1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十四年三月九日(木曜日)
午後一時五十分開議
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議事日程 第二十二號
昭和十四年三月九日
午後一時開議
第一 映畫法案(政府提出) 第一讀會
第二 工業組合法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第三 昭和十三年法律第六十四號中改正法律案(兌換銀行券の保證發行限度の臨時擴張に關する件)(政府提出) 第一讀會
第四 朝鮮銀行券及臺灣銀行券の保證發行限度の臨時擴張に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第五 船舶建造融資補給及損失補償法案(政府提出) 第一讀會
第六 大日本航空株式會社法案(政府提出) 第一讀會
第七 日本産金振興株式會社法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第八 保險業法改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第九 青年學校教育費國庫補助法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十 臺灣事業公債法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十一 臺灣米穀移出管理特別會計法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=0
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001・小山松壽
○議長(小山松壽君) 諸般ノ報告ヲ致サセ
マス
〔書記官朗讀〕
一今九日貴族院ヨリ受領シタル政府提出案
左ノ如シ
裁判所構成法中改正法律案
〔左ノ報〓ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一政府ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
工業組合法中改正法律案
(以上三月七日提出)
昭和十三年法律第六十四號中改正法律案
(兌換銀行劵ノ保證發行限度ノ臨時擴張
ニ關スル件)
朝鮮銀行劵及臺灣銀行劵ノ保證發行限度
ノ臨時擴張ニ關スル法律案
船舶建造融資補給及損失補償法案
大日本航空株式會社法案
日本產金振興株式會社法中改正法律案
(以上三月八日提出)
一去七日貴族院ニ於テ本院ノ送付ニ係ル左
ノ政府提出案ヲ可決シタル旨同院ヨリ通
牒ヲ受領セリ
昭和十四年度歲入歲出總豫算案竝昭和十
四年度各特別會計歲入歲出豫算案
豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲ス
ヲ要スル件
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
辯護士法中改正法律案
提出者
宮澤〓作君服部英明君
村松久義君
熊谷驛ヨリ太田町ヲ經テ桐生驛ニ至ル鐵
道敷設ニ關スル建議案
提出者
篠原義政君石坂養平君
鶴岡大鳥間鐵道敷設ニ關スル建議案
提出者熊谷直太君
鶴岡羽前高松間鐵道敷設ニ關スル建議案
提出者熊谷直太君
農民及勞働者ニ地下タビ配給ニ關スル建
議案
提出者
深澤豐太郞君依光好秋君
馬岡次郞君
岡崎多治見間鐵道敷設ニ關スル建議案
提出者
服部英明君岡本實太郞君
古屋慶隆君大野一造君
全國主要國道及府縣道鋪裝計畫普及完成
ニ關スル建議案
提出者
山道襄一君木原七郞君
土屋寛君藤田若水君
古田喜三太君作田高太郞君
神祇官復興ニ關スル建議案
提出者北原阿智之助君
上北地峽運河開鑿ニ關スル建議案
提出者
工藤鐵男君菊池良一君
小笠原八十美君森田重次郞君
小野謙一君
東北六縣ノ港灣修築促進ニ關スル建議案
提出者
熊谷直太君工藤鐵男君
東北地方國道鋪裝ニ關スル建議案
提出者
熊谷直太君工藤鐵男君
借地借家調停法改正ニ關スル建議案
提出者北原阿智之助君
棉作奬勵ニ關スル建議案
提出者
林平馬君小林三郞君
勤勞者階級ノ住宅建設竝保健衞生施設ニ
關スル建議案
提出者
山崎常吉君鈴木正吾君
國民生活緊張ニ關スル建議案
提出者
山崎常吉君鈴木正吾君
(以上三月七日提出)
國立義肢檢査所設置ニ關スル建議案
提出者
河合義一君片山哲君
肥料專賣ニ關スル建議案
提出者
稻田直道君吉植庄亮君
馬岡次郞君
市町村吏員ノ待造改善ニ關スル建議案
提出者
稻田直道君一ノ瀨俊民君
沖島鎌三君松尾孝之君
播丹鐵道買收ニ關スル建議案
提出者田中源三郞君
京都米原間鐵道增線竝電化ニ關スル建議
案
提出者
服部岩吉君森幸太郞君
地方自治團體名譽職ノ待遇ニ關スル建議
案
提出者
出井兵吉君田中源君
石坂養平君坪山德彌君
宮本雄一郞君山口忠五郞君
宮崎一君佐藤洋之助君
立川平君大本貞太郞君
木本主一郞君牧野賤另君
川島正次郞君田子一民君
中野治介君庄晋太郞君
淺井茂猪君松木弘君
江羅直三郞君小見山七十五郞君
小串〓一君池田七郞兵衞君
島根縣ニ高等工業學校設置ニ關スル建議
案
提出者高橋圓三郞君
湯澤驛ヨリ西馬音内町矢島町ヲ經テ本莊
驛ニ至ル鐵道敷設ニ關スル建議案
提出者
中川重春君小山田義孝君
信太儀右衞門君中田儀直君
小山倉之助君土田莊助君
(以上三月八日提出)
一去七日常任委員理事補闕選擧ノ結果左ノ
如シ
決算委員
理事服部英明君(理事小林三郞君
去六日委員辭任ニ付其ノ補闕)
理事井上良次君(理事佐竹晴記君
去六日委員辭任ニ付其ノ補關)
一去七日常任委員補關選擧ノ結果左ノ如シ
第二部選出
決算委員服部英明君(小林三郞君
補關)
第六部選出
決算委員川俣〓音君(佐竹晴記君
補關)
一去七日議長ニ於テ辭任ヲ許可シタル常任
委員左ノ如シ
第八部選出豫算委員大石大君
一去七日委員長及理事互選ノ結果左ノ如シ
米穀配給統制法案(政府提出)委員
委員長添田敬一郞君
理事
長野綱良君片岡恒一君
古田喜三太君田中好君
三善信房君馬岡次郞君
窪井義道君杉山元治郞君
一去七日特別委員理事補關選擧ノ結果左ノ
如シ
國際電氣通信株式會社法中改正法律案
(政府提出)委員
理事小笠原三九郞君(理事永田良吉
君去六日委員辭任ニ付其ノ補
關
一去七日特別委員委員長補關選擧ノ結果左
ノンリ
職員健康保險法案(政府提出)委員
委員長眞鍋勝君(委員長紫安新
九郞君去六日委員辭任ニ付
其ノ補闕)
一去七日議長ニ於テ選定シタル委員左ノ如
輕金屬製造事業法案(政府提出)委員
釘本衞雄君卯尾田毅太郞君
字賀四郞君池田〓秋君
寺島權藏君駒井重次君
粟山博君森田政義君
坪山德彌君葉梨新五郞君
瀧澤七郞君深澤豐太郞君
牧野良三君行吉角治君
長谷長次君小池四郞君
加藤鐐造君三木武夫君
一去七日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如シ
昭和十二年法律第五十七號中改正法律案
(鐵ノ輸入稅免除ニ關スル件)(政府提出)
外一件委員
辭任小山亮君補關道家齊一郞君
國際電氣通信株式會社法中改正法律案
(政府提出)委員
辭任高木粂太郞君補闕松尾四郞君
米穀配給統制法案(政府提出)委員
辭任大石大君補闕小野謙一君
職員健康保險法案(政府提出)委員
辭任米窪滿亮君補闕井上良次君
民族優生保護法案(八木逸郞君外一名提
出)委員
辭任田子一民君補關高橋熊次郞君
一昨八日平沼內閣總理大臣ヨリ左ノ通發令
アリタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
大藏書記官迫水久常
第七十四囘帝國議會大藏省所管事務政府
委員被仰付
一昨八日委員長及理事互選ノ結果左ノ如シ
輕金屬製造事業法案(政府提出)委員
委員長森田政義君
理事
釘本衞雄君卯尾田毅太郞君
坪山德彌君葉梨新五郞君
一昨八日常任委員補關選擧ノ結果左ノ如シ
第八部選出
豫算委員三田村武夫君(大石大君補
關
一昨八日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如シ
支那事變特別稅法中改正法律案(政府提
出)外二件委員
辭任小畑虎之助君補關池本甚四郞君
人事調停法案(政府提出)委員
辭任中村高一君補關佐竹晴記君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=1
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002・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス、御報告申上ゲルコトガアリマス、昨八日
〓宮貴子内親王殿下ノ御命名ノ儀執リ行ハ
セラレタルニ付、議長ハ本院ノ決議ニ基キ
マシテ、宮城ニ參內、宮內大臣ヲ經テ御祝
詞ヲ言上致シ、次デ大宮御所ニ參入、皇太
后宮太夫ヲ經テ御祝詞ヲ言上致シマシタ、
此段謹ンデ御報告申上ゲマス
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=2
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003・服部崎市
○服部崎市君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此ノ際日程第八ヲ繰上
ゲ上程シ、其ノ審議ヲ進メラレンコトヲ望
ミマス
(「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=3
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004・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=4
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005・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ノ順序ハ變更セラレマシタ、
日程第八、保險業法改正法律案、第一讀會
ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求メマ
ス-委員長田中亮一君
第八保險業法改正法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一保險業法改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十四年三月七日
委員長田中亮
衆議院議長小山松壽殿
〔田中亮一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=5
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006・田中亮一
○田中亮一君 只今議題トナツテ居リマス
ル保險業法改正法律案ノ委員會ニ於ケル審
議ノ經過竝ニ結果ヲ御報告申上ゲタイト思
フノデアリマス
本法案ノ改正ノ目的ハ、第一ニ商法ノ改
正ニ伴ヒ、改正商法トノ調和ヲ保ツ必要ヲ
生ジタルコトデアリマス、第二ニハ、現行
保險業法ハ明治三十三年ノ制定デアリマシ
テ、旣ニ四十年ヲ經過シ、現下ノ諸事情
ニ徵シマシテ不備ノ點ガ少カラザルモ
ノガアリマスノデ、之ニ鑑ミマシテ監督
指導ノ方策ヲ整備スルニアルノデアリ
マス、其ノ內容ニ於キマシテハ、其ノ一
ハ監督命令ニ關スル規定ヲ整備シ、又
事業ノ統制協定ニ關スル規定ヲ設ケタノデ
アリマス、其ノ二ノ業績不良ノ會社ニ對シマ
シテ事業ノ管理合併、又ハ契約ノ移轉ヲ爲
スベキコトヲ勸〓シ、或ハ命令シ得ル旨ノ
規定ヲ設ケタノデアリマス、其ノ他株式會
社ノ相互間、株式會社ト相互會社トノ合併、
保險計理人等ノ制度ヲ設ケマシテ、又財產
ノ評價ニ關スル規定ヲ整備シタ等デアリマ
ス、尙ホ幾多重要ナル改正ヲ含ンデ居ルノ
デアリマスルカラ、此ノ法案ハ我國ノ保險
行政ノ上ニ重大ナル意義ヲ有スルガ故ニ、
委員會ハ前後八囘ニ亙リマシテ、午前午後
ヲ通ジ、極メテ熱心ニ且ツ愼重ニ論議ヲ致
シタノデアリマス、今其ノ主ナルモノノ二三
ヲ擧ゲマスレバ、第一ハ保險國營ニ關スル
問題デアリマス、卽チ保險事業殊ニ生命保
險ハ多額ノ利益ヲ擧ゲテ居ルノミナラズ、
不當ノ競爭其ノ他種々ノ不備缺點ヲ生ジテ
居ルガ、政府ハ生命保險ノ國營ヲ斷行スル
コトニ依ツテ、是等ノ弊害ヲ一掃スル意思
ハナイカ、又損害保險ノ再保險ニ依ル海外
拂ハ相當多額ニ上ツテ居ルヤウデアルガ、
政府ハ再保險ノ國營ヲ斷行スルコトニ依ツ
テ、之ヲ防止スルノ意思ハナイカトノ質問
ニ對シマシテ、商工大臣ハ、生命保險ノ經
營上諸種ノ不備ノ點ノアルコトハ政府モ之
ヲ認メテ居ル、又保險國營ノ問題ニ付テモ
相當〓究ヲ行ツタノデアツテ、今後ト雖モ
尙ホ〓究スベキダト考ヘルガ、今囘ノ改正
案ハ國營ノ長所トスル點ヲ出來得ル限リ加
味スルト同時ニ、今日マデ發達シ來ツタ民
營ノ長所ヲ失ハシメヌコトヲ期スル所ノ最
善ノ方策トシテ、之ヲ提出シタノデアル、
隨ヒマシテ保險國營ニ付キマシテハ、尙ホ
將來愼重ニ考慮スルコトニ致シタイト御答
ガアツタノデアリマス、又關係各省ノ政府
委員ヨリモ同趣旨ノ御答ガアツタノデアリ
マス、又再保險ニ依ル海外拂ニ付テハ、最
近再保險「プール」ノ結成其他ノ方法ニ依ツ
テ極力節約ヲ圖ツテ居ルガ爲メ、今後ト
モ努力シタイトノ御答ガアツタノデアリマ
ス、其ノ二ハ不良會社整理ニ關スル件デア
リマシテ、卽チ政府ハ本法施行後整理ノ監
督或ハ命令ニ關スル規定ヲ適用シテ一時ニ
多數ノ不良會社ヲ整理スル意思ハナイカト
ノ質問ニ對シマシテ、商工大臣ハ本改正案
ノ目的ハ、保險事業ノ健全ナル發達ニ依リ
保險契約者ノ保護ヲ圖ラントスルモノデア
ツテ、徒ニ急激ニ多數ノ會社ヲ整理シ、保
險契約者竝ニ業界ニ不安動搖ヲ起スヤウナ
コトハ考ヘテ居ナイトノ御答ガアツタノデ
アリマス、以上ノ外生命保險ニ關スル弊害
取締、資產ノ運用、本法運用ニ關スル諮問
機關ノ設置等、其ノ他極メテ重要ナル質疑
應答ガアツタノデアリマスガ、是等ニ付キ
マシテハ擧ゲテ速記錄ニ依ツテ御了承ヲ願
ヒタイト思フノデアリマス
以上ヲ以チマシテ質疑ヲ打切リマシテ直
チニ討論ニ入リマシタ、民政黨ヨリ木村淺
七君、政友會ヨリ西川貞一君、第一議員倶
樂部ヨリ小池四郞君、社會大衆黨ヨリ中村
高一君、何レモ今囘ノ改正要旨ハ業界ノ現
狀其ノ他ニ鑑ミ極メテ適切デアルト考ヘル、
而シテ改正法ノ運用ハ事業ノ健全ナル發展、
國營問題ノ歸趨等ニ重要ナル關係ヲ持ツノ
デアリマシテ、其ノ業界ニ及ボス影響ハ極
メテ重大ナモノガアルカラ、官僚獨善ニ陷
ラヌヤウニ特ニ愼重ヲ期スル必要ガアルト
考ヘルガ、一面必要アル場合ニ於テハ、徒
ニ遲疑逡巡スルコトナク、適切ナル處置ヲ
斷行スベキデアルトセラレ、ソレ〓〓國營
問題ノ〓究、統制運用其ノ他ノ點ニ關スル
希望意見ヲ述べ、原案贊成ノ旨ヲ表明セラ
レタノデアリマス、而シテ採決ノ結果ハ滿
場一致原案通リ可決致シマシタ、以上ヲ以
テ御報告ト致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=6
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007・小山松壽
○議長(小山松壽君) 本案ノ第二讀會ヲ開
クニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=7
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008・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=8
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009・服部崎市
○服部崎市君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=9
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010・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=10
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011・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
保險業法改正法律案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=11
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012・小山松壽
○議長(小山松壽君) 別ニ御發議モアリマ
セヌ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告通
リ可決確定致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=12
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013・服部崎市
○服部崎市君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此ノ際日程第九ヲ繰上
ゲ上程シ、其ノ審議ヲ進メラレンコトヲ望
ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=13
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014・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=14
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015・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ノ順序ハ變更セラレマシタ、
日程第九、靑年學校〓育費國庫補助法案、
第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ
求メマス-委員長野村嘉六君
第九靑年學校〓育費國庫補助法案
(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報〓書
一靑年學校〓育費國庫補助法案(政府提
出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十四年三月八日
委員長野村嘉六
衆議院議長小山松壽殿
〔野村嘉六君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=15
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016・野村嘉六
○野村嘉六君 私ハ只今議題トナツテ居リ
マス靑年學校〓育費國庫補助法案ノ委員會
ニ於ケル審議ノ經過竝ニ結果ニ付キ御報告
ヲ申上ゲマス、靑年學校ハ御承知ノ通リ、
昭和十年ニ從來ノ靑年訓練所ト實業補習學
校トヲ合併致シマシテ、靑年學校制度ニ〓
メ、日々社會ニ活動勤勞シツツアル靑年ヲ
訓育スル爲ニ出來タノデアリマス、卽チ勤
勞靑年ニ對シ、其ノ心身ヲ鍛鍊シ、知識ヲ
啓發シ、德性ヲ涵養スルト共ニ、職業及ビ
實際生活ニ必要ナル知識技能ヲ授ケ、以テ
國民タルノ資質ヲ向上セシムルコトヲ目的
トスルノデアリマス、更ニ昭和十四年度ヨ
リハ、內外ノ情勢ニ鑑ミマシテ、男子ニ對
シ普通科一年生約十万人ニ義務制ヲ實行ス
ルコトニナツタノデアリマス、サウシテ補
助法案ノ金額ハ、全體デ四百三十万八千九
百四十圓デ、昭和二十年ニ普通科本科共全
部義務制ニナルノデアリマスカラ、逐次補
助額ガ增加サレマス、靑年學校ノ制度ハ普
通科二年、本科五年、通ジテ七箇年、尙ホ
其ノ他ニ專修科、〓究科モアリマス、入學
資格ハ尋常小學校卒業者デ、在學年限ハ十
二歲以上十九歲マデノ靑年男女デ、謂ハバ
總テノ靑年ニ對シ中等學校程度ノ〓育ヲ施
スノデアリマス、斯ル制度ハ各國ニ例ナキ
コトデ、我國ハ如何ニ〓育ニ重キヲ置イテ
居ルカト云フコトガ分ル次第デアルノデア
リマス(拍手)一國ノ文化興隆ハ其ノ源ガ〓
育ニアルト云フコトハ、千古ヲ通ジテノ鐵
則デアリマス(拍手)今日我國ニ於キマシテ、
十二歲以上十九歲マデノ靑年男女ハ約五百
万人、其ノ中靑年學校ニ就學シテ居リマス
者ハ、男子一百六十二万五千二百七十六人、
女子七十七万三千九百四十五人デ、合計二
百三十九万九千二百二十一人デアリマス、
今後義務制實施ニ依リマシテ、就學率ハ非
常ニ增加サルルコトト思ヒマス、授業時間
ハ普通科及ビ本科二年マデハ、每一箇年ヲ
通ジマシテ二百十時間、三年以上ハ百八十
時間デアリマス
是ヨリ委員會ニ於テ現ハレマシタ質問應
答ノ中數點ヲ擧ゲテ御紹介致シマス、靑年
學校ノ發達竝ニ義務制ハ結構デアルガ、地
方一万數千ノ町村ガ、昭和十四年度ノ豫算
編成ニ當リ、內務省ハ去冬命令ヲ出シテ、
十四年度ノ豫算ハ十三年度當初豫算ヨリ五
分減ズベシトノコトヲ指令シタトノコトデ
アリマスガ、靑年學校費ハ何レノ町村モ不
足ヲ告ゲ、政府亦此ノ事實ヲ認メ、國庫ヨ
リ增額補助ヲ爲シ居ル際、五分ヲ減ズルト
ハ常識上判斷出來ヌカラ、主務省タル內務
省ノ意見ヲ確メタシトノコトデアリマシ
タ、之ニ對シテ內務省ハ、靑年學校豫算額
五分減ノ命令ハ出シタコトハナイ、又今日
左樣ナ考ハ持ツテ居ラヌトノ明白ナル答辯
ヲ致シマシタ、又靑年學校生徒ハ勤勞者デ
アリマシテ、隨テ多クハ雇傭又ハ主從ノ關
係デアリマス、雇傭者又ハ主人ハ自分ノ爲、
卽チ自己ノ利益上ヨリ雇入レアルノデアル
カラ、他人心ガ自然人情上現ハレマシテ
生徒ヲシテ心身共ニ苦痛ヲ感ゼシムルコト
ガアリハセヌカ、若シ左樣デアツタナラバ、
生徒ハ洵ニ慘メナモノデ、爲ニ心身ノ鍛練、
知識ノ啓發ニ大ニ妨ゲヲ來シハセヌカ、當
局ハ之ニ對シテドウ云フ考ヲ持ツテ居ルカ
ト云フ質問デアリマシタ、政府ハ之ニ對シ
テ、雇傭者又ハ主人ニ付キテ十分諒解シテ貰
フヤウ、ソレ〓〓方法ヲ講ジマシテ、萬遺
憾ナキヲ期スルト云フ答辯デアリマシタ、
又靑年學校生徒ノ就學時間ヲ、勞務制限時
間內ニ算入スル意思ガアルカ否カトノ質問
デアリマシタ、之ニ對シテ政府ハ近日法文
化スル爲、別ニ算入ニ關スル法案提出ノ考
デアルト答辯致シマシタ、又靑年學校義務
制ニ對シマシテ、一方〓育審議會ノ答申デ
ハ、將來國民高等學校ガ義務制ニナレバ、
靑年學校普通科廢止スベシトノ意見ヲ答申
シタガ、是デハ地方〓育ノ實際ニ副ハヌコ
トデアリマスカラ洵ニ困ル、政府ハ之ニ對
シテドウ云フ方法ヲ執ルカト云フ質問ニ對
シテ、政府ハ適當ニ內容ヲ改善シテ善處ス
ルトノ答辯デアリマシタ
尙ホ申上ゲタイノハ、本案ニ關係ヲ持ツ
ト共ニ、一般〓育及ビ思想ニ關スルコトデ
アリマス、ソレハ〓育界ノ現狀ハ至ツテ不
安デアル、〓育界ガ不安デハ立派ナ〓育ハ
出來ナイ、卽チ〓權ノ確立ハ現今最モ必要
ト思フ、其ノ理由ハ色々アルガ、其ノ中デ
モ今日ノ制度ハ、〓育ノ首腦部トモ云フベ
キ〓育機關ハ內務省所管デアル、仍テ內務
省ニ左右サルル虞ガアル、卽チ地方ノ學務
部長、視學官、視學、何レモ內務省ニ依ツ
テ任免ヲサレテ居ルノデアリマス、其ノ執
ル所ノ日々ノ職務ハ〓育行政デハアリマス
ガ、任免權ガ內務省ニアル以上ハ、人情誰
デモ其ノ任免權ヲ有スル方ニ專心ニナルノ
