第75回帝国議会　衆議院　所得税法改正法律案外三十件委員会　第14号　昭和15年3月2日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  　　　　會議
  昭和十五年三月二日（土曜日）午前十時四十七分開議
  　出席委員左の如し
  　　委員長　堀切善兵衞君
  　　理事　小山倉之助君　理事　濱野徹太郎君
  　　理事　木村淺七君　理事　高橋熊次郎君
  　理事　小笠原三九郎君　理事　立川平君
  　　理事　河野密君
  　　　　長野高一君　　　山本粂吉君
  　　　　成島勇君　　　中島彌團次君
  　　　　川崎末五郎君　　　内藤正剛君
  　　　　川崎克君　　　渡邊玉三郎君
  　　　　伊藤五郎君　　　船田中君
  　　　　宮本雄一郎君　　　山川頼三郎君
  　　　　豐田收君　　　森肇君
  　　　　森田福市君　　　板谷順助君
  　　　　西川貞一君　小見山七十五郎君
  　　　　鈴木英雄君　　　田万清臣君
  　　　　松永義雄君　　　佐竹晴記君
  　　　　道家齊一郎君　　　青木作雄君
  　　　　藤本捨助君　　　北勝太郎君
  　　　　武田徳三郎君
  三月二日委員佐竹晴記君辭任に付其の補闕として永江一夫君を議長に於て選定せり
  　出席國務大臣左の如し
  　　　　　　内閣總理大臣　米内光政君
  　　　　　　　　大藏大臣　櫻内幸雄君
  　　　　　　内務大臣　伯爵　兒玉秀雄君
  　　　　　　　　商工大臣　藤原銀次郎君
  　出席政府委員左の如し
  　　　　　　内閣書記官長　石渡莊太郎君
  　　　　　内務省地方局長　挾間茂君
  　　　　　　　内務書記官　三好重夫君
  　　　　　　大藏政務次官　木村正義君
  　　　　　　　大藏參與官　松田正一君
  　　　　　大藏省主税局長　大矢半次郎君
  　　　　　　　大藏書記官　田中豐君
  　　　　　　　大藏書記官　山田義見君
  　　　　　　　大藏書記官　池田勇人君
  　　　　　　　大藏書記官　秋元順朝君
  　　　　　營繕管財局理事　松隈秀雄君
  　　　　　　　商工書記官　山本茂君
  　　　　　　　物價局次長　新倉利廣君
  本日の會議に上りたる議案左の如し
  　所得税法改正法律案（政府提出）
  　法人税法案（政府提出）
  　特別法人税法案（政府提出）
  　配當利子特別税法案（政府提出）
  　外貨債特別税法中改正法律案（政府提出）
  　相續税法中改正法律案（政府提出）
  　建築税法案（政府提出）
  　鑛區税法案（政府提出）
  　臨時利得税法中改正法律案（政府提出）
  　營業税法案（政府提出）
  　地租法中改正法律案（政府提出）
  　酒税法案（政府提出）
  　清涼飮料税法中改正法律案（政府提出）
  　砂糖消費税法中改正法律案（政府提出）
  　織物消費税法中改正法律案（政府提出）
  　揮發油税法中改正法律案（政府提出）
  　物品税法案（政府提出）
  　遊興飮食税法案（政府提出）
  　取引所税法中改正法律案（政府提出）
  　通行税法案（政府提出）
  　入場税法案（政府提出）
  　印紙税法中改正法律案（政府提出）
  　骨牌税法中改正法律案（政府提出）
  　狩獵法中改正法律案（政府提出）
  　明治四十四年法律第四十五號中改正法律案（砂糖消費税織物消費税等の徴收に關する件）（政府提出）
  　大正九年法律第五十一號中改正法律案（内地臺灣又は樺太より朝鮮に移出する物品の内國税免除に關する件）（政府提出）
  　支那事變特別税法及臨時租税増徴法廢止法律案（政府提出）
  　營業收益税法廢止法律案（政府提出）
  　資本利子税法廢止法律案（政府提出）
  　法人資本税法廢止法律案（政府提出）
  　臨時租税措置法中改正法律案（政府提出）
  　地方税法案（政府提出）
  　地方分與税法案（政府提出）
  　府縣制中改正法律案（政府提出）
  　市制中改正法律案（政府提出）
  　町村制中改正法律案（政府提出）
  　北海道會法中改正法律案（政府提出）
  　北海道地方費法中改正法律案（政府提出）
  　地方分與税分與金特別會計法案（政府提出）
  　家屋税法案（政府提出）
  　所得税法人税内外地關渉法案（政府提出）
  　昭和十二年法律第九十四號中改正法律案（支那事變の爲從軍したる軍人及軍屬に對する租税の減免、徴收猶豫等に關する件）（政府提出）
  　大正十三年法律第六號中改正法律案（外國船舶の所得税等免除に關する件）（政府提出）
  　アルコール製造事業等に對する所得税等の免除規定の改正に關する法律案（政府提出）
  　租税法規の改正に伴ふ恩給金庫法等の規定の整理に關する法律案（政府提出）

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• 001・堀切善兵衞

  ○堀切委員長　是ヨリ開會致シマス、昨日
  ニ引續キ道家君

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• 002・道家齊一郎

  ○道家委員　商工大臣ニ御尋ヲ致シマス、
  增稅ト最モ關係ノ重大ナ物價政策ニ付テ御
  尋ヲ致シマス、增稅ニ當ツテハ物價政策ヲ
  先ヅ第一ニ考慮シナケレバナラナイト思フ
  ノデアリマスガドウモ私色々ノ機會ニ承ル
  御說明、或ハ新聞紙等ヲ通ジテ拜見シマス
  ト、政府ニハ其ノ十分ナ對策ガナイヤウニ
  思ハレル、サウシテ又增稅ノ結果ガ如何ニ
  ナリ、其ノ增稅ハ誰ガ負擔スルカ、消費者ガ
  負擔スルトシテモ、何等ノ方針ガナク、唯
  收入ノ增加ヲ圖ルノミト云フ工合ニ見エル
  ノデアリマス、私ガ申上ゲルマデモナク、
  今日ノ增稅政策ハ最モ物價ニ重大ナ關係ヲ
  持ツコトハ言フマデモナイサウシテ今日
  我國ガ戰爭ヲスル場合、是ハ好ムト好マザ
  ルニ拘ラズ、增稅デ行カナケレバナラヌ、
  又今囘ノ戰爭ガナイニシテモ、今日日本ノ
  ヤウナ物資ノ狀況ニ於テハ、ドウシテモ統
  制經濟ガ必要デアル、先ヅ第一ニ是等ノコ
  トヲ考ヘナクテハナラナイノニ、ドウモマダ
  物價ト稅ニ付テ相談ガ纏マツテ居ラナイヤ
  ウニ見エルコトハ甚ダ遺憾デアリマス、此
  ノ點ニ付テ十分ナ御打合、十分ナ御相談ガ
  アツタノデアリマセウカ

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• 003・藤原銀次郎

  ○藤原國務大臣　道家君ノ御尋ハ御尤ト存
  ジマスガ、政府ガ度々申上ゲル通リニ、此
  ノ時局ヲ乘切ル爲ニハ、有ユル手段ヲ盡シ
  テ諸機關ヲ總動員シテ、ソシテ國民ノ協力
  ヲ得テ低物價政策デ之ヲ乘切リタイト云フ
  コトハ度々申上ゲマシタカラ御了解下ス
  ツテ居ルコトト存ジマス、今囘ノ增稅ニ際
  シマシテ本來ノ理想カラ申シマシタナラバ、
  消費稅ハ卽チ消費稅デアリマスルカラ、消
  費者負擔デ、ソレダケ物價ヲ引上ゲルト云
  フコトモ已ムヲ得ナイ、是ハ普通ノ道理カ
  ラ申ストサウ考ヘルノデアリマス、政府ニ
  於テモサウ云フ風ニ考ヘマスガ、併シ今日
  ノ經濟政策ニ於テ、ソコニ難カシイ問題ヲ
  持ツテ居リマスルノハ、一通リノ普通ノ理
  窟ハソコニアリマスルケレドモ、政府トシ
  テハ其ノ增稅ヲ消費者ニ負擔セシメナイ
  デ、其ノ增稅ノ全部又ハ一部分ヲ生產者ガ
  負擔シタリ、或ハ中間業者ガ負擔シタリシ
  テ、物價ノ騰貴ヲ抑制スルコトガ出來ル場
  合ニ於テハ、出來ルダケサウ云フ手段方法モ
  盡シタイ、斯ウ云フ希望ヲモ持ツテ居リマス、
  ト申シマスルノハ、極ク率直ニ申シマスレ
  バ、今日マデノ間ニ大資本トカ大工業者ナ
  ドノ生產者ニ於キマシテハ、相當ノ利益ヲ
  得テ、相當ニ內容ノ宜シイ生產者モ相當ア
  ルノデアリマス、其ノ事業別ニ依リマシテ、
  一々檢討シテ參リマスルト、內容モ豐富デ
  十分ナ配當モシテ、ソシテ十分ナ繰越金ヲ
  持ツテ居ルト云フヤウナ生產者モ相當ニア
  リマスルシ、サウ云フヤウナ者ニ對シマシ
  テハ、消費稅ヲ全額消費者ニ負擔セシメルト
  云フコトヨリハ、刻下ノ此ノ時局デアリマス
  ルカラ、若干ハ生產者ノ方ニ於テモ負擔シ
  テ、消費者ノ負擔ヲ成ベク輕クスルト云フ
  ヤウナ手段ヲ執ルコトモ、此ノ時勢ニ於
  テハ已ムヲ得ナイト存ジテ居リマス、サ
  ウ云フ譯デアリマスルカラ、此處デ原則的ニ
  全額消費者ノ負擔ト致シマスト云フコトヲ申
  上ゲ兼ネルノハ其ノ點デアリマス、ソコデ
  今大藏省ト商工省トノ間ニ議論ガ違フトカ、
  打合セガ不十分ダト云フ譯デハナイノデア
  リマシテ、原則ニ於テハサウデアルケレド
  モ、立場上今日ノ時局ヲ乘切ル上ニ於テハ、
  ソンナ手段モ執ラザルヲ得ヌト云フヤウナ
  內情ニアルト云フコトヲ、ドウゾ御承知ヲ
  願ヒタイト存ジマス

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• 004・道家齊一郎

  ○道家委員　私ノ御尋シヨウト思ツテ居ル
  點ハ、今商工大臣ノ仰シヤツタ點ナノデア
  リマシテ、勿論消費稅デアルカラ全部ヲ消
  費者ニ課ケルト云フコトナラ問題ハナイ、
  今仰ツシヤツタヤウニ、或種ノ產業ハ此ノ
  國家的戰爭ノ爲ニ非常ナ利得ヲシテ居ル、
  サウシテ隨分重イ税モ課ケラレテ居ル、ケ
  レドモ、マダ餘裕ガアルト私ハ思フ、ソレ
  ハ商工大臣ノ御覽ニナル通リデアリマス、
  ソコデ私ハ御尋シタ、ソレヲ豫メ稅ヲ決メ
  ル時ニ、モウ既ニ大體標準ハ斯ウナルノダ
  ト云フコトヲ決メテナケレーバ、是カラ御〓
  究ニナツテドレハドウスルトカ御決メニナ
  ルノデハ、ソレハ中々時日ヲ要シテ直グニ
  ハ決マラナイ、サウスレバ生產者ハ結局消
  費者ニ轉嫁シヨウトスルノハ、消費稅ニ限
  ラズ、如何ナル稅デアラウトモ人情デアリ
  マシテ、ソコニ弊害ガ出テ來ルノデハナイ
  カ、若シ之ヲ消費者ニ課ケルトスレバ、今
  モ商工大臣ガ御主張ニナリマシタヤウナ、
  低物價政策ハ崩レテシマフ、政府ハ組閣以
  來屢〓、低物價政策ヲ堅持スルト云フコトヲ、
  有ユル機會ニ於テ强調シテオ居デニナツテ
  居ル、サウシテ政府ノ政策トシテ、ハツキ
  リ新聞紙上ニモ發表ナサツテ居ラレル、ソ
  レカラ總理大臣モ大藏大臣モ屢〓之ニ付テ
  ハ言明モサレテ居ル、又商工大臣ハ只今モ
  仰シヤツテ居リマスケレドモ、其ノ仰シヤ
  ルコトガドウモ徹底シテ居ラヌヤウデス、
  ソレハ結局根本的ニ決ツテ居ラナイカラデ
  ハナイカ、昨日モ私ハ大藏大臣ニ申上ゲタ
  ノデスガ、今日ノヤウナ非常時局國家ヲ背
  負ツテ乘切ルニハ、自ラノ政策ヲ豫メ持ツ
  テ計畫的ニ行カナケレバ、其ノ日暮シデハ
  到底行ケヌ、ソンナコトデハ國民ガ迷ツテ
  シマヒマス、此ノ際御〓究中ナドト仰シヤ
  ルコトハ甚ダ遺憾ニ堪ヘマセヌ、モウ決定
  サレテ居ラナケレバナラヌノデスガ、成ベ
  ク早イ機會ニ於テ、如何ナル物ハ生產者ガ
  負擔スルモノデアルト云フコトヲ、ハツキ
  リ示シテ戴キタイ、若シ今分ツテ居レバ一一
  三デモ示シテ戴イタ方ガ宜イノデハナイカ、
  國民ヲシテ其ノ行ク所、其ノ負フ所ヲ自覺
  セシムル必要ガアルト思ヒマスガ、只今御
  考ニナツテ居ル品物ニ付テ、旣ニ御決マリ
  ノ物ガアリマシタラ御明示ヲ願ヒタイ

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• 005・藤原銀次郎

  ○藤原國務大臣　道家君ノ御尋ハ御尤モト
  存ジマスガ、政府ニ於テハ、增稅ト同時ニ
  肚積リハ致シテ居リマスシ、ソレカラ度々
  申上ゲル通リニ、公定價格ノ變更ヲ急イデ
  致シマシテ、サウシテ適正價格ノ決定ヲ成
  ベク早クシテ、敏速ニ斯ウ云フコトヲ扱ヒ
  タイト云フコトヲ度々申上ゲテ居リマスガ、
  其ノ場合ニ於キマシテ一ツ宛端カラ片付ケ
  テ行ク、此ノ商品ノ適正價格ヲ決メル時ニ
  ハ、此ノ增稅ノ金額ヲ負擔シタ價格ニスル
  トカ、此ノ商品ニ對シテハ、此ノ增稅ヲ全
  額負擔セシムルコトハ宜クナイカラ半額ニ
  スルトカ、三分ノ一ニスルトカ、或ハ是ハ
  生產者ニ全部負擔サセルトカ云フヤウナ工
  合ニ、商品ノ個々別々ノ物ニ對シテ、皆
  ツ宛決定シテ參リタイト云フノデアリマシ
  テ、政策トシテハ決定シテ居ルト申上ゲテ
  差支ナイデスケレドモ、ソレヲ實行スル場
  合ニ於テ一々ヤルノデ、此處デ全般的ニ、
  此ノ物ニ付テハ消費稅ヲ全額負擔サセル、
  此ノ物ハ消費稅ヲ全額負擔セシメナイト云
  フヤウナ工合ニ、机上ニ於テサウ云フコト
  ヲハツキリ申上ゲルコトノ出來ナイコトハ
  遺憾ニ思ヒマスガ、一ツ〓〓ノ商品ニ付テ、
  一ツ宛決定致シマシテ、先ヅ肚積リヲ申シ
  マスレバ、三月中ニハ大抵政府ノ方ニ於キ
  マシテハ是ハ決定シタイト云フ積リデ、其
  ノ調査ハ急イデ進行致シテ居リマス、左樣
  御承知ヲ願ヒマス

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• 006・道家齊一郎

  ○道家委員　三月中ニ大體御決定ノ見込デ
  アルト云フコトデ、滿足ハ出來マセヌケレ
  ドモ、御決定ニナツテ居ナケレバ已ムヲ得
  ナイト思ヒマス、併シナガラ政府ハ低物價
  ト仰シヤルケレドモ、事實上ニ於テ或ル物
  ハ增稅ダケ價格ガ上ル、サウナルト低物價政
  策ハ崩レテシマフノデアル、サウ云フ詳細ナ
  決定ノナイ前ニ、商工大臣ガ度々物價ハ引上
  ゲルノダト斯ウ仰シヤツテ居ルコトハ、財界ニ
  重大ナ影響ヲ及ボスモノデハナイカト思ヒマス、
  旣ニモウ大體斯ウ云フ物ダケハ上ゲル、斯ウ
  云フ物ハ抑ヘテ行ク、斯ウハツキリシテ居
  レバ闇取引ハ行ハレマセヌケレドモ、大體
  低物價政策ハ堅持スルト仰シヤリナガラ、
  或ル物ハ上ル、卽チ高物價ニナルト云フヤ
  ウニ第三者カラ取ラレルト、モウ上ルコト
  ガ分ツテ居レバ誰ダツテ出シマセヌカラ、
  影響ガアルノデ、甚ダ面白クナイト私ハ思
  フノデアリマス、ソコデ低物價ヲ堅持スル
  ナラスルト云フコトヲ、モツトハツキリシ
  テ戴カナイト、適正物價ダ、低物價ダト仰
  シヤルダケデハ困ルノデス、ソコデ伺ヒタ
  イノハ、低物價トハ一體何ヲ仰シヤルノカ、
  適正物價トハ一體何ヲ仰シヤルノカ、ソレ
  ガ分ラナイト適正物價ハ高物價デアルト
  云フ風ニ吾々ハ解釋スル、又一般モサウ云
  フ風ニ見テ居ルヤウデアリマスガ、低物價
  トハ何ヲ仰シヤルノデアリマスカ

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• 007・藤原銀次郎

  ○藤原國務大臣　九月十八日ヲ以テ物價ノ
  値段ヲ抑ヘマシテ、所謂九月十八日デ値段
  ヲ釘付ニシテ、是以上ニ値段ノ騰貴ヲ防グ
  ト云フ積リデ、低物價政策ヲ堅持シテ參リ
  マシタノハ、御承知ノ通リデアリマス、所
  デ此ノ九月十八日ニ物價ヲ釘付ニ致シマシ
  タノハ、其ノ時ノ當局ノ趣旨ニ於キマシテ
  モ、此ノ九月十八日ノ値段ヲ以テ永久ニ變
  更シナイデ、此ノ儘押シテ行カウト云フコ
  トノ不可能デアルト云フコトハ、其ノ時カ
  ラ分ツテ居ツタノデアリマス、先ヅ以テ物
  價ノ暴騰スルト云フ惧ガアツテ、此ノ時局
  ヲ乘切ルノニ、若シ物價ノ暴騰スルヤウナ
  氣配ヲ示シマシタナラバ、國家トシテ非常
  ナ重大ナ問題ニ相成リマスカラ、兎モ角取
  敢ズ九月十八日ヲ以テ物價ノ暴騰ヲ防グ爲
  ニ、停止令ト云フモノヲ發布致シタノデ
  アリマス、之ヲ發布シテ置イテ、サウシテ
  徐々ト適正ノ物價ヲ作ツテ、物價ヲ是正シ
  テ行キタイト云フノガ、其ノ物價委員會ノ
  根本ノ方針デアツテ、前內閣以來ノ方針デ
  アルノデアリマス、デアリマスカラ、釘付
  ニ一旦ハナツテ居ルケレドモ、此ノ儘ニシ
  テ行クト、段々ニ市場カラ商品ト云フモノ
  ハ無クナツテ、闇相場ノミニナツテシマフ
  ト云フヤウナ惧モアリマスルカラ、ヤハリ
  適正ノ物價ト云フモノヲ作ツテ、サウシテ
  之ヲ是正シテ行カナケレバナラナイト云フ、
  前內閣以來ノ方針ヲ襲踏シテ、出來ルダケ
  早ク適正ノ物價ト云フモノヲ作ツテ、上ル
  ベキモノハ上ゲ、下ルベキモノハ下ゲルト
  云フコトニシテ、之ヲ是正シテ參リマスル
  ケレドモ、併シナガラ適正物價ヲ作ツテ是
  正スルト云フコトハ、必ズシモ物價ヲ騰貴
  セシメル、低物價政策ヲ放棄スルト云フ風
  ニハ、政府ハ考ヘテ居ラナイ、ドウシテモ低物
  價政策ハ飽クマデ低物價政策デ參リタイ、
  ケレドモ一面增產シナケレバナラナイヤ
  ウナ必要ノアルモノデアツテ、消費ノ節約
  其ノ他ノ力ヲ以テシテハ、ドウシテモ抑ヘ
  ルコトノ出來ナイモノ、卽チ配給ノ改善ヲ
  シタリ、生產費ノ合理化ヲシタリ、消費ノ
  抑制ヲシタリ、色々ナ手段方法ヲ盡シテモ、
  ドウシテモ若干ノ價格ヲ引上ゲナクテハナ
  ラナイモノハ、若干ノ價格ヲ引上ゲルコト
  モ亦已ムヲ得ナイ、サウ云フコトヲ加味シ
  ナイデ、唯低物價ノミデ之ヲ乘切ルト云フ
  コトハ、實際言葉デ言フコトハ出來テモ、實
  行ニ於テハ是ハ甚ダ困難ナコトデアルカラ、
  低物價政策ヲサウ云フ方針ヲ以テ、何處マ
  デモ堅持シテ行キタイト云フコトヲ、度々
  申上ゲテ居ルノデアリマスガ、ドウゾ左樣
  御承知ヲ願ヒタイト存ジマス

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• 008・道家齊一郎

  ○道家委員　低物價ノ御說明ヲ、初メテハ
  ツキリ承リマシタ、勿論低物價ハ政府ノ執
  ラレタ九·一八デナクテハナラヌト思フノデ
  アリマスガ、併シ今ノ御說明ノ中デハツキ
  リシナイコトハ、低物價ハ何處マデモ保持
  スルノダト仰シヤルケレドモ、ヤハリ修正
  シテ行ケバ、ソレハ低物價デナクナルノデ
  アリマスカラ、次ノ低物價ト云フモノハ何
  ヲ言フカ、此ノ點ハ「コンパラチーヴ」ノ問
  題デスガ、時勢ニ適應スル價格ト云フコト
  ニナルノデアリマシテ、要スルニ其ノ時ノ
  適正價格ニナルノデアリマセウ、其ノ適正
  價格ハ、勞働賃銀初メ材料其ノ他ノ價格構成
  要素ノ上騰若クハ下向ノ適應スル所ノ價格、
  斯ウ云フ意味ニナルト思フノデアリマスガ、
  サウナルト政府ハ漸次物價ヲ上ゲテ行クコ
  トニナリマス、卽チ「インフレ」時代ニ於テ
  ハ、ドウシテモ需要ガ增シテ行キマスカラ、
  自由經濟ノ建前デ行クナラバ、ドウシタツ
  テ價格ハ上ツテ行クノガ當然デス、サウス
  ルト此ノ次ニモ亦上ツテ行ク、サウスルト
  其ノ時ニ適應スル所ノ物價ヲ定メルコトニ
  ナルノデアツテ、結局低物價ト云フモノハ
  捨テナケレバナラナイコトニナルト思ヒマス
  ガ、左樣ニ解釋シテ宜シウゴザイマスカ、卽チ
  漸次物價ハ時ニ應ジテ上ゲテ行ク、ソレガ
  卽チ適正物價ダ、斯ウ云フコトニナリマス、
  サウスルト國民ハ是カラマダ物價ハ上ツテ
  行クモノダト云フ認識ノ下ニ、色々ナ經濟
  活動ヲ致シマスカラ、玆ニ闇取引モ益〓盛ニ
  ナルノデハナイカト私ハ思フノデアリマス

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• 009・藤原銀次郎

  ○藤原國務大臣　政府ハ只今ノ御質問トハ
  全然考ヲ異ニ致シテ居リマス、ソレハ只今
  消費稅ニ付テモ、御尋ニ對シテ御答致シマ
  シタ通リニ、若シモ政府ガ時局下ノ今日ノ
  場合ニ於テ適正價格ヲ設ケル時ニ當ツテ
  物ノ値段ガ上ルベキ時ニハ上ルノデアルカ
  ラ、上ツテモ仕方ガナイヂヤナイカ、斯樣
  ニシテ漸次其ノ時〓〓ニ應ジテ物價ヲ上ゲ
  テ行カウト云フヤウナ方針デアリマスルナ
  ラバ、消費稅ヲ全部消費者ニ負擔セシメル
  ト云フコトモ亦已ムヲ得ナイト云フコトヲ
  申上ゲテ、ハツキリトサウ云フ說明ヲ申上
  ゲルコトガ出來マス、ケレドモ政府ノ考へ
  テ居リマスノハ、此ノ低物價政策ト云フモ
  ノハ、ドウシテモ有ユル困難ヲ凌イデモ、
  維持シタイト云フ方針デゴザイマスルカラ、
  生產者ニ負擔セシメ、若クハ配給業者ニ負
  擔セシメ得ルヤウナモノデアルナラバ、低
  物價政策ノ方針ノ下ニ、生產者ニハ出來ル
  ダケ負擔セシメナイ、斯ウ云フ考デスカラ、
  サウ云フ風ナ方法ヲ講ジテ、全體ニ於テ此
  ノ物價騰貴ノ傾向ニ進ンデ行クモノデアツ
  テモ、出來ルダケノ力ヲ以テソレヲ停止シ、
  防イデ行キタイ、何處マデモ此ノ物價騰貴
  ヲ防グコトヲ以テ政府ノ方針トシタイ、斯
  ウ云フ方針ハ何處マデモ持ツテ參リマスケ
  レドモ、又一面ニ於テ其ノ低物價ニノミ先
  走ツテ、何デモ彼デモ九·一八ノ「ストツプ」
  令ヲ是正シテ行カナイデ、此ノ儘押シテ行ク
  ト云フコトニナリマスルト、商品ガ市場カ
  ラ無クナツテ、サウシテ闇相場ガ行ハレテ、
  益〓國國ノ生活ニ不安ヲ與ヘルト云フヤウナ
  コトニ相成リマスルカラ、其處ニ若干ノ手
  心ヲ加ヘテ、適正價格ヲ設ケテ、生產者モ
  赤字デ非常ニ困難スルト云フコトノナイヤウ
  ニサウシテ一面ニ於テ增產モ奬勵シテ行
  キタイト云フコトヲ申シテ居ルノデアリマ
  シテ、決シテ政府ハ低物價政策ヲ抛棄シテ、
  其ノ時代々々ニ於テ物價ガ上ルナラバ、ソ
  レデ仕方ガナイヂヤナイカト云フヤウナ、
  時代々々ニ物價ヲ引上ゲルト云フヤウナ、
  サウ云フ趣旨ヲ持ツテ居ルノデハナイト云
  フコトヲ、是ハ改メテ又申上ゲテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=9

