1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十四年三月四日(土曜日)
午後一時十五分開議
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議事日程 第十九號
昭和十四年三月四日
午後一時開議
第一 司法保護事業法案(政府提出) 第一讀會
第二 地方學事通則中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第三 米穀配給統制法案(政府提出) 第一讀會
第四 國際電氣通信株式會社法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第五 職員健康保險法案(政府提出) 第一讀會
第六 花柳病豫防法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第七 寺院等に無償にて貸付しある國有財産の處分に關する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第八 郵便年金法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第九 軍馬資源保護法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十 種馬統制法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十一 競馬法の臨時特例に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=0
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001・小山松壽
○議長(小山松壽君) 諸般ノ報〓ヲ致サセ
マス
〔書記官朗讀〕
一今四日貴族院ヨリ受領シタル政府提出案
左ノ如シ
非訟事件手續法中改正法律案
〔左ノ報〓ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
(臨第一號)臨時軍事費豫算追加案
(以上三月二日提出)
司法保護事業法案
地方學事通則中改正法律案
米穀配給統制法案
國際電氣通信株式會社法中改正法律案
職員健康保險法案
(以上三月三日提出)
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
農家世襲財產法案
提出者林平馬君
辯護士法中改正法律案
提出者
高橋義次君高橋泰雄君
鹽川正藏君宮澤〓作君
中村高一君山本粂吉君
松永義雄君中山福藏君
森田重次郞君
刑事訴訟法中改正法律案
提出者
高橋義次君高橋泰雄君
宮澤〓作君鹽川正藏君
中村高一君山本条吉君
松永義雄君森田重次郞君
國道十一號線改修ニ關スル建議案
提出者
增田義一君武田德三郞君
澁川上田間鐵道速成ニ關スル建議案
提出者木檜三四郞君
名護屋村ヲ起點トシ唐津市嬉野町ヲ經テ
雲仙ニ至ル國際觀光コース建設ニ關スル
建議案
提出者矇生安太郎君
愛野時一郞君岡本實太郞君
伊藤五郞君池田秀雄君
住之江港修築ニ關スル建議案
提出者
愛野時一郞君宇賀四郞君
池田秀雄君
有明海沿岸地方耕作者ニゴム長靴配給ニ
關スル建議案
提出者
愛野時一郞君宇賀四郞君
池田秀雄君
國道十號線改修竝鋪裝ニ關スル建議案
提出者
佐藤與一君松木弘君
松井郡治君北昤吉君
高岡大輔君
新潟港ヲ第一種重要港灣ニ編入ニ關スル
建議案
提出者
今成留之助君松井郡治君
北昤吉君松木弘君
度量衡法施行令中改正ニ關スル建議案
提出者
小泉純也君武知勇記君
國道九號線三國峠貫通ニ關スル建議案
提出者
今成留之助君佐藤謙之輔君
加藤知正君最上政三君
(以上三月二日堤出)
競爭入札ノ取締等ニ關スル法律案
提出者福田關次郞君
小貝川上流竝五行川ノ根本的改修工事急
施ニ關スル建議案
提出者小平重吉君
南洋眞珠業ニ從事スル潜水夫ノ素質向上
竝潜水病ノ治療及豫防ニ關スル建議案
提出者東〓實君
函館高等水產學校ニ商船科併置ニ關スル
建議案
提出者
大島寅吉君渡邊泰邦君
田代正治君
(以上三月三日提出)
一去二日平沼內閣總理大臣ヨリ左ノ通發令
アリタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
内閣恩給局長平木弘
第七十四囘帝國議會政府委員被仰付
一去二日議長ニ於テ辭任ヲ許可シタル常任
委員左ノ如シ
第七部選出
豫算委員行吉角治君
第九部選出
懲罰委員馬場元治君
一去二日常任委員補關選擧ノ結果左ノ如シ
第三部選出
豫算委員小山田義孝君(西方利馬君
補關)
第八部選出
建議委員松浦周太郞君(山田〓君補
關
一去二日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ如
シ
地方鐵道法中改正法律案(政府提出)外一
件委員
森田重次郞君福田悌夫君
〓寛君堀內良平君
大野一造君手代木隆吉君
飯田助夫君高見之通君
坪山德彌君田中好君
小串〓一君松川昌藏君
高畠龜太郞君太田理一君
金井正夫君曾木重貴君
阿部茂夫君小田榮君
一去二日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如シ
靑年學校〓育費國庫補助法案(政府提出)
委員
辭任手代木隆吉君補闕今成留之助君
一昨三日常任委員補關選擧ノ結果左ノ如シ
第七部選出
豫算委員若宮貞夫君(行吉角治君
補關)
第九部選出
懲罰委員大石大君(馬場元治君
補關)
一昨三日委員長及理事互選ノ結果左ノ如シ
地方鐵道法中改正法律案(政府提出)外一
件委員
委員長高見之通君
理事
森田重次郞君福田悌夫君
坪山德彌君松川昌藏君
一昨三日特別委員理事補關選擧ノ結果左ノ
如シ
昭和十二年法律第五十七號中改正法律案
(鐵ノ輸入稅免除ニ關スル件)(政府提出)
外一件委員
理事卯尾田毅太郞君(理事原玉重君
去一日委員辭任ニ付其ノ補
關
一昨三日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如シ
國境取締法案(政府提出)委員
辭任淺沼稻次郞君補闕前川正一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=1
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002・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス、諸君一昨二日內親王殿下御誕生アラ
セラレタルニ付、昨三日議長ハ宮城竝ニ大
宮御所ニ參賀致シ、更ニ久邇宮邸ニ參殿御
祝詞ヲ言上致シマシタ
內親王殿下御誕生ニ付御命名式當日御
祝詞言上ノ件議長發議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=2
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003・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御命名式當日奉祝ノ
誠意ヲ表スル爲、院議ニ依リ議長ハ宮城ニ
參內御祝詞ヲ言上致シ、次デ大宮御所ニ參
入御祝詞ヲ言上致シタイト思ヒマス、之二
御異議ガナケレバ敬意ヲ表スル爲御起立ア
ランコトヲ望ミマス
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=3
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004・小山松壽
○議長(小山松壽君) 起立總員
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=4
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005・小山松壽
○議長(小山松壽君) 仍テ全會一致可決致
シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=5
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006・小山松壽
○議長(小山松壽君) 砂田重政君ヨリ故齋
藤大使歸還ノ件ニ付議事進行ニ關スル發言
ヲ求メラレテ居リマス、此ノ際之ヲ許可致
シマス-砂田重政君
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=6
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007・砂田重政
○砂田重政君 簡單デアリマスカラ自席力
ラノ發言ヲ御許願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=7
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008・小山松壽
○議長(小山松壽君) 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=8
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009・砂田重政
○砂田重政君 故前駐米齋藤大使ノ逝去ニ
當リマシテ、新聞紙ノ報ズル所ニ依リマスレ
バ、亞米利加ニ於テハ軍艦ヲ以テ其ノ遺骸
ヲ日本ニ送ルコトニ決定ヲ致シタヤウニ承
ツテ居リマス、外交官ノ而モ前任ノ大使ニ對
シテ斯樣ナ扱ヲサレルト云フコトハ、多ク其
ノ例ヲ聞カナイ所デアリマス、亞米利加ノ
好意ニ對シテ吾々ハ大イニ感激ヲ致ス者デ
アリマス(拍手)殊ニ新聞ノ報ズル所ニ依リ
マスレバ、亞米利加ノ下院ニ於キマシテ一
議員ヨリ此ノ事ニ付テ發言ガアリ、齋藤前
大使ノ遺族ニ對シテ敬弔ノ意ヲ表スルト共
ニ、其ノ祖國ニ對シテ深甚ナル弔意ヲ表ス
ルト云フ発言ガアツタヤウニ承ツテ居リマ
ス、日米兩國ノ外交上ノ親交ハ吾々常ニ最
モ重キヲ置イテ、其ノ誤解ノ起ラザランコ
トニ努力シツツアルコトハ申スマデモアリ
マセヌ、又兩國ノ間ニ於テ、其ノ根本ニ於
テ何等疎隔スベキ點ノナイコトヲ確信致ス
者デアリマス(拍手)事變勃發以來動モスレ
バ其ノ間ニ誤解ノ生ズルヤウニ考ヘラレマ
シタコトモ、此ノ好意アル亞米利加ノ處置
ニ付キマシテ、兩國ノ間ニ其ノ根本ニ於テ
一層緊密ナル外交上ノ親善ヲ加ヘルコトト
確信ヲ致スノデアリマス(拍手)冀クハ此ノ
機會ニ於テ外務大臣ヨリ玆ニ至リマシタ徑
路ニ付キマシテ、詳細ニ此ノ議場ニ於テ御
報〓ヲ願ヒタイト存ズルノデアリマス、議
長ハ外務大臣ニ御交涉ノ上、適當ナル處置
ヲ執ラレンコトヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=9
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010・小山松壽
○議長(小山松壽君) 此ノ際外務大臣ヨリ
發言ヲ求メラレテ居リマス、之ヲ許シマ
ス-外務大臣有田八郞君
〔國務大臣有田八郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=10
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011・有田八郎
○國務大臣(有田八郞君) 只今砂田君カ
ラ、前駐米大使故齋藤博君ノ薨去ニ際シテ、
米國朝野カラ受ケタ同情ニ對シテ感激ノ意
ヲ表サレルト共ニ、尙ホ此ノ點ニ付キマシ
テ私カラ報告ヲスルヤウニト云フコトデゴ
ザイマス、玆ニ其ノ大體ヲ申上ゲタイト思
フノデアリマス
齋藤前駐米大使ハ在任中カラ不幸病ヲ得
マシテ、療養ヲ致シテ居ツタノデアリマス
ガ、此ノ間米國ノ朝野カラ非常ニ同情ヲ寄
セラレテ居ツタノデアリマス、不幸最近ニ
薨去サレタノデアリマスガ、此ノ急逝ニ際シ
マシテ、大統領、國務長官ハ駐日米國大使ニ
訓令ヲ致シマシテ、米國大使ガ親シク外務
省ニ外務大臣ヲ訪問シテ、大統領及ビ國務
長官ノ名ニ於キマシテ、齋藤大使ノ薨去ニ
對シテ衷心カラノ哀悼ノ意ヲ傳ヘテ參ツタ
ノデアリマス、一方齋藤大使ノ薨去ニ際シ
マシテハ、米國ノ華盛頓、紐育、其ノ他米
國各地ニアリマス新聞紙ハ、一樣ニ齋藤大
使ノ功績ヲ讚ヘテ哀悼ノ意ヲ表シタノデア
リマス、又其ノ告別式ガ華盛頓ノ日本大使
館ニ於テ行ハレマスルニ當ツテハ、各方面
カラ非常ニ多數ノ花輪ヲ寄セラレ、又米國
朝野ノ名士多數ガ之ニ參列致シタノデアリ
さく、是等ノ米國朝野ノ示サレマシタ齋藤
大使ニ對スル同情ニ付キマシテハ、吾々ト
シテ衷心ヨリ感謝ヲ致シテ居ツタ次第デア
リマス
然ルニ其ノ後米國ノ駐日大使ガ外務省ニ
參リマシテ、本國政府ノ訓令ニ依ル趣ヲ以
テ、若シ日本政府竝ニ齋藤大使ノ遺族ニシ
テ異議ガナケレバ、齋藤大使ノ遺骨ヲ米國
ノ巡洋艦ヲ以テ日本ニ送リ屆ケタイカラ、
成ベク速ニ政府ノ意嚮ノアル所ヲ知ラシテ
貰ヒタイ、斯ウ云フコトデアツタノデアリ
そう、同時ニ華盛頓ニ於キマシテハ、米國
ノ國務省ノ次官ガ堀内大使ノ來訪ヲ求メマ
シテ、同樣ノ亞米利加政府ノ考ヲ傳ヘ
マスト共ニ、是ハ大統領ノ齋藤前大使
ニ對スル個人的ノ友情ト、日本ノ外交代表
者ニ對スル敬意ノ表示デアルト云フコトヲ
申添ヘタサウデアリマス、日本政府ニ於キ
マシテハ齋藤大使ノ遺族ノ意嚮モ聞キマシ
タ上ニ、直チニ米國大使ニ對シマシテ、日
本ト致シマシテハ、齋藤前大使ノ遺骨ヲ米
國海軍ノ軍艦ヲ以テ日本マデ護送スルト云
フ、此ノ米國政府ノ申出ヲ欣然受託致スト
云フコトヲ囘答致シタノデアリマス(拍手)
今囘米國政府ガ旣ニ米國駐在ノ任ヲ解カレ
マシタル齋藤前大使ニ對シテ、斯ノ如キ破
格ノ取扱方ヲ致シマスルコトハ、固ヨリ故
大使ノ秀レタル才幹ト不斷ノ努力ニ依リマ
シテ、日米國交ノ爲ニ盡サレ、又大統領初
メ米國朝野各方面トノ間ニ、非常ニ密接ナ
ル友好關係ヲ作ツテ居ツタガ爲デアルト存
ズルノデアリマスルガ、同時ニ此ノ亞米利
加政府ノ申出ハ、日本ノ代表者ニ對スル尊
敬ノ意思ノ表示デアルコトハ、亞米利加ノ
國務次官ガ堀内大使ニ對シテ申述ベタ所ニ
依ツテ明デアルノデアリマス、此ノ點ニ付
キマシテハ帝國政府トシテ、深ク米國政府
ノ好意ニ感激致シテ居ル次第デアリマス(拍
手)目下日米ノ關係ガ此ノ支那事變ヲ廻リ
マシテ、色々ノ困難ニ直面シテ居ルコトハ
事實デアリマス、然ルニ此ノ時ニ當リマシ
テ、斯ノ如キ友好的ノ意思表示ガ爲サレマ
シタト云フコトハ日米兩國國交ノ根柢ガ
實ニ深イモノガアル爲デアルト信ズルノデ
アリマス(拍手)帝國政府ニ於キマシテハ、
米國政府ガ斯ノ如キ申出ニ依ツテ示サレマ
シタ精神、又此ノ際米國官民一般ノ示サレ
タ此ノ感情トニ對シマシテ、感謝ノ意ヲ表
シマスト共ニ、是ト同樣ノ精神ヲ以テ、日
米關係ニ處シテ行キタイト考ヘテ居ル次第
デアリマス
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=11
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012・服部崎市
○服部崎市君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ日程第九乃至第十一ノ
三案ヲ繰上ゲ一括上程シ、其ノ審議ヲ進メ
ラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=12
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013・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=13
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014・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ノ順序ハ變更セラレマシタ、
日程第九、軍馬資源保護法案、日程第十、
種馬統制法案、日程第十一、競馬法ノ臨時
特例ニ關スル法律案、右三案ヲ一括シテ第
一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求
メマス-委員長東武君
第九軍馬資源保護法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
第十種馬統制法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第十一競馬法ノ臨時特例ニ關スル法
律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
一軍馬資源保護法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報告候也
昭和十四年三月三日
委員長東武
衆議院議長小山松壽殿
〔別紙〕
(小字ハ委員會修正)
軍馬資源保護法案中左ノ通修正ス
第十一條鍛鍊馬競走ノ施行者優等馬票
ヲ發行シタルトキハ命令ノ定ムル所ニ
依リ其ノ發行ニ依リ得タル金額ノ百分
ノ二十五以內ノ金額ヲ收得スルコトヲ
得
前項ノ場合ニ於テ鍛鍊馬競走ノ施行者
ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ納付金ヲ軍用
保護馬鍛鍊中央會ニ納付スベシ
前項ノ納付金ハ軍用保護馬鍛鍊中央會
ノ目的ヲ達スル爲必要ナル經費ニ充ツ
ルコトヲ要ス
鍛鍊馬場ノ開設又ハ維持、競走ノ觀覽、優
等馬票ノ發行又ハ購買、拂戾金又ハ賞金ノ
交付又ハ受領其ノ他鍛鍊馬競走ノ施行又ハ
開催ニ關シテハ地方稅ヲ課スルコトヲ得
ズ
報〓書
一種馬統制法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十四年三月三日
委員長東武
衆議院議長小山松壽殿
報〓書
一競馬法ノ臨時特例ニ關スル法律案政
府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十四年三月三日
委員長東武
衆議院議長小山松壽殿
〔東武君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=14
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015・東武
○東武君 只今上程ニナリマシタ軍馬資源
保護法案外二件ニ付キマシテ、委員會ノ經
過ト結果ニ付テ御報告申上ゲマス、本委員
會ハ二月十四日ヨリ昨日マデ引續キ十三囘
ニ亙リ開會致シ、委員諸君ハ勿論政府委員
ニ於カセラレテモ、熱心ニ質疑應答ヲ重ネ
愼重審議ヲ遂ゲタ次第デアリマス
法案ノ內容ヲ極ク簡單ニ申上ゲマス、今
次支那事變ニ因リマシテ、我國ト致シマシ
テハ未曾有ノ多數ノ馬ガ徵發サレマシテ
支那各地ニ於テ大規模ノ作戰ニ供用サレタ
ノデアリマス、其ノ結果軍事上ニ於テ幾多ノ貴
キ經驗ヲ積マレマシテ、產業上國防上玆ニ一
大馬政ノ變革ヲ招來シタノデアリマス、其ノ內
容トスル所ハ、國防上特ニ必要トスル馬ヲ軍
用保護馬ト致シマシテ、是ガ飼養管理ハ、一定
ノ飼養料ヲ民間ニ助成シテ、又軍用保護馬
ニハ一定ノ鍛鍊ヲ行ハシメマシテ、軍馬ノ
資質ノ向上普及ヲ圖ル爲、地方ニ於キマシ
テハ鍛鍊馬ノ競走ヲ爲サシメルト云フノデ
アリマス、尙ホ是ガ統轄機關ト致シマシテ
ハ、保護馬鍛鍊ノ中央會ヲ組織スルト云フ
我國馬政計畫中劃期的ノ大法案デアリマス
又第二ノ種馬統制法案ハ優良ナル種牡
馬及ビ種牝馬ヲ整備充實ヲ圖ル爲、種牡馬
ヲ全部國有ト致シマシテ、種牝馬ニ對シテ
ハ飼育者ニ相當ノ助成金ヲ交付スルト云フ
ノーハ國有種牡馬ハ昭和二十年度マデニ七
千五百頭ヲ國ニ於テ保有スルト云フノデア
リマス
次ニ競馬法ノ臨時特例ニ關スル法律案
ハ、現行競馬法ノ納付金ガ「百分ノ八」トア
ルノヲ、今度ハ「百分ノ十一·五」ニ增加ス
ルト云フ法案デアリマス、昭和十四年度ニ
於ケル勝馬投票券賣得金ハ一億六千四百万
圓昭和十三年度ニ於ケル實績ニ近キモノ
ト推定致シマシテ、政府納付金見込額ガ約
千七百八十七万圓トナルノデアリマスガ、
之ヲ前年度納付金ニ比較致シマスルト、約
七百六十三万圓ト云フ增加額ニナル豫定デ
アリマス、現在ノ時局ニ鑑ミマシテ此ノ
程度ノ引上ハ相當デアルト云フノデ、別段
議論ハアリマセヌデシタ
質疑應答ノ大要トシテ主ナルモノ二三ヲ
申上ゲマス、先ヅ國防ヲ中心トセル馬政計
晝ノ變革ハ巳ムヲ得ザルト致シマシテモ
是ガ爲ニ廣義國防上ノ產業ニ及ボス影響ハ
尠カラザルモノガアルト思フガ、政府ハ之
ニ對シテ如何ナル考ヲ有スルカ、陸軍大臣
ノ答辯ハ、政府ハ有ユル方面ニ於キマシテ
十分ノ考慮ヲ拂ヒ、馬事施設ニ多額ノ經費
ヲ增加致シマシテ、軍事產業共ニ兩全主義
ヲ徹底スル方針デアル
ニ、今囘ノ馬政方針ハ重型種ニ偏シ、
輕種ヲ輕ンズルモノアルガ、現在ハ已ムヲ
得ナイトシテモ、事變ガ終熄スル時ニハ
更ニ此ノ計畫ヲ變更スルノデハナイカト云
フ質問デアリマシタガ、陸軍大臣ノ答辯ハ
今度ノ事變ニ對スル馬ノ體驗ハ極メテ貴
重ナルモノガアツタ此ノ體驗ニ依ツテ馬
政ノ大變革ヲ爲シタノデアルガ、事變終熄
後ト雖モ本計畫ヲ變更スルヤウナコトハ斷
ジテナイト明答セラレマシタ
