1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十四年二月十四日（火曜日）
午後一時十分開議
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議事日程 第十一號
昭和十四年二月十四日
午後一時開議
第一 決議案（對ソ權益確保に關する件）（町田忠治君外八十二名提出）
第二 競馬法の臨時特例に關する法律案（政府提出） 第一讀會
第三 金資金特別會計法中改正法律案（政府提出） 第一讀會
第四 臺灣米穀移出管理特別會計法案（政府提出） 第一讀會
第五 短期現役小學校教員俸給費國庫負擔法中改正法律案（政府提出） 第一讀會
第六 兵役法中改正法律案（政府提出、貴族院送付） 第一讀會
第七 滿洲國に於ける領事官の裁判の廢止に關する法律案（政府提出、貴族院送付） 第一讀會
━━━━━━━━━━━━━発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/0
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001・小山松壽
○議長(小山松壽君) 諸般ノ報〓ヲ致サセ
マス
〔書記官朗讀〕
一今十四日貴族院ヨリ受領シタル政府提出
案左ノ如ジ
借地借家臨時處理法中改正法律案
〔左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
靑年學校〓育費國庫補助法案
(以上二月十三日提出)
-議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
理容師法案
提出者
山川賴三郞君中山福藏君
高橋義次君松定吉君
東條貞君
砂鑛法中改正法律案
提出者
原玉重君松永東君
伊東下田間鐵道敷設ニ關スル建議案
提出者
眞鍋儀十君高木条太郞君
津倉亀作君
樺太ニ鰊人工孵化實施竝禁漁區設定ニ關
スル建議案
提出者
松浦周太郞君手代木隆吉君
南雲正朔君深澤吉平君
女性移住者養成道場設立ニ關スル建議案
提出者
伊藤五郞君森田重次郞君
(以上二月十三日提出)
一昨十三日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如
シ
朝鮮事業公債法中改正法律案(政府提出)
委員
辭任田川大吉郞君補關小田榮君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/1
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002・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス、御諮リ致シマス、森林法中改正法律案
外一件委員長ヨリ本日本會議中委員會ヲ開
キタイトノ申出ガアリマス、之ヲ許可スル
ニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/2
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003・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ許可致シマス-日程第一、決議
案ヲ議題ト致シマス、提出者ノ趣旨辯明ヲ
許シマス-贊成者山本厚三君
第決議案(對ソ權益確保ニ關スル
件)(町田忠治君外八十一一名提出)
決議案
決議
帝國ノ權益ニ對スル「ソ」聯政府ノ暴戾ハ
近來彌〓甚シキヲ加へ正ニ根柢ヨリ之ヲ覆
ヘサムトスルニ至レリ
政府ハ速ニ適切ナル對策ヲ講ジ斷乎之ニ
臨ミ我カ權益確保上萬遺漏ナキヲ期スヘ
シ
右決議ス
〔山本厚三君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/3
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004・山本厚三
○山本厚三君 私ハ對「ソ」權益確保ニ關ス
ル決議案ニ付キマシテ提案ノ趣旨ヲ御說明
申上ゲタイト存ジマス、說明ニ先ダチマシ
テ一應決議案文ヲ朗讀致シタイト存ジマス
決議
帝國ノ權益ニ對スル「ソ」聯政府ノ暴戾ハ
近來彌、甚シキヲ加へ正ニ根柢ヨリ之ヲ
覆ヘサムトスルニ至レリ
政府ハ速ニ適切ナル對策ヲ講シ斷乎之ニ
臨ミ我カ權益確保上萬遺漏ナキヲ期スヘ
シ
右決議ス
本問題ハ國際上カラ申シマシテモ、又我ガ
國策ノ上カラ申シマシテモ、非常ニ重大ナ
問題デアルト存ジマス、元來我ガ露領ニ對
スル漁業權ト云フモノハ、御承知ノ如クニ
日露戰役ニ於テ我ガ同胞十万血肉ノ犠牲ニ
因ルモノデアリマス、又北樺太ノ石炭石油
ノ鑛業權ハ、實ニ尼港事件七百生靈ノ代償
トシテ獲タル所ノ賠償權益デアリマス、我
等ノ拂ヒマシタ所ノ此ノ貴キ犧牲ニ比ベマ
スレバ、殆ド幾分ノ一ニモ値セヌモノデハ
アリマスガ、我等ニ取リマシテハ、ソレダ
ケニ最モ貴重ナル戰利品デアルト申サナケ
レバナリマセヌ、我等ハ旅順包圍戰ノ當時、
又尼港殘虐ノ往昔ヲ追想致シマスル時ニ、
今尙ホ血淚ノ禁ジ難キモノガアルノデアリ
そくな然ルニ此ノ貴キ權益ハ今日如何ナル
狀態ニ在ルノデアリマセウ、近來「ソ」聯ノ
之ニ對スル態度ヲ見マスト、全ク常軌ヲ逸
シマシテ、國際信義ヲ無視シ、有ユル不法
不當ノ暴擧ヲ敢テシテ、正當ナル我ガ權益
ノ行使ヲ不能ナラシメントシテ居ル狀態デ
アリマス、我等ハ從來時局ノ重大ナルニ鑑
ミマシテ、多年隱忍自重シテ參ツタノデア
リマス、併シナガラ若シ此ノ儘ニ押進ンデ
行キマシタナラバ、是等ノ權益ハ遂ニ自然
消滅ニ歸スルノ外ハナイト存ジマス、斯ク
シテ若シ斯樣ニ相成ツタナラバ、我等ハ何
ヲ以テカ此ノ我等同胞十万ノ生靈ニ應ヘル
コトガ出來マセウ、勘忍モ程度ガアリマス、
最早是マデト私ハ考ヘル(拍手)宜シク斷乎
タル所ノ決心ヲ以テ、此ノ貴重ナル權益ノ
確保ヲ致サナケレバナラヌト存ジマス(拍
手)元來本條約ハ大正十四年芳澤「カラハ
ンㄴノ北京條約、卽チ日「ソ」國交ノ囘復ニ
關スル所ノ基本條約ニ依リマシテ、「ポーツ
マス」條約ヲ確認セシナ、更ニ昭和三年ニ
ハ後藤新平伯ノ入露トアリ、廣田「カラハ
ン」協定トナリ、玆ニ初メテ日「ソ」漁業條
約ト云フモノノ確立ヲ見ルニ至ツタノデアリマ
ス、昭和十年ニ本條約滿期更新ニ際シマシテハ、
商議ヲ重ヌルコト實ニ數十囘、遂ニ昭和十一年
末ニ至リマシテ、酒匂「カズロフスキー」極
東部長ノ協定ガ成リ、旣ニ我國デハ御批准
ヲ經テ假調印ヲ濟マシ、將ニ正式ノ調印ニ
至ラントシテ、「ソ」聯ハ日獨防共協定ヲ口實
ト致シマシテ、遽ニ調印ヲ拒否シ、以テ今日
ニ至ツタ次第デアリマス、爾來暫定協定二
囘ニ及ンダノデアリマスガ、今ヤ之ヲスラ
モ「ソ」聯ハ峻拒シテ應ジナイノデアリマス、
殊ニ甚シキハ安定漁區、特別契約漁區等、
特約ノ一切ヲ無視致シマシテ、全部ヲ公入
札ニ付セント云フコトヲ發表シタノデアリ
Val.更ニ甚シキハ名ヲ軍事上ノ必要ニ藉
リマシテ、沿海州其ノ他四十漁區ヲ禁止ス
ル等、洵ニ露骨無遠慮ナル所ノ發表ヲ致シ
テ來リマシク、我方ハ相變ラズ之ニ對シテ
總テ合理的一方ノ交涉ヲ重ネマシタガ、更
ニ今日ニ至ルマデ要領ヲ得ナイノデアリマ
ス、是ニ於テカ我ガ關係漁業者ハ一大決心
ヲ致シテ居ルヤウデアリマス、不當ナル三
月十五日ノ入札ニハ一人モ絕對的ニ參加ヲ
シナイ、飽クマデ出漁ヲ敢行セントシテ、
洵ニ悲愴ナル所ノ決意ヲ表明致シテ居ル現
狀デアリマス
惟フニ我ガ北洋ノ權益ト云フモノハ單ニ
戰爭ニ勝ツタ所ノ報酬、卽チ普通一般ノ戰
利品デハアリマセヌ、昔ヨリ多年我國漁民
ノ往來經營シタ所デアリマシテ、千島樺太
ハ申スニ及バズ、「カムチヤツ女」半島、〓〓
ホーツク」、沿海州ニ至ル所ノ非常ニ廣汎
ナル區域ニ亙ツテ漁業ヲ營ミ來ツタノデア
リマス、唯樺太ハ幕府末年ノ頽勢ニ乘ジマ
シテ、千島ト交換ヲ餘儀ナクセラレタノデ
アリマス、自分ノモノト自分ノモノトヲ交
換セシメラレタノデアリマス、往昔我ガ勇
敢ナル北海ノ漁人ハ、扁舟ニ棹シテ、何等
政府幕府ノ援助ヲ受ケズ、否、却テ當時ノ
幕府カラハ禁制ヲセラレテ居リマシタカ
ラ、此ノ禁制ヲ侵シテ北洋ニ航海ヲ致シ、
露西亞政廳ノ迫害ヲ忍ビ風浪、氷雪ト鬪
ヒツツ、北門ノ開拓ニ邁進シマシタ、其ノ
勇氣ト云フモノハ洵ニ感謝感激ノ外ハアリ
マセヌ(拍手)就中歷史ヲ繙キマスト、彼ノ
高田屋嘉兵衛ノ如キ、錢屋五兵衞ノ如キ、
又栖原屋角兵衞、是ハ今日モ現存シテ居リ
マスルガ、是等ノ剛膽ナル「パイオニヤ」ノ
壯圖ハ、歷史ニ輝ケル所デアリマシテ、今日
中南支攻略、「バイアス」灣上陸、殊ニ今囘
ノ海南島占據等ニ依リマシテ、今更ノ如ク
ニ明ニセラレマシタ彼ノ八幡船ノ遠征、實
ニ南支方面ヲ風靡致シマシタ所ノ八幡船ノ
遠征ト劣ラナイ所ノ、我ガ大和民族ノ意氣
ヲ天下ニ示シタモノト存ジマス、正ニ今日
ノ時代ニ於キマシテモ、懦夫ヲシテ起タシ
ムルノ慨アルモノト私ハ存ズルノデアリマ
ス(拍手)此ノ數百年ニ亙リマスル所ノ先覺
者達ノ努力ト犠牲ト云フモノガ、目〓、日
露、「シベリヤ」出兵等ヲ經マシテ、初メテ
玆ニ報ヒラレ、南樺太ヲ取戾シ、是等權益
ヲ得ルニ至リ、漸次大漁場ヲ開拓シ、又別
ニ領海外ニ沖取漁業ト云フ一大事業ヲ創始
スル等、今ヤ生產額五千万圓ヲ出デ、輸出
二千万圓ヲ超ユルノ盛大ナル事業トナツタ
ノデアリマスルガ、此ノ間幾多先覺ノ士ガ、
世ノ毀譽褒貶ヲ顧ミズ、我ガ北門鎖鑰ノ
爲權益擁護ノ爲、一身一家ノ利害ヲ忘レ
テ、國家ニ貢獻セラレタル所ノ偉大ナル功
績ニ對シマシテハ、我等ハ絕大ノ感謝ヲ拂
ハナケレバナラヌト存ジマス(拍手)此ノ機
會ニ一言申述ベルコトノ御許ヲ願ヒタイノ
ハ曾テ本議院ニ長ク議虛ヲ有セラレタ堤
〓六、平出喜三郞ノ兩君デアリマスガ、堤
君ハ北洋漁業ノ開拓者トシテ、平出喜三郞
君ハ沖合漁業ノ創始者トシテ、其ノ功績ガ
顯著ナモノガアリマスルカラ、此ノ機會ニ
申上ゲテ置キタイト存ジマス(拍手)
更ニ一言附加へナケレバナラヌコトハ
北樺太鑛業權益ノコトデアリマスルガ、石
油ニ於キマシテハ埋藏量實ニ三億餘瓲ニ上
ルト稱セラレテ居リマス、年產額最近二十
六万瓲、油質殆ド米油ニ匹敵スルノ良質ヲ
持ツテ居リ、一日ノ出油量率ハ世界ニ冠タ
リト稱セラレデ居リマス、今日ノ時局ニ於
テ如何ニ此ノ權益ガ重大デアルカト云フコ
トハ、申上ゲナクトモ自明ノ理デアリマス、
更ニ石炭モ年產二十万瓲、必要ニ應ジテハ
五十万、百万ノ增產ト云フコトモ、可能性
ガアルト稱セラレテ居リマス、是等ハ何レ
モ單ニ產業上ノ問題ナルエ止マラズシテ、
國策上極メテ重要ナル權益デアルト存ジマ
ス、然ルニ之ニ對スル「ツ」聯ヲ態度ハ、如
何ニモ暴戾ヲ極メマシテ、一方ニハ國內法
ヲ盾ニ有ユル坊害ヲ加へ、勞働者ト物資ニ
對シテハ徹底的ノ彈壓ヲ加ヘ、殊ニ甚シキ
ハ邦人從業者ニ對シテ、不法慘酷ナル所ノ
拘禁刑罰ヲ科シマシテ、何事ニ付テモイヤ
ガラセヲ申シテ、我ガ權益ノ行使ヲ不可能
ナラシタ、自然消滅ニ至ラシメントノ底意
ニ出テ居ルコトハ、極メテ明瞭ナル所ノ事
實デアリマス(拍手)最近「アグネヴォ」坂井
組合石炭利權ヲ取消シクガ如キハ、其ノ最
モ顯著ナ事例ト申サナケレバナリマセヌ、
最早斯クナル上ハ、普通一般外交辭令ナド
ノ取交セヲシテ居ツテハ、到底埒ノアク問
題デハナイト私ハ考ヘマス(拍手)一體政府
ハドウシテ之ヲ解決ナサラントスルノデア
リマスカ、今議會ニ於テ本會議、豫算總會
ヲ通ジテ、政府ノ御意、向ハ極メテ穩當デハ
アリマスルガ、吾々國民トシテ承服スルコ
トノ出來ル程度ノモノデハナイ、今少シク
强硬ナル熊度ヲ御執リニナツテ然ルベシト
私ハ考ヘル(拍手)私共ハ「ソ」滿國境關係ヲ
初メト致シマシテ、忍ブベカラザルコトヲ
忍ンデ來タコトガ、凡ソ年久シキモノガア
リマス、本件ハモト經濟的利害ノミニ局限
スル問題デハアリマセヌ、今日我國ガ北洋
一步ノ退却ハ、北門ノ護リ一步ノ後退ニア
ラズト、誰ガ言ヒ得ルコトガ出來マセウ(拍
手)政府ハ深ク是等權益ノ歷史ト國策上ノ
重要性ニ鑑ミ、萬全ク謀ヲ運ラセテ、此ノ
權益ヲ確保シ、以テ國民ノ期待ニ背カザラ
ンコトヲ期セナケシバナラヌト存ジマス(拍
手)是レ卽テ私共ガ本案ヲ提出致シマシテ、
政府フ斷乎タル決意ヲ要求スル所ノ所以デ
アリマス(拍手)願クバ全會一致ノ提案デア
リマスルカラ、滿場一致御決議アランコト
ヲ切望致シマス(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/4
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005・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ヨリ討論ニ入リマ
ス、通告順ニ依リ發言ヲ許シマス-深澤
豐太郞君
〔深澤豐太郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/5
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006・深澤豐太郎
○深澤豐太郞君 私ハ立憲政友會ヲ代表シ
テ本案ニ贊成ノ意ヲ表スルモノデアリマス、
露領北洋ニ於ケル漁業權ノ紛爭ハ、幾タビ
カ是ガ繰返サレテ來タノデアリマスルガ、
最近ニ於ケル紛爭ノ發端ハ、申スマデモナ
ク酒匂「カズロフスキー」修正案ニ對スル、
露西亞ノ調印拒絕ニ始ツテ居ルノデアリマ
ス、而シテ相次イデ暫定協定ガ結バレテ、
遂ニ條約ノ滿期ニ至ツテ、所謂無條約狀態ニ
マデ推シ進メラレテ、今日ニ至ツテ居ルノ
デアリマス、私ハ勿論無條約時代ト云フ言
葉ハ當ラナイト思フ、基本トナルベキ「ポー
ツマス」條約及ビ日「ソ」修好基本條約ハ、儼
トシテ存在ヲ致スノデアリマスルカラ、無條
約狀態トハ思ハナイノデアリマスルガ、其
ノ行使規定タル漁業條約ヲ缺如致シテ居リ
マシテハ、此ノ基本條約ノ行使ニ當ツテハ、
實力ヲ以テスル以外ニ方法ガナイノデア
リマス、私ハ是マデノ經緯ヲ顧ミテ、政
府モ國民モ深ク考ヘテ見ナケレバナラナ
イモノガアルト思ヒマス、卽チ「ソ」聯
ガ突如トシテ酒匂「カズロフスキー」成
案ノ調印ヲ肯ゼザル所以ハ、日獨防共
協定ノ締結ト云フ政治的理由ニ依ツテ、之
ヲ拒否致シテ居ルノデアリマス、尙ホ奇怪
千萬ナルコトハ、暫定協定ガ二囘マデモ續
ケラレテ、遂ニ條約ノ期限滿期ニナルソヲ
待ツテ、今日ノ暴狀ヲ極メテ居ルノデアリ
マスルガ、其ノ中デ最モ注意シナケレバ
ナラナイ點ハ、先程提案者ノ說明ニアリマ
シタ通リ、四十箇所ノ漁區ニ對スル一方的
閉鎖ノ行動デアリマス、是ハ事ハ多數ノ漁
區ノ中四十箇所ニ過ギナイノデアリマスル
ケレドモ、其ノ地域ハ殆ド「カムチヤッカ」
半島ヲ除ク大陸一帶ニ對スル漁區ノ閉鎖ト
ナツテ居ルノデアリマス、「ポーツマス」條
約ニ於テハ其ノ第十一條ニ於テ「露西亞國
ハ日本海、オホーツク海及ベーリング海ニ
面スル露西亞國領地ノ沿岸ニ於ケル漁業權
ヲ日本國民ニ供センガ爲ニ日本國ト協定ヲ
ナスベキコトヲ約ス」ト明記致シテ居ルノ
デアリマス、然ルニ一方的ニ此ノ「ポーツ
マス」條約十一條ノ中ニ於ケル沿海州ヲ初
メトスル大陸一帶ノ沿岸ニ對シテ我ガ漁場
封鎖シ、我ガ出漁ヲ禁止スル行動ニ出タコ
トハ、「ポーツマス」條約ノ大半ヲ自ラ抹殺
シ去ツタモノト言ハナケレバナラナイヲデ
アリマス(拍手)是ハ光輝アル日露戰爭ノ歷
史ニ顧ミテ斷ジテ許スコトノ出來ナイ所デ
アリマス、尙ホ其ノ他ノ漁區ニ對シマシテ
〓、此ノ四十箇所ヲ除キマシタ二百四十七
箇所ノ安定漁區ハ、總テ之ヲ競賣ニ付スコ
トヲ宣言致シマシタ、競賣其ノモノハ漁業
條約ニ於ケル一ツノ陷穽デアツタト私ハ思
フノデアリマス、今尙ホ暫定協定其ノ他ニ
於テ政府ハ競賣ノコトヲ考慮致シテ居ルモ
ノト思ヒマスルガ、競賣ハ凡ソ自由經濟ノ
國ニ於テデナケレバアリ得ナイ所ノモノデ
アラウト思フ、然ルニ露西亞ガ今日計畫經
濟デアルコトハ申スマデモナイ、ノミナラ
ズ企業ハ國營デナケレバ許サレナイ國柄デ
アリマス、假ニ露西亞ヲ自由經濟ノ下ニ於
ケル自由競爭デ入札ヲスルモノト假定シテ
モ條約面ニ於ケル三十二錢五厘ノ換算率ハ
何事デアリマス、一例ニ過ギマセヌガ、私
ハ先年「モスコー」ニ行ツテ、朝飯ニ「パンㄴ
ト卵ト「ハムサラダ」ヲ食ベタラ、邦貨ニ換
算シテ百五圓ノ料金ヲ拂ハセラレタノデア
ル、又工手學校ヲ卒業スレバ一躍八百留ヲ
以テ採用セラレテ居ル、故ニ露西亞ノ留ノ
價値ハ正ニ邦貨ニ換算シテ五錢以下2價値
シカナイモノト言ハナケレバナリマセヌ、
此ノ五錢以下ノ價値シカナイ留ヲ以テ彼ハ
入札ヲシ、我ハ三十二錢五厘ノ留ヲ以テ其
ノ入札ニ應ジタ場合ニ、若シ彼ガ其ノ漁區
ヲ奪取セントスルナラバ、假ニ自由經濟ノ
下ニ於テモ露西亞人ガ此ノ漁區ヲ奪ヒ去ル
コトハ易々タルモノト言ハナケレバナリマ
セヌ、況ヤ企業國營ノ下ニ於テ國營漁業ヲ
標榜シ、或ハ個人デ入札スル者モ亦政府ノ
命令ニ依ツテ入札ヲ致シテ居ル今日ノ場
合、此ノ安定漁區二百四十七箇所ガ入札ニ
付セラレタ一事ヲ以テ、此ノ全部モ亦彼ガ
奪ヒ去ラント企テツツアルコトモ明瞭デア
ルト言ハナケレバナラナイノデアリマス
(拍手)シテ見レバ沿海州ヲ初メ大陸ニ於ケ
ル漁場全部ヲ閉鎖シテ「ポーツマス」條約ノ
大半ヲ抹殺シ、今又安定漁區全部ヲ入札ニ
付シテ、此ノ悉クヲ奪ヒ去ルニ至リマシテ
ハ、「ポーツマス」條約、日「ソ」修好基本條
約ノ全部ハ彼ニ依ツテ蹂躪シ去ラレルモノ
ト言ハナケレバナラヌノデアリマス、私ハ
此ノ事實ニ對シマシテ深ク考ヘテ見ナケレ
バナラナイモノガアルト思フノデアリマス、
況ヤ支那事變ニ關聯ヲ持ツ所ノ援蔣〓
ループ」ノ連鎖ノ一環ノ現ハレトシテ、此ノ
事ガ吾々ノ眼前ニ展開シツツアルニ於テヲ
ヤト言ハナケレバナラナイノデアリマス
(拍手)漁業問題ニ對シマスル結論ハ留保致
シマシテ、北樺太ノ石油石炭鑛業權ニ對ス
ル今日ノ有樣ハ如何デアリマスカ、只今申
サレマシタ通リデアリマスルガ、事ノソコ
ニ至リマスルノニハ實ニ暴虐ノ限リガ盡サ
レテアルノデアリマス、之ヲ詳細ニ申上ゲ
ルコトハ時間ヲ取リマスルカラ遠慮ヲ致シ
マスルケレドモ、石油問題ハ芳澤「カラハ
ン」條約ニ依ツテ、大正十四年六月我ガ政
府ノ手ニ依ツテ創立セラレタ北樺太石油株
式會社ガ之ニ當ツテ居リマス、此ノ石油會
社ハ旣ニ二千万圓ニ增資ヲシテ、第七十議
會ニ於テ成立致シマシタル助成ノ豫算ガ、此ノ
事業ヲ助ケテ昨年度ハ一大躍進ヲ爲スベキ計
畫ノ下ニアツタノデアリマス、然ルニ其ノ後ノ
「ソ」聯政府ノ我ガ石油工業ニ對スル壓迫干
涉ハ殆ド至ラザルナキ有樣デアル、其ノ二
三ヲ申上ゲレバ、利權契約ニ依ル從業員ノ割
合ハ、技術家ハ邦人露人五〇%、從業者ハ
邦人二五%露西亞人七五%トノ條約ニナツ
テ居ルニ拘ラズ、十年度ハ此ノ規定ニ依ツ
テ申入レタル邦人ノ七百五十人ノ入國ヲ彼
ハ之ヲ拒絕シ、露西亞人ノ不足ノ勞働者ノ
邦人ノ採用ニ付テモ亦之ヲ拒否シテ居ルノ
デアリマス、而シテ僅ニ所要勞働者ノ四分
ノ一ノ入國ヲ許シテ、露西亞人勞働者ハ僅
ニ六分ノ一ヲ提供致シタニ過ギナイノデア
リマス、此ノ四分ノ一ノ邦人勞働者ト六分
ノ一ノ露西亞人勞働者ニ依ツテ此ノ事業ヲ
押進メテ居ルノデアリマスガ、其ノ成績ハ
此ノ一事ヲ以テ知ルコトガ出來ルノデアリ
そう、或ハ利權契約ニ依ル二十五條ノ油ヲ
送ル鐵管ノ敷設ヲ拒否シタリ、從業員ノ生
活必需品ノ輸入ヲ故意ニ削減シテ許可ヲ與
ハイ、爲ニ配給ニ手違ヲ生ズレバ、鑛業所
長ヲ違反ニ問ウテ之ヲ起訴セント致シ、醫
療機械或ハ藥品ノ輸入スラ今日ハ拒絕ヲ致
シテ居ル有樣デアリマス、沿岸荷役地ノ貸
與ヲ拒絕シテ、遂ニ折角持ツテ行ツタ試掘
機械ノ陸揚ガ禁止セラレテ、事業ガ中止ニ
ナツタ所モアル、材木ノ供給ハ二十九條ニ
依ツテ確保セラレテ居ルニ拘ラズ、其ノ供
給ヲ拒否シテ、昨年度ハ七千噸モ日本ノ內
地カラ材木ヲ逆ニ樺太ニ持ツテ行カナケレ
バナラナイ有樣デアリマス、三十四條ニ違
反シテ無線通信所ノ閉鎖ヲ命ジタリ、或ハ
採油作業場、技術建築物ノ建設ヲ禁止シタ
リ、些々タル火災ヲ口實トシテ六十五本ノ
油井ヲ閉鎖致シマシタ、露人勞働者ニ付テハ
突如四〇%ノ賃銀ノ値上ヲ要求シ、技術家
ノ名稱ニ違反シタト稱シテ四万留ノ罰金ヲ
科シタリ、微々タル酒保ノ犯罪ニ對シテ八
万六千留ノ罰金ヲ科シタリ、拘引、留置、
起訴、罰金、追放、國外退去、勤勉ナル露
人ハ之ヲ罷免スルト云フガ如キ有樣デ、正
ニ恐怖政策ヲ以テ我ガ石油事業ニ臨ミツツ
アル有樣デアル、遂ニ昨年度ハ從業員ノ大
量引揚ヲ斷行シナケレバナラナイ有樣ニ立
至ツタノデアリマス、石炭ニ付キマシテモ
亦同樣デアル、此ノ迫害ノ有樣ハ石油ニ對
スルト同巧異曲デアリマスケレドモ、モツ
ト石炭業ハ甚シキ壓迫ヲ受ケテ、遂ニ一割
ノ勞働者ヲ彼ノ地ニ殘シテ全部引揚ヲシナ
ケレバナラナイ有樣ニ立至ツタノデアリマ
ス、殊ニ坂井組合ニ對シテハ先程申サレタ
通リノ有樣デ、坂井組合ハ商工省ノ認可ヲ
得テ、將ニ八百万圓ノ北樺太炭業株式會社
ミノ創立ヲ見ントスルノ間際ニ至ツテ、其ノ利
權ガ取消サレテ「ソ」聯政府ノ沒收スル所ト
ナツタノデアリマス、斯ノ如キ有樣デ北洋
漁業ハ勿論、此ノ北樺太ニ於ケル石油石炭
共ニ彼ハ一方的ニ之ヲ蹂躪シテ、我ガ權益
ノ全部ヲ奪ヒ去ラント致シツツアルノデア
リマス、私ハ事玆ニ至リマシテハオ互ニ重
大ナル決意ヲ以テ之ニ臨マナケレバナラナ
イト思フノデアリマス
政府ハ此ノ事態ニ直面シテ、業者ガ漁業
權ニ付テハ自由出漁ヲモ辭セズト云フ決意
ヲ爲シテ居ルノニ對シテ、政府モ亦實力ニ
依ル出漁モ辭スル所ニアラズト言ハレテ居
リマス、實力ニ依ル出漁ハ勿論之ヲ避クル
コトハ出來マセヌ、併シナガラ實力ニ依ル
出漁ハ決シテ容易ナ事業デハナイノデアリ
きくり、德川時代ヨリ「ポーツマス」條約締結
ニ至ルマデノ間ハ、謂ハバ武裝的自由出漁
ノ時代デアリマス、アノ沍寒不毛ノ地ニ荒
天ヲ冒シテ出漁ヲシテ、遂ニ幾百千ノ人々
ハアノ海ニ呑マレ、荒野ニ屍ヲ曝シテ居リ
マス、先年私ハ「カムチヤッカ」ニ行ツテ、「カ
ムチヤッカ」東西ノ海岸隨所ニ此ノ古キ先達
ノ遺跡ヲ發見スルニ苦シマナカツタノデアリマ
ス、大正十年、十一年ノ自由出漁ニ於テモ、亦
警備ノ任ニ當ル海軍ノ御勞苦ハ非常ナルモノ
ガアツタト思ハレマス、其ノ犠性ハ明ニ之ヲ
物語ツテ居ルノデアリマス、併シナガラ今囘ノ
自由出漁ニ至リマシテハ到底其ノ比デハア
リマセヌ、「カムチヤッカ」半島ハ無人島デア
リマスガ、此ノ無人島ニモ尙ホ日本人ニ對ス
ル「ゲ·ペ·ウ」ノ壓迫ハ至ラザルナキマデニ
行屆イテ居ル、此ノ「ゲ·ペ·ウ」ノ防備ス
ル我ガ漁場「カムチヤッカ」ハ僻遠ノ地
デハアリマスガ、沿海州ハ尙更ノコトデア
リマス、此ノ漁場ニ對シテ無査證ノ旅劵ヲ
以テ上陸セント企テマスナラバ、卽チ實力
ヲ以テ自由出漁ヲ爲サント致シマスナラ
バ、其ノ自由出漁ハ正ニ敵前上陸ノ覺悟ヲ
以テ致サナケレナラナイノデアリマス拍
手)敵前上陸ハ敢テ恐ルル所デハアリマセ
又、併シ到ル處ニ林立致シテ居ル煙突、到
ル處ニ建設セラレテ居ル罐詰工場、此ノ工
場ニ關スル條約モ亦滿期ニナツテ居ル、六
箇月ノ出漁期間ヲ經レバ、八二人ノ番
人ヲ殘シテ引揚ゲテ來ナケレバナラナイ處
ニ、此ノ重大ナル工作物、財產ヲ置イテ吾々
ハ引揚ゲテ來ルノデアリマス、自由出漁ハ
實力ヲ以テ之ヲ爲スベシ、併シ放置致シテ