ハ當然デアリマス、特ニ是等ノ首腦部ノ人
人ハ、一生ヲ〓育行政ニ捧ゲルト云フ人ハ
極メテ少イ、多クハ他ノ方ニ轉任スル腰掛
的デアル、元來〓育ハ一生涯一身ヲ捧ゲテコ
ソ其ノ效果ガ擧ルモノデアリマス、現在ノ
如キ腰掛的デハ、〓育者ガ不安ヲ感ズルハ
勿論、認識モ十分デナイカラ、時々誤認ノ
問題ガ起ルノデアリマス、此ノ根本ヲ改ム
ルニアラザレバ、何時マデモ〓權ハ確立致
シマセヌ、隨テ〓育者ハ不安デアリマス、
此ノ際當局ハ斷乎トシテ制度ヲ改メ、文部
行政ヲ行フモノハ文部ノ所管ニ移シ、制度
〓育共ニ一體ト爲シ、〓權ヲ確立スル意思
ナキヤトノ質問ニ對シ、政府ハ機關組織ニ對
シテハ篤ト考慮スルトノ答辯デアリマシタ、
又〓育ニ關スル規定ハ、從來全部勅令デ定
マツテ居ル、併シナガラ此ノ〓育ニ關スル
重大問題ヲ勅令デ定メルト云フコトハ當ヲ
得ナイ、何故ナラバ、斯ル重大問題ハ總テ
國民ノ意思ヲ代表スル議會ヲ通ジテ、サウシ
テ法律ニ依ツテ定ムルノガ當然デアル、仍
テ此ノ際一部ノ文部省ノ意見ノミデナク、
〓育ニ關スル色々ノ規定ガ必要ナラバ、議會
ニ提案シテ、總テハ法律化スルガ宜シクナ
イカト云フノガ、全委員擧ゲテノ質問デア
リマシタ、所ガ之ニ對シテ政府ハ、從來通
リ勅令デヤツテモ差支ナイト思フ旨ノ答辯
ガアリマシタ、又世界ニ冠タル我ガ國體ノ
本義ヲ學生生徒ニ知ラシムルニハ、十分國
史〓究ノ知識ヲ授ケネバナラヌ、然ルニ今
日各學校ニ於テ國史〓授ノ時間ヲ見ルニ、
他ノ科目時間ニ比シテ著シク少イノデ、是
デハ到底學生生徒ヲシテ十分國史ノ知識ヲ
得セシムルコトハ出來マセヌ、國史ヲ知ラ
ズシテ祖國愛ヲ說クノハ、丁度木ノ根ヲ切
ツテ其ノ枝ヲ茂ラサウトスルト同樣デアリ
マーハ今日學生ニシテ共產主義ニ陷ル者ガ
アル、是等ノ原因ヲ調ベテ見ルニ、多クハ
國史ノ知識ガ乏シク、サウシテ一面ニハ「マ
ルクス」等ノ國體ニ反スル知識ヲ得テ居ル
カラデアル、政府ハ此ノ點ニ鑑ミテ將來國
史ニ重キヲ置ク意思デアルカドウデアルカ、
此ノ質問ニ對シテ當局大臣ハ勿論同感デア
ル、サウシテ他ノ科目トノ釣合ヲ圖リ適當
ニ改正スルト言明致シタノデアリマス、又
我國ハ御承知ノ通リ祖先崇拜ノ國デ、祖先崇
拜ハ家族制度ノ確立カラ出來テ居リマス、
外國ニテハ家族制度ハナイ、個人主義デア
ル、卽チ日本ニ於テハ祖先ヲ祀ル爲ニ親族
姻族共同シテ一家ヲ成シ、祖先崇拜ノ觀念
ヲ涵養シ、淳風美俗ヲ培ヒツツ來ツタノデ
アリマス、古ノ大寶令、又養老令等ノ規定
ヲ見テモ此ノ事實ガ明デアリマス、所ガ明
治三十一年民法、商法等制定サルルニ當リ
マシテ、親族、相續等ノ規定ニ對シテ、古
來ノ淳風美俗ニ關スル規定ヲ入ルルコトヲ
怠ツタノデアリマス、是ガ爲ニ其ノ後識者
學者ノ中ニ議論ガアツテ、大正八年ニ三十
一年ニ出來タ親族相續法ヲ改正シ、サウ
シテ日本ノ淳風美俗ヲ入レナケレバナラヌ
ト云フノデ改正ヲ企テマシテ、昭和二年改
正スベキ要綱三十四項ヲ設ケテ成文化スル
コトニナツタノデアリマス、併シナガラ其
ノ後數十年經チマスケレドモ、未ダニ政府
ガ之ヲ實行致シマセヌ、故ニ此ノ際祖先崇
拜ノ觀念ヲ益〓洒養スル必要上、是非トモ此
ノ改正ヲ法文化シテ貰ハナケレバナラヌガ、
當局ハ如何ニ考ヘルカト云フ質問ニ對シテ
ハ、是モ同感デアル、斯ウ云フ答辯デアツタ
ノデアリマス、ソレカラ〓育ノ根本ニ對シ
テノ質問ニ對シテハ、政府ハ〓育勅語ノ御
聖旨ヲ奉戴シ、〓育竝ニ思想全般ニ亙リ學
生生徒ヲ徹底的薰育スル旨ヲ明言サレマシ
タ
委員會ヲ開クコト十三囘、質問ヲ終リマ
シテ討論ニ入リマシタ、民政黨ノ佐藤與一
君ヨリ
、國庫補助金ハ義務〓育本質ニ鑑ミ國
庫負擔金トシ大ニ增額ヲ圖ルコト
〓員素質向上ヲ圖ル爲メ〓員養成施
設ノ整備擴充ヲ圖ルト共ニ〓員待遇ノ
向上ヲ爲スコト
獨立校舍ノ建築設備改善ヲ促進スル
爲メ國庫補助金ノ交付ノ途ヲ開クト共
ニ起債其他ヲ容易ナラシムル爲メ最善
ノ努力ヲ拂フコト
一、大都市ニ於ケル靑年學校不振ノ實情
ニ鑑ミ其振興ノ爲メ特別ノ考慮ヲ拂フ
コト
靑年學校ノ義務制實施ニ伴ヒ靑年團
ノ振興ヲ期スル爲メ法制ノ整備補助金
增額等適當ノ處置ヲ講ズルコト
〓育行政機構ヲ刷新シ〓育ノ健全ナ
ル發達ヲ期スルコト
政友會ノ曾和義弌君ヨリ
一、靑年指導ノ根本國策ヲ樹立スベシ
一、速ニ靑年團令ヲ制定スベシ
一、速ニ靑年學校義務〓育費負擔法ヲ議
會ニ提出スベシ
靑年學校〓員竝指導員ノ待遇改善ヲ
實現スベシ
第二控室ノ椎尾辨匡君ヨリ
、靑年義務制强行ヲ機トシ指導目標ヲ
明確ニシ靑年志氣ノ振作ニ努ムベシ
靑年學校靑年團員ト同期ノ他ノ學生
生徒等ト橫ノ聯絡ニヨリ靑年協同ノ途
ヲ開カレタキコト
社會大衆黨ノ河合義一君ヨリ
一、政府ハ將來靑年學校經費ノ全額ヲ國
庫負擔トスベシ
政府ハ靑年學校ノ義務制ヲ完成スル
ト共ニ〓育ノ內容ヲ完備シテ靑年學校
ヲ以テ國民〓育ノ中樞トスベシ
政府ハ現下壯丁ノ體位低下ノ事實ニ
鑑ミ靑年學校ニ於テハ特ニ生徒ノ榮養
ニ留意シテ體位ノ向上ヲ計ルベシ
トノ各派ヲ代表シテ各〓希望條項ガアリマシ
タ、採決ノ結果全委員一致原案ヲ可決致シ
マシタ、此段御報告申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=16
-
017・小山松壽
○議長(小山松壽君) 本案ノ第二讀會ヲ開
クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=17
-
018・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=18
-
019・服部崎市
○服部崎市君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=19
-
020・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=20
-
021・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、
議案全部ヲ議題ト致シマス
靑年學校〓育費國庫補助法案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=21
-
022・小山松壽
○議長(小山松壽君) 別ニ御發議モアリマ
セヌ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告通
リ可決確定致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=22
-
023・服部崎市
○服部崎市君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ日程第十及ビ第十一ノ
兩案ヲ繰上ゲ一括上程シ、其ノ審議ヲ進メ
ラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=23
-
024・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=24
-
025・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ノ順序ハ變更セラレマシタ、
日程第十、臺灣事業公債法中改正法律案、
日程第十一臺灣米穀移出管理特別會計法
案、右兩案ヲ一括シテ第一讀會ノ續ヲ開キ
マス、委員長ノ報告ヲ求メマス-委員長
菊池良一君
第十臺灣事業公債法中改正法律案
(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第十一臺灣米穀移出管理特別會計法
案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一臺灣事業公債法中改正法律案(政府提
出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十四年三月八日
委員長菊池良
衆議院議長小山松壽殿
報〓書
一臺灣米穀移出管理特別會計法案(政府
提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十四年三月八日
委員長菊池良
衆議院議長小山松壽殿
〔菊池良一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=25
-
026・菊池良一
○菊池良一君 只今上程セラレマシタ臺灣
米穀移出管理特別會計法案及ビ臺灣事業公
債法中改正法律案ニ付キマシテ、委員會ニ
於ケル審議ノ經過及ビ結果ヲ御報告申上ゲ
マス、本委員會ハ二月二十一日ヨリ三月八
日マデ、十囘ニ亙リマシテ質疑應答ヲ重ネ、
討論ニ入リ、討議ノ結果全員一致可決致シ
タ次第デゴザイマス
第一ニ臺灣米穀移出管理特別會計法案ニ
付キマシテ、主ナル質疑應答ヲ御報告申上
ゲマス、一、本管理案ハ臺灣ノ統治上ニ影
響ヲ及ボスコトハナイカ、二、本管理案ヲ
實施スルコトニ依リ產米ヲ減少シ、我國全
體ノ食糧問題、特ニ戰時下ニ於ケル食糧政
策ニ支障ヲ來スコトハナイカ、三、本管理
案ハ現下ノ食糧問題ノ重要性ニ鑑ミ、內外
地ヲ通ズル米穀ノ生產確保上ニ支障ヲ及ボ
スコトハナイカ、四、本管理案ハ臺灣農家,
ノ經濟ヲ著シク壓迫スル結果トナラヌカ、
五、本管理案ヲ計畫スルニ當リ、臺灣島內ニ
於テ言論ヲ壓迫セシ事實ハナイカ、六、本
管理案ハ糖業ノ保護トナラザルヤ、七、凶
作ノ場合本特別會計ハ多大ノ損失ヲ蒙ルコ
トハナイカ、八、本管理案實施ニ伴フ各種有
用作物ノ增產計畫ニ對應スベキ耕地ノ餘裕
ガアルカ、右ニ對シ平沼總理大臣、八田拓
務大臣、櫻內農林大臣、關係政府委員ヨリ、
次ノヤウナ趣旨ノ答辯ガアリマシタ、一、
統治上ノコトニ關シマシテハ特ニ首相ヨリ、
本管理案實施ニ依リ一時的ニハ農家經濟ニ
多少ノ影響ガアルカモ知レマセヌガ、元々
其ノ目的ノ一トシテ將來ニ於ケル農家經濟
ノ安定向上ヲ期スルモノデアリ、是ガ實現
ハ臺灣ノ現狀ヨリ見テ、確實ニ遂行シ得ル
モノナリト信ジマスルガ故ニ、本案ノ趣旨
ヲ十分諒解セシムルニ於テハ、何等懸念ノ
要ナキノミナラズ、內地ト臺灣トノ關聯性
ヲ一段ト緊密化スルモノデアリ、統制上何等
支障ナキモノト考ヘルトノ答辯ガアリマシ
タ、二、減產ノ虞ナキヤト云フ點ニ關シマシ
テハ、本管理案ヲ實施スルト同時ニ、現在禁
止シテ居ル水利施設竝ニ土地改良施設ヲ解
除シ、更ニ積極的ニ土地改良、干拓事業ヲ實
施シ、水田ノ改良擴張ヲ圖リ、他面耕地防風
林ノ造成、施肥ノ合理化、品種ノ改良、耕種法
ノ改善指導ヲ爲スコトニナツテ居リマスカラ、
平面的ニモ立體的ニモ、產米ハ增產スルコ
トトナリ減產ハ來サナイ、又現在企圖シテ
居ル程度ノ米價ノ調節ニ依ツテハ、他作ガ
米作ヲ侵スト云フガ如キ懸念モナイトノコ
トデアリマシタ、三、本管理案ノ實施ト、
現下ノ內外地ヲ通ズル米穀ノ生產確保トノ
關係ニ付キマシテハ、特ニ農林大臣及ビ拓
務大臣ヨリ、昭和十五米穀年度ノ供給米ハ、
旣定計畫ノ增產、卽チ內地三百万石、朝鮮
三箇年二百万石、臺灣二十七万石ノ外ニ、
更ニ安全性ヲ見込ンデ內外地ニ亙リ相當數
量ノ增產ヲ爲ス爲、目下關係當局間ニ協議
ヲ進メテ居ル次第デアツテ、內外地ヲ通ズ
ル米穀ノ需給ニ關シテハ當局ニ於テ萬遺
憾ナキヲ期スルヲ以テ何等懸念ノ要ナク
本管理案ノ實施ハ時局下ノ食糧政策上支障
ナキ旨ノ答辯ガアリマシタ、四、農家經濟
ヲ壓迫セヌカトノ問ニ對シマシテハ、本管
理案ヲ實施スルコトニ依リマシテ米價ガ調
節サレ、當初農家ノ收入ニ若干ノ影響ハア
リマスガ、本管理案實施兩三年後ニハ、米
作收益ノミニ付テモ、甲當リ收量ノ增加、
農業經營ノ多角化、集約化ニ依リマシテ、
農家經濟ハ將來一層安定向上シ、恆久的ニ
福利增進ヲ期スルコトトナルノデ、決シテ
農家經濟ヲ壓迫スルガ如キ結果トハ相成ラ
ヌトノコトデアリマシタ、五、言論壓迫ニ
關シマシテハ、本管理案ヲ總督府デ考究シ
始メマシタノハ一昨年デアリマシテ、立案
中其ノ內容ガ確保シナイ以前ニ、濫リニ憶
測シテ誤ツタ立論ノ下ニ色々ノ批判ヲ爲ス
コトハ、臺灣ノ如キ特殊事情ノ下ニ於キマ
シテハ、一般人心ヲ不安ナラシメ、經濟界
ニ及ボス影響モ少クナイノデ、新聞記事ノ
揭載ヲ禁止シマシタ、併シ昨年十一月臺灣
重要產業調査委員會ニ本案ヲ諮リ、案ノ確
定ヲ見マシタノデ、其ノ後ハ揭載禁止ヲ解
除シ、更ニ趣旨ノ普及徹底ニ付キマシテハ、
昨年十二月以降地方廳ヲ通ジ有ユル機會ヲ
利用シ、又小册子ノ配付等ニ依リ趣意徹底
ニ大イニ努メテ居ルトノコトデアリマシタ、
六、糖業ノ保護デハナイカトノ問ニ關シマ
シテハ、甘蔗ノ買上價格ハ從來大體米價ヲ
標準トシテ決定シテ居リマシタガ、砂糖ハ
國內ノ消費ノ增加、竝ニ滿洲、支那等ニ對
スル供給增加ノ爲メ、今後益〓其ノ生產ヲ
增加セネバナラズ、他面無水「アルコール」
ノ原料トシテモ相當甘蔗ノ增產ヲ必要トシ
マスノデ、將來米價ガ下ツテモ、所要蔗作
面積確保ノ爲ニハ、之ニ伴ヒ蔗價ヲ下ゲル
コトハ困難ナ事情ニアリマス、而シテ糖
業ニ關シマシテハ別ニ糖業令ヲ立案
中デアリマシテ、之ニ依リ甘蔗ノ作付
面積ト、買上價格トヲ許可制トスル外、糖
業ニ對スル監督ヲ强化シ、以テ米糖產業ノ
調整ヲ爲スト共ニ、甘蔗買收價格ノ公正ヲ
期シ、管理案ノ實施ニ依ル反射的利益ハ、
本令ノ活用ニ依ツテ十分規正スルコトニナ
ツテ居ルトノコトデアリマシタ、七、凶作
ノ場合特別會計ニ損失ヲ及ボサナイカトノ
點ニ付キマシテハ、臺灣ハ年二囘作デアル
關係上、第一期作ガ凶作デアツテモ、第二
期作ガ豐作デ之ヲ補フト云フヤウナ風ニナ
ツテ、凶作ニ因リ特別會計ニ損失ヲ與ヘル
危險ガ比較的少ク、萬一凶作ガ續イタトシ
テモ、剩餘金ノ積立制度ガアリ、又一方ニ
ハ此ノ會計ハ相當巨額ノ借入金ガ出來ルヤ
ウニナツテ居リマスノデ、間違ナク行クコ
トト思ツテ居ルトノコトデアリマシタ、
八、管理案實施ニ伴フ米其ノ他國家有用作
物ノ增產ニ對應スル耕地ノ餘裕ニ關スル問
ニ付キマシテハ、管理事業ノ剩餘金ニ依リ、
將來十箇年間ニ二十万餘甲ニ亙リ土地改良、
干拓事業ヲ行ヒ、耕地ノ改良ヲ行フト共ニ、
新ニ十二万數千甲ノ水田ヲ擴張スルコトニ
ナツテ居リマスノデ、計畫ノ米其ノ他各種
有用作物ノ栽培ハ可能デアリ、且ツ右工事
ハ總督府ノ土木當局ニ於テ既ニ調査計畫サ
レテ居ルモノノ內、勞力其ノ他ノ關係上十
箇年間ニ實施可能ノモノノミデアリマスノ
デ、其ノ實現性モ確實デアルトノコトデア
リマシタ
第二ニ臺灣事業公債法中改正法律案ニ付
テ申上ゲマス、本案ニ關シテ一、築港計畫ニ
至ル調査經過、二、計畫ノ內容、三、築港
ト工業地帶トノ關係等ニ涉リ質問ガアリマ
シタガ、之ニ對シ政府委員ヨリソレ〓〓詳
細ナル答辯ガアリマシタ、是ニテ質疑ハ全
部終了致シマシタ仍テ直チニ討論ニ入リマ
シテ、先ヅ立憲民政黨ヲ代表シテ岡野委員
ハ、米穀移出管理案ノ實施ニ當ツテハ、
戰時下ノ食糧確保ハ緊要事タルヲ以
テ移出米管理ノ實施ニ因リ內外地ヲ通
ズル米穀需給計畫ニ支障ナキヲ期スベ
シ
二、移出米管理ノ實施ト同時ニ糖業令ヲ
發布シ以テ其ノ統制ヲ一層强化シ糖業
ト他產業トノ利益ノ均衡ヲ期スベシ
三、移出米穀ノ買上價格ハ每期時價トノ
差額一石ニ付二圓ヲ超過セザルコトヲ
要ス
此ノ三ツノ希望條項ヲ述べ、且ツ本案ノ實
施ニ當リテハ、是ト竝行的ニ當局モ言明セ
ル如ク、糖業ノ統制强化ニ付小作制度ノ改
善、肥料配給ノ合理化、農事試驗機關ノ擴
充、農事金融ノ調整等ニ付、當局ノ一段ノ熱
意ヲ要望シテ本案ニ贊意ヲ表シマシタ、立
憲政友會ヲ代表シテ三善委員ハ一、米穀移
出管理案竝ニ糖業令ノ運用宜シキヲ得レバ、
臺灣ノ實情ヨリシテ產米ノ減產ヲ來ス憂ナ
キコト、二、米價ノ調節ニ依リテ得タル事
業剩餘金ハ、擧ゲテ之ヲ農村ニ還元スルモ
ノナルヲ以テ、農家經濟ノ安定向上ヲ來ス
モノナルコトヲ信ズルモ、今後ハ臺灣特別
會計ニ於ケル經費ヲモ一層增加シ、兩者相
合セテ一段農業ノ發展竝ニ農家經濟ノ向上
ニ資スルコト、三、米穀移出管理案ハ米
穀政策ノ一元化ニ貢獻スルト共ニ、臺灣
特有ノ作物ノ增殖ニ依リ、國際收支ニ貢
獻スルコト極メテ大ナルコト等ノ意見ヲ
述ベテ贊意ヲ表シマシタ、第一議員倶樂
部ヲ代表シテ守屋委員ハ、本案ハ其ノ趣
旨極メテ結構ナルニ拘ラズ、尙ホ內外ニ
幾多ノ誤解ヲ招キ居ル事實アルニ鑑ミ、
今後更ニ趣旨ノ徹底ヲ圖リ、誤解ノ一掃ニ
努メラレタキ旨ノ意見ヲ述ベテ贊意ヲ表シ
マシタ、社會大衆黨ヲ代表シテ前川委員ハ、
戰時食糧政策ノ確立上、臺灣特殊事情
ヲ活用シテ遺憾ナキヲ期スルコト、二、糖業ノ
統制ニ付テハ遺憾ナキヲ期スルコト、三、還元
施設ニ付テハ全體ノ農業生產力ヲ考慮スル
ト共ニ、生產農民ニ對シ特ニ留意スルコト、四
臺灣ニ於ケル土地單位面積ノ收量ハ尙ホ極メ
テ低キヲ以テ、小作改善、地價昂騰ノ防止等
ニ依リ掠奪農法ヲ防ギ、土地生產力ノ擴充
ニ努力サレタキコトノ意見ノ開陳ヲ爲シ贊
意ヲ表シマシタ、第二控室ヨリ小田委員ハ、
糖業統制ニ付キ善處サレタキコト、一一、
臺灣ノ一部ニ於テ故ラニ內臺人ノ疎隔ヲ來
ス如キ言動アルニ依リ、土地制度改革等ヲ
斷行シテ之ヲ根絕セシムルヤウ努力セラレ
タキコト等ノ意見ヲ述べテ贊意ヲ表シマシ
タ、東方會ヲ代表シテ、三田村委員ハ、糖業
統制ニ關シ意見ヲ述べ、尙ホ島民全體ヘノ
恩惠ノ建前カラ十分ノ留意アランコトヲ述
ベテ贊意ヲ表シマシタ
是ニテ討論終結シ、採決ニ入リ、臺灣事
業公債法中改正法律案及ビ臺灣米穀移出管
理特別會計法案ヲ各別ニ議場ニ諮リマシタ
所兩案トモ全員一致ヲ以テ原案通リ可決
致シマシタ次第デアリマス、此段御報告申
上ゲマス、何卒兩案ニ對シ御協賛アランコ
トヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=26
-
027・小山松壽
○議長(小山松壽君) 討論ノ通告ガアリマ
ス、之ヲ許シマス-土屋寛君
〔土屋寛君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=27
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028・土屋寛
○土屋寛君 私ハ只今議題ニナツテ居リマ
ス臺灣米穀移出管理特別會計法案ニ對シ、
立憲民政黨ヲ代表致シマシテ、三箇ノ希望
條項ヲ附ケテ委員長ノ報告ニ贊成ヲ致シマ
ス、玆ニ希望條項ヲ朗讀致シマス
希望條項
戰時下ノ食糧確保ハ緊要事タルヲ以
テ移出米管理ノ實施ニ因リ內外地ヲ通
ズル米穀需給計畫ニ支障ナキヲ期スベ
シ
二、移出米管理ノ實施ト同時ニ糖業令ヲ
發布シ以テ其ノ統制ヲ一層强化シ糖業
ト他產業トノ利益ノ均衡ヲ期スベシ
三、移出米穀ノ買上價格ハ每期時價トノ
差額一石ニ付二圓ヲ超過セザルコトヲ
要ス
斯樣ナ希望條項デアリマス、臺灣總督府ガ
現在ノ國策ニ順應致シマシテ、生產擴充、
資源確保ノ見地ヨリ、臺灣特有ノ氣候風土
ニ適應致シマスル農業資源、卽チ我國唯一
ノ熱帶的農業資源ヲ有スル關係上、米、甘
蔗、黃麻、棉花、苧麻、蓖麻等重要農作物
ノ增產十年計畫ヲ立テマシタ、其ノ增產計
畫ノ一部デアル米ニ關スル統制ノ必要カラ、
本案ハ提出セラレタモノト思ヒマス、條章
僅ニ十四箇條、借入金額モ二千五百万圓ヲ
限度トスルノデアリマシテ、政府竝ニ臺灣
總督府ノ意ノアル所ヲ諒トシテ、玆ニ贊成
ノ意ヲ表スルノデアリマス、併シ本法案ニ
依ツテ影響スル點ガ洵ニ重大デアルト存ジ
マスルガ故ニ、三箇條ノ希望條項ヲ附シテ
贊成ヲ致ス次第デアリマス
希望條項ノ第一ハ、前ニ朗讀ヲ致シマシ
タ通リデアリマスガ、臺灣總督府ノ十年計
畫中、米ノ增產要綱ヲ見マスレバ、十年後
ノ增產計畫、最後ノ年デアリマスガ、米ノ
產額ハ一千百五十二万石トナツテ居リマス、
之ヲ昭和十二年ノ產米ニ比ベマスルト、二
百二十八万石バカリノ增加デアリマス、ソ
シテ一面臺灣島內ノ消費ノ狀況ヲ調ベテ見
マスト、年々其ノ消費量ハ增加致シテ居リ
マシテ、前ニ述べマシタ十年後ノ增產二百
二十八万餘石ノ中カラ相當ノ島內消費ヲ認
メネバナリマセヌ、此ノ消費量ノ推算ハ、臺
灣ノ發展ニ伴ウテ增加ノ計算ヲセネバナリ
マセヌノデアリマスカラ、洵ニ難カシイ計算
デアリマス、併シ從來ノ經過カラ推算致シ
マスレバ、大略生產數量ノ約半額ヲ島內消
費ト認メルコトガ妥當デアルカト考ヘルノ
デアリマス、併シ總督府ノ計算ニ依リマス
ト、半額以上ガ島內ノ消費トナツテ居リマシ
テ、十年後ノ內地ニ移出スル數量ハ五百五十
万石トナツテ居リマス、現在內地ニ移出セラ
レテ居リマスル數量ハ約五百万石デアリマスカ
ラ、是デ十年後ニ增加致シマスル數量ハ五十万
石トナリマシテ、一箇年凡ソ五万石ノ移入增
加ヲ認メラレルノデアリマス、此ノ一箇年
五万石位ノ移入增加量デハ、食糧確保ノ上
ニ於テ聊カ危惧ノ念ヲ生ゼザルヲ得ナイノ
デアリマス、加之戰時ニ於キマシテ格段ニ
消費ガ增加致シテ居ル現狀デアリマス、仍
テ內地ノ米穀需給ノ狀況ニ依リマシテハ、
增產計晝ニ變更ヲ加ヘル場合ガアリマシテ
モ、又作付反別ノ增加、甲當リ收量ノ增產
ナド、內地ノ需要ニ支障ナキヲ期スベキモ
ノデアルト存ジマス、內地ガ凶作ノ場合ニ
外地ヨリ之ヲ補充スルノ已ムナキニ至
リマシタ際、臺灣米ハ農產物增產計畫ノ爲
ニ自然增加ガ抑制セラレ、內地需要ニ不足
ヲ來スガ如キ場合ガアツタト致シマスルナ
ラバ、由々シキ大問題デアリマス、仍テ內
外地ヲ通ズル米ノ需給計畫ニ支障ヲ來スガ
如キコトナキヤウ深甚ノ考慮ヲ拂ハネバナ
リマセヌ、仍テ此ノ希望ヲ附スル次第デア
リマス
第二ノ希望デアリマス、甘蔗ハ臺灣ノ農
作物中米ニ續イテ居ル重要作物デアリマス、
仍テ一方ニ於テハ米、一方ニ於テハ甘蔗ト
云フ、此ノ二大對抗作物トシテ助長發展ヲ
期セナケレバナラヌノデアリマス、斯クス
ル上ニ於テ糖業令ヲ定メルコトハ必然的ナ
コトデアリマス、臺灣總督府ニ於キマシテ
モ目下糖業令ヲ立案中ト聞イテ居リマス、
仍テ米穀管理實施ト竝行シテ糖業令ヲ發布
セラレ、甘蔗ノ栽培區域、作付面積ノ點、
及ビ買上價格ヲ許可制ニスル等、糖業ノ統
制强化ト、糖業ト他ノ有用作物トノ調整ヲ
圖リ、利益ノ均衡ヲ期スベキモノナリトノ
見地ヨリ致シマシテ、此ノ希望條項ヲ附ス
ル次第デアリマス
第三ノ希望ニ移リマス、臺灣總督府ノ計
畫ニ依リマスト、米穀ノ買入ハ作付以前ニ
決定シテ、其ノ價格ヲ發表スルコトニナツ
テ居リマス、右買入ノ價格ハ生產費、物價、
其ノ他ノ經濟事情ヲ參酌シテ、適正ナル米
價タラシメ、之ニ依ツテ農家經濟ノ安定ヲ
期セントスルト共ニ、各種有用作物ノ調和
的增產ヲ圖ラントシ、且ツ賣渡價格ト買入
價格トノ差額ヨリ經費ヲ控除シタル收益ハ
擧ゲテ島內ニ還元シ、農業ノ調整開發及ビ
助長ノ經費ニ充テルノデアリマス、ソコデ
買上價格ハ作付以前ニ發表致シ、其ノ發表
シタル價格ニ依ツテ買上ヲ致シマシテ、之
ヲ內地ニ於テ賣却シテ、其ノ買上價格ト賣
渡價格トノ差額ヨリ經費ヲ引イタ殘リ、其
ノ差益ガ農業調整開發及ビ助長ノ經費ニ當
ルコトトナルノデアリマスガ、買上價格ト
賣渡價格ノ差ヲ二圓ト見積ツテ種々ノ計畫
ガ立テラレテ居リマス、聞ク所ニ依リマス
ト二圓ハ最初ノ年ガ二圓デアツテ、順次四
圓程度マデ取ルノダト云フコトモアルカノ
ヤウニ傳ヘラレテ居ルノデアリマス、市場
ニ於キマシテ色々ナ物ガ賣買セラレマス場
合、物價ハ一定不動ノモノデハアリマセヌ、
常ニ高低アルコトハ何人モ首肯スル所デア
リマス、仍テ收得金ニ限度ヲ附スルコトガ
必要デアラウト存ジマスノデ、二圓ノ程度
ヲ超過セザルコトヲ希望條項中ニ加ヘタ次
第デアリマス
以上至極簡單デアリマスガ、臺灣米穀移
出管理特別會計法案ニ關スル希望條項ノ理
由ノ〓要ヲ申上ゲタ次第デアリマス、且ツ
臺灣事業公債法中改正法律案ニ付テハ何モ
申シマセヌ、贊成ヲ致シマス、是デ私ノ發
言ヲ終リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=28
-
029・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ニテ討論ハ終局致
