1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十四年二月七日(火曜日)午後一時十二分開議
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議事日程 第九號
昭和十四年二月七日
午後一時開議
第一 臺灣事業公債法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第二 朝鮮私設鐵道補助法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第三 朝鮮鐵道株式會社所屬金泉慶北安東間鐵道買收の爲公債發行に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第四 森林法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第五 林業種苗法案(政府提出) 第一讀會
第六 軍馬資源保護法案(政府提出) 第一讀會
第七 種馬統制法案(政府提出) 第一讀會
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〔左の報告は朗讀を經さるも參照の爲茲に掲載す〕
一政府より提出せられたる議案左の如し
昭和十二年度歳入歳出總決算
昭和十二年度各特別會計歳入歳出決算
昭和十二年度歳入歳出決算檢査報告
朝鮮私設鐵道補助法中改正法律案
朝鮮鐵道株式會社所屬金泉慶北安東間鐵道買收の爲公債發行に關する法律案
森林法中改正法律案
林業種苗法案
(以上二月四日提出)
軍馬資源保護法案
種馬統制法案
(以上二月五日提出)
競馬法の臨時特例に關する法律案
(以上二月六日提出)
一議員より提出せられたる議案左の如し
裁判所構成法改正法律案
提出者
野田文一郎君 岡本實太郎君
作田高太郎君 今成留之助君
池田清秋君 眞鍋勝君
南雲正朔君 高橋義次君
手代木隆吉君 西田郁平君
中山福藏君 菊池良一君
村松久義君 内藤正剛君
松永東君 服部英明君
原玉重君 森田重次郎君
田村秀吉君 牧野賤男君
牧野良三君 名川侃市君
松木弘君 世耕弘一君
小高長三郎君 津原武君
清瀬一郎君
檢察廳法案
提出者
野田文一郎君 岡本實太郎君
作田高太郎君 今成留之助君
池田清秋君 眞鍋勝君
南雲正朔君 高橋義次君
手代木隆吉君 西田郁平君
中山福藏君 菊池良一君
村松久義君 内藤正剛君
松永東君 服部英明君
原玉重君 森田重次郎君
田村秀吉君 牧野良三君
牧野賤男君 名川侃市君
松木弘君 世耕弘一君
小高長三郎君 津原武君
清瀬一郎君
行政書士法案
提出者
中山福藏君 高橋義次君
一松定吉君
司法書士法中改正法律案
提出者
中山福藏君 高橋義次君
一松定吉君
有明海沖ノ島に燈臺建設に關する建議案
提出者
愛野時一郎君 宇賀四郎君
教化團體奬勵助成に關する建議案
提出者 林平馬君
災害緊急對策耕地事業に要する鐵鋼材配給緩和に關する建議案
提出者
伊藤東一郎君 長井源君
内藤守正君
(以上二月二日提出)
青年禁酒法案
提出者
高橋壽太郎君 坂東幸太郎君
村松久義君 林平馬君
森田重次郎君 星島二郎君
志賀和多利君 依光好秋君
田中養達君 杉浦武雄君
赤松克麿君 杉山元治郎君
河合義一君 椎尾辨匡君
(以上二月三日提出)
恩給法中改正法律案
提出者
片山哲君 松本治一郎君
菊地養之輔君
電信線電話線建設條例改正に關する建議案
提出者 田中好君
穀物檢査國營即時斷行に關する建議案
提出者
佐藤洋之助君 吉植庄亮君
坪山徳彌君 篠原義政君
淡水養魚擴充計畫樹立に關する建議案
提出者 森幸太郎君
米の混砂搗精禁止に關する建議案
提出者
吉植庄亮君 小串清一君
農業團體統制に關する建議案
提出者
川俣清音君 三宅正一君
結核豫防竝撲滅に關する建議案
提出者
河合義一君 井上良次君
山崎釼二君
齒科用金合金配給に關する建議案
提出者 杉山元治郎君
(以上二月四日提出)
所得税法中改正法律案
提出者 塚本重藏君
農地保護法制定に關する建議案
提出者
三宅正一君 川俣清音君
廢品囘收及再生事業の統制及助成に關する建議案
提出者 中村高一君
(以上二月六日提出)
一去二日議長に於て辭任を許可したる常任委員左の如し
第四部選出豫算委員 北勝太郎君
第七部選出豫算委員 小谷節夫君
第八部選出豫算委員 今井新造君
一去二日に於ける特別委員の異動左の如し
朝鮮事業公債法中改正法律案(政府提出)委員
辭任鶴惣市君 補闕岩瀬亮君
人事調停法案(政府提出)委員
辭任椎尾辨匡君 補闕田川大吉郎君
名古屋帝國大學創設に伴ふ帝國大學特別會計及官立大學特別會計の關渉に關する法律案(政府提出)委員
辭任村上紋四郎君 補闕小野寅吉君
一去三日議長に於て辭任を許可したる常任委員左の如し
第六部選出豫算委員 中野治介君
第九部選出決算委員 小山亮君
一去三日常任委員補闕選擧の結果左の如し
第四部選出
豫算委員 永山忠則君(北勝太郎君補闕)
第七部選出
豫算委員 行吉角治君(小谷節夫君補闕)
第八部選出
豫算委員 小山亮君(今井新造君補闕)
一去三日特別委員理事補闕選擧の結果左の如し
昭和十四年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債發行に關する法律案(政府提出)外二件委員
理事 松尾四郎君(理事小山邦太郎君一月三十一日委員辭任に付其の補闕)
一去三日理事追加互選の結果左の如し
昭和十四年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債發行に關する法律案(政府提出)外二件委員
理事 山崎常吉君
一去三日に於ける特別委員の異動左の如し
昭和十四年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債發行に關する法律案(政府提出)外二件委員
辭任宮本雄一郎君 補闕東條貞君
一去四日常任委員補闕選擧の結果左の如し
第六部選出
豫算委員 立川平君(中野治介君補闕)
第九部選出
決算委員 今井新造君(小山亮君補闕)
一去四日議長に於て辭任を許可したる常任委員左の如し
第九部選出豫算委員 若宮貞夫君
第七部選出建議委員 成島勇君
一昨六日政府より昭和十二年度國有財産増減總計算書及之に添附すべき各省の同増減報告書竝會計檢査院檢査報告を受領せり
一昨六日衆議院規則第十五條但書に依り議長に於て議席を左の通變更せり
三七 加藤勘十君
三九〇 小田榮君
一昨六日常任委員補闕選擧の結果左の如し
第九部選出
豫算委員 名川侃市君(若宮貞夫君補闕)
第七部選出
建議委員 深澤吉平君(成島勇君補闕)
一昨六日に於ける特別委員の異動左の如し
昭和十四年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債發行に關する法律案(政府提出)外二件委員
辭任岸田正記君 補闕平野力三君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=0
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001・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ヨリ會議ヲ開ギマ
ス、御諮リ致シマス、決算委員長及ビ昭和
十四年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲公
債發行ニ關スル法律案外二件委員長ヨリ
本日本會議中委員會ヲ開キタイトノ申出ガ
アリマス、之ヲ許可スルニ御異議アリマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=1
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002・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ之ヲ許可致シマス-日程第一
臺灣事業公債法中改正法律案ノ第一讀會ヲ
開キマス-松村大藏政務次官
第臺灣事業公債法中改正法律案
(政府提出)第一讀會
臺灣事業公債法中改正法律案
臺灣事業公債法中左ノ通改正ス
第一條中「一億五千四百六十萬圓」ヲ「一
億七千二百九十萬圓」三郎人
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員松村光三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=2
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003・松村光三
○政府委員(松村光三君) 只今議題トナリ
マシタ臺灣事業公債法中改正法律案提出ノ
理由ヲ說明致シマス、臺灣總督府特別會計
ニ於ケル既定繼續費港灣費ニ追加シ計上致
シマシタル中部港築港工事ニ要スル經費千
五百万圓、竝ニ昭和十四年度豫算ニ計上シ
タル鐵道改良ニ要スル經費三百四十万圓
ハ其ノ經費ノ性質及ビ同特別會計歲計ノ
現情ニ顧ミマシテ、是ガ財源ヲ公債ニ依ル
コトト致シマシタルニ依リ、現行臺灣事業
公債法ノ公債發行限度ヲ增加スルノ必要ガ
アリマスノデ、本法律案ヲ提出致シマシタ
次第デアリマス、何卒御審議ノ上速ニ協賛
ヲ與ヘラレンコトヲ希望致シマス(拍手)
〔「質問ガアル」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=3
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004・小山松壽
○議長(小山松壽君) 本案ノ審査ヲ付託ス
ベキ委員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=4
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005・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ政府提出、朝鮮事業
公債法中改正法律案ノ委員ニ併セ付託サレ
ンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=5
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006・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=6
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007・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第
二、朝鮮私設鐵道補助法中改正法律案ノ第
一讀會ヲ開キマス-八田拓務大臣
第二朝鮮私設鐵道補助法中改正法律
案(政府提出)第一讀會
朝鮮私設鐵道補助法中改正法律案
朝鮮私設鐵道補助法中左ノ通改正ス
第一條第一項中「十五年ヲ限リ」ノ下ニ
「豫算ノ範圍內ニ於テ」ヲ加ヘ同條第二項
中「五年」ヲ「十年」ニ改ム
第二條前條ノ補助金ハ每營業年度ニ於
ケル建設費ニ對シ年五分ノ割合ニ相當
スル金額ヲ限度トス但シ每營業年度ニ
於ケル益金カ建設費ニ對シ年一分ノ割
合ニ相當スル金額ヲ超ユルトキハ其ノ
超過額ハ之ヲ補助金額ヨリ控除ス
第五條削除
附則
本法ハ昭和十四年四月一日ヨリ之ヲ施行
ス但シ本法施行ノ際現ニ補助ヲ受クル鐵
道ニ對スル補助ニ付テハ各現在ノ補助期
間滿了ノ日ノ屬スル營業年度ノ末日迄ハ
改正規定ニ拘ラズ仍從前ノ例ニ依ル
〔國務大臣八田嘉明君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=7
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008・八田嘉明
○國務大臣(八田嘉明君) 只今議題トナリ
マシタ朝鮮私設鐵道補助法中改正法律案提
出ノ理由ヲ說明致シス、朝鮮ニ於ケル私設
鐵道ニ對シマシテハ、現行法ニ依リマシテ
該鐵道營業開始ノ日ヨリ二十年マデハ補助
金ヲ交付シ得ルコトトナツテ居リマス所、現在
補助金ノ交付ヲ受ケツツアル私設鐵道中、近
ク其ノ補助期間ノ滿了スルモノガアルノデ
アリマスガ、是等ハ未ダ其ノ業績豫期ノ如ク擧
ラズ、仍テ當分ノ間ハ政府ノ補助ヲ離レテハ
自立シ難イ狀態デアリマス、而モ是等ノ鐵
道ハ朝鮮開發上重要ナル路線デアリ、且ツ
國營代行ノ意義ヲ有シマスルノデ、今囘本
法ニ必要ナル改正ヲ加ヘ、是ガ助成ノ爲必
要アル場合ニ於テハ、現在ノ補助期間ヲ更
ニ五年間延長シ得ルノ途ヲ開カント致シタ
ノデアリマス、尙ホ補助方法ニ付キマシテ
モ、現下經濟界ノ趨勢ニ鑑ミマシテ、適當
ノ改正ヲ加フルコトト致シマシタ、何卒御
審議ノ上御協賛アランコトヲ希望致シマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=8
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009・小山松壽
○議長(小山松壽君) 本案ノ審査ヲ付託ス
ベキ委員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=9
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010・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ政府提出、朝鮮事業
公債法中改正法律案ノ委員ニ併セ付託サレ
ンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=10
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011・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=11
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012・小山松壽
○議長(小山松壽君) 異議ナシト認メマス、
仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第三、朝
鮮鐵道株式會社所屬金泉慶北安東間鐵道買
收ノ爲公債發行ニ關スル法律案ノ第一讀會ヲ
開キマス-松村大藏政務次官
第三朝鮮鐵道株式會社所屬金泉慶北
安東間鐵道買收ノ爲公債發行ニ關ス
ル法律案(政府提出)第一讀會
朝鮮鐵道株式會社所屬金泉慶北安東間
鐵道買收ノ爲公債發行ニ關スル法律案
政府ハ朝鮮鐵道株式會社所屬金泉慶北安
東間鐵道買收ノ爲之ニ必要ナル額ヲ限度
トシ公債ヲ發行スルコトヲ得
〔政府委員松村光三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=12
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013・松村光三
○政府委員(松村光三君) 只今議題トナリ
マシタ朝鮮鐵道株式會社所屬金泉慶北安東
間鐵道買收ノ爲公債發行ニ關スル法律案提
出ノ理由ヲ說明致シマス、朝鮮鐵道株式會
社ノ經營ニ屬シマスル金泉慶北安東間ノ鐵
道卽チ慶北線ハ朝鮮國有鐵道ノ京釜線金
泉驛ヨリ北上致シマシテ、慶尙北道ノ略、〓
中部慶北安東驛ニ致リマスル延長百十餘粁
ノ私設鐵道デアリマスガ、本鐵道ハ曩ニ第六
十九囘帝國議會ノ協贊ヲ經マシタ朝鮮國有
鐵道中央線ノ建設工事ノ進涉ニ伴ヒマシテ、
工事用諸材料輸送ノ便宜上及ビ國有鐵道運
輸系絡整備ノ必要上等ヨリ、昭和十四年度
ニ於テ之ヲ買收スルヲ適當ト認メマシタル
爲、其ノ買收代價トシテ交付スベキ公債ヲ
發行シ得ルコトトスルノ必要ガアリマスノ
デ、本法律案ヲ提出致シマシタ次第デアリ
やくろ何卒御審議ノ上速ニ協贊ヲ與ヘラレ
ンコトヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=13
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014・小山松壽
○議長(小山松喜君) 本案ノ審査ヲ付託ス
ベキ委員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=14
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015・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ政府提出、朝鮮事業
公債法中改正法律案ノ委員ニ併セ付託サレ
ンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=15
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016・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=16
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017・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第
四及ビ第五ハ關聯セル議案デアリマスカラ、
一括議題ト爲スニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=17
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018・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程第四、森林法中改正法律案、
日程第五、林業種苗法案、右兩案ヲ一括シ
テ第一讀會ヲ開キマス-櫻內農林大臣
第四森林法中改正法律案(政府提出)
第一讀會
第五林業種苗法案(政府提出)
第一讀會
森林法中改正法律案
森林法中左ノ通改正ス
第三條中「地租條例」ヲ「地租法」ニ改ム
第九條命令ヲ以テ定ムル公有林、社寺
有林又ハ私有林ノ所有者ハ其ノ所有ス
ル森林又ハ造林ノ用ニ供スル土地ニ付
命令ノ定ムル所ニ依リ施業案ヲ編成シ
地方長官ノ認可ヲ受クヘシ認可ヲ受ケ
タル施業案ヲ變更セントスルトキ亦同
シ
地方長官必要アリト認ムルトキハ前項
ノ施業案ノ變更ヲ命スルコトヲ得
第一項ノ規定ニ依リ施業案ヲ編成スル
コトヲ要スル者又ハ前項ノ規定ニ依リ
施業案ノ變更ヲ命セラレタル者之ヲ編
成セス又ハ變更セサルトキハ地方長官
ハ其ノ者ニ代リテ之ヲ編成シ又ハ變更
スルコトヲ得
第十條地方長官森林生產ノ保續ヲ圖ル
爲特ニ必要アリト認ムルトキハ公有
林、社寺有林又ハ私有林ノ所有者ニ對
シ其ノ森林ニ付區域又ハ箇所及期間ヲ
定メ伐採方法又ハ造林其ノ他伐採ニ伴
フ必要ナル事項ヲ指定スルコトヲ得
前項ノ規定ハ前條ノ規定ニ依ル施業案
ノ編成アリタル森林及第六十九條ノ三
ノ規定ニ依ル森林組合ノ施業案ノ編成
アリタル森林ニ付テハ之ヲ適用セス
第十一條公有林、社寺有林又ハ私有林
ノ所有者第九條ノ規定ニ依ル施業案ニ
定メタル伐採、造林其ノ他ノ施業要件
ニ準據セス又ハ前條ノ規定ニ依ル指定
ニ從ハサルトキハ行政官廳ハ伐採ノ停
止ヲ命シ又ハ其ノ者ニ代リテ自ラ伐
採造林其ノ他施業上必要ナル行爲ヲ
爲シ若ハ公共團體ヲシテ之ヲ爲サシム
ルコトヲ得
前項ノ伐採停止ニ關スル規定ハ森林所
有者カ其ノ生活ヲ維持スル爲已ムヲ得
サルニ出テタル伐採ニ付テハ之ヲ適用
セス
第十一條ノ二第九條第三項ノ規定ニ依
リ施業案ヲ編成シ若ハ變更スルニ要シ
タル費用又ハ前條ノ規定ニ依リ伐採、
造林其ノ他施業上必要ナル行爲ヲ爲シ
又ハ爲サシムルニ要シタル費用ハ行政
官廳ニ於テ行政執行法第六條ノ例ニ依
リ之ヲ徵收スルコトヲ得
第十一條ノ三地方長官國土保安其ノ他
公益上特ニ必要アリト認ムルトキハ公
有林、社寺有林又ハ私有林ノ所有者ニ
對シ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ所有ス
ル森林ニ付施業技術者ノ雇入ヲ命スル
コトヲ得
第十三條ノ次ニ左ノ二條ヲ加フ
第十三條ノ二行政官廳必要アリト認ム
ルトキハ森林產物ノ生產若ハ取引又ハ
森林產物ヲ原料トスル物品ノ製造ヲ爲
ス者ニ對シ森林產物ノ需給ノ狀況ニ關
スル事項ノ報告ヲ命シ又ハ之ニ關スル
帳簿書類其ノ他ノ物件ニ付必要ナル調
査ヲ爲スコトヲ得
第十三條ノ三二以上ノ府縣ニ亙ル事項
ニ關シテハ本章ニ規定シタル地方長官
ノ職權ニ付勅令ヲ以テ別段ノ定ヲ爲ス
コトヲ得
第十八條及第二十三條中「市町村役場」ノ
下ニ「(町村制ヲ施行セサル地ニ於テハ之
ニ準スヘキ場所)」ヲ加フ
第三十四條中「第十一條」ノ下ニ「及第十
一條ノ二」ヲ加フ
第四十條、第四十九條、第五十條、第五
十八條及第六十一條中「御料局」ヲ「帝室
林野局」ニ改ム
「第五章森林組合」ヲ「第五章森林組
合及森林組合聯合會」ニ改ム
第六十二條森林組合ハ組合員ノ所有ス
ル森林ニ付自ラ施業ヲ爲シ又ハ組合員
ノ施業ヲ調整シ以テ森林生產ノ保續ヲ
圖ルヲ以テ目的トス
組合ハ前項ノ目的ヲ達スル爲定款ノ定
ムル所ニ依リ左ノ各號ノ一ノ事業ヲ行
フ
一組合員ノ所有スル森林ニ付施業案
ヲ編成シ之ニ基キ施業ヲ爲スコト
二組合員ノ爲ニ施業案ヲ編成シ之ニ
基キ組合員ノ爲ス施業ヲ調整シ及地
區內森林ノ施業ニ必要ナル共同施設
ヲ爲スコト
第六十四條一定ノ地區內ニ於ケル森林
ヲ所有スル者ハ定款ヲ定メ地方長官ノ
認可ヲ得テ森林組合ヲ設立スルコトヲ
得
組合ノ地區ハ市町村又ハ之ニ準スヘキ
モノノ區域ニ依ル但シ特別ノ事情アル
場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラス
第六十五條森林組合ハ其ノ名稱中ニ森
林組合ナル文字ヲ用フヘシ
森林組合ニ非サルモノハ其ノ名稱中ニ
森林組合ナル文字ヲ用フルコトヲ得ス
第六十六條ノ二地方長官森林生產ノ保
續ヲ圖ル爲特ニ必要アリト認ムルトキ
ハ命令ノ定ムル所ニ依リ地區ヲ指定シ
組合員タル資格ヲ有スル者ニ對シ森林
組合ノ設立ヲ命スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ設立ヲ命セラレタル
者ハ前條ノ條件ニ從ヒ定款其ノ他必要
ナル事項ヲ定メ地方長官ノ認可ヲ受ク
ヘシ
第六十九條ノ二森林組合ハ定款ノ定ム
ル所ニ依リ其ノ經費ヲ組合員ニ分賦ス
ルコトヲ得
第七十條第一項ノ規定ニ依リ組合員ニ
出資ヲ爲サシムル森林組合ニ付テハ前
項ノ規定ニ依ル經費分賦ハ第六十二條第
二項ニ規定スル事業ニ關シ命令ヲ以テ
定ムル經費ニ限ル
第六十九條ノ三森林組合ハ組合員ノ所
有スル森林ニ付命令ノ定ムル所ニ依リ
施業案ヲ編成シ地方長官ノ認可ヲ受ク
ヘシ認可ヲ受ケタル施業案ヲ變更セン
トスルトキ亦同シ
第九條第二項及第三項ノ規定ハ組合ニ
之ヲ準用ス
第六十九條ノ四第十一條及第十一條ノ
二ノ規定ハ第六十二條第二項第一號ノ
事業ヲ行フ森林組合及同項第二號ノ事
業ヲ行フ森林組合ノ組合員ニ之ヲ準用
ス
第六十九條ノ五第十一條ノ三ノ規定ハ
森林組合ニ之ヲ準用ス
第六十九條ノ六第六十二條第二項第一
號ノ事業ヲ行フ森林組合ハ定款ニ別段
ノ定アル場合ヲ除クノ外組合員ノ所有
スル森林ニ付組合ノ施業ノ範圍ニ於テ
使用及收益ヲ爲スノ權利ヲ有ス
前項ノ規定ニ依ル組合ノ收益ハ定款ノ
定ムル所ニ依リ組合員ノ所有スル森林
ノ評價額其ノ他命令ヲ以テ定ムル標準
ニ依リ之ヲ組合員ニ分配スヘシ
第七十條森林組合ハ定款ノ定ムル所ニ
依リ組合員ニ出資ヲ爲サシムルコトヲ
得
前項ノ規定ニ依リ組合員ニ出資ヲ爲サ
シムル組合ハ第六十二條第二項ニ規定
スル事業ノ外定款ノ定ムル所ニ依リ左
ノ事業ヲ行フコトヲ得
組合又ハ組合員ノ生產シタル森林
產物ノ運搬、加工、保管及販賣ニ關
スル施設ヲ爲スコト
二組合員ノ森林ノ維持又ハ施業ニ必
要ナル資金ノ貸付ヲ爲スコト
三地區內ニ居住スル森林所有者ヲ創
設スル爲地區內ノ森林ヲ取得スルコト
四第六十二條第二項第二號ノ事業ヲ
行フ組合ニ在リテハ組合員ノ委託ニ
依リ其ノ森林ノ施業ヲ爲スコト
第七十條ノ二前條第一項ノ規定ニ依リ
組合員ニ出資ヲ爲サシムル森林組合ノ
組合員ハ出資一口以上ヲ有スヘシ
出資一口ノ金額ノ最高限ハ命令ヲ以テ
之ヲ定ム
第七十條ノ三第七十條第一項ノ規定ニ
依リ組合員ニ出資ヲ爲サシムル森林組
合ニ在リテハ組合財產ヲ以テ其ノ債務
ヲ完濟スルコト能ハサル場合ニ於テ組
合員ノ全員ハ其ノ出資額及第六十九條
ノ二ノ規定ニ依ル費用負擔ノ外定款ノ
定ムル一定ノ金額(追補金額)ヲ限度ト
シテ組合ニ對シ責任ヲ負擔ス
前項ノ組合ハ拂込未濟出資額及追補金
額ニ付組合員ノ所有スル地區內ノ森林
ノ上ニ先取特權ヲ有ス
前項ノ先取特權ハ其ノ優先權ノ順位ニ
付テハ之ヲ不動產賣買ノ先取特權ト看
做シ其ノ效力ニ付テハ民法中不動產賣
買ノ先取特權ニ關スル規定ヲ準用ス
第七十三條ヲ削リ第七十四條ヲ第七十三
條トス
第七十四條森林組合聯合會ハ所屬ノ森
林組合及森林組合聯合會ノ共同ノ目的
ヲ達スル爲之ヲ設立スルコトヲ得
聯合會ハ森林組合又ハ森林組合聯合會
ヲ以テ之ヲ組織ス
聯合會ヲ設立セントスルトキハ定款ヲ
定メ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第七十四條ノ二森林組合聯合會ハ其ノ
名稱中ニ森林組合聯合會ナル文字ヲ用
フヘシ
森林組合聯合會ニ非サルモノハ其ノ名
稱中ニ森林組合聯合會ナル文字ヲ用フ
ルコトヲ得ス
第七十四條ノ三森林組合聯合會ハ定款
ノ定ムル所ニ依リ其ノ所屬組合又ハ聯
合會ニ出資ヲ爲サシムルコトヲ得
前項ノ聯合會ノ所屬組合又ハ聯合會ノ
責任ハ第七十四條ノ五ニ於テ準用シタ
ル第六十九條ノ二第一項ノ規定ニ依ル
費用負擔ノ外其ノ出資額ヲ限度トス
第七十四條ノ四森林組合聯合會ハ主務
大臣之ヲ監督ス
前項ノ規定ニ依ル主務大臣ノ職權ノ一
部ハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ地方長
官ニ委任スルコトヲ得
第七十四條ノ五第六十三條、第六十八
條、第六十九條、第六十九條ノ二第一
項、第七十條ノ二、第七十一條第二項
及第七十二條ノ規定ハ森林組合聯合會
ニ之ヲ準用ス
第七十五條中「森林組合」ノ下ニ「及森林
組合聯合會」ヲ、「其ノ他組合」ノ下ニ「及
聯合會」ヲ加ン
第七十五條ノ次ニ左ノ三條ヲ加フ
第七十五條ノ二森林組合又ハ森林組合
聯合會ニ於テ本章ノ規定(第六十九條
ノ四ニ於テ準用シタル第十一條及第六
十九條ノ五ニ於テ準用シタル第十一條
ノ三ノ規定ヲ除ク)又ハ之ニ基キテ發
スル命令ニ違反シタルトキハ其ノ役員
ヲ百圓以下ノ過料ニ處ス
第七十五條ノ三第六十五條第二項及第
七十四條ノ二第二項ノ規定ニ違反シタ
ル者ハ百圓以下ノ過料ニ處ス
第七十五條ノ四非訟事件手續法第二百
六條乃至第二百八條ノ規定ハ前二條ノ
過料ニ之ヲ準用ス
第八十三條中「重禁錮」ヲ「懲役」ニ、「贓額
以上贓額二倍」ヲ「千圓」ニ改ム
第八十四條中「二月以上三年以下ノ重禁
鋼及贓額以上贓額二倍以下ノ罰金ニ處ス」
ヲ「五年以下ノ懲役若ハ五千圓以下ノ罰
金ニ處シ又ハ其ノ刑ヲ併科ス」ニ改ム
第八十七條森林窃盗ノ贓物ヲ收受シタ
ル者ハ三年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ
罰金ニ處ス
森林窃盗ノ贓物ノ運搬、寄藏、故買又
ハ牙保ヲ爲シタル者ハ五年以下ノ懲役
若ハ五千圓以下ノ罰金ニ處シ又ハ其ノ
刑ヲ併科ス
第八十八條他人ノ森林ニ放火シタル者
ハ二年以上ノ有期懲役ニ處ス
自己ノ森林ニ放火シタル者ハ三年以下
ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス因テ
他人ノ森林ニ延燒シタルトキハ七年以
下ノ懲役ニ處ス
第八十九條火ヲ失シテ他人ノ森林ヲ燒
燬シタル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
火ヲ失シテ自己ノ森林ヲ燒燬シ因テ公
共ノ危險ヲ生セシメタル者亦前項ニ同
シ
第九十條中「前條第二項ノ罪ヲ犯サント
シテ未タ遂ケサル者ハ刑法未遂犯罪ノ例
ニ照シテ處斷ス」ヲ「第八十八條ノ未遂罪
ハ之ヲ罰ス」ニ改ム
第九十一條中「三十圓」ヲ「百圓」ニ改メ同
條但書ヲ削ル
第九十二條中「二十圓」ヲ「百圓」ニ改ム
第九十三條第一項中「二百圓」ヲ「三百圓」
ニ、同條第二項中「重禁錮及二百圓」ヲ「懲
役又ハ三百圓」ニ改ム
第九十四條中「五十圓」ヲ「百圓」ニ改ム
第九十四條ノ二第十一條第一項(第六
十九條ノ四ニ於テ準用スル場合ヲ含
ム)ノ規定ニ依ル伐採停止ノ命令ニ違
反シタル者ハ三百圓以下ノ罰金又ハ科
料ニ處ス
第九十五條中「二十圓」ヲ「五十圓」ニ改ム
第九十五條ノ二左ノ各號ノ一ニ該當ス
ル者ハ百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第十三條ノ二ノ規定ニ依ル報告ヲ
爲サス又ハ虚僞ノ報告ヲ爲シタル者
二第十三條ノ二ノ規定ニ依ル調査ヲ
拒ミタル者
第九十六條中「百圓」ヲ「一一百圓」ニ改ム
第九十七條中「二百圓」ヲ「三百圓」ニ改ム
第九十八條中「三十圓」ヲ「五十圓」ニ改ム
第九十九條ヲ削ル
第百條ヲ第九十九條トシ同條中「二十圓」
ヲ「五十圓」ニ改ム
第百一條ヲ第百條トシ同條中「二十圓」ヲ
「百圓」ニ改ム
第百二條ヲ第百一條トシ同條中「五十圓」
ヲ「百圓」ニ、「二百圓」ヲ「三百圓」ニ改ム
第百三條ヲ第百二條トス
第百三條法人又ハ人ノ代理人、戶主、
家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者カ
其ノ法人又ハ人ノ業務ニ關シ第九十四
條ノ二又ハ第九十五條ノ二第一號ノ違
反行爲ヲ爲シタルトキハ其ノ法人又ハ
人ハ自己ノ指揮ニ出テサルノ故ヲ以テ
處罰ヲ免ルルコトヲ得ス
第百三條ノ二第九十四條ノ二又ハ第九
十五條ノ二第一號ノ罰則ハ其ノ者カ法
