1. 会議録本文
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000・会議録情報
會議
昭和十五年二月二十二日（木曜日）午前十時二十七分開議
出席委員左の如し
委員長 堀切善兵衞君
理事 小山倉之助君 理事 濱野徹太郎君
理事 木村淺七君 理事 高橋熊次郎君
理事 小笠原三九郎君 理事 立川平君
理事 河野密君
山本粂吉君 池本甚四郎君
川崎末五郎君 内藤正剛君
長野長廣君 愛野時一郎君
川崎克君 津倉亀作君
渡邊玉三郎君 塚本三君
伊藤五郎君 石井徳久次君
船田中君 宮本雄一郎君
山川頼三郎君 豐田收君
森肇君 森田福市君
板谷順助君 西川貞一君
瀧澤七郎君 小見山七十五郎君
鈴木英雄君 田万清臣君
松永義雄君 佐竹晴記君
石坂繁君 青木作雄君
藤本捨助君 北勝太郎君
武田徳三郎君
二月二十一日委員池田七郎兵衞君、澤田利吉君及中村三之丞君辭任に付其の補闕として石井徳久次君、塚本三君及川崎末五郎君を議長に於て選定せり
出席國務大臣左の如し
大藏大臣 櫻内幸雄君
出席政府委員左の如し
内閣統計局長 川島孝彦君
内務省地方局長 挾間茂君
内務書記官 三好重夫君
大藏政務次官 木村正義君
大藏參與官 松田正一君
大藏省主税局長 大矢半次郎君
大藏省理財局長 相田岩夫君
大藏書記官 植木庚子郎君
大藏書記官 田中豐君
大藏書記官 山田義見君
大藏書記官 池田勇人君
營繕管財局理事 松隈秀雄君
本日の會議に上りたる議案左の如し
所得税法改正法律案（政府提出）
法人税法案（政府提出）
特別法人税法案（政府提出）
配當利子特別税法案（政府提出）
外貨債特別税法中改正法律案（政府提出）
相續税法中改正法律案（政府提出）
建築税法案（政府提出）
鑛區税法案（政府提出）
臨時利得税法中改正法律案（政府提出）
營業税法案（政府提出）
地租法中改正法律案（政府提出）
酒税法案（政府提出）
清涼飮料税法中改正法律案（政府提出）
砂糖消費税法中改正法律案（政府提出）
織物消費税法中改正法律案（政府提出）
揮發油税法中改正法律案（政府提出）
物品税法案（政府提出）
遊興飮食税法案（政府提出）
取引所税法中改正法律案（政府提出）
通行税法案（政府提出）
入場税法案（政府提出）
印紙税法中改正法律案（政府提出）
骨牌税法中改正法律案（政府提出）
狩獵法中改正法律案（政府提出）
明治四十四年法律第四十五號中改正法律案（砂糖消費税織物消費税等の徴收に關する件）（政府提出）
大正九年法律第五十一號中改正法律案（内地臺灣又は樺太より朝鮮に移出する物品の内國税免除に關する件）（政府提出）
支那事變特別税法及臨時租税増徴法廢止法律案（政府提出）
營業收益税法廢止法律案（政府提出）
資本利子税法廢止法律案（政府提出）
法人資本税法廢止法律案（政府提出）
臨時租税措置法中改正法律案（政府提出）
地方税法案（政府提出）
地方分與税法案（政府提出）
府縣制中改正法律案（政府提出）
市制中改正法律案（政府提出）
町村制中改正法律案（政府提出）
北海道會法中改正法律案（政府提出）
北海道地方費法中改正法律案（政府提出）
地方分與税分與金特別會計法案（政府提出）発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=0
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001・堀切善兵衞
○堀切委員長 ソレデハ是ヨリ開會致シマ
ス、今日ハ御要求ノアリマシタ總理ガ御見エニ
ナリマセヌガ、幸ヒ內閣統計局長官ガ御見エ
ニナツテ居ルノデ、國民所得、國富ト云フ點ヲ
一ツ御說明願フコトニ致シマス-統計局長発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=1
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002・川島正次郎
○川島政府委員 國民所得ノコトニ付キマ
シテ御說明ヲ申上ゲマス、統計局デ調査ヲ
致シテ居リマスル國民所得ハ、大正十四年
ニ第一囘調査ヲ致シマシテ、其ノ後昭和五
年、昭和十年ト今マデ三囘調査ヲ致シテ居
ルノデアリマス、此ノ國民所得ノ統計ノ趣
旨トスル所ハ、國民各個人ガ一年ニ經濟活
動ヲ致シマシテ、其ノ結果金錢的ノ所得ガ
幾ラデアルカ、ソレヲ全國總計ヲシテドノ
位ニナルカト云フコトヲ推計スルノガ趣旨
デアリマス、併シナガラ現在ノヤウナ統計
ノ制度組織ガ、マダ十分ニ整ツテ居リマセ
ヌ我國ニ於キマテハ、ソレヲ統計的ニ見テ、
十分ニ確實ナ推計ヲスルコトハ非常ニ困難
デアリマスノデ、現在デハ出來得ル限リノ所
デ一應ノ推計ヲ出シテ居ル次第デアリマス、
デアリマスカラ其ノ國民所得ト致シマシテ、
統計局ガ發表致シマス數字ハ、實際トハ相
當ノ開キガアリマスノデ、其ノ開キガ凡ソ
ドノ位デアルカト云フコトニ付キマシテ
ハ、後程モ御說明申上ゲマスガ、的確ニ其
ノ誤差ヲ計ル尺度ガ別ニアリマセヌノデ、
自然統計家或ハ國民所得ノ數字ヲ御使ヒニ
ナル方々ノ御銘々ノ見積リト云フモノガ入
ツテ來ルノデアリマス、隨テ一應此ノ國民
所得ノ推計ノ方法ヲ御說明申上ゲマシテ、
其ノ後デ數字ヲ申上ゲタ方ガ御便利デアラ
ウト思ヒマスノデ、少シ細クナリマスガ、
其ノ推計ノ方法ヲ申上ゲマス
大體國民所得推計ノ方法ト致シマシテ
ハ國勢調査デ產業ニ關スル分類ト云フノ
ヲ致シテ居リマス、農業、水產業、山形で
云フ風ニ國勢調査デ產業ノ分類ノ區別ヲ致
シテ居リマスルガ、大體ソレト同ジヤウナ
分類ニ依リマシテ、農業カラ得ル純收益、
水產業カラ得ル純收益、鑛業カラ得ル純收
益工業カラ得ル純收益、商業カラ得ル純
收益、交通業カラ得ル純收益、公務自由業
及ビ家事ニ從事シテ居ル人ノ純收益、其ノ
他ニ投資ヲ致シテ居ル人々ノ配當或ハ利益
金サウ云フ方面ノ國債投資及ビ事業ノ利
得ノ差額、斯ウ云フ八ツノ項目ニ分ケマシ
テ各〓調査ヲ致スノデアリマス、農業、水
產業、鑛業、工業、商業、交通業、公務自
由業及ビ家事就役、國債投資及ビ事業利得
ノ差額、斯ウ云フ風ナ八ツノ部門ニ分ケマ
シテ調査ヲ致シマス
其ノ調査ヲ致シマスル大體ノ立テ方ハ、
統計局デ全國ニ亙リマシテ、農業トカ水產
業トカ云フ產業部門ニ就キマスル人々ニ付
テ、標本的ニ或ル數ノ人ヲ調ベマシテ、ソ
レカラ農業一戶當リノ大體ノ純收益ハ幾ラ
デアルカ、ソレガ其ノ農家ノ生產シマシタ
農產物ノ價額ノ何分ニ當ツテ居ルカト云フ
生產額ト純收益トノ割合ヲ先ニ出シマシテ、
ソレカラ別ニ農林省、商工省或ハ大藏省其
ノ他ノ各省ノ色々ナ生產額ノ統計ノ數字ヲ
持ツテ參リマシテ、全體ノ生產額ニ付テ其
ノ幾割ガ純收益ニ當ルモノデアルカト云フ
コトヲ、計算ニ依ツテ見出シテ行カウト云
フ方法デゴザイマス、デアリマスカラ統計
局デ實地ノ調査ヲ致ジマスルモノハ標本調
査デアリマシテ全般ニ及ビマセヌ、極ク僅
カナモノヲ抽出シテ調ベルノデアリマス
ルガ、其ノ統計局ノ實地調査ニ依リマス
大體標準ノ收益步合ヲ見マシテ、ソレヲ各
官廳デ作ツテ居リマスル統計ノ生產額ニ掛
合セマシテ、全體ノ利益總額ヲ見ヨウト云
フ「システム」ヲ、大體ノ建前ト致シテ居リマ
ス、併シナガラ實際ニ於キマシテハ、サウ
云フコトノ出來ナイモノモアリマスルノデ、
ソレ等ニ付テハ又別ノ方法ヲ用ヒテ居リマ
ス、ソレデ多少煩雜ニ亙リマスルガ、各部
門部門ニ付テ申上ゲマス
農業ニ於ケル純收益ヲ推計致シマスルノ
二、農家ト農家デナイモノトニ分ケマシ
テ、コ農家ニ付キマシテハ、普通ノ農家ノ其
ノ當時ノ世帶數ノ推計ノ數ノ約千分ノ三ニ
相當スル戶數ヲ取リマシテ、其ノ戶數ハ昭
和十年ノ時ニハ一万六千九百二十戶デアリ
マスガ、此ノ約一万七千バカリノ農家ニ付
キマシテ調査票ヲ配リマシテ、サウシテ其
ノ調査ヲ受ケスマル世帶ニ於テ、一年間ニ
生產致シマシタ農產物總價額ノ金額、又其
ノ生產ニ要シマスル種トカ、苗トカ、或
光熱藥劑、サウ云フ肥料代、飼料代、農具代
ト云フヤウナ生產費ニ當ルモノノ金額ヲ申
告サセマシテ、ソレニ依リマシテ純收益幾
ラデアルカト云フコトヲ一戶々々ニ付テ出
シマシテ、其ノ全體ノ平均ヲ出シマシテ、
結局一万七千ノ農家世帶ノ中デ、生產額ガ
總額幾ラ、生產費トシテ見ラルベキモノガ
幾ラ、其ノ差引ノ純收益ト見ラルベキモノ
ガ幾ラト出シテ、其ノ純收益ト生產額總額
トノ割合ヲ出シマス、サウシテ其ノ割合デ
以テ、全國農家カラ出マシタ農產物ノ總價
額ノ推計ヲ致シタモノニ、ソレヲ割當テマ
シテ、普通ノ農業ノ世帶ノ一年間ノ收益ヲ
全部デ幾ラト、斯ウ云フ風ニ計算ヲ致シマ
ス
ソレカラ農業收益ノ農家ノ方デナイ、其
ノ他ノモノニ付キマシテハ、大體極クアラ
ミノ見方デアリマスガ、養畜、養禽、詰リ
養豚トカ養鷄ノヤウナモノヲ專門ニヤツテ
居ル農家、ソレカラ林業ヲ專門ニヤツテ居
ル家、サウ云フ世帶ニ付キマシテハ、極ク
僅カノ數ノ世帶ニ付キマシテ純收益ヲ調ベ
マシテ、ソレヲ養鷄或ハ養豚ヲヤツテ居ル
世帶ノ總數ニ掛合セマス、或ハ林業者ノ總
數ニ掛合セマシテ、養鷄或ハ養豚、或ハ林
業ニ從事シテ居ル專業者ノ純收益ヲ推計シ
テ參ルノデアリマス
ソレカラ第二ニ水產業ノ所得ヲ見マス爲
二、是ハヤハリ自營ノ水產業世帶ト申シ
詰リ個人々々ノ普通ノ漁業者、ソ.