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• 010・道家齊一郎

  ○道家委員　政府ハ種々ノ事情ニ依ツテ總
  テノ物價ガ上ツテ行クトシテモ、ソレニ應
  ジテ上ゲテ行クノデハナイ、斯ウ云フ御話
  ナンデスケレドモ、結果トシテハサウナル
  ノデハナイデセウカ、今ノヤウナ御說デハ
  ドウシテモ理論上合ハナイヤウデス、九·一
  八ノ物價ヲ決メタ時ハ勞働賃銀モ、又諸材
  料モ、價格構成要素ト云フモノハ其ノ物價
  ニ適當ナルモノデアツタ、然ルニモ拘ラズ
  今日デハ生產擴充ノ爲ニ或ル物ハドウシテ
  モ上ゲテ行カナケレバナラナイトハ商工大
  臣ガ屢〓、仰シヤツタコトナノデス、已ムヲ得
  ズ、卽チ政府ノ低物價ト云フモノハ、ドウ
  シテモ堅持出來ナクナツタ、自然ニ上ゲザ
  ルヲ得ナクナツタノデス、勞働賃銀ヲ御抑
  ヘニナツタ所デ、家族手當トカ、或ハ其ノ
  他色々ノ形デ結局上ゲザルヲ得ナクナツテ
  來タ、隨ツテ物價モ上ゲザルヲ得ナイ、現
  ニ九·一八ノ時ハソレデ宜カツタ、ケレドモ
  今日ハ生產ガ不足スルヤウニナツテ、遂一
  低物價ハ崩レテ來ル、是ハ根本ニ於テ理論
  的ナ矛盾ガアルカラデハアリマセヌカ、今
  マデ政府ガ左樣ナ態度デ低物價政策ヲ御執
  リニナツタカラ、今日ノヤウニ物價ヲ修正
  シナケレバナラナイコトガ起ルノデス、ソ
  コニ低物價ト適正物價ト云フ問題モ起ル、
  適正物價ト低物價ト云フコトハ全ク違フコ
  トデ、九·一八デ抑ヘルノガ低物價デス、適正
  デ行ケバ將來段々上ツテ行ク、豫算ガ膨脹
  シ、年ヲ重ネルニ從ヒ「インフレ」景氣ガ-
  ソレハ一ツノ凹凸景氣デハアリマスガ、購
  買力ヲソソル、購買力ヲソソレバ物資ガ上
  ルノハ當リ前デス、ドウモ今仰シヤルコト
  ハ如何カト思ヒマス、併シ之ヲ今此處デ議
  論シテモ仕樣ガアリマセヌ、私ノ御尋ハ此
  ノ位ニ致シマスガ、私ハ政府ノ從來ノ政
  策ガ全ク間違ツテ居タ、ソコニ「スタート」ガ
  アルノデス、第一ニ九·一八ヲ決メル時ノ
  決メ方、其ノ九·一八デ抑ヘル、低物價デ
  決メタ時ノ標準ガ間違ツテ居ツタ、又決メ
  テカラ後ノ政策ト云フモノガ間違ツテ居ツ
  タ、其ノ爲ニ今日ノコトガ起ツテ來タ、今
  更商工大臣ヲ責メテモ仕方ガナイノデス、
  併シ商工大臣モ物價委員デアラレルガ、ア
  ノ物價委員會ガナツテ居ラナイ、アンナ會
  デ物價ヲ決メルコトガ間違ヒデス、今日商
  工大臣ガ機構ヲ改造ナサラウト仰シヤツテ
  居ラレルノハ御尤モデス、委員會ハ金融資
  本家ガ其ノ牛耳ヲ執ツテ、二三ノ者ガ「ス
  タッフ」ニナツテ立テタ立案ニ依リ、是ハ
  ドウデスカト相談スル、サウスルト其ノ委
  員ハ大部分、實際家ノ資本家デアルカラ、
  物價ヤ經濟ノコトハ全部知ツテ居ラレルト
  思ハレマスガ、資本家デモ經濟ノコトヤ物
  價ノコトニ付テ非常ニ詳シイトハ、私ハ失
  禮ダガ申上ゲラレナイ、ソレ等ノ無責任ナ
  忙シイ人達ガ寄ツテ、ドウダ、是デ宜カラ
  ウト言フノデス、ソシテ出席スル委員ハ終
  ヒニハ半分モナイ、愚圖々々言ヘバ責任ヲ
  持タナケレバナラナイノデ、大體ノ所デ濟
  マセル、ソレヲ以テ低物價ダト言ツテ國民
  ニ强要ナサル、ソレニ反スル者ハ皆引張ラ
  レル、全國デ何千人、何万人ガブチ込マレ
  テ居ルノデス、斯ウ云フ委員會ナドハ根本
  的ニ立テ直ホサナケレバナリマセヌ、實ハ中
  央ノ金融ノ「オーソリチー」ダト云フ人ガ牛
  耳ヲ執ツテ居ルノデス、日本ハ金融財閥ニ
  依ツテ政治マデ支配サレ、內閣ノ組織マデ
  支配サレテ居ルノデス、產業資本家ヲ抑ヘ
  付ケテ、ソレガ物價マデモ決メテ居ル、又
  委員ノ構成分子ヲ見ルト、國民ノ多數ノ代
  表者ヲ出シテ居ル所ノ大政黨ガ入ツテ居リ
  やっと、責任ヲ負フベキデアリナガラ、政策
  ノ失敗ハ官僚ガ〓〓ト言フ、自カラ物價委
  員ニナツテ居リナガラ、何ガ故ニ責任ヲ負
  ハナイカ、官僚デモ惡イ所ガアリ、軍部デ
  モ惡イ所ガアレバ、惡イコトハ惡イ、善イ
  コトハ善イト言フベキデアル、皆責任ガア
  ルノデス、物價ヲ決メルニ際シ統制經濟ト
  自由經濟ノ根本的區別ヲ十分ニ意識シナ
  イ、ソレデ自由經濟ヲ半分、統制經濟ヲ半
  分取リ入レテ居ル、ソレデ物價ガ抑ヘラレ
  タラ不思議デス、コンナコトヲヤツテ居ラ
  レレバ物價ガ上ツテ來ルノハ當リ前デス、
  私ハ保證シテ置キマス、コンナコトデハ到
  底國民ノ生活ヲ安定スルコトハ出來ナイコ
  トヲ、ソコデ私ハ商工大臣ニ御尋スルノデ
  スガ、現在ノ儘ノ人デ委員會ノ機構ヲ改造
  ナサラウトスルコトハ考ヘ物デス、商工大
  臣ノ率直ナル御言明ニ對シ、其ノ御誠意ニ
  對シテ最高ノ敬意ヲ表スルモノデスガ、產業
  方面ノ人ニモウ少シ重點ヲ置イテ戴キタ
  イ、モウ少シ總テノ方面カラ私ハ參加シテ
  貰ヒタイト思フ、物價委員ニエライ名前バ
  カリ竝ベテ居ルガ名前デハ何モ出來マセヌ、
  議會カラモ全會派ノ代表ヲ入レラレルナラ
  バ宜イガ、或ル一部ノモノガ出ルノテハ何
  モ出來ルモノデハナイ、ソレデ今日ノ政治
  ニ對シ國民ガ滿足シテ居リマスカ、國民ノ
  不平ガ鬱積スル理由ハソコニアル、.pp.
  大キナ政黨カラノミ一人ヤ二人出シテ何ニ
  ナリマス、ソレナラバ、ソレガ責任ヲ持ツ
  カト云ヘバ、責任ハ持タナイ、全ク成ツテ
  居ラナイノデス、ソコデ次ニ御尋シタイノ
  ハ、生產擴充ヲ圖ル爲ニ物價ノ引上ゲ、卽チ
  適正價格ヲ御決メニナルサウデスガ、其ノ
  適正價格デ以テ生產擴充ガ出來ルト思ハレ
  マスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=10

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• 011・藤原銀次郎

  ○藤原國務大臣　色々ノ御說ヲ承リマシテ、
  洵ニ商工當局トシテ敬意ヲ表シテ謹ンデ
  御說ヲ承リマス、兎ニ角今日ノ場合デアリ
  マスルカラ、元々生產擴充ト低物價政策ハ、
  氷炭相容レナイモノヲ結付ケテ運用シテ行
  カウト云フ所ニ、苦心ガアルト云フコトヲ
  度々申シテ居ルノデアリマシテ、道家君ノ
  只今ノ御說ハヤハリソコニ歸著スルノデア
  リマシテ、一方ニ於テハ低物價デ行ツテ、
  一方ニ於テハ生產擴充ヲシヨウト云フノデ
  アリマスカラ、ソコニ非常ナ無理ガアル、
  其ノ無理ヲウマク調和シ運用シテ、此ノ時局
  ヲ凌イデ行キタイト云フ所ニ、當局トシテ非
  常ナ苦心ヲ致シテ居リマスト云フコトダケ
  ヲ、御諒察ヲ願ヒタイト思ヒマス
  ソレカラ適正價格ヲ決定シテ、果シテ生
  產擴充ノ目的ヲ達シ得ルカ、卽チ增產ノ
  目的ヲ達シ得ルカト云フ御尋ニ對シマシ
  テハ、適正價格ヲ設定スル時ニ當リマシ
  テ、此ノ現狀ヲ眺メマシテ、此ノ適正價
  格デアルナラバ、凡ソ此ノ位ナ增產ハ可
  能デアルト云フコトヲ目標ニシテ、適正
  價格ヲ決定致シタイト存ジテ居リマス、
  其ノ點ニ付テ一面ニ於テ御斷リヲ申上ゲ
  テ置キタイノハ今日ノ如ク兌換劵モ增
  發致シマシテ、公債モ澤山ニ募集スル、
  サウ云フヤウナ情勢デ通貨ガ膨脹シテ、
  國民ノ一部分ニハ非常ニ購買力モ旺盛ニ
  ナツテ參ツテ居ルコトハ御承知ノ通リ
  デアリマシテ、此ノ點ダケデモ物價ヲ引
  上ゲル趨勢ニ向ツテ居ルト云フコトハ、能
  ク政府ニ於テモ承知致シテ居リマスカラ、
  一面ニ於テハ公債モ募集セザルヲ得ズ、又
  兌換劵ノ增發モ已ムヲ得ナイ趨勢デアリマ
  スケレドモ、此ノ儘ニシテ置キマスト、只
  今仰セノ通リニ「インフレ」ニナリマスカ
  ラ、此ノ通貨ヲ引締メテ行ツテ、サウシテ
  購買力ヲ抑制シタイ、或ハ此ノ增稅ノ如キ
  モ、購買力ヲ收縮セシムル一ツノ手段ニモ
  ナラウカト思ヒマスシ、其ノ外ニ有ユル手
  段ヲ以テ、購買力ヲ抑制スルト云フコトヲ
  努メマシテ、此ノ兌換劵增發ニ因リ、或ハ
  公債ヲ增發スル爲ニ、物價ヲ騰貴セシムル
  ト云フヤウナコトモ出來ルダケ抑制シテ參
  リタイ、サウシテ相俟ツテ低物價政策ヲ堅
  持シテ參リタイト云フ所ニ、先ヅ非常ナ苦
  心ガアルト云フコトモ、是ハ申上ゲナクテ
  モ能ク分ルコトデアリマスケレドモ、繰返
  シテ申上ゲル次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=11

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• 012・道家齊一郎

  ○道家委員　御說明ハ能ク分リマシタガ、
  私ハ斯ウ考ヘマス、今增產ヲスル爲ニ物價
  ノ一部ヲ引上ゲ、修正サレテモ、ソレハ增
  產ニナラナイト思ヒマス、今日生產ノ增進
  ガ停頓シテ居ル理由ハ何處ニアルカト云フ
  ト、低物價モ多少原因デアツタデセウガ、
  低物價ガ原因デハナイ、低物價ヲ御定メニ
  ナツテモ、實ハ闇取引デ破ラレテ居ツタノ
  デアルカラ、低物價デ生產ヲシテ居ルノデ
  ハナイ、ソコデ何ノ爲ニ生產ガ增加サレナ
  イカト言ヘバ、ソレハ物資ト勞力ト生產ノ
  器具機械其ノ他ノ配給ノ圓滿ヲ缺イテ居ル
  ト云フコトト及ビ不足、斯ウ云フトコニ大キ
  ナ原因ガアルノデアラウト思ヒマス、ソコ
  デ價格ヲ御引上ニナツテモ現在ノ自由主義
  經濟デ御引上ニナルト、唯生產者ノ利潤ガ
  增スバカリデアリマス、ソレデハ生產者ハ
  其ノ增シタ利潤ヲ、其ノ生產擴充ノ設備ニ
  入レルカト云フト、入レハシナイ、ナゼ入
  レナイカト言ヘバ、入レテモ勞力其ノ他ガ
  不足デアルカラ入レナイノデアリマス、而
  モ政府ノ方針ハ-是ハ此ノ政府バカリデ
  ハナク、戰爭ガ始ツテ以來ノ歷代ノ政府ノ
  方針ガ、全ク國民ニ知レテ居ナイ、自由主義
  經濟下ニ於テ統制經濟ヲ如何ニ指導シテ行
  クカト云フコトガ、國民ニ分ラナイ、或ハ
  又早晩元ノ自由主義經濟ニ戾ルノカモ知レ
  ナイ、又此ノ戰爭ガ何時濟ムカ分ラナイ、
  政府ノ決意モ、昨日モ申上ゲタノデスガ、豫
  算ヲ始メ總テノ見透シガ付イテ居ナイ、來
  年再來年ノ大體ノ計畫見込ガ付イテ居ラナ
  イノデアリマス、事業家デアツタナラバ、來
  年再來年ノコト位ハ、大體ノ計畫ハ立チ得
  ルト思フ、然ルニ現在ノ政府ニハソレガ何
  モナイ、一體國民ハ何ニ依ツテ宜イノカ、
  殷賑產業デアル重工業デモ、徒弟ノ養成ス
  ラ、永久的方針ヲ以テ幼年工ヨリ養成シテ
  宜イカ、一時的ニ生產擴充ニ間ニ合フヤウ
  ニ、女デモ使ツタラ宜イノカト迷ツテ居ル
  ヤウナコトデス、コンナコトニ迷フ必要ハ
  ナイノデスガ、日本ノ現狀デハ戰爭ガ續イ
  テモ續カナクテモ、今日日本ノ工業カラ見
  レバ、商工大臣モ御說明ノヤウニ、ドウシ
  テモ生產擴充ハ續ケテ行カナケレバナラ
  汉、隨ツテドウシテモ勞働訓練モ根本對策
  ノ上ニシツカリト腰ヲ下シテ行カナケレバ
  ナラヌニモ拘ラズ、ソレスラモ分ラナイ狀
  態ニアルカラ、況シテ他ノモノハ分リ都ふと
  又、此ノ戰爭デモ濟メバ元ノヤウニナルダ
  ラウト云フ考ヘ方ヲシテ居ルカラ、生產擴
  充ナドニ入レツコハナイ、サウスレバドウ
  スルカト云フト、皆自分ノ懷ロニ入レテシ
  マフ、其ノ利益ニ戰時利得稅等ハ課カルニ
  シテモ、兎モ角國家ノ豫算ニ依ツテ、殷賑
  ヲ極メテ居ルノデ、マダ〓〓餘裕ガアルノ
  デハナイカト思ヒマス、資本家カラ言ヘバ
  モウ餘裕ハナイノダ、百万圓ノ利得ニ付テ
  二十何万圓シカ殘ラヌト云フヤウニ言ハレ
  ルケレドモ、私ハマダアルト思ヒマス、先
  程モ商工大臣ガ言ハレタヤウニ、或種ノモ
  ノハ確ニアリマス、ソレデ皆利得ヲ取ツテ
  シマヒマスカラ、價格ヲ引上ゲテモ到底生
  產增進ニハナラナイト思フ、唯價格ガ上ツテ
  行クバカリデ、又次ニ土ゲレバ上ルモノデス、
  際限ハナイト思ヒマス、サウ云フコトニ付テモ
  此處デ御意見ヲ承ラウトハ思ヒマセヌガ、根
  本方針ヲシツカリ立テテ、統制ナラ統制ノ續
  クコトヲハツキリ認識セシメ、誤解ノナイヤ
  ウニシテ、サウシテ政府ガ方針ヲ一ツ示シ
  テ戴キタイト思ヒマス、完全ナ自由主義經
  濟時代デハ、價格ノ高低ト需要供給ノ關係
  デ以テ國民經濟作用ノ調節ガ行ハレテ
  居ツタノデス、ソコデソレニ依ツテ
  自然ニ價格ガ上ツテ行ケバ增產サレテ行ク、
  此ノ狀況ヲ御考ニナツテ居ラツシヤツテ、
  價格ガ上ツタラ增產スルダラウ、併シソレ
  ハ完全ナ自由主義經濟ノ下ニ於ケル所ノ經
  濟ノ現象デアリマス、所ガ今日ノヤウナ統
  制ガ半バ行ハレテ居ル所ノ、卽チ計畫經濟、
  管理經濟時代ニ於テハ、經濟ノ調節作用ハ
  價格カラモウ離レテシマツテ居マス、經濟
  ノ調節作用ハ何ニ依ツテ行ハレルカト言ヘ
  バ價格ニ依ツテ支配サレル時代デハナイ
  ニモ拘ラズ、價格ニ依ツテ生產ヲ引上ゲ、
  生產ヲ「コントロール」ナサラウト云フ御
  考、其ノ政策ガ既ニ前內閣、前々內閣カラ
  間違ツテ居ルノデハナイカ、要スルニ低物
  價政策ヲ支持ナサラウト思フナラバ、サウ
  シテ生產擴充ヲナサラウト思フナラバ、生
  產擴充ハ物價ヲ引上ゲテモサウハ行ハレマ
  セヌ、價格ヲ守ラウトスルナラバ他ニ方法
  ガアル、自由主義經濟ヲ大イニ修正ナサラ
  ナケレバナラヌト思フ、然ルニ政府ハ依然
  トシテ自由主義經濟時代ノ價格、構成ニ依
  ツテ總テヲ論ジ、總テヲ計畫シテ居ラレル
  コトハ政策上ノ矛盾デハナイカト思フ、
  ソレデハドウスルカト云ヘバ、私ハ商相ノ
  御考ヲ承リタイノデアリマスガ、今日國家
  管理ハ不完全ナガラ半バ行ハレテ居ル、此
  ノ點急ニハ行カヌト仰シヤルカモ知レマセ
  ヌガ、モウ少シ管理ヲ强化シテ行カナケレ
  バ、到底物價政策ハ保タレヌモノデアルト
  思フノデアリマス、ソレニハ先ヅ從來ノ價
  格バカリニ偏重ナサレタ所ノ御考ヲ御捨テ
  ニナリ、生產ノ規制ト云フコトニ、全力ヲ
  御擧ゲニナルコトガ必要デアルガ、是ハ商
  工大臣モ御考ニナツテ居ルヤウニ思ヒマス、
  ソレカラ現在ハ消費ガ無統制デアル、ソレ
  デスカラ價格ハ上ツテ來ル、此ノ消費ニ付
  テ思切ツタ大統制ヲナサラナケレバナラ
  又、所ガ切符制度トカ何トカ言ツテ議論バ
  カリシテ居ツテ實行ハセヌ、色々難カシイ
  コトガアル、サウ簡單ニハ行カナイト仰シ
  ヤルカモ知レヌガ、モウ戰爭ガ始ツテカラ
  四年モ經チマス、此ノコトガ初メカラ政府
  ニ分ツテ居ツタラ出來タト思フ、今言ツテ
  モ仕方ガナイガ、考ヘテ居ラナカツタカラ
  出來ナイノデス、生活ノ基本調査ハ各國デ
  モヤツテ居リ、英國ノ如キハ最近更ニ大々
  的ノ消費統制ニ乘出シテ、大統制ヲシヨウ
  トシテ居ルコトガ、最近ノ「ロンドン·タイ
  ムス」ニ書イテアリマス、自由主義經濟萬能
  ノ英國ニ於テスラモ非常ナル決意ヲ示シテ
  居マス、又獨逸ノ如キハ何ヲヤルカ分リマ
  セヌガ、今度更ニ大々的ノ經濟方針ヲ決定
  シタサウデアル、アノ經濟統制ノ上ニ更ニ何
  ヲヤルノカ、是ハ「ニユーヨーク·タイムスㄴ
  ニ書イテアルノデ何ダカ分ラヌガ、恐ラク
  相當思切ツタ消費其ノ他ノ規正デアラウト
  思フ、斯樣ニシテ戰時經濟ヲ保ツテ居ルガ、
  日本ハ經濟組織ニ於テ獨逸其ノ他トハ違ヒ
  やく、サウシテ戰爭ノ程度カラ言ツテモ違
  フカラ、ソンナニ無暗ニヤル必要ハナイガ、
  今ノヤウナユルフンノ狀態、錯覺ノ經濟狀
  態デ、左ノ方ヲ押ヘルベキヲ右ノ方ヲ押ヘ
  テ、ソレデヤツテ行カウトシテモソレハ駄
  目デス、ソレデハ到底國民ハ經濟生活ノ安
  定ヲ得ルコトハ出來ナイ、ソコデ消費ノ指
  導割當ヲ徹底的ニオヤリニナル必要ガアル
  デハナイカ、サウシテ生產ノ規制ヲヤリ、
  消費ノ指導割當ヲ爲スト同時ニ、配給統制
  ニ付テ極力統制ヲ强化シテ戴キタイ、此ノ
  統制强化ハ避クベカラザルモノデス、若シ
  此ノ强化ヲ徹底スレバ物資ノ配給ハ圓滑ニ
  行クノダト云フコトヲ國民ニ徹底セシメテ
  戴キタイ、所ガ國民ハ之ニ付テ非常ニ間違
  ツタ考ヘ方ヲシテ居ル、一例ヲ申上ゲレバ、
  或ル自動車ノ運轉手ガ、政府ガコンナ統制
  バカリヤルカラ、吾々ニ「ガソリン」ガ來ナ
  イノダ、打棄ツテ置イテ吳レレバ、ナイナ
  ラナイデ宜イ、石油ガ一シカナイナラ一シ
  カナイト云フコトヲ示シテ吳レレバ、戰爭
  中ダカラ吾々ハ滿足スル、サウシテ自由ニ
  シテ置イテ貰ヒタイ、サウ云フコトヲ云ツ
  テ居マシタ、國民ハ不滿ヲ持ツテ居リマス、
  是ハ統制ニ對シテ國民ガ錯覺シテ居ルノデ
  ス、之ニ對シ私ハ言ツタ、若シ自由ニシテ
  置イタナラバドウ云フ結果ニナルカ、ソレ
  デハ價格ガ上ツテ行クデハナイカ、君等金
  ヲ持ツテ居ナイ者ノ車ハ動キハセヌゾト言
  ツテ說明シタガ、サウ云フ點ニ付テモ商工
  大臣ハ、ドウシテモ配給統制其ノ他ヲモツ
  ト强化シテ行カナケレバナラヌト云フナラ
  バ、其ノ方針ヲハツキリ示シテ戴キタイ、
  又ソレヲ政策ノ上ニモ現ハシテ戴キタイ、
  今日實例ハ他ニモ澤山アルガ、砂糖ニ一例
  ヲ取ツテ申上ゲレバ、商工省ハ從來ノ
  機構ヲ尊重シテ貰ヒタイト云フコトヲ、
  砂糖ノ業者ニ言ツテ居ラレル、サウシテ
  從來ノ機構トハ何ダト言ヘバ、會社カラ
  貿易商、ソレカラ卸賣業、斯ウ云フヤウナ
  機構ヲ言フ、此ノ機構ヲ崩サナイデヤツテ
  吳レ、商工業組合ヲ設ケテ、ソレガ仕込ヲ
  ヤルコトヲ認メナガラ、ソヲ止メテ吳レ、
  サウナルトドウナルカ、結局小賣業者ニハ行
  カナイ、サウシテ大キナ菓子屋トカ何カニ
  行ツテシマフ、菓子屋ハ砂糖デ賣レバ損ヲ
  スルケレドモ、菓子ニシテ賣レバ幾ラデモ
  高ク賣レル、ダカラソチラヘ持ツテ行ツテ
  シマフ、此ノ際國民ノ生活ヲ第一ニシタ、
  基本トシタ配給統制ヲハツキリナサレバ、
  ソレハサウハナラナイ、闇取引ハ澤山行ハ
  レテ居ル、ソレハ何ダト言フト、此ノ頃ハ
  公債ニ投資スルヨリモ、銀行ニ預ケルヨリ
  モ、郵便貯金ニ依ルヨリモ、物ヲ買ツタ方
  ガ宜イ、金カラ物ヘト云フノハサウ云フ風
  ニ利用サレテ居ル、藥ナンカ澤山例ガアリ
  マスガ、一々申上ゲマセヌ、非常ニ澤山「ス
  トック」ヲ持ツテ賣買シテ居ル、其ノ配給ニ
  付テハ國民ノ生活必需ト云フ目標ヲ等閑視
  シテ一向配給ノ統制ヲ强化ナサラナイ、先
  ヅ第一ニ國民ノ生活安定ト云フコトニ、配
  給ノ基調ヲ置イテ配給統制ヲ强化シテ戴キ
  タイモノデス、サウシテ一面ニ於テハ闇取
  引ノ大キナモノガ皆逃レテシマフ、金融資
  本家ノ資金調整ト言ツテモ、サウ云フ闇取
  引ニ對スル所ノ資本ニ對シテハ、金融家ノ
  壓迫ノ爲ニ其ノ取締ヲナサラヌ、サウシテ
  大キナ闇取引ガ公然ト行ハレテ居ル、ソレ
  ニ對シテ何等ノ方法ヲナサラヌ、サウシテ
  引張ラレル、饂飩ヲ十錢ノヲ十二錢ニ賣ツ
  タカラト云ツテ引張ラレル、ソレガ、何千
  ノ國民ノ怨嗟ノ的ニナル、斯ウ云フヤウナ
  政策デハ迚モ駄目デス、要スルニ此ノ前モ
  商工大臣ガ言ハレタヤウニ消費統制ト云フ
  コトニ全力ヲ置イテ、其ノ統制ヲ强化ナサ
  レバ物價ハ維持出來ル、若シ之ヲ中途半端
  ナコトヲナサレバ、幾ラオヤリニナツテモ
  段々上ツテ行ク、低物價政策ハ維持出來ナ
  イ、如何ニ御考ニナリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=12