シマシタ、兩案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=29
-
030・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ兩案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=30
-
031・服部崎市
○服部崎市君 直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開
き、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス
(「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=31
-
032・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=32
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033・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
臺灣事業公債法中改正法律案
第二讀會(確定議)
臺灣米穀移出管理特別會計法案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=33
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034・小山松壽
○議長(小山松壽君) 別ニ御發議モアリマ
セヌ、第三讀會ヲ省略シテ、兩案トモ委員
長報告通リ可決確定致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=34
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035・服部崎市
○服部崎市君 日程第一及ビ第二ハ後廻シ
トセラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=35
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036・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=36
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037・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマス、
仍テ日程第一及ビ第二ハ後〓シト致シマ
ス-日程第三及ビ第四ハ便宜上一括議題
ト爲スニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=37
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038・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマス、
仍テ日程第三、昭和十三年法律第六十四號
中改正法律案、日程第四、朝鮮銀行劵及臺
灣銀行劵ノ保證發行限度ノ臨時擴張ニ關ス
ル法律案、右兩案ヲ一括シテ第一讀會ヲ開
キマス-松村大藏政務次官
第三昭和十三年法律第六十四號中改
正法律案(兌換銀行劵ノ保證發行限
度ノ臨時擴張ニ關スル件)(政府提出)
第一讀會
第四朝鮮銀行劵及臺灣銀行劵ノ保證
發行限度ノ臨時擴張ニ關スル法律案
(政府提出)第一讀會
昭和十三年法律第六十四號中改正法律
案
昭和十三年法律第六十四號中左ノ通改正
ス
「十七億圓」ヲ「二十二億圓」ニ改ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
朝鮮銀行劵及臺灣銀行劵ノ保證發行限
度ノ臨時擴張ニ關スル法律案
朝鮮銀行法第二十二條第二項中一億圓ト
アルハ當分ノ內之ヲ一億六千萬圓トス
臺灣銀行法第九條第二項中五千萬圓トア
ルハ當分ノ內之ヲ八千萬圓トス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法ハ支那事變終了後一年內ニ之ヲ廢止
スルモノトス
〔政府委員松村光三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=38
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039・松村光三
○政府委員(松村光三君) 只今議題トナリ
マシタ昭和十三年法律第六十四號中改正法
律案竝ニ朝鮮銀行券及臺灣銀行劵ノ保證發
行限度ノ臨時擴張ニ關スル法律案ニ付テ說
明致シマス
先ヅ兌換銀行劵ノ保證發行限度ノ臨時擴
張ニ關スル法律中改正法律案ニ付テ說明致
シマス、本法律案ハ支那事變ノ進展ニ伴ヒマ
シテ、兌換銀行劵發行高ノ尙ホ增加ヲ來サ
ントスル趨勢ニ對處スル爲、曩ニ臨時ニ擴
張セラレマシタ兌換銀行劵ノ保證發行限度
ヲ更ニ五億圓擴張シテ、之ヲ二十二億圓ト
爲サントスルモノデアリマス、昨年四月兌
換銀行劵ノ保證發行限度ノ臨時擴張ニ關ス
ル法律ガ施行セラレタノデアリマスガ、其
ノ後ニ於ケル經過ヲ見マスルノニ、事變ノ
進展ト共ニ、一般經濟取引ノ膨脹ニ依リマ
シテ、兌換銀行劵ノ發行高モ增加ヲ來シテ
居リマスノニ加へ、昨年七月日本銀行正貨
準備ヨリ三億圓ヲ割キ、新ニ外國爲替基金
ヲ設定致シタ結果トシテ、右臨時擴張ノ效
果ハ同金額ダケ減殺サレタ關係モアリマシ
テ、昨年十一月以降ニハ屢〓制限外發行ヲ見
ルニ至ツタノデアリマス、而シテ今後ニ於
キマシテモ、事變ニ關聯シテ諸般ノ經濟活
動ハ依然伸張ヲ續ケ、之ニ伴ヒマシテ兌換
銀行劵ノ發行高モ更ニ增加スルモノト考ヘ
ラレマスノデ、此ノ際保證發行限度ヲ臨時
ニ尙ホ相當擴張スルヲ適當ト認メマシテ、
本案ヲ提出致シタ次第デアリマス
次ニ朝鮮銀行劵及臺灣銀行劵ノ保證發行
限度ノ臨時擴張ニ關スル法律案ニ付テ說明
致シマス、朝鮮銀行劵及ビ臺灣銀行劵ノ保
證發行限度ハ、曩ニ昭和十二年九月、之ヲ
ソレ〓〓一億圓及ビ五千万圓ニ擴張致シタ
ノデアリマスガ、其ノ後支那事變ノ進展
ニ因リ、朝鮮及ビ臺灣ニ於ケル一般經濟取
引ハ急激ナル增大ヲ來シ、之ニ伴ツテ朝鮮
銀行劵及ビ臺灣銀行券ノ發行高ハ顯著ナル
增加ヲ示スニ至ツタノデアリマス、而シテ
今後ニ於テモ支那事變ニ關聯シテ朝鮮及ビ
臺灣ニ於ケル通貨ノ需要量ハ更ニ增大シ、
延イテハ朝鮮銀行劵及ビ臺灣銀行劵ノ發行
高モ一層增加ヲ來スモノト認メラレルノデ
アリマシテ、兩銀行劵ノ保證發行限度ヲ現
在ノ儘ニ致シテ置キマストキハ、朝鮮及ビ
臺灣ニ於テ經濟取引上必要トセラレル通貨
ヲ、圓滑ニ供給致シマスル上ニ、支障ヲ生
ズルコトナキヲ保シ難イノデアリマス、斯
樣ナ次第デアリマスノデ、今囘支那事變ニ
關聯スル臨時的措置トシテ、朝鮮銀行劵及
ビ臺灣銀行劵ノ保證發行限度ヲ、ソレノ
六千万圓及ビ三千万圓擴張スルヲ適當ト認
メマシテ、本法律案ヲ提出致シタノデアリ
やく、以上兩件ニ付キマシテ御審議ノ上速
ニ協賛アランコトヲ望ミマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=39
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040・小山松壽
○議長(小山松壽君) 各案ノ審査ヲ付託ス
ベキ委員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=40
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041・服部崎市
○服部崎市君 日程第三及ビ第四ノ兩案ヲ
一括シテ議長指名十八名ノ委員ニ付託サレ
ンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=41
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042・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=42
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043・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第
五、船舶建造融資補給及損失補償法案ノ第
一讀會ヲ開キマス-鹽野遞信大臣
第五船舶建造融資補給及損失補償法
案(政府提出)第一讀會
船舶建造融資補給及損失補償法案
船舶建造融資補給及損失補償法
第一條政府ハ海運業ノ振興ヲ圖ル爲必
要アリト認ムルトキハ船舶建造資金ノ
融通ヲ爲ス金融機關ニ對シ補給金ヲ支
給シ且融通ニ因リテ受ケタル損失ヲ補
償スルノ契約ヲ爲スコトヲ得
前項ノ契約ハ之ニ基キ支給スベキ補給
金ノ總額ガ帝國議會ノ協贊ヲ經タル金
額ヲ超エザル範圍內ニ於テ之ヲ爲スコ
トヲ要ス
第二條前條ノ契約ヲ爲スコトヲ得ル期
間ハ昭和十四年度以降十年度間トス
第三條第一條ノ船舶建造資金及金融機
關ノ範圍、補給金支給ノ限度竝ニ船舶
建造資金ノ融通ヲ受クルコトヲ得ベキ
者ノ範圍ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四條政府ハ第一條ノ契約ヲ爲サント
スルトキハ金融機關ヲシテ船舶建造資
金ノ融通ニ付左ノ各號ニ依ラシムルコ
トヲ要ス
一融通資金ノ償還方法ハ十五年以內
ノ年賦償還ニ依ルコト但シ其ノ期間
內ニ於テ二年以内ノ据置期間ヲ定メ
得ルコト
二融通資金ニ依リテ建造セラルル船
舶ニ第一順位ノ抵當權ヲ設定スルコ
ト但シ船舶建造中ニ在リテハ之ニ代
ヘテ一時他ノ船舶其ノ他ノ物件ヲ擔
保ト爲シ得ルコト
三資金融通ノ限度ハ建造セラルル船
舶ノ擔保價格ヲ超エザルコト但シ政
府ノ認可ヲ受ケ其ノ擔保不足分ニ付
他ノ船舶其ノ他ノ物件ヲ擔保ト爲シ
タルトキハ此ノ限ニ在ラザルコト
四船舶ノ擔保價格ハ當該船舶ノ價格
ノ三分ノ二又ハ保險金額ノ五分ノ四
ノ中其ノ低キモノニ依ルコト
五貸付利率ハ勅令ノ定ムル率ニ依ル
コト
第五條第一條ノ契約ニ基ク政府ノ損失
補償ハ金融機關ガ融通ニ因リテ受ケタ
ル損失ノ百分ノ七十トス
前項ノ損失ヲ決定スル基準ハ政府之ヲ
定ム
第一項ノ損失及其ノ額ハ船舶融資損失
審査會之ヲ決定ス
船舶融資損失審査會ニ關スル規程ハ勅
令ヲ以テ之ヲ定ム
第六條金融機關ハ損失補償ヲ受ケタル
後ト雖モ其ノ債權ヲ保有シ且之ヲ取立
ツルコトヲ要ス
金融機關ハ前項ノ取立ニ依リテ得タル
金額ヨリ債權行使ノ爲要シタル費用ヲ
控除シ其ノ殘額ノ百分ノ七十ニ相當ス
ル金額ヲ政府ニ納付スベシ
第七條第一條ノ契約ニ基キ政府ガ金融
機關ニ對シテ支拂フベキ損失補償金ハ
國債證劵ヲ以テ之ヲ交付スルコトヲ得
第八條政府ハ前條ノ規定ニ依リ交付ス
ル爲必要ナル額ヲ限度トシ公債ヲ發行
スルコトヲ得
第九條本法ニ依リ交付スル國債證劵ノ
交付價格ハ時價ヲ參酌シテ大藏大臣之
ヲルテ
第十條金融機關ガ本法又ハ第一條ノ契
約ニ違反シタルトキハ政府ハ融通資金
ノ全部若ハ一部ニ付補給ヲ爲サズ、損
失ノ全部若ハ一部ニ付補償ヲ爲サズ又
ハ補給金若ハ補償金ノ全部若ハ一部ノ
返還ヲ命ズルコトヲ得
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣鹽野季彥君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=43
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044・塩野季彦
○國務大臣(鹽野季彥君) 只今議題トナリ
マシタ船舶建造融資補給及損失補償法案ノ
提出理由ヲ簡單ニ御說明申上ゲマス
近年我國海運ノ顯著ナル發展ニ伴ヒマシ
テ、優秀ナル商船隊ヲ整備スルコトガ極メ
テ緊要デアルト認メラレマシタノデ、政府
ハ先年來諸般ノ方策ヲ實施シテ、銳意是ガ
實現ニ努メ來ツタノデアリマス、然ルニ現
下ニ於ケル東亞ノ情勢ハ、經濟上ニ於キマ
シテモ、將又軍事上ニ於キマシテモ、急速
ニ我國船腹ヲ擴充スルコトヲ必要トスルニ
至ツテ居ルノデアリマシテ、海運ヲシテ我
ガ國力ノ進展ニ順應セシメマスル爲ニハ
到底現狀ニ晏如タルヲ許サザルノデアリマ
ス、是ガ爲ニハ固ヨリ業界ヲ適切ニ指導ス
ルト共ニ、諸般ノ助長策ヲモ講ズルノ要ア
リト認メラレルノデアリマスガ、我國ニ
於キマシテ最モ其ノ發達ノ遲レテ居リマス
ル海事金融施設ノ蔡備ヲ圖ルコトガ、最
モ急務デアルト首肯セラレルノデアリマ
ス、仍テ玆ニ新ニ船舶建造資金融通制度ノ
確立ヲ圖リマシテ、低利ニシテ且ツ潤澤
ナル資金ヲ供給シテ、船舶ノ建造ヲ計畫的
ニ遂行セシメ、更ニ船價ノ低減ニ依リ本邦
海運ノ對外競爭力ノ根幹ヲ培養セントスル
意圖ヲ以チマシテ、本案ヲ提出シタ次第デ
アリマス、何卒御審議ノ上速ニ御協贊アラ
ンコトヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=44
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045・小山松壽
○議長(小山松壽君)本案ノ審査ヲ付託ス ベキ委員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=45
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046・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ議長指名十八名ノ委
員ニ付託サレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=46
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047・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=47
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048・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=48
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049・服部崎市
○服部崎市君 日程第六ハ後〓シトセラレ
ンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=49
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050・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=50
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051・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程第六ハ後〓シト致シマス-
日程第七、日本產金振興株式會社法中改正
法律案ノ第一讀會ヲ開キマス-八田商工
大臣
第七日本產金振興株式會社法中改正
法律案(政府提出)第一讀會
日本產金振興株式會社法中改正法律案
日本產金振興株式會社法中左ノ通改正ス
第二十五條ニ左ノ二項ヲ加フ
前項ノ規定ニ依リ產金事業ノ振興上必
要ナル命令ヲ爲シタルトキハ政府ハ勅
令ノ定ムル所ニ依リ之ニ因リ生ジタル
損失ヲ補償ス
前項ノ補償ヲ伴フベキ命令ハ之ニ因リ
要スベキ補償金ノ總額ガ帝國議會ノ協
贊ヲ經タル金額ヲ超エザル範圍內ニ於
テ之ヲ爲スコトヲ要ス
第三十條第一項但書中「及當該營業年度
ニ於テ支拂ヒタル產金振興債劵」ヲ「竝ニ
當該營業年度ニ於テ支拂ヒタル產金振興
債劵及借入金」ニ改ム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣八田嘉明君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=51
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052・八田嘉明
○國務大臣(八田嘉明君) 只今議題トナリ
マシタ日本產金振興株式會社法中改正法律
案ニ付テ提案理由ヲ御說明致シマス、時局
ノ進展ニ伴ヒマシテ金ノ重要性ハ愈〓增大ス
ルノミデアリマス、隨ヒマシテ產金事業ノ
振興ニ付キマシテモ、更ニ一段ノ積極的措
置ヲ講ズル必要ガアルノデアリマスルガ、
本法律案ハ其ノ事態ニ卽應スル爲ニ、曩ノ
帝國議會ニ於テ御協賛ヲ得マシタル日本產
金振興株式會社法ヲ改正シテ、同會社ノ事
業ヲ更ニ一層積極ナラシメントスルモノデ
アリマス、改正ノ第一點ハ、政府ガ日本
產金振興株式會社ニ對シ、產金事業ノ振興
上必要ナル命令ヲ爲シタル場合、之ニ因リ
テ損失ヲ生ジタル時ハ、其ノ生ジタル損失
ヲ政府ガ補償セントスルモノデアリマス、
其ノ第二點ハ、日本產金振興株式會社ニ對
スル配當補給金ノ限度ヲ擴張セントスル
モノデアリマス、何レモ同會社ヲシテ徒ニ
其ノ缺損ニ躊躇スルコトナク、其ノ本來ノ設
立目的タル產金事業ノ振興ニ邁進セシメン
トスル趣旨デアリマス、何卒御審議ノ上御
協賛アランコトヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=52
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053・小山松壽
○議長(小山松壽君) 本案ノ審査ヲ付託ス
ベキ委員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=53
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054・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ政府提出昭和十二年
法律第五十七號中改正法律案外一件委員ニ
併セ付託サレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=54
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055・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=55
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056・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=56
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057・服部崎市
○服部崎市君 委員會ニ於テ審議中ノ議案
ノ報告ヲ待ツ爲、此ノ際暫時休憩セラレン
コトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=57
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058・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=58
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059・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ暫時休憩致シマス
午後三時四分休憩
午後三時三十七分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=59
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060・小山松壽
○議長(小山松壽君) 休憩前ニ引續キ會議
ヲ開キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=60
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061・服部崎市
○服部崎市君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ臨第一號、臨時軍事費
豫算追加案ヲ議題ト爲シ、委員長ノ報〓ヲ
求メ、其ノ審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=61
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062・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=62
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063・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
スハ仍テ日程ハ變更セラレマシタ、臨第一
號臨時軍事費豫算追加案ヲ議題ト致シマ
ス、豫算委員長ノ報告ヲ求メマス-豫算
委員長櫻井兵五郞君
(臨第一號)臨時軍事費豫算追加案
報〓書
一(臨第一號)臨時軍事費豫算追加案
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十四年三月九日
豫算委員長櫻井兵五郞
衆議院議長小山松壽殿
〔櫻井兵五郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=63
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064・櫻井兵五郎
○櫻井兵五郞君 只今議題トナリマシタ臨
時軍事費豫算追加案、臨第一號ニ付テ大要
御說明ヲ致シ、併セテ豫算委員會ニ於ケ
ル審査ノ經過ノ〓要竝ニ結果ヲ御報告申上
ゲタイト存ジマス、本追加案ノ金額ハ歲入
歲出共ニ四十六億五百万圓デアリマシテ、
其ノ歲出豫算ノ內譯ハ、陸軍臨時軍事費三
十一億四千三百万圓、海軍臨時軍事費八億
一千二百万圓、豫備費六億五千万圓ト相成
ツテ居リマス、本歲出豫算ハ、事變ノ推移
ニ伴ヒマシテ、其ノ目的達成ノ爲作戰部隊、
艦船等ノ爲ニ要スル凡ソ一箇年間ノ維持費、
其ノ他事變ニ關聯シテ緊切ナル諸施設ヲ爲
スガ爲ニ、必要ナル經費ヲ計上致シタモノ
デアルトノ政府ノ說明デアツタノデアリマス
次ニ歲出豫算ニ付キマシテハ、其ノ財源
ノ大部分ハ公債ニ依ルモノデアリマシテ、
卽チ公債及繰替借入金三十九億二千四百餘
万圓デアリマス、公債金以外ノ歲入ハ六億
八千九十餘万圓、其ノ內一般會計ヨリノ繰
入金ガ五億三千五百十餘万圓、各特別會計
ヨリノ繰入金ガ一億二千六百六十餘万圓、
其ノ他北支事件費財源受入、軍事費獻納
金及ビ臨時軍事費特別會計ニ屬スル物品
ノ拂下代等デアルトノ政府ノ說明デアツタ
ノデアリマス
本追加豫算案ハ三月二日夕刻本院ニ提出
セラレタノデアリマスガ、豫算委員會ハ翌
三月三日直チニ開會致シマシテ、政府ノ說
明ヲ求メ、審査ヲ開始致シ、爾來會議ヲ開
キマスコト五囘、本日午後三時審査ヲ終了
致シタノデアリマス、今其ノ審査ニ當ツテノ
質疑應答ノ〓要ヲ申上ゲマスレバ、其ノ質
