1. 会議録本文
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000・会議録情報
會議
昭和十五年二月十四日(水曜日)午後一時十八分開議
出席委員左の如し
委員長 堀切善兵衞君
理事 小山倉之助君 理事 濱野徹太郎君
理事 木村淺七君 理事 高橋熊次郎君
理事 小笠原三九郎君 理事 立川平君
理事 河野密君
長野高一君 成島勇君
池本甚四郎君 中島彌團次君
中村三之丞君 内藤正剛君
長野長廣君 川崎克君
津倉亀作君 渡邊玉三郎君
櫻井兵五郎君 澤田利吉君
中川重春君 石井徳久次君
池田七郎兵衞君 上田孝吉君
山川頼三郎君 豐田收君
森田福市君 田中好君
西川貞一君 瀧澤七郎君
小見山七十五郎君 鈴木英雄君
佐竹晴記君 石坂繁君
道家齊一郎君 藤本捨助君
北勝太郎君 武田徳三郎君
二月十三日委員川崎末五郎君及松浦伊平君辭任に付其の補闕として中島彌團次君及鈴木英雄君を議長に於て選定せり
出席國務大臣左の如し
大藏大臣 櫻内幸雄君
出席政府委員左の如し
大藏政務次官 木村正義君
大藏參與官 松田正一君
大藏省主税局長 大矢半次郎君
大藏書記官 田中豐君
大藏書記官 山田義見君
本日の會議に上りたる議案左の如し
所得税法改正法律案(政府提出)
法人税法案(政府提出)
特別法人税法案(政府提出)
配當利子特別税法案(政府提出)
外貨債特別税法中改正法律案(政府提出)
相續税法中改正法律案(政府提出)
建築税法案(政府提出)
鑛區税法案(政府提出)
臨時利得税法中改正法律案(政府提出)
營業税法案(政府提出)
地租法中改正法律案(政府提出)
酒税法案(政府提出)
清涼飮料税法中改正法律案(政府提出)
砂糖消費税法中改正法律案(政府提出)
織物消費税法中改正法律案(政府提出)
揮發油税法中改正法律案(政府提出)
物品税法案(政府提出)
遊興飮食税法案(政府提出)
取引所税法中改正法律案(政府提出)
通行税法案(政府提出)
入場税法案(政府提出)
印紙税法中改正法律案(政府提出)
骨牌税法中改正法律案(政府提出)
狩獵法中改正法律案(政府提出)
明治四十四年法律第四十五號中改正法律案(砂糖消費税織物消費税等の徴收に關する件)(政府提出)
大正九年法律第五十一號中改正法律案(内地臺灣又は樺太より朝鮮に移出する物品の内國税免除に關する件)(政府提出)
支那事變特別税法及臨時租税増徴法廢止法律案(政府提出)
營業收益税法廢止法律案(政府提出)
資本利子税法廢止法律案(政府提出)
法人資本税法廢止法律案(政府提出)
臨時租税措置法中改正法律案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00219400214&spkNum=0
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001・堀切善兵衞
○堀切委員長 ソレデハ是ヨリ稅制特別委
員會ヲ開會致シマス、本日ハ先ヅ大藏大臣
ノ御說明ヲ願ヒタイト思ヒマス-大藏大
臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00219400214&spkNum=1
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002・櫻内幸雄
○櫻內國務大臣 本案ノ說明ヲ申上ゲマス、
中央地方ヲ通ズル稅制ノ一般的改正ニ關ス
ル諸法律案ニ付キマシテハ、曩ニ本會議ニ
於テ大體ノ說明ヲ致シタノデアリマスガ、
此ノ機會ニ於テ少シク敷衍シテ說明致シタ
イト存ジマス
曩ニモ申述ベマシタ如ク、今囘ノ稅制改正
ハ負擔ノ均衡、經濟諸政策トノ調和、收入
ノ增加ト彈力性アル稅制ノ樹立、竝ニ稅制
ノ簡易化ト云フ四ツノ事項ヲ目標ト致シマ
シテ、國稅地方稅ノ全般ニ亙リ、根本的ノ
檢討ヲ加ヘテ、有效適切ナル改正ヲ斷行シ
以テ多年ノ懸案タル諸問題ヲ解決スルト共
二、長期建設ノ段階ニアル我國現下ノ財政
經濟諸事情ニ卽應スル稅制ヲ整備確立セン
トスルモノデアリマス、隨ヒマシテ其ノ內
容ハ極メテ廣汎ニ亙ツテ居リマスノミナラ
ズ、根本的ノ改正ヲ加ヘタ點ガ多々アルノ
デアリマス、以下改正ノ內容ニ付キ、稍
詳細ニ御說明申上ゲルコトト致シマス
今囘ノ稅制改正ニ於キマシテ、其ノ樞軸
ヲ成スモノハ現行ノ直接國稅ノ體系ヲ改組
シテ、新ニ分類所得稅及ビ綜合所得稅ヲ併
用スル體系ヲ採用シタコトデアリマス、御
承知ノ如ク現行直接國稅ノ體系ハ、所得稅
ヲ中樞トシ地租、營業收益稅及ビ資本利子
稅ノ三收益稅ヲ以テ、之ヲ補完スルノ方法
ニ依ツテ居ルノデアリマスガ、同ジク收益
稅タル家屋稅ハ地方稅ト致シテ居リマス爲、
體系整理ノ點カラ見テモ、負擔權衡ノ上カ
ラ考ヘテモ遺憾ナ點ガ多イノデアリマス、
仍テ此ノ際家屋稅ヲ國稅ニ移管シテ、收益
稅制度ニ整備スルコトモ一應考ヘラレル譯
デアリマスガ、元來收益稅ハ所得稅ノ補完
稅デアリマシテ、之ニ多額ノ收入ヲ期待ス
ルコトハ困難デアリマスノデ、將來相當多
額ノ財源ヲ求メントスレバ、直接稅ニ於キ
マシテハ結局所得稅ニ依ルノ外ナキモノ
ト信ズルフデアリマス、然ルニ現行ノ所得
稅ハ、最近數次ノ臨時的增徵ヲ重ネマシタ
結果、著シク其ノ伸張力ヲ喪失シテ居リマ
スノミナラズ、所得稅ノ納稅者ハ比較的少
〃、負擔ノ普遍化ノ點ニ於テモ缺クル所ガ
少クナイノデアリマス、仍テ此ノ際トシテ
ハ現行所得稅制度ニ根本的ノ改正ヲ加
ヘ、現在ノ如キ累進稅率ノ外ニ、新ニ比例
稅率ヲ導入シテ、稅制ニ大ナル彈力性ヲ附
與スル外、負擔ノ普遍化ヲ圖ル爲、成ベク
多クノ國民ヲシテ所得稅ヲ負擔セシムルコ
トトスルト共ニ、出來得ル限リ源泉ニ於テ
課稅シテ、納稅ノ簡易化ヲ期スル必要ガア
ルト思フノデアリマス、斯ノ如ク所得稅ニ比
例稅率ヲ採用シ、所得ノ種類ニ應ジテ源泉
ニ於テ課稅スルコトト致シマスルト、所得ノ種
類每ニ稅率、免稅點等ヲ異ナラシメ、資產所
得ニ重課スルコトニ依リマシテ、所得稅ノ中
ニ收益稅ノ機能ヲモ織込ムコトガ出來ルト
思フノデアリマス、卽チ負擔ノ均衡及ビ普
遍化ヲ圖リ、稅制ニ彈力性ヲ附與スルト共
ニ、是ガ簡易化ヲ期スル爲ニハ、此ノ際直
接國稅ノ體系ヲ改組シテ、分類所得稅ト綜
合所得稅ヲ併用スルコトトシ、收益稅制度ハ
之ヲ廢止スルヲ適當ト認メタ次第デアリマス、
尙ホ地租家屋稅及ビ營業稅ハ地方團體ノ諸
施設トノ聯關モ密接ニシテ、元々應益課稅
ノ性質ヲ有スルモノデアリマスルカラ、此
ノ機會ニ於テ是等ノ諸稅ハ之ヲ地方ノ財源
トシテ地方財政ノ確立ニ資スルヲ適當ト認
メタ次第デアリマス
次ニ所得稅制度ノ改正ニ付キ說明致シマ
ス、今囘新ニ設クルコトト致シマシタ分類
所得稅ハ、所得ヲ其ノ性質ニ依ツテ不動產
所得、配當利子所得、事業所得、勤勞所得、
山林ノ所得、及ビ退職所得ノ六種ニ區分シ、