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• 013・藤原銀次郎

  ○藤原國務大臣　御說ニ對シマシテ御尤モ
  ナ例ガ非常ニ多イト存ジマス、ソレデ少シ
  長クナツテ御氣ノ毒ノヤウデアリマスガ、
  政府トシテモモウ少シ詳シク所信ヲ述ベテ、
  御諒解ヲ得タイト存ジマス
  先ヅ以テ九·一八ノ「ストップ」令ヲ出シテ
  以來今日ニ至リマシテ、生產費ヲ償ハナイヤ
  ウナ商品ガ大分アラウト存ジマス、ソレデ
  アリマスカラ、其ノ生產ヲ增加スルト云フ
  コトハ是非必要デアル、此ノ生產ヲ增加ス
  ル爲ニ適正價格ヲ設ケテ、サウシテ其ノ結
  果物價ガ上ツテ來ル、其ノ物價ガ上ツテ來
  ルノハ、唯資本家ノ利益ニナルノミデアツ
  テ決シテ增產ノ目的ニハナラナイデハナ
  イカト云フ御趣意ハ、一應ハ御尤モデアリ
  マスガ、今日ノ狀態ニ於キマシテハ、卽チ
  商品ガ第一ニ資材ヲ得ルコトガ中々困難デ
  アリマス、其ノ次ニハ勞力モ段々缺乏シテ
  居リマス、其ノ次ニハ燃料トカ動力トカ云
  フモノモ段々缺乏シテ參ツテ居リマシテ、
  サウ云フモノガ相絡ミ合ツテ、一面ニ於
  テハ生產費ヲ償フコトガ出來ナイト云フ
  現象ヲ呈シ、一面ニ於テハ生產費ハ償フ
  ケレドモ、資材、勞力、燃料、動力等ヲ得
  ルコトガ出來ナイガ爲ニ增產ガ出來ナイ、
  ソレデ國民ハ非常ナ不自由ヲシテ居ルト
  云フモノガ中々多イノデアリマス、之ヲ
  一々調ベテ見ルト中々サウ云フモノモ多イ
  ノデアリマスルカラ、必シモ値段ヲ上ゲレ
  バ直グニ增產ガ出來ルト云フコトヲ考ヘテ
  居ルノデハナイノデゴザイマス、生產費ヲ
  償ハナイヤウナモノニ對シテ、サウシテ國
  民生活ニ必要ナモノハドウシテモ一面ニ於
  テハ資材、勞力、燃料、動力トカ云フモノノ供
  給ヲ圓滑ニシテヤルト同時ニ、ソレヲ供給シ
  テヤツテモ、尙且ツ生產費ヲ償ハナイト云フ
  場合ニ、其ノ値段ヲ上ゲテ行カウト云フノガ
  苦心ノアル所デアリマス、サウ云フ譯デアリマ
  スルカラ、此ノ適正價格ヲ設定シタ結果ハ、
  高物價ヲ次ニ認メタコトニナツテ、低物價
  政策ガ根本カラ覆ヘルト云フコトニハナラ
  ナイト存ジテ居リマス、又サウ云フコト
  ガアツテハ相成リマセヌカラ、是ハ何處マ
  デモサウ云フ方針ヲ以テヤツテ行キタイ、
  卽チ言換ヘレバ道家君ノ只今御說明ニナリ
  マシタ生產ノ規整ト云フモノガ、玆ニアル
  ノデアリマシテ、其ノ點ニ於テハ道家君ノ
  御指摘ニナツタ御方針ト、政府ノ方針ガ略、〓
  一致シテ居ルト申シテ宜カラウト思ヒマス、
  サウ云フ風ニシテ生產ヲ規整シテ行キタイ
  ト云フノデアリマス
  次ニハ消費ノ統制デアリマス、是ハ只今
  御話ノ通リ其ノ主義ニ於テハ道家君ノ御指
  摘ニナリマシタ通リニ、私モ考ヘテ居リマ
  ス、其ノ實情ハ私ヨリモ道家君ノ方ガ能ク
  御承知デアリマスカラ、諄ク申上ゲナイデ
  モ御承知デアリマセウガ、切符制度ヲ施行
  シテ、サウシテ國民ニ消費ノ節約ヲサセ、
  消費ノ規整ヲ强行スルト云フコトハドウシ
  テモシナケレバナラヌト思ヒマス、今後ニ
  於テ統制ガ强化セラレレバセラレル程、サ
  ウ云フ制度ヲ設ケテ消費ヲ規整スルコトハ
  必要ト考ヘマスガ、今直チニ切符制度ヲ
  今日施行シテ居リマス所ノ切符制度ノ成績
  ヲ振返ツテ見マスレバ、切符制度必ズシモ
  良好ノ結果ヲ呈シテ居ルトハ思ツテ居リマ
  セヌ、切符制度ヲ施行シテ却テ闇取引ガ自
  由ニ行ハレタリ何カシテ、消費者ニ非常ニ
  迷惑ヲ掛ケテ居ルト云フヤウナ實例モ、往
  往承知シテ居ルノデアリマシテ、ドウシテ
  モ生產品ノ貯藏ヲ殖ヤシテ、生產ヲ多クシ
  テ、サウシテ然ル後ニ切符制度ヲ施行スルト
  云フコトデナイト、今日ノヤウニ生產ガ少
  クテ、サウシテ供給ガ少イノニ切符制度ヲ
  施行スルト云フヤウナ場合ニ於キマシテ
  ハ、却テ切符制度ノ爲ニ惡イ結果ヲ來シテ
  居ルト云フヤウナコトニ相成ツテ居ル實例
  モアリマシテ、是ハ道家君モ能ク實情ヲ御
  承知ノコトト存ジマス、ソレ故ニ切符制度
  ト云フモノハ、將來ニ於テ施行シナケレバ
  ナラヌ時ガ來ルデアラウト思ヒマスガ、ソ
  レニ對シテハ切符制度ヲ施行シテ、是ガ圓
  滿ニ行ハレテ、國民ヲシテ强制的ニ消費節
  約ヲ實行セシメルコトガ出來ル確信ヲ持ツ
  テ、始メテ切符制度ヲ施行スルト云フコトガ
  宜イノデハナイカト思ツテ、實ハ其ノ切符
  制度ニ付テハ今愼重ニ〓究考慮シテ居ル次
  第デアリマシテ、此ノ切符制度其ノモノニ
  反對シテ居ル譯デハアリマセヌカラ、ソレ
  モドウゾ御承知願ヒタイ
  其ノ次ニ配給統制ノ强化ハ、是ハ全然御趣
  旨ト同ジデアリマシテ、總テ今日斯ウ云フ
  時局ヲ乘切ツテ國民ニ節約ヲ强ヒテ、サウシ
  テ一面ニ於テハ生產費ヲ下ゲ、低物價政策
  ヲ强行シ、一面ニ於テハ消費ノ節約ヲ强行
  シテ、サウシテ統制ヲ强化シテ參ルニハ、ド
  ウシテモ此ノ配給機構ト云フモノハ强化シ
  テ行カナケレバナラヌ必要ヲ認メテ居リマ
  シテ、其ノ趣旨ニ於テハ只今ノ御說ノ通リデ
  アリマシテ、著々トシテ其ノ配給統制ノ改善
  ヲ圖リツツアルノデアリマスガ、ソレガ動モ
  スレバ實情ニ卽シナイヤウナモノガ出來マ
  シテ、只今御指摘ニナリマシタヤウニ、政府
  ハ何ヲシテ居ルンダト云フヤウナ風ニ御考
  ニナルヤウナコトニ相成ツテ居ルモノモア
  リマスルコトハ、如何ニモ遺憾デハアリマス
  ルガ、狙ヒ所ハドウシテモ此ノ配給統制ヲ强
  化シテ、サウシテ此ノ統制經濟ヲ圓滿ニ遂
  行シテ參リタイト云フノガ政府ノ方針デア
  リマス、之ヲ要スルニ今自由經濟カラ統制
  經濟ニ移リ變ツテ居ルノデアリマスカラ、
  有ユル國民生活ノ總テノ消費ニ對シテ、
  朝一タニ之ヲ机ノ上デ議論スルヤウニ、旨
  ク徹底的ニ拍手喝采ヲ得ルヤウナコトニ努
  メテハ居ルシ、又ソレガ目的デハアリマス
  ケレドモ、中々サウ旨ク是ガ實行セラレナ
  イデ、アツチヘ間ヘコツチヘ問ヘシテ此處
  ニ至ツテ居ルノガ、今日ノ現狀デハナイカ
  ト存ジテ居リマス、ソレ故ニ此ノ決メ方、
  玆ニ至リマシテハ是ハ兎ニ角議論ノ時代デ
  ハナイ、色々議論ヲシテ居ル時代デハナ
  イ之ヲ實行シテアツチヘ問ヘコツチヘ閊
  ヘシタモノヲ適當ニ處理シテ行ツテ、サウ
  シテ之ヲ圓滿ニ遂行シテ行ク、サウシテ此
  ノ遷リ變リヲ上手ニヤツテ行クト云フコト
  ガ、今日最モ必要ナ政策デハナイカ、斯ウ
  思ツテ居リマス、政策其ノモノニ付テハ、
  政府ニ根本ノ方針ガナイトカ云フヤウナ御
  叱リモアルヤウデアリマスケレドモ、私ハ
  サウデハナクテ、ソレハアルノダケレド
  モ、實行スル時ニ當ツテ非常ニ混亂ヲ來シ
  テ、旨ク實行ガ出來ナイノダカラ、之ヲ旨ク
  實行シテ、サウシテ國民ノ苦痛ヲ出來ルダ
  ケ少クシテ行キタイト云フノガ、私ノ本當
  ノ精神デアリマシテ、本當ニサウ云フコト
  ヲ自分ノ念願トシテ、痩腕デ出來ルカ出來
  ナイカ知リマセヌケレドモ、出來ルダケノ
  コトハ盡シテ此ノ時局ヲ乘切リタイ、斯ウ
  思ツテ居リマスルカラ、其ノ點ハドウゾ御
  諒察ヲ願ヒタイト存ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=13

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• 014・堀切善兵衞

  ○堀切委員長　是ハ昨日大藏大臣ニモ一寸
  御尋シタコトニ關聯シテ居ル問題ニナリマ
  スガ、商工大臣ガ物價ヲ高クシマイトシテ
  極力御盡瘁ニナル、是ハ洵ニ吾々多ト致シ
  マス、唯ドウモ是ハ商工大臣ガ何ボ努力ヲ
  ナサツテモ、詰リ商工大臣ノ力ノ及バザル
  所ニ大イナル原因ガアリハセヌカ、又商工
  省デ物價問題ハ自分ノ方デ解決シテヤルノ
  ダト云ツテ御取込ニナツテ何ボ努力ナサレ
  テモ、外カラ大キナ騰貴ノ原因ガ來ルノデ
  ハドウ云フモノカ、到底力ノ及バザル所ニ
  原因ガアリハセヌカト思ハレマスガ、商工
  大臣ハ、イヤ自分ガ努力スレバ、商工省ダ
  ケデ立派ニ是ハヤツテ見セルト云フ御考ガ
  アリマスカドウカ、之ヲ伺ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=14

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• 015・藤原銀次郎

  ○藤原國務大臣　極メテ適切ナ御尤モナ御
  尋デアリマシテ、此ノ機會ニ私ノ所信ヲ申
  上ゲマシテ、御參考ニ供シテ御諒解ヲ得テ
  置キタイト存ジマス、只今委員長ノ御尋ノ
  通リニ、是ハ主トシテ商工省ノ問題デアリ
  マスケレドモ、商工省ノミノ力ニ依ツテハ、
  是ハドウシテモ旨ク行クトハ思ヒマセヌ
  是ハ內閣ノ總體ノ力ヲ以テ、政府ノ諸機關
  ガ全部一致ノ步調ヲ取ツテ行カナケレバナ
  ラナイト思ヒマス、私ノ考デハ政府ノ諸機
  關ヲ總動員シテ、一致ノ步調ヲ取ツテモ是
  ハ中々困難ナ問題ト思ツテ居リマス、是八、
  容易ニ出來ルコトデハナイト思ツテ居リマ
  ス、國家ヤ內閣ガ一致シテ此ノ方針ヲ執ル
  コトガ、第一先決ノ最モ必要ナ問題デアリ
  やっと、其ノ次ニハ商工省ガ其ノ當局トシテ、
  最モ渾身ノ努力ヲシナケレバナラヌト思ヒ
  マス、其ノ次ニハヤハリ國民ニ之ヲ理解シ
  テ戴イテ、サウシテ國民ノ協力ヲ得ナケレ
  バナラヌト思ヒマス、サウシナケレバ政府
  ガ如何ニ鯱鉾立チヲ致シマシテモ、國民ガ
  之ヲ了解シ、此ノ趣旨ヲ尊重シテ政府ヲ援
  ケル、此ノ時局ヲ乘切ル爲ニハ是ヨリ外ニ
  仕方ガナイ、斯ウ云フコトニナツテ協力シ
  テ戴カナケレバナラヌト思ヒマス、就キマ
  シテハ之ヲドウ云フ風ニシタラ宜カラウカ
  ト云フノデ、政府ノ內部ニ於キマシテモ色
  色協議ヲ致シマシテ、遂ニ物價對策委員會
  ノヤウナモノヲ政府ノ內部ニ、內閣ノ下ニ
  設ケマシテ、根本的對策、卽チ先刻モ申シ
  マシタ通リニ、物價ト云フ一ツノ各商品別ニ
  付テノ問題モ、相當ニ面倒ナ問題ガアリマ
  スケレドモ、其ノ商品別ノヤウナ小サイ問
  題デナクシテ、モツト大キナ問題、一例ヲ
  申シマシタナラバ兌換劵ヲ增發シテ購買力
  ヲ段々ニ誘ツテ行クト云フヤウナ、斯ウ云
  フ財政政策ト云フモノガ、物價ニ非常ニ影
  響ガアリマスルカラ、サウ云フ種類ノ根本
  問題ノ大問題ガ澤山アリマスルカラ、サウ
  云フ問題ヲ審議シテ決定スル爲ニ、物價對
  策委員會ト云フヤウナモノヲ設ケマシテ、
  ソコデ民間ノ聲モ聽キ、政府ノ意見モ述ベ
  テ、サウシテ根本的ノ政府ノ政策トシテ大
  體ノ大方針ヲ決定シテ、其ノ大方針ノ下ニ
  於テ各商品ハ商品別ニ、只今申上ゲタヤウ
  ニ適正價格ヲ設ケルトカ、配給機構ヲ改正
  スルトカ、消費ノ節約ヲドウスルトカ、切符
  制度ヲドウスルトカ云フヤウナ、サウ云フ
  問題ニ於キマシテハ、是ハ主トシテ商工省、
  或ハ農林省ト云フヤウニ、關係ノ問題モ
  無論アリマスケレドモ、商工省ガ大部分ノ
  問題デアリマスカラ、商工省ハ之ヲ背負ツ
  テ立ツテ、サウシテ內閣ノ決定シタ所ノ大
  方針ト、又商工省ガ其ノ方針ニ依ツテサウ
  云フ問題ヲ處理シテ行ク、其ノ處理スル方
  法ハ度々申上ゲタ通リニ、物價ニ關係シタ
  問題デ、國民生活ニ關係シタ問題デアリマ
  スカラ、出來ルダケ敏速ニ處理シテ、サウシ
  テ出來ルダケ此ノ穴ヲ塞イデ行ク、要ハ國
  民生活ニ安定ヲ與ヘテ、國民ノ苦痛ヲ出來
  ルダケ少クスルト云フヤウニシテ、之ヲ低
  物價政策デ乘切ルヨリ外ニハ方法ガナイ、
  ダカラ是デ一ツヤツテ見タイト、斯ウ云フ
  積リデ居リマスカラ、ドウゾ御諒承願ヒマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=15

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• 016・道家齊一郎

  ○道家委員　商工大臣ノ御誠意アル御答辯
  ニ對シテ、國民ハ恐ラク御信賴申スデアラ
  ウト私ハ信ジマス、併シナガラ果シテ其ノ
  政策ノ結果ガ國民ガ滿足シ、安心スルヤウ
  ナモノニナルカドウカト云フコトハ、多少
  ノ疑問ヲ持ツテ居リマス、併シ御努力ニナ
  ツテ居ルト云フコトハ、恐ラク國民モ認メ
  ルダラウ、唯ソコデ更ニ一言申上ゲタイコ
  トハ生產ガ增加シタラバ切符制度ヲヤツ
  テモ宜イ、今ヤツテモ物ガナイノデアルカ
  ラト、斯ウ仰ツシヤルノデスガ、是ハ生產ガ
  增加シテ來レバモウ切符制度ハ要ラナイノ
  デス、所ガナイカラヤラナイト言フ、此ノ
  切符制度ニモ色々障碍モアルノダト云フコ
  トモ、御說ノ通リデアリマス、現ニ「ガソリ
  ン」ノ切符制度ナドハ、切符ガアツテモ現物
  ガナイ、ソレヲ仰ツシヤルノデアラウト思
  フ、併シナガラアレガ切符制度ガナカツタ
  タラ、尙ホ混亂シテシマツダデアラウト思
  フ、デスカラドウシテモサウ云フ切符制度
  ヲ御考ニナツテ居ル時期デハナイ、世界ノ
  政策カラ言ツテモ、獨逸ヤ英吉利ヲ眞似ス
  ルノデハナイガ、兎ニ角經濟政策ニハ或ル
  共通點ガアリマスカラヤハリ參考ニナル、
  其ノ點カラ言ツテモモウ外ニ方法ハナイ、
  切符制度ハ國民ノ消費ノ調査ニモナル、是
  ガ實行サレテ、サウシテ品物ガ十分ニナイ
  トスレバ、ドレダケナイカト云フコトガハ
  ツキリシテ來ル、サウシテ又取締ノ上ニ於
  テモ、普通ノ自由主義經濟デ以テ今マデ育
  ツテ來タ商人達ハ營利ト云フコトガ目標デ
  スカラ、闇取引ヲスルコトヲ別ニサウ罪惡
  トハ思ツテ居ラナイ、先程申上ゲタヤウニ
  時勢ガ動イタト云フコトヲ認識シテ居ラヌ、
  政府モ亦ハツキリシタ方針ヲ示サナイ、ダ
  カラ商人達ハサウ惡イ事デハナイト思ツテ
  ヤツテ居ル、今ノ內ニ物ヲ買ツテ置クコト
  ハ投資ヲスルト同ジコトデアルカラト云
  フノデ、澤山買ツテ置ク、サウスルト隣リノ
  者ガ來テ、君分ケテ吳レト言ツテイヤデモ
  默ツテ持ツテ行ツテシマフ、今ハ金カラ物
  ノ時代デアル、サウシテ是ガ街カラ街へ傳ツ
  テ行ク、サウ云フ觀念デ切符制度ヲヤラシテ
  モ仕方ガナイ、是ハ切符ヲ賣買シテ居ルト云
  フヤウナコトカラシテモ國民ノ考ヘ方ガ違
  フ、國民ノ不正ニ對スル認識ガ違ツテ居リ
  マイ、今日最モ强調サレナケレバナラヌモ
  ノハ時勢ヲ認識シテ、此ノ戰爭ノ目的ニ向
  ツテ邁進スルコトガ何ヨリ必要デアル、ソ
  レニ對スル不平不足トカ、不滿トカ云フコ
  トハ成ベク抑ヘラレル所マデ抑ヘテ行カ
  ナケレバナラヌ、其ノ方法ニ於テ、又其ノ
  意味ニ於テ、ドウシテモ實施スルコトガ必
  要デアル、物資ガナイカラ實施スル必要ガ
  アル、サウシテ如何ニ消費ヲ統制スルニ付
  テモ切符ヲ通ジテ見ナケレバナラヌ、切符
  ヲ出シタカラ其ノ儘旨ク行クトハ私ハ信
  ジナイ、又左樣ナモノデハアリマセヌカラ、
  一日モ早ク御實行願ヒタイ、而モ生活必需品
  ニ對シテハ、大體必需的ノ最小限度ノ品ニ
  對シテ先ヅ實行スル、サウシテ家庭ニ安心
  ヲ與ヘテ戴キタイ、病人ヤ其ノ他ノ者ガア
  ツテモ炭ガ焚ケナイト言ツテ苦勞ヲシテ居
  ル、ソレニ對シテモ安心ヲ與ヘルヤウニシ
  テ戴キタイ、要スルニ政府ハ統制ヲ强化シ
  テ行カナケレバ、ドウシテモ此ノ經濟政策
  ハ統制デナクテハイケナイノダト云フコト
  ヲハツキリ認識セシメナケレバナラヌ、サウ
  シテ先ヅ第一ニ國民ノ生活安定上ノ必需品
  ノ配給ヲ第一位ニ置クヤウナ方針デ行ク、
  ソレデ足リナケレバ皆ガ消費節約ヲスルヨ
  リ外ナイ、兎ニ角切符制度ト云フモノハハ
  ツキリシタ總テノ標準ヲ與ヘルモノデアリ
  マスカラ、ソレヲ成ベク早ク斷行シテ戴キ
  タイ、サウシテ統制ハ强化スルナラ、必需
  品ヲ成ベク第一主義ニシテヤル、例ヘバ砂
  糖ガ家庭ニ行カナイデ、大キナ菓子屋ニ行
  ツテシマフト云フヤウナノハ本式デハナイ
  ト思ヒマス
  ソレカラ取締ニ付テモウ一ツキ聽タイノ
  ハ、小サイ取締ハ警告的ニヤツテ、再三ヤ
  ツテモ聽カナイ者ハ留置場ニ入レルノモ宜
  イカモ知レナイガ、今ノハアベコベデス、
  小サイ者ヲグン〓〓ヤラレテ居ル、ソレヨ
  リモ、金カラ物ヘト云フヤウナコトデ大玉
  ノ闇取引ヲヤル者ニ對シテハ斷乎タル處置
  ヲ執ルノダト云フコトヲ政府ガハツキリシ
  テ戴キタイ、サウシテ町會トカ、市町村ヲ通
  ズルナリ、何等カノ方法ヲ以テ方針ノ徹底
  スルヤウニヤツテ戴キタイ、今日ハ「ラヂオ」
  ガ戰時「ラヂオ」ノ用ヲシテ居ラナイ、モツト
  戰時ニ於テハ活躍スベキモノガ、何ヲヤツ
  テ居ルカト言ヘバ、下ラナイ事ニバカリ澤
  山時間ヲ使ツテ、肝腎ナ「ニュース」トカ何
  トカ云フコトニハ餘リ使ハナイ、宣傳機關、
  國民ニ知ラシムル機關ト云フモノハ活躍シ
  テ居ラナイ、サウシテ情報部位ノモノデ糊
  塗シテ居ル、今日ハ宣傳省ヲ設ケテ居ル世
  ノ中デアリマス、獨逸ノ眞似ヲスル譯デハ
  ナイガ、宣傳省ト云フ名前ガ惡ケレバ名前
  ヲ變ヘレバ宜イ、要スルニ民衆ガ理解シナ
  イ所ノ政治、經濟デハ、到底旨ク行クモノ
  デハアリマセヌ、ダカラ此ノ點ニ於テ、機
  構ノ上ニ於テモ缺ケテ居ルノデアリマス、
  何等カノ方法ヲ以テ、此ノ闇ハ嚴罰主義ダ
  ト云フコトヲハツキリ仰シヤレバ、仰シヤ
  ルダケデ既ニ闇取引ノ可ナリノ部分ト云フ
  モノハ阻止出來ルト思フ、而モ其ノ處置ニ付
  テハ同情ヲ以テヤルヤウナ方針ニ、內務當
  局ニモ御願シタイノデアリマスガ、內務大
  臣ハ如何ニ御考ニナルカ、商工大臣ノ御答
  辯ニ續イテ御答願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=16

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• 017・藤原銀次郎

  ○藤原國務大臣　道家君ノ只今ノ御注意
  ハ、政府當局ニ向ツテノ御警告、御忠告トシ
  テ、謹ンデ拜聽致シマシテ、御趣意ニ對シテ
  ハ全ク御尤モナ御說ト拜聽致シマシタ、此
  ノ複雜多岐ニ亙ツテ居リマス統制經濟ヲ運
  用致シマスニ際シテハ、只今御指摘ニナリ
  マシタヤウナ弊ノ起ラナイヤウニ、若シ其
  ノ弊ガアリトスレバ、サウ云フコトヲ成タ
  ケ少クスルヤウニ、是ハ渾身ノ努力ヲ盡シ
  テ行クヨリ外仕方ガナイコトデアリマスル
  カラ、商工大臣ト致シマシテハ部下ヲ能ク
  督勵致シマシテ、總テ御指摘ニナリマシ
  タヤウナ過チノナイヤウニ、其ノ過チヲ少
  クスルヤウニ精々努力致シタイト存ジテ居
  リマス、又此ノ切符制度ノコトニ付キマシ
  テハ、御趣旨ハ如何ニモ御尤モデアリマシ
  テ、其ノ通リデアリマスガ、今政府ノ一番
  苦心致シテ居リマスノハ、切符制度ヲ施行
  スル前ニハ商品ノ貯藏、餘裕ト云フモノガ
  ナケレバイケナイノデアリマス、卽チ例へ
  バ「マッチ」ニ付テ一例ヲ申上ゲマスレバ
  「マッチ」ノ如キハ切符制度ヲ施行スルノハ
  一番簡單デ、一番好イ商品デハナイカト云
  フ狙ヒヲ持ツテ居リマシテ、サウ云フコト
  ヲ色々〓究シテ居リマス、併シナガラ其ノ
  「マッチ」ノ切符制度ヲ施行スルノニハ、「マッ
  チ」ノ若干ノ貯藏ト云フモノガアツテ、
  各小賣店ナラ小賣店、販賣店ナラ販賣店ニ
  若干ノ貯藏ヲ先ヅ以テ給與シテ、ソレカラ
  切符制度ヲ施行スルト云フコトニナルト、
  是ハ圓滿ニ行ハレマスケレドモ、今ノヤウニ
  若干ノ貯藏モナクテ、サウシテ切符制度ヲ
  施行致シマシタナラバ、其ノ切符ヲ持ツテ
  行ツテモ何處ノ「マッチ」屋デモ「マッチ」ヲ
  手ニ入レルコトガ出來ナイト云フコトデ、
  却テ國民ニ迷惑ヲ來シハシナイカト云フヤ
  ウナコトヲ恐レテ、實ハ其ノ切符制度ヲ施
  行スルコトヲ斷行致サナイノガ現狀デアリ
  マス、サウ云フ譯デアリマスカラ、道家君
  ノ只今御指摘ニナリマシタコトハ如何ニモ
  御尤デアリマシテ、趣旨ニ於テハ其ノ積リ
  デ努力致シテ居リマスカラ、ドウゾ左樣御
  承知ヲ願ヒタイト存ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=17

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• 018・堀切善兵衞

  ○堀切委員長　道家君、總理ガ御見エニナ
  ツテ居リマスガ、時間モアリマセヌカラ、
  一ツ總理ニ對シテ始メテ戴キタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=18

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• 019・道家齊一郎

  ○道家委員　一寸內務大臣カラ取締ノ方針
  ニ付テノ御答辯ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=19

