1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十四年三月六日（月曜日）
午後一時二十分開議
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議事日程 第二十號
昭和十四年三月六日
午後一時開議
第一 米穀配給統制法案（政府提出） 第一讀會
第二 輕金屬製造事業法案（政府提出） 第一讀會
第三 花柳病豫防法中改正法律案（政府提出、貴族院送付） 第一讀會
第四 非訟事件手續法中改正法律案（政府提出、貴族院送付） 第一讀會
第五 鑛業法中改正法律案（政府提出） 第一讀會の續（委員長報告）
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001・小山松壽
○議長(小山松壽君) 諸般ノ報告ヲ致サセ
マス
〔書記官朗讀〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
(第一號)昭和十四年度歲入歲出總豫算追
加案
(特第一號)昭和十四年度各特別會計歲入
歲出豫算追加案
昭和十四年三月七日
(追第二號)豫算外國庫ノ負擔トナルベキ
契約ヲ爲スヲ要スル件
映畫法案
(以上三月六日提出)
〔左ノ報〓ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
輕金屬製造事業法案
(以上三月四日提出)
一去四日貴族院ニ於テ本院ノ送付ニ係ル左
ノ政府提出案ヲ可決シタル旨同院ヨリ通
牒ヲ受領セリ
人事調停法案
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
上越西線敷設ニ關スル建議案
提出者
增田義一君武田德三郞君
加藤知正君今成留之助君
神職待遇改善ニ關スル建議案
提出者曾和義弌君
視學制度改善ニ關スル建議案
提出者
泉國三郞君坪山德彌君
治山治水國策ノ確立及南九州ニ於ケル水
害救濟ニ關スル建議案
提出者伊東岩男君
東北農民藝品維持撰獎ニ關スル建議案
提出者松岡俊三君
治療師法制定ニ關スル建議案
提出者
守屋榮夫君〓瀨一郞君
靑木精一君井阪豐光君
宮崎小林間鐵道速成ニ關スル建議案
提出者陣軍吉君
(以上三月四日提出)
一去四日平沼內閣總理大臣ヨリ左ノ通發令
アリタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
司法書記官森山武市郞
第七十四囘帝國議會司法省所管事務政府
委員被仰付
去四日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ如
シ
國際電氣通信株式會社法中改正法律案
(政府提出)委員
岡野龍一君川副隆君
多田滿長君最上政三君
南雲正朔君高木条太郞君
高橋義次君植原悅二郞君
大本貞太郞君永田良吉君
西方利馬君犬養健君
小林絹治君〓瀨規矩雄君
伊豆富人君靑木精一君
冨吉榮二君田川大吉郞君
職員健康保險法案(政府提出)委員
紫安新九郞君中崎俊秀君
成島勇君木村淺七君
喜多壯一郞君本田彌市郞君
豐田豐吉君小串〓一君
泉國三郞君石坂養平君
田子一民君濱地文平君
星島二郞君太田理一君
永山忠則君赤松克麿君
米窪滿亮君道家齊一郞君
郵便年金法中改正法律案(政府提出、貴
族院送付)委員
木原七郞君本田彌市郞君
仲井間宗一君仲西三良君
庄晋太郞君木村作次郞君
山川賴三郞君小平重吉君
鈴木正吾君
一去四日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如シ
國境取締法案(政府提出)委員
辭任長谷長次君補關石坂繁君
昭和十二年法律第五十七號中改正法律案
(鐵ノ輸入稅免除ニ關スル件)(政府提出)
外一件委員
辭任名川侃市君補關野口喜一君
辭任武知勇記君補關原玉重君
人事調停法案(政府提出)委員
辭任田川大吉郞君補關椎尾辨匡君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=1
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002・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス、日程第一、米穀配給統制法案ノ第一讀
會ヲ開キマス-農林大臣櫻內幸雄君
第一米穀配給統制法案(政府提出)
第一讀會
米穀配給統制法案
米穀配給締制法
第一條米穀ノ買入若ハ賣渡又ハ其ノ代
理若ハ媒介ノ業務ヲ行ハントスル者ハ
勅令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ許可ヲ受
クベシ但シ勅令ヲ以テ定ムル者ハ此ノ
限ニ在ラズ
第二條前條ノ許可ヲ受ケタル者命令ノ
定ムル所ニ依リ正當ノ事由ナクシテ業
務ヲ開始セザルトキ又ハ其ノ業務ヲ休
止シタルトキハ政府ハ其ノ許可ヲ取消
スコトヲ得
第三條政府第一條ノ許可ヲ受ケタル者
ノ行爲ガ本法若ハ本法ニ基キテ發スル
命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シ
又ハ公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリト
認ムルトキハ其ノ許可ヲ取消シ又ハ其
ノ業務ヲ制限シ若ハ停止スルコトヲ得
第四條政府ハ米穀ノ買入若ハ賣渡又ハ
其ノ代理若ハ媒介ヲ爲ス者ニ對シ米穀
ノ配給統制上必要ナル命令ヲ爲スコト
ヲ得
政府必要ト認ムルトキハ何時ニテモ
一條ノ許可ヲ受ケタル者ニ對シ其ノ業
務ニ關スル諸般ノ報〓ヲ命ジ又ハ其ノ
帳簿物件ヲ檢査スルコトヲ得
第五條米穀市場ハ日本米穀株式會社ニ
限リ之ヲ開設スルコトヲ得
日本米穀株式會社米穀市場ヲ開設セン
トスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ市
場每ニ政府ノ認可ヲ受クベシ
何人ト雖モ米穀市場ニ類似ノ施設ヲ爲
シ又ハ其ノ施設ニ依リ取引ヲ爲スコト
ヲ得ズ
第六條米穀市場ノ賣買取引ハ差金ノ授
受ニ依リ其ノ決濟ヲ爲スコトヲ得ズ但
シ履行期ニ於ケル決濟ニシテ勅令ヲ以
テ定ムルモノニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
日本米穀株式會社ハ命令ノ定ムル所ニ
依リ米穀市場ノ賣買取引ニ付證據金ヲ
納メシメ又ハ手數料ヲ徵收スルコトヲ
得
米穀市場ノ賣買取引ノ方法其ノ他賣買
取引ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ
之ヲ定ム
第七條米穀市場ノ賣買取引ノ價格ハ勅
令ノ定ムル所ニ依リ米穀統制法第二條
ノ最低價格及最高價格ニ準據シテ定ム
ル價格ノ範圍ヲ超ユルコトヲ得ズ
第八條米穀市場ノ賣買取引ハ其ノ市場
ノ市場員ニ限リ之ヲ爲スコトヲ得但シ
命令ヲ以テ定ムル場合ニ於テハ此ノ限
ニ在ラズ
市場員タラントスル者ハ命令ノ定ムル
所ニ依リ政府ノ免許ヲ受クベシ
第九條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ前
條第二項ノ免許ヲ受クルコトヲ得ズ但
シ勅令ヲ以テ定ムル者ハ此ノ限ニ在ラ
ズ
一帝國臣民又ハ帝國法令ニ依リ設立
シクル法人ニ非ザル諸
二破產者ニシテ復權ヲ得ザルモノ
三禁錮以上ノ刑ニ處セラレ其ノ執行
ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ
至リタル後三年ヲ經過スルニ至ル迄
ノ者
四米穀市場ノ市場員ニシテ除名セラ
レ除名ノ日ヨリ三年ヲ經過セザルモ
ノ
五第二十條ノ規定ニ依リ免許ヲ取消
サレ取消ノ日ヨリ三年ヲ經過セザル
者
六營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ
有セザル未成年者又ハ林治產者ニシ
テ其ノ法定代理人ガ前各號ノ一ニ該
當スルモノ
七法人ニシテ其ノ業務ヲ執行スル役
員中第一號乃至第五號ノ一ニ該當ス
ル者アルモノ
第十條米穀市場ノ市場員前條第一號乃
至第四號、第六號若ハ第七號ニ該當ス
ルニ至リタルトキ又ハ日本米穀株式會
社ノ役員ト爲リタルトキハ勅令ノ定ム
ル所ニ依リ免許ハ其ノ效力ヲ失フ
政府ハ不正ノ手段ニ依リ第八條第二項
ノ免許ヲ受ケタル者アルコトヲ發見シ
タルトキハ其ノ免許ヲ取消スコトヲ得
第十一條本法ニ規定スルモノノ外市場
員ノ資格其ノ他市場員ニ關シ必要ナル
事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十二條市場員ハ命令ノ定ムル所ニ依
リ日本米穀株式會社ニ身元保證金ヲ納
付スベシ
第十三條日本米穀株式會社ハ米穀市場
ノ秩序ヲ保持スル爲定款ノ定ムル所ニ
依リ市場員ノ業務ヲ停止シ、千圓以內
ノ過怠金ヲ課シ又ハ政府ノ認可ヲ受ケ
市場員ヲ除名スルコトヲ得
第十四條市場員ハ業務ヲ廢止シタル後
ト雖モ米穀市場ノ賣買取引ノ結了及監
督ノ目的ノ範圍內ニ於テハ取引結了後
二週間ヲ經過スル迄仍業務ヲ廢止セザ
ルモノト看做ス
눈市場員死亡シ若ハ解散シ又ハ其ノ免許
ガ取消サレ若ハ效力ヲ失ヒタル場合ニ
於テハ米穀市場ノ賣買取引ノ結了ニ至
ル迄亦前項ニ同ジ
前二項ノ場合ニ於テ市場員ノ行爲ヲ爲
ス者ナキトキハ日本米穀株式會社ハ定
款ノ定ムル所ニ依リ他人ヲシテ其ノ行
爲ヲ爲サシムルコトヲ得
第十五條。市場員ハ其ノ米穀市場ニ依ラ
ズシテ米穀ノ賣買取引ヲ爲スコトヲ得
ズ但シ勅令ヲ以テ定ムル場合ニ於テハ
此ノ限ニ在ラズ
前項但書ノ場合ニ於ケル米穀ノ賣買取
引ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之
ヲルクト
第十六條市場員ハ委託ヲ受ケタル米穀
市場ノ賣買取引ニ付米穀市場ニ於テ其
ノ賣付、買付又ハ受渡ヲ爲サズシテ之
ヲ爲シタルト同一又ハ類似ノ計算ヲ以
テ委託者ニ對シ其ノ決濟ヲ爲スコトヲ
得ズ
前項ノ規定ニ違反シタル市場員ハ日本
米穀株式會社定款ノ定ムル所ニ依リ之
ニ二週間以上業務停止ヲ命ジ又ハ之ヲ
除名スベシ
第十七條日本米穀株式會社ハ政府ノ認
可ヲ受ケ米穀市場ノ賣買取引ノ違約ヨ
リ生ズル損害ニ付賠償ノ責ニ任ズルコ
トヲ得
日本米穀株式會社前項ノ規定ニ依リ損
害ヲ賠償シタルトキハ違約者ニ對シ其
ノ賠償シタル金額及之ニ要シタル費用
ニ付求償權ヲ有ス
第十八條日本米穀株式會社ハ證據金及
身元保證金ニ付他ノ債權者ニ對シ優先
權ヲ有ス
市場員ニ對シ米穀市場ノ賣買取引ノ委
託ヲ爲シタル者ハ委託契約ニ基キテ生
ズル債權ニ關シ其ノ市場員ノ身元保證
金ニ付他ノ債權者ニ對シ優先權ヲ有ス
第一項ノ優先權ハ前項ノ優先權ニ對シ
優先ノ效力ヲ有ス
第十九條政府ハ市場員ニ對シ米穀市場
ノ賣買取引ニ關シ米穀ノ配給統制上必
要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
政府必要ト認ムルトキハ何時ニテモ市
場員ニ對シ業務ニ關スル諸般ノ報〓ヲ
命ジ又ハ市場員ノ帳簿物件ヲ檢査スル
コトヲ得
第二十條政府市場員ノ行爲ガ本法若ハ
本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基キ
テ爲ス處分ニ違反シ又ハ公益ヲ害シ若
ハ害スルノ虞アリト認ムルトキハ其ノ
免許ヲ取消シ又ハ其ノ業務ヲ制限シ若
ハ停止スルコトヲ得
第二十一條日本米穀株式會社ハ米穀ノ
配給ノ統制ヲ圖ル爲必要ナル事業ヲ營
ムコトヲ目的トスル株式會社トス
第二十二條日本米穀株式會社ノ資本ハ
三千萬圓トス但シ政府ノ認可ヲ受ケ之
ヲ增加スルコトヲ得
第二十三條日本米穀株式會社ノ株式ハ
記名式トシ政府、公共團體、帝國臣民
又ハ帝國法人ニシテ社員、株主若ハ業
務ヲ執行スル役員ノ半數以上又ハ資本
ノ半額以上若ハ議決權ノ過半數ガ外國
人又ハ外國法人ニ屬セザルモノニ限リ
之ヲ所有スルコトヲ得
第二十四條政府ハ千五百萬圓ヲ限リ日
本米穀株式會社ニ出資スベシ
前項ノ規定ニ依ル出資拂込金ハ米穀需
給調節特別會計ノ歲出トシ該出資ニ因
リ政府ノ取得シタル株式ハ同特別會計
ノ所屬物件トス
政府所有ノ株式ノ株金拂込ハ其ノ他ノ
株式ノ株金拂込ト之ヲ異ニスルコトヲ
得
第二十五條日本米穀株式會社ニ非ザル
モノハ日本米穀株式會社又ハ之ニ類似
ノ名稱ヲ以テ其ノ商號ト爲スコトヲ得
ズ
第二十六條日本米穀株式會社ニ役員ト
シテ理事長副理事長各一人、理事五人
以上及監事三人以上ヲ置ク
理事長ハ日本米穀株式會社ヲ代表シ其
ノ業務ヲ總理ス
副理事長ハ理事長事故アルトキハ其ノ
職務ヲ代理シ理事長缺員ノトキハ其ノ
職務ヲ行フ
副理事長及理事ハ理事長ヲ輔佐シ定款
ノ定ムル所ニ依リ日本米穀株式會社ノ
業務ヲ分掌シ又ハ之ニ參與ス
監事ハ日本米穀株式會社ノ業務ヲ監査
ス
第二十七條理事長及副理事長ハ政府之
ヲ命ジ其ノ任期ヲ五年トス
理事ハ株主總會ニ於テ之ヲ選任シ政府
ノ認可ヲ受クルモノトシ其ノ任期ヲ四
年トス
監事ハ株主總會ニ於テ之ヲ選任シ其ノ
任期ヲ三年トス
第二十八條理事長、副理事長及業務ヲ
分掌スル理事ハ他ノ職務又ハ商業ニ從
事スルコトヲ得ズ但シ政府ノ認可ヲ受
ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第二十九條日本米穀株式會社ハ左ノ事
業ヲ營ムモノトス
-米穀市場ノ開設
二政府ノ委託ニ依ル米穀ノ買入又ハ
賣渡
三前二號ノ事業ニ附帶スル事業
四其ノ他本會社ノ目的達成上必要ナ
ル事業
日本米穀株式會社ハ前項ノ事業ノ外命
令ノ定ムル所ニ依リ米穀市場ノ開設ニ
附帶シ麥、大豆其ノ他ノ雜穀又ハ肥料
ヲ賣買取引スル市場ヲ開設スルコトヲ
得
前項ノ麥、大豆其ノ他ノ雜穀又ハ肥料
ヲ賣買取引スル市場ニ於テハ其ノ賣買
取引ニ付差金ノ授受ニ依リ決濟ヲ爲ス
コトヲ得ズ
日本米穀株式會社第一項第三號若ハ第
四號又ハ第二項ノ事業ヲ營マントスル
トキハ政府ノ認可ヲ受クベシ
日本米穀株式會社ハ命令ノ定ムル所ニ
依リ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其
ノ事業ノ全部又ハ一部ヲ廢止シ又ハ休
止スルコトヲ得ズ
第三十條日本米穀株式會社ノ役員又ハ
使用人ハ勅令ヲ以テ定ムル場合ヲ除ク
ノ外何人ノ名義ヲ以テスルヲ問ハズ米
穀市場ノ賣買取引ヲ爲シ又ハ其ノ委託
ヲ爲スコトヲ得ズ
日本米穀株式會社ノ役員又ハ使用人ハ
市場員トノ間ニ資金ノ供與、損益ノ分
配其ノ他市場員ノ業務ニ付特別ノ利害
關係ヲ有スルコトヲ得ズ
第三十一條政府ハ日本米穀株式會社ノ
業務ヲ監督ス
第三十二條定款ノ變更、利益金ノ處分、
社債ノ募集、合併及解散ノ決議ハ政府
ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ
生ゼズ
第三十三條政府ハ日本米穀株式會社監
理官ヲ置キ日本米穀株式會社ノ業務ヲ
監視セシム
日本米穀株式會社監理官ハ何時ニテモ
日本米穀株式會社ノ金庫、帳簿及諸般
ノ文書物件ヲ檢査スルコトヲ得
日本米穀株式會社監理官必要ト認ムル
トキハ何時ニテモ日本米穀株式會社ニ
命ジ業務ニ關スル諸般ノ計算及狀況ヲ
報告セシムルコトヲ得
日本米穀株式會社監理官ハ株主總會其
ノ他諸般ノ會議ニ出席シ意見ヲ陳述ス
ルコトヲ得
第三十四條日本米穀株式會社ハ每營業
年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ
政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミ
タル株金額ニ對シ年百分ノ六ノ割合ニ
達スル迄政府ノ所有スル株式ニ對シ利
益ノ配當ヲ爲スコトヲ要セズ
日本米穀株式會社ノ每營業年度ニ於ケ
ル配當シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ
者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額
ニ對シ年百分ノ六ノ割合ヲ超過スル場
合ニ於テ政府以外ノ者ノ所有スル株式
ニ對シ年百分ノ六ノ割合ヲ超エ利益配
當ヲ爲サントスルトキハ其ノ超過スル
利益金額ハ利益配當ガ總株式ニ付拂込
ミタル株金額ニ對シ均一ノ割合ニ達ス
ル迄政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂
込ミタル株金額及政府ノ所有スル株式
ノ拂込ミタル株金額ニ對シ一ト四トノ
割合ヲ以テ之ヲ配當スベシ
第三十五條政府ハ日本米穀株式會社ニ
對シ米穀ノ配給統制上必要ナル命令ヲ
爲スコトヲ得
政府ハ日本米穀株式會社ニ對シ其ノ
業務及財產ノ狀況ニ關シ報告ヲ爲サシ
メ、檢査ヲ爲シ其ノ他監督上必要ナル
命令又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第三十六條政府ハ日本米穀株式會社ノ
決議又ハ役員ノ行爲ガ法令、法令ニ基
キテ爲ス處分若ハ定款ニ違反シ又ハ公
益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリト認ムル
トキハ決議ノ取消シ、役員ノ解任又ハ
事業ノ停止若ハ禁止ヲ爲スコトヲ得
第三十七條米穀市場ニ類似ノ施設ヲ爲
シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ五千圓
以下ノ罰金ニ處ス
第三十八條米穀市場ニ類似ノ施設ニ依
リ取引ヲ爲シタル者ハ一年以下ノ懲役
又ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十九條第三十條第一項ノ規定ニ違
反シタル者又ハ同條第二項ノ規定ニ違
反シ市場員トノ間ニ特別ノ利害關係ヲ
生ズルコトヲ目的トスル行爲ヲ爲シタ
ル者ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
第四十條第一條ノ規定ニ違反シ許可ヲ
受ケズシテ米穀ノ買入若ハ賣渡又ハ其
ノ代理若ハ媒介ノ業務ヲ行ヒタル者ハ
三千圓以下ノ罰金ニ處ス
第四十一條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
-第三條ノ規定ニ依ル制限又ハ停止
ノ處分ニ違反シタル者
二第四條第一項又ハ第十九條第一項
ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者
第四十二條第四條第二項又ハ第十九條
第二項ノ規定ニ依ル檢査ヲ拒ミ、妨ゲ
又ハ忌避シタル者ハ五百圓以下ノ罰金
主控人
第四十三條日本米穀株式會社ノ役員又
ハ使用人米穀市場ノ賣買取引又ハ政府
ノ委託ニ依ル米穀ノ買入若ハ賣渡ニ關
スル職務ニ關シ賄賂ヲ收受シ又ハ之ヲ
要求シ若ハ約束シタルトキハ一年以下
ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス因
テ不正ノ行爲ヲ爲シ又ハ相當ノ行爲ヲ
爲サザルトキハ三年以下ノ懲役又ハ五
千圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ場合ニ於テ收受シタル賄賂ハ之
ヲ沒收ス若シ其ノ全部又ハ一部ヲ沒收
スルコト能ハザルトキハ其ノ價格ヲ追
徵ス
第四十四條前條第一項ニ揭グル者ニ賄
賂ヲ交付シ又ハ之ヲ提供シ若ハ約束シ
タル者ハ一年以下ノ懲役又ハ三千圓以
下ノ罰金ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキ
ハ其ノ刑ヲ減輕シ又ハ免除スルコトヲ
得
第四十五條米穀市場ニ於ケル相場ノ變
動ヲ圖ル目的ヲ以テ虚僞ノ風說ヲ流布
シ、僞計ヲ用ヒ又ハ暴行若ハ脅迫ヲ爲
シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ五千圓
以下ノ罰金ニ處ス
第四十六條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ一年以下ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰
金ニ處ス
米穀市場ニ於ケル相場ヲ僞リテ公
示シタル者
二公示若ハ頒布ノ目的ヲ以テ虚僞ノ
相場ヲ記載シタル文書ヲ作成シ又ハ
之ヲ頒布シタル者
第四十七條米穀市場ニ依ラズシテ米穀
市場ノ相場ニ依リ差金ノ授受ヲ目的ト
スル行爲ヲ爲シタル者ハ一年以下ノ懲
役又ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス但シ刑
法第百八十六條ノ規定ノ適用ヲ妨ゲズ
第四十八條米穀ノ買入若ハ賣渡又ハ其
ノ代理若ハ媒介ノ業務ヲ行フ者ハ其ノ
代理人、戶主、家族、同居者、雇人其
ノ他ノ從業者ガ其ノ業務ニ關シ第四十
條又ハ第四十一條ノ違反行爲ヲ爲シタ
ルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ
以テ其ノ處罰ヲ免カルルコトヲ得ズ
第四十九條第四十條及第四十一條ノ罰
則ハ其2者ガ法人ナルトキハ理事、取
締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役
員ニ、未成年者又ハ禁治產者ナルトキ
ハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營
業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル
未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第五十條日本米穀株式會社左ノ各號ノ
一ニ該當スルトキハ理事長又ハ理事長
ノ職務ヲ行ヒ若ハ代理スル副理事長ヲ
五千圓以下ノ過料ニ處ス副理事長又ハ
理事ノ分掌業務ニ係ルトキハ副理事長
又ハ理事ヲ過料ニ處スルコト亦同ジ
一本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令
ニ依リ認可ヲ受クベキ場合ニ於テ其
ノ認可ヲ受ケザルトキ
二第二十九條第一項又ハ第二項ノ規
定ニ依ラズシテ業務ヲ營ミタルトキ
三第三十五條ノ規定ニ依ル命令又ハ
處分ニ違反シタルトキ
日本米穀株式會社ノ理事長、副理事長
又ハ理事第二十八條ノ規定ニ違反シタ
ルトキハ千圓以下ノ過料ニ處ス
第五十一條第二十五條ノ規定ニ違反シ
タル者ハ千圓以下ノ過料ニ處ス
第五十二條非訟事件手續法第二百六條
乃至第二百八條ノ規定ハ前二條ノ過料
ニ之ヲ準用ス
附則
第五十三條本法施行ノ期日ハ各規定ニ
付勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十四條政府ハ設立委員ヲ命ジ日本
米穀株式會社ノ設立ニ關スル一切ノ事
務ヲ處理セシム
設立委員ハ定款ヲ作成シ政府ノ認可ヲ
受ケタル後株式總數ヨリ政府ニ割當ツ
ベキ株式ヲ控除シタル殘餘ノ株式ニ付
命令ノ定ムル所ニ依リ株主ヲ募集スベ
シ
株式申込證ニハ定款認可ノ年月日竝ニ
商法第百二十六條第二項第二號、第四
號及第五號ニ規定スル事項ヲ記載スベ
シ
設立委員ハ株主ノ募集ヲ終リタルトキ
ハ株式申込證ヲ政府ニ提出シ其ノ檢査
ヲ受クベシ
設立委員ハ前項ノ檢査ヲ受ケタル後遲
滯ナク各株ニ付第一囘ノ拂込ヲ爲サシ
<<>
前項ノ拂込アリタルトキハ設立委員ハ
遲滯ナク創立總會ヲ招集スベシ
創立總會ニ於テハ第二十七條ノ規定ニ
準ジ理事及監事ノ選任ヲ行フベシ
創立總會終結シタルトキハ設立委員ハ
其ノ事務ヲ日本米穀株式會社理事長ニ
引渡スベシ
第五十五條取引所法ハ米穀ニ關シテハ
之ヲ適用セズ
前項ノ規定ノ施行前米穀ノ賣買取引ヲ
爲ス取引所ニ於テ爲シタル米穀ノ賣買
取引ニ付テハ仍從前ノ例ニ依リ其ノ取
引ヲ結了スルコトヲ得
第一項ノ規定施行前米穀ニ關スル行爲
ニシテ取引所法ノ罰則ヲ適用スベカリ
シモノニ付テハ仍從前ノ例ニ依ル
第五十六條日本米穀株式會社ハ勅令ノ
定ムル所ニ依リ政府ノ認可ヲ受ケ米穀
ヲ賣買取引スル取引所又ハ正米市場開
設者ガ本法公布ノ際現ニ所有スル土地、
建物其ノ他ノ設備ヲ其ノ申込ニ應ジ買
取ルモノトス
日本米穀株式會社ハ勅令ノ定ムル所ニ
依リ政府ノ認可ヲ受ケ本法公布ノ際現
ニ存スル米穀ヲ賣買取引スル取引所ノ
使用人及取引員ニシテ前條ノ規定施行
ノ日迄引續キ其ノ業務ニ從事スルモノ
ニ關シ必要ナル措置ヲ爲スモノトス
政府前二項ノ認可ヲ爲サントスルトキ
ハ米穀取引事業審議委員會ノ議ヲ經ル
コトヲ要ス
米穀取引事業審議委員會ニ關スル規程
ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十七條日本米穀株式會社前條第一
項ニ規定スル買取ニ基ク不動產ニ關ス
ル權利ノ取得ニ付登記ヲ受クル場合ニ
於テハ其ノ登錄稅ノ額ハ不動產ノ價格
ノ千分ノ三トス但シ登錄稅法ニ依リ算
出シタル登錄稅ノ額ガ本法ニ依リ算出
シタル稅額ヨリ少キトキハ其ノ稅額ニ
依ル
北海道、府縣及市町村其ノ他之ニ準ズ
ベキモノハ日本米穀株式會社ニ對シ前
條第一項ニ規定スル買取ニ基ク不動產
ニ關スル權利ノ取得ニ關シ地方稅ヲ課
スルコトヲ得ズ
第五十八條第二十五條ノ規定施行ノ際
現ニ日本米穀株式會社又ハ之ニ類似ノ
名稱ヲ以テ商號ト爲ス會社ハ同條ノ規
定施行後六月以内ニ其ノ商號ヲ變更ス
ルコトヲ要ス
第五十一條ノ規定ハ前項ノ期間內之ヲ
前項ニ揭グル者ニ適用セズ
第五十九條第一條ノ規定施行ノ際現ニ
同條ノ許可ヲ受クベキ米穀ノ買入若ハ
賣渡又ハ其ノ代理若ハ媒介ノ業務ヲ行
フ者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ同條ノ規
定施行ノ日ヨリ之ヲ同條ノ許可ヲ受ケ
タル者ト看做ス
第六十條取引所稅法中第二十一條ノ次
ニ左ノ一條ヲ加フ
第二十一條ノ二日本米穀株式會社ノ
米穀市場ニ於ケル賣買取引ニシテ差
金ノ授受ニ依リテ決濟ヲ爲シ得ルモノ
ニ付テハ命令ヲ以テ定ムル賣買取引
ヲ除クノ外日本米穀株式會社及其ノ
米穀市場ヲ取引所、其ノ市場員ヲ取引
員ト看做シ本法中取引稅ニ關スル規
定ヲ適用ス〓〓場場ニ於テハ第五條
第一項ノ規定ニ拘ラス賣買各約定金高
ニ對シ萬分ノ一·二五ノ稅率ニ依ル
米穀配給統制法第十六條ノ規定ニ違
反シタル行爲アリタルトキハ第十七
條ノ例ニ依ル
日本米穀株式會社ノ米穀市場ニ於ケ
ル賣買取引ニシテ第一項ニ規定スル
賣買取引ニ該當セサルモノニ付差金
ノ授受ニ依リテ決濟ヲ爲シタルトキ
ハ第十七條ノ二ノ例ニ依ル
〔國務大臣櫻內幸雄君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=2
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003・櫻内幸雄
○國務大臣(櫻內幸雄君) 只今議題トナリ
マシタ米穀配給統制法案ニ付テ提出理由ヲ
御說明致シマス、申上ゲルマデモナク、米
ハ我ガ國民ノ主要食糧デアリマシテ、此ノ
米穀ノ生產及ビ供給ヲ確保シ、且ツ其ノ價
格ノ適正ヲ期シマスコトハ、最モ必要ナル
コトデアリマスガ、特ニ現下ノ時局ニ鑑ミ、
長期持久ノ事變下ニ於テ、國民ヲシテ主要
食糧ニ毫モ不安ナカラシメマスコトハ、卽
チ各般ニ亙ル國家活動ノ基礎ヲ固ウスル所
以デアリマスト共ニ、出征將士ヲシテ後顧
ノ憂ナカラシメ、且ツ銃後國民ノ生活安定
上絕對ニ必要ナル事柄デアリマス
固ヨリ政府ト致シマシテハ、米穀ノ生產
維持、需給ノ均衡ニ付キマシテハ最善ノ努
力ヲ拂ヒ、又米價ノ適正ニ付キマシテモ、、
米穀統制法ノ運用等ニ依リ、萬遺憾ナキヲ
期シテ居ル次第デアリマス、幸ヒ事變勃發
以來一年有半ヲ經タル今日、國民ハ〓糧ニ
聊カノ不安モナク、一途長期建設ニ邁進ス
ルコトヲ得マスルノハ、一ニ國土ノ恩惠デ
アリマスト共ニ、我ガ農山漁村ノ大ナル努
力ニ依ルモノデアリマシテ、誠ニ感謝ニ堪
ヘヌ所デアリマス、併シナガラ若シ萬一天
候其ノ他ノ關係ヨリ、現在ノ米穀事情ニ急
激ナル變動ヲ來スガ如キ事情ノ起リマシタ
場合ヲ想像致シマスナラバ、今日ニ於テ豫
メ之ニ對應スル爲適切ナル方策ヲ講ジテ置
キマスコトハ、極メテ肝要ノコトト確信ス
ルノデアリマス、隨ヒマシテ政府ニ於テハ、
此ノ問題ノ重要性ニ鑑ミマシテ、本年以降
ニ於ケル米穀ノ生產ニ關シテ、一面ニ於テ
必要ナル增產計畫ヲ考慮致シテ居ルノデア
リマスガ、殊ニ配給ノ問題ニ關シマシテハ、
米穀需給ノ圓滑、價格ノ適正ヲ圖ル上ニ於
テ、米穀配給統制ノ必要アリト認ムルノデ
アリマス、卽チ平戰時ヲ通ジ、特ニ戰時經
濟下ニ於テ、米穀ノ需給ノ調整及ビ價格政
策ノ萬全ヲ期シ、一朝米穀事情ノ急激ナル
變動ニ際會致シマシタ場合ニ於テモ、國民
生活ニ脅威ヲ與フルガ如キコトノ絕對ニナ
キヤウ、豫メ十分ナル整備ヲ致シテ置クコ
トノ必要ヲ痛感スルノデアリマス
然ルニ現在ノ米穀取引事情ヲ見マスルニ、
配給機構ニ遺憾ノ點ガ尠クナイノデアリマ
シテ、殊ニ現在ノ米穀取引所ニ於キマシテ
ハ、極メテ自由ナル投機取引ヲ行ヒツツア
リマス關係上、米穀事情其ノ他經濟事情ノ
變化ニ依リマシテハ、假需要ノ誘發、價格
ノ激動等、米穀ノ圓滑ナル配給、適正ナル
價格ノ維持ニ重大ナル支障ヲ來シ、米穀政
策ノ徹底ヲ期シ難キ事態ノ生ズル虞ナシト
シナイノデアリマス、隨テ以上ノ事情ヲ綜
合シテ考ヘマスル時、此ノ際速ニ取引機構
ノ改革ヲ致シマシテ、投機取引ヲ抑制シ、實
需ニ基ク正米取引ヲ原則トスル機構ニ改メ
ルト共ニ、是ト竝行シテ米穀ノ取扱ヲ爲ス
者ノ許可制度ヲ實施スル等、米穀配給機構
ニ必要ナル體制ヲ整ヘルコトガ焦眉ノ急務
ト存ズルノデアリマス
卽チ右ノ趣旨ニ基キマシテ、此ノ度本法
案ヲ制定致シマシタ次第デアリマスガ、今
本案ノ主ナル內容ニ付テ申上ゲマスレバ
第一ハ、米穀ノ需給ヲ統合シ、是ガ適正ナ
ル價格ヲ構成スル爲ニ、從來ノ米穀取引所
ヲ廢止シ、新ニ日本米穀株式會社ヲ設立シ、
全國必要ナル場所ニ正米取引ヲ主トスル市
場ヲ開設セシメ、一定ノ規準ノ下ニ取引ヲ
爲サシムルコトデアリマス
第二ハ米穀ノ取扱業者ノ安定ヲ圖リ、且
ツ必要アル場合政府ノ配給統制ニ協力セシ
ムル爲、新ニ是等ノ者ニ對シ許可制ヲ設ク
ルコトデアリマス
第三ハ、政府ハ必要アル場合ニ於テ米穀
ノ取扱業者等ニ對シ、賣買、讓渡使用等ニ關
シ、米穀ノ配給統制上必要ナル命令ヲ爲シ
得ルコトト致シタノデアリマス
以上ハ本法案提出理由ノ〓略デアリマス、
何卒愼重御審議ノ上御協贊アランコトヲ希
望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=3
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004・小山松壽
○議長(小山松壽君) 質疑ノ通〓ガアリマ
ス、順次之ヲ許シマス-眞鍋儀十君
〔眞鍋〔儀十君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=4
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005・眞鍋儀十
○眞鍋儀十君 只今議題トナリマシタ米穀
配給統制法案ニ付テ質疑ヲ致シタイト存ジ
マス
事件勃發ト同時ニ國家活動ノ有ユル部面
ニ、之ニ對應スル體制ヲ整備致シテ居リマ
スルコトハ當然デゴザイマシテ、特ニ武漢
攻略ヲ契機ト致シマシテ、事變ハ新段階ニ
入リ、玆ニ長期建設ニ對應スル食糧確保ノ
問題ガ採上ゲラレマシタコトハ、興亞議會
ニ於テ最モ冷靜愼重ニ私共ガ審査シナケレ
バナラヌ問題ト存ジマス、斯ウシタ見解カ
ラ、私ハ本案ニ依ツテ果シテ今政府ノ述べ
ラレマシタヤウナ、所期ノ目的ヲ達成シ得
ラレルモノカドウカニ付テ、政府ノ所信ヲ
質シテ見タイト存ジマス
米穀ノ圓滿ナル配給ト、米價ノ適正ナル
規整トハ、必ズシモ今日ノ戰時體制ナラズ
トモ、平時ニ於テモ必要缺クベカラザルモ
ノデゴザイマスルガ爲ニ、屢〓本議場ヲ通ジ、
政府ハ統制諸案ヲ提出シ吾々ニ協贊ヲ求メ
ラレテ居リマス、私共ハ其ノ都度巨額ノ國
帑ヲ計上シ、又種々ノ政府ノ言明ヲモ信ジ、
協贊ヲ與ヘタモノデアリマスガ、是等統制
諸案ノ現在ノ情勢ハドウナツテ居ルカト云
フコトヲ、本論ニ入ルニ先ダチ政府ニ質シ
テ見タイト思ヒマス
米穀問題ニ對スル一番最初ノモノハ統制
法デアリマス、申スマデモナク、統制法ハ米
價ノ低落時ニ政府ガ買上ゲテ、米價ノ昂騰
時ニ之ヲ賣却シ、玆ニ調節ヲ圖ラウト試ミ
タモノデアリマス、政府ハ本案ニ依ツテ國
庫ニ損失ヲ及ボスヤウナコトハナイト言明
セラレタノデアリマスガ、之ヲ實施シタ後
ノ事績ニ顧ミマスレバ、古米ノ格下、金利、
保管料等ヲ加ヘ、色々ノ失費ガ嵩ミ、其ノ
他ノ事情ハ政府ノ言明ヲ裏切リ、本法ノ爲
ニ國庫ノ損失ハ實ニ二億三千万圓ヲ超エタ
ノデゴザイマス、昭和八年本法ノ不備ニ依
リ、政府ハ重ネテ米穀統制法ヲ提出セラレ
マシタ、言フマデモナク最高最低ノ米價ヲ
公定シ、之ニ依ツテ米穀ノ數量ト價格トヲ
調節シヨウトシタモノデアリマス、然ルニ
此ノ米穀統制法ノ實施後ハ非常ナ增產デア
ツタ爲ニ、遂ニ買上米ヲ抱ヘテ苦境ニ陷リ、
數百万石ノ始末ニ困惑サレタ結果ハ、滑稽
ニモ雨ヨ降レ、風ヨ吹ケ、玆ニ凶作ガ來テ
イ限リハ、始末ノ付カナイト云フ狀態ニ陷ツ
テシマヒマシタ(「ノー〓〓」)ノー〓〓デハ
ナイ、是ガ爲ニ上半期ニ於テ下廻リ、下半
期ニ於テ反騰シタガ爲ニ、上半期ニ賣捌キ
タル貧農ハ、下半期ニ於テ飯米ヲ買入レナ
ケレバナラヌト云フコトカラ、有名ナ飯米
飢饉ガ生ジテ來タ、斯ノ如クシテ此ノ二案
トモ完全ナル目的ヲ遂行スルコトガ出來ナ
カツタ
次ニ生レタモノガ米穀自治管理法デアリ
そう、是ハ實施以來何等ノ效果モナク、缺
點ダケガ暴露サレテ居リマス、遂ニ舊臘物
價抑制目的達成ノ爲、最高米價据置ト云フ
問題ニ逢著シテシマヒマシタ、是ニ於テ米
穀統制諸法ハ完全ニ破綻シ、米價調整ノ機能
ハ時局ノ激流ニ浚ヒ去ラレタト云フ現實ガ
見セ付ケラレルニ至ツタノデアリマス、最早
政府ハ此ノ際舊殼ヲ脫シ、革新的見地ヨリ
根本的改革ヲ斷行スルニアラザレバ、店曝
案ヤ彌縫策デハ到底今日ノ時局ハ救ヒ切レ
ナイモノデアルト、吾々ハ過去ノ實績ニ照
シ結論ヲ見付ケ出シテ居ルガ、政府ノ所感
如何(拍手)
前車ハ屢〓、覆ツタ、其ノ重ナル苦キ經驗
ハ政府自體ガ持ツテ居ル筈、本案ノヤウナ
不徹底ナモノデ政府ノ所期セラレル目的ガ
貫徹サレルナラバ、旣ニ此ノ前制定セラレ
テ居ル統制諸法ニ依ツテ、政府ハ强權ヲ以
テ其ノ目的ヲ達成サレテ居ラナケレバナラ
ヌ、今更半官會社ヲ組織シテ、吾々ニ革新政
策ト銘打ツテ協賛ヲ求メラレマシテモ、之
ニ安心シテ吾々ハ協贊ヲ與ヘルコトガ出來
ヌノデアリマス、固ヨリ現在ノ配給機構ガ
米穀取引所、正米市場、米穀取扱業者ノ團
體米穀生產者ノ團體ト、其ノ有機的統一
ヲ缺イテ居ル點ニ付テハ私モ認メマス、是
ハ他ニ自ラ別箇ノ方途ガゴザイマス、後一
參考マデニ農林大臣ニ御知ラセスル、唯漫
然トソレ等ノモノヲ搔集メテ、茲ニ巨額ノ
國帑ヲ費シテ半官會社ヲ組織シ、之ニ依存
シテ戰時體制下ノ米穀對策ヲ解決サレヨウ
トスルコトハ、誤レルノ甚ダシイモノダト
私ハ考ヘル(拍手)
斯ウ論ジテ參リマスト、政府自體モ本案デ
ハ中々困難ダト肚ノ中デハ知ツテ居ラレル
筈之ヲナゼ豫見シナガラモ提出サレナケ
レバナラナイノデゴザイマスカ、世間往々
批評スル者ガアル、總理大臣自ラ總親和、
總努力ヲ「モットー」トシ、只管此ノ時局切拔
ケニ邁進サレヨウトシテ居ルニ拘リマセ
ズ、國民ノ間ニ異常ノ相剋摩擦ヲ惹起スベ
キ、而モ內閣自體ニ於テスラ、今日ニ至ル
マデ提案スルコト能ハザリシ程紛糾ヲ重ネ
ラレタト聞イテ居ルガ、ソレヲシモ押切ツテ
提出シナケレバナラナカツタ理由ノ中ニハ、
取引所救濟ノ必然性ト、產組進出ノ推進力
ニ依ルト世間唱ヘル者ガアルガ、ソレハ如
何デゴザイマセウカ(拍手)本案ヲ立案セラ
レタ最初ハ、固ヨリ二ツノ問題ガ中心デア
ツタ、ナゼ政府ハ率直ニソレヲ言ハヌカ、
之ヲ言ヘバ取引所ヲ國家自ラ賠償シナケレ