疑ノ第一點ハ、臨時軍事費ガ昨年ニ比シテ
大差ガナイデハナイカ、作戰兵力維持ノ經
費モ、昨年ノ支出ト大差ナシトノ說明デア
ルガ、併シ昨年ハ徐州ノ大會戰ト云ヒ、漢
口ノ大攻略戰ト云ヒ、アノ大消耗ヲ要スル
大會戰ガアツタノデアルガ、ソレニ引換へ
今年ハ左樣ナ金ノ掛ル大會戰ハナイ筈デア
ル、隨テ支出ノ狀況モ減少スベキ筈デアル
ノニ、支出ニ大差ナシトハ如何ナル理由ニ
依ルノデアルカトノ問ニ對シマシテ、陸軍
大臣ヨリ、大會戰ハナイガ、併シ占領地ノ
治安確保ノ爲相當ノ戰鬪ヲ繼續シテ居ル、
隨テ其ノ消耗累積モ大デアル、又十三年度
豫算ハ、實ハ實際ニ卽シテ少カツタ爲ニ非
常ニ苦心シ、蓄積準備モ相當使ツタ等ノ關
係ガアルガ、將來消耗ガ一層減レバ、支出
モ減少スル筋合デアルトノ答辯デアリマシ
タ、質疑ノ第二點ハ、內地ノ常備師團ノ相
當ノ部分ヲ滿支ノ間ニ移駐セシムル考ハナ
イカ、又長期建設ニ對應スル國內經濟力充
實ノ點カラ、新銳ナル現役兵ヲ現地ニ送ツ
テ、一家ノ主人トモナルベキ豫備兵ノ人ヲ
成ベク國內ニ留メル考ハナイカトノ問ニ對
シ、板垣陸軍大臣ハ、第一ノ點ハ今後ノ傾
向カラスレバ、大體其ノヤウナコトニナル
ト思フ、又第二ノ點ハ、是ハ現ニ長ク彼地
ニ居ル者及ビ特ニ年ヲ取ツタ兵隊カラ、逐
次新銳ナル部隊、若クハ兵員ニ交代セシム
ルヤウ實施シテ居ルトノ答辯ガアリマシタ、
次ニ質疑ノ第三點ハ、帝國不動ノ方針ハ既
ニ確定シ、特殊結合地帶ノ爲、或ハ又治安
助成ノ爲、或ハ更ニ共同防共目的達成ノ
爲相當廣範圍ノ地域ニ駐兵ヲ必要トスル
コトト思フガ、其ノ地域ノ範圍ハ如何、又
其ノ駐兵ニ對シテハ速ニ兵舍等恆久的設備
ヲ爲スベキデハナイカトノ問ニ對シ、政府
ハ駐兵地域ハマダ將來ノ動キモアルコト故、
玆ニ直チニ確定發表ハ出來ヌ、併シ兵舍等
ニ關シテハ、處ニ依リ著々恆久設備ヲ進メ
テ居ルトノ答辯デアリマシタ、質疑ノ第四
點ハ、此ノ大軍事豫算ノ消化ノ角度、竝ニ
東亞經濟協同體系內ニ於ケル資材獨立性
ノ觀點ヨリスル生產擴充ノ問題デアリマシ
タ、生產擴充ガ果シテ計畫目標通リニ年
度割デ實現出來ルノデアルカドウカ、現ニ
或ル製鐵會社デハ昨年第四期計畫トシテ七
百瓲爐ガ四基出來タガ、石炭ガ無クテ火
ガ入ラヌ、然ルニ本年亦如何ニ既定ノ
計畫トハ云ヘ、前ノ四基ガ遊ンデ居ルノニ、
更ニ七百瓲爐四基ノ工事ヲ進メテ、鐵ヲ集
メテ建築ヲヤルヤラ騒ギヲシテ居ル、是ハ
寧ロ妥當ナ方策トシテハ、爐ノ建設一部ヲ
停止シテ、其ノ資材資金ヲ石炭ノ選炭設備
等ニ振向ケ、生產擴充關係ノ均勢ヲ取ルベ
キデハナイカ、若シ斯ノ如キ事例ガ幾多ノ
方面種類ノ事業ニ重ツテ生產擴充ニ齟齬ヲ
來シタ場合、抑、豫算ノ消化ガドウナルノデ
アルカ、豫算ノ實行不能ニ對スル部分ニ對
シ、其豫算ニ豫期シタ軍備等ノ目的ガドウ
ナルノデアルカ、物動計畫ニ於テモ亦同樣
デアル、豫算ガ出來テ居ルノニ、其ノ基礎
的關係ニアル物動計畫ハ、今月一杯ヲ以テ
昭和十三年度生產ニ對スル昭和十六年度ノ生產增加割合
普通鋼約六割
鋼塊約六割
鐵鑛石約二倍半
アルミニウム割倍
銅約約數八
亞鉛七割
自動車揮發油
天然約三割
人造約三十倍
無水アルコール十三倍强
ソ1ダ灰約二割
工業鹽約六倍半
製紙用パルプ約二割
約二倍强
機金約二割五分
關車
貨約五割
自車車倍
動約五
完成スルト云フ、寔ニ憂慮ニ堪ヘナイトノ
意味ノ質問ガアリマシタ、之ニ對シ政府ハ、
一時的現象トシテハ左樣ナコトモアツタト
思フガ、今後ハ綜合計畫ノ下ニ萬遺漏ナキ
ヲ期シ、產業全體トシテ均勢ヲ取ツテ、齟
齬ノナイヤウニ努メルトノ答辯デアリマシ
タ、又一方抑〓生產擴充、物動計畫ニ對シ、
國民ガ不安ヲ抱クノハ政府ノ祕密主義ニ禍
ヒサルルノデアル、政府ハ思切ツテ是等ノ
計畫內容ヲ明ニシ、一ハ以テ國民ト共ニ協
力シテ目標ニ邁進スルコトトシ、他ハ以テ
如何ニ日本ノ經濟力內容ガ强力デアリ、且
ツ大ナル將來性ガアルカヲ世界ニ知ラシ
メ、以テ不當ノ輕侮ヲ避クベキデアルトノ
强キ委員ノ質疑ニ對シ、政府ハ從來ノ方針
ヲ一新シテ、左ノ如ク生產擴充計畫ノ內容
ヲ數量デナク、割合ヲ以テ示サレタノデア
リマス、卽チ其ノ內容ハ
特殊鑛及鍛鑄鋼二
銑鐵二
石炭
マグネシウム約約約約約約井倍割倍割倍倍
九
重錫鉛二
人天造然油約四割
約九倍
苛性ソーダ約四割
硫安約三割
人絹用パルプ約、清野
工作機械約二倍六割
羊客車約七割
毛約三倍四割
尙ホ昭和十六年度末ニ於テ日滿支ヲ通ジ大
體自給自足シ得ル品物ハ鐵鋼、石炭、輕金
屬、亞鉛、曹達、硫安、「パルプ」、鐵道車輛〓、
船舶、自動車、以上デアリマスルガ、政府
ハ更ニ之ニ說明ヲ加ヘマシテ、此ノ生產擴
充實現ノ曉ニ於キマシテハ、我ガ經濟力竝
ニ國防力ハ全ク面目ヲ一新スルトノ附言ヲ
セラレタノデアリマス、質疑ノ第五點ハ
豫算ヲ中心トシテノ物價問題デアリマス、
物價ガ騰勢ニ移ツテ、ドシ〓〓諸物價ガ奔
騰スル場合アリト致シマスレバ、豫算モ實
行出來ズ、國防計畫モ畫餅ニ等シイ、昭和
十二年ノ陸海軍ノ國防計畫ヲ前提トシテ、
物價ハ二割近ク奔騰シタガ、然ルニ一昨年
末ノ大豫算ノ使用ニ拘ラズ、其ノ騰勢ヲ一
割ニ止メ得タト云フコトハ、兎モ角モ近來
ノ物價抑制諸政策ノ賜デアル、併シナガラ
近來ノ諸情勢ハ、決シテ從來ノ手竝ヲ以テ
シテハ安心ガ出來ナイ、而モ此ノ重大ナル
物價問題ヲ、獨リ其ノ責任ヲ物價委員會ニ
ノミ委セントスルガ如キモ、政府自ラ今少
シク其ノ責任ヲ痛感スベキデハナイカトノ
問ニ對シ、政府ハ物價委員會ヲ强化シテ、
眞ニ適切ナル對策ヲ講究スルト共ニ、購買
力吸收ニ付テハ、公債及ビ貯蓄奬勵ノ外增
稅案ニ依リ、卽チ所得ノ增加シツツアル方
面ニ對スル直接負擔ノ增加、及ビ間接的方
法トシテハ、物品稅其ノ他ニ依ツテ物價問
題ノ一面ヲ正シ、他面ニ於テハ物資ノ需給
關係ヲ緩和シテ、極力其ノ弊害ヲ除去セン
トスル考デアルト云フ意味ノ答辯ガアツタ
ノデアリマス、質疑ノ第六點ハ、勞働力ノ
確保ノ問題、軍工廠ヨリ民間工場ノ高率賃
銀是正ノ問題、軍需製造品單價引下、及ビ
其ノ原料ノ價格引下、統制等ノ問題デアリ
マシタガ、之ニ對シマシテ政府ハ、現在ノ
所軍工場ニ於テハ政府ハ勞働力ノ大シタ不
足ハ感ジテ居ラヌ、賃銀ハ官民通ジテ均勢
ヲ保チタイガ、具體案ハ目下考究中デアル、
單價ノ引下ハ常ニ怠ツテハ居ラヌ、原料ノ
價格ニ付テハ特ニ注意ヲ拂ヒタイ等ノ答辯
ガアリマシタ、其ノ他蔣政權壞滅ノ問題、
防共協定强化ノ問題、政府部內意見統一ノ
問題等ガアリマシタガ、詳細ノコトハ速記
錄ニ依ツテ御諒承ヲ願ヒタイノデアリマス
之ヲ要シマスルニ質疑ヲ通ジテ現ハレマ
シタ所ノ委員諸君ノ總意ハ、正ニ新段階ニ
入ツタ事變ノ處理竝ニ建設ニ對シマシテ、
本豫算ヲ通ジテ誤リテキヲ期サシメタイ、
而シテ以テ眞ニ東亞ニ對スル我ガ民族的ノ
大使命ヲ達成セシメタイトノ熱誠ノ現ハレ
デアツタノデアリマス、之ニ對シマシテ政
府モ亦極メテ眞摯ノ態度ヲ以テ所信ノ披瀝
ニ努メラレタノデアリマス、總會モ終リニ
近付キマシタ昨八日午後ニ至リマシテ、政
府ハ各委員ノ質疑ノ一部ニ對シ、屢〓適當ノ
機會ニ於テ答辯スルト申シテ居リマシタソ
レ等ノ諸點ニ關シ、政府ヨリ祕密會ニ於テ
答辯シタイトノ申出ガアツタノデアリマス、
仍テ昨日午後四時ヨリ八時マデヲ祕密會ト
致シマシテ、政府ノ答辯ヲ聽キ、更ニソレ
ニ對シ原口君及ビ山道君ノ質疑ガアリマシ
タガ、遺憾ナガラ祕密會ニ於ケル經過ヲ申
上ゲル自由ヲ有シナイノデアリマス
斯クテ委員會ハ本日午前中質疑ヲ終了致
シ、午後二時半臨時軍事費豫算追加案ヲ、
他ノ共ニ議題トナツテ居リマシタ案件ト切
離シ討議ニ付シ、此ノ討論ニ於キマシテ立
憲民政黨ノ中山福藏君、立憲政友會ノ川島
正次郞君、第一議員倶樂部ノ永山忠則君、
社會大衆黨ノ山崎釼二君、第二控室ノ田中
耕君、東方會ノ渡邊泰邦君ノ諸君ヨリ各〓所
屬會派ヲ代表セラレマシテ贊成ノ旨ノ發言
ガアリマシタ、仍テ採決ニ入リ、原案贊成
ノ諸君ノ起立ヲ求メマシタ所、起立總員、
卽チ全會一致可決サレタノデアリマス、此
段御報告申上ゲル次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=64
-
065・小山松壽
○議長(小山松壽君) 採決致シマス、本案
ノ委員長報告ハ可決デアリマス、本案ヲ委
員長報告ノ通リ決スルニ贊成ノ諸君ノ起立
ヲ求メマス
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=65
-
066・小山松壽
○議長(小山松壽君) 起立總員
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=66
-
067・小山松壽
○議長(小山松壽君) 仍テ本案ハ全會一致
可決確定致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=67
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068・服部崎市
○服部崎市君 曩ニ後〓シト爲シタル日程
第一ヲ此ノ際上程セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=68
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069・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=69
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070・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、日程第一、映畫法案、第一讀會ヲ開キ
マス-內務大臣木戶幸一君
第映畫法案(政府提出)第一讀會
映畫法
映畫法案
第一條本法ハ國民文化ノ進展ニ資スル
爲映畫ノ質的向上ヲ促シ映畫事業ノ健
全ナル發達ヲ圖ルコトヲ目的トス
第二條映畫ノ製作又ハ映畫ノ配給ノ業
ヲ爲サントスル者ハ命令ノ定ムル所ニ
依リ主務大臣ノ許可ヲ受クベシ
前項ニ規定スル映畫製作業及映畫配給
業ノ範圍ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三條前條第一項ノ許可ヲ受ケタル者
死亡シタル場合ニ於テ其ノ業ヲ相續ニ
因リテ承繼シタル者ハ之ヲ同項ノ許可
ヲ受ケタル者ト看做ス
第四條主務大臣ハ第二條第一項ノ許可
ヲ受ケ映畫ノ製作ノ業ヲ爲ス者(映畫製
作業者)又ハ同項ノ許可ヲ受ケ映畫ノ配
給ノ業ヲ爲ス者(映畫配給業者)本法若
ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基
キテ爲ス處分ニ違反シタルトキ又ハ其
ノ業務ニ關シ公益ヲ害スル行爲ヲ爲シ
タルトキハ其ノ業務ノ停止若ハ制限又
ハ其ノ許可ヲ取消ヲ爲スコトヲ得
第五條映畫製作業者ノ映畫ノ製作ニ關
シ業トシテ主務大臣ノ指定スル種類ノ
業務ニ從事セントスル者ハ命令ノ定ム
ル所ニ依リ登錄ヲ受クベシ但シ十四歲
未滿ノ者ハ此ノ限ニ在ラズ
第六條主務大臣ハ前條ノ登錄ヲ受ケタ
ル者其ノ品位ヲ失墜スベキ行爲ヲ爲シ
タルトキ其ノ他同條ノ規定ニ依ル當該
種類ノ業務ニ從事スルヲ適當ナラズト
認メタルトキハ其ノ業務ノ停止又ハ其
ノ登錄ノ取消ヲ爲スコトヲ得
第七條映畫製作業者ハ命令ヲ以テ定ム
ル場合ヲ除クノ外第五條ノ規定ニ依ル
登錄ヲ受ケザル者ヲ同條ノ規定ニ依ル
當該種類ノ業務ニ從事セシムルコトヲ
得ズ前條ノ規定ニ依ル業務停止中ノ者
ニ付亦同ジ
第八條行政官廳ハ危害豫防、衞生其ノ
他公益保護上必要アリト認ムルトキハ
命令ノ定ムル所ニ依リ映畫製作業者ニ
對シ映畫ノ製作ノ現業ニ從事スル者ノ
就業其ノ他映畫ノ製作ニ關シ制限ヲ爲
スコトヲ得
第九條映畫製作業者主務大臣ノ指定ス
ル種類ノ映畫ヲ製作セントスルトキハ
撮影開始前命令ノ定ムル事項ヲ主務大
臣ニ屆出ヅベシ屆出ヲ爲シタル事項ノ
主タル部分ヲ變更シタルトキ亦同ジ
主務大臣ハ公安又ハ風俗上必要アリト
認ムルトキハ前項ノ規定ニ依リ屆出ヲ
爲シタル事項ノ變更ヲ命ズルコトヲ得
第十條主務大臣ハ特ニ國民文化ノ向上
ニ資スルモノアリト認ムル映畫ニ付選
奬ヲ爲スコトヲ得
第十一條主務大臣ハ公益上特ニ保存ノ
必要アリト認ムルトキハ映畫ヲ指定シ
其ノ所有者ニ對シ複寫ノ爲、一時其ノ
提出ヲ命ズルコトヲ得
第十二條主務大臣ハ必要アリト認ムル
トキハ命令ノ定ムル所ニ依リ映畫配給
業者ニ對シ外國映畫ノ配給ニ關シ其ノ
種類又ハ數量ノ制限ヲ爲スコトヲ得
第十三條映畫ハ命令ノ定ムル所ニ依リ
行政官廳ノ檢閱ヲ受ケ合格シタルモノ
ニ非ザレバ之ヲ輸出スルコトヲ得ズ
主務大臣ハ特別ノ事情アル場合ニ於テ
ハ前項ノ檢閱ニ合格シタル映畫ノ輸出
ノ制限又ハ禁止ヲ爲スコトヲ得
第十四條映畫ハ命令ノ定ムル所ニ依リ
行政官廳ノ檢閱ヲ受ケ合格シタルモノ
ニ非ザレバ公衆ノ觀覽ニ供スル爲之ヲ
上映スルコトヲ得ズ
前條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ
準用ス
第十五條主務大臣ハ命令ヲ以テ映畫興
行者ニ對シ國民〓育上有益ナル特定種
類ノ映畫ノ上映ヲ爲サシムルコトヲ得
行政官廳ハ命令ノ定ムル所ニ依リ特定
ノ映畫興行者ニ對シ啓發宣傳上必要ナ
ル映畫ヲ交付シ期間ヲ指定シテ其ノ上
映ヲ爲サシムルコトヲ得
第十六條主務大臣ハ必要アリト認ムル
トキハ命令ノ定ムル所ニ依リ映畫興行
者ニ對シ外國映畫ノ上映ニ關シ其ノ種
類又ハ數量ノ制限ヲ爲スコトヲ得
第十七條行政官廳ハ危害豫防、衞生、
〓育其ノ他公益保護上必要アリト認ム
ルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ映畫興
行者其ノ他映畫ノ上映ヲ爲ス者ニ對シ
興行時間、映寫方法、入場者ノ範圍其
ノ他映畫ノ上映ニ關シ制限ヲ爲スコト
ヲ得
第十八條主務大臣ハ公益上特ニ必要ア
リト認ムルトキハ映畫製作業者、映畫
配給業者又ハ映畫興行者ニ對シ製作ス
ベキ映畫ノ種類若ハ數量ノ制限、映畫
ノ配給ノ調整、設備ノ改良又ハ不正競
爭ノ防止ニ關シ必要ナル事項ヲ命ズル
コトヲ得
第十九條本法施行ニ關スル重要事項ニ
付主務大臣ノ諮問ニ應ズル爲映畫委員
會ヲ置ク
映畫委員會ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ
之ヲ定ム
第二十條行政官廳ハ當該官吏ヲシテ映
畫ヲ製作シ又ハ上映スル場所ニ臨檢セ
シムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ其ノ
身分ヲ示ス證票ヲ携帶セシムベシ
行政官廳ハ映畫製作業者、映畫配給業
者又ハ映畫興行者ニ對シ其ノ業務ニ關
スル事項ニ付報〓ヲ命ズルコトヲ得
第二十一條第二條第一項ノ規定ニ依ル
許可ヲ受ケズシテ映畫ノ製作又ハ映畫
ノ配給ノ業ヲ爲シタル者ハ六月以下ノ
懲役又ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十二條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
-第四條ノ規定ニ依ル停止又ハ制限
ニ違反シタル者
二第八條、第十二條、第十六條又ハ
第十七條ノ規定ニ依ル制限ニ違反シ
タル者
三第十三條第一項ノ規定ニ違反シ又
ハ同條第二項ノ規定ニ依ル制限若ハ
禁止ニ違反シテ映畫ヲ輸出シ又ハ輸
出セントシタル者
四第十四條第一項ノ規定ニ違反シ又
ハ同條第二項ノ規定ニ依ル制限若ハ
禁止ニ違反シタル者
五第十五條又ハ第十八條ノ規定ニ依
ル命令ニ違反シタル者
六第二十條第一項ノ規定ニ依ル臨檢
ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ同條第
二項ノ規定ニ依ル報告ヲ爲サズ若ハ
虛僞ノ報告ヲ爲シタル者
第二十三條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第五條ノ規定ニ依ル登錄ヲ受ケズ
シテ業トシテ同條ノ規定ニ依ル當該
種類ノ業務ニ從事シタル者
二第六條ノ規定ニ依ル停止ニ違反シ
タル者
三第七條ノ規定ニ違反シタル者
四第九條第一項ノ規定ニ依ル屆出ヲ
爲サズシテ映畫ノ撮影ヲ開始シタル者
五第十一條ノ規定ニ依ル命令ニ違反
シタル者
第二十四條映畫ノ製作若ハ映畫ノ配給
ノ業ヲ爲ス者又ハ映畫興行者其ノ他映
畫ノ上映ヲ爲ス者ハ其ノ代理人、戶主、
家族、同居者、雇人其ノ他ノ從事者ガ
其ノ業務ニ關シ第二十一條、第二十二
條第一號乃至第五號若ハ第六號後段又
ハ前條第三號乃至第五號ノ違反行爲ヲ
爲シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ
故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第二十五條第二十一條、第二十二條第
一號乃至第五號及第六號後段竝ニ第二
十三條第三號乃至第五號ノ罰則ハ其ノ
者ガ法人ナルトキハ理事、取締役其ノ
他ノ法人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未
成年者又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法
定代理人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ
成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者
ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第二十六條前二條ノ場合ニ於テハ懲役
ノ刑ニ處スルコトヲ得ズ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニ第二條ニ規定スル映畫
ノ製作若ハ映畫ノ配給ノ業ヲ爲ス者又ハ
其ノ業ヲ承繼シタル者ハ本法施行ノ日ヨ
リ一年ヲ限リ同條第一項ノ規定ニ拘ラズ
引續キ其ノ業ヲ爲スコトヲ得
前項ノ者前項ノ期間內ニ第二條第一項ノ
許可ヲ申請シタル場合ニ於テ其ノ申請ニ
對スル許可又ハ不許可ノ處分ノ日迄亦前
項ニ同ジ
前二項ノ規定ニ依リ其ノ業ヲ爲ス者ハ之ヲ第
二條第一項ノ許可ヲ受ケタル者ト看做ス
本法施行ノ際現ニ業トシテ第五條ノ規定
ニ依ル當該種類ノ業務ニ從事スル者ハ本
法施行ノ日ヨリ六月ヲ限リ同條ノ登錄ヲ
受ケズシテ引續キ業トシテ其ノ業務ニ從
事スルコトヲ得
第四項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
〔國務大臣侯爵木戶幸一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=70
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071・木戸幸一
○國務大臣(侯爵木戸幸一君) 只今議題ト
ナリマシタ映畫法案ニ付キマシテ提出ノ理
由ヲ御說明申上ゲマス
我國ニ映畫ガ初メテ輸入セラレマシテカ
ラ、四十年ノ日時ヲ經過シテ居リマスルガ、
其ノ間映畫ノ普及發達ハ寔ニ著シキモノガ
アリマス、國民娛樂トシテ最モ重要ナル地
位ヲ占ムルニ至リマシタノミナラズ、最近
ニ於キマシテハ〓化、宣傳、報道等ノ方面
ニ於テモ次第ニ顯著ナル機能ヲ發揮シ、更
ニ進ンデ國民藝術トシテ新ナル分野ヲ開拓
セントスル機運ニアルノデアリマシテ、映
畫ノ有スル國家的任務ハ愈〓重大トナツテ
來タノデアリマス、然ルニ從來我國ノ映畫
ニ對スル政策ハ、遺憾ナガラ〓ネ消極的範
圍ヲ出ナイ有樣デアリマシテ、之ヲ積極的
ニ利用、助長スル方策ニ缺ケテ居リマシタ
爲、我國ノ映畫事業ニハ、其ノ製作、配給、
上映ノ各部門ニ亙リ幾多改善ヲ要スベキモ
ノガアリマスルシ、又映畫ノ內容ニ付キマ
シテモ、相當考慮ヲ要スベキモノガ少クナ
イ狀況デアリマシテ、映畫ヲ通ジ國民文化
ノ進展ヲ期スルガ爲ニハ、速ニ是等ノ點ニ
付テ適切ナル方策ヲ講ズルコトヲ必要トス
ル次第デアリマス、斯樣ナ實情ニ鑑ミ、旣
ニ數、年前ヨリ屢ハ各方面カラ政府ニ對シ、
急速ニ映書國策ヲ樹立實行スベキコトヲ要
望セラレ、又貴衆兩院ニ於キマシテモ、其
ノ趣旨ノ建議、請願等ガアツタノデアリマ
シテ、內務省ニ於キマシテハ、豫テヨリ文
部省、厚生省ト協議ヲ重ネマシタ結果、玆ニ
本案ヲ提出スルニ至ツタ次第デアリマス
本案ノ内容中主ナル事項ヲ申上ゲマスレ
バ、先ヅ映畫製作業及ビ映畫配給業ノ濫立
ヲ防止シ、其ノ內容ノ充實ヲ圖ル爲之ヲ許
可事業トシ、映畫ノ質的向上ヲ期スル爲映
畫製作從事者ノ登錄制度ヲ實施シ、危害豫
防衞生、〓育、其ノ他公益保護ノ必要ヨ
リ、映畫ノ製作又ハ上映ニ付キ制限ヲ爲シ、
國民文化ノ向上ニ資スル映畫ノ出現ヲ促ス
爲選奬ノ制度ヲ設ケ、外國映畫ノ及ボス影
響ヲ是正スル爲其ノ配給竝ニ上映ニ付制限
ヲ爲シ、國民〓育又ハ啓發宣傳ノ目的ヲ達
スル爲映畫ノ上映ヲ命ジ、公益上ノ必要ニ
依リ映畫製作數量ノ制限、映畫配給ノ調整
等ニ關スル必要ナル命令ヲ發シ得ルコトト
シ、又本法施行ニ關スル重要事項ニ關スル
諮問機關トシテ映畫委員會ヲ設置スルコト
ト致シマスル等、映畫ノ質的向上ヲ促シ、
映畫事業ノ健全ナル發達ヲ圖リ、以テ國民
文化ノ進展ニ資スル爲、必要ト認メラレマ
スル事項ヲ規定致シタノデアリマスガ、尙
ホ詳細ノ點ニ關シマシテハ、委員會ニ於テ
御說明申上ゲタイト存ジマス、何卒十分御
審議ノ上、本案ニ對シ速ニ御協贊アランコ
トヲ切望スル次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=71
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072・小山松壽
○議長(小山松壽君) 質疑ノ通〓ガアリマ
ス、順次之ヲ許シマス-村松久義君
〔村松久義君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=72
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073・村松久義
○村松久義君 私ハ只今上程ノ映〓法ニ關
シ二三ノ質疑ヲ致シタイト存ジマス、只今
ノ提擧理由ノ說明ニアリマスル如クニ、映
畫ガ我國ニ輸入セラレマシテヨリ、旣ニ約
四十年ヲ經過致シテ居ルノデアリマス、然
ルニ此ノ間有識階級ヨリハ蔑視虐待ヲセラ
レツツモ、兒童ノ優待ヲ受ケツツ次第ニ隆
盛ヲ見ルニ至リ、遂ニ父兄ノ觀客ヲモ誘致
スルニ至リマシテ、今日ノ非常ナル盛況ヲ
見ルニ至ツタノデハアリマスケレドモ、今
日ニ至リマシテモ、尙ホ映畫蔑視ノ風潮ノ
絕エザルコトハ、洵ニ奇異ノ感ニ打タレザ
ルヲ得ヌノデアリマス、此ノ事ハ、日本ノ
映畫ノ技術ノ問題ハ姑ク措クト致シマシテ、
固ヨリ內容ノ發展ガ十分デナカツタト云フ
コトニ一ツノ原因ハアリマスルケレドモ、
其ノ根本ニ於キマシテハ、有識階級ガ映畫
ノ眞價ヲ究メズ、其ノ文化的、國家的使命
ヲ認識シ、映畫ノ向上發展ノ爲ニ助長援助
スル代リニ、却テ之ヲ壓迫シ、或ハ少クト
モ棄テテ顧ミザルガ如キコトガ、其ノ原因
ノ大ナルモノヲ成シテ居ルト言ハナケレバ
ナラヌノデアリマス、漸ク本日ニ至ツテ此
ノ映畫法案ノ上程ヲ見ルニ至ツタノデアリ
マシテ、此ノ意味ニ於テハ私ハ欣幸ニ堪ヘ
ザル所デハアリマスルガ、其ノ法案制定ノ
理由ノ堂々タルニ引替ヘテ、內容ノ局部末
梢的ナル法案ノ提出ヲ見マシタコトハ、恰
モ提案ノ理由ノ制定者ト、法案內容ノ作製
者トガ別世界ノ人ニ屬スルガ如キ印象ヲ與
ヘルノデアリマス(拍手)詳細ニ玆ニ讀上ゲ
マスコトハ省略致シマスガ、提案ノ理由ニ
ハ、映畫ノ國家的任務ハ愈。重要性ヲ加ヘ
テ來テ居ルト云フ
〔議長退席、副議長著席〕
然ルニ其ノ內容ニ於テハ、其ノ重要性ヲ忘
レタルガ如キ、極メテ皮相的ナ、貧弱ナル
內容ヲ有シテ居ルト云フコトハ、一體政府
ハ映畫ニ對シテ那邊マデ認識ヲセラレテ居