各其ノ種類ニ應ジテ稅率、免稅點、控除、
課稅方法等ヲ異ナラシメ、以テ各種所得聞ノ
負擔ノ均衡ヲ圖ルト共ニ、課稅方法ノ適正
簡易化ヲ期スルコトト致シタノデアリマス、
先ヅ其ノ稅率ハ財政ノ必要ニ應ジテ伸縮ヲ
容易ナラシムル爲、比例稅率ニ依ルコトト
致シタノデアリマスガ、資產所得タル不動
產所得ト配當利子所得ニ付テハ、各種所得
中最モ重キ百分ノ十ノ稅率ニ依ルコトト
シ、之ニ次イデ資產勤勞共働ノ所得タル營
業所得ニ付テハ百分ノ八·五、營業所得以外
ノ事業所得卽チ農業、漁業等ノ原始產業ノ
所得、醫師、辯護士等ノ自由職業ノ所得、
其ノ他ノ種目ニ屬セザル所得ニ付テハ百分
ノ七·五トシ、負擔力ノ最モ低キ俸給、給料、
賞與等ノ勤勞所得ニ付テハ、最モ輕キ百分ノ
六ノ稅率ニ依ルコトト致シマシタ、尤モ事
業所得中ニ於キマシテモ少額ノモノハ勤勞
所得ニ準ズルヲ適當ト認メ、其ノ金額千圓
以下ナルトキハ百分ノ六ノ稅率ニ依ルコト
ト致シタノデアリマス、尙ホ配當利子所得
中、國債及ビ地方債ニ付テハ、從來ノ例ニ依
リ稅率ヲ輕減スルコトトシ、又今囘新ニ課
稅スルコトト致シマシタ元本一定額以上ノ
銀行貯蓄預金、產業組合貯金等ノ利子ニ付
テハ一般ノ半額程度、卽チ百分ノ五ノ稅率
ニ依ルコトト致シタノデアリマス
次ニ不動產所得ト配當利子所得ニ付テ
ハ、其ノ資產所得タル性質ニ顧ミ、源泉課
稅ヲ爲スモノニ付テハ免稅點ヲ設ケズ、賦
課決定ニ依リ課稅スルモノニ付テハ、徵稅
ノ便宜上、百圓ノ免稅點ヲ設クルコトト致
シマシタ、而シテ勤勞所得ト事業所得ニ付
キマシテハ、所得ヨリソレ〓〓六百圓及ビ
四百圓ノ基礎〓除ヲ爲スコトニ依リ、極ク
少額ノ所得ニ免稅スルト共ニ、分類所得稅
ノ負擔ヲシテ累進的ナモノトシ、以テ比較
的少額ナ所得者ニ對スル負擔ヲ緩和スルコ
トト致シタノデアリマス
次ニ扶養家族多キ者ノ負擔ヲ緩和スルコ
トハ、負擔ノ衡平ノ上カラ見テモ亦人口政
策等ノ見地カラ考ヘテモ、此ノ際適當ナコ
トト認メラレマスノデ、扶養控除ノ制度ヲ
大イニ擴充スルコトト致シマシタ、卽チ現
行所得稅ニ於テハ三千圓以下ノ所得者ニ限
リ、控除ヲ認メルコトトナツテ居リマスガ、
今囘ハ五千圓程度以下ノ所得者、卽チ綜合
所得稅ノ課稅ヲ受ケザル者全部ニ之ヲ及ボ
スコトトシ、又妻ニ付テモ新ニ控除ヲ認ム、
ルト共ニ、扶養家族一人當リノ控除額モ、著
シク增加スルコトト致シテ居リマス、而シ
テ其ノ控除ノ方法ハ徴稅技術上ノ便宜等ヲ
考慮シテ、算出稅額ヨリ一人當リ百五十圓
ノ百分ノ八、卽チ十二圓ヲ控除スルコトト
致シテ居ルノデアリマスガ、之ヲ所得額ニ
付テ見マスルト、現行ハ百圓ノ控除ナルニ
對シ、勤勞所得ハ二百圓、其ノ他ハ大體百
五十圓程度ノ控除ト相成ルノデアリマス
次ニ分類所得稅ノ徵稅方法トシテハ、出
來得ル限リ源泉課稅ノ方法ヲ採用スルコト
トシ、以テ納稅ノ簡易化ヲ期スルコトト致
シマシタ、卽チ從來ノ第二種所得稅ニ於ケ
ル公社債、銀行預金ノ利子等ノ外ニ、配當
ニ付テモ源泉課稅ニ依ルコトト致シマシタ
外、新ニ俸給、給料、賞與等ノ勤勞所得ニ付テ
モ源泉課稅ノ方法ヲ採用スルコトト致シタノ
デアリマス、而シテ其ノ他ノ所得、卽チ不動產
所得、事業所得等ニ付キマシテハ前年ノ
實績ニ依ツテ賦課徵收スルコトニ致シテ居
リマス、尙ホ山林ノ所得ト退職所得ハ、其ノ
他ノ所得ト餘程性質ヲ異ニスルモノガアリ
マスノデ、之ヲ他ノ所得ト區分シ、ソレ〓〓
其ノ性質ニ應ジテ適當ナル稅率、基礎控除
等ヲ採用シテ居ルノデアリマス
次ハ綜合所得稅デアリマス、分類所得稅
ハ比例稅率ニ依ルモノデアリマスカラ、是
ノミヲ以テシテハ所得ノ大小ニ因ル負擔力
ノ差異ニ應ズル課稅ヲ缺クコトニナリマス
ノデ、別ニ各人ニ付總テノ所得ヲ綜合シテ、
相當額以上ノ所得者ニ限リ、累進稅率ヲ以
テ課稅スルコトトシ、以テ大所得ニ重課シ
テ、所得階級間ノ負擔ノ均衡ヲ圖ル必要ガ
アルト思フノデアリマス、仍テ大體現行第
三種所得稅ノ例ニ依リ綜合所得稅ヲ設
ケ、五千圓以上ノ所得者ニ限リ五千圓ヲ超
ユル部分ノ所得ニ對シ、百分ノ十乃至百分
ノ六十五ノ超過累進稅率ニ依リ課稅スルコ
トト致シマシタ
而シテ現行ノ第三種所得稅ニ比シ變更シ
タ事項中主ナルモノニ付テ說明ヲ致シマス
ルニ、先ヅ第一ハ公社債、銀行預金ノ利子等
ニ付テモ綜合課稅ノ建前ヲ採用スルコトニ
致シタ點デアリマス、御承知ノ如ク是等ノ
所得ニ對シテハ現行制度ニ於キマシテハ、
第二種所得稅トシテ比例稅率ニ依ル源泉課
稅ノミヲ行ツテ居ルノデアリマスガ、負擔
ノ均衡ヲ圖リ、彈力性アル稅制ヲ樹立スル
等ノ見地ヨリ是等ノ所得ニ付テモ此ノ際
綜合課稅ヲ行ヒ、累進稅率ニ依リ課稅スル
コトト致シタ次第デアリマス、併シナガラ
是ハ多年ニ亙ツテ實施シテ來タ制度ヲ變更
スルコトデアリ、各方面ニ影響スル所モ少
クナイト認メラレマスノデ、綜合ニ際シテハ
所得金額ノ四割ヲ控除シテ課稅スルコトト
致シマシタ外、尙ホ當分ノ內納稅義務者ノ
申請アル場合ハ綜合課稅ニ代ヘ、分類所
得稅ノ外ニ百分ノ十五ノ稅率ニ依リ源泉ニ
於テ課稅スルノ途ヲ講ズルコトトシ、斯
クシテ成ベク急激ナル變化ヲ避クルコトニ
依ツテ國債ノ消化、貯蓄ノ奬勵等ニ支障ヲ
來サザルヤウ萬全ノ留意ヲ致シタ次第デア
リマス
第二ハ配當所得ノ計算方法ヲ變更シタコ
トデアリマス、卽チ現行第三種所得稅ニ於
キマシテハ、配當所得稅ニ付テハ其ノ二割
ヲ控除シテ課稅スルコトニ致シテ居ルノデ
アリマスガ、一律ニ二割ノ控除ヲ爲スコト
デハ、負擔ニ依ツテ株式等ヲ取得シタ者ト
然ラザル者トノ間ニ負擔ノ均衡ヲ缺クコト
ニナリマスノデ、相當高度ノ累進稅率ニ依
ツテ課稅致シマスル綜合所得稅ニ於テハ、
二割控除ヲ廢止シテ株式等ノ取得ニ要シタ
負債ノ利子ヲ控除スルコトト致シタ次第デ
アリマス
次ニ法人ヨリ受クル〓算分配金等ハ之ヲ
配當ト看做シテ所得稅ヲ課スルコトト致シ
テ居リスマガ、綜合所得稅ニ於テハ他ノ所
得ト分離シテ課稅スルコトト致シマシタ、
又勤勞所得ニ付テハ總所得金額一万圓以下
ナルトキ一割ノ控除ヲ行フコトニ改メ、其
ノ他總テノ所得ニ付原則トシテ前年中ノ實
蹟ニ依ツテ課稅スルコトニ統一スルト共
ニ、減損更訂ノ制度ハ之ヲ廢止シテ、別
災害等ノ原因ニ因リ著シク納稅資力ヲ喪失
シタリト認メラルルモノニハ、所得稅ヲ輕減
免除スルノ途ヲ拓クコトト致シテ居ルノデ
アリマス
次ハ法人稅デアリマス、御承知ノ如ク現
行稅制ニ於キマシテハ、法人ニ對シテハ其
ノ所得ニ付所得稅ヲ、純益ニ付、營業收益
稅ヲ資本ニ付法人資本稅ヲ賦課シテ居ルノ
デアリマスガ、元來法人ハ個人ト其ノ性質
ヲ餘程異ニシ、個人ノ場合ニ於ケルガ如ク
所得ノ種類及ビ大小ニ應ジテ課稅ヲ異ニス
ル等ノ必要モアリマセヌノデ、所得稅ハ原則
トシテ個人ニ付テノミ課稅スルコトトシ、
法人ニ付テハ其ノ本質ニ顧ミ獨自ノ課税
機構ヲ用フルヲ適當ト認メ、法人稅ヲ創