バナラヌ責任ト、商工、農林兩省所管ノ相
剋摩擦ノ激成ト、此ノ二ツノ問題ニ逢著スル
ガ故ニ、幸ヒ時局ニ便乘シテ見エザル力ノ
或ルモノヲ得タ上、非常取扱ヲ目論マレタ
モノノヤウニ吾々ハ見ラレルノデアルガ、
此ノ點ハ吾々ノ誤解ヲ明確ニ解カレルヤウ
ニ希望致シマス
ナゼ私共ガサウ云フ疑問ヲ持ツノカ、是
ハドウシテモ政府ガ複雜ナル內部關係カラ
現存機關ヲ吸收シ、市場中心主義ヲ採用
スルト云フナラバ、言換ヘレバ現存機關ヲ
政府ガ取上ゲテ半官會社ニ使用サセルト云
フコトナラバ政府自ラ法律ヲ以テ廢止ヲ規
定スル時、卽チ此ノ問題ハ賠償〓算サレナ
ケレバナラヌ、此處デナゼ綺麗サツパリ賠
償〓算シテ、時代色豐カナル新機軸ヲ出サ
ウトハサレナイカ、此ノ問題ニ拘ハラナケ
レバナラヌ所ニ、總テノ明朗化セザル原因
ガ潜在シテハ居ラヌカ、大藏大臣モ御列席
デアルガ、恐ラク此ノ問題ハ他ノ犧牲產業
トノ振合上補償スルコトハ出來ナイ、斯ウ
答ヘラレルカモ知レヌ、ソレナラバ御答ヲ
俟ツマデモナイ、他ノ場合デハ其ノ犠牲ト
ナリタル產業ノ代リニ、其ノ同一產業ヲ國
家若クハ第三者ガ其ノ儘引繼イデ營業スル
モノデハナイガ、此ノ場合ニ限リ、其ノ犠
牲トナリタル同一產業ヲ他ノ會社ガ引繼イ
デ營業ヲ爲スコトニ依ツテ、六分カラ八分
ノ配當ニアリ付ケルノダ、サウシテ廢止セ
ラレル現存機關ハ、現ニ政府ノ特許ヲ受ケ、
一定ノ場所ヲ指定シ、殘サレタル尙ホ四五
年ノ營業期間ヲ持ツテ居ルモノデアリマス
ルガ、之ヲ他ノ會社ニ取消禁止シテ讓渡シ
ヨウト云フノナラバ、他ノ犠牲產業トハ全
然其ノ意味ヲ異ニシテ居ルノデアリマス、
尙ホ私ハ此處デ一言附加ヘテ置カナケレバ
ナラヌコトハ、他ノ犠牲產業ナラバ、平和
產業ガ軍需產業ノ爲ニ吸收サレテ犧牲ニナ
ツタ、ケレドモ是ハ何レノ日ニカ平和來ル
ノ時、復興スベキ期待ヲモ掛ケ得ルモノデ
アルガ、此ノ問題ニ限リ、例ヘバ平和來ノ
日ト雖モ、最早復興ハ許サレナイト云フ所
ニ、非常ニ異ツタ點ヲ持ツテ居ルモノデゴ
ザイマス、政府ハ之ヲ救濟デモスルヤウナ
積リデ居ラレルカラ間違フ、有形無形ノ權
利-商權ヲ買收スルノデアリマス、吾々
ハ決シテ今日之ヲ一取引所ノ爲ニ代辯ヲシ
ヨウトスル者デハナイ、時局ノ名ニ隱レ、
故ナク一切ノ私權ヲ抹消セントスルガ如キ
虞ヲ國民ニ抱カシムルガ如キコトガアツテ
ハナラヌト云フ所ニ、私ノ話ノ重點ガ置イ
テアル(拍手)或ハ言フカモ知レヌ、成程國
民ニハ犠牲ヲ强要スルケレドモ、其ノ國民
ノ犧牲以上ニ國家ニ必要ガアルノダ、斯ウ
力說サレルナラバソレデ宜シイ、ソレナラ
バ國家總動員法ニ據ルベキモノダ、私ハ寧
ロ何故國家總動員法ニ據ラヌカト申上ゲル、
寧ロ國家總動員法ニ據ツテ戴ケバ、其ノ第
十條ハ「政府ハ戰時ニ際シ國家總動員上必要
アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ總動員物
資ヲ使用又ハ收用スルコトヲ得」ト書イテ
アツテ、所謂徵發デアリマス、此ノ國家總
動員法デスラ、强制的處分ニ依リタル損害
三、勅令ノ定ムル所ニ依ツテ補償スルト
書イテアル、何故ハツキリソレデハ是デ行
カレナイカ、曖昧含胡ノ中ニ事ヲ解決サレ
ヨウトスルカラ、明朗ヲ缺ク結果トナツテ參
リマス、私ハ此ノ間ノ事情ハ誰ヨリモ前ノ
商工大臣、現在ノ農林大臣ガ一番能ク心得
テ居ラレルト思ヒマス(拍手)諄クハ申上ゲ
マセヌ、此ノ問題ガ嘗テ四度帝國議會ニ登
場致シマシタ際、我等ノ先輩櫻內先生ハ人
情ノ機微ニ通ジ、此ノ問題解決ノ爲ニハ何
クレトナク御指導、御誘掖ヲシテ戴キマシタ、
サウシテ今日御列席ノ松村政務次官ガ自ラ
執筆シテ、玆ニ作上ゲラレタモノガ米穀自治
管理法ニ對スル附帶決議デゴザイマス(拍手)
卽チ「本法ノ實施ニ際シテハ米穀取引所竝ニ
米穀業者ニ重大ナル影響ヲ與ヘザルヤウ特ニ
注意シ損害アリタル場合ニハ適當ナル對策
ヲ講ズベシ」ト明記致シテ居リマス、私ハ
人間櫻內ト云フモノヲ能ク存ジテ居リマス
ルガ爲ニ、是ハ本人ノ眞意デハナイノデハ
ナカラウカ(「ヒヤ〓〓」)マサカ聰明叡智ノ
櫻內サンガ江北ノ枳殼トナラレルヤウナコ
トハ斷ジテナイト思フ、冀クハ本員ノ質問
ヲ通ジ、本議會ニ於テアナタノ所信ヲ天下
ニ公明セラレルヤウニ、アナタノ爲ニ要求
シテ置キマス(拍手)
今日ノ國民ヲ犠牲ニテサルト云フナラバ、
ドウカ犠牲甲斐ノアル犧牲ニシテ戴キタイ
ノデアリマス、若シ是デ何處マデモ政府ガ
押通サウト云フナラバ、政府ノ所信ガ分リ
そく、然ルニ國家ハ補償ノ義務ナシト言フ
口ノ下カラ、玆ニ新會社ハ利用價値ヲ認メ
ナケレバナラナイノデゴザイマス、米穀取
引所、正米市場ノ土地建物其ノ他ノ設備ヲ、
建築ノ價格ト時價トヲ基準ニ評價シタモノ
ノ外ニ、マダ利用價値ト云フモノガ認メラ
レルトスレバ、ソレハ一體何ナノデアルカ、
私ハ利益率デアルノカ、權利デアルノカ、
此ノ利用價値ト云フモノヲ金額ニ見積レバ、
凡ソ何程ニ該當スルモノデアルカ、政府ノ
御意見ヲ伺ツテ置キマス、私ノ見ル所ヲ以
テスレバ、此ノ米穀取引所其ノ他ノ建物ハ、
先程申シマシタヤウニ、別ニ取上ゲテ此ノ
問題ト關係ナシニヤラナケレバナラヌモノ
デアルノニ、ソレヲヤラナカツタ結果ハド
ウ云フ風ニナツタノカ、此處ヘ此ノ缺陷ガ
暴露シテ參リマス、卽チ自由經濟時代ナラ
バイザ知ラズ、統制經濟時代カラ既ニ時代
ハ計畫經濟時代ニ入ツテ居リマス、サウシ
テ統制法、管理法ニ依ツテ既ニ取引所ハ拘
束ヲ受ケ、膠著ヲ致シテ居リマス、ソレヲ今
日自由主義經濟時代ノ遺物デアルモノヲ、何
ガ故ニ政府ガ之ヲ吸收シテ、此ノ機能ヲ喪
失シタルモノヲ加ヘタル新會社ヲ拵ヘナケ
レバナラヌノデアルカ、其ノ常識ガ私共ニ
ハ分リマセヌ(「ヒヤ〓〓」)ソレガ爲ニ米穀
業者ニアラザル〓算取引ノ市場員ニモ、米
穀取扱業者ニ一遍入レテ、之ヲ會社ノ市場
員ニシナケレバナラヌト云フヤウナ缺陷ヤ、
之ヲヤラウトスルカラ麥、大豆其ノ他ノ雜
穀肥料マデ、其ノ會社ノ仕事ノ範圍ニ持込
マナケレバナラヌト云フヤウナ矛盾ガ生ジ
テ來ルノデゴザイマス
言フマデモナク米穀取引ノ歷史ト申シマ
スルノハ倉庫中心ノ指シ時代カラ、今日
ハ鐵道ヲ利用シ、電話ヲ利用シ、銘柄ガ指
定サレマスナラバ、鐵道ノ輸送途中デモ取
引ガ出來ルヤウニナツテ居リマスカラ、所
謂取引ノ簡易化ニ因ル「コスト」ノ低下ヲ來
シテ居ルノデアリマシテ、寧ロ取引市場ハ
今日デハ相場ヲ建テルト云フ所ニ、中心ノ
仕事ガ置カレテ居ルヤウニモ見エテ居リマ
ス、ケレドモ斯ウ云フ施設ニ依ツテ賣買ヲ
行ヒ相場ヲ建テナクテモ「ラヂオ」ノ普及シ
タ今日、生產地ト消費地ノ氣配ニ依リテ爲
替相場ヲ建テルト同樣ナ適正ナ方法ニ依ツ
テ、他ニ名案ハゴザイマセヌカ、私ハ此ノ
新會社ノ市場デ相場ヲ建テサセヨウト云フ
コトハ表面デ、實ハ政府ガ將來强權ヲ以テ
相場ノ公定ニ指圖ヲサレル時期ガ來ルダラ
ウト思ツテ居リマスルガ、サウ云フ進ミ方
ヲスルノデハゴザイマセヌカ、何故ナラバ、
只今提出セラレテ居リマス豫算關係モ手傳
ヒマシテ、物價ハ再騰ノ時期ニ入リマシタ、
卽チ下ツタモノガジリ高ニナツテ參リマシ
ク、サウシテ政府自體ガ强行指示價格ヲ御
定メニナツテ、之ニ從ハナケレバナラヌト
云フヤウニ規定サレテ居リマス以上ハ、私
ノ先程申シマシタコトニ落著カナケレバナ
ラヌ筈ダ、大體サウ云フ外ノ物ハ公定價格
ヲ持ツテ居ツテ、其ノ物價ノ中カラ米穀ダ
ケヲ切離シテヤラウト仰シヤルコトニハ私
ハ不贊成デアリマス、現下ノ情勢ニ於キマ
シテハ、全物價ヲ一本トシタ中央公定價格
ノ規整所カ何カヲ設ケテ、是ト聯關シテ米
價ヲ規整スルデナケレバ、米穀ノミニ依ツ
テ米價ガ決定サレルモノデハゴザイマセヌ
ノデ、此ノ點ハ御再考ヲ願ツテ置カナケレバ
ナラヌト思ヒマス、況ヤ此ノ問題ノ起リマシ
タ當時ニ、〓算取引ガ投機ニ利用サレルコト
ヲ慮リ、實物取引ヲ主トシテヤラウトナサイ
マシタコトハ洵ニ賢明ナ策デアリマス、然ル
ニ〓算ヲ三月トシ延ベヲ二月トシタノヲ、
實物主義デ行カウト云フノヲ、〓算取引ハ認
メナイガ、延取引ハ認メル、サウシテ差金
ノ決濟モ場合ニ依ツテハ出來ル、是ナラバ
米穀ノ取引ヲシテ實需ニ應ジ、實米ノ流レ
ニ從ツテ圓滑適正ヲ期セントスル政府ノ趣
旨ニハ、延取引ヲ許スコトハ合致致シマセ
ヌガ、斷然此ノ機會ニ於テ現物ノミニ限定
セラルル御意思ハナイカ
一體農林大臣ハ屢〓、米價調節ノ爲ニハ配給
機構ノ强力ナル統制ガ必要ダト仰セラレ、
當局モ亦生產ヨリ消費ニ至ル部面ノ一貫セ
ル統制ガ必要ダト强調サレテ居リマスガ、
一貫締制トハ具體的ニ何ヲ御指シニナルノ
デゴザイマスカ、本案ニ依ツテ一貫統制ヲ
求メヨウトナサルノデゴザイマスカ、私ハ
本案ノヤウナ自由主義經濟機構內ノ市場取
引デハ米價ノ抑制モ出來ナケレバ、價格
ノ統制モ出來ヌト考へテ居リマス、此ノ點
ハ如何ニ御考ニナリマスカ、米價ヲ左右ス
ルモノハ生產配給ノ兩面カラ一貫シタ根本
國策ガナケレバ是ハ出來マセヌ、此處デ御
伺申上ゲタイノハ、政府ハ本案ニ依ツテ國
家管理ノ豫備段階ニ入ラレルモノデハナイ
カト見エルノデアリマスガ、是ガ國家管理
ノ豫備階梯デハゴザイマセヌカドウカ、又
全國ノ配給業者ヲ全部完全ナル手數料商人
ニシテシマフト云フ御意思ハナイカ、是ガ
モウ一步進ンデ米穀ハ專賣ニシナケレバナ
ラヌト云フ御意見ハ御持チデナイカ、其處
〓
マデ突進ンデ將來ニ對スル農林大臣ノ御意
見ヲ此ノ際承ツテ置キマス
次ニ私ノ申上ゲヨウトスルコトハ產業組
合ノ市場員問題デアリマス、世間往々本案
ハ戰時米穀對策上必要ダト云フヤウニ唱ヘ
ラレテ居リマスケレドモ、其ノ實際ハ米穀
市場ニ產業組合ノ進出ヲ許シ、此ノ新會社
ノ米穀市場ヲ產業組合ノ米穀販賣所ノ形ニ
マデ進メルモノダト云フヤウニ見テ居ル者
ガゴザイマス、言換ヘレバ前垂レト洋服ト
ヲ取替ヘルダケノ結果ニシカナラヌト見テ
居ル者ガゴザイマス、之ニ對シテ私ハ立法
上ノ疑義ト、機構破壞ノ危險ノ疑義トヲ持
ツテ居リマス、新機構ハ市場取引ヲ根幹ト
シテ居ル、而モ營利追求ノ尖端ヲ行クモノ
ハ何デアルカト云フト市場員デアリマス、
其ノ市場員ニハ產業組合ヲ公然參加サセル
ノデアリマス、所謂產業組合ハ公然營利的
事業ニ入リ込ンデ來ルノデアリマス、生產
者團體タル產業組合ガ市場員タルノ資格ヲ
持ツテ投機的延取引ニマデ入リ込ンデ來ル
コトヲ許スト云フコトハ、立法者ノ再檢討
ヲシテ見ナケレバナラヌ點ダト思ヒマス、
產業組合ノ營利行爲ヲ法律デ公認スルト云
フコトハ、產業組合自體カラ考ヘテモ其ノ
本旨ト相容レナイモノガナイカ、殊ニ商法
ニ依レバ取引所ニ於ケル取引ハ商行爲デア
リマス、此ノ商行爲ヲ許シテ投機的延取引
ニ參加シタル產業組合ノ危險ハ、是ノ背後
タル生產者ガ此ノ危險ノ分擔者ニナツテ來
ルノデアリマスガ、ソレデ宜シウゴザイマ
スカ、殊ニ產業組合ニハ賣行爲ダケヲヤラ
セルト仰セラレマスガ、市場員ト云フ者ハ、
賣行爲ダケヲ許シテモ適格者デゴザイマス、
是ハ今日マデノ習慣ト餘程違ツテ參リマス
ルノデ、此ノ點モハツキリシテ置キタイト
思ヒマス、私ハ心配致シマス、此ノ事變下ニ
於テ產業組合ガ投機取引ニ乘出シ、是デ銃後
農民ノ生活ガ安定致シマスカ、是デ銃後農
村ノ福祉主義ニ合致致シマスカ、寧口現在ノ
情勢ニ於テハ、行過ギタ產業組合ヲ矯正スベ
キ事態ニハ入ツテ居リマセヌカ(拍手)何ト考
ヘテモ刻下ノ總力戰ニ對スル米穀對策ノ根幹
ハ、農村ガ眞面目ニ生產力ノ維持增進ヲスル
コトデアツテ(「ヒヤ〓〓」)商業界ニ進出スル、
投機ニハ手ヲ出ス、ソレガ現時戰時體制下ニ
於テ爲サナケレバナラヌコトダトハ私共ハ
考ヘマセヌ(拍手)斯ウ云フコトヲ提ゲテ、
是ガ戰時體制下ノ米穀對策ト仰セラレルナ
ラバ、僣上ノ沙汰ダト申サナケレバナラヌ
(「ヒヤ〓〓」)
元來產業組合ノ配給組織ハ、一見中間費
用ガ輕減サレルヤウニ見エルガ、事實ハ決
シテサウデナイ、何故カナラバ、檢査料ノ
優遇、農業倉庫ノ政府補助、共同販賣ノ政
府奬勵金、縣販聯職員ノ補助、稅金ノ免除、
其ノ他ヲ合算致シマスレバ、社會的原價ハ
寧ロ之ニ依ツテ〓騰サレテ居ルモノダト申
サナケレバナラヌ、本案ノ如キハ徒ニ弱小
商人ヲ壓迫シ、生產者ニ媚ビルガ如ク見セ
掛ケテ、實ハ產業組合ニ利潤ヲ移轉スルモ
ノノヤウニ吾々ハ見テ居ル(拍手)今實際的
ノ問題ニ入ツテ行ケバ、生產者ガアル、產業
組合ノ農業倉庫ガアル、縣販聯ガアル、全
販聯ガアル、今度ノ新會社デ市場ガ市場員
ヲ使フ、ソレカラ白米商人、サウシテ消費
者ニ渡ル、此ノ七ツノ段階ヲ經ナケレバ吾
吾ノ口ニハ入ラヌ、現在ハドウナツテ居ル
カ、米屋ガヤツテ居ル所ヲ見ルト、生產地
ノ所へ持ツテ來テ買出人ヤ移出商ガ居ル、
サウシテ仲買、問屋、サウシテ白米商カラ
一般ニ入ツテ來ル、此ノ間色々ノ手數料ヲ
合算シテ見ルト、本會社ニ依リテ中間手數
料ノ支拂ハルルモノハ、〓算シテ石ニ付キ
一圓五十錢ト思ヒマス、今マデノ機構ヲ改
革シテ統一シテヤルトスレバ、凡ソ七十錢
デ濟ンデ居リマス、政府ハ中間機構ヲ簡略
シテ、一般消費大衆ニ安イ米ヲ食ハセ得ル
ト云フ確信ヲ持ツテ居ルカ、私ハ此ノ點ニ
付テハ、日本國民ガ全部米ヲ食ハナケレバ
ナラヌ者バカリデアル所ニ、アナタノ本當
ノ氣持ヲ聽イテ置カナケレバナラヌ、本案
ガ通過シテ實施サルレバ-米價ノ根本ニ
於テハ別ダ、中間機關ノ省略サルルコトニ
依ツテ出テ來タ金額ダケハ、米ノ値カラ引
イテ戴ケルカドウカ、私ハ逆ニコソナレ、
引ケルモノハナイト思フ、殊ニ是デ米穀市
場ヲ通ジテ米穀ヲ統制ナサラウト云フ所ニ
ハ、私ハ幾多ノ又難關ガアルト思ヒマス、
新會社ガ出來テ、市場員ノ市場內ヤ市場地
區內ノ取引ハ、アナタノ手デ統制ガ出來ル
ダラウ、今度ハ市場地區外ヤ非市場員ノ大
多數ノ取引ヲ、ドウシテアナタハ御統制ニ
ナル積リデアルカ、統制ノ出來ル範圍ノモ
ノハ統制サレルガ、統制ノ出來ナイ範圍ノ
モノハ、結局本案ニ依ツテハ統制カラ免レ
得ル機構デハゴザイマセヌカ、事ニ依ル
ト、國家トシテハ此ノ市場ヲ通ジテ大キナ
米ノ流ヲ抑ヘテ行ケバ間違ヒガナイト仰シ
ヤルカモ知レヌガ、サウシタ觀念的ナ机上
論デハ活キタ今日ノ取引ハ中々出來ルモ
ノデハゴザイマセヌ、寧ロ私ハ反對ニ此ノ
市場外ノ取引ガ、面倒ナ市場內ノ取引ヨリ
ハ却テ助長サレテ、ソコニ大キナ一ツノ流
ガ出テ來ルト思フ、經費ハ嵩ミ、複雜ナ手
數ハ要ルト云フナラ、モウ一ツ途ガアレバ
其處ヲ通ラウトスルノガ人情デゴザイマス、
結局市場ノ內ト外ト兩方ヲ統制スル法案デ
ナケレバ、今日ノ米穀ノ對策トハ申サレナ
イト云フ信念ノ下ニ、私ハ之ニ對スル兩方
ノ統制ニ付テ、政府ガドウ云フ御意見ヲ持
ツテ居ラレルカヲ承リマス、市場ノ外ガ何
等ノ制限ヲ受ケナイト云フコトハ、其處ニ
一ツ產組ノ目ヲ著ケラルル所モアル、睨ミ合
セテ、內ト外トノ有利ナ操作モ出來マス、何故
政府ハ此ノ際思切ツテ絕對市場主義ニナサ
イマセヌカ、市場ヲ通ズルニアラザレバ事實
上ノ取引ガ出來ナイヤウニシテ、市場員ノ資
格ヲ持ツテ居ル者デナケレバ配給ノ特典ヲ與
ヘヌヤウニシテ、玆ニ初メテ本當ニ政府ノ御
趣意ガ通ル筈デアリマス、政府ハロデハ言
ハヌガ、將來ドウシテモ斯ウスル傾向デア
ルト云フコトハ私ハ認メザルヲ得ナイ、何
故ナラバ市場ノ取引ヲ繁榮ナラシメ、手數
料ヲ增大サセル爲ニハ、絕對市場主義デ、
政府ノ市場ノ方へ抱ヘ寄セナケレバイカヌ
ノデアリマスカラ、政府ハ將來ハキツトサ
ウサレル筈ダト思フガ、一層ノコト今ノ內
ニ絕對市場主義ニナサイマスコトハ如何デ
アリマスカ、私ハ是ハ分ラヌカラ聽イテ置
キマスガ、政府ハ特殊ノ事情ノアルモノニ
ハ大集散地ノ市場トシテ特別ニ許可ニナ
ルヤウニ聽イテ居リマスガ、ソレハドノ程
度ノモノデ、何處邊リニ置カウトサレテ居
ルカヲ一ツ此處デ承ツテ置キマス、ソレニ
麥トカ、大豆トカ、雜穀トカ、肥料ダトカ、
ソレ等ノ賣買取引ヲ爲サウトナサイマス所
ハ大體ドウ云フ方面デアツテ、ドノ位ノ
程度デアリマスカ、承ツテ置キマス
私ハ幸ヒ話ガ此處ニ參リマシタカラ、產
業組合ト云フモノニ付テ、モウ少シ農林大
臣ノ御意見ヲ承ツテ置キマス、私ハ此ノ頃
一ツノ疑問ヲ持ツテ居ル、ソレハ產業組合
ト云フモノハ、果シテ農民ノ利益ヲ代表ス
ルモノデアルカドウカニ付テノ疑問デアリ
マス、今日ノ產業組合ハ政府ノ保護助長政
策ノ溫床ニ育チ、恩寵ニ狎レ、現今農村ヨ
リハ乖離シテ居ルトノ批評ガアルガドウ
カ、ソシテ一部ノ官僚ト產業組合商ノ指導
ノ下ニ、地主ヤ富豪ノ特殊機關ニナツタヤ
ウニ見エル、政府ノ當局者モオ居デニナル
ガ、今日ノ組合員中ノ大多數ハ小作人デア
リ、自小作農デアルト思フ、產業組合ノ役
員ノ中デ小作人ヤ自小作農カラ何人役人ガ
出テ居ルカ、數字ヲ御示ヲ願ヒタイ(拍手)
本當ニ產業組合ガ農民ノ利益ヲ代表スルモ
ノナラバ、本會社ガ出來テモ米價ハ高カラ
ンコトヲ希望スルニ決ツテ居リマス、サウ
シテ最高價格維持ノ爲ニハ賣惜ミモ致シマ
セウ、產地米穀ノ蒐集ヲ獨占化シ得ラレレ
バ米穀ノ供給權ヲ確保致シマシテ、會社
ハ產組ノ間接ニ操縦スル所トナリ、吊上ニ
拍車ヲ加ヘテ參リマセウ、何カ政府ハ全販
聯ダケシカ入レナイコトヲ恩惠ノヤウナ口
吻デ申サレルガ、產組ノ中央會長ハ其ノ全
國ノ大會ノ席上、全販聯シカ許可ハ取ラヌ
ガ、各府縣ニ此ノ市場ノ出張所ヲ設ケルコ
トニ依ツテ、全部入レタノト同一ノ結果ハ
現ハシ得ルト說明ヲ致シテ居リマス、此ノ
說明ハ誤デアルカドウカ、米穀ガ本案ニ依
ツテハ統制ガ出來マイト考ヘテ居リマスバ
カリデナシニ、寧ロ米價ガ上ルト云フ一ツ
ノ理論ヲ私ハ持ツテ居リマス、是ハ內地ノ
米穀ノ實收高ハ十三年度ニ六千六百万石デ
アリマスガ、消費ハ次第ニ增大致シマス、
供給ハ次第ニ窮屈トナツテ參リマス、昨日
カ一昨日ノ新聞ヲ見マスト、何カ政府ハ四
百万石ノ增產計畫ヲ持ツテ居ラレルト云
フ、此ノ四百万石ト云フ數字ノ基礎ハ何處
カラ來テ居ルカト云フト、昭和十四米穀
年度ノ需給推算ノ特越高維持ガ四百万石ヲ
必要トスルト云フ數字ガ四百万石デ、四百
万石ノ增產ガ出來ルト云フコトノ基礎ニ立
ツタ數字デハナイヤウデゴザイマス、サウ
シテ米價ハ次第ニ政府ガ抑制シテ參ルト致
シマスト、米價ハ抑制サレル、增產ハ出來
ルト私共ハ考ヘマセヌ、米價ガ抑制サレレ
バ、農民ハ米價ノ抑制サレルモノヨリハ他
ニ有利ヲ仕事ガアレバ、ソツチノ方ニ向フ
コトニナツテ、私ハ寧ロ減產ヲコソ來セ、
增產ニハナラヌト思フ、政府ノ本案ノ施行
ニ依ツテドノ位米穀ガ增產セラレ、米價ガ
調節サレルカト云フ、其ノ御說明ヲ聽イタ上
デ、更ニ又委員會ニ於テ次ノ質問ヲヤルノ
デアリマスガ、其ノ前ニ今囘ノ市場ニ於テ
市場員タル產業組合ト米穀商ノ間ニ、ドチ
ラニモ平等ノ立場ニ於テ取引ヲサセルト云
フ御意思デアリマスカ、例ヘバ產業組合ハ
米穀檢査ヲ受ケル場合ニモ檢査料ガ安イ、
商業組合ハ高イ、同ジ米穀市場ノ中デ國家
ガ管理ヲシテ居ツテ、一方ニハ高ク取ツテ一
方ニハ安ク取ルト云フ、此ノ點ハ平等ヲ缺イ
テ居ルモノト思フガ、斯樣ナ點ハ平等ノ立場
ニ兩方ヲ立タセテ取引ヲサセル御意思デゴ
ザイマスカドウカ、寧ロ私ハ產業組合ハ高
ク商業組合ハ安ク檢査料ヲシナケレバナラ
ヌモノダト思フ、ナゼナラバ、平等ノ値段
ニシテモ、產業組合ハ戾シガアル、其ノ戾
シト見比ベテ本當ノ平等ガ出來ルモノデア
リマシテ、サウ云フ點ヲ一例ヲ引イタニ過
ギマセヌノデ、ドウセ今度ノ市場ニ一〓ニ
入ルト云フナラバ、全部ニ對シテ平等ノ取
扱ヲサレナケレバナラヌト思ヒマスガ、政
府ノ御意見ヲ伺ツテ置キマス
私ハ今度ハ商工大臣ト農林大臣ト御列席
ノ上デ聽イテ見タイコトガアル、農村ニ於
ケル自小作農ハ何ダカ沒落ノ悲運ニ傾イタ
モノモボツ〓〓見エルヤウデアリマス、此
ノ人々ハ何處ニ流レテ來ルカ、結局ハ都市
集中ノ傾向ヲ增加シテ參リマス、農村ニハ
每年四十万人ノ自然增加ガアルト思フ、斯
ウ云フ人ノ中デ、有能者ハ都會ニ入ツテ中
小商工業者トナリ、無能者ハ店員トナリ、
勞働者トナリマス、シテ見レバ商人ト產組
トハ唇齒輔車ノ間柄デアリマシテ、相互扶
助ノ關係ニナケレバナリマセヌ、商工問題
ハ卽農村問題デアリ、農村問題卽商工問題
デアル、此ノ際判然ト各〓其ノ使命ニ鑑ミ、
其ノ分野ニ準據シ、濫リニ他ノ領域ヲ侵サ
ナイト云フ商工、農林兩省ノ職能分野ヲ玆
ニ明確ニサレテ貰ヒタイト思ヒマスガ、ド
チラカラデモ宜シイカラ、何處ガ分界デア
ルノカ明瞭ニ御答辯ガ願ヒタイ、何カ先日
法案ヲ見テ內容ヲ聽キマスト、產業組合ハ
賣リ一方デ商人ハ買ヒ一方ダト申サレテ居
リマス、商工大臣、之ニアナタハ御承服ニ
ナルカ、此ノ市場ニ於テ賣リハ產業組合ダ
ラウ、買ヒガ米穀業者トハ私ハ考ヘマセ
ヌ、此ノ會社ニハ、賣ル方ハ集荷獨占ノ產
業組合、會社ノ市場ニ入ツテ來ルト、之ヲ
下カラ受ケテ買フ者ハ米穀業者、此ノ米穀
業者ノ外ニ一般ノ者ガ、此ノ市場ニハ石數
ノ制限コソアレ買ヒニ行ケルノデハナイ
カ、向フカラ來ルモノハ產組一本、下デ受
ケルモノハ商人ト一般購買者ト致シマスレ
バ、此ノ比率ガドウナルカハ別物ダガ、
本ヲツカマヘテ半分ヲ貰フト云フ、此ノ「ト
リック」ハ私ハ中々商人ガ承服スルモノデハ
ナイト思ヒマス、一體茲ニ御名前ヲ指シテ
モ惡ウゴザイマスガ、我黨ノ農村問題ノ權
威者高田耘平氏デスラ、產業組合ノ行キ
過ギニハ異見ヲ持ツテ居ラレル、卽チ產業
組合ハ、販賣組合ノ如キ、購買組合ノ如
キ、農家ノ農業生產上必要ナ物品ニ限リ、
產業組合系統ノモノガ之ヲ取扱ヒ得ルノダ
ト云フ所ニ、限界ヲ求メタイト云フ御意思
ヲ持ツテ居ラレル、私ハ農林省ノ米穀配給
調査會ノ方ニモ關係ヲ持ツテ居リマスガ、
現在其ノ外ニ問題トシテ、相當規模ノ消費
者團體ニハ直接產業組合カラ〓シテ宜イト
云フコトニシタイ爲ニ、問題ガ引掛ツテ動
カヌ所モゴザイマス、由來農林省ニハ有馬
「イズム」ガ未ダニ潜勢力ヲ持ツテ居ルト云
フコトデゴザイマスガ、農林大臣ノ考ト共
ニ商工大臣ノ考モ此ノ際聽イテ置キマス、
配給機構ノ改革ニ對シマシテ、商工大臣ハ
根本的ナ一ツ對策ヲ御示ヲ願ヒタイ、キツ
ト農林大臣ノコトデアリマスカラ、本案ガ
通ツテモ米穀業者ニハサウ影響ハナインダ
カラ、今ノ問題ハアトカラニシヨウデハナイ
カト斯ウ言ハレルカモ知レヌガ、法律ガ出
來テモ業者ハ何時デモ無關係ダト云フコ
トハ、度々繰返シテ聽キマシタ、サウシテ
何遍聽イテモ法律ガ出來ルト業者ニハ影響
ガアルノデアリマス、現ニ米穀統制法カラ
米穀自治管理法ト、此ノ法律ノ出來タオ蔭
デ、今日デハ土地ノ產米スラ土著ノ米穀商
ガ取扱ヘナクナツテ、琵琶湖ヲ中心トシタ
大津市ノ如キ、米ノ新潟縣ノ新發田町ノ如
キ、金澤市ノ如キ、到頭土著ノ米穀商ハ產
業組合ノ爲ニ廢業スルノ已ムナキニ至リツ
ツアル狀態デゴザイマス(「農民ガ目覺メテ
來タ證據ダ」ト呼フ者アリ)本案ニハ廢業セ
ヨトハ書イテゴザイマセスケレドモ、廢業ノ
已ムナキニ結果ガ至リマス、全國二十万ノ
配給機關ヲ改廢シテ、二百万ノ從業員モ家
族モ喪家ノ狗ノ如ク纍々然ト巷ニ滿タナケ
レバナラヌ結果ニナルノデゴザイマスガ、
總理大臣ハ億兆一人ト雖モ其ノ志ヲ得ナイ
者ノナイヤウニスルト云フ、アナタノ皇道
政治道德ノ大キナ建前カラ此ノ點ヲドウ御
覽ニナリマスカ(「轉業セヨ」ト呼フ者アリ)
其ノ轉業ガドウデアルカ、現在政府ハ四十
万ノ失業者中轉業セシメタルモノハ、僅位
先日ノ統計デハ二万二千人、是等ノ旣ニ起
レル失業者ニ對スル政府ノ救濟ガ完全ニ行
ハレテ居ラヌ所ニ、更ニ多數ノ纏ツタ失業
者ヲ拵ヘルト云フナラ、爪デ拾ツテ箕デ澪
スノ類ダ(笑聲、拍手)一體商工大臣ハ健在
デアルノカ、配給業者ノ監督助長ヲスベキ
商工大臣ガ、唯農林大臣ニ取引所サヘ救濟
シテ貰ヘレバト云フヤウナ態度デ安閑トシ
テ居ラレル時ヂヤナイ(拍手)サウ云フ風ニ
シテ居ラレルカラ、肥料モ、飼料モ、炭モ、
卵モ、アナタノ管轄カラ離レテ農林省ノ產
組系統ヲ以テ始末サレテ居ル(拍手)外ニ向
ツテハドウデアルカ、蜜柑ノ如キハ日柑聯
ガ取リ、生絲ノ如キハ製絲聯ガ取リ、今ヤ
貿易省ガ出來ルト云フナラバ、アナタノ手
ヲ經ズシテ內ニモ外ニモ仕事ガ出來ルヤウ
ナコトニナツテ來ハセヌカ、朝ニ城ヲ拔カ
レ、夕ニ砦ヲ奪ハレ、古イ言葉ヲ引クヤウ
ダガ、禹ハ一饋ニ十起シテ以テ天下ノ民ヲ
勞ツタト云フ、商工大臣アナタニ直接ニハ
言ハヌカモ知レヌケレドモ、世間ハ拓務大
臣ガ本職デアツテ商工大臣ハ兼職ダト言ツ
テ居ル(拍手)此ノ非常時局ノ商工大臣ヲ受
持ツ者ガ、綽名ヲ何ト持ツテ居ルカト言ヘ
バ、不在大臣ト世間ハ言ツテ居ル(笑聲)私
ハ商工省ノ大臣ヲ專任ニ務メラレテ、此ノ
職ヲ失ハントスル天下ノ業者ニ對シテ適當
ノ御處置ヲ爲サルデナケレバ、今ニ商工省
ノ門前ニハ雀羅ガ張リ、三代目デ唐樣ニ書
クト云フ時代ガ來ナイトモ限ラヌト思フ(拍
手)私ハ商工大臣ガ健在ナラバ、今日ノ國
債消化ガ懸念セラレテ居ル時、千五百万圓
ノ國帑ヲ費シ、斯ウ云フ特殊ナ半官ノ會社
ヲ拵ヘズトモ、近代的ナ組織ヲ持ツテ居ルア
ナタノ方ノ商業組合ノ全面的活用ニ依リ、此
ノ時局ヲ切拔ケルダケノ確信ハ御持チニナ
ラナイカ(拍手)之ニ依ツテ一元的整備ヲ行
ヒ、一貫的統制ヲ企テルナラバ、此ノ相剋
摩擦モ起ラズ、オ互ノ分野ニ準據シテ圓滿
ナル解決ガ出來ル筈ダト本員ハ考ヘルガ、
商工大臣ノ御意見ハ如何、千數百年來ノ配
給事業ニ携ハリ、十幾億圓ノ運轉資金ト、
七億圓ノ賣掛代金ト、二十何億圓ノ配給ノ
仕事ヲ現·在シテ居ル其ノ商業人ノ結成シタ
ル商業組合ニ對シテハ、アナタハドウ云フ
見方ヲシテ居ラレルカ、況ヤ產業組合ハ無
稅デアルノニ比ベテ、此ノ商業組合ハ稅金
ヲ出ス、又其ノ子弟ノ幾万カハ戰場ニ出征
シテ、中ニハ屍ヲ曝シテ居ル、國債ニモ應
ジ、身分相應ノ獻金モシテ居ル(「同ジヂヤ
ナイカ」ト呼フ者アリ)ソレガ同ジナラ
バ、何故同ジヤウニ、兩方同ジニシナイデ
產組ダケガ利益ヲスルカ、隣保共助ノ精神
ニ依リヤツテ居ルコトハ同一デアル、產組
ガ國策ナラバ商組ハ國策デナイト言ハレル
カ(拍手)今日ノ商業人ハ昔トハ違フ、近代
的新組織ヲ持ツテ居ル、米屋ハ米屋デ、全
國ノ米穀ノ卸商業組合ヲ結成シ、小賣商業
組合ヲ結成シ、ソレデモ足リナイカラ、千
餘ノ組合ガ全國米穀商業組合聯合會ヲ組織
シ、臺灣ノ如キハ灣米移出商ガ打ツテ一丸
トナツテ、全國臺灣米移出商業組合ヲ組織
シ、此ノ全米商聯ト灣米移商聯トガ合致シ
テ、イツ何時デモ政府ノ御要求ノ中配給問
題ナラ御引受ヲスルトノ準備ヲ整ヘテ居ル
ガ、農林大臣ハ之ヲ御使ヒニナラウト云フ御
意思ハナイカ、又商工大臣ハ是非トモ農林
大臣ニ之ヲヤツテ戴カウト云フ熱意ハ御持
チニナラヌカ、商業組合ノ第九條ハ、全國
的ノ「アウトサイダー」ノ統制ヲ規定シ、第
十七條ハ統制商業組合ノ設立ヲ規定シ、第
二十七條ハ强制商業組合ノ設立ヲ規定致シ
テ居リマス、本案ノヤウナ場合ニハ、
特ニ斯ウ云フ機構ヲ利用スベキデハナ
イカ、若シ農林大臣ノ言ハレルヤウニ、
斯ウ云フ案デ米穀配給ノ圓滑ト米價ノ適
正ノ規整トガ出來ルナラバ、商業組合ヲ
打ツテ一丸トシタモノガ、市場經營ヲ商
工大臣ニ出願ヲシテ居ル筈デアリマス、
之ニヤラセルコソ商業組合モ强化シ、米穀
商人ノ失業モ囘避サレルト云フ一石二鳥ノ
名案ダ、商業組合ヲ拵ヘ、屢〓改正法ヲ出サ
レタアナタハ、寶ノ持腐レヲサレテ居ルデ
ハナイカ、一體斯ウ考ヘテ參リマスト、ド
ウシテモ本案ニ依ラナケレバナラヌ譯ガ私
ニハ分ラナクナツテ來マス
此處デ私ハ最後ノ結論ニ、本案ノ通過シ
タ場合ノ受益者ト被害者ダケハ一應檢討シ
テ置カナケレバナラヌト思フ、先ヅ第一番
ノ受益者ト言ハレルモノハ、ナルカナラヌ
カ分ラヌガ、世間ハ取引所ト呼ンデ居リマ
ス、是ハ正米取引ハ段々增加シテ行ク、サ
ウシテ〓算取引ガ段々減少シテ居ル、昭和
三年カラ七年マデノ五箇年ヲ百ト致シマス
ト、八、九、+、十一ハ六十二、五十二、
四十七、三十八ト減ツテ居リマス、溺レル
モノハ藁ヲモ摑ムト云フケレドモ、一ヶつ
藁サヘ摑ミ損ツタ岐阜ノ如キ、津ノ如キ、
四日市ノ如キ、姫路ノ如キ、伊豫ノ如キ、
一文ノ救濟金モ貰ヒ損ツタ、既ニ廢止解散
ノ運命ニ遭ツタモノガ居ルデハゴザイマセ
ヌカ、此ノモノヲ今マデ救濟シナカツタ、
ダカラ今之ヲ救濟スルト云フ問題ガ出テ居
リマスノデ、一應ハ是モ受益者ノ一人ダト
私ハ見テ居ルノデゴザイマスガ、本當ノ受
益者ハ產業組合ノ市場進出ノ方ダト思ヒマ
ス、是アルガ爲ニ產業組合ニ於テモ、多年
ノ赤字財政ガ何トカ始末ガ付キサウダト云
フ評判モ立ツテ居ル位デアリマス、第三ノ
受益者ハ古手官吏デアリマス(拍手)今日マ
デノ經驗ニ依ツテ知リ得ルガ如ク、國民ノ
租稅ニ依ツテ設立セラレタル國策會社ノ重
役ハ、多クハ恩給取ノ古手官吏ガ重要ナ椅
子ヲ占メテ來タノデゴザイマス、本案ニ依
レバ此ノ役員ハヤハリ政府ガ任免權ヲ持ツ
モノダト思ヒ、又既ニ其ノ人選モ凡ソ出來テ
居ルカニ聞クガ、再ビ三タビ繰返シテ國策
會社ハ又モヤ古手官吏ノ養成所トナルモノ
デアリマスルカドウカ(拍手)今一ツ是ハ私
ノ想像デアリマスガ、本案ノ成立ニ依ツテ、
或ハ四人ノ財閥ガ此ノ利益ヲ受ケルモノデ
ハナイカト睨ンデ居ル、卽チ臺灣米五百万
石ハ生產者ヨリ臺灣總督府ガ買上ゲテ、之
ヲ農林省ニ委託シ、農林省ガ之ヲ此ノ會社
ニ再委託シ、此ノ會社ガ下ヘ分ケテヤルモ
ノデゴザイマスルガ、此ノ會社ナルモノハ
投機ノ機會ガ排除サレテ居リマス、實米中
心デ行キマス、隨テ收入ガ減少シマス、之
ヲ補フ收入ノ中デ一番大キナ役割ヲ引受ケ
ルモノハ、內地ノ取扱ノ十倍ニ當ツテ居ル
臺灣米五百石ニ著眼シナケレバナリマセ
又、一般ニ向イテ行ク株ガ落著ク所ハ何處
カト云フト、臺灣米ノ大キナ四ツノ移入商
デ、蔭ニ廻ツテ此ノ利益ヲ配當ト云フ形デ
壟斷スルヤウニ作戰ガ出來テ居ルト私共ハ
考ヘテ居ル(「其ノ通リ」ト呼フ者アリ)ソコ
デ何ハ偖テ措イテモ一番肝腎ナ問題ハ一般
大衆デアリマス、消費者デアリマス、是·
ドウナルカ、私ハ寧ロ被害者ノ一人ダト言
ハナケレバナリマセヌ、市場經營デ商業組
合ガ之ヲヤリマスルト、入ツタ手數料ハ商
業組合カラ生產者、消費者、配給者、ドレ
カニ還元シテ參リマス、政府ノ要求スル此
ノ會社案デ行ケバ、此ノ間ニ入ツタ收入ハ
生產消費配給ノ部面ニハ還元サルルコトナ
クシテ、蔭デ大キナ株ヲ持ツテ居ル者ニ、
儲カツタモノハ六分カラ八分ノ配當デ皆
吸收サレテシマフノデゴザイマス、一體證
大衆ハ何處ニ利益ヲ受ケルデゴザイマセ
ウカ、殊ニ今問題ニナツテ居リマスルノ
ハ、買集メ業者、移出業者、卸賣業者、小
賣業者、此ノ眞中ニ入ツテ居リマス仲買
商ソレ等ノ者ハ產業組合ガ强制集荷ヲ行
ヒ、無條件委託ヲヤツテ、肥料ヤ他ノ物ト
ノ取引ヲ交換スルヤウナコトニナリマスレ
バ、米穀業者ガ集荷ヲ獨占サレタコトニ依
ツテ、打撃ヲ受ケルコトハ言フマデモアリ
マセヌ、サウシテ今度ハ產組ガ直接消費組
合ナドト結託スル、是ハ非常ニ小賣商マデ
ガ脅威サレマスルコトハ分リ過ギテ居リマ
スカラ申シマセヌガ、聞ケバ何カ農林次官
ハ曩ニ新聞記者ニ對シテ、產業組合ニ對シ
テハ販賣組合ノ個人消費ノ小賣ダケハ免許
ガ必要ダカ、消費組合ヤ官廳等ノ直賣ハ產
業組合ハ範圍外デヤラレルノダ、購買組合
ヤ消費組合ナドノ購入配給モ範圍外ダト御
說明ニナツテ居リマスガ、斯ウ云フコトデ
スト、全販聯、縣販聯ヤ其ノ單位組合ノ思
フ壺デアリマシテ、是デハ餘リニ商人ニヒ
ド過ギルノデハナイカト思フガ、此ノ新聞
記者ニ對スル御說明ハ間違ツテ居ツタモノ
デアリマセウカドウカ、又ココデ農林大臣
ニ承リマスガ、米穀業者ニ對スルアナタノ
方ノ免許ヤ統制命令ハ、產業組合系統ニモ
御適用ニナルカ、米穀業者ダケニ御適用ニ
ナルカ、例ヘバ產組ノ取引ニナツテ居リマ
ス家庭消費組合ヤ工場購買組合ハ、此ノ免
許統制命令ノ中ニ含マレルモノデアルカド
ウカ、大事ナコトデアリマスカラ御忘レナ
ク御答辯ヲ願ヒタイ
私ハ幾ラ本案ノ通過ト交換ニ業者ノ利益
ヲ擁護スルガ如キ口吻デ、營業免許ト云フ
言葉ヲ御用ヒニナツテ居リ、幾ラ免許ヲ下
サイマシテモ、本案ノ將來進ムベキ方向ト
政府ノ動向トヲ考ヘルト、免許ハ貰ツタガ
營業ノ、仕事ノ種ガナクナツテ參リマスレ
バ何ニナリマスカ、一方產業組合ノ進出ヲ
防グト云フ條件デ、事實是ガ行ヘルト云フ
ナラバ、營業免許ヲ米穀商人ガ貰ツタコト
ハ光榮デアリマスガ、一方產組ノ進出ヲ許
シテ之ニ免許ヲ御下シニナリマシテモ、使
ハウニモ使フバキ餘地ガナクナリハシマセ
ヌカ、是ハ兩立シタ雙方ノ分野ヲ明確ニシ
タ後ニシテ戴クモノデナケレバ有難イトハ
申上ゲラレマセヌ(拍手)
以上ニ依ツテ大體私ハ論旨ヲ盡シマシタ、
結局現在ノ戰時體制下ノ眞ノ米穀根本對策
トハドウ云フモノデアルカ、私ハ惟フニ日
滿支ヲ通ズル戰時農業體制ノ計畫化ト、農
家ヲ農產物ト農家購入品トノ、所謂鋏狀價
格差ヨリ救出スルト共ニ、資本主義經濟機
構ノ根柢ヲ成ス生產部面ノ內部關係ヲ整調
シ、全體主義的ナ統制機構ニ段々之ヲ移行
シ、斯ウシタ中カラコソ此ノ基本ニ照應シ
タ流通部面ノ編成替ガ行ハルベキモノデゴ
ザイマシテ、之ヲ行フ場合ノ配給部面ノ仕
事トシテハ、農村ニハ增產計畫ヲ實行シテ、
生產ノ增加ヲ來サシムルト共ニ、商業組合
ノ全面的活用ニ依リ配給ノ圓滑ヲ期セシメ、
米價ニ付テハ、全國ノ物ノ價ヲ米ダケヲ除
カズニ、全國中央物價公定委員會ヲ組織ス
ルコトニ依ツテ、日本ノ軍需品以上ノ軍需
品タル米穀ノ價格モ、此處デ規整スルト云
フコトニ致シマスレバ、恆久、臨時兩面ヲ
通ジ、一貫シタル米穀ノ根本對策ガ玆ニ打立
テラルベキモノデアツテ、斯樣ニナラナケ
レバナラヌト思フノデアリマスガ、之ニ對
スル政府ノ御所見ハドウデゴザイマスカ、
歷史的ナ大キナ齒車ガ非常ナ速サデ進ンデ
居リマス、ソコニ斯ウ云フ因循姑息ナ法案
ヲ御提出ニナツタノデハ物ノ役ニ立チマセ
ヌ、オ互ニ生產配給兩面ノ各〓其ノ得意ト
スル所ノ天分ヲ發揮シ、時代ニ順應シタル
眞ノ國策ノ遂行法案ニ改メラレマシテ、玆
ニ急イデモウ一遍新提出サレルコトガ望マ
シイト思ヒマス、アナタノ本案ヲ提出スル
マデニ各方面ニ御拂ヒニナリマシタ御盡力
ハ衷心ヨリ感謝致シテ居リマス、併シ妥協
案ガ出來タカラソレニ私共ガ贊成スルカト
云フト、ソレモ中々困難デアリマス、須
酒トシテ酒ノ持味ガアリマス、水ハ水トシ
テ水ノ持味ガアル、其ノ酒ノ中ニ水ヲウメ
テ是デ良イモノガ出來タト仰セラレルヤウ
ナコトニハ、私共ハ中々贊成ガシニクイノ
デアリマシテ、時日モ餘ス所僅カデゴザイ
マスカラ、早ク政府ノ方デモ少シ私共ノ滿
足シサウナ案ヲ御提出ニナリマスルヤウニ、
私ハ希望致シナガラ此ノ質問ヲ終ル次第デ
アリマス(拍手)
〔國務大臣櫻內幸雄君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=5
-
006・櫻内幸雄
○國務大臣(櫻內幸雄君) 只今眞鍋君カラ
詳細ナル御意見ヲ附サレテノ御質疑デアリ
やっ、之ニ對シテ條ヲ逐ウテ御答辯申上ゲ
タイト思ヒマス
第一ハ本案ニ依ツテ所期ノ目的ヲ達スル
コトガ出來ルカ否カ、斯ウ云フ御質疑ノヤ
ウデアリマス、之ニ附帶シテ、現在行ハレ
テ居ル米穀問題ニ對スル法律ノ運用ガ、如
何ニサレテ居ルカト云フコトヲ御質問ニナ
ツテ居ルヤウニ思ヒマス、御話ノ如ク當初
ノ米穀問題ノ論議サレマシタノハ、久シキ以
前デアリマシテ、以來量ノ問題ニ依ツテ之
ヲ解決致サウト致シ、次ニハ量及ビ價格ノ
調整ニ依ツテ此ノ問題ヲ決定致シマスガ爲
ニ、所謂米穀統制法ガ出來タノデアリマス、
米穀統制法ガ出來テ何等效果ガナイデハナ
イカト云フ風ナ御意見モアツタヤウデアリ
マスケレドモ、今日ノ米穀統制法ハ御承知
ノ如ク最高最低ノ値段ヲ決メマシテ、米價
ノ調節ニ對シマシテハ相當貢獻ヲ致シテ居
ルト考ヘテ居リマス、又今後ト雖モ此ノ米穀
統制法ノ力ニ依ツテ、米價ノ暴騰暴落ニ對シ
マシテ緩和致スコトガ出保ルト考ヘルノデ
アリマス、本案トノ關係ハ、本案ニ於テ規
定致シテアリマスガ如ク、所謂米穀統制法
ニ基イタ最高最低ノ範圍內ニ於テノミ取引
ヲサレルノデアリマスガ故ニ、米價ノ問題
ニ對シマシテハ、見樣ニ依リマシテハ殆ド
根本的對策ガ決定サレタトモ言ヒ得ルノデ
アリマス、唯其ノ配給其ノ他ニ付キマシテ、
本案ニ依ツテ十分ナル成果ヲ擧ゲルカ否カ
ト云フコトニ對シテノ御質疑デアリマス
ガ、是ハ御承知ノ如ク全體ノ米穀商ヲ、又