マシテ、
レト大キナ組織ヲ持ツテ居リマス水產會社、
此ノ二ツニ分ケテ個人的ノ漁業者ニ付キマ
シテハ、ヤハリ全漁業者ノ千分ノ三ニ相當
スル數、昭和十年ニ於キマシテハ約千七百
六十五世帶デアリマスガ、其ノ千七百餘リ
ノ世帶ニ付テ、ヤハリ調査票ヲ交付致シマ
シテ、ソレニ書入レサセテ、申〓サセル、
其ノ申〓ニ基イテ大體農家ノ收入ヲ計ルト
同ジヤウナ方法デ、總收入、總收益ヲ推計
シテ參リマス、ソレカラ水產會社ニ付キマ
シテハ、是ハ水產會社ニ照會ヲ發シマシ
テ-是ハ特殊ノ經營狀態ヲ致シテ居リマ
スカラ、殆ド總テノ水產會社ニ付テ調査ヲ
致シマシテ、其ノ純收益ヲ合算致スノデア
リマス
ソレカラ第三番目ノ鑛業ノ純收益ニ付キ
マシテハ、是ハ比較的十分ニ調ベガ整ツテ
居リマスノデ、總テノ鑛山ニ付キマシテ、鑛
產物ノ總價額カラ其ノ鑛產物ノ生產ニ要ス
ル生產費ヲ引キマシテ、ソレニ基イテ鑛業
全體ノ純收益ヲ割出シマシタ
ソレカラ工業ノ收益ニ付キマシテハ、是ハ
內容ガ色々アリマスノデ、大體二ツニ分ケマ
シテ、主要職工五人未滿ノ工場ヲ家內工業ト
見テ、其ノ家內工業ノ收益ヲ推計スル爲ニ約
六千程ノ世帶ニ付テ、ヤハリ調査表ヲ交付シ
テ必要ナ事項ヲ申告シテ貰ヒマス、ソレカラ
五人以上ノ工場、是ハ多少大規模ノ工場ト見
マシテ、ソレニ付キマシテハ全體ノ工場數
ノ約百分ノ四ニ當ル-昭和十年ニ於キ
マシテハ三千二百十二程ノ工場ニ付テ、ヤ
ハリ調査表ヲ配リマシテ相當詳細ナ申〓ヲ
サセルノデアリマス、ソレニ基キマシテ其
ノ工場ノ生產總價額、ソレカラ其ノ生產ニ
要シタル原料、廣〓、或ハ光熱、動力、工作
物機械器具ノ減耗品等ヲ控除シタ純益ノ
金額ヲ出シマシテ、ソレニ依ツテ全體ノ純收
益ヲ、計算スル、土木建築トカ映畫製(作トカ
新聞、雜誌トカ云フモノハ普通ノ工場トハ又
經營ノ態樣ガ違ツテ居リマスルノデ、特別
ノ照會ヲ致シマシテ、ソレヲ基トシテ計算ヲ
致シテ參リマス
第五番目ノ商業ノ收益ニ付キマシテハ、
物品販賣業、是ハ卸賣モ小賣モ入ツテ居リ
マスガ、物品販賣業ト娯樂興業者、旅館等
ノ接客業者、サウ云フモノニ付キマシテハ
千分ノ三、或ハ百分ノ二、或ハ百分ノ四ト
云フ風ナ割合デ世帶ヲ取リマシテ、ソレニ
調査表ヲ渡シテ調査ヲ致シ、其ノ結果ヲ基
準ト致スノデアリマス、其ノ他ニ媒介周旋
業者、或ハ金融業者、保險業者、ソレカラ商
業トハ違ヒマスルガ、地面ヲ貸シテ利益ヲ
取リ、或ハ貸家ニ依ツテ利益ヲ得ル人、サ
ウ云フモノニ付キマシテハ、此ノ一般的ノ調
査ノ方法ニ依リマセヌデ、特別ノ照會調査
ヲ致シテ、極ク僅ナ事例ヲ基ニシテ全體ヲ
計算致ス行キ方ヲ致シテ居リマス
交通業ノ方ニ於キマシテハ、鐵道、軌道
及ビ船舶ト云フヤウナモノニ付キマシテハ
大體其ノ方面ノ統計資料ガ十分デアリマス
ルノデ、一々調査表ヲ渡シテ申告ヲ求メナ
イデ、純益金ノ總額ニ稅トカ借入金ノ利子
トカ積立金、俸給、賃銀等ヲ加減致シマシ
テ其ノ收益ヲ出シタリ、或ハ鐵道、軌道ト
云フヤウナモノニ付キマシテハ營業益金
總額ニ稅、俸給、賃銀總額等ヲ合算シテ算
出スルトカ云フヤウナ特別ノ方法ヲ講ジテ
居リマス
ソレカラ公務自由業ト申シマスノハ、官
公吏或ハ辯護士、醫師ト云フモノデアリマ
スルガ、官公吏ニ付キマシテハ俸給、給料
總額ヲ個人ニ就カナイデ、其ノ統計ニ基イ
テ計算ヲ致シマス、辯護士、醫師等ノ自由
業ニ付キマシテハ若干ノ箇所ニ照會ヲシテ、
ソレヲ標準ニシテ全體ヲ推計シテ行ク可ナ
リ粗イ推計ノ仕方ヲシテ居リマス、ソレカ
ラ女中トカ下男トカ云フ家事使用人ノ收益
ニ付キマシテハ、是ハ商工省ノ調査ニ依リ
マシテ、平均給料額ヲ推計シマシテ、其ノ
推計シタ給料額ニ昭和十年ノ國勢調査ニ基
キマスル家事使用人ノ總數ヲ乘ジテ出ス、
斯ウ云フヤウナヤリ方ヲシテ居リマス
ソレカラ第八番目ノ投資ニ依ル所得ニ付
キマシテハ、大藏省ノ調査ニ基イテヤリ
マシテ、是ハ個人調査ヲ致シテ居リマセヌ、
ソレデ大體斯ウ云フヤウナ方法デ出シマス
ル關係上、全體トシテ見マスルト可ナリ洩
レガアリマス、ソレカラ調査ノ中ニハ色々
重複スル所モアリマスルガ、ソレ等ヲ押ナ
ベテ考ヘテ、此ノ計算ニ基キマシテ出タ數
字ガ、實際トドノ位ノ開キヲ持ツテ居ルカ
ト云フコトニ付キマシテハ、大體實際ノ國
民ノ所得ヨリモ少ナ目ニ出ルト云フコトハ
言ヘルノデアリマス、併シ其ノ少イ割合ガ
ドノ位デアルカト云フコトニ付キマシテハ、
先程モ申上ゲマシタヤウニ、現在ノヤウナ
統計ノ制度ガ統一シテ居リマセヌ關係上、
據ルベキ尺度トシテ檢算ヲスルベキ適當ナ
資料ガ見付カリマセヌノデ、全ク是ハ其ノ
考究スル人ノ見込ニ依ルノデアリマス、大
體斯ウ云フヤウナ性質デ國民所得ノ調査ヲ
致シテ居ルノデアリマスルガ、先程申上ゲ
マシタ大正十四年ト昭和五年、昭和十年ノ
三囘ノ計數ヲ申上ゲマスト、大正十四年ノ
國民所得ノ總額ガ百三十三億八千二百万
圓、昭和五年ノ國民所得ノ推計額ハ百六億
三千六百万圓、昭和十年ノ國民所得ノ推計
額ガ百四十五億三千二百万圓ニナル譯デア
リマス、併シ先程申上ゲマシタヤウニ此ノ
昭和十年ノ百四十五億三千二百万圓ト申シ
マスルモノハ實際トノ開キカラ申シマスト、
是ハ餘程內輪目ニナツテ居ルモノト考ヘラ
レ·エス
ソレカラ最後ニ附加ヘテ申上ゲタイノハ、
從來統計局ニ於キマシテ大正十四年、昭和
五年、此ノ二囘ノ國民所得ノ調査ノ數字ヲ
基ニ致シマシテ、其ノ間ノ大正十五年、卽
チ昭和元年、昭和二年、三年、四年ト云フ
各年ノ推計ヲ出シテ居リマス、ソレカラ昭
和五年以後モ六年、七年、八年ト云フ風ニ
推計ヲ出シタコトガゴザイマスガ、併シ是
ハ非常ニ假定ノ多イ方法デアリマシテ、大
體此ノ課稅ノ所得額、課稅ニ際シテ査定サ
レタ所得額ノ增減ト國民所得トガ、略〓關聯
シテ動クモノデアルト云フ學說ヲ基ニ致シ
マシテ計算シタノデアリマス、併シナガラ
昭和十年ノ國民所得ノ調査ニ依リマシテ、
今マデノ推計ノ狀況ヲ考ヘテ見マスルト、每
年ノ推計ヲ致シマスルノニ付キマシテ、統計
理論上ハ出來ルダケノ處置ヲシテ計算致シ
マシタル數字ガ實ハ大分違ツテ參ル、ソレ
ハヤハリドチラカト云フト內輪目ニ出テ來ル
ノデアリマス、隨テ昭和五年ノ國民所得ノ調査
ヲ本トシマシテ、昭和十年ノ年次ニ依ツテ
推定致シマシタ數字ト、昭和十年ニ實際ニ
國民所得ノ調査ヲ致シマシタ數字トノ間ニ
デモ、約十億以上ノ開キガ出テ參リマシテ、
實際ノ調査ヨリモ十億以上低イ目ニ出テ來
ル結果ガ分リマシタ、普通ノ統計理論ダケ
ヲ以テシテハ、到底每年々々ノ推計ト云フ
コトハ不適當ト云フコト、分リリシシガガ、-9
昭和十年以後ノ每年ノ推計ハ現在致シテ居
リマセヌ、ドウシテモサウ云フ推計ヲ致シ
マス爲ニハ普通ノ數理統計、及ビ公式ニ依
リマスル統計理論ノ外ニ、ヤハリ稅制ノ方
式及ビ稅務關係ノ知識ト、ソレカラ熟練ト
經驗ニ依ル所謂勘ト云フモノデ見込ンデハ
ソコニ多少ノ見込ヲ付ケナケレバ實際ノモ
ノニ合ハナイト云フコトガ分リマシタノデ、
統計局ト致シマシテハ昭和十年以後ノ每年
ノ推計ヲ止タテ居リマス、ソレカラ今一ツ
國富ノ統計ニ付キマシテデゴザイマスルガ、
是ハ大體國民所得ノ調査ニ併行致シマシテ、
同時ニ農業者或ハ工業者、或ハ水產業者ノ
各人ニ付テ調査票ヲ渡シテ申〓ヲサセル場合
二、其ノ一箇年ノ經營ノ狀況ノ外ニ、其ノ
世帶ニ於キマスル財產額ヲ見込デ記入サシ
テ、ソレヲ總計致シマシテ作ルノデアリマ
スガ、此ノ國富ノ統計ハ大體國際聯盟ガ出
來マシタ際ニ、國際聯盟ノ負擔金ノ割合ヲ
決メルトカ、或ハ國際聯盟ニ於キマシテ軍
縮ノ議ガ出マシタ時ニ、各國ノ國富額ニ比
例シテ軍縮ヲシタラドウカト云フヤウナ議
論ガ出タ爲ニ、我國デ作リマシタノガ基デ
アリマスルガ、國民所得ヨリモ尙ホ一層國
富ノ調査ハ、實際トノ開キガ多イヤウニ考
ヘラレマス、大體國民所得、國富ノ御說明
ハ以上デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=2
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003・堀切善兵衞
○堀切委員長 一寸オ待テ下サイ、委員長
カラモ御尋ヲシマスガ、昭和五年マデノ統
計ヲ吾々ハ頂戴シテ居ル、其ノ後十年間何
モ御發表ガナイ、餘リニドウモ怠慢ノヤウ
ニ考ヘラレマス、十年間晝寢ヲシテ居ルノ
カ、餘リニ長過ギル、何故ソレハ御發表ニ
ナラナイノカ、十年後ハ今ノ通リヤラナカ
ツタト云フヤウナコトデゴザイマスガ、面
倒ダカラヤラナイデハ甚ダ困ルノデス、內
閣統計局ト云フ立派ナ機關ガ國家ニアツテ、
ソレガ十年マデヤツテ見タガ、餘リシツカ
リイカヌカラ、面倒ダカラ止メチヤツタト
云フコトニ聞エルデセウ、果シテ是ハドウ
云フモノデセウカ、其ノ邊ノ所ヲ御說明願
ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=3
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004・川島正次郎
○川島政府委員 只今ノ御尋デゴザイマス
ガ、昭和十年ノ國民所得ノ調査ハ出來上リ
マスノガ昭和十二年デゴザイマス、ソレハ
先程モ申上ゲマシタヤウニ、實地ノ調査ハ昭
和十年ニ致シマシテ、ソレニ基キマシテ大體
一世帶ノ所得ノ平均ヲ求メマスル其ノ計算
ハ十年ニ致スノデアリマスガ、其ノ基準ノ收
益-國民ノ生產額ノ總額ト云フモノハ、
農業、工業、商業、ソレ〓〓ニ依リマシテ、
各關係省ガ作製致シマス、ソレガ出來上リ
マスノガドウシテモ一兩年後ニナリマスノ
デ、其ノ結果國民所得トシテ推計ガ出來上
リマスノガ、昭和十二年デゴザイマス、此
ノ十年ノ國民所得調査ハ、昭和十二年ノ秋ニ
出來上リマシタ、丁度其ノ時支那事變ガ起
リマシテ、事變ノ初期ノ頃デアリマシテ、
當時諸外國ノ我國ニ對スル色々ナ國情ノ偵
察ノ惧モアリマスシ、又先程モ申上ゲマシ
タヤウニ、此ノ百四十五億ト申シマスル數
字ハ、實際ノ國民所得ヨリモ餘程低イ目ニ
出テ居リマスノデ、ソレヲ其ノ儘國民所得
ナリト云フ風ニ一般ニ感ゼラレマスト、戰
爭勃發當初ニ於キマシテ、多少人心ニ面白
カラヌ影響ヲ與ヘハシナイカト云フ所デ、
當分之ヲ祕密ニ致シテ居ツタ次第デアリマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=4
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005・堀切善兵衞
○堀切委員長 十二年ニ出來タト言ハレル
ガ、吾々ガ頂戴シタノハ五年カラ十年ノ間
ハチツトモ載ツテ居ナイ、一番新シイノニ
ハ五年シカ載ツテ居ナイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=5
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006・川島正次郎
○川島政府委員 ソレハ先程モ申上ゲマシ
タヤウニ、昭和五年以後ノ各年ノ推計ト申
シマスノハ是ハ統計局ト致シマシテ練上
ゲタモノデアリマセヌノデ、統計局ノ職員
ガ〓究ノ爲ニ計算ヲ致シマシタノデアリマ
ス、特別ノ發表方法ヲ執リマセヌデ、統計
