1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十五年三月二十二日（金曜日）午前十時二十八分開議
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議事日程 第二十四號
昭和十五年三月二十二日
午前十時開議
第一 國民優生法案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會
第二 鑛業法中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會の續（委員長報告）
第三 砂鑛法中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會の續（委員長報告）
━━━━━━━━━━━━━発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=0
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001・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 報〓ヲ致サセマ
ス
〔佐藤書記官朗讀〕
一昨二十日委員會ニ於テ當選シタル正副委
員長ノ氏名左ノ如シ
市町村義務〓育費國庫負擔法改正法律案
特別委員會
委員長伯爵柳原義光君
副委員長男爵大森佳一君
日本肥料株式會社法案特別委員會
委員長伯爵大隈信常君
副委員長伯爵橋本實斐君
同日委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
鑛業法中改正法律案可決報告書
砂鑛法中改正法律案可決報告書
請願文書表(第八囘報告)
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
國民優生法案
昭和十五年三月二十三日
同日衆議院ヨリ本院ノ送付ニ係ル左ノ政府
提出案ハ同院ニ於テ之ヲ可決シ奏上セル旨
ノ通牒ヲ受領セリ
要塞地帶法中改正法律案
宇品港域軍事取締法中改正法律案発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=1
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002・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 是ヨリ本日ノ會
議ヲ開キマス、本日、長岡隆一郞君病氣ニ
付、職業紹介法中改正法律案特別委員ヲ、
辭任シタキ旨ノ申出ガゴザイマシタ、許可
ヲ致シテ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=2
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003・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、就キマシテハ、其ノ補闕トシマシ
テ麻生益良君ヲ指名致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=3
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004・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第一、國民
優生法案、政府提出、衆議院送付、第一讀
會、吉田厚生大臣
〔左ノ送付文及法案ハ朗讀ヲ經サ
ルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス以下之
ニ傚フ〕
國民優生法案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因
テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十五年三月二十日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
(小字及-ハ衆議院ノ修正)
國民優生法案
國民優生法
第一條本法ハ惡質ナル遺傳性疾患ノ素
質ヲ有スル者ノ增加ヲ防過スルト共ニ
健全ナル素質ヲ有スル者ノ增加ヲ圖リ
以テ國民素質ノ向上ヲ期スルコトヲ目
的トス
第二條本法ニ於テ優生手術ト稱スルハ
生殖ヲ不能ナラシムル手術又ハ處置ニ
シテ命令ヲ以テ定ムルモノヲ謂フ
第三條左ノ各號ノ一ニ該當スル疾患ニ
罹レル者ハ其ノ子又ハ孫醫學的經驗上
同一ノ疾患ニ罹ル虞特ニ著シキトキハ
本法ニ依リ優生手術ヲ受クルコトヲ得但
シ其ノ者特ニ優秀ナル素質ヲ併セ有ス
ト認メラルルトキハ此ノ限ニ在ラズ
一遺傳性精神病
二遺傳性精神薄弱
三强度目惡質ナル遺傳性病的性格
四强度且惡質ナル遺傳性身體疾患
五强度ナル遺傳性畸形
四親等以內ノ血族中ニ前項各號ノ一ニ
該當スル疾患ニ罹レル者ヲ各自有シ又
ハ有シタル者ハ相互ニ婚姻シタル場合
(屆出ヲ爲サザルモ事實上婚姻關係ト
同樣ノ事情ニ在ル場合ヲ含ム)二六分一
將來出生スベキ子醫學的經驗上同一ノ
疾患ニ罹ル虞特ニ著シキトキ亦前項ニ
同ジ
第一項各號ノ一ニ該當スル疾患ニ罹レ
ル子ヲ有シ又ハ有シタル者ハ將來出生
スベキ子醫學的經驗上同一ノ疾患ニ罹
ル虞特ニ著シキトキ亦第一項ニ同ジ
第四條前條ノ規定ニ依リ優生手術ヲ受
クルコトヲ得ル者ハ優生手術ノ申請ヲ
爲スコトヲ得此ノ場合ニ於テ本人配偶
者(屆出ヲ爲サザルモ事實上婚姻關係
ト同樣ノ事情ニ在ル者ヲ含ム以下之ニ
同ジ)ヲ有スルトキハ其ノ配偶者ノ同
三十歲
意ヲ、二十五歲ニ達セザルトキ又ハ心
神耗弱者ナルトキハ其ノ家ニ在ル父母
(婚姻ニ依リ其ノ配偶者ノ家ニ入リタル
者ニ在リテハ其ノ配偶者ノ父母トス以
下之ニ同ジ)ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
前條ノ規定ニ依リ優生手術ヲ受クルコ
トヲ得ル者心神喪失者ナルトキハ優生
手術ノ申請ハ前項ノ規定ニ拘ラズ其ノ
家ニ在ル父母之ヲ爲スコトヲ得但シ本
人配偶者ヲ有スルトキハ其ノ配偶者及
其ノ家ニ在ル父母之ヲ爲スコトヲ得
第一項及前項但書ノ場合ニ於テ其ノ配
偶者知レザルトキ又ハ其ノ意思ヲ表示ス
ルコト能ハザルトキハ第一項ノ場合ニ
在リテハ其ノ家ニ在ル父母ノ同意ヲ以
テ配偶者ノ同意ニ代ヘ前項但書ノ場合
ニ在リテハ其ノ家ニ在ル父母ノミニテ
申請ヲ爲スコトヲ得ルモノトス
前三項ノ規定ニ依リ其ノ家ニ在ル父母
ノ同意ヲ要ストセラレ又ハ其ノ家ニ在
ル父母ガ申請ヲ爲ス場合ニ於テ父母ノ
一方ガ知レザルトキ、死亡シタルトキ、
家ヲ去リタルトキ又バ其ノ意思ヲ表示
スルコト能ハザルトキハ他ノ一方ノミ
ノ同意又ハ申請ヲ以テ足リ父母共ニ知
レザルトキ、死亡シタルトキ、家ヲ去
リタルトキ又ハ其ノ意思ヲ表示スルコ
ト能ハザルトキハ後見人ノ、後見人知
レザルトキ、ナキトキ又ハ其ノ意思ヲ
表示スルコト能ハザルトキハ戶主ノ、
戶主知レザルトキ、未成年者ナルトキ
又ハ其ノ意思ヲ表示スルコト能ハザル
トキハ親族會ノ同意又ハ申請ヲ以テ父
母ノ同意又ハ申請ニ代フルモノトス但
シ後見人及親族會ハ第二項ノ規定ニ依
ル申請ヲ爲スコトヲ得ズ
第五條第三條第一項ノ規定ニ依リ優生
手術ヲ受クルコトヲ得ル者ニ對シ監護
上ノ處置、保健上ノ指導又ハ診療ヲ爲
シタル精神病院法ニ依ル精神病院同
法第七條ノ規定ニ依リ代用スル精神病
院ヲ含ム)若ハ保健所ノ長又ハ命令ヲ
以テ定ムル醫師ハ本人ノ同意ヲ得テ優
生手術ノ申請ヲ爲スコトヲ得此ノ場合
ニ於テ本人配偶者ヲ有スルトキハ其ノ
三十歲
配偶者ノ同意ヲモ、二十五歲ニ達セザ
ルトキ又ハ心神耗弱者ナルトキハ其ノ
家ニ在ル父母ノ同意ヲモ得ルコトヲ要
ス
前項ノ規定ニ依リ優生手術ノ申請ヲ爲
ス場合ニ於テ本人心神喪失者ナルトキ
ハ其ノ家ニ在ル父母ノ同意ヲ以テ本人
ノ同意ニ代フルモノトス
前條第三項及第四項ノ規定ハ前二項ノ
場合ニ之ヲ準用ス
第六條前條ノ規定ニ依リ優生手術ノ申
請ヲ爲スコトヲ得ル者本人ノ疾患著シ
ク惡質ナルトキ又ハ其ノ配偶者本人ト
同一ノ疾患ニ罹レルモノナルトキ等其
ノ疾患ノ遺傳ヲ防遏スルコトヲ公益上
特ニ必要アリト認ムルトキハ同條ノ規
定ニ依ル必要ナル同意ヲ得ルコト能ハ
ザル場合ト雖モ其ノ理由ヲ附シテ優生
手術ノ申請ヲ爲スコトヲ得
第七條優生手術ノ申請ハ命令ノ定ムル
所ニ依リ地方長官ニ之ヲ爲スベシ
前項ノ申請ニハ本人ノ健康診斷書及遺
傳ニ關スル調査書竝ニ本人(本人心神
喪失者ナルトキハ其ノ家ニ在ル父母ト
ス但シ本人配偶者ヲ有スルトキハ其ノ
配偶者及其ノ家ニ在ル父母トス)ガ優
生手術ガ生殖ヲ不能ナラシムルモノナ
ルコトヲ了知シタル旨ノ醫師ノ證明書
ヲ添附スベシ
第四條第三項及第四項ノ規定ハ前項ノ
場合ニ之ヲ準用ス
第八條地方長官ハ優生手術ノ申請ヲ受
理シタルトキハ優生手術ヲ行フベキモ
ノト認ムルヤ否ヲ決定ス
地方長官前項ノ決定ヲ爲サントスルト
キハ豫メ地方優生審査會ノ意見ヲ徵ス
ベシ
地方長官第一項ノ決定ヲ爲シタルトキ
ハ第四條又ハ第五條ノ規定ニ依リ優生
手術ノ申請ヲ爲スコトヲ得ル者及優生
手術ノ申請ニ付同意ヲ得ルコトヲ要ス
トセラレタル者ニ之ヲ通知スベシ
第九條前條第三項ノ規定ニ依リ通知ヲ
受クベキ者ハ同條ノ決定ニ不服アルト
キハ厚生大臣ニ之ヲ申立ツルコトヲ得
前項ノ申立ハ決定ノ通知ヲ受ケタル後
(通知ヲ受ケザル者ニ付テハ決定アリ
タル後)三十日ヲ經過シタルトキハ之
ヲ爲スコトヲ得ズ
厚生大臣宥恕スベキ事由アリト認ムル
トキハ前項ノ期限經過後ニ於テモ仍之
ヲ受理スルコトヲ得
第十條厚生大臣ハ前條ノ申立ヲ受理シ
タル場合ニ於テ申立ヲ理由ナシト認ム
ルトキハ之ヲ却下シ申立ヲ理由アリト
認ムルトキハ地方長官ノ決定ヲ取消シ
且優生手術ヲ行フベキモノト認ムルヤ
否ヲ決定ス
厚生大臣前項ノ却下又ハ取消及決定ヲ
爲サントスルトキハ豫メ中央優生審査
會ノ意見ヲ徴スベシ
第八條第三項ノ規定ハ第一項ノ却下竝
ニ取消及決定ニ之ヲ準用ス
第十一條第四條又ハ第五條ノ規定ニ依
リ優生手術ノ申請ヲ爲スコトヲ得ル者
及優生手術ノ申請ニ付同意ヲ得ルコト
ヲ要ストセラレタル者ハ書面又ハ口頭
ヲ以テ中央優生審査會又ハ地方優生審
査會ニ對シ事實又ハ意見ヲ申述スルコ
トヲ得
厚生大臣又ハ地方長官ハ中央優生審査
會又ハ地方優生審査會ノ審査ノ爲必要
アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ
依リ第三條ノ規定ニ依リ優生手術ヲ受
クルコトヲ得ル者ヲシテ審査會ニ出頭
ノ上事實ヲ申述セシメ又ハ醫師ノ健康
診斷ヲ受ケシムルコトヲ得
第十二條中央優生審査會及地方優生審
査會ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十三條優生手術ヲ行フベキモノト認
ムル決定確定シタルトキハ第三條ノ規
定ニ依リ優生手術ヲ受クルコトヲ得ル
者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ優生手術ヲ
受クベシ
優生手術ハ厚生大臣又ハ地方長官ノ命
ニ依リ命令ヲ以テ定ムル醫師命令ヲ以
テ定ムル場所ニ於テ之ヲ行フ
前項ノ規定ニ依リ優生手術ヲ行ヒタル
醫師ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ經過
ヲ地方長官ニ報告スベシ
第十四條優生手術ヲ行フベキモノト認
ムル決定確定シタル場合ニ於テ本人姙
娠中ナルトキハ第四條ノ規定ニ依リ優
生手術ノ申請ヲ爲スコトヲ得ル者ハ同
條ノ規定ニ依リ同意ヲ要ストセラレタ
ル者ノ同意ヲ得テ其ノ決定ヲ爲シタル
厚生大臣又ハ地方長官ニ對シ姙娠中絕
ノ申請ヲ爲スコトヲ得
前項ノ申請ニ基キ厚生大臣又ハ地方長
官姙娠中絕ヲ行フベキモノト決定シタ
ルトキハ本人ハ命令ノ定ムル所ニ依リ
娠娠中絕ヲ受クベシ
前項ノ姙娠中絕ハ姙娠三月ヲ超ユルモ
ノナル場合ニ於テハ之ヲ行フコトヲ得
ズ
前條第二項及第三項ノ規定ハ第二項ノ
姙娠中絕ニ之ヲ準用ス
第十四條
第十五條優生手術又ハ前條ノ妊娠中絕
ニ關スル費用ニ付テハ勅令ノ定ムル所
二代表)
第十五條
第十六條故ナク生殖ヲ不能ナラシムル
手術又ハ放射線照射ハ之ヲ行フコトヲ
得ズ
第十六條
第十七條第十三條又ハ第十四條ノ規定
ニ依ル場合ヲ除クノ外醫師生殖ヲ不能
ナラシムル手術若ハ放射線照射又ハ姙
娠中絕ヲ行ハントスルトキハ豫メ其ノ
要否ニ關スル他ノ醫師ノ意見ヲ聽取シ
且命令ノ定ムル所ニ依リ豫メ行政官廳
ニ屆出ヅベシ但シ特ニ急施ヲ要スル場
合ハ此ノ限ニ在ラズ
前項ノ屆出アリタル場合ニ於テ行政官
廳必要アリト認ムルトキハ其ノ指定シ
タル醫師ノ意見ヲ更ニ聽取セシムルコ
トヲ得
