1. 会議録本文
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000・会議録情報
會議
昭和十四年三月九日(木曜日)午後一時四十分開議
出席委員左の如し
委員長 高橋泰雄君
理事 西田郁平君 理事 中野治介君
齋藤直橘君 一ノ瀬俊民君
山崎常吉君 塚本重藏君
出席政府委員左の如し
内閣恩給局長 平木弘君
法制局參事官 樋貝詮三君
厚生省社會局長 新居善太郎君
傷兵保護院計畫局長 藤原孝夫君
委員長の許可を得て出席したる者左の如し
海軍中佐 川崎進君
本日の會議に上りたる議案左の如し
恩給法中改正法律案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=0
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001・高橋泰雄
○高橋委員長 是ヨリ開會致シマス、前會
ニ續イテ恩給法中改正法律案ノ質疑ヲ續行
致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=1
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002・塚本重藏
○塚本委員 此ノ際御許ヲ得マシテ少シ質
問ヲ致シタイト思ヒマスガ、先ヅ最初ニ、
改正ニナリマシタ「戰地外ニ在リテ航空部
隊ニ屬シ航空基地ニ於テ特殊ノ戰務ニ服シ
タルトキ」トアリマスガ、此ノ「特殊ノ戰務」
ト云フコトヲモウ少シ詳シク說明ヲシテ戴
キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=2
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003・樋貝詮三
○樋貝政府委員 此ノ點ニ關シマシテハ、
只今海軍ノ川崎中佐ガ見エテ居リマスカラ、
川崎中佐カラ具體的ニ其ノ內容、及ビソレ
ニ關聯シマシテノ今囘ニ於ケル所謂渡洋爆
擊ナドノ實況ニ付キマシテ、御說明ヲ申上
ゲタ方ガ早イカト思ヒマス、委員長ノ御許
ヲ得マシタナラバ川崎中佐カラソレヲ御說
明申上ゲタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=3
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004・塚本重藏
○塚本委員 結構デス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=4
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005・樋貝詮三
○樋貝政府委員 尙ホ是ハ軍ノ機密ニ亙ル
カモ知レマセヌノデ、關係官及ビ議員ノ方
以外ノ方ガ若シオ居デニナツタラ、退席ヲ
求メタイト云フコトデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=5
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006・高橋泰雄
○高橋委員長 ソレデハ是ヨリ祕密會ニ入
リマス、速記ヲ止メテ下サイ
〔午後一時四十五分祕密會ニ入ル〕
〔午後二時十分祕密會ヲ終ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=6
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007・高橋泰雄
○高本委員長 ソレデハ祕密會ヲ終了致シ
マシテ會議ヲ再開致シマス-塚本君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=7
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008・塚本重藏
○塚本委員 ソレデハ特殊ノ戰務ト云フコ
トハ其ノ程度ニ諒解致シマシテ、モウ一ツ
ハ、第五十九條ニ新シク一項ヲ加ヘラレマ
シタ條文ノ中ニアリマス「勅令ノ定ムル所
ニ依リ」ト云フノハ、是ハ先程一定ノ條件
ヲ附シテト云フ御說明ヲ承ツタノデアリマ
スガ、此ノ一定ノ條件ト云フモノヲモウ少
シ、御說明願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=8
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009・平木弘
○平木政府委員 是ハ大體勅令デ規定スル
コトニナツテ居リマシテ、マダ確定的ナコ
トハ申上ゲ兼ネルノデアリマスガ、大體ノ
考ト致シマシテハ、此ノ事變ニ際シマシテ
陸海軍デ戰時給與規則ト云フモノヲ發動サ
レルコトニナツテ居リマス、ソレハ大體戰
時ニ適用サレル譯デアリマスカラ、ソレト
大體時期ヲ同ジクシタラ宜イヂヤナイカ、
斯ウ云フ風ニ考ヘテ居リマス、併シナガラ
戰時給與規則ト申シマスノハ、納付金ニ付
テ事務ガ忙シイ爲ニ手數ヲ省カセルト云フ
問題ト必ズシモ一致スルモノデハアリマセ
ヌ、戰時給與規則ノ目的ハ別ニアルノデア
リマスカラ、必ズシモ一致スルト云フコト
ハ申上ゲラレナイノデアリマス、ソレデア
リマスカラ大體ニ於テ戰時給與規則ト一致
セシメルガ、必要ガアル場合ニ於テハ內閣
總理大臣ノ方デ適當ニ之ヲ制限セシメル、
斯ウ云フコトニシタラ適當デハナイカ、只
今ノ所斯ウ云フ風ニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=9
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010・塚本重藏
○塚本委員 直接改正ノ法文ニ付キマスル
質疑ハ此ノ程度ニ止メマスガ、此ノ際恩給
法ノ全般ニ付テ少シバカリ御伺シタイト思
ヒマス、先日齋藤委員カラモ、恩給法ヲ根
本的ニ改正スル意思ハナイカト云フ質疑ガ
アリマシテ、今ノ場合考ヘテ居ラナイト云
フ御答辯デアリマシタガ、是ハ漸次恩給法
ノ適用ヲ受クルベキ範圍ヲ擴メテ置クコト
ガ必要デハナイカト私ハ思フノデアリマス、
今度ノ戰爭ガ特ニ國家ノ總力戰デアツテ、
軍隊ノミノ戰デハナイ、銃後ノ國民モ齊シ
ク起ツテ協力スルニアラズンバ、戰爭ヲ遂
行シテ行クコトガ出來ナイト云フ事情ガ極
メテ明ニナツテ來テ居リマス、斯ウ云フヤ
ウナ世界ノ戰術ノ變遷ニ依リ、又社會ノ情
勢ノ變化ニ應ジテ、恩給法ヲ漸次改正シテ
行ク必要ガアルノデハナイカト思ヒマス、
ソレニハ恩給法ヲ根本的ニ改正シテ、廣イ
意味デ恩給法ニ依ツテ國民ノ大多數ヲ恩惠
ニ浴セシメルト云フヤウナ風ニ、漸次進メ
テ行クコトガ必要デハナイカト思フノデア
リマス、ソコデ差當リ今度ノ戰爭ニ依ツテ
考ヘラレマスコトハ、澤山ナ軍屬ガ戰地ニ
參ツテ居リマスガ、是等ノ者ト恩給法トノ
關係ガドウナツテ居ルカ、之ヲ一應御伺致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=10
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011・樋貝詮三
○樋貝政府委員 恩給法ノ根本改正ト云フ
御趣旨ガ、過日ノ御質問ノ時ニモ實ハ私等ノ
方ニハツキリ致シマセヌデシタガ、文字ノ傳
ヘル意味其ノ儘ニ取リマシテ、兎ニ角大キ
ナ改正ト云フヤウナコトニ諒解致シタ譯デア
ツタノデアリマスガ、御趣旨ノヤウニ恩給ノ
ヤウナ制度ハ廣ク行クノガ適當ダト云フコ
トハ確ニ考ヘラレマスノデ、獨リ官吏、或
ハ軍人ト云フモノニ限ラズ、所謂民間ノ人
ニ付テモ斯ウ云フ制度ガ發達スルコトガ
宜クハナイカト云フコトガ考ヘラレマス、
唯サウ云フ民間ノ方ノ恩給ニ付キマシテ
ハ、是ハドチラカト申セバ民間デ人ヲ使ツ
テ居ル者ノ方デ考フベキコトニ屬スルノデ
ハナイカト思ツテ居リマス、丁度國家ガ使
ツテ居ル官吏ヤ、又國家ノ爲ニ戰ニ從事シ
テ居ル軍人ニ付テ恩給制度ガアルヤウナ工
合ニ、民間ノ團體、例ヘバ會社ナラ會社員
ト云フヤウナモノニ對シマシテハ、會社デ
恩給制度ト云フヤウナモノヲ考フベキデハ
ナイカト思ヒマス、サウ云フ風ナ特別ナ團
體ニ屬セナイ分散シタ人々ニ對シテ、更ニ
斯ウ云フヤウナ方法ヲ何カ考フベキデハナ
イカト云フコトガ第一ニ考ヘラルベキコト
ダト思ヒマス、ソレ等ノ點ニ、付キマシテ
ハ、民間會社ナドニ於キマシテモ、或ハ一
時金デ退職手當ト云フヤウナ名ノ下ニ、或
ハ又場所ニ依リマシテハ年金的ノ制度ヲ認
メルト云フヤウナコトモアリマス、又官廳
ナドノ方面ニ於キマシテモ正式ノ官吏ト云
フモノデナイ、併シナガラ國ノ仕事ニ從事
シテ居ルト云フ職工ダトカ、或ハ所謂雇員
ト云ツタヤウナ部類ニ屬スル者ノ爲ニ、共
濟組合ノコトモ考ヘテ、段々ニソレガ發達
シテ參ツタヤウナ譯デ、勿論根本ノ制度ト
シテ多數ニ及ボスト云フコトニ付キマシテ
ハ、獨リサウ云フ所謂恩給バカリデハ片付
カナイ部分ガ相當ニアルカト思ツテ居リマ
ス、ソレデサウ云フコトニ付キマシテハ、
恩給法ノ改正ニ伴ヒマシテ、又恩給金庫ノ
設立ナドニ伴ヒマシテ、民間ノ有力會社ナ
ドニ於キマシテモ、恆久的ナ施設ヲ考ヘテ
見タイト云フヤウナコトヲ非公式ニ申サレ
テ居ルノモアリマスノデ、恩給金庫ナドヲ
通ジテ、將來ソチラノ方面ノ發達ヲ見ルノ
デハナイカト考ヘテ居ル次第デアリマス、
先程具體的ニ例ヲ御擧ゲニナリマシタ軍屬
ト恩給法トノ關係ハドウナルカト云フ御尋
デスガ、軍屬ト稱セラレル者ノ中ニモ色々
ナ者ガアリマシテ、官吏ノ身分ヲ持ツテ居
ル者モアリマス、ソレヲ持ツテ居ラナイ者
モアリマス、官吏ノ身分ヲ持ツテ居リマス
者ハ恩給法ノ範圍ニ入ル譯デアリマスガ、
官吏ノ身分ヲ持ツテ居リマセヌ者ハ、雇員
或ハ傭員ト云フヤウナ資格デ參ルコトニナ
リマスガ、ソレ等ノ者ニ付キマシテハ恩給
法自體ハ適用ガアリマセヌ、恩給法ト云フ
モノガ存在スル爲ニ、自然サウ云フモノガ
考慮ニ入レラレテ、諸種ノ給與ナドニ影響
ヲ及ボシテ居ルコトハ、アリマセウケレド
モ、恩給法自體ノ適用ハアリマセヌ、差當
リト致シマシテサウ云フ所マデ恩給法ノ適
用ノ擴大致シマスコトハ、是ハ官吏ト官吏
デナイ者トノ間ニ、實際官廳ナドニ於キマ
シテモ、心構ヘ其ノ他ニ付キマシテ餘程開
キガアルコトガ考ヘラレマス、是ハ實情デ
アリマス、ソレカラモウ一ツハ財政ノ方カ
ラノ顧慮モアリマス、兩面カラ考ヘマシテ、
マダ差當リソレニ恩給法ヲ適用シテ、恩給
ヲ給與シヨウト云フ所マデ考ヘテ居リマセ
ヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=11
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012・塚本重藏
○塚本委員 軍屬ノ中ニモ公吏モ居リマス
ルシ、種々雜多デアツテ、其ノ資格ノアル
者ハ勿論恩給法ノ適用ヲ受ケル、是ハ言フ
マデモナイノデアリマスガ、官公署ニ於キマ
シテモ所謂官吏マデニ行ツテ居ラナイ職員
ト申シマスカ、サウ云フモノヲ漸次擴ゲテ
行クヤウニシタ方ガ宜イト思フ、財政上ノ
コトニ付キマシテハ後デ又私ノ所見ヲ述べ
テ御意見ヲ御聽キシタイト思ヒマスガ、恩給
法ノ根本的改正デ考ヘラレマスコトハ、此
ノ議會デモ郵便年金法ガ改正ニナリマスガ、
是モ一ツノ謂ハバ一定ノ掛金ヲシテ置イテ
老後ニ年金ヲ貰ヘルト云フ制度デアリマシ
テ、恩給ノ性質ト大シテ變ラナイト思ヒマ
スガ、サウ云フ制度ヲヤハリ漸次擴ゲテ行
ク必要ガアルト思ヒマス、更ニモウ一ツハ
養老年金ト申シマスカ、國民年金ト申シマ
スカ、サウ云フヤウナ廣イ範圍ニ此ノ年金制
度ノ充備スル必要ガアル、唯官吏、〓育職員
警察官、監獄職買或ハソレ等ノ待遇職員ダ
ケガ恩給法ノ恩典ニ浴シテ其ノ他ノ全國民
ガ何等ノ恩惠ガナイト云フコトハ、今日ノ
所謂總國力戰ト云フ建前カラ見テ不公平デ
ハナイカト思フノデアリマス、政府ハ機會
アル每ニ犠牲ハ公平ニ負擔シテ貰フノダ、
斯ウ言ツテ居リマスガ、其ノ犠牲ニ報イル
途モ亦公平デナレバナラヌト考ヘマス、サ
ウ云フ意味ニ於テ此ノ養老年金トカ、或人
國民年金ト云フヤウナ制度ヲ樹テテサウ
シテ此ノ恩給法ニ似タヤウナモノニシテ國
民ノ老後ニ安心ヲ與ヘル、所謂國民ノ生活
ニ安心ヲ與ヘルト云フコトガ今日ノ場合、
是ハ國家トシテ當然行ハナケレバナラヌ一
ツノ國策デハアルマイカト考ヘルノデアリ
きく、此ノ點ニ付テノ御所見ヲ伺ヒタイト
思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=12
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013・樋貝詮三
○樋貝政府委員 御尤ナ御尋ト考ヘテ居リ
やく、唯諒承シテ戴キタイコトハ、所謂養
老年金「オールドペンション」アノ制度ト官
吏ノ恩給制度ト云フモノガ、本質ニ於テハ
非常ニ違ツテ居ルコトト存ジマス、ソレハ
名前ガ同ジク「ペンション」ト言ヒ、又譯シ
マシタ所デ養老年金ト云フ風ニ日本デハ譯
サレテ居リマスシ、恩給ナドト非常ニ近イ
名前ニ譯サレテ居リマスルノト、ソレカラ
又恩給モサウデアリマスルガ、此ノ年金ハ
殆ド終身的ニ、而モ每年々々給與サレルト
云フヤウナ點ガ非常ニ外形ガ似テ居リマス
カラ、サウ云フ點ヲ比較シテ、サウ云フヤ
ウナ趣旨デナイノニ、官吏ヤ軍人ダケニ付
テ恩給ガアルノハ片手落デハナイカト云フ
ヤウコトガ屢〓論ゼラレルノデアリマスガ、
實ハ中味ハ非常ニ違ツテ居ルモノト吾々ハ
考ヘテ居ルノデアリマシテ、官吏ヤ軍人ノ
方ハドチラカト申セバ、人ヲ使ツテ居ル者
ガ、自分ノ仕事デ段々ニ能力ヲ失ツテ行ク
者ニ對スル補給ト云フヤウナ性質ヲ本來ノ
恩給ノ方ハ持ツテ居リマス、段々ニ年ヲ取
ツテ行ク間ニ、十分ナ積立金ナドハ自力デ
ヤツテ行ケルヤウニ、タツプリト俸給其ノ
他ノ給與ナドモ與ヘラレテ居レバ、自分デ
積ンデ行クト云フコトニモナリマセウト思
ヒマス、ソレデ特別ナ恩給ヲ與フルノ必要
ハナシト云フコトニナリマス、ソレカラ又
例ヘバ戰爭ニ於テ、或ハ其ノ他ノ公務ニ於
キマシテ急ニ病氣ニナツタリ怪我ヲシタリ
スル、戰爭ニ行ツテ片腕ヲ落シテシマツタ
ト云フ人ガ生キテ居ルトシテ、其ノ人ガ十
分ニ働ケナクナリマスノデ、ドウシテモ之
ニ對シテハ國家デ之ヲ補給シテヤラナケレ
バナラヌ、腕ヲ返シテヤル譯ニハ行カヌカ
ラ、ドウシテモ其ノ人ノ生活ノ爲ニ必要ナ
金ヲ以テ之ヲ補フト云フコトヲシテヤラナ
ケレバナラヌダラウト思ツテ居リマス、是
ハ非常ニ急激ニ來ル能力ノ減損デアリマス
ガ、此ノ他勤メテ居リマス者ハ徐々ニ年ヲ
取ツテ行ク、而シテ仕事ガ一方ニ偏シテ居
ルモノデスカラ、此ノ間ニ貯蓄ノ出來ルヤ
ウナタツプリシタ給料ヲ貰ヘレバ宜シウゴ
ザイマスガ、サウデナケレバ-言葉ハ不
穩當デアルカモ知レマセヌガ、一種ノ不融
通ナ人間デアリマスノデ、補給シテヤラナ
ケレバナラヌト云フコトニナリマス、サウ
云フ譯デ今日ノ恩給法ニ於キマシテハ、急
激ニ能力ヲ失ツタ者、徐々ニ失ツテ行ク者
ニ對シテハ補給ヲシテ行ク、斯ウ云フコト
デアリマス、徐々ニ失ツテ行ク方ハ、現在ノ俸給
ガ將來ノ爲ニ多少備ヘテ行ケルダケノ餘分サ
ヘアレバ、恩給ハ廢メテ廢メラレヌコトハナ
イト思ヒマス、併シ急激ニ來ル戰爭デ片腕ヲ
失フトカ云フコトハ、サウ云フ途ハ有リ得ナ
イノデスカラ、ソレハドウシタツテ恩給ト云フ
モノデ補ツテ行カナケレバイカヌト云フコ
トデ、恩給ノ根本ノ建前ハサウ云フ所ニ出
發シテ居リマス、給與スルカシナイカ、或
ハ給與スル場合ニ於キマシテノ金額ヲドウ
スルカト云フコトモ、ソレデ考慮シテ居ル
ヤウナ譯デアリマス、之ヲ擴ゲテ參リマス
ナラバ、例ヘバ或ル會社ナラ會社デ人ヲ使
ツテ居ルト云フヤウナ場合ニ、其ノ仕事ニ
從事シテ居テ徐々ニ能力ヲ失ツテ行ク、卽
チ長イ間會社ノ事ニ沒頭シテ勤務シテ、會
社ノ給與ガ將來ノ爲ニ備ヘガ出來ヌヤウナ
低イモノヲヤツテ居レバ、恩給ノヤウナ制
度デヤルベキダラウシ、又會社ノ給料ガ良
クテ多少將來ノ爲ニ貯蓄シテ行ケルト云フ
コトナラバ、其ノ會社トシテハ特別ニ將來
恩給ヲヤラナクテモ宜イト云フコトニナル
ノダラウト思ツテ居リマス、大體ニ於キマ
シテハ會社ナドノ給與ノ方ガ、官公吏ヤ軍
人ナドニ對スル給與ヨリモ多イノデアリマ
ス、大抵官吏ナドガ實業界ノ方ニ行ク場合
ハ、四割カ五割增-非常ニ極端ナ例ハ五
倍モ六倍モ貰ツテ實業界ニ入ルト云フノガ
アリマスガ、是ハ一般デハナイ、通常ニ於
テ四割カ五割ハ俸給ガ良クナツテ行クト云
フコトニナツテ居リマス、ソレデ實業界ノ
方ノ給與トスレバ、將來ノ爲ニモ多少ハ備
ヘテ置ケルノデハナイカト云フコトガ考ヘ
ラレマス、實業界ノ方面デハ給與モ亦御說
ノ通リ區々ニナツテ居リマス、ソレデ良イ
給料ノ會社等ニ於キマシテ、理論上カラ申
セバ恩給ハ必要ハナイト思ヒマスガ、却テ
良イ給與ノ會社ノ方デ將來ノ爲ニ年金ヲヤ
ルト云フヤウナコトヲ現在ヤツテ居リマス、
其ノ制度ガナイ譯デモナイシ、若シナイト
スレバソチラノ會社ノ方デ考フベキ立場ニ
アルノデハナイカ、養老年金ニナリマスル
ト、全ク是トハ趣ヲ異ニ致シマシテ、或ル
老年ニ至ツテ生活ノ出來ナイヤウナ人ノ
種ノ保險ト致シマシテ、前カラ危險ヲ長イ
年代、多數ノ人ニ分散シテ行クト云フ組織
ニナツテ居リマスノデ、今ノ人ヲ使ツテ居
ル者ガ、其ノ使ハレテ居ル者ニ對シテノ將
來ヲ考ヘテ行クト云フノトハ非常ニ趣旨ガ
違ヒマス、名前ガ非常ニ似テ居ル、ソレカ
ラ給與ノ仕方ナドガ似テ居リマスカラ、動
モスルトソレト是トガ比較サレマスケレド
モ、養老年金ト云フ方面ハ、全ク別個ノ見
地カラ是ハ發達サセナケレバナラヌモノト
考ヘテ居ルヤウナ次第デアリマス、郵便年
金ノ擴張ナドニ於キマシテモ、多分ニサウ
云フコトニ代ルト言フト語弊ガアルカ知レ
マセヌガ、兎ニ角ソレノ一助トシテ今囘モ
提出サレタヤウナ譯デアリマス、養老年金
全體ニ付キマシテハ、所謂官吏ヤ公吏軍人
ナドノ恩給ト云フモノト比較ナシニモ、獨
立シテ別途ニ考フベキ問題ダト承知致シテ
居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=13
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014・塚本重藏
○塚本委員 今圖ラズモ恩給法ノ根本趣旨
ヲ拜承致シタノデアリマスガ、恩給法ガ出
來マスル一番最初ノ明治八年デスカ、海軍
デ決メラレタモノニ依リマスト、海軍退隱
令ト云フ名稱ヲ使ツテ居ラレマスヤウニ、
是ハ年取ツテ引退シタ場合ニ對スルソレ相
當ナ給與ヲスルト云フ精神カラ出テ居ルヤ
ウデアリマス、今ノ說明ニ依リマシテモ、
活動能力ガ徐々ニ或ハ急激ニ減損スルノデ、
ソレニ對スル補償ト云フヤウナ意味ガ主ナ
モノデアルヤウニ聽イタノデアリマス、サ
ウシテ此ノ國民年金、養老年金ト云フヤウ
ナモノハ、是ハ恩給ノ方トハ別ニソレ〓〓
民間ノ會社工場等ニ於テ考ヘラレルベキモ
ノデハナイカ、斯ウ云フ御意見デアリマシ
タケレドモ、今日ノ民間會社工場等ニ於キ
マシテ、サウ云フ年金ノヤウナ制度ヲ設ケ
テ居ルト云フ所ハ、恐ラクサウ譯山ナイノ
ヂヤナカラウカ、一、二ノ指ヲ屈スル程
度ノモノヂヤナカラウカト思ヒマス、勿論
陸軍、海軍其ノ他ノ官公署ニ隷屬シテ居ル
ト言ヒマスカ、其ノ管轄下ニアリマスル工
場等ニ於テハ、之ニ類似スルモノガアルノ
デアリマスケレドモ、其ノ他ノモノニ付テ
ハ殆ドアリマセヌ、唯退職積立金及退職手
當法ト云フ法律ガ出來マシテ、ソレニ依ツ
テ退職積立金ト云フモノガ、罷メタ場合ニ
貰ヘルヤウニナリマシタガ、是ハ一時
ニ貰フ金デアリマシテ、而モ其ノ額ハ極メ
テ僅カデアリマシテ、殆ド其ノ生活ヲ保障
スルニハ足ラナイノデアリマス、之ヲ今ノ
ヤウナ御考デ居ラレマシテハ、國民ハ永久
ニ救ハレル時ガナイト悲觀セザルヲ得ナイ
ノデアリマス、郵便年金ト云フモノハ出來
マシタケレドモ、議會デモ論議セラレテ居
ルヤウニ、其ノ發達ガ甚ダ遲々タルモノデ
アリマシテ、是ハヤハリ國家ノ手ニ依ツテ、
サウシテ全國民ノ老後ノ生活ニ安心ヲ與ヘ
テヤルト云フ、此ノ制度ガ必要デアルト考
ヘマス、尙ホ少シ質問ガアルノデアリマス
ガ、此ノ恩給法ノ根本改正ニ關シマシテ齋
藤委員カラ質疑ガアルヤウデアリマスカラ、
一時齋藤氏ニ讓リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=14