米穀ヲ取扱フ所ノ者ヲ免許制度ト致シマス
ト共ニ、之ヲ統制致シマシテ、政府ガ必要
ナル命令ヲ發スルト云フコトニナツテ居ル
ノデアリマスガ故ニ、此ノ米穀統制法ノ發
動ト相俟ツテ十分ナル成果ヲ擧ゲ得ルコト
ト考ヘルノデアリマス、米穀自治管理法ハ
御承知ノ通リ此ノ問題ヲ解決致シマスガ爲
ニ制定致シテ居リマスケレドモ、今日マデ
マダ發動致シテ居リマセヌ、豫備的法律ト
ナツテ居ルノデアリマス、要シマスルノニ
今日ノ米穀問題ハ、農家ノ人々ガ安ンジテ
生產ニ從事シテ相當ノ家計費ヲ得、サウシ
テ多少ノ利潤ヲ得テ、其ノ生活ガ安定保障
サレルト云フコトガ一ツノ要素デアリマス、
又一面ニ於テ消費者階級ノ人々ガ出來ルダ
ケ安イ價格ヲ以テ其ノ食糧ガ確保サレルト
云フコトガ、最モ重要ナコトデアリマス、
卽チ生產者ヲシテ安ンジテ其ノ業ニ從事セ
シメ、消費者ヲシテ安ンジテ食糧ノ問題ニ
對シテ心配ノナイヤウニスルト云フ事柄
ガ、最モ必要ナ事柄デアリマシテ、此ノ點
ニ重點ヲ置イテ今囘ノ法案ヲ提案致シタ譯
デアリマス、運用ノ如何ニ依ツテ只今眞鍋
君ノ御質問ニナルヤウナコトガ起リハシナ
イカト云フ所ノ御疑念ヲ御懷キニナル方ガ
アルカモ知レマセヌケレドモ、ソレニ對シ
マツテハ、徹底的ニ此ノ問題ニ對シ相當ノ
準備ヲ致シテ掛ルノデアリマシテ、私ハ本
法案ニ依ツテ大體ノ目的ヲ達シ得ルモノ、
斯樣ニ信ズルノデアリマス
次ニ本案ハ取引所救濟ヲ含ムモノノヤ
ウニ思ハレルガ、ソレナラバ男ラシク取
引所ノ救濟ト云フコトヲ謳ツタラドウカ、
サウシテ綺麗サツパリト出直シタラドウ
カト云フ御話デアリマス、取引所ノ問題
ハ御承知ノ如ク多年ノ問題デアリマス、
只今御話ノ如ク、米價ノ最高最低ヲ決定致
シマシタ結果ト致シマシテ、既ニ潰レタ取
引所モアルノデアリマス、此ノ問題ガ數年
來議會ノ問題トナツテ居ルコトハ、只今御
話ノ通リデアリマス、併シナガラ今囘ノ法
案ノ骨子ハ取引所救濟ガ主眼デハナイノデ
アリマス、卽チ米價ノ最高最低ヲ決メテ、
サウシテ生產ヲ確保シテ、消費者ニ圓滿ニ
配給スルト云フコトガ目的デアルノデアリ
マシテ、取引所ノ救濟ト云フコトハ第二次
的ノ問題デアリマス、卽チ從來ノ取引所ガ主
トシテ投機取引ヲ致シテ居ツタケレドモ、此
度設ケル所ノ日本米穀株式會社ハ實物ヲ取
扱フコトヲ主眼ト致シテ居ルノデアリマス、
從來ノ統計ニ依ツテモ御承知デアリマセウ
ガ、所謂米穀取引所ニ於ケル所ノ取引ノ大
部分ハ〓算取引デアリマス、其ノ〓算取引
ノ數字ヲ申上ゲマスト、昭和十一年ニ於テ
ハ七千七百万石ノ多キニ上ツテ居リマス、
又昭和十二年ニハ八千四百万石、昭和十三
年ニ於キマシテハ非常ニ激減ヲ致シマシテ
四千二百万石、要シマスルニ大部分ノ取引ガ
〓算取引デアルノデアリマス、此度ノ法案ニ
於キマシテハ、此ノ投機取引ト看做サルル
所ノ〓算取引ト云フモノニ付キマシテハ、
全部之ヲ除外致シタノデアリマス、然ラバ
延取引ヲ何ガ爲ニ許スカト云フコトヲ、
後ニナツテ御質問ニナツタヤウデアリマス
ガ、延取引ト云フモノハ、是ハ今日ノ實情
ニ於テハ私共ハ已ムヲ得ナイモノト思フノ
デアリマス、之ヲ全部ノ市場ニ於テ許スト
云フ意味デハアリマセヌ、大集散地ニ於テ
特ニ許シタイト思ツテ居ルノデアリマス、
又特別ノ事情ノアル場合ハ是ハ別デアリマ
ス、併シナガラ此ノ延取引ハ、從來ノ如ク
格付取引ト申ス一定ノ格付ノ米ヲ標準トシ
テ賣買致シテ、サウシテ其ノ標準價格ヲ基
準ト致シテ、他ノ米ヲ自由ニ代用スルト云フ
ヤウナ組織ニナツテ居リマスケレドモ、此
ノ延取引ニ對シマシテハ、銘柄別若クハ組
合セ銘柄別-例ヘテ申セバ埼玉縣ノ第何
等米ト茨城縣ノ何等米、之ヲ組合セタ米以
外ハ、其ノ取引ニ對シテ外ノ米デハイカナ
イ、斯ウ云フヤウナ組織ニナツテ居ルノデ
アリマス、卽チ從來ハ格付ノ米ニ依ツテ自
由ニ賣買ヲシテ、全國何處ノ米デモ持ツ
テ行ツテソレヲ補充シ得タノガ、此度ノ延
取引ニ依リマスト一定ノ米種ニ限ラレテ
居ルノデアリマスガ故ニ、容易ニ投機ノ目
的トハナラナイノデアリマス、ノミナラズ
其ノ期間內ニ於テ轉賣買戾ヲ許シマセヌ、
卽チ最後ノ受渡期間ニ於テノミ取引市場員
間ノ決濟ヲ許スコトニナツテ居ルノデアリ
マシテ、一言ニシテ申セバ、總テ實物ヲ主
トシタル所ノ取引ヲ致シテ、實物ニ依ル公
定相場ヲ作リタイト云フノガ、本質上ノ大
目的ニナツテ居ルノデアリマス
續イテ取引所ノ救濟問題ニ對シマシテ、
救濟トハ言ハズシテ、或ハ利用價値トカ、
其ノ他ノ名前ノ下ニ此ノ救濟ヲスルヤウナ
意味ガ含マレテ居ルガ、是ハドウデアルカ
ト云フ風ナ御意見デアリマス、ソレハ御承
知ノ如ク、現在建物ガアル、其ノ建物ヲ若
シ壞シ値段ニスレバ二束三文ニナル、併シ
ナガラ之ヲ實際ニ利用スル場合ニ於ケル所
ノ、利用價値ト云フモノハ自ラ違ツテ來ル
ノデアリマス、私共ハ今日此ノ市場ヲ買取
ツテ、此ノ會社ガ市場經營ヲ致ス場合ニ於
ケル、其ノ利用價値ヲ認メマシテ、買收ス
ルコトヲ容認シヨウト致スノデアリマスガ、
其ノ買收ノ價格ニ付キマシテハ、又買收ノ
方法ニ付キマシテハ、官民各方面カラ相當
ノ權威者ニ出テ戴キマシテ、此ノ公平ナル
審査決定ニ俟ツテ、其ノ買收價格ヲ決定致
シタイ、斯樣ニ考ヘルノデアリマス
次ニ斯ウ云フヤウナコトヲスルヨリハ、
寧ロモウ一歩進ンデ專賣制度トカ、或ハ國
家管理トカ、斯ウ云フモノニシテ根本的解
決ヲシタラドウカト云フ御意思ノヤウデア
リマスケレドモ、私ハ議論トシテハ深ク傾
聽致スノデアリマス、併シナガラ專賣ニ致
セ、或ハ國家ガ之ヲ管理致スニ致シマシテ
モ、相當面倒ナル問題ガ各方面ニ起ルノデ
アリマシテ、一朝一夕ニ只今之ニ贊成ヲ致
シマシテ、此法案ヲ改メル考ヲ持ツテ居リ
そのまん
又產業組合ガ此ノ問題ニ對シテ進出ヲ致
ス、此ノ問題ニ對シテ力强ク御議論ニナツタ
ト思ヒマス、產業組合ノ販賣組合ヲ市場員ニ
致スト云フコトハ、公平ナル見地ニ立ツテ、
私ハ當然デハナカラウカト思ヒマス、何故
ナラバ、御承知ノ如ク小サナ小農ノ人々ガ、
其ノ生產シタル所ノ米ヲ持寄ツテ、之ヲ都
會ノ地若クハ市場ニ持ツテ來テ賣ルト云フ
コトハ、當然認メラレテ居ルコトデアリマ
シテ、是ハ今日既ニ斯樣ナ手續ニ依ツテ販
賣サレテ居ルノデアリマス、又今日ト雖モ
市場員ノ手ヲ經テ市場ニ於テ賣却サレテ居
ルモノモ少クナイノデアリマス、卽チ之ヲ
市場員ニ致シテ見タ所デ、唯市場員ノ手ヲ
經ルカ經ナイカ、直接ニ自分ガ賣ルカ賣ラ
ヌカト云フダケノ違ヒデアリマシテ、小サ
ナ小農者、生產業者ト云フモノヲシテ、直
接ニ自由ニ賣ラシムルヤウナ途ヲ開クト云
フコトハ、是ハ私ハ當然爲サナケレバナラ
ヌ途デアルト考ヘルノデアリマス、之ニ反
シテ商業組合ヲ利用スルノ途、卽チ消費者
階級ニ於テモ消費者ノ團體ガ此ノ市場ニ入
ツテ、米ヲ自由ニ買ヒ得ルト云フコトノ途
ヲ開クコトモ、是亦當然爲スベキコトデア
ルト思ヒマス、商業組合ノ人々ガ今日アチ
コチノ米商人ヲ訪ネテ値段ヲ打衝シテ、サ
ウシテ之ヲ買付ケルト云フコトニ對シマシ
テハ相當不便ガアリマスノデ、此ノ市場ニ
參ツテ自由ニ買ヘル、而モ此ノ市場ハ賣ル
方ノ人々モ、買フ方ノ人々モ、僅ニ一俵ニ
對シテ二厘內外ノ手數料サヘ出セバ、各方
面ニ飛廻ツテ賣買スルノ必要ガナイノデア
リマシテ、極メテ單純ニ、極メテ便利ニ參
ルノデアリマシテ、私ハ消費者階級ノ方カ
ラ見マシテモ、亦生產者ノ方面カラ見テモ、
此ノ市場ヲ中心トシテ取引致スト云フコト
ハ、最モ必要ナコトデアル、斯樣ニ信ズル
ノデアリマス、唯此ノ機會ニ於テ從來ノ米
穀ヲ取扱ツテ居ツタ人々ガソレデハ困ルデ
ハナイカ、從來ハ農村カラ米ヲ安ク買ツテ
來テ、相當ノ利潤ヲ得テ賣捌ク、此ノ中間
業者ト云フモノガ非常ニ困ルデハナイカト
云フ御議論ガ出ルダラウト思ヒマス、又世
間ニハソレニ付テ相當議論ガアリマス、私
ハ此ノ點ニ付テハ或ル程度マデ之ヲ決シテ
反對スル者デハアリマセヌ、併シナガラ現
在ノ機構ニ於テ、旣ニ產業組合ノ取扱ツテ
居ル石數ハ約二割二三分デアリマス、而シ
テ米穀取扱業者ノ取扱ツテ居ル石數ト云フ
モノハ、アトノ七割以上デアリマス、併シ
ナガラ現狀ニ於テハ次第々々ニ產業組合ノ
方ガ進出ヲ致シテ、其ノ取扱數量ノ殖エツツ
アルト云フコトモ事實デアリマス、是ハ米
穀取扱業者ノ諸君ガ茲ニ大イニ御考ニナツ
テ、其ノ間ニ於テ此ノ七割以上持ツテ居ル
集荷機構ト云フモノヲ統制サレテ、農民ノ
利便ヲ圖リ、需要者ノ利便ヲ圖ルコトニ對
シテ一段ノ御考慮ヲ御拂ヒ下サイマシタナ
ラバ、恐ラク其ノ間ニ於テ適當ナル方策ガ
見出セルト思ヒマス、殊ニ販賣組合ハ唯場
內ニ於テモ賣ルダケデアリマス、是ガ先刻
延取引デ云々ト云フ御話デアリマシタガ、
假ニ延取引ニ於テ販賣組合ヲ許サレルト致
シマシテモ、一遍販賣組合ガ賣レバ是ハ品
物ヲ渡スノデアル、思惑ハサセナイノデア
ル、又消費者階級ガ米ヲ買ツタ場合ニ於テ
ハ、之ヲ必ズ受取ルノデアル、米穀取扱業
者ハ其ノ間ニ於ケル所ノ調節機關トシテ、
或ハ集荷ノ問題ニ對シマシテハ、此ノ廣イ
範圍內ニ於テ持ツテ居ル自分ノ集荷ノ勢力
ヲ利用シテ、自由ニ集荷ヲ致シ、賣ルコト
モ出來レバ、買フコトモ出來ル、兩者ノ間
ノ調節機關ニナルノデアリマス、卽チ消費
者ト生產者ト此ノ間ヲ調和スル所ノ調節機
關デアル、此ノ三ツノモノガ打ツテ一丸ト
ナツテ、今日ノ米穀政策、米穀配給ニ對シ
テ貢獻シテ下サルナラバ、玆ニ圓滿ナル需
給ガ成立スルト斯樣ニ思フノデアリマス括
手ノ
地區外ノ取引ニ付テノ御尋ガアリマシタ
ガ、地區外ニ於テ闇取引ガ行ハレル虞ガア
ルデハナイカ、斯ウ云フ御話デアリマスケ
レドモ、私ハ左樣ニ考ヘマセヌ、地區外ニ
於テ若シ米ノ値段ガ高クナツタト假定致シ
マスナラバ、地區外ノ人ハ市場ニ行ケバ安
イ米ガ買ヘルノデアリマスガ故ニ、進ンデ
市場ニ買ヒニ參ルデアリマセウ、何モ故ラ
高イ米ヲ買フ必要ハナイ、殊ニ市場ニ主ナ
ル米穀取扱ノ主流ガ集マルノデアリマスガ
故ニ、此ノ主流ニ依ツテ米穀ガ調節致サレ
マス以上ハ、地區外ニ於テ闇取引ノ行ハレ
ルト云フガ如キコトハ、私ハ斷ジテナイト
斯樣ニ思フノデアリマス
產業組合カ現在小作人ノ利益ヲ認メザル
ニアラズヤト云フ風ナ御意見デアツタト思
ヒマスガ、私ハ現在ノ產業組合ノヤリ方ガ
全部理想的デアルトハ申シマセヌ、大イニ
考慮ヲ促シタイ點ガ多々アリマスガ、米
關スル限リ、卽チ農民ノ委託ヲ受ケテ米ヲ
賣ル場合ノ行爲ダケハ、是ハ私ハ認メテ然
ルベキダト思フ、若シ產業組合ノ行爲ニ付
テ法律ニ違反シ、組合ノ規定ニ違反スルガ
如キコトニ付キマシテハ、是ハ十分取締ル
ベキコトデアルト斯樣ニ思フノデアリマス
ソレカラ此ノ會社ガ出來レバ古手官吏ヲ
使フノデハナイカ、又旣ニサウ云フ豫定ガ
アルノデハナイカト云フ風ナ御意見ガアリ
マシタガ、其ノ事柄ハ絕對ニアリマセヌ、
又現在ニ於テ左樣ナ將來之ヲ經營スル所ノ
人ニ付テ話合ツタコトモアリマセヌ、同時
ニ斯ウ云フ仕事ハ民間ノ事業ニ精通シタ
ル、商賣ニ堪能ナル人ヲ起用シテ、之ニ當
ラシムルコトガ當然ノコトデアルト思フノ
デアリマス(拍手)
又中央物價委員會ヲ設ケテ、サウシテ米
ノ値段ヲ一定化シテハドウカト云フ御議論
モアリマスガ、御承知ノ通リ米ハ多種多樣
極メテ複雜ノモノデアリマシテ、之ヲ單一
化ニ依ツテ賣買セシムルト云フコトハ容易
ノ業デハナイノデアリマシテ、理想ト致シ
マシテハ結構デアリマスケレドモ、實際問
題ト致シマシテハ甚ダ困難デアルト私ハ思
ヒマス、要シマスルノニ產業組合ガ此ノ集荷
ニ對シテ强制集荷ヲ爲スト云フヤウナ御話
ガアリマシタガ、左樣ナコトハナイノデア
リマス、此ノ點ニ付キマシテハ眞鍋君ノ御
心配ノ點ハ全然不必要ト思ヒマス
畢竟致シマスノニ、本案ノ趣旨ハ生產者
ト、消費者ト、配給業者、總テヲ調和一體
ト致シマシテ、圓滿ナル需給關係ニ致シタ
イ、斯樣ナ意味ニ於テ出シタノデアリマシ
テ、或ハ御答漏ガアルカモ知レマセヌガ、
ソレハ又別ノ機會ニ於テ申上ゲタイト思ヒ
マス(拍手)
〔國務大臣八田嘉明君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=6
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007・八田嘉明
○國務大臣(八田嘉明君) 只今眞鍋君カラ
私ニ御尋ノ點ニ付キマシテ御答申上ゲマ
ス
第一點ハ、農業生產者ガ產業組合ノ分野
!、一般米穀業者タル中小商業者トノ分野
ニ付テ御尋ガアリマシタ、此ノ點ニ付キマ
シテハ、只今農林大臣ヨリ或ル程度御觸レ
ニナリマシテ御答ガアツタノデアリマスガ、
結局御指摘ニナリマシタル新シキ市場ニ於
ケル所ノ生產團體側ハ、賣一方デアルト言
フケレドモ、其處ニ米穀ノ流レガ集中スル
ノデアラウト云フヤウナ御考カラノ、御質問
デアツタノデアリマスケレドモ、此ノ點ニ
付キマシテハ、只今農林大臣ヨリ御答ノア
リマシタル通リ、賣方ニ於キマシテモ、所
謂米穀取扱業者ガ相當ノ分量アルノデアリ
さく、隨テソレ等ノコトニ付キマシテハ、
只今農林大臣ヨリ御答ノアリマシタ通リ
ニ、十分ナル指導監督ヲスルコトガ出來ル
デアラウト考ヘルノデアリマス、併シナガ
ラ根本問題トシテハ、御說ノ中ニアリマシ
タ通リ、生產業者ノ方ノ團體タル產業組合
ト、此ノ取扱業者デアリマス所ノ商業者竝
ニ商業者ノ團體トノ間ノ圓滑ナル分野ト云
フモノガ、洵ニ大切ナル問題デアルノデア
リマス、此ノ點ニ付キマシテハ、敢テ只今
議題トナツテ居リマス所ノ此ノ米穀配給統
制法ニ限ラズ、總テノ問題ニ付テ、只今我
國ノ各方面ニ於テ、其ノ是非ガ論究サレテ
居ルノデアリマシテ、私ノ承知シテ居リマ
スル限リニ於テハ、政府當局ニ於キマシテ
モ、此ノ問題ニ付キマシテハ全般的ニ十分
ナル考究ヲ遂ゲマシテ、而シテ我國ニ多年存
在致シテ居リマス淳風美俗ヲ失ハナイヤウ
ニ、而シテ徒ニ相剋摩擦ノ生ジマセヌヤウ
ニ、此ノ生產カラ消費ニ至リマスル其ノ途
中ノ配給問題ニ付テ、或ハ生產者側ノ團體、
或ハ配給者側ノ團體間ニ於ケル此ノ問題ニ
付キマシテハ、最善ヲ盡サナケレバナラヌ
ト考ヘテ居ルノデアリマス、ソレニ關聯致シ
マシテ御指摘ニナリマシタ、商工省ニ於テ
此ノ問題ニ對シテ十分考慮ガ拂ハレテ居ラヌ
ヤウナ意味ノ御尋ガアリマシタケレドモ、
商工省ト致シマシテハ、其ノ指導監督ノ任
ニ在リマスル所ノ中小商業者ノ立場ニ付
キマシテモ、本問題ヲ考究スル上ニ於テ
十分ナル〓究ト考慮トヲ致シカノデアリマ
ス、唯徒ニ一方ニ囚ハレズニ、所謂國策ヲ
樹立スル上ニ於テ、是ガ決定竝ニ運用ニ付
キマシテハ、最モ其ノ衝ニ當ツテ居ラレル
所ノ農林省ト、十分全局的ニ高處大處ヨリ
考ヘマシテ、本案ニ同意ヲ致シテ居ルヤウ
ナ次第デアリマスルコトヲ諒トセラレンコ
トヲ願フノデアリマス
第二ノ御質問ハ、ソレデハ敢テ斯ノ如キ
米穀配給統制法案ニ依ラズトモ、商業家ヲ
シテ組合ヲ結成セシメテ、所謂商業組合ノ
方法ニ依ツテ配給ノ圓滑ヲ圖リ、本案ニ代
ル所ノ目的ヲ達成シ得ルノデハナイカ、其
ノ點ニ付テハドウ考ヘルカト云フ御尋デア
リマス、此ノ點ハ洵ニ御說ノ通リ考ヘルノ
デアリマス、卽チ米穀業者ヲシテ商業組合
ヲ結成サセ、問屋竝ニ小賣業者等ノ團體結
成ニ依リマシテ、此ノ組合ノ機構ヲ强化改
善致シマシテ、之ニ適當ナル統制ヲ加ヘマ
シテ、政府ガ指導宜シキヲ得ルナラバ、或
ル程度ノ目的ヲ達成シ得ルト云フコトハ私
ハ信ズルノデアリマス、併シナガラ今日マ
デノ情勢ニ於キマシテハ、十分ナル結果ヲ
直チニ擧ゲルト云フコトハ、又同時ニ考ヘ
ラレナイノデアリマシテ、本法ニ依ルコト
ガ時局ノ〓糧對策ト致シマシテ、最モ效果
的デアルト云フコトノ結論ニ到達致シタ次
第デアリマス、卽チ本法案ニ於キマシテモ、
米穀商業者ヲ免許制度ト致シタルコト、
又配給統制ガ必要デアリマスル時ニハ、政
府ガ命令ヲ發スルコトガ出來ルヤウニ相成
ツテ居ルノモ、精神ニ於キマシテハ、是等
ノ米穀取扱業者及ビ其ノ團體ヲ十分將來ニ
於テ統制シツツ、本案ノ運用ニ最善ヲ期シ
タイト云フ心掛デアルノデアリマス、一方
ニ於キマシテ御承知ノ如ク、過去ニ於テハ
兎角發達シニクカツタト思ハレル所ノ米穀商
業者ノ組合組織モ、最近ニ於キマシテハ、
相當自發的ニ是ガ結成强化ト云フコトニ對
シテ、其ノ機運ガ見エテ來タヤウニ存ズル
ノデアリマス、斯樣ナ點ニ鑑ミマシテ政府
ト致シマシテハ、特ニ商工省ト致シマシテ
ハ、此ノ米穀關係ノ商業組合ノ自然ノ發達
ヲ助長致シ、更ニ之ヲ强化致シマシテ、今
後配給ノ上ニ於キマシテ最モ有效ニ、此ノ
商業組合ノ活動ヲ效果的ナラシメマシテ、
一層本法案ノ運用ニ力ヲ致シタイト考ヘテ
居ルノデアリマス
第三ニ、米ヲ一般物價ト共ニ公定委員會
ノヤウナモノデ決スル考ハナイカト云フコ
トデアリマスガ、之ニ付キマシテモ農林大
臣カラ御答ガアツタト存ジマスルガ、米穀
ノ價格統制ハ、御承知ノ通リ既ニ過去ニ於
キマシテ、米穀統制法ニ依ツテ行ハレテ居
ルノデアリマシテ、一層今囘ノ本法案ニ依
ツテ其ノ點ハ强化セラレルト考ヘルノデア
リマスルカラ、現在ノ物價委員會等ニ於キ
マシテハ、此ノ米ノ問題ハ除外致シテ居ル
次第デアリマス、左樣御諒承ヲ願ヒマス(拍
手、発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=7
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008・小山松壽
○議長(小山松壽君) 小山田義孝君
〔小山田義孝君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=8
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009・小山田義孝
○小山田義孝君 只今議題トナリマシタル
米穀配給統制法案ニ對シテ質問ヲ試ミタイ
ト思ヒマス、米穀ノ生產確保ニ關スル問題
ト共ニ、適正ナル米價ヲ維持シテ圓滑ナル
配給ヲ爲サンガ爲ニハ米ノ生產カラ消費
ニ至ルマデノ間ニ、一貫シタル所ノ統制ノ
必要デアリマスルコトハ、米ガ國民ノ主要
食糧デアルト云フコトバカリデハナクシテ、
戰時食糧政策ノ圓滑ナル運用ヲ期スル爲ニ
モ極メテ緊要ノコトデアルノデゴザイマ
ス、此ノ要求ニ對應センガ爲ニ、今囘米
穀配給統制法案ノ提出ヲ見マシタコト
ハ、確ニ我國米穀政策ノ一步前進ヲ意味
スルモノデアルト私ハ考ヘル者デアリマ
ス、從來ノ我國ノ米穀政策ガ、米穀統
制法ヲ根幹ト致シマシテ、米穀自治管理
法又ハ米穀臨時措置法乃至ハ籾共同貯藏助
成法等ノ法令ニ依リマシテ、米穀需給ノ
調節ヲ圖ツテ來タノデアリマスガ、偶〓支那
事變ノ勃發ニ依リマシテ、全面的ニ經濟硫
制ニ乘出サナクテハナラヌ大勢ノ赴ク結果
ト致シマシテ、從來ノ政策ガ此ノ戰時下
ニ於キマシテハ、殆ド無力ニ近イ存在ト化
シツツアルト云フコトハ、現在ノ事情ヲ御
覽ニナリマスト能ク御分リノコトデアリマ
ス、米穀統制法ハ事變以來ノ物價ノ變動ニ
依リマシテ、公定價格ノ算定基準ガ動搖破
綻ニ瀕スルニ至リマシテ、米價ノ異常ナル
昂騰ヲ阻止スルコトガ殆ド不可能ニ陷ラン
トスル狀況ニアルノデゴザイマス、米穀配
給統制案ガ果シテ我國食糧問題ノ解決ノ爲
ニ、幾許ノ效果ヲ齎ラスカドウカト云フコ
トニ付キマシテハ、幾多ノ疑義ガアルノデゴ
ザイマスルケレドモ、要ハ本法運用ノ適正
ヲ得ルコトニ依リマシテ、相當ノ效果ヲ期
待スルコトガ出來ルト考ヘラレルノデアリ
やく、以下數點ニ亙ツテ政府ノ所見ヲ伺ヒ
タイト思フノデアリマス
本案ハ米ノ配給部面ニ對シテ强權的ナ國
家統制ヲ加ヘントスル案デアリマスガ、之ヲ
客觀的ニ見マスル場合ハ、本案ハ米ノ國家
管理、卽チ專賣制度ニ移行セントスル一步
手前ノ法律デアルト私ハ考ヘルノデアリマ
ス、卽チ政府ハ從來ノ米穀取引所ヲ廢止致
シマシテ、實米ノ取引ヲ爲ス爲日本米穀株
式會社ヲ設立シテ、內地外地ニ亙ル米穀ノ
取引配給ヲ爲サシメントスルモノデアリマ
シテ、配給組織ノ統制、米穀取扱營業者ニ
對スル免許制度ヲ設定シテ居ルノデアリマ
ス、他面價格政策ノ適正ヲ期セントスル本
案ノ建前ハ、一種ノ專賣制度ニ似通ツタ形
體ヲ備ヘテ居ルモノト思フノデアリマス、
而シテ本案制定ノ趣旨ヲ遺憾ナク徹底セシ
メンガ爲ニハ配給組織ノ根本的整備改善
ト相俟ツテ、生產者カラ消費者ニ至ルマデ
ノ米ノ賣賣價格ヲ公定シテ配給業者ヲシテ
完全ニ手數料商人タラシムル所マデ行カナ
ケレバ、其ノ目的ラ貫徹スルコトハ至難デ
アルト思フノデアリマス、從來ノ米ニ關ス
ル政策ノ推移カラ見マシテモ、吾々ガ意識
スルトシナイトニ拘ラズ、專賣制度ノ實現
ニ向ツテ一步々々ト前進ヲ續ケテ居ルカノ
ヤウナ外觀ヲ呈シテ居ルノデアリマス、米
穀法カラ米穀統制法、更ニ米穀自治管理法
トナリマシテ、今又專賣制度ト最モ關係ノ
深イ配給部面ニ對シテ、强度ノ統制ヲ加ヘ
ントスル本案ノ提出ヲ見ルニ至リマシタコ
トハ、專賣ヲ好ムト好マザルトニ拘ラズ、
我國米穀政策ノ動向ハ、專賣制度、實現ニ
向ツテ準備ヲ進メテ居ルカノ如キ觀ヲ呈シ·
テ居ルノデアリマス、殊ニ目下審議中ノ臺灣
米移出管理案ニ依リマスト、移出臺灣米ハ
臺灣總督府ニ於キマシテ買入ヲ爲シ、其ノ
販賣ハ農林省ニ委託スル、農林省ハ更ニ米
穀會社ヲシテ其ノ販賣ヲ代行セシメルト云
フノデアリマシテ、是ハ正ニ臺灣米ニ對スル
國家管理ヲ强行スルモノデアルト思ヒマス、
所謂專賣ニ準ズル制度ノ實現ヲ見ヨウトシ
テ居ルヤウナコトニナツテ居ルノデアリマ
ス、斯ル情勢下ニ於キマシテ、米價ノ統制
上、米ノ供給ニ付テ十分ナル統制力ヲ發揮
スル爲ニハ、此ノ專賣制度ヲ措イテ外ニ優
ル方策ハナイト私ハ考ヘテ居ル者デアリマ
ス、勿論米ノ配給ニ關シマシテ專賣制度ヲ
布クト云フコトハ、今ノ自由主義經濟ニ對
シテ重大ナル除外令ヲ求ムルト云フコトニ
ハナルノデアリマスルガ、併シ既ニ煙草或
ハ鹽等ニ付テ專賣ガ行ハレテ居ルト云フ現
狀ヨリ見マスレバ、決シテ不當ノ要求デハ
ナイト思フノデアリマス、勿論專賣制度ノ
實施ト云フコトハ、實行上非常ナル困難ヲ
伴フ問題デアリマス、併シ今後法律的ニ更
ニ一步ヲ進メントスレバ、殘ル問題ハ唯專
賣制度ノ斷行ノミト云フコトニナルノデア
リマシテ、只今櫻內農相ノ御答辯ニ依リマ
スルト、專賣ハ直チニ贊成シ得ナイト云フ
コトデアツタノデアリマスガ、此ノ問題ハ
本年ノ實績ト相俟ツテ、將來必ズ我國米穀
政策ノ中心課題トナルベキモノト考ヘルノ
デアリマスガ、政府ハ此ノ米ノ專賣制度ノ
實施ト云フコトニ對シマシテ、果シテ如何
ナル御用意ヲ持ツテ居ルカト云フコトヲ、
改メテ御伺致シタイト思フノデアリマス
次ニ私ハ今後ニ於ケル所ノ米ノ需給推算
ニ關スル問題ト、米ノ增產計畫ニ付キマシ
テ御伺ヲ致シタイト思ヒマス、國民ノ主要
食糧デアル所ノ米ノ國內生產ヲ確保スルト
云フコトハ、平時デアリマシテモ國策トシテ
實行スベキコトデアリマスガ、殊ニ戰時下
ニ於キマシテハ、軍需品ヤ貿易農產物ト同
樣極力其ノ減產ヲ防止シナケレバナラナ
イト共ニ、一面生產力ノ增進ニ向ツテ努力
ヲシナケレバナラナイト云フコトハ申スマ
デモナイコトデアリマス、然ルニ戰時下農
村ニ於ケル所ノ勞力、畜力ノ減退、肥料其
ノ他生產資材ノ供給ノ圓滑ヲ缺ク等ノ爲ニ、
是等ノ生產條件ノ低下ハ、必然的ニ農產物
ノ減收ノ脅威ヲ受ケルコトニナリマシテ、
從來殆ド食糧ノ不足ヲ經驗シナカツタ、我國
ニ於キマシテモ、昨今漸ク米穀需給ノ問題
ガ極メテ眞劍ニ論議サレルヤウニナツテ參
ツテ居ルノデアリマス、米ノ生產ヲ確保增
進スルト云フコトト、米ノ配給機構ヲ整備
改善スルコトトハ、現下ニ於ケル所ノ米穀
政策ノ盾ノ兩面ヲ爲スモノデアリマシテ、
配給部面ノ改善ダケヲ以テシテハ、勿論米
ノ問題ハ解決サレヌノデアリマス、農林當
局ハ本年度ニ於ケル所ノ米ノ需給數量ニ付
テ何等ノ不安ガナイトシテ、極メテ樂觀サ
レテ居ルノデアリマスガ、先般御發表ニナ
リマシタ昭和十四年度內外地ノ米ノ需給推
算ニ依リマスルト、前年度ヨリノ持越米ガ
九百四十八万八千石、內地外地ヲ通ズル實
收高ガ九千九百七十六万四千石、輸入見込
高ガ三十万石デ、供給數量ノ合計ガ一億九
百五十五万二千石トナツテ居ルノデアリマ
シテ、之ニ對シテ需要數量ハドウデアルカ
ト申シマスト、內地外地ヲ通ズル消費見込
高ハ九千九百四十万石、輸移出ノ見込高ガ
九十三万石デ、需要ノ合計數量ハ一億三十
三万石デアリマス、其ノ差引翌年度ヘノ持
越見込高ハ九百二十二万二千石ト云フ數字
ヲ示シテ居ルノデアリマスガ、此ノ需給推
算ニ付キマシテハ、私ノ了解シ得ナイ點ハ、
消費數量ノ見積ノ點デゴザイマス、政府ノ
發表ニ依リマス消費ノ見積數量ハ九千九百
四十万石デアリマスガ、今昭和十三年度ニ
於ケル所ノ消費高ノ實績ヲ見マスルニ、合
計一億五十九万石ノ數字ヲ示シテ居ルノデ
アリマス、而シテ之ヲ昭和十二年度ニ於ケ
ル所ノ消費量ニ比較シテ見マスル時ハ四百
四十五万九千石ノ增加ヲ示シテ居ルノデア
リマシテ、隨テ本年度ノ消費見込高ハ、少
クトモ一億二三百万石程度ニ達スルモノト
見ナケレバナラナイト思ヒマス、斯ク見マ
スル時ハ、來年度ニ持越サルベキ米ノ數量
ト云フモノハ、豫定通リノ平年作ノ收穫デ
アルトシマシテモ櫻內農相ノ樂觀ヲ裏切
ルヤウナ結果ヲ見ルノデハナイカト云フコ
トヲ憂フル者デアリマスルガ、此ノ點ニ關
スル政府ノ明確ナル御答辯ヲ煩ハシタイト
思フノデアリマス、更ニ本年度ハ米ノ需給
ニ何等ノ心配ガナイトシテモ、明年度以降
ノ需給關係ニ付テ考ヘテ見マスル時ハ、加
速度的ナ消費ノ增加ト、臺灣米ノ移出管理
ニ伴ツテ豫想セラレマスル所謂蓬萊米ノ減
產トニ依ツテ、或ハ供給ノ圓滑ヲ缺クニ至
ルノデハナイカト云フコトヲ懸念サルルノ
デアリマス、政府ノ今後ニ於ケル所ノ內地
外地ヲ通ズル五六百万石程度ノ增產計畫ハ、
單ニ今後ニ於テ豫想セラレマスル米ノ不足
數量ヲ補ツテ行ク程度ノ間ニ合セノ對策デ
アリマシテ、何等〓糧問題解決ノ根本ニ觸
レタモノデハナイノデアリマス、而モ內地
ニ於ケル米作ハ極端ナル所ノ集約的耕作法
ニ依ル關係デ以テ、技術的ニモ豫想通リノ增
產ヲ求ムルコトハ、實際上甚ダ困難ナ註文デ
アラウト思ヒマス、又事變ノ影響ニ因リマシ
テ生產條件ガ非常ニ低下シテ居リマス場合
デアリマスカラ、米ノ增產ニハ必然的ニ生
產費ヲ高カラシムル結果トモナリマス、加
フルニ一朝天候等ノ關係ニ依リマシテ、不
作ノアリマスコトヲ豫想スル時ニ於キマシ
テハ、直チニ國內供給確保ノ方針ニ大ナル
齟齬ヲ來スニ至ルト云フコトハ是亦極メ
テ明白ノコトデゴザイマス、是ニ於テ米ノ增
產計畫ヲ立テル爲ニハ、唯從來ノ如ク內地、
朝鮮、臺灣ニ依存スルノミデハ、決シテ滿
足スルコトハ出來ナイノデアリマス、竿頭
更ニ一步ヲ進メル意味ニ於キマシテ、政府
ハ此ノ際滿洲米ノ增產計畫ヲ樹立スルコト
ニ御留意ニナツテ居ラナイカト云フコトニ
付キマシテ御尋ヲ致シタイノデアリマス、
滿洲ノ米作ハ現在年產約四百万石内外ト言
ハレテ居リマスガ、米ノ耕作ニハ認可制ヲ
採ツテ居リマシテ、又法令ニ依リマシテ其
ノ販賣ヲ滿洲糧穀會社ニ獨占セシメマシ
テ、專賣制度ニ準ズル形態ヲ採ツテ居リ
さい、是ハ滿洲ニ於ケル米作ヲ自由ニ放任
シマスル時ハ、內外ノ農家、殊ニ朝鮮人
ノ移住農家ガ激增シマシテ、米作ガ異常ナ
ル發達ヲ遂ゲマス結果ハ、他ノ耕作物トノ
均衡ヲ破ルコトニモナリマシテ、或ハ曾テ
外地米ガ日本內地ニ流入シテ、內地米價ヲ
攪亂シタ苦イ經驗カラ、米ノ增產ヲ抑制シ
テ居ルモノト思フノデアリマスガ、斯ウシ
タ心配ノ起ル程滿洲ノ米作ハ極メテ有望ナ
ルモノガアルノデゴザイマス、卽チ耕地價
格ガ低廉デアルバカリデハナク、無限ニ近イ
耕作可能面積ヲ持ツテ居ルノデアリマシ
テ、而モ生產費ガ非常ニ安イノデアリマス
カラ、滿洲ニ米作ヲ奬勵スルナラバ、良質
米ヲ低廉ナ生產費デ以テ多量ニ增產ノ出來
ルコトハ極メテ明白デアリマス、其ノ滿洲
ノ增產ヲ制限シテ、生產費ノ高イ、增產ノ
困難ナル內地、朝鮮、臺灣ノミニ執著スル
ト云フコトハ、所謂日滿一體ノ叫バレル今
日、甚ダ妥當ヲ缺クモノデハナイカト思フ
ノデアリマス、或ハ滿洲ノ米ガ內地食糧充
足ノ調節瓣ヲ爲スコトニナツタ場合ニ於キ
マシテハ、內地、朝鮮、臺灣ノ米作ガ豐作
デアツタ場合ニハ、供給過剩ノ問題ガ起ルト
云フコトモ豫想セラルルノデアリマスシ、
ソレガ爲ニハ滿洲米ノ供給先ヲ失ツテ窮地
ニ陷ルト云フコトモ、一應ハ考ラレルコト
デアリマスケレドモ、サウシタ場合アリト
シマシテモ、滿洲米ハ或ハ中支、南支ノ方
面ニ輸出ノ途ガアルノデゴザイマシテ、若
シモソレガ不可能デアルト致シマシテモ、
米穀自治管理法ノ發動ニ依リマシテ、此ノ
過剩米ヲ各地ニ於テ統制貯藏スレバ、問題
ハ容易ニ解決スルモノデアルト考ヘラルル
ノデアリマス、內地ノ農家ノ立場カラ見マ
スル時ハ、割安ナ滿洲米ガ輸入サレマシ
テ、嘗テ低廉ナル島鮮米、臺灣米ニ惱マサ
レタ時ノ苦痛ヲ再ビスルト云フ心配ガ起ル
カモ知レマセヌケレドモ、併シソレモ滿洲
ガ臺灣ノヤウニ、移出管理制ヲ設定スルト
カ、或ハ又政府ガ滿洲米ヲ輸入專賣的ナ取
扱ノ下ニ、本案ノ所謂米穀會社ニ販賣ヲ命
ズルナラバ、問題ハ自然ニ解消スルコトニ
ナルト思フノデアリマス、卽チ政府ハ我國
〓糧問題解決ノ爲ニ、滿洲米ノ增產計畫ヲ
立テマシテ、將來ニ於ケル米穀ノ需給關係
ヲ調節スルノ御意思ナキヤ否ヤト云フコト
ニ付キマシテ御伺致シテ置キマス
次ニ私ハ政府ノ米價公定ニ際シテ執リマ
シタ極メテ偏頗ナル措置ニ對シテ、櫻內農
相ノ御所見ヲ御伺シタイト思フノデアリマ
ス、最近米價ハ〓算正米共ニ著シク强調ヲ
呈シテ居リマシテ、銘柄ニ依リマシテハ、
旣ニ最高價格ヲ突破スルモノサヘ簇出シタ
ノデアリマスガ、農林當局ニ於キマシテハ、
昭和十四年度ノ公定價格ヲ決定スルニ際シ
マシテ、最低價格ハ生產費ノ昂騰ヲ參酌シ
テ、大幅ノ引上ヲ斷行シタノデアリマスガ、
最高價格ノ決定ニ當リマシテハ、價格決
定ノ基準デアル物價參酌値ハ一割乃至ソレ
以上ニ上昇ヲ豫想サレテ居ツタノデアリマ
ス、其ノ結果當然最高米價モ引上ゲラレネ
バナラナイノデアリマスガ、銃後國民生活
ノ安定ヲ期スル上カラ、又戰時物價抑制政
策ノ見地カラ致シマシテ、現行最高價格ハ
前年度同樣ノ据置トナツテ居ルノデアリマ
ス、加フルニ每年十一月カラ翌年一月マデ
ノ新米出廻最盛期ニ於キマシテハ、補充買
上ヲ行ツテ居ツタノデアリマスガ、是ハ益〓
米價ノ〓騰ヲ刺戟スルモノトシテ、之ヲ差
控ヘルコトニナツタノデアリマス、私ハ現
在ノ米價ガ決シテ安イモソトハ考ヘテ居リ
マセヌシ、又最高價格ノ引上ヲ斷行スベシ
ト言フ者デモアリマセヌ、勿論戰時經濟運
營ノ圓滑ヲ期スル爲ニハ、一般物價ト共ニ
米價ノ異常ナル昂騰ヲ抑制シナケレバナラ
ナイト云フコトハ是ハ當然ノコトデアリ
マス、併シ一般物價ノ昂騰ヲ抑制スル一ツ
ノ方法トシマシテ、一ツノ手段トシテ、最
モ經濟力ノ弱イ農村民ノ收入ヲ犧牲ニスル
ガ如キ政策ヲ執ルト云フコトニ對シマシテ
ハ、私ハ甚ダ其ノ當ヲ得ナイ措置デアルト
信ズル者デアリマス(「ヒヤ〓〓」)卽チ農村
民ノ犧牲ニ依ツテ、農村民ニ犧牲ヲ强要スル
コトニ依ツテ、一般物價ノ昂騰ヲ抑制セント
スル如キコトハ、政府ノ今後ニ於ケル米ノ增
產計畫ニ對シテモ、尠カラザル障碍ヲ與ヘル
モノデハナイカト考ヘル者デアリマス、彼ノ
農村カラ供出セラレル木炭デアルトカ、或
ハ鷄卵、松脂ナドノ農產物ニ、公定相場ノ
設定サレマシタ時ニ、生產地カラ消費地へ
ノ出荷ガ非常ニ澁滯シタ事實ヨリ見マシテ
モ、米ノ增產政策遂行ノ上ニ甚ダ遺憾ノコ
トデアルト言ハナケレバナリマセヌ、今假
ニ政府ノ措置ガ妥當ナリト致シマシテモ、
然ラバ現在農村民ニ對シテ供給セラレル所
ノ生活必需品、肥料、其ノ他ノ生產資材ガ、
米價ト比例シテ適當ノ價格ニ依ツテ供給セ
ラレテ居ルカト云フニ、是ハヤハリ一般物
價ノ昂騰ト竝行シテ異常ナル高値ヲ以テ農
村民ノ手ニ入ツテ居ルノデアリマス、卽チ
賣ル物ハ比較的安イノニ反シテ、買入レル
モノハ比較的高イト云フコトニナレバ、政
府ノ物價政策ハ甚ダ偏頗デアリマシテ、弱
イ者イヂメト云フコトニナルノデハナイカ
ト思ハレルノデアリマス、此ノ現在ノ公定
米價ハ有馬前農相ニ依ツテ決定サレタモノ
デハアリマスルガ、櫻內農相モ有馬前農相
ト同樣ノ御意見ヲ持ツテ居ラレマスカドウ
カ、此ノ際明確ニ伺ツテ置キタイト思フノ
デアリマス
次ニ御尋致シタイコトハ、本案ノ日本米
穀會社ノ運用ニ關スル問題ニ付テデアリマ
ス、此ノ法案ハ米ノ配給統制上必要ナ命令
ヲ爲シ得ルト云フ、極メテ廣汎ニ亙ル權限
ヲ政府ニ委任スルモノデアリマシテ、最モ
重要ナル命令ノ內容ガ判然トシマセヌ爲
ニ、之ニ對シテ批判檢討ヲ加ヘルコトノ出
來マセヌコトニ甚ダ遺憾トスル者デアリマ
ス、斯ル重要ナル命令內容ハ委任命令トシ
ナイデ、本法ノ中ニ明確ニ規定シテ置クコ
トガ、本法ノ適用ヲ受クル米穀ノ取扱業者
ヲシテ不安ナカラシメル爲ニモ、極メテ必
要ノコトデアルト思フノデアリマス、又斯
ル廣汎ナル命令ヲ政府ニ委任シテ置クコト
ハ往々ニシテ官僚ノ獨善的專斷ヲ助長ス
ルコトニモナルノデアリマシテ、本法ガ今
議會ヲ通ジテノ重要法案デアルト云フ觀點
カラ見マシテモ、痛切ニ此ノ感ヲ深クスル
ノデアリマス、此ノ命令ニ依ツテ統制ヲ受
クル所ノ販賣組合、商業組合、或ハ卸賣商
ト小賣商、又ハ市場取引員ト仲買人トノ間
ニ、配給上ノ問題ニ關シマシテ紛爭ノ起ル
場合ノアルコトヲ豫想セラレルノデアリマ
スガ、米ニ關スルコトハ、單ニ配給上色々
ノ問題ガ生ズルバカリデハナクシテ、生產
者ト消費者トノ間ニモ、其ノ要求スル所ニ大
ナル矛盾ガアルノデアリマス、先ヅ先決問
題ト致シマシテ米ノ生產、配給、消費各部
面ニ亙ツテ其ノ對立ヲ避ケシムル一貫シタ
方針ノ確立ト云フコトガ、根本ノ要件ニナ
ルト思フノデアリマス、今度ノ米穀會社モ
此ノ根本趣旨ノ下ニ立タナケレバ、其ノ使
命ヲ全ウスルコトハ出來ナイト思フノデア
リマスガ、會社ガ此ノ體制ノ下ニ本來ノ機
能ヲ發揮致シマスル爲ニハ、生產者、消費
者或ハ配給業者ノ代表ニ依ル所ノ三位一
體ノ組織ヲ整備致シマシテ、米穀配給ノ參
謀本部トシナケレバナリマセヌ、斯クシテ
公定價格ノ範圍內デ時價相場ヲ參酌シテ買
入價格ヲ決定スルト共ニ、他面ニ於キマシ
テハ賣却價格ヲモ公定シテ、各地方ノ市場
ニ指令ヲ發スルト云フヤウナ方法ヲ執ルト
云フコトガ必要デアラウト思フノデアリマ
ス、又中間取扱業者ニ對シテハ、運賃或ハ
金利、倉敷及ビ取扱手數料等ノ配給費ヲ公
定致シマシテ、之ヲ支給スルト云フ方法ノ
下ニ業務ノ安定ヲ圖ツテ、米穀配給ニ專念
セシムルコトガ、先ヅ妥當ノ途デアルト考
ヘルノデアリマスガ、本會社運用ノ適正ヲ
期スル意味ニ於キマシテ、政府ハ如何ナル
對策ト用意ヲ持ツテ居ラルルノデアリマス
カ、御尋ヲ致シタイト思フノデアリマス
本案ノ規定ニ依リマスルト、日本米穀株
式會社ハ米ヲ主トシテ、麥、大豆其ノ他ノ
雜穀又ハ肥料等ニ亙ツテ、市場賣買取引ヲ
爲スコトニナツテ居ルノデアリマスガ、此
ノ會社ハ普通ノ營利會社ト違ヒマシテ、勿
論思惑賣買ナドヲ爲スベキモノデハナイノ
デアリマスガ、公定價格ノ範圍ニ於テ賣買
ヲスルモノデアリマスルカラ、會社ノ營業
成績ノ如何ニ依リマシテハ、最低價格ト最
高價格トノ中間ニ於キマシテ、比較的安ク
買入レタ米ヲ比較的高ク賣渡スコトモ出來
ル仕組ニナツテ居ルノデアリマス、ソレガ
爲ニ生產者ト消費者トノ間ノ賣買ニ不當ノ
値開キヲ生ズル結果トモナリマシテ、配給
統制ノ圓滑ヲ期シテ適當ナル米價ヲ維持ス
ルコトヲ以テ使命トスル此ノ會社ガ、動モ
スレバ特殊ノ營利會社ノ形態ヲ備ヘルニ至
ルト云フコトモ豫想セラレルノデアリマス、
是ハ賣買手數料ヲ主トシタル會社經營ノ建
前カラ考ヘマシテモ、亦民間出資ノ株式ニ
對シテ配當ノ割合ヲ規定シテ居リマス關係
カラ見マシテモ、營利ヲ主トシタル「ブロー
カー」會社ニ變質スル可能性ガ十分窺ハ
レルノデアリマス、隨ヒマシテ生產者カラ
消費者ニ至ルマデノ賣買ノ値開キガ相當大
キイモノニナルノデハナイカ、生產者ニ執
リマシテモ、消費者ニ取リマシテモ、甚ダ
好マシカラザル價格ノ決定ヲ見ルト云フコ
トニナル危險ガアルノデゴザイマス、會社
ガ米ノ受渡ヲ爲スニ當リマシテ、配給上必