第一項但書ノ場合ニ於テ屆出ヲ爲サズ
シテ生殖ヲ不能ナラシムル手術若ハ放
射線照射又ハ姙娠中絕ヲ行ヒタルトキ
ハ命令ノ定ムル所ニ依リ行政官廳ニ屆
出ヅベシ
第十七條優生手術ヲ受ケタル者婚姻セント
スルトキハ相手方ノ要求ニ依リ優生手術ヲ
受ケタル旨ヲ通知スベシ
第十五條
第十八條第十六條ノ規定ニ違反シ生殖
ヲ不能ナラシムル手術又ハ放射線照射
ヲ行ヒタル者ハ一年以下ノ懲役又ハ千
圓以下ノ罰金ニ處ス因テ人ヲ死ニ致シ
タルトキハ三年以下ノ懲役ニ處ス
第十九條中央優生審査會及地方優生審
査會ノ委員若ハ委員タリシ者又ハ優生
手術若ハ第十四條ノ姙娠中絕ニ關スル
審査若ハ施行ノ事務ニ從事シ若ハ從事
シタル公務員若ハ公務員タリシ者故ナ
ク其ノ職務上取扱ヒタルコトニ付知得
シタル人ノ祕密ヲ漏泄シタルトキハ六
月以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處
ス
前項ノ罪ハ〓訴ヲ待テ之ヲ論ズ
第十六條
第二十條第十七條第一項又ハ第三項ノ
規定ニ違反シ屆出ヲ爲サズ又ハ虚僞ノ
屆出ヲ爲シタル者ハ百圓以下ノ罰金ニ
處ス
附則
本法施行ノ期日ハ各規定ニ付勅令ヲ以テ
之ヲ定ム
〔國務大臣吉田茂君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=4
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005・吉田茂
○國務大臣(𠮷田茂君) 只今上程セラレマ
シタ國民優生法案ノ提出ノ理由ヲ御說明申
上ゲマス、國民優生法案ノ目的ト致シマス
ル所ハ、國民ノ素質ノ向上ヲ圖リ、依ッテ以
テ國家將來ノ發展ヲ期セムトスルノニ存ス
ルノデゴザイマシテ、此ノ目的ヲ達成致シ
マスル爲ニ、一面ニ於テハ惡質ナル遺傳
性疾患ノ素質ヲ有スル國民ノ增加ヲ防遏致
シマスルト共ニ、他面ニ於テハ、健全ナル素
質ヲ有スル國民ノ增加ヲ圖ラムトスルモノ
デアリマス、元來我ガ國民素質ノ優秀デア
リマスルコトハ)光輝アル二千六百年ノ歷
史ガ如實ニ之ヲ示ス所デゴザイスガ現下
ノ時局ニ際會致シマシテ、興亞ノ大業ヲ完
成シ、將來愈〓國國ノ發展ヲ期セムガ爲ニハ、
我ガ國民ノ優秀性ヲ保持スルコトハ固ヨリ、
益〓是ガ增强ニ努ムルコトハ、誠ニ今日喫緊
ノ要務デアルト考ヘルノデアリマス、我ガ
國民體力ノ現狀ヲ見マスルニ近年其ノ低
下致シマスル傾向ヲ見受ケラレルノデアリ
マシテ、其ノ素質モ亦、自然ニ之ヲ放置シテ
置キマスル時ハ、次第ニ低下スルノデハナ
イカト懸念セラルヽノデアリマス而シテ
國民體力ノ向上ヲ期シマスルガ爲ニハ單
ニ環境ノ改善ニ依リマシテ、後天的素質ノ
向上ヲ圖リマスルニ止マラズ更ニ進ンデ
根本的ニ、國民ノ先天的素質ノ向上ヲモ期
スルコトガ肝要デアルト考ヘルノデアリマ
ス、今我ガ國民ノ先天的素質ニ付キマシテ
檢討ヲ加ヘテ見マスルニ、不健全ナル素質、
殊ニ惡質ナル遺傳性疾患ノ素質ヲ有スル者
ガ、漸次增加スルノ傾向ガ見エルノデゴザ
イマス、是等ノ遺傳性惡質ガ遺傳ヲ致シマ
シテ、子孫ニ其ノ發病ヲ見マスルコトハ
啻ニ患者又ハ患者ヲ有スル家族ノ悲慘ナル
苦シミトナリマスルノミナラズ、之ヲ國家
的ニ見マシテモ、斯クノ如キ惡質ノ素質ガ
遺傳ヲ致シマシテ行キマスルナラバ、將來
ノ國家發展上ニ憂慮スベキ事態ガ齎ラサレ
ルコトト相成ラウカト思フノデアリマス、
以上述ベマシタ如キ理由ヲ以チマシテ、本
法案ヲ提出スルニ至リマシタ次第デアリマ
ス、此ノ法案ニ於キマシテハ惡質ナル遺
傳性疾患ノ素質ヲ有スル者ハ、綿密ナル審
査ヲ受ケタル後、必要ト認メラルヽ時ニハ、
優生手術、卽チ生殖ヲ不能ナラシムル手術
ヲ受ケ得ルコトヲ認メタノデアリマシテ、
之ニ依リマシテ惡質ノ遺傳性疾患ガ、將來
ノ國民ノ中ニ增加スルコトヲ防止シヨウト
スルモノデアリマス、尙是ト關聯致シマシ
テ避姙手術或ハ姙娠中絕等ノ如キ行爲ノ
濫用セラレマスルコトヲ嚴重ニ取締リマシ
テ、以テ健全ナル素質ヲ有スル國民ノ人爲
的減少ノ原因ヲ除イテ、人口ノ增加ニモ資
セムトスルモノデアリマス、本法案ノ如ク
ニ惡質ナル遺傳性疾患ヲ防遏スルコトノ目
的ヲ以テ致シマシタ法案ハ、第六十五囘、
第六十七囘、第七十囘、第七十三回、第七十
四囘ノ帝國議會ニ於キマシテ、五囘ニ亙
リマシテ衆議院ニ、民族優生保護法案ナル
名稱ノ議員提出ノ法案ガ議題トセラレマ
シタ、右ノ中第七十四囘ノ議會ニ於キマシ
テハ同院ニ於キマシテ一度可決セラレテ
本院ニ送付致サレマシタヤウナ次第デゴザ
イマス、政府ニ於キマシテハ本案ニ對シ
テ事ノ愼重ヲ期シマスルガ爲ニ、昨年設置
ヲ見マシタ國民體力審議會ニ要綱ヲ諮問致
シマシテ、同審議會ニ於キマシテハ愼重審
議ノ後ニ、昨年末其ノ答申ヲ見ルニ至リマ
シタ次第デアリマス、此ノ法案ハ右ノ答申
ニ基キマシテ立案致シタ譯デゴザイマス
會期切迫ノ折柄デハゴザイマスガ、何卒御
審議ノ上御協賛アラムコトヲ御願ヒ致シマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=5
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006・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 質疑ノ通〓ガゴ
ザイマス)御許ヲ致シマス、建部遯吾君
〔建部遯吾君濱壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=6
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007・建部遯吾
○建部遯吾君 唯今上程セラレ、マシタ國民
優生法案ニ對シテ、問題ノ取扱方ニ關スル
疑義十三箇條項ヲ述ベマシテ、政府竝ニ一般
ノ注意ヲ惹キタイト存ジマス、政府ノ御答
辯ハ、格別急速ニ願ヒタイト云フコトヲ
本旨トシマセズシテ、ドウカ周到ニシテ完
全ナル御〓究ノ成績ヲ御答辯アリタイト切
ニ希望致ス次第デアリマス、第一點ハ、個人
ノ生命ノ延伸ハ年齡ニ關シマス、然ルニ之
ニ對シテ、系統生命ノ延伸ハ世代ニ關スル
コトデアリマス、個人生命ノ延伸タル年齡
ヲ斷絕スル方法ニハ自殺、他殺又死刑ナ
ドガアリマス系統生命ノ延伸ヲ斷絕スル
ニハ避姙、堕胎、斷種等ガアリマス、死
刑若シクハ斷種ト云フモノハ、極端ノ、卽
チトヾノ詰リノモノデアリマスガソレノ
程度ノ輕イノニハ、先ヅ感化、ソレカラ輕
重アル種々ノ刑罰、而シテ其ノ最モ重イ最
モ極ニ位スルモノガ死刑デアリマスルヤウ
ニ、系統生命ニ付キマシテモ、衞生カラ、
各種輕重大小ノ病氣ニ對スル治療、其ノ極
點ノ行詰リニナッテ出テ參リマスルノガ斷種
デアリマス、死刑ト言ヒ斷種ト言ヒ、一度
斷ズレバ又取返シ難イコトハ申ス迄モアリ
マセヌ、此ノ系統生命ノ延伸ニ對スル若干
ノ損害ヲ與ヘルト云フコト、殊ニ其ノトヾ
ノ詰リデアルト云フ斷種ヲ取扱ヒマスノニ
ハ申ス迄モナク輕々ニ取扱フベキデナイ
ノデアルコトハ玆ニ喋々スル迄モアリマセ
ヌ此ノ點ニ付テ一ツ注意ヲ惹イテ置キタ
イト思フノデアリマスルガ、政府當局ハ固
ヨリ是等ノ點ハ疾クノ昔ニ御通過濟ミノコ
トデアルト信ジタイノデアリマスガ、先ヅ
以テ念ノ爲伺ヒタイ一點デアリマス、第二
點ハ、健全ナル素質ヲ有スル者竝ニ惡質ナ
ル遺傳性疾患ノ素質ヲ有スル者、是ガ本法
案ノ第一條ニ竝ベテ記載シテアリマスガ、
私ハ御了解ヲ得テ簡單ニ良質惡質ト約メテ
申シタイト思ヒマス此ノ良質ト惡質トハ
程度ノ差デアリマシテ、品質ノ正負デハナ
イ、「プラス」「マイナス」ト云フ素質デハナク、
程度ノ差デアルト云フコトハ第三條第一
項第四號ノ說明、是ハ衆議院ニ於ケル本法
案ノ特別委員會ニ於ケル速記錄ノ第二回第
六頁第三欄ニ明記シテ居リマスルヤウニ、
第四號ノ「强度且惡質ナル遺傳性身體疾患」ト
云フモノノ例トシテ、盲目、唖白子、サウ云
フモノヲ以テ政府委員ガ御答ニナッテ御示ニ
ナッテ居リマスルコトニモ明確デアリマス、何
人モ盲目ヤ啞ト云フモノヲ殺サムトシタリ、
又ハ盲目ヤ啞ノ生キテ居ルト云フコトハ社
會ノ損害デアルト考ヘル者ハアリマセヌ、
盲啞學校ト云フモノハ一ッノ文明施設ト認メ
テ居ルノデアリマス、唯目明キヨリハ盲目、
口ノ達者ノ者ヨリハ啞ノ方ガ、少シバカリ
社會ニ有用ナル程度ガ薄イト云フダケノコ
トデアリマス、國ニ有用ノ稍〓小ナル者ヲ直
チニ有害ト認ムルコトハ、是ハ論據ノ誤デ
アルト申サネバナリマセヌ、若シ茲ニ眞ニ
人口減衰ノ防遏ニ苦心慘憺スル識者又ハ人
士ガアリマスルナラバ、此ノ識者若シクハ
人士ハ、斯クノ如キ態度ヲ執ルモノデハナ
カラウト思フノデアリマスガ、政府當局ハ
ドウ御考ニナルカ第三點ハ、未完未成ノ
學說ヲ根據トシ、ノミナラズ特ニ我ガ國ニ
於ケル、我ガ社會ノ現狀ニ卽スル所ノ準備
調査モ頗ル不十分不完全デアッテ其ノ儘ノ
準備調査ヲ以テ、取急イデ實施ニ向ッテ急
グト云フコトハ或ハ斯カル態度ヲ執ル者ノ
思想ノ奧底ニ於テ、何等カマダ不十分ナ缺
陷ノ存スルコトヲ自ラ暴露スルト云フコト
ニナルノデハナカラウカ、是ハ稍〓穿ッタヤウ
ナ觀察若シクハ言ヒ〓シ方デアリマスケレ
ドモ、腹藏ナク申上ゲレバ、是等モ聊カ調
査〓究ノ價値ノアル問題デハナカラウカ、
之ニ付テハドウ云フ御考ガアルノデアリマ
スカ、第四ニハ本法案ノ第一條ニ、本法
ハ何々ヲ目的トスト云フ其ノ目的ニ、二ツ
列ベテアリマスル中ノ第二番目デアリマス、
卽チ「健全ナル素質ヲ有スル者ノ增加ヲ圖
リ」、是ハ能ク言ハレテ居リマスルガ是ハ
ハ唯然ラザルモノ、卽チ「惡質ナル遺傳性疾
患ノ素質ヲ有スル者ノ增加ヲ防遏スル」ト
云フ淘汰ト云フ行キ方ニ依ッテ、惡質者ニ對
シテノ、健全ナル素質ヲ有スル者ノ比率ノ
增進ヲ遂グルト云フコトヲ意味スルノデア
リマシテ、是ガ何等良質ナル人口ノ增加ヲ
爲スト云フ譯ノモノデハアリマセヌ、固ヨ
リ本法案ガ羊頭ヲ懸ゲテ狗肉ヲ賣ルモノデ
ハナイニ相違アリマセヌケレドモ、輕率ニ
讀ンデ之ヲ以テ人口增加案デアルヤウニ了
解スルナラバ、是ハ本法案起草者ノ責任ニ
非ズシテ、輕率ニ誤リ讀ム者ノ責任ニナラ
ウト思フノデアリマスガ是ハ固ヨリ異議
ハナイコトデアリマスケレドモ、政府當局
カラソコノ點ヲ明カニシテ下サル方ガ、一
層御深切デハアリマセヌカト思フノデアリ
やく、第五點ハ、良質人口增加、卽チ第一
條ノ目的、第二、之ヲ現シテ居ルカノ如ク
ニ見エマスル所ノ唯一ノ條項ノ本法案ノ第
十六條デアリマス、併シナガラ惜シイ哉、
其ノ次ニ直グ第十七條ト云フモノガ直チニ
記サレテ居リマスルノデドウモ頗ル强キ
程度ニ迄裏切ラレテシマッテ居ルヤウナ感
ジガスルノデアリマス、此ノ感ジニ對シテ、
早マッテ讀ミ、早マッテ了解スル癖ノアル讀
者ハ之ヲ例ノ羊頭狗肉ノ一例ト斯樣ニ見
ル惧ガアリハセヌカ、是ガ第五ノ疑點デア
リマス、第六點ハ、產兒制限ノ默認乃至不
取締、衆議院ノ特別委員會ニ於テモ屢〓〓酬酬
サレマシタルヤウニ、或種ノ器具乃至賣藥
ト云フモノガ行ハレルコトヲ以テシテソ
レデ良質人口ノ增加、卽チ本法案第一條ノ
二目的ノ中ノ一ツトシテ設ケテ、强ク言ハ。
レテ居リマスル所ノ目的第二ト云フモノヲ、
依然トシテ强ク揭ゲ、明カニ記シテ置クト
云フコトハ聊カ同一ノ意思カラ發スル所
ノ熊度ト致シマシテハ若干ノ矛盾ト迄デ
ナクトモ、其ノ間ニ距離アリ逕庭アルコト
ヲ感ゼズニ濟ムコトデアリマセウカ、是一
對スル本案提出者ノ御見解ヲ伺ヒタイノデ
アリマス、第七ニハ、是ハ世間デハ今日迄
ニ於キマシテハ割合ニ輕ク視ラルヽコトデ
アリマスガ、社會心理ヲ通シテノ社會的效
果社會的影響ト云フヤウナコトハ、多ク
ノ問題、特ニ此ノ度ノ問題等ニハ、深ク且
廣キ考慮ヲ要スルモノガアルノデアリマス、
本問題ヲ繞ッテ之ヲ立案スルト云フ始メカ
ラ、之ヲ實施シ且ソレガ進行スルト云フ其
ノ段階ニ連レテ、社會的模倣ヤ、雷同ヤ、
流行崇拜ヤ乃至愛新主義又ハ愛新動機ト申
シマセウカ、所謂「フィロネイズム」何デモ新
シイコトガ面白ク好キデ困ルト云フ、其ノ
反對ハ憎新主義、新シイコトヲ憎ム主義、
所謂「ミソネイズム」デアリマスカ、此ノ愛
新動機ト云フヤウナモノノ或ハ個人心意、
或ハ社會心意ノ奧底ノ動向ニ動クモノガア
リハセヌカ、之ニ付キマシテハ、或ハ反省、
或ハ達觀、洞察、是ガ必要ニナッテ來ルノ
デアリマスルガ、本問題ヲ取扱フニハ、殊ニ
是等ノ社會心意上ノ注意考察乃至〓究ガ必
要デアルト云フコトハ、固ヨリ我ガ政府當
局ハ夙ニ御認ニナツテ居ルコトデアッタニ
相違ナイト存ジマスガ、如何デアリマセウ
カ、第八ニ、生殖ヲシテ不能ナラ、シムル手
術ト云フコトガ、本法案ニハ總體二十
箇條ノ中五箇條ニ出テ居リマシテ、出テ
居ル囘數ハ六囘デアリマス、姙娠中絕ト云
フ言葉ハ三箇條七囘出テ居リマス優生
手術ト云フ言葉ハ、申ス迄モナク本法案ノ
骨子デアリマスカラ十三箇條二十四囘出テ
居リマス、放射線照射ト云フコトハ三箇
