1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十五年三月二十六日(火曜日)午前十時二十分開議
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議事日程 第二十八號
昭和十五年三月二十六日
午前十時開議
第一 臨時資金調整法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二 昭和十五年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債追加發行に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第三 支那事變に關する一時賜金として交付する爲公債發行に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第四 石炭配給統制法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第五 木炭需給調節特別會計法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第六 農産物檢査法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第七 日本輸出農産物株式會社法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會續(委員長報告)
第八 裁判所構成法改正法律案(衆議院提出) 第一讀會
第九 檢察廳法案(衆議院提出) 第一讀會
第十 辯護士法中改正法律案(衆議院提出) 第一讀會
第十一 刑事訴訟法中改正法律案(衆議院提出) 第一讀會
第十二 司法書士法中改正法律案(衆議院提出) 第一讀會
第十三 樺太に衆議院議員選擧法施行に關する法律案(衆議院提出) 第一讀會
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=0
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001・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 報告ヲ致サセマ
ス
〔白木書記官朗讀〕
昨二十五日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府
提出案ハ卽日裁可ヲ奏請シ又可決ノ旨ヲ衆
議院ニ通知セリ
地方稅法案
地方分與稅法案
府縣制中改正法律案
市制中改正法律案
町村制中改正法律案
北海道會法中改正法律案
北海道地方費法中改正法律案
地方分與稅分與金特別會計法案
農會法中改正法律案
同日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
石炭配給統制法案可決報告書
木炭需給調節特別會計法案可決報告書
農產物檢査法案可決報〓書
日本輸出農產物株式會社法案可決報告書
同日衆議院ヨリ左ノ議案ヲ提出セリ
辯護士法中改正法律案
刑事訴訟法中改正法律案
司法書士法中改正法律案
樺太ニ衆議院議員選擧法施行ニ關スル法
律案
同日衆議院ヨリ本院ノ送付ニ係ル左ノ政府
提出案ハ同院ニ於テ之ヲ可決シ奏上セル旨
ノ通牒ヲ受領セリ
國民體力法案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=1
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002・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 是ヨリ本日ノ會
議ヲ開キマス、日程第一、臨時資金調整法
中改正法律案、日程第二、昭和十五年度一
般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲公債追加發行
ニ關スル法律案、日程第三、支那事變ニ關
スル一時賜金トシテ交付スル爲公債發行ニ
關スル法律案、政府提出、衆議院送付、第
一讀會ノ續、委員長報告、是等ノ三案ヲ一
括シテ議題ト爲スコトニ御異議ゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=2
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003・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、委員長西尾子爵
〔左ノ報〓書ハ朗讀ヲ經サルモ參
照ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ倣フ〕
〓臨時資金調整法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十五年三月二十五日
委員長子爵西尾忠方
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
昭和十五年度一般會計歲出ノ財源ニ充
ツル爲公債追加發行ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十五年三月二十五日
委員長子爵西尾忠方
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
支那事變ニ關スル一時賜金トシテ交付
スル爲公債發行ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十五年三月二十五日
委員長子爵西尾忠方
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔子爵西尾忠方君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=3
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004・西尾忠方
○子爵西尾忠方君 只今議題トナリマシタ
臨時資金調整法中改正法律案外二件ノ特別
委員會ノ審議ノ模樣竝ニ其ノ結果ニ付テ、
玆ニ御報告ヲ申上ゲマス、先ヅ最初ニ日程
第一、臨時資金調整法中改正法律案ニ付テ
申上ゲマス、事變勃發以來、政府資金ノ撒
布ノ激增ガ國民生活ニ及ス惡影響ヲ防止ス
ル爲、政府ハ極力國民貯蓄ノ奬勵ニ力ヲ盡
シテ來タノデアリマスガ、最近ノ我ガ國ノ
經濟情勢ヲ見マスト、國民大衆ノ一部ニハ
急激ニ增加シタ利得ヲ、思惑其ノ他時局柄
不謹愼ノ浪費ニ振向ケル者ガ見受ケラレル
ヤウニナッタノデアリマスガ、是等ノ事ガ延
イテハ國民經濟生活ニ好マシカラザル影響
ヲ與ヘルモノデアリマスカラ、此ノ方面ノ
過剩購買力ヲ吸收スル爲ニハ、現在迄政府
ノ執リ來タッタ方策ヲ一層强化スルヲ適當
ト認メマシテ本法ノ改正ヲ行ヒ、新タニ報
國債劵ヲ發行スルト共ニ、從來ノ貯蓄債劵
ニ付テモ割增金ノ限度ヲ引上グルコトトシ
タノデアリマス、報國債劵ハ貯蓄債劵ト
同ジク政府ガ日本勸業銀行ヲシテ發行セシ
ムルモノデアリマシテ、收入金ノ限度
ハ五億圓トシタノデアリマスガ、昭和
十五年度ニハ大體二億圓程度ヲ發行スル
見込ミヲ立テテ居ル〓デアリマス、發行
方法ニ付テハ、本債劵ハ劵面金額ヲ十圓
以下トシ、賣出價格ハ劵面金額通リトシ、
且利子ヲ付ケナイコトヲ特色トシテ居リマ
ス、償還期間ハ、發行ノ翌年ヨリ十年以內
トシ、每年一囘以上抽籤ヲ以テ割增金ヲ
附セムトスルノデアリマスガ、此ノ割增金
ハ本債劵ノ最モ特徴ノアル點デアリマシテ、
本債劵ヲ無利子トシタ代リニ、現在ノ貯蓄
債券又ハ復興貯蓄債劵ニ較ベレバ相當多
額ノ割增金ヲ附ケ得ルヤウニナッテ居ルノ
デアリマス、割增金ノ限度ハ、法制上ハ無
制限デアリマスガ、實行ニ當ッテハ過度ニ射
倖心ヲ唆ルコトノナイヤウニ、最高ノ割增
金ハ、劵面金額十圓ノ場合ハ一萬圓程度
トスルトノコトデアリマス、又本債劵ノ所
持人ヲシテ、成ルベク長ク之ヲ保有セシム
ルコトガ、本債劵發行ノ目的トスル購買力
吸收ノ趣旨ニ副フモノデアルト云フノデ
郵便局又ハ日本勸業銀行ニ無料デ本債劵ヲ
保管シ得ル制度ヲ設ケ、其ノ保管ヲ委託シ
タル者ニ對シテハ、其ノ期間ガ相當長期デ
アル時ハ、主務大臣ノ定ムル所ニ依ッテ、
別ニ割增金ヲ交付セムトスルノデアリマス、
尙本債劵ノ發行ニ依ル收入金ハ、全部之ヲ
大藏省預金部ニ預ケ入レテ、國債ノ消化ニ
運用セムトスルノデアリマス、次ニ改正ノ
第二點ハ、貯蓄債劵ノ割增金ノ限度ガ、現
在賣出價格ノ百五十倍トナッテ居ルノヲ、復
興貯蓄債劵又ハ勸業債劵ト同樣、三百倍ニ
引上ゲムトスルコトデアリマス、以上二點
ガ本法案改正ノ要點デアリマス、委員會ニ
於キマスル御質疑ノ主ナルモノヲ申上ゲマ
スレバ、發行限定ヲ五億圓ニシタノハ如何
ナル計算ニ依ルカトノ問ニ對シ、御答辯ハ、
五億圓トシタノハ、本年度ノ發行額ノ見込
ハ、大體二億圓程度ハ可能デアラウト考ヘ
ル、尙明年度モ大體同額程度ハ發行シタイ
ト考へ、二年間ニ四億圓、ソレニ對シ約一
億圓ノ餘裕ヲ見越シテ五億圓トシタト云フ
コトデアリマス、次ニ割增金ノ當籤ノ率ニ
付テノ間ニ對シ、御答ハ、是ハ發行ノ際大
藏大臣ガ決メルト云フコトニナッテ居リマ
シテ、別段今確定シテ居ル譯デハナイノデ
アリマストノコトデアリマス、次ニ報國債
劵ノ發行ハ、將來貯蓄債劵ヤ勸業債劵ノ發
行ノ妨ゲトナラヌカトノ質問ニ對シ、此ノ
報國債劵ヲ計畫シタノハ、御承知ノ通リ事
變以來貯蓄債劵ハ旣ニ十數回ニ亙ッテ發行
繼續ヲ致シ、日本勸業銀行ハ勿論、政府モ
廣ク民間ニ此ノ貯蓄債劵ノ普及ニ付テ努力
ヲシタノデアリマス、其ノ間ニ於テ具サニ
民間ノ色々ノ事情ヲ調査シ見聞ヲシテ見マ
スト、從來ノ貯蓄債劵デハ到底吸收シ切レ
ナイ方面ノモノガアルト云フコトヲ感ジタ
ノデアリマス、今後公債ノ增發ニ依リ政府
資金ノ撒布、購賣力ノ增加ト云フコトガ豫
想サレル際ニ於テハ、從來ノ貯蓄債券及國
債ダケデハ、殊ニ國民大衆ノ間ニ滯留シテ
居ル過剩資金ヲ吸收シ得ナイ部分ガアルノ
デ、サウ云フ層ガアルト云フコトヲ痛切ニ
感ジタノデ、ソコデ新シイ所ノ形式ヲ持チ
方法ヲ持ッタ債券ヲ思ヒ立ッタヤウナ次第デ
アリマス、從ッテ貯蓄債劵ノ發行ト竝行シ
テ報國債劵ヲ發行シテモ、兩者ハ竝行シテ
消化シ得ルト確信シテ居ル次第デアリマス、
卽チ貯蓄債劵ノ購買者ト、報國債劵ノ購買
者トハ一部ハ或ハ重複シテモ、又他ノ部
分ニ於テハ全然別箇ノ階層モアルノデ、從ツ
テ貯蓄債劵ノ賣行ニハ縣念ハナイト考ヘル
トノ答辯デアリマシタ、次ニ報國債劵ヲ發
行シタ場合ニ、旣發ノ貯蓄債劵、勸業債劵
ノ下落ヲ來スコトハナイカトノ御質疑ニ對
シテノ御答ハ此ノ報國債劵ノ發行ト云フ
コトガ世間ニ傳ヘラレテ、一時ニ於テハ若
干ノ衝動ガアリ得ルノデアリマシテ、時等
的ニハ下落スルヤウナコトガアッテモ、結局
ニ於テハ既發債劵ノ市價ニハ影響ヲ及ボサ
ナイト考ヘテ居リマス、報國債劵ノコトガ
先月アタリ出マシタ時ニ、一時下ッタノデア
リマスガ、最近ニ於テハ其ノ値段モ相當落
チ著イテ漸次恢復ノ方向ニ向ヒツヽアリマス、
尙又預金部ニ於テ、郵便貯金者ガ政府ニ於テ
保管シテ居リマス貯蓄債券ヲ政府ニ買上ヲ願出
ヅル際ニ於テハ、從來ト何等異ナラザル所
ノ法定價格ヲ以テ現ニ買上ゲツヽアルノデ
アリマスカラ、若シ賣却ノ希望者ガアレバ
政府ニ對シ賣却ヲ要求スレバ宜シイノデアッ
テ、其ノ際從來ト變リナイ値段デ、何等制
限ナク買上ゲテ居ル次第デアリマス、是等
ノ點ヲ考ヘ合セマシテ、旣發債劵ニ付テ將
來ニ於テモ影響ナキモノト考ヘテ居ルトノ
御答デアリマシタ、次ニ報國ト云フ名稱ヲ
此ノ債券ニ付ケタ理由ニ付テ御尋ガアリマ
シタ、之ニ對シ當局ヨリ、事變ノ進行ニ伴
ヒ過剩資金ノ吸收、或ハ通貨膨脹ノ抑制ト
云フヤウナ大キナ國策ノ爲ニ、斯ウ云フ報
國債劵ヲ出サザルヲ得ナイト云フコトニ相
成ッタモノデアリマシテ、此ノ債劵ハ現下ノ
國策ノ必要カラ出タ債劵デアリマス、從來
ノ外國及我ガ國ノ歷史等カラ見マスト富
籤等ノヤウナモノハ、動モスレバ興味本位、
或ハ利益本位ニ計畫サレタコトガアルヤウ
デアリマスガ、今日ノ報國債劵ハサウデハ
ナク、現在ノ此ノ通貨對策ノ一ツトシテ計
畫サレタモノデアリマス、卽チ政府ノ側カ
ラ見レバ、是ガ對策ノ爲ニ出ス債劵デアル
ト云フコトヲ表徵スル意味ニ於テ、報國ト
云フ文字ヲ用ヒラレタモノデアリマス叉
之ヲ購入スル方面カラ見マスレバ、當初ハ
方便デアルガ、結局此ノ報國債劵ヲ購入ス
レバソレガ卽チ通貨ノ吸收トナリ、公債
ノ消化トナルノデ、卽チ是ハ國策ニ協力ス
ルト云フコトニナルノデアリマスカラシテ、
サウ云フ意味カラ言ヘバ、國民ノ側カラ申
セバ、或ハ當初ハ割增金ト云フモノニ興味ヲ
持ッテ應ジタカモ知レマセヌガ、結果ニ於テ
ハ矢張リ報國ノ一端ト相成ル譯デアリマス、
殊ニ此ノ債劵ハ、他ノ債劵ト違ヒ利息ガ附
カナイノデアリマス、割增金ニ當ル者コソ
若干ノ利益ヲ得ルデアリマセウガ、大部分
ノ人ト云フモノハ當然當ラナイノデアリマ
ス、故ニ當ラナイ人カラ見レバ、利息ニ相
當スルモノハ國ニ寄附シタノト同ジ結果ニ
相成ル譯デアリマス又サウ云フ樣ナ氣持
デ此ノ債券ニ應募シテ貫ヒタイト云フ氣持
ヲ以テ、是等ノ點ヲ併セテ報國ト云フ名稱
ヲ選ンダ次第デアルトノコトデアリマス、
次ニ一千倍ト云フ限度ハ、是ガ最高限度ト考
ヘテ居ルカドウカト云フ御尋ニ對シ、政府
ノ御答辯ハ、ソレニ付テハ富籤ニ關スル御
話モアリマシタカラ、此ノ際富籤ト報國債
劵トノ區別ニ付テ政府ノ所見ヲ申述ベタイ
ト思ヒマス、本會議ノ席上御議論ガアリマ
シタケレドモガ、從來諸外國、我ハ我ガ國
ニ於テモ富籤ト稱セラルヽモノハ殆ド全
部ガ元金ヲ醵出シテ、其ノ元金ガ籤ニ當ラ
ナイ場合ニハ取上ゲラレテシマフト云フコ
トガ大キナ要素トナッテ居ルノデアリマス、
然ルニ此ノ報國債劵ハ、元金ハ絕對ニ返ス、
殊ニ長イ間保管シテ居ッタ者ニ對シテハ、
種ノ奬勵金ト云フ意味合ニ於テ最後ニ或程度
ノ割增金迄附ケヨウト云フ性質ノモノデア
リマシテ、元金ハ無クナラナイト云フ建前
ニナッテ居ルノデアリマス、其ノ點ニ於テ餘
程違ッタモノガアルト考ヘテ居ルノデアリ
マン、而シテ此ノ千倍ノ限度ハ、現在ノ狀
況ニ於テハ大體是ガ最高限度デハナカラウ
カ是以上近キ將來ニ於テ非常ニ殖スト云
フコトガ適當デアルト云フ風ニハ必シモ
考ヘテ居ナイトノ御答デアリマシタ、以上
ハ本案ニ付テノ御質疑ノ主ナルモノデアリ
マイ、次ハ日程第二、昭和十五年度一般會
計歲出ノ財源ニ充ツル爲公債追加發行ニ關
スル法律案ニ付テ申上ゲマス本案ハ昭和
十五年度歲入歲出總豫算追加第二號ニ計上
セル經費ノ所要財源、總額二億千六百六十
餘萬圓ノ內、普通歲入及前年度剩餘金ヲ以
テ充當スベキ分三千八百三十餘萬圓ト、道
路公債法ニ依ル公債金ヲ以テ充當スベキ分
六十餘萬圓トヲ差引キタル殘額、一億七千
七百七十萬餘圓ヲ公債ニ求メムトスル爲ニ、
公債ノ追加發行ニ關スル法律案デアリマス、
本委員會ニ於キマシテハ歲出臨時部遞信
省所管、第三十一款特殊會社補給金、第一
項日本發送電株式會社配當補給金二千三百
七十八萬九千四百四十五圓ノ追加要求ニ對
シュ一委員カラ御質疑ガゴザイマシタ、昨
年此ノ會社法ノ委員會ニ於テ、電力ハ低廉
豐富ニハナラナイ、從ッテ會社ハ豫定ノ利益
ヲ擧ゲ得ラレナイダラウト警告ヲシテ置イ
ク、果セル哉、斯ウ云フ損失ヲ國家ニ與ヘ
タノデアルガ、大藏省ハ經營ノ一部ニ迄立
入ッテ調査サレルナラバ、遞信省モ尙嚴重ナ
監督ヲサレルコトニナッテ、從ッテ其ノ內容
モ良クナッテ行クコトト思フ、將來ハ是非嚴
重ナ監督ヲ希望スルガ、當局ノ御所見如何
ト云フ質問デゴザイマシタ、之ニ對シマシ
テ、當局カラハ、國策會社ニ對シテハ其ノ
事業計畫ナリ決算、配當等、直接ノ監督官
廳ヨリ大藏省ニ協議ヲシテ參リマスノデ、
サウ云フ意味ニ於テ大藏省ハ監督ヲシテ居
ル譯デアリマス、衆議院ニ於キマシテモ
監督方法ヲ變ヘタラドウカトノ議論モアリ
マシタ譯デアリマスカラシテ、今後之ニ對
シテ考究シテ見タイト思フト云フ御答辯デ
ゴザイマシタ、次ニ日程第三、支那事變ニ
關スル一時賜金トシテ交付スル爲公債發行
ニ關スル法律案ニ付テ申上ゲマス、本案ハ
今囘支那事變ニ關シ功勞ノアッタ陸海軍軍
人其ノ他ニ對スル行賞ハ、昭和十五年度
以降緩急ノ順序ヲ考慮シテ實行セラルヽコ
トトナリマシタ處、是等功績ノアル者ニ對
シテハ、滿洲事變、其ノ他ノ戰役、事變ノ
例ニ準ジマシテ一時賜金ヲ賜與セラルヽコ
トト考ヘラレマスガ、此ノ賜金ハ公債證書
ヲ以テ交付スル爲、昭和十五年度分トシテ
總額一億六千四百二十萬圓ダケ起債ノ權能
ヲ得ル必要ガアルノデアリマス、尙此ノ公
債ハ其ノ性質ニ鑑ミマシテ、受賞者ヲシテ
永ク保有セシムル爲之ヲ登錄國債トシ、之
ニ對シ本劵ヲ記名式トシ、利札ヲ無記名式
トスル特別ナル證劵ヲ發行スルノデアリマ
ス、且我ガ國現下ノ財政經濟事情ニ鑑ミ、
之ヲ自由ニ讓渡シ又ハ擔保ニ供スルコトヲ
得ザルコトトシ、受賞者ニ於テ已ムヲ得ズ
換價ヲ必要トスル時ハ政府ニ於テ買上グ
ル途ヲ拓クコトトスルヲ適當トシテ提出セ
ラレタノデアリマス、委員會ニ於ケル質疑
ノ主ナルモノハ、本法第三條ニ「命令ノ定ム
ル所ニ依リ政府ニ買入ルル場合」トアルガ、
如何ナル場合デアルカトノ御質疑ニ對シ、
當局ヨリ詳細ナル御答辯ガアリマシタガ、
細カイコトニ亙リマスルカラシテ速記錄ニ
讓リタイト存ジマス、次ニ支那事變ハ未ダ
級熄セザルニ拘ラズ、此ノ際行賞ノ實施ヲ
要スル理由ニ付テ御尋ガアリマシタ、之一
對シ、事變勃發以來二年有半ヲ經過シ、死
歿者、戰傷病者、戰地ヨリノ歸還者等ガ多數
アリマスカラ、此ノ際一應打切リ、行賞ヲ實
施セムトスルノデアルトノ御答デアリマシ
タ、次ニ昭和十五年度以降何年度間ニ亙ッテ
實施スル豫定デアルカトノ御尋ニ對シ、大
體昭和十五年度以降四箇年度間ニ亙ッテ、
緩急ノ順序ヲ考慮シテ實行シタイ考デアル
トノ御答デアリマシタ、次ニ行賞一時賜金
ハ全部公債ヲ以テ交付スルモノデアルカ、
若シ現金デ交付スル分アリトセバ、其ノ豫
算ハ幾許ヲ何處ニ計上シテアルカトノ御尋
ニ對シ、御答ハ、原則トシテハ公債ヲ以テ
交付スルト云フコトニ相成ッテ居リマス
ガ、一時賜金額二十圓未滿ノ者ニ付テハ現
金ヲ以テ交付スル考デアリマス、尙特殊ノ
者ニ付テハ一時賜金ニ代ヘ賜品ヲ賜與スル
計畫モアルノデアリマス、是等ノ現金ニ付
テハ、陸海軍關係ノ分ハ何レモ臨時軍事費
ヲ以テ支辨セラルヽコトニナッテ居リマス、
一時賜金、慰勞金ニ代ヘテ賜與スベキ賜品
ノ購入費ニ付テハ、陸海軍關係ハ何レモ臨
時軍事費ヲ以テ支辨セラレルコトニナッテ
居リ、陸海軍以外ノ各省ニ付テハ、必要ナ
行賞事務ノ取扱費ハ、其ノ事務取扱ノ開始
ガ〓ネ昭和十六年以降デアリマス關係上、
十六年度以降ニ於テ計上スルトノ御答辯デ
アリマシタ、次ニ將來財政經濟事情ノ變化
ニ應ジ此ノ制限ヲ撤廢スル意ナキヤトノ御
尋ニ對シ、本公債ハ現下ノ財政經濟事情
ニ鑑ミ制限ヲ付シタモノデアリマスカラ、
將來此ノ事情ノ變化ニ應ジマシテ斯クノ如
キ制限ヲ付スル必要ヲ認メザルニ至リマス
レバ、斯カル制限ノナイ普通ノ公債ニ借換
ヘタイ方針デアルトノ御答デゴザイマシダ、
是等ノ外ニ、政府ノ買上ゲノ手續上細カイ
點ニ付テノ多クノ御質疑ガアリマシタガ、省
略ヲ致シマス、以上ハ三案ニ關スル委員會ニ
於キマスル質疑應答ノ大要デゴザイマス、斯
クシテ三案ヲ一括致シマシテ討論ニ移シマ
シタル處、一委員ヨリ、報國債劵ニ付テ御意
見ノ發表ガアリマシタ、卽チ本債劵ハ其ノ割
增金ノ額等、其ノ時々ニ於テ當局ガ決メラ
ルヽト云フコトデアルガ、ドウカ中正ヲ得
テ弊害ヲ生ジナイヤウニシ、運用ノ如何ニ
依リ弊害ヲ生ズルヤウデアレバ然ルベク善
處シテ戴キタイ、非常時局ニ於ケル一種ノ便
法トシテ已ムヲ得ザルコトデアルカラ、暫ク
當局ノ方ヲ信賴シ、贊成ヲスルト云フ御意
見デゴザイマシタ、最後ニ採決ヲ致シマシタ
處全會一致ヲ以テ三案トモ原案通リ可決
確定セラレタ次第デゴザイマス、以上ヲ以チ
マシテ私ノ報告ヲ終リマス、何卒委員會ノ決
定通リ御賛成アラムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=4
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005・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 先ヅ臨時資金調
整法中改正法律案ヲ問題ト致シマス、討論
ノ通〓ガアリマシタカラ、之ヲ御許シ致シ
マン、小山松吉君
〔小山松吉君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=5
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006・小山松吉
○小山松吉君 只今議題トナリマシタ臨時
資金調整法中改正法律案ニ付テ、其ノ一部
デアリマスル報國債劵ニ關スル部分ニ付テ
私ハ反對ヲ致スモノデアリマス、本案ハ條
文ハ簡單デアリマスケレドモ、國民思想ニ
影響スルコトノ重大ナル結果デアリマシテ、
我ガ國民ノ醇風美俗ヲ破壞スル虞アル法案
デアルト信ズルノデアリマス、斯クノ如キ
案ニ對シマシテハ、特別委員會ニ於テハ愼
重ニ御審議ニナッタノデアリマセウガ、本會
議ニ於テモ愼重審議ヲ盡シテ御決定御決議
ヲ願ハナケレバナラヌト思ヒマシテ、整
登壇シタ譯デゴザイマス、我ガ國ニ於テ從
來、富籤ヲ許スベシト云フ議論ハ可ナリアッ
タノデアリマスガ、ソレハ我ガ國情ナリ、
我ガ國ノ歷史ニ稽ヘマシテ、刑法ノ富籤ノ
規定ニ反シテ迄モ富籤ヲ實行シヨウト云フ
議論デハナイノデアリマス、刑法ノ規定ニ
ハ觸レナイヤウニシテ置イテ、サウシテ所
謂從來ノ勸業債劵ノヤウナモノノ程度ヲ擴
張シ、詰リ割增金ヲ增スノデアリマスガ、
サウシテ富籤類似ノ債劵ヲ發行シヨウト云
フノデアリマシテ、私ノ記憶スル所デハ、
昭和六七年ノ頃ニ政治家ノ間ニ可ナリ旺盛
ニ唱ヘラレタノデアリマス、詰リ當時農村
窮乏ノ時デアリマシテ、農山村漁村ナドヲ
救濟スル爲ニハ富籤ガ一番宜イト云フノデ
アリマシタガ、此ノ議論ハ昭和七年五月齋
藤內閣ノ成立シマシタ時ニ、齋藤內閣ガ同
意致シマセヌノデ遂ニ是ハ止メニナッタノ
デアリマス、然ルニ現内閣ニナリマシテ
カラ、此ノ多年ノ懸案、而モ爲スベカラズ
ト云フ趣旨ノ懸案ニ對シテ、從來ノ內閣モ
敢テシナカッタ法案ヲ大英斷ヲ以テ提出シ
タノデアリマス、報國債劵ノ美名ノ下ニ、
刑法上ノ富籖ト解スベキデナイト云フ議論
モアリマスケレドモ、從來富籤ヲ各國家ガ
禁止シテ居ル理由カラ見マスト、其ノ富籖
ノ弊害トシテ擧ゲラレテ居ル條件ハ殆
ド具備シテ居ルノデアリマス、ソレデアリ
マスカラ、報國債劵ハ、名前ハ綺麗デ
アリマスケレドモ、其ノ實質ハ富籤デアル
ト思フノデアリマス、是ハ法律家ノ間ニ
ハ毫モ異論ノナイコトデアリマシテ、本月
一日ノ豫算委員會ニ於テ、內田重成君ガ色々
御質問ニナッテ〓居リマス、內田君ノ御意見
モ私等トチットモ變ラヌヤウデアリマスガ、
其ノ御意見ニ對シテ、現ニ現政府ノ司法大
臣ハ、觀念論ヨリスレバ最近行ハレルト云
フ債劵モ富籤デアルト、斯ウ明カニ申シテ
居ルノデアリマス、マア觀念論ト云フ所ガ
少シ意味ノアルコトデアリマスガ、觀念上
富籤デアルナラバ、事實上ニ於テモ富籖ト
言ハナケレバナラヌノデアリマスガ、サウ
云フ次第デアリマシテ、私ガ此處デ法律ノ
議論ヲスル必要ハアリマセヌカラ、現內閣
ニ於テモサウ云フ論者ノアッタト云フコト
ヲ申上ゲテ置クノデアリマス、大藏大臣ガ
英斷ヲ以テ御提出ニナリマシタ此ノ法案
ハ道路傳フル所ニ依リマスト、大藏大臣
ノ御就任ノ際ニ、新工夫ノ財政政策ヲ提案
スルト云フコトヲ仰シヤッタサウデアリマ
シテ、是ハ其ノ新工夫ノ一ツデアルト思ハ
レルフデアリマス、失禮デアリマスガ、若
シ道路傳フル所ノ通リデアルトスレバ、是
ハ新工夫デモ何デモナイ從來ノ政治家ハ
誰デモ氣ガ付イタ、財政窮乏ノ際ニハ富籤
ト云フコトハ直グ氣ガ付キマスガ、是ハ弊
害ノ偉大ナルコトニ鑑ミマシテ之ヲ敢テシ
ナカッタノデアリマス、然ラバ大藏大臣ノ仰
シヤッタト云フ所ノ新工夫ト云フコトト致
シマシテ、ソレナラバ十分ニ御〓究ニナッテ
居ルカト云フト、少シモサウ云フ模樣ガ見
エナイノデアリマス、第一、本案ノ政府ノ
御說明デハ、只今委員長ノ御報告ガアリマ
シタ通リ、從來執リ來ッタ方策デハ民間ニ滯
溜シテ居ル過剩購買力ヲ吸收スルノニ不十
分デアルカラ、國民貯蓄ヲ一層增進セシメ
ル爲ニ此ノ法案ヲ提案シタノデアルト云フ
ノデアリマシテ、大藏大臣ノ私ノ質疑ニ對
シテノ御答デハ、更ニ此ノコトヲ詳細ニ御
述ニナッテ居ルノデアリマスガ、殷賑ニ依ッ
テ懷ニ金ヲ儲ケテ居ル者ガ、無駄ニ使ハナ
イデ、サウシテ是ガ國家ノ用ヲ爲スヤウニ
持ッテ行クニハ、多少斯樣ナ方法ニ依ルコト
モ已ムヲ得ナイデハナイカ、斯樣ニ考ヘ
ル、何等カノ方法ニ於テ吸收スルト云フ事
柄ハ惡イトハ思ハナイ、是等ノ方法ニ依ッテ
貯蓄スルト云フ觀念ガ出來レバ、初メハ割
增金ヲ目安ニ債劵ヲ買フ人モアルカモ知レ
ナイガ、次第々々ニ貯蓄ト云フ觀念ニ移ッテ
來ルノデアル、割增金ノ多イト云フノハ
是ハ一ツノ所謂方便トシテ致スコトガ適當
デアルト考ヘタノデアリマスト、斯ウ云フ
御答辯デアリマス、其ノ御答辯ヲ伺ッテ、私
ハ聊カ、聊カデハアリマセヌ、大イニ失望
シタノデアリマス、斯ウ云フ理由デハ、多
年ノ懸案タル富籤類似ノ債劵ヲ發行スル理
由ニハナラナイノデアリマス、從來、勸業
債劵、貯蓄債劵等ガ富籖類似ノモノトシテ
弊害ガアルト論ゼラレマシテ、之ヲ禁止シ
ヨウト云フ說ガ時々出テ居ルノデアリマス、
又實際貯蓄債劵、勸業債劵ト云フモノハ、
此ノ頃民間ニ餘リ信用ガナイノデアリマシ
テ、金ヲ吸收スル力ヲ持タナイノデアリマ
ス是ハ持タナイ筈ナノデアリマス、初メ
第一囘、第二囘ハ割增金ヲ多ク附ケ、籤數
モ多クアルケレドモ、三同、四囘トナルト段々
減ラシテシマフト云フ方法ヲ執ッテ居リマス
カラ、ソレヲ民間ガ知ッテ居ッテ餘リ買ハナイ
ヤウニナッタモノト思ハレルノデアリマス、
要スルニ此ノ議論ノ要點ニ、割增金ノ多イ少
イト云フコトニ依ッテ決定セラレルノデアリ
マシテ、貯蓄債劵、勸業債劵ト云フモノモ行
ハレテ居リマス、是ハ法律デ認メラレタモ
ノデアリマスカラ、今日ハ行ハレテ居ルノ
デアリマスガ、此ノ程度ナラバ害ハナカ
ラウト云フコトデ、詰リ落チ著イタコトデ
アリマス、然ルニ今囘ノヤウニ十圓ニ對シ
テ一千倍、一萬圓ノ金ヲ與ヘルト云フ
ヤウナ多額ノモノニ付テハ、是ハ十分ニ檢
討シテ當不當ヲ決スベキデアルニモ拘ラズ、
サウ云フヤウナ御〓究ハアッタヤウニナク、
唯方便デアルト云フノニ至ッテハ、遺憾ナガ
ラ私ハ報國債劵ノ割增金ノ額ニ付テハ眞面
目ニ御〓究ニナッタモノトハ思ハレナイノデ
アリマス、只今委員長ノ御報〓ヲ承リマス
ト此ノ法案ノ第十四條ノ四ノ第二項ニ、
割增金ノ方法及金額ハ主務大臣之ヲ定ムトア
リマスカラ、此ノ規定ニ依ッテ必ズシモ一萬
圓ト決ッタノデハナイ、適當ニ按配スルト云
フヤウナ說明ガ、政府側カラアッタヤウデア
リマスケレドモ、是モ見樣ニ依ッテハ甚ダ心
配ナノデアリマス、法律ニ一千倍ト書イテ
ナイノデアリマスカラ、大藏大臣ガ二千倍
ニモスル、必要ヲ認メレバ三千倍ニモスル、
外國ニ流行ッテ居ルヤウナ巨額ノ割增金ヲ
附ケルト云フヤウナコトニナッテモ困ルノデ
アリマス、私ハ斯ウ云フ點ヲ實ニ心配ニ堪
ヘナイト思ッテ居ルノデアリマス、次ニ報國
債劵發行ノ目標ハヽ大藏大臣ノ御說明ニ依
リマスト、殷賑業ニ關係アル人々ノ懷ノ金
ヲ、無駄ニ使ハセズニ報國債劵ニ向ケヨウ
ト云フノデアリマスケレドモ、是ハ私ノ考
デハチヨット目的ヲ達シニクイコトデアルト
思フノデアリマス、今日軍需工業其ノ他殷
賑業ニ依ッテ金ヲ儲ケテ居リマス人ハ、現今
遊興シ、金ヲ浪費シテ居ル人デアリマシテ、
非常時ノ何モノタルコトヲ理解シナイ、持ッ
タコトノナイ金デアリマスカラ、ソレニ委
セテ有頂天ニ使ッテ居ル人々デアリマス、
是等ノ人々ニ報國債劵ヲ買ハセヨウトスレ
バ或者ハ一攫千金ヲ夢見テ遊興費ヲ得ヨ
ウトシテ買フ者モアリマセウ、ケレドモ大
藏大臣ノ仰シヤッタヤウニ、貯蓄ノ觀念ノア
ル人デハナイノデアリマス、是等ノ人々ノ
貯蓄心ヲ養成シヨウト致シマスニハ、報國
債劵ヲ買ハセヨウトシナイデ、却テ是等ノ
人々ニ對シテハ其ノ心ヲ矯正スル必要ガア
ルノデアリマス、別ニ勤儉力行ヲ爲スベキ
再〓育ヲシナケレバナラヌト思フノデアリ
マイ、宜シク各種ノ〓化〓體ノ人々ヲシテ
十分ニ講釋デモシテ聽カセマシテ、サウシ
テ勤儉力行、貯蓄心ヲ增進スルヤウニ御努
メニナルコトガ必要デアルト思フノデアリ
マス、ソレデアリマスカラ、大藏大臣ノ狙
ヒ所ハ、私ハ其ノ目的ヲ達シ得ラレナイデ
アラウト思フノデアリマス、第二ニ、右ノ
如ク浪費者ノ懷ハ當テニナラナイトシマス
ルト、報國債劵ト云フモノハ、買フ者ハド
ウ云フ者デアルカト云フト、一般大衆デア
ラウト思ヒマス、一般大衆ハ、比較的眞面
目ナ者ガ多イノデアリマスカラ、大〓郵便
貯金又ハ銀行預金ヲシテ居ルノデアリマス、
是等ノ人々ガ、政府ガ虎ノ子ノヤウニシテ
居ル郵便貯金若シクハ銀行預金、又ハ貯蓄
債劵ヲ賣却シテ、サウシテ報國債劵ニ乘リ
換ハルト云フコトニナッテハ、何ニモナラヌ
コトニナリマス、詰リ割增金ダケ多イ方へ
替ッテ行キマスカラ、ソレデハ大藏大臣ノ
狙ッテ居ル資金吸收ノ目的ヲ達シ得ラレナ
イデアラウト思フノデアリマス、現ニ委員
會ニ於ケル御說明ヲ承リマスト、只今委員
長ノ御報告モアリマシタガ、此ノ報國債劵
ノ發行ト云フコトガ世ニ傳ハリマスト、貯
蓄債劵其ノ他ノ債券ハ一時下落シタト云フ
ノデアリマシテ、今後ハサウデモアルマイ、
ドウカナルダラウト云フコトデアリマスガ、
下落シタ、サウ云フ狀況ニナッテ居ルノデ
アリマスカラ、零細ノ資金ヲ吸收スルト云
フニハ、他ニ適當ノ財政策ヲ御考ニナラナ
ケレバナラヌノデアラウト思ヒマス、次
ニ申上ゲルノハ、政府ハ、失禮デアリマス
ケレドモ、臨時資金調整ニ熱中シテ、國
民思想ニ如何ナル影響ヲ及スカト云フコト
ヲ、一向御觀察ニナッテ居ナイノデアリマ
ス、諺ニ鹿ヲ追フ者山ヲ見ズ、利ヲ摑ム者
人ヲ見ズト云フコトガアリマスガ、報國債
劵發行ニ急ナルガ餘リ、我ガ國民タル者ハ
古來如何ナル傳統ヲ有シテ居ッタカ、又現
時ニ於テ國民ハドウ云フ思想ノ動向デアル
カト云フコトヲ、毫モ御〓究ニナッテ居ラナ
イノデアリマス、報國債劵ノ發行ヲシヨウ
トスルニハ、政ヲ爲ス者ハ斯ウ云フ點ヲ能
ク御考ヲ願ヒタイト思フノデアリマス、私
ハ徒ニ政府ヲ攻擊スル爲ニ申スノデハアリ
マヌセガ、兎ニ角實ニムヅカシイ此ノ非常
ナル時局ヲ御擔當ニナッテ居ル其ノ御勞苦
ハ御察シ申上ゲマスガ、併シ當議場ナリ其
ノ他ノ場所ニ於テ總理大臣首メ各大臣ガ國
民精神作興ニ付テ御話ニナッテ居ル事柄ハ、
明カニ此ノ報國債劵ト云フコトト矛盾シテ
居ルト私ハ思フノデアリマス、割增金ノ多
イ債劵ヲ發行シテ、サウシテ國民ノ思想ガ
ドウナルカト云フコトヲ御考ニナラナイデ
ハ、如何ニ國民精神ヲ昂揚スルトカ、作興
スルトカ仰シヤッテモ、ソレハ效能ガナカラ
ウト思フノデアリマス、富籤ト云フコトハ
一體普通ノ御方·······ト言ッテハ失禮デアリマ
スケレドモ、極ク簡單ニ考ヘテ居ル方ガ多
イノデアリマス、是ハ人ノ物ヲ盜ンダリ人
ヲ詐欺シテ金ヲ取ッタリスルノト違ッテ、自
分ノ金ヲ損スルノデアリマスカラ、之ヲ取
締ル必要ハナイト云フヤウニモ言ヘルノデ
アリマス、併シナガラ大局カラ見マスルト、
此ノ富籤興行ト云フコトハ、國民ノ善良ナ
ル風俗ヲ害シ、弊害ノ甚ダシキモノデアリ
マスカラ、個人ノ利害關係ノ上ニハ國家ガ
干涉スベキコトデハナイノデアリマスケレ
ドモ、何處ノ國デモ相當ノ規定ヲ設ケテ、
日本ハ殊ニ嚴重ニシテ居ルノデアリマス
ソレデアリマスカラ、現ニ勸業債劵ナド發
行サレテ居リマスケレドモ其ノ他ノ富籤
類似ノコト、法律デ規定シテアル富籤類似
ノコト以外ハ政府ハ禁止シ、又ハ制限スル
コトニナッテ居ル、內務省令ニ明カニ規定ガ
アリマス、是ハ皆サンモ御承知ノ通リ、緣
日デ妙ナ富籤類似ノ事ヲスルコトヲ禁ジラ
L、福引ニ於テ金ヲ多ク出スト云フコトモ
禁ゼラレ、大分內務省ハ各地方ニ於テ取締
ヲ厲行シテ居リマス、ソレトモ矛盾スル譯
デス、斯ウ云フヤウニ富籤類似ノモノハ法
律ガ禁ズル主義デ以テ内務省合ガ現ニ存在
シテ居ル以上ハ、成ルベク斯ウ云フコトハ
御ヤリニナラヌガ宜シイ、政治家トシテハ、
斯ウ云フコトヲ御ヤリニナルト云フコトハ
餘程御考ヲ願ヒタイノデアリマス、富籤類
似ノモノデアッテモ弊害ノ多イコトハ、是ハ
前會私ガ申述ベマシタ通リ、我ガ國デハ昔
カラ弊害ガヒドカッタノデアリマス、德川時
代ノ色々ナ本ヲ讀ンデ見マスト、富籤ニ當ツ
タ者ハ富籤デ逃ゲ出スト云フ者ガアル、ド
ウ云フ譯カト云フト、當リマスト近所ノ者
ガ御祝ヒニ來ル、御馳走ヲシテ吳レ、金ヲ
ネダリニ來ル、當ッタ爲ニ却テ困ル、斯ウ云
フ風ナ例モアルノデアリマシテ、是ハ德川
時代ノコトカト思ッテ居マスト、私ハ職務上
知ッテ居ル、事實ニ於テハ臺灣彩票ノ內地ニ於
テ行ハレタ時モ「マニラ」ノ彩票ガ行ハレタ
時モ、斯ウ云フ類似ノ例ガアルノデアリマ
ス、當ッテ却テ人カラネダラレルト云フコト
ガアルノデアリマシテ、善良ナル風俗ヲ害
スルコトハ私ガ喋々ト申上ゲル必要ハナイ
程ヒドイノデアリマス、之ヲ要スルニ、何
レノ方面ヨリ考ヘマシテモ報國債劵ヲ認メ
ルト云フコトハ、我ガ國古來ノ醇風美俗ヲ
傷ツケルコトデアリ、今ヤ非常時ニ於テ國
民ガ各自緊張シ、勤儉力行シテ、銃後ノ護リ
ヲ全ウスベキ時ニ當リマシテ、大藏大臣ノ
御認ニナッテ居ルヤウナ、遊興スル者、浪費
スル者、其ノ者ヲ目標ニシテ貯蓄心ヲ增進
セシムル爲ニ發行スルノダト云フノデハ
是ハ却テ逆效果ヲ呈スルモノト信ズルノデ
アリマス、況ヤ畏多イコトデアリマスガ、
過日申上ゲマシタ明治四十一年ノ戌申詔書、
昨年五月靑少年ニ賜リマシタ御勅語ヲ拜シ
マシテ、聖旨ヲ克ク奉體致シマスルト、是
ハドウシテモ報國債券發行ト云フコトニハ
躊躇シナケレバナラナイノデアリマス
終ニ臨ンデ一ツ附加シテ申上ゲタイノハ
本年ハ紀元、二六六百年ヲ奉祝スル年デアリ
やく、本年一箇年間ハ我々國民ハ敬神ノ信
念ニ燃エツヽ、肇國ノ御精神タル皇孫正シ
キヲ養ヒ給ヒシ訓ヲ奉戴致シマシテ、全國
民ヲ擧ゲテ敬虔ノ念ヲ以テ一箇年間ヲ過ゴ
シタイト考ヘテ居ルノデアリマス、是コソ
眞ニ紀元二千六百年ヲ奉祝スル意味デアリ
マセウ、我々モ及バズナガラ靑少年ノ指揮
又ハ〓化ニハ力ヲ盡シテ居ルノデアリマス
ガ、此ノ報國債劵ガ發行セラレルト云フコ
トニナリマスト、一度其ノコトガ世間ニ傳
ハリマスト、必ズ全國ヲ擧ゲテ津々浦々迄、
一萬圓摑マウト云フ信念ガ發生スルダラウ
ト思フノデアリマス、我ガ國民ハ良イ所モ
アリマスガ、遺憾ナガラ輕佻ナル點モアル
ノデアリマス、一萬圓ノ金ヲ得ヨウトシ、
熱中シ、狂奔スル癖ガアリマス、初メテ一
萬圓取レルノデアリマスカラ、報國債劵發