設シテ、現行第一種所得稅及ビ法人資
本稅ヲ一括シテ課稅スルコトト致シタノ
デアリマス、卽チ法人稅ハ法人ノ各事業
年度ノ所得及ビ生產所得竝ニ各事業年度
ノ資本ニ對シ賦課スルコトトシ、其ノ稅
率ハ產業ニ對スル影響等ヲ十分考慮シテ、
一般法人ノ所得ニ付テハ百分ノ十八ト致シ、
資本ニ付テハ現行千分ノ-·二ヲ千分ノ
一·五ニ引上グルコトト致シタノデアリマス
次ニ法人所得ノ計算上現行ニ比シ二ツノ
點ニ於テ改正ヲ加フルコトト致シマシタ、
其ノ第一點ハ稅金ノ控除ヲ如何ニスルカニ
關シテデアリマス、御承知ノ如ク現行第一
種所得稅ニ於キマシテハ、所得ノ計算上其
ノ期ニ納付シタル所得稅、臨時利得稅等ヲ
損金トシテ控除スルコトトナツテ居ルノデ
アリマスガ、斯ノ如キ計算方法ニ依リマス
ルト、法人ノ負擔關係ガ至極明瞭ヲ缺クノ
ミナラズ、相當高クナツタ稅率ノ下ニ於テ
ハ、稅負擔ノ爲ニ利益ノ著シキ波動ヲ來シ、
負擔ノ衡平ヲ缺クヤウナ場合モ生ジマスル
ノデ、此ノ際法人租稅負擔ノ適正明確ヲ期
スル爲、法人ノ稅金ハ其ノ課稅ノ對象タル利
益ノ生ジタ事業年度ニ於ケル其ノ利益ヨリ
納付セシムル趣旨ニ依リ、所得ノ計算上法
人稅ハ之ヲ損金トシテ控除セザルコトニ改
メタノデアリマス、尤モ臨時利得稅ハ時局
ノ影響等ニ因ツテ增加シタ利得ニ對シ課稅
セントスルモノデアリマシテ、先ヅ之ヲ納
付セシメタ後、法人稅ヲ賦課スベキモノト
認メラレマスノデ、現在ハ所得稅ト同ジク
其ノ事業年度ニ於テ納付シタル臨時利得稅
ヲ所得ノ計算上控除スルコトニナツテ居リ
マスノヲ、今囘ハ既納ノ臨時利得稅ノ控
除ハ之ヲ認メズ、其ノ代リニ利益カラ其ノ
期分ノ臨時利得稅額ヲ控除シタル殘額ヲ課
稅標準トシテ之ニ法人稅ヲ賦課スルコトト
致シタノデアリマス、尙ホ法人稅臨時利得
稅以外ノ諸稅ヲ損金トシテ控除スルコトハ
現行ト同樣デアリマス
法人所得計算方法ニ關スル改正ノ第二點
ハ缺損金ノ繰越控除ヲ認メタコトデアリ
さっ、卽チ現行稅法ニ於キマシテハ法人
ノ所得ハ各事業年度每ニ打切リ計算スルコ
トニナツテ居ルノデアリマスガ、法人企業
ノ實情ニ十分應ジ難キ場合モアリマスノデ、
此ノ際右ノ原則ニ或ル程度ノ例外ヲ設ケ、
前一年內ニ生ジタ缺損金ハ現事業年度ノ利
益ト通算シテ所得ヲ計算スルコトニ致シタ
ノデアリマス、尙ホ法人ノ受クル配當利子
所得ニ付キマシテハ、其ノ性質徵稅技術等
ニ顧ミ、源泉ニ於テ課稅スルヲ適當ト認
之、個人ト同ジク分類所得稅ヲ賦課スルコ
トト致シテ居ルノデアリマスガ、負擔ノ重
複ヲ避クル爲其ノ稅額ハ之ヲ法人稅額ヨリ
控除スルコトト致シテ居リマス、法人稅ハ
以上ノ外大體現行ノ第一種所得稅及ビ法人
資本稅ノ例ニ依ルコトト致シテ居リマス
次ニ現行臨時利得稅ハ利得ヲ甲種及ビ乙
種ニ分チ、ソレ〓〓基準年度、稅率等ヲ異
ニシテ課稅シテ居ルノミナラズ、一面法人
ニ付テハ高率ノ利益ニ對シテ課稅スル超過
所得稅モアリマシテ、極メテ複雜ナ制度ト
ナツテ居リマスノデ、此ノ際課稅ノ適正簡
明ヲ期スル爲、臨時利得稅ヲ改組シテ、昭
和四五六年ト云フ古キ年度ヲ基準年度トス
ル甲種利得ノ制度ハ之ヲ廢止スルト共ニ、
超過所得稅ヲ之ニ統合シテ課稅スルコトト
致シタノデアリマス、又法人ノ利益ノ計算
ニ付キマシテハ、法人稅ニ於ケルト同ジク、
其ノ負擔ノ適正明確ヲ期スル趣旨ニ依リ、法
人稅及ビ臨時利得稅ハ之ヲ損金トシテ控除
セザルコトニ改メタノデアリマス、而シテ
法人ノ利益中資本金額ノ年一割ヲ超ユル金
額及ビ事變前三年間ノ利益率ヲ超ユル金額
ヲ利得トシテ、之ニ對シ百分ノ二十五乃至
百分ノ六十五ノ稅率ニ依リ賦課スルコトト
シ、以テ事變ノ影響等ニ因リ利益ノ增大シ
タルモノニ對シ重課シテ、事變下ニ於ケル
負擔ノ調整ヲ圖ルコトト致シタノデアリマ
ス、尤モ資本金十万圓以下ノ小法人ニ付テ
ハ右ノ稅率ヲソレ〓〓百分ノ十程度輕減ス
ルコトニ致シテ居リマス
次ニ個人ノ營業利得ニ對スル臨時利得稅
ニ付キマシテハ、法人ニ於ケルト同樣甲種
利得ノ制度ヲ廢止スルト共ニ、新規ノ營業
者又ハ營業ヲ擴張シタルモノ等ニ苛酷トナ
ラザルヤウ事變前三年間ノ平均利益ガ七千
圓又ハ現年分ノ利益ノ三分ノ一ニ相當ス
ル金額中、何レカ多額ナル一方ノ金額ニ達
セザル時ハ其ノ何レカ多額ナル一方ノ金
額ヲ平均利益トシテ控除スルコトニ改メタ
ノデアリマス、而シテ其ノ稅率ハ現行百分
ノ二十五ヲ、百分ノ三十ニ引上グルコトト
致シマシタ
次ニ產業組合、商業組合、工業組合、貿易
組合、漁業協同組合、蠶絲共同施設組合、
產業組合中央金庫等ノ特別ノ法人ニ對シテ
ハ各種ノ租稅ヲ免除シテ居ルノデアリマ
スガ、一般國民負擔ノ增加ニ伴ヒ時局ニ顧
ミ當分ノ內應分ノ負擔ヲ爲サシメルヲ適
當ト認メラレマスノデ、此ノ際特別法人稅
ヲ創設シテ是等ノ法人ノ剩餘金ニ對シ、
般法人ノ半額程度、卽チ百分ノ九ノ稅率ニ
依リ課稅スルコトト致シタノデアリマス、
尤モ剩餘金ノ計算ニ當リマシテハ、是等法
人ノ本旨ニ顧ミ、其ノ取扱ツタ事業ノ分量
ニ對シテ爲スベキ配當ハ、之ヲ損金トシテ
控除スルコトトシ、又是等ノ法人中產業組
合商業組合等ノ單位組合ニ對シマシテハ、
其ノ剩餘金ガ年三分以下ノトキハ免稅スル
コトニ致シテ居ルノデアリマス、特別法人
稅以外ノ諸稅ニ付キマシテハ現行ト同
ジク免稅ヲ存置スルコトニ致シテ居リマス
次ニ尙ホ稅制ノ簡易化ヲ期スル爲、現在
ノ利益配當稅ト公債及社債利子稅トハ、之
ヲ統合シテ配當利子特別稅トシテ課稅スル
コトト致シマシタ、尙ホ現在ノ利益配當稅
ハ、配當率年七分ヲ超ニル利益配當ニ付キ賦
課シテ居ルノデアリマスガ、今囘分類所得
稅ニ於テ利益ノ配當ニ對シ、新ニ一割ノ源
泉課稅ヲ行フコトト致シマシタノデ、此ノ
點ヲモ考慮シテ配當金中、配當率年一割以
下ノ分ニ對スル課稅ハ、之ヲ廢止スルコト
ト致シタノデアリマス
次ニ外貨債特別稅ハ利率年五分ヲ超ユル
外貨國債ノ利子、五分五厘ヲ超ユル其ノ他
ノ外貨債ノ利子ニ對シ、賦課シテ居ルノデ
アリマスガ、最近ノ實情ニ顧ミ外貨國債ニ
付テハ四分ヲ超ユルモノ、其ノ他ノ外貨債
ニ付テハ四分五厘ヲ超ユルモノニ對シ課稅
スルト共ニ、此ノ際內地居住者ノ所有ニ屬
スル在外證劵ニ付テモ、課稅スルコトト致
シタノデアリマス
次ハ相續稅デアリマス、御承知ノ如ク相
續稅ニ付キマシテハ、昭和十二年臨時租稅
增徵法ニ依リ、相當ノ增徵ヲ致シタノデア
リマスガ、一般國民ノ負擔ヲ增加セシムル
ノ餘儀ナキ事情ニアリマス此ノ際トシテハ、
相續稅ニ付テモ相當ノ增徵ヲ行フヲ適當ト
認メマシテ、總稅額ニ於テ大體三割程度ノ
增收ヲ圖ルコトト致シタノデアリマズ、尙
ホ相續稅ニ付キマシテハ、次ノ二點ニ於テ
改正ヲ加ヘルコトト致シマシタ、其ノ第一
ハ新ニ家族控除ノ制度ヲ認メタコトデアリ
やく、卽チ課稅價格五万圓以下ノ死亡ニ因
ル家督相續、竝ニ三万圓以下ノ死亡ニ因ル
遺產相續ニ付キマシテ、一定條件ノ下ニ扶
養家族一人ニ付キ千圓ノ控除ヲ認メルコト