局ノ統計時報ト申シマス機關雜誌ノ〓究雜
誌ガゴザイマス、ソレニ載セタダケデゴザ
イマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=6
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007・堀切善兵衞
○堀切委員長 ソレヲ代議士ニ御配付ニナ
ツタラドウデスカ、每年サウ云フモノガ出
テ居ルナラバ、議會ハ每年開ケルノダカラ、
國民ノ代表タル代議士ニ御配付ニナルベキ
モノト思ヒマスガ···発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=7
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008・川島正次郎
○川島政府委員 ソレハ實ハソコマデ考へ
テ居リマセヌデシタガ、大體其ノ雜誌ニ出
シマシタ趣旨ハ、一種ノ〓究發表ト云フヤ
ウナコトデゴザイマシテ、大體ノ過程ヲ、
國民ノ所得額ト、ソレカラ課稅ノ所得額ト
ノ相關關係カラ見テ計算スレバ斯ウナル、
併シソレニ付キマシテハ其ノ當時マダ十分
ナ確信ガアリマセヌノデ、統計局ト致シマ
シテ正式ニ發表スルマデニ至ラナカツタノ
デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=8
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009・堀切善兵衞
○堀切委員長 ソレハ其ノ邊デ宜シイト致
シマシテ、十年ノモノハ宜シイガ、昭和十
年後ノ最近ノモノハドノ位ノ計算デゴザイ
マスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=9
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010・川島正次郎
○川島政府委員 是ハ現在致シテ居リマセヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=10
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011・堀切善兵衞
○堀切委員長 十二年ノマデシカヤツテ居
ナイノデスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=11
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012・川島正次郎
○川島政府委員 昭和九年マデ〓究的ニ致
シタモノガゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=12
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013・堀切善兵衞
○堀切委員長 其ノ後ハズツト分リマセヌ
カ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=13
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014・川島正次郎
○川島政府委員 其ノ後ハ致シテ居リマセ
ヌ、其ノ譯ハ昭和十年ノ國民所得ノ調査ニ
依リマシテ、先程申上ゲマシタ百四十五億
三千二百万圓ノ數字ガ上ツテ來タ、若モ其
ノ前ニヤツテ居リマシタ昭和五年カラ六
年、七年、八年、九年ト各年ノ推計ノ方法
ガ非常ニ適當デアルナラバ、其ノ年々ノ推
計カラ來ル十年ノ數字ト、調査カラ來マシ
タ昭和十年ノ數字トガ、略ゝ一致ヲシナケ
レバナラヌ譯デアリマス、所ガ昭和五年ノ
國民所得カラ推計ヲシテ來マシタ方法デヤ
ツテ行キマスト、約十億少ク出テ來ル、詰
リソレハ昭和五年カラ年々推計ヲシテ行キ
マスル方法ガ、唯統計ノ理論ダケデハ實際
ニ適合シナイト云フコトガソレデ分ツタノ
デス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=14
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015・堀切善兵衞
○堀切委員長 ソレダカラ止メテシマツタ
ト云フノデハ甚ダ滿足出來ヌノデス、遺漏
ガアルナラバソレヲ補ツテ、正シキモノヲ
拵ヘテ行クト云フコトガ任務デハナイカト
思フノデスガ、マアソレヨリ外ニナイト云
フコトナラバ仕方ガアリマセヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=15
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016・立川平
○立川委員- 先般大藏省ガ吾々ニ御示シニ
ナツタ數字ハ昭和十四年度ハ二百五十五
億ト推算サレタノデアリマスガ、統計局ハ
其ノ數字ハ略〓、御認メニナツテ居ル譯デスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=16
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017・川島正次郎
○川島政府委員 昭和十年ノ推計ニ付キマ
シテハ、只今申上ゲマシタヤウニ普通ノ統
計理論ノ公式ダケデハ不十分デアリマスノ
デ、ソコニ見込ヲシナケレバナリマセヌ、
其ノ見込ニ付テハ現在定說トサレルヤウナ
理論ガアリマセヌノデ、ドウシテモ各人ノ
經驗カラ割出シテ來ル勘デ見當ヲ付ケナケ
レバナラヌト思ヒマス、若シサウ云フ點ヲ
統計局ノ方ニモ御許シガ願ヘマスナラバ
此ノ二百五十五億ト云フ數字ハ、私ハ內輪
ニ見タ數字トシテ認メラレルト思ヒマス
事實ハ私ノ方ノ見當カラ見マスルト、多少
ソレヨリハ多イノデハナイカト云フ風ニ考
ヘラレルフデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=17
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018・立川平
○立川委員 大正十四年ノ總額ガ百三十三
億昭和十年ガ百四十五億ト云フ增加率カ
ラ-是ハ其ノ通リノ率ニハ行キマスマイ
ケレドモ、ソレカラ考ヘマシテ昭和十年カ
ラ四年間ニ、百億以上ノ增加ハ非常ニ多過
ギハセヌカ、只今統計局長官ハ內輪ト申サ
レタガ、然ラバ昭和十年トカ五年トカ
ノ-尤モ五年ハ非常ニ少クナツテ居リマ
スガ、昭和十年アタリノ推定ハ十億位ノコ
トニナツテ、非常ニ少イモノト見ラレハシ
ナイカト思フノデアリマス、更ニ大藏省ハ
此ノ二百五十五億ト云フ推算ヲ出サレマシ
タ其ノ基礎ハ、統計局ノヤウナ計算ノ方法
トハ全然違フノデアリマセウガ、若シ違フ
トスレバ、ドウ云フ計算カラ出サレタノデ
アリマスカ、此ノ際統計局長ヨリ先ヅ此ノ
殖ヘ方ノ非常ニ多イト云フ點ノ御說明ヲ願
ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=18
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019・川島正次郎
○川島政府委員 此ノ國民所得ノ數字ヲ見
マスル上ニ於キマシテ、大體時ヲ前後ニシ
テ見マスル場合ニハ、此ノ金額ハ金錢ノ價
値デゴザイマスノデ、ソコニ實際ノ物資ノ
量ト、ソレヲ金額ニ現ハシタ場合トニ付キ
マシテ、各自其ノ年〓〓ニ依ツテ、相當ノ開キ
ガアルト云フコトヲ考ヘナケレバナリマ
セヌ、ソカラ此ノ國民所得ノヤウナ經濟統
計ヲ見マスル場合ニハ、人口統計ト違ヒマシ
テ、大體ハ「グラフ」ニ書キマシタ線ガ決シテ
ナダラカニ推移シナイノデアリマス、非常ニ高ク
ナツタリ低クナツタリ、其ノ波ト谷トノ間
ガ急激ニ變化スル傾向ガアリマス、一見致
シマスルト昭和五年ヨリ昭和十年ハ約五割
增加致シテ居リマスガ、ソレデ同ク十年ト
十五年ト又其ノ五割ト云フ風ニ見ル譯ニハ
イカナイト存ジマス、是ハ其ノ經濟界ノ急
激ニ變化スル山ノ所ト、或ハ中腹ノ所ニ掛
ツタ場合等ニ於キマシテ餘程違ヒマスノ
デ、百四十五億ト二百五十五億ト云フヤウ
ナ相違ハ、特ニ疑問ヲ挾ム程ノコトハナイ
ヤウニ考ヘマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=19
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020・大矢半次郎
○大矢政府委員 此ノ前ノ國民所得ノ點ニ
付テ御尋ガアツタ場合ニ、御答シテ置キマシ
タ通リ、內閣統計局カラ大正十四年ト昭和
五年ノ兩度ノ國民所得ガ發表サレテ居リマ
スガ、其ノ他ノ數字ハ發表セラレテ居ナイ、
ソレデ大正十四年ト昭和五年トノ間ニ挾マ
ツタ各年ノ國民所得ノ推移ハドウシテ見ル
カト云フニ、大體第三種所得稅ノ課稅對象
トナル所得金額ノ推移ヲ見テ、推定スル方
法ガ宜カラウト思フ、又内閣統計局デモ同
樣ノ方法ヲ採ツテ居ルヤウニ、私共考ヘテ
居リマスト云フコトヲ申上ゲテ置キマシタ
ガ、只今統計局長ノ御說明ニ依ツテ、ソレ
ハ公式ノモノデナクテ、統計局ノ職員ガ〓
究的ニナサレタモノデアルト云フコトヲ、
今承知シタ譯デアリマスカラ、多少其ノ前
ニ申上ゲタ點ヲ訂正致シテ置キマス、ソレ
デ私共每年稅務統計ヲ作ル場合ニ於テモ、
大體其ノ年ノ國民所得ト云フモノハドウ
云フ風ニナルモノカト云フコトハ見テ居リ
やっ、ソレカラ稅制改正、或ハ增稅等ヲ致
ス場合ニ於キマシテモ、稅務ノ立場カラ致
シマシテ、一應ノ推計ヲ致シテ居リマス、
ソレデ稅務ノ立場カラ推計スル方法トシテ
ハ、ヤハリ第三種所得ノ課稅對象トナル所
得ノ每年ノ變遷ノ狀況ニ依ツテ、各年ノ國
民所得ノ狀況ヲ推計シテ行ク方ガ、一番妥
當デハナカラウカ、ソレ以上推計シ得ベキ
方法ガナイカラ、先ヅ之ニ依ツテ行クノダ
ト云フコトヲ、私此ノ前申上ゲテ置イタノ
デアリマスガ、其ノ方法ニ依ツテ計算シテ
見マスルト、昭和五年ノ内閣統計局ノ發表
セラレテ居リマスル國民所得ニ對シマシテ、
最近ノ國民所得ヲ推計致シマスルト、大體
二百五十五億程度ニナル、斯ウ云フコトヲ
此ノ前申上ゲテ置イタ次第デアリマス、ソ
レカラ昭和十年ニハ內閣統計局ノ國民所得
ノ調査ガ百四十五億、然ルニ最近ハ二百五
十五億ト云フコトハ、殆ド倍ニモ近イヤウ
ニナツテ居ルガ、ソレガ多過ルデハナイカ
ト云フヤウナ御話デゴザイマスガ、其ノ第
三種所得ノ課稅對象トナツテ居ル所得金額
ハ、御手許ニ參考資料トシテ配付シテ居リ
マスル第三種所得稅額表ト云フ中ニ、大體
ノ見當ノ付ク數字ガゴザイマス、昭和十一
年ニハ二十五億、昭和十二年ニハ二十九億、
昭和十三年ハ三十八億、昭和十四年ハ四十
五、昭和十年ハ出テ居リマセヌガ昭和十一
年ハ二十五億、昭和十四年ハ四十五億ニナ
ツテ居リマス、尤モ此ノ間ニ於テハ免稅點
ノ引下トカ、或ハ配當所得ヲ四割控除シテ
居タノヲ二割控除ニスルト云フヤウナ、所
得金額算出ノ方法トカ、限界ト云フ點ニ於
テ異動ガアリマスカラシテ、是ハ補整シナ