行ノ當時ニ必ズ騷ギ、ト言ッテハ語弊ガアル
カモ知レマセヌガ、兎ニ角混雜ヲ生ズルデ
アリマセウ、富籤ノ日ノ又混雜モアリマセ
ウ、當ッタ者ノ喜ビ、當ラナイ者ノ失望、サ
ウ云フコトヲ併セテ考ヘマスト、今後一箇
年ノ後、又下半期ナドハ、マルデ二千六百
年ヲ奉祝スベキ敬虔ノ念ハ國民ノ間ニ蹂躪
セラレ、信念ヲ傷ツケルト云フコトニナル
コトヲ私ハ憂フルノデアリマス、是ハ私ガ
衷心憂慮ニ堪ヘナイ所デアルト思ッテ居ルノ
デアリマス、以上述ベマシタヤウナ譯デア
リマシテ、報國債劵ノ御發行ト云フコトハ
幾多ノ疑義ガアル、國民ノ思想ニ影響ノ大
ナルモノデアリマスカラ、政府ハ、各大臣
ニ於テ十分ニ御〓究ニナリ、割增金ハ如何
ニスベキカ、又改正スベキモノガアレバ適
當ナル改正ヲ加ヘテ、サウシテ更ニ御提案
ニナルト云フコトガ、私ハ、賢明デアル、
政治家トシテ最モ賢明デアルト信ジテ居ル
ノデアリマス、此ノ理由ヲ以テ、遺憾ナガ
ラ報國債劵發行ノ規定ニ付テハ私ハ贊成ヲ
スルコトガ出來ナイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=6
-
007・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 他ニ御發言モナ
ケレバ、是ヨリ採決ヲ致シマス、本案ノ第
二讀會ヲ開クコトニ同意ノ諸君ノ起立ヲ願
ヒマス
〔起立者多數〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=7
-
008・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 過半數ト認メマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=8
-
009・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=9
-
010・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=10
-
011・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=11
-
012・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=12
-
013・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナケレバ、全部ヲ問
題ニ供シマス、本案全部、委員長ノ報告通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=13
-
014・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=14
-
015・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=15
-
016・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=16
-
017・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=17
-
018・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=18
-
019・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第三讀會
ヲ開キマス、本案全部、第二讀會ノ決議通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=19
-
020・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=20
-
021・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 次ニ昭和十五年
度一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲公債追加
發行ニ關スル法律案及支那事變ニ關スル一
時賜金トシテ交付スル爲公債發行ニ關スル
法律案ノ、兩案ニ付採決ヲ致シマス
〔男爵阪谷芳郞君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=21
-
022・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 阪谷男爵ハ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=22
-
023・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 チヨット政府ニ質問ヲ
致シタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=23
-
024・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 宜シウゴザイマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=24
-
025・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 今ノ委員長ノ報〓ニ依
リマスト、此ノ第二ノ公債追加發行ノ件ハ、
電力國策會社ニ補給スル二千三百萬圓ノ財
源ニ充ツルノデアルト云フ御說明デアッタ
ヤウニ聽キ取リマシタ、果シテ左樣デアル
ナラバ、此ノ歲出ノ豫算ハ既ニ成立シテ居
ルノデアリマスカ、一應承リタイ
〔政府委員木村正義君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=25
-
026・木村正義
○政府委員(木村正義君) 阪谷男爵ノ御質
疑ニ對シテ御答ヲ申上ゲマス、只今委員長
ノ報〓ノ中ニアリマシタ二千三百餘萬圓ノ
日本發送電會社ニ對スル補給金ハ別途提
出シテアリマス追加豫算、昭和十五年度ノ
追加豫算第二號ノ中ニ、遞信省所管トシテ
提出シテアルノデアリマス、只今審議中ト
存ジマスガ、サウ云フ關係ニ相成ッテ居ル
次第デアリマス、〔男爵阪谷芳郞君「成立シ
テ居ナイ」ト呼フ〕、提出シテアリマス、只今
貴族院ニ於テ豫算委員會ニ於テ御審議中デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=26
-
027・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 マダ豫算ガ成立シテ居
ラヌト云フコトデアルナラバ此ノ豫算ニ
付キマシテハ、政府ノ責任ハ重大デアル、
國民ハ一方ニ五億ノ增稅ヲ負擔スル際ニ、
政府ノ責任ニ依ッテ斯クノ如キ過大ナル補
給ヲシナケレバナラヌト云フコトハ、餘程
重大ナ問題デアリマシテ、定メシ歲出ノ方
デ相當議論ガアルコトト思ヒマス、若シ歲
出ノ方ノ豫算ガ、政府ノ責任ガ······說明ガ
明瞭デナカッタ場合ニ、不成立トナッタ時ニ
ハ、此ノ公債追加ハ政府ニ於テ使用シナイ
ト云フコトヲ明言シテ置カレナイト本員
ハ此處デ決ヲ採ルコトニ反對ヲ致シマス
〔政府委員木村正義君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=27
-
028・木村正義
○政府委員(木村正義君) 只今御尋ネノ點
ハ日本發送電會社ニ對スル補給金ノ問題
ハ實ハ法律ノ規定ニ基イテ政府ハ提案ヲ
致シテ居ル次第デアリマスガ、阪谷男爵ノ
御尋ノヤウニ、若シ豫算ニ於テソレガ削除
セラルヽト云フヤウナコトガアリマシタナ
ラバ是ハ當然其ノ範圍內ニ於テ公債ノ發
行ハ致サナイト、斯ウ云フ關係ニ相成ル次
第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=28
-
029・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 法律ノ結果デアルト云
フコトハ本員モ承知致シテ居リマスガ、何
分責任ガ重大ナ問題デアリマスカラ、ドウ
ナルカ分ラナイ、政府ニ向ッテ削除ヲ求メル
カモ分ラナイ、固ヨリ自由討議ニハ屬セヌ
ト思ヒマスガ、今大藏省ノ政府委員ノ言ハ
レタ通リニ、不用額トシテ置クト云フコト
デアレバ、此ノ際決ヲ御採リニナルコトニ
付テ異存ハアリマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=29
-
030・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御異議ガゴ
ザイマセヌケレバ兩案ノ第二讀會ヲ
開クコトニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=30
-
031・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=31
-
032・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ兩案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=32
-
033・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=33
-
034・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=34
-
035・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=35
-
036・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 兩案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナケレバ、全部ヲ問
題ニ供シマス、兩案全部、委員長ノ報告通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=36
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037・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=37
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038・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ兩案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=38
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039・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=39
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040・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕、発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=40
-
041・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=41
-
042・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 兩案ノ第三讀會
ヲ開キマス、兩案全部、第二讀會ノ決議通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=42
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043・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=43
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044・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第四、石炭
配給統制法案、政府提出、衆議院送付、第
一讀會ノ續、委員長報告、委員長溝口伯爵
石炭配給統制法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十五年三月二十五日
委員長伯爵溝口直亮
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔伯爵溝口直亮君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=44
-
045・溝口直亮
○伯爵溝口直亮君 只今ヨリ石炭配給統制
法案特別委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報告申
上ゲマス、本委員會ハ去ル二十二日設ケラ
レマシテ、同日直チニ委員長、副委員長ノ
選擧ヲ終リ、翌二十三日ヨリ昨二十五日迄
三囘開會致シマシタ、其ノ間先ヅ商工大臣
ノ說明ヲ伺ヒマシテ、次デ質疑應答ヲ續ケ、
二十五日ニ至リマシテ質疑ヲ終リ、次デ討
論ニ移リ、全會一致ヲ以テ本法案ヲ衆議院
ノ修正通リ可決致シマシタ、今是ヨリ商工
大臣ノ御說明及質疑應答中ノ主要ナルモノ
ヲ御報告申上ゲマス、詳細ハ追テ配付セラ
ルベキ速記錄ニ就テ御覽ヲ願ヒマス、尙委
員會聞會中祕密會トシ、又ハ速記ヲ中止シ
マシタコトガゴザイマシテ、其ノ內容ニ關
シマシテハ今玆ニ御報告申上ゲルコトヲ
得マセヌノヲ遺憾ト致シマスガ、其ノ間行
ハレマシタ質疑事項ハ大體石炭ノ資源及
ビ其ノ利用ノ實狀、石炭需給ノ實狀及ビ豫
想、炭坑ニ於ケル勞務關係等デアリマス、
又本委員會ニ於キマシテハ委員外ノ一議
員ガ特ニ出席シテ質疑セラレマシタコトガ
一件ゴザイマシタ、先ヅ商工大臣ガ本委員
會ニ於テ提案ノ理由ヲ說明セラレマシタコ
トヲ要約スレバ、次ノ通リダト考ヘマス、
最近各炭鑛ニ於ケル出炭ノ狀況ハ意ノ如ク
ナラズ、配給機構ノ不整備ト相俟チマシテ、
石炭ノ配給ノ圓滑ヲ缺キ、遂ニ昨年末ノ如
キ狀況ヲ呈シマシタ、其ノ原因ハ配給機構
ト炭價トノ問題ノ二ツニ分ッテ考ヘルコト
ガ出來マス、現在ノ配給機構ニテハ、指定
統制團體ガ澤山アル爲ニ、相互ノ連絡ヲ缺
キ、又團體員ニ對スル統制力モ十分ナラザ
ル憾ガアリマス、故ニ石炭消費規正ノ效果
ヲ確保シ、配給ノ圓滑ヲ期スル爲ニハ團
體ヲ一元化シ、一手デ配給ノ基本ヲ掌握ス
ベキ强力ナル統制力ガアル組織ヲ必要トシ
やく、次ニ現在石炭ノ增產ヲ妨ゲル最大ノ
要因ハ石炭ノ販賣價格ノ問題デアリマス、
併シナガラ今日直チニ石炭價格ノ一般的引上
ヲ認ムルコトハ、從ッテ諸物價ノ騰貴ヲ誘致
シ、現下ノ低物價政策ト背馳スル結果ヲ招來
スル虞ガアリマス、故ニ石炭ハ飽ク迄公定
價格制ヲ確立シ、極力炭價ノ昂騰ヲ抑制ス
ル必要ガアリマス、此ノ二ツノ要求ヲ同時
ニ調和スル爲ニハ、石炭ノ一手購入一手
販賣ヲ爲シ、指定中樞機關ヲ設ケ、之ヲ
心トシテㄱプール」平準價格制ノ運用ニ依ツ
テ解決スルヲ以テ最モ適切ナルモノト考ヘ
ル、本法案ハ實ハ以上ノ如キ趣旨ニ依ツテ立
案セラレタモノデアッテ、之ヲ要約スレバ要
項ガ七ツゴザイマス、第一ハ日本石炭株式
會社ヲ設立シテ石炭ノ一手買入及一手販賣
權ヲ賦與シ配給ノ中樞機關トスルコト、第
二一日本石炭株式會社ハ石炭ノ一手買入
及一手販賣ヲ爲スニ當ツテハ「プール」平準
價格制ノ運用ニ依リ、卽チ生產費ヲ基準ト
シタル適正價格ニ依リ買入レタル石炭ヲ、
公定價格ヲ以テ規格販賣セムトスルモノニ
シテ、之ニ依ッテ物價統制上ノ要求ト增產上
ノ要求トノ調和ヲ圖リ、尙其ノ他主トシテ
中小炭鑛ニ對シ、金融的援助ヲ行ヒ以テ積
極的增產ヲ圖ルコト、第三、本會社ハ其ノ
石炭ノ販賣ニ關シ、販、賣業者ニ對シ必要ナ
ル指示ヲ爲シ得ルコトトシ、配給ノ一元的
統制ノ確保ヲ圖ルコト、第四ハ、本會社ハ政
府ガ資本ノ半額ヲ出資スル特殊會社デアル
コト、第五、本會社ノ社債ノ募集ハ其ノ發行
限度ヲ拂込株金額ノ三割迄擴張シ資金調達
ヲ容易ナラシメタコト、第六、民間出資ニ對シ
利益配當確保ノ爲政府所有株ヲ後配株トセ
ルコト、第七、本會社ニ對シ政府ハ適當ナル指
導監督ヲ行フコトヲ得ル如ク規定セルコト、
以上ガ商工大臣ノ御說明ノ大要ヲ申上ゲタ
積リデゴザイマス、次ニ質疑應答ノ主要ナ
ルモノヲ申上ゲマスト此ノ御質疑ハ之
ヲ大別スレバ三類ニ區別スルコトガ出來ル
ト存ジマス、第一ハ石炭ノ增產及其ノ實施
方法ニ關スル事項、第二ハ石炭ノ配給ノ機
構及運營ニ關スル事項、第三ハ日本石炭株
式會社ノ組織及業務ニ關スル事項、此ノ三
ツニ分ツコトガ出來ルト存ジマス、之ニ對
シマシテ商工大臣及商工、農林、鐵道、厚
生ノ各省及企畫院ノ政府委員ガ御出席ニナ
リマシテ、極メテ懇切ニ答辯セラレマシタ
コトハ委員ノ多トスル所デゴザイマス、今
是ヨリ逐次其ノ質疑應答ノ大要ヲ申上ゲマ
ス、只今申上ゲマシタ第一類ニ屬スルモノ
ニ付キマシテハ、根本ハ主トシテ石炭增產
中殊ニ內地炭約六百萬「トン」增產ノ計畫
ニ對シマシテ、政府原案ノ如ク石炭增產獎
勵金、新坑開發助成金、石炭買取價格補償金
ト云フ此ノ三ツヲ以テ增產ヲ實行シテ行カウ
ト云フノデ、是ガ果シテ此ノ方法ニ依ッテ其
ノ目的ヲ達成シ得ルヤト云フコトノ不安ガ
根本トナッテ、數多ノ質問ガ發セラレマシタノ
デゴザイマス、先ヅ之ヲ御考ニ置イテ居テ戴
キタイト存ジマス、逐次其ノ質疑應答ノ主
ナルモノヲ申上ゲマスト、第ハ、增產ノ
爲ニ斯クノ如キ色々ナル方法ヲ設ケズニ
石炭ノ價格ヲ引上ゲルガ最モ手ッ取リ早ク、
而モ最モ有效デアリハシナイカ、ト云フ御
問ニ對シマシテ、政府ハ、石炭ト云フモノ
ハ總テノ工業其ノ他ノ根幹ヲ成スモノデア
ルカラシテ、此ノ價格ヲ引上ゲレバ、從ッテ
諸種ノ價格ノ引上ゲヲ誘致シテ來ル、今聖
戰遂行ノ爲ニハ財政及經濟上ノ主要ナルコ
トハ低物價政策ヲ堅持スルコトデアル、然
ルニ石炭ノ價格ヲ上ゲルト、動モスレバ此
ノ低物價政策ヲ壞スヤウニナッテ、到底是ハ
現今ノ狀態ニ於テ行ヘルコトデハナイ、ソ
レ故ニ各種ノ增產奬勵金、助成金、補償金
等ヲ以テ增產ニ差支ナイヤウニシ、且ソレ
ニ加フルニ本會社ニ依ル「プール」平準價格
制ノ運用ニ依ッテ目的ヲ達成スル外ハナイ、
之ヲ以テ十分達成出來ル考ヘデアル一一夫
員ヨリシテ、現ニ昨年突如トシテ米價ヲ五
圓引上ゲタ、然ラバ石炭ヲ引上ゲテモ場合
ニ依ッテハ差支ナイノデハナイカト云フ御
問ニ對シマシテハ、政府ハ、我ガ國ノ諸物
價ハ米價ガ基準トナッテ居ルカラシテ、米價
ノ高低ハ諸物價及勞銀ノ高低ヲ招來スルコ
トハ否メナイ、併シナガラ此ノ諸物價及勞
銀ガ續イテ上ルト云フコトモ、現今ノ如キ
統制時代ニ於テハ、自由經濟時代ノ如ク、
直チニ追隨スルモノデハナイ、其ノ上ニ米
價ノ引上ト云フコトハ單ニ物價政策ノミ
ナラズ、諸種ノ復雜ナル關係カラシテ已ム
ヲ得ズ是ハ行ッタモノデアッテ、ドウモ之ヲ
以テ炭價ノ引上ト云フモノヲ行フ標準ニハ
ナラナイ、飽ク迄モ政府ハ低物價政策ヲ堅
持スル積リデアルカラシテ、炭價ノ引上ト
云フコトハ同意出來ズ、尙飽ク迄モ補助政
策竝ニ「プール」平準價格制ノ運用ニ依ッテヤ
ルヨリ他ハナイ、次ニ一委員ヨリシテ、石
炭增產ノ助成金ニ付テ、此ノ助成金ト云フ
モノガ、殊ニ新坑開發助成金ニ於テハ、額
ガ少額ニ失シテ、十分ナル目的ヲ達シナイ
ノデハナカラウカ、卽チ坑道掘進ノ助成金
ト云フモノハ、約一「メートル」ニ付テ三十
五圓バカリデ、是ハ政府ノ言明ニ依リマス
ト、實際ノ價格ノ約三分ノ一ヲ助成スル積
リデアルト云フ御答辯デゴザイマシタガ、如
何ニモ諸物價其ノ他勞銀モ總テ〓騰シテ居
ル今日ニ於テ、此ノ位ノ助成金デハ如何ニ
モ少イ、十分ノ目的ハ達成セラレナイノデ
ハナイカト云フ御問ニ對シマシテ、政府ハ
先ヅ此ノ程度ノ助成ヲシタナラバ出來ルダ
ラウト思フト云フ御答辯デアリマシタ、一一夫
員ヨリシテ、石炭ノ增產ガ思フヤウニ行カ
ズ、殊ニ足リナイト云フヤウナ聲ヲ聞クノハ、
或ハ出炭業者ニ於テ賣惜ミヲシタノデハナ
カラウカ、米ニ於テ例ガアルガ如ク、將來
値上リヲ見越シテ隱匿ヲシテ居ルノデハナ
カラウカト云フ御問ニ對シマシテ、政府ハ、
石炭ト云フモノハ貯炭ノ隱匿ハ非常ニ困難
デアルカラシテ、能ク噂ニハアルガ、賣惜ミ
ト云フコトハ大シテナカラウト思フ殊
ニ今囘本法案ガ通過シテ一元的ノ配給ニナ
レバ其ノ憂ト云フモノハ殆ドナクナルト
云フ御答デアリマシタ、次ニ一委員ヨリシ
テ石炭ノ品質ニ關スル問題ニ付テ御質問
ガゴザイマシタ、卽チ增產ヲ無理ニシヨウ
トスルト、ドウモ石炭ノ品質ガ惡クナル、
殊ニ今囘ノ石炭增產獎勵金ト云フヤウナモ
ノニハ、增產分ニ對スル「トン」當ノ奬勵金ガ
出ルノデ、無理ニ目方ヲ餘計出セト云フコ
トニナッテ、品質ノ惡イ物ヲ出スヤウニナリ
ハシナイカ、若シ斯クノ如キ情勢ニナッテ來
タナラバ、石炭ハ相當出タ所デ實際ノ效力
ト云フモノハソレ程ナイ、何トカシテ良質
ノ石炭ヲ十分ニ出スト云フコトニ付テ政府
ハ御骨折リニナラナクチヤナラヌト思フ
ガ、政府ノ所見ハ如何デアルカト云フ御問
ニ對シマシテ
(副議長候爵佐佐木行忠君議長席ニ著
乞
政府當局ヨリ、將來ハ各石炭山ニ付テ責任
ノ「カロリー」ヲ一定シテ之ヲ保證シテ、昭
和十三年以前ト同ジ位ナ炭質ノモノヲ出サ
スヤウニ十分努メル、現在ニ於テハ四千
「カロリー」以下ノ石炭ガ約二十萬「トン」モ
アル、尙「ボタ」ノ混入ヲシテ居ルモノガ四
五十萬「トン」位ハアルダラウ、斯クノ如キ
モノハ一掃シマシテ、將來ノ標準トシマシ
テハ九州及ビ北海道炭ハ最低量四干, 3位
リー」、常磐炭及ビ宇部炭ノ如キモ最低三千
乃至三千五百「カロリー」以上ノモノトスル
コトニ十分努力シヨウト云フコトデアリマ
シタ、次ニ一委員ヨリシテ石炭ノ勞働者及
ビ勞働條件ニ付テノ御質問ガゴザイマシ
タ卽チ勞働者一人ノ出炭額ガ、或年度迄
ハ上ッテ來マシタガ、ソレヨリズット低下シ
テ、今ハ最高カラ見ルト餘程低下シテ居ル、
是ハ諸種ノ原因ガアル、例ヘバ熟練勞働者
ガ應召サレテ戰地へ行ッテ居ルト云フコト
モアリ、又未熟勞働者及ビ婦人勞働者等ノ
入坑モ原因シテ居リマセウガ、其ノ他ドウ
モ勞働者ノ覺悟ト申シマスカ、詰リ時局ニ
於ケル認識等ニ於テ缺クル所ハナカラウ
カ、又勞働條件ニ於テ、勞働時間等モ餘リ
ニ制限サレルト却テ是ハ出炭ガ少クナルカ
ラシテ、何トカ此ノ際、重大ナル時期デア
ルカラシテ、餘リ理想ニ趨ラズニ十分ヤラ
シテハドウカ、現ニ重工業及ビ軍需工業方
面ニ於テハ多ク請負仕事デヤッテ居リマスカ
ラシテ、其ノ收入ト云フモノハ隨分大キイ、
是ハ坑內作業ニ於テ無暗ニ時間等ヲ制限サ
レルト、唯サヘ坑內ノ作業ト云フモノハ
地上ノ作業ヨリ嫌ガルモノデアルカラシテ、
益〓勞勞者ノ獲得ニモ困難デアラウ、後藤
出炭量モ思フヤウニ行カナイト云フノガ當
リ前デアルカラシテ、此ノ點ニ於テ政府ハ
如何ニ御考ニナッテ居ルカト云フコトニ付テ
御質問ガゴザイマシタガ、政府當局ヨリハ
勞働者ノ精神的覺悟、卽チ此ノ聖戰下ニ於
ケル銃後ノ務メヲ十分ニスルト云フコトニ
付テハ出來ルダケ骨ヲ折ッテヤッテ居ル、又
勞働時間ニ付テハ或程度以上延シテモ却テ
ソレハ結果ハ面白クナイ、ドウシテモ或
「カーヴ」ガアッテ其ノ頂上迄行クト、後ハ
時間ヲ殖シテモ十分デナク、却テ下ルヤウ
ニナッテ來ルカラシテ、ソコ迄ノ所ハ是非
ヤラス積リデアルガ、ソレカラ先キハ無暗
ニ時間ヲ延シタッテ效力ハナイ、ソレニ付
テ十分〓究シテ居ル、次ニ一委員ヨリ
シテ石炭增產ト云フコトヲ頻リニ仰ッシヤ
ルガ、增產ノミナラズ石炭ノ消費ノ節約ニ
付テモ御考ニナッタラドウダラウカト云フ
コトニ付テ御質問ガアリマシタ、政府當局
ハ之ニ關シマシテハ完全燃燒ノ〓究
及ビ指導等ニ付テ全力ヲ盡シテ居ル、可ナ
リ今迄ハ效果ハ擧ッテ居ル積リデアルガ、
將來ハ之ヲ益〓實行スル積リデアル、ソレカ
ラ一委員ヨリシテ、石炭增產ニ付テ只今政
府ガ頻リニ御計畫ニナリソレニ其ノ實施
ヲサレルニ當リマシテ、各省ノ各機關ノ連
絡ト云フモノガ十分デナケレバ、折角之ヲ
ナンコーモ效果ハ少イ、殊ニ例ヘバ物資ノ配
給デアルトカ、人員ノ充足デアルトカ若
シハ鐵道ノ諸機關ノ運轉デアルトカ云フコ
トガ餘程ガッチリ行カナイト、思フヤウナ
增產ハ出來ナイノデハナカラウカ、之ニ付
テ政府ハドウ御考ニナルカト云フコトニ付
テ、政府當局ハ、企畫院ヲ中心ニシテ、目
下之ニ關シテ十分實施シ、尙將來ニ付テ出
來ルダケノコトヲ考究シ實行スル積リデア
ル次ニ一委員ヨリシテ、唯今ノコトニ關
聯致シマシテ、鐵道ノ諸施設ヲ願ヒ出ルト
如何ニモソレガ暇ガ掛ル、數箇月ハ早イ方
デ、場合ニ依ルト半年以上モ掛ルコトガア
ルガ、斯クノ如キハ石炭增產ニ非常ナル障
碍ヲ與ヘルモノデアルガドウデアルカト云
フコトニ對シテ、政府當局ハ元來鐵道ニ
於ケル工事ト云フモノハ其ノ實施ニ當ッテ
今迄餘リ愼重デ、且之ヲ經濟的ニ實行シヨ
ウトスルガ爲ニ、之ニ囚ハレテ時期ヲ失ス
ル虞ガアッタト云フコトハ認メザルヲ得ナイ、
將來ハ之ヲ十分改善シテ、場合ニ依レバ經
濟的ノ要求ハ二ノ次ギニシテモ、時期ヲ早
メテ之ヲ實行シヨウト云フ御答辯デゴザイ
マシタ、次ニ一委員ヨリシテ、石炭增產ノ
主力ヲ商工省ニ於テ內地炭ニ置カレルヤウ
ニ御話ニナリマスガ、內地炭ハ旣ニ可ナリ
年ヲ取ッテ居テ、一番有效ナル場所ノ開發ト
云フモノハ殆ド行ハレテ居ルノデ、將來ノ
增產ニ於テ餘リ大ナル期待ヲ懸ケルコトガ
出來ナイノデハナカラウカ、寧ロ其ノ主力
ヲ內地炭ニ置カズシテ樺太炭若クハ滿洲北
支ノ輸入炭ノ增加ニ依ル方ガ宜クハナカラ
ウカト云フ御質問ニ對シマシテ政府當局
ヨリハ、誠ニ是ハ御尤ナコトデハアルガ、樺
太炭モ勿論增產ヲ十分スル積リデアルガ、
是ハ今商工省ノ所管ニハ入ッテ居リマセヌ
カラ、商工省所管ニ於テ出來ルダケノ增產
ヲ計畫シテ、內地炭ヲ六百萬ㄱトン」ノ增產計
畫ヲ立テタノデアル、又滿洲殊ニ北支ノ輸
入炭ニ付テハ一委員ヨリ、山西炭ノ貯藏
量ト云フコトハ是ハ問題ニナラヌ程大キナ
モノデアッテ、世界的ニ知ラレテ居ル所デア
ルコトデハアルガ、ソレヲ如何ニシテ內地
ニ持ッテ來ルカト云フコトガ主ナル問題デ
アルカラシテ、北支ニ於ケル鐵道連絡及ビ
港灣トノ關係ヲ餘程調査シテ、最モ都合ノ
好イ而モ最モ經濟的ニ持ッテ來ラレルコト
ニ付テ十分ニ御〓究ガアリタイト云フコト
ニ對シテ、政府ハ是ハ出來ルダケ將來〓
究シテ、ソレ等ノ點ニ付テ遺憾ナイヤウニ
シタイト云フ御答辯ガゴザイマシタ、以上
ガ大約石炭增產ニ關スル御質問ノ主ナル點
デゴザイマス、次ニ石炭ノ配給ニ關シマスル
御質問ハ、是モ亦根本ノ問題ト致シマシテ
ハ、本機構ニ依ッテ配給ガ果シテ圓滿確實ニ
實施サレ得ルヤ否ヤト云フ不安ガ根本ノ疑
點トナッテ居ルノデゴザイマス、之ニ關シマ
シテ數多ノ質問ガ試ミラレマシタノデゴザ
イマスガ、先ヅ其ノ主要ナルモノヲ申上ゲヨ
ウト存ジマス、一委員ヨリシテ、是ハ本法案
ノ如キ特殊會社ヲ設ケズニ自治統制デ進ム
方ガ宜インヂヤナイカト云フ御問ニ對シマ
シテ、政府當局ハ、民間ノ自治統制ニ依ッテハ
此ノ目的ヲ達成スルコトハ出來ナイト思フ、
殊ニ現在ノ如キ聖戰遂行下ハ勿論ノコト、假
令之ガ終局ヲ見マシテモ直チニ自由經濟時代
ガ來ルモノトハ思ッテ居ナイ、、寧ロ益〓經濟强〓
化ノ經濟機構トナルモノト見ルノ外ハナイ、
卽チ自治統制デハ到底此ノ目的ヲ達スルコ
トハ出來ナイト云フ御答辯デゴザイマシタ、
次ニ一委員ヨリシテ、石炭受渡ノ方法ニ付
テ御質問ガゴザイマシタ是ハ政府當局
ハ、總テ從來ノ慣行ヲ尊重シテ成ルベク摩
擦ノ生ジナイヤウニヤッテ行カウト云フコト
デゴザイマシタ、次ニ一委員ヨリシテ、前
ト同樣ニ石炭ノ配給ニ付テハ殊ニ各省ノ連
絡ヲ必要トスルノデアルガ是ガウマク行
カナケレバ、折角炭ガ山カラ出テモ必要ナ
所ニハ配給サレナイト云フコトニナルガ、
此ノ點ニ付テ政府ハ如何ニ御考ニナッテ居
ルカ、一例トシテ昨年初頭ニ於テ、小樽ニ
炭ハ可ナリ積マレ且之ヲ運送スル貨物船
ト云フモノハ十數艘モ港内ニ入ッテ居リマ
シタガ、奈何セム積込ノ設備其ノ他ガ十分
デナイ爲ニ、多少天候ノ關係ハアリマシタ
ガ、船ガ暫クノ間、立往生スルト云フヤウ
ナ有樣デアッテ、是等ノ連絡ト云フモノガ餘
程ウマク行カナケレバ實效ヲ收メルコトハ
出來ヌ、殊ニ昨年末ニ於テ石炭ノ問題ノ勃
發シタ時ニ、商工省、鐵道省及ビ陸海軍其
ノ他ニ於テ一種ノ委員的ノモノヲ作ッテ、
各地ニ於テ能ク協議ヲシテ此ノ配給ノ圓滑
ヲ圖ッタ、是ハ誠ニ結構ナコトデアルガ、將
來是等ニ付テ政府ハ如何ニナサル御考デア
ルカト云フ御問ニ對シマシテ、政府當局ハ、
將來各省ノ間ノ連絡ト云フモノハ益〓之ヲ强
化シテ萬遺憾ノナイヤウニ一ツヤッテ行ク積
リデアルト云フ御答デゴザイマシタ、ソレ
カラ次ニ一委員ヨリシテ、此ノ機構ノ變換
ニ關シマシテ、過渡期ニ於テ生產ノ減退及
ビ配給ノ困難等ヲ招來スルノデハナカラウ
カト云フ御問ニ對シ、政府當局ハ、一元的
統制ヲ行フモ、各地方ニ於ケル配給機關ハ
現制ノモノヲ其ノ儘使用シテ、之ガ大變革
ヲナスモノデナイカラシテ、其ノ影響ハ大
シテヒドクナイト思フ、斯ウ云フ御答デゴ
ザイマシタ、以上ガ大體配給ニ關スル質問
應答ノ主ナルモノデゴザイマス、次ニ第三
類ニ屬スルモノ、卽チ日本石炭株式會社自
體ノ問題デゴザイマス、之ニ關スル御質問
ハ是亦根本ト致シマシテハ是迄ノ國策
會社ニ於テ種々ナル不便ダトカ或ハ不始末
ヲ起シタ場合ガアルコトニ鑑ミマシテ、此
ノ會社ガ事業ヲ遂行スルニ果シテ支障ガナ
イカ否ヤト云フコトノ不安ガ根本トナッテ、
質問ガ發セラレマシタ次第デアリマス、今
其ノ主要ナルモノヲ申上ゲマスレバ、第
ハ、日本石炭株式會社ノ役員ノ機構及ビ其
ノ運用等ニ關シマシテ、政府ハ今迄ノ國策
會社ノ不出來ニ鑑ミテドウ云フ風ニナサル
御積リデアルカト云フ質問ニ對シマシテ
當局ハ本會社ハ一面重要ナル國策ヲ遂行
スベキ所謂國策會社デアルケレドモ、其ノ
事業ヨリ見レバ、純然タル事業會社デナケ
レバナラナイ、從ッテ其ノ成績ノ果シテ擧
ルヤ否ヤト云フコトハ、繫ッテ會社ニ於ケル
役員ノ人的素質ニ在ルコトハ勿論デアル、
從ッテ之ヲ選ブ爲ニハ、產業上十分ナル經驗
ガアリ、人格ノ高イ人ヲ選ンデ、之ニ委シ
テ機構ヲ整ヘサセル考デアル、政府ハ株ノ
半數ヲ持チ、且此ノ法案ニ依ッテ監督ヲ行フ
コトヲ以テ滿足シテ、無用ノ干涉ハシナイ
積リデアル、殊ニ本會社ノ役員ノ如キモ、
若シ會社ニ於テ政府トノ連絡トカ其ノ他ノ
必要ヨリシテ出シテ吳レロト云フ請求ガア
レーハ或ハ平取締役トカ又ハ監査役グライ
ハ官吏ヲシテ居タ人ヲ入レルカモ知レナイ
ガ、決シテ政府ニ於テ此ノ役員ヲ壟斷シ、
ソレニ依ッテ業務ヲ行ッテ行カウト云フ考ヘ
ハ毛頭ナイ、此ノ會社ハ飽ク迄モ純然タル
事業會社トシテ經營セシメル考デアルト云
フ御答辯デゴザイマシタ、次ニ一委員ヨリ
シテ、此ノ會社ノ設立ノ時期及ビ過渡的ノ
對策ハ如何デアルカト云フ御質問ニ對シマ
シテ、本會社ハ本年七月ニ設定シ、其ノ後
諸準備ニ三四箇月ヲ要スル積リデアル過
渡期ニ於ケル配給及ビ之ガ準備ニ付テハ
今ヨリ萬全ヲ期シテヤル積リデアル次ヘ
一委員ヨリシテ、本法案ノ第十四條第二項
ト、同條第一項第五號ノ意味ニ付テノ御質
問ガゴザイマシタ、卽チ第十四條ノ第五號ト
云フノハ「其ノ他石炭ノ需給ノ圓滑及價格
ノ公正ヲ圖ル爲必要ナル事業」ト云フノデ、
ソレガ第二項ニ於テ「主務大臣ノ認可ヲ受ク
ベシ」ト云フ認可事項ニナッテ居ル、然ルニ此
ノ會社ノ主要ナル目的ト云フモノハ、石炭ノ
需給ノ圓滑及ビ價格ノ公正ヲ圖ルト云フガ
根本ニナル、殆ド此ノ根本ナルモノガドウ
モ認可事項ニナルノハドウ云フ譯デアルカ
ト云フ御質問ニ對シ、政府ヨリシテ此ノ第
五號メ意味味、「其ノ他」ト云フノハ一
元的統制ヲ行フ場合ニハ貯炭場トカ積
込設備トカ荷揚ノ設備トカ艀舟其ノ他ノ
諸設備モ、場合ニ依ッテハ此ノ會社デ
ヤラナケレバナラヌカモ知レナイ、
之ガ爲ニハ數萬圓デ濟ムモノモアラウシ、
或ハ數百萬圓數千萬圓ヲ要スル設備ガアル
カモ知レナイ、是等ノコトヲ會社デヤル場
合ニハ、致府ノ認可ヲ受ケルノガ至當デア
ルト思ッテ此ノ條ヲ設ケタンダト、斯ウ云フ
御答辯デアリマシタ、以上申上ゲタ所ガ質
疑應答ノ大要デアリマス、斯クノ如キ質疑
應答ヲ終リマシタル後、討論ニ移リマシテ、
一委員ヨリシテ、本案ニハ贊成スル、併シ
日本石炭株式會社ハ其ノ經營及ビ運用ガ若
シ宜シキヲ得ザル時ハ、却テ石炭配給ノ混
亂ヲ來シ、其ノ需給ニ重大ナル惡影響ヲ及
スノ憂ナシトセズ、政府ニ於カレテハ此ノ
點ニ留意シ、旣設國策會社ノ成績ヲモ顧慮
シハ日本石炭會社ノ經營及ビ運用ニ付特ニ
十分ノ注意ヲ加ヘ、萬遺憾ナキヲ期セラル
ルコトヲ望ム旨ヲ述べラレマシタ、次ニ他
ノ一委員ヨリシテ、昨年末ヨリノ石炭問題
ハ、幸ニ當局ノ努力ニ依ッテ消解シ事ナキニ
至リマシタ、此ノ際此ノ法案ヲ提出サレマ
シタ故ニ、本案ノ趣旨モ政府ノ努力ニ依ッテ
所期ノ目的ヲ達成シ得ベキモノト確信致シ
やっ、ガ若シ萬一ニモ然ラザル場合ニ於テ
ハ由々シキ大事トナッテ、延イテハ產業界全
般ニ大事ヲ生ジナイトモ限ラナイ、ソレ故
ニ政府ハ之ガ爲十分ニ考慮サレマシテ、能
ク專門家ヲ簡拔シテ、之ニ會社ノ運營ヲ一
任セムトサレルト云フ此ノ政府ノ言明ニ信
賴シ、其ノ成績ヲ期待シヨウト思フ者デア
リマス、又石炭增產ニ付テハ、各省ニ於テ
協力シテ、優先的ニ人的物的ノ諸資材ヲ供
給シ、之ガ效果ヲ確保セムトスル努力ニ
是亦信賴セムトスル者デアリマス、殊ニ政
府ハ物心兩方面ヨリ招來スル所ノ闇相場、
卽チ純然タル闇相場若シクハ實際ニ於テ數
量價格ハ同ジデモ品質ヲ下ゲル所ノ惡質
ノ闇相場、是等ノ總テノモノノ根絕ヲ確實
ニ斷行サレムコトヲ希望シマス、此ノ闇相
場ナルモノハ實ニ聖戰下ニ於ケル最大恨
事デアッテ、之ガ絕滅ヲ期スル爲ニハ國民精
神ヲ高調シテ之ニ對處シ、以テ聖戰ノ認識
ト銃後ノ務メヲ覺悟シテ、之ヲ絕滅シナケ
レバナラナイト考ヘテ居ル、石炭配給ノ統
制ヲ爲スニ當ッテモ、當初ヨリ殊ニ此ノ點ニ
留意スルコトヲ望ム、尙本案ノ實施ニ當リ
テハ、其ノ準備ヲ周到敏速ニシ、殊ニ本年
冬期ニ於テ、昨年ノ冬期ニ於ケルガ如ク石
炭ノ不足ニ依ッテ產業ニ重大ナル支障ヲ及
シタガ如キコトノナイヤウニ、萬全ノ方策
ヲ立テテ、之ヲ確實ニ施行スルコトヲ期待
致シマス、又坑夫ノ採炭量ニ關シマシテモ、
其ノ勞働能力ト云フモノハ、單ニ物質的ノ
方面ノミナラズ、精神上ニ於テモ十分ナル
覺悟ヲ持ッテ、其ノ覺悟ヨリ生ズル所ノ力ヲ
以テ行ッタナラバ、ズット此ノ勞働能力モ殖