人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法
人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者
又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理
人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者
ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テ
ハ此ノ限ニ在ラス
第百六條北海道ニ於テ本法ヲ適用スル
ニ付必要ナル事項ニ關シテハ勅令ヲ以
テ特例ヲ設クルコトヲ得
第百七條第二項中「第十一條」ノ下ニ「及
第十一條ノ二」ヲ加フ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
公有林又ハ社寺有林ニ付本法施行前地方
長官ノ認可ヲ受ケタル施業案又ハ施業要
領ハ本法ニ依リ認可ヲ受ケタル施業案ト
看做ス
從前ノ規定ニ依リ設立セラレタル森林組
合ニシテ本法施行ノ際現ニ存スルモノハ
本法施行ノ日ヨリ五年ヲ限リ仍從前ノ例
二氏八
前項ノ組合ハ前項ノ期間內ニ命令ノ定ム
ル所ニ依リ監督官廳ノ認可ヲ得テ改正規
定ニ依ル組合ト爲ルコトヲ得
第三項ノ組合ニシテ同項ノ期間內ニ改正
規定ニ依ル組合ト爲ラサルモノハ其ノ期
間滿了ノ日ニ於テ解散ス
本法施行前從前ノ罰則ヲ適用スヘカリシ
行爲ニ付テハ仍從前ノ例ニ依ル
林業種苗法案
林業種苗法
第一條本法ニ於テ種苗トハ林業ノ用ニ
供スル樹木ノ種子及苗ヲ謂フ
第二條本法ヲ適用スル種苗ノ樹種ハ勅
令ヲ以テ之ヲ定ム
第三條行政官廳ハ命令ノ定ムル所ニ依
リ優良ナル種苗ノ採取ニ適スル樹木又
ハ其ノ集團ヲ母樹又ハ母樹林トシテ指
定スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル指定ヲ受ケタル母樹
又ハ母樹林ハ行政官廳ノ許可ヲ受クル
ニ非ザレバ之ヲ伐採スルコトヲ得ズ
第四條行政官廳前條第一項ノ規定ニ依
リ母樹又ハ母樹林ノ指定ヲ爲シタルト
キハ其ノ旨ヲ其ノ樹木又ハ樹木ノ集團
ノ所有者ニ通知シ且命令ノ定ムル所ニ
依リ之ヲ公示スベシ
第五條行政官廳ハ母樹又ハ母樹林ノ所
有者ニ對シ母樹又ハ母樹林ノ保護又ハ
管理ニ關シ必要ナル處置ヲ命ジ又ハ有
害ナル行爲ヲ制限シ若ハ禁·止スルコト
ヲ得
第六條行政官廳ハ母樹又ハ母樹林ノ所
有者ニ對シ母樹又ハ母樹林ニ關シ必要
ナル事項ノ報告ヲ命ズルコトヲ得
第七條政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ母
樹又ハ母樹林ノ所有者ニ對シ伐採ヲ停
止セラレタルニ因ル直接ノ損失ヲ補償
ス
前項ノ規定ニ依ル補償金額ニ付不服ア
ル者ハ其ノ補償金額ノ通知ヲ受ケタル
日ヨリ三月以內ニ通常裁判所ニ出訴ス
ルコトヲ得
第八條行政官廳母樹又ハ母樹林トシテ
存置スルノ必要ナシト認ムルトキハ母
樹又ハ母樹林ノ指定ヲ解除スルコトヲ
得
第四條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用
ス
第九條行政官廳ハ配付ノ目的ヲ以テス
ル種苗ノ採取ニ關シ命令ノ定ムル所ニ
依リ採取時期ヲ指定シ又ハ採取ニ適セ
ザル樹木若ハ其ノ集團ヨリノ採取ヲ禁
止スルコトヲ得
第十條行政官廳必要アリト認ムルトキ
ハ種苗ノ種類ニ應ジ之ニ適スル配付區
域ヲ指定シ又ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ
種苗ノ輸出若ハ輸入ヲ制限シ若ハ禁止
スルコトヲ得
第十一條種苗ノ販賣ヲ業トスル者ハ其
ノ業務ニ關シ命令ノ定ムル事項ヲ行政
官廳ニ屆出ヅベシ
第十二條行政官廳必要アリト認ムルト
キハ命令ノ定ムル所ニ依リ種苗ノ販賣
ヲ業トスル者ヲシテ其ノ販賣スル種苗
ニ保證票ヲ添附セシムルコトヲ得
第十三條行政官廳必要アリト認ムルト
キハ種苗ノ販賣ヲ業トスル者ニ對シ種
苗ノ給配ノ狀況ニ關スル事項ノ報告ヲ
命ジ又ハ之ニ關スル帳簿書類其ノ他ノ
物件ニ付必要ナル調査ヲ爲スコトヲ得
第十四條母樹又ハ母樹林ニ關シ本法又
ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依リテ爲
シタル手續其ノ他ノ行爲ハ母樹又ハ母
樹林ノ所有者ノ承繼人ニ對シテモ其ノ
效力ヲ有ス
第十五條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ
三百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
-第三條第二項ノ規定ニ違反シ許可
ヲ受ケズシテ母樹又ハ母樹林ヲ伐採
シタル者
二第五條ノ規定ニ依ル命令又ハ制限
若ハ禁止ニ違反シタル者
三第六條ノ規定ニ依ル報告ヲ爲サズ
又ハ虛僞ノ報〓ヲ爲シタル者
四配付ノ目的ヲ以テ第九條ノ規定ニ
依ル指定又ハ禁止ニ違反シ種苗ヲ採
取シタル者
五第十條ノ規定ニ依ル指定ニ違反シ
種苗ノ配付ヲ爲シ又ハ同條ノ規定ニ
依ル制限若ハ禁止ニ違反シ種苗ノ輸出
若ハ輸入ヲ爲シ若ハ爲サントシタル者
六第十二條ノ規定ニ違反シ保證票ヲ
添附セズシテ種苗ヲ販賣シ又ハ虛僞
ノ保證票ヲ添附シテ種田ヲ販賣シタ
ル者
第十六條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ
百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
-第十三條ノ規定ニ依ル報〓ヲ爲サ
ズ又ハ虛僞ノ報告ヲ爲シタル者
二第十三條ノ規定ニ依ル調査ヲ拒ミ、
妨ゲ又ハ忌避シタル者
第十七條種苗ノ販賣ヲ業トスル者ハ其
ノ代理人、戶主、家族、、同居者、雇人
其ノ他ノ從業者ガ其ノ業務ニ關シ第十
五條第二號、第三號、第五號若ハ第六
號又ハ前條第一號ノ違反行爲ヲ爲シタ
ルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ
以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第十八條第十五條第二號、第三號、第
五號及第六號竝ニ第十六條第一號ノ罰
則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理事、取
締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役
員ニ、未成年者又ハ禁治產者ナルトキ
ハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營
業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル
未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第十九條第十一條ノ規定ニ依ル届出ヲ
爲サズ又ハ虛僞ノ屆出ヲ爲シタル者ハ
百圓以下ノ過料ニ處ス
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百
八條ノ規定ハ前項ノ過料ニ之ヲ準用ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣櫻內幸雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=18
-
019・櫻内幸雄
○國務大臣(櫻內幸雄君) 只今議題トナリ
マシタ森林法中改正法律案及ビ林業種苗法
案ノ提案理由ヲ御說明申上ゲマス
戰時經濟體制ノ進展スルニ伴ヒマシテ、
建築用材、製炭資材、「パルプ」資材、坑木用
材、其ノ他木材ノ需要ガ顯著ニ增加シツツ
アル反面ニ於キマシテ、國際牧支改善ノ爲、
外國產木材ノ輸入ガ强度ニ制限ヲ受ケルニ
至リマシタ爲、木材ノ需要ハ主トシテ內地
產木材ヲ以テ充足セネバナラヌコトト相成
リマシタ、其ノ結果內地森林、特ニ從來比
較的施業ノ放漫デアリマシタ民有林ニ付テ
ハ漸次過伐早伐ノ傾向ヲ來シ、就中搬出
ニ便利ナル地方ニ於テ、此ノ傾向ハ一層顯
著デアリマス、隨テ從來動モスレバ植伐不
均衡ノ爲ニ貧弱トナツテ居リマシタ民有林
ノ蓄積ハ是ガ爲最近頓ニ減耗シツツアリ
マシテ、今後此ノ儘之ヲ放置致シマスルナ
ラバ、內地ニ於ケル木材給源ガ次第ニ涸渴
シ、重要資源自給方策ニ破綻ヲ來シマスル
ノミナラズ、治山治水其ノ他國土ノ保安ヲ阻
碍シ、各種災害瀕發ノ誘因トナリ、銃後產業
經濟ノ圓滑ナル進展及ビ國民生活ノ安定ヲ
甚シク脅威シ、延イテ戰時經濟ノ目的遂行
ニ對スル重大ナル障碍ヲ來タス虞ガアルノ
デアリマス、是ニ於テ民有林ニ於ケル施業
ヲ合理化スルコトニ依リマシテ、間伐ノ徹
底的普及、老齡過熱林分ノ經濟的利用開發
ラ促進スルト共ニ、幼齡未熟林分ノ濫伐ヲ
抑制シ、又伐採跡地ノ造林ヲ厲行致シマシテ、
以テ木材需給ノ現勢ニ卽應シタ合理的植伐
關係ノ確立ヲ圖リ、森林資源ヲ培養シ時局
下ニ於ケル各種木材ノ供給ヲ確保スルト共
二、一面治山ノ基礎ヲ固クシテ災害ヲ防除
スルコトハ洵ニ喫緊ノ要務デアルト存ジ
やく、仍テ今囘森林法中第二章營林ノ監督
ニ關スル規定及ビ第五章森林組合ニ關スル
規定ヲ改正補足致シマシテ、民有林施業ヲ
充實セシメ、以テ其ノ目的ノ達成ヲ圖ラン
トスルモノデアリマス、尙ホ此ノ機會ニ於
テ同法第七章罰則ニ關スル規定ヲ、現行刑
法ノ規定ニ卽應スル如ク改正致シダイ存ズ
ル次第デアリマス
次ニ林業種苗法案ニ付テ申上ゲマス、右
ニ述ベマシタ如ク現下木材需給ノ實勢ニ稽
ヘマシテ、森林資源ノ造成ハ洵ニ刻下ノ急
務ト存ジマスガ、造林ノ成績ハ其ノ種苗ノ
良否ニ依存スルコトガ多大デアリマシテ、
而モ種苗ノ良否ハ永年ノ歲月ガ經過シタ後
ニ至ツテ初メテ外部ニ現ハレテ來ルモノデ
アリマスカラ一旦種苗ノ選擇ヲ誤ツタ場
合ハ、十數年間ノ努力ヲ水泡ニ期セシメル
ヤウナ結果ヲ招來スルノデアリマス、隨テ
造林ノ成績ヲ確保スル爲ニ、林業用種苗ノ
主要ナモノニ付キ、優良ナル種子及ビ苗木
ヲ供給セシメルコトヲ主眼トシ、且ツ適地
適木ノ配置ニ萬全ヲ期スル爲、種苗配付及
ビ販賣ニ關シテ必要ナル施設ヲ講ジ、以テ
森林生產ノ成果ヲ確保シ、林業經營ノ基礎
ヲ安定セシメル爲、林業種苗法ヲ制定致シ
タイト存ズル次第デアリマス、何卒御審議
ノ上速ニ御協贊アランコトヲ希望致シマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=19
-
020・小山松壽
○議長(小山松壽君) 質疑ノ通〓ガアリマ
ス、順次之ヲ許シマス-松尾四郞君
〔小田榮君「議長、僕ノ質問通〓ヲ何故
許サナカツタカ」ト呼フ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=20
-
021・小山松壽
○議長(小山松壽君) 小田君ニ著席ヲ命ジ
マス
〔小田榮君「議長、ソンナコトガアル
カ」ト呼フ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=21
-
022・小山松壽
○議長(小山松壽君) 小田君ニ著席ヲ命ジ
マ人
〔松尾四郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=22
-
023・松尾四郎
○松尾四郞君 私ハ只今上程サレマシタ森
林法中改正法律案ニ付テ御質問ヲ申上ゲタ
イノデゴザイマス、只今大臣ヨリ御說明ノ
アリマシタ通リ、最近事變ノ影響ヲ受ケマシ
テ、我國木材ノ需要ハ急激ニ增加致シマシ
タニ反シマシテ、供給ノ方面ハ外材ノ輸入
ガナクナリマシタ爲ニ不足ヲ致シテ參リマ
シタ、其ノ結果內地材ノ急激ナル需要ガ起
ツテ參リマシタ、殊ニ此ノ木材需給ノ關係
ニ付テ私ガ調ベテ見マスルト、幼輪材、若
木ノ伐採ガ激シクナツテ參ツタノデゴザイ
やっ、私ノ大體推測的ニ調べタモノデゴザ
イマスガ、之ニ依ツテ見マスルト、我國ノ
木材ノ需給關係ハ、事變前昭和十二年ヲ取
ツテ見マスルト、約八千三百万石ノ消費ガ
起ツテ居リマス、此ノ消費ノ內譯ヲ見マス
ト、建築材ニ約四千五百万石、「パルプ」ニ
一千五百万石、鑛山ノ坑木等ニハ四百五十
万石、電柱、枕木等ニハ約一千七百万石、
斯ウ云フ內譯ニナルノデゴザイマシテ、之
ヲ事變後ノ今日ニ比較シテ見マスト、建築
材ノ方ハ資金統制等ニ依リマシテ餘程減少
致シマシタ、少クモ千五百万石位ハ其ノ消
費ガ減少シテ居ルコトハ推測出來ルノデゴ
ザイマス、之ニ反シマシテ「パルプ」ノ方ハ
ドウカト云ヒマスト、是ハ非常ナ增加ヲ致
シテ居リマシテ、少クモ一千万石以上ノ增
加ヲ致シテ居リマス、又鑛山、石炭方面ノ
坑木ニ使フモノモ、最近ノ鑛山熱ニ依リマ
シテ急激ナル增加ヲ致シテ居リマス、是モ
五百万石以上ノ增加ヲ見テ置カナケレバナ
ラヌト思ヒマスルノデ、建築材デ減少シマ
シタモノハ、「パルプ」ト鑛山用ノ方面ノ消費
ガ起ツテ居リマスカラ之ヲトン〓〓ト見
マシテモ、更ニ起リマシタル軍需方面ノ用
材、是ダケハ新シイ需要ガ起ツテ居リマス、
然ルニ供給ノ方面ヲ見マスルト、外材ノ輸
入ガ非常ニ減少シテ參リマシタ、亞米利加
材ノ如キハ四百万石入ツテ居リマシタモノ
ガ、最近ハ百五十万石ニナリ、南洋材ガ二
百五十万石入ツテ居ツタモノガ百万石、北
洋材-沿海州カラ來ル材木ハ全ク來ナク
ナリマシタカラ、此ノ方面カラノ供給ガ不
足シテ參リマシタモノヲ、五百万石位ハ見
テ置カナケレバナラヌト思フノデアリマス、
軍需方面ハ支那ノ戰地ノ復舊、兵舍建築、
橋梁、枕木、電柱等、急激ニ起ツタ需要ガ
約一千五百万石モアルヤウニ推測致シテ居
リマス此ノヤウニ急激ニ二千万石モ不足
ヲ來シテ來タモノガアリマシテ、而モ軍需
方面ノ用材ハ非常ニ納期ガ短イノデアリマ
スカラ、最近ハ里近イ若木ヲドン〓〓伐ツ
テ出スノデアリマス、此ノ情勢ガ進ミマス
ト、成育ノ最モ盛ンナ、成長率ノ良イ幼齡
林ガナクナツテ參リマシテ、成長ノ止ツテ
居ル老木ガ殘リ、國家カラ見テ洵ニ不經濟
極マル狀態ニ相成ツテ居ルノデゴザイマス、
此ノ點ニ於キマシテ、今度政府ガ現行法律
案ヲ改正シ、統制ヲ加ヘテ、幼齡林ノ伐採
ヲ禁止シ、而シテ更ニ植林ヲ强制シヨウト
云フ法案ヲ御提案ニナツタノデアリマス、
ソコデ此ノ御提案ノ趣旨ヨリ見マシテ、此
ノ法案ヲ大體通讀シテ見マスルト、法案ノ
體裁ニ於キマシテハ整ツテ居リマスルガ、
之ヲ實行ニ移シテ考ヘテ見マスルト、非常
ナ困難ニ遭遇スルト云フコトヲ私ハ考ヘサ
セラレルノデアリマス、何故カト申シマス
レイ、此ノ法案ノ建前ハ、幼齡林ノ伐採ヲ
禁止シテ、老木ノ方カラ先ニ伐ツテ行クト
云フヤウナ施業案ト云フモノヲ强制シテ拵
ヘサセ、其ノ施業案ノ實行ヲ滑カナラシメ
ル爲ニ森林組合ヲ作ル、更ニ森林組合ヲ一
元的ニ統制スル爲ニ、森林組合聯合會ヲ作
ルト云フコトガ此ノ法案ノ骨子デアリマス、
所ガ此ノ施業案ト云フモノガ非常ナ問題デ
アリマス、私ハ施業案ト云フモノハ現在ノ民
有林ニ當嵌メテドンナモノガ出來ルカト云
フコトハ、ドウモ想像ガ付カナイ、ソコデソ
レニ付テ種々ノ質疑ヲ致シタイノデアリマ
スガ、是ハ細カイ所ニ入リマスカラ只今ハ質
問ヲ致シマセヌ、他ノ機會ニ於テ御尋ヲ致
シマスガ、唯一點此ノ施業案ヲ實行スルニ
當リマシテ、非常ナ障碍ニナルト思フヤウ
ナ點ガアリマスノデ、此ノ點ニ付テ大臣ニ
御尋ヲ致シタイ
ソレハ施業案ヲ實行致シテ參リマスト、
伐採ヲ禁止スルト云フコトガ條件ニナツテ
來ルノデゴザイマス、所ガ小サナ山林ヲ所
有シテ居ル者ガ伐採ヲ禁止セラレマスト、
山林ヲ金ニ換ヘル、詰リ資金化スルコトガ
出來ナイヤウニナルノデアリマシテ、此ノ
點ハ其ノ場合ヲ想像シテ、此ノ法案ニモ禁
止ノ條項ヲ特ニ緩和サレタ所モアルノデア
リマス、ソレハ第十一條ニ此ノ施業案ニ伐
採ヲ禁止サレタ場合ノ規定ヨリ特ニ緩和シ
テ居リマス、第十一條ニ「前項ノ伐採停止ニ
關スル規定ハ森林所有者カ其ノ生活ヲ維持
スル爲已ムヲ得サルニ出テタル伐採ニ付テ
ハ之ヲ適用セス」卽チ生活ヲ維持スル爲巳
ムヲ得ザルニ出デタル場合ニ於テハ之ヲ許
スト云フコトニ緩和セラレテ居リ、直接生
活ヲ維持スル爲ノ資金ヲ要スル時ノ伐採
ハ此ノ施業案ノ禁止ヨリ解カレルノデア
リマスカラ、此ノ點ハ緩和セラレテ居ルノ
デアリマスガ、此ノ生活維持ト云フコトガ、
ドノ程度マデ考ヘラレテ居ラレマスカ、山
村ノ中產階級デ、小サナ山林ヲ持ツテ居リ
マスル農家ハ、山林ヲ育成致シマシテ、ソ
レニ依ツテ娘達ノ御嫁入ノ仕度モスルノデ
ゴザイマス、又學校ニ在リマスル學生ノ資
金モ是ヨリ出スノデゴザイマス、斯ウ云フ
モノハ恐ラク生活維持ノ資金トハ認メ得ラ
レナイモノダラウト思ヒマス、又サウ云フ
モノヲ一々禁止ヨリ解カルルト云フコトデ
アレバ、此ノ施業案ニ禁止シタ所ノ精神ニ
合ハナイノデアリマスカラ、斯ウ云フ場合
ノ資金ノ需要ガ起ツタ時ニ、一體政府ハド
ウナサル御積リデアリマスカ、此ノ點ヲ十
分救濟シ、援助スル途ヲ立テテ置カナケレ
バ本案ハ實施ニ當リマシテ空文ニ終ルト
思フノデアリマス、現行法ニ於キマシテ
モ、詰リ新シク斯樣ニ改正ヲシナクテモ
伐採ヲ禁止シ、或ハ植林ヲ强要スル規定ハ
アルノデアリマス、併シナガラ現行法ノ規
定ニハ金融關係方面ノ救濟援助ノ方法ガ
定メラレテアリマセヌカラ、今日ノヤウナ
荒廢シタ狀態ニナツテ參ツタノデゴザイマ
ス、ソコデ政府ハ之ニ對シマシテドウ云フ
ヤウナ金融的救濟ノ途ヲ御考ニナツテ居ラ
レマスカ承リタイノデアリマス、尤モ此ノ
法案ノ第七十條ヲ見マスト、其ノ第二號ニ
斯ウ云フコトガ書イテアル「組合員ノ森林
ノ維持又ハ施業ニ必要ナル資金ノ貸付ヲ爲
スコト」卽チ今囘ハ森林組合ヲ作リ、森林
組合ハ信用組合、產業組合等ノヤウニ資金
ノ出資ヲ認メテ、資金的ノ活動モセシムル
ヤウナ法案ノ建前ニナツテ居リマシテ、特
ニ斯ウ云フ組合員ノ森林ノ維持又ハ施業ニ
必要ナ資金ノ貸付モ爲スト云フコトガ入ツ
テ居リマスカラ、此ノ點ヲ考慮サレテ居ル
ト云フコトダケハ考ヘラレルノデアリマ
ス、併シナガラ組合員ガ出資シタ位ノ少シ
ノ資金ダケデハ到底森林資金トシテ必要
ナル多額ノ金額ニ對シテハ間ニ合ハヌソ
コデ此ノ組合ノ聯合會ガ作ラレテ居リマス
カラ、此ノ聯合會ヲ活動セシメテ大キナ資
金ヲ得ル途ヲ考ヘテ居ラルルノデアラウト
思ヒマスケレドモ、此ノ法案ヲ見マシタ所
ガ其ノ點ニハ少シモ觸レテ居リマセヌ、
資金關係ハ何處ヲ見テモ書イテアリマセ
又、ソコデ是ハヤハリ產業組合或ハ商工業
組合ノ中央金庫ノヤウニ、森林組合聯合會
中央金庫ト云フヤウナモノデモ作ツテ、此
ノ資金援助ノ途ヲ開クニアラザレバ、本法
案ノ實施ニ當リマシテ非常ナ困難ニ遭遇ス
ルデアラウト云フコトヲ私ハ憂慮致スノデ
ゴザイマス(「細カイコトハ委員會デ賴ミマ
ス」ト呼フ者アリ)勿論政府ニ於カレマシテ
ハ勸業銀行、農工銀行等ヲ以テ、精々便宜
ヲ圖リマスト云フ位ノコトハ御答辯ニ相成
ルカモ知レマセヌガ、私ハサウ云フ程度ノ
モノデハ、此ノ今度ノ法案ノ改正ノ實行ニ當ツ
テハイカヌト思フ、餘程徹底シタル確カナ金融
關係ノ途ヲ開イテ置カナケレバ、空文ニ終
ルト云フコトヲ私ハ憂慮致シマスカラ、ド
ウカ此ノ點ニ付キマシテ、確固タル金融ノ
援助ノ途ニ付テノ御方策ヲ伺ヒタイノデゴ
ザイマス
第二點ハ國有林ト本案トノ關係デゴザイ
マスガ、國有林ヲ伐採致シマス其ノ仕事ノ
ヤリ方ハ、大藏省ガ歲入ノ豫算ヲ立テマス
ル時ニ、或ル金額ヲ歲入ノ方ニ見積ツテア
ルノデス、其ノ見積ツタ金額ニ合ハスヤウ
ニ國有林ヲ伐採スル、ソレデスカラ若シ木
材市場ノ値ガ非常ニ下落シテ居ル時ニハ澤
山ノ木材ヲ伐リ出スノデス、其ノ澤山ノ木
材ヲ伐リ出ス爲ニ、今度民間ノ木材ノ市場
ニ非常ニ影響ヲ與ヘマシテ、民間ノ方ノ木
材ノ値ガ暴落致シマスガ、今度ハ民間ノ方
デ資金ガ要ル時ニ、暴落シテモ已ムヲ得ヌ
カラ、ヤハリ金ガ要ルノデ、今度ハ又其ノ
金ノ分量ダケ其ノ木材ヲ伐採スル、ソレデ
國有林ノ方カラモ澤山ノ木材ガ市場ニ出ル、
民間ノ方カラモ澤山ノ木材ガ市場ニ出
ル、非常ニ木材ガ出テ來テ、今度ハ供給過
剩ニナツテ、木材ノ市價ガ暴落ニ暴落ヲ重
ネテ來ルヤウニナリマシテ、山林家ガ非常
ニ困難ニ陷ル時ガアル、斯ウ云フ時ニハ國
有林ハ伐採ヲ差控ヘテ、サウシテ民間林ノ
木材市場ト云フモノノ價格ヲ維持スルヤウ
ニ努メテ貰ハナケレバナラヌ、卽チ木材需
給ノ調節ノ位置ニ國有林ヲ置カナケレバナ
ラヌモノガ、今日デハ寧ロ是ト反對デ、大
藏省ノ歲入ノ上ニ於ケル金額ヲ先ニ押ヘテ
アル、ソレデスカラ、ドウシテモ其ノ金額
ニ合フヤウニ木材ヲ出サナケレバナラヌカ
ラ、一タビ木材ノ需給關係ガ狂ツテ來マス
ト、今度ハ供給ノ方ガ非常ニ多ク出テ來マ
スカラ、段々暴落スル、暴落スレバソレダ
ケ餘計木材ヲ伐ラナケレバナラヌ、斯ウ云
フコトニナルノデ、此ノ間ニ國有林ハ木材
需給調節ノ役目ト逆行スル結果ヲ來シテ居
ル(拍手)ソレデ私ハ此ノ本材需給關係ヲ調
節スルノ立場ニ國有林ヲ置クベキモノデア
ルト思フ、ソレニハドウスレバ宜イカト申
シマスト、ヤハリ是ハ特別會計ニ立テマシ
テ、ソレノ方ニ國有林財產ノ關係ダケ移ス、
而シテ木材需給調節ノ役目ヲセシメル、之
ヲ以テ我國木材ノ需給關係ガ一元的統制ガ
出來ルノデス、左樣ニナサル御考ガナイ
カ、之ヲ御尋申上ゲタイノガ第二點デゴザ
イマス
更ニモウ一點終リニ御尋申土ゲタイノハ、
日滿支經濟ヲ一丸ト致シマス關係上、滿洲
ノ木材ハ相當多量ニアリマシテ、此ノ伐採
ガヤハリ我國ノ內地ノ事情ニ、又重要ナル
關係ヲ起シテ來ルコトハ、申スマデモナイ
コトデゴザイマス、支那ニハ餘リ森林ハゴ
ザイマセヌガ、此ノ方ハ恰モ國有林ノー
日本ガ現在內地デ以テヤツテ居リマス國有
林ガ木材需給關係ヲ破ル、木材需給關係ヲ
調節スルドコロデハナイ、之ニ逆行シテ居
ルヤウナ立場ニ又滿洲材ガナツテ來ルヤウ
ナ傾向ガアルノデゴザイマス、ソコデヤハ
リ今囘ノ此ノ森林法改正ガ實施セラレルニ
當リマシテハ、滿洲モ此ノ一元的統制ノ下
ニ置カレルト云フコトノ方策ヲ講ゼラレル
必要ガアルト思フ、之ニ對シテ政府ニ於キ
マシテハ何力相當ナル對策ヲ考へテ居ラ
レルト存ジマスカラ、此ノ機會ニ御所見ヲ
伺ヒタイノデアリマス
私ノ質問ハ以上ノ三點デゴザイマスガ、
改メテ玆ニ其ノ三點ノ要旨ヲ申上ゲテ置キ
マス、第一點ハ、施業案ヲ實行スルニ當リマ
シテ、金融ノ途ヲ開クニアラザレバ、此ノ施業
案ヲ實行スルニ當ツテ非常ナ困難ニ遭遇ス
ルト思ヒマスカラ、森林組合ノ聯合會ヲ通ジ
テ、政府ハ相當ナル資金的救濟援助ヲナサ
ル御意思アリヤ否ヤ、第二點ハ、國有林ノ伐採
ハ民間ノ木材需給調節ノ役目ヲセシムベキ
目的ノ爲ニ特別會計ヲ設立スルノ意思ナキ
や、第三點ハ日滿支ヲ通ジタル木材需給
ノ一元的統制ノ必要アリト思フ、此ノ方策
如何、此ノ三點デゴザイマス、何卒大臣ノ
御答辯ヲ煩ハス次第デゴザイマス(拍手)
〔國務大臣櫻內幸雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=23
-
024・櫻内幸雄
○國務大臣(櫻内幸雄君) 松尾君ノ御質問
ニ對シテ御答辯申上ゲマス、松尾君ノ御心
配ニナツテ居ル第一點ハ、此ノ施業案ヲ實
行スルニ當ツテ、森林所有主ガ金融上非常
ニ困リハシナイカ、之ニ對スル對策ガアル
カナイカ、斯ウ云フ御質疑デアツタカノヤ
ウデアリマス、森林ニ對スル所ノ金融ニ付
キマシテハ、從來非常ニ不便デアリマシ
テ、此ノ金融ヲ緩和致シタイ見地カラ、曩
ニ森林火災保險ノヤウナモノヲ設ケマシ
テ、是ガ金融ノ便ヲ圖リタイト考ヘテ居ツ
タヤウナ譯デアリマスガ、此ノ度ノ施業案
ハ御承知ノ如ク治山治水ノ大問題ヲ解決ス
ルガ爲ニ、又將來永續的ニ森林增植ヲ圖ル
ガ爲ニ之ヲ計畫致シタモノデアリマスガ
其ノ所有者ガ施業ヲ致スニ當リマシテハ
小サナ山林ノ所有主ハ、勢ヒ森林組合ヲ拵
ヘテ之ヲ致スコトト相成ルノデアリマス
其ノ人々ニ對シテハ、施業案ノ作成ニ對シ
テ政府ガ補助致スノミナラズ、愈〓之ヲ實
施スルニ當リマシテモ、間伐ニ對シテ補助
ヲ與ヘ、又植林ニ對シテ補助ヲ與ヘ、之ヲ
運搬スル林道ニ對シテ補助ヲ與ヘル規定ニ
ナツテ居ルノデアリマシテ、比較的容易ニ
施業ガ實行サレルコトニナツテ居ルノデア
リマス、唯個人々々ノ之ヲ所有シテ居ル者
ガ賣買致ス上ニ於テ、不便ハナイカト云フ
御懸念モアルデアリマセウガ、是ハ自由ニ
其ノ持分ヲ賣買スルコトヲ許シテアルノデ
アリマシテ、寧ロ組合ガ之ヲ監督シテ居ル
關係上カラ、之ヲ擔保トシテ取ツタ者ハ
安心シテ金ヲ貸スコトガ出來ルヤウナ結果
トナルノデアリマス、唯平素日々伐採ヲ致
シテ、之ヲ生活ノ資金ニシテ居ル人々ハ
非常ニ困ラレルダラウト思ヒマシタノデ、
之ニ對シテハ除外例ヲ設ケタヤウナ譯デア
ルノデアリマス、併シ此ノ森林ニ對スル所
ノ金融ニ付キマシテハ、是ハ餘程大問題デ
アリマスガ故ニ、先刻御話ノ如ク、森林中
央組合金庫ノ如キモノヲ設ケルト云フ風ナ
御意見モ、私共ハ洵ニ傾聽致スノデアリマ
ス、併シナガラ此ノ施業案ガ發達ヲ致シ
テ、餘程多數ノ施業組合ガ出來マシタ後ニ
於テハ斯ウ云フコトモ出來ルデアラウト
思ヒマスケレドモ、當初カラハ難カシイ
ノデアリマス、併シ此ノ金融問題ニ對シマ
シテハ、政府ニ於テハ金融改善〓究會ヲ設
ケマシテ、銳意其ノ金融ノ途ヲ講ジタイト
云フコトヲ〓究致シテ居ルヤウナ譯デアリ
マス
第二點ノ之ニ對スル所ノ特別會計ヲ設ケ
タラドウデアラウカ、卽チ政府ガ無暗ヤタ
ラニ大藏省ノ指圖ニ依ツテ、歲入ヲ得ルガ
爲ニ伐リ出スト云フヤウナコトヲヤツテハ
イカヌト云フヤウナ御意見モアリマシタ
ガ、政府ノ伐採ニ付キマシテハ豫メ一定ノ
計畫ガ立ツテ居ルノデアリマシテ、今日左
樣ナ御心配ハナイト思ヒマス、元ト不況ノ
時代ニ於テハ往々御說ノヤウナ意見モアリ
マシタケレドモ、今日ハ確タル伐採ノ計畫
ヲ立テテ、其ノ計畫ニ依ツテ進ンデ居ルノ
デアリマシテ、之ニ依ツテ民間ノ製材業者
ヲ壓迫スルガ如キコトノナイヤウニハ、十
分注意ヲ致シテ居ル積リデアリマス、特別
會計ヲ設ケルコトニ付キマシテハ、是ハ私
共十分今後〓究致シマシテ、其ノ〓究ノ結
果ニ依ツテ之ヲ決定致シタイト思ヒマス
第三點ノ日滿支三國ノ關係デアリマス
ガ、是ハ御承知ノ如ク滿洲ハ殆ド統制ヲサ
レテ居リマス、而シテ日滿ノ間ニ於テハ緊密
ナル連絡ヲ取ツテ、日滿ノ間ニ於テ何等齟
齬或ハ意思ノ疏通ヲ缺クコトノナイヤウニ
十分ニ注意ヲ致ス考デ居リマス(拍手)
〔小林三郞君「決算委員ノ方ニ申上ゲマ
ス、只今カラ決算委員會ヲ開キマスカ
ラ御參集ヲ願ヒマス」〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=24
-
025・松尾四郎
○松尾四郞君 議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=25
-
026・小山松壽
○議長(小山松壽君) 松尾君、何カ御發言
デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=26
-
027・松尾四郎
○松尾四郞君 簡單デスカラ此ノ席カラ御
許ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=27
-
028・小山松壽
○議長(小山松壽君) 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=28
-
029・松尾四郎
○松尾四郞君 只今大臣ノ御答辯ニ對シマ
シテ滿足致シ兼ネル點ガアリマスガ、是ハ
他ノ機會ニ於テ更ニ御尋致シタイト思ヒマ
ス私ノ質問ハ是デ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=29
-
030・小山松壽
○議長(小山松壽君) 馬岡次郞君
〔馬岡次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=30
-
031・馬岡次郎
○馬岡次郞君 只今上程サレマシタ森林法
ノ改正法律案及ビ林業種苗法案、之ニ對シ
マシテ、又之ニ關聯致シマシテ私ハ六箇ノ
質問ヲ持ツ者デアリマス、今其ノ中二點ハ
松尾君ガ御尋下サイマシタ、然ルニ不幸ニ
シテ私ガ御尋シヨウト思フ要點ニ付テ農林
大臣ノ御答辯ハ觸レナカツタノデ、暫ク重
複スルカモ分リマセヌガ、其ノ點ヲ重ネテ
御尋致シタイト思ヒマス、御答ヲ願ヒマス
便宜上、時間モ許サレマセヌカラ、先ヅ第
ニ要點ダケヲ申上ゲマス
第一、森林法ノ改正ニ、多年ノ懸案デア
ツタ第三章ノ保安林及ビ第四章ノ土地使用
及ビ收用ガ何故ニ改正サレナカツタカ、之
ヲ御尋致シタイト思ヒマス、第二、森林法
ノ第二章及ビ第五章ノ改正ニ依ツテ、之二
必然的ニ併行ヲスベキ獨立ノ金融機關ガ缺
ケテ居リハセナイカ、又是ガ缺ケテ居ルガ
爲ニ現行ノ產業組合ト相剋摩擦ガ起リハセ
ナイカ、此ノ點ヲ御尋致シタイト思ヒマス、
其ノ次ニ第二章ノ改正ニアル營林ノ監督デ
アリマスガ、營林ノ監督ハ指導デナケレバ
ナラナイト思フノデアリマス、然ルニ相變
ラズ監督ノ文字ヲ御使ヒニナツテ居ルノデ
アリマス、此ノ點ニ付テ指導ノ御意思ガ十
分ニオアリニナツテ居ルカ、此ノ點ヲ御尋
致シタイノデアリマス、第四ニ、今囘ノ改
正ハ我國ノ現下新情勢カラ考ヘテ見マスル
ト、木材ノ保續ニ眼目ヲ置カレテ居ルカノ
ヤウニ見受ケルノデアリマス、然ルニ此ノ
木材ノ保續ニハ需給調節ノ調査機關ガ併行
シナケレバ、此ノ完全ナル目的ヲ達シ得ラ
レナイト信ズル者デアリマス、此ノ設備ガ
アリヤ否ヤ、之ヲ御尋シタイノデアリマス、
第五ニハ先程松尾君ノ御尋ニナリマシタ
國營林業ノ收支ガ特別會計ニ置カレテ居ナ
イ爲ニ民間作業ヲ壓迫スル、此ノ重壓ヲ遁
レル爲ニ特別會計ノ必要ヲ認メル者デアリ
マス之ニ對スル御所見ヲ重ネテ伺ヒタイ
ノデアリマス、第六ハ新ニ創定セラレマシ
タ林業種苗法案ヲ拜見致シマスルト、現在
ノ母樹ノミニ重キヲ置カレマシテ、將來ノ
母樹其ノモノニ對スル御考ヲ御忘レニナツ
テ居ルカノヤウニ考ヘルノデアリマス、此
ノ點ヲ承リタイノデアリマス、以上六點ニ
付キマシテ聊カ私ノ疑問ト致シマスル要
點ヲ申上ゲマシテ、簡明ナル御說明ヲ願ヒ
タイト思フ者デアリマス
第一項ノ問題ハ、私ガ今更此處デ事新シ
ク申上ゲルマデモアリマセヌガ、本法ノ制
定ハ明治四十年デアリマシテ、其ノ間三十
有餘年ヲ經過シテ居ルノデアリマス、是ガ
