1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十四年三月二十三日(木曜日)
午後一時二十八分開議
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議事日程 第二十九號
昭和十四年三月二十三日
午後一時開議
質問
一 大日本消防協會國庫補助増額に關する質問(松田正一君提出)
二 小運送業法及日本通運株式會社法實施に關する質問(木檜三四郎君提出)
三 鋼材配給統制に關する質問(中村高一君提出)
四 ビルマに帝國總領事館設置に關する質問(高岡大輔君提出)
五 人權尊重法權擁護に關する質問(福田關次郎君外一名提出)
六 搗粉有害の錯覺竝之か使用禁止の失態に關する質問(土屋清三郎君提出)
七 祈願の意義に關する質問(片岡恒一君提出)
八 米の混砂精白禁止に關する質問(吉植庄亮君提出)
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第一 宗教團體法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
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〔左の報告は朗讀を經さるも參照の爲茲に掲載す〕
一議員の異動左の如し
大阪府第四區選出議員森田政義君死去せられたり
一昨二十二日貴族院に於て本院の送付に係る左の政府提出案を可決したる旨同院より通牒を受領せり
昭和十三年法律第八十七號中改正法律案(本邦内に於て募集したる外國債の待遇に關する件)
國際電氣通信株式會社法中改正法律案
一議員より提出せられたる質問主意書左の如し
米の混砂精白禁止に關する質問主意書
提出者 吉植庄亮君
(以上三月二十二日提出)
一昨二十二日常任委員補闕選擧の結果左の如し
第三部選出
決算委員 中村不二男君(古島義英君補闕)
一昨二十二日特別委員委員長補闕選擧の結果左の如し
民族優生保護法案(八木逸郎君外一名提出)委員
委員長 清寛君(委員長斯波貞吉君去十六日委員辭任に付其の補闕)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=0
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001・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス、諸君、議員森田政義君ハ一昨二十一日
逝去セラレマシタ、洵ニ痛惜哀悼ノ至リニ
堪ヘマセヌ、此ノ際本田彌市郞君ヨリ發言
ヲ求メラレテ居リマス、之ヲ許シマス-
本田彌市郞君
〔本田彌市郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=1
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002・本田彌市郎
○本田彌市郞君 只今議長ヨリ御報〓ニナ
リマシタ故森田政義君逝去ニ付、院議ヲ以
テ弔詞ヲ贈呈シ、其ノ弔詞ハ之ヲ議長ニ-
任スルノ動議ヲ提出致シマス、此ノ際私ハ
諸君ノ御許ヲ得マシテ、議員一同ヲ代表シ
テ、玆ニ故森田君ニ對シ哀悼ノ微意ヲ披瀝
シタイト思ヒマス
森田君ハ熊本縣ノ御出身デアリマシ
テ、明治十七年九月天草郡新合村ニ出
生セラレタノデアリマス、大正三年明
治大學ヲ御卒業ニナリマシテ、翌四年判檢
事登用試驗ニ及第セラレ、司法官試補ニ任
ゼラレタノデアリマスガ、間モナク官ヲ辭
シテ大阪市ニ辯護士ヲ開業セラレ、在野法
曹トシテ活躍シテ居ラレタノデアリマス、
大正十三年第十五囘衆議院議員總選擧ニ際
シ、君ハ最モ難選擧區ヲ以テ稱セラレマス
所ノ大阪市、只今ノ第四區ヨリ、毅然トシ
テ立候補ヲセラレ、見事當選ノ榮冠ヲ荷ハ
レテ、本院ニ議席ヲ占メラレ、引續キ當選
六囘、在職十一年ノ久シキニ亙リマシテ、
本院議員トシテ國政協賛ノ重責ニ膺ラレ、
國家憲政ノ爲ニ多大ノ貢獻ヲ致サレツツア
ツタコトハ、諸君ノ御承知ノ通リデアリマ
ス、殊ニ本期議會ニ於テモ數日前マデ登院
セラレ、輕金屬製造事業法案ノ特別委員長
トシテ、熱心ニ其ノ職務ヲ鞅掌セラレテ居
ツタコトハ、吾人ノ眼前ニ髣髴タルモノガ
アリマス、然ルニ今ヤ此ノ人去ツテ歸ラズ、
幽明境ヲ異ニシ、永遠ニ本議場ニ相見ユル
コトヲ得マセヌコトハ、洵ニ痛惜ノ至リニ
堪ヘマセヌ、君ハ資性快活ニシテ、氣骨稜々
タルノ政治家デアリマシタ、今玆ニ君ト
永遠ノ別離ヲ告グルニ當リマシテ、謹ンデ
衷心ヨリ哀悼ノ意ヲ表スル次第デアリマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=2
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003・小山松壽
○議長(小山松壽君) 本田君提出ノ動議ニ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=3
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004・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ハ可決セラレマシタ-茲ニ
議長ノ手許ニ於テ起草シタル弔詞ヲ朗讀致
シマス
衆議院ハ議員勳四等森田政義君ノ長逝ヲ
哀悼シ恭シク弔詞ヲ呈ス
此ノ弔詞ノ贈呈方ハ議長ニ於テ取計ヒマス
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=4
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005・服部崎市
○服部崎市君 質問一乃至八ハ後〓シトセ
ラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=5
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006・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=6
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007・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ質問一乃至八ハ後〓シト致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=7
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008・服部崎市
○服部崎市君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此ノ際日程第一ト共ニ、
同一委員ニ付託セラレタル政府提出、寺院
等ニ無償ニテ貸付シアル國有財產ノ處分ニ
關スル法律案ヲ一括議題ト爲シ、委員長ノ
報〓ヲ求メ、其ノ審議ヲ進メラレンコトヲ
望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=8
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009・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=9
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010・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ハ變更セラレマシタ-日程
第一、宗〓國體法案、寺院等ニ無償ニテ貸
付シアル國有財產ノ處分ニ關スル法律案、
右兩案ヲ一括シテ第一讀會ノ續ヲ開キマ
ス、委員長ノ報告ヲ求メマス-委員長安
藤正純君
第宗〓團體法案(政府提出、貴族
院送付)第一讀會ノ續(委員長報告)
寺院等ニ無償ニテ貸付シアル國有財產
ノ處分ニ關スル法律案(政府提出、貴
族院送付)第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
一宗〓團體法案(政府提出、貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十四年三月二十二日
委員長安藤正純
衆議院議長小山松壽殿
希望條項
一政府ハ時局ニ鑑ミ特ニ宗〓家ノ活動
ヲ促進スル爲速ニ適當ノ方策ヲ講ズベ
二政府ハ宗〓〓師ノ資格向上ニ付特ニ
考慮ヲ拂ヒ遺憾ナキヲ期スベシ
三政府ハ將來宗〓團體内部ニ於ケル各
種ノ選擧竝ニ宗〓ノ名ノ下ニ於ケル營
利ヲ目的トスル行爲ニ付嚴重ナル監督
ヲ爲シ其ノ肅正ニ努ムベシ
報〓書
一寺院等ニ無償ニテ貸付シアル國有財產
ノ處分ニ關スル法律案(政府提出、
貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決
致候此段及報〓候也
昭和十四年三月二十三日
委員長安藤正純
衆議院議長小山松壽殿
〔安藤正純君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=10
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011・安藤正純
○安藤正純君 宗〓團體法案竝ニ寺院等ニ
無償ニテ貸付シアル國有財產ノ處分ニ關ス
ル法律案、此ノ二案ノ特別委員會ニ於ケル
審議ノ經過竝ニ其ノ結果ニ付御報〓ヲ申上
ゲマス
抑〓本法案ハ明治三十二年山縣内閣ノ時、
第十四議會ト云フ、議會ノ初期時代ニ當リ
マシテ、宗〓法案トシテ貴族院ニ提出セラ
レタノガ嚆矢デアリマス、當時贊成反對ノ
議論ガ囂々トシテ朝野ヲ騷ガセマシテ、民
論ノ旺ンナル沸騰ニ對シマシテ、橫暴ナ
ル官憲ノ抑壓行爲モ行ハレタノデアリマス
ガ、結局二十一票ノ差ヲ以テ貴族院ニ於テ
否決トナツタノデゴザイマス、爾來約三十
年、宗〓法ノ問題ハ等閑ニ付セラレマシテ、
隨テ議會ニ提出セラレナカツタノデアリマ
スガ、昭和二年若槻内閣ニ依ツテ再ビ第五
十二議會ニ提案セラレタノデアリマス、然
ルニ此ノ時モ亦幾多ノ法理論ガ擡頭致シマ
シテ、遂ニ特別委員會ハ中止セラレテ、審
議未了ニ終ツタノデアリマス、何故ニ斯ノ
如ク二度マデモ反對論ノ爲ニ制服セラレタ
ノデアルカ、簡單ニ之ヲ申上ゲマスレバ、
當時ノ宗〓法案ナルモノガ、信仰ノ本然性
ニ深キ考慮ヲ拂ハズ、宗〓本來ノ特質ヲ藐
視シテ、宗〓其ノモノヲ法ノ對象トシタコ
トガ、其ノ第一デアリマス、又當時ノ宗〓
法案ナルモノガ、動モスレバ信〓自由ノ憲
法ノ明文ニ牴觸スルノ嫌ヒノアツタコトガ、
其ノ第二デアリマス、又當時ノ宗〓法案ナ
ルモノガ、我國ノ歷史的宗〓觀卜現實的宗
〓觀トヲ閑却致シマシテ、徒ニ法制萬能主
義ニ墮スルノ傾ガアツタコトガ、其ノ第三
デアリマス、是ニ於テ宗〓法案ハ其ノ內容
ニ根本的改正ヲ加ヘラレマシテ、隨テ法案
ノ名稱モ宗〓法案デハナク、宗〓團體法案
トシテ、昭和四年田中內閣ニ依ツテ三タビ
第五十六議會ニ提案サレタノデアリマスガ、
此ノ時ニ於テモ亦紛々ノ議論ガ院ノ內外ヲ
騷ガセ、殊ニ他ノ政治的事情モ介在致シテ、
遂ニ審議未了ニ終ツタノデアリマス
一方宗〓制度調査會ニ於キマシテモ、大
正十五年以來本法案ノ基礎トナルベキ宗〓
團體法案要綱ニ付キマシテ、愼重ニ審議ヲ
續ケテ居リマシタガ、此ノ間法案要綱ノ改
變セラルルコト三タビニモ及ンデ居リマス、
洵ニ法律案トシテ本案ノ如ク四十年ノ久シ
キニ亙ツテ懸案デアリ、而シテ其ノ經過ノ頗
ル波瀾ニ富メルハ、蓋シ他ニ類例ヲ見ザル
所ト存ズルノデアリマス、斯ノ如キ因緣附
ノ宗〓團體法案ガ今同四タビ議會ニ提案セ
ラレマシテ、恰モ四十年目ノ今日ニ本院審
議ノ下ニ成立セントシツツアルコトハ、戰
時態勢ノ現在ニ於テ、如何ニ我ガ日本國民
ガ、物ノ尊サト共ニ心ノ尊サヲ感ズル、綽々
餘裕アル品位ヲ有スル國民デアルカト云フ
コトヲ示スニ足ルモノト存ズル次第デアリ
マス(拍手)
以上ノ如ク本法案ハ多年ノ縣案デアリマ
ス宗〓團體ニ關スル重要法規デアリマス
ノデ、特利委員會ニ於キマシテモ、去ル二
月二十四日カラ三月二十二日ニ至ルマデ十
六囘ニ亙リ、愼重ヲ期シテ審議ヲ續ケタ次
第デゴザイマス、此ノ間主管大臣タル文部
大臣ハ固ヨリ、時ニハ總理大臣、外務大臣、
內務大臣、陸軍大臣等ノ說明ヲモ求メマシ
テ、各委員カラハ立法ノ趣旨及ビ運用ノ方
針、或ハ宗〓行政ノ現狀竝ニ將來ノ方策等、
各般ニ付キマシテ極メテ熱心ニ意見ノ開陳
ヤ質問ガ行ハレタノデゴザイマス、其ノ詳
細ハ速記錄デ御覽ヲ願フコトト致シマシテ、
其ノ最モ重要ナリト思フ數點ニ付キマシテ
簡單ニ御報告ヲ致シマス
第一ニ神社ト宗〓トノ問題デアリマス、
神社ト宗〓、惟神ノ道ト宗〓トノ關係ニ付
キマシテハ、度々質間ガゴザイマシタ、之
ニ對シマスル政府ノ答辯ハ、神社ハ國ノ宗
祀トシテ、總テノ國民ハ報本反始ノ誠ヲ致
シテ、之ヲ崇敬シ惟神ノ道ヲ遵奉スベキモ
ノデアツテ、如何ナル宗〓ノ〓義ト雖モ、
之ニ牴觸シ矛盾スルコトヲ許シマセヌ、又
我國ノ法制上ニ於キマシテハ、神社ハ宗〓
ニアラズ、隨テ神社ハ此ノ宗〓團體法ノ適
用以外ニアルト云フ趣旨ニ出テ居リマス
第一ニ囘〓ニ關スル問題デアリマス、本
法案ニ揭ゲテ居リマス宗〓ノ名稱ハ、神
道佛〓及ビ基督〓ノ三者ニ止ツテ居ルノ
デアルガ、東亞再建ノ我ガ大陸國策ニ伴ツ
テ、今後我ガ國內及ビ國外ニ於ケル囘〓徒
ノ處遇ニ付テハ、大ニ留意スル必要ガアル今
日ニ於テハ、右ノ外世界ノ三大宗〓ト呼バ
ルル回〓ノ名稱ヲモ、法文ノ中ニ明記スル
ノガ適當デアルト云フ說ニ付キマシテハ
特別委員會ヲ通ジテ盛ニ論議セラレタ所デ
アリマス、之ニ對スル政府ノ答辯ト致シマ
シテハ、亞細亞大陸ニ多數ノ信徒ヲ擁スル
同〓徒ノ動向ニ付テハ深ク關心ヲ持ツ所デ
アリ、囘〓徒ノ處遇ニ付テハ、將來十分考
慮ヲ拂フ積リデアル、唯本法案ハ我ガ國內
ニ於ケル宗〓ノ活動狀況ヲ基本トシテ立案
ヲセラレタモノデアルカラ、囘〓ノ名稱ヲ
特ニ掲ゲナイデモ、宗〓團體法成立ノ曉ニ
於テハ、囘〓モ他ノ宗〓ト同樣ニ、相當條
項ヲ具備スレバ、本法案中ノ〓會ニ關スル
規定其ノ他ガ適用セラレテ、國家ノ保護ト
監督トヲ受ケ得ルコトハ勿論デアルト云フ
ノデゴザイマス
第三ニ時局ト宗〓トノ關係ニ對スル質問
デアリマス、今次ノ事變ニ際シテハ宗〓
家ノ〓化活動ニ依ツテ皇道ノ宣揚、日本精
神ノ涵養ニ資セシムル必要ガアルト云フ質
問ニ對シテハ、政府ハ宗〓ヲ通ジテノ國民思
想ノ涵養ハ、切實ニ其ノ必要ヲ感ズルカラ、
此ノ際宗〓家ノ自覺ト奮起トヲ促シ、宗〓
國體法ノ制定ニ伴ヒ、內ハ國民精神總動員、
外ハ大陸國策ヲ初メ、各方面ニ宗〓家ノ協
力ト活躍トヲ求ムベク、其ノ方策ニ付テ考
究中デアルト云フ答辯デゴザイマシタ
第四ニ支那布〓ノ問題ニ關シマシテ、大陸
ニ於ケル從來ノ日本宗〓家ノ活動ハ、歐米
宣〓師ノ活躍ニ比シ著シク遜色アルモ、今
ヤ東亞新秩序ノ建設ニ邁進セントスル折柄、
更ニ積極的ニ日本宗〓家ノ大陸進出ヲ促シ、
其ノ活動ヲ指導助長シテ、對支文化工作ニ
貢獻スル所アラシムル必要ガアルト思フガ、
政府ノ方策ハドウデアルカト云フ質問ニ對
スル答辯ト致シマシテハ、大陸ニ於ケル日
本宗〓家ノ活動ヲ促進スルコトニ付テハ、
旣ニ種々ノ方途ヲ講ジツツアルガ、其ノ重
要性ニ鑑ミ、將來更ニ一段ト力ヲ致シタイ
考デアルト云フコトデアリマシタ
第五ニ宗〓ニ關スル調査會ノ質問デアリ
マス、將來宗〓行政ニ關スル調査會、或
審議會ノ如キモノヲ設置スル意思ハナイカ
トノ質問ガアリマシタガ、斯ノ如キ機關ノ設
置ハ其ノ必要アリトノ考ヲ以テ、將來ハ大ニ
考慮スルト云フ政府ノ答辯ガアリマシタ
第六ニ宗〓團體內部ノ選擧取締ニ關スル
質問ガ、多クノ委員カラ發セラレマシタ、
卽チ管長其ノ他宗〓國體ノ役員ノ選擧ニ付
テハ、往々忌ハシイ事象ノ發生ヲ見ルガ、
斯ノ如キハ國法ヲ以テ嚴重ニ處罰シ得ルヤ
ウニシテ、宗〓界ノノ正ヲ圖ルベシトノ嚴
峻ナル質問ニ對シマシテハ政府ハ斯ノ如
キ事柄ニ付テハ社會〓化ノ任ニアル宗〓
家自身ノ覺醒ニ俟ツコトガ寧ロ根本問題デ
アリ、且又宗〓團體ノ本質ニ鑑ミ、國法ニ
依ツテ處罰ノ途ヲ講ズルヨリモ、宗〓團體
ノ自治ニ委スノガ適當デアル、又將來〓規、
宗制、〓團規則ヲ認可スル場合ニ當ツテ、
選擧ニ關スル規定ニ不備ノ點ノナイヤウニ
十分注意ヲシ、更ニ之ガ違反アリシ場合ニ
於テハ嚴正ナル監督措置ニ出ヅルコトガ
アル、斯ウ云フ旨ノ答辯ガゴザイマシタ
第七ニ宗〓結社取締ニ關スル質問ト致シ
マシテハ、宗〓結社ニ對シテハ、從來ハ警
察的見地ニノミ立脚シテ取締ヲ致シテ居ル
傾キガアルガ、人心ノ機微ニ觸ルル所ノ宗
〓ニ關スル監督取締ニ付テハ特殊ノ配慮ガ
必要デアル、政府ハ其ノ用意ガアルカ、此
ノ質問ニ對シマシテハ、政府ハ宗〓團體法
成立ノ上ハ、宗〓結社ニ對シテハ、文部、
內務兩省ガ緊密ナル連絡ノ下ニ、一層周到
ナル注意ヲ以テ監督ヲ怠ラナイ、弊害ヲ未
然ニ防止スルニ努ムルノ傍ラ適正ナル指導
ヲ行ツテ、遺憾ナキヲ期シタイト云フ答辯
ガアリマシタ
第八ニ宗〓〓育ノ問題デアリマス、學校
〓育ニ於ケル宗〓情操ノ涵養ヲ更ニ重要視
シテ、靑年學生生徒ノ精神ノ修練ニ資セ
シムルノ方途ヲ講ズルコトガ今日ノ時局ニ
際シ最モ必要ト考ヘルガ、政府ノ所見如何
トノ質問ニ對シマシテ、政府ハ學校〓育ニ
於ケル宗〓情操ノ涵養ハ、十分其ノ重要性
ヲ認ムル所デアルノミナラズ、學校〓育バ
カリデハナイ、社會〓育或ハ家庭〓育ノ方
面ニ於テモ、更ニ其ノ效果ヲ擧ゲルヤウニ
努力致シタイト云フ答辯デアリマシタ
第九ニ宗〓〓師ノ資格ニ闘スル問題、是
ハ多數ノ委員カラ質問ヲセラレマシタ、卽
チ本法案ニ於テハ〓師ノ資格規定ガナイ
ガ、〓師ノ資質如何ハ宗〓界ノ向上ニ最モ
必要デアルト云フ質問ニ對シマシテ、政府
ハソレ〓〓歷史沿革ヲ異ニシ、事情ヲ別ニ
スル各〓派、宗派、〓團ノ〓師資格ヲ一律
ニ規定セントスレバ、勢ヒ各〓宗派、〓團
ニ通ズル最低限度ヲ定ムルヨリ外ハナイ、
ソレデハイケナイカラ、却テ之ヲ〓規、宗
制等ニ委セ、其認可ニ際シテハ出來得ル限
リ高キ〓師資格ヲ規定セシムルヲ以テ適當
トスル、又是ト共ニ〓宗派ノ〓師養成機關
ヲ擴充シ、或ハ〓師再〓育施設ヲ講ズル等、
極力〓師資質向上ヲ圖ルトノ答辯デアリマ
シタ
第十ニ寺院、〓會ノ財政監督ニ關スル點
デアリマス、各委員カラハ寺院、〓會等ノ
收入ノ公私ノ區分ヲ明確ニシ、財政經理ノ
公正ト堅實トヲ期スルコトハ、寺院、〓會
ノ健全ナル發達ヲ圖ル上ニ於テ最モ必要デ
アルトノ質問ニ對シマシテハ、政府ハ其ノ財
政ヲ堅實化スルコトハ、本法適用上最モ意
ヲ用ヒタイ所デアル、卽チ本法案中ノ不動
產及ビ重要動產ノ處分、或ハ借財又ハ保證
等ヲ爲サントスル場合ノ認可ノ規定ノ適用
ニ十分注意ヲスルデアラウ、又寺院規則ト
カ、〓會規則ノ認可ニ當ツテハ、財務ニ關
スル規定ヲ整備サセ、時ニハ各種ノ報告ヲ
徵シテ、十分監督指導ニ努力致シタイ旨ノ
答辯ガアツタノデアリマス
最後ニ第十一トシテ、治安警察法ノ第五
條ニ於テハ、神官、神職、僧侶其ノ他諸宗
〓師ハ、政事結社ニ加入スルコトガ出來ナ
イコトニ現在ナツテ居ル、所ガ今日ハ神官
千、神職モ、儈侶モ、其ノ他諸宗〓師モ一
般ニ選擧權竝ニ被選擧權ガ與ヘラレテ居ル、
其ノ選擧權、被選擧權ガ與ヘラレテ居ル宗
〓家ニ對シテ、不具癈疾者ト同樣ニ結社加
入ヲ許サザルハ不合理デアル、之ヲ改正ス
ル考ハナイカト云フ質問ニ對シマシテハ
政府ハ之ニ付テハ弊害モ相當ニ考慮セラレ
ルカラ、遽ニ其ノ意思ヲ決定シ難イガ、併
シナガラ是ハ十分〓究考慮スル考デアルト
云フ答辯ガゴザイマシタ
以上ガ本法案ニ關スル質疑應答ノ主ナル
モノデアリマス
斯クテ質疑ヲ終リマシテ、昨三月二十二
日ノ第十六囘特別委員會ニ於キマシテ討論
ニ入リ、各派ヲ代表シテ紫安、立川、赤松、
鈴木、椎尾、三田村ノ諸君カラ意見ノ陳述ガ
ゴザイマシテ、續イテ採決ヲ致シマシタ結
果、左ノ希望條項ヲ附シマシテ貴族院送付
ノ本案ヲ全會一致可決致シタノデゴザイマ
ス、卽チ希望條項ハ次ノ通リデアリマシテ、
是ハ各派一致ノ決定デアリマス
-政府ハ時局ニ鑑ミ特ニ宗〓家ノ活動
ヲ促進スル爲速ニ適當ノ方策ヲ講ズベシ
二政府ハ宗〓〓師ノ資格向上ニ付特ニ
考慮ヲ拂ヒ遺憾ナキヲ期スベシ
三政府ハ將來宗〓團體內部ニ於ケル各
種ノ選擧竝ニ宗〓ノ名ノ下ニ於ケル營
利ヲ目的トスル行爲ニ付嚴重ナル監督
ヲ爲シ其ノ肅正ニ努ムベシ
以上ガ宗〓團體法案ノ審議ニ關スル御報〓
デゴザイマス
續イテ此ノ特別委員會ニ併託サレマシタ
寺院等ニ無償ニテ貸付シアル國有財產ノ處
分ニ關スル法律案ノ審議ノ經過竝ニ結果ヲ
簡單ニ御報告致シマス、寺院佛堂ノ國有境
內地讓與ノ問題モ、御承知ノ如ク多年ノ
懸案デゴザイマシテ、政府ハ宗〓團體法ガ
成立シテ、寺院佛堂ノ財產管理ニ關スル方
法ガ完備ヲ致シマシタ曉ニハ、躊躇ナク此
ノ懸案ヲ解決スベキ旨ヲ、過去ニ於テ屢〓聲聲
明ヲ致シテ居ツタノデアリマスガ、今囘宗
〓團體法案ノ提出ト共ニ宗〓團體ヲ保護シ、
其ノ〓化機能ヲ發揮セシメテ、國運ノ進展
ニ寄與スル所多カラシメントスルノ趣旨カ
ラ致シマシテ、玆ニ古來寺院佛堂ト歷史的
ノ緣故ヲ有スル國有境內地ノ讓與ヲ行ハン。
ト云フノデアリマス、卽チ寺院又ハ佛堂ニ
無償ニテ貸付ケテアル國有財產ハ、寺院等
ガ一定ノ期間內ニ申請ヲ致シマスレバ、境
內地トシテ必要ナ部分ヲ限リ、之ヲ無償ニ
テ讓與スルコトト致シマス、其ノ讓與ニ付
テハ特ニ新シク設置ヲ致シマスル寺院境內
地處分審査會ニ諮問ヲシテ、愼重且ツ公明
ニ讓與ノ行ハルルヤウニ致シタイト云フノ
デアリマス、又其ノ讓與ヲセザル部分ニ付
キマシテハ、申請ニ依リマシテ時價ノ半額
ヲ以テ之ヲ賣拂ヒ、其ノ代金ハ年賦延納ヲ
認メテ居ルノデアリマス、所ガ此ノ年賦延
納ノ期限ハ政府ノ原案ニ依レバ五年トナ
ツテ居ツタノデアリマスガ、貴族院ニ於テ
十年ト修正ヲ致シテ來タノデアリマシテ、
政府モ亦之ニ同意ヲ致シテ居リマス、而シ
テ本案ニ關スル質疑應答ノ詳細ハ速記錄ニ
讓リマシテ其ノ中最モ重要ナリト考ヘルモ
ノヲ簡單ニ御紹介致シマス
第一ニハ宗〓團體ヲ保護助長スル趣旨ヲ
以テ、貸付地ヲ讓與スルトセバ寺院佛堂
以外ノ宗〓團體ニ對シテモ、之ニ貸付中ノ
國有財產ヲ讓與スルノガ適當デハナイカ、
斯ウ云フ質問ガアツタノデアリマスガ、政
府ハ、此ノ讓與ノ趣旨ハ固ヨリ寺院等ノ保
護ニアルノデアルケレドモ、旁〓歷史的ニ
密接ナル緣故ヲ有スル國有境內地ヲ寺院等
ニ讓與スルノガ適當デアル、隨テ他ノ宗〓
團體ニ對スル關係トハ自ラ異ナル理由ガア
ル、斯ウ云フ答辯デアリマシタ
第二ニハ讓與ノ範圍ニ付テノ質問ガアリ
マシタ、是ノ答辯ト致シマシテハ、讓與ノ
範圍ハ勅令ヲ以テ規定セラレルノデアルガ