來ル財產ハ何ヲ以テ之ヲ擁護致スノデアリ
マセウカ、漁業ニ付テノ自由出漁ノ難點ハ
其處ニアルノデアリマス、樺太ニ對シテハ
何ヲ以テ之ヲ擁護スルカ、私ハ此ノ場合敢
テ重大ナル決意ヲ爲サナケレバナラヌト言
フ所以ハ、敵前上陸ヲ、冒シテ自由出漁ヲス
ルナラバ、外ニ豫メ何カ方法ガナケレバナ
リマセヌ、北樺太ノ此ノ重大ナル利權ハ、
大正九年五月二十四日、想起シテモ慄然タ
ル彼ノ尼港事件ニ因ル我ガ保障占領ニ依ツ
テ樺太ニ開拓セラレタル事業デアリマス、
保障占領中ニ石油ノ探鑛ヲ爲シ石炭ノ探鑛
ヲ爲シ、此ノ保障占領還付ノ代償トシテ、
北樺太ニ於ケル是等利權ハ確保致スコトガ
出來テ居ルノデアリマス、而シテ今其ノ利
權ノ全部ハ抹殺シ去ラレントシテ居ルノデ
アリマス、「カムチヤッカ」ニ於ケル漁業ガ
日露戰爭ノミニ因ツテ得夕利權デナイコト
ハ勿論デアリマス、吾々ノ先覺者ガ長イ間
開拓シ、而シテ發達シ來ツタ事業デアルコ
トハ申スマデモアリマセヌガ、「カムチヤッ
カ沿海州其ノ他ニ於ケル漁業權モ亦日
露戰爭ニ因ル一ツノ成果デアリマス、併シ
「セント·パウロスク」ニ軍艦旗ガ飜ツタ日露
戰爭ノ代償トシテモ之ヲ見ルコトガ出來ルノ
デアリマス、「カムチヤッカ」ニ於ケル漁業
權ハ、日露戰爭ノ時ニ、首都「セント·パウロ
スク」ニ飜シタ軍艦旗ノ代償トモ見ルコト
ガ出來ル、北樺太ニ於ケル利權ハ、尼港事
件ノ保障占領ノ代償トシテ得タモノデアル
トスレバ、之ヲ解決スルノ途ハ一ツシカア
リマセヌ、名ハ自由出漁デアツテモ、實力
ヲ以テ之ヲシナケレバナラナイトシタナラ
バ、宜シク帝國ハ此ノ漁區ハ一時的占據ヲ
爲スベシ、北樺太ニ對シテハ再ビ保障占領
ヲ斷行スベシト言ヒタイノデアリマス拍
手)此ノ占領地ヲ返還スル爲ニ得タル權益
デアル以上、此ノ權益ガ蹂躙シ去ラレルナ
ラバ、保障占領シタル地域ヲ再ビ保障占領
スルコトガ正當ナル途デハアルマイカト思
フノデアリマス、私ハ一觸卽發ノ世界ノ大
勢ニ顧ミテ、或ハ是ガ世界大戰ノ導火線タ
ランカトモ思ハルルノデアリマスガ、今、
「斷ジテ行ヘバ鬼神モ避ク」ト云フ時デアリ
やく、政府ガ斷ジテ是ダケノコトヲ行ハン
トスルナラバ、鬼神ハ避ケテ其處ニ途ハ自
ラ開ケルト思フ、此ノ重大ナル決意ヲ爲ス
ニアラザレバ「ポーツマス」條約ノ成果モ、
尼港事件ノ賠償モ蹂躪シ剝奪シ去ラレルモ
ノト致シタナラバ、宜シク此ノ重大ナル決
意ヲ固メ、光輝アル權益ト利權トヲ確保ス
ル爲ニ、周到ナル用意ト大膽ナル決心ヲ以
テ事ニ當ツテ、之ヲ確保セラレンコトヲ政
府ニ要望シ、本決議案ニ贊成ノ意ヲ表スル
者デアリマス(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/6
-
007・小山松壽
○議長(小山松壽君) 靑木精一君
〔靑木精一君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/7
-
008・青木精一
○靑木精一君 諸君、私ハ同志ヲ代表致シ
マシテ本決議案ニ贊成ヲ致ス者デゴザイマ
ス、本案ノ對象トナツテ居リマスル所ノ露
領漁業權、北樺太ノ石油石炭ニ對スル利權、
此ノ問題ハ提案者及ビ深澤君ノ申サルル通
リ、我ガ國民ノ忘レントシテ忘ルルコトノ出
來ナイ重大ナル國家的ノ權益デアリマス、然ル
ニ今日此ノ際本案ノ有スル內容ノ如キ決議案
ヲ帝國議會ニ於テ審議シ、決議シナケレバナ
ラナイト云フヤウナ事態ガ起ツテ來タコト
ヲ私ハ甚ダ遺憾ニ思フノデアリマス(拍手)此
ノ權益ハ權益事業ノ性質カラ言ヘバ三大權益
ト言ヘマスルガ、併シ之ヲ左樣ナル事業ノ性質
內容カラ言ハズシテ、國家的ニ强ヒテ區分
シテ見ルナラバ二大權益デアル、更ニ吾々
ハ日本ノ北方ニ對スル所ノ國是ト云フ點カ
ラ見ルナラバ、北方露西亞ニ對スル確固タ
ル所ノ一大權益ト云フコトガ言ヘルノデア
ル、然ルニ此ノ歷史アリ、サウシテ意義深
キ所ノ權益ニ對シテ、最近數年來「ソ」聯政
府ガ兎角忍ビ難キ所ノ態度ヲ以テ臨ンデ來
テ居ル、昭和十一年以來此ノ權益關係者
ハ一體此ノ權益ハドウナルモノカト云フ
コトニ付テ、窃ニ心配ヲ重ネテ來テ居ツタ
ノデゴザイマス、然ルニ今ヤ此ノ權益ハド
ウナルモノカト云フ、唯消極的ノ不安ヲ以
テ見送ツテ居ルコトノ出來ナイ事態ニ立至
ツテ居ルノデアリマス、此ノ貴重ナル所ノ
權益ヲ如何ニシテ確保シテ行クベキカト云
フコトガ、我ガ非常時日本ニ課セラレタル
所ノ重大ナル課題ト相成ツタノデゴザイマ
ス(拍手)「ソ」聯ハ千九百二十八年、卽チ產
業五箇年計畫ノ實行以來、「ソ」聯領土內ニ
於ケル所ノ利權囘收ノ政策ヲ進メテ來テ居
ルノデアリマス、「ソ」聯領內ニ於ケル英米
獨佛ノ資本家ニ渡シテアル所ノ利權ハ、政
治的、經濟的壓迫ニ依ツテ段々之ヲ奪還致
シ、囘收致シテシマツテ居ル、極東露領ニ
於キマシテモ、此ノ只今問題トナツテ居ル
所ノ權益以外ニ、單ナル利權法ニ依ツテ認
メラレテ居ツタ所ノ日本人ノ權益、最モ著
名ナルモノハ):沿海州ノ森林權益、或ハ「オ
ホーツク」ノ金鑛權益其ノ他數種ノ權益ガ
アリマシタガ、ソレ等ハヤハリ種々ナル所
ノ政治的、經濟的、人的壓迫ニ依ツテ、殆
ド全部ヲ囘收サレテシマツテ抛棄シナケレ
バナラナクナツテシマツダ、此ノ國家的、
歷史的ノ三大權益ニ對シテ「ソ」聯ガ唯涎ヲ
流シナガラ眺メテ居ツタケレドモ、如何セ
ン此ノ三大權益ハソレ〓〓基本條約ニ確認
サレテ居ル所ノ權益デアルカラシテ、輕々
ナル所ノ同收策ハ實行セラレナイデ今日ニ
及ンデ居ルノデアリマス、人ハ言フ、日獨
防共協定ノシツ箆返シニ、斯樣ナル所ノ權
益ニ對スル侵害ノ行動ニ出ダノデアルト言
不可、ゾレモアリマセウ、日獨防共協定成
立以來、殊ニ濃厚ナル所ノ色彩ト態度ヲ以
テ臨ンデ來テ居ルノデゴザイマス、尤モ一
種ノ國際的感情問題ガ絡マツテ居ルノデゴ
ザイマスルガ、其ノ根柢ニ於テハ外國ニ對
スル權益ヲ全部囘收致シテ、サウシテ產業
五箇年計畫ニ依ツテ自國ノ手デ之ヲ開發シ
ヨウト云フ意圖ガ動イテ來テ居ルコトハ事
實デゴザイマス、併シナガラ如何ニ「ソ」聯
ガ此ノ日本ノ握ツテ居ル所ノ二大權益ニ對
シテ、之ヲ奪還シ、之ヲ囘收シヨウトシテ
掛ツテモ、是ハ「ソ」聯ノ思フ儘ニハナラナ
イノデアル、シテハナラナイノデアル、露
領漁業權ハ明治初年以來今日マデ、三タビ基
本條約ニ依ツテ確認セラレテ居ルノデア
ル、「ポーツマス」ノ條約ニ依ツテ確認セラ
V、而シテ大正十四年ノ廣田「カラハン」ノ
日「ソ」基本條約ニ依ツテ、現在ノ「ソ」聯政
府が再確認ヲ與ヘテ居ル、是ハ天下周知ノ事
實デアルガ、更ニ之ヲ沿革的ニ遡ツテ見マ
スレバ、明治八年ノ樺太千島ノ交換條約ノ
中ニ、「ポーツマス」條約ノ條項ト殆ド違ハ
ナイ程度ノ條約ガ成立ヲ致シテ居ルノデア
リマス、卽チ其ノ六款ノ第二條ニハ「日本船
及商人通商航海ノ爲メ「ヲホツク」海諸港及
東察加ノ海港ニ來リ又ハ其海及海岸ニ沿フ
テ漁業ヲ營ム等澤テ魯西亞最懇親ノ國民同
樣ナル權理及特典ヲ得ル事」、吾々ノ先輩ガ
時ノ國內情勢ニ依ツテ樺太千島ノ交換ヲ致
シタト云フコトハ、今日カラ之ヲ顧ミルト
洵ニ遺憾ナルコトヲ感ゼザルヲ得ナイノデ
ゴザイマスルガ、其ノ時ノ交換條約ニ「ポー
ツマス」ガ確認シタルト同ジ程度ノ、ヨリ
以上ノ、最惠國約款ニモ等シイヤウナ條約ガ
確認セラレテ居ルノデアル、尙ホ明治八年ノ
此ノ條約ヲ確認スルニ至ラシメタル所ノ根柢
ハ、二百年以來我ガ大和民族ノ北方發展、我
大和民族ノ北洋ニ於ケル所ノ漁業發展ノ動カ
スベカラザル所ノ國民的實力ガ此處ニ至ラシ
メテ、サウシテ明治八年ニ於テ堂々ト此ノ交
換條約ニ於テ露領漁業權益ト云フモノガ確
認サレルニ至ツタノデアリマス、故ニ此ノ露
領漁業條約ト云フモノハ、單ナル日露戰爭十
万生靈ノ代償ト解スルコトハ出來ナイ、歷
史的ニ我ガ日本ノ北方發展ニ依ツテ築キ上
ゲタル所ノ、我國自體ガ建設シタル所ノ權
益デアルノデアリマス(拍手)北樺太ノ石油
石炭ノ權益モ、是ハ單ナル尼港事件ノ代償
トカ、或ハ北樺太ノ保障占領ニ於ケル所ノ
派遣軍撤退ノ一ツノ置土產トシテ出來タル
モノデハナイノデアリマス、此ノ北樺太ニ
對スル所ノ、我ガ國民ノ北方發展ノ足跡ト
云フモノハ、是ハ如何ニカシテ吾々ハ維持
シテ行カネバナラヌ、其ノ一ツノ印トシテ
玆ニ二ツノ石油、石炭ノ權利ガ認メラレテ
居ルモノト吾々ハ解釋シナケレバナラヌ、
而モ此ノ石油、石炭、露領漁業此ノ三ツノ
權益ガ資源ニ乏シキ我國ニ取リマシテハ缺
クベカラザル所ノ重要ナル產業デアルコト
ハ申スマデモナイノデアリマス、「ソ」聯ハ御
承知ノ通リ「ソ」聯革命以後ニ於テハ、有ユ
ル舊時代カラノ、帝政時代カラノ國際條約
ヲ破棄改訂ヲ致シテ來テ居ルケレドモ、此
ノ露領漁業權ニ對シテハ一指ヲ染メルコト
ガ出來ズシテ、「ポーツマス」條約ヲ全面的
ニ之ヲ確認シテ居ルデハナイカ、日本人ノ
開拓シタル所ノ結果デナケレバ-日本人
ノ開拓ヲ俟タナケレバ、世界三大漁場ノ一
クル所ノ北洋漁場ガ今日ノ盛大ヲ致スコト
ハ出來ナイノデアル、吾々ハ唯日本ガ之ヲ
我ガ物ニシテ利用シヨウト云フヤウナ狭イ
考デハナイノデアル、此ノ北洋ノ寶庫デア
ル所ノ水產漁業ヲ露西亞人ニ任シテ置イタ
ノデハ、永久ニ開拓ノ機會ガナイノデアル、
我ガ大和民族ノ力ニ依ツテノミ之ヲ開拓シ
テ、世界ノ利用ニ供給スルコトガ出來ルノ
デアリマス(拍手)此ノ漁業條約ノ成行ハ洵
ニ懸念ニ堪ヘザル所ノ狀況ニナツテ居リマ
スガ、其ノ交涉ノ經過ヲ密ニ見マスルノニ、
ヤハリ此ノ露領漁業ニ對シテ「ソ」聯ガ觸手ヲ
動カシテ、色々ナ手ヲ以テ之ヲ「ソ」聯ノ手
ニ囘收シ、基本條約ヲシテ有名無實ニ陷ラ
シメテヤラウト云フ意圖ガ十分讀メルノデ
アリマス、ソレハ日本人ニ依ヅテ獲得セラ
レテ居ル北洋露領漁場ノ漁區ノ七三%ヲ占
メテ居ル所ノ所謂安定漁區、此ノ安定漁區
ヲ今囘ノ新條約ニ於テハ禁止シ、サウシテ
之ヲ總テ競爭入札ニ掛ケヨウト云フ「ソ」聯
側ノ主張デアル、七三%ヲ占メル所ノ最モ
有力ナル所ノ安定漁區ラ取上ゲテシマウト
云フノガ、「ソ」聯ノ意圖デアルコトハハツ
キリ致シテ居ルノデアル、之ヲ入札ニ掛
ケ、競賣ニ掛ケラレルナラバ、是ハ朞年ナ
ラズシテ露西亞ノ手ニ囘收サレテシマフヲ
デアル安定漁區ト云フ此ノ取扱ヲスルヤ
ウニナツテ、廣田「カラハン」協定ニ依ツテ、
此ノ協定ガ出來タカラコソ初メテ日本ソ露
領漁業ト云フモノガ生命ヲ繫イデ居ルフデ
アル、明治四十一年カラ昭和三年マデノ間
ニ於ケル所ノ、露額漁業ニ於ケル日露ノ勢力
ヲ此較シテ見ルト八對二、卽チ絕對優勢ヲ
我國ガ占メテ居ツタノニ對シテ、昭和五年
ニハ其ノ漁區ノ配分ガ五對五ニ下ツテシマ
ツタ、昭和十一年ニハ全然地位ガ〓倒ヲ致
シテ、四·八對五·一トトツツ來テシマツテ
居ル、此ノ間卽チ紛糾ガ每年續イテ、其ノ結
果廣田「カラハン」協定ノ安定漁區制度ト云
フモノガ玆ニ現ハシテ來タノデアル、此ノ
安定漁區ヲ永久ニ吾々ハ支持シナケレバ、
露領ノ漁業權ト云フモノハ有名無實ニ終ラ
シメラレテシマフノデゴザイマス、而シテ
此ノ露領漁業ノ國家ニ貢獻致シテ居ル所ノ
其ノ狀態ハ、申上ゲルマデモナイコトデゴ
ザイマスガ、英國ニ對シテ年々三千万圓ノ輸出
ヲ雜持シテ居ル、國際賃借上非常ナル貢獻ヲ
續ケテ來テ居ルノデアリマス、其ノ他國内ノ〓
糧問題カラ言ツテモ、又東北六縣ヲ初メ、
新潟、石川、富山、北海道カラ年々一万ノ從
業員ガ出動致シテ、此ノ權益事業ノ經營ヲ
致シテ居ルノデアリマス、斯樣ナ狀態デ名
實共ニ此ノ露領漁業ト云フモノハ我國ニ取
ツテハ重大ナル權益デアルノデゴザイマス、
唯此ノ權益ヲ確保スルガ爲ニハ、非常ナル
所ノ外交上ノ難關ヲ突破シテケルバヲラヲ
イ事情ニ今日ハ立至ツテ居ル、此フ重大ナ
ル權益ヲ民間會社ニ任シテ置クコトハ軽シ
カラヌデハナイカ、斯ウ云フ感ジヲ持ツ者
ガ若シモ官民一部ノ間ニアリトスルナラバ、
左樣ナル所ノ感ジヲ一掃セシメチケレバ、
本當ノ露西亞ニ對スル所ノ國民的力ハ起ツ
テ來ナイ、左樣ナル考ヲ持ツ者ハナイ筈デ
アリマスルケレドモ、若シ左樣ナル意見ガ
アルナラバ、必ズシモ是ハ民間會社ニ經營
サシテ置カテクトモ宜シイ、其ノ經營主體
ハ如何樣ナル所ニ之ヲ變更致シテモ敢テ差
支ハナイノデアリマス、若シ現在ノ代行會
社ガイケナイト云フナラバ、更ニ改善セラ
レタル所ノ代行會社ニ之ヲヤラセルガ宜シ
1ソレデモ尙ホイケナイト云フナラバ、
ソレコソ政府ハ一大決心ヲ定メテ、北洋全
體ノ漁業經營ヲ政府ノ直接監督管理ノ下ニ
置ク所ノ國策會社ニ、之ヲ編成替ヲ致スコト
ハ當然デアルト私ハ思フノデアリマス(拍
手)農林省ニハ此ノ國策會社ニ編成替ヲス
ルト云フヤウナ考ガアリ、腹案ガアル筈デ
アル、此ノ時局ニ於テ、此ノ時局ノ壓力ヲ
以テ初メテ此ノ國策ガ農林省ニ依ツテ踏切
レル筈デアル、何故之ヲヤラヌカ
最後ニ私ハ申上ゲマスガ、此ノ權益ヲ確
保スルガ爲ニハ最早問題ハナイノデアル、
政府ノ腰一ツデアル、露西亞モ日本ノ態度
ヲ探ルベク斯樣ナル所ヲ訐餘曲折フ手段ヲ
執ツテ居ル、日本ノ態度ガハツキリ致シ
テ腰サヘ强硬ニナレバ、露西亞ノ之ニ對ス
ル所ノ壓力ト云フモツハ、自然ニ消散シテ
シマフノデアル、露西亞ガ恫偈外交、權略
外交ヲスルコトハ、今日ヲ以テ始マツタノ
デハナイ、是ハ傳統的ノ露西亞ノ外交政策
ト言ツテ宜シイ、サウシテ强情デ粘リ强ク
テ飽クマデモ粘リ付ク、此ノ露西亞ノ國民
性ト云フモノヲ無視シテ、此ノ權益問題ノ
確保ハ出來ナイノデアル、併シナガラ最後
ノ土壇場ニ至ツテ他愛モナク豹變ヲ致スコ
トモ、是モ露西亞國民性ノ持味デアル、故
ニ〓强ニ腰ヲ强クシテ、根氣負ヲシナイヤ
ウニシテ、之ヲ押ノ一手デ露西亞ニ對抗ヲ
致シテ居レバ宜イノデアル、總理大臣ヲ初
メ外務大臣、陸海軍大臣ニ此ノ腰ガアルカ
ドウカト云フコトガ卽チ今日ノ問題ナノデ
アル(拍手)ドウカ政府ニ於キマシテハシツ
カリ腰ヲ定メテ、サウシテ霞ケ關的ノアノ
型ニ篏ツタ所ノ外交振リデナク、眞劍ニ此
ノ問題ヲ貫徹スベク努力セラレルナラバ、
私ハ從來ノ露領漁業權ノ紛爭歷史ヲ囘顧ス
ルト共ニ、今囘ノ此ノ紛議モ敢テ我ガ目的
ヲ貫徹スルコトニ於テ、必ズシモ絕望デナ
イト云フコトノ自信ヲ持ツ者デゴザイマス、
唯徒ニ形式的ヲ交渉バカリヲヤツテ居ツテ
ハ、何時マデ經ツテモ向フノ頑張リニ我國
ガ押サレ氣味ニナツテ居ルハ今日ノ狀態ハ
卽チツレデアル、有田外務大臣ハ此ノ露領
權益問題ニ對シテハ不思議ナ因緣ヲ持ツテ
居ル、昭和十一年ニ將ニ新條約ノ調印ヲ爲
サントスル所ノ一日カ二日前ニ日獨防共協
定ガ成立シタ爲ニ、此ノ問題ガ紛糾シ始メ
タノデアル、又今日有田外相ガ此ノ問題ノ
解決ノ責任ヲ背負ツテ居ルノデゴザイマス
ガ、此ノ經過カラ見テ有田外務大臣ノ責任
ハ二重ノ責任ヲ負ウテ居ルモノト私共ハ思
フ(拍手)有田外務大臣バカリニ任ス譯ニハ
行カナイ、ドウカ政府全體デ協力ヲ致シテ、
何處マデモ此ノ問題ヲ眞直グニ解決ヲスル
ト云フコトニ努力ヲセラレタイノデアル、
若シ此ノ問題ガ不結果ニ終ルヤウナコトガ
アリマスレバ、今日支那建設ヲ中心ト致シ
マシテ、其ノ國際的日本ノ環境ト云フモノ
ハ著シク壓迫ヲ加ヘラレルノデゴザイマス
カラシテ、間題ハ權益問題デアルケレドモ、
此ノ結果如何ト云フコトハ實ニ我ガ國運
ノ前途全體ニ對スル所ノ關係ヲ及ボシテ來
ルフデゴザイマス、政府ノ肚ヲシツカリ決
メラレテ、此ノ問題ニ對シテハ輕々ナル所
ノ處置ヲ執ラナイデ、十分ニ周到愼重ナル
所ノ態度ヲ以テ、飽クマデモ目的ノ貫徹ニ
努力セラシンコトヲ私ハ希望致シマス(拍
手発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/8
-
009・小山松壽
○議長(小山松壽君) 渡邊泰邦君
〔渡邊泰邦君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/9
-
010・渡邊泰邦
○渡邊泰邦君 私ハ此ノ決議案ニ對シマシ
テ社會大衆黨竝ニ東方會ヲ代表致シマシ
テ·······(笑聲、拍手)贊意ヲ表スル者デアリマ
ス、北洋ノ權益ハ遡レバ日本ノ民族ガ二百
年ニ亙ル非常ニ歷史ノ深イ權益デアリマシ
テ、單ナル一產業部門ノ問題トシテハ、此
ノ歷史ハ餘リニモ因緣ガ深過ギルノデアリ
やく、殊ニ二万人ノ勞働者ガ年々從事致シ
マシテ、家族ヲ入レマスルト二十万人ニ餘
ル、ソレ等ノ人々ノ生活問題モ包含セラレ
テ居ルノデアリマス、現今ノ「ソ」聯當局ノ
方針ト解シマスベキモノハ、執拗ニ此ノ問
題ニ食ヒ下ガリマシテ、日本ニ對シイヤガ
ラセノ連發ニ依ツテ、此ノ問題ヲ紛糾ニ陷
ラシメ、根本的ニハ日本ノ有スル權益ヲ漸
次縮小セントスルノ意圖アルコトハ、極メ
テ明瞭ニ看取セラレルノデアリマス、最近
北樺太ニ於キマスル彈壓、其ノ壓迫ノ如キ
ハ旣ニ前三者ニ依ツテ縷々申述ベラレテ居
リマスルカラ、私ハ玆ニ縷說ヲ避ケマスル
ガ、眼モ當テラレナイ事實ハ幾多吾々ノ眼
前ニ展開サレテ居ルノデアリマス、此ノ間
題ニ對スル理論、此ノ問題ノ見透シニ對ス
ル方法ハ、旣ニ前三者ニ依ツテ論ジ盡サレ
テ居リマスカラ私ハ蛇足ヲ加ヘマセヌガ、
唯歷史的ノ必然性ト其ノ落著ク先ヲ示唆シ
テ、當局ノ斷乎タル處置ヲ促サントスル者
デアリマス(拍手)「ソビエト」聯邦ハ今日ノ
日本ノ地位ガ複雜ナル國際的ノ雰圍氣ニアル
ヲ奇貨居クベシト爲シテ之ニ乘ジテ、我ガ國
民ノ決意ハ牢固トシテ拔クベカラザルモノ
アルコトヲ察知セズ、橫車ヲ押シテ日本ノ
外交ノ軟弱ノ程度ヲ測ラントスルモノデア
ルコトヲ私ハ信ズル者デアリマス(拍手)政
府ハ事理ヲ盡シテ彼等ノ反省ヲ求メ、落著
ク先ニ落著クダラウト云フコトヲ、屢〓言明
セラレテ居ルノデアリマスルガ、私共カラ
見ルト甚ダ手緩イト言ハナケレバナラヌ、
日本政府ノ今日マデノ慇懃鄭重ナル外交ハ、
紳士ノ外交デアリマスルガ、是マデ屢〓、列國
ヲシテ日本與シ易シトノ感情ヲ懷カシメ、
其ノ誤解ニ出發シテ彼等ノ暴慢ヲ助長セシ
メタコトハ、一再ニシテ止マラナイノデア
リマス(拍手)其ノ結果全國民ノ憤激ヲ買ツ
テ、遂ニ實力行使ノ已ムヲ得ザル所ニマデ
立至ラシメタコトハ現ニ今日ノ例トシテ
吾々ハ眼前ニ見テ居ルノデアリマス、卽チ
度ヲ過ギクル謙遜卑屈ナル左顧右眄ハ、却
テ日本ニ取ツテ惡化ノ原因コソスレ、決シ
テ好イ結果ヲ齎スモノデナイト云フコトヲ
銘記セラレマシテ、ドウシテモ此ノ問題ハ
國民ノ權益トシテ斷乎確保スル信念ヲ示サ
レンコトヲ切ニ要望スル者デアリマス、若
シ言葉ノ上デ解決出來ナカツタナラバ、力
ノ囘答ヲ與ヘル以外ニ方法ハナイ、力ノ囘
答ヲ與ヘルコトハ、「ソビヱト」ノミナラズ、
支那事變ニ對シテ、動モスレバ第三國ガ日
本ノ實力ト信念ヲ疑ツテ居ル、ソレ等ノ人
人ニ對シテモ、此ノ力ノ囘答ハ彼等ニモ普
遍的ニ返事ヲ與ヘルモノト看做サナケレバ
ナラヌノデアリマス(拍手)無敵ノ日本陸軍
ハ伊達デ飾ツテ居ルノデハアリマセヌ、浦
鹽ヲ中心ニ潜水艦ガアル、組立潜水艦ガア
ルサウデアリマスガ、恐ルル必要ハナイ、
是ハ吾々ダケガ恐レナイノデナクシテ、コ
ンナモノハ大洋ニ出テ活動出來ナイト云フ
コトハ、旣ニ世界ノ常識デアルコトヲ思フ
ノデアリマス、今日ノ日本ノ實力ハ彼等ヲ
顧慮スル必要ハナイ、況ヤ正義ハ吾等ニア
ルノデアリマス、政府ハ斷ジテ逡巡スルコ
トナク、ハツキリト世界ノ檜舞臺ニ立ツテ、
吾々ハ斯ノ如キ事ヲ斷行スルノダト云フ勇
氣ヲ以テ國民ヲ指導シ、斷乎トシテ「ソビ
千七·聯邦ニ對セラレンコトヲ切ニ要望致
シマス(拍手)有田外務大臣ハ外務省ノ外務
大臣デハナク、國民外交ノ一員トシテ、所
謂國家ノ總力ノ反映タル一ツノ日本國民ノ
代表トシテ、强ク而モ聰明ニ此ノ聞題ヲ善
處セラレンコトヲ切望致シマシテ、本決議
案ニ贊意ヲ表スル者デアリマス(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/10
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011・小山松壽
○議長(小山松壽君) 道家齊一郞君
〔道家齊一郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/11
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012・道家齊一郎
○道家齊一郞君 私ハ只今議題トナリマシ
ク決議案ニ對シテ第二挫警ヲ代表シテ贊成
ノ意思ヲ表明スル者デアリマス、漁業權ノ
何タルカニ付テ、又「ソビエト」ノ態度等ニ
付キマシテハ、前者ニ於テ縷々述ベラレタ
所デアリマスルカラ、私ハ贊成ノ意ヲ表ス
ル經過ノ上ニ於テ、重複スルカモ知レマセ
ヌガ、簡單ニ申述ベテ政府當局ノ決意ヲ促
ス者デアリマス(拍手)
抑〓我ガ北洋漁業ノ歷史ハ旣ニ十六世紀
ニ發シテ居ルノデアリマス、慶長四年ノ松
前藩時代ニ始ツタ所ノモノデアツテ、北洋
漁業ノ發展ハ我ガ民族ノ北方開拓ノ歷史デ
アルノデアリマス、幾百年ノ間或ハ風浪ト
鬪ヒ、或ハ不當ナル所ノ彈壓ニ耐エテ、サ
ウシテ幾多ノ尊キ犧牲ヲ拂ツタ結果デアリ
やくろ、而シテ此ノ旣得權ハ、旣ニ我ガ國運
ヲ賭シタル所ノ日露ノ大會戰ニ於テ、勝利
ノ代償トシテ更ニ之ヲ確保シタモノデアリ
そく、言ヒ換ヘレバ吾々ハ血ト肉ヲ以テ此
ノ權益ヲ買ツタノデアリマス(拍手)我國ニ
對シテ「ポーツマス」條約ハ其ノ漁業權ノ確
保ニ調印シタノデアリマス、其ノ後大正十
四年一月彼ノ芳澤「カラハン」條約ニ依リマ
シテ、更ニ之ヲ確認セシメタノデアリマス、
是ハ「ソ」聯ノ重大ナル條約上ノ義務ニ屬ス
ル、我國ノ確乎不動ノ權利デアルコトハ喋
喋ヲ要シナイノデアリマス、目下其ノ漁業
ハ北洋全體ヲ通ジテ約一億ヲ算スルノデア
ル、「ソビエト」ノ關係ニ於テ約四五千万圓
ニ上ル所ノ漁獲高デアル、サウシテ前者モ
述ベラレマシタヤウニ、其ノ從業員、勞働
者ハ約二万ニ垂ントシテ、家族ヲ入レレバ
十万デアル、其ノ出漁ノ船舶ノ噸數ハ約五
六十万噸、實ニ是ハ世界ノ最大ナル所ノ、
組織的十一ノ體系ヲ成シタ權利デアルノデ
アリマス、我ガ輸出貿易モ此ノ漁業權ヲ失
フナラバ、重大ナル影響ヲ蒙ムルコトハ御
承知ノ通リデアリマセウ、然ルニ「ソ」聯ハ
此ノ漁業施行細則ガ彼ノ國內法ニ依ツテ定
メラレタト云フ所ノ理由ノ下ニ、彼ハ勝手
ナ解釋ヲ行ツテ我ガ權益ヲ壓迫シツツア
ル當時國內法ニ、於テ制定スルコトハ問題
デアルト言ツタノデアリマスガ、「ソ」聯ハ
之ニ對シテ自己ノ正義ヲ主張シテ、斯ル事
ノナイコトヲ保障シタニモ拘ラズ、今日彼
ハ勝手ナ解釋ヲシテ居ル是ハ一體何デアル
カ、ソレハ私我ガ政府當局ノ處置其ノ當ヲ
得ナカツタニ依ルモノト思フノデアリマス、
兎ニ角斯樣ナルコトヲ今論ジテモ致シ方ナ
イノデアリマスガ、彼等ハ機ガアル每ニ吾
等ノ權益ヲ侵害セントシテ居リマス、漁區
ノ如キモ競賣制度デアルコトヲ幸トシテ、彼
等ハ政府ガ個人ノ假面ヲ被ツテ不當ナル高
價ヲ以テ漁區ノ入札ヲ圖リ、漸次我ガ權益
ヲ侵害シツツアリマス、現行條約ノ施行サ
レマシタ昭和三年ニ於テハ、我ハ八〇%以
上ノ權利ヲ持チ、彼ハ二〇%以下デアツタ、
其ノ漁區ノ數ニ於テ我ハ二百五十五デアツ
タ、彼ハ僅ニ四十二デアツタモノガ、最近
ニ於テハ如何デアリマセウカ、全ク其ノ主
客ヲ〓倒スルニ至ツタ、我國ハ三百八十六、
「ソ」聯ハ四百九ヲ算スルニ至ツタノデアリマ
ス、ソレノミナラズ我國ニ對スル所ノ迫害ハ、
有ユル方向ヲ通ジテ益〓强烈ヲ極ムル一方デ
アル、例ヘバ漁區ノ一方的閉鎖ヲスルトカ、
或ハ漁船ハ不法ナ拿捕ヲ行フトカ、或ハ監督