エテ來ルデアラウカラシテ其ノ成果ヲ擧
グル爲ニ政府ハ十分ナル努力ヲ望ム、以上
ノ諸點ニ關シテ政府ノ言明及將來ノ善處ニ
信賴シマシテ、本案ニ贊成ヲ表スル者デア
ルト云フコトヲ述べラレマシタ、又他ノ一
委員ヨリシテ、本法案ノ成立ニ依リテ、果
シテ石炭ノ增產及配給ノ圓滑ヲ期シ得ルヤ
否ヤト云フコトハ疑ナキ能ハヌ、殊ニ物價
ニ關係スル統制ハ極メテ困難デアッテ、動モ
スレバ却テ之ガ爲ニ闇相場ヲ惹起スル虞ナ
シトシマセヌ、併シナガラ政府ガ先日來數
次ニ亙ッテ言明セラレタル決意ニ信賴シ、之
ガ實施ガ十分ニ出來ルモノトシテ本案ニ贊
成スル者デアル政府ハ本案ノ實施ニ當リ
マシテ些細ノ遺漏モナキヤウ萬全ノ方策
ニ依ッテ效果ヲ確保セラレタイ、以上ノ如
ク各委員ノ意見ノ開陳ガアリマシテ贊意
ヲ表セラレ、次ニ採決ニ移リマシテ、全員
一致ヲ以テ本案ハ衆議院ノ修正通リ可決致
シマシタ、右委員長トシテ御報告申上ゲマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=45
-
046・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 別ニ御發言
モナケレバ本案ノ採決ヲ致シマス)本案
ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異議ゴザイマセ
ヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=46
-
047・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=47
-
048・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=48
-
049・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=49
-
050・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 西大路子爵
ノ動議ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=50
-
051・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=51
-
052・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 本案ノ第二
讀會ヲ開キマス、御異議ガナケレバ、全部
ヲ問題ニ供シマス、本案全部、委員長ノ報
告通リデ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=52
-
053・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=53
-
054・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=54
-
055・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=55
-
056・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 西大路子爵
ノ動議ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=56
-
057・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=57
-
058・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 本案ノ第三
讀會ヲ開キマス、本案全部、第二讀會ノ決
議通リデ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=58
-
059・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス、午後一時三十分迄休憩ヲ致シ
マス
午後零時五分休憩
午後一時三十九分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=59
-
060・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 報〓ヲ致サ
セマス
〔佐藤書記官朗讀〕
本日委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
昭和十五年度歲入歲出總豫算追加案(第
二號)、昭和十五年度各特別會計歲入歳出
豫算追加案(特第二號)、豫算外國庫ノ負
擔トナルベキ契約ヲ爲スヲ要スル件(追第
三號)可決報告書
金華山軌道株式會社及朝倉軌道株式會社
所屬軌道ノ經營廢止ニ對スル補償ノ爲公
債發行ニ關スル法律案可決報〓書
自動車交通事業法中改正法律案修正報〓
書
國民優生法案可決報〓書発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=60
-
061・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 是ヨリ休憩
前ニ引續キ會議ヲ開キマス、日程第五、木
炭需給調節特別會計法案、日程第六、農產
物檢査法案、日程第七、日本輸出農產物株
式會社法案、政府提出、衆議院送付、第
讀會ノ續、委員長報〓、是等ノ三案ヲ一括
シテ議題ト爲スコトニ御異議ゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=61
-
062・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマスヽ委員長大塚惟精君
木炭需給調節特別會計法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十五年三月二十五日
委員長大塚惟精
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
農產物檢査法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十五年三月二十五日
委員長大塚惟精
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
日本輸出農產物株式會社法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十五年三月二十五日
委員長大塚惟精
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔大塚惟精君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=62
-
063・大塚惟精
○大塚惟精君 只今議題トナリマシタ木炭
需給調節特別會計法案、農產物檢査法案、
日本輸出農產物株式會社法案、以上三案ノ
特別委員會ニ於ケル審議ノ經過ノ〓要竝ニ
結果ニ付御報〓致シマス、先ヅ木炭需給調節
特別會計法案ニ付キマシテ御報告致シマス、
本法案ノ目的トスル所ハ木炭ノ需給調節
ノ島、政府ニ於テ木炭ノ買入、賣渡、又ハ貯
藏ニ關スル一切ノ歲入歲出ヲ、一般會計ト
區別シマシテ經理スル爲ニ特別會計ヲ設
置セムトスルノデアリマス、今其ノ審議中ニ
起リマシタ質疑中ノ主ナル點ニ付テ御報告
申上ゲマス、先ヅ第一ニ、昨年末以來ノ所
謂木炭飢饉ノ原因ヲ問ヒ質サレマシテ、且
十五年度ニ於ケル木炭增產計畫ノ目標、ソ
レト其ノ計畫ノ大要トニ付テ政府ノ說明ヲ
求メラレマシタ、卽チ昨年末以來ノ木炭飢
饉ノ原因ハ、木炭ノ生產ノ側ニ於キマシテ
ハ中國、九州方面ニ於テ旱害ノ爲ニ其ノ
生產ガ幾分カ減少致シマシテ、豫期ノ如キ
增產ノ成果ヲ得ルコトガ出來マセスデアリ
マシタ、尙勞力ノ不足ガアリマス、又製炭
ニ要スル資材ノ缺乏ノ爲、生產ノ方面ニ於
テハ增產ノ成績ニ稍〓〓遺憾ノ點ガアッタヤウ
デアリマス一方需要ノ方面ニ於キマシテ
ハ非常ニ其ノ需要ガ增大致シマシテ、工
業用、鑛山用、卽チ工鑛業用ノ需要ノ增加
ガアリマシテ、又「ガソリン」代用「ガス」木炭
ノ需要ガ多クナリマスシ、各家庭ニ於テノ
石炭ノ缺乏、又電力ヤ「ガス」ノ規正等ノ爲
二、著シク木炭ノ需要ヲ增加致シマシタ
加フルニ都會地、又ハ其ノ附近ノ殷賑產業
ノ繁榮等ガ反映致シマシテ、交通運輸ノ機
能十分デナカッタ等、是等ノ諸原因ガ集リマ
シテ、木炭飢饉ヲ現出シタトノコトデアリ
マシタ、從ッテ十五年度ニ於キマシテハ、是
ガ對應策ト致シマシテ、此ノ本年度ノ目標
ハ最近五箇年間ノ平均木炭消費基準數量
六億五千萬貫、之ニ對シマシテ二億萬貫ノ
增產ヲ計畫セラレテ居ルノデアリマス、卽
チ合計八億五千萬貫ヲ目標トシテ增產計畫
ヲ立テラレタト云フコトデアリマスサウ
致シマシテ、本特別會計ニ依リマシテ、政
府ガ買上ヲ爲サムトセラルヽ木炭ノ數量
ハ一億九千二百萬貫デアリマシテ、是人
木炭ノ需要ノ圓滑ヲ缺ク虞ガ多イ、卽チ木
炭ノ消費ガ多イ所ノ國內ノ十三大都市、
六大都市ノ外、七ツノ大キナ都市ニ付キマ
シテ、此ノ十三大都市ノ消費總數量ガ約三
億六千萬貫ニナルサウデアリマス、其ノ中
ノ工鑛業用、卽チ工業或ハ鑛山用ニ消費ス
ル所ノ一億二千萬貫ヲ差引キマシタ殘リノ
二億四千萬貫ニ付テ其ノ約八掛ヲ見積ラ
レテ今申ス一億九千二百萬貫ト云フコト
ヲ目安トサレタト云フコトデアリマス、サ
ウ致シマシテ、右述べマスヤウナ大キナ增
產計畫ヲ如何ニシテ爲スカ、果シテ之ガ實
行ガ出來ルカト云フコトニ付キマシテノ問
ニ對シマシテハ政府ハ先ヅ增產ノ爲、其
ノ原料トナル所ノ原木ノ供給確保對策ヲ講
ゼラレマシテ、國有林產ノ原木ノ拂下ヲ計
畫シテ居ル、又一般民有林ノ利用ヲ林道ニ
依ッテ開發スル、又原木ノ價格對策ト致シマ
シテハ、原木ノ共同購入ニ關スル助成ヲシ
テ居ル、而シテ一面製炭能率、炭ヲ製造ス
ル所ノ能率ヲ增進スル爲ニハ、炭竈構築ノ
助成ヲスル或ハ製炭技術ノ練習ヲヤル、
運搬設備ヲ改良スル、炭材供給ノ斡旋モヤ
ル、又是ハ非常ニ困難ナコトデアルケレド
モ、製炭夫、卽チ炭燒生產者ノ移動計畫モ
講ジテ居ル、斯ウ云フコトデアリマス、又
以上述べマスヤウニ、八億五千萬貫ノ製炭
ヲ十五年度ニ於テヤル、又ソレヨリ後十六
年度、十七年度ニ於テモ引續キ斯クノ如キ
大キナ製炭增產計晝ヲヤルト致シマシタナ
ラバ、本邦ノ山林ノ現狀ニ於キマシテ、果
シテ斯ウ云フコトガ出來ルノデアラウカ、
山林ヲ荒廢セシメズニ是ダケノ增產計畫ガ
出來ルデアラウカト云フ問ニ對シマシテハ、
我ガ國ニ於ケル薪炭林ノ總面積ハ約一千百
萬町步アリマシテ、一年ノ樹木ノ生長率ト云
フモノハ、一町步ニ付テ約十石デアル、卽チ一
千百萬町步全面積ニ付テ申シマスレバ
億一千萬石ノ樹木ノ生長ガアル譯デアルカ
ラ、一石カラ十貫目ノ炭ヲ採ルコトガ出來ル
トスレバ、十一億貫ヲ製炭スルコトガ出來ル
ノデアル、尙其ノ外ニ用材ノ切レ端シ、餘材
ト云フモノガ薪炭ニ用ヒラレルカラシテ、
年ニ八億五千萬貫程度ノ製炭ヲ爲スト云フ
コトハ、日本ノ山林ノ現狀ニ照シテ林力ニ
不相應ナル所ノ計畫デハナイ、十分ニ其ノ
餘裕ガアル、斯ウ云フ說明デアリマシタ、
又近時山林ノ伐採ガ著シク目立ッテ來テ居
ル然ルニ今斯クノ如キ木炭增產ノ計畫ヲ
實施シタナラバ、或ハ濫伐ニ陷ル、過伐ニ陷
ル早伐ニ陷ル、此ノ濫伐、過伐、早伐ノ
弊ニ陷ッテ林相ヲ荒廢セシメ、國土保安ヲ阻
碍スルガ如キコトナキヤト云フ問ニ對シマ
シテハ治山、治水、砂防等ノ關係ニ於キ
マシテハヽ關係各省トモ十分ニ打合セヲ遂
ゲテ、災害防止、林業施設ト云フコトニ付
テハ萬違算ナキヲ期シテ居ル、ト云フコト
デアリマス、又伐採後ノ植林ニ付キマシテ
モ、十分ノ用意ト計畫ヲ持ッテ居ルトノ說明
デアリマシタ、尙又數多ノ委員ヨリ山林
ノ火災、山火事ノコトニ付テ、之ガ防止ニ
全力ヲ注グベキ旨ノ注意的、警告的質問ガ
行ハレタノデアリマス、次ニ農產物檢査法
案ニ付テ御報告申上ゲマス、本法案ノ目的
ト致シマス所ハ農產物檢査ノ統一ト的確
トヲ期シテ、併セテ配給ノ圓滑ニ資スル爲
ニ、現在各道府縣ニ於テ施行致シテ居リマ
ス所ノ米穀其ノ他ノ重要農產物ニ付テ國營
檢査ヲ斷行セムトスルモノデアリマス、此
ノ法案ニ關シマシテハ、三ツノ主ナール質疑
應答ガアリマシタ、其ノ第一ハ、本法ハ嚴
罰ヲ以テ穀物檢査ヲ强行セムトスルモノデ
アル、若シ檢査ヲ受ケズシテ農產物ヲ受渡
シ又ハ一定地域內ニ搬入致シタモノハ千圓
以下ノ罰金ニ處スルコトニナッテ居リマス、
又取締上必要デアリマス時ハ、當該官吏又
ハ吏員ハ營業所、倉庫等ニ臨檢致シマシ
テ、又ハ帳簿、書類等ヲ檢査スルコトガ出
來ルコトニナッテ居リマス、斯クノ如キハ徒
ニ農產物ノ生產者其ノ他ノ者ヲ畏怖セシメ
マシテ、却テ農產物配給ノ圓滑ヲ妨グルノ
嫌ナキヤトノ質問ガアリマシタ、政府ハ之
ニ答ヘラレマシテ、本法ノ運用ニ付テハ寬
嚴宜シキヲ制スルヤウニ愼重ナル注意ヲ拂ッ
テ、サウシテ此ノ法ノ爲ニ、今質疑ニナッタ
ヤウナ、國民ニ徒ニ畏怖ノ念ヲ懷カシメテ、
サウシテ却テ配給ノ圓滑ヲ妨グルガ如キコ
トガナイヤウニ深甚ノ注意ヲ拂フ旨ノ答
辯ガアッタノデアリマス、次ニ檢査手數料ノ
徵收ノ問題デアリマス、農產物檢査手數料
ノ徴收ハ强制檢査ヲ致シマス以上、其ノ
性質カラ考ヘマシテ寧ロ徵收スベキデハナ
イノデハナイカ此ノ點ニ付テハ數多ノ委
員ヨリ熱心ナル質疑ガアッタノデアリマス、
此ノ點ハ衆議院ニ於キマシテ熱心ニ論議セ
ラレタ所デアリマシテ、同院ニ於テ本案ヲ
議決致シマス場合ニ、其ノ委員長ノ報告ヲ
見マスレバ、下ノ如ク速記錄ニ載ッテ居リマ
ス、委員長ハ「農林大臣ニ對シ、農產物檢査
ノ手數料ハ現下ノ米穀事情ト國營檢査ノ本
質トニ鑑ミテ、之ヲ徵收スベキモノニアラ
ズト思惟スルモ、若シ財政ノ都合等ニテソ
レガ不可能ナリトスルナラバ地方消費米
ノ檢査ニ關スル限リ之ヲ免除スル等、別の
適當ナル方法ヲ講ジテ其ノ成果ヲ得ル迄、
是ハ施行ヲ延期スルコトニ致シタイト存ジ
マスガ、之ニ對スル政府ノ御所見ヲ承リタ
ウ存ジマスト云フ質問ガアリマシタ、之二
對シ農林大臣ハ、御趣旨ハ至極御尤モト存
ジマスカラ、財政上ノコトモ篤ト考慮ノ上
極力之ガ實現ニ努力スルコトニ致シマス、
從ッテ其ノ成案ヲ得ル迄、本法ノ施行ニ付テ
モ御意見ノ通リ實行致シタイ、トノ答辯ガ
アリマシタ」ト述ベテアリマス、是ハ重要ナ
ル衆議院ニ於ケル質疑應答デアリマスガ故
ニゝ委員會ニ於キマシテモ、一委員ヨリ此
ノ質疑應答ノ部分ヲ引用致サレマシテ、其ノ
意義ヲ一層明確ニスル必要ガアリマスガ爲
ニ、此ノ點ニ付テ農林大臣ニ詳細ニ問ヒ質サ
レタ所ガアリマシタ、農林大臣ハ、農產物檢
査制度ヲ國營ニ移ス計畫ノ沿革カラ說キ起
サレマシテ、是亦極メテ詳細ニ其ノ所信ヲ
披瀝セラレマシタ、結局此ノ制度ハ來ル十
月一日以降ニ於テ實施スベキモノデアルカ
ラ、ソレ迄ニ十分ニ考慮スベシ、手數料ノ
全廢ハ不可能デアルカモ知レナイガ、何カ
之ヲ低廉ニスル方法ヲ考慮シテ、大藏當局
トモ協議シテ、實施迄ニハ適當ナ考慮ヲ廻
ラス考デアル、唯無手數料トスルコトニハ
直チニ同意シ難イ、又消費米ノミニ付テ手
數料ヲ免ズルコトモ、檢査ヲ二元的ニ導ク
ノ嫌ガアルカラシテ、此ノ點モ必ズシモ同
意シ難イ、唯現在ノ手數料トシテ徵收セム
トシテ居ル所ノ一俵六錢程度ハ稍〓高キ
ニ失スルヤウニ思ハレルカラシテ、本法ノ
實施期迄ニハ之ヲ低滅スルコトニ付テ十分
考慮シテ見タイ、ト云フ重要ナル御言明ガ
アッタノデアリマス、次ニ米穀ノ檢査制度ノ
如キハ米ノ過剩ナル時代ノ產物デアル、今
日ノ如キハ米ノ不足ヲ愬ヘテ居リ、又其ノ
不足ノ爲ニ騰貴ヲ來シテ、國民ハ米ノ等級
ナドハ問題ニシテ居ナイ、寧ロ其ノ量ノ多
キヲ欲スル時ニ、米ノ國營檢査ヲヤルガ如
キハ是ハ寧ロ時代ニソグハナイ嫌ハナキ
カ且又檢査ヲスルトシテモ、玄米ノミヲ
檢査シテ、白米ノ檢査ヲ爲サザルコトハ片
手落テデナイカトノ質疑ガアリマシテ、之
ニ對シテ農林大臣ハゝ現時ノ如キ米穀事情
ニ對シマシテハ米穀政策ヲ根本的ニ再檢
討セムトスル趣旨ニハ誠ニ御同感デアル、
併シ現狀ニ於テモ尙國營檢査ハ矢張リ必要
ガアルト確信スルノデアル、唯白米ノ檢査
ヲ爲スコトニ付テノ御意見ハ承ッタケレド
モ是ハ種々困難ナル事情ガ伴ウテ居ルノ
デアッテ、遽ニ白米ノ檢査ヲ斷行スルコトハ
考ヘラレナイケレドモ、白米ノ價格ヲ決定
スルト云フコトニ關シテハ價格形成委員
會等ニ諮リマシテ十分ニ考究ヲ盡シテ見タ
イ斯ウ云フ答ガアッタノデアリマス、最後
ニ日本輸出農產物株式會社法案ニ付テ御報
告申上ゲマス、本法案ハ、輸出農產物中我
ガ國ノ特產物デアリマス除蟲菊、薄荷、靑
豌豆及輸出向キノ菜豆、菜種及ビ菜種油等
ニ付キマシテ、需要ノ增大、價格騰貴等ニ
伴ヒ、輸出ノ數量ヲ確保スルコトガ困難デ
アリマスコトニ鑑ミマシテ、是等農產物ノ
集荷及ビ配給ヲ適當ニ統制スル爲ニ、本會
社ヲ設立致シマシテ、其ノ資本金ヲ一千萬
圓トシ、其ノ半額ヲ政府ノ出資ニ依リ之ヲ
經營セムトスルモノデアリマス、本法案ニ
付キマシテハ、衆議院ニ於テ修正ガゴザイマ
シタ、卽チ第八條ノ末項ニ「輸出農產物ヲ
監督スル官廳ノ官吏タリシ者ハ其ノ職ヲ退
キタル後五年間日本輸出農產物株式會社ノ
役員ト爲ルコトヲ得ズ但シ主務大臣ニ於テ
特ニ必要アリト認メタルトキハ此ノ限ニ在
ラズ」ナル一項ヲ加フル旨ノ修正ガアリマ
シタ、今審議中ニ起リマシタ質疑ノ主ナル
問題ニ付テ申上ゲマス、第一ニハ圓「ブロッ
ク」向キ輸出增加ノ點、及軍需充足ノ點等
カラ致シマシテ、本會社設立ノ理由ノ詳細
ニ付テ質疑ガアリマシテ、之ニ依リ本會社
ノ取扱フ輸出物ハ、、大部分ハ主トシテ第三
國ニ向ケ輸出セラルヽモノデアリマス會
社ハ原則トシテ出廻リノ全數量ヲ集荷致シ
マシテ此ノ第三國向キ輸出、ソレカラ軍
需ニ必要ナル數量ヲ確保配給シテ其ノ殘リ
ヲ內需及圓「ブロック」向ケ輸出ニ向ケムトス
ルモノデアッテ、會社ガ集荷及配給ヲ統制ス
ルコトニ依ッテ、是等農產物ノ需給關係竝ニ
價格關係ノ圓滑適正ヲ期シ得ル旨ノ答ガアッ
タノデアリマス、第二ニ本會社ノ取扱ヒマス所
ノ農產物ニ付テ、百合ノ根、「テユーリップ」、
是等ノ農產物ヲモ追加取扱ハシメムトスル
モノデアルカドウカ、又菜種ニ付テハ北海
道產ノ洋菜種ノミニ限定シテハドウカ、斯
ウ云フ質疑ガアリマシタノニ對シマシテ
取扱品目ノ追加指定ニ付テ、茶、農產罐詰、
百合根、是等ノモノハ將來ニ於テ考慮ヲ要
スルモノデアリマスケレドモ、差當リ前述
ノ如キ農產物ニ限ッタト云フコトデアリマス、
尙將來追加指定ヲスル場合ニ於キマシテハ、
今後十分ニ〓究ヲ遂ゲテ關係各方面トモ協
議ノ上ニ決定シテ行キタイ)決シテ官廳ノ
ミデ之ヲ決メルト云フヤウナヤリ方ヲシナ
イ積リデアルト云フ答辯ガアッタノデアリマ
ス、又菜種ニ付テハ原料菜種ノ需給竝ニ價
格闘係ノ現狀ヨリ致シマシテ、本會社ニ於
テ之ヲ取扱フ必要ハアリマスケレドモ、集
荷統制ニ付テハ是ハ衆議院ニ於テ希望決
議ガ上ッテ居リマス、其ノ希望意見ヲ尊重ス
ル旨ノ答辯ガアッタノデアリマス、次ニ本
會社ノ集荷竝ニ配給ノ方針如何ト云フ質疑
ガアリマシタガ、之ニ對シテハ、集荷ニ営岳ツ
テハ既存ノ集荷機構ヲ十分ニ尊重スル
又配給ニ付テモ先ヅ輸出ハ自ラ之ヲ爲スヤ
ウナコトハシナイ、輸出業者ヲシテ之ヲ行
バシムルコトニシタイ、又內國ノ需要ニ付
テモ、旣存ノ配給機構ヲ尊重シテ、會社自
ラガ消費迄ノ配給ヲ爲スヤウナコトハ決シ
テ考ヘテ居ナイト云フ答ガアッタノデアリマ
ス、次ニ本法案中ニモ亦、命令違反ノ行爲
ニ關シマシテハ五千圓以下ノ罰金ニ處スル
旨ノ規定ガアリマス、故ニ之ガ運用ニ付テ
ハ嚴密ナル注意ヲ要スル旨ノ警告的質疑ガ、
數多ノ委員ヨリアッタノデアリマス、尙此ノ
法案ヲ審議致シマス際ニ於キマシテハ此
ノ會社設立ノ目的等ニ關シマシテハ、速記
ヲ止メテ詳細ニ承ッタノデアリマス、斯ク致
シマシテ、以上三法案ニ付テ質疑ヲ終リマ
シテ、討論ニ入リマシテ、御二人ノ委員ヨ
リソレ〓〓原案贊成ノ陳述ガアリマシタ、
併シ原案ニ贊成スルト共ニ、今質疑應答ノ
中ニ現レマシタ諸點
〔議長伯爵松平賴壽君議長席ニ著ク〕
殊ニ手數料ノ問題ノ如キ、或ハ嚴罰主義ニ
對スルガ如キ、或ハ森林荒廢防止ニ關スル
ガ如キ、各諸點ニ付テ熱心ナル希望ノ意味
ヲ含メテノ贊成ノ意見ノ陳述ガアリマシテ、
三法案共ニ採決ヲ致シマスル場合ニ於キマ
タン·全會一致ヲ以テ原案竝ニ衆議院修
正通リニ可決致シマシタ次第デアリマス、
詳細ハ速記錄ヲ御覽ヲ御願ヒ致シマス、以
上ヲ以テ報〓ヲ終リマス
〔宮田光雄君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=63
-
064・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 宮田君ハドウ云
フコトデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=64
-
065・宮田光雄
○宮田光雄君 質問ヲ致シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=65
-
066・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 宜シウゴザイマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=66
-
067・宮田光雄
○宮田光雄君 私モ今議題ニナッテ居リマス
三案ノ委員トシテ種々質疑ヲ致シマシタノ
デゴザイマスカラ、此ノ會期切迫ノ際ニ此ノ
議場デ質問ヲ致スノハ差控ヘタイト思ッテ居
リマシタノデゴザイマスガ、唯一點ドウシ
テモ伺ッテ置キタイコトガゴザイマス、ソレ
ハ此ノ木炭需給調節特別會計法案ニ付テ、
委員各位ガ種々木炭ノ供給需要ニ付テノ心
配ヲセラレタ質問ガゴザイマシタノデ、此
ノ法案ニ依ッテ果シテ來ルベキ冬期ノ需要
ニ適當ニ應ズルコトガ出來ルノデアラウカ
ト云フコトハ、種々政府ノ言明ハゴザイマ
シタケレドモ、尙且委員ノ間ニハ一抹ノ不
安ノ感ジヲ抱イテ居ルノデアリマスソレ
デアリマスルカラシテ、有ラユル角度カラ
シテ木炭ノ製造需要ト云フモノニ對スル方
法ヲ講ジテ貰ヒタイト云フコトヲ、切ニ我
我委員ハ念願ヲ致シテ居ッタノデアリマス、
然ルニ本日ノ新聞ニ依リマスト云フト、日
本瓦斯用木炭株式會社法案ト云フモノハ、
本院ニ送ラレルコトガ出來ナイヤウナ情勢
ニ陷ッテ居ルヤウニ思フノデアリマス、所
謂握リ潰シヲサレヨウト致シテ居ルヤウ
ニ思ハレマス、此ノ二ツノ法案ハ、兩輪
ト申シテ宜イカソレハ私ハ分リマセヌ
ガ相竝ンデ此ノ木炭ノ供給ト云フコトニ
當ラナケレバナラナイ、殊ニ此ノ法案ハ近
來特ニ發達致シテ參リマシタ所ノ自動車用
ノ木炭ヲ供給スル法案デアル、今迄ノ家庭
或ハ工業其ノ他ニ對スル所ノ木炭ノ需要ノ
範圍ヲ侵シテ參リマシタモノハ正ニ此ノ
自動車用ノ木炭デアリマスルガ、然ルニモ
拘ラズ、此ノ大切ナル法案ガ衆議院ニ於テ
握リ潰シトナッテシマッタト云フコトデアリ
マスルト云フト果シテ當局者トシテハ十
分ニソレ等ノ方面ニ於ケル木炭ノ需要ニ對
處スルコトガ出來ルノデアリマスカ、ドウ
デアリマスカ、又衆議院ニ於テ如何ナル理
由ヲ以テ此ノ法案ヲ通過セシムルコトニ難
色ガアルノデアリマスカト云フコトヲ承リ
タイノデアリマス、ソレカラモウ今日トナ
リマシテハ到底此ノ法案ノ成立ヲ期待ス
ルコトハ出來マセヌノデアリマスガ、然ラ
バ之ニ對シテ法律案ハ握リ潰サレタト致シ
マシテモ、實際ノ「ガス」用木炭ノ需要ト云フ
モノハ何等減少ヲシナイ、更ニ當局ニ於テ
ハ「ガソリン」ヲ用ヒルコトヲ抑制致シマシ
テサウシテ努メテ木炭ニ依ル所ノ自動車
ヲ動カサセヨウト云フコトヲシテ、獎勵金
迄出シテイラッシヤルノデアリマスカラ、現
在ノ趨勢ヲ以テ致シマスレバ、「ガス」用木炭
ノ需要ト云フモノハ何倍ニモ增大スルノデ
ハナイカト思フ、此ノ際ニ於テ、此ノ法律
案ガ議會ニ於テ成立ヲ見ナイト云フコトハ、
誠ニ遺憾至極デアルノデアリマス、ソレデ
アリマスルカラシテ、此ノ法律案ハ此ノ儘
ニ握リ潰サレタト致シマシテ、政府ハ果シ
テ之ニ對シテ如何ナル對策ヲ持ッテイラッシ
ヤルノデアリマスカ、私一個人ノ希望ト致
シマスレバ、議會デ通ラナカッタノハ致シ方
ナイトシテモ、其ノ後ニ於テ實際ノ狀況ニ
對處シテ我々ヲ安心セシメル爲ニハ法令
ノ許ス範圍ニ於テ出來ルダケノコトハシテ
戴キタイト云フ希望ヲ持ッテ居ルノデアリ
マスガ、兎ニ角之ニ對スル大臣ノ御答ヲ簡
單ニ願ヒタウゴザイマス
〔國務大臣島田俊雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=67
-
068・島田俊雄
○國務大臣(島田俊雄君) 宮田君ノ只今ノ
御質問ニ御答ヲ申上ゲマス、昨年來ノ木炭
ノ事情ニ鑑ミマシテ、只今議題トナッテ居リ
マス木炭需給調節特別會計ノ制度ヲ一方ニ
於テ設ケマシタ、大體ニ於テ大消費地タル
東京始メ十三大都市ヲ目標ト致シマスル其
ノ家庭用ノ木炭ニ付キマシテハ、此ノ特別
會計ノ運用ニ依リマシテ需給ノ萬全ヲ期シ
タイト考ヘテ居リマス、ソレト同時ニ、一
方ニ於テ近時非常ナ發達ヲ爲シ、又,カ,
リン」ノ關係等カラシテ已ムヲ得ザル事情
モアリマシテ增大ヲシテ來マシタ「ガソリ
ンㄴ代用ノ爲ニスル木炭ニ關シマシテハ
是ハ普通ノ家庭用ノ木炭トハ性質ヲ異ニシ
テ居リ、或品ニ依リマシテハ人體ノ健康上
ニモ害ヲ及スヤウナ品物デアリマスガ故ニ、
兩樣ノ意味カラシテ、此ノ「ガソリン」代用
ニスル「ガス」用木炭ニ付キマシテハ、特別
ノ制度ヲ設ケ、卽チ一ツノ會社ヲ設立致シ
マシテ、此ノ會社ニ於テ此ノ種ノ木炭ノ生
產ノ確保竝ニ配給ヲ圓滑ナラシメルノ働キ
ヲサセタイト云フ、所謂兩建ノ考ヲ以チマ
シテ此ノ法案ヲ提出シタ次第デアリマスヽ
然ルニ衆議院ニ於ケル只今迄ノ審議ノ狀況
ニ依リマスト、會期切迫ノ今日ニ於キマシ
テ、完全ニ通過ヲ見ルヤ、甚ダ其ノ點ニ懸
念ヲ抱イテ居ルヤウナ狀態ニナッテ居ルノ
デアリマス、從ヒマシテ、斯樣ナ場合ニ於
テ其ノ案ガ不成立ヲ致シマシタヤウナ場
合ニ、政府トシテ最モ心配ヲ致シマスコト
ハ「ガス」用ノ木炭ニ依ル需要ノ爲ニ、家
庭用ノ木炭ノ方面ニ喰ヒ込ンデ來ル惧ガア
リハシナイカト云フコト、從ッテ其ノ爲ニ家
庭用ノ木炭ニ付テノ增產計畫ノ上ニ多少ノ
妨ゲヲ來スヤウナ結果ニナリハシナイカト
云フコト、又其ノ「ガス」用木炭ノ取締ノ行屆
カナイヤウナ結果ト致シマシテ、「ガス」用木
炭ガ家庭ノ用途ニ向ケラレルヤウナコトガ
アリマシテ、ソレガ爲ニ保健衞生ノ上ニ危惧
サルベキ結果ヲ來スヤウナコトガアリハシ
ナイカト云フヤウナ點ニ付テ、心配ヲシテ
居ルノデアリマス、尙ソレノミナラズ、「ガス」
用木炭ノ需要ノ增大ノ爲ニ、此ノ意味ニ於テ
其ノ使命ヲ帶ビテ造ラウトシテ居ル所ノ會
社ノ組織ガ十分ニ成立ヲシナイ場合ニ於キ
マシテハ、其ノ增產ノ計畫ニ於テモ或ハ多少
ノ支障ヲ見ナケレバナラヌカト云フヤウナ
惧ヲ抱イテ居ルノデアリマス、併シナガラ
萬一斯樣ナ場合ガ起リマシタト致シマシテ、
只今宮田君ノ御示ノ通リ是ガ成立ヲシナイ
場合ニ於キマシテハ已ムヲ得ナイコトト
致シマシテ、之ニ付テハ今申上ゲタヤウナ
事情ガアリマスカラシテ、法令ノ許ス限リ
ニ於キマシテ、出來ルダケノ處置ヲ執ッテ、
此ノ人體ニ有毒ナル「ガス」用木炭ガ家庭ノ
用途ニ向ケラレルヤウナコトヲ防グト共ニ、
時ノ必要ニ應ジテ此ノ必要ナル「ガス」用木
炭ニ付キマシテハ、又出來得ル限リノ方法
ヲ講ジテ、其ノ增產ノ途ヲ講ジテ行キタイ、
斯樣ニ考へ居リマスノデ、マダ衆議院ニ
於テ審議中ニ屬シテ居リマスカラ結果ハ申
上ゲルコトハ出來マセヌガ、左樣ナ場合ニ
對シマシテハ、政府ハ萬已ムヲ得ザルモノ
トシテ、已ムヲ得ザル場合ニ付テ十分愼重
ナル考究ヲ致シマシテ、之ニ依ッテ生ズル不
利不便ヲ出來ルダケ少イ程度ニ止メルコト
ニ努力致シマシテ、木炭ノ需給ニ付テ圓滑
ヲ圖ルヤウニ致シタイト斯樣ニ考ヘテ居
ル次第デアリマス、尤モマダ衆議院ニ於キ
マシテハ否決ニナッタ譯デハアリマセヌ、審
議中デアリマシテ、此ノ審議ノ停頓シテ居
ル事情ニ付キマシテハ、今日切迫シテ居ル
時間ノ關係上、私ハ此處デ之ヲ尙述ブルコ
トヲ遠慮シテ置キタイト考ヘマスガ、左樣
ナ考デアリマシテ、是ガ成立ヲシナカッタ場
合ニ付キマシテハ、政府トシマシテハ已ム
ヲ得ザル處置トシテ、出來ルダケノコトヲ
努力シテ見タイト、斯樣ニ考ヘテ居ル次第
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=68
-
069・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 宮田君ハ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=69
-
070・宮田光雄
○宮田光雄君 私ハ宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=70
-
071・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 他ニ御發言モナ
ケレバ、三案ノ採決ヲ致シマス三案ノ第
二讀會ヲ開クコトニ御異議ハゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=71
-
072・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=72
-
073・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ各案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=73
-
074・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=74
-
075・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=75
-
076・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=76
-
077・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 三案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナケレバ、全部ヲ問
題ニ供シマス、三案全部、委員長ノ報告通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=77
-
078・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=78
-
079・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ各案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=79
-
080・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=80
-
081・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=81
-
082・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=82
-
083・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 三案ノ第三讀會
ヲ開キマス、三案全部、第二讀會ノ決議通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=83
-
084・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=84
-
085・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 此ノ際金華山軌
道株式會社及朝倉軌道株式會社所屬軌道ノ
經營廢止ニ對スル補償ノ爲公債發行ニ關ス
ル法律案、自動車交通事業法中改正法律案
ノ二案ヲ議事日程ニ追加シ、一括議題ト爲シ、
第一讀會ノ續ヲ開キ、委員長ノ報〓ヲ煩ハシ
タイト存ジマス、御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=85
-
086・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、委員長、一條公爵次
金華山軌道株式會社及朝倉軌道株式會
社所屬軌道ノ經營廢止ニ對スル補償ノ
爲公債發行ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十五年三月二十六日
委員長公爵一條實孝
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
自動車交通事業法中改正法律案
右別册ノ通修正議決セリ依テ及報告候也
昭和十五年三月二十六日
委員長公爵一條實孝
貴族院議長伯爭松平賴壽殿
特別委員ノ修正ニ係ル部分ノミヲ印刷シ)
(其ノ他ハ之ヲ略ス小字及-ハ修正ナリ
附則
第十一條特別法人稅法中左ノ通改正ス
第二條中第七號ヲ第八號トシ第八號ヲ
第九號トシ第六號ノ次ニ左ノ一號ヲ加
フ
及
七自動車運送事業組合又ハ自動車
運送事業組合聯合會(所屬ノ組合
員、組合又ハ聯合會ラシテ出資ヲ
爲サシメザルモノヲ除ク)
第六條中「及蠶絲共同施設組合」ヲ「、
蠶絲共同施設組合及自動車運送事業組
合」ニ改ム
〔公爵一條實孝君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=86
-
087・一條實孝
○公爵一條實孝君 只今議題ト相成リマシ
タ金華山軌道株式會社及朝倉軌道株式會社
所屬軌道ノ經營廢止ニ對スル補償ノ爲公債
發行ニ關スル法律案、竝ニ自動車交通事業
法中改正法律案ニ關スル特別委員會ノ經過
竝ニ結果ヲ御報告申上ゲマス、兩法案ノ委
員會ハ去ル十六日ヨリ本日迄前後七囘ニ
亙リ開催致シ、兩法案ヲ一括シテ審議致シ
マシタ、先ヅ鐵道大臣ヨリ提案ノ趣旨ニ付
詳細ナル說明ガアリ、之ニ對シマシテ各委
員ヨリ極メテ熱心ナ質疑竝ニ意見ノ開陳ガ
アリ、政府カラハ又懇切丁寧ナル御答辯ガ
アリマシタ、法案ノ要旨ニ付キマシテハ時
間ノ關係モアリ、又旣ニ鐵道大臣ガ此ノ壇
上ヨリ說明サレマシタノデ省略致シ、主ナ
ル質疑應答ニ付テ其ノ〓要ヲ申上ゲタイト
存ジマス、補償ニ關スル法律案ニ付キマシ
テハ、先ヅ金華山軌道ハ、之ヲ買收シテ改
築シタ方ガ良クハナカッタカトノ質問ニ對