大體境內地トシテ必要ナリト認メラレルモ
ノハ全部讓與スルコトニナルデアラウト
ノ答辯デアリマシタ
第三ニハ從來ノ國有境內地ヲ現ニ公園ニ
編入セラレテアル寺院ニ對スル取扱ニ付テ
ノ質問ガアリマシタガ、之ニ對シマシテハ
政府ヨリ公園管理者トモ協議ノ上ニ、出來
得ル限リ境內地ノ範圍ヲ公園地カラ除却シ
テ、本法ノ適用ヲ受ケ得ルヤウニ取計ヒタ
イト云フ答辯ガアリマシタ
第四ニ國有財產法ニ依ツテ寺院又ハ佛堂
ニ無償ニテ現在貸付シテアル國有地ハ元
元是ハ公領地デハナイ、寺院ノ私有地デア
ルト考ヘル、隨テソコニ差別ヲ置カズ、全
部無償デ還付スルノガ適當デハナイカ、此
ノ質問ニ對シマシテハ政府ハ明治初年以
來ノ沿革カラ見ルモ、亦國有財產法ノ規定
カラ見ルモ、國有地デアルコトハ明デアツ
テ、今回寺院等保護ノ見地カラ其ノ必要部
分ヲ讓與シテ、目的外使用地ヲ時價ノ半額
デ賣却セントスルモノデアル、斯ウ云フ答
辯ヲ致シタノデゴザイマス
斯クテ質問ヲ終了致シマシテ、三月二十
三日、卽チ只今第十七囘ノ特別委員會ニ於
テ討論ヲ行ヒ、採決ヲ致シマシタ結果、全
會一致貴族院送付ノ案ヲ可決致シタノデゴ
ザイマス
最後ニ一言致シマス、抑〓宗〓ノ精神ハ慈
悲博愛デアルト共ニ、威武モ屈スル能ハ
ズ、富貴モ淫スル能ハズ、千万人ト雖モ吾
レ往カント云フ何モノニモ恐レザル最モ强
キモノデアリマス、然ルニ今日ノ宗〓家ノ
中ニハ濫リニ官權ニ賴リ、資本ニ阿ルノ卑
屈ナル態度ノアル者ガ少クナイノデアリマ
ス、釋迦ヤ基督ヲ初メ、各宗各〓ノ祖師ガ
履ミ來ツタ烈々タル殉〓精神ニ照シマシテ、
洵ニ恥ヅル所ナキヤヲ疑フモノデゴザイマ
ス(拍手)此ノ宗〓團體法ト寺院境內地ノ無
償讓與トガ藥ニナルカ毒ニナルカ、一ニ宗
〓家ノ自肅自奮ニアルト存ジマス、私ハ此
ノ機會ニ宗〓家ノ根本的自覺ヲ警告致シマ
ス
尙ホ囘〓ニ對スル論議ハ、本委員會ノ論
議ノ焦點トナツタノデアリマスカラ、此ノ
機會ニ總理大臣ヨリ囘〓ニ對スル政府ノ所
見ヲ明示セラレンコトヲ希望致シマス拍
手)
之ヲ以テ私ノ報告ヲ終リマス、宜シク御
審議ノ上可決アランコトヲ希望致シマス(拍
手ノ
〔國務大臣男爵平沼騏一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=11
-
012・平沼騏一郎
○國務大臣(男爵平沼騏一郞君) 只今安藤
委員長ヨリ御希望モゴザイマシタカラ、囘
〓ニ對スル私ノ所見ヲ一言致シマス、囘〓
ハ亞細亞大陸ニ於キマシテ多數ノ信徒ヲ有
シテ居リマシテ、勢力ヲ占メテ居リマス
隨テ囘〓徒ノ動向ニ付キマシテハ、政府ト
致シマシテ將來大イニ意ヲ用ヒタイ所存デ
ゴザイマス、而シテ我國ニ於キマシテハ憲
法第二十八條ニ依ツテ、其ノ制限ニ反セザ
ル限リハ各宗〓ニ對シテ一樣ニ信〓ノ自
由ヲ認メラレテ居ルノデアリマスルカラシ
テ.囘〓徒モ他ノ宗徒ト同ジク、我國ニ於
キマシテ信〓ノ自由ヲ有スルコトハ一點ノ
疑ナキ所デアリマス、而シテ本宗〓團體法
案ハ、今日マデノ我國ニ於ケル各宗〓ノ宗
〓活動ヲ基本トシテ立案セラレタルモノデ
ゴザイマスルカラ、囘〓ヲ宗〓團體法中ニ
ハ特ニ明記ハ致シテ居リマセヌナレドモ、
本案成立ノ曉ニ於キマシテハ、囘〓モ他ノ
一般宗〓ト同樣相當ノ條項ヲ具備スル以上
ハ、本法ニ於ケル〓會等ノ規定ヲ適用セラ
レマシテ、適正ナル監督ト相當ノ保護ヲ受
クルコトハ、是ハ相當ノコトデゴザイマシ
テ、此ノ點ニ付キマシテ論議ヲ挾ムノ餘地
ハナイコトト信ズルノデアリマス、以上私
ノ囘〓ニ對スル所見ヲ申述ベマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=12
-
013・小山松壽
○議長(小山松壽君) 兩案ノ第二讀會ヲ開
クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=13
-
014・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ兩案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=14
-
015・服部崎市
○服部崎市君 直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=15
-
016・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=16
-
017・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
宗〓團體法案第二讀會(確定議)
寺院等ニ無償ニテ貸付シアル國有財產ノ
處分ニ關スル法律案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=17
-
018・小山松壽
○議長(小山松壽君) 別ニ御發議モアリマ
セヌ、第三讀會ヲ省略シテ、兩案トモ委員
長報告通リ可決確定致シマシタ(拍手)質問
一、大日本消防協會國庫補助增額ニ關スル
質問ヲ許可致シマス-提出者松田正一君
大日本消防協會國庫補助增額ニ關
スル質問(松田正一君提出)
大日本消防協會國庫補助增額ニ關スル
質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和十四年三月六日
提出者松田正
大日本消防協會國庫補助增額ニ關ス
ル質問主意書
社會文化ノ進展ト支那事變ノ勃發ハ種々
ナル警備ノ必要ヲ增大シ且ツ其ノ他ノ危
險防止ノ爲消防員ノ責任愈〓加重シ爲ニ從
來ノ組織ヲ改メ規律、職責、指導其ノ他
强化ノ必要ヲ生シ去ル一月二十四日勅令
(第二十號)ヲ發セラレ其ノ名稱モ從來ノ
消防組ヲ警防團ト改メラレ防空、水火消
防其ノ他ノ事故防止及警備ニ從事セシム
ルコトトナリ地方長官(東京府ニ在リテハ
警視總監)ハ其ノ職權ヲ以テ又ハ市町村長
ノ申請ニ依テ之ヲ設置スルコトトナリ來
ル四月一日ヨリ其ノ實施ヲ見ルニ至レリ
大日本消防協會ハ之ニ從ヒ其ノ名稱ヲ大
日本警防團協會ト改メ右勅令實施後ハ其
ノ活動範圍ヲ擴大シ以テ飛躍的發展ヲ劃
サムトシ今ヤ會員モ必然的ニ增加シ其ノ
數五百萬人ヲ突破セムトスル實情ニ在リ
而シテ從來全國各市町村ニ於ケル消防員
ハ其ノ數二百二十五萬人ニシテ之カ指
導〓育、表彰、弔慰及救濟等ハ大日本
消防協會ニ於テ處理シ之ニ要スル經費ハ
國庫ヨリ年額五萬圓ノ補助ト地方支部
ヨリ五萬圓計十萬圓ヲ以テ支辨シ來レ
ルモノナリ然ルニ〓ヤ其ノ數ニ於テ倍加
以上ヲ算シ而モ其ノ組織擴大强化セムト
スルニハ莫大ナル經費ヲ必要トスルハ火
ヲ睹ルヨリ明カナリト謂フヘシ政府ハ今
次ノ改革ト同時ニ本協會ニ對シ補助金增
額ノ意思アリヤ
若是レアリトセハ其ノ額ヲ明示シ且ツ本
協會ノ活動ニ關シ內務大臣及大藏大臣ハ
如何ナル考ヲ藏セラルルヤ其ノ所見ヲ問フ
右及質問候也
〔松田正一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=18
-
019・松田正一
○松田正一君 私ハ大日本消防協會、卽チ
四月一日カラ勅令ノ命ズル所ニ依ツテ大日
本警防團協會ト改稱ヲ致シマスル、此ノ協
會ニ對スル國庫補助ニ關シテ、政府ノ所見
ヲ承リタイト思フ者デアリマス、御承知ノ
如ク文化ノ發達ト戰時下ノ現狀ニ伴ヒマシ
テ、色々ナ事故モ發生ヲ致シマス、又色々
ナ災害モ頻々トシテ起ル、之ヲ豫メ豫防シ、
又災害ノ起ツタ時ニ之ヲ擴大シナイヤウニ
防除スル職務ニ在ル現在ノ消防員ノ職責ト
云フモノハ、段々重クナツテ來タノデアル、
ソレデ政府ハ去ル一月二十四日勅令ヲ發セ
ラレテ、此ノ消防員ノ職責、規律等ヲ强化
スルコトニナツテ、其ノ名前モ消防組ト云
フモノヲ警防團ト改メテ、此ノ時代ニ意義
アラシメルト云フコトニナツタノデアリマ
ス、其ノ組織ハ地方長官、又ハ東京ニアツ
テハ警視總監ガ職權ヲ以テ之ヲ組織シ、市
町村長ノ申請ミ依ツテ之ヲ設置スルト云フ
コトニナツタノデアリマス
所デ今我國ニドレダケノ消防員ガアルカ
ト云フト、二百二十五万人アル、之ヲ協會
ガ總括致シマシテ、或ハ指導、奬勵、表彰
若クハ救濟ト云フコトヲヤツテ居ル、是八、
協會ガヤラナカツタラ外ニヤルモノハナイ、
ソレナラ其ノ協會ノ費用ハドレダケデ賄ツ
テ居ルカト云フト、各府縣ニアリマスル協
會ノ支部カラ年ニ五万圓、政府カラ五万圓
ノ補助ヲ得テ、一年合計十万圓ノ金ヲ元ト
致シテ之ヲ賄ツテ居ル、尤モ基本財產ハゴ
ザイマスケレドモ、是ハ使ヘナイ、篤志家
ノ寄附ハ豫算ニ入レラレナイ、結局十万圓
ト云フモノデヤツテ居ル、其ノ金ヲドウシ
テ使ツテ居ルカト云フコトヲ見テミマスル
ト、大日本消防協會寄附行爲施行細則ト云
フモノガアル、其ノ第二條ニ「消防員ガ其
ノ職務ノ執行ニ當ツテ死亡シタルトキハ一
千圓以內ノ金ヲ贈與ス」ト云ツテアル詰
リ消防員ガ消防ニ從事シテ働イテ死ンダ場
合ニ、一千圓以内ノ金ヲヤルト云フ、以內
ト云フノダカラ一千圓ノ金ヲ貰ツタ者ハ餘
リナイ、漸ク六大都市デハ一千圓ニ近イ金
ヲ貰ツタ例ハアルヤウダガ、地方ノ各府縣
ノ消防員ハ、死ンダ時ニハ二百圓カ三百圓
シカ貰ハナイ、後ニ遺家族ガドレダケアツ
テ、ドレダケ生活上ノ苦痛ヲ感ジテ居ツテ
モ、之ヲ救フト云フ規定ガ何モナイ、又不
具癈疾トナツタ者ニハ一時金五百圓以內ヲ
贈與スト云フコトガアル、腕ヲ取ラレタリ、
足ヲ取ラレタリ、盲ニナツタリシタ者ニ五
百圓以内ト云フガ、以內ダカラ、六大都市
デハ三百圓カ四百圓ハ貰フダラウガ、地方
デハ百圓カ百五十圓シカヤラナイ、其ノ爲
ニ將來働ケナイヤウニナツタカラト云ツテ、
之ニ對スル救濟方法ト云フモノハ何モナイ、
又怪我ヲシタ場合ニハ、其ノ治療久シキニ
亙ツタ者ハ二百圓以內ヲ贈與ストナツテ居
ル、ソレハ久シキニ亙ツテト云フノダカラ、
今マデノ例ニ依ルト四十日以上治療ニ掛ツ
タ者デナケレバ金ハ貰ヘナカツタ、而モソ
レハ實費ニモ當ラナイ、其ノ間働ケナイト
云フコトニ對スル生活ノ保障ハ何モナイ、
斯ウ云フ譯デアツテ、御承知ノ如ク消防員
ガ水火災ノ時ニ働クアノ働キ振ヲ見テミマ
スト、火ノ中デアラウガ、水ノ中デアラウガ
飛込ンデ行ツテ災害ノ擴大ヲ防止スル、
其ノ時ノ精神ハ自己ノ生命財產ハ無
論ノ話、一家モ顧ミズシテ公ニ處シ
テ御奉公スル考デ働イテ居ルノデアツテ、
戰地ニ於ケル軍人ノ働クノト殆ド變リガナ
イノデアル(拍手)政府當局諸君ハ各府縣デ
年々行ハレル消防殉職慰靈祭ト云フ、アノ式
ニ列席サレタコトガアルカ、アノ時ニ列席
スルガ宜イ、アソコヘ列席スルト云フト、
主人ガ亡クナツテ遺サレタ家族ガ、如何ニ
貧シイ暮シヲシテ居ルカト云フコトガ分
ル、又火事ノ時ニ火ノ中ニ飛込ンデ足ヲ〓
ギ取ラレ、手ヲ〓ギ取ラレテ手ナク、足
ナクサリトテ義足モナケレバ、義手モナ
イ、人ニ助ケラレテ飛ンデ步イテ居ル者ガ
列席致シテ居リマス、アレヲ政府ハ後學ノ
爲ニ列席シテ見ルガ宜イ、政府ハヤカマシ
ク言ウテ來ル者ニハ、相當ナ補助ヲヤツテ
居ルヤウナ實例モアル、ヤカマシク言ヘナ
イ者、訴ヘルコトノ能ハザル弱イ者ガ、其
處デ溺レテ死ニ掛ツテ居ツテモ之ヲ助ケヌ
ト言フノカ、近來防空演習ガ行ハレルア
ノ時ニ婦人ノ方モ多ク道ニ竝ンデ居ルノヲ
見マスルガ、成程婦人ノ方ト雖モ普通ノ男
子ヨリ以上ニ働ケル人モ中ニハアル、ケレ
ドモ下ニ絹物ヲ著テ、上ニ三越カラ買ウテ
來タト云フ「モンペ」ヲ穿イテ、袢天ヲ著テ、
紅白粉ヲ付ケテ、空ノ「バケツ」ヲ持ツテ立
ツテ居ル御婦人モアリマスルガ、中ニハ普
通ノ男子以上ナ働キヲスル人ガアツテ、相
當效果ハ擧ルカモ知レマセヌ、ケレドモソ
レハ未知數ナ話デ、「バケツ」モ-アレハ
空ダカラ持ツテ立ツテ居ラレル、アレニ水
一杯入レタラ、ヨウ持タヌ人モアル、又持
ツテモ道ノ半丁モヨウ行カヌ人ガアルノデ
ス、アレガ爆彈投下サレタ時ニ、ドレダケ
ノ働キガ出來ルカト云フコトハ、未知數ナ
ガラ察シ得ラレルノデアル、此ノ時ニイザ
ト言ツテ消防員ガ駈付ケテ働ク時ノ、其ノ
働キ振リト效果ニ於テ比較致シテ貰ヒマス
レバ、天地雲泥、黑白ノ差アリト言ハナケ
レバナラヌ、一體二百二十五万人ニ五万圓
ノ國庫補助、一人ニ割ツタラ幾ラノ補助ニ
ナリマスカ、一人ノ消防員ニ一年二錢二厘
二毛シカ補助シテ居ラヌ、一箇月二厘足ラ
ヌ一厘八毛、一日ニハ一毛足ラヌ六絲ト云
フ(拍手)コンナコトデ今度警防團ト名前マ
デ變ヘテ、時節柄之ヲ强化シテ、果シテ其
ノ實ガ擧ルカドウカ、モウ少シ眼ヲ細カウ
使ツテ物事ヲ考ヘテ貰ヒタイ、成程一兩日
前ニ本議場デ審議致シタ文治費追加豫算、其
ノ中百六十万圓バカリ組ンデアル、組ンデ
アルガ今度警防團トナツタナラバ、地方長
官自身ガ乘出シテ行ツテ之ヲ組織スルノデ
アルカラシテ、今ノ二百二十五万人ガ五百
万人ニ殖エマス、是ハ地方デ現在ヤツテ居
ル、五百万人ニ殖エル、今マデ地方デ組ン
デ居ル地方費ノ警備費ガ、日本全國デ二千
三百六十万圓程アルト云フコトヲ聞イテ居
リマス、サウスルト何ト致シテモ今度强化
スレバ、四千万圓以上ノ地方費トナラナケ
レバナラヌ、ソレニ百五十万圓補助スルト
云フノダカラ、マアザツト一割足ラヌ、三分
七厘、四分位デアル、ソレヲ補助スル、其
ノ中ニ官吏ノ人件費ガ七万圓組ンデアル、
是ハ四十二人ノ人ヲ殖ヤスノダサウダガ、
ソレニ七万圓組ンダノダカラ、一人一年ニ
一千五百七十五圓ノ官吏ガ四十二人組ンデ
アル、人件費ダケハ惜シ氣モナク要求サレ
テ居ル、所デ協會ノ補助ノ增額ガタツタ三
万圓デアル、是デ果シテ將來ノ警防團トシ
テハ效果ヲ擧ゲルコトガ出來ルカ、今日ハ
厚生省ノ方ニ通〓シテ居ラヌカラ、厚生省
ハ來テ居ラヌガ、一體近頃ノ社會立法、厚
生省ニアル社會立法ニ、果シテ效果ノ擧ツ
テ居ルモノガアリマスカ、母子保護法ダノ
救護法ダノト云ツテ喧シク言ツテ居ル、名
前ハアルケレドモ、其ノ實ドレダケ救護シ
テ居ルカ、今此ノ社會カラ言フナラバ、年
寄ツテ働クコトガ出來ヌト言ツテ、誰ニモ
食ハシテ吳レト言ツテ行クコトハ出來
ヌ者、及ビ病弱デ働クコトハ出來ズ、食
フコトハ出來ヌ、賴ツテ行クコトガ出
來ヌト云フ哀レナ者ガ、方面委員デ保護
シテ居ルダケデ二百二十万人居ル、其ノ
中デ政府ノ救助シテ居ルノハ十九万三千數
人一割ニ足ラナイ、ソレニドレダケノ補
助ヲシテ居ルカト云ヘバ、一人一日二十五
錢以内、以內ダカラ十錢シカヤツテ居ナ
イ、今十錢ヤツテ居ルト云フケレドモ、十
錢ト云フノハ、ヤリ初メタ時ノ物價ノ値ト
今ト比較スルト、小賣物價ノ値ガ七割近ク
上ツテ居ル、ソレカラ生活指數ハ三割五分
モ上ツテ居ル、サウスルト實際彼等ガ救ハ
レテ居ルノハ、一日五錢カ六錢シカ惠マレ
テ居ラヌ、ソレガ證據ニハ昭和十三年ノ豫
算ト昭和十四年ノ豫算ト比較スルト、母子
保護法ト救護法ノ國庫補助ガ各〓三十万圓ヅ
ツ豫算ガ減ツテ居ルデハナイカ、ナゼ減ツ
タカ、是ハモウ救フ人ガナイヤウニナツタ
カラ減ツタノカ、官吏ノ俸給ガ餘計取過ギ
テ居タカラ使ヒ切レナイノデ減ツタノカ、
ソレハ分ラヌ、大體厚生省ノ「ウインド」ノ
中ニ藏ツテアル社會立法ト云フモノハ、外
國ニモ名前ガアルカラ、日本ニモ名前ヲ附
ケテ置カナケレバナラヌト云フノデ、名附
ケタ法律ガ大部分デアツテ、效果ニ於テハ
寧ロ無イヨリマシカト云フ法律ガ多イ、此
ノ警防團協會ガ、四月一日カラ名前ヲ變ヘ
テ是デ會員ヲ殖ヤシテ活動シヨウト思ツタ
ラ、コンナ三万圓ノ補助ノ增額位デ果シテ
實ヲ擧ゲルコトガ出來得ルカ、是デ萬民輔
翼或ハ總努力、總親和ト云フコトノ效果ガ
果シテ擧ガルカ、之ニ對スル大藏省及ビ內
務省當局ヨリ御答辯願ヒタイ(拍手)
〔政府委員漢和憲和君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=19
-
020・漢那憲和
○政府委員(漢和憲和君) 松田君ノ御質問
ニ對シマシテ私カラ御答辯ヲ申上ゲマス、
財團法人大日本消防協會ハ、警防團ノ新設
ニ伴ヒマシテ、現消防組員ノ外更ニ現防護
團員ヲ新ニ會員トシテ包含スルコトニナリ
マシタ、會名竝ニ寄附行爲ニ修正ヲ加ヘマ
シテ、其ノ業務モ擴張繁劇トナルコトト相
成リマスルノデ、從來ノ國庫補助年額五万
圓ヲ以テシテハ、到底其ノ目的及ビ事業ノ
遂行ニ遺憾ナキヲ期スルコトガ出來マセヌ
ノデ、政府ニ於キマシテハ是ガ增額ノ必要
ヲ認メマシテ、現下財政ノ許ス範圍ニ於キ
マシテ、取敢ズ十四年度追加豫算トシテ相
當額ノ國庫補助增額ヲ計上スルコトト決シ
タ次第デアリマス、而シテ本協會タル警防
團員ハ防空、水火消防其ノ他ノ警防業務
ニ從事シ、以テ國土ノ防衞ノ災害ノ防遏、
及ビ一般警備ノ補助ニ任ズル職責ニ鑑ミマ
シテ、將來十分本會ノ活動ニ遺憾ナキヲ期
シタイト考ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=20
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021・服部崎市
○服部崎市君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此ノ際政府提出、關稅
定率法中改正法律案、昭和七年法律第四號
中改正法律案、及ビ昭和十四年法律第一一號
中改正法律案ノ三案ヲ一括議題ト爲シ、委
員長ノ報告ヲ求メ、其ノ審議ヲ進メラレン
コトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=21
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022・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=22
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023・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ハ變更セラレマシタ-關稅
定率法中改正法律案、昭和七年法律第四號
中改正法律案、昭和十四年法律第二號中改
正法律案、右三案ヲ一括シテ第一讀會ノ續
ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求メマスー
委員長岡崎久次郞君
關稅定率法中改正法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
昭和七年法律第四號中改正法律案輸
入稅ノ從量稅率ニ關スル件)(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
昭和十四年法律第二號中改正法律案
(昭和十四年度一般會計歲出ノ財源ニ
充ツル爲公債發行ニ關スル件)(政府提
出第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一關稅定率法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報告候也
昭和十四年三月二十三日
委員長岡崎久次郞
衆議院議長小山松壽殿
〔別紙〕
(小字及-ハ委員會修正)
關稅定率法中改正法律案中左ノ通修正ス
附則
施行ノ期日ハ各規定ニ付勅令ヲ以テ之ヲ
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
定ム
附帶決議
政府ハ滿洲國ヨリノヒマシ油原料輸入ニ
付從來ノ數量確保ノ爲適當ナル處置ヲ講
ズベシ
報〓書
一昭和七年法律第四號中改正法律案輸
入稅ノ從量稅率ニ關スル件)(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十四年三月二十三日
委員長岡崎久次郞
衆議院議長小山松壽殿
報告書
一昭和十四年法律第二號中改正法律案
(昭和十四年度一般會計歲出ノ財源ニ
充ツル爲公債發行ニ關スル件)(政府提
出
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十四年三月二十三日
委員長岡崎久次郞
衆議院議長小山松壽殿
〔岡崎久次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=23
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024・岡崎久次郎
○岡崎久次郞君 只今議題トナツテ居リマ
スル關稅定率法中改正法律案、昭和七年法
律第四號中改正法律案、昭和十四年法律第
二號中改正法律案、右三案ニ付テ委員會ノ
經過竝ニ結果ヲ御報告申上ゲマス、先ヅ關
稅定率法中改正法律案ニ付テ委員會ノ經過
及ビ結果ヲ申述ベマス
本案ハ我國ニ出來マセヌ沖類ノ原料竝ニ
或種ノ油ノ原料ハ無稅、又或種ノ油ハヤハ
リ日本ニゴザイマセヌノデ無稅ニスルト云
フ、關稅ヲ改正スル法律案デアリマス、而
シテ本法律案ニ對シテハ附則ガ修正サレテ
通過シ、又附帶決議モ出來テ居リマスルヤ
ウナ譯デ、色々混入ツタル關係ニナツテ居
ルノデアリマスルカラ、此ノ法律案ニ付テ
ハ特ニ或ル程度マデ詳細ニ申上ゲル必要ヲ
感ズルノデアリマス、本法案中、胡麻油、
荏胡麻油合セテ一千三百万圓ヲ無稅ニスル
ノデアリマスガ、主トシテ「ヒマシ」油ヲ無
稅ニスルト云フコトニ議論ノ焦點ガアツタ
ノデアリマス、ドウシテ是ガ議論ノ焦點ニ
ナルカト申シマスレバ、「ヒマシ」油ノ原料
タル「ヒマシ」ハ主トシテ滿洲カラ日本ニ輸入
サレテ居リ、サウシテ內地デ「ヒマシ」油ヲ
拵ヘテ居ルノガ今日マデノ現狀デアルノデ
アリマス、滿洲カラ「ヒマシ」原料ノ輸入サ
レテ居リマスノガ約三百万圓、蘭印カラ輪
入サレマスモノガ約一百万圓、「ブラジル」
カラ輸入サレマスモノガ約七十五万圓、英
領印度カラ輸入サレルモノガ約十六万
圓程デアリマシテ、合計ザツト五百万圓程
ノ原料ガ今日マデ輸入サレ、サウシテ日本
ガ「ヒマシ」油ニ拵ヘテ、軍需品、飛行機ノ
油其ノ他各種ノ工業用品ニ使ハレテ來タ
ノデアリマス、所ガ內地ノ「ヒマシ」油ガ今
ヤ缺乏シテ、値段モ非常ニ高クナツテ居ル
ト云フコトデアリマス、ソコデ製品タル「ヒ
マシ」油ノ輸入稅ヲ撤廢スルト云フコトノ
政府提案ガアツタノデアリマス、此ノ點ダ
ケナラバ大シタ議論ハナイヤウデアリマス
ガ、茲ニ委員會ノ質問ノ多ク行ハレタル點
ハ「ヒマシ」油ノ原料ヲ滿洲カラ日本ニ輸入
ヲ致シマスル際ニ、一瓲八圓ノ輸出稅ヲ課
ケテ居ルノデアリマス、然ルニ原料ニハ一
瓲八圓ノ輸出稅ヲ課ケテ、滿洲カラ入ツテ
來ル「ヒマシ」油ハ無稅ニスルト云フノハ片
手落デハナイカ、此ノ點ニ付キマシテ多ク
ノ質問應答ガ行ハレ、是ガ委員會ニ於ケル質
問應答ノ中心點ニナツタノデアリマス、ノ
ミナラズ是ガ日滿ヲ通ズル今後ノ多クノ關
稅協定、或ハ產業協定、或ハ產業提携、有
ユル點ニ付テ種々ナル關係ヲ結ブ上ニ重要
ナル處置ト云フノデ、委員會ハ各委員カラ
詳細ナル質問ガ行ハレ、政府カラモ綿密ナ
ル答辯ガ行ハレタノデアリマシテ、松尾委
員大野委員、小笠原委員、世耕委員、又
