1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和十四年三月二日(木曜日)
午後一時十二分開議
━━━━━━━━━━━━━
議事日程 第十八號
昭和十四年三月二日
午後一時開議
第一 決議案(農林漁業の生産増進に關する件)(町田忠治君外八十三名提出)
第二 國債整理基金特別會計法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第三 明治三十九年法律第三十四號中改正法律案(國債に關する件)(政府提出) 第一讀會
第四 明治四十二年法律第九號中改正法律案(政府に對する保證金其の他の擔保に供したる國債の買入銷却に關する件)(政府提出) 第一讀會
第五 産金法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第六 地方鐵道法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第七 軌道法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第八 恩給法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第九 花柳病豫防法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十 寺院等に無償にて貸付しある國有財産の處分に關する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十一 郵便年金法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十二 裁判所構成法改正法律案(野田文一郎君外二十六名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十三 檢察廳法案(野田文一郎君外二十六名提出) 第一讀會の續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━
〔左の報告は朗讀を經さるも參照の爲茲に掲載す〕
一政府より提出せられたる議案左の如し
國債整理基金特別會計法中改正法律案
明治三十九年法律第三十四號中改正法律案(國債に關する件)
明治四十二年法律第九號中改正法律案(政府に對する保證金其の他の擔保に供したる國債の買入銷却に關する件)
(以上二月二十八日提出)
産金法中改正法律案
地方鐵道法中改正法律案
軌道法中改正法律案
恩給法中改正法律案
(以上三月一日提出)
一議員より提出せられたる議案左の如し
家畜傅染病豫防法中改正法律案
提出者 伊禮肇君
乳幼兒保健局設置に關する建議案
提出者 山崎常吉君
決議案(農林漁業の生産増進に關する件)
提出者
町田忠治君 頼母木桂吉君
堤康次郎君 小泉又次郎君
手代木隆吉君 櫻井兵五郎君
作田高太郎君 平野光雄君
俵孫一君 添田敬一郎君
岡本實太郎君 岡田喜久治君
篠原陸朗君 池田秀雄君
内藤正剛君 武知勇記君
小山倉之助君 松田正一君
勝正憲君 鳩山一郎君
島田俊雄君 中島知久平君
堀切善兵衞君 横川重次君
鈴木英雄君 高橋熊次郎君
土倉宗明君 大口喜六君
松山常次郎君 岡田忠彦君
原惣兵衞君 宮脇長吉君
松野鶴平君 原口初太郎君
牧野賤男君 宮崎一君
木下成太郎君 志賀和多利君
加藤知正君 深澤豐太郎君
服部岩吉君 若宮貞夫君
宮澤裕君 西岡竹次郎君
清瀬規矩雄君 砂田重政君
安達謙藏君 秋田清君
望月圭介君 山崎達之輔君
内田信也君 青木精一君
窪井義道君 赤松克麿君
石坂繁君 中野寅吉君
森肇君 伊豆富人君
飯村五郎君 藤本捨助君
平野力三君 井阪豐光君
守屋榮夫君 安部磯雄君
麻生久君 杉山元治郎君
河上丈太郎君 亀井貫一郎君
片山哲君 淺沼稻次郎君
三輪壽壯君 河野密君
田万清臣君 須永好君
松方幸次郎君 椎尾辨匡君
今井新造君 道家齊一郎君
三木武夫君 中野正剛君
由谷義治君 大石大君
杉浦武雄君 田中養達君
(以上二月二十八日提出)
公證人法中改正法律案
提出者 中野治介君
穴吹坂出間坂本丸龜間及法勳寺善通寺間省營自動車運轉開始に關する建議案
提出者 松浦伊平君
船舶職員法改正に關する建議案
提出者
米窪滿亮君 岡崎憲君
(以上三月一日提出)
一昨一日貴族院に於て本院の送付に係る左の政府提出案を可決したる旨同院より通牒を受領せり
(第二號)昭和十三年度歳入歳出總豫算追加案
(特第一號)昭和十三年度各特別會計歳入歳出豫算追加案
(追第一號)豫算外國庫の負擔となるべき契約を爲すを要する件
軍用自動車檢査法案
一去二十八日平沼内閣總理大臣より左の通發令ありたる旨の通牒を受領せり
商工書記官 山本茂
第七十四囘帝國議會商工省所管事務政府委員被仰付
一去二十八日常任委員理事補闕選擧の結果左の如し
建議委員
理事 中野寅吉君(委員永山忠則君去二十八日理事辭任に付其の補闕)
一去二十八日議長に於て辭任を許可したる常任委員左の如し
第八部選出豫算委員 田中亮一君
一去二十八日議長に於て選定したる委員左の如し
酪農業調整法案(政府提出)委員
田中万逸君 池田清秋君
深澤吉平君 坂下仙一郎君
篠原陸朗君 小林三郎君
内藤守正君 藤生安太郎君
塩川正藏君 河野一郎君
吉植庄亮君 小笠原八十美君
松尾孝之君 立川平君
永山忠則君 北勝太郎君
野溝勝君 小田榮君
明治三十五年法律第四十九號中改正法律案(國勢調査に關する件)(政府提出、貴族院送付)委員
西田郁平君 齋藤直橘君
中崎俊秀君 高橋泰雄君
中野治介君 丸山辨三郎君
一ノ瀬俊民君 山崎常吉君
塚本重藏君
一去二十八日に於ける特別委員の異動左の如し
國境取締法案(政府提出)委員
辭任野溝勝君 補闕淺沼稻次郎君
昭和十二年法律第五十七號中改正法律案(鐵の輸入税免除に關する件)(政府提出)外一件委員
辭任野口喜一君 補闕名川侃市君
一昨一日平沼内閣總理大臣より左の通發令ありたる旨の通牒を受領せり
内務書記官 三好重夫
第七十四囘帝國議會内務省所管事務政府委員被仰付
一昨一日議長に於て辭任を許可したる常任委員左の如し
第三部選出豫算委員 西方利馬君
第八部選出建議委員 山田清君
一昨一日常任委員補闕選擧の結果左の如し
第八部選出
豫算委員 増永元也君(田中亮一君補闕)
一昨一日委員長及理事互選の結果左の如し
酪農業調整法案(政府提出)委員
委員長 田中万逸君
理事
池田清秋君 深澤吉平君
藤生安太郎君 塩川正藏君
明治三十五年法律第四十九號中改正法律案(國勢調査に關する件)(政府提出、貴族院送付)委員
委員長 高橋泰雄君
理事
西田郁平君 中野治介君
一昨一日特別委員理事補闕選擧の結果左の如し
青年學校教育費國庫補助法案(政府提出)委員
理事 岡田喜久治君(理事武知勇記君昨一日委員辭任に付其の補闕)
一昨一日に於ける特別委員の異動左の如し
酪農業調整法案(政府提出)委員
辭任立川平君 補闕沖島鎌三君
青年學校教育費國庫補助法案(政府提出)委員
辭任武知勇記君 補闕岡田喜久治君
昭和十二年法律第五十七號中改正法律案(鐵の輸入税免除に關する件)(政府提出)外一件委員
辭任原玉重君 補闕武知勇記君
國境取締法案(政府提出)委員
辭任石坂繁君 補闕長谷長次君
朝鮮事業公債法中改正法律案(政府提出)委員
辭任岩瀬亮君 補闕小林絹治君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=0
-
001・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス、此ノ際陸軍大臣ヨリ枚方陸軍倉庫被害
ニ關シ報告ノ爲發言ヲ求メラレテ居リマス、
之ヲ許シマス-陸軍大臣板垣征四郞君
(國務大臣板垣征四郞君登壇)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=1
-
002・板垣征四郎
○國務大臣(板垣征四郞君) 昨一日午後大
阪府下枚方倉庫ガ爆發致シマシテ、倉庫ト
共ニ附近部落ノ類燒ヲ見マシタコトハ、
聖戰遂行ノ途上ニ於キマシテ洵ニ遺憾ニ堪
ヘマセヌ、目下詳細ナル狀況ノ調査中デア
リマスガ、只今マデ判明シマシタル被害ノ
狀況ニ付テ〓況ヲ申上ゲマス、發火ノ原因
ニ付キマシテハ未ダ明瞭ニナツテ居リマセ
ヌガ、枚方陸軍倉庫ニ於テ作業中火藥ガ爆
發シタコトニ起因スルモノト思ハレマシテ、
午後二時四十五分彈藥庫ヨリ出火シ、逐次
爆發、折柄ノ强風ノ爲枚方陸軍倉庫ノ大部
ヲ烏有ニ歸シ、引續キ附近部落ニ延燒シ、
二日午前三時頃鎭火致シタ模樣デアリマス
ガ、目下判明シタル枚方、禁野、中ノ宮、
山垣內等ノ燒失家屋ハ全燒約八百、半燒約
百戶デアリマス、又現在判明致シマシタ所
デハ、陸軍關係ニ於テ死者六名、重輕傷者
約五十名デアリマスガ、尙ホ若干ノ死傷ア
ル見込デアリマス、地方側ノ死傷ハ目下判
明セルモノハ死者十名、重傷者三十二名、
輕傷者約四百四十名デアリマス、救護竝ニ
警護ニ關シマシテハ第四師團ヨリ步兵約一
大隊、工兵一中隊、第十六師團ヨリ工兵一
中隊、外ニ憲兵竝ニ救護班ヲ派遣シ、又大
阪府、京都府ヨリ警官千二百名、消防官二
百五十名、救護班七十班ヲ派遣セラレ、ソ
レゾレ警備、消防、救護ニ任ジテ居リマス、
陸軍中央部ト致シマシテハ、次官以下關係
諸官ヲ現地ニ急派シ、善處セシメ、萬遺憾
ナキヲ期シテ居ル次第デアリマス、作戰ニ
ハ別段影響ハゴザイマセヌ、玆ニ此度ノ事
故ヲ遺憾トシ、不幸ナル罹災者ニ對シ深厚
ナル弔意ヲ表シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=2
-
003・小山松壽
○議長(小山松壽君) 日程第一、決議案ヲ
議題ト致シマス、提出者ノ趣旨辯明ヲ許シ
マス-提出者高橋熊次郞君
第決議案(農林漁業ノ生產增進ニ關
スル件)(町田忠治君外八十三名提出)
決議案
決議
農林漁業ノ生產ヲ增進シ國民生活ノ安定
ヲ期スルハ長期聖戰對應ノ絕對的要務ナ
リ
政府ハ速ニ重要農林水產物ノ生產增進ニ
關シ生產資材ノ供給、勞働力ノ調整、生
產物價格ノ適正竝農山漁村部落實行團體
ヲ整備强化セシムル等適當ナル施設ヲ徹
底シ以テ聖戰目的ノ達成上萬遺憾ナキヲ
期スヘシ
右決議ス
〔高橋熊次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=3
-
004・高橋熊次郎
○高橋熊次郞君 只今議題ニ供セラレマシ
タ各派議員ノ共同提案ニ係リマスル農林漁
業ノ生產增進ニ關スル決議案ノ趣旨ニ付キ、
發言ヲ致ス次第デアリマス、先ヅ念ノ爲決
議案ノ案文ヲ朗讀サセテ戴キマス
決議
農林漁業ノ生產ヲ增進シ國民生活ノ安定
ヲ期スルハ長期聖戰對應ノ絕對的要務ナ
リ
政府ハ速ニ重要農林水產物ノ生產增進ニ
關シ生產資材ノ供給、勞働力ノ調整、生