三、國防ヲ中心トセル軍用保護馬ノ制度
ハ馬モ兵器モ同一ナレバ軍馬鍛鍊ニ必
要ナル施設ハ軍事費ニ於テ支辨シテハドウ
カ、之ニ對シテハ、軍用保護馬ノ飼養ハ、
一箇年三十七圓ト云フ極ク少額ノ補助ニナ
ツテ居リマス、又馬ヲ曳付ケル一日ノ旅費
ハ、三十錢ト云フ極ク少額ナ金デアツテ
生產者ヤ農家ニ多クノ犠牲ヲ拂ハシムル結
果トナル虞ガアルガモウ少シ國防中心ト
シテ此ノ保護馬制度ヲ立ツルノナラバ、モ
ウ少シ政府ハ思切ツタ施設ヲ爲シテハ如何
ト云フコトデアリマシタガ、櫻內農林大臣
ハ、先ヅ此ノ程度ニ於テ十分トハ申シマセ
又カ、今後注意シテ、或ハ非常ニ不十分ト
云フヤウナコトガ分レバ、適當ニ考慮ヲ爲
スト云フ答辯デアリマシタ
四、馬ノ改良ト生產トハ牧野ニ負フ所ガ
非常ニ大キイノデアルガ、政府ハ國有林野
ヲ開放シテ、牧野ノ擴充ニ努ムル意思ガア
ルカドウカト云フコトハ、是ハ最モ委員會
ニ於テ各委員ヨリ熱心ニ質問應答ヲ重ネラ
レマシタ、政府ハ此ノ點ニ關シテハ、調査
會モ設置シテアリ、目下〓究中デアル、必
ズ近ク實現シテ、委員諸君ノ意ニ副フヤウ
致シタイト考ヘテ居ル、斯樣ニ力强クハツ
キリト此ノ點ハ答辯ヲサレマシタ
五、今囘ノ鍛鍊馬競走ノ實施ニ依リマシ
テ、從來ノ地方競馬百四十箇所バカリガ廢
止サレルノデアルガ、競馬ノ主催團體タル
畜產組合聯合會、又ハ畜產組合其ノ他ノ團
體ニ於テ、尠カラズ債權債務ノ關係ヲ持ツ
テ居ルガ、今囘ノ整理ニ當リマシテ政府ハ
負債ノ償還又ハ整理ニ對シテ、十分ナ用意
ト其ノ方針ガアルカドウカ、之ニ對シテハ
政府ハ適當ナ資本ヲ以テ餘リ地方ニ御迷惑
ヲ掛ケナイヤウニ致ス用意ガ十分アルト云
フ答辯デアリマス
六、鍛鍊馬競技ト地方競技ニ對シマシテ
地方稅ヲ課スルト云フコトデアリマス、是
ガ本委員會ニ於テ非常ニ重大ナ問題トナツ
タノデアリマスガ、競馬法ニ依ル日本競馬
協會ノ競馬ニ對シマシテハ、同法第八條ニ
於テ「地方稅ヲ課スルコトヲ得ズ」トハツキ
リ明文ガアルノデアル、卽チ是ハ納付金ニ
依ツテ納メテ居ルノデアルカラ、地方稅ハ
課セナイ、然ルニ今囘ノ軍用鍛鍊競技ニ對
シテハ地方稅ヲ課スル方針デアル、斯樣ナ
說明デアリマシタ、委員會ハ全會一致其ノ
不當ヲ難詰シタ結果、政府ト委員會トノ間
ニ數次ノ懇談ヲ爲シマシテ、成ベク無修正
デ全會一致デ協賛ヲスル考デ非常ナ努力ヲ
致シマシタノデアリマスガ、政府部內ニ於
テハ各省ニ於テ一致ヲ見ルコトガ出來ナイ
ノデ、已ムヲ得ズ玆ニ修正スルコトニナツ
タノデアリマス、修正案ヲ申上ゲマス
修正案
軍馬資源法第十一條第四項トシテ左ノ
項ヲ加フ
鍛鍊馬場ノ開設又ハ維持、競走ノ觀覽、
優等馬票ノ發行又ハ購買、拂戾金又ハ
賞金ノ交付又ハ受領其ノ他鍛鍊馬競走
ノ施行又ハ開催ニ關シテハ地方稅ヲ課
スルコトヲ得ズ
採決ノ結果右修正案ヲ全會一致委員會ハ
可決致シマシタ、其ノ他ノ法案ハ全部原案
ヲ可決致シマシタ、詳細ハ速記錄ニ讓リマ
ス、右御報〓ヲ申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=15
-
016・小山松壽
○議長(小山松壽君) 三案ノ第二讀會ヲ開
クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=16
-
017・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ三案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=17
-
018・服部崎市
○服部崎市君 直チニ三案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長ノ報〓ノ
通リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=18
-
019・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=19
-
020・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ三案ノ第二讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
軍馬資源保護法案第二讀會(確定議)
種馬統制法案第二讀會(確定議)
競馬法ノ臨時特例ニ關スル法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=20
-
021・小山松壽
○議長(小山松壽君) 別ニ御發議モアリマ
セヌ、第三讀會ヲ省略シテ、三案トモ委員
長報告通リ確定致シマシタ(拍手)日程第
-司法保護事業法案、第一讀會ヲ開キマ
ス-司法大臣鹽野季彥君
第一司法保護事業法案(政府提出)
第一讀會
司法保護事業法案
司法保護事業法
第一條本法ニ於テ司法保護事業トハ左
ニ揭グル者ノ保護ヲ爲ス事業及右事業
ニ關シ指導、聯絡又ハ助成ヲ爲ス事業
ヲ謂フ
-訴追ヲ必要トセザル爲公訴ヲ提起
セズトセラレタル者
二刑ノ執行猶豫ノ言渡ヲ受ケタル者
三刑ノ執行停止中ノ者
四刑ノ執行ノ免除ヲ得タル者
五假出獄中ノ者
六刑ノ執行ヲ終リタル者
七少年法ニ依リ保護處分ヲ受ケタル
者
第二條前條ノ保護ニ於テハ本人ガ更ニ
罪ヲ犯スノ危險ヲ防止シ之ヲシテ進ン
デ臣民ノ本分ヲ恪守セシムル爲性格ノ
陶冶、生業ノ助成其ノ他適當ノ處置ヲ
以テ本人ヲ輔導スルモノトス
保護ノ種類及方法ハ命令ヲ以テ之ヲ定
ム
第三條司法保護事業ヲ經營セントスル
者ハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ之ヲ廢
止セントスルトキ亦同ジ
第四條主務大臣ハ司法保護事業ヲ經營
スル者ニ對シ監督上必要アル場合ニ於
テハ其ノ事業ニ關スル報告ヲ徵シ、實
況ヲ調査シ又ハ事業ノ經營ニ關シ指示
ヲ爲スコトヲ得
第五條主務大臣ハ司法保護事業ヲ經營
スル者ニ對シ司法保護事業ニ關スル事
項ノ調査ヲ委囑スルコトヲ得
第六條司法保護事業ヲ經營スル者其ノ
事業ノ經營ニ必要ナル資金ヲ得ル爲寄
附金ヲ募集セントスルトキハ主務大臣
又ハ地方長官ノ許可ヲ受クベシ
前項ノ規定ニ依リ寄附金ヲ募集シタル
者(其ノ承繼者ヲ含ム)ハ其ノ收支ヲ寄
附金募集ノ許可ヲ受ケタル官廳ニ報〓
スペン
前項ニ揭グル者其ノ寄附金又ハ之ニ依
リテ得タル財產ヲ處分セントスルトキ
ハ寄附金募集ノ許可ヲ受ケタル官廳ノ
許可ヲ受クベシ
第七條司法保護事業ヲ經營スル者本法
ニ違反シ、公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞
アリ又ハ著シク不當ノ行爲アリタルト
キハ主務大臣ハ司法保護事業委員會ノ
意見ヲ聽キ其ノ者ニ對シ第三條ノ認可
ヲ取消シ又ハ事業ノ經營ヲ制限スルコ
トヲ得司法保護事業ヲ經營スル者ガ法
人ナル場合ニ於テ理事其ノ他ノ業務ヲ
執行スル役員ニ著シク不當ノ行爲アリ
タルトキ亦同ジ
司法保護事業委員會ニ關スル規程ハ勅
令ヲ以テ之ヲ定ム
第八條政府ハ司法保護事業ヲ經營スル
者ニ對シ豫算ノ範圍內ニ於テ奬勵金ヲ
交付スルコトヲ得
第九條道府縣、市町村其ノ他ノ公共團
體ハ司法保護事業ノ用ニ供スル土地建
物ニ對シテ租稅其ノ他ノ公課ヲ課スル
コトヲ得ズ但シ有料ニテ之ヲ使用セシ
ムル者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第十條第一條ニ揭グル者ノ保護ヲ爲サ
シムル爲別ニ司法保護委員ヲ置ク
司法保護委員ニ關スル規程ハ勅令ヲ以
テ之ヲ定ム
第十一條司法保護事業ヲ經營スル者左
ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ五百圓以
下ノ罰金ニ處ス
第六條第一項ノ規定ニ依ル許可ヲ
受ケズシテ寄附金ヲ募集シタルトキ
二第六條第二項ノ規定ニ依ル報告ヲ
爲サズ又ハ虚僞ノ報告ヲ爲シタルト
キ
三第六條第三項ノ規定ニ依ル許可ヲ
受ケズ又ハ其ノ許可ニ反シテ寄附金
又ハ之ニ依リ得タル財產ヲ處分シタ
九十年
四第七條ノ規定ニ依ル取消又ハ制限
ニ違反シテ司法保護事業ヲ經營シタ
孔祥寺
第十二條司法保護事業ヲ經營スル者ハ
其ノ代理人、戶主、家族、雇人其ノ他
ノ從業者ガ其ノ業務ニ關シ本法ニ違反
シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ
故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第十三條司法保護事業ヲ經營スル者ニ
適用スベキ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルト
キハ理事其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行ス
ル役員ニ、未成年者又ハ禁治產者ナル
トキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニ司法保護事業ヲ經營ス
ル者ニシテ命令ノ定ムル所ニ依リ屆出ヲ
爲シタルモノハ第三條ノ規定ニ依ル認可
ヲ受ケタル者ト看做ス
第六條第一項ノ規定ハ司法保護事業ヲ經
營スル者ニシテ本法施行前寄附金ノ募集
ニ付行政官廳ノ許可ヲ受ケタルモノニ對
シテハ其ノ許可ニ基キ本法施行ノ際現ニ
募集中ノ寄附金ニ付之ヲ適用セズ
〔國務大臣鹽野季彥君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=21
-
022・塩野季彦
○國務大臣(鹽野参彥君) 只今議題トナリ
マシタ司法保護事業法案ノ趣旨ニ付キマシ
テ御說明ヲ申上ゲマス
近年ノ犯罪現象ヲ見マスルニ、再犯者ノ
數ハ年ヲ逐ウテ增加ノ傾向ヲ示シテ居ルノ
デアリマシテ、之ヲ長期戰下ニ於ケル犯罪
ノ推移ト併セ考ヘマスル時ニハ、洵ニ憂慮ニ
堪ヘザルモノガアリ、マス、平時ニ於キマシ
テモ、安寧秩序ハ國運ノ發展、國民ノ福社
ノ基礎デアリマスガ今日國ヲ擧ゲテ新東
亞建設ノ大業ニ邁進シテ居リマスル時、銃
後ニ於ケル治安ヲ確保スルコトハ、最モ緊
要ナル時務ニ屬スルノデアリマシテ、是ガ
爲ニハ罪ヲ犯シタル者ヲ保護善導シテ、其
ノ再犯ニ陷ルノ危險ヲ防止スルト共ニ、進
ンデ忠良ナル臣民ノ道ニ復歸セシメ、國民
トシテ應分ノ御奉公ヲ爲サシムルヤウ、之
ヲ輔導援護スルコトガ肝要デアリマス、御
承知ノ如ク國家ノ經營スル司法保護施設ト
致シマシテハ思想犯ニ付テハ思想犯保護
觀察法ニ基キ保護觀察所ガ設置セラレ、少
年ニ付テハ少年法ニ基キ少年審判所及ビ矯
正院ガ設置セラレテ、何レモ相當ノ實績ヲ
擧ケテ居ルノデアリマスガ、是等ノ國家機
關ガ保護活動ヲ爲スニ當リマシテハ、民間
ニ於テ經營セラルル司法保護事業ノ協力ニ
俟ツ所ガ多イノデアリマス、而シテ思想犯
及ビ少年ヲ除ク一般ノ犯罪者ノ保護ニ付テ
ハ、保護觀察所、少年審判所及ビ矯正院ニ
比スベキ國家施設ガ無イノデアリマスカ
ラ、殆ド全ク民間ノ事業經營者ノ保護活動
ニ依存シテ居ルノ實情デアリマス、現在民
間ノ保護事業經營者ノ數ハ一千二百ヲ超ユ
ルノデアリマスガ、其ノ機構ハ少數ノ者ヲ
除イテハ〓ネ脆弱デアリマスノミナラ
ズ、其ノ保護活動ノ內容ニ付キマシテモ、
從來殆ド各經營者ノ任意ニ委セラレテ居リ
マシタ關係上、其ノ熱意ニ於テハ洵ニ推重
スベキモノガアルニ拘ラズ、其ノ方法ニ於
テハ今尙ホ改善ノ餘地ヲ存スト認ムベキモ
ノモ少クナイノデアリマス
尙又司法保護ノ對象タルベキモノハ每
年數十万ニモ達スルノデアリマシテ、民間
ニ於ケル保護事業經營者ノミノ努力ヲ以テ
シテハ、能ク當面ノ必要ニ對應シ得ナイ事
情ニアリマスルノミナラズ、是等多數ノ保
護對象者ノ中ニハ保護事業經營者以外ノ
民間有識者ノ輔導援護ニ依ツテ、更生復活
セシメ得ルモノガ少クナイノデアリマス
右ニ申述ベマシタ理由ニ依リマシテ、政
府ハ一面司法保護事業ヲ經營スル者ニ對ス
ル助成ノ方途ヲ講ジ、適當ナル指導監督ヲ
加ヘテ、其ノ機能ヲ一層有效適正ニ發揮セ
シムルト共ニ、他面ニ於テハ新ニ司法保護
委員ノ制度ヲ設ケ、民間ノ有識者ニ司法保
護委員ヲ委囑シテ保護活動ヲ爲サシムル
爲玆ニ司法保護事業法ヲ制定スルノ必要
ヲ認メタ次第デアリマス、本法案ニ關スル
詳細ハ委員會ニ於テ御說明申上ゲル機會ガ
アラウト思フノデアリマスガ、何卒愼重御
審議ノ上御協賛ヲ與ヘラレンコトヲ切望致
シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=22
-
023・小山松壽
○議長(小山松壽君) 本案ノ審査ヲ付託ス
ベキ委員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=23
-
024・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ、政府提出人事調停法
ノ委員ニ併セ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=24
-
025・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=25
-
026・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第
ニヽ地方學事通則中改正法律案、第一讀會
ヲ開キマス-文部大臣荒木貞夫君
第二地方學事通則中改正法律案厳
府提出)第一讀會
地方學事通則中改正法律案
地方學事通則中左ノ通改正ス
第五條中「兒童〓育事務」ヲ「兒童生徒〓
育事務」ニ改ム
第九條中「郡」ヲ削ル
第十條中「郡制」ヲ削ル
附則
本法ハ昭和十四年四月一日ヨリ之ヲ施行
ス
〔國務大臣男爵荒木貞夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=26
-
027・荒木貞夫
○國務大臣(男爵荒木貞夫君) 只今議題ト
ナリマシタ地方學事通則中改正法律案提出
ノ理由ヲ御說明申上ゲマス、靑年學校〓育
義務制ノ實施ニ當リマシテハ市町村ノ狀
況ニ依リ靑年學校生徒ノ〓育事務ヲ、他ノ
市町村等ニ付託シ得ル途ヲ開ク必要ガアリ
マスルコトト、尙ホ此ノ機會ニ字句ノ整理
ヲモ併セ行ハンガ爲、同法中二三ノ改正ヲ
爲サントスルモノデアリマス、何卒宜シク
御審議アランコトヲ切望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=27
-
028・小山松壽
○議長(小山松壽君) 本案ノ審査ヲ付託ス
ベキ委員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=28
-
029・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ政府提出靑年學校〓
育費國庫補助法案委員ニ併セ付託サレンコ
トヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=29
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030・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=30
-
031・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=31
-
032・服部崎市
○服部崎市君 日程第三ハ後〓シトセラレ
ンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=32
-
033・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=33
-
034・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、日程第三ハ後廻シト致シマス-日程
第四、國際電氣通信株式會社法中改正法律
案ノ第一讀會ヲ開キマス-鹽野遞信大臣
第四國際電氣通信株式會社法中改正
法律案(政府提出)第一讀會
國際電氣通信株式會社法中改正法律案
國際電氣通信株式會社法中左ノ通改正ス
第一條中「其ノ附屬設備」ノ下ニ「(國內電
氣通信ニ共用セラルル通信ケーブル設備
及其ノ附屬設備ヲ含ム)」ヲ加フ
第二條國際電氣通信株式會社ハ前條ニ
定ムルモノノ外政府ノ命令ニ依リ又ハ
其ノ認可ヲ受ケ左ノ事業ヲ營ムコトヲ
得
一外國ニ於ケル電氣通信事業ノ經營
二外國ニ於ケル電氣通信ノ設備及其
ノ附屬設備ノ貸付
三電氣通信ノ設備及其ノ附屬設備ノ
建設及保守ノ請負
四電氣通信ノ用品ノ製造及販賣
五前四號ニ揭クル事業ニ對スル投資
第三條及第四條中「主務大臣」ヲ「政府」ニ
改ム
第五條國際電氣通信株式會社ノ株式ハ
記名式トス
國際電氣通信株式會社ノ株主ハ政府、
公共〓體、帝國臣民又ハ帝國法人ニシ
テ社員、株主若ハ業務ヲ執行スル役員
ノ半數以上、資本ノ半額以上若ハ議決
權ノ過半數カ外國人若ハ外國法人ニ屬
セサルモノタルコトヲ要ス
勅令ノ定ムル法人ニシテ特ニ政府ノ許
可ヲ受ケタルモノハ前項ノ規定ニ拘ラ
ス國際電氣通信株式會社ノ株主ト爲ル
コトヲ得
第六條政府ハ國際電氣通信株式會社ニ
對シ其ノ資本ノ半額ヲ限リ出資スルコ
トヲ得
政府所有ノ株式ノ株金拂込ハ其ノ他ノ
株式ノ株金拂込ト之ヲ異ニスルコトヲ
得
政府ハ國ノ所有ニ屬スル第一條ニ揭ク
ル設備及其ノ設備ヲ爲ス爲購入シタル
土地ヲ以テ出資ノ目的ト爲スコトヲ得
第六條ノ二前條ノ規定ニ依リ政府ニ於
テ引受ケタル株式ノ拂込金ハ通信事業
特別會計ノ資本勘定ノ歲出トス
通信事業特別會計ニ屬スル財產ノ出資
ニ因リ政府ノ取得シタル株式ハ同特別
會計ノ資本所屬物件トス
第八條政府ハ國際電氣通信株式會社ノ
設備ヲ使用シタルトキハ勅令ノ定ムル
所ニ依リ該設備使用ニ對シ國際電氣通
信株式會社ニ交付金ヲ交付ス
第八條ノ二國際電氣通信株式會社ハ商
法ニ規定スル制限ヲ超エテ社債ヲ募集
スルコトヲ得但シ社債ノ總額ハ拂込ミ
タル株金額ノ三倍ヲ超ユルコトヲ得ス
社債ヲ募集スル場合ニ於ケル株主總會
ノ決議ハ資本ノ半額以上ニ當ル株主出
席シ其ノ議決權ノ過半數ヲ以テ之ヲ爲
スコトヲ得
第八條ノ三政府ハ社債ノ元本ノ償還及
利息ノ支拂ニ付保證スルコトヲ得
前項ノ保證ニ因ル政府ノ支出金ハ通信
事業特別會計ノ業務勘定ノ歲出トス
第十二條中「主務大臣」ヲ「政府」ニ、「電氣
通信ノ設備若ハ其ノ附屬設備」ヲ「第一
條ニ揭クル設備」ニ改ム
第十二條ノ二政府ハ公益上必要アリト
認ムルトキハ國際電氣通信株式會社ニ
對シ電氣通信ノ技術ノ〓究ニ關シ必要
ナル事項ヲ命スルコトヲ得
第十二條ノ三國際電氣通信株式會社ハ
命令ノ定ムル技術者ヲ選任シ技術ニ關
スル事項ヲ擔任セシムヘシ
政府ハ前項ノ技術者カ其ノ職務ヲ怠リ
又ハ其ノ職務ヲ行フニ當リ不當ナル行
爲ヲ爲シタルトキハ其ノ解任ヲ命スル
コトヲ得
第十二條ノ四國際電氣通信株式會社社
債ヲ募集セムトスルトキ又ハ借入金ヲ
爲サムトスルトキハ政府ノ認可ヲ受ク
、ソ
第十二條ノ五國際電氣通信株式會社事
業計畫ヲ設定シ又ハ變更セムトスルト
キハ政府ノ認可ヲ受クヘシ
第十三條取締役及監査役ノ選任及解
任定款ノ變更、利益金ノ處分、合併
竝解散ノ決議ハ政府ノ認可ヲ受クルニ
非サレハ其ノ效力ヲ生セス
政府ハ國際電氣通信株式會社ノ決議又
ハ取締役若ハ監査役ノ行爲カ法令、法
令ニ基キテ爲ス處分若ハ定款ニ違反シ
又ハ公益ヲ害スト認ムルトキハ其ノ決
議ヲ取消シ又ハ取締役若ハ監査役ヲ解
任スルコトヲ得
第十四條中「主務大臣」ヲ「政府」ニ改ム
第十四條ノ二政府ハ國際電氣通信株式
會社監理官ヲ置キ國際電氣通信株式會
社ノ業務ヲ監視セシム
第十四條ノ三國際電氣通信株式會社監
理官ハ何時ニテモ國際電氣通信株式會
社ノ金庫、帳簿及諸般ノ文書物件ヲ檢
査スルコトヲ得
國際電氣通信株式會社監理官必要ト認
ムルトキハ何時ニテモ國際電氣通信株
式會社ニ命シ業務ニ關スル諸般ノ計算
及狀況ヲ報告セシムルコトヲ得
國際電氣通信株式會社監理官ハ株主總
會其ノ他諸般ノ會議ニ出席シ意見ヲ陳
述スルコトヲ得
第十四條ノ四國際電氣通信株式會社ハ
每營業期ニ於ケル配當シ得ヘキ利益金
額カ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂
込金額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ニ達ス
ル迄政府ノ所有スル株式ニ對シ利益ノ
配當ヲ爲スコトヲ要セス
第十四條ノ五國際電氣通信株式會社勅
令ノ定ムル營業期及爾後ノ每營業期ニ
於ケル配當シ得ヘキ利益金額カ政府以
外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込金額ニ對
シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過スル場合ニ
於テ政府以外ノ者ノ所有スル株式ニ對
シ年百分ノ六ノ割合ヲ超エ利益配當ヲ
爲サムトスルトキハ其ノ超過スル利益
金額ハ利益配當カ總株式ニ付拂込ミタ
ル株金額ニ對シ均一ノ割合ニ達スル迄政
府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込金額及
政府ノ所有スル株式ノ拂込金額ニ對シ一
ト五トノ割合ヲ以テ之ヲ配當スヘシ
國際電氣通信株式會社前項ノ規定ニ依
リ利益ノ配當ヲ爲ス場合ニ於テ昭和十
四年三月三十一日以前ニ於テ發行シタ