條四囘出テ居リマス、昔カラ申シマスヤウ
ニ、惡ノ進ミ易キヤ火ノ原ヲ燎クガ如シト
云フ言葉モアリマスルガ、人口減衰ノ初期
社會的症候、所謂醫學ノ言葉デ申セバ「ジ
ムプトーメ」ガ既ニ歷然タル我ガ國ノ今日
ニ於キマシテ、右ノ如キ善良ナル風俗ト若
干ノ距離ニ在ル所ノ標語ガ、大ビラニ又漫
然ト、從ッテ頻繁ニ濫用サルヽコトニ、若シモ
本法案ヲ通シテ若干ナリトモ、ナルコトガ
アリマスルナラバ、是ハ產兒制限ニ火ヲ點
ケル所ノ點火作用ト云フコトヲ通ジテ、良
質人口ノ增進、卽チ繰返シテ申シマスガ第
一條ノ第二目的、之ニ對シテ反逆的效果ヲ
來シハシマスマイカ、此ノ點ニ付テドウ云
フ御考デアリマセウカ、第九點ト致シマシ
テハ是ト關聯セル事實及其ノ扱ヒ方デア
リマスルガ、最近約三十五年間ニ於キマシ
テ、主ナル各國ノ人口ノ自然增加ノ低下ハ
實ニ著ルシイモノガアルノデアリマス、「イ
タリー」ハ此ノ期間ニ於テ、此ノ期間ノ初
メニ於ケル人口自然增加率人口一千ニ付一
二·二カラ、此ノ期間ノ終リニ至ル間ニ二一·
八ヲ減ラシマシテ、此ノ期間ノ初メト終リ
僅カニ三十五箇年間ニ於テノ自然增加率ノ
減リ方ハ、百分ノ七十七ニナッテ居ルノデアリ
V.P.「ドイツ」ハ一五·五カラ八·四ヲ減ラ
シマシテ、僅カニ三十五箇年間ニ百分ノ四
十六トナッテ居リマス、「アメリカ」ハ一四·
四カラ八·三ヲ減ラシマシテ百分ノ四十三
トナッテ居ルノデアリマス、「イギリス」本
國之ニハ「イングランド」、「スコットラン
ド」「ウヱールス」及「アイルランド」、ヲ
含メテ「イギリス」本國ト假ニ名ヅケマス、
之ニ付キマシテハ、一一·〇カラ七·八ヲ減
ラシマシテ僅カニ百分ノ二十九ト云フコト
ニナッテ居リマス、「フランス」ニ至リマシ
テハ一·二カラ一·六ヲ減ラシマシテ、是ハ
右ノ計算ガ出來マセヌヽㄱプラス」カラㄱマ
イナス」ニ墜落致シテ居ル譯デアリマス、
人口減衰ノ急潮澎湃トシテ岸ヲ洗ヒ巖ヲ嚙
ムト云フ狀態、此ノ狀態ト云フモノハ衆
議院ノ特別委員會ニ於テモ可ナリ痛切ナル
問答ガ行ハレマシタガ、此ノ事實ト彼ノ國
國デ斷種法ノ實施セラレ且盛ニ行ハレルト
云フ事實ト、此ノ一對ノ事實ノ間ニ如何ナ
ル相關關係ガアルカ因果關係ト迄言ハズ
トモ、因緣關係デモアリハシナイカ、之二
付テ政府當局ニ於テハ嘗テ御調査御〓究ニ
ナッタコトデアラウト信ジタイノデアリマス
ルガ如何デアリマスカ、之ヲ伺ヒタイ、第
十點ハ、「本法案ハ個人的醫療ニ於ケル喧傳
サレ過キタ」ト云フ、形容詞ハ衆議院ニ於
ケル特別委員會ニ於テ政府委員ノ御答辯中
ニアル誠ニ適切ナル形容詞デアリマス、喧
傳サレ過ギタ而モ左程ノ實效ノ無イ所ノ精
神病治療ニ於ケル「インシュリン」療法、又
「〓カルジァゾール」療法、ソレヨリモ更ニ猛
烈ナル一種ノ社會的「インシュリン·カル
ジァゾール」療法デアリハセヌカト云フ疑
ヲ、右精神病ニ於ケル「マラリア」療法ヨ
リモ更ニ新シク、更ニ殘酷猛烈ナル療法其
ノコトヲ承リマシテ私ハ聯想セザルヲ得ヌ
ノデアリマス個人的療法ニ於ケル右ノ二
法ヤ斷種法ハ一理ヤ二理ヤ三理ハ無論アリ
マセウケレドモ、或ハ又チヨット社會的療
法ト致シマシテ幾ラカ似タ所ガアリハセヌ
カ、所謂接近聯想ト云フコトデ、私ノ小サ
イ頭ニハ其ノ聯想ヲ禁ズル能ハザルモノガ
アリマスガ、是等ニ付テハ固ヨリ私ノモ所
感デアリマスルカラ、政府當局ノ御所感如
何ト云フコトヲ、若シ餘リ失禮デナイナラ
バ伺ッテ見タイヤウナ氣ガ致スノデアリマ
ス、第十一點ハ本法案ガ實行サルヽ場合
ニ於テ、奸譎ナル質ノ惡イ或目的、或策
動ニ惡用セラルヽコトモアルデアラウカモ
知レナイノニ對シテノ周到ナル御考慮ガ
アッタノデアリマスルカ、固ヨリオアリニ
ナッタコトト存ジマスルケレドモ、是ハ實
ニ善良ナル風俗ノ維持ト云フコトトハ若干
ノ距離ノアル事柄デアリマスルガ故ニ、彌
ガ上ニモ周到ニ考慮ガアリタイト云フ考カ
ラ、チヨット是モ一箇條ニ加ヘタノデアリ
マス、極ク平タク申セバ、所謂オ家騷
動メキタヤウナコトヲ大體指スモノト
御了解願ヒタイノデアリマス、第十二點ト
致シマシテハ、醫學ノ建設的進步ニ努力ス
ル是ハ多勢ノ努力ヲ集メ、又事柄其ノモ
ノガ、頗ル困難ナル事柄デアリマス、其ノ
方ニハ卽チ稍〓怯ニシテ、極度ノ程度ニ於ケ
ル破壞的處置ヲ行フノニハ、輕易ニハ過ギルト
云フコトガ、若シアリトシマスレバ、是ハ或
ハ氣力ノ萎靡、偷安姑息、地獄呼バハリノ
流行、消極破壞行爲ノ頻發スルヤウナ社會
ハ是ハ誠ニ末世的ノ極メテ顯著ナル一ツ
ノ社會的症候デアルノデアリマシテ、萬 、
我ガ日本モ之ニ罹リ、又萬一本法案ガ是ト
若干ノ聯關ヲ有スルコトガアリナドト事
理ニ達セザル者ガ非難デモスルヤウナコト
ガアリマシテハ、折角ノ我ガ國ノ重大ナル
救濟ニ向ッテ進マウトスル政府當局ハ勿論
ノコト國民ニ對シテモ意氣ヲ阻喪セシム
ルコトニナル虞ガナイトモ致シマセヌ故
ニ是モ一箇條ニ加ヘテ伺ッテ見タイト云
フ次第デアリマス私ハ衆議院特別委員會
ノ速記錄ヲ拜見致シマシテ、誠ニ今囘ノ特
別委員會ノ質疑應答ハ隨分多クノ特別委
員會ニ於ケルガ如ク、痛切又適切デアツタ
ヤウニ拜見致シタノデアリマス、法令ノ形
式的方面ハ之ヲ措キマシテ、本問題ノ社會的、
優生的及人口問題上ノ安員的方面ハ政府
委員ノ方々ノ御御辯ハ、甚ダ遺憾ナガラ支
離ニシテ且不徹底ガ多イト拜讀致シタノデ
アリマス、ドウカ縝密ナル再檢討ノ爲、假
スニ時日ヲ以テシ十分ナル御自信ト、御自
任トヲ具ヘテカラ御出直シニナル必要ハナ
イモノデアラウカ、只今厚生大臣ノ御提案
ノ理由ノ御說明ニ於キマシテモ本案ハ是
デ六度目デアル、卽チ第一囘カラ今日ニ至
リマスル迄、數年ノ時日ヲ經過シテ居ッテ、
ソレデ政府委員諸君ノ此ノ方面ニ於ケル御
答辯ガ、ドウ拜見シマシテモ、十二分ニ完
全ナルモノデアルトハ申上ゲ兼ネルヤウナ
狀態ヲ以テシマスレバ是ハ政府ヤ國民ノ
努力ガ足ラヌノデハナク本問題其ノモノ
ガマダ十分ニ完全ナル學理ガ打立テラレテ
居ラズ、又是カラ出發シテ、實行上ノ軌範
ヲ提供スル迄ニハ、本問題其ノモノガ未ダ
十分成熟セザルト云フコトヲ、側面カラ
裏書スルモノデハアルマイカ、之ヲ以テ私
ハ第十三箇條ノ疑義ト致シタ譯デアリマス、
右、旣ニ此ノ質問ノ劈頭ニ於テ、又終リノ箇
條ノ質問ニ於キマシテ申シマシタル通リノ
次第デアリマスルカラ、私ハ必ズシモ拙速
ナル御答辯ヲ要求ハ致シマセヌ、寧ロ巧遲
ト云フコトデ願ヒタイモノデアリマスルガ、
私ガ〓究法、問題ノ取扱ヒ方ニ對シテノ一
言ヲ挾ンダト云フコトノ性質上カラ致シマ
シテモ、私ハ固ヨリ再質問ヲ致ス考ハゴザ
イマセヌ、之ヲ以テ質問ヲ終リマス
〔國務大臣吉田茂君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=7
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008・吉田茂
○國務大臣(𠮷田茂君) 御答ヲ申上ゲマス、
建部博士ノ御質問中ニ、御質疑ノ點ニ關シ
テハ必ズシモ拙速ナル答辯ヲ求メル者デナ
イト云フ御申シ添モアッタノデゴザイマス
ガ、十數箇條ニ亙リマスル御質疑ノ要點
要點ニ付キマシテハ豫メ政府ニ於キマ
シテモ十分ナ考ヲ繞ラシテ置イタ次第モ
ゴザイマスルノデ、大略ノ點ニ付キマシ
テ此ノ際政府ノ見ル所ヲ御答ヲ申上ゲ
尙詳細ハ他ノ機會ニ於キマシテ御〓ヲ受
ケルコトニ致シタイト存ジマス、第
ニ系統的生命ヲ斷ツヤウナ本法案ノ如
キモノヲ取扱フニ付テハ輕々ニシテハナラ
ヌト思フガ、政府ハドウ考ヘルカト云フ御
尋デゴザイマス固ヨリ其ノ通リニ政府モ
考ヘテ居ル次第デゴザイマシテ、此ノ點ニ
付キマシテハ從來カラモ只今御質疑中ニ
仰セノ如ク屢〓論議セラレル機會ガ久シク
繼續致シマシタ次第デゴザイマスルノデ、
徒ニ之ヲ論議ノ程度ニ止メテ置クト云フコ
トヨリ、寧ロ政府自ラ進ンデ詳細且愼重ナ
ル調査ヲ致シ、其ノ調査ノ結果ニ待ッテ、
政府ニシテ決スベキモノガアレバ決スルガ
宜シカラウト云フコトヲ以チマシテ、愼重
ニ政府自ラモ取調べ、審議會ノ意嚮モ徵シ、
斯界ノ專門家ハ固ヨリノコト、專門ニアラ
ザル方面カラモ各方面ノ有識練達ノ士ニ
御諮ヲ致シマシテ、愼重ナ手續ノ下ニ此ノ
案ヲ決定致シタ次第デゴザイマス、單ニ厚
生省一省ニ於キマシテ之ヲ愼重ニ審議致シ
タト云フコトニ止リマセズ、之ヲ議會ニ提
出シ御審議ヲ仰ギマスニ付キマシテハ政
府全體ト致シマシテモ十分ニ考ヲ練リ、決
心ヲ致シマシテ、玆ニ御霖議ヲ願フ運ビニ
ナツタ次第デゴザイマスノデ、全ク御考ノ
點ト同ジ考ヲ持ツテ提案致シテ居ル次第デ
ゴザイマス、次ニ良質、惡質ト云フコトハ
程度ノ差デアッテ、本質ノ差デナイ、例ヘバ
盲人或ハ啞者等ヲ本法ノ適用ノ對象ニ勅令
案デ豫想シテ居ルノハドウデアラウカ、ト
云フコトノ意味ノ御質疑デゴザイマシタ
ガ、政府ハ必ズシモ良質ト惡質トハ程度ノ
差デアルトハ考ヘナイノデアリマス、一第
條ノ前段ニアリマスモノト後段ニアリマ
スモノトハ、程度ノ差ニアラズシテ、質ノ
差デアルト考ヘルノデゴザイマス、惡質ノ
中ニ又程度ノ差ガアリマスコトハ是ハ御所
見ノ通リデゴザイマス、勅令案トシテ參考
ニ衆議院ニ提出致シマシタモノノ中ニ、ノ遺
傳性ノ盲人或ハ遺傳性ノ聾啞等ヲ豫想致シ
テアルノデゴザイマスガ、ソレ等ノ一ツノ
ノ疾患ヲ如何ニ取扱フベキカト云フコトニ
付キマシテハ十分政府ト致シマシテハ愼
重ナ取扱ヲスル積リデ居ル次第デゴザイマ
ス、最モ惡質ナル遺傳性盲人、或ハ最モ
惡質ナル遺傳性聾啞ト云フヤウナノハ
是ハ其ノ本人ノ不幸ハ固ヨリノコト家族
竝ニ延イテハ國家社會ノ不幸デゴザイマス
ノデソレ等ノ惡質ナルモノ甚ダシク惡
質ナルモノニ付キマシテハ豫メソレ等ノ
人々ノ生レテ來ルコトヲ防止シヨウト云フ
趣意デゴザイマス、一ツ一ツノ症狀、如何
ナルモノニ付テ優生手術ヲ行フコトニ致ス
カト云フコトハ、是ハ法律案ノ適用ノ問題
デゴザイマスノデ、十分愼重ヲ期シタイト
考ヘテ居ルノデゴザイマス、恐ラク御質疑
ノ動機トセラルヽ所ト、政府ノ所見トハ
同樣デアラウカト考へテ居ルノデアリマス、
次ニ未完成ノ學說ニ基イテ、準備調査ノ不
完全ノ際、此ノ通過ヲ急グト云フコトハ理
解シニクイト云フヤウナ意味ノ御尋デゴザ
イマスガ、此ノ法案ノ基礎ニナッテ居リマス
ル學問ハ、固ヨリ學問ノ進步ハ窮マリノナ
イモノデアリマスカラ、完成デアルトハ申
上ゲラレナイノデアリマスガ、之ヲ本法案
ノ基礎ト致シマスルガ爲ニ、我ガ國ニ於ケ
ル今日ノ遺傳學、優生學ハ、此ノ法案ノ基
礎トシテ之ヲ活用致シマシテ誤リナキ程度
ニ隨分ノ發達ヲシテ居ル其ノ今日ノ發達
ノ段階ニ於キマシテ、是ダケノ實際政策ニ
活用セラレマスコトニ於キマシテハ、決シ
テ誤リハナイモノト、斯樣ニ政府ハ考ヘテ
居ル次第デゴザイマス、準備調査ノ上ニ於
キマシテモ政府ト致シマシテハ出來得
ル限リノ力ヲ出シマシテ、本法案實施ノ確
信ヲ得テ之ヲ立案、御審議ヲ仰グ運ビニ至
リマシタ次第デゴザイマス、併シナガラ尙
前項御質疑ニ對シマシテ申上ゲマシタ通リ
二、本法案ノ實施ニ付キマシテハ、何處迄
モ事ノ愼重ヲ期シテ參ルト云フ用意ヲ怠ッ
テハナラヌト考ヘテ居ル次第デゴザイマス、
次ニ健全素質ノ增加ヲ圖ルヤウナ内容ヲ本
法案ハ持ッテ居ラヌデハナイカ、第一條ノ
後段ニ其ノコトガ謳ッテアルケレドモ、是
デハ單純ナル、消極的ナ働キシカ出來ヌト
思フガドウカト云フ御尋デゴザイマス
此ノ問題ニ付キマシテハ、博士モ御質疑中
ニ御述ニナリマシタ通リニ本法關係ノ中
ニ於キマシテ、之ニ該當致シマスル條文ノ
最モ明カナルモノト致シマシテ、第六條ガ
アルノデゴザイマス、優生手術ニ依リマシ
テ、惡質ノ遺傳性疾患ノアリマスル系統ガ、
此ノ法案ノ適用ヲ受ケ、マスルコトハ、誠ニ
ソレハ消極的ノ作用ト申シテ宜シイカト思
フノデアリマスガ、ソレノミデナクシテ、
御質疑中ニモ屢〓御引用ニナリマシタ如ク
ニ近時我ガ國ノ人口ノ增加率ハ遞減ノ傾
向ヲ示シテ居リマス、是ハ誠ニ憂慮スベキ
コトデアリマス、是ハ本法案ニ於テ優生手
術ト稱セラレテ居リマスガ如キ左樣ナ操作
ガ理由ナクシテ行ハレルト云フコトガ、
最モソレ等ノ現象ノ一ツヲ成シマスル憂慮
スベキ所ノ一ツデアルト考ヘルノデアリマ
ス、從ッテ今迄法文ヲ以テ明カニセラレテ居
リマセヌデシタソレ等ノ手術ノ濫用ヲ禁止
スル、ソレニ對シテ嚴重ナル制裁ヲ以テ臨
ム、又次ノ御尋ニアリマシタ十七條ニ於テ
十六條ノ手續ヲ規定致シテ居ルノデアリマ
スガ、關係廳ニ於キマシテモ、醫師ノ隨意
ノ認定ニ依ッテ之ヲ行フト云フコトデナク
シテ、嚴重ナ手續ヲ要求致シテ居ルノデゴ
ザイマスノデ、其ノ手續ヲ履マズシテ、或ハ
其ノ手續ニ違背シテ斯樣ナ手術ヲ今後行ヒ
マスコトハ、嚴重ニ之ヲ取締リ、處罰シテ
參ラウト云フ點ニ於キマシテ、本法案トシ
テ積極的ナ發達ヲ達成致サウト考ヘテ居ル
次第デゴザイマス、固ヨリ人口增加率ノ遞
減ヲ防止シ、健全ナル良質ナル國民ノ增殖
ヲ圖ッテ參ラウト云フニハ、政府ト致シマシ
テモ、固ヨリ本法案ノミノ働キニ依ッテ之