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015・高橋泰雄
○高橋委員長 齋藤君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=15
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016・齋藤直橘
○齋藤委員 只今塚本君ヨリ、恩給法ノ全
體ノ改正ニ付テ御意見ガアリマシタガ、私
モ先日恩給法ノ全面的改正ニ付テ御考ガナ
イカト云フコトヲ御尋致シマシタ所ガ、差
當ツテサウ云フ考ガナイ、斯ウ云フ御答デ
アツタノデアリマス、其ノ後私モ恩給法關
係ノ、前議會或ハ前々議會等ノ速記錄ナド
ヲ見マシテ、多少勉强致シタノデアリマス、
其ノ當時ノ政府委員ノ御答辯ヲ伺ツテモ、
或ハ議員諸君ノ發言ヲ見マシテモ、結局大
體意見ハ一致シテ居ルヤウデアリマシテ、
歸スル所財政問題ニ歸着スル、金ガナイト
コ
云フヤウナコトニ落着クヤウデアリマス、
卽チ財政上ノコトサヘ許サレルナラバ隨分
政府トシテモ改正シテ見タイ、斯ウ云フ點
ガ多イノダラウト思フ、サウ云フコトハ後
ニ讓リマシテ、-而モ塚本君ハ財政上ノ
意見ガアルヤウデアリマスカラ、私モソレ
ヲ承ツテカラ申上ゲテ見タイト思ヒマス、
唯此ノ事變ニ當面シテ、全面的ノ改正ハ出
來マセヌデモ、事變關係ノコトダケハ是ハ
ヤラナクテハナラヌト思フ、サウ云フ結果
カラ今囘ノ御改正モ現ハレタモノト思ヒマ
ス、吾々ハ此ノ案ニ付キマシテハ更ニ異議
ナイ考デアリマスカラ、アレハ宜イノデア
リマスケレドモ、只今塚本君ノ御話ヲ承リ
マスト、事變ニ關係シタ人々ニ成ベク多ク
恩給ヲ均霑サセル、斯ウ云フコトヲ申サレ
テ居ル、是ハ私モ洵ニ至極御尤ナ御意見ダ
ト思ヒマス、所デ塚本君ト恩給局長ノ問答
ヲ承ツテモ、大體精神ノ在ル所ハ分リマス
ケレドモ、ドウ云フ人々ガ此ノ事變ニ活動
シテ居ラレルカ、是ハ軍人ハモウ分ツテ居
リマス、或ハ軍人ニ準ズベキ人モ分ツテ居
ル、官吏デアリマシテモ其ノ時ノ資格デ恩
給ヲ貰ヘルコトモアリ、或ハ恩給ニ關係ナ
イコトモアルヤウニ思フ、其ノ他軍デ色々
ナ人ガ活動シテ居ルヤウデスガ、ドウ云フ
名目ノ人ガ活動シテ居ルノカ、先程御話ガ
アツタガ、ソレハ一括スルト、雇員ト云フ
ヤウナコトニナルノデアリマス、或ハ囑託
ト云フヤウナ人モ活動シテ居ラレルヤウニ
思フノデス、サウ云フ類ノ人々ヲ此ノ際具
體的ニ承ツテ見タイノデス、ドウ云フ人ガ
活動シテ居ルカ、例ヘバ宣撫班ト云フ人ガ
此ノ頃活動シテ居ルヤウデスガ、アア云フ
人ハ國家ノ關係ガドウ云フヤウナ立場ニア
ル人デアルカ、雇員カ囑託ダラウト思ハレ
マスケレドモ、モツトソレヲ詳シク承リタ
イ、又サウ云フヤウナ宣撫班類似ノヤウナ
人ガモツト他ニモ居ルノカドウカ、或ハ技
術者ナドニモ居ルノヂヤナイカト思フ、サ
ウ云フノモ承ツテ置キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=16
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017・樋貝詮三
○樋貝政府委員 軍ニ屬シマシテ活動致シ
テ居リマス人ト、ソレカラ軍ニハ屬シテ居
ラヌケレドモ、事變ノ爲ニ主トシテ軍ノ外
廓的ナ存在トシテ活動シテ居ル者トアル譯
デアリマス、軍ノ方ハ、固有ノ軍隊ハ是ハ軍
人デ出來テ居リマス、ソレカラ軍人以外ニ軍
ニ屬シテ居リマス者トシテハ、所謂軍屬デア
リマスガ、是ハ文官デアル者モアレバ、公
吏デアル者モアレバ、其ノ身分ヲ保有シタ
儘ニ向フニ屬シテ居リマス者ガアリマス、
其ノ他ニ名前ハ色々雇員ト言ヒ、囑託ト言
ヒ、或ハ中ニハ顧問ト言ヒ、色々大小ニ從ヒ
マシテ吾々ノ常識ガ許スヤウナ色々ナ名前
ガ付イテ居リマスケレドモ、一括シテ言ヘ
バ、官吏ナドノ身分ヲ持タナイ、サウ云フ
身分デナクテ而モ尙ホ軍ノ方ノ仕事ヲシテ
居ル人々ガ澤山アリマス、近ク出來ルコト
ニナツテ居リマス例ノ興亞院連絡部ナドニ、
現地ノ方デ吸收サレルヤウナ人々ナドガ之
ニ屬シマスケレドモ、高イ地位ノ人トシテ
ハ、內地ニ居ツテ親任待遇ヲヤツタト云フ
ヤウナ人ナドモ向フニ參ヅテ居リ、或ハ勅
任一二等ノ所ニ達シタト云フヤウナ人モ居
リマスガ、ソレ等ガ顧問トカ、或ハ囑託ト
カ云フヤウナ名前デ、隨テ特別ナ官吏ト云
フ身分ヲ持タズニ囑託サレテ、實ハ社會的
ニ上下ハアルケレドモ、法律的ノ眼カラ見
レバ雇員ナドト同ジ立場ニ立チマシテ、サ
ウシテ色々ノ仕事ニ携ツテ居リマス、ソレ
ハ軍ニ屬スル特務部ナドノ將校ナドノ指圖
ヲ受ケマシテ、司令官ノ統下ニ入ツテ働イ
テ居リマスガ、サウ云フ人ガ澤山アリマス、
尙ホ其ノ他ニ純然タル地方關係デ向フノ方
ニ-內地デ申シマスレバ雇、或ハ傭人ト
官廳デ呼ンデ居リマスガ、其ノ傭人ニ屬ス
ルヤウナ者モ澤山參ツテ雜務ニ服シテ居ル、
ト云フ狀態デアリマス、ソレハ軍ノ方ニ屬
シテ仕事ヲシテ居ル人々ナノデアリマスガ、
其ノ他ニ尙ホ內地ノ方ノ官廳カラ派遣サレ
タ人ト致シマシテ、例へバ鐵道ニ於ケル技
師或ハ書記官ヲ派遣スル、或ハ大藏方面
ニ於キマシテモ財務官ヲ派遣スル、或ハ通
信ナドノ方面ニ於キマシテモ、遞信省カラ
書記官以下、或ハ技師、技手ト云フヤウナ
人々ガ派遣サレマシテ、又ソレニ隨イテ其
ノ雜務ヲヤル爲ニ雇員ナドガ附キマシテ、
澤山現地ニ行ツテ働イテ居ルヤウナ事情デ
アリマス、是ガ內地ヤ或ハ朝鮮、臺灣ト云
フ風ナ、所謂外地ト稱セラレテ居リマス所
ノ書記官ト、總動員事務ナリ、或ハ直接ノ
戰務ナリニ協同シテ働イテ居ルヤウナ狀態
ニアリマス、法律的ニ見レバ官吏、官吏ニ
アラザルモノト云フ風ニ分カレテ居リマス
ガ、官吏ニアラザル者ト、又社會的ト申シ
マセウカ、實際上ハ等級、位地、仕事ノ重
要サト云ツタヤウナモノニ千差萬別ナ相違
ガアリマシテ、到底是ハドウ云フ仕事ヲシ
テ居ルト云フコトニ付テハ、一々枚擧ニ遑
ナシト云フ位ナ差別性ヲ持ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=17
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018・齋藤直橘
○齋藤委員 大體ハ雇員ト云フヤウナコト
ニナルノデスガ、ソコデサウ云フ人ガ、ヤ
ハリ雇員タル資格デソレ〓〓待遇ヲサレテ
居ルト思フノデスケレドモ、戰死ナドシタ
場合ハドウ云フコトニナルノデスカ、ソレ
ハ殆ド恩給法ニ關係ノナイ人デスガ、何カ
實質上特別ナ扱ヒヲサレルノデハナイカト
思ヒマスガ、サウ云フコトハ御分リニナツ
テ居リマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=18
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019・樋貝詮三
○樋貝政府委員 サウ云フ人ガ戰死シマシ
タ場合ニハ、恩給法ノ方カラ言ヘバ何等顧
ミラレマセヌノデス、ソレカラ其ノ他ノ點
ノ給與ノ方ハ、今日ハ陸軍ノ方ハ出ラレテ居
リマセヌガ、海軍ノ方ハ川崎中佐ガ居ラレ
マスカラ、具體的ニ御答致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=19
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020・川崎進
○川崎說明員 雇員傭人ト云フヤウナ者ガ
戰死致シマスト、是ハ戰死バカリデハアリ
マセヌガ、公務デ亡クナリマスト云フト、
給與ノ方面ニ於キマシテハソレ相當ノ待遇
ガアルノデアリマス、是ハ別ニ雇員扶助令、
傭人扶助令ト云フ勅令ガ出テ居リマシテ、
ソレニ依リマシテ待遇サレルノデアリマス、
此ノ扶助令ノ中ニハ、遺族扶助料モアリマ
スシ、ソレカラ傷病ノ扶助料モアリマスシ、
埋葬料ノ如キモアルノデアリマス、但シ遺
族扶助料ノ方ハ、恩給法ニ依リマスト年金デ
アリマスケレドモ、雇員扶助令、傭人扶助
令ノ方ハ一時金デアリマス、ソレカラ戰死
ノ場合ニ於キマシテハ、靈ヲ慰メルト申シ
マスカ、斯ウ云フ方面ニ付キマシテハ軍人
ニ準ジマシテ色々ノ弔靈ノ方法ヲ講ジテ居
ル譯デアリマス、靖國神社ノ合祀ナドハ勿
論ヤラレテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=20
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021・齋藤直橘
○齋藤委員 雇員傭人ニ對シテモサウ云フ
規定ガアツテ、其ノ規定ニ基イテヤツテ居
ラレル、斯ウ云フコトニ承ツタノデスガ、
ソレハ恩給法トハ餘程差ガアルダラウト思
ヒマス、其ノ給與金額ナリガ、只今御話ノ
通リ扶助料ノ如キモ年金デハナイ、斯ウ云
フ御話デアリマシタガ、サウ云フコトガ私
共ハ實ヲ言フト此ノ事變ニ際シテ、恩給法
ノ改正ヲシテ戴キタイト思フ所デス、雇員
傭人ト云フ人々ハ兵隊デハアリマセヌケレ
ドモ、或ハ志願ヲシテ行カレタ人々デアル
カモ知レマセヌガ、ソレデアリマシテモ戰
爭ヲサレルト云フコトガ、是ハヤハリ國ニ
盡サレル、或ハ盡サレタ所ノ功績ト云フモ
ノハ、兵隊サンニサウ讓ラヌノデアリマス、サ
ウ云フ者ハ國家トシテモ其ノ遺族ニ對シテ相
當扶助ノ途ヲ考ヘナケレバナラヌ、今御話
ニ依リマシテモ、一方ハ年金ヲ頂戴シテ居
ル、一方ハ恐ラク僅カノ一時扶助金ニシカ
當ラヌト思ヒマス、サウ云フコトヲ恩給局
ハ相當御主張ニナツタノデスカ、何レ恩給
局トシテハ事變ニ際シテ各種ノ方面カラ恩
給法ヲ〓究サレテ、サウシテ此ノ事變ニ對
應サレル御意見ガアルニ相違ナイ、偶〓塚本
君カラ、多クノ事變關係ノ人々ニ恩給法ノ
恩典ニ浴セシメタイ、斯ウ云フ御發議ガア
リマシタノデ、私モソレハ豫テサウ思ツテ
居ツタ、是ハドウシテモサウナケレバナラ
ヌ、殊ニ下級ノ人ニサウシテ貰ハナケレバ
ナラヌト思フ、ソレ等ニ付テ何カ御意見ガ
アツテモ、ヤハリ財政上出來ヌノデアル、
斯ウ云フコトニナルノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=21
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022・平木弘
○平木政府委員 只今ノ問題ハ、恩給局ノ
方ニ於キマシテモ前カラ檢討シテ居ル問題
デアリマス、唯先程樋貝政府委員カラ御話
ガアリマシタ通リニ恩給法ノ建前ガ、私共
ト致シマシテハ大體公務員ニ限定シタイ、
公務員以外ノ方デ實質上恩給法ト同ジヤウ
ナ建前デ救濟ヲスル必要ナ場合モ、勿論澤
山アルト考ヘテ居リマス、ソレハ會社ノ從
業員トカ、會社其ノ他ニ關係ガアリマセヌ
者ノ養老年金ノ問題トカ、色々ニ問題ガア
リマセウガ、ソレヲ恩給法ノ中ニ包含シマ
シテ考ヘルト云フコトハ、私共現在考ヘテ
居リマセヌ、隨ヒマシテ只今ノヤウナ官吏
ノ身分ヲ持タナイ雇員トカ傭人ノ問題ニ付
キマシテハ、ヤハリ其ノ方面デ必要ナル措
置ヲ講ズルノガ適當デハナイダラウカ、サ
ウシテ行クノガ、實質ハ同ジデアリマセウ
ケレドモ、國ノ恩給法其ノ他ノ建前ヲ各〓守
リ且ツ有效ナ目的ヲ達スル方、法デハナイ
カ、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=22
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023・齋藤直橘
○齋藤委員 ソレハ公務員ト云ツテモ、公
務員ト云フモノハ自然ニ決ツテ居ルノデア
リマセヌ、ソレハヤハリ公務員ト云フモノ
ハ斯ウ云フモノダト云フコトヲ國ガ決メ
テ、ソレデ公務員ノ範圍モ決マルノデス、
今戰地ニ在ツテ國家ノ爲ニ働イテ居ル人
ガ、ソレハ雇員デアツテモ傭人デアツテモ
公務員ニ入レル、是ハ一向差支ナイト思
フ、サウ云フコトヲ此ノ事變關係ノ問題ト
シテ御取上ゲニナツテ、サウシテ御〓究ニ
ナルコトハ私共適切ナコトデハナイカト思
フ、恩給法ノ全面的改正ヲ行フト云フコト
ハ成程容易デナイト思ヒマス、ガ少クモ
現在ノ恩給法ノ範圍ニ於テ公正ヲ期シテ行
クト云ツタヤウナコトハ、是ハ當然爲サナ
ケレバナラヌト思フノデス、サウ云フ戰地
ニ於テ働イテ居ル雇員トカ傭人トカ云フ人
ガ、私ハ常識判斷デ、少クモ戰爭サレタヤ
ウナ場合ニハ、是ハ絕對ニ兵隊サン同樣ヂヤ
ナイカト思フ、當然是ハ國家ガ見テヤラナ
ケレバナラヌト思フ、何カサ、ウ云フコトヲ
御考ニナル餘地ガアルノデスカ、一寸此ノ
際伺ツテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=23
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024・樋貝詮三
○樋貝政府委員 御趣旨洵ニ御尤ト思ヒ
マス、先年雇員全體ニ付テ恩給制度ヲ
考ヘヨウト云フコトデ私ガ試ミタコトガ
アリマス、モウ十五六年モ前ニナリマ
スガ、是ハ色々檢討致シマシタ、恩給ヲ
雇員程度マデ擴張スベキカ、雇員トシテ
獨立ニ恩給ヲヤラヌトシテモ、雇員ノ在職
年數ト云フヤウナモノヲ通算スル方法ヲ
講ズルカ、或ハ雇員トシテ公務ニ斃レタ場
合ニ恩給ヲヤルト云フヤウナコトヲ考フベ
キデハナイカト云フコトデ、色々檢討ヲ
致シテ見マシタ、是ハ第一ニ非常ニ大キナ
影響ヲ來シマスコトハ、財政ノ關係デアリ
マス、非常ニ數ガ多イノト、第二ニハ雇員
ノ心理ト申シマセウカ、雇員ダツテ全部ト
云フ譯デハアリマセヌガ、大體ノ傾向ヲ言
ヒマスト、腰ガ落付カヌト言ヒマスカ、官
吏ニナツタ者トハ實際ニ於テ何處トナク違
フ所ガアルノデアリマス、同ジ人間デモ任
官シマスト、腰ノ落付キ方ガ違フノデアリ
マシテ、官廳ノ具體的ノ例ヲ申シマシテモ、
午後ノ四時ニナリマスレバ大體雇員ハサツ
サト歸ツテシマフ、ソレガ判任官以上デア
ルト、ヤハリ上ノ者ノ用事ガ濟ムマデハ、
居殘ツテ居ルト云フヤウナ傾向ニナツテ居
リマス、又課長ナリ局長ナリトナレバ、責
任上夜ヲ徹シテモ屢〓、仕事ヲヤル、サウ不
平モ言ハズニ仕方ガナイ、當然サウ云フモ
ノト云フヤウナ考デ任官シタ者ハ受入レテ
居ルト云フヤウナ實情デアリマス、ソレ等
ノ色々ナ點ヲ考慮致シマシテ、到底雇員マ
デ恩給ヲ延バスコトハ出來ナイト云フコト
デ、現業的ナ方面デハ例ノ共濟組合ト云フ
モノガ發達致シマシタ、官吏ノ方ハ入レズ
ニ雇員、傭人デ共濟組合ヲ組織スル、之ニ
ハ國家ガ補助シ、當人達ニモ納金ヲサセテ、
恩給ニ類シタ、或ハ一時金的ニ給與ヲスル
ト云フヤウナ共濟組合ヲ官廳ニ澤山拵ヘタ
ノデアリマシテ、今日色々ナ方面ニ相當發
達シテ居リマスガ、サウ云フモノデ行ツタ
方ガ宜カラウ、極ク長イ雇員モアリマスケ
レドモ、大體一般ヲ通ズレバ雇員ノ在職期
間ハ短イノガ多イノデス、サウ云フヤウナ
所カラドウモ之ヲ官吏ヤ何カト一〓ニスル
譯ニハ行カヌ、別ニ取扱ツテ行カウト云フ
ヤウナコトニ結論ハナリマシタノデス、軍
人ノ方面ニ付テハ、所謂一般ノ兵ハ無論官
吏ヂヤアリマセヌガ、其ノ關係ハ全ク命令
服從デ、今ノ普通ノ雇員ノ如キ自由ナモノ
デハナイノデアリマス、是ハ全ク別ニ取扱
ハネバナラヌト云フ譯デ、軍人ニ於キマシ
テハ、軍ニ居ルモノト召集ニ依ルモノト之
ヲ區別致シマセヌ、全然一體トナツテ同ジ
ヤウニ働カナケレバナラヌト云フ譯デ、全
然區別致シテ居ラヌヤウナ狀態デアリマス、
ソコデ軍ノ方デ使ヒマスル雇員ト傭人トヲ
見合セテ考ヘマスト、ソコニヤハリ區別ノ
「ライン」ハ引キ得ルト云フコトガ考ヘラレ
マス、現在ノ事變ニ於キマシテモ、純粹ノ意
味ニ於ケル戰死ハ雇員、傭人ニハナイ建前
デアリマス、恐ラク今後トモナイダラウト
思ヒマス、ソレハ第一線ノ戰鬪ヲヤルト云
フヤウナ仕事ニハ雇員ヤ傭人ハ用ヒナイノ
デアリマス、隨テ色々ノ物ノ運搬デアルト
カ、或ハズツト後ノ方ニ居リマシテ事務ヲ
手傳フトカ云フヤウナコトニ使ヒマスノ
デ、ソレ等ガ假ニ偶〓敵カラ迂囘シタ大部隊
ニ襲擊デモサレレバサウ云フコトモゴザイ
マスガ、今マデ日本デサウ云フコトハアリ
マセヌ、純粹ノ戰鬪死ト云フ意味ニ於ケル
戰死ハ雇員ナドニハアリマセヌ、自ラヤル
コトガ兵ト雇員トデハ、餘程違ヒマスノデ、
立場ガ違フ爲ニ、兵ト同ジ恩給法デ律スル
コトガ公平デアルカドウカ、是モ考ヘナケ
レバナラヌト思ツテ居リマス、今ノ所デハ、
少クトモ此ノ事變ニ關シマシテ、軍人ノ方
ト斯ウ云フ雇員達ト全然同ジヤウニ取扱フ
ト云フ所マデ、其ノ必要ヲ認メテ居リマセ
ヌヤウナ次第デアルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=24
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025・齋藤直橘
○齋藤委員 雇員傭人ニハ戰死者ガナイト
承リマシタガ、サウトバカリハ言ヘナイト
思フ、併シ私ノ申シマシタノハ、兵隊サン
ト同樣ニ取扱ヘト云フノデハアリマセヌ、
ソレハ自ラソコニ階段ノアルノハ當然デア
リマスケレドモ、當然ノ階段ハアルニシテ
干、ヤハリ戰死ト云フコトニナレバソレ相
當ノ待遇ヲシナケレバナラヌ、先刻海軍ノ
政府委員ノ御話デハ、唯一時金ガアルダケ
デアル、年金ト一時金ト云フモノハ非常ニ
差ガアルコトハ御承知ノ通リデアル、モツ
ト接近シタ待遇ガ必要ヂヤナイカ、斯ウ云
フコトヲ希望シタノデアリマス
ソレカラ次ニ御尋致シタイノハ、根本的
ノ御尋ガアリマシタカラ、ソレハ一寸塚本
君ノ御尋ニナツテ居ルコトト關聯ガ淺イカ
モ知レマセヌガ、此ノ場合御尋致シタイト
思ヒマス、吾々恩給法ノ改正案ヲ見マシテ、恩
給法全體ノコトヲ考ヘマスト、ソシテ殊ニ事
變ニ際會シマシテ、事變ニ關係シテ居ル人ガ
恩給法ノ均霑ヲ如何ニ受ケテ居ルカ、公平
ニ受ケテ居ルカ、或ハサウ行ツテ居ラヌカ、
サウ云フヤウナコトヲ第一知リタイノデア
リマス、是ハ一箇條々々〓究シマシタ所
デ、吾々專門家デアリマセヌカラ到底容易
ナコトデハアリマセヌガ、大雜把ニ恩給法
ノ恩典ニ如何ニ及ンデ居ルカト云フコトヲ
御伺ヒシタイノデアリマス、ソコデ段々ト
〓究ヲ致シマスト、此ノ恩給法ダケデ戰死
者ノ遺族或ハ戰傷者、殊ニ重イ戰傷者ノ如
キハ、到底國家ガソレダケヲ以テ報ヒタイ
ト云ツテ滿足スルコトハ出來ヌノデアリマ
ス、是ハ法以外ニ色々ナ方法ガ講ゼラレナ
ケレバナラヌト思ヒマス、サウ云フコトヲ
考ヘマスト、是ハ恩給局ノ主管ノ範圍外ト
思ヒマスケレドモ、厚生省アタリデ昨年來
ドウ云フコトヲヤツテ居ルカ、恩給制度ト
相俟ツテヤハリ國家ノ報イル是ハ重大ナル
事柄ダト思フ、サウ云フコトハ厚生省ノ方
ガ御見エニナツテ居ラナケレバ已ムヲ得マ
セヌガ、サウ云フコトヲ承ルコトガ、吾々
ハヤハリ此ノ恩給制度ノ根本ニ觸レテ、
吾々ノ考ヲ決メルノニ非常ニ參考ニナルヤ
ウニ思フノデスガ、サウ云フ機會ヲ作ツテ
戴クコトヲ委員長ニ御願致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=25
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026・平木弘
○平木政府委員 斷片的ニハ無論私モ存ジ
テ居リマスガ、ソレデハ御滿足モ行カヌダ
ラウト思ヒマス、ソレカラ海軍ノ人事局ノ
川崎中佐ハ、〓要トシテハ厚生省ノ方デヤ
ツタ仕事モ存ジテ居ル、御承知ノヤウニ、
人事局ノ方ハ厚生省、恩給局ノ兩方ニ跨ツ
テ居リマスカラ、〓要ナラバ御說明出來ル
ト申シテ居リマスガ、御都合デ只今川崎中
佐ヨリ御答辯申上ゲテモ宜イト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=26
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027・高橋泰雄
○高橋委員長 一寸齋藤君ニ申上ゲマスガ、
此ノ機會ニ厚生省ノ政府委員ノドナタカニ
御出席願ツテ御答辯シテ戴ゲバ、其ノ方
ガ便宜カト思ヒマスカラ、一應照會シテ見
マスガ、其ノ間御滿足ガ行クカドウカ知リ
マセヌガ、海軍ノ方ガ御出席ニナツテ居リ
マスカラ、一應其ノ御話ヲ伺ツテ見タラド
ウカト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=27
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028・齋藤直橘