ルカ、又映畫ノ文化的、國家的使命ニ對シ
テ、如何ナル認識ヲ持ツテ立案セラレタル
モノデアルカヲ疑ハザルヲ得ナイノデアリ
マン、私ノ映畫ニ對シテ理解致シテ居リマ
スルコトヲ簡單ニ申上ゲマスレバ、斯樣ニ
ナルノデアリマス
十九世紀ニ生レテ二十世紀ノ人類ニ引繼
ガレタル所ノ思想、感情ノ新シイ表現機關
ガ實ニ映畫デアツテ、言語、繪畫、文字等
ノ遠ク企テ及ブコトノ出來ナイ新天地ヲ形
成致シテ居ルモノガ映畫デアルト考ヘテ居
リマスルガ、若シ國家ガ之ヲ眞ニ支配シ利
用シテ行クコトノ方法如何ニ依リマシテ
ハ、其ノ人生ニ及ボス寄與ノ實ニ重大ナル
コトヲ思ハザルヲ得ナイノデアリマス、例
ヘバ映畫ハ民族ヲ超越致シテ居ル、言語ノ
相違ヲ克服シテ、力强ク一切ノ人類ニ平等
ニ呼ビ掛ケル力ヲ持ツテ居ルノデアルガ、
空間的ニモ時間的ニモ極メテ自由性ヲ有シ
テ居ルノデアリマスルカラ、若シ新東亞建
設ニ當ツテ、第一線ニ之ヲ立テテ行クコト
ニナリマスルナラバ、其ノ效果ノ偉大ナル
コトハ、申上ゲルマデモナイト思フノデア
リマス(拍手)國家總動員ニ際シマシテ、眼
ヲ以テ直接愬ヘテ行クト云フ、此ノ映畫
ヲ採用致シテ參リマスルナラバ、精神總動
員ノ際ニ行ハルル百囘ノ講演會ヨリモ、
本ノ「フイルム」コソ、偉大ナル力ヲ發揮ス
ルモノデアルト思フノデアリマス(拍手)今
ヤ歐米各國、伊太利、獨逸、佛蘭西、其
ノ他ノ國々ニ於キマシテハ、相競ツテ映
畫國策ナルモノヲ樹立致シテ、或ハ國立
ノ映畫製作所ヲ設立シ、或ハ國立ノ映畫
協會ヲ設ケマシテ、其ノ組織ヲ强化シ、其
ノ機構ヲ嚴ニシテ、內政ニ、外交ニ、第一
線ニ立タシメテ居ルノデアリマスルガ、私
各國ノ完備セル映畫法ニ關シテ、之ヲ檢討
スル時間ヲ有シマセヌガ、例ヘバ今囘ノ日
支事變ニ於テ、我國ハ軍事的ニハ大成功ヲ
シテ居ツタノデアルガ、宣傳ノ戰ニ於テハ
慘敗ヲ喫シテ居ル、其ノ原因ハ固ヨリアリ
マスルケレドモ、根本ノ原因ト致シマシテ
ハ、先ヅ支那ニ於ケル完備セル映畫法ト、
國立ノ中央電影院ノ組織トヲ比較シテ見ル
ガ宜シイノデアリマス、現ニ提案セラレマ
シタル所ノ本案ト、其ノ優劣ノ差ノ極メテ
甚シキモノヲ發見スルノデアリマスルガ、私
共ハ此ノ本案ノ內容ニ於テ、現在ノ不健全
ナル興行映畫界ノ基礎ノ上ニ、不健全ナル
機構ト內容ヲシカ有シテ居ラナイ興行映畫
界ノミヲ目標トシテ、些少ナル是正ヲ加ヘ
ントスルダケノ本法案、此法案ヲ見マシタ
ル場合ニ、映畫ノ重要性ヲ認識致シテ居リ
マスル人々ハ正ニ啞然タルモノガアツタ
ノデアリマス、政府ハ斯ノ如キ法案ヲ提出
セラルルニ當リマシテハ根本ニ於テ映畫
ノ重要性ヲ認識シタル所ノ、映畫國策トモ
稱スベキ大方針ヲ先ヅ樹立シナケレバナラ
ヌ筈デアリマス、其ノ大方針ガ樹立セラレ
テ居ルノデアルカドウカ、セラレテ居ルト
スルナラバ、其ノ內容ヲ承ツテ審議ニ入リ
タイト思フノデアリマス
次ニ私ハ一ツノ假定ヲ設ケテ質シテ見タ
イト存ジマスガ、今假ニ百班或ハ二百班ノ
映畫班ヲ拵ヘテ、之ニ適切ナル映畫ノ數本
ヲ與ヘル、東亞新建設ニ際シテ、第一線ニ
活躍セシムルコトヲ想像致シテ見マスルナ
ラバ、其ノ效果ノ偉大ナル何人モ異議ヲ挿
ム者ハナイト信ジマス、此ノ事ハ望マシイ
コトデアルガ、併シ我國ノ現狀ヲ以テシテ、
果シテ可能デアルカドウカ、現在我ガ日本
內地ニ散在致シテ居リマスル映寫機ハ、標
準型、十六「ミリ」、九「ミリ」半ト云フモノ
ハ大凡數万臺ニ及ンデ居ルノデアリ、其ノ大
部分ハ塵ニ塗ミレテ、國策奉仕ノ機會ナキヲ
喞ツテ居ルト云フ有樣デアリマスルカラ、之
ヲ動員致シマスルコトハ、當ニ易々タルコ
トデアルノデアリマス、映畫ニ關スル政府
ノ費用ハ、今日ニ於テハ或ハ鐵道ニ、文部
ニ、內務ニ、其ノ他ノ省ニ分割セラレテ居
リマスルガ爲ニ、常ニ能率ヲ失ヒツツアル、
若シ是等ノ各省ノ豫算ニ加フルニ、精神總
動員ノ費用ノ或ル數額ヲ加ヘテ行キマスル
ナラバ、恐ラク二百五十万ノ巨額ニ及ブノ
デハナイカト存ジマスルガ、此ノ金ヲ以テ
一局ニ之ヲ統合シテ、或ハ伊太利ノニンジ
テ」國立製作所ニ於テ、或ハ「リユーチェL
ノ如ク國立ノ映畫協會ナドニ於テ、眞ニ其
ノ企畫、人的ノ配置ノ宜シキヲ得マシタナ
ラバ、國策映畫ノ製作ト云フモノハ、必ズ
ヤ相當ノ可能性ヲ生ンデ來ルコトヲ私信ジ
テ疑ハヌ、然ルニ從來此ノ豫算ニ關シマシ
テ、私共ハ大藏省ノ態度ヲ見ルノデアルガ、
常ニ消極的デアル、映畫ノ認識ヲ一體何處
ニ置イテ居ルカ、ソレサヘモ疑問ニ思ハザ
ルヲ得ヌ程ニ、極メテ消極的ナル扱ヲ致シ
テ居ルノデアルガ、映畫ノ重要性ガ國家任
務ノ達成ニアルト云フ、本案ノ提案ノ理由
ガ眞ナリトスルナラバ、宜シクモツト積極
的ニ一步ヲ踏出スベキモノデアルト云フコ
トハ、ドウシテモ私共ハ要望ヲセザルヲ得
ナイノデアツテ、大藏大臣ガ居リマスルナ
ラバ、之ニ對シテ御答辯ヲ得タイト存ジマ
スルガ、斯ノ如クシテ吾々ハ大藏省ガ一臂
ノ力ヲ貸ス、更ニ商工省ガ企業助成ノ途ヲ
講ジテ參リマスルナラバ、今日ノ費用ヲ以
テ、之ニ多少ノ力ヲ添ヘマシタダケデ、立
派ナルモノガ出來上ルト云フコトヲ信ジテ
疑ガナイノデアリマス、滿洲ニハ滿映會社
ガアリマス、北支ニハ、北支政權ハ未ダ確
立シタトハ言ヒ得ナイ今日ノ狀態ニ於テ、
政府ノ出資ニ依ル所ノ國策ノ映畫會社ガ出
來上ラント致シテ居ルノデアリマス、是ト
提携ヲシ、其ノ映畫國策ノ實現ノ爲ニ邁進
ヲ致シマスルナラバ、我ガ日本ノ支那ニ慘
敗ヲ喫シタル此ノ宣傳ニ於テ、必ズヤ偉大
ナル效果ヲ發揮シ得ルモノデアルト云フコ
トヲ、私ハ信ゼザルヲ得ナイ、要スルニ政
府ガ映畫ニ對シテハドウ云フ認識ヲシテ
居ルノデアルカ、國策的ノ價値ヲ何處ニ求
メテ居ルノデアルカト云フコトニ對スル、
根本ノ決心ヲ示サレルナラバ、今日ト雖モ
遲クハナイノデアリマス、進ンデ東
亞建設ノ爲ニ、否、世界外交ノ爲ニ統合シ
テ進マレタナラバ、今日ニ於テモ十分
間ニ合フト云フコトヲ、私ハ玆ニ申上ゲタ
イト思フノデアリマス、隨テ私ハ映畫ノ大
陸進出ニ關スル政府ノ御所見、政府ノ映畫
ニ關スル費用ノ統合ニ關スル御所見、國內
ニ散在ヲ致シテ居リマスル映寫機ノ活用ノ
方法如何、將來又大藏省ガ之ニ對シテドウ
云フ方針デ積極的ノ援助ヲナサラウトスル
ノデアルカ、伺ツテ置キタイト思フノデア
リマス
時間モナイヤウデアリマスカラ、私段々
ニ項目ダケヲ擧ゲテ申上ゲタイト思ヒマス
ルガ、映畫ノ學校〓育ニ關スル問題ト致シ
マシテモ、私共ハ此ノ際文部大臣ノ御考ヲ
承ツテ置キタイト思ヒマス、又農村ト映畫
ト云フ問題、今日映畫館ハ千八百餘アリマ
シテ、而シテ映畫ノ觀覽者ハ年ニ三億ヲ下
ラナイト申シマスカラ、恰モ映畫ガ大衆化
サレ、普遍化サレテ居ルガ如ク思ハレルノ
デアリマスルガ、仔細ニ之ヲ檢討致シテ參
リマスト、私共ハ全人口ノ六〇%ノ人々ガ全
然映畫ニ惠マレナイ、特別ノ機會ガナケレ
バ映畫ニ惠マレナイト云フ現狀ヲ發見致シ
テ參リマス、ソレガ殊ニ農村ノ人々デアリ、
漁村ノ人々デアリ、山村ノ人々デアルコト
ヲ考ヘテ參リマスト、映畫ノ普遍大衆化ト
云フコトニ對シテ、異議ヲ挾マザルヲ得ナ
イノデアリマス、殊ニ今日映畫界ガ繁昌シ
テ居ルノハ事變「ニュース」ガ掛ツテ居ル
カラデアルト言ハレルガ、其ノ「ニュース」
ノ上映館ト云フモノハ、全映畫館ノ中ノ僅
ニ六割デアリ、而シテ前申上ゲマシタ通リ
ニ、映畫ガ農漁山村ニ惠マレテ居ラナイ、
出征兵士ヲ出シテ居リマスル〓土、近親、
家族ノ人々ハ、皇軍ノ模樣ハドウデアラウ
カ、將兵ノ安否ハ如何デアラウカト云フコ
トハ、瞬時モ忘レルコトノ出來ナイ最大關
心事デアリマス、之ニ對シマシテ、若シタ
ツタ百班ナリ二百班ナリノ、映畫班ヲ作ツテ
行キマスナラバ、僅カ一箇月、二箇月ヲ以
テ、全國津々浦々ニマデ之ヲ普及セシメテ
行クコトガ出來ルノデアリマス、其ノ內容
ノ詳細ハ委員會デ具體的ニ申上ゲテ見タイ
ト存ジマスガ、今日映畫ノ價値ヲ法案提案
ノ理由書ニ於ケルガ如ク重大ニ認メテ居ラ
レマスナラバ、ナゼ今日マデ之ヲ進ンデヤ
ラレナカツタカ、私色々不滿ヲ申上ゲタノ
デアリマスガ、考ヘテ參リマスレバ、其ノ
根柢ハ何處ニ在ルカ、要スルニ今日我國ノ
國民文化政策ノ貧困ト云フコトニ、其ノ原
因ヲ歸セナケレバナラヌト思フノデアリマ
ス、貧弱ナル所ノ國民文化政策ノ基礎ノ上
ニ立ツテ居ル所ノ映畫政策デアレバコソノ
感ヲ深ウセザルヲ得ナイノデアリマスルガ、
映畫ヲ通ジマシテ、私共ハ更ニ一段其ノ奧
ニ在ル所ノ一般文化政策ノ確立ヲ望マザル
ヲ得ナイノデアリマス、殊ニ時期ハ戰時デ
アリマス、國民ノ眞ノ長期建設ガ行ハレテ
行カナケレバナラナイ時期ニ際會シテ居ル
ノデアリマス、私共ハ此ノ際本當ノ國民精
神ノ向上ヲ期待シ、精神內容ノ豐富ヲ期待
シ、更ニ國運ノ進展ニ資セントスル國民文
化政策ノ具體的ナル何等カノ政策ヲ御持合
セニナツテ居ラナケレバナラヌト云フコト
ヲ考ヘルノデアツテ、私ハ最後ニ、映畫ヲ
通ジマシテ、文部大臣ノ文化政策ニ對スル
御所見ヲ承ツテ置キタイト存ジマス
以上數點不滿ヲ申上ゲタノデアリマスガ、
何卒明快ナル御答辯ヲ賜ハランコトヲ希望
致ス次第デアリマス(拍手)
〔國務大臣侯爵木戶幸一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=73
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074・木戸幸一
○國務大臣(侯爵木戸幸一君) 御答ヲ致シ
マス、只今ノ村松サンノ御質問ノ第一點ハ、
映畫國策ニ付テデアリマス、今囘提案致シ
マシタ映畫法ハ、枝葉末梢的デアルト云フ
ヤウナ御意見デアリマシタガ、政府ニ於キ
マシテハ、今囘ノ提案ノ理由ハ、先程申上
ゲマシタヤウナ理由デ、相當國民文化ノ向
上ノ爲ニ、其ノ必要ヲ認メテ提案シタ次第
デアリマス、唯映畫法案ニ規定セラレテ居
リマスコトハ、其ノ必要デアリマスル事項
ノ骨子トモ申スベキモノヲ揭ゲタノデアリ
マシテ、隨テ映畫國策ノ全體ガ必ズシモ此
映畫法ヲ以テ盡キテ居ルト云フ譯デハナイ
ノデアリマス、政府ニ於キマシテハ幸ニ
シテ本法案ガ御協贊ヲ得マスレバ、之ヲ根
幹ト致シマシテ、將來之ニ關聯スル必要ナ
ル有ユル方策ヲ講ジマシテ、以テ映畫ヲ通
ジマシテ、國民文化ノ向上ニ資シタイト存
ジテ居ル次第デアリマス
次ハ映寫機ノ利用ニ付テノ御尋デアリマ
シタ、現在我國ニ於キマシテハ大體一万
臺近イ映寫機ガアルト考ヘテ居リマスガ、
是等ノ內、映畫興行者ノ有スルモノハ、每
日使用セラレテ居リマスルシ、又官廳公共
團體等ノ有ユル映寫機モ、ソレ〓〓其ノ目
的ニ從ツテ動カサレテ居ルノデアリマスカ
ラ、此ノ點ハドノ位ノ利用價値ガアルカ
十分調ベテ見ナケレバナラヌト存ジマス、
唯御話ノ點ハ一ツノ考デアルト存ジマスノ
デ、尙ホ一層其ノ活用ヲ圖リ、國民文化ノ
進展ニ資シタイト存ジテ居リマス
其ノ次ノ御尋ハ官廳映畫ノ豫算ガ各省
ニバラ〓〓ニナツテ居ル爲ニ、其ノ利用價
値ガ少イ、之ヲ統合シテ使ツテハドウカト
云フ御尋デアリマシタ、現在マデ此ノ映畫
ニ使ヒマスル豫算ハ、御話ノ通リ各省ニ
アルノデアリマスガ、是等ハ各省ガソレノ
特別ノ目的ニ從ツテ製作シテ居ルガ爲ニ、
斯ノ如キコトニナツテ居ルノデアリマス、
併シナガラ之ヲ纏メマシテ何等カノ方法デ
統合致シマスレバ、其ノ效果ヲ擧ゲ得ルコ
トモ亦考ヘラレルノデアリマスカラ、此ノ
點ニ付テモ十分考究シタイト考ヘテ居リマ
ス
次ハ映畫ノ大陸進出ト云フコトノ御尋デ
アリマシタ、我國ノ文化ノ神髓ヲ廣ク支那
民衆ニ傳ヘマス上ニ、映畫ノ利用ト云フコ
トハ、勿論效果的デアルト考ヘマス、其ノ
點ニ付キマシテハ、興亞院其ノ他各關係方
面ニ於テモ、適當ナル方策ヲ御考ニナルコ
トト存ジマスルガ、內務省ト致シマシテ
モ、今後此ノ法案ガ成立致シマスレバ、是
等ニ付キマシテ民間ノ製作者ヲ慫慂指導致
シマスト共ニ、是ガ輸出ニ付テモ能フ限リ
ノ便宜ヲ與ヘテ、此ノ政策ヲ遂行シテ行キ
タイト考ヘテ居リマス(拍手)
〔國務大臣男爵荒木貞夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=74
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075・荒木貞夫
○國務大臣(男爵荒木貞夫君) 只今御尋ノ
國民文化政策ニ關シテノ御尋デアリマス、
可ナリ廣汎ナ問題デアリマスノデ、玆ニ簡
單ニ御答ヲ申上ゲルコトニ付テハ、或ハ十
分デナイカトモ存ジマスルガ、社會〓育ヲ
今一段ト振作ヲ致サセマシテ、今日ノ事態
ヲ津々浦々マデ國民總體ノ上ニ及ボスベキ
施設ヲ爲ス必要アリト感ジテ居ルノデアリ
やく、其ノ爲ニハ社會〓育方面ニ於テハ、
或ハ巡〓文庫ノ如ク、或ハ定期的ニ各方面
ニ必要ナル講演或ハ「ラヂオ」ヲ通ジテノ〓
育、幾多數ヘ來レバアルト存ジマス、今日
此ノ施設ガ甚ダ貧弱デアリマシテ、御說ノ
如クニ映畫ヲ通ジテスラ旣ニ十分デナイノ
デアリマス、社會〓育方面ニ對シテ一段各
般ノ施設ヲ致シマシテ、或ハ圖書館ノ施
設、或ハ〓究ニ關スル諸種ノ便宜ヲ圖ル、
斯樣ナコトニ依リマシテ、一切ヲ通ジテ能
ク國民總體ノ上ニ政府ノ企畫サルル所ガ通
ジ、更ニ之ヲ通ジマシテ時代ノ認識ヲ得サ
セルコトガ必要デアルト存ジマス、其ノ爲
ニ今御指摘ノ映畫ヲ利用スルコトハ、又其
ノ一ツノ最モ重要ナルモノト存ズルノデア
リマス、故ニ是等ニ依リマシテ一段ノ振作
ヲ期シタイト存ジマスガ、要スルニ社會〓
育施設ニ依リマスル普及徹底ニツ依テ、之
ヲ振興スルコトガ必要ト感ジテ居ルノデア
リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=75
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076・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 岩瀨亮君
〔岩瀨亮君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=76
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077・岩瀬亮
○岩瀨亮君 昭和七年「ジユネーブ」ニ開カ
レタ萬國議員同盟會議カラノ歸途、私ハ歐
米各國ヲ巡遊シテ、聊カ諸外國ノ文化施設
ノ實際ヲ見聞シタノデアリマスガ、此ノ時
旣ニ映畫ハ娛樂ノ領域以外ニ、一國ノ文化
產業ニ貢獻スル重大ナ役割ヲ演ジテ居ツタ
ノデアリマス、然ルニ日本映畫ハ遠ク世界
ノ水準ニ及バナイノミナラズ、寧ロ我國文
化ヲ侮辱スル感ジスラ與ヘラレ、轉タ寒心
ニ堪ヘナカツタノデアリマス、是ニ於テ私
ハ映畫國策樹立ノ必要ヲ痛感シ、歸朝匁
匁同憂議員多數ノ贊成ヲ得テ、第六十四
囘帝國議會ニ映畫國策ニ關スル建議案ヲ
提出シテ、幸ヒ議會ノ可決ヲ得タ次第デ
アリマス、其ノ後內務省ニ映畫統制委員會ガ
出來、又官民合同ノ大日本映畫協會モ設立
サレ、映畫ニ關スル世ノ認識ハ大イニ革マ
ルニ至ツタノデアリマス、而シテ玆ニ上程
サレマシタ映畫法案ハ、消極的ニ我國映畫
事業ノ現狀ヲ其ノ儘立法化シタダケデ、少
シモ積極的ナ映畫國策ニハ觸レテ居ナイノ
デアリマス、併シナガラ私ハ是ガヨリ徹底
的ナ映畫國策樹立ヘノ一步ヲ踏出シタモノ
トシテ、欣快ニ堪ヘナイト同時ニ、政府當
局ニ對シ其ノ勞ヲ多トスル者デアリマス、
以下本法案ニ關スル根本的ナ問題ニ付テ質
疑ヲ試ミタイト存ジマス
先ヅ第一ニ平沼首相ニ御伺致シタイノデ
アリマスガ、只今御見エニナリマセヌノデ、
適當ナ機會ニ御答辯願ヒタイト思フノデア
リマス、本法案ノ第一條ニ「本法ハ國民文
化ノ進展ニ資スル爲映畫ノ質的向上ヲ促シ
映畫事業ノ健全ナル發達ヲ圖ルコトヲ目的
トス」トアルノデアリマスガ、如何ナル方
向ト如何ナル目標ニ於テ、國民文化ノ進展
ニ資スルノデアリマスカ、動モスレバ諸外
國ノ中ニハ、崇高ナル日本文化ノ目標ヲ、
恰モ世界ノ侵略征服ニアルカノ如ク曲解シ
テ居ル向モアルノデアリマス、故ニ今囘「文
化」ト云フ文字ガ初メテ法文化サレマシタ
此ノ機會ニ、日本文化ノ方向ト目標トヲ御
明示相成ルコトハ洵ニ必要ナルコトカト存
ジマス、尙ホ此ノ際總理ニ併セテ御尋シテ
置キタイコトハ、總理ノ映畫ニ對スル御認
識ト、宣傳省設置ノ問題トデアリマス、齋
藤元首相ハ大日本映畫協會ノ設立サレルヤ、
自ラ進ンデ其ノ初代會長トナリ、映畫ニ對
スル首相ノ心意氣ヲ示シテ、國民ニ少カラ
ザル親ミヲ與ヘラレタノデアリマス、又近
衞前首相ハ映畫〓及ボス感化力ノ偉大ナル
ヲ說イテ、屢〓閣閣諸公ニ是ガ觀賞ヲ奬メラ
レタトノコトデアリマスガ、平沼現首相ハ
果シテ如何ナル御關心ヲ御持チデアリマス
カ、申スマデモナク映畫ノ近代生活ニ占メ
ル分野ハ、頗ル深刻且ツ廣汎デアリマシテ、
是ガ國民ニ及ボス影響ハ實ニ想像以上デア
リマス、特ニ事變下乃至戰時下ニ於ケル映
畫ノ役割ハ洵ニ重大デアリ、思想戰ニ於ケ
ル最モ有力ナル武器トサヘ言ハレテ居ル位
デアリマス、今次事變ニ付テ之ヲ見マシテ
モ、全ク其ノ通リデアリマシテ、現ニ揑造
ノ映畫デアリ虛僞ノ宣傳デアルト知リナガ
ラモ、歐米各國ハ巧妙ナ支那ノ宣傳映畫ニ隨
分引摺ラレテ居ルデハアリマセヌカ、又「ソ
ビエト」聯邦ハ早クモ北洋ノ漁業權ヲ繞ル
日「ソ」ノ關係ヲ映畫化シテ、人心ノ收攬ニ
利用シテ居ルト云フデハアリマセンカ、
犬虛ヲ吠エテ萬犬實ヲ告グト云フ言葉モア
リマス、爲政者ノ再思三考スベキ問題カト
存ジマス(拍手)然ルニ政府ハ此ノ事變
下、而モ益〓、思想戰ノ重要性ヲ加ヘツツ
アル今日、映畫ヲ御利用ニナラナイノハ
映畫利用ニ關スル御認識ガ足ラヌノデ
ハナイカト存ジマス、私ガ敢テ平沼首相
ニ映畫ニ對スル御認識ヲ問フ所以モ亦茲ニ
存スルノデアリマス、興亞聖戰ノ大目的ヲ
達成スル爲ニハ、國內的ニ、國際的ニ、有
效適切ナル宣傳ヲ必要トスルコトハ申スマ
デモアリマセヌ、而シテ其ノ最モ效果的ナ
宣傳方法トシテハ映畫以上ノモノハアリマ
セヌ、現ニ政府モ司法省ヲ除ク各省ヲシ
テ、年々二百万圓內外ノ巨費ヲ投ジ、指導
宣傳ノ映畫ヲ作製シテ居ルノデアリマス
ガ、各省割據ノ弊ハ、同ジク政府ノ宣傳デ
アリナガラ類似重複、無味乾燥、所謂官
廳映畫ノ譏ヲ免レナイ狀態デアリマス、故
ニ之ニ統一ト連絡トヲ與ヘ、加フルニ他ノ
各種宣傳機關ヲモ總括統合シテ、之ヲ一省
ニ收メ、內文化ノ向上ヲ圖リ、產業ノ振興
ニ資スルト共ニ國論ノ統一ニ當テ、外誤レ
ル諸外國ノ認識ヲ是正スベキデアルト信ジ
マスガ、首相ハ果シテ如何御考ニナリマス
カ
第二ニ内務大臣ノ御所見ヲ承ルコトガア
リマス、其ノ一ハ本法案ハ製作業者、配給
業者、興行者、其ノ他映畫ノ上映ヲ爲ス者
ニ對シ、高度ノ制限ヲ加ヘルト同時ニ、嚴
重ナ罰則規定ヲ設ケテ居ルノデアリマス、
卽チ外國映畫ノ配給竝ニ上映ニ關スル種類
ト數量ノ制限、國內映畫ノ製作配給ノ種類
ト其ノ數量ノ制限、興行時間、映寫方法及
ビ入場者ノ範圍ニ關スル制限等デアリマ
ス、其ノ個々ニ付テ詳細ナ數字的內容ヲ御
示ヲ願ヒタイノデアリマス、何トナレバ其
ノ內容ト取扱如何トハ、映畫事業ノ健全ナ
ル發達ニ重大ナル關係ガアリ、場合ニ依ツ
テハ角ヲ矯メントシテ牛ヲ殺スガ如キ結果
ヲ招來セヌトモ限ラヌカラデアリマス、官
僚獨善ノ非難囂々タル昨今、之ヲ憂フル者
ハ恐ラク私一人デナイト考ヘマス(拍手)其
ノ二ハ映畫委員會ノ構成ト權限トニ付テデ
アリマス、是ハ本法案ノ可否ヲ決スベキ鍵
點トモナルノデアリマスカラ、其ノ人的構
成ノ諮問ノ範圍トニ付テ明確ナル御說明ヲ
願ヒタイノデアリマス(拍手)其ノ三ハ登錄
制度ニ付テデアリマス、政府ハ監督ヤ俳優
ノ登錄制度ヲ以テ、如何ニモ非常ナ名案ノ
如ク御考ノヤウデアリマスルガ、斯ノ如キ
ハ僅ニ俳優ヤ監督ノ德義上ノ取締ニ幾分ノ
效果ガアルダケデ、之ヲ以テ映畫從業員ノ
質的向上ヲ望ムト云フガ如キハ、正ニ木ニ
緣ツテ魚ヲ求ムルノ類デアリマス、關係從
業員ノ根本的ナ問題ハ、何ト云ツテモ彼等
ノ生活問題デアリマス、監督ハ兎モ角ト致
シマシテ、助監督ヤ助手、「カメラマン」等
ノ多クハ月二十圓カ二十五圓ノ薄給デ働イ
テ居ルノデアリマス、電車賃、煙草錢、白
粉代ダケデ働イテ居リマスル男女俳優モ決
シテ少クナイノデアリマス(拍手)隨テ折角
登錄制ヲ御採用ニナリマシテモ、彼等ノ生
活問題ニ觸レナイ限リ、從業員ノ質的向上
ヲ圖ルコトハ絕對不可能ノコトト存ジマス
ルガ、內務大臣ノ御意見ハ如何デアリマス
カ
第三ニ、荒木文相ニ御尋シタイコトガゴ
ザイマス、映畫〓育ノ問題、映畫從業員ノ
〓育機關、文化映畫製作所ニ關スル問題デ
アリマス、今日我國ノ〓育ハ依然歐米ノ模
做〓育ニ堕シ、未ダ日本主義的〓育ノ確立
サレナイ憾ガアリマス、凡ソ改善ト云ヒ、
革新ト云フモ、要ハ之ヲ〓育ニ求ムルノ外
ハナイノデアリマス、最近荒木文相ハ最高
學府ノ立直シニ銳利ナル「メス」ヲ加ヘタリ、
日本主義〓育ノ根本問題デアリマスル初等
〓育ノ再檢討ニ專ラ精進サレルナド、私ノ
窃ニ敬服シテ居ル所デアリマスルガ、文相
ハ初等〓育改善ニ最モ效果的ナ映畫ノ〓材
化ト云フコトニ付テ如何ナル御考ヲ御持デ
アリマスルカ、少クトモ文部省ニ映畫ニ關ス
ル一局位ハアツテ、〓育映畫ノ〓究ヤ其ノ配
給特ニ映畫ヲ觀ル機會ニ惠マレナイ農村
小學校ニ對スル「フイルム」ノ無料貸與ナドヲ取
扱ツテ然ルベキカト存ジマス、次ニ、ヨリ
良キ映畫ハ進步シタ技術ト科學トノ綜合カ
ラ生レルモノデアリマシテ、俳優、監督カ
ラ、「カメラマン」、助手、錄音係、「セット」
係ニ至ルマデ、ソレ相當ノ〓育ヲ必要トス
ルノデアリマス、又良キ文化映畫ヲ製作ス
ル爲ニハ、其ノ上ニ「レントゲン」映畫、顯
微鏡映畫、高速度映畫ナドノ撮影施設ハ勿
論ノコト、映畫圖書館ヤ參考館ノ設置モ必
要ナノデアリマス、ニモ拘ラズ今日是等ノ
技術者ヲ養成スベキ權威アル機關モナケレ
バ科學的施設ノ見ルベキ何モノモナイノ
デアリマス、仍テ私ハ玆ニ俳優及ビ技術者
ノ養成ニ對シテハ國立映畫學校、文化映畫
ノ製作指導ニ關シテハ文化映畫製作〓究所
ノ設置ガ必要ト存ジマスルガ、交部大臣ハ
如何御考デアリマスカ
第四ハ輸出映畫ニ關スル問題デアリマ
ス、政府ハ日本映畫ノ向上ト文化政策ノ見
地カラ、當然輸出映畫事業ニ對スル保護奬
勵ヲ爲スベキデアルト存ジマス、輸出映畫
ノ保護奬勵ハ、啻ニ日本映畫ノ發達ヲ育成
助長スルバカリデナク、日本及ビ日本人ノ
優秀性ヲ廣ク海外ニ紹介スル上ニ於テ、千
ノ演說、萬ノ「パソフレット」ニモ優ル宣傳
價値アリト信ズル者デアリマス(拍手)然ル
ニ本案ハ輸出映畫ノ保護助成ニ關シテ聊カ
モ觸レテ居ナイノハ如何ナル理由デアリマ
スカ、所管大臣ノ御說明ヲ願ヒタイノデア
リマス
尙ホ私ハ政府ガ滿洲國及ビ新興支那政府
當局トノ間ニ、映畫宣傳ノ利用ニ關シ連絡
協調ノ途ヲ講ジツツアリヤ否ヤ、又是ガ爲
日滿支映畫委員會ノ設置計畫アリヤ否ヤ、
大日本映畫協會ノ利用ニ關シ特別ノ考慮ヲ
拂フ意思アリヤ否ヤ、又映畫事業ノ資金問
題ニ關スル御所見、更ニ演劇、「レビュー」、
紙芝居等ニ對スル御所見ニ付テモ一々御伺
シタイノデアリマスルガ、時間ノ制限ヲ受
ケテ居リマスルノデ、是等ノ點ニ付キマシ
テハ委員會ニ讓ルコトト致シマス
唯最後ニ一點申上ゲタイコトガアリマ
ス、ソレハ新聞社ヤ通信社ナドノ「ニュー
ス」映畫ニ付テデアリマス、今次事變勃發
以來戰線ト銃後トノ距離ヲ縮メ、是ガ融合
ヲ圖ル上ニ於テ、凡ソ「ニュース」映畫以上
ノ何モノガアツタデアリマセウカ、都市ト
農村トノ區別ナク、燒ケ付クヤウナ瞳ヲ注
イデ戰線ノ子弟ヲ「スクリーン」ニ求メル映
畫面會ノ一場面コソ、其ノ間ノ消息ヲ物語
ツテ餘リアルノデアリマス、況ヤ官製ノ國
民精神總動員運動ニ比シテ、一本ノ「ニュー
ス」映畫ガ、如何ニ擧國一致ノ態勢樹立ニ
役立ツカヲ思フニ於テオヤデアリマス、政
府當局ノ深甚ナル御考慮ヲ促シテ已マナイ
次第デアリマス
私ハ此ノ機會ニ事變勃發以來映畫報國ノ
尊イ犠牲トナラレタ「カメラマン」諸君ノ英
靈ニ對シ、各位ト共ニ謹ンデ敬弔ノ意ヲ表
シタイト存ジマス(拍手)