ヲ擧ゲヨウト考ヘテ居ルノデハナイノデア
リマシテ、各種ノ人口政策、萬般ノ保健衞
生ノ政策、尙延イテハ國家ノ經濟政策、產
業政策、〓育上ノ政策、有ラユル方面ニ亙
リマシテ、國力ノ增强ト云フコトノ根本ハ
健全ナル國民ノ增加ニアル、本法案ハ之ヲ
遺傳性疾患ト云フ方面カラ取扱ッテ居ルノ
デアリマス、有ラユル方面ニ亙リマシテ
政府ト致シマシテハ十分ニ健全ナ人口ノ增
殖ト云フコトニ此ノ法案ニ關聯致シマシテ
全力ヲ注イデ參ラネバナラヌト考ヘテ居ル
ノデアリマス、殊ニ御質疑中ニモ仰セラレ
タ通リ、今日我ガ國ノ人口モ亦其ノ增加率
遞減ノ初期ノ徵候ヲ示シテ居リマス是ハ
甚ダ憂慮スベキコトデゴザイマスノデ、全
力ヲ擧ゲテ此ノ點ニ對シテ善處致シマシテ、
今日ノ傾向トハ反對ニ人口增加率ガ遞增
スルト云フガ如キ狀勢ニ持來スコトガ、興
亞大業達成ノ爲ニモ絕對ニ必要デアルト
斯樣ニ考ヘテ居ルノデゴザイマス、其ノ點
ニ付キマシテハ全力ヲ注ギタイト云フ覺
悟ヲ持ッテ居ルノデゴザイマス、十七條ニ關
スル御質問ト、十六條ニ關スル御質問ト、
併セテ便宜上此ノ點御答ヘ致シタ次第デゴ
ザイマス、次ニ產兒制限、所謂產兒制限ノ
默認、或ハ默認デナクトモ取締ノ不徹底ト
云フヤウナ現在ノ狀況ノ下ニ於テ、第一條
ノ後段ノ健全ナル國民ノ增加ヲ圖ラウト云
フ目的ヲ達成シヨウト云フコトハ若干其
ノ間ニ矛盾ガアリハセヌカト云フ仰セデゴ
ザイマス、只今モ申上ゲマシタ通リニ、我
ガ國ノ人口ノ增加率ガ低下ノ傾向ヲ示シ始
メタト云フコトニ付キマシテハ、所謂產兒
制限ト云フヤウナ言說ガ從前行ハレ、或ハ
左樣ナコトガ實際ニ、寧ロ社會ノ中以上ノ
階級ニ於テ行ハレルノデハナイカト云フコ
トハ、誠ニ憂慮ニ堪ヘナイ點デゴザイマス、
ソレ等ノコトヲ法律ヲ以テ取締ルト云フコ
トハナカ〓〓御想像モ付カウト思ヒマ
スガ、困難ナコトナノデゴザイマス、固ヨ
リ法制的取締ノ上ニ於キマシテモ、政府ハ
十分ニ考究致シテ居ルノデゴザイマスケレ
ドモ、是ハ一片ノ法律、規則ヲ以テ容易ニ
取扱ヒ難イ、目的ヲ達シ難イ問題デゴザイ
マイク。本法案ノ實施ニ付キマシテモ、此ノ
法制ノ趣意ハ前刻來縷々申述ベル通リデゴ
ザイマスルガ、本法案ノ趣意目的ヲ達成致
シマスル爲ニハ、〓化指導、健全ナ次代ノ
國民ヲ多數ニ得ルト云フコトハ現代ノ日
本ノ國民ノ務デアリ大切ナ御奉公ノ道デ
アルト云フ所以ノ考ヲ國民全般ニ徹底スル
コトガ何ヨリモ大切デアラウカト思フノデ
アリマス從ッテソレニ悖ルガ如キコトハ、
國民トシテノ務ヲ怠ルモノデアルト云フ
斯樣ナ心構ヘガ國民全體ニ現レテ來ルト云
フコトガ、何ヨリ大切デアルト思フノデア
リマス、本法ノ適用ニ當リマシテモ、徒
此ノ本條ノ運用ノミニ依ッテ目的ヲ達成シ
ヨウト云フヤウナ考ニ墮セズシテ、此ノ法
案ノ趣意ト云フモノガ國民ノ常識トナッテ、
サウシテ本法案ノ企圖スル目的ト云フモノ
ガ、國民ノ自發的協力ニ依ッテ達成セラレル
ト云フコトモ最モ大切ナ要點トシテ、此ノ
法案ノ運用ニ當リ、又國民ノ保健思想、衞
生思想、厚生問題ニ對スル考ノ指導ノソレ
ヲ根本ニ立テテ參リタイト斯樣ニ考ヘテ居
ル次第デゴザイマス、次ニ此ノ法案ニ付テ
所謂新奇ヲ好ム、或ハソレニ反動的ニ反對
スルト云フヤウナ左樣ナ何ト申シマスカ
上ズッタ考デ輕々ニ取扱ハレテハ困ルデハ
ナイカト云フ御尋デゴザイマス、是レ誠ニ
御同感ニ存ジマス、斯クノ如キ大切ナ問題
ニ付キマシテハ、決シテ新シイカラ善イ
舊イカラ惡イト左樣ナ上ズッタ考デ輕々ニ
取扱ッテハナラスト思ヒマスノデ、若シ世間
一部ニ左樣ナ現象モ御感ジニナルコトデア
リマスレバ政府ト致シマシテハ此ノ上
ニモ十分左樣ナコトノナイヤウニ戒心ヲ加
ヘ注意ヲ致シタイト存ジマス、次ニ人口ノ
增加率ノ遞減スル初期ノ現象ガ現レテ居ル
ヤウナ今日此ノ際、本法案ニ用ヒテアルヤ
ウナ妊娠ノ中絕ト云フ左樣ナ用語ガ屢〓用ヒ
ラレルコトハソレハ誠ニ憂フベキコトデ
ハナイカト云フ御話デゴザイマス、政府ト
致シマシテハ、成ルベク國民ニ好マシカラ
ザル印象ヲ與ヘマスヤウナ文字ハ使ハナイ
ガ宜シイト考ヘルノデアリマス、從ッテ本法
ノ文字モ、左樣ナ點ニ心ヲ用ヒマシテ、各
種ノ用語ヲ選ンデアリマス次第デアリマス、
ソレガ爲或ハ用語ノ意味ト云フモノガ、的
確ニ讀ム人ニ理解セラレナイヤウナ嫌ガア
ルノデハナイカト云フヤウナコトモ感ゼラ
レル次第デゴザイマスガ、御心配ノ點ニ付
キマシテハ本法案ノ中ニ現レテ居リマス
用語ノ用ヒ方ヲ御覽ニナリマシテモ、政府
ノ其ノ邊ニ對スル心配ニ付キマシテハ、御
想像ガ付カウカト思フノデゴザイマス、併
シ何ト言ヒマシテモ、我ガ國人口增加率ハ
低下ノ自然的傾向ヲ示シテ參ッテ居ルノデ
アリマス、是ハ現實デアリマス、此ノ現象
ニ對シマシテハ、國民ハ眼ヲ掩ウテハナラ
ヌト思フノデアリマス、從ッテ又之ニ對處ス
ベキ有ラユル方策ヲ講ゼネバナラヌト斯樣
ニ考ヘルノデゴザイマスノデ、若干ソレ等
ノ御心配ニナリマスヤウナ用語ノ用ヒラルヽ
コトモ已ムヲ得ナイ、萬難ヲ克服致シマ
シテ、今日ノ憂慮スベキ我ガ國ノ人口減少
ニ對處セネバナラヌト斯樣ニ考ヘルノデゴ
ザイマス、次ハ各國ノ人口ノ自然增加ノ低
下現象ハ誠ニ著シイ、ソレト斷種ト云フコ
トノ間ニ因果ノ關係ガ何カアリハシナイ
カ、ソレヲ調ベタコトハアルカト云フ御尋
デゴザイマシタ、矢張リ何レノ國ニ於キマ
シテモ、健全ナル人口ノ自然增加ト云フコ
トニ付キマシテハ、今日各國共ニ頗ル熱
心ニ努メテ居リマスル現狀ハ博士ノ御承知
ノ通リノ次第デゴザイマス、何レノ國ニ於
キマシテモ亦斷種或ハ優生ト云フモノヲ
此ノ線ニ沿ウテ取扱ウテ居リマスルコトハ、
是亦疑ノナイ事實デアラウト思フノデゴザ
イマス、其ノ間ノ因果關係ヲ、ドノ國デド
ウ考ヘテ居ルカト云フヤウナコトニ付キマ
シテハ、是ハ私ト致シマシテ十分ニ御答ヲ
申上ゲルト云フコトハ或ハ適當デナイカト
考ヘマスノデ、別ノ機會ニ政府ノ關知シ
テ居リマスル限リノコトヲ御耳ニ入レル
コトニ致シタイト存ジマス、次ニ此優生
手術、或ハ從前斷種ト言ハレテ居ッタヤ
ウナ方法ヲ今日採用スルト云フコトハ、如
何ニモ慘慄ナ印象ヲ與ヘハシナイカト云フ
コトデゴザイマス、此ノ點ニ付キマシテモ、
左樣ナ心配ガアリマスルコトデゴザイマス
レバ十分ニ左樣ナ心配ヲ與ヘマセヌヤウ
ニ、手術ノ方法內容等ニ付キマシテハ是
ハ他ノ機會ニ於キマシテ政府委員ヨリ技術
的ナ十分ナ御說明ヲ申上ゲルコトニ致シタ
イト思フノデアリマス左樣ナ印象ヲ世間
ニ與ヘルコトノナイヤウニ、又事實與ヘズ
ニ濟ムコトト思ヒマスノデ、是亦御質問ノ
趣旨ニ副ウテ萬全ノ注意ヲ致シタイト存ジ
マス、次ニ本法ノ惡用ト云フコトニ對スル
周到ナル用意ガアルカ、例ヘバオ家騒動ト
云フヤウナコトニ本法ガ濫用セラレルコト
ハナイカト云フ御尋デアリマシタ、固ヨリ
左樣ナコトガアッテハナリマセヌノデ、本法
ノ施行ニ付キマシテノ手續ヲ最モ嚴重ニ致
シテアルト云フコトハ、今迄ニ比ベマシテ、
寧ロ左樣ナ手術ガ今後此ノ法案ノ成立スル
コトニ依ッテ濫用セラレ得ナイヤウニナリ
マスル一ツノ確乎タル保障ニ、寧ロ本法ガ
ナルヤウニ致シタイト云フヤウナ考ヲ以チ
マシテ、周到ナル用意ヲ施シテアル次第デ
ゴザイマス、次ニ此ノ種ノコトヲ斷行スル
ニハ如何ニモ勇氣ガアルガ、外ノ大事ナコ
トヲ斷行スルニハ勇氣ガナイ、左樣ナ印象
ヲ與ヘハシナイカト云フ御尋デアリマシタ
ガ、政府ト致シマシテハ、決シテ左樣ナコ
トハナイト思ヒマス、如何ニ困難ナコトガ
アリマシテモ、今日ノヤウナ御時世ニ於キ
マシテハ、必要ナ事デアリマスル以上ハ萬
難ヲ排シテ總テソレヲ遂行致シタイ、左樣
ニ考ヘテ居ル次第デゴザイマス、本法ニ付
キマシテモ左樣ナ考ノ一ツノ現レデアルト
云フ御諒解ヲ得マスルナラバ誠ニ仕合セデ
アリマスガ、尤モサレバト言ヒマシテ、本
法適用ニ付キマシテハ是ハ從前例ヲ見マ
セヌノデ誠ニ大切ナル且新シイ法制デアリ
マスルノデ、此ノ運用ニ付キマシテハ十分
愼重ナ考慮工夫ヲ以テ之ヲ致シタイト云フ
考ハ、同時ニ抱カネバナラヌコトト考ヘテ
居ル次第デゴザイマス、最後ニ衆議院ニ於
ケル委員會等ノ記錄ニ依ッテ見ルト、政府委
員ノ答辯ニハ甚ダ不徹底ナモノガアルヤウ
ニ感ゼラレル就テハ徹底シタ本法ノ取扱
ト云フコトヲ期スルガ爲ニ、之ヲ考ヘ直シ
テ再出發ヲスル意嚮ハナイカト云フ御尋
デゴザイマシタ、政府ト致シマシテハ最
初ニモ申上ゲマシタ如クニ、本法案ノ御審
議ヲ仰ギマスルニ付キマシテハ豫メ十分
ニ技術的ナ又常識的ナ、或ハ醫學的ナ又社
會學的ナ有ラユル立場カラ之ヲ數年ニ亙
リマシテ檢討ヲ致シ、之ヲ取調ベル爲ノ特
別ノ審議機關ヲ取リ設ケマシテ、十分ノ自
信ヲ持ッテ此ノ法案ノ御審議ヲ今日仰イデ
居ル次第ナノデゴザイマス、固ヨリ御審議
ニ當リマシテハ十分御當院ニ於キマシテ
御審議ヲ願ヒ御〓ヲ仰グト云フコトハ
大切ナコトデアルト考へルノデゴザイマス
ガ、何卒最初ノ御說明中ニモ申上ゲマシタ
通リニ御審議ノ上御協賛アラムコトヲ切ニ
御願ヲ致ス次第デアリマス、以上ヲ以テ御
答ト致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=8
-
009・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今議題トナリマシタ
國民優生法案ハ、重要ナル法案デアリマス
ルノデ、此ノ特別委員ノ數ヲ十五名トシ、
其ノ委員ノ指名ヲ議長ニ一任スルノ動議ヲ
提出致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=9
-
010・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=10
-
011・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 戶澤子爵ノ動議
ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=11
-
012・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、特別委員ノ氏名ヲ朗讀致サセマス
〔佐藤書記官朗讀〕
國民優生法案特別委員
公爵島津忠承君侯爵小村捷治君
伯爵柳澤保承君子爵野村益三君
子爵實吉純郞君子爵水野勝邦君
光行次郞君男爵小池正晁君
下村宏君男爵高木喜寛君
男爵村田保定君次田大三郞君
金杉英五郞君岩田三史君
野田六左衞門君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=12
-
013・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 過日ノ小山君ノ
質疑ニ對シ、總理大臣ヨリ答辯ノ發言ヲ求
メラレマシタ此ノ際御許シ致シマス、米
內內閣總理大臣
〔國務大臣米內光政君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=13
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014・米内光政
○國務大臣(米內光政君) 過日ノ本會議ニ
於キマスル小山君ノ御質問ニ御答ヲ致シマ
ス、今囘政府ガ臨時資金調整法ヲ改正致シ
マシテ報國債劵ヲ發行スルコトニ關シマ
シテノ御尋ガアッタノデゴザイ·マスルガ、政
府ハ經濟上、金融上、各般ノ事情ヲ考ヘマ
シテ現在ノ實情ニ於キマシテハ此ノ際
本債劵ヲ發行スルノヲ適當ナリト考ヘタ次
第デアリマス、本債劵ガ國民ノ射倖心ヲ刺
戟シ、勤儉力行ノ美風ヲ害スル虞ハナイト
云フ點ガ、最モ御懸念ノ點デアッタヤウデア
リマスルガ、政府ト致シマシテハ此ノ程
度ノ割增金ヲ附シテノ債劵ノ發行ハ、御心
配ノ如キ憂ノナイモノト考ヘマスルト共
二、御趣意ノ點ハ十分ニ考ヘマシテ、元金
ハ其ノ儘返還致シマストカ、割增金ハ國債
ニ依リ支給シ得ルコトニ致シマストカ、國
民ノ貯蓄心ヲ損ハザルヤウ、十分ニ配慮ヲ
致シマシテ立法致シテアルノデアリマスル
カラ本債劵ノ發行ガ國民精神作興ノ趣意
ニ反スルコトハナイト信ジテ居ルヤウナ次
第デゴザイマス、之ヲ以テ御答ト致シマス
〔小山松吉君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=14
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015・小山松吉
○小山松吉君 一昨日ノ本會議ニ於キマシ
テ、臨時資金調整法中改正法律案ニ付キマ
シテ私ガ二ツノ點ヲ政府ニ御尋致シタノデ
ゴザイマシタガ、其ノ第一點ハ大藏大臣ヨ
リ御答ガゴザイマシテ、御深切ニ縷々御述
ニナリマシタコトニ付テハ御禮ヲ申上ゲ
ル譯デアリマスガ、併シ其ノ內容ハ私共ノ
考ト隔リガゴザイマシテ、大藏大臣ノ御述
ニナリマシタ趣意ハ、浪費セラルヽ資金ヲ