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• 020・兒玉秀雄

  ○兒玉國務大臣　全然御同感ノ意ヲ表シマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=20

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• 021・道家齊一郎

  ○道家委員　ソレデハ總理ニ御尋致シマス
  ガ、總理ガ國民ヲ指導シテ行カレル上ニ於
  テノ御決意ヲ承リタイト思フノデアリマス、
  今囘ノ稅制改革案ハ、是ハ未曾有ノ大增稅
  ヲ伴ツテ居リマスガ、此ノ改革ハ從來ノ日
  本ノ稅制ノ弊風デアツ夕所ノ、上ニ輕ク下
  ニ重イト云フ形ヲ稍〓是正セントスル傾向
  ハ現ハレテ居リマス、併シナガラ何ト言ツ
  テモヤハリ大衆ニ重イ、サウシテ中小以下
  ノ商業者ニ重課サレテ居ル、ソコデ大衆ノ
  生活ノ上ニ重壓トナツテ來テ居ルノデアリ
  マスガ、殊ニ之ニ對シテ重壓ヲ感ズル者ハ
  「サラリーマン」デアリマス、ソレカラ中小ノ
  商工業者デアリマス、是等ガ如何ナル考ヲ·
  持ツテ居ルカト云フト、物資ガ少ナイト云フ
  ヨリモ配給統制ガ宜シキヲ得ナイカラ、更
  ニ不足ノ倍加サレタ壓迫ヲ感ジテ居リ、之
  ニ對シテ不滿ト不安ヲ持ツテ居ルト云フコ
  トデアリマス、サウシテ闇取引ニ依ツテド
  ンドン物價ハ上ゲラレテ行ク、此ノ頃ノ所
  謂中產階級ト云フ所ハ、殷賑產業ニ依ル成
  金ト言ヒマセウカソレデ稍〓層ガ入レ代
  ツテシマツタ、前ノ中產階級ハ消費節約ヲ
  サセラレテ、サウシテ新シイ階級ガ出テ來
  ク、汽車ニ御乘リニナツテモ、一等ニ乘ル
  客カラ種ガ變ツテ來テ居ル、「デパート」デ
  物ヲ買フ人達モ種ガ變ツテ來テ居ル、料理
  屋ニ來ル客モ、「ホテル」ニ來ル客モ、稍〓客
  種ガ變ツテ來タ、映畫デモサウデス、左樣
  ニ入レ代ツテ來タノデアリマスカラ、日本
  全體トシテハ同ジコトデアリマスケレド
  モ、前ノ階級ト云フモノハ殷賑產業ノ恩惠
  ヲ受ケテ居ナイ、サウシテ是等ハ知識階級
  デアル、是ガ苦痛ヲ忍ンデ居ルノデアリマ
  ス、此ノ事ハ申スマデモナイコトダラウト
  思ヒマス、私ハ此處ニ手紙ヲ持ツテ居リマ
  スノデ、參考ニ一寸讀ンデ見マセウ、澤山
  ノ手紙ガ參リマシタガ、其ノ中デ署名ノナ
  イモノハ問題ニナリマセヌガ、署名ノ
  アルモノヲ讀ンデ見マス、一部ハ增稅ニ
  付テ斯ウ云フ考ヲ持ツテ居リマス、前
  ハ略シマスガ、「昨今議會デ御審議ノ大增
  稅案ハ、結局通過シテ吾々薄給生活者
  竝ニ中小商工業者ノ生活ノ苦トナルモノト
  ハ覺悟シテ居リマスルガ、國ヲ擧ゲテ
  ノ聖戰デアレバ如何ナルコトモ耐エ忍ブコ
  トニ異議ハアリマセヌ、併シ物資ノ缺乏苦
  ニ加フルニ重稅苦ヲ忍バザルヲ得ザル吾々
  「サラリーマン」ノコトヲ御同情ニナツテ御
  審議ヲ願ヒタイ、吾々ハ如何ナル苦痛ニ對
  シテモ決シテ不滿不平ハ申サナイケレドモ」
  是ハ言ツテハイケナイカモ知レマセヌガ、
  「某氏ノ言フ所ヲ考フレバ一理ガアルト思ヒ
  マス、今囘ノ事變ハ吾々ニハ眞否ハ能クハ
  分ラナイケレドモ、何等得ル所ノナキ戰爭
  ニ一家生活苦ノ重壓ニ悶ヘルモノトスレ
  バ馬鹿氣タ話ダ」云々ト云フコトガ書イテア
  ル、ソレカラモウ一ツアリマス、是ハヤハ
  リ增稅ニ付テデアリマス、是ハ名前ヲ申上
  ゲタラ、恐ラクドナタデモ知ツテ居ラツシ
  ヤル方ノ關係者デスガ、ソレガ帝大內ニ於
  ケル所ノ思想問題ヲ論ジテ居ル、是ハ長ク
  ナリマスカラ讀ミマセヌガ、斯ウ云フ講義
  ヲシテ居ラレル、有名ナ人ガヲカシナコト
  デスガ、明治御一新ハ下級武士ト上級武士
  トノ爭ニ過ギナイ、下級武士ガ偶〓皇室ヲ
  戴イタカラ、一君萬民ノコトガ生ジタ、我
  國ノ傳統的云々、ソレカラ日本ノ神話ハ云々
  ト云フコトヲ公然ト言ツテ居ル、增稅問
  題ニ對スル所ノ不平ガアリ、又斯ウ云フ思
  想ガ大學ノ〓授ニ持タレテ居リ、サウシテ
  自由主義ノ思想ガ公然ト論ゼラレテ居ル、
  國民ハ一體ドウシテ宜イカ分ラナイ、然ル
  ニ政府ハハツキリシタモノヲ示サナイ、是
  ハ一二ノ例ニ過ギマセヌガ、私ノ所ニハ色
  色ナモノガ何十通ト來テ居リマズ、中ニハ
  無記名ノモノモアリマスガ、ソンナモノハ
  相手ニシナイトシテモ、斯樣ナ狀況デ、國
  民ハ迷ツテ居マス、增稅ハ已ムヲ得ナイト
  思ヒナガラ、裏デハ不平ヲ持ツテ居ル、ソ
  コデ私ハ獨逸ノ敗戰ノ狀況ヲ讀ミマスト、
  實ニ恐ルベキ原因ガ其處ニアリマシタ、ソ
  レハ何ダト云フト、獨逸ノ國民ハ勝利-
  日本デ言ヘバ戰爭ノ目的遂行ト云フコトニ、
  政府ガユルフンノ爲ニ、全力ガ注ガレテ
  居ラナカツタ、無主義、無定見、無政策ノ爲
  ニ、獨逸ノ國民ハ最後ノ勝利ノ目的ニ對シ
  テ戰フト云フ意思ヲ失ツタ、是ハ「ルーデ
  ンドルフ」ガ言ツテ居ルノデアリマス、我
  國デモ平和ヲ希望スル平和論者ガ、何ノ爲
  ノ戰爭ダ-斯ウシタ一人ノ言葉デハアルガ、
  非常ニ大キナ影響ヲ及ボスモノデアル、是
  ガ國民全體ニ行キ渡ツタ、サウシテ遂ニ獨
  逸政府ハ國民ニ勝利ノ將來ノ目標ヲ與ヘナ
  カツタ、獨逸ノ議會ノ一部モ、國民モ、希
  望スル所ノ强力ナ指導者ヲ缺イテ居タ、殆
  ド無爲無策デアツテ、議員モ國民モ漸次思
  想的ナ〓落ノ道ヲ辿ツテ行ツタ、而モ戰爭
  ニ伴ツテ起ツテ來ル所ノ色々ナ不平不滿、
  物資ノ缺乏等ハ勿論デアリマス、是等ニ對
  スル所ノ政策宜シキヲ得ナイデ、二年三年
  ヲ過ギテ行ツタ、多數ノ課題ニ對シテ何等
  ノ解決ヲ與ヘナカツタ、何等ノ國民ノ行ク
  ベキ道ヲ示サナカツタ、サウシテ獨逸ハ何ノ
  爲ニ戰爭ヲシテ居ルノダト云フコトヲ示サ
  ナカツタ、目標ハ最後ノ勝利以外ニハナイ
  ノダト云フコトヲ說カナカツタ、サウシテ
  遂ニ國民ハドウ云フ考ヲ持ツタカト云フト、
  平和ヲ希望スル、平和ヨリ外ハナイ、斯ウ
  云フコトニナツテシマヒ、又只管自己ノ利
  益ト安全ヲ希望スルヤウニナツタ、是ガ獨
  逸ノ〓糧缺乏ト相俟ツテ、戰爭沒落ノ大キ
  ナ一ツノ原因デアリマス、而シテ革命ガ玆
  ニ起ツタ、吾々ハ斯ウシタ考へ方ガ日本ノ
  國民ニアルトハ思ヒマセヌ、併シナガラ吾
  吾ハ警戒シナケレバナラヌト思フ、政政ト
  シテハシツカリシタ方針ヲ示シテ邁進シテ
  戴カナケレバナラヌ、唯稅ハ取レルノダカ
  ラ取ツテ置ケバ宜イノダ、斯ウ云フ考ヘ方
  ヲシテオ居デニナルト、中小商工業者、「サ
  ラリーマン」ニ擴大サレタカラ、今マデハ
  所得稅其ノ他ノ納稅者ガ百八十何万人デア
  リマシタガ、ソレガ非常ニ增シマス、サウ
  シテソレガ生活ノ重壓ニナル、之ヲ放任シ
  テ置キマストエライ問題ニナラナイトモ言
  ヘマセヌ、私ハ此ノ際政府ニ此ノ事變解決
  ト云フコトニ對シテ認識ガ足リナイ者トカ、
  不徹底ナ者、或ハ懷疑的思想ヲ抱ク者ニ對
  シテハ、斷乎トシテ之ヲ排擊スル所ノ御決
  意ヲ以テ御進ミニナルコトガ、此ノ戰爭目
  的ヲ達成スル爲メ、最モ必要ナコトダラウ
  ト思ヒマス、總理大臣ハ如何ニ御考ニナリ
  マスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=21

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• 022・米内光政

  ○米內國務大臣　只今ノ道家君カラ段々ノ
  御意見ヲ伺ヒマシタ、ドウ致シマシテモ今
  日ノ非常時局ヲ乘リ切ツテ行ク上ニハ、先
  ヅ國論ヲ統一致シマシテ、國民ガ全體トナ
  ツテ此ノ事變目的ノ達成ニ努力ヲシナケレ
  バナラヌト云フコトハ、言フマデモナイコ
  トト考ヘルノデアリマス、只今ノ御話ニ依
  リマシテ、國民ノ中ニハ緊張ヲ缺イテ居ル
  者モ大分アルカラ、之ニ對シテハ政府ハ斷
  乎トシテ「リード」シテ行カナケレバナラヌ
  ノダト云フ仰セハ御尤モデアリマス、御說
  ノ通リデアリマスガ、私ノ見ル所ヲ以テ致
  シマスレバ、全國民ハ大體ト致シマシテ此
  ノ事變目的ヲ理解シ、又事變下ノ國民トシ
  テノ生活態度、心構ヘ、其ノ點ニ付テハ
  大體ニ於テハ遺憾ガナイモノト信ジテ居ル
  次第デゴザイマスルガ、尙ホ政府ニ於キマ
  シデハ是等ノ方面ニ一層工夫ヲ凝シマシテ、
  國民ノ中ノ一員ト雖モ精神ニ弛緩ヲ來シ、
  其ノ結果トシテ先程御指摘ニナリマシタヤ
  ウナ分子ノ無クナルヤウニ、十分ニ努力ヲ
  致シタイト考ヘテ居ル次第テアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=22

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• 023・道家齊一郎

  ○道家委員　首相ノ御答辯御尤モナコトダ
  ト思ヒマス、國民ハ左樣ナ考ヘ方ヲ持ツテ
  居ナイト仰シヤル、私モ同感デアリマス、
  獨逸ガサウデアツタト云フコトニハ御同感
  デアリマセウ、併シナガラ忌憚ナク申上ゲ
  マスレバ、今日ノ政府ノ方針デ行キマスレ
  バ、斷乎トシテオ進ミニナルト言ツテモ、
  國民ハ信賴スルデセウカ、私ハ非常ニ疑問
  ヲ持ツテ居ル、財政ヲ始メ、何等ノ政策
  ノ呈示モナケレバ、御方針モ決ツテ居ラナ
  イヤウデアル、ソレデ國民ガ附イテ行クデ
  ヒヨ「をだ
  アリマセウカ、私ハ其ノ點ヲ疑問ニ思ヒマ
  ス、若シ斷乎タル御決意ガアルナラバ、思
  想上ノ整理ニ於テハ、共產黨ハドン〓〓引
  張ラレマシタ、ソレデ差支ナイト思ヒマス、
  或ル人ハ議會ニ於ケル所ノ言論ハ自由ダト
  言ハレルカモ知レマセヌガ、自由ニモ自ラ
  制限ガアリマス、國家ノ方針ニ對シテ如何
  ナルコトヲ言ツテモ宜イトハ言ヘナイ、ソ
  レハ議會內デ處分スルト云フカモ知レナイ、
  併シナガラ議會內ノミニ於テ放任スベキ問
  題デハナイ、根本的ノ大方針ヲ示シテ、國
  民ハ斯樣ナコトハ間違ツテ居ルノダ、政府
  ハ斯ノ如キ方針デ行クノダト云フコトヲ御
  示シニナラナケレバナラヌ、ソレニ付テ異
  議ガ貴族院等ニアツタガトンデモナイ話デ
  ス、私ハ首相ノ斷乎タル御方針ヲ示シテ戴
  キタイノデス、戰前赤ニ對シテ斷乎タル方
  針ヲ示サレナイカラ、赤ノ蔓延ヲ見タノデ
  ス、私ハ嘗テ文部省デ陛下ガ各私立大學
  ノ總長ニ拜謁ヲ賜ツタ、日本ノ思想ヲ憂ヘ
  ラレテ、何トカシナケレバナラナイト云フ
  取締ノ方針ヲ定メルベク拜謁ヲ賜ツテ、會
  議ガ開カレマシタ、其ノ時私ハ文部省ニ言
  ツタノデス、惡イ者デアツタラハツキリナ
  サラナケレバ、段々蔓延シテ行ク、蔓延シ
  テ置イテソレヲ引張ツタツテ無理ナコト
  デハナイカ、思想上、學問ノ〓究ハ自由ダ
  カラト云ツテ勝手ニシテ置クコトハイカヌ、
  其ノ儘ウツチヤツテ置クカラドン〓〓蔓延
  シテ、サウシテ遂ニ議會ニ代議士ガ出ルヤ
  ウニナツテ、ソレヲ引張ツタノデス、併シ
  ソレデ國民ノ思想ハ非常ナ轉向ヲシマシタ、
  今日ニ於テモ此ノ聖戰ノ目的ガ分ラヌナン
  テ、四年後ニナツテ言フ者ガ、何處ニアル
  カ、ソレハ無責任極マルヂヤナイカ、分ラ
  ナイト云ツテソレデハドウスル、方針ヲド
  ウスルト云フ何等ノ示ス所モナクシテ、サ
  ウシテ無責任ナコトヲ言ツテ、國民ノ言ハ
  ント欲スルコトヲ言フ--何ヲ言ハント欲
  スルノカ、サウ云フ馬鹿ナ思想ガ許セルモ
  ノデハナイ、サウ云フ事ヲウツチヤツテ置
  クベキデハナイト思ヒマス、ソレガ爲ニ貴
  族院ニ於テモ大河內子爵ハ取消サレテ居リ
  マス、之ニ對シテ總理大臣ハ何ト仰シヤツ
  タカト云フト、「誠ニ御同感デゴザイマス、將
  來强ク正シク進ミタイト存ジテ居リマス、尙
  只今縷々政府ニ對シテ御忠告下サイマシテ有
  難ウゴザイマス、謹ンデ拜聽致シマシテ將來
  施政ノ上ニ大イニ參考トシタイト存ジテ居
  リマス」、是ハ私ハ言葉尻ヲ摑ヘテ申上ゲル
  ノデハナイ、總理トシテハ全體ノ答辯ダト
  解釋致シマス、勿論サウ云フヤウナ東洋ノ
  平和トカ、永遠ノ平和トカ、東亞ノ新秩序
  ト云フコトガ分ラナイサウ云フ者ニ對シテ
  謹ンデ御拜聽ニナツタトハ思ヒマセヌ、唯
  私ハ斯ウ云フ時ニハ一ツハツキリトシテ戴
  キタイ、ソンナ馬鹿ナコトガアルカ、新秩
  序ト云フコトガ分ラナイヤウナ者ガ何處ニ
  アル、戰爭ノ目的ガ分ラナイ者ガ何處ニア
  ル、億二億ノ償金ヲ取ツテ一體何ニナ
  ル、時代ニ依ツテ戰爭ノ方法モ違ヘバ、宣
  戰ヲ布告スル場合モアリ、布告シナイ場合
  モアル、平和ノ條件モ色々アル、サウ云フ
  コトヲ今頃言ツテ國民思想ヲ攪亂スル、今
  國民ノ不平不滿ハ充チ滿チテ居ル、故ニ斯
  ウ云フ言論ヲ謳歌スル、謳歌スルガ改ニ此
  ノ問題ハ絕對ニ小ナル問題デハナイト信ジ
  やく、議會ニ於テノミ問題トセラルベキ性
  質ノモノデハナイ、ソレヲ團結シテ謳歌ス
  ル者ガアルナラバ、徹底的ニ之ニ對シテ處
  斷スベキデハナイデスカ、是ガ國民ノ行ク
  ベキ道ヲ示シ、是ガ國民ニ事變ノ目的ヲ誤ラ
  シメザル方法デアルト思ヒマス、私ハ首相ガ
  斷乎タル方針ヲ御示シヲ願ヒタイノデス
  ソレカラ次ニ首相ニ御尋シタイコトハ、
  總理大臣ハ自由主義ヲ大イニ尊重ニナツテ
  居ルヤウナ御言葉ガ、前ノ議會ニ於テ海軍
  大臣ノ時ニ御アリニナツタノデスガ、免〓
  角私ハ日本ノ行クベキ政治、經濟政策總テ
  ニ付テ、ハツキリシタ方針ヲ御言明願ヒタ
  イト思ヒマス、日本ハ御承知ノヤウニ憲法
  デ以テ自由ヲ保障シテ居リマス、ダカラ自
  由主義デス、若シソレガイケナケレバ憲法
  ノ修正ノ道ハ付イテ居リマスケレドモ、私
  ハ憲法ヲ修正スル必要ハナイト思ヒマス、
  色々ナ思想ガ混沌トシテ居リマスガ、私ハ
  今日ノ日本ト云フモノハ、自由ヲ保障スル
  所ノ憲法ヲ基礎トシテ、其ノ範圍ニ於テ改
  造シテ行クノダト云フコトヲハツキリ言ツ
  テ戴キタイ、左樣デナイト御思ヒニナルナ
  ラバ、サウデナイト云フ御答辯ヲ願ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=23

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• 024・米内光政

  ○米內國務大臣　昨年ノ議會ニ於キマスル
  私ノ言辭カラ御考ニナリマシテ、何カ私ガ
  自由主義者デアルカノヤウニ申サレマシ
  タ、サウ云フコトハナイノデアリマス、要
  スルニ總テハ今ノ御質問ノヤウニ、憲法ノ
  下ニ何モヤツテ行ク、ソレダケ御答致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=24

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• 025・道家齊一郎

  ○道家委員　自由ハ保障セラレテ居ルカ
  ラ、其ノ範圍デ行クト云フコトヲ御承認ニ
  ナツタモノト思ヒマス、ソコデ自由主義
  デハアルケレドモ、今日ハ此ノ自由ニ對シ
  テ時勢ノ必要上大キナ統制ヲ加ヘテ行カナ
  ケレバナラヌ、思想上ニ於テモ、ソレカラ
  經濟政策ニ於テモ、增稅ニシテモ自由主義
  ト統制主義トハ、半々ニナツテ居ルヤウニ
  見エマス、デスカラ經濟ノ統制ハ强化シテ
  行カナケレバナラヌト御思ニナレバ其ノ事
  ヲ仰シヤツテ戴キタイ〔「何ノ質問カ」ト呼ヒ、
  其ノ他發言スル者多シ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=25

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• 026・小山倉之助

  ○小山委員　議事進行ニ付テ發言致シマス、
  只今ノ道家君ノ質問ハ、質問ト云フヨリハ大
  分意見ヲ含ンダ支離滅裂ノ議論ヲ長ク拜聽
  致シマシタ、(「ヒヤ〓〓」「ノーノ〓」)其ノ
  中ニハ議會ニ於テ起ツタ問題ヤ、外國ノ文
  書ナドノ例ヲ引キ、學者ノ意見ヲ聽イテ之
  ヲ披露シタノデアリマスガ、其ノ中ニハ甚
  ダ穩カナラザル言葉ガ澤山アリマス、仍テ
  委員長ハ速記錄ヲ十分御調べ願〓マシテ、
  適當ノ措置ヲ執ラレンコトヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=26

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• 027・堀切善兵衞

  ○堀切委員長　ソレ等ノ點ハ委員長ニ御任
  セヲ願ヒマス、只今ノ御質問ニ對シ總理ノ
  御答辯ガアリマセヌ、モウ時間モ時間デス
  カラ此ノ邊デ午後ノ質疑ニ移リタイト思ヒ
  マス、是デ休憩致シマス
  午後零時十六分休憩
  午後一時三十六分開議

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=27

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• 028・堀切善兵衞

  ○堀切委員長　休憩前ニ引續キ開會致シマ
  ス、道家君ニ何カ殘ツテ居リマシタガ、午
  前ダケデ板谷君ニ廻シテ戴クコトニ諒解ガ
  付キマシタカラ······板谷君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=28

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• 029・道家齊一郎

  ○道家委員　私ハ內務大臣ニマダ御尋ガア
  リマス、總理大臣ニ對スル質問ハ打切ル譯
  デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=29

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• 030・堀切善兵衞

  ○堀切委員長　ソレデハ板谷君暫ク御待チ
  ヲ願ツテ······道家君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=30

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• 031・道家齊一郎

  ○道家委員　內務大臣ニ御尋申上ゲマス、
  此ノ度ノ分與稅ハ單純ナ原地還付デハナク
  テ、徵收地ト關係ナク、地域的財政調整ノ
  目的デ之ヲ配分ナサルト云フノデ、洵ニ結
  構ダト思ヒマスガ、實際問題トシテ徵收地
  ト關係ナク果シテ配分ガ出來ルカドウカト
  云フコトハ、將來ノコトデスカラ分リマセ
  ヌケレドモ、私ハ大イニ其ノ懸念ヲ持ツノ
  デアリマス、委員會ヲ設ケテ其處デ御決定
  ニナル、斯ウ云フノデアリマスガ、實ハ政
  治的勢力ニ依ツテソレガ本當ニ正シク分與
  出來ルカ、此ノ點ニ付テ御確信ヲ承リタイ
  ト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=31

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• 032・兒玉秀雄

  ○兒玉國務大臣　配付稅ノ配付方ニ付キマ
  シテノ御心配ハ、御尤モノコトダト思ヒマ
  ス、配付稅ヲ配付シマスノニ、中央ニ於テ
  ハ貴衆兩院ノ方ニ御願シテ委員會ヲ作リマ
  シテ、大體ノ方針ヲ審議シテ戴クコトニ相
  成ツテ居リマスガ、此ノ配付ノ方法ニ付キ
  マシテハ、或ハ地方ノ運動、或ハ請願等ノ
  爲ニ、政治的ノ勢力ニ依ツテ動カサテレテ、
  不公平ナ結果ヲ來スコトヲ恐レマシテ、全
  部配付ノ方法ヲ法律ニ於テ明記シテアルノ
  デアリマス、其ノ配付ノ方法ニ依リマシテ、
  之ヲ地方ニ分布致スノデアリマスカラ、大
  體ニ於テ極ク公正ナル按排ガ出來ルモノト
  考ヘテ居ルノデアリマス、只今御質問ノア
  リマシタル通リニ、色々ノ請託ニ依リマシ
  テ是ガ厚薄ヲ付ケラレルト云フ事柄ハ、最
  モ恐ルベキ事柄デアリマスノデ、其ノ邊ハ
  今囘ノ法律ニ規定サレマシタル方法ニ依リ
  マシテ分與致シマスルガ故ニ、先ヅ大體ニ
  於テ公平ニ又必要ニ應ジテ適當ニ配分サレ
  ル、斯ウ考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=32

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• 033・道家齊一郎

  ○道家委員　ソレデハ只今ノ内務大臣ノ御
  言葉ヲ信ジテ、暫ク其ノ結果ヲ待ツコトト
  致シマス、更ニ御尋致シタイコトハ、交付金
  制度ガ行ハレマスト、地方ノ財政ニ對シテ
  ハ監督權ガ一面ニ於テハ强化サレル、監督
  ヲシ易イ立場ニ置カレル、其ノ監督ガ寧ロ
  干涉ニ流レハシナイカト云フコトハ、自治
  體ノ恐レテ居ル所デアリマスガ、左樣ナコ
  トハナイト私ハ信ジマス、併シナガラ從來
  モ色々弊害ガアルノデス、例ヘバ大藏省ヤ
  內務省アタリノ役人ノ人ガ、自治ヘドン/
  入ツテ來テ、ソレヲ受容レラレナケレバ色
  色ノ方面ニ支障ガ出ルト云フヤウナコトハ
  直接トハ言ヒマセヌケレドモ、多少サウ云
  フ傾向ガアルト云フコトハ、都市デモ言ツ
  テ居ルノデアリマス、殊ニ東京市ノ如キハ
  サウデアリマスガ、是ハ一ツナイヤウニシ
  テ戴キタイ、之ニ付テハ唯私ハ希望ヲ申上
  ゲテ置クニ止メマスガ、更ニモウ一點伺ヒ
  タイコトハ地方財政ノ監督ノコトデアリ
  やく、此ノ地方財政ノ監督ハ從來モ內務省
  ガヤツテオ居デニナルノデアリマスガ、實
  際ハ甚ダ遺憾ナル狀態ニアル、財政ノ調査
  ヲナサツテ、警告ヲ與ヘラレテ、ソレヲ實
  行シテ居ラナクテモ一向構ハナイト放任シ
  テ居ラレルノデアリマスガ、今後此ノ點ヲ
  如何ニナサルカ、ヤハリ從來ノ通リナサル
  ノデアリマセウカ、一例ヲ申上ゲテ見マス
  下、市會議員ガ分配シテ居ル所ノ調査費ト
  云フヤウナモノハ、產業調査費デアルトカ
  色々ノ名目デ以テ十万圓モ取ツテ居ル、是
  ナドハ何トカ改正スベキモノデハナイカ、
  少クトモ名義ダケデモ改正スベキデハナイ
  カ、每年内務省カラ警告ヲ與ヘラレテ居ル
  ガ、ソレヲ實行シナクテモ內務省ハヂツト
  シテ居ラレル、是デハ困ルト思ヒマスガ、
  如何ナモノデセウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=33

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• 034・兒玉秀雄

  ○兒玉國務大臣　今囘ノ稅制ニ伴ヒマシテ、
  配付稅其ノ他一般ノ地方ノ財政ヲ主トシ、
  之ニ特別ノ監督機關ヲ設ケルコトノ必要ヲ
  感ジマシテ、可ナリ大規模ノ監督官ヲ中央ニ
  モ亦地方ニモ置クコトニナツテ居リマスケレ
  ドモ、併シ其ノ目的ハ只今御話ノヤウナ風
  ニ、徒ニ地方ノ自治行政ニ干涉スルト云フ意
  味合ニアラズシテ、飽クマデモ自治ノ精神ヲ
  尊重致シマシテ、主トシテ事務的ノ監督ヲ致
  スコトニ致シタイ、斯樣ニ考ヘテ居リマス、
  監督官ト致シマシテ本省ニ勅任官二人、奏
  任官三人、又地方廳ニハ地方事務官九十四
  人ヲ配スルコトニ相成ツテ居ルノデアリマ
  ス、之ニ依リマシテ地方ノ主トシテ財政狀態
  稅制ノ監督指導ヲ致サセルコトニ相成ツテ
  居ルノデアリマス、又東京市ノ御話ガアリ
  マシタガ、東京市ノコトハ私ヨリハ道家君ノ
  方ガ良イ所モ惡イ所モ餘程御承知ノコトデ
  アリマスルカラ、只今御話ノヤウナ事柄ハ、
  先ヅ私ハ道家君アタリニ依ツテ、一ツ力强
  ク矯正ヲ願ヘバ大變ニ結構ナコトデハナイ
  カト思ヒマスルガ、萬一力ガ足ラナケレバ
  御手傳シテモ差支ナイカト思ヒマスガ、先
  ヅドウゾ市ハ市デ矯正ヲ願フコトニナルコ
  トガ、自治ノ上カラ見マシテ結構ナコトト
  思ウテ居リマス、大體其ノ點デ御諒承ヲ願
  ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=34

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• 035・道家齊一郎

  ○道家委員　申上ゲルマデモナク私モ微力
  ナガラ努力ハ致シマスガ、御承知ノヤウニ
  今日ノ代議制度ト云フモノハ數ヲ以テ決定
  サレルノデアリマシテ、如何トモ致シ難イ
  ノデアリマス、之ヲ直サウトスルナラバ、
  私ハヤハリ都制案ト云フヤウナ根本制度ノ
  改革ガ必要デアルト同時ニ、內務省ガ其ノ
  本來ノ權限デアル所ノ監督權ヲ强化ナサラ
  ナケレバ、到底改革ハ出來ナイ、少數デモ
  通ルナラ別デアリマス、此ノ點ハ漸次共鳴
  者ヲ得ルベク努力致シテ居リマスルケレド
  モ、ソレニハ長イ年月ヲ要スルノデアリマ
  スカラ、是非內務省ハ警告シタ位ノコトハ、
  一ツ斷行スルヤウニ監督官ヲ御增シニナル
  方針ヲ執ツテ戴キタイ、一例ヲ申上ゲマス
  レバ、最近ノ問題デスガ、此ノ十二月ニモ
  五十万圓ト云フ、大シタ金デモアリマセヌガ、
  小市民カラ見レバ大キナ金ガ出テ居ル、
  ソレノ如キハ實ニ奇々怪々ナルモノデ、內
  務省も旣ニ御承知ダラウト思フ、所謂「ボス」
  トカ言ハレル人達ガ操縱スル所ノ市會議員
  ニ依ツテ計畫セラレ、サウシテ其ノ金ハド
  ウ云フ金デアツタカト云フト、玉川水電ト
  云フ電力會社ニ對スル補償ノ金デアリマス、
  ソレデ東京市ニ第二水道擴張費ト云フノガ
  アリマシテ、其ノ中カラ出シタ、ソレデ更
  正豫算ヲ拵ヘテ、玉川水電ニ對スル補償ト
  シテ出シタ、御承知ノヤウニ小河内ニ貯水
  池ノ新シイノガ出來マスノデ、水電ノ取入
  ロハ其處ニアルカラ補償スルト云フ名義デ
  アル所ガ更正シタ時ニハ何モサウ云フ說
  明ガナイ、物價ノ騰貴デアルトカ、設計ノ
  變更ト云フモノデ更正豫算ガ說明サレテ通
  過シタ、サウシテ知ラナイ中ニ何時ノ間ニ
  カ、更正豫算ノ中ニ玉川水電ノ補償ト云フ
  モノガ一本首ヲ出シテ、ソレヲ付託セラレ
  タ委員長モ知ラナケレバ誰モ知ラナイ、ザ
  ウシテソレヲ會社ニ渡シタ、所ガ之ヲ交付
  スルコトニ付テハ問題ガアリマシテ、牛塚市
  長モ躊躇シタ、亡クナラレタ所ノ小橋市長
  モ、是ハドウモ合理的ノモノデナイト云フ
  ノデ判ヲ押サナイ、市長ガ亡クナツテ、三
  邊助役ガ代理ヲシタ、其ノ代理モ否定サレ
  タニモ拘ラズ、之ニ對シテ此ノ十二月判ヲ
  押シテ出シテシマツタヽサウシテ是ハ交付
  サレタ、今市會ノ問題ニナツテ居ル、斯樣
  ナコトヲ若シスレバ、交付金ヲヤツタツテ
  駄目ダ、ソレハ幾ラデモ出テ行キマス、又
  某水道會社ヲ百六十万圓デ買フコトモ、是
  ハ市會議員ガ決議スルノニ、何處デ決議ヲ
  シタカ、一日視察ニ行ツテ十分審議スルト
  言ヒナガラ、其ノ歸リガケ世田谷ノ區役所
  ノ二階ニ集ツテ、ソコデイキナリ百六十万
  圓異議ナシト決メタ、此ノ如クニ努力セヨ
  ト仰シヤツテモ、吾々ハ少數デ如何ニ努力
  シテモ效果ガナイ、斯樣ナコトデマダソレ
  ハ確定致シマセヌガ、委員會ハ通過シタ、
  斯樣ニシテ行ケバ、百六十万圓、五十万圓、
  其ノ他內務大臣モ御承知デアリマセウガ、
  浦安ノ糞尿ノ處理地問題、是ガ三四箇月ノ
  間ニ十万圓モ掛ケテ買ツテ、是ガ千葉縣ト
  大紛爭ヲ起シテ居ル、更ニ公有水面ノ埋立
  地ガ賣買サレテ居ル、斯樣ナコトニ對シテ内
  務省ハ十分ナル監督ヲシテ貰ヒタイト考ヘ
  ル、マダ未解決ノ今日生々シイ問題デアリ
  やく、地方財政ニ折角分與スルト云フヤウ
  ナコトヲ言ツテ居ラレマシテモ、斯樣ニシ
  テドン〓〓拔ケテ行クノデハトテモ駄目デ
  ス、マダ澤山アリマスケレドモ一々申上ゲ
  ルマデモナイコトデアルガ、唯一例トシテ、
  大臣ガ新シク御就任ニナツテ御知リニナラ
  ナイカラ御參考ニ申上ゲル、之ニ對シテ熱
  意ヲ以テ制度ノ改革ヲナサリ、監督ヲ强化
  シテ行カレタイ、但シ先刻申上ゲマシタヤ
  ウニ、人ヲ賣込ンデ色々ナ高壓ヲナサレヌ
  ヤウニ特ニ御願シテ置ク、是ハ御參考マデニ
  申上ゲテ御決意ヲ伺ヒタイト思ヒマスガ
  次ニ伺ヒタイコトハ都制案ヲ御出シニナ
  ツテ、此ノ現狀ヲ改造ナサレル御意見ハア
  リマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=35