ニ依リマシテ、小資產ノ負擔增加ヲ緩和ス
ルコトト致シタノデアリマス、第二ニハ
定期間內ニ行ハレタ贈與ハ、之ヲ合算シテ
課稅スルコトトシ、以テ相續財產ノ分割ニ
因ル負擔囘避ノ弊ヲ除去スルコトト致シタ
ノデアリマス
次ハ鑛業稅ノ改正デアリマス、御承知ノ如
ク現行制度ニ於テハ、鑛業ニ付キマシテハ
營業收益稅ヲ課セズシテ、鑛產物ニ對シテ
鑛產稅又ハ特別鑛產稅ヲ賦課スルノ制度ト
相成ツテ居リマスガ、所得稅制度ノ改組、
營業稅ノ創設等ニ伴ヒマシテ、此ノ際鑛產
稅ノ制度ヲ廢止シ、鑛業ニ對シテモ一般ノ營
業ト同ジク、是等ノ租稅ヲ賦課スルコトニ
改メ、以テ其ノ負擔ノ適正ヲ圖ルコトト致シ
マシタ、併シナガラ鑛業ニ對スル特別ノ課
稅トシテ、現行ノ鑛區稅及ビ砂鑛區稅ハ、
其ノ儘之ヲ存置スルヲ適當ト認メラレマス
ノデ、此ノ際法規ノ簡易化ニ資スル趣旨ヲ
モ含メテ、現行鑛業法中ニ於ケル鑛區稅ニ關
スル規定竝ニ砂鑛區稅法及ビ臨時租稅措置
法中ニ於ケル、特別砂鑛區稅ニ關スル規定
ヲ統合シテ、鑛區稅法ヲ制定スルコトト致
シタノデアリマス、尙ホ鑛業ニ對スル課稅
制度ノ改正ニ伴ヒマシテ、鑛業者ノ負擔ニ
增加ヲ來ス場合モアリマスノデ、此ノ際時
局ニ緊要ナル鑛業物ノ採掘事業ニ對シテハ、
後ニ說明致シマス如ク、ソレ〓〓適當ト認
ムル課稅ノ輕減、又ハ免除ノ途ヲ講ズルコ
トト致シテ居リマス
次ニ取引所稅中取引所營業稅制度ノ改正
ニ付キ說明致シマス、取引所ニ對シマシ
テハ一般ノ營業收益稅ヲ課セズシテ、取
引所營業稅ヲ賦課シテ居ルノデアリマスガ、
今囘直接稅體系ノ改組、地方稅制度ノ改正等
ニ伴ヒ、取引所ノ營業ニ付テモ一般ノ例ニ
依リ、法人稅及ビ營業稅ヲ賦課スルコトト
致シ、尙ホ是ト共ニ從來ノ取引所營業稅ハ
之ヲ取引所特別稅ト改稱シテ、取引所ニ對
スル特權料的ナ課稅トシテ存置スルコトト
致シ、新ニ其ノ稅率ヲ賣買手數料收入金額
ノ百分ノ十二ト定ムルコトト致シタ次第デ
アリマス、尙ホ會員組織ノ取引所ニ付テ
ハ從來ト同ジク取引所特別稅ヲ課稅セザ
ルコトト致シテ居リマス
次ニ間接國稅ノ改正ノ〓要ニ付キ說明致
シマス、間接稅ニ付キマシテモ、此ノ際國
庫收入ノ增加ヲ圖ルト共ニ、消費ノ抑制等
ニ資スル趣旨ニ依リマシテ、各稅ニ亙リ相
當ノ增徵ヲ行フコトト致シタノデアリマス
ガ、戰時國民生活ノ確保、物價政策トノ調
和等ラ考慮シテ、課稅物件ノ選擇、各稅ノ
增徵割合等ニ付十分ノ留意ヲ致シタノデア
リマス、卽チ主トシテ奢侈的消費、又ハ此
ノ際トシテハ不急ト認メラルル消費ノ負擔
ヲ增加スルノ方針ヲ執リ、生活必需品、原
料品等ニ對スル課稅ハ出來得ル限リ之ヲ避
クルコトトシ、以テ間接稅ノ增徵ニ因リ國
民ノ生活ヲ不當ニ壓迫シ、或ハ一般物價騰
貴ノ機運ヲ促進セシムル等ノコトナキヤウ、
萬全ノ注意ヲ怠ラナカツタノデアリマス
先ヅ酒稅デアリマス、現在酒類ニ關シマ
シテハ、酒造稅法、麥酒稅法、酒精及酒精
含有飮料稅法、支那事變特別稅法、臨時租
稅增徵法、其ノ他多數ノ法規ガ存在シ複雜
ヲ極メテ居ルノデアリマスガ、此ノ際稅制
ノ簡旨化ヲ圖ル爲、是等ノ諸法律ヲ單一稅
法ニ統一シテ、新ニ酒稅法ヲ制定セントス
ルモクデアリマス、而シテ酒類ニ對スル課
稅ノ方法及ビ內容等ニ於キマシテ種々ノ改
正ヲ加ヘテ、最近ノ事態ニ卽應セシムルコ
トト致シテ居ルノデアリマスガ、以下其ノ
主要ナル點ニ付テ說明致シマスルニ、先ヅ
第一ハ課稅方法ノ改正デアリマス、御承知
ノ如ク酒類ニ對スル課稅方法ト致シマシテ
ハ、從來造石稅制度ヲ可トスルカ、或ハ庫
出稅制度ヲ可トスルカニ關シ論議ガ行ハレ
テ來タノデアリマスガ、物品稅ニ於テ庫出
稅ヲ實施致シマシタ事蹟ト業界ノ實情トニ
照シテ考ヘマスレバ、此ノ際一擧ニ庫出稅
制度ニ移行スルコトハ必ズシモ適當ニア
ラズト認メラレマスノデ、今囘ノ改正ニ於
テハ原則トシテ造石稅制度ト、庫出稅制度
トヲ併用スルコトニ致シマシタ、唯麥酒ト
果實酒ニ付テハ其ノ製造及ビ販賣ノ實情ニ
顧ミ、庫出稅ノミヲ課スルコトトシ、濁酒
ニ付テハ造石稅ノミヲ課スルコトト致シテ
居リマス、第二ハ稅率ノ改正デアリマス、
酒類ニ於キマシテハ其ノ消費ノ性質、實情
等ニ照シ、此ノ際總稅額ニ於テ、三割程度ノ
增徵ヲ行フコトトシ、各酒類ニ付キ負擔ノ
均衡ニ留意シツツソレ〓。〓適當ト認ムル稅
率ヲ定ムルコトト致シテ居リマス、眞作
各酒類ノ取引ノ實情ニ應ジテ、造石稅ノ納
期ニ改正ヲ加ヘ、又一定條件ノ下ニ〓酒ト
合成〓酒ノ混合ヲ認ムル等、各種ノ事項ニ
付ソレ〓〓適當ト認ムル改正ヲ行フコトト
致シテ居ルノデアリマス
次ニ〓涼飮料稅ニ付キマシテハ、其ノ課
稅物件中第一種玉「ラムネ」ハ、比較的負擔力
ノ少ナキ方面ノ消費ニ屬スト認メラレマス
ノデ、之ニ付テハ增徵セザルコトトシ、其
ノ他ノモノ卽チ「サイダーL「シトロン」「ソー
ダ水等ニ付ギマシテ、大體三割程度ノ增
徴ヲ行フコトト致シタノデアリマス
次ハ砂糖消費稅デアリマス、申スマデモ
ナク、砂糖ハ必ズシモ贅澤品トハ稱シ難イ
ト思フノデアリマスガ、其ノ消費ノ實情等
ニ顧ミマスレバ、各種ノ消費稅ニ付キ相當ノ
增徵ヲ行ヒマスル場合、砂糖ニ付キマシテ
モ或ル程度ノ增徵ヲ行フハ適當ト認メラレ
マスノデ、今囘ノ改正ニ於テ總稅額ニ於
テ、大體二割程度ノ增收ヲ圖ルコトト致
シタノデアリマス、又砂糖消費稅ハ多年
色相ニ依ル區分ニ從ヒ課稅シテ參ツタノデ
アリマスガ、其ノ後種別ノ廢合、製糖技術ノ
進步等ニ伴ヒ、砂糖ノ品質ニモ相當ノ變化
ヲ來シ、色相ニ依リ區分シテ課稅スルコト
ハ、必ズシモ適當ニアラズト認メラレマス
ノデ、今囘之ヲ製造方法ニ依リ區分スル制
度ニ改メテ、含蜜糖ト分蜜糖トニ大別シテ課
稅スルコトト致シ、以テ糖業ノ現狀ニ卽應セ
シムルト共ニ、其ノ將來ノ改良發達ニ資ス
ルコトト致シタ次第デアリマス、織物消費
稅ニ付キマシテハ、昭和六年、稅率ノ引下
ヲ行フト共ニ、其ノ非課稅範圍ヲ擴張セラ
v、爾來最近數次ノ增稅ニモ拘ラズ、是ガ
增徴ハ見合ハサレテ參ツタノデアリマスガ、
今同更ニ各稅ニ亙リ相當ノ增稅ヲ行フコト
ト致シマシタノデ、是等トノ權衡ヲモ考慮
シ、本稅ニ付テモ輕微ナル增稅ヲ行フコト
ト致シタノデアリマス、卽チ其ノ稅率從價
百分ノ九ヲ百分ノ十ニ引上グルト共ニ、從
來ノ非課稅織物ノ範圍ヲ縮小シテ、麻毛
等ヲ使用シタル織物ニ對シ、課稅スルコト
ニ致シタノデアリマス、尤モ一般大衆ノ消
費ニ屬スル「ステープル〓ファイバー」織物、
綿織物等ニ付キマシテハ、現行ト同ジク免
稅ヲ存置スルコトニ致シテ居リマス
次ニ揮發油稅ニ付キマシテハ、昭和十二
年創設以來、一「ガロン」ニ付キ五錢ノ稅率
ヲ据置イテ參ツタノデアリマスガ、此ノ際
國庫收入ノ增加ヲ圖ルト共ニ、燃料國策ノ
遂行ニ資スル趣旨ニ依リ、-「ガロン」ニ付
八錢ノ引上ヲ行ヒ、合計十三錢ノ稅率ニ改
メントスルモノデアリマス
次ハ物品稅デアリマス、御承知ノ如ク物