野溝委員等カラ、四日ニ亙ツテ詳細ナル質
問應答ガ行ハレタノデアリマス、其ノ結果
本日質問ヲ打切リ、民政黨ヲ代表シテ大野
委員カラ、本法律案ノ附則中ニ「本法ハ公布
ノ日ヨリ之ヲ施行ス」ト云フ文案ヲ「本法施行
ノ期日ハ各規定ニ付勅令ヲ以テ之ヲ定ム」ト
云フ修正意見ガ出タノデアリマス、又附帶
決議ト致シマシテ「政府ハ滿洲國ヨリノヒ
マシ油原料輸入ニ付從來ノ數量確保ノ爲
適當ナル處置ヲ講ズベシ」斯ウ云フ附帶決議
ガ提出サレタノデアリマス、之ニ對シテ政
友會ヲ代表シテ世耕委員ガ、本附則修正ニ贊
同ノ意ヲ表サレ、且ツ附帶決議ニ付テ意見
ヲ述ベラレタノデアリマス、附帶決議モ贊
成サレタノデアリマスガ、此ノ附帶決議ノ
「原料輸入ニ付從來ノ數量確保ノ爲適當ナ
ル處置ヲ講ズベシ」之ニ對シテ自分ノ調ベタ
所ニ依ルト、昭和十三年ニ於テ滿洲ニ於ケ
ル原料ノ約八割ガ日本ニ來テ、二割ガ向フ
ニ殘ツテ居ルヤウナ數字ニナルノデアルカ
ラ、此ノ數字ヲ內地ノ油製造業者ノ原料ト
シテ確保スル爲ニ、十分ナル處置ヲ講ジテ
貰ヒタイト云フコトヲ、尙ホ念ヲ入レテ注
意サレタノデアリマス、斯クシテ政民兩黨
ハ本修正案竝ニ附帶決議ニ贊成致シタノデ
アリマスガ、社會大衆黨ヲ代表シテ野溝委
員カラ、本修正ニハ反對ヲ表サレタノデア
リマス、サウシテ原案支持ノ意見ガ提出セ
ラレマシタ、其ノ意見ハ日滿經濟提携ノ上
ニ重要ナル今後ノ動キヲ見ル爲ニ、治安宣
撫政策トシテモ、亦滿洲ヲ十分開發スル上
ニ於テモ、日本ガサウ云フ讓步マデシテモ
滿洲ノ爲ニ十分ナル世話ヲシテ行カナケレ
バナラヌノデアルカラ、本原料輸入稅ノ
撤廢ニハ反對デアツテ、從來通リ滿洲ノ
爲ニ保存シタ方ガ、經濟提携上都合ガ好イ
デハナイカト云フヤウナ意味ノ御意見ガア
ツテ、反對ノ意見ヲ提出セラレタノデアリ
マス、採決ノ結果ハ政民兩黨ノ修正竝ニ附
帶決議ガ大多數ヲ以テ可決セラレタノデア
リマス、野溝君ノ原案支持ノ御意見ハ一人
ダケデ、贊成者ハゴザイマセヌデシタ、コ
コデ委員長ハ其ノ採決ニ入ルニ先ダツテ、
政府委員ニ本修正ノ點ハ非常ニ「デリケー
ト」ナ問題デアリ、又今後滿洲ト日本トノ關
稅及ビ經濟提携ハ、石炭トカ、鐵トカ、「ア
ルミニウム」トカ、有ユル問題デ關稅及ビ經
濟提携ノ色々ノ問題ヲ含ムノデアリマシテ、
此ノ圓滿ナ解決ハ今後ニ於テ非常ニ必要ダ
ト思フノデアリマスガ、今日ノヤウナ此ノ
中ニ含マレタル非常ニ「デリケート」ナ意味
ヲ、政府ハ滿洲ト折衝スル前ニ於テ、法案
提出ノ前ニ於テ協議ヲナサツタカ、或ハ協
議ヲシタケレドモ行屆カナカツタノカ、或
ハ之ヲ御忘レニナツテ居ツタノカ、是等ノ
三點ニ付テ政府ノ意見ヲ質シタノデアリマ
スガ、ソレニ對シテ政府ハソレモ知ツテ居
ツタケレドモ、十分交涉ガ行屆カナカツタ
コトヲ遺憾トスルト云フヤウナ御答ガアリ
マシタ、サウシテ大多數ヲ以テ本案ハ修正
及ビ附帶決議ヲ以テ通過シタノデアリマス
ガ、政府委員カラ本修正竝ニ附帶決議ニ對
シテ、貴議院ガ之ニ同意シタ場合ニハ、政
府ハ之ニ同意ヲスルト云フ御辯明ガアリマ
シテ、本案ハ委員會ハ修正及ビ附帶決議ヲ
以テ可決致シマシタコトヲ御報〓申上ゲマ
ス
昭和七年法律第四號中改正法律案、昭和
十四年法律第二號中改正法律案デアリマス
ガ、昭和七年法律第四號中改正法律案ハ、
日本ニ必要ナル、サウシテ日本ニ餘リ出來
ナイ油類ノ三割五分ノ稅金ヲ課稅シテ居ツ
タノヲ、削ルト云フ案デアリマシテ、是ハ
滿場一致本法案ニ贊成ヲ表サレテアリマス、
昭和十四年法律第二號中改正法律案ハ一般
會計追加豫算ノ不足ニ對シテ公債ヲ發行ス
ル、其ノ公債發行ノ限度額ヲ一億八千九百
十万圓增加スル限度增額ノ法案デアリマシ
テ、一般會計ノ追加ガ既ニ貴族院ヲ通過シ
テ居ル今日ニ於テ、當然ナル結果トシテ滿
場一致可決致シタノデアリマス、右御報〓
申上ゲマス、何卒委員會ノ議決シタ通リ本
會ニ於テ協賛アランコトヲ切望シテ報告ヲ
終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=24
-
025・小山松壽
○議長(小山松壽君) 三案中關稅定率法中
改正法律案ノ委員會修正ニハ反對ガアリマ
スカラ、先ヅ本案ヲ審議シ、次ニ委員會可
決ノ二案ヲ一括シテ審議致シマス、先ヅ關稅
定率法中改正法律案ノ審議ニ入リマス、本
案ノ第二讀會ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=25
-
026・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ本案ノ第二讀會ヲ開クコトニ決シ
オンタン発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=26
-
027・服部崎市
○服部崎市君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=27
-
028・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=28
-
029・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キ議案
全部ヲ議題ト致シマス
關稅定率法中改正法律案第二讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=29
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030・小山松壽
○議長(小山松壽君) 採決致シマス、本案
ノ委員長報告ニ係ル修正ニ贊成ノ諸君ノ起
立ヲ求メマス
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=30
-
031・小山松壽
○議長(小山松壽君) 起立多數、仍テ委員
長ノ報告ニ係ル修正ハ可決致シマシタ
手)其ノ他ノ部分ハ原案ノ通リ御異議アリ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=31
-
032・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ其ノ他ノ部分ハ原案ノ通リ決シマ
シタ、是ニテ本案ノ第二讀會ハ終了致シマ
シタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=32
-
033・服部崎市
○服部崎市君 直チニ本案ノ第三讀會ヲ開
カレンコトヲ望ミマズ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=33
-
034・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=34
-
035・小山松壽
○議長(小山松嘉君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ本案ノ第三讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
關稅定率法中改正法律案第三讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=35
-
036・小山松壽
○議長(小山松壽君) 別ニ御發議モアリマ
セヌ、本案ハ第二讀會議決ノ通リ確定致シ
マシタ
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=36
-
037・小山松壽
○議長(小山松壽君) 次ニ昭和七年法律第
四號中改正法律案、昭和十四年法律第二號
中改正法律案ノ審議ニ入リマス、兩案ノ第
二讀會ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=37
-
038・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ兩案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=38
-
039・服部崎市
○服部崎市君 直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報〓ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=39
-
040・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=40
-
041・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開キ議案
全部ヲ議題ト致シマス
昭和七年法律第四號中改正法律案
第二讀會(確定議
昭和十四年法律第二號中改正法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=41
-
042・小山松壽
○議長(小山松喜君) 別ニ御發議モアリマ
セヌ、第三讀會ヲ省略シテ、雨案トモ委員
長報告通リ可決確定致シマシタ
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=42
-
043・服部崎市
○服部崎市君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此ノ際政府提出、明治
三十五年法律第四十九號中改正法律案ヲ議
題ト爲シ、委員長ノ報〓ヲ求メ、其ノ審議
ヲ進メラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=43
-
044・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=44
-
045・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ハ變更セラレマシタ-明治
三十五年法律第四十九號中改正法律案、第
一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求
メマス-委員長高橋泰雄君
明治三十五年法律第四十九號中改正法
律案(國勢調査ニ關スル件)(政府提出、
貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報〓書
一明治三十五年法律第四十九號中改正法
律案(國勢調査ニ關スル件)(政府提出、
貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十四年三月二十三日
委員長高橋泰雄
衆議院議長小山松壽殿
〔高橋泰雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=45
-
046・高橋泰雄
○高橋泰雄君 只今議題トナリマシタ明治
三十五年法律第四十九號中改正法律案ノ委
員會ニ於ケル審議ノ經過竝ニ結果ヲ簡單ニ
御報告致シマス、法律第四十九號ハ御承知
ノヤウニ國勢調査ニ關スル法律デアリマス、
此ノ改正案ノ要旨ヲ簡單ニ申上ゲマスト、
現下我國ノ情勢ニ鑑ミマシテ、物資ガ如何
ニ國民ノ間ニ消費セラルルカ、國民ノ消費
生活ニ要スル物資ノ數量及ビ金額、其ノ
地理的分布ノ狀況、配給ノ狀況等ヲ統計的
ニ調査致シマシテ、急速ニ諸般ノ政策ノ基
礎資料ヲ整備致シテ置ク必要ガアルノデア
リマス、政府ニ於キマシテモ此ノ必要ヨリ
致シマシテ、本年ノ七月一日ヲ期シマシテ、
國民ノ消費ニ關スル調査ヲ行フコトニ相成
ツテ居ルノデアリマスガ、御承知ノヤウニ
現行法ニ於キマシテハ、國勢調査八十年每
ニ一囘之ヲ行ヒ、其ノ中間ノ五年每ニ一同
ノ簡易ノ調査ヲ行ヒ得ルニ過ギナイノデア
リマスカラ、前囘ノ調査カラ五年若クハ十
年目ニ當ツテ居リマセヌ本年ニ於キマシテ
ハ、政府ニ於テ調査ノ必要ヲ感ジマシテモ、
現行法ノ下ニ於キマジテハ、此ノ必要ニ應
ズルコトガ出來ナイヤウナ事情ニアルノデ
アリマス、仍テ之ニ改正ヲ加ヘマシテ、必
要ニ應ジテ臨時ノ調査ヲ行ヒ得ルヤウナ規
定ヲ設ケントスルノガ本案ノ要旨デアリマ
ス
委員會ニ於キマシテハ、委員諸君ト政府
當局トノ間ニ熱心ナル質疑應答ヲ重ネラレ
マシテ愼重容議ヲ盡シタノデアリマス
極メテ簡單ニ其ノ一二ヲ玆ニ御紹介シテ見
マスルト、第一ニ此ノ度ノ臨時調査ハ本年
七月一日ヲ期シマシテ、前年一箇年間ニ於
ケル賣上金總額ヲ調査シ、主トシテ小賣營業
者ニ付テ過去一箇年ノ賣上ヲ申告セシムル
ノデアリマスガ、斯ウ云フ申告ガ果シテ正
確ニ行ハレルカドウカト云フコトガ、質問
ノ第一デアツタノデアリマス、之ニ對シテ
政府ハ、消費調査ハ其ノ性質上人口調査ト
同樣ナ正確ノ程度ヲ持ツコトハ困難デアリ
マスケレドモ、實際ノ政策ヲ立テ若クハ國
策ヲ遂行シテ行ク上ニ於テ役立ツ程度ノモ
ノハ、出來ル確信ヲ持ツテ居ルトノ答辯デ
アツタノデアリマス、次ノ質疑ハ今囘ノ臨
時消費調査ハ一囘ニ之ヲ限ル積リデアルカ
ドウカト云フ質疑デアリマス、政府ハ之ニ
對シテ、今後ト雖モ必要ニ應ジテ其ノ調査
ヲ行フ考デアルト云フ答辯ガアツタノデア
リマス、其ノ他多方面ニ亙ツテ委員諸君カ
ラ質疑ヲ試ミラレタノデアリマスガ、其ノ
詳細ハ會議錄ニ依ツテ御諒承ヲ願ヒタイト
存ジマス
斯クテ質疑ヲ終リマシテ討論ニ移リマシ
テ、各派ヲ代表セラルル委員諸君カラ、何
レモ政府原案ニ贊成スル旨ノ意見ノ開陳ガ
アリマシタ、討論ノ結果、本案ハ全會一致
ヲ以チマシテ、政府原案通リ可決スベキモ
ノト決定ヲ致シマシタ、此段御報告ヲ致シ
マス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=46
-
047・小山松壽
○議長(小山松壽君) 本案ノ第二讀會ヲ開
クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=47
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048・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=48
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049・服部崎市
○服部崎市君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=49
-
050・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=50
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051・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
明治三十五年法律第四十九號中改正法
律案(國勢調査ニ關スル件)
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=51
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052・小山松壽
○議長(小山松壽君) 別ニ御發議モアリマ
セヌ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告通
リ可決確定致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=52
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053・服部崎市
○服部崎市君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此ノ際政府提出、非訟
事件手續法中改正法律案、裁判所構成法中
改正法律案及ビ商法ヲ引用スル條文ノ整理
ニ關スル法律案ノ三案ヲ一括シテ議題ト爲
シ、委員長ノ報〓ヲ求メ、其ノ審議ヲ進メ
ラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=53
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054・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=54
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055・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ハ變更セラレマシタ、非訟事
件手續法中改正法律案、裁判所構成法中改
正法律案、商法ヲ引用スル條文ノ整理ニ關
スル法律案、右三案ヲ一括シテ第一讀會ノ
續ヲ開キマス委員長ノ報告ヲ求メマス-
委員長牧野賤男君
非訟事件手續法中改正法律案(政府提
出、貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報告)
裁判所構成法中改正法律案(政府提出、
貴族院送付)第一讀會ノ續(委員長報告)
商法ヲ引用スル條文ノ整理ニ關スル法
律案(政府提出、貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一非訟事件手續法中改正法律案(政府
提出、貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十四年三月二十三日
委員長牧野賤男
衆議院議長小山松壽殿
報告書
一裁判所構成法中改正法律案(政府提
田、貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十四年三月二十三日
委員長牧野賤男
衆議院議長小山松壽殿
報〓書
一商法ヲ引用スル條文ノ整理ニ關スル法
律案(政府提出、貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十四年三月二十三日
委員長牧野賤男
衆議院議長小山松壽殿
〔牧野賤男君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=55
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056・牧野賤男
○牧野賤男君 非訟事件手續法中改正法律
案、裁判所構成法中改正法律案、商法ヲ引
用スル條文ノ整理ニ關スル法律案、右三案
ノ委員會ニ於ケル經過竝ニ結果ニ付テ御報
〓ヲ申上ゲマス、右三案ハ何レモ政府提出、
貴族院送付ノ案デアリマシテ、非訟事件手
續法中改正法律案、裁判所構成法中改正案
ハ商法ノ改正ニ伴ヒ、又有限會社法ノ制
定ニ伴ツテ、當然改正セラルベキ案デアリ
マシテ、政府ノ綿密丁寧ナル提案ノ理由ヲ
聽キマシテ、委員會ニ於キマシテハ詳細質
問ヲ致シ、何レモ皆必要已ムヲ得ザルモノ
トシテ贊成ノ表決ヲ致シタノデアリマス
商法ヲ引用スル條文ノ整理ニ關スル法律
案、是ハ三十八種ノ法律ノ改正案デアリマ
ス、一々順序好クヤルナラバ、三十八箇ノ
改正法律案ガ出ル譯デアリマスガ、此ノ一
箇ノ法律ヲ以テ、三十八ノ改正法律案ヲ引
繰メテ一ツノ法案ニ致シタノデアリマス、
此ノ法案ニ關シマシテハ、其ノ內容ニ付キ
マシテ、商法ノ改正ニ伴フ必要デアリマス
ルカラ、固ヨリ異存ハナイノデアリマスル
ガ、斯樣ナ便宜法ヲ以テシテハ、政府ノ役
人ノ方デハ便利ガ宜イカモ知ラヌケレド
モ、人民ノ方デハ甚ダ不便デアラウト云フ
コトカラ、他日斯樣ナコトヲシナイデ、法
律ヲ十分整頓スルヤウニト云フ强イ希望ガ
アリマシタ、委員會ニ於キマシテハ結局討
論ノ結果、原案ニ贊成ヲ致スコトニ表決致
シタノデアリマス、右三案トモ要スルニ原
案贊成ヲ致シタ次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=56
-
057・小山松壽
○議長(小山松壽君) 三案ノ第二讀會ヲ開
クニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=57
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058・小山松壽
○議長(小山松壽君) 異議ナシト認メマス、
仍テ三案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=58
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059・服部崎市
○服部崎市君 直チニ三案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=59
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060・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=60
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061・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ三案ノ第二讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
非訟事件手績法中改正法律案
第二讀會(確定議)
裁判所構成法中改正法律案
第二讀會(確定議)
商法ヲ引用スル條文ノ整理ニ關スル法
律案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=61
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062・小山松壽
○議長(小山松壽君) 別ニ御發議モアリマ
セヌ、第三讀會ヲ省略シテ、三案トモ委員
長報告通リ可決確定致シマシタ(拍手)質問
一一、小運送業法及日本通運株式會社法實施
ニ關スル質問ヲ許可致シマス-提出者木
檜三四郞君
二小運送業法及日本通運株式會社法
實施ニ關スル質問(木檜三四郞君提
105
小運送業法及日本通運株式會社法實施
ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和十四年三月九日
提出者木檜三四郞
小運送業法及日本通運株式會社法實
施ニ關スル質問主意書
小運送業法及日本通運株式會社法實施ノ
經過ヲ見ルニ政府カ帝國議會ニ於テ說明
セル本法制定ノ精神ニ全然矛盾セルモノ
アリ此ノ點ニ關シ政府ノ所見如何