ル政府以外ノ者ノ所有スル株式ニ對ス
ル利益配當金カ其ノ拂込株金額ニ對シ
年百分ノ七ノ割合ニ達セサルトキハ勅
令ノ定ムル營業期及爾後十年間ヲ限リ
政府ノ所有スル株式ニ對スル配當ニ充
ツヘキ利益金ヲ以テ之ニ達スル迄該株
式ニ對シ利益ノ配當ヲ爲スコトヲ得但シ
昭和十四年四月一日以後ニ於テ拂込ミ
タル株金額ニ對シテハ此ノ限ニ在ラス
第十四條ノ六國際電氣通信株式會社ニ
ハ命令ノ定ムル所ニ依リ昭和十五年一
月一日ヨリ十年間其ノ通信ケーブル設
備ヲ以テ營ム事業ニ付所得稅及營業收
益稅ヲ免除ス
第十四條ノ七北海道、府縣及市町村其
ノ他之ニ準スヘキモノハ前條ノ規定ニ
依リ所得稅及營業收益稅ヲ免除セラレ
タル國際電氣通信株式會社ノ事業ニ對
シ地方稅ヲ課スルコトヲ得ス但シ特別
ノ事情ニ基キ政府ノ認可ヲ受ケタル場
合ハ此ノ限ニ在ラス
第十四條ノ八國際電氣通信株式會社左
ノ事項ニ付登記ヲ受クル場合ニ於テハ
其ノ登錄稅ノ額ハ左ノ額トス
一第六條第三項ニ規定スル出資ニ因
ル資本ノ增加
增資拂込株金額ノ千分ノ一
二第六條第三項ニ規定スル出資ニ基
ク不動產ニ關スル權利ノ取得
不動產ノ價格ノ千分ノ三
第十四條ノ九電信線電話線建設條例ハ
勅令ノ定ムル所ニ依リ國際電氣通信株
式會社カ第一條ニ揭クル設備ノ建設及
保守ヲ爲ス場合ニ之ヲ準用ス
第十六條第一項ヲ左ノ如ク改ム
國際電氣通信株式會社カ本法若ハ本法
ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲
ス處分ニ違反シタルトキハ取締役又ハ
其ノ職務ヲ行フ監査役ヲ百圓以上五千
圓以下ノ過料ニ處ス
第十六條ノ二本法ヲ朝鮮、臺灣又ハ樺
太ニ施行スル場合ニ於テ必要アルトキ
ハ勅令ヲ以テ特別ノ規定ヲ爲スコトヲ
得
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
政府國際電氣通信株式會社法第六條第三
項ノ規定ニ依リ出資ヲ爲サントスルトキ
ハ出資ノ目的タル財產ノ價格及之ニ對シ
テ與フル株式ノ數ニ付政府出資財產評價
委員會ノ議ヲ經ベシ
政府出資財產評價委員會ニ關スル規程ハ
勅令ヲ以テ之ヲ定ム
政府ハ一般會計ニ屬スル國際電氣通信株
式會社ノ株式ヲ有價ニテ通信事業特別會
計ニ保管換ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ保管換ヲ爲ス株式ノ對
價タル支出金ハ通信事業特別會計ノ資本
勘定ノ歲出トシ其ノ株式ハ同特別會計ノ
資本所屬物件トス
〔國務大臣鹽野季彥君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=34
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035・塩野季彦
○國務大臣(鹽野季彥君) 只今議題トナリ
マシタ國際電氣通信株式會社法中改正法律
案ノ提案理由ヲ說明致シマス、現下內外ノ
諸情勢竝ニ東亞ニ於ケル電氣通信ノ現狀ニ
鑑ミマスルニ、日滿支三國ノ國防、政治、
經濟及ビ文化ノ緊密ナル互助連繫ヲ確保ス
ルニ必要ナル東亞電氣通信網ヲ整備致シマ
スコトハ東亞ノ新秩序確立上不可缺且ツ
喫緊ノ一要目デアリマス、隨ヒマシテ日滿
支三國ノ主要都市ヲ連絡スル安固堅牢ナル
通信「ケーブル」ノ急速ナル整備ヲ企圖スル
コトガ肝要デアリマシテ、是ガ爲ニハ我國
ノ適當ナル民間機關ヲシテ、滿洲及ビ支那
ノ各通信事業經營機關ト緊密ナル連繫ヲ保
チツツ、其ノ整備ニ當ラシムル方策ヲ採ル
コトガ必要デアリマス、卽チ政府ハ我國通信
政策其ノ他諸般ノ事情ヨリ見マシテ、現在
對外電氣通信設備ノ建設保守、外國ニ於ケ
ル無線設備ノ貸付及ビ工事ノ請負等ヲ目的
トシテ居リマスル國際電氣通信株式會社ヲ
シテ、本整備ニ協力セシメルコトガ最適當
デアルト考ヘマシテ、今囘同會社ノ事業目
的ヲ擴張シマスルト同時ニ、事業ノ圓滿適
正ナル遂行ヲ期スル爲、一面會社ニ對スル
政府ノ保護ヲ厚ウシ、他面政府ノ監督權ヲ
强化スル等ノ必要ヲ認メ、本改正法律案ヲ
提出致シタ次第デアリマス、何卒御審議ノ
上速ニ協贊ヲ與ヘラレンコトヲ希望致シマ
ス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=35
-
036・小山松壽
○議長(小山松壽君) 本案ノ審査ヲ付託ス
ベキ委員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=36
-
037・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ議長指名十八名ノ委
員ニ付託サレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=37
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038・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=38
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039・小山松壽
○議長(小山松壽君) 異議ナシト認メマス、
仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第五、
職員健康保險法案ノ第一讀會ヲ開キマ
ス-厚生大臣廣瀨久忠君
第五職員健康保險法案(政府提出)
第一讀會
職員健康保險法案
職員健康保險法
第一章總則
第一條職員健康保險ニ於テハ被保險者
ノ疾病、負傷、死亡又ハ分娩ニ關シ保
險給付ヲ爲スモノトス
保險者ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ被保險
者ト同一ノ世帶ニ屬シ被保險者ニ依リ
生計ヲ維持スル者(以下世帶員ト稱ス)
ノ疾病又ハ負傷ニ關シ保險給付ヲ爲ス
コトヲ得
第二條本法ニ於テ報酬ト稱スルハ事業
ニ使用セラルル者ガ勞務ノ對償トシテ
受クル俸給、給料又ハ賃金及之ニ準ズ
ベキモノヲ謂フ
俸給、給料又ハ賃金ニ準ズベキモノノ
範圍及評價ニ關シテハ勅令ヲ以テ之ヲ
定ム
第三條報酬ノ額ニ基キ保險料又ハ保險
給付ノ額ヲ定ムル場合ニ於テハ標準報
酬ニ依リ之ヲ算定ス
標準報酬ニ關スル事項ハ勅令ヲ以テ之
ヲ定ム
第四條保險料其ノ他本法ニ依ル徵收金
ヲ徵收シ又ハ其ノ還付ヲ受クル權利及
保險給付ヲ受クル權利ハ一年ヲ經過シ
タルトキハ時效ニ因リテ消滅ス
前項ノ時效ノ中斷、停止其ノ他ノ事項
ニ關シテハ民法ノ時效ニ關スル規定ヲ
準用ス
命令ノ定ムル所ニ依リ保險者ノ爲ス保
險料其ノ他本法ニ依ル徵收金ノ徵收ノ
告知ハ民法第百五十三條ノ規定ニ拘ラ
ズ時效中斷ノ效力ヲ有ス
第五條本法又ハ本法ニ基キテ發スル命
令ニ規定スル期間ノ計算ニ付テハ民法
ノ期間ノ計算ニ關スル規定ヲ準用ス
第六條職員健康保險ニ關スル書類ニハ
印紙稅ヲ課セズ
保險給付トシテ支給ヲ受ケタル金品ヲ
標準トシテ租稅其ノ他ノ公課ヲ課セズ
第七條保險給付ヲ受クル權利ハ之ヲ讓
渡シ又ハ差押フルコトヲ得ズ
第八條保險者又ハ保險給付ヲ受クベキ
者ハ被保險者又ハ被保險者タリシ者ノ
戶籍ニ關シ戶籍事務ヲ管掌スル者又ハ
其ノ代理者ニ對シ無償ニテ證明ヲ求ム
ルコトヲ得
前項ノ規定ハ第一條第二項ノ保險給付
ヲ爲ス場合ニ於テハ世帶員又ハ世帶員
タリシ者ノ戶籍ニ關シ之ヲ準用ス
第九條保險者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ
被保險者ヲ使用スル事業主ヲシテ其ノ
使用スル者ノ異動及報酬ニ關シ報告ヲ
爲サシメ、文書ヲ提示セシメ其ノ他職
員健康保險ノ施行ニ必要ナル事務ヲ行
ハシムルコトヲ得
第十條行政官廳ハ必要アリト認ムルト
キハ被保險者ノ異動及報酬竝ニ保險給
付ノ決定ニ關シ當該官吏ヲシテ被保險
者又ハ被保險者タリシ者ノ勤務場所ニ
就キ關係者ニ對シ質問ヲ爲シ又ハ帳簿
書類其ノ他ノ檢査ヲ爲サシムルコトヲ
得
第十一條主務大臣ハ本法ニ規定スル其
ノ職權ノ一部ヲ命令ヲ以テ行政官廳ニ
委任スルコトヲ得
第十二條保險料其ノ他本法ニ依ル徵收
金ヲ滯納スル者アルトキハ保險者ハ期
限ヲ指定シテ之ヲ督促スベシ
前項ノ規定ニ依リ督促ヲ爲シタル場合
ニ於テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ督促手
數料及延滯金ヲ徵收ス
第十三條前條ノ規定ニ依ル督促ヲ受ケ
タル者其ノ指定ノ期限迄ニ保險料其ノ
他本法ニ依ル徵收金ヲ納付セザルトキ
ハ保險者ハ國稅滯納·處分ノ例ニ依リ之
ヲ處分シ又ハ滯納者若ハ其ノ者ノ財產
ノ在ル市町村ニ對シ之ガ處分ヲ請求ス
ルコトヲ得但シ職員健康保險組合ガ保
險者ナル場合ニ於テ國稅滯納處分ノ例
ニ依リ處分スルコトヲ得ルハ市町村ニ
對シ處分ヲ請求スルモ市町村ガ其ノ請
求ヲ受ケタル日ヨリ三十日以內ニ其ノ
處分ニ著手セズ又ハ九十日以內ニ之ヲ
結了セザル場合ニ限ル
前項但書ノ規定ニ依リ職員健康保險組
合ガ國稅滯納處分ノ例ニ依リ處分ヲ爲
ス場合ニ於テハ主務大臣ノ認可ヲ受ク
ルコトヲ要ス
保險者ガ第一項ノ規定ニ依リ市町村ニ
對シ處分ヲ請求シタルトキハ市町村ハ
市町村稅ノ例ニ依リ之ヲ處分ス此ノ場
合ニ於テハ保險者ハ徵收金額ノ百分ノ
四ニ相當スル金額ヲ當該市町村ニ交付
スベシ
第十四條保險料其ノ他本法ニ依ル徵收
金ノ先取特權ノ順位ハ市町村其ノ他之
ニ準ズベキモノノ徵收金ニ次ギ他ノ公
課ニ先ツモノトス
第十五條保險料其ノ他本法ニ依ル徵收
金ニ關スル書類ノ送達ニ付テハ國稅徵
收法第四條ノ七及第四條ノ八ノ規定ヲ
準用ス
第十六條本法ハ國、北海道、府縣、市町
村其ノ他之ニ準ズベキモノノ事業ニ使
用セラルル者ニ之ヲ適用セズ
第十七條本法中町村トアルハ町村制ヲ
施行セザル地ニ在リテハ之ニ準ズベキ
モノトス
第二章被保險者
第十八條左ノ各號ノ一ニ該當スル事業
ノ事業所ニシテ市又ハ主務大臣ノ指定
スル町村(以下指定町村ト稱ス)ニ在ル
モノニ使用セラルル者ハ職員健康保險
ノ被保險者トス
一物ノ販賣ニ關スル事業
二金融又ハ保險ニ關スル事業
三物ノ保管又ハ賃貸ニ關スル事業
四媒介周旋ニ關スル事業
五集金、案內又ハ廣〓ニ關スル事業
六前各號ニ揭グルモノノ外勅令ヲ以
テ指定スル事業
前項第一號乃至第五號ニ揭グル事業ノ
範圍ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第一項ノ規定ニ拘ラズ左ノ各號ノ一ニ
該當スル者ハ職員健康保險ノ被保險者
トセズ
-第一項ニ規定スル者ヲ常時十人未
滿使用スル事業所ニ使用セラルル者
二健康保險ノ被保險者及健康保險法
第十四條第一項ノ規定ニ依リ健康保
險ノ被保險者ト爲ルコトヲ得ル者
三一年ノ報酬千二百圓ヲ超ユル者
四前各號ニ揭グル者ノ外勅令ヲ以テ
指定スル者
第十九條健康保險ノ被保險者タル職員
ヲ使用スル事業主ハ主務大臣ノ認可ヲ
受ケ其ノ職員ヲ事業所每ニ包括シテ職
員健康保險ノ被保險者ト爲スコトヲ得
前項ノ認可ヲ申請スルニハ被保險者ト
爲ルベキ者ノ二分ノ一以上ノ同意ヲ得
ルコトヲ要ス
第二十條前條ノ認可アリタルトキハ其
ノ事業所ニ使用セラルル職員ハ職員健
康保險ノ被保險者トス
第十八條第三項第三號及第四號ノ規定
ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十一條左ノ各號ノ一ニ該當スル事
業所ノ事業主ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ
其ノ事業所ニ使用セラルル者ヲ包括シ
テ職員健康保險ノ被保險者ト爲スコト
ヲ得
ー第十八條第一項第一號乃至第六號
ニ揭グル事業ノ事業所ニシテ市又ハ
指定町村以外ノ地ニ在ルモノ
二第十八條第一項ニ規定スル者ヲ常
時十人未滿使用スル事業所ニシテ市
又ハ指定町村ニ在ルモノ
三前二號ニ揭グルモノノ外勅令ヲ以
テ指定スル事業ノ事業所
第十九條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ
之ヲ準用ス
第二十二條前條ノ認可アリタルトキハ
其ノ事業所ニ使用セラルル者ハ職員健
康保險ノ被保險者トス
第十八條第三項第二號乃至第四號ノ規
定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十三條第十八條ニ規定スル事業所
ガ左ノ各號ノ一ニ該當スルニ至リタル
トキハ其ノ事業所ニ付第二十一條ノ認
可アリタルモノト看做ス
-第十八條第一項ニ規定スル者ハ常
時十人未滿使用スル事業所ト爲ルニ
至リタルトキ
二市又ハ指定町村以外ノ地ニ在ルニ
至リタルトキ
三第二十一條第一項第三號ノ規定ニ
依リ指定スル事業ノ事業所ト爲ルニ
至リタルトキ
第二十四條第十八條、第二十條及第二
十二條ノ規定ニ依ル被保險者ハ其ノ業
務ニ使用セラルルニ至リタル日又ハ第
十八條第三項第二號乃至第四號、第二
十條第二項若ハ第二十二條第二項ノ規
定ニ該當セザルニ至リタル日ヨリ其ノ
資格ヲ取得ス
第二十五條第十八條、第二十條及第二
十二條ノ規定ニ依ル被保險者ハ死亡シ
タル日、其ノ業務ニ使用セラレザルニ至
リタル日又ハ第十八條第三項第二號乃
至第四號、第二十條第二項若ハ第二十
二條第二項ノ規定ニ該當スルニ至リタ
ル日ノ翌日ヨリ其ノ資格ヲ喪失ス但シ
其ノ事實アリタル日ニ更ニ前條ノ規定
ニ該當スルニ至リタルトキハ其ノ日ヨ
リ其ノ資格ヲ喪失ス
第二十六條第二十條又ハ第二十二條ノ
規定ニ依ル被保險者ヲ使用スル事業主
ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ其ノ被保險者
ノ全部ヲシテ其ノ資格ヲ喪失セシムル
コトヲ得
前項ノ認可ヲ申請スルニハ被保險者ノ四
分ノ三以上ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
第一項ノ認可アリタルトキハ被保險者
ハ認可アリタル日ノ翌日ヨリ其ノ資格
ヲ喪失ス
第二十七條第二十五條ノ規定ニ依リ被
保險者ノ資格ヲ喪失シタル者ニシテ喪失ノ
日前二月以上引續キ被保險者タリシモ
ノハ勅令ノ定ムル所ニ依リ繼續シテ被
保險者ト爲ルコトヲ得
第二十八條前條ノ規定ニ依ル被保險者
ハ前條ノ規定ニ依リ被保險者ト爲リタ
ル日ヨリ六月ヲ經過シタルトキ其ノ他
勅令ヲ以テ定ムル事由ニ該當スルニ至
リタルトキハ其ノ資格ヲ喪失ス
第二十五條ノ規定ハ前條ノ規定ニ依ル
被保險者ガ死亡シタル場合ニ之ヲ準用
ス
第三章保險者
第二十九條職員健康保險ノ保險者ハ政
府及職員健康保險組合トス
第三十條政府ハ職員健康保險組合ノ組
合員ニ非ザル被保險者ノ保險ヲ管掌ス
第三十一條職員健康保險組合ハ其ノ組
合員タル被保險者ノ保險ヲ管掌ス
第三十二條職員健康保險組合ハ事業主
及其ノ事業所ニ使用セラルル被保險者
ヲ以テ之ヲ組織ス
職員健康保險組合ハ法人トス
第三十三條一又ハ二以上ノ事業所ニ付
被保險者常時三百人以上ヲ使用スル事
業主ハ職員健康保險組合ヲ設置スルコ
トヲ得
被保險者ヲ使用スル二以上ノ事業主ハ
共同シテ職員健康保險組合ヲ設立スル
コトヲ得此ノ場合ニ於テハ被保險者ノ
員數ハ合算シテ常時三百人以上タルコ
トヲ要ス
第三十四條職員健康保險組合ヲ設立セ
ントスルトキハ組合員タル資格ヲ有ス
ル被保險者ノ二分ノ一以上ノ同意ヲ得
規約ヲ作リ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
二以上ノ事業所ニ付職員健康保險組合
ヲ設立セントスル場合ニ於テハ前項ノ
同意ハ各事業所ニ付之ヲ得ルコトヲ要
ス
第三十五條前二條ノ規定ニ於テ被保險
者トアルハ第十九條第一項又ハ第二十
一條第一項ノ規定ニ依ル認可ノ申請ト
同時ニ職員健康保險組合ノ設立認可ノ
申請ヲ爲ス場合ニ在リテハ被保險者ト
爲ルベキ者トス
第三十六條主務大臣ハ一又ハ二以上ノ
事業所ニ付第十八條ノ規定ニ依ル被保
險者常時五百人以上ヲ使用スル事業主
ニ對シ職員健康保險組合ノ設立ヲ命ズ
ルコトヲ得
第三十七條前條ノ規定ニ依リ職員健康
保險組合ノ設立ヲ命ゼラレタル事業主
ハ規約ヲ作リ設立ニ付主務大臣ノ認可
ヲ受クベシ
第三十八條職員健康保險組合ハ設立ノ
認可ヲ受ケタル時ニ成立ス
第三十九條職員健康保險組合成立シタ
ルトキハ事業主及其ノ事業所ニ使用セ
ラルル被保險者ハ總テ之ヲ組合員トス
第四十條職員健康保險組合ノ規約ノ變
更ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレ
バ其ノ效力ヲ生ゼズ
第四十一條主務大臣ハ職員健康保險組
合ニ對シ其ノ事業及財產ニ關シ報〓ヲ
爲サシメ、其ノ狀況ヲ檢査シ、規約ノ
變更ヲ命ジ其ノ他監督上必要ナル命令
又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第四十二條職員健康保險組合ノ役員ニ
欠缺若ハ故障アルトキ又ハ組合ノ役員
ガ保險給付其ノ他其ノ執行スベキ職務
ヲ執行セザルトキハ主務大臣ハ官吏其
ノ他ノ者ヲ指定シテ其ノ職務ヲ執行セ
シムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ其ノ職務ノ執行ニ要
スル費用ハ職員健康保險組合ノ負擔ト
ス
第四十三條主務大臣ハ職員健康保險組
合ノ決議又ハ役員ノ行爲ガ法令、規約
若ハ主務大臣ノ命令若ハ處分ニ違反シ
又ハ公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリト
認ムルトキ又ハ組合ノ事業若ハ財產ノ
狀況ニ依リ其ノ事業ノ繼續ヲ困難ナリ
ト認ムルトキハ決議ヲ取消シ、役員ヲ
解職シ又ハ組合ノ解散ヲ命ズルコト
ヲ得
第四十四條解散ニ因リテ消滅シタル職
員健康保險組合ノ權利義務ハ政府之ヲ
承繼ス
第四十五條本法ニ規定スルモノノ外職
員健康保險組合ノ管理、財產ノ保管及
利用方法、分合、解散其ノ他職員健康
保險組合ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ
以テ之ヲ定ム
第四十六條同時ニ二以上ノ事業所ニ使
用セラルル被保險者ノ保險者ハ命令ノ
定ムル所ニ依ル
第四章保險給付及保健施設
第四十七條被保險者ガ其ノ疾病又ハ負
傷ニ關シ療養ヲ受ケタルトキハ療養費
ヲ支給ス
前項ノ療養費ヲ支給スベキ療養ノ範圍
竝ニ療養費ノ額及支給方法ハ勅令ヲ以
テ之ヲ定ム
保險者ハ第一項ノ規定ニ拘ラズ勅令ノ
定ムル所ニ依リ被保險者ノ疾病又ハ負
傷ニ關シ療養費ノ支給ニ代ヘテ療養ノ
給付ヲ爲スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ
勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ者ヨリ費用
ノ一部ヲ徵收スルコトヲ得
第四十八條療養費ハ同一ノ疾病又ハ負
傷及之ニ因リ發シタル疾病ニ關シ其ノ
療養ヲ始メタル日ヨリ起算シ六月ヲ經
過シタル後ノ療養ニ付テハ之ヲ支給セ
ス
主務大臣ノ指定スル疾病ニ關シテハ保
險者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ前項ノ期
間ヲ超エ尙六月以內ノ療養ニ付繼續シ
テ療養費ヲ支給スルコトヲ得但シ其ノ
療養ヲ始メタル日前勅令ノ定ムル期間
引續キ被保險者タリシ者ニ限ル
第四十九條被保險者ガ療養ノ爲引續キ
勞務ニ服スルコト能ハザルトキハ勞務
ニ服スルコト能ハザルニ至リタル日ヨ
リ起算シ三月ヲ經過シタル日ヨリ其ノ
後ニ於ケル勞務ニ服スルコト能ハザル
期間傷病手當金トシテ一日ニ付報酬日
額ノ百分ノ五十ニ相當スル金額ヲ支給
ス但シ日給ヲ受クル被保險者ニ付テハ
勞務ニ服スルコト能ハザルニ至リタル
日ヨリ起算シ十日ヲ經過シタル日ヨリ
之ヲ支給ス
前項ノ傷病手當金ハ勅令ノ定ムル所ニ
依リ之ヲ減額スルコトヲ得
保險者ハ第一項ノ規定ニ拘ラズ勅令ノ
定ムル所ニ依リ傷病手當金ノ支給ノ待
期ヲ短縮シ又ハ廢スルコトヲ得
第五十條傷病手當金ノ支給期間ハ同一
ノ疾病又ハ負傷及之ニ因リ發シタル疾
病ニ關シテハ三月ヲ以テ限度トス但シ
日給ヲ受クル被保險者ニ付テハ六月ヲ
以テ限度トス
第四十八條第二項ノ規定ハ前項ノ場合
ニ之ヲ準用ス
傷病手當金ハ其ノ支給期間ヲ經過セザ
ルトキト雖モ療養費ノ支給ヲ爲シ得ル
期間ヲ經過スルニ至リタルトキハ之ヲ
支給セズ
第五十一條被保險者ガ死亡シタルトキ
ハ被保險者ニ依リ生計ヲ維持シタル者
ニシテ埋葬ヲ行フモノニ對シ埋葬料ト
シテ報酬月額ノ一月分ニ相當スル金額
ヲ支給ス但シ其ノ金額ガ三十圓ニ滿タ
ザルトキハ之ヲ三十圓トス
被保險者ガ死亡シタル場合ニ於テ前項
ノ規定ニ依リ埋葬料ノ支給ヲ受クベキ
者ナキトキハ埋葬ヲ行ヒタル者ニ對シ
前項ノ金額ノ範圍內ニ於テ其ノ埋葬ニ
要シタル費用ニ相當スル金額ヲ支給ス
第五十二條被保險者ガ分娩シタルトキ
ハ分娩費トシテ二十圓ヲ出產手當金
トシテ分娩ノ前後勅令ヲ以テ定ムル期
間一日ニ付報酬日額ノ百分ノ五十ニ相
當スル金額ヲ支給ス
第五十三條保險者ハ被保險者ヲ產院ニ
收容シ又ハ助產ノ手當ヲ爲スコトヲ得
產院ニ收容シ又ハ助產ノ手當ヲ爲シタ
ル被保險者ニ對シテ支給スベキ分娩費
及出產手當金ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ
之ヲ減額スルコトヲ得
第五十四條分娩ニ關スル保險給付ニ付
テハ勅令ヲ以テ分娩前一定ノ期間被保
險者タリシ者ニ非ザレバ之ヲ爲サザル
コトヲ定ムルコトヲ得
第五十五條出產手當金ノ支給ヲ爲ス場