品稅ハ主トシテ奢侈的性質ヲ有スト認メ
ラルル物品、又ハ其ノ消費ガ負擔力ヲ示ス
ト認メラルル物品ニ對シ課稅スルノ趣旨ニ
依リ、昭和十二年八月北支事件特別稅トシ
テ創設セラレ、其ノ後支那事變特別稅法ニ
引繼ガレ、昭和十三年及ビ昭和十四年ノ兩
度ニ亙リ、其ノ課稅範圍ヲ擴張セラレテ來
タノデアリマスガ、此ノ際奢侈的消費ニ重課
スルノ趣旨ニ依リ、其ノ課稅的物品中奢侈
的性質ノ濃厚ナリト認メラルル貴金屬製品等
)、第一種甲類ノ物品竝ニ寫眞機、蓄音器
等ノ第二種甲類ノ物品ニ對スル稅率ヲ、從
價百分ノ十五ヨリ百分ノ二十ニ引上グルコ
トト致シタノデアリマス、而シテ課稅範圍
ノ擴張ハ、物價政策トノ調和等ヲ考慮シテ、
之ヲ最小限度ニ止ムルコトト致シ、補足的
ナ意味ニ於テ象牙製品、七寶製品及ビ琥珀
製品ヲ第一種甲類ニ追加シテ、百分ノ二十
ノ稅率ニ依リ課稅スルコトトシ、第一種乙
類トシテ一定價格以上ノ菓子、愛玩用動物、
盆栽及鉢植類ヲ追加シテ、百分ノ十ノ稅率
ニ依リ課稅スルコトトシ、更ニ第二種乙類
トシテ高級ノ化粧石鹼、煉齒磨及ビ水齒磨、
高級ノ綠茶等ニ付、百分ノ十ノ稅率ニ依リ
製造場ヨリ移出ノ際課稅スルコトト致シテ居
リマス、而シテ第二種ク物品中、飴、葡萄糖及
ビ麥芽糖ニ付キマシテハ砂糖消費稅ノ增徵トノ
權衡ヲモ考慮シ、其ノ稅率ヲ百斤ニ付キ五
十錢程度引上ゲルコトト致シマシタ、尙ホ
酒類ニ付テハ之ヲ酒稅ニ統合シテ、庫出稅
トシテ課稅スルコトト致シマシタ關係上、
酒類ニ對スル物品稅ノ規定ハ之ヲ廢止スル
コトト致シタ次第デアリマス
次ニ遊興飮食稅ハ昨年ノ議會ニ於テ御協
贊ヲ經、同年四月ヨリ之ヲ實施シテ參ツタ
ノデアリマスガ、最近此ノ種ノ消費ハ增大
ノ傾向ニアリマシテ、此ノ際之ニ對スル課
稅ヲ相當大幅ニ增徵シテ、此ノ種消費ノ抑
制ニ資スルト共ニ收入2增加ヲ圖ルコトハ、
極メテ妥當ナ措置ト信ジマスルガ故ニ、稅
率ヲ五割程度引上ゲ、藝妓ノ花代ニ對スル
現行稅率百分ノ二十ハ、之ヲ百分ノ三十トシ、
其ノ他ノ料金ニ對スル現行稅率百分ノ十ハ、
之ヲ百分ノ十五トスルト共ニ、飮食ニ對ス
ル免稅點ヲ改正シテ、藝妓ノ花代ヲ伴フ飮
食ノ料金及ビ「カフェー1、)「バー」等ニ於ケル
料金ニ付テハ、免稅點ヲ設ケザルコトトシ、
又一般ノ飮〓ニ付テモ五圓ノ免稅點ヲ、三圓
ニ引下グルコトト致シテ居ルノデアリマス
次ハ入場稅デアリマス、入場稅ハ劇場、活動
寫眞館、競馬場等ノ入場者竝ニ舞踏場、「ゴル
フ」場等ノ設備利用者ニ對シ課稅スルモノデ
アリマスガ、此ノ種ノ消費行爲ハ尙ホ相當ノ
擔稅餘力アリト認メラレマスガ故ニ、ソレゾ
レ稅率ノ改正及ビ免稅點ノ引下ヲ行フコト
ト致シタ次第デアリマス、卽チ先ヅ劇場、活
動寫眞館、競馬場等ノ入場者ニ對シテハ免稅
點ヲ多少引下ゲテ大體二十錢以上ノ入場料
ニ付キ課稅スルコトニ改ムルト共ニ、
圓未滿ノ入場料ニ付テハ百分ノ十ノ稅率ヲ
据置キ、入場料ガ一圓以上三圓未滿ナルト
キハ、百分ノ二十ニ、三圓以上ナルトキハ
百分ノ三十ニ引上グルコトトシ、又舞踏場、
「ゴルフ」場等ノ設備利用者ニ對シテハ、現
行百分ノ十ノ稅率ヲ百分ノ二十ニ引上グル
コトニ致シタノデアリマス
次ハ通行稅デアリマスガ、一般ニ增稅ヲ
行ヒマスル際デアリマスノデ、本稅ニ付テ
モ相當程度ノ增徵ヲ行ヒ、國庫收入ノ增加
ヲ圖ルコトト致シマシタ、卽チ其ノ稅率ヲ
相當引上グルト共ニ、新ニ四十粁以上五十
粁未滿ノ三等乘客ニモ課稅スルコトトシ、
又急行料金ニ對シテモ一割ノ課稅ヲ行フコ
トト致シテ居ルノデアリマス
次ニ取引所稅中取引稅ニ付キマシテハ、
最近ニ於ケル株式取引ノ狀況ニ照シ、尙ホ
增徵ノ餘地アリト認メラレマスノデ、株式
ノ賣買取引ニ對スル稅率ヲ相當引上グルコ
トト致シマシタ、尙ホ其ノ他骨牌稅及ビ狩
獵免許稅ニ付キマシテハ、最近數次ノ增稅
ニモ拘ラズ、是ガ稅率ノ引上ヲ見ナカツタ
ノデアリマスガ、此ノ際一般的ニ增徵ヲ行
ヒマスルニ伴ヒマシテ、此ノ兩稅ニ付テモ
相當ノ增徵ヲ行フヲ適當ト認メ、ソレ〓〓
適當ト認ムル稅率ノ引上ヲ行フコトト致シ
テ居ル次第デアリマス
尙ホ以上ノ改正ノ外、支那事變特別稅法
ノ廢止ニ伴ヒ、同法中ニ於ケル建築稅ニ關
スル規定ヲ其ノ儘取纒メマシテ、建築稅法
ヲ制定スルト共ニ、物品切手ニ對スル印紙
稅ノ增徵ニ關スル規定ヲ、印紙稅法ニ移シ
規定スルコトニ致シタ次第デアリマス
次ニ臨時租稅措置法ノ改正ニ付キ說明致
シタイト存ジマス、曩ニ本會議ニ於テ申述
ベマシタルガ如ク、稅制ノ改正ト經濟諸政
策トノ調和ニ關シテハ、增稅額ノ決定竝ニ
配分、企業ニ對スル課稅、配當利子所得ニ
對スル課稅、間接稅課稅物件ノ選擇等ニ關
聯シテ、十分ノ留意ヲ致シタ次第デアリ
マスガ、此ノ際生產力ノ擴充其ノ他時局下
緊要ナル經濟諸政策ノ遂行ニ資スル爲、臨
時租稅措置法ヲ改正シテ、租稅上ノ必要ナ
ル措置ヲ講ズルコトト致シマシタ
其ノ第一ハ法人ノ留保所得ニ對スル課稅
輕減ノ制度ヲ擴張シタコトデアリマス、卽
チ現行法ニ於キマシテハ、法人ガ所得ノ四
割以上ヲ留保シテ、之ヲ生產設備ノ擴張、
國債ノ保有等ニ運用致シマシタ場合ニ於テ
ハ、其ノ運用金額ノ百分ノ二一四五ニ相當ス
ル所得稅ヲ、輕減スルコトニ致シテ居ルノ
デアリマスガ、今囘ハ所得ノ三割以上ヲ留
保シタル場合ニ、其ノ運用金額ノ百分ノ三·
六ニ相當スル法人稅ヲ輕減スルコトト致シ
チョン
第二ハ海外企業ヨリ生ズル所得ニ對スル
法人稅、及ビ分類所得稅ノ輕減デアリマス、
此ノ際海外企業ノ發展ヲ圖リマスコトハ、
最モ必要ナコトト認メラレマスノデ、海外
企業ヨリ生ズル所得ニ付キマシテハ、法人
ニアリテハ法人稅ノ稅率ヲ百分ノ四ダケ輕
減シ、個人ニアリテハ分類所得稅ノ稅率ヲ、
百分ノ二ダケ輕減シテ課稅スルコトト致シ
テ居リマス
第三ハ重要鑛物ヲ目的トスル鑛業ニ對ス
ル課稅ノ輕減デアリマス、曩ニモ申述ベマ
シタ如ク、此ノ際金鑛、銅鑛、鐵鑛、錫、鑛、
亞鉛鑛、硫化鐵鑛、「ニッケル」鑛、「マンガ
ン」鑛、石油等ノ重要鑛物ノ增產ヲ圖ルコ
トハ時局ニ鑑ミ緊要ナリト認メラルルノ
デマリマスルガ、鑛業ニ對スル課稅制度ノ
改正ニ伴ヒ、負擔ノ增加ヲ來ス方面モアリ
マスノデ、是等ノ重要鑛物ヲ目的トスル鑛
業ヨリ生ズル所得ニ對シテハ、臨時租稅措
置法ニ依リ、分類所得稅及ビ法人稅ノ稅率
ヲ、ソレ〓〓百分ノ二ダケ輕減スルコトト
致シテ居ルノデアリマス、尙ホ是ト共ニ、
重要鑛物ノ採掘ヲ開始シタル者、又ハ設備
ヲ增設シテ採掘ヲ爲ス者ニ對シテハ、新
一定年間所得稅、法人稅及ビ營業稅ヲ免除
スルコトト致シテ居リマス
第四ハ事業會社ニ對スル加算稅ノ適用ヲ
緩和セントスルコトデアリマス、卽チ同族會
社中事業ノ經營ヲ主タル目的ト爲スモノニ
付テハ法人稅ニ於ケル、稅額加算ノ條件ヲ
著シク緩和スルコトト致シマシテ、產業ノ
發展ニ支障ナキヤウ努メタ次第デアリマス
第五ハ生命保險會社ノ所有スル株式ノ配