右及質問候也発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=62
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063・木檜三四郎
○木檜三四郞君 其ノ前ニ總理大臣及鐵道
大臣ノ出席ヲ要求致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=63
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064・小山松壽
○議長(小山松壽君) 政府ニ要求致シマス
〔木檜三四郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=64
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065・木檜三四郎
○木檜三四郞君 私ハ玆ニ小運送業法及ビ
日本通運株式會社法實施ニ關シテ、議會權
威ノ爲ニ微力ナガラ質問ヲ提出スル次第デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=65
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066・小山松壽
○議長(小山松壽君) 木檜君ニ申上ゲマス、
總理大臣ハ貴族院ニ於ケル豫算總會ニ出席
中デ出席致シ兼ネルトノコトデアリマス、
尙ホ鐵道大臣ハ所用ノ爲登院致シテ居リマ
セヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=66
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067・木檜三四郎
○木檜三四郞君(續) ソレデハ此處デ議長
ヲ通ジテ御願致シテ置キマスガ、本問題ハ
議會ノ權威ニ關スル問題デアリマスマダ
會期ハ明日明後日トアリマスカラ、私ノ質
問セントスル點ヲ速記錄ヲ通シテ御覽ニナ
リ、明確ナル御答辯ヲ戴キタイコトヲ要求
シテ置キマス
私ガ玆ニ質問セントスル小運送竝日本通
運株式會社兩法案ニ關スル問題ハ、國家ノ
大局カラ言ヘバ至ツテ小問題ノヤウデアリ
マスガ、實ハ由々シキ問題デアルト私ハ思
フノデアリマス、兩法實施ニ付テ質問ヲ致
シマスノモ、近時政府當局ガ如何ニ議會ニ
於テノ說明ト云フモノガ虚僞デアリ、又如
何ニ議會ヲ無視スルカト云フコトノ證據ヲ
此處ニ申上ゲテ、此ノ事件ハ憲法擁護ノ建
前カラ捨テ置キ難キ大問題トシテ、玆ニ鐵
道大臣ニ對シテ質問致ス譯デアリマス、私
共ガ受取ル議案ト云フモノハ、畏クモ
陛下ノ御裁可ヲ仰ギ奉ツテ、議會ヘ提出セラ
レル案デアリマスカラ、ソレダケ鄭重ナ手
續ヲ經テ居ルノデアリマス、隨ヒマシテ、
議案審議ノ任務ノ重且ツ大ナルコトハ今更
申スマデモアリマセヌ、斯樣ナ鄭重ナ手續
ヲ經タル議案ノ說明ニ當ル政府當局ノ行動
ヲ見ルナラバ、其ノ議案ニ對シテ眞劍味ヲ
缺イテ居ル、唯其ノ場遁レノ說明ヲシテ、
議案ガ通過サヘスレバ宜シイト云フ見地カ
ラ、無責任驚クベキモノガアル、斯樣ナ譯
デアリマシテ、議案ガ可決致サレマシタ後
ハ愈〓實施ノ段取トナリマスト、眼中議會
ナク、唯政府當局ノ勝手ナル指示ノ下ニ施
行サレテ居ルノデアリマス、斯ノ如クンバ
議會協賛ノ意義何處ニアリヤト私共疑ハザ
ルヲ得ナイ、ソコデ御承知ノヤウニ從來日
本ノ運送業ト云フモノハ、政府ノ許可モ要
セズ、屆出モ要ラズ、何人ニモ營業ガ出來
タノガ日本ノ憎行デアリマス、然ルニ鐵道
省ガ運送業統制ノ爲ニ、此ノ小運送業法ヲ
一昨年制定シテ、從來ノ自由營業ヲ免許制
度ニシタノデアリマス、當時ノ鐵道大臣ガ議
會ニ於テ、此ノ法案ヲ提出致シマシタ時ニ、議
員ノ質問ニ對シテ提出理由トシテ答辯シテ
申シマスノニ、今マデ自由制度デアツタ運送
業ヲ免許制度ニ致スト云フコトハ、原則ト
シテ現存シテ居ルモノヲ保護スル意味ニ於
テ考ヘテ戴キタイ、斯樣ナ說明ヲシテ居リ
マス、今マデ自由制度デアツタモノヲ、運
送業ヲ免許制度ニスルト云フコトハ現存
シテ居ルモノヲ保護スル意味ニ考ヘテ貰ヒ
タイ、如何ニモ民衆ノ爲ノヤウナ說明デアリ
マス、此ノ說明ハ一昨年ノ三月二十二日ノ委
員會ニ於テ鐵道大臣ガナシテ居ル、同ジ日
ニ喜安鐵道次官ガ議員ノ質問ニ又答辯シテ
申シマスルノニ、此ノ法律ヲ布イテ小運送
業ヲ免許制度ニ致スコトハ、單ニ小運送業
ニ從事シテ居ル人間ノ生活安定ヲ圖ルバカ
リデナシニ、小運送業ヲ利用シテ居リマス
ル社會大衆ノ利益ヲモ考へル譯デアリマス、
斯樣ニ言ッテ居ル、何處マデモ政府ノ御都合
主義デナク、民衆ノ爲、又營業ヲシテ居ル
者ノ營業權保護ノ爲ダト言ハレテ居リマス、
卽チ大臣、次官ガロヲ揃ヘテ、小運送業ノ
制定ハ、現存シテ居ル小運送業者ノ保護ノ
爲ナリ、生活安定ノ爲ナリ、大衆ノ利益ノ
爲ナリト明言シテ居ル、斯樣ニ明言シテア
ルニ拘ラズ、實際ニ此ノ法律ガ可決ニナリ、
行フニ當ツテハドウデアルカト云フト、矛
盾撞著甚シキモノガアル、卽チ營業權ノ保
護ドコロカ、職權ヲ以テ免許シタ所ノ運送
業者ニ合同ヲ强ユル、合同セザレバ營業ニ
不安ガアルガ如ク、如何ニモ立法ノ精神ニ
副ハザル行ヲシテ居ルノデアリマス、小運
送營業ガ法律化サレテ、其ノ法律ノ下ニ免
許ノ認證ヲ與ヘタカト思フト、一方ニ合同
ヲシロ、合同ヲシナケレバ營業ガ不利益ニ
ナルゾト、當局ハ盛ニ强壓ヲ加ヘテ居ル、
斯樣ナ譯デアリマシテ、商賣柄ダケニ弱イ
モノデアリマスカラ、此ノ運送業ト云フモ
ノハ非常ニ不安ニ陷ツテ居ルノデアリマス、
其ノ强要サレタ各地ノ實例ヲ擧ゲルナラバ、
實ニ澤山アリマシテ時間ヲ要シマスカラ、
斯樣ナコトハ申シマセヌガ、北海道、東
北近畿、中國、九州等此ノ事例ハ澤
山ゴザイマス、其ノ中ニハ餘リニ合同ヲ
シロト言ハレテ辛イノデ、土地ノ有力家
ニ賴ンデ、或ハ代議士ノ方ナドニ賴ン
デ鐵道省ニ訴ヘルト、此ノ有力ナル人ノ御
言葉デ强制合同ハ止メニナルト云フ狀態デ
アリマシテ、依賴スル人ノナキ者ハ是ガ
爲ニ殆ド路頭ニ迷ツテ居ルヤウテ情勢ガ、
現在法ヲ行ツタ今日ノ有樣デアリマス、斯
樣ナ譯デアリマシテ、是ハ營業權ノ保護ド
コロデハナイ、壓迫デス、更ニ又甚シイノ
二、此ノ小運送業ト云フモノハ法律ヲ
議會ニ提案致シマシタ時ニハ一万ニ近イ數
ガアリマシタ、其ノ中ニハ鐵道省ガ出シタ
參考書類ヲ見ルト、運送業者トシテ洵ニ心
ノ宜シカラザル者モアリ中ニハ詐欺ヲヤ
ル者モアルシ、殆ドペテン師ノヤウナヤ
リ方ヲシテ居ル者ガアル、其ノ時ニ委員會
ニ於テ同僚ノ人ガ質シテ言フニ、是程澤山
アル小運送業者ノ中デ不正行爲ヲスル者ガ
アルナラバ、此ノ際之ヲ整理スルノカ、之
ニ對シテ政府委員ガ答ヘテ居ル、整理ヲシ
ナイデ、現在アリマスル八九千ノ營業者ト
云フモノニ向ツテハ假令惡クテモ監督ヲ
シテ、全部今マデヤツテ來タ運送業者ニハ
特ニ既得權トシテ免許ヲ與ヘマス、斯ウ云
フ說明ヲ得タ、是ガ決議ニナリマストドウ
ナルカト云フト、一方ニハ從來自由營業デ
ヤツテ居ツタモノハ惡イモノガアルケレド
モ、ソレヲ旣得權トシテ與ヘルト言ツタニ
拘ラズ、鐵道省ニ、此ノ事ヲ申出ルト、小運
送業ヲ當然許スベキモノヲ、言ヲ左右ニ託
シテ許サヌノガ澤山アリマス、卽チ既得權
トシテ左樣ナモノハ許シテヤル、斯樣ニ何
等ノ條件ナシニ議會デ決議シテ、全部ニ免
許ヲ與ヘル聲明サヘセラレタノデアリマス、
然ルニ此ノ法律ハ何時カラ實、施シタカト云
フト、一昨年十月カラ實施ヲシテ、今日ニ
至ルモ既得權デ許サルベキ人ガ、今日マダ
九州ノ方ニマデモ不平ヲ唱ヘテ居ル人ガ澤
山アリマス、是ハ如何ニモ法律ヲ拵ヘル時
ニハ議會ニ於テ聲明シタコトハ從來ヤ
リ來ツタ祖先傳來ノ運送營業ト云フモノ
ハ、旣得權トシテ許スゾト云フ聲明ヲシテ
置キナガラ、議會ヲ通過シテ法律ガ出來レ
バ免許ヲ與ヘナイト云フ譯デス、斯ノ如キ
ハ議會ヲ欺キ、又業者ヲ欺瞞セルモノデア
ル、而モ法案ヲ通過セシメンガ爲ニハ、業
者ニ對シテハ引續イテノ運送業者ニハ既得
權トシテノ許可ヲスルト言ツテ置キナガ
ラ、ソレヲ業者ニ與ヘナイデ、却テ不安ヲ
與ヘル、當時此ノ法案ガ議會ニ出タ時ニハ、
運送業者ニハ反對シタ者ガ澤山アツタ、所
ガ先祖傳來ヤリ來ツタ運送業者ニハ、既得
權トシテ與ヘルゾト云フ此ノ條件ガアリマ
スカラ、ソレナラバ吾々ハ安心ダカラト云
フノデ、不同意ヲ唱ヘル人マデモ、議會ヲ
通過スル運動ヲ致シタ譯デス、法案ガ成立
シタ今日ハ斯樣ナ狀態デ、殆ド議會ノ聲明
ヲ裏切ツテ居ルト云フ譯デアリマシテ、斯
ル弱キ營業者バ不安ニ苦シミツツアル、實
ニ事變下ニ於テ一ツノ不祥事デアリマス、
是ハ一種ノ「ペテン」詐欺デ、殆ド辯解ノ辭
ハナカラウト思ヒマスガ、政府當局ハ何ト
之ニ對シデ辯解ヲスルカ、此ノ點ハ特ニ政
府カラノ答辯ヲ求ムルモノデアリマス(拍
手)斯樣ナ次第デアリマシテ、一方ニハ免
許シタモノニ向ツテ合同ヲ强ヒル、一方ニ
ハ免許權ヲ與フベキモノヲ與ヘナイデ置
ク、是ハ一ツノ營業權ノ蹂躪デアリマス、
一方ハ免許シテ置イテ合同ヲ强ヒテ不安ヲ
與ヘル、營業ハ不振トナル、然ラバ運送店
ノ合同ヲサセテ減少スルトドウナルカト云
フト、大衆ノ不便不利ニナルデハアリマ
セヌカ、政府ノ說明ノ國民大衆ノ利益ノ爲
ニ此ノ法律ヲ組ンダト云フコトガ、裏切ラ
レテ居ル譯デアリマス、斯ノ如キハ日本通
運會社ト云フモノガ、鐵道省ヲ背景ニ議會
デノ聲明ヲ無視スルモノト言ハナケレバナ
ラヌ(拍手)
日本通運會社ガ此ノ橫暴ヲ爲シタノヲ、
同會社ノ理事卽チ重役ノ中ニハ見ルニ見兼
ネテ、舊丸計ノ株主ニ刷物ヲ配付シテ申譯
ヲシテ居ル、是ハ昨年ノ十一月九日附ニ「集。
約合同ニ對スル私見」ト致シマシテ、重役
≧ノ一人ガ態〓舊丸計ノ株主ニ刷物ヲ配ツテ居
〓、其ノ一節ニ斯ウ云フコトガ書イデアル
「就中相當ノ設備ト取扱量ヲ有シ、又相當ノ
利益ヲ收メテ、而モ其ノ自主經營ノ繼續ヲ
熱望シテ居ルモノマデモ、一驛一店ノ實ヲ
理想トスルト云フガ如キ獨斷ノ下ニ、其ノ
合同ヲ慫慂スルコト、否、强要スルガ如キ
熊度ヲ以テ業者ニ臨ムコトハ何等ノ社會
的實益ガナイノミナラズ、業法制定ノ精神
ヲ蹂躪スルモノデアルト同時ニ、斯業者ヲ
シテ危地ニ陷レ、斯業界ヲ徒ニ混亂セシム
ルモノデアルト思フノデアリマス、分ケテ
非指定者間ノ任意ノ合同ヲ阻止シテ一途
ニ指定店ヘノミノ合同ヲ强要スルガ如キ傾
向ノアルノハ實ニ日本通運會社成立ノ精
神ヲ抹殺シ、其ノ運營ヲ逆用シ、亂用スル
モノデアルト信ズルモノデアリマス」、「隨
テ一部地方ノ鐵道吏員又ハ日本通運ノ從業
員ガ、鐵道ハ將來斯々ノ計畫ヲ實施スルノ
デアル、然ル場合現狀ノ儘デハ營業ガ出來
ナクナルカラ、今ノ內ニ合同セヨトカ、又
ハ一驛一店ニ合同セシムルコトガ、省竝ニ
通運ノ方針デアルカラト云フガ如キ口吻ヲ
以テ、其ノ合同ヲ慫慂スルコト、否、之ヲ
强要スルコトハ、本省竝ニ通運本社ノ眞意
ニアラザルモノト云フヨリモ、寧ロ其ノ眞
意ニ反スルモノデアルト信ズルノデアリマ
ス」云々ト是ガ日本通運會社ノ重役ノ理
事某ガ刷物デ出シタモノデアル、卽チ會社
自身ガ斯ウ云フコトヲ言ツテ居ル、斯樣ナ
譯デ鐵道ヲ背景トシテ日本通運會社ト云フ
モノガ、從來ノ運送業者ニ向ツテ無理ナ事
ヲ致シテ居ルノデアリマス、日本通運會社
ノ重役カラ斯ル意見ガ出タノヲ見テモ、如
何ニ通運會社ノ首腦部ガ無理ヲシテ居ルカ
ト云フコトガ明デアル、思フニ戰時體制下
ノ今日ノ最大急務ハ、國民ヲシテ其ノ業務
ニ安心ヲシテ働クヤウニスルノガ、政治ノ
要諦デナケレバナラヌノデアル、然ルニ今
日非指定運送業者ダケデモ約四千軒モアリ
マセウ、之ニ從業員ヲ加へタナラバ相當ノ
多數ニ上ツテ居リマス、斯ク多數ノ人數ニ
上ツテ居リマス業者ニ、官權ノ威力ヲ背景
ニ營業ニ壓迫ヲ加ヘルガ如キハ、平沼總理
ノ萬民輔翼ノ實ヲ擧ゲル所以デナイト思フ
ノデアリマス、今日ノ長期戰ニ亙ル戰爭又
ハ東亞建設ノ大業ハ、上下一體トナツテ眞
面目ニ努力スルコトデナケレバナラヌト私
ハ思フ、然ルニ政府ハ議會ニ於ケル說明ヲ
全然裏切ツタル行動ヲシテ、民衆多數ニ迷
惑ヲ及ボシ、而シテ議會政治ヲ侮蔑スルモ
ノデアルト言ハナケレバナラヌノデアリマ
ス、更ニ又國民大衆ノ營業權ヲ蹂躙シ且ツ
生活ニ不安ヲ與ヘルモノデ、特ニ今日ノ時
局ニ於テハ戒メナケレバナラヌ、政府當局
ハ曩ニ鐵道大臣及ビ鐵道次官ノ說明ニ背戾
セル行動ヲ爲サシメテ差支ナシト信ズル
カ、此ノ點ニ關シ明確ナル答辯ヲ戴カナケ
レバナラヌ(拍手)
又鐵道省ハ所管營業ノ自己ノ勢力ヲ伸バ
ス爲ニハ、總テ鐵道省ノ制壓下ニ取入レン
トスル勢ヲ以テ、日本通運會社法ノ規定ニ
依リマスル所謂投資會社ニマデ手ヲ伸バシ
テ居ル、サウシテ民間會社株ヲ買收シテ、
民間業者ヲ排斥シ、一切天降リノ官僚ノ手
ニ取上ゲントシテ狂奔シテ居ル、斯ル行動
ハ會社成立ノ精神ニ悖ルモノデアルト思フ
ノデアリマスガ、是等ハ政府ガ之ヲ認メテ
ヤラシメルノデアルカ、監督官廳トシテノ
鐵道大臣ノ所信如何、此ノ點ヲ御尋致シマ
ス
更ニ鐵道省ハ全國ノ鐵道列車內ノ食堂營
業者ニマデ手ヲ伸バシテ居ル、之ニ統
制ノ手ヲ伸バシテ全部ノ營業者ヲ一團ト
シ、一食堂會社ヲ組織セシメテ、其ノ
中心首腦部ハ天降リノ鐵道省ノ役人ヲ以
テ配置シテ、各〓其ノ事務ニ當ラシメテ居
ルガ、是ガ會社組織ノ理窟ハ統制デ洵ニ結
構デス、併シナガラ統制シテ無駄ヲ省クト
云フコトハ、理窟ハ宜イガ、事實ニ於テハ
成績ガ洵ニ擧ラヌノデアリマス、從來ノヤ
ウニ各列車ノ〓堂ノ營業者ガアツテ、オ互
ニ競爭シテオ客樣ニ安價ニ良キ食事ヲ提供
スルト云フコトガ今マデノ營業者ノヤリ口
デアツタノデアルガ、此ノ度ハ鐵道省ノ統制
ノ下ニ一會社トナツテシマヒマシタカラ、
今日ハオ客樣ニ對スル「サービス」ハ要ラ
又、唯上役ニ對スル「サービス」ガ必要デア
ル、上役ノ命令ニ從ツテ動クト云フダケデ、
會社ノ働キガ動イテ參リマスルカラ、食事
ハ却テ粗末トナリ、總テガ形式的官僚風ト
ナリ、乘客ニ取ツテハ迷惑千萬デアル、從
來ノ食堂營業ハ客本位テアツタモノガ、今
日ハオ役人本位トナツテ居ル、鐵道省ニ取
ツテハ天降リノ天地ガ廣クナリマシタカラ、
ソレダケ便利デハゴザリマセウガ、多數ノ
乘客ハ洵ニ御氣ノ毒デアル鐵道省ハ斯ル
方面ニマデ權力ヲ伸バシテ、極端ナル統制
政治ヲ實行セントシテ居ルノデアリマス、
併シナガラ民間業者ハ之ニハ反對デアル、
反對ダケレドモ、鐵道若クハ通運會社ト云
フオ役所ヲ背景トスル有力者ニ睨マレルコ
トハ怖イカラ、總テ默シテ居ル、唯服從スル
ヨリ外ハナイト云フノガ今日ノ狀態デス、
斯樣ナ次第デアリマスガ、鐵道省ノヤリロト
云フモノハ自己ノ權力ノ及ブ所ハ、恰モ「ソㄴ
聯邦ノヤウニ强力チル命制政治ヲ行ツテ
以テ一切ノ民業ヲ奪ヒ去ルノ施設ヲ爲サン
トスルノ方針デアルカ、サウシテ鐵道省ハ
飽ク、マデ議會政治ヲ無視シ、飽クマデ强力
ナル官僚專制ノ統制政治ヲ行ハントスルノ
デアルカ、此ノ點特ニ鐵道大臣ニ御伺ヲス
ル譯デアリマス
更ニ此ノ日本通運會社ノ法律實施ニ際シ
テ特ニ伺ハネバナラヌフハ日本通運株式
會社ハ半官半民ノ組織デアリマシテ、從來
ノヤウニ此ノ會社ニ對シテハ、又天降リノ
官吏ガ重役トナリ、事業本位ヨリハ寧ロ月
給本位、待遇本位、斯ウナリハシナイカト云
フノデ、議會ニ於テハ此ノ點ニ付テ質問ヲ
致シタ、所ガ喜安鐵道次官ノ答辯ニ「此ノ
七條ヲ置キマシタノハヽ決シテ役人ノ古手
ヲ持ツテ行クトカ、役人ガ行クトカ、サウ
云フヤウナコトヲ微塵モ實ハ考ヘテ居リマ
セヌ」斯ウ答辯シテ居リマス、是ハ一昨年
ノ三月十九日ノ委員會デ言ツテ居ル、卽チ
此ノ喜安次官ノ答辯ハ、何處マデモ官吏ノ
天降リハ致シマセヌト云フコトヲ明言シタ
譯デアリマズ、然ルニ事實ハドウデスカ、
全然裏切ツテ居ル、此ノ法律ハ一昨年ノ十
月一日カラ實施サレタノデアリマスヽ其ノ
實施ノ十月ノ前月九月ニハ喜安鐵道次官
ノ監督ノ下ニアル鐵道局長ノ山下某ハ退官
ヲシテ、翌十月ハ日本通運會社ノ理事トナ
ツテ居ル、前月マデハ此ノ山下ハ年俸四千
六百五十圓デアツタモノガ、一躍翌月ニハ
六千圓トナリ、之ニ恩給ノ方デ一千八百三
十七圓九十二錢ヲ貰ツテ居ル、卽チ前月マデ
ハ四千六百五十圓デアツタモノガ、恩給金ヲ
入レテ七千八百三十七圓九十二錢ヲ受クル
コトニ相成ツテ居ル、斯ウ云フコトハ私共ハ議會
人トシテ特ニ考ヘナケレバナラヌノデアリ
マス、卽チ昨年ノ議會ニ於テ、微塵モ役人ヲ入
レルト云フヤウナコトハ考ヘテ居リマセヌ
ト言ツタ、ソレガ裏切ラレテ、現在喜安鐵道次
官ハ其ノ衝ニ坐ツテ居ルデハアリマセヌカ、
其ノ下ノ自分ノ部下カラ斯樣ナ者ヲ出シテ、
前月マデハ四千六百五十圓ノ人ガ、翌月
ハ七千八百三十七圓九十二錢ヲ受ケル身ト
ナツタ、是ハドツチガ宜シイノデアルカ、
鐵道省ノ今マデノ給與ガ薄カツタノデアル
カ、或ハ此度ノ吳レ方ガ多過ギルノデアル
カ、何レニシテモ此ノ事柄ハ私ガ探シタノ
デハナイ、昨年ノ暮ノ議會ニ參考表トナツ
テ來テ居ル、鐵道省ノ表ニ依ツテ明デアリ
やっく此ノ點ハオ互ニ〓究シナケレバナラ
ヌト思フ、此ノ外ニ鐵道省カラ十月ニ、通
運會社ノ開店〓々ニ入ツタ人ハ主ナル人ガ
六人アル、先ヅ參事ニハ井出某、是ハ東鐵
ノ貨物課長ヲシテ居ツタ、又副參事ニハ中
原申藏、是ハ名古屋ノ運輸營業係長カラ來
テ居ル、又同ジク副參事ニ齋藤融ト云フノ
ガ岡山カラ入ツテ來テ居ル、同ジク副參事
ニ鈴木留吉ト云フ者ガ靜岡ノ運輸事務所カ
ラ來テ居ル、又平佐京太郞ト云フ人ガ梅田
驛長カラ移ツテ來テ居ル常務監事ニハ五
十嵐明、是ハ鐵道省ノ官房法規課長ヲシテ
居ツタ、是等ガ主ナル人々デアリマス、微塵
ダモ天降リノ役人ハアリマセヌト說明シタ
モノガ、開店〓々ニ有力ナル者ダケデ七名
入ツテ居リマス、是等ハ皆鐵道省在勤當時
ヨリモ急激ニ多クノ月給ヲ吳レテ居ル、マ
ダソレダケナラ宜シイガ、之ニハ皆恩給金
ヲ吳レテ居リマス、唯此ノ中、井出繼男ト
云フ人ハ、入社當時恩給年限ニ達シテ居ラ
ヌカラ、休職ニシテ恩給ヲ與ヘルヤウニ致
シタ、斯ル如キハ恩給制度制定ノ趣旨ニ適
フモノデハアリマスマイ、恩給ハ退官シタ
ル官吏ノ老後生活ノ安定ノ爲ニ出テ居ル、
他ノ會社ニ增俸サレテ行クトカ、或ハ若イ
身空ノ人ガ恩給年限ガ來ナイカラト云フノ
デ、休職ニシテマデヤルト云フコトハ私
ノ心ヲ以テ國家ノ法ヲ濫用スルモノト言ハ
ナケレバナラヌ(拍手)更ニ此ノ天降リノ役
人ハ、昨年ノ三月カラ五月マデニ入ツタ者
ハ、有力ナ者ダケデ十四名モ入ツテ居ル、
卽チ日本通運株式會社ノ理事ニ早川愼一ト
云フ者ガ入ツテ居ル、是ハ名古屋ノ鐵道局
長デ、是モ年俸ハ四千六百五十圓、其ノ恩
給ガ千八百三十七圓九十二錢デ、年俸ヲ六
千圓貰ツテ居ルカラ、前月マデ四千六百五
十圓取ツテ居ツタ者ガ、翌月カラハ七千八
百三十七圓九十二錢ノ年俸ヲ受ケル身トナ
ツタ、時ハ何時デス、國民ハ皆銃後ノ犠牲
ヲ拂ツテ居ル時デス、政府ノ役人ガオ手盛
デ斯樣ナコトヲ致シテ、國民大衆ニ申譯ガ
出來マスカ、其ノ他此ノ三月カラ五月マデ
ノ間ニ十三名モ有力ナル人ガ入ツテ居ル、
煩ヲ省イテ其ノ人名ハ擧ゲマセヌガ、此ノ
中ニモ鐵道監理官ヲシタ高木ト云フ人ガ入
ツテ居ル是モ年ガ若クテ恩給ニ達シナイ
ト云フノデ休職ニシテ居リマス、是亦私ノ
心ヲ以テ法ヲ濫用シタモノト言ハナケレバ
ナラヌ、斯樣ナ點ハ嚴正ニ今日鐡道大臣ノ
意見ヲ御伺シナケレバ吾々ハ國民ニ對シ
テ相濟マヌ(拍手)、是等ノ入ツタ人ハ總テ
恩給附デス、唯恩給ノナイノガ二人アリマ
スガ、是ハ休職ニシテ恩給年限ヲ繼續サセヨ
ウトシテ居ル、オ互ドンナ緣故ガアラウト
モ、斯ウ云フ點ハ公平ニ觀察シナケレバナ
ラヌト私ハ思フ、是ハ皆鐵道大臣決裁ノ上
ニ又喜安次官監督ノ下ニ行ハレタ事實デ
アリマス、然ルニ一方國民大衆ハ戰時體制
ノ下ニ、自己ノ力以上ノ苦痛ヲ忍ンデ銃後
ノ役目ヲ果シテ居ル、斯ル時政府ハ國民ニ
對シ、又戰線ノ將兵諸君ニ對シテ、此ノ我
儘ナル增俸ノオ手盛ニ付テ何ト辯解致シマ
スカ、此ノ點ニ付テ特ニ明答ヲ煩ハシタイ
(拍手)又喜安次官ノ答辯中ニ「役人ノ古手
ヲ持ツテ行クトカ、役人ガ行クトカ、サウ云
フヤウナコトヲ微塵モ實ハ考ヘテ居リマセ
ヌ」、卽チ絕對ニ天降リハセヌトノ意味ノ此
ノ言葉ト、此ノ多數ノ役人ヲ天降リニ入レマ
シタ事實トヲ照合セテ、政府ノ答辯ハ確ニ虚
僞デアルト確信スルノデアリマスガ、政府
ノ所信如何、以上ハ全然議會ヲ欺キタル其
ノ上ニ、議會ニ於ケル說明ヲ無視シテ、唯
法律執行ノコトニナリマスレバ、政府ノ役
人ノ勝手ナ切盛リヲ致シマス、是ガ卽チ世
間ノ申シマスル官吏ノ獨善デアルトカ、官
吏專制デアルト私ハ思フ(拍手)是ガサウデ
ナイナラバ、サウデナイダケノ御說明ヲ承
リタイノデアリマス
更ニ又官紀肅正ノ上カラ一ツ御伺致シタ
イ、日本通運會社ニハ鐵道省ヨリ「。ハス〓
貰ツテ利用スル者ガ澤山アリマス、而モ其
ノ〓パス」ヲ使用シナガラ、一方ニハ通運會
社カラ汽車賃ヲ取ツテ居ル者ガアル、俗
申シマスナラバ是ハ汽車賃ノ二重取デス、
此ノ汽車賃ハ單純ナ汽車賃デハアリマセヌ、
其ノ中ニハ戰時ニ際シテ增稅スル通行稅ナ
ルモノガ入ツテ居リマス、此ノ汽車賃ヲ著
服シタ其ノ中ニハ通行稅ガアル、此ノ通行
稅マデ著服シタ者ガ日本通運會社ノ上役ニ
居ル、是ハ確ニ通行稅ノ橫領デアリマス、
今期ノ議會ニハ生活難ノ爲ニ知ラズ識ラズ
苦シイ者モアルデアラウト云フヤウナ所カ
ラ、今日ノ細カイ增稅ニ對シテモ、諸君カ
ラ御修正ニナツタノハ是等ノ點ヲ諒トシタ
カラデアラウト私ハ思フ、然ルニ通運會社
ノ上役ニ居ル者ハ裕ナル報酬ヲ受ケテ居ル
身デアルノニ拘ラズ、汽車賃ノ二重取ヲ
シ、而モ其ノ中ニアル通行稅ヲ橫領シテ居
ル、其ノ主ナル一例ヲ申シテ置キマス、卽
チ是モ政府ガ吾々ニ御渡シニナツタ昨年春
ノ議會ニ出シタ表ニ依ツテ申上ゲル卽チ
其ノ表ニ依リマスト月俸九百十七圓、恩
給百五十三圓十六錢、一月ノ報酬計千七十
圓十六錢ヲ取ツテ居ル、此ノ外ニ期末々々
ノ報酬モ相當ニアリマス、此ノ多額ナ金ヲ
取ツテ居ル方ガ汽車賃ノ一一重取ヲシテ居ル、
卽チソレハ副社長ノ村上義一デアル、斯ウ
云フ副社長ノ層書ノアル人ガ汽車賃ノ二重
取ヲ爲シ、其ノ中ノ通行稅ヲ橫領シテ居ル
ト云フコトデ、半官半民ノ大會社ノ重役ト
シテ多數ノ社員從業員ヲ統率スルコトガ出
來ルカドウカ、苟モ多數ノ社員從業員ノ上
位ニアル者ハ、德ヲ以テ下ヲ指導シテ行カ
ナケレバナラヌト私ハ存ズル、昨年ノ如キ
ハ「ボーナス」ガ非常ニ多額デアツタノデ、
鐵道省カラ天降リノ役人ハ、鐵道省ト較べ
テ「ボーナス」ノ多イノニ驚イタ位デアリマ
ス、斯樣ナ譯デアリマスカラ、鐵道省ハ直
接ニ日本通運株式會社ヲ監督シテ居リ其
ノ指導者ノ位置ニアル以上ハ、是等ハ嚴重
ニ糺シ、通行稅橫額ノ事實アル者ハ適切ナ
ル處置ヲ爲スベキガ當然ト存ズル、今期議
會ニ於テ微細ナ點ニマデモ支那事變ニ付テ
增稅ヲ斷行シテ、長期戰ノ資ニ供セントシ
テ居ルデハアリマセヌカ私ハ煩ヲ避ク
ル爲ニ不正行爲ノ一端ダケヲ述ベテ、政府
ガ此ノ醜劣ナル行爲ヲ知ツテ知ラザル風ヲ
シテ居ルノカ、現下ノ時局ニ際シテ政府ノ