○齋藤委員 ソレデハサウ御願致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=28
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029・川崎進
○川崎說明員 私ハ唯サウ云フ方面ノ說明
ダケデゴザイマスガ、斯ウ云フ方面ニ關係
致シテ居リマスノデ、說明員トシテ申上ゲ
ママ、御話ノヤウニ恩給法バカリデ行ツテ
居ルノデハ決シテナイノデアリマシテ、恩
給法デハ第一ニ退職ト云フコトヲ條件トシ
テ居リマシテ、退職シナケレバ恩給法ト云
フモノハ發動サレナイノデアリマスガ、軍
人側ニ取リマシテハ軍人ニ居リマス時カラ
又出征スル前カラ何ガシカノ援助ガ必要ナ
場合ガ多イノデアリマス、ソレニ付キマシ
テハ軍人援護事業ト云フノデヤツテ居ルノ
デアリマス、援護事業ハ大體法ニ依ル援護
ト、法ニ依ラザル援護トニ分レマス、法ニ
依ルノハ軍事扶助法デアリマシテ、法ニ依
ラザルモノトシマスト、扶助法以外デ、是
ハ厚生省所管ノコトデアリマスガ、制度的
ノ扶助施設、或ハ團體ヲ以テスル扶助施設
ト云フモノヲヤツテ行ク、此ノ方ハ先ヅ應
召等ニナリマシテ出テ行キマス場合モ、法
ニ依ラザルモノヲ要スレバ發動致シマシテ
援護シテ行ク、ソレカラ軍人ニナリマシテ
カラノ援護ト云フモノハ、是ハ主トシテ軍
事扶助法ニ依ツテヤツテ居ル狀態デアリマ
ス、軍事扶助法ニ付キマシテハ要スレバ
當該者カラ御說明ガアルト思ヒマスガ、此
ノ制度ハ要スルニ生活困難ナ者ヲ困難デナ
イヤウニシテヤル、詰リ生活ノ水準線ニマ
デ達シサセテヤルト云フコトノ手段デ來テ
居ルノデアリマス、ソレカラ在役中ニ於キ
マシテモ、軍事扶助ダケデ賄ヘナイ點ガ多々
アルノデアリマス、例ヘバ軍事扶助法ノ
方ハ法デアリマス故ニ、戶籍ニ立脚シテ出
來テ居リ、色々ノ手續上ノ問題ガアルノデ、
是ハヤハリ一寸規定ニ引掛ツテ出來ナイ、
扶助ガ十分ニ賄ヘナイ點ガ多々アリマシテ、
内緣ノ妻ダトカ、或ハ私生子ダトカ、或ハ
同一戶籍內ニアラザル世帶ノ狀況ニ關ス
ルモノ、斯ウ云ツタ點マデハ法デハ出來ナ
イモノガアルノデ、ソレハ援護事業ト致シ
マシテ、制度的ノ扶助ニ依ツテヤツテ居ル
ヤウナ狀態デアリマス、ソレカラ軍人ガ退
職ヲ致シマス、其ノ退職、或ハ傷ツイテ
免役ニナル、或ハ病氣ニナツテ免役ニナツ
テ來ル者モアリマス、或ハ死亡スルト云フ
ヤウナ者モアリマスガ、此ノ死亡シタ場合
ニ於キマシテハ、恩給法ニ依リマシテ遺族
扶助料ニナツテ行クノデアリマスガ、其ノ
遺族扶助料ト死亡トノ間ニ若干ノ期間ガア
リマシテ、遺族ハ當面ノ生活問題ニ困ルト
云フヤウナ場合ニハ、是ハ軍事扶助法ノ適
用ナリ、或ハ援護施設ノ適用ニ依リマシテ、
困ラナイヤウニシテヤル、ソレカラ所謂傷
痍軍人トナリシマテ、傷痍疾病ノ爲ニ免役
サレテ行ク者ニ對シマシテハ、陸軍病院或
ハ海軍病院ヲ出マシテモ、直グ是ハ困ル問
題デアリマスカラ、此ノ方ハ厚生省ノ外局
デアル傷兵保護院ノ施設ニ引取ツテ世話ヲ
スル、卽チ疾病ノ方ハ傷兵保護院ノ經營シテ
居リマス所ノ傷痍軍人療養所ニ入レテヤル、
ソレカラ傷痍者ノ方ハ是ハ適當ナル療養ヲ
スルヤウニ仕向ケテ居リマス、サウシテ其
ノ療養ヲ要セザル者ハ、國立ノ職業再〓育
所ノ方ニ於テ職業再〓育ヲヤルトカ、或
直グ就職ノ出來ル者ハ軍病院ニ居リマス間
カラ能ク連絡ヲ取ツテ居リマシテ、就職ノ
方ニ振向ケル、斯ウ云フヤウナヤリ方デヤツ
テ居ルノデアリマス、ソレカラ御承知ノヤ
ウニ昨年十一月五日ニ恩賜財團軍人援護會
ガ出來マシテ、在來ノ團體ヲ統括致シタノ
デアリマスガ、此ノ恩賜財團軍人援護會ニ
於テモ、法ヲ以テ救濟出來ナイ所ノ援護ヲ
引受ケテヤル、斯ウ云フヤウナ方法デ進ン
デ居リマス、〓要御說明申上ゲタ次第デア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=29
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030・塚本重藏
○塚本委員 齋藤氏ノ言ハレマシタコトハ、
私ノ尙ホ言ハントスル所ヲ十分ニ述ベテ貰
ヒマシタノデアリマスガ、唯ソレニ對シマ
スル答ノ中ニ、ドウモ雇員ト公務員ト同ジヤ
ウニハ行カヌ、例ヘバ勤務振リニ於テモ面
白クナイ點ガアル、或ハ勤續ノ年數ガ短イ
トカ云フヤウナ色々ノ事情ヲ述ベラレマシ
タガ、是ハ待遇ニサウ云フ甲乙ガアルカラ、
結局其ノ勤務ノ上ニサウ云フ等差ガ現ハレ
テ來ルノデハナイカ、同ジ待遇ヲ以テシマ
スルナラバ、雇員ト雖モ、其ノ他ノ下級ノ
人々ト雖モ同ジヤウニヤハリ誠實ニ働クト
思フノデアリマス、人間ハ其ノ置カレル環
境ニ依ツテ考ガ各〓變ツテ參リマス、酬ユル
ニ適正ナル方法ヲ以テシマスレバ、ソレニ
對シマシテヤハリ勤勉ニ働クダラウト思ヒ
やっ、私ハ此ノ事ニ付テ多ク論議スル考ハ
アリマセヌガ、ドウゾ一段ト此ノ點ニ付テ
御考ヲ廻ラシテ戴キマシテ、恩給法ノ改正
ヲ斷行セラレンコトヲ御願スル次第デアリ
マス
ソレカラ財政ノ問題デアリマスガ、日〓
戰爭、日露戰爭ノ後ニ於テ恩給ノ額ガ急增
シタコトハ想像セラレルノデアリマスガ、
恐ラク今次ノ事變ニ於キマシテモ異常ナル
增加ヲ來スデアラウト云フコトガ想像出來
マス、ソコデ國家ノ財政ハ益バ困難ニナツ
テ行ク譯デアリマスガ、其ノ點デ今ノ恩給
法ニモ少シ考ヲ廻ラシテハドウカ、曩ニ說
明ガアリマシタヤウニ、恩給法ノ根本趣旨
ト云フモノガ大體生活ヲ保障スルト云フ點
ニアルノデアリマスカラ、例ヘバ支給ノ年限
ニ於テモ、戴キマシタ表ニ依リマスト、年
齡ノ制限トシテ四十歲マデハ恩給ノ一部ヲ
停止スルトナツテ居リマスガ、現實ニ於テ
此ノ規定ニ依ツテ恩給ヲ停止セラレタコト
ガアリマセウカ、私ハ恐ラクナイノデハナ
イカト思ヒマスガ、一應承テ置キタイト思
ヒース発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=30
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031・平木弘
○平木政府委員 現在ノ恩給法ニ於キマシ
テハ、慥カ四十歲マデハ一部停止スルコト
ニナツテ居ルト思ヒマス、是ハ私ノ方デハ
ヤツテ居リマセヌデ、實ハ貯金局デヤツテ
居リマシテ、ハツキリシタ數字ハ今持ツテ
居リマセヌ、併シ該當者ノアルコトダケハ
事實デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=31
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032・塚本重藏
○塚本委員 該當スル者ガアツテ、ソレガ
現實ニ行ハレテ居ルデアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=32
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033・平木弘
○平木政府委員 現實ニ行ハレテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=33
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034・塚本重藏
○塚本委員 此ノ表ニ依リマスト、佛蘭西
デハ年齡制限ガ文官六十歲、現業文官五十
五歲、英吉利デハ文官六十五歲、亞米利加
デハ技術官等七十歲ト云フヤウニナツテ居
リマスガ、我國ニ於キマシテハ四十歲マデ
ト云フノヲ五十歲位マデ上ゲタラドウカ、
而モ唯一部ノ停止デナシニ、全額ヲ停止ス
ルト云フヤウニスルノモ一ツノ試ミデハナ
イカト思ヒマス、四十歲位デハマダ十分働
キ得ルト思ヒマスガ、働キ得ル能力ノアリ
マス者ハ働カセルト云フ建前ヲ取ル、勿論
負傷シタ者トカ、或ハ疾病ニ罹ツタ者トカ
云フヤウナ、働キ得ル能力ヲ喪失致シマシ
タ者ハ例外デアリマスガ、サウデナイ者ニ
付キマシテハ支給年限ヲモウ少シ上ゲルコ
トモ一ツノ方法デハナイカト思ヒマスガ、
如何デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=34
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035・樋貝詮三
○樋貝政府委員 御考御尤ダト思ヒマス、
先年恩給法ヲ改正致シマシタ時分ニモソレ
ヲ考慮致シマシタ、所ガ實際ハドウカト申
シマスト、年齡ガ低クテ恩給ヲ貰フ人ハ-
傷病ノ爲ニ貰フ人ハ別ト致シマシテ、下級
ノ軍人カ巡査或ハ看守デゴザイマス、他ノ
稍〓、高級ノ官吏ハ低イ年齡ナドデハ恩給ニナ
リマセヌ、大抵高級官吏ガ恩給年限ニ達ス
ルノハ五十歲近邊カラ五十歲ヲ越エタ頃デ
アリマス、我國デ三十代デ恩給年限ニ達ス
ルノハ今申上ゲタヤウナ人々ダケデアリマ
ス、若イ人ノ恩給年齢制限ヲ思ヒ切ツテヤ
ラウト云フ考モ改正ノ際持ツテ居リマシタ
ガ、ソレヲ實行致シマスト、其ノ結果ハド
ウナルカト云フト、今申シタヤウナ人々ニ
對シテ停止ヲ實行スルト云フコトニナリマ
ス、サウスルト、ドチラカト言ヘバ塚本サ
ン邊リカラ御叱ヲ受ケルヤウナコトニナリ
ハセヌカト思ヒマス、ソレモ其ノ若イ人達
ガ直グ他へ行ツテ職ヲ得テ、十分ナ收益ヲ
擧ゲテ行ケルヤウナ人々デアレバ、是ハ思
切ツテ停止シタ方ガ宜イト思ツテ居リマス
ガ、其ノ人々ハ巡査トカ看守トカ、或ハ軍人
ナラバ判任官級ノ軍人デスシ、兵ナラバ戰
爭ナドデ恩給ニナル人ガアルト思ヒマスガ、
平常デハ餘リアリマセヌ、大抵下士アタリ
ノ人デアリマス、其ノヤツテ居ル仕事ハ大
體軍隊ヤ警察ナドノヤウナコトデ、ドチラ
カト云ヘバ餘リ潰シノ利カヌ方デアリマス
ノデ、ソレ等ノ人々ノ恩給ヲ停止スルコトニ
ナリマスト、其ノ人々ガ後デ生活ガ出來ヌ
ト云フ境遇ニ陷リ易イノデアリマス、而モ
社會性ノ重要サカラ申セバ、サウ云フ人々
コソ重要性ガアルニモ拘ラズ、サウ云フ人
人ガ其ノ停止ノ爲ニ酷イ目ニ遭フト云フ結
果ニナルノデアリマス、恩給ト或モノヲ「プ
ラス」スレバ、卽チ安イ俸給デモ恩給ガア
ルカラヤツテ行ケル、又俸給ガ安イカラ就
職モ容易デアル、謂ハバ恩給持參金附デ就
職ヲヤツテ居ルノデアリマス、サウ云フ事
情ガアル爲ニ年齡ノ若イ人々ノ恩給ニ對シ
テ思切ツテ手ガ著ケラレナイノデアリマシ
テ、四十歲ト云フ所ヲ押ヘタノデアリマス、
而モ其ノ停止ノ分量ト云フモノモ非常ニ少
クナツタ所以ハソコニアルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=35
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036・塚本重藏
○塚本委員 私モ言葉ガ少シ足リマセヌデ
シタガ、勿論サウナリマスト、啻ニ負傷者、
疾病者バカリデナク、所謂判任官以下ト云
フヤウナ者ニ付キマシテハ特別ノ考慮ヲ拂
ハナケレバナラヌト考へテ居リマス、御答
ノヤウニ下士、兵或ハ警察官ヲヤツテ漸ク
恩給ガ支給シ始メラレタト云フヤウナ人々
ガ、他ニ就職シテ居リマス實情ヲ見マスル
ト到底恩給ダケデハ生活ガ出來ナイヤウ
ナ人ガ多イノデアリマシテ、サウ云フヤウ
ナ恩給ヲ持ツテ就職シテモ尙且ツ生活ガ豐
カデナイヤウナ人々ニ付テハ、十分考慮ヲ
拂ハナケレバナラヌト考ヘテ居リマス、併
シ是モ考へ樣ニ依リマスト、實ニ怪シカラ
ヌコトダト平素カラ思ツテ居リマス、軍隊
ニ再役シテ恩給ガ附イタ、或ハ警察官ガ
定ノ年限ヲ勤メテ恩給ガ貰ヘルヤウニナツ
タト云フ人達ガ、會社ヤ工場等ニ勤メテ居ル
實情ヲ見マスト、恩給ガアルカラ特ニ給料ガ
低イト云フヤウナ傾向モ見受ケラレルノデ
アリマス、是ハ全ク面白クナイコトデアル、國
家ノ爲ニ永年勤メタ者ガ漸ク恩給ヲ得ラレ
ルヤウニナツテ、ソレガ民間ノ會社工場
ニ勤メル場合ニハ、國家ノ恩惠ニ依ツテ受
ケテ居ル恩給ヲ斟酌シテ、特ニ低イ給料デ雇
フト云フヤウナ結果ニナツテ居ルト思フノ
デアリマス、勿論斷言スルコトハ出來マセ
ヌケレドモ、若シサウ云フ風ニ五十歲ナラ
五十歲マデハ恩給ガ支給出來ナイト云フコ
トニナレバ、今ノサウ云フヤウナ狀態モ多
少改マツテ來ハシナイカト思フノデアリマ
スガ、何レニシテモ、多少ハソコニ手心ハ
置クト致シマシテモ、今ノ相當ナ高イ額ヲ
纏マツテ貰フ者ニ付テ、斯ウ云フ制度ヲ設
ケマスナラバ、相當餘裕ガ出來テ來ルノデ
ハナイカ、ソレカラ民間ニ就職シタ場合ノ
コトデアリマスガ、今申シマシタヤウニ、
判任官以下ハ兎モ角トシテ、ソレ以上ノ高
等官デアリマスガ、サウ云フ人達ガ再ビ公
務員トナツタ場合ニ、勿論其ノ間恩給ハ停
止セラレルデセウ、所ガ是ガ民間ノ會社ニ
入ツテ居ルト、恩給ヲ貰ヒナガラ、先ニモ
御話ノアツタヤウニ、官ニ居ルヨリハ寧ロ
民間ニ就職シタコトニ依ツテ破格ナ給料ヲ
得テ居ル者ガ相當多イ、是等ノ如キハヤハ
リ公務員トシテ再ビ就職シタ場合ト同ジヤ
ウニ、民間ニ就職シテ相當多額ノ給料ヲ得
テ居ル者ナドニ付キマシテハ、是ハ斷乎ト
シテ一時停止ヲナサルコトガ必要デハナイ
カト思ヒマスガ、御意見ハ如何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=36
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037・樋貝詮三
○楓貝政府委員 是ハ私モ考ヘテ見マシタ
ノデスガ、確ニ御說ノヤウナコトガ考ヘラ
レマスノデ、先ノ昭和八年ノ時デアリマシ
タカ、相當額ノ恩給ヲ貰ツテ居ル者デ、更
ニ他ノ方面カラノ收入ガ相當額以上ニナツ
タ場合ニハ、其ノ恩給ノ一部分ヲ停止スル
ト云フコトニ致シマシタ、之ヲ吾々ハ多額
所得者ノ恩給ト呼ンデ居リマスガ、サウ云
フヤウナ改正モ致シマシタ、是ガ不十分デ
アルト云フヤウナ御意見モ一方ニアルト思
フノデアリマスガ、當時議會ニ於キマシテ
モ、他方デ相當之ニ對シマシテハ痛烈ナ攻
擊ヲモ與ヘラレ、兩面カラ攻擊ヲセラタヤ
ウナコトデアリマスガ、兎ニ角ソレハ今丁
度塚本サンノ仰シヤルヤウナ思想ガ根據ニ
ナリマシテ、改正ハ一時致シマシタケレド
毛、新シイ制度トシテハ相當穩當ナ所ニ行
カウト云フ譯デ、微溫的デアルト一方ニ於
テハ攻擊ハサレマシタケレドモ、吾々ガ考
ヘル所デハ、穩當デアルト思フ所デアヽ云
フヤウナ制度ヲ作リマシタノデス、此ノ場
合、卽チ他ノ會社ナリ、或ハ銀行ナリヘ勤
メタヤウナ場合ニ、全部停止シタラドウカ
ト云フ問題モ考ヘテ見マシタ、若シ全部停
止スルノダトスレバ、恩給ヲ貰ツテ居ツテ
寢テ居タ方ガ宜イ、働イテ同ジ位ノ收入ヲ
得ルヨリハ、自由ナ身體デ寢テ居テモ同ジ
ヤウナ金ヲ貰ヘルナラ、先ヅ寢テ居ラウ、
斯ウ云フヤウナ狀態モ起シハシナイカト云
フ點ヲ憂ヘマシタ、ソレカラモウ一ツハ、
財產收入ヲ澤山持ツテ居ルヤウナ人ニ付テ
ハ停止ヲシナイデ、殘存ノ能力ヲ叩イテ、
サウシテ其ノ身體カラ俸給ヲ働キ出サウト
云フノデモウ一遍努力スルヤウナ人ニ付テ
停止ヲシテシマフト云フヤウナ結果ニナツ
テモ、不公平デアラウト思フノデアリマス、
ソレ等ノ點ヲ色々考ヘネバナラヌト云フ譯
デ、恩給外ノ所得ガ勤勞カラ來ルト、或ハ
勤勞外カラ來ルトヲ問ハズニ、一定額以上
ニナツタナラバ、サウ云フ人ノ恩給ノ方ハ
一部停止ヲシヨウト云フコトニ致シマシタ、
之ヲ極端ニヤツテ行クト、今度ハ俸給ミタ
イヤウナモノニ付キマシテモ同樣デ、是ハ
會社ニ勤ムルト官廳ナドニ勤ムルトヲ問ハ
ヌ、理論上ノ結果ニナルト思ヒマス
ケレドモ、財產ガアツテ官吏ニナリ
財產ガアツテ會社ニ勤メテ居ル者ニハ
俸給ヲヤラヌデモ宜イデハナイカト云フヤ
ウナコトニナリマシテハ、一種ノ生存
權ノ主張ノヤウナ問題ニナリマセウ、サウ
云フヤウナ譯デ、無イ者、暮セヌ者ダケニ
ヤレバ宜イデハナイカ、極端ニ言ヘバサウ云
フコトニナリマス、ソコデ相當ナ程度デ「ラ
イン」ヲ引カナケレバナラヌト云フノデ、
今デハ其ノ額ニ付テモ、恩給ヲ千圓以上貰
フヤウナ人間、ソレカラ恩給外ノ所得モ五
千圓ヲ超エルト云フヤウナ者ニ付テ、恩給
ノ一部ヲ引イテ行カウト云フヤウナ程度ニ
致シタ譯デアリマス、是ハモウ少シ推移ヲ
見マシテ、改メル部分ガアレバ改メテモ宜
イト思ヒマスケレドモ、何ニシテモ始メマ
シテカラ年數ガ幾ラモ經ツテ居リマセヌノ
デ、ドンナ工合ニ是ガ影響シテ居ルカト云
フコトノ、ハツキリシタ事實ハ分リマセヌ、
年額ニシマシテ約五十万圓位、今停止ヲシ
テ居リマスケレドモ、額トシテハ今日及ビ
今後ニ於ケル恩給額ニ對シテ九牛ノ一毛ミ
タヤウデスガ、サウ云フヤウナ所カラ出發
シテ、今ソンナヤウナ程度ニ止マツテ居ル
譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=37
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038・塚本重藏
○塚本委員 ソレカラ今日マデ相當高額ナ
恩給ヲ受ケテ居ツテ、自發的ニ辭退セラレ
マシタヤウナ方ハアリマセヌカ、左樣ナ人
ハアリマセヌデシタカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=38
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039・樋貝詮三
○樋貝政府委員 私此ノ恩給ノ方ニ關係シ
マシテ約二十年ニナリマスルガ、此ノ間デ
ハ一旦恩給ヲ貰フヤウニナツテ居リナガラ
辭退シタト云フヤウナ人ハ一件シカアリマ
セヌ、所ガソレハ大阪ノ方ニ居リマシタ或
ル癈兵デアツタノデスガ、多少ノソコニハ
「トリック」ガアリマシテ、所謂純情カラ出タ
恩給辭退デハナカツタ、少シ減シテ證書ヲ
書換ヘテ吳レト云フ一部ノ辭退ノ申出、詰
リ證書ヲ新ニシヨウト云フヤウナコトデア
リマシタカラ、是ハ其ノ例ニナラナイト思
ツテ居リマス、此ノ他ニハ恩給ヲ辭退シタ
ト云フコトハアリマセヌガ、恩給ヲ請求シ
ナカツタ人ハアリマス、其ノ顯著ナ例ハ軍
神ト謳ハレマス乃木閣下ガソレデアリマス、
爾靈山デ御令息二人ヲ喪ハレテ、親御トシ
テ兩方ノ扶助料ヲ合セテ請求シ得ル立場ニ
アラレタノデアリマスケレドモ、乃木閣下
ハ、自分ハオ上カラ頂戴シテ居ル俸給デ十
分生活ハ出來ルノデアルカラト云フヤウナ
意味デ、ツイ請求ヲナサラナカツタ、是ハ
恩給ガ裁定サレテ後ノ辭退デハアリマセヌ
ケレドモ、是ハ明ナル辭退デアリマス、此
ノ他ニハ著明ナ例ハ覺エテ居リマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=39
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040・塚本重藏
○塚本委員 只今圖ラズモ乃木閣下ノ人格
ノ飽クマデモ高潔ナコトヲ伺ヒマシテ淚ヲ
浮ベマシタノデスガ、今日相當ナ生活ヲシ
テ居リナガラ-今日ノ時局ヲ考ヘマスル
時ニ、モウ少シハサウ云フ人ガアツテ宜イ
ノデハナイカト私ハ考ヘマス、然ルニ未ダ
ニサウ云フ實例ノナイト云フコトニ付キマ
シテハ、私ハ一種言フベカラザル心情ニ打
タレタ者デアリマス、今ノ乃木閣下ノ御話
ヲ承リマシテ、洵ニ感激ニ堪ヘマセヌ
以下少シバガリ此ノ機會ニ細カイコトヲ
伺ツテ置キタイト思ヒマスガ、每度官報ヲ
見マシテ、昭和十二年陸軍省告示第三十九
號ニ依リ特ニ金何圓ヲ賜フヤウナコトガ澤
山現ハレテ來ルノデアリマスガ、アレハド
ウ云フ事情ニ依ツテ給與サレテ居ルノデア
リマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=40
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041・樋貝詮三
○樋貝政府委員 只今ノハ所謂特別賜金ト
云フモノダト思ヒマスガ、是ハ陸軍ト海軍
トデ給與ノ仕方ガ少シ違ツテハ居リマスガ、
總計シタ額ハ大體同ジヤウニナルト思ヒマ
スガ、給與ノ仕方ガ違ツテ居リマスノデ、
特別賜金ト云フモノノ額自體トシテハ、陸
軍ノ方ガ多ク海軍ノ方ガ少イヤウニ現ハレ
テ參ツテ居ルカト思ヒマスガ、多分ソレニ
付テノコトヲ御尋デアラウト想像シテ居リ
マス、海軍ノ方ノ關係ニ付キマシテハ、此
處ニ居ラレマス川崎中佐カラ申上ゲタイト
思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=41
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042・川崎進