〔國務大臣侯爵木戶幸一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=77
-
078・木戸幸一
○國務大臣(侯爵木戸幸一君) 最初ニ御尋
デゴザイマシタ製作業者、配給業者等ノ數
等ノコトデアリマスルガ、是ハ何レ委員會
等ニ於テ適當ナ資料ヲ提出スル積リデ居リ
マスカラ、其ノ時ニ御說明致シタイト存ジ
マス
次ニ御尋ノ映畫委員會ノ組織權限デゴザ
イマス、映畫委員會ハ其ノ運用如何ニ依リ
マシテハ、各方面ニ大ナル影響ヲ及ボスモ
ノデアリマスカラ、特ニ此ノ組織ニ付キマ
シテハ、廣ク貴衆兩院ノ議員ヲ初メ衆智ヲ
集メマシテ、其ノ協力ヲ求ムルコトト致シ
タイト存ジテ居リマス、尙ホ映畫委員會ニ
於キマシテハ、本法施行ニ關スル重要事項
ヲ諮問スルコトト致シマスト共ニ、廣ク映
畫ニ關シマスル事項ニ付テハ、建議ヲスル
コトガ出來ルコトニ致シタイト考ヘテ居リ
マス
次ニ登錄制度ニ關シマスル御質問デアリ
マシタガ、御話ノ通リ從業員ノ質的向上ヲ圖
リマスニハ、其ノ生活問題ト云フコトガ極
メテ重要ナ事デアルコトハ申スマデモナイ
ノデアリマス、併シナガラ此ノ問題ハ興行
會社其ノモノノ改善、共共ニ考慮セラルベキ
モノデアルト考ヘルノデアリマシテ、本法
律ニ於キマシテハ從業者ノ自肅自戒、又ハ
國民文化ニ寄與致シマスル所ノ公共性トヲ
十分ニ認識サセマシテ、其ノ質的向上、精
神的ノ向上ヲ圖ルコトモ亦必要デアリマス
ノデ、其ノ意味ニ於キマシテ登錄制度ヲ實
施スルコトト致シタ次第デアリマシテ、之
ニ依リマシテ從業者ニ對シマシテ其ノ公共
的ノ存在タル自覺ヲモ與ヘ、其ノ擧措進退
ガ社會ニ與ヘマス影響ニ付テ、十分ノ考慮
ヲ拂フヤウニ致シタイト存ズル次第デアリ
マス
次ニ御尋ノ映畫ノ輸出促進ノコトデアリ
やく、是ハ現在ノ日本ノ映畫ガ、市場ガ國
內ニ限ラレテ非常ニ狹イト云フコトガ、
面ニ於キマシテ我國ノ映畫事業ノ大キナ缺
點デアリマス、サウ云フ次第デアリマスカ
ラ、出來得ルダケ販路ヲ擴張致シマシテ、
輸出ヲ促進スルト云フコトハ最モ緊要デア
ルト考ヘテ居リマス、唯我國ノ輸出サレマ
ス映畫ノ內容ニ付キマシテハ、餘程愼重ニ
考慮致シマセヌト、トモスレバ國情ノ違ヒ
其ノ他カラ致シマシテ、非常ニ我國ニ對ス
ル認識ヲ歪曲サレマシタ例モ相當ゴザイマ
スカラ、是等ニ付テハ十分愼重ナル考慮ヲ
以テ、此ノ促進策ヲ講ジタイト考ヘテ居リ
マス(拍手)
〔國務大臣男爵荒木貞夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=78
-
079・荒木貞夫
○國務大臣(男爵荒木貞夫君) 只今御尋ノ
映畫〓育ニ關シマシテハ、映畫ガ〓育ニ非
常ナ貢獻ヲ爲シ、又效果ノアルト云フコト
ハ多年ノ間唱ヘラレタ所デアリマスガ、今
日マデ其ノ利用ガ十分デナカツタト云フコ
トヲ感ズルノデアリマス、是ガ爲ニ曩ニ政
府ノ補助ヲ與ヘマシテ、映畫〓育中央會ヲ
設ケマシテ、取敢ズ之ニ依リマシテ適當ナ
ル配給ヲ致シ、農村其ノ他ニ對シテ是等ノ
〓育ガ徹底致スヤウニ致シ、又優良ナル〓
育ニ關スル映畫ノ製作等ニ努力致シテ居ル
次第デアリマシテ、現ニ十八府縣ニ亙リマ
シテ、此ノ實行ニ當ツテ居ル次第デアリマ
ス、尙ホ今後ニ於テハ是ノ利用ニ付テハ十
分努力致シタイト考へテ居リマス
尙ホ映畫施設ノ中央機關ニ付キマシテ
ハ、是亦御指摘ノ如ク、列國ニ比シテ甚ダ
貧弱ナ感ガアルコトハ、私モ痛感致スノデ
アリマスガ、只今御示ニナリマシタ獨立映
畫製作〓究所其ノ他ノ中央機關ノ設置ニ付
キマシテハ、ソレ〓〓財政當局及ビ是等技
術竝ニ〓究機關ノ助長ト共ニ、將來ニ於テ
大イニ考慮致シタイト存ズル次第デアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=79
-
080・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 野口喜一君
〔野口喜一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=80
-
081・野口喜一
○野口喜一君 只今上程ニ相成リマシタ映
畫法ニ付キマシテ、〓論ヲ少シ申上ゲテ、
而シテ七ツノ點ニ付テ御伺致シタイト存ズ
ルノデアリマス、a
興隆科學日本ノ國民大衆
ノ生活ノ糧トシテ、我國ノ映畫ハ四十年ノ
歷史ヲ經テ、民間ニ於テノ唯一ノ文化事業
トシテ發達シテ參リマシテ、其ノ業績ハ洋
畫、特ニ輸入ニ於テ七五%ヲ有シマス米畫
ニ對抗シテ、惡戰苦鬭致シツツ今日ノ發達ヲ
認メラレルニ至ツタノデアリマス、映畫業
者ハ其ノ營利的ナルト非營利的ナルトヲ合
ハセテ其ノ數六百六十三、全國常設館一千
七百六十五、內地人口ニ對シマシテ四万人
ニ對シテ一ツノ常設館ノ平均數ヲ示シテ居
リマス、支那、滿洲ニ於ケル日本人經營館
ハ六十六アリマス、映畫關係從業員ノ
數七千ヲ算フルニ至ツテ居リマス、全
國ニ於ケル有料觀覽者數一箇年約三億ト、
無料觀覽者數ノ約三億トヲ合シマスト、
實ニ延數六億餘ノ巨額ニ上リマシテ、
大和民族一億人口ノ延六倍ヲ示シテ居ルノ
デアリマス、其ノ文化性ト〓化性トガ如何
ニ國民大衆ノ實生活、思想生活上ニ影響ヲ
齎シテ居ルカト云フコトハ、此ノ數字ヲ以
テシテモ如實ニ現ハレテ居ルト私ハ思フノ
デアリマス、是等多數ノ觀覽者ノ中デ、良
キ〓化トシテハ或ハ時局認識ヲ深メ、銃後
國民ノ赤誠ヲ各人ガ各樣ニ表現シ、或ハ各
自ガ本分ニ從ヒ、發奮努力其ノ忠誠ノ誠ヲ
行ウテ居ルモノモアリマスガ、又一方惡
キ影響ト致シマシテハ、逸樂怠惰ニ沈淪シ
テ、却テ國民的大義ヲ誤リ、恥辱ヲ永久ニ
自己ノ生涯ニ捺印シタ愚カ者モ亦無シトハ
言ヘナイノデアリマス、斯ノ如キ感化誘引
ノ强力ヲ持ツテ居リマス映畫ニ依ツテ、國
民大衆ノ文化指導ヲ作爲シマス時ハ、演說
講演ノ理論的ノモノヨリ、大衆效果ニ於テ、
理解ハ映畫ノ右ニ出ヅルモノナシト確信致
ス者デアリマス、旣ニ英吉利、亞米利加、
佛蘭西、獨逸、伊太利、滿洲ニ於テハ、映
畫法ヲ制定シ、獨伊米ノ如キハ、專ラ映畫
ヲ通ジテ國內ニ將又國外ニ、示威的宣傳ノ
手段トシテ莫大ナル國費ヲ投ジ、映畫國策
ヲ確立シテ居ル事實ガアルノデアリマス、
我國ノ如キハ漸クニシテ今日獨伊ニ倣ヒ、
映畫國策ノ建前カラ、初メテ政府ガ本法ノ
立案ヲ畫スルニ至ツタノデアリマス、從來
ノ警察行政ヨリ一步ヲ進メマシテ、法的基
礎ニ依ツテ其ノ統一ヲ圖ラント致シマスガ、
發達過程ガ完全ナル資本主義的機構ニ未ダ
成熟シテ居ナイ所ノ日本映畫ニ對シマシテ、
全ク完成セル米國ノ猶太系大資本映畫トヲ
相對セシメル時、邦畫ノ大資本的機構ノ缺
如ニ、深ク同情的ノ考慮ヲ拂ハナケレバナ
ラヌト思フ者デアリマス、今ヤ邦畫ノ素質
向上ヲ要望致シマス聲ハ、朝野ノ輿論デアリ
マスガ、政府ハ國際文化ノ情勢ニ押サレテ、
徒ニ獨伊ニ模倣シテ急遽玆ニ之ヲ法制化セ
ントノ意向デアル如ク觀察シ得ラレマスル
ハ、恰モ暴風下ニ於ケル近火警鐘ノ亂打ニ
接スルノ思ヲ感ゼシメマス、玆ニ上程サレ
マシタル本案ヲ檢討致シマスルニ、現下ニ
於ケル文化的國民生活ノ實狀ニ照シテ、私
ハ以下七點ニ付テ御質問申上ゲマス
第一點ハ、國民的精神指導方策ニ種々ナル
方法ハアリマスガ、最モ容易ニ各國民層ニ
徹底セシメル手段トシテハ演劇及ビ映畫デ
アリマセウ、我ガ特有ノ國柄ヲ現ハシ、大
和魂ヲ不知不識ノ間ニ訓練シテ、所謂八紘
一宇ノ大精神ヲ知得セシムル最善ナル方策
トシテ、演劇國策ノ確立モ亦其ノ一ツデア
ルト信ジマス、旣ニ友邦獨伊ニ於テハ演劇
國策ヲ樹立シテ、國立〓究所ニ依リ平易簡
明ニ國民ノ精神指導ヲ敢行シテ居リマ
ス、近代日本ハ歐米ニ率先シテ總テニ
範タルベカラザル地位ニアリマス、娛
樂モ、趣味モ、或ル程度マデハ人間生活
上必須ナル心ノ糧デアリマシテ、其ノ醍醐
味ノ神祕境ニ浸リツツ大衆指導ガ出來得
マスルハ演劇ト映畫デアリマセウ、今ヤ時
局ハ長期建設ノ秋ニ拘ラズ、都下各大劇場
及ビ映畫館ハ何レモ滿員盛況ノ實情デアリ
やく、是等ハ一面大國民ノ悠揚迫ラザル態
度トシテ第三國モ觀察スル事デアリマセウ
ガ、ヨリ宜キ內容ヲ具有スル日本演劇確立
ノ爲、國立演劇映畫〓究所ヲ設立スル必要
性ヲ感ジマスガ、此ノ際政府ノ御意向ヲ伺
ヒタク存ジマス、第二點、東亞ノ新秩序ガ所
謂三國共同體ニ依リ、提携互助連關ノ一單
位トシテ、文化的工作ニ、進展セントスル
時、日本映畫ノ對支輸出ヲ簡易化セシメ
テ、支那人ヲシテ日本化シタル亞細亞人ニ
宣撫〓導セネバナリマセヌ、邦畫ノ對支輸
出ニ特別ナル便宜ヲ與ヘ、而シテ其ノ助長
政策ヲ講ズル要トアリト信ジマス、衣〓住足
リテ禮節ヲ知ル人類ガ、尙ホ其ノ足ラザル
ニモ拘ラズ、欲求スルモノハ娛樂デアリ、
趣味デアリマス、砲煙彈雨殺伐ト阿鼻叫喚
ノ修羅ノ巷ヨリ、支那四億ノ民衆ヲ平和的
風潮ニ導キ、政治經濟ニ貢獻セシメンニ
ハ、其ノ宣撫的文化工作ヲ第一義トシテ、
支那民衆ノ氣持ヲ捉フルノガ急務デアリマ
ス、其ノ一手段トシテ國策邦畫ヲドシ〓〓
對支輸出シテ支那民衆ヲ誘導セネバナラヌ
ト存ジマス、然ルニ我レ之ニ消極的ナル時
ハ、世界的恐怖デアル米ノ猶太系大資本ニ
依ル宣傳映畫ノ爲、援蔣「イデオロギー」ヲ
支那人ニ植付ケ、日支提携ニ水ヲ差ス大キ
ナ惧レアルヲ國民ト共ニ憂ヘテ止マザルモ
ノガアリマス、米ハ映畫ヲ以テ四大事業ノ
一トシテ重視シ、其ノ投資額三十億弗、製作
費ガ一箇年約二千五百万弗、全世界ニ輸出
スル利益一箇年額一億一千万弗ニシテ、我
國ノ映畫輸出年額ハ約百万圓位ノ僅少ナル
ヲ知ルニ於テ、全ク天地雲泥ノ差ト言ハザ
ルヲ得マセヌ、其ノ最大原因ハ國體、國情、
國語普及ノ關係ニ基因スルトハ云ヘ、恐ル
ベキハ以上ノ大輸出米畫ガ支那デ盛ニ歡迎
サレテ居ルコトデアリマス、邦畫ガ同文ノ
支那へ進出シテ居ラナイノモ、一ツニハ蔣政
權ヲ增大セシメ、支那民族ノ一部カラ誤解
サレテ居ルノモ、是等ノ對策ヲ等閑視シテ
居タコトガ、大事變ヲ誘引シタ一原因ヲ成
シテ居ルト言ウテモ、過言デハアリマスマ
イ、政府モ業者モ此ノ重要ナル文化機關ヲ
今後ハ輕視セズ、我ガ世界無比ノ國體ノ精
華ト、忠君愛國ノ國民性トヲ、最モ理解シ
易イ映畫ヲ通ジテ全世界ニ向ツテ顯揚シ透
徹セネバナラヌト存ジマス(拍手)先ヅ日滿
支連瑣ノ映畫ヲ製作配給セシメ、卽チ大陸
映畫ノ上映ヲ支那ニ之ヲ積極的ニ輸出工作
セシメルノ要ヲ痛感致シマス、之ニ對スル
政府ノ所見ヲ伺ヒタク存ジマス
第三點ハ列國ハ等シク外畫ノ輸入ヲ恐レ
テ居マス、獨逸ノ如キハ千九百三十三年
九月、其ノ文化評議會法ニ依ル「ナチス」精
神及ビ政治普及ヲ徹底セシメル爲ノミノ自
國映畫ノ保護ト、外畫輸入制限ヲ敢行シテ
居リマス、隨テ自國映晝ノ輸出ニ付テハ、
獨伊共檢閱免除ヲ實行シテ奬勵ノ實ヲ擧ゲ
テ居ルト聞キマスガ、我國ニ於テモ、政府
ハ將來邦畫ノ輸出ニ對シ、素質向上セバ
檢閱免除ノ如キ政策ヲ執ラレマスヤ否ヤ、
非常時日本ハ輸出入ノ平均ヲ保持センガ爲
ニ、國民ノ需要及ビ輸出工業製品ノ爲ニ、
必要ナル資材ノ輸入ニ對シテモ、特ニ禁止
的ノ輸入制限ヲ爲シ、中小輸出商工業者
ハ時局認識ノ上カラ隱忍自重シテ居ルニ
拘ラズ、我ガ建設日本現下ニ於テ何等必要
ナキ米畫ヲ十三年度ニ於テハ數百本ノ輸入
ヲ許可シ、之ガ爲約二千万圓ノ巨額ノ金ヲ
米へ流出スル遺憾ナル結果ヲ惹起シタト聞
クガ、大藏大臣ノ之ニ對スル御見解ヲ伺フ
次第デアリマス、國民思想ニ及ボス興行方
面ヨリ論ジマシテモ、外晝專門館ニハ必ズ
國策映畫ヲ併合上映セシメ、二本建興行ニ
スルコトガ絕對ニ必要デアルト思ヒマス、外
畫專門館ニテ「アメリカニズム」ニ陶醉シテ
時ヲ過ス如キハ、決シテ國民〓化ノ善導ト
ハナリマセヌ、實例トシテ明眸皓齒ノ「ディ
アナ·ダービン」ヲ主役トスル「オーケス
トラノ少女」ガ一タビ封切セラルルヤ、帝
都ノ洋畫「ファン」ハ擧ゲテ熱狂シテ、續映
更ニ續映ノ場合ヲ展開シマシタ、是等カラ
我ガ日本人ノ得タモノハ何カ、未ダ殘存ス
ル碧眼紅毛ニ對スル依存的思想ト、一本ニ八
十万圓也ノ邦貨ヲ米國へ流レ込マシタ國家
的損失ノ二ツヲ擧ゲザルベカラザル事實ガ
アルノデアリマス(拍手)故ニ外畫輸入ニ關
シマシテハ、所謂不見轉輸入ト謂ハレル
「ブラインド·ブッキング·システム」ニアラ
ザル、卽チ金ノ流出ヲ防止シナガラ優秀文
化參考映畫ノ制限的配給ヲ內容トスル、所
謂「クオーター·システム」ニ映畫貿易行政
ヲ實施セラレンコトヲ望ミマスガ、政府ノ
御所見ヲ伺ヒマス
第四點、映畫ハ新聞雜誌又ハ「ラヂオ」等
ニ比シテ、大衆的ニ其ノ保護助成ノ方法
ト相俟ツテ國策遂行ノ具ニ供スル素質ヲ
有シテ居リマス、國內的ニハ有ユル宣
傳指導ノ材料トナリ、國外的ニモ日本
ノ國體文化、其ノ固有ノ藝術ノ紹介、
國內產業ノ實情、國民外交ノ伸張ノ如キ、
映畫製作ノ一定方針ヲ確立致シマシタナラ
バ、軈テハ皇威ノ發揚、國運ノ伸張ニ寄與
スルト思ヒマス、映畫國策ヲ決定シテ今後
ノ日本ニ處セザルベカラザル秋、唯單ニ其
ノ助成方法トシテ表彰ノ程度ニ止メテハ、到
底優良映畫製作ハ困難デアルト考ヘルノデ
アリマス、助成金ヲ交付シテ國家意思ノ具
現化ヲ示スノガ、民間事業ニ對スル眞ノ斯
道奬勵ノ誠デアルニ拘ラズ、素質向上ヲ叫
ビナガラ補助方法ニ付キ何等ノ具體策ナキ
ハ、佛造ツテ魂入レザル誹ヲ免レザルモノ
ト思フノデアリマスル(拍手)故ニ政府ハ漸
次民間業者ニ對シテ是ガ助成金ヲ將來交付
スルノ意思アルヤ否ヤ
第五點、政府ハ國民ニ對シテ有ユル生
活樣式ニ於テ統制經濟ヲ强制シテ居リマ
ス、良キ程度ノ統制ハ必要デアリマス
ガ、私ハ玆ニ伺ヒタイコトハ、司法省ヲ
除キマシテ中央官廳十二省、朝鮮、臺
灣、樺太、南洋ノ各廳ヲ加へ實ニ三十六
部局、其ノ他農會等ノ團體ヲ入レマシテ、
情報ニ、〓育ニ、農林ニ、商工指導ニ、貯
蓄ニ、保險ニ、運輸又國際觀光ニ、衞生、
體力向上ニ映畫ヲ利用シテ居ルコトハ、何
人モ承知ノ如クデアリマスガ、如何ニ映畫
ガ娛樂興行以外ニ大ナル國家的使命ヲ持ツ
テ居ルカガ、之ヲ以テモ裏書セラレル譯デ
アリマス、各官廳ハ宣傳ト從業員〓化及ビ
娛樂映畫等ヲ製作セシメテ居リマスルカラ、
本法ニ於テハ是等官廳映畫ノ製作ヲバラバ
ラニセズ、企畫アル統制下ニ置カルルモノト
思考シテ居リマシタ所、何等此ノ點ニ觸レ
テ居ナイノハ全ク意外デアリマシタ、少ク
トモ一省十万圓以上ノ製作費ヲ支出シテ居
ルト聞イテ居リマスガ、之ヲ一元化セバ百五
十万圓以上ノ經費ヲ以テ製作スルコトガ出
來民間業者ト連絡シテ製作スルナラバ、
彼我共ニ補助ヲ受ケタルト同一的ノ結果ト
モナリマシテ、保護助成ノ目的モ達成セラ
レ、各官廳ノ宣傳效果モ百「パーセント」ニ至
ラシムルコトノ可能ヲ推定シ得ルノデアリ
マイ、サナキダニ官廳相互間ノ事務ノ不統
一ヲ聞ク時、國策映畫製作ヲ機ニ各官廳間
ノ映畫ヲ其ノ製作ニ於テ統制シテ、範ヲ國
民ニ示シ、斯クシテ漸次ニ進步的過程ヲ經
由スルハ、近代ニ適切ナル政府自身ノ自覺
的方策ト思ヒマスルガ、政府ノ御所見ヲ明
確ニ伺ヒタイト存ジマス
第六點、農山漁村民ノ生活ヲ思フ時、生
產力擴充計畫遂行ノ現在ニ於テ、離農者續
出スル傾向ハ洵ニ憂フベキ事デアリマスカ
ラ、政府ハ文化的娯樂ノ分配配給ノ計畫ヲ
樹立シテ、農山漁村ニ國策映畫ヲ無料配給
シ、本當ノ擧國一致、東亞再建ノ大義ヲ認
識セシムルコトモ、長期建設途上ニ於ケル
農村對策ノ一ツト思ヒマス、小學校內又ハ
村内集會所ノ如キ簡單ナル場所ニ依ツテ出
來得ルコトデアリマシテ、文部省或ハ國民
精神總動員聯盟等ガ、一年ニ一二度位巡囘
スルカシナイカ程度ノ微溫的ナルモノデハ、
到底農山漁村ノ國民ニ時局認識ト日本精
神ノ鼓吹ニ伴フ娛樂ヲ與フルコトハ不可能
デアリマス、現在ヨリ以上ニ普及セシメル
ト云フ、政府ニ右樣ノ御考アリヤ否ヤヲ伺
フ次第デアリマス
最後ニ文部大臣ニ年少者映畫ノコトニ付
テ伺ヒマス、一箇年ノ有料觀覽者約六百万
餘ノ數ヲ示ス年少者ノ映畫對策トシテ、興
行映畫觀覽ヲ禁ズルハ、其ノ性行及ビ學業
ニ及ボス影響等ヲ考慮シテ、原則トシテ禁
止規定ノ妥當ナルヲ認メマスルガ、過去ニ
於テ甲乙二種ニ致シタル大正七年八月ノ取
締規則モ、二箇年ニテ廢止ノ巳ムナキニ至
ツタ事實ガアル、故ニ此ノ際十分ナル之ニ
對スル檢討ヲ必要ト致シマス、〓育及ビ文
化映畫、民族精神酒養ニ資スル歷史的、文
藝的ノ時局反映ノ作品ヲ上映シテ、年少者
ヲ映畫ノ上カラ指導訓育スルモ亦必要ナル
事ニ屬シマス、年少者週間トカ、或ハ一步
進ミマシテ、獨逸ノ如ク少年映畫館、ヌ、
學校內ニ一定日時ヲ定メテ定期的ニ年少者
ニ適切ナル娛樂ヲモ伴フ指定映畫ヲ上映セ
シムルコトモ必要ノ一ツデアリマス、年少
者ヲシテ文化ニ接セシメズ、倚ラシムベシ
知ラシムベカラズノ封建的思想政策ハ、潔
白神ノ如キ少年ヲシテ徒ニ退嬰的ニ陷ラシ
ムルハ勿論、進取、明朗、潑剌、鮮魚ノ如
キ少年ノ特異性ヲ滅却セシムルノ虞ヲ覺エ
マス、斯ノ如キハ第二國民ノ精神訓育ニ重
大ナル結果ヲ想定シ得ラレマスカラ、政府
當局ノ愼重ナル施政ヲ要望シテ止ミマセヌ、
之ニ對スル御所見ト、且ツ年少者ヲ十四歲
未滿ニ認定致サレマシタ文部行政上ノ根據
ヲ文部大臣ニ伺ヒマス
其ノ他ノ事ハ他ノ機會ニ讓リマシテ、茲
ニ關係各大臣ヨリ明快率直懇切ナル御答辯
ヲ要求致シマシテ、私ノ質疑ヲ終ル次第デ
アリマス(拍手)
〔國務大臣侯爵木戶幸一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=81
-
082・木戸幸一
○國務大巨(侯爵木戸幸一君) 只今野口サ
ンノ御尋ノ中私ニ關係シタル部分ニ付テ御
答致シマス、日滿支映畫事業ノ提携ト云フ
コトニ付キマシテノ御質問デアリマシタ、
日滿支映畫事業ノ提携ト云フコトハ、我國
ノ東亞政策上カラ見マシテモ極メテ重要ナ
ルコトデアリマス、殊ニ宣撫的文化工作ト
シテハ、最モ重要ナル役割ヲスベキモノト
考ヘテ居リマス、現ニ日本映畫ハ相當滿洲、
支那方面ニモ輸出サレテ居ルノデアリマス
ガ、尙ホ今後益〓三國映畫事業ノ關係ヲ緊密
ニ致シマシテ、此ノ方面ニ向ツテモ十分進
出スルヤウ努力致シタイト考ヘテ居リマス
ソレカラ外國映畫ノ制限ニ付テノ御尋デ
アリマス、外國ノ映畫ガ我國ノ人心ニ與ヘ
マス色々ノ影響ニ付キマシテハ、只今御話
ノ通リ、一面ニ於キマシテハ非常ニ惡イ影
響モアルガ、又一面ニ於キマシテハ外國ノ
風俗習慣等ヲ廣ク國民ニ知ラセマス效果モ
アルノデアリマス、今日此ノ法案ニ於キマ
シテ之ヲ相當制限致シマスノハ、只今ノヤ
ウナ惡イ方ノ影響ヲ防止致シマスト共ニ、日
本映畫ノ市場ヲ廣メル見地カラ致シマシ
テ、相當數ノ配給ノ制限ト、上映ノ制限ヲ
行フ考デ居ルノデアリマス、隨ヒマシテ文
化映畫ノ類ニ對シマシテハ、此ノ制限ハ行
ハナイ方針デアリマス、只今ノヤウナ趣旨
デアリマスカラ、娛樂ノ方ニ付キマシテモ、
絕對ニ之ヲ禁止スルト云フコトハ、只今ノ
所考ヘテ居ラナイ次第デアリマス
ソレカラ映畫事業ノ健全ナル發達ヲ圖ル爲
三、一面ニ於テハ、行政上精神的ノ援助等
モアリマスガ、更ニ進ンデ助成金ヲ交付スル
考ハナイカト云フ御尋アリマシタ、其ノ點ニ
付キマシテハ差當リ政府ト致シマシテハ、
此ノ法案ノ運用ニ依リマシテ、亂立致シテ
居リマスル各製造業者、配給業者等ノ統制
ヲ圖リマシテ、又ソレ等ノ手段ニ依リマシ
テ、相當基礎ヲ確立致スコトノ出來ルコト
ヲ信ジテ居ル次第デアリマス、併シナガラ
將來ニ於キマシテ是等ノ國民的ノ文化向上
ニ對シマシテ必要ガアリマスレバ、是等ノ
點ニ付テモ考慮ヲ致ス考デ居リマス
ソレカラ官廳映畫ノ製作機構ノ統一ニ付
キマシテハ、先程村松サンニ御答シタト存
ジマスカラ、大體御承知ト存ジマスガ、是
等ハ各官廳ガソレ〓〓特別ナル目的ヲ以テ
製作致シマスコトガ多イノデアリマス、隨
ヒマシテ之ヲ一ツノ特設機關ヲ作ツテ纏メ
マスコトガ、果シテ十分改善セラレル一ツ
ノ手段ニナルヤ否ヤニ付テハ、相當利害得
失ヲ考ヘナケレバナラヌト存ジテ居リマス、
併シ或ル部分ニ付テハ其ノ必要モアルモノ
ト存ジマスルガ、是等ハ十分一ツ考究シタ
イト考ヘテ居リマス
〔國務大臣男爵荒木貞夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=82
-
083・荒木貞夫
○國務大臣(男爵荒木貞夫君) 年少者ノ映
畫〓育ニ付テハ最モ必要デアルコトハ先程
申述ベタ通リデアリマスガ、御指摘ノヤウ
ニ或ハ週間、或ハ國立映畫館ヲ作ルトカ、
或ハ學校ニ於テ之ヲ利用スル等色々ゴザイ
マスガ、是等ハ題材ヲ十分選ビマシテ、是
等ノ手段方法ニ付キマシテ、只今〓育映畫
中央會ニ於テソレ等ノ點ヲ〓究致シマシ
テ、是等ノ發達及ビ利用ヲ十分圖リタイト
存ジテ居リマス、又年少者ヲ十四歲ニ定メ
マシタコトハ、成年前期ヲ見マシテ、其ノ
成年前期ニ於テ最モ思想ノ動搖シ易イ此ノ
時ヲ抑ヘテ、十四歲ニ決定シタ次第デアリ
さゝ、尙ホ農村ニ對スル映畫ノ配給或ハ國
立劇場ノ設立等ニ付キマシテハ、先程一端
ヲ申述ベマシタコトニ依ツテ御諒承願ヒタ
イト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=83
-
084・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 赤松克麿君
〔赤松克麿君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=84
-
085・赤松克麿
○赤松克麿君 今囘映畫法ガ上程サレルニ
當リマシテ、私ハ二三質疑ヲ致シタイト思
フノデアリマスガ、極メテ大體ナ簡單ナ質
問ヲ致シマシテ、詳細ハ委員會ニ讓リタイ
ト思フノデアリマス、此ノ映畫ガ新聞ヤ「ラ
ヂオ」ト共ニ、國民ニ對スル最モ大ナル宣
傳力ト、感化力トヲ持ツテ居ルト云フコト
ハ申スマデモナイノデアリマシテ、之ヲ今
マデ政府ガ自由ニ放任シテ居ツタト云フコ
トガ抑〓怠慢ナノデアリマシテ、今囘映畫法
ガ上程サレルト云フコトハ、稍〓遲キノ憾ミ
ガアルノデアリマスガ、併シ今囘兎ニ角映
畫法ガ上程サレルト云フコトハ、我國ノ文
化立法トシテ劃期的ナ意義ヲ有スルモノト
シテ、吾々ハ之ヲ衷心カラ歡迎スル者デア
リマス(拍手)併シ今度ノ映畫法ガ出マスル
一ツノ眼目ハ、良イ映畫ヲ作ルコトデアル
ト思フノデアリマス、今マデ行ハレテ居ル
映畫ト云フモノガ、ドウモ享樂本位デアリ、
興味本位デアリマシテ、靑年子女ガ見テ芳
バシカラヌモノモ大分アルノデアリマス、
是モ今マデ自由主義經濟ノ下ニ、全ク營利
的商品トシテ映畫ガ作製サレタノデアリマ
スカラ、已ムヲ得マセヌケレドモ、併シ又
一方官廳ガ各省ニ於テ色々國策ノ爲ニ作ラ
レタ映畫ト云フモノモ、是モ餘リ面白イモ
ノデハナイノデアリマス、政府ノ國策宣傳
ノ意思ハ能ク現ハレテ居リマスケレドモ、
一體映畫トカ或ハ小說トカ、演劇トカ云ツ
タヤウナ文化的存在ハ、餘リ「イデオロ
ギー」ガ露骨ニ出ルト、大衆ノ感興ハ惹カナ
イノデアリマス、ソコニ文化的價値ト大衆
ニ「アッピール」スル藝術的ノ價値ガ一致ス
ルコトニ依ツテ、初メテ立派ナ映畫ガ生レ
テ來ルノデアリマス(拍手)所ガ從來政府デ
作ラレマシタ映畫ト云フモノハ、或ル特定ノ
目的ハ稍〓ハツキリシテ居リマスケレドモ、
其ノ大衆ニ與ヘル效果ハ寧ロ無味乾燥デア
リマシテ、餘リ感動ヲ與ヘナイノデアリマ
ス、デアリマスカラ、寧ロ是ハ大衆方面カ
ラ見レバ、動モスレバ之ヲ敬遠スル傾向ガ
多々アルト思フノデアリマス、總テガ惡イ
ト申シマセヌ、中ニハ隨分良イモノモアリ
マスケレドモ、ドツチカト言ヘバ餘リパツ
トシナイモノガ多イノデアリマス、私ハ此
ノ映畫ノ統制ニ當リマシテハ、此ノ點ハ非
常ニ重要ナノデアリマシテ、他ノ統制ト違
ヒマシテ、角ヲ矯メテ牛ヲ殺ス結果ニナラ
ヌヤウニ、詰リ國民ノ個人的ナ藝術的創意、
「クリエーション」ト云フモノヲ抑ヘ付ケナ
イヤウニ、政府ノ斯ウシタイト云フ國家ノ意
思ト、國民ノ中ノ藝術的創意ト云フモノヲ、
巧ニ調和スルト云フコトノ考慮ガ現ハレナ
イ場合ニ於テハ、却テ藝術ニ對スル一ツノ
壓迫カラシテ、映畫政策ハ却テ角ヲ矯メテ
牛ヲ殺ス結果ニナルト云フコトヲ恐ルルノ
デアリマス、此ノ點ハ私ハ非常ニ重要點デ