產物價格ノ適正竝農山漁村部落實行團體
ヲ整備强化セシムル等適當ナル施設ヲ徹
底シ以テ聖戰目的ノ達成上萬遺憾ナキヲ
期スヘシ
右決議ス
是ガ案文デアリマス、現下ノ重大時局ニ際
シマシテハ、軍需竝ニ國民生活必需口興ノ
他貿易物資ノ增產ヲ圖リマシテ、其ノ供給
ヲ確保シナケレバナラヌコトハ申スマデモ
ゴザイマセヌ、工業關係物資ニ付キマシテ
ハ、物動計畫ニ伴フ生產擴充計畫ガ樹立セ
ラレマシテ、是ガ實行ニ一步ヲ進メツツア
ルノデアリマス、然ルニ農林水產物ノ供給
確保ニ關シマシテハ、政府ニ其ノ熱意ト經
綸トノ見ルベキモノガマリマセヌ(拍手)吾
人ハ深ク之ヲ遺憾トスルモノデアリマス、
軍需物資ノ供給ヲ確保スベキハ敢テ申スマ
デモアリマセヌ、勿論ノコトデアリマス、
加之今日糧食ニ不安ナキノ故ヲ以テ晏如タ
ルガ如キハ、絕對ニ許スベカラザルモノガ
アルノデアリマス(拍手)將來進ンデ〓糧其
ノ他國民生活必需品ノ供給ヲ確保致シマシ
テ、國民生活ノ安定ヲ庶幾スルコトヲ必要
ト致スノデアリマス、更ニ輸入物資ノ自給
化ヲ圖リ、生絲、茶其ノ他ノ輸出農產物
ノ增進ニ努メマシテ、以テ國際收支ノ均衡
ヲ保持スルハ、最モ緊急ノコトニ屬スルノ
デアリマス(拍手)蓋シ重要農產物ノ生產增
進ヲ圖リ、其ノ供給ニ遺憾ナキヲ期スルノ
ハ、長期聖戰ノ目的達成ノ爲ニ國家當面ノ
急務デゴザイマス(拍手)
「ソ」聯政府ノ意ヲ承ケテ出版サレタ或ル
出版物ノ中ニ、次ノヤウナコトガ書イテア
リマス、「開戰第一年ニ農村方面カラ百五十
万人ヲ動員スルデアラウ、商工方面カラ動
員サレル約五十万人モ、農村方面カラ補充
サレネバナラナイカラ、結局農村ニハ二百
万人ノ勞働人口ヲ失フ、日本ノ農村成年人
ロハ一千九百万人デアルカラ、其ノ一〇%
强デアル、特ニ減少サレルモノハ優秀ナル
勞働力デアルカラ、農業生產ニ對スル影響
ハ、此ノ「パーセント」以上ニ重大デアル、
機械ノ利用乏シク、全ク人間勞力ニ依存ス
ル日本ノ農業ニ取リテ、勞働力ノ減退ハ重
大ナル打擊デアツテ、極ク少ク見テモ、開
戰第一年ニ、農業生產ノ減退率ハ一〇%ヲ
下ルコトハナイ、米ニ於テ百万噸、其ノ他
之ニ準ズベキモノト思フ、戰局ノ發展ト共
ニ益〓生產ハ減退シ、歐洲大戰當時ニ於ケル
獨逸、佛蘭西以上ニ農業物資ノ不足ヲ來シ、
開戰第三年ニハ〓糧不足ノ爲ニ戰鬪力ヲ失
フニ至ルデアラウ」ト言ツテ居リマス、御
承知ノ通リ歐洲大戰當時、第三年目ニ於テ
獨逸ハ三割七分、佛蘭西ハ四割二分ノ農業
生產ノ減退ヲ來シテ、言語ニ絕スルガ如キ
苦境ニ陷ツタノデアリマス、我國ハ今ヤ支
那事變第三年ヲ迎ヘマシタ、併シナガラ「獨
佛以上ノ苦境ニ立ツデアラウ、戰鬪力ヲ失フ
デアラウ」ト考ヘタ論者ニ、我國ノ今日ノ
姿ヲ目ノアタリ見セテヤリタイモノデアリ
マス、畢竟スルニ彼等ハ我國ノ崇高ナル農
民精神、世界ニ比類ナキ我國ノ農業ノ特質、
農村ノ美風、之ヲ見逃シテ居ルノデアルカ
ラ、斯ル誤算ヲ來スノデアリマシテ(拍手)
吾々農村ニ於ケル勞働力ノ減退ハ、重大ナ
ル打擊デハアリマス、併シナガラ其ノ難局
ヲ突破スル底力ヲ我ガ農業ハ持ツテ居リ、
斷ジテ歐米人ノ想像スルガ如ク農業生產ノ
減退ヲ來スガ如キコトハナイモノト確信致
スノデアリマス(拍手)
併シナガラ諸君、「ソ」聯ノ論者ノ述ブル
所モ餘リニ認識不足デハアリマスケレドモ、
現內閣ノ態度ニ對シテハ吾々ハ大ナル不滿
ヲ感ゼザルヲ得ナイノデアリマス(拍手)農
林漁業生產ノ維持增進ニ關シ何等積極的施
設ヲ講ジヨウトシテハ居ナイノデアリマス、
農業生產ノ前途ニ對シ全ク之ヲ樂觀シ、成
行ニ委セテ置イテ心配ガナイト考ヘテ居ル
ノデアルカ、政府ニ何等ノ經綸ナク、此ノ
難局ニ對處スベキ方策ヲ知ラナイノデアル
カ(拍手)ト吾人ハ怪シムノデアリマス、吾
吾ハ必ズシモ悲觀論ヲ爲ス者デハアリマセ
ヌ、併シナガラ食糧其ノ他ノ重要農產物、
林產物、水產物ノ供給確保ガ、戰爭遂行上
極メテ重大性ヲ持ツテ居ルコトヲ考ヘマス
ルトキ、斷ジテ無爲無策ニシテ生產ノ維持
增進ニ關シ何等積極性ヲ有シナイ政府ノ施
設ハ、滿足スルコトガ出來ナイノデアリマ
ス(拍手)
惟フニ事變下ニアツテ農山漁村ニ勞働力
ノ減退ヲ來スノハ、蓋シ已ムヲ得ザルコト
デアリマセウ、而シテ此ノ必然的情勢ノ下
ニ於テ生產增進ニ邁進セントスル所ニ、戰
時農村對策ノ苦心ハ存シテ居リマス、最モ
周到ナル用意ヲ必要トスル所以デアリマス、
卽チ農業生產力維持增進ニ必要ナル人的資
源ノ確保ヲ期センガ爲ニハ、工業勞働力ノ
吸收ニ關シ、一地方ニ集中セシメザル等、
適當ナル統制方策ヲ講ゼナケレバナラヌ、
卽チ工業用勞働者ノ募集等ニ當ツテハ、地
方ノ情勢ヲ能ク考慮致シテ、一地方ニ偏在
セザルヤウナ用意ト工夫ヲ要スルモノト考
ヘルノデアリマス(拍手)勞働力調整ノ徹底
ヲ期サナケレバナリマセヌ、如何ニ數字的
ニハ農村勞働ハ尙ホ餘裕ガアリマシテモ、
地方々々ニ依ツテ季節的勞働ノ大ナル拂底
ヲ來スノデアリマス、是等ノ調整ヲ圖ルニ
ハ、相當遠距離ノ部落ニ於ケル團體的移動
モ之ヲ奬勵シ、此ノヤウナ施設ニ對シテ相
當ノ助成方策ヲ講ゼナケレバナラナイト
思フノデアリマシテ、是等モ併セテ此
ノ問題ニ付テ、考慮スベキモノナリト
考フルノデアリマス、生產計畫具體案
ヲ速ニ定メマシテ、作付準備前ニ各農
家ニ周知セシムルコトガ必要ト思フノデア
リマス、又農業報國精神ノ〓揚、卽チ一死報
國ノ信念ヲ以テ將兵諸士ガ戰線ニ於テ活躍
サレルト同ジ心掛ヲ以テ、少クモ農村ノ靑
少年ハ農業ニ勵ミ得ルヤウニ仕向ケルト云
フ事等ガ、最モ肝要デナイカト思フノデア
リマス(拍手)
特ニ第一線的生產增進ノ實踐機關デアリ
マスル所ノ、農村部落ノ各種實行團體ノ機
構ヲ强化致シマシテ、其ノ活動ヲ促進スベ
キ適當ナル方策ヲ講ゼナケレバナラヌト思
フノデアリマス(拍手)唯監督官廳、上級產
業團體ノミノ指導監督其ノ他ノ施設ニ依リ
マシタノミデハ、是等方策實現ノ徹底ヲ期
スルコトハ出來マセヌカラ、基礎團體デア
ル各部落ニ於ケル所ノ實行團體ノ機構ヲ更
ニ强化シ、之ヲ整備シ、强力ナル活動ヲ期セ
シメナケレバナラヌト思フノデアリマス(拍
手)又農村ニ於ケル勞働力ハ獨リ其ノ數的減
少ニ止リマセズ、質的低下ノ甚シキモノガア
ルノデアリマス、之ヲ强化スルニハ、ドウシ
テモ指導員ノ活動ニ俟タナケレバナラヌノ
デアリマスケレドモ、農村ノ指導員ハ其ノ待
遇ガ惠マレテ居リマセヌ、又其ノ位置モ不安
ナノデアリマスルカラ、由來此ノ方面ニ安定
ヲ缺イテ居ツタノデアリマスルガ、事變以
來大陸進出計畫等ノ漸次進行致スニ伴ヒマ
シテ、優秀ニシテ健全ナル是等分子ノ多ク
ハ、外地ニ向ヒツツアルノデアリマシテ、
一層其ノ機能ガ薄弱化セントシツツアル今
日デアリマスカラ、產業指導施設ノ充實徹
底ト云フコトニハ、特ニ意ヲ用ヒナケレバ
ナラヌト思フノデアリマス
各國ニ於ケル百「エーカー」-約六十町
步當リノ扶養ヲ要スル人口ノ割合、卽チ要
扶養人口ト云フモノハ、御承知置キノ通リ
ニ米國ニ於テハ百五人、佛蘭西ニ於キマシ
テハ百九十五人、獨逸ハ三百二十一人、而
シテ我國ハ實ニ一千百四十人デアリマス、
隨テ我國ニ於キマシテハ、反當收穫ノ增大
ヲ期セナケレバナリマセヌ、隨テ勞力ニ集
約的ナルト共ニ肥料ニ集約的ナルコトハ、
本邦農業ノ特色デアリマシテ、肥料ニ依存
スルコト我國農業ノ如キハ、全ク他ニ其ノ
比ヲ見ザル所デアリマス、殊ニ昨年度ニ於
テハ施肥量ノ減ジマシタルト、天候ノ關係
等ニ因リマシテ、土壤ハ著シク瘠薄ヲ來シ、
今年ハ特ニ施肥量ノ增大ヲ必要トスル實情
ニアリマス、然ルニ政府ハ需要期ノ目前ニ
差迫レル春肥料ニ對スル手當サヘモ未ダ調
ベテ居リマセヌ、今年度ノ需給ニ關シ全ク
其ノ見透シガ立タナイノデハナイカト、甚
ダ不安狀裡ニ放置サレテ居リマシテ(拍手)
農業者ヲシテ徒ニ焦眉痛心セシメツツアリ
マスルコトハ、現時局下ニ於テ許シ難キ怠
慢トモ思ハレルノデアリマス(拍手)政府ハ
速ニ肥料供給確保ニ關スル方途ヲ講ジ、更
ニ配給制度ノ確立ト共ニ價格ノ適正ヲ圖リ、
肥料對策ニ遺憾ナキヲ期セネバナリマセヌ
(拍手)其ノ他農林漁業用資財ノ供給ヲ確保
シ、其ノ配給統制ヲ强化シ、生產增進施設
及ビ減損防止施設ノ强化徹底ニ努メ、農產
物ト農用購入品トノ價格ノ均衡ヲ保持セシ
ゞ、農林關係團體ノ活動促進ヲ圖ルナド、
重要農林水產物ノ增產ニ關シ、萬全ノ方策
ヲ講ゼネバナラヌト思惟スル者デアリマス
(拍手)以上本案ノ趣旨トシテ簡潔ニ申述ベ
タノデアリマス、政府ニ於キマシテハ宜シ
ク決議ノ趣旨ニ鑑ミラレマシテ、猛省一番、
本案趣旨ノ徹底ニ努力セラレンコトヲ望ム
次第デアリマス、滿堂諸君ノ御贊同ヲ得タ
イト希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=4
-
005・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ヨリ討論ニ入リマ
ス、通告順ニ依リ發言ヲ許シマス-村上
國吉君
〔村上國吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=5
-
006・村上國吉
○村上國吉君 私ハ立憲民政黨ヲ代表致シ
マシテ、此ノ決議案ニ贊成ノ意ヲ表スルト
共ニ、其ノ贊成ニ付テ吾々ノ意ノアル所ヲ
申述ベタイト存ズルノデアリマス、長期聖
戰下ノ此ノ重大ナル時局ニ際シマシテ、農
林、漁業ノ生產ヲ增進シ、其ノ供給ヲ確
保スルコトノ絕對的必要事ナルコトハ論ヲ
俟タナイ所デアリマシテ、要ハ如何ニスレ
バ其ノ目的ヲ達シ得ルカノ一點ニ、總テガ
懸ツテ居ルト思フノデアリマス、前席ニ於
キマシテ高橋君ハ其ノ提案理由ノ說明ニ當
リマシテ、政府ニ之ニ對スル熱意經綸ノ見
ルベキモノガナイト申サレマシタガ、此ノ
點ニ付キマシテハ私ハ聊カ所見ヲ異ニ致シ
マス(拍手)併シ同時ニ私ハ玆ニ政府ノ其ノ
政策ヲ若干檢討スル必要ガアルト思フノデ
アリマス
政府ニ於キマシテバ此ノ長期戰ニ對應ス
ル爲ニ、農林水產物ノ生產ニ付テソレ/〓
增產ノ計畫ヲ持ツテ居ルノデアリマス、卽
チ中ニハ三年計畫ノモノモアレバ、五箇年
計畫ノモノモアリ、七箇年計畫ノモノモア
リマスルガ、要スルニ食料作物、家畜、林
產、水產等ノ全般ニ亙ツテ一定ノ目標ヲ立
テ、計畫的ニ其ノ增產ヲ期シテ居ルノデア
リマシテ、昭和十四年度ノ計畫ニ付テ見マ
シテモ、米ノ四百万石、小麥ノ百万石ノ增
產、繭ノ八千五百万貫ノ生產、甘藷ノ二億
万貫、木炭ノ一億万貫ノ增產ト云フガ如
キ、ソレ〓〓ノ計晝ヲ持ツテ居ルノデアリ
マスガ、平常時ナラバ兎モ角、サナキダニ
資材勞力等ノ生產資源ノ供給ニ、相當大ナ
ル不自由ヲ感ジテ居ル此ノ事變下ニ於キマ
シテ、却テ其ノ生產ヲ增加セントスルノデ
アリマスルカラ、政府ガ此ノ計畫ヲ實行セ
ントスルニ當リマシテハ、中々容易ナ業デ
ハナイト思フノデアリマス、ソレモ唯今年
ダケト云フノデアリマスナラバ、又其ノ途
ナキニシモアラズト考ヘラレマスケレド
モ、生產資源、特ニ勞力ノ如キ、事變ノ續