官ガ不法行爲ヲ敢テスルトカ、一々枚擧ニ遑
アリマセヌ、ソレハ恰モ滿洲事變ニ於テ我
等ガ被ツタ權益ノ侵害ト比較スルニモ餘ア
ルモノデアリマス、而シテ彼ハ改訂期ニ
於キマシテ其ノ調印ヲ言ヲ左右ニ託シテ延
期ヲ致シ、遂ニ外交當局ノ軟弱ナル所ノ態
度ニ依ツテ今日マデ至ツタコトハ、旣ニ述
ベラレタ通リデアリマセウ、彼等ノ目的ハ
我ガ權益ノ剝奪デアル、サウシテ終ニハ之
ヲ壞滅セントスルニアルコトハ言フマデモ
ナイコトデアリマス、遂ニ最近ニ至ツテ十
二月ノ二十八日「ノトヴィノフ」外務人民委員
ハ我國ガ北鐵關係ノ支拂ヲ履行シナイト
云フコトヲ口實ニ、條約ノ締結ニ應ゼザル
コトヲ申出タノデアリマス、サウシテ彼ノ
壓迫ハ獨リ漁業權ノミナラズ、石油ノ問題、
石炭ノ採掘權ニト及ンデ居ルノデアリマス、
我國ニ取ツテ石油ガ如何ニ重大デアルカハ
今更申述ベルマデモナイ、何ガ故ニ斯ル狀
態ヲ政府ハ安閑トシテ居ラレルカ、政府ハ
頗ル樂觀的態度ヲ執ツテ居ラレルヂヤアリ
マセヌカ、此ノ條約ハ何トカスレバ結末ガ
著クカノ如ク考ヘテ放任シテ居ルカラ、今
日ノ如キ狀態ニナツタ、此ノ漁業權ハ吾等
ノ血ト肉デ買ツタ以上、政府ハ決意ヲシテ
貰ヒタイ、此ノ權益ハ吾々ノ血ト肉ヲ以テ
モ斷乎トシテ守ラナケレバナラヌト云フコ
トヲ決意シテ貰ヒタイ(拍手)彼等ノ不遜ナ
ル態度ノ原因ヲ考察スルニ、先ヅ第一ニ私
ハ當局ノ軟弱ナル外交政策ヲ擧ゲザルヲ得
ナイノデアリマス、第二ニハ次第ニ完備シ
ツツアル「ソ」聯ノ軍備デアル、而シテ第三
ニハ日支ノ事變、而シテ第三國ノ態度デア
ルノデアリマス、吾々ハ內閣ニ對シテ國民
總親和ナドト云フ御念佛ノヤウナモノヲ要
求シテ居ルノデハナイ、吾々國民ハ左樣ナモ
ノヲ要求シテ居ルノデハナイ、何ヲ要求シ
テ居ルカト云フト、從來ノ如キ軟弱政策ヲ
〓算スルト云フコトニアル、吾々ハ政府ニ
强ク之ヲ警告致シマス、元來我國ノ政府ノ
態度ハ甚ダ外交ニ於テ軟弱デアル、嘗テ滿
洲事變ノ勃發當時「ソ」聯ニ對シテ吾々ノ執ツ
タ行動ハ何ヲ物語ルデアリマセウカ、アノ
乾念子ニ於ケル砲艦ノ砲擊ハ何ヲ意味スル
カ、彼ハ何ガ故ニ沈默シタカ、第二ニ最近
ニ起ツタ所ノ張鼓峰ノ事件ハ如何ニシテ解
決シタデアラウカ、常ニ是ガ「ソビエト」ノ態
度デアル、彼ハ押セバ退キ、退ケバ押シテ
來ル、是ガ「ソビエト」ノ傳統的國民外交デア
ルノデアリマス、吾等ハ此ノ外交ヲ能ク知
ラナケレバナラヌ、私ハ外務當局ガ獨リ
「ソ」聯ニ對スルノミナラズ、甚ダ軟弱ナル態
度ヲ以テ今日諸國ニ對應シテ居ラレルコト
ヲ甚ダ遺憾トスル者デアリマス、獨リ今日
ニ其ノ軟弱ナル態度ガ始ツタモノデハナ
イ、一例ヲ申上ゲルナラバ驚クベキ事例ガ
アル、私ガ嘗テ歐洲ヲ廻ツタ時ニ、「ハンブ
ルグ」ノ市長ニ會ヒタイト言ツタ所ガ、外
務省ノ當局ハ何ト言フカ、「ハンブルグ」ノ
市長ハ是ハ一國ノ王樣ダ、サウ君簡單ニ會
ヘナイ(「簡單」ト呼フ者アリ笑聲起ル)ソン
ナ馬鹿ナコトハナイ、彼等ハ一週間モ二週
間モ其ノ面會ニ日ヲ要シテ、躊躇逡巡ヲシ
テ居ル、何トナレバ敬意ヲ表スルノダト言
フ、倫敦ノ市長ニ會ヒタイト言フト、週
間待ツテ吳レト言フ、サウシテ外交上ノ事
ハ調ベテ居ルカト云フト、何ニモ調ベテ居
ナイ、「アタッシェ」ノ方ガ餘程能ク調ベテ居ル、
一々之ヲ述ベルト長クナリマスガ、私共ハ
總テノ方面ニ於テ此ノ外交ノ刷新ヲ要求ス
ルモノデアル、此ノ刷新ガ目下ノ我ガ日支
事變ノ解決ノ上ニ於テ缺クベカラザル所ノ
必要ナル條件デアルト思フノデアリマス
今ヤ世界ハ擧ゲテ一大變革期ニ際會シツ
ツアル、政治、經濟、思想、外交ニ於テ、
大キナ轉囘ヲ爲シツツアルコトハ御承知ノ
通リデアル、經濟ニ於テハ國防經濟、卽チ
統制ヲ中心トスル經濟本位ニ變リ、自由主
義ヲ〓算シツツアル、思想ニ於テモ國家主
義流行ノ時代デアル、外交ニ於テハ何デア
ルカト云フト、力ヲ背後トシタ所ノ强硬外
交デアリマス、果シテ日本ノ外務當局ハ、
此ノ新時代ノ躍進國家ノ執ツテ居ル所ノ政
策ニ相應シイ行動ヲ執リツツアルデアラウ
カ、「エチオピヤ」ニ對スルア2伊太利ノ行
動獨逸ヲ行動、之ヲ思ヒ合セタナラバ、
我ガ外交ガ如何デアルカハ判斷ニ苦シマザ
ル所デアリマセウ、今日ノ外交方針ハ大膽
デナクチヤナラナイ、サウシテ日「ソ」問題
ノ解決モ、今囘ノ廣東ノ攻略ノ如ク其ノ有
終ノ美ヲ收メナケレバナラヌ、是ニハ强硬
デナクチヤナラヌ、是ニハ力ガナクチヤナ
ラヌ、今日ハ力ガ權利ク時代デアル、吾々
ハ力ニ依ツテ最後ノ權利ヲ把握シナケルバ
ナラヌ、此ノ外交問題ノ解決モ、漁業權ノ
解決モ、又最後ノ力ヲ以テ解決シナケレバ
ナラヌト思フノデアリマス、簡單デアリマ
スガ、私ハ本案ニ賛意ヲ表スル者デアリマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/12
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013・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ニテ討論ハ終局致
シマシタ、採決致シマス、本案ニ贊成ノ諸
君ノ起立ヲ求メマス
〔總員起立〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/13
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014・小山松壽
○議長(小山松壽君) 起立總員
〔拍手起ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/14
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015・小山松壽
○議長(小山松壽君) 仍テ本案ハ全會一致
可決セラレマシタ-此ノ際外務大臣ヨリ
發言ヲ求メラレテ居リマス、之ヲ許シマス
〔國務大臣有田八郞君登墙具〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/15
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016・有田八郎
○國務大臣(有田八郞君) 只今ノ對ソ權益
確保ニ關スル決議ニ付キマシテ、此ノ際政
府ノ決意ヲ表明致シテ置キタイト思フノデ
アリマス、政府ト致シマシテハ是等ノ權益
確保ノ爲、從來努力ヲ怠ラチカツタノデア
リマスルガ、目下ノ情勢ニ照シマシテ、更
ニ一段ノ努力ヲ傾注シ、適切ナル對策ヲ講
ズルニ於テ、其ノ最善ヲ盡サンコトヲ期ス
ル次第デアリマス(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/16
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017・小山松壽
○議長(小山松壽君) 日程第二、競馬法ノ
臨時特例ニ關スル法律案第一讀會ヲ開キヌ
ス-櫻內農林大臣
第二競馬法ノ臨時特例ニ關スル法律
案(政府提出)第一讀會
競馬法ノ臨時特例ニ關スル法律案
競馬法第八條第一項ノ規定ニ依リ日本競
馬會ガ政府ニ納付スベキ金額ハ同項ノ制
限ニ拘ラズ其ノ賣得金ノ額ノ百分ノ十一·
五以内ニ於テ命令ノ定ムル金額トス
前項ノ規定ニ依ル政府ニ納付スベキ金額
ト競馬法第九條ノ規定ニ依ル賣得步合金
額トノ合計ハ賣得金ノ額ノ百分ノ十八ヲ
超ユルコトヲ得ズ
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
本法ハ支那事變終了後其ノ翌年十二月三
十一日迄ニ之ヲ廢止スルモノトス
〔國務大臣櫻內幸雄君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/17
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018・櫻内幸雄
○國務大臣(櫻内幸雄君) 只今議題トナリ
マシタ競馬法ノ臨時特例ニ關スル法律案ノ
提出ノ理由ヲ申上ゲタイト存ジマス、今
次支那事變ノ推移ニ對處シ、併セテ最近
ニ於ケル競馬施行ノ實況ニ鑑ミマシテ、
此ノ際競馬法ニ依ル政府納付金ニ關シ所要
ノ改正ヲ加フルノ要アリト認メマシテ、右
ニ關シ過般馬政調査會ニ對シテ諮問ヲ致シ、
其ノ答申ニ基キ立案致シタモノデアリマシ
テ、競馬法ニ依ル政府納付金率及ビ之ニ關
聯スル勝馬投票劵ノ賣得金ニ對スル控除率
ニ關シ、臨時的ニ必要ナル改正ヲ加ヘント
スルモノデアリマス、何卒御審議ノ上速ニ
御協賛アランコトヲ希望致シマス(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/18
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019・小山松壽
○議長(小山松壽君) 本案ノ審査ヲ付託ス
ベキ委員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/19
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020・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ政府提出、軍馬資源
保護法案外一件ノ委員ニ併セ付託サレンコ
トヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/20
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021・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/21
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022・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第
三、金資金特別會計法中改正法律案、第
讀會ヲ開キマス-石渡大藏大臣
第三金資金特別會計法中改正法律案
(政府提出)第一讀會
金資金特別會計法中改正法律案
金資金特別會計法中左ノ通改正ス
第三條第二項ヲ左ノ如ク改ム
前項ノ規定ニ依リ本資金ヲ使用セント
スルトキハ其ノ金額ヲ一般會計又ハ他
ノ特別會計ノ歲入ニ繰入レ當該會計ノ
歲出トシテ拂出スベシ
第四條第一項ヲ左ノ如ク改ム
本資金ハ本會計ニ屬スル經費ヲ支辨ス
ル爲必要ナル金額ヲ除クノ外大藏大臣
ノ定ムル所ニ依リ之ヲ金、國債、產金
振興債劵、日本產金振興株式會社株式
(額面總額二千五百萬圓ヲ限ル)又ハ勅
令ノ定ムルモノニ運用スルコトヲ得
第五條中「一般會計」ノ下ニ「又ハ特別會
計」ヲ加フ
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣石渡莊太郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/22
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023・石渡莊太郎
○國務大臣(石渡莊太郞君) 金資金特別會
計法中改正法律案ニ村テ說明致シマス、現
下ノ時局ニ顧ミマスルニ、產金ノ增加ヲ圖
リ、國際收支ノ改善ニ努ムルコトハ、喫緊
ノ要務デアルト存ジマスル所、是ガ爲ニハ
金資金ノ運用範圍ヲ擴張致シマシテ、從來
ノ金、國債、產金振興債劵又ハ日本產金振
興株式會社株式ニ對スル運用ノ外、勅令ノ
定ムルモノニモ運用シ得ルコトトスル等ノ
必要ガアリマスノデ、本法律案ヲ提出致シ
マシタ次第デアリマス、何卒御審議ノ上速
ニ協賛ヲ與ヘラレンコトヲ希望致シマス(拍
手発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/23
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024・小山松壽
○議長(小山松壽君) 本案ノ審査ヲ付託ス
ベキ委員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/24
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025・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ政府提出、昭和十四
年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲公債發
行ニ關スル法律案外二件ノ委員ニ併セ付託
サレンコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/25
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026・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/26
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027・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第
四、臺灣米穀移出管理特別會計法案、第
讀會ヲ開キマス-石渡大藏大臣
第四臺灣米穀移出管理特別會計法案
(政府提出)第一讀會
臺灣米穀移出管理特別會計法案
臺灣米穀移出管理特別會計法
第一條臺灣總督府ニ於テ米穀ノ移出ヲ
管理スル爲特別會計ヲ設置シ其ノ歲入
ヲ以テ其ノ歲出ニ充ツ
第二條本會計ニ据置運轉資本ヲ置キ其
ノ金額ハ五百萬圓トシ漸次臺灣總督府
特別會計ヨリ繰入ルルモノトス
第三條本會計ニ屬スル經費ヲ支辨スル
爲必要アルトキハ政府ハ本會計ノ負擔
ニ於テ借入ヲ爲スコトヲ得但シ其ノ金
額ハ二千五百萬圓ヲ超ユルコトヲ得
ズ
第四條本會計ニ於テハ米穀ノ賣渡代
金積立金ヨリ生ズル收入、借入金及
附屬雜收入ヲ以テ其ノ歲入トシ米穀ノ
買入代金、米穀ノ買入賣渡加工貯藏及
運搬ニ關スル諸費、借入金ノ償還金
及利子、一時借入金ノ利子其ノ他諸費
ヲ以テ其ノ歲出トス
第五條米穀ノ買入數量ノ增加其ノ他避
クベカラザル事由ニ因リ生ジタル豫算
ノ不足ヲ補フ爲歲出豫算ニ豫備費ヲ設
クルコトヲ得
第六條本會計ノ歲出額ハ其ノ實際ノ歲
入及据置運轉資本ノ合計額ヲ超過スル
コトヲ得ズ
第七條本會計ニ於テ支拂上現金ニ餘裕
アルトキハ之ヲ大藏省預金部ニ預入ル
ベシ
第八條本會計ニ於テ支拂上現金ニ不足
アルトキハ本會計ノ負擔ニ於テ一時借
入ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル一時借入金ハ當該年
度內ニ之ヲ返還スベシ
第九條本會計ニ於テ決算上過剩ヲ生ジ
タルトキハ之ヲ積立ツベシ
本會計ニ於テ決算上不足ヲ生ジタルト
キハ前項ノ規定ニ依ル積立金ヨリ之ヲ
補足スベシ
第十條本會計ノ積立金ハ之ヲ臺灣ニ於
ケル農業ノ調整、開發及助長ノ爲必要
ナル費途ニ使用スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ本會計ノ積立金ヲ使
用セントスルトキハ其ノ金額ヲ臺灣總
督府特別會計ノ歲入ニ繰入レ臺灣總督
府特別會計ノ歲出トシテ拂出スベシ
第十一條本會計ノ積立金ハ國債ヲ以テ
保有シ又ハ大藏省預金部ニ預入レ之ヲ
運用スルコトヲ得
第十二條本會計ノ每年度歲出豫算ニ於
ケル支出殘額ハ之ヲ翌年度ニ繰越シ使
用スルコトヲ得
第十三條政府ハ每年本會計ノ歲入歲出
豫算ヲ調製シ歲入歲出ノ總豫算ト共ニ
帝國議會ニ之ヲ提出スベシ
第十四條本會計ノ收入支出ニ關スル規
程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
附則
本法ハ昭和十四年度ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣石渡莊太郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/27
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028・石渡莊太郎
○國務大臣(石渡莊太郞君) 臺灣米穀移出
管理特別會計法案ニ付テ說明致シマス、臺
灣總督府ニ於テ米穀ノ移出管理ノ爲ニ行ヒ
マスル米穀ノ買入賣渡、加工又ハ貯藏ニ關
スル一切ノ歲入歲出ハ、之ヲ他ノ會計ト區
分シテ經理スルヲ適當ト認メマスル所、是
ガ爲特別會計ヲ設置スルノ必要ガアリマス
ノチ、此ノ法律案ヲ提出致シマシタ次第デ
ゴザイマス、何卒御審議ノ上速ニ協贊ヲ與
ヘラレンコトヲ希望致シマス(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/28
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029・小山松壽
○議長(小山松壽君) 質疑ノ通〓ガアリマ
ス、之ヲ許シマス-岡野龍一君
〔岡野龍一君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/29
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030・岡野龍一
○岡野龍一君 私ハ只今提案致サレマシタ
臺灣米穀移出管理特別會計法案ニ對シテ、
數點ノ疑義ヲ質シタイト思フノデアリマ
ス、主トシテ拓務大臣、之ニ關聯致シマ
シテ陸軍大臣、農林大臣ヨリモ御答辯ヲ煩
シタイト思フノデアリマス、又財政的見地
ヨリ質問致シマスル點ニ付テハ、石渡大藏
大臣ノ御答辯ヲ煩シタイノデアリマス、諸
君、此ノ移出米管理法案ナルモノハ、昨年
六月八日小林總督ガ帝國「ホテル」ニ於テ、事
態ノ樂觀ヲ許サザルヲ看取セラレマシテ、
都下ノ新聞記者ヲ集メラレテ御聲明ニ相成
ツタノデアリマスガ、其ノ趣旨ヲ要約致シ
マスルト斯ウ云フノデアリマス、第一點ハ、
島內ノ米價ヲ適正ナラシメ米作偏重ノ傾向
ヲ矯メル、第二點ハ、軍事上或ハ國策經濟
上、帝國領土內ニ於テ自給ヲ必要トスル國
家的有用作物ノ栽培ヲ奬勵シ、農家經濟ノ
安定向上ヲ期ス、第三ハ管理事業ノ剩餘金
ヲ以テ積極的ニ農業生產力ノ增進ヲ圖リ、
農產資源ノ開發利用ヲ促進スル、斯樣ニ述
ベラレテ居ルノデアリマス
私ハ此ノ故ニ、先ヅ第一點ト致シマシテ、
戰時食糧政策ノ見地ヨリ質疑ヲ致シタイト
思フノデアリマス、事變以來一年有半我國
ハ前古未曾有ノ國難ニ直面シナガラ、國民
ハ忍ブベカラザルヲ忍ビ、有ユル困苦缺乏
ニ堪ヘツツアルノデアリマスケレドモ、何
トナク國民ノ間ニ餘裕ガアリ、不安、焦燥
ノ氣分ノナイノハ何ガ故デアリマセウカ、
言フマデモナク食糧問題、吾々ノ最モ大切
ナ食糧ニ不足ヲ缺イテ居ナイト云フコトデ
アリマス、有ユル物資ニ對シマシテ続制ガ
行ハレ、此ノ統制ノ爲ニ轉業失業、有ユル
困苦ヲ國民ハ嘗メツツアリマスケレドモ、
大事ナ國民生活ノ安定ニ最モ大切ナル食糧
ニ對スル統制ヲ受ケテ居ナイト云フコトハ、
我國ノ一大强味デナクテハナラヌノデアリ
マス、諸君、歐洲大戰當時交戰各國ガ開戰
後間モナク、其ノ〓糧ニ統制ヲ加ヘタト云
フコトハ、諸君御承知ノ通リデアリマスケ
レドモ、之ヲ想ヒ起ス時ニ今更ノ如ク〓糧
農產物ノ重要性ヲ痛感セザルヲ得ナイノデ
アリマス、二月ノ「農政」ニ農政ノ權威者安
藤博士ガ引例サレテ居リマスケレドモ、歐
洲大戰ノ直後英國ノ「ヘンリー·リユース」ガ
其ノ著「平時及戰時ニ於ケル食糧供給」ト云
フ書物ノ〓言ニ於テ、斯ク述ベラレテ居ル
ノデアリマス、食糧ハ古今ヲ通ジテ平時ニ
於テ缺クベカラザル物資タルト共ニ、戰時
ニ於ケル最モ重要ナル兵器デアル、戰時ニ
於ケル最モ重要ナル兵器デアルト述ベテ居
ルノデアリマス
〔議長退席、副議長著席〕
更ニ殺人器ハ原始時代ノ投石器、弓矢ヨリ
近代ノ銃砲、水雷、爆彈、毒瓦斯ニ至ルマ
デ、人智ト科學ノ進步ニ依リ著シク變化セ
ルモ、戰爭ヲ決定セシムルニ最モ有力ナル
モノハ飢餓、食糧ノ不足デアルコトハ普佛
戰爭ニ於ケル巴里市、最近ノ大戰ニ於ケル
獨逸ガ適例デアルト「ヘンリー·リユースㄴ
ハ述ベテ居ルノデアリマス、斯ノ如ク此ノ食糧
生產物ノ大切ナルコトハ、殊ニ米穀ノ大切テル
コトハ、今更喋々ヲ要シナイノデアリマス、然ル
ニ聖戰第三年ニ入リマシタ所ノ今日、吾々
ハ戰時〓糧問題ニ付テ十分警戒ヲ致サネバ
ナラヌノデアリマス、卽チ昭和十四年度ノ
需給推算ニ於テ、當初八百万石ノ次年度持
越ガ豫想セラレテ居リマシタケレドモ、第
二囘豫想ニ於テ是ガ殖エマツテ、九百七十
万石ノ次年度持越ガ豫想セラレテ居ルノデ
アリマス、併シナガラ決シテ之ヲ以テ安心
スルコトハ出來マセヌ、ナゼカト云ヘバ米
穀ノ消費量ガ年々著シク增大致シテ居ルノ
デアリマス、卽チ昭和十一年ニハ七千三百
万石デアリマシタノガ、昭和十二年ニハ七千
九百万石、昭和十三年ニハ八千万石ニ殖エ
テ居ルノデアリマス、更ニ本年度ハ八千万
石ヲ遙ニ突破スルト云フコトハ是ハ常識デ
アリマス、更ニ戰時食糧對策、卽チ支那事
變ガ或ル時期ニ解決ヲ致シマシテモ、十年、
二十年ノ長期建設ト云フコトヲ考ヘル上ニ
於テハ、吾々ハ今後十年、二十年先ノ〓糧
問題ヲ解決スルコトヲ心掛ケナケレバナリ
マセヌ、人口問題ノ權威デアリマスル所ノ上
田博士ハ、十年後ニハ內地ダケデ八千四百
万石、二十年後ニハ九千二百万石ノ消費量
ヲ增大スルト言ツテ居ルノデアリマスケレ
ドモ、私ヲ以テ言ハシムレバ、是ハ平時ノ
計算デアツテ、事變以來ノ戰時、今後ノ長
期建設ト云フコトヲ考慮セラレザル平和的
ナ計算デアリマスルガ故ニ、更ニ增大スル
ト云フコトハ是ハ火ヲ賭ルヨリモ明カデア
リマス、更ニ朝鮮モ僅カデハアリマスルケ
レドモ、消費量ヲ增シテ居リマス、過日ノ
委員會ニ於ケル大野政務總監ノ言明ニ依リ
マスルト、一昨年ハ朝鮮ヨリ滿洲ニ僅カ五
万石出テ居リマスルケレドモ、昨年ハ二十九
万石、殆ド六倍ニ相成ツテ居ルノデアリマス、
之ヲ抑ヘテ居ルガ、若シ之ヲ抑ヘラレナイナ
ラバ三十万石、四十万石、五十万石ヲ突破ス
ルト云フコトハ、私ハ當然デアラウト思フ
ノデアリマス、更ニ今日ハ東亞經濟「ブロツ
ク」ト云フコトガ喧シク言ハレテ居リマス、
卽チ我ガ日本ダケノ食糧問題デハアリマセ
タ、滿洲、支那、卽チ我ガ經濟圈內ニアリ
マスル所ノ東亞一體ヲ考ヘテ、東亞ト云フ
大局ニ立チテ食糧問題ノ解決ヲ圖ラナクテ
ハナリマセヌ、諸君、滿洲ハ今日年々米モ
小麥モ五六十万石ノ不足ヲ告ゲテ居リマス、
支那ハ米ニ於テ四百万石乃至五百万石、小
麥ニ於テ二百万石ヲ不足致シテ居ルト言ハ
レテ居ルノデアリマス、殊ニ支那ノ東亞新
秩序ノ建設ニ當リマシテ、都會ハ破壞セラ
レ、農村モ疲弊困憊致シテ居リマス、此ノ
農村ニ向ツテ、先ヅ米ヲ供給スルコトガ宜
撫工作上何ヨリモ彼等ノ人心ヲ捉ヘルコト
デアル、是ガ宣撫工作ノ唯一ノ策デアルト
サヘモ言ハレテ居ルノデアリマス(拍手)
飜テ我國ノ狀態ヲ見マスト云フト、支那
事變ハ言フマデモナク目下進行中デアリ、
隨テ事變以來農村靑年ノ應召、軍馬ノ徵用、
是等ニ依ツテ勞働力ノ不足致シタコトハ言