アルト思フノデアリマス、今マデ各官廳ニ
於テ作ラレマシタ映畫ハ官吏ガ之ヲ作リ、
指導スル、ソコニ一ツノ國策映畫ト云フ銘
ヲ打ツタモノハ生レマスケレドモ、ソレヲ
見テ滿足スル者ハ作ツタ官吏ダケデアリマ
ス(拍手)ソレハ官吏ノ自己滿足ナノデアリ
マシテ、大衆ハサツパリ滿足シナイノデア
リマス、斯ウ云フコトガ今後ナイヤウニシ
テシマツテ、常ニ大衆ノ感興ト云フモノニ
政府ノ考ヘテ居ル國策的意思ヲ巧ニ織込マ
セテ行ク方法ヲ考ヘル必要ガアルト思フノ
デアリマス、今マデノ官廳ノ映晝ノヤウ
ニ、餘リ映畫ノ政策ノ中ニ官吏ガ立入リ過
ギルト云フコトモ、全然惡イトハ言ヒマセ
ヌガ、ドウカト思フノデアリマシテ、寧ロ是
ハ政府ガ或ル一定ノ「アイデヤ」ヲ民間ノ專
門家ニ與ヘマシテ、之ニ一定ノ補助金ヲ交
付シテ、サウシテ民間ノ專門家ガ政府ノ意
ヲ體シテ自由ニ作ルト云フコトガ、却テ立
派ナモノガ出來ハセヌカト思フノデアリマ
ス(拍手)サウシテ初メテ映畫ノ效果ト云
フモノガ現ハレテ來ルノデハナイカト
私ハ考ヘテ居ルノデアリマス、兎ニ角良イ
映畫ヲ作ルト云フコトニ關シマシテ、此ノ
映畫法ニ於テハ其ノ具體的方法ガ現ハレテ
居リマセヌガ、如何ニシテ良イ映畫ヲ作ル
カト云フコトニ關シマシテ、何カ政府ノ御
所見ガアレバ伺ヒタイト思フノデアリマス
其ノ次ハ今マデ度々同僚ノ諸君ガ觸レラ
レマシタ點デアリマスガ、農村ニ於ケル映
畫ノ配給問題デアリマス、農村ト都市トノ
文化的不平均ト云フモノガ、今日ノ資本主義
ノ缺陷ノ最大ノ癌デアリマス、靑年子女ガ
農村ヲ離村スルト云フ一因モ亦玆ニ存スル
ノデアリマス、ソコデ私ハ斯ウ云フコトヲ
政府ガ一ツオヤリニナツタラドウカト、私
ノ私案ヲ提案スルノデアリマスガ、一ツ移
動映寫班ト云フモノヲ作ル、ソレハ政府自
ラヤラヌデモ宜シイ、今日ノ映畫業者ニ移
動映寫班ト云フモノヲ組織セシメマシテ、
之ニ一定ノ補助金ヲ與ヘテ、特定ノ地方ニ
巡囘ノ映畫ノ興行ヲ命ズル、又映畫業者モ
映畫報國ノ精神ニ立チマシテ、損ヲシナイ
程度ニ於テ、十分其ノ國家ノ事業ニ奉仕シ
テ行クト云フ考ヲ持タセマシテ、政府ハ之
ニ一定ノ補助金ヲ交付シテ、映畫業者ト協
力シマシテ、移動映寫班ニ依ツテ、全國ニ於
ケル農村、漁村、山村ノ津々浦々ニマデ、
文化ノ貧困ニ惱ンデ居ル地方ニ、普ク其ノ
恩惠ヲ均霑サスト云フ方法ヲ御執リニナツ
タラドウカト思フノデアリマス(拍手)私ハ
サウ云フ方法ヲ御執リニナラヌト、偶〓此ノ
映畫ガ月ニ一囘或ハ二囘、甚シキハ二箇月
ニ一囘位〓ツタ所ガ、ソレデハ到底滿足シ
ナイノデアリマスカラ、モツト頻繁ニ繼續
的ニ何等カ文化ノ不平均ヲ是正スル映畫ノ
方策ヲ御執リニナルト云フコトニ付テ、
ツ御考ヲ御願シタイ、又其ノ御所見モ御聽
シタイノデアリマス
其ノ次ニ第三點デアリマスガ、映畫事業
ハ單ナル營利事業デハナイノデアリマシテ、
旣ニ映畫法ガ制定サレントスル今日ハ、モ
ウ立派ナ國民的文化事業デアリマス、所ガ
從來ノ社會觀念カラ言ヒマスト、映畫事業
ト云フモノハ何ダカ水物商賣デアル、映畫
關係者ハ水商賣ヲヤツテ居ルト云フヤウナ
考ヘ方ガ一般社會ニモアリマスシ、又此ノ
映畫業者自身ニモサウ云フ考ガ殘存シテ居
ルト思フノデアリマス、是ハ非常ナ誤リデ
アリマシテ、今日映畫事業ハ立派ナ文化事
業デアルシ、又俳優モ監督モ立派ナル國民
文化ノ選士デアルト云フ位置ガ、此ノ法律
ニ依ツテ明確ニ與ヘラレルモノト思フノデ
アリマスガ、ソレニシテハモウ少シ映畫業
者ヲ指導啓發シテ、眞ニ此ノ映畫ノ文化的
使命ヲ理解サセル必要ガアリマス、又俳優
監督ノ人格〓養ヲ高メル必要ガアルト思
フ、從來ノ通念カラ申シマスト、映畫俳優
ニナルト云フコトハ、何ダカ不良ノ仲間入
リスルヤウナ、良家ノ子女ガ之ヲ潔シトシ
ナイヤウナ考ヘ方ガアルト思フノデアリマ
スガ、私ハ是ハドウシテモ改善シテ、映畫
ト云フモノノ文化的使命ヲ國民モ、亦映畫
業者自身モ十分理解スル必要ガアルト思フ
ノデアリマスガ、ソレニシテハ今日ノ澤山ノ
映畫會社ヲ其ノ儘存在サセテ居ツテ、是デ
立派ナ映畫ヲ作レ、是デ俳優監督ハ人格〓
養ヲ高メロト言ツテモ、ソレデハ聊カ無理
デハナイカト思ヒマス、私ハサウ云フ國策
的見地ニ立ツナラバ、今日ノ多クノ映畫會
社ヲ統一致シマシテ、一大國策映畫會社ヲ
作ツテ、其ノ財政的基礎ヲ鞏固ニシテ、俳
優監督ノ待遇ヲ改善シ、人格〓養ヲ高メ、
之ヲ十分〓育シテ、實ニ堂々タル一ツノ國
民的文化機關トスル必要ガ絕對ニアルト私
ハ思フノデアリマス(拍手)サウ云フ方向ニ
進マナイデ、現在ノ儘ノ映畫會社ヲ適當ニ
高イ所カラ指導スルト云フコトハ、實際問
題トシテハ困難デアリマス、此ノ點ニ關シ
マシテ文部大臣ノ御所見ヲ伺ヒタイト思フ
ノデアリマス
最後ニ映畫ト云フコトノ一番中心ノ問題
ハ宣傳デアリマスガ、今日映畫法ガ內務省
ト文部省ト兩大臣ニ依ツテ提案サレタノデ
アリマスガ、併シ映畫ト云フモノハ、內務
省的見地カラ見レバ是ハ取締ニナル、文部
省的見地カラ見レバ是ハ社會〓育的ニナル
ノデアリマスガ、更ニ映畫ノ積極性ヲ見レ
バ宣傳デアリマス、今日支那ガ世界ノ輿論
ヲ寧ロ映畫ニ依ツテ「リード」シテ居ル傾キ
ガアル、支那ノ現地デ撮ツタ多クノ「フイ
ルム」ハ、亞米利加ノ「ハリウッド」ヘ送ラレ
テ、其處デ現像サレテ歐米各國ニ配給サレ
ル、其ノ影響ガ非常ニ日本ニ不利デアルト
云フコトハ明ナ事實デアリマス、サウ云フ
風ニ今ヤ映畫事業ハ、國內的ニハ社會〓育
機關デアリマスガ、國際的ニハ是ハ文化戰デ
アリ、思想戰デアリ、宣傳戰デアリマス、
サウ云フ重要ナ一ツノ映畫ヲ統制シ、適正
ナル指導ヲ爲ス必要カラスレバ、私ハドウ
シテモ宣傳省ヲ置イテ、「其ノ宣傳省ノ一局
ニ映畫局ヲ作リマシテ、其ノ宣傳省ノ映畫
局トシテ其ノ機能ヲ發揮セシムルコトガ、
本來ノ映畫ノ使命ヲ最モ積極的ニ發揮セシ
ムル所以デアルト思フノデアリマスガ、今
ヤ日本ノ國際關係ガ益〓複雜多岐ヲ極メ重
大化スル折柄、宣傳省ノ必要ハナイカ、殊
ニ映畫政策ニ關シテ此ノ宣傳省ノ必要ヲ一
入痛感致スノデアリマスガ、之ニ關シマシ
テ內務大臣デモ宜シウゴザイマスシ、或人
文部大臣デモ宜シウゴザイマス、何レナリ
トモ、宣傳省設置ノ必要ヲ痛感スルモノデ
アリマスガ、之ニ對スル御所見如何ト云フ
コトヲ最後ニ御尋シテ、私ノ質問ヲ終リタ
イト思フノデアリマス(拍手)
〔國務大臣侯爵木戶幸一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=85
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086・木戸幸一
○國務大臣(侯爵木戸幸一君) 赤松サンニ
御答ヲ致シマス、最初ノ御尋ハ良イ映畫ヲ
作ル必要ガアル、ソレニハドウスルカト云
フ御尋デアリマス、殊ニ官廳映畫ガ無味乾
燥デアルト云フ御批評デアリマス、是ハ私
等モ屢〓耳ニスル所デアリマス、御話ノヤウ
ナ缺點ガアルコトハ認メテ居ルノデアリマ
ス、併シ今日ハ總テ製作ハ民間ニ任セルヤ
ウニ致シテ居リマスカラ、漸次ソレ等ノ點
ハ改善サレルコトト思ツテ居リマス、又良
イ映畫ヲ作ルト云フコトハ、要スルハ今日
ノヤウニ會社ガ濫立致シマシテ、互ニ無理
ナ競爭ヲシテ居リマスコトヲ是正致シマシ
テ、餘裕アル製作能力ヲ持チマスレバ、自
然其ノ方面ニ向ツテモ相當ナ效果ヲ擧ゲテ
行クト考ヘテ居ル次第デアリマス、ソレカ
ラ映畫ノ文化的使命カラ見テ、國策映畫會
社ヲ作ツテハドウカト云フ御尋デアリマシ
タ、今日政府ガ考ヘテ居リマスノハ、現在
アリマスル各會社ノ整理統合ト云フコトモ
必要デアリマセウガ、飛躍的ニ國策映畫會
社ヲ設立スルト云フコトハ、今日ノ所マダ
考ヘテ居ラナイ次第デアリマス、ソレカラ
宣傳省ノ問題デアリマスガ、是ハ非常ニ大
キナ問題デアリマス、今日宣傳ノ必要ナル
コトハ世界各國トモ之ヲ認メテ居リマスノ
デ、我國ニ於キマシテモ其ノ設置ノ必要デ
アルト云フ論ハ、色々論ゼラレテ居ル所デ
アリマスルガ、政府ト致シマシテハ、未ダ
其ノ點ニ付テハ具體的ナル問題ヲ申上ゲル
時期ニハ達シテ居ラナイノデアリマス、宣
傳省ト云フモノガ出來マシタ場合、映畫ヲ
此處ニ統一致スト云フコトモ、一ツノ方法
デアラウト存ジマスガ、今日ハ未ダ其ノ點
ニ付テハ具體的ナル結論ヲ申上ゲル時期ニ
ハ達シテ居ラヌ次第デアリマス(拍手)
〔國務大臣男爵荒木貞夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=86
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087・荒木貞夫
○國務大臣(男爵荒木貞夫君) 只今ノ農村
ニ對スル映畫政策及ビ其ノ普及ニ對スル御
意見ハ了承致シマシタ、左樣ナ方法モ將來
考ヘテ見タイト存ジテ居リマス、第二ニ映
畫ハ今ヤ單ニ娛樂及ビ興味本位デナクシテ、
〓育ニ對シテ非常ニ必要ナ役割ヲ演ズルガ故
ニ、是等ニ從事スル者ニ對スル問題ノ御尋
デアリマスガ、過去ニ於テハ御述ニナツタ
ヤウナコトガアラウト存ジマスルガ、今後
ニ於テハ只今御指摘ノヤウニ重要ナ任務ヲ
持ツテ居リマスルノデ、是等ノ點ヲ統一或
ハ指導等ヲ致シマシテ、サウ云フ風ニ進メ
ルコトガ必要ト考ヘテ居ル次第デアリマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=87
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088・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 前川正一君
〔前川正一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=88
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089・前川正一
○前川正一君 私ハ極ク簡單ニ二三ノ點ニ
付キマシテ質問ヲ致シタイト思ヒマス、御
答辯ノ際ハ成ベク御詳細ニ願ヒタイト思フ
ノデアリマス、政府ガ此度映畫ノ持ツテ居
リマス大衆性ト文化性ト、而モ宣傳、報道、〓
化ノ力ト云フコトヲ認メラレマシテ、玆ニ映
畫法ヲ上程サレタト云フコトハ、確ニ一ツ
ノ文化的ナ、日本デハ珍シイコトデアリマ
ス、其ノ意味ニ於キマシテ、一種ノ歷史的
意義サヘアルノデハナイカト、別ニ煽テル
譯デハアリマセヌガ、考ヘルノデアリマス、
所ガサウ云フ意味ヲ持ツテ居リマスル映畫
政策ヲ玆ニ確立シヨウト云フコトノ御考ヲ
持タレル前ニ、何故其ノ基本ヲ成ス所ノ全
體的ナ文化政策ヲ確立シナイカ、其ノ大本
ノ全體的ナ文化政策ノ確立ヲセズシテ、映
畫政策ダケヲ玆ニ急グカラ間ニ合セニヤラ
ウト云フヤウナ態度ハ、ドウモ私達ハ腑ニ
落チナイノデゴザイマス、日本ノ今日程最
モ健康ナ文化ノ要求サレタ時代ハゴザイマ
セヌ、民族ノ飛躍的ナ段階ニ於キマシテハ、
最モ健康ナル文化ノ要求ガアルノデアリマ
スルガ、此ノ文化ノ健康ナルモノノ創造ヲ
必要ト致シマスルナラバ、私ハ先ヅ思ヒマ
ス、映畫方針ノ確立ノ前ニ、先ヅ政府ハ民
間カラ擡頭致シテ居リマスル文化運動ノ個
個ノモノヲ綜合的ニ統一サレマシテ、時代
ノ必要ニ對應シ得ルヤウナ力强イ文化政策
ヲ確立ナナケレバナラヌノデハナイカ、斯
ウ云フ意味ニ於キマシテ、是ハ特ニ國務大
臣トシテノ荒木サンニ御尋シマスルガ、內
閣直屬ノ中央文化委員會ト云ツテモ宜シイ
ノデアリマスガ、音樂モ、演劇モ、映畫モ、
文學モ、美術モ、總テヲ綜合統一致シマシ
テ指導スルヤウナ趣旨ノ委員會ヲ御作リナ
サルコトハドウカト云フコトヲ御尋シタイ
ト思フノデアリマス、是ハ旣ニ獨逸ニ於テ
モ「ゲッベルス」宣傳相ノ下ニ中央文化評議
會ナルモノガゴザイマシテ、映畫ノ上ニ、
演劇ノ上ニ、非常ナル效果ヲ奏シテ居ルノ
デアリマスガ、特ニ日本ニ於キマシテモ、
此ノ映畫法ガ旣ニ獨逸ヤ伊太利ノアノ國策
的ナ見地ニ追隨シヨウトスル傾向ガアル以
上ハ、ココマデオヤリニナツテモ宜イノデ
ハナイカ、先ヅ此ノ一點ニ付テ國務大臣ト
シテノ荒木サンノ御意見ヲ承リタイト思フ
ノデアリマス(拍手)
第二點デゴザイマスガ、此ノ法案ヲ御出
シニナル場合ニ、映畫ガ國家的ノ任務ヲ持
ツテ居ル、其ノ重要性ト云フコトヲ先ヅ謳
ハレテ居ル、サウ云フコトヲ言ハレナガラ、
映畫ノ經營ハヤハリ個人主義的ノ營利經營
ニ放任サレテ居ルノデアリマス、日本映畫
ガ今日マデ外國映畫ニ比ベマシテ、割合ニ
發展シナカツタト云フコトハ、製作費ガ安
クテ儲ケノ多イモノヲ作ラウト云ツタヤウ
ナコトガ、日本映畫ノ發達ヲ傷ケテ居ルト
思フ、此ノ營利的ノ經營ノ下ニ映畫事業ヲ
放任サレテ、而モ質的ノ向上ヲ圖ラウト云
フコトハ、中々困難デアラウト思フノデア
リマス、此ノ儘デ行キマスナラバ入場者
ノ少イ、隨テ入場料ノ少イ農村ニ向ツテ映
畫ガ出テ行カナイノハ當リ前デアリマス、
特ニ少年ニ必要デアル所ノ少年ノ爲ノ映畫
ハ今後ハ無クナツテ來ルト思フノデアリ
マス、映畫ト云フモノハ藝術デアル、資本
ダケデハ出來ハシナイ、其處ニ働ク所ノ監
贅「シナリオ·ライター」、或ハ俳優、「カメ
ラマン」ト云ツタヤウナ人達ノ調和シタル
藝術的意欲、一種ノ藝術的環境ガナク
シテハ良イ映畫ハ出來テ來ナイト私ハ
思フ、斯ウ云フ意味ヲ持ツテ居ル映畫ニ
對シテ、今度ノ法案ヲ見マスト、ヤハリ
依然トシテ取締的ノ內容ガ多分ニアルノデ
アリマシテ、建設的ニ指導シテ行カウト云
フ條規ガ非常ニ少イノデアリマス、モツト
之ヲ具體的ニ指導スルト云フ意見ヲ私ハ示
サナケレバナラト思フ、是ハ一例デゴザイ
マスガ、文部省ガ推薦致シマシタ例ノ「風
ノ中ノ子供」ト云フ名畫ガゴザイマス、之ヲ
日本ノ文化ヲ紹介スル爲ニ佛蘭西へ送ツタ、
ソコデ巴里ニ於ケル在留邦人ハ此ノ映畫ヲ
觀ヨウト思ツテ探シタケレドモ、何處ノ映
畫館ニモナイ、能ク調ベテ見ルト、大使館ノ
庫ノ中ニ藏ツテアツタト云フコトデアル、
是ハ日本ノ官吏ガ映畫ノ持ツ文化的意義ヲ
知ラナイト云フコトノ一ツノ證據デアルト
思フ、斯ウ云フヤウナオ役人方ノ頭デ以テ、
藝術的ナ映畫ト云フモノヲ指導監督スルト
云フコトハ中々困難ダト思フ、而モ一方
ハ金儲中心ノ資本家デアル、私ハ映畫ト云
フモノノ將來ニ非常ニ憂鬱ヲ感ズル、斯ウ
ナルト其處ニ先ヅ考ヘテ戴キタイコトハ、
映畫ノ取締ト云ヒマスカ、指導機關ヲ擔當
スル部門ニ据ヘル人ハ、少クトモ藝術ヲ理
解スル所ノオ役人デアリ、映畫事業ノ特殊
性ヲ理解スル所ノオ役人ヲ据ヘナカツタナ
ラバ、今後政府ノ企圖サレルヤウナ本當ノ
映畫事業ノ發展ハナイノデハナイカト考ヘ
등
ルノデアリマスガ、是等ニ對シマシテ內務
大臣トシテ、モツト具體的ノ指導方針ナリ
御意見ガアリマスナラバ、此ノ際承リタイ
ト思フノデアリマス(拍手)
次ハ度々問題ニナリマシタコトデアリマ
スガ、重要デアリマスカラ尙ホ申上ゲタイ
ト思ヒマス、農村映畫デゴザイマス、人口
ノ半分ヲ占メ、而モ文化ニ惠マレナイ、娛
樂機關ノ非常ニ少イ、特ニ是ハ事變以後ニ
於キマシテ農村ニハ娛樂機關ハ殆ドゴザイ
マセヌ、此ノ農村ニ映畫ガヤツテ來ナイ、
映畫ノ觀覽者ノ七〇%以上ハ都會人デアル、
農村ニハ勿論來マセヌ、木戶錢ノ代リニ大
根ヲ持ツテ來ル農村ニハ中々來ナイノデア
リマス(拍手)是ハ金ガ儲カラナイカラデア
リマス、サウ云フモノヲ其ノ儘ニ致シテ置
キマスルト、日本全體ヲ擧ゲテノ文化水準
ヲ高メルコトハ出來ナイト思フ(拍手)ソコ
デ適度ノ娯樂性ト文化性ヲ持ツテ居リ、而
モ〓育宣傳的ナ內容ヲ持チマス映畫ヲ、是
ハ仕方ガナイカラ政府ガ積極的ニ農村ニ持
込ム必要ガアル、是ハ一例デゴザイマスガ、
先達テ北海道ノ方へ產業組合映畫ヲ持ツテ
行ツタ、所ガ何里ト云フ遠方カラ一晩ニ觀
覽者ガ千何百人集マツタ、而モ夜ノ十一時
頃映畫ガ一囘濟ンダガ歸ラナイ、モウ一囘
見セロト言フノデス、ソレ程農村ハ娛樂映
畫ニ饑エテ居ルノデアリマス(拍手)斯ウ云
フ地方ニハ、積極的ニ政府自身ガ、國民精
神總動員ニ二百万圓モ金ヲ出スナラバ、半
分デモ宜シイ、之ヲ持ツチ來テドン/〓ヤ
ル必要ガアルト思フ、確ニ效果ガアルノデ
アリマス(拍手)特ニ是ハ文部大臣ト致シマ
シテ、農村向ノ映畫ヲ積極的ニ作ラシテ、
之ヲ農村ニ配給スル、斯ウ云フ點ニ付テノ
御意見ガアルナラバ承リタイト思フノデア
リマス
ソレカラ兒童映畫デゴザイマスルガ、是
ハ政府ノ方デ積極的ニヤラレテ居ルカラ非
常ニ結構デアル、農村映畫ト關聯シテ申上
ゲルノデアリマスガ、特ニ是ハ私ノ意見ナ
ノデス、出來マスルナラバ此ノ際各學校ト
カ、農村若クハ都會デモ宜シイガ、靑年團
トカ、特ニ農村ノ各部落ニ於ケル所ノ實行
團體デモ宜シイ、或ハ農村ニ於ケル所ノ婦
人團體ト云ツタヤウナ集團ノ爲ニ、特ニ役
立ツヤウナ映畫、〓材的ナモノデモ宜イ、
或ハ產業的ナモノ、農地改良ノ指導ト云ツ
タヤウナモノデモ宜イ、或ハ榮養食ヲ指導
シタルモノ、體位向上ヲ指導シタルモノデ
モ宜イ、サウ云ツタ內容ヲ持ツ映畫ヲ政府
ガ作ラシテ、ソレヲドン〓〓サウ云フ機關
ヘ持込ム、持込ンダダケデハ駄目デアル、
學校ノ板ノ間デ以テ御役所カラ持ツテ來タ
映畫ダカラ、義理ニ痺レヲ切ラシナガラ見
テ居ルノデハ駄目デアルカラ、ソレハモウ
少シ溫カミノアル映畫上映ノ場所ヲ部落
ニ作ツテ貰ヒタイ、學校ナラバ學校ノ一部
ヲ旨クヤツテ貰ヒタイ、今申上ゲマシタヤ
ウナ集團團體ニ對シマシテ、政府ノ方デ上映
機關ヲ設備スルト云フコトニ付テ、特ニ費
用ヲ用ヒマシテ此ノ際ヤラレルコトハ、國
民文化ノ全體的ノ向上ニ私ハ役ニ立ツノデ
ナイカト考ヘル(拍手)特ニ是ハ文部大臣ト
シテノ御意見ガ承リタイノデアリマス
其ノ次ノ問題デゴザイマスルガ、檢閱ナ
ノデス、檢閱ハ今マデハ「フイルム」ニナツテ
カラ檢閱サレタ、切ラレタ、今度ハ臺本ニ
於テ事前檢閱ガ新ニ出來タ、是ハ宜シイ、併
シナガラ考ヘテ戴キタイコトハ、此ノ檢閱
ニ關係致シマスル役人ガ、臺本ヲ檢閱スル役
人ト「フイルム」ヲ檢閱スル役人トガ出來テ
來ル、所謂官僚ノ癖デアリマスルガ、ドウ
致シマシテモ責任逃レニナル、俺ノ責任ハ
此處デ終ル、左樣ニナリマスルト終ヒニハ、
結局以前ヨリヨリ以上「フイルム」ガ「カットㄴ
サレテ來ルヤウナコトニナリハシナイダラ
ウカ、斯ウ云フコトヲ業者ハ今カラ心配シ
テ居リマス、出來マスルナラバ左樣ナ部門
ヲ擔當致シマスル役人ニハ、特ニ形式主義
者トカ機械主義者的ノ考ヲ持タヌヤウナ人
ヲ入レテ戴キタイ、是モ一ツノ考ダト私ハ
思フノデアリマス、是ハ一例デゴザイマス
ルガ、最近傷兵保護院ガ映畫ヲ註文シタ、
「シナリオライター」ガ旨ク書イテ出來タ、
喜バレタ、之ヲヤラウト思ツテ內務省ニ持
込ンダ所ガ、內務省ノ檢閱官ハ通サナイ、
「パス」シナイ、內閣ノ一部ニ於キマシテ出
來テ非常ニ喜バレタモノガ、內務省デハ檢
閱ガ通ラナイ、斯ウ云フヤウナ事實モアル
ノデアリマス、其ノ他映畫ノ檢閱ニハ陸軍
省海軍省、文部省若クハ內務省、色々ナ
省ニ關係ガゴザイマシテ、各省ヲ順々ニ通
ツテ行ク間ニ切ラレテシマフ、テン〓〓
バラ〓〓ニナル、ソレヲモウ少シ同時的ニ
モツト事務的ニ迅速ニヤラレルヤウナ方
法、所謂檢閱ノ一元化デゴザイマスルガ、
之ヲ此ノ際御立テニナル必要ガアルノデナ
カラウカ、斯ウ思フノデゴザイマス(拍手)
檢閱ノ問題デ考ヘテ戴キタイコトハ、餘リ
檢閱ガウルサクナリマスルト、業者ガ自然
ニ「オペレッタ」ノヤウナ時代性ノナイ所ノ「ナ
ンセンス」物ヲ作リ出シテ來ル、檢閱ニ心配
ナイモノデアリマスガ、斯ウ云フモノハ國
民文化ニ役立タナイノデアリマス、サウ云
フ點ヲ考ヘマスルナラバ、是ハ獨逸ハ中々
聰明デアリマス、檢閱制度ニ於キマシテ陪
審制度ヲ採用致シマシテ專門家ノ意見ヲ聽
ク、ソレデ檢閱ヲ旨クヤツテ居リマスガ、
日本ニ於キマシテモ、此ノ際內務省ヲ中心
ニ、各省及ビ民間ノ業者ノ意見ヲ反映セシ
メルヤウナ、映畫檢閱ノ機關ヲ御作リニナ
ツタラドウカ、特ニ是ハ內務大臣ノ御所見
ヲ承リタイト思フノデアリマス(拍手)
最後ニ登錄制ノ問題デゴザイマス、映畫從
業者ヲ登錄ニスルコト、是ハ一種ノ從業者
ノ質ヲ良クスルト思フノデアリマスガ、登
錄銓衡ヲヤル場合ニ、大日本映畫協會ヲ通
ジテヤルト云フコトヲ私ハ聞イテ居ル、所
ガ大日本映畫協會ヲ調ベテ見マスルト、此
ノ構成分子ハ政府ノ役人デアル、其ノ次ハ
映畫資本家ト興業資本家、是ハ同一デアリ
マス、松竹見タイナモノデアル、其ノ次ハ
民間ノ有識者デアル、其ノ上ニ加ツテ居ルノ
ガ僅ニ映畫監督ノ協會デアル、現業員ノ監
督協會ノ代表ガ八名加ツテ居ルノデアル、
アトハ作家協會デアルトカ、若クハ色々ノ
「カメラマン」ノ全國的ノ組織ヲ持ツタ協會
カラハ誰一人入ツテ居ナイ、映畫ニ現實從
業シテ居ル者ハ殆ド入ラナイデ、上ノ方ダ
ケガ入ツテ居ルノデアリマス、而モサウ云
フ機關ヲ通ジマシテ、俳優トカ「カメラマ
ン」監督ノ資格ヲ調ベテ行カウ、之ヲ判斷
シテ登錄ヲ與ヘルト云フコトヲ申シマス
ガ、中々效果ハ擧ラヌノデナイカト思フノ
デアリマス、出來マスナラバ、此ノ際日本
映畫協會ヲ通シテ登錄ヲシヨウト致シマス
ルナラバ、宜シク「カメラマン」ノ協會カラ
モ、作家協會カラモ代表者ヲ御入レニナツ
テ內容ヲ充實サスカ、若クハ出來マスナラ
バ、大日本映畫協會ノ改組ヲ此ノ際ヤラレ
テハドウカト云フコトヲ、特ニ内務大臣ニ
承リタイト思フノデアリマス
又映畫演劇ノ質的ノ向上ヲ圖ルト致シマ
スルナラバ、先程ドナタカ申シマシタガ、
生活問題ガアル、是モ一應理窟デアリマス、
ダガモウ一ツ考ヘタイコトハ、映畫、演劇
ニ當リマスル人逹ヲモウ少シ〓育スル爲ニ
「アカデミ」ヲ作ル必要ガアルノデハナイカ、
〓究機關ヲ作ル必要ガアルノデハナイカ、
旣ニ或ル大學ニ於キマシテハ映畫ノ講座ヲ
設ケラレテ居ル所ガアリマス、是ハ宜シク
國家的事業トシテ、國民文化ノ第一線ニ走
ル所ノ選士デアルト云フナラバ、ソコマデ
ノコトヲ國家ノ力ヲ以テヤツタラ宜イデハ
ナイカト思フノデアリマス、之ニ對シマシ
テノ御意見ヲ聽キタイ
モウ一ツノ問題ハ、此ノ映畫從業者ノ登
錄制度ニ依リマシテ失業ヲスルノデハナイ
カ、特ニ登錄問題ト關聯スル所ノ失業問題、
色々是等ノ點ニ付キマシテ能ク分ルヤウニ、
全國數千ノ映畫從業員ノ不安ヲ解消シマス
ル爲ニ、特ニ內務大臣ノ明快ナル御答辯ガ
得タイト思フノデアリマス
モウ一ツノ問題ハ現業者ノ保護規定デゴ
ザイマシテ、是ハ結構デアリマスルガ、年
少婦女子ノ深夜業廢止、是ハ宜シイノデア
リマス、唯此ノ中ニ斯ウ書イテアル、但シ
所轄警察署ノ許可ヲ受ケタル者ハ此ノ限ニ
アラズ、映畫會社ノ所轄警察署長ガ主管ス
ルコトニナツテ居ルノデアリマス、許可ヲ得
タ場合ハ年少者デアラウガ、婦女子デアラ
ウガ、夜通シ映畫ヲ撮映シテモ構ハヌト云
フコトニ相成ルノデアリマスガ、之ヲ特ニ斯
ウ云フ場合ト斯ウ云フ場合ダケハ許可ヲシ
テモ宜イト云フ、例外規定ヲ列擧的ニヤツ
テ戴イタラドウカ、是ハ命令デ出サレルト
思フノデアリマスガ、此ノ御考慮ヲ一ツ戴
キタイト思フノデアリマス
其ノ次ノ問題ハ災害豫防ノ規定デアリマ
ス、是モ非常ニ結構デアル、併シナガラ「ス
タジオ」ニ參リマシタラ換氣裝置、煖房裝置
ガアリマセヌ、實ニ非衞生極マルモノデア
ツテ「スクリーン」ノ上デ見ル映畫ト「スタ
ジオ」ノ中ニ於ケル生活トハ極端ニ違フノ
デアリマス、特ニ夏ナンカニナリマスルト
「セット」ノ中ヲ閉切ツテ、「ライト」ニ照サレ
ナガラ百何十度ト云フ蒸暑イ釜ノ中見タイ
ナ所デ仕事ヲシテ居ル、極端ナノハ三十何
時間勞働ヲスル、途中デ倒レルト「ホルモ
ン」注射ヲヤツテ又仕事ヲスル、マルデ人間
ヤラ機械ヤラ分ラヌノデアリマス、之ヲ女
優、監督「カメラマン」皆ヤツテ居ルノデア
リマス、斯樣ナヒドイ勞働ハ私ハナイト思
フ、ダカラ「スタジオ」デ過勞シテ倒レル
者負傷スル者、重傷スル者、時ニハ高イ
樓ノ上カラ落チテ死ヌ所ノ「カメラマン」モ
アル、肺結核ハ頻々トシテ出テ來ル、斯ウ
云フ非衞生ナ狀態ヲ考ヘマスルナラバ、特
ニ厚生省ノ方ニ御願シタイト思フノデアリ
マスガ、「スタジオ」製作所ニ工場法ヲ適用
サレタラドウカ、又健康保險法ノ適用ガ必