合ニ於テハ其ノ期間傷病手當金ハ之ヲ
支給セズ
第五十六條被保險者ノ資格ヲ喪失シタ
ル際疾病、負傷又ハ分娩ニ關シ保險給
付ヲ受クル被保險者ハ被保險者トシテ
保險給付ヲ受クルコトヲ得ベカリシ期
間繼續シテ同一保險者ヨリ其ノ給付ヲ
受クルコトヲ得但シ被保險者ノ資格喪
失ノ日前勅令ノ定ムル期間引續キ被保
險者タリシ場合ニ非ザレバ之ヲ受クル
コトヲ得ザルモノト爲スコトヲ得
第五十七條前條ノ規定ニ依リ保險給付
ヲ受クル者ガ死亡シタルトキ、前條ノ
規定ニ依リ保險給付ヲ受ケタル者ガ其
ノ給付ヲ受ケザルニ至リタル日後三月
以內ニ死亡シタルトキ又ハ其ノ他ノ被
保險者タリシ者ガ被保險者ノ資格ヲ喪
失シタル日後三月以內ニ死亡シタルト
キハ被保險者タリシ者ニ依リ生計ヲ維
持シタル者ニシテ埋葬ヲ行フモノハ最
後ノ保險者ヨリ埋葬料ノ支給ヲ受クル
コトヲ得
第五十一條ノ規定ハ前項ノ規定ニ依リ
埋葬料ノ支給ヲ受クル者ナキ場合及前
項ノ埋葬料ノ金額ニ之ヲ準用ス
第五十八條被保險者タリシ者ガ被保險
者ノ資格ヲ喪失シタル日後勅令ヲ以テ
定ムル期間內ニ分娩シタルトキハ分娩
ニ關シ被保險者トシテ受クルコトヲ得
ベカリシ保險給付ヲ最後ノ保險者ヨリ
受クルコトヲ得
第五十九條前三條ノ規定ニ拘ラズ被保
險者タリシ者ガ健康保險又ハ船員保險
ノ被保險者ト爲リタルトキハ勅令ノ定
ムル所ニ依リ保險給付ヲ爲サズ
第六十條保險者ハ勅令ノ定ムル所ニ依
リ本章ニ規定スル保險給付ニ併セテ其
ノ他ノ保險給付ヲ爲スコトヲ得
第六十一條疾病ニ罹リ、負傷シ又ハ分
娩シタル場合ニ於テ繼續シテ報酬ノ全
部又ハ一部ヲ受クルコトヲ得ベキ者ニ
對シテハ之ヲ受クルコトヲ得ベキ期間
勅令ノ定ムル所ニ依リ傷病手當金又ハ
出產手當金ノ全部又ハ一部ヲ支給セズ
第六十二條前條ニ揭グル者ガ其ノ受ク
ルコトヲ得ベカリシ報酬ノ全部又ハ一
部ヲ受クルコト能ハザリシトキハ保險
者ハ之ニ對シ勅令ノ定ムル所ニ依リ傷
病手當金又ハ出產手當金ノ全部又ハ一
部ヲ支給ス
前項ノ規定ニ依リ保險者ノ支給シタル
金額ハ事業主ヨリ之ヲ徵收ス
第六十三條被保險者又ハ被保險者タリ
シ者ガ自己ノ故意ノ犯罪行爲ニ因リ又
ハ故意ニ事故ヲ生ゼシメタルトキハ保
險給付ヲ爲サズ
第六十四條被保險者ガ鬪爭、泥醉若ハ
著シキ不行跡ニ因リ又ハ故意ニ危害豫
防ニ關スル業務上ノ監督者ノ指揮ニ從
ハザルニ因リ事故ヲ生ゼシメタルトキ
ハ傷病手當金ノ全部又ハ一部ヲ支給セ
ザルコトヲ得
第六十五條被保險者又ハ被保險者タリ
シ者ガ左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ
於テハ疾病、負傷又ハ分娩ニ關シ其ノ
期間ニ係ル保險給付ハ之ヲ爲サズ
-陸海軍ニ徵集又ハ召集セラレタル
トキ
二本法施行區域外ニ在ルトキ
三矯正院其ノ他之ニ準ズベキモノニ
入院セシメラレタルトキ
四監獄、留置場又ハ勞役場ニ拘禁又
ハ留置セラレタルトキ
他ノ法令ニ依リ國又ハ公共團體ノ負擔
ニ於テ診療所ニ收容セラレタル者ニ對
シテハ療養費ヲ支給セズ
第四十九條第二項及第五十三條第二項
ノ規定ハ前項ニ揭グル者ニ之ヲ準用ス
保險者ハ被保險者又ハ被保險者タリシ
者ガ第一項各號ノ一ニ該當スル場合ト
雖モ第一條第二項ノ保險給付ヲ爲スコ
トヲ妨ゲズ
第六十六條保險者ハ正當ノ理由ナクシ
テ療養ニ關スル指揮ニ從ハザル者ニ對
シ之ニ支給スベキ傷病手當金ノ一部ヲ
支給セザルコトヲ得
第六十七條保險者ハ詐欺其ノ他不正ノ
行爲ニ依リ保險給付ヲ受ケ又ハ受ケン
トシタル者ニ對シ勅令ノ定ムル所ニ依
リ期間ヲ定メ保險給付ノ全部又ハ一部
ヲ爲サザルコトヲ得
第六十八條保險者ハ必要アリト認ムル
トキハ保險給付ヲ受クル者ノ診斷ヲ行
フコトヲ得
保險者ハ正當ノ理由ナクシテ前項ノ診
斷ヲ受ケザル者ニ對シ保險給付ノ全部
又ハ一部ヲ爲サザルコトヲ得
第六十九條保險者ハ事故ガ第三者ノ行
爲ニ因リテ生ジタル場合ニ於テ保險給
付ヲ爲シタルトキハ其ノ給付ノ價格ノ
限度ニ於テ被保險者又ハ被保險者タリ
シ者ガ第三者ニ對シテ有スル損害賠償
請求ノ權利ヲ取得ス
第七十條保險者ハ被保險者ノ健康ヲ保
持增進スル爲左ノ施設ヲ爲スコトヲ得
一疾病又ハ負傷ノ豫防ニ關スル施設
二健康診斷ニ關スル施設
三保養ニ關スル施設
四其ノ他健康ノ保持增進ニ關スル施
設
第七十一條保險者ハ事業ニ支障ナキ場
合ニ限リ被保險者ニ非ザル者ヲシテ保
險者ノ施設ヲ利用セシムルコトヲ得
保險者ハ其ノ施設ヲ利用スル者ニ對シ
命令ノ定ムル所ニ依リ利用料ヲ請求ス
ルコトヲ得
第七十二條第六十三條、第六十五條第
一項及第二項、第六十八條竝ニ第六十
九條ノ規定ハ世帶員ニ之ヲ準用ス
第五十六條ノ規定ハ第一條第二項ノ保
險給付ニ之ヲ準用ス
第五章費用ノ負擔
第七十三條國庫ハ勅令ノ定ムル所ニ依
リ每年度豫算ノ範圍內ニ於テ職員健康
保險事業ニ要スル費用ノ一部ヲ負擔ス
第七十四條保險者ハ職員健康保險事業
ニ要スル費用ニ充ツル爲保險料ヲ徵收ス
保險料ノ算定ニ關スル事項ハ勅令ヲ以
テ之ヲ定ム
第七十五條被保險者及被保險者ヲ使用
スル事業主ハ各保險料額ノ二分ノ一ヲ
負擔ス但シ第二十七條ノ規定ニ依ル被
保險者ハ其ノ全額ヲ負擔ス
第七十六條少額ノ報酬ヲ受クル被保險
者ニ關スル保險料ニ付テハ勅令ヲ以テ
事業主ノ負擔スベキ割合ヲ增加スルコ
トヲ得
第七十七條職員健康保險組合ハ第七十
五條ノ規定又ハ前條ニ基キテ發スル勅
令ノ規定ニ拘ラズ其ノ規約ヲ以テ事業
主ノ負擔スベキ保險料額ノ負擔ノ割合
ヲ增加スルコトヲ得
第七十八條被保險者ガ第六十五條第一
項各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ勅
令ノ定ムル所ニ依リ其ノ期間保險料ヲ
徵收セズ
第七十九條事業主ハ其ノ使用スル被保
險者ノ負擔スベキ保險料ヲ納付スル義
務ヲ負フ但シ第二十七條ノ規定ニ依ル
被保險者ノ負擔スル保險料ニ付テハ此
ノ限ニ在ラズ
第八十條事業主ハ勅令ノ定ムル所ニ依
リ前條ノ規定ニ依リ納付スベキ保險料
ヲ被保險者ニ支拂フベキ報酬ヨリ控除
スルコトヲ得
第六章審査ノ請求、訴願及訴訟
第八十一條保險給付ニ關スル決定ニ不
服アル者ハ第一次職員健康保險審査會
ニ審査ヲ請求シ其ノ決定ニ不服アルト
キハ第二次職員健康保險審査會ニ審査
ヲ請求シ其ノ決定ニ不服アルトキハ通
常裁判所ニ訴ヲ提起スルコトヲ得
前項ノ審査ノ請求ハ時效ノ中斷ニ關シ
テハ之ヲ裁判上ノ請求ト看做ス
第八十二條保險料其ノ他本法ニ依ル徵
收金ノ賦課若ハ徵收ノ處分又ハ第十三
條ノ規定ニ依ル處分ニ不服アル者ハ主
務大臣ニ訴願シ又ハ行政裁判所ニ出訴
スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル訴願ニ關シテハ職員
健康保險組合ヲ訴願法ノ規定ニ依ル行
政廳ト看做ス
第八十三條保險料其ノ他本法ニ依ル徵
收金ノ賦課又ハ徵收ノ處分ニ關シ訴願
ノ提起アリタルトキハ主務大臣ハ第二
次職員健康保險審査會ノ審査ヲ經テ裁
決ヲ爲スベシ
第八十四條本法ニ規定スルモノノ外職
員健康保險審査會ニ關シ必要ナル事項
ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第八十五條審査ノ請求、訴ノ提起又ハ訴
願若ハ行政訴訟ノ提起ハ處分ノ通知又
ハ決定書ノ交付ヲ受ケタル日ヨリ三十
日以內ニ之ヲ爲スベシ此ノ場合ニ於テ
審査ノ請求ニ付テハ訴願法第八條第三
項ノ規定ヲ、訴ノ提起ニ付テハ民事訴
訟法第百五十八條第二項及第百五十九
條ノ規定ヲ準用ス
第七章罰則
第八十六條正當ノ理由ナクシテ第十條
ノ規定ニ依ル當該官吏ノ質問ニ對シ答
辯ヲ爲サズ若ハ虛僞ノ答辯ヲ爲シ又ハ
其ノ檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シタル
者ハ三百圓以下ノ罰金ニ處ス
第八十七條第九條ノ規定ニ依ル保險者
ノ請求アリタル場合ニ於テ正當ノ理由
ナクシテ報告ヲ爲サズ、虚僞ノ報〓ヲ
爲シ又ハ文書ノ提示ヲ爲サザル者ハ百
圓以下ノ罰金ニ處ス
第八十八條事業主ハ其ノ代理人、戶主、
家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ガ
其ノ業務ニ關シ前條ノ違反行爲ヲ爲シ
タルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故
ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第八十九條第八十七條ノ罰則ハ其ノ者
ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ他
ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成
年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定
代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成
年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ
付テハ此ノ限ニ在ラズ
第九十條職員健康保險組合ノ設立ヲ命
ゼラレタル事業主ガ正當ノ理由ナクシ
テ主務大臣ノ指定スル期日迄ニ設立ノ
認可ヲ申請セザルトキハ其ノ手續ヲ遲
延シタル期間其ノ負擔スベキ保險料額
ノ二倍ニ相當スル金額以下ノ過料ニ處
ス
第九十一條職員健康保險組合ガ第四十
一條ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ又ハ處
分ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シタルトキハ
其ノ役員ヲ百圓以下ノ過料ニ處ス
附則
本法施行ノ期日ハ保險給付、保健施設及
費用ノ負擔ニ關スル規定竝ニ其ノ他ノ規
定ニ付各別ニ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣廣瀨久忠君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=39
-
040・廣瀬久忠
○國務大臣(廣瀨久忠君) 只今議題トナリ
マシタ職員健康保險法案提出ノ理由ヲ說明
致シマス、我國現下ノ情勢ニ鑑ミマシテ、
國民ノ健康ノ保持增進ヲ圖ルコトノ緊要デ
アリマスコトハ、今更申スマデモナイ所デ
アリマス、然ルニ現時ノ我ガ國民ノ健康狀
態ヲ見マスルニ、遺憾ナガラ滿足スベキ狀
態ニアルトハ申シ難イノデアリマシテ、加
フルニ今次事變ガ國民體力ノ上ニ及ボスコ
トアルベキ影響ヲ考慮致シマスル時ハ、國
民ノ健康ノ保持增進ニ關スル諸般ノ施設ヲ
整備スルノ必要アルコト、實ニ今日ノ如ク
切ナルハナシト申サナケレバナリマセヌ、
旣ニ御承知ノ通リ現在我國ニ於ケル健康保
險制度ト致シマシテハ工場、鑛山等ノ勞
働者ニ對シテ健康保險ノ制度ガアリ、又農
山漁村居住者、中小商工業者等ニ對シテハ
國民健康保險ノ制度ガ實施セラレテ居ルノ
デアリマスルガ都市ノ給料生活者、商店
使用人等ニ付キマシテハ、未ダ十分ナル保
護ノ施設ガ講ゼラレテ居ナイ實情ニ在ルノ
デアリマス、然ルニ是等ノ被傭者ハ經濟的
ニモ其ノ保護ヲ必要トスル程度ニ於キマシ
テ、工場、鑛山等ノ勞働者ト何等異ナル所
ガナイノミナラズ、其ノ健康狀態ニ照シマ
シテモ、之ガ健康ノ保持增進ヲ圖ルコトノ
必要ハ、國民保健ノ上カラハ勿論、現下ノ
非常時局ニ際シマシテ、前線及ビ銃後ニ於
ケル人的資源ノ充實强化ヲ期スル上カラ申
シマシテモ、寔ニ緊切ナルモノガアルト考
ヘラレルノデアリマス、仍テ是等ノ者ニ對
シマシテ適切ナル健康保險制度ヲ創設致シ
マシテ、其ノ健康ノ保存增進ヲ圖ルト共ニ、
國民生活ノ安定ニ資スルコトハ現下喫緊ノ
要務ト考ヘマシテ、玆ニ本法案ヲ提出致シ
タ次第デアリマス、何卒御審議ノ上速ニ御
協贊アランコトヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=40
-
041・小山松壽
○議長(小山松壽君) 質疑ノ通〓ガアリマ
ス、順次之ヲ許シマス-伊藤東一郞君
〔伊藤東一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=41
-
042・伊藤東一郎
○伊藤東一郞君 私ハ只今議題ト相成ツテ
居リマスル職員健康保險法案ニ付キマシテ
二三ノ質疑ヲ爲シ、政府ノ所見ヲ伺ハント
スルモノデゴザイマス、諸君、政府ハ曩ニ
健康保險法ヲ實施サレマシテ、工場、鑛山
ニ於ケル勞働者ノ對策ヲ講ジ、昨年七月ハ
國民健康保險法ヲ實施シ、全國多數ノ國民、
殊ニ農山漁村ノ國民保健ニ力ヲ入レラレル
コトトナリ、更ニ今囘本法案、而シテ軈テ
船員保險法案ノ提出ヲ見ルニ至ツタノデゴ
ザイマス、今本法案ニ付キマシテ其ノ
內容ヲ檢討致シマスルノニ、當初厚生省
ノ原案トシテ各新聞紙上ニ發表セラレ
マシタモノニ比較致シマシテ、甚シク消
極的デアリ、殆ド重要條件ガ骨拔ニサ
レテ居ルノデアリマス、隨ヒマシテ國民
ノ要望ト本案ノ理由トニ照シ合セマシタ時、
頗ル遺憾ノ點ガ多々アルノデゴザイマス、
政府ニ於キマシテモ、恐ラク此ノ程度デハ
滿足ナモノデハナイト御考ニナツテ居ルコ
トト思ハレマス、果シテ然ラバ近キ將來ニ
於テ更ニ徹底セル改正ヲ爲シ、喫緊ナル時
代ノ要求ト厚生省本來ノ使命ニ邁進ナサル
御決心アリヤ否ヤ、若シ其ノ御決心ガナイ
ト致シマシタナラバ、甚ダ失禮デハゴザイ
マスルケレドモ、捲土重來ヲ期シテ今囘ハ
御撤回ナサルコトガ賢明ナ策デアルト存ジ
マスルガ故ニ、先ヅ私ハ之ニ對スル政府ノ
根本的御方針ヲ伺ヒタイノデゴザイマス
諸君、次ニ私ハ被保險者ノ家族ノ取扱ニ
關スル根本問題ヲ伺ヒタイノデアリマス、
惟フニ健康保險ノ問題ハ、決シテ世帶主又
ハ當該者ノミニ限定セラルベキモノデナ
〃、家族全員ヲ對象トセネバ、斷ジテ意味
ヲ成サナイモノト確信ヲ致シテ居ル者デゴ
ザイマス、宜ナル哉、國民健康保險法ハ家
族ヲモ全部其ノ對象トシテ取扱ヒマシテ
我國ノ淳風美俗、而シテ現下家庭ノ經濟的
事實ニ相應ジテ居ルニ拘ラズ、曩ニ制定サ
レマシタル健康保險法ハ、未ダ當該勞働者
ノミニ限定シテ家族ニ及バズ、更ニ今囘ノ
保險法案ニ於キマシテモ、原則トシテ家族
ヲ埒外ニ置カレテ居リマスルコトハ、結局
我國保險制度ノ不統一ヲ示シテ居ルバカリ
デナク、彼ノ個人主義ニ立脚シタル歐米各國
デアリマシタナレバイザ知ラズ、鞏固ナル
家族制度ヲ以テ國家存立ノ根柢トシテ居リ
マスル我國ニ於キマシテハ、家族ヲ除外シ
テ啻ニ世帶主或ハ當該者一人ノミノ保險ヲ
圖ラントスルガ如キ制度ハ、確ニ是レ國民
ノ期待ニ反スルバカリデナク、世界ニ獨特
ナル我國ノ國情ヲ無視シタルモノデアルト
斷言ヲシテ憚ラナイノデアリマス、之ニ對
スル政府ノ御所見ヲ伺ヒタイノデアリマス、
政府ハ被保險者ニ依リマシテ生計ヲ維持シ
テ居ル一定範圍ノ者ノ疾病或ハ傷害ニ關シ
マシテ、其ノ療養ニ要シマスル費用ヲ保險
者ノ任意補給ニ讓ツテ、肝腎ナ問題ノ中心
ヲ外シテ居ラレルノデアリマス、斯樣ナ不
徹底ナ規定ニ依リマシテ國民保健ノ目的ヲ
達シ得ナイコトハ火ヲ睹ルヨリモ明デアリ
マン、厚生省ノ原案トシマシテハ、ヤハリ
家庭ニマデ及ボスコトニナツテ居リマシタ
ノガ、中途デ足踏ヲシマシテ、何時ノ間ニ
カ變更サレタノデアリマスルガ、斯ノ如ク
等シク國家ノ意思ニ依ツテ運營セラルベキ
國策ニ於テ、バラ〓〓ノ取扱ヲナサルニ付
キマシテハ、其處ニ何カ合理的ナ根據デモ
オアリニ相成ルノデアリマセウカ
更ニ私ガ御伺致シタイノハ、公共ノ事業
ニ從事スル職員ノ中ニハ、彼ノ共濟組合ノ
如キ國家援護ノ下ニ相互扶助ノ組織ヲ有ス
ルモノモアリマスルガ、尙ホソレデモ是等
ノ施設ヲ有セザル職員モ決シテ少シト致シ
マセヌ、殊ニ道府縣市町村ノ事業ニ使用セ
ラレテ居リマス職員ハ殆ド何等ノ保護方
法ガ講ゼラレテ居ナイノデアリマス、而モ
是等職員ノ待遇タルヤ決シテ良好デアルト
ハ申サレマセヌ、就中市町村ノ事業ニ使用
セラレツツアリマスル人ノ如キニ至リマシ
テハ、實ニ薄給デゴザイマシテ、社會立法
本來ノ立場カラ申シマスレバ、是等モ同時
ニ何トカシナケレバナラヌ問題デアルノデ
アリマス、併シ更ニ之ニ手ヲ著ケラレテ居
ラヌ所ヲ見マスレバ、政府ニ於キマシテ何
カ他ニ御成案デモアルノデアリマセウカ
若シオアリニナルナラバ此ノ際御發表ヲ願
ヒタイノデアリマス、又本法案ニ依リマス
レバ、被保險者ノ除外規定ヲ、一箇年ノ報
酬千二百圓ヲ超過スル者ハ被保險者タルヲ
得ズト一律ニ取扱ハレテ居リマス、惟フニ
等シク千二百圓ト申シマシテモ、大都市ト
地方小都市トニ於テ其處ニ著シキ差異ノア
ルコトヲ見逃シテハ相成リマセヌ、例ヘバ東京
市或ハ大阪市ニ於キマシテハ、月收百圓、ソレ
ニ四五人ノ家族ヲ擁スル限リ相當ニ苦シキ生
活內容デアリマスルガ、之ヲ地方小都市ニ於ケ
ル同額收入者ノソレニ比較致シマスレバ
非常ナル相違ガアルノデアリマス、若シ夫レ
地方小都市ニ於ケル月收百圓ヲ以テ、被保
險者資格ノ經濟的ノ標準ト致シマスルコト
ガ妥當ト致シマシタナラバ大都市ニ於キ
マシテハ少クトモ百五十圓乃至二百圓ニ
引上ゲナクテハ、本案ノ所期スル目的ハ斷ジ
テ達成セラレナイモノト確信スルノデゴザイ
ママ、更ニ又經濟的標準ノ何レニ置クニ致
シマシテモ、被保險者ノ世帶員數ノ多寡ニ
依リマシテ、生活ノ難易ハ決シテ一樣ナル
モノデハアリマセヌ、月收百圓デ二人暮シ
ノ家庭ト、月收百五十圓デ五六人暮シノ家
庭トハ、恐ラク後者ノ方ガ生活ガ困難デア
ルコトハ私ガ申上ゲルマデモアリマセヌ
然ルニ本案ハ是等世帶ヲ單位トセル生活ノ
實情ニ付キマシテハ、更ニ何等ノ考慮ガ拂
ハレテ居ナイノデアリマス、前申述べマシ
タ如ク、國民健康保險法ハ原則トシテ全國
民ヲ對象トシテ制定サレ、分ニ應ズル負擔
ニ依リマシテ、社會政策的ノ目的モ達セラ
レ、ソレト同時ニ相互扶助ノ美風モ振作セ
ント致シテ居ルノデアリマス、然リ而シテ
此ノ法ノ精神ハ飽クマデモ尊重サレネバナ
ラナイノニ、何故ニ今囘ノ法案ニ此ノ精神
ヲ御採用相成ラナカツタノデアルカ、又更
ニ政府ノ御意見ノ如ク、月收百圓ヲ加入非
加入ノ資格標準トナサル場合ニ於キマシテ
ハ、或ハ惧ル職員ノ間ニ上下二ツノ階級的
區別ト、之ニ伴フ差別的意識トヲ釀成スル
ノ憂ナキヤデアリマス、政府ハ宜シク斯樣
ナル經濟的ニ依ル區別ヲ取除キ、職員全部
ヲソレ〓〓己ガ分ニ應ズル負擔ヲ爲サシメ、
相倚リ相扶ケテ國家ニ貢獻セシムルコトコ
リ、現內閣ノ强調スル所謂總親和總努力ノ
御方針ニ副フモノデハナカラウカト存ズル
ノデゴザイマス(拍手)
尙更ニ被保險者ノ範圍ヲ使用人常時十人
以上ヲ五人ニ、或ハ醫療給付ノ期間ヲ半減
サレマシタ、是モ亦足踏ノ所產デアルト聞
及ンデ居リマス、思フニ健康保險ノ必要程
度ハ使用者ノ少ナケレバ少イ程、却テ痛
切ニ必要ヲ要求致シテ居ルノデゴザイマス、
若シ夫レ醫療給付ノ期間ニ於キマシテモ
從來實施中ノ健康保險ニ依ル醫療ノ取扱ニ
於テ、六箇月ノ期間ハ事實上短キニ失シテ
居ルトノ非難ト不滿ガアルノデアリマス、
以上之ヲ要シマスルノニ、政府原案ノ今日
ノ御改訂ハ、一ニ保險其ノモノヨリモ國庫
負擔ヲ輕減スルコトニノミ重點ヲ置キ、本
法本來ノ目的ノ中心ヲ逸脫シ、實情ヲ無視
シ、認識ヲ缺キ、思ヒヤリナク、親心ノナ
イ改惡デアリマシテ、眞ニ痛切ナル國民ノ
聲ヲ等閑視スルモノト斷言シテ憚ラナイノ
デアリマス、政府ハ以上ノ諸點ヲ如何ニ御
考ナサルカ
私ハ最後ニイマ一ツ御伺致シマスルコト
ハ、由來保險國策ノ事業タルヤ、今日其ノ
第一步ヲ踏出シタルモノデハナク、夙ニ健
康保險其ノ他ノ實施成績ニ徵シマシテ、其
ノ運用技術ハ旣ニ體得濟ミデアルノデアリ
さい、然ラバ本法案ハ假ニ審議決定ノ曉ニ
於キマシテハ、全國一齊ニ實施ナサルノガ
當然デアリ、又國民ノ要望スル所デアリマ
ス、然ルニ從來ノ例ニ見マスルト、豫算其
ノ他ノ事情ヲ理由ト致シマシテ、僅ニ其ノ
一部ニノミ實施サレマシテ、容易ニ普及ヲ
見ナイ傾向ガアルノデアリマスガ、旣ニ經
驗濟ミデアリ、且ツ急施ヲ要スル時局柄デ
モアリマスルコトナレバ、何レ遠カラズ全
部ニ普及スルヤウ、各般ノ御準備ハ旣ニ整
ヘラレテ居ルモノト確信致スノデゴザイマ
スルガ、政府ハ何時ニナツタラ全國津々浦
浦ニ普及的ニ御實施ナサル御見込デアルカ
ト云フコトデアリマス
以上政府ノ御答辯ヲ要求致シマスルノモ、
結局ハ折角社會立法ヲ御制定ナサルナレバ
我國ノ國情ニ基キ、世相ニ鑑ミ、實情ニ卽
シタモノト致シマシテ、國民ヲシテ其ノ恩
典ニ浴セシメ、怠ケル者ハ別デアリマスガ
苟モ感謝ノ氣持ヲ以テ己ガ天職ニ勵シム人
デアリマシタナラバ、其ノ職業ノ如何ヲ問
ふく、贅澤ヲサセルト云フコトハ出來ナイ
ニシテモ、何レモ皆マメ息災ニ、朗カナ生
活ヲ得セシメテ、與ニ倶ニ手ヲ取ツテ千載
無窮ノ皇謨ヲ翼贊シ奉ラシムルコトコソ、
社會立法ノ大精神デアルト同時ニ、是ガ軈
テハ政治ノ要諦デアルト確信ヲ致シマスル
ガ故ニ、御質問ヲ申シタ次第デゴザイマス
何卒政府ノ御親切ナル御答辯ヲ希望シテ止
マナイ者デアリマス(拍手)
〔國務大臣廣瀨久忠君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=42
-
043・廣瀬久忠
○國務大臣(廣瀨久忠君) 御答ヲ致シマス、
今囘ノ政府案ガ厚生省ノ原案ト稱セラルルモ
ノト違フノデハナイカト云フ點ニ付テノ御
質問デアリマス、仰セノ通リ違ツテ居リマ
ス、併シ是ハヤハリ政府全體ト致シマシテ
考究致シマシタ結果、現行健康保險制度ト
ノ權衡デアルトカ、或ハ財政ノ關係デアル