シマシテ、政府ハ、一應ハ考慮シテ見タガ、
何分ニモ軌道ノ大部分ガ道路上又ハ道路ニ
沿ウテ居リマシテ、之ヲ省線トシテ利用ス
ルコトガ出來ナイ狀態デアッタノデ、買收セ
ズニ國有鐵道ヲ別ニ敷設シタノデアルト云
フ答辯ガアッタノデアリマス、又金華山軌
道ノ營業ヲ調査スルニ當リ、二十二日間ノ
實績ヲ以テ推算シタノハ非常識デハナイカ
トノ御質問ニ對シマシテ、金華山軌道ハ省
線開通ノ日ヨリ事業休止ノ日迄二十二日間
ノ實績シカナク、又同軌道ト國有鐵道ハ殆
ド竝行シテ居リ、運賃、時間等モ國有鐵道
ガ遙カニ有利ナ事情ニアルカラ、二十二日
間ノ實績ニ依ル減收カラ致シテモ、大シタ
狂ヒハナイト思フトノ答辯ガアリマシタ、
次ニ朝倉軌道ノ甘木·杷木間ハ殘存路線トシ
テ營業ヲ繼續スルカドウカトノ質問ニ對シ
マシテ、當局ハ殘存路線ノミデハ營業繼續
ハ不可能ト認メラレル、會社カラモ營業廢
止ノ申請ヲ致シテ居ルノデ、兩區間共ニ營
業廢止補償ヲ致シタキ考デアルトノ答辯デ
アリマシタ、以上ノ外二三ノ質疑應答ガゴ
ザイマシタガ、之ヲ省略致シマス、次ニ自
動車交通事業法中改正法律案ニ付キマシテ
ハ先ヅ交通行政、殊ニ自動車ニ關スル行
政ガ各省ニ分屬シテ居ル爲、兎角政策ガ
不統一トナリ事務ノ圓滑ヲ缺ク虞ガアルカ
ラ、行政機構ヲ統一スル必要ガアルトノ意
見ガ述ベラレマシタルニ對シ、政府ハ其ノ
趣旨ニハ同感デアルガ、今遽ニ機構ヲ統一
スルニハ種々考慮スベキ點モアルノデ、今
後十分〓究シテ行キタイト思フ、尙行政機
構ガ現在通リデアッテモ、一層各省間ノ連絡
協調ヲ密ニシテ支障ナキヲ期シテ行クトノ
答辯ガアリマシタ、次ニ自動車ノミナラズ
鐵道軌道以外ノ陸上運送全般ニ亙ッテ綜合
的ニ政策ヲ樹立シ、輸送力ノ强化ヲ圖ラネ
バナラナイトノ意見ニ對シマシテハ、政府ハ
其ノ點ニ付テモ十分意ヲ用ヒ、小運送業其
ノ他ノ運送事業ニ付テモ、輸送力强化ノ爲
必要ナ措置ヲ講ジテ行クトノ答辯ガアリマ
シタ、又燃料其ノ他資材ニ關シ種々質疑
應答ガアリマシタガ、殊ニ「ガソリン」代用
木炭ノ確保ニ付テ、單ナル机上ノ計畫ノミ
ニ終ル憂ナキヤトノ質問ニ對シマシテ、木
炭ノ生產竝ニ配給ニ付テハ、萬全ノ策ヲ
講ジ遺憾ナキヲ期スルトノ答辯ガアリマシ
ク、更ニ運賃値上ニ關スル質疑ガアリ
マシタガ、之ニ對シ、燃料ノ消費規正、
物價ノ騰貴等ノ原因ニ依リ、事業ノ
經營ガ困難ニナッテ來タコトハ事實デ
アルガ、物價政策ノ點カラ考ヘテ、全般的
ニ運賃ノ値上ヲスルコトハ出來ルダケ避ケ
タイト思フ、併シ尙今後更ニ實情ヲ調査シ
テ善處スルトノ答辯ガゴザイマシタ、以上
ノ外自動車ニ關スル技術ノ〓究、運轉者ノ
養成、道路ノ整備、其ノ他各般ノ事項ニ付
熱心ナ質疑應答ガ行ハレマシタノデアリマ
スルガ、詳細ハ速記錄ニ讓リタイト存ジマ
ス、質疑ヲ終リマシテ討論ニ入リ、補償ニ
關スル法律案ニ付キマシテ、一委員ヨリ贊
成ノ意見ノ開陳ガアリ、更ニ省營ノ自動車
運輸營業開始ニ依ッテ、地方鐵道軌道ニ損害
ヲ與ヘタル場合ノ補償ノ法規ノ制定ヲ考
憂サレムコトヲ希望スルトノ意見ガアリマ
シタ、採決ニ入リマシテ、本案ハ全會一致
可決ト相成ッタノデアリマス自動車交通
事業法中改正法律案ニ付キマシテハ一 一六
員ヨリ本案ハ自動車運送事業ノ現狀ニ鑑
ミ緊要ノモノデアルカラ賛意ヲ表スル、而
シテ附則第十一條ハ、特別法人稅法案ガ一
部修正セラレタ結果、之ニ伴ヒ本條ヲ修正
スベキデアルトシテ修正意見ノ提出ガアリ
マシタ、此ノ修正ノ條項ヲ讀ミ上ゲマス、卽
チ附則ノ第十一條特別法人稅法中、第二條、
第七號自動車運送業組合ノ下「又ハ」ヲ「及」
ト改メ、同法第六條ノ改正ハ之ヲ削除ス、
又一委員ヨリ贊成意見ヲ述ベラレマシテ、
本案ニ對シ商工當局トノ協調、鐵道當局ノ
努力ヲ讚美セラレ、又其ノ運用ニ注意スル
コト特ニ軍事上ノ見地ヨリシテ貨物自動
車ノ整備ヲ完全ニスルコト等ノ御希望ガア
リマシタ、又他ノ二三ノ委員ヨリモ贊成意
見ノ陳述ガアリマシテ、我ガ國產業界ハ統
制經濟ノ强化ニ伴ヒ、利潤追求ノ經濟カラ
手數料經濟ヘト移行シツヽアルカラ、利潤
側カラ能率ノ增進、生產力擴充ヲ圖ルコト
ハ困難デアル今後ハ官廳側ノ能率增進ヲ
シテ生產力擴充ヲ圖ルヨリ外ハナイカラ折
角ノ努力ヲ望ムトノ意味ノ希望ガアリ、又
自動車局ヲ鐵道省ニ設ケテ、眞ノ自動車交
通行政ノ一元化ヲ望ムトノ意味ノ御意見等
ノ開陳ガアリマシタ、次デ採決ノ結果、修
正意見ハ全會一致ヲ以テ可決セラレマシテ、
其ノ他ノ法案ニ付キマシテモ、原案通リ是
亦全會一致ヲ以テ可決セラレマシタ、以上
簡單ナガラ御報告ヲ申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=87
-
088・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御發言モナ
ケレバ、兩案ノ採決ヲ致シマス、兩案ノ第二
讀會ヲ開クコトニ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=88
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089・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=89
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090・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ兩案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=90
-
091・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=91
-
092・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=92
-
093・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=93
-
094・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 兩案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナケレバ全部ヲ問
題ニ供シマス、兩案全部、委員長ノ報告通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=94
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095・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=95
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096・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ兩案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=96
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097・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=97
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098・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=98
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099・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=99
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100・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 兩案ノ第三讀會
ヲ開キマス、兩案全部、第二讀會ノ決議通
リデ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=100
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101・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=101
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102・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 此ノ際、昭和十
五年度歲入歲出總豫算追加案、第二號、昭
和十五年度各特別會計歲入歲出豫算追加
〓〓特第二號、豫算外國庫ノ負擔トナルベ
キ契約ヲ爲スヲ要スルノ件、追第三號ヲ議
事日程ニ追加シ、是等ノ三案ヲ一括シテ議
題ト爲シ、委員長ノ報〓ヲ煩ハシタイト存
ジマス、御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=102
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103・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
三支豫算委員長、井上子爵
一昭和十五年度歲入歲田總豫算追加案
(第二號)
一昭和十五年度各特別會計歲入歲出豫算
追加案(特第二號)
一豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲
スヲ要スル件(追第三號)
右衆議院ヨリ受領シタル各案ヲ審査シ總
テ衆議院議決案ノ通可決スヘキモノナリ
ト議決セリ依テ及報〓候也
昭和十五年三月二十六日
委員長子爵井上匡四郞
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔子爵井上匡四郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=103
-
104・井上匡四郎
○子爵井上国四郞君 只今議題ニ供セラレ
マシタ追加豫算三案ニ付テ、豫算委員會ノ
經過竝ニ結果ヲ御報〓申上ゲマス、此ノ追
加豫算案ハ現內閣ニ於テ編成セラレマシタ
最初ノ豫算デアリマス而シテ之ガ內容ハ
各省ニ亙ッテ居ルノデアリマス、先ヅ總豫算
追加案ヨリ申上ゲマスト、同案ハ其ノ金額
二億千六百餘萬圓ニ上リ、殆ド各省ニ亙ッテ
居ルノデアリマス、且外二案ノ關係スル所
ノ省モ相當多數デアリマスノデ、豫算委員
會ハ之ヲ分科ニ付託致シマシテ、審査ノ進
捗ヲ圖ルト共ニ、十分檢討ヲ加ヘタノデゴ
ザイマス、卽チ二十四日午後衆議院ヨリ三
案ヲ受領後、直チニ豫算總會ヲ開キ、昨二
十五日ヲ分科會ニ充テ、本日再ビ總會ヲ開
キ、會期切迫ノ際出來ベキダケ愼重ナル審
査ヲ遂ゲタノデアリマス、今豫算案ノ內容
ニ付テ御說明申上ゲマス、昭和十五年度歲
入歲出總豫算追加、第二號ハ、歲入歲出共
ニ二億千六百六十餘萬圓デアリマシテ、歲
入追加額ノ內譯ハ經常部千九百餘萬圓、
臨時部一億九千七百六十餘萬圓デアリ更
ニ其ノ種類別金額ヲ申上ゲマスレバ普通
歲入ト致シマシテハ合成〓酒ノ增產ニ伴
フ酒稅ノ增加千六百九十餘萬圓、金資金特
別會計ヨリノ繰入ノ增加千三百八十餘萬圓、
國有林ニ於ケル木材及木炭ノ增產ニ伴フ森
林收入ノ增加百五十餘萬圓、其ノ他百三十
餘萬圓、計三千三百八十餘萬圓デアリマス、
本追加豫算ノ財源ニ充用スベキ公債金ト致
シマシテハ道路公債六十餘萬圓、歲入補
塡公債一億七千七百七十餘萬圓、計一億七
千八百三十餘萬圓ヲ計上シ、更ニ前年度剩
餘金四百五十餘萬圓ヲ繰入ルヽコトト致シ
テ居リマス、右今囘ノ歲入追加額ヲ、暴露,
可決セラレマシタ昭和十五年度總豫算及總
豫算追加第一號ノ額ニ加ヘマスレバ普通
歲入ハ四十一億千百二十餘萬圓、公債金ハ
十九億六百五十餘萬圓トナリ、前年度剩餘
金繰入七千九百五十餘萬圓ヲ合セマシテ、
昭和十五年度歲入豫算ノ總額ハ六十億九千
七百三十餘萬圓トナル次第デアリマス、次
ニ歲出追加額ノ內譯ハ、經常部三千九百餘
萬圓、臨時部一億七千七百六十餘萬圓デア
リマシテ、其ノ主要ナル事項ヲ申上ゲマス
レバ、臨時外交施設ニ關スル經費ノ增加二
百五十餘萬圓、產金奬勵ニ要スル經費ノ增
加千三百八十餘萬圓、石炭增產對策ニ關ス
ル經費五千六百三十餘萬圓、重要肥料供給
確保施設ニ要スル經費ノ增加千九百餘萬圓、
自給肥料改良增產及施肥改善ニ要スル經費
ノ增加三百五十餘萬圓、主要食糧農產物增
產確保施設ニ要スル經費ノ增加三百八十餘
萬圓、災害土木費補助ノ增加五百六十餘萬
圓、早害恆久對策ニ關スル經費百十餘萬圓、
日本發送電株式會社配當補給金二千三百七
十餘萬圓、第二豫備金ノ增加二千萬圓、支
那事變ニ伴フ金鵄勳章年金ノ增加八百十餘
萬圓、傷痍軍人保護ニ要スル經費ノ增加百
四十餘萬圓デアリマスルガ、尙此フ外政府
竝ニ地方職員共濟組合制度創設ニ關スル經
費、市町村吏員及〓員共濟施設費補助ニ要
スル經費、靜岡市火災復興助成ニ要スル經
費、貯蓄奬勵ノ普及徹底ニ面女スル經費、
物價對策審議會設置ニ要スル經費、早生稻
ノ作付奬勵ニ要スル經費、肥料ノ消費調整
施設ニ要スル經費、國有林ニ於ケル軍需木
材及木炭ノ增產奬勵ニ要スル經費、生鮮〓
糧品ノ配給及價格統制ニ要スル經費、通商
振興ニ要スル經費、海員〓育振興ニ要スル
經費等ヲ計上シテ居ルノデアリマス以上
申述ベマシタ歲出追加額ヲ、昭和十五年度
總豫算及總豫算追加第一號ノ額ニ加ヘマス
ルト、昭和十五年度歲出豫算ノ總額ハ、經常
部二十七億四千七百九十餘萬圓、臨時部三
十三億四千九百三十餘萬圓、合計六十億九
千七百三十餘萬圓トナル次第デアリマス、是
ハ前議會及本議會ニ於テ協賛ヲ經マシタ昭
和十四年度ノ一般會計ノ豫算額、歲入四十
八億三千六百六十餘萬圓、歲出四十八億八
千二百六十餘萬圓ニ比シ、歲入ニ於テ十二
億六千餘萬圓、歲出ニ於テ十二億千四百餘
萬圓ノ增加デアルノデアリマス、次ニ昭和
十五年度各特別會計歲入歲出豫算追加特別
第二號ハ造幣局、印刷局、大藏省預金部、
國債整理基金、公債金、金資金、政府出資、
關東局、帝國大學、官立大學、學校及圖書
館、米穀需給調節、農業再保險、通信事業、
帝國鐵道、朝鮮總督府、臺灣總督府、臺灣
米穀移出管理、樺太廳、南洋廳及簡易生命
保險等二十一特別會計ノ外、今囘新タニ創
設スベキ木炭需給調節及損害保險國營再保
險ノ兩特別會計ニ關スルモノデアリマス
而シテ木炭需給調節特別會計ハ、最近ニ於
ケル木炭需給ノ實情ニ鑑ミ、政府ニ於テ木
炭ノ買入又ハ貯藏ヲ行ヒ、以テ木炭ノ需給
調節ヲ圖ラムトスル爲ニ設置セムトスルモ
ノデアリ、又損害保險國營再保險特別會計
ハ、損害保險國營再保險法ニ依リ、政府ノ
經營スル損害保險國營再保險事業ノ爲設置
セムトスルモノデアリマス、最後ニ豫算外
國庫ノ負擔トナルベキ契約ニ關スル件、追
第三號ノ主要ナルモノハ中國地方其ノ他
ニ於ケル早害恆久對策トシテ必要ナル貯水
池ノ築造費補助、旱害地方ニ於ケル用水幹線
改良專業費及農用公共施設新設改良事業費
ニ對スル補助、靜岡市ノ火災復興助成ノ爲
ノ復興事業費補助及借入金利子補給、竝
石炭增產對策トシテ必要ナル石炭新坑開發
助成金及石炭買取價格補償金ニ關スルモノ
等デアリマス、尙昭和十五年度ニ於ケル公
債ノ發行豫定額ハ、本豫算、追加豫算第一
號及ビ今囘ノ追加豫算竝ニ臨時軍事費追加
豫算ニ於テ發行ヲ豫定シテ居リマスルモノ
ヲ合シ、總計六十億二千六百九十餘萬圓デ
アリ、是ハ昭和十四年度ノ發行豫定額ニ比
シ、一億百四十餘萬圓ノ增加トナルノデア
リマス、玆ニ昭和十五年度歲入竝ニ歲出豫
算ノ純計ヲ申上ゲマスト歲入豫算ノ純計
ハ約百六十一億七千餘萬圓、歲出豫算ノ純
計ハ約百五十八億四千餘萬圓トナルノデア
リマス、此ノ中ニハ臨時軍事費特別會計及
臨時陸軍材料資金特別會計ヲ含ンデ居ルノ
デアリマス、是ヨリ質疑應答ノ主要ナルモ
ノ一二ヲ御紹介申上ゲマス、政府職員共濟
組合制度創設ニ關スル件ニ付キマシテ、是
ハ各省ニ跨ガッテ居リマスノデ各分科ニ於
テモ質問ガアッタノデアリマス、其ノ質問ノ
要旨ハ同制度創設ノ目的、理由及ビ斯ク
ノ如キ恆久施設ヲ追加豫算トシテ提出セシ
理由、現存スル共濟施設トノ關係等デアル
ノデアリマス、此ノ創設ノ目的理由ハ、政
府職員ノ福利增進ヲ目的トシタモノデアリ、
今日ノ物價騰貴ノ爲ニ下級官吏ノ生活費ガ
增大シ、之ニ對スル壓迫ニ對シ、政府ハ增
俸增給ノ方法ニ依ラズ、福利施設ノ增進ニ
依ッテ之ヲ補助セムトシタモノデアル、
追加豫算ニ計上シタル理由ハ各省ニ關聯
シテ本豫算提出ノ時期ニ間ニ合ハナカッタ
ノデアッテ、性質トシテハ、斯クノ如キ恆
久施設ヲ本豫算ニ計上スルコトハ、當然デ
アッテ、追加豫算ニ之ヲ計上シタノハ巳ム
ヲ得ザルニ依ルモノデアルト云フ答辯デア
リ又既設ノ福利施設トノ關係ニ付キマシ
テハ、文部省ハ、〓員共濟施設トシテ從來
存續セシ互助會ノ如キモノトハ別箇ニヤル
積リデアッテ、之ヲ利用包含セシムルノデハ
ナイト云フ答辯デアリ、內務省ハ市町村
吏員ノ共濟ニ關シテハ、從來發達シ來リタ
ル所ノ互助會ヲ指導利用シ、之ヲ包含セシ
ムル積リダト云フヤウナ說明デアリマシテ、
兩省ノ間ニ齟齬ガアルノデアリマス、從ッテ
質問者ハ、實施ニ當リテハ各省區々ニナラ
ナイヤウニ努力セラレタイト云フ希望ヲ述
ベラレタニ對シテ、政府ハ、此ノ計畫ノ內
容ハ未ダ周到ナル相談ヲ盡サレテ居ラナイ
ノデアルカラ、實施ニ當ッテハ愼重ニ協議ス
ルト云フ答辯デアッタノデアリマス、次ハ日
本發送電會社ニ關スル質問デアリマス日
本發送電會社ノ不成績デアッタ所ノ原因ハ
何處ニアルカ、又初メ創立ノ場合ノ目論見
トノ行違ヒハ、ドウ云フ點ニ生ジタノデア
ルカト云フヤウナ質問デアリマシテ、之二
付テハ相當技術的ニ詳細ナル說明ガアッタ
ノデアリマス、要スルニ不成績ノ主要ナル
原因ハ、渴水ニ遭ッテ所要ノ電氣ヲ買フコト
ガ出來ナカッタ、之ヲ補充スベキ火力發電所
ニ必要ナ石炭ハ、又石炭飢饉ニ遭ッテ十分ニ
之ヲ獲得スルコトガ出來ズ、又其ノ石炭ノ
價格ガ非常ニ高ク品質ガ非常ニ低下シタ
ト云フコトガ、電力飢饉ヲ來シ、且會社ノ
不業績ヲ彌ガ上ニモ大ナラシメタ原因デア
ルト云フコトヲ數字的ニ說明セラレテ居ル
ノデアリマス、本年度ノ見込ハドウデアル
カト云フ質問ニ對シマシテハ、若シ平水ヲ
得ルナラバ四分ノ配當ヲシ得ル見込デアル
ト云フヤウナ政府側ノ答辯デアリマス、同
會社ハ最近北海道、樺太ニ炭鑛ヲ買收シタ
トノ噂ガアルガ、其ノ理由ハドウ云フ所ニ
アルカト云フ質問デアリマス、之ニ對シテ、
同會社ハ年々多量ノ石炭ヲ消費スルノデア
リマスカラ、適正炭ヲ確保スル必要ガアル
ノデ適當ナ炭鑛ヲ子會社ヲシテ買收セシ
メタノデアルト云フ答辯デアッタノデアリマ
スガ、質問者ハ、火力發電所ハ寧ロ劣等炭ヲ
利用シ得ルト云フコトノ方ガ長所デアル、特
ニ良イ所ノ適正炭ヲ選ブ必要ハナイト思フ
ト云フ說ヲ述ベラレ、政府トノ間ニ種々意見
ノ交換ガアッタノデアリマスルガ、質問者ハ
滿足ヲ得ラレナイヤウナ狀態デアリマシタ
之ニ對シマシテ第六分科ハ希望決議ヲセラ
レテ居ルノデアリマス、是ハ後段ニ行ッテ御
報告申上ゲマス、其ノ他質問事項ト致シマ
シテハ、在外ニ於ケル貿易仲介機關トシテ、
外務省ト商工省ノ兩省ノ間ノ連絡ガ不十分
デアル、之ヲモット近接ナラシムル必要ガア
ル、日「ソ」漁業條約ニ關スル質問、日米條約、
天津問題、揚子江問題等ノ外務省ニ對スル
質疑應答デアリマス、其ノ他拓務、商工省
關係ノ問題ト致シマシテハ、内外地ノ石炭
增產問題、內外地ノ金增產問題、金密輸出
問題ト云フヤウナモノガ質疑應答セラレマ
シタ、文部省ニ對シマシテハ「アラビヤ」文
化科ノ增設、商船學校ノ增設等ノ問題デア
リマス、農林省ニ對シマシテハ日「ソ」漁業
條約、北洋漁業及膃肭獸保護條約等ニ關ス
ル質疑、早害ニ對スル施設、遞信省ニ對シ
マシテハ厦門、「バンコック」間ノ航路ニ關
スル質疑、其ノ他今囘政府ノ發行シマス報
國債劵ニ付テ、「報國」ト云フ名稱ニ付テノ
質疑ガアリマシテ此ノ債劵ニ報國ト云フ
ヤウナ名稱ヲ附ケルノハ面白クナイト云フ
論者ト、又其ノ質疑ニ對シテ寧ロソレハ差
支ナイト云フ論者トノ兩方ガアッタノデアリ
マイク之ガ詳細ハ速記錄ニ讓リマス、討論
ニ入リマシテ、一委員カラ、此ノ豫算ハ現
内閣ノ對內外諸政策遂行上必要ナル豫算ト
認メ贊成スルト云フ贊成意見ヲ述べラレ
他ノ委員カラハ、對內政治ノ明朗化及國際
關係ノ調整ヲ圖ラレタシトノ希望ヲ以テ贊
成セラレマシタ、又他ノ委員カラハ、三ツノ
希望ヲ述ベラレテ贊成ヲセラレタノデアリ
マス、第一ハ、政府ニ於テ近ク支那ニ使節ヲ
派遣スルコトニ決定セラレタコトハ、事變
處理上正ニ一步ヲ進メタモノデアリ、誠
機宜ニ適シタル處置ト思フ、政府ハ此ノ際
在支諸機關ノ連絡及協調ニ意ヲ須ヒ、以テ
外交ノ統一上萬遺憾ナキヲ期セラレムコト
ヲ望ム第二ハ蔣政權ヲ排擊シ汪政權ヲ
支持スルコトハ擧國一致ノ要望デアリマス、
政府ハ此ノ際適當ノ方法ニ依リ、遲滯ナク
汪政權ニ正式承認ヲ與ヘ、以テ支那民衆ニ
對シ其ノ嚮フ所ヲ昭カニスルト共ニ、列國
ヲシテ速カニ新事態ニ順應セシムルヤウ善
處セラレムコトヲ望ミマス、第三ハ支那
ニ於ケル列國ノ正當ナル權益ヲ尊重スルト
共ニ、其ノ通商貿易ノ進展及經濟的投資ヲ
歡迎スルコトハ、政府ノ屢〓言明セラレタル
所デアリマス、政府バ此ノ際列國トノ懸案
解決ニ一段ノ力ヲ注ギ、以テ國際關係ノ調
整ヲ圖リ、支那ノ經濟的發展ヲ期セラレム
コトヲ望ムト云フ三ツノ希望ヲ述べラレテ、
本豫算ニ贊成セラレタノデアリマス、續イ
テ三案ヲ一括シテ採決ヲ致シマシタ結果、
全會一致ヲ以テ可決致シマシタ、次イデ第
六分科ノ希望決議ヲ付議致シマシタ
希望決議
一政府ハ電力管理法制定ノ趣旨ニ鑑ミ
電氣廳ト日本發送電株式會社トノ關係
ヲ是正シ其ノ機能ヲ十分ニ發揮セシム
トン
政府ハ電力ノ開發ニ努力スルト共ニ
之ニ要スル勞力資材ノ配給ヲ確保シ將
來電力不足ヲ惹起セサル樣遺憾ナキヲ
期スヘシ
ト云フノデアリマス、之ヲ議場ニ諮リ、全
會一致ヲ以テ可決致シマシタ、又此ノ決議
案ハ委員長ヨリ本議場ニ報〓スベシト云フ
コトヲモ可決セラレタノデアリマス、右ニ
對シ遞信大臣ヨリ下ノ如キ言明ガアリマシ
タ、只今ノ希望御決議ニ對シマシテ一言政
府ノ所見ヲ申上ゲマス、電氣廳ト日本發送
電株式會社トノ關係ニ付キマシテハ電力
管理法第三條ノ運營ニ留意シ、發送電會社
ノ知識經驗ヲ十分發揮セシムルヤウ努ムル
ト同時ニ、其ノ關係ニ於テ是正スベキモノ
ハ之ヲ是正シ、電力管理法制定ノ趣旨ヲ十
分發揚セシムル方針デアリマス、從ッテ希望
御決議ノ御趣旨ハ之ヲ尊重シ善處致シタ
イト存ジマス、尙又政府ハ、電氣ガ基礎產業
タル重要性ニ鑑ミ、今後ニ於キマシテモ努メ
テ電力ノ開發ヲナシ、勞力、資材ノ配給ヲ
確保シ、御決議ノ如ク電力不足ノ事態ヲ再
ビ惹起セザルヤウ萬遺憾ナキヲ期スル積リ
デアリマス、ト云フ遞信大臣ノ言明ガアリ、
又總理大臣ヨリモ遞信大臣ノ言明ヲ是認〓セ
ラレ、政府ニ於テハ最善ヲ盡スト云フ總理大
臣ノ御言明ガ附言セラレマシタ、之ヲ以テ
私ノ報告ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=104
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105・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 質疑ノ通〓ガゴ
ザイマス許可ヲ致シマスゝ松本烝治君
〔松本烝治君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=105
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106・松本烝治
○松本烝治君 私ハ只今委員長カラ御報〓
ニナリマシタ總豫算追加案中ノ、遞信省所
管日本發送電株式會社ニ對スル配當補給金
二千三百七十八萬圓餘カト記憶シテ居リマ
スルガ、此ノ歲出ニ關シマシテ質問ヲ致シ
タイノデアリマス昨年ノ夏以來所謂渴水
ニ依ル電力不足ノ問題ガ起リマシテ我々
ノ日常生活ニ名狀スベカラザル不便ヲ與
へ、又產業ノ上カラ申シマシテハ、之ニ對
シテ何億ト見テ宜シイカ眞ニ計算スルコト
ノ出來ナイ程ノ大キナ損害ヲ與ヘタト云フ
コトハ、今更茲ニ申述ベル必要モナイコト
ト思ヒマス、當時此ノ問題ガ起リマシテ、
怨嗟ノ聲將ニ起ラムトスルニ當リマシテ、政
府カラ發行サレテ居リマスル週報ト云フ靑
イ小册子ガアリマスルガ、其ノ小册子中ニ、
電氣廳ノ名ヲ以テ辯明ミタイナコトガ載ツ
テ居ッタノデアリマス、ソレヲ見マスト
此ノ不足ハ渴水ニ因ッテノミ生ジタノデア
ル、而シテ幸ニ此ノ電力管理ナルコトガ行
ハレテ居ッタカラ、此ノ位デ濟ンダノデア
ル、若シ此ノ電力管理ガ行ハレテ居ラナカッ
タラ大變ナコトニナッタノデアラウ、ト云フ
ヤウナコトガ載ッテ居ッタノデアリマス、私
ハ此ノ强イ自信ヲ以テ表明セラレタル意見
ニ對シテ、唯感嘆スルノミデアッテ、所謂開
イタロガ塞ガラナイノデ、何等之ニ對シテ
議論ヲスル考ハナクナッタノデアリマス、往
來ヲ步イテ居ル人ヲ突キ飛バシマシテ大怪
我ヲサセマシテ、曰クオ前ミタイナ間拔ケ
者ハ、突キ飛バシテヤラナケレバ自動車ニ
轢カレテ死ンデ居ッタラウ、有難ク思ヘ、ト
云フヤウナコトヲ申スノハ、是ハ市井ノ無
賴漢ガ恫愒虚勢ヲ張ッテ、以テ自己ノ責任ヲ
囘避セムトスル時ニ爲サレル所ノ言デアリ
やく、私ハ此ノ電氣廳ノ辯明ヲ以テ決シテ
之ト同一視スル譯デハナイ、斯樣ナ陋劣ナ
ル動機ニ依ッテ斯クノ如キ辯明ガサレタト
ハ思ヒマセヌ、必ズヤ確乎タル自信ニ基イ
テ斯ウ云フコトヲ言ハレテ、國民ニ安心ヲ
サセヨウト云フヤウナ御趣意デアッタカト
思フノデアリマス、併シナガラ其ノ所謂高
飛車的ノ論法ニ至ッテハ、二者ノ間ニ一脈通
ズル所ノ趣ガアルノデアリマシテ、私ハ斯
クノ如キ議論ニ對シテ對抗ヲスルダケノ勇
氣ヲ持タナイ、爾後口ヲ結ンデ電力不足問
題ニ付テ何等申シマセヌ、此ノ議會ニ於テ
モ何モ申シマセヌシ、又今日モ亦、斯ウ云
フ電力不足ノ問題ト云フヤウナ濟ンデシマッ
タコトニ付テ何等申サウトハ思ヒマセヌ、
唯併シナガラ、此ノ日本發送電株式會社ノ
運營宜シキヲ得ナカッタト見エマシテ、國庫
窮乏ノ際ニ、二千三百八十萬圓バカリノ補
給金ノ支出ヲ必要トセシメタト云フコトニ
付キマシテハ、是ハ恐ラクハ政府ト雖モ責
任ヲ御感ジニナルノデハナカラウカト思ヒ
マシテ、此ノ點ニ付テ少シバカリ伺ッテ見タ
イノデアリマス、只今ノ委員長ノ報告ニ依
リマスト、發送電會社ノ不始末ト申シマス
カ、ウマク參リマセヌカッタコトハ、渴水ニ
因ル所甚ダ大デアルト云フヤウナコトデ、
計數ヲ擧ゲテ豫算委員會ニ於テ御說明ガ
アッタサウデアリマス、私ハ不幸ニシテ之ヲ
伺ッテ居リマセヌガ、此ノ會期切迫ノ際ニ、
此ノ本議場デモウ一遍左樣ナコトヲ伺フ必
要ハ私ハナイト思フ、渴水ハ勿論斯クノ如
キ違算ヲ生ジタコトニ付テノ一ツノ原因デ
アッタト云フコトハ、勿論認メルノデアリマ
ス、併シナガラ渇水ニ依ッテ賣ル電力ガ非常
ニ減ッタトカ云フ、何カチヨット今伺ッタカト
思ヒマスガ、賣ル電力ガ減リマスレバ買フ
電力モ減ルノデス、發送電會社ノ水力電氣
ハ主トシテ他ノ電力會社カラ購入シテ居
ル電力デアルト思ヒマス、渴水ニ依ッテ收入
ヲ失フノハ、水力發電所ヲ持ッテ居ル電力會
社ガ大イニ收入ヲ失ッタニ違ヒナイ、發送電
會社ハソレヲ取次イデ賣ル、其ノ取次ノ利
益ハナクナッタカモ知レマセヌガ、別ニ大シ
テ直接ニ利益ヲ失フ譯ハナイ、唯渴水ニ依ッ
テ餘計ノ火力ヲ焚カナケレバナラナカッタ
ト云フコトニ付テハ勿論損害ガアッタト思
ス、是ハ私ハ否認ハ決シテ致シマセヌ、
體其ノ大キナ茲ニ違算ガ出來タノデアリマ
ス、確カ電力管理案ノ出マシタ時分ノ御說
明ニ依ルト、或ハ其ノ後ノ目論見書デアリ
マスカニ依ルト、此ノ發送電會社ハ、設立
サレマシタ第一年度ニ於テ六分ノ配當ヲス
ル、第二年度ニ六分五厘、第三年度ガ又六
分五厘、其ノ後ハ七分トカ云フヤウナコト
ニナッテ居ルノデアリマス、處ガ第一年度ニ
於テハ四分ノ配當ヲ辛ウジテシタヤウデア
リマス、今第二年度ニ至ッテ二千數百萬圓
ノ補給ヲ要スルヤウナ狀態ニナッタノデア
リマス、之ヲ當時ノ豫想ト比較致シタナラ
バ、恐ラクハ其ノ違算ノ額ハ五六千萬圓ニ
或ハ上ッテ居ルノデハナイカ、數千萬圓ノ大
キナ缺損ガ出テ來タ、豫算ニ比シテサウ云フ
大キナ違ヒガ出テ來タノデアルト思フノデア
リマス、斯クノ如キ大キナ違ヒハ何デ一體出
タノデアルカ、私ハ是ハ殆ド一ニト言ッテハ言
ヒ過ギカモ知レマセヌガ、主要ナ原因ハ石炭ノ
價格ノ喰違ヒデアル、或ハ炭價昂騰、ト云
フヤウナ言葉ヲ使ッテ宜シイカモ知レマセ
ヌガ、炭價ガ〓騰スルコトハ當リ前デア
ル、唯電力管理案ヲ作ラレタ人々ハ炭價
ガ下ルト思ッテサウ云フ計算ヲシテ居ラレ
ク、玆ニ於テ大ナル喰ヒ違ヒガ出來ルコトハ
當然デアリマス、デ玆ニ一言シナケレバナ
ラヌコトハ炭質ノ低下ト云フヤウナコト
ヲ頻リニ矢張リ言ハレテ居ルヤウデアリマ
ス炭質ノ低下ト云フノハ卽チ炭價ガ高イ
ト云フコトヲ意味スル、其ノ以外ニ何等ノ
意味ハナイト私ハ思フノデアリマス、電力
會社ガ石炭ヲ買ヒマスノハ、之ヲ積ンデ置
イテ眺メテ喜ブ爲デモ何デモナイ、焚イテ
火力ヲ得ル爲デアリマス、サウナリマスレ
バ、例ヘバ六千「カロリー」ノ石炭ヲ二十圓
デ買フ積リデ居ッタ、ソレガ不幸ニシテ其ノ
石炭ガ三千「カロリー」デ以テ二十圓デアッ
タトシマシタナラバ、ソレハ炭價ハ豫想ノ
倍以上ニナッテ居ルモノト言ッテ宜シイノデ
アリマス、何トナレバ石炭ハ嵩ガ多クッテ
取扱ハ不便デアッテ、而シテ惡クスレバ蒸汽
罐ニ損害ヲ與ヘル、サウ云フヤウナ石炭デ
同ジ火力ニシカナラヌト云フノデハ、所謂
二十圓デ三千「カロリー」ノ石炭ハ、六千「カ
ロリー」二十圓ノ石炭ト比較スレバ倍以上
ノ高イモノデアリマス、私ノ聞イテ居ル所
ニ依リマスト、相當サウ云フ惡イ石炭ヲ澤
山御買ヒニナッタ、是ハ所謂此ノ電力不足問
題ノ言譯ニ頻リニサウ云フヤウナコトヲ言
ヒ觸ラシテ居ラレタヤウデアリマス、ソレ
ハ卽チ非常ナ高イ石炭ヲ買ッタト云フコト
ヲ自白シテ居ルノニ外ナラナイト思フノデ
アリマス一體政府ノ所謂物價牴制ト云ヒ
マスカ、其ノヤリ方ハ甚ダ不徹底ノヤウニ
思フ、酒ハ二升二圓ト云フコトナラバ、水
ヲ半分以上モ割ッタヤウナ酒デモ宜シイ、是
ハ何カ近ク直ルサウデアリマスガ、今迄ハ
サウナッテ居ル、是ニ於テカ所謂金魚酒トカ
云フモノガ澤山流行シマシテ、金魚ガ游イ
デモ危險ハナイ酒デアルサウデアリマス
菓子ハ前ト比べマストズット小サクナッタ、
半分位ニナッテシマッタ、値段ハ同ジデスガ、
大キサガ半分ナラバ値段ガ倍ニナッタト同
ジデアラウト思ヒマス、石炭ニ付テモ全ク
同ジコトデ、石炭中ニアリマス所謂「ボタ」
トカ「ハサミ」トカ云フヤウナモノヲ選鑛ヲ致
シマシテ、篩ヒ出シテシマッテ石炭ヲ賣ルノ
ガ當リ前デアリマス、ソレヲ篩ヒ出サナイ
ノミナラズ、前カラ溜ッテ居ッタヤツヲ中ヘ
入レテ賣ル、甚ダシキニ至ッテハ外ノ所カ
ラ「ボタ」ヲ賣ッテ來テ、サウシテソレヲ混入シ
テ賣ル、左樣ナコトデアッテモ、一「トン」幾
ラト云フ値段サヘ宜ケレバ差支ガナイノダ
ト云フコトヲ御認ニナッテ居ッタノデハナカ
ラウカ、發送電會社ハ國策會社デアルカ
ラ、闇相場ノモノナドハ買へナイトカ何ト
カ云フヤウナコトガ出テ居ッタノデアリマ
スソンナ石炭ヲ喜ンデ買ッテイラッシヤル
カラ、是ハ闇相場以上ニ石炭ヲ高ク御買ヒ
ニナッタモノト思フ、此ノ石炭ノ豫定額ト實
際ニ買ハレタ價格トノ間ノ大キナ喰ヒ違ヒ
ガ、卽チ今囘ノヤウナ非常ナル大キナ穴ヲ
拵ヘタ主要ナル原因デアルコトハ是ハ御
否認ハ出來マイト思ヒマス、然ラバ石炭ノ
値段ニ付テノ御豫定ハ、當時ドウ云フヤウニ
考ヘラレテ居ッタノカ、是ハ貴衆兩院デ擧ツ
テ、間違ッテ居ルソンナ安イ積リデ居ッタ
ラ大變ナ見當違ヒデアルト云フコトヲ、皆
申シテ居ッタ、私モ亦之ヲ本院ニ於テ初メテ
電力管理案ガ上程サレマシタ時ニ此ノコト
ヲ質問デ申シテ居リマス、恐縮デアリマス
ルガ、チヨットソレヲ讀マシテ戴キマス、「此
ノ新シク出來マスル會社ノ將來ノ經營ニ付
テノ計算ナドモ、實ニ杜撰極マルモノノヤ
ウデアリマス、是ハ長ク申上ゲル必要モア
リマセヌケレドモ、例ヘバ明年カラハ石炭
ガ十四圓デ買ヘルト云フヤウナコトニ目論
見書ニ書イテアル、又暫クスルト十一圓ニ
ナルト云フヤウニ書イテアルヤウデアリ
マス、併シ今時二十圓以下デ契約ガ若
シ出來マスレバ、工場渡シノ石炭ガ假令
粗惡ナル發電所用トシマシテモ二十圓以下
デ若シ契約ガ出來タラ大成功デアラウト思
ヒマス、明年ハドウナルカ、明年ニ至ッテ俄
カニ十四圓ニ下ルナント云フコトハ豫想モ
出來マセヌ、商工大臣ハ此處ニ居ラレマセ
ヌガ、如何ニ商工大臣ト雖モ來年ハ石炭ハ
十四圓位ニナルデアラウナドト云フコトハ
決シテ仰セラルヽコトハ出來マスマイ又
大藏省ノ方モ此ノ每年數十億ノ國債ヲ出ス
ヤウナ時代ニ於キマシテ、來年頃カラハ「デ
フレーション」ガ起ルノデアル、一般物價
モ下ルデアラウナドト云フコトハ先ヅ御言
ヒニナルマイト思ヒマス、サウ云フ無責任
ナ計算ヲ目論見書トシテ出サレタ、唯驚ク
ノ外ハナイノデアリマス、電力會社ノ必要
トスル石炭ハ一年ニ確カ五百萬「トン」近ク
デアリマス、假ニ十四圓ト云フ計算ガ二十圓
ニナリマシタナラバ直チニ五六、三千萬
圓ト云フ違ヒガ出テ來ルノデアリマス、三
千萬圓モ餘計ニ經費ガ要リサウナモノヲ、
少イコトニシマシテ、サウシテ何分ノ配當
ガ出來ルカラ大丈夫ダトカ何トカ云フ御說
明ハ、以テノ外ノコトデアルト思ヒマス」、
斯樣ニ當時申シテ居ッタノデアリマスシ、伺
フ所ニ依リマスト、會社ノ出來マス時ノ目
論見書ハ、十四圓ヨリハ高ク何カ石炭ガナッ
テ居ルサウデアリマス、併シ矢張リ十圓臺
デアルヤウニ聞イテ居リマス、斯クノ如キ
コトハ想像ヲ絕シタ無茶苦茶ナ計算デアリ
マーハ斯ウ云フ好イ加減ナモノヲ出サレマ
シテ、サウシテ是デモウ配當ガ出來ルノデ、
政府ニ御迷惑ハナイト云フヤウナコトデ出
サレテ置イテ、斯ウ云フ迷惑ナコトガ出來
テ、是ハ政府ニ於テハ、如何ナル政府デア
リマシテモ多少ノ責任ハ御感ジニナルコ
トカト思フノデアリマス其ノ點ヲ伺ハウ
ト實ハ思ッテ居ルノデアリマス、或ハ言ハレ
ルカモ知レマセヌ、此ノヤウナ戰時ノ非常
狀態ニ於テハ、是ハ豫想ハ出來ナイコトデアッ
タト云フヤウナコトヲ言ハレルノカモ知レ
マセヌ、ガソレヲ言ハレルコトガ出來マイ
ト思フノハ、此ノ電力管理案ガ議會ニ提出
セラレマシタ時ハ、支那事變ノ戰ヒ正ニ酣
ナル秋デアリマス所謂東亞新秩序ノ建設
ノ大事業ガ、一年ヤ二年デ簡單ニ片附イテ