○川崎說明員 御話ノ點ハ死歿者特別賜金
ト申シマス、ソレハ死歿者特別賜金賜與規
程下云フモノニ依ツテ居リマス、「今囘ノ支
那事變ニ係ル死歿者特別賜金賜與規程左ノ
通定ム」トシテ、昭和十二年ノ十月ニ陸軍
省ノ告示、海軍省ノ〓示トシテ出テ居ルモ
ノナノデス、此ノ制度ハ在來ノ戰役事變ニ
ハアツタノデアリマシテ、其ノ根本ニナル
モノハ、私ハツキリ記憶シテ居リマセヌ
ガ、明治二十八年ノ勅令ト思ヒマスガ、ソ
レニ根據シテ居ルモノデアリマス、其ノ勅
令ガ本デアリマシテ、其ノ後ノハ省告示デ
規定サレテ居リマス、ソレデ是ハ死歿者ニ
ダケ賜與スル一時金デアリマシテ、官等ニ
依リマシテ、又戰死、戰傷死、戰病死、ソ
レカラ事變ニ直接關係アル勤務ニ從事シタ
爲ニ死歿シタト云フコトガ土臺ニナツテ居
リマス爲ニ、戰地外デ事變勤務ノ爲ニ殪レ
タ者ニモヤルト云フヤウナ工合デアリマシ
テ、各〓其ノ狀況ニ依リマシテ額ガ違ツテ
來テ居リマス、陸軍省ノ方ハ官報デ〓示ニ
ナツテ居リマスガ、海軍ノ方ハ官報ニハ出
シテ居リマセヌ、又取扱ト致シマシテモ、
海軍ノ方ハ若干手續ガ違ヒマスノデアリマ
スカ、賜金額ニ於キマシテハ全ク同樣デア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=42
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043・塚本重藏
○塚本委員 是ハヤハリ恩給法ノ中ニアリ
マスル傷痍賜金デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=43
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044・樋貝詮三
○樋貝政府委員 恩給法ノ中ニハ全然規定
ハアリマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=44
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045・塚本重藏
○塚本委員 ソレカラ此ノ支那事變ニ依リ
マシテ、相當澤山ナ人ガ拔群ノ動功ヲ樹テ
ラレテ金鵄勳章ガ授與セラレテ居リマスガ、
其ノ金鵄勳章ヲ授與セラレマシタ數ハドレ
位ニ上ツテ居リマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=45
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046・樋貝詮三
○樋貝政府委員 一寸只今金鵄勳章ノ方ノ
數ヲ持ツテ居リマセヌノデ、只今電話デ、
會議ノ濟ムマデニ賞動局ノ方ニ照會致シマ
シテ申上ゲルコトニ致シマセウ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=46
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047・高橋泰雄
○高橋委員長 宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=47
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048・塚本重藏
○塚本委員 ソレデ結構デス-ソレカラ
此ノ機會ニ、恩給金庫ガ昨年成立シマシタ
ガ、アノ恩給金庫ノ成績ノ〓要ヲ承ツテ見
タイフデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=48
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049・平木弘
○平木政府委員 恩給金庫ハ昨年七月ニ事
業開始致シマシテ以來、貸付口數ニ於キマシ
テ約三万二千數百件デゴザイマス、其ノ金
額ハ三千九百万圓バカリニ相成ツテ居リマ
ス、是ハ昨年十二月マデノ數字デゴザイマ
ス、其ノ內容ヲ申上ゲマスルト、大體舊債
ノ借替ガ大部分ニナツテ居リマス、多少新
シク貸付ニモナツテ居ルヤウナ狀況デアリ
やっ、之ヲ一箇月ニ致シテ見マスト五百万
圓乃至六百万圓バカリノ金額ニナツテ居リ
そく、其ノ後今年ノ正月以來ノ狀況モ大體
此ノ程度ノ貸付ヲ行ツテ居リマスガ、金額
ニ於キマシテモ口數ニ於キマシテモ多少
減ツテ居ルノデハナイカト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=49
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050・塚本重藏
○塚本委員 此ノ恩給金庫ガ出來マシテカ
ラ後ニ於キマスル恩給證書ノ再交付デアリ
マスガ、サウ云フモノニ付テ多少從來トハ
變ツタ影響ヲ及ボシテ居ルノデハナイカト
思ヒマスガ、十三年中ノモノハマダ集計ハ
出來テ居ラナイカト思ヒマスガ、大體分ツ
テ居リマスナラバ、再交付ノ申請數、交付
數取下或ハ不交付ニナツタモノ、サウ云
フモノガ分リマスナラバ承リタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=50
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051・平木弘
○平木政府委員 恩給金庫成立後ノ狀況ハ
一寸分リ兼ネマスルガ、只今持ツテ居リマ
スノハ十三年中ノ數字ガ分ツテ居リマス、
其ノ數字ヲ申上ゲマス、證書ノ再交付ニ付
キマシテハ、一時非常ニ多數ノ申請ガアリ
マシタガ、十三年度ニ於キマシテハ恩給金
庫設立後、恩給金庫ノ色々ナ斡旋ニ依リ
マシテ、妥協ガ付キマス場合モアリマシタ關
係デアリマスルカ、十三年度ニ於キマシテ
ハ、前年度ニ比較致シマシテ相當減ツタノ
デアリマス、ソレヲ數字ヲ申上ゲマスルト、
申請致シマシタ件數ガ一千五十九件、其ノ
中デ再交付致シマシタ件數ガ二百十四件、
所ガ此ノ二百十四件ノ中ニハ亡失、毀損致
シマシタモノガ百七十二件デアリマス、隨
ヒマシテ所謂呈示ノ用ニ供スルコトガ困難
ナ場合、何ト申シマスルカ、謂ハバ高利貸
ノ手ニ入ツテ居ル場合ガ大部分ダト思ヒマ
スルガ、此ノ場合ハ僅ニ四十二件、斯ウ云
フ數字ニ相成ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=51
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052・塚本重藏
○塚本委員 私ノ質問ハ是デ終リト致シマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=52
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053・西田郁平
○西田委員 一寸簡單ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=53
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054・高橋泰雄
○高橋委員長 極ク簡單ニ御願致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=54
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055・西田郁平
○西田委員 第三十二條ノ改正ノ結果增加
スル金額ノ大體見込ガ分ツテ居リマセウカ、
之ヲ一ツ承リタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=55
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056・樋貝詮三
○樋貝政府委員 御尋ノハ今度ノ改正ニ依
リマシテノ增額デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=56
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057・西田郁平
○西田委員 サウデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=57
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058・樋貝詮三
○榻貝政府委員 其ノ分ハハツキリト分リ
マセヌノデアリマス、ソレハ何故カト申シ
マスレバ、加算ヲ致シマシテモ直グ罷メル
人々デナイ人ガ多イノデゴザイマスカラ、
ソコデズツト先ニ行カナケレバ分リマセヌ、
加算ト申シマスノハ、年數ガ、例ヘバ一年
居レバ四年ニ勘定サレル結果デスカラ、ソ
レ等ノ人々ガ假ニ少將トカ中將トカ云フ所
ヘ行ツテ罷メルト、同ジ一年デモ其ノ當時
ノ俸給ヲ基礎ニシテノ一年計算ニナリマス
カラ、額ハ大キクナリマス、ソレカラ今低
イ所デ直グ罷メタトスレバ、大尉トカ少佐
トカ、或ハモツト低ケレバ下士トカ云フヤ
ウナ所デ罷メマスカラ、額ガ非常ニ低イト
云フコトニナリマスシ、今現實ニ辭メタ人
人デナイノデスカラ、算定ガ困難デ、見込
數ト云ヒマシテモ、非常ニ怪シイ見込數ヲ
申上ゲルヨリ外ニ仕方ガナイノデスガ、是
ハ先程申上ゲマシタヤウナ人數デゴザイマ
シテ、其ノ中ノ一部分ガ辭メル譯デアリマ
スカラ、額ニシタラ大シタコトハナイノデ
アリマス、唯兵ノ人ナラバ、斯ウ云フ加算
ガアレバ恩給ニナルシ、サウデナケレバ
恩給年數ガ足ラヌト云フ人ガ、相當生ズル
ノデハナイカト思ツテ居リマスガ、具體的
ノ數字ハ一寸想像シマシテモ、非常ニ想像
ノ分量ガ多イノデ一寸申上ゲ兼ネマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=58
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059・西田郁平
○西田委員 第五十九條ノ方ノ改正デ、
〓パーセント」納金ヲシナイト云フ、此ノ方
モ一寸分リ兼ネマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=59
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060・平木弘
○平木政府委員 是ハ先程申上ゲマシタ通
リニ、支那ノ方ニ行ツテ居リマス將兵全部
ニヤルカドウカト云フコトモ、マダ最後ノ
所ハツキリ致シテ居リマセヌカラ分リマセ
ヌガ、假ニ全部止メルト云フコトニ致シマ
スレバ、大體陸海軍合セマシテ年額五十万
圓カ六十万圓位ノ範圍內デハナイカト考ヘ
テ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=60
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061・齋藤直橘
○齋藤委員 今ノ第五十九條ノ西田君ノ御
質問ニ關聯シマシテ、此ノ改正ノ理由ヲ承
ルト、「軍人等公務員ガ、戰地ニ在リテ戰務ニ
服スル期間恩給法ニ依ル納金ヲ徵收スルハ
著シク困難ナル實情ニ在ルヲ以テ」斯ウ書
カレテアルノデス、是ハ吾々想像スルニ成
程困難ダト思ヒマス、恐ラク俸給ヲ配給サ
レルニ付テモ困難ガ伴フノデハナイカト思
フノデアリマス、是ハ戰地デスカラ已ムヲ
得ヌト思ヒマス、吾々ハソレヨリモ寧ロ戰
爭ニ際シテ第一線ニ立ツテ居ル人達ニ對シ
テハ、兵同樣ニ此ノ期間免除シテモ宜イヤ
ウニ思フノデスガ、此ノ提案ノ理由ハ徵收
ガ困難デアル、斯ウ云フ理由ニナツテ居リ
マス、其ノ邊ノ事情ヲ一ツ御說明ヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=61
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062・樋貝詮三
○樋貝政府委員 此ノ本當ノ理由ハ全ク徵
收困難ト云フ方カラ參ツテ居ルノデゴザイ
マシテ、此ノ間陸軍ノ政府委員カラ、陸軍方
面ノ徴收困難ナ事情ヲ申上ゲタヤウナ譯デ、
俸給デモドウモ十分ニ渡シ兼ネル場合ガ多
イ、又ソレヲ差引シマシテ、其ノ現金ヲ日
本銀行ノ方へ段々送ツテ來ルト云フコトニ
ナルト、非常ナ困難ガアリマスノハ此ノ間
申上ゲタ通リデアリマスガ、此ノ額ハ今申
上ゲマシタヤウニ大體將兵通ジマシテ全部
行クモノトシマシタ所デ五十万圓デアラウ
ト云フコトハ考ヘラレマスガ、サウ云フヤ
ウナ僅カナ金デ、一人當リニシマシタラ俸
給ノ百分ノ一ト云フヤウナコトデ、斯ウ云
フヤウナ所カラ別ニ軍人ヲ優遇スルトカ云
フ意味デ斯ウ云フコトハ致シタクナイノデ
アリマス、ト申シマスルノハ、ドウモ出征ノ將
兵ニ對シマシテノ國民ノ感謝ト云フモノガ、
斯ウ云フ物質ナンカデ幾ラカデモ減殺サレ
ルト云フコトノアルコトハ非常ニ好マシク
ナイコトデアリマシテ、固ヨリ國民ノ感謝ハ
ソレ位ノコトデ聊カモ動搖サセラレルモノ
デナイト思ヒマスケレドモ、假令是ダケニ
シテモ、何カサウ云フ所デ僅カナ物質優遇
ヲスルノダト云フコトヲ、國民ガ幾ラカ頭ノ
一角ニデモ置キマスコトハ嬉シクナイノデ
アリマシテ、全ク以テコンナコトヲシナク
テ濟ムナラバシナイデ行キタイ、其ノ他ノ
公務員モ亦國ノ財政ニ對シテ負擔ヲシテ居
ル譯デアリマスカラ、戰時ニ際シテ特ニ困苦
ニ耐ヘテ奮鬪セラルルコトハセラルルコト
トシテ、コチラノ納金ハ納金デ國家財政ニ
寄與スルト云フコトハ、國民トシテ變リナ
シニヤルト云フコトニ致シタイ譯ナノデア
リマスガ、今申上ゲマシタヤウナ事情デ、
ソレハ到底事實ニ於テモ十分ニ參リマセヌ
ノデ、此ノ免除ヲシタイト云フコトニ趣旨
ガアリマスノデ、今ノ理由書デモサウ云フ
コトヲ正直ニ書イタヤウナ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=62
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063・中野治介
○中野委員 私ハ二三御尋致シタイト思フ
ノデアリマスガ、此ノ事變ニ際シマシテ、
特ニ現職ノ官吏ニ對スル綱紀肅正ニ關シマ
シテハ、總理ヨリモ屢〓、明セラレテ居ルノ
デアリマス、之ニ對シマシテハ國民ガ如何
ニ此ノ官吏ニ對シマシテ或ル期待ヲ持ツテ
居ルカト云フコトハ分ルノデアリマス、其
ノ現職ニ居ラレル官吏ノ方ニ對シマシテハ、
斯樣ナ國民ノ各方面カラ色々ノ期待ガ寄セ
ラレテ居ルト云フヤウナ現狀デアリマシテ、
是ハ恩給ト直接關係ガナイヤウデアリマス
ガ、永ク官吏ヲ勤メタソレニ對スル優遇ト
致シマシテ、退職後恩給ヲ頂戴致シマス人
ハ、其ノ戴ク理由ニ付キマシテ濃厚ナ認識
ガナケレバナラヌノデアリマス、若シ其ノ
認識ガ濃厚ニアリマスト致シマスナラバ、
其ノ身ヲ持スル上ニ於テ、只今ノ現狀ハ實ニ
私ハ歎カハシイト思フノデアリマス、ト申
シマスノハ官吏デ恩給ヲ頂戴致シマス人ハ、
年齡ノ上カラ申シマシテモ相當ナ年齡ニ達
シテ居ルノデアリマスカラ、所謂長者ニ對
シテ敬意ヲ表スルト云フ日本精神カラ考ヘ
マシテ、年ノ上カラ言ツテモ人ノオ手本ト
ナラナケレバナラヌ、又物質的デハアリマ
スケレドモ、國家ガサウ云フ優遇ヲスルト
云フ見地カラ致シマシテモ、人ノオ手本ト
ナラナケレバナラヌ、斯樣ナ立場ニ居ラレ
ル所ノ恩給ヲ受クル人ハ、眞ニ〓黨ノ爲ニ
働イテ居ルノデアルカドウカ、晏如トシテ
恩給ニ衣〓シテ居ルヤウナ狀態デアルカド
ウカ、又物質ノミニ憧レマシテ、恩給ヲ取
ツタ上ニ更ニ給料ニアリ付ク、其ノ態ガ只
今モ同僚カラ御話ノアリマシタヤウニ、軍
神乃木サンノヤウナ態度ニ出ラレル人ハ唯
僅ニ一人、之ヲ見マシテモ全豹ヲ知ルコト
ガ出來ルノデアリマスガ、其ノ〓黨ニ盡ス
ト云フ狀態ハ、此ノ恩給ヲ受ケナイ普通ノ
吾々野ニ在リマス所謂野人ハ、多分〓黨ノ
世話ヲシテ居ルノデアリマスガ、恩給ヲ戴
イテ居ル人ハ超然トシテ居リマシテ、不平
ハ言フノデス、非難コツ致シマシテ、色々
ナ邪魔ニハナリマスケレドモ、〓黨ノ爲ニ
積極的ニ働カナイ、斯ウ云フコトハ洵ニ國
家ノ爲ニ平素私共ハ遺憾ニ思ツテ居ルノデ
アリマスルガ、況ンヤ今日ノヤウニ上下一體
ニナツテ國事ニ當ラナケレバナラヌト云フ
時ニ於キマシテハ、一段ト其ノ點ニ付テ認
識ヲ深メラレマシテ、現職ニ居ル官吏諸公
ハ首相ノ御話ノ如ク、國民一般ガ期待シテ
居リマスルヤウニ、今少シク陛下ノ臣デ
アル、斯ウ云フ心掛ガアツテ欲レイノデア
リマス、軍人諸公ハ陛下ノ軍人デアル、
軍人精神ト云フコトヲ「モットー」トセラレ
マシテ、常ニ上官ノ命令ハ陛下ノ御命令デ
アルト云フコトニ訓示セラレマシテ、其ノ
働キ振リガ如何ニモ活キ〓〓シテ居リマシ
テ、如何ニモ國家ノ爲ニ忠誠ヲ盡サレルノ
デアルト云フコトガアリ〓〓ト國民ノ眼前
ニ展開シテ居ルノデアリマスケレドモ、文
官諸公ノ平素ノ働キ振リハ、唯月給ヲ取ツ
テハ、時間ヲ潰シテ居レバ宜イト云フヤウ
ナ御考トシカ一般國民カラハ見ラレヌノデ
アリマス、ソレデ年限ガ經ツテ野ニ下レバ、
只今申シマスヤウナ次第デゴザイマシテ、
所謂陛下ノ臣デアル、斯ウ云フ心掛ガゴ
ザイマセヌカラ、貰フ所ノ俸給、恩給モ、唯
債權者ガ貸シタ金ヲ取ルヤウナ權利義
務ノ觀念コソアリマスケレドモ、是
ハ陛下ヨリ戴ク所ノ祿デアル、國民
ノ膏血ヨリ頂戴スル所ノ祿デアル、是
ハ眞ニ頂戴スルモノデアルト云フ尊イ魂
ト云フモノガ缺ケテ居ルノデアリマス、ソ
コデ恩給ノ事務ヲ御取扱ニナリマスル官吏
諸公ハ、其ノ點ニモツト力ヲ御入レ下サイ
マシテ、今少シ活キ〓〓トシタ精神ヲ以テ、
恩給ヲ受ケル所ノ精神ヲ會得セシムルコト
ニ付テ努力セラレタイト念願シテ居ル次第
デアリマスルガ、其ノ點ニ對シマスル所見
ハ如何デゴザイマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=63
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064・樋貝詮三
○樋貝政府委員 只今ノ御話ニ付キマシテ
ハ、吾々モ亦共鳴スル所ガ多分ニアリマス
ノチ、何カノ機會ヲ捉ヘマシテ、只今仰セ
ラレタヤウニ退職官吏、恩給受給者ガ或ハ
地方ニ、或ハ其ノ他公共ノ事柄ニ冷淡デア
ルヤウナコトニ對シマシテハ、大イニ反省
ヲ求メルヤウナ方法ヲ講ジテ行キタイト思
ツテ居ル次第デアリマス、併シ是ガ只今御
擧ゲニナリマシタ軍人ノ方デスト、將校ナ
ドハ終身官デアリマスカラ、割合ニ其ノ方
面デ退職後ニ於キマシテモ諸種ノ命令ヲ下
シ易イノデアリマスガ、文官ハ御承知ノヤ
ウニ退官致シマスレバ、恩給ノ關係デダケ
ハ繋ツテ居リマスガ、文官關係ニ於テハ全
ク官吏デナイト云フヤウナコトカラ、退職
官ニ對シテ命令ヲ下シ得ルヤウナ制度ニハ
只今ナツテ居リマセヌノデ、非常ニ其ノ點
ハヤリニクイ譯デアリマス、命令的ナ、或
ハ訓示的ナコトヲ申ス譯ニハ參ラヌヤウナ
事情ニナツテ居リマスノデ、サウ云フ爲ニ
此ノ點モ餘程考慮シナケレバナラヌト存ジ
テ居リマス、今ノ御趣旨ノ點ハ、確ニ吾々
モ事務ニ就テ痛感致シテ居ル譯デアリマス、
唯先程オ話ノアリマシタ御言葉ノ端ヲ特ニ
强クオ聽キシテモ洵ニ恐縮デスガ、實ハ文
官モ唯月給ヲ貰ツテ時間ヲ潰シテ居ルト云
フヤウナ心組ハ、少ク共若イ官吏ハサウ云
フコトデハアリマセヌカラ、其ノ點御諒承
ヲ願ヒタイト思ヒマス、サウ云フ官吏モ所
所ニ見受ケマスシ、私等モソレニ對シテ苦々
シク感ズルヤウナ譯デアリマシテ、今日ノ
此ノ時局ニ對シテハ官吏、殊ニ靑年官吏ニ
付テハ、夜ヲ日ニ繼イデ實際仕事ニ熱中シ
テ居リマスノデ、是非其ノ邊ノ所ハ御見直
シヲ願ヒタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=64
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065・中野治介
○中野委員 此ノ機會ニ不束カナ私ノ經驗
デハゴザイマスルガ、只今申シマシタコト
ハ、私ガ多年經驗シタ悲シムベキ現象デア
リマス、殊ニサウシタ野ニ下ツテ國家ノ爲
ニ御心配申上ゲルト云フコトノ少イノハ、
高級官吏-高イ恩給ヲ貰ツテ居ル人ニ殊
ニ多イノデアリマス、低イ役目ヲ辭メテ、
僅カノ恩給ヲ貰ツテ居ルヤウナ方ハ、相當
ニ淚グマシク〓黨ノ爲ニ犧牲ヲ拂ツテ居ル
ト云フ例ハ多イノデアリマスルガ、多イ恩