爲ニ常ニ此ノ改正ガ唱ヘラレテ居リマシ
夕、時代ノ進運ニ副ハナイ爲ニ、是カラ受
ケル重壓ノ下ニ當業者ハ保護奬勵ノ途ヲ得
ラレナイコトヲ歎イテ居ツタモノデアリマ
ス、然ルニ今度幸ニシテ此ノ改正法律案ガ
出タ、如何ナル結果ニナツタカ、如何ナル
改正ヲサレルカト、吾々ハ大ナル期待ヲ持
ツテ見テ居ツタノデアリマスガ、蓋ヲ開ケ
テ見ルト開ケテビツクリ玉手箱、肝腎ナ要
點ガ皆忘レラレテ、却テ施業ガ難カシクナ
ツタカノヤウニ考ヘラレルノデアリマス、
殊ニ第二章ノ營林監督ニ於テ、私有林ニ對
シテ强制的施業案ノ作成ヲ命ゼラレテ居リ
マス、是ガ爲ニ森林組合ノ改組モ出來テ居
リマス、併シ此ノ森林組合モ七項カラ成ツ
テ居ルモノヲ二種ノ森林組合ニ改組サレマ
シテ、共同施業組合ト調整施業組合トニ區別
サレテ居ルカノヤウニ見受ケルノデアリマ
ス、此ノ治山治水ノ大目的ヲ達シマスル爲
二、是等ノ二點ノミデハ到底出來得ナイ
モノデアリマス、改正案ニ於テハモウ少シ
寛ニスベキモノハ寬ニシ、嚴ニスベキモノ
ハ嚴ニシタ御改正ヲ願ヒタイト思フト同時
ニ、其ノ取扱手續ヲ一定ニシテ貰ハナイト、
事實是ガ取締ヲ受ケル者ガ困ルノデアリマ
ス、是ハ條章ニ涉ツテ一々事例ヲ擧ゲテ御
尋申上ゲタイト存ジマスガ、時間ガ許シマ
セヌカラ他ノ機會ニ讓ルト致シマシテ、眞
ノ事情ヲ簡單ニ申上ゲマスト、或ル地方ノ
如キハ一町村内ノ一部落ノ中央ヲ流レル川
ヲ界トサレテ、土砂扞止ノ名ノ下ニ內務省
ノ取締ヲ受ケルモノト、荒廢地復舊ノ名ノ
下ニ農林省ノ取締ヲ受ケルモノトガアルノ
デアリマス、是等ヲ事實處理ヲ致シマス上
ニ於テ、實ニ困ル者ハ其ノ土地所有者デア
リマス、取扱ガ煩雜ニナル爲ニ困ルノデア
リマス、是等ハ此ノ際御改正アツテ然ルベ
キモノト考ヘテ居ツタノデアリマス、然ル
ニ是等ニハ一指モ染メテ居ラレナイカノヤ
ウニ見受ケラレルノデアリマス、地方民ハ
第二章ノ改正デ施業案ノ手續ガ煩瑣ニナル
ト同時ニ、是等ノ不便モ改正セラレナイト
スルナラバ、益〓不便ヲ受ケルノデハナイカ、
此ノ心配ノアル點ヲ何故御改正ニナラナカ
ツタカ、唯一時的ニ糊塗スル爲カ、戰時情
勢ノ爲ニ必要ノ木材ヲ御考ヘニナツテ此ノ
改正ヲサレタノカ、此ノ點ヲ御伺シタイノ
デアリマス、併シ森林ハ一年生植物デハナ
イノデアリマス、數十年ヲ經過セナケレバ
其ノ結果ヲ見ラレナイモノデアリマス、戰
時體制ノ名ノ下ニ一時ヲ糊塗スル改正デハ
吾々ハ滿足出來ナイモノト信ズルガ故ニ御
尋ヲスルモノデアリマス
第二ニ御伺致シタイノハ、先程松尾君ガ
非常ニ御心配サレマシタ金融ノ問題デアリ
マス、私モ同一ノ心配ヲスル者デアリマス
殊ニ今囘ハ組合强化經濟行爲達成上、一 -
三十圓出資ノ組合ヲ御認メニナリ、サウシ
テ追補金額三十圓デ現行ノ產業組合ト殆ド
變ラナイモノヲ御作リニナルノデアリマ
ス、然ル所現今ノ山村ノ金融機關ノ缺如シテ
居ル理由ハ、產業組合ノ發達ニモ及ボシテ
來マスレバ、森林組合ノ發達ニモ影響スル
ノデアリマス、事實ノ上ニ於キマシテハ
同一組合員ガ二ツノ組合ニ加盟致シマシ
テ、之ヲ圓滿ニ此ノ組合ガ遂行シ得ラレマ
セウカ、農林省當局ニ於カレテハ、現行ノ
漁業組合ト產業組合トノ相剋摩擦ニ付テモ
十分御承知ノ筈デアリマス、其ノ上ニ又玆
ニ同事業異種名ノ組合ヲ御奬勵ニナルト致
シマスルナラバ、其ノ結果ガ如何ニナルカ
ト云フコトハ火ヲ睹ルヨリ明デアリマス
詳シイ事例ヲ擧ゲテ私ハ御尋ヲ致シタイノ
デアリマスガ、時間ガ許サレマセヌ爲ニ、
唯要點ダケヲ申上ゲマシテ、當局ニ是ガ圓
滿ニ遂行出來得ルト御考デアルカ否ヤ、之
ヲ御尋致シタイノデアリマス、同時ニ先程
ノ大臣ノ御答辯ニ依リマスト、金融機關ガ
今囘此ノ組合ノ發達ニ連レテ獨特ノ機關ヲ
作ルト御說明ガアリマシタガ、今マデ此ノ
機關ガナカツタ爲ニ發達セテカツタモノ
ガ、尙ホ此ノ機關ヲ忘レラレテ居ツテハ發
達セナイ、結局有名無實ノ組合ガ二ツ起ツ
テ、共ニ睡眠狀態ノ組合ニ陷ツテシマフコ
トハ、現在ガ證明シテ居ルノデアリマス、
一日モ早ク此ノ機關ヲ御作リ願ハナケレ
が、山村ノ產業組合ニセヨ又森林組合ニセ
ヨ、圓滿ナル所期ノ目的ハ達セラレナイノ
デアリマス、重ネテ此ノ點ニ付テ御尋致シ
タイノデアリマス
次ニ御尋致シタイノハ、今度ノ改正ノ營
林監督デアリマス、現在ノ法律デハ、社寺
有林若クハ公有林ニ施業案ノ方法ヲ施行ス
ル命令ガ出テ居ルノデアリマス、之ヲ今度
ハ私有林ニマデ及ボサレタノデアリマス、
殊ニ私有林ニ關スル施行方法ハ、各人ノ地
方的ノ事情ニ依ツテ、ソレヲ申請スレバ認
可サレルカノヤウニ見エテ居リマス、併シ
此ノ施行案ハ机ノ上デ作ルモノデアリマ
ス、土地ハ地力ニ依ツテ成長モスレバ發達
モスルモノデアリマスカラ、玆ニ人爲的ノ
施業案ヲ作リマスナラバ、豫定ノ如ク出來
上ラナイノデアリマス、間伐スベキ時期ニ
雜草ノ下刈モシナケレバナラナイ、斯ウ云
フヤウナ結果ニ陷ル爲ニ、今マデ公有林ノ
施業案モ比較的不便デアツテ困ツテ居ツタ
ノデアリマス、之ニハ餘程優秀ナル技術ヲ
有スル指導者ト技術者ガナケレバナラナイ
ノデアリマス、是ガ缺如シテ居ツテハ到底
此ノ目的ハ達セラレナイト私ハ信ズルノデ
アリマス、然ルニ今マデ施行サレマシタ
施業案ノ御方針ナリ、御指導ナリヲ拜見致
シマスト、不幸ニ致シマシテ折角御指導ニ
ナリマシタ施業案ガ、所期ノ目的ト反對ノ
結果ヲ來シテ、眞僞モ分ラナイノニ勝手ナ
計畫ヲ立テタ爲ニ困ツテ居ル官有林モ澤山
アリマス、又公有林モ澤山アリマス、其ノ
技術者ハ如何ニシテ御養成ニナル御見込デ
アルカ、又是ガ得ラレル御見込デアルカ、
日本全國一圓ニ民有林ニマデ營林監督ヲナ
サル上ニ於テ、施業案ノ作成ヲ命ズル上ニ
於テ、其ノ御用意ガ出來テ居ルノデアルカ、
之ヲ御尋致シタイノデアリマス、殊ニ是ハ
監督デナクシテ指導デナケレバナラナイト
思ヒマス、此ノ點ニ對スル當局ノ心構ヘヲ
御尋致シタイノデアリマス
次ニ御尋致シタイノハ、此ノ施業案ト今
度ノ改正ニ依ツテ森林資源ノ保續ヲスルト
云フ當局ノ御意思デアリマス、然ルニ今日
日本ノ木材需給調節ノ調査ハ完全ニ行ツテ
居ルノデアルカ、先程來松尾サンモ色々ト
御述ニナリマシタガ、亞米利加材ハ益〓奥
地奧地ニ切込ンデ行キマス、又良品種ノモ
ノハ內地ニ比較的入ツテ居リマセヌ今後
ハ亞米利加材モ上向クコトハ當然デアリマ
ス、又滿洲ノ開發、北支ノ開發ニ依ツテ、
北洋材モ內地ニハ比較的向ツテ來ナイ結果
ニナルダラウト信ジラレマス、又此ノ事變
ノ爲ニ永ラク不景氣デアツタ木材界ガ稍〓
價格ヲ持直シタノデアリマスガ、一時悲況
ノドン底ニアツテ、多年營々孜々トシテ育
成シ、數十年ヲ要シタ木材ガ、河口マデ流
シテ金ニ換ヘヨウトスルト、五六十日デ栽
培サレル大根一本ノ價ニモ達シナイヤウナ
時代ガアツタ爲ニ、非常ニ濫採シ濫伐シタ
ノデアリマス、又持堪ヘテ居リマシタ者ハ、
今日此ノ事變ニ因ツテ價格ヲ持直シマシタ
爲ニ、大河ノ堰ヲ切ツタ如クニ濫伐シ掛ケ
タノデアリマス、此ノ結果トシテ今カラ木
ヲ植ヱテ居ツタノデハ、如何ニシテ內地必
需品デアリ、新體制ニ於ケル必需品デアル
木材ガ得ラレルノデアルカ、私ハ之ニ對ス
ル不安ヲ持ツ者デアリマス、是ガ爲ニ國家
ハ是非共此ノ需給調節ノ調査機關ヲ備ヘテ
戴キタイノデアリマスガ是ガ果シテ出來
テ居ルノデアルカ、之ヲ御尋致シタイノデ
アリマス、先程松尾君ハ國有林ヲ特別會計
ニ置カナケレバ困ルト云フ御議論デアリマ
シタ、之ニ對シテ當局ハ色々ト金ニ換ヘテ
スル爲ニ、決シテ國有林ハ民間事業ヲ壓迫
サレヌト仰シヤツテ居ラレマス、併シ大森
林業家ハイザ知ラズ、中小ノ林業家ガ木材
ヲ伐ル心理狀態ヲ當局ハ御承知ニナツテ居
ルノデアリマセウカ、私ハ之ヲ疑フ者デア
リマス、實際植林ヲスル者ハ自分ノ子供ヨ
リ以上ニ可愛ガツテ育テ上ゲルモノデアリ
マン、何ガ爲ニ好ンデ用事ノナイモノヲ伐
リマセウ、已ムニ已マレナイ事情デ伐ルノ
デアリマス、然ルニソレガ豫定ノ收入ニ達
シナイ場合ニハ、必要ノ金額ヲ得ルマデハ
多量ノ伐採ヲシナケレバナラナイノデアリ
さく、然ルニ國營ノ林業ハ計畫事業デアル
爲、決シテ之ヲ壓迫シナイト仰セラレマス
ルガ、計畫事業ノ爲ニ其ノ時々ニ於ケル取
捨按排ガ出來ナイノデアリマス、木材ガ非
常ニ安クナツテ市場ヲ攪亂シテ居ル時デモ、
豫定ダカラ、計畫ダカラト云ツテ、ドシド
シト伐ラレルノデアリマス、是ガ缺點デア
ル爲ニ、私ハ特別會計ニシテ其ノ調節ヲ圖
ツテ戴キタイト云フコトヲ唱ヘル者デアリ
マス
最後ニ今度ノ林業種苗法案デ母樹ヲ指定
シテ良品種ノ保續ヲ考へテ居ラレマス、非
常ニ結構デアリマス、然ルニ是ガ遲レテ居
リマシタ爲ニ、殆ド現在ニ於ケル杉種ノ如
キハ不良品種バカリニナツテ居ルノデアリ
きく、地方ニ於キマシテハ之ヲ心配致シマ
シテ、地方令ヲ以テ母樹ノ指定ヲ致シテ居
リマス、然ルニ是ニハ一定ノ補償金ヲ與ヘ
マシテモ、價格ガ上ツテ參リマスルト金利ニ
モ足ラナイ爲ニ、母樹ヲ伐ツテシマフノデ
アリマス、斯樣ニ致シマスルト、終ヒニハ
母樹ガナクナツテシマフノデアリマス、然
ルニ御承知ノ如ク此ノ種苗ハ、杉、檜ニ於
キマシテハ、最適期ハ六七十年ヲ要スルノ
デアリマス、此ノ間此ノ母樹ヲ養成セナイ
下、玆ニ五六十年間母樹ガ持チ堪ヘラレル
カ、事實ハ持チ堪ヘラレナイノデアリマス
爲ニ、私ハ此ノ法案ニハ是非共母樹ヲ指定
シント良品種ノモノヲ多量ニ配給スルト同
時ニ、將來ノ爲ニ國若クハ公共團體ニ母樹
林ヲ設置スル御計畫ヲ立テテ、サウシテ之
ニ向ツテ公有林ノ如キハ相當ノ助成ヲナサ
ツテ、將來ニ來ルベキ母樹ノ養成ヲナサラ
ナケレバ、折角ノ此ノ法案モ畫餅ニ屬スル
デハナイカト云フ心配ヲ致ス者デアリマス、
色々ト詳シク御尋致シタイノデアリマスガ、
時間モ許シマセヌ、適當ノ機會ニ讓リマシ
テ、以上此ノ六項目ニ付テ當局ノ簡明ナル
御說明ヲ願ヒタイノデアリマス
〔國務大臣櫻內幸雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=31
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032・櫻内幸雄
○國務大臣(櫻内幸雄君) 馬岡君ノ御質問
ニ對シテ御答辯ヲ申上ゲマス、第一點ノ森
林法改正ニ當リテ、保安林ノ問題竝ニ土地
使用及ビ收用ノ規定ニ對シテ改正ヲスル必
要ガアルト思フガ、之ヲ改正ヲシナイノデ
アルカ、斯ウ云フ風ナ御質疑デアツタヤウ
ニ思ヒマス、保安林ニ付キマシテハ、種々
考究スベキ點ガゴザイマスケレドモ、色々
〓究致シマシタ結果、現在ハ此ノ儘ニ致シ
テ置キタイト考ヘルノデアリマス、唯施業
案ガ實施サレマシタ曉ニ於テ、保安林ヲ解
除竝ニ整理スベキ所ノモノガ澤山出テ來ル
ダラウト思ヒマス、隨テ玆ニ緩和點ヲ見出
スコトガ出來ルデハナカラウカト思ツテ居
リマス、土地ノ使用及ビ收用法ノ問題ニ付
キマシテハ此ノ運用上ニ付テ十分ニ注意
ヲシテ、今マデノ缺點デアツタコトヲ緩和
致シタイト、斯樣ニ考ヘテ居ルノデアリマ
ス、次ニ森林法ノ改正ニ伴ツテ金融ノ問題
ノ御話デアリマシタガ、是ハ先刻松尾君ニ
御答申上ゲマシタ通リ、金融改善〓究會ヲ
設ケマシテ、十分此ノ點ニ付テハ〓究考慮
シテ、其ノ不便ヲ除キタイト思ツテ居リマ
ス、產業組合ト此ノ組合トハ、自ラ其ノ組
合員ノ人ガ違フノデアリマシテ、其ノ間ノ
關係ハ大シテ顧慮スルコトハナイト考ヘテ
居ルノデアリマス、ソレカラ監督ニ付キマ
シテ指導的立場デナクテハナラヌ、斯ウ云
フ御話デアリマスガ、是ハ洵ニ御尤ダト思
フノデアリマス、政府ト致シマシテハ、全
般的ニハ指導的立場ニ於テ十分ニ協力致シ
マスト同時ニ、必要ノ場合ノ外ハ監督ニ對
シマシテハ十分注意ヲシテ行ヒタイト思ツ
テ居リマス、木材需給關係ニ付キマシテ調
査機關ヲ設ケテハドウカト云フ御意見デア
リマスガ、此ノ問題ハ內地外地トモ色々連
絡ヲ取リマシテ、十分ニ〓究ノ上木材ノ自
給ヲ政府トシテハ行ヒタイト思ツテ居ルノ
デゴザイマス、其ノ完璧ヲ期シマスガ爲ニ
ハ御趣旨ノ如キ調査機關ヲ設ケル必要ガ
起ツテ來ルノデハナカラウカト考ヘテ居ル
ノデアリマシテ、目下考慮中デアリマス
第五ノ國有林伐採ノ收入ニ重點ヲ置イテ、
民業壓迫其ノ他ニ付テノ御意見ガアリマシ
テ、又木材ノ價格ノ高低ノ場合ニ於ケル伐
採ノ關係等ニ付テ、特別會計ヲ設ケテ之ヲ
調節シタラ宜シイデハナイカト云フ御意見
デアリマスガ、此ノ御意見ハ先刻モ申上ゲ
マシタ通リ、私共傾聽致ス所デアリマシテ、
之ニ對シテハ目下〓究ヲ致シテ居ル場合デ
アリマス、母樹林ノ問題ニ付キマシテノ御
意見ガゴザイマシタガ、是ハ私共ト致シマ
シテハ、十分御趣旨ニ副フヤウ、此母樹ノ
育成選定ニ關スルコトニ付キマシテ、注意
ヲ拂ヒタイト思ツテ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=32
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033・小山松壽
○議長(小山松壽君) 長野長廣君
〔長野長廣君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=33
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034・長野長廣
○長野長廣君 私ハ森林法中改正法律案竝
ニ林業種苗法案ニ付テ農林大臣ノ答辯ヲ求
メタイト思ヒマス、偖テ森林業ハ商業工業
等ト比ベマシテ嶄然タル特質ヲ持ツテ居ル
ノデアリマス、而モソレガ時局ノ波ニ乘リ國
策ノ線ニ沿ヒマシテ益、著シキヲ加へ、是
ガ振興ハ爛頭焦眉ノ問題ト相成ツタノデア
リマス、木材需要ハ人絹「パルプ」、製紙原料、
例ヘバ新聞紙ニ於キマシテハ年產八九十万
瓲、「ス·フ」原料ヲ加ヘマスレバ百七十万瓲ハ
絕對ニ必要ニ相成ツテ來ルノデアリマス、
一面ニ於テ軍需用材トシテノ建築用材、電
桂、枕木、其ノ他之ニ特別ニ必要ナル所ノ
モノヲ合算シ、更ニ之ニ內地及ビ外地ノ鑛
山用ノ坑木ノ材積ヲ合算致シマスルナラバ、
數倍ノ額ニ相成ルノデアリマス、是等ノ點
ニ想到致シマスルトキニ於テ、實ニ森林資
源ノ重要性ハ、他ノ有ユル產業ノ根本トシ
テ、又最近新ニ其ノ重要性ノ高マリ來ツタ
コトト相合シテ、正ニ他ノ產業ニ冠絕スル
モノデアルト確信ヲ致ス者デゴザイマス
(拍手)以上ハ統計的數量的ノ事實ニ過ギナ
イノデゴザイマスルガ之ヲ深ク森林業ノ
本質ニ鑑ミマスルトキニ於テ卽チ森林ハ
豐富ナル電力ノ源トナリマス、或ハ又治山
治水ノ根柢ト相成ル意味ニ於キマシテハ
國土保全ノ上ニ貢獻シ、又國土ノ美化モ之
ニ依ツテ大成ヲセラレルノデゴザイマス
而シテ鬱蒼タル森林地帶ニ於キマシテコソ、
眞ノ日本精神ガ芽生ヘ暢育致スノデアリマ
え、國土ニ森林ノ繁茂セザル場合ニハ必
ズ民族精神ハ衰亡致シテ居ルコトハ、歷史
ノ證明スル所デアリマスシ、又翠綠滴ル所
ニ正氣ガ集マルノデゴザイマス、洵ニ森林
業ノ發達ハ、統計的數量的ノ生產ヲ標的ト
スル他ノ產業ニ冠絕シ、卽チ無形的、形而
上的、文化的意味ニ於テ現代ニ重要ナル使
命ヲ擔當スルモノデアリマス、今ヤ森林政
策ハ此ノ時代的重要性ニ立脚ヲ致シマシ
テ、益〓之ヲ擴充シ、其ノ徹底ヲ期セネバナ
ラヌコトニ相成ツテ來タノデゴザイマス、
林業政策ハ以上ノ理由ニ於キマシテ他ノ產
業政策、他ノ文化政策ノ根本トシテ重視シ、
之ニ力ヲ入レナクテハナリマセヌ、林業ハ
農業ト竝立シテ國政ノ根本デアリ、所謂國
ノ本デナクテハナラヌト考ヘルノデアリマ
スカラ、農林大臣トセラレテハ、此ノ時代
的色彩、時代的要求ヲ達觀セラレテ、特
此ノ方面ニ力ヲ用ヒラレ、今マデハ政治ノ
片隅ニ片付ケラレテアツタ此ノ林業ノ問題
ヲ、政治ノ中心ニ持ツテ參リマシテ、サウ
シテ我國ノ大半ヲ占メテ居ル森林國土ノ開
發ニ向ツテ、十分ナル御努力ヲ願ヒタイト
思フノデゴザイマスガ大臣ノ之ニ對スル
御所見ハ如何デアリマスカ、先ヅ第一ニ答
辯ヲ求メタイノデアリマス
近時人造絹絲原料、製紙原料等ノ要求、其
ノ他只今マデ申上ゲマシタヤウナ林材ノ需
要ガ、非常ナ勢ヲ以テ增大シ來ツタ關係上、
林業ノ性質ニ非常ナル變化ヲ來シマシタ
卽チ農業ト併行シテ高度化セントシ、集約
的ニ資本勞力ヲ加ヘナケレバナラヌ傾向ヲ
認メルノデアリマス、諸君、此林業ガ農業
ト併行シ、林業ガ田畑ノ栽培ト相似タルガ
如キ發展過程ヲ辿リツツアルコトニ想到致
シマスル時ニ於テ、何ヲ措イテモ大切ナル
ハ、林地利用ノ根本ニ徹シタル所ノ交通運
輸機關ノ完成デアリ、林道鐵道等ノ敷設デ
アリマス、先ヅ速ニ林道ヲ十分ニ敷設シナ
ケレバナリマセヌガヽ現ニ調査セラレタ所
ニ依リマスト、林道ノ開設ヲ要スル最小限
度ノ面積ハ二百三十三万町步デアリマシテ、
之ニ敷設スベキ林道ノ總延長ハ千三百万米、
此ノ經費一億四千万圓ト註セラレテ居ルノ
デアリマス、而シテ少クトモ國家ハ五千四
百万圓程度ノ補助ヲ致サナクテハナラヌト
云フコトニ相成ル次第デゴザイマス、然ル
ニ此ノ森林法ノ改正ニ於キマシテ森林組合
ヲ組織シ、其ノ經濟組織ヲ此ノ中ニ取入レ
テ、是等林道其ノ他ノ森林施設ヲ行ハシメ
ルト云フヤウニ計畫セラレテ居ルノデゴザ
イマスガ、此森林法改正ノ本義ニ考ヘテ見
マシテモ、特ニ此ノ林道ノ敷設ヲ促進スル
爲ニ、相當ノ補助ヲ致サナクテハナラヌト
考ヘル次第デゴザイマス、農林大臣ハ森林
組合ノ經濟的活動ノ眞義ニ徹シタル補助政
策トシテハ現在甚ダ遺憾デアル、之ニ付テ
御確信ガアルノデアルカ
更ニ又是ハ鐵道省ニ關係スルコトデアリ
マセウケレドモ、農林大臣トシテノ確信ヲ
伺ヒタイ、由來我國ノ鐵道敷設ハ、其ノ
實施ノ跡ヲ見ルニ、大抵山脈ヲ直角ニ詰
リ山脈ヲ横斷シテ敷設セラレテ居ルノデ
アリマス、然ルニ最近鑛產資源ノ開發ト
云ヒ、森林資源ノ開發ト云ヒ、成ベク廣範
圍ニ亙ツテ效果的ニ交通運輸ノ途ヲ開ク必
要ガアル立場ヨリ、鐵道ハ山脈ニ竝行シテ
走ラセル必要ガアルノデアリマス、サウシ
テ既設ノ橫斷線ト相合セマシテ、玆ニ鐵道
網ノ完成ヲ致シ、森林資源ノ運輸開發ト云
フコトニ付テ、鐵道ノ劃期的能率ヲ發揮セ
シムルコトガ必要デハナイカト思フノデア
リマス、今後我國ニ於テ敷設スベキ鐵道
ハ、森林資源ノ開發、鑛山資源ノ開發ト云
フガ如キ問題ニ留意スル意味ニ於テ、山脈
ヲ縱走スル所ノ鐵道敷設ヲ促進スル必要ガ
アルト思フ、殊ニ農林政策ノ上ニ其ノ切實
ヲ感ズル次第デアリマス、農林大臣ハ之ニ
對シテ如何ナル見解ヲ持タレルノデアルカ
次ニ森林金庫ノ問題ニ付テ前二人ノ方々
カラ御質問ガアツタニ對シテ、農林大臣
ハ相當〓究ヲ續ケル積リデアルト云フ
御答デアリマシタケレドモ、今ヤ我國ノ森
林資源開發、殊ニ森林法改正ニ伴フ所ノ
森林組合ノ活動ヲ思フ時ニ於テ、唯〓究ニ
名ヲ藉ツテ荏苒日ヲ過スコトヲ許サナイノ
デアリマス、速ニ是ハ決行シナクテハナラ
又、彼ノ獨逸ガ土地ト云フ特別ナル經濟的
性質ヲ有スルモノニ對シテノ金融機關トシ
テ、農地金庫タル農地銀行ナルモノヲ設ケ
テ、相當ニ成績ヲ擧ゲタノデゴザイマスルガ、
此ノ森林經營ノ如キ資本ヲ固定セシムル性
質ヲ有スルモノ、殊ニ我國山村ノ如ク經濟
的ニ頗ル逼迫シテ居ル地帶ニ於テ、森林法
ヲ活用スルコトヲ考ヘル時ニ於キマシテ、
速ニ此ノ森林組合ノ活動ニ必要ナル資金ヲ
中央ヨリ注入スル爲ニ、恰モ彼ノ產業組合
ニ對スル產業組合中央金庫ノ如キ職能ヲ發
揮スルモノヲ設ケルノ急ナルコトヲ痛感ス
ル者デゴザイマス(拍手)例ヘバ森林金庫ヲ
速ニ作リ、之ヲ十分ニ充實致シマシテ、其
ノ靈能ヲ發揮シテ、森林組合ノ經濟組織ノ
完成及ビ是ガ經濟的活動ヲ可能ナラシムル
コトガ緊要事ナリト思フノデアリマス、農
林大臣ハ直チニ此ノ金庫確立ノ手續ニ邁進
サレンコトヲ切望ニ堪ヘナイ者デアリマス
ガ、之ニ對スル御所見ハ如何デアリマスカ
更ニ價格及ビ需給ノ調整ヲ木材ニ對シテ
行ハナケレバナラヌコトハ、前質問者カラ
御話ガアツタノデゴザイマスガ、之ニ對シ
テ簡單ニ私モ補足ヲ致シテ答辯ヲ求メタイ
ト思ヒマス、諸君、國有林ハ國民ヲ愛撫ス
ベキ地位ニ立ツ政府ガ直接ニ經營セラレテ
居ルモノデアリマス故ニ、國有林ノ經營、
國有林ノ伐採、國有林ノ利用ト云フ點ニ於
キマシテハ、飽クマデ山村民ヲ育ミ、森業
當事者、中小木材業者ヲ育ンデ行クト云フ
態度ヲ執ラナケレバナラヌノデゴザイマス、
然ルニ最近木材界ノ情勢ヲ通觀致シマスル
ニ、寧ロ此ノ木材業者ノ愛護、森林業者ノ愛
護ノ地位ニ立ツベキ森林行政當局ノ間ニ於
テ、木材價格ヲ奔騰セシムルガ如キ嫌ヒノ
アルコトヲ私ハ認メザルヲ得ナイノデアリ
マス、諸君、此ノ問題ニ付テハ特ニオ互ニ〓
究調査致シマスルシ、農林當局トシテモ十
分ナル調査ト是正ヲシテ戴カナケレバイケ
ナイ次第デアリマス、是レ以上私ハ踏込ン
デ兎ヤ角議論セントスル者デハゴザイマセ
ヌケレドモ、特ニ私ハ此ノ木材價格及ビ需
要供給ノ調整ニ付テ國家ガ特別會計制度ヲ
設ケ、民間ノ森林當業者及ビ中小木材當業
者ヲ十分ニ育テテ行クト云フ見地ニ立ツテ、
伐採ヲ加減シ、需給調整、價格ノ調整ヲ圖
リ行クノ見地ニ立テル良政治ヲ行ハレンコ
トヲ切望シテ已マナイノデアリマス、此ノ
意味ニ於テ私ハ農林大臣ニ特別會計制度ヲ
直チニ設定スルコト、及ビ國有林ノ經營、
國有林ノ拂下等ニ於テハ、飽クマデ山村ノ
民衆、中小木材業者ヲ愛護スルノ態度ニ出
デルノ覺悟ガアルカ、又之ニ對スル所見ノ
發表ヲ望ム次第デアリマス
造林ノ本質ヲ經濟的ニ眺メテ見マスルニ、
植ヱタル樹木ハ三十年、五十年、百年ノ後
ニ初メテ囘收サレルノデアル、是程資金ノ
固定スルモノハナイノデアリマス、而モ關
東地方ノ森林地帶ニ於テ杉一町步ノ造林費
ガ實ニ百二三十圓、松林ニ於テモ百圓程度
ヲ要シテ居ルノデアリマス、就中杉ニ於テ
九十圓ノ苗木代ヲ要シ、松ノソレハ七十圓
ヲ要シテ居ルノデゴザイマス、故ニ先程農
林大臣ノ御發表ニナリマシタ如ク、造林業
者ニ對シテ十分ナル補助ヲサレル必要ガゴ
ザイマスルケレドモ、今日山村ノ民衆ガ食フ
ヤ食ハズシノ饑渴ノ狀態ニ於テ、尙ホ林木ヲ
我子ノ如ク愛護シテ居ル所ノ其ノ熱意ニ對
シマシテモ、國家ハ彼等ガ容易ニ植林ヲ爲
シ得ルヤウニ十分補助スル必要ガアルト考
ヘマス(拍手)然ラバ如何程補助スベキ
や、私ハ〓括的ニ見テ、少クトモ苗木
代ハ全額之ヲ國家ニ於テ負擔スベシト云
フコトヲ主張致シタイノデゴザイマス、
殊ニ此ノ際農相ニ御尋致シタイコトハ
斯ル困難ナル植林事業ナルガ故ニ、寧ロ
民間ヲシテ造林會社ヲ設立セシメテ、國家
モ强力ニ之ニ參畫シマシテ、玆ニ自發的ニ
植林ヲ行フト云フコトニサセテハ如何ナモ
ノデアルカ、之ニ對スル農林大臣ノ御所見
ヲ伺ヒタイノデアリマス、今日森林地帶ニ
住ム農民ハ、實ニ食フヤ食ハズノ窮況ニ於
テモ、尙ホ祖先墳墓ノ地ヲ離レルコトガ出
來ナイノデアリマス、斯クシテ幾千百年ノ
間父祖傳來ノ山ヲ護リ、父祖傳來ノ樹木ヲ
愛護致シテ今日ニ來ツテ居ルノガ、山村民
ノ實情デア、リ、又山村民ノ生活デアルノデア
リマス、又一面ヨリ眺メマスルニ、山村ニ
生ヲ享ケタル者ハ、山村、山地ノ資源ヲ開
發シテ、サウシテ國家ニ奉仕シテ居ルノデ
アリマス、是レ天ノ使命デアリ、國民トシ
テノ責務デアルトシテ、彼等ハ日夕此ノ事
ニ從ツテ居ルノデゴザイマス、然ルニ今日
山村民ハ果シテ幾何ノ山地所有ノ恩典ニ浴
シテ居ルノデアルカ、甚シキハ祖先傳來植林
シタルモノヲ人手ニ渡シテ、全ク日傭稼ヲ
シテ居ル者ガ多イノデゴザイマス、私ハ山
村民ヲシテ先ヅ喜ンデ其ノ山村ニ愛著セシ
メナケレバナラヌト思フ、此ノ見地ニ立チ
テ考察スル時ニ於テ、農林省トシテハ或ル
程度現在國有林ヲ民間ニ拂下ゲ、或ハ農村、
或ハ府縣ノ自治體ニ對シテ是ガ利用經營ヲ
爲サシメルト云フガ如ク、現在ノ法令、又
ハ現在ノ法令ヲ超越シテ新シキ制度ヲ設ケ
テデモヤラナクテハナラヌモノデアルト確
信致シマス、然ルニ之ニ反對スル者ハ曰ク、
若シ之ヲ民間ニ委ネル時ニハ直チニ山ハ
荒廢スルデアラウト言フノデアリマス、併
シナガラ政府ハ現ニ森林法ノ改正ヲ爲シ、
之ニ依ツテ濫伐ヲ止メ、理想的施業案ノ實
行ヲ企畫シ得ルモノト斷言シ、施業監督上
最モ效能アリトシテ、本改正法案ヲ提出致
シテ居リマスル以上ハ、私ハ政府トシテハ
本法案通過セバ何等憂フル所ハナイト思フ
ノデアリマス、須ク全國各地ニ散在スル所
ノ國有林中、民間ニ拂下ゲ、民間ニ經營セ
3ソ、民間ニ利用セシメ、民間ニ耕作セシ
メテ可ナル箇所ニ向ツテハ、斷乎然ルベキ
途ヲ現在以上ニ開カルル必要ガアルト思フ、
農林大臣ノ御所見ハ如何デアルカ(拍手)
諸君、政治上ニ於テ林業ホド輕ゼラレタ
モノハアリマセヌ、全ク物置ノ隅ニ塵芥ト
共ニ堆積セラレタノガ林業政治ノ姿テアリ
じく、過去ノ林業政治デアリマス、其ノ實
證トシテ森林當業者ニ對スル所ノ租稅制度
ヲ檢討致シテ見マセウ、諸君、森林稅制ノ
中ニ於テ北海道ニ其ノ端ヲ發シタ反別稅ナ
ルモノガアルノデアリマス、是ハ不在地主
ニ課シタモノデアリマスケレドモ、イツト
ハナシニ是ガ內地ニ傳播シテ、幾百ノ町村
ニ實施セラレ、全ク荊棘ノ生エルニ任シタ
如キ荒レ山モ、之ニ數千百倍ノ價値アル大
美林モ、共ニ同一ノ取扱ニ於テ高キ租稅ヲ
課セラレテ居ルノデアリマス、殊ニ此ノ外
立木伐採稅、流木稅、筏稅ト云フガ如キ府縣
稅ヲ課スルモノガ相當ニ多イノデアル、町
村稅ト致シマシテハ是等ノ府縣稅ノ附加
稅ノ外ニ、又獨立セル筏稅、反別稅、移出
稅、伐採稅、流木稅、斯ウ云フヤウナモノガ次
カラ次ト重課セラレテ居ルノデアリマス
而モ是ガ幾十年來何等ノ整理、統制、輕
減ヲ加ヘラルルコトナク今日ニ及ンデ居ル
ノデアリマス、斯ノ如ク此ノ貧弱ナル山村
ヲ犧牲ニ致シマシテ、而シテ斯クモ不合理
ナル斯クモ過重ナル所ノ搾取的課稅ヲ致
シテ居ルト云フコトハ、寸刻モ許スベカラ
ザルコトト存ズルノデゴザイマス、私ハ先
ヅ全國六百万戶ノ農民ノ休戚ヲ雙肩ニ擔ハ
レテ居ル農相ガ、斯ル不合理ナル稅制改廢
ニ向ツテ力ヲ加ヘラレテ、大藏當局ノ反省
ヲ促シ、又內閣諸公ヲ動カサレテ、速ニ此
ノ不合理ヲ一掃シ、一貫統制セル下ニ合理
的ナル課稅ヲセラレンコトヲ切望シテ已マ
ナイノデゴザイマス(拍手)農林大臣ハ本間
題ニ對シテ如何ナル御見解ト、又如何ナル
決心ヲ有セラレルノデアルカ
森林法ノ改正ニ伴ウテ、治山、治水問題
ヲ考慮セラレタコトハ、大臣ノ說明ニモ明
デアリマスルガ、此ノ治水、治山ノ問題ハ、
吾々ノ記憶ニ新ナル神戶地方ノ昨年ノ大慘
害或ハ其ノ他全國各地ニ年々現ハレル
所ノ幾億ノ損害ニ省ミル時ニ於テ、特ニ切
實ナルモノヲ感ズルノデアリマス、然ルニ
之ニ付テハ機構ノ上ニ於テ不合理ガアル、
法律ノ上ニ於テ不合理ガアル先ヅ機構ノ
上ニ於テハ、群馬縣下ノ某地方ニ於キマシ
テハ僅々二百間ノ距離ニ於テ、上ノ端ハ
農林省、中程ハ內務省、更ニ其ノ次ハ農林
省ト、斯ウ云フ如クニ砂防ト治水ノ仕事ガ
分レテ居ルノデアリマス、全ク有機的統一
ヲ缺イテ居ルト云フ事實ガアル、是ガ全國
ニ點々アルノデゴザイマス、又申スマデモ
ナク保安林ガ農林省ノ所管ニ屬シ、サウシ
テ砂防上重要ナル地點ハ一筆々々ノ保安
林ヲ農林省ガ指定ヲ致シテ居ルノデゴザイ
マン·然ルニ内務省ノ砂防法ニ於キマシテ
ハ字ヲ單位トスル、詰リ農林省ノ指定シテ
アル保安林以外ノ必要ノナイ部分ニマデ更
ニ網ヲ被セテ、砂防法ヲ適用シテ居ルノデ
アリマス、法律的ニ斯ル不合理ガアリ制
度的ニ斯ル重複ガアル、是ガ此ノ重要ナル
治山治水ノ問題ヲ妨ゲルコト甚シイノデア
リマス、殊ニ從來我國ノ治水ハ常ニ川ノ末
流ノ堤防修築ニ汲々ト致シテ居リマシテ、上
ノ水源-山嶽ノ補正、森林ノ撫育ト云フ
コトニ頭ヲ置イテ居ナカツタ嫌ヒガアルノ
デアリマス(拍手)須ク今後ハ山ノ高キニ登
ツテ末流ヲ眺メテ、而シテ其ノ河川ニ於ケ
ル缺陷ヲ指摘シ、之ニ對スル拔本塞源ノ策
ヲ立テルコトガ、國家政策ノ上ニ最モ喫緊
ナコトデハナイカト考ヘルノデゴザイマス
(拍手)是等ノ點ニ於キマシテ、農林大臣ハ
徒ニ內務其ノ他ノ當局トノ關係ヲ口實トシ
テ囘避スルコトナク、須ク關係各大臣ヲ動
カサレマシテ、玆ニ統制セル法律ト、統制
セル機構ノ下ニ、此ノ懸案タル治水治山ノ
問題ヲ速ニ解決セラレンコトヲ希望スルノ
デゴザイマス、之ニ付テ如何ナル抱負ヲ持
ツテ居ラルルノデアルカ又如何ナル決心
ヲ以テ臨マルルノデアルカ、御明答ヲ願ヒ
タイノデアリマス
最後ニ私ハ森林行政ノ統一問題ニ付テ
質問ヲ致シタイト思ヒマス、此ノ問題ガ
解決セラレナカツタナラバ、折角ノ森
林法改正モ眞ニ其ノ目的ヲ發揮スルコト
ガ出來ナイト思フカラデアルノデアリマ
ス、諸君、今日森林ガ有ユル產業ノ根源ヲ
成シ、有形無形ニ我ガ國本ヲ擔ウテ居ルト
云フ事實ヲ眺メル時ニ於キマシテ、森林政
治ノ敢行ニ付キマシテハ、須ク我國版圖ノ
全部ヲ網羅シテ、有機的ニ一體ヲ成シタル
所ノ一貫セル政策ニ依ツテ、森林行政ガ運營
セラレナケレバナラヌト思フノデゴザイマ
ス、然ルニ今日ノ實情ヲ見ルナラバ、或ハ
樺太、或ハ朝鮮、或ハ臺灣、南洋、乃至ハ
北海道ト、ソレ〓〓特別ノ機關ニ任セラレ
マシテ、農林省ハ僅ニ內地ノ大部分ヲ管轄
致シテ居ルニ過ギナイノデゴザイマス、ソ
コデ私ハ此ノ際國家ノ大局ヨリ眺メテ、先
ヅ第一ニ國土ノ中ニ於テ、ドウシテモ或ル
程度ハ之ヲ認メナケレバナラナイト云フ特
異性ヲバ、或ル地方ニ向ツテハ認メツツ
出來ル限リ速ニ拔本的ノ行政改革ヲ行ヒマ
シー、サウシテ農林省ガ殆ド全部ノ國土ニ
向ツテ、殆ド絕對ノ行政權ヲ獲得スルヤウ
ニ致サナケレバナラヌト思ヒマス、是亦農
林行政上ノ難事業トシテ今日マデ放置セラ
レテ居リマス、時局上林業ノ重要性ニ省ミ
テ、眞ニ決心スル所アラバ容易ニ之ヲ爲シ遂
ゲ得ルモノナリト確信スルノデゴザイマス、
此ノ際速ニ本問題ノ調査ニ邁進シ、多年實
現シ得ズ其ノ儘ニ放任セラレタル本問題
ヲ、速ニ解決セラレンコトヲ望ミマス、農
林大臣ハ之ニ對シ如何ナル見解ト決意ヲ有
セラレルカ、明確ナル答辯ヲ求メル次第デ
アリマス(拍手)
〔國務大臣櫻內幸雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=34
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035・櫻内幸雄
○國務大臣(櫻内幸雄君) 長野君ノ御質問
ニ對シテ答辯申上ゲマス、第一ノ御尋ハ、從
來森林行政ガ輕ンジラレタヤウナ形跡ガア
ルガ、此ノ森林行政ニ對シテドウ考ヘテ居
ルカ、斯樣ナ御質疑デアツタト思ヒマス、
私ハ日本ト致シマシテハ森林行政ハ最モ重
要ナルモノノ一ツデアルト考ヘマス、御承
知ノ如ク治山治水ノ根源ハ森林ニアリマス、
卽チ總テノ河川ノ根源トナツテ居ルノデア