ク限リ年々其ノ供給ガ減少スルデアラウト
考ヘラレマス、他ノ一面ニ於テハ其ノ生產
ハ斷ジテ後退シテハナラヌ、否、益〓前進セ
シメナケレバナラヌノデアリマスカラ、
ソコニ非常ナル困難ガ伴フコトヲ覺悟セネ
バナラヌト思フノデアリマス
政府ハ此ノ事變ニ備ヘル爲ノ對策トシテ、
昨年農林省ニ臨時農村對策部ヲ設ケ、其ノ
下ニ計畫課外二課ヲ置イテ對策本部ノ陣容
ヲ整ヘ、昭和十四年度ノ豫算ニハ甚ダ貧弱
ナガラ臨時農村對策施設費ヲ計上シテ、之
ニ備ヘテ居ルノデアリマス、又曩ニハ農村
經濟更生中央委員會ヲ改組擴大致シマシテ、
新ニ農林計畫委員會ヲ組織シ、更ニ近クハ
道府縣市町村ニ亙ル經濟更生委員會ニ、中
央同樣ニ生產計畫部、肥料配給統制部、生
產資材統制部、勞力調整部ヲ設置セシメマ
シテ、生產ノ計畫的增產、肥料其ノ他資材
ノ配給、勞働力ノ調整ニ當ラシムル等、生
產ノ增加ニ關シマシテ相當ニ周到ナル用意
ト心構ヲ以テ、之ニ臨ンデ居ルノデアリマ
ス、斯クテ一應中央地方ヲ通ジタル長期戰
對應ノ陣形ハ整ツタ觀ハアリマス、併シナ
ガラ實際其ノ生產ニ當ル所ノ業者達ヲシテ
能ク政府ノ意ヲ諒承シ、其ノ計畫ニ參加
シ、各〓ノ生產分野ニ於テ進ンデ其ノ增產ヲ
分擔スル氣分ニナラシムル用意アリヤト言
大、甚ダ心細イ感ガアツテ、斯クテハ如
何ニ政府ガ其ノ陣頭ニ立ツテ大聲疾呼、號
令ヲ致シマシテモ、遂ニ十分ナル效果ヲ收
ムルニ至ラズシテ終ルナキヤヲ、吾々ハ憂
慮シテ居ルノデアリマス
此ノ事變以來農山漁村ノ部落及ビ其ノ部落
ニアル所ノ各種ノ團體ハ、銃後ノ奉仕ニ於
キマシテ、犠牲奉公ノ誠意ヲ捧ゲ、多大ナ
ル負擔ト勞苦ヲ忍ンデ、能ク努力致シマシ
ク、農林水產物ノ生產ガ事變前ト異ナルコ
トナク、克ク今日アル所以ハ全ク其ノ努力
ニ依ルモノト思ハナケレバナリマセヌ、併
シナガラ今日ノ農山漁村ハ其ノ生產ニ關シ
マシテ、相當疲勞ノ色アルコトヲ否ミ得ナ
イノデアリマス、吾々ハ我ガ農村組織ノ現
狀ニ於キマシテハ、是モ亦洵ニ無理カラヌ
コトデアルト思フデアリマス、然ルニ今又
此ノ農山漁村ヲシテ、茲ニ更ニ大量ノ增產
ヲ致サシメントスルノデアリマスカラ、如
何ニスレバ、彼等ガ其ノ負擔ニ堪ヘ得ルデ
アラウカニ付テ、吾々ハ深ク檢討スルノ必
要アルコトヲ、痛感セザルヲ得ナイノデア
リマス
事變勃發以來政府ハ農山漁村對策ニ努力
シ、種々生產維持ノ施設ヲ行ツテ居ルノデ
アリマスガ、其ノ爲ス所ヲ見マスト、其ノ
施設ノ對象トスル所ハ常ニ町村以上ノ上部
機關デアリマシテ、殊ニ官廳ノ强化擴充ニ
關スルモノデアリマシテ、實際生產ニ携リ
ツツアル所ノ下部組織ノ力ヲ强化シ、之ヲ
活動セシムル方策ニ至ツテハ、殆ド見ルベ
キモノガアリマセヌ(拍手)而モ此ノ下部組
織ヲ動カシ、之ヲ働カセルノデナケレバ、生
產ノ維持ハ次第ニ困難ニナルノデアリマシ
テ、今日ノ農山漁村ガ其ノ生產ニ於テ多少
トモ疲勞ノ色ヲ現ハスニ至ツタノハ、主ト
シテ其ノ結果デアルト思フノデアリマス
(拍手)若シ政府ガ今次ノ增產計畫ノ實行ニ
當ツテ、今マデノ如ク此ノ下部組織ノ生產
機能ヲ動員スル方策ヲ缺キ、之ヲ等閑ニ致
シマシタナラバ、此ノ計畫ハ到底十分ナル
結果ヲ得ルニ至ラザルモノト斷言セネバナ
リマセヌ(拍手)
政府ニシテ玆ニ意ヲ用ヒ、之ヲ動員シ、
其ノ協力ヲ求ムル計畫ヲ以テ其ノ實行ニ臨
ムナラバ、漸ク疲勞ノ色アル農山漁村モ其
ノ元氣ヲ取戾シ、奮ヒ起ツニ至ルデアリマ
セウ、計畫遂行ノ分岐點ハ正ニ茲ニ在ルト
思フノデアリマス、農山漁村ニハ部落ガア
リマス、部落ノ中ニハ最寄ガアリマス、是
ガ今日ノ農村組織デアリマス、此ノ部落ハ
制度的存在デナイト致シマシテモ、古クカ
ラノ沿革的、傳統的存在デアツテ、最寄ハ
其ノ肢體デアリ、常ニ隣保相助ノ精神ニ依
ツテ固ク結付ケラレ、其ノ力ハ極メテ强イ
フデアリマス、而シテ今日ニ於テハ、其ノ
部落又其ノ最寄ノ間ニ、所謂產業的實行團
體トモ稱スベキモノガアツテ、其ノ數ハ全
國ニ亙ツテ現在二十七万餘ヲ算シテ居リマ
ス、但シ其ノ系統及ビ組織ハ頗ル區々デア
リマスガ、其ノ大半ハ主トシテ產業的ニ其
ノ部落、最寄ヲ網ノ目ノヤウニ結付ケテ居
ルノデアリマス、此ノ部落ト最寄、而シテ又
其ノ實行團體ハ、取モ直サズ農林漁業ノ生
產ニ從事スル人々ノ集リデアリマスカラ、
此ノ集マリニ對シテ政府ガ强ク呼掛ケ、其
ノ奮起ト活動ヲ求ムルコトガ、戰時對策ト
シテ、特ニ又增產對策トシテ最モ必要デア
ルト思フノデアリマス、卽チ政府ハ町村ヲ
通ジテ是等ノ部落ト、又其ノ部落ヲ通ジテ部
落ノ實行團體ト抱合ツテ、對策ノ實行ニ當
ルベキデアリマス、殊ニ增產ノ確保ニ必要
ナル生產資材ノ配給、作業ノ協力、共同作
業、勞力ノ調整ノ如キハ、部落及ビ部落
實行團體ノ緊密ナル一體的活動ニ俟ツニア
ラザレバ、實行シ得ザルコトノミデアリマ
スカラ、政府ハ此ノ際是等ノ下部組織ヲ適
當ニ調整整備シ、之ヲ動員シテ增產計畫ノ
遂行ニ備フベキデアリマス、部落及ビ部落
實行團體ニ、增產確保ノ任務ヲ擔當セシメ
テ遺憾ナカラシムルニハ、其ノ機能ヲ十分
强化セネバナリマセヌ、卽チ茲ニ如何ニス
レバ其ノ結合ヲ固クシ、國策ノ線ニ沿ウテ
敏活ナル活動ヲ爲サシメ得ルカノ問題ガア
ルノデアリマスガ、之ニ關シテ吾々ハ政府
ニ於テ適當ナル臨時活動助成金ヲ交付スベ
シト主張スルノデアリマス(拍手)吾々ハ此
ノ機關ノ力ヲ借リルニアラズンバ、增產計
畫ノ遂行ハ到底困難ナリト信ジマス、此ノ
困難ナリトスル實際的見地カラシマシテ、
此ノ機關ノ活動ノ爲ニハ二千万圓ヤ三千万
圓ノ助成金交付ノ如キハ、斷ジテ吝ムベキ
デハナイト信ズルノデアリマス、勿論其ノ
助成ノ形式、方法ノ如キハ、必シモ今此處
デ彼此レ論議スベキ限リデハアリマセヌガ、
要ハ此ノ機關ヲ活動セシメ、增產計畫ノ遂
行生產ノ確保ニ役立タシメ得バ足リルノ
デアリマス、切ニ政府ノ勇斷ヲ要望シテ本
決議案ニ贊成スル次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=6
-
007・小山松壽
○議長(小山松壽君) 森肇君
〔森肇君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=7
-
008・森肇
○森肇君 本決議案ノ目的ト致ス所ニ付キ
マシテハ、旣ニ前二君ヨリシテ大體ノコト
ヲ御述ニナツタノデアリマス、私ハ此ノ機
會ニ於テ平素聲ヲ揚ゲザル漁村ニ關シテ、
聊カ知ル所ヲ申述べテ政府ノ御參考ニ供シ
タイト思ヒマス(拍手)
勞力ガ缺乏致シテ居ル、資材ガ不足致シ
テ居ル、其ノ他色々ノ方面ニ缺漏ガアルト
云フコトハ、多ク申述ブル必要ハアリマセ
又、殊ニ漁村ニ於テハ其ノ甚シキヲ見ルノ
デアリマス、今日ニ於テハ相當大型ノ船ニ
ナリマスト、旣ニ漁村ヨリ姿ヲ消シテ居リ
マン、而シテ其ノ補充ノ途ハ殆ド絕エテ居
ルノデアリマス、網ガ破レマシテモ、網ガ
無クナリマシテモ、之ヲ補給致シマスル資
材ノ配給ハ、十分ニ參ラナイノデアリマス、
船ヲ動カス第一ノ動力ヲ作ル油ノ配給ハ、
是亦御承知ノ通リデアリマス、此ノ油ノ配
給ニ關シテハ、免稅ノ特典ヲ奪ハレタル其
ノ際ニ於テ、政府自ラノ發意ニ依ルモノモ
アリ、本院ノ要求ニ基クモノモアリ、兩々
相俟ツテ、相當金額ノ特別助成費ガ計上サ
レテ居ツタノデアリマスガ、今日此ノ豫算
實行ノ跡ヲ見マスルト、昨年モ相當此ノ點
ニハ減額ヲ加ヘラレタ、昭和十四年度ノ豫
算ニ於テモ、三割ニ近キ減縮ガ加へラレテ
居ルノデアリマス、若キ人々ガ戰線ニ出テ
居リマスルト云フコトハ、農山漁村ヲ通ジ
テ一樣ノコトデアリマスケレドモ、私共ノ
知ル限リデハ、殊ニ漁村ニ於テ其ノ陣頭ニ
立チマスル者ノ數ガ、比較的ニ多イト認メ
ルノデアリマス(拍手)殊ニ漁村ノ人々ハ
平素波ヲ枕ニ働イテ居リマス、其ノ働イテ
居リマスル實際ヲ見テ居リマスルト、戰場
ニ立テル將兵諸君ト多ク選ブ所ハアリマセ
ヌ、殊ニ波ヲ枕ニ、波ト鬪ツテ働カナケレ
バナラヌ漁業ニ對シテハ、農村ニ於ケル如
ク老人幼少年ヲ使役スルト云フ便利モ、非
常ニ少イノデアリマス、斯樣ノ關係ヨリ致
シマシテ、勞力ノ不足ヲ考ヘマシテモ、他
ノ各方面ニ比較致シマシテ、漁村ハ今日其
ノ不足ノ多キニ苦シンデ居ル筈デアリマス、
彼等ハ先祖傳來ノ稼業デアルガ故ニ、巳ム
ヲ得ズシテ海ノ上ニ働イテ居ルケレドモ、
波ト鬪ヒ、波ヲ枕ニスルコトヲ好ンデ居ル
ノデハアリマセヌ、私共ノ承知致シテ居リ
マスル二三ノ縣ニ於テハ、彼等ノ生活ヲ確
保シヨウト云フ目的ヲ以テ、彼等ニ與フル
ニ土地ヲ以テシタノデアリマスガ、其ノ土
地ヲ得マシタル彼等ノ子弟ハ、軈テ陸上ニ
上ルノデアリマス、斯樣ノ情勢デアルガ故
ニ、今日殷賑產業其ノ他ノ關係ニ於テ、各
方面ヨリ誘ヒノ手ガ掛リマスルト、其ノ方
ニ流レ込ンデ參リマスル靑年男女ノ數ト云
フモノモ、他ノ方面ニ比シテハ寧ロ多イト
私共ハ見テ居ルノデアリマス、斯樣ノ情勢
ニ於テ、如何ニシテ米ト竝ンデ國民ノ生活
ニ資スベキ食糧ノ確保ガ出來ルデアリマセ
ウカ、私ハ此ノ際ニ於テ政府ニ對シテ不平
ハ申シマセヌ、政府トシテモ相當御苦心ニ
ナツテ居ルデアリマセウ、併シナガラ此ノ
漁村方面ニ對シテハ、平素カラシテ政府ノ
注意ガ足リナイノデアリマス(拍手)私ハ極
メテ之ヲ遺憾ト致シマス、殊ニ今日ニ於テ
モ聲無キ漁村デアルガ故ニ、音ヲ立テザル
漁村デアルガ故ニ、常ニ餘所ニ見ラレテ居
ル感ジヲ免レヌノデアリマス(拍手)斯樣ノ
實情ハ、農村山村ヲ通ジテ殆ド選バザル所
デアリマスガ、特ニ漁村ニ於テ其ノ甚シキ
ヲ見ルコトヲ遺憾ト致シマス(拍手)ドウカ
政府トシテハ、是等地方ノ實情ヲ十分ニ見
ラレテ、前二君ノ申述ベラレタル所ト併セ
テ、私ノ意見ヲモ參酌セラレ、此ノ決議案
ノ趣旨ニ副フヤウ、十分ノ力ヲ致サレンコ
トヲ切望致シマス(拍手)私ハ玆ニ本決議案
ニ對シマシテ、贊成ノ意思ヲ表明致シマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=8
-
009・小山松壽
○議長(小山松壽君) 須永好君
〔須永好君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=9
-
010・須永好
○須永好君 私ハ本決議案ニ對シマシテ、
社會大衆黨ヲ代表シテ、極ク簡單ニ贊成ノ
趣旨ヲ申述べタイト思フノデアリマス、申
スマデモナク農山漁村ハ事變勃發以來、多
數ノ應召者ヲ出シ、又軍馬ヲ送リ、而モ此
ノ勞力不足ノ裡ニ、戰爭持續ノ根源タル其
ノ生產ノ擴充確保ヲ遂行シテ參ツタノデア
リマス、聖戰既ニ第三年ヲ迎ヘマシタガ、
生活物資、就中食糧品ノ不足ヲ來サズ、國
民生活ガ安定シ、長期建設戰ニ何等不安ヲ
感ジマセヌノハ、其ノ後ロニ子供ヲ脊負ツ
テ働イテ居リマスル所ノ、農山漁村民ノ努
力ノアルコトヲ、忘レテハナラナイノデア
リマス(拍手)併シチガラ是等ノ努力ニモ自
ラ制限ガアルノデアリマス、我國ノ如ク集
約農ノ行ハレテ居リマスル國ニ於キマシテ
ハ、肥料ハ農業生產ノ原料トモ申スベク、
缺クコトノ出來ナイ要素デアリマス、然ル