ケレバナリマセヌガ、サウ全體ニ著シイ影
響ハ及ボサナイカト存ジマス、隨ヒマシテ
大體第三種所得ノ變遷ノ狀況ト、ソレカラ
昭和十年ノ國民所得百四十五億ニ對シテ、
最近ノハ二百五十五億ニ推サ定マルト云フ
コノハ一致シテ居ルノデハナイカ、斯ウ云
フ風ニ考ヘテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=20
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021・立川平
○立川委員 先程私ノ聞違ヒカトモ思フノ
デスガ、大正十四年度總額ハ百三十三億ト
ナツテ居ルヤウデアリマスガ、サウシマス
ト大正十四年ガ百三十三億デ、昭和四年ハ
百六億ニナツテ、昭和十年ニ百四十五億ニ
ナツタト云フノハ、何カ特別ナ理由ガアル
ノデアリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=21
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022・川島正次郎
○川島政府委員 是ハ一〓ニ申上ゲ兼ネマ
スガ、大體カラ申シマシテ景氣ニ左右サレ
タモノト思ヒマス、昭和五年ハ最近ニ於キ
マシテ一番景氣ノ惡イ時デ、國勢調査ノ
色々ナ職業ノ分野ヲ見マシテモ、產業ノ分
野ヲ見マシテモ、其ノ他ノ經濟統計ヲ見マ
シテモ、非常ニ此ノ時ハ不景氣ニ襲ハレテ
居ツタ時デアリマス、低クナルノハ當然デ
アリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=22
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023・立川平
○立川委員 ソレナラバ大正十四年ノ百三
十三億ト昭和十年ノ百四十五億ハ稍〓常態デ
アル、昭和五年ガ特ニ景氣ガ惡カツタト云フ
ヤウナ結論ニナルノデアリマスカ、サウス
ルト常態ヲ較ベテ大正十四年ノ百三十三億
ト、昭和十年ノ百四十五億デハ、十年以上デ
僅カニ十億位シカ殖エテ居ラナイ、然ルニ
其ノ後四年デ略〓、倍ニ近イ殖エ方ト云フコ
トハ、愈マソコニ誤差ガアルノデハナイカ
ト云フ疑ヲ持タレルノデスガ、ドウ云フ譯
デアリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=23
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024・川島正次郎
○川島政府委員 大正十四年ト較ベマスル
ト旣ニ十年ヲ經テ居リマス、殊ニ經濟界
ノ方面ニ於キマシテハ、滿洲事變前ト滿洲
事變後ノ景氣ハ、餘程違フ所ガアリマスノ
デ、仰セノヤウニ昭和十年ガ大正十四年ト
略〓同ジト見ル見方モゴザイマスガ、併シ寧
ロ此ノ昭和十年ノ百四十五億ト云フ數字
ガ、實際ヨリハ低目ニ出テ、詰リ所得ノズ
ツト上リ掛ケノ麓ノ所ヲ抑ヘタモノト見タ
方ガ宜イカト存ズルノデアリマス、ココニナ
リマスト殆ド見當ノ間題ニナリマスケレド
モ、先程申シマシタ國民所得調査ノ統計ノ
方法カラ考ヘマスト、此ノ百四十五億ト云
フモノハ、餘程低イ目ニ出テ來テ居ル、サ
ウ云フ低イ目ニ出テ來ル開キハ、昭和五年、
或ハ大正十四年ノヤウナ不景氣ノ時デアル
トカ、或ハサウデナクテモ多少保合ノ時デ
アリマスノト、上リカケノ變動期ニ入ルヤ
ウナ時期トデハ、開キガ多ク出テ來ルノデ
ハナイカト思ハレマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=24
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025・板谷順助
○板谷委員 ドウモ只今ノ統計局長官ノ御
說明ハ不徹底デ、能ク要領ヲ得マセヌガ、
大體統計局ガ國民所得ノ調査ノ本元デナケ
レバナラヌ、然ルニ今囘ノ稅制改正ハ、御
承知ノ通リ恆久的ノ財源トシテ改正ヲシヨ
ウト云フノデアリマスルカラ、國民ニ果シ
テ擔稅力アリヤ否ヤ、是ガ重大ナ關係ノア
ルコトデアリマス、所デ先般大藏大臣ノ御
說明ニ依リマスト、昭和十四年ガ二百億カ
ラ二百五十億アルヤウナ御話ニ承ツタ、又
主稅局長ハ二百五十億アルト云フ、只今立
川君ノ質問ニ對シテ、アナタハソレヲ肯定
スルヤウナ風ノ御話ガアツタケレドモ、
一體何ヲ根據ニシテソレヲ肯定ナサルカ、
昭和五年以來何等調査ナクシテ、サウ云フ
御答辯ガ出來ルモノデアリマスカ、現在ノ
時局デアルカラ、國民ハ勿論或ル程度マデ
納稅ニ應ジナケレバナラヌコトハ、勿論望
ムコトデアル、併シナガラ生產力ノ擴充、
或ハ低物價政策、是ハ政府ガドウシテモ實
行シナケレバナラヌト云フコトヲ言明シテ
居ル、ソレデアルカラ恆久的ノ財源トシテ、
今囘ノ稅制改正ガ適當デアルカドウカト云
フコトヲ、今檢討シナケレバナラヌ委員會
デアル、ソレニ國民所得ニ對スル確信ガナ
クシテ、ドウシテ御說明ガ出來マスカ、モ
ウ少シ此ノ點ハハツキリ御答辯ヲ願ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=25
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026・大矢半次郎
○大矢政府委員 是ハ此ノ前ニモ申上ゲテ
置キマシタガ、國民所得ニ對スル課稅ノ割
合ハ、國民ノ負擔力ヲ測定スル場合ニ、
ツノ有力ナ資料ニハ違ヒガナイ、併シナガ
ラ國民所得ノ計算ト云フモノハ非常ニ困難
デ、各國ニ於テモ其ノ計算方法ガソレ〓〓
違ツテ居ルノデアリマスカラ、ソレヲ間違
ヒナイモノトシテ、亞米利加ハ、國民所得
ニ對シテ百分ノ二十、佛蘭西ハ百分ノ二十
八、然ルニ日本ハ百分ノ十五ダカラ、亞米
利加ニ對比シテモウ百分ノ五ダケ餘計課シ
テ宜イノダ、佛蘭西ニ對比シテハモウ百分
ノ十三餘計課シテ宜イノダ、斯ウ云フヤウ
ナコトハ一〓ニ申サレナイ、ソレハ各國ノ
國民所得ノ調査ノ方法ソレ自體ニ於テ違ヒ
ガアリ、又實際調査ニ當ツテ精粗ノ違ヒモ
出テ來ル、又假ニソレガ同ジ割合ト致シマ
シテモ、產業界ガ上向ノ場合ト下向ノ場合
ニ依ツテ、自ラソレガ違ツテ來ル、或ハ又
國民ノ間ノ富ノ分配ノ程度ガドウ云フ風ニ
ナツテ居ルカ、產業ノ發達ノ程度ガドウ云
フ風ニナツテ居ルカ、直接稅、間接稅ノ方
面ノドチラニ多ク稅收入ガ依存シナケレバ
ナラナイカ、色々ナ點ガアルノデアルカ
ラ、ソレ等モ十分考究シナケレバナラ
又、要スルニ國民所得ニ對スル稅ノ負擔
ノ割合ハ、一應ノ參考ニハナリマスケレ
ドモ、餘リニ之ニ重キヲ置クト、又ソコ
ニ誤リガ起ルモノデアル、隨テ稅制改正
等ニ當ツテ、ドノ程度ノ增稅ヲシナケ
レバナラヌカト云フ場合ニハ、其ノ時ノ
財政ノ狀況、國民經濟ノ狀況、產業界ノ狀
況國民生活ニ及ボス影響、ソレ等色々ノ
方面カラ檢討シテ、先ヅ最モ適當ダト思ハ
レル所ニ落着カセナケレバナラヌ、國民所
得ニ對スル租稅負擔ノ割合モ、一應參考ニ
ハナリマスケレドモ、餘リニ之ニ重キヲ置
ク譯ニ行カナイデアラウ、斯ウ云フコトヲ
前ニ申上ゲタ次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=26
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027・板谷順助
○板谷委員 只今主稅局長ノ御答辯ニ對シ
テ私ハ承服致シマセヌガ、私ノ順番ガ來タ
時分ニ質問スルコトニ致シマシテ、統計局
長官ニ御伺シタイノデアリマス、世帶ノ一
部ニ付テ調査ヲスルト云フコトデアリマス
ガ、是ハ全國府縣別ニデモヤツテ行カウト
仰シヤルノデアリマスカ、或ハ又國民所得
ハ法人ト個人ヲドウ云フヤウナ御取扱ニナ
ツテ居リマスカ、其ノ點ヲ御伺致シタイト
思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=27
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028・川島正次郎
○川島政府委員 只今ノ御尋デゴザイマス
ガ、法人ニ付キマシテハ個人ト分ケマシテ
別ニ法人ノ方ノ調査ヲ致シテ居リマス、併
シ其ノ調査ニ付キマシテ抽出スル割合ニ付
キマシテハ、法人ニハ色々規模ノ大小ガア
リマスルノデ、別ニ機械的ノ方針ニ依ラズ
二、適當ト思ハレル、會社ニ照會ヲ致シテ
ソレヲ本ニ致シマス、ソレカラ個人ノ所得
ニ付キマシテハ大體全國ヲ十一ノ統計區ニ
分ケマシテ、其ノ統計區ノ各〓ヲ地勢ニ依
ツテ大體二區位ヅツニ分ケテ、其ノ府縣ヲ
一固マリニ致シマシテ、ソレヲ人口、ソレ
カラ米ノ產額ノ順位ニ一應竝ベマス、ソレ
カラ別ニ又同ジ府縣ノ組ミ合ハサツタモノ
ヲ其ノ府縣ノ工業ノ大小、及ビ商業、水產
業ノ大小ノ平均ノ順位ニ竝ベマシテ、ソレ
ヲ平均シタ順位ヲ作ツテ各府縣ヲ竝ベマシ
タ上ニ、大體三ツノ府縣カラ二ツヅツ取ル
ト云フヤウナ極メテ機械的ナ方法ヲ執ツテ
居ルノデアリマス、斯ウ云フ國民所得ノ調
査ニナリマスト、ドウニモソレヨリ外ニ良
イ方法ガアリマセヌノデ、已ムヲ得ズサウ
云フ方法ヲ執ツテ居ル次第デアリマス、デ
アリマスカラ全國ニ亙ツテ調ベテハ居リマ
スケレドモ、其ノ全國ニ亙ツタモノノ平均
ガ、果シテ全體ノ平均ニナルカドウカト云
フコトニ付テハ、是ハ餘程開キガアルモノ
ト見ラレルノデアリマス、現在ノ調査ノ方
法トシテ、斯ウ云フ大キナ數字ヲ一纒メニ
シヨウトスル際ニハ、其ノ外ニ方法ガドウ
ニモ見付カリマセヌノデ、サウ云フ方法ヲ
以テヤツタ譯デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=28
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029・板谷順助
○板谷委員 モウ一點······此ノ國民ノ所得
ト云フコトハ、先刻御話ノ純益デスカ、總
所得デスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=29
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030・川島正次郎
○川島政府委員 純益デス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=30
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031・板谷順助
○板谷委員 ソレカラ今法人ト個人トノ御
說明ハ一寸聽取リ兼ネタノデアリマスガ、
是ハ御調査ノ仕方ニ依ツテ二重ニナリマセ
ウ、國民所得デアルカラ、國民全體ニ對ス
ル所得、ソコデ今押シナベテ法人ト個人ト
重複スルヤウナコトニナツテ居リマセヌカ、
ソレダケ一寸御尋致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=31
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032・川島正次郎
○川島政府委員 御尋ノ通リ重複シタ部分