平和ナ安樂ナ時代ニナルナドト云フコトハ、
誰モ考ヘナカツタラウト思フノデアリマス、
私ハ不明ニシテ當時支那事變ガ斯樣ニ長ク
掛ルトハ思ヒマセヌデシタ、併シナガラ支
那事變ニ次グモノハ必ズアルノダ、支那事
變ガ片附イタカラトテ平和ニハ迚モナラナ
イ、ノミナラズ惡クスレバ大イナル戰爭ナ
ドガ之ニ次イデ來ルベキモノデアラウト
云フコトヲ考ヘマシテ、實ハ電力管理案ノ
委員會ニ於テ其ノ事ニ付テ質問ヲ致シマシ
タ、速記ヲ停止シテノ質問デアッタト記憶シ
テ居リマス、詰リサウ云フヤウナ時代デアル
カラ、サウ云フ時代ニ斯ウ云フ變革ヲスル
コトハ危險デハナイカ、平時ニ於テ斯ウ云
フコトハヤルベキコトデ、斯ウ云フ此ノ戰
時狀態ガドウナルカ甚ダ危イ時ニヤルノハ
間違デハナカラウカ、譬ヘテ申セバ、戰サ
ヲシテ居ル、戰鬪ヲシテ方ニ酣ナル秋ニ、部
隊ノ編制替ヲスルヤウナコトデ、ソンナコ
トハドンナ人デモシナイコトデハナカラウ
ト云フ意味ノ質問ヲ致シマシタ、之ニ對シテ
當時ノ遞信大臣以外ニ於キマシテモ、他ノ
確カ國務大臣モ、イヤ左樣ニ心配シナイデ
宜シイ、ドウ云フ譯デ心配シナイデ宜イノ
カ分リマセヌガ、シナイデ宜シイト云フコト
デ斷言サレタヤウナ次第デアリマス、私ハ此
ノ今日ノ非常狀態ト云フヤウナコトデハ言
譯ハドウモ出來マイドウシテモ是ハ最初
カラ殆ド故意ニ近イ重大ナル過失ニ依ッテ
計算違ヒヲサレテ居ッタ其ノ祟リガ此處ニ覿
面ニ來タモノニ外ナラヌト云フコトヲ痛感
シテ居ルノデアリマス、或ハ此ノ百億ノ豫算
ニ二千數百萬圓位ハ大シタモノデハナイト云
フヤウニデモ、其ノエライ自信ノ强イ方々ガ
多イノデアリマスカラ、左樣ナ小サイ額ノ
コトヲ愚圖々々言フナト云フヤウナ御叱リ
ヲ受ケルカモ知レマセヌガ、私ハ百億ノ豫
算デアルガ故ニ此ノ際ノ二千數百萬圓ハ實
ニ困ルノデアルト云フコトヲ言ヒタイノデ
アリマス、(拍手)一體此ノ百億ノ豫算、總豫
算ダケデ純計百億、各特別會計豫算ヲ入レ
マシタナラバ恐ラクハ純計百五六十億ニナ
ルカト思ヒマス、斯樣ナ大キナ豫算ハ前古
未曾有デアリマスガ、之ヲ背負ッテ參ルコト
ハ私ノ見ル所デハ今ノ日本ニ取リマシテ
ハ隨分ノ重荷デアルト考ヘルノデアリマス、痩
馬ニ百貫日ノ物ヲ載ッケテ辛ウジテ山ヲ登ツ
テ居ルト云フヤウナ狀態、此ノ際此ノ百貫目
ノ荷物ノ中カラ十匁デモ百匁デモ宜イ、
少シ宛デモ減ラシテ貰ヒタイ、此ノ上チヨッ
トデモ之ニ載ッケタナラバ、モウ馬ガ或ハ躓
イテ倒レテ大變ニ困ッタヤウナコトガ出來ル
虞ハナイカト非常ニ憂慮シテ居ルノデアリ
やく。私ハ此ノ內閣ガ出來マシテ、新總理
大臣及新大藏大臣ヲ迎ヘマシタ時ニハ是
ハ必ズヤ其ノ豫算ヲ、俄ニ變更モ時ガナイカ
ラ御出來ニナルマイガ、併シ十分ニ考ヘテ
實行豫算ヲ作ッテ、出來ルダケノ節約ヲス
ル、何億ノ豫算ヲ減ラス積リデアルト云フ
ヤウナ御聲明ノ出來ルコトト實ハ期待シテ
居ッタノデアリマス、不幸ニシテ大藏大臣ハ、
加へ算ハ御承知デアルガ引キ算ハ御承知デ
ナカッタヤウニ見エテ居タ、色々ナ御事情モ
アリマセウガ、甚ダ殘念ニ感ジテ居リマシ
タガ、昨日此ノ議場ニ於キマシテ、稅制改
革案ニ關聯シテノ豫算ノ執行ニ付テ、非常
ナ覺悟ヲ以テ大節約ヲ爲サルト云フヤウニ、
私ノ耳ニハ聽エタ御言明ガアッタノデ大イ
ニ喜ンダ、矢張リ引キ算ヲ能ク心得ラレテ
居ルコトト思ヒマス、ドウゾ此ノ際、アノ
額ハ六千二百萬圓ト云フヤウナ額デアッタ
ヤウデアリマスガ、六億二千萬圓位總豫算
カラ御引キ、引キ算ヲナサッテ戴キタイト思
フノデアリマス、若シアノ稅革案ノ衆議院
ノ修正ニ依ッテ斯クノ如キ御言明ヲ得タト
シマスレバ、是ハ意外ノ儲ケモノデアリ
マシテ、アノ稅革案ノ修正自體ガ良イカ惡
イカ私ニハ能ク分リマセヌガ、若シ餘程惡
イ改正デアッタトシテモ、此ノ御言明ヲ得タ
ダケデ私ハ其ノ惡カッタコトヲ償フニ足ルト
思ッテ、昨日ハ喜ンダ次第デアリマス、是ハ
少シ餘計ナ脫線ヲ申シテ甚ダ相濟ミマセヌ
ガ、左樣ナル危イ時期ニ於キマシテ、二千
數百萬圓ノ重荷ヲ加へマスト云フコトハ
百貫目ノ荷物ヲ背負ッテ居ル馬ニ更ニ二百四
十匁バカリノモノヲ載ッケルト云フコトニナ
ル、是ハ相當考ヘテ戴カネバナラヌコトト
思フノデアリマス、左樣ナ意味ニ於キマシ
テ、私ハ此ノ責任タルヤ相當重イモノデア
ルト考ヘテ居ルノデアリマス)而シテ更ニ
進ンデ考ヘマスルト、是ハ發送電會社ノ補
給金ニ依リマシテ國庫ニ被ラシメタル損害
ニ付テノ責任デアリマスルガ、會社ノ株主
ニ對シテ矢張リ責任ヲ感ゼラレナケレバナ
ラヌコトト思フノデアリマス、卽チ發送電
會社ヲ作ラレル際ニハ、政府ハ只今申シタ
ヤウニ初年度カラ六分ノ配當ガ出來マシテ、
六分五厘トナリ、七分トナルト云フヤウナ
目論見書ヲ示シテ、印刷ヲシテ遞信大臣タ
ル人ノ設立委員長ヲ初メトシテ御歷々ノ名
ヲ列シテ之ニ書キマシテ、サウシテソレヲ
廣ク世間ニ公示サレテ株式ヲ募ラレタノデ
アリマス、一體此ノ電力事業ナルモノハ
安全ナル放資ノ目的トシテ認メラレテ居ル
モノデアリマシテ、新規ナドウナルカ分
ラヌヤウナ仕事トハ全ク性質ガ違フノデア
リマス而モ發送電會社ノ仕事ハ新シイ
電力ヲ拵ヘルノデハナイノデ、從來ノ電力
會社ガ持ッテ居ッタ設備ヲ、之ヲ取ッテ來テソ
レデ直グ營業ヲスルノデアリマス、サウシ
マスレバサウ云フ會社ノ計算ガソンナエ
ライ喰ヒ違ヒガアラウトハ誰モ考ヘナイ
ノハ當リ前カモ知レマセヌ、玆ニ於テカ、確
カ新シイ株主ハ一億御募リニナッタカト思ッ
テ居リマスガ、此ノ一億ノ株ハ直チニ滿株ト
ナリ、皆欣々然トシテ之ヲ持ッタ譯デアラウ
ト思ヒマス、而シテ拂込ヲ爲シテ偖六分ノ配
當ヲ待ッテ居ルト四分シカ來ナイ次ニハ
六分五厘カニナル筈ノヤツガ政府ノ補給ヲ
得テ僅カニ四分シカ來ヌト云フコトデアリ
マス、斯樣ニナリマシテハ如何ニ澁イ顏ヲ
シテモ追ッ付クマイト思ノデアリマス、私
ハ斯クノ如キ設立ノヤリ方ハ、大衆ニ對ス
ル詐欺ノヤウナモノデアルト思フノデアリ
やく、之ニ付テハ政府ハ責任ヲ感ゼラレテ
然ルベキモノト思フノデアリマス、其ノコ
トハ私ハ旣ニ前ノ審議ノ際ニ此ノ議場デ申
シテ居ルノデアリマス甚ダ恐縮デアリマ
スガ、又少シ讀マシテ戴キマス、「今度ノ商
法改正法、是ハ當院ヲ既ニ通過シタモノデ
アリマスルガ其ノ第四百九十條ニ會社ノ
發起人トカ取締役トカ云フヤウナ者ガ會
社設立ノ際又ハ增資ノ際ニ重要ナル事項ニ
付テ」、誤植ガアリマスガ、「重要ナル事項ニ
付テ誤ッタル記載ノアル目論見書ヲ作ッテ
之ヲ行使シマスト五年以下ノ懲役、五千圓
以下ノ罰金ニ處セラレルコトニナッテ居リ
そう、此ノ商法ノ規定ガ適用サレ實施サレ
タ後ニ於キマシテ、會社ノ發起人ガ、若シ
此ノ度遞信省デ御作リニナッタヤウナ目論
見書ヲ作ッテ御出シニナルト、直チニ重大ナ
ル刑罰ニ觸レルコトニナルノデアリマス、
商法改正法デ何ガ故ニ斯クノ如キ立法ヲ致
シタカト申シマスレバ、無責任ナル目論見
書ヲ作ッテ、設立當初カラ直チニ配當ガ出來
ルトカ、何年目ニ一割ノ配當ガ出來ルト云
フヤウナ、好イ加減ノコトヲ目論見書ニ載セ
マシテ之ヲ公示スル、是ハ一般公衆ニ對スル
詐欺デアル、故ニ重罰ヲ以テ之ニ對サナケ
レバイカヌト云フ趣意デ此ノ規定ガ設ケラ
レテ居ルノデアリマス、私ハ遞信省デ御示ニ、
ナッタ目論見書ナドヲ見マシテ、餘リノコト
デ慨嘆ニ實ハ堪ヘナイノデアリマス」ト云フ
コトヲ申シテ居リマス、不幸ニシテ此ノ目論
見書ノ大ナル出鱈目ノモノデアッタト云フ
コトハ明瞭ニ今日ナッタ次第デアリマス、斯
クノ如クニシテ、一億ノ新シイ株主ニ對シテ
多大ノ損害ヲ掛ケ又將來ニ於テモ掛ケラ
レルコトニナルト思ヒマスガ、是ハ政府ハ
何カ責任ヲ感ゼラレルコトト思フノデアリ
そく、更ニ進ンデ電力會社ガ持タサレタ株
ニ付テハ、政府ハ一層重イ責任ヲ感ゼラレ
ナケレバナラナイト思ヒマス、卽チ新シイ
株主ハ出鱈目ナ目論見書、政府ハマサカサ
ウ出鱈目ヲシマイト思ッテデハゴザイマセ
ウガ、瞞サレテ金ヲ出シタノデ是ハ仕方ガ
ナイカモ知レマセヌ瞞サレタ人間ガ餘リ
利巧デナイト云フコトデアルカモ知レマセ
ヌガ、電力會社ニ至ッテハ持ッテ居ッタ財
產ヲ取上ゲラレマシテ、之ニ換ヘテ此ノ
株ヲ貰ッタノデアリマス、サウナリマスト
電力會社ニ對シテハ一層責任ヲ强ク感ズル
必要ガアルノデハナカラウカト思ヒマス
加之、此ノ電力會社ノ財產ヲ取上ゲマシテ、
之ニ對シテ發送電ノ株ヲ與ヘルニ當ッテノ
評價ト云フモノハ、實ニ苛酷ナル評價ヲシ
タノデアリマス、少シ細カイコトニ涉リマ
スガ、簡單ニ述ベサセテ戴キマスガ、電力
會社ガ取上ゲラレマス財產ノ評價ハ二本建
ニナッテ居リマス、一ツハ其ノ財產ノ建設
費カラ相當ノ減損額ヲ引イタ額デアル、他
ノ一ツハ會社ガ過去十年間ニ其ノ財產カラ
得タ所ノ純益金、ソレヲ一定ノ利率デ還元
致シマシテ、、サウシテ出テ來ル所ノ元金ノ
額其ノ二ツヲ合セマシテー一デ割ッタ、ソレ
ヲ評價額ニスルト云フコトニ、法律ハシテ
居ルノデアリマス、此ノ第一ノ方ノ評價ニ
付テモ實際ハ隨分ヒドイコトガアッタヤウデ
アリマス、マア聞キマシタ一ツノ、タッダ一
ツノ例ヲ申シマスレバ、或會社デハ市街地
ニ高壓線ヲ持ッテ居ル、市街地ノ高壓線デア
ルカラ高壓線ノ下ラズット平行線的ニ土地
ヲ買收シテ持ッテ居ッタ、併シナガラ其ノ土
地ヲ買收スルニ當ッテ、二ツノ直線ヲ眞ッ直
グニ引イタヤウニ買收ハ出來マセヌ、必ズ
ヤ喰ミ出シテ居ル點ガ澤山アル譯デアリマ
ス、之ヲ發送電ニ出資セシメルニ當ッテ、政府
ハ何ト云ハレタカト言フナラバ、喰ミ出シ
タヤウナモノハ要ラナイカラ其ノ眞ッ直グ
ナ所ダケヲ寄越セ、値段ハドウカト云フト、
是ハ其ノ面積デ割當テテ宜イノダ、丁度殿
樣ガ·······ト申シテハ甚ダ失禮デアリマスガ、
魚屋カラ魚ヲ買ヒマシテ、オ刺身トカ燒魚
ノ良イ所ダケヲ取ッテシマッテ後ハ骨ヤ何
カハ持ッテ歸レ、目方デ代ハ差引クゾト云フ
ヤウナ話デアリマス、是ハドウモ少シ私亂
暴ト思ヒマスガ、人民ハ泣キ寢入ダッタヤウ
デアリマスガ、マアソンチ工合ニ隨分ヒド
イノデアリマスガ、ソレヨリモット一番ヒド
イノハ何デアルカト云フト、今ノ還元ノ方
デアリマス、今ノ還元ト申シマスノハ、會社
ガ其ノ財產カラ利益ヲ得テ居ツタ、其ノ利益
額ガ、例ヘバ一年ニ八百萬圓ノ利益ガアッタ
トシマスレバ、ソレヲ八分ノ金利デ、利率
デ還元シマシタナラバ、元金ハ幾ラニナルカ
ト云フト、一億ニナリマス、八百萬圓ヲ割ル
ノ百分ノ八デ卽チ一億圓ニナリマス、併シ
ナガラ之ヲ四分デ還元シマシタナラバ二億
ニナルノデアリマス、此ノ還元ノ利率ト云
フモノハダカラ非常ニ重要ナコトデアリ
マス、仍テ私ハ此ノ案ノ審議ノ際ニハ、此
ノ還元ノ利率ヲ政府ガ勅令デ決ヌルト云フ
コトニナッテ居ルノハ宜シクナイカラ、須ク
是ハ法律ニ、四分ナリ五分ナリ幾ラデモ宜
シイガ、適當ナル所ヲ書クガ宜シイ、一體
此ノ還元ノ利率ト云フモノハ、其ノ金ヲ貰ツ
テ、ソレヲ投資シテ、同ジ收入ガアルト云フ
額ノ爲ノ還元ノ率デアルカラ、其ノ還元ノ
率タルヤ、市場ニ出シテソレダケノ利〓ニ
ナル、サウ云フ率デナケレバナラヌ、鐵道
國有法ノ時ニハ、ソレガ五分デアッタノデア
リマス、今ノ時代チラバ恐ラクハ四分ガ適
當デアラウト思フノデアリマス、是ハドウ
モ勅令ニスルト危ナイ、斯ウ云フ不信用ナ
當局ニハ任セラレナイト私ハ思ッタノデアリ
マスガ、ドウシテモ讓ラレナイノデ到頭其
ノ儘勅令ト云フコトニナリマシタ、仍テ私
ハ其ノ委員會ノ最後ノ時ニ希望決議ノ案ヲ
提出シタノデアリマス、ソレハドウ云フコ
トカト申シマスト、「日本發送電株式會社法
第九條第三項ノ規定ニ依リ勅令ヲ以テ同條
第一項第二號ノ一定ノ利率ヲ定ムルニ當リ
テハ强制出資ニ對スル完全補償ノ趣旨ニ基
キ日本發送電株式會社ノ事業經營上ノ便宜
ヲ偏重スルノ弊ニ陷ルコトナク一般市場利
率ニ範リテ公正妥當ナル利率ヲ定ムル樣留
意スルコト」、斯樣ナ希望決議ヲ提出致シマ
シテ、滿場ノ御一致ヲ得タノデアリマス、
勿論希望決議ナルモノハ法律上何等效力ノ
ナイコトハ言フ迄モアリマセヌ、ダカラ希
望決議ガアッタニモ拘ラズ、政府ガ其ノ直
後ニ於テ七分ト云フヤウナコトニ御決メニ
ナッタ、七分ナント云フ利率ハ考ヘラレナ
イ、公債ヲ持チマシテモ、社債ヲ持チマシ
テモ、餘程怪シイ會社ノ株デモ持タヌ
限リハ七分ノ利廻リニナリマセヌ、サウ云
フ無法ニ高イ利率ヲ御決メニナッタコト
ハ此ノ希望決議ノ趣旨ニ全然反シテ居リ
マスガ、併シ是ハ私ハ法律的ニハ何モ效力
ガナイ當時本會議ニ於テモ報〓サレテ居
リマス、諸君モ此處デ御聽キニナッタ譯デ
アリマス、是ハドウモ仕方ガナイト思ヒマ
スルガ、此ノ希望決議ヲ提出シテ、其ノ理由
ヲ說明シタ場合ニ、當時遞信大臣ハ何ト言
ハレタカト云フト、御趣旨ヲ諒トシタノデ
アリマス、此ノ御趣旨ニ副フヤウニ大イニ
努力スルト云フヤウナコトヲ言ハレタノデ
アリマス、斯クノ如キコトヲ言ハレテ、其
ノ舌ノ根ノ未ダ乾カザルニ當ッテ、七分ト云
フコトデ案ヲ御出シニナッテ、委員會ト云フ
ノハ是ハ傀儡的ノモノデアリマスカラ、ソコ
ヲ通シテ、到頭七分ト云フコトニナスッタ、
此ノ爲ニ電力會社ノ被ッタ損害ハ大變ナモ
ノデアラウト思ヒマス、併シ斯ウ云フコト
ヲ申スノハ私ガ騙サレタト云フコトヲ自白
スルノデ甚ダ以テオ恥カシイノデアリマス
ガ、滅多ニダカラ人ノ言フコトヲ信用スル
譯ニ行カヌト云フ〓訓ヲ之ニ依ッテ得タ譯
デアリマス、何セヨ七分ト云フ還元率ヲ
決メテ居ラレル以上、何カ言譯ガ少シ出來
ルトスレバ、此ノ會社ノ株ガ七分ニ配當ガ
出來ルト云フコトニナレバ、其ノ七分ノ配
當ハ安全ニ貰ヘルナラバ、是ハ幾ラカ言譯
ガ出來ルト思ヒマスガ、矢張リ四分デアル
何時ニナッタラ七分ガ出來ルカ、後デ伺ッテ
見ヨウト思ヒマス、斯ウ云フコトニ付テ政
府ハ責任ヲ感ゼラレルノガ當然カト思ヒマ
スガ、先ヅ如何デアルカヲ伺ヒタイノデア
リマス、最後ニ簡單ニ申シマスルノハ、伺
ヒマスルノハ將來ノ見込デアリマス、只今
ノ委員長報告ニ依リマスト、來期ハ四分ノ
配當ガ出來ル、自力デ出來ルト云フコトデ
アリマス、是ハ恐ラクハ先ヅ大體相當當然
ノコトト思ヒマス、何トナレバ今度ノ期、
卽チ十月カラ三月迄ニ至ル所ノ期ガ是ガ渴
水期、冬季渴水期、此ノ時ニ非常ニ澤山ノ
石炭ヲ焚ク、四月一日カラ九月三十日迄ノ
期ハ、是ハ殆ド餘リ多クノ石炭ヲ要サナイ
期デアリマス、仍テ此ノ來期ニ四分ノ配當
ハ或ハ出來ルカモ知レヌト思ヒマスルガ、
來々期ニハ一體ドウチルノカ、是ハ渴水期
ガ又來ル是ハ未曾有ノ旱魃ナント云フコ
トデハ濟ミマセヌ、每年ノ渴水期、今度ノ
期ニ此ノ大キナ穴ガ出來マシタノハ是ハ當
リ前ナンダ、詰リ渴水期ナンダ、渴水期ニ
石炭ヲ大イニ焚カナケレバナラヌト云フ
コトハ是ハ當然ノコトデアル仍テコンナ
大キチ穴ガ出來タト云フコトヲ先程申シタ
次第デアリマス、ソコデ來々期ニハ一體ド
ウナルノデアルカ、御見込ハドウデアルカ、
ソレカラ一體何時其ノ七分ノ配當、天下ニ
公約サレタ七分ノ配當ナルモノハ何時カラ
出來ルヤウニナル御積リデアルカ、又是ハ
私ハ公約サレタヤウニ持ッテ行クコトガ當
然デアル之ヲナサラナケレバナラヌト思
ヒマスガ、ソレヲ爲サルノニハ、ドウ云フ
コトデ爲シ得ルト御考ヘニナッテ居ルカ、只
今伺ヒマスト、當院豫算委員會ニ於テ希望
決議ガアリマス、發送電會社ノ機構ニ付テ
大ナル改良ガサレル、又改良スルト云フ御
積リダト云フコトヲ伺ヒマシタガ、是ハモ
ウ勿論必要デアル、コンナ間違ッタ機構ヲ
大々的ニ變ヘチケレバ嘘デアリマス、私ノ
考デハ電氣廳ハ宜シク之ヲ廢止シナケレバ
ナラヌト云フコトヲ考ヘテ居リマス、マア
サウ云フコトハ〓ト致シマシテ、此フ機構
ノ改正位ヂヤ此ノ間違ッタ計算ヲ修正ハ出
來マセヌ、何時ニナッテ石炭ガ十圓臺ニ下
リマスカ、考ヘラレヌコトデアリマス私
ハドウシテモ此ノ料金ニ付テ改正ヲシナケ
レバナラヌ、今ノ料金ハ必ズシモ適正ナル
モノトハ思ハナイ、之ニ付テ改正ヲシナケ
レバナルマイ、其ノ改正ニ依ッテノミ此ノ
大キナ缺損ガ是カラマア出ナイヤウニナリ
得ルカモ知レヌ國庫ニ此ノ上ノ迷惑ヲ掛
ケナイヤウニスル爲ニハヽ私ハドウシテモ
料金ヲ改正シナケレバナルマイカト考ヘテ
居リマスルガ、遞信大臣ハ、サウ云フ點ニ付
テ、卽チ將來ノ見込ニ付テドウ御考ニナル
カ大變長イ質問ヲ致シマシテ恐縮デアリ
マスルガ、御答ノ方ハ成ルベク一ツ簡單ニ
願ヒマス、勝手ナコトデアリマスガ··
〔國務大臣勝正憲君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=106
-
107・勝正憲
○國務大臣(勝正憲君) 御答ヲ申上ゲマス、
日本發送電會社ノ第二營業年度ニ於キマシ
テ、遂ニ二千三百萬圓ト申スヤウナ配當ノ
補給ヲ爲スノ已ムヲ得ザルニ至リ、此ノ非
常時局ニ於キマシテ新タニ國民ノ負擔ヲ增
スコトニ至リマシタコトハ、遞信當局トシ
テ深ク遺憾トスル所デゴザイマス、此ノ缺
損ノ原因ガ、石炭ノ單價ノ見積リガ安カッタ
ノデハナイカトノ御尋デゴザイマスガ、電
力管理案ヲ議會ニ於テ審議セラルヽ當時ニ
於キマシテ、石炭ノ單價ノ見積リハ、其ノ
當時ノ石炭ノ價格竝ニ從來ノ統計等ニ鑑ミ
マシテ、「トン」當十四圓ト云フコトニ見テ
居ッタノデアリマス、其ノ後日本發送電會社
ノ設立委員會ノ際、是ハ十四年ノ初メ頃ト
思ヒマスガ、其ノ頃ニハ尙大事ヲ取リマシ
テ「トン」當ヲ十八圓ト見タノデアリマス、斯
樣ニ申セバ少シ我ガ田ニ水ヲ引クヤウデア
リマスガ、此ノ設立委員會ニハ官吏モ居リ
マスガ、相當民間ノ御經驗ノ方々モ居ラレ
ル譯デアリマス、其ノ或委員ノ仰セラレル
ニハ是ハ十八圓ト云フノハ餘リ石橋ヲ叩
イテ渡ルヤウナ見積リデハナイカト冗談ヲ
言ハレタ者モアル位ニ、其ノ當時ハ大丈夫
ニ見テ居ッタ積リデアッタサウデアリマス
ガ併シ其ノ後單價ハ益〓暴騰ヲ致シマシテ、
十四年ノ上半期ノ平均ノ單價ハ十七圓八十
二錢、ソレカラ下半期ノ石炭ノ單價ハ二十
二圓十九錢、平均二十圓四十四錢下半期
ニハ、少シ推測ガ混ッテ居リマスガ、大體サ
ウ云フ數字デゴザイマス、左樣ニ致シマス
レバ「トン」當四圓ト致シマシテ三百萬「ト
ン」ト石炭ヲ致シマスレバ、千二百萬圓ソコ
ニ開キガ生ズル譯デアリマスガ、石炭ノ方
ノ關係デ發送電會社ノ計算ニ非常ニ不利益
ニナッタノハ、石炭ノ單價ヨリモ石炭ノ數量
デゴザイマス、卽チ近年稀ナル渴水ニ出遭
ヒマシタ爲ニ、非常ニ石炭ヲ焚カナケレバ
ナラナイト云フコトニナッタ、ソレカラ加フ
ルニ、炭質ガ非常ニ低下シタ爲ニ非常ニ發電
ガ困難トナッタ、是ハ只今松本博士ハ炭質ノ
低下ト云フコトハ詰リ炭ガ高クナッタト同一
デアラウト、斯ウ云フ仰セデアリマシタガ、
技術者ノ說明スル所ニ依リマスルト、九州
ノ北部デアルトカ宇部地方、或ハ北海道ト
云フヤウナ炭田近クノ發電所ニ於キマシテ
ハ所謂粗惡炭ヲ焚イテ發電スルト云フ設
備ニナッテ居ルサウデアリマス、然ルニ關西
方面ノ發電所ハ、炭田カラ遠イ爲ニ、運賃
ヲ非常ニ喰ハルヽコトヲ恐レマシテ、非常
ニ良質炭ヲ比較的數量ヲ少ク焚ク設備ヲ致
シテ居ルサウデアリマス、ソレデ發送電ト
致シマシテハ六千三百「カロリー」位ノモノ
ヲ計畫シテ居リマシタガ、得タ所ハ五千幾
ラ、甚ダシキハ五千二、三百ニモ落チタ、
ソレデ良質炭ヲ得ラレズシテ、「カロリー」
ガ一割低下スレバ發熱量ガ一割低下スルノ
デハナクシテ、技術者ノ說ニ依リマスルト
云フト、「カロリー」ガ一割減ルト云フト發
電力ハ二割乃至三割減ル、斯樣ナ關係デ非
常ニ不利益ナ結果ニナッタト云フヤウナコト
デアリマス、ソレカラ此ノ發送電會社ノ非
常ナ缺損ノ原因ニ、賣電ノ費用卽チ賣ッタ電
力ノ電力代金ガ非常ニ減ッタト言フガ、賣ッ
タ金ガ減ッタナラバ買フ金モ減ッタ筈デアル
カラ、此處デハ非常ニ下ツタ筈デアルト云フ
仰セデアリマシタガ、御承知ノ如ク水力發
電ノ會社カラ買ヒマス電力量ハ或ハ一箇
月トカ、或ハ半期トカ長イ期間ノ平均デ押
ヘマシテ「グロス」デ買ッテ居ルサウデアリ
マス、ソレデ豫定量ヨリモ非常ニ減ッタ場合
ニハ罰金ト云フモノヲ取ルト云フコトデアッ
テ少々減ッタ所デ罰金ハ取ラレナイ、ソコ
デ發電會社ニ拂フ金ハ大シタ差ガナクシテ、
賣ッタ場合ニハ一「キロワット」幾ラト云フノ
デ賣リマスカラ、是ハ著シク響イテ來ル、
斯樣ナ關係モアッタサウデアリマス、斯樣ナ
關係デゴザイマシテ異常ナル渴水ト、之ヲ
補フ爲ノ石炭ノ購入量ノ增加、炭質ノ低下、
炭價ノ暴騰、是等ノ原因ガ相寄リ相集リマ
シテ今日ノヤウナ結果ヲ來シタモノデアル
ノデアリマス、又來期以後ハドノ位ナ配當
ヲヤル見込デアルカト云フ御尋ネデゴザイ
マシタガ、十五年ノ上半期ニハ先ヅ四分配
當ハ出來ルデアラウト見込ンデ居リマス、
十五年ノ下半期ニ於キマシテハ、今後十分ニ
電力管理機構ニ付テモ相當ナ檢討ヲ加ヘ
或ハ改善スベキモノハ改善シ、色々ヤッテ
見タイト思フノデアリマスカラ、今日豫想
ヲ致シマシテ幾ラ位ノ配當ニナルト云フコ
トハ、此ノ席デ少シ申上ゲルノハ早計デア
ルヤウニ存ジマス
〔松本烝治君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=107
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108・松本烝治
○松本烝治君 私ガ簡單ナル御說明ヲ願ヒ
タイト申シマシタノハ簡單デモ全部御答
ヲ願ヒタカッタノデアリマスガ、肝要ナル點
(毫モ御答ヘガナイノデ、矢張リ依然トシテ
旱魃論ヲサレルノハドウカト考ヘマスガ、
今仰セラレタコトハ、大體ニ於テ私ノ言ッタ
コトヲ皆御確カメニナッテ居ルノデ、炭質ガ
大イニ下ッタ、卽チソレハ非常ニ高イ、私ハ
炭質ガ下ッテ「カロリー」ガ半分ニナレバ石
炭ノ値段ハ倍ニナッタト見タラ宜イト思ヒ
マシタガ、今ノ御說明デハドウシテ三倍、
四倍ニモナリサウデアリマスガ、サウ云フ
コトニナルト、惡イ石炭ヲ御使ヒニナッタ、
卽チ石炭ノ要ルノハ當リ前デ、冬期渴水期
ニ多量ノ石炭ヲ焚カナケレバナラヌ、ソレ
ガ非常ニ惡イ石炭デ、澤山買ッタ、卽チ非常
ナ高イ石炭ヲ買ッタ、委員會デ何カ十八圓ト
カ云フノハ石橋ヲ叩イテ渡ルトカ云フ話
デスガ、當時既ニ二十何圓、二十五、ノ六圓
ハ石炭ハシテ居ッタラシイ、ソレヲ十八圓ガ
安イナント云フノハ、ソレハ皮肉ヲ言ッタン
デセウ、卽チ十四圓トカ、十八圓トカ、到
底買ヘサウモナイコトガ出テ居ルカラ、マ
ア皮肉ヲ言ッタモノト思フノデ、委員會ト云
フモノ程困ッタモノハナイ、政府ノ委員會
デ、民間ノ者ガ假ニ何カ考ガアリマシテモ、
政府原案ニ對シテ忌憚ナキ批評ハ出來ナイ
ラシイヤウデアリマス、是モ批評ヲシテ直
ルノナラバ批評ヲ致シマセウ、併シナガラ
唯政府原案ニ、是ハ間違ッテ居ル、コンナ馬
鹿氣タコトガアリマスカナドト云フコトヲ
申シテ、而モ何等修正ノ結果ヲ得ラレナイ
ト云フコトニナリマスレバ、徒ニ睨マレル
ダケデアリマス、政府ノ役人ニ對シマシテ、
民間ノ人ガ隨分オ辭儀ヲシタリヽ或ル場合
ニハ靴ノ塵ヲ拂ハムバカリニ最敬禮ヲシタ
リ、或ハ御馳走シタリ、色々スルコトガ多
イヤウデアリマス、是ハスル方モ、サセル
方モ怪シカラヌト言ヘバ怪シカラヌカモ知
レマセヌケレドモ、人情當然ノコトデ、マ
ア委員會ナゾニ出マシテ侃々諤々ノ議論
ヲ忌憚ナク言ヒ得ル人ハ、私共ノヤウナ
事業ト餘リ關係ナク、文無シデアルトカ云
フ者シカナイノダラウト思フノデ、苟モ或
事業ヲヤッテ居ル人間ハ、事業ガ可愛イノ
デ、是ハウッカリ脱マレデモシタナラバドウ
云フコトニナルカ已ムヲ得ズ御無理御尤
モト云フコトニナッテ居ル、其ノコトガ御分
リニナラヌヤウナ人ガ寄ッテイラッシヤルン
デハトンデモナイコトガ出來ルト思フノデ
アリマス、私ハ今日此ノ發送電會社ノ關係
ノ質問ヲ政シマシタノハ、決シテ當時局ニ
當ッテ居ラレタ所ノ、特定ノ個人ノ責任ヲ問
フト云フヤウナ考デハアリマセヌ、唯政府
ガ發案シテ、サウシテ出サレタモノニ、斯
ウ云フ大キイ違算ガアッタ時ニ、罪ヲ一ニ之
ヲ早魃ニ歸シテ、迚モ旱魃ニ歸シ得ナイコ
トヲ、明々歷々タルモノヲ旱魃ニ歸シテ、
サウシテ責任ヲ囘避サレルヤウナコトデ
ハ、是ハ御話ニナラヌ、モウ別ニ是以上伺
フ必要モアリマセヌ、デアリマスガ、今ノ
御話ハ問フニ落チズシテ語ルニ落ツトカ云
フコトデ政府ニ責任ノアルコトヲ實質ニ
於テハ御認ニナッタ所ノ答辯デアルカノヤ
ウニ考ヘマスノデ、是以上別ニ伺フ考モゴ
ザイマセヌ、實ハ私ハ、遞信大臣カラ十分
ナ御答辯ヲ得ラレナカッタナラバ、大藏大臣
ナリ、總理大臣カラモ一ツ御答辯ヲ得ヨウ
カト思ヒマシタガ、併シ是ハ得ナイデモ宜
シウゴザイマセウ、私ガ申シタコトヲ能ク
御聽キ下スッタナラバ、自ラ御分リニナッテ
居ル點ガアルカト思フノデアリマス、私ハ、
今日會期切迫ノ際ニ、謂ハヾ死兒ノ齡ヲ數
フルガ如キ質問デアリマス、幾ラ之ヲ愚圖
愚圖申シマシテモ、政府ノ法律上ノ責任ニ
ナッテ居ル其ノ爲ニ出ス金ノ豫算ヲ削除ス
ル譯ニハ參ラヌノデアリマス、私ハサウ考
ヘテ居ル、仍テ此ノ會期切迫ノ際ニ、斯ク
ノ如キ死兒ノ齡ヲ算フルガ如キ質問ヲスル
コトハ私ノ本意ヂヤアリマセヌ、私ハ之ヲ
伺ハナケレバナラヌト思ヒマシタノハ此
ノ頃ノ狀態ヲ見マスルノニ、餘リニモ無責
任ノコトガ澤山行ハレテ居ルノデアリマス、
マア責任不感症トデモ申シマセウカ、責任
ヲ感ジナイ病氣、サウ云フ責任不感病者ガ
世間ニ滿チ渡ッテ居ルヤウニ思フ、殊ニ政
界、官界ニ於テ是ガ最モ甚ダシイヤウニ思
ヒマス、斯クノ如キ責任不感病者ガ、此ノ
大事ナ、政府ノ仕事ノ範圍ガ非常ニ擴ガツ
テ、政府ノ權力ガ非常ニ大キイ、此ノ日本
ノ政治ヲ、斯クノ如キ責任不感病者ノミガ
寄ッテヤルヤウナコトデハ、私ハ、日本ノ、
世界ノ强國、東亞ノ盟主タル地位ニ鑑ミマ
シテ、甚ダシク危イヤウナコトニ感ズルノ
デアリマス、仍テ此ノ質問ヲ出シマシテ
責任觀念ヲ少シ喚起シタイト云フ意味デ此
ノ質問ヲ致シタ、其ノ意味ハ、恐ラクハ御
列席ノ閣僚諸閣下ハ御諒察下スッタカト思
ヒマスノデ、此ノ上色々御答辯ヲ求メル必
要モナイカト思ヒマス、尙進ンデ一體ドウ
シテ斯ウ責任ヲ感ジナイヤウニ世ノ中ガナッ
タカト云フコトノ原因ヲ考ヘテ見マスルノ
ニ、勿論此ノ原因ハ澤山アリマセウ、是ハ
數ヘ得ラレナイ程色々アリマセウガ、其ノ
一ツノ原因ハ、政府ガ實力不相應ニ仕事ヲ
擴ゲラレタト云フコトニアルンダト私ハ思
フ、每日々々幾ツカノ法令ガ出ル、此ノ法
令ヲ拵ヘル人ハ三而六皆ガアッテモ出來ナ
イ仕事、私共ナド賴マレマシタラ一ツ作ル
爲ニ參ッテシマフダラウト思フ、サウ云フモ
ノヲ數十之ヲ出ス、大變ナ仕事デアリマス、
責任ナド感ジテ居ッタラソンナモノハ出セ
マイト私ハ思フ、恐ラク現在ノ狀態ヲ見マ
スルト、法令ヲ濫發シ、國策會社ヲ濫設シテ、
以テ天下ノ政治ハ出來ルノデアル斯クノ
如クニシテ天下ガ治ルト考ヘテ居ルンヂヤ
ナイカト云フヤウニ見受ケル、是程間違ッ
タコトハナイト思フ、一體行ハレマセヌ所
ノ法令ヲ出スト云フコトハ罪惡デアルト思
フ、是ハ一ノ利ナクシテ多クノ害ガアルノ
デアリマス、行ハレナイ所ノ法令ガアル
如何ナル人モソレヲ遵奉ハ出來ナイト
云フサウ云フモノバカリニナリマシタナラ
バ、法律ヲ遵奉スルト云フヤウナ精神
ハ無クナッテシマフノハ當然デアリマス、
法律ニ違反スルコトヲ以テ當然ナリト云フ
ヤウニナリマス、總テノ人ガ違反シテ居ル
法規ハ私ハアルト思フ、現ニサウ云フヤウ
ナ法規ニ違反シテ居ル、總テノ人ガ違反
シテ居ル、偶、二三人ノ人ガ捕マッテ、警察
デ變ナ所ニ入レラレデモスルト、不都合ナ
奴ダト誰ガ考ヘルカ、寧ロ不運ナ氣ノ毒ナ
人ダト云フノデ、同情ヲ私ハスルト思フ
斯クノ如クニナリマシテ、法令濫發セラレ、
國策會社濫設セラレ、幾ツ國策會社ナドア
ルカ私ハ數ヘラレモシマセヌ、名前ハ勿
論デアリマス、斯クノ如クニシテ天下ノ政
治ガ善ク行クト思ッタラ大ナル間違ヒ、斯ク
ノ如キ無理ナコトヲ爲サルカラ政界、官界
ノ方ノ責任感ガナクナッテシマフ、是ハ當リ
前ダト思フ、之ヲ一ツ改メテ戴カナケレバ
ナラヌト思フ一體法令ヲ無闇ニ作ッテ、天
下ヲ治メヨウナント云フコトノ間違ッテ居
ルコトハ、支那ノ舊イ昔ノモウ秦ノ時代カ
ラ分ッテ居ル、秦ノ商鞅以後ノ亡國ノ歷史ガ
之ヲ證シテ居ルノデアリマス、又此ノ頃惡
イコトハ、何カ法令ニ依ッテ一種ノ「イデオ
ロギー」的ノ、要ラナイ所ノコトヲヤラウト
スル、サウ云フ考、一體サウ云フ間違ッタ考
ト云フモノノ惡イコトハ漢ノ王莽トカ
宋ノ王安石ノヤッタ仕事デ、歷史デ明白ニ其
ノ失敗ニ歸シテ居ルコトガ分ッテ居ル、サウ
云フコトガ、ドウモ此ノ頃御分リニナラヌ
ヤウニモ見エルノデ是ハ甚ダ遺憾デアリマ
ス、決シテ此ノ內閣ニ對シテ私ハ言ッテ居ル
ノデハナイ、此ノ數年來ノ政府ノヤラレタ
コトヲ具サニ見マスルト、法令サヘ作レバ宜
シイ、國營會社サヘ造レバソレデ宜シイノ
ダ、力モ何モ無イモノヲ唯無闇ニ作リマシ
テ、ソレデ非常ナ害ヲ生ジテ居ルコトガ分ッ
テ居ラレヌラシイノデアリマス、之ヲ一ツ
改メテ戴クコトガ現下ノ最大急務デアル、
此ノ點ニ付テ十分ニ考ヘラレマシテ、必要
ノナイヤウナ、出來ナイヤウナ法令ナドヲ
作ラヌヤウニ、其ノ爲ニハ數ヲ減ラスヤウ
ニ、人ニ委シテ置イテ濟ムコトハ委スヤウ
ニ、何デモ政府ノ手デヤラナケレバナラヌ
ト云フヤウナ考ガ間違ッテ居ル、其ノ點ニ付
テ十分ニ一ツ御考ヲ願ヒタイ、サウ云フコ
トヲ考ヘラレナケレバ、私ハ百億ノ豫算ヲ
背負ッテ行クコトガ出來ナイト思ヲ、私ハ先
程百億ノ豫算ヲ背負ヒ得ナイ虞ガアルト申
シマシタガ、日本ノ國民ノ力ハ、底力ハ非
常ニ强イモノデ、ソンナモノデハナイ、モツ
ト大キナモノヲ背負ヒ得ル、又此ノ近キ將
來ニ於テ政治サヘ善ケレバ非常ニ强イ力ガ
出來ルト私ハ考ヘテ居ル、然ルニ此ノ數年
來ノ政治ヲ拜見致シマスト、國民ノ力ヲ殺
グヤウナコトヲ多クサレテ居ル、國民ノ力
ヲ少クトモ發揮セシメザルヤウナコトヲ澤
山サレテ居ル、斯クノ如クニシテ負擔ダケ
ヲ重クスルト云フコトデハ、是カラ先キヤッ
テ行ケナイ、非常ニ玆ニ大キナ破綻デモ起ツ
タナラバ、其ノ時ニナッテ後悔シテモ及バナ
イノデアリマス、私ハ、此ノコトノ趣意ガ、
政府ニハ······現内閣ニハ能ク御分リニナッ
テ居ルカトモ思フノデアリマスガ、餘計ナ
コトデアルカモ知レマセスガ、サウ云フ趣
意ノコトヲ申上ゲタイト云フ意味ニ於テ、
最モ無責任ナル政府ノ仕事デアッタモノニ
對シテ、之ヲ一ツ例トシテ申上ゲタニ過ギ
ナイノデアリマス、私ノ今日ノ質問ノ趣意
ハサウ云フコトデアリマスカラ、强ヒテ御
答ハ勿論求メマセヌ、若シ私ノ申シタコト
ガ間違デアル、左樣ナ量見デハイケナイト
云フコトデアリマシタナラバ、寧ロ御答ヲ
戴イテ〓訓ヲシテ戴キタイト考ヘルノデア
リマス(拍手)
〔國務大臣米內光政君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=108
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109・米内光政
○國務大臣(米內光政君) 重大ナ問題デア
リマスカラ、私カラ御答ヲ致シマス、官吏ハ
各〓其ノ職分ニ應ジマシテ其ノ任務ノ重大ナ
ルコトヲ思ヒ、自肅自戒過誤ナカラムコト
ヲ考ヘルノハ當然デゴザイマス、私ハ內閣
ノ首班ト致シマシテ、能ク之ヲ監督致シマ
シテ、苟モ官吏獨善ト云フヤウナ弊害ノ起
ラヌヤウニ努力ヲ致シ、又官吏各自ハ自ラ
其ノ責任ヲ自覺シ、其ノ職責ヲ尊重スルヤ
ウニ指導致シタイト考ヘテ居リマス、左樣
御了承ヲ願ヒマス
〔男爵阪谷芳郞君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=109
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110・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 阪谷男爵ハ質疑
デゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=110
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111・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 質問デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=111
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112・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 質問ハ通〓者ガ
ゴザイマスカラ、··二荒伯爵
〔伯爵二荒芳德君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=112
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113・二荒芳徳
○伯爵二荒芳德君 議會會期ノ切迫致シマ
シタ今日、私モ亦只今松本博士ノ仰セニナ
リマシタガ如キ沈痛ナ考ヲ以チマシテ、一
言政府ニ質問ヲシタイト思フノデゴザイマ
ス本議會卽チ第七十五囘帝國議會ハ紀
元二千六百年ヲ迎ヘマシテ、最モ重大ナ興
亞ノ大業ニ邁進ヲ致スベキ議會デアルト存
ジテ居リマス、而シテ今日此ノ最終日ニ當
リマシテ、此ノ議會ノ踏ミ來リマシタ所ヲ
見マスノニ、財政方面ノコトニ付キマシテ
ハ多々各方面カラ質問モゴザイマシタシ、
又憂ヲ以テ政府ニ對スル所信ヲ述ベラレタ
ノデアリマスガ、私ノ最モ憂ト致シマスノ
ハ此ノ重大ノ時期ニ於キマシテ、日本ノ
民族的ノ信仰ト云フモノガ、未ダ十分ニ探究
ヲサレル用意ノナイト云フコトデアルト思
フノデアリマス、先程來日本ノ財政ニ大キ
ナ缺陷ガ生ジテハナラヌト云フ憂慮ヲ以テ
種々松本博士カラモ御話ガゴザイマシタ
ガ、同ジヤウニ日本ノ國力ハ他ノ一面ニ於
テハ民族的ノ信仰ニ根ザシテコソ眞ノ躍進
ガ出來ルト存ズルノデアリマス、然ルニ數
年來國體ノ明徵ノ論ガ盛ニ行ハレマシタ
ガ、其ノ議論ハ眞ニ國民ノ生活ト云フモノ
ニ卽スルコトガ甚ダ薄ク、動モスレバ唯口
舌ノ上ニ是ガ論議セラレ、惡イ場合ニハ國
體明徵ノ語ヲ以テ他ノ思想ヲ徒ニ壓迫スル
ト云フヤウナ岐路ニ踏ミ迷ッタ事實モ決シ
テナイコトハナイト思ヒマス、是ハ歷代ノ
内閣ガ其ノ重點ヲ十分ニ突キ究メナカッタ所
ニ起因スルト思フノデゴザイマスガ、私今日
玆ニ其ノ一例ヲ採ッテ申述ベタイト存ジマ
スノハ此ノ二千六百年ヲ迎ヘルニ當リマ
シテ神武天皇ノ聖蹟調査委員會ノ官制ガ
設ケラレマシテ、其ノ聖蹟ノ調査ヲ致シ、之
ヲ顯揚致シツヽアルコトハ誠ニ結構ナコト
ト存ジテ居リマス、併シナガラ神武天皇
ノ御東行ハ、日本民族ノ思想史カラ申シマス
ナラバ、是ハ一ツノ民族的維新ノ一段階デ
アルト云フコトガ申サレルノデアリマス
卽チ神武天皇ガ日向カラ大和ニ御入リニ
ナル御決意ヲ遊バサレタ時モ、又大和ノ橿
原ニ卽位ヲ遊バス時ニ於キマシテモ、何レ
モ天祖ノ大理想ヲ布イテ、サウシテ皇化ヲ
廣ク宇內ニ弘メヨウト云フ御行動デアッタ
ノデアリマス、從ヒマシテ聖蹟ノ御調査ハ
ドウシテモ筑紫三代ノ御經綸ト云フコトヲ
知ラナケレバ、神武天皇ノ御聖蹟モ亦ハッ
キリ致スコトハ出來ナイト存ジテ居ルノデ