ニ最近其ノ配給適正ヲ缺キ、春肥ノ季節ト
ナツテ參リマシテモ、農家ノ手ニ肥料ガ渡
ラズ、徒ニ奸商ガ之ニ乘ズルト云フヤウナ
コトニナツテ居リスマルノハ、甚ダ遺憾ニ
堪ヘナイノデアリマス(拍手)百駄ノ肥ヨリ
モ一夜ノ眞ト申シ、一日延セバ十日ノ損ト
申スヤウニ、一日ノ時機ヲ爭フノガ農家作
業ノ實際デアリマス、斯ノ如キ時ニ肥料ノ
配給ガ思フニ任セズシテ居リマスコトハ、
實ニ莫大ナ損失ト思フノデアリマス、政府
ハ最近ニナツテ、三箇月分ノ肥料輸入量ヲ
決定シテ、其ノ配給ヲ急グト申シテ居リマ
スガ、速ニ之ヲ實行シ、更ニ化成肥料ノ統
制ヲモ併セ行ヒマシテ、肥料ノ配給割當制
ヲ速ニ實行シテ、其ノ對策ニ遺憾ナキヲ期
セラレタイノデアリマス
次ニ農山漁村ノ勞力ガ或ル程度マデ、工
業方面ニ流動吸收サレマスコトハ、工業生
產力擴充ノ爲ニ農村ガ忍ブベキ已ムヲ得
ナイ犠牲ト考ヘルコトガ出來ルノデアリマ
スケレドモ、農業ト工業トノ餘リニモ甚シ
イ利潤ノ相違ガ、農山漁村民ノ氣持ヲ動搖
セシメテ、勤勞ノ美風サヘ侵サレテ、農水
產確保ノ上ニ碎ダ寒心ニ堪ヘナイモノガア
ルノデアリマス(拍手)政府ハ此ノ方面ニ案
外樂觀ヲシテ居ルヤウデアリマスルケレド
モ、愛國的ナ報〓、愛國統計、是等ニ幻惑
ヲシテ居リマシテ、其ノ對策ヲ忘レルヤウ
ナコトガアリマスルナラバ、日本民族ガ三
千年ノ歷史ヲ賭ケタ東亞建設ノ大業モ、控折
シナイト誰ガ保證シ得ルデアリマセウカ
(拍手)斯ク考ヘマスレバ、政府ハ肥料ヲ初
メ農水產資材ノ潤澤適正ナル配給ヲ行ヒ、
農業ト工業トノ利潤均衡化ヲ圖ツテ、以テ
農村勞力ノ調整ヲ行ヒ、或ハ價格主義ニ依
ツテ指導シタ農業ヲ、强制多收主義ニ改メ
テ、殊ニ默々トシテ銃後ノ勞働奉仕ニ、或
ハ共同作業ニ、遺家族ノ慰問ニ、或ハ農水
產ノ改良ニ、偖テハ水路、道路、社寺ノコ
トニ至ルマデ取扱ツテ活躍シ、大日本帝國
ノ礎石ヲ成シテ居リマスル所ノ部落實行團
體ノ助成强化ノ如キハ、農業團體ノ廢合整
理ト共ニ、缺クベカラザル所ノ緊要事デア
ルト思フノデアリマス(拍手)是等ヲ內容ト
致シテ居リマス所ノ本決議案ニ對シ、吾々
ハ雙手ヲ擧ゲテ贊成シ、其ノ實現ヲ期シテ
止マナイ者デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=10
-
011・小山松壽
○議長(小山松壽君) 小野謙一君
〔小野謙一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=11
-
012・小野謙一
○小野謙一君 諸君、農林水產物ノ生產ヲ
安定シ强化シ擴大セシムルコトハ、强大ナ
ル國防國家體制ノ確立ガ强ク要求サレテ居
ル現下ノ日本ニ於テハ、洵ニ不可缺ナル且
ツ重大ニシテ緊要ナル案件デアリマス、斯
ル見地ヨリ本決議案ニ對シマシテ、東方會
ハ全幅ノ贊意ヲ表スルモノデアリマスガ、
問題ハ如何ニシテ本決議案ノ趣旨ヲ實踐貫
徹スルカニ重點ガアルト存ジマス此ノ農林
水產物ノ生產ヲ保持シ、增進セシムル根本
的チ要件ハ、農林漁業經營ノ安定性ヲ確立
スルコトニアリマス、殊ニ農業經營ヲ安定
セシムル手段方法ハ、固ヨリ多々存スルノ
デアリマスケレドモ、其ノ最モ基礎的ナモ
ノハ土地問題ノ解決、土地政策ノ確立實踐
ニアルノデアリマス、而モ私共ハ旣ニ此ノ
問題ニ對シテ成案ヲ持ツテ居ルノデアリマ
スガ、時間ガアリマセヌノデ、今日ハ之ヲ
省略致シマシテ、本決議案ニ直接關係アル、
卽チ現下ノ事變下ニ對處スベキ二三應急的
對策ニ村テ申述ベタイト存ジマス
第一ハ農產物ノ價格ノ適正化デアリマス、
農產物ト工業生產品トノ不適當ナル鋏狀價
格差ヲ適正化スル物價政策ヲ確立實施スル
コトデアリマス、最近是等ノ傾向ガ特ニ著
シキモノアルガ故ニ、政府ニ對シテ有效適
切ナル物價政策ノ卽時斷行ヲ要望スルモノ
デアリマス
第二ハ農業生產ノ維持增進ニ不可缺ナル
肥料ノ增產ト、低廉且ツ圓滑ナル配給ノ確
保ヲ要求スル、此ノ點ニ關シマシテハ、政
府ノ微溫的態度ガ洵ニ遺憾ニ堪ヘマセヌ、
現ニ東北地方ニ於キマシテハ春肥ノ需要ヲ
目睫ニ控ヘナガラ、過燐酸加里鹽ノ配給ヲ
殆ド絕望視サルル狀態ニ放置シナガラ、政
府ガ如何ニ銃後農民ニ對シ生產ノ增進ヲ强
要スルモ、ソレハ寧ロ難キヲ强フルモノト
言ハネバナリマセヌ(拍手)加之全農業物ノ
輸出ガ一箇年五億圓ヲ超エテ居ル實績ニ鑑
ミルモ、且亦直接軍需品タル見地ヨリスル
モ、硫安其ノ他ノ化學肥料ノ輸入ニ、相
當ノ彈力ヲ持タセルコトノ必然性ヲ認ムベ
キデアルト信ジマス
第三ハ農山漁村ニ於ケル人的資源ノ確保
デアリマス、事變發生以來壯丁ノ應召ニ因
リ、又ハ軍需品工場ヘノ勞働力吸收ニ因リ、
地方ニ於ケル勞働力ハ非常ニ不足ヲ告ゲツ
ツアルノ情勢ニアルノデアリマス、故ニ是
ガ補給ノ對策トシテ、農業器具機械、其ノ
他生產資財ノ確保配給ニ特別ノ意ヲ用ヒナ
ケレバナリマセヌ
第四ハ農山漁村ノ各種團體ヲ整理統合シ、
是等ノ諸團體ヲ計畫的ナル生產擴大指導工
作ニ總動員スベキデアリマス、私共ハ銃後
國民ニ對シ、均等ナル犠牲ト奉仕トヲ要求
スルモノデアリマスガ、事變ガ長期ニ亙レ
バ亙ル程、一方的ナル犠牲ノミハ決シテ國
民ノ堅忍持久力ト、其ノ精神力ヲ鼓舞激勵
スル所以デハアリマセヌ(拍手)卽チ政策的
ニ之ヲ助成シ、激勵シ、而シテ其ノ元氣ヲ涵
養スルコトガ必要デアリマス、是ガ爲ニハ
政府ハ全國三十万ノ部落團體ニ補助金ヲ與
ヘ、其ノ積極的活動ヲ求ムルコトガ、長期
聖戰下ニ於ケル農林水產ノ生產ヲ確保增進
シ、以テ東亞ノ新建設ニ邁進スル所以デア
ルト信ジマス、而シテ六十億ノ戰費ニ比較
シマスレバ、五六千万圓ノ助成金ハ九牛ノ
一毛ト申サナケレバナリマセヌ(拍手)
更ニ私ハ最後ニ消費ニ對シテ一言申添ヘ
タイノデアリマス、事變下ニ於ケル銃後國
民ノ任務ハ、一方ニ生產ノ增進ヲ確保スル
ト共ニ、他方ニハ消費ノ合理化ヲモ實行セ
ネバナリマセヌ、私ノ所謂消費ノ合理化ト
ハ、消費ノ制限ニアラズシテ、無意義ナル
消耗ノ防止デアリマス、一例ヲ國民
ノ主食物米ニ付テ申上グルナラバ、國
策トシテ混砂搗ヲ禁止シ、七分搗ヲ實行
スルコトニ依リ、內地ニ於ケル米ノ消費量
ノ優ニ一割、七八百万石ノ無意義ナル減損
ヲ防除シ得ルノデアリマス、是ハ單ニ經濟
的見地ヨリ申スノデハナイ、精神的ニ之ヲ
見ルナラバ、國民精神總動員ノ立派ナ實踐
デアリマス(拍手)又衞生保健ノ角度カラ眺
ムルナラバ、學者專門家ノ定說ニ依リマシ
テモ、旣ニ議論ノナイ所デアリマス、之ヲ
要スルニ一擧三得デアル、私ハ政府ニ對シ、
國策トシテ速ニ消費ノ合理化ヲ實行セラレ
ンコトヲ御勸メスルモノデアリマス(拍手)
斯ノ如ク生產ノ增進ト消費ノ合理化ト兩々
相俟ツテ、食糧ニ惠マレタル我ガ日本ガ初
メテ長期ノ戰爭ヲ克服シ、長期ノ建設ニ成
功シ、來ルベキ第二、第三ノ戰爭ニ何等ノ
不安ナクシテ準備スルノ可能性ヲ持ツモノ
ト確信致シ、本決議案ニ贊成スルモノデア
リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=12
-
013・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ニテ討論ハ終局致
シマシタ、採決致シマス、本案ニ贊成ノ諸
君ノ起立ヲ求メマス
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=13
-
014・小山松壽
○議長(小山松壽君)起立總員 〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=14
-
015・小山松壽
○議長(小山松壽君) 仍テ本案ハ全會一致
可決セラレマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=15
-
016・服部崎市
○服部崎市君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此ノ際日程第十二及ビ
第十三ノ兩案ヲ繰上ゲ一括上程シ、其ノ審
議ヲ進メラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=16
-
017・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=17
-
018・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス-政府ハ此ノ日程變更ニ同意セラレマ
シタ、仍テ日程ノ順序ハ變更セラレマシタ、
日程第十二、裁判所構成法改正法律案、日
程第十三、檢察廳法案、右兩案ヲ一括シテ
第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報〓ヲ
求メマス-委員長熊谷直太君
第十二裁判所構成法改正法律案(野
田文一郞君外二十六名提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
第十三檢察廳法案(野田文一郞君外
二十六名提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
一裁判所構成法改正法律案(野田文一郞
君外二十六名提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十四年二月二十八日
委員長熊谷直太
衆議院議長小山松壽殿
報〓書
一檢察廳法案(野田文一郞君外二十六名
提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十四年二月二十八日
委員長熊谷直太
衆議院議長小山松壽殿
〔熊谷直太君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=18
-
019・熊谷直太
○熊谷直太君 只今上程セラレマシタ裁判
所構成法改正法律案及ビ檢察廳法案ノ委員
會ニ於ケル經過及ビ結果ヲ御報告申上ゲタ
イト思フノデアリマス、委員會ハ四囘ニ亙
リマシテ質疑應答ヲ重ネマスタ、最初ニハ本
案提出者野田文一郞君ノ說明ヲ求メタノデ
アリマス、此ノ兩案ハ形ハ別レテ居リマス
スケレドモ、實ハ精神ハ一ツカラ出テ居ル
所ノ法案デアリマシテ、經過ヲ御報〓致ス
ニ付キマシテモ、兩方ニ分タズニ一括シテ申
上ゲテ置キタイト思フノデアリマス、其ノ
方ガ便利ト考ヘルノデアリマス、野田君ノ御
說明ハ、法文ハ澤山アリマスケレドモ、其
ノ趣旨ハ極ク平タク申上ゲマスト六點ニナ
ツテ居ルノデアリマス、其ノ第一ハ檢事局
ト裁判所トノ分離、是ハドウシテモヤツテ
行カナケレバナラヌ、今日ノ實情ニ徵シテ
見マスト、檢事局ト裁判所ト一〓ニナツテ
居ル結果ト致シマシテ、種々ナル惡弊ヲ招
來スル、卽チ吾々ガ大聲疾呼スル所ノ人權
蹂躪ノ惡弊ヲ招來スル虞ガアルカラ、ドウ
シテモ之ヲ分ケテ行カナケレバナラヌト云