要ダト思フノデアリマス、ソレカラ映畫ヲ
撮ルノデモ三十何時間モ撮ラセナイ、連續
撮影ノ最長時間ヲ決定スル、濟ンダラ又直
グヤラサレル、其ノ間ノ休養時間ガ短イカ
ラ、最低時間ヲ決定シナケレバナラヌト思
フ、サウ云フ點ガ特ニ考へラレナケレバナラ
ヌト思フノデアリマス、若シ其ノ上ニ出來
マスナラバ、日曜祭日ノ公休日ヲ持ツテ居
ル所ハ一ツモアリマセヌ、休ミナド一ツモ
ナイ、是モ外竝ミニ多少緩和スルヤウナコ
トニ考ヘテ戴キタイ、表面華ヤカニ見エテ
內實極メテ慘メナ此ノ映畫從業者ニ對シマ
シテ、若シ厚生省ノ御同情アル御意見ヲ伺
フコトガ出來マスナラバ、極メテ結構デア
ルト思フノデアリマス、極ク簡單デアリマシ
タガ以上ガ質問ノ要旨デアリマス(拍手)
〔國務大臣侯爵木戶幸一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=89
-
090・木戸幸一
○國務大臣(侯爵木戸幸一君) 前川サンニ
御答ヲ致シマス、最初ノ御尋ハ映畫ノ取締
ガ單ニ警察取締デナク、指導ニ存シテ居ル
以上、是等ノ職ニ當ル者ハ藝術ニ理解アル
者ヲ以テ充テナケレバイカヌデハナイカト
云フ御尋デアリマス、此ノ點ニ付テハ政府
モ考慮致シテ居リマスノデ、將來此ノ方面
ニ當リマス者ニハ、成ベクサウ云フ方面ノ
理解ヲ深メテ行クヤウニ努メテ行キタイト
考ヘテ居リマス
ソレカラ事前檢閱ト事後檢閱トノ調和ト
申シマスカ、統一ト云フコトニ付テ御尋ガ
ゴザイマシタガ、此ノ事前檢閱ト云フモノ
ハ、從來折角出來マシタモノヲ檢閱ノ時ニ
不合格ニ致シマスコトハ、營業的ニ見マシ
テモ非常ニ困ルコトガアルノデアリマス、
其ノ意味ニ於キマシテ、最初ニ其ノ大體ノ
筋書等ニ付テ檢閲ヲ致シマシテ、サウシテ
成ベク事後ニ於テハ、ソレ等ノモノノ不合
格ニナラヌヤウニ努メル、其ノ趣旨ニ於テ
行フノデアリマシテ、此ノ點ニ付テハ只今
御話ノヤウニ機關ガ二ツニナリマスト、ソ
コニ又色々ノ支障ガアルト云フコトニ付テ
ハ、十分ノ注意ヲ致シマシテ、此ノ設ケマ
シタル本旨ヲ十分貫徹スルヤウ致シタイト
考ヘテ居リマス
ソレカラ檢閱ヲ致シマスニ付テハ、何カ
一ツノ委員會等ヲ作ツテ、各方面ノ者ヲ入
レテヤツタラドウカト云フ御尋デアリマシ
タガ、此ノ檢閱ニ付キマシテハ、必要アリ
マス時ハ、現在デモソレ〓〓專門家ノ意見
ヲ參酌シテ居リマス次第デアリマスカラ、
此ノ際委員會ノ制度等ハ考ヘテ居ラナイ次
第デアリマス
次ニ日本映畫協會ノ改組ニ付テノ御尋デ
アリマス、映畫協會ハ只今御話ノ通リニ昭
和十年ニ設立サレタモノデアリマスガ、今
囘此ノ映畫協會ノ援助ヲ得マシテ、登錄ニ
付テノ一ツノ機關ト致シマス以上ハ、其ノ
內容ニ付キマシテハ、只今御話ノヤウナ點
モアリマスノデ、十分考慮致シテ、機關ト
シテノ機能ヲ十分發揮シ得ルヤウ致シタイ
ト考ヘテ居リマス
ソレカラ登錄制度ノ實施ガ失業者ヲ出シ
ハシナイカ、斯ウ云フ點デアリマス、此ノ
點ハ只今考ヘテ居リマスノハ、餘リ嚴格ニ
制限ヲスルト云フ考ハナイノデアリマシ
テ、此ノ點急激ナル向上ヲ圖リマス爲ニ、
或ハ失業問題ヲ起スト云フヤウナコトハ、
只今ノ所ハ考ヘテ居リマセヌ、唯時ニ品位
ヲ失墜スルトカ、或ハ風〓上影響スルト云
フヤウナ問題ガ起リマシタ場合ニ、法規ニ
依リマシテ登錄ノ取消ヲヤルトカ、業務ノ
停止ヲヤル、是ハ已ムヲ得ナイノデアリマ
スガ、全般的ニ無理ナ引上ヲヤリマシテ、
失業問題ヲ起スト云フコトニ付キマシテ
ハ今日當局トシテハ考ヘテ居ラナイ次第
デアリマス(拍手)
〔國務大臣男爵荒木貞夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=90
-
091・荒木貞夫
○國務大臣(男爵荒木貞夫君) 第一ノ中央
文化委員會ト云フヤウナモノヲ內閣ノ下ニ
置イテ、總テノ文化振興ニ關シテ綜合的ノ
〓究及ビ施設ノ基礎ヲ爲シテハドウカト云
フ御意見ノ點ニ付テハ、洵ニサウ云フヤウ
ナ必要ヲ感ジテ居ルノデアリマス、殊ニ世
界トノ文化交流ノ最モ必要ナ時デアリ、更
ニ日本ノ文化ヲ最モ正確ニ世界ニ向ツテ示
ス必要ノアル場合ニ於テ、斯樣ナ點ヲ必要
ト認メマスルガ、只今ノ所是等ノ業務ハ悉
ク文部省ノ所管ニアリマスルノデ、取敢ズ
文部省内ニ斯樣ナ總テノ施設、及ビ中央機
關ヲ作ルコトニ向ツテ努力致シテ居リマス
ルノミナラズ、只今是ノ一端ヲ現實スルヤ
ウニ致シテ居ル次第デアリマス、之ニ依ツ
テ取敢ズ此ノ方面ノコトヲ致シテ行キタイ
ト存ジテ居リマス
第二ノ映畫ニ從事スル所ノ總テノ人々ニ
今少シク藝術的ノ指導ヲシ、之ヲシテ文化
振興ノ上ニ對スル映畫ノ效果ヲ十分ナラシ
ムル方法ニ對シテ何カ考ガアルカ、斯ウ云
フヤウニ承ツタノデアリマスルガ、其ノ必
要ヲ十分認メマシテ、今後斯ウ云フ方面ニ
對シテハ、內務當局トモ又其ノ他ノ方面ト
モ十分ナ連繫ヲ執リマシテ、其ノ趣旨ヲ貫
徹スルヤウニ致シタイト存ジマス
第三ノ農村ニ對シテノ映畫配給ノ問題デ
アリマスルガ、先程來段々問題ニナリマシ
タノト、又映畫製作ニ關シテ、各集團ニ對
シテソレ〓〓部門ヲ異ニシテ作ツテハドウ
カト云フヤウナコトモ、必要ナ點ト考ヘマ
スルノデ、十分考ヘテモ居リマスシ、是等
ノ點モ實現スルヤウニ努力ヲ致シタイト考
ヘル次第デアリマス(拍手)
〔政府委員津崎尙武君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=91
-
092・津崎尚武
○政府委員(津崎尙武君) 御尋ノ中ノ映畫
製作所ニ工場法ヲ適用シテハドウカト云フ
コトデアリマスガ、是ハ「フイルム」ノ加工
ヲ行フ作業場ニ對シテハ、其ノ性質カラ致
シマシテ工場法ヲ適用シテアルノデアリマ
ス、隨テ其ノ關係上健康保險法モ之ニ適用
シテアルノデアリマスガ、其ノ他ノ職員ニ
對シマシテハ、直チニ其ノ性質上此ノ工場
法ヲ適用シ、隨テ健康保險法ヲ適用スルト
云フ譯ニハ行キマセヌケレドモ、映畫俳
優其ノ他ノ職員ニ付キマシテハ、只今御承
知ノ通リ職員健康保險法ガ委員會デ審議ニ
ナツテ居リマスカラ、是ガ制定セラレマシ
タナラバ、此ノ法ニ依ツテ任意加入ノ方法
ニ依ツテ、健康保險ガ出來ルコトニ相成ルノ
デゴザイマス
ソレカラ只今年少者トカ婦女子ノ夜業禁
止、其ノ程度ノコトナドニ關係シテノ御話
デアリマシタガ、深夜業禁止ト云フノハ、
滿十六歲未滿ノ者及ビ女子ニ對シマシテ
ハ、午後十時ヨリ午前五時ニ至ル所謂深夜
業是ハ禁止スルト云フ考デ、隨テ此ノ法
律ニ關聯スル勅令ヲ制定スルコトニナル豫
定デゴザイマス其ノ他ノコトニ付キマシ
テハ、警察ノ云々ト云フコトハ、是ハ季節
ノ繁忙ナ時トカ、或ハ「ロケーション」ノ場
合ノ如キ所ヲ緩和シテ、其ノ所轄警察ノ許可
ニ依ツテ致スト云フコトニヤリタイト思ツ
テ居ルノデアリマス、尙ホ只今內務大臣カ
ラモ御答辯ニナリマシタガ、御話ノ通リ藝
術的ノコトデアリ、氣分デ行クト云フコト
ガアルサウデアリマスカラ、中々一定ノ時
間ヲ決メテ、其ノ決メタ通リニヤルト云フ
ヤウナコトハ難カシイ場合ガアルト云フコ
トデアリマシテ、隨テ一律ニ其ノ時間ヲ規
定スルト云フヤウナコトハ、今考ヘテ居ナ
イト云フコトデゴザイマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=92
-
093・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 三田村武夫君
〔三田村武夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=93
-
094・三田村武夫
○三田村武夫君 旣ニ同僚各議員カラ殆ド
論ジ盡サレマシタノデ、私ハ殘サレタ別ナ
方面カラ簡單ニ二三ノ點ヲ御尋致シマス
日本國民ノ中デ一箇年ニ映畫ヲ觀ル者四
億ダト云ヒマス、ソレハ今日此ノ映畫ニ國
民ガ如何ニ多クノ關心ヲ持ツテ居ルカノ一
例デアリマス、私ハ映畫ノ一畫面ガ與ヘル
影響ガ、數万言ノ演說ヨリモ、數百頁ノ著
書ヨリモ、ヨリ强ク印象付ケラレルコトヲ
知ツテ居リマス、其ノ意味ニ於テ此ノ映畫
法ノ制定ハ重要ナル意義ヲ感ジテ居リマス、
此ノ映畫法案ヲ通覽致シテ居リマスト、
ツノ文化警察ノ立法デアリマスガ、私ハ先
ヅ最初ニ文化警察ノ任務ニ付テ内務大臣ニ
簡單ニ御尋致シマス、多クノ說明ヲ加ヘナ
イ爲ニ問旨ヲ明ニ致シマス、國民ノ文化生活
ニ國ノ行政ガ警察的干涉ヲ爲スナラバ、其ノ
所謂文化警察ハ從來ノ警察觀念ト餘程異ツ
タモノデナケレバナラナイ、卽チ特定ノ行
爲、不行爲ヲ强制スル消極的警察作用ノミ
ニ止マルコトナク、國家ノ要求スル文化目
標ヲ明示シテ、ソレヘノ到達ヲ助長シ指導
スル積極的行政活動ガ必要デアル、此ノ點
ニ關スル內務當局ノ見解如何ト云フノデア
リマス、從來警察ノ觀念ハ極メテ消極的デ
アリマシテ、所謂人民ノ兇害ヲ豫防シ、安
寧ヲ保全スルニアル、是ガ警察ノ根本觀念
デアリマシタガ、ソレカラ受ケル警察的印
象ハ、泥棒ヲ捕ヘルトカ、惡イコトヲスル
者ヲ懲シメルトカ云フノデアリマス、所ガ
玆ニ所謂文化警察ハ、斯ノ如キ警察觀念デ
以テハ律シ得ナイノデアリマス、モツト幅
ノ廣イ、モツト程度ノ高イ警察觀念ガ玆ニ
考ヘラレルノデアリマス、卽チ警察的任務
ノ進化發展ト云フコトヲ考ヘナケレバナリ
マセヌ、サウシテ其ノ文化警察ノ上ニ期待
サレルモノハ、國家ノ文化目標ノ追求デア
リマス、サウシテソレヘノ積極的指導デア
リマス、映畫ハ一ツノ流行ヲ作ツテ行キマ
ス、其ノ際其ノ指導ヲ誤ツタナラバ、國民ニ
與ヘル影響モ甚ダ大キイ、此ノ點ヲ考慮シ
マスガ故ニ、特ニ文化警察ノ新シイ一ツノ
立法ヲ致シマス今日ニ於テ、內務當局ガ其
ノ所謂文化警察ニ付テ如何ナル見解ヲ御持
チデアリマスカ、御伺致シタイノデアリマ
ス
第二點、映畫法ヲ制定スルナラバ、ナゼ
演劇法ヲ作ラヌカ、此ノ點デアリマス、映
畫モ演劇モ言論、出版ト同樣、思想表現ノ
一形式デアリマス、言論、著作、印行、集
會結社ノ思想表現ガ法律ニ依ツテ規制サ
レ、玆ニ又映畫ニ依ル思想發表ガ立法化サ
レルナラバ、演劇ニ依ル意思表示モ亦立法
化サレル必要ガアリマス、殊ニ所謂文化統
制ノ見地カラ眺メマスナラバ、映畫法制定ト
同時ニ、演劇法ノ制定ヲ必要ト考ヘマスガ、
內務當局ハ如何御考デアリマスカ、憲法第
二十九條ノ所謂言論出版集會結社ノ自由ハ、
私達最モ廣イ意味ニ解シタイノデアリマス、
從來映畫ニ對スル取締ト致シマシテ、內務
當局ハ映畫ヲ出版ノ一種ト眺メテ來テ居リ
マシタ、サウシテ出版檢閱ト同樣ノ建前ニ
於テ、「フイルム」ノ檢閱ヲ致シテ居ツタモ
ノデアリマス、大審院ノ判例モ、「フイルムㄴ
ハ出版物デアルト云フヤウナ判例ガ出テ居
リマシテ、其ノ見解ノ下ニ取締ヲシテ來テ
居ツタノデアリマスガ、今日映畫演劇ノ與
ヘル對社會的影響ノ至大ナルニ鑑ミタ場合
ニハ、之ヲ立法化スルコトハ當ニ必要ナ手
段デアリマス、隨テ演劇ニ付テモ同樣ナコ
トガ言ヘルノデアリマシテ、映畫ノ一畫面
ガ數千言ノ演說ヨリモ强イ印象ヲ與ヘルト
同樣ニ、舞臺ノ一情景モ亦甚ダ强イ刺戟ヲ
與ヘマス、私ハ曾テ日本ノ左翼劇團ト稱セラ
レル劇團ニ依ツテ上演サレマシタ「西部戰
線異狀ナシ」ト云フ劇ヲ見タコトガアリマ
ス、何トモ言ヘナイ深刻ナ氣分ヲ味ヒマシ
タ、科白ガナクトモ其ノ「ゼスチュア」ニ依
ツテ觀衆ハ甚ダ多クノモノヲ酌取ルノデア
リマス、此ノ演劇ガ地方ノ一官憲ノ手ニ依
ツテ取締ラレ、規制サレテ居ルコトハ甚ダ
大キナ矛盾デアリマス、私ハ此ノ際映畫法
ヲ制定スルナラバ、當然演劇法モ制定シテ
貰ヒタイ、寧ロ內務省ハ同時ニ演劇法ノ制
定ヲナゼ考ヘナイカ、其ノ怠慢ヲ私ハ責メ
タイノデアリマス、演劇ハ脚本ヲ檢閱スル
カラ差支テイデハナイカト申シマスガ、脚
本ト上演トハ違ヒマス、脚本ヲ讀ンダ讀者
ト舞臺ニ見セラレタ觀客トハ大キナ違ヒガ
アリマス、此ノ點私ハ內務省ハ篤ト御考慮
願ヒマシテ、演劇法ノ制定ニ格段ノ考慮ヲ
拂ハレンコトヲ希望致シマス
第三點、思想統制ノ目標ニ付テ內務大臣
及ビ文部大臣ニ簡單ニ御尋ヲ致シマス、勿
論映畫法ノ制定モ思想統制ノ一形態デアリ
マス、戰時下ノ思想問題ハ言フマデモナク
重要デアリマスガ、國家ガ苟モ權力作用ヲ
以テ思想ノ統制ヲ行ハントスルナラバ、其
ノ目標ヲ何處ニ置クカノ點ハ又甚ダ重要デ
アリマス、卽チ國家國民ノ生存ニ害ヲ爲シ、
社會ノ安寧ヲ害スル思想ノ排除ハ勿論必要
デアリマスガ、ソレガ思想統制ノ目標デハ
アリマセヌ、思想統制ノ目標ハ、思想文化
ノ進步發展ガ國家國民ノ發展繁榮ニ寄與ス
ルコトヲ十分考慮シタ上ニ於テ、其ノ目標
ヲ何處ニ置クカヲ考ヘネバナラナイノデア
リマス、言フマデモナク、ソレハ國家ノ針
路ト同一方向ニ向ケラレネバナリマセヌ、
卽チ日本デ言フナラバ、日本ガ進ム道ト其
ノ同ジ方向ニ向ツテ、思想ノ統制ガ行ハレ
ナケレバナラナイノデアリマス、稍〓具體
的ニ申シマスナラバ、國家ノヨリ高キ理想
ヲ目標トスルコト、日本デ言フナラバ不動
ノ國家目標ハ、卽チ文化目標ハ言フマデモ
ナク建國理想ノ顯現デアリマス、國民精神
ノ發揚デアリマス、而シテ國家國民ノ發達
繁榮ガ、其ノ思想統制ノ目標ニナツテ居ラ
ナケレバナリマセヌ、更ニ現在當面シタ問
題カラ申シマスナラバ、所謂聖戰目的ノ貫
徹東亞再建ノ大業完成、其ノ爲ノ國民總
動員、斯ウ云フモノガ思想統制ノ目標ニナ
ツテ居ラナケレバナラナイノデアリマス、
映畫ハ社會萬般ノ事象ヲ畫面ニ反映シテ參
リマスガ、是等ヲ取締ノ對象トシテ眺メタ
た時、警察當局ハ如何ニ之ヲ扱ヒ、更ニ其
ノ文〓的ナ立場カラ指導啓發ノ任ニ當ラレ
ル文部當局ハ、此ノ思想統制ノ目標ニ付テ
如何ニ御考ニナリマスカ、御伺致シマス
最後ニ本法ハ一體立法ノ目的ト對象トヲ
誤ツテ居ラヌカ、此ノ點ヲ一言御伺致シマ
ス、ト申シマスノハ、此ノ映畫法案ハ映畫
ノ製作乃至映畫事業其ノモノ、言葉ヲ換ヘ
テ申シマスト、映畫營業其ノモノヲ對象ト
シタ立法デアルカ、乃至ハ映畫ノ內容、其
ノ文化的價値乃至ハ社會的影響ヲ規制スル
目的ノ立法デアルカ、此ノ點デアリマス、
第二ノ點デ申シマシタ如ク、此ノ映畫ト云フ
モノガ思想表現ノ一形式デアリ、憲法二十
九條ノ所謂思想發表ノ自由ノ一部分トシ
テ、玆ニ立法化スルナラバ、其ノ法律
ニ盛ラレル內容ハ、實體的ニ法律ノ中ニ規
定サレナケレバナリマセヌ、ソレハ丁度
出版法、新聞紙法ニアリマス如ク、例ヘバ
安寧秩序ヲ害スルモノハイケナイトカ、風
俗ヲ紊スモノハイケナイトカ、國憲ヲ紊亂
スルモノハイケナイトカ、刑事被〓人ヲ賞
揚スルモノハイケナイトカ云フ實體的規定
ガ、法律ノ內容ニ現ハレテ居ナケレバイケ
マセヌ、所ガ此ノ映畫法案ヲ見マスト、殆
ド多ク映畫營業、卽チ映畫事業ヲ對象トシ
タ規定デアリマシテ、如何ナル映畫ヲ作ル
カノ實體的規定ガアリマセヌ、政府ハ之ヲ
命令ニ委任サレルヤウデアリマスガ、少ク
トモ私ハ立法ノ形式トシテハ逆ダト思ヒマ
ス、寧ロドウ云フ映畫ヲ作ルベキカハ法其
ノモノガ明示シナケレバナリマセヌ、サウ
シテ公正ナ進步ト正義ヲ根幹トスル映畫ト
云フモノヲ作ラセル、是ガ映畫行政ノ、映
畫國策ノ、映畫政策ノ態度デナクチヤナラ
ヌト思ヒマス、此ノ點ニ對シテ立案者デア
リマス內務當局ハ如何ニ御考デアリマスカ、
以上四點ヲ御伺シマシテ私ノ質問ト致シマ
ス(拍手)
〔國務大臣侯爵木戶幸一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=94
-
095・木戸幸一
○國務大臣(侯爵木戸幸一君) 三田村サン
ニ御答致シマス、第一點ハ文化警察ノ任務
ト云フ御尋デアリマス、是ハ色々ニ考ヘラ
レル點モアルト存ジマスガ、文化警察ト云
フノハ、從來其ノ對象ニ依リマシテ出版警
察トカ、或ハ宗〓警察トカ、演劇映畫ニ對
スル警察等ノ言葉デ述ベラレテ居ルモノヲ
總稱スルモノト思フノデアリマシテ、此ノ
趣旨ノ警察ハ從來動モスレバ取締ノ方面ニ
專ラデアツテ、サウシテ國民文化ノ進展ノ
爲ニ之ヲ誘抜指導スルト云フ方面ガ缺ケテ
居ツタヤウニ存ジラレマスノデ、今後ハ此ノ
方面ニ向ツテ、從來ノ如ク簡單ニ安寧秩序、
或ハ善良ナル風俗ヲ壞亂スルト云フヨリモ、
モウ一步進ンデ文部當局其ノ他ノ活動ト相
俟チマシテ、積極的ニ國民文化ノ向上ニ資
スルヤウニ努力シタイト考ヘテ居リマス
ソレカラ第二ノ演劇法制定ノ考ハアルカ
ト云フ御尋ハ、御話ノ通リ演劇ガ映畫ト共
ニ多數ノ觀客ヲ擁シマシテ、其ノ影響力ノ
多イコトハ御意見ノ通リデアリマスガ、-
面映畫ト演劇トニ於キマシテハ、其ノ仕事
ノ內容其ノ他モ違ツテ居リマスノデ、是等
ニ付テハ尙ホ適當ニ〓究ヲ致シマシテ方策
ヲ立テタイト考ヘテ居リマス、大體ニ於テ
御趣旨ノ點ハ御尤ト考へテ居リマスガ、今
日直チニ映畫法ト共ニ演劇法ヲ作ルト云フ
コトニ付テハ、未ダ考ヲ決メテ居ラナイ次
第デアリマス
ソレカラ思想統制ノ目標如何、斯ウ云フ
御尋デアリマシタガ、是ハ勿論只今御述ニ
ナリマシタ通リデアリマス、日本國民ガ總
テ國體ノ本義ニ徹スルコトニアルコトハ言
ヲ俟タナイノデアリマス、此ノ方面ニ向ヒ
マシテ當局トシテハ十分努力ヲ致シマシテ、
思想ノ混亂ヲ來サナイヤウニ致シタイト考
ヘテ居リマス
ソレカラ最後ニ此ノ法律ガ所謂製造業者、
配給業者等ノ爲ニ出來テ居ルカノ如ク御考
ノヤウデアリマシタガ、是ハ第一條ニ「國
民文化ノ進展ニ資スル爲映畫ノ質的向上ヲ
促シ映畫事業ノ健全ナル發達ヲ圖ル」ト云
フ目的ヲ揭ゲテアリマスノデ、此ノ趣旨ニ
依リマシテ、一會社其ノ他ノ唯發展ヲ圖ル
ト云フノデナク、國民文化ノ進展ニ資スル
ト云フ意味ニ於テ運用シテ行ク考デ居リマ
ス
〔國務大臣男爵荒木貞夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=95
-
096・荒木貞夫
○國務大臣(男爵荒木貞夫君) 御尋デアリ
マシタカラ御答致シマスガ、只今內務大臣
カラ御答シタコトニ依ツテ御諒承ヲ願ヘル
コトト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=96
-
097・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 是ニテ質疑ハ終了
致シマシタ、本案ノ審査ヲ付託スベキ委員
ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=97
-
098・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ議長指名十八名ノ委
員ニ付託サレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=98
-
099・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=99
-
100・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
WVS仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=100
-
101・服部崎市
○服部崎市君 殘餘ノ日程ヲ延期シ、本日
ハ是ニテ散會セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=101
-
102・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=102
-
103・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
やく、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、次會ノ
議事日程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、本
日ハ是ニテ散會致シマス
午後六時二十七分散會
〔衆議院議事速記録第二十二號山田〓君演說參照〕
自昭和十二年四月日一ヶ年間全國ノ藝妓酌婦業態者女給仲居、
至昭和十三年三月三十一日
給仕婦總數二百六十七万八千四十人中ノ花柳病患者數
病名人數百分比
人
黴一〇、八九四〇·四一
疳病毒五一、八七〇一·九四
軟淋
性下一四、八六四〇·五五
剝脫六、一四〇〇·二二
昭和十一年度ニ於ケル花柳病ノ死亡率總數一万一千七百六十六人
人入
黴毒五、五三六麻痺性痴呆二、四二〇
先天黴毒二、七四五淋疾
六ケ月未滿四七
脊髓勞一、〇二四
自昭和元年十一ケ年ノ調査ニ依ル娼妓ノ罹病率
至昭和十一年
病名娼妓百名ニ對スル罹病者百名ニ對スル
黴毒〇·一三七·五四
淋疾一·〇六五九·七三
軟性下疳〇·五八三二·七三
自昭和二年十二年間ノ壯丁檢査人員六十一万五千二百六十四人中ノ
至昭和十三年
花柳病患者數
病名人數
人
黴毒一、〇九〇
淋疾四、〇一一
軟性下疳-、四六九
合計六、五七〇
之ヲ地方別ニスレバ昭和十二年度一、〇〇〇人中福岡一八、四二人長崎一六、六
八人奈良一四、三五人ノ順位ニテ岩手ノ三、七九人ヲ以テ最下位トス
歐洲大戰中獨逸ニ於ケル入院患者ノ統計
一九一七年一九一八年一九一九年一九二〇年一九三一年一九二二年
黴毒二八、〇六五二九、五六五四七、〇九二※五九、七五八五五、一八九四三、七三〇
軟性下疳一、四三六二、二二一七、五七二※七、五三三五、六五一三、五〇四
淋病二九、五六〇三五、七七三五四、一六三※四四、九六六五一、三〇七四九、一六三
最高
(イ)歐洲大戰當時獨逸陸軍ニ於ケル花柳病罹患率(每千比)
(ホフマン調査)
一九·九到一九〇七年}六ケ年間平均
四四·四戰後第一年
四四·一戰後第二年
四〇·七戰後第三年
四七·〇戰後第四年
(ロ)戰役後占領地帶トナリシ獨逸プワルツ地方花柳病患者數
一九一三年
一計男女一九一四年
一九一五年
一九一六年
一九一七年
一九一八年
一九一九年
一九二〇年
1.1001.000900800700600500400300200100
(ハ)英蘭及ウェールスニ於ケル黴毒死亡數
年次男女計備考
九一年一、〇九〇七九五一、八八五
九一、一五四七九二一、九四六
九※一、二五二※八七五※二、一二七※最高
年年年
九一〇九八七六五一、一七〇八二三一、九九四
九一一、一〇二七五五一、八五七
九一一年一一五四八六九二、〇二三
九二年一、〇三八七六一一、七九九
-九二二年八四八六二四一、四七二
九二三年八五七五三二一、三八九
-九二四年七八一五一五一、二九六
戰後死亡數漸減セルハ充實セル豫防竝ニ治療措置ニヨルモノト見ルベシ
(二)歐洲大戰中英蘭及ウェールスニ於ケル一年未滿乳幼兒ノ黴毒死亡
年次死亡數備考
一九一五年一、一六九
九一、二三二
九-、三五四
九一〇九八七六一、二六二
年年年年
九-一、二一七
九二※一、四四三※最高
九二一一、二一四
九二二年八七四
九二三年七九七
九二四年六六六
歐洲大戰中英國花柳病治療所ニ於ケル患者總數(ハリソン氏報〓)
一九一七年一九一八年一九一九年一九二〇年一九二一年一九二二年
黴毒二六、九一二四二、一三四四二、八〇五三二、七三三二五、七六二
軟性下疳八〇六二、一六四四、四四二一、六五四一、一〇八
淋病一七、六三五三八、六九九四〇、二八四三二、四三三二九、四七七
花柳病以外ノモ六、六二二一五、四四七一九、六六四一七、四五九一六、九八八
ノ
診察患者總數一一九、〇三六五一、九七五九八、二四四一〇五、一八五八四、二七九七三、三三五
無料檢査
顯微鏡檢査一一、六九七二二、五六四五二、一三二六九、一七六-1
ワッセルマン反應二七、一九二五九、三七九一〇四、三三六一三八、三四四
卽チ一九二〇年マデ新患者ハ年々著シク增加シ、花柳病總患者數ハ一九一一〇年ニ於
テ最高ニ達シ、一九二一年ヨリ減少ノ傾向トナレリ。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X02319390309&spkNum=103
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