給ヲ貰ツテ居ル人ニ、得テ〓黨ノ爲ニ働カ
ナイ、所謂犧牲的ノ行動ガ少イト云フコト
ガ、サウシタ部面ニ多イノデアリマス、ソ
レカラ是ハ別ニ議論スル譯デハゴザイマセ
ヌガ、國家ヲ思フ熱情カラ私ハ申上ゲルノ
デアリマスガ、例ヘバ軍隊ガ演習ニ參リマ
シテ宿ノ割當ヲスルト云フ場合デモ、世話
ヲ燒カセルノハ役人デス、一般ハサウシタ
場合ニハ熱心ニ働イテ吳レマシテ、總テノ
仕事ガ圓滑ニ參リマスケレドモ、色々ナ理
窟ヲ付ケテ、サウシタ便宜ヲ與ヘルコトニ
付テ厄介ヲ掛ケルノガ官吏デス、是ハ私一
人ダケデナク、他ノ人モ體驗シテ居ルヤウ
ナ次第デアリマシテ、一事ガ萬事、是デ以
テ其ノ官吏ノ國ニ對スル勤メ方、心ノ置
キドコロガドウデアルカト云フコトガ想像
出來ルト思フノデアリマス、是ハ要スルニ
軍人ガ陛下ノ軍人デアルト云フコトヲ常
ニ精神カラ離サナイヤウニ、陛下ノ臣デ
アル、吾々ハ陛下ノ赤子ニ對スル國務ヲ
執ツテ居ルノデアル、之ヲ叩キ込ンデ、心
カラサウ考ヘマシテ、日々ノ仕事ニ向ツテ
居リマシタナラバ、サウシタ間違ヒハ起キ
ヌト思フノデアリマス、是ハ私及ビ他ノ人
ノ多年ノ體驗カラ申シマスルコトデ、今別段
攻撃センガ爲ニ攻擊スル意味デ申上ゲル譯
デハゴザイマセヌカラ、其ノ點ハ更ニ再檢
討下サイマシテ、國家非常時ノ際デゴザイマ
スカラ、一般國民-吾々ト致シマシテモ一
段ト忠誠ヲ盡スノデアリマスルガ、社會ノ軌
範トナル地位ニ居ラレル、而モ辭メレバ恩
給ヲ戴カレル、斯樣ナ官吏ハモウ一步眞劍
ニ御考下サイマシテ、其ノ働キ振リガ國民
ノ眼前ニ展開スルヤウニ私ハ念願スル次第
デアリマス、此ノ事ニ付テハ別段御答辯ハ
要求致シマセヌ
ソレカラモウ一ツハ昭和十一年ノ議會
ト、ソレカラ十二年ノ議會デモサウダト
思ツテ居リマスガ、私ノ名儀デ昭和十一年
ニハ請願、十二年ニハ建議案トシテ、衆議
院デハ採擇ニナツタノハ、巡査ガ或ル年限
勤メテ、ソレカラ警部補ニナリ恩給年限ニ
達シテ一寸警部ニナツテ、ソコデ辭メテ、
元ノ法律ノ下デ恩給ヲ貰フコトニナツタ、
其ノ人ガ一二年致シマシテ更ニ警部ニ就任
ヲ致シマシテ、ズツト長イ間勤メタノデア
リマスガ、其ノ二度目ニ勤メマシタ年限ハ
恩給年限ニ達シテ居ナイノデアリマス、ソ
コデ當時ノ恩給法ニ依リマスト、或ル年限
勤メテ辭メテ更ニ勤メタ場合ハ、更ニ前後
通算スルト云フ利益ナコトニ規定サレテ居
ラナイノデアリマスガ、只今私ガ申上ゲマ
シタ事例ノ分ハ、先ノ法律ニ依ツテ貰フコ
トニナツタ者ガ更ニ再役ヲ致シマシテモ、
ズツト一本調子ニ只今ノ法律ノ如ク、ソレ
ヲ通算ヲ致シマシテ利益ニ取扱ハレルコト
ニナラナイト妙ナコトデアルカラ、ソレヲ
ズツト一律ニ同樣ニ取扱ハレルヤウニト云
フ請願、建議デアツタノデアリマスガ、基
ノ當時政府ノ方ニ實ハ非公式ニ伺ツテ見マ
スト、理窟ハ成程ソレガ公平ノ如クデアル
ガ、サウ云フヤウニ改正スルト影響スル所
ガ非常ニ大キイト云フコトデアリマシタ、其
ノ際ニ私モサウカト斯ウ思ツテ居リマシタ
ガ、能ク考ヘテ見マスト、サウシタ實例ハ
餘リナイノデハナイカシラン、斯ウ思ヒマ
シテ其ノ他ノ人ニ聽イテ見マシテモ、ソン
ナ事例ハ全國ニサウアリヤシマイト云フ話
デアリマス、僅カナ數ノ爲ニ面倒ダカラト
云フノモ一ツノ理窟デアリマスガ、實際僅
カナモノデアルニモ拘ラズ、其ノ理窟デ排
斥セズシテ、影響スル所ガ大キイカライケ
ナイノダ、斯ウ云フノデハ一寸理窟ガ合ツ
テ居ラナイノデアリマス、ソコデ丁度斯ウ
云フ機會デアリマスカラ、其ノ點ドウ云フ
風ニ大ナル影響ガアルカ、一ツ御伺ヒシタ
イ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=65
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066・樋貝詮三
○樋貝政府委員 前段ノ御質問ニ付キマシ
テハ答辯ヲ求メナイト云フコトデアリマス
カラ別ニ申シマセヌデ、後段ノ分ダケニ付
テ申上ゲマス、今ノ巡査カラ警部補ニナツ
テ辭メタトカ、或ハ警部位デ辭メテ-巡
査デ辭メテモ同ジコトニナリマスガ、又後
ニ警部ニナリ警部補ニ出タト云フヤウナコ
トハ、大正十二年ノ十月一日ガ現行恩給法
ノ施行期日デアリマスガ、ソレヲ跨ギマシ
タ前後ニ亙リマシテ非常ナ複雜ナ關係ヲ起
シテ居ルノデアリマス、ソレデ其ノ當時ニ
於キマシテ旣ニ巡査ナドトシテノ-當時
退隱料ト申シテ居リマシタガ、年金ノ纏ツ
タモノハ恩給法ノ改正ニ依ツテモ、其ノ年
金ノ權利ト申シマセウカ、資格ト云フモノ
ヲ無クサシメナイヤウニシヨウト云フコト
ニ致シマシタ、ソレカラサウデナクテマダ
巡査トシテ居ツテモ、退隱料トマデ纏ラナ
イ、辭メテ見タ所デ一時金ニ過ギナイト云
フヤウナ、サウ云フ人々ガ引續イテ恩給法
施行後ニ警部ニナリ、他ノ官吏ニナルト云
フ場合ナラバ年數ヲ通算シテヤラウト云
フ、大キナ方針ヲ現行ノ規定デ取リマシタ、
所ガ其ノ結果ガ贔屓ノ引倒シニナリマシテ、
卽チ當時ノ退隱料ニナツテ居ツタガ爲ニ却
ツテ損ニナルト云フ場合ガ、少數デスケレ
ドモ起リマシタ、ソレハ色々請願ヤ何カニ
現レテ參リマシテ、何トカシテ吳レト云フ
コトデアリマシタ、ソレデドウモ法律ヲ其
ノ儘ニシテ置キマシテ、解釋デ動カスト云
フ餘地ガナカツタモノデスカラ、昭和八年
ニ恩給法ヲ改正シマシタ時ニ、其ノ附則ノ第
十五條ト云フモノガアリマスガ、ソレニ依
ツテ合理的ニ其ノ場合ヲ解決スルト云フ態
度ニ出マシタ、ソレデ御協賛ヲ仰イデソレ
ガ施行ニナツテ居ル譯デアリマス、ソレデ
大部分ノ場合ガ救濟サレタ譯ナノデアリマ
ス、ソレデモ殘ツタ部分ガアル譯デアリマ
スガ、其ノ部分ニ付キマシテハ無論ウツカ
リシテ殘シタ譯デモ何デモアリマセヌノ
デ、色々檢討シテ、將來ニ向ツテ無論此ノ
時ノ改正ハ致シタ譯デアリマスケレドモ、
今ノ殘シタ部分ニ付テハ、之ヲサウ云フコ
トデ救フトスレバ、ソレト同ジ立場ニ立ツ
テ居ル其ノ他ノ官吏公吏等ニ付キマシテ
モ、同ジ態度デ出テ行カナケレバナラヌト
云フコトガ考ヘラレ、而モソレガサウ大シ
テ合理性ガ認メラレナイト云フ點ト、兩方
カラ參リマシテ、ソレハ殘スト云フコト
ニ肚ヲ決メマシテ案ヲ立テテ御協贊ヲ
願ツタノデアリマス、其ノ時ニモ慥カ御
質問ガアリマシテ、ソレニ對シテ斯ウ
云フ事情デアルト云フコトヲ申シタヤウニ私
記憶シテ居リマスガ、ソレデ出來上リマ
シタノガ今ノ制度デアリマス、恩給局ヘ御
問合セノ時ニ、財政上ノ點ヲ顧慮シナケレ
バナラヌカラト云フコトヲ答辯シタト云フ
今ノ御話デアリマスガ、是ダケノ件トスレ
バ、ソレハ大シタ金額デハナイト思ヒマス
ケレドモ、斯ウ云フモノニ類シタヤウナ事
柄、卽チ或ル利益ノ部分ダケヲ、合理性ヲ
突破シテモ、受給者ニ利益ナラバ其ノ小サ
イ部分ニマデ利益ヲ認メルト云フ態度ヲ執
リマスト一般ノ官公吏及ビ軍人等ニ關聯
致シマシテ、非常ニ廣イ範圍ニ同ジヤウナ
コトヲヤツテ行カナケレバナラヌ、ツレガ
影響スル所ガ非常ニ大キイ、今此ノ場合ダ
ケヲ取上ゲレバ金額ニシテモ知レタモノデ
アラウト思ヒマスガ、ソレヲ一旦許スト云フ
コトニナレバ、他ノ方ニモ皆之ヲ認メナケレ
バナラヌ、是ハ立法ノ上カラ行キマシテモ、
恩給局ガ由來維持シテ居リマス公平ノ理論
ト態度カラ致シマシテ、之ヲ拒ム譯ニ參ラ
ヌ、續々ト或ハ請願トナリ、法律案トナツ
テ出テ參ルデアラウト思ヒマス、ソレヲ全
部纒メマシタナラバ、是ハ金額ニシテ何千
万圓ト云フモノヲ增スヤウナ結果ニナル虞
ガアリマス、ソレハ到底堪ヘラレナイト云
フ譯デアリマス、サウ云フヤウナ所カラ、
是レ自體ハ今ノ御話ノ通リサウ大キイモノ
デハアリマスマイト思ヒマスガ、恩給局ニ
於キマシテモ財政ニ影響スル所ガ大キイト
申上ゲタノダラウト思ヒマス、私恩給局ニ
居リマシタ時代ニ-御答シタノハ私デハ
ナカツタノデスガ、サウ云フコトヲ申上ゲ
タノダラウト今想像致シテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=66
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067・中野治介
○中野委員 モウ一點伺ツテ見タイト思ヒ
マン、恩給ヲ貰ツテ居ル人ガ、恩給擔保デ
金ヲ借リル其ノ借リ方デアリマス、是ハ相
當數ニ上ツテ居ルガ、其ノ中デ其ノ借リ方
ガ不正デ、全ク法律ノ鏡ニ掛ケマシタナラ
バ立派ナ犯罪デ、而モヤリロカラ申シマ
シテモ憎ムベキ事情ノアル借リ方ヲシテ居
ルヽ私共サウシタ事例ニハ段々ト遭遇シタ
コトガアルノデアリマスガ、是ハ此ノ時局
ニ斯ウシタコトヲ申上ゲルノハ如何カト思
ヒマスガ、軍人ノ中ニ相當ニ多イノデアリマ
ス、最初カラ脫法行爲ニ出マシテ金ヲ借リ
ル、サウシテチヤント法律ハ知ツテ居リナ
ガラ借出シテ、アトデ恩給證書ノ取戾ノ訴
ヲ起スト云フヤウナ、實ニ下劣以外ニ其ノ
罪狀ノ憎ムベキモノヲ含ンデ居ル、サウ云
フ件數ガ相當多イ數ヲ占メテ居ルト私共考
ヘテ居ルノデスガ、サウ云フコトハ恩給局
モ御分リダラウト思ツテ居リマス、ソレニ
付テノ對策ト云ツタ所デ、是ハ難カシイ問
題ダラウト思フノデスガ、其ノ點ニ付テノ
御考ハドウ云フ風ニ運バレテ居リマスル
カ、其ノ一點ヲ御示シヲ願ツタラ幸ダト思
フノデアリマス、モウ一ツハ雇員ノ恩給ト
云フコトニ付テ先程來色々御議論ガアリマ
シタガ、私モ數年間雇ヲシテ居リマスル關
係上、雇ノ勤務振リト云フモノヲ知ツテ居
ル積リデゴザイマスガ、先ノ御話ニ依リマ
スト、雇ハ腰ガ据ラヌト云フコトデスガ、
ソレハ東京アタリデハサウシタ連中ガ多イ
ダラウト思フ、ト云フノハ試驗ヲ受ケル爲
ニ一寸雇ニ腰掛ケニ入ツテ居ルト云フ連中
ガアリマス、サウ云フ腰ノ据ラヌ人ガ恩給
年限ニ達スルト云フコトハ絕對ニアリマセ
ヌカラ、恩給法ヲ中心トシテ議論ヲ致シマ
スル時ニハ、腰ガ据ラヌト云フコトハ私ハ
議論ニナラナイト思フ、或ル一定ノ年限ヲ
勤メタ者ニ恩給ヲヤラヌト云フコトハ理窟
ニ合ハヌヂヤナイカト云フ議論ハ、ヤハリ
殘ル問題デゴザイマス、雇及ビ小使デアリ
マスガ、是ニハ年限ハ長クスルト云フ必要
ハアルト思フ、ト云フノハ小使デアリマシ
テモ雇デアリマシテモ、向上心ニ依リマシ
テ上ニ段々ト上ツテ貰ハナケレバナラナイ、
唯僅カナ給料ニ甘ンジ、僅カナ恩給ニ戀々
トシテ居ルト云フヤウナ精神ヲ助長スルト
云フヤウナコトハ避ケナケレバナラヌカ
ラ、年限ヲ長クスルコトハ必要デアリマスル
ガ、長ク小使ヲ勤メ、長ク雇ヲ忠實ニ勤メタト
云フ者ニ對シマシテハ、ヤハリ恩給ヲ與ヘル
ト云フコトガ至當ヂヤナイカ、斯樣ニ實ハ
考ヘテ居リマス、ト云フノハ長ク實際官廳
ノ雇ヲ勤メ、小使ヲ勤メテ居ルヤウナ人ハ
大抵善良ナル者デゴザイマシテ、仕事コソ違
ヒマスケレドモ、ヤハリソレハ家デ言ヘバ
釘トナリ、楔トナルノデ、ソレガ能クヤル
カラ仕事ガ旨ク行クノデゴザイマシテ、ソ
レニ代ヘルノニ腰ノ据ラヌ雇トカ小使バカ
リデゴザイマシタラ、所謂役所ノ仕事ト云
フモノハ旨ク行クモノヂヤナイ、小使ヤ雇
ガ氣ガ利イテ長ク勤メテハ所謂其ノ官廳ノ
主トモ言フベキ者ガ居リマシテヤツテ吳レ
レバコソ、其ノ仕事ノ實ガ擧ルト私共ハ考
ヘテ居ルノデゴザイマスガ、今一應其ノ點
ニ付テノ御考ヲ伺ヒマス、先ニハ腰ノ据ラ
ヌモノダカラト云フヤウナコトデシタガ、
其ノ點質大分見解ガ違ヒマス、寧ロ雇トカ
小使ト云フモノニナリマスレバ、上役カラ
睨マレテハ自分ノ地位ニ關係致シマスカラ、
私共ノ經驗デ、ドウシタツテ上役ガ居ル間
ハ退廳スルト云フコトハナイト思ヒマス、
東京ナドニ住ンデ居ル人デ試驗勉强ノ爲ニ
入ツテ居ルト云フヤウナ人ハ、ソコデイケ
ナケレバ又何處カニ變ツテ行クト云フヤウ
ニ、心ニ賴リガアリマスガ、東京ヲ離レ
夕田舍ニハサウ云フコトハ斷ジテナイト思
フ、其ノ點ニ付テ今一應御說明ヲ願ヒタイ
ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=67
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068・樋貝詮三
○福貝政府委員 二點ノ御尋ノ中、能ク惡
辣高利貸ト云フコトヲ申シマスガ、惡辣借
金者トデモ申シマセウカ、借リル方ガ隨分
性ノ惡イト云フヤウナモノハ、恩給局ニ於
キマシテモ、是ハ借リタ方ガイケナイノダ
ト云フヤウナモノ、或ハサウ云フ事情ガ能
ク想像出來ルヤウテ事件ガ相當アリマス、
先程塚本サンガ恩給證書ノ再交付ニ付キマ
シテ統計ヲ御尋ニナリマシタ、恩給局長カ
ラ之對ニシテ、所謂證書使用ガ困難ナ爲メ
ノ再交付ノ件數ガ件數ガ割合ニ少イト云フ
コトヲ申上ゲタ譯デアリマスガ、其ノ件數
ハ少イ、求メラレテ居ル通リニ與ヘナイ、
約五分ノ一位與ヘタト先刻件數ヲ申上ゲマ
シタノデスガ、ソレ等ノ者ニハ餘程手心ヲ
致シテ居ル譯デス、金貸ノ方ニ隨分ト見兼
ネル非常ニ酷イノガアルト同時ニ、借リル
方ニ、初メカラ是ハ詐欺ノ目的デ借リテ居
ルノヂヤナイカト云ラヤウナコトヲ考ヘラ
レルノガ相當アリマス、恩給局ハ詐欺ノ手
先ニナルベキデハナイト云フ主張ノ下カ
ラ、サウ云フヤウナ事情ノハツキリ致シマ
シタモノニ付テハ、再交付ヲ致シテ居ラナ
カツタヤウナ事情デアリマス、サウ云フヤ
ウナ所カラ多少統制ハ致シテ居ル次第デア
リマス
ソレカラ第二ノ雇員ノ問題デアリマスガ、
是ハ私ノ見マシタ所ガ都會地ヲ主ニシテ居
ル關係上、地方ノ實情ト餘程違ツタ所ガア
ルカモ知レヌト存ジテ居リマスガ、都會地
ナドニ於キマシテ何時モ動キノ現ハレ方ヲ
見マスト、外ノ景氣ノ好クナツタ時ニソレ
ガ殊ニ顯著ニ現ハレマス、景氣ノ惡クナツ
タ時ニハ就職スルノニ骨ヲ折ルカラ、用心
深ク嚙リ付クト云フヤウナコトニナリマス
ガ、景氣ガ再ビ好クナルトサツサト他ニ轉
ジテシマフト云フコトニ付キマシテハ、恐
ラクハ其ノ意味ノ境遇ノ惠マレ方ト云フコ
トカラ來ル結果デモアリマセウ、先程塚本
サンガ、條件サヘ好ケレバ同ジニナルヂヤ
ナイカ、其ノ條件ガ違ツテ居ルカラサウ云
フコトニナルト云フヤウナ御話ガアリマシ
タガ、結果カラ見レバ確ニサウ云フコトハ
アルト思ヒマス、雇員ノ人ノ動キハ非常ニ
自由デアルノデアリマス、都會ト地方トニ
依ツテ、又其ノ外部ニ於ケル景氣ノ好シ惡
シト云フヤウナコトニ依ルノデアリマシテ、
一樣ニ何レトハ申セマセヌガ、全體カラ通
觀シテ見タラマダ官吏ノ方ガ尻ノ坐リガ宜
イノデハナイカ、尻ノ坐リダケデ恩給ノコ
トヲ考ヘルベキデハ無論ナイノデスガ、
ツノ要素トシテ申上ゲタノデアリマス、サウ
云フヤウナコトモ考ヘラレハシナイカト云フ
ヤウナコトガ、先年議論ヲ致シマシタ時ニ現
ハレタ一ツノ議論デアツタノデアリマス、兎
ニ角前年モ之ヲ議題ニ取上ゲマシテ、相當長
イ間論議ヲシタヤウナ譯デアリマスカラ、
是ハ全然理由ナシ、全ク理由アリトドチラ
カニ簡單ニ決メラレルモノデシタラ、今日
ニ問題ヲ殘サズニ、又當時ニ於キマシテモ問
題ニナラズニ來タモノダト思ヒマスガ、兩
面トモニ理由ガ相當主張出來ルヤウナコト
デアツタ爲ニ、隨テ議題ニモナリ、又論議
モサレタト云フコトニナル譯デアリマス、
只今色々御聽キ致シマシタヤウナ事情モ篤
ト考慮致シテ置キマシテ、後ノ立法ナドニ
當リマシテモ參考ニ致シタイト云フ積リデ
居リマスガ、先程ノ塚本サンノ御話ナドモ
同時ニ加ヘマシテ念頭ニ存シテ、何カノ機
會ニハ十分資料ニシタイト云フ考ハ持ツテ
居リマス、只今トシテ差當リハドウモ之ニ
對シテ恩給法デ規律シテ行カウト云フ考ハ
アリマセヌ、別途ノ今日存在シテ居ル共濟
組合ト云フヤウナモノデ考ヘテ行ツタ方ガ
宜イデハナイカト今日ハ考ヘテ居リマス
尙ホ今ノ御質問トハ少シ離レルノデアリ
マスガ、先程齋藤サンカラノ御尋デゴザイ
マシタカ、金鵄勳章ノ數字ガ今屆イタノデゴ
ザイマスガ、三月八日現在ニ於キマシテ、
今マデ金鵄勳章ヲ下賜セラレタ者ガ三万三
千二百八人デゴザイマス、此ノ內譯ハ一寸
申上ゲ兼ネマスノデ、恩賞ニ與リマシタ人
數ダケノ所デ御諒承願ヒタイト思ヒマス
ソレカラ先程四十歲未滿ノ者ノ恩給停止
ノ人員ニ付テノ御尋ガ、塚本サンデシタカ
アリマシタガ、只今ノ所調査ノ付キマシタ
最近ノ人數ハ百二人デゴザイマス、ソレカ
ラ厚生省ノ方ガ見エテ居リマスカラ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=68
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069・高橋泰雄
○高橋委員長 齋藤君ニ申上ゲマスガ、先
刻御要求ノ厚生ノ政府委員ガ見エマシタカ
ラ、御質疑ガアレバ御發言ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=69
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070・齋藤直橘
○齋藤委員 吾々恩給法改正案ノ審議ニ當
リマシテ、今囘ノ改正ノ趣旨ハ事變ニ伴フ
モノデアリマス、吾々モ事變ニ伴フ觀點カ
ラ審議ヲ致スコトガ適當ト思ツテ、其ノ方
針デ審議ヲ進メテ居ル次第デアリマス、恩
給法以外ニ戰死者遺族ノ保護ニ對スル對策、
又傷兵保護ニ對スル各種ノ對策、是ハ先年
來政府ガ行ヒツツアル所デアリマシテ、ソ
レ等ノ件ニ付テ現今ノ狀況等ヲ出來ルダケ
詳細ニ承ルト云フコトガ、今囘此ノ改正法
律案ヲ審議スル上ニ非常ニ參考ニナリマス
カラ、ソレ等ノ御說明ヲ得タイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=70
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071・藤原銀太郎
○藤原政府委員 只今齋藤サンノ御尋ノ傷
兵保護對策ノ事柄ニ付キマシテ、現在傷兵
保護院デ計畫ヲシ、實施ヲ致シテ居リマス
ルコトニ付テ極ク大體ヲ申上ゲタイト思ヒ
マス、傷兵ノ保護對策ト致シマシテハ、非
常ニ多岐各般ニ岐レルノデアリマスガ、之
ヲ御說明申上ゲマス便宜ト致シマシテ、事
項別ニ分割シテ申上ゲタ方ガ宜シカラウト
存ズルノデアリマス、先ヅ第一ニハ醫療ノ
保護ノ施設デゴザイマス、第二ハ職業ノ保
護ノ施設、第三ハ傷痍軍人ノ待遇等ニ關ス
ル施設デアリマス、第四ト致シマシテ傷痍
軍人竝ニ一般ノ國民ノ側ニ對スル〓養、〓
化ト云フ事項デゴザイマス、大別致シマス
ト、斯樣ナ四種類ニ分割シテ申上ゲルコト
ガ出來ルノデアリマス
其ノ中ノ醫療保護ト云フコトニ付キマシ
テハ、如何ナルコトヲ計畫シ、實施シテ居ル
カト申上ゲマスト、是ハ直接國立ノ療養所
ヲ設置致シマシテ、ソレニ傷痍軍人ヲ收容
シテ保護ヲ加ヘ、療養ヲ致サシメルト云フ
計畫ヲ以テ、只今其ノ計畫ノ建物ノ建設中
ニ大部分屬シテ居ルノデアリマシテ、旣
其ノ一部ノモノハ出來上ツテ患者ノ收容、
ヲ始メテ居ルモノモアルノデアリマス、其
ノ內容ヲ簡單ニ申上ゲマスレバ、結核ノ療
養所ヲ全國ニ二十五箇所造ルノデゴザイマ
ス、更ニ溫泉ノ療養所ヲ十箇所造ルノデア
リマスガ、其ノ溫泉ノ療養所ト申シマスモ
ノハ、傷痍ヲ受ケマシテ、其ノ傷痍ハ陸海
軍ノ病院ニ於キマシテソレ〓〓治療ヲ加ヘ
ラレマシテ、陸海軍病院ヲ退院致シマス時
ニ、ソレ〓〓其ノ症狀ハ固定ヲ致スノデアリ
ざる、サウシテ除役若タハ召集解除等ニナ
リマシテ出テ參リマシタ者ガ、氣候ノ變化
ニ依ツテ、殊ニ冬季等ニ於キマシテハ關節
ガ痛ミヲ、感ズルトカ云フヤウナコトガ屢〓
アルノデアリマス、是等ノ人ニ對シマシ
テ湯泉ノ療養所ヲ設ケマシテ、ソレニ依ツ
テ其ノ治療、療養ニ資スルト云フ施設ニナ
ツテ居ルノデアリマス、尙ホ精神障害者ノ
爲ニ精神療養所ヲ一箇所設クルコトニ致シ
テ居ルノデアリマス、更ニ此ノ精神療養所
ニ付キマシテハ、明年度ニ於キマシテ二箇
所增設ノ豫定ヲ以チマシテ、只今議會ニ豫
算ガ提案サレテ居ルノデアリマス、ソレカラ
其ノ醫療ノ保護ノ一ツト致シマシテ委託療
養ト云フ方法ヲ實施致シテ居ルノデアリマ
シテ、是ハ國立ノ療養所ニ入所スルコトガ
困難ナル事情ニアリマスル者若クハ國立ノ
療養所ノ收容力ニ超過シテ收容シ切レナイ
ト云フヤウナモノニ對シマシテ、公私立ノ
病院デアリマスルトカ、或ハ溫泉旅館等ニ
委託ヲ致シマシテ、其ノ療養費ヲ國ニ於テ
支辨ヲスルト云フ內容ノ方法デゴザイマス、
尙ホ此ノ外ニ自宅療養ト云フモノヲ實施シ
テ居ルノデアリマス、是ハ傳染性ノ疾患デ
ナイ病氣ニ對シマシテ、自宅ニ於テ療養ヲ
加ヘル、サウシテ附近ノ醫師ニ依ツテ手當
ヲ受ケシメル、其ノ經費ヲ國庫デ支辨ラス
ルト云フ方法デゴザイマス
次ニ職業ノ保護ト云フコトニ付キマシテ申