吸收スルノ方法トシテ此ノ種ノ手段ヲ執ッ
タノデアル、所謂方便ノヤウナモノダ、方
便ト致シテ適當ダト、斯ウ云フ風ノ御答デ
アリマスカラ、大分私ノ考トハ違フ所ガゴ
ザイマシテ、是以上御尋ヲ致シマシテモヽ
議論ニナルノデアリマスカラ、大藏大臣ニ
對シテハ質問ハ打切ルコトニ致シマス只
今總理大臣ヨリ御答辯ガアリマシテ、御禮
ヲ申上ゲマスガ併シ此ノ御答辯ノ內容
モ、遺憾ナガラ私ガ縷々事實ヲ擧ゲテ申上
ゲタ事柄ニ對スル御答ニハナッテ居ナイカ
ト思フノデアリマス、是以上申上ゲテモ意
見ノ相違議論ニナリマスカラ、是デ私ハ
質問ヲ打切リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=15
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016・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第二、鑛業
法中改正法律案、日程第三、砂鑛法中改正
法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會
ノ續、委員長報告、是等ノ兩案ヲ一括シテ
議題ト爲スコトニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=16
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017・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、委員長保科子爵
〔左ノ報告書ハ朗讀ヲ經サルモ參
照ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ做
フ〕
鑛業法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十五年三月二十日
委員長子爵保科正昭
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
砂鑛法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十五年三月二十日
委員長子爵保科正昭
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔子爵保科正昭君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=17
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018・保科正昭
○子爵保科正昭君 只今議題トナリマシタ
本案委員會ノ經過ノ大要竝ニ結果ヲ御報告
申上ゲマス、二ツノ法案ハ、鑛業法及砂鑛
法施行ノ實情ニ鑑ミ、各條ニ涉リ必要ナル
改正ヲ加ヘタモノデアリマシテ、之ニ依リ
マシテ新タニ有用鑛物ヲ鑛業法所定ノ鑛物
ニ加フルノ外、試掘權制度ノ改正、其ノ他
鑛業權ニ關スル制度ノ整備ヲ圖リ、砂鑛權
ノ設定ヲ容易ナラシムルト共ニ、鑛業及砂
鑛業ニ對スル監督ニ遺憾ナキヲ期セムトス
ルモノデアリマス、委員會ハ去ル三月ノ十
六日ヨリ四囘ニ亙リマシテ開會致シマシタ
ノデゴザイマス質問ノ多クハ試掘權制度
ノ改正ニ關スルモノデアリマシタ、其ノ主
ナル質疑應答ヲ申上ゲマスト、第一ハ、試掘
權ヲ四年ニテ打切ルコトト爲シタル趣旨如
何ト云フニ在ルノデアリマス、之ニ對シマ
シテ政府ヨリハ、試掘權ハ單ニ採掘ノ價値ア
リヤ否ヤヲ調査スルコトヲ保護スル爲ノ權
利デアルガ故ニ、其ノ期間モ四年デ十分デ
アル、從來ノ如ク何年デモ其ノ延長ヲ認メ
ルト云フヤウデハ試掘權制度ノ趣旨ヲ沒
却スル結果トモナルノデ、四年デ打切ルコ
トトシテ、試掘權制度ヲ其ノ本來ノ趣旨ニ
戾シテ、權利ノ濫用ヲ防止シ、而シテ今後
ハ試掘權ハ四年デ打切ルコトトセラレタ結
果、試掘モ爲サズシテ漫然試掘權ヲ保有ス
ルト云フヤウナ弊害ハ、之ニ依ッテ多分ニ矯
正セラルヽコトトナルカラ、此ノ方面カラ
探鑛ヲ促進シ、將來ノ鑛物ノ增產ニ資スル
コトトナルノデアル斯ウ云フ答辯ガアリ
マシタ第二ハ政府ハ今囘試掘權制度ノ
改正ニ依ッテ、所謂豫備鑛區ヲ否認セムトス
ルモノデハナイカト云フコトデアリマス、
之ニ付キマシテハ、政府ヨリハ、今囘ノ改
正ハ鑛業常識上當然ニ認メラレテ然ルベキ
程度ノ豫備鑛區ヲ決シテ否認セムトスルモ
ノデハナイ唯從前ハ一度試掘權ガ設定セ
ラレタルトキハ何等ノ試掘行爲ヲ爲サズ
トモ、之ガ存續ヲ事實上認メラレテ來タノ
デアルガ、今後ハ鑛業法上ハ採掘鑛區ノ形
ニ於テ之ヲ認メルト云フコトニナルノデア
ル豫備鑛區等ヲ採掘權ノ形ニ於テ保有ス
ルコトハ卽チ日本ノ鑛物ノ賦存狀態ニ關
スル基礎資料ヲ得テ置クコトニナリ將來
ノ增產實現ニ備ヘルト云フ意味ニ於テ絕對
ニ必要デアルト認メテ居ル)斯ウ云フ答辯
デアリマシタ、第三ニハ今囘ノ試掘權制
度ノ改正ニ依レバ、今後試掘權ヲ得タ者ハ
必ズ四年以内ニ試掘ヲ完了シナケレバナラ
ナイコトニナル、是ハ事實上不可能ナル場
合ガ尠クナイノニモ拘ラズ四年內ニ試掘
ヲ爲サヌトノ理由デ試掘權ヲ取上ゲテシマ
フト云フコトハ苛酷デハナイカ、已ムヲ得
ザル場合ニ於テハ一定期間其ノ延長ヲ認メ
ルコトニシテハドウデアラウカ、斯ウ云フ
質問ニ對シマシテハ、政府ハ眞ニ試掘ヲ
爲サムトスル者ニ對シテハ決シテ試掘權
ヲ取上ゲヨウトスルモノデハナイ、寧ロ出
來得ルダケ早ク本來ノ鑛業權デアル所ノ採
掘權ニスルコトヲ促進シヨウト云フノデア
ル而シテ四年ノ期間ハ十分ノ餘裕ヲ見込
ンデ決メタモノデアルト云フノデアリマス、
デ、之ヲ更ニ延長スル必要ハ毛頭ナイト云
フ答辯デアリマス、第四ハ、試掘權存續期
問中ニ採掘出願ヲ爲シ、其ノ許可ヲ得ザル
間ニ試掘權ノ期間滿了シタ場合ニハ、作業
ヲ中止スルコトトナリ不都合デアルカラ
採掘權ノ許可又ハ不許可ノ指令ノアル迄ハ
試掘權者ト看做スヤウニスル規定ヲ設ケテ
ハドウカト云フ、斯ウ云フ質問ガアリマシ
タ、之ニ對シマシテ、政府ハ試掘權ノ存
續中ニ採掘出願ヲ爲シタトキハ其ノ許可
又ハ不許可ノ指令ノアル迄ハ試掘權者ト看
做スト云ヲ規定ヲ設ケルト致シマスト、試掘
權ノ期間ハ一定シナイコトニナル、是ハ其ノ
通リデアリマシテ、採掘願ヲ出シマシテモソ
レガ許可ニナリマス間ニ、或モノハ早ク來、
或モノハ遲クナリマスカラ、是ハ一定シナイ
コトニナル、又採掘出願ガ不許可トナッタ場
合ニ於テ、他人ノ試掘鑛區ノ出願ノアッタ
場合ニハ、先願者ガ不許可トナッテ後願者
ガ却テ許可セラルヽコトトナルト更ニ又
不合理ヲ生ジ、其ノ結果鑛業法ノ基本ト致
シテ居ル所ノ先願主義、之ニ反對ニナル
コトニナル、是ハイケナイト、斯ウ云フ答
辯デアリマシタ、第五ニハ、今般ノ改正ハ
勿論必要ナモノデアルガ、日本產金振興株
式會社、帝國鑛業開發株式會社等ノ國策會
社ガ、積極的ニ民間ト協力スルコトガ必要
缺クベカラザルコトデアルト思フ、之ニ對
シテ政府ハドウ考ヘテ居ルカト云フノデア
リマス、政府ヨリハ、今囘ノ改正ノ趣旨ハ、
單ニ此ノ法律ノ改正ノミヲ以テ達成セラル
モノデハナイコトハ言フ迄モナク、其ノ
爲ニハ政府及ビ特殊會社ノ積極的ナ協力ガ
要件デアルコトハ全ク同感デアル、斯ウ云
フコトデアリマシタ、又政府及特殊會社ノ
從來ノ活動ニ付テハ遺憾ノ點モ少クナイカ
ラ、今後ハ其ノ陣容ヲ充實スルト共ニ、積
極的ニ民間ニ協力スルコトトスルト云フ答
辯ガゴザイマシタ、右ノ外本法案ノ直接間
接ノ事柄ニ付、又現下緊要ノ課題タル重要
鑛物ノ增產等ニ付テ、適切ナ質疑及ビ希望
ガアリマシテ、政府ヨリハ種々答辯ガゴザ
イマシタ、其ノ詳細ナコトハ速記錄ニ依ッテ
御了承ヲ願ヒタイト存ジマス、質疑ヲ終リ
マシテ討議ニ入リ、一委員ヨリ、睡眠鑛區
トサレテ居リマスモノノ開發ニ付テ、其ノ
鑛區ガ適切デアルナラバ、衆議院ノ修正ヲ
成ルベク活用シテ、原案通リ運用ノ妙ヲ得
ルコトガ誠ニ望マシイ事デアル之ヲ一言
附加ヘテ本案ニ贊成スルト云フコトデアリ
マシタ、次イデ採決ニ入リ、全會一致ヲ以
テ可決セラレマシタ、以上御報告申上ゲマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=18
-
019・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御發言モナ
ケレバ兩案ノ採決ヲ致シマス、兩案ノ第
二讀會ヲ開クコトニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=19
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020・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=20
-
021・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ兩案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=21
-
022・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=22
-
023・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=23
-
024・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=24
-
025・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 兩案ノ第二讀會
ヲ開キマス御異議ガナケレバ全部ヲ問
題ニ供シマス兩案全部、委員長ノ報告通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=25
-
026・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=26
-
027・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ兩案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=27
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028・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=28
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029・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=29
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030・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=30
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031・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 兩案ノ第三讀會
ヲ開キマス、兩案全部、第二讀會ノ決議通
リデ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=31
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032・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス是ニテ議事日程ハ全部終了致シマ
シタガ、本日衆議院ヨリ重要議案ノ送付ガ
アリマスルコトト存ジマスルカラ、午後三
時三十分迄休憩ヲ致シマス
午前十一時四十九分休憩
午後四時十二分開議発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=32
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033・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 報〓ヲ致サセマ
ス
〔小林書記官朗讀〕
本日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案
ハ直ニ裁可ヲ奏請シ又可決ノ旨ヲ衆議院ニ
通知セリ
鑛業法中改正法律案
砂鑛法中改正法律案