トカ云フヤウナ點カラ顧ミマシテ、漸進主
義ヲ取ツテ進マウ、元來社會政策的施設ニ
付キマシテハ、漸進的ニ進ムコトガ妥當デ
アル、而シテ結局成ベク早ク圓滿ナ、完全
ナモノニ作上ゲルノデハアリマスルガ當
初ヨリ餘リニ完璧ナルモノヲ期スルコトハ
容易デナイ、漸進主義ニ進ムコトガ妥當デ
アルト云フノデ、案ヲ少シク縮小シタノデ
アリマス
第二ノ點トシテ、家族マデ其ノ保險ノ恩
典ニ浴スルヤウニセンケレバイカヌデハナ
イカ洵ニ御尤デアリマス、併シナガラ是
モ亦現在ノ勞働者ノ健康保險制度ニ於テモ
サウデアリマスガ、家族ハ入ツテ居ラヌノ
デアリマス、是等トノ彼此權衡ヲモ保タナ
ケレバナリマセヌ、又是モ先程申上ゲマシ
タヤウニ、漸進的ナ態度ヲ以テ進ムガ妥當
デアラウト思ヒマスノデ、殊ニ一家ノ柱石
デアリマス所ノ主人ヲ被保險者ニ致シテ置
キマスレバ、之ニ依ツテ家族ニ對シテモ餘
程宜シイ影響ヲ與ヘ得ルノデアリマスルカ
ラ、現狀ニ於テ先ヅ今ハ忍ンデ行クベキデ
アラウト存ジマス
次ニ公吏ニ付テ何カ考ヘテ居ルカ、府縣
吏員トカ或ハ市町村ノ吏員等ニ付テハ何カ
考ヘテ居ルカト云フ御尋デアリマスガ、之
ニ付キマシテハ現ニ〓究中デアリマズ、是
ハ將來成ベク早ク何等カノ此ノ種ノ施設ヲ
考ヘ出シタイト思ツテ居ルノデアリマス
ソレカラ千二百圓ト云フコトニ被保險者ノ
最高限ヲシタノハ適當デハナイ、是ハ成程
場所ニ依リマシテハ、東京ニ於ケル千二百
圓ト地方ノ市街地ニ於ケル千二百圓トハ
自ラ其ノ價値ニ於テ異ナル所ガアリマス、
併シナガラ大體ノ見方トシテ、ヤハリ全體
ヲ通ジテ千二百圓ト云フ所ヲ見ルコトガ、
大體ニ於テ正シイデハナイカ、千二百圓以
上ノ收入ノアル者ハ一應自ラ病氣其ノ他
ニ付テ手當ヲ爲シ得ルモノト判斷ヲ致シマ
シテ、千二百圓未滿ノ者ハ、是ハ保險制度
ニ依ツテオ互ニ扶ケ合フト云フ組織ノ中ニ
入レルノガ、妥當デハナイカト云フ認定ヲ
下シタノデアリマス、固ヨリ此ノ千二百圓
ガ最モ良イカドウカト云フコトニ付テハ
色々意見モアラウト思ヒマス、併シ現在ノ
實情デハ先ヅ此ノ邊ガ妥當デアラウト云フ
認定ニ立ツタ譯デアリマス、ソレカラ尙ホ
使用人ヲ十人ト制限シタ、或ハ保險給付ヲ
六箇月ト制限シタ、是等ニ付テモヤハリ御
意見ガアリマシタ、洵ニ御尤ニ存ジマスガ、
ソレハ使用人十人ヨリモ五人ノ方ガ、社會
政策的ニ見レバヨリ效果ハアリマセウ、併
シ是亦漸進的ニ進メルト云フ建前カラ、當
初ニ於テハ是デ忍ンデ行ク、勞働者ノ健康
保險ニ於テモヤハリ此ノ樣ナ經過ヲ經テ居
ルノデアリマス、保險給付ノ六箇月ニ付テ
ハ是ハ勞働者ノ健康保險ト全ク同ジデア
リマス
ソレカラ尙ホ最後ニ施行區域ノ問題デア
リマスガ、施行區域ノ問題ニ付テハ、是八
市街地ニ限ツテ居リマス、何故市街地ニ限
ツタカト申シマスト、市街地以外ノ農山漁
村等ニ於キマシテハ昨年本議會ヲ通過致
シマシタ國民健康保險ヲ施行スルコトガ原
則ニナツテ居リマス、隨ヒマシテ農山漁村
ニ於キマシテハ國民健康保險ニ依ル市街
地ニ於テハ此ノ職員保險ヲ行フ、勿論市街
地ト關係ノアル會社等ガ農村ニアル場合ニ
ハ、其ノ會社ノ職員ハ所謂任意包括ト云フ
一ツノ名前ノ下ニ、其ノ中ニ入リ得ルコト
ニナツテ居リマス、是等ノ點ニ付テハ詳細
委員會等ニ於テ御說明申上ゲタイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=43
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044・小山松壽
○議長(小山松壽君) 井上良次君
〔井上良次君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=44
-
045・井上良次
○井上良次君 只今議題トナリマシタ職員
健康保險法案ト之ニ關聯致シマシテ二
三重要ト思ハレル點ニ付テ質問ヲ申上ゲタ
イト思フノデアリマス、私共數年前ヨリ下
級俸給生活者ヲ對象トスル健康保險制度ノ
制定ヲ强ク要求致シテ來タ者ト致シマシテ、
今日此ノ時局下ニ付キマスル、而モ人的資
源ガ極メテ重要視サレル時ニ、而モ戰時議
會ノ唯一ノ社會立法ト致シマシテ、此ノ法律
案ガ本議會ニ提案ヲサレマシタコトニ對シ
テ、全「サラリーマン」大衆ト共ニ非常ナ慶
ビニ存ジマス、且ツ此ノ法案ノ提案ニ對シ
マシテ、蔭ナガラ御盡力ヲ賜ハリマシタ關
係當局ニ對シテ、先ヅ劈頭ニ敬意ヲ表シテ
置キマス
併シナガラ玆ニ提案致サレマシタ職員健
康保險法案ノ內容ヲ逐條的ニ檢討シテ見マ
スルト、全「サラリーマン」ガ長イ間待望致
シテ居リマシタ其ノ期待ニ對シテ、全ク本
法案ハ申譯的デアツテ、其ノ期待ニ副ハナ
イ結果ヲ內容ニ示シテ居ルノデアリマス
今伊藤議員カラモ指摘サレマシタヤウニ
政府ハ單ナル遁辭トシテ辯明サレテ居リマ
スケレドモ、少クトモ職員健康保險法ヲ制
定スル前提ハ今日ノ下級「サラリーマンㄴ
大衆ガ如何ナル現狀ニ置カレ、如何ナル生
活ト健康ノ下ニ在ルカト云フ、此ノ事實ニ
依ツテ此ノ法案ガ立案ヲサレナケレバナラ
ヌノデアリマス、隨テ私ハ現在ノ俸給生活
者大衆ガ如何ナル生活狀態ニ置カレ是等
ノ人々ガ我國國民層ノ中デ如何ナル立場ト
如何ナル地位ニ居ルカト云フコトニ付テ、
一言申上ゲテ置キタイト考ヘルノデアリマ
ス、御存ジノ通リ、俸給生活者層ハ我國ノ
國民ノ中堅階級デアリマス、國民ノ中デ他
ノ何レノ部分ト比較致シマシテモ、其ノ知
識ト〓養高ク、且ツ國家ノ輿論ヲ形成シ社
會的指導人物モ亦此ノ俸給生活者層カラ數
多ク出テ居ル現狀デアリマス、隨テ此ノ
「サラリーマン」ガ健在デアルカ否カト云フ
コトハ國家ノ存立ト民族ノ發展ノ上ニ重
大ナ意義ヲ持ツテ來ルノデアリマス、然ル
ニ國家的ニ重要ナル立場ニアル此「サラ
リーマン」ノ社會的ナ、經濟的ナ生活ノ狀
態ハ如何ナル狀態ニ放任サレテ居ルカト言
ヒマスト、今日ノ數多クノ「サラリーマンL
ハ明治、大正ノ時代ノ「サラリーマンㄴ
ノヤウニ、立身出世ノ途ガ安易ニ開カレテ
居リマセヌ、低額ナル給料ト高マリ行ク物
價ノ暴騰ノ重壓ノ中ニ、如何ニ其ノ生活ノ
切詰メヲ餘儀ナクサセラレテ居ルカト云フ
コトヲ考ヘナケレバナリマセヌ、彼等ハ美
食的ナ食慾ヲ壓ヘ、又、遊ビニ行キタイ氣持
サヘ壓ヘテ、月々洋服靴等ノ月賦支拂ノ爲
ニ如何ニ追ヒマクラレテ居ルカト云フコト
デアリマス、下級「サラリーマン」ノ榮養不足
ト、過勞ノ狀態ヲ、世間デハ蒼白キ→ 3
テリ」ト云フ俗稱ヲ以テ呼ンデ居リマス、
如何ニ彼等ガ心身共ニ弱々シク、壓ヘ付ケ
ラレタル所ノ社會層トシテ存在シテ居ルカ
ト云フコトデアリマス、本法ハ斯ノ如キ生
活狀態ニアリマス「サラリーン」大衆ノ福祉
ヲ增進スルコトヲ目的ニシテ立案サレタ唯
一ノ社會立法デアルニ拘ラズ、今伊藤議員
カラモ指摘サレマシタヤウニ、昨年社會保
險制度ノ調査委員會デ立案サレマシタ厚生
省原案ト、更ニ過去十餘年ノ永イ間運用シ
テ來テ居リマス所ノ健康保險法ト比較對照
シテ見マシタ時ニ、甚ダシク此ノ案ガ申譯
的デアルト云フコトガ分ルノデアリマス
第一ニ、原案ニ於テハ最初三百餘万ノ多數
ノ人々ヲ對象ニシテ居ツタノデアリマス
ガ、玆ニ提案サレマシタ本法律案ノ對象ト
スル人員ハ、僅ニ三十七万八千人ト云フ激
減振リヲ示シテ居リマス、斯ノ如ク原案ヨ
リモ其ノ內容ヲ低下シ、十何年ノ長イ間ニ
亙ツテ現實ニ勞働者ヲ對象ニ致シマス健康
保險ノ經驗カラ割出シテ見テモ、是ト差別
ヲ設ケル理由ハ何處ニモナイノデアリマス、
斯ノ如ク申譯的ニシテ不備缺陷極マル法案
ヲ以テ、此ノ戰時下ノ眞只中ニ、而モ人的
資源ヲ涵養シヨウナドト考ヘテ居ル所ノ政
府ニ對シマシテ、全勤勞大衆ハ非常ナ不滿
ヲ懷イテ居ルノデアリマス
先ヅ第一ニ私ガ質問ヲ申上ゲタイ點ハ、
又本法ガ最モ大キナ缺陷トシテ持ツテ居リ
マスモノハ、全國ニ約七十万ト推定サレマ
ス所ノ、政府ノ仕事ニ從ツテ居リマス下級
官吏ト傭人ヲ、此ノ法律カラ除外シタコト
デアリマス、更ニ今伊藤氏カラモ指摘サレ
テ居リマシタヤウニ、市町村吏員ヲモ本法案
中カラ除外シタコトデアリマス、今政府ノ
御話ヲ伺ツテ居リマスト、漸進的ニヤルト
カ、ソレ等ノ者ニハ何トカ考ヘルトカ、サ
ウ云フ遁辭ニ係ツテ是等ノ人々ヲ滿足セシ
メルコトハ、私ハ出來ヌト考ヘテ居リマス、
唯政府ハ巷間傳ヘル所ニ依リマスト、國家
ノ財政上ノ加重ヲ逃レル爲ニ、官公吏員ヲ
除外シタト云フコトヲ伺ツテ居リマス、事
實ナリヤ政府ノ所見ヲ承ツテ置キタイ、勿
論官吏ノ中ニハ共濟組合施設ヲ利用スル者
ガゴザイマス、併シナガラ中デ、共濟組合ノ
施設全然ナクシテ、醫療救護等ノ爲ニ非常
ニ苦シミ惱ンデ居ル人々ガ、相當私ハ多ク居
ルト睨ンデ居リマスガ、是等ノ官吏ニ對シテ
當局トシテノ今後ノ對處ヲ一體ドウスルノ
カト云フコトヲ、具體的ニ御示ヲ願ヒタイ
ト考ヘルノデアリマス、假ニ政府ノ關係シ
テ居リマス役入其ノ他ヲ本法カラ除外致ス
トシマシテモ、市町村ノ吏員ヲ何故除外シタ
カト云フコトデアリマス、市町村吏員ノ保險
料ノ一部ハ市町村ノ負擔トナルベキ筋合ノ
モノデアリマス、サウシマスト之ヲ除イタ
ト云フ理由ハ、市町村常局ノ反對ニ依ルノ
カ、ソレトモ官吏ト均衡ヲ保ツ爲ニ市町村
吏員ヲ犧牲ニシタノカ、更ニ進ンデ突込ン
デ伺ヒマスト、政府ハ一年一人當リ二圓ノ
國費負擔ヲ免レル爲ニ、此ノ市町村吏員ヲ
除外シタカ、何レノ點ニ其ノ除外理由アリ
ヤト云フコトデアリマス
次ニ原案ニ依リマスト、本法ノ適用業種
ハ二十九業種ニ亙ツテ居リマシタガ、整
提案ヲサレマシタ法律案ノ內容ヲ見マスト、
僅ニ五項目ニ限定シテ、而モソレ以外ノ事
業ニ於キマシテハ、勅令ヲ以テ指定スルト
アリマス、五項目以外ノ政府ガ勅令ニ依ツ
テ指定シヨウトスル內容ハ、一體ドウ云フ
業種目デアルカト云フコトヲ明確ニサレタ
イノデアリマス
次ニハ今伊東氏モ觸レテ居リマシタガ、
本法デハ十人未滿ノ使用人ヲ使用スル事業
所ハ除外サレテ居リマス、現行健康保險法
デハ五人以上トナツテ居リマス、政府ガ過
去長イ間五人以上ノ工場ノ健康保險ヲ取扱
ツテ來テ、何等ソコニ無理ガナイト私ハ睨
ンデ居リマスガ、何故ニ此ノ法律ヲ十人ト
シナケレバナラヌカト云フコトデアル、而
モ茲ニ御考ヲ願ヒタイノハ、五人トカ十人
トカ云フ小規模ナ會社、工場、店舗ニ働イ
テ居ル者コソ、斯ノ如キ健康保險ニ依ル醫
療施設ガ最モ必要デゴザイマス、然ルニ之
ヲ除外シタ、若シ此ノ取扱ガ非常ニ困難ト
豫想サレマスナラバ、是等小規模ノ業者ヲ
橫ノ組合ニ組織セシメテ、組合單位ニ依ル
所ノ健康保險制度ヲ適用スル必要ガアルト
考ヘマスガ、政府ニ其ノ意思アリヤ否ヤト
云フコトヲ伺ツテ置キタイノデアリマス(拍
手)
次ニ本法適用ノ被保險者ニ取ツテ、最モ
利害關係ノ深イ療養ニ關スル規定、傷病手
當ニ關スル規定、世帶員ニ對スル規定、何
レモガ原案或ハ現行健康保險法ト對照致シ
マシテ、甚ダ改惡サレテ居ルコトハ、前ニ
伊藤氏カラモ指摘サレタ通リデアリマス、
モツト具體的ニ掘下ゲテ申シマスト、健康
保險法デハ療養ニ關スル經費ハ全額ヲ保險
者ガ負擔シテ居ルニ拘ラズ、本法デハ八割
シカ負擔シテ居リマセヌ、療養給付ニ至リ
マシテハ原案ガ一箇年トナツテ居ル、然ル
ニ此ノ案ハ六箇月ニシテ居ル、更ニ傷病手
當支給額モ、原案健康保險法デハ標準報酬
日額ノ百分ノ六十ニナツテ居ルニ拘ラズ、
本法デハ是ガ百分ノ五十ニナリ、更ニ世
帶員ノ分娩、死亡ノ規定ガ除外サレテ居リ
マス、斯ノ如キハ社會立法トシテノ實
際ノ效果ヲ擧ゲルコト、極メテ困難デハナ
イカト私共ハ考ヘルノデアリマスガ、政府
ハ斯ノ如ク改惡致シマシタ所ノ、其ノ理由、
根據何レニ在ルカト云フコトデアリマス、
厚生大臣ノ答辯ヲ承ツテ居リマスト、一 度
ニサウ云フヤウニヤツテハ駄目ダカラ、漸
進的ニヤルノガ妥當デアルト斯ウ言フ、併
シ同ジヤウニ勤勞收入デ生活シテ居ル工場
勞働者ノ健康保險ハ現行保險法ニ依ツテ
率ヲ良クシテ置イテ、新シキ社會立法トシ
テ生レタモノガ、時代遲レ的ナ考ヘ方デ宜
イト云フ考ヘ方ハ、是ハ根本的ニ誤ツテ居
リマス(拍手)而モ半年カ一年ヤツテ、マダ
十分ニ成績ガ分ラヌト云フコトナラバ、不
安モアリマセウケレドモ、十年間ノ永イ間
ニ亙ツテ健康保險ヲ運用シテ居リマスゾ
十年ノ運用成績ヲ見テ、是ナラ大丈夫ト云
フコトノ確信ガ、マダ今ノ厚生省ノ保險局
ニハ付キマセヌカ、コンナコトヲ今日ノ「イ
ンテリ」ニ申シマシタナラバ、「インテリ」
ハ憤慨致シマスゾ、モツト確信ノアル御答
辯ヲ得テ置キタイト考へルノデアリマス、
今ノ答辯ノ中ニ、今一ツ私注意スベキコト
ハ、政府全體ガ考ヘタ場合、財政上其ノ他
ノ都合ニ依ツテ斯クセザルヲ得ナカツタト
云フコトデアル、然ラバ政府ハ今日重大ナ
此ノ時局下ニ於テ、國家ノ生產力ノ擴充、
物動計畫ノ遂行、支那ニ於ケル長期建設、
是等ヲ完全ニ遂行スルニ當ツテ、金ト物ダ
ケアツタナラバ、ソレデ宜イト考ヘテ居ル
ノデアルカ、人的資源ヲ一體ドウシヨウト
云フノデアルカ、有能ニシテ健全ナル人的
資源ガ、今日ノ時局下ニ於テハ生產力擴充
ノ線ニ沿ウテ、絕對的ニ必要デアルト云フ
コトヲ政府ハ御忘レニナツテ居ルノデアル
カ、此ノ點ニ對スル御意見ヲ伺ツテ置キタ
イト思フノデアリマス(拍手)
更ニ今一ツ伺ツテ置キタイ點ハ、政府ハ
成程健康保險法或ハ原案ナドヲ比較致シテ
見マスト、不備缺陷ガ多イト云フコトヲ認
メラレテ、又本議會ガ今日ノ「サラリーマ
ン」大衆ノ生活ト健康ノ狀態ヲ諒解致シマ
シテ、少クトモ健康保險法並ミニ之ヲ修正
シヨウトシタ場合ニ、政府ハ果シテ同意ス
ルノ意思ガアルカト云フコトヲ伺ツテ置キ
タイノデアリマス、若シ今直チニ是ガ同意
出來ナイト致シマスナラバ、政府ハ近キ將
來ニ之ヲ修正シテ完全ナモノニスルト云フ
意思ガアルヤウニ伺ヒマスガ、其ノ時期ハ
何時ニナルカト云フコトヲ明確ニシテ貰ヒ
タイト思フノデアリマス、細カイ點ニ付テ
ハ委員會デ質問ヲ申上ゲマスガ、更ニ私ハ
此ノ法律案ニ關聯ヲ致シマシテ、二三質問
ヲ申上ゲテ置キタイノデアリマス
其ノ第一點ハ、政府ハ國民ノ體位ノ向上
ヲ目標トシテ、健康保險法或ハ國民健康保
險法、此ノ職員健康保險法、近ク上程サル
ベキ船員ヲ目標ニスル船員保險ト云ヒマス
カ、斯ウ云フ各種ノ社會立法的ナ健康保險
法ヲ制定サレルト云フコトハ洵ニ喜バシイ
コトデアリ、其ノ徹底ヲ圖ルコトモ亦必要
デゴザイマスガ、是等ノ各種健康保險法ハ
各々別個ニ活動致シテ居リマスケレドモ、
其ノ目的ハ同一デアリマス)而モ今伊藤氏
カラモ遠廻シ的ニ指摘サレテ居リマシタガ、
斯ノ如キ個々ノ部面々々ヲ對象ニスル爲ニ、
數多クノ國民大衆ガ此ノ健康保險ノ運營施
設カラ除外サシテ居ル實情ニアルノデアリ
やく、隨テ政府ハ是等各種健康保險法ヲ統
一化致シ、又其ノ內容ヲ充實シテ、以テ眞
ノ意味ニ於ケル國民健康保險法ヲ制定シテ、
全國民ニ對スル醫療施設ノ完全ヲ期ス必要
ガアルト考ヘマスガ、其ノ意思アリヤ否ヤ
ト云フコトヲ伺ツテ置キタイノデアリマス
次ニ政府ハ各種健康保險法ヲ制定シテ、
醫療ニ惱ム勤勞大衆ヲ救ヒ、國民體位ヲ確
保セントスルコトハ洵ニ結構デアリマスガ、
茲ニ注意スベキハ、健康保險ノ被保險者ノ
療養ノ對象トナル醫業ハ、今日自由主義營
利經濟ノ上ニ行ハレテ居ルコトデアリマス、
保險制度ハ日本國民ノ洵ニ美シイ相互扶助
ト隣保共助ノ精神カラ出發シテ居ルニ拘ラ
ズ、此ノ健康保險法ニ依ル醫療ハ利己的ナ
營利ヲ目的トシテ居ルノデアリマス、定
限度ノ療養費ヲ以テ營利開業醫ノ療養ヲ受
ケントスル時ニハ、必然ニソコニ粗診粗療
ニ陷ル危險ガ起ツテ來ルノデアリマス、サリ
トテ「醫ハ仁術ナリ」ト申シマシテモ、今日ノ
營利的開業醫制度ヲ其ノ儘ニシテ、醫師ダ
ケヲ責メル筋合ノモノデモナイカト考ヘマ
ス、私ハ單ニ健康保險ノ被保險者ノ醫療ノ
立場カラノミデナク、進ンデ長期建設下ノ
人的資源ヲ確保シ、產業上、國防上、又我
ガ民族ノ發展ノ上ニ、醫業ヲ國家管理ニス
ルコトガ極メテ重要デアルト考ヘルノデア
リマス其ノ爲ニハ今日ノ醫師、藥劑師ノ
社會的地位ト生活ヲ國家的ニ保障致シマシ
テ、進ンデ醫師、藥劑師ガ今日マデ我國ノ
醫療ニ盡シタ其ノ功績ヲ十分ニ國家ガ顯彰
致シマシテ、彼等ノ協力ヲ求メル必要ガア
ルノデアリマス、私共醫業ヲ國家管理ニシ
ヨウト云フ根本的ナ理由ハ、今日國民大衆
ガ懷イテ居リマス所ノ間違ヒダラケノ衞生
思想、醫事觀念ヲ根本的ニ打破致シマシテ
生理ト豫防ト衞生ノ正シイ觀念ヲ徹底セシ
メ、病氣ヲ治ス者ハ醫者デモナケレバ藥デ
モナイ先ヅ自分自身ノ健康デアリ、體力
デアツテ、醫者ハ唯其ノ病氣ヲ治ス爲ノ一
ツノ介添役、藥ハ介補物ニ過ギナイト云フ
コトヲ十分ニ徹底セシメ、此ノ醫事ヲ活用
スルコトニ依ツテ國民ガ平等ニ醫療ヲ受
ケ、玆ニ初メテ國民ノ體位ハ改善サレテ
國家凡百ノ事業能率ハ高マリ國家發展ノ
上ニ重大ナル基礎ヲ確立スルト云フ立場カ
ヲ、私共ハ醫業ノ國家管理ヲ主張スル者デ
アリマス、政府ハ曩ニ醫藥制度調査會ニ諮
問セントシテ立案ヲ致シマシタル、開業醫
制度ノ改革ヲ中心ニスル、今日ノ醫藥制度
改革ニ關スル幹事案ヲ持タレテ居ルサウデ
アリマスガ、其ノ幹事案ヲ此ノ席上デ御發
表ヲ願ヒ、且ツ醫業國營ニ關スル政府ノ確
信アル御所見ヲ伺ツテ置キタイノデアリマ
ス
最後ニ政府ハ事變下ノ國民體位ヲ確保
シ、勤勞大衆ノ勤勞ニ生氣ト愉快サトヲ與
ヘ、勤勞能率ヲ發揮セシメ、生產力ヲ高メ
ル爲ニ必要ナルモノハ、彼等ノ「エネルギーㄴ
ノ補給ト培養デアリマス、「エネルギー」ノ
補給ニハ先ヅ國家ガ彼等ノ生活ヲ保障シ、
國家的ナ保健施設ヲ完備スルコトデアリマ
ス、特ニ日本ニハ國家的ナ國民ノ保健施設
ガ完備シテ居マセヌ、煤煙ト塵埃ト騷音ノ
中ニ過激ナ勤勞ヲ續ケテ居リマス都市勤勞
大衆ハ、其ノ生活ト其ノ休養ノ爲ニ、如何
ナル狀態ニ置カレテ居ルカト云フコトヲ考
ヘマスナラバ是等ヲ對象トスル保健施設
ハ今日極メテ急施ヲ要スルモノデアリマス、
一昨年日本ニ「オリムピック」ガ開催サレル
ト云フコトガ決定致シタ時ニ、獨逸ノ「ヒ
トラー」總統ハ、此ノ日本ノ「オリンピック」
ニ獨逸ノ勤勞大衆數百名ヲ派遣シテ、日本
ニ視察ニ寄越サウト云フ「ニュース」ヲ私共
ハ聞イタノデアリマス、別ニ私ハ獨逸ヲ眞
似シロトハ申シマセ、ヌ、併シ此ノ意氣
デアリマス、今日事變下ニ重要ナル生產力
擴充ノ役割ヲ持ツテ居リマス勤勞大衆ノ保
健ノ問題ニ對シテ、政府ハモツト積極的デ
アツテ欲シイノデアリマス、一米國人デア
ル「ロックフェラー」カラ僅カノ金ヲ貰ツテ、
公衆衞生院ヲ建設シテ、得々トシテ居ルヤ
ウナ狀態デ、果シテ完全ナ國民ノ健康ガ保
レルカト云フコトデアリマス、國家豫算ノ
中デ保健衞生ニ使フ金ハ一千六百万圓デア
リマス、厚生省全體ノ豫算ハ、國家豫算カ
ラ見マスト百分ノ十二ニシカ當ツテ居リマ
セヌ、眞ニ息詰マルヤウナ事變下ニ於テ、
國民ニ朗カナ生氣ヲ與ヘテ愉快ニ勞働セ
シメテ、眞ノ協力ヲ要求スルコトガ、眞實
ノ意味ニ於ケル萬民輔翼ノ眞精神デナイカ
ト云フコトヲ私ハ考ヘテ居ル(拍手)ロデ神
懸リ的ナロ頭禪辭ヲ如何ニ稱ヘテ見タ所ガ、
抽象的ニ「スローガン」的ニ國民生活ノ安
定ヲ叫バレタ所ガ、國民ノ腹ハ肥リマセ
又國民ノ生活ハ安定致シマセヌ、如何ナ
ル具體政策ヲ以テ國民生活ヲ安定シ、國民
ノ體位ノ向上ヲ圖リ、生產力擴充ノ役割ヲ
果サシメルカト云フコトガ、今日ノ時局下
ニ於テハ最モ考ヘナケレバナラヌ重點デア
リマス、之ニ對スル積極的ナル御意見ヲ承
ツテ置キタイ尙ホ之ニ必要ナル經費ニ付
テ大藏省ガ兎角意見ガアルサウデアリマス
ガ、本日大藏大臣ハ見エテ居リマセヌカラ、
適當ナ機會ニ大臣ヨリ本議場ニ向ヅテ、私
ノ此ノ國民體位向上ニ要スル經費ヲ捻出ス
ルノ意思アリヤ否ヤト云フコトニ付テノ御
答辯ヲ伺ヒタイト思ヒマス、以上各項ニ亙
リ政府當局ノ所信ヲ伺ヒマシテ、私ノ質問
ヲ終リマス(拍手)
〔國務大臣廣瀨久忠君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=45
-
046・廣瀬久忠
○國務大臣(廣瀨久忠君) 御答致シマス、
政府ノ案ガ甚ダ不徹底デアルト云フ御話デ
アリマスガ、是ハ大筋ヲ通ツテ居ルノデア
リマス、此ノ大筋ヲ通ツテ將來圓滿ナ制
度ニ之ヲ仕上ゲル積リデアリマス、尙ホ官
公吏ヲナゼ除イタカ、是ハ決シテ官公吏ノ
此ノ種ノ制度ニ付テ-只今封鎖ト云フヤ
ウチ文字ヲ御用ヒニナリマシタガ、甚ダ適
當デナイト思ヒマス、決シテ官公吏ニ關シ
テ此ノ種ノ制度ヲヤラナイト云フ意味デハ
ナイノデアリマス、是ハ現ニ或ル程度行ハ
レテ居リマスルシ、官公吏ニ付テハ將來
十分ニ〓究モシ、調査モシテ、出來ルダケ
ノコトハ致サウト云フ積リデアリマス、總
テノコトヲ一〓ニヤルト云フ譯ニハ參リマ
セヌ、逐次ニ進ムヨリ致シ方ガナイノデア
リマス、ソレカラ尙ホ勅令ヲ以テ定メル事
業ハドンナモノカト云フ御話デアリマスガ、
大體ノ事業ハ法ノ上ニ列擧セラレテ居ルノ
デ盡キテ居リマス、アトノ事業ハ比較的小
サイモノデアリマス、是ハ委員會デ說明ス
ルノデ宜カラウト思ヒマス、ソレカラ尙ホ
組合單位ノ加入問題ニ付テノ御意見デアリ
マシタガ、此ノ問題ニ付テハ、是ハ重要ナ
ル問題デアリマシテ、場合ニ依ツテハ是ハ
加入ヲ認メテモ宜イト云フヤウナ考ヲ持ツ
テ、今〓究ヲ致シテ居リマス、ソレカラ尙
ホ此ノ案ガ確信ガナイト云フ御話デアリマ
シタガ、決シテ確信ナシニ作ツタ案デハナ
イノデアツテ、之ヲ大筋トシテ進ムト云フ
確信ノ下ニ作ツタノデアリマス、尙ホ人的
資源ニ付テノ考ガ十分デナイヂヤナイカト
云フヤウナ御質問モアリマシタガ、政府ハ人
的資源ニ付テハ色々考へテ居リマス、是ハ
各方面ニ付テノ厚生省ノ豫算ハ、總テ是レ
人的資源ノ培養ニ關スル豫算デアリマス、
此ノ點ハ一ツ〓〓申上ゲマセヌガ、人的資