上ゲマスガ、職業ノ保護ト致シマシテハ、陸海
軍ノ病院ニ居リマスル中ヨリ、ソレ〓〓其ノ人
ノ傷痍疾病ノ程度ニ應ジマシテ、退院ノ後適
當ナル方面ノ職業ト云フコトヲ〓究ヲシマシ
テ、適切ナル職業ノ指導ヲ致ス、サウシテ退院
後ニ於キマシテソレ〓〓其ノ職業ノ就職ニ
幹旋ヲ致ス、又就職後ニ於キマシテモ事業
主ト連絡ヲ持チマシテ就職後ノ補導ヲスル、
斯樣ナ計畫ヲ以テ當ツテ居ルノデアリマシ
テ、是ガ爲ニ地方廳ニ職業ノ指導ノ爲ノ專
務職員ヲ配置致シテ居ルノデアリマス、叉
傷兵保護院ニ此ノ方面ノ專門家、權威者ヲ
職業顧問トシテ囑託ヲ致シテ居ルト云フ狀
況ニナツテ居ルノデアリマス、サウ致シマ
シテ此ノ職業ノ指導ノ方針ト云フコトニ付
キマシテハ、成ベク入營若クハ召集前ノ職
業ニ復歸セシメル、言換ヘレバ原職ニ復歸
シセムルト云フコトヲ根本ノ方針ト致シテ
居ルノデアリマス、併シナガラ身心ノ缺陷
ノ爲ニ、元ノ職業ニ必ズシモ復歸スルト云
フコトガ困難デアルト云フ場合ガ多々アル
ノデゴザイマス、其ノ爲ニ特ニ更ニ其ノ人
ニ向ツテ適當ナル職業ニ就職スル爲ノ準備
〓育、言換ヘレバ職業ノ再〓育ヲ行フト云
フ必要ガアルノデアリマス、其ノ爲ニ國立
ノ傷痍軍人職業補導所ト云フモノヲ計畫致
シテ居ルノデアリマス、是ハ大阪ト福岡ノ
二箇所ニ合計四百人ノ者ヲ收容セシムルト
云フ計畫デ、只今施設物ノ建設中デゴザイ
やく、此ノ外東京ニ對シマシテハ財團法人
啓成社ニ國庫ヨリ補助金ヲ交付致シマシテ、
特ニ傷痍軍人ノ爲ノ施設ヲ擴張セシムルト
云フコトニ致シテ居ルノデアリマス、更ノ
職業ノ再〓育ノ施設ト致シマシテハ是ノミ
ヲ以チマシテハ不十分デゴザイマスノデ、
全國ノ各道府縣ニ向ツテ國庫ヨリ補助金ヲ
交付致シマシテ、道府縣ノ施設トシテ簡易
ナル、而モ其ノ地方ノ特色ノアル職業ノ再
〓育ノ施設ヲ行ハシメルト云フコトニ致シ
テ居ルノデゴザイマス、尙ホ此ノ外職業ノ
事柄ニ付キマシテハ、職業ノ爲ニ更ニ特定
ノ學校或ハ工場等ニ對シマシテ、再〓育ノ
爲ニ入學入所スルト云フヤウナ必要ガアリ
マスルノデ、ソレ等ノ者ニ對シテハ學資給
與ヲ致シマシテ、其ノ〓育ヲ受ケシメルト
云フ途ヲ開イテ居ルノデアリマス、尙ホ又
傷痍軍人ノ職業ニ就職シ、就業致シマスル
爲ニ必要ナ作業義手義足ト云フヤウナモノ
ヲ支給スルト云フ計畫ニナツテ居ルノデア
リマス、又事業主ニ對シマシテハ、成ルベ
ク傷痍軍人ヲ使ツテ貰フヤウニ慫慂ヲ致シ
マス、同時ニ其ノ爲ニ或ル程度工場ノ設備
ヲ變ヘナケレバナラヌト云フヤウナ必要ニ
迫ラレル場合ガ多々アルノデアリマシテ、サ
ウ云フ場合ニ對シテ、工場主ニ於テ其ノ傷痍
軍人ニ適スルヤウニ設備ノ一部ヲ改善スルト
云フヤウナ場合ニ於キマシテハ、此ノ作業設備
改善ノ爲ニ國庫ヨリ補助金ヲ出スト云フヤウナ
方法ヲ講ジテ居ルノデアリマス、尙ホ傷痍軍人
ガ自ラ營業ヲ營ムト云フ爲ニ、所謂生業資金
ト云フモノガ必要デアリマス場合ニハ、傷
痍軍人ノ生產ノ爲ノ資金ヲ貸付融通スルト
云フ途ヲ開イテ居ルノデアリマス、是ハ此
ノ頃出來マシタ恩賜財團軍人援護會ト云フ
モノニ對シテ、國庫ヨリ補助金ヲ交付致シ
マシテ、其ノ援護會ノ事業トシテ之ヲ行ハ
シメルコトニ致シテ居ルノデアリマス、其
ノ外特殊ノ傷痍軍人ニ對スル保護施設ト致
シマシテ失明軍人、卽チ兩眼ノ失明軍人ニ
對シマシテ失明軍人寮及ビ是ノ〓育所ト云
フモノヲ東京ニ設ケマシテ、是等ノ人ニ對
シテ、生活ガ一變致シマスノデ其ノ一變シ
タ生活ノ不自由ヲ防グ爲ニ色々訓練ヲシ、
又精神上ノ慰安指導ヲ行フト同時ニ、職業
上ノ〓育ヲ施スト云フ意味ヲ以チマシテ、
失明傷痍軍人ノ施設ヲ行ツテ居ルノデアリ
さい、大體是ガ職業ノ保護ニ關スル對策デ
ゴザイマス
次ニ傷痍軍人ノ優遇或ハ名譽表彰ト云フ
ヤウナ問題ニ付テノ施設デゴザイマスガ、
是ハ特ニ國家ニ非常ナ功勞者タル所ノ傷痍
軍人ニ對シマシテハ、其ノ名譽ヲ出來得ル
限リ表彰スル途ヲ講ジナケレバナラヌノデ
アリマシテ、其ノ趣旨ヲ以チマシテ全國ノ
傷痍軍人ノ門戶ニ標識ヲ一樣ニ附ケルトカ、
或ハ傷痍軍人ノ記章ノ改正ガ今囘行ハレマ
シテ、其ノ記章ヲ地方長官ノ手ヨリ莊嚴ナ
ル式典ヲ行ツテ傳達ヲセシメルト云フヤウ
ナ方法ヲ講ジタノデアリマス、尙ホ又色々
ノ公式ノ會合等ノ場合ニ於キマシテ、傷痍
軍人ノ爲ニ特別ニ席ヲ設ケテ參列ノ機會ヲ
與ヘルト云フヤウナコトニ、各地方長官ニ
措置ヲ講ジテ貰フヤウ、ソレ〓〓通達シテ
居ルノデアリマス、尙ホ傷痍軍人ノ優遇ニ
付キマシテハ、國ノ施設、或ハ公共團體等
ノ公ノ施設ノ中デ、例ヘバ文化ノ爲ノ施設
デアルトカ、或ハ慰安ノ施設デアルトカ、
各種ノ施設ガゴザイマスガ、ソレ等ニ對シ
テ特ニ傷痍軍人ニ無料利用ノ途ヲ講ジ、或
ハ國有鐵道ノ無賃乘車デアルトカ、公共團
體經營ノ電車ノ「パス」デアルトカ、色々ナ
方面ニ於テノ優遇ノ途ヲソレ〓〓關係ノ各
省ニ配慮ヲ願ヒマシテ講ジテ居リ、又從來
ヨリモ擴大ヲ致シタモノモアルノデアリマ
ス、其ノ他各種ノ職業上ノ問題ニ付キマシ
テ、政府ノ認可、許可ヲ要スル事項ニ付キ
マシテハ、特ニ傷痍軍人ニ對シテ優先的ナ
取扱ヲ爲スト云フヤウナコトモ多々アルノ
デアリマス、是等ハ大體政府若クハ公共團
體ニ於テ行ツテ居リマスル保護優遇ノ施設
デゴザイマスガ、是ト同時ニ傷痍軍人ノ保
護ト致シマシテハ、政府ノ施設ト相俟ツテ、
團體ノ施設トシテ、傷痍軍人ニ對スル保護
ノ徹底ヲ期スル必要ガアルノデゴザイマシ
テ、其ノ爲ニ今日デハ恩賜財團軍人援護會
ト云フ有力ナ軍人援護ノ團體ガ設立ヲ見テ
居リマス、此ノ團體ニ、此ノ方面ノ民間ノ
援護施設ノ徹底ヲ期スルヤウニ活動ヲシテ
貰ツテ居ルノデアリマス、尙ホ又傷痍軍人
ノ修養ノ團體デアリマシテ、大日本傷痍軍
人會ト云フモノガゴザイマス、是ノ活動ニ
依リマシテ、傷痍軍人ノ主トシテ修養ノ方
面ノ團體トシテ施設ヲ行ツテ居ルヤウナ狀
況デアリマス
最後ニ傷痍軍人ノ〓養〓化ト云フコトデ
アリマスガ、傷痍軍人ニ對シマシテ今囘政
府ト致シマシテハ可ナリ徹底ヲシタ保護對
策ヲ行ヒツツアルノデアリマス、併シナガ
ラ是ト同時ニ傷痍軍人ニ對スル精神的ノ指
導ト云フコトガ最モ大切ナノデアリマシテ、
サウ云フ意味カラ致シマシテ、傷痍軍人ニ
對スル精神指導ト云フコトニ、政府ト致シ
マシテハ重點ヲ置イテ居ルノデアリマス、
尙ホ一面一般國民ニ對スル〓化ト云フコト
ガ又大切デアリマス、今日デハ傷痍軍人ニ
對スル國民ノ感謝ノ熱情ト云フモノハ、洵
ニ溢レルバカリノ狀況デアリマシテ、今日
ニ於キマシテハ別段心配ハナイノデアリマ
スガ、從來ノ經驗ニ依リマスト、年ヲ經ル
ト共ニ其ノ熱情ガ段々冷メテ來ル、ソコニ
亦傷痍軍人ノ側ニ於キマシテモ非常ニ心理
狀況ニ變化ヲ來スト云フヤウナ關係ガゴザ
イマスノデ、國民ノ感謝ノ熱情ヲ永ク傷痍
軍人ニ對シテ存續セシムル、又國民各層ノ
人々ガソレ〓〓ノ立場ニ於テ、傷痍軍人ガ
再ビ起ツテ國家ニ御奉公ヲスルコトニ對シ
テ協力支援スルト云フ氣持ヲ徹底セシムル
ヤウニ、國民ノ〓化ニモ努力ヲ致シテ居ル
ノデアリマス、以上大要申上ゲマシタ次第
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=71
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072・齋藤直橘
○齋藤委員 承リマシテ能ク分リマシタ、
大體ノ御方針ハ承リマシタガ、其ノ實績ハ
承ラヌノデアリマス、全體ヲ承ツテモ時間
ヲ取リマスカラ、二三私ノ伺ヒタイ所ヲ御
尋致シタイト思ヒマス、全國ニ二十五箇所ノ
國立結核療養所ヲ造ル、此ノ結核ノ傷痍軍人
ハ相當多イト思フノデアリマスガ、其ノ數
ヲ承ルコトガ出來レバ承リタイ、又承ルコ
トガ出來ナケレバ、他ノ疾病等ニ比較シテ
ドンナ比率ニナツテ居ルカ、ソレヲ承リタ
イト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=72
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073・藤原銀太郎
○藤原政府委員 只今ノ數ノ問題ハ今日發
表スルコトガ出來ナイノデアリマス、比率
ノ問題ニ付キマシテハ、傷痍軍人ノ數ハ、
御承知ノ通リ今日事變ノ過程デアリマス爲
ニ日々動クノデアリマス、大體ノ今日マデ
ノ數ハ實ハ分ツテ居ルノデアリマス、但シ
其ノ病氣ニ對スル比率ノ問題ニ付キマシテ
ハ非常ニ調ガ困難デアリマシテ、詳シイ調
ガマダ出來テ居リマセヌ、ソコデ此ノ問題
ニ付キマシテハ只今申上ゲルコトガ出來ナ
イノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=73
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074・齋藤直橘
○齋藤委員 ドウモ此ノ程度ノコトハ祕密
ニサレル必要ハナイト思ヒマス、是ハ大體
疾病者ノ數ガ分ラナケレバ御方針ガ立タヌ
筈デアリマスカラ、結核ガ他ノ疾病ニ對シ
テ約一割見當、サウスレバ幾人收容スル所
ノ病院ヲ幾ツ造ル、斯ウ云フコトハソレデ
初メテ案ガ立ツ譯デアル、併シ御尋シテモ
御答ガ出來ヌト言ハルレバ仕方ナイデス
ガ、所デ此ノ結核トカ其ノ他ノ疾病デモ同
樣デスケレドモ、是ハドウ云フ御方針デス
カ、應召シテ病氣ニ罹ツタ、ソレヲ全快サ
シテ再ビ戰線ニ送ル、是ハモウ第一義ダト
思フノデスケレドモ、或ハ兵役ヲ免除サレ
ルヤウナ人ニ對シテハ全快ヲサシテ〓里ニ
歸ス、尤モ是ハ兵役ニハ適セヌヤウナ者ノ
コトデスガ、サウ云フ御方針ダラウト思フ
ノデスガ、結核ナドニ罹ツタ人ハ、恩給ニ
モ一寸關係ガゴザイマスケレドモ、戰傷或
ハ戰病者ニ對スル御取扱ハドウナリマスカ
ソレヲ承リタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=74
-
075・平木弘
○平木政府委員 結核ニナツタ場合ニハ、
恩給法デ言ヒマスレバ增加恩給ニナル譯デ
アリマス、結核ガ果シテ公務ニ基因スルカ、
或ハ其ノ他ニ原因スルノカ、此ノ區別ハ非
常ニ難カシイモノデアリマス、其ノ爲ニ一般
的ニハ-一般的ト申シマスノハ、內地デ
アリマストカ、或ハ普通ノ公務員デアルト
カ、サウ云フ意味デアリマスガ、一般的ニ
ハサウ云フ因果關係ノ判斷ガ困難デアリマ
スルカラ、假令結核ニ罹リマシテモ、公務
上ノ傷痍トハ認メテ居リマセヌ、唯滿洲事
變或ハ今度ノ事變等ニ於キマシテハ、サウ
云フモノヲ大體增加恩給ニ該當スルト云フ
コトニ取扱ツテ行ク方針ニナツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=75
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076・齋藤直橘
○齋藤委員 ソレハ增加恩給ト云フコトデ
スガ、結核ヲ例ニ引キマシタケレドモ、結
核バカリデハナイト思ヒマス、應召シテ入
營ヲスル、サウシテ直チニ結核ニナルト
カ、或ハ其ノ他ノ疾病ニ冐サレタ、サウ云
フ者ハヤハリサウ云フ御取扱ニナツテ居マ
スカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=76
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077・平木弘
○平木政府委員 其ノ病氣ニ依ルノデアリ
マシテ、只今ハ結核ノ場合ヲ申上ゲタノデ
アリマス、其ノ外ハ其ノ病氣ニ依ルノデア
リマスカラ、一〓ニ如何ナル病氣ニ罹ツテ
モ總テ之ヲ公務上ノ傷痍ト認メルカドウカ
ト云フコトハ申上ゲニクイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=77
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078・齋藤直橘
○齋藤委員 結核ハドウデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=78
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079・平木弘
○平木政府委員 結核ノ場合ニハ、公務上
デナイト云フ理由デモハツキリシテ居レバ
公務上デナイト云フコトニシマスケレドモ、
ソレ以外ノ場合ニ於キマシテハ、公務上ノ
傷痍ト云フ風ニ取扱フ方針ニナツテ居リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=79
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080・齋藤直橘
○齋藤委員 何カ入院シテカラノ期間ニ制
限ガアリマセヌカ、或ハ入營ヲシテ一箇月經
タナクテハイカヌトカ、二箇月後發病シタ
トカ、サウ云フヤウナ制限ハアリマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=80
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081・樋貝詮三
○樋貝政府委員 別ニ期間ニ制限ハ置キマ
セヌケレドモ、例ヘバ入營シテ卽日結核デ
ヒドイ狀態ニナツタト云フノハ、ソレハ勤
メタカラ結核ニナツタト云フヤウニハ考ヘ
ラレマセヌノデ、勤務ト病氣トノ間ニ長イ
期間ガナイ場合ニハ、サウ云フ極端ナ短イ
モノニナリマスト、是ハ公務ニ基因シタト
ハ言ヘマセヌ、併シ別ニ期間デ幾ラ〓〓經
ツテカラデナケレバイケナイト云フ、サウ
云フ制限ハアリマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=81
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082・齋藤直橘
○齋藤委員 私ハアルヤウニ聞イテ居リマ
スケレドモ、是ハ更ニ御調ヲ願ヒタイ、結
核等ノ如キハ、激務ノ爲ニ潜伏シテ居ルモ
ノガ發病スルノデアリマスカラ、ヤハリ公
務ニ基因シタルモノト認メラルルノガ穩當
ダラウト思フ、相當數ガ多カラウト思ヒマ
スカラ、是ハ患者タル軍人ニ利益ノヤウニ
解釋サレルノガ穩當デハナイカト思ヒマス、
ソレカラ二十五箇所ト云フノヲ、一寸場所
ヲ伺ツテ置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=82
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083・藤原銀太郎
○藤原政府委員 二十五箇所ハ、北海道、
靑森、秋田、新潟、宮城、東京、千葉、愛
知長野、石川、三重、福井、京都、神奈
川、大阪、兵庫、廣島、岡山、島根、德島、
愛媛、福岡、佐賀、宮崎、鹿兒島デゴザイ
マス、其ノ中デ既ニ全部若クハ一部出來上
リマシテ開設致シテ居リマスモノハ千葉、
愛知、岡山、福岡、廣島、宮城、長野、石
川、京都ト云フ箇所デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=83
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084・齋藤直橘
○齋藤委員 其ノ二十五箇所全部出來ルニ
ハ何時マデ掛ルノデスカ、ソレカラ各〓一箇
所ノ收容人員ガ違フノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=84
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085・藤原銀太郎
○藤原政府委員 此ノ二十五箇所ノ建設
ハ、マダハツキリシタ竣功ノ時期ヲ申上ゲ
ル譯ニモ參リマセヌケレドモ、大體ノ豫定
ト致シマシテハ、此ノ秋マデニ全部出來上
ル豫定デ、只今建設ヲ進メテ居ルノデゴザ
イマス、サウシテ其ノ收容ノ定員ハ必ズシ
モ一律デハゴザイマセヌ、最モ大キイ東京
大阪ハ千人ノ收容デアリマス、其ノ他五百
人ノ收容ノモノガ十七箇所、四百人ノ收容
ノモノガ二箇所、三百人收容ノモノガ四箇
所ト云フ數ニナツテ居ルノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=85
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086・齋藤直橘
○齋藤委員 先刻一寸御尋シタノニ御答辯
ガ漏レテ居ルノデスガ、結核療養所ノ方針
ハ癒シテ歸スト云フノデスカ、或ハ自宅ニ
歸ルヤウニナレバ歸スト云フノデスカ、是
ハ中々永イ病氣デスカラ、相當長イ期間病
院ニ居ラナケレバナラヌト思ヒマスガ、ソ
レハドウ云フ風ナ御取扱ニナツテ居リマス
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=86
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087・藤原銀太郎
○藤原政府委員 此ノ傷兵保護院ノ結核療
養所ニ收容致シマシタ者ハ、全治スルマデ
收容ヲシテ、其ノ上デ歸〓セシムルト云フ
方針デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=87
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088・齋藤直橘
○齋藤委員 ソレヲ承ツテ大變安心ヲ致シ
マシタ、其ノ次ニ御伺致シタイノハ、生業
資金ヲ恩賜財團軍人援護會ヲ通ジテ貸與ス
ル、斯ウ云フ御話デアリマスカラ、政府カ
ラ此ノ援護會ニ所要ノ金額ヲ交付シテ、此
ノ援護會ノ責任ヲ以テ生業資金ヲ貸シ與ヘ
ル、斯ウ云フコトニナルノダト想像致シマ
ス、是ハ其ノ金額ニ於テ凡ソドレ位ノ金額
ヲ貸シ與ヘラレルカ、或ハ保證人トカ何ト
カ云フ者ガ必要デアリマセウカ、サウ云フ
コトヲ〓略御分リニナツテ居ル所ヲ承リタ
イ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=88
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089・藤原銀太郎
○藤原政府委員 生業資金ニ付キマシテハ
先刻申上ゲマシタ通リ、恩賜財團ヲ通ジテ
融通ヲ致ス豫定ニ致シテ居リマスノデ、目
下其ノ融通ヲシマスル場合ノ條件等ニ付キ
マシテハ、恩賜財團ト折衝中デゴザイマシ
テ、未ダ確定ヲ致シテ居リマセヌケレド
モ、大體ノ見込ヲ申上ゲテ置キタイノデア
リマス、左樣ナ意味デアリマスルカラ、ハ
ツキリ確定デナイト云フコトダケハ御諒承
願ツテ置キタイノデアリマス、大體一世帶
ト申シマスカニ貸付ケマスル金額ノ限度ハ
五百圓ヲ以テ最高トスル、ソシテ貸付ケマ
スル場合ノ條件ハ、無論人的信用ト云フコ
トニ依ツテ貸付ケル、而モソレハ特別ニ保
證人等ノ方法ヲ成ベク採ラナイデ、貸付ヲ致
シマスル場合ニ携ハル關係ノ人達デ、其ノ
生業資金ヲ貸シマスコトニ依ツテ傷痍軍人
ガ行ヒマスル生業方面ノ見透シ、又ソレノ
確實性、ソレカラソレガ果シテ此ノ人ニ適
スルヤ否ヤト云フヤウナ事柄ニ付キマシテ
十分ニ調査ヲ致シマシテ、其ノ邊デ指導ノ
徹底ヲ期スルヤウニシテ、貸付ノ條件ハ成
ベク寛大イニ致シタイト云フ方針デゴザイ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=89
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090・齋藤直橘
○齋藤委員 五百圓ト云フコトハ如何ニモ
少イヤウニ思フノデスガ、是ハ豫算ノ總額
ノ關係等無論オアリノコトト思ヒマス、今
日五百圓ヲ以テ其ノ生業ヲ再興スルト云フ
ヤウナコトハ到底出來ヌノデアリマスカラ、
是ハモツト增額セラレルヤウニ御考慮ヲ願
ヒタイト希望致シマス
失明軍人ノコトニ付テ御尋致シマス、是
ハ數ハヤハリ祕密デスカ、生業、生活狀態
ガ一變スルノデスカラ、私ハ斯ウ云フ人ハ
非常ニ氣ノ毒ダト思フ、是ハ全體傷痍軍人
諸君ニハ非常ニ御氣ノ毒ナノデアリマスケ
レドモ、殊ニ兩眼ヲ失ハレタヤウナ人ニハ
實ニ感謝ノ辭ガナイ程デアリマスノデ、ド
ウ云フ職業ヲ是等ニ與ヘテ、一生生活ガ出
來ルヤウニ職業ヲ指導シテ行カウト云フ御
考ガアルノデゴザイマスカ、一々斯ウ云フ
コトヲ御尋致シマスト時間ヲ空費致シマス
カラ、失明軍人ニ對スル指導ノ方針ヲ承ツ