ガ相當ニアルト思ヒマス、是ハモウ已ムヲ
得ヌコトニシテ、總テヲ押シナベテシマツ
テ居ル譯デアリマス、デスカラ、此ノ數字
ト云フモノハ、サウ云フ積リデ御覽ヲ願ヒ
タイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=32
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033・森田福市
○森田委員 今ノ御說明ト委員諸君カラノ
御尋トノ間デ、締計局長モ大體サウ正確ナ
モノデナイト仰シヤツタノデスカラサウ
追究セヌデ宜イノデスガ、綺計ト云フモノ
ハ御承知ノ通リ地方デモ每年同ジコトデハ
イカヌト云フノデ、零ヲ一ツヅツ附ケテ行
ツタ例シガアル、同ジヤウナ數字ヲ出シテ
ハイケナイト云フノデ尻ニ零ヲ附ケテ行キ
マシタラ、其ノ地方ノ算出ガ多クナツタ、
國全體ヨリモ多クナツタ例ガアル、今ノモ
私ハ斯ウ思フノデス、國民所得ガ二百五十
億而モ今統計局長ガ言ハレタヤウニ純益
ノ所得デアル、純益ノ所得ガ二百五十億國
民所得ニアルナラバ、所得稅ハ本年ハ法人
ト個人ト合セテ十五億、私ハ二百五十億ノ
純益ガアルナラバ、日本ノ國富ト云フモノ
ハ非常ナ驚異デ進ンデ行カナケレバナラヌ
ト思フガ、總收入ヂヤナイ、總所得ト云フ
名前ガ惡イ、國民總收入ガサウアルノデハ
ナイ、若シ純益ガ二百五十億アルナラバ、私
ハソレハドンナ計數ヲ御立テニナツテモ現
ハレヤウ筈ハナイト思フ、ソレカラ法人ト個
人ノ建前ハドウ行クカト云フト、國民ノ所得
ヲ決定スル際ニ法人ノ所得ガ分ラヌト仰シ
ヤツタガ、法人ノ所得ハ幾ラ小サイ會社
デモ、稅務署ニ決算報〓ヲ出シマスカラ分
リマス、個人ノトハ違ツテ、法人ノハ明確
ニ純益ハ計上出來ル、其ノ明確ニ計上ノ出
來タ純益ノ中カラ、國民ニ配分シタ殘リノ留
保所得ト、純國民所得ト合ハシタモノガ國
民ノ本當ノ純益デス、ソレガ本當ノ國ノ富
ヲ增シ、產業ノ力ヲ試シテ見ル標準ニナル
ノデアルカラ、今ノアナタノ說明ノヤウナ
方法ヲ以テ國民ノ總所得ヲ決定シテ行キ居
ルト、又ソレニ依ツテ擔稅力ヲ決定シヨウ
ト云フヤウナコトヲヤルト、ソレハ大變ナ
間違ヒデス、國民所得ナドヲ決定スルコト
ハ非常ニ大切ナコトデアル、他ノ個人ノ所
得ノ決定ハ中々困難デアルコトハ、私モ了
解シマスガ、法人ダケハ明瞭ニ分ツテ居ル、
其ノ法人ノ總所得ノ中カラ個人ニ分配シタ
殘リヲ國民所得ノ全體ト見レバ宜イ、配當
シタモノト他ノ個人純益トヲ合セタモノガ、
國民ノ本當ノ總所得ニナル、ソレガ二百五
十億アル筈ハアリマセヌ、若シアルナラバ
ドウ云フ計算ニナルカヲ御示シニナラヌト
イカヌガ、唯是ハ例ヲ出シテ凡ソ斯ウ云フ
風ノ見當デアル、全體ノ國民ノ總收入デア
ルトカ云フ風ニ仰シヤルナラバ、一應ソレ
デ了解シテモ宜シイガ、純益トシテナラ私ハ
諒解出來ヌト云フコトヲ申上ゲテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=33
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034・武田徳三郎
○武田委員 私モ統計局長官ニ一寸伺ヒタ
イノデスガ、統計局長官ノ御意見デハ、昭
和十四年ニ二百五十五億ハ寧ロ內輪ダト云
フ御見解デアリマシタガ、私モサウデナイ
カト實ハ思フノデス、學者ニ依ツテハ三百
億位ノ國民ノ所得ガアルト云フ說ヲナス者
モアリマス、是ハ色々ムヅカシイ理窟ガア
リマセウガ、私モ實ハ二百五十五億ト云フ
ノハ內輪デナイカト考ヘテ居ルノデス、併
シサウ云フコトヨリハ、斯ウ云フコトハ分
ラナイモノデセウカ、名古屋ノ高商ノ統計
〓究室デ〓究サレタ報〓書ヲ見マスト、日
〓戰爭ノ時、明治二十七年カラ二十箇年ノ
間ノ生產ヲ本トシテ其ノ增加率ヲ調ベテア
ルノデアリマスガ、ソレハ私ハ今此處ニ文
獻ハ持ツテ居ラヌノデ、記憶デスカラ間違
ツテ居ルカモ知レヌガ、二十年間ノ每年ノ
增加率ハ慥カ百分ノ六ト云フ數字ガ出テ居
ルト云フコトデアリマス、是ハ其ノ增加率
ヲ以テ確定的ノモノトシテ、其ノ計數ヲ見
ルコトハ出來ナイデアリマセウ、年々ニ依
ツテ、殊ニ自由經濟主義ノ時ニハ、ソコニ
景氣循環ノアルコトハ當然デアリマスカラ、
サウ云フコトヲ見ルコトガ良イカ惡イカ分
リマセヌガ、併シ先程統計局長ノ御話ノヤ
ウニ、正確ナ國民所得ノ調査ハ昭和五年デ
アツタ、是ハ先ヅ一通リ基本トシテ看做ス
コトガ出來ルカト思フノデアリマスガ、各
種ノ統計學者ノ意見ヲ見マスノニ、皆昭和
五年ノ統計局ノ御調ベヲ基礎トシテ論議ヲ
シテ居ルヤウデアリマス、一先ヅ是ガ間違
ナイモノト假定致シマスレバ、昭和五年ハ
我國ノ「デフレーション」政策ノ極端ニ行ハ
レタ年デアリマシテ、最モ不景氣ノ絕頂ノ
年デアリマスカラ、ソレカラ最近マデハ殆
ド引伸スヤウニ、我國ノ生產モ盛ンニナリ、
隨テ國民所得モ增加シテ居ルノデアリマス、
デアリマスカラ昭和五年カラ最近マデノ國
民ノ生產高ト云フモノハ、總テ各省ニ於テ、
工業ニ付テハ商工省、農產物ニ付テハ農林
省ト云フ工合ニ御調ベガ大體アルノデアリ
マスカラ、其ノ生產額ノ增加ノ趨勢ニ物價
ノ上ツタ趨勢ト云フモノヲ見タナラバ、國
民所得ノ增加率ト云フモノモ、ソコデ大體
ノ計數ガ出ルヤウニ私ハ思フノデアリマス、
其ノ大藏省デ御調ベニナツタ第三種ノ國民
所得ノ增加率ト云フモノハ、稍〓ソレニ類シ
タモノデアリマスルケレドモ、之ヲ更ニ日
本ノ各產業ノ生產高ガ略〓調ベテアルノデ
アリマスルカラ、其ノ生產ノ增加率ニ物價
ノ增加率ノ計數ヲ調ベタナラバ、大體ニ於テ
ドノ位ノ國民所得ガ增加シテ居ルト云フコ
トハ、〓略〓確實ニ近イモノガ出サウウニ思
フノデスガ如何デスカ、サウ云フモノハ出
來テ居リマセヌデスカ、ソレヲ一ツ統計局
長ノ方デ御調ベノ結果分リマシタラ、御報
告ヲ願ヒタイデス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=34
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035・川島正次郎
○川島政府委員 御說ノ通リ各產業ノ生產
額ノ增加ノ趨勢ガ分リマスルト、ソレニ基
キマシテ昭和五年ノ國民所得カラ現在ガ、
凡ソドノ位デアルカト云フ大體ノ見當ハ付
キ得ルト思ヒマス、唯併シ其ノ各產業部門
ノ生產統計ノ趨勢ト云フモノヲ、一ツノ指
數ニシテ出シマス場合ガ非常ニ困難デアリ
マシテ、見ル人ニ依リマシテ、ドノ數字ト
ドノ數字ヲ採ツテ行ツタラ宜イカト云フヤ
ウナコトニ付テ、相當ニ〓究ノ餘地ガアラウ
ト存ジマス、統計局ニ於キマシテハ、マダ
其處マデ手ヲ伸バス餘地ガアリマセヌノ
デ、現在ノ所デハヤツテ居リマセヌ、將來
ニ於キマシテハサウ云フ綜合的ナ〓究ヲ致
シマシテ、大體ノ趨勢ヲ見テ、ソレニ基イテ
國民所得額ノ推測ト云フコトモ致シタイト
ハ存ジテ居リマスガ、現在ノ所デハマダソ
レニ手ガ著イテ居リマセヌ
ソレカラ先程一寸御話ガアリマシタコト
ニ付キマシテ、一言申上ゲタイト思ヒマス
ガ、國民所得ニ付キマシテハ、純益ノ計算
デアルト云フコトヲ申上ゲマシタガ、多少
其處ニ說明ノ不十分ナ點ガアツタヤウニ存
ジマス、國民所得ノ調整ノ際ノ純益ト申シマ
スノハ、之ヲ先ヅ個人トシテ考ヘテ戴キタ
イト思ヒマス、先ニ個人トシテ考ヘテ見テ
賣上高トソレニ要スル費用トヲ差引イタ殘
リヲ、個人ノ純收益ト一應認メル、サウ云フ
モノヲ全國デ總テノ人ニ付テ合算スレバド
ウ云フ額ニナルダラウ、此ノ行キ方デ此ノ
純收益ノ計算ヲ致シタノデアリマス
〔「農家ハドウナルノデスカ」ト呼フ者
アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=35
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036・川島正次郎
○川島政府委員 農家ハ農產物ノ總額カラ
農產物ヲ作ル爲ニ製シタ費用ヲ引イタ殘リ
ヲ純收益ト見テ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=36
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037・堀切善兵衞
○堀切委員長 如何デセウ、尙ホ色々希望
ニ滿タヌ點ガアルガ、此ノ後十分ニ必要ナ
〓究ヲシテ發表シテ戴クト云フコトニ致
シマシテ、此ノ點ハ此ノ程度デ措クコトニ
シテ、是ガ爲ニ國民ハ費用ヲ惜シマヌト云
フコトデ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=37
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038・川島正次郎
○川島政府委員 先程カラ段々ノ御尋ガア
リマシタノデ、ソレニ付キマシテ一言申上
ゲテ置キタイト思ヒマス、此ノ國民所得ノ
調査ト云フノハ、最初起リマシタ趣旨ガ、
非常ニ正確ナモノヲ作ルト云フ目的ヨリ
モ、大體ノ國民ノ所得ハドウデアルカト云
フ所ヲ狙ヒマシタ爲ニ、現在ノヤウナ正確
性ガナイ、其ノ點ハ私共ノ所デモ、是ハ決
シテ正確ダカラ此ノ通リデアルト云フコト
デ出シタノデハナイノデ、斯ウ云フ方法デ
計算シタ場合ニ此ノ數ガ出ルノデスカラ、
其ノ發表ヲスル際ニハ計算ノ方法ヲ付加ヘ
テ發表シテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=38
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039・堀切善兵衞
○堀切委員長 西川君、總理及ビ商工大臣
ハ差支ヘテ來レナイサウデアリマスガ、大
藏大臣ガ居リマスカラ、大藏大臣ノ方ニ御
質問ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=39
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040・西川貞一
○西川委員 私ハ第一ニ我國ノ財政ノ全般
ノ見透シニ付テ、御尋致シタイノデアリマ
ス、此ノ點ニ付キマシテハ曩ニ中村委員ヨ
リモ御質問ガアリマシテ、又本會議及ビ豫
算總會等ニ於テモ、色々御質問應答ガアツ
タコトト存ジマス、私出來得ル範圍ニ於テソ
レ等ノ點モ參照ハ致シマシタガ、尙ホ本案
ノ審議ニ當リマシテ、十分ニ此ノ點ニ吾々
ノ見解ヲ確立スルコトガ出來マセヌノデ、
大藏大臣ニ對シテ此ノ問題ニ付テ御質問ヲ
致シテ見タイト思フノデアリマス
今囘ノ稅制改革ニ付キマシテハ、少クモ
國民ハ二ツノ期待ヲ持ツテ居ル、一ハ中央
地方ヲ通ジテ國民負擔ノ均衡ヲ圖ル、二ハ
此ノ稅制改革ニ依リマシテ、少クモ我國財
政ノ基礎ヲ確立スル、其ノ前途ニ對スル一
ツノ見透シヲ得ルコトデアツタノデアリマ
ス、蓋シ現在ノ我國ハ、社會ノ各方面ニ於
テ多大ノ不安ノ空氣ガ漂ツテ居ルト云フコ
トハ、否定スベカラザル事實デアリマス、
此ノ不安ノ空氣ハ何處カラ出ルカト申シマ
スト、我國ノ財政ガ年々赤字財政ニ次グニ
赤字財政ヲ以テ致シマシテ、公債ハ年々累