フマデモアリマセヌ、又十六年マデノ生產
力ノ擴充ニ依リマシテ、軍需工場ニ農村カ
ラ引張ラレル、少クトモ都會ニ止ツテ、農
村ニ歸農スベキ人間ガ減ルト云フコトモ、
是ハ勘定ニ入レナケレバナリマセヌ、而モ
一面ニ於テハ滿洲移民ノ奬勵ヲ致サレテ居
リマシテ、滿洲ニ對スル我ガ農民ノ進出ト
云フコトガ考ヘラレテ居ルノデアリマス、
殊ニ昭和十二年度ハ十一年度ニ比較致シマ
シテ、二万二千五百八十六戶ノ農家ノ減少
ニ相成ツテ居リマス、昭和六年以來農家ノ
戶數ハ減少ノ一途ヲ迪リツツアルフデアリ
マス、斯ノ如ク消費量ガ著シク增大スルニ
反比例シテ、國內ノ食糧生產方面ノ農村ノ
勞働力ノ不足、滿洲ニ對スル進出、軍需工
業方面ヨリノ勞働力ノ吸引、有ユル惡條件
ガアリマス爲ニ、餘程〓糧問題ノ確保ニ付
テハ農林當局、臺灣當局、朝鮮當局ハ頭ヲ
用ヒラレナクテハナラヌト思フノデアリマ
ス(拍手)卽チ此ノ點ニ關シマシテ農林省ガ
今マデノ態度ヲ改メテ、三百万石ノ增產計
畫ヲセラレ、朝鮮ニ於テ四十万圓ノ豫算ヲ
計上シテ、二百万石ノ增產計畫ヲセラレル
ト云フコトハ、洵ニ時宜ヲ得タモノト致シ
マシテ、私ハ其ノ態度ニ敬服セザルヲ得ナ
イノデアリマス、併シナガラ拓務大臣、臺
灣當局ニ私ガ申上ゲタイコトハ、今囘提案
セラレマシタ所ノ移出米管理案ナルモノハ、
今日ノ時勢ノ變化ヲ見ザル、卽チ時勢ノ變
化以前ノ案デアリマシテ、今日ノ戰時食糧
對策ト致シマシテハ、矛盾逆行ノ嫌ヒハナ
イカ、時代ニ逆行シテハ居ラヌカ、此ノ點
ヲ拓務大臣ニ御尋致シタイノデアリマス、
而モ拓務大臣ハ同ジ主管デアリマス所ノ朝
鮮ニ於テハ、增產計畫ヲ認メテ居ラレル、
サウシテ滿洲ノ移民進出ト云フコトニ力ヲ
入レテ居ラレル、然ルニ臺灣ニ於テノミ減
產ノ傾向ヲ來スベキ臺灣米移出管理案ヲ出
サレル所以ハ、何處ニアルノデアリマスカ、
此ノ點ニ對シテ世上多クノ疑ガアリマスカ
ラ、私ハ贊否何等決シテ居リマセヌデ、白
紙デアリマスケレドモ、世上疑ガアル以上
ハ、其ノ疑ヲ解カレル責任ガアラウト思フ
ノデアリマス(拍手)米作ヲ抑制スル時代ト
云フモノハ今日過ギマシタ、昭和七年ニハ
外地米ノ輸入制限ヲ實施スルカドウカ、昭
和八年ニハ米穀統制法ニ依ツテ米ヲ統制シ
ヨリ、昭和九年ニハ米穀ノ供給過剩ガ問題
トナツタ、卽チ一月三十一日ノ議會開會中
ニ、農林當局ガ發表セラレタ前年度ノ實收
高ハ七千八百二十万石ニ上ツテ、空前ノ豐
作デアリ增收デアツタ、此ノ事ガ問題ニナ
ツタ、卽チ昭和七年八年九年ノ時代ト今日
トヲ混同セラレル所ニ、錯覺ガアルノデハ
ナイカ(拍手)之ヲ私ハ指摘致シマシテ反省
ヲ求メ、且ツ之ニ對スル御意見ヲ承リタイ
ノデアリマス、拓務大臣ニ對シテハ朝鮮デ
ハ增產ヲ認メ滿洲ニハ移民ヲ奬勵セラレ、
臺灣デハ減產ノ傾向ヲ有スル、此ノ矛盾ガ
豫算總會ニ於テモ問題ニナツタガ、之ニ對
シテ如何ナル御考ガアルカドウカ、世ノ疑
ヲ御解キ願ヒタイノデアリマス
之ニ關聯致シマシテ櫻內農相ニ一言御尋
致シテ、御意見ヲ承ルコトガ出來マスレバ
幸デアリマス、今日我國ノ農村部落團體ハ
眞ニ報國ノ熱誠ニ燃エ、犧牲奉公ノ念旺ン
デアリマシテ、所謂隣保相扶ケ、能ク銃後
護國ノ實ヲ擧ゲツツアルコトハ、大臣モ御
認メノコトト思フノデアリマス、併シナガ
ラ物ニハ限度ガアリマス、事變ガ長期ニ亙
ルニ從ヒマシテ、今ヤ漸ク人的資源ノ不足
ヲ感ジツツアルノデアリマス、而シテ部落
實行團體ニ於キマシテハ色々ナコトヲ中央
カラ命令サレマシテ、日夜是ガ對策ニ苦心
慘澹致シテ居ルノデアリマス、今日農村方
面ニ於キマシテ部落團體ニ對スル助成金ガ
問題ニナツテ居リマスガ、此ノ助成金ニ付
テ農林大臣ハ如何ニ御考慮ナサツテ居ルノ
デアリマスカ、此ノ事ニ付テノ御所見ヲ承
リタイノデアリマス
次ニ此ノ管理案ト特用作物問題ニ付キマ
シテ、拓務大臣及ビ陸軍大臣ノ御所見ヲ承
リタイト思フノデアリマス、此ノ管理案ハ
要スルニ米作偏重デアルカラ、此ノ米作偏
重ヲ抑ヘルト云フ、卽チ米ヲ作ルコトヲ抑
ヘル、其ノ代リ國家有用ノ材デアル特殊作
物、曰ク黑麻、曰ク苧麻、曰ク蓖麻、廣義
ニ申シマスナラバ甘蔗モアリマセウ、甘藷
モアリマセウ、棉花モ入リマセウ、軍事上
必要ナル特用作物ヲ作ルト申サレテ居ル、
私ヲ以テ言ハシメレバ、又世間疑フ所
デハ、此ノ特用作物ノ耕作ト云フコトハ、
此ノ管理案ヲ以テシナクテモ指導奬勵ニ
依ツテ其ノ目的ヲ達シ得ルト思フノデア
リマスガ、如何デアリマスカ、私ハ此
ノ特用作物ガ年々增產致サレテ居ルト云フ
コトノ資料ヲ、此處ニ澤山持ツテ居リマ
ス、ケレドモ是ハ委員會デ御尋致シマス、
後ニハ兵役法其ノ他大事ナ法案ガ控ヘテ居
リマスカラ、成ベク簡略ニスル爲ニ省キマ
スガ、甘蔗ノ問題ニ付テモ此處ニ資料ガア
リマス、苧麻モアリマス、箆麻モアリマス、
黃麻モアリマス、唯一點此處デ陸軍大臣ニ
質問致シマスル關係上、申上ゲネバナラヌ
ノハ、此ノ管理案ニ依ツテデナイト特用作
物ノ奬勵ガ出來ヌト申サレテ居リマスケレ
ドモ、此ノ蓖麻ハ軍事上必要ナモノデアリ
マン、此ノ蓖麻ハ昭和十一年ニハ僅ニ三百
十一町步、臺灣流ニ申シテ三百十一甲デア
リマシタノガ、二年後ノ昭和十三年ニハ八
千町步ニ增大致シテ居ルノデアリマス、此
事ハ指導奬勵其ノ宜シキヲ得タ結果デア
リマス、卽チ此ノ蓖麻ニ付キマシテハ、是
ハ軍事上必要ダ、又此ノ非常時ニ必要ダカ
ラ、オ前達農民ハ愛國蓖麻トシテ蓖麻ノ增
殖ヲ圖レト云フヤウニ奬動ヲナサツタ爲
二、僅カ二箇年ノ間ニ三百町步ガ八千町步
ニナツタノダ、然ルニ何ヲ好ンデ此ノ管理
案ガ必要ナノカ、是ガ臺灣ノ農村ニ於ケル
疑デアリマス、此ノ點ニ對シテ拓務當局ノ
御答辯及ビ陸軍大臣ノ御答辯ヲ煩ハシタ
イ、卽チ特用作物ノ增產ハ今囘ノ管理案
ニ依ラズトモ、臺灣當局ノ指導獎勵ニ依ツ
テ十分デアル、卽チ殖產局、各州ノ勸業課
其ノ他ノ能力ヲ總動員致サレマスナラバ、
立派ニヤツテ行ケル斯ウ云フノデアリマ
ス、特用作物ハ又軍事上必要ナルコトハ認
メマスガ、其ノ指導奬勵ニ依ツテ目的ヲ達
シ得ルト思フガ、ドウデアリマスカ、管理案
ニ依ツテ米作ヲ抑制セザレバ、目的ヲ達シ
得ズト軍部當局ハ御考ニナルカドウカ、若
シモ軍事上ドウシテモ、愛國蓖麻ガ必要ダ、
苧麻ガ必要ダト言フナラバ、オ前ノ所ハ是
ダケヤレト云フヤウニ、反別ヲ强制的ニ割
當テテ行ケバ、軍事上必要ナ苧麻、菎麻等
ハ充シ得ルト考ヘマスガ、如何デアリマス
カ、是ハ私ノ疑ノミナラズ、此ノ疑ガ臺灣
島民ノ間ニ充滿シテ居リマスガ、軍部當局
ハ如何ニ考ヘラレマスカ、此ノ一點ヲ御尋
致シタイノデアリマス、若シ此ノ管理案ニ
依ツテ米作ヲ抑ヘテマデモ、特用作物ヲヤ
ラナケレバナラヌト軍當局ガ御考ニナルナ
ラバ、非常時ニ於ケル食糧問題ニ對シテ片
手落デハナイカト云フ疑ガ、附ケ加ヘラレ
ルノデアリマスガ、此ノ點モ重ネテ御尋致
シタイノデアリマス
次ニ石渡大藏大臣ニ御尋致シマス、財政
上ノ問題デアリマス、卽チ臺灣移出米管理
特別會計ニ於キマシテ、此ノ豫算ヲ見マス
ト利鞘一石ニ付キ四圓ト相成ツテ居ルノデ
アリマス、而シテ半箇年ノ豫算ニ賣拂諸費
ガ五百六十餘万圓、檢査費ガ十万餘圓、調
査費ガ四十八万餘圓、創業費ガ八十三万餘
圓其ノ他合計八百万圓ニ近イ支出ヲ豫定
セラレマシテ、利益金ガ百九十餘万圓ニ相成
ツテ居リマス、此ノ中ニ損失補償ノ爲ニ積
立テテ置ク、又一部ハ臺灣當局ガ常ニ口ニセ
ラレマス所ノ農村還元デアリマス、之ヲ百
百九十四万圓餘ノ利益ト見込ンデ居ラレマ
スケレドモ、私ハ之ニ疑ガアルノデアリマ
ス、卽チ內地ニ於ケル米穀特別會計ニ於テ
モ莫大ナル損失補塡ヲ致シテ居ルコトハ、
天下周知ノ事實デアリマス、併シナガラ是
ハ農民ノ救濟ト云フ意味ニ於テ、莫大ナル
負擔ヲ國庫ガ致スノデアリマスカラ、言譯
ハ立ツノデアリマス、然ルニ臺灣米ノ管理
案ニ於テハ、農民カラ一石ニ付キ四圓ダケ
安ク取上ゲテ、サウシテ利益ガナカツタ時
ニハドウ辯解ナサルノデアリマスカ、私ハ
是ハ重大問題ダト考ヘルノデアリマス、而
モ此ノ値段ハ植付前ニ發表セラルルト言フ、
然ラバ植付前ニ旣ニ今度ノ米ハ幾ラデ買上
ゲテ貰ヘルト云フコトガ、ハツキリ分ルノデ
アリマスカラ、米ガ出來タガ、モウ將來値上リ
ノ望ミハナイ、暴落モ致シマセヌケレドモ、
値上リ見込ガナイ爲ニ、皆一時ニ賣渡申込
ガ殺到スル、賣ツテ置ク方ガ宜シイ、賣ラ
ズニ自分デ貯藏シ、自分デ保管シ、自分デ
金利ヲ持ツコトヨリモ、之ヲ賣渡シテ置ク
方ガ利益デアルト云フコトハ、火ヲ睹ルヨリ
モ明カデアリマス、ソコデ一時ニ賣渡申込
ガ殺到スル場合ニ、之ヲ拒絕サレルナレバ
是ハ重大ナル社會問題デアリマスカラ、ヨ
モヤ拒絕ハナサルマイ、拒絕セズシテ是等
ヲ一時ニ抱込ムトスルト、是ガ貯藏、是ガ
金利、是ガ保管等ノ點ニ對シテ私ハ相當ナ
ル疑ヲ持ツテ居ルノデアリマスガ、特別會
計ヲ主管致シテ居ラレマスル大藏大臣ハ、
此ノ私ノ財政的ノ質問ニ對シテ自信ガアラ
レマスカドウカ御所見ヲ承リタイノデアリ
マス、又拓務大臣、臺灣當局ニ於キマシテハ、
此ノ米ノ貯藏設備等ニ付テ具體的ニ相當大
掛リノモノヲ要スルト思ヒマスガ、之ニ對
スル御用意ガアルノカドウカ、吾々ノ安心
ノ行キマスヤウニ、又滿足致シマスルヤウ
十、親切ナル御答辯ヲ煩シタイト思フノデ
アリマス
次ニ農民ニ及ボス惡影響、經濟的壓迫ニ
對シテ私ハ所見ヲ述べテ、御意見ヲ承リタ
イノデアリマス、臺灣總督府當局ハ事態ヲ
簡單ニ考ヘテ居ラレマス、洵ニ輕ク扱ツテ
居ラレマスケレドモ、此ノ管理案ナルモノ
ハ、臺灣ニ於テ生產費ニ少シ經濟事情ヲ斟
酌シタ値デ米ヲ買上ゲテ、之ヲ內地ニ持ツ
テ來テ時價デ賣ルト言ハレル、サウスルト
一石ニ對シテ其ノ利鞘ガ四圓ト致シマス
ト、一千万石ノ生產中約半額ノ五百万石ノ
移出米ニ付テ、四五ノ二千万圓ト云フ減收
ニナルノデアリマス、又一物一價ノ原則ニ
依リマシテ、移出米ガ下レバ臺灣內地ニ於
ケル米ノ値段ガ下ルト云フコトモ、是モ亦
當然ト言ハネバナリマセヌ、假ニ私ノ所說ニ
誤リナシトスレバ一千万石ニ於テ一·四ノ
四、四千万圓ノ減收ヲ見ルノデアリマス、
是ハ重大問題デアルト思フ、若シモ此ノ衆
議院議員選擧法ノ布カレテ居リマスル內地
ニ於テ、石四圓値引ヲシテ買フ爲ニ農民ニ
影響ヲ及ボスト云フコトデアレバ、私ハ重
大問題ダト考ヘテ居ルノデアリマス(拍手)
又是ガ直チニ甘蔗ノ買收價格ニ影響ヲ及ボ
スノデアリマス、卽チ今日マデ臺灣ニ於テ
ハ米糖相剋ノ言葉ガアリマス、米ト甘蔗ト
ガ相剋ヲ致ス、例ヘバ製糖會社ノ方デハ、
米ガ高ケレバ隨テ甘蔗ノ値段ヲ高ク買フ、
米ガ安ケレバ甘蔗ヲ安ク買フノデアリマ
ス、ソコデ農民ノ方ハ製糖會社ガ無理ヲ言
ウテ安ク買フナラバ賣ラナイ、米ヲ作ル、斯
ウ云フ手ガアツタノデアリマスケレドモ、
之ニ依ツテ米作ヲ抑ヘルトスレバ、製糖
會社トノ關係ニ於テ非常ナル不利ヲ受ケマ
ス、卽チ私ノ言フ所ハ、米ガ下レバ、隨テ
ソレヲ基準トシテ買上ゲラレル甘蔗ノ値ガ
下ルガ、其ノ影響ハザツト常識的ニ私ガ聽
イテ見マスト、一箇年ニ八百万圓乃至一千
万圓ノ損害ダト云フノデアリマス、洵ニ重
大ナル關係ガアルノデアリマス、半面臺灣
ノ財政膨脹ノ問題デアリマス、是ハ昭和十
二年度ニハ一億五千万圓、昭和十三年度ニ
ハ一億八千万圓、本年度ハ飛躍致シマシテ
二億三百万圓、是ダケノ膨脹ヲ致シテ居リ
マスノデ、膨脹ノ爲ニ負擔ガ過重セラレル
ト云フコトハ言フマデモナイ事デアリマス、
卽チ島民ノ經濟生活ノ安定、向上ヲ圖ルト
當局ハ言ハレマスケレドモ、此ノ四千万圓
ノ影響、甘蔗ノ値下リニ依ル八百万圓乃至
一千万圓ノ差額、更ニ一面財政膨脹ニ依ル
負擔ノ過重、是等ヲ思ヒ合セマス時ニ、私
ハ洵ニ氣ノ毒ニ堪ヘナイノデアリマス、卽
チ農民ニ對スル經濟的ノ壓迫ヲ、私ハ深憂
セザルヲ得ナイノデアリマスガ、此ノ點ニ
對シテ私ガ餘リニ杞憂ニ過ギテ居ルカドウ
カ、親切明快ナル御答辯ヲ煩シタイノデア
リマス
更ニ拓務當局及ビ臺灣當局ハ、米穀管理
ノ剩餘金ハ、之ヲ水利事業其ノ他ノ土地改
良事業、耕地防風林ノ設置等、土地生產力
增進ノ施設、農事試驗機關、農業經營指導
機關ノ擴充ニ充當スルカラ、農村ニ還元ス
ルト言ハレル、併シナガラ農民カラ取上ゲテ
置イテ、之ヲ還元スルコトガ善政デアリマス
カ、旣ニ臺灣統治ノ方針ニ依ツテ、新附ノ
民ニ對シテハ、一般行政費ヲ以テ水利ガ必
要ナラバ水利ヲ爲シ、土地ノ改良ガ必要ナ
ラバ、土地ノ改良費ヲ惜シ氣モナク出シテ
ヨハ、眞ノ內臺一如デハアリマセヌカ、卽
チ斯ノ如キモノハ一般行政費カラ出スノガ
至當ダト思フガ、何ヲ苦ンデ管理案ナルモ
ノヲ以テ、農民カラ取上ゲテ、其ノ金ヲ以
55
テ還元スルト云フコトヲ言ハレルノデアル
カ、私ハ其ノ理由ガ薄弱ダト思ヒマスガ、
如何デゴザイマセウカ
更ニ私ハ管理案ガ臺灣統治ニ及ボス影響
ニ付テ、質疑ヲ致シタイト思フノデアリマ
ス、我國ノ臺灣統治ハ、歷代ノ總督ニ依ツ
テ闡明サレテ居ル如ク、一視同仁デアル、
內臺一如デアル、內臺無差別デアル、臺灣
ハ外地デアルケレドモ、固ヨリ大日本帝國
ノ構成體デアリマス、內地ガ頭又ハ胴體デ
アレバ、臺灣、朝鮮ハ手デアリ、足デアル
ト云フ譬ハ識者ガ常ニ口ニ致シ、一般國民
ノ常識ト相成ツテ居ルノデアリマス、內地
人モ、臺灣人モ、朝鮮人モ、地域的區別ハ
ゴザイマスケレドモ、日本帝國ノ有機的構
成分子デアリマス、隨テ共存共榮、苦樂共
受ノ原則ノ適用ハ、此ノ三者ノ間ニ差別ガ
アツテハナリマセヌ、差別ナク適用サルベ
キデアリマス、大局的ニ見テ、米穀統制法
ノ恩澤ニ依ツテ內地ノ農家ガ助カレバ朝鮮
モ助カル、又臺灣農家モ內地農家同樣助カ
レルト云フコトガ、當然デナクテハナラヌ
ト思フノデアリマス(拍手)農民ノ不當利得
云々ト云フコトヲ叫バレマスケレドモ、又
米作偏重ト云フコトヲ言ハレマスケレドモ、
內地ハ臺灣米ノ補充ニ依ツテ、朝鮮米ノ補
充ニ依ツテ、今日マデノ食糧問題ヲ解決致
シテ居ル、私ヲシテ言ハシメレバ米作偏重
ニアラズ、臺灣總督ノ米作ニ對スル偏見デ
ハナイカト反問セザルヲ得ナイノデアリマ
ス(拍手)又天惠ヲ蒙レル一部ノ領土ガ我國
ニアルト致シマスレバ、其ノ天惠ヲ蒙ツテ
居ルモノヲ嫉視セズ、之ヲ抑ヘズ、東北其
ノ他ノ水準ニ達セザルモノノ「レベル」ヲ上
ゲルト云フコトガ、善政ノ極致デナクテハ
ナラヌト思フノデアリマス(拍手)臺灣島民
ノ氣持ハ如何デアリマセウカ、無論彼等ハ
言ヒマス、吾々ハ熱ト光ノ天惠ニ依ツテ、
天然自然ノ條件ニ惠マレテ居ルカラ、吾々
農家ハ幸福デアル、洵ニ有難イ、薯モ能ク
出來ル、甘蔗モ能ク出來ル、米モ一毛作ノ
ミナラズ二毛作モ出來ル、非常ニ彼等ハ幸
福ヲ享受シテ居リマス、故ニ彼等ノ納稅成
績ヲ御覽下サイ、臺灣ハ一億八千万圓ノ豫
算カラ二億二百万圓ニ躍進シテ居リマス、
隨テ財政膨脹ヲ來シテ、負擔ハ益〓彌ガ上ニ
モ增徵スルノデアリマスケレドモ、彼等ノ
納稅成績ハ、全體的ニ見マシテ納期前ニ納
メラレテ居リマス、滯納處分ト云フモノハ
殆ドナイト言ツテモ宜イ位デアリマス、此
ノ點ニ付テハ本會議デナクトモ、委員會ニ
於テモ質問シ、又御答辯ヲ得タイト思ヒマ
スカラ、此處デハ御答辯ハ要リマセヌガ、
彼等ノ納稅成績ノ良イコトハ、私ハ範トス
ルニ足ルト考ヘテ居ルノデアリマス、更ニ
彼等ハ光ト熱ノ幸福ヲ感ジテ居レバコソ、
購買力ヲ持ツテ居ルノデアリマス、卽チ彼
等ニ底力ヲ與ヘテ居ルト云フコトハ、非常
時日本ノ大局カラ見テ、ドレ程力强イコト
デアルカ分ラヌノデアリマス(拍手)彼等ハ
內地ヨリ小麥、乾魚、鹽魚、綿織物、各
種紙類、木材、絹織物、肥料、〓酒、燐寸、
麥酒、鐵材、機械類等ヲ移入シテ消費シツ
ツアルノデアリマシテ、昨年ノ統計ニ依リ
マスレバ二億七千七百餘万圓、卽チ三億万
圓ニ近イ日本內地ノ商品ヲ購買シ、消費致
シテ居ルノデアリマス、卽チ有機的經濟機
構下ニ於テ、直接間接ニ相互ニ貢獻シ合ウ
テ居ルノデアリマス、臺灣ノ底力ガ減ジ、
臺灣ノ民力ガ涸渴致シマスレバ、日本ノ商
品內地ノ商品ノ賣行ガ惡クナルト云フコ
トハ、火ヲ諸ルヨリモ明カデハアリマセヌ
カ(拍手)
更ニ非常時ニ於ケル臺灣島民ノ熱誠ニ付
テ一言致シタイノデアリマス、彼等ハ此ノ
非常時ヲ認識シ、皇民化運動ノ效果モアツ
タデアリマセウケレドモ、臺灣ニ於ケル金
獻運動ハ半箇年ナラズシテ三千五百万圓ニ
達シテ居リマス、日本ノ金獻運動、日本ノ
民間ノ金動員ガ幾ラデアルカト云フコトハ
承知シテ居リマスガ、是ハ申シマセヌ、祕
密ニスル方ガ宜イデセウ、ケレドモ臺灣ニ
於テハ三千五百万圓ヲ突破シテ居リマス、
更ニ國防獻金デゴザイマスガ、此ノ非常時
ニ於テ陸海軍ニ獻金致シマシタ臺灣島民ノ
熱誠ハ、六百万圓ニ達シテ居リマス、人口
五百六十万ノ臺灣ニ於テ六百万圓、人口二
千二百万ノ朝鮮ニ於テ七百万圓、內地ニ於
テ七千五百万圓ヲ陸海軍ニ獻金シテ居ルノ
デアリマスガ、五百六十万島民ノ臺灣ニ於
テ、六百万圓ノ陸海軍國防獻金ヲ致シテ居
ルト云フコトハ、卽チ底力ガアリ、民力ガ
休養セラレテ居ル證據デハアリマセヌカ、
折角是程ノ底力ノアルモノヲ、米作偏重ノ
名ニ依ツテ之ヲ抑ヘル理由何處ニアリヤ(拍
手)支那事變ガ假ニ一時的ノ結ヲ結ビマシ
テモ、我國ノ長期建設-第一期ガ十六年
マッハ、次ハ第二期、第三期ト云フ風ニ、吾
吾ハ二期三期ノ計畫ヲ持タナケレバナラヌ
ト云フコトヲ想像致シテ居ルノデアリマス、
此ノ秋ニ方ツテ長期建設ヲ口ニシナガラ
斯ノ如キ統治上惡影響ヲ及ボスカノ施設ヲ
ナサルルト云フコトハ、私ハ不可思議千萬
ト言ハナケレバナラヌト思フノデアリマス
(拍手)此ノ戰時ニ於キマシテ、臺灣カラ通
譯、人夫ト致シマシテ、出征致シマシタ島
民ハ相當居リマス、此ノ人數ハハツキリ知
ツテ居リマスケレドモ申シマセヌ、併シ要
スルニ臺灣島民ノ心ヲ捉ヘテ、非常時日本
ニ協力セシメテ、所謂平沼首相ノ總親和ノ
實ヲ擧ゲルカ擧ゲヌカト云フ洵ニ重大ナル
時ニ當ツテ、斯ノ如キ摩擦相剋ヲ起スガ如
キ提案ヲセラレルト云フコトハ、如何デア
ルカト云フ疑ガ世上多イノデアリマスルカ
ラ、私ハ之ヲ質シテ見タイノデアリマス(拍
手)非常時ニ直面致シマシテ、臺灣ノ金獻ガ
非常ナ底力ヲ見セ、半年ナラズシテ三千五
百万圓ヲ突破シ、全國民感激ノ標的トナツ
テ居リ、又臺灣ノ財政ヲ見ル時ニ、非常時局
ヲ反映致シマシテ、非常ナ膨脹ヲ見セテ居
リマスケレドモ、膨脹ニ依ル所ノ負擔ノ過
重ヲ厭ハズ、臺灣島民ガ熱誠ヲ披瀝致シテ
居リマスル今日、今囘ノ管理案ナルモノハ、
私ハ其ノ民心ニ及ボス影響鮮少ニアラズト
考ヘザルヲ得ナイノデアリマス、延イテハ
東亞新秩序建設ノ聖業ノ達成ノ爲ニ、一抹
ノ不安ヲ感ゼザルヲ得テイノデアリマス、
臺灣ノ人口ハ只今申上ゲル通リ五百六十万
人、是ガ農業者ハ總人口ノ五四%デ、其ノ人
口ノ大半ヲ占メテ居ルノデアリマスルガ、
此ノ大半ヲ占メテ居ル大多數ノ農民ニ、非
常ナル衝撃ヲ與ヘタコトハ事實デアリマス、
表面平靜ニ見エテ居リマスケレドモ、內政
的ニ、內在的ニ潛ンデ居リマス人心ノ機微
ヲ思フ時ニ、私ハ洵ニ憂慮セザルヲ得ナイ
ノデアリマス(拍手)
アナタ方ハ皇民化運動ナルモノヲナサツ
テ居リマス、皇民化運動トハ何デアリマス
カ、臺灣人ノ服ヲ禁止セラレルコトデアル、
寺廟ノ撤廢デアリマス、其ノ他風俗習慣ヲ
一日モ早ク形ノ上カラ皇民化シヨウト云フ
手段デアリマス、物事ハ精神的ニ內カラ行
ク場合ト、形カラ行ク場合トガゴザイマス
カラ、之ヲ私ハ拒否スル者デハゴザイマセ
ヌ、之ヲ嗤フ者デハアリマセヌ、併シナガ
ラ根本ハ臺灣島民五百六十万ノ心ヲ把握ス
ルコトデナクチヤナラヌ、現內閣ハ總親和ヲ
主張セラレ、又外務大臣ハ東亞建設ニ對シ
大愛ヲ以テ臨ムト言ハレテ居リマス、又總
理大臣ハ皇道ヲ以テ臨ムト言ハレテ居リマ
ス、其ノ皇道トハ何デアリマスカ、各〓其ノ
處ヲ得セシメ、天下一人トシテ其ノ處ヲ得
ザル者ナカラシムルト云フノガ、是ガ皇道
ノ極致ナルモノデナクチヤナラヌト私ハ思
フ(拍手)
アノ獨裁專制ノ標本ノ如ク考ヘラレテ居
リマスル所ノ「ヒトラー」ハ議會ハ之ヲ蹂
躪シ、政府卽議會、政府其ノモノガ議會デア
ルト云フノデ、議會ヲ開クト云フト、彼自
ラ演說ヲシテ置イテ、既ニ閉會、散會ト云
フ風デアリマス、其ノ「ヒトラー」デサヘ
モ、立憲政治ハ國民了解ノ政治デナクチヤ
ナラヌト云フノデ、議會ヲ斯ノ如ク扱ツテ
居リマスケレドモ、「ヒトラー」ト政治博覽
會ト云フモノハ有名デアリマス、卽チ「ヒ
トラー」ハ到ル處ノ都市ニ於テ、模型ヲ以
テ、寫眞ヲ以テ、其ノ他統計ヲ以テ「ヒト
ラー·ナテス」ノ天下ニナツテカラ、產業ハ
是程勃興致シタ、貿易ハ是程振興致シタ
失業者ハ是程無クナツタ、轉業者ハ是程出
來テ居ルト云フ風ニ言ツテ、議會ニ於テハ
專制ノ如ク扱ヒマスケレドモ、國民ニ對シ
テハ直接ニ了解ヲ得ツツ、彼ベノ信賴ヲ增
シ、結束ヲ固メ、而シテ新興獨逸ヲ建設シ
ツツアルデハアリマセヌカ、臺灣ニ於テハ
一人ノ代議士ヲ持チマセヌ、若シモ臺灣ニ
五十人ナリ百人ノ代議士ガアリマシタナラ
バ、此ノ問題ハ議會ノ大間題トナラウト私
ハ思フノデアリマス(拍手)アノ專制獨裁ノ
如ク思ハレテ居ル「ヒトラー」ニシテ既ニ斯
ノ如シ、臺灣當局ハ速ニ反省セラレ、又吾々
興、臺灣五百六十万民ノ疑ヲ、本會議
ニ於テ又ハ委員會ニ於テ、帝國議會ヲ通ジ
テ天下ニ闡明セラレ、以テ彼等ノ心ニ暗影
ヲ留メルコトナク、東亞新秩序建設ノ萬全
ヲ期セラレンコトヲ冀ツテ、質疑ヲ終ル次
第デゴザイマス(拍手)
〔政府委員寺田市正君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/30
-
031・寺田市正
○政府委員(寺田市正君) 只今岡野君ノ御
質疑中、拓務大臣ニ對スル御質問ハ、大臣
ガ只今貴族院ニ出席シテ居リマスカラ、私
カラ一應御答辯ヲ申上ゲテ置キマス、若シ
十分ノ滿足ガ得ラレナイ場合ハ、他日大臣
カラ直接御答辯申上ゲル機會ガアラウト思
ヒマス
拓務省ニ關シマシタ御質問ノ先ヅ第一ハ、
此ノ制度ガ實施サレタ曉ニハ臺灣米ガ減產
シハシナイカ、生產米ガ減ジハシナイカト
云フ趣旨ノ御質問デアツタヤウデゴザイマ
スガ、御承知ノ通リ此ノ制度ハ急激ナ增產
ハ之ヲ避ケテ居ルノデゴザイマス、ケレド
モ一定年次ノ生產目標ヲ立テマシテ、內地
ノ農林省トモ能ク協議ヲ盡シマシテ、サウ
シテ逐次米ノ增產ヲ圖ルト云フノガ本案ノ
趣旨デゴザイマスカラ、決シテ減產スルト
云フ心配ハナイト思プノデアリマス〔「アナ
タニハ分ラヌ」、「ハツキリ言ヘ」其ノ他發
言スル者アリ〕又是ガ爲水利施設ノ改善
ヤ、開墾、干拓等ノ事業モ積極的ニ施設ヲ
加ヘルコトニナルノデアリマシテ、作付面
積ト云フモノハ寧ロ擴大スル、多クナル積
リデアルノデアリマス、ソコデ實際ニ付キ
マシテハ反當リノ增收等モ出來マスノデゴ
ザイマスカラ、減產ノ心配ハナイト申上ゲ
テ宜シイノデアリマス
第二ノ御質問ハ、特用作物ハ此ノ制度以
外ノ方法デモ奬勵ガ出來ルヂヤナイカ、蓖
麻苧麻、黃麻ト云フヤウナモノハ、此ノ
制度ヲ設ケヌデモ、當然行ケルノデハナイ
カト云フ御話デゴザイマシテ、現ニ此ノ蓖
麻ノ如キハ、愛國蓖麻トシテ奬勵サレマシ
ク爲ニ、三百万權ガ八千万博ニナツク、之
ヲ見テモ當然此ノ方法、此ノ制度ニ依ラズ
シテ、特用作物ノ奬勵ハ出來ルヂヤナイカ
ト云フ御趣旨デアツタヤウデアリマスガ、
是ハ御承知ノ通リ、全ク精神的ニ愛國心ノ
發揚ニ愬ヘマシテ、所謂愛國蓖麻トシテ大
イニ奬勵致シマシタ結果、斯ノ如ク作付反
別モ增シテ參リマシタケレドモ、是バカリ