要ナル所ノ中間經費ハ、出來得ル限リ低率
デナケレバナラナイト云フコトハ申上ゲル
マデモアリマセヌ、而シテ此ノ手數料ガ米
ノ價格ヲ構成スル所ノ重要ナル要素デアリ
マスト同時ニ、會社ニ取リマシテハ最モ主
要ナル所ノ收入デアリマス關係カラ、手數
料ノ料率ノ高低ト云フコトハ、直チニ會社
經營ニ重大ナル影響ヲ齎スモノデアリマス、
會社ノ經營ニ安定性ガナケレバ、ソコニ必
ズ不合理ナル米ノ價格ガ現ハレテ來ルノデ
アリマスルカラ、此ノ矛盾ヲ解決スル方法
トシテ、政府ハ如何ナル對案ヲ持ツテ居ラ
ルルノデアリマスカ、政府ハ此ノ會社ニ安
定性ヲ與ヘル意味ニ於キマシテ、一定期間
ヲ限ツテ民間出資ノ株式ニ對シテハ配當保
證ノ制度ヲ設ケテ、米穀會社ガ一種ノ7
ローカー」會社ニ陷ル弊ヲ防止スル方法ヲ
執ルノ御意思ナキヤ否ヤト云フコトニ付キ
マシテ、併セテ御伺ヲ致シテ置キタイト思
フノデアリマス
次ニ御伺致シタイコトハ、米穀取引所廢
止ニ伴フ善後措置ノ問題デアリマスガ、米
穀取引所ノ廢止セラルル結果トシテ、新一
設置セラレマスル所ノ日本米穀會社ガ取引
所ノ財產ヲ買收スルコトニナツテ居ルノデ
アリマス、其ノ買收價格ハ建設價格ト時價
ト更ニ利用價値トヲ睨ミ合セテ決定スルコ
トニナツテ居ルヤウデアリマスガ、此ノ利
用價値ヲ參酌スルト云フコトハ一體ドウ云
フコトデアルカ、先刻眞鍋君モ此ノ點ニ觸
レラレタヤウデアリマシタガ、此ノ法律ハ
最初ノ案デハ、取引所及ビ取引員ニ對シテ
ハ廢業手當ヲ支給スルコトニナツテ居ツタ
ノデアリマス、然ルニ之ヲ撤囘シテ、其ノ
代案トシテ取引所ノ財產ノ買收、取引員ニ
對シテハ新設會社ノ株式ヲ優先的ニ割當テ
ル、或ハ轉業資金ヲ融通スル、從業員ハ會
社ノ開設スベキ所ノ市場ニ收容スルコトニ
ナルト云フヤウニ變更サレテ居ルノデアリ
マスガ、此ノ外ニ取引所ノ利用價値ヲ斟酌
スルト云フコトハ、考ヘヤウニ依リマシテ
ハ、ヤハリ廢業手當ヲ支給スルト云フコト
ト同樣ノ意味ニ解サレルノデアリマス、政
府ハ最初日本米穀株式會社法ノ立案ニ際シ
テ、廢止サルベキ取引所ニ對シテ多額ノ廢
業手當ヲ支給スルコトニナツテ居ツタノデ
アリマスガ、之ニ對シテハ猛烈ナル反對ノ
アツタコトヲ考ヘラレマシテ、此ノ非難ヲ
「カバー」スル意味デ、廢業手當ニ代ルベキ
利用價値ト云フ言葉ヲ用ユルニ至ツタノデ
ハナイカト云フ疑ヲ持タレルノデアリマス
ガ、若シ廢業手當ヲ利用價値ト云フコトト
内容的ニ同樣ナル意味ニ理解サレルモノデ
アルトシマスルナラバ、是ハ甚シイ欺瞞的
行爲デアリ、又甚ダ當ヲ得ナイ措置デアル
ト言ハナケレバナリマセヌ、殊ニ商工省ハ
米穀取引所廢止ニ對シテ、當然廢業手當ヲ
支給スベシトノ建前ヲ執ツテ居ルノデアリ
マスルカラ、此ノ點ニ付キマシテハ商工大
臣カラモ明確ナル御答辯ヲ煩シタイト思フ
次第デアリマス
尙ホ會社ノ開設致シマスル所ノ市場ヲ通
ジテ賣買サレル米以外ニ、市場ノ區域外ニ
於テモ賣買取引サレル米ガ相當多イト思フ
ノデアリマスガ、此ノ問題ニ付キマシテハ、
只今櫻内農林大臣カラ御答辯ガアツタヤウ
デアリマスルケレドモ、私ハ此ノ市場區域
外ニ於ケル所ノ取引米ニ對シテハ、此ノ法
律ノ適用ヲ受ケナイ結果ニ於キマシテハ、
ヤハリ從來ノ產地仲買商人ハ思惑賣買ヲ主
トシタル所ノ取引ヲ爲ス場合ノアルコトヲ
考ヘナケレバナラナイト思ヒマス、是ガ米
ノ適正ナル價格ヲ紊ス原因ヲ作ル場合ノ多
イコトモ考ヘナケレバナラナイト思フノデ
アリマシテ、單ニ市場內ニ於ケル取扱ノミ
デハ萬全ヲ期シ得ナイコトハ勿論デアリマ
ス、生產地ニ於テ却テ市場米ニ比較シテ高
イ價格ヲ以テ取引セラレマスル場合ノ多イ
コトモ豫想セラレルノデアリマスガ、生產
米ガ市場外ニ向ツテ流出セラレル結果ヲ見
ルニ至ルト云フコトハ、是ハ當然ノ理窟デア
ルト思ハナケレバナラナイノデアリマス、
之ニ對シテハ本法第三條ニ於キマシテ業務
許可ノ取消、制限、停止ト云フヤウナ、禁止
事項ガ規定サレテ居リマスルケレドモ、此
ノ市場外ノ賣買ヲ未然ニ防止シテ、市場ノ
取引ヲ一元的ニ統制セシメントスル規定ノ
缺ケテ居リマスルコトハ、確ニ本案ノ重大
ナル缺陷デアルト言ハナケレバナラナイト
思ヒマス、卽チ市場外ノ取引ニ依ウテ米價
ガ變動スルニ至ルト云フ、此ノ實際上ノ問
題ニ對シテ、政府ハ果シテ如何ナル御考ヲ
持ツテ居ルノデアリマスルカ、御伺ヲ致シ
タイト思フノデアリマス、以上八點ニ付キ
マシテ政府ノ明確ナル御答辯ヲ御願致シマ
シテ私ノ質問ヲ終リマス(拍手)
〔國務大臣櫻內幸雄君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=9
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010・櫻内幸雄
○國務大臣(櫻內幸雄君) 小山田君ノ質疑
ノ第一點ハ、國家管理トシテ米穀ヲ取扱ツ
テハドカウト云フヤウナ御意見ノヤウデア
ツタト思ヒマス、卽チ專賣制度、若クハ絕
對性ヲ有スル國策會社等ニ於テ國家管理ヲ
致スト云フ事柄ハ、理想トシテハ決シテ私
共ハ反對致ス者デハアリマセヌ、併シナガ
ラ實際ニ於テ行ヒマス上ニハ中々困難ガア
ルノデアリマシテ、例ヘバ米ヲ買上ゲル場
合ニ於テ、農村個々カラドウ云フヤウナ買
上ノ仕方ヲ致スカ、又販賣ノ方ニ於キマシ
テモ、其ノ價格決定ニ付キマシテモ、種々
ナル問題ガアルノデアリマシテ、目下之ニ
對シマシテハ十分ナル注意ヲ拂ツテ〓究調
査ヲ致シテ居リマスケレドモ、只今ノ所專
賣制度ヲ實施スルト云フヤウナ考ヲ持ツテ
居リマセヌ、御趣旨ノアル所ダケハ十分ニ
拜承致シタイト思ヒマス
ソレカラ次ニ需給關係、此ノ問題ハ米穀
政策ノ根幹ニ觸レル問題デアリマスガ、我
ガ日本ニ於キマシテ將來ノ米穀ノ需給關係
ガ如何樣ニナリ行クカト云フコトハ、最モ
注意ヲ拂ハナケレバナラヌ問題デアリマス、
昭和十四年ニ於ケル所ノ米穀ノ需給ノ數字
ハ、大體只今御述ニナツタヤウナ數字デア
リマス、隨ヒマシテ本年度ニ於テハ約九百
二十二万石ノ明年度ニ繰越ノ米ガ出來ルノ
デアリマシテ、配給其ノ宜シキヲ得レバ決
シテ不安ハナイノデアリマス、少シモ本年
度ニ於テノ食糧ニ不安ハゴザイマセヌ、唯
明年度以後ニ於ケル所ノ計畫ヲ如何ニシテ
立テルカト云フ問題ニ付キマシテハ、只今
ノ所デハ內地、外地、卽チ日本ノ內地及ビ臺
灣朝鮮ヲ一貫致シマシテ、其ノ土地カラ
生產スル米ニ依ツテ自給ガ出來ル計畫ヲ立
テテ居リマス、御話ノ如ク戰時狀態デアリ
マスルガ故ニ、需要ハ可ナリ殖エテ行クノ
デアリマスガ、此ノ消費ノ增加ヲ勿論見積
ツテ居リマス、又其ノ以外ニ多少ノ餘裕ヲ
見マシテ消費高ヲ定メテ、之ニ對應スルヤ
ウナ生產高ヲ得タイ、斯樣ニ思ツテ努力致
シテ居ルノデアリマス、御話ノ如ク勞力ガ
不足シタ、肥料モ十分手ニ入ラヌ、斯ウ云
フ點ニ付キマシテ、之ヲ補フベキ方策ヲ講
ジヨウトシテ今日努力致シテ居ルノデアリ
マシテ、現在ニ於キマシテハ、此ノ前議會
ニ於テ申上ゲマシタ通リ、內地ニ於テ三百
万石ノ增產計畫ヲ立テテ居リマシタガ、更
ニ內地ニ於テ百万石、其ノ他ニ於テ百万石
程ノ增產ヲ今計畫ヲシテ準備シテ居ルヤウ
ナ譯デアリマシテ、國內ニ於テ食糧品ノ不
足等ノナイヤウニ萬全ヲ期シタイト思ツテ
居リマス
將來ニ互ツテ滿洲國ノ米穀ノ產額ヲ殖ヤ
シテ、日滿一體トシタル所ノ需給關係ヲ立
テル必要ハナイカト云フ御話デアリマスガ、
御尤千萬デアリマス、勿論將來ニ於ケル所
ノ滿洲國ノ米ノ增產ニ付テモ深ク〓究ヲ致
シテ居リマス、但シ御承知ノ通リ昭和八年
デアリマシタカ、非常ナ豐作ガアリマシテ、
其ノ爲ニ農家ニ於テ非常ナ苦シミガアツタ
ト云フ歷史モアリマスノデ、此ノ點ニ付キ
マシテハ、深ク有ユル方面カラ〓究ヲ致シ
マシテ需給ノ關係ヲ立テタイト思ヒマス、
現在ニ於テハ出征將士其ノ他ノ關係上カラ、
勞力ニ於テ缺乏ヲ致シテ居リマスルケレド
モ、是等ノ將士諸君ガ歸ツテ來タ曉ノコト
モ考ヘナケレバナリマセヌ、又臺灣、朝鮮
ニ於ケル所ノ自然增加、內地ニ於ケル所ノ
自然增加等ニ付テモ考へナケレバナリマセ
々、隨ヒマシテ今日ノ窮乏シタル場合ト將
來ノ場合トヲ能ク見合ツテ、滿洲ノ增產計
畫ヲモ見合シテ、一體トシタル計畫ノ下ニ
於テ其ノ需給ノ方策ヲ確立シテ行キタイ、
斯樣ニ考ヘマシテ計畫ヲ立テテ居ルヤウナ
譯デアリマス
其ノ次ニ米穀ノ公定相場ニ付テ、最低最
高ガ昨年ノ十二月ニ決メラレテ居ルガ、此
ノ決メ方ハドウモ適當デナイヤウニ思フガ
ドウデアルカ、ソレニ對シテ前當局者ハ低
物價ヲ以テ之ニ對シテ、最高價格ヲ上ゲヌ
デモ宜シイト云フ風ナ意見ヲ言ツタガ、現
在ノ當局モ亦左樣ニ考ヘルカト云フ風ナ御
意見デアツタト思フノデアリマスガ、勿論
物價ノ昂騰ト云フコトヲ抑制シテ、而シテ
其ノ生產費ヲ低下スルト云フコトニ付キマ
シテハ、固ヨリ同一意見デアリマシテ、最
善ノ努力ヲ盡シタイト思ヒマス、唯現在ノ
米價ノ最高最低ノ決メ方ニ付キマシテハ、
色々ノ議論ガアルコトト考ヘマスガ、是ハ
御承知ノ通リ率勢米價ヲ基準ト致シマシテ、
最高ノ方ハ上二割三割ノ間ニ於テ、農林大
臣ノ決メタ價格ト家計米價トモ見合ツテ最
高ヲ定メテ居ルノデアリマシテ、最低ノ方
面ニ於キマシテハ、申スマデモナク生產業
者ノ費用、ソレカラ率勢米價、又運賃、諸
掛リ等ヲ見合ツテ定メテアルノデアリマシ
テ、現在ノ相場ガ非常ニ不適當デアルト云
フコトニ付キマシテハ、左樣ニハ考ヘマセ
ヌケレドモ、若シ將來ニ於テドウシテモ物
價ノ抑制ガ出來ズ、或ハ周圍ノ狀況ガ大イ
ナル變動ガアリマシタ時ニハ、ソレハ其ノ
時ニ考慮致サナケレバナラヌ問題デアルト
思ヒマス
次ニ會社ノ運營ニ付テ御質疑ガアリマシ
タガ、此ノ廣汎ナル命令條項ニ付テ、相當
ナル此ノ際命令ヲ致スベキ所ノ條項ヲ明ニ
シテ、而シテ當業者ヲシテ安心セシムル必
要ガアルノデハナイカ、斯ウ云フ御意見デ
アリマスガ、要シマスルノニ、此ノ法案ノ
目的ハ配給統制ヲ致シマシテ、而シテ米穀
ノ生產ヲ確保シ、消費者ニ對スル所ノ供給
ヲ確保スル目的ニ立ツテ居ルノデアリマシ
テ、其ノ命令條項ニハ相當ナル條項ヲ決メ
ル積リデアリマスガ、決シテ之ニ依ツテ官
吏獨善ノ妄斷ヲ致スガ如キコトハ絕對ニナ
イノデアリマシテ、其ノ點ハ御安心ヲ願ヒ
タイト思ヒマス
ソレカラ取引手數料ノ公定ニ付テ御話ガ
アリマシタガ、是ハ先刻申シマス通リ、從
來ヨリハ極メテ低廉ナ手數料ヲ取ルノデア
リマシテ、決シテ之ニ依ツテ現在ノ中間ノ
費用ガ殖エルト云フヤウナコトハナク、恐
ラク是ハ數字ニ依ツテ委員會ニ於テ御示シ
ガ出來ルカト思ヒマス、消費者ニモ生產者
ニモ其ノ利益ガ均霑致スヤウニ致シタイト
思ヒマス
ソレカラ取引所ノ善後處置ニ付テノ御質
問デアリマシタガ、是ハ先刻申上ゲマス通
リ、本法案ノ施行ノ結果ト致シマシテ、取引
所ガ玆ニ廢業ヲ致スノデアリマスガ故ニ、之
ニ對シテ若シ從來ノ建前カラ申シマスナラ
バ、或ハ之ヲ買收スルトカ、鐵道國有法ノ
例ニ依ルトカ、適當ナル方法ガアルト思ヒ
マス、併シナガラ今日ノ狀態ニ於キマシテ、
是等ノ人々ニ對シマシテハ適當ナル、卽チ
善後措置ト致シマシテハ、先刻御話ノ通リ
今囘出來マスル所ノ會社ノ株劵ノ優先權ヲ
與ヘルトカ、或ハ所有物件ヲ買フトカ、或ハ
失業者ヲ救濟スル適當ナル方法ヲ講ジテ、
之ニ依ツテ善後措置ヲ致シタイト思フノデ
アリマス
ソレカラ地域外ニ對スル所ノ取引ノ問題
ニ對シテ御話ガゴザイマシタガ、是モ先刻
申上ゲマシタ通リ主流ガ市場ニ集ルノデア
リマシテ、其ノ結果トシマシテ地域外ニ於
テ勿論相當ノ取引ハアリマセウケレドモ、
ソレガ此ノ市場價格ヲ左右スルト云フモノ
デハナイノデアリマシテ、市場ニ順應シテ
是ハ取引ガ行ハレルモノト、斯樣ニ考ヘテ
居ルノデアリマス、大體サウ云フコトダツ
タト思ヒマスノデ、之ヲ以テ御答辯ト致シ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=10
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011・小山松壽
○議長(小山松壽君) 村上國吉君
〔村上國吉君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=11
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012・村上國吉
○村上國吉君 私ハ此ノ法案ニ對シマシテ
ハ、大體ニ於テ贊成セントスル意思ヲ持ツ
テ居ル者デアリマスガ、ソレダケニ又之ニ
關聯シタル重要ナリト信ズル二三ノ事項ニ
付テ、農林大臣ニ御尋ヲ致シタイト考ヘル
ノデアリマス
此ノ法案ノ目的トスル所ハ、一方ニ於テ
ハ米ノ生產ヲ確保スルト同時ニ、適當ナル
配給機構ニ依ツテ適正ナル市場價格ヲ保持
シタイノデアルト、大臣ハ說明サレテ居リ
やく、ソコデ適正ナル市場價格ト云フモノ
ハ何ニ依ツテ是ガ決マルカト言ヘバ、本案
ノ第七條ニ述べテアリマスガ如クニ、米穀
統制法第二條ニ定ムル所ノ最高、最低價格
ニ準據シテ、其ノ範圍內ニ於テ其ノ市場價
格ハ定メシムルノデアル、斯ウ云フ考ヘ方
ニナツテ居ルノデアリマス、ソコデ其ノ最
高最低價格ノ定メ方ト云フコトガ、極メテ
重大ナ問題ニナツテ來ルノデアリマス、ソ
コデ私ハ大臣ニ對シテ米穀統制法施行令ヲ
改正スルノ要アリト思フガ、大臣ノ御考ハ
如何ト云フノガ第一ノ問題ニナツテ來ルノ
デアリマス、米穀統制法施行令ニ統制法ノ
第二條ニ定メテアル最低價格、最高價格ヲ
斯ウ云フ方法ニ依ツテ決メルノデアルト云
フコトガ規定サレテ居リマス、此ノ事ハ旣
ニ當局ニ於テハ十分御承知ノコトデハアリ
マスケレドモ、質疑ノ趣旨ヲ進メル必要上
若干之ニ說明ヲ加ヘテ見タイト思ヒマス、
卽チ最低價格ナルモノハ其ノ年ノ米ノ生產
費ニ運賃諸掛リヲ加ヘタルモノヲ一方ニ立
テル、又他ノ一方ニ於テハ米價指數ト物價
指數トノ關係ニ依ツテ農林大臣ノ定ムル價
格、之ヲ一方ニ立テテ、其ノ二ツノモノヲ
睨ミ合シテ、其ノ範圍內ニ於テ最低價格ハ
決メルノダト云フ農林大臣ノ定ムル價格ナ
ルモノハ、卽チ物價參酌値、物價指數ト米
價指數カラ出テ來タ所ノ價格、此ノ物價參
酌値ノ下値一割ト、下値二割ニ相當スル價
格ノ範圍內ニ於テ、農林大臣ガ適當ナリト
認ムル所ニ決メテ行ク、斯ウ云フヤリ方デ
アリマス、サウシテ又最高價格ハ一方ニ於
テハ其ノ年ニ調査シタル所ノ家計費ニ基イ
テ算出シタル家計米價、之ヲ一方ニ立テル、
他ノ一方ニ於テハ物價參酌値ノ上値二割ト
三割トノ間ニ於テ、適當ト認ムル所デ農林
大臣ガ之ヲ決メル、此ノ二ツノモノヲ睨ミ
合シテ其ノ範圍內ニ於テ、最高價格ヲ決メ
ルト云フノガ現在ノ此ノ施行令ニ於テ決メ
ラレテ居ル事柄ナノデアリマス、然ルニ今
日ノ最低最高價格ノ決メ方ガ、果シテ此ノ制
度ノ通リニ、施行令ニ言ウテ居ルガ如クナ
ツテ居ルカドウカ、此ノ點ニ私ハ非常ニ大
ナル疑問ガアルノデアリマス、昨年ノ十二
月十七日ニ米穀統制委員會ガ開カレテ、昭
和十四米穀年度ノ最高最低ノ價格ナルモノ
ハ、此ノ委員會ニ於テ決定サレテ居リマス、
其ノ時ノ事實ヲ此ノ規定ニ當嵌メテ見タ
時ニ、ドウシタ感ジガ起ルカト云フ私ノ考
ヘ方デアリマス、卽チ昨年ノ米ノ生產費ハ
二十八圓六十錢、ソレニ運賃諸掛リ一圓三
十錢ヲ加ヘテ合計二十九圓九十錢トナリマ
ス、物價參酌値ハ三十八圓二十六錢ト相成
ツテ居リマス、此ノ三十八圓二十六錢ノ下
値一割ハ三十四圓四十三錢、又下値二割ハ
三十圓六十一錢、ソコデ農林大臣ノ定ムル
價格タルモノハ此ノ三十圓六十一錢ト三十
四圓四十三錢トノ間ニ於テ、決メラレナケ
レバナラヌモノデアル、サウシテ其ノ決ツ
タモノト一方ノ基準デアル二十九圓九十錢
トヲ睨ミ合シテ、最低價格ハ決メラレナケ
レバナラヌモノデアルガ、昨年決ツタ最低
價格ナルモノハ御承知ノ如クニ二十九圓九
十錢ト云フコトニ相成ツテ居ルノデアリマス、
最高價格ハ物價參酌値三十八圓二十六錢ノ
上値二割ト言ヘバ四十五圓九十一錢デ、三
割ト言ヘバ四十九圓七十四錢デアリマス、
此ノ二割ト三割トノ範圍內ニ於テ農林大臣
ガ一ツノ基準ヲ決メル、サウシテ家計米價ニ
依ツテソレト對照シテ行クノデアリマスガ、
其ノ家計米價ナルモノハ三十四圓七十五錢
ト云フコトニナツテ居ルノデアリマス、此
ノ三十四圓七十五錢ト一方ノ上値二割、三
割ノ間ニ於テ決ツタ所ノ値段ト睨ミ合シテ、
最高價格ハ決メラルベキ筈デアルガ、其ノ
最高價格ハ御承知ノ如クニ三十五圓四十錢
ト云フコトデ、前年通リト相成ツテ居ルノ
デアリマス、ココデオ互私達ガ考ナケレバ
ナラヌコトハ、斯ノ如キ儼然タル規定ガア
ルニ拘ラズ、最低價格ヲ決スルニ當ツテ、
基準ノ一方デアル二十九圓九十錢マデ引付
ケテ持ツテ行ツテ、ソレデ兩者ノ間ノ範圍
内ニ於テ決メタ價格デアルト云フコトガ、
正シイヤリ方デアルト言ヘルカドウカト云
フ問題デアリマス、又最高價格ノ場合ニ於
テ考ヘテ見マスナラバ、成程上値二割ノ四
十五圓九十一錢ト家計米價ノ三十四圓七十
五錢トノ間ニ於テ、三十五圓四十錢ト云フ
モノガ取上ゲラレテ居ルノデアリマスケレ
ドモ、一方ニ於テハ上値ノ三割ト云フモノ
ハ全ク「オミット」サレテシマツテ、何等考慮
ガ拂ハレテ居ラナイト云フ事實ガアル上ニ、
此ノ三十四圓七十五錢ト云フ家計米價ガ、
殊更ニ拵ヘラレタモノダトモ言ヒタイ位ナ
感ジヲ持ツノデアリマス、ト云フノハ此ノ
米穀統制法ガ施行サレテカラ以來、每年家
計米價ノ決定ニ適用サレテ居ル副食物其ノ
他ノモノハ、其ノ七分ヲ採用サレテ來タニ
拘ラズ、昨年ニ至ツテ俄然トシテ三分五厘
ダケシカソレニ取入レテ居ラナイ、從來ノ
通リノ七分ヲソレニ取入レマシタナラバ、
其ノ家計米價ト云フモノハ三十六圓四十三
錢ト云フ數字ニナツテ來マスノデ、ソレデ
ハ上値二割ノ四十五圓九十一錢ト脱ミ合セ
テ行キマス時ニ、其ノ家計米價ダケデ、モウ
旣ニ前年ノ最高價格ヲ超スト云フ結果ニナ
ルモノデアリマスカラ、玆ニ殊更ナル工夫
ヲ凝ラシテ、以テ其ノ家計米價ヲ低クシタト
云フ事實ハ、見逃ス譯ニ參ラナイノデアリ
そう、又曩ノ最低價格ニ於テ一一十九圓九十
錢ト決メテ居リマスガ、是ガモツト上ヘ上
ツタ所デ、今日ノ米穀事情デアリマスカラ、
最低價格デ政府ガ米ヲ澤山ニ買入レナケレ
バナラヌト云フ義務ハ生ジテ來ナイト思ヒ
さく、ソレナラバ上ゲテモ宜イデハナイカ
ト云フ考モ起リマスガ、此ノ最低價格ヲ上
ゲルト、三十五圓四十錢ノ最高價格ニ定メ
ントスル政府ノ意圖カラ見マスルナラバ、
最低最高ノ間ノ値幅ガ餘リニ縮小セラレル
モノデアルカラシテ、ソレデ殊更ニ生產費
ニ運賃諸掛リヲ加ヘタ程度ニ於テ、之ヲ定
メント致シタ次第デアルノデアリマス、斯
ウ云フ事實ガ行ハレテ居ル、卽チ殊更ナル
工夫ヲ加ヘル、或ハ又解釋ノ上ニ於テ、是
デ法文通リニ相違ガナイノデアリマスト云
フコヂ付ケタ解釋ヲシテ、サウシテ以テ最
高最低ノ價格ヲ定メントスルコトハ、私、
正シイ行キ方デハナイト思フノデアリマス、
玆ニ米穀配給締制法ヲ布イテ、市場ヲ統
一シテ適正ナル價格ガ現レテ來ルヤウニシ
ヨウト云フガ、其ノ適正ナル價格ヲ、米穀
統制法ニ於テ言ウテ居ル所ノ最低最高價格
ノ範圍內ニ於テ爲サシメントスルナラバ、
此ノ最低最高價格ノ定メ方ト云フノハ、極
メテ重大ナル役割ヲ持ツコトニナツテ來ル
ノデアリマス(拍手)此ノ重大ナル役割ヲ持
ツ所ノ最低最高價格ノ定メ方ガ、只今私ガ
申シタ如クデアリト致シマスルナラバ、ド
ウシテモ玆ニ相當ナ考慮ヲ加ヘナケレバナ
ラヌコトガ生ジテ來ルト思フノデアリマシ
テ、ソレハ畢竟スルニ今日ノ此ノ米穀統制法
ノ施行令ヲ改正シテ、今日ノ實情ニ副フヤ
ウニシテ行クト云フコトガ、最モ大切ナル事
柄デアル、斯樣ニ思フノデアリマス、現行ノ
施行令ニ定メテ居リマス所ノ最高最低價格ノ
定メ方ト云フモノハ、昭和八年頃、米ハ餘ル、
値ハ下ル、斯ウシタ觀念ニ支配セラレテ居
タ所ノ當時ノ制定ニ依ルモノデアリマス、
米ハ餘ルノダ、値ハ下ルノダ、ソレヲ餘リ
ニ下ゲナイヤウニスルノニハ、ドウシタラ
宜イカト云フ此ノ觀念ニ支配サレテ出來タ
モノガ、今ノ施行令デアリマス、殊ニ昭
和六年カラ七年ニハ、アノ米ノ非常チ安値
ノ恐慌時代ヲ經テ居リマシテ、其ノ當時ノ
經驗カラ此ノ施行令ト云フモノハ考ヘラレ
タ筈デアリマス、サウスルト是ハ今日ノ經
濟事情、今日ノ米穀事情ニハ固ヨリ適合致
シマセヌ、デアリマスカラ私ハ安値ノ時代
ニモ適合ノ出來ル施行令ニスルト同時ニ、
今日ノ如キ事情ノ場合ニモ適用ノ出來ル施
行令ニ改メルノガ、宜イデハナイカト考ヘ
ルノデアリマスガ、農林大臣ノ御考ハ如何
デアリマセウカ、若シ改正ノ必要ガテイト
スルナラバ、·今日ノ事情ニモ適合スルヤウ
ニ運用スル方法ガアルノカ、アルナラバ其
ノ運用方法ニ付テノ御考ヲモ、御示シヲ願
ヒタイノデアリマス
第二ノ點ハ有馬前農林大臣ノ言明ニ對ス
ル櫻內農林大臣ノ見解如何トデモ申シマス
カ、サウシタ點デアリマス、昨年十二月十
七日ニ開會サレタ米穀統制委員會ニ於テ、
當時ノ農林大臣有馬サンハ、非常ニ重大ナ
ル言明ヲ與ヘテ居リマス、當時ノアノ委員
會ノ狀態ガドウデアツタカト云フコトハ、
當時ノ新聞ニモ報道サレテ居リマシタ如ク
ニ、此ノ種フ委員會トシテハ珍ラシイ程ノ
緊張シタ場面ヲ呈シタノデアリ、マス、何故
ニソレダケ緊張シタカト云フト、畢竟スル
ニ最高價格ノ決定ニ當ツテ、政府ガ前年通
リノ三十五圓四十錢ニ定メントスル諮問案
ヲ、提出シタコトニ出發ヲ致シテ居ルノデ
アリマス、卽チ諸物價ノ著シク騰貴シテ居
ル今日ニ於テ、米價獨リガ騰貴ヲ許サズト
スル所ノ政策ヲ固守シテ、果シテ長期建設
下ニ於ケル食糧ノ生產ヲ安全ニ確保スルコ
トガ出來ルカドウカト云フコトガ問題デア
ツタノデアリマス、當時政府ノ需給推算ニ
示シテ居ルガ如クニ、昭和十四米穀年度ノ食
糧ニハ不足スルヤウナ虞ガナイト致シマシ
テモ、其ノ需給狀態ハ今日マデトハ異ツテ、
相當ニ窮屈デアルコトヲ免レナイ、又此ノ
需給推算ニ示サシテ居ル消費量ハ、必ズモ
ツト相當量增加スルモノデアラウト考ヘラ
レル、左樣ナル譯デアルカラ今年ノヤウナ
時ニハ、其ノ生產ガ彌ガ上ニモ增加スル政策
ヲ執ルベキダ、政府ニハ生產增加ノ計畫ヲ
持ツテ居ルト云フコトデハアルガ、更ニ最
高價格ヲモツト引上ゲテ、農家ノ氣分ニ刺
戟ヲ與ヘテ、增產ニ向ツテ精進セシムベキ
デハナイカ、是ガ最高價格引上論ノ根據デ
アツタノデアリマス、其ノ際有馬當時ノ農
林大臣ハ、政府ハ今諸物價ヲ引下ゲル方針
デアル、出來ルナラバ事變前ノ狀態ニマデ
モ之ヲ引戾シテ行カウトシテ居ル今日ニ於
テ、諸物價ノ高低ノ原動タル米ノ値段ヲ引
上ゲルコトハ、政府トシテハ政策ノ矛盾デ
アル、又政府ノ物價方針ニ相反スル結果ヲ
招來センコトヲ惧レル、又肥料其ノ他生產
資材ノ價格ガ總テノ物價-米ノ騰貴ニ伴
レテ上ツテ來ルナラバ、米ノ最高價格ヲ
引上ゲテモ、結局生產者ニハ利益ヲ齎サナ
イ、殊ニ米ノ最高價格ヲ引上ゲル、事實ニ
於テ米ノ市價ヲ引上ゲルト云フコトニ相成
ルトスルナラバ、自分ハ國務大臣トシテ
閣議ノ席ニ於テ物價ノ引下ヲ主張スルコト
ガ出來ナクナル、又生產ノ確保ニ付テハ別
箇ノ方策ヲ以テ之ニ對應シテ、斷ジテ懸念
ナキヤウニスル考デアル、斯ウ云フ意味ノ
答辯ヲ繰返シ爲サレテ居ルノデアリマス、
ソコデ民間カラ出テ居リマス所ノ委員多數
ノ意思ヲ代表シテ、一委員カラ次ノ如キ希
望條件ガ提出サレテ居リマス、肥料其ノ他
農用資材ノ絕對ニ不足ナキ供給ト其ノ價格ノ
引下、米ノ品質本位ニ囚ハレズシテ多收量品
種ヲ栽培セシムルコト、朝鮮及ビ臺灣ニモ徹底
的ニ增產ヲ圖ルコト、病蟲害防除ノ徹底ヲ期ス
ルコト、其ノ他尙ホ二三アリマスガ、是ハ省
略致シテ置キマス、卽チ斯ノ如キ希望條件
ガ提出サレマシテ、ソレニ對シテ有馬前農
林大臣ハ、深ク之ヲ諒トシテ其ノ努力ヲ約
束サレマシタ、而シテ物價殊ニ農用資材ノ
價格ノ引下ニシテ、若シソレガ實現セヌガ
如キ場合ニハ、責任ヲ取ルトノ言明ヲ與ヘ
ラレテ居ルノデアリマス、右ハ勿論前農林
大臣有馬氏ノ言明デハアリマスルケレドモ、
統制委員會ガ此ノ言明ニ信賴シテ、最高價
格ハ政府諮問ノ通リニ決定シタノデアルト
云フ事實ニ鑑ミマスナラバ、現農林大臣ニ
於カセラレマシテモ、此ノ言明ヲ繼承シテ、
其ノ精神ヲ體シテ實現ニ努力セラルベキ
義務ガアルモノダト私ハ思フ者デアリマス
(拍手)之ニ對スル農林大臣ノ御見解ヲ
伺ツテ置キタイノデアリマス
第三ニハ米ノ專賣ニ關スル件デアリマス、〓
世間デハ此ノ法案ノ施行ヲ以テ、米穀專賣
ノ前提デハナイカト云フ說ヲ爲シテ居ル者
ガアリマス、私ニハ政府ニハ決シテサウシ
タ意圖ガアツテ、今日サウシタコトガ考へ
ラレタモノダト云フ想像ハ起リマセヌケレ
ドモ、其ノ事實ハドウデアルカト云フコト
ヲ今一應確メテ置キタイノデアルガ、第二
ニハ此ノ法案ハ他日ノ米穀專賣ヲ意圖スル
モノデハナイト致シマシテモ、此ノ法案ノ
施行ハ確ニ專賣ノ施行ニ色々ノ便宜ヲ與ヘ
ル結果トナルコトダケハ、首肯スルコトガ
出來ルノデアリマス、卽チ見樣ニ依ツテハ
先刻小山田君カラモ申サレマシタ如クニ、
米穀ノ專賣ニ向ツテ一步ヲ進メタモノデア
ルトモ言ヒ得ルト思フノデアリマス、我國
ノ米ノ配給問題ハ、其ノ需給關係ヲ繞ツテ
絕エズ起ツテ居ル今日ノ問題デアリマス、
將來モ恐ラクサウシタコトガ續クノデハア
ルマイカト思ハレマス、卽チ此ノ配給統
制ノ施行ニ依ツテ、米穀ノ配給問題ガ永
久ニ解決スルモノデアルトハ考ヘラレナイ
ノデアリマス、米ノ專賣問題ハ多年論議サ
レテ居ル所デアリマスガ、消エントシテ居
ルカト思フト燃上ガル、燃上ガツタカト思フ
ト下火ニナルト云フ狀態ヲ、今日マデ此ノ
專賣問題ハ幾タビモ繰返シテ居ルノデアリ
マスルガ、併シ其ノ政策ノ總テノ米ノ配給
ニ關スル進ミ方ヲ見マスト、一步々々專賣ヲ
必要トスル狀態ニ移行シツツアルノデハナ
イカト云フガ如キ考モ起ルノデアリマス、
是ニ於テ政府ハ此ノ際眞劍ニ專賣問題ニ付
テ〓究ヲナサレタラドウカ、〓究ノ結果ガ
専賣ヲ可トスル結論ニ到達シタナラバ之ヲ
斷行スルコト、又不可ナリトスル結論ニ
到達スルナラバ、必ズソレニ對應シテ米穀
ノ配給問題ヲ徹底的ニ解決シテ、生產者、
消費者及ビ配給業者ニ將來ノ向フ所ヲ示ス
コトガ、適當デハナイカト云フコトヲ考ヘ
サセラレルヤウニ、今日ナツテ居ルノデア
リマス、此ノ意味ニ於キマシテ、私ハ米ノ
專賣ノ眞劍ナル〓究ヲ政府ニ進言セントス
ルモノデアリマスルガ、之ニ對シテ政府ノ
所見如何、此ノ御答辯ヲ願ヒタイト思フノ
デアリマス、私ノ質問ハ是デ終リマス(拍
手)
〔國務大臣櫻內幸雄君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=12
-
013・櫻内幸雄
○國務大臣(櫻內幸雄君) 村上君ノ御質疑
ニ對シテ御答致シマス、第一點ハ米穀統制
法施行令ヲ改正スル意思アリヤ否ヤト云フ
點デアリマス、御承知ノ通リ、現在ノ施行
令ニ於キマシテハ、私ハ其ノ施行令其ノモ
ノノ中デ十分運用ガ出來ルデハナイカト考
ヘテ居リマス、唯ダ今御指摘ニナリマシタ
物價參酌値、卽チ率勢米價ト申シマスカ、
此ノ算定ノ基礎ガ、非常ニ米價ノ動搖シテ
居ツタ時代ガ含マレテ居ルト云フコトダケ
ハ、確ニ私共認メテ居リマスノデ、其ノ點ニ
付テハ考慮ヲ拂ハナケレバナラヌト考ヘテ
居リマス、又從來農家二千戶ニ就テ調ベテ居
ツタノヲ、更ニ或ハ三千戶ニスルトカ、或ハ極
ク小農者ノ人々ノ生產費ヲ調ベルトカ、サウ云
フ事柄ニ對シテ、調査ノ方法等ニ付テハ考慮
シナケレバナラヌト考ヘマス、併シ御話ノ
如ク此ノ本年度ノ最高最低ノ値段ヲ取極メ
マシタ點ニ付キマシテ御議論ノ點ガアリマ
シタガ、是ハ御意見ニ對シマシテ、全然私
ハ同意トハ申シマセヌケレドモ、或ル程度
多少傾聽致スベキ御議論デアリマシテ、此
ノ點ニ付キマシテハ深ク考慮ヲ拂ヒタイト
思ツテ居リマス
ソレカラ第二ニ、本年度ノ最高低價格ヲ
決メル場合ニ於テ、前農林大臣ガ責任ヲ以
テ聲明セラレタ點ガアルガ、之ニ對シテ何
ト考ヘルカト云フ風ナ御議論デアリマシタ
ガ、私ハ物價ヲ下ゲテ生產「コスト」ヲ安ク
スルト云フコトニ對シテ、有ユル努力ヲ致
シタイト云フ信念ニ於キマシテハ前任者
ト同一ノ考ヲ持ツテ居リマス、併ナガラ
總テノ物價ガ〓騰スル情勢ニアリマスガ故
ニ、肥料デアルトカ、或ハ其ノ他農具資材
デアルトカ云フモノヲ、豫期ノ如ク下ゲル
コトノ出來得ナイコトニ付テハ、深ク憂慮
致ス者デアリマシテ、更ニ十分ナル注意ヲ
拂ヒタイト思ヒマス
最後ニ米ノ專賣ニ關シテノ御話ガアリマ
シタガ、米ノ專賣ノ第一步トシテ本案ヲ提
出シタカト云フ御意見ニ對シマシテハ、左
樣ナ意味ヲ持ツテ居ル譯デハアリマセヌケ
レドモ、或ハ事實ガサウ云フコトニナルカ
モ知レマセヌ、併シ要點ハ、タビ〓〓申上
ゲマス通リ米穀ノ配給ノ圓滑ト生產ノ確
保、消費者ヘノ需要供給ノ確保、此ノ點ニ
付テ本案ヲ出シタ譯デアリマシテ、米ノ專
賣ニ對スル所ノ問題ニ付キマシテハ、理想
トシテハ國家ガ一ツノ會社ヲ設ケテ全部買
取ツテ、全部供給スル方法ニスルカ、或
國自ラ之ヲヤルカ、斯ウ云フ事柄ハ理想的
方法デアラウト考ヘマスケレドモ、技術上
ニ於キマシテモ、又財政上ニ於キマシテモ、
相當〓究ヲ要スルコトデアリマスガ故ニ、
十分ニ調査ヲ致シマシテ、其ノ結果若シ之ニ
向ツテ進ムコトガ必要ナリト考ヘマスレバ、
適當ノ機會ニ於テ皆サンノ御審議ヲ仰ギタ
イト考ヘマス(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=13
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014・小山松壽
○議長(小山松壽君) 吉植庄亮君
〔吉植庄亮君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=14
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015・吉植庄亮
○吉植庄亮君 私ハ本案ノ上程ニ際シマシ
テ、國民トシテ又農民トシテ大イニ喜ブ者
デゴザイマス、吾々國民ハ今日マデ、吾々
ノ主食物デアリマスル米穀ガ朝ニタニ投機
ノ具ニ供セラレ、其ノ爲ニ私共ノ家計ヲ常
ニ動搖止ムナキニ至ラシメラレテ居ツタノ
デゴザイマス、ソレガ今日初メテ此ノ案ノ
上程ニ依ツテ、正シキ道ヲ履ムコトニナル
ノデゴザイマス、私共農民ノ作リマシタ米
ハ、所謂蠣殼町相場ト言ハレル投機ノ具ニ
常ニ供セラレマシテ、此ノ投機ノ畫キマ
スル亂舞ノ儘ニ踊ラサレテ居ツタノデゴ
ザイマス、神聖ナル農民ノ血ト汗トノ結晶
デアリマスル米ガ、斯樣ナ狀態ニ置カレマ
スルコトハ、全農民ニ取ツテ洵ニ殘念至極
デアツタノデゴザイマス(拍手)其ノ米ガ今
日初メテ正シキ道ニ於テ國民ノ賣買ノ目標
ニナラウト致シテ居ルノデゴザイマス、ノ
ミナラズ、農民ハ生產ハ致シテ居リマスル
ガ、其ノ賣買ニ際シテノ意思表示ガ正式ニ
ハ斟酌セラレナカツタノデゴザイマス、ソ
レガ今囘ノ提案ニ依ツテ市場ニ於ケル意思
表示ヲ法文化シヨウト云フコトニナルノデ
ゴザイマス、是ガ私ノ國民トシテ農民トシ
テ喜ビニ堪ヘナイト申シタ所以デゴザイマ
シテ、此ノ點カラ厚ク農林省當局ニ御禮ヲ
申シ、敬意ヲ表スル者デゴザイマス、併シ
ナガラ斯樣申上ゲタカラト云ツテ、然ラバ
本案ハ絕對ニ無瑕ノモノデアリ、全然吾々
ノ理想ニ近キモノデアルカト申シマスルノ
二、殘念ナガラ左樣斷言スルコトハ出來マ
セヌ、此ノ案ヲ見マスルト、幾多重大ナル
缺陷ガ藏セラレテ居リマス、先程農林大臣
ハ、本案ノ提案ハ一面米取引機構ノ革新デ
アリ、又他面ニ於テ米穀業者ト生產者團體
トノ共存諧調ヲ爲シテ、米問題ヲ解決スル
ノデアルト云フ意味ヲ述ベラレテ居リマス、
又過般此ノ案ガ愈〓提案ト決定シタ時ニモ、
天下ニ向ツテ左樣公表セラレテ居リマス、
成程一ツノ精神デアリマスル所ノ米取引機
構ノ革新ハ、此ノ案ニ依ツテ完全ニ斷行出
來ルヤウデゴザイマス、併シナガラ今一ツ
ノ精神デアリマスル米穀業者ト生產者團體
トノ間ニ於ケル共存諧調ヲ期スルト云フ點
ハ、遺憾ナガラ本案ヲ以テシテハ其ノ目的
ヲ達スルコトガ出來ナイト確信致シマス、
御承知ノ通リニ米穀業者ハ生產者ノ生產シ
タ物ヲ出來ルダケ高ク他ニ販賣シテ其ノ利
益ヲ取ル、而モ其ノ利益ハ出來ルダケ大ナ
ルコトヲ欲シテ居ルノデゴザイマス、所謂
營利業者群デゴザイマス、之ニ對シテ產業
組合ヲ中心トスル生產團體ハ、自己ノ生產
致シテ居リマスル物ヲ正當ノ價格ニ於テ之
ヲ販賣シ、自己ノ消費セントスル物ヲ正當
ノ價格ニ於テ購買シヨウトスル團體デアリ
マシテ、所謂非營利團體デゴザイマス、此
ノ營利業者群ト非營利業者團體トヲ一ツノ
米穀會社ト云フ檻ノ中ニ入レテ、共存諧調
ヲ望ムト云フコトハ、是ハ木ニ緣ツテ魚ヲ
求ムルヨリモ尙ホ難シキモノト信ジマス、
斯樣ニ本案ハ缺陷ヲ藏シテ居リマス、此ノ
點ニ付テ私ハ過般一米穀商人ト會談致シマ
シタ時ノコトヲ、皆樣ニ御報〓シタイト思
ヒマス、其ノ時ニ其ノ米穀商人ハ私ニ向ツ
テ斯樣申シマシタ、實ハ私共ハ一石ニ付テ
大體二十五錢ノ租稅ヲ納メテ居リマス、區
稅町稅、市稅、府稅、直接國稅、大體一
石ニ付テ二十五錢ニ當ツテ居リマス、然ル
ニ產業組合ハ此ノ稅ヲ免除セラレテ居ル、
此ノ稅ヲ免除セラレテ居リマス國體ト、私
共商業團體ガ今日マデ此ノ實社會ニ於テ戰
ヒ來ツタノデアリマスガ、幸ニ千五百万石
ノ市場ニ出廻リマス米穀ノ中、七割ハ吾々
商人ガ獲得致シマシテ、三割ガ產業組合ノ
得ル所デアツタノデアル、併シナガラ今日
以後ハモウ私共ハ戰ヒ勝ツコトハ出來ナイ
ノデアル、此ノ二十五錢ノ負擔ヲ見事ニ乘
切ツテ行ツタ一ツノ原因ハ、今日マデ〓算
取引ガ許サレテ居リマシタ、此ノ〓算取引
ニ私共ハ買付ケタ米ヲ賣繫イデ、所謂保險
繫ギヲシテ來タカラコソ、此ノ二十五錢ノ
負擔ヲ克服シ、尙ホ七割ノ市場ヲ獲得出來
タノデアル、然ルニ今日以後ハ延取引ハア
リマシテモ、是ハ銘柄取引デアツテ、所謂
保險繫ギヲ爲スコトハ出來ナイ、ココデ吾
吾ガ獲得シタル七割ノ市場ト云フモノハ忽
チ壞滅シ、此ノ二十五錢ガ禍ヲ爲シテ、吾
吾ハ遂ニ壇ノ浦ニ陷ラネバナラナイノデア
ル、斯樣申シテ居リマシタ、是ハ米穀業者
トシテ相當悲觀ノ色ガ濃イ見方デアラウト
ハ思ヒマスガ、其ノ中ニ十分ノ眞理ヲ含ン
デ居ラナイコトハナイト云フコトヲ、吾々
ニモ察セラレルノデゴザイマス、相剋摩擦
ヲ絕對ニ避ケルト申シマシタ所デ、此ノ事
實ハ如何トモ致スコトガ出來マセヌ、謂ハ
バ獅子ト虎ヲ一ツ檻ノ中ニ放ツ、犬猿啻ナ
ラザルモノヲ一ツ檻ノ中ニ放ツ、茲ニ共存
諧調ヲ望ムコトハ出來マセヌ、ココデ私ハ
甚ダ遺憾ニ感ジマスコトハ、農林大臣ガ先
程來米穀國家管理案乃至ハ米穀專賣ト云フ
考ハナイト言ハレタコトデゴザイマス、此
ノ案ガ米穀專賣乃至ハ國家管理案ノ前提デ
アルト云フコトニナリマスルト、玆ニ是ダ
ケノ相剋摩擦モ暫クノ間ト云フノデ、圓滿
ニ何等カノ方法ヲ以テ導クコトガ出來ル筈
デアリマス、併シナガラ是ガ最後案デアリ、
絕對ノ案デアルト云フコトニナリマスト、
將來何時此ノ理想案ガ來ルカモ分ラナイト
云フコトニナリマスカラ、此ノ相剋摩擦ハ
洵ニ深甚ナルモノニナルト思ヒマス、又
面私ハ米穀ト云フモノハドウシテモ統制機
構ニ適シタル商品デアルト云フ考ヲ持ツテ居
リマス、卽チ今日ノ戰時色一色ニ塗ラレマシ
タ此ノ統制機構ノ流行ニ先ダチマシテ、十數
年前旣ニ米穀法ガ制定セラレ、延イテ米穀統
制法ノ出現トナリ、米穀自治管理案トナリ、
遂ニ今日ノ米穀配給統制案ガ上程セラレタノ
デゴザイマス、是ハ實ニ能ク此ノ米ノ性質
ヲ物語ツテ居ルト私ハ信ジマス、而シテ又
此ノ統制機構ト云フモノハ、理論的ニ見マ
スト、此ノ究極、行キ付クベキ所ノモノハ、
最後ハ國家管理カ專賣デナケレバナラナイ
モノデアラウト確信致シマス、此ノ理論的
ニ見テ最後ハ米穀國家管理案ナリ、專賣デ
ナケレバナラナイト云フ統制機構ニ於テ、
此ノ案ガ最後案ナリト言ハレルコトハ、案
自ラガ只今申シマシタヤウナ缺陷ヲ有シテ
居リマスル以上、是ハ相當重大ナ問題ニナ
ルノデハナイカ、私ハ此ノ點ニ於テ只今村
上君ノ御問ニ對シテ、農林大臣ガ申述ベラ
レマシタ最後ノ御言葉ヲ、モウ一步前進セ