アリマス、然ルニ此ノ神武天皇ノ御聖蹟
調査ノ議ガ起リマシテ以來、九州ノ土地ニ
於キマシテハ、皆地方民ガ此ノ地方ノ筑紫
三代ノ御聖蹟ヲ調査致シ、又顯揚スルコト
ニ全力ヲ擧ゲマシテ努メマシタ結果ト云フ
三ツノ一面ニハ從來カラゴザイマス由〓
ノ最モ正確ナ御聖蹟ノ顯揚ト云フ運動ニモ
ナリマシタ、ガ、又他ノ一面ニ於キマシテ
ハ、其ノ地方民ノ熱誠ナ餘リニ、動モスレ
バ歷史的ノ材料等ニ於テ十分ナル調査ヲ缺
キマシテ、サウシテ御聖蹟ノ決定ヲ致スト云
フヤウナ傾モ玆ニ生ジテ參リマシテ、相互ニ
地方々々デ相對立スルノ觀ガ起ッテ參リマシ
タコトハ、殊ニ昨年來激シイコトデアルノ
デアリマス、是ハ恐ラク當局ニ於キマシテハ
篤ト御承知デアルト思フノデアリマス、斯クノ
如キ事柄ハ、徒ニ肇國ノ大精神ヲ明朗ナラ
シムル上ニ於テ支障ヲ來サシメル結果トモ
ナル場合ガナイトモ限ラナイノデアリマシ
テ此ノ點ニ付キマシテハ、特ニ政府當局
ガ此ノ二千六百年ヲ機會ト致シマシテ、適
當ナ機關ヲ置キマストカ、或ハ政府自身ガ
國體ノ根本信仰ニ對シテ明快ナル態度ヲ執ッ
テ、其ノ誤リナキコトヲ期スルコトガ最モ
必要デアルト存ズルノデアリマス、外國ノ
例ヲ取リマシテモ如何カト存ジマスガ、彼ノ
「ナイルㄴ河ノ河畔ノㄱロセッタ」ニ發見サレマ
シタ所謂ㄱロセッタ」石ト申シマスモノガ十八
世紀末ニ發見セラレテ、初メテ五千年來分
ラナカッタ所ノ「エヂプト」ノ文字ガ讀マレ
マシテ、サウシテ「エヂプト」ノ文化ニ多大
ノ貢獻ヲ致シタト云フコトハ人口ニ膾炙
致シマシタ事實デアリマス、又日本ニ於キマ
シテモ、從來カラ幾多ノ歷史的事實ガ湮滅サ
レテ、サウシテ其ノ古蹟ノ跡ヲ覓メルノニ
非常ナ困難ヲ致シテ居ルト云フコトハ到ル
處ニアル譯デアリマス、今日筑紫三代ノ御
事蹟ヲ徒ニ地方ニノミ委シテ置クト云フコ
トハ、丁度我ガ國ノ中世ニ於ケル歷史ガ、
今日探究困難ニ至ッタト同ジコトガ起ル、是
ハ必然的ニ今日カラ看取サレルノデアリマ
シテ、此ノ點ヲ如何ニ政府ガ御考ニナッテ戴
ケルカト云フコトヲ伺ヒタイノデアリマス、
而シテ從來政府當局ニ於キマシテ、一ツノ
誤ッタトモ申スベキ、或ハ先入主トモナッテ
居ル國史ノ觀方ガアル譯デアリマス、ソレ
ハ考證學的ノ觀點ニ立ッテノミ古代ノ歷史
ヲ見ヨウトスル觀方デアリマス、若シモ考
證學的ニノミ之ヲ觀マスルナラバ、日本民
族ノ精神生活、卽チ信仰ト云フモノハ決シ
テ分ルコトハナイノデアリマス、卽チ國體
ハ遂ニ我々ノ民族的信仰ニ到達シナケレ
バ、我々ノ精神生活ヲ導クコトハ出來ナイ
ノデアリマシテ、之ヲ信仰トシテ觀ルカ、
ソレトモ歷史的ニノミ觀ルカト云フ二ツノ
問題ガ玆ニ決定セラレナケレバ、國體ノ明
徵期スベカラズト云フコトハ明白デアリマ
ス、然ルニ從來皆考證學的見地ニノミ立ッテ
觀テ居ルト云フコトハ果シテ將來ニ於テ
日本民族ノ國體觀ト云フモノヲ、確實ニ明
白ニセシムルコトニ十分ナル力ヲ與ヘ得ル
カドウカ此ノ點ヲ十分ニ御考ヲ願ヒタイ
ト思フノデアリマス、私ハ一ツノ契機ガ、
一ツノ變轉期ガ我ガ國ニ來テ居ルト云フコ
トヲ確信致ス者デアリマス、二千六百年ハ
正ニ我々ガ民族的ニ新シキ精神生活へ進ム
ベキ時代デアル、ソレハ卽チ我々ノ民族信
仰ニ根ザシテ、眞ニ自守的日本ノ立場ニ立ツ
テ、國民總立上リニ進ムベキ時ダト存ジマ
スルガ、旁〓以テ啻ニ財政的ノ破綻ガ日本
ニ來ルコトヲ警戒スルバカリデナク、日本
ノ精神界ヘ來ラムトスル其ノ缺陷ニ對シテ
千、今ニシテ用意シテ行カナイナラバ、恐
ルベキ我々ノ精神的ノ蹉跌トモ申スベキモ
ノガ全ク來ナイトモ言へナイノデハナイト
云フコトヲ惧レルノデアリマス、此ノ點ニ
付キマシテ總理ノ御所懷ヲ承リ得マスルナ
ラバ、誠ニ幸ト存ジマスル次第デアリマス
〔國務大臣米內光政君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=113
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114・米内光政
○國務大臣(米內光政君) 御答ヲ致シマス、
只今ノ御質問ハ誠ニ御尤デゴザイマスルト
同時ニ、頗ル重大ナ問題ト考ヘルノデアリ
マスガ、何分ニモ肇國悠遠ナル時代ニ於キ
マスル聖蹟ノコトニ關スル御質問デゴザイ
マスルノデ、御質問ノ要旨ハ篤ト承リ置キ
タイト考ヘル次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=114
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115・阪谷芳郎
○男爵阪谷芳郞君 本員ハ先刻ノ松本君ノ
質問ニ對スル政府ノ答辯ガ、答辯ニナッテ居
ラヌヤウデシタノデ、今ヤ我々ハ此ノ議會
ヲ閉ヂムトスル今日ニ於テ、最モ明朗ナル
感情ヲ以テ此ノ議場ヲ去リタイ、國民モ亦
之ヲ希望シテ居ルノデアリマス、何カ此ノ
際總理大臣及遞信大臣ヨリ、モウ少シ過失
ハ過失デアル、處分ハ斯ウ處分スル、斯ウ云
フヤウナ責任アル答辯ヲ得タイト思ッテ、其
ノ質問ヲ致シタイト思ヒマシタノデスガ、
モウ時ガ移リマシタカラ見合ハセマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=115
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116・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 質疑通告者ハ終
リマシタ、他ニ御發言モナケレバ、是ヨリ
採決ヲ致シマス、各案全部ヲ問題ニ供シマ
ス、各豫算案ニ同意ノ諸君ノ起立ヲ請ヒマ
ス
〔起立者多數〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=116
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117・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 過半數ト認メマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=117
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118・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 此ノ際、國民優
生法案ヲ議事日程ニ追加シテ、第一讀會ノ
續ヲ開キ、委員長ノ報告ヲ煩ハシタイト存
ジマス、御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=118
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119・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、委員長野村子爵
國民優生法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十五年三月二十六日
委員長子爵野村益三
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔子爵野村益三君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=119
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120・野村益三
○子爵野村益三君 國民優生法ノ內容、前
後二十一箇條ノ內容ニ付キマシテハ、本法
上程ノ際ニ厚生大臣ヨリ委曲說明セラルヽ
所ガアリマシタノデ、今更私ハ申述ベマセ
又、唯我々ガ特別委員會ニ於テ檢討致シマ
シタ結果、本法ノ中ノ極メテ重要ナルコトト
思フ事項ノミヲ、簡單ニ御紹介ヲ申上ゲテ見
タイト存ジマス、其ノ第一ハ、所謂優生手術
ヲ爲シ得ル者、卽チ條文ノ四條、五條、六條
〔副議長侯爵佐佐木行忠君議長席ニ著ク〕
之ヲ自覺又自發ニ求ムルコトヲ建前ト致シ
タコトデアリマス、自分ノ過去、子供ノ行
末、一家ノ悲慘、社會ニ及ス影響等ヲ考へ
マシテ、此ノ法案中ニ規定シテアル疾患ヲ
持ッテ居ル者ハ、自ラ進ンデ優生手術ヲ受ケ
ル、所調申請ヲスル、是ガ建前ニナッテ居
ルト云フコトハ一ツノ注意スベキ點デア
ルト思フノデアリマス、所謂之ヲ任意申請
ト申シテ居ルノデ、此ノ任意申請ノ制度ハ
外國ニ於テハナイノデアリマス、此ノ申請
ノ方法ニ付キマシテノ、其ノ次ニ注意シナ
ケレバナラナイコトハ所謂同意申請ト申ス
ノデアリマス、卽チ精神病院長、保健所長
竝ニ特定ノ醫師ハ、本人ノ同意ニ代ヘ其
ノ父母ノ同意ヲ得テサウシテ手術ノ申請ヲ
爲ス、所謂之ガ只今御披露申上ゲタ同意申
請デアルノデアリマス、而シテ最モ惡質ノ
モノ最モ急ヲ要スルモノサウ云フモノ
ニ對シマシテハ所謂强制申請ガ行ハレル、
只今申上ゲタヤウナ病院長、保健所長竝ニ
特定ノ醫師ハ、サウ云フ場合ニ於テハ本人
ノ同意ト云フヤウナコトヲ質スニ及バズ
已ムヲ得ザル疾病者ニ已ムヲ得ザル場合ニ
申請ヲ行フノデアリマス、斯ウ云フ場合ニ
所謂揮ハルヽ所ノ大慈悲ノ利劍デアリマス、
ソレカラ重要事項ノ第二ト致シマシテハ、
申請及ビ其ノ手續ニ周到ナル規定ヲ設ケタ
コトデアリマス、七條、八條、九條、十條、
十一條、十二條ハ卽チ此ノ規定デアリマス、
デ、前ニ申上ゲマシタ場合ニ於テ、直チニ
所謂大慈悲ノ利劍ハ揮ハレナイノデアリマ
ス、卽チ原則ト致シマシテ、一定ノ同意者
ヲ要シ、其ノ手續ニハ必要ノ資料ヲ要シ、
地方優生審査會ノ審査ヲ經、地方長官ノ決
定トナル、若シ關係者ニシテ地方長官ノ決
定ニ不服ガアレバ更ニ中央優生審査會ノ
審議ヲ經テ、厚生大臣ノ判決ヲ受ケル、判
斷ヲ受ケル玆ニ於テ所謂彌陀ノ利劍ハ揮
ハレルコトニナルノデアリマス斯樣ニ周
到綿密ヲ極メタル方法ニ依リマシテ所謂
始メテ優生手術ナルモノガ行ハレルノデア
リマス、是等ヲ痛感致シマスト、我々ハ或
ハ人權蹂躙ト云フヤウナ思想、考ハ出ナイ
ヤウニモ思ハレルノデアリマス、但シ斯ク
ノ如クニ致シマシテ、本法目的ノ一半、卽
チ惡質ナル遺傳性ノ疾患ノ素質ヲ有スル者
ノ增加ヲ防遏シ、此ノ本法目的ノ一半ハ稍〓
達成セラルヽヤニ了承スルノデアリマス、
併シナガラ目的ノ他ノ一半、卽チ健全ナル
素質ヲ有スル者ノ增加ヲ圖ルト云フコトハ
如何デアルカト申シマスト、是ハ第三ニ數
ヘルノデアリマスガ、第十六條、第十七條
ノ規定ニ依リマシテ、從來行ハレル、又是
ヨリ益〓行ハレムトスル弊風ヲ除去シヨウト
云フコトヲ圖ッタ點ニアルノデアリマス、
卽チ第十六條ノ規定ニ依リマスト故ナク
生殖ヲ不能ナラシムル手術又ハ放射線照射
ノ如キモノハ、之ヲ明カニ法文ノ中ニ掲ゲ
テ禁止スルコトニ致シタ、ノデアリマス
扨若シ醫療上サウ云フコトガ必要デアル
ト云フ場合ニ於テハ更ニ手續ヲ定メ、サ
ウシテ之ニ違反スル者ニ對シテハ適當ノ制
裁ヲ加ヘル、適當ノ罰則ヲ規定サレタノデ
アリマス、是等ハ積極的ニ健全ナル素質ヲ
有スル者ノ增加ト云フコトヲ、積極的ニ期
待シ得ズト致シマシテモ、少クトモ之ニ對
シテ相當ノ寄與ヲナシ得ルモノト思フノデ
アリマス、以上特別委員會ニ於ケル質疑應
答ノ次第ヲ搔イ摘ンデ申上ゲマス、其ノ質
疑應答ノ第一ハ、遺傳及ビ遺傳學ト醫學ト
ノ關係ニ付テデアリマス、本法ノ適用ヲ受
ケル疾患ハ第三條ニ揭ゲラレタ五種ノモノ、
是等ハ何レモ遺傳シタルコトガ確認セラレ
タルモノト言ハレルカ、今日ノ遺傳學ハ果
シテ之ヲ確認シ得ルモノナリヤ否ヤ、假ニ
今日ソレト確認セラレタリトスルモ、學問
ノ進步ニ依リ、殊ニ醫學ノ進步ニ依リ、將
來是等ノ種類ハ變更サレルヤモ知レナイ、
斯クノ如クニシテ今日優生手術ヲ施スト云
フノハ危險デモアリ、又不當デハアルマイ
カ、所謂精神病者ノ中ニ先天的ナモノ卽チ
遺傳的ナモノト、然ラザルモノ卽チ後天的
ノモノトノ割合ハ、現在ドウ云フ狀態ヲ呈
シテ居ルカ第三條ニ規定シテアル精神病
者ノ中ニ、輕快シタル者ニ對シテハ、尙所
謂優生手術ナルモノヲ施スノガ宜イノデア
ルカドウカ、假令第三條ニ記載シタル病者
トスルモ、或人ハ學齡以前ニ治療ヲ加ヘレ
バ其ノ效驗ガアルト稱シテ居ル、果シテ當
局ハ如何考ヘラレルカ、本法ノ規定······規
定ト申スノハ第三條ノ規定デアリマス、他
國、例ヘバ「ドイツ」等ノ規定トハ二三ノ相
違ガアル、例ヘバ「アルコール」中毒、或ハ
性的異常ト云フヤウナモノヲ「ドイツ」ノ法
文ニハ記載シテアルガ、本法ニ於テハ無イ、
是ハ如何デアルカ、凡ソ本法ヲ、又優生手
術ヲ肯定スルノニハ、先ヅ以テ遺傳ノ現象、
原則ヲ知ルコトガ必要デアル、其ノ原則、
現象ヲ認メテ、尙之ヲ信ズルト云フコトガ
先決問題デアル、然ルニ今日最近ニ發表セ
ラルヽ遺傳說ト云フモノハ、ナカ〓〓難解
ナコトデアルノデ、サウ云フモノヲ果シテ
定論ト看做スベキヤ否ヤ、定論ト看做シテ
差支ナイノデアルカドウカト云フノガ、根
本ノ最モ熱烈ニ交換サレタル質疑應答デア
リマシタ、之ニ對シマシテハ今日ノ遺傳
學又優生學ハ世間ニ於テ考ヘルヨリモ一
層進步シタモノデアル、卽チ遺傳的疾患ヲ
確認スルニ足ルモノデアル、本法ハ現在ノ
進步ニ基礎ヲ置イテ立案シタモノデアル
病症ノ輕快スルト云フガ如キハ、實ハ遺傳
性ノ精神病デハナイ、治療ガ出來ルト云フ
モノモ、何レモ惡性ノモノデハナイ、遺傳
性ノ精神病ハ假令醫學ガ進步シテモ、之ヲ
治療シ去ルト云フコトハ考ヘラレナイ、本
法ノ對象トスル疾患ニ付テハ、外國ノ例ト
ハ聊カ違フ所ガアル、例ヘバ「アルコール」
中毒ノ如キハ、我ガ國ノ現狀ヨリ見テ、對
象トスルノニハ早イト考ヘル、如何ヤト考
ヘラレル、但シ將來ハ考慮スベキモノアリ
トモ考ヘルノデアルデ「ドイツ」ニ於テハ
所謂病的性格ナルモノヲ、本法ニ申ス精神
薄弱ト云フ中ニ含マセテアルノデアル、本
法ノ中ノ第三條中ノ第三號ニ規定シテアリ
マス所ノ病的性格ト云フノハ所謂性的異
常等ヲモ、卽チ反社會性ノモノモ含マセテ
アルノデアル、例ヘバ遺傳學ノ最近ノ說ノ遺
傳因子ヲ確認スル、染色體ノ中ニ遺傳因子ヲ
確認スルコトガ出來ル、或ハ男女ノ性別ヲ
決定スルノニ斯ウ〓〓ダト云フヤウナ、所謂
男女性別ノ決定說ト云フモノハ今日旣ニ
學界ノ定說トナッテ居ルモノデアル、大體斯
樣ナ答辯デアリマシタ、第二ノ質疑應答ト
シテ御紹介申上ゲタイノハ、本法ノ强化、
本法ハ優生手術ヲ受クルコトヲ原則トシテ
任意制トシテ居ル卽チ本人ヨリ申請スル
建前ニナッテ居ル、寧ロ是ハ諸外國ノ如クニ
强制トシテ、優生審査會ノ如キモノハ勅令ニ
委ネルヤウナコトハセズシテ、「ドイツ」ノ例ノ
如ク之ヲ法文中ニ明記シテ、之ニ强制力ヲ
持タセタ方ガ宜イノデハナイカ或ハ又性
能檢査所若シクハ性能〓究所ノ如キモノガ
アッテ、此處ニ於テ、又優生審査會ノ如キモノ
ニ於テ十分ニ審査シテ、其ノ判定ニ依ッテ手
術ノ決定實施ヲスル方ガ宜イノデハナイカ、
例ヘバ少年矯正院ニ收容シテ居ル少年ノ如
キハ殆ド半分ハ頑强ナル變質者デアル、
又彼ノ誇大妄想症ノ大本〓ノ〓係ノ如キモ
ノハ正シク寧ロ本法ヲ適用シテ宜イモノ
デハナイカ、又進ンデハ所謂優生手術ト云
フヤウナコトヨリモ、寧ロ去勢ヲヤッタラド
ウデアルカ、少クトモ將來之ヲ行フ所ノ意
思アリヤ否ヤ、又他面、刑事政策ヨリ見ル
モ之ヲ斷行シタ方ガ宜イデハナイカ、之二
對シマシテハ、元々本法ハ國民ノ自覺ニ依
ルヲ建前トシ、尙何分ニモ我ガ國ニ於テハ
初メテノコトデアリ、又我ガ國ノ現狀ニ在ッ
テハ、此ノ程度ヲ以テ實行上先ヅ適當ノモ
ノト考ヘルノデアル但シ第六條、强制申
請ノ規定モアッテ、之ガ運用ニ付テ考ヘタナ
ラバ宜カラウトモ思フ、要スルニ、ヨリ一
層本法ヲ强化スルト云フコトハ實施後ノ成
績結果ニ俟ッテ、更ニ考慮ヲ加ヘテモ宜カラ
ウト思フ、デ去勢ニ付キマシテハ、之ヲ併
用スル國、現在本法ノ類似ノ事柄ヲヤッテ
居ル國ハ先ヅ七箇國バカリアリマスガ、其
ノ中併用スル國ハ四ツノ國モアル、ケレド
モ〓究ノ餘地ガアッテ、刑事政策トシテハ一
層〓究ヲ要スベキモノガアル尤モ我ガ國
ニ於テハ刑事·政策トシテハ實行シテ居リマ
セヌ、第三ハ、積極的施設ニ付テデアリマ
ス、本法ハ寧ロ優生手術法ト稱スベキニ
似テ居ル、換言スレバ、不良ノ者ヲ除クニ
過ギザル消極的施設デアルト思フ、サレバ
是ト同時ニ、本法ト同時ニ積極的方面、
例ヘバ國民素質ノ改良ノ方面ニ力ヲ入レル
ベキデハアルマイカ、少クトモ此ノ方面ニ
早ク〓究ヲ開始シテ宜イト思フ、此ノ點ヨ
リ言ヘバ當局者ノ說明ノ如ク、百九十五
人ノ專門ノ醫師ニ委囑ヲシテ無慮三千人
ニ亙ル所謂家系調査ヲ行フト共ニ、優良家
系、優良ナル家系ヲ進ンデ調査考究スルト
云フ必要ガアルノデハアルマイカ、而シテ
其ノ優良家系ヲ持ッテ居ル方面ニ付テハ、宜
シク保護助成ヲ爲スト云フコトモ考ヘナケ
レバナルマイ斯ウ云フ質疑ニ對シマシテ
ハ、勿論國民素質ノ向上ヲ圖ルノニハ、本
法實施ノミニ期待スベキモノデハナイ本
法モ、畢竟スルニ所謂優生方策ノ一ツノ現
レデアル、廣イ意味ノ優生方策ヲ講ジテ、
或ハ人口問題〓究所ナリ、今度出來マスル
厚生科學〓究所ナリ、及ビ其ノ他ノ機關ヲ
利用シテ、又他ノ諸機關ト連絡協調ヲシテ、
サウシテ政策ノ達成ヲ圖ルベキデアル、又
サウスル所存デアル、御示ニナリマシタ優
良家系ノ調査ノ如キハ實ハ各府縣ノ〓育會
ニ依賴シテ多數ノ資料ハ集ッテ居ルノデアリ
マスケレドモ之ヲ集計綜合スルコトハ又
一廉ノ努力ヲ要スルノデ、目下其ノ方面ニ
努メテ居リマス、尙將來モ引續イテ調査ヲ
スル考デアル、斯樣ナ答デアリマシタ、第
四ハ優生手術後ノ成績デアリマス、優生
手術ヲ加ヘテ後、心身ノ蒙ル影響ニ付テハ
色々ノ報告ガアル、現ニ政府ガ提供セラ
レタ報〓ノ中ニ付キマシテモ、手術ヲ
受ケルコトカラ或ハ性慾ノ亢進ヲ愬
フル者ガアルヤウデアル又大分多イ
ヤウデアル是等ノ點ハ如何デアルカ、手
術ハ簡單デ、何レモ十分カ十五分デ完了ス
ルノデアルガ、其ノ手術ヲ施行シタ後ニ、
一般ノ健康狀態ハドウデアルカ健康ニ影
響スル所ハドウデアルカ之ニ付キマシテ
ハ斯ウ云フ答辯デアリマス又說明デアリ
Vマ、手術ノ直後ニハ多少ノ變調ガナイデ
ハナイ、ケレドモ、之ヲ要スルニ日ヲ經ル
ニ從ッテ漸次平靜ニ歸シ、心身上格別ノ影
響殊ニ惡イ影響ヲ被ラナイ現狀デアル
男性ニ付キマシテハ寧ロ健康ヲ增進シ、惡
癖ヲ去リ、而モ性慾ヤ性生活ヲ障害スルコ
トハ極メテ稀デアル、女性、無論精神病者
デアリマスガ、此ノ女性ニ付テハ大部分ハ
性慾ニハ變化ハナイ、但シ少數ハ增シ、尙
ソレヨリモ更ニ少數ハ減少シタリトノ報〓
ハアル要スルニ大シタ影響ハ被ラナイ、
又本邦ノ癩患者一千三名ニ付テ行ッタ實績
ニ依リマスルト、手術ノ後ハ寢付カナイモ
ノガ四一「パーセント」、四日以上臥床セル
モノガ二一「パーセント」、尤モ婦人ノ方ハ、
相當男子ヨリモ豫後ノ愼重ナ態度ヲシナケ
レバナラヌト思フ、ソレカラ健康狀態ニ影
響ナキモノガ六五「パーセント」、ソレカラ
健康狀態ヲ增進シタモノガ一〇·六「パーセン
ど低下セルモノハ僅カニ五·八「パーセ
ント」其ノ他不詳ノモノガ若干、ソレカ
ラ性慾ニ對スル影響ハ增減ナキモノガ五
五·六「パーセント」、增シタルモノガ四·八
그パーセント」、減少シタルモノガ一三·二
「パーセント」、其ノ他不詳、サウ云フヤウ
ナ說明デアリ報〓デアリマシタ、第五ハ、
癩患者ニ對スル施設デアリマス、所謂治癩、
癩病ヲ癒ス治癩對策デアリマス、是モ熱心
ニ質疑應答ガ行ハレタノデアリマス、其ノ
質疑ノ要點ハ、癩ハ遺傳性デナイト云フコ
トデ本法ヨリ除外サレタ、サウシテ別ニ法
案ヲ制定セラレタ而モ此ノ法案ハ未ダ審
議ヲ終ラナイト云フ狀態デアル、サウ致シ
マスルト、本法ノ施行ニ對シテ支障ガナイ
ノデアルカ、癩患者ノ數ハ一萬五千、之ヲ
隔離スルナラバ相當年月ノ後ニハ絕ヤスコ
トガ出來ル見込ハアル、現在本法ニアリマ
スル官公私ノ治療所十七ヲ算ヘル、其ノ中
ニ收容サレテ居ル所ハ僅カニ約一萬、アト
ノ患者ニ付テノ對策ハドウスル、若シ殘餘
ノ分ヲ收容スルト致シマシタナラバ、一體
其ノ經費ハドノ位掛ル、本來斯クノ如キ絕
滅ノ目途ガ明カデアッテ、而モ聖旨ヲ拜シテ
居ルヤウナ此ノ癩患者ニ對シテ、所謂治癲
對策ニ對シテ十分ノ力ヲ盡スノガ本筋ト思
フ、而モサウ云フ方面ニ急ナラズシテ、本
法ノ如キ新シイモノ、竝ニ色々ノ新シイモ
ノヲ考ヘ出スト云フヤウナコトハ、果シテ
ドンナモノデアラウ、一體癩絕滅ニ關スル
對策ハヽドウ考ヘテ居ラレルノカト云フ、
最モ熱心ナル御質疑ニ對シマシテハ、政府
ハ斯樣ニ言ッテ居リマス、本法ハ實ハ十五年
度ハ準備期間デアッテ、此ノ間ニ十分ナル準
備工作ヲスルヽ實際施行セラレルノハ十六
年度デアル、所謂此ノ癩ニ關スル法案ガソ
レ迄ニ間ニ合ヘバ本法施行ニハ支障ハナイ
ト考ヘル、癩患者ノ收容ニハ其ノ甚ダシ
キ者、危險ノ多キ者約一萬五千人ノ中ノ一
萬人ヲ收容スベキ計畫ヲ立テテ居ルノデア
ル若シ殘餘ノ分ヲ收容スルニハ建築費ガ
七百五十萬圓、經常費ハ百九十萬圓ヲ要ス
ル、御言葉ニアリマシタヤウニ聖旨ヲ拜シテ
居ルヤウナ狀態デアリマスカラ、癩對策ニ付
テハ出來ルダケノコトヲ致ス所存デアル、是
ガ當局者ノ答辯デアリマス、終ニ〓括的質疑
トシテ一二御紹介ヲ申上ゲマセウ、ソレハ本
法ハ消極的ナリトノ批判モ、是モ尤モデアル、
宜シク他ニ積極的ノ方策ヲ講ズベシト云フ
御希望モ、是モ同感デアル又治癩對策ヲ
的確ニスベシト云フコトモ、是モ御尤モデ
アル要スルニ本法施行ニ付テ〓括的ニ考
ヘテ見ルト云フト、一體本法ヲ施行シナカッ
タナラバドウナルカ、ドウ云フ影響ガアル
カ、第二ハ、本法ヲ施行シタナラバドウ云
フ利益ガアルカ、第三ニハ由來本法ヲ肯
定スルノニハ遺傳論ヲ認メテサウシテ
之ヲ信ズルコトヲ前提トスル、併シナガラ斯
ウ云フ難解ノモノヲ大衆ノ間ニ徹底セシム
ルト云フコトハ、是ハ甚ダムヅカシイコト
デアル、之ニ付テハドウ云フ順序、方法ヲ
用ヒラレルノカ、續イテ所謂優生方策ニハ
消極ト積極トノ方面ガアル、是ハ外國ノ燒
キ直シデナク日本ノ優生方策トシテハ
其ノ内容ハ果シテドウ云フモノデアルカ、
此ノコトニ對シマシテハ、色々各項ニ亙ツ
テ、少ク共一項ニ付テ十以上ノ具體的ノ答
辯ガアリマシタ、併シ段々時間モ切迫致シ
マスカラ、ソレハ割愛スルコトニ致シマス、
附加ヘテ申上ゲマスルガ、本法ノ對策、或
ハ施行期日ニ付キマシテハ先刻モ申上ゲタ
ヤウニ、施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ定メラレ
ルノデアリマスガ、之ヲ實行スルノハ、昭
和十六年度、本法ノ對象、本法ノ規定ヲ受ク
ベキ所ノ人數ハ約二十五萬ニナル、尤モ大
體ヲ考ヘマシテ、或ハ精神病者、其ノ他身
體的缺陷ノアルト云フヤウナ者ヲ大體調ベ
テ見ルト、約百二十五萬人アル、其ノ中デ
遺傳性ノモノデアリ、而モ强度ノ者、惡質
ノ資詰リ捨テ置キ難イモノヲ拾ヒ上ゲマ
シテ適用者トシテ考ヘルト、今申シマシタ
ヤウニ約二十五萬ニナル、ソコデ昭和十五
年度ハ準備期間トシテ出來ルダケノ準備ヲ
致シ、其ノ準備トシテハ旣ニ豫算ニ計上ス
ルコト三萬圓、十六年度ニ於テハ約百萬圓
位ハ要スルデアラウシ、サウシテ此ノ執行
ノ順序ハ一足飛ビニ二十五萬人ニ及スト
云フコトハ出來ナイノデ、段々ニ及シテ行
ク積リデアルト云フノガ、質疑應答ノ〓括
的ノコトヲ簡單ニ御紹介シタ次第デアリマ
ス、尙御承知ノヤウニ、衆議院カラ修正ヲ
加ヘラレタ箇所ハ三箇所バカリデアリマス、
是ハ殊更御紹介申上ゲルコトヲ避ケマス、
左樣ニ致シマシテ質疑應答ヲ了ヘ、今朝討
論ニ入リマシタ、贊成意見ノ陳述ガアリマ
シタ、尙決議事項ノ、希望決議ノ提案ガア
リ之ガ議題トナッテ議決サレタノデアリマ
ス、決議事項ヲ朗讀致シマス、ーハ、本法
ノ重大性ニ鑑ミ政府ハ本法ノ實施ニ當リ常
ニ其ノ社會ニ及ボス影響ニ付深甚ノ注意ヲ
拂ヒ、又本法ノ目的ヲ達成スル方法ニ付一
層ノ〓究ヲ爲スベシ、第二、優生思想ノ啓
發ニ當リ本法制定ノ趣旨ヲ周知セシメ徒ニ
社會ニ不安ノ念ヲ抱カシメザルヤウニ留意
スベシ、第三、中央及地方ニ設クベキ優生
審査會ノ組織ニ付愼重ニ注意シ又委員ノ構
成ニ付キテハ特ニ考慮スベシ、以上衆議院ヨ
リ廻送サレマシタ所ノ修正ヲ加ヘラレタ本
法竝ニ希望決議等ハ全會一致ヲ以テ可決ヲ
致シタノデアリマス、私ノ御報告ハ是デ終
リマス、此ノ內外甚ダ多事デ、國民擧ゲテ
出來ルダケノアラン限リノ努力ヲ致シテ居
ル此ノ眞ッ最中ニ、百年ノ大計デアル體力向
上ノ問題ヲ我々ガ議スルト云フコトハ如
何ニモ我々ハ惠マレタモノト感ゼザルヲ得
ナイノデアリマス、從ッテ此ノ惠マレタル我
我トシテハ、此ノ機會ニ於テ十分ニ一ツ審
議ヲシナケレバナラヌト思フノデアリマス、
ドウカ十分ニ御審議ヲ願ヒタイト存ジマス、
私ノ御報告ハ是デ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=120
-
121・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 討論ノ通〓
ガゴザイマス、之ヲ許シマス、建部君
〔建部遯吾君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=121
-
122・建部遯吾
○建部遯吾君 會期切迫致シテ、畏キ會期
延長ノ詔書ヲモ拜シマシタル此ノ際、極ク
簡單ニ本案ニ反對ノ主ナル理由ヲ箇條書ノ
ヤウニ擧ゲテ御聽ニ達シタイト存ジマス
第一、本案ハ我ガ國從來ノ系統生命尊重觀、
寧ロ系統生命神聖觀ト云フモノニ新タニ一
大缺裂ヲ與ヘルモノデアリマス、是ヨリ致
シテ產兒制限ノ惡傾向ニ拍車ノ加ルベキハ
疑ナキコトデアリマス、恰モ一箇ノ楔ヲ拔
キ棄テマスノデ、機械全體ガバラ〓〓ニ瓦
解スルガ如キモノデアリマス、第二、人口
減衰ノ根源ハ、系統生命尊重觀ノ衰滅ニ存
スルノデアリマス、我ガ國既ニ人口減衰ノ
初期社會的症候ノ顯著ナル今日ノ時期ニ際
シマシテ、殊ニ本法實施ノ危險ハ倍加致ス
ノデアリマス、第三、本法案ガ遺傳學理ノ
檢討及其ノ應用ニ缺陷ノアルコトデアリマ
ス、其ノ一、惡質ノ遺傳ガ百「パーセント」
デアリマスルコトハ、絕對遺傳者デアル男
ト女トノ配偶關係ノ場合ニ限ルノデアリマ
ス、其ノ二ツニハ問題ノ男女ガ、本人一
生代ニ於ケル其ノ限リニ於テハ完全遺傳者
デアリマシテモ、絕對遺傳者デナクテ、祖
先以來前代ニ若干ノ良質者ヲ有シテ居ル限
リ、隔世遺傳ニ依リマシテ、若干良質ノ子
ヤ孫ノ生マルヽコトナシトセヌノデアリマ
ス、其ノ三、惡質者ニ良質者ヲ配偶者トシ
マスル場合ニハ其ノ子供ハ四人ニ付テ惡
質者一人、若干惡質者一人、若干良質者一
人及良質者一人ト云フ生レ方ヲ致ジマス
ノガ遺傳學上ノ原則デアリマス、第四、斯
樣ニ致シマシテ、本法ガ系統生命ノ斷絕ト
云フコトハ惡質者ノ生レ來ル者一人ヲ防
ガムガ爲ニ、右ノ原則ヲ無視シテ、其ノ餘
ノ惡質ナラザル者三人ヲモ犧牲ニ供スルヲ
敢テスルモノデアルノデアリマス、第五、
本法案ハ國家社會ニ有用ノ程度ノ聊カ低キ
個人ヲ、有害ノ存在ト混同致シマシテ、認
識錯誤ニ陷リ、其ノ系統生命上、將來ニ享
有スベキ生命ノ斷絕ヲ敢テスルコトデアリ
マス、是ハ積極的人口增加政策ニ對スル明
白ナル反逆デアリマス、第六、系統生命ノ
斷絕デアル所ノ斷種法ノ輕易ナル實施ト、
急速度ノ人口減衰トノ相駢立スル兩事實ノ
間ニ、少クトモ因緣關係ガアルノミナラズ、
進ンデ相當程度ノ因果關係モアルコトヲ本
法案ハ無視セルコトデアリマス、第七、其
ノ他左ノ諸問題ニ注意ト考慮ト檢討トヲ、本
案ガ缺イテ居ルコトデアリマス、一ツニ、
未完成ノ擧說ヲ根據トスルコト、竝ニ自國
ノ現狀ニ對スル準備調査及事實認識ノ不十
分、不完全ナルコトデアリマス、二ツニ、良
質人口增加ヲ擬裝シテ居ルコトデアリマス、
三ツニ、社會心理ノ普通法則ヲ無視スルコト
デアリマス、四ツニ、歐米主要ナル國々ノ重
要關係事實ヲ閑却スルコトデアリマス、五
ツニ、個人觀ニ偏リ、社會觀トナリマスル
ト、ソレニハ認識不足又ハ感覺缺乏ヨリ來
ル錯誤ニ陷ッテ居ルコトデアリマス、次ニ是
ハ聊カ所感ヲ述ベル氣味モアリマスケレド
モ玆ニ附加ヘテ置キタイト思ヒマス、-
體本案ノ提出ハ功ヲ樹ツルニ急ニシテ、敬
虔ノ信念ト眞摯ノ氣象トニ聊カ遺憾ヲ存シ
テ居ルコトデアリマス、之ニ關聯致シマシ
テ、斯樣ニ申ス意見ガアリマス不確實ナ
ル新シキ計畫ヲ避ケテ確實ナル重要事業ニ
全力ヲ致シ、優生案ハ何等急速制定ヲ要ス
ルコトナク、之ヲ著實周到ナル正當〓究ニ
讓リ、畏クモ皇太后陛下ノ有難キ御旨ニ基
キツヽモ、爾來兎角實施實行ガ捗々シクナ
カッタ所ノ、而モ根絕スルコトガ不可能デアリ、
明確ナル所ノ癩療養ニ全力ヲ擧ゲテ專心努
力スルニ如カズト云フ、是亦一說デアリマセ
ウ、而シテ私ノ耳ニ入ッタダケデモ、此ノ見解
ハ我々ノ同僚中ニ甚ダ少數ニハ止マラナイ
ノデアリマス、昔ハ「エデン」ノ園ニ罪ノ果物ガ
アリマシタ、「フランス」ノ「ゾラ」ハフ〓ニ
コンディテ」ト云フ小說ヲ著シマシテ、祖
國「フランス」ノ上下男女ヲ警告致シマシタ
ケレドモ、後頭ニ毛髪ノナイ機會ハトウノ
昔ニ遠ク過ギ去リマシテ、如何トモスル能
かつ、人口減衰ハ、過日ノ質疑ニ申シタ通
リ世界ノ最第一ト相成リマシタ、堂々タル
我ガ帝國議會ハ大命ヲ敬ミ畏ミ、廣キ視野
ニ立チ、確カナル基礎ニ立チテ、悔ヲ千載
ニ貽スコトナカラムコト、本員ノ切ニ祈ル
所デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=122
-
123・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 下村宏君
〔下村宏君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=123
-
124・下村宏
○下村宏君 私ハ只今ノ議案ニ贊成ノ意見
ヲ述ベルモノデアリマス、會期モ切迫シ時
モ可ナリ移ッテ居リマスルカラ、成ルベク簡
約シテ申シマスルガ、此ノ問題ハ極メテ
重要ナル問題デアリマス、而モ此ノ優生法
案ノ內容ニ付テハ誤解サレテ居ル場合モ相
當アリマス、殊ニ一般ニ周知サレテ居リマ
セヌ、從ッテ暫ク時ヲ拜借致シマシテ、私ガ
何故ニ此ノ法案ニ贊成ヲスルカト云フ心持
ヲ述べマシテ、此ノ議場ト申サズ、之ヲ通
ジテ廣ク江湖ニ私見ヲ申述ベタイノデアリ
マス、申上ゲル迄モナク國策ノ中心ハ、其
ノ民族ノ人口ノ數ノ增スコトト、ソレカラ
其ノ質ノ向上スルコトデアリマス、デ日本
ノ明治維新以後、今日迄躍進ヲ續ケテ來タ
コトハ國運ノ隆昌ガ增加スル人口ヲ消化
スルコトガ出來ル、又其ノ人口ガ增スカラ
國運ガ進ンデ來ル、是ハ國運ガ停滯シテ居ッ
タ德川時代ニハ御承知ノ通リ殆ド增サナ
カッタノデアリマス、國運ガ增加スル人口ヲ
消化シ得ナイノデアリマス、デ維新以後隆
隆ト國運ガ增シテ、人口ガ如何ニ殖エテモ
ソレガ右カラ左ヘト消化サレテ行ク、併シ
次第々々ニ此ノ增加率ガ鈍ッテ來ル、更ニ憂
フベキコトハ此ノ一般國民ノ體位ガ低下
シテ來タコトデアリマス、申上ゲル迄モナ
ク歐米各國ノ平均壽命ハ、十五年カラ長キ
モノハ六十年以上ガ平均壽命デアリマス、
日本ハ漸ク四十五歲デアッテ、而モ年々延ビ
テ行クカト云フト、停滯シテ居ルノデアリ
マイ、各國ノ平均年齡ハ年々延ビテ行ク、
茲ニ我ガ國ト約十年以上ノ開キガアリマス、
何故平均壽命ガ短クナッテ行クカト云ヘバ、
御承知ノ通リ徵兵檢査ガ之ヲ證明シテ居リ
マシー、徵兵檢査ノ甲種、乙種ノ合格率ハ年
ヲ追ウテ減少シテ居ルノデアリマス是程
由々シイ大キナ問題ハナイノデアリマス
數ヲ增サナケレバナラヌ、同時ニ其ノ體質
ガ向上シナケレバ何等意味ヲ爲サナイノデ
アル、要スルニ人間ハ生レテ公ノ爲ニ世ノ
中ニアッテ、積極的ニ「プラス」ニ働クモノト、
ㄱプラス·マイナス·ゼロ」ノモノト今度
逆ニ「マイナス」ニ働イテ他人ヲ傷ケル、甚
ダシキハ他人ヲ殺ストカ、色々ナ罪惡ヲス
ルト云フ「マイナス」ニナルモノト大體二樣
ニ分レマセウ、言フ迄モナク
〔議長伯爵松平賴壽君議長席ニ復ス〕
惡質者、殊ニ精神病者ノ如キハ世ノ中ニ非
常ナ「マイナス」ヲ掛ケル階級デアリマス
本人達ノ爲ニ或ハ精神病院ヲ造ッテ、其ノ病
院ノ內ニ收容シナケレバナラナイ、或ハ宅
ニ居ッテモ絕エズ監視シテ、人一人ガソレニ
掛ッテ居ラナケレバナラナイ、サウ云フ人ハ
此ノ世ニ害ガアッテモ益ハナイノデアリマ
ス、更ニ甚ダシキハ人ヲ殺ス氣狂ヒガアリ
やく、私ガ阪神ニ住ンデ居ル頃ニ神戶デア
ノ入江ト云フ殺人狂ガ病院ヲ脫ケ出シマシ
ク、普通ノ殺人犯ノ人ナラバ、ソレガ脫ケ
出タカラト言ッテモ世ノ中ハ騷ギマセヌガヽ
氣狂ヒデ殺人デアルト云フ者ガ病院ヲ脫ケ
出タト云フダケデ、當時阪神ノアノ附近ノ
者ハ夜ハナカ〓〓外ニモ出ラレヌ、警官力
ラ靑年團、延ニシテ何萬ト云フ人ガ數日間
此ノ狂人一人ヲ捕ヘル爲ニ非常ナ手數ト
金ヲ使ッタノデアリマス、斯ウ云フ「マイナ
Zニナル人ハ其ノ人一人ノ爲ニ何十、何
頁、何千ノ「プラス」ヲスル人ニモ相當ル程
ノ害ヲ世ノ中ニ及スノデアリマス、今日刑
事ノ方ノ犯人ヲ見マシテモ、亦不良少年ヲ
見マシテモ其ノ中ノ尠カラヌ部分ハ、矢張
リサウ云フ系統ニ屬シテ居ルノデアリマ
ス、此ノ惡質ノ遺傳者、惡質者ヲ世ノ中カ
ラ除カナケレバナラヌト云フコトハ、我々
モ當然考ヘルノミナラズ、其ノ家ノ家族達
モソレガ爲ニドレダケ苦痛ヲ嘗メテ居ルカ
分ラナイノデアリマス、各國ノ法制ガ區々
ニナッテ居リマスノハ、其ノ國々ノ風土ナ
リ、又其ノ國ノ流行病ト言ヒマスカ病氣ノ
性質ナリサウ云フコトデ、ドウ云フ病氣迄
ソレニ入レルトカ、或ハ何等親迄ノ危險ノ
アル者迄ヲ含ムトカ、或ハソレヲ强制スル
カ或ハシナイカ、此ノ差別ハ御承知ノ구
メリカ」ノ各州殆ド大部ハ此ノ優生法ヲ施
行シテ居リマスルガ、ソレハ國々ニ依ッ
テ、其ノ州每ニ依ッテ多少ノ相違ハアリ
マスケレドモ、何レモ惡質者ヲ除カネバナ
ラヌト云フコトニ於テハ一致シテ居ルノデ
アリマス、此ノ點ニ於テ最モ例ニ出ル
ノハ「ドイツ」デアリマス、御承知ノ通リ第
一次ノ歐洲大戰デ「ドイツ」ハ壯丁二百萬人
ヲ失ッテ居ルノデアリマス、而モ此ノ間四年
半ニ亙ッテ食糧ノ封鎖ヲ受ケタ「ドイツ」ハ、
遂ニ此ノ經濟封鎖、殊ニ食糧封鎖ニ因ッテ破
レタノデアリマス、此ノ「ドイツ」ハ最後ニ
ナッテ段々ト國民ノ榮養ガ足リナクナリ、病
ニ罹リ遂ニハ餓死者ヲ出スヤウニナッテ、私
共ノ承知シテ居ル限デハ、爲ニ飢エ死シタ
者ハ八十萬人ニ及ンデ居ルノデアリマス、
二百萬人ノ壯丁ヲ失ッテ八十萬人ノ餓死者
ヲ出シテ居ル、自分ノ領土ハ削ラレル、國
民ハ數ニ於テウント減ラサレタノミナラ
ズ、サウ云フ程度ニ國民ノ體位ガ下ッタ時
ニ、此ノ「ドイツ」民族ハ何ト叫ンデ居ッタ
カ、私ノ「ドイツ」ニ居ッタノハ大正十年デ
アリマス、當時「ドイツ」ノ民族ハドウシテ
我々ノ低下シタ體位ヲ取リ戾スカ、ドウシ
テ人口ノ遞減ヲ取返スカ、斯クノ如キ狀態
デハモウ何年カ經ツト「ポーランド」ニ比較
シテモ數ニ於テモ質ニ於テモ負ケテシマフ
ノダ、何處迄モ我々ハ人口ノ增加ヲ圖ラナ
ケレバナラヌ、同時ニ此ノ下ッテ行ク體質ノ
低下ヲ取返サナケレバナラヌ、當時或ハ「ハ
イキング」ヲスルトカ、或ハ有ラユル「ス