デハ中々サウ收穫ヲ確保スルト云フコトガ
困難デアリマスカラ、玆ニ制度ヲ設ケマシ
テ、此ノ特用作物ノ奬勵ニ付キマシテハ、
其ノ對抗作物ト見ルベキ米ノ價格ノ適正デ
アルコトヲ圖リマシテ、サウシテ此ノ特
用作物ノ奬勳ニモ當リタイト思ツテ居ル所
デアリマス、又政府ガ石四圓モ普通ノ市價
ヨリ値下デ買收スルトナレバ、非常ナ收益
ニナツテ來ルデハナイカ、ソンナ儲ケヲシ
テドウスルカト云フヤウナ、御話デゴザイ
マシタガ、ソレハ少シ計算ガ違ツテ居ルノ
デアリマス、只今ノ計畫デハ石約二圓以內
ノ値下デ買上ゲルコトニナツテ居ルノデア
リマスカラ、岡野君ノ仰シヤツクヤウナ
大變ナ收益ヲ擧ゲルト云フコトハナイ
ノデアリマス、隨ヒマシテ、農家ノ經濟
ヲ壓迫スル、若クハ非常ニ低價デ以テ買上
ゲルト云フコトハ、斷ジテナイノデゴザイ
マスカラ、其ノ點ハドウカ御諒承ヲ願ヒタ
イノデアリマス
ソレカラ米ヲ買上ゲタナラバ、ソレヲ貯
藏スルニ付テノ倉庫ナドハドウスルカト云
フ御話デゴザイマシタガ、御承知ノ通リニ
玄米ヲ以テ買上ゲマスカラ、一時ニハ殺到
シテ參ラヌノデアリマス、漸次此ノ買上ヲ
致スノデアリマスカラ、倉庫等モサウ非常
ナ準備ハ必要ハナイノデゴザイマスガ、ソ
レデモ產業組合其ノ他從來カラノ倉庫ガゴ
ザイマスカラ、是等ヲ利用致シマズレバ十
分デアルノミナラズ、現ニ十四年度ノ豫算
ニ於キマシテ相當ノ倉庫建築費ヲ計上シテ
アル次第デゴザイマス
次ハ農民經濟ノ壓迫トナラヌカト云フ御
趣旨ノヤウデゴザイマシタガ、此ノ制度ノ
實施ハ漸進的ニ之ヲ處置致スノデアリマシ
テ、サウシテ今申上ゲマシタ石二圓弱ノ政
府ノ收益ト云フモノハ、之ヲ擧ゲテ農業生
產部門ノ改善ニ使用致シマスカラ、農業經
營ノ多角化、集約化ト云フコトヲ促進致シ
マシテ、漸ヲ逐ウテ農業經濟ノ安定向上ヲ
齎シマシテ、窮極ニ於テハヤハリ農家ノ福
社ヲ增進シテ、農業經濟ヲ充實スルト云フ
此ノ趣旨ガ貫徹サレルモノト思フノデゴザ
イマス
其ノ次ハ臺灣統治ニ及ボス影響、島民ノ
心理上ニ關スル影響ガ重大デナイカト云フ
御心配デゴザイマシタガ、此ノ制度ハ單ニ
一時ノ目的ノ爲デバナクシテ、所謂永遠ノ
島民ノ福利ヲ增進スルト云フコトヲ主眼ト
シテ居ルノデゴザイマス、ソレニ臺灣ガ天
然ニ持ツテ居リマス生產ヲ擴充强化シテ、
サウシテ帝國全體ノ福社ニ寄與シタイト云
フノガ此ノ趣旨デアリマスカラ、此ノ制度
ノ制定ノ趣旨ヲ能ク島民ガ諒解ヲ致シマシ
タナラバ、寧ロ島民ハ臺灣ニ生活シテ居ル
ト云フ、詰リ一ツノ自負ヲ增進致シマシテ、
所謂內臺一如ノ精神ニ基キマシテ、統治上
ノ心配等ハナカラウト思フノデゴザイマシ
テ、サウ云フ點等ニ付キマシテモ、特ニ注
意致シテ居ルヤウナ次第デゴザイマス、ソ
レダケノヤウデアツタト思ヒマスガ、若シ
マダアリマスナラバ更ニ御答致シマス
〔國務大臣板垣征四郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/31
-
032・板垣征四郎
○國務大臣(板垣征四郞君) 只今ノ私ニ對
スル御質問ハ、軍需物資ガ却テ減產ヲスル
ノデハナイカト云フヤウナ意味ノ御質問ノ
ヤウニ承リマシタ、是ハ減產ヲシナイ、增
加ヲスルト云フコトニ付テハ、只今拓務當
局カラ答辯ノアツタ通リデアリマス、要ス
ルニ陸軍ト致シマシテハ戰時〓糧問題、竝
ニ此ノ軍需物資生產擴充ノ見地カラ本案ヲ
適當ト認メ、其ノ成立ヲ希望スルモノデア
リマス
〔國務大臣櫻內幸雄君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/32
-
033・櫻内幸雄
○國務大臣(櫻内幸雄君) 岡野君ノ私ニ對
スル御質疑ハ、今日部落ニ於テ農事關係者
ガ非常ナル努力ヲ致シテ居ルケレドモ、旣
ニ勞力ノ不足ヲ來シテ居ツテ、非常ナ困難
ヲ來シテ居ルノデアルガ、之ニ對シテ其ノ
活動ヲ增スノニハドウ云フ對策ガアルカ、
又補助ヲスルカドウデアルカ、斯ウ云フヤ
ウナ御質疑デアツタト思ヒマス、現在ノ農
村ノ狀態ニ付キマシテハ、從來屢〓申上ゲタ
通リ、我ガ農家ノ人々ガ非常ナル努力ヲサ
レテ居ルコトニ對シマシテハ深ク敬意ヲ表
スル所デアリマス、就中部落單位ニ於テ實
行組合其ノ他ノ人々ガ一團トナツテ働イテ
居ラレルコトハ吾々モ洵ニ感謝致シテ居
ル所デアリマスガ、之ニ對シテ政府ガ如何
ナル助成ヲ致スカト云フコトニ付キマシテ
ハ、今日ニ於キマシテモ所謂共同施設ノ
大部分ハ、此ノ實行組合ノ力ヲ借リテ致
シテ居ルノデアリマシテ、ソレニ對スル
所ノ補助、助成ト云フモノヲ相當見テ支出
致シテ居リマス、併シナガラ現在ノ實情カ
ラ見テ其ノ程度デ目的ヲ達ズルコトガ出來
ルカドウデアルカ、尙ホ一層之ニ對シテ考
慮ヲ拂ハナケレバナラヌデハナイカト云フ
コトニ付キマシテハ、私共深ク岡野君ニ同
意ヲ表スル譯デアリマス、此ノ點ニ付キマ
シテハ目下〓究考慮ヲ致シテ居ルノデアリ
マスガ、只今ノ所デハ未ダ是ト云フ成案ヲ
持ツテ居リマセヌ、併シナガラ今日マデ
豫算面ニ現ハレタ所ニ於キマシテモ、可ナ
リ多數ニ上ツテ居ルノデアリマシテ、或、
動力ノ共同利用デアルトカ、畜力ノ共同利
用デアルトカ、或ハ勞力ノ移動調整デアル
トカ、共同作業デアルトカ、勤勞奉仕デア
ルトカ、總テ是等ニ對シテハ、多少ナリ共
補助ヲ致シテ居ルノデアリマシテ、其ノ補
助、助成ニ付キマシテハ、相當效果ガアル
ト考ヘテ居ルノデアリマス、尙ホ今後ニ於
キマシテモ十分ニ此ノ間題ニ對シマシテ
ハ、〓究致シタイト考ヘテ居リマス
更ニ根本ノ問題ニ付キマシテ-或ハ是
ハ私デハナカタカットモ思ヒマスケレドモ、
此ノ米穀政策ニ對シテ增產ノ計畫ニ付テノ
御意見ガアツタト考へテ居リマス、此ノ件
ニ付キマシテ拓務當局カラ話ガアリマシタ
如ク、今後ノ臺灣米ニ付キマシデハ、農林
拓務兩省ノ關係者ニ於テ、將來一定ノ增加
率ノ計畫ヲ立テマシテ、臺灣ノ米ノ收穫ガ
順次增加致スヤウナ相談ヲ致シテ居リマ
ス、朝鮮ニ付キマシテハ固ヨリ臺灣ト內地
ノ如ク今囘計畫サレタ一元化的ナ方策ガマ
ダ決定致シテ居リマセヌガ、緊密ナ連絡ヲ
執ツテ增產計畫ヲ立テテ居ル次第デアリマ
ス、內地ニ於ケル所ノ增產計畫ニ付キマシ
テハ、今極力力ヲ盡シテ居ル次第デアリマ
ス(拍手)
〔政府委員松村光三君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/33
-
034・松村光三
○政府委員(松村光三君) 只今ノ岡野君ノ
御質疑ニ對シマシテ、大藏所管ニ關スル部
分ニ付キマシテ御答申上ゲマス、本案ハ臺
灣ニ於ケル重要產業ノ調整ヲ圖リ、其ノ健
全ナル發達ヲ期スル爲二立テラレタルモノ
デアリマシテ、買上價格ノ決定等ニ當リマ
シテハ其ノ趣旨ニ合スルヤウニ適正ヲ期
スル考ヘデアリマス、又納入組合ヲ作ラシオ
テ、漸次ニ買上ゲタモノヲ內地ニ移出スル
ノデアリマスルカラ、內地ノ米穀需給調節
特別會計ニ於ケル如キ、保管等ノ爲ニ特ニ
損失ヲ加ヘルコトハナイト考ヘテ居リマス
ルガ、尙ホ此ノ案ノ施行ニ當リマシテハ、
十分ナル注意ヲ以チマシテ萬遺漏ナキコト
ヲ期シタイト考ヘテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/34
-
035・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 三善信房君
〔三善信房君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/35
-
036・三善信房
○三善信房君 私ハ臺灣米ノ移出管理ニ付
キマシテ、極ク簡單ニ政府當局ノ所見ヲ伺
ヒタイト思フノデアリマスヽ食糧問題ガ國
民生活ノ上ニ重要ナルモノデアリマスルコ
トハ、今更申上ゲルマデモナイコトデアリ
マス、農林大臣ハ屢〓或ハ豫算總會ノ席上、
或ハ分科會等ニ於キマシテ、我國ノ食糧政
策ニ於テハ別段支障ノナイヤウニ述ベラレ
テ居リマスルガ、私ハ現在ノ農林省ノ企テ
テ居ラルル程度ノモノデハ、果シテ時局下
ニ於テ生產ノ確保ガ出來ルヤ否ヤト云フコ
トニ頗ル疑問ヲ持ツ者デアリマス、此ノ點
ニ付キマシテハ特ニ農林當局ノ御考慮ヲ願
ツテ置クノデアリマスルガ、只今本法案ト
關聯シマスル臺灣米ノ移出管理ハ、臺灣カ
ラ我國ニ來ル米五百万石程度ノモノヲ臺灣
總督デ管理ヲスルト云フコトガ、其ノ問題
ニナツテ居ルノデアリマスヽ其ノ管理ガ適
當デアルカドウカト云フコトガ、私共ガ質
サントスル所ノ問題デアリマス、臺灣ハ御
承知ノ通リニ、氣候風土ガ農業ニ適シテ居
リマスル關係上、臺灣ノ產業ハ農業ヲ中心
トシテ發達致シテ參ツテ居リマス、明治三
十三年ニハ僅ニ二十万甲、二百万石ノ米デ
アツタノガ、現在デハ四十五万甲、約五十
万甲ノ反別デアリマシテ、其ノ總額モ九百
万石ニ達シテ居ルノデアリマス、是レ固ヨ
リ其ノ土地ガ最モ農產物ニ適シテ居ルノト
共ニ、當局ノ指導奬勵モ其ノ適當ヲ得タ結
果デアルト信ズルノデアリマス、而シテ內
地、朝鮮、臺灣ハ產業上特ニ緊密ナル連繫
ヲ保ツテ、適地適產、以テ國家ノ全體的見
地ニ立チマシテ、國運ノ進展ニ貢獻セネバ
ナラヌト思ヒマス、今囘臺灣米ノ移出管理
モ此ノ趣旨ニ依リテ設ケラレタモノデアル
ト深ク信ズル者デアリマス、然ルニ若
シ移出管理ヲ實施セラレマシタガ爲ニ、
臺灣農民ノ農家經濟ヲ壓迫シテ、農民
ノ生活ニ不安ヲ來スヤウナコトガアツ
タナラバ、絕對ニ避ケナケレバナラヌ
ト信ズルノデアリマス、支那事變以來五百
万ノ臺灣島民ハ時局ノ重大性ニ鑑ミマシテ、
一致協力シテ至誠報效ノ誠ヲ盡シテ居リマ
ス、此ノ島民ニ對シテ經濟上ノ大ナル打撃
ヲ與ヘルヤウナコトハ、絕對ニ避ケナケレ
バナラヌト思フノデアリマス、臺灣農民ガ
現在心配シデ居リマスノハ、此ノ法案ガ實
施サレマシタ後ニ臺灣ノ米ガ非常ニ下リハ
ジナイカ、或ハ臺灣ノ米ノ生產ノ制限ヲス
ルノデハナイカ、或ハ臺灣ノ農家ノ收大ガ
非常ニ激減スルノデハナイカ、此ノ三ツガ
臺灣島人ノ最モ心配致シテ居ル點デアリマ
ス、此ノ心配シテ居ル點ニ付キマシテ、此
ノ議會ヲ通ジテ十分之ヲ臺灣島民ガ諒解ス
ルヤウニ明示サレル必要ガアルト思ヒマス、
斯樣ニシテ政府ノ政策ニ臺灣ノ島民モ喜ン
デ參加スルヤウニスルコトガ、最モ政治ノ
要諦ナリト信ズル者デアリマス(拍手)此ノ
點ニ付キマシテ、特ニ此ノ法案ヲ實施シテ
モ臺灣ニ何等ノ苦痛ヲ與ヘナイ、寧ロ臺灣
ノ農民ハ是ガ爲ニ幸福ニナツテ、經濟上非
常ニ利益ヲスルト云フヤウナコトニ付キマ
シント十分諒解シ得ラルルヤウニ所見ヲ述
ベラレンコトヲ希望致シテ置キマス
米穀ノ移出管理ノ目的ト致シマスル所
ハ、米穀ノ移出管理ニ依リマシテ臺灣ノ米
價ヲ適當ニ定メ、現在ノ米作偏重ノ傾向ヲ
改メマシテ、軍事上又ハ國防上、此ノ國策
遂行上我ガ國內ニ於テ自給ヲ必要トスル所
ノ、或ハ甘蔗、或ハ棉、或ハ麻類ト云フヤ
ウナモノヲ栽培ジテ、所謂國家的ニ有用ナ
ル作物ノ栽培ヲ奬勵スルト共ニ、一面管理
ノ事業ニ依ツテ得タル所ノ剩餘金ガアルト
致シマスルナラバ、之ヲ以テ積極的ニ農業
生產ノ增進ヲ圖ル、農產資源ノ開發ヲ爲ス
ト云フノガ、其ノ眼目デナケレバナラヌト思
ヒマス、之ヲ要シマスルニ、米作偏重ヲ改
メマシテ、サウシテ他ノ作物ヲ一部栽培ス
ルト云フコトニナリマスルガ、結局ハ之ヲ
實行スル上ニ付キマシテハ價格ノ問題デア
リマス、米ヲ高ク買上ゲラルルト云フコト
ニナリマスレバ、米ノ增產ハ從ツテ行ハレ
マス、米價ヲ安ク買ハルルト、隨テ米ノ產
額ト云フモノハ減少致シマス、又米ヲ高ク
買ハレマスルト、此處ニハ剩餘金ガナイヤ
ウニナルカモ知レマセヌ、隨テ他ノ作物ノ
栽培上ニ對スル所ノ有ユル施設ハ出來ナイ
ヤウニナツテ參ルト思ヒマス、若シ非常ニ
安ク米ノ買入價格ヲ決定セラレマスルト、
剩餘金ガ幾ラカアリマスノデ、有ユル施設
ニ對シテ經營ヲサルルコトガ出來ルト思ヒ
マス、要スルニ政府ガ其ノ價格ヲ如何ニス
ルカト云フコトガ、其ノ重要デアルト思ヒ
マス、サウ致シマスレバ、果シテ政府ノヤル
所ノ有ユル政策モ行ハレ、或ハ又其ノ米ノ
增產或ハ減產等ニ付キマシテ影響致スノデ
アリマスカラ、之ヲ如何ニ調和シテ行カレ
ルカト云フコトハ、最モ必要ナコトデアル
ト思ヒマス
尙ホ今囘米ノ買入價格ニ對シマシテ、政
府ハ作付前ニ買入ノ價格ヲ決定スル、サウ
シテ農民ニ知ラシメル、斯ウ云フヤウナ御
意思ノヤウデアリマスガ、果シテ作付前ニ
米ノ價格ヲ決定セラレルトシマスルナラ
バ、何ニ依ツテ決定セラレルカ、恐ラク前
年ノ米ノ生產費或ハ前期ノ生產費ヲ基トシ
テ、之ニ物價及ビ有ユル經濟事情ヲ參酌シ
テ決メラレルト思ヒマスケレドモ、其ノ生
產費ハ其ノ米其ノモノノ生產費デナクシテ、
前期ノ米ノ生產費、前年ノ米ノ生產費デア
リマスカラ、玆ニ非常ナル相違ヲ來スノデ
アリマス、其ノ點ヲ如何ニ調和セントスル
ノデアリマスカ、米ノ價格ニ付キマシテ、
我ガ內地ニ於キマシテモ、最低最高ノ價格
ガ決メラレテアリマスケレドモ、今年ノ最
高價格ノ如キ無理ナ決メ方ハナイト私ハ考
ヘルノデアリマス、如何ニ私ガ考ヘマシテ
千、或ハ物價ノ事情、或ハ經濟事情カラ考
ヘマシテモ、少クトモ農村ノ米ノ最高價格
ヲ前年ト同樣ニ決メラレルト云フコトハ、
常識カラ考ヘテドウシテモ私共ハ諒解スル
コトハ出來マセヌ(「ヒヤ〓〓」)唯政府ハ物
價ヲ抑ヘル、上ゲナイト云フ方針ノ下ニ、米
ノ値段ヲ去年ト同樣ニ、最高價格ヲ決メル
ト致サレマスナラバ、是モ一應諒解ガ出來
マス、若シ果シテサウデアルトスルナラバ、
米ト其ノ他ノ農村必需品ノ價格ノ均衡ヲ取
ルヤウニ、他ノ物價ノ引下ゲヲシナケレバ
均衡ガ取レナイト私ハ思フノデアリマス
(拍手「ヒヤ〓〓」)斯樣ナ考ヲ以テ今囘又臺
灣ニ臨マレルト云フコトデアツタナラバ、
臺灣島民ノ受クル所ノ損害ト云フモノハ、
蓋シ莫大ナルモノデアルト信ズルノデアリ
マく、隨テ臺灣米ノ買上價格ノ決定ニ對シ
マシテハ、適當ニ其ノ點ヲ考慮サレル必要
ガアルト思ヒマスルガ、如何ナル考ヲ御持
チニナルノデアリマスカ
尙ホ臺灣ニ於テハ全農產物ノ六割ガ米デ
アリマシテ、一割五分ガ甘蔗デアリマス、隨
テ米ト甘蔗トガ臺灣ノ重要作物デアリマス
ルガ、今其ノ一ツノ米ニ對シテ統制ヲ加ヘ
ラルルト致シマシタナラバ、他ノ甘蔗ニ對
シテモ當然玆ニ一ツノ統制ヲ加ヘラルル必
要ガアルト思ヒマス(拍手)之ニ對シテ如何
ナル考ヲ御持チニナツテ居ルカ
尙ホ我國ノ米穀政策ヲ一貫シテヤル上ニ
付キマシテ、臺灣ニ移出管理ヲナサレルト
スルナラバ、ヤハリ同ジ我ガ國內ニ移入スル
所ノ朝鮮米ニ對シテハ、如何ナル考ヲ御持
チニナツテ居ルカ、此ノ點ヲ併セテ御伺致
シマス、此ノ數項ニ涉リマシテ極ク簡單ニ
申上ゲマシタケレドモガ、大臣ノ答辯ハ十分
私ガ理解スルヤウニ懇切丁寧ニ御願致シマ
ス(拍手)
〔國務大臣八田嘉明君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/36
-
037・八田嘉明
○國務大臣(八田嘉明君) 三善君ノ御質問
ニ對シマシテ一應私ヨリ御答申上ゲタイト
思ヒマス、農民ノ經濟ノ壓迫ニナラヌカト
云フ點ニ付キマシテハ、只今御話モアリマ
シタガ、本案ハ主トシテ島内ノ米價ノ適正
ヲ圖ツテ、一方ニ於テ重要產業ノ調和的發展
ヲ期シテ、而シテ結局農家經濟ノ安定ヲ圖
ラントスルニアリマスルノデ、一時本法ノ
施行當初ニ於キマシテハ、或ル程度米ノ買
上價格等ノ點カラ致シマシテ、多少ノ異動
ヲソコニ生ズル譯デアリマスルケレドモ、
結局本管理案ニ依リマシテ得タル所ノ收益
ハ、之ヲ悉ク農業開發ニ對シマシテ還元致
シマスル方針デアリマスルノデ、永遠ニ於
テハ農民ノ經濟更生竝ニ福利ノ增進ニ寄與
スル所ガ極メテ多イコトヲ信ズル者デアリ
マス、殊ニ此ノ管理法案ノ趣旨ハ、只今モ
御話ノアリマシタル通リ、臺灣ノ天然ノ惠
マレタル所ノ、此ノ熱帶的自然條件ヲ最モ
有效ニ利用致シマシテ、一方ニ於テハ適
當ナル米產ノ發達ヲ圖リマスルト共ニ、現
下竝ニ將來ニ於テ必要デアリマスル所ノ重
要農產物ノ發展ニ對シマシテ適當ナル考慮
ヲ拂ヒツツ、此ノ目的ヲ達シタイト云フ關
係デアリマスルノデ、農民經濟ノ壓迫トナ
ルヤウナコトハ決シテナイト考ヘマスノミ
ナラズ、結局其ノ反別ニ於キマシテハ、甚
シイ增加ガアリマセヌデモ、多角經營及ビ
集約經營ニ依リマシテ、寧ロ農家ノ經濟ハ
十分ニ採算ガ取レルコトハ疑ナク存ジテ居
ル次第デアリマス、隨ヒマシテ只今特ニ强
ク御尋ノアリマシタル所ノ臺灣ノ統治上、
殊ニ現在此ノ時局ニ際シマシテ、臺灣島民
ノ時局ヲ認識シテ、此ノ國家ノ全局ニ寄與
シテ居ル所ノ此ノ實際ノ狀態ニ顧ミマシテ、
此ノ法案ノ結果ガ苟モ之ニ違反スル所ノ結
果ヲ生ズルコトハ、洵ニ考ヘナケレバナラ
ヌト云フ點ニ付キマシテハ、臺灣總督府ニ
於キマシテハ勿論、拓務省ニ於キマシテモ
特ニ此ノ點ニ注意ヲ致シマシテ、萬違算ナ
キヲ期シテ居ル次第デアリマス、殊ニ本管
理案ノ趣旨ガ徹底シテ、島民ニ理解セラレ
ルニ至リマシタ曉ニ於キマシテハ、十分ニ
此ノ點ガ明瞭ニナリマシテ、何等統治上ニ
危惧ノ起ルコトハナイト堅ク信ジテ居ル次
第デアリマシテ、今後トモ管理案ノ決定シ
マシタル曉ニ於キマシテハ、臺灣總督府ト
共ニ、政府ニ於キマシテモ十分ナル理解、
周知ノ方法ニ付テ遺憾ナキヲ期シタイト存
ジテ居リマス
又買入價格ニ付キマシテハ、只今御話モ
アリマシタ通リ、是ハ中々御說ノ通リ難カ
シイ問題デアルト存ジマスルガ、ヤハリ米
穀ノ生產費、物價其ノ他ノ農村經濟事情ヲ參
酌致シマシテ、大體ニ於テ前年同期ノ生產費
ヲ基準ト致シテ居リマスルコトハ、洵ニ已
ムヲ得ナイコトデアルト考ヘルノデアリマ
ス、殊ニ此ノ臺灣米ノ管理ニ付キマシテハ、
其ノ目的ガ他ノ重要農作物トノ關係ヲ最モ
適正ニ致ス關係上、其ノ他ノ重要作物トノ
價格ノ關係ヲモ考慮致シマシテ、買上價格
ヲ適正ニ決定致シテ、急激ナル變化ヲ避ケ
ルヤウニ致シタイト考へテ居リマス、只今
大體買入價格ニ付テハ左樣ナ風ニ考ヘテ居
リマス
尙ホ朝鮮ニ付テ御指摘ガアリマシタ
ガ、臺灣ニ於キマシテハ、申スマデモナ
ク臺灣ノ所謂天然ノ此ノ條件ニ適シマスル
ヤウニ、本管理案ヲ制定致シマシタルヤウ
ナ關係デアリマシテ、臺灣ニ於テハ所謂多
角的ニ重要農產物ト此ノ米作トヲ調節シテ
參ルコトガ出來マスルケレドモ、朝鮮ニ於
テハ申スマデモナク氣候等ノ關係ヨリ臺灣
其ノ儘ノ同樣ナル考ヲ以テハ朝鮮ニ於テハ
行ハレナイカトモ考へマスノデ、此ノ點ニ
付キマシテハ只今御話ノ點ニ付キマシテ十
分今後ニ於テ考ヘ、內地ノ米穀政策トモ呼
應致シマシテ、最善ノ將來ノ策ヲ考ヘタイ
ト存ジテ居リマス
最後ニ米穀管理制度ト同時ニ此ノ甘蔗等
ノ作付或ハ延イテハ糖業ノ方面ニ對シテ對策
ヲ考ヘル必要ガアルノデハナイカト云フ點
ニ付キマシテハ、政府當局ニ於キマシテモ
十分此ノ點ニ付テハ考慮致シテ居リマス、
特ニ律令ヲ設ケマシテ、甘蔗ノ作付ノ面積
竝ニ甘蔗ノ買上價格ノ許可制度ヲ實施致シ
タイ考ヲ持ツテ居ルヤウナ次第デアリマス、
一應私ヨリ御答申上ゲマス(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/37
-
038・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 前川正一君
〔前川正一君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/38
-
039・前川正一
○前川正一君 只今ノ案ニ付キマシテ極ク
簡單ニ理由ヲ申述ベマシテ政府ノ御所見ヲ
承リタイト思フノデゴザイマス、只今政府カ
ラノ御答辯ガゴザイマシタケレドモ、今囘
ノ臺灣米ノ移出管理法ニ依リマシテ、臺灣
ノ米ノ相場ハ餘リ下ラナイ、隨テ減產トハ
ナラナイト思フ、斯ウ云フヤウナ御答辯ガ
アツタノデゴザイマスルガ、是ハ論理的ニ見
マシテモ、現實ノ農村ト云フ事情カラ見マ
シテモ、私達ハドウモ肯定シニクイノデゴ
ザイマス、先ヅ此ノ點ニ付キマシテモツト
明確ナ御說明ヲ得タイト思ヒマシテ、第一
段ノ質疑ヲ致シタイト思フノデアリマス
平時ニ於キマシテモ其ノ國ノ領土ノ中
デ、其ノ國ノ領土内ノ人ロガ其ノ領土內ノ
食糧デ充サレルコトハ極メテ理想的ナコト
デゴザイマスルガ、特ニ戰時ニ於キマシ
テハ、其ノ必要ガ尙ホ一層痛感サレルノデ
ゴザイマス、先程岡野君モ言ハレマシタヤ
ウニ、食糧ガ戰時ニ於テドレ程重要デアル
カト云フ色々ノ引例モゴザイマシタ、實上
其ノ通リデゴザイマス、旣ニ御承知デゴザ
イマセウガ、戰時ニ於ケル所ノ米ノ消費量
ト云フモノハ、實ニ驚クベキ增加ヲ致スモ
ノデアリマス、日露戰爭當時ニ於キマシテ
ハ、年々六百万石ノ米ノ消費增加ヲ致シマ
シタ、歐洲大戰當時ニハ五百五十万石ノ消
費ノ增加ヲ致シテ居リマス、而モソレガ戰
後ニ於テモ此ノ增加シタ數字ガ減退ヲシナ
イノデアリマス、吾々ハ斯ウシタ經驗ヲ持
ツテ居ル、今囘ノ事變ニ於キマシテモ戰線
ノ將士諸君ノ爲ニ、或ハ軍需工場ノ殷盛ト、
都市ヘノ勞働人口集中等ノ關係カラ致シマ
シテ、米ヲ主要食物ト致シテ居リマスル現
在ノ私達ニ於テハ相當多クノ消費量ガ激增
スルモノト見ナケレバナラヌト思フノデゴ
ザイス(拍手)然ルニ今年ノ米ノ需給推算ノ
數字ヲ見マスルト、成程辻褄ハハツキリ合
ウテ居リマス、ダガ先日ノ第二囘ノ增收發
表ガゴザイマシタケレドモ、米ノ相場ハ決
シテ動カウトシテ居リマセヌ、出廻リ期ノ
今日ニ於テハ、普通ナラバ多少米價ハ下向
クノデアリマスルケレドモ、依然トシテ最
高價格ニ釘付ケラレテアル儘デアリマス、或
ル一二ノ銘柄ノ如キハ最高價格ヲ突破シテ
居ルモノサヘアルヤウナ狀態デゴザイマス
(拍手)日本ニ於ケル物資ノ中デ唯一ツノ强
味ハ此ノ米デゴザイマス、國民ノ主要食物
デアル所ノ米ノ問題ハ特ニ戰時ニ於キマシ
テハ絕對的ノモノデナケレバナラヌト思フ、
而モ是ハ物價問題ト極メテ「デリケート」ナ
關係ヲ持ツテ居ルノデアリマス、米ノ相場
ヲ「コントロール」致シマス爲ニ、政府ニ於
キマシテハ、特ニ戰時ニ於テ手持米ヲ最モ
潤澤ニシナケレバナラヌノデハナイカト考
ヘルノデアリマス(拍手)又持越米ノ如キニ
致シマシテモ、政府ノ發表シテ居リマスル
所ノ數字ト、商人側ガ巷間デ傳ヘル所ノ數
字トガハツキリ合ハナイ、果シテ今年ノ米
ガ政府ニ於テ十分デアルト思ハレルノデア
リマセウカ、政府ハ萬一ノ不作ノ場合等ニ
備ヘマスル爲ニ、又ハ市場ノ人氣ヲ調整ス
ルト云ツタヤウナ立場カラシマシテ、特一
此ノ際ハ手持米ヲ潤澤ニシテ戴キクイト考
ヘルノデアリマス(拍手)然ルニ果シテ政府
ハ今年ノ此ノ米穀年度ニ於キマシテ、米ニ
於テハ斷ジテ不安ナシト、斯ウ云フ斷言ヲ
確信ヲ以テ致スコトガ出來ルカドウカト云
フコトヲ私達ハ疑フノデアリマス(拍手)斯
ウ申シマスルト云フト政府ハ言ハレルデセ
ウ、內地ニ於テハ三百万石ノ增產ノ計畫ヲ
持ツテ居ルノダ、朝鮮ニ於テモ二百万石ノ
增產計畫ヲ持ツテ居ルノダ、所ガ此ノ增產
計畫ガ私達ニハモツト眞劍ニ考ヘテ見ナケ
レバナラヌト思フコトガアルノデアリマス、
昨年ノ不作ノアリマシタ當時ニ、百姓ノ一
戶一戶ニ就テ調ベテ見タ時ニ、應召軍人ヲ
出シテ居ル、家族ノ手間ノ不足シタ家ニ於
テ特ニ不作ノ多カツタト云フ事實ヲ私ハ知
ツテ知ル(拍手)其ノ上ニ牛馬ハ戰線ニ徵發
サレテ居リマス、勞力ハ戰場ニ動員サレ又
ハ工場ニ吸收サレテ居ル、肥料ハ高イ、農
具ハ高イ、農業藥劑モ高クテ而モ不足デア
ル、斯ウ云フヤウナ惡イ條件ノ下ニ於キマ