緩慢ナル監督振リヲ責メナケレバナラヌ、
ソレ故ニ此ノ點ニ對シテ特ニ鐵道大臣ノ答
辯ヲ求メル者デアリマス
其ノ次ニハ鐵道省内ノ所謂五十五万圓事
件デス、此ノ始末ノ內容ハ鐵道省ハ如何ニ
シタカ、此ノ事件ハ鐵道省ノ係官ノ職務怠
慢ノ結果デアルト私ハ思フ、卽チ近頃ノ所
謂官僚獨善、戰時豫算ニ便乘シテ我儘ナル
役人ノ多數ガ議會カラ費用ヲ頂戴シテ、サ
ウシテ役人ガ權力ヲ伸バス、其ノ結果ハ斯
ウ云フヤウナコトマデ官紀ガ緩ンデ來タノ
デアルト私ハ思フ、卽チ此ノ事件ハ兩國ノ
「スマル」運送店ガ納入金ヲ怠ツタ爲デアリ
やっくり納金未納ニ付テハ係ノ下級官ガ未
納報告ヲ上官ニ致シタト聞イテ居ル、然ル
ニ如何ナル理由デアルカ、上官ハ其ノ未納
報告ヲ受ケナガラ、其ノ儘放任シタ事實ガ
アル、世間デハ「スマル」事件ヲ不問ニシ
ク、鐵道當局ノ上役ト、「スマル」運送店ト
ハ一種ノ默契ガアツタノダトサヘ言ツテ居
ル而モ問題ハ鐵道省內デ謂フ五十五万圓
事件デアリマス、納金ヲ受取ツテヤルベキモノ
ヲ受取ラナイデ怠ツタ、下級ノ者ガ報告シテ
居ツタガ、上級ノ人ガ見テ見ヌ振ヲシテ、監督
ヲ怠ツタ結果デアリマセウ、此ノ事件ノ發覺
ハ會計檢査院カラ注意ガアツテ初メテ知ツタ
ノデアリマス、鐵道省ハ此ノ會計檢査院ノ注意
ニ驚イテ、東鐵ニ命ジテ之ヲ調査ヲサセタ、
此ノ事件發覺後渦中ノ擔當者ハ御氣ノ毒ニ
懲戒免官トナツタ、其ノ上役ニ對シテハ何等
ノ懲戒的處置ヲ講ゼザリシ理由如何、此ノ
點ヲ御伺スル譯デアリマス、鐵道省ノ官紀
紊亂ハ此ノ一小事件デモ明瞭デアリマス、
鐵道省ガ本事件ニ對シテ爲サレク處置ノ詳
細ナル〓末ヲ、此ノ機會ニ御答辯ヲ願ヒタ
イ、更ニ又日本通運株式會社ガ此ノ「スマルㄴ
運送店ニ對シテ如何ナル處置ヲ執ツタカ、
監督官廳ノ首腦者タル鐡消大臣カラ之ヲ承
リダイノデアリマス、伍堂鐵道大臣ガ日本
通運株式會社設立ニ付テ其ノ說明ヲスル時
ニ運送會社設立ノ目的ハドウダト言ツタ
時ニ、此ノ會社ヲ設立シマス目標ハ營利ガ
本意デナイノデアリマス、要スルニ國民大
衆荷主ニ利益ヲ與ヘテ卽チ運賃ヲ低下
シ取扱ヲ安全ニスルト云フ點ニアルノデア
リマス、是ガ伍堂鐵道大臣ノ說明デアリマ
ス、卽チ日本通運株式會社ハ飽クマデ營利
本位デナイ、大衆ノ爲デアル、荷主ノ運賃
ヲ安クスル爲デアル、斯樣ニマデ言ツテ居ル、
而シテ鐵道當局ハ此ノ通運會社ヲ設立スル
前マデハ國際通運會社ニ對シテ口ニ筆ニ
其ノ營業方針ヲ攻擊シテ、諸官廳銀行等ニ
於ケル請負作業ノ競爭等ニ付テ、非常ニ非
難ヲ爲サツタ然ルニ今日日本通運會社ガ
成立シテ見ルト、過去ノ國際通運ト略〓同樣
ナ行動ヲ致シテ居ル、同樣ナ行動ヲシテ居
ルニ拘ラズ、鐵道省カラハ何等ノ注意モ命
令モ與ヘタコトヲ聞カナイ、扱人ガ變レバ
實體ハ其ノ儘デ宜シイ、而モ各地ノ下拂料金
ノ如キハ三割以上モ頭ヲ刎ネテ居ル、甚シ
キハ二重ノ手數料マデ取ツテ居ル、證據ガ
ナケレバ問題ニナリマセヌカラ茲ニ一例ヲ
擧ゲテ置キマス、九州ノ某製鐵所カラ發送
スル軍用「ガソリン」ヲ、船デ某港ノ丸通ノ營
業者ニ宛テテ送ツタ、所ガ日本通運支店ハ
之ヲ請負ツテ、同店ハ某港ノ艀業者ニ下請
ヲサセタ、而モ此ノ間ニ於テ日本通運會社
ハ自分ノ營業所デアルト云フ名目デ手數料
ヲ取リ、又支店ノ名義デ扱賃ヲ取ツテ居ル、
同一ノ物ヲ扱フノニ二重ノ搾取ヲスルト云
フコトハ如何ニモ宜シクナイコトデアル、
而モ下請ノ艀業者ハ僅ナル口錢デアリマス、
又軍部關係ノ或ル物ノ取扱ノ如キハ、日本
通運ガ貨車卸シ、或ハ倉入手數料トシテ一
瓲ニ付テ二圓八十錢ヲ取ツテ居ル、正當ナ
料金ハ一圓內外デ宜シイノデアリマス而
モ請負運送店ト云フモノハ一瓲ニ付テ八十
錢シカ貰ツテ居ラヌ卽チ是ハ下請デス、
斯ノ如キコトハ日本通運會社ガ今日ノ時局
ニ於テ最モ緊張シテ、國家ノ爲ニ働カネバ
ナラヌ譯デアリマスノニ世間ノ言フ濡手
デ粟ノ摑ミ取リト云フヤウナ亂暴ナヤリ方
ヲシテ頭ヲ刎ネテ居ル斯ウ云フコトハ鐵
道大臣ガ監督シテ居リマス以上ハ、十分ナ
ル注意若クハ制裁ヲ與ヘナケレバナラヌト
思フノデアリマス(「ヒヤ〓〓」)卽チ日本通
運會社ハ營利本位デナイ、國民大衆ノ利益
ノ爲デアルト云フノデアリマスカラ、下請
料ノヤウナモノハ撤廢ヲシテ、寧ロ小運送
業ノ改善、又ハ荷主ノ利益增進ヲ圖ルベキ
ガ當然デアルト思フ此ノ矛盾セル行動ヲ
鐵道省ハ何ト思召スカ、此ノ點ニ對スル答
辯ヲ伺フノデアリマス(拍手)
又日本通運會社ト云フモノハ、獨リ內地
ニ於テ營利ニ沒頭スルノミデハナイ、中支
那マデ行ツテ極端ナル暴利ヲ貪ツテ居ル、
私共ハ中支那ニ行ツタコトハ洵ニ結構デア
ルト思フ、併シナガラ中支那へ參リマシテ
日本ノ體面ヲ汚スヤウナ暴利ヲ貪ルコトハ
國家ヲ代表スル吾々議會トシテハ當然責メナ
ケレバナラヌ(拍手)而モ中支那マデ發展シ
テ、上海ニ支社ヲ置イテ盛ニ利益獲得ヲシ
テ、是ガ爲ニ軍部カラ國策ノ線ニ沿ハナイト
云ツテ大キナオ目玉ヲ頂戴シテ、是ガ爲ニハ
會社ノ重役ガ態〓上海へ出張シテ軍ニ御詫ビ
ヲシテ、漸ク事濟ミニナツテ居ル、斯ル營
利一點張リノ行動ハ、日本通運會社設立ノ
精神ニ背クモノデアリマスルガ故ニ、鐵道
省ハ監督ノ位置ニ在ルモノデアリマスカラ、
中支那ニマデ出張ツテ此ノ醜態ヲ演ジタ點
ヲ何處マデモ責メテ、サウシテ日本通運會
社設立ノ本旨ニ副フヤウニシナケレバナラ
ヌト思フガ、之ヲ放任シタ鐵道大臣ノ御意
見ヲ伺ハナケレバナラヌ(「簡單々々」ト呼
フ者アリ)
次ニ現在ノ通運會社ト云フモノハ殆ド鐵
道省ノ官吏ニ依ツテ充當サレテ居リマス
(「議長注意」ト呼フ者アリ)萬民輔翼ト總理
大臣ノ言ハレルノハ何カト言ヘバ、各〓其ノ
所ニ於テ自己ノ機能ヲ安心シテ發揮スルヤ
ウニ働カセルノガ、萬民輔翼ノ途ヲ盡ス所
以デアリマス、然ルニ今日ハドウデアルカ
ト言ヘバ、日本通運會社ト云フモノハ鐵道
省ヲ背景トシタ天降リノ役人ハ、今日益〓多
イノデアリマス(「其ノ通リ」ト呼フ者アリ)
斯樣ナ時デアルカラ、眞面目ニ下カラ叩キ
上ゲ、段々熟練ヲシタ社員若クハ從業員ト云
フモノハ、鐵道省カラ慣レナイ役人ガ來テ
自分ノ地位ヲ奪ハレ、遂ニ失職スル、從業
員ハ是ガ爲ニ恐怖心ニ襲ハレテ居ル、今日
デコソ戰時體制デアリマスカラ、緘默シテ
居リマス、若シ是ガ平時デアツタナラバ
斯樣ナ不都合ナル行動ヲ爲スモノハ責メナ
ケレバナラヌ、兎ニ角職ニ從事スル者ニハ
不安ヲ與ヘナイヤウニ注意ヲ致スコトガ、
政治ノ要諦デアリマス(拍手)斯ル次第デア
リマスカラ、今日運送店ト云フモノハドウ
ナツテ居ルカト言ヘバ以前ハ運送店ハ荷
主ノ運送店デアツタガ、今日ハ荷主ハドウ
デモ宜シイ、自己ノ營業ヲ安定シテ行カウ
ト思フノニハ、鐵道省若クハ日本通運會社
ノ上役ノ御機嫌ヲ取ル(「議長、注意」ト呼
フ者アリ)卽チ上役邊ノ御機嫌ヲ取リサヘ
スレバ、荷主ニ對スルコトナドハドウデモ
宜シイト云フコトニナツテ居ル、是等ニ對
シマシテモ鐵道大臣ノ監督ガ其ノ宜シキヲ
得ナイノデアルト私ハ思フ(「モウ宜イダラ
ウ」「ヤレヤレ」ト呼フ者アリ)更ニ又日本通
運會社ト云フモノハ全體實現サレテカラ
ハ運送會社ノ費用ヲ成ベク減ラシテヤル
計算ニシテモ計算費用ハ成ベク低額ニシテ
ヤルト云フノガ設立ノ方針デアリマス、然
ルニ日本通運會社實施前ニハ非指定業ト云
フモノガアリマシテ丸「テイ」、丸計ノ兩
計算會社ト云フモノハ其ノ料金ハ一箇月
二圓ヅツデ四圓デアツタ然ルニ政府ガ日
本通運會社ヲ拵ヘテカラハドウナツタカト
云フト、此ノ費用ガ增シマシテ、既設計算
會社ノ下ニ集約合同ヲシテ國策會社トナツ
テカラハ俄ニ加盟店ノ費用ト云フモノハ
增シテ居ル而モ數倍若クハ十數倍ニ增シ
テ居リマス、日本通運會社ノ一種、二種、
三種ト云フヤウナ甲種ト稱スベキモノハ
運送業者界ノ中堅層デアリマス、是等ハ加
盟店ノ費用ガ低下サレタト云フコトハ少シ
モ聞カヌノデアリマス(「議長、時間ノ御注
意ヲ願ヒマス」「ヤレ〓〓キ」ト呼フ者アリ)卽
チ當初ノ通運會社ノ甲ト言ツテ指定サレタ
三種ノ業者ノ一箇月ノ加盟店費ト云フモノ
ハ百七圓負擔シテ居リマス、以前ハ四圓
デ濟ンダモノガ百七圓負擔シテ居ル日本
通運會社ノ出來ル以前ハ四圓デ濟ンダモノ
ガ、實ニ二十七倍ノ多額ニナツテ居リマス
斯ノ如キハ鐵道大臣ガ明言セル營利本位デ
ナイト云フ證據デアル、卽チ斯ウ云フ點ハ、
議會ニ於ケル說明ヲ裏切ツテ、唯議會ヲ切
拔ケサレスレバ宜シイト云フ虚僞ノ說明デ
アリマス(「簡單」「時間ノ制限ハドウシタ」
ト呼フ者アリ)苟モ民衆ノ爲ニヤルト云フ
ノナラバ、計算料ヲ減ラスト云フノナラバ>
以前四圓デアツタモノハ少クトモ、ソレ以下
ニナラナケレバナラヌ(「ヒヤ〓〓」「簡單」ト
呼フ者アリ)然ルニ甲種ニ屬スルモノガ二十
七倍モノ多額ニナルト云フコトハ、鐵道大臣
自ラノ說明ヲ裏切ルモノデアルト言ハナケ
レバナラヌ(「議長、御注意ヲ願ヒマス」ト呼
ヒ其ノ他發言スル者アリ)第一、此ノ法律ハ、
鐵道省ガ此ノ運送業者ト云フモノヲ監督シ
テ居ルノデアリマスガ、全體此ノ立法ノ精
神ハ鐵道省自ラガ一方ニ於テハ運送業者
ノ監督省デアル、玆ニ公平ナルコトハ出來
ヌノデアリマス、私共ハ一昨年此ノ法律案
ガ出タ時ニ、鐵道省ガ通運會社ト云フヤウ
ナモノヲ拵ヘテ、其ノ監督省トナルコトガ
間違ヒデ、是ハ內務省ガヤルベキモノデア
ルト言ツタ位デアリマス
〔「時間ノ制限ハドウシタ」「議長、御注
意ヲ願ヒマス「ヤレ〓〓」「簡單ニ」ト
呼ヒ其ノ他發言スル者多シ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=67
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068・小山松壽
○議長(小山松壽君) 木檜君-木檜君ニ
此ノ際議長ヨリ一言致シマス、質問ニ對シ
マシテハ各派交涉會ニ於ケル時間ノ申合セ
モアリマスカラ、質問提出者、各議員諸君
ニ於テ自制セラレンコトヲ希望致シマス(拍
手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=68
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069・木檜三四郎
○木檜三四郞君(續) 承知致シマシタ-
斯樣ナ次第デアリマスカラ、鐵道省自ラ
運送業者デアリ、一方ハ監督者デアリマス、
ソレデアリマスカラ、此ノ日本通運會社法
ガ決定シマシタ以上ハ、何處マデモ公平ナ
建前デ行カナケレバナラヌモノヲ、却テ此
ノ取扱振リガ公平デナク、片手落ノ取扱ヒ
ニナツタカラ、今申上ゲマスヤウニ議會
ニ於テ說明シタ法案ノ精神ニ背クヤウナ行
動ヲ爲スコトニ相成ツタ譯デアリマス、是
等ノ實施ノ跡ヲ點檢スレバ、議會ニ於ケル
說明ハ全部裏切ツテ、鐵道省ハ我儘勝手ナ
行ヒヲ爲シテ居ル譯デアリマス、斯樣ナ譯
デアリマスカラ、私共ハ半官半民ノ會社ニ
對シテハ、特ニ今後注意シナケレバナラヌ
ト思フ、卽チ半官半民ノ天降リノ役人ノ重
役ト云フモノハ今マデ其ノ會社ニ對シテ
餘リ熱意ヲ注イダ例ヲ聞カヌ、稀ニハ天降
リノ役人ニモ良イノガアリマス、併シナガ
ラ吾々ガ近時目前ニ見セ付ケラレタ半官半
民ノ會社ト云フモノニハ、餘リ良イ人ガ降
ツテ居ラヌ、斯樣ナ譯デアリマスカラ、私
共ハ是等ノ監督上ニ於テ、熱意ヲ持チ、事
ニ當ツテハ親切ナ人ヲ求メルノニハ、ドウ
シテモ其ノ道ニ堪能ナ人デナケレバナラヌ、
東北振興會社ノ總裁ニナツタ吉野君ガ、大
臣ノ椅子ヲ以テスレバ振興會社ハドウナラ
ウトモ、ソンナコトハドウデモ宜シイ、唯
大臣ト云フ椅子ガ欲シクテ其ノ椅子ニ就ク、
斯ウ云フ譯デス、或ハ八田サンガ又其ノ後
ニ拓務大臣トシテ迎ヘラレレバ、就職スル
時ニハ大變ナ聲明ヲシテ置キナガラ、僅カ
數箇月ニシテ大臣ノ椅子ニ就ク、斯ウ云フ
ノハ事業ニ當ツテ熱意ト親切ガナイカラデ
アル事業家ナラバ玆ニ資金ヲ投ジテアリ
マスルカラ椅子ヲ以テ勸誘サレテモサ
ウ唯々トシテ動クモノデハアリマセヌ、仕
事ガ中心デス、斯樣ナ譯デアリマスルカラ、
今後日本通運株式會社ヲ設立シタ以上ハ、
其ノ目的ニ副フヤウニシナケレバ、折角拵
ヘタ此ノ法制ノ意義ヲ成サヌト私ハ思プ、
ソコデ私ハ總理大臣ニ一ツ最後ノ質問ヲ述
ベテ他ハ省略致シマス、平沼總理大臣ニ御
問シテ置キマス、以上私ガ速記錄ト對照シ、
又事實ヲ指摘シテ質問シタコトニ依リ、政
府ハ御裁可ヲ仰ギ奉ツテ提出致シマシタ議
案ニ對シテ虚僞ノ說明ヲシ、又私ノ心ヲ以
テ公ノ事ヲ處シタルコトハ能ク御分リデア
ラウト思フ、總理ノ所謂萬民輔翼ノ道デナ
イ、卽チ官紀ハ紊亂シテ居ルコトガ分ツテ
居リマス、ソコデ何故ニ斯ル行動ヲ官吏ガ
致スカト云フコトヲ〓究スルコトガ大切
デス、蓋シ其ノ原因ハ官界ノ信賞必罰ノ
實ガ擧ツテ居ラヌト云フコトガ一ツノ原因
ダト思フ、今一ツハ官吏ノ身分保障ト云フモ
ノガ一ツノ防壁トナツテ、官吏ガ我儘ヲ致
スノデアリマス、今ヤ日本ハ東洋平和ノ爲
ニ蔣政權打倒ト共ニ、長期建設ノ事業ニ邁
進シテ居リマス、實ニ容易ナラヌ時デアリ
やく、此ノ時平沼總理ハ昨二十二日山道君
ノ質問ニ對シテ御答ヲシテ曰ク、卽チ官吏
全體ヲ董督スル責任ヲ平沼總理ハ自分デ持
ツテ居ル官吏全體ニ付テ其何レノ部分ニ
於テモ苟モ非違ガゴザイマシタナラバ、私
ノ董督ノ責任ヲ盡サザルノ爲デアルト言ツ
テ居ル、然ラバ以上述ベマシタコトハ卽
チ部下ノ官吏ガ白日公然、平然トシテ、天
降リノ役人ヲ民間ノ會社ニ入レテ、一方恩
給年限ニ達セザル者ニハ、職權ヲ濫用シテ
恩給ヲ與ヘ、更ニ多額ノ報酬ヲ受ケサセテ、
今日戰線ニアル將兵諸君ノ苦心ヲモ考ヘナ
イ、我儘ナル行動ヲ致シテ居リマス、平沼
總理大臣ハ此ノ點ニ對シテ如何ナル御考ヲ
持タレルカ、總理大臣ニ此ノ點ニ對シテ特
ニ御辯明ヲ求ムル次第デアリマス、之ヲ以
テ終リニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=69
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070・小山松壽
○議長(小山松壽君) 質問三、鋼材配給統
制ニ關スル質問ヲ許可致シマス-提出者
中村高一君
三鋼材配給統制ニ關スル質問(中村
高一君提出)
鋼材配給統制ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和十四年三月十日
提出者中村高一
鋼材配給統制ニ關スル質問主意書
昨年七月一日商工省ハ支那事變勃發ノ爲
戰時資材ノ重要物資タル鋼材ニ對シ統制
命令ヲ發シタルモ配給機構不備ノ爲鋼材
配給ノ圓滑ヲ缺クカ如キ狀態ナリ卽チ
(1)現在配給機構トシテ指定商、指定問
屋、特約店ノ三段階アルニ拘ラス卸、
小賣ノ區別明確ナラス而モ指定商及指
定問屋ハ直接實需家ニ販賣スル爲特約
小賣店ニハ殆ト鋼材配給セラレス從テ
中小工業者ハ鋼材入手至難トナリ今ヤ
下層部ノ不平甚シキ狀態ニ在リ
(2)指定問屋ノ仕入カ個々ニ行ハレ統一
ナキ爲現品カ指定問屋各店ニ分散在庫
セラルルノミナラス品種、數量、入荷
ノ時期等ヲ公表セス且ツ在庫モ不明ナ
ルカ爲繁雜ナル手數ト長時日ヲ要シ迅
速ニ實需家ニ配給スル能ハス
(3)指定問屋ハ特約店ニ販賣スルヨリ利
益率多ク且ツ現品ヲ自店ニ保管セルカ
故ニ自店ノ得意先タル實需家ニ對シ特
約店ヨリ優先的ニ配給スルカ如キ不公
平甚シク政府ノ統制ハ問屋ニ苦痛少ナ
ク特約小賣店ニ犧牲大ナリ
(4)指定問屋ハ自店ノ得意先擁護ノ爲安
價ニシテ優良ナル共販物ヲ優先的ニ實
需家ニ配給シツツアリ
(5)指定問屋ハ統制規則ノ建前ヨリスレ
ハ特約店ヨリ證明書提示ノ必要ナキニ
拘ラス照會電話ニ對シテモ切符ヲ提示
セサレハ囘答ニ應セサルカ爲特約店ハ
得意先ノ註文ニ對シ卽答ヲ爲シ得ス緊
急ノ見積ハ不能ニシテ全ク苦境ニ在リ
(6)指定問屋ハ配給會ヲ組織シ問屋相互
間ニ於テ商品ノ融通ヲ爲シ其ノ口錢率
ハ特約店ニ販賣スルヨリモ高率ナル爲
特約店ニ對スル配給ハ一層圓滑ヲ缺ケ
リ
(7)中小工業者(實需家)ハ特約店ニ對シ
鋼材購入ノ外ニ多年金融上ノ便益ヲ受
ケツツアリタルモ最近ハ特約店ニ材料
不足ノ爲中小工業者ハ一重ノ不便ヲ受
ケツツアリ
仍テ左ノ如キ諸點ニ關シ政府ニ質問ス
ル次第ナリ
(1)鋼材配給業者中卸ト小賣ノ分野ヲ
明確ナラシメ以テ各自ノ機能ヲ十分ニ
發揮セシムル爲問屋ノ民需へノ直賣ヲ
禁スルノ意思ナキヤ
(二)政府ハ指定問屋及特約店ニ付ソ
レソレ商業組合ヲ結成セシメタルニ拘ラ
ス指定問屋ハ個々ニ仕入ヲ爲シ其ノ販
賣モ組合ト關係ナク一部ヲ特約店ニ一
部ヲ實需家ニ何レモ個々ニ配給(販賣)
スル爲其ノ配給ニ情實關係生シ業者ノ
軋轢甚シ政府ハ組合ノ機能ヲ發揮セシ
ムル考ナキヤ
(1)目下設立準備中ト聞ク日本鋼材販
賣株式會社ノ配給(販賣)方法ニ付政府
ハ如何ナル監督指導ヲ爲ス方針ナリヤ
右及質問候也発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=70
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071・中村高一
○中村高一君 商工大臣ノ出席ヲ要求致シ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=71
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072・小山松壽
○議長(小山松壽君) 商工大臣ハ貴族院ノ
委員會ニ出席中デ、コチラヘ出席致シ兼ネ
ルトノコトデアリマス、政府委員ガ居リマ
スカラ御說明致シマス
〔中村高一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=72
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073・中村高一
○中村高一君 此ノ問題ニ付キマシテハ、
他ノ委員會ニ於テモ其ノ一部ヲ質問致シタ
ノデアリマスルガ、政府ノ答辯ガ要領ヲ得
テ居リマセヌノト、モウ一ツハ鐵ノ配給ガ
極メテ圓滑ヲ缺イテ居ルノデアリマシテ、
其ノ爲ニ一日モ早ク配給方法ニ付テノ機構
ヲ整備シ、更ニ其ノ配給ヲ圓滑ニスル必要
ガアルト思ヒマシテ、政府ノ明快ナル御所
見ヲ此ノ際承リタイト思フノデアリマス
今日時局ニ際シマシテ、色々ノ物資ノ配
給ガ圓滑ヲ缺イテ居リマスルコトハ私ガ
玆ニ申上ゲルマデモナイノデアリマスルガ
特ニ其ノ中デ鐵ハ最モ生產擴充ニ缺クベカ
ラザル重要物資デアリ、而モ一方ニ於キマ
シテハ軍需工業ニ是ガ使用セラレ、一九〇
一於キマシテハ民間工業ノ新設ト擴張ノ爲ニ
是亦物資ノ需要ガ極メテ大キイノデアリマ
スガ、其ノ間ニ於キマシテ配給ガ圓滑ヲ缺
キマスル爲ニ、日本全國ノ中小工業者ニ與
ヘテ居リマス所ノ、非常ナル苦痛ヲ考ヘマ
スルナラバ-無理ナコトヲ吾々ハ政府ニ
要求セントスル者デハナイノデアリマシテ、
今日時局ノ爲ニ資源ノ不足デアルコトハ
是亦政府ノミヲ攻擊スルコトハ無理カモ知
レマセヌガ、其ノ配給方法ニ關シテ政府ノ
監督ト配分方法ガ宜シキヲ得マスルナラバ
其ノ圓滑ヲ期スル方法ハ多々アルニモ拘ラ
ズ、今日放任セラレテ居リマスルカラ、私
ハ此ノ際政府ニ聽カントスルノデアリマス、
併シナガラ今日何ガ故ニ此ノ配給ガ圓滑ヲ
缺イテ居ルカト云フコトノ詳細ナ點ニ付キ
マシテハ質問主意書トシテ書面ニ依ツテ
之ヲ指摘致シテ居リマスノデ、其ノ點ニ付
キマシテハ之ヲ質問主意書ニ讓リ、其ノ缺
陷ノ指拒ハ省略致シタイト存ズルノデアリ
やっ、何故ニ質問主意書ニ私ガ列記致シマ
シタヤウナ幾多ノ缺陷ヲ前ニシテ、商工當
局ハ思ヒ切ツタ配給機構ノ整備ヲ致サナイノ
カ、是ガ私ノ政府ニ質問致シタイト思フ第一
點デアリマス、現在配給ニ付キマシテハ指定商ト
問屋ト特約店、卽チ小賣商ト三ツノ段階ガハ
ツキリ分レテ居リマス、而モ卸業者ニ付キマ
シテハ商業組合ヲ結成セシメ、特約店ニ付
テハ是亦橫ノ商業組合ヲ結成セシメ、三段階
ニ配給機構ヲ統制致シテ居ル、制度ノ上ニ
於テハチヤント三段階ガアルニモ拘ラズ、
其ノ配給方法ハ自由主義其ノ儘ニ委セテア
ルカラ茲ニ私ハ缺陷ガアルト思フソレ
デアリマスカラ、制度ノ上ニ於テ三ツノ段
階ヲ置イテ統制ヲ執ツテ居ルナラバ、統制
ノ通リニ指定商ト問屋ト小賣店トノ間ニ、
此ノ職能ヲ明確ニサセル必要ガアル、今日
ニ於テハ指定商モ直接民間ニ賣リニ行ク、
問屋ニ買ヒニ來レバ問屋モ亦民間ニ賣ル、
小賣店モ亦民間ニ賣ルト云フヤウニ、三
ツノ段階ニ於テ相競爭ヲシテ居リマスルナ
ラバ、今日統制ヲ執ラレテ居リマスル三千
五百ノ小賣店ト云フモノハ全ク浮上ツテシ
マツテ、材料ノ配給モ受ケルコトガ出來ズ、
其ノ爲ニドウスルコトモ出來ナイ現狀ニア
ルバカリデナク、小賣店ヲ直接ノ相手ト致
シテ居リマスル所ノ中小工業者ガ、此ノ爲
ニ全ク鐵材ヲ求メルコトガ出來ナイト云フ
ヤウナ窮狀ニアルノデアリマスカラ、政府
ハ思切ツテ問屋ハ問屋トシテノ職分ヲ盡サ
セル、小賣店ハ小賣店トシテノ職分ヲ分ケ
テ、玆ニ兩者相活キル途ヲ盡シテ、オ互ニ
相剋摩擦ヲ避ケルコトガ最モ必要ナリト考
ヘルノデアリマス(拍手)此ノ點ニ付キマシ
テノ政府ノ御囘答ヲ願ヒタイノデアリマス
第二ハ今日ノ配給ニ付キマシテノ一番大
キナ缺點ハ、小賣商店モ或ハ民間ノ工業者
モ、政府ノ配給機關ノ中ニ入ツテ居ラナイ
爲ニ、全然配給ニ付テノ要求ヲ一言モ言フ
機會ガナイ、生產ニ付テハ成程今度政府ガ
統制ヲ執ツテ、日本鋼材販賣株式會社一ツ
ニ統制スルト云フコトヲ聞イテ居リマス
生產方面ニ一ツノ統制ヲ執ルナラバ、同ジ
ク配給ニ付テモ政府ハ統制ヲ執ル必要ガア
ル然ルニ此ノ配給ニ付テノ機關ガ全然ナ
イ爲ニ、幾ラ特約店ニ不平ガアツテモ、要
求ガアツテモ、政府ニ向ツテ要求スベキ機
關ガナイ、小賣業者ガ斯ウ云フモノヲ欲シ
イト言ツテモ、是ガ配給ヲ圓滑ニサセル所
ノ聲ヲ伸ベルダケノ機關ガナイノデアリマ
スルカラ、ソコデ政府ニ於テハ製造業者ト
問屋ト小賣店ト民間ノ工業者トヲ打ツテ一
丸トシタ所ノ、配給協議會ヲ設ケラレルノ
意思アリヤ否ヤト云フコトガ、私ノ第二ノ
御尋デアリマス
第三點ハ、今囘政府ガ中心ニナリマシテ、
日本鋼材販賣株式會社ニ依ツテ生產ノ統制
ヲセラレルト云フノデアリマスルガ、配給
機構ニ付テノ統制ヲ執ラレナカツタナラ
バ、生產ニ付テノミノ統制ヲ執ツテモ、其
ノ目的ヲ達スルコトガ出來ナイト私ハ考
ヘマスルノデ、政府ガ生產ノ方面ニ統制ヲ
執ルト云フコトニ考ヲセラレマスルナラ
バ、配給ニ付テモ、速ニ統制ヲ執ラレマシ
テ、民間ノ今日非常ニ圓滑ヲ缺イテ居リマ
ス所ノ鐵ノ配給ニ付テ、十分ナル御考慮ヲ
願ヒタイト云フコトヲ申上ゲマシテ、簡單
ナガラ質問ノ主旨トスル次第デゴザイマス
(拍手)
〔政府委員今井健彥君〓壇]発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=73
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074・今井健彦