增ノ一途ヲ辿リ、此ノ公債ガ如何ナル時期
ニ於テ、如何ナル方法ニ依ツテ、如何ナル
財源ニ依ツテ決濟ガ出來ルノデアルカト云
フコトニ對シマシテ、何等ノ見透シヲモ得
ルコトガ出來ナイノデアリマス、只今モ色
色〓究ヲ重ネラレマシタル國民所得ノ全般
ヲ測定シ、我國經濟ノ前途ノ動キヲ測定
シ、而シテ合理的ナル稅制ヲ確立致スコト
ニ依ツテ、此ノ財政ノ全般ニ對シマシテ、
一ツノ見透シヲ確立シテ、現在ハ赤字財政
ヲ免ルルコトガ出來ナイニ致シマシテモ少
クモ將來ニ一點ノ光明ヲ發見シタイ、是一七
於テ國民擧ツテ此ノ稅制改革ニ期待シテ居
ルコトト思フノデアリマス、然ルニ此ノ稅制
改革ニ基礎ヲ置イテ提出サレマシタル本年
度豫算ニ於キマシテ、吾々ハ毫モ前途ニ光
明ヲ發見スルコトガ出來ナイノデアリマス、
卽チ本年度ノ赤字公債ハ前年度ノ追加豫算
ヲ合計致シマシタモノニ比較致シマスナラ
バ、多少減少サレテ居ルヤウデアリマスケ
レドモ、尙ホ本年度ニ於テハ今後追加豫算
ヲ相當當局ニ於テ御用意ニナリツツアルヤ
ウニ伺フノデアリマス、是等追加豫算ニ計
上致サレマス赤字公債ノ額ヲ合計致シマス
ナラバ、此ノ大增稅ヲ致シマシテ尙ホ前年
ヨリモ、赤字公債ガ增加致スノデハナイカ
ト思フノデアリマス、是ニ於テ私ガ御伺致
シタイコトハ、大體大藏大臣ノ肚ノ中ニ持
ツテ居ラレマス追加豫算ノ總額ハ、ドノ程
度出サレル御見込デアリマスカ、第二ハ、
追加豫算ノ財源トシテ國債以外ノモノヲ、
何カ御考慮ニナツテ居ラレマスカ、結局十
五年度ノ赤字公債ノ總額ハ、如何程發行サ
レルコトニナツテ居リマスカ、以上ニ付キ
マシテ御答辯ヲ得タイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=40
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041・櫻内幸雄
○櫻內國務大臣 我國ノ財政ノ見透シニ付キ
マシテハ、度々申上ゲマシタ通リ、今日支那
事變ヲ抱ヘテ居リマシテ、之ニ要スル所ノ
費用ガ少カラズ要ルコトハ、御承知ノ通リ
デアリマス、殊ニ國際情勢ノ關係其ノ他カ
ラ致シマシテ、國防ノ充實ニ一層力ヲ盡サ
ナケレバナラヌ事柄デアリマスノデ、旁ら、
致シマシテ今後ノ財政ノ見透シト致シマシ
テハ支那事變ノ終結如何ガ懸ツテ財政ニ
影響ヲ致シテ來マスノデ、一〓ニハ申スコト
ガ出來マセヌケレドモ、今日ノ情勢カラ申
シマスト、容易ニ國費ガ大ナル減少ヲ致サ
ナイト云フ考ヲ持ツテ居リマス、隨ヒマシ
テ將來財政上ノ建前ト致シマシテハ、之ニ
對應スルダケノ案ヲ立テナケレバナラヌノ
デアリマスケレドモ、今日只今公債ヲ今後
幾ラ發行シテ、其ノ公債ヲ償還スル爲、竝
ニ其ノ公債ノ利子ヲ拂フ爲ニ幾ラ要スルカ
ラ、斯ウ云フヤウナ建前ニ於テ財政計畫ヲ
確立シテ行クト云フ事柄ヲ、今日確定致ス
ト云フコトハ可ナリ困難ガアルノデアリマ
ス、隨ヒマシテ今囘ノ增稅ノ如キモ、公債
ノ利子及ビ減債基金ト云フモノヲ目標ニ置
イタノニアラズシテ、要スルニ現在ノ國情
カラ言ヒ、國民ノ負擔力ヲモ考ヘ、又經濟上
ノ實勢ヲモ考ヘマシテ、此ノ程度ノ負擔ヲ
願ツテ差支ナイデハナイカト云フノデ決定
致シタモノデアリマス、隨ヒマシテ將來ノ
財政計畫ニ付キマシテハ、自ラ其處ニ確タ
ル方針ヲ決定致サナケレバナリマセヌガ、
ソレニハ今ノ事變ニ對スル見透シヲ確實ニ
付ケナケレバナリマセヌケレドモ、今此ノ
見透シトシテ事變ガ何年デ濟ム、隨テ何年
後ニハドウ云フ財政計畫ヲ立テルト云フコ
トニ付キマシテハ、今日未ダ申上ゲル機會
ニ到達致シテ居ラナイノデアリマス
ソレカラ今御話ノ赤字公債、本年度ノ追
加豫算ガ出ルデアラウガ、其ノ財源ハ主ト
シテ公債ニ俟ツデアラウ、隨テ今日ノ赤字
公債ハ更ニ殖エルデハナイカト云フ御話デ
アリマスガ、是ハ相當增加致スト考ヘテ居
リマス、併シ今折角折衝中デアリマシテ、
ドノ程度ノ赤字公債ヲ殖ヤサナケレバイカ
ヌト云フコトヲ、只今明言致スコトガ出來
マセヌノヲ遺憾ト致シマスガ、ココ數日ノ
間ニハ之ヲ確定致シタイト考ヘテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=41
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042・西川貞一
○西川委員 ココ數日ノ內ニハ御決定ニナ
ルト云フ御話デアリマスガ、前年度ノ如キ
ハ追加豫算トシテ、ベラ棒ニ大キイモノガ
出テ來タノデアリマス、本年度ハ左樣ナコ
トニハナラヌダラウト思ヒマスケレドモ、
併シナガラ色々ナ情勢ニ於キマシテ、ヤハ
リ數億ニ上ルト思フ、大體ノ輪廓ハ此ノ際
御示シヲ願ツテ置キタイノデアリマス
尙ホ現在支那事變ノ解決ニ對スル見透シ
ガ付キ兼ネルカラ、財政ノ前途ニ對スル見
透シガ付カヌ、財政ノ基礎ヲ確立スルコト
ガ困難デアル、隨テ言葉ヲ惡ク言ヒマスナラ
バ、其ノ日暮シ的ニ、先ノコトハ先デ考ヘル
ト云フコトデヤツテ行クヨリ外ニハ致シ方ガ
ナイ、斯ウ云フ御考デアルヤウニ承ツタノデ
アリマスガ、私ハ此ノ非常ナル大增稅、此ノ劃
期的ノ稅制改革ヲナサレルニ當リマシテハ、左
樣ナ心構ヘデ御出シニナルト云フコトハ妥當
デナイト思フ、ソレデハ國民ハ承服シ難イ
ト私ハ思フ、少クモ現在ノ政府當局ニ於カ
レマシテモ、亦國民ト致シマシテモ、最早支
那事變其ノモノニ對スル一ツノ肚ヲ決メナ
クテハナラヌ、今囘ノ稅制ハ、支那事變臨
時特別稅トシテ增徵サレマシタモノガ玆ニ
恆久化スル、最早是ハ臨時デハナイ、隨ツ
テ此ノ稅制ヲ基礎ト致シマス財政ハ、是ハ
臨時的ナ財政デハナクテ、恆久的ナ財政、
平時財政トシテ吾々ハ考ヘテ行カナクテハ
ナラヌト思フノデアリマス、詰リ支那事變
ガ解決シタカラト云ツテ、吾々ハ歲出ニ著
シキ減少ヲ來サウトハ豫想シ能ハナイ、卽
チ私ハ臨時軍事費特別會計ノコトハ別ニ致
シマシテ、一般會計ニ於キマシテハ支那事變
ガ終熄シタカラト云ツテ、是ガ著シク減少
スルモノトハ思ヘナイ、隨テ臨時軍事費ノ
點ヲ切離シテ、一般會計ニ於テ、セメテ前
途ニ對スル見透シヲ付ケ、前途ニ對スル計
畫ヲ立テテ行カナケレバナラヌ時機ニナツ
テ居ルト思フノデアリマス、隨テ此ノ場合
支那事變特別會計ハ、何時一應ノ處理ヲサ
レル御心組デアリマスカ、支那事變ノ解決
ノ時機等ニ付キマシテハ、興亞院長官等ヨ
リ他ノ機會ニ於テ御發表ガアツタヤウデゴ
ザイマスガ、財政當局ト致シマシテハ、此
ノ空前ノ軍事費、而モ長期ニ亙リマシテ一
會計年度ニ依ツテ支出サ、レテ居リマス此ノ
特別會計ヲ、何時頃ニナツタラ一應ノ處置
ヲサレルノデアルカ、興亞院長官ノ說明サ
レマス支那事變解決ノ時機ト云フモノハ
サウ短イ期間ニ吾々ハ期待スルコトハ出來
ナイノデゴザイマスガ、其ノ興亞院長官ガ
言明サレマシタヤウナ支那事變ノ終局的ナ
解決ノ機會ガ來ナケレバ、支那事變特別會
計ハ現狀ノ儘ニ置クノデアルカ、ソレガ財
政當局トシテ適當ト認メラレルカ、一國財
政ノ經理ノ上ニ於テ、サウ長イ間非常ニ厖
大ナル金額ガ一會計年度ノ下ニ於テ處理サ
レルコトヲ、其ノ儘ニシテ宜シイカドウ
カ、之ニ對スル大藏大臣ノ御見解ヲ御示シ
願ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=42
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043・櫻内幸雄
○櫻内國務大臣 最初ノ御話ハ追加豫算ト
シテ出ス所ノ赤字公債ノ輪廓ト云フコトデ
アリマスガ、是ハ今折衝中デアリマシテ、
私ガ玆ニ輪廓ヲ申シマスト、ソレガ直チニ
影響致シテ來ル關係ガアリマスノデ、是ハ
暫ク御猶豫ヲ願ヒタイト思ヒマス
ソレカラ財政計畫ニ對シテ其ノ日暮シデ
ハナイカト云フ御話デアリマスガ、此ノ問
題ニ付テハ先般來申上ゲマシタ通リ、大體
ニ於テ現在國費ガ減少致サナイト云フ見地
デ、日本ノ財政ノ基礎ヲ確立スルト云フ見
地カラ、今囘ノ增稅ヲ圖ツタノデアリマシ
テ、一面カラ申セバ今日ノ增稅ハ先刻來
申ス通リ、公債ノ元利償還ニ當ル金額以上
ニナルノデハナイカト云フ御話デアリマス
ガ、其ノ見當デ決メタ譯デハアリマセヌケ
レドモ、日本ノ財政ガ將來非常ナル危機ニ
瀕スルヤウナコトノナイヤウニト云フ見地
カラ定メタノデアリマシテ、詰リ今御話ノ
如ク支那事變臨時事件費以外ノ國費ハ、當
分減少シナイ、此ノ見地カラ此ノ增稅案ヲ
立テ、而シテ財政計晝ヲ立テテ居ルヤウナ
譯デアリマス、唯私ノ申シマシタノハ、今
日マデ既ニ二百十億ニナツテ居ル厖大ナル
公債ヲ、ドウ云フ風ニシテ償還シテ行クノ
カ、ソレカラ是ハ其ノ儘ニシテ置イテドウ
ヤツテ行クノカ、卽チ根本的ニ日本ノ財政
ヲ立直ジテ、此ノ公債ノ負債ヲ減ラスト云
フ風ナ方法ニ付キマシテハ、支那事變ノ見
透シガ付イテ、ソコニ初メテ確立セラルベ
キモノト考ヘテ居ルノデアリマシテ、今日
只今ノヤウナ情勢ガ續キマシテモ、日本ノ
財政ハ決シテ懸念ノナイモノデアル、今囘
ノ增稅ヲ致シマシタ結果ト致シマシテハ、
其ノ點ニ付テ非常ナ危惧ヲ總テ一掃シ得ル、
斯樣ニ考ヘテ居ル譯デアリマス、ソレカラ此
ノ支那事變ノ特別會計ノ問題ハ、何時打切
ルカト云フ御話デアリマスガ、此ノ問題ハ
支那事變ガ今後ドウ云フ風ニ處理サレテ行
キマスカ、幸ニシテ支那中央政權ガ出來テ、
是ト手ヲ握ツテ行クヤウニナリマシタナラ
バ自ラ會計ノ建テ方モ違ツテ來ルト考
ヘマス、又其ノ新中央政權トノ話合ノ結果
ニ依リマシテハ、當分駐兵ヲスル、斯ウ云
フコトニナルカモ知レマセヌガ、其ノ駐兵
ノ費用ヲ此ノ儘此ノ特別會計ヲ繼續シテ行
ツテ、此ノ特別會計デ支出シテ行クトカ、
或ハ之ヲ打切ツテ他ノ方法ニ依ツテヤツテ
行クトカ云フコトニ付キマシテハ、マダ決
定致シテ居リマセヌノデ、之ヲ申上ゲ兼ネ
マスケレドモ、要スルニ支那事變ノ所謂解
決ノ付イタ所、柳川長官ガドウ云フコトヲ
申シマシタカ知リマセヌケレドモ、支那事變
ノ終結シタ時ニ、今度ハ特別會計ヲ無クス
ルコトハ勿論デアリマスケレドモ、其ノ以
前ト雖モ事態ガ變ツテ來マシテ、サウシテ
此ノ特別會計ヲ廢止シ得ル時期ガ來マシタ
ナラバ一日モ早ク是ハ打切リタイト云フ
風ニ考ヘテ居ルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=43
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044・西川貞一
○西川委員 私ハ現在ノ日本ガ抱ヘテ居リ
マスル厖大ナル國債ノ償還計畫ト云フコト
マデガ、現在確立シナクテハナラヌト云フ
意味ニ於テノ前途ノ見透シヲ御尋シタノデ
ハナイノデアリマス、只今大藏大臣ガ言ハ
レマシタヤウニ、現狀ノ儘續イテ、而モ先
般來非常ナ異變ガナイ限リニ於テハ增稅ハ
シナイノデアルト、斯ウ云フ言明モアツタ
ノデゴザイマスルガ、私ハ現在ノ此ノ財政
ノ趨勢カラ行キマシテ、果シテ其ノ大藏大
臣ノ言明通リノヤウニ、又此ノ稅制ノ下ニ
於キマシテノ財政ノ運營ガ出來得ルカドウ
カト云フ點ニ疑問ヲ持ツノデアリマス、隨
テ其ノ疑問ノ點ニ付テ是カラ質問ヲ進メル
ノデアリマスガ、特ニ支那事變ノ特別會計
ハ、事變ガ終局的ニ解決シナクテモ、適當