シテ、內地三百万石、朝鮮二百万石ノ增產
ヲヤルト云フノデゴザイマスケレドモ、此
ノ增產計畫タルヤ多少ノ危險性ヲ持ツテ居
ル所ノ增產計畫デハナイカト云フコトヲ考
ヘルノデアリマス(拍手)勿論政府ニ於キマ
シテ音頭ヲ取ルナラバ、農民ハ、今日ノ時
局ヲ認識スル所ノ農民ハ、張リ切ツテ增產
ニ從事ハスルデゴザイマセウガ、併シナガ
ラ農業ハ他ノ產業部門トハ違ツテ居ルノデ
アリマス、相當長イ期間ニ亙ラナケレバ、
初メ蒔イタ所ノ種ガ結實シナイヤウニ、其
ノ計畫ハ實現致シマセヌ、又農業機關ハ今
日ノ狀態デハテン〓〓バラ〓〓デゴザイマ
シテ、統一ガゴザイマセヌ、其ノ指導ニ於
キマシテモ相當困難ナルモノガアルノデハ
ナイカト云フコトヲ考ヘル、是ハ極メテ具
體的ナ一例デゴザイマスルガ、本當ニ增產
ヲ政府ガ眞劍ニ御考ニナリマスルナラバ
寧ロ現在ノ農林省ガ推薦シテ居リマス所ノ、
アノ奬勵品種、風ニモ弱ケレバ、蟲ニモ弱
1、而モ肥料ヲ澤山食フヤウナ所ノ、唯味
ダケノ旨イト云ツタヤウナ奬勵品種ヨリモ、
其ノ地方ノ土壤、氣象、風土ニ適スル在來
種ノ品種ニ取換ヘテ、サウシテ抵抗力ノ强
イ品種ヲ以テ增收ヲ圖ルト云フコトガ、極
メテ簡單容易ナ增收方法デアリマス、而モ此ノ
上ニ肥料デアルトカ、農具デアルトカ云ツタ
ヤウナモノノ配給ハ、軍需品ノ其ノ次ニ來ル
所ノ重要ナモノトシテ、私達ハ農村ニ配給シ
テ貰ハナイト云フト、折角ノ此ノ增產計畫
モ效果ガナイノデハナイカト云フコトヲ考
ヘル、然ルニ現在政府ノ是等ニ對シマスル、
特ニ米ニ對シマスル方針ヲ色々考ヘテ見マ
スト云フト、先ヅ臺灣ニ於キマシテハ、只
今ノ案ハ机ノ上デハ極メテ立派ナ案デゴザ
イマス、併シナガラ農民ノ心理カラ見マシ
テ、經濟的根據カラ見マシテ、今囘ノ臺灣
米移出管理ト云フモノハ、私ハ決シテ是ハ
增產ヲ狙フモノデナイ、必ズヤ減產ヲスル
モノデアラウト云フコトヲ言ヒ得ルト思フ
ノデゴザイマス(拍手)一方ニ於テ戰時下ノ
食糧政策ノ重要性ヲ願ミズニ、而モ米ガ年
ニ二囘出來ル立派ナ土地ノ臺灣ニ於テ、米
ガ減產ニナルデアラウト云フヤウナ案ガ、
臺灣ニ於テ行ハレヤウトシテ居ル、內地ニ
於テハ增產三百万石ハ先程申シタヤウナ理
由デ、極メテ危險性ガアルト思フノデゴザ
イマス(拍手)而モ現在唯配給ダケノ問題ヲ
内容トスル所ノ米穀會社法案ノ如キモノサ
ヘモ、今尙ホ宙ニブラツイテ居ルヤウナ狀
態デゴザイマス、支那ノ占據地域ニ於キマ
シテモ增產ノ指導ヲ講ゼラレテ居ルヤウデ
ゴザイマスルガ、是ハ中々急イデ間ニ合ハ
ナイト思フ、滿洲ニ於キマシテハ嚴重ナ統
制ニ依リマシテ、生產ノ統制マデガ行ハレ
テ居リマス、然ルニ朝鮮ニ於キマシテハ、
米ニ對スル所ノ大シタ統制的ナモノハ、何
等見ルコトガ出來ナイノデゴザイマス、實
ニ日本ト滿洲ト支那、此ノ東亞一體ヲ連ネ
テ考ヘテ見マスル時ニ、米穀政策ト云フモ
ノガ、各地々々デテン〓〓バラ〓〓デゴザ
イマシテ、何等一ツノ統一ガナイノデゴザ
マス(拍手)日本ノ今日ノ經濟的領域ハ極メ
テ廣クナツテ參リマシタ、今マデノヤウナ
內地ダケノ方針デハ、一ツノ農林行政モ、
一ツノ米穀政策サヘモ、間ニ合ハナイ時代
トナツテ來タト思フノデゴザイマス、ドウ
カ此ノ際日滿支ヲ打ツテ一丸トシタ所ノ、
大キイ立場カラノ食糧政策ノ確立、特ニ日
本ト滿洲ト臺灣ト朝鮮トヲ通ジテノ增產計
畫ヲ含メタ所ノ、戰時米穀政策ノ搖ギナキ
確立ヲ緊急問題トシテ解決シテ戴キタイト
思フノデゴザイマス(拍手)斯ル理由ノ下ニ內
地臺灣、朝鮮ヲ含メタ所ノ計畫的ナ增產
方針ガ農林當局ニ於テオアリニナルカドウ
カ、此ノ點ヲ篤ト伺ヒタイト思フノデゴザ
イマス、尙ホ朝鮮カラ年々內地ニ八百万石
ノ移出米ガ參リマスガ、是ハ先程モ拓務大
臣ノ御答辯ニ於キマシテ、朝鮮ニハ代作物
ガナイ、臺灣トハ條件ガ違フガ故ニ管理ヲ
ヤラナイト云フヤウナ御答辯ガゴザイマシ
ク、一應肯カレル點デハアリマス、併シナ
ガラ世間デハ朝鮮ニハ東拓ガアル、不在地
主ノ大キイノガ相當多イ、之ニ手ヲ著ケル
ノハ何ダカト云フヤウナ噂モ聞クノデゴザ
イマスガ、必ズシモ移出米管理ハ減產ヲ條
件トシナクテモ宜イノデアリマス、增產ト
云フコトヲ含メタ所ノ朝鮮米ノ移出管理若
クハ生產計晝ト云フモノガ、此ノ際ハツキ
リ立テラレルコトガ必要デハナイカト思フ
ノデゴザイマス(拍手)更ニ農林大臣ニ此ノ
點ヲ御尋ネスルノデゴザイマスガ、日本ト
滿洲ト支那ヲ通ズル所ノ、而モ統一アル綜
合的ナ食糧政策ノ確立、出來マスナラバ今
マデノ內外各地ノ個々別々ナ、部分的ナ統
制ヲ一段ト强化統一致シマシテ、生產ヲ確
保シ、米價ヲ安定シ、配給ヲ調整シ、中間
利潤ヲ抑制シ、而モ內外地ノ米ノ對立ヲ緩
和スルト云ツタヤウナコトヲ內容トスル、
內外地一體ノ米ノ專賣實施ヲヤルコトガ、
此ノ際必要デナイカト思フノデアリマス(拍
手)先日農林大臣ハ、生產カラ消費ヲ通ジテ
ノ一貫セル統制ガ必要デアルコトヲ說カレ
マシテ、國民ハ相當期待ヲ致シテ居ルノデ
ゴザイマス、出來マスナラバ此ノ際農林大
臣カラ戰時下ニ於ケル所ノ食糧政策ノ方針
ト、米穀專賣制度ニ關スル所ノ率直ナル御
所見ガ承リタイト思フノデゴザイマス(拍
手)
第二點デゴザイマス、今囘ノ臺灣米移出
管理ノ理由ハ、先程カラ縷々申サレテ居リ
マスカラ申上ゲマセヌガ、米價ノ適正ト、
米作偏重ト、軍事上、國策上必要ナル所ノ
特用作物ヲ增產スル爲ニヤルノダ、此ノ理
由ハ極メテ明快デゴザイマス、適地適作ノ
立場カラ、熱ト光ノ島豪灣ニ於キマシテ、
其ノ氣候ト風土ニ適スル所ノ國策的ナ特用
作物ヲヤルト云フコト、而モ海外ヨリノ輸入
ニ俟ツテ居ツタ物ヲ大イニ栽培致シマシテ、
國際收支ノ調整ニ役立テヨウトスルコトハ、
今ノ場合極メテ必要デアリマシテ、銳意
是ガ促進ニ努力シナケレバナラヌコト
ハ當然デアリマス、事變以來現在マデノ臺
灣ノ事情ヲ見マストキニ、先程カラ申サレ
マスヤウニ、臺灣島民ノ時局ニ對スル熱誠
ナル愛國心ニ依リマシテ、此ノ政府ノ、若ク
ハ臺灣當局ノ企圖サレマシタ所ノ特用作物
ノ增產ト云フモノハ、相當素晴シイ勢デ以
テ成功シテ來タト思フノデゴザイマス、臺
灣島民ノ愛國心ニ愬へマシテ、之ヲ割當制
ニ依ツテヤツテ貰フ、割當制デ此ノ增產ヲ
計畫スル、斯ウ云フ方法ニ依リマシテデ
モ、現在ノ時局ガ必要トスル程度ノ特用作
物ノ增產ガ吃度出來得ルト私共ハ考ヘルノ
デゴザイマス(拍手)現在臺灣島民ノ惧レテ
居リマスコトハ、米價適正ト云フ名ノ下ニ
於テ、米價ノ引下ガヤラレルノデハナイ
カ、米作偏重ノ名ノ下ニ於テ、水田ガ甘蔗
ノ畑ニ轉換サレルノデハナイカ、而モ其ノ
甘蔗ガ米價安ニ依ツテ同時ニ引下ゲラレル
ノデハナイカト云フ點ナノデアリマス(拍手)
管理米一石ニ對シテ二圓ノ利鞘ヲ取ラレル
ト云フ御話デゴザイマス、五百万石ノ移出
米ニ對シテハ一千万圓トナリ、島內消費ノ
アトノ四五百万石ニ對シテモ同ジク約一千
万圓、ソコデ一千數百万圓ノ收入減ガ農村
ニ起ツテ參リマス、其ノ大部分ガ農民ニ轉
嫁サレルコトハ、是ハ自明ノ理デアリマス、
米ガ下リマスト同時ニ他ノ作物モ下ル、勞
働賃銀モ下ル、特ニ島民ノ心配スルコトハ、
米價ニ引摺ラレマシテ廿蔗ノ下ツテ來ルコ
トデアリマス、臺灣島民ハ此ノ米ト甘蔗デ
生活ヲ維持シテ居ルノデアリマス、其ノ臺
灣ニ於ケル二大農產物ガ共ニ手ヲ引キ合ツ
テ低下致シマシタ時ノ、臺灣ノ農民諸君ノ
生活問題ヲ考ヘテ戴キタイ(拍手)之ニ對シ
マシテ總督府ハ製糖會社ヲ或點マデ取締ル
ノダ、今マデノ總督府令ヲ改正シテ、今度
ハ委任立法デアル所ノ律令ヲ以テ之ニ代ラ
スノダ、サウシテ甘蔗ノ作付面積モ認可ニ
スレバ、甘蔗ノ買上價格ノ最低値段モ決メ
ルノダカラ心配ハ要ラナイト申サレマスガ、
旣ニ南洋ニ於ケル南洋興發ノ甘蔗ノ買收價
格ノ一方的契約ヲ臺灣島民ハヨク知ツテ居
ルノデアリマス、是等ノ過去ノ經驗カラ、
臺灣島民ハ、此ノ律令ト云フモノニ對シテ
餘リ期待ヲ持ツテ居リマセヌ、多クノ臺灣
農民ハ依然トシテ不安ニ怯エテ居ルノデア
リマス、旣ニ此ノ農家ガ收入ヲ減少スルデ
アラウト云フコトヲ立證シテ、臺灣ニ於ケ
ル勸業銀行ノ各支店ガ-畑デハアリマセ
又、甘蔗ト米ノ作ラレル水田デアリマス、
其ノ價格ガ五%乃至六%モ低下シテ居ルコ
トヲ證明シテ居マス、是ハ簡單ナ一ツノ事
實デゴザイマスガ、以テ立證スルニ足ルト
思フノデアリマス、此ノ際拓務當局ガ臺灣
島民ノコトヲ眞ニ考ヘテ戴キマスナラバ、
今臺灣島民ガ製糖會社ヲ或ル程度ニ於テ抑
制スルデアラウト思ハレル此ノ律令ガ、ド
ウ云フ內容ヲ持ツテ居ルノデアルカ、之ヲ
此ノ際發表シテ戴キマシテ、臺灣島民ノ不
安ト疑問トヲ解消シテ貰ヒタイト思フ者デ
ゴザイマス(拍手)更ニ臺灣ニ於キマシテ
ハ、今日旣ニ阿片ト煙草ト樟腦ト鹽トノ外
ニ酒マデガ專賣ニナツテ居ルノデアリマス、
而モ相當ニ成績ヲ擧ゲテ居ルノデアリマス、
此ノ際臺灣ノ地域的獨占事業デアリ、而モ
米ト年中喧嘩シテ居ル砂糖ニ對シテ、米ヲ
移出管理スルナラバ、臺灣ニ於ケル獨占事
業デアル製糖事業ヲ國營若クハ專賣ニスル
ト云フコトガ(拍手)臺灣ノ統治ノ上カラ見マ
シテモ、國家經濟ノ上カラ見マシテモ、其
ノ他色々ナル意味ニ於キマシテ極メテ有利
ナコトダト考ヘルノデゴザイマス、此ノ二
點ニ對シテ特ニ拓務大臣カラ明快ナル御答
ヲ戴キタイト思フノデアリマス(拍手)
第三點ハ、臺灣總督府ノ文書ヲ見マス
ト、最近ノ臺灣ニ於ケル小作人ハ農耕地ニ
安定ガ出來ナイ、生活ヲ脅威サレルコトガ
夥シイ、地主モ小作人モ共ニ惱マサレテ居
ル、小作爭議ハ協調團體ニ依ツテ解決ニ當ツ
テ居ル云々ト申シテ居リマス、又現ニ昨年三
月末ノ調査ニ依リマスト、臺灣島内デ二千六
百餘件ノ小作爭議ガ此時局下ニ於テ起ツテ居
ルト云フコトハ、洵ニ遺憾千萬デゴザイマス、
斯樣ナ地主小作人ノ對立ノ下ニ於キマシテ
ハ、恐ラク農民ハ土地ノ上ニ安定ガ出來ナ
イデセウ、隨テ生產力ガ相當弱メラレテ居ル
コトハ間違ヒゴザイマセヌ、併シナガラ殘
念デハゴザイマスガ、斯樣ナ小作爭議ト云
フ事實ガ現存シマス以上ハ、何トカシテ此
ノ解決方法ヲ考ヘナケレバナラヌト思フノ
デアリマス、サウシテ臺灣ニ於ケル所ノ生
產力ヲモツト伸バスコトガ、今日ノ急務デ
アルト思フノデアリマス(拍手)此ノ爲ニ既
ニ朝鮮ニ於キマシテハ、内地同樣小作調停
會ガゴザイマス、農地調整法ニ匹敵スル所
ノ農地令ガゴザイマス、臺灣ニ於キマシテ
モ內地朝鮮同樣、小作調停法若クハ農地調
整法ト云フヤウナモノヲ、臺灣ノ實情ニ卽
シタ內容ニ於テ之ヲ實施致シマスコトハ、
臺灣ニ於ケル所ノ生產力ノ擴充ト云フ見地
カラ見マシテモ、臺灣ニ於ケル所ノ皇民化
運動ノ上カラ見マシテモ、臺灣統治ノ上カ
ラ見マシテモ、一「エポック」ヲ劃スルモノデ
アリマシテ、農民ヲシテ勇躍國策ニ殉ジ、
今日ヨリモヨリ一層協力邁進セシムル所ノ、
好キ結果ヲ生ムモノデハナカラウカト云フ
コトヲ考ヘラレルノデゴザイマス、此ノ點
ニ對シマシテ特ニ拓務大臣ノ臺灣島民ヲ思
フ所ノ心カラナル御答辯ヲ戴キタイト思ヒ
マス、以上三ツノ要點ヲ申述べマシテ、內
容ハ簡單デゴザイマスルガ、ソレニ對スル
政府當局ノ答辯ハ、成ベク詳細ニ伺ヒタイ
ト思セマス、是デ私ノ質問ヲ終リマス
〔國務太臣櫻内幸雜君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/39
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040・櫻内幸雄
○國務大臣(櫻内幸雄君) 只今ノ御質疑ニ
對シマシテ答辯申上ゲマス、第一點ハ現在
ノ勞力ノ不足其ノ他ノ關係上、米穀ノ生產
ガ減少スル憂ガアルガ、此ノ際ニ於ケル現
在農林當局ノ施設デハ、其ノ生產ガ果シテ
確保出來ルカドウデアルカ、又此ノ際ニ
於ケル增產計畫トシテ多政穫ノ米種ヲ奬勸
スルノ考ヲ持ツテ居ルカ否カト云フコトノ
御尋デアツクヤウニ思ヒマス
勞力ノ不是其ノ他ノ關係上、生產ガ容易
ニ確保出來ナイト云フ事柄ニ付キマシテ
ハ、憂ヲ同ジク致シテ居ルノデアリマス、
隨ヒマシテ今囘ノ豫算ニ於キマシテモ、幾
多ノ施設ニ付テ御協賛ヲ仰イデ居ルノミナ
ラズ、農家ノ總力ノ發揮ヲ願ツテ、其ノ力
ニ依ツテ之ヲ補ツテ行キタイ、斯樣ニ考ヘ
マシテ今日幾多ノ方法ニ付キマシテ、力ヲ
盡シテ居ルヤウナ次第デアリマス、多收穫
ノ問題ニ付キマシテハ、氣候風土ノ關係モ
アリ、色々ツ事情モアリマスノデ、ソレ等ヲ
調査致シマシテ、其ノ地方々々ニ依ツテ多
收穫ノ奬勵ヲ致シタイト考ヘテ、目下試驗
場其ノ他ニ於テ調査ヲ致サセテ居リマス
第二ノ點ハ日滿支ヲ一貫シタル所フ生產
計畫ヲ確立シテ、以テ〓糧問題ヲ解決スル
ノ考ハドウデアルカト云フ御質問デアリマ
スガ、此ノ點ニ付キマシテハ、旣ニ企畫院
ヲ中心ト致シマシテ相當ナル調査ヲ進メテ
居リマス、隨七マシテ一日壬速ニ其フ方策
ヲ確立致シタイト今日心配〓シテ居ル次第
デアリマス、臺灣、朝鮮其ノ他內外地ヲ通
ジマシテハ、旣ニ米穀自給計畫ヲ確立致シ
マシテ、年々ノ需要ニ對スルダケノ今日相
當ノ準備ヲ致シテ居ルノデアリマス、尙ホ
專賣制度ヲ施行スルノ考ハナイカト云フ御
話デアリマスガ、專賣制度ノ問題ハ多年當
議會ニ於テモ問題ニナツテ居ル所デアリマ
スケレドモ、現在政府ト致シマシテハ米穀
統制法ヲ十分ニ活用致シマシテ、今日ノ時
代ノ要求ニ却應致シタイト考ヘテ居ルノデ
アリマシテ、只今專賣制度ヲ施行スルト云
フヤウナコトハ考ヘテ居リマセヌ、右答辯
申上ゲマス
〔國務大臣八田嘉明君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/40
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041・八田嘉明
○國務大臣(人田嘉明君) 臺灣ニ砂糖ノ專
賣ヲヤル意思ハナイカ、斯ウ云フ御話デア
リマスガ、砂糖ノ生產ハ申スマデモナク臺
灣ニ於ケル所ノ最モ重要テル產業デアリマ
シテ、是ガ消長ハ一ニ本島產業經濟ニ及ボ
ス所洵ニ重大デアリマスノデ、政府ト致シ
マシテハ甘庶栽培、製糖事業ニ對シマシテ、
其ノ趨勢ニ十分留意致シテ居リマスコトハ
御承知ノ通リデアリマス、而シテ是万專賣
ニ付テドウデアルカト云フコトニ付キマシ
テハ、今直チニ之ヲ實行シ得ザルモノト考
ヘマス、併ナガラ原料供給者デアリマスル
所フ農民ノ立場カラ、又一方ニ於テハ消費
者デアル所ノ大衆ノ立場カラ、十分ナル統
制ヲ與フル要ガアルト存ジマス、政府ニ於
キマシテモ先程申上ゲマシタ通リ、今囘ノ
米穀管理制度ト關聯致シマシテ、適當ナル
調整ノ方法ヲ講ジテ居ルコトハ御承知ノ通
リデアリマス、尙ホ糖業令ノ内容ニ付テ、
モツト說明セヨト云フ御話デアリマシタガ、
是ハ只今ノ所先程モ申上ゲマシタガ、作付
豫想面積及ビ買上價格ノ認可制度ヲ考慮致
シテ居ルモノガ、其ノ中心ヲ成シテ居リマ
ス、適當ノ機會ニ更ニ詳細ニ付キマシテハ
御答ヲ申上ゲタイト存ジテ居リマス、最後
ニ臺灣ニ小作調停法或ハ農地調停法ノ如キ
ヲ、實施スル意思ガナイカト云フコトニ付
キマシテハ、現在御承知ノ通リ業佃會ナル
モノガ組織セラレテ居リマシテ、地主ト小
作トノ間ノ協調ニ是ガ相當資シテ居ルコト
ハ御承知ノ通リデアリマス、將來ハ此ノ業
佃會ヲ法制化致シマスルコト、或ハ又小作
調停法ノ施行、小作法ノ制定等ニ付キマシ
テ、十分ノ考慮ヲ致シタイト存ジテ居リマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/41
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042・金光庸夫
○副議長(金光傭夫君) 是ニテ質疑ハ終了
致シマシタ、本案ノ審査ヲ付託スベキ委員
ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/42
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043・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ政府提出、朝鮮事業
公債法中改正法律案委員ニ併セ付託シ、尙
ホ委員ノ數ヲ二十七名ト爲シ、追加ノ委員
ハ議長ニ於テ指名セラレンコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/43
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044・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/44
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045・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
やく、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程
第五、短期現役小學校〓員俸給費國庫負擔
法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス-
文部大臣荒木貞夫君
第五短期現役小學校〓員俸給費國庫
負擔法中改正法律案(政府提出)
第一讀會
短期現役小學校〓員俸給費國庫負擔法
中改正法律案
短期現役小學校〓員俸給費國庫負擔法中
左ノ通改正ス
「短期現役小學校〓員俸給費國庫負擔法」
ヲ「現役小學校〓員俸給費國庫負擔法」ニ
改ム
第一條師範學校ヲ卒業シタル市町村立
小學校正〓員ニシテ陸軍又ハ海軍ノ現
役ニ服スル者ノ俸給ノ爲市町村ニ於テ
要スル費用ハ國庫之ヲ負擔ス
前項ノ規定ニ依リ俸給費ヲ國庫ニ於テ
負擔スル者ノ範圍ハ勅令ヲ以テ之ヲ定
ム
附則
本法ハ昭和十四年十二月一日ヨリ之ヲ施
行ス
〔國務大臣男爵荒木貞夫君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/45
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046・荒木貞夫
○國務大臣(男爵荒木貞夫君) 只今上程ニ
相成リマシタ短期現役小學校〓員俸給費國
庫負擔法中改正法律案ニ付キ御說明申上ゲ
やく、今般政府ハ本會議ニ兵役法中改正法
律案ヲ提出致シテ居ル次第デアリマスガ、
右兵役法ノ改正ニ伴ヒ短期現役兵ノ制度ガ
廢止致サレルコトニ相成ツテ居ルノデアリ
マス、隨テ短期現役小學校〓員俸給費國庫
負擔法モ、當然改メラレネバナラヌ次第デ
アリマス、御承知ノ如ク短期現役ニ服スル
小學校〓員ニ對シテハ、其ノ在營中〓員タ
ル身分ハ現職ノ儘トシ、俸給ハ三分ノ一ヲ
支給シ來ツテ居ツタノデアリマスガ、是ガ
理由ト致シマスル所ハ、小學校〓員ハ國民
〓育ニ任ズベキ重責ニアリ、〓員自ラ軍隊
〓育ヲ受ケ、其ノ得タル所ヲ國民〓育ニ及
ボシ、以テ次代國民ヲシテ國民ノ必任義務
ヲ完全ニ履行セシムルノ重大ナル任務ヲ有
スル點ニアルノデアリマス、今囘兵役法ノ
改正ニ依リ、短期現役兵ノ制度ハ之ヲ廢止
セラレルコトト相成ルノデアリマスガ、小
學校〓員ガ有スル此ノ國民〓育上ノ重責ハ、
短期現役兵制度ノ廢止ニ依ツテ消滅セザル
ノミナラズ、現時ノ國情ニ鑑ミル時ハ、益〓、
其ノ重要性ヲ加ヘタルモノト考ヘルノデア
リマス、此ノ故ニ短期現役兵制度ノ廢止後
モ、師範學校卒業者ニシテ現役ニ服スル小
學校正〓員ニ對シテハ、其ノ身分取扱ハ從
前通リトシ、其ノ俸給支給ニ付テハ、短期
現役兵當時ノ待遇ト懸隔ヲ生ゼシメザルヤ
ウ支給致シタイト考へテ居リマス、而シテ
其ノ俸給費負擔ニ關シテハ、市町村財政ノ
現狀ニ照ラシ、從前通リ之ヲ國庫ノ負擔ト
爲スコトト致シタイト存ズル次第デアリマ
ス、隨テ本案ハ兵役法改正ニ伴ヒ短期現役
兵制度ノ廢止ニ依リ、改ムベキ點ヲ改正セ
ントスルニ外ナラナイノデアリマス、何卒
愼重御審議ノ上速ニ御協贊アランコトヲ希
望致シマス(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/46
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047・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 本案ノ審査ヲ付託
スベキ委員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/47
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048・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ政府提出、軍用自動
車檢査法案委員ニ併セ付託サレンコトヲ望
ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/48
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049・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/49
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050・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
やくろ仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程
第六、兵役法中改正法律案ノ第一讀會ヲ開
キマス-陸軍大臣板垣征四郞君
第六兵役法中改正法律案(政府提出、
貴族院送付)第一讀會
兵役法中改正法律案
兵役法中左ノ通改。正ス
第六條中「四年」ヲ「五年」ニ改ム
第七條中「五年」ヲ「七年」ニ改ム
第八條中「十二年四月」ヲ「十七年四月」ニ、
「十一年四月」ヲ「十六年四月」ニ改ム
第十條削除
第十二條中「六十日」ノ下ニ「(海軍現役兵
ニシテ師範學校ヲ卒業シ小學校ノ〓職ニ
就クノ資格ヲ有スル者ニ在リテハ一年六
十日)」ヲ加フ
第十五條削除
第十七條第三項中「前二項」ヲ「前項」ニ改
メ同條第二項ヲ削ル
第十八條中「、第九條第一項及第十條」ヲ
「及第九條第一項」ニ改ム
第三十三條現役ニ適スル者ハ勅令ノ定
ムル所ニ依リ體格等位ノ優劣ニ從ヒ徵
集豫定者及其ノ徵集順序ヲ定メ各徵募
區ノ配賦人員ニ應ジ現役兵、第一補充
兵ノ順序ニ之ヲ徴集ス
前項ノ徵集順序ヲ定ムル場合ニ於テ體
格等位同一ナル者ニ付特ニ必要アルト
キハ勅令ノ定ムル所ニ依リ抽籤ノ法ニ
依リ其ノ徵集順序ヲ定ムルコトヲ得
第一項ノ規定ニ依リ徵集スベキ者ノ屬
スル兵種ハ各徵募區ノ配賦人員ニ應ジ
其ノ身材、藝能及職業ニ依リ之ヲ定ム
現役ニ適スル者ニシテ現役兵又ハ第一
補充兵ニ徵集セザル者ハ之ヲ第二補充
兵ニ徵集ス
現役兵徴集豫定者ニシテ其ノ屬スル兵
種定マリタル者ハ本人ノ願ニ依リ第一
項及第二項ノ規定ニ依ル徵集順序ニ拘
ラズ現役兵ニ之ヲ徵集スルコトヲ得
第三十八條削除
第四十一條徵兵檢査ヲ受クベキ者ニシ
テ勅令ノ定ムル學校ニ在學スル者ニ對
シテハ勅令ノ定ムル所ニ依リ年齡二十
六年迄ヲ限トシ其ノ徵集ヲ延期ス