リマス、此ノ森林ノ涵養如何ニ依ツテハ洪
水ヲ防止スルコトモ出來ルノデアリマス、
卽チ農作物ノ被害ヲ根絕スルコトモ出來ル
ノデアリマス、日本ノ食糧政策ノ上カラ云
ヒマシテモ、我ガ森林ヲ確保スルト云フコ
トハ、最モ重大ナコトト私ハ信ズルノデア
リマス(拍手)殊ニ現在直接產出ヲ致シテ居
ル所ノモノニ付テ考ヘテ見マシテモ、材木
ガ內地ダケデ約七千万石ノ多キニ達シテ居
リマス、又木炭ノ如キハ六億六千万貫ニ達
シテ居リマス、之ニ從事シテ居ル所ノ從業
員ハ、正確ニハ申上ゲ兼ネマスケレドモ
約四百万人ニ近イ人ガ之ニ從事シテ居ルノ
デアリマス、今日國際上ノ變化ニ依リマシ
テ棉花ガ入ラナイ、之ニ代ルベキ所ノ「ス
テープル·ファイバー」竝ニ「パルプ」資材モ
亦此ノ山ニ俟タナケレバナラヌノデアリマ
ス、故ニ此ノ森林行政ノ如何ハ、明ニ我ガ
帝國ノ興廢ニ關スルト言ツテモ差支ナイト
思フノデアリマス(拍手)卽チ私共ハ此ノ點
ニ付キマシテ、十分之ニ重キヲ置イテ、力
ヲ注ギタイト考ヘテ居リマス
次ニ森林開發ニ對シテ林道ヲ擴充シナケ
レバイカヌデハナイカト云フヤウナ御意見
デアリマシタガ、全ク御同感デアリマス、
今日百万圓ヅツノ林道助成費ヲ出シテ居リ
マスガ、是ハ私ハ少イト思ツテ居ルノデア
リマシテ、明年度カラハ此ノ增額ヲ是非期
待致シタイト考ヘテ居ル次第デアリマス、
又鐵道大臣ガ見エマセヌケレドモ、鐵道省
ニ於テモ、此ノ森林資材ヲ搬出スルコトニ
付キマシテハ、十分ナル考慮ヲ拂ツテ居ル
ノデアリマス
第三ニ、森林組合ノ經濟活動ニ卽應スル
金融對策ニ付テノ御質疑デアリマシタガ、
先刻モ申上ゲマス通リ、此ノ件ニ付キマシ
テハ、金融改善〓究會ニ於テ〓究ヲ致スノ
ミナラズ、現存スル有ユル金融機關ヲ動員
致シマシテ、其ノ金融ニ萬遺憾ナキヲ期シ
タイト考ヘテ居ルノデアリマス
國有林伐採ニ付テ中小森林業者トノ間ノ
調整ニ付テノ御意見ガアリマシタガ、此
ノ問題ニ對シテハ從來トモ注意ヲ致シテ居
ルノデアリマスケレドモ、今後ハ更ニ一層
注意シテ萬全ヲ期シタイト思ツテ居ルノデ
アリマス、之ニ關シテ國策會社ヲ設ケテ
其ノ運營ニ當ラシテハ如何ト云フ御意見デ
アリマシタガ、此ノ問題ハ相當考慮スベキ
必要ノアル問題デアリマスケレドモ、御承
知ノ如ク日滿支一體ノ上デ、所謂森林計畫
ト云フモノヲ確立致サナケレバナリマセヌ
ノチ、其ノ點カラ尙ホ直チニ此ノ問題ヲ具
體化シテ御協賛ヲ仰グ順序ニナツテ居ナイ
ノデアリマス
國有林ノ拂下ニ付テノ御意見ガゴザイマ
シタガ、從來ト雖モ關係市町村ニ對シテ出
來ル限リノ便利ヲ圖ツテ、拂下モ出來得ル
限リハ致シテ居ルノデアリマスケレドモ
今後ハ其ノ關係ニ依ツテ委託制度ヲ採用シ
テ、從來ノ缺陷ヲ補ツテ行キタイト考ヘテ
居リマス、委託制度以外ニ於テ特ニ之ヲ拂
下ゲル問題ニ付キマシテハ、從來ヨリ一層
便利ヲ圖ツテ見タイト思フノデアリマスケ
レドモ、此ノ問題ニ付キマシテハ種々ナル
關係ガアリマスノデ、今玆ニ之ヲ明ニ申上
ゲ兼ネルノデアリマス
ソレカラ森林ノ所有者ノ負擔ノ問題ニ對
シテノ御質疑デアリマシタガ、此ノ問題ハ
洵ニ御質疑御尤デアリマスケレドモ、色々
ナル名目ニ於テ所有者ガ負擔ヲ致シテ居リ
マスガ、反別割ノ問題ノ如キハ曩ニ次官
通牒ヲ以テ是ハ廢止シタイト云フコトヲ言
ツテヤツタト記憶致シテ居リマス、其ノ他
道路ノ毀損或ハ河川ノ修繕費其ノ他ニ關ス
ル所ノ費用ノ割當ガアリマスガ、是ハ所謂
製材ヲ搬出致シマス關係上巳ムヲ得ザル點
デアリマシテ、此ノ點ニ付キマシテハ、此
負擔ヲ整理スルト云フコトニ付テハ、深ク
〓究ノ上御趣旨ニ副ヒタイト考ヘルノデア
リマス
治水治山ノ行政機構ニ付テ改正ヲスルノ
必要ハナイカト云フ御意見デアリマシタガ、
私ハ此ノ問題ニ對シマシテハ篤ト考究ヲ
致シタ上デナケレバ御答ハ出來マセヌケレ
ドモ、此ノ行政機構ノ改革ニ對シマシテハ、
十分ニ〓究ヲ致シタイト考ヘテ居リマス、
大體以上ヲ以テ御答辯ニ代ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=35
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036・小山松壽
○議長(小山松壽君) 山川賴三郞君
〔山川賴三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=36
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037・山川頼三郎
○山川賴三郞君 私ハ只今上程サレマシタ
法案ニ付キマシテ、八項目ニ亙ツテ御尋ヲ
致シタイト思ウテ居ルノデアリマス、其中
デ先程來ノ諸君ヨリ大分蠶食サレマシテ
(笑聲)非常ニ貧弱ニナツタノデアリマスガ、
ヤハリ其ノ根本ニ相當違フ所ガアリマスカ
ラ、成ベク重複セヌヤウニシテ御質問ヲ申
上ゲタイト思ヒマス、前ニ申シテ置キマス、
第三章ノ保安林ノ强化及ビ保安林ノ買上ト
云フ問題ト、ソレカラ其ノ次ニハ治山治水
ト防災ト云フコトデアリマス、災害ヲ防グ
ト云フコトデアリマス、又次ニハ防災ト土木
ノ監督、ソレカラ次ニハ林業施業團體ハ下
級團體ニ適スル、斯ウ云フコトデス、其ノ
次ハ森林組合制度ノ强化ト林業助成ニ付テ、
其ノ次ハ林業技術員ノ養成ニ付テ、次ニ國
有林ノ整理、次ニ山林會法ノ制定、以上ノ
御質問ヲ申上ゲタイト思フノデアリマス
森林法中改正法律案ハ、山嶽地帶ノ多イ
我國トシマシテハ大切ナ法律デアリマシ
テ、是ガ改正ニ付キマシテハ十分ノ〓鑚ヲ
致サナケレバナラヌノデアリマス、我國ノ
林業面積ハ道府縣ヲ合シテ二千四百十八万
餘町步デ、我ガ國土ノ總面積ノ六割三分ニ
當ル大地積デ、是ガ利用厚生ノ如何ガ我國
產業ニ重大ナ關係ヲ及ボスコトハ勿論デア
リマス、現行法ハ施行以來旣ニ三一十餘年ヲ
閱シ、時代ノ進運ニ副ハザルモノガ多々生
ジテ參リマシテ、是ガ改訂ハ緊要デアリマ
スガ、玆ニ提出サレテ居リマス改正ノ主ナ
ル點ハ、營林監督ノ整理ト林業組合制度ノ
改正ニ止メ、時局下物動ノ對應資源充實ノ
爲ニ營林施業ノ機能ヲ發揮シ、時代ノ要求
ニ應ゼラレタノデアリマスガ、今少シク物
足ラヌ思ノ致シマスルノハ、第三章ノ保安
林監督ノ上ニ防災ト云フ意味ヲモツト强ク
含マセテ、道路ノ改修ヤ、住宅ノ經營ヤ、河
川ノ改良ヤ、開墾等ノ工事ニ際シテ、特
脆弱ナ地質ノ地方ニ對シテハ、土地臺帳ノ
名稱如何ニ拘ラズ、必要アルモノハ本法ノ
强制行使ガ出來得ルヤウニ改メル必要ハナ
イカト云フコトデアリマス、尤モ第百四條
ニ於キマシテ、第三十六條ニ「原野、山岳
其ノ他ノ土地ニシテ第十四條第一號乃至第
五號ノ場合ニ該當スルモノニ付本章ノ規定
ヲ準用スルコトヲ得」トアルノデ、此ノ條
章ニ依ツテ山林以外ノ土地ニ對シマシテモ
防災監督ガ出來得ルノデアリマスカ、又第
十四條、第二十條ノ條章ハ、林地以外ノ災
害ヲ受ケ易イ傾斜地ニマデ及ボシ得ルノデ
アリマスカ、此ノ二點ニ付テ御尋ガ致シタ
イノデアリマス、大臣ノ御答辯ヲ願ヒマス
尙ホ是ハ先程ノ長野サント重複スルヤウ
ナ嫌ガアリマスガ、一寸立場ガ違ヒマスカ
ラ申上ゲマス、保安林ハ所有者ニ營林伐採
ノ自由ガ禁止サレテ居ルガ故ニ、是ハ國有
林ニ買上ゲル責任ガアリ、又保安林タルノ
效用ニ副ヒ得ルト思ヒマスガ故ニ、之ヲ買
上ゲナケレバナラヌト思ヒマス、何故只今
マデ買上ゲノ方途ニ出ナカツタノデアリマ
スカ、御所感ガ承リタイノデアリマス
次ニ山ト災害ニ付テ、山ハ災害ノ受難器
デアリマス、我國ハ世界中デ一番ノ災害國
デアリマシテ、年々數億圓ノ大被害ガ次
ギ次ギトヤツテ來ルノデアリマス、之ヲ防グ
方法トシマシテハ、常ニ此ノ森林法ヲ活用
スル外ハナイノデアリマスルガ何故ニ今
次ノ改訂ハ此ノ點ニ重點ヲ置カナカツタノ
デアリマスカヲ不審ニ思フノデアリマス
(拍手)風水災ノ襲來ハ南洋「パラオ」島附
近ニ起リマシタ低氣壓ガ段々ト北進シテ次
第ニ强力トナリ、日本近海ニ來マスルト
目ニハ見エマセヌガ、氣流ノ中ニ大キナ谷
ガ出來テ、最後ニ日本ノ國土卽チ山ニ向ツ
テブチ當ルノデアリマス、一度風位ガ此ノ
習慣ガ付クト、何年カ繼續的ニヤツテ來ル
ト云フノデアリマス、洵ニ困ツタコトデアリ
マスルガ、如何トモ致シ方ハナイ、是ハ雨
雷ノ神ノ御所管デアルノデアリマス(拍手)
其ノ災害ノ受難器ト云フノガ山デ、其ノ山
カラノ分ガ人間ノ所管ナノデアリマス、其
ノ山ガ自然ノ形體ヲ存置スルコトニ依ツテ、
其ノ被害ノ程度ヲ低メルコトガ出來ルノデ
アリマスルガ風雨ガ襲來シテ山ノ表土ヲ
動搖浸潤シ、一石ノ降雨ガ土ト混ツテ二石
トナリ、更ニ土砂砂礫ガ倍加シテ四石トナ
リ、岩石巨木ヲ溪谷ニ押流シ、山野ヲ崩壞
シ、堤防ヲ破壞シ、平野ニ出テ耕地住宅ヲ
數十尺ノ泥ノ底ニ沈メテ、幾多ノ人命財產
ヲ損フノデ、世ノ中ニ是ヨリ恐ロシイコト
ハナイノデアリマス、而シテ其ノ被害ノ程
度ト云フモノガ年々甚シクナツテ來マシタ
ガ、其ノ原因ハ山ノ皮膚ヲ人間ガ荒スカラ
デアリマス是ニ於テ治山治水ト云フ問題
ガヤカマシクナツテ參リマシテ政府ハ豫
算ニ年々多少ノ費目ハ上ゲラレテ居リマス
ガ洵ニ貧弱デ且ツ實行豫算ニ於テ又々
減額サレマシテ、前途憂慮ニ堪ヘヌモノガ
アリマス、治山治水トハ無立木地帶ノ造林、
粗木地帶ノ改植、砂防工事、土砂扞止、溪川ノ
改良、遊水設備、卽チ「ダム」ヲ造ツテ、
時間ニ降ツタ雨ヲ一時間半ニ留メ流シヲシ
テ、下流ノ川ノ力ニ副フヤウニスル、ソレ
カラ又雪ハ自然遊水ノ天惠作用デアツテ、
冬季ノ降雨ヲ雪ニシテ山嶺ニ貯ヘ、初夏田
圃灌漑必要期ガ來ルト、氣溫ノ加減デ適度
ニ雪解ガシテ平野ニ流レ出ルノデ、是程結
構ナ遊水作用ハ無イ然ルニ人間ハ雪ノ恩
ヲ忘レテ、唯雪ノ害バカリヲ唱ヘテ居ルノ
ハ洵ニ相濟マヌコトデアリマス(拍手)雪ニ
感謝スル意味ニ於キマシテ、雪害豫防費ノ
相當額ヲ計上スルコトハ當然ノコトデアリ
マス(拍手)以上ノ遊水設備ハ、我國工業發
達ノ基礎デアル水力電氣ヲ起スコトニモ、
山ガ大切ナ役割ヲシテ居ルノデアリマス
又溜池ヲ造リマシテ遊水ト灌漑ニ併用シ、
河川ヲ修築シ、港灣ヲ改良シマス等、色々
必要ナ事業ヲ行ツテ、災害ノ程度ヲ減ズル
コトニ努メルコトガ、時運ノ大變化ニ副フ
所以デハアリマセヌカ、思切ツテ以上ノ諸
事業ニ積極的計畫ヲ立ツルノ御意思ハナイ
カ、又一般ノ土木工事ノ計畫監督ニ付テモ、
防災ニ重點ヲ置イタ强力ナル規定ヲ設クル
ノ考ハアリマセヌカ、御伺致シタイノデア
リマス
次ニ本案改訂ノ中ニ公有林、社寺有林及
ビ大地積ノ私有林ト、其ノ他ニ小口ノ私有
地ヲ合セテ組合ヲ作ラシムル等ノ、施業案
ノ編成實行確保ガ加へラレテアリマスルガ、
是ハ大地積ノ施業案ハ結構デアルガ、小口
私有林ヲ合シタ組合ハ不適當デアルト思フノ
デアリマス、私等山村ノ實際家カラ見マス
ト、施業團體ノ大キナモノヨリ小サナモノ
ノ方ガ、其ノ成績ガ皆良好デアリマス、卽
チ國ヤ縣ガ經營スルノヨリハ、郡又ハ村、
又村ヨリハ部落ト云フヤウナ風ニ、漸次小
サナ團體ノ經營ノ方ガ優良デアルバカリデ
ナク、經費ノ點ニ於テモ下級團體ノ方ガ少
ウゴザイマス、經濟的デアリマスルコトハ
間違ノナイコトデアリマス、私ノ友人カラ
來タ手紙ノ中ニ斯ウ云フコトガ書イテアル、
私ノ村ニ公有林野ノ官行造林ガアルガ、
苗木ノ不良、手入ノ不十分ナノカ、又不適
地不適木ナノカ、成績甚ダ不良デアルガ、
何トカ手入ヲスルカ、又見込ノナイ處ハ何
年經テモ無價値デアルカラ計畫ヲ變更シ
テ山林ノ效用ヲ上ゲラレタイ、何々谷ノ官
行造林ナンカ馬鹿ノ標本デ、植林セズニ捨
テ置ケバ今頃ニハ數万圓ノ雜木林ニナツテ
居ルノニ、多クノ金ヲ掛ケテ山ヲ無價値ニ
シテシマツタ、國ノ損ハ別トシテモ、部落
ノ迷惑此ノ上モナイコトデアルト云フコト
ガ書イテアル、又縣行造林モ同樣不成績デ、
馬鹿ノ標本ガ私ノ村ニアリマス、御參考マ
デニトアリマス、私モ造林ニハ苦イ經驗ヲ
持ツテ居ル一人デアリマスガ、一番大切ナ
コトハ苗木ノ撰定ト、適地適木ト、地力鑑定
トノ三點ニアル、苗木ノコトハ別ニ林業種
苗法ガ提出サレテ居リマスカラ結構デアリ
やっく、植林ト云フコトハ、一度誤レバ五六
十年間ハ山ヲ無價値ニスルノデ、適木適地
ト地力ノ鑑定ガ大切デアルガ、之ヲ鑑定ス
ル技術家ガ何人アルカデアリマス、以上述
ベク通リ大地積ノ施業ハ不成績ニ陷リ易イ
カラ、玆ニ机上論ト實際トノ矛盾ノナイヤ
ウニシテ、國家百年ノ營林策ヲ誤ラザルコ
トヲ講ゼラレタイ、仍テ小口私有林地ノ併
合組合ハ其ノ村ノ任意ニシテ、特ニ其ノ必
要ヲ認ムル場合ニ限ルト云フコトニ改メタ
イト思ヒマスガ、當局ノ御所見ヲ御伺申上
ゲマス
尙ホ森林組合制度ノ强化ト、林業助成金
增額交付及ビ林業技術員國庫助成法ノ制定
ト技術員ノ要望ニ付テ御尋致シタイ、我
國私有林ノ面積ハ千四百九十五万町步ノ大
地積デアリ、又關係事業モ多種多樣ナモノ
デ、之ヲ略記致シマシテモ竹、栗、漆樹、山
葵、食用菌葷類ノ增產、(「細カイゾ、委員
會デヤレ」ト呼フ者アリ)イヤー、待ツテ呉
レ-(笑聲)藥草ノ採集、苗木ノ自給、造林
ノ手入、間伐雜木林ノ施業改善、製炭ノ改
良、荒廢地復舊、魚附林ノ保存又ハ設置、
林道ノ開設、森林地積ノ實測、境界標識ノ
設置デアツテ、山村更生計畫ノ〓究ト指導
ニ當ル技術員ニ對シテ、普通農事ヤ養蠶、
畜產、水產ト同樣ニ助成法ガ設置セラル
ベキノニ、獨リ林業ニ限ツテ除外サレタノ
ハ甚ダ理解ニ苦シムノデアリマス(拍手)今
ヤ戰時體制下ニアツテ、木材及ビ木材ヲ原
料トスル「パルプ」ヽ「スフ」ヌハ「ガソリ
ン」代用ノ木炭ノ製造改善ハ、國家喫緊ノ要
務デアルノミナラズ、國土保存ノ上カラモ
林業問題ハ特ニ大切デアリマス、以上ノ見
地カラ各地ノ林業關係事業ニ對シ助成金ヲ
增額セラレタイガ、之ニ對シテ農林大臣ノ
御意見ヲ承リタイノデアリマス、尙ホ同一
ノ理由ニ依リマシテ、技術員補助法ヲ設ケ
ラレルト其ニ、技術員ノ養成機關設置ノ御
用意ガアルノデアリマスカ、當局ノ御所見
ヲ御伺申上ゲタイノデアリマス
次ハ國有林ノ整理デアリマス、國有林ノ中ニ
ハ極ク小口ノモノガ、十町以下ノモノガ各村
ニ散在シテアリマスルガ、其ノ經營振リハ机
上的デ、且ツ地力ト云フコトガ考ヘテナイ、不
適當ナ輪伐法ヲ立テテ、樹齡ノ適否ガ計畫
ノ年齡ニ合ハズ、次ギ〓〓ト枯損木トナツ
テ棄テラレテ行クノデ、結構ナ老齡材ヲ棄
テテシマフノガ洵ニ勿體ナイ、地力ト云フ
モノハ、同一ノ處デモ少シノ距離デ五六十
年デ戾木ニナル處ト、二三百年經ツテモ戾
木ニナラヌ處ガアル、戾木トハ成長極度ヲ
經過シタル所ノ木デアリマス、民有林ニハ
枯損木ガ少イガ、國有林ハ枯損木トシテ年
年拂下ゲラレル本數ヤ材數ヲ集計シテ見タ
ラ、驚ク程多量デアルト私ハ思フノデアリ
マス、之ヲ御調査ニナツタコトガアリマス
カ承リタイノデアリマス、國有林ハ樹齡ノ
適否ニ拘ラズ木ノ細カイ所ヲ殘シテ置クガ、
地力ノナイ處ハ何年經ツテモ太ラヌ其ノ內
ニ戾木トナツテ次ギ〓〓枯損木トナツテ
シマフ、是ハ廣大ナ面積ニ、限リアル役人
ノカデ適齡適伐ヲ行フト云フコトハ言フベ
クシテ行ハレナイコトデアリマス、徒ニ管
理費バカリ掛ケテ、村ノ中ニ邪魔物ヲ置イ
テ、時ニハ詰ラヌ犯人ヲ拵ヘタリスルヨリ
ハ、其ノ小口山ヲ其ノ村ニ拂下ヲスルカ
又經營ヲ村ニ一任シタラ宜カラウト思ヒマ
ス(拍手)之ニ對シ大藏、農林兩大臣ノ御意
見ガ承リタイノデアリマス
次ニ山林會法ヲ設クルノ要ハナイカ、森
林組合ハ產業組合ノヤウナモノデ事業團體
デアリマス、山林會ハ山ノ指導機關デ農會
ノヤウナモノデアリマス、農會ハ農會法ガ
出來テカラ發展シマシタガ、山林會ハマダ
山林會法ノ設ケガナイ爲ニ、何時ニナツテ
モ發展スル筈ハナイノデアリマス、一日モ
早ク有效ナ山林會法ヲ制定シテ、山トシテ
一番働イテ居ル私有林ノ指導奬勵ニ當ラシ
ムルコトガ、山ヲ活カス所以デアルト思フ
ノデアリマス(拍手)之ニ對スル農林大臣ノ
御所感ヲ承リマス
以上八項目ニ分チマシテ御尋ヲ致シマス
次第デゴザイマス、細カイコトハ又委員會
デ御尋ヲ致シマス、甚ダ簡單デハゴザイマ
スガ、ドウカ御酌取リ下サイマシテ御答辯
ヲ御願致シマス次第デアリマス(拍手)
〔國務大臣櫻內幸雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=37
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038・櫻内幸雄
○國務大臣(櫻內幸雄君) 山川君ノ御質問
ニ對シテ答辯ヲ申上ゲマス、第一ハ保安林
ノ强化及ビ買上ニ付テノ御質問デアリマス
ガ、保安林ニ付キマシテハ前ニ御答辯申上
ゲマシタ如ク、現在ノ現行法ニ於テ先ヅ差
支ナイモノト考ヘテ居リマスガ、其ノ整理
ニ付キマシテ、施行規則ヲ改正シテ之ヲ補
ヒタイト思ツテ居リマス、又保安林ヲ買上
ゲルコトガ當然デハナイカト云フ御意見デ
アリマスガ、是ハ見ヤウニ依ツテハ或ハサ
ウ云フ御意見ノ立ツコトモ御尤ト考ヘマス
ケレドモ、財政其ノ他ノ關係上今日ハ其ノ
事ガ出來ナイコトヲ甚ダ遺憾ト致シマス
第二ニ治山治水ト防災、防災ト土木ノ監督
ト云フコトニ付キマシテ御意見ガアリマシ
タガ、洵ニ御意見ニ對シテハ同感デアリマ
ス、併シ政府ト致シマシテハ農林省關係
ニ於テモ治山治水ノ問題ニ付キマシテハ相
當力ヲ盡シテ居ルノデアリマシテ、昭和十
二年以來十二箇年計畫ニ於テ七千七百五
十万圓ノ豫算ヲ以チマシテ治山治水ニ當ツ
テ居リマス、更ニ昨年ノ災害ニ付キマシテ
ハ繼續費ヲ以テ四千五百万圓ノ災害復舊
費ヲ計上致シテ、其ノ復舊ニ當ツテ居ル次
第デアリマス、河川竝ニ土木ノ問題ニ付キ
マシテハ內務省ニ於キマシテ十分考慮致
シマシテ、相當ナル施設ヲ致シテ居ル筈デ
アリマス、林業ノ施業團體ハ自主的デナケ
レバナラヌ、自主的ニ改メテハドウダラウ
カ、斯ウ云フ御意見デアリマスガ、此ノ事
柄ハ能ク本案ヲ御覽下サイマスレバ分ル
通リニ、大體ニ於テ國家トシテ立テベキ所
ノ施業案ヲ實行スル順序ヲ立テテ居ルノデ
アリマシテ、若シ萬一土地ノ所有者ニ
於テソレガ實行シニクイ場合ニ於テハ、
必要ニ應ジテ國家ガ之ヲ行フコトト相成ツ
テ居ルノデアリマス
小口森林ノ所有者ニ對シマシテハ、十分
特別ノ考慮ヲ拂ツテ居リマシテ、施業案ヲ
編成シ、其ノ中カラ之ヲ補助シテ行ク順序
ニナツテ居リマシテ、施業ニ付キマシテモ
先刻言ツタ間伐ニハ間伐、輪伐ニハ輪伐、
伐採ニハ伐採、造林ニハ造林、其ノ他ソレ
ゾレノ點ニ於テ補助ヲ致シテ居ルノデアリ
マス
森林組合制度ノ强化ト助成、林業技術員
ノ養成、此ノ事ニ付キマシテハ十分ニ注意
ヲ致シタイト思ツテ居リマス
第七ノ國有林整備ニ付キマシテハ、曩ニ
國有林野整備委員會ノ答申ノ次第モアリマ
スノデ、其ノ答申ニ基イテ目下相當ノ整備
ヲ致シタイト考ヘテ、其ノ準備ヲ致シツツ
アルノデアリマス
山林會法ノ制定ニ付キマシテハ、山林ノ開
發ニ伴ヒマシテ、自然山林會法ヲ制定スル
時機ガ至ルト考ヘマスケレドモ、今日ハ未ダ
愼重考慮中デアリマシテ、直チニ之ヲ制定
スルト云フコトハ申上ゲ兼ネマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=38
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039・小山松壽
○議長(小山松壽君) 川俣〓音君
〔川俣〓音君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=39
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040・川俣清音
○川俣〓音君 私ハ只今上程サレテ居リマ
ス森林法中改正法律案ニ付キマシテ、六點
ヲ擧ゲマシテ質問致シタイト思フノデアリ
マス、特ニ時間ヲ急ギマス爲ニ、項目ヲ列
記致シマシテ質問ヲ申上ゲマスガ故ニ、簡
明ニ御答辯ヲ願ヒタイト思フ次第デゴザイ
やっく、其ノ六點ノ中ノ行政機構ノ統一ノ點
ニ付キマシテ、同僚長野君ノ意見ト稍〓、同ジ
ク致シマスノデ、此ノ點ハ出來ルダケ省キ
タイト思フノデゴザイマス
第一ニ申上ゲタイコトハ、國家百年ノ大
計カラ見マシテ、又戰時林業國策ノ上カラ、
特ニ事變勃發以來需要ノ急增致シマシタ軍
需用材或ハ坑木用材、「パルプ」材、木炭ノ
供給ヲ長期ニ亙ツテ確保致ス爲ニ、又國際
貸借ノ改善ノ上ニ巨額ノ輸入ヲ見テ居リマ
ス「パルプ」木材、一般用材ヲ初メ「ガソリ
ン」代用木材、木炭或ハ天然松脂等ノ國內
需要ヲ圖ル爲ニハ、ドウシテモ是ガ對應策
ト致シマシテ、林政ノ對策ト致シマシテ
是ガ國有國營ノ大方針ヲ立テナケレバ、此
ノ大問題ガ解決シ得ナイト考ヘルノデゴザ
イマスガ、之ニ對スル大臣ノ所見ヲ御伺ス
ル次第デゴザイマス、元々巨額ノ「パルプ」
材ノ輸入、內地材ノ供給ノ不足、此ノコト
ハ國內ノ森林資源ノ不足ニ基クモノデハナ
クテ、私共ノ見ル所ニ依リマシテハ、森林
資源ノ保護培養、竝ニ其ノ開發ニ於ケル政
府ノ現在マデニ執リマシ夕無方針ナ狀態
ガ、經濟的資源ノ涸渴ヲ來タシタモノト思
ツテ居ルノデアリマス、隨テ此ノ解決ニ當
リマス爲ニハ根本策ヲ講ゼズニ此ノ大問
題ガ解決サレルトハ考へラレナイノデアリ
やっ、目下針葉樹ノ用材ヲ供給致シテ居リ
マスル亞米利加ノ如キモ、過伐ノ結果將來
二十年ヲ經タズシテ輸出力ヲ失フノデハナ
イカト言ハレテ居リマス、然ルニ我國ノ氣
候風土ヲ見マスト、林木ノ成長ニ洵ニ適ス
ル所ノ適正ナ風土氣候ヲ持ツテ居ルノデア
リマス、斯ウ云フ狀態デアリマスノデ、此處
ニ育ツテ居リマス天然林、或ハ立木ノナイ林
野、即チ無立木林野ノ半分ニ人工的ニ造林ヲ
加ヘラレマスナラバ、將來世界的、木材ノ饑
饉ニ際シテモ、我國ダケハ自給ヲ爲シ得ルバ
カリデハナイ、更ニ進ンデハ海外ニ輸出ス
ベキモノスラ考ヘラレルノデアリマス、又サ
ウシテ將來國內ニ於ケル所ノ工業原料トシ
テノ發達モ期シ得ラレルト考ヘルノデゴザ
イマスガ、之ニ對スル根本ノ策ガナクテ、現
在ノヤウナ改正法案ヲ以テシテハ、到底其
ノ所期ノ目的ガ達成スルコトハ困難デアル
ト考ヘルノデアリマス、林業ノ如ク公益ニ
關係ノ深イ、且ツ營利主義的經營ヲ以テシ
テハ國民經濟ノ上ノ生產目的ニ合致シ難
イ產業ハ、是ハ國家ノ直接經營、卽チ國營
又ハ特殊國策株式會社等ノ經營ニ依ツテノ
ミ此ノ目的ガ達成サレルト考ヘルノデゴ
ザイマス、特ニ我ガ日本ハ明治ノ初年ニ至
リマスマデ、大寳ノ律令以來、山川藪澤公
私之ヲ共ニスト云フ、所謂國營ノ大本ヲ
立テテ居ツタノデアリマス、羅馬法ガ急
ニ日本ニ入リマシテカラ、所謂佛蘭西革
命或ハ獨逸ノ山林開放ノ運動ニ稍〓乘乘マ
シテ、日本モ山林法ノ改正ヲ營ンダノデ
アリマスケレドモ、此ノヤウナ日本ノ特殊
事情ニ合ハザル改正ヲ爲シタダケデハ、根
本的解決ハ到底困難デアルト考ヘルノデア
リマス、殊ニ今ノヤウナ政治狀態ニ於テハ、
明治初年ノ森林令ノヤウナ、立入ツタ干渉
ヲ私有林林業ニ加ヘルコトハ困難ダト考ヘル
ノデアリマス、其ノ意圖サレル所ハ諒トサ
レマスケレドモ、現在ノヤウナ狀態ニ於テ
ハ、同僚カラ反對ノアリマスルヤウニ、干
涉サレルト云フコトニ付キマシテノ反對ガ
相當アルノデハナイカト想像サレルノデア
リマス、是ハ卽チ今日マデ森林ヲ所有シテ
居リマスル者ニ、木材ノ蓄積ノ利廻ヲ考へ
ルナト云フヤウナ干渉ハ實際ハ不可能ニ
近イト思フ、所謂森林ノ純益主義ヲ採ルカ、
土地ノ純益主義ヲ採ラセルノカ、此ノ點ガ
恐ラク此ノ法律ノ中ニ明示サレテ居ラナイ
點デアリマス、政府ノ考ヘテ居ル所ハ、恐
ラク森林ノ純益ヲ中心ニ考ヘラレテ居ルノ
デアリマセウケレドモ、個々ニ經濟ヲ營ン
デ居リマスル森林ノ所有者ハ、土地ノ利廻
ヲ考ヘルト云フコトハ當然ダラウト思フ
其ノ利〓ヲ考ヘルナト云フガ如キ改正ハ、
稍〓困難ニ近イノデハナカラウカト思フノ
デアリマス、如何ニ林業ガ商工業ト違ヒマ
シテ、自由放任ニ依ツテ其ノ發達ヲ圖ルコ
トガ出來ナイ產業デアルトハ云ヘ、如何ニ
森林令ヤ舊幕時代ニ於ケル制度ガ森林保有
ノ上ニ適切ナル手段デアルト云ヒマシテ
モ營林監督的干涉ヲ嚴ニシテ林業ノ發達
ヲ圖ラウト云フコトハ非常ニ無理ナ相談
ダト思フノデアリマス、隨テ此ノ方法ヲ執
ラレルト云フノデアリマスナラバ巨額ノ
補助金或ハ奬勵等ノ非强制的手段ニ依ツテ
保護助成策ヲ執ルカ、又ハ民有國營ノ方法
ニ出ヅルカ、現在ノヤウナ制度ヲ尙ホ幾分
デモ達成スルトスルナラバ委託管理制度
ト云フヤウナモノヲ設ケマシテ、所謂之ニ
對シテ森林金庫法ト相俟ツテ、特ニ擔保物
件ヲ提供致シマシタ委託管理者ニ對シマシ
テ、特融ノ途ヲ開カレルヤウナ方法ヲ執ル
ノデナクテハ、此ノ法案ノ所期ノ目的ハ達
シ得ラレナイト思ヒマスガ、其ノ用意ハア
ルノカドウカヲ御尋致シタイト思フノデア
リマス
次ハ入會權ノ問題デアリマス、此ノ入會
權ハ御承知ノヤウニ、國民經濟生活ノ上カ
ラ見マスルナラバ重要ナ問題デアリマス、
國民經濟ノ總生產額ノ增加カラ考ヘテ參リ
マスルナラバ、所謂國民經濟カラ考ヘマス
ルナラバ、入會權ト云フモノハ甚ダ不當ナ
形式ノヤウニモ考ヘラレルノデアリマスル
ケレドモ、併シナガラ山村ニ生活致シテ居
リマス者カラ致シマスレバ客觀的ニハ甚
ダ無價値ノヤウナ入會權、零細ナ價値ヨリ
ナイ入會權デアリマスケレドモ、山村ニ於
テ生活シテ居リマス山村民ニ取リマシテ
ハ落葉デアラウト、下草デアラウト、或
ハ茸デアラウト、筍デアラウトモ、價格ニ
致シマシテハ左程ノモノデハアリマセヌ
ガ、主觀的ニハ何物ニモ換ヘ難イ所ノ品物
デゴザイマス(拍手)ソレヲ一片ノ法律ニ依
ツテ永ラク生活シテ居リマシタ入會權ヲ
整理シヨウトスルヤウナ意圖ガ見エルノデ
アリマスケレドモ、一方ニ於テ近ク政府ハ
提案サレルノデアラウト稱サレテ居リマス
ル町村制ノ改正法案ニ窺ヒマスレバ、主ト
シテ部落ノ强化ニアルヤウニ聞イテ居ルノ
デアリマス、一方農林省ハ此ノ總有ノ態ニ
於ケル入會權或ハ地役權的入會權ヲ比較的
制限シ、以テ森林政策ヲ立テルガ如キ方法
ニ出デラレテ居ルヤウデゴザイマスガ、內
務省ガ最近執ラレヨウトスル所ノ所謂部落
ヲ强化シヨウトスルコトト、農林省ノ執ツ
テ居ラレマスル部落ノ經濟的價値ヲ減少セ
ントスルヤウナ入會權ノ制限ニ關シテハ
其ノ處理整理ニ關シテ政府ノ是ガ方針ヲ明
ニ致シテ戴キタイノデゴザイマス
次ハ保安林ノ問題デゴザイマス、國有保
安林ハ其ノ名稱ヲ省イテ、地租ニ當ルベキ
金額ヲ各市町村ニ交付サレルノ途ヲ開カレ
テハ如何、其ノ點デゴザイマス(拍手)御承
知ノヤウニ元來保安林ハ、私有林ノ林業ノ
開放ノ除外例トシテ、保安林制度ト云フモ
ノガ生レテ來タノデアリマス、卽チ國有ニ
ハ保安林ト云フモノハ考ヘラレナイ、私有
林ガ開放サレタ除外例ト致シマシテ、保安
林制度ト云フモノガ生レテ來タモノデアリ
マシテ、私有林ノ林業ハ之ヲ自由ニスル代
リ、干涉的ニ之ヲ制限ヲ加ヘテ行クコトハ
是ハ已ムヲ得ナイト思ヒマスケレドモ、國
ガ經營致シテ居リマス國有林ガ、政府ノ意
圖ニ依ツテ濫伐サレルト云フヤウナコトモ
考ヘラレナイノデアリマス、保安林ナル所
ノ名稱ヲ除ツタカラ濫伐スルト云フヤウナ
政府ガアルコトモ想像サレナイノデゴザイ
マスカラ、其ノ名稱ハ實質ハ土砂ノ扞止、
或ニ防風林、或ハ土砂防止林、或ハ水源地
ノ涵養林ト致シマシテ必要デアリマスケレ
ドモ、保安林ト云フ名ノ下ニ地方ニ交付サ
レテ居リマセヌ地租ニ當ルベキ金額ヲ、地
方町村ニ交付スルノ意思ガアルカドウカト
云フコトヲ御尋致シタイノデアリマス
モウ一ツ、是ハ此ノ法案ノ根本デアルト
思フノデゴザイマスガ、色々施業案ガ本法
案ノ重要ナ點デゴザイマスケレドモ、各地
方ノ長官ガ此ノ施業案ヲ許可スベキヤ、或
ハ其ノ施業案ヲ指導保護スベキカト云フト
云フ點ノ目標ヲ、何處ニ置イテ居ラレルノ
デアルカ、卽チ此ノ點ハ林業政策ノ用途
別、地域別竝ニ樹種別、綜合的立地計畫ノ
確立ガ急務デアルト考へルノデゴザイマ
ス、此ノ點ニ付テ農林大臣ハ其ノ準備ガオ
アリニナリマスカドウカヲ御尋シタイノデ
ゴザイマス、卽チ國內資源ノ開發ハ、官民
有造林促進ノ爲ニハ、木材ノ用途別、地域別
ノ林業立地計畫ヲ基本トスル植林ノ大造林
計畫ヲ樹立シナケレバナラナイト考ヘルノ
デアリマス、是ガ今日林業政策上ニ課セラ
レテ居ル所ノ國際收支ノ改善ニ資スル爲ニ
モ、又木材「パルプ」ノ輸入防遏ト、「パルプㄴ
國內需給ノ方策ヲ確立シ、他方ニハ燃料國
策ノ遂行ヲ積極的ニ强化シ、木炭增產計畫
ヲ樹立シナケレバナラナイノデアリマス
此ノㄱパルプ」用材國內需給ト薪炭用材ノ生
產力增進ノ爲ニハ是非共木材用途別、地
方別立地計畫化ヲ基本的條件トシテノミ可
能デアルト考ヘルノデゴザイマス、政府ニ
其ノ準備ナクシテ、此ノ法案ハ全ク成功ヲ
期シ難イト考ヘルノデゴザイマスケレドモ、
如何ニ施業案ヲ指導サレントスルカ、其ノ
方針ヲ明示サレンコトヲ望ムノデゴザイマ
ス
次ニ御尋致シタイノハ、現在ノヤウニ一
方ニ於テハ木炭ノ公定價格ヲ抑ヘ、一七〇八
於テハ原木ノ値段ガ〓騰致シマシタ爲ニ、
薪炭業者ガ塗炭ノ苦シミノ中ニアルノデア
リマス、所謂「ガソリン」ノ代用ト致シマス
ル木炭ノ需要ガ增大致シテ居リマスニモ拘
ラズ、木炭製造業者ガ塗炭ノ苦シミニアル
ト云フコトハ考ヘラレナイ現象デアルニモ
拘ラズ、此ノ現象ノアルコトヲ甚ダ遺憾ト
致スノデアリマスガ、斯ル狀態ニ於キマシ
テハ、「ガソリン」ノ代用木炭ノ奬勵ナドト
云フコトハ到底夢見得ザル所デアルト思
フノデアリマス、又一方肥料ノ輸入ノ困難
ナル際、政府ハ堆肥ノ奬勵ヲ致シテ居リマ
スケレドモ、此ノ森林計畫ト堆肥ノ關係モ
相當注意ナサラナケレバナラヌ點デアルト
考ヘルノデアリマス、又軍馬ノ奬勵ト採草
地ト森林トノ關係デアリマスガ、斯ウ云フ
問題ヲ解決スル意圖ヲ持タズニ、森林法ノ
改正ト云フコトハ困難デアルト考ヘマスケ
レドモ、之ニ對スル綜合的ナ御意見ヲ承リ
タイト云フコトヲ申上ゲマシテ、以下政府
ノ御答辯ヲ煩ハス次第デアリマス(拍手)
國務大臣櫻內幸雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=40
-
041・櫻内幸雄
○國務大臣(櫻內幸雄君) 川俣君ノ御質問
ニ對シテ答辯ヲ申上ゲマス、第一問ハ森林
ノ國有國營ヲ目標トシ、少クトモ前提トシ
テ國有民營ニシテハドウカ、ソレデナケレ
バ其ノ目的ハ達セラレナイデハナイカト云
フ御所見ノヤウデアツタノデアリマスガ、
此ノ御意見ハ一ツノ見方デアリマシテ、私
共モ常ニ其ノ點ニ付テ〓究ヲ致シテ居ルノ
デアリマスケレドモ、現在ト致シマシテハ
政府ガ適當ナル監督ヲ致シテ民間ニ自ラ
經營ヲサセテ差交ナイト考ヘテ居ルノデア