當ニ對スル課稅ノ輕減デアリマス、旣ニ御
說明致シマシタ如ク、株式ノ配當ニ付キマ
シテハ、今囘分類所得稅トシテ新ニ一割ノ
源泉課稅ヲ行フコトト致シタノデアリマス
ガ、生命保險會社ハ相當多額ノ株式ヲ所有
シテ居リマス關係上、今囘ノ源泉課稅ニ依
リ、其ノ經營ニ相當ノ影響ヲ及ボスモノア
リヤニ認メラレマスノデ、事變下ニ於ケル
保險業ノ實情等ヲモ考慮シテ、經過的ナ措
置ト致シマシテ、生命保險會社ガ從來ヨリ
引續キ所有スル株式ノ配當ニ付、源泉課稅
ノ稅率ヲ百分ノ十ヨリ百分ノ六ニ輕減シテ、
是ガ負擔ノ增加ヲ緩和スルコトト致シタ次
第デアリマス
尙ホ以上ノ外臨時租稅措置法ニ付キマシ
テハ樽入黑糖等ノ容器トシテ、樽以外ノ
モノヲ認容スルコトト致シマシタ外、各稅
ノ改廢ニ伴ヒマシテ、ソレ〓〓必要ナル改
正ヲ施スコトト致シタ次第デアリマス、以
上ハ國稅各稅ノ改正ノ〓要ニ關スル說明デ
アリマス
此ノ機會ニ於テ地方稅ノ改正ニ付キマシ
テモ、簡單ニ說明致シマス、地方稅制ノ改
正ニ當リマシテハ地方稅負擔ノ均衡ト、
地方財政ノ基礎ノ確立等ヲ目標ト致シマシ
テ、地方稅制ノ根幹ニ二ツノ重要ナル改正
ヲ行ハントスルモノデアリマス
其ノ一ハ、直接國稅體系ノ改組ト關聯致
シマシテ、地租、家屋稅及ビ營業稅ノ如キ
物稅ヲ以テ、地方團體ノ獨立財源ノ中心ト
シ、地方稅ヲシテ應益課稅ノ原則ニ適合ス
ル稅種ニ依存セシムルコトト致シタ點デア
リマス、唯課稅ノ方法ト致シマシテハ、負
擔ノ均衡ヲ期スル等ノ理由ニ依リマシテ、
是等諸稅ノ一部ハ之ヲ國ニ於テ徵收シ、其
ノ收入ヲ還付稅トシテ、是ガ徵收地タル府
縣ニ還付スルコトトシ、又地方團體ハ之ニ
相當額ノ附加稅ヲ賦課スルコトト致シテ居
ルノデアリマス、而シテ其ノ負擔ノ程度
ハ)三稅間ノ均衡ヲモ考慮致シマシテ、國
稅及ビ附加稅ヲ通ジ、地租ハ土地賃貸價格
ノ百分ノ八、家屋稅ハ家屋ノ賃貸價格ノ百
分ノ七、營業稅ハ營業純益ノ百分ノ六ヲ目
途トスルコトニ致シテ居リマス、右ノ改正
ニ伴ヒマシテ、國稅タル地租ニ付テハ、一其其
ノ稅率ヲ賃貸價格ノ百分ノ二ニ改メ、又少
額地租ノ免稅範圍ヲ擴張シテ、賃貸價格ノ
合計五圓未滿ノ時ハ、地租ヲ免除スルコト
ト致シマスル等、適當ト認メル改正ヲ行ヒ
マスルト共ニ、新ニ營業稅法ヲ創設スルコ
トト致シマシタ、營業稅ハ大體現行營業收
益稅ノ例ニ依ルコトト致シテ居ルノデアリ
マスガ、稅率ヲ純益ノ百分ノ一·五ト致シマ
シタ外、湯屋業、理髪美容業、其ノ他主ト
シテ現行地方營業稅ノ課稅種目ヲ新ニ採リ
入レマシテ、之ニ營業稅ヲ課スルコトト致
シマスルト共ニ、法人ニ付キマシテハ、其
ノ〓算純益ニ對シテモ課稅スルコトニ致シ
テ居ルノデアリマス、又家屋稅ニ付キマシ
テハ近日中ニ之ニ關スル法案ヲ提出シ
テ、御協賛ヲ求ムル見込デアリマスガ、國
稅ト致シマシテハ、昭和十七年度ヨリ之ヲ
實施スル方針ニ依ルコトトシ、昭和十五、
十六ノ兩年度ニ於テ家屋賃貸價格ノ調査ヲ
行フ豫定デアリマス
地方稅制ニ關スル改正ノ第二點ハ、地方
稅制ニ分與稅制度ヲ採リ入レタコトデアリ
ママ、地方財源ノ地域的偏在ヲ調整スルト
共ニ、一面地方自治トノ調和ヲ考慮ニ入レ
テ、新ニ分與稅制度ヲ採用スルコトト致シ
タノデアリマス、卽チ國稅トシテ徴收シタ
ル地租、家屋稅及ビ營業稅ハ、之ヲ還付稅
トシテ府縣ニ還付スルノ外、所得稅、法人
税入場稅及ビ遊興飮食稅ノ各一部ヲ以テ
配付稅トシテ、各地方團體ニ對シ人口、
課稅力等ヲ標準トシテ、調整的ニ交付スル
コトト致シテ居リマス、而シテ此ノ分與稅
制度ノ創設ト共ニ、從來負擔均衡ノ上カラ
兎角ノ非難ガアリマシタ戶數割ハ之ヲ全廢
シ、新ニ負擔分任ノ精神ヲ充足セシムル爲、
市町村獨立稅トシテ、市町村民稅ヲ創設ス
ルコトト致シテ居ルノデアリマス、尙ホ
其ノ他所得稅附加稅ハ之ヲ廢シ、法人稅ニ
付テハ附加稅ノ賦課ヲ認メザルコトト致シ
タ外、雜種稅、市町村特別稅等ニ付キマシ
テモ、ソレ〓〓適當ナ整理改正ヲ加ヘテ負
擔ノ均衡ヲ圖ルコトト致シテ居ルノデアリ
マス
以上中央及ビ地方ヲ通ズル稅制ノ一般的
改正ニ付キ其ノ〓要ヲ說明致シタノデアリ
マスガ、國稅制度ノ改正ニ依リマシテ平年
度一般關係ニ於テ、新法ニ依ル分類所得稅
ハ五億八千六百餘万圓、同ジク綜合所得稅
ハ四億六千百餘万圓、計十億四千八百餘万
圓新法ニ依ル法人稅ハ五億八百餘万圓、
超過所得稅ヲ除ク現行所得稅ノ減少八億九
千六百餘万圓、特別法人稅創設ニ因ル增加
百五十餘万圓、現行地租ノ減少四千九百四
十餘万圓、現行營業收益稅ノ廢止ニ因ル減
少一億三千五百餘万圓、資本利子稅廢止ニ
由ル減少四千八百三十餘万圓現行法人資本
稅廢止ニ因ル減少三千八十餘万圓、臨時利
得稅ノ改正ニ因ル增加一億一千七百餘万圓、
配當利子特別稅ノ減少二一千六十餘万圓、外
貨債特別稅ノ增加九百三一十餘万圓、相續稅
ノ增加三千二百九十餘万圓、鑛產稅及特別
鑛產稅ノ廢止ニ因ル減少五百五十万圓、取
引所營業稅ノ改正ニ因ル減少五十餘万圓、
酒稅ノ增加五千百二十餘万圓、〓凉飮料稅
ノ增加二百三十餘万圓、砂精消費稅ノ增加
二千五百三十餘万圓、織物消費稅ノ增加一
千百九十餘万圓、揮發油稅ノ增加一千二百
三十万餘圓、酒類ノ物品稅ヲ除ク物品稅ノ
增加九百六十餘万圓、遊興飮食稅ノ增加六
千百四十餘万圓、取引稅ノ增加四百八十餘
万圓、通行稅ノ增加七百八十餘万圓、入場
稅ノ增加七百五十万餘圓、狩獵免許稅等印
紙收入ノ增加、五十餘万圓ト相成リマス
ノ六、結局國稅ニ於テ平年度約七億一千五
百万圓、初年度タル昭和十五年度約五億二
千八百万圓ノ增收ト相成ルノデアリマス、
而シテ以上ノ外ニ地方分與稅分與金特別會
計ノ歲入ニ所屬セシムルコトト致シマシタ
地租ト營業稅ノ收入ガ、平年度九千八百餘
万圓、初年度七千六百餘万圓デアリマスノ
デ、是等ヲ通ズル一切ノ國稅トシテハ、平
年度約八億一千四百万圓、昭和十五年度約
六億四百万圓ノ增收ト相成リマス見込デア
リマス、併シナガラ一面地方稅ノ改廢ニ伴
ヒ、地方分與稅分與金トシテ、地方團體ニ交
付スル金額等ガ從來ノ臨時地方財政補給金
ノ外ニ、平年度約三億三百万圓、初年度約
二億三千万圓ダケ增加スルコトニナツテ居
リマスノデ、差引國庫收入ノ純增加ハ平年
度約五億一千万圓、初年度約三億七千三百
万圓ト相成ル見込デアリマス、以上稅制改
正ニ關スル諸法案ニ付說明致シタ次第デア
リマス、何卒御審議ノ上速ニ御贊成アラン
コトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00219400214&spkNum=2
-
003・堀切善兵衞
○堀切委員長 只今ノ御說明ニ付テ內容ノ
意味等ハ他日御尋致ストシテ、何カ御話ニ
ナツタ文句ノ中ニ不明ダツタトカ、聽漏ラ
シタ點等ガアリマシタナラバ、此ノ際御尋
置キヲ願ツテ置ケバ結構ダト思ヒマス
一寸只今御讀ミニナリマシタ中デ株式等