○政府委員(今井健彥君) 只今ノ中村君ノ
御質問ニ對シマシテ御答辯申上ゲマス
第一問ノ鋼材ノ配給ニ關シマシテハ、先
ヅ鋼材ノ消費者ト云フコトヲ考ヘナケレバ
ナリマセヌ、鋼材ハ軍需、官廳ノ需要、其
ノ外特定ノ大口需要ガ一ツアリマス、其ノ
外ニ中小工業者ノ需要、此ノ二ツニ分レテ
居リマス、此ノ中デ中小工業者向ニ付キマ
シテハ、卸ト小賣トノ觀念ヲ明確ニスルコ
トガ出來マスガ、大口需要家ニ對スル配給
ニ付テハ、單ニ小賣店ノミヲ配給機關トス
ルコトハ需要者ニ對スル供給ヲ確保スル
上ニ却テ不便デアリマス是等太日需要家
及ビ中小工業者雙方ニ對シテ圓滑ナル配給
ヲ期シ得ルヤウ、製鐵業者ト指定問屋及ビ
特約店ノ各締制機關ニ於テ具體案ヲ〓究シ
ツツアリマスガ、尙ホ今囘設立セラルル鋼
材販賣會社ノ成立ト共ニ、指定問屋及ビ特
約店ノ配給取扱數量ラ決定致シマシテ、配
給ノ圓滑ヲ期スルコトトシ、目下商工省ニ
於キマシテ是等各方面ノ意見ヲ檢討シ、急
速ニ具體案ヲ立テ之ヲ實施スル方針デアリ
マス尙ホ指定商ハ從來軍需、官廳需要、
特定大口需要、輸出等ニ付キマシテ取扱ヲ
爲シツツアリマスガ、一般民需向ニ對シマ
シテハ直接取扱ヲ致シマセヌ、製鐵業者ノ
組織スル鋼材共販組合ノ事務ヲ代行スル所
ノ機關デアリマシタガ、今囘共販組合ヲ一
層强化スル目的ヲ以チマシテ、現ニ設立
中ノ鋼材販賣會社ニ吸收セラレルコトニナ
リマスノデ、現在ノ指定商制度ハ會社設立
ト共ニ之ヲ廢止スル方針デアリマス
第二ノ質問ニ對シマシテハ、從來ノ販賣
機構ニ於テハ鋼材ノ共販組合ハアリマスガ、
製鐵業者ト販賣業者トノ契約及ビ取引ハ個
個ニ行ハレテ居リマシタノデ、全般的ニ締
制アル配給機構ヲ整備スルコトノ出來ナイ
憾ミガアリマシタ、仍テ今囘設立スル販賣
會社ニアリマシテハ製鐵業者ノ製品ヲ一
應會社ニ於テ買取リマシテ、更ニ之ヲ會社
ヨリ指定問屋ニ配給シテ、指定問屋ヨリ特
約小賣店ニ又配給セシメマス、而モ商工省
ニ於キマシテハ製鐵業者ノ製品ノ監督、會
社ヘノ販賣ノ監督、會社ヨリ指定問屋へ販
賣シタルモノノ監督、指定問屋ヨリ特約小
賣店ヘノ配給數量ノ監督ヲ嚴ニ致シマシ
テ、全般的ニ鋼材ノ品種別數量、仕入狀況、
在庫狀湿等ヲ知悉シ、配給ノ圓滑ヲ期スル
ト共ニ、一面ニハ指定問屋及ビ特約店ニ付
テソレ〓〓商業組合ヲ結成セシメマシタノ
ハ配給統制實施上配給就制機關トシテ
其ノ機能ヲ發揮セシムル趣旨ニ基クモノデ
アリマシタガ故ニ、今囘會社成立ト共ニ一
層此ノ機構ヲ利用シ、指定問屋各個ノ間ニ
於テモ、亦指定問屋ト特約小賣店トノ間ニ
於テモ、相互ノ仕入狀況及ビ在庫狀況ヲ明
瞭ナラシメ、以テ實需家ニ迅速ニ配給セシ
ムルコトト致シマス
第三ノ御質問ニ對シマシテハ目下設立
準備中ニ在ル日本鋼材販賣株式會社、是ハ
假ノ名前デアリマシテドウナルカ分リマ
セヌガ、此ノ會社ノ設立ノ趣旨ハ、現在製
鐵業者ノ組合契約ニ基ク鋼材共同販賣組合
ノ販賣統制ヲ强化シ、其ノ配給ノ適正ヲ圖
ルニ在ルヲ以テ、國策的見地ニ立脚スル一種
ノ國策會社ノヤウナモノデアリマス、是一
法規的ニハ何等ノ準據スル法令ハアリマセ
ヌガ國策的會社ト云フ使命ニ鑑ミマシ
テ、其ノ運營ニ當リマシテハ配給機構ノ整
備ヲ圖リ、是ガ適正ナル監督ニ依リ、需要
家ノ事業ノ種類及ビ事業ノ規模ノ大小ニ拘
ラズ、急速圓滑ニ
〔議長退席、副議長著席〕
鋼材ヲ配給セシムルト共ニ、指定問屋及ビ
特約小賣店ノ摩擦相剋ヲ除去セシムルヤウ
指導致シタイト存ジマス、政府ハ又常時右
會社ノ運營ニ關シマシテ監督ヲ嚴ニシ、國
策的會社タルノ使命ヲ全ウセシムル方針デ
アリマス、以上ヲ以チマシテ中村君ニ對ス
ル御答辯ト致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=74
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075・金光庸夫
○副議長(金光廣夫君) 質問四、「ビルマ上
ニ帝國總領事館設置ニ關スル質問ヲ許可致
シマス-提出者高岡大輔君
四ビルマニ帝國總領事館設置ニ關ス
ル質問(高岡大輔君提出)
ビルマニ帝國總領事館設置ニ關スル質
問主意書
右或規ニ據リ提出候也
昭和十四年三月十一日
提出者高岡大輔
ビルマニ帝國總領事館設置ニ關スル
質問主意書
近時「ゼルマ」ハ我カ國ニトリ益〓、重太關
心ヲ拂ハサルヲ得サル存在トナレリ
英國カ三囘ノ戰役ニ依リ遂ニ「ビルマ」王
朝ヲ倒シ印度ノ一州トシテ統治スルニ至
リタルハ今ヨリ五十四年前ナリ然ルニ「ヂヨ
ン·サイモン」委員會ノ勸告ニ始マリ三囘
ノ英印和平圓卓會議ヲ重ネタル結果印度
ニ於ケル「ダイヤキー」(一一重政治)ノ撤廢
ト印度聯邦制ノ實施ト共ニ「ゼルマ」分離
カ重要點トナリ遂ニ昭和十二年四月一日
ヲ以テ「ビルマ」ハ印度ヨリ分離セラルル
ニ至レリ
今日「ビルマ」ニ於テハ「ゼルマ」雲南ヲ連
絡スル所謂援蔣「ルート」ノ建設或ハ「ラ
ングーン」カ第二ク上海タラムトシ或ハ
「ミッチナ」ヨリ下關ニ達スル鐵道數設ヲ
目的トシタル「アングロ·チャイニーズ·
シンジケート」ノ設立等更ニ「ビルマ」佛
〓徒ト印度囘〓徒トノ爭ヨリ民族運動、
獨立運動ニ展開スルヤモ計リ知レサル重
要問題カ引キ續キ起リツツアル狀態ナリ
然ルニ我カ帝國ハ此ノ重大事ニ際會セル
ニ拘ラス僅ニ「ラングーン」ニ一領事館ア
ルノミト云フカ如キハ斷シテ其ノ重責ニ
堪フルモノニアラサルハ勿論政府ノ認識
ニ缺クルモノアルヲ疑ハサルヘカラス仍
テ政府ハ速ニ「ラングーン」ニ總領事館ヲ
設置シ且ツ「マンダレー」ニ領事館ヲ設置
スルハ絕對必要ナリト認ム帝國政府ニ果
シテ此ノ事實ヲ認識シ外交機關ノ充實ヲ
圖ル意思アリヤ
右及質間候也
〔高岡大輔君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=75
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076・高岡大輔
○高岡大輔君 私ハ昨年ノ秋カラ今年ノ正
月ニ掛ケマシテ三箇月半ニ亙ツテ「シヤムㄴ
ㄱビルマ」印度ヲ旅行シテ參リマシタ、此
ノ旅行中ニ種々痛感スルモノガアリマシ
タガ、其ノ中ノ一ツトシマシテ、現在ノ
〓ゼルマ」ハ日支事變下ノ我國ニ取リマシ
テ、愈、重大ナル存在デアルコトヲ知ツタ
ノデアリマス、「ビルマ」ハ御承知ノヤウ
ニ千八百二十四年カラ英國ノ侵略ヲ受ケマ
シテ、タビ重ナルコト三囘、遂ニ英國ノ爲
ニ「ビルマ」王朝ハ倒レテ、印度ノ一州トシ
テ英國人ノ統治下ニ屬スルヤウニナリマシ
タコトハ千八百八十五年卽チ今ヨリ五十
四年前デアリマス、然ルニ其ノ後佛〓徒ガ
政治的ノ運動ヲ展開致シマシテ、千九百二
十七年卽チ昭和二年ノ十一月八日ニ5 日
ン·サイモン」卿ガ委員長トナリマシタ、印
度統治實施成績調査委員會ガ任命セラレマ
シテ、此ノ委員會ハ二箇年半ニ亙ル調査ノ
結果、「ビルマ」ハ其ノ人情、風俗、宗〓、
有ユル角度カラ見テ印度トハ全然異ルトノ
理由ヲ以チマシテ、是ガ分離ヲ勸告致シタ
ノデアリマス、此ノ「リポート」ノ勸告ノ
中ニハ大キナモノガ三ツアリマス、卽チ印
度カラノ「ビルマ」ノ分離、「ダイヤキー」
二重政治ノ撤廢、今將ニ實施セラレヤウト
スル印度聯邦制、此ノ三ツデアリマス、ソ
シテ其ノ後引續キ英印和平圓卓會議ガ三囘
開カレマシテ幾多ノ紆餘曲折ヲ經マシ
タガ、遂ニ「ビルマ」ノ分離ガ可決トナリマ
シテ、千九百三十七年卽チ昭和十二年四月
一日ヲ以テ實現シタノデアリマス、而モ此
ノ前年十一月ニ總選擧ガ行ハレマシテ、「ビ
ルマ」人ニ依ル第一次「ビルマ」政府ガ樹立
サレタノデアリマス、此ノ時ニ當リマシテ
我國ハ如何ナル外交機關ヲ此處ニ置イタカ、
斯ウ申シマスルト、御承知ノヤウニ領事館
ガ一ツアリマシテ、領事ノ下ニ二人ノ書記
生ガ居ルニ過ギナイノデアリマス、「ビルマ」
ノ隣ノ國、卽チ「シャム」ハ御承知ノヤウニ
獨立國デハアリマスケレドモ、其處ニハ我ガ
公使館ガアリマス、而モ陸海兩軍ノ駐在武
官ガ此處ニ駐在シテ居ラレマス、然ルニ此
ノ兩者ヲ比ベマスト、其ノ面積ハ「ビルマ」
ニアリマジテハ二十三万平方哩、我ガ內地
樺太、臺灣ノ和ヨリ更ニ大キイノデアリマ
シテ、「シャム」ノソレニ比べレバ一割以上
ノ大ヲ持ツテ居ルノデアリマス、而モ人口
ニ於キマシテハ「シャム」ノ一倍半デアリマス、
然ルニモ拘ラズ只今申シマシタヤウニTビ
たいとニハ僅ニ領事館ガアルノミデアリマ
ス、私ハ今日アリマス領事館ヲ總領事館ニ
引上ゲ、更ニ「マンダレー」ニ領事館ヲ置ク
ト云フコトハ一ツニハ「ビルマ」ヲ尊重ス
ル所以ダト考ヘルノデアリマス、然ルニ此
ノ「ビルマ」ガ益〓重大意義ヲ存シ、我國ニ取
ツテ重大關心ヲ拂ハザルヲ得ザル存在トナ
リマシタコトハ皆樣御承知ノヤウニ、此
ノ「ビルマ」カラ雲南ニ通ズル蔣介石政權ノ
武器ヲ輸送スル所ノ道路ガ建設サレタコト
デアリマス、此ノ道路ニ付キマシテ簡單ニ
是ガ歷史ヲ申上ゲマスト、曾テ「マルコポー
ロㄴガ黃金國日本ヲ目指シテ、東洋ニ憧
憬レテ冒險旅行ヲ致シマシタガ、其ノ歸途
北支カラ南下シ、揚子江ヲ下ツテ雲南府、
卽チ昆明ニ入リ、昆明カラ「ビルマ」ノ「バー
モ」ニ出デ、「ビルマ」カラ印度、波斯、土
耳古ヲ經マシテ歸ツテ行ツタノデアリマズ、
此ノ昆明ト「ビルマ」ノ「バーモ」ノ間百十哩、
之ヲ俗ニ「マルコポトロ·ルート」ト斯ウ申
シテ居リマス、所ガ其ノ後西曆千九百一一年
卽チ明治三十五年ニ至リマシテ、英國ト支
那トノ間ニ「マナイ」條約ト云フモノガ縮結
サレ、此ノ條約ニ依リマシテ兩國ガ各〓其ノ
國境マデ完全ナル道路ヲ造ルコトヲ約束シ
タノデアリマス支那側ハ卽チ其ノ後中華
民國トナリマシタガ此ノ「マルコポーロ」
ノ通リマシタ道路ヲ逐次改修シナガラ下
關マデ二百七十五理ノ所ヲ開通シタノデア
リマス、而モ此ノ道路ハ三四年ニ此處マデ
通リマシテ、「バス」ガ此ノ間ヲ二晝夜デ通
レルヤウニナツテ居リマス、ソレカラ以西
ノ「バーモ」マデハ某ノ儘デアリマシタガ、
一方「ビルマ」側、卽チ英國側ハドウデアル
カト申シマスト鐵道ノ一番北ノ終點「ミツ
チナ」カラ國境守備軍駐屯地ノ「フォート。
ハリスン」ヲ經マシテ、ソレカラ「マルコ
ポーロ」ノ通リマシタ舊道路ニ騰越ト云フ處
デ合シ、ソレカラ永昌-別名保山ト申シ
マスガ保山ヲ通ツテ下關マデノ鐵道敷設
計畫ヲ立テ、是ガ實測ヲ終リマシテ御承
知ノ如ク將ニ著手ショウトスル時ニ、歐洲
大戰ガ勃發シテ、其ノ儘ニナツテ今日ニ至
ツテ居ルノデアリマス
斯クシテ日支事變ガ勃發シテ參リマシ
タ、ソコデ日支事變ガ始マリマスヤ、支那
側ハ昨年一月ニ起工致シマシテ、昨年ノ八
月ニ之ヲ完成致シマシタ、卽チ此ノ道路ハ
下關カラ永昌マデ、ズツト舊道路ヲ改修シ
テ參リマシタガ、何ヲ思ツタモノカ、永昌
カラ舊道路ヲ經ズシテ、直チニ西南方ニ岐
レマシテ「サルウィン」河ヲ渡ツテ龍陵ヲ經、
更ニ「シュウェリー」河ニ竝行シテ芒市及ビ
「チェファン」ヲ經マシテ-支那側ハ畹町河
ト言ツテ居リマスガ、「ビルマ」側デハ「キー
ンヤンㄴト言ツテ居リマス、此ノ「キーン
ヤン」ヲ經マシテ「ムレセー」ニ達シテ居ルノ
デアリマス、而モ此ノ道路ハドンナ道路カト申
シマスト、砂又ハ小石デ鋪裝シマシテ道幅ハ十
米ヲ標準トシテ居リマスガ、何シロ三千尺、
四千尺、五千尺y一万尺ト云フ山又山ノ高地
ノ山腹ヲ縫ツテ行キマス道路ダケニ、中々難
工事ガアリマシテ、五米前後ノ所ガ相當多イ
ノデアリマス、而モ此ノ道路ニ架ケラレマシ
タ橋梁ハ、永久的ノモノトシマシテハ五十
米三十米、十八米ノモノガ各〓ゞ一個、臨時
的ブモノトシマシテ八十六米ト三十米ノ
モノガ各〓一個アリマス、此ノ臨時的ノモ
ノト言ヒマシテモ、或人ノ話ニ依リマスレ
バ、十瓲ノ重サニ堪へ得ル、斯ウ申シテ居
リマス、又向フヲ視察シマシタ某日本人ノ
話ニ依リマスレバ、此處デ貨物自動車ハ全
部荷物ヲ下シテ橋ヲ空車デ渡シテ、向ブ
側デ荷ヲ積直シテ持ツテ行ツタ、斯ウ云フ
コトヲ言ツテ居ルノデアリマス、何レニ致
シマシテモ斯ウシタ相當長イ橋梁ガ出來、
此ノ外ニ小サナ橋ガ四百二十八個出來テ居
リマス、更ニ隧道ハ成程小サイモノモアリ
マセウケレドモ、大小合セマシテ五百二十
二個出來テ居リマス、是ガ工事費トシマシ
テハ三百二十万元蔣介石政權カラ補助金ガ
出テ居リマス到底是ダケノ金デ此ノ難工
事ガ出來ヤウ筈ガアリマセヌ、ケレドモソ
コハ支那式ト申シマスカ、卽チ此ノ邊ニ住
ンデ居ル住民ヲ無報酬デ强制勞働セシメテ
居リマス日本人ノ調ベマシタ所ニ依リマ
スレバ、是ガ一日十二万四千人、他ニ石屋
サント言ヒマスカ、サウシタ職工ガ一万六
千人、合セテ十四万人ト謂ハレテ居リマス、
所ガ英國人ノ「モーリス·コリス」ト云フ人
ノ旅行記ヲ見マスト、一日十七万人ヲ使用
シテ居ツタ、而モソレ等ノ家族ハ辨當ヲ持
ツテ、主人ト言ヒマスカ、亭主ト言ヒマスカ、
父親ト言ヒマスガ、此ノ强制勞働ヲ强ヒラ
レテ居ル者ニ、辨當ヲ運ンデ居ツタト云フ
コトヲ申シテ居ルノデアリマス、此ノヤウ
ニ今ハ昆明カラ「ビルマ」ノ國境マデ道路ガ
出來タノデアリマス、「ビルマ」側ハドウナ
ツテ居ルカト申シマスト、此ノ「ムーセー」
カラズツト南ニ下リ「クッカイ」ヲ經マシテ
「ラシオ」ニマデ通ジテ居リマス、西ノ方ハ
ト申シマスレバ、是カラ「ナムカン」ヲ經マ
シテ、「バーモ」ニ通ジテ居ル、此ノ全長約
二百哩程ノ道路ハ、完全ニ出來テ居リマス、
而モ之ニ付テ說明ヲ申上ゲタイコトハ先
程申上ゲマシタ「クッカイ」地方ハ、三四千
乃至五千近クノ高地デアリマシテ、而モ此
ノ邊ノ山ニハ樹木ガ少イノデ、展望ガ利ク
ト云フノデ、此ノ邊ガ重要軍事地帶トナリ、
噂ニ依リマスルト、此ノ道ノ兩側ニハ、トー
チカ」ト言ヒマス九、砲臺ト言ヒマスカ、
サウシタ軍事施設ガ十分構築サレテ居ルト
云フ噂デアリマス、更ニ「ラシオ」ノ停車場
ハドンナ工合ニテツテ居ルカト言ヒマスト、
是カラ二理程引込線ガ出來テ居ル、此ノ引
込線ノ兩側ハ全部倉庫デ、而モ此ノ倉庫ニハ
軍需品ガ山ト積マレテ居ルト云フ噂デアリ
きくち、而モ只今申上ゲマシタヤウニ、「ラシ
オ」カラハ鐵道デ「ラングン」ニ通ジヽ적バ
こい〓イラワヂ」河ニ依リマシテ「ラング
ン」ニ通ジテ居リマス、又一方先程申上ゲ
マシタ錢道敷設計畫ガ著々進捗致シマシテ、
「アングロ·チャイニース·シンヂゲート」ガ
設立サレ、四千万磅ノ豫算ガ計上サレテ、
工事ニ著手サレヨウトシテ居リマス、卽チ
昨年八月四日ノ倫敦「タイムズ」ニ出マシタ
「アルヂャノン·モーアリング」ト云フ人ノ
記事ヲ見マスト、英國ノ極東鐵道政策ガ、
急遽復活スルヤニ思ハルルノデアリマス
私ハ是ニ於テ不可解ナコトハナゼ英國
ガ此ノ國境ニ向ツテ軍備ヲ充實シタカ、モ
ウ一點ハ何ヲ好ンデ此ノ難工事ノ新道路ヲ
開鑿ンタカト云フ點デアリマス、之ヲ說明
致シマスノニ、昭和十年ニ國境ニアリマス
「ワステート」ニ、民族ノ紛爭事件ガ起キマ
シタコトハ御承知ノ通リデアリマス、此
ノ紛爭事件ニ依リマシテ、「ビルマ」ト支
那ノ兩側カラ軍隊ガ出マシタガ、此ノ兩軍
〓ノ間ニ偶〓衝突ガ起キ、其ノ裁定方ヲ國際聯
盟ニ仰イダノデアリマス、其ノ第三國委員
トシマシテ出マシタ瑞西ノ「イセリシ」大佐
ヲ首メトシテ、兩國ノ武官ガ現地調査ヲ致
シマシテ是ガ昭和十二年ノ五月ニ終了致
シタノデアリマス、此ノ調査ノ結果ハドノ
ヤウナモノカ分リマセヌケレドモ、支那新
聞ニ依リマスト、此ノ紛爭地帶ノ五分ノ三
ヲ支那ガ取レバ、殘リ五分ノ二ハ英國側ニ
讓ツテモ宜シイト云フ說明ヲ見タノデアリ
マス私ハ此ノ調査ノ內容ハ分リマセヌケ
レドモ、此ノ作成調書ト云フモノハ兩國ニ
送付サレテ、サウシテ兩國ノ承認ヲ經タ上
デ聯盟理事會ニ提出サレ、ソコデ承認ヲ得
テ初メテ決定ヲスルノデアリマス、然ルニ
該調書ハ雙方政府ニ於キマシテ、更ニ如何
樣ニモ意見ヲ加へ得ル狀態ニアリマシタノ
デ、果シテ噂ノ如キ英支新協定ガ結バレタ
カドウカト云フコトガ、玆ニ疑問トナツテ來
ルノデアリマス、噂ノ英支新協定ト云フモ
ノハ何カト言ヒマスト、私ガ今想像シテ居
リマスル土地、其ノ地帶ノ鑛物資源ニ付テ
御說明ヲ申上ゲマス、卽チ此ノ邊ハ世ニモ
稀ナル砂金地帶デアリマス是モ先程ノ英
國人ノ旅行記ヲ見マスルト、此ノ邊ニハ非
常ニ砂金ガ多イ爲ニ、寧ロ銀ガ金ノ二倍半
ノ價値ヲ持ツテ居ル、ナゼカト言ヒマスレ
バ、金ハ河へ行ケバ幾ラデモアルガ、銀ノ
方ハ之ヲ製鍊シナケレバナラヌト云フ建前
デアリマス、此處ヲ旅行シマシタ人ノ話ヲ
聽キマスト、法螺ト言ヒマスカ、噓ノヤウ
ナ氣ガ致シマスガ、河ヲ步クト靴ノ底ニ砂
金ガ附イタト云フ話デアリマス、此ノ外銀
ハ御承知ノ通リ世界的ニ豐富ニ土地デアリ、
鉛ガアリ、「マグネシウム」ガアルト云フ、
有ユル鑛物資源ガ此處ニ豐富ナノデアリマ
ス、此ノ資源ノ非常ニ豐富ナ處へ道路ヲ附
ケタト云フコトガ、若シモ事實デアルトシ
マスルナラバ、此ノ新道路ハ唯單ニ瀬死ノ
狀態ニアル蔣介石ニ武器ヲ賣ラントスル英
國武器商人ガ、戰時成金ヲ夢ミルノデハナ
クシテ、表支那カラ、此ノ日支事變ニ依ツ
テ、英國ガ巳ムヲ得ズ退却セザルヲ得ナイ
ト云フ見透シカラ、卽チ裏支那ニ將來ノ期
待ヲ掛ケテ、裏支那開發、裏支那ノ資源獲
得ノ爲ニ、此ノ道路ヲ造ツテ行ツタンデハ
ナイカ、斯ク致シマスレバ噂ニアル「ラン
グン」ガ、上海、香港ニ代ル第二ノ上海デ
アルトノ說ガ肯カレルノデアリマス、斯ク
致シマシテ將來ノ「ビルマ」ト云フモノハ
我國ニ取リマシテ最モ重大ナル存在デアル
コトヲ知ルニ至ツタノデアリマス
更ニ「ビルマ」ノ國內情勢ヲ申シマスレバ、
御承知ノヤウニ昨年七月二十六日、偶と起
キマシタ佛〓徒ト囘〓徒トノ間ノ爭、是等
ニ付キマシテハ、皆樣カラ戴キマシタ時間
ガアリマセヌカラ略シマスケレドモ、第
次、第二次ノ此ノ「ビルマ」ノ暴動ハ、遂二
佛〓徒對囘〓徒ノ喧嘩カラ、民族運動トナ
ツテ參リマシタ、更ニ是ガ反英運動トナツテ
來タ、御承知ノヤウニ「ビルマ」トカ印度ノ
斯ウシク東洋ニ於ケル英國ノ植民地ハ之ヲ
失フコトニ依ツテ、「サシモノ世界的力ヲ持ツ
タ世界ノ一等國英國ハ、直チニ第三等國乃至
ハ群小弱小國ニ蹴落シ得ルト云フ見透シカ
ラシテ、印度デハ獨立ノ最後通牒ヲ發シヨウト
シテ居ル、又「ビルマ」ニ於テモ同ジヤウナ
見透シカラ、獨立運動ニマデ展開シテ居ル
ノデアリマス、私ハ「ビルマ」ノ將來ト云フモ
ノハ、其ノ獨立運動ガ如何ニ展開スルカハ
別ト致シマシテモ多事多端ナルコトヲ思
ハザルヲ得ナイノデアリマス
更ニ「ビルマ」ト日本トノ貿易上カラ考ヘ
マスト、是ハ又重大關係ガアリマス、此ノ
貿易上ノ問題ハ皆樣モ御承知ノコトト思ヒ
マスカラ、私ハ省キマスケレドモ、「ビル
マ」人ガ、卽チ「ビルマ」カラ印度人ノ去リマ
シタ「ビルマ」人ハ、今度ハ直接ニ日本ト貿
易ヲ開始シタイトノ希望ヲ澤山持ツテ居ル
ノデアリマス
此ノヤウニシテ「ビルマ」ハ重大ナル存在
トナツタニモ拘ラズ、先程申上ゲマシタヤ
ウニ我ガ外交機關ハト言ヘバ、領事館ガ一
ツアルノミデアリマス私ハ斷ジテ此ノ新
情勢ニ對應スルコトハ出來ナイト確信致ス
ノデアリマス、私ハ敢テ英國ノ「チェンバレ
ン」、或ハ「ハリフワックス」或ハ「サイモン」其
ノ他ノ內閣ノ人達ヲ、彼此レ言ハウトハ思
ヒマセヌケレドモ此ノ重大危局ニ立チマ
シタ「ビルマ」ヲ考ヘテ行キマス時ニ、我國
ノ外交機關ハ玆ニ擴充スル必要ガ、當然生
ジタモノト思フノデアリマス、一體日本デ
ハ東亞ノ新秩序建設ト言ヒマスケレドモ
又東亞ノ盟主ト言ヒマスケレドモ、其ノ外
交機關ヲ見マシタ場合ニ、果シテソレニ對
應シ得ルカ否カハ甚ダ疑問ナノデアリマ
ス、之ヲ以チマシテ私ノ說明ヲ終リマスガ、
帝國政府トシテハ果シテ此ノ新情勢ヲ認識
シ、將來東亞ニ於ケル外交機關ヲ充實シヨ
ウトノ考ヲ持チ、少クトモ今日「ビルマ」ニ
アリマスル外交機關、卽チ領事館ヲ總領事
館ニ引上ゲ、更ニ「マンダレー」ニ領事館ヲ
置キ、十分ナル外交機關ヲ置キ、更ニ願ク
バ日本ノ軍部ノ駐在武官モ此處ニ派遣シ
テ、十分ナル態度ヲ以テ兩國ノ親善ヲ圖ラ
レル意思アリヤナシヤ、此ノ一點ヲ御伺シ
タイノデアリマス(拍手)
〔政府委員〓水留三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=76
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077・清水留三郎
○政府委員(〓水留三郞君) 只今高岡君ノ
御質問ハ一二/그ビルマ」ノ「ラングン」ノ
帝國領事館ヲ、總領事館ニ昇格セヨト云フ
點デゴザイマシタ、イマ一ツハ「マンダ
レー」ニ新シク領事館ヲ造レト云フ御要求
デゴザイマシタ、先ヅ第一ノ問題カラ御答
致シマス、昭和十二年四月一日ニ「ビルマ」
ガ印度カラ分離セラレマシテカラ、其ノ重
要性ト云フモノハ非常ニ加ハリマシテ、同
時ニ「ラングン」ノ帝國領事館ノ事務モ、非
常ニ煩雜ニナツタノデアリマス、隨ヒマシ
テ外務當局ト致シマシテハ「ラングン」ノ帝
國領事館ヲ總領事館ニ昇格スル爲ニ書策致
シマシテ現在考慮シテ居ルノデアリマス、
取敢ズ館員ヲ一名增シマシタ、是ハ豫算ノ
關係カラデアリマス、支那事變ノ進展以來、
只今高岡君ノ申サレタ如ク、「ビルマ」ノ重要
性ト云フモノハ層一層有ユル方面ニ於テ加
ツテ參ツタノデアリマス、故ニ豫算ノ許ス
範圍ニ於テ、一日モ早ク其ノ實現ヲ期シタ
イト外務當局ハ思ツテ居ルノデアリマス(拍
手)更ニ「マンダレー」ニ帝國領事館ヲ新設
スベシトノ御意見デゴザイマスガ、此ノ點
ハマダ通商上其ノ他ニ於テ、ソレ程重要ナ
ル地點トハ認メテ居ラナイノデアリマス
ノミナラズ各國ニ於テモ「マンダレー」ニ一
ツモ領事館ヲ置イテナイノデアリマス故
ニ今日ノ所俄ニ「マンダレー」ニ帝國領事館
ヲ置クト云フ考ハ、現在持ツテ居ラナイノ
デアリマス、此ノ點ヲ御答辯致シテ置キマ
ス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=77
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078・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 質問五、人權尊重
法權擁護ニ關スル質問ヲ許可致シマス-提
出者福田關次郞君
五人權尊重法權擁護ニ關スル質問
(福田關次郞君外一名提出)
人權尊重法權擁護ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和十四年三月二十日
提出者福田關次郞
外一名
人權尊重法權擁護ニ關スル質問主意
書
今ヤ我カ國ハ新東亞建設ノ途上ニ在リ國
家ノ總力ヲ擧ケテ之カ目的達成ニ邁進シ
國民ノ多クハ戰時下有ユル困苦ト鬪ヒ盡
忠奉公ノ誠ヲ致シツツアルノ秋ニ當リ官
吏モ亦自肅自戒以テ範ヲ國民ニ示シテ之
カ師表タルノ要アリト信ス
然ルニ近時官權ヲ濫用シテ人權ヲ蹂躪シ
時ニ憲法ヲモ無視スルノ行動アルハ法治
國家ノ痛恨事ト謂ハサルヘカラス
政府ハ刻下ノ重大時局ニ鑑ミ速ニ是等ノ
弊風ヲ芟除シ以テ眞ニ吏道ヲ刷新シ官紀