フノデ、檢事局ト裁判所ノ分離ガ重要ナ點
ニナルノデアリマス、第二ハ大審院長ノ監
督權ノ擴張、皆樣御承知ノ通リ、是マデハ
大審院長ハ權限ヲ多ク持ツテ居ラヌ、唯大
審院ノ範圍內ニ於テノミ行政權ヲ持ツテ居
ルノデアリマシテ、大審院ノ管轄卽チ全國
ニ亙ツテハ持ツテ居リマセヌ、此ノ場合ニ
於テ之ヲ更ニ大キク致シマシテ、全國ニ亙
ルモノニシタイ、斯ウ云フ考ヲ持ツノデア
リマス、第三ニハ審級制度ノ合理化、是亦
皆樣御承知ノ通リニ、控訴院ニ於テハ三名
ノ判事デス、昔ハ五名ノ判事ヲ以テ裁判シ
テ來タノデアリマスガ、今日ハ三名トナツ
テ居ル、成程三名ノ判事デモ宜シイ、一人
ノ判事デモ宜シイ、判事ニ其ノ人ヲ得レバ、
ソレデ結構デアリマスケレドモ、中々サウ
理想通リニ參ラヌ、是ハ是非トモ員數ヲ殖
ヤシテ、控訴院ニ於テハ五人、大審院ニ於
テハ七人、斯樣ニシテ比較的多數ノ、比較
的優良ナル人ヲ得マスレバ、其ノ裁判ハ比
較的立派ニナルコトハ疑ナイコトデアリマ
スカラ、之ヲ直シテ行キタイト云フノガ第
三點デアリマス、第四點ハ法曹ノ一元化、
是ハ成ベク世ノ中ノ經驗ニ富ミ、人間社會
ノコトヲ能ク見聞シテ居ル人、サウ云フヤ
ウナ人ヲ擧ゲテ裁判官若クハ檢事ニシタイ
ト云フ趣旨デアリマス、是マデハ御承知ノ
通リ辯護士カラ採ルノニモ、中々難カシイ
審査ヲ經テヤルト云フヤウナ狀態デアリマ
シテ、兎角學問バカリヤツテ世ノ中ノ事ヲ
見聞シナイ人ヲ裁判官又ハ檢事ニ採用スル
結果、種々ナル方面ニ惡イ結果ヲ招來スル
ノデアリマスカラ、是ハドウシテモ直シテ
行カナケレバナラヌト云フ考ヲ以テ、此ノ
法案ガ出來タノデアリマス、第五ハ判事ト
檢事トノ人事交流ノ廢止デアリマス、御承
知ノ通リニ今日檢事トナツテ居レバ明日判
事ニ轉補セラレ、今日判事トナツテ居レバ
明日檢事ニ轉補セラレルト云フヤウニ、自
由自在ニ轉官シテ行クコトニ付キマシテハ、
多少ノ弊害ガアルノデハナイカト云フ考ヲ
持ツテ居ルノデアリマス、是ハサウ云フコ
トノナイヤウニ致シマシテ、成ベク判事ハ
判事、檢事ハ檢事ト云フ風ニシテ行キタイ
ト云フ考ヲ持ツタノデアリマス、第六、判事
停年制ノ廢止、停年制ハ一應ノ理窟モアリ
マスケレドモ、併シ此ノ制度ノ置カレタ所
ノ弊害ト致シマシテハ、ドウ云フコトガ出
テ來ルカト考ヘテ見マスト、停年ニ達シマ
シテモ全ク頭腦ガ明晰デアツテ、健康モ洵
ニ宜シイ、斯ウ云フ人デモ年ヲ取ツテ停年
ニ達スレバ、辭メナケレバナラヌト云フコ
トハ甚ダ宜シクナイコトデアル、故ニソコ
ニ一ツノ年ヲ限ラヌデモ、何等カノ會議ノ
結果、罷メナケレバナラヌ者ハ、幾ラデモ
罷メサセルコトガ出來ルト思フノデアリマ
ス、杓子定規ニ停年制ヲ行フ弊害ハ、是マ
デ段々經驗シ來ツテ其ノ甚ダ大ナルヲ認メ
マスガ故ニ、此ノ制度ヲ廢止シタイト云フ
ノデアリマス、右六點ハ提案者タル野田文一
郞君カラ、委員會ニ於テ說明セラレマシタ所ノ
モノデアリマス、之ニ對シテ司法大臣ハ如何ナ
ル御意見ヲ持ツテ居ラレルカト云フト、甚ダ
遺憾ナガラ今日ニ於キマシテハ右兩法案ヲ
改ムルノ意思ガナイト云フ御意見デアツタ
ノデアリマス、質問ハ終了致シマシテ討論
ニ入リ、民政黨ノ高橋義次君、政友會ノ高
橋泰雄君、社會大衆黨ノ松永君、第一議員
倶樂部ノ金井君、斯ウ云フ方々ヨリ段々ト
御意見ガアリ、兩案トモ是非トモ成立セシ
ムベキモノデアルカラ、大贊成デアルト云
フ意見ヲ述べラレタノデアリマス、結局之
ヲ議場ニ諮ツタ所、滿場一致ヲ以テ可決シ
タノデアリマス、此段御報告ニ及ビマス、
ドウゾ皆サンモ此ノ兩案ニ對シテ御贊成ア
ランコトヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=19
-
020・小山松壽
○議長(小山松壽君) 兩案ノ第二讀會ヲ開
クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=20
-
021・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ兩案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=21
-
022・服部崎市
○服部崎市君 直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開
き、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告通リ
可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=22
-
023・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=23
-
024・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
裁判所構成法改正法律案
第二讀會(確定議)
檢察廳法案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=24
-
025・小山松壽
○議長(小山松壽君) 別ニ御發議モアリマ
セヌ、第三讀會ヲ省略シテ、兩案トモ委員
長報告通リ可決確定致シマシタ(拍手)日程
第二乃至第四ハ關聯セル議案デアリマスカ
ラ、一括議題ト爲スニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=25
-
026・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、日程第二、國債整理基金特別會計法中
改正法律案、日程第三、明治三十九年法律
第三十四號中改正法律案、日程第四、明治
四十二年法律第九號中改正法律案、右三案
ヲ一括シテ第一讀會ヲ開キマス-松村大
藏政務次官
第二國債整理基金特別會計法中改正
法律案(政府提出)第一讀會
第三明治三十九年法律第三十四號中
改正法律案(國債ニ關スル件)(政府
提出)第一讀會
第四明治四十二年法律第九號中改正
法律案(政府ニ對スル保證金其ノ他ノ
擔保ニ供シタル國債ノ買入銷却ニ關
スル件)(政府提出)第一讀會
國債整理基金特別會計法中改正法律案
國債整理基金特別會計法中左ノ通改正
ス
第二條第三項中「前項」ヲ「前二項」ニ改メ
同條第二項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ國債總額ノ計算ニ際シ割引ノ方
法ヲ以テ發行シタル國債ニ付テハ發行
價格ヲ以テ額面金額ト看做ス
第二條ノ三國債ノ元金償還ニ充ツル爲
前二條ノ繰入額ノ外割引ノ方法ヲ以テ
發行シタル國債ノ前年度首ニ於ケル未
償還分ノ發行價格差減額ヲ發行ノ日ヨ
リ償還ノ日迄ノ年數ヲ以テ除シタル額
ニ相當スル金額ヲ每年度一般會計又ハ
特別會計ヨリ國債整理基金特別會計ニ
繰入ルヘシ
第二條第四項ノ規定ハ前項ノ場合ニ付
之ヲ準用ス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
明治三十九年法律第三十四號中改正法
律案
明治三十九年法律第三十四號中左ノ通改
正ス
第九條但書ヲ削ル
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
明治四十二年法律第九號中改正法律案
明治四十二年法律第九號中左ノ通改正ス
左ノ但書ヲ加フ
但シ割引ノ方法ヲ以テ發行シタル國債
ニシテ買入ノ日ヨリ五年以內ニ償還期
限ノ到來セサルモノニ付テハ發行價格
ニ命令ノ定ムル所ニ依リ發行價格ト額
面金額トノ差額ノ一部ニ相當スル金額
ヲ加算シタルモノヲ以テ其ノ國債ノ債
權金額ト看做シ買入銷却ヲ爲スコトヲ
得
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員松村光三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=26
-
027・松村光三
○政府委員(松村光三君) 只今議題トナリ
マシタ國債整理基金特別會計法中改正法律
案、明治三十九年法律第三十四號中改正法
律案及ゼ明治四十二年法律第九號中改正法
律案提出ノ理由ヲ說明致シマス、現下巨額
ノ國債ヲ發行スル必要ガアリマスルノデ、
此ノ際其ノ一部分ヲ割引ノ方法ニ依ツテ發
行シ得ルコトト致シマスルコトハ、國債消
化ノ一助トナリマスノミナラズ、他面其ノ
所有者ニ於キマシテハ、國債ノ利子ヲモ貯
蓄スルコトトナリマシテ、時局對策上最モ
緊要ナ貯蓄奬勵ノ趣旨ニモ合致シマスルノ
デ、此ノ際昭和十四年以降ニ於テ發行致シ
マスル國債ニ付キマシテ、其ノ一部分ハ此
ノ方法ニ依ルコトト致シマシタル所、是ガ
爲ニハ國債整理基金特別會計法、明治三十
九年法律第三十四號及ビ明治四十二年法律
第九號中ニ、ソレ〓〓若干ノ改正ヲ加ヘル
必要ガアリマスノデ、是ガ改正法律案ヲ提
出致シマシタ次第デアリマス、何卒御審議
ノ上速ニ御協贊ヲ與ヘラレンコトヲ希望致
シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=27
-
028・小山松壽
○議長(小山松壽君) 本案ノ審査ヲ付託ス
ベキ委員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=28
-
029・服部崎市
○服部崎市君 日程第二乃至第四ノ三案ハ
一括シテ政府提出、昭和十四年度一般會計
歲出ノ財源ニ充ツル爲公債發行ニ關スル法
律案外二件委員ニ併セ付託セラレンコトヲ
望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=29
-
030・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=30
-
031・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第
五、產金法中改正法律案、第一讀會ヲ開キ
マス-松村大藏政務次官
第五產金法中改正法律案(政府提出)
第一讀會
產金法中改正法律案
產金法中左ノ通改正ス
第十一條ノ二政府ハ必要アリト認ムル
トキハ左ニ揭グル物ヲ所有スル者ニ對
シ命令ノ定ムル所ニ依リ之ガ處分ニ關
シ禁止若ハ制限ヲ爲シ又ハ之ヲ政府若
ハ政府ノ指定スル者ニ賣却スベキコト
ヲ命ズルコトヲ得
一金地金
二金ノ合金ニシテ命令ノ定ムル種類
ノモノ
三金ヲ主タル材料トスル物ニシテ命
令ノ定ムル種類ノモノ
政府ハ必要アリト認ムルトキハ金貨幣
ヲ所有スル者ニ對シ命令ノ定ムル所ニ
依リ之ガ處分ニ關シ禁止若ハ制限ヲ爲
シ又ハ之ヲ鑄潰シ依リテ得タル金地金
ヲ政府若ハ政府ノ指定スル者ニ賣却ス
ベキコトヲ命ズルコトヲ得
第十一條ノ三前條ノ規定ニ依リテ政府
ノ爲ス金地金、金ノ合金又ハ金ヲ主タ