ノ取得ニ要シタル利子ヲ引クト云フ所ニ
「等」ト云フ字ガアツタヤウデアリマシタガ、
果シテサウデセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00219400214&spkNum=3
-
004・櫻内幸雄
○櫻内國務大臣 ゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00219400214&spkNum=4
-
005・堀切善兵衞
○堀切委員長 有難ウゴザイマシタ、サウ
スルト株式バカリデハナイ譯デスネ、株式
等ノ取得ニ要シタル利子ヲ引クト云フコト
デスナ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00219400214&spkNum=5
-
006・小山倉之助
○小山委員 資料ノ要求ヲ致シタイノデア
リマスガ、私ノ方デ此處ニ書イタモノガア
リマスカラ之ヲ讀ミ上ゲマス、國民總所得
及ビ貯蓄額(最近五箇年)月別物價勞銀金利
指數(最近五箇年)自然增收額(昭和十二年
十三年十四年、但シ增稅ヲ控除シタルモノ)
大正十三年以來稅法改正一覽表、國稅各稅
種收入見込表、所得稅種別(第一種、第二
種第三種)收入額(最近五箇年)所得稅階
級別納稅人員數、臨時利得稅調定額(十四
年度)遊興稅ノ豫定ト實蹟(府縣別但シ十四
年度見込)物品稅ノ豫定ト實蹟(但シ十四
年ハ見込)地方稅收入額(府縣別、種別、
府縣稅、市稅、町村稅最近五箇年)自動車
稅及ビ自轉車稅額(府縣別)專賣益金表最
近五箇年內地、朝鮮、臺灣)國稅、滯納處分
表(最近五箇年間)接犯罪者處分法ニ依ル
處分數(最近五箇年)是ハ重複スルカモ分リ
マセヌガ、若シ重複ガアリマシタラ一ツ御
訂正ヲ願ヒタイ、各稅勅令(其ノ他委員命
令事項)案要綱、各稅改正稅額及ビ增收額
內譯(初年度ト平年度共)配當所得二割控除
廢止ニ因ル增收額、株式取得ニ要シタル負
債利子控除ニ因ル減收額、總テノ負債ノ利
子ヲ控除スル場合ノ減收額、配當所得計算
期間ヲ曆年ニ改ムル場合ノ減收額、法人利
益計算上從來通リ稅金ヲ損金トスル場合ノ
減收額、法人稅、臨時利得トヲ區別願ヒタイ
ノデス、同族會社加算稅規定改正ニ因ル減
收額、綜合所得計算上分類所得稅ヲ控除ス
ル場合ノ減收額、解散法人ヨリ分配ヲ受ク
ル殘餘財產ノ出資超過額ヲ配當トスルニ因
ル增此額、公社信利子等源泉課稅選擇ニ因
ル減收額、臨時租稅措置法改正ニ因ル減收
額、各稅別各事項每ニ御願致シマス、直間
國稅負擔額調(改正現行比較)直接稅ト間接
稅及ビ其ノ他稅トノ割合(最近五箇年)地方
稅制改正ニ因ル地方稅增減收額、(改正現行
比較)私ノ要求スル大體ノ資料ハ是ダケデ
アリマス、後程必要ガアリマシタラ追加致
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007・堀切善兵衞
○堀切委員長 出來ルダケ調ベテ出シテ戴
キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00219400214&spkNum=7
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008・高橋熊次郎
○高橋委員 私ノ要求スル資料ヲ申上ゲマ
ス、一、稅制改正ニ對スル主稅局ノ原案、
二、改正稅法ニ附隨スル勅令案又ハ命令要
項、三、稅制調査會ノ速記錄、四、昭和五
年以來ノ國民所得調、以上デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00219400214&spkNum=8
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009・立川平
○立川委員 私モ資料ヲ請求シマスガ、重
複シタモノガアツタヤウニ存ジマスガ、是
ハ適當ニ御取捨ヲ願ヒマス、新舊法律ノ各
對照表、勅令、命令各要項全部、增收額算
出ノ根據ノ表、ソレカラ個人事業所得者ノ
四百圓、二千圓、四千八百圓、五千圓、
万圓、三万圓、五万圓、八万圓、十万圓、
十五万圓、二十万圓、二十五万圓、三十万
圓、五十万圓ノ各事業所得者ノ新稅法ニ依
ル納稅額計算表、五、資本金二百万圓拂込
濟積立金ナシノ法人ガ年額二十万圓、二十
五万圓、三十万圓、四十万圓、五十万圓ノ
各事業所得ヲ得タ場合ノ新稅法ニ依ル納稅額
ノ計算表、竝ニ此ノ純益ヲ法人ガ納稅シタ
ル殘高ヨリ百分ノ五ノ法定積立ヲ殘シタ其
ノ殘存金ヲ同一家族ニ全部配當シテ、其ノ
配當金ヲ受取ツタ個人ハ、其ノ個人ノ新稅
法ニ依ル納稅ヲ各名目每ニ算出シテ納稅ス
ルトセバ、最後ニ其ノ事業家トシテノ純收
入ハドウナルカ、六、最高制限ガナクナツ
タ結果、純益ヨリモ納稅額ガ多クナルモノ
ガアルト思フ、資本金十万圓、十五万圓、
二十万圓ノ純益ノアツタ場合ニサウ云フモ
ノガアルト思フガ、其ノ表、七、舊法ノ第
三種所得稅法ト新法ノ分類綜合兩所得稅法
ニ依リ段階式ニシテ同一收入ニ對スル稅額
ノ比較及ビ其ノ增減ノ表、是ハ大體四百圓
カラ百万圓マデノモノヲ段階式ニシタモノ、
八事業家タル株主ガ會社デ或ル收入ヲ得
テ法人所得ヲ納メ、殘リノ所得ノ配當ヲ受
ケテソレニ各種ノ納稅ヲスレバ一體ドレ位
正味ノ殘高ガアルカ、是モ段階ヲ少シ付ケ
テ表ヲ作ツテ戴キタイ、九、飮食遊興稅ノ
今日マデノ實績、收入、府縣別ノ明細、十、
過去三箇年分ノ課稅決定ニ對スル異議申立
者ノ數及ビ其ノ異議アルニモ拘ラズ納稅ヲ
一應サセタモノ、十一、酒ノ造石數ト割水
ヲシタ庫出石數、ソレカラ消費者ノ消費石
數十二、新稅法ニ依ル各國稅別ニ收入見
込ノ一覽表、但シ所得額ノ稅率ヲ示シタ正
確ナ計算、ソレカラ次ハ稅制調査委員會ノ
速記錄全部、ソレカラ平年度ニ於ケル地方
分與稅、第二條第二項ノ金額、十五年度ニ
於ケル道府縣標準單位稅額及ビ各道府縣單
位稅額、各道府縣別ノ災害土木費ノ負債額、
第十七條第一項該當ノ府縣名、同第二項該
當府縣名、市町村標準單位稅額、十五年度
ニ於ケル大都市配付稅、都市配付稅、町村
配付稅ノ各金額見込高、各大都市單位稅額
及ビ大都市標準單位稅額、同ジク第二十五
條該當ノ大都市及ビ同第二項該當ノ大都
市、各都市ノ單位稅額、同標準單位稅額、
同ジク第三十二條該當都市、同ジク第二項
該當都市、第三十九條該當町村數、同ジク
第二項該當町村數、第五十一條ニ該當スル
道府縣、第五十三條ノ該當府縣、以上デア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00219400214&spkNum=9
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010・河野密