リマシテ(拍手)之ニ對シテハ適當ナル奬勵ノ
方法ヲ講ジタイト考ヘテ居リマス、第二ハ
入會權ノ問題ヲ御話デアリマシタガ、勿論
此ノ入會權ハ無視スルモノデハアリマセヌ、
尊重ハ致シテ居ルノデアリマシテ、此ノ入
會權ノ問題ト本法トハ關係ガナイト私共ハ
考ヘマス、ソレカラ國有保安林ノ、保安林ノ名
稱ヲ廢シテ、之ニ對スル地租ヲ市町村ニ交
付スルト云フ問題デアリマスガ、是ハ不可
分ノモノデハナイノデアリマシテ、此ノ問
題ニ對シマシテハ別ニ考慮スベキ事柄デア
ルト考ヘマス、森林行政ノ統一ニ付キマシテ
ハ、固ヨリ是ハ當然爲サナケレバナラヌコ
トデアリマシテ、唯今日ハ北海道ノ問題ガ
マダ未解決ニ殘ツテ居ル點ガアリマスガ
是ハ十分〓究ノ上適當ナ時期ニ統一サレル
ト考ヘテ居リマス、又施業案ニ付キマシテ、
其ノ施業ノ方法等ニ付テノ御意見ガアリマ
シタガ、是ハ勿論適地適本主義ヲ以テ、其
ノ計畫ヲ樹立シテ行キタイト考ヘテ居リマ
ス、木炭等ニ付キマシテ御意見ガゴザイマ
シタガ、此ノ木炭ニ付キマシテハヽ今ソレ
ゾレ考究ヲ致シテ居ルノデアリマシテ、適
當ナル增產計畫ヲ立テ、之ヲ實行致シタイ
ト考ヘテ居リマス、堆肥、採草地ニ關シテ
ノ御意見ガゴザイマシタガ、此ノ問題ニ付
キマシテハ、農林省ト致シマシテハ、各〓助
成若クハ補助等ノ方法ニ依リマシテ、其ノ
方法ヲ講ジテ居ルヤウナ次第デアリマス(拍
手ノ
〔政府委員漢那憲和君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=41
-
042・漢那憲和
○政府委員(漢那憲和君) 只今川俣君ノ御
質問ノ中、內務省所管ニ關スルコトニ付テ
御答ヲ致シマス、御質問ノ要旨ハ、只今上
程サレテ居ル森林法改正案ハ農村ノ部落ノ
力ヲ弱メルト云フヤウナ傾向ノ規定ガアル、
然ルニ內務省カラ近ク本議會ニ提案セラル
ベシト聞ク町村制改正案ハ、部落ノ方ヲ强
化スルト云フ方針デ立案ヲセラレテ居ルヤ
ウデアルガ、此ノ間ノ矛盾ヲドウスルカト
云フ趣ノ御質問ニ承リマシタ、內務省ニ於
テ本議會ニ提出致サウト存ジマシテ銳意〓
究中ノ町村制改正案ノ中ニハ、減程或ル特定
ノ部落ニ付テ、或ル特定ノ事項ノ强化ヲ目
的トスルヤウナ規定ガアルヤウニ思ヒマス、
併シナガラ此ノ考ヘ方、此ノ方針ハ、只今
上程セラレテ居ル森林法ノ精神ト、少シモ
矛盾スル所ハナイト考へルノデアリマス(拍
手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=42
-
043・小山松壽
○議長(小山松壽君) 質疑ハ終了致シマシ
タ、各案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ選擧ニ
付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=43
-
044・服部崎市
○服部崎市君 日程第四及ビ第五ノ兩案ヲ
一括シテ、議長指名二十七名ノ委員ニ付託
サレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=44
-
045・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=45
-
046・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-此ノ際
海軍大臣ヨリ潛水艦遭難事件ニ關シ報〓ノ
爲發言ヲ求メラレテ居リマス、之ヲ許シマ
ス-米內海軍大臣
〔國務大臣米內光政君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=46
-
047・米内光政
○國務大臣(米內光政君) 潛水艦ノ遭難事
故ガゴザイマシタノデ〓要ヲ御說明申上ゲ
マス
去ル二日未明豐後水道ニ於キマシテ艦隊
ノ演習中、「イ」號第六十三潜水艦ハ僚艦ト衝
突致シマシテ沈沒致シマシタ、艦隊ニ於キ
マシテハ各方面ト協力致シマシテ、目下尙
ホ全力ヲ擧ゲテ救難作業中デゴザイマスガ、
今日マデ判明致シマシタ所ニ依リマスレバ、
生存者六名、生死不明ノ者八十一名デアリ
やく、斯ル事故ヲ惹起致シマシタコトハ洵
ニ遺憾トスル所デゴザイマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=47
-
048・小山松壽
○議長(小山松壽君) 日程ヲ續ケマス、日
程第六及ビ第七ハ關聯セル議案デアリマス
カラ、一括議題ト爲スニ御異議アリマセヌ
カ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=48
-
049・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程第六、軍馬資源保護法案、日
程第七、種馬統制法案、右兩案ヲ一括シテ
第一讀會ヲ開キマス-櫻內農林大臣
第六軍馬資源保護法案(政府提出)
第一讀會
第七種馬統制法案(政府提出)
第一讀會
軍馬資源保護法案
第一條本法ハ國防上特ニ必要トスル馬
ノ資質ノ向上ヲ圖リ軍馬資源ノ充實ヲ
期スルコトヲ目的トス
第二條政府ハ軍馬タルベキ資質アル馬
ヲ選定スル爲命令ノ定ムル所ニ依リ每
年馬ノ檢定ヲ行ヒ之ニ合格シタルモノ
ヲ軍用保護馬ニ指定スルコトヲ得
市町村長ハ前項ノ檢定ニ立會ヒ又ハ當
該市町村ノ吏員ヲシテ之ニ立會ハシム
ベシ
第三條政府ハ前條第一項ノ檢定ヲ受ク
ル者ニ對シ勅令ノ定ムル所ニ依リ手當
及旅費ヲ給ス
第四條政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ每
年度豫算ノ範圍內ニ於テ軍用保護馬ヲ
飼養スル者ニ對シ補助金ヲ交付スルコ
トヲ得
第五條軍用保護馬ノ所有者其ノ他命令
ヲ以テ定ムル者ハ其ノ軍用保護馬ニ付
本法ノ定ムル鍛鍊ヲ受ケシムルコトヲ
要ス
第六條本法ニ依ル軍用保護馬ノ鍛鍊ハ
普通鍛鍊及鍛鍊競技トシ政府之ヲ管理
ス
普通鍛鍊ハ軍馬トシテ必要ナル能力及
馴致ノ向上維持ヲ圖ルコトヲ目的トス
鍛鍊競技ハ普通鍛鍊ヲ受ケタル軍用保
護馬ノ能力及馴致ヲ審査シ併セテ軍馬
ノ資質ニ關スル知識ノ普及ヲ圖ルコト
ヲ目的トス
第七條普通鍛鍊ノ事業ハ命令ノ定ムル
所ニ依リ地方長官之ヲ行フ
市町村長ハ命令ノ定ムル所ニ依リ普通
鍛鍊ニ關スル事務ノ一部ヲ行フ
普通鍛鍊ノ施行ニ因リ軍用保護馬死亡
シ又ハ傷害ヲ受ケタルトキハ政府ハ勅
令ノ定ムル所ニ依リ補償金ヲ交付ス
第八條鍛鍊競技ハ命令ノ定ムル所ニ依
リ北海道、府縣、畜產組合聯合會、畜
產組合其ノ他政府ノ指定スル〓體ヲシ
テ之ヲ行ハシム
鍛鍊競技ニシテ優等馬ノ投票ニ關スル
施設ヲ伴フモノ(以下鍛鍊馬競走ト稱
ス)ヲ行フコトヲ得ル者ハ命令ヲ以テ
定ムル畜產組合聯合會又ハ道府縣ノ區
域ニ依ル畜產組合其ノ他政府ノ指定ス
ル法人ニシテ鍛鍊馬場ニ付政府ノ許可
ヲ受ケタルモノニ限ル
鍛鍊馬競走ヲ行フコトヲ得ル鍛鍊馬場
ノ數ハ一府縣一箇所以內、北海道三箇
所以內トス
鍛鍊馬競走ノ施行ハ鍛錬馬場每ニ年二
囘以內トシ其ノ期間ハ每囘四日以內ト
ス
第九條鍛鍊競技ニハ勅令ノ定ムル所ニ
依リ地方長官ノ指定シタル軍用保護馬
ニ非ザレバ出場セシムルコトヲ得ズ
第十條鍛鍊馬競走ノ施行者ハ命令ノ定
ムル所ニ依リ入場者ヨリ入場料ヲ徵收
スベシ
鍛鍊馬競走ノ施行者ハ鍛錬馬場ニ於テ
入場者ニ對シ額面金額三圓以下ノ優等
馬票ヲ額面金額ヲ以テ發行スルコトヲ
得
優等馬票ノ發行ハ鍛鍊馬競走一競技ニ
付一人一枚ヲ限リ單式優等馬票及複式
優等馬票ヲ發行スル場合ニ於テハ鍛鍊
馬競走一競技ニ付一人各一枚ヲ限ル
優等馬票ハ之ヲ讓渡スコトヲ得ズ
學生生徒又ハ未成年者ニ對シ優等馬票
ヲ發行スルコトヲ得ズ
當該鍛鍊馬競走ニ於ケル命令ヲ以テ定
ムル施行委員又ハ當該鍛鍊馬競走ニ關
スル騎乘者其ノ他鍛鍊馬競走ノ事務ニ
從事スル者ニ對シ亦前項ニ同ジ
鍛鍊馬競走ノ施行者ハ優等馬投票ノ的
中者ニ對シ命令ノ定ムル所ニ依リ當該
競技ニ付テノ優等馬票ノ發行ニ依リ得
タル金額ヲ超エザル範圍內ニ於テ拂戾
ヲ爲スモノトス但シ其ノ金額ハ優等馬票
ノ額面金額ノ十倍ヲ超ユルコトヲ得ズ
優等馬投票ノ的中者無キ場合ニ於ケル
優等馬票ノ發行ニ依リ得タル金額又ハ
前項但書ノ規定ニ依リ生ジタル超過金
ハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ優等馬票
ヲ購買シタル者、拂拂スベシ
前二項ノ拂戾金ノ債權ハ一年間之ヲ行
ハザルトキハ時效ニ因リテ消滅ス
第十一條鍛鍊馬競走ノ施行者優等馬票
ヲ發行シタルトキハ命令ノ定ムル所ニ
依リ其ノ發行ニ依リ得タル金額ノ百分
ノ二十五以內ノ金額テ收得スルコトヲ
得
前項ノ場合ニ於テ鍛鍊馬競走ノ施行者
ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ納付金ヲ軍用
保護馬鍛鍊中央會ニ納付スベシ
前項ノ納付金ハ軍用保護馬鍛鍊中央會
ノ目的ヲ達スル爲必要ナル經費ニ充ツ
ルコトヲ要ス
第十二條軍用保護馬鍛鍊中央會ハ法人
トシ鍛鍊競技ノ健全ナル發達ヲ圖リ以
テ軍用保護馬ノ能力及馴致ノ向上ニ資
スルト共ニ軍馬ノ資質ニ關スル知識ノ
普及ヲ期スルコトヲ目的トス
軍用保護馬鍛鍊中央會ハ全國ヲ通ジ
箇トシ第八條第二項ノ許可ヲ受ケタル
者ヲ以テ之ヲ組織ス
軍用保護馬鍛鍊中央會成立シタルトキ
ハ會員タル資格ヲ有スル者ハ總テ會員
トス
第十三條政府ハ軍用保護馬鍛鍊中央會
ノ保有スル資金ガ勅令ヲ以テ定ムル額
ヲ超過スルトキハ其ノ超過額ヲ政府ニ
納付セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル納付金ハ國稅滯納處
分ノ例ニ依リ之ヲ徵收スルコトヲ得但
シ先取特權ノ順位ハ國稅ニ次グモノト
ス
第十四條軍用保護馬鍛鍊中央會ニハ所
得稅及營業收益稅ヲ課セズ
軍用保護馬鍛鍊中央會ガ本法ニ基キテ
爲ス登記ニ付テハ登錄稅ヲ課セズ
第十五條本法ニ定ムルモノノ外軍用保
護馬鍛鍊中央會ノ設立、登記、管理、
監督、解散、〓算其ノ他軍用保護馬鍛
鍊中央會ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ
以テ之ヲ定ム
第十六條行政官廳ハ鍛鍊競技ノ施行者
ニ對シ鍛鍊競技ノ施行ニ關シ監督上必
要ナル命令又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第十七條政府ハ鍛鍊馬競走ノ施行者又
ハ軍用保護馬鍛鍊中央會ニ對シ鍛鍊競
技ノ健全ナル發達ヲ圖ル爲必要ナル施
設ヲ命ズルコトヲ得
第十八條政府ハ鍛鍊馬競走ノ施行者又
ハ其ノ役員若ハ施行委員ノ行爲ガ法令
若ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シ又ハ
公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリト認ム
ルトキハ左ノ處分ヲ爲スコトヲ得
一第八條第二項ノ許可ノ取消
二鍛鍊馬競走ノ停止
三優等馬票發行ノ停止又ハ制限
四施行委員ノ職務執行ノ停止
第十九條軍用保護馬ハ政府ノ許可ヲ受
クルニ非ザレバ之ヲ輸出シ又ハ移出ス
ルコトヲ得ズ第二條第一項ノ檢定ニ合
格シタル馬ニ付命令ヲ以テ定ムル期間
內亦同ジ
第二十條政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ
每年軍用保護馬ノ檢査ヲ行ヒ之ニ合格
セザルモノニ付軍用保護馬ノ指定ヲ取
消スコトヲ得
第二條第二項ノ規定ハ前項ノ檢査ニ之
ヲ準用ス
第二十一條政府ハ第二條第一項ノ檢定
又ハ前條第一項ノ檢査ノ爲必要アリト
認ムルトキハ區域及期間ヲ指定シ馬ノ
移動ヲ制限スルコトヲ得
第二十二條本法ハ左ノ各號ノ一ニ該當
スル馬ニ付之ヲ適用セズ
-當歲ノモノ又ハ明ケ十八歲以上ノ
モノ
二國又ハ道府縣ノ所有ニ係ルモノ
三前二號ノ外命令ヲ以テ定ムルモノ
第二十三條軍用保護馬ガ左ノ各號ノ一
ニ該當スル場合ニ於テハ軍用保護馬ノ
指定ハ其ノ效力ヲ失フ
一明ケ十八歲ニ達シタルトキ
二輸出又ハ移出セラレタルトキ
三國又ハ道府縣ノ所有ト爲リタルト
キ
四前三號ノ外命令ヲ以テ定ムル場合
第二十四條市町村長ハ命令ノ定ムル所
ニ依リ左ノ各號ノ一ニ該當スル馬ニ付
馬籍ニ其ノ旨記載スベシ
一第二條第一項ノ檢定ニ合格シタル
モノ
二軍用保護馬ニ指定セラレタルモノ
又ハ軍用保護馬ノ指定ヲ取消サレタ
ルモノ若ハ其ノ指定ノ效力ヲ失ヒタ
ルモノ
第二十五條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ三年以下ノ懲役若ハ五千圓以下ノ罰
金ニ處シ又ハ其ノ刑ヲ併科ス
鍛鍊競技ニ關シ第八條第二項ノ許
可ヲ受ケズシテ優等馬票ヲ發行シ又
ハ之ニ類似ノ行爲ヲ爲シタル者
二第十八條第三號ノ停止又ハ制限ニ
違反シ優等馬票ヲ發行シタル者
三鍛鍊競技ニ關シ常習トシテ多數ノ
者ニ對シ財物ヲ以テ賭事ヲ爲シタル
者
四·第十條第六項ニ揭グル者ニシテ前
號ニ規定スル行爲ノ相手方ト爲リタ
ルモノ
第二十六條鍛鍊馬競走ノ施行委員鍛鍊
馬競走ノ職務ヲ執行スルニ當リ之ニ對シ
テ暴行又ハ脅迫ヲ加ヘタル者ハ二年以
下ノ懲役又ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス
團體若ハ多衆ノ威力ヲ示シ、團體若ハ
多衆ヲ假裝シテ威力ヲ示シ又ハ兇器ヲ
示シ若ハ數人共同シテ前項ノ罪ヲ犯シ
タル者ハ三年以下ノ懲役又ハ三千圓以
下ノ罰金ニ處ス
第二十七條第十九條ノ規定ニ違反シタ
ル者ハ一年以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ
罰金ニ處ス
第二十八條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス
一第九條ノ規定ニ違反シ同條ニ規定
スル軍用保護馬ニ非ザル馬ヲ鍛鍊競
技ニ出場セシメタル者
二第十條第二項又ハ第三項ノ規定ニ
依ル制限ニ違反シ優等馬票ヲ發行シ
タル者
三第十條第五項又ハ第六項ノ規定ニ
違反シ優等馬票ヲ發行シタル者
四第十條第六項ニ揭グル者ニシテ優
等馬票ヲ購買シタルモノ
五第十條第七項ノ規定ニ依ル制限ニ
違反シ拂戾金ヲ交付シタル者
六第二十五條第一號乃至第三號ノ一
ニ規定スル行爲ノ相手方ト爲リタル
者
第二十九條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
一第十條第二項又ハ第三項ノ規定ニ
依ル制限ニ違反シ優等馬票ヲ購買シ
タル者
二第十條第五項ニ揭グル者ニシテ優
等馬票ヲ購買シタルモノ
三優等馬票ヲ讓渡シ又ハ讓受ケタル
者
四第十條第七項ノ規定ニ依ル制限ニ
違反シタル拂戾金ノ交付ヲ受ケタル
者
第三十條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ
五十圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
-第二條第一項ノ檢定、第七條第一
項ノ普通鍛鍊又ハ第二十條第一項ノ
檢査ニ應ゼザル者
二第二條第一項ノ檢定、第七條第一
項ノ普通鍛鍊又ハ第二十條第一項ノ
檢査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者
三第二十一條ノ規定ニ依ル制限ニ違
反シタル者
第三十一條軍用保護馬鍛鍊中央會ノ役
員又ハ鍛鍊馬競走ノ施行委員ガ其ノ職
務ニ關シ賄賂ヲ收受シ又ハ之ヲ要求若
ハ約束シタルトキハ二年以下ノ懲役ニ
處ス因テ不正ノ行爲ヲ爲シ又ハ相當ノ
行爲ヲ爲サザルトキハ五年以下ノ懲役
三重県人
前項ノ場合ニ於テ收受シタル賄賂ハ之ヲ
沒收ス若シ其ノ全部又ハ一部ヲ沒收スル
コト能ハザルトキハ其ノ價額ヲ追徵ス
第三十二條前條第一項ニ揭グル者ニ對
シ賄賂ヲ交付、提供又ハ約束シタル者
ハ二年以下ノ懲役又ハ三百圓以下ノ罰
金ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキ
ハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除スルコトヲ得
第三十三條法律ノ規定ニ依ラザル馬ノ
競走ニ關シ優等馬票、勝馬投票劵若ハ
之ニ類似ノモノヲ發賣シ又ハ之ニ類似
ノ行爲ヲ爲シタル者ハ三年以下ノ懲役
若ハ五千圓以下ノ罰金ニ處シ又ハ其ノ
刑ヲ併科ス
第三十四條法人又ハ人ノ代理人、戶主、
家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ガ
其ノ法人又ハ人ノ業務ニ關シ第二十七
條又ハ第三十條第一號若ハ第三號ノ違
反行爲ヲ爲シタルトキハ其ノ法人又ハ
人ハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ
其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第三十五條第二十七條竝ニ第三十條第
一號及第三號ノ罰則ハ其ノ者ガ法人ナ
ルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ
業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又ハ
禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人ニ
之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト同
一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此
ノ限ニ在ラズ
第三十六條前二條ノ場合ニ於テハ懲役
ノ刑ニ處スルコトヲ得ズ
第三十七條鍛鍊競技ノ施行者又ハ鍛鍊
馬競走ノ施行委員第十六條、第十七條
又ハ第十八條第四號ノ規定ニ依ル行政
官廳ノ命令ニ違反シタルトキハ千圓以
下ノ過料ニ處ス
軍用保護馬鍛鍊中央會ノ役員第十五條
ノ規定ニ依ル勅令又ハ第十七條ノ規定
ニ依ル命令ニ違反シタルトキハ千圓以
下ノ過料ニ處ス
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百
八條ノ規定ハ前二項ノ過料ニ之ヲ準用
ス
第三十八條本法ニ於テ市町村又ハ市町
村長トアルハ市制第六條ノ市及市制第
八十二條第三項ノ市ニ在リテハ區又ハ
區長トシ町村制ヲ施行セザル地ニ在リ
テハ町村又ハ町村長ニ準ズベキモノト
ス
附則
本法施行ノ期日ハ各規定ニ付勅令ヲ以テ
之ヲ定ム
軍用保護馬鍛鍊中央會ハ本法公布ノ日ニ
於テ現ニ優勝馬投票ニ依リ景品劵ヲ發行
スル競馬施行ノ許可ヲ受ケ居ル畜產組合
聯合會又ハ畜產組合ガ第三十三條ノ規定
ノ施行ニ關聯シ當該競馬場ニ付爲ス設備
ノ處分其ノ他ノ整理ニ關シ勅令ノ定ムル
所ニ依リ必要ナル事業ヲ行フコトヲ得
種馬統制法案
種馬綺制法
第一條本法ハ種馬ヲ整備シ其ノ配合ヲ
統制シ以テ馬ノ改良增殖ヲ圖ルコトヲ
目的トス
第二條馬ノ種付事業ハ命令ノ定ムル所
ニ依リ政府之ヲ管掌ス
北海道、府縣、畜產組合、畜產組合聯
合會其ノ他政府ノ適當ト認ムル者ニ限
リ前項ノ規定ニ拘ラズ命令ノ定ムル所
ニ依リ政府ノ特許ヲ受ケ馬ノ種付事業
ヲ行フコトヲ得
第三條種牡馬ハ總テ國ニ於テ之ヲ所有
スルモノトス但シ第七條ノ規定ニ依リ
指定セラレタル種牡馬ニ付テハ此ノ限
ニ在ラズ
第四條政府ハ種牡馬タルベキ資質アル
馬ヲ選定スル爲命令ノ定ムル所ニ依リ
每年公共團體又ハ私人ノ所有(以下民
有ト稱ス)ニ係ル牡馬ノ檢定ヲ行ヒ之
ニ合格シタルモノヲ候補種牡馬ニ指定
スルコトヲ得
第五條政府ハ國有ノ種牡馬ヲ整備スル
爲每年度豫算ノ範圍內ニ於テ所要ノ頭
數ヲ限リ民有ノ候補種牡馬ヲ購買ス
第六條政府ハ必要ニ應ジ國有ノ牡馬ヲ
候補種牡馬ニ、國有ノ牡馬又ハ候補種
牡馬ヲ種牡馬ニ決定ス
第七條政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ第
二條第二項ノ特許ヲ受ケタル者ノ所有
スル牡馬又ハ候補種牡馬ヲ種牡馬ニ指
定スルコトヲ得
第八條種牡馬ニ非ザレバ種付ニ供用ス
ルコトヲ得ズ
第九條種牡馬又ハ候補種牡馬ニハ去勢
ヲ行フコトヲ得ズ
第十條政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ國
有ノ種牡馬又ハ候補種牡馬ヲ北海道、
府縣、畜產組合又ハ畜產組合聯合會ニ
シテ第二條第二項ノ特許ヲ受ケタルモ
ノニ無償ニテ貸付スルコトヲ得
第十一條政府必要アリト認ムルトキハ
第二條第二項ノ特許ヲ受ケタル者ニ對
シ種牡馬ノ飼養管理又ハ種付ニ關スル
設備ノ改善ヲ命ジ其ノ他監督上必要ナ
ル命令又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第十二條政府ハ第二條第二項ノ特許ヲ
受ケタル者ノ行爲ガ本法若ハ本法ニ基
キテ發スル命令ニ違反シ又ハ公益ヲ害
シ若ハ害スルノ虞アリト認ムルトキハ特
許ヲ取消シ又ハ種牡馬ノ種付ニ關スル
業務ヲ停止シ若ハ制限スルコトヲ得
第十三條政府ハ優良種牝馬タルベキ資
質アル馬ヲ選定スル爲命令ノ定ムル所
ニ依リ每年明ケ二歲ノ民有牝馬ノ檢定
ヲ行ヒ之ニ合格シタルモノヲ候補優良
種牝馬ニ指定スルコトヲ得
政府ハ前項ノ檢定ヲ受クル者ニ對シ勅
令ノ定ムル所ニ依リ手當及旅費ヲ給ス
第十四條政府必要アリト認ムルトキハ
所有者又ハ命令ヲ以テ定ムル者ノ申請
ニ依リ明ケ三歲以上ノ民有ノ牝馬ノ檢
定ヲ行フ
政府ハ前項ノ檢定ニ合格シタル馬ヲ優
良種牝馬又ハ候補優良種牝馬ニ指定ス
ルコトヲ得
第十五條政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ
候補優良種牝馬ヲ優良種牝馬ニ指定ス
ルコトヲ得
第十六條政府馬ノ改良增殖ヲ圖ル爲必
要アリト認ムルトキハ馬ノ配合ノ統制
上必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲ス
コトヲ得
第十七條政府ハ種付ヲ爲スコト不適當
ト認ムル牝馬ニ付命令ノ定ムル所ニ依
リ其ノ種付ヲ制限スルコトヲ得
第十八條政府必要アリト認ムルトキハ
優良種牝馬又ハ候補優良種牝馬ノ所有
者其ノ他命令ヲ以テ定ムル者ニ對シ當
該馬ノ飼養管理又ハ種付ニ關シ必要ナ
ル命令ヲ爲スコトヲ得
第十九條政府ハ學術〓究ノ爲ニスル馬
ノ種付ニ付テハ命令ヲ以テ別段ノ定ヲ
爲スコトヲ得
第二十條政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ
每年度豫算ノ範圍內ニ於テ政府ノ貸付
シタル種牡馬若ハ候補種牡馬ヲ飼養ス
ル者又ハ優良種牡馬若ハ候補優良種牡
馬ヲ飼養スル者ニ對シ補助金ヲ交付ス
ルコトヲ得
第二十一條種牡馬、候補種牡馬、優良
種牝馬又ハ候補優良種牝馬ハ政府ノ許
可ヲ受クルニ非ザレバ之ヲ輸出シ又ハ
移出スルコトヲ得ズ
第二十二條政府ハ命令ノ定ムル所ニ依
リ每年民有ノ種牡馬、候補種牡馬、優
良種牝馬又ハ候補優良種牝馬ノ檢査ヲ
行ヒ之ニ合格セザルモノニ付其ノ指定
ヲ取消スコトヲ得
第二十三條民有ノ種牡馬、候補種牡馬、
優良種牝馬又ハ候補優良種牝馬ガ左ノ
各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ其ノ
指定ハ效力ヲ失フ
一國有ト爲リタルトキ
二輸出又ハ移出セラレタルトキ
三前二號ノ外命令ヲ以テ定ムル場合
第二十四條市町村長ハ命令ノ定ムル所
ニ依リ種牡馬、候補種牡馬、優良種牝
馬又ハ候補優良種牝馬ニ指定セラレタ
ル馬ニ付馬籍ニ其ノ旨記載スベシ其ノ
指定ヲ取消サレタル馬又ハ其ノ指定ノ
效力ヲ失ヒタル馬ニ付亦同ジ
前項ノ市町村長トハ市制第六條ノ市及
市制第八十二條第三項ノ市ニ在リテハ
區長トシ町村制ヲ施行セザル地ニ在リ
テハ町村長ニ準ズベキモノトス
第二十五條第二十一條ノ規定ニ違反シ
タル者ハ一年以下ノ懲役又ハ千圓以下
ノ罰金ニ處ス
第二十六條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ六月以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰
金ニ處ス
第二條第二項ノ特許ヲ受ケズシテ
馬ノ種付事業ヲ行ヒタル者
二第八條ノ規定ニ違反シタル者
三第二條第二項ノ特許ヲ受ケタル者
ニシテ第十六條ノ規定ニ依ル命令ニ
違反シタルモノ
四第二條第二項ノ特許ヲ受ケタル者
ニシテ第十六條ノ規定ニ依ル處分ヲ
拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタルモノ
第二十七條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
-第九條ノ規定ニ違反シタル者
二第十一條ノ規定ニ依ル命令ニ違反
シタル者
三第十一條ノ規定ニ依ル處分ヲ拒ミ、
妨ゲ又ハ忌避シタル者
四第十二條ノ規定ニ依ル業務ノ停止
又ハ制限ニ違反シタル者
第二十八條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ五十圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
一第十三條第一項ノ檢定又ハ第二十
二條ノ檢査ニ應ゼザル者
二第十三條第一項ノ檢定又ハ第二十
二條ノ檢査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シ
タル者
三第二條第二項ノ特許ヲ受ケタル者
以外ノ者ニシテ第十六條ノ規定ニ依
ル命令ニ違反シタルモノ
四第二條第二項ノ特許ヲ受ケタル者
以外ノ者ニシテ第十六條ノ規定ニ依
ル處分ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル
モノ
五第十七條ノ規定ニ依ル種付ノ制限
ニ違反シタル者
六第十八條ノ規定ニ依ル命令ニ違反
シタル者
第二十九條法人又ハ人ノ代理人、戶主、
家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ガ
其ノ法人又ハ人ノ業務ニ關シ第二十五
條、第二十六條第二號若ハ第三號、第
二十七條第一號、第二號若ハ第四號又
ハ前條第一號、第三號、第五號若ハ第
六號ノ違反行爲ヲ爲シタルトキハ其ノ
法人又ハ人ハ自己ノ指揮ニ出デザルノ
故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第三十條第二十五條、第二十六條第二
號及第三號、第二十七條第一號、第二
號及第四號竝ニ第二十八條第一號、第
三號、第五號及第六號ノ罰則ハ其ノ者ガ
法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ
法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年
者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代
理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年
者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付
テハ此ノ限ニ在ラズ
第三十一條前二條ノ場合ニ於テハ懲役
ノ刑ニ處スルコトヲ得ズ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
政府ハ當分ノ內勅令ノ定ムル所ニ依リ島
嶼ヲ指定シ本法ノ全部又ハ一部ヲ施行セ
ザルコトヲ得
種牡馬檢査法ハ之ヲ廢止ス
本法施行前種牡馬檢査法ニ依ル檢査ニ合
格シ本法施行ノ際現ニ同法ノ種牡馬タル
モノハ第七條ノ規定ニ依リ種牡馬ニ指定
セラレタルモノト看做ス
本法施行ノ際現ニ馬ノ種付事業ヲ行フ者
又ハ其ノ事業ヲ承繼シタル者ハ命令ノ定
ムル所ニ依リ本法施行ノ日ヨリ一年間ヲ
限リ引續キ其ノ事業ヲ行フコトヲ得
前項ノ者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ
許可ヲ受ケ前項ノ期間經過後引續キ其ノ
事業ヲ行フコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル許可ノ申請ヲ爲シタル
者ハ其ノ申請ニ對スル許可又ハ不許可ノ
處分ノ日迄引續キ其ノ事業ヲ行フコトヲ
得
政府ハ勅令ヲ以テ定ムル期間內ニ限リ第
十條ノ規定ニ拘ラズ國有ノ種牡馬又ハ候
補種牡馬ヲ北海道、府縣、畜產組合又ハ
畜產組合聯合會ニ無償ニテ貸付スルコト
ヲ得
本法施行前種牡馬檢査法ノ罰則ヲ適用ス
ベカリシ行爲ニ付テハ仍其ノ罰則ニ依ル
馬匹去勢法第一條中「種牡馬」ノ下ニ「又
ハ候補種牡馬」ヲ加フ
馬匹去勢法第二條ヲ左ノ如ク改ム
第二條左ノ各號ノ一ニ該當スル牡馬
ニハ去勢ノ施行ヲ猶豫ス
一疾病又ハ發育不全ニ因リ去勢ヲ行
フニ堪ヘスト認メタルモノ
二學術〓究ノ爲行政官廳ノ許可ヲ得
タルモノ
三前二號ノ外命令ヲ以テ定ムルモノ
馬匹去勢法第四條第三號中「種牡馬ニシ
テ檢査合格ノ證明ノ效力ヲ失ヒタルモノ」
ヲ「種牡馬又ハ候補種牡馬ニシテ其ノ指
定ヲ取消サレ又ハ指定ノ效力ヲ失ヒタル
モノ」ニ改ム
馬匹去勢法第九條中「種牡馬檢査法」ヲ
「種馬統制法中種牡馬又ハ候補種牡馬ニ
關スル規定」ニ改ム
〔國務大臣櫻內幸雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=49
-
050・櫻内幸雄
○國務大臣(櫻內幸雄君) 只今議題トナリ
マシタ軍馬資源保護法案及ビ種馬統制法案
ノ提出ノ理由ヲ申上ゲタイト存ジマス
今次ノ支那事變ニ因リ我國トシテハ未曾
有ノ多數ノ馬ガ徵發セラレ、支那各地ニ於
テ軍馬トシテ大規模ニ各種ノ作戰ニ供用セ
ラレマシタ結果、軍事上ニ於テハ勿論、產
業上ニ於テモ幾多貴重ナル經驗ヲ得タノデ
アリマス、右支那事變ノ經驗ト、最近軍備
各般ノ施設ニ一大變革ヲ來シマシタ等ノ事
情ニ依リ、陸軍ノ馬政ニ關スル要望ノ次第
モアリマシテ、此ノ際廣義國防ノ見地ニ立
チ、有事ノ際ニ於テ國軍所要ノ軍馬ノ供給
ヲ容易ナラシムルト共ニ、努メテ產業上ニ
及ボス支障ヲ輕減致シマス爲ニハ、一 H.