ル材料トスル物ノ買入ハ金資金ノ運用
ニ屬スルモノトス
第十一條ノ四第十一條ノ二ノ規定ニ依
リ政府又ハ政府ノ指定スル者ニ賣却ス
ベキコトヲ命ジタル場合ノ賣却價額ハ
金地金ニ在リテハ其ノ物ノ中ニ含マル
ル金ノ純量ニ付第一條第一項ノ規定ニ
依リ政府ガ金地金ヲ買上グル場合ノ買
上價格ニ依リ算出シタル金額トシ金ノ
合金又ハ金ヲ主タル材料トスル物ニ在
リテハ金委員會ノ定ムル所ニ依ル
第十一條ノ五第十一條ノ二第一項第三
號ノ規定ニ依リ金ヲ主タル材料トスル
物ヲ政府又ハ政府ノ指定スル者ニ賣却
スベキコトヲ命ジタル場合ニ於テ其ノ
物ガ美術品骨董品工藝品其ノ他ノ物ニ
シテ鑄潰スルコトヲ適當トセザルモノ
ナルトキハ其ノ物ヲ所有スル者ハ命令
ノ定ムル所ニ依リ政府ノ許可ヲ受ケ之
ヲ賣却セザルコトヲ得
第十四條中「又ハ第十一條」ヲ「、第十一條
又ハ第十一條ノ二」ニ改ム
第十九條中「當該金地金」ノ下ニ「、金ノ合
金金ヲ主タル材料トスル物」ヲ加ヘ同
條ニ左ノ二號ヲ加フ
五第十一條ノ二ノ規定ニ依ル禁止又
ハ制限ニ違反シタル者
六第十一條ノ二ノ規定ニ依ル命令ニ
違反シテ金地金、金ノ合金又ハ金ヲ
主タル材料トスル物ヲ政府又ハ政府
ノ指定スル者ニ賣却セザル者
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
外國爲替管理法第四條第一項第一號中
「金地金、」ヲ削リ同法第五條第三項中「金
地金」ヲ「外國通貨」ニ改ム
〔政府委員松村光三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=31
-
032・松村光三
○政府委員(松村光三君) 只今議題トナリ
マシタ產金法中改正法律案ニ付テ提出ノ理
由ヲ說明致シマス、金ノ集中ヲ圖リ、以テ
本邦ノ對外決濟力ノ充實ニ資スルコトハ、
我國現下ノ國際收支ノ狀況ニ顧ミマシテ、
極メテ必要ナコトデアリマス、去ル第七十
一議會ニ於キマシテ協賛ヲ得マシタ產金法
ノ施行以來諸般ノ措置ヲ講ジマシテ、之二
依リマシテ極力產金ノ增加ヲ圖ルト共ニ、
或ハ金ノ使用規則ヲ制定シ、國內ニ於ケル
金ノ消費節約ヲ圖リ、或ハ國民ノ協力ヲ得
マシテ民間所在金ノ集中ニ努メテ參ツタノ
デアリマスガ、今後ニ於ケル時局ノ推移ニ
顧ミマスレバ、此ノ際民間所在金ノ集中ハ
更ニ之ヲ徹底スルノ要ガアルト考ヘルノデ
アリマス、勿論民間所在金ノ集中ハ、=
國民ノ愛國心ノ發露ニ俟ツモノデアリマス
ガ、是ガ徹底ヲ期スル爲ニハ必要ナル場
合、金地金ハ勿論、金ヲ主タル材料トスル
物等ヲ所有スル者ニ對シマシテハ、是ガ處
分ニ付テ禁止若クハ制限ヲ爲シ、又ハ之ヲ
政府若クハ日本銀行其ノ他政府ノ指定スル
者ニ賣却スベキコトヲ命ジ得ル旨ノ法制ヲ
整ヘテ置クコトガ必要デアルト認メマシテ、
本法案ヲ提出致シマシタ次第デアリマス、
何卒御審議ノ上速ニ協賛ヲ與ヘラレンコト
ヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=32
-
033・小山松壽
○議長(小山松壽君) 質疑ノ通〓ガアリマ
ス、之ヲ許シマス-高橋壽太郞君
〔高橋壽太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=33
-
034・高橋壽太郎
○高橋壽太郞君 只今政府委員ヨリ御說明
ノアリマシタ產金法中改正法律案ニ關聯ヲ
致シマシテ、三四點ノ質問ヲ致シタイト存
ジマス、本法案ハ世ニ所謂金强制買上案デ
アリマス、時局柄金ノ集中ト云フコトハ致
シ方ナイコトデアリマセウ、併シナガラ政
府ハ國民ノ懷ロヲ狙フ前ニ、先ヅ金ノ增產
ヲ圖ルベキ積極的計畫ヲ立テラレナケレバ
ナラヌノデアリマス、私ハソレ等ノ見地カ
ラ、政府ニ質問ヲ致シタイト存ジマス
第七十二囘議會ノ當時、賀屋大藏大臣ハ
此ノ事變下ニ處スル軍需日買入用ノ金ハ、之
ヲ輸出貿易ノ振興ニ求メテ外貨ノ獲得ヲス
ル、又一方ニハ產金ノ奬勵ヲ行ツテ、其ノ
產金額ヲ以テ賄ツテ行カウト云フ案デアリ
マシタ、貿易外ノ國際收支貸借ニ餘リ期待
ヲ置カレナイ現狀ニ於キマシテハ、是レ以
外ニ途ハアリマスマイ、併シナガラ昨十三
年度ノ貿易ノ收支關係ヲ調ベテ見マスルト、
表面ハ六千四百万圓ノ輸出超過ニナツテ居
リマスルガ、是ハ圓「ブロック」內ノ勘定デア
リマシテ、第三國ノ貿易關係ヲ調ベテ見マ
スルト、驚ク勿レ五億圓ノ輸入超過ニ相成
ツテ居ルノデアリマス、一體賀屋財政ノ根
本ハ、輸出貿易ノ伸張ト產金額ノ增加ニ依
ツテ軍需品ヲ十分ニ買入レ、日本銀行ノ正
貨準備ニハ手ヲ著ケナイ、斯ウ云フコトニ
立脚シテアツタト思フノデアリマスガ、今
日ノ情勢ニ於テハ、最早日本銀行ノ有金ニ
手ヲ著ケナケレバナラナイト云フ重大ナル
時局ニ相成ツタノデアリマス、洵ニ國家ノ
爲ニ深憂ニ堪ヘナイ所デアリマス、當時賀
屋財政ニ參晝ヲセラレマシタ石渡大藏大臣
モ亦吾々ト共ニ憂ヲ同ウシ、甚ダ之ヲ遺憾
トセラレル所デアラウト存ジマス、惟フニ
今日ノ我ガ戰時體制下ニ於キマシテハ、百
億圓ノ公債ヲ消化スルコトハ困難ニハ違ヒ
アリマセヌケレドモ、決シテ至難ノ業デハ
ナイノデアリマス、併シナガラ之ニ反シテ、
其ノ十分ノ一ニモ足ラナイ數億ノ金貨ヲ獲
得スルト云フコトハ、難事中ノ難事デアリ
マン、此ノ事ガ遂行出來ナケレバ、恐ラク
此ノ聖戰ノ目的ヲ達成スル上ニ於テ、多大
ノ障碍ヲ生ズルモノト存ジマス、併シ是ト
テモ施スニ途ヲ以テスレバ、決シテ不可能
ノコトデハアリマセヌ、大河內子爵ノ議員ニ
配ラレマシタ「持テル國」日本ト云フ本ニハ、
斯ウ云フコトガ書イテアリマス、南阿弗利
加ハ世界ノ最大金產國デアルガ、其處デハ
決シテ富鑛ノ金鑛バカリヲ處理シテ居ルノ
デハナイ、百万分ノ二程度ノ貧鑛ヲ多量ニ
製鍊ヲシテ居ルノデアル、斯ウ書イテアリ
いく、今日我國ニ於テハ百万分ノ四以下ノ
貧鑛ハ、物ニナラナイト云ツテ之ヲ捨テテ
居ル、洵ニ贅澤至極デアリマス、是デハ金
ノ資源ニ乏シイノヂヤナイ、產業的勇氣ノ
乏シイコトヲ慨歎セザルヲ得ナイノデアリ
さく、又一方ニ於キマシテ、日本內地各所
ニ澤山ノ金山ガ發見サレテ居リマス、ソレ
等ハ多クハ世ニ所謂山師ト稱セラレル群小
ノ鑛業權者ノ手ニアツテ、未ダニ開發セラ
レズニ放置サレテアリマス、私ハ何故政府
ガ之ヲ動員スルコトヲヤラナイノカ、深ク
怪シム者デアリマス、是等ノ山々ハ悉ク有
望ナ山バカリデハアリマスマイケレドモ、
之ニ開發ノ資金ヲ與ヘ、之ヲ導クニ相當ノ
技術ヲ以テシマスレバ、私ハ數デコナスト
云フ言葉ノ通リ、相當ナ金產額ヲ得ルニ違
ヒナイト確信スル者デアリマス、政府ガ頻
リニ計畫ヲサレマシテ實施ニ移サレマシタ
產金奬勵法ノ如キモ、多クハ大キナ鑛業權
者ヲ保護助成スルコトニナリマシテ、群小
ノ鑛山業者ヲ保護助成スルト云フコトニハ
相成ツテ居リマセヌ、政府ハ宜シク此ノ際
此ノ群小鑛山業者ヲ動員シテ、大イニ產金
ノ增加ヲ圖ルベキデアリマス、此ノ事ハ軈
テ吾等ガ大陸ノ資源開發ヲスル際ニ當ツテ、
是等群小ノ鑛山業者ハ率先シテ嘗テ內地ニ
於テ體驗シタ所ヲ大陸ニ施シ、大イニ支那
大陸ノ鑛山開發ニ貢獻スル所アラウト存ジ
マス、此ノ點カラ申シマシテモ、政府ハ
ツノ鑛山實習學校、或ハ鑛山技術講習會ヲ
開イタ積リデ、思ヒ切ツタ助成金額ヲ支出
スベキデアラウト思フノデアリマス
今日我國ノ輸出貿易ハ內地ノ物價高ニ禍
セラレマシテ殆ド振ヒマセヌ、話ニ聞ク所
ニ依リマスト、政府ハ輸出貿易損失補償法
ト云フモノヲ設ケラレマシテ、八割ノ損失
マデ引受ケテヤラウトシテ乘出サレタノデ
アリマスガ、今日ノ實情ニ於キマシテハ、
殆ド此ノ法律ハ無用ニ歸シテ居ル、ドウ云
フ譯カト申シマスト、輸出貿易品トシテペ
ケヲ喰ツタ不合格品ハ、却テ內地ニ於テ高
ク賣レル、何モ苦シンデ外國ニ品物ヲ賣ラ
ナクテモ宜シイ、數倍ノ利益ヲ求メ得ラレ
ル、故ニ今日輸出品ハ不合格ニナツタ方
ガ宜シイ、サウ云フコトヲ考ヘルニ至ツタ
商賣人モ少クナイヤウデアリマス、斯ル狀
態デアリマスレバ、是ハ輸出貿易ニ餘程骨
ヲ入レテモ、其ノ實績ヲ擧ゲルコトハ相當
困難ガ伴フモノト思ヒマス、サウシマスト、
殘サレタ唯一ツノ途ハ產金ノ增加ヲ圖ル
ト云フコトニナルノデアリマス、否、金ノ
產出ノ增加バカリデハアリマセヌ、ニング、
所謂重要鑛物ノ增產ヲ圖ルト云フコトニ致
サナケレバナラヌト存ジマス、政府ハ前議
會ニ於キマシテ、產金法及ビ重要鑛物增產
法案ヲ提出サレテ、今日ソレガ實施ニナツテ
居ルノデアリマスガ、其ノ成績甚ダ芳シカラヌ
コトハ御承知ノ通リデアリマス、一體大藏省ハ
金資金特別會計-今日審議ニ上ツタヤ
ウデアリマスガ、之ヲ持ツテ居ル關係デアリマ
セウ、黃金ノ金ダケニ熱中シテ居ラレルヤ
ウデアリマスガ、是ハ一ヲ知ツテ二ヲ知ラ
ナイモノデアル、斯ウ申上ゲタイノデアリ
マス、ゾレハ姑ク措キマシテ、產業四箇年
計畫ノ骨子トモナリ、又我ガ戰時財政經濟
ノ大黑柱デアル所ノ產金額ガ、四年計畫ノ
第一年度タル昨年ニ於テ所期ノ成績ヲ擧ゲ
得ナイト云フコトハ、國家ノ爲ニ洵ニ悲シ
ムベキコトデアリマス、良キ手始メハ成功
ノ半バナリト申シマスガ、抑〓ノ第一步カラ
蹉跌ヲ來スヤウデアツテハ、此ノ先ノコト
ガ案ジラレルノデアリマス、然ルニ昭和十
四年度ノ一般會計ニ於ケル商工省ノ豫算ヲ
見マスルト、十三年度モ、十四年度モ殆ド
豫算ニハ變リガアリマセヌ、洵ニ驚クベキ
コトデアリマス、鑛物關係ニ於テ豫算ノ增
額サレタモノハ、石油增產ニ關スル助成金
數百万圓ト、鑛山監督局增員ニ伴フ經費三
十万圓、是ダケデアリマス、其ノ他ハ舊態
依然何等ノ變化ヲ見ナイノデアリマス、一
體此ノ十三年度ノ豫算ハ恐ラク昭和十二年
ノ夏頃、上海戰ノ酣ナル時ニ作ラレテ、マ
ダ蔣介石ヲ對手ニシテ居ツタ時代ノ編成ニ
ナツタモノデアリマス、而シテ論議サレタ
ノハ十三年ノ春、マグ物資ノ經濟給制ノ行
ハレナイ、今カラ言ヒマスレバ、「昔ハモノ
ヲ思ハザリケリ」ト云ツタヤウナ時代ニ、
此ノ豫算ガ取扱ハレタノデアリマス、然ル
ニ今日此ノ緊迫セル事態ニ對應スル商工省
ノ豫算ガ、昨年ト何等ノ差ガナイト云フコ
トハ何トシタコトデアルカ、私ハ此ノ豫算
ヲ時局ニ取殘サレタル豫算ト申シマス、商
工大臣ニハ御氣ノ毒デアリマスケレドモ、
洵ニ斯ウ云フ取殘サレタル豫算ヲ國民ニ提
示シナガラ、國民ニ時局ノ認識ヲ强ヒルガ
如キハ、誤レルモ亦甚シキモノト申サナケ
レバナリマセヌ(拍手)去ル昭和十二年度ノ
貿易關係ヲ檢討致シマスルト、第三國カラ
ノ輸入ガ十五億圓、內鑛石竝ニ金屬ノ輸入
ハ九億圓ニ達シテ居リマス、正ニ第三國輸
入ノ六割ヲ占メテ居リマス、恐ラク昨十三
年度ハ一層此ノ金屬類ノ輸入ガ增加シテ居
ルモノト信ズルノデアリマスガ、是等ノ支
拂ハ結局金貨デ拂ハナケレバナラヌコトハ
申スマデモアリマセヌ、サウシテ見マスル
ト金モ其ノ他ノ重要鑛物モ、是ハ全ク異名
同體ノ物デアリマス、不二ト申シマスカ、
-ニシテ二ナラズ、二ニシテ一ナリト云フ
アノ言葉ノ通リデアリマス、隨テ私共ハ金
資金特別會計ヲ有スルガ故ヲ以テ、金ノミ