シメテ戴キタイト思ヒマス(拍手)只今ノ農
林大臣ニ私ガ申上ゲマシタ言葉ニ付テ、御
考ヲ承リタイノデアリマス
第二ニハ私ハ我國ノ戰時米穀政策ニ付テ
洵ニ不安ニ堪ヘナイモノガアルノデゴザイ
そう、此ノ點ニ付テ御伺致シタイノデアリ
マス、是カラ私ハ私ガ調査致シマシタ材料
ガアリマス、之ヲ申述べマスガ、此ノ材料
ハ洵ニ嚴肅ナル警告ヲ我ガ日本ニ發シツツ
アルモノデゴザイマス、只今カラ申述べマ
スル材料ニ付テ農林大臣ハ如何御考ニナリ
マスカ、此ノ事ヲ承リタイノデゴザイマス、
私ガ調査致シマシタ結果ハ、悉クト申シテ
モ宜シイ位悲觀材料ノミデゴザイマス、樂
觀材料ハ唯一ツモゴザイマセヌ、私ハ先程
來農林大臣カラ承ツテ居リマスルシ、又屢〓
新聞紙上デ農林當局ノ御意見ヲ承ツテ居リ
マスガ、私モ政府ノ見ル如キ結果ノ來ルコ
トヲ、國家ノ爲ニ常ニ念願致シテ居ルモノ
デゴザイマス、政府ガ見テ居リマスヤウ
ニ米穀ノ需給ガ來年ハ多少心配デアル
ガ、本年ハ絕對大丈夫デアル、左樣ニ見タ
イノデゴザイマス、國家ヲ愛スレバ愛スル
程左樣見タイノデゴザイマスガ、併シ私ノ
調査ハ一切私ノ念願ヲ裏切リマシテ、私
本年ノ米穀需給狀態ハ頗ル危イゾト「エス·
オー·エス」ノ信號ヲ發シテ吳レテ居ルノデ
ゴザイマス、私ハ斯樣ナ事ヲ農林大臣ニ御
話申上ゲマスコトハ甚ダ恐縮デゴザイマス
ガ、併シ此ノ事ハ私ノ材料一切ヲ物語リマ
スル前提トシテ必要デゴザイマスカラ、暫
ク我慢ヲシテ聽イテ戴キタウゴザイマス、
農林當局ノ發表致シテノ居ル所ヲ見マスル
ト、米ト云フモノハ人間ノ力デ簡單ニ出來
ルヤウニ見ラレマス、併シナガラ米ハ左樣ニ
人間ノ力ヲ以テ「ゴム」ヲ引伸バシタリ縮メ
タリスルヤウニハ出來ナイモノデゴザイマ
ス、全國ノ農事試驗場ニ於テ調査致シマシ
タ所ニ依リマスルト日本ノ土地ノ力ハ洵ニ
偉大ナモノデゴザイマス、十箇年間無肥料
デ、而モ尙ホ良キ土地ニ於キマシテ三俵
半、一石四斗、ソレカラ惡イ處デ三俵、
石二斗ノ收穫ガ得ラレルト云フノデゴザイ
マー、況シテヤ本年マデ肥料ヲヤリマシタ
後、來年肥料ヲヤリマセヌデモ三俵半乃至
三俵ハ樂ニ穫レルコトハ、之ヲ以テモ分ル
ノデゴザイマス、之ヲ日本全國ノ水田三百
二十万町ニ掛合セマスト、此ノ三俵半乃至
三俵ト云フモノハ、中ヲ取ツテ四千万石ニ
ナルノデゴザイマス、卽チ政府ガ發表致シ
テ居リマスル所ニ依レバ、昨年ハ六千五百
万石、昭和九年ハ五千百万石ト發表致シテ
居リマス、其ノ內四千万石ハ土地ノ力デゴ
ザイマス、アトガ人間ト自然トノカデア
ル、是ガ私ノ調ベマシタ數字ノ基礎ヲ成シ
マス、ソレデアリマスルカラ、昭和九年ニ
ハ近來デノ未曾有ノ大凶作ガアリマシタ
ガ、此ノ大凶作ノ五千万石ト云フモノハ、
當時ノ自然ト人間ガ土地ト協力シテ初メ
テ生產ヲ得タノデゴザイマスルガ、其ノ内
ニ自然ガ人間ニ反逆ヲシタ、ソコデ五千百
万石ヨリ穫レナカツタ、サウスルト土地
ノ力ガ四、自然ト人間ガ一、斯ウ相成ツテ
居リマス、昨年ガ六千五百万石デ、是ハ自
然ト人間ガ固キ握手ヲシテ作ツタ、其ノ自
然ト人間ガ固キ握手ヲシテ作ツタ米ガ六千
五百万石、土地ノ力ガ四千万石トナリマ〓
ス、米ヲ論ズル時ニ此ノ根本觀念ヲ脇ニ
シテ論ジテハ玆ニ大ナル過誤ガ來リマス、
之ヲ土臺ニ私ハ調査材料ヲ申上ゲマス、凶
作ト云フ年ハドウ云フ風ニ來ルカト云フコ
トヲ、農林省カラ頂戴致シマシタ資料ニ依
ツテ調査致シマスト、大正八年以降昨年昭
和十三年マデ五千七百万石ノ收穫マデヲ凶
作トシテ入レマシテ七囘、五千五百万石限
度ヲ凶作トシマシテ、五囘日本ニハ凶作ガ
來テ居リマス、卽チ四年ニ一度ハ五千五百
万石限度ノ凶作ガ來ルコトニナツテ居リマ
ス、是ハ自然ガ人間ヘ反逆シマシタ場合デ
ゴザイマス、又モウ一ツ斯ウ云フ凶作ノ來
方モゴザイマス、豐作ノ後ハ大體ニ凶作デ
アリマス、大正九年ニ六千三百万石穫レテ
居リマスカラ、其ノ翌年ハ五千五百万石ノ
凶作デゴザイマス、昭和五年六千六百万石
穫ツテ、當時開闢以來ノ大增收ト吾々ガ喜
ンダノデゴザイマシタガ、其ノ翌昭和六年
ハ五千五百万石ト云フ減收デゴザイマス、
又昭和八年ニ其ノ開闢以來ノ大增收ヲ突破
シテ七千万石ノ增收ヲ致シマスルト、其ノ
翌昭和九年ハ近來二十箇年ニ初メテノ五千
百万石ト云フ大減收ガ來テ居リマス、
ツハ天候ノ工合モアリマセウガ、大體ニ於
テ大豐作ニ依ツテ地力ヲ消耗致シマスル其
ノ後ニ肥料ヲ潤澤ニ施サナイコトモ、ッ
ノ原因ヲ成シテ居ルト見テ宜シイデアリマ
セウ、サウシマスト昭和十一年、十二年、
十三年ト云フ年ハ六千七百万石、六千六百
万石、六千五百万石ト三箇年續イタ、斯樣
ナ豐作ノ三箇年連續ハ過去二十箇年ニナイ
ノデゴザイマスガ、其ノ三箇年間ノ連續ノ
豐作、其ノ後ニ來ルベキモノハ何カ、凶作
デアルト云フ推定ガ付クノデゴザイマス、
而モ亦三箇年連續ノ豐作ハ十一年、十二年、
十三年ニアリマシタガ、四箇年連續ノ豐作ト
云フ年ハアリマセヌ、サウ致シマスト、此
ノ統計ヲ本ト致シテ考ヘマスルト、本年ハ
凶作ナリト斷言ハ出來ナイニシマシテモ、
豐作デハナイト云フコトハ、數字ノ上カラ
私共ハ斷定シテ宜シイデアラウト思ヒマス、
其ノ上ニ又モウ一ツアリマス、米ノ値段ガ
豐凶ニ及ボシマスル度ト申シマスルモノハ、
米ノ値段ガ高上リニナツテ參リマシタ翌年
ハ、大體ニ豐作ノ原因ヲ成シマスガ、米ノ
値段ガ安クナリマシタ年ノ翌年ハ、大體ニ
於テ豐作デナイト云フコトニナツテ居リマ
ス、此ノ點カラ申シマスト、先程村上君カ
ラノ御話モアリマシタガ、本年ノ昭和十三
年度產米ノ最高米穀價格ト云フモノハ、相
當無理ヲシテ低價ニ押付ケテ居リマス、又
臺灣ノ米穀移出管理案ニ依リマシテ、臺灣
ノ玄米ガ本年ハ一石ニ付テー一圓安イコトニ
ナリマス、ソレダケ値ガ安ク農民ノ手ニ入
リマス、サウシマスト、是ハ決シテ增產ノ
原因トハナラナイデ、非增產ノ原因ト算へ
ルコトガ出來マス、是ハ自然ガ人間ヘ
反逆シタト私ガ申ス場合デゴザイマス、
今度ハ逆ニ人間ガ自然ニ反逆致シタ場
合ノ凶作ガゴザイマス、我國ニ於キマシテ
ハ、日〓戰爭、日露戰爭當時ノ米ノ產額ハ、
私ガ戴キマシタ農林省ノ資料ニハアリマセ
ヌカラ申上ゲルコトハ出來マセヌガ、併シ
日〓戰爭ガ起リマシタ明治二十七年、是ハ
大豐作デゴザイマシタ、其ノ翌年二十八年
ガ大凶作、三十七年ガ大豐作デアツテ、三
十八年ガ大凶作、是ハ人間ガ戰線ニ出テ勞
力ノ不足ト、ソレカラ注意力其ノ他ノ不足
ト云フコトガ、人間ガ自然ヘノ反逆ノ場合
デゴザイマス、之ヲ最モ端的ニ物語ツテ居
リマスノガ、世界大戰ニ於キマスル開戰後
三年目ニ於ケル、佛蘭西、獨逸ニ於ケル三
割カラ四割以上ニ及ビマシタ所ノ大凶作、
是ガ能ク物語ツテ居リマス、サウシマスル
ト、本年ハ今度ノ事變ガ起リマシテカラ三
年目デアリマシテ、所謂人間ガ自然ニ反逆
致シテ來ル所ノ凶作ノ年ニ當ツテ居リマス、
此ノ人間ガ自然ヘノ反逆ヲ打倒スルニハ、
ドウシテモ玆ニ豐富ナル肥料ト、勞働力ノ
完全ナル調整ト、又農產資材ノ豐富ナル供、
給ト、此ノ一切ノ價格ヲ引下ゲルコト、是
レ以外ニハ途ガナイノデゴザイマス(拍手)
然ルニ此ノ途ガ政府デハ只今講ジテ居ルト
申サレテ居リマスルガ、私共ノ眼カラ見マ
スルト、政府ガ言フヤウニハ民間ニ行渡ツ
テ居ラナイノデゴザイマス、サウシマスト
此ノ點ガ頗ル危險ダト私ハ思フ、以上擧ゲ
來リマシタ一切ガ、本年ノ米穀市場ニ對シ
テ惡材料ノ連續デゴザイマス、然ラバ之ニ
對シテ豐作或ハ增收ニ導ク所ノ原因ハナイ
カ、唯一ツアリマス、政府ガ言明致シテ居リ
マスル增產計晝デアリマス、内地四百万石、
外地百五十万石、合計五百五十万石ノ增產
計畫ガ是デゴザイマス、又增產ニ對シテ計
上セラレマシタ豫算九百万圓ト云フモノガ
ゴザイマス、是ガ唯一無二ノ增收竝ニ豐作
ハ吾々ガ期待ヲ掛ケテ居リマス原因デゴザ
イマスガ、併シ惜シイコトニ此ノ政府ノ聲
明ハ、私共成程ト思ハレルノデゴザイマス
ガ、其ノ聲明ガマダ一ツモ實行ニ入ツテ居
ラナイノデゴザイマス、一ツノ例ヲ申上ゲ
マスルト、政府ハ肥料ヲ潤澤ニ供給スル、
斯ウ言ハレテ居リマス、併シ是ハ農林大臣
ト致シマシテハ就任〓々ノコトデアラレマ
スノデ、直チニ是ハ農林大臣ヲ御責メスル
コトハ出來マセヌノミナラズ、最近ノ御努
力ニ依リマシテ燐鑛石三十万瓲、加里鹽慥
カ九万瓲カノ輸入ガ出來ルコトニナリマシ
ク、斯樣ナ點ハ洵ニ其ノ御精進ヲ感謝致ス
者デゴザイマスガ、併シ全般的ニ見テ此ノ
肥料計畫ハ大分遲レテ居リマシテ、今日關
東ニ於キマスル吾々ノ處、又東北ニ於キマ
シテモ、關西ニ於キマシテモ、春ノ肥料ガ
手ニ入ラナイデ、農民ガ天ヲ仰イデ嗟嘆シ
テ居ルノガ、全國ニ彌漫致シテ居ルノデア
リマシテ、是ハホンノ一例ニ過ギマセヌ、
又先程村上君カラ有馬農林大臣ノ言ハレマ
シタコトヲ現農林大臣ガ御引繼ニナルカ、
其ノ責任ヲ取ラレルカト云フ御尋ガアリマ
シタガ、農產資材ノ値下ノ點デゴザイマス、
是モチヨツトモ斷行セラレテ居リマセヌ、
米ハ開戰前カラ本年一月マデニ一割一分ノ
價格騰貴ニ過ギマセヌ、併シナガラ此ノ米
ヲ作リマスルニ要スル肥料、是ハ四割四分
ノ騰貴トナツテ居リマス、又牛馬鷄ヲ飼ヒ
マスル飼料ハ二割六分ノ騰貴、農民生活ニ
必要デアリマスル所ノ被服、或ハ農具、機
具或ハ足袋、斯樣ナモノハ洵ニ五割九分ノ
大値上ヲ示シテ居ルノデゴザイマス、農民
ガ賣ル所ノモノガ戰前ニ比ベテ一割一分高
値、而モ昨年ニ比ベテハ一文モ値上ニナツ
テ居リマセヌ、然ルニ農民ガ米ヲ作ルベキ
所ノ、麥ヲ作ルベキ所ノ資材ハ、斯ノ如キ
價格騰貴ヲ致シテ居ルノデアリマス、政府
ガ百ノ聲明ヲ出シマシテモ、實際ハ斯樣ナ狀
況ニナツテ居ル、是デ政府ノ聲明スル四百万石
ノ內地ニ於ケル增產計畫ヲ吾々ガ是認出來
マスカドウカ、大臣ハ篤ト胸ニ手ヲ當テテ御考
ヲ願ヒタイ、一切ノ狀況ガ惡材料ノミノ累積
デゴザイマシテ、希望ヲ繋グ原因ハ一ツモゴザ
イマセヌ、此ノ數字ハ私ガ徒ニ作ツタ數字
デハゴザイマセヌ、是ハ農林省カラ出サレ
マシタ數字ニ付テ一切調上ゲマシタモノデ
ゴザイマス
ソコデ私ハ農林、軍部兩當局ニ御尋ヲ致
シタイ、吾々ハ此ノ戰ヲ飽クマデモ勝タネ
バナリマセヌ、又飽クマデモ此ノ際ニ於テ
興亞ノ新體制ヲ建設スル爲ニ鬪ヒ勝タネバ
ナリマセヌ、凶作ガ來マセウトモ、如何ナ
ル國難ガ來マセウトモ鬪ヒ勝タネバナリマ
セヌ、併シソレニハソレダケノ準備ガ必要
デアリ又用意ガ必要デアリマス、農林大臣
ハ此ノ凶作ガ來マシタ時ニ、之ニ對スル對
策ヲ御持チデゴザイマスカ、之ヲ承リタイ、
附加ヘマスガ、此ノ凶作ハ萬一來ルカモ知
レナイト云フヤウナ性質ノモノデハアリマ
セヌ、只今申上ゲマシタヤウニ、四年ニ
度必ズ來ルコトガ明瞭ニナツテ居リマス、
本年ガ丁度其ノ年柄デアリマス、又其ノ來
ルヤ一切ノ增產計畫ヲ吹飛バシ、一切ノ人
間ノ精進努力ト云フモノヲ蹴飛バシテ驀進
スル所ノ凶作デゴザイマス、ソレガ今年ハ
來ル年ニナツテ居ル、デアリマスルカラ來
ルカモ知レナイノデハナイ、此ノ凶作ニ對
シテドウ御用意ガアリマスカ、之ヲ承リタ
イ、又陸軍當局ニ御尋致シマス、戰ヲスル
時ニハ必ズ勝ツ見込ノ時ニ於キマシテモ、
其ノ最惡ノ場合ヲモ豫想シテ用意スルノガ
名將デアルト承ツテ居リマス、只今申上ゲ
マシタ如ク、來ルベキ凶作懸念ニ對シテ、
陸軍當局ハ戰時〓糧政策ニ毫モ不安ヲ御感
ジニナリマセヌカ、之ヲ御尋致シマス
次ニモウ一ツ承リタイコトガアリマス、
私ハ右ノ場合ニ對處スル爲ニ、一ツノ簡單デ
ハアリマスガ、此ノ際重大ト私ガ考ヘテ居
リマスル案ヲ持ツテ居リマス、此ノ案ニ關
シマシテ陸軍、農林、厚生三大臣ニ御尋ヲ
致シマス、私ノ案ト申シマスモノハ極メテ
簡單デゴザイマス、米穀統制ニ當リマシテ
卽時ニ國法ヲ以テ混砂精白ヲ禁止シ、七分
搗以上ノ米ノ搗精ヲ禁止セヨ、斯ウ云フ案
デゴザイマス、斯樣申上ゲマスト、アナタ
方ノ中ニハ何カ如何ニモオ伽噺デモスルヤ
ウナ風ニ御取リニナルカモ知レマセヌガ、
(「ノー〓〓」)此ノ問題ハ實ニ重大ナ內容ヲ
含ンデ居リマス(「ヒヤノ〓」)七分搗搗精一
石ニ付キマシテ四升ノ步增シガ生ジマス、
農林省ガ發表シマシタ本年ノ米穀消費高ト
云フモノハ九千九百万石デアリマス、之二
四升ヲ掛ケマスト三百九十七万石ノ米ガ餘
リマス、是ハ私共ガ糠ニシテ、而モ砂ヲ混
ゼテ食ベルコトノ出來ナイ糠トシテ捨テル
モノガ、米トシテ三百九十七万石還ツテ來
ルノデアリマス(拍手)又米一石ニ付テ此ノ
際ニ糠ガ一斗二升五合取レマス、之ヲ九千
九百万石ニ掛ケ合セマスト千二百四十二万
石ノ混砂搗精ヲ禁ジマシタ曉ハ食糧ト爲シ
得ベキ糠ガ取レルノデゴザイマス、兩者合
セマシテ千六百四十万石ト云フ食糧ガ茲ニ
日本ニ生レ來ルノデゴザイマス、是ハ今日
私共ニ取リマシテ洵ニ、而モ凶作ガ四年
目ニ來ル年ニ廻リ合セマシタ時ニ、而モ此
ノ戰時體制下ニ於キマシテ重大ナル結果ヲ
招來スル案デゴザイマス、而モ此ノ案ト云
フモノハ、唯國法一ツデ之ヲ作リ出スコト
ガ出來マス、而モ更ニ私ハ申上ゲマスガ、
斯ウ申上ゲマスト七分搗米ヲ食ベルコトガ
嫌ヒナ人ニ白米ヲ食ハセネバナラヌガドウ
スルカ、是ニハ奢侈稅デアリマスル白米稅
ヲ取レバ宜シイ、又全國百六十万圓ニ上
ツテ居リマスル此ノ混砂精白ニ用ヒマス
砂ノ業者ハドウスルカ、是ハ賠償其ノ他ノ
方法ニ依ツテ、僅カ百六十万圓デアリマス
カラ、ドウニカ處分ガ出來ル問題デゴザ
イマス、農林省トシテハ勿論玆ニ千六百四
十万石ト云フ戰時〓糧政策ヲ援助スベキ所
ノ食糧ガ出テ來ルノデアリマスルカラ、勿
論御賛成下サルコトト確信致シマス、又厚
生省ハ先般來豫算分科會、或ハ請願委員會、
建議委員會ニ於キマシテ、此ノ混砂搗精ト
云フコトニ對シテハ、是ハ國民ノ衞生上又
榮養學上非常ニ害ノアルモノデアルカラ、
遠カラザル將來ニ於テ、國法デ禁止シテモ
宜シイ、但シ先程申上ゲタヤウニ百六十万
圓ノ權益ヲ持ツテ居リマスル業者ガアルカ
ラ、直チニ此ノ權益ヲ無視シテ之ヲ國法ニ
スル譯ニハ行カナイト云フ御答辯デアツタ
ノデゴザイマス、サウシマスルト國民保健、
體位向上ト云フヤウナ觀點ノミデナク、只
今申上ゲマシタヤウナ戰時食糧對策ニ重大
問題ヲ含ンデ居リマスコトニナリマスレバ、
厚生大臣モ思ヒ切ツテ、是ハ國法デ斷行ス
ルト云フ御意思ニナラレルダラウト私ハ確
信致シマス、又諸君御承知ノ通リ我國壯丁
ノ體位ト云フモノハ、昭和五六年以降非常
ニ衰ヘテ參ツテ居リマス、昭和五年前ハ千
人ノ中二百五十人ノ不合格者デアリマシタ
ノガ、昭和五六年以降ニハ俄ニ三百五十人
ニ增加致シマシタ、更ニ昭和十年ニ至リマ
シテハ、千人ノ中四百人カラ四百五十人ノ
不合格壯丁ヲ出シテ居ルノデアリマス、是
ハ全世界ニ對シマシテ持タザル國日本ノ持
テル唯一ノ優秀ナル人的資源、此ノ人的資
源ガ年々蝕マレツツアルコトヲ示シマス、
此ノ際ニ、此ノ體位向上ヲ圖ルト云フコト
ハ、洵ニ意味ノ深キコトト存ジマス、而モ
其ノ體位向上ヲ圖ルノニハ、白米食ハ人體
ニ宜クナイト云フ今日ノ學說ノ前ニ、又混
砂精白米ハ人體ノ榮養上、衞生上宜クナイ
ト云フ定ツタ學說ノ前ニ、其ノ兩者ヲ直チ
ニ禁止スルト云フコトハ、此ノ體位向上ヲ
圖ルト云フ直接ノ途デアルト私ハ確信スル
(拍手)此ノ問題ハ所謂一石二鳥デアリマシ
テ(「ノー〓〓」)土屋君ハ御反對デゴザイマ
セウガ、此ノ一石二鳥ノ戰時〓糧政策ノ完
成ト、茲ニ國民體位ノ向上ヲ圖ルト云フ二
ツヲ握リ得ルコトデアリマスカラ、之ニ對
シテハ是非トモ只今申上ゲタ二大臣ノ御贊
同ヲ願ヒタイノデアリマス
更ニ陸軍當局ニ御伺致シマス、陸軍省ハ
旣ニ此ノ事ヲ早ク見テ、モウ陸軍ニ於キマ
シテハ十數年前、海軍ニ於キマシテモ數年
前ヨリ、軍隊ノ內部ニ於テハ白米食ヲ禁止
シ、混砂精白米ヲ禁止致シテ居リマス、私
ハ陸軍或ハ海軍ヲ此處デハ總括シテ軍部ト
申上ゲマス、軍部ニ於キマシテハ自己ノ軍
隊ニ收メタ兵隊サンハ可愛イニ違ヒナイ、
違ヒナイカラ體ニ毒ニナル白米ヲ禁止シ、
混砂精白米ヲ禁止シテ居ル、自分ノ兵隊サ
ンガ可愛カツタナラバ、其ノ兵隊サンヲ造
リ上ゲル元デアリマス所ノ靑少年ガ可愛ク
ナイ筈ハナイ(拍手)又其ノ家族ガ可愛クナ
イ筈ガナイ、其ノ隣人ガ可愛クナイ筈ハナ
イ、又〓里ニ歸リマシタ所ノ歸還兵、其ノ
家族、其ノ隣人ガ可愛カラザル筈ハナイ、
軍部ハココデ百尺竿頭一步ヲ進メマシテ、
啻ニ軍隊內ニ於テ白米ヲ禁ジ、混砂精白米
ノ禁止ヲ斷行シテ居リマスノミナラズ、全
日本ノ國民ガ此ノ白米ヲ食ハナイヤウニ、
混砂精白米ヲ食ハナイヤウニ、而シテ〓糧
獲得ト體位向上ヲ圖リマス上ニ、折角軍部
當局ノ御決意ヲ御願致シマス(拍手)
私ハ先程肥料問題ニ付テ申上ゲマシタ
ガ、只今國元カラ參リマシタ手紙ヲ讀ミ上
ゲマシテ、暫ク御〓聽ヲ煩ハシタイト思ヒ
マス、要點ヲ申上ゲマス、千葉縣君津郡ノ
某村ニ於テハ、舊臘販購聯ニ對シテ桑、麥ノ
追肥用トシテ過燐酸石灰、石灰窒素、硫安、
加里等二百三十二瓲ノ配給申込ヲシマシ
タ、所ガ現在手入シマシタモノガ僅カ二割五
分、特ニ過燐酸石灰ハ百二十瓲ノ所要ニ對
シテ供給全クナク、加里鹽亦同樣ナル有樣
デアリマス、斯ウ書イテアリマス、又附ケ
加ヘテ、生產確保ハ餘程困難カト憂慮ニ堪ヘ
マセヌト致シテアリマス、又同郡某村ニ於
テハ春ノ肥料ハ所要ノ三割程度ヲ入手セル
ニ過ギマセヌ、是デハ耕種改善基準設定委
員會ナルモノヲ設ケマシテモ何ニモナリマ
セヌ、是デ行キマスト折角地方農民ガ、-
生懸命ニ勤勞倍加運動、或ハ勤勞奉仕、共
同作業、勞働移動班等ヲ拵ヘテヤツテ居リ
マシテモ、肥料ノ入ラナイ土地ヲ勇猛心ヲ
以テ耕スコトハ、理窟デハ分ツテ居リマシ
テモ實際ハ出來マセヌ、斯ウ申シテ居リマ
ス、詳シイコトハ委員會デ申上ゲルコトニ
シテ省キマスガ、唯最後ニ二ツ申上ゲタイ
コトガアリマス、暫ク御〓聽ヲ願ヒマス
商工大臣ガオ居デニナツテ居リマスカラ
御尋致シマス、第二條ノ免許制ニ關シテ規
定ガゴザイマス、此ノ免許制ニ付キマシテ
ハ、私昨年ノ議會ノ委員會ニ於テ、農林省
ノ米穀局長ニ向ツテ、今日東京市內ノ白米
業者ノ數ガ餘リニ多過ギル、斯樣ナコトデ
ハ徒ニ市民ガ高價ナル米ヲ食ベルコトニナ
ル、而モ市民ガ不當ニ高キ米ヲ食ベルト云
フコトハ、延イテ米ノ値ガ一圓デモ上リマ
スト直ニ、是ハ全農村ニ重大影響ヲ及ボス、
故ニ之ヲ免許制ニシテ何トカ善處シテ戴ケ
ナイカト申上ゲタコトガゴザイマシタ、其
ノ免許制ガ玆ニ規定サレテアリマスノデ、
私トシマシテハ我ガ意ヲ得タリト申サネバ
ナラナイノデアリマスガ、併シ私共ノ見ル
所ヲ以テシマスルト、此ノ免許制ノミヲ以
テシテハ、到底東京市內ニ於ケル米價ノ適
正ハ期シ得ラレナイト信ジマス、是ハドウ
シテモ東京ノ米穀商ハ數ガ多過ギマシテ、
一軒ノ店デ三俵カソコラヲ賣ツテ、ソレデ
食ベテ行カレル價格ヲ以テ賣ラネバナリマ
セヌカラ、ドウシテモ高クナリマス、私ガ
調ベマシタ所ニ依リマスト、昨年ノ一月深
川正米市場ノ中米ノ値段ハ三十三圓十二錢
デアリマス(「簡單々々」ト呼フ者アリ)所ガ
大阪ノ中米ハ是ヨリ一圓九十八錢高カツタ、
然ルニ拘ラズ白米ハ大阪ノ方ガ東京ヨリモ
安イ、是ハ簡單ニハ出來ナイ問題デアリマ
ス、正米市場ハ大阪ノ方ガ一圓九十八錢東
京ヨリ高イ、サウシテ白米ノ方ハソレヨリ
安イ、此ノ二重差額ハ幾ラニナルカト申シ
マスト、昨年ノ一月ニ於テ五圓三十五錢、
東京市民ハ大阪市民ヨリモ一石ニ付テ五圓
三十五錢高イ米ヲ食ベテ居ツタ、ソコデ是
ハ私ガ昨年ノ議會デ周東米穀局長ニ向ツテ
ヤカマシク申上ゲマシタコトガ、多少影響
シタノダラウト思フ、昨年ノ七月八日ニナ
リマシテ東京ニ於ケル白米價格ト云フモノ
ハ、俄ニ一圓九十六錢ノ値下ヲ見タ、一〓
九十六錢ノ値下ヲ見テ、業界ハ之ニ不服ハ
言ツテ居リマセヌ、所ガ此ノ一圓九十六錢
ノ値下ヲシテ、其ノ後ドウナツタカト申シ
マスト、七月ハ東京ノ正米ガ三十四圓十六
錢デアリマシタノガ、十二月ハ三十五圓三
十四錢トナツテ居リマス、此ノ差額一圓十
八錢トナリ、此ノ正米値上リ一圓十八錢ト、
前ノ一圓九十六錢ノ値上リヲ兩方合セマス
ト三圓十四錢ニナリマス、サウスルト三圓
十四錢ト云フ高イ米ヲ東京市民ハ〓ベテ居
ツタノダトト云フコトノ、是ガ好イ證據ニ
ナリマス、ソレデハ大阪トドウ云フ値開キ
ガアルカト申シマスト、私ガ調査シタ範圍
ニ於キマシテハ、七月以後マダ大體三圓ノ
値開キガアリマス、是ハ重大問題デアツテ、
ドウシテ斯樣ナ結果ガ出テ來ルカト申シマ
スト、大阪ノ米商人ハ、一日三俵位ヨリ賣
レナイ商店ニ於テハ、副業トシテ荒物屋ヲ
兼營致シテ居リマス、然ルニ東京ノ商店ハ
一日二俵ヨリ賣レナイ店デアリマシテモ、
荒物屋ハ兼營致シマセヌデ、獨立シタ唯米
屋サンデアリマス、卽チ大阪ニ於キマシテ
ハ一日二俵ヤ三俵賣ル米屋サンハ立行カナ
イ値段デアル、一日三十俵ナリ或ハ二十俵
ナリ賣レル店ガ立行ク其ノ値段デ米ハ賣ラ
レテ居ル、所ガ東京ハ二俵カ三俵賣ル米屋サ
ンデモ、生計ガ立行ク價格ヲ以テ米ガ賣ラ
レテ居ル、是ハ由々シキ一大事デアリマス、
而モ先程私ガ申上ゲマシタヤウニ、東京市民
ガ斯樣ナ高イ米ヲ食フノハ、所謂經濟的無
能力、又言葉ヲ換ヘテ申シマスト無頓著ト
申シマセウカ、ソレガサセタ業デアリマス
カラ、所謂自業自得デアリマス、併シ自業
自得ト言ウテ吾々ハ看過スコトハ出來ナイ、
ナゼナラバ只今申シマシタヤウニ、東京ニ
於テ假ニ今日俄ニ一石一圓値上リニナリマ
スト、直グ殺人相場-此ノ戰時體制下ニ於
テ米穀ノ一石一圓ノ値上リト云フモノハ、
一般物價ニ影響ヲ及ボスト云フ聲ヲ擧ゲル
ニ違ヒナイ、斯樣ナコトデ屢〓東京市民ハ其
ノ無自覺カラ出タル、常識ヲ外レタル高イ
米ヲ食ベタ、ソレガ直チニ農村ノ對策ニ影響
シ來ツタコトハ屢〓アルノデアリマス、之ヲ
是正スルニハドウシテモ今米日穀商ガ多過
ギルカラ、此ノ多過ギル米穀商ヲ免許制採
用ト同時ニ、三分ノ一位ニシテシマフ、左
樣ナコトニスルト此ノ整理ニ依ツテ適正ナ
ル價格ノ白米ト云フモノガ、東京市民ノ口
ニ入リマス、此ノ點ニ付テ商工大臣ハドウ
御考デアリマスカ伺ヒタイ(拍手)
又モウ一ツ、是ハ農林大臣ニ御伺致シマ
ス、米穀配給統制法ガ玆ニ上程ニナリ、是
ガ通過致ストシマスト、ソコニマダ一ツノ
殘サレタル重大ナル問題ガアリマス、卽チ
令日ノ米穀ノ檢査統一問題デアリマス、今
日ノ米穀ノ檢査ト云フモノハ各府縣區々マ
チマチニナツテ居リマス、此ノ配給統制ヲ斷
シテ、此ノ檢査ノ統制ヲ斷行シナイト云フコ
トハ、車ノ兩輪ノ一輪ガ缺ケルコトニ相成リ
マス、之ニ對シマシテ農林大臣ハ如何ナル御
考デゴザイマセウカ(拍手)私ノ乏シキ體驗
ヲ申上ゲマスト、此ノ各府縣ニ於キマスル
檢査ノ不統一ト云フコトハ、非常ニ米ノ統
制問題ニ惡影響ヲ及ボシテ居ルノミナラズ、
其ノ以上ニ我ガ農村ニ重大ナル關係ヲ及ボ
シテ居ルノデゴザイマス、一ツノ實例ヲ申
上ゲマスルト、例ヘバ千葉縣ニ於テ檢査員
ガ米ノ品位向上ヲ圖ラウト致シマス、檢査
員トシテ品位向上ヲ圖ルト云フコトハ正ニ
當然ノコトデアリマス、サウ致シマスルト
東京市場ニ於テハ、何ヨリモ乾燥ノ十分效
イタ米ヲ要求致シマス、是ハ委員會ニ讓リ
マシテ詳細ハ省キマスガ、乾燥ガ十分效キ
マスト東京市內ノ米穀商ハ非常ニ利益ヲ得
マス、其ノ代リ農民ハ之ニ依ツテ非常ナ不
利益ヲ來シマス、商人ガ利益ヲ得ルコトデ
アリマスカラ、是ガ直チニ影響致シマシテ、
千葉縣ノ米ガ乾燥十分デアリマスト品位ガ
上リマス、卽チ是ハ千葉縣ノ米穀檢査員ノ
功名手柄ト相成リマス、左樣ナ關聯、關係
ガアリマシテ、不當ナル米穀ノ乾燥ト云フ
ヤウナコトガ、農民ニ大ナル困難ヲ來タサ
シテ居リマス、サウシテ千葉縣ガ左樣ナコ
トヲスルト、栃木縣マデ競ツテヤル、隣ノ
茨城縣ガ又之ニ競フト云フヤウニナリマシ
テ、東京市內ノ米穀商ノ一顰一笑ガ直チニ
農村ニ影響シテ、農村ノ損害トナルノデゴ
ザイマス、是ハ洵ニ重大問題デアリマシ
テ、此ノ際此ノ米穀配給統制案ノ實現ト共
ニ、此ノ米穀國營檢査斷行ニ邁進セラレン
コトヲ御願致シマス、之ヲ以テ私ノ質問ヲ
終リマス
〔國務大臣櫻內幸雄君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=15
-
016・櫻内幸雄
○國務大臣(櫻內幸雄君) 吉植君ノ御質疑
ニ對シテ御答致シマス、第一ニ本案ヲ以テ
最後案トシテ居ルト言フガ、ソレハ考遠ヒ
デハナイカト云フ風ナ御意見ノヤウデアツ
タト思ヒマス、私ハ本案ヲ以テ絕對無比ノ
最後案デアルト云フ言葉ハ使ツテ居リマセ
ヌ、專賣若クハ國營、是ガ圓滿ニ實行致サレ
ルナラバ、理想トシテ洵ニ結構ナコトダト
思ヒマス、故ニ之ニ對シマシテハ十分ナル
調査考慮ヲ拂ツテ、或ハ他日御協賛ヲ願フ
ヤウナコトニナルカモ知レマセヌケレドモ、
今日ノ場合ニ於キマシテ、只今サウ云フ案
ヲ出ス意思ガナイト斯樣ニ申上ゲタノデア
リマスルカラ、御諒承願ヒマス
第二ニ戰時米穀對策ニ付キマシテ、種々
ナル觀點カラ、本年ハ凶作デアラウト思ハ
レルガ、ソレニ對スル所ノ對策ガ十分デナ
イ、斯樣ナル御指摘デアリマス、私共本年
ガ凶作デアルカ、豐作デアルカト云フコト
ニ付キマシテハ、容易ニ豫斷ハ許シマセヌケ
レドモ、少クトモ凶作デアツタ場合ニドウ
スルカト云フ心組ダケハ、豫メシテ置カナ
ケレバナラヌト考ヘテ居リマス(拍手)其ノ
點ニ付キマシテモ度々申上ゲマスルケレド
モ、現在ノ農村事情カラ申シマスト天候ノ
上ノミナラズ、勞力ノ點ニ於テモ、肥料ノ點
ニ於テモ或ハ馬匹關係ノ上ニ於テモ、現狀ヲ
維持スルコト、卽チ平年作ヲ維持スルコトス
ラ、可ナリ困難デアルト吾々ハ考ヘテ居リ
マス、要シマスルノニ、農村ノ人々ノ總力
ヲ此處ニ集中シテ戴イテ、皆樣方ノ御協
力ニ與ツテ、サウシテ是ガ難關ヲ突破致サ
ナケレバナラヌト致シマシテ、計畫ヲ立テ
テ居ルヤウナ譯デアリマス、曩ニ御協賛ヲ
願ヒマシタ案ニ依リマシテハ、三百万石ノ
內地增產ノ計畫デアリマシタケレドモ、更
ニ百万石內地ニ於テ增產シ、又外地ニ於テ
數十万石ノ增產ヲ致シタイトシテ、目下銳
意〓究シテ居ルノデアリマス、之ニ對スル
對策ニ付キマシテハ種々色々ナル方策ガア
ルコトハ考ヘマスノデ、是ハ或ハ追加豫算
等ヲ御要求申上ゲマシタ時ニ、詳細ニ御報
告ヲ致シタイト思ヒマス、要シマスルニ吉
植君ノ御心配ニナツテ居ルガ如キ事柄ガア
ツテハ相成ラヌト思ヒマスノデ、吾々ハ夙
夜其ノ問題ニ對シマシテ深甚ナル注意ヲ拂
ヒ、用意ヲ致シテ居ルコトダケヲ申上ゲテ
御諒解ヲ得タイト思ヒマス
ソレカラ肥料供給ノ問題ニ對シテ增產計
畫ヲ言フガ、肥料ガ廻ツテ居ナイヤウナコ
トデドウスルカ、洵ニ御尤デアリマス、私
就任以來此ノ問題ニ付キマシテハ、眞ニ心
配ヲ致シマシテ、所謂物動計畫ガマダ決定
致シマセヌ際ニ於テ、此ノ肥料ダケハドウ
シテモ確保致シタイト思ヒマシテ、漸クニ
シテ決定致シマシテ、一兩日前ニ之ヲ發表
致シマシタ次第デアリマスガ、其ノ數量ハ
三圓マデノ加里鹽ノ供給高ヲ七万瓲、七圓
マデ九万瓲、合計十六万瓲、過燐酸ハ三月一
杯ニ二十万瓲、七月マデニ更ニ三十万瓲、
合計五十万瓲、而シテ硫安肥料ニ於キマシ
テハ是ハ八十九万瓲程供給出來ル豫定デア
リマスガ、大體ニ於テ明年度ノ供給額ヨリ
モ更ニ殖エタ數字ニテツテ居リマス、故 と
此ノ數量ガ圓滿ニ供給出來マスルナラバ、肥
料ト致シマシテ大ナル缺陷ガナクテ濟ムデ
アラウト思ヒマスルケレドモ、今御話ノ如
ク今日尙ホ其ノ配給ノ十分隅々ニマデ行ツ
テ居ナイコトハ甚ダ遺憾デアリマスノデ、
此ノ點ニ付キマシテハ十分事務當局ヲ督勵
致シマシテ、一日モ速ニ此ノ憂ヲ除キタイ
斯樣ニ考ヘテ居リマス
更ニ七分搗ノ問題ガ起リマシタガ、是ハ吉
植君ノ御話ノ如ク、全國的ニ左樣ナコトガ
行ハレマスレバ非常ニ是ハ補充ニナルノデ
アリマスガ、只今ノ所ハ要スルニ人々各〓嗜
好ニ依リマシテ、奬勵ハ致シテ居リマシテ
モ未ダ全部七分搗米ヲ食フ狀況ニナツテ居
リマセヌガ、萬々一ノ場合ニ於テハ是ハ必
ズヤ實行サレルコトト考ヘマス、混砂米云々
ニ付キマシテ、是ガ衞生ニ害ガアルモノ
カナイモノカト云フ問題ニ付キマシテハ、
厚生省ニ於テ御調ニナツテ居リマスカラ、
厚生大臣カラ御答辯ガアルト思ヒマスガ、
從來ノ搗粉ヲ混ゼテ搗イテ居ツタ人々ノ營
業上ノ關係、竝ニ早ク米ノ搗ケル關係等ヲ
考慮致シマシテ、直チニ全部混砂搗ヲ廢止
スルト云フコトニ今日ハナツテ居リマセヌ
ケレドモ、大體ノ方針ガ混砂搗ヲ廢止スル
ト云フ方針ニナツテ居リマシテ、各縣ニ委
託シテ、事情ニ應ジテ之ヲ速ニ實行スルヤ
ウニナツテ居ルノデアリマス、此ノ點ニ付
キマシテハ多分厚生大臣カラ御答辯ガアル
ト思ヒマスカラ之ヲ省略致シマス
ソレカラ米穀ノ國營檢査、是ハ洵ニ御尤
ナコトデアリマシテ、現在ニ於テハ各縣各〓
自分ノ產地ノ米ヲ優秀ナモノニシタイト云
フコトニ急ニシテ、其ノ點ニ力ヲ注イデ居
リマス結果、各縣各〓違ツタ檢査ノ狀態デア
リマス、之ヲ統一シテ國營ニスルト云フコ
トハ最モ必要ナコトデアリマシテ、農林省
ニ於テモ曾テハ此ノ國營ノコトノ案ヲ決メ
マシテ、提案ノ準備ヲ致シタコトモアリマ
スケレドモ、今日未ダ其ノ實行ニ至ラヌコ
トハ甚ダ遺憾デアリマシテ、適當ナル機會
ニ於キマシテ其ノ實現ヲ期シタイト斯樣ニ
思ツテ居リマス(拍手)
〔國務大臣廣瀨久忠君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=16
-
017・廣瀬久忠
○國務大臣(廣瀨久忠君) 白米ヲ無砂七分
搗程度ノ米ニ致シマスト云フコトニ付キマシ
テハ、洵ニ結構ナコトデアリマス、併シナガラ
法規ヲ以テ之ヲ一律ニ强制スルト云フコト
ハ、國民長イ間ノ慣習等ノコトモアリマスル
ノデ、容易ニ贊成致シ難イ所デアリマス、政府
ハ國民ノ榮養ニ關スル所ノ知識ノ啓發ニ努
メ、尙ホ國民體位ノ向上ノ必要ヲ能ク認識セ
シメマシテ、白米ヲ止メテ胚芽米又ハ七分
搗程度ノ米ヲ使用スルヤウニ、極力奬勵ヲ致
ス積リデアリマス、只今農林大臣ノ御話ノヤ
ウニ重大ナル時局ニ際シテハ、國民ノ自覺ニ
依ツテ是ハ實行出來ルモノダト私モ信ジマ
ス、又混砂搗精ノ問題ニ付キマシテハ、是
ハ榮養上竝ニ衞生上ノ見地カラ之ヲ禁止ス
ル方針デアリマス、併シ直チニ全國ニ禁止
スルト云フコトハ、砂ノ生產業者ナドニ對
スル影響モ考慮シナケレバナリマセヌノ
デ、各地方ノ實情ニ應ジマシテ、軈テ全國
的ニ之ヲ普及セシムル方針デアリマス拍
手)
〔政府委員西村茂生君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=17
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018・西村茂生
○政府委員(西村茂生君) 吉植君ノ御質問
ニ對シマシテ陸軍ト致シマシテ御答辯ヲ申上
ゲマス、戰時下ニ於ケル食料問題ニ付キマ
シテハ、陸軍ト致シマシテハ重大ナル關心
ヲ持ツテ居ルコトハ勿論デゴザイマス、特
ニ主食タル米ニ付キマシテ是ガ不足ヲ來シ
ハシナイカト云フコトニ付キマシテハ、非
常ナ關心ヲ持ツテ居ルノデゴザイマシテ、
此ノ點ニ付キマシテハ本議會ニ於ケル皆樣
方ノ御高見ノ御趣旨モゴザイマスノデ、今
後一層熱心ニ〓究致シタイト思フノデゴザ
イマス、更ニ白米ノ搗精ニ付キマシテ、無
砂デ七分搗程度ニ致シマスコトニ付キマシ
テハ、各種ノ點ヨリ考ヘテ見テ非常ニ結構
ナコトダト思ヒマス、陸軍ニ於キマシテハ
十數年以來胚芽米、無砂ノ米ヲ用ヒテ居ル
ノデゴザイマス、申上ゲルマデモゴザイマ
セヌガ、胚芽ハ非常ナ力ヲ持ツテ居リマス
シ、又糠トナルベキ部分ノ、卽チ米ノ外殼
ヲ去ラザルコトハ、榮養ノ點カラシテモ必
要ナコトデ、胚芽ヲ存スルヤウノ程度ニ搗
クト云フコトデモ、精白ヨリハ榮養價値ニ
非常ナ相違ガアリマスノデ、榮養上ノ價値カ
ラ申シマシテモ、又米ノ節約ト云フコトカ
ラ申シマシテモ、陸軍ト致シマシテハ相當
確信ヲ持ツテ之ヲ厲行致シテ居ルノデゴザ
イマス、爾カ致シマシテ、此ノ無砂ノコト
ニ付キマシテハ、只今所管當局ヨリ申述ベ
ラレマシタヤウニ、今日ト致シマシテハ地
方的ノ實情ニ卽スルヤウニ、地方々々ニ依
ツテ取締ヲ厲行サレテ居ルヤウデゴザイマ
シテ、是モ結構ナコトト思ヒマスルガ、今
後是等ノコトヲ厲行サレ、而シテ吉植君ノ
御趣意ノヤウニ全國的ニ是ガ行ハルルコト
ヲ、陸軍ト致シマシテハ其ノ日ノ一日モ早
ク來ルコトヲ切望シテ居ルノデアリマス
〔國務大臣八田嘉明君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=18
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019・八田嘉明
○國務大臣(八田嘉明君) 只今吉植君ノ御
述ニナリマシタ點ニ付キマシテ御答致シマ
ス、東京竝ニ大阪ノ米ノ小賣値段ヲ比較サ
レマシテ、東京ニ於テハ小賣商ガ其ノ取扱
數量ニ比シテ、割合ニ多イ爲デハナイカト
云フコトヲ述ベラレタノデアリマスガ、或
ハサウ云フコトガアルカモ存ジマセヌ、何
レニ致シマシテモ本法ニ於テハ先ヅ米穀取
扱業者ヲ一ツノ免許制度ニ致シマシテ、更
ニ將來ニ於テハ配給ノ實情ニ卽シ、或ハ又
商業組合等ノ結成ノ結果ヲ參照致シマシ
テ、必要ガアリマスルナラバ、只今吉植君
ノ御說ノヤウナコトモ或ハ必要カト存ジマ
ス(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=19
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020・小山松壽
○議長(小山松壽君) 平野力三君
〔平野力三君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=20
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021・平野力三
○平野力三君 私ハ本案ガ上程サレマスル
ニ於キマシテ、前農林大臣及ビ前々農林大
臣ガ、本案ニ對シテ多大ノ苦心ヲ拂ハレマ
シタコトニ付テハ、敬意ヲ表スル者デアリ
マス、併シナガラ本案ハ現下ノ米穀政策ヲ
解決スル建前ニ於テ現ハレタモノト致シマ
シテハ、私ニハ多大ノ疑問ナキヲ得ナイノ
デアリマス、是ヨリ私ハ櫻內農林大臣ニ對
シマシテ、本案ニ關スル各種ノ疑點ヲ質シ
テ見タイト思フノデアリマス
私ハ最初本案ノ法文其ノモノニ對スル質
疑ヲ致シマス前ニ、我國ノ米穀政策ノ根本
ニ關シマシテ、農林大臣ノ所信ヲ質シテ見
タイト思フノデアリマス、我國ノ米穀政策
ハ明治ノ初年以來多大ノ苦心ヲ拂ツテ參リ
マシタ問題デアリマス、就中大正七年ノ
米騒動ヲ契機ト致シマシテ、是ガ政治問題
ト致シマシテ頗ル重大化シテ參ツタノデア
リマス、而シテ大正十年ニ米穀法ノ制定ヲ
見、其ノ米穀法モ屢〓改正ヲ行ハレマシテ、
米穀統制法トナリ、其ノ米穀統制法モ忽チ
缺陷ヲ暴露致シマシテ、米穀自治管理法其
ノ他ノ法律トナツテ今日ニ至ツテ居ルノ
デアリマス、是等ノ政策變遷ノ跡ヲ靜ニ考
ヘテ見マスル時ニ、政府ハ一ツノ現象ガ起
リマスルト直グ法律ヲ制定スル、次ノ現象
ガ起レバ又法律ノ改正ヲ行ツテ、終始一
貫、總テ姑息應急ノ對策ニ耽ツテ來マシテ、
米穀政策ニ對スル根本對策ナカリシコトハ、
私ノ最モ遺憾トスル所デアリマス(拍手)今
囘提案サレマシタ此ノ米穀配給統制法案
ハ、苟モ我ガ日本ノ國ガ新東亞建設ノ巨步
ヲ踏ミ出シテ、內外トモニ庶政ノ改新ヲ爲
サナケレバナラヌ時ニ出デマシタ法案トシ
テ、櫻內農林大臣ハドレダケノ確固タル成
案ヲ持ツテ居ラレルカト云フコトニ付テ、
私ハ是カラ具體的ニ農林大臣ノ所信ヲ質シ
テ見タイト思フノデアリマス、第一ノ質疑
ハ本案ト農業政策ノ關係デアリマス、第二
ノ點ハ增產政策ト本案トノ關係デアリマス
〔議長退席、副議長著席〕
第三ノ點ハ價格政策ヨリ見タル本案ノ關係
デアリマス、是ヨリ逐一之ニ對スル所見ヲ
申上ゲテ、農林大臣ノ所信ヲ質シタイト思
フノデアリマス
第一ノ農業政策ト本案トノ關係、言換ヘ
テ救農政策ト本案トノ關係ト申シテモ宜シ
イノデアリマス、米ハ言フマデモナク我國
五百五十万戶ノ農家ノ中ノ八割、四百八十
万戶ノ農家ガ此ノ生產ニ從事ヲ致シテ居リ
マシテ、農業生產品中ノ王座ヲ占メ、我國
農產物ノ優ニ半分以上ノ價格ヲ占メテ居リ