本日委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ
氏名左ノ如シ
職業紹介法中改正法律案特別委員會
委員長侯爵德川賴貞君
副委員長平塚廣義君
昭和十三年度第一豫備金支出ノ件(承諾
ヲ求ムル件)特別委員會
委員長公爵桂廣太郞君
副委員長田口弼一君
本日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
有機合成事業法案可決報〓書
會計檢査院法中改正法律案可決報〓書
裁判所構成法中改正法律案可決報告書
恩給法中改正法律案可決報告書
職業紹介法中改正法律案可決報告書
本日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
石炭配給統制法案発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=33
-
034・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 休憩前ニ引續キ
會議ヲ開キマス、本日委員長ヨリ報〓書ノ
提出セラレマシタ會計檢査院法中改正法律
案裁判所構成法中改正法律案、是等ノ二
案ヲ此ノ際議事日程ニ追加シ一括シテ議
題ト爲シ、第一讀會ノ續ヲ開キ、委員長ノ
報告ヲ煩ハシタイト存ジマス、御異議ゴザ
イマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=34
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035・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、委員長加藤子爵
會計檢査院法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十五年三月二十一日
委員長子爵加藤泰通
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
裁判所構成法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十五年三月二十二日
委員長子爵加藤泰通
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔子爵加藤泰通君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=35
-
036・加藤泰通
○子爵加藤泰通君 只今上程ニナリマシタ
會計檢査院法中改正法律案ノ委員會ノ經過
竝ニ結果ノ御報〓ヲ申上ゲマス、本法案改正
ノ頭.「會計檢査院法第二條中「檢査官十
四員」トアリマスノヲ「檢査官十六員」トシ、「副
檢査官專任二十四員」トアリマスノヲ「副
檢査官專任二十八員」ト改メ、又第五條中
「檢査官三員又ハ四員」トアリマスノヲ、「檢
査官三員乃至五員」ニ改ムルノ件デアリマス、
近時殊ニ支那事變ノ勃發以來、急激ナル國
費ノ膨脹ト共ニ、會計檢査院ノ檢査事項
モ複雜繁多ヲ極メ、其ノ爲前述ノ通リ檢
査官ニ於テ二名、副檢査官ニ於テ四名ヲ增
員セムトスルモノデアリマス、先ヅ質問ニ
入リマシテ一委員ヨリ此ノ案ノ提出ヲ
見ルノハ寧ロ其ノ遲キヲ憾ムノ感ガアル
年々決算委員會ニ於テ會計檢査院ノ批難事
項ヲ見ルノニ、審議ノ結果ハ却テ檢査院
ノ批難ハ不當デアッテ、政府ノ措置ニ過誤ノ
ナイト認メル事例ガ度々アル是等ハ要ス
ルノニ檢査官ノ手不足ノ爲審議上缺クル所
ガアルノデハナイカト考ヘラレル尙國運
ノ進展ト共ニ今日以上ノ增員ヲ要スルモノ
デハナイカト考ヘラレル故ニ臨時委員ト
申シマスカ當分ノ內ノ委員、檢査官ト云フ
ヤウナモノヲ增員シテハドウカ斯ウ云フ御
質問ガゴザイマシタ一之ニ對シマシテ政府
ハ實際上檢査院ノ仕事ハ非常ニ繁劇ヲ加
へ其ノ增員ノ如キモ痛切ニ考ヘテ居ルノ
デアリマスガ、先ヅ差當リ今囘ハ檢査官二
名副檢査官四名ノ增員ヲ行ハムトスルモノ
デアリマス、又只今御話ノ一時的、或ハ又當分
ノ内ノ增員トシテ檢査官ヲ增スト云フ點ニ
付キマシテハ、檢査官ノ地位ニ鑑ミマシテ、
當分ノ內任命スルト云フコトハ適正デナイ
ト考ヘマス、斯ウ云フヤウナ答辯ガゴザイ
マシタ、其ノ外ニハ餘リ質問モゴザイマセ
又、次イデ討論ニ入リマシタガ、別段御發
言モナク、採決ニ入リマシダル結果、全員
一致ノ下ニ本案ハ原案通リ可決スベキモノ
ト相成リマシタ、次ニ本委員會ニ併託ス
ルコトニナリマシタ裁判所構成法中改正法
律案ノ委員會ノ經過竝ニ結果ノ報告ヲ申上
ゲマス、裁判所構成法ノ第八十六條第一項
中「地方裁判所檢事局ノ書記課ニ」トアリマ
ス其ノ下ニ「書記長又ハ」ト云フ條文ヲ加ヘ
ル件デアリマス、卽チ此ノ法ノ目的ハ、
裁判所書記ノ優遇ト、又部下監督ノ强化ト
云フ點ニアルノデアリマス、現今ニ於キマ
シテ、全國ノ裁判所ヲ通ジテ書記ノ數ハ六
千餘名ニ達シテ居リマスガ、是等ガ奏任官
トナルベキ進級ノ途ガナイノデゴザイマス、
卽チ前途ガ塞ガレテ居リマスル爲事務ニ熟
練セル優秀ナル書記ヲシテ永年勤續セシメ
ルコトニ多太ノ困難ヲ生ジマスルト共ニ、
一面新タニ優秀ナル者ノ採用ヲスル上ニモ、
非常ナ困難ヲ感ズルノデアリマス、仍テ司
法部多年ノ希望デアリマスル此ノ書記優遇
ノ途ヲ開カムトスルモノデアル且又高等
官書記長ノ設置ト共ニ部下監督ヲ强化セ
ムトスルモノデアルト云フ趣意ノ說明デア
リマシタ之ニ付テハ餘リ御質問モゴザイ
マセヌ討論ニ入リマシテ別ニ御發言モナ
ク採決ニ入リマシタル所、全員一致ノ下
ニ本案ハ原案通リ可決スルコトニ相成リマ
シタ簡單デゴザイマスガ、右御報〓ヲ申
上ゲマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=36
-
037・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御發言モナ
ケレバ兩案ノ採決ヲ致シマス兩案ノ第
二讀會ヲ開クコトニ御異議ハゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=37
-
038・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=38
-
039・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ兩案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=39
-
040・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=40
-
041・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=41
-
042・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=42
-
043・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 兩案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナケレバ全部ヲ問
題ニ供シマス、兩案全部、委員長ノ報告通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=43
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044・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=44
-
045・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ兩案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=45
-
046・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=46
-
047・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=47
-
048・松平頼壽
○議長 (伯爵松平賴壽君)御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=48
-
049・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 兩案ノ第三讀會
ヲ開キマス、兩案全部、第二讀會ノ決議通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=49
-
050・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=50
-
051・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本日委員長ヨリ
報〓書ヲ提出セラレマシタ有機合成事業法
案ヲ、此ノ際議事日程ニ追加シテ、第一讀
會ノ續ヲ開キ、委員長ノ報告ヲ煩ハシタイ
ト存ジマス、御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=51
-
052・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、委員長保科子爵
有機合成事業法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十五年三月二十二日
委員長子爵保科正昭
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔子爵保科正昭君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=52
-
053・保科正昭
○子爵保科正昭君 只今上程セラレマシタ
有機合成事業法案ニ對シマシテ、委員會ノ經
過竝ニ結果ヲ御報告申上ゲマス、先ヅ本法
律案ノ內容ヲ簡單ニ御說明致シマスト本
法ハ我ガ國ニ於ケル國防ノ整備及產業ノ發
展ヲ圖ル爲、有機合成事業會社ヲ保護助成シ
テ、其ノ事業ノ確立ヲ圖ルノガ目的デゴザ
イマス、保護ノ方法ト致シマシテハ、所得
ニ對スル法人稅及營業稅竝ニ地方稅ノ免
除機械器具ノ輸入稅ノ免除、製品ニ對ス
ル奬勵金ノ交付、競爭品ニ對スル輸入制限又
ハ高率關稅ノ賦課等デゴザイマス、其ノ適
用品ハ勅令ヲ以テ指定スルコトニナッテ居
リマス今差當リ合成「ゴム」ヲ始メト致シ
マシテ、合成「トルオール」、合成「ベンゾー
ル「メタノール」「ブタノール」、醋酸、
合成樹脂等ヲ豫定シテ居ルノデゴザイマス、-
將來斯業ノ發達ト共ニ品目ノ追加ヲ行フコ
トニナッテ居リマス、本法ニ對シマシテハ
委員會ハ三月ノ十九日、三月ノ二十日ノ兩
日開カレマシテ、各委員ヨリ熱心且適切ナ
ル御質問ガアッタノデゴザイマス、之ニ對シ
マシテ政府當局カラモ懇切ナ答辯ガアリマ
シタ、其ノ質問ノ主ナルモノヲ申上ゲマス
ト新製品ヲ保護奬勵シタ爲ニ需要者ニ迷
惑ヲ及ボシ、又ハ輸出振興ヲ阻碍スル虞ナ
キヤトノ質問ガゴザイマシタ有機合成品
ハ品質ニ於テハ從來ノモノニ比シテ寧ロ
優ルトモ劣ルコトハナイノデアル、有機合
成品ノ製品ハ、主トシテ國內需要ニ向ケテ
輸出品ニ强ヒテ高價ナル有機合成品ヲ使用
スル意思ハナイノデアルト答辯サレマシタ、
又本法實施ノ結果、大企業家ノミヲ保護サ
レテ、其ノ結果小資本家ハ保護サレナイト
云フヤウナコトハナイカト云フヤウナコト
デアリマシタニ對シテ、政府ハ發明〓究
ノ實施ヲ阻碍スル虞ノナイコトヲ目的ト致
シマシテ、本法ハ、試驗的ニ〓究ノ程度ノ
ミヲ除クノ外ハ、如何ナル小規模ノ企業ニ
對シテモ適當ナ保護ヲ爲スト云フ方針ダト
云フコトヲ辯明サレタノデアリマス、其ノ
他有機合成ノ定義ノ問題、本法ノ適用範圍
ノ問題、發明者保護ノ問題、發明工業家ノ
問題、所要石炭竝ニ電力ノ確保ノ問題、外
國特許買收ノ問題、化學機械自給自足ノ問
題有機合成事業ノ確立ヲ妨グル虞アル物
品ニ對スル高率關稅賦課ノ問題、化學技術
者ノ養成竝ニ其ノ確保ノ問題、其ノ他關係
事項ニ付キマシテ愼重ニ適切有益ナル質問
應答ガ行ハレタノデアリマス、斯クシテ三
月二十日、委員會ノ質問ヲ終リマシテ、討
議ニ入ッタノデゴザイマスガ、討議ニ際シマ
シテハ、各委員ヨリソレ〓〓本法ニ贊成ノ
旨ノ發言ガアリマシタガ、其ノ際本法ノ運
用ニ當ッテ成ルベク小規模ノ企業ヲモ保護
助成セラレタキコト、有機合成事業ニ要ス
ル技術竝ニ資材ハ之ヲ國內ニ求ムルヲ根本