ノ時ニ處理ヲスルカドウカ考ヘテ見ルト云
フ御意見デアリマス、此ノ點ニ付キマシテ
ハ少クモ支那事變ノ目的ガ變ツテ來ル、所
謂出兵ノ意義ガ變ツテ參リマシタナラバ旣
ニ此ノ事變ニ對スル國民ノ觀念ト、其ノ新
ナル局面ニ於ケル國民ノ觀念ハ大キナ變リ
ガアルト思フ、單ナル事變費トハナラズシ
テ、大キナ興亞國防計畫トデモ申シマスル
カ、非常ニ大キナ意味ニ於テノ國防計畫ノ
遂行ニナツテ來ルト思フノデアリマシテ、
隨テソレニ卽應スベキ財源ヲ確立シ、ソレ
ニ適當ナル形體ノ財政ヲ確立サセルコト
ハ、極メテ必要ナコトデアルト私ハ存ジマ
ス、隨テソレ等ニ對スル根本ノ確立ハ適當
ニ、速ニナサレンコトヲ、私ハ希望ト致シテ
述ベテ置ク次第デアリマス
ソコデ更ニ我國ノ一般會計ノ前途デアリ
マスルガ、此ノ支那事變特別會計ヲ處理サ
レタト致シマシテ、其ノ際ニ私ハ一般會計
ニ引繼ガレマシテ、一般會計ノ歲出ノ增大
ヲ來スベキ部分ガ相當ニアルノデハナイカ
ト思ツテ居リマス、此ノ事ヲ今日ノ場合國
民ハ覺悟シテ居ナカツタナラバ此ノ事變費
特別會計ノ處理ガ行ハレマシタ時ニ又非常
ナル驚キヲ以テ迎ヘナクテハナラヌヤウナ
コトニナリハシナカイト思フ、是ハ大藏大臣
トシテハ大體ノ見透シガ付イテ居ル筈デア
リマスカラ、此ノ際相當ノ部分ガ一般會計
ニ更ニ繰込マレテ、一般會計ノ膨脹ヲ見ル
ニ至ルノデハナイカ、此ノ點ニ對スル大藏
大臣ノ見解ヲ御披瀝願ヒタイノデアリマス、
ソレカラ現在本年-度ニ於キマシテハ、先般
森委員ヨリ指摘サレ、問題ニサレマシテ色
色論議サレマシタヤウニ、支那事變特別會
計ヘ租稅收入ノ方カラ六億圓ノ繰入ヲ致シ
テ居ラレマス、之ヲ事變費ニ繰入ヲ致サレ
テ居リマスルト、此ノ六億圓ニ相當スル稅
ノ分ハ、或ハ事變費特別會計ガ處理サレタ
曉ニ於テハ是ハ減稅サレルノデハナイ
カ、今ハ空前ノ大戰爭ノ遂行中デアルカ
ラ、此ノ重イ負擔ハ我慢シナケレバナラヌ
ケレドモ、此ノ經理ガ一應處理サレタ曉ニ
於テハ、ソレダケハ減稅サレルノデハナイ
カト云フ期待モ國民ハ持チマス、又ソレヲ
呪咀サレルヤウナ形ニモナツテ居ルノデアリ
マスガ、之ニ對シテモ此ノ際ハツキリシタ
見解ラ御述べ願ヒタイ、又明年度ニ於テモ
更ニ稅收入ノ相當部分ヲ、事變費特別會計
ニ繰込ンデ行カレル方針デアルカドウカ、
此ノ三點ニ付キマシテ御答ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=44
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045・櫻内幸雄
○櫻內國務大臣 事變解決後一般會計ガ非
常ニ膨脹スルデハナイカト云フ御話デアリ
マスガ、今日只今ソレガドノ位ノ程度ニ膨脹ス
ルカト云フヤウナコトハ考ヘラレマセヌケ
レドモ、支那ノ新中央政權ガ安全ニ發達シ
テ、其ノ國防竝ニ治安一切ヲ擔任シテ
行ク力ガ出來ルヤウニナリマシタナラバ
日本ガソレニ對シテ非常ナ負擔ヲシテ
行クト云フヤウナコトハ私ハアリ得
ナイダラウト思ヒマスガ、當分ノ間ハ、
過渡的ノ間ニ於キマシテハ、其ノ點ニ
付テ我國ニ於テ相當ナ犠牲ヲ拂フト言ヒマ
スカ、助力ヲ致スト言ヒマスカ、或ハ假ニ
貸シテ置クト言ヒマスカ、サウ云フヤウナ
事柄ガ多少考ヘラレルト思ヒマスケレドモ
其ノ他ニ於キマシテモ亦東亞新秩序ノ建設
ニ付キマシテハ、相當ノ開發ノ費用モ要リ
マスルシ、經濟合作ニシマシテモ相當ノ投
資モ要リマスノデ、完全ニソレ等ノ新投資
ノ働ヲ致シマスマデハ、或ル程度ノ經費ヲ
ヤハリ國內ニ於テ負擔シナケレバナラヌノ
デアリマスカラ、假ニ此ノ支那事變費ガ急
ニ解決シテ、此ノ特別會計ヲ廢メルコトガ
出來得ルヤウナ事態ガ幸ニ出來タト致シマ
シテモ、當分ノ間ハ少カラザル經費ヲ日本
デ負擔シテ行クト云フコトガ起ツテ來ハシ
ナイカト云フコトヲ、今考ヘテ居リマスケレ
ドモ、是ハ今後ニ於ケル折衝其ノ他事態ノ
推移ノ狀態ニ依リマシテ、決定スルコトデ
アリマシテ、今直チニドノ程度マデ、日本
ノ一般會計ガ膨脹スルト云フコトヲ申上ゲ
ル場合ニ立到ツテナイト思ヒマス、唯多少
少カラザル費用ガ殖エルト云フコトハ、覺
悟シテ行カナケレバナラナイト思ヒマスケ
レドモ、今日支那事變費ヲ負擔シテ居ルト
云フ場合ニ比ベテ見マスルト、其ノ金額ハ
寧ロ減少スルデアラウ、斯樣ニ考ヘテ居ル
ノデアリマス、ソレカラ六億圓ノ金ヲ軍事
費ノ中ニ入レテ居ルガ、是ハ事變ガ濟ンダ
ナラバ減稅ニ振當テラレル意味ガアルノデ
ハナイカト云フコトヲ、國民ガ思ツテ居ル
ト云フ御考デアリマスガ、御承知ノ通リ二
百億以上ノ國債ヲ持ツテ居リマス現狀カ
ラ言ツテモ、又新東亞建設ニ對スル費用ノ
點カラ言ヒマシテモ、更ニ國防充實ノ上カ
ラ言ヒマシテモ、更ニ東亞ノ大發展ヲ期ス
ル爲ニ生產擴充ヲ致ス上カラ言ヒマシテモ、
中々國費ト云フモノハ增大致ス傾向ニアル
ノデアリマシテ、此ノ事變ガ濟ミマシテ直
チニ其ノ六億圓ト云フモノガ減稅ニ振向ケ
ラレルト云フコトハ豫期ガ出來ナイト思ヒ
マス、勿論先刻來申ス通リ、從來ノ負債ニ對
シテ一定ノ方針ガ立ツテ、サウシテ其ノ償還
方法、等モ確定致シテ、當時ノ國情ガ許ス
ナラバ出來得ル限リ減稅ヲ致スト云フ事柄
ハ、今囘ノヤウナ增稅ヲ致シタ後ニ於テハ、
當然致サナケレバナラヌコトデアリマスケ
レドモ、今日カラ事變ガ濟メバ減稅ヲスル
ノダ、斯ウ云フ風ニ考ヘマスコトハ、熱
決シテ當ヲ得タモノデナイト思ヒマス、勿
論事變費ノ中デ輕減ヲシナケレバナラヌモ
ノトカ、或ハ臨時的ニ取ツタモノデアリマ
スカラ、或ハ廢メナケレバナラヌモノガ起
ルカモ知レマセヌガ、ソレハ其ノ時ニ於テ考
慮ヲ致スベキモノデアリマシテ、今日此ノ
支那事變ガ解決ヲシタカラ、直チニ減稅ス
ルト云フコトハ.今豫想ガ出來ナイノデア
リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=45
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046・西川貞一
○西川委員 只今御答辯ヲ御伺致シマシテ、
其ノ御言葉ヲ仔細ニ吟味致シマシテモ、言
葉其ノモノノ中ニ色々ナ疑問ヲ含ムノデア
リマス、私共ハ支那事變ノ臨時軍事費ノ中
ニ見込マレテ居ルモノガドンナ費用デアル
カハ、一切知ルコトヲ許サレマセヌ、併シ
ナガラ察知致シマスノニ、ソレハ事變解決
ノ後ニ於テモ、一般會計ニ繰込ンデ之ヲ維
持シテ行カナクテハナラヌモノガ可ナリア
ルヤウニ推測サレルノデアリマス、只今其
ノ點ニ付テ、吾々ハ大體ノ輪廓デモ、玆
見透シヲ付ケタイノデアリマスガ、大臣ノ
御答辯デハ多少少カラズト云フヤウニ言ハ
レテ居リマスシ、其ノ多少少カラズハ勿論
現在ノ軍事費ヨリカ少イダラウ、斯ウ言ハ
レマスケレドモ、現在ノ軍事費五十億、六十
億ト云フモノガ、多少少カラズト云フヤウ
ナ形容デ現ハセルモノデハナイノデアリマ
ス、多少少カラズ、現在ノ費用ヨリカ少イ
ト云フ間ニ、今少シ私共ハ肚ヲ決メルニ足ル
一ツノ輪廓ヲ讀取リタイト思フノデアリマ
ス、併シ兎モ角モ之ニ依リマシテ、平時財
政ニ於テ現在ヨリモ容日勿ニ減ラナイト云フ
コトデハアリマセヌ、ソレハ吾々初メカラ
豫想致シテ居リマスルガ、減ラナイドコロデ
ハナイ、大イニ增加スルコトヲ、只今ノ御答辯
ニ於テモ、旣ニ示唆サレテ居ルノデアリマス、
大イニカ多少少カラズカ存ジマセヌケレドモ、
兎モ角モ增加スル、ソコデ增稅ハ大體ニ於
テハモウ此ノ上ノ增稅ハシナイト言ハレタ
ノデアリマスケレドモ、增稅ヲサレズニ是
等ノ歲出ヲ賄ツテ行カウト致シマスナラ
バソコニ非常ニ大キナ稅收入ノ自然增加
ガ見込マレ得ルノデアルカ、若クハ此ノ上
更ニ赤字公債ヲ累增セシメテ行クノデアル
カ、二ツヨリ途ハナイ、ソコデ具體的ニ御伺
致シマス、本年ノ歲出ノ增加ノ中デ、少カ
ラザル部分ヲ國債ノ利子及ビ恩給、年金ノ
增加、是ハ二億圓ヲ超エテ居ルヤウニ思ヒ
マスルガ、是等ノ歲出ノ自然膨脹ノ額ガ、
今後年々ドノ位自然的ニ膨脹シテ行クモノ
ト押ヘラレルノデアルカ、ソレニ對シマシ
テ租稅收入ノ自然增加、此ノ稅制改革ニ依
ル今後ノ年度ノ進行ニ依ル自然增收ガ、ド
ノ位アルト押ヘラレテ居ルカ、更ニ本年度ノ
豫算ト明年度ノ豫算トノ自然增加ノ趨勢ヲ
考ヘル場合ニ於キマシテ、極メテ重要ナノハ、
各方面ニ於テ問題ニナリマシタケレドモ、
基準物價、之ヲ十三年ノ物價ニ於テ爲サレ
テ居リマスル、ソレガ明年度ノ豫算編成ニ際
シマシテモ、其ノ基準物價ヲ其ノ儘維持シ
得ルト御考ニナツテ居ラレマスカ、若シ明
年度ノ豫算編成ヲ、自然ノ物價ノ趨勢ニ卽應
サセマス時ニハ其ノ物價騰貴ニ因ル自然
增加ハ、ドノ程度ニナルト見込マレテ居リ
マスルカ、之ニ對シマシテ御答辯ヲ御願致
シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=46
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047・櫻内幸雄
○櫻内國務大臣 多少少カラズト云フノハ
少シ語弊ガアツタト思ヒマスガ······ソレカ
ラ自然增收ヲドウ見テ居ルカト云フ御話デ
アリマスガ、今日マデノ豫算カラ見マスト、
昭和十二年-度ニ於テ六千五百万圓前年度豫
算ヨリ增加致シテ居リマス、十三年度ハ一
億六千百万圓增加致シテ居リマス、十四年
度ニ於キマシテハ、二億五千五百万圓增加
致シテ居リマス、斯ウ云フ風ナ增加ヲ致シ
テ居リマスガ、併シ是ハ經濟界ノ狀況ニ因
ルノデアリマスシ、又政府ノ仕事ノ工合等
ニモ因ルノデアリマシテ、一〓ニ此ノ自然
增收ト云フモノガ、ドノ程度ニ進行致シテ
行クカト云フ事柄ハ、今急ニ豫斷ヲ許サヌ
ト思ヒマス、併シナガラ日本ノ經濟力ガ發
展致スニ連レマシテ、自然ニ增加致シテ行
クコトダケハ間違ヒナイデアラウト思ツテ
居リマス、餘程恐慌ノヤウナモノガ起ツテ
來ザル限リハ、自然ニ增加致シテ行クノデ
アラウト思ヒマスガ、其ノ數字ハ今ノ所マ
ダ斯ウ云フ風ナ數字デアルト云フコトニ決
メテ掛ツテ居リマセヌケレドモ、或ル增收
ト云フコトニ付キマシテハ、見當ヲ付ケテ
居ル譯デゴザイマス、ソレカラ恩給年金等
ガ非常ニ增加スル、ソレヲ償ツテハドウカ
ト云フ御話デアリマスガ、此ノ恩給年金モ、
實ハ事變以來非常ナ增加率ヲ辿ツテ居ルノ
デアリマシテ、昭和十年頃デアリマスト
四五百万圓程ヨリ、年々年金ガ殖エテ居リ
マセヌ、然ルニ最近十二年カラニナリマス
ト、千二百万圓ニナリ、ソレカラ十四年度
ノ豫算ニ於キマシテハ四千五百万圓、ソレ
カラ十五年度ノ豫算ニナリマシテハ五千三
百万圓程增加致シテ居ルヤウナ譯デアリマ
ス、斯ウ云フ狀況デアリマスノデ、殊ニ事
變ガ終了致シマスト、又更ニ增加スルモノ
ト考ヘナケレバナリマセヌノデ、是ト見合
ツテドウ斯ウト云フコトハ直チニ申上兼
ネマスケレドモ、此ノ恩給年金ノ自然增加
ト云フモノヲ···発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=47
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048・西川貞一