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• 036・兒玉秀雄

  ○兒玉國務大臣　都制案ノ問題デアリマス
  ガ、是ハ大體調査委員會ノ方デ審議ガ進ミ
  ツツアルノデアリマスケレドモ、所謂都長
  官ノ問題ニ付キマシテ、十分ナル意見ノ
  致ヲ見ナイデ、今日其ノ儘ニナツテ居ルノ
  デアリマス、此ノ問題ニ付キマシテハ引
  續キ〓究ヲシナケレバナラヌコトト思ツテ
  居リマスルガ、此ノ都制案ノ問題バカリデ
  ハアリマセヌ、地方制度ノ全般ニ亙リマシ
  テ大檢討ヲ加ヘマシテ、成ベク早イ機會ニ
  於テ御審議ヲ願フヤウナ機會ヲ得タイ、斯
  樣ニ考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=36

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• 037・道家齊一郎

  ○道家委員　內務大臣へノ質問ハ終ツテ、局
  長ニ二三伺ヒタイ、今囘ノ分與稅制度デ市
  町村ノ災害費ノ借入金ノ元利償還ニ付テ、
  特ニ六都市ニハ別ニ何モ規定ガナイヤウデ
  アリマスガ、是ハ如何ナル御取扱ヲナサレ
  ルノデアルカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=37

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• 038・挾間茂

  ○挾間政府委員　此ノ災害復舊費ヲ今囘ノ
  配付稅ノ配分ノ標準ニ加ヘマスニ付キマシ
  テハ、大體災害復舊費ノ輪廓ノ明確デアル
  モノヲ、押ヘルコトガ適當デアルト思ツテ
  居リマス、言葉ヲ換ヘテ申シマスト、各地
  方團體ノ自由意思ニ依ツテ自由ニ增減シ得
  ル性質ノモノヲ、分與ノ基準ニ致シマスコ
  トハ、配付稅分與ノ標準トシテハ適當デナ
  イト思ヒマスノデ、サウ云フ關係カラ申シマ
  スト、大體道府縣ニ於ケル災害復舊費ハ、
  國ノ勅令ニ依ツテ補助規定ガゴザイマシテ、
  審査ノ結果決定スルモノデス、之ヲ標準ニ
  持ツテ行クコトガ適當デアルト思フノデア
  リマスガ、他ノ災害ニ對スル復舊ノ問題ニ
  付キマシテハ、是ハ各地方團體ノ自由意思
  ニ基クモノデゴザイマスノデ、分與ノ基準
  ニ加ヘルト云フコトハ均衡ヲ失フ虞ガアリ
  マスカラ、今囘ノ配付稅配付ノ基準トシテ
  ハ、斯ウ云フ自由意思ニ依ツテ、各地方團體
  ガ增減自在デアルト云フモノハ、基準ノ中
  ニ加ヘナイコトガ適當デアルト思ヒマシテ、
  市町村ノ配付稅ノ方ニハ加ヘナイノデアリ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=38

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• 039・道家齊一郎

  ○道家委員　サウ致シマスト適當ナ金額ヲ
  配付ヲナサラナイト云フコトニナリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=39

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• 040・挾間茂

  ○挾間政府委員　適當ナル配分ヲ爲スニ付
  キマシテ、他ノ災害復舊費ヲ加へルコトハ
  適當デナイト思ツテ居リマス、今囘ノ配付
  稅配付ノ基準ガ、最モ適切ナ配分ノ基準ニ
  ナルト云フ風ニ考ヘテ居リマス

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• 041・道家齊一郎

  ○道家委員　ソレデハ次ニ伺ヒタイノハ、
  六大都市ト其ノ府縣トノ間ニ於テ、地方獨立
  稅ノ財源デアル三收益稅ヲ折半シテ分ケル
  ト云フヤウナコトニナツテ居リマスガ、東
  京市ノ如キハ折半デハ少シ困ルノデハナイ
  カト思ヒマスガ、切半ト云フ理由ハ何處ニ
  アリマスカ

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• 042・挾間茂

  ○挾間政府委員　一寸私聞漏シマシタガ、
  折半ト云フノハ第一種ト第二種ノ問題デゴ
  ザイマセウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=42

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• 043・道家齊一郎

  ○道家委員　地租等三收益稅:

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• 044・挾間茂

  ○挾間政府委員　是ハ三收益稅附加稅獨立
  デ吾々考ヘテ居ナイノデゴザイマシテ、今
  囘ノ稅制ト云フモノハ、現在ノ制度ヲ一應
  白紙ノ狀態ニ還シマシテ、サウシテ各團體
  ニドレダケノ額ヲ與ヘルノガ最モ實情ニ合
  フカト云フ算盤ヲ立テマシテ、ソレニ對シ
  テ地租、營業收益稅、家屋稅ト云フモノハ
  半額ヅツ與ヘ、尙ホ其ノ他ニ獨立稅モ認メ
  マシテ、其ノ補足ノ財源ト申シマスカ、隨
  テソレニ依ツテ財政ガ調整セラレル財源ト
  致シマシテ配付稅ヲ之ニ加ヘル、斯ウ云フ
  建前ニナツテ居リマスノデ、地租其ノ他三
  收益稅ノ收入ノ割合ヲ、道府縣市町村ト云
  フモノヲ折半ニ致シマシタコトハ、今囘ノ
  稅制全般ヲ通ジテ御覽戴ケバ、ソレデ必要
  ナ財源ヲ各團體ニ與ヘルト云フ形ニナツテ
  居ルノデアリマス

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• 045・道家齊一郎

  ○道家委員　全體ヲ通ズレバソレハ調節サ
  レルノダト仰シヤルノデスガ、地方獨立財
  源トシテハ、此ノ地租、營業收益稅、家屋
  稅ト云フモノガ重要ナ財源デアツテ、ソレ
  ガ折半サレルト云フコトハ、ドウモ大都市
  トシテハ少シ過少デハナイカ、全體トシテ
  調和サシテ考ヘル、斯ウ仰シヤルガ、私ハ
  サウ思フノデアリマス、重ネテ御伺致シマス

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• 046・挾間茂

  ○挾間政府委員　先程申上ゲマシタ通リ、
  稅制改正ノ際ニ地方財政收入ノ全體ヲ、十
  億三千二百万圓ト見積リマシテ、是ニハ十
  五年度ニ於ケル自然增收ノ分モ全部包含致
  シテ居ルノデアリマシテ、ソレヲ各地方團
  體別ニ、ドウ云フ風ニ分ケレバ宜イカト云
  フコトヲ建前トシテ、今囘ノ稅制ヲ作ツテ
  居ルノデアリマシテ、言葉ヲ換ヘテ申シマ
  スト、大都市ニ付テ考ヘマスト、大都市ガ
  現在昭和十五年度ニ於テ、ドレダケノ稅收
  入ガアルデアラウ、其ノ稅收入ヲ得サセル
  ノニハ、ドウ云フ財源ヲ分配スレバ宜シイ
  カト云フノヲ基準トシマシテ、今囘ノ稅制
  ガ立テラレテ居ル譯デアリマス、此ノ三收
  益稅ノ稅率ガ、府縣ト都市ト折半ニナツテ居
  リマシテ、適當ナル財源ガソレデ供與サレ
  ルコトニナツテ居リマス、假ニ東京市デ申
  シマスト、東京市ノ今日ノ所得稅附加稅ハ、
  法ニ依ル制限率本稅一圓ニ付七錢ト云フノ
  ガ、二十一錢マデ上ツテ居ルノデアリマス、
  斯ウ云フ高率ナ稅ヲ取リマシテ、十五年度
  ニ於テドレダケノ稅收入ガアルデアラウカ、
  斯ウ云フコトヲ見込ミマシテ、ソレヲ見積
  ツタ財源ガ、今囘ノ三收益稅ノ稅收入其ノ
  外ノ獨立稅及ビ配付稅デ收入ガ擧ゲラレル
  ト云フコトニナツテ居ル譯デアリマス、動
  モスレバ今囘ノ配付稅ガ、大都市ニ非常ニ
  少額ニナリハシナイカト云フ御懸念ガアル
  ヤウデゴザイマスノデ、是ハ資料トシテ差
  上ゲテ置イタノデゴザイマスガ、大都市ニ
  對スル配付稅ハ千二百万圓、其ノ他ノ都市
  ニ對シテ千四百万圓、町村全體デ九千八百
  万圓ト云フヤウナ率デ、今囘ノ稅制改正ニ
  依ル配付稅ガ分與セラレルヤウニナツテ居
  リマス、尙ホ之ヲ六大都市ニ付テ申上ゲマ
  スト、改正前ノ稅收入ハ、大體六大都市ヲ
  通ジマシテ一億三千四百万圓程度デゴザイ
  マスガ、今囘ノ改正法ニ依リマスト、獨立
  稅及ビ附加稅ヲ加ヘマシテ一億五千万圓、
  ソレニ配付稅千二百万圓ガ入リマスノデ改
  正稅法ニ依リマスレバ六大都市ニ一億六千
  二百万圓ノ稅收入ガアル、是ハ大體ノ〓算
  デゴザイマスガ、斯ウ云フコトニナルト思
  フノデアリマシテ、隨テ大都市ニ對スル財
  源ニ付キマシテハ、今囘ノ稅制ガ脅威ヲ與
  ヘルト云フコトハ全然ナイヤウニ構成ヲ致
  シテ居ル譯デアリマス

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• 047・道家齊一郎

  ○道家委員　次ニ御尋致シタイコトハ、府
  縣獨立稅トシテ地方稅制ノ四十八條ニアリ
  マスガ、此ノ中自動車稅ダケヲ市ニ委讓ナ
  サラナイデ、荷車稅ト自轉車稅ヲ委讓ナサ
  ル、所ガ實際問題トシテ東京市ノ道路ヤ軌
  道ヲ磨滅破損セシムルモノハ、主ニ自動車
  デアルト思フノデアリマス、荷車ナドハ非
  常ニ少クテ又重量ノ點デモ少イ、ヤハリ分
  與トシテ委讓ナサルトスレバ、此ノ大キナ
  道路ノ負擔ヲ生ズル自動車稅ヲ、委讓ナサ
  ルノガ適當デハナイカト思ヒマスガ、如何
  ナル理由デ之ヲ委讓ナサラナイノデアリマ
  スカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=47

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• 048・挾間茂

  ○挟間政府委員　今囘ノ稅制改正案ニ於キ
  マシテハ、六大都市ト其ノ所在府縣ノ財源
  ノ調整ト云フ問題ハ、稅制全體デ考ヘテ居
  リマスノデ、特ニ自動車稅ノ課稅ト云フコ
  トダケニ付テ特例ヲ認メルト云フコトハ、
  是ハ如何ナモノデアルカト考ヘルノデアリ
  きく、併シ道路ト自動車、此ノ兩者ハ因果
  關係ガ極メテ密接デアルト云フコトハ認
  メナケレバナラヌト思フノデアリマス、六
  大都市ニ於キマシテハ、市內ノ國道、府縣
  道ノ管理者ハ市長デゴザイマス、隨テ其ノ
  市長ガ統轄シテ居ル-行政廳ガ統轄シテ
  居ル自治體、卽チ六大都市ガ、其ノ費用ヲ
  負擔ヲスルコトニナリマス、隨テ府縣ニ於
  キマシテ賦課スル自動車稅ヲ、市ノ方ニ委
  讓スルト云フコトニ付キマシテモ、吾々ト
  シマシテハ一應理由ガアルコトデハナイカ
  ト云フ風ニ考ヘテ居ルノデゴザイマスガ、
  自動車ノ如キモノノ使用範圍ハ相當廣範圍
  ニ亙ルモノデアリマシテ、必ズシモ市內ノ
  ミニ限ラナイノデゴザイマスカラ、課稅權
  ヲ市ノミニ與ヘルト云フコトニ付キマシテ
  ハ、ドウモソレハ適切デナイノデハナイカ
  ト云フ風ニ考ヘテ居ルノデアリマス、其ノ
  外細カイ理由ニ付キマシテ色々考究ヲ致シ
  マシタノデアリマスガ、ヤハリ之ヲ單純ニ
  市稅トスルト云フコトヨリモ、府縣稅及ビ
  其ノ附加稅デ、兩團體ニ於テ課稅セシムル
  コトガ適當デアルト云フ風ニ考ヘテ居リマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=48

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• 049・道家齊一郎

  ○道家委員　諒承致シマシタ、ソレデハ前
  ノ家屋稅其ノ他三收益稅ノ課率ノコトニ付
  テモ、又自動車稅ノ委讓ニ付テモ、全體ト
  シテ考ヘテ居ルノダ、ソレデ結果ハ不衡平
  ナ負擔ニナラヌ、是ハ暫ク結果ヲ見ルト致
  シマシテ、次ニモウ一ツ承リタイノハ、例
  ノ三部制ヲ行ツテ居ル名古屋トカ、兵庫等
  ガ、內務省モ御存ジデアリマセウガ、三部
  制廢止ヲ暫ク延期ヲシテ吳レ、最小限度ニ
  於テ現在ノ市會議員ノ任期中ダケデモ廢止
  ヲ延期ヲシテ貰ヒタイ、サウシナイト經濟ノ
  點其ノ他ニ於テ非常ニ不便ヲ感ズルカラト
  云フコトデアリマスガ、之ニ對シテノ御見
  解ヲ承リタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=49

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• 050・挾間茂

  ○挾間政府委員　三部制ハ御存ジノヤウニ、
  愛知縣ト、兵庫縣ノ二縣ガ今殘ツテ居ルノ
  デアリマス、大阪、東京、神奈川、京都、廣
  島、斯ウ云フ順序ヲ以チマシテ、從來存在
  致シテ居リマシタ三部制ハ漸次廢止セラレ
  テ參リマシタ、是ハ御存ジノヤウニ、府縣
  ガ單一シタ自治體トシテ仕事ヲ致シマス場
  合ニ、ソコニ經濟團體トシテ別個ノ存在ガ
  アルト云フコトニ付キマシテハ、從來ヨリ行
  政ノ統一負擔ノ均衡ト云フ上カラ致シマシ
  テ、出來得ベクンバ速ニ廢止スルノガ適當
  デアルト云フ一般ノ方針ヲ以テ進行ヲ致シ
  テ參リマシタ、併シナガラ兵庫ト愛知ニ於
  キマシテハ、尙ホ從前ノ制度ガ存續サレ
  テ居ルノデアリマス、然ルニ今囘地方稅制
  ガ全面的ニ改正ニナリマシテ、分與稅制ト
  云フモノヲ設ケマシテ、日本全國ニ於ケル
  各地方團體ノ負擔ノ均衡ヲ圖リ、財政ヲ調
  整スルト云フ建前ニナツテ參リマシタノデ、
  謂ハバ理論上ノ問題トシマシテ、今囘ノ稅
  制改正ト二部、三部經濟組織ト云フモノハ、
  觀念トシテ相容レナイト云フコトニ一應理
  論的ニハナツテ參リマス、尙ホ分與稅ヲ配
  付致シマス場合ニ、御存ジノヤウニ三部經
  濟ノ下ニ於キマシテハ、愛知縣、兵庫縣共
  ニ全體ニ屬スベキ歲入ヲ市ニ分賦致シテ居
  ルノデアリマス、同一縣內ニ於テ二個ノ經
  濟團體ガ存在スルト云フ形ニナリマスノデ、
  分與稅ヲ分與致シマスノニ、技術的ニ非常
  ニ困難ナ問題ガ起ツテ來ルノデアリマス、
  斯ウ云フヤウナコトデ數年前廣田内閣當時
  ニ稅制改革ヲ致シマス際ニモ、三部制ハ之
  ヲ廢止スルト云フ建前デ進ンデ居ツタノデ
  アリマス、今囘ノ稅制改正ノ機會ニ於キマ
  シテ、是ハ廢止ヲスル方針デ進ンデ居リマ
  ス、但シ三部經濟ノ存在スル府縣ニ於キマ
  シテハ、消極財產其ノ他ノ點ニ於キマシテ、
  色々前後措置ヲ講ズベキ部分ガアルト思ヒ
  マスノデ、是ハ無條件ニ致シマスコトハ適
  當デナイト考ヘマス、隨ヒマシテ關係知事
  ノ會合ヲ求メマシテ、只今折角其ノ善後ノ
  措置ニ付キマシテ考究ヲ致シマシテ、負擔
  ノ異常ナル變動ヲ起スコトノナイヤウニ、
  此ノ案ノ實行ヲ進メテ行カウト考ヘテ居リ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=50

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• 051・道家齊一郎

  ○道家委員　ソレデハ成ベク支障ノナイヤ
  ウニ、サウシテ又今御說明ノ御方針ハ御尤
  モノヤウニ思ヒマスガ、其ノ間ノ調節ヲ得
  テ御處理願ヒタイト思ヒマス
  次ニ承リタイコトハ受益者ノ分擔金制
  度デアリマスガ、之ニ付テハ都市ノ諸施設
  ノ發達助長ト云フ意味ニ於テ、勿論賛成デ
  アリマス、併シナガラ是ハ主ニ御承知ノヤ
  ウニ獨逸ノ制度ヲ採入レテ居ルノデスガ、
  玆ニ却テ受益者負擔ヲシテ居ナガラ、非常
  -
  ナ損害ヲ蒙ムル場合モアル、要スルニ受益
  者負擔ノ制度ノ改正ガ必要デハナイカト思
  フノデアリマスガ、此ノ實例ニ付テハ長ク
  ナリマスカラ省キマス、申スマデモナク御
  存ジノコトト思ヒマスガ、何カ内務省ニ於
  テハ、近イ內ニ左樣ナコトハ御考ニナツテ
  イラツシヤイマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=51

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• 052・挾間茂

  ○挾間政府委員　受益者分擔金ト云フノハ、
  法律的ニ申シマスト、目的稅ト大體同一種
  類ニ屬シマス個々ノ法律ニ規定シテアル受
  益者負擔制度ト、ソレカラ一般的ノ市制、
  町村制、府縣制ノ上ニゴザイマス市町村ノ
  一部又ハ數人ノ利益ノ爲ニスル分擔金制度
  ト、兩方アル譯デアリマスガ、此ノ前ニ申
  シマシタ個々ノ特別法ニ於キマスル受益者
  負擔金ノ問題ハ、是ハ現在例ヘバ都市計畫
  法トカ、道路法トカニ其ノ規定ガゴザイマ
  シテ、其ノ方面ニ於テ十分〓究スルコトニ
  ナルダラウト思ヒマス、ソレカラモウ一ツ
  ノ一般的分擔金ノ問題ニ付キマシテハ、是
  ハ從前ヨリ市制、町村制等ニ認メラレデ居
  ツタ制度デゴザイマシテ、從來餘リ是ハ利
  用セラレテ居ナカツタノデアリマス、併シ
  只今御述ニナリマシタヤウナ趣旨ニ於キマ
  シテ、成ベク之ヲ活用セシムルヤウニ、指
  導シテ參リタイト考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=52

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• 053・道家齊一郎

  ○道家委員　內務省ニ對スル私ノ質問ハ終
  リマシタカラ、昨日一寸大藏省ニ對シテ御
  尋シテ殘ツタ問題ガアリマスカラ、大藏省
  ノ當局ニ御尋致シマス、大臣デナクテ結構
  デアリマス、ソレハ保險ノ事デアリマスガ、
  臨時租稅措置法中改正法律案ノ第一條ノ
  八是ハ「本法施行地ニ本店又ハ主タル事務
  所ヲ有スル生命保險會社ノ甲種ノ配當利子
  所得ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依リ」云々
  トアルノデアリマスガ、此ノ生命保險會社
  ト云フ中ニハ、徵兵保險會社モ含マレルノ
  デアリマセウカ、如何ナモノデアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=53

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• 054・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　含マレマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=54

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• 055・道家齊一郎

  ○道家委員　其ノ他ノ場所ニモ色々生命保
  險若クハ生命保險會社ト云フ字句ガ使ツ
  テ、語句ノ統一ガ付イテ居リマセヌ、徵兵
  保險ヲ生命ノ中ニ含ムモノト解釋シテ宜イ
  ノデアリマセウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=55

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• 056・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　是ハ生命保險ト生命保險
  會社ニ依ツテ多少違フト思フノデアリマス、
  相續稅法ニ於キマシテ生命保險ト言ツテ居
  ル場合ニハ、特ニ斷ツテナケレバ徵兵保險
  ノ方ハ包含セラレテ居ナイ、今度ノ臨時租
  稅措置法ニ依リマシテハ、生命保險事業其
  ノモノヲ指スノデハアリマセヌデ、生命保
  險會社ヲ指シテ居ルノデアリマス、隨ヒマ
  シテ人格ヲ指ス場合ト事業其ノモノヲ指ス
  場合ニ於キマシテハ、自ラ多少內容ノ違フ
  場合ガ出テ來ル次第デアリマス、法制ト致
  シマシテハ別ニ不都合ハナイト、斯ウ考へ
  テ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=56

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• 057・道家齊一郎

  ○道家委員　今度改正法ガ通過スレバ控除
  ノ規定ハナクナルノデスガ、此ノ控除ニ付
  テモ私ハヤハリ考ヘナケレバナラヌト思ツ
  テ居ル、デスカラ、若シ改正ニナレバ是ハ
  問題ナイノデスガ、改正ニナラヌトシテ、
  徵兵保險ノ如キモノニ對シテモ、普通ノ保
  險ト同ジヤウニ御扱ヒニナツテ、ヤハリ控
  除スルヤウナ精神デ爾後總テノ御取扱ヲ、
  此ノ法律ノ如何ニ拘ラズ爲サツタラドウカ
  ト思ツテ居リマスガ···

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• 058・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　生命保險料ヲ拂込ンダ場
  Orke
  合ニ所得稅ノ計算上之ヲ經費ニ見ルカドウ
  カト云フコトニ付テハ、性質其ノモノカラ
  出テ來ルモノデハナイト思フノデアリマス、
  從來所得稅法ニ於キマシテ生命保險料ヲ所
  得金額ノ中ヨリ控除致シテ居リマシタ趣旨
  じゃあき出しとばたら
  ハ、我國保險業發達ノ狀況ニ鑑ミマシテ、
  斯ウ云フ制度ヲ取ツテ居タモノカト存ジマ
  ス、此ノ意義ヲ擴充シテ行クノモ一ツノ方
  法カト存ジマスケレドモ、又一面ニ於テ生
  命保險ト、多少貯蓄ト云フ觀點カラ致シマシ
  テ類似シテ居リマスル郵便貯金トカ、或ハ
  貯蓄銀行ニ對スル預金ト云フヤウナモノニ
  付テモ、別ニ所得稅ノ所得ノ計算ノ場合ニ
  經費ニ見テ居リマセヌデ、是ハ性質カラ論
  ジ難イト思フノデアリマシテ、我國生命保
  險事業ノ今日ノ狀況カラ致シマシテ、先ヅ
  今囘ノ稅制改正ニ於テ、他ニ徵稅技術上相
  當ノ困難モアリマスカラ、此ノ際生命保險
  料ノ控除ハ見合セタイト存ジテ居リマス
  隨ヒマシテ更ニ徵兵保險ノ保險料控除マデ
  モ擴充シタラト云フ考ハ、今持ツテ居リマ
  セヌ

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• 059・道家齊一郎

  ○道家委員　次ニ御尋シタイノハ犬ヤ猫ノ
  賣買ニ依ツテ十圓以上一割ソレカラ鳥ノ時
  ニハ三圓以上一割ト云フコトニナツテ居リ
  マスガ、是ハドウ云フ譯デ犬ト猫ハ十圓デ、
  鳥ヲ買ヘバ三圓以上課カル、斯ウ云フ區別
  ヲ設ケタノデアリマスカ

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• 060・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　是ハ大體課稅ノ對象トナ
  ルモノヲ見マシテ、此ノ程度ヲ以テ適當ト
  スルト、斯ウ見タノデゴザイマス、別ニ數
  字上キチント出テ來ル譯デハゴザイマセヌ
  ケレドモ、現在ノ是等ノ愛玩用動物ノ取引
  ノ狀況等ヲ見マシテ、先ヅ課稅スルトスレ
  バ、此ノ點ニ限界點ヲ置クノガ適當ダラウ
  ト考ヘタ次第デアリマス

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• 061・道家齊一郎

  ○道家委員　是ハ要スルニ購買者ガ、ソレ
  ダケノ餘裕ヲ持ツテ居ル娛樂デアルト云フ
  意味デ、課セラレルト思フノデスガ、サウ
  ナルト犬ダノ猫バカリ優遇サレテ、鳥ハド
  ウモ一向優遇サレテ居ラナイ、犬ダラウガ
  猫ダラウガ、買ツタラヤハリ三圓以上同ジ
  ニ擔稅能力ガアルト見テ御課ケニナツタ方
  ガ宜イノヂヤナイデスカ

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• 062・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　愛玩用動物ノ中、鳥ニ對
  スル課稅デアリマスガ、是ガ小鳥ノ類ハ命
  令案要項ニ、其ノ種類ヲ列擧シテ居ルノデ
  アリマス、斯ウ云フ小鳥ニ付キマシテハ
  大體三圓程度ヲ限界トスルノガ宜イダラウ、
  十圓ト致シマスノハ少シ高過ギル感ジガ致
  シテ居ルノデアリマス