ヲ肅正シ且ツ憲法ヲ擁護シテ國民ノ不安
ヲ一掃シ以テ國難打開ニ努ムルハ刻下ノ
急務ナリト信ス政府ノ所見如何
右及質問候也
〔福田關次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=78
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079・福田關次郎
○福田關次郞君 只今日程ニ上リマシタ本
員提出ノ人權尊重法權擁護ニ關スル質問ヲ
試ミタイト存ジマス、御承知ノ通リ今ヤ我
ガ日本ハ大東亞建設ノ新段階ニアルノデゴ
ザイマシテ、此ノ大東亞ヲ建設致シマスレ
バ、日本ハ亞細亞ノ盟主トモナルベキ責任
ガアリマス、此ノ重大ナル責任ヲ果シマス
ルノニハ、卽チ他國民デアリマスル數億ノ
民衆ヲ我ガ同胞ト看做シ、一視同仁ノ大政
策ヲ確立シナケレバナラヌコトハ言ヲ俟チ
マセヌ、此ノ時ニ當リマシテ此ノ帝國議會
ニ於テ人權尊重、憲法及ビ法律ノ擁護ノ必
要ヲ政府ニ質シマスルト云フコトハ、帝國
ノ大ナル恥辱ト謂ハナケレバナリマセヌ
併シナガラ外ニ戰爭ヲ爲シテ、今ヤ其ノ戰
爭ノ美果ヲ收ムルノ大ナル計畫ヲスルト共
ニ內ニ於キマスル內政ノ紊亂ヲ閑却致シ
マシタ時ニハ、卽チ此ノ重大ナル東亞新建
設ノ大業ノ完成ヲ望ムコトハ出來得ナイコ
トヲ痛感シテ、已ムナク此ノ質問ヲ試ミル
ノデアリマスルカラ、政府ニ於カレマシテ
ハ此ノ邊ノ意思ノ存スル所ヲ能ク御諒承相
成ツテ、責任アル所ノ答辯ト、我ガ日本國
民ノ多クガ、之ニ依リマシテ安心ヲ爲シ得
ルダケノ基礎ヲ確立セラレンコトヲ望ンデ
置キタイト思フノデアリマス、我國ノ現在
ノ情勢ヲ見マスレバ、有ユル機構ニ於キマ
シテ改善スベキモノハ少クゴザイマセヌ、
卽チ庶政ヲ一新シテ而シテ之ヲ肅正シ、從
來ノ病根ヲ一掃致シマシテ、以テ我ガ日本
帝國ノ百年ノ經綸ヲ確立スルノ時期デハナ
イカト信ズルノデアリマス、是ニ於キマシ
テ私共ハソレヲ爲シマスルコトノ非常ニ緊
要デアルト信ジ、敢テ質問ヲ爲シマシテ、
政府ノ所信ヲ質サント致ス者デアリマス
現時官界ヲ通觀致シマスレバ、全ク官僚
獨善、官僚「ファッショ」ノ新傾向ガ釀成サレ
テ、容易ニ取去ルコトハ出來ナイノデアリ
マス、卽チ其ノ結果ト致シマシテ、此ノ數年
間ニ現ハレマシタル所ノコトヲ要約致シマ
スレバ、其ノ爲ニ立憲ノ大本タル憲法ヲ無
視シタル事實、法律ヲ蔑視シタル所ノ事實、
以テ官權ヲ濫用シ、人權ヲ蹂躪シ、中ニハ
纎弱キ婦女子ニマデ暴行凌辱ヲ敢テ爲シ、
斯クテ吾々國民ノ聞クダニ戰慄スベキモノ
ガ少クナイコトハ國家ノ爲ニ痛恨ニ堪ヘ
ザル所デゴザイマス、斯ル時代逆行ノ暴擧
ヲ根絕シテ、仍テ以テ更生シタル現在及ビ
將來ノ機構ヲ樹立スルニアラザレバ、國家
國民ノ不安ハ寸刻モ去ルコトハ出來ナイノ
デゴザイマスガ、政府ハ是等ノ風潮ニ對シ
テ如何ナル御考ヲ御持ニナツテ居ルノデゴ
ザイマセウカ、之ヲ要約致シマスレバ、現
在日本ノ官吏中ニハ、無根ノ事實ヲ揑造シ、
犯罪ヲ僞造シ、眞ニ罰スベキヲ罰セナイノ
デアリマス、而シテ罰スベカラザル者ヲ罰
シテ居ルト云フ事實ハ枚擧ニ遑ガナイノデ
アル、斯ク致ンマシテ無辜ノ良民ヲ不法監
禁シ陛下ノ赤子ヲ法律ニ依ラズシテ虐殺
シ、婦女子ニ暴行凌辱ヲ加フル事實ハ、洵
ニ私共事實トシテ之ヲ承服シテ居リマスノ
餘リニ多キニ苦シム者デアリマス是等憲
法及ビ法律ヲ無視致シマシタル官吏ノ行爲
ニ關シ、政府ハ司法行政ノ上長官トシテ
又司法行政ノ大權擁護ノ責任アル國務大臣
トシテ如何ナル責任ヲ痛感シ、且ツ之ニ對
スル處置ヲ執ラント致サレマスルガ、政府
ノ責任アル御決意ト、明快ナル答辯ヲ煩ハ
シタイノデゴザイマス、我國ハ上ニ宏大無
邊ノ御仁慈ヲ垂レサセ給フ皇室ヲ戴キ、夙
ニ帝國獨特ノ立憲ノ制ヲ樹テサセラレ、以
テ國家及ビ官民ノ遵奉スベキ大本ヲ示シ給
ウタノデアリマス、而モ此ノ有難キ憲法政
治ハ國家ノ存續スル限リ萬古不易、日月星
辰ヲ共ニスベキ國家永遠ノ生命トモ言フベ
キモノデアリマシテ、日本臣民ノ據リテ遵
奉スベキ大本ト謂ハナケレバナリマセヌ
況ヤ天皇ノ御名ノ下ニ法律ヲ適用スル司
法官ハ固ヨリ、行政百官ニ至リマスマデ、此
ノ國家ノ基本タルベキ法律及ビ憲法ヲ擁護
シ奉リ、以テ官吏ノ當然ノ道ヲ守リマスル
ト云フコトハ、當然ナル要諦ト謂ハナケレ
バナラヌノデゴザイマス、然ルニ近來民意
ニ基礎ヲ置カザル變態內閣ノ出現相次ギ、
官紀綱紀ハ益〓紊亂シ、且ツ上長ノ威令行ハ
レテ居ラヌデハアリマセヌカ、斯ク致シマ
シテ司法行政ノ公正モ亦危ウカラント致ス
ルコトハ國家ノ一大憂患ト申サナケレバ
ナリマセヌ、斯ル風潮ノ現狀ニ對シ、政府
ハ如何ナル信念ヲ以テ處置ヲ執ラントセラ
レルカ御明答ヲ煩ハシタイノデアリマス、
私共ハ議會ニ於キマシテハ國民ノ付託ニ基
キ、區々ノ微衷恭シク天昭ニ應ヘ奉ランコ
トヲ深ク期シテ居ルノデゴザイマス、然ル
ニ此ノ非常時國難ニ際會シテ、物心ヲ合シ
テ聖戰ノ目的達成ニ猛進シナケレバナラヌ
秋ニ當リ、官吏中上陛下ノ御聖旨ニ相反
シ、立憲ノ大義ヲ沒却シテ、多數國民ノ生
存權ヲ脅威セントスルガ如キハ斷ジテ許
スコト能ハザルモノト言ハナケレバナリマ
セヌ、今ニシテ斯ル蠻逆ヲ矯正スルニアラ
ザレバ、密ニ惧レマス、國體ノ尊嚴ト立憲
ノ大本ハ內ニ紊亂シ、法治國家ノ構成ハ爲
ニ崩レ、國民ハ其ノ適順スル所ヲ知ラズシ
テ遂ニハ國家ヲ恨ムノ結果ニ終ルコトナ
シト致シマセヌコトヲ、是ヨリ本員ハ只今
申上ゲマシタル抽象論ニ對シ、吏道ノ頽廢、
人權蹂〓、官權濫用、良民虐殺ノ暴行凌辱
事件ニ關シマシテ、其ノ事實ノ一端ヲ御參
考ニ申上ゲ、以テ政府ノ御反省ヲ促シ、之
ニ對スル所ノ御處置ニ付テ明快ナル御答辯
ヲ得タイト存ジマス
平沼內閣御成立ニ相成リマシテ日ガゴザ
イマセヌ、中ニハ司法大臣ノ如キハ長ク其
ノ職ニ居ラレマスカラ、自ラ是等ノ蠻逆ハ
御承知デアリマス、又他ノ閣僚モ之ヲ御承
知ノ方モゴザイマセウガ、平沼總理大臣ト
シテハ斯ウ云フ恐ルベキ事ガ今日ノ御代
ニ存スルト云フコトハ或ハ御存ジナイカ
モ分リマセヌ、今日ノ此ノ重大ナル質問ニ
當リ、國務大臣ガ出ヅルコトナクシテ、之
ヲ屬僚ノ方ニ委セントスル此ノ一事ヲ見テ
モ、如何ニ現內閣ガ官紀ノ肅正、吏道刷新
ニ不熱心デアルカヲ、立證シテ餘リアリト
言ハナケレバナリマセヌ(拍手)故ニ官報ヲ
通ジ此ノ言ヲ政務官其フ他ノ方々ニ於テ
之ヲ總理大臣、所管大臣ニ御傳ヘニ相成リ、
以テ來ルベキ帝國議會ノ再開サレマスルマ
デニ、政府ガ本員ノ申上ゲマス所ノ改革ノ
實ヲ御擧ゲニナルカドウカヲ見タイト思ヒ、
再ビ斯樣ナ事ヲ繰返スコトナカラシメンコ
トニ御努メアランコトヲ切望致シテ置キマ
ス
第一官紀綱紀紊亂ノ事實ト致シマシテハ、
時間ガゴザイマセヌカラ、私ノ手許ニアリ
マスル事實ノ一々ハ遺憾ナガラ申上ゲルコ
トハ出來マセヌガ、官吏ノ模範的行動ヲナ
サルノハ、堂識的カラ見マシテモ裁判所關
係、司法省官吏ガ一番嚴肅ニシテ、官吏ト
シテノ範ヲ天下ニ御示ニナルベキモノト思
ヒマスカラ、裁判所ノ內部ニ於ケル所ノ官
吏ノ行動、如何ナルコトヲシテ居ルカト云
フコトニ付テノ一ヅノ例ヲ申上ゲマスレバ
我ガ日本ニハ御承知ノ通リ豫算ヲ編成シテ、
或ル部面ハ一筒年ノ總收入トナリ、或ル部
面ハ一箇年ノ總支出トナルノデアリマスガ、
私共議會ニ於キマシテ、數年間我ガ日本ノ
豫算及ビ政府ノ執行スル所ノ、國民ノ膏血
ヲ如何ニ濫費シテ居ルカ、全ク豫算ハ支離
滅裂ダト申上ゲタノデアリマスガ、此ノ一
ツヲ申上ゲマスルト、第一ハ金澤地方裁判
所檢事局-檢事局ハ犯罪捜査ノ源デゴザ
イマス、其ノ源ニ於キマシテ、昭和四年カ
ラ十二年度ニ亙リマスル、有ユル困難ヲシ
テ國民ガ納メタ罰金、追徴金、是等ノモノ
ヲ數年間ニ亙ツテ數万圓ヲ橫領シテ居リマ
ス、是ガ我ガ日本ノ犯罪捜査ノ源デアル檢
察當局デゴザイマス、其ノ源ニ於テ斯樣ナ
事ガ數年間ニ亙ツテ行ハレテ居ルガ、國家
ノ收入ハドウナツテ居ルカ、次ニハ岐阜地
方裁判所檢事局ニ於テモ、五箇年間ニ亙ツ
テ數千圓ノ罰金、追徴金ヲ費消シテ居リマ
ス、第三ハ東京控訴院檢事局ニ於テモ、六
箇年間ニ互リ數万圓ヲ費消橫領致シテ居リ
マスル事實、第四ハ盛岡區裁判所ニ於キマ
シテモ、同ジク罰金追徵金ヲ五箇年間ニ亙
ツテ橫領費消シテ居リマス、第五ハ長崎地
方裁判所ニ於テモ、七箇年間ニ亙ツテ是等
ノ金ヲ悉ク橫領費消シテ居ルデハアリマセ
ヌカ、我ガ日本ノ斯ウ云フ金ハ一年々々デ
國家ノ歲入トナツテ、國民ノ負擔スベキ國
費ノ一部ニ充當シテ、以テ國民ノ負擔ノ輕
減ニ充ツベキコトガ、會計法上、憲法上當
然ノ歸結デアリマス、然ルニ事實ハ如何デ
アリマスカ、八年間、九年間、十年間ト
國家ノ歲入トナルベキモノガ一厘一毛モ入
ラヌデモ、日本ノ會計法ト今日ノ法律ニ依
ツテハ之ヲ發見スルコトガ出來ナイデハ
アリマセスカ、是ニ於テ本員等ガ豫テ申シ
ママ、今日ノ議會制度及ビ內閣制度、各省
制度ノ根本改革ヲ提唱致シマスル所以ノモ
ノハ玆ニ存スルノデアリマス、我ガ日本
ノ豫算ハ全ク支離滅裂デ、何ヲ以テ之ニ信
ヲ置クニ足リマスカ、是等ハ總理大臣ニ能
ク御傳ヘニ相成リ、以テ是ガ改革ノ基礎タ
ラシムベク參考トナサシメナケレバナラナ
イノデアリマス
次ニハ一般官吏ガ如何ナルコトヲスルカ
ト云フコトノ一例ヲ申上ゲマス、例ヘバ愛
知縣水產課長和氣某ハ、土地ノ漁業組合ト
提携シテ内務省ヲ騙シテ數万圓ノ金ヲ詐取
シテ居リマス、サウ云フ者ガ長イ間オ役人
樣デオ勤メナサレテ居ル(笑聲)諸君、我國
ノ內務省ノ課長級ト云ヘバ相當ナモノデア
ル、ソレ等ガ內務省ヲ騙シテ詐欺橫領、金
ヲ盜ミ出スノデアリマスケレドモ是等ニ
向ツテ一片ノ吏道刷新ノ通牒デ吏道ノ刷
新ガ出來マスルカ、又國有財產ヲ私スル一
例ヲ申シマスレバ北海道ニ於ケル森林主
事小山某、釜田某、其ノ他數名等ハ-モ
ウ森林主事トナリマスト、アノ地方ノ國有
林ハ一人デ以テ責任ヲ負ウテ部下ヲ使ツテ
居ル大將デアリマス、ソレガ自己ノ管掌ニ
係リマスル國有財產ノ此ノ林野ヲ自分デ盜
伐ヲスルノデアリマス、ソレハオ手ノモノ
デアリマセウ、自分ガ之ヲ管理シテ、其ノ
官林ヲ盜伐シテ、之ヲ民間ニ賣ツテ不當ノ
利益ヲ得タト云フ事實ハ玆ニ擧ツテ居ルノ
デアリマス、同時ニ尙ホ自分ノ手デハ足ラ
ヌカラ、他人ニ盗伐セシメテ、其ノ金ヲ貰
ツテ居ルコトモ事實デアリマセウ、斯ルコ
トデ綱紀肅正、吏道ノ刷新ハ御經ノ文句デ
ハ駄目デゴザイマス、又埼玉縣ニ於キマス
ル百万圓問題、是ハ決算委員會ノ問題ニモ
ナツタノデアリマスガ、此ノ百万圓-失
禮ナガラ埼玉縣ハ非常ニ困憊シタ所ノ財政
窮乏ノ縣デアリマス、其ノ縣ニ於テ數年間
ニ亙ツテ會計課長ガ百万圓ト云フ大金ヲ費
消シ、而モ是ハ知事デアル人ガ董督ノ責任
ヲ全フセザルガ故ニ、此ノ結果ガ起ツテ居
ル其ノ中ノ當時ノ知事ガ今閣僚ノ中ニ居
ラレルデハナイカ、斯樣ナコトデ吏道ノ刷
新ガ出來マスカ先ヅ其ノ源ヲ〓メテ範ヲ
天下ニ示スニアラズンバ、斷ジテ是ガ改革
ノ實ハ擧ゲ得ナイコトヲ申上ゲテ、政府ノ
反省ヲ促シ所見ヲ伺ツテ置キタイト思ヒマ
ス、昨日總理大臣ノ山道君ニ對シマスル御
答辯ノ中ニハ、身ヲ以テ範ヲ示ス、身ヲ以
テ範ヲ示スナラバ、上ニアル內閣其ノモノ
ガ身ヲ以テ範ヲ示シテ戴カナケレバナラヌ
ノデアリマスルガ、現內閣ハ其ノ御覺悟ガ
アリマスカドウカヲ伺ツテ置キタイノデア
リマス
次ニ文部省內ニ於キマスル問題デアリマ
スガ、國寶ニナルベキモノガ國寶ニナラナ
イ、國寶タルノ價値ナキモノガ、運動ト金
力ニ依ツテ國寶ニナツテ居ル、重要美術品
保存法ハ昭和八年ニ通過致シマシテ、我ガ
日本ノ國寶ヲ海外ニ出サントスル時ニハ
政府ノ許可ヲ得ナケレバナラヌコトニナツ
チョコは是ニ於テ外人ト通謀シテ國寶ニナ
ルベキ性質ノモノヲ、ヽ國寶ニセズシテ外國
ニ出シテ居ル、是等ノ事實ハドウシテ此ノ官
界ノ一大革正ヲ圖ラレマスカ、而モ是ハ病
根長キニ亙ツテ居リマス、而モ其ノ中ノ荻
野某ノ如キハ骨董屋ト提携シテ、價値少キ
モノヲ價値アルカノ如ク鑑定シテ、莫大ナ
ル金額ニ上ル不正ノ賣買ヲシテ居ルト云フ
コトデアリマス、斯樣ナモノガ今日綱紀肅正
ノ叫バレル時ニマダ存在シテ、而モソレニ手
ヲ觸レルコトガ出來ヌトナツタナラバ、綱
紀ノ肅正、吏道ノ刷新ハ如何ニシテ完成致
シマスカ、今日本ハ豫算面ノ上ヨリスルモ、
財政ノ窮乏ト云フモノハ、政府モ亦御承知
ノ通リデアル、今日戰爭ヲ始メテ幾百億、
是等ノモノハ現在及ビ將來ノ支出ハ悉ク
元利トモ國民ニ其ノ色擔ヲ貽スモノデア
ル、斯ル窮乏ノ時ニ、各植民地ニ於キマス
ル財政計畫ヘドウ云フコトニナツテ居リマ
スカ、一々申上ゲル時間ガゴザイマセヌカ
ラ樺太ニ例ヲ取リマス、樺太ノ一年間ノ
豫算ハ四千五百万圓デアリマス、其ノ自己
ノ豫算ニ等シイ程ノ三千万圓ト云フ林木賣
拂代金ヲ隱シテ居ルデハアリマセヌカ、斯
樣ニシテ國家ニ提出シナケレバナラヌ金ヲ
出サズ、植民地カラ一定ノ金額ヲ一般會計
ニ入レヨト言フカラ、玆ニ財政窮乏ヲ裝フ
「カムフラージュ」スベク、斯ノ如キコトヲシ
テ居ル、林木ノ拂下ヲ受ケタ者ハ、御拂ヒ致
シマスト云ウテ金ヲ持ツテ來ル、一寸待ツテ
呉レ、オ前ノ方カラ延期願ヲ出シテ吳レ、眞
ニ國民ガ自己ノ經營ニ善良ナル經營者ノ志
ヲ以テスルナラバ、待ツテ吳レト言ウテモ、
取上ゲルノガ一國ノ官吏タリ、善良ナル所
ノ事業經營ノ本旨デハアリマセヌカ、然ル
ニ拘ラズ支拂ハントスルモノヲ之ヲ止メテ
其ノ收入缺陷ガアル如クニ裝フニ至ツテハ、
我ガ日本ニ於キマスル官紀綱紀ノ紊亂蓋シ
驚クベキモノガアルト言ハナケレバナリマ
セヌ、又各省ニ於キマシテ每年行ハレマス
ル所ノモノニハモウ言フニ忍ビザル所ノ
缺陷ガ存シマス、是等ハ一々申上ゲマスレ
バ却テ時間ヲ取リマスカラ省略致シマス
次ハ人權蹂躪ノ事實ニ付テ一二ノ例ヲ申
上ゲテ、政府ノ明快ニシテ責任アル所ノ答
辯ヲ煩ハシタイト思ヒマス、今申上ゲマス
ヤウニ、現內閣ハ成立致サレマシテカラ時
日ハ僅カデゴザイマス、其ノ事實ヲ御知リ
ニナラヌカモ分リマセヌ、例ヘテ見マスト、
一番ヒドイノハ是ハ前年ノコトデアリマ
スガ、十一年五月ニ德島縣ノ小松島警察管
內ニ於テ行ハレタ高鉾村ノ村會議員選擧デ
アリマス、其ノ時ニハドウ云フコトヲシタカ
ト云フト、其ノ村ハ全部ノ有權者ガ三百七
十名デアリマス、其ノ時小松島警察署長ハ
其ノ選擧ニ臨ム管内ノ警察官ヲ集メテ、斯
ウ云フ訓示ヲ致シテ居リマス、諸君、今ヤ
官吏身分保障令ノ嚴存セルアリ自今違反
事項ノ有無ニ拘ラズ悉クヲ檢擧セヨト云フ
命令ヲ、小松島警察署長ハ管內全部ノ警察
官ニ發シマシタ事實ガアリマス、斯ク致シ
マシテ選擧ハ四月ノ末ニ行ハレマシタ、サ
ウシテ五月十九日ニ是ガ徹底的檢擧トナリ、
三百七十名ノ有權者一人殘ラズ小松島警察
署ニ監禁シタデハアリマセヌカ、今日ノ農
村ハ一日働イテ尙ホ生活ニ困難ヲ感ジテ居
ル、今日農村振興ノ申請書、請願ハ山ノ如
クニ積マレルノデアル、然ルニ法律ニ依ル
ニアラズシテ、斯ノ如ク一村悉クヲ一網打
盡的ニ官憲ガ壓迫シテ、其ノ中ノ三百人ハ
數日間ニ亙ツテ拘禁致シマシタ、又二十三
名ノ候補者全部ヲ檢擧シ、事ノ有無ニ拘ラ
ズ略式命令ヲ以テ罰金ヲ言渡シタ、之ニ對
シテ中ニハ不服ヲ以テ正式裁判ヲ訴ヘタノ
デアリマス、其ノ正式裁判ヲ訴ヘタ時ニ證
人ノ申請ヲシタ、所ガ其ノ被告ニ有利ナ證
言ヲシタ證人ニ裁判長ハ歸宅ヲ許サレテ居
リマス、然ルニ拘ラズ其ノ裁判所ヲ小松島
警察署長及ビ警部補ノ率ヒタル數十名ノ警
官ヲ以テ包圍シ、裁判所ヨリ出テ來ル所ノ
證人一人殘ラズ僞證罪ナリト稱シテ之ヲ監
禁致シマシタ、裁判長ハ歸宅ヲ許サレテ居
ル、法ニ依ルニアラズンバ其ノ罪ノアリヤ
否ヤヲ決スルコトハ出來ナイ、然ルニ一ノ
獨斷ヲ以テ、官吏身分保障令ヲ楯ニシテ斯
ノ如キ暴擧ヲシテモ、今日其ノ警察署長ヤ
ソレ等ヲ內務省ハ處斷サレマシタカ、出來
マスマイ、官吏身分保障令ガアル間ハ出來
ナイ、是レ現内閣及ビ總理大臣ガ官吏身分
保障令ヲ之ガ堅持ヲ叫バレマスケレドモ
國家政治上ノ斯ル實際ヲ御知リニナラヌカ
ラ、斯ウ云フコトヲ言ハレル、此ノ席ニ出
テ此ノ事實ヲ御聽キニナツタナラバ如何
ナル御感ジヲナサルノデアリマセウカ、政
府委員カラ能ク傳ヘテ貰ヒタイ、總理大臣
モ人間デアリマスカラ、總テノ人情ト云フ
コトハ御分リデアリマセウ、法律ヲ無視シ、
憲法ヲ無視致シマスコトハ、宜シイトハ仰
セニナリマスマイ、之ヲ致シマシタ所ノ官
吏ニ對シテ適當ノ處斷ヲ爲ス能ハズトハ何
事デアリマスカ、第二ハ是モ數年前ノコト
デアリマスガ、法律ニ據ラズシテ、唯必要
アリトシテ、或ル良民ヲ拉致シ來ツテ、オ
前ハ何カシタデアラウト云フコトヲ强制的
ニ自白ヲ强ヒタ所ガ、其ノ者ハ數年間或ル會
社ノ熟練エデアリマスカラ、何一ツ知ラナ
イ斯ウ云フコトガアルデアラウト言ツ
テ、拵ヘタ犯罪ヲ强制シテ、數日間言語ニ
絕スル拷問ヲ致シマシタ、其ノ結果七日間
拷問ヲシ盡シテ、遂ニ之ヲ撲殺シタノデア
リマス、洵ニ此ノ聖代ニ於キマシテ、
斯カル事ガ行ハレタト致シマスナラバ、政
府ハ如何ナル御感ジヲナサイマスカ、此ノ
寫眞ハ當時警察ハ祕密ノ裡ニ葬式シヨ
ウト思ツタガ負傷ノ工合ヲ悉ク寫眞ニ祕
密ニ撮ツタノデアリマス、此ノ公開ノ席デ
ハ申上ゲルノモ帝國ノ一大耻辱デゴザイマ
ス、此ノ寫眞ヲ見マスルト兩腿ニ鈍刀ヲ突
込ンデ居リマス、斯樣ナコトハ吾々ハ言ヒ
タクナイ、兩腿ニ鈍刀ヲ突込ム等ハ、假令
時局柄ト雖モ、內政ニ於テ斯ノ如キ亂暴狼
藉亡國的行動ヲ爲スモノハ斷ジテ許ス
コトハ出來ナイト吾々ハ信ズルモノデアリ
マス(拍手)尙ホ此ノ結果トシテ驚クノハ
政府ノ御認メヲ願ツテ御反省ヲ願ハナケレ
バナラヌコトガアリマス此ノ高鉾村ノ檢
擧事件ニ於テ純眞ナルベキ靑年ガ發表シテ
或ル方面ニ送ツタ所感ノ一端ヲ述ベテ、此ノ
結果ガ我ガ日本ノ所謂內政上ニドレダケノ
惡影響ヲ及ボスカ、其ノ文面ノ中ニハ一日
モ早ク我等ガ政黨ヲシテ我等ガ政黨内閣タ
ラシメヨ、此ノ聲コソ官憲ノ彈壓、蹂躪ニ
苦ミ拔イテ眞ニ目覺メタル國民ノ叫ビデ
ス、此ノ中ニハ尙ホ、昭和聖代ニ行ハレ得
ル事件デアリマセウカ、私共靑年ハ過ギ去
ツタ思潮トハ言ヒナガラ佛蘭西革命當時ノ
人權宣言、自由主義思潮ガ偲バレテナリマ
セヌ、併シ私達ハ無分別ハスマイ、正義自
由ノ矛ヲ取ツテ最後マデ戰ヒ拔カウト云フ
コトヲ持ツテ來テ、此ノ一村擧ツテソレ等
ノ失望ト落膽ニ沈ミツツアル所ノ村民ヲ勵
マシ慰メ合ヒツツ我等靑年ノ本分ヲ保ツテ
行カウト云フ現狀デアリマス
斯ノ如キ結果ト致シマシテ、我ガ地方自治
體ヲシテ國家政治ノ上ニ及ボス影響ハ之ニ
依ツテ大ナルヲ察スルコトガ出來ルデゴザ
イマセウ、次ニハ餘リ長クナリマスカラ詳
シイコトハ省略致シマシテ、高知縣ニ於ケ
ル所ノ檢察ノ暴擧デアリマス、是ハ昭和十
一年二月デアリマスカ高岡警察署ニ於キ
マシテ選擧違反ヲ擧ゲマス時ニ、事ノ有無
ニ拘ラズ檢擧シテ斷罪セヨト云フ命令デア
ツタ、是ニ於キマシテ是等ノ者ハ上ニ訴ヘ、
裁判ニ訴ヘ、裁判所ニ聽クコト能ハズ、是
非ナク指ヲ食切リ、數人ノ被告ハ斯ノ如キ
陳情ヲシテ居ル、血痕淋漓タル此ノ上申書
ヲ御覽ナサイ、併シ地方裁判所ニ於キマシ
テハ大阪控訴院ノ檢事長ハ之ヲ能ク御承
知ノ筈デアリマス、如何ニ之ヲ取扱ハレタ
力現在我ガ日本ニ於テハ憲法ニ依ツテ國
民ノ自由ト權利ハ法律ニ依ルニアラザレバ
逮捕監禁處罰ヲ受クルコトナシト云フ保障
ガアリナガラ、一官吏ノ爲ニ斯ノ如キ橫暴
ニ泣キツツアル者少クゴザイマセヌ、其ノ
他尙ホ驚クノハ我ガ日本第一ノ財閥三菱某
ガ上海ヲ中心ニ武器ノ密輸出ヲ中華民國ニ
致シマスル、是ニ於キマシテ此ノ事ガ發覺
致シ、密輸出シマスルコトハ第一囘ガ四十
四万圓、其ノ次ガ百二十万圓、數囘アリマ
スガ、一々申上ゲマセヌ、其ノ者ヲ知ツテ
居ル者ガ、之ヲ天下ニ訴ヘント致シマシタ
者ニ對シテ大阪府警察部ハソレ等ノ酒井某、
村田某ヲ檢擧シテ大財閥ノ所謂手先トナ
リマシテ、天井カラ吊下ゲテ逆サマニシ、
有ト有ユル拷問ヲ數日續ケタルコトモ司法
省ハ御承知デアリマスカ、一國ノ大財閥ノ爲
ニハ罰スベキ者ヲ罰セズシテ、罰スベカラ
ザル良民ヲ罰シテ、所謂不正橫暴拷問ヲ遂
ゲテ居リマス、是ガ憲法ヲ擁護シ、法律ヲ
擁護スル法治國家ノ行政ト言ハレマセウ
カ、是等ノ如キコトヲ餘程深ク御考ヲ願ハ
ナケレバナリマセヌ、又吾々ハ昭和十二年
四月伏見ニ起キマシタ婦女凌辱事件ハ、祕密
會ニアラザル此ノ會議デハ其ノ有樣ヲ申上
ゲルコトハ出來マセヌ、其ノ被害ヲ受ケマシ
タ者ハ田中シン、三十五歲、保津田ハル、三
十六歲、高瀨シゲ、是ハ四十歲、此ノ三名ノ
婦女ニ對シマスル凌辱事件ノ如キハ、其ノ
一人ノ者ノ寫眞ハ是デアリマス是等ノ者
ニ對シマシテ洵ニ言語ニ絕スル凌辱ト暴行
ヲ加へ、而モ天井ヨリ逆サマニ吊シテ、同
署ノ監內ニ居ル被疑者悉クヲ監房ヨリ連出
シテ、之ヲ觀覽セシメタル事實ガ擧ガリマ
シタ、同時ニ香山警察巡査部長外數人ノ警
官ハ之ヲ吊下ゲテ女ノ生命トモ言フベキモ
ノヲ露出シ、呻吟スルヲ眺メテ、面白半分ニ
晝食ヲ喫シタ事實ガゴザイマス、是等ニ依
リマシテ、是ハ旣ニ告訴トナリ、而シテ旣
ニ其ノ者ハ一部ハ犯罪ニ依リマシテ刑ノ言
渡ハアツタノデアリマスガ、之ヲ監督シ、
之ヲ指導スル所ノ上長ハ榮轉ヲシテ居リマ
ス、斯樣ナルコトデ綱紀紊亂、人權蹂躪ノ
源ガ何處ニ絕エマスルカ、而モ此ノ婦女子
ノ語ル所ニ依リマスレバ、私ノ前デ二十二
歲位ノ男子ヲ同ジク足ニ手錠ヲ掛ケ、之ヲ
逆サマニ吊ツテ、サウシテ大イニ呻吟スル
者ニ對シテ飴ノ如キ燒火箸二本ヲ突付ケテ
居ル事實、サウシテ之ヲ臀部ニ當テテ驚ク
ベキ拷問ヲ致シマシタル事實モ暴露スルニ
至ツタノデアリマス、斯樣ニ致シマシテ私
共ハ考ヘル、法治國家ノ權威ト今日ノ內務
省今日ノ司法省、各省ハ是等ノ事實ニ對
シテ如何ナル御考ヲナサルカデアリマス
次ニハ彼ノ有名ナ國鐵事件、是ハ目下裁
判中デアリマスルガ、此ノ事件ノ如キモ根
據ハ殆ドナイ、拷問ニ依ツテ警視廳ハ有ユ
ル暴狀ヲ極メタ、其ノ中ニ石松組ノ主人石
松某ノ如キハ言語ニ絕スル拷問ヲ受ケ、前
齒二本ヲ折ラレ、右腕ヲ打折セシメラレテ
居リマス、餘リノコトニ遂ニ土田ト云フ警
視廳ノ警部補ヲ瀆職罪ヲ以テ訴ヘ、其ノ裁
判ガ昨年ノ十一月九日ニ行ハレタ、其ノ當
時ノ證人土田ノ下僚デアツタ三枝幸之助ハ
裁判所ニ於テ僞證スルコト能ハズ、遂ニ其
ノ拷問無謀ナル事實ヲ證言スルノ外ナキニ
至ツタノデゴザイマス、斯ルコトヲ致シマ
シテ今日ノ國鐵事件ト云フモノハ天下ニ大
ナルモノガアルカノ如クニ宣傳セラレタ、
斯ルコトヲシテ自白致シマシタル所ノ豫審
調書、檢事ノ調書ガ何ノ價値ガゴザイマス
カ、是等ニ對シマシテモ私ハ詳シク申上ゲ
タイガ、其ノ點ハ此ノ程度ニ致シテ置キマ
ス、其ノ次ニ尙ホ驚クベキハ天下ノ耳目ヲ
惹キマシタ所ノ電力統制案反對運動ニ對ス
ル所ノ檢擧事件デアリマス、是ハ御承知ノ
通リ今殆ド事濟ンダト云フバカリノ所デ、
中ニハマダ牽聯シテ居ル者モゴザイマスガ、
此ノ中ニ驚クノハ輦轂ノ下、內閣直屬ノ
監督下ニアリマスル所ノ此ノ警察官署ニ於
テ斯ノ如キ橫暴ニシテ驚クベキ拷問ガ行
ハレルト云フコトハ、聖代ノ一大恥辱ト申
サナケレバナリマセヌ、是ハ初メ斯ウ云フ
觀察ヲシタト云フコトガ愈〓現ハレマシタ、