源ノ尊重スベキコトニ付テハ十分之ヲ認メ
テ居リマス、ソレカラ尙ホ社會保險ノ統一
問題ヲ御取上ゲニナリマシタガ、是ハ現在
勞働者ノ健康保險、尙ホ農山漁村ニ關スル
國民健康保險、ソレカラ今囘ノ職員健康保
險等ノ制度ガアリマスルガ、是等ニ付キマ
シテハ其ノ整備ヲ先ヅ圖ツテ行カナケレバ
ナラヌト思ヒマス、徒ニ統一致シマシテモ、
ソレ〓〓ノ事情ガアリマスカラ、先ヅ之ヲ
整備ヲシテ、而シテ後ニ統一問題ハ〓究ヲ
致シタイト思ヒマス、ソレカラ本案カラ離
レテ醫療問題ニ付テノ御質問デアリマスガ、
此ノ問題ハ御承知ノヤウニ昨年本議會ヲ通
過シタ醫藥制度調査會ニ於テ目下〓究中デ
アリマス、〓究ノ結果成案ガ出來マスレバ
玆ニ又提案ヲ致スコトニナラウト思ヒマス、
今幹事案ヲ此處デ發表スルト云フヤウナ時
期デハナイト思ヒマス、ソレカラ尙ホ保健施
設ニ付テノ問題デアリマスガ、勤勞者ニ對
スル保健施設ガ不十分デハナイカ、之ニ付
キマシテハ吾々モ及バズナガラソレ〓〓努
力ヲ致シテ居ルノデアリマシテ、或ハ工場、
鑛山ニ於ケル所ノ衞生ニ關スル各方面ノ規
則デアルトカ、或ハ各方面ノ行政デアルト
カ、ソレカラ危害豫防ニ關スル各種ノ施設
デアルトカ、或ハ勞働時間ニ關スル各種ノ
制限デアルトカ、或ハ榮養問題デアルトカ、
色々ナ方面ニ付テ指導ヲ致シマス、ソレノ
ミナラズ又人的方面ニ向ツテモ、銃後ニ於
ケル生活各般ニ向ツテノ勤勞者ニ對スル指
導ヲ致シテ居ル積リデアリマス、尙ホ足ラ
ヌ所ハアルト思ヒマス、是等ニ付テハ將來
十分努力ヲ致シタイト思ヒマス、尙ホ此ノ
案ガ不徹底デアルガ、是ハ今修正シテモ宜
シイカト云フヤウナ意味ノ御話ガアリマシ
タガ、今ハ此ノ案デ宜シイト私ハ思ヒマス
(「ヒヤ〓〓」)併シ先程御話シタヤウニ漸進
主義ヲ以テ進ムノデアリマスカラ、將來漸
進スル中ニ改正スベキ點ガ無論アルト思ヒ
マい、其ノ際ニハ無論改正ヲ致シマス(拍
手発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=46
-
047・小山松壽
○議長(小山松壽君) 田中養達君
〔田中養達君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=47
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048・田中養達
○田中養達君 私ハ極ク簡單ニ二三御尋シ
タイト思ヒマス、一方ニハ治療ノ普及徹底
ヲ圖リ、一方ニハ國民ノ健康增進、此ノ二
ツノ大キナ眼目ニ對スル厚生省ノ觀念、信
念ニ私ハ非常ナ疑ヲ持ツテ居ル、ソレハド
ウ云フコトカト申シマスルト、今出シテ居
ラレル案ハ、申スマデモナク治療ノ普及ヲ
圖ルト云フ建前カラノ案デアリマスケレド
モ、此ノ內容ヲ靜ニ見マシテモ、現在十人
雇ツテ居ル者ト十人以下ノ者ト、ソコニ非
常ニモウ不公平ガアリマス、而モ今日ノ此
ノ治療行爲ニハ、十數年前ニ健康保險ガア
リ昨年國民健康保險ガ出來、今又此ノ案
ヲ出シテ居ル、此ノ案ノ內容ヲ見マスト
軈テハ又町村其ノ他ノ官公吏ニ對スルモノ、
又組合其ノ他ノモノモ出テ來ル、是ハ私ハ
非常ニ亂雜ダト思フ、而モ其ノ官公吏ノ中
デモ、鐵道員ハ鐵道省ノ病院ヲ持ツテ居ル、
警察官ハ警察病院ヲ持ツテ居ル、又遞信省
ハ遞信省デ持ツテ居ル、同ジ役人デモ支離
滅裂デアル、隨テ其ノ內容ヲ仔細ニ檢討スレ
バ、私ハ玆ニ非常ナル不公平ナ現實ノ問題ガ
アルト思フノデアリマス、ソコデ私ハ御尋
シタイコトハ、全體本案ト昨年アレ程喧シ
カツタ國民健康保險法案ト何處ガ違フノデ
スカ、根本ノ違ヒハ唯履傭關係デ、雇主ニ
幾分ノ掛金ヲ出サシテヤルト云フコトダケ
デスヨソレナラバ九人雇ハレテ居ル所ノ
人デモ、十一人雇ハレテ居ル所ノ人デモ
其ノ雇人ト云フ身分ニ變リハナイノデスヨ
コンナ馬鹿ナ不公平ナ案ハナイ、私ハソコ
デ少クトモ今日ノ此ノ治療行爲ヲ徹底シテ、
普及シテヤリタイト云フ建前デ行クナラバ
寧ロ總テヲ國民健康保險一本ニシテシマフ
方ガ宜イ、私ハ斯ノ如キ詰ラヌモノヲ出サ
ズニ、十年前ノ健康保險モ寧ロ國民健康保
險ノ中ニ入レテ一本ニシテシマフ、而シテ今
言フヤウニ身分ニ相違ガアルナラバ、法律
ヲ改正セラレレバ何デモナイコトデス、サ
ウシテ少クトモ私ハ治療行爲ニ關スル限リ
ニ於テハ、貴賤貧富、官民一切無差別平等
ニ此ノ恩典ニ浴セシメルト云フ建前ニナラ
ナクテハナラヌト思フ(拍手)是ハ丁度夜店
ニ「ステッキ」ガ竝ベテアルノヲ見テ、是モ
イカヌ、是モイカヌト云フヤウニ、マルデ
「サンプル」ヲ竝ベタヤウナコトバカリヲシ
テ居ル、是ハ現實ノ問題デス、隨テ其ノ間ニ
警察官デアルガ故ニ、鐵道員デアルガ故ニ
ト云フヤウニ、同ジ帝國ノ臣民デアリナ
ガラ、玆ニ治療ニ非常ナ不公平ノアルコト
ヲ遺憾ニ思フ、少クトモ厚生省ノ出來タ今
日、願クハ此ノ大キナ目標ノ下ニ之ヲ整理
統一サレルコトガ、今日ノ急務ヂヤナイカ
ト私ハ思フ(拍手)今井上君ノ質問ニモ、伊
藤君ノ御尋ニモ、此ノ亂雜無統制ヲドウス
ル、アナクハ今軈テハ整備スルト仰シヤル
整備スルト言ヒナガラ無統制ノ方ヘドンド
ンコンナモノヲ作ルノヲ止メテ、何故之ヲ
今カラ統制ノ方ニ向ケラレヌカ、私ハ玆ニ
非常ナ疑問ヲ持ツテ居ル、厚生大臣ハハツ
キリト此ノ信念ヲ言ツテ戴キタイ、吾々ハ
此ノ事ニ反對スルノヂヤナイノデアリマス、
重ネテ私ハ申上ゲマスガ、願クハ今日ノヤ
ウナ支離滅裂ナコトデハ可哀相ニ貧乏人
ハ十分テ手當モ受ケラレヌト云フヤウナ現
狀ヲ、貴賤貧富ノ別ナク平等ナ治療ヲ受ケ
ラレルヤウニシテヤツテ下サラヌカ(拍手)
而シテ貧乏人モ此ノ組合ニ入レサヘスレバ
金持、貧乏人ノ差別ナク治療ガシテ貰ヘル
ト云フコトニナツテ、有難イト皆ガ喜ンデ、
翕然ト此ノ組合ニ入ルト云フ建前デナイト、
コンナ法律ヲ百作ラレテモ何ニモナラヌ(拍
手)是ハ現實ノ問題デアリマス、國民ハ治
療費ノ三錢ヤ五錢安イノヲ喜ンデ居ルノデ
ハナイ、自分ガ病氣シ、嬶ガ病氣シ、子ガ
病氣シ、親ガ病氣シテ、愈〓トナツタ時ニ、
片一方デ富豪ノ家ハ十分治療ガ出來ル、俺
ノ家ハ貧乏デアルガ爲ニ出來ヌ、此ノ時ノ氣
持ヲアナタハ御承知デスカ、ドンナ無理ヲシ
テモ金ヲ拵ヘテ十分ノ治療ヲ受ケタイト云
フ所ニ、事每ニ無理ガ出來ル、隨テ私ハ帝
國臣民デアル以上ハ、金ノ有無ニ拘ラズ、
一視平等誰デモ治療ガ出來ルト云フ、此ノ安
心ト此ノ喜ビトヲ國民ニ持タスト云フコト
ガ、一番大切ノコトデアルト私ハ思フ、此ノ
建前カラヤツテ下サラヌカ、少クモ社會政
策的ノ意味ヲ多分ニ含ンデ居ル此ノ案、
番私ハ大切ナコトデアルト思ヒマス、是非
トモ私ハ此ノ點、此ノ事ヲ先ヅ厚生大臣ニ御
尋致シタイ、思ヒ切ツテヤツテ下サイ、何
レハ此ノ案ガ成立シマセウ、又ゾロ醫師會
トノ契約問題ガ起リマス、昨年是ハ相當問
題トナツタノデ、私ハ申上ゲマセヌガ大
臣ニ私ハ御尋シテ置キタイコトハ、アナタ
ガ本當ニ大キナ信念ヲ持ツテ此ノ事ヲヤラ
レルナラバ、無論今日ノ制度ニ於テハ開業
醫ト契約スルヨリ外ニ途ハアリマセヌガ
少クモ國家ガ必要ト認メタ是等ノ組合員ニ
付テハ、治療費ノ高イ安イニ拘ラズ、當然
開業醫ハ診ルベキモノナリト云フ、此ノ義
務ヲ負ハシムルダケノ法律改正ヲスル御考
ガアルカドウカ、現在醫者ハ何人ヲモ治療
ヲ拒ムコトガ出來ナイ法律ニナツテ居リマ
ス、其ノ儘デ宜シイ、何モ契約ナサルコト
ガナイ、政府ガ必要ナリト認メタ治療行爲
ヲ醫者ガ斷ルト云フコトハ斷ジテ許サヌ
但シ此處ハ昨年モ問題ニナリマシタヤウニ、
醫師會ニ契約シテ、醫者ガドウ斯ウ言フト
カ組合ガ可哀相トカ、損スルトカ、經濟
ガ持テヌト云フケチナ問題デハナイ、政府
ハ然ルベキ所ヲシツカリ睨ンデ、之ニハ衆
智ヲ集メテ貰ハナケレバナリマセヌ、而シ
テ凡ソ治療費ハ斯ク〓〓ナルベシト云フ
大キナ「プラン」ヲ立テタ以上ハ、日本ニ開
業シテ居ル醫者ハ、悉クソレヲ診ルベキ義
務ガアルモノナリト云フコトヲ、ハツキリ
私ハ明記サレルナラバ、將來此ノ問題ハ起
リマセヌ、是ハ見テ居ツテ御覽ナサイ、將
來此ノ問題ハ必ズ起リマス、詰ラヌ醫者ノ
コトヲ知ラヌ人間ガ、半分慈善ノヤウナ看
板ラ懸ケテ、ケチナ醫者ヲ呼ンデ來テ、其
ノ實儲ケテ居ルト云フ詰ラヌノガ幾ラモア
ルノデアリマスカラ、私ハソレニ引ツ掛ル
患者ガ氣ノ毒ニ思フ、私ハ此ノ點ハ責任ノ
地位ニ立ツタアナタノ責任ダト思フ、科
之ヲヤツテ戴キタイ、ソレデ初メテドンナ
組合ニ入ツテモ、安イ切符ヲ持ツテ行ツテ
千、日本中ノ醫者誰ニデモ診テ貰ヘル、尤
モ醫者ノ自由ノ選擇ガ何モ不都合ガナイト
云フヤウニシマセヌト、折角ノ此ノ目的ヲ
私ハ達スル譯ニハ行カヌト思ヒマス
モウ一ツ國民健康增進ノ問題デスガ、是
ハ本案トハ直接關係ガナイヤウダガ、ヤハ
リ盾ノ兩面デスカラ、此ノ機會ニ私ハ承ツ
テ置キタイガ、大體日本デ厚生省ノ出來タ
ノハ、或ル意味ニ於テ不幸ダト私ハ思ツテ
居ル、ソレハ國民健康增進ノ爲ト云フ建前
カラ出來タノデハナシニ、此ノ儘デ捨テ置
クトモウ甲種合格無ウナル、國民ノ健康ガ
餘リニ低下スルカラ、驚イテ出來タノガ厚
生省デアリマス、出來タコトハ結構デアリ
マスガ、其ノ出來タ出發點ハ此處ナンデア
ル、モツト積極的ニ國民ノ健康ヲ增進シヨ
ウト云フ建前カラ出來タ厚生省デハナシニ、
餘リ健康ヲ低下スルカラ驚イテ出來タト云
フノガ今日ノ日本ノ厚生省ノ成立デス、隨
テ少クモ國民ノ健康ヲ低下スル何モノカガ
アルナラバ、先ヅ此ノ事ヲ取除クト云フコ
トガ一番大切デアル增進結構デス、增進
ヲ圖ル前ニ、先ヅ其ノ低下ノ原因ヲ、科
理窟ヲ拔イテ、一ツヅツデ宜イカラ實行ニ
移シテ戴キタイ、アナタハ其ノ信念ガアル
カナイカ、ソレハ私ハ餘リニ數多イコトデ
スカラ、委員會其ノ他デ申上ゲルノデスガ
ホンノ一二ヲ私ハ申上ゲテ見タイト思フガ、
國民ノ健康ト一番密接ナ關係ノアルモノハ何
カト言ヘバ食物デアル、日本デ言フナラバ米
デス、此ノ米ノ問題ノ如キハ非常時下ノ今
日、經濟的ニ見テモ、又衞生的ニ見テモ、最
モ大キナ問題ダト私ハ思フ、兩三日前ニ農
山漁村ノ生產增進ノ決議案ガ出ク、是ハ私
ハ尤ナコトト思ヒマスガ、一面ニ於テ增進
ヲ圖ルト同時ニ、一面ニ於テ消費ノ合理化
ヲ圖ツテ貰ヒタイ、ソレハ今謂フ消費ノ節
約デハナイノデス、或種ノ合理化、ソレニ一
番大切ナノハ、私ガ今申上ゲルヤウナ此ノ
食糧問題ノ米デス、現在國民ガ食ツテ居ル
アノ白米〓、是ハ衛生上カラ容易ナラザル
結果ガアリマス、コンナコトハ無論アナタ
方ハ御存ジノコトト思ヒマスガ、是ハ國立
榮養〓究所デハツキリ〓究シテ居リマス、
今一般ニ使ツテ居ルアノ砂ヲ混ゼタ白米、
ソレガ如何ニ恐ロシク健康ヲ害シテ居ルカ
ト云フヤウナコトハ、科學的ニスツカリ立
證サレテ居リマス、其ノ結論ハドウカト言
ヘク、砂ヲ無クスルコト、砂ヲ入レヌコト、
而シテ七分搗米ニスルコト、ソレガ今日ノ
健康衞生竝ニ一面ニ於テ經濟ノ上カラ、最
モ大切ダト云フコトハハツキリシテ居ルノ
デアリマス、私ハ國ガ國立デウント金ヲ掛
ケテ、多年ノ間〓究サシタ其ノ結論ガ斯ウ
ナツタ以上ハ、宜シク之ヲ採用スベシ、昨
年閣議ナドデ少シ是ハ問題ニナツクラシイ
ガ偶〓或ル大臣ガ、ヤツパリ白米ガ美味
クテ宜イト言フト、クタ〓〓ト碎ケテシ
マツタト云フコトデスガ、何ト云フ馬鹿ナ
コトデス、此ノ機會ニ私ハ消費ノ徒ナル節
約デナシニ、無駄ハ排シテ貰ヒタイ、消費
ノ最合理化デアル、而モソレガ國民健康ノ
上ニ非常ナ大影響ガアル、私ハコンナコト
ヲ詳シク申上ゲル時間ノナイコトヲ遺憾ニ
思ヒマスガ、是ハ最モ大切ナコトダ、最近
アナタノ部下ニハ權威者ガ入ツテ居リマス
カラ、十二分ニ此ノ意思ヲ尊重シテ、徹底
シテ之ヲヤツテ戴キタイ、砂ナシノ府縣、
是等モ十七八府縣アルト思ヒマスガ、實
區々デス、縣令デ行ツタリ、警察取締令デ
行タリ、洵ニ區々デス、國家デイカヌトナ
ツタラ、アナタノ方デ思切ツテ止メサセル、
是ナクシテドウスルノデス、折角厚生省ガ
出來テ大臣ガ出來タノデアル、私ハ是非共
之ヲ一日モ速ニ取急イデ法制化スルダケノ
アナタニ信念ガアリ、國民ニ對シテ親切ヲ
御持チニナル必要ガアルト思ヒマスガ、如
何デアリマスカ、此ノ點ヲ一ツ御尋申上ゲ
タイ
今一ツハ國民ノ體位低下ノ最モ大キナ原
因ヲ成シテ居ルモノハ何カト云フト、アノ
例ノ無責任極マツタ賣藥ノ廣告デス、アノ
廣告ハ全體何ント云フコトデス、可哀相ニ病
メル人ハ迷ウテ居リマスヨ、其ノ弱點ニ付込
ンデアノ無責任極マツタ廣〓ハ是ハ醫者
デナクテモ、素人ノ方ガ常識デ判斷シテ安
心ナサル方ハナイ、アンナコトヲ此ノ非常
時下ニ麗々シク大新聞ニ廣告シテ居ルノヲ
許シテ見テ居ルノデハ厚生省ハ何處ニア
ルカ分ラナイ(拍手)本営田デスヨ、是ハ眞劍ニ
考慮シテヤツテ下サラヌト可哀相ダ、而モ
多クハ性ニ關係シタ病氣、然ラザレバ結核、
其ノ他ノ人ノ苦勞、而モ長イアノ悲慘狀態
ハドウデス、ソレハ獨リ本人ノ病氣ダケデ
ナク、經濟的ニモ、一家殆ド全滅セントス
ルヤウナアノ哀レナ弱點ニ付込ム所ノアノ
廣〓、是ハ許スコトハ出來マセヌヨ、單エ
私ハ國民ノ健康ト云フコトダケデナシニ
人道上ノ問題ダト思フ、アナタハドウ御考
デスカ、世界ニアリマスカ、アンナモノ
ガ······日本ダケデスヨ、何ト云フ馬鹿ナコト
ガ今日ノ聖代ノ御代ニ許サレテ居ルノダラ
ウ、幸ヒ厚生省ガ出來、特ニ其ノ專門省ガ
出來タノデアリマス、私ハ是等ニ向ツテハ
思切ツテ嚴罰主義デ向フダケノアナタニ親
切ガアルカナイカ、之ヲ承ツテ置キタイト
思ヒマス
今一ツハモウ直グ出マセウガ、花柳病豫
防取締、是ハ洵ニ結構ナコトデス、併シナ
ガラコンナモノヲ幾ラアナタ方ガ御取締ニ
ナツテモ、是ハ枝葉末節デ、根本ニ觸レテ
居ラヌ、花柳病ガ今日斯ノ如ク蔓延シタ根
本ハ何處ニ在リマスカ、申スマデモナクア
ノ若イ人等ガ、而モ一杯飮ンデ理性ヲ失ウ
タ時ニ一番多イノデアリマス、コンナコト
ハ私ガ申サナイデモ御存ジノ話デ、其ノ根
本ハ何カト云フト酒ナンダ、ドウデス、此ノ
オ酒ニ付テハ例ノ二十五歲未滿禁酒法案
私ハ酒ヲ飮ム方ニ止メテ吳レト云フノデハゴ
ザイマセヌヨ、此ノ非常時下ニ於テ、セメテ二
十五歲以下ノ前途ノアル靑年ニ、酒ダケハ止メ
サセタイモノデアルト云フノデアリマス(拍手)
一面ニ於テハ健康ヲ害シ、一面ニ於テハ前
途ヲ過ル、是程ハツキリシタモノハナイ、
何故是ガ衆議院ヲ通ラヌノデスカ、不思議
デナラヌ(「反對々々」ト呼フ者アリ)反對ト
言フノハ酒屋ノ事務長カ、酒屋ノ運動員
位ナモノデアル(拍手「ノー〓〓」)是ハ是
非······(「ノー〓〓」「ヒヤ〓〓」)是ハオ年寄
ノオ酒ノ好キナ人ニ止メヨト言フノデハナ
イ、併シナガラ此ノ非常時局下ニ於テ、一面
ニ於テハ〓糧ニ、一面ニ於テハ健康ニ、特ニ
靑年ノ健康ニ關スル重大ナル問題デアル、
政府ハ何故モウ少シ眞劍ニ之ヲ採上ゲテ下
サラナイカ、歐羅巴戰爭ノ時ニハ米國モ、
露西亞モ、獨逸モ、佛蘭西モ、伊太利モ、
悉ク其ノ國情ニ應ジタ禁酒法ヲ皆ヤツテ居
リマス、日本ハ今長期建設ダ、非常時ダト
政府デモロヤカマシク唱ヘテ居ルガ、セメ
テ二十五歲未滿禁酒法位ハ制定シテ〓
(「二十五歲以上ハドウスル」ト呼フ者アリ)
此ノ問題ニ付テ眞劍ニ御考ヲ願ヒ、而シテ
國民ノ緊張ヲ促スト云フコトガ最モ必要デ
アルト私ハ思フ、花柳病豫防ニ反對デハア
リマセヌガ、其ノ由テ來ル原因ヲ衝イテ見
ル此ノ位ノ親切ガ政府ニナイ以上ハ、政
府ガ如何ニ消費節約、長期建設、精神總動
員ヲ叫バレテモ駄目デアル、アナタ方ノ想
像以上デスヨ、ヤハリ今日ノ地方靑年、處
女會等ハ車ヲ輓イテ錻力ノ腐ツタノヲ集メ
テ居リマス、國民ノ精神ハ緊張シテ居ル、
コンナモノヲ議員法律案トシテ委セナイデ、
政府ニ於テ眞劍ニ、熱意ノアル、本當ニ國
民ノ健康增進ヲ圖ルト云フ此ノ親切味ガア
ルナラバ、私ハ政府自ラ此ノ案ヲ提ゲテ
ソレ相當ノ機關ニ諮ラレルノガ當然デアル
ト思フガ、大臣ハ此ノ點如何ニ御考ニナル
カ、私ハモツト〓〓申上ゲタイコトガアリ
マスガ、ソレハ委員會其ノ他ノ機會ニ申上
ゲルコトニ致シマス、此處デハホンノ二三
ノ例ヲ申上ゲタニ過ギナイノデアリマスカ
ラ、其ノ御積リデ御答辯ヲ願ヒマス
〔國務大臣廣瀨久忠君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=48
-
049・廣瀬久忠
○國務大臣(廣瀨久忠君) 第一ニ治療ノ不
公平ノ問題ニ付テノ御心配、洵ニ御尤ニ存
ジマス、各方面ニ付テノ治療ニ付テハ十
分ニ連絡ヲ取ツテ不公平ノナイヤウニシナ
ケレバナラヌコトハ申スマデモアリマセヌ、
併シナガラ治療ニ付キマシテハ、自ラ治療
シ得ル能力ノアル者モアリマス、サウ云フ
者ハ自ラ治療スルコトガ適當デアルト思ヒ
きく、又自ラ治療ノ出來ナイ者、是等ニ對
シマシテハ國家ノミナラズ、旣ニ御承知ノ
恩賜財團濟生會ノ如キモノモアリ、又國家
トシテハ救護法ノ如キモノモアリ、其ノ他
豫算上ニ於テモ救療費ヲ相當ニ持ツテ居ル、
サウシテ自ラ治療ガ出來ナイデ困ツテ居ル
者ニ對シテハ、國家ハ之ニ對シテ相當ノ施
設ヲ持ツテ居リマス、又其ノ他十分ノ力ノ
ナイ者ニ付テハ、或ハ共濟組合、或ハ社會
保險制度、今ノ健康保險制度等、皆此ノ一
ツダト思ヒマス、是等ノ制度ヲ活用致シマ
シテ、國民ニ出來ルダケ此ノ治療ノ機會ヲ
與ヘルト云フコトニ付テハ、有ユル努力ヲ
拂ツテ居ル積リデアリマス、併シナガラマ
ダ足ラナイ點ガアルカモ知レマセヌ、ソレ
等ニ付キマシテハ、私共ガ玆ニ提出致シテ
居リマスヤウナ案ハ、皆ソレヲ考ヘテ提出
ヲ致シテ居ル譯デアリマス、此ノ種ノ案ヲ
出シマシテモ、決シテ唯徒ニ亂雜ニ出スト
云フ積リデハアリマセヌ、社會保險制度ニ
付テモ、一定ノ體系ヲ以テ吾々ハ進ンデ居
ルノデアリマシテ、唯思付キニ亂雜ニ出ス
ト云フヤウナ意味デハアリマセヌ、隨ヒマ
シテ現在ハ一般職員ニ付テノ保險制度ヲ提
案シテ居リマスガ、將來ニ於テハ或ハ公吏、
官廳ノ職員等ニモ何等カノ制度ヲ考ヘヨウ
ト云フコトヲ、先程來申上ゲテ居ル次第デ
アリマス
ソレカラ尙ホ健康增進ノ問題ニ付テ色々
御尋ガアリマシテ、其ノ中ニ混砂問題ニ付
テノ御質問ガアリマシタガ、混砂問題ニ付
キマシテハ政府ト致シマシテハ、混砂ハ
禁止スルト云フ方針ヲ以テ進ンデ居リマス、
唯一擧ニ法律ヲ以テ之ヲヤルコトハ、從來
ノ永年ノ慣例ヲ突如トシテ改メルコトニナ
リマスルノデ、是ハ社會上竝ニ產業上ノ影
響モアリマスルコトデアリマスカラ逐次
ニ進ム積リデアリマス、併シナガラ禁止ノ
意思ヲ以テ現ニ進行致シテ居リマス、白米
ノ問題ハ成ベク避ケタ方ガ宜シイ、白米ヨ
リモ七分搗ガ宜シイト云フ、詰リ奬勵ノ方
法ヲ以テ進ム積リデ以テ、現ニ進ンデ居ル
譯デアリマス、ソレカラ尙ホ賣藥ノ問題デ
アリマスガ、賣藥ハ一切皆駄目ナモノダト
云フコトハ私ハナイト思ヒマス、併シナガ
ラ物ニ依ツテハ廣〓等ガ甚ダ適當デナイモ
ノガアルヤウデアリマシテ、是等ニ付テハ
先程モ申上ゲマシタ醫藥制度調査會ニ於キ
マシテ目下考究中デアリマスノデ、其ノ成
案ヲ得マスレバ、之ニ依ツテ處理ヲ致ス積
リデアリマス
尙ホ酒ノ問題ニ付テハ、現在未成年者禁
酒法ガアリマス、之ニ依リ未成年以上ノ者
ニ付キマシテハ、各自ノ自覺ニ愬ヘテ適宜
處理スベキモノデアルト思ツテ居リマス(拍
手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=49
-
050・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ニテ質疑ハ終了致
シマシタ、本案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ
選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=50
-
051・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ議長指名十八名ノ委
員ニ付託サレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=51
-
052・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=52
-
053・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=53
-
054・服部崎市
○服部崎市君 日程第六ハ後〓シトセラレ
ンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=54
-
055・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=55
-
056・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程第六ハ後〓シト致シマスー
日程第七、寺院等ニ無償ニテ貸付シアル國
有財產ノ處分ニ關スル法律案ノ第一讀會ヲ
開キマス-松村大藏政務次官
第七寺院等ニ無償ニテ貸付シアル國
有財產ノ處分ニ關スル法律案(政府
提出、貴族院送付)第一讀會
寺院等ニ無償ニテ貸付シアル國有財產
ノ處分ニ關スル法律案
第一條本法施行ノ際現ニ國有財產法ニ
依リ寺院又ハ佛堂ニ無償ニテ貸付シア
ル國有財產ハ寺院ニ在リテハ本法施行
後二年內ニ、佛堂ニ在リテハ宗〓團體
法第三十五條ノ規定ニ依リ其ノ佛堂ガ
寺院ニ屬シ又ハ寺院若ハ法人タル〓會
ト爲リタル場合ニ本法施行後三年內ニ
申請シタルトキハ寺院境內地處分審査
會ニ諮問シ主務大臣之ヲ當該寺院又ハ
〓會ニ讓與ス
前項ノ規定ニ依リ讓與スベキ國有財產