○河野委員 私モ資料ヲ要求致シマス、重
複シタラ適當ニ取捨ヲ願ヒタイト思ヒマス、
第一ハ所得階級別所得稅負擔金調(現行法
及ビ改正案トノ比較)二、所得階級別納稅
人員所得額及ビ納稅額調、三、右改正案ニ
依ル見込額調、四、國民所得ニ對スル租稅
負擔ノ割合(現行及ビ改正案)五、右英米佛
獨伊等トノ比較、六、所得金千圓、三千圓、
五千圓、七千圓、一万圓ニ於ケル不動產所
得、配當利子所得、事業所得、勤勞所得ノ
負擔稅額比較(地方稅ヲ含ム)七、所得中ニ
各種所得ヲ含ム場合ニ於ケル所得稅額算出
ノ計算例、八、最近三箇年ニ於ケル直接稅
及ビ間接稅收入額竝ニ割合、九、右改正後
ニ於ケル見込、+、最近五箇年ニ於ケル不
動產所得、配當利子所得、事業所得、勤勞
所得ノ所得金額調、十一、現行稅制トノ比
較ニ於ケル改正案ニ依ル稅收增減ノ一覽
表、十二、全國諸會社ノ留保所得調(最近
三箇年)、十三、租稅臨時措置ニ依リ減免セ
ラレタル稅額調、十四、物品稅實施以來ノ
種目別稅收調、十五、所得金額四百万圓ヲ
超エル者ノ數、納稅者名、所得內容、十六、
稅制改正ニ伴フ勅令及ビ省令案要項、以上
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00219400214&spkNum=10
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011・立川平
○立川委員 追加ヲ致シマス、一、最近五
箇年間府縣歲入歲出決算合計額表、二、同
ジク最近五箇年間市ノ歲入歲出決算合計額
表、三、同ジク最近五箇年間町村歲入歲出
決算合計額表、四、改正案ニ依ル平年度府
縣市町村別各稅收入見込額、以上デアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00219400214&spkNum=11
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012・高橋熊次郎
○高橋委員 先程私ヨリ請求致シマシタ
ル、稅制調査會ノ速記錄ハゴザイマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00219400214&spkNum=12
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013・大矢半次郎
○大矢政府委員 稅制調査會ノ速記錄ハゴ
ザイマセヌ、尙ホ其ノ他御要求ニナリマシ
タ資料ハ、出來ルダケ速ニ調製シテ提出致
シタイト存ジマスガ、本日御配リ致シマシ
タ資料ノ中、「租稅ニ關スル參考計表」ト云
フモノニ、相當部分入ツテ居ルヤウデゴザ
イマス、ソレカラ「稅制改正ニ因ル租稅及
印紙收入歲入額增減表」ト云フ資料ノ中ニ
モアルト存ジマス、ソレカラ立川サンカ
ラ、所得稅ニ於ケル最高制限ノ規定ヲ撤廢
シタカラ、其ノ結果純益ヨリモ納稅額ノ方
ガ多クナル場合ガアルノデハナカラウカト
云フ御尋デアリマシタガ、是ハゴザイマセ
又、隨テ此ノ資料ハ提出致シ兼ネマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00219400214&spkNum=13
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014・堀切善兵衞
○堀切委員長 各委員カラ御請求ガ多イヤ
ウデスガ、政府カラ御提出ニナツタ稅ノ種
類モ隨分多イノデスカラ、ドウゾ一ツ出來
ルダケ材料ヲ御出シ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00219400214&spkNum=14
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015・高橋熊次郎
○高橋委員 只今稅制調査會ノ速記錄ガナ
イト云フ御話デアリマス、ソレデハ稅制調
査會ニ於ケル答申案ガアルト思ヒマスカラ
其ノ答申案ヲ御願ヒ致シタイト思ヒマス、
ソレカラ各國ノ稅制ノ調査會ラシタモノガ
アルヤニ承ツテ居ルノデアリマスガ、各國
ノ稅制ノ調査サレタモノノ印刷ガアルトス
ルナラバ、吾々ノ審議上非常ナ參考ニナル
ト思ヒマスカラ、是非頂戴シタイト思ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00219400214&spkNum=15
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016・石坂繁
○石坂(繁)委員 私モ資料ヲ要求致シマス、
第一、地方債ノ總額、之ヲ道府縣債ト市町
村債ニ分ケテ御調ベヲ願ヒタイ、第二、現
行制度ニ於ケル家屋稅、雜種稅及ビ所得稅、
營業稅ノ附加稅ノ總額、之ヲ道府縣ノ收入
ト市町村ノ收入ニ分ケテ願ヒタイ、第三、
現行制度ニ於ケル地方團體ノ委任事務費ノ
總額、是モ道府縣ノ負擔ト市町村ノ負擔ニ
分ケテ願ヒタイ、第四、英、佛、獨ノ現行
所得稅法ヲ承知致シタイノデアリマス、ソ
レニ關スル資料、以上デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00219400214&spkNum=16
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017・堀切善兵衞
○堀切委員長 小山君ニ一寸御相談致シマ
ス、御請求ノ中ノ一番最初ニアリマシタモノ
ハ、高橋君ノ御請求、河野君ノ御請求ト共通シ
テ居ルヤウデアリマス、最近ノ國民所得ト
云フノデアリマスガ、是ハ御尤モナコトデ、
國民ノ所得ガ幾ラアツテ稅ヲ幾ラ取ツタラ
宜イカ、基礎デスカラ、之ニ付テハ內閣統計
局長ニ來テ貰ツテ、政府委員ニナツテ居ル
ヤウデアリマスカラ、此ノ根本ニ付テ一ツ
聽イテ見タラ如何デセウカ、私共每年貰フ
ガ、昨年貰ツタモノニ依ルト、昭和五年マ
デシカ出テ居ナイ、其ノ五年ノ國民所得ノ
總額ガ百六億トカ何トカ云フノデスカラ、
今年ノ政府ノ豫算殆ド全部ガ、國民所得ニ該
當スルヤウナコトニナツテ居ルノデス、其
ノ後殖エタモノデ國民ガ暮シテ居ルヤウナ
譯デ、其ノ後ドレ程殖エタカ、〇是ハ根本的
ノ問題ダラウト思ヒマスカラ、統計局長ニ
モ此ノ次ハ來テ戴イテ、御說明ヲ願ヒタイ
ト思ヒマス、ソレデハ今日ハ此ノ程度デ散
會致シマス、次會ハ公報ヲ以テ御知ラセス
ルコトニ致シマス
午後二時三十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00219400214&spkNum=17
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