○西川委員 ソレト公債ノ利子···発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=48
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049・櫻内幸雄
○櫻內國務大臣 公債ノ利子ハ、御承知ノ通
リ非常ニ公債ガ殖エルノデアリマシテ、
其ノ公債ノ殖エタ利子ト、ソレカラ恩給年
金トヲ自然增收ニ依ツテ賄フト云フ事柄ハ
可ナリ困難デハナカラウカト、斯樣ニ考ヘ
テ居リマス、ソレカラ明年度ノ豫算、卽チ
昭和十六年度ノ豫算ヲ編成スルニ當ツテ、
昭和十三年度ノ基準單價ヲ基調トスルカド
ウカト云フ御話デアリマスガ、是ハ私未ダ
事務當局トハ協議致シマセヌケレドモ、其
ノ點ハ更ニ改メナケレバナラヌモノデハナ
カラウカト考ヘテ居リマシテ、其ノ心組ミ
デ進ミタイト思ツテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=49
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050・西川貞一
○西川委員 モウ一言御尋シテソレデ打切
リマス、只今ノ御答辯ニ依リマスルト、國
債利子ト恩給年金ノ自然增加、自然膨脹額
其ノモノヲスラ、此ノ租稅ノ自然增收ニ依
ツテ賄フコトガ困難デアラト云フ見込ノヤ
ウデアリマス、然リトスレバ他ノ事情ニ依
ツテ自然ニ膨脹致シマスルモノハ、何ニ依
ツテ御賄ヒニナルカ、增稅ハ自然ノ趨勢ヲ
辿ル間ハシナイト云フコトデアリマスガ、
旣ニ公債利子ト恩給年金ノ自然的膨脹ノ
賄フコトスラ、租稅收入ノ自然增加ニ依
ツテハ困難デアル、然ラバ他ノ事情ニ依ツ
テ尙ホ歲出ハ自然ニ膨脹スル、是ハ經濟ノ
發達スル限リ必ズアルノデアリマス、之ヲ
賄フ財源ガナイノミナラズ、本年度豫算ニ
於テ新ニ計上サレマシタ費目ノ中ヲ分析シ
テ見マスルト、生產力ノ擴充ニハ、明年度
ヲ俟タズシテ、本年度ノ追加豫算ニ於テ、
更ニ大キナ數字ガ出テ來ルデアリマセウ、
其ノ他將來之ヲ減少シ得ル費用ト云フモノ
ハ、殆ド吾々ハ此ノ中カラ發見スルコトガ
出來ナイ、是等ノ膨脹、加フルニ事變費ガ
打切ラレタ時ニハ尙ホ其ノ方カラ少ナカ
ラザル部分ガ、一般會計ノ中ニ入リ込ンデ
來ルト云フコトニナリマスルト、何ヲ以テ
ソレ等ノ歲出ヲ賄ハントスルノデアルカ、
致方ナイカラ赤字公債ヲ出シテ行ク、斯ウ
云フ結論ニナラザルヲ得ナイト思フノデア
リマス、サウシテ此ノ赤字公債ニ對シマシ
テハ、大藏大臣ハ民政黨ノ領袖トサレマシ
テ、所謂公債漸減方針、新規發行ヲ成ベク
シナイト云フ方針ヲ、過去ニ於テハ可ナリ
堅持サレテ居ツタト吾々ハ伺ツテ居リマス、
又此ノ委員會ニ於キマシテモ、好マシクナイ
ト云フコトヲ言明ニナツテ居ルノデアリマ
ス、其ノ大藏大臣ノ好マレナイ所ノ、而モ
一部ノ財政理論家カラ申シマスルト、絕對
ニ左樣ナコトハ不可デアル、此ノ爲ニハ可
ナリ大キナ犠牲スラモ拂ツテ、其ノ爲ニハ
國內ニ大キナ相剋摩擦ヲスラ惹起シテモ堅
持シヨウトシタ公債漸減ノ方針ガ、好ムト
好マザルトニ拘ラズ、茲ニ打破ラレテ行カ
ナケレバナラヌ此ノ社會情勢、櫻內大藏大
臣ノ下ニ於テモ數字ハ必然的ニ赤字公債ヲ
累增セシメナケレナバラヌ此ノ社會情勢、
之ヲ如何ニシテ解決スルカ、之ヲ解決スル
一ツノ方策ヲ持タズシテハ、今日輔弼ノ責
ヲ果スコトハ出來ナイト私ハ信ズル、是ハ
單ナル財政現象ダケデハナイ、今日我國ノ
政局ノ不安、社會不安ノ其ノ根源ハ、此ノ
財政現象ニ表現サレテ居ル所ノ矛盾ニアル
ノデアリマス、此ノ矛盾ヲ打開セズシテハ、
此ノ社會ノ不安ヲ一掃シ、國家ノ安泰ヲ圖
ルコトハ出來ナイト思フ、ソレニハ既ニ此
ノ上ニ增稅ヲナサルコトモ困難デアリ、サ
レバトテ赤字公債ヲ累增ノ儘ニ放任スルコ
トモ困難デアル、增稅ニ依ラズ、赤字公債
ニ依ラズ、何等カノ新シキ構想、新シイ歲
入ヲ求メル爲ニ、新シイ構想ノ下ニ財政計
畫ヲ立テルト云フコトヲ、ドウシテモナサ
ラナケレナバラヌ時機ニ達シテ居ルト思フ
ノデアリマス、詰リ吾々ハ玆ニ財政ノ技術
的ノ論議ヲスルノデハナイ、徵稅ノ技術的
ノ論議ヲスルノデハナイ、日本ノ當面ノ要
求シテ居ル場面ハ、全ク著想ヲ變ヘテ、新
ナル構想ノ下ニ財政ノ基礎ヲ確立シナカツ
タナラバ、日本ノ前途ハ永久ニ光明ヲ發見
スルコトガ出來ナイ、少クモ財政現象ヲ通
シテ見ル限リニ於テ、光明ヲ發見スルコト
ガ出來ナイト云フコトヲ、吾々ハ認メザル
ヲ得ナイノデアリマスガ、此ノ點ニ對シマ
シテ、大藏大臣ハ如何ナル見解ト覺悟ヲ持
ツテ臨ンデ居ラレマスカ、是ダケ聽イテ置
キタイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=50
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051・櫻内幸雄
○櫻內國務大臣 先ヅ自然增收ノ問題カラ
申上ゲマス、自然增收ガドノ位アルカト云
フコトノ見當ハ、今日ノ經濟狀態カラ言ヒ
マスト、相當ノ金額ガアルト思ヒマスガ、
御承知ノ通リ赤字公債ノ利子竝ニ恩給年金、
是モ非常ニ殖エテ參リマス、赤字公債モ年
年殖エテ行クノデアリマシテ、此ノ元利ヲ
全部此ノ增收ニダケ俟ツテ、此ノ財政計畫ヲ
立テルト云フコトハ、是ハ、私ハ若シサウ云
フ立テ方ヲスレバ誤リデアラウト思ヒマス、
將來赤字公債ガ殖エテ行ク、此ノ赤字公債
ヲドウシテ行クノカ、借金ダケドン〓〓シ
テ行ツテ宜イノカ、借金ハ出來ナイヂヤナ
イカ、私ハ西川君ノ御議論ハ拜聽致シマス
ガ、併シナガラ赤字公債ヲ出シマス時ニ、
此ノ赤字公債ノ利子竝ニ償還ヲ負擔スルダ
ケノ一定ノ方針ヲ立テテ、此ノ赤字公債ニ
對シテ、其ノ利子ト、ソレカラ其ノ元金ノ
年賦償還ノ費用ニ關スル方針ヲ立テテ、
サウシテ其ノ赤字公債ニ依ツテドウ云フ
結果ヲ得ルカ、卽チ生產擴充ヲ致シマ
スルナラバ、生產擴充ヲ致ス爲ニ費用ヲ
投ジタ、其ノ費用ヲ投ジタモノガ何年後ニ
國民ノ利益トナツテ現ハレテ來ルカ、其ノ
間、ソレガ現ハレテ來ル時ニハ卽チ稅ニナ
ツテ現ハレテ來ル、斯ウ云フ譯デアリマシ
テ、赤字公債ノ性質ニ依リマシテハ、私ハ
赤字公債其ノモノガ、直チニ國民ニ對シテ
脅威ヲ與ヘルモノニアラズシテ、將來ソレ
ガ利益ヲ產ンデ來ルヤウナ方面ニ使ハレマ
スナラバ、私ハ此ノ赤字公債ト云フモノハ
恐ルルニ足ラヌト思フノデアリマス、卽チ
元來カラ申セバ、今マデ赤字公債ヲ出シマ
ス場合ニ、年々五十億圓出スト假定致シマ
シテ、其ノ五十億圓ノ利子ト、償還金トニ
對スル方針ガ玆ニ確定サレルナラバ、私ハ
更ニ國民ニ對シテ不安ヲ與ヘナイト思フノ
デアリマス、ソレデ現在ニ於ケル支那事變
其ノ他ニ付キマシテハ、是ハ將來支那ト經
濟合作ヲシテ、ソレガ產ンデ來ル利益ヲ期
待シテ、之ニ依ツテ今囘ノ大キナ使ツタ國
費ノ償還ニ充テル途ヲ講ジナケレバナリマ
セヌガ、其ノ以外ノモノニ對シマシテハ、
國防ノ點ニ付キマシテモ、又生產擴充ノ點
ニ付キマシテモ、恐ラク私ハ將來相當ナル
利益ヲ國民ニ與ヘテ來ルモノト思ヒマス、
ナゼナラバ國防費ト云フモノヲ多ク出シ
マスガ、國防費ヲ出シマスト云フト、卽チ
國內ノ重工業ガ發展スル、重工業ガ發展ス
レバ、從來外國カラ買ツテ居ツタ資材ト云
フモノヲ買ハナクナツテ來ル、資材ト云フ
モノヲ買ハナクナツテ來レバ、卽チソレガ
國內ノ生產業ヲ發達セシメル、國內ノ生產
業ヲ發達セシメルコトニナレバ、ソレニ依
ツテ又稅收入ガ殖エテ來ル、他ノ平和產業
ノ生產擴充ニ於テモ同ジコトデアルノデア
リマス、隨ヒマシテ此ノ點ニ付キマシテ
ハ、公債ノ性質、又豫算ノ使ヒ方、斯ウ云
フ點ニ於テ十分ニ檢討ヲ加ヘマシテ、是ガ
國力增進ノ爲ニ必要ダト云フ場合ニ於キマ
シテハ、一時的ニ多少困難ガアリマシテ
モ、是ハ遂行スベキモノデアルト、斯樣ニ
考ヘテ居ルノデアリマス、現在赤字公債ガ
年々非常ニ殖エテ居ル、是ハ私決シテ褒メ
タコトデハナイト思ヒマス、出來得ル限リ
此ノ赤字公債ヲ減シテ行クト云フコトニ付
キマシテハ、考慮致サナケレバナラヌト思
ヒマス、ヤリ方ハ勿論色々アリマセウガ、
兎ニ角無駄ナ國費ヲ削除スル、斯ウ云フコ
トデモ私ハ相當ナ金額ガ出テ來ルノデハナ
カラウカト云フ風ニ考ヘテ居リマス、又此
ノ生產擴充ノ方面デモ、中途半端ナ仕事ニ
金ヲ投ゼズシテ、速ニ出來上リ得ル生產擴
充ノ事業ヲ早クヤラシテ行キマスナラバ、
其ノ生產擴充ニ依ツテ得タ所ノモノガ利益
ヲ產ンデ來ルノデアリマジテ、其ノ產ンデ來
タ利益ガ、卽チ今囘發行サレル所ノ赤字公
債ノ元利償還ノ働キヲ爲スヤウニナツテ來
ルト思ヒマス、卽チ其ノ方面ニ於テ自然增
收ノ實ガ現ハレテ來ルノデハナカラウカト
思ヒマス、ソレカラ今日支那ニ向ツテ可ナリ
ノ費用ヲ投ジテ居リマスガ、是モ遠カラズ
鐵ナリ石炭ナリ、總テノ物資ガドン〓〓出
テ來ルヤウニナリマスレバ、此ノ日本ガ投
資シタ金ハ利益ヲ生ンデ來ルノデアリマシ
テ、相當我國ニ對シテ收入ヲ持ツテ來ルノ
デハナカラウカト思フノデアリマス、ソレ
デ要點ハ此ノ赤字公債ヲ出シタ場合ニ於テ
千、其ノ赤字公債ニ依ツテ國力ガ衰ヘナイ
ト云フ立場カラ案ヲ立テナケレバナラヌト
思ヒマス、ソレカラ今囘ノヤウナ臨時事變
ニ要スル赤字公債ニ付キマシテハ、適當ナ
時機ニ此ノ赤字公債ヲドウ云フ風ニシテ償
還シテ行クカ、此ノ赤字公債ノ償還方法ヲ
確立シテ進ンデ行ケバ宜シイノデハナイカ
ト思ツテ居リマス、此ノ點ニ付テハ今囘ノ
增稅ニ於キマシテモ、十分考慮シテ居ルノ
デアリマシテ、私ハ近キ將來ニ於テ、是等
ノ問題ニ對シテ確定シタル對策ヲ立テテ、
サウシテ國民ノ安心ヲ得ルヤウニ致シタイ
ト考ヘテ居ルヤウナ譯デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=51
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052・西川貞一
○西川委員 只今ノ御答辯ニ基イテ更ニ究
明シナクテハナラヌ點ガ多々アルノデアリ
マスガ、今日ハ時間ノ關係モアリマスノデ、
之ニ對スル質問ハ總理大臣ニ對スル質問ト
共ニ保留シテ置キマシテ、本日ハ此ノ程度
ニ於テ止メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=52
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053・堀切善兵衞
○堀切委員長 今日ハ此ノ程度ニシテ、明
日ハ午前十時カラ開會致シマス、但シ貴族
院ニ於ケル豫算審議ノ關係上、總理及ビ大
藏大臣ハ午前中コチラニ出席出來ナイデア
ラウト思ヒマス、併シ商工大臣ニハ、大藏大
臣カラコチラニ御出席ニナルヤウ一ツ御話
置キヲ願ヒタイト思ヒマス、或ハ大臣ハ皆
出席ガムヅカシイカモ知レマセヌガ、兎 2
角十時カラ開クコトニ致シマシテ、今日ハ
是デ散會致シマス
午後零時二十二分散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X00619400222&spkNum=53
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