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• 063・道家齊一郎

  ○道家委員　鳥ノ十圓ヂヤナクテ、犬ノ十
  圓ガ高イ、犬ハ實際ハ値段ガ高イモノデス
  カラ、十圓ノ犬ト云フト良イ犬ヂヤアリマ
  セヌガ、鳥ト同ジニ御課ケニナルナラ三圓
  カラ御課ケニナツタラ宜イ、ソレカラ御課
  ケニナラナイナラ、鳥モヤハリ十圓マデ御
  引上ゲニナツタラドウカト云フコトヲ言フ
  ノデアリマス、ソレハ何等根據ガナイカラ私
  ハサウ言フノデス、是ハ犬ダカラ、鳥ダカ
  ラ、猫ダカラト云フテ課ケルノヂヤナイカ
  ラ、サウシタ方ガ合理的デス、ソレカラ一面
  カラ言フト、鳥ノ三圓ト云フノハ、是ハ少
  シ安過ギルト思フ、三圓位ノ鳥ニ御課ケニ
  ナルコトハ、〓育上大キナ問題デス、日本
  人ノ缺陷ハ斯ウ云フヤウナ趣味ノ點ニ於テ、
  非常ナ缺陷ヲ持ツテ居ル、是ガ大キクナツ
  テ、家庭ノ主婦トナツタ場合、ドウ云フコ
  トニナリマスカ、鳥ナドニ對スル何等ノ興
  味モ持タナイ、知識モ持タナイ、旅行シテ
  モ鳥ヤ昆蟲ニ對シテノ認識ガアルト、其ノ
  旅行ハ非常ニ豐富ナモノニナル、ダカラ動
  物ニ對スル所ノ愛護心ト云フヤウナモノハ、
  ヤハリ漸次〓育的ニ養成シテヤラナケレバ
  ナラヌ、其ノ意味ニ於テ、下ラナイ娛樂物
  ヲ買フヨリ、子供ガ鳥ナドヲ持ツテ喜ベバ、
  親ガソレヲ滿シテヤルト云フコトハ宜イコ
  トヂヤナイカ、ソレニハ三圓ト云フノヲ十
  圓位マデ引上ゲテ、ソレ位ノ範圍デノ娛樂
  ハ犬ヲ認メラレルナラバ、認メラレテハ
  ドウカ、斯ウ云フコトヲ私ハ考ヘルノデス、
  ソレカラ先程鳥ノ種類ヲ御指定ニナリマシ
  タガ、是ハ色々擧ゲテアリマス、併シアレ
  ハ實ニ不徹底ナモノデアツテ、何處デアノ
  種類ヲ御〓究ニナツタカ知リマセヌガ、マ
  ア鷹司公爵ニデモ、或ハ黑田侯爵ニデモ御
  相談ニナツタノカ知レマセヌガ、私ノ知ツ
  テ居ル範圍デモ-私ハ犬ヤ猫ニ對シテハ
  非常ナ興味ヲ持ツテ居ツテ、鳥ハ大〓飼ツ
  タカラ知ツテ居マスガ、アノ中デモ拔ケテ
  居ルノガアル、ソレデ指定シテアレバソレニ
  課ルガ、指定シテナケレバソレニ課カラヌ、
  ダカラ寧ロ金額デ列擧的ニヤツテ、三圓
  以上ノモノニハ課稅ヲナサツタ方ガ衡平ヂ
  ヤナイカト思ヒマスガ、アノ種類ハ如何ニ
  シテ御調ベニナツタノデスカ

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• 064・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　此ノ課稅對象トナル小鳥
  ノ種類ニ付キマシテハ、當業者ノ意見ヲ十
  分ニ聽取致シマシテ、サウ云フコトニ致シ
  タ次第デアリマス

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• 065・道家齊一郎

  ○道家委員　是以上ハ意見ニナリマスカラ、
  參考マデニ承ツテ置イテ、此ノ程度ニ致シ
  テ置キマス、私ハ是デ終リマス

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• 066・堀切善兵衞

  ○堀切委員長　ソレデハ板谷君

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• 067・板谷順助

  ○板谷委員　私ハ本案ニ對シテ、各委員諸
  君ヨリ詳細ニ質疑應答ガ重ネラレマシタノ
  デアリマスカラ、出來ルダケ重複ヲ避ケル
  積リデアリマス、併シナガラ今日マデノ政
  府當局ノ御答辯ノ中、不滿ノ點モアリ、又
  疑ヲ質サナケレバナラヌ點ガアリマスルノ
  デ、此ノ意味ニ於キマシテ別箇ノ觀點ヨリ、
  成ルベク簡單ニ質疑ヲ致シタイト思ヒマス、
  先ヅ第一ニ財政問題ニ付キマシテ、今日マ
  デ豫算總會或ハ本委員會ニ於キマシテ、色
  色質疑ガ重ネラレタノデアリマス、大臣ハ
  我國ノ將來ノ財政ニ對シテ、極メテ樂觀的
  ナ御答辯ニナツテ居ラレタ、現在ノ御立場
  ニ於テ無理カラヌ、其ノ御衷情ヲ御察シ申
  上ゲル、私モ敢テ悲觀スル意味デハナイガ、
  併シ私ハ樂觀ヲシテ居ラヌ、恐ラクハ國民ニ
  於キマシモヤハリ同ジ氣持デアラウト思フ
  ノデアリマス、ソコデ今度ノ稅制改正ニ對シ
  テ、增收ヲ圖ルト共ニ、彈力性ガアルト云フ
  コトガ要綱ニモアリ、又屢〓サウ云フ意味ノ
  コトヲ仰シヤツテ居ルガ、私ニハ能ク分ラ
  ナイ、或ハ此ノ彈力性ト云フコトハ、上ニア
  ルノカ、下ニアルノカ、或ハ又間接稅方面
  ニアルノカ、此ノ點ニ付キマシテ一ツ御說
  明ヲ願ヒタイ
  更ニ今囘ノ支那事變ハ勿論中央政權ガ假
  ニ出來マシテモ、何時解決スルカ見込ガ付
  カヌ、所謂長期戰デアル、隨テ現在ニ於テ
  モ既ニ百六十五億カラノ金ヲ使ツテ居ル
  ガ、マダ前途ニ對シテモドレダケノ金ガ要ル
  カ分ラヌ、隨テ赤字公債モ發行セネバナラ
  ヌ、又事件費ノ一部ヲ租稅ニ依ツテ賄フト
  云フコトモ、是ハ當然ノコトデアリマセウ
  ガ、只今申上ゲマスル通リ、前途ノ財政ノ
  見込ガ付カヌ關係カラ、國民ニ於テハ前途
  ニ非常ナ不安ヲ持ツテ居ル、ソコデ私ハ此
  ノ支那事變解決ニ對スル費用、之ヲ將來ニ
  於テ國民全部ニ負擔ヲシロト云フコトハ、
  事實ニ於テハ中々困難ダト思フ、又國民ノ
  頭ノ中ニモ、此ノ支那事變ニ對シテ何カ期
  待シテ居ル所ガアルノデハナイカ、勿論此
  ノ度ノ支那事變ハ東洋平和ノ爲メ、八紘一
  宇ノ理想ヲ實現スル、是ガ大ナル目的デア
  ルト云フコトハ言フマデモナイコトデアリ
  やく、又近衞聲明ニ於テ、領土ハ取ラヌ、
  或ハ償金ハ取ラヌ、是モ我國ノ根本方針デ
  アルト云フコトハ言フマデモナイ、併シナ
  ガラ今日マデ多大ノ犠牲ヲ拂ツテ、之ニ求
  ムル所ガ必ズ私ハ國民ノ頭ニアルト思フ、
  國民ハ時局柄何モ言フコトハ出來ナイノデ
  スカラ默ツテ居リマス、デアルカラ子孫永
  久ニ、此ノ事件費ノ大部分ヲ負擔サセルト
  云フコトニ付テハ、政府當局トシテ大イニ
  考フベキモノデアルト思フ、ソコデ私ハ此
  ノ事件費ニ對シテハ一般會計カラ切離シ
  テ、將來ニ於ケル財政政策ヲ立テベキモノ
  デハナイカト考ヘルノデアリマスガ、藏相
  ハ之ヲ如何ニ御考ニナツテ居リマスカ

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• 068・櫻内幸雄

  ○櫻內國務大臣　第一ニ御尋ニ相成リマシ
  タノハ、今囘ノ增稅ノ建前ノ中デ、彈力性
  ノアルト云フコトヲ高調ジテ居ルガ、ソレ
  ハ何處ノ點ニ彈力性ガアルノデアルカ、是
  ハ私共最初カラ申シテ居ル言葉デアリマス
  ガ、此ノ度ノ改正ニ依ル分類所得稅ハ比例
  稅率ニ依リマシテ、若シ事情ガ許シマスナ
  ラバ、此ノ比例稅率ヲ利用致シマシテ、將
  來若シ財政ノ餘地ガ出來マシタナラバ、比
  例稅率ヲ下ゲル、又ドウシテモ經濟上ノ變
  化ガ大キイ、又特別ナル事態ガ起リマシテ、
  更ニ增收ヲ必要トスル場合ニ於テハ、此ノ
  比例稅率ヲ改メルト云フ事ハ、他ノ法文其
  ノ他ニ聯關シテ行ハズシテ、單純ニ爲シ得ル
  ト云フノデアリマス、又此ノ比例稅率ニ付
  キマシテ、上ノ方ヲ多ク取ルカ、下ノ方ヲ
  多ク取ルカト云フ御話デアリマスガ、是ハ
  申スマデモナク實際上ノ實情ニ卽シテ考ヘ
  ナケレバナラヌコトデアリマシテ、今日ハ
  現在提案致シマシタ稅率ニ於テ、大體經濟
  界ニ大ナル打擊ヲ與ヘズシテ行クモノト考
  ヘ、先ヅ適當ナリト考ヘテ提案致シタヤウ
  ナ譯デアリマス、ソレカラ支那事變ノ前途
  ガ長期戰デアルコトハ固ヨリデアツテ、之
  ニ對シテハ巨額ノ費用ヲ要スル、隨テ今日
  マデ既ニ百六十五億圓ノ費用ヲ使ツテ居ル
  ガ、更ニ前途多クノ費用ヲ要スル、大藏大
  臣ハ之ニ對シテ樂觀的考ヲ持ツテ居ルガ、
  併シナガラ國民ノ多クハ前途ニ對シテ、非
  常ナ不安ヲ有シテ居ルト云フ風ナ御話デア
  リマスガ、私ハ實際ノ事實ヲ申シテ居ルノ
  デアリマシタ、卽チ今囘ノ增收ガ今後數年
  起ル所ノ事件費卽チ現在ノ事件費ガ大ナル
  變化ノナイ場合ニ於ケル所ノ事件費ノ元利
  償還ノ途ニ當ル部分ニ適當ヲスルモノデア
  ツテ、其ノ以外ニ自然增收等モアルカラ、
  此ノ增稅ハ左樣ナコトヲ目標ト致シタノデ
  ハナイノデアルケレドモ、實際ノ問題トシ
  テハ之ニ對シテ相當ノ働キヲ致スモノデア
  ル又ソレニ對シテ何等不安ノ考ヲ持ツテ
  居ナイ、斯ウ申上ゲルノデアリマスガ、此
  ノ前途ニ對シテ左樣ニ樂觀シテ居ルカト申
  シマスト、サウデハナイ、今日ノ經濟界ノ
  發展性ヲ持續シテ行キ、サウシテ更ニ將來
  ノ發展ヲ期待致シマスノニハ總テノ方面
  ニ付キマシテ萬遺算ナキヲ期サナケレバナ
  ラヌノデアリマシテ、一面ニ於テハ物價政
  策ニ於テ誤ツテハ相成リマセヌ、又生產擴
  充計畫ニ付キマシテモ、其ノヤリ方ヲ誤ツ
  テハイカヌノデアリマス、同時ニ全國民
  ガ總テ協力シテ、サウシテ此ノ難關ヲ突
  破スルト云フ心情ニ依ツテ進ンデ戴クト
  云フ事柄ガ必要デアリマシテ、唯徒ニ樂
  觀ヲシテ居ルモノデハナクシテ、此ノ難
  關ヲ突破致スノニハ餘程ノ決心ト努力ガ
  必要デアル、其ノ點ハ非常ナ決心ヲ要ス
  ルト云フコトニ付キマシテハ、私ハ板谷
  君ガ御心配ニナツテ居ルノト同ジニ心配ヲ
  致シテ居ルノデアリマスケレドモ、併シ決
  シテ悲觀ヲ致シテ居ルモノデハナイノデア
  リマス、ソレカラ此ノ事件ニ對シテ非常ナ
  巨額ノ金ヲ要スル、此ノ非常ナ巨額ノ金ヲ
  要シタノヲ、國民ノ負擔ニ於テノミ之ヲ處
  理シテ行クト云フ事柄ハ、是ハ間違ツテ居
  ナイカ、斯ウ云フ御尋デアリマスガ勿論今
  囘ノ聖戰ニ於テ償金ハ取ラナイ、土地ハ取
  ラナイト云フコトヲ明ニ致シテ居ルノデア
  リマシテ、事變ガ終了致スト同時ニ、是マ
  デ掛ツタ費用ヲ直チニ賠償金デ之ヲ取ルト
  カ、或ハ其ノ他ノ代償品ニ依ツテ之ヲ補充
  シテ行ク途ヲ取ルトカ云フコトハ、今日政
  府トシテ考ヘテ居ナイ所デアリマスガ、併
  シ日滿支ノ間ニ經濟合作ヲ行ツテ、而シテ
  其ノ經濟的共存共榮ニ依ツテ得ル所ノモノ
  ガ決シテ私ハ尠クナイト思フ、今囘或ハ二
  百億掛リマスカ、二百五十掛リマスカ、ソレ
  ハマダ確定的ニハ豫想ハ出來マセヌケレド
  〓、併シナガラソレニ對シテ將來、今囘ノ
  事變ヲ契機ト致シマシテ、日支兩國民、併
  セテ滿洲ノ國民ガ心カラナル經濟上ノ提携
  ヲ致シマシテ、雙方ノ利益ヲ圖リ、互助連
  環ノ實ヲ擧ゲテ行クト云フコトニナリマシ
  タナラバ、今囘投ジマシクル所ノ軍事費ニ
  對シテ之ヲ償却シ、或ハ支辨シテ行クダケ
  ノ利益ハ玆ニ生ジテ來ルノデハナカラウカ、
  同時ニ之ニ依ツテ東亞永遠ノ平和ト云フモ
  ノガ招來サレルノデハナカラウカ、斯樣ニ
  考ヘテ居ルノデアリマス、而シテ此ノ事變
  ヲ特別會計ニ致シテ、此ノ事變ニ掛ツタ費
  用ヲ明ニシテ置クガ宜イノデハナイカト云
  フ御話デアリマスガ、御承知ノ通リ今囘ノ
  臨時軍事費ト云フモノハ年度ニ區切ツテ居
  リマセヌ、卽チ當初カラ之ヲ一本建ニシテ
  ズツト繼續ヲ致スノデアリマシテ、將來之
  ニ對シテドノ位軍費ガ掛ツタト云フコトハ、
  一目瞭然ニナルヤウニ相成ツテ居ルノデア
  リマシテ、御話ノ如ク制度的ニハ未ダ考ヘ
  テ居リマセヌケレドモ、是モ將來考慮致ス
  ベキ問題デアル、斯樣ニ考ヘテ居ル次第デ
  アリマス

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• 069・板谷順助

  ○板谷委員　今囘ノ稅制改正ハ彈力性アリ
  ヤ否ヤト云フコトニ付キマシテハ、私ハ後
  ニ數字的ヲ擧ゲテ御參考ニ供シタイト思ヒ
  そう、ソレカラ申スマデモナク國家有事ノ
  際ニ於テハ、國民ガ財產ヲ投出シテモ其ノ
  難ニ赴クト云フコトハ當然ノ義務デアリマ
  ス、是ハ言フマデモナイコトデアリマス、
  併シナガラ此ノ恆久的ノ稅制改革ヲ愛國心
  ニ結ビ付ケルノハドウカ、斯ウ申シマスル
  コトハ、御承知ノ通リ一面ニ於テ生產力擴
  充物資ガ非常ニ缺乏シテ居ルカラ、之ヲ
  何トカシナケレバナラヌ、又一面ニ於テ低
  物價政策ヲ堅持スルト云フ建前ニナツテ居
  ルコトデアリマスカラ、之ヲ愛國心ニ結ビ
  付ケテ論ズルト云フコトハ、私ハ筋違ヒデ
  ハナイカト考ヘテ居ル、勿論今申上ゲマ
  スルヤウニ、一朝國ノ重大ナ場各ニ於テハ
  其ノ難ニ赴クト云フコトハ、國民全部ノ
  財政ヲ投出シテモ當然ノコトデアリマスガ、
  屢〓總理大臣初メ政府ノ當局ガサウ云フコト
  ヲ仰シヤルケレドモ、併シナガラ國民生活
  ノ上ニ於テ非常ナ不安デアル現在ノ狀態ニ
  於テハ、ソレハ私ハドウカト思フ、ソコデ
  私ハ此ノ支那事變費ト云フモノガ前途ノ見
  透シガ付カヌ、段々多クナツテ行クト云フ
  コトニ付テ、國民ガ其ノ負擔ニ堪ヘナイカ
  ラ、之ヲ何トカ支那事變處理ノ際ニ於テ、
  政府ノ當局トシテハ之ヲ如何ナル方法ニ依
  ツテカソコニ財源ヲ見出ス、何ヲ取ルカト
  云フコトニ付テハアナタガ先達テ西川君ノ
  質問ニ對シテ、支那事變其ノ他ニ付テハ是
  ハ將來支那ト經濟合作ヲシテ、ソレガ生ン
  デ來ル利益ヲ期待シ、之ニ依ツテ今囘ノ大
  キナ使ツタ國費ノ償還ニ充テル途ヲ講ジナ
  ケレバナラヌ、斯ウ云フコトヲアナタハ仰
  シヤツテ居ル、ソコデ私ハ今申上ゲマスヤ
  ウニ、國民ガ日本ノ財政ニ對シ不安ヲ懷イ
  テ居ル、幾ラ金ガ掛ルカ分ラヌト云フノデ、
  政府トシテハ支那事變處理ト云フモノガ唯
  一ノ目的デアル以上ハ、何トカ此ノ際今申
  上ゲタ財政計畫ヲ別ニ樹テベキモノデハナ
  イカ、斯ウ私ハ御尋シテ居ルノデアリマス、
  モウ一度御答辯願ヒマス

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• 070・櫻内幸雄

  ○櫻內國務大臣　私ノ取リ方ガ間違ツテ居
  ルカモ知レマセヌガ、間違ツテ居リマシタ
  ラ御指摘ヲ願ヒマス、此ノ度ノ戰爭ニ非常
  ナ巨額ナ金ヲ要スル、其ノ費シタ費用ヲ將
  來ドウシテ補ツテ行クカト云フコトニ付キ
  マシテハ只今モ申シ、又曩ニモ、今御引例
  ニナツタ通リ申シマシタ、卽チ支那ト日本
  トノ經濟的合作、此ノ合作ニ依ツテ所謂脣
  齒輔車ノ關係ニ於テ相互ニ提携シテ行ツテ
  サウシテソレニ依ツテ利益ヲ生ミ出スコト
  ガ出來得ルコトト相成ルヤウニ考ヘルノデ
  アリマシテ、例ヘテ言ヘバ石炭ノ開發ニ致
  シマシテモ、鐵山ノ開發ニ致シマシテモ、
  或ハ水產業ノ開發ニ致シマシテモ、有ユル
  方面ニ於テ日本ト支那トガ相互ニ提携シテ、
  互助連環ノ狀態ヲ持續シテ參リマスナラ
  バ、ソレガ齎ス所ノモノハ單ニ日本ニ大キ
  ナ利益ヲ齎スノミナラズ、支那ノ國民ニモ
  大キナ利益ヲ與ヘルノデアリマス、雙方ト
  モ之ニ依ツテ尠ナカラザル利益ヲ得ルデア
  ラウ、卽チ今囘投ジマシタ所ノ費用ハ之ヲ
  償ヒ得テ餘リアルヤウナ狀態ヲモ招來シ得
  ルコトガアルノデハナカラウカ、是ハ國民
  ノ協力ト努力ニ俟ツノデアリマスケレドモ、
  從來相反目シテ居ツタ時代ト、互ニ心カラ
  提携シテ行クコトガ出來ルヤウニナツタ時
  代トデハ、自ラソコニ相違ガ起リマシテ、日
  本國民ノ利益ニナルコトモ亦起ツテ來ルノ
  デアリマスガ故ニ、其ノ利益ヲ考ヘ得ベキ
  デハナカラウカ、斯樣ニ考ヘテ申上ゲタ次
  第デアリマス、稅制ニ付テ今日國民ノ愛國
  心ニ結付ケテ考ヘルコトハ間違ツテ居ルデ
  ハナイカ、斯ウ云フ御話デアリマスガ、ソ
  レハ御話ノ如ク日本ノ國民ハ愈〓ト云フ場
  合ニ於テハ、單ニ財產ノミナラズ總テ自分
  ノ一身ヲ捧ゲテ行ク國民性デアリマスガ故
  ニ、何モ故ラニ稅ノ上ニ於テ愛國心ニ愬ヘ
  テ增稅ヲスルト云フヤウナコトヲセヌデモ
  宜イト云フ御話ハ御尤モダト思ヒマス、併
  シ此ノ度ノ稅制ニ於キマシテ或ル程度ノ、
  卽チ言葉ヲ換ヘテ言ヘバ、相當ノ增稅ヲ國
  民ニ負擔シテ戴クト云フ事柄ハ、私ハ愛國
  心ニ愬ヘルト云フ譯デハアリマセヌケレド
  モ、現在ノ實情ニ照シテ負擔ヲシテ戴クト
  云フコトヲ御願シテモ、私ハ國民トシテ諒
  解ヲ得ラレルノデハナカラウカ、斯ウ考心
  チテルルノデアリマシテ、何モソレヲ愛國
  ニ愬ヘテ增稅ヲスルノデアルト云フ一本調
  子ニ考ヘテ居ルモノデハナイノデアリマス

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• 071・板谷順助

  ○板谷委員　ドウモ只今ノ御答辯ハ不滿足
  デアリマスガ、御互ニ議論シテモ仕方ガナ
  イカラ此ノ程度デ止メテ置キマス
  ソコデ此ノ度ノ稅制改正案ニ對スル政府
  ノ御答辯ヲ檢討シテ見マスト、率直ニ申シ
  マスト極メテ不得要領、或ハ經濟諸政策ト
  調和ヲ圖ツタト云フヤウナコトヲ言ツテ居
  ラレル、併シナガラ果シテ政府ガ堅持シナ
  ケレバナラヌト云フ生產擴充或ハ低物價政
  策トノ間ニ大ナル矛盾ガナイカ、是ハ各委
  員カラモ色々御尋ガアリ、又先程商工大臣
  ノ御答辯ニ於キマシテモ相當ノ矛盾ガア
  ル、ソレヲ出來ルダケ何トカ調和スルト云
  フヤウナ答辯ヲサレテ居ル、併シナガラ恐
  ラクハ今囘ノ稅制改正ハ、政府ハ四大目
  標ノ下ニ發表サレテ居リマスルケレドモ、
  所謂增收ト云フモノヲ唯一ノ目標トシテ本
  案ヲ立テラレタノデハナイカト私ハ思フ、
  私ハ若シ大藏大臣ガ十分ニ時間ヲ持ツテ居
  ラレタナラバ、恐ラクハ此ノ案ニ對シテ再
  檢討ヲ加ヘテ適當ニ御考ニナツタノデハナ
  イカト思フ、御承知ノ通リ前事務官大臣ガ
  案ヲ立テテ稅ヲ取ル方ニ集中ヲシタ、ソレ
  ニ付テアナタガ此ノ度ノ組閣〓々十分ニ檢
  討ナサル期間ハナカツタカモ知レナイガ、
  甚ダ失禮デハアリマスケレドモ、果シテア
  ナタガ此ノ案ノ內容ヲ十分檢討シテ、確信
  ヲ持ツテ御答辯ニナツテ居ルカドウカ、今
  日マデ御答辯ノ內容ヲ聽イテ見マスト、今
  申上ゲマスヤウニ增收ヲ唯一ノ目的トシテ
  此ノ案ガ立テラレタト云フコトガ御答辯ノ
  中ニ明ニナツテ居ル、ソコデ現在ノ我國ノ
  經濟界ノ狀況ハ、國民ニ幾ラカ餘裕ヲ與ヘ
  テ、生產擴充ヲヤラナケレバナラヌノニ、
  國民ニ餘裕ヲ與ヘズシテ、ヤレ生產擴充ヲ
  ヤレ、或ハ低物價政策ハ堅持セヨ、國策ニ
  ハ順應セヨト言ハレテ居ルガ、率直ニ申上
  ゲマスナラバ、手足ヲ縛ツテ尻ヲ叩イテ居
  ルヤウナコトニナツテ居ルノデハナイカト
  思フ、或ハ言葉ガ極端デアルカモ知レマセ
  ヌケレドモ、私ハサウ云フ感ジガスルノデ
  アリマス、ソコデ恐ラクハ此ノ改正案ノ通
  過シタル結果、含ミアルモノ、內容ノアル
  モノハ殆ド大部分ノ金ヲ取ラレテシマフ
  御承知ノ通リ現在ハ金利ガ安イト云フヤウ
  ナ關係カラ、借金デ仕事ヲシタ方ガ宜イト
  云フヤウナ結果ニナリハシナイカ、國民ニ
  幾ラ働イテモ駄目ダト云フヤウナ觀念ヲ起
  サセルト云フコトハ、前途ニ對シテ非常ニ
  憂慮スベキ問題デハナイカト思フ、御承知
  ノ通リ現在國民ハ時局柄何モ言フコトガ出
  來ナイ、言フコトノ出來ナイ所ニ私ハ此ノ
  危險性ガアルノデハナイカト思フ、將來東
  亞ノ新秩序建設ト云フ重大使命ガアリマス
  カラ、實力ヲ培養スルト云フ所ニ重點主
  義ヲ置イテ行カナケレバナラナイコトハ
  言フマデモナイ、御承知ノ通リ日米關係ニ
  於テモ極メテ段々惡化シ、將來ニ於テハ日
  本ハ自給自足ノ方針ヲ執ツテ行カナケレバ
  ナラヌ、サウ云フ事態ニ於テ、果シテアナ
  タハ、此ノ重大時局ヲ切拔ケルニ付テノ確
  信ヲ持ツテ居ラレルカ、アナタハ屢〓一割以
  下ノモノニハ課稅シナイ、ソレ以上ノモノ
  ハ取ルノダト云フコトヲ仰シヤツテ居ルケ
  レドモ、此ノ改正ノ結果、有ユル法人ガ六
  七分程度ノ配當デ甘ンズル爲、將來稅ノ增
  收ノ上ニ於テモ、或ハ自然增收ノ上ニ於テ
  モ私ハ大イナル狂ヒガ來ルノデハナイカト
  思フ、此フ點ニ付テ確信ガアリマスカ

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• 072・櫻内幸雄

  ○櫻內國務大臣　御答申上ゲマスガ、先ヅ
  第一ニ私ガ此ノ法案ヲ提出スルニ當ツテ十
  分ナ檢討ヲ致シタカドウカ、確信ヲ以テ提
  出ヲシタカドウカト云フ御尋デアリマスガ、
  御承知ノ通リ私ハ一月ノ中頃ニ大命ヲ拜シ
  タノデアリマスガ、此ノ法案ハ申スマデモ
  ナク昨年以前ニ出來テ居ツタノデアリマス、
  併シ是ハ重大ナ問題デアリマスノデ、就任
  以來相當ニ檢討ヲ致シタノデアリマス、又
  就任以前ニ於テモ私ト致シマシテハ衆議院
  議員トシテ、國民ノ代表者ノ地位ニ立ツテ
  之ニ付テハ相當〓究致シタノデアリマス、
  固ヨリ是ガ理想的ナ完璧ノ法案ダトハ私ハ
  思ヒマセヌケレドモ、兎ニ角朝野ノ有ユル
  有力ナル人ヲ網羅シタ稅制委員會ガ二十八
  囘モ會議ヲ重ネテ審議シ、其ノ以前ニハ政
  府ノ當事者ニ於テモ之ヲ練リニ練ツテ、而
  モ數年來練ツタ案デアリマシテ、而シテ茲
  ニ成案ヲ得タノデアリマスカラ、私ハ相當
  敬意ヲ表シテ此ノ案ニ對シテ〓究致シテ來
  タノデアリマス、隨テ私ハ之ヲ提案致シテ
  御協賛ヲ御願シテ然ルベキモノダト信ジテ
  提案致シタ譯デアリマス
  ソレカラ第二ニ、增收ヲ唯一ノ目的トシ
  テ居ルト仰セラレマスガ、固ヨリ增收ト同
  時ニ彈力性ヲ有スル稅法ヲ得タイ、是ハ豫
  テカラ申ス通リ、增收ハ今囘ノ稅制改革ノ
  四大眼目ノ一ツニナツテ居リマス、而モ其
  ノ中ノ有力ナル一ツノ題目デアルニハ相違
  アリマセヌガ、是ガ唯一ノ目的デアルト云
  フノデハナイノデアリマス
  ソレカラ次ニ、東亞新秩序建設ヲ達成致ス
  三、將來非常ニ國本ヲ培養シテ置カナケ
  レバ其ノ目的ハ完成出來ナイノダ、殊ニ亞
  米利加ノ空氣モ惡イシ、國際情勢モ決シテ
  好クナイ、此ノ機會ニ於テ國民ニ十分ナル
  餘力ヲ與ヘテ置クコトガ必要デハナイカト
  仰セラレマスガ、私ハ全ク板谷君ノ御說ニ
  同感デアリマス、若シ日本ノ財政ガ增稅ヲ
  スルノ必要ハナイ、又增稅ヲ俟タズシテ處
  理シテ行ケル、斯樣ナル事柄ニ付テ十分ノ
  確信ガ得ラレマスナラバ、私ハ板谷君ノ御
  說ト同樣ニ、左樣ナル方針ニ向ツテ參リタ
  イト思ヒマス、併シナガラ今日ノ財政ハ左
  樣ナ餘地ガアルトハ考ヘマセヌノミナラズ、
  多年ノ懸案デアツタ此ノ稅制改革ガ今日マ
  デ延ビテ居リマシタコトハ、旣ニ申シタカ
  モ知レマセヌケレドモ、丁度支那事變ガ始
  リマシテ、是ガ半年カ一年若クハ一年半デ
  濟ムデアラウト云フノデ、延ビ〓〓ニナツ
  テ居ツタノデアリマスガ、此ノ際ニ於テ、
  旣ニ長期建設ト云フモノガココ數箇年間デ
  終了致サナイト云フコトニナリマスナラバ、
  此ノ機會ニ於テ之ヲ斷行スルコトガ必要ナ
  コトデアルト考ヘテ、此ノ提案ノ決意ヲ致
  シタ譯デアリマス、而シテ此ノ國難打開ニ
  對シテ確信ヲ持ツテ居ルカト云フ御話デア
  リマスガ、ソレハ極メテ重大ナコトデアリ
  さく、私ハ今後ノ國際情勢ガ如何ニ變化シ
  テモ日本ガ微動ダモセザル體制ヲ强化シテ
  行クニ付テハ、吾々トシテハ非常ナ決心ヲ
  致ス必要ガアルト思ヒマスト同時ニ、之二
  對處スルニハ少カラズ細心ノ注意ヲ拂ツテ
  進ンデ行カナケレバナラヌト考ヘテ居リマ
  ズ、2併シナガラ私ハ其ノ困難ヲ突破シテ行
  クト云フコトニ付テハ毫末モ疑ヒマセヌ、
  私ハ日本國民ガ眞ニ協力シテ進ンデ行クナ
  ラバ、此ノ難關ヲ突破シ得ルト信ジテ居ル
  次第デアリマス