ポーツ」ニ嗜ムトカ、色々ノ方法ヲ始メテ居
リマシタ、ソレガ御承知ノ通リ「ヒトラー」
總統ノ時代ニナッテ一層此ノ運動ガ强化サ
レタノデアリマス、御承知ノ通リ一方デハ
結婚ノ奬勵ヲ圖リ子供ヲ產ム)之ヲ奬勵ス
ル、家族ガ多イ其ノ負擔ヲ輕メル此處デ
詳シイコトハ申シマセヌガ、有ラユル方法
デ結婚ヲ奬勵シ、又多ク產ムヤウニ奬勵シ
タノハ無理カラヌノデアル同時ニ其ノ低
下シタ體質ヲ取返ス爲ニ、「ドイツ」ハ非常
ナ「スポーツ」ノ奬勵ヲ始メタノデアリマス、
是ハ私ガ體育ノ方ニ關係シテ居ルカラ申ス
ノデハアリマセヌガ、御承知ノ通リ「オリ
ンピック」大會ト云フヤウナモノハ)アレハ
國ガヤルノデハナイノデアリマス、各都市、
ガ「オリンピック」ノ組織委員會ニ依ッテ催ス」
ノデアリマス、ケレドモ、此ノ前ノNa
リン」ノ「オリンピック」大會ト云フモノハ殆
ド政府ガヤッタノデアリマス、政府ガヤッテ
少カラヌ巨額ノ金ヲ之ニ投ジ、更ニ十六日
間「ヒトラー」總統ハ連日「スタヂアム」ニ出
タノデアリマス、今迄歐洲大戰ニ依ツテ體質
ノ極ク低下サレタト云フ「ドイツ」ガアノ
「オリンピック」大會デ五十餘箇國ノ中デ第
一ノ成績ヲ取ッタノデアリマス、是ガ勝ツタ
「イギリス」ヤ「フランス」ガ負ケタ「ドイ
ツ」ニ脅威ヲ感ジテ居ル所以デアリマス、如
何ニ「ドイツ」ガ人口ノ增加ニ努力シタカ
體位ノ向上ニ努力シタカソレ程努力シテ
居ル「ドイツ」ガ最モ此ノ優生運動、斷種法
ニ於テハ各國ノ中デ一番手廣クヤッテ居ル、
一番强クヤッテ居ルノデアリマス、何故左樣
ナコトヲ「ドイツ」ガヤルノカ、要スルニ我
我ガ人ガ殖エナケレバナラヌト云フノハ、
「プラス」ノ人ガ殖エナケレバナラヌノデア
ル「マイナス」ガドン〓〓殖エテ來テハ其ノ
國ハ亡ビルノデアリマス、茲ニ「ドイツ」ガ千
九百三十三年ニ此ノ斷種法ヲ行フニ當ッデ
聲明シタ理由書ガゴザイマスルガ、其ノ一
部ヲ此處デ朗讀ヲ致シマス、「「ドイツ」國家
ガ隆盛ニ趣イテ以來、大衆ハ人口政策問題
及ビ持續的ナル出產ノ減退ニ付テ熱心ニ考
慮スルヤウニナッタ、實ニ國民人口ノ減少
ニ加フルニ益、ス顯著ニナリツヽアル國民
ノ遺傳質ノ問題ハ深刻ナル考慮ヲ必要ト
スルモノデアル、健康ナ家族ノ大部分ハ一
子又ハ無子ノ狀態ニ移リツヽアル一方ニ、
無數ノ低格者及ビ遺傳的ノ惡質者ハ何ノ抑
制モナク增殖シ、其ノ病的デアリ非社會
的デアル子孫ノ爲ニ國家全體ノ負擔ハ激增
シツヽアルノデアル、健康ナル「ドイツ」人
ノ家族、特ニ〓養アル階級ハ平均僅カニ二
兒ヲ有スルニ過ギザルニ對シ、一方精神薄
弱者及ビ他ノ遺傳的〓低格者ハ、一夫婦平均
三人又ハ四人ノ出產率ヲ示シテ居ル、斯カ
ル情勢ニ於テハ「ドイツ」國民ノ構成ハ一代
一代ト變ッテ來テ、結局三代ニナッテ價値ノ
高イ階級ハ、低格ノ階級ニ依ッテ完全ニ壓
倒サレルコトトナル、斯クノ如キハ價値
ノ高キ家族ノ絕滅ヲ意味スルモノデアッ
テ、國家ハ累卵ノ危機ニ瀕スルコトト
ナルデアラウ、更ニ精神薄弱者、精神病
者非社會性者等ニ對シ年々數百萬ノ金額
ガ支出サレ、ソレ等ハ健康ナル家族カラ有
ユル種類ノ稅金トシテ取立テラレ、保護ノ
爲ニ要スル費用ノ負擔ハ其ノ金ヲ調達セ
ネバナラヌヤウナ人々ニ依リテハ、旣ニ如
何ナル狀態ニ於テモ絕望的ナ程度ニ達シテ
居ル數十年來「ドイツ」及ビ其ノ他ノ國々
ノ遺傳學者ハ、聲ヲ大ニシテ、健康ナル遺傳
質ヲ喪失シツヽアルコトハ總テノ文化民
族ニ重大ナ變質ヲ將來スルニ違ヒナイト云
フコトヲ警告シテ居ル、玆ニ遺傳病子孫ノ
防止法ヲ制定シ、生物學的ニ低格ナル遺傳
質ヲ除去セシムルヤウニスル希望ガ、「ドイ
ツ」國民全體カラ起ッタノデ。アル、斷種ハ國民
ノ漸進的ニ〓淨ニシ、病的遺傳素質ノ淘汰
ニ役立ツモノデアル」、是ガ「ドイツ」、ノ斷種法
ヲ始メタ時ノ趣意書ノ劈頭ニ書イテアルノ
デアリマス、デ私ハ此ノ問題ハ殆ド三四十
年來ト申シマスルカ、此ノ殆ド二十年程前ニ
「人口問題講話」ト云フ詰ラヌ本ヲ出シマシ
タガ、其ノ中ニモ此ノ問題ヲ切言シテアリ
マスルガ、一體何デ下村ガサウ云フ問題ニ
早クカラ關心ヲ持ツヤウニナッタカト申シ
マスルト、私ノ〓里デ私ガ子供ノ時ニ、近
イ所ニ住ンデ居ル家デ、長男ガ氣狂ヒニナ
リマシタ、我々極ク知ッテ居ル者ハ、氣狂ヒニ
ナッタソレニ對シテ非常ニ其ノ家ニ同情ヲ
表シテ居ル中ニ其ノ長女ガ是ハ氣ハ違ッテ
居リマセヌガ、其ノ兄ガ氣狂ヒデアル爲ニ
相思ノ中デアル結婚ガ成立シナインデアリ
マス、到頭ソレガ爲ニ其ノ長女ガ首ヲ縊ッテ
死ンダノデアリマス、サウスルト其ノ相思
ヲシテ居ッタ男ノ人モ亦今度ハ自殺シタン
デアリマス、サウスルト今度ハ其處ノ家へ
此ノ病氣ニ緣ノナイ所カラ嫁イダオ母サン
ガソレラ見テ、又入水ヲシテ死ンダノデア
リマス、私ハサウ云フコトヲ子供ノ時ニ見
タノガ、ドウモ斯ウ云フ數字ノ或調ベデ見
ルト、其ノ入水シタ嫁サンノ其ノ嫁ナタ家
ノオ父ッサン、詰リオ祖父サンガ矢張リ今ノ
遺傳性ノ精神病デアリマス、成ル程ソコニ
發病シナイ子供モ出來マセウガ、併シ私ニ
言ハシムレバ一人ノサウ云フ不幸ナ者ノ出
來ルト云フ、此ノ災害ト云ヒマスカ、憂ト
言ヒマスカ、悲シミハ、二人ヤ三人ノ殖エ
ルト云フコトトハ到底比較ニナラナイノデア
リマス、何モ氣狂ヒガ自分ガ氣狂ヒデ三人
モ四人モ殺セバ尙減ルヂヤナイカト云フヤ
ウナ、算盤勉定ヲ言フ譯デハアリマセヌガ、
ナカ〓〓斯ウ云フ家族ハ色々ノソコニ悲慘
ナル問題ガ順々ニ展開サレテ行クノデアリ
やや、更ニ私ガ是ハ實ハ申シテ宜イカドウ
カト思ヒマシタガ、私ノ最モ親友デ松波寅
吉ト云フ醫者ガアリマシタ、名古屋デ松波
病院長ト云ヘバ殆ド誰知ラヌ人ガアリマセ
又、是ハ私ガ六七年一〓ニ自炊シテ居ッタ、
此ノ松波氏ハ、私ガ自分妹ヲ是非貰ッテ呉レ
ト言ヒ、更ニ私ノ父親ト母親ヲ連レテ松波
君ノ岐阜ノ家へ訪ネテ行ツテ、其ノ又兩親ヲ
說イテ、貰ッテ吳レト言ッタガドウシテモ本
人ガ承知シナイ、何故カト云ヘバ松波君ハ
遣傳性ノ癲癎ヲ持ツテ居ッタ、ケレドモ、是
ハ私共五六年居ッタ間ニ發病シタノハ僅カ
ニ二囘デアリマス、ソンナコトハ一ツモ構
ハヌト云フノデ私ガ妹ヲ貰ッテ吳レト言ッタ
ンデアリマスガ、ドウシテモ聽カナイノデ
アリマス、到頭松波君ハ一生嫁ヲ取ラナイ、
俺ハ斯ウ云フ因子ヲ持ツ者ヲ後へ遺シタク
ナイト云フノデ、僅カ一月程前ニ亡クナリ
マシタガ、到頭最後迄妻ヲ娶ラナイ、同時ニ
自分ハ極メテ〓イ生活ヲ送ッタノデアリマ
ス、何モ今度ノ優生法ニ依ルト、松波君ハ斯
ウ云フ手術ヲ受ケナクテ宜イノデアリマス、
何シロ五年ニ二度位シカ起ラズ、其ノ後ハ
起ラナイ、又松波君ノ弟ハ立派ニ病院長ヲ
ヤッテ居リマスガ、是ハ少シモ起ラズ、其ノ
家族ニハ少シモサウ云フ心配ガナイノデアル、
ナイケレドモ、松波君ハ醫者デアリマスカラ、
日本ノ國ノ中へ少クトモ斯ウ云フ病質ヲ持ッ
タ者ハ遺シタクナイト云フノデ、到頭一生ヲ通
ジテ獨身デ幕シタノデアリマス、斯ウ云フ土流
階級デアリ、物ノ分ッタト申シマスルカ、サウ迄
シテ世ノ中ヘ迷惑ナ人ヲ造ラナイ本人モ可
哀想デアル、、家族モ可哀想デアル、親類モ可
哀想デアル、國モ迷惑スルノデアル、サウ云
フ者ヲ遺サヌト云フコトヲソレ程迄ニ進ン
デヤルト云フノハ、是ハ云フ迄モナク上流
階級、中流階級、物ノ分ッタ人ノヤルコトデ
アル、下級ノ多數ノ者ハ極メテ無邪氣ニド
ンドン拵ヘル、「ドイツ」ガ默ッテ居レバコヽ
三代程經ツト、上流、中流ノ社會ハ殆ド第
三階級ニ壓倒サレル、低格ノ者ガドン〓〓
殖エルノダ、現ニ日本デモ產兒制限ヲヤル
トカ、避姙ヲスルトカ云フノハ、相當物ノ
分ッタ連中ガヤッテ居ルノデアル、何處ノ國
デモ中流以上ノ子供ノ生レル率ハ低イノデ
アリマス、一般ノ餘リ好マシクナイ方ハ幾
ラデモ殖エテ行クノデアリマス、此處ニ精
神病患者ノ數ヲ御披露致シマスルト、精神
病ノ患者ノ數ハ昭和元年ニハ約六萬人デア
リマシタ、ソレカラ昭和十二年ニナッテ此ノ
六萬人ノ精神病患者ガ九萬ニナッテ居リマ
ス、丁度五割增シテ居リマス、此ノ中ニハ
無論遺傳性ト遺傳性デナイ者トアリマス
遺傳性ノ患者ハ其ノ九萬ノ中デ五萬八千ト
云ヒマスカラ、云殆ド三分ノ二ヲ占メテ居ル
ノデアリマス、デ遺傳性デナイ精神病患者ト
云フノハ能クアルノハ花柳病ナドニ罹ツ
テ氣狂ヒニナル、是ハ存外我々能ク見ルノ
デアリマス、是ハ遺傳性ヂヤナイノデアリ
マンク、ドウモ昨今私等ノ家へ手紙ナドデ
色々文句ヲ言ウテ來タリ、質問ヲシテ來ル
中ニ、此ノ後天的ノガ存外多イノデアリマス、
是ハ後カラサウ云フ病氣カラ氣狂ヒニナル
ノデアリマスカラ、今ノ遺傳性デナイカラ、
一ツモ心配ガナイノデアリマスケレドモ、
併シサウ云フ患者ガ自分ノ家族トカ親族ニ
アルト云フヤウナ人達ハ、今度ノ此ノ法案
ヲ聞イテ、氣狂ヒト云フモノハ皆イカヌノ
ダト云フコトデ、可ナリ何ト言ヒマスルカ
怯エルト云フカ、不安ノ念ヲ持ッテ居ルヤウ
デアリマスガ、サウヂヤナイノデアリマス、
ケレドモ遺傳デ精神病ニ罹ッテ居ル者ガ、
旣ニ前申シマシタヤウニ昭和元年カラ十二
年ノ間ニ五割其ノ數ヲ增シテ居ル人デアリ
さく、更ニ先天的ノ盲、盲ハ後天的ニ、世
ノ中ヘ目明デ生レタガ、後カラ或ハ癩ノ病
氣デアッテ其ノ病毒ガ入ッタトカ、或ハ「ト
ラホーム」ガ段々ヒドクナッテ眼ガ漬レタト
カ、或ハ能ク花柳病等ニ因ッテ眼ノ潰レルモ
ノモアリマス、是等ハ皆後天デアリマス、
今ノ遺傳ヂヤナイノデアリマス、遺傳デナ
イ者ハ無論非常ニ多イノデ、是モ昭和六年
ト十一年トヲ較ベマスルト、後天的デ後カ
ラ病氣ニナッテ眼ノ潰レルノハ、昭和六年ニ
ハ七萬四千デアッタモノガ、ソレハ昭和十一
年ニ六萬三千ニナリマシタカラ、是ハ幾分カ
減ッテ來テ居リマス、處ガ遺傳ノ方ノハ、數ハ
極メテ少イ、二千二百六十人ト云フノガ昭
和六年ノ數デアリマスルガ、昭和十一年ニ
ハ殆ド倍ニナッテ、二千二百六十人ガ四千二
百三人ニ增シテ居リマス、斯樣ニ精神病患
者ト言ハズ、其ノ他ノ惡質者ハ此ノ遺傳ニ
屬スル者ガ年ヲ逐ウテ殖エテ來ルト云フコ
トハ誠ニ寒心スベキコトデアリマス、體
ハ今度ノ法案ハ精神病院ニデモ入ッテ居ル
ト、其ノ院長ガ申請ヲシテ此ノ手術ヲスル
ト云フコトニナッテ居リマシテ、其ノ他ハ本
人達カラ請求スルコトニナッテ居リマス
従ッテ是ハ生溫イ徹底セヌト云フ聲ガ相當
又一面高イノデアリマス、併シ是ハマア順
序トシテ其ノ病ノ重イ者ハ入院モシ、又入
院シテ居ル者ハ今言フヤウニ病院ノ方デ申
請シテヤル更ニ私共ニ言ハシムレバ何
レ其ノ中刑法ノ規定ノ改正ニ伴ウテ其ノ時
ニ必ズ私ハ入ルト思ヒマスノハ今ノ刑事ノ
犯罪者デアリマス、而モソレガ矢張リ遺傳
ノ惡質ヲ持ッテ居ル爲ニサウ云フ犯罪ヲヤ
ル者ガ、今度ハ當然刑事政策トシテ之ニ手
術ヲ行フト云フコトハ當然過ギタ話デア
リ、又先程野村委員長カラ報告ノアリマシ
タヤウニ、ドウモ遺傳ダケヂヤ追ッ付カヌ、
今度ハ去勢シテシマフ、アト本人ガ犯罪ヲ
出來ヌヤウニシテシマフ、ソコ迄突込ンデ
去勢セネバ、唯斷種ダケデハ餘計安心スル
ト云フ、サウ云フ連中ハ實ニ無責任デアリ
マセウガ、餘計構ハズ無茶ナコトヲスルカ
ラ去勢シナケレバイカヌト云フコト迄モ
論ジラレテ居リマスガ、要スルニサウ
云フ惡質ガ社會ニ害ヲナス者ハ、無論是ハ
强制シテ斷種スベキデアリ、更ニ又一步進
ンデ去勢スルト云フコト迄是ハ考ヘラレル
ノデアリマス、デ本法ニ依ッテ將來產兒制
限ト云フヤウナコトガ······之ヲ助長シ、增
スコトニナリハセヌカト云フ懸念ノ說モア
リマス、是ハ此ノ法案バカリニ依ッテ右左ト
云フコトハ申上ゲ兼ネマスルガ、私共ノ解
釋デハ、今度ハ此ノ第十五條ニ「故ナク生殖
ヲ不能ナラシムル手術又ハ放射線照射ハ之
ヲ行フコトヲ得ズ」ト云フヤウニ禁止シタノ
デアリマス、是ハ現在ガソレヲ禁止スル法
文ノナイ爲ニ、果シテドレダケノ醫者ガド
レダケノ數ノ手術ナリ又ハ此ノ放射線ノ照
射ヲヤッテ居ルカハ、是ハドウモ統計デハ擧
ゲラレマセヌガ、私共ノ聞ク所デハ可ナリ
此ノ手術ヲヤッテ居ルラシイノデアリマス、
是カラモヤレマス、併シ是カラヤル時ニハ
第十八條ニ、其ノ時ニ醫者ハ「一年以下ノ
懲役又ハ千圓以下ノ罰金」ト云フ制裁ガ今
度附イタノデアリマス、詰リ理由ガナクシ
テ唯避姙ト云フヤウナコトデ今ノ手術ガ出
來ナクナッタノデアリマス、現在ハドレダケ
ヤッテ居ルカモ分リマセヌ、今度ハ此ノ法ガ
施行サレタラ、ソレヂヤドレダケ是ガ制限
サレルカ是モ分リマセヌ、分リマセヌガ、
兎ニ角今迄ハ制裁ガナイ、今度ハ一年以下
ノ懲役ト千圓以下ノ罰金ト云フ制裁ガ附イ
タ以上ハ、此ノ法ガ施行サレレバサウ云フ
手術ナリ照射ヲスル者ハ減ルモノト是ハ見
ナケレバナラヌト思フ此ノ方ノ效果ハ數
字ニ於テハ相當大キイト私ハ思フノデアリ
マス、デ無論我々ハ血族ノ絕エルコトヲ防
ガネバナリマセヌガ、併シ惡質者ガ後ニ續
イチヤ是ハ潰レルモノデ、今迄デモドウ云
フ名家デアッテモ色々ノ事情デ後ガ絕エテ來
レバ親類カラ養子ヲスルトカ色々ノ方法ガ
アリマス、此ノ病氣ト雖モ矢張リ其ノ家族
ナリ親族ナリノ間デ後ヲ繼グト云フ途ハア
ルノデ、假令其ノ血液ガ後ニ續イテモソレ
ハ氣違ヒデハ仕樣ガナイノデアリマス、デ
此ノ法案ガ先程モ建部博士ノ言ハレタヤウ
ニ、私共モ餘リニ重大ナ法案ガ非常ナ切迫
シタ時期ニ提出サレテ十分論議サレヌト云
フコトハ是ハ非常ニ私モ遺憾ニ存ジテ居
リマス、宗〓法案ガ屢〓、提案セラレテ通過セ
ズ、昨年ハ提案サレマシタガ、貴族院デ殆
ド囘數ヲ知ラヌ程議セラレタ例モアリマス
ルガ、唯私共ガ·······少ナクトモ私ガ之ニ今
贊意ヲ表シテ居ル氣持ハ是ガ來年ニナッタ、
再來年ニナッタト云ッテ、ソレデハ今迄遺傳
ノ精神病デアッタ者ガ急ニナクナルトカ、ド
ウトカ云フ問題デハナクシテ、此ノ問題ハ
今日ノ私ハ矢張リ時局ニ沿ウテ急ガネバナ
ラヌト云フ感ジヲ持ッテ居ルノデアリマス、
申上ゲル迄モナク此ノ前ノ體力ノ管理法案
ノ提案サレタ時ニモ、私ハ此ノ壇上カラ申
上ゲマシタガ、今囘ノ事變ニ依ッテ玆ニ國民
ノ中堅トナルベキ若イ人達ガ多數現地ニ
行ッテ或ハ戰デ死ニ「或ハ病ンデ死ニ、或ハ
又色々ナ病氣ヲ貰ッテ其ノ體位ガ下ルノミ
ナラズ內地デハサウシタ多數ノ若イ人ガ內
地ヲ離レテ居ル爲ニ內地ニ於ケル出生率ハ
非常ニ減ジルノデアル是ハ戰ノアル時ニ
ハ避クベカラザルコトデアリマシテ何ト
モ致シ方ハナイノデアリマス、從ッテ今日我
我ニ切ニ考ヘラレテ居ルコトハ結婚ノ年
齡ガ段々ト晩婚ニナリツヽアルノヲ矢張リ
早メルト云フノモ一策デアリマスルガ、
番勿體ナイコトハ赤ン坊ガ生レテ乳兒ノ
死亡スル率ガ、御承知ノ通リ「ヨーロッパ」ナ
ドニ比較シテ倍以上モ、日本ノ乳兒ノ死
亡率ガ高イノデアリマス、ソレハ先天的ニ弱
イカラ死ヌノヂヤナイ、ソレニ對スル手當
ガ足リナイ、或ハ榮養ガ足リナイ、或ハ不注
意ニ呑マシ過ギタリ、色々其ノ子供ノ育テ
方ノ衞生知識ノ足リヌト云フコトモアリマス、
又託兒所ト云フヤウナ制度ガマダ發達セヌ、
不十分デアルト云フコトモ重キ原因ヲ成シ
テ居リマスルガ、サウ云フ點デ兎ニ角今乳
兒ノ死亡率ノ餘リニ海外ヨリ高イノヲ、セ
メテ海外竝迄ハ之ヲ下シテ行キタイ、而モ今
度ハ小學カラ中學時代ニナルト、御承知ノ
結核病ト云フモノガ、是ハ日本ハ特ニ多イノ
デアリマス、是ハ私ガ今此處デ申上ゲル迄モ
ナク、結核ノ撲滅ト云フコトニハ御上ノ思
召モアリ、今囘モ相當ノ豫算モ見ラレテア
ルヤウデアリマスルガ、乳兒ノ死亡率ガ高
イ、若イ人ノ死亡率ガ又高イ、又ソレガ丁
度丁年ニナッテ徴兵檢査デ見テモ、甲種、乙
種ノ率ノ低イ大キナ原因ヲ成シテ居ルノ
デ、此ノ點ニ留意サレテ行ケバ今ノ平均
壽命ノ四十五歲ト云フモノヲセメテ五十歲
位迄ハ高メ得ルト思フノデアリマス、從ッテ
サウ云フコトハ、其ノ方面デ積極ニ大イニ
活動シナケレバナリマセヌガ併シ一方デ
此ノ雜草ハ其ノ根ヲ斷タナケレバナラナイ
ノデアリマス、デ海外ノ例ニ依リマスルト、
〓ドイツ」或ハ「スエーデン」其ノ他各國ノ例
ハ、斷種ヲ始メテカラ後ノ方ガ人口ノ出產
率ハ皆多クナッテ居リマス、例ヘバ「ドイツ」
ヲ以テ例ヲ採リマスレバ千九百三十三年
ニ此ノ斷種法ヲ始メタ時ニハ人口千ニ付
テノ出生率ハ一四·七デアリマス、ソレガ五
年經ツト一四·七ガ一八·三トナッテ居リマ
ス、是ハ斷種法ヲヤッタカラ人ロガ增加シ
タトハ私ハ申シマセヌ、斷種法ヲヤレバ
ヤッタダケノモノハ私ハ減ルト思フノデアリ
マスケレドモ、左デ斷種法ヲヤリ、右デハ
積極ニ今言フヤウニ體位ノ向上ト云フコト
ニ努メル、生レタ子供ハ成ルベク死ナヌヤ
ウニ丈夫ニ育テテ行ク、斯ウ云フヤウニ必ズ
斷種ニ力ヲ入レル時ニハ、其ノ國ノ政府ハ
積極ニ又多數子供ノ生レルヤウニ、又生レ
タ子供ノ體位ノ向上スルヤウニト努力ヲシ
テ居ル時ト思ヒマス、詰リ兩々相俟ッテ行ク
ノダト思ヒマス恐ラクハ日本デモ此ノ法
案ガ成立シマシテ、一方デ斷種サレル爲ニ
惡質者ノ數ハ減リマス、私ハ、惡質者デア
ル以上ハ減ラサニヤイカヌト思ヒマス、百
利ヲ興スヨリモ一害ヲ除クニ如カズト云フ
コトガアリマスガ、事實今日ノ新聞ノ社會
記事ヲ見テモ、非常ナ悲慘ナ記事ハ、調べ
レバ大〓之ニ引掛ッテ來ルノデアリマス、
昨年カ杉並區デアリマシタカ、中野區カデ、
兄貴ハ狂人ダ、弟ハマダ出テ來ヌ、出テ來
ヌカラ放ッカッテ置イタラ、ソレガ「カフヱー」
店ニ入ッテ入ッテ、其處デ丁度病氣ガ起ッ
テ其處ノ場ニ居ッタ朝鮮ノ留學生ト、ソレ
ヲ御相手ヲシテ居ッタ「カフヱー」ノ女給ガ
殺サレタ、其處へ來テ偶發シタノデアリマ
ス、ドウシテモ惡質者デアレバ、是ハ社會
へ「マイナス」ヲ掛ケルノデアルカラ、是ノ
種ヲ斷ツト云フコトハ本人ノ爲ノミナラズ、
ソレハ他ニ直接、間接ニ幾多ノ影響ヲ及ス
ノデアリマスカラ、是ハ除クダケノ數ハ減
リマセウ、併シ一方デ是カラハ△〓言フヤウ
ナ斷種或ハ照射ノ手術ハ、今迄ハ法ノ制裁
ガナカッタガ、今度ハ一年以下ノ懲役或ハ千
圓以下ノ罰金ト云フ制裁ガコヽヘ出來マス
れた。餘程之ニ依ッテ此ノ方ハ減ッテ來ルカ
ラ、マア裏カラ言ヘバ出生ガ增スト云フコ
トモ出來マス、併シ何ト言ッテモ根底ハ國民
全體ガ目覺メテ、思想的肉體的ニ伸ビテ
來ナケレバ唯此ノ法一ツノ成立スル、セ
ヌト云フコトデ直チニ日本ノ人口ノ是非ト
云フコトハ私ハ申セナイト思フ、デマア此
ノ人口ノ增減トカ斯ウ云ウ問題ハ極メテ緩
慢ナモノデアリ、殊ニ數カラ言ヘバ漸ク何
萬トカ云フノデ、知レタモノデアリマスル
ガ、唯考慮シテ戴キタイコトハ、普通ノ品
物ナレバ註文シテ增產スルコトモ出來レバ
註文ガナケレバ工場ノ一部ヲ閉鎖スルトカ、
或ハ操業ノ短縮トカト云フコトハ勝手ニ
取捨出來マスケレドモ、一ト度此ノ人口ノ
動キガ增ストカ減ルトカ、或ハ一般ノ國民
ノ體位ガ良クナルトカ、惡クナルトカ云フ
此ノ潮ハナカ〓〓容易ナコトデ動カナイノ
デアリマス、サレバコソ人口ノ增加ト云フコ
トニ如何ニ苦慮シテ居ッテモ、「フランス」ハア
ノ通リナカ〓〓彼ノ大勢ヲ支ヘ戾スコトハ
出來ナイノデアリマス、「ナポレオン」時代ニ
ハドン〓〓殖エタアノ「フランス」ガ、今日
ナカ〓〓戾ラナイノデアリマス、是ハ直グ
右左ト見エル問題デハアリマセヌガ、我々
ガ自分達ノ後ニ附イテ來ル民族ノ爲ヲ思ッ
タナラバ、斯ウシタ惡質者ハ遺サナイヤウ
ニ、サウシテ健全ナル者ガ殖エテ行クト云
フコトニ於テ、聘カ我々ガ子孫ニ盡ス義務ガ
足リルノデハナイカ、恰モ此ノ時局ニ際會
シテ居ルダケニ、私ハ却テ此ノ案ノ施行セラ
ルヽコトガ急ナルコトヲ覺エルノデアリマス、
先程カラ此ノ議場ニ居リマスト、色々ト豫
算其ノ他ニ付テ幾多ノ問題モゴザイマシタ、
私ハ「ヨーロッパ」ノ國ニ依ッテハ、戰サニ
ナッテサウシテ軍事費ハドン〓〓增スガ、其
ノ他ノ費用ハ逆ニ減ラシテ行ッタト云フ例
モ聞カヌデハアリマセヌ、昨今ノヤウニマ
ア便乘スルト云フ譯デハアリマセヌガ、餘
リニモドン〓〓色々ノ仕事ガ殖エルト云フ
コトモ、斯ウ云フ時局、殊ニ持久戰デバ大
イニ考ヘナケレバナラヌト思ヒマスガ、併
シ總テノ問題ノ根柢ハ人ニアルノデアリマ
ス、今迄ノ日本ハ兎角金トカ物ノ問題バ
カリニ餘リニ氣ガ捉ハレ過ギテ居ッタノデ
アリマス、幸ニ厚生省ガ出來、茲ニ積極的ニ
國民ノ體力管理デアルトカ、或ハ健康保險
デアルトカ其ノ他幾多ノ案ヲ今進メテヤッ
テ居マスルガ、マア是等ノ幾多ノ施設モ、
要スルニ極メテ大事デアルガ、併シ矢張リ
ソレヲ動カス人、ソコニ根柢ガアルノデア
リマスルカラ、此ノ運用ガ宜シキヲ得ナイ
ト、必ズシモ此ノ趣旨ト云フモノガ貫徹ハ
シニクイノデアリマス、是ハ私ハ、當局ニ
於キマシテモ先程建部博士ノ御注意モアリ
マシタガ、此ノ委員會ニ於テモ幾多ノ註文
ハアリマシタ、殊ニ最モ私共ガ痛切ニ感ジ
ルノハ癩ノ患者ノ問題デアリマシテ、是ハ
現存ノ約一萬五千、其ノ中ノ約一萬近クハ
モウ收容サレテ居リマス、是カラ後ノ五千
モ亦收容スレバ、是ハモウ其ノ收容サレタ
人ノ皆亡クナッタ時ガ日本デ癩ガ無クナツ
タ時デアリマス、此ノ人達ニ手術ヲスルト
カセヌトカ云フ問題ハ別デ、此ノ連中ヲ皆
隔離サヘシテシマヘバ、此ノ隔離シタト共
ニ日本デ癩ハ無クナルノデアリマス、段々
先キデ經費ハ滅ッテ來ルノデアリマシテ、無
クナルノデアリマス、今日ハ世界デハ、モウ
隔離シテ段々ト減ッテ無クナッタ「イギリス」
トカ其ノ他ノ例モアリマス、「ドイツ」アタリ
ナドハ、確カ七人トカ八人トカ云フノガ二
三年前ノ話デアル、〓究材料ガ足リナクテ
困ルト云フコトデアル、其ノ點ハ、日本ハ安
心ナモノデ、一萬五千人デアルカラ〓究材
料ガ豐富デアリマス、サウ豐富ニ要ラナイ、
是レ位ハ、斯クノ如ク豫算ガ膨脹サレテ色
色仕事ヲヤル時ニ、アノ不幸ナ癩患者ダケ
ハ收容シテ、之ヲ根絕シテ日本カラ無クナ
ラシメルソレデ本人ノ爲、本人ノ家族ノ
爲本人ノ親類ノ爲ニ、幾多ノ精神的、肉
體的ノ苦痛ヲ除クト云フガ如キコトハ極メ
テ大切デアリマシテ、是等ハ委員會デ委員
ノ中カラモ多數意見ガ出マシテ厚生大臣
モ之ニ大イニ努力サレルト云フコトヲ言明
サレタノデアリマス、私共ハソレ等ノ言ヲ
信賴シマシテ、ドウカ此ノ法案ガ此ノ趣旨
ノ達成スルヤウニ運行サレタイ、ソレニハ
又此ノ趣旨ニ付テ、一般ノ民衆ニ能ク知ッテ
貰ヒタイ、有ラユルモノニハ利害ハ伴ヒマ
スルガ、何トシテモ私共ハ其ノ害毒ノ極メ
テ深刻ナルモノヲ心得テ居リマスカラ、サ
ウ云フ希望ヲ添ヘマシテ、私ハ此ノ本案ノ
成立スルコトヲ切望スル者デアリマス
〔國務大臣吉田茂君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=124
-
125・吉田茂
○國務大臣(𠮷田茂君) 只今上程セラレテ
居リマスル國民優生法案ニ付キマシテハ
前刻來段々御議論ヲ拜聽シタ次第デゴザイ
マス、提案ノ當初ニモ申述べテ置キマシタ
通リニ、本法案ノ實施ニ付キマシテハ、政
府ハ決シテ本法案ノミニ依リマシテ日本
國民ノ實質、體位竝ニ精神共ニ健全ナル日
本國民ノ本質ヲ强化シ、尙健全ナル人口ヲ
殖ヤシ得ルト云フ風ニ考ヘテ居ル次第デハ
ナイノデゴザイマシテ、本法ニ依リマシテ
惡質者ノ後ニ殖エテ參リマスルコトヲ
防止致シ、又良質者ノ益〓殖エマスルコト
ヲ、本法ニ依リマシテ馴致致シマスルト共
ニ、是ト併セテ各種ノ積極的ナ方策、保健
衞生其ノ他有ラユル人口問題等ニ關シマス
ル積極的施設ニ大イニ力ヲ注ギマシテ眞
ニ優良ナル日本國民ノ益〓殖エルコトヲ期
待致シ、之ニ依リマシテ國力ノ增强ヲ圖ラ
ウト云フ精神ニ外ナラヌ次第デゴザイマ
ス、本案ノ御審議ニ連レマシテ、委員會
ニ於キマシテ希望決議案ヲ議セラレマシタ
コトモ、亦此ノ御趣意デアラウト存ズル
ノデアリマス固ヨリ本法ハ我ガ國ニ於
キマシテ初メテ實行セラレマス極メテ意味
重大ナル法案デゴザイマスルカラ、希望決
議ノ各項目ニ謳ハレテ居リマスルガ如ク、
本法ノ實施ニ付キマシテハ十分ナル留意ヲ
致シマシテ、其ノ趣意、目的ト云フモノ
ガ、國民ノ間ニ能ク理解ヲセラレ又本
法ノ運用ニ當リマシテ、苟モ其ノ運用ヲ過
ツガ如キコトノアリマセヌヤウ、十分ノ注
意ヲ致サネバナリマセヌコト勿論デゴザイ
マスルノデ、其ノ點政府ニ於キマシテハ、
希望決議ノ各條項ノ御趣意ニ全然御同感デ
アリマスルト共ニ、併セテ本法ノ運用ト伴
ヒマシテ、各種ノ積極的方策ニ全力ヲ注ギ
マシテ、日本國民ノ力ノ、又數ノ增强ト云
フコトニ盡力ヲ致シタイ、斯樣ニ考ヘテ居
ル次第デゴザイマスルノデ、此ノ際一言政
府ノ見ル所ヲ申上ゲル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=125
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126・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 是ニテ討論ハ終
リマシタ、本案ノ採決ヲ致シマス、本案ノ
第二讀會ヲ開クコトニ同意ノ諸君ノ起立ヲ
請ヒマス
〔起立者多數〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=126
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127・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 過半數ト認メマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=127
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128・西大路吉光
○子爵西大路言光君 直チニ本案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=128
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129・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=129
-
130・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=130
-
131・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=131
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132・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナケレバ、全部ヲ問
題ニ供シマス、本案全部、委員長ノ報告通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=132
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133・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=133
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134・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=134
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135・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=135
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136・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=136
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137・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=137
-
138・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第三讀會
ヲ開キマス、本案全部、第二讀會ノ決議通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=138
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139・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=139
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140・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第八、裁判
所構成法改正法律案、日程第九、檢察廳法
案日程第十、辯護士法中改正法律案、日
程第十一、刑事訴訟法中改正法律案、日程
第十二、司法書士法中改正法律案、日程第
十三、樺太ニ衆議院議員選擧法施行ニ關ス
ル法律案、衆議院提出、第一讀會、是等ノ
六案ヲ一括シテ議題ト爲スコトニ御異議ハ
ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=140
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141・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス
〔左ノ送付文及法律案ハ朗讀ヲ經
サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス以下
之ニ傚フ〕
裁判所構成法改正法律案
右本院提出案及送付候也
昭和十五年三月二十四日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
裁判所構成法
第一章總則
第一條裁判所ハ民事及刑事ヲ裁判ス
第二條裁判所ハ區裁判所、地方裁判所、
控訴院及大審院トス
司法事務上必要アルトキハ法律ヲ以テ
或ル地方裁判所ヲ民事ノミヲ管轄スル
裁判所又ハ刑事ノミヲ管轄スル裁判所
ト爲スコトヲ得
第三條裁判所ニ判事ヲ置ク
第四條裁判ニ關スル職務ノ執行ニ付テ
ハ判事ハ獨立ノ地位ヲ有ス
第五條區裁判所ニ於テハ判事單獨ニテ
裁判ヲ爲ス
地方裁判所ニ於テハ三人ノ判事、控訴
院ニ於テハ五人ノ判事、大審院ニ於テ
ハ七人ノ判事ヲ以テ組織シタル部ニ於
テ合議ニ依リ裁判ヲ爲ス
第六條裁判所ノ設置及管轄區域ハ別ニ
法律ヲ以テ之ヲ定ム
第七條裁判所ニ於テハ國語ヲ用フ
第八條司法年度ハ一月一日ニ始マリ十
二月三十一日ニ終ル
第九條裁判所ノ事務章程ハ司法大臣之
ヲ定ム
大審院ハ自ラ事務章程ヲ定ム
第二章區裁判所
第十條區裁判所ハ民事訴訟ニ於テ左ノ
事件ニ付管轄權ヲ有ス
-千圓ヲ超過セサル金額又ハ價額千
圓ヲ超過セサルモノニ關スル事件
二價額ニ拘ラス左ノ事件
イ住家其ノ他ノ建物ノ賃貸借關係
ニ基ク事件
ロ占有ノミニ關スル事件
反訴ニ付テハ前項ノ規定ニ拘ラス訴訟
法ノ定ムル所ニ依リ管轄權ヲ有ス
第十一條區裁判所ハ刑事訴訟ニ於テ左
ノ事件ニ付管轄權ヲ有ス但シ豫審ヲ經
タルモノ及特ニ大審院ノ管轄ニ屬セシ
メタルモノハ此ノ限ニ在ラス
一拘留又ハ科料ニ該ル罪ノ事件
二短期一年以上ノ懲役又ハ禁錮ニ該
ル罪ヲ除ク外有期ノ懲役若ハ禁錮又
ハ罰金ニ該ル罪ノ事件
第十二條區裁判所ハ破產事件ニ付管轄
權ヲ有ス
第十三條區裁判所ハ法律ニ別段ノ定ア
ル場合ヲ除ク外非訟事件ニ付管轄權ヲ
有ス
非訟事件中登記事務ハ錄事ヲシテ之ヲ
取扱ハシムルコトヲ得
第十四條區裁判所ノ權限及權限行使ノ
方法ハ本法ニ規定スルモノノ外訴訟法
其ノ他ノ法律ノ定ムル所ニ依ル
第十五條司法大臣ハ區裁判所ノ事務ノ
一部ヲ同一地方裁判所ノ管轄區域内ノ
他ノ區裁判所ヲシテ取扱ハシムルコト
ヲ得
第十六條司法大臣ハ區裁判所ノ事務ノ
一部ヲ取扱ハシムル爲區裁判所出張所
ヲ設置スルコトヲ得
第十七條判事二人以上ヲ置キタル區〓
判所ニ於テハ司法大臣ハ其ノ一人ヲ監
督判事トス
第十八條監督判事又ハ判事一人ノ區裁
判所ニ於テハ其ノ判事ハ其ノ廳ノ行政
事務ヲ掌ル監督判事差支アルトキハ他
ノ判事席次ノ順序ニ依リ之ヲ代理ス
判事一人ノ區裁判所ニ於テ其ノ判事差
支アルトキハ裁判事務ノ代理ヲ爲ス判
事之ヲ代理ス
第十九條區裁判所ノ事務ハ各判事ニ分
配ス
第二十條判事差支アルトキハ其ノ區裁
判所又ハ他ノ區裁判所判事之ヲ代理ス
第二十一條區裁判所ニ於ケル事務分配
及代理順序ハ地方裁判所長每年豫メ之
ヲ定ム
第二十二條司法大臣ハ區裁判所カ事務
ヲ取扱フコトヲ得サル事由ヲ生シタル
場合ニ於テハ地方裁判所長ノ每年豫メ
定メタル順序ニ依リ他ノ區裁判所ヲシ
テ代リテ之ヲ取扱ハシムルコトヲ得
第二十三條事務ノ分配ハ司法年度中之
ヲ變更セス但シ判事事務分擔著シク不
均衡ト爲リタル場合又ハ轉職、退職、
疾病其ノ他ノ事故ニ因リ引續キ差支ヲ
生シタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第二十四條區裁判所判事差支ノ爲或ル
事件ヲ取扱フコトヲ得ス裁判所ノ判事
中其ノ代理ヲ爲シ得ヘキ者ナキ場合ニ
於テ其ノ事件緊急ナリト認ムルトキハ
地方裁判所長ハ地方裁判所判事ニ其ノ
代理ヲ命スルコトヲ得
第三章地方裁判所
第二十五條地方裁判所ハ民事訴訟ニ於
テ左ノ事件ニ付管轄權ヲ有ス
第一審トシテ
區裁判所ノ管轄ニ屬スルモノヲ除キ
其ノ他ノ事件
二第二審トシテ
イ區裁判所ノ判決ニ對スル控訴
ロ區裁判所ノ決定及命令ニ對スル
抗〓
第二十六條地方裁判所ハ刑事訴訟ニ於
テ左ノ事件ニ付管轄權ヲ有ス
第一審トシテ
區裁判所ノ管轄ニ屬スルモノ及特ニ
大審院ノ管轄ニ屬セシメタルモノヲ
除キ其ノ他ノ事件
二第二審トシテ
イ區〓判所ノ判決ニ對スル控訴
ロ大審院ノ管轄ニ屬スルモノヲ除ク
外區裁判所ノ決定命令ニ對スル抗〓
第二十七條地方裁判所ハ非訟事件ニ關
スル區裁判所ノ決定及命令ニ對スル抗
告ニ付管轄權ヲ有ス
第二十八條地方裁判所ニ一又ハ二以上
ノ民事部及刑事部ヲ置ク
部ノ數ハ司法大臣之ヲ定ム
第二十九條地方裁判所ニ所長ヲ置ク
部ニ部長ヲ置ク
第三十條所長ハ部長ト爲リ且其ノ廳ノ
行政事務ヲ、部長ハ裁判長ト爲リ部ノ
行政事務ヲ掌ル
第三十一條所長差支アルトキハ席次ノ
順序ニ依リ部長之ヲ代理ス
部長差支アルトキハ席次ノ順序ニ依リ
部員之ヲ代理ス
第三十二條豫審事務ヲ取扱フヘキ判事
ハ司法大臣之ヲ命ス
第三十三條地方裁判所ノ事務ハ之ヲ各
部各豫審判事及其ノ他ノ各判事ニ分配
ス各部長、部員ノ配置及所長、部長、
部員差支アル場合ニ於ケル代理ノ順序
ハ部長及上席判事ト協議シテ所長每年
豫メ之ヲ定ム
第三十四條地方裁判所判事差支ノ爲或
ル事件ヲ取扱フコトヲ得ス且其ノ廳ノ
判事中代理ヲ爲シ得ヘキ者ナキ場合ニ
於テ所長ハ其ノ管轄區域內ノ區裁判所
判事又ハ豫備判事ニ其ノ代理ヲ命スル
コトヲ得但シ豫備判事ハ各部一人ニ限
ル
前項ノ場合ニ於テ緊急ノ必要アリト認
ムルトキハ控訴院長ハ管轄區域内ノ他
ノ地方裁判所判事ヲシテ豫審事務ヲ取
扱ハシムルコトヲ得