前項ノ規定ニ依リ徵集ヲ延期セラレタ
ル者ニ對シテハ在學ノ事由止ム年又ハ
其ノ翌年ニ於テ徵兵檢査ヲ行フ但シ
ノ學校卒業ノ日ヨリ六月以內ニ他ノ學
校ニ入學スル者ニ付テハ徵集延期ノ事
由尙繼續スルモノト看做ス
第一項ノ規定ニ依リ徵集ヲ延期セラレ
タル期間滿了ノ年ニ至ルモ在學ノ事由
尙止マザル者ニ對シテハ其ノ年徵兵檢
査ヲ行フ
戰時又ハ事變ニ際シ特ニ必要アル場合
ニ於テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ徵集ヲ
延期セザルコトヲ得
第四十五條第二項中「第三項」ヲ「第二項」
三段人
第四十九條左ニ揭グル者徵集豫定者ト
爲リタル場合ニ於ケル其ノ徵集順序ハ
第三十三條第五項ノ規定ニ依ル者ノ下
位トシ其ノ他ノ者ノ上位トス
第四十六條第二項ノ規定ニ該當ス
ル者
二第四十七條ノ規定ニ該當スル者
三第七十四條ニ規定スル罪ヲ犯シ刑
ニ處セラレタル者
四第七十六條ニ規定スル罪ヲ犯シ刑
ニ處セラレタル者
第五十三條第一項中「第四十一條第三項
若ハ第四項」ヲ「第四十一條第二項若ハ第
三項」ニ、「、第六十六條第一項又ハ第六十
七條」ヲ「又ハ第六十六條第一項」ニ、同
條第二項中「第十七條第一項又ハ第二項」
ヲ「第十七條第一項」ニ改ム
第五十五條第二項中「服役第一年次ノ」ヲ
削ル
第五十六條第三項ヲ左ノ如ク定ム
前項ニ規定スル召集日數ハ特別ノ必要
アル場合ニ限リ五十日以內之ヲ延長ス
ルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ第一項ニ
規定スル召集囘數ヲ一囘宛減ズルモノ
トス
第五十七條第一項中「第一補充兵」ヲ「補
充兵」ニ改ム
第六十二條第四項中「認ムル者ナルトキ
ハ」ノ下ニ「召集期日若ハ召集年次ヲ變更
シ又ハ」ヲ加フ
第六十七條削除
第七十三條中「帝國外ノ地ニ在リテ帝國
臣民ノ爲ニ設置シタル學校」ヲ「帝國外ノ
地ニ在ル學校」ニ改ム
附則
本法ハ昭和十四年三月三十一日ヨリ之ヲ
施行ス但シ第十條、第十二條、第十五條、
第十七條、第十八條、第三十八條、第四
十一條、第四十五條及第六十七條ノ改正
規定竝ニ第五十三條ノ改正規定中第十七
條、第四十一條及第六十七條ニ關スル部
分ハ昭和十四年十二月一日ヨリ之ヲ施行
ス
昭和十四年三月三十一日ニ於テ現ニ第十
九條ノ規定ニ基キ其ノ服役ノ期間ヲ延長
セラレ居ル者ノ服役ハ第八條ノ改正規定
ニ拘ラズ仍從前ノ例ニ依ル
昭和十四年十二月一日ニ於テ現ニ短期現
役兵トシテ徵集セラレ未ダ入營セザル者
及短期現役兵トシテノ服役ヲ終リタル者
ノ服役ハ仍從前ノ例ニ依ル
昭和十四年十二月一日ニ於テ現ニ中學校
又ハ從前ノ第四十一條ノ規定ニ依リ中學
校ノ學科程度ト同等以上ト認メタル學校
ニ在學スル者ニ對スル徵集ノ延期ハ其ノ
者ガ現ニ在學スル學校ニ引續キ在學スル
間ハ第四十一條ノ改正規定ニ拘ラズ仍從
前ノ例ニ依ル
〔國務大臣板垣征四郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/50
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051・板垣征四郎
○國務大臣(板垣征四郞君) 兵役法中改正
法律案提出ノ理由ニ付テ說明致シタイト存
ジマス
第一ハ服役、召集、在學徵集延期等、直接
軍備充實ニ關係アル改正デゴザイマス、海
軍關係ノ事項モゴザイマスガ、併セテ私カ
ラ申上ゲマス、御承知ノ如ク現下内外ノ情
勢ノ變化ハ、帝國軍備ノ迅速且ツ飛躍的充
實ヲ必須トスルニ至リマシテ、戰時所要兵
力保持ノ爲ニハ或ル程度服役期間ノ延
長ヲ絕對ニ必要トスルニ至ツタノデアリマ
ス、卽チ陸軍ニ於キマシテハ補充兵役ヲ五
年、海軍ニ於キマシテハ豫備役ヲ一年、後
備兵役ヲ二年延長致サネバナラヌコトト相
成リマシタ次第デアリマス、又就中幹部ノ
新銳化竝ニ在〓軍人ノ能力向上ニ付キマシ
テハ、今次事變ニ於キマシテ特ニ其ノ必要
ヲ痛感セラレタ所デアリマシテ、是ガ爲在
學徵集延期制度及ビ召集制度ニ所要ノ改正
ヲ加ヘナケレバナラヌノデアリマス、尙ホ
現役兵徵集人員モ增加ヲ見ルコトトナリマ
シタ結果、入營兵ノ體位低下ヲ極力阻止ス
ルノ必要ヲ生ジ、是ガ爲メ兵員徵集法ニ付キ
マシテモ、其ノ目的ニ副フ如ク所要ノ改正
ヲ致シタイト存ジマス
第二ハ短期現役兵制度ノ廢止デアリマ
ス、現在ノ制度ニ於キマシテハ、師範學校
ヲ卒業シタ者ハ五箇月ノ現役ノ後ハ、直チ
ニ第一國民兵役ニ服スルコトト相成ツテ居
リマスガ、近時軍ノ裝備ハ著シク機械化サ
レ、其ノ戰鬪法モ頗ル複雜ニナリマシタノ
デ、僅カ五箇月ノ期間デハ到底軍隊〓育ヲ
十分ニ施スコトガ出來ナイバカリデナク、
〓員タル者ニ十分ニ軍隊〓育ヲ體得セシメ、
現役服役後ニ於テ之ヲ兒童生徒ノ〓育ニ及
ボシ、國民ノ必任義務ヲ完全ニ遂行セシ
メ、遺憾ナク皇運扶翼ノ任ヲ盡サシメマス
爲ニモ、現在ノ制度デハ適當デナイト存ズ
ルノデアリマス、而モ一朝有事ノ際ニ於キ
マシテハ小學校〓員ガ一般國民ト同樣、直
チニ國防ノ第一線ニ立ツコトハ國民〓育上
極メテ肝要デアルト思料致スノデアリマス、
隨テ本制度ハ之ヲ廢止致サントスル次第デ
アリマス、本制度ノ廢止ニ依リマシテ、
層國民皆兵ノ實ヲ擧ゲ得マスコトハ、今更
申スマデモナイコトト存ジマスガ、尙ホ本
制度ノ廢止ニ依リ、國民〓育ニ支障ヲ及ボ
サナイコトニ付キマシテハ、十分ナル確信
ヲ有シテ居ル次第デアリマス
第三ハ日滿兩國一體ノ關係ヲ助長スル爲
ノ改正デアリマス、卽チ滿洲國ノ設立スル
學校中、日滿兩國發展ノ爲、特種重大ナル
關係ヲ有スルモノニ對シマシテハ、帝國ト
致シマシテ其ノ充實發展ノ爲積極的援助ヲ
爲スト共ニ、之ニ在學スル帝國臣民ニ對シ
マシテハ、其ノ修學ニ關シ、帝國ノ設立ス
ル學校ニ於ケルト同樣ノ便宜ヲ與フルノ必
要ガアルモノト信ズル次第デアリマス、今
囘本法律案ヲ提出スルニ至リマシタ理由ハ
以上ノ通リデゴザイマス、何卒御審議ノ上
速ニ御協賛アランコトヲ希望致シマス(拍
手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/51
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052・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 質疑ノ通告ガアリ
マイ、之ヲ許シマス-最上政三君
〔最上政三君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/52
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053・最上政三
○最上政三君 私ハ只今上程ノ本案ニ對
シ、四點政府ニ質疑ヲ試ミタイト思ヒマス
第一ハ短期現役制度ノ廢止ノ問題デアリ
PV、今囘ノ改正案ハ只今陸軍大臣ヨリ申
サレタル如ク服役、召集、徵兵延期等各項
ニ亙ル改正デアリマス、其ノ間ニハ色々重
要問題モアリマセウガ、問題トナルノハ、
短期現役制度ノ廢止デアルト思フノデアリ
マス、元來此ノ制度ハ我國獨特ノ制度デア
ツテ、是ガ爲メ今日マデ優秀ナル小學〓員
ヲ得、又我ガ〓育界ニ貢獻シタコトハ私ガ
申スマデモアリマセヌ、此ノタビ此ノ制度
ヲ改正シテ師範卒業者モ一般兵役者ト同ジ
ク、二箇年服役トスルト云フヤウニ改正ニ
相成ルノデアリマスガ、其ノ結果今後師範
學校入學者ハ減少スルノデハナイカ、又小
學〓育ニ對シ影響スル虞ナキヤ否ヤト云フ
點デアリマス、是ガ實施ノ場合ニ於テハ、
最近ノ狀況ヲ見テモ每年二千五百名內外ノ
入營者ガアリマス外ニ、男子〓員一箇年ノ
退職及ビ死亡者ハ約二万人ニ達シテ居リマ
ス、之ヲ加ヘルト年ニ二万數千人ノ小學〓
育者ガ玆ニ不足ヲ生ズルコトニ相成ルノデ
アリマス、唯デサヘ今日軍需「インフレ」景
氣ニ依ツテ、師範學校入學志望者ガ少イノ
デアリマス、若シモ本案施行ノ場合ニ於テ
志望者ガ少クナリ、其ノ爲ニ小學〓員ノ素
質等ニ於テ低下スルノデハナイカト云フコ
トヲ憂フル者デアリマス、又現在ノ短期現
役制度ニ於テハ召集サレタ場合ニ、在役中
小學校ノ〓員トシテ俸給ノ三分ノ一ヲ支給
サレテ居リマス、勿論是ハ當然支給サルベ
キモノデアリマスガ、他ノ一般服役者ト權
衡上ノ問題ハドウカ、現ニ今日官公署ニ在
職スル者ガ、其ノ在職中召集サレタ場合ニ
於テ、現役兵トシテ召集サレタトキハ俸給
ノ全部ハ貰ヘナイノデアリマス、是ガ充員
召集デアルトカ、臨時召集ト云フヤウナ、
所謂赤紙ノ召集ナラバ俸給ノ全額ガ貰ヘル
ノデアリマス、斯ウ云フ譯デ、此ノ事變ガ
今後如何ニナルカハ存ジマセヌガ、此ノ俸
給額モ相當ノ額ニ達スルト思フ、勿論國家
ノ爲ニ是等官公吏ノ人々ガ出征シタノデア
ルカラ、俸給ノ全額ヲ支給スルコトハ差支
ナイガ、唯現役者デアルカラ俸給ヲ吳レナ
イ、充員召集デアルトカ、臨時召集者ニハ
俸給全額ヲ支給スル、ソレノミナラズ手當
モ支給シ、俸給モ昇ルノデアリマス、斯ノ
キ如コトデアツテ、今後幾年續クカ分ラナ
イト云フトキニ、現役者ト、又赤紙召集者ト
ノ間ニ、憂フル點ガナイカドウカヲ心配ス
ルノデアリマス、特ニ徵兵檢査ノ際ニ補充
兵トシテ決定シタ者ガ、一ハ現役ニ變更シ
テ召集サレテ俸給ガ貰ヘナク、一ハ補充兵
トシテ充員召集トシテ召集サレテ俸給ガ貰
心同ジ官廳ニ居ル人々ガサウ云フヤウ
ナ待遇ヲ受ケテ居ル、此ノ點ハ如何デアル
カ、私ハ陸軍當局其ノ他ノ國務大臣ニ伺ヒ
タイノデアリマス
第二ハ昨年來徵兵延期ノ學生ガ遽ニ增加
シテ居ル問題デアリマス、我國ニ於テハ男
子二十歲ニ達スレバ兵役ノ義務ニ服サナケ
レバナラヌコトハ、今更申スマデモナイノ
デアリマス、然ルニ國家ハ除外例トシテ、
中等學校以上ノ指定サレタ學校ニ在學スル
學生トカ、海外ニ在ル者ニ對シテハ徵兵延
期ノ恩典ヲ與ヘテ居リマス、是ハ國家皆兵
制度ノ國家トシテ、嚴格ナル意義カラ申シ
マスレバ如何カト思フ、併シナガラ私ハ此
ノ制度ニ反對デアリマセヌ、又之ヲ否認シ
ヨウトスル者デモアリマセヌ、唯國家非常
時ノ際、此ノ恩典ニ預ツテ居ル所ノ學生諸
君ガ如何ナル現狀ニアルカト云フコトヲ、
特ニ荒木文部大臣ニ伺ヒタイノデアリマス、
由來我國ノ壯丁ハ農村ノ子弟ガ大部分ヲ占
メテ居リマス、彼等ハ中學校ニ入レズ、小
學校ヲ卒ヘタ者バカリガ多イノデアリマス、
其ノ中ニハ家貧シウシテ、本人ガ召集サレタ
場合ニ於テハ、一家ノ生活スラ得ルコトガ
出來ナイ人モ多イノデアリマス、是ガ爲ニ
國家ハ兵役法第二十條、第四十條ニ於テ、
兵役ヲ免除シ、或ハ徵兵延期ノ恩典ヲサヘ
與ヘテ居ルノデアリマス、併シナガラ是等
ノ人々ハ兵役免除、或ハ徵兵延期ノ恩典ニ
預ルコトヲ潔シトシナイノデアリマス、特
ニ今囘ノ應召ニ對シテハ一家ノ働キ者ガ多
ク召集サレタノデアリマス、ソレガ爲ニ地方
ノ農家ハ耕作ヲ休ミ、商家ハ家業ヲ疊ンデ
勇躍出征ヲシテ居ル人々ガ多イノデアリマ
ス、彼等ハ眼中一身一家ナク、唯國家ニ御
奉公申上ゲテ居ルヤウナ次第デアリマス、
中ニハ入營ニ際シテ再檢査ヲ受ケテ、身體
ガ惡ク歸サレントスルヤ、徵兵官ニ採用方
ヲ嘆願スル人ガ澤山アリマス、尙ホ若シモ
容レラレナイ場合ニハ、何ノ顏アツテ〓黨
メ人々ニ見エン乎ト、自殺シタ人サヘアル
ト云フコトハ、大臣モ御承知デアルト思フ
ノデアリマス、此ノ氣慨、此ノ意氣アツテ
コ、、皇軍ガ到ル處ニ於テ連戰連勝シテ居
ルノデアリマス、又我ガ國民ノ美點ハ玆ニ
存スルノデアリマス、然ルニ事變下ノ我ガ
高等〓育ヲ受ケツツアル、猶豫ノ恩典ニ預
ツテ居ル學生諸君ノ現狀ハドウデアルカ、
一度銀座街頭トカ盛リ場ニ行ツテ見レバ、
感慨無量ノモノガアリマス、世間デハ徵兵
延期ノ學生中、眞ニ學業中途ニシテ餘儀ナ
ク延期シタ者ガドノ位アルカトサヘ噂サレ
テ居リマス、私ハ此ノ噂ヲ信ジタクハアリ
マセヌ、信ジタクハアリマセヌガ、併シ最
近ノ徵兵檢査ノ現狀ヲ見ルト、或ハ世間ノ
噂ガ事實デアルノデハナイカトスラ疑ハレ
ルノデアリマス、今陸軍當局ノ調査ニ係ル
過去數年間ノ學生ノ徵兵延期ノ人數ヲ擧ゲ
テ申上ゲテ見タイト思ヒマス、昭和九年ニ
ハ九万一千百三十三人ノ徵兵延期ノ學生ガ
アリマシタ、十年ニハ九万七百八十六人デ
アリマス、十一年ニハ九万五百四十一人ト
云ウヤウナ數字デ、此ノ數年間ハ年々減少
シテ居リマス、減少シテ居ルニモ拘ラズ、
十二年ニハ九万二千三百九十七人ニ增加シ
テ居リマス、十三年ニハ更ニ增加シテ九万
六千十四人ト云フ數字ニナツテ居リマス、
之ヲ十二年ニ比ベテ見マスルト約四千人ノ
增加デアル、又十一年度ニ比ベテ見マスル
ト昨年ハ約六千人ノ增加ヲ示シテ居ルノ
デアリマス、一方徵兵檢査ノ人員ハ、私此
處デハ數字ヲ承知シテ居リマスガ一々申上
ゲマセヌ、徵兵檢査ノ人員ハ最近甚ダ憂フ
ベク年々減少シテ居ル、又學校數モ殖エテ
居ラナイ、ソレニモ拘ラズ事變突發後徵兵
猶豫ノ學生ガ一年ニ二千、四千ト云フヤウ
ニ殖エルト云フノハドウ云フ結果デアルカ、
此ノ點ヲ荒木文部大臣ニ特ニ御伺シタイノ
デアリマス、斯ク申シマシテモ、私ハ荒木文部
大臣ヲ問責スル者デハアリマセヌ、大臣ニ
對シテ私ハ敬意ヲ拂ツテ居ルノデアリマス、
ソレハ荒木文部大臣ノ御令息貞發君ガ昨年
南支戰線ニ派遣サレ、最近歸〓シタト云フ
コトヲ新聞デ見タトキニ、實ニ文部當局ノ
大臣トシテ、國民ノ儀表トシテ、最モ好イ
〓訓デアルト思ツタノデアリマス、國務大
臣ノ御令息ガ一兵卒トシテ南支戰線ニ働ク
ト云フ其ノ新聞記事ヲ見テ、私ハ荒木文部
大臣ニ敬意ヲ拂ツタ一人デアリマス、故
私ハ文部大臣ニ對シテ決シテ問責スルノデ
ハアリマセヌガ、斯樣ナ數字ガドウシテ玆
ニ現ハレテ來タノデアルカ、尙ホ事變勃發
後徵兵延期ノ學生ガ國家ノ危急ヲ憂ヘテ自
ラ延期ヲ取消シ、喜ンデ徵兵檢査ヲ受ケ勇
躍出征シタ人ハ何人アルカ、其ノ數ヲ示シ
テ戴キタイノデアリマス
第三ハ徵兵再檢査ノ問題デアリマス、是
ハ一面カラ見ルト甚ダ不合理ノヤウデアリ
マスガ、只今陸軍大臣ガ此處ニ御述ニナツ
タ說明ニ依ツテモ、我國ニ於テハ現在ノ儘
デハ、自然增加ニ待ツテハ陸軍トシテノ所
要人員ヲ得ルコトガ困難デアルト言ハレテ
居ルノデアリマス、今日世界各國ハ軍備ノ
擴張ニ汲々タルモノガアリマス、我國モ之
ニ伴ウテ所要人員ヲ增加スルノハ當然デア
リマス、併シナガラ私ハ之ヲ解決スルニハ
自ラ方法ガアルト思フノデアリマス、例へ
テ申セバ過去十年間位ノ壯丁ニシテ、徵兵
檢査ノ結果不合格トナツタ者ニ對シ、此ノ
際政府ハ臨時的ニ徵兵再檢査ヲスル意思ナ
キヤト云フコトデアリマス、サスレバ私ノ
計算ニ於テモ優ニ百万位ノ優秀ナル壯丁ガ
得ラレルノデアリマス、最近ノ徵兵檢査ノ
狀況ヲ見マスルト、檢査人員ノ約七割方ガ
合格シテ居ルノデアリマス、之ヲ數年前ニ
就テ見マスルト、二三割方ノ合格率シカナ
イノデアリマス、此ノ間ノ狀況ヲ見マスト、
當時ハ軍縮時代ニ於テ不合格トナツタ人モ
アリマセウ、又檢査ノ當時病弱者デアツタ
人モアリマセウガ、其ノ後癒ツタ人モアル
カラ、此ノ方法ヲ以テ再檢査ヲ實施シタナ
ラ、一時ニ相當多數ノ壯丁ガ得ラレルノデ
アリマス、此ノ聲ダケデモ蔣介石政權ハ勿
論英佛ノ迷夢ヲ醒マスコトハ易々タルモ
ノデアルト思フノデアリマス、以上ハ甚ダ
私ノ理想論ノ如クデアリマスガ、軍部ノ
部ニ於テモ斯ウ云フ意見ガアルト云フコト
ヲ、私ハ承知シテ居ルノデアリマス、ドウ
カ此ノ問題ニ付テハ十分御檢討アランコト
ヲ私ハ陸軍大臣ニ要望シ、同時ニ此ノ問題
ニ付テ御意見ヲ承リタイト思フノデアリマ
ス
第四、最後ノ問題ハ兵役稅ノ問題デアリ
マン、之ヲ言葉ヲ換ヘテ申シマスレバ、壯
丁稅デアリマス、徴兵檢査ノ結果不合格者
トナツタ者ニ對シ兵役稅ヲ課スルト共ニ、
兵役ニ應ズル男子ナク、婦女子バカリノ一
家ニ對シ、兵役稅ヲ課スル意思ナキカ如何
ト云フコトデアリマス、是ハ國民皆兵主義
ノ國家トシテ眞ニ考究スベキコトデアツテ、
現ニ獨逸ヲ初メ、其ノ他ノ二三ノ國ニ於テ
行ツテ居ルノデアリマス、唯今囘ノ事件ニ
於テハ、第一線ニアル將士ノミナラズ、銃
後ニアル國民モ亦勤勞奉仕等ニ依ツテ國家
ニ御奉公申上ゲテ居ルカラ、其ノ必要ハナ
カラウト云フ論者モアルノデアリマス、併
シナガラ銃後ニ於テ活動シテ居ル人々ハ、
兵役免除者バカリカト言ヘバ、サウデハアリ
マセヌ、今ヤ我國ハ國ヲ擧ゲテ老若男女
悉ク銃後ニ於テ努力シテ居ルコトハ、既に
御承知デアルト思フノデアリマス、又此ノ問
題ハ本議場ニ於テモ屢〓問題トナツタノデア
リマス、卽チ明治三十四年第十六議會ニ於テ
ハ議員吉岡直一氏ガ本案ヲ提出シ、又大正
四年第三十六議會及ビ三十七議會ニ於テハ、
議員矢島八郞氏ガ此ノ兵役稅法案ヲ提出致
シテ居ルノデアリマス、當時ノ內容ハ兵
役稅ハ徵兵適齡ニ達シタル翌年ヨリ七年
間之ヲ納付シ兵役義務者ガ第三種所得納稅
者ナルトキハ、所得金額ノ千分ノ二十ヲ徵
シ、單ニ市町村ノ公民ナルトキハ五圓、公
民ニアラザルトキハ三圓トナツテ居ルノデ
アリマス、當時此ノ案ハ兵役稅ヲ壯丁稅ト
改メテ、其ノ他二三ノ箇所ヲ修正シテ衆議
院ハ通過シタル歴史ガアルノデアリマス、
偶〓、貴族院ニ於テ審議未了トナツタノデア
リマス、兵役稅ニ對シテハ陸軍當局ニ於テ
ハ、今日マデ反對ノ意向ノヤウデアリマス、
其ノ理由トシテハ、兵役ノ義務ヲ稅金ヲ以
テ代ヘルト云フコトハ、軍人精神ニ反スル
モノデアル、或ハ又傭兵制度ニ堕スル虞ガ
アルト云フコトデ反對シテ居ルノデアリマ
ス、是ハ一應御尤ノヤウデアリマスガ、假
ニ傭兵制度ト誤ルト云フナラバ、徵收方法
ニ依ツテ其ノ憂ヲ除去スルコトガ出來ルノ
デハナイカト私ハ思フノデアリマス、卽チ
此ノ兵役稅ヲ特別會計トスルノデアリマス、
特別會計トシテ之ヲ實施シタ場合ニ於テハ、
或ハ此ノ誤解ヲ防ギ得ルコトト思フノデア
リマス、今日軍事扶助料竝ニ軍事援護費用
ハ約一億圓ニ達シテ居ル情勢デアリマス、
私ハ此ノ軍事費用及ビ援護費用等ニ充ツル
爲特別會計ヲ以テ兵役稅ヲ課シタラ宜イト
思フ、其ノ兵役稅ヲ以テオ互ニ困ツテ居ル
所ノ家族ヲ救フトシタナラバ、是ハ相互扶
助デモアリ、又國民皆兵ノ趣意ニモ適シテ
居ルト思フノデアリマス、ドウカ政府ハ斯
ウ云フヤウナ意味ニ於テ、此ノ兵役稅ニ對
シ御考慮ヲ願ヒタイ、又兵役ニ服セザル所
ノ一家ニ於テハ、寧口今日ニ於テハ稅金其
ノ他ニ依ツテ、國家ニ御奉公ヲシヨウト考
ヘテ居ルモノガ多數デアルノデアリマス、
現ニ此ノ問題ハ地方ニ於テ相當問題トナ
リ、群馬縣ノ縣會ニ於テモ、是ガ問題トナ
ツタト云フ事例モアルノデアリマス、故
私ハ名稱トカ徵收方法ハドウデモ宜イカ
ラ、ドウカ此ノ兵役稅ヲ創定シテ、サウシ
テ今日ノ軍事扶助料デアルトカ、其ノ他ノ
費用ノ一部分ニ兵役稅ヲ用ヒル考ハナキカ、
以上ノ四點ニ對シテ政府ノ御答辯ヲ伺ヒタ
イト思フノデアリマス(拍手)
〔國務大臣男爵荒木貞夫君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/53
-
054・荒木貞夫
○國務大臣(男爵荒木貞夫君) 只今ノ最上
君ノ御質疑ニ御答致シマス、第一ハ師範
學校ノ生徒ガ短期現役兵ノ廢止ニ伴ウテ減
少シハシナイカ、過去ノ思想カラ或ハ左樣
ナ御心配ガ起ルカトモ存ジマス、併シナガ
ラ苟モ國民〓育ニ任ズル此ノ重要チ責務ヲ
持ツテ居ル者ガ、兵役ノ長短ヲ交換トシテ
入ツテ來ルト云フヤウナコトデアツタナラ
バ、是ハ非常ナ誤リデアル、先ヅ其ノ根柢
ヲ直ス必要ガアルト存ジマス(拍手)而シテ今
提案ノ理由ニモアリマシタ如ク、私ハ國民
〓育ト軍隊〓育トハ一貫シタル皇運扶翼ノ
一ツノ大キナ〓育デナケレバナラヌ、故
國民〓育ニ任ズル者ハ義勇公ニ奉ズル此ノ
考ヲ徹底セシムルコトガ、ヤハリ國民〓育
ノ最モ重要ナモノト存ジマス、故ニ之ヲ十
分ニ體得シテ、幼少ノ頃カラ徹底セシムル
爲ニハ、小學校ノ〓員ガ過去ニ於テモ寧ロ
自ラ進ンデ此ノ體驗ヲスルコトガ、必要デア
ツタト考ヘルノデアリマスルガ、事茲ニ至
ラナカツタノハ、歐洲ノ總テノ制度ヲ受入
レタ其ノ關係デアツタノデハナイカト存ズ
ルノデアリマス、故ニ斯樣ナコトニ付テハ、
其ノ根本ヲ玆ニ考ヘテ行キタイ思ツテ居リ
マス、併シナガラ他方物質ノ問題其ノ他モ
アリマスノデ、自然人情トシテ御心配ノ點
ニナラウト存ジマスカラ、此ノ國民〓育ニ
從事スル者ノ待遇、之ニ對シテハ將來大イ
ニ考慮致シマシテ、此ノ神聖ナル任務ニ
服スル人々ノ位置ノ向上ヲ圖ツテ、以テ
之ヲ防ギタイト考ヘテ居ル次第デアリマス
第二ノ募集ニ關シテノ問題デアリマス
ガ、是ハ十四年度ニ於キマシテ、地方ニ師
範學校ノ第二部生ノ增募ヲ奬勵致シマシ
テ、其ノ增募ニ對シマシテハ、中央カラ之
ニ補助ヲ與ヘルコトニナツテ、今年度ノ豫
算ニ十万圓ヲ計上致シマシテ、取敢ズ其ノ
應急ノ措置ヲ講ジテ居ル次第デアリマス
第三ノ、二年ニ亙ツテ之ニ三分ノ一ノ俸給
ヲ支給スル場合ニ、他ノ一般兵役義務者ト
ノ均衡ガ取レナクハアルマイカ、斯樣ナ御
質問ノヤウニ存ジマシタガ、是ハ師範學校
卒業生ノ重要ナ任務ニ鑑ミマシテ、過去ノ
短期現役兵ト同一ナ考ヲ以テ、玆ニ特殊性
ガアルト云フコトニ依ツテ、其ノ點ハ必要
ナコトト考ヘルノデアリマス
第四ノ大學生ノ問題ニ付キマシテハ、大學
生ノ中ニモ、若シ一タビ御用トアレバ必ズ
進ンデ行ク者ガ多數ニアルト考ヘテ居ルノ
デアリマスルガ、假ニモ此ノ軌範トナルベ
キ大學生ガ時局ノ認識ヲ誤ツテ、只今御指
摘ニナリマシタヤウナコトガアリマスルナ
ラバ、洵ニ〓育當事者トシテ相濟マヌコト
デアリマスノデ、昨年來是等ノ振肅ニ對シ
テハ、多少ソレ〓〓ノ手段ハ盡シテ居リマ
スガ、今尙ホソコニ十分ニ至ラナイノデア
リマス、全般ニ是等ノ軌範トナルベキ學生
ニ付キマシテハ、十分督勵ヲ致シマシテ、御期
待ニ副フヤウニ致シタイト存ズルノデゴザ
イマス、以上ヲ以テ御答ト致シマス(拍手)
〔國務大臣板垣征四郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/54
-
055・板垣征四郎
○國務大臣(板垣征四郞君) 只今ノ御質問
ノ徴集延期學生ノ狀態ノ件デアリマス、徴
集延期ノ學生ノ增加シテ參リマシタコト
ハ、御意見ノ通リデアリマス、此ノ原因ハ
徵集延期ノ資格ヲ有スル學校ノ增加、又之
ニ向ツテ入學スル者ノ人員ノ增加、又一方
ニ於テ優良學校ヘノ入學難ニ伴ヒマシテ、
徴集延期ヲ更ニ又延引スル者ガ增加シテ來
ク、斯ウ云フヤウナ原因デアルト判斷ヲシ
テ居ルノデアリマス、而シテ此ノ學生ノ中
ニ、或ハ徵兵忌避トデモ疑ハルベキ證據ハ
ナイカト云フ次ノ御質問デアリマスガ、只
今ノ所ニ於キマシテハ、徵兵ノ檢査其ノ他
ノ結果ニ依リマシテモ、其ノ確證ハゴザイ
マセヌ(拍手)又斯ノ如キコトハ學生ニ於テ
斷ジテアルベキコトデハナイト確信スルノ
デアリマス(拍手)又徵集延期中ノ學生デ、
今囘ノ時局ニ鑑ミテ進ンデ徵兵檢査ヲ受ケ
テ召集ニ應ジタ者ハ、昨年度中百三十一名
ゴザイマス(拍手)
徵兵檢査ニ於キマスル再檢査ノ問題デア
リマス、一タビ徵兵檢査ヲ受ケマシテ、終
結處分ガ決定致シマスレバ、ソレ〓〓所要
ノ兵役ニ就クコトニナルノデアリマス、隨
テ更ニ再檢査ヲ行ツテ、此ノ終結處分ヲ覆
シテ別ナ兵役ニ還元セシムルト云フコト
ハ、現行ノ兵役法ノ體制ヲ覆スモノデアリ
マシテ、法規上カラ致シマシテモ、又徵集
技術上カラ致シマシテモ、實行ガ至難ナコ
トデアルト考ヘルノデアリマス、尤モ徵兵
檢査ニ際シテ疾病中ノ者、或ハ又病後デ間