ノ範圍ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
寺院境內地處分審査會ニ關スル規程ハ
勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二條前條ノ讓與ニ關スル處分ニ對シ
不服アル者ハ訴願ヲ爲スコトヲ得
前項ノ訴願ノ裁決ヲ爲ス場合ニ於テハ
寺院境內地處分審査會ニ諮問スベシ
第三條第一條ニ規定スル國有財產ニシ
テ同條ノ規定ニ依ル讓與ヲ爲サザルモ
ノハ勅令ヲ以テ特ニ國有トシテ存置ス
ルノ必要アリト定ムルモノヲ除クノ外第
一條ノ申請ヲ爲シタルモノニ付テハ讓
與ヲ爲サザルコトノ決定通知ヲ爲シタ
ル日ヨリ五年內ニ、其ノ他ノモノニ付
テハ寺院ニ在リテハ本法施行後五年內
ニ、佛堂ニ在リテハ宗〓團體法第三十
五條ノ規定ニ依リ其ノ佛堂ガ寺院ニ屬
シ又ハ寺院若ハ法人タル〓會ト爲リタ
ル場合ニ本法施行後六年內ニ申請シタ
ルトキハ時價ノ半額ヲ以テ隨意契約ニ
依リ之ヲ當該寺院又ハ〓會ニ賣拂フコ
トヲ得
前條ノ規定ニ依リ訴願ヲ爲シタル者ハ
前項ノ期間滿了後ト雖モ其ノ裁決書ヲ
受領シタル日ヨリ尙二年間前項ノ賣拂
ノ申請ヲ爲スコトヲ得
第四條前條ノ規定ニ依ル賣拂代金ニ付
テハ命令ノ定ムル所ニ依リ五年內ノ年
賦延納ヲ認ムルコトヲ得但シ國債ヲ以
テ擔保ヲ供シタルトキハ十年內ノ年賦
延納ヲ認ムルコトヲ妨ゲズ
第五條第一條ニ規定スル國有財產ニシ
テ同條ノ規定ニ依ル讓與ヲ爲サザルコ
トニ決定シタルモノニハ國有財產法第
二十四條ノ規定ヲ適用セズ但シ第三條
ノ規定ニ依リ賣拂ノ申請ヲ爲シタル國
有財產ニ付テハ賣拂契約成立ノ日又ハ
賣拂ヲ爲サザルコトノ決定通知ヲ爲シ
タル日迄命令ノ定ムル所ニ依リ無償ニ
テ之ヲ當該寺院又ハ〓會ニ貸付シタル
モノト看做ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
寺院等ニ無償ニテ貸付シアル國有財產ノ
處分ニ關スル法律案
(小字及-ハ貴族院修正)
寺院等ニ無償ニテ貸付シアル國有財產ノ
處分ニ關スル法律案中貴族院修正ノ箇所
左ノ如シ
第四條前條ノ規定ニ依ル賣拂代金ニ付
十
テハ命令ノ定ムル所ニ依リ五年內ノ年
賦延納ヲ認ムルコトヲ得但シ國債ヲ以
テ擔保ヲ供シタルトキハ十年內ノ年賦
延納ヲ認ムルコトヲ妨ゲズ
〔政府委員松村光三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=56
-
057・松村光三
○政府委員(松村光三君) 只今議題トナツ
テ居リマスル寺院等ニ無償ニテ貸付シアル
國有財產ノ處分ニ關スル法律案提出ノ理由
ヲ說明致シマス
今囘宗〓團體法案ノ提出ニ際シマシテ、
政府ハ是ト共ニ寺院佛堂ノ國有境內地讓與
ノ問題ヲ解決スルヲ適當ト認メマシテ、寺
院等ニ無償ニテ貸付シアル國有財產處分ニ
關スル法律案ヲ提出致シタ次第デアリマス、
御承知ノ通リ寺院佛堂ノ國有境內地讓與ノ
問題ハ多年ノ懸案デアリマシテ、政府ニ於
キマシテハ寺院佛堂ノ財產管理ノ方法ガ完
備スルニ於テハ、適當ニ之ヲ解決スベキ旨
ヲ屢〓發表シ來ツタノデアリマスルガ、今囘
提案ノ宗〓團體法案ガ成立ノ曉ニ於キマシ
テハ、寺院佛堂ノ財產管理ノ方法モ完備ス
ルコトトナリマスルガ故ニ、宗〓團體ヲ保
護シテ、其ノ〓化作用ヲ十分ニ遂ゲシムル
ガ爲ニ、古來寺院佛堂ト特殊ノ沿革的關係
ヲ有スル國有境內地ヲ、適當ナル條件ノ下
ニ讓與致シマスルコトハ、時宜ニ適シタル
措置デアルト信ジマス
本法案ノ〓要ヲ申シマスト、本法施行ノ
際ニ寺院又ハ佛堂ニ無償ニテ貸付ケテアリ
マスル國有財產ハ、寺院等ガ一定ノ期間內
ニ申請致シマシタ場合ニハ、其ノ境內地ト
シテ必要ナル部分ハ之ヲ讓與スルコトニナ
ツテ居リマス、而シテ其ノ讓與ハ愼重且ツ
公正ニ之ヲ行フノ必要ガアリマスカラ、寺
院境內地處分審査會ヲ設ケ、之ニ諮問シマ
シテ讓與スルコトト致シマシタ、又其ノ讓
與ヲ爲サザル部分ニ付キマシテモ、寺院等
ノ申請ニ依リ時價ノ半額ヲ以テ賣拂ヲ爲シ、
其ノ代金ニ付キマシテハ年賦延納ヲ認メテ
アルノデアリマス、何卒御審議ノ上速ニ御
協贊アランコトヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=57
-
058・小山松壽
○議長(小山松壽君) 質疑ノ通〓ガアリマ
ス之ヲ許シマス-加藤知正君
〔加藤知正君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=58
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059・加藤知正
○加藤知正君 私ハ只今議題ニナリマシタ
寺院等ニ無償ニテ貸付シアル國有財產ノ處
分ニ關スル法律案ニ關聯致シマシテ、最モ
重要ナル質問ヲ平沼總理大臣、木戶內務大
臣荒木文部大臣、石渡大藏大臣ニ對シテ
致シタイト存ジテ、其ノ御出席ヲ要請致シ
テ置キマシタ所、四大臣トモ御出席ガナイ
ノデアリマス、其要請シタ大臣ガ御出席ガ
ナイノニ質問ヲスルノハ、的ノ無イ所ヘ鐵
砲ヲ放ツヤウナモノダソンナ質問ヲシテ
見タ所ガ仕樣ガナイ、デアリマスカラ是ハ
何レ他日機會ヲ見テ質問ヲ致スコトニ致シ
マシテ、唯一點大藏當局竝ニ文部當局ニ對
シテ御尋ヲ致シテ置キタイト思フノデアリ
マス
只今松村政務次官カラ此ノ趣旨辯明ガア
リマシタガ、現在ノ寺院佛堂國有境內地ノ
總面積ハ二千九百十二万一千五百六十四坪
デアツテ、此ノ推定價格ガ一億八千四百六
十二万四千四百六十二圓デアルガ、此ノ中
讓與スベキモノト推定セラルルモノ二千八
百八十五万九千三百八十坪、此ノ推定價格
一億八千二百三十七万七千七百七十七圓デ
アリマス、賣拂スベキモノト推定セラルル
モノ六万二千百八十四坪、此ノ推定價格二
百二十四万六千二十圓、國土保安其ノ他公
益上又ハ森林經營上特ニ國有トシテ存置ス
ル必要アリト認ムルモノ二十万坪、此ノ推
定價格六百六十万圓ト云フコトデアリマス、
併シ元來此ノ寺院佛堂國有境內地ナルモノ
ハ、昔時高僧碩德ガ靈地ヲ相シテ自ラ之ヲ
開拓致シタルモノカ、然ラザレバ王侯士人
ノ信仰ニ依リテ淨地ヲ寄附致シタルモノ
カ、然ラザレバ寺院自ラ開墾買得シタルモ
ノデアルノデアリマス、カルガ故ニ一部ノ
例外地ヲ除キマシテ、其ノ他ハ寺ノ住職ノ
モノデモナケレバ、又官ノモノデモナイノ
デアリマス、全ク是ハ寺院ノ所有地デア
ツタノデアリマス、然ルニ明治ノ初年ニ於
キマシテ、所謂廢佛毀釋ノ大嵐ガ吹イタノ
デアリマス、佛〓撲滅ノ政治方針ニ禍ヒセ
ラレテ、此ノ寺院ノ所有地ヲ上地セシメタ
ノデアル、同時ニ之ヲ官有地トシ、國有財
產ノ中ニ編入シテシマツタノデアリマス、
人ハオ寺ヘ物ヲ上ゲルトカ、坊サンニ物ヲ
上ゲルト云フノニ、其ノオ寺ノ物ヲ政府ガ
唯捲キ上ゲテシマツタノデアリマス、ソレ
ガ卽チ只今ノ此ノ國有財產デアリマス、斯
樣ナ次第デアリマスカラ、其ノ不當處分デ
アルコトハ言フマデモナイ、其ノ後段々政
府ニ於テモ調ベテ見ルト、是ハ如何ニモ不
當處分デアツタ、斯ウ云フモノヲ上地セシ
メタコトハ宜クナカツタト云フ所ニ氣ガ付
イタノデアリマス、氣ガ付クト同時ニ、先
ヅ以テ申譯的ニ自費ヲ以テ開墾致シタト云
フコトノ確證ノ上ツタモノニ對シマシテ、
無代下付ノ達ヲ出シタノデアリマス、併シ
是ダケデハ如何ニモ寢覺メガ惡イ、全部之
ヲ返サネバ濟マナイ、斯ウ云フ所カラ明治
十一年ノ五月ニナリマシテ、內務省達ヲ以
テ、一般寺院ノ境內地ヲバ無條件デ無代下
付ヲスルト云フ達令ヲ布イタノデアリマス、
斯クアルベキガ當然ナノデアリマス、只今
取上ゲタノデアルカラ、無條件デ之ヲ返ス
ト云フノガ當リ前ナンデアリマス、所ガ是
ニハ別ニ請願期限ト云フモノヲ定メテナカ
ツタノデアリマスガ、明治二十二年ニナリ
マシテ會計法ナルモノガ實施セラルルト同
時ニ、折角ノ此ノ達合ガ自然消滅ト相成ツ
タノデアリマス、此ノ明治十一年ノ內務
省ノ達令ナルモノガ、全國的ニ津々浦々ノ
各寺院ニマデ能ク行屆イタカドウカハ頗ル
疑問デアルノデアリマスガ、兎ニ角此ノ會
計法ノ實施ト共ニ、折角ノ達令ガ自然消滅
トナルト同時ニ、全國七万一千餘ノ寺院中
四万餘ノ寺院ト云フモノハ、下渡シ願漏レ
ト相成リ、其ノ分ガ其ノ儘官有地トシテ國
有財產ニ編入セラレ、以テ今日ニ及ンデ居
ルノデアリマス、斯樣ナ次第デアリマスル
カラ、今囘政府ニ於テ折角之ヲ元ノ寺院ヘ
御返シナサラウト云フ御親切ガアリマスル
ナラバ、彼此レ文句ヲ言ハズニ、全部ヲソ
ツクリ其ノ儘御返シナサレテ然ルベキモ
ノデハナイカト思ヒマス、卽チ明治十一
年ノ內務省ノ達令ノ如ク御取計ヒナサルト
云フコトガ、是ガ本當デハアリマスマイカ
ト言フノデアリマス、何故ニ其ノ一部、
卽チ六万二千坪、之ヲ假令時價ノ半額
ナリトハ申セ、有償下付ト云フヤウナコト
ニナサルト云フノハ、如何ナル次第デアリマ
スカ、上地セシメタ寺院カラ地代金ヲ取
ツテ賣拂ハナケレバナラヌト云フノハ、如
何ナル次第デアリマスルカ、折角ノ御親切
ガアルナラバ全部無代下付デ御返シナサ
レテ宜シイデハナイカ、ト、斯樣ニ私へ考
ヘルノデアリマス、如何ナル理由ニ依ツテ
斯樣ナ御取計ヒヲナサルノデアルカ、ソレ
ヲ明快ニ大藏當局竝ニ文部常局ノ御辯明ヲ
戴キタイノデアリマス、此ノ一點ダケ玆ニ
御尋シテ私ノ質問ハ終ルコトニ致シマス
(拍手)
〔政府委員松村光三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=59
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060・松村光三
○政府委員(松村光三君) 只今ノ加藤君ノ
御質疑ニ御答致シマス、寺院等ニ貸付シテ
アリマスル此ノ國有地ヲ今囘上程致シマス
ル趣旨ハ明治維新當時、政府ハ寺領ヲ以
テ公領ノ一種ト云フ觀念ノ下ニ境內地ヲ整
理致シタノデアリマス、其ノ際境內地ノ內
外ヲ明ニシテ、境內地ハ依然占有ヲ許シテ
居リマシタガ、其ノ後地租改正ノ際ニ、境
內地ノ中民有地トシテ證據ノアルモノハ民
有地ニ編入致シマシタガ、其ノ證據ノナイ
モノハ之ヲ國有財產ニ編入シタノデアリマ
ス、是ハ土地整理ノ原則ト致シマシテ巳ム
ヲ得ナイコトデアリマシテ、違法不當ニ沒
收致シタノデハ斷ジテアリマセヌ、今囘宗
〓團體法案ガ提出サレマシタル際ニ、此ノ
〓化團體ノ職能ヲ保護助長セシムル趣旨ヲ
以チマシテ、玆ニ政府ハ其ノ大部分、卽チ
二千九百餘万坪ノ中僅ニ六万坪餘ヲ殘シマ
シテ、殆ド其ノ大部分ヲ無償ニテ讓渡スル
ノデアリマスルガ、現在境內地ト稱セラレ
ツツモ、不當ニ之ヲ使用シテ居ルモノ、全
然使用セザルモノ、又國家ニ之ヲ存置スル
コトガ必要ナリト考ヘマスルモノヲ一部分
殘シマシテ、其ノ大部分ヲ無償讓渡シタル
ノミナラズ、其ノ殘部ニ付キマシテモ時價
ノ半額ヲ以テ特ニ讓渡スルコトニ致シマシ
テ、其ノ償還ノ期限モ大體十箇年間ノ年賦
償還ヲ認メタノハ此ノ趣旨デアリマス、此
ノ點特ニ御諒承ヲ御願致シマス(拍手)
〔政府委員小柳牧衞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=60
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061・小柳牧衞
○政府委員(小柳牧衞君) 加藤君ノ御質問
ニ對シテ私ヨリ尙ホ御答ヲ致シタイト存ジ
やく、只今ノ御質問ニ對シマシテハ、大藏
當局ヨリ御答ガアリマシタ通リ、時局ニ顧
ミマシテ寺院ノ活動ヲ要望シヨウト私共考
ヘマシテ、此ノ取扱ヲ爲スト云フコトハ極
メテ必要デアルト存ズルノデアリマス、而
シテ其ノ無償讓渡ノ程度等ハ、此ノ法案ヲ
以テ適切ト考ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=61
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062・加藤知正
○加藤知正君 議長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=62
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063・小山松壽
○議長(小山松壽君) 何カ御發言デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=63
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064・加藤知正
○加藤知正君 發言デアリマス、簡單デア
リマスカラ此處デ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=64
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065・小山松壽
○議長(小山松壽君) 登壇ヲ望ミマス
〔加藤知正君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=65
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066・加藤知正
○加藤知正君 只今松村政務次官ハ、寺院
ノ境內地ハ之ヲ公領地ト認メタ云々ト云フ
御辯明デアリマスガ併シナガラ明治四十
三年ニハ行政裁判所ハ之ヲ寺院ノ私有地ナ
リト判決ヲ下シテ居リマスサウシテ三十
何箇寺ノ境內地ヲ無代返還致シテ居リマス、
斯樣ニ行政裁判所ガ私有地トシテ認メテ居
ルモノヲ、何故ニ公領地ト御認ニナルノカ、
其ノ理由ヲ御伺致シタイト存ジマス
〔政府委員松村光三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=66
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067・松村光三
○政府委員(松村光三君) 只今再度ノ御質
問デアリマスガ維新當時匆々ノ際之ヲ公
領地ト認メタノデアリマスルガ、其ノ後地
租改正ノ際ニ民有地ノ證據歷然タルモノヲ、
先程申シマシタヤウニ民有地ト致シマシテ、
證據ナキモノヲ國有財產トシテ編入致シタ
ノデアリマスルカラ、其ノ點ハ重ネテ特ニ
御諒承ヲ御願致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=67
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068・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ニテ質疑ハ終了致
シマシタ、本案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ
選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=68
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069・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ政府提出宗〓團體法
案委員ニ併セ付託サレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=69
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070・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=70
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071・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第
八、郵便年金法中改正法律案ノ第一讀會ヲ
開キマス-廣瀨厚生大臣
第八郵便年金法中改正法律案(政府
提出、貴族院送付)第一讀會
郵便年金法中改正法律案
郵便年金法中左ノ通改正ス
第二條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ年金契約ニ於テハ勅令ノ定ムル
所ニ依リ年金支拂ノ事由發生ノ日ヨリ
一定ノ期間內ニ年金受取人死亡スルモ
仍其ノ殘存期間年金受取人ノ遺族ニ繼
續シテ年金ヲ支拂フヘキコトヲ約スル
コトヲ得
第六條年金受取人又ハ第二條第二項ノ
規定ニ依リ繼續シテ年金ノ支拂ヲ受ク
ヘキ者(以下單ニ年金繼續受取人ト稱
ス)カ第三者ナルトキハ其ノ第三者ハ
當然年金契約ノ利益ヲ享受ス
第七條年金ヲ受取ルヘキ權利ハ之ヲ讓
渡スコトヲ得ス
第八條年金ヲ受取ルヘキ權利ハ之ヲ差
押フルコトヲ得ス但シ年額二百五十圓
ヲ超ユル金額ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第九條年金契約者ハ第三者ヲシテ年金
契約者トシテノ權利義務ヲ承繼セシム
ルコトヲ得此ノ場合ニ於テ年金契約者
カ年金受取人ニ非サルトキハ年金受取
人ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
前項ノ承繼ハ政府ニ通知スルニ非サレ
ハ之ヲ以テ政府ニ對抗スルコトヲ得ス
第十條年金契約者ハ年金支拂ノ事由發
生スル迄ハ年金契約ノ解除ヲ爲スコト
ヲ得但シ年金契約者カ別段ノ意思ヲ表
示シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ解除ハ將來ニ向テノミ其ノ效力
ヲ生ス
第十一條年金契約者ハ命令ノ定ムル所
ニ依リ年金契約ノ變更ヲ請求スルコト
ヲ得
第十二條年金契約者掛金ヲ拂込マスシ
テ命令ノ定ムル猶豫期間ヲ經過シタル
トキハ政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其
ノ年金契約ヲ既ニ拂込ミタル掛金ニ依
ル掛金拂濟年金契約ニ變更スルコトヲ
得
前項ノ場合ニ於テ掛金拂濟年金契約ニ
變更セラレサル年金契約ハ解除セラレ
タルモノト看做ス
第十條第二項ノ規定ハ前項ノ解除ニ之
ヲ準用ス
第十三條隨時ニ掛金ノ拂込ヲ爲スヘキ
年金契約ニ於テ年金支拂ノ事由發生ス
ル迄ニ年金契約者ノ拂込ミタル掛金ニ
依ル年金ノ額カ命令ノ定ムル額ニ達セ
サルトキハ其ノ年金契約ハ解除セラレ
タルモノト看做ス
第十條第二項ノ規定ハ前項ノ解除ニ之
ヲ準用ス
第十四條年金受取人ノ死亡又ハ年金契
約ノ解除若ハ變更ノ場合ニ於テハ年金契
約者又ハ年金契約申込ノ際年金契約者
ノ指定シタル第三者ハ勅令ノ定ムル所
ニ依リ操込掛金ニ基キ算定シタル返還
金(以下單ニ返還金ト稱ス)ノ支拂ヲ請
求スルコトヲ得
年金契約者カ年-金受取人以外ノ第三者
ヲ返還金受取人ニ指定スルニハ年金受
取人ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
第十五條年金受取人以外ノ者ヲ以テ返
還金受取人ト爲シタルトキハ年金契約
者ハ返還金支拂ノ事由發生スル迄ハ年
金受取人ヲ以テ返還金受取人ト爲スコ
トヲ得
年金受取人ヲ以テ返還金受取人ト爲シ
タルトキハ年金契約者ハ之ヲ變更スル
コトヲ得ス
第一項ノ返還金受取人ノ變更ハ政府ニ
通知スルニ非サレハ其ノ效力ヲ生セス
第十六條年金受取人以外ノ第三者タル
返還金受取人カ返還金支拂ノ事由發生
前ニ死亡シタルトキハ年金受取人ヲ以
テ返還金受取人トス
第十七條年金受取人カ戰爭又ハ戰爭ニ
準スヘキ事變ニ際シ戰闘又ハ戰鬪ニ準
スヘキ公務ニ因ル傷痍疾病ノ爲勅令ノ
定ムル期間內ニ死亡シタルトキハ第十
四條ノ規定ニ依リ返還金ノ支拂ヲ爲ス
ト否トニ拘ラス政府ハ年金受取人ノ遺
族ニ勅令ノ定ムル特別返還金ヲ支拂フ
前項ノ戰爭ニ準スヘキ事變、戰鬪ニ準
スヘキ公務竝ニ遺族ノ範圍及順位ハ勅
令ヲ以テ之ヲ定ム
第十八條第六條ノ規定ハ第十四條ノ返
還金受取人及前條ノ特別返還金受取人
ニ、第七條ノ規定ハ返還金又ハ特別返
還金ヲ受取ルヘキ權利ニ之ヲ準用ス
第十九條第十四條ノ規定ニ依リ返還金
ノ支拂ヲ請求スルコトヲ得ル年金契約
及第二條第二項ノ年金契約ニ於テハ年
金契約者、年金受取人又ハ年金繼續受
取人ハ命令ノ定ムル所ニ依リ左ノ金額
ノ範圍內ニ於テ貸付ヲ請求スルコトヲ
得
第二條第二項ノ年金契約以外ノ年
金契約ニ在リテハ第十四條ノ規定ニ
依ル返還金額
二第二條第二項ノ年金製約ニシテ年
金支拂ノ事由發生前ノモノニ在リテ
ハ第十四條ノ規定ニ依ル返還金額
三第二條第二項ノ年金契約ニシテ年
金支拂ノ事由發生後ノモノニ在リテ
ハ第二條第二項ノ一定ノ期間ノ內未
タ經過セサル部分ニ對シ支拂ハルヘ
キ年金ノ總額
前項ノ貸付ヲ受ケタル者貸付金ノ辨濟
ヲ爲サスシテ命令ノ定ムル期間ヲ經過
シタルトキハ政府ハ命令ノ定ムル所ニ
依リ貸付金ノ辨濟ニ代ヘ年金及返還金
ノ減額ヲ爲スコトヲ得
第二十條ヲ第二十五條トシ以下第二十二
條迄順次五條宛繰下グ
第二十條年金契約ノ全部又ハ一部カ無
效ナル場合ニ於テ年金契約者カ善意ニ
シテ且重大ナル過失ナキトキハ年金契
約者ハ拂込掛金ノ全部又ハ一部ノ返還
ヲ請求スルコトヲ得
第二十一條年金又ハ返還金ヲ支拂フヘ
キ場合ニ於テ其ノ年金契約又ハ之ニ基
キテ爲シタル貸付ニ付政府カ辨濟ヲ受
クヘキ金額アルトキハ支拂金額ヨリ之
ヲ控除ス
第二十二條當該官署カ年金、返還金、
特別返還金又ハ年金契約者ニ返還スヘ
キ掛金ヲ命令ノ定ムル所ニ依リ支拂ヒ
タルトキハ其ノ支拂ハ之ヲ有效トス
第二十三條年金、返還金及特別返還金