第三十五條民事地方裁判所及刑事地方
裁判所アル場合ニ於テ裁判事務上必要
アリト認ムルトキハ控訴院長ハ民事地
方裁判所又ハ刑事地方裁判所ノ判事ニ
其ノ管轄區域ヲ同シクスル刑事地方裁
判所又ハ民事地方裁判所ノ判事ノ代理
ヲ命スルコトヲ得
第三十六條。第十四條及第二十三條ノ規
定ハ地方裁判所ニ之ヲ準用ス
第三十七條司法大臣ハ地方裁判所ノ事
務ノ一部ヲ取扱ハシムル爲支部ヲ設置
スルコトヲ得
支部ノ上席ノ部長又ハ上席ノ判事ハ支
部ノ行政事務ヲ掌ル
上席ノ部長又ハ上席ノ判事差支アル場
合ニ之ヲ代理スヘキ者ハ司法大臣ノ定
ムル所ニ依ル
第四章控訴院
第三十八條控訴院ハ左ノ事件ニ付管轄
權ヲ有ス
地方裁判所ノ第一審判決ニ對スル
控訴
二大審院ノ管轄ニ屬スルモノヲ除ク
外地方裁判所ノ第一審トシテ爲シタ
ル決定及命令ニ對スル抗〓
第三十九條控訴院ニ院長ヲ置ク
部ニ部長ヲ置ク
第四十條院長ハ部長ト爲リ且其ノ廳ノ
行政事務ヲ掌ル
部長ハ裁判長ト爲リ其ノ部ノ行政事務
可愛い
第四十一條院長ハ判事差支ノ爲或ル事
件ヲ取扱フコトヲ得ス且其ノ廳ノ判事
中代理ヲ爲シ得ヘキ者ナキ場合ニ於テ
其ノ事件緊急ナリト認ムルトキハ管轄
區域内ノ地方裁判所判事ニ其ノ代理ヲ
命スルコトヲ得但シ豫備判事ニ之ヲ命
スルコトヲ得ス
第四十二條第十四、第二十三條、第二
十八條、第三十一條及第三十三條ノ規
定ハ控訴院ニ之ヲ準用ス
第五章大審院
第四十三條大審院ハ左ノ事件ニ付管轄
權ヲ有ス
終審トシテ
イ上告
ロ地方裁判所ノ第二審トシテ爲シ
タル決定及命令竝控訴院ノ決定及
命令ニ對スル抗〓
ハ地方裁判所又ハ區裁判所ノ爲シ
タル上〓棄却ノ決定ニ對スル抗〓
二第一審ニシテ終審トシテ
刑法第七十三條、第七十五條、第七
十七條乃至第七十九條及第八十一條
乃至第八十九條ノ罪竝治安維持法第
一條第一項ノ罪及其ノ未遂ノ罪ノ事
件
第四十四條大審院ニ院長ヲ置ク
部ニ部長ヲ置ク
第四十五條院長ハ部長ト爲リ且其ノ廳
ノ行政事務ヲ掌ル
部長ハ裁判長ト爲リ其ノ部ノ行政事務
マルナ
第四十六條院長ハ判事差支ノ爲或ル事
件ヲ取扱フコトヲ得ス且其ノ廳ノ判事
中代理ヲ爲シ得ヘキ者ナキ場合ニ於テ
事件緊急ナリト認ムルトキハ控訴院ノ
判事ニ其ノ代理ヲ命スルコトヲ得
第四十七條法律上ノ點ニ付爲シタル大
審院ノ裁判ハ當該事件ノ裁判ニ付裁判
所ヲ覊束ス
第四十八條大審院ニ於テ法律上ノ點ニ
付前ニ爲シタル裁判ト異ル裁判ヲ爲サ
ントスルトキハ事件ノ性質ニ從ヒ民事
若ハ刑事ノ總部又ハ民事及刑事ノ總部
ヲ聯合シタル部ニ於テ審判ヲ爲ス
聯合審判ハ當該事件ヲ擔任スル部ノ請
求ニ因リ院長之ヲ命ス
第四十九條聯合部ハ相當ト認ムルトキ
ハ當該法律上ノ點ニ限リ裁判ヲ爲スコ
トヲ得此ノ場合ニ於テハ聯合審判ノ請
求ヲ爲シタル部ニ於テ事件ヲ完結ス
第五十條聯合部ノ審判ハ聯合部ノ判事
三分ノ二以上關與シテ之ヲ爲ス
前項ノ場合ニ於テハ聯合部ノ判事中席
次最高キ者ヲ部長トス伹シ院長ハ自ラ
部長ト爲ルコトヲ得
第五十一條院長ハ第一審ニシテ終審タ
ルヘキ刑事ノ事件ニ付其ノ廳ノ判事ニ
豫審ヲ命ス但シ便宜ニ依リ他ノ裁判所
ノ判事ニ豫審ヲ命スルコトヲ得
第五十二條第十四條、第二十三條、第
二十八條、第三十一條及第三十三條ノ
規定ハ大審院ニ之ヲ準用ス
第六章判事
第五十三條判事ハ三年以上辯護士トシ
テ實務ニ從事シタル者ヨリ之ヲ任ス
第五十四條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ判事ニ任セラルルコトヲ得ス
禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者
二破產ノ宣〓ヲ受ケ復權セサル者
三懲戒處分ニ因リ免官セラレタル者
又ハ辯護士法ニ依リ除名セラレタル
者
第五十五條新ニ判事ニ任セラレタル者
ハ一時豫備判事トシテ地方裁判所ニ勤
務セシムルコトヲ得
第五十六條判事ハ終身官トシ親任、勅
任又ハ奏任トス
第五十七條大審院長ハ親任判事ヲ以テ
之ヲ親補ス
控訴院長、大審院部長及地方裁判所長
ハ司法大臣ノ上奏ニ因リ勅任判事ヲ以テ
之ヲ補シ其ノ他ノ判事ノ職ハ勅任判事又
ハ奏任判事ヲ以テ司法大臣之ヲ補ス
第五十八條五年以上判事タル者ニ非サ
レハ控訴院判事ニ補セラルルコトヲ得
ス
第五十九條十年以上判事タル者ニ非サ
レハ大審院判事ニ補セラルルコトヲ得
ス
第六十條判事タル資格ヲ有スル者ニシ
テ左ニ揭クルモノノ在職ハ前二條ノ適
用ニ付テハ之ヲ判事ノ在職ト看做ス
一朝鮮總督府判事
二臺灣總督府法院判官
三關東廳法院判官
四南洋廳判事
五實務ニ從事スル辯護士
六帝國大學令又ハ大學令ニ依ル大學
ニ於テ民事又ハ刑事ニ關スル法律學
ノ〓授ヲ擔任スル〓授、助〓授又ハ
專任〓員
七行政裁判所長官及行政裁判所評定
官
八司法次官、司法省各局長及司法書
記官
九訴訟事件及非訟事件ニ關スル事務
竝登記事務ニ從事スル領事官
第六十一條判事ハ在職中左ノ諸件ヲ爲
スコトヲ得ス
一公然政事ニ關係スルコト
二政黨ノ黨員又ハ政社ノ社員ト爲ル
コト
三帝國議會ノ議員又ハ道府縣市町村
ノ議會ノ議員ト爲ルコト
四行政事務ニ關スル公務ヲ兼ヌルコ
ト
五商業ヲ營ミ又ハ營利ヲ目的トスル
法人ノ役員ト爲ルコト
第六十二條司法事務上必要アルトキハ
司法大臣ハ控訴院又ハ大審院ノ總會ノ
決議ニ依リ判事ニ轉職ヲ命スルコトヲ
得
第六十三條判事身體又ハ精神ノ〓弱ニ
因リ職務ヲ執ルコト能ハサルニ至リタ
ルトキハ控訴院又ハ大審院ノ總會ノ決
議ニ依リ之ニ退職ヲ命スルコトヲ得
疾病其ノ他巳ムコトヲ得サル事由アル
場合ニ於テハ本人ノ願ニ依リ前項ノ規
定ニ拘ラス之ニ退職ヲ命スルコトヲ得
第六十四條前二條ノ總會ニ關スル事項
ハ司法大臣之ヲ定ム
第六十五條法律ヲ以テ裁判所ノ組織ヲ
變更シ又ハ之ヲ廢シタル場合ニ於テ其
ノ判事ヲ補スヘキ關位ナキトキハ司法
大臣ハ之ニ俸給ノ半額ヲ給シテ闕位ヲ
待クシム
第六十六條判事禁錮以上ノ刑ニ處セラ
レタルトキハ其ノ官ヲ失フ
第六十七條判事ハ第六十二條ノ規定ニ
依ルノ外懲戒ノ處分ニ因ルニ非サレハ
其ノ意ニ反シテ轉官、轉職又ハ免官セ
ラルルコトナシ
前項ノ規定ハ豫備判事ニ對シ勤務スヘ
キ裁判所ノ變更ヲ命スルコトヲ妨ケス
第六十八條判事ニ對シ懲戒訴追又ハ刑
事訴追ヲ始メタル爲法律上職務ヲ執ラ
シムルコト能ハサル期間內ハ俸給ノ三
分ノ一ヲ減ス
第六十九條判事ノ席次ハ司法大臣之ヲ
定ム
第七章錄事及通譯官吏
第七十條裁判所ニ錄事ヲ置ク錄事ハ奏
任又ハ判任トス
錄事ハ民事及刑事ノ審理ニ關スル準備、
法廷ノ立會、調書ノ作成、記錄ノ整理保
管其ノ他法令ノ定ムル事務ヲ取扱フ
錄事ハ前項ノ外上官ノ指揮ヲ承ケ裁判
所ニ於ケル諸般ノ事務ヲ取扱フ
第七十一條地方裁判所及錄事二人以上
ヲ置キタル區裁判所ニ監督錄事、)控訴
院及大審院ニ錄事長ヲ置ク
錄事ノ職ハ司法大臣之ヲ補ス
監督錄事及錄事長ハ上官ノ命ヲ承ケ錄
事ノ事務ヲ監督ス
第七十二條裁判所ニ通譯官及通譯吏ヲ
置クコトヲ得
通譯官ハ奏任、通譯吏ハ判任トス
通譯官及通譯吏ノ職ハ司法大臣之ヲ補
ス
第八章開廷
第七十三條開廷ハ裁判所又ハ支部ニ於
テ之ヲ爲ス
事務ノ處理上必要ナル事情アルトキハ
司法大臣ノ許可ヲ受ケ管轄區域内ノ一
定ノ場所ニ於テ開延ヲ爲スコトヲ得
第七十四條開廷中秩序ノ維持及審判ノ
指揮ハ裁判長ニ屬ス
第七十五條開延ハ定數ノ判事列席シテ
之ヲ爲ス但シ裁判所ノ長ハ裁判長ノ請
求ニ因リ補充判事ヲ命スルコトヲ得
補充判事ハ審判ニ立會ヒ判事差支アル
トキ之ニ代ルモノトス
第七十六條安寧秩序又ハ風俗ヲ害スル
ノ虞アルトキハ裁判所ハ決定ヲ以テ對
審ノ公開ヲ停ムルコトヲ得
第七十七條對審ノ公開ヲ停ムルノ決定
ハ理由ヲ開示シテ之ヲ言渡スヘシ
第七十八條判決ノ言渡ハ之ヲ公開ス但
シ理由ニ付テハ安寧秩序又ハ風俗ヲ害
スルノ虞アルトキハ裁判所ハ決定ヲ以
テ公開ヲ停ムルコトヲ得此ノ場合ニ於
テハ前條ノ規定ヲ準用ス
第七十九條公開ヲ停メタルトキト雖裁
判長ハ相當ト認ムル者ノ入廷ヲ許スコ
トヲ得
第八十條裁判長ハ未成年者、裁判所ノ
威儀ニ適セサル風體ヲ爲ス者其ノ他秩
序維持ニ害アリト認ムル者ノ入廷ヲ禁
シ又ハ之ヲ退廷セシムルコトヲ得
第八十一條裁判長ハ法廷ノ秩序維持ノ
爲必要ト認ムルトキハ開延中審判ヲ妨
ケ又ハ不當ノ行狀ヲ爲ス者ヲ閉廷迄留
置スルコトヲ得
裁判所ハ決定ヲ以テ前項ノ違反者ヲ五
百圓以下ノ過料又ハ五日以內ノ勾置ニ
處スルコトヲ得
留置命令及其ノ理由ハ之ヲ訴訟記錄ニ
記載スヘシ
第八十二條過料又ハ勾置ヲ命スル裁判
ニ對シテハ該事件ノ手續ニ從ヒ卽時抗
告ヲ爲スコトヲ得
勾置ニ付テハ勾留ニ關スル規定ヲ準用ス
第八十三條第八十一條ノ場合ニ於テ其
ノ行爲刑ヲ科スヘキモノナルトキ及法
廷ニ於テ僞證其ノ他ノ犯罪アリタルト
キハ裁判長ハ事實ヲ明確ニシテ事件ヲ
檢事ニ送致スヘシ此ノ場合ニ於テ必要
アルトキハ裁判長ハ違反者ノ逮捕ヲ命
スルコトヲ得
第八十四條第七十四條及第七十六條乃
至前條ノ規定ハ區裁判所判事、ヽ豫審判
事及受命判事ノ審判ニ之ヲ準用ス但シ
裁判長ノ權限ハ審判ヲ爲シタル判事之
ヲ行フ
第八十五條豫審判事又ハ受命判事ノ爲
シタル過料又ハ勾置ノ裁判ニ對シテハ
二日以內ニ判事所屬ノ裁判所ニ異議ノ
申立ヲ爲スコトヲ得
抗告ハ異議ニ付テノ裁判ニ對シテ之ヲ
爲スコトヲ得
第八十六條法廷ニ於テハ審判ニ關與ス
ル判事、檢事、錄事及辯護士ハ一定ノ
制服ヲ著ス
第九章合議
第八十七條裁判ノ合議ハ裁判長之ヲ開
キ且之ヲ整理ス
合議ハ之ヲ公行セス
合議ノ〓末竝各判事ノ意見及多少ノ數
ニ付テハ嚴ニ祕密ヲ守ルヘシ
第八十八條合議ニ於テハ席次低キ判事
ヨリ順次意見ヲ陳述シ裁判見ヲ終トス
判事ハ意見ノ陳述ヲ拒ムコトヲ得ス
第八十九條裁判ハ過半數ノ意見ニ依ル
數額ニ付判事ノ意見三說以上ニ分レ何
レモ過半數ニ達セサルトキハ過半數ニ
達スル迄多額ノ意見ヨリ順次寡額ニ合
算ス
刑事ニ付意見三說以上ニ分レ何レモ過
半數ニ達セサルトキハ過半數ニ達スル
迄被告人ニ不利ナル意見ヨリ順次利益
ナル意見ニ合算ス
第十章司法行政ノ監督
第九十條司法大臣ハ裁判所ヲ監督ス
大審院長、控訴院長及地方裁判所長ハ
各其ノ廳及管轄區域內ノ下級裁判所ヲ
監督ス
區裁判所ノ監督判事又ハ一人ノ判事ハ
其ノ廳ヲ監督ス
第九十一條司法大臣及監督權アル判事
ハ不適當ナル事務取扱ニ關シテ注意ヲ
爲シ且職務ノ内外ヲ問ハス地位ニ不相
應ナル行狀ニ對シテ諭〓ヲ爲スコトヲ
得但シ處分前當該官吏ヲシテ辯明ヲ爲
サシムヘシ
第九十二條前條ノ規定ハ法令ニ依ル懲
戒ノ事由アル場合ニハ之ニ適用セス
第九十三條本章ノ規定ニ依ル監督權ノ
行使ハ事件ノ裁判ニ關スル判事ノ職務
ノ實行ニ影響ヲ及ホスコトナシ
第九十四條司法事務取扱ノ延滯又ハ不
適當ナル事務取扱ニ對シテハ利害關係
人ハ司法大臣又ハ監督權アル判事ニ之
ヲ申〓スルコトヲ得
附則
第九十五條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以
テ之ヲ定ム
第九十六條裁判所構成法施行條例ハ之
フルガー
第九十七條本法施行前裁判所ノ受理シ
タル訴訟ノ管轄ニ付テハ從前ノ規定ニ
依ル但シ本法ニ依リ其ノ裁判所ノ管轄
ニ屬スルモノハ此ノ限ニ在ラス
第九十八條本法施行前ニ聯合審判ヲ命
シタル事件ノ聯合審判ニ付テハ仍從前
ノ規定ニ依ル
第九十九條本法施行ノ際現ニ從前ノ規
定ニ依ル判事ノ資格ヲ有スル者ハ本法
施行後ト雖仍其ノ資格ヲ有ス大審院判
事又ハ控訴院判事ニ補セラルル資格ニ
付亦同シ
第百條舊刑法ノ重罪ノ刑又ハ禁錮ニ處
セラレタル者ハ第五十四條ノ規定ノ適
用ニ付テハ之ヲ禁錮以上ノ刑ニ處セラ
レタルモノト看做ス
第百一條本法施行ノ際現ニ從前ノ規定
ニ依リ裁判所書記タル資格ヲ有スル者
ハ本法施行後ト雖仍裁判所錄事タル資
格ヲ有ス
第百二條本法施行前從前ノ規定ニ依リ
罰金又ハ拘留ニ處スヘキ行爲ヲ爲シタ
ル者ニシテ本法施行ノ際未タ其ノ裁判
ヲ受ケサルモノハ本法ニ依リ處罰ス但
シ過料ノ額ハ從前ノ規定ニ依ル額ヲ超
ユルコトヲ得ス
第百三條本法施行前從前ノ規定ニ依リ
爲シタル罰金又ハ拘留ノ裁判及陳述禁
止處分ニ付テハ仍從前ノ規定ニ依ル
第百四條本法施行ノ際現ニ裁判所勤務
ノ裁判所書記又ハ書記長ハ別ニ辭令ヲ用
ヒス同官等俸給ヲ以テ裁判所錄事ニ任
セラレ各其ノ現ニ勤務スル裁判所ノ錄
事又ハ錄事長ニ補セラレタルモノトス
第百五條違警罪卽決例、明治三十二年
法律第七十號及刑事交涉法ハ本法ノ爲
ニ變更ヲ受クルコトナシ
第百六條他ノ法令中裁判所勤務ノ裁判
所書記ニ關スル規定ハ之ヲ裁判所錄事
ニ關スル規定トシ裁判所書記長ニ關ス
ル規定ハ之ヲ裁判所錄事長ニ關スル規
定トス
第百七條裁判所勤務ノ裁判所書記ノ職
務上ノ行爲ハ之ヲ裁判所錄事ノ職務上
ノ行爲ト看做ス
檢察廳法案
右本院提出案及送付候也
昭和十五年三月二十四日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
檢察廳法
第一條檢察廳ハ區檢察廳、地方檢察廳、
檢察院及總檢察院トス
司法大臣ハ地方檢察廳ノ事務ノ一部ヲ
取扱ハシムル爲支廳ヲ設置スルコトヲ得
第二條檢察廳ニ檢事ヲ置ク
第三條檢事ハ公訴ヲ實行シ、裁判ノ執
行ヲ指揮シ其ノ他公益上必要ナル事項
ニ付法令ノ定ムル職權ヲ行フ
第四條區檢察廳ノ檢事ハ區裁判所ノ管
轄ニ屬スル事項、地方檢察廳ノ檢事ハ
地方裁判所ノ管轄ニ屬スル事項、檢察
院ノ檢事ハ控訴院ノ管轄ニ屬スル事項、
總檢察院ノ檢事ハ大審院ノ管轄ニ屬ス
ル事項ニ付其ノ職務ヲ行フ
第五條總檢察院ニ檢事總長、檢察院ニ
檢事長、地方檢察廳ニ檢事正ヲ置ク
檢事二人以上ヲ置キタル區檢察廳ニ於
テハ其ノ一人ヲ首席檢事トス
第六條檢事總長ハ總檢察院ノ長、檢事
長ハ檢察院ノ長、檢事正ハ地方檢察廳
ノ長ト爲リ各其ノ廳ノ行政事務ヲ掌ル
支廳ノ上席ノ檢事、首席檢事又ハ檢事
一人ノ支廳若ハ區檢察廳ニ於テハ其ノ
檢事ハ檢事正ノ命ヲ承ケ其ノ廳ノ行政
事務ヲ掌ル
第七條檢察廳ノ設置及管轄區域ハ別ニ
法律ヲ以テ之ヲ定ム
第八條檢事ハ左ニ揭グル者ヨリ之ヲ任
ズ
-三年以上辯護士トシテ實務ニ從事
シタル者
二判事及判事タル資格ヲ有スル朝鮮
總督府判事及朝鮮總督府檢事
第九條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ檢
事ニ任ゼラルルコトヲ得ズ
一禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者
二破產ノ宣〓ヲ受ケ復權セザル者
三懲戒ノ處分ニ因リ免官セラレタル
者又ハ辯護士法ニ依リ除名セラレタ
ル者
第十條檢事ハ親任、勅任又ハ奏任トス
檢事總長ハ親任檢事ヲ以テ之ヲ親補ス
檢事長ハ司法大臣ノ上奏ニ因リ勅任檢
事ヲ以テ之ヲ補シ其ノ他ノ檢事ノ職ハ
勅任撿事及奏任檢事ヲ以テ司法大臣之
ファン、
第十一條新ニ檢事ニ任ゼラレタル者ハ
一時豫備檢事トシテ區檢察廳又ハ地方
檢察廳ニ勤務セシムルコトヲ得
第十二條檢事總長年齡六十五年、其ノ
他ノ檢事ノ職ニ在ル者年齡六十三年ニ
達シタルトキハ退職トス伹シ司法大臣
ハ三年以内ノ期限ヲ定メ仍在職セシム
ルコトヲ得
第十三條檢事身體又ハ精神ノ衰弱ニ因
リ職務ヲ執ルコト能ハザルニ至リタル
トキハ總檢察院ノ總會ノ決議ニ依リ之
ニ退職ヲ命ズルコトヲ得
疾病其ノ他已ムコトヲ得ザル事由アル
場合ニ於テハ本人ノ願ニ依リ前項ノ規
定ニ拘ラズ之ニ退職ヲ命ズルコトヲ得
第一項ノ總會ニ關スル事項ハ司法大臣
之ヲ定ム
第十四條法律ヲ以テ檢察廳ノ組織ヲ變
更シ又ハ之ヲ廢シタル場合ニ於テ其ノ
檢事ヲ補スベキ關位ナキトキハ司法大
臣ハ之ニ俸給ノ半額ヲ給シテ關位ヲ待
タシム
第十五條檢事禁錮以上ノ刑ニ處セラレ
タルトキハ其ノ官ヲ失フ
第十六條檢事ハ懲戒ノ處分ニ因ルニ非
ザレバ其ノ意ニ反シテ轉官又ハ免官セ
ラルルコトナシ
檢事ノ懲戒ニ關シテハ別ニ法律ヲ以テ
之ヲ定ム
第十七條檢事ニ對シ懲戒訴追又ハ刑事
訴追ヲ始メタル爲法律上職務ヲ執ラシ
ムルコト能ハザル期間內ハ俸給ノ三分
ノ一ヲ減ズ
第十八條檢察廳ニ錄事ヲ置ク
錄事ハ奏任又ハ判任トス
錄事ハ書類ノ作成、記錄ノ整理保管其
ノ他法令ノ定ムル事務ヲ取扱フ
錄事ハ前項ノ外上官ノ指揮ヲ承ケ檢察
廳ニ於ケル諸般ノ事務ヲ取扱フ
第十九條地方檢察廳及錄事二人以上ヲ
置キタル區檢察廳ニ首席錄事、檢察院
及總檢察院ニ錄事長ヲ置ク
錄事ノ職ハ司法大臣之ヲ補ス
首席錄事及錄事長ハ上官ノ命ヲ承ケ錄
事ノ事務ヲ監督ス
第二十條檢察廳ニ通譯官及通譯吏ヲ置
クコトヲ得
通譯官ハ奏任、通譯吏ハ判任トス
通譯官及通譯吏ノ職ハ司法大臣之ヲ補
ス
第二十一條司法大臣ハ公訴ノ實行ニ付
檢事ヲ指揮ス
檢事總長以外ノ檢事ニ對スル指揮ハ檢
事總長ヲ經由シテ之ヲ爲ス但シ緊急ノ
必要アルトキハ此ノ限ニ在ラズ
前項但書ノ規定ニ依リ指揮ヲ爲シタル
トキハ司法大臣ハ檢事總長ニ其ノ指揮
ヲ爲シタル事項ヲ通告ス
第二十二條檢事總長、檢事長及檢事正
ハ公訴ノ實行ニ付各其ノ廳及管轄區域
內ノ檢察廳ノ檢事ヲ指揮ス
檢事總長、檢事長及檢事正ハ公訴ノ實
行ニ付各其ノ廳及管轄區域內ノ檢察廳
ニ於テ或ル檢事ノ取扱フベキ事務ヲ自
ラ取扱ヒ又ハ之ヲ他ノ檢事ニ移スコト
ヲ得
第二十三條檢事ハ犯罪ノ捜査其ノ他職
務ノ執行ニ付司法警察官吏ヲ指揮ス
第二十四條司法大臣ハ檢察廳ヲ監督ス
第二十五條檢事總長、檢事長及檢事正
ハ各其ノ廳及管轄區域內ノ檢察廳ヲ監
督ス
區檢察廳ノ首席檢事又ハ一人ノ檢事ハ
其ノ廳ヲ監督ス
第二十六條檢事總長、檢事長及檢事正
ハ各其ノ廳ノ檢事ヲシテ監督事務ノ
部ヲ取扱ハシムルコトヲ得
第二十七條檢事總長、檢事長、檢事正、
支廳ノ上席ノ檢事又ハ首席檢事差支ア
ルトキハ各其ノ廳ノ檢事席次ノ順序ニ
依リ之ヲ代理ス
檢事一人ノ支廳又ハ區檢察廳ノ檢事差
支アルトキハ其ノ廳ヲ監督スル檢事正
ハ其ノ職務ヲ代理スベキ者ヲ命ズ
檢事ノ席次ハ司法大臣之ヲ定ム
第二十八條司法警察官及司法警察官ノ
職務ヲ行フ者ニ對スル監督ハ前四條ノ
例ニ依ル
第二十九條檢察廳ノ事務取扱ノ延滯又
ハ不適當ナル執務若ハ處分ニ對シテハ
利害關係人ハ直近上級ノ監督官廳ニ抗
〓ヲ爲スコトヲ得但シ裁判所ニ於テ取
消又ハ變更ヲ命ズルコトヲ得ル檢事ノ
處分ハ此ノ限ニ在ラズ
抗〓ハ原檢察廳ヲ經由シテ書面ヲ以テ
之ヲ爲スベシ
第三十條抗告ニ對スル處分ハ抗〓申立
人ニ通知スベシ
第三十一條檢察廳ノ事務章程ハ司法大
臣之ヲ定ム
附則
第三十二條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以
テ之ヲ定ム
第三十三條區檢察廳ノ檢事ノ職務ハ當
分ノ内司法警察官又ハ其ノ職務ヲ行フ
者ヲシテ之ヲ取扱ハシムルコトヲ得
第三十四條本法施行ノ際現ニ從前ノ規
定ニ依リ檢事タル資格ヲ有スル者ハ本
法施行後ト雖仍其ノ資格ヲ有ス
第三十五條從前ノ檢事局ハ第八條ノ適
用ニ付テハ之ヲ檢察廳ト看做ス
第三十六條舊刑法ノ重罪ノ刑又ハ禁錮
ニ處セラレタル者ハ第九條ノ適用ニ付
テハ之ヲ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル
モノト看做ス
第三十七條本法施行ノ際現ニ從前ノ規
定ニ依リ裁判所書記タル資格ヲ有スル
者ハ本法施行後ト雖仍檢察廳錄事タル
資格ヲ有ス
第三十八條本法施行ノ際現ニ檢事ノ職
ニ在ル者ハ別ニ辭令ヲ用ヒズ同官等俸
給ヲ以テ檢事ニ任ゼラレタルモノトシ
各區裁判所檢事局ノ檢事ハ當該區檢察
廳ノ檢事ニ、各地方裁判所檢事局ノ檢
事又ハ檢事正ハ當該地方檢察廳ノ檢事
又ハ檢事正ニ、各控訴院檢事局ノ檢事
又ハ檢事長ハ當該檢察院ノ檢事又ハ檢
事長ニ、大審院檢事局ノ檢事又ハ檢事
總長ハ總檢察院ノ檢事又ハ檢事總長ニ
補セラレタルモノトス
本法施行ノ際現ニ休職中ノ檢事又ハ退
職檢事タル者ハ別ニ辭令ヲ用ヒズ各休
職又ハ退職ノ儘檢事ニ任ゼラレタルモ
ノトス
第三十九條本法施行ノ際現ニ檢事局勤
務ノ裁判所書記ハ別ニ辭令ヲ用ヒズ同
俸給ヲ以テ檢察廳錄事ニ任ゼラレタル
モノトシ各區裁判所檢事局勤務ノ書記
ハ當該區檢察廳ノ錄事ニ、各地方裁判
所檢事局勤務ノ書記ハ當該地方檢察廳
ノ錄事ニ、各控訴院檢事局勤務ノ書記
ハ當該檢察廳ノ錄事ニ、大審院檢事局
勤務ノ書記ハ總檢察院ノ錄事ニ補セラ
レタルモノトス
第四十條本法施行前區裁判所檢事局ニ
於テ受理シタル事件ハ其ノ地ノ區檢察
廳ニ於テ之ヲ處理ス
本法施行前地方裁判所檢事局ニ於テ受
理シタル事件ハ其ノ地ノ地方檢察廳ニ
於テ之ヲ處理シ地方裁判所支部檢事局
ニ於テ受理シタル事件ハ其ノ地ノ地方
檢察廳支廳ニ於テ之ヲ處理ス
本法施行前控訴院檢事局ニ於テ受理シ
タル事件ハ其ノ地ノ檢察院ニ於テ之ヲ
處理ス
本法施行前大審院檢事局ニ於テ受理シ
タル事件ハ總檢察院ニ於テ之ヲ處理ス
第四十一條他ノ法令中檢事局ニ關スル
規定ハ之ヲ檢察廳ニ關スル規定トス
他ノ法令中區裁判所檢事局ニ關スル規
定ハ之ヲ區檢察廳ニ關スル規定トシ地
方裁判所檢事局又ハ地方裁判所支部檢
事局ニ關スル規定ハ之ヲ地方檢察廳又
ハ其ノ支廳ニ關スル規定トシ控訴院檢
事局ニ關スル規定ハ之ヲ檢察院ニ關ス
ル規定トシ大審院檢事局ニ關スル規定
ハ之ヲ總檢察院ニ關スル規定トス
第四十二條他ノ法令中區裁判所ノ檢事
ニ關スル規定ハ之ヲ區檢察廳ノ檢事ニ
關スル規定トシ地方裁判所ノ檢事又ハ
檢事正ニ關スル規定ハ之ヲ地方檢察廳
ノ檢事又ハ檢事正ニ關スル規定トシ地
方裁判所支部ノ檢事ニ關スル規定ハ之
ヲ地方檢察廳支廳ノ檢事ニ關スル規定
トシ控訴院ノ檢事又ハ檢事長ニ關スル
規定ハ之ヲ檢察院ノ檢事又ハ檢事長ニ
關スル規定トシ大審院ノ檢事又ハ檢事
總長ニ關スル規定ハ之ヲ總檢察院ノ檢
事又ハ檢事總長ニ關スル規定トス
第四十三條他ノ法令中第一審裁判所、
上訴裁判所、控訴裁判所、上告裁判所
又ハ管轄裁判所ノ檢事ニ關スル規定ハ
之ヲ各當該裁判所ノ管轄ニ屬スル事項
ニ付職務ヲ行フ檢察廳ノ檢事ニ關スル
規定トス
他ノ法令中裁判ヲ爲シタル裁判所ノ檢
事ニ關スル規定ハ之ヲ其ノ裁判所ノ管
轄ニ屬スル事項ニ付職務ヲ行フ檢察廳
ノ檢事ニ關スル規定トス
第四十四條他ノ法令中檢事所屬ノ裁判
所ニ關スル規定ハ之ヲ當該檢事ノ職務
ふヲ行フベキ事項ニ付管轄權ヲ有スル裁
判所ニ關スル規定トス
第四十五條他ノ法令中檢事局勤務ノ裁
判所書記ニ關スル規定ハ之ヲ檢察廳錄
事ニ關スル規定トス
第四十六條從前ノ檢事又ハ檢事局勤務
ノ裁判所書記ノ職務上ノ行爲ハ各之ヲ
檢事又ハ檢察廳錄事ノ職務上ノ行爲ト
看做ス
辯護士法中改正法律案
右本院提出案及送付候也
昭和十五年三月二十五日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
辯護士法中左ノ通改正ス
第二條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
辯護士試補ノ實務修習ハ指導辯護士ニ
配屬シテ之ヲ行フ
第二條第二項ヲ左ノ如ク改ム
辯護士試補ノ實務修習及考試ニ關スル
事項ハ司法大臣之ヲ定ム
第二條ノ二指導辯護士ハ實務修習ノ爲
所屬辯護士試補ニ訴訟復代理又ハ辯護
人代理ヲ命ズルコトヲ得
訴訟復代理又ハ辯護人代理ヲ命ゼラレ
タル辯護士試補ハ其ノ事件ニ付訴訟代
理人又ハ辯護人ト同一ノ權限ヲ有ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
刑事訴訟法中改正法律案
右本院提出案及送付候也
昭和十五年三月二十五日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
刑事訴訟法中左ノ通改正ス
第四十二條ニ左ノ一項ヲ加フ
辯護士法第二條ノ二ノ規定ニ依リ辯護
人代理ヲ命シタルトキハ其ノ書面ヲ差
出スヘシ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
司法書士法中改正法律案
右本院提出案及送付候也
昭和十五年三月二十五日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
司法書士法中左ノ通改正ス
第二條左ノ條件ヲ具フル者ハ司法書士
タル資格ヲ有ス
一帝國臣民又ハ主務大臣ノ定ムル所
ニ依リ外國ノ國籍ヲ有スル者ニシテ
私法上ノ能力者タルコト
二檢定委員ノ考試ニ合格シタルコト
前項ノ考試ニ關スル事項ハ司法大臣之
ヲ定ム
第二條ノ二司法書士ハ地方裁判所ノ所
屬トス但シ管轄區域ヲ同シクスル民事
地方裁判所及刑事地方裁判所アル場合
ニ於テハ民事地方裁判所ノ所屬トス
第十條ノ二司法書士ハ其ノ事務取扱ノ
統一及改善ヲ圖ル爲其ノ所屬地方裁判
所每ニ司法書士會ヲ設ケ地方裁判所長
ノ認可ヲ受クヘシ
第十條ノ三司法書士會ハ會則ヲ定メ左
ノ事項ヲ規定ス
-役員ニ關スル事項
二會議ニ關スル事項
三司法書士ノ風紀保持ニ關スル事項
四會費ノ徵收ニ關スル事項
五會員入退會ニ關スル事項
六其ノ他會務ノ處理ニ必要ナル事項
會則ハ所屬地方裁判所長ノ認可ヲ受ク
ヘシ會則ノ變更ニ付亦同シ
第十條ノ四司法書士會ノ組織、權限及
監督ニ關スル事項ハ司法大臣之ヲ定ム
第十條ノ五司法書士ハ其ノ所屬地方裁
判所ノ司法書士會ニ加入シタル後ニ非
サレハ其ノ業務ヲ行フコトヲ得ス
第十一條中「品位ヲ失墜スヘキ行爲」ノ下
ニ「若ハ本法又ハ司法書士會ノ會則ニ違
反シタル行爲」ヲ加フ
第十二條司法書士ニ非スシテ司法書士
ノ業務ヲ行ヒタル者ハ五百圓以下ノ罰
金ニ處ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニ司法書士タル、者ハ本法
ニ依ル司法書士ト看做ス
各地方裁判所所屬司法書士ハ本法施行ノ
日ヨリ三月內ニ司法書士會設立ノ爲會則
ヲ定メ所屬地方裁判所長ノ認可ヲ受クヘシ
第十條ノ五ノ規定ハ本法施行ノ日ヨリ四
月間之ヲ適用セス
樺太ニ衆議院議員選擧法施行ニ關スル
法律案
右本院提出案及送付候也
昭和十五年三月二十五日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
衆議院議員選擧法ハ之ヲ樺太ニ施行ス
衆議院議員選擧法別表中北海道第五區ノ
次ニ左ノ一項ヲ加フ
樺太三人
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=141
-
142・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 六案ノ特別委員
ノ氏名ヲ朗讀致サセマス
〔近藤書記官朗讀〕
裁判所構成法改正法律案外五件特別委員
侯爵西〓從德君子爵安藤信昭君
子爵京極高修君木場貞長君
仁井田益太郞君男爵宮原旭君
竹越與三郞君川上親晴君
栗林德一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=142
-
143・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 報〓ヲ致サセマス
〔丸龜書記官朗讀〕
本日本院ニ、於テ修正議決シタル左ノ政府提
出案ハ直ニ之ヲ衆議院ニ囘付セリ
自動車交通事業法中改正法律案
本日衆議院ヨリ本院ノ囘付ニ係ル左ノ政府
提出案ハ同院ニ於テ本院ノ修正ニ同意シ奏
上セル旨ノ通牒ヲ受領セリ
自動車交通事業法中改正法律案
本日政府ヨリ左ノ答辯書ヲ受領セリ
貴族院議員公爵島津忠重君外二十七名提
出度量衡法改正ニ關スル質問ニ對スル答
辯書
〔左ノ質問主意書及答辯書ハ朗讀
ヲ經サルモ參照ノタメ玆ニ載錄ス〕
度量衡法改正ニ關スル質問主意書
一、現行度量衡法ハ大正十年メートル法
專用ノ制ニ改メラレタルガ、我國情ニ
卽セザルモノアルヲ以テ實行不能ノ結
果、猶豫期間ハ延期ニ延期ヲ重ネ、土
地及建物ニ關シテハ遂ニ無期限ニ之ヲ
延期スルノ已ムヲ得ザルニ至リ、法律
ノ權威ヲ失墜スルコト甚シク、紛糾混
亂漸ク滋カラントシ、國民ハ適從スル
所ヲ知ラザルナリ、政府ハ宜シク調査
會ノ答申ニ基キ、度量衡制度ヲ速カニ
尺貫法及メートル法併用ノ制ニ改メ、
以テ眞ニ我國ノ實情ニ適應セシメ、國
民生活ノ混亂不安ヲ除去スルヲ要ス
右ニ對スル政府ノ所信ヲ問フ
二、尺貫法ハ伊勢神宮ノ御造營ヲ始メ奉
リ、祭祀其ノ他國家的見地ヨリシテ特
殊ノ由〓アリト認ムベキ各般ノ用途ニ
限リ、除外例トシテ永久ニ之ガ使用ヲ
許容セラレタルモ、斯ノ如キ我ガ國ト
シテ最モ重要ナル用途ニ供セラルル尺
貫法ハ、祭政一致ノ國體ノ下ニ於テ、
之ヲ本位度量衡トシテメートル法ト共
ニ法律上明確ニ規定スベキモノトスル
ハ、蓋シ國民ノ信念ナリ然ルニ斯ノ如
キ重要事項ヲ僅カニ施行令中ノ例外規
定トシテ取扱ハレタルガ如キハ、甚ダ姑
息ナル措置ニシテ、斷ジテ神祇、祭祀竝
國史ヲ尊重スル所以ニアラズ、是レ度量
衡制度調査會答申ニ特記シタル如ク、該
法ヲ尺貫法及メートル法併用ノ制ニ改
正スベキ特殊重大ナル理由ナリト信ズ
右ニ對スル政府ノ所信ヲ問フ
三、國史ニ親シミ、國風ヲ尊重スルノ觀
念ヲ涵養シ、且社會及家庭ノ實生活ニ
適應セシムルハ、國民〓育ノ基本的要
諦ナリ、政府ハ上述ノ事情ニモ鑑ミ、尙
ホ兒童心理ニ及ボス影響ヲモ深ク考慮
シテ、小學校ニ於ケル算數〓育ハ、古來
國民ノ慣用セル尺貫法ヲ最先ニ授ケ、然
ル後之ニ附シテ、メートル法〓育ヲ施
スノ方針ニ改ムルコト極メテ緊要ナリ
上島、
右ニ對スル政府ノ所信ヲ問フ
四支那ノ歐米依存ヲ排シ、今ヤ東亞新
秩序ヲ建設セントスルニ當リテハ、其
ノ精神的紐帶ヲ是等諸民族ノ歷史的所
產タル文化ノ協同性ヲ求ムベキハ多言
ヲ俟タザル所ナリ、斯カル見地ヨリセ
バ東亞共通ノ度量衡ノ基本ヲ數千年
來慣用ノ尺貫法ニ置クベキコト當然ナ
リト信ズ
右ニ對スル政府ノ所信ヲ問フ
右議院法第四十八條ニ依リ及質問候也
昭和十五年三月二十二日
提出者
公爵島津忠重侯爵細川護立
侯爵德川義親伯爵松木宗隆
伯爵柳原義光伯爵酒井忠正
子爵靑木信光子爵岡部長景
松井茂男爵千秋季隆
小原直內田重成
建部遯吾男爵黑田長和
男爵井田磐楠男爵渡邊汀
山岡萬之助加藤政之助
澤田牛麿赤池濃
土方久徵瀧川儀作
小倉正恒松本眞平
江口定條金杉英五郞
佐々木八十八平沼亮三
贊成者
公爵德川家達公爵山縣有道
公爵九條道秀公爵伊藤博精
公爵岩倉具榮侯爵嵯峨公勝
侯爵山內豐景侯爵池田仲博
侯爵鍋島直映侯爵前田利爲
侯爵淺野長之侯爵大隈信常
侯爵野津鎭之助侯爵德川賴貞
侯爵中山輔親侯爵筑波藤麿
侯爵黑田長禮侯爵西〓吉之助
侯爵蜂須賀正氏侯爵久我通顯
侯爵大炊御門經輝侯爵小村捷治
侯爵四條隆德伯爵副島道正
伯爵山本〓伯爵柳澤保承
男爵大井成元子爵梅小路定行
子爵冷泉爲勇子爵池田政時
子爵西大路吉光子爵〓岡長言
子爵野村益三子爵今城定政
子爵西四辻公堯子爵立花種忠
子爵秋月種英子爵保科正昭
子爵松平保男子爵戶田忠庸
子爵加藤泰通子爵秋元春朝
子爵松平忠壽子爵米田國臣
子爵松平乘統子爵西尾忠方
子爵波多野二郞子爵富小路隆直
子爵裏松友光子爵秋田重季
子爵戶澤正己子爵高橋是賢
子爵大島陸太郞子爵植村家治
子爵梅園篤彥子爵安藤信昭
子爵松平康春子爵土岐章
子爵綾小路護子爵大岡忠綱
子爵錦小路賴孝子爵牧野康熙
子爵京極銳五佐藤三吉
大島健木場貞長
井上通泰鈴木喜三郞
水野鍊太郞犬塚勝太郞
織田萬小山松吉
男爵紀俊秀男爵千田嘉平
光行次郞小幡酉吉
有吉忠一中川健藏
平塚廣義河井彌八
男爵東久世秀雄出淵文勝夫次
松村眞一郞後藤
河原田稼吉安井英二
男爵〓誠之助若林賚藏
平生釟三郞佐藤鐵太郞
三井〓一郞岡喜七郞
仁井田益太郞勝田主計
坂西利八郞川村竹治
太田政弘男爵小畑大太郞
結城豊太郞伍堂卓雄
柴田善三郞男爵前田勇
男爵淺田良逸男爵山中秀二郞
男爵岩倉道倶男爵今園國貞
田口弼一男爵矢吹省三
橫山助成長世吉
男爵柴山昌生男爵伊藤文吉
大橋八郞長谷川赳夫
男爵原田熊雄男爵高木喜寛
男爵井上〓純男爵高崎弓彥
男爵伊江朝助男爵大藏公望
男爵近藤滋彌男爵北島貴孝
男爵奥田剛郞男爵關義壽
男爵三須精一男爵松平外與麿
男爵松田正之男爵益田太郞
男爵安場保健男爵杉溪由言
男爵岩村一木男爵山根健男
男爵北大路信明男爵西
男爵島津忠彥男爵明石乙元酉彥長乙
男爵村田保定市來
坂野鉄次郞中川望
三浦新七宮田光雄
黑田英雄遠藤柳作
川上親晴有賀光豐
岡田文次藤沼庄平
松村義に松本學
德富猪一郞古島雄
樺山資英若尾璋八
小坂順造太田耕造
大橋新太郞堀啓次郞
千石興太郞結城安次
澁澤金藏內藤久寛
菊池恭三米山梅吉
兒玉謙次板谷宮吉
西野嘉右衞門光永星郞
下出民義磯貝浩
名取忠愛橋本辰二郞
山隈康野村茂久馬
菅澤重雄熊谷三太郞
鈴木幸作安宅彌吉
小坂梅吉松本勝太郞
大澤德太郞田中穗積
田部長右衞門野村德七
佐々木嘉太郞風間八左衞門
中島德太郞塩田團平
小野耕大藪守治
米原章三松井貞太郞
出光佐三伊澤平馬
齋藤万壽雄大西虎之介
飯塚知信野田六左衞門
栗林德上野喜左衞門
渡邊甚吉岩元達
宮城長五郞
昭和十五年三月二十六日
內閣總理大臣米內光政
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
貴族院議員公爵鳥津忠重君外二十七名提
出度量衡法改正ニ關スル質問ニ對シ別紙
答辯書差進候
貴族院議員公爵島津忠重君外二十七名
提出度量衡法改正ニ關スル質問ニ對ス
ル答辯書
一、度量衡制度ニ關シテハ度量衡制度調査
會ノ答申ノ趣旨ニ基キ昭和十四年一月
度量衡法施行令ヲ改正シ尺貫法度量衡
使用ノ要アルモノニ付テハ之ヲメート
ル法度量衡ト併用セリ從テ現行ノ制度
ハ我國ノ實情ニ適シタルモノト思料ス
二、-度量衡法施行令ノ改正ニ依リテ特別ノ
由〓アル用途ニ供セラレ其ノ他特別ノ
由〓アル建造物、寶物其ノ他ノ物件ニ
關シ尺貫法度量衡ヲ用ウルコトヲ得ル
コトトナレルモ右ハ度量衡法第五條ノ
二ノ規定ニ基キタル勅令ニ依ルモノニ
シテ神祇、祭祀竝國史ノ尊重ヲ害スル
モノト思料セズ
三、小學校ニ於ケル算數〓育ニ於テメート
ル法度量衡〓授ヲ先ニシタルハ度量衡
制度ノ本旨ニ基キタルモノニシテ尙兒
童ノ學習能力ヲ併セ考慮シタル結果ナ
リ而シテ先ヅメートル法度量衡ニ依
リテ兒童ノ數量觀念ヲ確實ナラシメタ
ル後ニ於テ尺貫法度量衡ヲ課スルヲ適
當ナリト思料ス
但シ現行〓科書ニ於テハ尺貫法ノ運
用、計算等ニ十分習熟セシメ日常生活
ニ支障ナカラシムル方針ノ下ニ從來ヨ
リモ尺貫法度量衡ニ關スル〓材ノ分量
ヲ增シ實際生活ニ適合スルヤウ改訂ヲ
行ヒタリ
四、東亞新秩序建設ノ見地ニ於テモ、我
國ノ現行度量衡制度ヲ基本トシテ考慮
スルヲ適當ナリト思料ス
右及答辯候也
昭和十五年三月二十六日
內閣總理大臣米內光政
文部大臣松浦鎭次郞
商工大臣藤原銀次郞発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=143
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144・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 是ニテ散會ヲ致
シマス
午後六時八分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007503242X02819400326&spkNum=144
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