モナイト云フヤウナ壯丁デアツテ、甲種デ
アルカ、或ハ乙種デアルカト云フコトヲ判
定スルコトモ出來ナイ、又其ノ判定ハ翌年
ニ俟タナケレバナラヌト云フヤウナ場合ニ
於キマシテハ、此ノ再檢査ノ方法ハ現ニ實
行シツツアルノデアリマス、又尙ホ補充兵
役又ハ國民兵役ニアル者ト雖モ、志願ニ依
ツテ從軍スル途ノ開カレテ居リマスルコト
ハ御承知ノ通リデアリマス
其ノ次ノ問題ハ兵役稅ト申シマスカ、其
ノ問題デアリマスガ、本問題ハ兵役義務ノ
本質ニ鑑ミマシテ、非服役者ノ課稅ニ付テ
ハ御同意ガ出來難イト考ヘテ居リマス、之
ニ課稅スルト致シマスレバ、各種ノ不合理
ノ事態ヲ生ズルコトモ考ヘラレルノデアリ
マス、併シ一方ニ於キマシテ、此ノ兵役義
務者ノ待遇ニ付キマシテハ、當局ニ於テモ
特ニ意ヲ用ヒテ居ル所デアリマシテ、曩ニ兵
役義務者及癈兵待遇審議會ヲ設ケマシテ、
此ノ答申事項ニ付キマシテハ、著々之ヲ實
行シツツアルノデアリマス、又最近ニ於キ
マシテハ、更ニ軍事救護法ヲ改正シテ軍事
扶助法ト致シマシテ、此ノ扶助ノ擴充ヲ圖
リツツアルノミナラズ、目下入營官公吏ノ
身分保障、或ハ入營者ノ職業保障ノ强化等
ニ付キマシテモ銳意〓究中デゴザイマス、
是ダケ御答致シマス(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/55
-
056・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 伊東岩男君
〔伊東岩男君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/56
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057・伊東岩男
○伊東岩男君 私ハ只今提案ニ相成ツテ居
リマスル所ノ、兵役法中改正法律案ノ國防
上ノ重要性ニ鑑ミマシテ、本案ニ直接關係
アル事項竝ニ本案ト關聯致シマスル事項ニ
付テ簡單ニ陸軍大臣、文部大臣、厚生大臣
ニ御尋シタイト思フノデアリマス
先ヅ第一ハ只今陸軍大臣カラ色々本案提
出ノ理由ノ御說明ヲ拜聽致シマシタガ、無
論微溫的デハアリマスケレドモ、此ノ戰時
下ニ於キマシテ、ドウシテモ必要ナル改正
デアルコトハ勿論デアリマス、私ノ見ル所
ニ依リマスト、斯ル消極的ナ改正デ、此ノ
變轉極リナキ國際情勢ノ變化ニ卽應致シマ
ス所ノ、新作戰上ノ兵力確保ニ十分ナル確
信ガアルカドウカト云フ點デアリマス、何
故ニ此ノ際モウ一歩ヲ進メテ積極的ナ大改正
ヲ御斷行ニナラナカツタノデアルカト云フ
此ノ點デアリマス、而シテ我國ニ於キマシ
テハ精兵第一主義ヲ採ツテ居ルノデアリマ
スカ、此ノ見地カラ適齢年齢ノ低下ヲ主張
スルモノデアリマス、軍ノ御考ハドウデア
ルカ、卽チ我國ハ精兵主義ヲ第一義トスル
ノハ勿論デアリマス、國際情勢、國防上ノ
現狀カラ致シマシテ、皆兵主義ヲ併セテ必
要トスルコトハ言フマデモアリマセヌ、而
シテ私ハ第一ニ精兵主義ヲ絕對ニ堅持セネ
バナラヌト考ヘルモノデアリマス、此ノ觀
點カラ致シマシテ、第一徵兵ノ年齡ヲ低下
スルコトガ非常ニ適切ダト思ヲノデアリマ
ス、然ルニ軍ニ於テハ年齡ノ低下ニハ御反
對ニナツタ結果トシテ、今囘ノ御提案ニモ
此ノ實現ヲ見ナイコトハ洵ニ遺憾トスル所
デアリマス、第一軍ノ精否ハ將兵ノ體力、
氣力ニアルト思フノデアリマスガ、勇猛氣
銳ナ活力ハ若キ血潮ニノミ流レテ居ルト私
ハ思フノデアリマス、然ルニ年齡低下ハ體
力ガ十分デナイカラ、飽クマデ軍ハ滿二十
歲制度ヲ主張サレテ居ルヤウデアリマスケ
レドモ、現在ノ日本ノ志願兵ニ依ツテ之ヲ
見マスルト何等ノ缺點モナイノデアリマ
ス、又外國ニ於テモ、米國、英國、佛國、
何レモ十八歲、露西亞ハ十九歲デ入營セシ
メテ居ルノハ御承知ノ通リデアリマス、更
ニ靑年學校ヲ義務制度ニ致シマシタノデ、
私ハ靑年學校カラ引續キ兵役ニ服セシメテ
サウシテ〓育ヲスルコトガ必要ダト思フノ
デアリマス、サウシテ早ク入營セシメテ、
早ク兵役義務ヲ終了セシメ、三十七八歲ト
云フ中年層ノ時代ニナツタ時ニハ、是ガ地
方デ一番活躍スル階級デアリマスカラ、ゾ
レ等ノ者ヲバ生產事業其ノ他ニ活躍セシム
ルコトガ必要ダト考ヘルノデアリマス、私
ハ左樣ナ見地カラ致シマシテ、軍ノ反對ス
ル理由ハ少シモナイト考ヘテ居リマスケレ
ドモ、ドウモ軍ハ之ニ反對サレテ居ルヤウ
デアリマスガ、軍トシテハ別ニ何等カ反對
シナケレバナラナイ、卽チ低下スルコトノ
出來ナイ理由ガアルナラバ、其ノ理由ヲ伺ヒ
タイノデアリマス
次ハ農村ハ强兵ノ源泉地デアリマス、兵
農一體、和戰兩全ノ强化ニ村テ、軍ノ所信
ハドウカト云フ問題デアリマスガ、私ハ都
會ノ兵ガ必ズシモ弱イトハ斷ジテ考ヘテ居
リマセヌ、然ルニ支那事變ニ依ツテ、敵兵
ノ言ヲ所ニ依レバ、某々師團ニ最モ恐レヲ
ナシテ居ル事實ガアルノデアリマス、農村
ガ强兵育成ノ道場デアルコトハ、蓋シ疑フ
餘地ガナイノデアリマス、支那事變處理ノ
對策ノ一ツトシテ、日滿支ヲ一體トスル農
業「ブロック」ノ結成、是ハ當然デアリマス
ガ、其ノ結果トシテ少クトモ內地ノ農村ヲ
壓迫シテ、是ガ原因トナツテ內地農村ニ不
安ヲ招カシムルヤウナコトガアツテハ斷ジ
テ相成ラナイノデアリマス、內地農村ノ維特
發展ニ依ツテフミ勇猛ナ軍隊ヲ得ラレルノ
ミナラズ、兵〓其ノ他軍需品ノ大部分ヲ生
產スル農村デアリ又道場デアルノデ、寧ロ
直接ノ國防事業デアルト云フ不可分關係ニ
於テ、兵農一體ト云フ立場ヨリ、農村問題
ニ對シテ軍ノ深キ理解ト關心ヲ換起スルモ
ノデアリマス、軍ト農村ノ問題ニ付テハ尙
ホ論及致シタイノデアリマスケレドモ、之
ヲ省略シテ、唯軍ノ農村ニ對スル關心ニ付
テ御所信ヲ承リタイノデアリマス
次ハ出征兵フ棒給給與ハ絕對ニ公平ナル
コトガ原則デナケレバナリマセヌ、然ルニ
モ拘ラズ、現在ノ狀態ヲ見テミマスト甚ダ
不公平デアルガ、軍ハ何等カ之ニ對シテ對
策ヲ講ズルノデアルカ、又此ノ儘デ放任ス
ル方針デアルヤ否ヤト云フ點デアリマス、
卽チ官公吏、會社員及ビ職エガ應召サーシタ
場合ハ、其ノ俸給ノ全額若クハ大部分ヲ支
給サレルコトニナツテ居ルメデアリマス、
然ルニ農民又ハ商工業者ガ召集サレテモ、
依然定メラレタ俸給、卽チ上等兵デアリマ
スナラバ八圓八十錢デアル、假ニ農村ヨリ
或ル會社ヘ職工トシテ出テ居ル者ガアツタ
ト致シマシテ、是ガ召集サレク場合ハ、其
ノ當時ニ給料百圓若クハ百五十圓貰ツテ居
ル者ハ、其ノ儘ニ支給ヲ受ケルコトガ出來
ルヤウニ相成ツテ居ル、此ノ事實カラ考ヘ
マシテ、私ハ此ノ點ガ非常ニ不公平デアル
ト思ンノデアル、同ジ出征兵ノ間ニコンナ
不公平ナ事實ガアツテハ、是ハ精神的ニ、
思想的ニ及ボス影響ハ決シテ少クハアリマ
スマイ、長期作戰ノ上ニ軍ハ當然此ノ點ニ
付テハ顧慮シナケレバナラヌ重大ナル問題
ダト思フノデアリマスガ、此ノ善後對策ニ
付テ確信アル陸軍大臣ノ御答辯ヲ得タイト
思フノデアリマス
最上君モ先程兵役稅ノ間題ヲ御話ニナツ
タノデアリマスガ、兵役義務ニ對スル公平
ナル犧牲ノ負擔ト云フ點ヨリ見テ、兵役ニ
服セザル家庭ニ、國民皆兵ノ精神ニ基キ、
適切妥當ナル負擔ヲセシムルト云フコトニ
付テハ、相當考ヘナケレバナラナイ大キナ
問題デアリマス、只今陸軍大臣ノ御答辯ニ
依リマスト、御反對ノ御意見ノヤウデアリ
マスケレドモ、是ハ少クトモ大キナ問題デ
アリマス、假ニ全國ノ戶數ヲ千五百万戶ト
致シマシテ、三百方戶ノ兵役關係家庭ガア
ツタト致シマシテモ、殘リノ千二百万戶ノ
家庭ト云フモノハ、何等兵役上ノ義務負擔
ヲ受ケテ居ラナイノデアリマス、併シ兵役
稅トカ、徵兵稅トカ、左樣ナ名前ノ付ク課
稅ヲ致シマスコトハ、是ハ國民皆兵ノ本義
ニ則ツテ適切デナイト思ヲノデアリマシテ、
此ノ點ハ陸軍大臣ト同樣ノ意見ヲ持ツテ居
リマスケレドモ、之ニ代ルベキ公平ナル負
擔ヲ、兵役ニ服セザル家庭カラ適當ナル方
法デ徵收スルヤウナ方針ヲ執ツテ行クト云
フコトハ、ドウ致シマシテモ唯戰時下ニ於
ケル間ダケデモ必要デアルト私ハ思ヒマス
ノデ、特ニ此ノ點ニ御再考ヲ得タイト思フ
ノデアリマス
次ニ壯丁ノ體位ガ非常ニ低下致シテ居リ
マスルコトハ、長期作戰ノ上ノ一大缺陷ダ
ト思フノデアリマス、人的資源ノ確保强化
策ニ村テ、ドウ云フ御考ヲ持ツテ居ラレル
カ、更ニ銃後對策ノ十全、負傷兵ノ失業問
題等ニ付キマシテ、御尋シタイト思フノデ
アリマスガ、精銳主義ノ第一要件ハ、精神
ト身體ノ健良性ニアルノデアリマス、皆兵
主義ハ國民全體ノ體位向上ニ依ツテ、初メ
テ其ノ目的ヲ達スルノデアリマス、然ルニ
現時ノ徵兵檢査ノ狀況ハ如何、又學生及ビ、
靑年ノ體位低下ハ洵ニ寒心ニ堪ヘマセヌ、
勞働過勞ニ因ル所ノ健康ノ惡化、農村衞生ノ
破壞、殊ニ入的資源ノ基本タル出生率ノ減少
ニ鑑ミマシテ、出征兵ノ交代問題等ニ付テハ、
十分ナル考慮ヲ拂フベキコトヲ痛感スルノ
デアリマスルガ如何、銃後對策ニ付テハ最
善ノ施設ヲサレツツアリマスルガ、第一線ノ
勇士ニ後顧ノ憂ナカムシムルコトガ最モ肝
要デアリマス、殊ニ名譽ノ負傷ヲシタリ、
又ハ疾病ニ罹ツタ多數ノ失業者ニ對シテハ、
特段ノ注意ヲ拂フベキ問題ダト思フノデア
リマスルガ、此ノ點ニ付テ敢テ厚生大臣ニ
質問スルモノデアリマス
最後ニ靑年學校振興强化ノ問題ト、短期
現役制度ノ廢止ニ伴フ小學〓育ニ支障ナカラ
シムル對策如何ト云フ問題デアリマス、軍
關係ノ國家施設ノ中、靑年學校ク役割ハ最
モ重大デアリマス、而モ軍ノ各般ニ頗ル影
響ガアルノデ、其ノ施設ニ村テハ萬全ヲ期
セナケレバナリマセヌ、然ルニ十四年度ヨ
リ愈〓靑年學校ノ義務制ガ實施サレマスル
ガ、義務ダケヲ負ハセテ、國家ハ一部分ノ
經費ノ負擔ハスルケレドモ、其ノ義務モ負
擔モ大部分ハ國民ニ之ヲ負ハシテ居ルノデ
アリマス、左樣ナ靑年學校ノ現在ノ制度ニ
對シテハ、私ハ非常ナル不滿ヲ持ツテ居ル
一人デアリマス、靑年學校ハ兵營ノ一部分
デアリマス、兵ノ八割ハ此メ靑年學校ヨリ
出テ居ルコトニ思ヒヲ及ボシマシタ時、兵
營ト同樣、國家自ラガ之ヲ負擔シテ、寧口
國營靑年學校ト爲スベキコトヲ熱望シ、特
ニ要求スルモノデアリマス、第一、軍事〓
練ノ徹底ノ爲ニ將校若クハ下士ノ配屬、次
ハ優良〓員養成ノ機關、〓員給ノ全額負擔、
學校建設費、設備費ノ負擔、生徒費ノ補給
ヲ爲シ、訓練學習ノ時間ヲ增加シテ、サウ
シテ十全ヲ期セナケレバナヲナイト思フノ
デアリマス
尙ホ最後ニ御尋シタイコトハ、短期現役
兵制度ノ廢止問題デアリマス、之ニ因ツテ
生ズル幾多ノ〓育上ノ缺陷ガ現ハレテ來ル
ト私ハ信ズルノデアリマス、先ヅ〓員ノ不
足ニ對スル缺陷、其ノ他〓育全面的ニ及ボ
ス支障ニ對シテ、政府ハ如何ナル對策ヲ持
ツテ居ルカ、特ニ文部大臣ノ御答辯ヲ得タ
イノデアリマス、以上ノ質問ニ對シテ、信
念ト熱意アル所ノソレ〓〓ノ御答辯ヲ要求
スル次第デアリマス(拍手)
〔國務大臣板垣征四郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/57
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058・板垣征四郎
○國務大臣(板垣征四郞君) 只今ノ御質問
ノ第一ハ、壯丁ノ年齡低下ノ問題デアルト
承知ヲ致シタノデアリマスガ、現行ノ兵役
法ニ於キマシテハ、滿二十歲ヲ以テ諸般ノ
兵業ニ服セシムルト云フ見地カラ、此ノ年
齡ガ最モ適當デアルト考ヘテ居ルノデアリ
いく、隨テ今直チニ之ヲ改正スル考ハナイ
ノデアリマスガ、之ヲ改正スルト致シマシ
テ偖テ十九ガ宜イカ、或ハ十八ガ宜イカト
云フヤウナユトハ、是ハ最モ愼重ニ〓究ヲ
シナケレバナラヌ問題デアルト考ヘルノデ
アリマス、尙ホ一方ニ於キマシテ厚生省ニ
於カレマシテハ、徵兵前ノ若イ十五六歲ノ
者ニ、豫備檢診ヲ實行スルト云ヲ御考ガア
ルヤウデアリマス、是ハ洵ニ結構ナコトデ
ゴザイマシテ、此ノ結果ヲ徵兵檢査ニ十分
ニ利用スルト云フコトニ付テ考ヘテ居リマ
ス
第二ノ問題ハ負擔ノ公正ヲ期スル見地カ
ラ、官公吏竝ニ大會社、大銀行等ニ於テハ、
出征前ト同樣ノ給與ヲ致シテ居ルケレドモ、
其ノ他ノ中小商工業者等ニ至ツテハ其ノ給
與ヲ受ケテ居ラナイ、洵ニ御話ノ通リノ事
實ガアルト存ズルノデアリマス、併シナガ
ラ之ヲ全部ニ亙リマシテ給與致シマスコト
ハ、諸般ノ事情カラシテ困難デアルト考ヘ
ルノデアリマス、軍ト致シマシテハ、從來
支給致サレマシタ所ノ者ハ、依然其ノ支給
ヲ繼續サレンコトヲ希望スル次第デアリマ
スルシ、又支給ヲ受ケテナイ者ニ對シテハ、
目下軍事扶助法ノ適用ニ依ツテ遺憾ナキヲ
期シテ居ル次第デアリマス、尙ホ今後トモ
銃後ノ負擔ノ公正化ニ付キマシテハ、他ノ
政府當局トモ連絡ヲ致シマシテ、十分ニ〓
究ヲ致ス考デアリマス、兵役稅ノ問題ニ付
テハ先程御答申上ゲマシタ通リニ、御同意
致シ兼ネル所デアリマス
〔國務大臣男爵荒木貞夫君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/58
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059・荒木貞夫
○國務太臣(男爵荒木貞夫君) 靑年學校ノ
〓育ニ關スル國營ノ問題デアリマシタ、靑
年學校ノ制度ハ我國ノ劃期的ノ試ミデアリ
マシテ、私共靑年學校ノ〓育ニ將來ノ國運
ノ消長ヲ大イニ期待シテ居ル者デアリマス、
故ニ出來得レバ之ヲ地方ノ負擔トスルコト
ナク、國營トスルコトガ理想トシテハ適當
デアルト思ヒマスルガ、御承知ノヤウニ只
今ノ狀態ニ於テ、直チニ之ヲ實現スルコト
ハ困難デアリマシテ、甚ダ十分デハアリマ
セヌガ、總テノ問題ヲ考慮致シマシテ、此
ノ程度ニ於テ取敢ズ靑年學校ノ義務制ヲ施
行致シマシテ、此ノ中堅靑年ニ將來ヲ期待
スル方法ヲ執ルコトガ、今日切要ト考ヘテ
居ル次第デアリマス、御說ハ洵ニ御尤デア
リマスガ、出來得ル限リ地方ノ負擔ヲ十分
輕減シツウ、此ノ效果ヲ擧ゲルコトニ努力
ヲ致シマス、ソレカラ師範學校ノ短期現役
兵ノ廢止ニ伴ウテノ減少ノ問題ハ、先程最
上君ニモ御答ヲシタノデアリマスルガ、物
質ト精神的方面トノ兩方ノ作用ニ依リマシ
テ、十分ニ待遇ヲ改善スルコトト同時ニ、
此ノ重要ナル任務ニ服スル國民〓育ノ任ニ
當ル方ノ氣構ヘト、國家ガ之ニ對スル待遇
トヲ考慮致シマシテ、此ノ現象ヲ減ズルヤ
ウニ努力致ス次第デアリマス(拍手)
〔國務大臣廣瀨久忠君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/59
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060・廣瀬久忠
○國務大臣(廣瀨久忠君) 先ヅ第一ニ國民
體位ノ低下ニ關スル御質問ニ對シテ御答シ
マスガ、國民體位ノ低下ニ付キマシテハ、
以前ヨリ心配セラレテ居ツタ所デアリマシ
テ、厚生省モ斯ウ云フ問題ヲ取扱フ爲ニ生
レタヤウナ次第デアリマス、吾々ト致シマ
シテハ文部省當局ト連絡ヲ取リマシテ、各
般ノ衞生行政或ハ體力向上、矯正等ニ十分
ノ努力ヲ致シマシテ、此ノ方面ニ力ヲ致シ
テ、立派ナ成績ヲ將來ニ期シタイト思ツテ
居リマス、尙ホ出生率ノ問題、人口ノ問題
等ニ付テ御心配ニナツテ居ルコトハ洵ニ御
尤ニ存ジマス、殊ニ今囘ノ事變ニ依リマシ
テ出生率ノ減少ガ相當ニアルノデハナイカ、
恐ラク每年二百万近クノ出生ガ、三四十万
ノ減少ヲ來スノデハナイカト云フコトヲ心
配致シテ居リマス、隨ヒマシテ是等ノ生レ
タ子供ニ付テハ、之ヲ完全ニ育テ上ゲルベ
〃、吾々ノ方ニ於テモ特別ナ豫算ヲ以テ、
乳幼兒ノ保護ヲ完全ニ致ス積リデアリマス、
尙ホ出生率ノ增加、此ノ問題ハ非常ニ重要
ナ問題デアリマシテ、一朝一夕ニハ解決ノ
出來ナイ問題デアリマスガ、人口問題ノ〓
究ノ一端トシテ、十分ニ〓究ヲ致シタイト
思ツテ居リマス
次ニ國策ニ關係シテ生ズル所ノ失業者ノ
問題ニ付テ御心配ノ點、洵ニ御尤ニ存ジマ
ス、物資動員計畫ノ爲ニ不振ナ產業ガ生ズ
ル、之ニ依ツテ失業者ヲ生ズル、之ニ對シ
テ如何ニスルカ、是ハ非常ニ重要ナ問題デ
アツテ、私共ト致シマシテモ昨年來非常ナ
努力ヲ拂ツテ居リマス、先ヅ申スマデモナ
ク軍需工業、殷賑產業ニ出來得ル限リ轉職
ヲセシメル、紹介ノ勞ヲ取ル、其ノ外或ハ職
業ヲ授ケル爲ニ職業ノ補導ヲスル、或ハ授
產ヲスル、或ハ內職ヲ與ヘルト云フヤウナ
各方面ノ施設ヲ十分ニ講ジテ居リマス、是
ガ爲ニハ相當ナ多額ノ豫算ヲ計上致シマシ
テ、商工省ト連絡ヲ取リマシテ、總テ違算
ナキヲ期スベク最善ノ努力ヲ致シテ居ル次
第デアリマス(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/60
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061・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 是ニテ質疑ハ終了
致シマシタ、本案ノ審査ヲ付託スベキ委員
ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/61
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062・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ政府提出、軍用自動
車檢査法案委員ニ併セ付託サレンコトヲ望
ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/62
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063・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/63
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064・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
マット、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程
第七、滿洲國ニ於ケル領事官ノ裁判ノ廢止
ニ關スル法律案ノ第一讀會ヲ開キマス-
外務政務次官〓水留三郞君
第七滿洲國ニ於ケル領事官ノ裁判ノ
廢止ニ關スル法律案(政府提出、貴族
院送付)第一讀會
滿洲國ニ於ケル領事官ノ裁判ノ廢止ニ
關スル法律案
第一條明治三十二年法律第七十號第六
條乃至第十七條ノ規定ハ滿洲國ニ駐在
スル領事官ニハ之ヲ適用セズ
第二條本法施行ノ際現ニ滿洲國ニ駐在
スル領事官ノ管轄權ヲ有スル訴訟事件
及非訟事件ニ關スル事務竝ニ登記事務
ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ朝鮮總督府裁
判所又ハ關東法院之ヲ管轄ス
第三條本法ニ定ムルモノヲ除クノ外滿
洲國ニ於ケル領事官ノ裁判ノ廢止ニ關
シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
附則
本法ハ昭和十四年四月一日ヨリ之ヲ施行
ス
本法施行ノ際現ニ滿洲國ニ駐在スル領事
官ノ取扱ニ係ル訴訟事件及非訟事件ニ關
スル事務竝ニ登記事務ハ第二條ノ規定ニ
依ル各相當ノ裁判所ニ移ルモノトス
本法施行前滿洲國ニ駐在スル、領事官ノ爲
シタル訴訟事件及非訟事件ニ關スル行爲
竝ニ登記ハ第二條ノ規定ニ依ル各相當ノ
裁判所之ヲ爲シタルモノト看做ス
明治四十一年法律第五十一一號及明治四十
四年法律第五十一號ハ之ヲ廢止ス
本法施行前前項ノ法律ニ依リ朝鮮總督府、
裁判所又ハ關東法院ニ於テ受理シタル訴
訟事件及非訟事件ニ關シテハ仍從前ノ例
ニ依ル但シ第三項ノ規定ノ適用ヲ妨ゲズ
〔政府委員〓水留三郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/64
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065・清水留三郎
○政府委員(〓水留三郞君) 只今上程サレ
マシタ滿洲國ニ於ケル領事官ノ裁判ノ廢止
ニ關スル法律案ニ付キマシテ、提案理由ヲ
御說明申上ゲマス、昭和十二年十一月新京ニ
於テ調印セラレマシタル滿洲國ニ於キマス
ル治外法權ノ撤廢及ビ南滿洲鐵道附屬地行
政權ノ移讓ニ關スル日本國滿洲國間條約ニ
依リマシテ、滿洲國ニ於キマスル帝國ノ領
事官ハ、一定ノ訴訟事件及ビ非訟事件ニ
關スル事務ニ付キマシテハ、條約實施後モ
尙ホ之ヲ處理シ得ルコトトナツテ居ル次第
デアリマスガ、今日ノ實情ト致シマシテハ、
右事務ハ特ニ領事官ヲシテ之ヲ取扱ハシメ
ル必要モナイヤウニナリマシタノデ、右ノ
領事官ガ管轄權ヲ有シマスル是等ノ事務
ハ、今後ハ一切之ヲ擧ゲテ朝鮮總督府裁判
所又ハ關東法院ノ管轄ニ移サントスルモノ
デアリマシテ、是レ本案ヲ提出致シマシタ
所以デアリマス、何卒宜シク御審議アラン
コトヲ御願致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/65
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066・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 本案ノ審査ヲ付託
スベキ委員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/66
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067・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ政府提出人事調停法
案委員ニ併セ付託サレンコトヲ望ミマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/67
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068・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/68
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069・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
マシ、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、是ニテ
議事日程ハ議了致シマシタ、次會ノ議事日
程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、本日ハ是
ニテ散會致シマス
午後五時三十八分散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/txt/007413242X01219390214/69
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