於テ日滿等ヲ通ジ馬ノ生產及ビ分布ノ調整
ヲ圖リ、以テ馬資源ノ培養充實ニ努メマス
ルト共ニ、他面國內ニ於キマシテ國內保有
馬ノ資質及ビ能力ノ向上、馬ノ生產力ノ擴
充ヲ圖リ、以テ馬政上遺憾ナキヲ期スルコ
トヲ緊要ト認ムルノデアリマス、仍テ國內
保有馬ノ資質及ビ能力ノ向上ヲ圖ル方策ト
シテ、玆ニ軍馬資源保護法ヲ制定シ、又馬
ノ生產力ヲ擴充スル方策ト致シマシテ、種
馬統制法ヲ制定シ、國防上特ニ必要トスル
馬ノ資質ノ向上ヲ圖ルト共ニ、有能馬ノ造
成ニ努メントスルモノデアリマス
而シテ軍馬資源保護法案ノ主要ナル內容
ト致シマシテハ、國防上特ニ必要トスル馬
ヲ軍用保護馬ニ指定シ、是ガ飼養管理ヲ十
分ナラシムル爲、飼養費ノ一部ニ對シ助成
ヲ爲シ、又軍用保護馬ニハ一定ノ鍛鍊ヲ行
ハシメ、常ニ軍馬タルニ必要ナル能力ヲ充
實セシムルト共ニ、軍馬ノ資質ニ關スル知
識ノ普及ニ資スル爲、鍛鍊馬競走ノ施行ヲ
認メ、且ツ軍馬資源確保ノ爲、輸移出ニ付
キ政府ノ許可ヲ要スルコトトシ、尙又軍用
保護馬鍛鍊中央會ヲ設置スル等ノ規定ヲ設
ケマシテ、軍馬資源ノ保護充實ヲ圖ルコト
ヲ目的ト致シテ居ルノデアリマス
種馬統制法案ノ主要ナル內容ト致シマシ
テハヽ優良ナル種牡馬及ビ種牝馬ヲ整備充
實スルト共ニ、其ノ配合ヲ統制シ、以テ馬
ノ改良增殖ヲ圖ルコトヲ目的ト致シ、是ガ
爲種牡馬及ビ候補種牡馬ノ制度、優良種牝
馬及ビ候補優良種牝馬ノ制度、馬ノ種付事業
ノ特許制度等ヲ設クルコトトシテ居ルノデ
アリマシテ、種牡馬ハ之ヲ國有トシ、又優良
種牝馬等ノ飼養者ニ對シテハ保護助成ノ途
ヲ講ズルノ外、生產資源確保ノ爲、其ノ輸
移出ニ付キ政府ノ許可ヲ要スルコトトシ、
以上ノ制度ノ運用ニ依リマシテ、馬ノ改良
增殖上遺憾ナキヲ期シタイト存ズルノデア
リマス
以上ガ軍馬資源保護法案及ビ種馬統制法
案提出ノ理由ノ大要デアリマス、何卒御審
議ノ上速ニ御協賛アランコトヲ希望致シマ
ス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=50
-
051・小山松壽
○議長(小山松壽君) 質疑ノ通告ガアリマ
ス、順次之ヲ許シマス-遠山房吉君
〔遠山房吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=51
-
052・遠山房吉
○遠山房吉君 只今上程ニ相成リマシタ軍
馬資源保護法案竝ニ種馬統制法案ニ對シマ
シテ、只今農林大臣ヨリ縷々御說明ガゴザ
イマシタガ、我國現下ノ時節柄ト云ヒ、且
ツ將來ニ於キマシテハ、此ノ案件ハ最モ重
大ナルコトデアルト私ハ確信ヲ致スノデゴ
ザイマス、就キマシテ此ノ計畫、提案ニ對シ
マシテハ、寧ロ其ノ遲カリシコトヲ甚ダ遺
憾ト致スモノデゴザイマス、私ハ右兩案ヲ
一括ヲ致シマシテ、左ノ四點ニ對シ至ツテ
簡單ニ質問ヲ致シタイト存ズル次第デゴザ
イマス、第一ハ飼育總數ノ標準、第二ハ耕
地及ビ放牧地トノ關係、第三ハ種馬及ビ奬
勵ノ對策、第四ハ衞生對策、以上デゴザイ
マス
第一ノ飼育總數ノ目標ニ對シマシテハ、
內地ニ於ケル飼育總數ヲ何程ニ致サレルノ
デアルカ、其ノ中軍馬使用ニ充ツルモノ何
頭デアリマスカ、其ノ他民間ニ於ケル各種
使用ニ對シマスル計畫ガ如何デアリマスル
カ、此ノ點ヲ御伺ヲ致シタイ、尙ホ此ノ場
合ニ於キマシテ、滿蒙ニ於キマスル馬匹關
係ノコトノ御所見ガゴザイマシタナラバ
附加ヘテ御答辯ヲ御願致シタイト斯樣ニ存
ジマスル、第二、農耕地及ビ放牧地トノ關
係ニ對シマシテハ、馬ノ增殖ニ從ヒマシテ、
是ガ飼料ニ充ツル爲ニ畑ヲ使ハネバナラヌ
コトト、及ビ放牧ヲセンケレバナラヌ、又
軍馬ニ對シマシテハ、ソレ〓〓ノ運動場ノ
設備モ致サンケレバナラヌノデアリマスル
ガ、之ニ對シマスル御計畫ヲ承リタイト思
ヒマスル、第三ノ種馬及ビ奬勵對策ニ對シ
マシテ、種牡馬ニ對シマスル牝馬ノ配給ノ
按配、之ニ對シマシテハ、如何ナル計畫
ヲ爲サント致サレルノデアリマスルカ又
民間ヨリ種馬及ビ軍馬ヲ購買致スコトガゴ
ザイマスルノデアリマスルガ、其場合ニ於
キマシテ何レニ其ノ價格ノ標準ヲ置カレル
ノデアリマスルカ、之ニ對シマシテ御答辯
ヲ願ヒタイト存ジマスル、次ニ奬勵對策ニ
付キマシテハ、地方競馬ヲ殆ド全廢マデニ
至ラシメルト云フ御計畫ノヤウデアリマス
ルガ、此ノ結果ト致シマシテ、從來ノ競馬
其ノモノノ跡始末ヲ如何ニナサレル御方針
デアリマスルカ、又民間ニ於キマスル所ノ
育成其ノ他ニ對シマシテハ、如何ナル補助
ヲ與ヘント致サレルノデアリマスルカ、之
ヲ併セテ御伺ヲ致シタイト思フノデアリマ
ス、第四ノ衞生對策ニ付キマシテハ、如何
ナル御方針ニ依リマスルカ、私昨年馬ノ關
係ニ付キマシテ陸軍省ノ政務官ヨリ承ツタ
ノデアリマシタケレドモ、委員會ニ於キマ
シテノ御答辯ハ、獸醫ノ必要ナシト云フ明
カナ御答辯ヲ受ケタノデアリマスルガ、目
下民間ニ於キマスル所ノ獸醫ノ必要ナルコ
トハ、絕叫ヲ致サレテ居ルノデアリマス、
之ニ對シマシテ政府ハ如何ナル御方針ガゴ
ザイマセウカ、詳細ニ御說明ヲ願ヒタイト
思ヒマス
甚ダ簡單デゴザイマスガ、私ハ以上四點
ニ付キマシテ農林大臣ヨリ詳細ノ御答辯ヲ
伺ヒタイノデアリマス(拍手)
〔國務大臣櫻內幸雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=52
-
053・櫻内幸雄
○國務大臣(櫻內幸雄君); 遠山君ノ御質問
ニ對シテ御答致シマス、第一ノ飼養總數竝
ニ其ノ目標等ニ付テノ御質問デアリマスガ、
此ノ事柄ハ何レ適當ナ機會ニ申上ゲルコト
ト致シマシテ、此ノ際ハ差控ヘタイト思ヒ
やく、第二ノ飼料ニ付テノ問題デアリマス
ガ、此ノ問題ニ對シマシテハ相當深ク考慮
致シテ居ルノデアリマシテ、牧野等ニ付キ
マシテハ、牧野委員會ヲ設ケテ其ノ整備ヲ
行ヒ、其ノ他ノ飼料ニ付キマシテモ、種々
對策ヲ講ジテ遺憾ナキヲ期シテ居リマス、
馬ノ賣買價格ニ付キマシテハ、市場價格ヲ
基準ト致スノデアリマシテ、ソレニ依ツテ
賣買ヲスルコトト相成ルノデアリマス、地
方競馬ノ問題デアリマスガ、是ハ今マデノ
地方競馬ヲ全廢致シマス代リニ、各縣一箇
所竝ニ北海道三箇所ノ競馬場ヲ公認致シマ
シテ、卽チ政府監督ノ下ニ之ヲ實行致サセ
ルコトト相成ルノデアリマシテ、其ノ數ニ
於テハ半減以下ニナルノデアリマスケレド
モ、其ノ公認シタ整備シタル競馬場ニ於テ、
從來ノ地方競馬ノ有シテ居ツタダケノ成績
ハ擧ゲ得ルト考ヘマス、尙ホ地方競馬會ノ
整理ノ問題デアリマスガ、此ノ問題ハ今囘
出來マスル所ノ競馬ノ中央會ニ於テ整理ヲ
致サセル考デアルノデアリマス、ソレカラ
衞生對策デアリマスガ、此ノ問題ハ文部省
ノ所管ニ於テ獸醫學校ガアリマスケレド
モ、ソレハ御承知ノヤウナ程度デアリマシ
テ、其ノ卒業生ノ數ガ少イノデアリマスガ
其ノ少イ對策ト致シマシテハ適當ナ講習
會其他ニ依ツテ補充致シマスト同時ニ、軍
馬ニ付キマシテハ、之ニ對スル所ノ衞生ノ
設備ハ別ニ講ジテ置キマシテ、遺憾ナキヲ
期シタイト考ヘテ居ルノデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=53
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054・小山松壽
○議長(小山松壽君) 大石倫治君
〔大石倫治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=54
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055・大石倫治
○大石倫治君 私ハ只今上程セラレテ居リ
マスル軍馬資源保護法案竝ニ種馬統制法案
ニ關聯致シマシテ、先ヅ農林大臣ニ御所見
ヲ伺ヒタイト存ズルノデアリマス
馬ノ國防、產業上ノ重要性ヲ持ツテ居リ
マスルコトハ、今改メテ申上ゲルマデモナ
イコトデゴザリマス、日露戰爭ノ直後ニ於
キマシテ、第一次三十年馬政計畫ヲ定メ、
其ノ計畫ガ終リマスルヤ、引續キ第二ノ三
十箇年馬政計畫ヲ樹立實行ニ入ツタノハ
僅カ數年前デアルノデアリマス、當時第二
次馬政計畫樹立ニ當リマシテ、國民ハ今日
程馬ニ對シテ關心ヲ持タレナカツタコトヲ
遺憾ト致シテ居ツタノデゴザリマスルガ
支那事變ガ勃發ヲ致シマシテ、初メテ軍馬
ノ國防上重要性ガ加ヘラレタカノヤウニ認
メラレテ參リマシタコトハ、申スマデモナ
イ次第デアリマス、此ノ支那事變ニ關シマ
シテ、內地ヨリ多數ノ軍馬ガ戰地ニ送ラレ
內地ニ於キマシテハ在〓軍人等マデ召集ヲ
セラレ、農村ノ勞力不足ヲ告ゲ、此ノ馬ノ
勞力ヲ以テ補ハント致シマスル、其ノ馬モ
非常ニ不足ヲ致シテ參ツタノデアリマス、
陸軍ニ於キマシテハ今囘ノ事變ニ於ケル實
績ニ鑑ミマシテ、第二次馬政計畫ニ一大變
革ヲ加フルコトニナリマシテ、從來第一次、
第二次ノ馬政計畫ガ定メラレマシテ、生
產シツツアリマシタル所ノ馬ハ、一大馬產
方針ヲ改メネバナラヌト云フ場合ニ達シタ
ノデアリマス、卽チ陸軍ノ要求致シマシタ
ル所ノ馬ハ低身廣軀、四肢强健ニシテ
負擔力、輓曳力竝ニ持久力ニ富ミ、中等體
尺者ヲシテ乘御使役ニ便ナラシメ、而シテ
飼養管理ニ容易ナル馬ト云フ標準ヲ以テ要
求ヲセラレタノデアリマス、而シテ第一次、
第二次ノ兩計畫共國內ノ保有馬數ハ百五十
万頭デアツタノデアリマスルガ、此ノ度ハ壯
齡馬百万頭ヲ標準トスル所ノ要望デアリ
やく、若シ壯齢馬百万頭ヲ保有セント致シ
マスルナラバ、所謂四歲以下十八歲以上ノ
馬ヲ合セテ、國內デ飼養スベキ頭數ハ百六十
万頭ヲ標準ト致サネバナラヌト云フ今日ニ
立至ツテ居ルノデアリマス、然ルニ事變ノ
爲ニ國內ノ馬ハ非常ニ少クナツテ居リマス
ル、國防上、產業上、何レノ點ヨリ申シマ
シテモ、是ハ最モ近イ期間ノ內ニ、其ノ補
充ヲ行ハネバナラヌト云フ必要ニ迫ラレテ
居ルノデアリマス、然ルニ我ガ國內ニ於ケ
ル馬ノ生產力ハ、曾テ百五十万頭ヲ保有ス
ル爲ニ、其ノ補充ヲ漸ク保ツカ保タザル程
度ニ止マツテ居ツタノデアリマスルガ、茲
ニ夥シク戰地ニ送ラレマシタル馬ノ補充ヲ
シ、更ニ今後ノ增產ヲ致スコトニ依ツテ補
ヒマスルト云フニ付キマシテハ、此ノ補充
計畫、增產計畫ヲ、最モ大キナル所ノ困苦
ニ立ツテヤラネバナラヌト思フノデアリマ
ス、殊ニ軍ノ要求、此ノ軍馬資源ハ獨リ內
地依存ニ滿足スルバカリデハゴザリマセヌ、
所謂日滿支一體ノ軍馬資源ノ培養ト云フコ
トモ、亦要望セラレテ居ルノデアリマスル
カラ、此ノ馬ノ生產ト云フモノハ、軍事上、
農村經營、生產擴充ノ上ニ於キマシテ最
モ緊要ナル國策トシテ叫バルルニ至ツタコ
トハ故ナシト致サヌノデアリマス、然ルニ
本年農林省ニ置カレマシタ豫算ヲ拜見致シ
マスルト、昨年、或ハ一昨年度ヲ本年度ニ
比較致シマスルト、殆ド三倍ノ增額ヲ致シ
テ居ルノデアリマス、如何ニ馬政國策ノ重
大デアルカヲ物語ルコトハ申スマデモナイ
コトデアリマス、併シナガラ此ノ增額セラ
レマシタル二千万圓、此ノ二千万圓ノ費途
ハドウ云フ工合ニナツテ居ルカト檢討ヲ致
シマスルト、只今上程セラレテ居リマス所
ノ軍馬資源涵養ノ爲ニ關聯法ヲ實施セラレ
ル曉ニ於ケル費用、ソレガ增額ノ殆ド半バ
ヲ占メテ居リマス、又種馬統制法實施ノ曉
ニ於ケル所ノ費目モ、此ノ中ニ加ツテ居ル
ノデアリマシテ、增額セラレマシタル豫算
ノ大部分ハ、生產方面ノ助成ニ向ケラレル
モノト認メルコトガ出來ナイ、今日馬產地
方ノ生產ニ從事シテ居リマスル多數ノ當業
者又國內ニ於テ所謂百六十万頭ノ馬ヲ保
有セシムル所ノ飽育者、使役者、斯樣ナ人々
ノ經濟力ヲ觀察致シマスルト、決シテ中流以上
ノ豐富ナル經濟力、資本力ヲ持ツテ居ル者
ハナイノデアリマス、大部分ニ於テ何レモ
經濟力ノ乏シイ、資本力ノ貧弱ナル階級ノ
人ガ、多ク馬ヲ所有シテ居ラネバナラヌト
云フ現狀ニ置カレテ居ルノデアリマス、斯
ノ如キ狀態ニシテ馬ノ供給ガ益〓不足ヲ〓
ゲ、馬ノ需要ガ益〓多キヲ加ヘテ參リマスル
ニ從ツテ、馬ノ値段ト云フモノガ騰貴ヲ致
シテ參リマスト云フト、此ノ育成者、使役
者ガ馬ヲ求ムルト云フコトハ、容易ナラザ
ルコトニ相成ルノデアリマスルカラ、軍部
ノ要望スル所ノ壯齡馬百万頭ヲ保有スルト
云フ點ニ、吾々ハ疑ヲ懷カザルヲ得ナイコ
トニ立至ルノデアリマス、故ニ若シ眞ニ是
等ノ馬ノ補充ヲ充實シ、更ニ增產計畫ノ根
本計畫ヲ立テルト云フコトニ致シマスルナ
ラバ、此ノ豫算ノ運用上カラ申シマシテ
モ、更ニ生產育成方面ニ向ツテ國ノ力ガモ
ツトモツト多ク注ガレネバナラヌ筈デアル
ト思フノデアリマスルガ、豫算增額シタリト
雖モ、此ノ點ノ施設ニ於テ未ダ十分ナラザ
ルコトハ、甚ダ遺憾トスル所デアリマス、
又日滿支一體ノ計畫ヲ定ムルコトトナリマ
シテモ、支那、滿洲ニ於ケル現在ノ馬ノ狀態
ニ於キマシテハ其ノ能力ニ於テ到底內地
馬ニ及バザルコトハ勿論デアリマス、隨テ
滿支兩國ニ於ケル所ノ馬ハ改良ヲ加ヘネバ
ナラナイ、ソレニハ內地ヨリ種牡馬或ハ種
牝馬デアルト云フヤウナモノノ移殖ヲ致サ
ネバナラヌノデアリマシテ、是亦本年ヨリ
少カラザル頭數ノ移出ヲ計畫セラレテ居ル
ノデアリマス、一方內地補充ノ生產力ニ於
テ未ダ十分ナラズ、而シテ滿支兩國ニ移出
セントスル所ノ馬ノ頭數ヲ考ヘマシタ時ハ、
今日ノ此ノ生產計畫ニ於キマシテハ、イツ
ノ時ニカ之ヲ充實セシムルコトガ出來ルデ
アリマセウカ、農林大臣ハ此ノ計畫ニ付テ
吾々ガ納得シ得ル所ノ御說明ヲ願ヒタイト
存ズルノデアリマス
次ニ軍ノ要望致シマシタ馬ノ規格ハ只今
申述ベタ次第デアリマスガ、此ノ要望ノ出
來マシタル所以ハ、三十數年ヲ費シテ改良
セラレマシタル所ノ內地馬ガ、一タビ之ヲ
戰地ニ送ツテ見マスルト、其ノ乘御使役ノ
點ニ於テ、飼養管理ノ點ニ於テ、其ノ能力
ノ點ニ於テ、甚ダ不十分デアリ、或ハ氣候
風土ノ關係、或ハ飼料ノ關係、或ハ乘御使
役ノ過度等ニ依ツテ、用兵作戰ノ上ニ少カ
ラザル不便不利ヲ來シタデハナカラウカト
察スルノデアリマス、是ニ於テ軍ハ前申シマ
シタ規格ニ基ク所ノ馬ノ要望ヲ農林省ニ向
ツテセラレ、農林省ハ此ノ要望ニ基キマシ
テ、第二次計畫ヲ擲ツタトハ申シマセヌ
ガ、直チニ變改ノ擧ニ出デラレマシタノデ
アリマス、併シ假令農林省ノ方針ガ變リマ
シテモ、馬ハシンコ細工ノヤウニ直チニ自
由自在ニ出來ルモノデハゴザリマセヌ、軍
馬ニ供用スルマデニハ、最短年限ニ於キマ
シテ六箇年ヲ費シ、或ハ七箇年、八箇年ヲ
費スニアラザレバ、軍馬ニ供用スルコトハ
出來ナイノデアリマス、而シテ此ノ不完全
ナル所ノ、能力ノ不足ナル所ノ馬ヲ、軍ノ
要望ニ副フ所ノ馬ニ作リ變ヘヨウト致シマ
スルト云フコトハ、實際上ニ於キマシテモ、
技術上ニ於キマシテモ、容易ナラザル事柄
デゴザリマスルガ、併シナガラ全國ノ生產當
業者ハ努メテ此ノ馬ヲ作ランコトニ精勵ヲ
致シテ居ル、併シナガラ如何ニ良イ馬ヲ作ラ
ウト致シマシテモ、之ニ伴フ所ノ牧野ト云
フモノガナケレバ相成ラヌノデアリマス
牧野ナクシテ飼育管理ニ容易ナル馬、或ヘ
四肢ノ筋腱ガ發達シテ關節ガ健全デアルト
云フヤウナ馬ヲ作リ上ゲルコトハ、到底
不可能ニ屬スルノデアリマス、然ルニ現在
我國ノ馬產地方ヲ見マスルト、唯僅ニ北海
道ニ於キマシテハ、俗ニ申ス帝國牧場ナル
モノガ未ダ存在致シテ居リマスルガ爲ニ、
多少放牧地、採草地トシテ自由ニ使ヒ得ル
モノガゴザリマスルカラ、生產費ガ安ク、
一人ニテモ多數ノ馬ヲ生產シツツアルノデ
ゴザリマス、然ルニ北海道ヨリモ多數ノ馬
ヲ生產致シテ居リマスル所ノ東北六縣、或
ハ九州方面ノ主要馬產地ニ於キマシテハ、
全ク此ノ放牧地、採草地ノ行詰リヲ生ジテ
居リマシテ、靑森縣ノ如キ優秀馬ヲ產出シ
テ居リマスル八戶邊リニ行ツテ見マスルト、
靑森縣ノ山ト云フ山ノ大部分ガ國有林デア
リ、而モ斯樣ニ豐富ナル國有林ノ中ニ於テ
馬ヲ自然ニ放牧スルコトハ出來マセヌ、自
由ニ採草ヲシテ飼料ヲ與ヘルコトハ出來マ
セヌ、所謂舍飼ヲ以テ致シテ居ルノデアリ
マス、舍飼ヲ致シマシタ馬ハ生產費ガ非常
ニ高クナリ、隨テ四肢ノ强健ヲ缺キ、關節ノ
健全ヲ失フコトハ固ヨリ免レ難イコトデア
リマス、低身廣軀ニシテ四肢强健ナル馬ハ、
此ノ放牧地ノ開放ヲ得ズシテハ到底不可能
ノコトニ屬スルノデゴザリマスルガ、只今
委員ニ付託セラレマシタル森林法ノ改正案
ヲ拜見致シマシテモ、同ジ馬ト山林トヲ掌
ラレル農林大臣ハ、此ノ馬ノ放牧ニ付キマ
シテハ、何等玆ニ御目醒メニナツテ居ラヌ
カノヤウニ存ズルノデアリマス、牧野ノ開
放ハ獨リ生產方面バカリデハゴザリマセ
又、育成、利用ノ方面ニ於キマシテモ多
年之ヲ要望シ、其ノ開放ヲ要求致シテ居ル
ノデアリマスルガ、農林省山林局ニ於キマ
シテハ未ダ其ノ擧ニ出デザルノミナラズ、
所謂林間混牧ト云フモノヲ要求致シマシテ
モ言ヲ左右ニ致シマシテ未ダ混牧サヘモ
許シテ居ラヌノデアリマス、混牧ト申スモ
ノハ林間ニ馬ヲ放スノデアリマス、林間ニ
馬ヲ放スト木ノ芽ヲ食フトカ、或ハ木ノ皮
ヲ食ツテ木ノ發育ヲ妨ゲラレルト云フヤウ
ナコトヲ申サレテ居リマスガ、北海道ノ
ツノ例ヲ見マスルト、馬ヲ混牧致スガ爲ニ、
却テ林業ヲシテ自然ニ盛ンナラシメテ居ル
實例ヲ見出スノデアリマス、北海道ハ御承
知ノ如ク何レノ山ニ行キマシテモ笹ト云プモノ
ガ密生ヲ致シテ居リマス、北海道ノ放牧ハ
此ノ笹ヲ馬ノ飼料トシテ、春夏秋冬、雪ヲ
掘ツテ馬ガ笹ヲ食ツテ生存ヲシテ居ルト云
フェル、笹ガ馬ニ對スル關係ヲ有ツテ居ル、
此ノ笹ハ春ニナツテ筍ガ出來マスルト、昨
年出來タ所ノ竹ハ皆葉ヲ落シテシマヒマス、
サウシテ新シキモノニ代ル、年々斯樣ニシ
テ代リマスルト、其ノ竹ノ葉ガ段々積重ナ
リマシテ一ツノ層ヲ成シ、木ノ實ガ落チマ
シテモ其ノ木ノ實ガ土ニ觸レヌノデアリマ
ス、兩ガ降リマシテモ兩ガ土ニ浸透シナイ
デ流レルノデアリマス、日光ハ土ニハ來ナ
イノデアリマス、デアリマスカラ、此處ニ
木ノ實ガ出來マシテモ少シモ實生ト云フモ
ノハ生ジナイ、所ガ此ノ林野ニ馬ヲ放チマ
スト、馬ガ每年々々其ノ笹ヲ食ツテ參リマ
ス、枯葉ガ積ツテ層ヲ成スト云フコトハ出
來マセヌカラ、木ノ實ハ實生ヲ生ジテ却テ
林相ヲ助ケテ居ルト云フ事實サヘアルニ拘
ラズ、農林省ニ此テハ此ノ混牧スラ許シテ
居ラヌト云フヤウナ實情ニ置カレテ居ルノ
デアリマス、農林大臣ハ此ノ牧野ノ開放、
此ノ放牧地、採草地ニ對シテ如何ナル英斷
ノ擧ニ出デラレントスルカ、此ノ點御伺ヲ
致シタイト存ジマス
次ニハ種馬ノ統制法ガ定メラレマシテ、
今日マデ官民相互ニ於テ六千頭ノ種牡馬ヲ
供給致シテ居ツタ、全國ノ當業者ハ種牡馬
六千頭ヲ早ク國有ニシテ欲シイト云フ多年
ノ願ヲ致シテ居リマシタガ、財政ノ都合ニ
依ツテ實現スルニ至ラズ、第二次馬政計畫
ニ於キマシテハ、昭和二十年度ニ於テ六千
頭ノ中三千頭ヲ國有トスルノ計畫ニナツテ居
ツタノデアリマス、然ルニ此度軍ノ要望ガ
農林省ノ容ルル所トナリマシテ、昭和二十
年度ニ達スル時ニ於キマシテハ六千頭ノ
種牡馬全部ヲ國有トスルノミナラズ、更に
千五百頭ヲ增加スルノ計畫ト相成ツテ居ル
ノデアリマス、斯樣ナ急激ナル計畫ニ依ツ
テ、果シテ適當ナル所ノ種牡馬ヲ得ルコト
ガ出來ルデアラウカ、是等モ私ノ甚ダ疑ヲ
免レルコトガ出來ナイ點デアルノデアリマ
ス、若シ良イ馬ヲ出サウト致シマスルナラ
バ生產地方ニ對スルモツト徹底的助成ヲ
必要トスルノデハナカラウカ、又馬產ノ變
革ヲ行フノニハ、生產地方ニ於ケル徹底シタ
ル所ノ助成ヲ必要トスルノデハナカラウカ
ト思ハレル、ナゼナラバ生產者ノ資力ハ甚
ダ乏シイノデアリマス、今日マデ良馬トシ
テ重用セラレテ居ツタ所ノ輕種系ノ馬ガ廢
止セラレ、中間種系ニ代ルト云フコトニナ
リマシタガ、輕種地方ニ於キマシテハ、輕
種生產ノ爲ニ或ハ「サラブレット」、或ハ「ア
ラブ」、、「アングロアラブ」、是等ノ馬ハ所謂
「ハタ」馬ト稱シ、種牝馬ヲ繫養致シテ、ソ
レニ依ツテ輕種生產ヲ致シテ居ル所ニ、今
Y
度ハ逆交配ヲスル、或ハ中間種ヲ配合スル
トカト云フコトニナリマシテハ、是ハ良イ
軍馬ヲ得ルコトハ中々容易デハナカラウト
思フ、併シナガラ生產當業者ノ資力ハ直チ
ニ此ノ種牡馬ヲ更新スル力ガナイノデアリ
さく、故ニ斯ウ云フ地方ニ對シテハ、國ノ
力ヲ以テ適當ナル種牝馬ニ更新ヲセシメテ、
適當ナル種牡馬ヲ配合致シマシテ、初メテ
理想ノ馬ヲ出スコトガ出來ルカモ知レヌノ
デアリマス、現在ノ制度ニ於テ唯斯樣ニ急
激ナル所ノ變革ヲ致シマシテモ、其ノ實績
ガ果シテ擧ルカドウカニ私ハ疑ヲ持タザル
ヲ得ナイノデアリマス、此ノ種牡馬ノ統制
實行ニ當リマシテ、果シテ其ノ實績ヲ得ル
カドウカト云フコトニ付キマシテ、農林大
臣ノ御所見ヲ伺ヒタイノデアリマス
次ニハ鍛鍊競技ニ關スルコトデアリマス、
此ノ軍馬資源鍛鍊法案ニハ軍馬候補馬トシ
テノ多數ノ馬ヲ鍛鍊スルノデアリマスガ、此
ノ鍛鍊法ノ實施ニ伴ヒマシテ、今日マデ全
國百十數箇所ニ行ハレテ居リマシタ所
ノ所謂地方競馬ト云フモノハ廢止セラ
レルコトニナルノデアリマス、北海道ノ
如キハ十四箇所ノ地方競馬場ヲ持ツテ居リ
マスルガ、此ノ法律ノ實施ニ當リマシテ
ハ三箇所ニ減リ、各府縣二箇所三箇所ノ競
馬場ガ一箇所ニ減ラサレネバナラヌ、斯樣
ニナルノデアリマス、此ノ鍛鍊競技ニ付キ
マシテハ、從來省令ヲ以テ行ハレテ居リマ
シタガ、此ノ開催主催者ハ其ノ弊害ニ堪ヘ
兼ネテ、此ノ法律化ヲ要望致シテ居リマス
ルコト多年、玆ニ漸ク鍛鍊法ニ附隨シテ鍛
鍊競技ナル名目ノ下ニ、地方競馬ハ換骨奪
胎ヲ致スコトニナツタノデアリマスガ、之
ヲ行フニ當リマシテ、軍用保護馬鍛鍊中央
會ナル中央機關ガ設立セラレ、此ノ鍛鍊競
技ニ關スル一切ノ事務ヲ行フコトニナルノ
デアリマス、由來馬ニ關スル團體ハ法律ニ
依ツテ出來マシタル日本競馬會、或ハ乘馬
協會、或ハ帝國馬匹協會ト云フヤウナ三ツ
ノ團體ガアルノデアリマスルガ、各〓其ノ
掌ル所ヲ異ニ致シテ居リマスルケレドモ、
從來地方競馬ニ關シテハ、總テ帝國馬匹協
會ニ於テ取扱ハレテ居リ、出走馬ノ登錄ヲ
農林省ノ委任ニ依ツテ扱ツテ居ルト云フヤ
ウナ風ニナツテ居ルノデアリマス、今日時
代ノ要求ニ依ツテ總テガ統制或ハ簡易化サ
レントシテ居ル時ニ當リマシテ、現在三團
體ガアリマシテスラモ、色々不便不利益ナル
コトヲ見出スノデアリマスルガ、更ニ中央
機關デアル此ノ中央會ナルモノガ出來マス
ルナラバ、一ツノ團體ヲ加ヘルコトニナル
ノデアリマス、併シナガラ帝國馬匹協會ノ
組織ガ之ヲ扱ハシムルコトガ出來ナイノデ
アルカドウカハ知リマセヌガ、立法技術ノ
上カラシテ、此ノ機關ヲ出サナケレバナラ
ヌコトニチツタノデハナイカト思フノデア
リマスガ、ソレニ付キマシテハ將來此ノ機
關ノ運用ニ當ツテ、相剋摩擦トハ申サヌデ
モ、不利不便ヲ防ギ、旣設ノ中央團體ト密
接ナル連繫ヲ保ツテ行クコトガ、效果的ノ
モノデアルト信ズルノデアリマスルガ、是
等ノ點ニ付キマシテ農林大臣ノ御所見ヲ伺
ヒタイト存ズルノデアリマス
次ニハ陸軍大臣ニ簡單ニ御伺ヲシタイ、
軍馬資源ノ維持涵養ニ付キマシテハ、軍トニ
於カレテモ非常ニ關心ヲ持タレマシテ、陸
軍ノ馬ニ對スル計上豫算ヲ見マシテモ、昨
年ニ比較シテ數倍ニ增加ヲ致シテ居ルノデ
アリマス、併シナガラ馬ノ値段ガ非常ニ高
クナツテ參リマスルカラ、其ノ豫算ノ增加
シマシタコトニ依ツテ、其ノ內容ガソレ程
充實シテ行クモノトハ存ゼラレナイノデア
リマス、私ハ此ノ鍛鍊法ニ依ツテ鍛鍊セラ
レマスル所ノ軍馬資源ハ、寧ロ陸軍省ノ直
轄トシテ行ハレタナラバ如何デアラウカ、
言葉ヲ換ヘテ申セバ、今日ノ軍馬制度ヲモ
ツト廣義ニ行ツテ戴キタイト思フノデアリ
マス、此ノ鍛鍊ヲ陸軍ガ行ヒ、其ノ豫算一
千万圓ニ近キモノヲ、農林省ヲシテ生產計
畫ノ爲ニ使ハシテ戴キマシタナラバ、非常
ナ效果ガアルモノデハナカラウカト思フ、
又現在ノ在〓軍馬制度ヲ、其ノ在營年限ヲ
短縮致シマシテ、多數ノ在〓軍馬ヲ民間ニ
委託スルヤウナ方法ヲ執ラルルノガ如何デ
アラウカト存ズルノデアリマス、次ニハ育
成馬牡馬ノ購買ノ頭數及ビ價格ヲ引上ゲル
必要ガアルト思フノデアリマス、育成馬ト
申シマシテモ、生產者ノ手カラ直接買上ゲ
ル所ノ二歲馬ヲ主トシテ指スノデアリマス
ガ、今日ノ育成馬ハ軍縮時代ニ縮小セラレ
マシタ其ノ儘ノ規模デ今日ニ及ンデ居ルノ
デアリマスルカラ、育成馬ハ如何ナル場合
ニ於キマシテモ、其ノ能力其ノ乘御使役ニ
於キマシテハ、軍ノ要望ニ適ツテ居ルノデ
アリマスルカラ、ドウシテモ此ノ育成馬
ト云フモノノ擴張ヲ必要トスルト思フノデ
アリマス、所謂今日ノ軍馬補充部ヲ非常ニ
擴張セラレマシテ、此ノ二歲幼駒ノ買上ゲ
ヲ增加シ、其ノ價格ヲ引上ゲテ下サイマス
ルナラバ、馬產奬勵上生產增進ノ上ニ非常
ナ效果ヲ生ミ出スコトガ出來ルト存ズルノ
デアリマスガ、此ノ點ニ付テ陸軍大臣ノ御
所見ヲ承リタイノデアリマス
甚ダ恐レ入リマスガモウ少シデアリマ
ス、文部大臣ニ簡單ニ御伺ヲ致シタイコト
ハ、文部省管轄ニアリマスル各府縣ノ農學校
或ハ靑年學校-農事〓育ヲ主トシテ〓育
セラレテ居リマスル所ノ農學校ニ今日馬事
〓育ノ施設ノナイコトハ甚ダ不可思議ニ堪
ヘナイ次第デアリマス(「ヒヤ〓〓」拍手)農
業デ馬モ牛モ〓ヘズシテ本當ノ此ノ日本農
村ノ經營ガ出來得ルデアリマセウカ、何處
ノ農學校ニ行ツテ見マシテモ、馬一匹置ク
所ガ無イノデアリマス、何處ノ靑年學校ヲ
見マシテモ、恐ラク馬ヲ置ク計畫ニナツテ
居ル所ハナイト思フノデアリマス、支那事
變ガ起リマシテ、特務兵其ノ他召集セラレ
マシテ馬ヲ扱ハナケレバナラヌ人々ガ、馬
ト云フモノヲ見タコトモナイ-トハ申シ
マセヌケレドモ、殆ド馬ト云フモノヲ知リ
マセヌ、隨テ直グ馬扱ヒヲ命ゼラレタリ、
馬ノ輸送ヲ致シマスル時、馬ト云フモノト
初メテ接スルノデアリマスカラ、モウ怖イ
一方デアル、或ル停車場ニ兵隊ガ線路ニ倒
レテ居ツタ、介抱シテ聽イテ見ルト、馬ガ
怖クテ馬ト一〓ニ列車ノ中ニ居ラレヌカラ
外ニ出テ戶ニ縋ツテ來タガ、或ル停車場ニ
列車ガ到著スルト同時ニ手ヲ放シテ倒レタ、
是ハ一例デアリマスルガ、是ガ爲ニ不慮ノ
傷ヲ受ケタリ、或ハ生命ヲ失ツタ者ナシト
モ限ラヌノデアリマス、是ハ畢竟スルニ普
段之ニ對スル所ノ〓育、馬ニ對スル所ノ知
識ノ涵養ガ乏シイ結果、玆ニ至ツテ居ルモ
ノト存ズルノデアリマス(拍手)斯ウ云フ
點カラ申シマシテモ、國防上、農村經營上、
今日ノ靑年ヲシテ都會タルト郡部タルトヲ
問ハズ、馬ニ對スル所ノ知識、馬事ニ對ス
ル所ノ〓育ハ最モ必要ナル緊急事ト思フ
ノデアリマスガ、文部大臣ノ之ニ對スル所
ノ御所見ヲ伺ヒタイト思フノデアリマス
(拍手)
〔國務大臣櫻內幸雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=55
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056・櫻内幸雄
○國務大臣(櫻內幸雄君) 大石君カラ馬政
計畫ノ改變ニ關スル所ノ御質疑ガアリマシ
タガ、御承知ノ如ク第二期馬政計畫ノ半バ
ニ於テ今囘ノ事變ガ起リマシタノデ、軍事
用ノ馬匹ノ充實ヲ圖ル爲メ、又產業上ニ於
テ馬匹ニ缺陷ヲ起サザランガ爲ニ、今囘ノ
改變ヲ致シテ、內地馬政計畫ヲ確立致シタ
ノデアリマス、其ノ使送ニ付テノ御意見モ
アリマシタガ、大體ニ於テ總額二千一百万
圓ノ中デ、軍用保護馬奬勵ニ九百八十万圓
程ヲ使ヒマシテ、種馬統制ニ七百五十万圓、
牧野改良ニ百三十八万圓程使ツテ居ルノデ
アリマス、主タルモノハ申スマデモナク軍
用保護馬ノ奬勵ト種牡馬ノ點ニアルノデア
リマス、國有林ヲ開放シテ放牧竝ニ採草地
トスルガ宜イデハナイカト云フ御意見デア
リマシタガ、此ノ點ニ付キマシテハ吾々モ
深ク考慮致シテ居ルノデアリマシテ、國有
林地ニ付テハ營林上大ナル支障ナキ限リハ
開放ヲ致シタイ考デ今考究致シテ居ル最中
デアリマス、又放牧、採草地ニ對シマシテ
ハ相當ノ費用ヲ投ジテ今日其ノ放牧採草地
擴充ヲ致シツツアルノデアリマス
ソレカラ種馬統制ニ關シマシテ御意見ガ
アリマシタガ、是ハ今囘ハ大體ニ於テ國有
ノ建前デアリマシテ、特別ノ場合ニ於テ民
間ニ許スコトトナツテ居ルノデアリマシテ、
全國的ニ遺漏ナキヤウニ致シタイ考ヘテ居
リマス
鍛鍊競技ニ付キマシテ御意見ガアツタノ
デアリマスガ、從來ノ日本競馬會、軍事保
護馬中央鍛鍊會、サウ云フモノガ澤山出來
ルコトハドウデアラウカト云フ風ナ御意見
ノヤウニ拜承致シタノデアリマスガ、今囘
ノ軍事保護馬中央鍛鍊會ハ、御承知ノ如ク
從來ノ公認競馬、卽チ日本競馬會ノ管理致
シテ居リマス競馬會ノ出場馬トハ全然異ツ
テ居ルノデアリマシテ、今囘ノ鍛錬競技ニ
出場致ス所ノ馬ハ全然軍用保護馬デアルノ
デアリマス、此ノ點ニ於テ性質ガ全然變ツテ
居リマス、殊ニ從來ノ地方競馬會ト云フモ
ノノ整理ヲモ、此ノ中央會ガ擔任致スコト
ニナツテ居ルノデアリマシテ、特殊ノ事情ガ
存在シテ居ルノデアリマス、併シナガラ日
本競馬會、其ノ他ノ會派ト密接ナル連絡ヲ
取リマシテ、馬事思想ノ發達竝ニ馬匹增殖
ニ對シマシテハ出來ルダケ其ノ目的ヲ達シ
タイト考ヘルノデアリマス
最後ニ、是ハ文部大臣ヘノ御質疑ノヤウ
デアリマシタガ、文部大臣ハ見エマセヌカ
ラ、何レ適當ノ機會ニ於テ御返事ガアルカ
モ知レマセヌガ、地方ノ靑年ニ馬事〓育ヲ