テ、全體ノ御方針ヲ忖度シタイト思フノデア
リマス、出來ルダケ詳細ニ承リタイト思ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=90
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091・藤原銀太郎
○藤原政府委員 失明傷痍軍人ノ數ニ付キ
マシテノ御尋デゴザイマスガ、是モ前ト同
樣ニ申上ゲルコトハ差控ヘタイト思ヒマス、
失明軍人ノ保護トシテ先刻大略ノコトヲ
申上ゲタノデアリマスガ、失明軍人ニ對シ
マスル保護ハ、只今モ御話ノアリマシタヤ
ウニ、急激ニ兩眼ヲ失ツタ爲ニ生活ガ一變
致スノデアリマシテ、其ノ爲ニ精神的ニモ
非常ナル衝撃ヲ受ケテ、人生ノ將來ニ全ク
光明ヲ失フト云フヤウナコトニナリ易イノ
デアリマス、左樣ナ點ニ付キマシテ精神的
慰安ヲ與ヘ、サウシテ今後努力ヲサレルニ
於テハ、再ビ社會人トシテ立派ニ活動ヲシ
得ル途ガアルト云フヤウナ點ニ付テノ精神
指導モ行ヒ、又生活ノ一變シタコトニ對シ
テノ新シイ生活ノ訓育ト、盲人生活トシテ
ノ訓育、訓練ヲスルト云フコトヲ一面ニ於
テ考ヘテ居ルノデアリマシテ、左樣ナ意味
デ失明軍人ノ爲ノ寮ヲ造リマシテ、其處ニ
於テ共同ノ合宿生活ヲ行ハシメマシテ、ソ
レ等ノコトニ當ツテ居ルノデアリマス、同
時ニ失明軍人ノ〓育ト云フコトノ爲ニ、中
等部、師範部ト云フ內容ヲ持チマシタル〓
育ヲ施シテ居ルノデアリマシテ、是ハ只今
ハ官立ノ東京盲學校內ノ一部ニ於キマシテ
其ノ施設ヲ行ツテ居ルノデアリマス、是一
必ズシモソレ自體ガ特殊ノ職業〓育ト云フ
コトノミデハゴザイマセヌ、普通〓育ト云
フヤウナ内容ノ學科モゴザイマス、又本人
ノ希望ニ依リマシテハ職業的ナ學科ヲモ〓
授シテ居ルノデアリマス、例ヘバ簡易ナル
工作デアルトカ、或ハ速記デアルトカ、或
ハ點字印刷デアルトカ、琴、尺八、其ノ他
「マッサージ」等、希望ノ者ニ對シマシテハソ
レ等ノ學科ト云フヤウニ、各種ノ方面ニ亙
リマシテ職業的ナ方面ノ學科ヲモ併セテ授
ケテ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=91
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092・新居善太郎
○新居政府委員 先程遺族ニ對シテノ援護
竝ニ恩典ニ付テ御尋ガゴザイマシタ、遺族
ニ對シマシテハ御承知ノ通リ遺族扶助料、
戰歿死者特別賜金其ノ他死亡賜金、公傷賜
金金鵄勳章年金、軍人遺族記章ト云フヤ
ウナ恩典ガデゴザイマス外、煙草ノ小賣賣
捌或ハ收入印紙ノ小賣營業ト云フヤウナ
コトノ指定ニ當リマシテモ、優先的ニ取扱
ツテ恩典ヲ與ヘテ、現在相當ノ實績ヲ擧ゲ
テ居リマスシ、又扶助料ノ收入ニ對シテハ
各種ノ租稅ノ免除ヲ行ツテ居リマス、又遺
族ガ靖國神社ニ合祀祭ノ時ニ參拜スルト云
フヤウナ時ニハ、鐵道運賃ヲ免除スル或ハ
各地方ノ公共團體デ慰靈祭ヲ行フヤウナ時
ニハ割引ヲスルト云フヤウナコトモ行ツテ
居リマス、又小學校ノ授業料ノ減免ト云フ
ヤウナ恩典ノ途モ聞イテ居リマスシ、又各
地方ニ於テ公式ノ式典ヤ會同等ガアル際
ニ、遺族ヲ特ニ優遇スル途ヲ講ズルヤウニ
ト云フヤウナコトモ、各地方長官ニ對シテ
考慮ヲシテ貰フヤウナ通牒モ發シテ居リマ
ス、又遺族ガ生活ニ困難ヲ感ズルヤウナ場
合ニハ、軍事扶助法ニ依ツテ各種ノ扶助ヲ
スル途ヲ講ジテ居リマス、其ノ扶助ノ內容
ヲ申上ゲマスト、生活扶助、生業扶助、或
ハ醫療、授產ト云フヤウナコト、又不幸ニ
シテ亡クナリマシタ時ニハ其ノ埋葬ヲスル、
或ハ埋葬料ヲ與ヘルト云フヤウナ途モ講ジ
テ居リマス、又御承知ノ通リ法律ニ於キマ
シテ相當ノ條件ガアリマスガ、其ノ條件ニ
合ハナクトモ社會ノ實際カラシテ、或ハ我
國ノ家族制度ノ上カラ見マシテ、法律ニ依
ツテ與ヘラレルト同ジヤウナ內容ノ扶助
ヲスルノガ適當デアルト云フヤウニ見ラレル
場合モアリマスノデ、サウ云フヤウナ場合
ニ付キマシテモ、或ハ又其ノ他法律ニ漏
レテ居ルト云フヤウナ實情ニアルモノ等總
テニ對シマシテ、實情ニ合セル爲ニ要スル
費用ト致シマシテ、軍事救護事業助成費ト
云、フ費目ノ下ニ十三年度ニ於テ一千万圓ノ
豫算ヲ計上シテ、ソレニ依ツテ總テ賄ツテ
居ルト云フ狀況ニナツテ居リマス、又遺族
ノ育英ニ付キマシテモ、中等學校ニ入ルト
云フヤウナコトニ對シマシテハ相當心ヲ用
ヒテ、其ノ便宜モ圖ツテ居リマス、又家庭
ノ柱石ヲ失ツテ居ルノデ、各般ノコトニ付
キマシテ不便モ感ジマセウシ、又相談モシ
タイト云フヤウナ狀況モアラウト思フノデ
アリマシテ、是等ニ對シテ謂ハバ身ノ上相
談ト云フヤウナコトノ役ニモ立チ、又色々
法令ニ依ル恩典ヲ受ケルニ付キマシテモ、
手續其ノ他ニ付キマシテモ面倒ヲ見テ上ゲ
ルト云フコトカラ致シテモ必要ト思ヒマス
ノデ、是ハ遺族バカリデハゴザイマセヌガ、
遺族モ含メテ對象ト致シマシテ、サウ云フ
目的ノ下ニ各府縣及ビ市町村ニ軍事援護相
談所ト云フモノヲ設置シ、之ニ要スル費用
ヲ國庫ノ方カラ出シテ、出來ルダケ遺漏ノ
ナイヤウニ御世話ヲシ、其ノ戰歿軍人ノ功
勞ニ酬ヒテ出來ルダケ遺族ノ御世話ヲシタ
イト云フヤウニシテ居リ、又特別賜金ナド
モ遺族ガ受ケマシテ後ノ其ノ保存或ハ活用
ト云フコトニ付キマシテモ、相當御相談ヲ
申上ゲルヤウニト云フ風ナコトモ心掛ケテ
居ルノデアリマス、又色々從來ノ關係カラ
シテ負債ナドノアリマス點ニ付キマシテハ、
特ニ農山漁村ノ方面ニ於キマシテハ、臨時
農村負債處理法ニ依リマス特別ノ扱ヒト云
フ途モ講ジテ居リマスシ、又戶籍ノ取扱ニ
付キマシテモ、手數料ノ免除其ノ他便宜ノ
方法ヲ講ジテ居ルト云フ狀況ニナツテ居リ
そう、ソレカラ扶助料ナドガ參リマス、マデ
ノ手續期間中、ソレヲ立替ヘルト云フヤウナ
コトモ必要ガアリマスノデ是ハ先程御話ノ
アリマシタヤウニ軍人援護會ト云フヤウナ
團體デヤルコトニナツテ居リマス、又其ノ
他民間ノ各種團體ノ方ニ於キマシテモ、遺
族ノ物心兩方面カラ安住ノ所ヲ得サセルト
云フヤウナコトカラ、所謂母子「ホーム」ト
云フヤウナモノモ、從來一般ニ使用シテ居
ツタモノヲ特ニ遺族ノ方ニ振向ケルトカ、
或ハ又新シクサウ云フモノヲ建テルトカ致
シマシテ、遺族ノ方ニソレヲ使ハセルト云
フヤウナ途モ講ズルヤウニ指導シテ參ツテ
居リマス、ソレカラ物的方面ニ於テ相當ノ
恩典ナリ色々ノ途ヲ講ジマスト共ニ、先程
傷兵ニ對シテ其ノ御話ガアリマシタヤウニ、
遺族ニ對シテモ遺族自身ガ、家庭ノ柱石ハ
ナクトモ此ノ社會ニ於テ立派ナ生活ヲシ、
又其ノ遺族ヲシテ立派ニ成人サセルト云フ
上カラ行キマシテモ、何ト申シテモ精神的
ナ援護ト云フコト、而モ現在社會ノ人々ガ
拂ツテ居リマス敬意ト同情ヲ本當ニ將來永
ク續カセルト云フコトガ特ニ必要デアルト
考ヘマスノデ、其ノ方ニ付キマシテ特ニ力
ヲ入レ、殊ニ昨年ノ暮カラハ家庭强化運動
ト云フモノヲ起シマシテ、一般ノ遺族竝ニ
應召軍人ノ家庭ヲ、家族ノ人自ラモ、戰死
者或ハ第一線ニ於テ働イテ居リマス將兵ニ
劣ラヌヤウニ、立派ナ家庭ニスルト云フ風
ナ心ヲ揮ヒ起シテ戴クト共ニ、又一般社
會ノ人モ本當ニ心カラナル敬意ト同情
ヲ持チマシテ、其ノ家庭ヲ立派ナモノニ
スルト云フ風ナ、主ニ心ノ方カラ行ク
方法ヲ執リマシテ、是ハ各大衆雜誌或ハ婦
人雜誌、或ハ新聞社ト云フ方面ノ協力モ
得、又宗〓家ノ方ノ活動モ得、又各種〓化的
團體ノ方ノ活動ヲモ御願スルト云フヤウニ
致シマシテ、特ニ心掛ケテ居ル次第デアリ
やく、又生業資金ト云フ風ナコトニ關シマ
シテモ、先程御話ガアリマシタ恩賜財團軍
人援護會ノ方デ遺族ニ對シマシテモ同樣ナ
取扱ヲスルト云フ方法ニナツテ居リマス、
恩賜財團軍人援護會ノコトハ、先程他ノ政
府委員カラ申上ゲマシタガ、是ガ地方ノ支
部ヲ持ツテ居リマシテ、各府縣ニソレガア
リマスガ、最近ニ於キマシテ各種ノ援護ガ、
町村ニ於キマシテ總テ連絡統合ノアル形ニ
ナツテ、實際ニ當篏ルヤウナ趣旨ヲ以テ、
又一方ニ於キマシテハ、兵役義務ノ服行ヲ
完全ナラシメルト云フ新シイ目的ヲ以チマ
シテ、各町村ニ銃後奉公會ト云フ名稱デ統
一シマシテ、此ノ事變前カラアリマスル軍
人援護ノ團體、或ハ此ノ事變ニ於テ成立シ
マシタ軍人援護ノ團體、斯ウ云フモノノ內
容ヲモ强化致シマシテ、總テ法令ニ依ル援
護ノ徹底モ圖リ、又法令ニ依ル援護ニ於テ遺
憾ノアル點、漏レル點ト云フモノハ、又此
ノ團體ノ活動ニ依ツテ大イニ完璧ヲ期シタ
イト云フコトニシテ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=92
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093・齋藤直橘
○齋藤委員 御說明ヲ承リマシテ能ク分リ
マシタ、此ノ遺族扶助、傷兵保護ノ事業ハ
銃後後援事業ノ中心デアリマスカラ、ドウ
カ政府ニ於テモ一層此ノ事業ヲシテ萬遺憾
ナキヲ期シテ戴キタイト思ヒマス、私ハ此
ノ方ハ此ノ程度ニシテ、恩給ノコトデ一寸
後程御尋ヲ致シマス厚生省ノ方ハ終リマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=93
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094・塚本重藏
○塚本委員 一寸厚生省ノコトニ關聯シ
テ-齋藤委員ノ質問ニ對スル結核將兵ノ數
ハ公表出來ナイト云フコトデアリマスガ、
是ハ昨年ノ議會デハ相當論議セラレタ數デ
アリマス、其ノ後ドウナツテ居ルカ、其ノ
變遷ノ事情ハ知リマセヌガ、ソレ等カラ推
シマシテモ、相當ノ數ニ上ツテ居ルト云フ
コトヲ吾々ハ承知致シテ居リマス、ソレニ
對シテ今結核療養所トシテ全國ニ二十五箇
所設ケル、而シテ其ノ收容人員ハ合計致シ
マシテ一万四千五百名、此ノ收容人員ヲ以
テ致シマシテハ到底其ノ目的ヲ達スルコト
ガ出來ナイコトハ明カデアリマスガ、此ノ
點ニ付キマシテハ、是等ノ二十五箇所ガ今
春大體其ノ竣功ヲ見ルト致シマシタナラ
バ其ノ次ニ於キマシテ第二期ノ事業トシ
テ、更ニ是位ノ療養所ヲ建設スルコトガ必
要ダト思ヒマスガ、サウ云フコトニ付テノ
具體案ヲ持ツテ居ラレマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=94
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095・藤原銀太郎
○藤原政府委員 結核ノ傷痍軍人ニ對シマ
スル施設トシマシテ、只今御說明ヲ申上ゲマ
シタ二十五箇所ノ收容力ハ一万二千五百人
ニナルノデアリマスガ、此ノ數デ果シテ十
分デアルカドウカト云フ點ニ付キマシテハ、
吾々ト致シマシテモ心配ヲ致シテ居ルノデ
アリマス、併シ現在マデノ所ニ於キマシテ
ハ、只今申上ゲマシタ計畫ノモノヲ實現致シマ
スナラバ、大體ニ於テ支障ナク行ケルノデハ
ナイカト見込ヲ付ケテ居ルノデアリマスケ
レドモ、御承知ノ通リ事變ノ中途デアリマ
スカラ、今後ノ作戰ノ模樣等ニ依リマシテ
ハ如何樣ニナリマスカ、今日ヨリ豫測ハ出
來ナイノデアリマス、今後若シ此ノ療養所
ノ收容力ヲ以テ不足スルト云フコトニ相成
リマスレバ、ソレニ對シマシテハ善處致シ
タイト云フ積リデ考ヘテ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=95
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096・塚本重藏
○塚本委員 是ハ今後ノ推移如何デナク、
現在ノ實情ガ、旣ニ是ダケノ收容力デハ滿
足シ切レナイコトト私共ハ承知致シテ居ル
ノデアリマス、勿論其ノ全部ヲ收容シナイ
デ、他ニ之ヲ收容シ得ルヤウナコトガドノ
程度ニアルカ、ソレカラ又程度ニ依ツテハ
サウ云フ療養所ニ入ラナイデ、自宅療養等
ヲスル者ノ數モ相當アラウカト思ヒマス
ガ、何レニ致シマシテモ私共ノ承知致シテ
居ル數カラ見マスナラバ、極メテ其ノ一部
シカ收容シ切レナイト云フ狀態ダト思フノ
デアリマスガ、今ノ所ハ大體是デ宜イノダ
ト云フコトデアリマスト、陸軍デ云ヒマス
胸膜炎デアリマスガ、ソレハ結核病トシテ
其ノ中ニ包含サレテ居ルノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=96
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097・藤原孝夫
○藤原政府委員 胸膜炎ニ付キマシテハ、
結核トハ別ノ取扱ニナツテ居ルノデゴザイ
やっ、併シナガラ御承知ノ通リ胸膜炎ノ進
ミマシタモノガ、結核ニ罹患スル危險率ハ
非常ニ多イノデアリマス、隨ヒマシテ結核
療養所ニ收容致シマス者ノ中ニハ、陸海軍
病院ニ於テ胸膜炎トシテ診斷ヲ受ケタ決定
ノ者ニ對シマシテモ、其ノ一部ハ必要ニ應
ジテ收容ヲ致スコトニ致シテ居ルノデアリ
マス
尙ホ只今御答ヲ申上ゲマシタ點ニ付キマ
シテ補足シテ申上ゲテ置キタイノデアリマ
スカ、若シ十四年度ニ於キマシテ現在ノ療
養所ヲ以テ不足ヲスルト云フ情勢ニナリマ
シタ時ニハ、必要ニ應ジテ豫備金ノ支出ヲ
以テソレニ對シテノ處置ヲ講ズルト云フコ
トニ、財務當局トノ話ヲ纏メテ居ルノデゴ
ザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=97
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098・塚本重藏
○塚本委員 陸軍ノ胸膜炎ハ結核トハ別ニ
シテ居ルト云フ御答辯デアリマシタガ、是
ハ全然同一ノモノデアリマス、勿論今ノ答
辯ノヤウニ、程度ニ於ケル差ハアルカ知レ
マセヌガ、私ノ聞ク所ニ依リマスト、胸膜
炎ト云フヤウナ病名ハナイ筈デアリマス、
是ハ日本ノ陸軍ガ特ニ持ツテ居ル病名デア
リマシテ、サウ云フ病名ハナイト聞イテ居
ルノデアリマシテ、特ニ陸軍ガサウ云フ病
名ヲ附ケテ居ルノダ、斯ウ聞イテ居ルノデ
アリマシテ、胸膜炎ハ是ハ明ニ結核患者ト
シテ取扱ヲナスベキモノダト私ハ思ヒマス、
サウ云フ意味ニ於テ一層此ノ施設ヲ擴充シ
テ行カナケレバナラヌト思フノデアリマス、
今ノ御答辯デハ胸膜炎ハ結核トハ別デア
ル、胸膜炎ガ進行シタ場合ニ結核トナリ得
ル可能性ヲ持ツテ居ルト云フコトデアリマ
スケレドモ、是ハ全ク同一ノモノデアルト
私共ハ認識シテ居ルノデアリマス、是ハ昨
年ノ決算委員會ノ記錄デアツタト思ヒマス
ガ、私ハソレヲ讀ンデ居リマス時ニ、陸軍
當局ノ答辯ニ對シテ甚ダドウモ好クナイ感
ジヲ持ツタノデアリマス、サウ云フ胸膜
炎ノ人達ハ、一旦除隊ニナツテ歸ツテ自宅
療養ヲシテ、癒ル者ハ癒ルシ、癒ラヌ者ハ
癒ラヌノデアリマス、斯ウ云フヤウナ極メ
テ不人情ナ答辯ヲ當局ガシテ居ラレルノヲ
見テ、私ハ一人デ憤慨シタモノデアリマス
ガ、今日〓里ニ歸ツタ人ノ中ニハ、サウ云
フ人達ガ相當多イト思ヒマス、此ノ點ニ於
キマシテハ、一層結核療養所ノ增設ヲ圖ラ
レテ、廣ク胸膜炎將兵ニ對シマシテモ、同
樣ニ是ハ取扱ツテ、寧ロ輕微ナ時ニ十分ナ
ル手當ヲ致シマスルナラバ、是ハ早ク癒ル
ノデアリマス、ソレヲ放ツテ置ケバ、段々
進行シテ結局純粹ノ結核ニナル譯デスカ
ラ、寧ロ其ノ胸膜炎ト言ハレテ居ル時ニ於
テ、之ヲ全治セシムルト云フコトニ萬全ノ
努力ヲ拂ハレルコトガ必要デハナイカト思
フ、ドウゾ此ノ點ヲ十分御考慮下サイマシ
テ、ソレ〓〓ノ對策ヲ御立テ戴キタイト思
ヒマス
ソレカラ軍人援護會ト云フモノガ各地ニ
アツテ、政府當局デハ銃後奉公會トシテ之
ヲ改組セラレルコトニナツタト聞イテ居リ
マスガ、此ノ銃後奉公會ノ組織ヲドウ云フ
風ニシテ行カレルノデアルカ、日本全國津々
浦々ニ至ルマデ、殘ラズ此ノ奉公會ニ包含セ
シムルヤウナ會ニ、之ヲ發展セシメヨウトシ
テ居ラレルノデアリマスカ、サウシテ是ハド
ウ云フ仕事ヲサセヨウトシテ居ラレルノデア
リマスカ、其ノ事ヲ承リタイノデアリマスガ、
此ノ機會ニ是マデアリマシタ軍人援護會ノ
大阪ニ於ケル實情ヲ、此處デ極メテ簡單ニ
申上ゲテ、今後ソレ等ノ仕事ヲ進メテ貰ヒ
マス御參考ニ供シタイト思ヒマス、事變ガ
始マリマシテ、大阪ニ於キマシテハ全市各
戶殘ラズ、各地域每ニ軍人援護會ガ組織サ
レマシタ、恐ラク是ハ日本ニ於テモ大阪ホ
ド徹底シタ所ハナイノデハナイカト私ハ思
フノデアリマスガ、其ノ組織ノ經過ヲ見
ルト、ドウモ色々面白クナイコトガアツタ
ノデアリマス、例ヘバ經費ノ點ニ於キマシ
テモ、大阪市ガ各援護組合ニ對シテ、其ノ
地域ニ於キマスル所得納稅額竝ニ戶數等ニ
按分致シマシテ、何分カノ金ヲ醵出セシメ
ル、サウシテ更ニ又區ハ區デ、ソレニ比例
ヲ取リマシテ一定ノ金ヲ徵シテ行ク、サウ
シテ殘ツタモノガ、各組織セラレタ援護組
合ノ活動ノ資金ニナルト云フヤウニシタノ
デアリマシテ、其ノ他ノ事ハ全ク援護組合
ノ自由裁量ニ委サレテ居リマシタ、勿論斯
ウ云フモノハ自治的ニ、國民ノ誠心誠意カ
ラ生レテ來ルコトガ望マシイコトデハアリ
マスケレドモ、ソコニヤハリ一ツノ統一シ
タ指導方針ト申シマスカ、全體トシテソレ
ヲ旨ク運用シテ行ク所ノ一ツノ方法ガ考慮
サレナケレバナラヌト思ヒマス、其ノ點ニ
非常ニ缺ケタ所ガアツタト思フノデアリマ
ス、或ル地方ニ於キマシテハ一口十錢トシ
テ、相當强力ニ、各戶ニ對シマシテ、彼處
ハ二十口持ツテ吳レ、此處ハ五十口、此處
ハ三口持ツテ吳レ、少クトモ二口ハ持ツテ
吳レト云フ風ニシテ、援護組合費ヲ納メ
サセルヤウニシタノガ大部分デアリマス、
所ガ富裕區ニナリマスト、其處ニ居ル富豪
ガ一人デ以テ數万圓ノ金ヲ投出シテ、其ノ
事ノ爲ニ、組合員カラ組合費ヲ徵收シナイ
デ、裕カニ援護組合ノ仕事ヲヤツテ行ケル
ト云フヤウナ所ガアリマス、而モ私共見テ
居リマスノニ、サウ云フ所ハ主トシテ市ノ
中央部デアリマシテ、富豪ノ澤山居住シテ
居ル土地デアリマス、而モサウ云フ所デハ
割合ニ出征者ノ數ガ少イ、是ガ市ノ周圍部
ニ參リマスト、サウ云フ富豪ガ割合ニ少イ、
而モ出征者ノ數ハ非常ニ多イ、隨テ周圍部
ノ方ニ於キマスル各援護組合ノ負擔ト云フ
モノハ相當加重セラレテ居ル、サウ云フ思
ハシクナイ現象ガ經濟的ニ現ハレテ參ツテ
居リマス、ソレデ私ハ是ガ出來マス時ニ、
市ニ對シマシテモ、區ニ對シマシテモ進言
シタノデアリマス、組合費ハ出來ルダケ或
ル一定ノ方針ヲ決メテ平等ニ出サシメテ、
負擔ヲ公平ニスルト云フ建前デ、出來ルダ
ケ公平ニ醵出セシメル、サウシテ之ヲ區ナ
リ市ヘ各援護組合カラ集メテ、必要ニ應ジ
テ區ナリ市カラ再ビ此ノ援護組合ニ還元ス
ルト云フ方法ヲ執ラナケレバイケナイデハ
ナイカ、サウシナケレバドウモ今ノ富裕地
區ト、サウデナイ地區ニ於ケル負擔ガ思ハ
シク行カヌデハナイカト云フヤウナコトヲ
進言シテ參ツタノデアリマスガ、遂ニソレ
ハ採用ニナラズニ今日ニ至リマシク所ガ
實際ニ於テハ私ガ申上ゲル通リニ、色々トサ
ウ云フ不公平ガ生ジテ來ル、相接シテ居リ
マス所デ、甲ノ方デハ每月集金シテ居ル、他
ノ援護組合デハ隔月ニシテ居ル、或ハ年ニ
一囘シカ取ツテ居ラナイ所モアツテ、其ノ
負擔ニ高低ガアルト云フヤウナコトデアリ
マスシ、更ニモウ一ツハ援護ノ手ヲ伸ベマ
ス被援護者ニ及ボス心理的ナ影響ノ問題デ
アリマスガ、サウ云フ風ニ個々ノ援護組合
ガ勝手ニ經濟ヲヤツテ居リマス關係ト致シ
マシテ、或ル援護組合デハ非常ニ痒イ所ニ
手ガ屆クヤウニ世話ヲスル、或ル援護組合デ
ハソレニ比ベテドウモ十分デハナイ、恐ラ
ク地域ガ相接シテ居ル譯デアリマスカラ、遺族
達ガ色々ナ場合ニ於テ相語リ合フ機會ガア
リマセウ、サウスルト甲ノ地域ニ於テハ斯ウ
云フコトヲヤツテ居ルガ、乙ノ方デハヤラヌ、
乙デハ斯ウ云フコトヲヤツタガ、甲ノ地域
デハヤツテ居ラヌト云フヤウナコトガアリマ
シテ、援護ノ上ニモ厚薄ガ生ジテ來ル、サウ
云フコトカラ來ル心理的ナ影響ト云フモノ
モ、相當考慮セラレナケレバナラナカツタ
ト思フノデアリマスガ、未ダニサウ云フ點
ガ十分ニ行ツテ居リマセヌ、是ハ全國的ニ
見レバ大阪デハサウ云フコトヲヤツテ居ル
ガ、東京ニ來マスト、サウ云フコトハ一向
知リマセヌト言ツテ居ルヤウナ譯デアル、
此ノ銃後奉公會ニ對シテ厚生省ハドノ程度
ニ介入シテ、全國ニ之ヲ普及シ、何ヲ發展
ノ目標トセラレルノデアルカ、其ノ活動ノ
内容ハドウ云フ風ニシテ行カレルノデアル
カ、經濟ノ方面ハドウ云フ風ニシテ行カレ
ルノデアリマセウカ、其ノ全貌ニ付テ御伺
致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=98