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• 073・板谷順助

  ○板谷委員　議會ガ多年中央地方ヲ通ズル
  稅制改革ヲ要望シテ居ツタガ、何モ此ノ支
  那事變デ經濟界ガ動搖シテ居ル此ノ際ニ、
  强ヒテヤルト云フ必要ハナイヤウニ私ハ想
  像サレルノデアリマス、御承知ノ通リ劃期
  的ノ大增稅ヲスルト云フコトニ付テハ、地
  方稅ニ付キマシテモ相當ノ準備ノ必要ガア
  ル、或ハ國稅ニ於キマシテモイキナリ
  デモナイカモ知レヌガ、兎ニ角此ノ大增稅
  案ヲ國民ニ能ク納得ヲサセ、氣持好ク納メ
  サセルト云フコトニ付テハ、ヤハリ少クモ
  二年、三年ノ時日ヲ要スベキモノダト思フ、
  ソコデアナタハ今此ノ稅制改革ニ付テハ二
  十八囘モ各方面ノ權威者ヲ集メテヤツタノ
  デアル、自分ハ其ノ意思ヲ尊重シ、此ノ案
  ガ相當ノモノデアルト云フ確信ノ下ニ提案
  シタト云フ御話デアリマスガ、アナタハ其
  ノ稅制調査會ノ答申ニ對シテハ何處マデモ
  尊重ナスツテ行ク御考デアリマスカ、今ノ
  アナタノ御言葉ニ依レバサウ云フ風ニ取レ
  ルノデアリマスガ····

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• 074・櫻内幸雄

  ○櫻內國務大臣　只今ノ御尋ハ、此ノ稅制
  調査會ノ答申ヲ尊重シテヤツタカドウデア
  ルカト云フコトデアリマスガ、私ハ此ノ案
  ハ稅制調査會ノ答申ヲ十分ニ尊重シテヤツ
  タモノト考ヘマス、多少ハ相違シタモノガ
  アルカモ知レマセヌガ、大體ノ基本ハ稅制
  調査會ノ答申ヲ尊重シテヤツタノデアリマ
  ス

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• 075・板谷順助

  ○板谷委員　若シ此ノ答申案中ニ重大ナ條
  件ニ付テ政府ノ原案ト違ツタ點ガアルナラ
  バ、之ヲ修正スルコトニ付テ御同意ニナリ
  マスカ、最モ重大ナ案デ··

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• 076・櫻内幸雄

  ○櫻內國務大臣　私ハ此ノ稅制調査會ノ答
  申ヲ修正シテ直シタモノガドレ〓〓ト云フ
  コトハ今此處デ申上ゲ兼ネマスガ、ソレヲ
  修正致シマシタ點ハ、是ハヤハリ修正シタ方
  ガ宜イト云フ調査ノ結果修正致シタノデア
  リマシテ、今御指摘ニナリマシテモ、直チ
  ニ私ガ修正ニ御同意ヲ申上ゲルト云フコト
  ハ申上ゲ兼ネマス

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• 077・板谷順助

  ○板谷委員　ドウモサウナルトアナタノ屢〓、
  各方面ノ權威者ヲ集メテ二十八囘モ審議シ
  タ其ノ答申案ニ基イテ自分ハ此ノ案ガ是ナ
  リト信ジテ出シタノダト云フ御言葉ト、チ
  ヨツト違フヤウデスガ···

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• 078・櫻内幸雄

  ○櫻內國務大臣　私ハ少シモ違ハヌト思ヒ
  マン、其ノ二十八囘モ調ベタ結果ノ問題ニ
  對シマシテ、十分ソレヲ此ノ改正案ニ織込
  ンデ提案致シタノデアリマシテ、答申案其
  ノ儘ヲ全部之ニ織込ンダ、卽チ調査會ノ案
  ニ依ツテ之ヲ全部決定シテ出シタ、斯ウ云
  フ意味デハナイノデアリマシテ、調査會ノモ、
  答申案中ニモ色々ノ意見モアツタノデアリ
  マシテ、調査會ニ於キマシテ全會一致デ決
  定シタ意見ハ全部私ハ取入レテ居ルト記憶
  シテ居ルノデアリマス、少數意見ニ對シマ
  シテハ、必ズシモ之ニ依ラナクテハナラヌ
  ト云フノデハアリマセヌケレドモ、少數意
  見デモ採用シタノモアリマスケレドモ、大
  體ニ於テ調査會ノ決定ト云フモノハ尊重シ
  テヤツテ居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=78

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• 079・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　此ノ際多少誤解ガアルト
  困リマスカラ私カラモ補足シテ御答致シテ
  置キタイト存ジマス、御手許ニ「稅制調査會
  答申」ト云フノヲ資料トシテ差上ゲテ居ル
  ノデアリマスガ、此ノ中ニ於キマシテ最初
  ノ第一頁ヲ御覽ニナリマスト、「稅制調査會
  答申、稅制調査會ハ中央地方ヲ通ズル稅制ノ
  一般的改正ニ關シ關係當局ノ提出ニ係ル稅
  制改正試案ニ基キ愼重審議ノ結果大綱トシ
  テハ右試案ニ依リ稅制改正ヲ行フヲ適當ト
  認ムルモ左記事項ニ付テハ修正又ハ考慮ヲ
  要スルモノト認ム」ト致シテ居リマシテ、第
  一國稅、第二地方稅トシテ居リマス、是一
  稅制調査會ニ於キマシテ一致ノ御意見デア
  リマシテ、是ハ十分尊重シテ案ヲ決メテ居
  リマス、ソレカラ其ノ第五頁ニナリマスト、
  「尙稅制調査會ニ於テ陳述アリタル左記意
  見ニ付テハ政府ニ於テ愼重考究アランコト
  ヲ望ム」トシテ居リマスガ、是ハ稅制調査會
  ニ於テ纒ツタ意見デハアリマセヌ、此ノ中
  ニハ色々相互矛盾撞著シタ意見モアルノデ
  ゴザイマスガ、兎ニ角稅制調査會ニ於テ斯
  ウ云フ意見モアツタト云フコトヲ一ツ政府
  ニ答申シテ置カウ、斯ウ云フ次第デ出來テ
  居ルノデアリマシテ、隨ヒマシテ此ノ五頁
  以下ニアルノハ相當多數ノ委員ノ方ノ意見
  モ織込マレテ居リマスガ、又極ク一部少數ノ
  ミノ意見ノモノモアリマシテ、寧ロ大多數ハ
  之ヲ否定スルヤウナ意見モ相當出テ居ルノデ
  ゴザイマス、此ノ事ダケ申上ゲテ置キマス

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• 080・板谷順助

  ○板谷委員　答申案ハ多數デアルカ少數デ
  アルカ私ニハ分ラナイ、併シナガラ其ノ中
  ニハ無論役人ノ方モアルデアリマセウガ、
  役人ノ方ハ出來ルダケ稅ヲ取ラウト云フ、
  大臣ノ仰シヤル各方面ノ權威者ト云フノハ
  要スルニ民間ノ經驗アル或ハ學者ダトカ、
  サウ云フヤウナ人ヲ指スコトト思フノデア
  リマス、苟モ答申ト云フモノガ多數デアル
  カ少數デアルカト云フコトハ此ノ書面ノ上
  デハ明カデナイ、併シ私ハ大臣ガ屢〓、各
  方面ノ權威者ヲ集メテ二十八囘モヤツタ案
  デアルカラ自分ハ之ヲ適當ト認メテ出シタ
  ノダ、斯ウ云フ御言葉デアルガラ私ハ今念
  ヲ押シタノデス、所ガ御答辯ガドウモ屢〓、
  聲明ヲ爲ス所ト違フヤウデス、併シ是ハマ
  アサウ擧足ヲ取ツテモ仕方ガナイノデ此ノ
  程度ニシテ置キマス、併シ答申案ト云フモ
  ノハ尊重ナサル必要ガアルト私ハ信ズル

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• 081・櫻内幸雄

  ○櫻內國務大臣　兎ニ角此ノ案ヲ決定致シ
  マスノニハ、稅制調査會ノ意見ト云フモノ
  ハ十分尊重シテ拵ヘタ譯デアリマシテ、全
  部其ノ儘採ツタト云フ意味デハナイノデア
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=81

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• 082・板谷順助

  ○板谷委員　ソコデ私ハ此ノ改正案ガ、果
  シテ國民ニ擔稅力ガアルヤ否ヤ、國民ガ此
  ノ稅ノ負擔ガ出來ルカドウカト云フコトガ
  現在ノ我國ノ經濟界ニ於テ私ハ重大問題ト
  思フ、先般統計局長ヲ呼ンダ際ニ、一體國民
  ノ所得ハ幾ラアルカト云フコトヲ質問シタ
  際ニ、昭和十年ヨリ調ベテ居ラヌ、大藏當
  局トシテハ、主稅局長ハ二百五十五億モア
  ルヤウナ御話、又大藏大臣ハ本會議ノ御答
  辯ニ於テ二百億カラ二百五十億、其ノ間ニ
  非常ナ大キナ開キガアル、苟モ統計局ト致
  シマシテハ成ベク最近ノ國民ノ所得ヲ調べ
  テ報告スベキモノヲ、ドウ考ヘルカト言ヘ
  バ、ソレヲ肯定スルヤウナ話ヲシテ、詰リ出
  鱈目ナ報告ヲシテ居ル、コンナコトハ當テ
  ニナリハシナイ、ソコデ國民所得ヲ調ベル
  ト云フコトニ付テハ、必ズシモ國民ノ所得
  ノミデハナク、主稅局長ノ御答辯ニ依リマ
  スト、國民ノ生活、或ハ經濟界ノ狀況、產
  業界ノ狀況、國民ノ生活ニ及ボス影響等色
  色ノ方面カラ檢討シテ、先ヅ適當ト思ハレ
  ル所ニ落付カセナケレバナラヌト云フ意味
  ノ御答辯デアツタ、ソコデ今申上ゲマスヤ
  ウニ、果シテ現在ノ此ノ稅制ニ於テ國民ガ
  擔稅力ガアルカ、一面ニ於テ生產擴充、
  面ニ於テ低物價政策ガ堅持出來ルカ、私
  是ハ重大ナ問題ダト思フ、先程申上ゲマシ
  タヤウニ、兎ニ角前途或ハ國際情勢ニ於テ
  如何ナル變化ガアルカ分ラナイカラ、或ル
  程度マデ餘力ヲ殘シテ、所謂生產擴充、低
  物價政策ヲ第一義トシテ此ノ際進マナケレ
  バナラヌト云フ重大ナ時機デアル、所ガ今
  申上ゲルヤウニ、此ノ國民所得ニ對シテ私
  ハ非常ナ疑ヲ持ツテ居ル、政府當局ノ御答
  辯ガ區々デアツテ、一向要領ヲ得ナイノデ
  スガ、此ノ點ニ付テ大藏大臣ト主稅局長ト
  五億カラノ食違ヒガアル、或ハ又國民ノ生
  活ノ上ニ於テ何等不安ガナイ、物資ガ非常ニ
  缺乏シテ居ツテ、國民ガ非常ニ現在苦シン
  デ居ル、成程殷賑產業、時局產業ノ者ハ、ソ
  レハ或ハ相當ナ餘裕ガアルカモ知レヌガ、
  先ヅ第一ニ物資ノ缺乏シテ居ルト云フコト
  ニ付テ國民生活ノ上ニ於テ不安ガナイ、是
  モ相當ニ考慮シタ、斯ウ云フ御答辯デアル
  ガ、此ノ點ヲモツトハツキリ一ツ御〓ヲ願
  ヒタイ

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• 083・櫻内幸雄

  ○櫻內國務大臣　國民所得ノ問題ニ對シテ、
  政府當局ノ話ス所ハドウモ違フデハナイカ
  ト云フ御話デアリマスガ、私ガ豫算總會デ
  申上ゲマシタノハ、主稅局デ調ベテ居リマ
  ス二百五十五億ト云フ數字ヲ記憶致シテ居
  リマシテ、ソレデ二百五十億見當ト云フコ
  トヲ大體ニ申シタノデアリマス、其ノ後統
  計局、其ノ他ノ方面モ調ベテ見マシテ、私
  ハ今日デモヤハリ二百五十億内外ハ確實ニ
  收入ガアルデハナイカ、斯ウ信ジテ居リマ
  ス、唯統計局ハ昭和十年ニ調査致シタ此ノ
  方、所謂具體的調査ヲ致シテ居ラヌノデア
  リマシテ、統計局ハ二百五十億ノ國民ノ所
  得ガアルト云フコトハ申サナカツタヤウデ
  アリマスガ、併シナガラ其ノ局長モ、今日
  ハ少クトモ二百五十億ハアルト云フコトニ
  自分ハ見當ヲ付ケテ居ル、斯樣ナ譯デアリ
  マシテ、具體的ニ材料ヲ以テ、所謂正確ナ
  ル調査ニ依ツテ組立テラレタ所ノ金額ガ二
  百五十億デアルト云フコトハ、私ハドウモ
  言切リマセヌケレドモ、昭和十年ノ調査ヲ
  基礎トシ、同時ニ今日稅ヲ取立テテ居リマ
  ス所ノ主稅局ノ立場トシテ、有ユル方面カ
  ラ調査シタ點ヲ顧ミテ、大體二百五十億ハ
  アルモノト考ヘテ居リマス、或ハ私ガ二百
  億以上二百五十億アルト云フコトヲ申シタ
  カモ知レマセヌガ、私ハ二百五十億ノ所得ガ
  アルト云フコトハ信ジテ居ル譯デアリマス、
  ソレカラ今日ノ場合ニ於テ、低物價政策ヲ
  堅持シテ生產力擴充ニ主力ヲ注ガナケレバ
  相成ラヌデハナイカ、ソレニ主力ヲ注グコト
  ヲ忘レテ居ルノデハナイカト云フ御話デア
  リマスガ、併シナガラ御說ノ通リ今日ノ實情
  ハ、將來ノ發展ヲ考ヘマシタ場合ニハ、ドウ
  シテモ生產力ノ擴充ヲ致サナケレバナラヌ、
  又國防ノ上ニ於キマシテモ、生產力ヲ擴充シ
  テ、卽チ自力自營ガ出來ルヤウニ相成ラナ
  ケレバナラナイノデアリマシテ、此ノ點ニ
  對シマシテ力ヲ注グコトハ勿論致サナケレ
  バナラナイノデアリマス、今日財政上可ナ
  リ困ツテ居ル場合ニ於キマシテモ、生產擴
  充ニ對シマシテハ力ヲ入レテ居ルヤウナ譯
  デアリマス、物資ノ缺乏ヲ認メナイカト云
  フ御話デアリマスガ、是ハ物ニ依ツテハ餘
  剩ノアルモノモ相當アリマスガ、今日此ノ重
  要ナル物資ノ中ニ於キマシテ、生產擴充ガ
  思フヤウニ參ラズシテ、サウシテ品物ガ不足
  シテ居ル點ガ多々アルト思ヒマス、卽チ現
  在ノ日本ノ狀態デ一番心配ヲ致サナケレバ
  ナラナイ點ハ、此ノ物資ノ缺乏ヲ補ツテ行
  クト云フコトニアルノデアリマシテ、此ノ
  點ニ付キマシテハ、吾々トシテモ深ク考慮
  ヲ拂ハナケレバ相成ラヌト思ツテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=83

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• 084・板谷順助

  ○板谷委員　主稅局長ハ、今私ガ申上ゲタ
  コトニ對シテハドウ云フ御考ヲ持ツテ居ラ
  レマスカ、一ツ伺ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=84

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• 085・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　國民所得ノ點ニ付テノ御
  尋カト存ジマス、實ハ國民所得ハ此ノ程度
  アルト云フコトヲ當初私カラ申上ゲタノデ
  ハナカツタノデアリマス、偶〓今囘ノ增稅ニ
  當リマシテ、增稅實施後ニハ國民所得ニ對
  スル租稅ノ負擔ノ割合ハドレ位ニナツテ居
  ルダラウカト云フコトガ問題ニナツテ來タ
  ノデアリマシテ、其ノ場合ニ、昭和五年ニ內
  閣統計局デハ國民所得ノ調査ヲ致シテ發表
  シテ居ルガ、其ノ後ノ發表ハ致シテ居ナイ
  ト云フコトヲ私ハ申上ゲタノデゴザイマス、
  併シ國民所得ノ高ガ幾ラ程アルカ分ラナイ
  デ一體增稅案ナント云フモノガ立テラレル
  カ、斯ウ云フ御話ガアリマシテ、大體ノ見
  當デモ付カナイカト云フノデアリマスカラ、
  ソレハ私共每年租稅收入ノ狀況ヲ見タリ、
  又或ハ最近數度ニ亙リマシテ增稅ヲ致シテ
  居リマスルガ、其ノ際ニ於キマシテハ、大
  體國民所得ハドウ云フ風ニナツテ居ルダラ
  ウカ、而シテ現時ノ國民所得ニ對シテドウ
  云フ割合ニナツテ居ルダラウカ、增徵後ノ
  國民ノ負擔ハドウナルダラウカト云フコト
  ヲ一應計算ハシテ居ルノデゴザイマス、勿
  論是ハ唯私共租稅行政ニ携ツテ居ル者ノ、
  事務上ノ一ツノ參考トシテ居ルノニ過ギナ
  イノデアリマスケレドモ、併シ其ノ立場カ
  ラ國民所得ガドレ程ニナルカト云フコトニ
  ナリマスレバ、是ハ計算シ居ルモノガゴザ
  イマスカラ、昭和五年內閣統計局ノ發表セ
  ラレタ國民所得ヲ基礎ニ致シマシテ、其ノ
  後第三種所得ノ課稅對象トナツテ居ル所得
  ノ推移ノ狀況ヲ見テ、各年ノ國民所得ノ推
  移ヲ推定シテ見ル、其ノ方法ハ大正十四年
  ニ內閣統計局ニ於テ國民所得ヲ計算シ、更
  ニ昭和五年ニ於テ國民所得ヲ計算シタ場合
  ニ於テ、大正十四年ヨリ昭和五年ノ間ニ納
  マツテ居ル各年ノ所得ヲ推計スル場合ニ致
  シタ方法デアツテ、先ヅ日本トシテ現在ノ
  所、實際ニ國民所得ヲ調査シナイ各年分ニ
  付テハ、此ノ方法ニ依ルノガ一番妥當デア
  ラウト思フ、隨ヒマシテ私共ハサウ云フ計
  算方法ニ依ツテ國民所得ヲ推計シテ居ルノ
  デアリマスガ、ソレニ依リマスレバ最近ノ
  ハ二百五十五億圓ニナル、斯ウ云フコトダ
  ケ申上ゲテ置イタノデゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=85

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• 086・板谷順助

  ○板谷委員　私ガアナタニ御尋シタノハ、
  先般二百五十五億アツテ、平均ガ一七%ニナ
  ルト云フヤウナ御話デアツタガ、何モ是ハ
  平均デ出ス筋合ノモノデナイ、ソコデ今囘
  ノ稅制改正ニ付テ國民經濟ノ狀況、產業界
  ノ狀況、國民ノ生活ニ及ボス影響等、色々ノ
  方面カラ檢討シタト云フ御答辯ニナツテ居
  ルガ、ドウ云フ御檢討ヲナスツタカ、先程
  申上ゲマスヤウニ生產力ガ非常ニ減退シテ
  居ル、物資ガ非常ニ缺乏シテ居ル、國民ガ
  非常ニ苦ンデ居ル、生產力擴充、低物價政
  策ト云フモノヲ第一義トシテヤラナケレバ
  ナラヌ此ノ時代ニ於テ、アナタハ之ヲ斟酌
  シテ此ノ改正案ヲ作ツタト云フ御答辯ニナ
  ツテ居ルカラ、ソレヲ私ハ伺ツテ居ル

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=86

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• 087・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　此ノ度ノ稅制改革ニ於
  キマシテハ四ツノ大キナ目標ガアルノデゴ
  ザイマス、其ノ中ニ增收ヲ圖ルト云フコトモ
  一ツノ目標ニナツテ居ルノデアリマスガ、
  今ノ御尋ハ此ノ點ニ觸レタモノカト存ジマ
  ス、御話ノヤウニ最近色々ナ方面ニ於テ物
  資ガ缺乏シテ、相當國民生活ニ於テモ困難
  ヲ來シテ居ルト云フ事實ガアルノハ、私共
  モ十分承知シテ居ルノデアリマス、併シナ
  ガラ一面ニ於テ會社ノ利益率ノ例年ノ狀況
  ヲ見マシテモ、拂込資本ニ對スル利益率ハ、
  昭和六年ニ於テハ五%程デアリマシタ、是
  ガ昭和九年ニハ八%餘ニナリ、十年ニハ九
  %餘ニナリ、十一年ニハ九%九ニナリ殆ド
  一〇%、十二年ハ一二%、十三年ハ又一二
  %-十二年ヨリモ一寸越シテ居リマス
  ガ、斯ウ云フ風ニナツテ居リマシテ、十二
  年度以降相當增稅モ行ハレテ居ルニモ拘ラ
  ズ、ヤハリ會社ノ拂込資本ニ對スル收益率
  モ相當殖エテ來テ居リマス、ソレカラ御手
  許ニ差上ゲマシタ參考資料ヲ御覽下サイマ
  シテモ、第三種所得ノ額ハ每年々々相當增
  加シテ居リマス、隨ヒマシテ稅收入ノ上ニ
  於キマシテモ、最近數年ハ相當大キナ自然
  增收モ得テ居ルト云フヤウナ狀況デアリマ
  スノデ、我國ノ經濟界ノ狀況ハ、斯ウ云フ
  點ヲ見マスルト決シテ弱ツテ居ルモノデハ
  ナイ、此ノ際我國ノ國庫財政ノ狀況カラ見
  マシテモ、尙ホ幾分國民ニ負擔ハ願ヘルデ
  ハナカラウカ、斯ウ云フ考察ヲ下シテ居ル
  次第デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=87

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• 088・河野密

  ○河野委員　關聯シテ一寸-國民所得ト
  租稅トノ關係デアリマスガ、是ハ只今主稅
  局長カラ御答辯ガアリマシタ中ニモアリマ
  シタヤウニ、第三種所得稅ノ收入カラ國民
  所得ヲ寧ロ〓算シテ行クノガ、日本ノ國民
  所得ノ計算方法ダト私ハ思フ、是ハソレダ
  カラ日本デハ、國民所得ト租稅トノ關係ガ
  ドウ云フ率ニナツテ居ルカト云フノハ極メ
  テ意味ノナイコトダト思フノデアリマス
  ガ、サウ云フコトヲ大藏當局ガハツキリナ
  サルコトガ宜イノデアツテ、例ヘバ外國ニ
  比ベテ日本ハ高クアルトカナイトカ、國民
  所得ハ二百五十億アルカラ、ソレニ對スル
  今度ノ增稅ノ率トシテハ一七%ダカラ高ク
  ナイトカ、斯ウ仰シヤルケレドモ、私ハ是
  ハ全ク架空ノ數字デアツテ、寧ロ全收入カ
  ラ國民所得ヲ計算シテ行ツテ、一定ノ率ヲ
  以テ國民所得ヲ推定シテ居ルノダカラ、是
  ハ甚ダサウ云フ答辯ハイケナイコトヂヤナ
  イカト斯樣ニ思フノテスガ、當局ノ考ヘ方
  ハ如何デスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=88

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• 089・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　是ハ私前二囘ニ亙リマシ
  テ相當詳細ニ御答シテ居ル積リデゴザイマ
  スガ、今河野サンカラ重ネテ御尋デアリマ
  シタカラ、ハツキリ御答シテ置キマス、國
  民所得ノ調査ハ、此ノ前ニ統計局長ノ此ノ
  席デノ御答ニ依リマシテモ、我國ニ於キマ
  シテハ極メテ「ラフ」ナモノデアリマス、ア
  レヲ以テ的確ナル國民所得ノ調査ガ出來テ
  居ルモノトハ稱シ難イカト思ヒマス、是ハ
  獨リ我國バカリデハナイ、私ハ今日英、米、
  獨、佛各國ノ國民所得ノ調査モ、其ノヤウ
  ニ正確ナモノハ出來テ居ナイノデハナイカ
  ト思ハレルノデアリマス、尙ホ各國ニ於テ
  國民所得ノ調査ヲ致ス方法ソレ自體ガ又色
  色違ツテ居ルノデアリマシテ、或ハ學者ニ
  依リマシテハ物的調査ノ方法、或ハ人的調
  査ノ方法ト大別シテ居ルノモアルヤウデア
  リマス、物的調査ノ方法ト云フノハ所謂生
  產統計デアリマシテ、是ハ一ツノ工業ナラ
  工業ト致シマスト、其ノ工業方面ノ生產高
  ヨリ原料費或ハ燃料費ト云フヤウナモノヲ
  差引イタ殘リデゴザイマシテ、是ハ使用人
  ニ對スル俸給ナンカモ經費ニハ見ナカツタ
  ノデアリマス、要スルニ其ノ國ノ國民全體
  ノ所得ヲ見ル場合ニ、物的ニ如何程增加シ
  テ居ルカ、斯ウ云フコトヲ見ルノデアリマ
  スカラ、會社ノ經營デヤツテ居ル場合ニ會
  社ノ所得、純益ヲ見ルト云フヤウナ性質ノ
  モノデハナクテ、其ノ會社ガ事業ヲヤツテ
  居ル場合ニ、物的ニ國全體トシテドレダケ
  ノ生產增加ガアルカ、斯ウ云フコトヲ見ル
  ノデアリマスカラ、使用人ニ對スル俸給、
  賞與ト云フヤウナモノモ皆所得ノ中ニ計算
  サレル、斯ウ云フコトニナツテ居ルノデア
  リマス、一面ニ於テハ又人的調査ノ方ハ、
  各人ニ付キマシテ實際個々ノ者ガドレダケ
  ノ收入ガアルカト云フコトヲ見テ行ク方法
  デアリマシテ、是ハ或ハ國債カラ得ル利子
  モ所得ニ計算サレマス、ソレカラ個人間ノ
  貸借關係カラ生ジテ來ル所得モ所得ニ見ラ
  レル、斯ウ云フコトデアリマシテ、是等ノ
  モノハ一國ノ物的生產ノ方面カラ言ヘバ無
  意味ナコトニナルノデアリマス、然ルニ或
  國ハ物的方法ニ依リ、或國ハ人的方法ニ依
  ツテ統計ヲ致シマシテ、之ヲ國民所得ナ
  リ、斯ウシテ居ル、而モ其ノ調査ノ方法ニ
  色々精粗ガアルノデアリマスカラシテ、
  隨ヒマシテ佛蘭西ガ國民所得何百億法
  アル、亞米利加ガ何千億弗アルト言ツテ
  見タ所ガ、サウ正確ナモノデゴザイマ
  セヌ、隨テ之ニ對スル國民所得ノ割合ガ亞
  米利加ハ二十デ佛蘭西ガ二十八ダカラ、
  亞米利加ノ方ガ負擔ガ輕イ、斯ウ云フコト
  ハ申上ゲラレナイ、又日本ノハ今囘ノ增稅
  前ハ百分ノ十五、增稅後ハ百分ノ十七ダカ
  ラシテ亞米利加ニ對シテマダ餘程低イノ
  ダ、佛蘭西ニ對シテハ尙ホ著シク低イノダ
  ト云フコトモ申サレナイ、或ハ學者等ニ於
  キマシテハ隨分色々ノ〓究ヲシテ居ルヤウ
  デアリマスケレドモ、各國ノ國民所得ソレ
  自體ノ調査ガ當テニナリマセヌカラシテ、
  之ヲ基礎ニシテ高イ低イヲ机ノ上デ論ズル
  譯ニハ行カヌ、一應ノ參考ニハナリマスケ
  レドモソレニ重キヲ置クコトハ困難デアル、
  斯樣ニ考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=89