致スト云フコトニ付キマシテハ御說ノ通
リ最モ必要ヲ感ジマシタノデ、今囘農林省
ニ於キマシテハ之ニ對スル所ノ經費ヲ要求
致シマシテ、農學校其ノ他ノ學校ニ於テ此
ノ馬事〓練ヲ致シタイト考ヘテ居リマス
(拍手)
〔國務大臣板垣征四郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=56
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057・板垣征四郎
○國務大臣(板垣征四郞君) 大石君ノ私ニ
對スル第一ノ御質問ハ、陸軍ノ馬ニ關スル豫
算ハ尙ホ一層之ヲ增加シテ、軍用保護馬鍛鍊
ノ如キモ陸軍ノ主管トシテハ如何カ、斯ウ
云フ御意見ノヤウニ承リマシタガ、陸軍ノ
馬ニ關スル豫算ニ付キマシテハ、他ノ兵器
ト同樣大イニ重視シテ居ル所デゴザイマス
ガ、馬政ニ關スル豫算ハ軍事費豫算ノ範圍
外デアリマシテ、農林當局ノ豫算トシテ計
上セラルベキモノト考へテ居リマス、但シ
本豫算ニ付キマシテハ、軍事費トモ看做シ
マシテ、其ノ成立ニ協力シテ居ル次第デア
リマス
尙ホ軍用候補馬ノ鍛鍊ニ付キマシテハ固
ヨリ陸軍トシテ大イニ關心ヲ有スル次第デ
アリマスガ、鍛鍊ノ馬數及ビ其ノ分布其ノ
他實施ノ大綱ニ關シマシテ、必要ニ應ジテ
要望ヲ開示シ、農林當局ニ實施ヲ一任致シ
マシテ差支ナイモノト考ヘテ居リマス
第二ノ御質疑ハ在〓軍馬ノ制度ヲ設クル
考ハナイカト云フヤウナ御質問デアリマシ
タガ、在〓軍馬制度ヲ設ケントスル御趣旨
ハ有事ノ際ニ於ケル所ノ徵發ノ對象トナル
ベキ軍用適格馬ヲ、成ベク多ク民間ニ保有
セシメントスルニ外ナラヌト考ヘルノデア
リマスガ、今議會ニ提出セラレマシタル所
ノ軍馬資源保護法案ハ、國防上特ニ必要ト
スル所ノ馬ノ資質ノ向上ヲ期シ、軍馬資源
ノ充實ヲ圖リ、有事ノ際ニ於ケル所ノ徵發
ニ遺憾ナカラシムル目的ヲ持ツテ居ルノデ
アリマスルガ故ニ、在〓軍馬ノ制度ヲ設ケ
ントスル趣旨ハ之ニ依ツテ達成セラレルモ
ノト考フルノデアリマス、隨テ本法案ガ成
立致シマスルニ於テハ、特ニ在〓軍馬制度
ヲ設クルノ必要ノナイモノト考ヘテ居リマ
ス、尙ホ陸軍ニ於キマシテ飼養シタル過剩
馬ヲ以テスル所ノ現行ノ所謂貸付豫備馬制
度ガ、如何ニ之ヲ擴張致シマシテモ、戰時
資源取得ノ見地カラ申シマスルナラバ、之
ニ大ナル所ノ期待ヲ掛ケ得ザルノミナラズ、
强ヒテ之ヲ擴張致シマスルナラバ、每年必
要以上ノ新馬ヲ軍隊ニ於テ調〓ヲ要スル結
果トナリマシテ、戰鬪ヲ以テ基準トスル所
ノ軍隊ニ多大ノ煩累ヲ掛ケル結果トナルノ
デアリマス
次ニハ軍馬ノ購買價格ノ件、又二歲幼駒
ノ購買頭數ヲ增加シテハドウカ、斯ウ云フ
御意見デアリマシタガ、支那事變勃發以來
馬ノ市價ハ著シク騰貴致シマシタノニ鑑ミ
マシテ、右ノ市價等ヲモ考慮シテ逐次購買
價格ヲ增加致シマシタ次第デアリマス、而
シテ尙ホ將來軍馬ノ購買價格ヲ適正ナラシ
ムル點ニ付キマシテハ、御趣旨ニ副フ如ク
考慮致ス考デアリマス、又二歲ノ幼駒ノ購
買數ノ增加ノ件ニ付キマシテハ、從來生產
保護ノ見地カラ努力シ來ツタ所デアリマス
ルガ、右ノ頭數ノ增加ハ軍ノ編制トモ關係
ヲ有スル事項デゴザイマシテ、〓究ノ上ニ
善處致シタイ考デアリマス
〔政府委員小柳牧衞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=57
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058・小柳牧衞
○政府委員(小柳牧衞君) 只今ノ御質問中
文部省ニ關スル部分ニ付キマシテハ、部
分ハ國務大臣トシテ御答ガアツタヤウニ存
ルガ、尙ホ一言私ヨリモ附加ヘテ置
キタイト存ジマス、御質問ハ農學校及ビ靑
年學校ニモツト馬ニ關スル知識ヲ修得セシ
メ、且ツ其ノ修得ニ便ズル施設ヲ爲スヤウ
ニト云フコトニ付テノ御質問ト拜承致シマ
シタ、洵ニ御尤ニ存ズルノデアリマス、當
局ニ於キマシテモ御同樣ノ意味合ヲ以チマ
シテ、旣ニ農學校ノ畜產學科ニ於キマシテ、
又靑年學校ノ職業科ニ於キマシテ、ソレ
ゾレ馬ニ關スル知識ノ修得竝ニ馬事思想ノ
涵養ニ努メテ參ツタノデアリマス、又所ニ
依リマシテハ特ニ馬ヲ飼育致シマシテ、其
ノ〓習ニ便ジテ居ル所モアリマスルガ、又
當局ト致シマシテモ、是等ノ特殊施設ノ補
助等ニ付キマシテ相當考慮ヲ拂ツテ居ルノ
デアリマス、併シナガラ只今モ御話ノアリ
マシタ通リ、當局ハ之ヲ以テ滿足スル者デ
ハアリマセヌ、殊ニ時局ハ益〓產馬ニ付キマ
シテ國防上竝ニ產業上要望スル所ガ多イノ
デアリマスカラ、是等ノ點ヲ考慮致シマシ
テ、益〓此ノ趣旨ヲ貫徹スルニ努メマシテ
御期待ニ副ヒタイト存ズル次第デアリマス、
左樣御諒承ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=58
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059・小山松壽
○議長(小山松壽君) 森田重次郞君
〔森田重次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=59
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060・森田重次郎
○森田重次郞君 只今上程サレテ居リマス
ル二ツノ法案ニ關聯致シマシテ、重要ナリ
ト信ズル二三ノ點ヲ質問シ當局ノ御答辯ヲ
煩ハシタイト思ヒマス
先ヅ第一番ニ御伺致シタイコトハ、當局ノ
方針ガ目マグルシイバカリニ變更スルコト
ニ對スル民間側ノ考へ方デアリマス、第
次馬政計畫一期二期更ニ第二次馬政計畫ナ
ルモノガ二年前ニ成立ツテ是ガ實施ノ運ビ
ニ就イタバカリノ際ニ
〔議長退席、副議長著席〕
更ニ今囘ノ事變ニ鑑ミタト云フコトヲ理
由ト致シマシテ、內地馬政計畫ナルモノガ
樹立セラレタサウデアリマス、考ヘテ見マ
スルニ、馬ハ物デハアリマセヌ、命ノアル
モノデス、隨ヒマシテ金ガ多イカラト云ウ
テ、直チニ計畫ヲ變へマシテモ、容易ニ之
ニ順應スルコトノ出來ナイノハ當然ノコト
ナノデアリマス、或ル地方ニ於テ輕イ馬ヲ
拵ヘ上ゲマスルマデノ営專者ノ苦心ト云フ
モノハ、容易ナラヌモノガアツタノデアリ
マス、數百年來ノ傳統ト風土ト鬪ヒマシテ、
ヤウ〓〓ニシテ把握致シマシタル技術ガ、
當局ノ一片ノ改造ヲ以テ無殘ニモ打破セラ
レマシテ、サウシテ新ナル方針ニ依ツテ將
來又粒々辛苦ノ惱ミヲ續ケテ行カナケレバ
ナラナイト云フコトハ、民間側ノ犠牲蓋シ
大ナルモノガアルト信ズルノデアリマス拍
手)然ルニ吾々ノ所見ヲ以テ致シマスレバ
陸軍側ノ要求ニ依ツテ今囘ノ馬政計畫ナル
モノガ樹立セラレタモノダサウデアリマス
ルガ、日露戰爭ノ經驗ニ依リマシテモ、或
ハ滿洲事變ノ經驗ニ依リマシテモ、亦類推
シ得ル一ツノ見透シサヘ持ツテ居リマスル
ナラバ、我國ニ於ケル戰爭ハ支那大陸若ク
ハ滿蒙或ハ「シベリヤ」デ起ルデアラウト云
フコトハ、何人モ數年前ヨリ豫想致シテ居
ツタ所ナノデアリマス、(拍手)然ルガ故ニ
若シ當局ニシテ眞ニ馬ノ生產者ヲ愛シ、眞
ノ國防ヲ充實シヨウト致シマスルナラバ、
此ノ見透シノ下ニ容易ニ變更スベカラザル
永遠ノ大計畫ヲ立テルノガ、私ハ當局ノ責
任ダト考ヘル者デアリマス(拍手)今囘日
支事變ノ試行錯誤ニ依ツテ新タナル方向ヲ
決定スベキ必要ニ迫ラレテ、今囘ノ提案ガ
アツタサウデアリマスルガ、已ムヲ得ナイ
コトハ已ムヲ得ナイデアリマセウ、アリマ
セウガ、之ニ依ツテ被ル生產者ノ損害、將
來如何ナル方面ニ向ヒ、如何ナル方法ニ依
ツテ此ノ犠牲ヲ御救ヒナサラウトスルノデ
アルカ、サウシテ又此ノ計畫ニ依ツテ、將
來ノ北方ノ或ル方面、或ハ南方ノ或ル方面ニ
於テ或ル事件ガ突發致シマシテ、ソレニ依
ル經驗ニ依ツテ再ビ馬政計畫ヲ變更スルガ
如キコトガアツテハ國民ハ到底之ヲ甘受ス
ルコトガ出來ナイノデアリマス、ドウカ其
ノ意味ニ於テ、今囘樹立セラレタル馬政計
畫ノ內容ニハ、サウ云フヤウナ永遠ノ見透
ノ下ニ計畫ヲ立テラレタ、容易ニ變更ス
ベカラザルモノデアルヤ否ヤ、此ノ席ニ於
テ御斷言アランコトヲ御願致ス者デアリマ
ス
第二ニ軍馬資源保護法案ニ對シテ質問致
シタイト思ヒマス、地方競馬法ガ廢止セラ
レマシテ軍馬資源保護法案ガ出サレタ、目
的ハ軍馬ノ確保デアリマス、之ニ依ル統制
デアリマス、ソレハ宜イノデアリマス、ダ
ガ一面吾々考ヘナケレバナラナイノハ、之ニ
依ツテ馬ノ値段ガ高クナルカドウカノ一點
デアリマス、若シ目的ヲ强調スルコトニ依
ツテ馬ノ値段ガ高クナラナイト云フコトニ
ナリマスト、生產力擴充ノ原則ニ矛盾ヲ生
ズルコトニナルト私ハ考ヘマス(拍手)然ル
ニ今囘御提案ニナリマシタ軍馬資源保護法
案ナルモノヲ見マスト、先ヅ色々ノ方面カ
ラ拘束ヲ加ヘテ居ルノデアリマスガ、其ノ
最モ顯著ナルモノハ競馬期日ガ短クナツ
タト云フ點、更ニ一縣一箇所ニ限ラレタト
云フ點、更ニ或ル範圍內ニ於キマシテ出走
管區ナルモノヲ定メマシテ、其管區以外ニ
ハ馬ヲ出スコトノ出來ナイト云フ制限ガ加
ツテ居ルコトナノデアリマス、サウ云フ制限ノ下
ニ行ハレテモ、尙且ツ競馬價値アリトシ、
ソコニ一種ノ興味ヲ以テ此ノ軍馬資源保護
法案ナルモノガ運用セラレマスルナラバ、生產
者モ喜ビ、國家モ亦其ノ目的ヲ實現スルコト
ガ出來ルデアリマセウガ、若シ此ノ色々ノ
制限ニ依リマシテ競馬ニ對スル興味ト云フ
モノガナクナリマシテ、ソレニ依ツテ馬ノ
値段ト云フモノガ低下致スト云フコトニナ
リマスレバ、如何ナル法律ヲ以テシテモ產
馬ノ事業ヲ盛ンニスルト云フコトハ、私ハ
斷ジテ出來ナイコトニナルノダト思フノデ
アリマス(拍手)其ノ意味合ニ於キマシテ、
政府ハ軍馬資源保護法案ノ內容ニ定メテ居
リマスル色々ノ制限ヲ、モウ少シ緩和スル
御考ハナイカ、此ノ點ヲ御伺シタイノデア
リマス
第三ニ文部當局ニ御伺致シタイノデアリ
マスルガ、成ベク簡潔ニ申上ゲマスガ、馬
ノオ醫者サンガ足ラナクナツテ居ルノデア
リマス、サウシテ馬ノ生產率ガ漸次低下シ
ツツアルノデアリマス、是ハ容易ナラナイ
問題ナノデアリマシテ、ドウシテモ、獸醫
ヲ養成スルコトヲ相當重要視スルコトニナ
ラナケレバ、此ノ法案ヲ定メマシタ目的ヲ
達成スルコトガ出來ナイト云フノガ私ノ考
ヘ方ナノデアリマス、然ルニ文部省ハ地方
農學校ニ併設致シテ居リマシタル獸醫科ナ
ルモノヲ廢止致シマシテ、ソレニ代フルニ
農林學校等ニ相當數ノ生徒ヲ收容シヨウト
云フ御計畫ヲオ立テニナツテオ居デニナル
ヤウデアリマス、成程程度ノ高イオ醫者サ
ンヲ造ルト云フノデアリマスカラ、私等ハ
無論ソレニ對シテハ贊成スル者デアリマス
ルガ、一面程度ガ高クナリマシテモ、オ醫
者サンノ數ガ非常ニ少クナリマシテ、地方
ノ病氣ノ急ニ應ズルコトガ出來ナイト云フ
ヤウナ現象ガ惹起致シマシタナラバ、是一
地方產馬界ニ取ツテハ洵ニ由々シイ一大事
デアルト考ヘルノデアリマス、文部省ハ此
ノ農學校ニ併設致シマシタ獸醫科ヲ再ビ復
活スル御意思ガナイカ、更ニ又他ノ方法ト
致シマシテ、其ノ農學校ニ二箇年位ノ專攻
科ヲ設ケマシテ、此ノ急ニ應ズル御意思ガ
ナイカ、更ニモウ一ツ文部當局ニ御伺致シ
タイコトハ、先程申上ゲマシタ農林學校等
ニ比較的高等ナル獸醫ヲ養成シヨウトシテ
ナサイマシタ此ノ施設ガ、餘リニ急ナル求
メデアリマシタ爲ニ、農林學校ナル本來ノ
目的ノ上カラ考ヘマシテ、獸醫科ナド餘リ
重大視シナイヤウナ處ニ獸醫科ノ生徒ヲ募
集スルト云フヤウナ形ニナル傾向ガアリ
且ツ一箇所ニ相當ナ人數ヲ集中致シマシタ
爲ニ、其ノ地方ニ於テハ實驗材料トシテノ
動物ヲ得ルコトガ極メテ困難ダト云フ一事
ガアルコトハ、見逃スコトノ出來ナイ一ツ
ノ事實ナノデアリマス、是マデ工業學校ニ
致シマシテモ、或ハ其ノ他ノ學校ニ致シマ
シテモ、都會中心デアリマシテ、總テノ〓
育機關ハ都會ヘ都會ヘト集ツタノデアリマ
スルガ、ソレモ單ナル抽象的ナル〓念ノ把
握ヲ求メルモノデアリマシタナラバ格別
デアリマスルガ、此ノ獸醫科ノ如キハ、實
驗ノ材料トシテノ動物ヲ得ルコト能ハザル
ト云フコトハ、其ノ學校ノ最モ大切ナル目
的ヲ達スルコトガ出來ナイト云フコトニナ
ルノデアリマシテ、私等ハ斯樣ナ學校ヲ都
會ニ集中セシムルコトニハ、ドウシテモ贊成
ヲ表スルコトガ出來ナイノデアリマス、然
ルガ故ニ、文部省ハ此ノ日滿支全般ヲ通ズ
ル產馬擴充計畫、之ヲ充實セシムル一ツノ
永世的ノ施設ト致シマシテ、最モ實驗材料
ノ多イ地方ニ單科大學ヲ設クル御意思ナキ
ヤ否ヤ、此ノ點ヲ御伺致シタイノデアリマ
ス
モウ一ツ御伺シタイコトハ、飼料〓究所
ニ關係シタ事柄デアリマス、御存ジノ通リ、
今マデノ飼養方法ハ自然放置ノ飼養方法
ナノデアリマス、然ルニ自然ノ採草地ハ年
年生草ガ矮小トナリマシテ、榮養分ノ點ニ
於テモ昔日ノ面影ガアリマセヌ、故ニ吾々
ノ最モ關心シナケレバナラナイ一ツノ事柄
ハ、如何ニシテ此ノ自然ノソレカラ來ル缺
陷ヲ科學的合理的ナル見地カラ〓究致シマ
シテ、馬ノ飼料ヲ補充シ、以テ所期ノ目的
ヲ達成セシムルコトガ出來ルカドウカト云
フ點ガ、最モ重要ナ點ダト私ハ考ヘルノデ
アリマス、文部省ニ於テハ多少ノ御施設ガ
アラルルヤウデアリマスルガ、斯ノ如ク馬
ノ生產擴充ヲ目的トスル大計畫ト大キイ豫
算ノ下ニ案ガ出マシタル場合ニハ、之ニ應
ジマシタル科學的施設モ亦之ニ副フヤウナ
形ニナサラナケレバナラナイノデハナイカ、
隨テ文部省トシテハ、舊來ノ小規模ノモノ
ヲ更ニ大規模ノモノト致シマシテ、此ノ民
間ノ需要ニ應ズル御意思アリヤ否ヤ、此ノ
點ヲ御伺致シタイノデアリマス
更ニ第五ノ點デアリマスルガ、是ハ先程
大石先輩ノ御演說ノ中ニモ出テ居リマシタ
カラ、簡單ニ申上ゲマスガ、要スルニ馬ノ
値段ヲ高クスルノデナケレバ、生產家ハ迚
モ立ツテ行ケナイ、其ノ價格ノ中心ヲ成ス
モノハ大體ニ於テ軍馬デアル、故ニ軍部ハ
是ダケノ大キイ統制ト、軍部ノ方カラ向ケ
ラレタル要求ニ依ツテ斯ノ如キ案ガ提案セ
ラレタノデアリマスカラ、ソレニ應フル意
味ニ於テモ、民間側カラ買上ゲル馬ノ値段
ヲモツト高イモノニシテ戴キタイト思フノ
デアリマス(拍手)此ノ點ニ付テ當局ハ其ノ
御覺悟ガオアリナサルヤ否ヤ、此ノ點ヲ御
伺致シタイト思ヒマス
更ニモウ一ツ放牧地ノ關係デ御伺致シタ
イコトガアリマス、是モ先程大石先輩カラ
ノ御話ガアリマシタカラ、簡單ニ要點ダケ
ヲ申上ゲマス、我ガ東北地方ニ限ツタコト
デハナイノデアリマスルガ、先ヅ東北地方
ノコトヲ知ツテ居リマスルカラ、其ノ點ヲ
申上ゲマスルガ、國有林野ト民有林野ノ割
合ハ、日本全國ノ統計ニ依リマスト云フト、
國有林野二割五分ニ對シテ民有林野七割五
分ニナツテ居リマス、所ガ東北地方へ參リ
マスト、五割、五割トナリ、靑森縣、岩手
縣福島縣ノ方へ參リマスルト、國有林野
ガ驚ク勿レ六割五分デ、民有林野ガ僅ニ三
割五分ナノデアリマス、然ルニ從來ノ放牧
地ハ年々開墾其ノ他ニ依ツテ面積ガ狹小ト
ナツテ參リマシタ、ト同時ニ生エテ居ル草
ノ伸ビガ段々低クナ、ツテ參リマシタ、此ノ
點ヲ補ヒマスルニハ、先程申上ゲマシタ飼
料ノ科學的〓究等モ必要デアリマスルガ、
一面如何ニシテ新タナル放牧地ヲ獲得シ得
ルヤ否ヤト云フコトガ、地方馬產家ニ取ツ
テハ最モ重要ナ問題ナノデアリマス(拍手)
然ルニ地方官憲ノ地方民ノ要望ニ應フル態
度ハ甚ダ官僚的デアリマシテ、幾ラ御願致
シテモ、ドウシテモ言フコトヲ肯イテ吳レ
ナイノデス、私ノ縣ノ或ル郡ノ如キハ、
郡ノ九割マデガ官有地ナノデス、家ノ軒下
マデ官有地ナノデス、ソレヲ何トカ拂下ゲ
テ吳レト言ウテモ、中々拂下ゲテ吳レルヤ
ウナ態度ヲ見セマセヌ、農林當局ニ對シテ
御願申上ゲヨウトシテモ、中々書類ヲ上ノ
方へ通シテ吳レナイト云フヤウナ狀況ニナ
ツテ居ルノデアリマス、只今農林大臣ノ御
答辯ニ依リマスルト、適當ナル措置ヲ執リマ
スト云フヤウナコトデアリマスルガ、中々其
ノ適當ナル措置ト云フモノハ容易ニ實現サレ
ナイノデアリマス(拍手)之ヲ私ハ農林大臣
ニ御實行ヲ御願致シタイ、吾々ハ唯事ヲ好
ンデ演壇カラ物ヲ言フノデハナイノデアリ
やく、一體此ノ馬ノ生產ト云フモノハ、世
ノ中ガ進ムニ從ヒマシテ生產費ガ非常ニ掛
ツテ參リマシテ、其ノ割合ニ値段ガ上ラヌ
ノデス、デアリマスルカラ馬產家ト云フモ
ノハ非常ニ苦ンデ居ルト云フノガ實際ノ實
情ナノデアリマス、苦ンデ居ルナラ他へ轉
業スレバ宜イデハナイカト云フ議論モ一面
立ツデアリマセウガ、中々轉業ハ出來マセ
ヌ-否シマセヌ、何故シナイノデアルカ
ト云フト、ソレハ拵ヘルモノガ物デナクテ
動物ダカラデス、命ノアル馬ダカラデス、
馬ニ對スル愛ガアルカラデス(拍手)此ノ愛
ノ深サニ依ツテ日本ノ馬產計畫ト云フモノ
ハ實現サレテ居ツタト云フ、此ノ一點ヲ當
局ニ私ハハツキリ分ツテ戴キタイト思フノ
デアリマス(拍手)私ノ縣ノ或者ガ自分デ拵
ヘタ優等馬ヲ、關西ノ或ル地方ノ有力家ニ
賣付ケタガ、其ノ馬ニ會ヒタクテ會ヒタク
テ叶ハヌノデ、夫婦二人デ遙々ト關西マデ
行ツテ其ノ馬ニ面會シテ、何處モ見物セズ
ニ家ヘ歸ツテ居リマス(拍手)此ノ愛、此ノ
愛アレバコソ東北地方カラ優秀ナル馬ガ出
テ來ルノデアリマス(拍手)今囘ノ馬政計畫
ナルモノハ、國家ノ必要ニ應ジテ爲サレタ
一ツノ統制デアリマスガ故ニ、我ガ地方ノ
馬產家ハ、否、日本全體ノ馬產家ハ、必ズ
ヤ之ニ對シテ贊意ヲ表シ、喜ンデ之ヲ實行
スルデアラウト私ハ考ヘル者デアリマスガ、
一面斯ノ如キ犧牲ハ國民ノ唯一方的ナ犠牲
ニ依ツテ爲サレテハナリマセヌ、政府モ亦
之ニ對シテ一ツノ責任ヲ負ハナケレバナラ
テイ(拍手)然ルガ故ニ極メテ簡單ナル我ガ
地方ニ有リ餘ル放牧適地ノ如キハ、農林大
臣ノ手ニ依ツテ速ニ拂下ゲ若クハ貸下ゲラ
レンコトヲ御願致シテ已マナイノデアリマ
ス(拍手)ドウカ是等ニ對シテ農林大臣ノ御
覺悟ノ程ヲ御言明アランコトヲ御願申上ゲ
ル次第デアリマス(拍手)
〔國務大臣櫻內幸雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=60
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061・櫻内幸雄
○國務大臣(櫻內幸雄君) 森田君ノ熱心ナ
ル愛馬ノ御觀念ニ付キマシテハ、謹ンデ傾
聽致シマシタ、當局ノ馬政計畫ガ屢〓變ルガ、
斯ウ云フコトデハ產馬地ニ對シテ相濟マヌ
デハナイカト云フ風ナ第一ノ御意見ト拜承
シマシタ馬政計畫ハ御承知ノ通リ第二次
馬政計畫ノマダ實行ノ濟マナイ間ニ、此ノ
度ノ馬政計畫ト云フモノヲ定メタノデアリ
マスガ、是ハ全ク支那事變ノ結果トシテ、
將來ノ國際關係ヲモ見透シテ、サウシテ
此ノ計畫ヲ立テナケレバナラナクナツタノ
デアリマシテ、現在ノ軍用馬ノ問題ニ付キ
マツテハ、陸軍當局カラノ要求ニ依ツタノ
デアリマシテ、或ハ此ノ點ニ付キマシテハ
陸軍大臣カラ御說明ガアルカモ知レマセヌ、
併シナガラ農林省ト致シマシテハ、單ニ軍
用馬ノ缺陷ヲ補フバカリデナク、我ガ產業
上馬ノ增殖ヲ圖ラナケレバナラナイト云フ
見地カラ此ノ案ニ同意致シタノデアリマス、
今後ノ計畫ニ付キマシテハ、出來得ル限リ
多クノ馬匹ガ欲シイト思ヒマス、併シナガ
ラ財政ノ關係モアリマスノデ、此ノ程度ニ
於テ此ノ度豫算ヲ要求致シタノデアリマス、
將來ノ見透シニ付キマシテハ今私カラ此
ノ際申上ゲルコトハ差控ヘマスガ、或ハ陸
軍大臣カラ御答辯ガアルカモ知レマセヌ
第二ニ馬ノ値段ノ問題デゴザイマシタ
ガ、此ノ問題ニ付キマシテハ、陸軍、農林
兩省ノ關係者ガ取引改善協議會ヲ設ケマシ
テ、其ノ價格ノ調整ヲ圖ツテ、餘リ高クナ
〃、又安クナク、適當ナ所ニ定メタイト考
ヘテ居ルノデアリマス
又競馬場ノ數ヲ減ラシ、或ハ競馬開催日
ヲ減ラシテ、殊ニ其ノ出場馬ヲ一定ノ地域
ニ限ツテ、果シテ是デ適當デアルカ否カト
云フ御意見ノヤウデアリマシタガ、御心配
ノ點ハ御尤ト考ヘマスケレドモ、此ノ度ノ
計畫ハ從來トハ異ナリマシテ、全然軍用保
護馬ヲ主眼ト致シテ計畫致シマシタノデ、
自ラ從來ノ競馬會トハ性質ノ異ツタ所ガア
リマス、從來ノ例カラ申シマスト、全體ノ出場
馬數ノ約三割餘ト云フモノガ、他ノ競馬會、
卽テ他ノ縣ニ出場致シテ居ルヤウデアリマ
ス、此ノ度ハ之ヲ止メテ居リマス、此ノ點
ハ少シク不便ニナルヤウデアリマスケレド
モ、又一面從來トハ優等馬ノ馬票ナドノ金
額モ變リマシタシ、殊ニ公認ヲ致シテ總テノ
設備ヲ改善致シテ奬勵ヲ致スノデアリマス
カラ、是ハ補充シ得ルト考ヘルノミナラズ、又
風〓上ニモ鑑ミル所ガアツタノデアリマス、
ドウカ是ハ御諒承ヲ願ヒタイト思ヒマス
ソレカラ飼料〓究ノ問題ニ付テ御意見ガ
アリマシタ、是ハ洵ニ御尤ナ御意見デアリ
マシテ、政府ニ於テモ綜合的〓究機關ヲ設
ケタイト思ヒマシテ、其ノ準備ヲ致シテ居
リマシテ、今囘モ小額ナガラ豫算ヲ要求シ
テ居ルヤウナ譯デアリマス、牧野ノ問題ニ
對シテ熱心ナル御意見ガアリマシタガ、先
刻モ御答辯申上ゲマシタ通リ、牧野採草地
ニ充當スル爲ニハ、營林ニ差支ナイ限リニ
於テ出來ルダケ開放ノ手續ヲ執リタイト斯
樣ニ今日考ヘテ居ル次第デアリマス、外
此ノ點ニ付キマシテハ牧野整備審議會等ガ
ゴザイマスノデ、篤ト協議致シマシテ御趣
旨ニ副ヒタイト考ヘマス(拍手)
〔國務大臣板垣征四郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=61
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062・板垣征四郎
○國務大臣(板垣征四郞君) 今囘ノ新馬政
計畫ノ點デアリマスガ、陸軍ト致シマシテ
此ノ計畫ハ今囘ノ事變ノ貴重ナル體驗ヲ骨
子ト致シタモノデアリマス、又將來ニ對シ
マシテハヤハリ國防上ノ必要ニ基キマシテ
十分ノ見透シモ付ケテアル次第デアリマシ
テ、固ヨリ之ヲ遽ニ變更スルト云フコトハ
考ヘテ居リマセヌ、價格ノ點ニ付キマシテ
ハ先程モ御答ヲ致シマシタガ、市價ノ騰
貴ヲ參酌致シマシテ、其ノ適正ヲ期シツツ
アル次第デアリマスガ、尙ホ農林當局トモ
協議ヲ致シマシテ、十分考慮ヲ拂ヒタイト
思ツテ居ル次第デアリマスス(拍手)
〔政府委員小柳牧衞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=62
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063・小柳牧衞
○政府委員(小柳牧衞君) 只今ノ御質問中
文部當局ニ關スル部分ヲ御答致シタイト思
ヒマス、其ノ第一點ハ獸醫師ノ養成ニ關ス
ル點ト拜承致シマシタ、御承知ノ通リ先年
獸醫師法ガ改正セラレマシテ、無試驗檢定ヲ
受ケルニハ從來中等程度ノ學校卒業生ヲ以
テ足レリト致シタノデアリマスガ、改正ノ
結果專門學校卒業生タルコトヲ要スルヤウ
ニ相成ツタノデアリマス、而シテ產馬ノ振
興上獸醫師ヲ多數要スルコトハ洵ニ御尤
デアリマスノデ、當局ト致シマシテモ是等
ノ要求ニ應ズル爲ニ十三年度ニ於キマシテ
ハ旣ニ盛岡、東京及ビ宮崎ノ高等農林學校
ニ獸醫師ノ爲ニ生徒ノ增募ヲヤツタノデア
リマス、更ニ十四年度ニ於キマシテハ鳥
取及ビ鹿兒島ノ高等農林學校ニ於キマシテ、
此ノ種ノ學科ヲ新設致シマシテ、獸醫師タル者
ヲ養成スルヤウニ努メテ居ル次第デアリマ
ス、而シテ只今御話ノ通リ中等程度ノ學校
ニ於キマシテ、獸醫師科ヲ漸次廢止セラレ
マシタコトハ色々ノ理由モアリマセウケレ
ドモ、一面ニ於キマシテハ、獸醫師タルノ資
格ヲ得ルコトガ困難ニ相成ツタ點モ多々ア
ルダラウト思フノデアリマス、而シテ只今
御質問ノヤウニ、此ノ際是等中等程度ノ學校
ニ二箇年位ノ專攻科ヲ設ケテ、獸醫師ノ資
格ヲ與ヘテハドウカト云フ御質問ニ對シマ
シテハ、御尤ノ理由モ存スルノデアリマス
ガ、是ハ農林當局ト篤ト協議ヲ遂ゲテ善處
致シタイト思フノデアリマス
第二ノ產馬地方、特ニ我國ノ產馬界ニ於
テ歷史ト優良ナル產馬地トシテ知ラレテ居
ル所ノ東北地方ニ畜產ヲ主トスル所ノ大學
ヲ設クル意思ナキヤ否ヤト云フ御質問デゴ
ザイマシタガ、洵ニ御尤ノコトト存ズルノデ
アリマス、先年東北帝國大學ニ於キマシテ、
畜產ヲ主トスル所ノ農學部ヲ新設セントス
ル希望モアツタヤウニ聞イテ居リマス、又
靑森地方ニ於キマシテ畜產ヲ主トスル單科
大學ヲ要望セラレテ居ルト云フコトモ聞イ
テ居リマス、是等ハ何レモ御尤ナル御希望
ト存ズルノデアリマスガ、併シ大學ヲ新設
スルニ付キマシテハ、色々ノ角度ヨリ之ヲ
考究シナケレバナラヌト思ヒマス、殊ニ財
政ニ付キマシテハ十分ノ考究モ要スルノデ
アリマシテ、此ノ點ハ篤ト考究致シマシテ
善處致シタイト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=63
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064・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 小串〓一君
〔小串〓一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=64
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065・小串清一
○小串〓一君 先刻來質疑續行中デアリマ
ス、此ノ二ツノ法案ハ我國ニ於キマスル
畫期的ノ法案デアリマシテ、·多年問題トナ
ツテ居ツタモノヲ玆ト解決スルニ至ツタコ
トハ甚ダ慶賀ニ存ズル次第デアリマス、
殊ニ軍馬資源保護法案ハ、昨年ノ三月當議
場ニ於キマシテ、政民兩黨ヨリ軍用候補馬鍛
鍊法案トシテ提出サレマシテ滿場一致ヲ
以テ之ヲ決議セラレタノデアリマス、今囘
ノ政府ノ御提案モ此ノ院議ヲ尊重セラレマ
シテ、時代ニ卽スル爲ニ此ノ案ガ御提出ニ
ナツタコトト思フノデアリマシテ、大體ニ
於テ本案ニ贊意ヲ表スル者デアリマス、併
シナガラ先刻來先輩同僚ノ各位ヨリ色々質
疑ノアリマシタ通リ、其ノ政府ノ企圖セラ
レル所ノモノニ付テ、尙ホ私共トシテハ大
イニ質疑ヲ致シ、其ノ御答辯モ伺ツテ問題
ヲ明ニシテ見タイト云フ考カラ、私モ成ベク
重複ヲ避ケマシテ二三ノ御尋ヲ致シタイト
存ズルノデアリマス、今更申スマデモナク
馬ガ人類生活ニ密接ノ關係ガアリ、殊ニ戰
爭ニ當ツテ其ノ駿足ヲ利用シテ有ユル戰野
活動スル功績ト云フモノハ殆ド人ニ次グ大
切ナルモノデアリマス、今日機械力ガ十分
ニ利用セラルルヤウニナツテ、是等ノ動物
ヲ使用スルコトハ自然ニ減ズルカト思フ
ト、實戰ノ結果ハ寧ロ其ノ需要ガ增大サレル
ノデアリマス、我國ノ馬政ハ日〓日露ノ戰
役ヲ經テ、一紀元ヲ劃シ、日露戰後、先刻
來議論ノアリマス第一期馬政計畫ヲ樹立セ
ラレテ、爾來長足ノ進步ヲ遂ゲ、最近ニ於
テ滿三十年ニ達シテ、卽チ第二期馬政計畫
ヲ發表セラレタノデアリマスガ、其ノ丁
度僅カ二年ノ間ニ今囘ノ事變ガ勃發シ
民間カラ徵發シタ所ノ馬ガ戰爭ニ參加シ
テ、有ユル缺陷ヲ認メタト云フコトカラ、
先刻陸軍大臣ノ御言葉モアリマシタヤウ
ニ、軍ノ要望其ノ他ヲ採ツテ、玆ニ此ノ法
案ヲ出スト共ニ、馬政計畫實施ニ關スル
二千有餘万圓ノ豫算ヲ計上サレテ居ルノデ
アリマス、併シ之ニ依ツテ果シテ當局所期
ノ目的ヲ達スルヤ否ヤト云フコトハ、マダ
マダ私共大イニ心配ニ堪ヘナイノデアリマ
ス
第一ニ伺フコトハ、先刻農林大臣ハ此ノ
法案ハ廣義國防ノ見地ニ立ツテ計畫ヲ立テ
タト云フコトデアリマスガ、其ノ內容ヲ見
マスルト云フト單ニ軍馬資源ノ充實ト云
フコトニ重キヲ置イテ、馬ト云フモノガ農
村ノ生產ニ重大ナル關係ガアル、隨テ馬ト
云フモノヲ養フニハ、同時ニ農村ノ馬ヲ利用
セシムル方面ニ於テ、最モ政府ガ力ヲ注ガ
ナクテハナラヌ、若シモ是ガ單ニ軍馬ノ資
源ノミヲ養フト云フコトガ有ユル計畫ノ目
的デアツテ、アトハ先刻御話ノ人ノ愛馬心
ヲ利用シテ、農村ガ馬ヲ澤山ニ飼フダラウ
ト云フヤウナコトヲ考ヘタナラバ、是ハト
ンダ間違ヒダト思フ(拍手)寧ロ馬ヨリモ牛
ノ方ガ實際農村ニ於テノ利用價値ハ多イ、
ソレデアルカラシテ、ドウシテモ軍馬ノ資
源ヲ養ヒ、數十万ノ軍用候補馬ヲ得ヨウト
スルナラバ、ヤハリ廣義國防ノ建前カラ、
農村ニ向ツテ是等ノ動物ヲ色々ニ利用シ、
ソレニ依ツテ生產ヲ助ケ、多少牛ヤ何カ
ヨリ不利デモ、而モ之ヲ一方ニ於テハ國家
的義務、又一方ニ於テハ農村ノ生產力擴充
ノ目的ニ副フヤウニ、卽チ眞ノ廣義國防ノ
目的カラ、產業方面ニ馬ヲ活躍サセル、サ
ウシテ農家經濟ノ安定ヲ圖ルコトデナクテ
ハナラヌト思ヒマス、先刻大臣ハ是ハ廣義
國防ノ建前カラ計晝シタト仰シヤイマシタ
ガ、私ハサウ云フ形ヲ此ノ案ノ上カラ發見
スルコトガ出來ナイノデアリマス、此ノ點
ガ御何ヲスル一ツデアリマス
第二ノ點ハ、種馬統制法ニ依ツテ種牡馬
ハ昭和二十年マデニ全部國有ト致シテ、僅
ニ其ノ一部ヲ民間ニ貸ス、是ハ吾々ノ多年
ノ希望デアツテ、贊成ヲスル次第デアリマ
スカ、併シ其ノ一部ヲ民間ニ繫養セシムル
ハ、產業團體ヲ適當ト考ヘルノデアリマス、
サウシテ馬ノ改良ト云フモノハ、成ベク衆