マス一大產業デアリマス、此ノ米ニ對スル
政策ノ消長ハ、直チニ以テ農民ノ生活ニ對
シテ重大ナ影響ガアルト云フコトハ言フマ
デモナイノデアリマス、故ニ苟モ米穀政策
ト云フモノハ、農業政策ト救農政策ト竝立
ヌル時ニアラザレバ、農民ト致シマシテハ
承服出來ナイノデアリマス、此ノ見地ニ立
ツテ私ガ本案ヲ靜ニ〓究シテ見マシク結果
ニ依リマスルト、本案ハ一種ノ低米價政策
ヲ執ツテ參ラレタノデハナイカト思フノデ
アリマス、米穀法制定以來、最近ニ至ルマ
デノ米穀政策ハ、歴代ノ農林大臣ニ依ツテ
高米價政策ガ主張サレタ、卽チ米價ノ吊上
ゲデアリマス、從來ノ農業政策ガ米價ヲ吊
上ゲヨウ、吊上ゲヨウト云フ方針ヲ執ツテ
參ツタト云フコトニ對シテハ疑問ガナイノ
デアリマスガ、今囘ノ米穀配給締法案ハ、
私ノ〓究ニ依リマスルト、低米價政策ニア
ラズヤト思フノデアリマス、或ハ農林大臣
ハ直チニ以テ低米價政策デハナイト仰シヤ
ルカモ知レマセヌガ、私ハ斯ウ思ヒマス、
今日有ユル物價ト云フモノガ暴騰致シマシ
テ、農民ガ購入致シマスル物ノ中ニハ二
倍或ハ三倍ニ騰貴致シテ居リマス物ガアル
コトノ言フマデモナイ時ニ、米價ヲ上ゲナ
イヤウニ-國民ノ經濟情勢カラ、今日ノ
價格政策カラ、米價ヲ成ベク上ゲナイヤウ
ニスルト云フ指導精神ニ立ツテ居リマスル
此ノ法案ハ、卽チ低米價政策ト斷言シテ憚
ラナイノデアリマス、私ハ是ニ於テ申上ゲ
やっ、今日我國ノ米穀政策ヲ國家大本ノ上
ニ採ラナケレバナラナイト云フコトニ對シ
テハ、吾々ハ敢テ反對ハシナイノデアリマ
ス、併シナガラ低米價政策ヲ採ツテ、農民
ニ對シテ是ダケノ犠牲ラ强ヒルノデアリマ
スナラバ、之ニ對スル別箇ノ政策ト云フモ
ノガナケレバ、私ハ本案ハ不完全デアルト
斷言セザルヲ得ナイノデアリマス、言換ヘ
マスレバ最近本議會ノ豫算總會ヲ通ジ、或
ハ本議場ニ於テ屢、論ゼラレテ居リマスル農
產物價ノ鋏狀價格ニ付テ、之ヲ如何ニシテ
防止スルカト云フ點ニ付テ農林大臣ニ成案
ガナケレバ、此ノ配給統制法案ハ、米ノ問
題トシテハ、一應正シイ政策デアルカモ知
レマセヌケレドモ、農業政策ノ見地ニ立ツ
テハ、貧困デアルト云フコトヲ言ハザルヲ
得ナイノデアリマス(拍手)是ニ於テ農林大
臣ニ何ヲナサルカト斯ウ問フ上ニ於キマシ
テ、私ハ率直ニ農林大臣ガ過去ニ於ケル米
穀政策ノ運用ノ上ニ於テ莫大ナル金額ヲ損
失シ、米穀統制ヲヤツテ來タ、具體的ニ申
シマスレバ、七億万圓ノ厖大ナ豫算ヲ以テ、
米ヲ買フコトニ依ツテ、賣ルコトニ依ツ
テ、是ダケノ損害ヲシタ、是ダケノ犠牲ヲ
拂フダケノ觀念ガアリマスルナラバ、今日
農民ノ生產品タル米穀ノ生產費ノ低下ノ爲
ニ、肥料ノ專賣ヲ斷行サレテ宜カラウカト
斷ズルノデアリマス、農林大臣ガ此ノ配給
統制法案ト竝行サレマシテ、肥料ノ專賣ヲ
斷行サルル上ニ、國家ガ相當ノ犠牲ヲ拂ハ
ルルト云フコトデアリマスルナラバ、私
此ノ議會ニ於キマシテ全院ノ贊成ヲ得テ、
肥料問題ノ解決ハ掌ヲ返ス如クニ出來ルト
思フニ拘ラズ、今日聞ク所ニ依リマスルナ
ラバ、肥料ノ配給問題竝ニ肥料ノ專管問題
ハ、農林省ト商工省トノ間ニ於テ未ダ意見
ノ一致ヲ見ズ、商工省ガ其ノ專管問題ニ對
シテ、マダ完全ナル所ノ囘答ヲシテ居ナイ
ト云フヤウナ現狀ヲ見マスル時ニ、農林大
臣ハ此ノ點ニ對シテ明快ナル所ノ、吾々ノ
納得ノ出來ル、肥料政策ニ對シテ斷乎肥料
ノ專賣マデヤルダケノ覺悟ガアルノデアル
ト云フ位ナ態度ヲ、此ノ席上ニ於テ御示ニ
ナルコトガ肝要デアラウト私ハ存ズルノデ
アリマス(拍手)
第二ノ質問ト致シマシテ增產政策デアリ
やく、私ハ率直ニ申上ゲマスルト、此ノ
配給統制法ト云フモノガ施行サレタ場合
ニ、米ガ增產ニナルカ、或ハ減產ニナルカト
云フコトニ付テハ疑問ヲ持チマス、固ヨリ
他ノ色々ナ政策ノ結果カラ論ズルノデハア
リマセヌ、此ノ法案其ノモノハ米ノ增產ニ
ナルノカ、減產ニナルノカト云フ議論ニ付
テ暫ク致シテ見タイト思ヒマス、卽チ配給
機關ダケヲ、此ノ法案ニ現ハレテ居ルヤウ
ニ完全ナル統制ヲサレタカラト云ツテ、增
產ニナルト云フ理窟ニハナラヌト思ヒマス、
水道ノ鐵管ダケヲ完全ニ掌握シテ、之ニ對
スル統制權ヲ持ツタカラト云ツテ、水源地
ト云フモノニ對スル考ガナケレバ、是ハ水
道ニ對スル完全ナル政策デハナイ、電力統
制法案ニ於キマシテモ、豐富低廉ナル所ノ電
力ガ出來ルカ出來ナイカ、送電線ヤ小賣ヲ
統制スルト云フ問題デハナイ、豐富ニシテ
低廉ナルモノガ出來ルカト云フコトガ議論
デアツタヤウニ、我國ノ米穀政策ノ上ニ於
キマシテモ、私ノ信ズル所ニ依リマスナラ
バ、配給機關ダケノ統制ト云フモノデハナ
クシテ、米ガ一體ドウ云フ過程ニ依ツテ、
如何ナル傾向ニ依ツテ增產ヲ圖ルコトガ出
來ルカト云フコトニ對スル、具體的ナ問題
ヲ農林大臣ガ御持チニナラナケレバナラヌ
ト思ヒマス、此ノ點ニ於テ最近屢〓或ハ本會
議ノ席上ニ於キマシテモ、新聞或ハ雜誌等
ヲ通ジマシテモ、我國ノ現在ノ農村ノ實情
ト云フモノハ勞働力ガ足ラナイ、又畜力ガ
足ラナイ、又農村ニ於キマスル所ノ重要肥
料ト云フモノハ輸入ガ閉鎖サレテ居ル、斯
ウ云フヤウナ諸般ノ關係カラ、增產ト云フ
コトニ對スル所ノ悲觀的部面ト云フモノガ
多イト云フコトニ付テハ、私ガ喋々スルマ
デモナイノデアリマス、然ラバ之ニ卽應ス
ル所ノ對策ト致シマシテ、現在如何ナル對
策ヲ執ツテ居ラルルカ、勞力ガ足ラナイ、
一般ノ東京市民或ハ其ノ他都市ノ人ニ聞キ
マスルト、農村ニ勞力ハナイト云ウテモ、
何トカ米ダケハ出來ルノデハナイカト云フ
漠然タル考ヲ持ツテ居ル、又政府ノ諸氏モ
農村ニ於ケル勞力ガ足ラナイ〓〓ト云フコ
トヲ耳ニシテ居ルケレドモ、重要ナル農業
生產物ダケハ、何トナク擁護サレテ居ルノデ
ハナイカト云フヤウナ考ヲ持ツテ居ラルル
コトハ、私ハ危險デアルト思ヒマス、此ノ戰
爭ガ長期ニ亙リマシテ、愈〓我ガ日本ノ國ガ相
當ナル決心ヲシナケレバナラヌト云フ見地
ニ立チマスルナラバ、勞力ガナクテモ、畜
力ガナクテモ、農業生產力ヲ斷ジテ維持ス
ルコトガ出來ルト云フダケノ、具體的成案
ト云フモノヲ吾々ハ持ツテ居リタイノデア
リマス、然ラバ其ノ具體的成案ト云フモノニ
付テ吾々ガ考ヘマスル時ニ何デアリマセウ、
從來ノ農民ノ勤勞ニ換フルノニ機械ヲ以テ
スル、今日ノ農業生產力ト云フモノハ、最
早ドウシテモ相當ノ機械力ニ依ツテ、勞力
ノ不足ノ部面ヲ補ツテ生產力ヲ擁護シナケ
レバナラヌト云フコトハ、苟モ農業事情ニ
通ズル者ノ共通ノ意見デアルト思ヒマス、
然ルニ現在ノ我國ニ於ケルノ農業器具ノ態
勢ハドウデアルカト申シマスルト、昨年七
月、八月、九月ノ間ニ於キマスル所ノ、農
具ニ對スル所ノ鐵ノ配給ト云フモノハ僅ニ
五%、百分ノ五デアリマス、此ノ百分ノ五
ニ當リマスル所ノ鐵ニ依ツテ、能ク現在農
村ノ生產力ト云フモノガ維持出來ルデアリ
マセウカ、農器具ノ製造ハオロカ、農器具
ニ對スル所ノ修繕スラ出來ナイト云フコト
ガ今日ノ現狀デアリマシテ、而モ之ニ對シ
マスル所ノ對策ガ當局ニ立ツテ居ルカト申
シマスルナラバ、立ツテ居リマセヌ、現ニ
私ハ昨年我國ノ農業狀態ニ付テ屢〓耳ニ致シ
タノデアリマスルガ、少クトモ昨年ノ我國
ノ米ノ減收ノ中ニ於キマシテハ、約三千万
圓ニ相當致シマス所ノ稻熱病ノ災害ト云フ
モノガアリマス、昨年ノ第七十三議會ニ於
テ、農業保險法案ガ議會ヲ通過致シマスル
時ニ、議員ト政府委員トノ間ニ於テ、此ノ
稻熱病ト云フモノハ人力ヲ以テ防ゲルカ防
ゲナイカト云フコトニ付テ、隨分激烈ナル
議論ガゴザイマシテ、長野長廣君ノ如キハ、
過去ノ經驗ニ徵シテ斷ジテ稻熱病ハ防ゲナ
イ、農業保險ノ對象ニ入ルベシト主張サレ
マシタ、當時農林當局ノ御意見ハ、稻熱病
ト云フモノハ機械ノ力ニ依ツテ防ゲルノデ
アルト云フ見解ノ下ニ、吾々ハ農業保險ノ
委員會ニ於テ一應之ヲ諒承致シタ、然ルニ
昨年ノアノ天候カラ全國ニ起リマシタ所ノ、
アノ稻熱病ガ蔓延シタ時ニ、全國ノ農民ガ
之ヲ防ガナケレバナラナイト云ウテ、盛ン
ニ稻熱病ヲ防護致シマスル所ノ噴霧器ヲ買
ヒニ出マシタケレドモ、噴霧器ノ原料デア
リマス眞鍮ト護謨ト云フモノハ、旣ニ一昨
年ノ暮カラ統制ヲサレテ居リマシテ、噴霧
器ハナイ、如何ニ農林當局ガ、農業保險委
員會ニ於キマシテハ、稻熱病ハ防ゲルノデ
アルト云フ答辯ヲサレマシテモ、此ノ肝腎
ナル所ノ機械ヲ擁護セズニ置イテ、農民ガ
ミス〓〓稻熱病ノ爲ニ稻ガ倒レルノヲ見テ
居ルト云フ現狀ヲ見ル時ニ、果シテ農林當
局ガ之ニ對シテ完全ナル責任ヲ負フコトガ
出來ルカト云フコトヲ、私ハ問ハントスル
ノデアリマス(拍手)是ハ單ニ私ガ昨年知リ
マシタ所ノ一ツノ事實デアリマスルガ、最
近ノ我國ノ農器具政策ト云フモノヲ見マス
ルト、商工省ト農林省ノ間ニ於テ價格ノ統
一ヲ缺イテ居リマス、卽チ此ノ農器具ト云
フモノハ、今ヤ混亂、混冥ニ陷リマシテ、
現狀ヲ以テ致シマスルテラバ、其ノ業ヲ捨
テテ他ノ方へ轉業シナケレバナラヌト云フ
聲ヲ聞イテ居ルノデアリマスルガ、私ハ其
ノ農器具業者ノ今日主張シテ居リマスル所
ノ値段ノ正當ナリヤ否ヤト云フコトニ對シ
テハ、專門家デアリマセヌカラ未ダ判定出
來マセヌケレドモ、政府ハ農民ニ向ツテ農
業ノ生產力ガ衰ヘテハナラヌ、諸君ハ愛國
心ニ依ツテ、農業報國ノ精神ニ依ツテ、主
要產業タル所ノ米ヲ作ラナケレバナラナイ、
農業生產力ヲ落シテハイケナイ、隣保相助
ヲシナケレバナラヌト言ハレマシテモ、肝
腎ナ所ノ農器具ト云フモノニ對スル對策ガ
立ツテ居ラナカツタナラバ焉ゾ農業政策
ニ對スル所ノ完全ナルモノト言フヲ得ンヤ
ト私ハ言ヒタイノデアル、斯ク考ヘテ參リ
マスル時ニハ、先ヅ我國ノ農業ト云フモノ
ガ、此ノ點ニ一大進展ヲシテ行カナケレバ
ナラヌト云フ見地ニ立チマスル時ニ、唯口
ニ增產計畫增產計畫ト云フ前ニ、此ノ點ニ
對シマシテハ少クトモ十二分ナル對策ヲ立テ
ラレナケレバナラヌト云フコトヲ私ハ附言
致シマスルト共ニ、次ニ增產政策ニ對シマ
スル所ノ、更ニ根本問題ニ付テ私ノ所信ヲ
開陳シテ見タイト思フノデアリマス、先程
申上ゲマスルヤウニ、今日我國ノ農民ニシ
テ米ヲ作ツテ居リマスル者ハ農家ノ大半デ
アル、農家ノ大半デハアリマスルガ、之ヲ
數字的ニ仔細ニ〓究ヲ致シテ見マスルト、
眞ニ鋤鍬ヲ執ツテ米ヲ作ツテ居リマスル所ノ階
級ト云フモノハ、其ノ七割マデハ農村ニ於ケ
ル所ノ他人ノ地面ヲ借リテ耕作シテ居ル所ノ階
級デアリマス、我國ノ耕地ハ六百万町步、其ノ
中半分ノ田ガ三百万町步デアリマシテ、其ノ三
百万町步ノ半分ノ百五十万町步ト云フモノハ
所謂小作地デアリマス、此ノ半分ノ小作地
ト云フモノノ中ニ、所謂純然タル小作人ト
自作兼小作農タル所ノ-農村ニ於ケル中
農階級以下ノ一挺ノ鋤、一挺ノ鍬ヲ以テ鬪
ツテ居ル所ノ、所謂自作兼小作農家ト云フ
モノガ七割ヲ占メテ居ルノデアリマシテ、
此ノ七割ヲ占メテ居ル大多數ノモノガ-
今日農村カラ都會へ流レテ參リマスル所ノ
所謂移動米、米ガ商品トナツテ居リマスル
モノガ三千五百万石デアリマスガ、小作料
ハ其ノ中ノ千五百万石、移動米ノ半分ニ當
リマスル所ノ千五百万石ト云フ所ノ多クノ
米ト云フモノハ、他人ノ地面ヲ借リテ耕作
ヲシテ居リマスル所ノ、小作人階級ノ雙肩
ニ依ツテ其ノ生產ガ維持サレテ居ルト云フ
コトニ付テハ、我國ノ農業統計ガ示シテ居
ル所デ間違ヒナイノデアリマス、然ラバ其
ノ生產ノ一番適切ナル所ノ部面ニ營々トシ
テ働イテ居リマスル所ノ農民諸君ト云フモ
ノガ、今日ニ於テ此ノ重大時局ニ對シテ國家
ノ食糧ヲ生產スルダケノ、完全ナル生產階
級トシテノ經濟力ト、完全ナル所ノ體力ト、
完全ナル所ノ氣力ノ上ニ於テ萬遺憾ナキヤ
ト云フコトハ、米ノ增產問題ニ於テ私ハ見
逃スベカラザル重大點デアルト思フノデア
リマス(拍手)而モ此ノ農村人口ノ七割ヲ占
メテ居リマスル所ノ所謂小作人階級ハ、肥
料ハ自分ノ負擔デアル、農具ハ自分ノ負擔
デアル、勤勞ハ自己ノ筋肉ト血液デアル、
一タビ凶作ニ遭ヒマスルナラバ、其ノ凶作
ニ對スル責任ハ其ノ小作人ガ背負ウテ、豐
凶ニ拘ラズ收穫ノ半分ト云フモノヲ納ム
ル、此ノ制度ト云フモノガ、果シテ現在ノ
我ガ日本ノ非常時農業形態ニ對スル所ノ、
完全ナル制度ナリヤ否ヤト云フコトニ對シ
テ、農林大臣ノ再認識ヲ私ハ要求シタイト
思フ者デアリマス(拍手)卽チ是ニ於テ一タ
ビ思ヲ廻ラシテ見タナラバドウデアリマセ
ウカ、是等ノ農民階級ガ今日都會ニ於テ叫
バレマスル所ノ產業報國、勞働者ト資本家
ガ一體ニナツテ國家ノ爲ニ盡ス、洵ニ吾々
ハ今日ノ情勢ト致シマシテ尊敬ヲ致シマス、
農村ニ於キマシテハドウデアリマスカ、勞
働者モ企業家モ卽チ小作人一人デアリマス、
是ハ我ガ日本ノ國ノ農業形態ノ本質デアリ
マス、世間偶々小作爭議-小作料ノ合理化
運動ヲ以テ勞働爭議ニ對シマスルケレド
モ、ソレハ爭議ノ形態ガ大衆行動デアツク
リ爭議ノ中ニ或ハ手段方法ニ同ジヤウナ
モノアリト雖モ、其ノ經濟上ノ基礎理念ニ
於テハ、農村ニ於ケル小作料ノ合理化運動
ト云フモノハ、肥料モ自分ガ持チ、農具モ
自分ガ持チ、種子モ自分ガ持チ、天災ニ對ス
ル危險モ全部自分ガ負ハナケレバナラナ
1、此ノ悲壯ナル小作人階級ノ巳ムニ已マ
レザル所ノ所謂經濟更生運動デアルコト
ヲ、私ハ農林大臣ノ認識ヲ得タイト思フノ
デアリマス、斯ク考ヘマスルトキニ、此ノ
所謂引合ハザル所ノ小作人階級ト云フモノ
ニ對シテ、農林大臣ハ如何ナル對策ヲ以テ
臨マルルカ、私ハ今日是等ノ小作人諸君ガ、
農村ニ於テ如何ナル情勢ヲ取ツテ居ルカ、
或ハ小作爭議ノ起ル地方ニ於キマシテハ、
一部ノ地主階級諸君ニ依リマシテハ、彼等
ハ愛國心ガ缺乏シテ居ルト言ツテ、或ハ小
作爭議デモ起リマスルト、ソレハ何等カノ
者ガ行ツテ煽動デモスルヤウナ言論ヲサレ
マスルガ、ソレハ誤ツテ居リマス、都會ニ
於キマシテハ、都會ノ借家人ハ火事デモ起
レバ、自分ノ火鉢ヲ逆サマニシテ置イテ、
自分ノ物ダケ持ツテ逃ゲルト云フコトヲ聞
キマスガ、農村ノ小作人ハドウデアリマス、
自分ノ耕作シテ居ル地面ガ他人ノ地面デア
リマシテモ、其ノ畦ガ壞レマスルナラバ、
自分ノ住ンデ居ル宅地ノ地面ノ土ヲ持ツテ
行ツテ其ノ畦ヲ修理シテ、ソレガ他人ノ地
面デアラウト、誰ノ地面デアラウト構ハズ、
自己ノ祖先傳來耕作シタ地面デスカラ、ソ
レヲ完全ニスル、アノ農民ノ觀念ハ唯一片
ノ同情ヲ以テ見ル譯ニハ行カナイ、此處ガ
眞ニ政治家タル者ガ千思萬省シテ、農村ノ
七割ヲ占メテ居ツテ、其ノ經濟ノ立行カナ
イ所ノ、農民階級ニ對スル一大根本對策ヲ
立ツルコトニ依ツテ、一面ニ於テハ農村ノ
振興、一面ニ於テハ米穀ノ增產政策ト云フ
モノニ對シテ千思萬省サレルコトガ、弘
現下ノ情勢ニ於テ妥當ナリト存ズル者デ
アリマス、此ノ見地ニ立ツテ考ヘマスルト
キニ於テ、今日多數ノ農村問題ヲ論ジマ
スル所ノ農政學者ハ、我國ノ米穀政策ノ將
來ハ、小作料モ金納ニシナケレバナラナ
イト主張シテ居リマス、卽チ收穫物ノ半
分ヲ人ニ取ラレタラ、殘ツタモノヲ商品化
スルコトハ出來ナイノデアルカラシテ、卽
チ小作料ヲ金納ニシテ置イテ、小作人自ラ
ガ其ノ米ヲ商品化スル所ノ制度ヲ採ラナケ
レバナラヌト云フコトガ、今日ノ學者ノ意
見ノ一致ヲ見テ居リマス、併シ私ハ小作料
ヲ金納ニシテ、今日ノ農業政策ヲ圖ルベキ
ヤ否ヤト云フコトニ對シテハ疑問ヲ持ツテ
居リマス、言換ヘマスルナラバ、作ツタ物
ヲ納メルト云フ觀念ハ、今日ノ農村ニ於キ
マシテハ善良ナル風俗デアリマス、私ハ物
ヲ作ツタ者ガ物ヲ納メルト云フ、此ノ善良
ナル風俗ダケハ殘シテ置イテ、我國ノ農村
ノ土地問題ヲ解決シタイト云フ考ヲ持チマ
スルトキニ、今日農林大臣ニ切ニ反省ヲ促
シテ見タイト思フコトハ、東京ニ、大阪ニ、
自分ノ住居ヲ都會ニ置キマシテ、北海道ニ、
九州ニ、多數ノ地面ヲ掌握致シテ居リマス
ル所ノ不在地主ナル者ガアリマス、此ノ不
在地主ト云フ者ハ、此ノ國家非常時ニ於ケ
ル所ノ生產階級トシテ、ドレダケノ役ヲ勤
メテ居リマセウカ、私ハ不在地主ノ問題ニ
付キマシテハ、他ニ論ズル場合モアリマス
ルガ、小作人ガ自分ノ地面ヲ管理シテ、自
分ガ其ノ地面カラ生產ヲ擧ゲテ居ルノデア
リマスケレドモ、土地ヲ單ナル營利ノ對象
トシテ所有スルダケニ依ツテ、自己ガ地主
デアルト云フ考ヘ方ヲ持ツテ居ルト云フコ
トハ、今日ノ時勢ニハ適應スルモノデナイ
ト私ハ斷ジタイノデアリマス(拍手)言換ヘ
マスルナラバ、地主ガ土地ヲ所有スルコト
ヲ許サレタル觀念ハ、玆ニ暴風ガアリマス
ルナラバ、砂防林ヲ作ツテ其ノ暴風ヲ防イ
デ生產ニ從事スル、玆ニ水害ガアリマスル
ナラバ、地主自ラノ力ニ依ツテ、其處ニ堤
防ヲ築イテ小作人ノ援護ヲ圖ツテヤル、言
換ヘマスナラバ、自分ノ犠牲ニ於テ土地ヲ
管理スルダケノ力ガアツテ、初メテ是ガ生
產階級デアリマス、然ルニ今日何等生產ニ
從事シナイ所ノ是等ノ不在地主ノ土地ヲ、
徒ニソレ等ノ人ノ所有ニシテ置クヨリハ、
百尺竿頭一歩ヲ進メテ、此ノ米穀配給新制
法ノ實行ト共ニ、之ヲ國家ノ管理ニ移シ、
而シテ其ノ地面カラ上ル小作料ト云フモノ
ハ政府自カラ之ヲ收メテ、高イ金ヲ出シテ
サウシテ米ヲ賣ツタリ買ツタリシテ、損ヲ
シテ國民ニ迷惑ヲ掛ケルヨリハ、ソレ等ノ
諸君ノ地面ト云フモノヲ國有トシテ、國家
ガ相當莫大ナル小作料ヲ收メテ、其ノ國家
ノ收メタ小作料ノ力ニ依ツテ、米穀ノ政策
ト云フモノニ對シテ相當踏出スト云フコト
デアリマスナラバ、一石二鳥デアツテ、正
ニ私ハ農村問題ノ解決ノ要諦ト云フモノハ
ココニ存スルト思フノデアリマスガ、之二
對スル櫻內農林大臣ノ忌憚ナキ御所見ヲ伺
ツテ置キタイト思フノデアリマス、以上ノ
二點、土地制度ノ改革ト農器具ニ對スル根
本改革ハ、米ノ增產政策ニ對スル所ノ動カ
スベカラザル二大方針デアルト考ヘマスノ
デ、敢テ櫻內農林大臣ノ所信ヲ質シタイト
思フノデアリマス
第三ノ點ハ價格政策デアリマス、米價ノ
問題ハ本日モ此ノ席上ニ於キマシテ屢〓議論
ヲサレタコトデアリマスルカラ、私ハ是レ
以上論ジマセヌガ、率勢米價ト云ヒ、或ハ
家計米價ト云ヒ、或ハ生產費ヲ基準ト致シ
マスル所ノ米價ノ計算ト云ヒ、是等ハ單ナ
ル數學的ナモノデアリマス、苟モ米穀ニ關
シマスル所ノ價格政策ヲ論ズルニ當リマシ
テ、最モ大切ナル問題ハ、價格ヲ決スル所
ノ其ノ機關ト人ノ問題デアリマス、米穀統
制法モ、米穀法モ、其ノ運用ノ途上ニ於キ
マスル所ノ人ニ關スル問題デアリマスガ、
從來ノ此ノ價格決定ニ當リマスル所ノ、其
ノ決定方法ヲ見テ居リマスト、眞ニ米ノ生
產ニ從事致シテ居リマスル所ノ所謂生產者
階級ト云フモノノ代表者ハ洵ニ少イノデア
リマス、米ヲ商品化シテ、自分ノ作ツタ米
デハナク、是ハ商品デアルト云フ見地ニ於
テ、米ヲ商品化スル者ノミガ生產者ノ代表
デハアリマセヌ、眞ニ生產者ノ代表ト云フ者デ
アリマスナラバ、粒々辛苦米ヲ作リ、其ノ間ニ
ハ何十囘トナク手間ヲ掛ケテ、其ノ使フ農器
具ニ於テモ三十種類以上ノ多數ノモノヲ使ヒ
苦心慘憺ヲシナケレバ出來ルモノデハナイ
ト云フコトノ立派ナル體驗ノアル人間ヲ、
其ノ價格決定ノ委員ニ推薦セラルルト云フ
コトガ當然デアラウト思フモノデアリマス(拍
手)以上ノ三點ハ私ガ米穀政策ニ關シマシ
テ、特ニ農林大臣ニ伺ハントスル所ノ問題
デアリマシテ、之ニ對スル櫻內農林大臣ノ
明快ナル答辯ヲ得タイト思ヒマス
最後ニ極メテ簡單ニ法文其ノモノニ關ス
ル質疑ヲ致シテ置キタイト思ヒマス、法文
ニ關スル質疑ト致シマシテハ、先ヅ第一ニ
承リタイト思ヒマスルコトハ、本案ノ第二
十九條ニ付テデアリマス、第二十九條ハ
私共ガ初メテ此ノ法案ヲ拜見致シマシテ驚
イタノデアリマスガ、今囘ノ法案ハ米穀配
給統制法案ト云フ法案デアル、米ニ關スル
問題ヲ中心トシテ立テラレマスル所ノ日
本米穀會社ト云フモノニ、如何ナル理由ガ
アツテ麥ヤ大豆ヤ、雜穀ヤ、肥料ト云フモ
ノヲ扱ハレルト云フコトヲ挿入サレタノデ
アリマスカ、私ハ米穀會社ト云フモノハ米
一本ヲ扱ツテ、而モ米ニ對シテハ絕對的ナ
ル權威ヲ以テ、本會社ガ運用セラルルト云
フコトガ當然デアラウト思ツテ居ツタニ拘
ラズ、此ノ第二十九條ノ中ニ斯ル曖昧ナル
條文ヲ挿入サレタト云フコトニ付キマシテ
ハ、果シテ如何ナル理由デアリマスルカ、
聞ク所ニ依リマスルト、此ノ一箇條ニ對シ
テハ、商工當局ガ此ノ點ヲ入レナケレバ本
案ニハ贊成シナイ、農林當局ハ斯ウ云フモ
ノヲ入レルコトニ對シテハ不滿デアツテ、
賛成ヲサレナカツタノデアルケレドモ、商
工當局ガドウシテモ之ヲ入レナケレバ、從
來ノ取引業者ノ間ニ於ケル所ノ妥協ガ付カ
ナイカラ、ヤハリ之ヲ頑張ツタ、而モ議會
ハ成ベク急イデ之ヲ提案ヲシナケレバ期日
ガ切レルト云フヤウテ政治的ナル工作カ
ラ、此ノ第二十九條ニ米以外ノ麥デアルト
カ、大豆デアルトカ、肥料デアルトカ云フ
ヤウナモノヲ取扱ハレルコトヲ挿入スルニ
至ツタト聞イテ居リマスルガ、斯ノ如クン
バ、先程來農林大臣ガ此ノ席上ニ於テ信念
ヲ以テ主張サレテ居リマスルケレドモ、唯
商工省トノ單ナル妥協ノ上ニ斯ウ云フヤウ
ナモノヲ入レラレルト云フコトハ、寧ロ私
ハ本案通過ノ途上ニ於テ、又本案通過ニ對
シテ相當ナル努力ヲシナケレバナラナイト
考ヘテ、本案ニ贊成シテ居ル所ノ議員ノ心
境スラ、之ニ依ツテ或ハ變化ヲ來サナケレ
バナラヌト云フ風ニ思フノデアリマスルカ
う、此ノ第二十九條ニ斯ウ云フヤウナ怪シ
ゲナル所ノ追加ヲ入レラレタト云フコトニ
對スル、極メテ率直明快ナル御答辯ヲ、私
ハ此ノ席上ニ於テ櫻內農林大臣ニ要求スル
者デアリマス
次ニハ市場ニ對シテ全販聯ハ賣リ一方デ
アルト云フコトハ分リマシタガ、併シ全購
聯ト云フモノハ、物ヲ買ツテ農民ニ配付致
シマスル所ノ完全ナル機關デアリマスルカ
ラ、此ノ市場ヘ全販聯ノ賣リダケニ制限ヲ
サレタナラバ、全購聯ヲ入レラレルト云フ
コトガ理論上當然デアル、產業組合ニ對ス
ル所ノ根本問題ニ對スル櫻內農林大臣ノ所
見ハ別デアリマスガ、今日、明治三十三年
ニ產業組合法ヲ作ラレテ、日本ノ農村振興
ト云フモノハ、產業組合ニ依ツテ相當ヤラ
セヨウト云フ根本理論ガ立ツテ居ルナラ
バ、歷代ノ農林大臣又此ノ根本政策ヲ踏襲
致シテ居リマスルナラバ、何ガ故ニ此ノ市
場ニ對シテ堂々ト全購聯ヲ入レラレルト云
フコトニ對シテ躊躇ヲサレタカ、是ハ私
ハ、農林大臣ノ唯產業組合ト商工業者ノ妥
協ノ點サヘ付ケバ、是ガ政策デアルト云フ
風ナ、政策ノ誤リデアツテ、信念ヲ以テ產
業組合ノ上ニ對シテ、產業組合ノ今マデ踏
ンダ政策ヲ是認サレルナラバ、全購聯ヲ此
ノ市場ニ對シテ入レルト云フコトガ當然デ
アラウト信ズルノデアリマス
最後ニ、全販聯ノ小賣ヲ禁止サレテ居リ
マスガ、是モ私ハ農林大臣ニ伺ツテ置キタ
イ、農林大臣ノ先程來ノ御話デ、本案ノ提出
ニ當リマシテ種々商工當局トノ間ニ於ケル
苦心ノ跡ハ知リ得ラレマスガ、先程モ申上ゲ
マシタヤウニ、地方ニ於ケル販賣組合ガ農民
ノ生產品ヲ農民ニ賣ツテ居ルト云フ此ノ形
態デアリマス、當然ノ形態デアリマス、何等
矛盾シナイ極メテ當然ナル所ノ政策デアリ
マスルモノニ對シテ、全販聯ノ小賣ト云フモ
ノヲ特ニ認可制度ニ依ツテ普通ノ小賣商ト
同樣ニ扱ハレテ居リマスル點ニ付テモ、公
平デアルト云ヘバ公平デアルト云フ言葉ハ
用ヒラレマスルケレドモ、之ヲ歷代農林大
臣ノ產業組合政策ト見マスルナラバ、ソコ
ニ相當ノ產業組合ニ對スル事業制限ト云フ
モノガ潜ムノデハナイカト考ヘルノデアリ
マス、此ノ點ニ付テハ問題小ナリト雖モ、
將來ニ對スル農業政策ノ重大ナル問題デア
リマスノデ、今少シク明快ナル御答辯ニ依
ツテ、何ガ故ニ全販聯ノ小賣ニ對シテモ、
普通ノ米穀商竝ミニ取扱ハレルカト云フコ
トニ對スル御答辯ヲ得テ置キタイト思ヒマ
ス、尙ホ種々本案ニ對スル質疑ハ盡キナイ
ノデアリマスケレドモ、大體私ノ質問ハ以
上ヲ以テ終リト致シマス、何卒以上ノ質問
ニ對シテ、農林大臣ノ極メテ明快率直ナル
御答辯ヲ希望致シマシテ私ノ質問ヲ終リマ
ス(拍手)
〔國務大臣櫻內幸雄君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=21
-
022・櫻内幸雄
○國務大臣(櫻内幸雄君) 御答申上ゲマス、
本案ハ低米價政策デハナイカト云フコトガ
第一點ノヤウデアリマシタガ、左樣デハア
リマセヌ、要スルニ公正ナル價格ニ依ツテ、
生產者モ安ンジテ生產ヲ爲シ得、消費者モ
亦適當ナル價格ニ依ツテ供給ヲ受ケルト云
フコトヲ根幹ト致シタ案デアリマシテ、決
シテ低米價政策ト云フ意味デハナイノデア
リマス
ソレカラ肥料專賣ヲ斷行スルノ考ハナイ
カ、是ハ御承知ノ通リ現在肥料ノ大部分デ
アル硫安竝ニ加里、過燐酸ハ全部一ツノ中
樞機關ヲ設ケテ居リマシテ、ソレガ總テ政
府ノ指揮命令ニ依ツテ配給致シテ居リマス
ノチ、大體ニ於テ殆ド專賣ヲ致シテ居ルト
同ジヤウナ傾向ニ置カレテ居リマス、唯有
機質肥料ニ至リマシテハ、今日其ノ統制ガ出
來テ居リマセヌケレドモ、御承知ノ通リ是
ハ多種多樣デアリマシテ、此ノ點ニ付キマ
シテハ未ダ十分〓究ノ出來テ居ナイコトヲ
遺憾トシテ居リマスケレドモ、是モ出來得ル
限リ統制致シテ行キタイ、斯樣ニ考ヘマス
次ニ增產計畫ニ付テノ御話デアリマスガ、
是ハ度々申上ゲマス通リ、中々容易ノ業デ
ハナイノデアリマシテ、機械ノ不足、勞力
ノ不足等ニ付キマシテモ、新シキ機械ヲ購入
スルコトハ困難デアリマスルガ故ニ、從來
ノ機械ヲ共同使用スル方法ヲ講ズルトカ、
勞力ノ不足ニ對シマシテハ、移動勞力班ヲ
設ケテ之ヲ補充スルトカ、或ハ稻熱病其ノ
他ノ問題ニ付キマシテハ、之ヲ徹底的ニ驅
除スル方法ヲ講ズル、併シソレヲ講ズルノ
三、今道具ガナイト云フ御話デアリマシ
タガ、此ノ點ニ付キマシテハ是非トモ其ノ
道具ヲ補充致シタイ、出來ナイ場合ニ於テ
ハ、從來金屬デ作ツテ居ツタモノハ竹ヲ使
用スルトカ、種々ナル方法ガアルト考ヘマ
ス、要シマスルニ、全般的ニ農事ニ關係サレ
テ居ル方々ノ總動員ヲ致シテ、其ノ總力ノ
發揮ニ依ツテ之ヲ補充シテ行キタイ、小作
人ノ問題ニ付キマシテ、或ハ金納トシテハ
ドウデアラウカ、或ハ小作人保護トカ云フ
ヤウナ問題ガアリマシタガ、現在ノ小作人
ノ諸君ガ非常ニ御苦ミニナツテ居ルト云フ
コトニ對シマシテハ、吾々モ深ク考ヘテ居
リマス、故ニ從來ニ於キマシテモ、御承知
ノ通リ農地調整法ノ如キモノヲ設ケテ、出
來得ル限リ是等ノ人々ヲ自作農ニシテ、サ
ウシテ全部ガ自分ノ田ヲ耕スヤウニ致シタ
イト云フノデ、之ニ努力致シテ居ルヤウナ
次第デアリマス
次ニ價格政策ニ對シマシテ、其ノ根幹ヲ
成ス所ノ締制法ノ第二條ノ價格ヲ決定スル
委員ニ、所謂實際農事ニ關係シテ居ル人ヲ
採用スルノガ必要デナイカト云フ御意見デ
アリマスガ、是ハ御尤ノ御意見デアリマス、
現在ニ於テモ農會其ノ他農事ニ關係シテ居
ル人ヲ御依賴致シテ居リマスケレドモ、更ニ
實際ニ當ツテ居ル人ヲ御願スルヤウナ場合
ガ起ツテ來ルト考ヘルノデアリマス
ソレカラ法案ノ第二十二條ト仰セラレマ
シタガ、是ハ御話ニ依ルト第二十九條ノ問
題デアラウト思ヒマス、此ノ問題ニ對シマシ
テ、決シテ農林、商工ノ間ニ爭ツタコトハ、
今日マデ毫末モナイノデアリマス、唯附屬的
ニ斯樣ナコトヲ設ケマシタノハ、現在ノ取
引所ニ於キマシテ、斯ウ云フモノヲ附帶事業
ト致シテ居ル土地ガアリマス、斯ウ云フ土地ニ
對シマシテハ、茲ニ之ヲ一朝ニシテ廢止ス
ルト云フコトハ、農村ノ爲ニ非常ニ不便デ
アリマスシ、又斯ウ云フ附帶事業ヲ場合ニ
依ツテ致スト云フ事柄ガ、此ノ目的ヲ達ス
ル場合ニ於テ必要ナ場合モアリマスノデ、
是ハ任意ニヤルコトニナツテ居リマシテ、
此ノ條文ガ此ノ法案ノ根柢ヲ成シテ居ルモ
ノデハナイト同時ニ、農林省ト商工省トノ
間ニ少シモ意見ヲ異ニシテ爭ツタト云フヤ
ウナ事實ノナイコトヲ御承知願ヒタイト思
ヒマス、大體ソレダケデアツタト思ヒマス
ノデ、之ヲ以テ答辯ト致シマス(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=22
-
023・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 三宅正一君
〔三宅正一君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=23
-
024・三宅正一
○三宅正一君 私ハ今囘御提案ニナリマシ
タ米穀配給統制法案ニ關シマシテ、本法案
ガ戰時配給納制機構トシテ持ツテ居リマス
ル農業政策上ノ地位、其ノ立場カラ考ヘマ
シタル本法案ノ內容ニ付テノ檢討ヲ試ミル
ト共ニ、本法案ヲ出サナケレバナラナクナ
リマシタ所ノ基礎條件デアル、日本ノ國ニ
於ケル生產ノ減退現象ニ對スル、政府ノ增
產政策ノ不徹底ナル數々ノ點ニ關シテ具體
的ナ質問ヲシテ、農林大臣其ノ他ノ所見ヲ
質シタイト考ヘルノデゴザイマス
戰時農業政策ノ根幹ハ、第一ハ必要農產
物ノ生產ヲ確保スルコトデアリマス、戰時
ニ於テ益〓需要ガ增大シテ來ル、其ノ需要ニ
應ジテ必要ナル農林水產物ノ生產ヲ確保ス
ルコトハ、是レ戰時農業政策ノ第一要諦デ
ナケレバナラヌト考へルノデゴザイマス、
(拍手)而シテ斯ノ如キ努力ヲ試ミルニモ拘
ラズ、萬々一此ノ品物ノ窮屈ヲ感ズルコト
ニ依ツテ價格ガ暴騰シ、若クハ此ノ生產ガ
非常ニ不安定ニナルコトニ依ツテ、國民生
活ヲ不安定ニ陷ラセナイ爲ニ價格安定政策
ヲ行フコトガ、其ノ次ノ戰時農業政策トシ
テ現ハレテ參ルト思フノデゴザイマシテ、
今囘ノ米穀配給統制法案ハ、此ノ戰時農業
政策ノ第二ニ位スル所ノ法案デアルト私ハ
考ヘルノデゴザイマス、而シテ戰時農業政
策ノ第三ハ、强キ兵隊ト健全ナル勞力ヲ移
出スル所ノ人的源泉ヲ爲ス農村ヲシテ、過
勞ト榮養不良ト生活破綻ノ爲ニ破滅サセル
コトニ依ツテ、日本ノ人的資源ヲ壞滅ニ歸
スルコトヲ防ギマスコトガ卽チ戰時農村政
策ニ於ケル所ノ第三ノ要諦デアルト、私
考ヘテ居ルノデゴザイマス(拍手)隨テ何ト
申シマシテモ此ノ法律ハ其ノ第二ニ位スル
モノデアツテ、戰時農業政策ノ第一點ハ、
生產物ノ確保ト所謂農民生活ノ保全デアリ、
農民生活ノ安定デアル、之ヲヤリナガラ而
モ萬々一ノ所謂其ノ供給ノ窮屈ニ備ヘルノ
ガ、此ノ法律ナノデゴザイマシテ、政治ハ
所謂全能力ヲ擧ゲテ、常ニ最善ノ努力ヲ增
產及ビ農民生活ノ安定ニ傾注致シマスケレ
ドモ、併シナガラ一方ニ於テ最惡ノ事態ニ
備ヘマスル所ノ用意ヲ整ヘテ置クコトハ
絕對ニ必要ナリト考ヘルノデゴザイマス、
此ノ最惡ノ事態ニ對シマスル用意ガ、卽チ
今囘提案サレマシタ所ノ此ノ法律デアルト、
私ハ考ヘルノデゴザイマシテ、萬々一食糧
ノ供給ニ不足ヲ生ジマシテモ、窮屈ヲ感ジ
マシタ際ニ於キマシテモ、其ノ價格ガ暴騰
シテ國民生活ニ一大不安ヲ與ヘルト云フヤ
ウナコトヲ防ギマスル爲ノ戰時配給統制機
構ガ、卽チ本法案ナリト考ヘルノデゴザイ
マスルガ、農林大臣ハ左樣ニ本法ヲ御諒承
ニナツテ居ルカドウカガ、第一ノ私ノ質問
ナノデゴザイマス
此ノ見地カラ致シマシテ本法案ノ內容ヲ
考ヘテ見マスト、前ノ質問者ニ於テモ指摘
サレマシタヤウニ、米穀法、米穀統制法、
米穀自治管理法ト、漸次米穀ニ關スル統制
ガ强化サレタコトニ依ツテ、行詰リマシタ
取引所救濟デアルト云フヤウナ、サウ云フ
行掛リ案デアルトハ、此ノ法律ヲ私ハ解シ
タクナイノデゴザイマス、サウデハナクテ、
萬々一ノ際ニ於テ、〓糧ノ切符制ヲ適用ス
ル必要ヲ感ジマスルガ如キ最惡ノ事態ニ於
テモ、能ク機能ヲ發揮スルコトノ出來ル用
意ト寶刀トヲ、內輪ニ藏シマシタ戰時配給
締制機棒ガ此ノ法律デアルト私ハ考ヘルノ
デアリマスガ、農林大臣ノ御所見ハ如何デ
アルカ、此ノ見地カラ檢討致シマスルト、
本法案ハ非常ニ不完全デアリ、非常ニ「ルー
ズデアル、斯ウ云フヤウナ時ニ際會致シ
マシテハ、本法案ヲ以テ致シマシテハ不完
全デ、更ニ別テ立法ヲ必要スルト云フ「ルー
ズ」ナ法案デアツテ、此處ニ私ハ本法案
ノ缺陷性ト、現狀維持性ト非革新性ガアル
ト感ズルノデアリマスガ、其ノ非革新性ニ
付キマシテ二三ノ點ヲ指摘致シマシテ、農
林大臣ノ御所見ヲ承リタイト考ヘルノデア
リマス
本法ガ投機ノ手段ニ依ツテ米價ヲ暴騰セ
シメル危險ヲ防止スル爲ニ、〓算取引ヲ廢
止セシメラレマシタコトハ、私共ノ最モ贊
成スル所デアリマスケレドモ、半官半民ノ
會社デアルトハ言ヒナガラ、營利會社ニ市
場ヲ經營セシメマス結果ハ、配當增加ヲ望
ンデ勢ヒ延取引ヲ多ク致シマスル結果トナ
リマシテ、投機性ヲ無クシヨウト考ヘナガ
ラ、配當ヲ殖ヤス爲ニ範圍ハ狭メラレマス
ケレドモ、投機性ハ無クナラヌト云フ點ニ、
私ハ本法案ノ不徹底性ガアルト考ヘルノデ
ゴザイマスガ、農林大臣ノ御所見ハ如何デ
アリマスカ、ノミナラズ株式ヲ業者ニ優先
的ニ持タセル結果ハ、市場ノ經營ガ投機性
ノ排除及ビ公益的經營ヲ爲サナケレバナラ
ヌノニ、投機ノ排除、公益ニ最モ不適格ナ
ル所ノ今マデノ相場業者ガ、株主ニナリ重
役ニナツテヤリマスト云フ所ニ、本會社ガ
公益性ヲ滅却スル危險性ガアルト云フコト
ヲ考ヘザルヲ得ナイノデゴザイマスガ、此
ノ點ニ付テ大臣ハ如何ニ御考ニナツテ居ル
カヲ承リタイト思フノデゴザイマス、而モ
ナゼ斯ウ云フヤウナ機關ヲ、株式會社ト云
フガ如キ營利會社ニ經營ヲ委セラレタノデ
アリマスカ、寧ロ滿洲ニ於テヤツテ居ルヤ
ウニ、或ハ獨逸ニ於テヤツテ居リマスルガ
如ク、非營利、公益ナル經營ヲヤリマスル
爲ニ、公營デアルトカ、官營ノ取引所制度
ニナサイマスコトノ方ガ、本當ノ戰時配給
統制策トシテハ最モ適當ナモノデアルト考
ヘルガ、ナゼ其ノ點ニ付テソコマデ進マナ
カツタカト云フコトヲ承リタイト思フノデ
ゴザイマス
更ニ今回米穀ノ取引ニ付テ一元的統制ヲ
ヤリマスル機會ニ於キマシテ、最高最低價
格ノ範圍內ニ於テ、取引ヲサセルト云フヤ
ウナ行キ方デハナクシテ、銘柄ニ應ジテ
本建ノ公定價格制ヲ以テ行クト云フ所ノ、
投機性ヲ全然排除シタ一本建ノ公定價格制
ニ進ミマス方ガ、戰時ノ配給統制機構ト致
シマシテハ極メテ當然ナ話デアルノミナラ
ズ、今日商工省等ガ中心トナツテ決メテ居
リマスル木炭デアラウガ、絹デアラウガ何
デアラウガ、物價ハ最高價格一本制デ既ニ
今日マデ進ンデ居リマスル時ニ於テ、ナゼ最
高價格及ビ最低價格ノ間ニ於テ、マダ投機取
引ノ出來ルヤウナ餘地ヲ殘サレタノデアル
カト云フコトニ付キマシテ、私ハ其ノ不徹
底性ニ付テ御質問申上ゲタイト考ヘルノデ
ゴザイマス、而モ之ヲ一本建ノ公定價格制ニ
致シマスルダケデナクシテ、延取引-二月
ノ延取引ヲ認メテ居ルト云フコトデアリマ
スケレドモ、先物取引ヲ認メマスルナラバ、
延取引ナド認メル必要ハナイト私ハ考ヘル
ノデアリマス、營利會社ニヤラシテ延取引
ヲ認メテ、ソレデ配當ヲ目標ニシテ居リマ
スレバ、必ズ政府ノ意圖スル所ト違ツテ、
投機性ガ行ハレルコトニ依リマシテ、本當ニ
米ノ配給ガ窮屈ヲ感ジマシタ時ニ役立タナ
イト云フコトヲ、私ハ憂ヘザルヲ得ナイノ
デゴザイマスガ、政府ノ之ニ對スル御辯明
ヲ承リタイト考ヘルノデアリマス、業者
ヲ許可制ニ致シマシタコトハ、是ハ一進步
デゴザイマスケレドモ、配給費ヲ眞ニ輕減
シ、而シテ一朝米ガ不足ヲ致シマシテ切符
制度等ヲヤラナケレバナラナイト云フヤウ
ナ時ニ際シマシテ、本法ノ如ク配給機
構ノ段階ヲ澤山置キマスルコトハ、配給費
輕減ノ上ニ於キマシテモ、統制ノ上ニ於キ
マシテモ、極メテ不適當デアルト私共ハ考
ヘザルヲ得ナイノデアリマス、配給費ヲ最
モ儉約スル途ハ、生產者カラ直接消費者ニ
持ツテ行キマスコトガ、最モ配給費ノ儉約
ニナルフデアリマス、然ルニ今囘ノ會社法
案ニ於キマシテハ、仲買モ之ヲ其ノ儘ニ殘
シ、小賣商モ之ヲ其ノ儘殘シ、更ニ問屋モ
之ヲ其ノ儘殘シテ、其ノ上ニ會社ヲ一遍通
ラナケレバナラナイト云フコトニナルノデ
アリマスカラ、今マデ三段階ヲ以テ生產者
カラ消費者ニ屆イテ居ツタノガ、會社、市
場ヲ通ルコトニ依ツテ四段階ニナツテ、ソ
レダケ配給費用ハ高クナル危險性ヲ來スノ
デハナイカト云フコトヲ私共ハ考ヘルノデ
ゴザイマスガ、斯ウ云フヤウナ際ニ於キマ
シテ、本當ニ之ニ依ツテ失業致シマス者ニ
對シマシテハ、適當ニ轉業等ニ付テ考ヘテ
ヤルト共ニ、何ガ故ニ配給關係ト云フモノ
ヲ簡單化スコトニ付テ、今一步積極的ニ出
ラレナカツタカト云フコトヲ、私ハ聽カザ
ルヲ得ナイノデゴザイマス(拍手)
更ニ私ハ戰時配給統制機構トシテ、本法