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099・新居善太郎
○新居政府委員 銃後奉公會ニ付テノ御尋
デアリマシタガ、銃後奉公會ノ極ク大キイ
目標トシテ居ル所ヲ申上ゲマスト、先程一
寸申上ゲマシタガ、各地方ニ軍事援護團體
ガ出來テ居リマス、是ハ御承知ノ通リ事變
前カラアルモノモアリマスシ、事變後ニモ
大分出來テ居ルノデアリマス、隨テ其ノ大
多數ハ此ノ事變中ニ於ケル軍事ノ援護ト云
フコトヲ目標ニシテ居リマス、併シナガラ
又我國ノ從來カラノ問題ト致シマシテ、又
建國ノ本義デアル所ノ國民皆兵ト云フ此ノ
根本精神ノ方カラ考ヘマシテ、兵役義務ノ
服行ヲ容易ナラシムルト云フコトヲ平素心
掛ケテ置クト云フコトガ、苟モ日本國民デ
アル以上ハ當然デアリ、又是非ヤラネバナ
ラヌノデハナイカト云フ問題ガ從來カラア
ツタノデアリマス、此ノ方ノ平素心掛ケル
組織ヲ如何ニシテ作ルカト云フヤウナコト
モアリマシタノデ、今度全國ニ大部分出來
テ居リマス此ノ軍事援護會ヲ、一面ニ於キ
マシテハ兵役義務ノ執行ヲ容易ナラシムル
方面ノ使命ヲ持チ、一面ニ於キマシテハ隣
保相扶ノ美風ノ發露デアル軍事援護ノ使命
ヲ達成セシムルト云フ、兩方ノ目的ヲ持ツ
タ團體ト致シマス、隨テ其ノ團體ノ存立ハ
單ニ事變中ノミデハナク、平戰兩時ヲ通ジ
テ、擧〓一致ノ麗ハシイ團體ガ全國ニ汎ク
出來ルコトガ、非常ニ宜イコトデハナイカ
ト云フ所ニ著眼致シ、名前モ銃後奉公會ト
致シマシタ、此ノ使命ヲ達成セシムルヤウ
ナ内容ニピツタリ合ツテ居ル團體ハソレデ
宜シイガ、合ハヌモノハソレニ合セルヤウ
ニスル、又銃後奉公會又ハ援護團體ガマダ
出來テ居リマセヌ所ハ、サウ云フモノヲ成
ベク作ツテ貰ヒタイト云フ趣旨デゴザイマ
ス、是ハ原則ト致シマシテハ、各町村ニ全部
サウ云フモノガ出來ルヤウニ指導シテ行キ
タイ、併シナガラ只今御話ノ大阪トカ、其
ノ他六大都市ハ一律ニ町村並ミニ行キマセ
ヌカラ、ソレハ或ハ學區每ニスルトカ、或
ハ行政區ニスルトカ、色々分ケ方ハアラウ
ト思ヒマス、又ソレハ其ノ都市ノ實情ニ合
フヤウナ單位デヤル考デアリマス、ソレカ
ラ内容ハドウ云フコトカト云フ御尋ガアリ
マシタガ、只今申シマシタ兵役義務心ノ昂
揚ヲ圖リ、或ハ隣保相扶ノ道義心ノ振作ヲ
圖リ、或ハ平素カラ兵役義務ノ執行ノ準備
ヲスル、或ハ現役又ハ應召軍人若クハ傷痍
軍人竝ニ其ノ遺族家族ノ援護ヲスル、ソレ
カラ勞力奉仕其ノ他家事ノ援助ヲスル、或
ハ不幸ガアリマシタ際ノ弔問、慰藉或ハ後
援、或ハ身上、家事ノ相談ニ與リ、或ハ軍
事援護思想ノ普及徹底等、苟モ軍事援護ニ
關スルコトハ其ノ事柄ヲヤル基本ガ國カ
ラ行クコトデアリマシテモ、或ハ府縣等ノ色
々ナ團體カラ行クコトデアリマシテモ、此
ノ銃後奉公會ヲ通ジテ、其處デ謂ハバ渾然
一體トナツテソコヘ行クト云フ仕組ニシタ
イ、而モソレニハ擧〓一致ノ團結心ヲ常ニ
起サシメルヤウナ仕組ニシタイト考ヘテ居
ルノデアリマス、ソレカラ先程ノ經理ノ方
面デゴザイマスガ、會費、補助金、寄附金
其ノ他ノ收入ヲ以テ之ニ充テルヤウニナツ
テ居リマス、ソレデ近所トノ振合ヒト申シ
マスカ、サウ云フ方面ノ問題デゴザイマ
スカシ是ハ先程モ御話ガアリマシタ通リ、
上カラ强制的ニヤルノデナク、本當ニ美ハ
シイ心持ノ發露トシテ、下カラ盛リ上ル其
ノ產婆役ヲ此方デシテ行クノガ適當デアラ
ウト思ヒマスノデ、會費モ其ノ團體自身ノ實
情ニ應ジテ決メテ行ツタラ宜イデハナイカ
ト思ヒマス、併シ擧〓一致ノ精神ヲ害スル
ヤウナ會費ノ徵收ノ仕方ハ差控ヘテ貰ヒタ
イ、斯ウ云フヤウニシテ居リマス、又其ノ
地方ニ富豪ガ多イトカ、或ハ割合ニ下層階
級ノ人ガ多イトカ云フ點カラ致シマシテ、
負擔力ニ相違ノアル點ニ對シテハ、マダ現
實的ニハ何モ行ツテ居リマセヌガ、將來町
村ノ補助トカ、府縣ノ補助トカ、サウ云フ
點デ「バランス」ヲ取ル途ヲ考ヘナクテハナ
ラヌデハナイカト考ヘテ居リマス、ソレカラ
現實ニ援護スル內容ガ隣リノ町村ト違フコ
トハ、私共モ往々耳ニ致シタノデゴザイマ
シテ、是ハ下カラ盛リ上ゲタ團體自身ノ心
ノ發露トシテヤル以上ハ、ドウモ違ヒノア
ルコトハ已ムヲ得マセヌ、併シ其ノ間ニ餘
リナ違ヒガアツテ、先程ノ御話ノヤウニ、
近所話ヲサレルヤウナ時ニ非常ニ違ヒガア
ル、是ハ精神的ニモ却テ害ヲ成スコトモア
リマスノデ、ソレ等ハオ互ニ成ベク話合ヒ
ヲスル機會ヲ作ルトカ、或ハ又其ノ上ニ立
ツテ、兩方ヲ綜合シテ指導シテ行ク所デ能
ク注意シテ、サウ云フコトノナイヤウニ注
意スルトカ、色々苦心ヲシテ居ルノデアリ
やっ、段々此ノ目的ニ向ビマシテ遺憾ノナ
イヤウニシテ行キタイ、斯ウ考ヘテ居ルノ
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=99
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100・高橋泰雄
○高橋委員長 宜シウゴザイマスカ-齋
藤君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=100
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101・齋藤直橘
○齋藤委員 私恩給法ニ付キマシテ一二點
御伺シタイノデアリマス、ソレハ旣ニ政府
委員ハ御承知デアリマスガ、傷痍軍人代表
者ガ吾々ニ陳情シテ參ツタ事柄デアリマシ
テ、其ノ內容ハ先年貴族院デモ衆議院デ
モ請願ガ採擇セラレタ事項デアリマス、卽チ
第一ハ恩給法第四十六條ノ二中「三年以內」
ヲ省除シ、無期限ニ改正セラレタイノデア
ルカ、政府ハサウ云フ御考ハナイカドウ
カ、第二ハ傷病年金ヲ普通恩給項症ニ改正
シテ遺族扶助料ヲ附與シテ貰ヒタイガ、政
府ニ其ノ御考ガナイカドウカ、其ノ二點デ
アリマス、卽チ第一ハ退職後三年以內ニ病
症ガ增惡致シマシタモノニ付テハ傷病賜金
ガ下賜セラレマスケレドモ、三年經過以後
傷病增惡シタル者ニハ傷病賜金ノ恩典ガナ
イノデアリマス、然ルニ傷病ガ三年後ニ於
キマシテ甚シク增惡致シマシテ、悲慘ナ狀
況ニ陷ツタ者ガ多數アルノデアリマス、日
〓戰爭或ハ日露戰爭ノ場合ニ於キマシテ傷
病ヲ受ケタル者デアツテ、其ノ後傷病ガ增
惡シテ、陸海軍ノ軍醫官ノ診斷ノ結果、佩
章者ト指定セラレテ軍人傷痍記章ヲ授與セ
ラレタ者ナルニ拘ラズ、傷病賜金ノ恩惠ニ
浴シナイ者ガ多數ニアルノデアリマス、是
等ハ恩給法ニ「三年以內」ト規定サレテアリマ
スカラ、其ノ後ニ增惡シタ場合ニ於テモ其
ノ恩典ニ浴スルコトガ出來ナイノデアリマ
ス、政府ハ是等ヲ改正サレル御意思ガアリ
マスカドウカ
第二ニハ傷病年金ノ遺族扶助料ヲ附與サ
レタイ、是ハ御承知ノ通リニ只今デハ遺族
扶助料ガナイノデアリマス、然ルニ普通恩
給ノ受給者ハ、奉職中相當ノ俸給ヲ受ケ
テ、一家ノ生計ヲ保持シテ來タノデアリ
マンク、退職後ハ恩給ヲ支給サレマシテ、
且ツ又遺族扶助料モ附與セラレルノデアリ
マス、然ルニ傷病年金ノ受給者ノ大部分ハ
兵役ノ義務ヲ遂行致シマシテ、戰地ニ於テ
惡戰苦鬭ヲ續ケ、爲ニ傷病ヲ得テ不具者ト
ナツタヤウナ國家ノ犠牲デアル、然ルニ
方ハ扶助料ヲ附與セラレテ、一方ハ扶助料
ヲ附與セラレテ居ラヌノデアリマス、公平
ヲ缺クト思フノデアリマスガ、政府ハ是等
ヲ改正サレル御考ガナイカドウカ、是ハ
先程申シマシタ通リ、傷痍軍人代表者ノ
吾々委員ニ對スル陳情デアリマスカラ、政
府ノ御答辯ニハ、傷痍軍人ハ餘程注意ヲ拂
ツテ居ルコトト考ヘマス、斯ウ云フコトハ
昨年貴族院モ衆議院モ請願ガ採擇ニナツテ
居ルノデアリマスカラ、政府委員ハモウ疾
ニ御〓究ニナツタコトト思フ、如何ナル
點デ實現ガ出來ナカツタカ、其ノ實現ノ出
來ナカツタ理由ヲ一ツ排除シテ、將來ハ之
ヲ實現スル御考デアルカドウカ、此ノ際出
來ルダケドウゾ詳細ニ御答ヲ願ツテ、ソレ
ヲ全國ノ傷痍軍人ニ傳ヘタイト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=101
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102・樋貝詮三
○樋貝政府委員 只今ノ御尋二點ノ中、先
ヅ第一ニ恩給法第四十六條ノ二ニ規定シテ
アリスマ所ノ「三年內」ト云フ制限ヲ除去スル
カドウカト云フ點ニ付テノコトヲ御答致シ
やく、是ハ只今齋藤サンカラ仰シヤラレマ
シタ通リニ、屢〓請願ノ形ヲ以テ現ハレテ來
マシク事項デアリマス、政府方面ニ於キマ
シテモ斯ウ云フ風ナ希望ガアルコトヲ能ク
存ジテ居ル譯デアリマス、私モ亦政府委員
トシテ之ニ對シマシテ數囘答辯モ致シマシ
タヤウナ次第デアリマスガ、元々此ノ制限
ヲ置キマシタノハ、此ノ四十六條ノ二ニ依
ツテ與ヘマス所ノ傷病年金ノ基礎ニナル傷
病ノ程度ト云フモノハ、上ノ方ハ餘程程度
ガ高イノデスケレドモ、下ノ方ハ可ナリ低
イノデゴザイマス、ソレデ改正前ニ於キマ
シテハ、之ニ對シテハ一時金ヲ與ヘテ居ツ
タニ過ギナカツタノデスガ、何時モ問題ニ
ナルノハ、上ノ增加恩給ヲ與ヘル程度ノ所
ト、ソレカラソレニ直グクツ付イタ所ノ傷
病ノ程度ト、ドノ位違フカト云フコトガ問
題視サレタ譯ナノデアリマス、總テノ事柄
ニ付テ境目ニ立チマスト云フト、右ニ入ル
ベキカ左ニ入ルベキカ、是ハ非常ニ分リニ
クイ譯デアリマスガ、此ノ傷病ノ程度ニ付
キマシテモサウ云フコトガ屢〓問題ニナツ
タノデアリマス、ソレナラバ可ナリ程度ヲ
下ゲテシマツテスレバ、其〓問題ハ解消ス
ルヂヤナイカト云フヤウナコトモアリマ
シテ、色々請願モアリ陳情モアリマシタ結
果、此ノ傷病年金ト云フモノヲ作リマシタ、
元ノ一時金デアツタモノノ中ノ上ノ方カラ
相當ノ部分ヲ取リマシテ、ソレニ對シテ年
金ヲ與ヘル、併シナガラ之ニ對シテハ扶助
料ヲ伴フモノトハシナイト云フコトデ、軍
ノ方ノ當局ナドトモ能ク懇談シタ結果、此
ノ傷病年金ト云フモノヲ作ツテ、卽チ之ヲ
年金ニシテ其ノ本人一代ノ給與トスルト云
フコトニ致シマシタヤウナ譯デ、是ガ昭和
八年ノ時ノ改正ノ一部デアリマス、元々傷
病者、殊ニ戰爭ナドニ於ケル所ノ公務傷者
ニ對シマシテハ、恩給當局ニ於キマシテモ
寧ロ他ヨリハ先ンジテ非常ニ同情致シテ居
ツタ譯デ、昭和八年ノ改正ハドチラカト申
セバ減額ヲ目的トシタ改正デアツタニモ拘
ラズ-先程問題ニナリマシタ軍人其ノ他
カラモ國庫納付金ヲ取ルヤウニナリマシタ
ノモ、又文官ナドカラ倍ニシテ取ルヤウニ
ナリマシタノモ昭和八年ノ改正デアリマス
ガ、左樣ナ財政的整理ヲ致スト云フニモ拘
ラズ、其ノ財源ヲ持ツテ參リマシテ、傷病
者ノ恩給又遺族ノ扶助料ト云フ方面ニハ出
來ルダケノ財源振向ケヲヤリ、優遇シテ行
クト云フコトヲ考ヘテ居リマシタ、又常ニ
吾々ハ公務傷病者ニ對シマシテ、又死亡者
ノ遺族ニ對シマシテ非常ニ同情スベキモノ
デアル、感謝スベキモノデアルト云フ信念
ヲ以テ進ンデ參ツタヤウナ譯デアリマス、
所ガ今申上ゲマシタヤウナ譯デ、傷病年金
ヲ與ヘル所ノ基礎ニナル傷病ト云フモノハ、
割合ニ程度ガ-所謂增加恩給ト云フモノ、
不具癈疾程度ニ達シマシテ增加恩給ヲ與ヘ
ルト云フモノニ對シマシテハ程度ガ低イノ
デゴザイマス、時ヲ長ク經チマスト他ノ原
因ガ介入シタコトガ分リニクイノデス、非
常ニ能ク分ルモノモアルケレドモ、分リニ
クイモノガ多イノデゴザイマス、ソコデ增
加恩給ト云フ不具癈疾ノ程度ノ高イモノニ
對シマシテハ、五年間後カラ增惡シテ行
ツタ場合ニ於ケルモノヲ當然ニ見テヤル
ト云フコトニシテ居ルニ拘ラズ、此ノ傷
病年金ニ付キマシテハ、或ル者ニ付テハ一
年內、或ル者ニ付テハ三年內ニ、是ガ爲ニ
兵役ヲ免ゼラレタト云フヤウナ、比較的短
イ期間ニ其ノ事情ガ確定シタコトヲ要件ト
シマシテ、之ニ給與ヲスルト云フコトニ致
シマシタ、ケレドモ是ダケデ打切レバ、極
ク顯著ニ或ル程度ニ達シタ者ガ而モ尙ホ拔
ケテシマフト云フ虞ガアリマスノデ、差上
ゲテアリマス條文デ御覽戴ケバ分リマスル
ガ-少シ込入ツテ居リマスガ、第四十六
條ノ二ノ二項ト云フモノニ「前條第二項及
第三項ノ規定ハ前項ニ規定スル條件(傷病
ノ程度ヲ除ク)ヲ具備スル者ニシテ退職當
時ノ傷病ノ程度カ前項ノ勅令ニ定ムル程度」
卽チ今ノ傷病年金ヲヤル程度デス「ニ達セ
サリシモノノ傷病年金ニ付之ヲ準用ス」トア
リマシテ、其ノ前條第三項ノ規定ト申シマス
ノハ、後カラ重クナツテ行ツテ、今一年トカ
三年トカ云フヤウナ期限ヲ過ギテカラ問題
ニナツタヤウナ、卽チ程度ガ段々高マツテ行
キマシテ、其ノ後ニ至ツテ初メテ傷病年金ヲ
ヤルヤウナ工合ニ增惡シテ行ツタヤウナ場合
デモ裁定官廳ガ恩給審査會ノ議ニ附シテ、
他ノ原因ガ介入シタノデハナイ、ソレハ公
務ニ基因シタ傷病ガ其ノ儘ノ狀態デ惡クナ
ツテ行ツタト云フコトヲ認定サレレバ、ソ
レニ對シテハヤハリ傷病年金ガヤレルト云
フコトデ救濟ノ途ハ開イテアルノデアリマ
ス、特ニサウ云フ手續ヲ經ナイデ一應行ケ
ルモノハ、ヤハリ或ル程度ノ短カイ期間ヲ
切ツテ置キマセヌト、他ノ方ノ事情ノ介入
ト云フコトハ中々分リニクイ、程度ガ高ケ
レバ其ノ點ハハツキリ致シマスケレドモ、
程度ノ低イモノニナルト、非常ニ分リニク
イ、低ケレバ低イ程分リニクイ、傷痍ノ方
ハマダ〓〓分リマス、所ガ疾病ノ程度ノ低
イモノニナルト殆ド分ラナイ、サウ云フヤ
ウナ事情デ或ル程度デ打切ラナケレバナラ
ナイ、顯著ニ公務ニ基因シテ居ルノハ、今
言ツタヤウニ十分ニ救フ途ガ付イテ居ル譯
デアリマス、サウ云フヤウナ事情デ、現在
之ヲ撤廢スルトカ、更ニ延長スルトカ云フ
必要ハ認メナイノデアリマス、初メハ是ハ
一年デアリマシタ、一年ダト軍ノ方デ除隊
ナドヲスルヤウナ場合ニ、除隊間際ニ病院
ヘ入レテ居ルト云フヤウナ關係ガアツテ、
サウ云フ方面カラ困ル事情ガアリマシタガ、
三年ニ延セバ大體ニ於テ問題ナイト云フヤ
ウナ所デ、少シ長目デアルケレドモ、三年マ
デ延シタヤウナ譯デアリマス、今日之ヲ改
正スル必要モ感ジマセヌシ、又改正致シマ
シテハ、サウ云フヤウナ譯デ弊害ヲ釀シテ
困ルト思フノデアリマス、唯此ノ陳情ノ中
ニハサウ云フコトガ現ハレテ居リマセヌケ
レドモ、其ノ改正前ノ昔ノ所謂無償癈兵ト
云フモノガアリマシタ、其ノ無償癈兵ト稱
セラレルノハ、一時金ヲ貰ツタリ或ハ貰ハ
ズシテ、其ノ後ニ重ツテ來タノガアル、其
ノ部分ガ重ツテ來タトハ言ヒナガラモ、四
十六條ノ二ノ勅令デ決メタ程度、卽チ傷病
年金ヲヤルベキ傷病程度ニ現在達シテ居ラ
ナイノハ、此ノ改正デ審査ノ結果程度ニ
達シテ居ラナイノデスカラ、傷病年金ヲヤ
レナイト言ツテ撥ネラレタ部分ガアル、其
ノ程度ヲ審査スルトキニ於キマシテモ、恩
給局ニ於キマシテハ非常ニ寛大ナ標準ヲ以
テ、普通ノ場合ニ測定スルヨリカ二段モ三
段モ下ゲテノ標準デ、事實ハ皆傷病年金ニ
入リ得ルヤウニ考ヘテ見マシタガ、ソレデ
モ尙ホ到底入レラレナイト云フヤウナ低イ
程度ノ人デ、尙ホ無償癈兵ナリト自ラ稱シ
テ居ツタ者ガ相當アル、ソレハ到底此ノ年
金ヲヤルコトニ裁定ヲスルコトニ適シナイ
ト云フ譯デ、是ハ已ムヲ得ナイト云フノデ
撥ネタモノガ相當アルノデアリマス、是一
今日カラ考ヘマシテモ、撥ネルノガ相當ダ
ト思ヒマス、其ノ傷病ノ判定ハ、今モ申上
ゲテ諄イヤウデアリマスケレドモ、非常ニ
寛大ナ內規ト申シマセウカ、內定シテ居リ
マスル規則ニ照シテ見レバ、隨分ト幾段モ
下ノ程度マデモ寛大ナ認定ヲ致シマシタ、
ソレデモ尙ホ漏レザルヲ得ナイ、サウ云フ
モノヲモ尙ホ傷病年金ヲ與ヘルト云フヤウ
ナ裁定ヲスルトスレバ、是ハ國家的ニ相濟
マヌト私ハ固イ信念ヲ持ツテ居リマス、若
シサウ云フノガ後ロニ隱レテ居ル事實デア
ルトスレバ、ソレハ諦メテ貰ハナケレバナ
ラヌカト考ヘテ居リマス
ソレカラ第二ノ點ノ、此ノ傷病年金ノ受給
者ノ遺族ニ遺族扶助料ヲ付與セラレタイト
云フ希望デアリマスガ、是ハ何處ニ境目ヲ
置クベキカト云フ問題デ、要スルニ程度ノ
問題ヲ大部分含ンデ居リマス、傷病年金ヲ
受ケマス者ハ只今申上ゲマシタヤウニ、
比較的ニ其ノ身體ノ缺損ナリ、或ハ病氣ナ
リハ程度ノ低イモノデアル、癈兵所謂不具
癈疾者ト謂ハレテ居ル所ノ從來ノ人々カラ
見マスト、遙ニ低イノデアリマス、殊ニ其
ノ傷病年金ノ一番上ノ方デ、元ハ一時金ヲ
貰ツタニ過ギナイモノヲモ、不具癈疾ノ程
度ヲ下ゲマシテ、昭和八年ノ改正ノトキニ
ハ癈兵ノ方へ繰入レマシタカラ、殘ツタ傷
病年金ヲ貰フ方ノ傷病程度ハ餘程低イノデ
アリマス、サウ云フ譯デ所謂癈兵ト稱セラ
レル者ト比較シテ見マスト、ズツト其ノ能
力ニ於テモ殘存分ガ多イト云フコトガ考ヘ
ラレマス、是等ノ他ノ方ノ仕事デ相當働ケ
ル所ノ人々ノ遺族ニ、唯其ノ傷病ダケヲ理
由ト致シマシテ扶助料ヲ與フベキカドウカ
ト云フコトニ付テハ、度合ノ問題ニ對シテ
大イニ考ヘサセラレル問題デアルト考ヘテ
居リマス、私ハ此ノ程度ノ人々ノ遺族ニ對
シテ、當然ニ遺族扶助料ヲヤラネバナラヌ
ト云フ程マデニハ考ヘテ居ラナイヤウナ譯
デアリマス、元ノ一時金者アルデ所ノ傷病
ノ程度ノ稍〓高イ者ハ、今日昭和八年ノ改
正ニ於テ所謂第七項症、是ハ增加恩給ヲ貰
フ不具癈疾者ノ最低デスガ、從來六項マデ
ニ止メタノヲ、七項ト云フ所ニ一階下ノ
階段ヲ設ケテ、之ニハ扶助料ヲヤルコトニ
シタノデアリマスガ、其ノ程度デ十分デア
ルト云フヤウニ考ヘテ居リマス、是等ノ人々
ヲ優遇スルコトハ固ヨリ結構ト思ヒマスケ
レドモ、併シ自ラソレニハ程度モアリ、相
當性ト云フコトモ考へナケレバナリマセヌ
カラ、目下ノ所デハ此ノ程度ヲ以テ相當デ
アルト云フ風ニ考ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=102
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103・齋藤直橘
○齋藤委員 色々御說明ヲ承リマシタガ、
第一ノ問題ニ付キマシテ、日〓戰爭或ハ日
露戰爭デ戰傷ヲ受ケ若クハ疾病ニ罹ツタ者
ガ、三年經過後ニ陸海軍軍醫ノ診斷ノ結果
增惡シタ、斯ウ云フコトデ傷痍軍人記章ヲ
授與サレテ居ル事實ガアル、是ハ中々明瞭
ヲ缺ク、戰傷ハ分ツテモ疾病ニ於テハ特ニ
分ラヌト云フ御話デスガ、併シ斯ウ云フ傷
痍軍人記章ヲ增惡ノ結果授與サレタ事實ガ
アツテ見レバ、此ノ分ダケハ分ツタモノガ
アツタラウト想像サレマス、第二ノ點ハ成
程御說ノ通リ戰傷ノ程度ガ低イ者デハアリ
マスケレドモ、苟モ國家ノ爲ニ戰線ニ立チ
マシテ負傷ヲシタ者デアリマスカラ、ソレ
ガ先程厚生省ノ人ノ御話ガアリマシタケレ
ドモ、他ニ適當ナ職業デモ得マシテ生活ノ
安定ヲ得ルコトガ出來マスレバ、實際上サ
ウ大シタコトモナカラウト思フノデアリ
マスケレドモ、如何ニ其ノ戰傷或ハ疾病ノ
程度ガ輕微デアツテモ、在來自分ノ執リ來
ツタ所ノ生業ヲ再ビスルコトガ出來ヌ、其
ノ結果遺族ガ困ルト云フヤウナコトガナキ
ニシモアラズ、左樣ナコトモ考ヘラレルノ
デアリマスカラ、ドウカ政府ニ於キマシテ
モ、此ノ二點ニ付キマシテハ更ニ〓究、御
考慮ヲ願ツテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=103
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104・樋貝詮三
○樋貝政府委員 將來ニ於キマシテノ〓究
ニ當リマシテ、今ノ御言葉ノ點ハ能ク念頭
ニ置キマシテ、考究ヲ致シタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=104
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105・高橋泰雄
○高橋委員長 是デ質疑ヲ終了シテ宜シウ
ゴザイマスカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=105
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106・高橋泰雄
○高橋委員長 ソレデハ御異議ナシト認メ
マシテ、本案ニ對スル質疑ハ是デ終局致シ
マシタ、本日ハ是ニテ散會致シマス、次會
ハ公報ヲ以テ御通知申上ゲマス
午後六時十二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007413334X00419390309&spkNum=106
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