智ヲ集メ、經驗ヲ利用シ、馬ニ關スル經驗
アル篤志家ヲ政府監督ノ下ニ、種牡馬ノ繫
養ヲ許シテ、其ノ手腕ヲ發揮セシムルコト
ガ必要デハナイカ、全部國家ノミニ賴ルト
云フコトハ、甚ダ違ツタコトヲ申スヤウデ
アリマスガ、原蠶種ノ國營ガ實行セラレマ
シテ、昨年ハ不幸ニシテ其ノ國營ノ原蠶種
ガ、民間ノ蠶種ヨリモ成績劣等デアツタト
云フコトデ非難ガアツタ、是ハ近頃申シニ
クイ言葉デスガ、官僚獨善ノ結果、有ユル
衆智ヲ集メルト云フコトヲシナイノデハナ
イカ、私ハ幾分カハ民間ノ經驗アリ、愛馬
心ニ富ンダ篤志家ト云フヤウナ者ヲ奬勵シ
テ、種牡馬ノ保有ヲヤラセルノモ宜イカト
思ヒマス
第三點ハ先刻御話ノ、第二期馬政計畫ノ
定マツテ間モナク、直チニ之ラ變革セラレ
ク爲ニ、先刻來是ハ屢〓、話ガアリマシタカ
う、別ニ私ハ質問デナク、簡單ニ私ノ意見
ヲ述ベテ置キマスガ、突然トシテ輕種ヲ廢
シテ中間種、重種ニ重キヲ置イタ爲ニ、此
ノ輕種ヲ飼ツテ居ツタ地方ノ農民ハ、非常
ナル打擊ヲ被ツテ居ル、是ハ元來輕種ヲ盛
ニ飼ハセルト云フコトニハ誰ガヤラシタノ
デアリマスカ、政府ガ十數年ニ亙ル所謂馬
政計畫ニ依ツテ、民間ニ此ノ飼養ヲ奬勵シ
テ、サウシテ玆ニ一ツノ馬ノ體型ガ整ヒ、地
方ニ依ツテハ輕種ノミヲ生產スル、先刻森田
君ノ仰シヤツタヤウナ、淚グマシキ努力ニ
依ツテ生產シタモノガ、國策ノ變更ニ依ツ
テ直チニ是等ノ馬ガ大暴落ヲスル、農民ガ非
常ニ苦シムト云フコトハ、是ハ私ハ考ヘナケ
レバナラヌ、政府ハ少クトモ斯ル地方ノ輕
種生產者農民ヲ、見殺シニスルコトハ出來ヌ
ダラウト思フ、是ハ政府ガ適當ナル施設ヲ
御與ヘニナリ、救濟ノ途ヲ講ズルノガ、至
當デアルト考ヘテ居リマス(拍手)
第四ノ點ハ、政府ノ從來ノ方針ガ、馬ニ
對シテハ生產ニ重キヲ置ク、先刻來ノ皆サ
ンノ話ニ甚ダ相濟マヌノデスガ、生產地ニ
重キヲ置イテ、是ガ育成利用ノ方面ニ力ヲ
注イデ居ナイ、之ヲ閑却シテ居ツタト云フ
點デアリマス、今囘ノ馬政計畫デハ、軍用
馬ヲ保有スル者ニハ補助金ヲ與ヘル、色々
ノ方法ニ依ツテ多少利用地帶ノコトモ考ヘ
テ居ルノデアリマスガ、元來生產地帶ト利
用地帶トハ緊密ナ連繫ヲ保チ、サウシテ利
用地ガ盛ニナルト云フコトニナレバ、生產
地ハヒトリデニ景氣ガ出ル、馬ノ値段モ上
ルノデアリマス、此ノ點ノ政府ノ今マデノ
御注意、又今囘ノ計畫モ稍、〓缺陷ガアルト存
ジテ居リマス、之ニ付テノ御答辯ヲ願ヒタ
イ
ソレカラ是ハ再三皆サンガ仰シヤツタコ
トデアリマスガ、今囘ノ事變ニ當ツテ馬ガ
戰地ニ於テ甚ダ不良ナ成績デアツタ、而モ
軍ノ現役ノ馬ハサウ云フコトハナカツタ、
民間カラ徵發シタ所ノ馬ガ缺陷ヲ暴露シタ、
私モ一昨年戰地ニ參リマシテ、其ノ實狀ヲ
見タノデアリマス、是等ノ原因ニ驚イテ、
急イデ馬ノ血種ヲ變ヘラレタノデハナイダ
ラウカ、是ハ元來ガ徵發馬ト云フモノハ鍛
鍊馴致ガナカツタ、更ニ其ノ徵發馬ヲ取扱
フ所ノ特務兵ニ、馬ノ知識ガナカツタト云
フコトガ原因デアリマシテ、既ニ昨年此ノ
缺陷ヲ認メテ、政府ハ調〓鍛鍊ノ經費ヲ計
上セラレ、今ヤ全國ニ亙ツテ之ヲ實行シテ
居ル、又地方競馬ニ依ル所ノ馬事施設ト云
フモノハ、主トシテ此ノ點ニ集中セラレテ
居リマス、私ノ縣ノ如キハ海軍マデ、總テ
ノ軍籍ニアル壯丁ニ皆馬事〓育ヲ施シテ居
リマス、更ニ進ンデ一般ノ學生ニモ及ボス
ト云フ今〓究ヲシテ居ルノデアリマスガ、
要スルニ馬ノ鍛鍊ガ足リナク、人ノ鍛鍊ガ
足リナカツタト云フコトガ此ノ原因デアル
カラ、今後ニ於テハ先刻來皆サンノ御意見
モアリマシタガ、進ンデ私ハ一般ノ壯丁、
地方ノ靑年團ト云フヤウナモノニハ悉ク
馬事〓育ヲ施ス方法ヲ執リタイ、サウシテ
以テ剛健ノ思想ヲ養ヒ、體位ノ向上ヲ圖ツ
テ、有事ノ際ニハ誰デモ馬ヲ乘御スルコト
ガ出來ルヤウニ致シタイト考ヘテ居リマス、
此ノ點ハ先刻政府ノ御答辯ガアリマシタガ、
尙ホ一步考ヘテ戴キタイ
第六ノ御尋ハ所謂鍛鍊競技卽チ競馬ニ
付テデアリマス、競馬ト云フモノハ一般民
衆ノ馬ニ關スル思想ヲ鼓吹シ、馬ノ改良增殖
ニ强キ根柢ヲ與ヘ、馬事振興上絕對ニ必要
デアルト云フコトハ私ガ今更中スマデモナ
イコトデアリマス、唯此ノ競馬ナルモノハ
馬劵ノ發行ニ依ツテ風〓上ノ非難ガアル爲
二、當局者ト雖モ往々御遠慮ナサル所ガア
ル、併シ是ハ英米獨佛何レノ國デモ競馬竝
ニ馬券ヲ行ハザルハナイ、殊ニ其ノ制限ハ
我國ノヤウナ苛酷ノ制限ハナイ、獨逸ノヤ
ウナ質實剛健ヲ國民性ノ國デモ、嘗テ馬劵
ヲ停止シタコトガアル、サウスルト云フト
產馬上憂フベキ事態ヲ生ジテ、間モナク又
此ノ馬券ヲ復活シタト云フ事實ガアル、我
國デモ明治三十九年ニ初メテ閣令ヲ以テ馬
劵ノ發行ヲ許サシ、何等ノ制限ヲ加ヘナカ
ツタ爲ニ、非常ニ競馬倶樂部ガ濫立シ、サ
ウシテ遂ニ僅カ二年ニシテ、之ヲ廢止スル
コトニナツタガ、ソレガ爲ニ此ノ多數出來
上ツタ倶樂部ハ、マダ一囘モ競馬ヲ施行シ
ナイデ停止サレタト云フ爲ニ、態、政府ハ競
馬規程ヲ發布シテ、多額ノ補助金ヲ與ヘ、
補助金ニ依ツテ競馬ヲ續行スルト云フ御計
畫ヲ立テラレタノデアリマスガ、是等ハ何レ
モ收支償ハズシテ僅カ數年ノ中ニ殆ド壞滅
シ、解〓スルト云フコトニナツタ、同時ニ
產馬ハ衰退シ、馬フ頭數ハ激減シ、國防上
憂慮スベキ事態ヲ生ズルニ至リマシタノデ、
遂ニ大正十二年ニ競馬法ガ此ノ議會ニ提出
サレ、今日ノ十一箇所ノ公認競馬ヲ見ルニ
至ツタノデアリマス、尙ホ是ノミデハマダ
馬產ノ上ニ十分ノ效果ナシト云フノデ、昭
和二年八月ニ農林內務兩省令ヲ以テ地方競
馬規則ガ發セラレ、卽チ現今ノ地方競馬百
十六箇所ガ各府縣ノ畜產組合ニ依ツテ實行
サレテ居ルノデアリマス、是等ノ競馬ノ初
期ニ當リマシテハ、競馬違反或ハ詐欺暴力
等ノ犯罪モアツタノデアリマスケレドモ、
漸次民衆ノ理解ト開催者ノ自肅ニ依ツテ、
現今ハ最モ穩健ニ靜肅ニ施行セラレテ居ル、
唯馬劵ヲ數枚買フト云フヤウナ違反者ヲ見
ルノ外ハ、殆ド地方競馬ノ弊害ト認ムベキ
モノハナイト思ツテ居ル、然ルニ競馬ト云
フモノヲ尙ホ風〓上害ガアルト言ツテ非難
スルノハ、卽チ嘗テ少數ノ不良行爲ヲ爲シ
タ者ガ大袈裟ニ喧傳サレタノデアツテ、寧
ロ其ノ弊害ノ原因ハ飮酒トカ、花柳界トカ、
取引所トカ云フヤウナモノノ弊害ト混同サ
レテ居ルノデアリマス、此ノ點ヲ强ク言ハ
ナケレバ分ラナイ、故ニ馬劵ハ彼ノ非衞生
的ナ遊興ヤ陰暗ナル〓博ナドトハ全ク選ヲ
異ニシテ、大衆環視ノ下ニ勇壯豪快ナル競技
ヲナスノデアル、デアルカラ之ヲ何カ惡イ
コトヲスルト云フヤウナ考ヲ當局者ガ持ツ
ノハドウ云フモノデアルカ、往年マダ一般
國民ノ經濟思想ガ幼稚ノ場合ニハ先刻來私
ノ申ス弊害モアツタラウケレドモ、現今ニ
於テハ國民ノ理性ガ發達シテ居リマシテ)
殆ド其ノ弊ヲ憂フル必要ハナイノデアルカ
ラ、私ハ此ノ際鍛鍊法ヲ見テツク〓〓考ヘタ
ノハ、今日ノ地方競馬ニ對スル有ユル非難攻擊
ガ段々ニ治マツテ來テ、サシタル弊害モナ
"、唯强ヒテ弊害アリトスレバ、實行ノ出
來ナイ無理ナ規則ニ原因ヲ持ツテ居ルト私
ハ考ヘルノデアル、デアルカラ當局者ハ之
ヲ實行ノ出來ル規則ニ當嵌メレバ宜シイ、
全國百十六箇所ノモノヲ僅カ四十箇所位ニ
縮メテシマフ、而モ其ノ開催ニ於テハ一方
ニ於テ軍用馬ノ鍛鍊競技ハ大ニヤレト言ヒ
ナガラ、其ノ競技ノ日數ハ四日ニ制限スル
ト云フコトハ、先刻大臣ノ答辯モアリマシ
タガ甚ダ諒解ニ苦シム、私ハ此ノ院議ヲ御
尊重ニナツテ、昨年當議場デ全會一致デ決
議ニナツタアノ軍用候補馬鍛鍊法案ノ內容
ト同一ニ改メテ貰ヒタイト云フノガ私ノ希
望デアリマス
最後ニモウ一ツ御尋致シマスノハ、此ノ
法案ハ本院ヲ通過スルモノト思ヒマス、而
シテ百十數箇所ノ全國ノ地方競馬ガ全部廢
止ヲセラレマシテ、サウシテ新規ノ認可ヲ
得ルモノハ府縣一箇所以內ト云フノデスカ
ラ、先ヅ四十箇所内外デアラウ、サウスル
ト此ノ四十箇所以內ノ競馬ノ施行ニ依ツテ、
而モ此ノ窮屈ナ、殆ド競馬ノ實行ガ不可能
ニナリハセヌカト云フヤウナ窮屈ナ法律ノ
下ニ之ヲ行フト云フノデアルカラ、從來地
方競馬ガ馬事ニ貢獻ヲシテ、財源トシテ居
ツタ所ノモノヲ皆私ハ失フコトニナリハシ
ナイカト思フ、又負債ノ整理モ出來ナクナ
リハシナイカ、假ニ是等ノ整理サレタ競馬
會ガ解散スルニ付テモ相當ノ費用ガ要ルノ
デアリマス、先刻是ハ新ニ出現スル中央團
體ニ依ツテ整理ヲナサシムルト云フ當局ノ
辯明デアリマシタガ、其ノ中央團體ト雖モ、
此ノ不振ナル少數ノ畜產組合、其ノ少數ノ
競馬場ヲ持ツテ居ル畜產組合ノ收入ノ中カ
ラ斯カル支出ガ出來ルカドウカ、私ハ是ハ
無論國家ガ此フ前競馬ヲ廢シタ時ノヤウニ、
相當決心ヲナスツテ、卽チ賠償ノ責ヲ背負
ツテ下サツテモ宜イモノト思フ、卽チ國家
若クハ之ヲ認可シタル所ノ地方廳ノ責任ハ
洵ニ重大デアルト思フ、之ヲ簡單ニ中央團
體ニ依ツテ整理セシムルト云フヤウナ御言
葉デハ、吾々ハ滿足スルコトハ出來マセヌ
以上七點ニ付キマシテー-其ノ中ノ二點
ハ旣ニ御答辯ガアリマシタカラ、殘リノ五
點ニ付テ御答ヲ願ヒマス
〔國務大臣櫻內幸雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=65
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066・櫻内幸雄
○國務大臣(櫻内幸雄君) 小串君ニ御答辯
ヲ申上ゲマス、第一點ハ廣義國防ノ見地カ
ラ之ヲ實行シロト云フ御意見デアリマス
ガ、是ハ當初說明ヲ申上ゲマシタ通リ、固
ヨリ目的ハ軍用馬トシテ使フノデアリマス
ケレドモ、平生ハ之ヲ農村ニ於テ所謂廣義
國防ノ見地ニ於テ十分働キヲサセル考デア
ルノデアリマシテ、之ニ對シテ飼養料ヲ助
成シ、以テ農村ノ產業ニ貢獻サセタイト思
フノデアリマス、全ク小串君ノ御意見ト同
一意見デアリマス
第二點ノ篤志家ノ經驗アル人ノ意見ヲ聽
イテ、衆智ヲ利用シテハドウデアルカト云
フ御話デアリマスガ、是ハ固ヨリ御說ノ通
リデアリマシテ、種牡馬ニ付キマシテモ特
別ノ調査ノ結果、特ニ之ヲ取扱ヲ許スト云
フ規定ヲ設ケテ居ルヤウナ譯デアリマス
第三點ハ前ニ答辯致シテアリマスカラ之
ヲ省略致シマス
第四ハ生產地帶ト利用地帶トノ連絡ヲ緊
密ニシテ、以テ馬匹ノ增產ヲシ、農家ノ經
濟ヲ助ケタラドウデアルカト云フ風ナ御意
見デアツタト思ヒマスガ、此ノ點ハヤハリ
御同感デアリマシテ、利用範圍ヲ擴大致シ
マスト共ニ、適當ナル連絡及ビ之ニ關スル
施設ヲ講ジタイト考へテ居ルノデアリマス
第五ノ人ノ鍛鍊ハ、是ハ先刻來申上ゲマシ
タ通リ、人ニ對スル馬事〓育ヲ十分ニ致シ
タイト云フコトハ以前ニ申上ゲタ通リデア
リマス、鍛鍊競技ニ付キマシテハ昨年ノ
議會ニ於テ衆議院デ決定シタ通リヲ決行シ
タラドウデアルカ、斯ウ云フ御意見デアリ
マスガ、昨年ノ本議會ニ於テ決定致シマシ
タノハ、各府縣一箇所、北海道五箇所、年二
囘、開催日六日ヅツ、斯ウナツテ居ルノデ
アリマシテ、今囘ノ提案ヲ致シマシタノハ
各府縣一箇所、北海道ノ五箇所ハ三箇所ト
變ツテ居リマス、開催日ガ六日ガ四日ニ變
ツテ居ルノデアリマスガ是ハ種々考究致
シマシタ結果多少相違シテ居ル點ガアリマ
スケレドモ、大點此ノ程度ニ於テ目的ヲ達
スルノデハナカラウカト思ツテ、斯樣ニ決
定致シタ譯デゴザイマス
次ニ地方產業組合ノ窮狀救濟ノ問題デア
リマスガ、此ノ點ニ付キマシテハ曩ニ答辯
ヲ致シマシタ通リ、中央鍛鍊競技會ニ於テ
處理致サセル考デアリマシテ、大略其ノ目
的ヲ達シ得ルト、斯樣ニ確信ヲ致シテ居ル
次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=66
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067・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 中野寅吉君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=67
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068・中野寅吉
○中野寅吉君 極ク簡單デアリマスカラ此
ノ席ヨリ發言ヲ御許ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=68
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069・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=69
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070・中野寅吉
○中野寅吉君 私ノ質問ハ三分間デアリマ
ス、正直ナ話ハ簡單ダカラ餘リ喋ラヌ、本
法案ノ質疑ニ付テ、遠山君、大石君、森田
君、小串君ヨリ今質問ガアツタガ、農林大
臣ノ答辯中洵ニハツキリシナイ所ガアル、
ソレハ此ノ放牧地ノ狹イト云フコトニ付テ
ノ大事ナ質疑ニ對シテ、ソレハ營林ニ差支
ナイ範圍ニ於テヤル、ソレデハ營林ニ差
支アル時ハ放牧地ハ構ハヌカ、之ヲ平タ
ク言ヘバ、樹ガ大事デ馬ガ大事デナイト云
フノカ、馬ニハオ餘リヲ喰ハシテ其ノ目的
ヲ達スルト云フノカ、ソンナコトデハイケ
ナイ、此ノ重大時局デアルカラ、重大國策
トシテ、陸軍省ナリ、農林省ナリ相談シテ、
此ノ法案ヲ出シタノデハナイカ、然ラバ陸
軍大臣モ、農林大臣モ國務大臣ト云フ考ヲ
以テ、此ノ法案ノ實效ノ擧ルヤウニ心配シ
ナケレバナラナイト思フノデアルガ然ル
ニ何ダ、營林ニ差支ナイ範圍ニ於テ放牧地
ヲ考ヘルトハドウダ(拍手)馬ノ爲ニハ何物
モ犧牲ニ供シテ、サウシテ此ノ時局ヲ乘リ
切ル決心デナケレバナラヌト私ハ思フガ、
ソレヲハツキリ答ヘテ貰ヒタイ、馬ノ爲ニ
ハ營林ノ政策ナドハ一部中止シテモ、此ノ
法案ノ實效ノ擧ガルヤウニヤルカヤラヌ
カ、是ハ陸軍大臣モ亦ヤラセルト云フ決心
ヲ持タナケレバナラナイ、重大時局ヲ乘リ
切ル爲ニ此ノ法案ヲ出スト云フノデハナイ
カ、ソレガハツキリシナイ、奧齒ニ物ノ挾
ツタヤウナコトデハ承知ハ出來ナイ、此ノ
點ヲ聽キマス(拍手)
〔國務大臣櫻內幸雄君登摘セ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=70
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071・櫻内幸雄
○國務大臣(櫻內幸雄君) 中野君ノ御意見
ハ、國有林ノ中ヲ營林ニ構ハズニ伐ツテ放
牧地帶ニセヨト云フ御意見ニ聞エマスガ、
若シ果シテ然リトスレバ、治山治水ノ關係
上、或ハ洪水ガ起ルトカ、或ハ種々ナル副
作用ガ起ツテ來ルノデアリマス、是ハ餘程
考ヘナケレバナラヌコトデアリマシテ、其
ノ以外ニ放牧竝ニ採草地ノ設備ヲスル方法
ガナイト云フ場合ニハ或ハサウ云フコト
モ必要デアルカトモ思ヒマスケレドモ、他
ニ方法ガアル以上ハ、一面ニ於テ治山治水
ノコトモ考ヘ、又木材生產ノコトモ考ヘテ
政治ヲ行ハナケレバナラヌノデアリマシテ、
農林當局ト致シマシテハ、國有林ニ對シテ
ハ營林ニ差支ナイ程度ニ開放致シタイト、
斯樣ニ考ヘテ居ルノデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=71
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072・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 野溝勝君
〔野溝勝君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=72
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073・野溝勝
○野溝勝君 私ハ只今上程ニナリマシタ軍
馬資源保護法案ト種馬締制法案ノ二法案ニ
付キマシテ質問ヲ試ミタイト思ヒマス、同僚
議員カラ既ニ詳細ニ亙ツテ御質問ガアリマ
シタノデ、質問ヲサレタ點ハ重複ヲ避ケマ
シテ、二三質問ヲ致スコトニ致シマス
申上ゲルマデモナク、今囘ノ此ノ二法案
ハ支那事變ニ因ツテ生レタモノデアリマシ
テ、此ノ法案ノ狙ヒ所ハ、戰列部隊所要ノ有
能馬ヲ作ル爲ニ、軍馬ノ資質ノ向上ト、種馬
ノ整備配合ノ統制ト、生產力擴充ト、此ノ三
ツノ綜合計畫下ノ馬政計畫ノ立法デアルト
心得テ居ルノデアリマス此ノ法案ニ對シ
今一步掘リ下ゲテ檢討致シマスト、產業國
防兩全ヲ兼備シテ居ル所ノ馬政計畫デアル
ト思フノデアリマス、ソレハドウ云フ點デ
サウ云フコトヲ言ヒ得ルカト云フト、今囘
ノ馬政計畫ノ中ノ品種ガ、中半血種、卽チ
「アングロ·ノルマン」ヲ採用シテ居ルノデ
アリマス、此ノ「アングロ·ノルマン」種ハ
申上ゲルマデモナク、是ハ農家ノ最モ要求
シテ居ル種馬デアリマシテ、此ノ種馬ヲ政
府ガ採上ゲテ種牡馬トシタコトニ付キマシ
テハ、最モ農家ノ受入レル所デアリマス、
此ノ點ニ於キマシテ今囘ノ馬政計畫ハ、吾
吾ハ大イニ贊成スル者デアリマス、併シ此
ノ馬政計畫モ、若シ一步誤ルヤウナコトガ
アリトスルナラバ、ソレハ却テ此ノ飼育農
家ニ對シテ失望ヲ與ヘルバカリデナク、國
防上ニ及ボス影響ノ重大サヲ吾々ハ痛感ス
ル者デアリマス(拍手)左樣ナ意味デ私ハ左
ノ四點ヲ質問シテ見タイト思ヒマス
第一點ハ馬ノ增產ニ伴フ生產飼育者、農
家ノ生活安定ニ付テ政府ノ所見如何ト云フ
コトデアリマス、此ノ點ハ同僚ノ諸君ガ質
問サレマシタカラ私ハ省略致シマス、併シ
此處デ一ツ申上ゲテ置カナケレバナラヌコ
トハ、大石君竝ニ森田君等々ガ力說サレタ
重要ナ點ハ、主ニ生產者、飼育者ニ對スル
要望ト致シマシテ、價格政策、卽チ馬匹ノ
値上ヲ要求シテ居ルノデアリマス、此ノ價
格政策ヲ中心ニ論議サレテ居リマスガ、農
民ノ要求シテ居ル點ハ、馬匹ノ値上リヲ要
求スルト云フコトハ鋏狀價格差ノ修正デア
リマス、農產物ガ値上リスル、其ノ率ガ他
ノ物價ノ値上リスル率ヨリハ少イト云フ、
此ノ點ニ不平不滿ノ聲ガアルノデアリマス
此ノ點ガ修正サレルナラバ、敢テ馬匹ノ値
ガ上ラナクテモ宜シイノデアリマス、馬匹
ノ値ガ無暗ニ上ルト云フコトハ、却テ是ハ
强性「インフレ」ヲ起スコトニナル、是ハ十
分ニ考ヘナケレバナラヌ、ソレヨリハ此ノ
馬ノ生產飼育ニ對スル必要ナ條件デアル所
ノ飼料ヲ安クスルトカ、牧野ヲ開放スルコ
トニ致シマスナラバ、或ハ馬ヲ飼育スル爲
ニ資金ヲ簡易ニ融通シテヤルトカ云フコト
ナリマスナラバ、多クノ農家ハ大多數ガ
馬ヲ飼育スルコトガ出來ル、シテ見マスル
ト、今日最モ力說サレテ居リマスル有畜農業
ノ經營、有畜農業經營ノ合理化ニ依ツテ、時
局重大ノ意義ヲ有ツ生產力擴充ガ解決スル
ノデアル、私達ハ斯ル觀點ニ立チマシテ、徒ニ
旣往ノ諸君ガ力說サレマシタ價格政策ノ
點ニ盡キル意見ニ對シマシテハ、理論的ニ
ハ贊成出來マセヌ(拍手)左樣ナ點ニ於キマ
シテ、第一點ハ目的ハ同ジデアツテモ、内
容ハ違ツテ居ルノデアリマス、第二點ハ日
滿支蒙ヲ通ズル大陸馬政計畫ニ付キマシテ
御所見ヲ御伺致シタイト思ヒマス、政府カ
ラ上程サレマシタ二法案ノ前段ヲ見マスル
ト、內地馬政計畫竝ニ日滿ニ關係ヲセル馬
政計畫ニ付キマシテ論及ヲサレテ居ルノデ
アリマス、私達至極御尤ニ感ジテ居リマ
ス、併シ今日我國ト致シマシテハ、東亞新
建設或ハ東亞協同體ノ秩序ノ維持ト云フコ
トヲ盛ニ力說サレテ居ルノデアリマス、此
ノ馬政計畫モ是ハ東亞協同體ノ國防計畫ノ
一環デアルト私ハ心得テ居リマス、國防計
畫ノ一環デアリマスル、此ノ馬政計畫ノ確
立卽チ東亞協同馬政計畫ノ確立コソハ
私ガ論ズルマデモナク最モ緊要ナコトデア
ルト思ヒマス、然ルニ何ガ故ニ日滿ノ馬政
計畫ダケヲ中心ニ立案シ、殊ニ馬ノ方ニ於
キマシテハ、最モ古來ヨリ歷史ヲ持ツテ居
リマスル蒙古ノ蒙古馬或ハ韃靼馬、此ノ大
陸性能馬ヲ取上ゲズシテ本馬政計畫ヲ立案
サレタコトハ甚ダ遺憾ニ存ズル次第デアリ
マス(拍手)政府ニ於キマシテモ日滿ダケデ
ナクテ、蒙支ニ對スル馬政計畫ノ意見ヲ政府
ハ持ツテ居ラレルコトダト思フノデアリマ
ス、此ノ際日滿蒙支一貫セル馬政計畫ニ付テ、
政府ノ所信ヲ御發表ヲ願ヒタイト思ヒマス
第三點ハ馬產ノ分布調整ニ付テデアリマ
ス同僚ノ諸君カラモ縷々御話ニナリマシ
タガ、私ハ別ノ角度カラ此ノ馬產ノ分布調
整ニ付テ質問ヲシテ見タイト思ヒマス、馬
ノ資源保護ノ爲ニ內地ノ馬政計畫ト致シマ
やと、地方ヘノ分布調整ヲ確立スル點ニ付
キマシテハ、特ニ法律ノ內容ニモ能ク謳ハ
レテ居リマス、併シ從來ノ馬政狀況ヲ見マ
スルト、日本ノ總馬數ノ四割乃至五割强ト
云フモノハ、北海道乃至ハ東北方面ニ依ツ
テ占有サレテ居ツタノデアリマス、然ルニ
今後ノ軍馬資源ノ確保、生產配合ハ中半血
種ヲ採用スル結果カラ、決シテ東北乃至ハ
北海道ニ限ラレナケレバナラヌト云フコト
ハナイト存ズルノデアリマス、勢ヒ我國ノ
內地農業ノ有畜計畫化ト相關聯シテ具體化
サレナケレバナラヌト心得ル者デアリマ
ス、我國ニ於キマシテハ未ダ利用サレナイ
所ノ原野ガ數百万町步カラアル譯デアリマ
ス、是ガ改良利用サレルコトハ、我國ノ如
キ過小農制ノ農民ニ取リマシテハ、最モ緊
急ナ生活問題デアルト心得テ居ル次第デア
リマス、今囘ノ馬政計畫ガ中半血種、中格
挽馬デアル點ニ於テ、先程申シマシタ通リ
農家ノ飼育ニ最セ適スルノデアリマスカ
ラ、此ノ適スル馬政計畫ニ對シマシテ、之
ヲ全國各府縣ニ適正ニ分布調整スルコトガ
最モ當ヲ得タモノト考ヘルガ、政府ノ所見
如何デアリマスカ、特ニ樺太方面ニ於キマ
シテハ、最モ寒帶ニ適シ、耐寒力ノアル馬
ガ出來ル譯デアリマス、臺灣方面ニ於キマ
シテハ、最モ耐熱力ノアル所ノ馬ガ出來ル
譯デアリマス、此ノ耐熱力ト耐寒力トノ馬
ノ分布調整ト云フヤウナコトハ、北進、南
進ノ國力ヲ伸張スル上ニ於キマシテモ、重
大ナ影響ヲ持ツモノト私ハ心得テ居ル次第
デアリマス(拍手)斯ノ如ク重要意義ヲ持ツ
テ居ル馬匹ノ分布調整ノ關係ニ付キマシテ、
政府當局ハ如何樣ニ考へテ居ラレルカ、御
所見ノ御發表ヲ願ヒタイト思ヒマス、特上
申上ゲテ置キタイコトハソレバカリデナク
テ、此ノ分布調整ガ圓滑ニ行クト云フコト
ハ、傳染病等ニ對スル豫防ニモナルト思フ
ノデアリマス、例ヘバ一箇所ニ馬匹ヲ多ク
生產スルコトハ、其ノ地方ニ於キマシテ多
クノ傳染病ガ出來ル場合、例ヘバ傳貧、或
ハ骨軟症、或ハ流產ト云フヤウナモノガ東
北ニ澤山發生スル、其ノ場合ニ其ノ地方ノ
ミヲ馬產地ノ區域トシテ居ル場合ニ於キマ
シテハ、其ノ地域ニ於ケル馬匹ガ皆ヤラレ
ルコトニナリマス、ソンナコトニナレバ
恐ラク今日ノ大馬政計畫ハ大キナ蹉跌ヲ來
スノデハナイカ(拍手)斯ウ云フ點ニ考ヲ及
ボス時ニ、馬產ノ分布調整ノ意義最モ重且
ツ大ナルコトヲ心得ル者デアリマス
最後ニ馬政計畫ト牧野ニ付テ御意見ヲ聽
キタイト思ヒマスガ、先輩同僚ノ諸君カラ
旣ニ御話ガアリマシタノデ私ハ省略致シマ
ス、唯中野君カラ先程農林大臣ニ希望意見
ガアツタヤウデアリマス、牧野ト馬政ニ付
テノ質疑ニ對シマシテ、農林大臣ハ考慮ヲ
スルト云フ程度デ答辯ヲサレタヤウニ思ハ
レテ居ルノデアリマス、併シ考慮ヲスルト
云フ程度デハ私ハ滿足ガ出來ルモノデハナ
イノデアリマス(拍手)何故カナラバ、申上
ゲルマデモナク今囘ノ日支事變ニ於キマシ
テ、軍馬ニ於テ役立ツモノハ舍飼ヲシテ居
タ馬デハナイ、皆是ハ放牧馬デ、所謂牧場
デ育成サレタ馬ガ最モ勇猛果敢ナ戰ヲシタ
譯デアリマス(拍手)此ノ實績ハ私ガ申上ゲ
ルマデモナク、所謂無言ノ勇士ノ戰鬪歷史
ヲ見レバ能ク分ルコトデアリマス、特ニ放
牧馬ハ御承知ノ通リ綠肥、所謂草ヲ食ツテ
居リマス、草ハ「カルシウム」ヲ含ンデ居
ル、草ノ「カルシウム」ヲ食ヘバ骨ガ丈夫ニ
ナル、是ハ私ガ申上ゲルマデモナク、賢明
ナ大臣ハ御承知デアリマセウ、舍飼ヲシタ
馬ハ確ニ肉ハ付キマスケレドモ、骨格ガ整
ヒマセヌ、大石君ノ話デハアリマセヌケレ
ドモ、低身廣軀四肢强健ナル馬ハ出來マセ
ヌ、ソコヘ行クト放牧ハ只今申上ゲタヤウ
ニ骨格ノ頑丈ナ馬ガ出來、特ニ戰列部隊所
要ノ有能馬ト云フモノハ、舍飼ヲシタル所
ノ馬デハ得ラレナイ、舍飼馬ハ所謂單馬デ
アル、獨リデ育ツテ獨リデ行動ヲスル、併
シ放牧馬ハ絕エズ集團的ノ生活ヲシテ居ル、
而シテ軍馬ニ於テハ決シテ獨リデ步ク馬ハ
要求シナイノデアリマス、放牧シタ馬ハ集
團的ノ訓練ヲ經テ居ル爲ニ、軍所要ノ有能馬
トシテ適スルコトニナルノデアリマス(拍
手)斯ル牧野ト馬政トノ關係ニ付キマシテ、
農林行政ノ一元化、整理統一統合ヲ說イテ
居ル本家本元ノ農林大臣カラ、ソンナ他愛
ノナイ答辯ヲサレタノデハ、吾々ハ決シテ滿
足スル者デハナイノデアリマス、特ニ農林
大臣ヨリ此ノ際林野行政ト畜產行政ノ兼備
統合一體ノ御所見ヲ御聽キシタイノデアリ
やく、以上ヲ申上ゲマシテ私ノ質問ハ終リ
ト致シマス(拍手)
〔國務大臣櫻內幸雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=73
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074・櫻内幸雄
○國務大臣(櫻內幸雄君) 御答辯申上ゲマ
ス、生產飼育者ノ立場ニ立タレテ、馬匹ノ
價格問題ニ對シテノ御意見ガゴザイマシタ
ガ、私共深ク傾聽致スノデアリマス、若シ
御話ノ如ク馬匹ノ價格ガ非常ニ暴騰致シマス
ト、色々ノ所ニ關係致シマスノデ、馬匹ノ價
格ノ暴騰ト云フコトヲ考ヘマス前ニ、先ヅ生
產費用ノ低減竝ニ生產者ノ負擔輕減等ニ付
テ深ク考ヘナケレバナラヌト思ヒマス、卽
チ政府ハ種牡馬ヲ國有ニ致シマスルト同時
ニ、飼養費ノ補助等ヲ致シマシテ、生產費
ノ低下ヲ圖ツテ居ルノデアリマス、併シナ
ガラ此ノ價格ガ相當ノ價格デナケレバ、ヤ
ハリ農村ニ於テ之ヲ飼育シナイノデアリマ
スカラ、其價格ニ付キマシテモ陸軍當局ト
相協力シマシテ、適當ナ價格ニ之ヲ抑ヘタ
イト思フノデアリマス、次ニ日滿支ヲ通ズ
ル大陸馬政計畫ヲ何故立テヌカ、何故支那
ヲ除イタノデアルカ、斯ウ云フ御質疑ノヤ
ウデアリマシタガ、日滿兩國ヲ通ジテ此ノ
計畫ヲ立テマシタ際ニハ蒙疆及ビ北支ト
云フモノノ生產狀態ヲ考慮ノ中ニ入レテ
此ノ計畫ヲ立テテ居ルノデアリマス、唯此
ノ計畫ニ日滿支ト云フ言葉ヲ使ヒマセヌデ
シタノハ、尙ホ多少〓究スベキ點ガアリマ
シタ爲ニ之ヲ除イタノデアリマス、馬資源
ノ分布調整ヲ圖ル必要ナキヤ、此ノ點ニ付
キマシテハ御意見モゴザイマシタガ、吾々
ハ種々ナル關係ヲ考慮ノ中ニ入レマシテ
適切ナル調整ヲ致シタイト考ヘマス、最後
ニ放牧場ニ付テノ御意見ガゴザイマシタガ、
此ノ點ニ付キマシテハ吾々ト致シマシテ
モ出來ルダケ馬匹ノ增殖ニ對シテ差支ナイ
程度ノ途ヲ講ジタイ、斯樣ニ考ヘテ居リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=74
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075・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 是ニテ質疑ハ終了
致シマシタ、各案ノ審査ヲ付託スベキ委員
ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=75
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076・服部崎市
○服部崎市君 日程第六、第七ノ兩案ヲ
括シテ、議長指名二十七名ノ委員ニ付託サ
レンコトヲ望ミマス
〔「贊成ト」呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=76
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077・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=77
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078・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
マく、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、是ニテ
議事日程ハ議了致シマシタ、次會ノ議事日
程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、本日ハ是
ニテ散會致シマス
午後六時六分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01019390207&spkNum=78
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