案ノ持ツテ居リマスル一番大キナ缺陷ガ何ニ
在ルカト申シマスナラバ、萬一今年ノ秋ニ
デモ非常ナ凶作ガ來タ、或ハ大キナ戰爭ガ
起キテ外地カラ米ガチツトモ持ツテ來ラレ
ナイ、其ノ際ニ於キマシテ米ガ足ラヌトナ
リマスレバ、農家ノ側ニ於キマシテモ、米
屋ノ側ニ於キマシテモ賣惜ミ、賣隱シガア
リマスコトハ、是ハ當然デアリマス、然ル
ニ米ノ生產者カラ持ツテ來ルノニ對シテ、
今囘ノ法案ニ依リマスレバ仲買ガ不特定ナ
農民カラ之ヲ買ツテ來ル、產業組合ガ農民
カラ買ツテ來ル、農會ガ之ヲ買ツテ來ル、
一村ニドレダケノ米ガ出來テ、ドレダケ餘
ツテ居ルカト云フヤウナコトハ、仲買ト產
業組合ト農會ガ蒐集シ、或ハ農民ガ直接ニ
賣リニ持ツテ行クト云フヤウナ、混雜ヲシ
タ米ノ集荷制度ヲ以テ致シマシテハ、私ハ
在高デハ分ラナイト考へルノデゴザイマス、
サウ云フヤウナ狀態ノ下ニ於テ本當ニ米ガ
無クナツタ、農民ガ米ヲ袋ニ入レテ一斗ヅ
ツ隱シ、或ハ米屋ガ米ヲ賣惜ンダト云フ時
ニ、ドウヤツテ統制ヲヤラレルカ、少クモ
サウ云フ際ニ備ヘマシタ米ヲ集メル組織ト
致シマシテハ、營利性ヲ持タナイ所ノ農會
ナリ、市町村ナリ、產業組合ナリ、是ガ村
ニドレダケノモノガアルカ、ドレダケガ殘
ツテ居ルカト云フコトヲ常ニ調ベテ、ソレ
ヲ常ニ持ツテ來テ、市場ヲ通ジテ販賣業者
ニ渡スト云フヤウニヤラレナケレバ、不適
當デアルト私ハ考ヘルノデアリマスガ、折
角戰時立法トシテ此ノ法案ヲ出シテ置カレ
ナガラ、米ヲ集荷スル方面ニ於テ、斯ウ云
フ用意ニ缺ケテ居ル所ガアルト云フコトニ
付キマシテハ、私ハ深ク遺憾トセザルヲ得
ナイノデゴザイマスガ、政府ノ所見ハ如何
デゴザイマセウカ、承リタイト考ヘルノデ
ゴザイマス(拍手)
更ニ私ハ今マデノ質問者ガ此ノ點ニ付テ
觸レテ居ラナイノデアリマスガ、最モ重要
ナ、本法ニ於テ考ヘナケレバナラヌ問題ハ
米價ノ二重制ニ付テノ問題デアリマス、二
重價格制ノ問題デアリマス、今囘ノ法律ガ
通リマスルナラバ小賣商人ハ免許制ニナリ
やって、卸賣業者モ免許制ニナルノデアリマ
ス、免許制ニナリマシテ、モウ儲ケト云フモ
ノハ非常ニ減ツテ來ル、隨テ手數料商人ト化
スノデアリマス、今マデノ小賣商人デゴザイ
マシタナラバ、品物ヲ混ゼ集メテ、三等米ト
一等米トヲ混ゼタリ色々ノ操作ヲヤリマシ
テ、カラクリヲヤツテ、相當儲ケテ賣リマ
スカラ、消費者ノ方デ買フ際ニ、借リ買ヒ
ヲ致シマシテ、サウシテ掛倒シヲヤリマシ
テモ供給シタノデアリマス、所ガ今度手數
料主義ニナツテシマヒマスレバ、煙草屋ト
同ジデアル、煙草屋ガ皆ニ貸賣ヲシマシテ、
踏ミ倒サレタラ煙草屋ハ一遍ニ參ツテシマ
フカラ現金賣ニナルノデゴザイマス、米屋ガ全
部ウマ味ガナクナツタト云ウテ、現金賣ニナリ
マシタナラバ現金ヲ持タナイ者ハ、煙草ト米
ハ違フノデアルカラ、其ノ日カラ食フニ困ラザ
ルヲ得ナクナルト云フ點ニ、私ハ重大ナ本法ノ
用意ノ足ラザル點ガアルト考ヘルノデアリ
マス、隨テ斯ノ如ク致シマシテ、專賣ニ近
イヤウナ小賣商人ノ手數料主義ノ下ニ、多
クウマ味ヲ與ヘナイト云フコトニ致シマシ
テ、貸賣ヲサセナイヤウニ致シマシタナラ
が、一方ニ於テ米穀統制法ヲ改正スルコト
ニ依ツテ、貧乏ナ者、生活ニ困ル者等ニ於
キマシテハ、特ニ安イ價格ヲ以テ配リ、或
ハ貸賣ヲシ、或ハ只デ拂下ゲルト云フ途ヲ
開イテ置カズニ、貸賣ハ今日カラ罷リナラ
ヌト云フコトニナツタラ、恐ラク日本ニハ
飢餓鬪爭ガ起ル危險性ガ相當ニ方々ニアル
ト云フコトヲ吾々ハ考ヘマスガ、此ノ點ニ
付テ、農林省ノ曾テノ有馬案ニハ斯ノ如キ
用意ガアツタニ拘ラズ、今囘ソレヲ除カレ
マシタ所以ハドウデアルカ、有馬案ト申シ
マシテモ、先般日本米穀會社法トシテ發表
サレタ案デハナクシテ、昨年ノ八月頃政府
ガ米穀會社法トシテ考へマシタ最初ノ案ニ
ハ、此ノ點マデ考慮ガ拂ハレテ居ツタノデ
アリマスガ、此ノ點ニ付テノ政府ノ用意ヲ
ナゼ缺カレタカ、ドウヤツテ之ニ適應サレ
ルカト云フ點ニ付キマシテ、私ハ農林大臣
ノ御答辯ヲ得テ置キタイト考ヘルノデゴザ
イマス
次ニ私ガ問ヒタイ點ハ、此ノ問題ガ一番
ノ中心問題デアル、卽チ何ト言ツテモ戰時
農業政策ノ根本ハ增產政策、食糧ノ供給ヲ
確保スルコトガ第一デアル、萬一不足シタ
時ノ用意ニ今囘提出サレマシタ法案ガアル
ノデアリマスルカラシテ、何ト言ツタツテ
農林水產物ノ生產ヲ確保致シマスルコド
ガ、私ハ農業政策ノ是ハ中心問題デアルト
考ヘルノデゴザイマス、然ルニ日本ノ農村
三、農林大臣自カラモ言ハレテ居リマス
ルガ如ク、自然ノ儘ニ放任シテ置キマスル
ナラバ、段々ト減產ヲ來ス所ノ逆條件ガ野
ニモ山ニモ滿チテ居ルノデゴザイマス、卽
チ勞力ノ不足ハ單ニ應召者ダケノ勞力不足
デハナイ、日本ノ產業ガ輕工業カラ重工業
竝ニ化學工業ニ移リマシタ結果ハ「フレッ
シュ」ナ、新鮮ナル農村ノ中心勞働力ヲ永久
的ニ都會ニ奪ヒツツアリマシテ、農村ノ勞
働力不足ハ單ニ數ガ不足スルノミデハナク
シテ、質的ナ貧困ヲ來シテ居ルト云フコト
ヲ吾々ハ考ヘルノデゴザイマス(拍手)此ノ
勞力ノ大不足ト云フ逆條件ヲ克服シ、之ニ
加フルニ畜力ノ不足、畜力ノ不足ハ農業勞
力ヲ不足サセタダケデナク自給肥料ヲ不足
サセルノデアル、更ニ機械ノ供給ガ不十分
デアリ、肥料ノ供給ガ不十分デアル、有機
質ノ肥料ハ値段ガ非常ニ暴騰シテ居ルト云
フヤウナ、色々ナ逆ノ條件ガ揃ツテ居リマ
スルノニ加ヘマシテ、吉植君モ指摘サレマ
シタガ三年ノ間豐作ガ續キマシタ結果、日
本ノ地力ハ非常ニ掠奪サレテ居リマ厭カ
ラ、從來三年モ豐作ガ續イタ後ハ必ズ〓期
的ニ凶作ガ來ルト云フ危險ナル逆條件ガア
ル、此ノ歷史ノ示ス逆條件ガ揃ツテ居ルト
云フ時ニ、平年作ヲ目標トスルノデナクシ
テ、平年作ヨリモ米ニ於テ四百万石、小麥
ニ於テ百万石、其ノ他軍需、民需、輸出、
總テノ農產品ニ亙ツテ全而的ナ大增產ノ計
畫ヲ爲サシメヨウトスル農林省ノ意氣込ニ
對シテハ、國民全體ハ欣然之ニ協力スルニ
吝カデナイケレドモ、實際ニ於テ此ノ逆條
件ヲ克服シテ、サウシテ此ノ增產計畫ヲ實
現スルト云フコトニ付テハ、今農林省ノ考
ヘテ居ラレル政策ノミヲ以テ致シマシテ
ハ、私ハ實ニ困難デアルト云フコトヲ考
ヘザルヲ得ナイノデゴザイマス、此ノ點ニ
付テノ用意ガ十分デナイナラバ、私ハ日本
ノ、此ノ持タザル國ト致シマシテ、併シナ
ガラ食糧ダケハ心配ガナイト云フ强味ガ戰
爭ノ眞最中ニ駄目ニナルト云フコトニナリ
マスルナラバ、是ハ重大ナル問題デアル、
此ノ點ニ付テ私ハ農林省ノ持ツテ居ラレマ
ス其ノ增產政策ニ付キマシテハ、多クノ人
ガ之ニ觸レラレナカツタノデアリマスガ、
私ハ非常ナ危險性ヲ感ジテ居ルノデゴザイ
そう、一體農林省ハドウヤツテ此ノ逆條件
ノ下ニ於テ增產ヲ實現ナサレヨウトシテ居
ラレルノデアルカト申シマスナラバ、今米
ニ於テ四百万石、小麥ニ於テ百万石、其ノ
他全面的ナ增產デゴザイマスガ、而モ其ノ
全面的ナル增產ヲドウヤツテヤルカ、農林省
ノ發表サレマシタ其ノ增產案ニ依リマスル
ト云フト、第一ハ肥料其ノ他ノ生產資材ノ
配給、勞力ノ移動調整施設等ト相俟チテ、
技術的指導ニ依ツテ反當リ收量ノ增加ヲ圖
リ、本目的ヲ達成セントシテ居ラレルノデ
増
ゴザイマス、卽チ農林省ノ稅產ハドウヤツ
テヤルカト云ツテ聽キマスルト云フト、機
械ト肥料ヲ配給スル、其ノ上技術指導デ以
テ增產ヲ實現シヨウトシテ居ラレルノデア
リマス、農林省ノ今日マデノ增產ノ政策ハ、
常ニ技術指導ノ政策デアツテ、御承知ノ通
リ日本ノ農業政策ニ於キマシテハ農林省ガ
補助金ト助成金ヲ出サレマシテ、農事試驗
場、農會、縣ノ技術員、產業組合等ガ其ノ
指導ノ尖端部隊トナリマシテ、指導ニ依ツ
テ、補助金デ以テ日本ノ生產ヲ擧ゲテ來ラ
レタノガ今日マデノ農林省ノ傳統的政策デ
アツタノデゴザイマス、日本ノ農村ハ御承
知ノ通リ五反百姓、一町百姓、非常ナ零細
農ガ數百万人農村ニ雲集シテ居ルノデアリ
さく、此ノ微力ナル農民ガ指導ト助成ヲ俟
タズシテ增產ヲ爲スコトガ出來ナイコトハ、
是ハ當然ナ話デアリマス、隨テ私ハ農林省
ノ傳統ノ增產計畫、技術的指導ト、助成金
ニ依ル其ノ助長政策ト云フモノニ對シマシ
テハ、今日モマダ存在意義ガアルト考ヘル
ノデアリマスケレドモ、今日マデ此ノ指導
增產計畫ガ成功致シマシタモウ一ツノ魔力
ハ何デアルカト言ヘバ、價格引上政策デア
ツタノデアリマス、農林省ハ右手ニハ補助
金政策ヲ伴フ指導行政ヲ行ヒ、技術指導ヲ
行ヒ、左手デハ農產物ノ價格吊上政策ヲ行
ハレマシテ、、此ノ指導政策ト補助金政策ト
價格政府トニ依ツテ、日本ノ農業ヲ維持シ
テ來ラレタノデゴザイマス、然ルニ日本ノ
農業ハ、今日最早高價格政策ヲ維持スルコ
トガ出來ナイ段階ニ入ツタノデアル、平野
君モ申サレマシタガ、有馬前農林大臣ガ、農
村出身ノ委員ノ猛烈ナル反對アルニ拘ラズ、
昭和十四年度フ米穀ニ付キマシテ最高價格
ヲ据置カレタノデゴザイマス、私共ハ當然
ナ話デアルト思ヒマス、今日日本ノ國ニ於
キマシテ物價ヲ維持スルカ、然ラザレバ抑
制スルカ、之ヲ引下ゲナケレバナラヌ段階
ニ入ツテ居ル、物價ノ王デアル所ノ米ノ値
段ヲ、今日高米價政策ヲ以テ增產シヨウト
云フコトハ、日本ノ戰時下ノ要求ガ之ヲ許
サナイノデアルカラ、今マデ農林省ガ行ハ
レマシタ價格政策ト云フモノガ駄目ニナツ
タノデアリマス、高價格政策、現在ノ經濟
機構ニ於テ、儲カルト云フコト位生產ヲ刺
戦スル要素ハナイノデアリマス、價格ヲ吊
上ゲルト云フコトガ、卽チ生產增加ノ推進
力デアル、此ノ推進力ガ今日之ヲ使フコト
ガ出來ナイ、寧ロ値段ヲ引下ゲナケレバナ
ラナイト云フ條件ノ下ニ於テ勞力モ費用モ
何モ彼モ足ラナイ所デ、米ハ四百万石殖ヤ
セ、小麥ハ百万石殖ヤセト言ツタツテ、是
ダケノ事デ殖エルト考ヘラレマシタナラ
バ、私ハ農林省ノ心藏ハ「トーチカ」ヨリ
モモツト甚シク强大ナルモノデアルト考ヘ
ザルヲ得ナイノデアリマス(拍手)私共ハ之
ヲ支持シテ贊成ヲ致シマスケレドモ、今日
斯ノ如キ逆條件ノ下ニ於テ農業生產力ヲ全
面的ニ增產サレヨウト爲サルナラバ、價格政
策ガ伴ハナイト云フナラバ、別ノ工夫ヲ農林
省ニ於テオヤリニナルニアラズンバ畫ニ
描イタ牡丹餅、官僚ガ机上ニ於テ考ヘマシ
タ「ペーパー·プラン」トシテハ、麻カラ、小
麥カラ、米カラ全面的增產ハ紙ノ上ニ出來
ルカモ知レヌガ、今年ノ秋ニ於テハ日本ノ
國ハ全面的減產ニ脅カサレナケレバナラヌ
ト云フ危險性ガアルト云フコトヲ、農林大臣
ハ深ク御考ニナラナケレバナラヌト思フノ
デアリマス(拍手)唯吾々ハ單ニ難カシイ、難
カシイト言ツテ脅カスダケデハナイ、吾々
ニハ吾々ノ政策ガアルカラ是カラ後デ之ヲ
オヤリニナツタラドウカト云フコトヲ申上
ゲタイノデアリマスケレドモ、要スルニ今
日農林省ガ傳統的ニヤツテ居ラレマス技術
指導ダケデ增產セラレヤウト云フコトハ、
實ニ無理デアリマス、サウデハナクシテ、
此ノ增產ヲヤル爲ニハ今日ヨリモ値段ヲ引
下ゲテモ農民モ引合フシ、消費者モ喜ブト云
フ-農業機構ノ不合理性ニ對シマシテ其
ノ根本ニ向ツテ「メス」ヲ入レル革新政策ヲ
行ハナケレバ、增產計晝ハ實現サレナイト
云フコトヲ私ハ考ヘルノデアリマス(拍手)
然ラバ農業ニ於ケル革新政策トハ何デア
ルカ、私ハ日本ノ農業ハ、今囘ノ事變ヲ契
機ト致シマシテ、其ノ基礎ニ於テ變革ヲ來
シタト考ヘテ居ルノデゴザイマス、御承知
ノ通リ我國農業ノ今日マデノ特徵ハ、土地
飢饉ト云フ言葉デ呼バレテ居リマスガ如
ク、非常ニ狹小ナル耕地ヲ耕シマシテ、ソ
コニ過剩勞力ガウヨ〓〓トシテ居ツタト云
フノガ今日マデノ日本ノ農業ノ特質ナノデ
アリマス、土地ガ足リナクテ人ガ多過ギル
ト云フコトガ、今日マデ日本ノ農業ヲ規定
シテ居ツタ所ノ性質デアツタノデアリマス、
然ルニ今日ハ人ガ足ラナイト云フ性質ニ變
ツテ來タ、今マデハ土地ヲ尊重スルダケデ、
勞力ヲ只ニ見タ-只ニ見ナクトモ非常ニ
安ク見タノデアル、隨テ或ル耕地ヲ耕シマ
ス上ニ、改良農具ヲ入レマスナラバ確ニ增
產ガ出來ルト考ヘテ見テモ、改良農具ヲ入レ
ル代リニ人間ノ勞力、血ト汗ヲ切リ刻ムコ
ニ依ツテ、機械ヲ入レズニ作ツテ居ツタ、
汗ト脂ノ農業ガ今日マデノ日本ノ農業デア
ツクト私ハ考ヘテ居ルノデゴザイマス、然
ルニ事變ヲ契機ト致シマシテ、今マデノ如
キ「單位面積ノ收穫ヲ殖ヤス」コトノミヲ考
ヘル政策カラ、「單位勞働ニ對スル生產力ヲ
如何ニシテ上ゲルカ」ト云フ段階ニ入ツテ
來テ居ルノデアリマス、卽チ人ノ勞力ガ今
マデハ安ク使ハレテ居ツタノヲ、相當ニ高
イ勞力ヲ使フ爲ニハ「單位勞働力當リノ生
產力」ヲ如何ニシテ引上ゲルカト云フコト
ガ、今日日本農業ニ與ヘラレテ居ル一ツノ
條件ナノデアリマス、之ヲヤリマス爲ニハ、
土地制度ヲ改革シナケレバ出來ナイノデア
リマス、土地制度ヲ改革シテ單位勞働力當
リノ生產力ヲ引上ゲ、土地ノ生產力ヲ引上
ゲ、更ニ農業內部ニ持ツテ居ル不合理性カ
ラ來ル所ノ高イ生產費ノ切下ゲヲ斷乎トシ
テヤラナケレバ、增產計畫ガ行ハレナイト
云フ段階ニ入ツテ居ルト私ハ考ヘル者デゴ
ザイマス、私ハ此ノ點ニ付テ、土地ノ國家
管理ヲ政府ハ今日卽行スル意思ハナイカト
云フコトヲ承リタイト考ヘルノデアリマス、
土地ノ國家管理トハ一體何デアルカ、電力
國家管理法ニ現ハレタ所ノ理念ト同ジデゴ
ザイマス、今日日本ノ土地制度ガドウナツ
テ居ルカト申シマスナラバ-吾々ハ土地
ノ國有ハ今日間ニ合ハナイト考ヘル、土地
制度ノ改革ノ爲ニハ二ツノ案ガ今日マデ用
意サレテ居ルノデアリマス、一ツハ所謂社
會主義ノ陣營ニ唱ヘラレテ居ル所ノ土地ノ
國有政策デアリマス、モウ一ツハ全耕地ノ
自作農化政策デアリマス、此ノ二ツノ政策
ハ、土地制度改革ノ政策ト致シマシテハ二
ツノ大キナ政策デアルニ違ヒナイケレド
モ、今日戰時ノ急場ニ間ニ合セマス爲ニハ、
此ノ二ツノ政策トモ急ノ需メニ應ズルコト
ガ出來ナイノデアリマス、是ニ於テ土地ノ所
有權ハ其ノ儘ニスルガ陛下カラ預リマシ
タ日本ノ土地ヲ本當ニ役ニ立ツヤウニ、生
產力ヲ上ゲル爲ニ個人ノ所有權ノ濫用ヲ防
イデ、國家ガ公益的ニ之ヲ管理スルノ制度
ヲ作ルコトガ、今日ノ段階ニ於ケル增產政
策ノ第一歩ナリト私ハ考ヘルノデアリマス
〔「所有權ノ否認カ、怪シカラヌ」ト呼
ヒ其ノ他發言スル者多シ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=24
-
025・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 靜肅ニ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=25
-
026・三宅正一
○三宅正一君(續) 私ハ土地ノ國家管理ノ
問題ニ付キマシテ、五六ノ問題ヲ指摘致シ
マシテ農林大臣ノ所見ヲ伺ヒタイト思フノ
デゴザイマス、第一ハ我國ノ耕地ハ一戶當
リノ耕作面積ガ非常ニ狹小デアリマス、五
反百姓、三反百姓ハ日本ノ農家ノ中ニ於キ
マシテ相當多數ヲ占メテ居ルノデゴザイマ
スケレドモ、此ノ五反百姓、三反百姓ノ土
地ガ又飛ビ〓〓ニ離レテ居リマシテ、村ノ
內外ニ亙リマシテ非常ニ飛ビ〓〓ニ離レテ
作ラサレテ居ルノデアリマス、全國ノ租稅
ヲ拂ツテ居リマス有租地ガ五百八十万町歩
アルノデゴザイマスガ、ソレガ筆數ニ於キ
マシテ九千四百万筆ニナツテ居ルノデアリ
さく、一筆ノ面積ガ僅カニ六畝デゴザイマ
ス、隨テ僅カ五反位シカ作ツテ居リマセヌ
所ノ農家ガ、ソレガ平均ヲ致シマスルト、
村ノ内外ニ亙ツテ猫ノ額ノヤウナ土地ヲ十
六筆ニ分ケテ耕作シテ居ルノデアリマス、
ダカラシテ朝ハ半里先ノ向フノ村ニ行ツテ
猫ノ額ノヤウナ所ヲ耕シ、夕方ニハ又向フ
ノ部落ニ行ツテ猫ノ額ノヤウナ所ヲ耕ス、
サウ云フ不經濟ノコトヲヤツテ居ルノデゴ
ザイマシテ、是ガ卽チ農業ノ機械化ヲ阻止
シテ參リマシタ所ノ原因ナノデゴザイマス、
日本ノ農業ノ機械化ヲヤラナケレバナラヌ
共同化ヲヤラナケレバイカヌト云フ叫ビハ
數十年前カラ現ハレテ居ルケレドモ、コン
ナ小サナ土地ヲ飛ビ〓〓ニ作ツテ居ツテ何
ガ機械化デアル、卽チ勞力拂底ノ爲ニ機械
化ヲヤリマス爲ニハ耕地ノ交換分合ヲヤ
リマスコトガ極メテ適切ナコトデアルト思
フノデアリマス、今日若シ耕地ヲ交換分
合シテ一所ニ纏メマスナラバ、之ニ依ツテ
平場地帶ニ於テハ一反步ニ一日半ノ勞力ヲ
儉約出來ルト言ツテ居ルノデアリマス、山
間地帶ニ於キマシテハ、耕地ノ交換分合ヲ
斷行スルコトニ依ツテ、一反ニ二日、三日ノ
勞力ヲ儉約スルコトガ出來ルト言ツテ居ル
ノデゴザイマス、全國ニ六百万町步ノ耕地
ガアルノデアリマス、若シ之ヲ完全ニ交換
分合致シマシタコトニ依ツテ、假ニ一反ニ
付テ一日ノ勞力ガ儉約出來ルト致シマスナ
ラバ、六千万日ノ勞力ノ儉約ガ此ノ一ツノ
政策ニ依ツテ出來ルト云フコトヲ考ヘマス
時ニ於テ、是ハ稅金ノ免稅ニ依ツテ奬勵ス
ル必要モアル、政府ハ現ニ今囘ノ增稅案ニ
於キマシテ、土地ノ交換分合ヲヤル際ニ於
ケル登錄稅ヲ免除スルト云フ旨ノ規定ヲシ
テ居ラレマスガ、登錄稅ノ免除ダケデハ足
ラナイノデアリマス、不動產取得稅ノ免除
ヲモヤラナケレバナラナイノデゴザイマシ
テ、不動產取得稅ノ免除ニ付テ如何ナル用
意ガアルカト云フコトニ付キマシテ、私ハ
農林大臣ニ伺ヒタイノデアリマス、而モ單
ニ免稅ヲヤツテ之ヲ奬勵スルダケデハナシ
ニ、積極的ニ耕地ノ交換分合ヲ勸メマス爲
三、國家公益上必要ガアル場合ニハ、耕
地ノ交換分合ヲ命ジ得ルト云フ土地國家管
理ノ法律ヲ、單行法トシテ出スコトガ必要
デアルト云フコトヲ、私ハ第一ニ申上ゲタ
イノデアリマス、所有權ノ否認デモ何デモ
ゴザイマセヌカラシテ、此ノ點ニ付テ若シ
誤解ガアリマスルナラバ、能ク御聽ヲ願ヒ
タイト考ヘルノデアリマス
第二ニ私ハ日本ノ土地制度ニ於テ最モ大
キナ生產力ヲ阻碍シテ居リマスル所ノ原因
ハ、何ト申シマシテモ平野君ガ申サレマシ
タ通リ、高額小作料ト地價ガ高過ギルト云
フ問題ナノデゴザイマス、是モ實例ニ付テ
申上ゲマスルナラバ、統計ニ依リマスレバ
白作農ノ農業用財產中、七割七分六厘ハ土
地財產デアリマス、隨テ農具デアルトカ、
家畜デアルトカニ使ヒ得マスル所ノ財產ト
云フモノハ、僅ニ二割二分四厘シカナイノ
デアリマス、斯ノ如ク致シマシテ土地ガ高
イ爲ニ自作農ニナラウト致シマスレバ、
白作農ハ借金ヲシナケレバナラナイ、斯ク
シテ借金ヲ致シマシタ時ニ、自作農創定ノ
借金デ苦シムカ、然ラザレバ高利貸ノ借金
デ苦シムト云フコトニナツテ、土地ヲ買フ
ダケニ全力ヲ擧ゲマシテ、農事改良ノ爲ニ
注込ム費用ト云フモノハ殆ドナイ、是ガ非
常ニ生產力ヲ阻碍シテ居リマスルコトハ申
スマデモナイ所ナノデゴザイマス、斯ノ如ク
致シマシテ自作農ハ資本ノ大部分ヲ土地購
入ニ奪ハレ、常ニ災害ニ脅カサレ、負債ニ
惱マサレテ、生產力增大ノ爲ニ、經營改善ノ
爲ニ新シキ投資ヲ行フ餘地ヲ持タナイト云
フノガ、日本農業ニ於ケル特質ナノデゴザ
イマス、小作農ニ付テ申上ゲマスルナラバ、
帝國農會ノ調ニ依リマシテモ、小作農ノ農
業經營費ノ五割五分ガ、小作料デアリマシ
テ、二割弱ガ肥料デアリマス、五分ガ飼料
デアリマス、五割五分ノ小作料ヲ取ラレテ
居ツテ、而モ實際耕作スル反別ハ一町ニ足
ラナイト云フ農民デハ、米ヲ作リナガラ米
ヲ食フコトモ出來ナイト云フ狀態ノ下ニ陷
レラレルノハ當然デゴザイマス、況ヤ改良
農具ヲ買ツタリ、新シキ農業ノ知識ヲ持込
ンダリスルコトノ出來ナイコトハ當然デア
リマシテ、農業生產費ヲ下ゲマシテ米ヲ安
クシナガラ農民モ引合ヒ、一般モ助カルト
云フ方策ヲ執リマス爲ニハ、何ト言ツテモ
今日此ノ小作料ヲモツト下ゲ、土地ノ値段
ヲモツト下ゲルコトガ、根本條件デアルコ
トハ申スマデモナイ所デゴザイマス、而モ
政府ハ國策トシテ自作農創定政策ヲヤツテ
居ラレマシテ、其ノ金ヲ相當豫算トシテ要
求セラレテ居ルノデアリマスケレドモ、斯
ノ如ク土地ガ上ツテ行ツタノデハ、自作農
創定ハ出來マセヌ、今日勸業銀行ノ調査ニ
依リマシテモ、土地ノ値段ハ又上ツテ來テ
居ルノデアリマス、小作料モ上ツテ來テ居
ル、十三年ニ入リマシテ土地ノ値段モ上リ、
小作料モ上ツテ居ル、昭和七年以來土地ノ
値段ハズツト上ツテ、一遍モ下ツタコトハ
ナイ、小作料モ最近徐々ナガラズツト上ツ
テ居ルト云フコトハ、益、、農村內部ニ於テ
農業改革ノ必要ヲ痛感セシムルモノデアリ
マシテ、此ノ痛イ所ノ病根ニ觸レルコトヲ
避ケテ、補助金デ奬勵ダケシテ胡麻化サウ
ト云フ、サウ云フ根性ヲ以テ致シマシテハ、
今日ノ重大ナル日本農業ハ斷ジテ增產政策
ヲ實現スルコトハ出來ナイト思フノデアリ
マス、今日ハ御承知ノ通リ最早自由主義ノ經
濟ハ去ツタノデアリマス、特ニ弱イ部面デア
ル農業ニアリマシテハ、バラ〓〓デ米ヲ賣
ツテ居ツタノデハ、迚モ米屋ニヤラレテイ
カナイト云フコトデ、政府ハ八億數千万圓
ノ金ヲ取ツテ米穀自治管理法ヲ作リ、米穀
綺制法ヲ作リマシテ、チヤント米ノ値段ヲ
生產費ト生計費デ保護シテ居ラレル、肥料
會社ガ構暴シテハイケナイカラト云フノデ
肥料統制ノ法律ヲ作ツテ、肥料ガ高クナラ
ヌヤウニ農民ヲ保護シテ居ラレル、旣ニ農
村全體ニ對シテ自由主義經濟ノ原則ヲ抛棄
シテ、米穀政策ニ於テ農民ヲ價格政策デ保
護シ、肥料政策デ保護シテ居ルナラバ、農
村內部ニ於ケル土地ノ關係ダケヲ自由放任
ニ委セテ置イテ、小作料ハ上リ放題、地價
ハ上リ放題トシテ置クト云フコトハ、地主
ノ爲ニハ國家ハ骨ヲ折ルケレドモ、小作人
ノ爲ニハ勝手ニ抛ツテ置クト云フ感ジヲ農
民ニ持タレテモ、私ハ已ムヲ得ナイ今日マ
デノ行キ方デアツタト考ヘザルヲ得ナイノ
デアリマス、私ハ斯ウ云フヤウナ點ニ付キ
マシテ、政府ガ土地ノ國家管理ヲ斷行サレ
マスルコトニ依ツテ、米穀ノ値段ヲ公定サ
レマスルト同ジヤウニ、小作料ニ付テモ、
地價ニ付キマシテモ、是ガ地主ニモ小作ニ
モ一番好イコトデアリ、何ヨリモカニヨリ
モ生產力增大ノ爲ニハ、此ノ程度ニ小作料
ヲ抑ヘナケレバイケナイト云フ標準ヲ御作
リニナリマシテ、之ヲ以テ小作爭議等ガ起
キナクトモ、農民モ其ノ堵ニ安ンジテ生產
力ヲ增大シ得ル途ノ開カレマスルコトハ、
私ハ經濟ノ事ニ詳シイ櫻內農林大臣ガ、本
當ニ自分ノ立場ヲ離レテ御考ニナリマスル
ナラバ、當リ前ノ話デアツテ、斯ウ云フ聲
ガ議會ニ聞エナイ所ニ議會轉落ノ姿ガアル
ト云フコトヲ、能ク御考ヲ願ヒタイト考ヘ
ルノデアリマス、此ノ點ニ付テハ單ニ土地
ノ問題ダケデハナイ、山林ニ付テモ其ノ通
リデゴザイマス、御承知ノ通リ炭ノ値段ガ
上ツテハナラヌト云ツテ、木炭ノ最高價格
ヲ御決メニナツタ、然ルニ山ノ原木ハ二倍
ニナリ三倍ニナツタ、炭ノ値段ハ抑ヘラレテ
山ノ木ノ値ダケハ三倍ニナツタラ一體誰ガ損
ヲスル、間デ作リマス炭燒ト配給業者ガ損ヲスル
ノデアルガ、ソレ等ハ弱小連中デアルカラ抛ツ
テ置イテ宜シイト云フ、コンナ皇道主義ガア
リ全體主義ガアルナラバ、私ハ開キ直ツテ御
目ニ懸リタイト思フノデアリマス、斯ウ云フ
風ニ山林ノ問題ニ付キマシテモ土地管理ヲ
行ヒマシテ、國家ガ山林ノ木ノ値段ニ付テ
モ、炭ノ値段ニ付テモ、勞働賃銀ニ付テモ
各〓正シキ所ニ之ヲ統制スルト云フ本當ノ
公平性ヲ徹底サレマスル爲ニ、國家管理ガ
必要ナリト考ヘルノデゴザイマス、而モ私
ハ更ニ此ノ點ニ付テ御聽シタイノデゴザイ
マスルガ、今日貧農ハ牧草地ヲ持タナイノ
デアリマス、政府ハ馬ヲ飼へ〓〓ト奬メマ
スルケレドモ、草刈場ヲ持タナイ貧農ニ
ハ馬ハ飼ヘナイノデアリマス、自給肥料ヲ
作ル爲ニモ馬ヲ飼フ爲ニモ、部落ニハ貧農
ト雖モ入レル何箇所カノ草刈場ヲ開放シテ
ヤルコトガ、馬ノ增產デアリ、農民生活ノ
安定デアルノデアリマス、然ルニ今日所有
權ガ偏ツテ、今マデ入會ノ慣例デ殘ツテ居
ツタモノスラ取ラレテシマツテ、農民ニ草
刈場ノナイト云フ狀態デアル、政府ハ土地
ノ國家管理ヲスルコトニ依ツテ必要ナル草
刈場ヲ開放シ、馬ヲ飼ハセ肥料ヲ作ラセル
途ヲ講ゼラレル必要ガアルト存ズルノデア
リマス
更ニ私ハ日本農業ノ土地問題ニ絡ミマシ
テ、日本農業ノ重大ナル危機ニ付テ申上ゲ
タイト考ヘルノデアリマス、御承知ノ通リ
日本ノ農業ハ今日マデト雖モ農林省ノ統計
ニ現ハレテ居リマスル如ク、兼業農家ガ多
カツタノデアリマス、副業ニヤツテ居ル所
ノ兼業農家デアリマス、然ルニ今日マデ日
本ノ國ニ於テ三割ノ兼業農家ガアツタノデ
ゴザイマスルガ、最近軍需工業ノ殷盛ニ伴
ヒマシテ、親父ハ工場ニ出テ働キ、中心勞
働力ハ工場ニ出テ働キマシテ、家ニ殘ツタ
者ハ僅カノ土地ヲ細君ト年寄トデ耕シマシ
テ、土地ノ生產力ヲ考ヘルノデハナイ、飯
米サヘ入レバ宜シイ、野菜サヘ穫レレバ宜
シイト云フ農業副業化ノ傾向ガ、非常ニ深
々
刻ニナツテ參リマシタコトハ、全面的增產
計畫ノ見地ニ立ツテ考ヘテ、洵ニ遺憾ノ次
第デアルト考ヘザルヲ得ナイノデアリマス、
卽チ親父ガ中心ニナツテ家ノ土地ヲ耕スト
云フコトデナケシバ新シイ肥料ヲ入レル
何
コトモ出來ナイ、Phoney斯ウ云フ
副業農家ガ殖エテ來ルト云フコトハ、日本
農業ノ生產力ガ衰ヘルト云フコトデアルノ
デゴザイマス、隨テ私ハ出來ルダケ日本ノ
國ニ於テ三反百姓、五反百姓ヲ減サナケレ
バイカナイト思フノデアリマス、一方ニ於
テハ小作料ヲ下ゲテ引合フヤウニシテヤル、
一方ニ於キマシテハ三反百姓、五反百姓ヲ
一町五反ナリ二町ト云フヤウナ適正規模ノ
農家ニ改メテ、副業デ百姓ヲヤルト云フ者
ヲ少クスルヤウニシナケレバ、日本農業ハ
非常ナル危機ニ當面スルト云フコトヲ考ヘ
ルノデゴザイマスルガ、斯ウ云フ點ハ卽チ
農業ノ生產ノ計畫化ト共ニ、土地ニ付テノ
計畫化ヲ考ヘラレマシテ、滿洲ニ移民ガ出
ルナラバ、其ノ移民ヲ出スノハ耕地狹小ノ
地帶カラ移民ヲ出スト云フヤウナ方途ニ依
リマシテ、政府ハ適正ナル規模ノ農家ヲ作
ラシテ、サウシテ農民ニ一定ノ土地ヲ保障
スル、サウシテ副業農家ヲ出來ルダケ減ス
途ヲ講ゼラレマスコトハ、一ハ人心ヲ安
定セシムル上ニ於テモ、一ハ農業生產力ヲ
增進スル上ニ於テモ必要ナリト考ヘルノデ
ゴザイマスルガ、之ヲヤリマス上ニ於テモ、
政府ガ公益ノ爲ニハ土地ノ所有權ニ付テ命
令ヲ發シテ、公ノ利益ノ爲ニ命令ヲ發シ得
ル土地國家管理ノ法制ヲ伴ハザレバ、私ハ
出來ナイト考ヘルノデゴザイマシテ、此ノ
點ニ付テモ私ハ土地國家管理ヲオヤリニナ
ル必要ガアルト考ヘテ居ルノデアリマス
更ニ私ガ考ヘナケレバナラヌト思ヒマスル
點ハ、農具ノ共同利用ノ問題デゴザイマス、
今日マデ日本ノ國ニ於テ農業ノ機械化ノ行
ハレナカツタノハドウ云フ譯デアルカ、土地
ガバラ〓〓デアツタカラデアル、所有權ノ關
係ニ於テモ、耕作ノ關係ニ於テモ土地ガバ
ラバラデアツタカラデアリマス、土地制度ノ
不合理、土地集中ノ困難、土地改良ノ困難、
耕作權ノ不安等ガ今日マデ農業ノ共同化ヲ
阻碍シテ參ツタノデアリマス、隨テ現在改良農
具ヲ利用シテ居リマスル率ハ非常ニ少イノ
デアリマス、、僅カニ改良農具ヲ持ツテ居
リマスノハ金持ノ百姓、富農デアリマスト
カ、地主デアリマストカ、商人ガ持ツテ居
ルノデアリマシテ、自分デ使ツテ、アトハ
之ヲ利用料ヲ取リマシテ賃貸サセテ居ルノ
デアリマス、改良農具ノ共同利用ト云フヤ
ウナコトハ非常ニ少イノデアリマスルガ、
私ハ政府ハ一面ニ於キマシテ鐵其ノ他ノ配
給ヲ完全ニスルコトニ依ツテ、農民ニ農具
ヲ保障スルト共ニ、鐵其ノ他ノ資材ノ不足
致シマシタ際ニ於テ、此ノ際農具ノ國勢調
査ヲ斷行サレマシテ、卽チ農具ノ「センサ
ス」ヲ斷行サレマシテ、サウシテ何處ニ改良
農具ガドレダケアルカト云フコトヲ隈ナク
調ベラレマシテ、之ヲ共同ノ利用ノ爲ニ提
供セラレルコトニ依ツテ農業ノ生產力ヲ擧
ゲルト共ニ、一方ニ於キマシテハ國家ガ鐵
ヲ浪費スルコトヲ防グヤウニナサイマスコ
トガ最モ適切ナルコトト考ヘルノデアリマ
シテ、土地制度ノ改革ニ絡ンデ、私ハ農具ノ
國勢調査ヲ斷行サレ、之ヲ共同的ニ利用サセ
ルノ途ヲ考ヘラレテ居ルカドウカト云フコト
ニ付テ御伺ヲシタイト思フノデゴザイマス
更ニ地主制度ノ不合理ガ日本ノ農業ノ增
產ノ上ニ非常ナル暗影ヲ與ヘテ居リマ
スル一ツハ、所謂今日ノ小作關係カラ來マ
ス所ノ品種ノ關係デアリマス、御承知ノ通
リ日本ノ農業ハ、第一ノ特徵ハ非常ニ小作
料ガ高イト云フコトデアル、第二ノ特徴ハ
物納小作料デアルト云フコトデアリマス、
隨テ地主ハ米ヲ取リマスノデ、米ノ値段ガ
安イカ高イカト云フコトハ、地主ノ收入ニ
重大ナル關係ガアル、實農民ノ收入ハ飯米
ヲ自分デ食フノデアリマスカラ大シタ關係
ハナイケレドモ、地主ハ賣ルダケデアリマ
スカラ、非常ナ關係ガアルノデアリマス、
隨テ品種ヲ選定致シマス場合ニ於テ、例へ
バ山間地デ以テ、日照日數ガ足ラナク、冷
タイ水ガ出ルト云フヤウナ處ニハ愛國種
ノ如キ品種ハ劣等デアルケレドモ、非常ニ
强イ品種ヲ植エサセナケレバイケナイノデ
アリマス、所ガ愛國種ヲ一石小作料ヲ取ツ
タツテ、値段ガ安イ、農林一號ヲ作ラシテ
取ルナラバ、一石ニ付テ二圓三圓モ違フ、
ソコデ今日ノ不合理ナ小作制度ハ、奬勵米、
罰米ノ制度ニ依リマシテ、其ノ土地デ穫レ
ナイ奬勵品種ヲ植エサセマスル結果、山間
地帶等ニ於テハ違作ガ非常ニ多イノデアリ
やっ、隨テ私ハ斯ノ如キコトガナイヤウニ
一方米穀ノ檢査ヲ國營ニ致シマスルト共ニ、
一方ニ於キマシテハ、品種ノ奬勵ハ市場價
値-米トシテ賣ツテ儲カルカ儲カラヌカ
ト云フコトデナシニ、其ノ土地ニ適シタ多
牧穫ヲ目標ニ致シマシタ適地多收穫主義ニ
轉換サセルコトガ必要デアルト考ヘルノデ
アリマス(拍手)是亦土地ノ國家管理ニ伴ヒ
マシテ、其處ニ作リマス品種等ニ付テモ、
農事試驗場、農會等ガ公益ノ見地ニ立ツテ
此處ニハ之ヲ作ラセルガ宜シイト云フ指導
ト管理ヲ爲サイマスコトハ、非常時ノ狀態
ノ下ニ於テ極メテ適切ナリト考ヘルノデア
リマス、斯ノ如キ諸點ヲ考ヘマスル時ニ於
テ、土地國有ハ問題ニナラヌ、今日ノ急ニ
間ニ合ハヌ、全部ノ農民ヲ自作農ニスル
ト云フコトモ間ニ合ハナイトスルナラバ、
ドウシテモ土地國家管理ノ原則ニ依リマシ
テ、陛下ヨリ御預リシマシタ日本ノ土地
ヲ、生產力擴充、公益ノ目的ノ爲ニ使ハセル
コトガ、極メテ必要デアルト考ヘルノデア
リマス
更ニ私ハ御伺致シタイ點ハ是モ土地ノ國
家管理ト關係ヲ致シマスケレドモ、今日農
林省ノ計畫ニ依レバ、四百万石ノ增產ト云
フモノハ本年ノコトデアル、ダカラ耕地ヲ
擴ゲルコトハ間ニ合ハナイカラ、反當
リノ收穫ヲ殖ヤサウト云フ政策ヲ採ツテ
居ラレル、洵ニ御尤ノコトデアルト思
ヒマス、併シナガラ一面耕地ハ殖エテ
居ラナイデ、軍需工業ノ爲ニ却テ潰
レテ居ル現狀デアル、アタラ美田ガ
軍需工場ノ爲ニ潰サレテシマツテ、其處力
ラ毒水、汚水ガ流レルコトニ依ツテ農業生
產力ガ非常ニ阻碍サレテ居ル、今日軍需工
業ガ行キマス狙ヒ所ハ、工業立地ノ見地ニ
立ツテ、水ノ宜シイ土地ノ安イ、勞働力ノ安
イ所ヘドツト軍需工業ガ流レテ行ツテ居ル、
ソコニ農業立地ノ見地カラ致シマス所ノ土
地ノ保護ニ對スル政策ガ缺ケテ居リマスル
ガ故ニ、山ノ上ニ造ツテモ宜シイ軍需工業
ヲ、或ハ安イ原野ガ其處ニ在ルニ拘ラズ、
此ノ山、原野ヲ使ハナイデ、美田ヲ潰シテ
居ルト云フガ如キコトニ對シテハ、生產力
確保ト土地愛護ノ見地カラ、政府ハ土地ノ
國家管理ヲ致シマスルト共ニ、工場ニ依ツ
テ耕地ガ害ヲ被ラナイヤウニ、同ジ工場ヲ
造ルトシテモ、良イ田畑ヲ潰サナイヤウ
ニ、其ノ他ノ原野ヲ使ハセルヤウニ公益的
管理ヲ行フコトガ極メテ適切ナリト考ヘル
ノデアリマスガ、之ニ對スル農林大臣ノ御
考ハ如何デアルカ伺ヒタイノデアリマス、
最近農村ニ於キマシテハ、工場ノ汚毒水問
題ニ依ツテ、非常ナ害ヲ被ツテ居ル現狀デ
アリマス、吾々ハ今日ノ時局ニ鑑ミマシテ
工場ノ出來ルコトハ歡迎致シマス、致シマ
スケレドモ、ソレニ依ツテ、工場ノ汚毒水
ノ爲ニ農業ガ困ルト云フコトデハ甚ダ困ル
ノデアリマスカラ、此ノ點ニ付キマシテ農
林省ハ一ツ農地ヲ保護スル見地ニ立ツテ、
特別立法ヲ御考ニナル必要ガアルト考ヘル
ガ、之ニ對スル農相ノ御意見ヲ承リタイト
思フノデアリマス
要スルニ今申シマシタコトハ主トシテ土
地ノ國家管理ヲ中心ニシテ、今日ノ不合理
ナル小作料ヲ引下ゲ、耕地ノ交換分合ヲヤ
リ、農具ノ共同利用ヲヤリ、斯ノ如キコト
ニ依ツテ農產物ノ生產費ヲ引下ゲ、生產力
ヲ引上ゲ、土地ノ生產力ト勞働ノ生產力ヲ
引下ゲルコトニ依ツテ、農業內部ニ於ケル
生產費ノ切下ゲヲ行ハナケレバナラヌノデ
アルガ、更ニ一方ニ於テ外部ノ條件ニ左右
サレマス所ノ「シエーレ」、農產物ト其ノ他
ノ品物トノ關係ニ於ケル「シエーレ」ヲ防グ
途ヲ講ゼラレナケレバ、米ノ値段ヲ安クシ
テ增產ヲスルト云フコトハ絕對ニ行ハレナ
イノデアリマス、生產物ノ「シエール」ヲ防
グ方策ニ付テ、一體農林大臣及ビ商工大臣
ハ如何ナル御用意ヲ御持チニナツテ居ルカ
ヲ私ハ承リタイノデゴザイマス、昨昭和十
二年-度ノ春一〇〇デアリマシタ農產物-
是ハ米、麥、雞等デアリマス食用農產物ガ
昭和十二年、事變ノ始マル前ニ一〇〇デア
リマシタモノガ、本年ノ一月「ダイヤモン
き及ビ三菱經濟調査所ノ調査ニ依レバ、
一〇〇デアツタモノガ一〇六ニ値段ガ上ツ
テ居ルノデアリマス、六ダケ上ツテ居ル、
然ルニ農民ガ必需品トシテ買フ所ノ肥料デ
アルトカ、網デアルトカ、護謨靴デアルト
カ云フヤウナ必需品ハ昭和十二年度ニ
〇〇デアツタモノガ、十四年一月ニハ一五
九、七ニナツテ居ルノデアリマス、農產物
ノ値上リハ僅ニ六デアツタ、然ルニ農民ノ
買フ肥料其ノ他ノ必需品ノ値上リハ五九·
七デアツタ、斯ウ云フ狀態ヲ放置シテ置イ
テ、米ノ價格ヲ上ゲテヤルゾト言ツテ增產
ヲ勸メラレタツテ、私ハ絕對ニ增產ハ行ハ
レナイト思フノデアリマス、農民側ニ於キ
マシテ自ラ自己改革ヲ行ヒマシテ、小作料
ヲ下ゲ、土地制度ヲ改革シテ自ラノ不合理
ヲ切開シテ出テ來ルト云フ元氣ヲ持ツナラ
バ、農民ノ外ノ條件ニ對シテハ、農林大臣
ハ農民ノ先頭ニ起ツ決心ヲ以テ、商工大臣
ハ我國產業ノ健全ナル發達ノ推進力トナル
見地ニ立ツテ、其ノ障碍ヲ防ガレル途ヲ
講ゼラレマスコトハ當然ダト思フノデアリ
マスガ、此ノ點ニ付テ一體商工農林兩大臣
ハ如何ナル具體案ヲ持タレテ居ルカ、其ノ
具體策ニ付テ御伺ヲ致シタイト考ヘルノデ
ゴザイマス、私ハ農業内部ニ於ケル生產費
ノ引下ヲ斷行致シマスト共ニ、農業外部ニ
於ケル生產費引下ヲ斷行シナケレバイケナ
イト思フ、ソレニ付テハ、第一ハ肥料價格
ノ引下デアリマス、獨逸ニ於キマシテハ、
昭和十三年一月ニ遡リマシテ、硫安其ノ他
ノ化學肥料ニ付テ三割乃至二割ニ亙リマス
ル所ノ値下ヲ斷行シテ居ル、ソレハ生產計
畫化ニ依ル所ノ、日本ノ農林省ガ計畫シタ
ト同ジモノデアル、增產計畫ヲ統制的ニ行
ヒマス爲ニ、一方ニ於テ其ノ生產費ノ重要
ナル部分ヲ占メル肥料ニ付テ、一擧ニ三割
以上ノ値下ヲ斷行シタノデゴザイマスル
ガ、私ハ今日米ノ値段、農業品ノ値段ヲ上
ゲズニ豐富ニ生產サセル爲ニハ、此ノ肥料
價格ノ引下ヲ御考ニナルコトハ、極メテ適
當デアルト考ヘルノデアリマス、單ニ肥料
價格ノ引下ヲ御考ニナルダケデナシニ、肥
料ノ割當制ニ付キマシテモ、今日農林省デ
御決定ニナツテ居ルダケノ計畫ヲ以テシ
テハ、私ハ非常ナル違算ヲ來スト思フノデ
アリマス、農村ヲ御調ベニナルト分リマス
ガ、農村ニ於キマシテハ御承知ノ通リ三分
ノ一ハ貧農ノ耕地デアリマス、此ノ貧農ノ
耕地ハ肥料入レ不足デアリマス、貧乏ノ爲
ニ肥料入レ不足ニナツテ居ルノデアリマス、
斯ノ如キ貧農ハ產業組合カラ肥料ヲ取ラズ
ニ、商人カラ取ルノデゴザイマス、春肥ト
申シマスガ、元肥-春肥ヲ買ヒマ、ス時ニ
ハ、肥料屋ニ一部ノ金ヲ拂ヒマシテ肥料ヲ
借デ以テ持ツテ來ルノデアリマス、夏肥ヲ
取リマスル時ニハ現金ヲヤラズニ肥料ヲ持
ツテ來ルノデアリマス、サウシテ秋ニ米ガ
出來ルト、肥料屋ガ地主ヨリモ先ニ、一杯
先ニヤツテ參リマシテ、サウシテ檢査員ヲ
連レテ参リマシテ、米デ肥料代ヲ取ツテ居
ル、米デ取引シテ居ルト云フノガ大部分、
サウ云フノガ日本ノ貧農階級ニハ非常ニ澤
山アルノデゴザイマス、貧農階級ハ勿論肥
料知識ガ乏シイノデアリマスカラ、絕對的
量ガ不足デアルバカリデナク、商人ハ此ノ
貧農階級ニ對シテドウ云フ賣リ方ヲ致スカ
ト申シマスト、自分ガ或ル會社ノ特約店ヲ
ヤツテ居リマシテ、片寄ツタ肥料ヲ賣付ケ