支拂ノ義務竝ニ掛金返還ノ義務ハ二年、
掛金拂込ノ義務ハ一年ヲ經過シタルト
キハ時效ニ因リテ消滅ス
第二十四條年金契約者、年金受取人、
年金繼續受取人、返還金受取人又ハ特
別返還金受取人カ郵便年金ニ關スル事
項ニ付政府ニ對シテ民事訴訟ヲ提起ス
ルニハ簡易生命保險審査會ノ審査ヲ經
ルコトヲ要ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
特別返還金ニ關スル規定ハ年金受取人ガ
昭和十二年七月七日以後ニ死亡シタル場
合ニ之ヲ適用ス
〔國務大臣廣瀨久忠君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=71
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072・廣瀬久忠
○國務大臣(廣瀨久忠君) 只今上程セラレ
マシタ郵便年金法中改正法律案提出ノ理由
ヲ說明致シマス本案ハ現下緊要ナル國民生
活ノ安定竝ニ國民貯蓄奬勵ノ見地ヨリ、郵
便年金制度ヲ擴張致シマシテ、年金受取人
ノ生存中年金ヲ支拂フニ止マラズ、一定條
件ノ下ニ本人ノ遺族ニモ年金ノ支拂ヲ繼續
スルガ如キ年金種類ヲ創設スルト共ニ、戰
爭又ハ事變ニ因リ死亡セル年金受取人ノ遺
族ニ特別ノ支拂ヲ爲ス等、制度ノ效用ヲ大
ナラシムル外、一般民衆ノ利用ヲ容易ナラ
シムル爲、掛金拂込上便宜ナル方途ヲ講ジ、
併セテ現行法中不備ノ條項ヲ補整シテ、制
度ヲ改善スル目的ノ下ニ郵便年金法ヲ改正
セントスルモノデアリマス
郵便年金ハ國民ノ老後ニ於ケル生活ヲ安定
ナラシムル目的ヲ以テ、大正十五年創始セラ
レマシタ官營生命保險制度デアリマスガ、創
始以來順調ナル發達ヲ遂ゲマシテ、現在ノ契
約年數ハ四十二万件、年金年額ハ三千四百万
圓ヲ算シ、又其ノ積立金ハ一億三千万圓ニ
達スル成績ヲ收メテ居リマシテ、之ニ依リ國
民生活ノ安定ニ貢獻ヲ致スト同時ニ、集積セ
ラレタル資金ハ國民經濟上ニ寄與スル所少
カラザルモノガアルノデアリマス、幸ヒ今
囘ノ改正ガ實現致シマスレバ、加入者ノ福
社ヲ增進スルト共ニ、今後本制度ノ普及發
達ヲ促進スルコトトナリ、現下ノ時局ニ鑑
ミマシテモ、其ノ意義ハ深イモノガアルト
存ズルノデアリマス、何卒御審議ノ上速ニ
御協贊アランコトヲ切望スル次第デアリマ
ス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=72
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073・小山松壽
○議長(小山松壽君) 質疑ノ通〓ガアリマ
ス、之ヲ許シマス-佐竹晴記君
〔佐竹晴記君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=73
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074・佐竹晴記
○佐竹晴記君 只今議題トナリマシタ郵便
年金法中改正法律案ニ關シ四五點簡單ニ質
疑ヲ申上ゲタイト存ジマス
先ヅ第一ニ今囘ノ改正ノ最モ主要ナルモ
ノハ、保證期間附終身年金制ノ創設、卽チ
年金受取人ノ生存中年金支拂ヲ爲スノ外、
其ノ受取人ガ年金支拂開始後一定ノ保證期
間內ニ死亡致シマシタ場合ニ、年金受取人
ノ遺族ニ年金ノ支拂ヲ繼續スルト共ニ、年
金支拂開始前ニ契約消滅致シマシタ場合ニ
於テハ、拂込掛金ニ一定ノ利息ヲ附シテ之
ヲ返還ヲスルト云フ制度ヲ創設致シマシタ
點デアリマス、此ノ改正ニ依リマシテ、郵
便年金制ト云フモノノ實質ハ、普通ノ生命
保險ト何等選ブ所ガナクナリマシテ、年金
制ノ特質ヲ失フニ至ツタノデハナイカト考
ヘルノデアリマス、申上ゲルマデモ
ナク現行郵便年金制ト云フモノハ中
產階級以下國民大衆ノ老後ノ生活安定ノ
爲之ヲ主眼トスルモノデアリマシテ
一般生命保險ノ場合ノ如ク、被保險者ノ
死亡致シマシタ場合ニ、其ノ遺族ノ生
活安定ヲ目的トスルモノデハアリマセヌ、
被保險者自身ガ老人ニナリマシタ場合ニ
人ノ御厄介ニナラナイヤウニ、安ンジテ生
活ノ出來ルヤウニト云フノガ目標デアツ
テ、其ノ掛金ノ如キモ一旦掛ケタモノハ掛
ケ放シ、卽チ抛棄スルト云フコトガ本則デ
アリマスルコトハ、現行法第七條ニ其ノ趣
旨ヲ明ニ致シテ居ルノデアリマス、然ルニ
今囘玆ニ保證期間附終身年金制ヲ御設ケニ
ナリマシテ、遺族ニ對スル年金ノ支拂繼續
及ビ掛金ノ返還ノ制度ヲ創設スルニ至リマ
シテハ普通ノ生命保險ト何等選ブ所ガナ
イコトニナリマシタカラ、若シソレナラバ
餘リ事業ノ振ハナイ年金制ニコンナ改正ヲ
加ヘマシテ、普通ノ生命保險化致シマセズ
トモ、非常ニ好イ成績ヲ擧ゲテ居リマスル
簡易生命保險ヲ擴張シテ巧ク運營致シテ參
リマス方ガ、ヨリ能ク中產階級以下大多數
ノ國民大衆ノ利用ヲ增大シ、所期ノ目的ヲ
達成スル所以デハナイカト思ハレルノデゴ
ザイマスルガ、政府ノ御所見ハ如何デゴザ
イマセウカ
第二ニハ、若シ夫レ政府ニシテ年金制ノ
事業ヲ簡易保險ニ委讓スルコトガ困難デア
ルト致シマスナラバ、政府ハ國庫ヨリ相當
ノ負擔金ヲ出シマシテ、其ノ他根本的改正
ヲ加ヘテ、此ノ年金制ニ活ヲ入レルデナケ
レバ、現在ノ儘ノ年金制デハ到底政府ノ
企圖致シマスル目的ハ達スルコトハ出來ナ
イト思フガ、如何デゴザイマセウ、政府ノ
言フ所ニ依リマスレバ、此ノ制度ハ極メテ
順調ニ發達シテ來テ居ル、諸外國ノ例ニ比
シテモ決シテ劣ツテ居ナイト白負セラレテ
居ルヤウデアリマスルガ、吾々ノ見ル所ニ
依レバ必ズシモ左樣ニハ思ヘナイノデアリ
マス、此ノ年金制ハ創設以來旣ニ十數年ヲ
經過致シテ居リマス、所ガ世間デハ餘リ知
ラレテ居リマセヌ、簡易生命保險ト云ヘバ
子供デモ之ヲ知ツテ居リマスルガ、郵便年
金制ハ大人デモ知ラナイト云フノガ寧ロ普
通デアリマス、ソレナラバ當局ハ其ノ宣傳
ヲ怠ツテ居ツタカト申シマスト、サウデハ
ナイ、政府ハ年金制ノ宣傳ニ對スル郵便局
アタリノ努力ハ、簡易保險ヨリモ非常ニ骨
ガ折レテ、數倍ノ努力ヲ拂ツテ居ルト御述
ニナツテ居ラレマスガ、洵ニ其ノ通リデア
ラウト存ジマス、ソレナノニ一向國民ノ頭
ノ中ニ其ノ制度ガ浸透シナイ、又一般生命
保險ヤ簡易生命保險ガ逐年素晴シイ勢デ激
增シテ參ツテ居ルノニ拘ラズ、年金制ハ最
近減退ノ狀態ヲサヘ示シ、或ハ掛込中止ガ
頻出致シテ居リマスル等、不振ノ狀態ニア
リマスルコトハ、一體何ヲ意味スルノデア
リマセウ、要スルニ此ノ制度ガ社會ノ實情
ニ卽シナイカラデアルト斷ゼザルヲ得ナイ
ノデアリマス、政府委員ガ貴族院デ說明シ
テ居ル所ニ依リマスレバ「簡易保險ト比べ
テ其ノ普及ノ數字ガ比較ニナラヌノハ、
ハ國民ノ心理狀態ニ於テ、自分ガ死ンダラ
後ハドウナルダラウト云フ、死後ノ備ヘヲ
スルコトガ、老後ノ安定ト云フコトヲ考へ
ルコトヨリモ痛切デアルカラデアル」ト說明
セラレテ居リマス、併シ吾々ハ必ズシモ左
樣ニハ考ヘナイ、死後ノコトヲ考ヘル程ノ
人デゴザイマスレバ、自分ノ老後ノコトヲ
考慮シナイ人ハ誰一人恐ラクアリマスマイ、
生命保險ニ加入シナイ人デアリマシテモ、
老後ヲ心配致シマシテ、多少ノ貯蓄デモシ
ヨウ、病氣ノ時ニハ困ルカラ、之ニ備ヘル
爲ニ蓄財ニ苦心シテ居ルト云フコトハ、何
人モ否ミ得ナイ所デアリマセウ、死後ノコ
トヲ慮ツテ保險ニ加入スル人デアリマシテ
モ、先ヅ養老保險ニ入ツテ、自分ノ老後ノ
安定ニ備ヘヨウト云フノガ人情デアリマス、
國民大衆トシテ如何ニ老後ノ生活安定ニ付
テ切實ナル思ヲ馳セテ居ルカト云フコトガ
分ルノデアリマス、然ルニ此ノ切實ナル思
ニ備ヘル爲ノ年金制度ガ國民大衆ニ徹底致
シマセズ、活潑ニ利用セラレズ、一般生命
保險ヤ簡易保險程ニ伸ビナイ所カラ見マス
ナラバ、決シテ政府ノ仰シヤルヤウナ簡單
ナモノデナイト私共ハ思ヒマス、卽チ制度
自體ニ存スル缺陷ノ爲デアリマス、社會實情
ニ適セナイカラデアルト斷ゼザルヲ得ナイ
ノデアリマス(拍手)抑、ら、郵便年金制ハ國民大
多數ノ、而モ中產階級以下ノ老後ノ生活安
定ガ目標デアル、恆產ノナイ人ガ、卽チ貧乏
人ガヨリ多ク其ノ必要ヲ感ズルノデアル、
然ルニ現行年金制度ハ掛金ガ非常ニ高イ、
無產者ノ利用ノ出來ナイヤウニナツテ居リ
マス、隨ヒマシテ一番利用ノ必要ヲ感ジマ
マル階層ニ於テハ加入困難デアツテ、其ノ
結果多額ノ掛金ヲ爲シ得ル有力者ガ、多ク
之ヲ利用致シマスル實情ニアルデハナイカ
ト思ハレマス、是ガ爲ニ此ノ制度ノ企圖ス
ル所ト、其ノ方向ニ矛盾ガアツテ、社會ノ
實情ニ卽シナイ爲ニ、今日ノ不振ヲ招來シ
テ居ルモノト言ハネバナリマセヌ、果シテ
然リト致シマスナラバ、政府ニ於テ眞ニ此
ノ郵便年金制ヲ活用シテ、大イニ國民大衆
ノ生活安定ヲ期シヨウト云フナラバドウ
シテモ相當額ノ國庫負擔金ヲ出スコトガ必
要デアルコトハ申上ゲルマデモナイ、其ノ
他或ハ任意加入制度ヲ强制加入ニ致シマシ
テ負擔能力アル者ニ多額ノ負擔ヲ爲サシ
メ、或ハ現行法ノ五十歲、五十五歲支拂開
始据置年金制度ノ如キモノモ、六十歲以上
ニナラナケレバ年金ノ支拂ヲ開始シナイト
云フ風ニ徹底的ナ改正ヲ加ヘマシテ、以テ
一般國民大衆ノ掛金ノ低減ヲ圖リ、大衆ヲ
シテ利用シ易カラシムルヤウニスルノ外ハ
ナイト存ズルノデアリマス、政府ノ御意見
果シテ如何、厚生省ニ於カレマシテハ根
本的ノ對案ヲ考究セラレ居ルヤウニ承リマ
シタ、若シ是ガアリマスルナラバ、此ノ機
會ニ其ノ內容ノ詳細ヲ示サレンコトヲ切望
致シマス、殊ニ本案ノ委員會ハ恐ラク九名
ト云フコトニナルサウデアリマスルガ、
吾々ノ方カラハ委員ヲ出スコトガ出來マセ
ヌ隨ヒマシテ委員會ニ於テ詳細ノ質問ヲ
申上ゲルコトガ出來マセヌカラ、吾々ニ對
シマシテ其ノ對策ガアルナラバ、此ノ機會
ニ內容ノ詳細ヲ御說明アランコトヲ切望申
上ゲマス(拍手)
第三ニハ此ノ年金制ニ對シテ國庫負擔金
ヲ逐次增大シテ行ツテ、結局國庫負擔ニ依ル
國民年金制、養老年金制ノ實現ニマデ持ツ
テ行クベキデハナイカト考ヘルガ、如何デ
ゴザイマセウ、今日現職ヲ離レテ老後ノ生
活ヲ國家ニ依ツテ保障サレマスル者ハ、官
吏ト軍人ト〓職員ノミデアリマス、國家ヲ
構成シ、財政的ニハ擔稅義務ヲ果シツツ、
經濟的ニハ長期建設ニ重要ナル役割ヲ遂行
シツツアル所ノ農、エ、商國民大衆ハ貧
困ト飢餓ト疾病ニ惱ミツツ老衰シナケレバ
ナラヌノデアル、總理大臣ハ此ノ席ニ於テ
萬民輔翼ヲ說カレマシタ、勿論國民大衆ハ
萬民輔翼ノ精神ヲ以テ緊張努力ヲ致シテ居
リマス、萬民輔翼ノ政治ノ存スル所、國家
ノ恩惠モ亦遍ク萬民ニ均霑セシメナケレバ
ナリマセヌ、獨リ官吏、軍人、〓職員ノミ
ノ獨占スベキモノデナイコトハ當然デアル
ト存ズルモノデアリマス、故ニ私ハ此ノ制
度ヲ次第ニ擴張致シマシテ、以テ農民モ、
勞働者モ、中小商工業者モ總テ等シク、例
ヘバ六十歲以上ニナレバ其ノ生活ヲ保障ス
ル、卽チ年金ヲ下付スル所マデ持ツテ行カ
ナケレバナラヌト考ヘルノデアリマス、是レ
一見單ナル理想論ノ如クデアリマスルガ、
熱意ヲ持ツテヤレバ斷ジテ不可能デハアリ
マセヌ、故ニ其ノ實現ヲ要望シテ已マナイ
次第デアリマスガ、政府當局ノ御所見如何
第四ニハ郵便年金ト最モ深イ關係ヲ持ツ
テ居リマス、此ノ郵便年金ノ實務ニ從事ス
ル郵便現業從業員、殊ニ三等郵便局現業從
業員ノ待遇ト本制度トノ關係ニ付テ簡單ニ
御尋ヲ申上ゲタイト存ジマス、是等ノ從業員
ハ事變以來激增致シマスル諸多ノ事務ヲ滯リ
ナク處理シ、或ハ公債ノ消化ニ、或ハ貯蓄ノ
奬勵ニ、常ニ第一線ニ立ツテ國策遂行ノ爲ニ
重大ナル任務ヲ果シツツアルノデアリマスル
ガ、如何ニ一生懸命働キマシテモ、彼等ニハ勿論
恩給ハ附キマセヌ老後ノ生活安定ガ保障サレ
テ居リマセヌ、ソレノミカ日常ノ待遇ハ極メ
テ劣等デアリマス、又賞與等ニ付テ之ヲ御
覽ニナリマシテモ、勅任官トカ奏任官トカ
云フヤウナ偉イ方ガ-是ハ決算ニ現ハレ
タ數字デゴザイマスガ、吾々ノ手許ヘ屆イ
テ居リマス資料ニ依リマスレバ、或省デハ
五十幾割ト云フ莫大ナ賞與ヲ受ケラレテ居
ル、或ハ商工省デハ某勅任官ガ莫大ナ賞與
金ヲ受ケタトカ受ケナイトカ云ツテ、是ガ
新聞デ問題ニサレテ居ル、然ルニ斯ウ云ツ
タ下級從業員ニ至リマシテハ僅ニ一箇月
位ト云ツタヤウナ、極メテ些少ノ賞與シカ
下付セラレテ居ラヌ狀態デアル、オ偉イ方
ガ滅私奉公ヲ說カレ總親和ヲ論ゼラレテ
モ、斯ウ云フ工合デハ果シテ如何デアリマ
セウ、要ハ實踐躬行ニアリマス、上ニ立ツ
方ガ莫大ナル賞與ヲ受ケナガラ、又過分ナ
恩給モ附キ得ルモノト致シマスルナラバ、
其ノ下ニ働イテ居ル者ニモ等シク國家ノ恩
典ヲ與ヘ、又其ノ老後ノ生活ヲ安定セシム
ルヤウニト意ヲ用ヒテコソ、初メテ上下一
體擧國一致、眞ノ總國力ノ發揮ガ出來ル
ノデハナカラウカト存ズル者デアリマス、
吾々ハ少クトモ斯ノ如キ下級吏員ニ對シマ
シテハ恩給法ヲ擴充適用スルカ、或ハ本法
ヲ更ニ一段改正致シマシテ、年金制度ヲ擴
充適用スルカニ依ツテ、老後ノ安定ヲ圖ル
ノ途ヲ開クコトガ、最モ緊要ナリト存ジマ
スルガ、政府當局ノ御所見如何
最後ニ第五、今囘ノ改正中、保證期間附
終身年金制ノ創設ト共ニ、最モ重要ナルモ
ノハ第十七條ノ新設デアリマス、卽チ年金
受取人ガ戰鬭又ハ戰鬪ニ準ズベキ公務ニ因
ル傷痍疾病ノ爲ニ死亡シタル時ハ遺族ニ
對シ政府ハ特別返還金ヲ支拂フコトト致シ
テ居ル點ガ是デアリマス、而シテ是ハ昭和
十二年七月七日以後ノ死亡者ニ適用スル旨
ヲ規定致シマシタ爲ニ、今次事變ニ鑑ミ洵
ニ機宜ヲ得タ改正ト思フノデアリマスル
ガ、併シ其ノ病死者ノ程度範圍ガ極メテ明
確ヲ缺イテ居ルノデアリマス、卽チ第十七
條ニハ事變ニ際シ戰鬪又ハ戰鬪ニ準ズベ
キ公務ニ因ル傷痍疾病ノ爲死亡シタルトキ
トゴザイマスルガ、是ハ如何ニ解スベキモ
ノデアルカ、例ヘバ我ガ忠勇ナル將兵ガ嚴寒
ヲ冒シテ「ソ」滿國境ヲ警備致シテ居リマス、
又酷暑ヲ物トモ致シマセズ海南島ヲ占領致
シテ守備致シテ居ル、今別ニ戰鬪ハナイ、
戰鬪ニ準スベキモノモナイ、此ノ時此ノ公
務中病氣デ殪レマシタナラバ、此ノ規定ノ
適用ヲ受ケナイデアリマセウカ、若シ是等
ノ行爲ガ所謂戰鬪行爲又ハ準戰鬪行爲デア
ルト致シマスルナラバ、然ラバ如何ナル時
期カラ戰鬪行爲ニ參加シタト見ルベキデア
リマセウカ、赤紙ノ召集狀ヲ受取リ家ヲ出
タ時カ、入隊シタ時カ、大陸ニ上陸シタ時
カ、或ハ實戰ニ參加致シマシタ時カ、其ノ
他各般ノ場合ニ亙リマシテ疑問ガ盡キナイ
ノデアリマス、御意見ノ如ク現行恩給法ニ
於キマシテハ戰死者ト戰病死者トヲ區別
致シマシテ、其ノ遺族扶助料ニ差等ヲ設ケ
マシタガ、併シ等シク身ヲ皇國ノ爲ニ捧
ゲ誠忠ノ誠ヲ效シツツアル間ニ殪レマシ
タ以上、其ノ精神ニ於テ毫モ差別ハナイト
吾々ハ思フ、隨ヒマシテ其ノ差別ハ洵ニ遺
憾トシ、吾々ハ曩ニ同一待遇ヲセラレンコ
トノ建議案ヲ提出シ、委員會ニ於テハ其ノ
成立ヲ見タノデアリマス、幸ヒ此ノ十七條
ニ於キマシテハ戰病死者ニモ等シク其ノ返
還金ヲ支拂フト云フコトニナツテ居リマス
ルガ、前敍ノ如ク其ノ解釋如何ニ依リマシ
テハ、或者ニハ適用ヲサレ、或者ニハ適用サ
レナイト云フコトニナリ、右恩給法ノ不備
同樣ノ憾ミヲ貽シハシナイカト惧レルノデ
アリマス、此ノ際本法ノ適用限界ヲ明ニサ
レンコトヲ望ミマス、以上五點質問申上ゲ
マス
〔國務大臣廣瀨久忠君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=74
-
075・廣瀬久忠
○國務大臣(廣瀨久忠君) 保證年金ノ制度
ノ創設ニ付テノ御質問デアリマシタガ、是ハ
從來ノ實績ニ徵シマシテ、從來ダケノ年金
制度デハ我國ノ實情ニ照シテ適當デナイ、
ヤハリ年金制度ノ大衆化ニ付テハ、今囘ノ
ヤウナ遺族ニモ年金ヲ與ヘルト云フ制度ヲ
採ルコトガ、我國ノ家族制度ノ下ニ於テハ
適當デアルト云フ、從來ノ實際ノ經驗ニ徵
シテ制定致シタモノデアリマス、ソレカラ
次ニ郵便年金ニ付テ政府ノ方カラ補助金ヲ
與ヘルト云フ考ハナイカト云フ御質問デア
リマスガ、郵便年金ノ任意的ノ制度デアル
建前カラ申シマシテモ、今政府カラ補助金ヲ
與ヘルト云フ考ハ持ツテ居リマセヌ、唯出
來ル限リ工場勞働者其ノ他ニ付キマシテ、
年金ノ奬勵ニ付テハ色々ノ工夫ヲ凝シタイ
ト思ツテ居リマス、ソレカラ尙ホ厚生省ト
シテ年金制度ニ付テ調査シタ結果ヲ、此處
ニ發表セヌカト云フ御話デアリマスガ、是
ハ〓究ハ致シテ居リマスガ、此處ニ發表ス
ルコトハ未ダ適當デナイト思ヒマスカラ、
發表ハ申上ゲ兼ネマス、次ニ國民全體ヲ對
象トシタル强制養老年金制度ノ如キモノヲ
考ヘナイカト云フ御意見デアリマスガ、强
制國民養老年金ノ制度ハ、是ハ非常ニ大キ
ナ問題デアリマシテ、國ノ財政ノ上カラ云
ヒマシテモ、亦我國ノ如キ家族制度ト云フ
モノヲ中心ニ考ヘルト云フ建前カラ申シマ
シテモ、非常ナ重大ナ問題ダト思ツテ居リ
マス、十分ニ考慮ヲセンケレバナラヌノデ、
今何トモ申上ゲ兼ネル次第デアリマス、ソ
レカラ尙ホ此ノ恩給制度ノ擴張ニ付テノ御
意見デアリマシタガ、官廳ノ下級吏員、雇
傭員等ニ付テノ恩給ノ制度ニ付キマシテ
ハ、政府ニ於キマシテハ目下ノ所是ガ擴張
ノ意向ヲ持ツテ居リマセヌ、最後ニ今囘ノ
改正ノ中ノ第十七條ノ特別返還金ヲ受ケル
者ノ資格ニ關シテノ御質問デアリマス、此
ノ條文ハ、公務員ノ戰地又ハ事變地ニ於ケ
ル、戰爭又ハ事變ニ關スル勤務ニ因ル傷痍
疾病ニ關スルモノデアリマスルガ、其ノ實
際ノ適用範圍ニ付キマシテハ、出來得ルダ
ケ之ヲ廣ク解釋シ、廣ク運用スル積リデア
リマスルカラ、御示ノヤウナ場合ハ大部分
之ニ依ツテ運用ヲシテ、適用致シテ行ケル
モノト思ツテ居リマス(拍手)
〔國務大臣鹽野季彥君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=75
-
076・塩野季彦
○國務大臣 (慶野委彥君)三等局ノ從事員
ハ其ノ勞苦ノ多大デアリマスルコト、又待
遇ノ菲薄デアリマスルコトハ御說ノ通リデ
アリマスルガ、此ノ待遇ニ付キマシテハ漸
次之ヲ改善スベク努力スル積リデ居リマス、
又老後ノ生活安定ト云フコトニ付キマシテ
モ、是ハ直轄局タルト又普通ノ三等局タル
トヲ問ハズ、遞信省ニ於キマシテハ常ニ留
意致シテ居ル所デアリマス、現ニ遞信部內
ニ於ケル雇傭員全部ヲ以テ共濟組合ヲ組織
致シテ居リマス、此ノ組合ニ於キマシテ組
合員ノ掛金及ビ政府ノ補給金ヲ以テ、其ノ
退職ニ際シマシテハ一時金若クハ年金ヲ給
與シテ居ルノデアリマス、恩給類似ノ制度
ガ確立サレテ居リマス、ノミナラズ昭和十
二年カラ雇傭人ノ退職手當制度ヲ確立致シ
テ、退職後ニ於ケル生活ノ安定ヲ圖ツテ居
リマス、御說ノヤウニ、恩給制度ニ均霑サ
シテハドウカト云フ御意見ニ付キマシテ
ハ、是ハ三等局ノ建前カラ致シマシテ、今
直チニ御意見ノヤウニハ出來ナイノデゴザ
イマスルガ、今後逐次直轄局ト致シマシテ、
其ノ直轄局員トシテ優秀ナル者ニ付キマシ
テハ之ヲ官吏ニ採用シ、隨テ恩給制度ニモ
浴セシムルト云フ方針ニ向ツテ進ミタイト
存ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=76
-
077・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ニテ質疑ハ終了致
シマシタ、本案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ
選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=77
-
078・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ議長指名九名ノ委員
ニ付託サレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=78
-
079・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=79
-
080・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=80
-
081・服部崎市
○服部崎市君 殘餘ノ日程ヲ延期シ、明後
六日定刻ヨリ特ニ本會議ヲ開クコトトシ、
本日ハ是ニテ散會セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=81
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082・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=82
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083・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議テシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、次會ノ議
事日程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、本日
ハ是ニテ散會致シマス
午後四時十二分散會
衆議院議事速記錄第十九號中正誤
頁段行誤正
四〇〇三一〇-一一「第二十三「第三十
條三條」発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02019390304&spkNum=83
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