ノ事ニ沒頭シテ居ル大藏省當局ノ認識ヲ改
メテ戴キタイト存ジマス、實ヲ申セバ金ヨ
リモ其ノ他ノ金屬類ガ一層必要ナノデアリ
やく、黃金タル金ハ唯支拂決濟ノ爲ノ金ニ
止マルノデアリマスガ、其ノ他ノ金屬ト云フ
モノハ直チニ物デアル、而シテ此ノ聖戰ヲ
遂行スル爲ニハ最モ重要ナル軍需品デアリ
ひと、金ニシテ物、之ヲ兼ネテ居ル物ガ重
要鑛物デアリマス、政府ハドウカ是等ノ點
ニ對シテ十分ニ施設ヲ誤ラヌヤウニ御願致
シマス
只今金ト其ノ他ノ金屬トノ話ヲ申上ゲマ
シタガ、殊ニ密接ナ關係ニアルモノハ金ト
銅デアリマス、金ト銅ハ冶金學ノ上カラ言
ツテモ、亦採鑛ノ上カラ言ツテモ是ハ不可
分ナモノデアリマス、申スマデモナク金山
ヤ、砂金カラ採リ出シマスル黃金ノ高ト云
フモノハ、餘リ多クハナイノデアリマス、
大部分ハ銅製鍊會社カラ產出スルモノガ多
イノデアリマス、日立ノ鑛山ト云ヒ、佐賀
ノ關ノ製鍊所ト云ヒ、厖大ナル金ヲ此處カ
ラ產出シテ居リマス、隨テ金ノ產額ノ增加
ヲ圖ルニハ、ドウシテモ銅ノ方ノ增產ヲ圖
ラナケレバナラナイト云フコトニ相成ルノ
デアリマスガ、銅方面ノ事ヲ考ヘテ見マス
ト洵ニ心細イノデアリマス、政府ハ之ニ何
等ノ助成モ與ヘナイト申シテ宜イデアリマ
セウ、若シ政府ガ幸ニ金ト銅ガ不可分ダト
云フコトヲ御承認ニナツテ、銅增產ニ對ス
ル施設ヲ進メラレマシタナラバ、所謂一石
二鳥、今日非常ニ銅ノ不足シテ居ル此ノ際
デモアリマスカラ、大イニ國家ヲ利スル所
ガアルダラウト思フノデアリマス
次ニ申上ゲタイト思ヒマスコトハ、先程
一寸觸レマシタ群小ノ鑛業權者ニ、鑛山開
發ノ資金ヲ融通スルト云フコトデアリマス、
今日是等ノ鑛山ヲ開發致サウト思ヒマスト、
之ニ要スル資金ハ興業銀行ハ勿論ノコト、
日本產金振興會社ト雖モ、其ノ資金ノ融通
ハ致サナイノデアリマス、開發ニ著手シテ
將來ノ見込ノアルモノニ對シテ、融通ヲス
ルコトニ相成ツテ居ルノデアリマス、資金
ヲ融通スルト云フ上ニハ、是モ無理ハナイ
コトト存ジマスガ、併シ政府ガ曩ニ制定サ
レマシタ輸出貿易損失八割補償ト云フヤウ
ナ、放膽ナ金融ヲヤラルルナラバ、是等ノ
群小鑛山ヲ動員シテ、金其ノ他ノ重要鑛物
ノ增產ヲ圖ルコトハ容易イノデアリマス
次ハ此ノ議場デ屢〓、耳ニスル所ノ產業方
針ハ營利追求ノ產業デハイケナイ、公益經
濟ニ基カナケレバナラヌト云フコトヲ、屢〓
耳ニシテ居ルノデアリマス、御說御尤、私
モ主義ニ於テ異存ハアリマセヌ、併シナガ
ラ今日ノ我國ノ產業ハ、長イ間營利追求デ
進ンデ來タノデアリマス、今日之ヲ止メテ
公益經濟ニ乘換ヘテ、次ノ「レール」ヲ走ル
ト云フコトハ、一方ナラザル混雜ヲ來スノ
デアリマス、嘘モ方便ト申シマスノデ、今
日ノヤウナ急場ニハ、營利追求ヲシテ來タ
者ニハ營利追求デ働カシテ儲ケサセ、サウ
シテ生產力擴充ヲ圖リ、且ツ政府ノ稅收入
ヲ增シテ行ケバ宜イノデアリマス、大局カ
ラ之ヲ見マスト營利經濟モ窮極スル所、ヤハ
リ公益經濟ニ歸著スルノデアリマス、蜜蜂ヲ
御覽ナサイ、蜜蜂ハ何モ人間ノ公益ノ爲ニ蜜
ヲ集メテ居ルノデハアリマセヌ、併シナガラ
彼等ガ集メタ蜜ヲ人間ガ取ツテ利用シテ行
〃、何モ蜜蜂ニ公益經濟ノ說明ヲスル必要
ハアリマセヌ(「營利經濟反對」ト呼フ者ア
リ)私ハ營利追求ニ依レト言フノデハアリ
マセヌ、噓モ方便デヤレト言フノデアリマ
ス(「資本家ノ代辯者、シツカリヤレ」ト呼
フ者アリ)何ヲ言フカ、ドチラガ資本家ノ
代辯者カ
〔發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=34
-
035・小山松壽
○議長(小山松喜君) 私話ヲセヌヤウニ御
願致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=35
-
036・高橋壽太郎
○高橋壽太郞君(續) 最後ニ一言申添ヘタ
イコトハ、國防上ノ要求ガアレバ、吾々ハ
算盤ヲ離レテモ其ノ產業ハ助長シテ行カナ
ケレバナラヌト云フコトニナリマス、何レ
政府ノ計畫シテ居ラレマス四箇年增產計畫
ト云フモノハ、日滿支三國ヲ含ム大計畫デ
アリマセウ、唯私ガ政府ノ注意ヲ喚起シテ
置キタイト思ヒマスコトハ、海ヲ越エテ大
量ノ物資ヲヤツタリ取ツタリスルコトヲ、
戰時ニモ容易ク行ハレルモノナリト前提シ
テオヤリニナラナイコトヲ切望スル者デア
リマス、此ノ事ハ屢〓私ガ申上ゲタノデア
リマスカラ、玆ニ繰返スマデモアリマセス
ガ、私ノ實ニ惧レル所ハ、天ノ一角ニ數十
隻ノ潜水艦ヲ浮ベ、數百臺ノ爆擊機ヲ用意
シテ、我ガ日滿支ノ交通線ノ要衝タル朝鮮
海峽附近ヲ睨ンデ居ルモノガアリハセヌカ、
此ノ點デアリマス、此處ノ交通線ヲ妨害サ
レマスト、有ユル產業計晝モ蹉跌ヲ生ジハ
セヌカ、此ノ事ニ對シテ政府ノ猛省ヲ促シ
テ置キタイト存ジマス
以上申シマシタ質問ヲ要約致シマスト次
ノ四項ニ相成リマス
一、政府ハ金及ビ銅增產ニ關スル積極的
對策ヲ有スルヤ
二、政府ハ金銅鐵以外ノ重要鑛物ニ對
シ、如何ナル增產計畫ヲ有スルヤ
三、日本鑛山開發會社法案トモ稱スベキ
モノヲ、政府ハ目下〓究中ナリト仄聞ス、
政府ハ今議會ニ之ヲ提出スルヤ否ヤ
四、昭和十四年度一般會計ニ於ケル重要
鑛物增產ニ關係アル豫算ハ、時局ニ對應セ
ザルモノト認ム、政府ハ相當ナル追加豫算
ヲ要求スルノ意ナキヤ、以上(拍手)
〔國務大臣八田嘉明君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=36
-
037・八田嘉明
○國務大臣(八田嘉明君) 只今高橋君ヨリ
御尋ニナリマシタル諸點ニ對シテ、御答申
上ゲタイト存ジマス、第一ハ金銅ノ增產ニ
付テ政府ハ積極對策ヲ執ルベシ、其ノ對策
ニ付テハドウデアルカト云フ御尋デアリマ
ス、銅ハ姑ク措キマシテ、金ニ對シマシテ
ハ既ニ御承知ノ通リ、曩ノ議會ニ於テ產金
增產ニ關スル所ノ法制ヲ定メマシテ、政府
ハ之ニ基キマシテ探鑛ノ奬勵金或ハ製錬所、
選鑛所ノ建設ニ對シマスル補助ヲ行ツテ居
リマス、又鑛山開發ニ必要ナル資材ノ供給
ニ對シ十分ナル助成ヲ致シ、更ニ又現地ノ
技術員ノ養成ニ付キマシテハ、將來ノ必要
性ニ鑑ミマシテ、現在ノ事業家ニ於テ養成
セラレテ居リマスル其ノ事柄ニ對シマシ
テ、助成ヲ致シテ居ルヤウナ次第デアリマ
ス、斯樣ナ次第デアリマシテ、政府ニ於キ
マシテハ十四年度ノ豫算ニ於キマシテモ、
只今申上ゲタヤウナ增產計畫ニ對シマシ
テ、必要ナル豫算ヲ計上シテ御協賛ヲ願ツ
テ居ルヤウナ次第デアリマス、其ノ以外ニ
於キマシテハ、鐵道省等ノ運賃ノ割引等ニ
對シマシテモ、十分ナル考慮ヲ拂ツテ居ル
コトハ御承知ノ通リデアリマス、只今豫算
ガ甚ダ多クナイト云フコトニ付テ御話ガア
リマシタガ、金ニ付キマシテハ、御承知ノ通
リ昨年十月創立サレマシタル日本產金株式
會社ナル國策會社ニ於テ、政府ニ代リマシ
テ是等ノ必要ナル助成ニ對シテ、責任ヲ以
テ仕事ヲ致シテ居ルヤウナ次第デアリマス、
マダ其ノ會社ハ創立日淺イ爲ニ十分ナル成
績ヲ擧ゲマセヌケレドモ、今後ノ增產ニ
付キマシテハ、資金ノ融通或ハ製鍊所ノ設
置等ニ對シマシテ、專ラ力ヲ致シテ居ルヤ
ウナ次第デアリマス、尙ホ政府ニ於キマシ
テハ、產金ニ對シマシテ官民ノ協議會ヲ作
リマシテ、只今計畫サレテ居リマス所ノ豫
定ノ年次計畫ヲ遂行致シマスコトニ對シテ、
萬違算ナキヲ期シテ居ルノデアリマス
之ニ關聯シテ第二ノ御質問ト致シマシ
テ、銅ノ增產ニ對シテ、又之ニ關聯シテ金、
銅、鐵以外ノ所謂非鐵-銅モ含メマシタ所
ノ非鐵金屬ノ開發ニ對シマシテ、御意見ヲ
伺ツタノデアリマスケレドモ、御話ノ如ク
金ト全ク同ジ價値ヲ有シマス所ノ國產ノ銅
ヲ產出スルト云フコトハ、極メテ重要ナル
問題デアリマスシ、又鉛、亞鉛其ノ他ノ非
鐵金屬ヲ開發スルト云フコトハ、時局柄政
府ニ於キマシテモ、洵ニ緊急ノ問題デアル
ト考ヘマシテ、是ガ開發ニ對シテ對策ヲ〓
究シテ、旣ニ大體ノ成案ハ得テ居ルノデア
リマシテ、只今關係省ノ間ニ於テ〓究ヲ致
シテ居リマスルガ、恐ラクハ不日成案ヲ得
マシテ、出來得ル限リ早ク本議會ニ提案ヲ
致シタイト考ヘテ居ル次第デアリマス、是
ガ出來マスト、曩ニ制定セラレテ居リマス
所ノ重要鑛物增產法ノ運用ト相俟チマシ
テ、是等ノ必要トスル所ノ國內ノ資源ノ開
發セラレルコトニ於テ、極メテ有效ナル結
果ヲ齎スデアラウト信ズルノデアリマス
尙ホ最後ニ、十四年度ノ豫算ニ是等ノ鑛
物開發ニ對シテ、政府ノ豫算ガ不十分デア
ルト云フヤウナ意味ニ於テ、御質問ガアリ
マシタガ、只今申上ゲタヤウナ計畫ガ成案
ヲ得マスル以上、之ニ關聯シテ必要ナル
豫算ヲ追加豫算トシテ計上致シマシテ、御
協贊ヲ願フ次第デアリマス、此ノ點御該承
ヲ願ヒタイト思フノデアリマス(拍手)
〔政府委員松村光三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=37
-
038・松村光三
○政府委員(松村光三君) 只今商工大臣カ
ラ大體御答辯ガアリマシタガ、特ニ一二ノ
點ニ付テ御答ヲ申上ゲタイト思ヒマス、第
一第二ノ御質疑ニ付テハ旣ニ御答辯ガアリ
マシタノデ、第三ノ豫算ノコトデアリマス
ガ、今ノ御質疑ニ依リマスト、商工省ノ所
管ニ於テ僅ニ四百万圓ダケデアルト云フコ
トデアリマシタガ、成程商工省所管ニ於キ
マシテハ、從來ノ如ク四百數十万圓デアリ
マスケレドモ、遞信省ノ所管ニ於キマシテ、
發送電其ノ他ノ關係ニ於キマシテ、金鑛獎
勵ノ施設トシテ百七十万圓ヲ計上致シテ居
リマスカラ、一般會計ニ於キマシテハ合計
六百万圓デアルノミナラズ、朝鮮其ノ他臺灣
等ニ於キマシテ多大ノ產金奬勵施設ヲシテ
居リマスカラ、今年度ニ於ケル一般會計竝
ニ特別會計ノ產金奬勵ノ合計ハ、二千八百
二十餘万圓ニ相成ツテ居リマス、其ノ他產
金會社ノ問題ハ勿論別デアリマス、尙ホ其
ノ他各種ノ問題ニ付テ御質疑ガアリマシタ
ガ、大體豫算ノ問題ダケヲ御答申上ゲタ次
第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=38
-
039・小山松壽
○議長(小山松市君) 是ニテ質疑ハ終了致
シマシタ、本案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ
選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=39
-
040・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ政府提出、昭和十二
年法律第五十七號中改正法律案外一件委員
ニ併セ付託サレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=40
-
041・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=41
-