ルノデアリマス、配合肥料ヤ化成肥料ヲ賣
付ケル、單肥ハ價格ガ安クテ儲ガ少イカ
ラ、配合肥料ヤ化成肥料ヲ賣付ケル、サウ
スルト硫安ハ十分土地ニ足ツタケレドモ、
加里トカ過燐酸ガ足リナイト云フコトデ、
肥料ハドウシテモ片寄ツテ居ルノデアリマ
ス、是ハドウシテモ完全肥料ヲヤラナケレ
バナラナイ、政府ハ此ノ際進ンデ此ノ化成
肥料、配合肥料ヲ禁止サレナケレバ駄目デ
アリマス、ソレト共ニ此ノ不足致シマシタ肥
料ヲ割當テマス時ニ於テハ、肥料代ヲ持タヌ
者デモ土地ガアレバ必ズ完全ナル肥料ヲ入
レテヤル、其ノ代リ必ズ秋ニハ小作料ヨリ
モ優先シテ其ノ肥料代ヲ取ルト云フ方策ヲ
講ゼラレマシテ、現在肥料入レ不足ニナツ
テ居ル所ニ肥料ヲ御入レニナリマスナラ
バ私ハ必ズ一割ヤ一割五分ノ增產ハ可能
デアルト思フノデアリマス、サウ云フ細カ
イ點マデ注意致サレマシタ所ノ肥料割當政
策ヲ御執リニナラナケレバイケナイト思フ
ノデアリマシテ、此ノ點ニ對シマシテ農林
大臣ノ御用意ヲ承リタイノデアリマス
更ニ吾々ガ考ヘナケレバナラナイ點ハ、此
ノ生產費ノ點ニ付キマシテ御注意願ヒタイ
點ハ、電氣ノ問題デゴザイマス、御承知ノ
通リ日本ノ農業ニ於キマシテ、今日機械化
ノ行ハレテ居リマス部分ハ極メテ少イノデ
アリマス、併シナガラ日本ノ農業ニ於テ完
全ナル機械化ガ行ハレテ居リマス部分ハ調
製脫穀デアリマス、今マデ土臼ヲ使ツテ人
間ノ力デヤツテ居リマシタ調製脫穀ガ、今
日デハ石油發動機カ、電氣發動機カ、或ハ
水車ニ依ツテ、自然ノ力、機械ノ力ヲ使ツ
テ居ルノデゴザイマス、最近勞力ガ拂底致
シマシタ結果、電氣ノ需要ト云フモノハ非
常ニ多クナツテ來タノデゴザイマス、隨テ
農業生產費ノ中ニ於テ電氣ノ持ツテ居リマ
ス所ノ比率ト云フモノハ、非常ナ重大性ヲ
備ヘテ來タノデゴザイマシテ、之ヲ安ク供
給スルカ高ク供給スルカト云フコトハ、農
產物價ノ値上リトナリ、農業生產費ノ値上
リトナリ、非常ナル問題トナルノデゴザイ
マス、所ガ今日電氣ノ利用ノ方法ハドウナ
ツテ居ルカト申シマスト、農林省ハ調製脫
穀機ニ付テ共同作業場ヲ指導シテ居ラレマ
スケレドモ、共同作業場ハ農家千軒ニ三軒
位シカナイ、千戶ノ農村ニ付テ三戶位シ
カナイノデアリマス、詰リ足ラナイノデ
アリマス、隨テ農民ハ個人々々デ電氣ヲ
引イテ居ルノデゴザイマスガ、一馬力ノ
「モーター」ヲ調製脫穀ノ爲ニ引キマスト、
三町以上ノ土地ガナケレバ引合ハナイノデ
ゴザイマス、所ガ日本ノ農民ハ一町五段位
シカ作ツテ居ハシナイ、三町持タヌ者モ損
ヲシテ電氣ヲ引張リ込ンデ居ルノデアリマ
スルカラ、之ニ對シマシテ四五軒ニ一ツヅ
ツノ共同利用ノ指導奬勵ノ方法ヲ御考ニナ
リマシタナラバ、是ハ農村ノ勞働力不足ノ緩
和ノ上ニ於テ、重大ナル效果ヲ齎スト考ヘル
ノデゴザイマス、ソレダケデナシニ、マダ電
氣ノ問題デ重大ナ關係ヲ持ツテ居リマスノハ、
灌漑用ノ揚水機及ビ排水用ノ排水機ニ使フ
灌漑排水ノ電氣ナノデゴザイマス、私ハ最
近之ヲ調べマシテ非常ニ驚イタノデゴザイ
マスガ、新潟縣ノ中蒲原郡ノ石山村ト云フ
村デ、七ツノ用排水組合ガゴザイマシテ、
低イ田圃ノ水ヲ揚ゲマス爲ニ二万數千圓ノ
金ヲ使ツテ居リマシテ、反當リ二圓ノ金ヲ
使ツテ居ルノデアリマス、隨テ農業生產力
ノ上ニ於キマシテ非常ニ重大ナル意義ヲ持
ツテ居ルノデゴザイマスルガ、之ニ對シマ
シテ電氣會社ハ獨占資本家デアル、農民ハ
弱小ナモノデアル、隨テ其ノ弱小ナ農民ト
電氣會社トノ間ノ農業用電氣ノ供給條件ト
云フモノハ、非常ニ不利益ニナツテ居ルノ
デゴザイマシテ、此ノ不利益ヲ打破致シマ
スルコトハ、極メテ必要デアラウト考ヘル
ノデゴザイマス、私ハ斯ウ云フ點ニ付キマ
シテ取付ケ、取外シ、給燈料、供給條件、
是等ニ付テハ農林省ト遞信省トデ御協議ニ
ナツテ、日本ノ農業生產力擴充ノ爲ニ特ニ
安イ政策料金制ヲオヤリニナツタラ宜イト
思ヒマス、特ニ安クシテヤリ、ソレカラ灌
漑用排水ニ使ヒマスル電氣ノ如キハ、深夜
間ノ餘剩電力ヲ使ハセルコトニ依ツテ、只
デ供給スルト云フ途ヲ講ジタナラバ、濕田
ノ爲ニ裏作ガ出來ナイ田圃ガ、電氣ノ供給
ニ依ツテ裏作ガ出來ルト云フコトニナツテ
來ルノデゴザイマシテ、非常ニ重大ナコト
デアルト考ヘルノデゴザイマスガ、此ノ
點ニ付テ一ツ遞信大臣ト農林大臣ノ御所
見ヲ承リタイト考ヘルノデゴザイマス、私
ハ時間ガアリマセヌノデ、アトハ端折リタ
イト思ヒマスガ、極ク簡單ニ項目ダケ-
マダ七ツ八ツモ項目ヲ持ツテ居ルノデ
ゴザイマスガ、項目ダケヲ申上ゲマシテ、
之ニ對シマシテノ御所見ヲ承リタイト思フ
ノデアリマス、斯ノ如キ農業內外ニ亙ル革
新政策ヲ斷行スルコトニ依ツテ、日本ノ農
林水產物ハドンナコトガアツテモ、供給不
足ヲ來サセナイト云フ用意ヲサセマスコト
ハ極メテ適當デアツテ、吾々モ之ニ協力
ヲ惜ム者デハナイガ、萬々一ノコトヲ考慮ス
ル時ニ、兵隊ガ應召シテ居ル譯デモ何デモ
ナイ臺灣朝鮮等ニ對シマシテ、增產ヲモツ
ト徹底的ニヤラセル必要ガアルト考ヘルノ
デアリマス、內地ノ農業ヲ壓迫シハシナイ
カト云フ虞ノ爲ニ、僅ニ百數十万石ヲ朝鮮
ト臺灣ニ割當テテ居ラレルヤウデアリマス
ケレドモ、私ハ米ハ多々益、、辨ズルノデアル、
此ノ際臺灣及ビ朝鮮ニ向ツテハ、モツト思
切ツタル奬勵ト割當ヲオヤリニナル用意ヲ
御考ヲ願ヒタイト云フコトヲ、農林大臣及
ビ拓務大臣ニ要求シタイト考ヘルノデアリ
マスガ、之ニ付テ一ツ額、其ノ他見透シニ
付テ御話ヲ願ヒタイト思フノデアリマス
其ノ次ハ消費節約ノ問題デアル、私ハ斯ノ
如クシテ內地、外地ニ亙ツテ出來ルダケノ增
產ヲ圖リマシテモ、而モ尙且ツ日本ノ戰時
ノ狀態ヲ考ヘマスナラバ、此ノ際消費節約
ヲ今カラヤル必要ガアルト思フノデアリマ
ス、但シ消費節約ハ國民ノ元氣ヲ衰ヘサセ
ナイヤウナ方法ニ依ツテヤラナケレバナラ
ナイノデアリマス、吉植君モ申サレタノデ
アリマスケレドモ、私ハ今日消費節約ノ見
地ニ立ツテ、白米ヲ禁止致シマシテ、玄
米、半搗米若クハ七分搗米ニ致シマシタナ
ラバ、ソレニ依ツテ何百万石カラ節約スル
ト云フ方途ヲ御考ニナルコトガ必要デアル
ト考ヘルノデアリマスガ、是ハ如何デアル
カ、是ヨリ又別ニ案ヲ御持チニナツテ居ル
カドウカ、先ヅ消費節約ニ付テ御伺致シタ
イト思フノデアリマス
更ニ農村ハ今日軍隊及ビ產業ノ人的基礎
デアリマス、農村ヲ破壞シテハナラナイ、
然ルニ農村ニ於テハ過勞ノ爲ニ婦人ノ流產
ガ最近著シク目立ツテ殖エテ來テ居ルノデ
アリマス、ソレト共ニ勞力不足ノ爲ニ、結
婚ノ年齡ガ二十二デ結婚シテ居ツタモノガ、
二十五トナリ二十六ト引上ゲラレテ來テ居
ルノデアリマス、私ハ農村ニ對シテ是ダケ
ノ增產ヲ要求スルナラバ、一方ニ農民ノ榮
養ト保健等ノ爲ニ萬全ノ用意ヲ國家ハ致シ
テカラ要求スルコトガ適當デアラウト考ヘ
ルノデアリマス、然ルニ農村ノ醫者ハ應召
サレレバ、モウ歸ツテ來ハシナイノデアリ
やっ、指導行政ガ農業ニ於テ必要デアルヤ
ウニ、零細農ニ付テハ指導衞生ガ必要デア
ル、私ハ農村ノ保健政策ニ付テ厚生省ハ
體如何ナル方針ヲ持ツテ居ルカニ付テ承リ
タイト思フノデアリマス(拍手)厚生省ハ都
會ノ勞働者ニ對シマシテハ工場課ヲ設ケラ
シ、勞働課ヲ設ケラレマシテ、色々ヤラレ
テ居ルケレドモ、特ニ農村ノ爲ニ農村局或
ハ農村課ヲ作ツテ、農民ノ保健指導ノ爲ニ
ヤツテ居ラレルト云フ事實ハナイ、厚生省
ハ一體日本ノ全體ノモノデアルカ、町ノモ
ノデアルカト云フコトヲ農民ハ疑ツテ居ル
ノデアリマス、或ハ國民健康保險ヲヤツタ
カラ、是デ宜イト言ハレルカモ知レマセヌ
ガ、アレバカリノ國民健康保險デドウナル
ノデアリマスカ、效果ガ一遍ニ全面的ニ及
ブ所ノ方途ヲ考ヘナケレバナラヌノデアリ
マシテ、私ハ國家ノ財政ノミニ賴ラズ、例
ヘバ醫療組合ノ病院ヲ共管スルコトニ依ツ
テ指導スルトカ、或ハ產業組合ガヤツテ居
ル保健運動ヲ厚生省ガ農村課ニ於テ指導ス
ルトカ云フヤウナ方法ニ依リマシテ、農林、
厚生兩省ハ單ニ衞生ハ俺ノ方ダ、生產ハ俺
ノ方ダナドト云フコトデナシニ、生產力增
進ノ爲ニ提携ヲサレマシテ、萬全ノ途ヲ講
ゼラレタイト考ヘルノデアリマスガ、之二
對シマシテ農林大臣及ビ厚生大臣ノ御所見
ヲ承リタイト思フノデゴザイマス、私ハ尙
ホ申上ゲタイコトガアリマスルケレドモ、
甚ダ時間ヲ取リマシタノデ是ダケデ質問ヲ
終リタイト思ヒマス(拍手)
〔國務大臣櫻內幸雄君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=26
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027・櫻内幸雄
○國務大臣(櫻內幸雄君) 三宅君ニ御答辯
申上ゲマス、現在ノ時局ニ對シテ本案ハ不
徹底デハナイカ、增產計畫ト農民生活安定
ト云フモノニ主眼ヲ置ク必要ガアルデハナ
イカ、又萬一ノ場合ニ於テハ、價格ノ統制
ヲ別ニ決定スル必要ガアルデハナイカ、斯
ウ云フ風ナ意味ノ御問デアリマシタガ、勿
論增產ハ必要デアリマシテ、先刻來度々申
上ゲマス通リ、此ノ問題ニ對シテハ全力ヲ
盡シテ居ルノデゴザイマシテ、各位ノ御協
力ヲ願ヒタイト思ヒマス、農民ノ生活安定
ノ問題ハ、是ハ固ヨリデアリマシテ、此ノ
點ニ付キマシテモ十分ニ留意ヲ致シテ居ル
譯デアリマス、價格ヲ萬一ノ場合ニ於テ統
制スル、斯ウ云フ問題ハ本案ニ於テモ最高
最低ノ價格ガアリマスガ、場外ニ於テ若シ
ソレニ背イタ場合ガ起ツテ、米價ノ問題ガ
玆ニ混亂スルガ如キ場合ガ起リマシタナラ
バ、是ハ卽チ米價ノ公定價格ヲ決定シサヘ
スレバソレデ宜シイト思ヒマス
ソレカラ營利會社ニ一任シテ此ノ仕事ヲ
ヤラセルコトハ不都合デハナイカ、國家ガ
之ヲヤルベキデハナイカト云フ御議論デア
リマスガ、ソレハ一應尤トモ考ヘマスケレ
ドモ、今日ノ場合官民一致シテ事ヲ致スコ
トガ最モ合理的デアルト考ヘマシテ、左樣
ニ決定致シタノデアリマシテ、唯其ノ經營
者其ノ者ニ付キマシテハ、深ク注意ヲ致シ
テ任命致シタイト考ヘマス
ソレカラ取引所側カラ重役ヲ出ス云々ト
云フ御意見デアリマスケレドモ、是ハ大體
ニ於テ政府ガ半數ヲ持ツテ居リマス上ニ、
尙ホ取引所以外カラモ株主ガ出ルコトデア
リマスガ故ニ、公平適當ナル所ノ重役ガ選
任サレルコトト考ヘマス
銘柄取引ハ止メテ一定シタル一本槍デ制
定シタラ宜イデハナイカト云フ御話デアリ
マスケレドモ、御承知ノ通リ米ハ各地各樣
デアリマシテ、若シ之ヲ今日ノ如キ格付米
ノ仕組ニ依ツテ取引サレマスレバ、玆ニ自
然ト投機慾ガ起ツテ困ルノデアリマシテ、
此ノ目的ヲ達成スル爲ニハ、卽チ一定ノ何
縣ノ何產ノ何等米ト云フコトニ致シマシテ、
相對的ニ取引ヲ致シマスレバ、玆ニ投機慾
ト云フモノハ減少シテ投機ガ抑壓出來ルノ
デアリマシテ、左樣ニ致シタイト考へテ居
ルノデアリマス
ソレカラ生產者カラ消費者ニ直接ヤルト
云フ計畫ヲ立テタラドウカ、卽チ生產者ト
消費者ト取引スルコトガ一番間ノ費用ガ掛
ラヌデ宜イデハナイカト云フ御話デアリマ
スガ、是ハ理論トシテハサウデアルカモ知
レマセヌガ、實際問題ト致シマシテ、何ノ
商賣デモ何事デモ、玆ニ中間機關ガアツテ、
之ヲ援助シテ行クト云フコトニ於テ、初メ
テ圓滑ニ行クノデアツテ、若シ消費者ト生
產者ダケデアリマスナラバ、玆ニ非常ナル
摩擦ガ起ラヌトモ限ラヌノデアリマス、故
ニ此ノ點ニ付キマシテハ玆ニ第三者ノ米穀
商人ガ入ルト云フコトガ、最モ適當デアル
ト考ヘルノデアリマス
ソレカラ米價ノ二重價格ト云フ御話デア
リマスガ、是ハ現在ニ於キマシテモ非常ニ
困ラレテ居ル所ノ方々ニ對シテハ、農林省
ニ於テ所有シテ居ル所ノ米ヲ特別ニ安ク拂
下ゲテ居ルヤウナ狀態デアリマシテ、部
ハ行ツテ居ルノデアリマスケレドモ、全般
的ニ二重價格ヲ設ケテ、一部ノ人ニハ高ク
賣リ、一部ノ人ニハ安ク賣ルト云フ制度ハ、
到底今日ノ場合ニ於テハ難カシイト思ヒマ
ス、小賣商人ノ手數料ノ問題ヲ決定致シテ、
サウシテ安ク一般ニ供給スルト云フ意味ノ
御話デアリマシタガ、是ハ此ノ市場ガ出來
テ、市場ノ相場ガ決定シテ、全國ノ米ガ斯
ク斯クノ相場デアルト云フコトガ玆ニ明ニ
ナリマシク以上ハ、當然其ノ間ニ中間ノ人々
ガ非常ナ暴利ヲ搾取スルト云フコトハ出來ヌ
結果ニナルノデアリマシテ、要スルニ消費者ガ
安ク米ヲ使用スルコトガ出來ルト考ヘマス、
今日ノ農村ノ狀態ハ總テ減產ノ條件デアル
ガ、增產ノ用意ガアリヤ否ヤト云フ御質問
デアリマスガ、是ハ以前ニ答辯致シマシタカ
ラ玆ニ省キマス
ソレカラ土地制度ノ問題、土地國家管理
ノ問題ニ關シテ非常ニ御意見ガアリマシタ
ガ、是ハ御意見トシテ傾聽致シマシテ、中
ニハ贊成致スコトモアリマスケレドモ、贊
成致サナイコトモアリマス、此ノ問題ニ對
シマシテハ今日之ヲ取上ゲテ實行致スト云
フ言明ヲ致スコトノ出來ナイノヲ遺憾ト致
シンコ入
ソレカラ小作料値下ノ問題、或ハ其ノ
他澤山ノ問題ガアリマス、或ハ農地法等ノ
問題ニナリマスケレドモ、是ハ御意見トシ
テ拜聽致シマス、吾々ト致シマシテハ、全
體ノ農民ヲシテ出來得ベクンバ自作農ニ致
シタイト云フ見地カラ、卽チ昨年農地調整
法ト云フモノヲ設ケマシテ、二十四箇年間
從來ノ小作料ヲ拂ツテ居レバ、其ノ土地ガ
自分ノモノニナルト云フ見地カラ、アア云
フ案ヲ立テタ譯デアリマスガ、尙ホ一層之
ヲ發達セシムルト云フ方法ニ努力致シタイ
考デアリマス、ソレカラ肥料對策其ノ他ニ
付テ御意見ガアリマシタガ、肥料ニ對シマ
シテハ十分ニ投機ヲ防グ方法ヲ講ジタイト
思ヒマス、ソレカラ電力ノ問題ニ對シテ御
意見ガアリマシタガ、電力ニ對スル問題ハ、
是ハ全ク吾々モ同意見デアリマシテ、其ノ
方針ニ依ツテ進ミタイト考ヘテ居リマス、
尙ホ種々御議論ガアリマシタケレドモ、適
當ナ機會ニ於テアトハ御返事申上ゲタイト
思ヒマス
〔國務大臣八田嘉明君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=27
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028・八田嘉明
○國務大臣(八田嘉明君) 三宅君ノ御質問
中、農業用ノ物資器材等ノ價格ガ騰貴シタ
ガ爲ニ、其ノ生產費ガ〓騰スルニ拘ラズ、
其ノ値上リト收入トノ均衡ガ取レナイト云
フ問題ニ付キマシテ御話ガアリマシタガ、
全ク斯ルコトハ極力避ケナケレバナラヌノ
デアリマス、ソレガ爲ニハ商工省ト致シマ
シテハ、敢テ農業物資ノミナラズ必要ナル
生活必需品ニ付キマシテハ、出來ルダケ價
格ノ昂騰ヲ抑制スルコトニ今日努メテ居リ
マスノデ、今後ニ於キマシテモ是ガ價格ノ
抑制竝ニ配給ノ圓滑ト云フコトニ付キマシ
テハ、物資ノ需給調整ノ上カラ考ヘマシテ、
最善ヲ盡シタイト存ズル次第デアリマス、
其ノ他ノ問題ハ別ノ機會ニ御答申上ゲタイ
ト思ヒマス
〔國務大臣廣瀨久忠君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=28
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029・廣瀬久忠
○國務大臣(廣瀨久忠君) 御答致シマス、
農村ノ問題ニ付キマシテ、厚生省ト致シマ
シテモ從來モ種々行政上努力ヲ致シテ居リ
さゝ、勿論都會ノミノ厚生省デナイコトハ
申スマデモナイコトデアリマス、御話ノヤ
ウニ厚生省トシテハ既ニ一般的ニハ國民健
康保險ノ如キ、或ハ無醫村ニ對スル對策ノ
如キ、或ハ保健所ノ對策ノ如キ、各般ノ豫
防行政或ハ保健衞生行政ヲ指導致シテ居リ
やく、尙ホ此ノ問題ニ付テハ農林省トモ十
分連絡ヲ取ツテ、將來一段ト努力スル積リ
デアリマス
(「大藏大臣ハドウシタ」ト呼ヒ其ノ他
發言スル者アリ〕
〔國務大臣鹽野季彥君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=29
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030・塩野季彦
○國務大臣(鹽野季彥君) 生產力ヲ增大セ
シメ、又生產費ヲ低下セシムル爲ニ、農村
ニ於テ電力ヲ利用スル爲ニ、安價ナル電力
ヲ供給スルト云フコトノ必要デアリマスコ
トハ、洵ニ御說ノ通リデアリマス、政府ニ
於キマシテモ水力利用ノ開發及ビ指導ノ爲
ニ、又共同作業場ニ對スル配電施設ノ助成
ノ爲ニ、十四年度ノ豫算ニ於テモ相當計上
ヲ致シテ居リマス、尙ホ電力ヲ安價ニ配電
致シマスルニ付テハ、國策會社トシテ、政
策料金トシテ、他ノモノニ比シテ特ニ低廉
ニ供給スルコトニ致サセルヤウニナツテ居
リマス(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=30
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031・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 小田榮君
〔小田榮君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=31
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032・小田榮
○小田榮君 私ハ本案ニ關シマシテ極ク簡
單ニ二三重要ノ點ニ付テ御質問申上ゲマス
其ノ前ニ戰時下日本ノ農村ノ一狀況ヲ御
報告申上ゲマス、本年初頭沖繩縣ノ國頭郡
金武村ノ戰死者ヲ弔問シテ參ツタノデアリ
マスガ、其ノ戰死者ノ家ガ八疊程ノ茅葺デ
アリマス、其ノ一間ハ板ノ間デアリマシテ、
六疊程ノ蓙ガ一枚敷イテアリマス、オ盆ガ置
カレテ居リマス、勿論其ノオ盆ハ斯ウ云フ
上等ノモノデハナイノデアリマス、ソレニ缺
ケテ居ルオ茶飮茶碗ガ置カレテ居リマス、
サウシテ其ノオ茶飮茶碗ニハ灰ガ僅カ入ツ
テ居リマス、此處ニハ五ツニナル子供ト三
ツニナル子供ガ母ノ歸リヲ待ツテ居リマス、
是ガ聖戰目的ノ爲ニ陛下ノ御爲ニ命ヲ捧
ゲ奉ツタ所ノ戰死者ノ家族ノ姿デアリマ
ス、母ハ畑ニ日傭トシテ嬰兒ヲ背ニシテ働
キニ出テ居リマス、又同ジク國頭郡本武村
ノ瀨底島ノ出征兵士ノ宅ヲ見舞ツタノデア
リマスガ、三人ノ男ノ子ヲ持ツ母ハ、一人
ヲ戰線ニ送リ、一人ハ兵營ニ入營セシメ、
又一人ハ出稼ギニ出テ居リマス、サウシテ
食ベルコトガ出來ナイ爲ニ、隣リ近所ノ者
ガ此ノ家ヲ護ル老婆ニ對シテ、芋ノ補給ヲ
致シテ居リマス、是ガ出征軍人ノ母デアル、
所ガ私ハ其ノ母ノ子デアル所ノ出征軍人ニ
戰線ニ於テ邂逅致シタノデアリマス、兵士
ハ之ヲ見ヨト云ツテ私ニ一片ノ紙ヲ見セテ
呉レマシタ、ソレハ電報デアリマス、是八
其ノ兵ガ大阪カラ出發ヲスル時ニ、母カラ
送ツタ所ノ激勵ノ電報デアリマス、文面ハ
「亡キ父ガ看護ル、勇ミ立テ」、サウシテ此
ノ兵士ハ、其ノ電報ヲ懷中ニシテ懸命ニ君
國ノ爲ニ戰ツテ居ルノデアリマス、此ノヤ
ウナ戰兵、此ノヤウナ農村ノ實情ヲ吾々ハ
目撃シナガラ、此ノ農民ノ爲ニ、此ノ國民ノ
生キ得ル爲ニ、十分ナル對策ヲ講ズルコト
ガナケレバ、或ハ惧レルノデアリマス此ノ度
ノ聖戰目的ヲ貫徹シ得ルカ否カヲ、御承知
ノヤウニ沖繩ハ絕海ノ孤島トモ申セマス、
而モ此處ニハ六十万ノ國民ガ住ンデ居リマ
ス、其ノ六十万ノ中ノ大部分ニ依ル所ノ一
年間ノ農產收入ハ、一戶當リ三百二十六圓
デアリマス、所ガ內地一般ハドウカト云フ
ナラバ、一千一百四十七圓二十八錢デアリ
そう、此ノヤウナ狀態ニ置カレテ居ル所ノ
沖繩農民ガ、本案ニ依ツテハ何等酬ハレル
所ガナイノデアリマス、何トテレバ、沖繩
農民ハ主ニ廿蔗作農民デアリマス、製糖農
民デアルノデアリマス、サウシテ米ハ主ト
シテ臺灣ヨリ蓬萊米ヲ移入シテ居ルノデア
リマス、內地農民ノ爲ニ、米作農民ノ爲ニ、
此ノ議會ニ於テ種々ナル政策ガ審議セラ
V、決定セラレテ行ツタノデアリマスガ、
中央ヨリ遠ク隔ツテ居ル爲ニ、沖繩農民ハ
只今申シマシタガ如キ有樣デアリマス、而
モ其ノ上ニ交通ノ不便ガアリ、或ハ農業指
導ノ拙劣、又ハ農器具ノ不足、肥料ノ問題
ガ橫ハツテ居リマセウ、諸多ノ理由ニ依ツ
テ、其ノ僅カ三百二十何圓ノ金ヲ以テ、
家ノ者ガ生計ヲ立テテ行カナケレバナラヌ
ノデアリマス、ソレガ何ガ故ニ顧ミラレル
コトガ少イカト言ヒマスト、內地一般ノ農
民ガ米作ヲ主トシテ居ルニ比ベテ、是ガ甘
蔗作ヲ主トシテ居ルカラデアリマス
ソコデ私ハ臺灣ノ狀態ヲ一瞥シタイト思
ヒマス、臺灣ノ農民ハ主ニ米作ト甘蔗作ト
ヲ致シテ居リマス、サウシテ本案ガ成立致
シマスナラバ、臺灣米穀管理法案ノ成立ト
共ニ、臺灣米ハ年々五百万石以上ノモノガ、
其ノ機構ヲ通シテ内地ニ移出セラレルノデ
アリマス、コチラカラ申セバ移入セラレル
ノデアリマス、サウシテ其ノ米管案ノ持ツ
所ノ本質ハ、臺灣農民ガ現在米價ニ依ツテ
取得シテ居ル所ノ收入ヲ、一石ニ付テ二圓
ヅツ抑ヘテ行カウ、サウシテ其ノ費用ヲ以
テ米作以外ノ主要ナル作物ノ開發ノ爲ニ力
ヲ致サウト云フコトガ、意圖サレテ居ルノ
デアリマス、而モ是ニ於テ吾々ガ絕對ニ
逸スルコトノ出來ナイコトハ、一石ニ付
テ二圓、五百万石デ約一千万圓ノ金ヲ浮
カサウガ爲ニ、臺灣農民ノ收入ヲ減少サセ
ルノデアリマス、所ガ此ノ米作農民ノ收
入ヲ抑ヘルコトニ依ツテ、多分ニ甘蔗作ガ
增大シテ行クモノデアルト云フコトデアリ
マス、而モ其ノ甘蔗作ハ、直チニ以テ製糖
資本家ノ利得ヲ增大スル所以デアリマス、
此ノ所ニ吾々ハ只今審議セラレツツアル所
ノ本案ガ、臺灣農民ノ現狀ニ對シテ十分ナ
ル認識ト、十分ナル對策ヲ持ツナラバ、當
然此ノ米ノ統制ニ隨伴シテ、製糖業ノ統制
ヲ敢行シナケレバナラヌト云フコトデアリ
やっと、米作農民ガ零碎ナル收入ヲ石二圓モ
抑ヘラレル、而モ製糖資本家ハ二億圓內外
ノ投下資本ニ依ツテ、年々三割乃至四割ノ
利潤ヲ擧ゲテ居リマス、年々七千万圓ニ及
ブノデアリマス、七千万圓ノ利潤ヲ獲得シ
ツツアル所ノ製糖資本家ノ其ノ利潤ヲ、其
ノ儘容認シナガラ、米作農民ノ僅ナ收入カ
ラ、一年間ニ一千万圓ノモノヲ獻納サセル、
此ノヤウナ方策ニ吾々ハ大キナ社會的ナ、
政治的ナ矛盾ノ存スルコトヲ否ミ得ナイト
思フノデアリマス
〔發言スル者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=32
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033・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 暫クデスカラ御靜
聽ヲ願ヒマス
八発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=33
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034・小田榮
○小田榮君(續) 而モ今マデノ質問者ニ依
ツテ述ベラレマシタ如ク、此ノ案ガ實施セ
ラレマシテモ、現下日本農村ノ持ツ所ノ種
種雜多ナル不合理ハ、未ダ根本的ニ改革ハ
セラレテ居ナイノデアリマス、ソレハ肥料
資本家ノ占メツツアル所ノ利潤デアリ、サ
ウシテ又小作農民ノ生活ヲ常ニ重壓シツツ
アル所ノ小作制度ノ問題デアリマス、或ハ
朝鮮ニ於テハ八割カラ九割ノ、吾々ノ常識ヲ
以テシテハ考ヘルコトノ出來ナイ、途方モ
ナイ小作料ヲ强制セラレテ居ル朝鮮同胞ガ
居ルノデアリマス、此ノヤウナ不合理性ヲ
徹底的ニ改廢シテ、以テ勤勞者ノ生活ヲ安
定セシメルコトガ、戰時下ニ於ケル所ノ政
府當局ノ執ルベキ、最モ重大ナル政策ナリ
ト考ヘルノデアリマス、之ニ對シテ農林大
臣ハ如何ニ御考ニナツテ居ルカ、明確ナル
御答辯ヲ戴キタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=34
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035・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 小田君、成ベク問
題外ニ涉ラナイヤウニ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=35
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036・小田榮
○小田榮君(續) 而シテ其ノ小作制度ノ問
題及ビ小作制度ニ對シテノ政府ノ意見ハ度
度出テ居リマスルガ、製糖業ニ對スル國家
的統制ニ對シテ如何ナル御意見ヲ御持チデ
アルカ、之ニ對シテ御答辯ヲ要求致シマス、
私ハ既ニ時間モ經ツテ居リマスノデ、アナ
夕方ノ望マレル如ク簡單ニ濟マセマス
端折リマシテ、只今申シマシタ所ノ小作
制度ノ根本的ナル改革、卽チ日本ノ農民ニ
對シテ、其ノ生活ヲ保障スル所ノ耕地ヲ與
ヘルト云フコトガ爲サレズシテ、我ガ日本ハ
豐葦原瑞穗ノ國ト言ハルベキデハナイト思
フ、而モ吾々ハ只今日本肇國以來曾テ無キ
一大戰爭ヲ戰ツテ居リマス、而シテ忠勇ナ
ル皇軍將士ノ其ノ努力ハ、畏クモ御稜威ノ
致ス所トハ申セ、海陸ニアノ赫々タル戰果
ヲ獲得致シテ居ルノデアリマス、而モ私ハ
今次聖戰ノ眞ノ目的ヲ達成スル爲ニモ、而
シテ事變處理ノ主要ナル方策ト致シマシテ
モ、日本ニ於テ日本ノ國內ノ農村ノ持ツ社
會的不合理デアル所ノ小作制度ヲ根本的ニ
改革スルコトガ必要デアル、ソレガ延イテ
ハ支那ノ農村ノ持ツ所ノアノ農奴制ノ改革
ニ對シテ、日本民族ガ其ノ決意ト信念ヲ持
ツモノデアルト云フコトヲ明示スルコトガ
出來ルト信ズル者デアリマス、而シテ日本
ノ農村ハ其ノ耕地ハ狭小デアリマス、五反
百姓デアリ、或ハ三反百姓デアリマス、而
モ小作人ガ多數ヲ占メテ居ル此ノ日本ノ農
民ニ對シテ、吾々ハ生活ヲ保障スルニ足ル
所ノ土地ヲ與ヘナケレバナラナイ、其ノ土
地ハ大陸ニアルノデアリマス、北滿ノ方面
ニ於テハ拓務省或ハ軍部ニ於テ國防移民ガ
徹底化サレツツアリマス、勿論慶賀スベキ
コトデアリマス、而モ中支、南支ニ對シテ
ハ未ダ政府當局ハ十分ナル日本農民ノ移
植政策ヲ御立テニナツテ居ナイト思フノデ
アリマス、政府ハ此ノ中支、南支、或ハ海
南島ニ對シテ、日本農民ノ大移動ヲ講ズル
御意思ハナイカ、單ニ軍事ニ依ル所ノ對支
處理ノミデハナクシテ、商業資本ノ對支進
出ノミニ止ラズ、日本農民ヲ支那大陸ニ移
植スルコトニ依ツテ、支那ノ大衆ト日本ノ大
衆ガ其ノ生活ヲ通ジテ、眞情ヲ通ジテ東洋
ノ樂土ヲ構築スル、此ノ信念ニ副ハシムル
ノ意思ハナイカ、其ノコトガ日本ノ
〔「議長注意セヨ」ト呼ヒ其ノ他發言ス
ル者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=36
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037・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 小田君ニ注意致シ
マス、問題外ニ涉ルコトガ多イヤウデアリ
マスカラ御注意願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=37
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038・小田榮
○小田榮君(續) 其ノ事ガ現在困窮ノ中ニ
アツテモ、尙ホ能ク國家民族ノ防衞ト發展
ノ爲ニ、其ノ生命ト其ノ勤勞ヲ致シテ居ル
所ノ、日本農民ニ對スル生活改善ト向上ノ
途デアルト信ズルノデアリマス、而シテ私
ハ此ノ諸多ノ國民生活上、社會的、政治的
ナ矛盾ヲ多分ニ腹ニ持ツテ居ル所ノ日本ニ
於テ、戰時內閣トサレテハ十分ナル革新意
思ヲ敢然ト發揚スル所ノ決意ガナケレバナ
ラヌト思フノデアリマス、只今申シマシタ
所ノ日本農民ノ大陸進出ニ對シテ、如何ナ
ル決意ヲ御持チデアルカヲ承リタイト思フ
ノデアリマス(拍手)
〔發言スル者多シ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=38
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039・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 小田君ノ御質問ハ
大部分問題外ニ涉ルト存ジマス、御注意ヲ
願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=39
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040・小田榮
○小田榮君(續) 最後ニ私ハ饑餓窮乏ノ中
ニアツテモ、忠勇ナル日本臣民ハ其ノ男子
タルト女子タルトヲ問ハズ、一意獻身報國
ノ念ニ燃エテ居ルノデアリマス、而モ私ハ
此ノ戰時議會ニ初メテ臨ンデ、初メテ此ノ
壇上ニ於テ政府當局ニ對スル質問ヲ試ミタ
ノデアリマス、所ガ今マデ感ズル所ニ依レ
バ議場ニ於テモ騷然タルモノガアル、或
ハ政府當局ニ於テモ、眞ニ戰時內閣トシテ
ノ眞劍サガアルヤ否ヤヲ疑ハシメルモノガ
アルノデアリマス、數日前平沼首相ハ此ノ
座ニ於テ、戰時議會ノ首相トシテ爲スベカ
ラザルニ拘ラズ····
(「議長注意セヨ」ト呼ヒ其ノ他發言ス
ル者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=40
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041・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 小田君ニ注意致シ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=41
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042・小田榮
○小田榮君(續) 不謹愼ナル居睡リヲシテ
居タノデアリマス
〔發言スル者多シ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=42
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043・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 問題外ノ質問ヲ爲
サツテハイケマセヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=43
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044・小田榮
○小田榮君(續) ソレニ近衞前首相ノ如キ
ハ革新政策ヲ呼號シナガラ、閣僚カラ戰線
方面ニ皇軍慰問ニ出掛ケルコトヲ要求セラ
レタニ對シテ···
〔發言スル者多シ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=44
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045・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 小田君、發言ヲ中
止致シマス、降壇ヲ命ジマス
(「答辯ハ要ラヌ」ト呼ヒ其ノ他發言ス
ル者アリ〕
〔國務大臣櫻內幸雄君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=45
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046・櫻内幸雄
○國務大臣(櫻內幸雄君) 今小田君ハ甘蔗
ノ問題ヲ御話ニナツタヤウデアリマスガ、
甘蔗ノ問題ニ對シマシテハ、農林省トシテハ
糖業奬勵法ニ依リ奬勵ヲ致シテ、尙ホ今後
モ其ノ方針ニ進ミタイト思ヒマス、滿洲移
民ニ關スル問題ハ、是ハ分村計畫ヲ立テテ
ヤツテ居ルノデアリマスカラ、御諒承ヲ願
ヒマス(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=46
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047・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 是ニテ質疑ハ終了
致シマシタ-本案ノ審査ヲ付託スベキ委
員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=47
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048・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ議長指名三十六名ノ
委員ニ付託サレンコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=48
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049・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=49
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050・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認
メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-此
ノ際御諮リ致スコトガアリマス、麻生久君
病氣ニ付三月六日ヨリ三月十五日マデ、右
請暇ノ申出ガアリマス、之ヲ許可スルニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=50
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051・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
やく、仍テ許可スルニ決シマシタ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=51
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052・服部崎市
○服部崎市君 殘餘ノ日程ハ延期シ、本日
ハ是ニテ散會セラレンコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=52
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053・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=53
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054・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、次會ノ
議事日程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、本
日ハ是ニテ散會致シマス
午後八時十分散會
衆議院議事速記錄第二十號中正誤
四〇三頁三段一三行池田秀雄君ノ次ニ藤生安太
郞君ヲ加フ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02119390306&spkNum=54
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