政黨ヲ解消シ、政黨解消ニハ電力統制案ニ
反對スルニ付テハ電力會社ト云フモノハ大
ナル財閥デアル、此ノモノガ或ル政黨、政
治家ト提携シテ、サウシテ此ノ法案ヲ葬リ
去ラントスルノ大運動ヲ開始セラレタト云
フコトニナツタ、是ニ於キマシテ其ノ嫌疑
ヨリ內務省及ビ警視廳ノ警視總監及ビ幹部
ト提携シテ、此ノ有無ニ抱ラズ是ガ摘發
くヲ愈〓決意スルニ至ツタノデアリマス、以
テ政黨解消ノ唯一無二ノ要題タラシメント
スルコトヲ期セラレタト云フコトデアル、
是ニ於キマシテ先ヅ第一ニ中程ニ於テ非常
ニ警視廳ヲ喜バシタノハ日本電力ニ
於テ行先不明ト見ラレルヤウナ金額約二百
万圓ガアル、玆ニ勢ヲ得テ其ノ傍系ヲ
悉ク檢擧スルニ如カズトナツタノデアル、
此ノ結果ト致シマシテ、先ヅ第一ニ東
電ノ最高重役某ト、ソレト弟田邊某トヲ檢
擧シタ、之ニ依リマシテ不當トモ言フ
ベキカ、兎ニ角一部ノ費用ガ出タコトハ分
ツタ、其ノ費用ハ五万圓、其ノ五万圓ト云
フモノハ東電ノ某重役ト其ノ弟ノ田邊某ト
ニ依ツテ明ニナリマシタ、併シ是モ必ズ或
ル方面ニ行ツテ居ルデアラウト云フコトデ
アリマシタガ、調ベテ見マスト此ノ金ハ何
處ニ行ツテ居ルカ、東京ノ何雲莊ト云フモ
ノガアル、其ノ橋本某ト云フモノニ向ツテ
此ノ金ヲ與ヘタト云フコトガ分ツタ、是ハ
電力ニ何等ノ關係ガナイ、此ノ者ニ之ヲ與
-ハ、サウシテ其ノ者ヲ何カアルデアラウ
ト云フノデ何等罪ニナリマセヌ、廣告ヲ新聞
ニ出スノデアリマスカラ、ソレダケノ金ヲ
貰ツタノデアルカラ、何等ノ犯罪トナルベ
キモノデハナイ而モ之ヲ五十日間勾引シ
テ居ル其ノ次ニハ二百万圓ノ使途不明ト
云フコトガ日電ニアツタ、ソレヲ愈〓調べ
テ見マスルト、驚ク勿レ小田原電氣ニ向ツ
テ融通シタルノト、大阪ニ於ケル姉妹會社
ニ融通シタ金ガソレデアツタコトガ分ツタ、
是ニ於テ警視廳ハ是等ノ關係者ヲ約三箇月
間ニ亙ツテ勾引シ、而モ天下ノ紳士デアリ
マス是等ヲ法律ニ依ルニアラズシテ國民
ノ自由權ト不法監禁ヲ致シマシタル責任ハ
誰ガ負フノデアリマスルカ、同時ニ又傍系
トシテ電氣協會理事松根某ナルモノヲ檢擧
シテ、是亦八十日間留置シテ有ユル拷問ヲ
爲シ、而シテ是ガ不正運動ノ自白ヲ迫ツタ
ガ、是亦何モノモ得ルコト能ハズ、是等ノ
モノヨリ類推致シマシテ日電ノ某重役ノ如
キ、三箇月ニ亙ツテ有ユル拷問ヲ受ケ、遂
ニ之ニ堪ヘズシテ警察ノ言フガ儘ノ調書ニ
調印スルニ至ツタノデアリマス、併シナガ
ラ是ガ檢事局ニ〓サレテ其ノ事ヲ明ニ致シ
マシタガ迚モ生命ガ危イノデ、背ニ腹ハ代
ヘラレナイカラ、言ハレル儘ニ其ノ通リヲ
自白シタノデアリマスガ、事實ハ斯々デア
ル、一面ニ於テ會社ノ帳簿ヲ「トラック」二臺
カ三臺ニ引揚ゲテ莫大ナル費用ヲ使ツ
タノデゴザイマセウ、サウシテ之ヲ引上ゲ
テ行ツタ、行ツテ見タ所ガ不正ノ金ノ行先
ガナイカラ、ソレノ言フコトト符合スル、
檢事ハ之ヲ起訴セントシタガ、遂ニ起訴ス
ルコト能ハズ、不起訴トナツタノデアリマ
ス、以上ニ依リマシテ今日ノ警視廳及ビ日
本全國ノ警察ニ於ケル不法監禁、法權ヲ無
視以テ官權ノ濫用ノ有樣ハ御分リデアラ
ウト存ズルノデアリマス
尙ホ驚クノハ本年今議會中ノ三月十三日
ニ、京都地方裁判所ニ於ケル豫審判事ガ犯
罪ヲ製造センガ爲ニ、其ノ豫審調書ヲ僞造
行使シタト云フコトニ依ツテ、一辯護士ヨ
リ告發ヲサレタト云フ事實デアリマス、一國
ノ司法官ニシテ天皇ノ御名ニ於テ法ヲ掌
ル所ノ豫審判事ガ、犯罪ヲ製造センガ爲ニ
豫審調書ヲ僞造シ、行使シテ、ソレニ依ツ
テ〓訴サレルト云フガ如キハ、前代未聞ノ
コトデハゴザイマスマイカ而モ此ノ裁判
所ハ私ハ先程カラ申シマシタヤウナコトニ
付テハ多クハ人ノコトデアリマスガ、此
ノ松野豫審判事ニハ私モ調ベラレタコトガ
アルノデアリマス、私ハ御承知ノ通リ選擧
違反ヲ以テ一時此ノ嫌疑ヲ受ケタコトハ
全國ノ新聞ニ報道サレマシタカラ定メシ御
承知デアリマ、セウ、然ルニ此ノ犯罪檢擧ノ方
法ハドウデアルカ、先程私ハ罰スベキヲ罰
セズ、罰スベカラザルモノヲ罰スルノガ今
日ノ我ガ日本ノ檢察當局ノ通弊ダト申上ゲ
マシタ、其ノ事實ハ私ノ事件ヲ檢擧スルノ
ニハドウシタノデアルカ、卽チ事務長ノ家
ニ數人ノ使用人ガ居ル、其ノ使用人ノ關春
雄ナルモノガ、主人ガ選擧事務所へ行ツテ
居ルノヲ奇貨ト致シマシテ、主人ノ判ヲ僞
造シテ得意先數十軒ヨリ金ヲ橫領費消シタ
事件デアリマス、サウシテ買立テノ自轉車
ヲ竊取シテ逃亡シタノデアリマス、正ニ竊
盜私印僞造横領犯人デアルコトハ明デゴザ
イマセウ、同時ニ其ノ者ハ數十囘ニ亙ツテ
小サイ-手癖ガ惡イノデ各警察署ニ檢擧
サレタコトガアル其ノ者ハ親ガ金持デア
ルカラ示談ニ依ツテ不起訴トナツテ居リマ
シタガ、此ノ事件ノ其ノ時ノ取調ハドウデ
アリマセウカ、福田派ノ選擧違反ガナイカ
知ラン、警察ハ私ヲ狙ヒ打チトシテ、
ドウカシテ之ヲ檢擧シヨウ、議會ニ出サシ
メザルヤウニシヨウト、其ノ干涉壓迫振
リハ到底此處デハ申上ゲルコトノ出來
ヌ程ノ辛辣サデアル、然ルニ何等選擧違反
ヲ發見スルコト能ハズ、遂ニ此ノ者ヲシ
テ告訴スル暇ハナカツタガ、同家使用人
ガ憤慨ヲシテ口頭ヲ以テ警察ニ訴ヘタ、訴
ヘタガ警察ハ檢擧ニ掛ラナカツタ所ニ、西
陣警察管內デ他ノ使用人ガ犯人ノ通行シテ
居ルヲ發見シ、ソレヲ捕マヘテ交番所ニ突
出シタ、檢擧シテ見ルト事務長ノ家ノ使用
人ト云フコトカラ、其ノ竊盗橫領、私印僞
造ノ方ハ調ベズシテ、オ前何カ選擧違反ノ
コトヲ知ラセレバ、オ前ノ罪ハ無罪ニシテ
ヤルト云フ交換條件デアル、是ニ於テ遂ニ
關春雄ハ警察ニ言ハルル儘、悅ブ儘ニ出鱈
目ヲ言ツタガ、是ガドウシテ選擧違反ヲ知
ルカ、事務所ニ居ル者ナラ知ルケレドモ、
選擧事務所ニ居ラザル者ガ知ル筈ガチイ、
ソレヲ言ウタカラ遂ニ檢事ト相談シテ、檢
擧スベキ當然ナル私印僞造橫領及ビ竊盜ヲ
致シタ者ヲ之ヲ放還シテ、遂ニ私共ニ選擧
違反アリト呼號スルニ至ツタ、是ニ於テ裁
判トナツテ事實無根トナツタカラ、遂ニ私
ハ國家ヲ相手トシテ損害賠償名譽囘復ノ訴
訟ヲ提起シタコトハ司法省御承知デセウ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=79
-
080・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 福田君、各派交渉
會ニ於ケル申合セモアリマスカラ、成ベク
自肅セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=80
-
081・福田關次郎
○福田關次郞君(續) 承知致シマシタ、斯
ク致シマシテ裁判ニ付セラレタ當時ヽ西陣
警察署ノ刑事ハ、證人調ニ當リマシテ裁判
所ノ控室ニ於テ證人ヲ拉致シ來ツテ脅迫ヲ
與ヘテ居ル、是等ノ如キハ已ガ主張シテ檢
擧シタ者ガ犯罪タランコトヲ希望シタモノ
デ、公明ナル裁判デハ、罪ノナイ者ヲ罰ス
ル譯ニハ行カナイ、遂ニ無罪トナツタ、是
ニ於テ本員ハ國家ヲ相手取ツテ、今言フ所
ノ國家ヲ相手取リ損害賠償、名譽囘復ノ訴
訟ヲ提起シタ處、是亦裁判ノ結果國家ノ敗
訴トナリ、遂ニ昨年十月十三日官報ヲ以テ、
本員ニ對シテハ國家賠償金ヲ與ヘ同時ニ
昨年十月十三日ノ官報ヲ以テ、謝罪ノ意味
ヲ以テ無罪ノ事實ヲ公表サレタデハナイカ、
斯クシテ民間及ビ一國ノ選良ニ對シテハ、
斯ノ如キ無キ所ノ者ヲ有罪タラシメ、有罪
タルベキ者ヲ放還スルト云フニ至ツテ、司
法行政ノ權威何レニアリマセウカ、我ガ日
本ノ司法權ノ神聖ヲ維持スルコトガ出來マ
セウカ、之ニ對スル責任アル御答辯ヲ煩ハ
シタイト思ヒマス
以上殘忍極マリナキ官權ノ行爲ニ對シ、
政府ハ如何ナル御所見ト措置ヲ執ラレント
致シマスルカノ御決意ト責任ヲ、御問ヒ致
シタイノデアリマス、抑〓司法行政權ハ大權
ノ發動ニ基クモノデアリマスル、況ヤ帝國
ノ國體卽チ國ハ民ヲ以テ本トスルトノ建國
以來ノ御聖旨ヲ、臣民トシテ能ク奉戴シテ事
ニ當ラナケレバナリマセヌ、要ハ歷代天皇
ノ大御心ヲ奉戴シテ法ノ神聖ヲ維持シ、以
テ健全ナル法憲ヲ維持シ得タリトセバ、斯ル
不祥事ハ斷ジテ起ルコトハナイト思ヒマス、
一人ノ人權ヲ、尊重スルコトハ世界各國何レ
ノ國ニ於キマシテモ當然執ラナケレバナラ
ヌ所デアル、過ギニシ滿洲事變、世界大戰、
日〓日露ノ戰爭、或ハ北海ニ於ケル藥種商
ノ殺害事件ノ如キハ、一人ノ人格ヲ損フ結
果ニ因ル、斯ク國家ヲ〓シテ其ノ國權ト國威
ノ維持ヲ圖ルノ行動ニ出デナケレバナリマ
セヌ、然ルニ內ニ陛下ノ赤子ニ對シ、法律
ニ依ルコトナクシテ斯ノ如キ橫暴ヲ敢テ
スルト致シマスルナラバ、我ガ日本ガ世
界各國ニ對シマシテ如何ニ國權及ビ國威
ヲ發揚スルコトガ出來得ルノデゴザイマ
スカ、將來ニ對シマスル大ナル問題トシ
テ、政府ノ反省ヲ促サナケレバナリマセ
又、私ハ事ヲ好ンデ此ノ質問ヲ致シマスル
モノデハゴザイマセヌ、斯ル事實ニ基キ政
府ガ吏道刷新ト官紀綱紀ノ肅正ヲ御高調ニ
相成ツテ居ルコトハ非常ニ共鳴スベキモノ
デアリマス、之ニ對シマシテ、政府ハ如何ナ
ル途ヲ御執リニナラント致シマスルカ
以上ヲ要シマスルニ、斯ノ如キ犯罪ノ歷
史ト云フモノハ、我ガ日本ノ犯罪史上ニハ
ゴザイマセヌ、維新前後ニ於キマスルアノ
暴政ナル德川ノ政府ノ暴史ト雖モ、流石ニ
武土ノ志ヲ持ツテ居リマスルカラ、斯樣ナ
婦女子ニマデ言フニ忍ビザル所ノ暴行凌辱
ヲ加ヘタ歷史ハゴザイマセヌ、而モ法律ニ
依ルニアラズシテ斯ノ如キ撲殺ヲシタヤウ
ナ事實モゴザイマセヌ、犯罪ナキニ拘ラズ
犯罪ヲ製造シテ、眞ニ罰スベキ者ヲ放還シ
タト云フ事實モゴザイマセヌ、斯ノ如キ恐
ルベキ不祥事ノ生ジマスル原因ハ、第一民
意ヲ代表セザル變態內閣ノ續出、第二ハ是等
官吏ハ勿論、其ノ指導監督及ビ總監督ヲ嚴罰
ニスルコトガ出來ザル結果デアル、第三ハ官
僚獨善、官僚「ファッショ」ノ惡傾向ヲ打破スル
コトノ力ガ內閣ニナイ結果デアル、第四ハ
官吏登用法ニ知識ヲ偏重シ人格ヲ輕視シタ
ルノ結果ニ因ルモノデアル、第五ハ尙ホ斯
ル暴擧ヲ援クルガ如キ官吏身分保障令ノ存
置此ノ法アルガ爲ニ惡質官吏ト認メテ居
ツテモ戒筋ノ途ガナイデハゴザイマセヌ
カ、之ヲ戒飭スルト云フナラバ、本人カラ
異議ヲ申立テレバソレキリデアル、ソレニ
依ツテ是等ノモノヲ戒飭致シマスルガ、而
モ斯ル叛逆ノ行爲ヲ全國ニ續出スルヲ見ル
ニ至リマシタル事實ハ官吏身分保障令ト
云フモノノ存在ニ基因致シマスカラ、此ノ
保障令存否付テ再檢討ヲ加ヘル必要大ナ
ルモノアリト云フコトヲ申上ゲテ置キタイ
終リニ一言スベキハ我國ハ今ヤ國ヲ賭シ
テ聖戰ニ沒頭シテ半面ニ內政ノ紊亂ヲ顧ミ
ザルガ如キコトガアリマシタノデハ、長期
建設ノ目的貫徹ハ斷ジテ爲シ得ザルコトヲ
注意シナケレバナリマセヌ
以上質問ノ諸點ニ對シマシテ、政府ハ眞
ニ我ガ日本國民ガ將來安心ヲ爲スコトガ出
來得ルダケノ信念ト決意トヲ御示ニナリマ
シテ、明快ナル御答辯ガアツテ然ルベシト
存ジマス私ノ質問ハ以上述ベマシタ實ニ已
ムニ已マレザルニ出タル所ノ質問デゴザイ
マスルカラ、何卒此ノ邊ヲ御諒承相成ツテ
責任アル答辯アランコトヲ切望致ス次第デ
ゴザイマス
〔政府委員倉元要一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=81
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082・倉元要一
○政府委員(倉元要一君) 只今福田君ヨリ
御熱心ナル御質問ヲ拜聽致シマシタ、官吏
ハ國民ノ儀表タルベキ者デアリマシテ、官
吏法規ニ關シテハ最モ嚴肅ニ之ヲ遵守シナ
ケレバナラヌ、況ヤ國民ノ權益ヲ尊重致シ
マスルコトハ勿論デアリマス、此ノ事變下
ニ於キマシテ、官吏ハ最モ自肅自戒御奉公
ノ誠意ヲ捧ゲナケレバイカヌト思ヒマス
〔「裁判所ノ判決モ讀メヌヂヤナイカ、
裁判所ノ判決例ガ讀メルカ」「默レ」ト
呼ヒ其ノ他發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=82
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083・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 靜肅ニ
〔「裁判所ノ判決例ガ讀メナイヂヤナイ
カ」「僞仙人默レ」ト呼ヒ其ノ他發言ス
ル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=83
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084・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 靜肅ニ
〔「判決ノ理由書ガ讀メナイヂヤナイカ
讀メルカ、モツトシツカリシロ」ト呼
ヒ其ノ他發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=84
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085・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 靜肅ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=85
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086・倉元要一
○政府委員(倉元要一君)(續) 近時人權蹂
躪ニ關スル世論ハ囂々トシテ起ツテ參リ
マシタ、此ノ國民ノ輿論ガ帝國議會ニ反映シ
マシテ、先年本院ニ於テ司法部刷新ノ決議
案ガ出タノデアリマス、此ノ決議案ニ基キ
マシテ、司法部ニ於キマシテハ昨年ノ七月
司法制度調査會ヲ設置致シマシテ之ニ貴
衆兩院ノ議員、學者、實業家、經驗家、此
ノ一大調査機關ニ依リマシテ斯ノ如キ人
權蹂躪ト云フガ如キ忌ハシキ事ガ再ビ起ラ
ナイコトヲ期シマシテ此ノ根絕スル方法
ト致シマシテノ調査ヲ重ネテ居ル次第デゴ
ザイマス、只今福田君カラ二三ノ事實ヲ御擧
ゲニナツテ御非難ヲ蒙ツタノデアリマスル
ガ、罰スベキハ罰シ、或ハ中ニハ自責ノ念
ニ驅ラレテ遂ニ自殺ヲシタ者モアリマス
福田君ノ只今御述ニナリマシタ大體ノ內容
ニ付キマシテハ、既ニ過日ノ決算委員會ニ於
テ仔細ニ同樣ノ內容ヲ御質問ニナツテ、之
ニ對シマシテ司法大臣ヨリ丁寧ニ御答辯ヲ
申上ゲテ居リマス、ドウカ詳細ナコトハ其
ノ速記錄ニ依ツテ御承知ヲ御願シタイト思
ヒマス
〔政府委員漢那憲和君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=86
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087・漢那憲和
○政府委員(漢那憲和君) 福田君ノ御質問
ノ中警察權ノ運用ノ方面ニ關スル御答ヲ私
カラ申上ゲマス、警察權運用ノ適正妥當ヲ
期スベキコトハ洵ニ肝要ノコトデアリマシ
テ當局ト致シマシテハ常ニ十分玆ニ意ヲ
用ヒテ居ル所デゴザイマスルガ、近時司法
警察官吏ノ行動ニ關シ色々非難ノ聲ヲ聞キ
マスルコトハ甚ダ遺憾ニ存ズル所デゴザ
イマス、斯樣ナコトハ警察官吏ノ〓養指導
監督ニ於テ尙ホ十分ナラザル點ガアルコト
ニモ依ルコトト考ヘマシテ、內務省ニ於テ
ハ警察幹部ノ養成ニ努ムルト共ニ、初任巡
査ノ〓養ハ勿論、一定期間實務ニ就キマシタ
巡査ニ對シマシテモ再〓養ヲ施シ、其ノ他犯
罪捜査ニ專從スル警察官ニ對シマシテハ
刑事警察ニ關スル特別ノ〓養ヲ行フ等、相
當努力ヲ致シテ來タ次第デアリマス、尙ホ
今後ハ更ニ是ガ徹底ヲ圖ルト共ニ、警察吏道
ノ刷新ニ關シ格段ノ努力ヲ拂ヒマシテ、又
犯罪ノ搜査ニ付キマシテモ科學ノ利用ニ努
メ、警察權ノ運用ニ對スル從來ノ非難ヲ一
掃スルヤウニ努メタイト存ジマス又內務
省監督下ニアル官吏ノ中ニ過ヲ犯シマシテ、
國家ニ迷惑ヲ掛ケタ者ガアルコトヲ福田君
ハ御指摘ニナリマシタガ、洵ニ是ハ遺憾ナ
コトデゴザイマス、內務省ト致シマシテハ、
將來一層指導監督ヲ嚴重ニ致シマシテ、吏
道ノ刷新振肅ニ努メタイト存ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=87
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088・服部崎市
○服部崎市君 殘餘ノ質問ヲ延期シ、明二
十四日定刻ヨリ本會議ヲ開クコトトシ、本
日ハ是ニテ散會セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=88
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089・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=89
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090・金光庸夫
○副議長(金光庸夫君) 御異議ナシト認メ
やく、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、次會ノ
議事日程ハ公報ヲ以テ御通知致シマス、本
日ハ是ニテ散會致シマス
〔左ノ報〓ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一政府ヨリ受領シタル答辯書左ノ如シ
片岡恒一君提出祈願ノ意義ニ關スル質問
ニ對スル答辯書
(以上三月二十三日受領)
祈願ノ意義ニ關スル質問主意書
右成規ニ據リ提出候也
昭和十四年三月二十日
提出者片岡恒一
祈願ノ意義ニ關スル質問主意書
支那事變發生以來應召者ノ家族ハ勿論一
般國民ノ神社ニ參拜スル者益〓多キヲ加
ヘ朝ニタニ神前ニ額ツキツツアル者ノ姿
ヲ見ル時愈〓其ノ意ヲ强クスルト雖モ祈
願ノ意義其ノモノニ至リテハ恐ラク千差
萬別ニシテ或ハ地方淫祠ニ言フカ如ク氏
神ヤ大神カ吉凶禍福ノ與奪ノ權ヲ有シ給
フカ如ク考ヘテ祈願スル者ナキニアラサ
ルヤヲ疑ハサルヲ得ス卽チ之ヲ實際ノ狀
況ニ付テ觀ルニ過去ノ戰役ニ於テ一人ノ
戰死者ヲモ出ササル部落ノ神社ニ對シテ
ハ其ノ遠近ヲ問ハス參拜スル者跡ヲ斷タ
サリシニ不幸一度該部落ヨリ戰病死者ヲ
出スニ至ルヤ參拜者ハ全然其ノ跡ヲ斷ツ
ノ實情ナリ更ニ又應召者ノ家族ノ全部ト
ハ言ハサルモ其ノ出征兵士ニシテ名譽ノ
戰死ヲ遂クルニ至ルヤ祈願モ日參モ無效
ナリトシテ再ヒ參拜スル熱意ヲ失ヒツツ
アルノ例ハ屢〓見聞スル所ナリ
斯ノ如キニ於テハ若シ一朝第三國ト戰ヲ
交ヘ敵ノ飛行機等ノ我カ國土ヲ侵スカ如
キコトアリトセハ「神ハ何ヲシテ居ラレ
ルカ何故ニ神風ヲ吹カシ給ハヌカ」ト罵
リ遂ニハ神ノ尊嚴ヲ冒瀆スルノ結果ヲ招
來スルヤモ圖ラレス今ニシテ政府ハ祈願
ノ意義ヲ明確ニシテ其ノ嚮フ所ヲ指示ス
ルニアラサレハ敬神崇祖ノ根本觀念ニ一
大動搖ヲ生シ其ノ國民思想ニ及ホス影響
甚大ナルモノアリト思惟ス
謹ミテ按スルニ神武天皇ハ御卽位四年
ノ春ニ詔シテ
「我カ皇祖ノ靈天ヨリ降鑒シテ
朕カ躬ヲ光シ助ケタマヘリ今諸ノ
虜巳ニ平キ海內無事ナリ以テ
天ツ神ヲ郊祀シテ大孝ヲ申フ可キモノ
ナリ」
ト宣ヒ靈時ヲ鳥見山ニ設ケテ
皇祖天神ヲ祀リ報本反始ノ誠ヲ示シ給フ
是レ天皇カ臣民ニ敬神ノ大本ヲ御示シ遊
ハサレタル最モ大切ナル事柄ニシテ神ニ
對シテハ此ノ精神ヲ以テ一貫セサルヘカ
ラスト確信ス
更ニ延喜式ノ祝詞ノ中古事記ヲ參照シ奈
良朝以前ニ出來タルモノト認メラルル祝
詞ニハ神ニ祈ル又ハ祈願等ノ如キ請ヒ求
ムルノ文字モナク意味モナキコトハ已ニ
國學者ノ唱フル所ニシテ古事記、日本書
紀ニ說ケル彼ノ「國うみ物語」ニ於テ神ト
國民トハ親子ノ關係ニ在リト說ケルハ神
道ノ根本精神ヲ明カニセルモノト謂フヘ
ク例ヘハ每朝父母ニ對シ「オ早ウ御座イ
マス」ト挨拶スルノ態度ハ神道ニ於ケル
神ヲ祭ルノ態度ナリ故ニ「祭リ」トハ「奉
仕スル」「仕ヘ奉ル」ノ意義ニシテ「上ノ人」
ニ仕ヘ行クコトカ卽チ祭ノ意義ト解スヘ
キナリ
然レハ子ハ親ニ求メストモ親自ラ子ヲ愛
護スル如ク神ハ常ニ國民ヲ保護シ給フト
ノ信仰カ神道ノ要諦ト信ス故ニ萬一我カ
帝國ニ一大事變起リタル場合國民ハ擧ツ
テ其ノ事件ヲ神ニ御報告申シ上ケ神ノ保
護シ給フコトヲ感謝シ奉リ滅私奉公ノ誠
ヲ盡スノカ神武天皇ノ御詔ヲ奉體スル
所以ニシテ神ニ對シテ護リヲ求メ「願フ」
「祈ル」コトハ神道ノ本質ニアラサルモノ
/夏
群書類從ノ大神宮參詣記ノ中ニ「後村上
天皇ノ御代ニ京都ニ坂士佛ト云フ有名ナ
醫者ガアツタソノ士佛ガ伊勢ノ大神宮樣
ニ參詣ヲシタ事ガアツタガソノ時大神宮
樣ニ御詣リヲスル時ノ心得ヲ伊勢ノ神官
ニ尋ネタトコロ
コノ大神宮樣ニ御詣リヲスルニハ祈ルコ
トガアツテハナラナイト云フコトデアツ
タ祈ルト云フ事ハ神ヲ汚スコトデアル」
ト〓ヘラレシコト記サル
仍テ考フルニ祈年祭ノ祝詞ニ「祈ル」「願
フ」ト云フコトノアラサルニ祈年祭ノ祝
詞ト云フハ此ノ祈年ノ祈ハ「祈ル」請ヒ求
ムルノ意ニアラス詩經ニ「以祈黃考」トア
リ字典ニ其ノ祈ノ文字ヲ「告」ト讀マシメ
「以テ黃考ニ告ク」ト讀マシメタリ然レハ
祈年祭ト云フハ今年モ豐作ニテアリタキコ
トヲ神ニ申シ上クル祭ト解スヘキナリ故
ニ此ノ意味ニ於テ祈願トハ神ニ對シ奉リ
自己ノ希望ヲ申シ述ヘテ國民一致ノ誠ヲ
申シ上クルコトト解釋セハ神道思想ニ
致スルモノト思考ス
右祈願ノ意義ヲ政府ニ質スト共ニ之ヲ
般國民ニ周知セシムルノ方法如何
右及質問候也
昭和十四年三月二十三日
內閣總理大臣男爵平沼騏一郞
衆議院議長小山松壽殿
衆議院議員片岡恒一君提出祈願ノ意義ニ
關スル質問ニ對シ別紙答辯書差進候
〔別紙〕
衆議院議員片岡恒一君提出祈願ノ意義
ニ關スル質問ニ對スル答辯書
我國民カ常ニ神祇ヲ崇敬シ神社ニ參
拜スルコトハ實ニ建國以來ノ美風ニシ
テソノ基ク所固ヨリ宏大無邊ナル神恩
ヲ感謝スルト共ニ神意ヲ奉戴奉行シテ
以テ肇國ノ鴻謨ニ答ヘ奉ランコトヲ期
スルニアリ而シテコノ敬神觀念ノ中心
ニハ神祇ノ光助ヲ仰キ奉ル思想卽チ祈
願ノ精神ノ存スルコト亦疑ヲ容レサル
所ナリ
畏クモ神武天皇ノ御東遷ノ途中ニ於テ
屢〓非常ノ苦難ニ會ハレタルニ際シ神
祇ヲ禮祭セラレタルコトハ全クコノ御
主旨ニ他ナラスシテ又上代ノ神祇祭祀
ニ於テ國民カ私心ヲ去ツテ祈願ノ至誠
ヲ披瀝シタルコトモ著名ナル事實ナリ
トス
右及答辯候也
昭和十四年三月二十三日
內務大臣侯爵木戶幸一
午後五時三十分散會
衆議院議事速記錄第二十九號中
正誤
頁段行誤正
六八〇三一一六貧汚貪汚
六八二四二膏民ノ脂民ノ膏民ノ脂
六八四二二五文限分限発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413242X03019390323&spkNum=90
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