方針トスベキモ、速カナル斯業ノ確立ヲ期
スル爲、機械器具ノ輸入ニ付適當ニ臨機
ノ處置ヲ執ラレタキコト、有機合成事業ノ
確立ノ爲ニ本法ノ運用竝ニ其ノ他ノ方法
ニ依リ徹底的ノ保護ヲ加フベキコト政府
ガ此ノ際豫定スル本法ノ適用品目ヲ擴張シ
テ必要ナル品目ヲ加ヘラレタキコト等ノ
希望意見ガ開陳セラレマシタ、之ニ對シマ
シテ政府側ヨリ十分考慮スベキ旨ヲ發言ガ
アッタノデゴザイマス、而シテ採決ノ結果、
全會一致ヲ以テ政府原案通リ可決致サレマ
シタ御報告申上ゲマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=53
-
054・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御發言モナ
ケレバ、本案ノ採決ヲ致シマス、本案ノ第
二讀會ヲ開クコトニ御異議ハゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=54
-
055・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=55
-
056・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=56
-
057・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=57
-
058・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=58
-
059・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=59
-
060・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第二讀會
ヲ開キマス御異議ガナケレバ全部ヲ問
題ニ供シマス、本案全部、委員長ノ報告通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=60
-
061・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=61
-
062・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=62
-
063・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=63
-
064・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=64
-
065・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=65
-
066・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第三讀會
ヲ開キマス、本案全部、第二讀會ノ決議通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=66
-
067・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=67
-
068・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 只今報〓ヲ致サ
セマシタ衆議院ヨリ送付セラレマシタ政府
提出ニ係ル石炭配給統制法案ヲ、此ノ際議
事日程ニ追加シテ、第一讀會ヲ開クコトニ
御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=68
-
069・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス藤原商工大臣
石炭配給統制法案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因
テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十五年三月二十二日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
(小字ハ衆議院ノ修正)
石炭配給統制法案
石炭配給統制法
第一條石炭ノ生產業者、輸入業者及移
入業者竝ニ石炭ノ取扱ヲ爲ス會社ニシ
テ主務大臣ノ指定シタルモノ(指定會
社)ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ生產、
輸入、移入又ハ取扱ニ係ル石炭ヲ日本
石炭株式會社ニ賣渡スベシ但シ左ニ揭
グル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
-石炭ノ生產業者、輸入業者又ハ移
入業者命令ヲ以テ定ムル場合ヲ除ク
ノ外其ノ生產、輸入又ハ移入ニ係ル
石炭ヲ自己ノ用ニ供スルトキ
二指定會社ノ社員又ハ株主タル石炭
ノ生產業者其ノ生產ニ係ル石炭ヲ當
該指定會社ニ賣渡ストキ
三特別ノ事情アル場合ニ於テ主務大
臣ノ許可ヲ受ケタルトキ
第二條主務大臣ハ石炭ノ配給ノ圓滑ヲ
確保スル爲特ニ必要アリト認ムルトキ
ハ石炭ノ生產業者、輸入業者、移入業
者又ハ販賣業者ニ對シ石炭ノ配給ニ關
スル施設ノ賃貸又ハ讓渡ニ付命令ノ定
ムル所ニ依リ協議ヲ爲スベキコトヲ命
ズルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ協議ヲ命ゼラレタル
者協議ヲ爲サズ若ハ爲スコト能ハズ又
ハ協議調ハザルトキハ主務大臣ハ當該
事項ニ付必要ナル決定ヲ爲スコトヲ得
第三條前條第二項ノ規定ニ依ル決定ア
リタル場合ニ於テ賃貸料又ハ讓渡價格
ニ付不服アル者ハ其ノ決定ノ通知ヲ受
ケタル日(決定ノ通知ヲ受ケザル者ニ
付テハ其ノ公示ノ日)ヨリ三十日以內
ニ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第四條前二條ニ定ムルモノノ外決定竝
ニ之ニ依ル石炭ノ配給ニ關スル施設ノ
賃貸及讓渡ニ關シ必要ナル事項ハ勅令
ヲ以テ之ヲ定ム
第五條主務大臣ハ石炭ノ生產業者、輸
入業者若ハ移入業者又ハ指定會社ニ對
シ其ノ業務及財產ノ狀況ニ關シ報〓ヲ
爲サシメ又ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ノ
檢査ヲ爲スコトヲ得
第六條日本石炭株式會社ハ石炭ノ需給
ノ圓滑及價格ノ公正ヲ圖ル爲必要ナル
(事業ヲ營ムコトヲ目的トスル株式會社
トス
第七條日本石炭株式會社ノ資本ハ五千
萬圓トシ内二千五百萬圓ハ政府ノ出資
トス
日本石炭株式會社ハ主務大臣ノ認可ヲ
受ケ其ノ資本ヲ增加スルコトヲ得
第八條日本石炭株式會社ノ株式ハ記名
式トシ政府、公共團體、帝國臣民又ハ
帝國法人ニシテ社員、株主若ハ業務ヲ
執行スル役員ノ半數以上、資本ノ半額
以上若ハ議決權ノ過半數ガ外國人若ハ
外國法人ニ屬セザルモノニ限リ之ヲ所
有スルコトヲ得
勅令ノ定ムル法人ニシテ特ニ主務大臣
ノ許可ヲ受ケタルモノハ前項ノ規定ニ
拘ラズ日本石炭株式會社ノ株主ト爲ル
コトヲ得
第九條日本石炭株式會社ニ非ザルモノ
ハ日本石炭株式會社又ハ之ニ類似ノ名
稱ヲ以テ其ノ商號ト爲スコトヲ得ズ
第十條日本石炭株式會社ニ役員トシテ
社長副社長各一人、理事五人以上及監
事二人以上ヲ置ク
第十一條社長ハ日本石炭株式會社ヲ代
表シ其ノ業務ヲ總理ス
副社長ハ社長事故アルトキハ其ノ職務
ヲ代理シ社長缺員ノトキハ其ノ職務ヲ
行フ
副社長及理事ハ社長ヲ補助シ日本石炭
株式會社ノ業務ヲ分掌ス
監事ハ日本石炭株式會社ノ業務ヲ監査ス
第十二條社長、副社長及理事ハ株主總
會ニ於テ之ヲ選任シ主務大臣ノ認可ヲ
受クルモノトシ其ノ任期ヲ四年トス
監事ハ株主總會ニ於テ之ヲ選任シ其ノ
任期ヲ三年トス
石炭鑛業ヲ監督スル官廳ノ官吏タリシ者ハ
其ノ職ヲ退キタル後五年間日本石炭株式會
社ノ役員ト爲ルコトヲ得ズ但シ主務大臣ニ
於テ特ニ必要アリト認メタルトキハ此ノ限
ニ在ラズ
第十三條社長、副社長及理事ハ他ノ職務
又ハ商業ニ從事スルコトヲ得ズ但シ主
務大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限
ニ在ラズ
第十四條日本石炭株式會社ハ左ノ事業
ヲ營ムモノトス
一石炭ノ買入及販賣
二石炭ノ輸出、輸入、移出及移入
三石炭鑛業ニ對スル資金ノ融通及投
資
四前各號ノ事業ニ附帶スル事業
五其ノ他石炭ノ需給ノ圓滑及價格ノ
公正ヲ圖ル爲必要ナル事業
日本石炭株式會社前項第四號又ハ第五
號ニ揭グル事業ヲ營マントスルトキハ
主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第十五條日本石炭株式會社ハ販賣ノ目
的ヲ以テ買入ルル者ニ石炭ヲ賣渡スト
キハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ
認可ヲ受ケ其ノ石炭ノ販賣ニ關シ必要
ナル事項ヲ指示スルコトス得
主務大臣ハ石炭ノ配給ノ圓滑又ハ價格
ノ公正ヲ圖ル爲特ニ必要アリト認ムル
トキハ日本石炭株式會社ヨリ販賣ノ目
的ヲ以テ石炭ヲ買入ルル者ニ對シ前項
ノ指示ニ從フベキコトヲ命ズルコトヲ
得
第十六條日本石炭株式會社ハ商法第二
百九十七條ノ規定ニ依ル制限ヲ超エテ
社債ヲ募集スルコトヲ得但シ社債ノ總
額ハ拂込ミタル株金額ノ三倍ヲ超ユル
コトヲ得ズ
社債ヲ募集スル場合ニ於テハ商法第三
百四十三條ニ定ムル決議ニ依ルコトヲ
要セズ
第十七條日本石炭株式會社社債ヲ募集
セントスル場合ニ於テハ主務大臣ノ認
可ヲ受クベシ
第十八條日本石炭株式會社ノ社債權者
ハ同會社ノ財產ニ付他ノ債權者ニ先チ
テ自己ノ債權ノ辨濟ヲ受クル權利ヲ有
ス
第十九條日本石炭株式會社ハ每營業年
度ニ準備金トシテ資本ノ缺損ヲ補フ爲
利益金額ノ百分ノ八以上ヲ積立ツベシ
第二十條主務大臣ハ日本石炭株式會社
ノ業務ヲ監督ス
第二十一條日本石炭株式會社ノ定款ノ
變更、利益金ノ處分、合併及解散ノ決
議ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレ
バ其ノ效力ヲ生ゼズ
第二十二條日本石炭株式會社ハ每營業
年度ノ事業計畫ヲ定メ主務大臣ノ認可
ヲ受クベシ之ヲ變更セントスルトキ亦
同ジ
第二十三條日本石炭株式會社ハ命令ヲ
以テ定ムル場合ヲ除クノ外主務大臣ノ
認可ヲ受ケタル價格ニ依ルニ非ザレバ
石炭ノ買入又ハ販賣ヲ爲スコトヲ得ズ
第二十四條主務大臣ハ日本石炭株式會
社ニ對シ石炭ノ需給調整上必要ナル事
業ヲ行フベキコトヲ命ジ其ノ他業務ニ
關シ公益上必要ナル命令ヲ爲スコトヲ
得
第二十五條主務大臣ハ日本石炭株式會
社ノ業務ニ關シ監督上必要ナル命令ヲ
爲スコトヲ得
第二十六條主務大臣ハ日本石炭株式會
社監理官ヲ置キ日本石炭株式會社ノ業
務ヲ監視セシム
第二十七條日本石炭株式會社監理官ハ
何時ニテモ日本石炭株式會社ノ金庫、
帳簿及諸般ノ文書物件ヲ檢査スルコト
ヲ得
日本石炭株式會社監理官ハ必要アリト
認ムルトキハ何時ニテモ日本石炭株式
會社ニ命ジ業務ニ關スル諸般ノ計算及
狀況ヲ報告セシムルコトヲ得
日本石炭株式會社監理官ハ株主總會其
ノ他諸般ノ會議ニ出席シ意見ヲ陳述ス
ルコトヲ得
第二十八條主務大臣ハ日本石炭株式會
社ノ決議又ハ役員ノ行爲ガ法令、法令
ニ基キテ爲ス處分若ハ定款ニ違反シ又
ハ公益ヲ害スト認ムルトキハ其ノ決議
ヲ取消シ又ハ役員ヲ解任スルコトヲ得
第二十九條日本石炭株式會社ハ每營業
年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ
政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミ
タル株金額ニ對シ年百分ノ四ノ割合ニ
達スル迄政府ノ所有スル株式ニ對シ利
益ノ配當ヲ爲スコトヲ要セズ
日本石炭株式會社ノ每營業年度ニ於ケ
ル配當シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ
者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額
ニ對シ年百分ノ四ノ割合ヲ超過スル場
合ニ於テ政府以外ノ者ノ所有スル株式
ニ對シ年百分ノ四ノ割合ヲ超エ利益配
當ヲ爲サントスルトキハ其ノ超過スル
利益金額ハ利益配當ガ總株式ニ付拂込
ミタル株金額ニ對シ均一ノ割合ニ達ス
ル迄政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂
込ミタル株金額及政府ノ所有スル株式
ノ拂込ミタル株金額ニ對シ一ト三トノノ
割合ヲ以テ之ヲ配當スベシ