042・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第
六及ビ第七ハ關聯セル議案デアリマスカラ、
一括議題ト爲スニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=42
-
043・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、日程第六、地方鐵道法中改正法律案、
日程第七、軌道法中改正法律案、右兩案ヲ
一括シテ第一讀會ヲ開キマス-鐵道政務
次官工藤十三雄君
第六地方鐵道法中改正法律案(政府
提出)第一讀會
第七軌道法中改正法律案(政府提出)
第一讀會
地方鐵道法中改正法律案
地方鐵道法中左ノ通改正ス
第六條削除
第六條ノ二乃至第六條ノ五ヲ削ル
第二十五條主務大臣ハ公益上必要アリ
ト認ムルトキハ地方鐵道業者ニ他ノ陸
上運送事業者ト連絡運輸、直通運輸、
運賃協定其ノ他運輸ニ關スル協定ヲ爲
スヘキコトヲ命スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ設備ノ共用又ハ變
更、運輸ノ手續、運賃ノ割合、費用ノ
負擔其ノ他ノ事項ニ付協議調ハサルト
キハ申請ニ因リ主務大臣之ヲ裁定ス
第三十一條第一項中「ヲ時價ニ依リテ國
債劵面金額ニ換算シタル金額」ヲ削ル同
條第二項中「建設費ヲ時價ニ依リテ國債
劵面金額ニ換算シタル金額ニ達セサルト
キハ其ノ換算シタル金額」ヲ「建設費ニ達
セサルトキハ其ノ建設費」ニ改ム
第三十三條第一項中「時價ニ依リテ國債
劵面金額ニ換算シ」ヲ削ル
第三十五條買收代價ハ國債證劵ヲ以テ
之ヲ交付スルコトヲ得此ノ場合ニ於テ
二十五圓未滿ノ端數ヲ生シタルトキハ
之ヲ額面金額二十五圓トス
前項ニ依リ交付スル國債證劵ノ交付價
格ハ時價ヲ參酌シテ大藏大臣之ヲ定ム
第三十六條ノ二中「ヲ時價ニ依リテ國債
劵面金額ニ換算シタル金額」ヲ削ル
第三十六條ノ三第一項中「百分ノ七」ヲ
「百分ノ五」ニ改ム
第三十六條ノ五ヲ削ル
第三十九條第一項第五號及第二項ヲ削ル
附則
本法施行ノ期日ハ各規定ニ付勅令ヲ以テ
之ヲ定ム
昭和九年法律第二十二號ハ之ヲ廢止ス
軌道法中改正法律案
軌道法中左ノ通改正ス
第十九條中「第三十三條ノ二二ヲ「第一十
三條」ニ改ム
第二十一條軌道會社ノ株金ノ第一囘拂
込金額ハ株金ノ十分ノ一迄下ルコトヲ
得但シ地方鐵道會社ニ非サル會社カ兼
業トシテ軌道ヲ敷設スル場合ハ此ノ限
ニ在ラス
第二十五條中「地方長官」ノ下ニ「又ハ鐵
道局長」ヲ加フ
第二十六條中「第六條ノ一一乃至第八條」ヲ
「第七條、第八條」ニ、「、第三十六條ノ四
及第三十六條ノ五」ヲ「及第三十六條ノ四」
三六人
第二十九條第一項第五號及第二項ヲ削ル
附則
本法施行ノ期日ハ各規定ニ付勅令ヲ以テ
之ヲ定ム
〔政府委員工藤十三雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=43
-
044・工藤十三雄
○政府委員(工藤十三雄君) 只今議題トナ
リマシタ地方鐵道法中改正法律案竝ニ軌道
法中改正法律案ノ提出理由ヲ御說明申上ゲ
マス、現在地方鐵道會社及ビ軌道會社ニ對
シマシテハ、株金全額拂込前ニ於テ其ノ資
本ヲ增加シ、又一定ノ期間利益配當ニ關シ、
普通株式ニ劣ル株式、卽チ所謂後配株ヲ發
行シ得ル規定ガ設ケラレテ居ルノデアリマ
スルガ、今囘商法ノ改正ニ依リマシテ、
般ノ株式會社ニ付キマシテモ廣ク同樣ナコ
トガ認メラレルコトトナリマシタノデ、是
等ニ關スル特別規定ヲ整理致ス必要ガアル
ノデアリマス、又地方鐵道、軌道ノ買收又
ハ補償ノ際交付スベキ買收代價又ハ補償金
ハ、一應五分利附國債證劵ヲ以テ交付スル
コトヲ本位ト致シ、更ニ之ヲ時價ニ依
リマシテ五分未滿ノ利附國債證劵ニ換
算シテ交付致シテ居ルノデアリマスル
ガ、換算ノ基準トナルベキ五分利附國
債證劵ガ、最近殆ド發行サレテ居ラヌ爲
二、現在ニ於テハ其ノ適正ナル時價ヲ定
メ難イ狀態トナツテ居ルノデアリマシテ、
買收又ハ補償ノ實施上、爲ニ支障ヲ生ズル
ニ至リマシタノデ、此ノ際現行ノ如キ換算
方法ヲ改メタイト存ズルノデアリマス、尙
ホ其ノ他ノ規定ニ關シマシテモ、二三修正
ヲ適當トスルモノガゴザイマスノデ、是等
ニ付キマシテモ此ノ機會ニ於キマシテ、併
セテ改正ヲ行ヒタイト存ズルノデアリマス、
以上申述べマシタ理由ニ依リマシテ、茲ニ
本案ヲ提出致シタ次第デアリマス、何卒十
分御審議ノ上御協贊アランコトヲ希望致シ
マス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=44
-
045・小山松壽
○議長(小山松壽君) 各案ノ審査ヲ付託ス
ベキ委員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=45
-
046・服部崎市
○服部崎市君 日程第六及ビ第七ノ兩案ハ、
一括シテ議長指名十八名ノ委員ニ付託サレ
ンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=46
-
047・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=47
-
048・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第
八、恩給法中改正法律案、第一讀會ヲ開キ
マス-黑崎法制局長官
第八恩給法中改正法律案(政府提出)
第一讀會
恩給法中改正法律案
恩給法中左ノ通改正ス
第三十二條第一項第二號ヲ左ノ如ク改ム
二戰地外ニ在リテ航空部隊ニ屬シ航
空基地ニ於テ特殊ノ戰務ニ服シタル
トキ、ハ其ノ期間ノ一月ニ付三月
三前號ニ揭クルモノヲ除クノ外戰地
外ニ在リテ戰務ニ服シタルトキハ其
ノ期間ノ一月ニ付一月半
同條第三項中「地域、」ノ下ニ「航空基地及
航空基地タル期間、」ヲ加フ
第五十九條ニ左ノ一項ヲ加フ
前五項ニ規定スル納金ハ戰時又ハ事變
ニ際シテハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ
免除スルコトヲ得
附則
本法ハ昭和十四年五月一日ヨリ之ヲ施行
ス但シ第三十二條ノ改正規定ハ昭和十二
年七月七日ヨリ之ヲ適用ス
〔政府委員黑崎定三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=48
-
049・黒崎定三
○政府委員(黑崎定三君) 只今上程セラレ
マシタ恩給法中改正法律案ノ提出理由ヲ申
述べマス
本案ヲ以テ改正セントスル點ハ二點アル
ノデアリマシテ、其ノ第一ハ、現行恩給法
ニ依リマスト、戰地又ハ事變地ニ於テ、戰
務ニ服シテ居リマスル公務員ニ對シテハ、
其ノ恩給在職年限ノ計算ガ、服務期間ノ一
月ニ付三月ヲ加算スルコトトナリ、又戰地
外ニ於キマシテ戰務ニ服シテ居ル者ニ對シ
テハ、一月ニ付一月半ノ加算ヲ爲スコトト
ナツテ居ルノデアリマス、御承知ノ通リ、
近代航空技術ノ發達ニ伴ヒマシテ、戰地外
ノ航空基地カラスル遠距離作戰ガ、屢〓行ハ
レテ居ルノデアリマシテ、此ノ作戰關係者
ノ中デ、戰地ニ行キマスル航空機ノ乘員ハ、
前述ノ戰地ニ於テ戰務ニ服務スル者デアリ
マスルカラ、其ノ在職年ノ加算ハ一月ニ付
三月ヲ加算スル割合ニナルノデアリマス、
所ガ基地ニ於キマシテ地上勤務ニ服シマス
ル者ハ、前述ノ一月ニ付一月半ノ戰地外勤
務ノ加算シカナイノデアリマス、併シナガ
ラ航空基地ハ常ニ敵ノ攻擊ヲ受クル危險ニ
曝サレテ居ルノデアリマシテ、又航空機ノ
乘員ト基地ニ於ケル地上勤務員トハ密接不
可離ノ關係ニアリマシテ、是ガ一體トナツ
テ初メテ完全ナ戰鬪力ヲ發揮シ得ルノデア
リマスルカラ、之ヲ分離シテ別々ニ違ツタ
在職年限ノ加算ヲ致シマスルノハ不適當デ
アリマスノミナラズ、地上勤務員ノ勞苦、
身體能力ノ消耗度ハ、戰地ニ行ツテ戰務ニ
服シテ居リマスル者ト比較致シマシテ、決
シテ劣ルモノデハナイノデアリマスルカラ、
是等地上勤務員ニ對シマシテモ戰地ニ在ル
者ト同樣ニ、一月ニ付三月ノ加算ヲ附加ス
ル必要ガアルノデアリマス、是ガ改正ノ第
一點デアリマス
第二ニハ、現行法ニ依リマスルト下士官以
上ノ軍人及ビ其ノ他ノ公務員ハ、總テ俸給
ノ百分ノ一又ハ百分ノ二ニ相當スル金額
ヲ、每月國庫ニ納付スル義務ヲ負ツテ居ル
ノデアリマス、所ガ戰地ニ於キマシテハ、
部隊ハ常ニ移動シテ居リマスルシ、隨テ其
ノ納金ヲ徴收スル方法ガ甚ダ困難デアリマ
ス、本來複雜ナ所へ持ツテ來テ、實行ガ甚
ダ困難ニナルノデアリマス、場合ニ依リマ
シテハ徴收事務ガ不可能ナリト申シテ宜イ
場合モ生ズルノデアリマス、ソコデ戰時又
ハ事變ニ際シマシテハ、一定限度ニ於テ此
ノ納金ノ義務ヲ免除シタイト考ヘマシテ、
此ノ趣旨ノ改正ヲ行ヒマスノガ第二點デア
リマス
以上ガ本案ヲ以テ改正セントスル內容デ
アリマス、何卒御審議ノ上速ニ御協賛アラ
ンコトヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=49
-
050・小山松壽
○議長(小山松壽君) 本案ノ審査ヲ付託ス
ベキ委員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=50
-
051・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ政府提出、明治三十
五年法律第四十九號中改正法律案委員ニ併
セ付託サレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=51
-
052・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=52
-
053・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=53
-
054・服部崎市
○服部崎市君 殘餘ノ日程ヲ延期シ、本日
ハ是ニテ散會セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=54
-
055・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=55
-
056・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、次會ノ議
事日程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、本日
ハ是ニテ散會致シマス
午後三時十分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X01919390302&spkNum=56
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。