第三十條第一條ノ規定又ハ第十五條第
二項ノ規定ニ依ル命令ニ違反シタル者
ハ一年以下ノ懲役又ハ一萬圓以下ノ罰
金ニ處ス但シ犯罪ニ係ル石炭ノ價額ノ
三倍ガ一萬圓ヲ超ユルトキハ罰金ハ當
該價額ノ三倍以下トス
第三十一條第二十三條ノ規定ニ違反シ
タル者ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十二條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
-第五條ノ規定ニ依ル報告ヲ爲サズ
又ハ虚僞ノ報告ヲ爲シタル者
二第五條ノ規定ニ依ル檢査ヲ拒ミ、
妨ゲ又ハ忌避シタル者
第三十三條營業者ハ其ノ代理人、戶主、
家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ガ
其ノ業務ニ關シ第三十條、第三十一條
又ハ前條第一號ノ違反行爲ヲ爲シタル
トキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以
テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第三十四條第三十條、第三十一條及第
三十二條第一號ノ罰則ハ其ノ者ガ法人
ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法人
ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者又
ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理人
ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者ト
同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ
此ノ限ニ在ラズ
第三十五條前二條ノ場合ニ於テハ懲役
ノ刑ニ處スルコトヲ得ズ
第三十六條日本石炭株式會社左ノ各號
ノ一ニ該當スルトキハ社長又ハ社長ノ
職務ヲ行ヒ若ハ代理スル副社長ヲ五千
圓以下ノ過料ニ處ス副社長又ハ理事ノ
分掌業務ニ係ルトキハ副社長又ハ理事
ヲ過料ニ處スルコト亦同ジ
一本法ニ依リ認可ヲ受クベキ場合ニ
於テ其ノ認可ヲ受ケザルトキ
二第十四條ノ規定ニ依ラズシテ業務
ヲ營ミタルトキ
三第十六條第一項ノ規定ニ違反シ社
債ヲ募集シタルトキ
四第二十四條又ハ第二十五條ノ規定
ニ依ル命令ニ違反シタルトキ
第三十七條日本石炭株式會社ノ社長、
副社長又ハ理事第十三條ノ規定ニ違反
シタルトキハ千圓以下ノ過料ニ處ス
第三十八條第九條ノ規定ニ違反シタル
者ハ千圓以下ノ過料ニ處ス
附則
第三十九條本法施行ノ期日ハ各規定ニ
付勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十條政府ハ設立委員ヲ命ジ日本石
炭株式會社ノ設立ニ關スル事務ヲ處理
セシム
第四十一條設立委員ハ定款ヲ作成シ主
務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第四十二條前條ノ認可アリタルトキハ
設立委員ハ株式總數ヨリ政府ニ割當ツ
ベキ株式ヲ控除シタル殘餘ノ株式ニ付
株主ヲ募集スベシ
第四十三條株式申込證ニハ定款認可ノ
年月日竝ニ商法第百七十五條第二項第
二號及第四號乃至第七號ニ規定スル事
項ヲ記載スベシ
第四十四條設立委員株主ノ募集ヲ終リ
タルトキハ株式申込證ヲ主務大臣ニ提
出シ其ノ檢査ヲ受クベシ
第四十五條設立委員ハ前條ノ檢査ヲ受
ケタル後遲滯ナク各株ニ付第一囘ノ拂
込ヲ爲サシムベシ
前項ノ拂込アリタルトキハ設立委員ハ
遲滯ナク創立總會ヲ招集スベシ
第四十六條創立總會ニ於テハ第十一一條
ノ規定ニ應ジ社長、副社長、理事及監
事ノ選任ヲ行フベシ
第四十七條創立總會終結シタルトキハ
設立委員ハ其ノ事務ヲ日本石炭株式會
社社長ニ引渡スベシ
第四十八條商法第百六十七條、第百八
十一條及第百八十五條ノ規定ハ日本石
炭株式會社ノ設立ニハ之ヲ適用セズ
第四十九條第九條ノ規定施行ノ際現ニ
日本石炭株式會社又ハ之ニ類似ノ名稱
ヲ以テ商號ト爲ス會社ハ同條ノ規定施
行後六月以內ニ其ノ商號ヲ變更スルコ
トヲ要ス
第三十八條ノ規定ハ前項ノ期間內之ヲ
前項ニ揭グル者ニ適用セズ
〔國務大臣藤原銀次郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=69
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070・藤原銀次郎
○國務大臣(藤原銀次郞君) 只今議題トナ
リマシタ石炭配給統制法案ノ提案理由ヲ御
說明申上ゲタイト存ジマス我ガ國現下ノ
物資需給狀況ニ鑑ミ、最モ緊要ナル生產力
擴充竝ニ物價統制ノ目的達成上、支配的ナ
ル影響ヲ有スルモノハ石炭ノ需給及其ノ
價格ノ適否如何ニ在リト申シマシテモ決
シテ過言デナイト考ヘルノデアリマス、然
ルニ我ガ國ニ於ケル石炭ノ需給狀態ヲ觀マ
スルニ今次ノ支那事變ノ發生以來、其ノ
需要量ノ增加ハ特ニ著シキモノガアルノデ
アリマスガ、之ニ對シマシテ生產ノ方ハ
最近山元ニ於ケル各種生產條件ノ緊迫化ニ
依リ著シク惡影響ヲ受ケテ居リマスノミ
ナラズ、配給機構ノ不整備ニ因ル石炭配給
ノ不圓滑ト相俟チマシテ、必要ナル方面へ
ノ供給確保ニモ困難ヲ生ジ、海外貿易ノ增
進モ、生產力擴充モ、之ガ爲尠カラザル障
碍ヲ受ケテ居リマス、殊ニ最近發電用石炭
其ノ他ノ工業用石炭ニ關シマシテ、御承知
ノ如キ狀態ヲ惹起致シ、國民生活上幾多ノ
不安ヲ與ヘマシタコトハ誠ニ遺憾ニ存ズル
所デアリマス、斯クノ如キ現狀ニ對シマシ
テハ、有ラユル方策ヲ講ジテ事態ノ改善ヲ
圖ルコト極メテ緊要デアリマシテ若シ今
日ノ狀態ノ儘ニ放置シテ置キマスレバ前
述ノ如キ不安ヲ將來ニ殘シ、國策遂行ノ圓
滑ヲ期シ得ナイモノト考ヘル次第デアリマ
ス政府ニ於キマシテハ、石炭ノ配給統制
ヲ目的ト致シマシテ、曩ニ輸出入品等ニ關
スル臨時措置ニ關スル法律ニ基キ石炭販賣
取締規則ヲ制定致シマシテ、右ノ目的達成
ニ努メテ參ッタノデアリマスルガ、現下ノ
情勢ハ更ニ現在ノ配給機構ヲ統合一元化
シ、統制力ニ富ム强力ナル機構ヲ中心ト致
シマシテ、配給統制ノ運營ニ當ラシムル必
要ニ迫ラレテ居ルノデアリマス、次ニ石炭
ノ極メテ急激ナル需要增加ニ對處シ、併セ
テ長期建設ノ將來ニ備ヘムガ爲ニハ大規
模ナル增產促進ノ方策ヲ樹立シ、速カニ之
ヲ實施シテ供給ノ增加ニ努ムルコトガ不可
缺ノ要務ナリト認メラルヽノデアリマスル
ガ、山元ニ於ケル生產條件ノ惡化ハ、炭礦
業者ノ採算ヲ惡化致シマシテ、現在ノ炭價
ヲ引上ゲルニ非ザレバ增產ヲ期待スルコト
ヲ得ナイヤウナ狀態デゴザイマス、然ルニ
炭價ノ一般的引上ハ、延イテ諸般ノ物價ニ
響影ヲ及シ、現下ノ物價政策ニ背馳致シマ
スルガ爲、到底之ヲ實施スルコトヲ得ナイ
ノデアリマシテ、一方ニ於テ低物價政策ヲ
堅持スルノ趣旨ニ於キマシテ適正ナル公定、
價格ヲ定ムルト共ニ、他方極力石炭ノ增產
ヲ圖リ必要ナル方面へ供給ヲ確保セネバ
ナラヌ次第デゴザイマス、政府ニ於キマシ
テハ之ガ對策ト致シマシテ增產奬勵金、
新坑開發助成金等ノ交付ニ依リマシテ、鑛
區ノ積極的開發ヲ促進スル方策ヲモ考究致
シマシテ、之ニ要スル經費ニ付キマシテモ
別途追加豫算ヲ計上致シテ居リマスルガ、
是等ノ方策ノミニ依リマシテハ尙解決シ得
ナイ問題ヲ殘シテ居ルノデアリマス、卽チ
先ニ申シマシタル公定價格制ヲ確立致シマ
スル爲ニハ、現在多種多樣ナル石炭ヲ全國
的ニ一定ノ規格ニ格付ケ致シマシテ、之h
應ズル價格ヲ定ムル必要ガアルノデアリマ
スガ、一方各炭礦ニ於ケル生產事情、炭質
ハ必ズシモ前述ノ規格ニ依ル炭質ト一致シ
ナイノデアリマシテ、卽チ或炭礦ニ於キマ
シテハ生產條件比較的不利益デアリマシ
テ生產費ガ高イニモ拘リマセズ炭質
ハ寧ロ惡質ナルモノアリ或ハ右ト全
ク反スル事情ニアルモノモアリマシ
テ、現在ニ於テハ二重、三重ノ炭價ヲ
ヲ現出シ、諸種ノ不都合ヲ生ジテ居ルノデ
アリマスルガ、此ノ間ヲ調整致シマシテ、
一方ニ於テハ增產ノ機運ヲ促進致シマスル
ト共ニ、他面生產ノ合理化ヲ阻碍セザルガ
如キ國家的要求ヲ充シ得ル賣値ヲ、炭礦業
者ノ爲ニ考慮スル必要ガアルト考ヘル次第
デアリマス斯クノ如キ諸事情ヲ考慮致シ
マシテ、低價格ノ維持、規格賣炭ノ實施等、
物價政策上ノ要求ト、生產增進ノ爲ノ採算的
要求トヲ調和的ニ實施セムガ爲ニハ斯ク
ノ如キ操作ヲ確實ニ實行シ得ル一元的綜合
機關ヲ設置スルコトガ最モ有效ナリト考へ
ルモノデアリマス、仍テ先ニ述ベマシタ配
給統制上ノ必要ト併セ考ヘマシテ、石炭ノ
一手買上及ビ一手販賣ヲ爲ス特定ノ中樞機
關ヲ設ケ、之ヲ中心ト致シマシテ販賣機構
ヲ一元的ニ系統化シ、配給ノ完全ナル圓滑
化ヲ圖リマスルト共ニ右機關ニ於キマシ
テ「プール」平準價格制ノ運用ニ依リマシテ、
前述ノ炭價問題ヲ解決致シマスルコトト致
シマシテ、之ニ因ル右機關ノ採算惡化ヲ防
止致シマスルガ爲ニ、先ノ增產奬勵金、新坑
開發助成金ト併セテ右機關ニ對スル買上補
償金ヲモ追加豫算ニ計上致シテ居ルノデゴ
ザイマス而シテ右ノ如キ事業ハ其ノ性質
上、何レモ公正ナル國家的ノ機關ニ依ッテ經
營セラレルコトガ必要デアルノデアリマシ
テ之ヲ單ナル民間ノ企業ニ期待スルコト
ハ不可能デアルト思料セラルヽノデアリマ
ス、是レ玆ニ新タニ法律ニ依リ半官半民ノ
特殊會社タル日本石炭株式會社ヲ設立致シ
マシテ、是等ノ事業ニ當ラシメムトスル所
以デゴザイマス、本法律案ハ、石炭ノ配給
統制ニ關スル規定竝ニ日本石炭株式會社ノ
組織、權限、監督等ニ關スル規定ヲ包含ス
ルモノデアリマスルガ、何レモ現在及ビ將
來ノ時局ニ於キマシテ、最モ緊要ナル石炭
ノ配給ノ圓滑化及ビ增產達成上、必要缺ク
ベカラザル事柄デアルト信ズルノデゴザイ
さく、何卒御審議ノ上御協賛アラムコトヲ
希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=70
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071・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今議題トナリマシタ
石炭配給統制法案ハ、重要ナル法案デアリマ
スルガ故ニ、此ノ特別委員ノ數ヲ十八名ト
ジ、其ノ委員ノ指名ヲ議長ニ一任スルノ動
議ヲ提出致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=71
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072・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=72
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073・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 戶澤子爵ノ動議
ニ御異議ゴザイマセヌカ
)〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=73
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074・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、特別委員〓氏名ヲ朗讀致サセマス
〔佐藤書記官朗讀〕
石炭配給統制法案特別委員
公爵鷹司信輔君侯爵前田利爲君
伯爵溝口直亮君子爵秋田重季君
子爵高橋是賢君子爵柳澤光治君
川村竹治君男爵飯田精太郞君
男爵伊藤文吉君男爵西酉乙君
倉知鐵吉君山岡萬之助君
小坂順造君瀧川儀作君
小倉正恒君松本勝太郞君
小野耕一君中野敏雄君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=74
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075・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 明日ハ午後一時
三十分ヨリ開會致シマス、議事日程ハ、決
定次第彙報ヲ以テ御通知ニ及ビマス、本日
ハ是ニテ散會致シマス
午後四時四十分散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02419400322&spkNum=75
4. 会議録のPDFを表示
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