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• 090・伊藤五郎

  ○伊藤委員　一寸簡單ニ關聯シテデスガ、
  私ハ稅ハ國民所得ト國ノ富トヲ睨合セテ課
  稅シナケレバナラヌト云フ考ヲ持ツテ居ル
  ノデス、併シ是マデ國民所得ニ付テ色々議
  論ガ出マシタケレドモ、我國ノ所謂國富ガ
  ドノ程度ニナツテ居ルカト云フコトガ餘リ
  詳シク大藏當局カラ御說明ガナカツタヤウ
  ニ思フノデアリマス、ソコデ私ハ御伺致シ
  タイノハ、我國ノ富ノ程度如何、私ノ御尋
  シタイ第一點ハ是デアリマス、第二八我國
  ノ債務ノ總額如何、特ニ農村ト都市トノ債務
  ノ額ヲソレ〓〓區別シテ御伺ヲシテ、此ノ
  稅制改革案ノ審議ノ參考ニシタイト思ヒマ
  スルカラ、御返事ヲ願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=90

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• 091・櫻内幸雄

  ○櫻内國務大臣　今其ノ數字ヲ私正確ニ記
  憶致シマセヌガ··

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=91

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• 092・伊藤五郎

  ○伊藤委員　大體デ宜シウゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=92

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• 093・櫻内幸雄

  ○櫻內國務大臣　私ノ記憶シテ居リマスル
  國富ハ古イ數字デアリマスガ、千七百億デ
  ハナカツタカト記憶シテ居リマス、是ハ三
  年バカリ前ノ統計ト思ヒマスガ、併シナガ
  ラ是ハ數字ノコトデアリマスカラ、調ベテ
  後程又申上ゲマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=93

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• 094・板谷順助

  ○板谷委員　更ニ御伺致シマスガ、今回
  ノ稅制改正ハ經濟諸政策ト調和サセルト云
  フコトヲ屢〓繰返サレテ言ハレテ居ル、又
  此ノ稅制改正ハ、申スマデモナク經濟政策
  ノ一部デアル、ソコデ此ノ稅制ガ改正サレ
  夕後ニ、臨時資金調整法、或ハ配當制限令、
  賃金給與停止令ト云フヤウナ經濟諸立法ガ
  益〓强化サレルト思フガ、之ニ對スル相當ナ
  調整ヲナサイマスカ、其ノ點ヲ伺ヒタイト
  思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=94

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• 095・堀切善兵衞

  ○堀切委員長　其ノ御答ノ前ニ、只今出席率
  ガ比較的多イカラ此ノ際一寸申上ゲテ置キ
  マス、本委員會ニ付託セラレマシタ議案ハ、
  所得稅法改正法律案外四十四件ノ多數ニ上
  リ、而モ諸君ノ御精勵ニ依リマシテ、連日
  圓滿ニ議事ノ進行ヲ進メテ居ルノデアリマ
  スルガ、更ニ審議ノ完璧ヲ期スル爲、理事諸
  君ト協議ノ結果、地方稅法案、地方分與稅法
  案、府縣制中改正法律案、市制中改正法律
  案、町村制中改正法律案、北海道會法中改正
  法律案、北海道地方費法中改正法律案、地方
  分與稅分與金特別會計法案、以上ノ八件ヲ小
  委員ヲ擧ゲテ審議ヲシテ戴クコトニ致シマシ
  タ、而シテ小委員ノ數ハ十八名ト致シ、各派ヲ
  適當ニ按排シテ、委員長ニ於テ御指名致シ
  タイト思ヒマス、會期モ切迫シテ居ルコト
  デアリマスルカラ、小委員會ハ明後日ヨリ
  開會致シ、本委員會ト竝行シテ審議致ス
  コトニ申合セマシタカラ、ドウゾ右御諒承
  願ヒマス
  (「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=95

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• 096・堀切善兵衞

  ○堀切委員長　然ラバ直チニ其ノ小委員ノ
  指名ヲ致シマス
  地方稅法案外七件ノ小委員氏名
  小山倉之助君長野高一君
  成島勇君川崎末五郞君
  內藤正剛君飯田助夫君
  塚本三君宮本雄一郞君
  石井德久次君上田孝吉君
  山川賴三郞君瀧澤七郞君
  小見山七十五郞君西川貞一君
  永江一夫君靑木作雄君
  藤本捨助君武田德三郞君
  以上十八名ニ御願致スコトニ致シマス、
  此ノ段申上ゲテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=96

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• 097・堀切善兵衞

  ○堀切委員長　ソレデハ只今ノ御答辯ヲ御
  願致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=97

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• 098・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　此ノ度ノ稅制改正ニ當リ
  マシテハ、經濟諸政策トノ調和ヲ圖ルコト
  モ一ツノ目標ニナツテ居リマシテ、各種ノ
  方面ニ於テ考慮シテ居ルト云フコトハ、旣
  ニ是マデモ度々御答シテ居ルノデアリマス
  ガ、將來資金調整法ノ改正、或ハ利子配當
  制限令ノ改正、賃金給與令ノ改正等ガアツ
  タ場合ニ、是ト調和ヲ圖ルヤウニ更ニ改正
  シテ行ク積リカト云フ御尋デゴザイマス、
  是ハソレ〓〓ノ各法規ガ改正セラレタ後、
  其ノ必要ガアルト思ハレル場合ニハ、更之
  改正ヲシテ行キタイト考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=98

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• 099・板谷順助

  ○板谷委員　私ガ只今ノヤウナ質問ヲ申上
  ゲマスコトハ幸ニ此處ニ商工大臣ガオ
  居デデアリマシテ、民間ノ事情ニモ精通サ
  レテ居ルコトデアリマスカラ、能ク御聽取
  ヲ願ツテ置キタイト思ヒマスガ、御承知ノ
  通リ從來配當制限ヲシテ社内留保ヲ强制的
  ニ命ジタト云フコトハ、所謂生產擴充ヲ自
  己資金ニ於テ行ツテ、公債ノ消化ニ寄與セ
  ントスル趣意カラ、總動員法ガ發動サレタ
  モノト思フ、然ルニ大部分ハ留保金ヲ奪ハ
  レルコトニ現在ナツテ居ル、成程藏相ハ先
  般ノ御答辯ニ於テ、留保所得ガ生產擴充ニ
  使ハレル場合等ニハ相當ナル減稅モ考慮ス
  ル斯ウ言ハレテ居リマスガ、社内ノ留保
  金ニ對スル最高課稅限度ガ、現行法ニ依ツテ
  稍〓引下ゲラレテ居ルノハ是ハ事實デアリマ
  ス、卽チ最高五割五分ト云フノハ、普通所
  得稅、超過所得稅及ビ臨時利得稅ノ合計デ
  アツテ、之ニ營業收益稅、法人資本稅、及
  ビ各稅種ノ附加稅ヲ加へマスル時ニハ、法
  人ノ負擔額ハ六割ニ上ル譯デアル、利益ヲ
  全然配當セズ、全額ヲ社內ニ保留シタ場合
  ニ、尙ホ之ニ六割ノ課稅ヲスルト云フノデ
  アルカラ、生產力擴充或ハ公債消化ヲ圖ラン
  トスルモ不可能デアルト云フコトハ言フマ
  デモナイ、ソレカラ第二ノ、留保金ヲ設備
  ノ擴張、公債ノ買入ニ充テタ場合ノ課稅輕
  減モ、留保率ノ向上及ビ運用方法ノ改善ニ
  好影響ヲ與ヘテ居リマス、與ヘテ居ルガ、
  之ニ振向ケラレタル留保金ニ對シテハ所得
  稅ノ一部デナク、臨時利得稅ヲ輕減スルノ
  ガ私ハ適當デハナイカト思フ、卽チ臨時
  利得稅ト云フモノハ、戰時利得ヲ擧ゲタ者
  ニ對スル特別ノ課稅デアル、此ノ利得ヲ以
  テ配當セズ、戰爭目的ノ遂行ノ爲ニ使ツタ
  ナラバ、是ハ免除スルト云フコトガ當然デ
  アルガ、併シ免除ガ出來ヌトシタナラバ、
  利得稅カラ引クト云フコトガ私ハ當然デア
  ルト思フ、之ニ對スル御意見ヲ承リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=99

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• 100・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　生產擴充ヲ必要トスル今
  日デアルカラ、法人ノ社內留保ニ對スル負
  擔ハ成ベク低クスル必要ガアルデハナカラ
  ウカ、殊ニ國家總動員法ノ發動ニ依リマシ
  テ、配當ガ制限セラレテ居ル今日ト致シマ
  シテハ、尙ホ其ノ必要ガアルデハナカラウ
  カ、斯ウ云フ御趣旨ノヤウニ拜聽致シマシ
  タ、大體ニ於テハ同感デゴザイマス、併シ
  今ノ生產擴充ノ點ニ付キマシテハ、稅法ニ
  於キマシテモ十分考慮セラレテ居ルノデア
  リマシテ、例ヘバ自動車製造事業、輕金屬
  製造事業、或ハ航空機製造事業ト云フヤウ
  ナ、目下ノ時局下ニ於テ生產力ノ擴充ヲ必
  要トスル最モ重要ナモノニ付キマシテハ、
  ソレ〓〓單行法ヲ以チマシテ、五年或ハ七
  年ト云フ風ニ免稅期間ヲ設定シテ居ルノデ
  アリマス、此ノ程度ニ至ラナイモノニ付キ
  マシテモ、所得稅法、法人稅法等ニ於キマ
  シテ、比較的生產擴充ヲ必要トスル方面ノ
  事業ニ付キマシテハ、開業ノ年及ビ翌年ヨ
  リ三年間所得稅、法人稅ヲ免除スル規定モ
  置イテ居ルノデアリマシテ、大體斯ウ云フ
  方面ニ於キマシテ、最モ生產擴充ヲ必要ト
  スル方面ニ對スル措置ハ相當講ジテ居ル積
  リデアリマス、社内留保ニ對スル課稅ガ六
  割以上モアツテ、ソレデ生產擴充ガ出來ル
  カ、斯ウ云フ御話デアリマスケレドモ、普
  通ノ法人ハ、此ノ度ハ御承知ノ通リ法人稅
  ノ稅率ト致シマシテ百分ノ十八ノ課稅ニナ
  ツテ居リマス、之ニ地方團體ノ財源トナル
  營業稅マデヲ加ヘテモ百分ノ二十四ニナル
  ノデアリマスカラ、此ノ程度ノ-資本ニ
  對スル一割程度以下ノ收益率ノアル法人ニ
  付キマシテハ、其ノヤウニ重イ負擔ニナツ
  テ居ナイノデアリマシテ、今御述ニナツタ
  ヤウナ法人ハ、資本金ニ對シテ年七割トカ
  十割ノ利益ヲ擧ゲテ居ルト云フ法人ノ場合
  ダト存ジマス、恐ラク從來ノ所得稅法ニ於
  テ最高緩和ノ規定ガアル、其ノ緩和ノ適用
  ヲ受クル法人ニ付テカト存ジマスルガ、是
  ハ斯ウ云フ時局下デ經濟界ニ相當變動ガア
  ル場合ナレバコソ、一年ニ於キマシテ資本
  ニ對シテ六割、七割、或ハ十割以上モ利益
  ヲ擧ゲルト云フコトデアリマスカラ、般
  國民ガ相當重キ稅ヲ負擔シテ居リマス際ト
  致シマシテハ、此ノ程度ノ課稅ハ巳ムヲ得
  ナイト存ジマス、又斯ノ如ク一面ニ相當高
  率ノ收益ヲ擧ゲテ居ル法人ニアリマシテハ、
  其ノ半額或ハ六割程度ノ課稅ヲ致シマシテ
  モ、アトニ相當ノ額ガ殘ルノデアリマスカ
  ラ、他ノ一般ノ法人トノ振合ヲ考ヘテ見テ
  モ、別ニ其ノ方面ノ生產擴充ニ著シイ支障
  ガアルモノトハ考ヘラレナイト存ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=100

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• 101・板谷順助

  ○板谷委員　私ガ先ニ申上ゲタ所謂彈力性
  ハ何處ニアルノカ、上ニアルノカ下ニア
  ルノカト云フ質問ニ對スル十分ナル御答辯
  ガ得ラレナカツタノデアルガ、一割以下ノ
  モノニハ段々輕ク課ケテ、上カラ取ルト云
  フノデアリマスガ、恐ラク一割以上ノ配當
  ハ配當制限令ニ依リ、或ハ其ノ他ノ事情ニ依
  ツテナクナルノデハナイカト思フ、ソコデ
  私ハ稅ノ收入ニ大ナル狂ヒガ生ジテ來ルノ
  デハナイカト云フトコトヲ申上ゲタケレド
  モ、ソレニ對スルハツキリシタ御答辯ガナ
  イカラ、ソレハソレデ宜シイ、ソレカラ臨時
  資金調整法ニ依ツテ生產擴充ノ資金ノ調達
  ガ益〓强化サレテ來ル、是ハ幾ラカ緩和ノ方
  法ヲ御執リニナツテ居ルノデスガ、現在ニ
  於テハ段々强化サレテ居ツテ、生產擴充ノ
  資金ニ非常ナ支障ヲ來シテ居ル現狀デアリ
  マスガ、ソレハドウデスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=101

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• 102・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　臨時資金調整法ハ他ノ不
  要ナ方面ニ資金ガ流レテ行クノヲ抑制シテ
  生產力擴充ヲ必要トスル方面ニ成ベク多ク
  持ツテ行カウ、斯ウ云フ趣旨デ出來テ居ル
  ノデアリマス、資金調整法ノ作用ニ依ツテ
  生產擴充ヲ必要トスル方面ニ資金ノ流レテ
  行クコトガ阻止サレテ居ルト云フ風ニハ考
  ヘテ居リマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=102

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• 103・板谷順助

  ○板谷委員　事實ハサウデハアリマセヌ、
  デアルカラ生產擴充ヲヤラウト云フ御方針
  ナラバ、能ク此ノ臨時資金調整法トノ按配ヲ
  十分執ツテ貰ヒタイ、ソレカラ給與停止令ガ
  發動ノ結果、高率課稅ヲ爲スニ於テハ有ユ
  ル名目ニ於テ濫費ヲスル、是ハ事實現ニ行ハ
  レテ居ル、其ノ結果物價騰貴ノ爲メ九·一八
  ノ賃銀デハ生活ガ出來ナイ、是ハ現在ニ於テ
  其ノ通リデアル、隨テ百二十億ノ貯蓄ノ線
  ニモ沿ハヌト思フ、又一面購買力ノ膨脹ヲ
  來シタル現狀デ將來益〓、是ガ甚シクナルト
  思フ、此ノ見解ハドウデスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=103

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• 104・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　ドウモ大分私共ノ考ト違
  ヒマス、今仰シヤイマシタ給與停止令ト云
  フノハ、此ノ時局下ニ於キマシテ非常ニ利
  益ヲ擧ゲテ居ルモノハドシ〓〓使用人ノ給
  料ヲ引上ゲテ行ク、其ノ結果濫費ヲ助長ス
  ル、物資ノ不足、物價ノ騰貴ヲ來タス、斯
  ウ云フ虞ガアリマス爲ニ給與停止令ガ布カ
  レテ居ルト思フノデアリマス、是ガ爲ニ法
  人ガ濫費スルコトニ付キマシテハ、ヤハリ
  國家總動員ニ基ク經理命令ガアルノデアリ
  マシテ、餘リ要ラヌ點ニ渡ルヤウナ場合ニ
  ハ、給與令ヲ出シタト同ジ趣旨ニ基キマシ
  テ經理命令ヲ出シテ行ク、斯ウ云フ譯デア
  リマス

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• 105・板谷順助

  ○板谷委員　マダ時日モアリマスカラシテ、
  此處デ押問答シテモ仕方ガアリマセヌカラ、
  又其ノ機會ニ更ニ質問致シマス、ソレカラ
  稅金ノ損金ノ取扱ノ問題デアリマス、是一
  各委員カラモ屢〓御質問ニナツタノデアリマ
  スルガ、之ニ對スル大藏大臣ノ御答辯ヲ引
  用シテ、私ハ御尋シタイト思フ、大藏大臣
  ハ本會議ノ御答辯ニ於テ、一會社ニ於テ百
  万圓ノ利益ガアツタ、而シテソレニ對シテ
  十万圓ノ稅金ヲ拂ツタ、卽チ利益處分ノ部類
  ニ稅金ヲ書出スノガ當リ前デアツテ、從來其
  ノ際ニ稅金ヲ想定シテ、其ノ想定シタル稅
  金ヲ損金ノ中ニ計上スルト云フ事柄ハ是ハ
  少シク間違ツタ事柄デアラウト思フ、斯ウ
  云フ御答辯デアリマス、アナタハ多年民間ノ
  事業ニモ御關係ニナツテ居ツテ、能ク會社ノ
  計算ノ實情モ御分リナツテ居ル、アナタハ現
  在大臣トシテ役人トナツテ、斯ウ云フ御答
  辯ヲナサラナケレバナラヌト云フ、ソコニ
  ハ私ハ御察シヲスルガ、法人ノ稅金ヲ損金
  トシテ控除スル御取扱ハ、他ノ委員モ言ツ
  タヤウニ多年ノ習慣デアツテ、決算後ニ稅
  ガ課カツテ來ルノデアツテ、是ハ新ニ想定
  シテ居ルノデハナイ、是ハ御承知ノ通リデ
  アル、大部分ノ會社ハ卽チ決算後ニ於テ之
  ヲ帳簿ニ拂出シ、又記入ヲスル、是ハモウ
  多年ノ習慣デアル、所ガアナタガ仰セラレ
  ルヤウニ、百万圓ノ資本ニ對スル十万圓ノ
  利益ガアルナラバ、一割デアル、是ハ大シ
  タコトハナイノデアリマスガ、百万圓ニ對
  シテ六七十万圓以上モ拂フト云フコトニナ
  レバ、卽チ稅ニ稅ガ課カルト云フ結果ニナ
  ル、恐ラクハ各會社ガ前期分ノ稅金ヲ損金
  ニ計上シテ、其ノ殘額ヲ利益金トシテ配當
  スルコトニナルダラウト思フ、假令政府ガ
  利益ノ中カラ稅金ヲ拂へト仰シヤツテモ、
  計算ノ上ニ於テハ卽チ損金トシテ斯ウ云フ
  經理方法ヲ採ルト思フ、所ガ其ノ場合ニ於
  テ利益率ガ假ニ三割ノ時ニ於テハ、會社ノ
  經理上益金ノ八割八分ノ稅金ヲ課セラレテ
  居ル、是ハ大キナ話デスガ、假ニ利益率ガ
  五割ノ場合ニハ一期以上ノ稅金ガ課カルコ
  トニナル、損金ニ見ナイト云フコトガ急激
  ナ課稅トナル、是ハアナタガ先程稅制調査
  會ノ答申案ヲ尊重スルト云フコトヲ言ハレタ
  ガ、アノ答申案ニモ、此ノ條項ガ書カレテ
  居ルノデアリマスガ、相當此ノ點ヲ緩和ナ
  サル必要ガアルノデハナイカ、其ノ御所見
  ヲ承リタイ

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• 106・櫻内幸雄

  ○櫻內國務大臣　板谷君ノ御意見ニ付テ私
  ノ見解ヲ申上ゲマス、實ハ極ク露骨ナコト
  ヲ申シマスガ、私任官シテ此ノ案ヲ出シマ
  ス前ニ此ノ稅ヲ調ベタ時、アナタト私ハ同
  ジ意見ヲ持ツテ居ツタ、ソレデ色々之ヲ論
  議シテ見マスト、ドウモ結局私ノ意見ガヤ
  ハリ從來ノ舊習ニ囚ハレテ居ル意見ダト云
  フコトヲ發見シタ、ソレデ極ク單純ニ申シ
  マスト、板谷サンノ關係ノ會社ハ立派ナ會
  社デアリマスカラ別デアリマスケレドモ、
  先ヅ大體ノ會社ハ、殊ニ今囘一割配當ヲ致
  シマスト、ソレニ要スル所ノ稅金ヲドウ云
  フ風ナ計算ヲ立テテ行クカト云ヒマスト、
  先ヅ來年ニ持越シテ、來年拂ツテ卽チ其ノ
  次ノ期ニ拂ツタ時ニ損金出シテ、サウシテ
  拂ツテ行ツテ居ルノデアリマス、ソレカラ
  有力ナ會社、儲カツテ居ル會社ハ、稅金引
  當金ト云フモノヲ取リマシテ、其ノ期ニ於
  テ之ヲ控除シテ、卽チ是ハ想定シタモノデ
  アリマスガ、想定シタ費用ヲ計上シテ、其
  ノ殘額ヲ利益金處分金ニ持ツテ行ツテ居
  ル、斯ウ云フ風ナ狀態デアリマス、ソレデ
  ドウモ今囘ノヤウナヤリ方ヲスルト、從來
  何年トナクヤツテ居ル計算法ノ根柢ガ變ツ
  テ來テ、ドウモ不都合デハナイカ、ドウシテ
  モ理窟ニ合ハヌ、斯ウ云フ議論ヲ私ハ主張
  シタノデアリマスガ、
  〔委員長退席、小山委員長代理著席〕
  併シ能ク之ヲ〓究シテ見マスト、外國ニ於
  テモ是ハ二通リノ行キ方ガアリマシテ、今
  囘ノ改正ニ依ル行キ方モアリ、又從來日本
  デ行ツテ居ツタヤウナヤリ方モアルノデア
  リマス、ソレデ兎ニ角是ハ利益ニ應ジテ稅
  ヲ課スルノデアリマスカラ、玆デ利益ガ此
  ノ會社ニ幾ラ出タ、其ノ出タ利益ヲ處分ス
  ル時ニ、此ノ利益ニ對シテ幾ラノ稅ヲ課ケ
  ルノダ、斯ウ云フ風ニ相成ルノデアリマス
  カラ、其ノ利益處分ノ中ニ稅ヲ加ヘテ行ク
  ト云フコトガ、先ヅ適當デアラウ、サウシ
  テ其ノ利益ヲ出スノハ、稅ヲ引イタ殘リガ
  利益ダ、斯ウ云フ見方、是ハ從來ノ見方デ
  アリマスケレドモ、此ノ度ノハ卽チ利益ニ
  依ツテ稅ヲ課ケルノデアルカラ、其ノ利益
  ト云フモノヲ出シテ、丁度利益配當デアル
  トカ、或ハ重役賞與デアルトカ、退職手當
  金デアルトカ云フモノヲ出スト同ジヤウニ、
  此ノ利益金ノ處分ノ所ニ是ダケ儲カツタカ
  ラ、第一番ニ稅金ヲ幾ラ、配當ヲ幾ラ、ソ
  レカラ賞與金ヲ幾ラ拂フ、積立ヲ幾ラスル
  ト云フ風ニヤル、此ノヤリ方ガ先ヅ適當デナ
  イカ知ラン、私ハ色々〓究シ、色々論議致シ
  マシタ結果先ヅ是ハ決シテ不當デハナイ、
  適當デアル、斯ウ云フ風ニ信ジタ譯デアリ
  マイク、ソコデ今ノ板谷サンノ御話ノ通リ、
  然ラバ是ハドウ云フコトヲ意味スルカ、增
  稅ヲ意味シハセヌカ、是ハ私ハ板谷君ト同
  意見デアリマス、稅金ヲ利益ノ處分ノ上カ
  ラ出スト云フコトニナリマスト、卽チ其ノ
  金額ニ對スル分ダケハ、幾ラカ稅ガ增シテ
  來ル結果トナリマス、ナゼナラバ其ノ稅ダ
  ケヲ經費ニ拂ヒマスレバ、其ノ經費ニ拂ツ
  タモノニ對シテハ稅金ガ掛ラナイノデアリ
  マス、今囘ハソレガ利益金處分ノ方ニ出テ
  來ルノデアリマシテ、利益ヲ生ム方ノ經費
  トシテ計上致サレナイノデアリマスカラ、
  其ノ金額ニ對スル分ダケハ稅ガ增シテ來ル、
  斯樣ニ考ヘマスガ、此ノ建前ガ必ズシモ不
  當デハナイ、又見樣ニ依ツテハ此ノ方ガ順
  當ナヤリ方デハナイカ知ラン、斯ウ云フコ
  トニ結論ヲ得マシタノデ、私モ之ニ贊成シ
  テ、斯ウ云フ風ニナツタ次第デアリマス、
  ドウカ左樣御承知ヲ願ヒマス

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• 107・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　一寸數字ニ亙ルコトヲ一
  言私カラ御答シテ置キタイト思ヒマス、先
  程所得ニ對シテ稅ガ六七割掛ルカラ、隨テ
  翌期ニ三割程度ノ利益ヲ得テモ、殆ド其ノ
  大部分ハ稅ニ持ツテ行カレル、斯ウ云フ御
  話デアルノデアリマスガ、併シ是ハ能ク御
  考ヘ下サレバ得心ガ行カレルカト存ズルノ
  デアリマス、當期ニ於キマシテ資本金百万
  圓ノ會社ガ百万圓ノ利益ヲ擧ゲタ、其ノ爲
  ニ六十万圓ノ稅ヲ拂ツダト致シマスト、其
  ノ前期ニモ同ジヤウナ利益ヲ擧ゲテ居リマ
  スト、ヤハリ六十万圓ノ稅金ヲ拂フノデア
  リマスカラ、當期ニハ百万圓ノ所得ノ外ニ、
  前期ノ稅ニ屬スル分ノ六十万圓ハ支拂ツテ
  居ルノデアリマス、隨ヒマシテ事業目體カ
  ラハ百六十万圓ノ利益ヲ上ゲタ、稅務ノ計
  算ニ於テハ前期分ノ所得ニ對スル所得稅ハ
  損ニ見ラレルカラ、ソコデ百万圓トナツテ、
  其ノ百万圓ノ所得ニ對シテ六十万圓ノ課稅
  ヲ受ケル、ソコデ當期ノ所得ニ對スル六十
  万圓ノ課稅ハ何時負擔スルカト言ヘバ、其
  ノ期ニハ負擔シナイ、翌期ニ於テ負擔スル、
  斯ウ云フ譯デアリマシテ、アナタノ仰シヤ
  イマシタ六割ノ負擔ト云フノハ、當期ノ所
  得百万圓ヲ計上スル場合ニ、旣ニ負擔シテ
  居ルノデアリマス、ソレヲモウ一遍其ノ百
  万圓ノ中カラ出スヤウナ計算ニナルト、非
  常ニ高イモノニナリマスケレドモ、一事業
  年度ニ對シテ稅ハ一遍以上支拂フコトハゴ
  ザイマセヌカラ、サウ云フ計算ニハナラナ
  イ次第デゴザイマス

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• 108・板谷順助

  ○板谷委員　主稅局長ハ稅ヲ取ル役目ダカ
  ラ、アナタノ辯解ヲ聽イテモ仕方ガアリマ
  セヌガ、大藏大臣ハ失禮ダガアナタノ主張
  ガ通ラヌノハ、アナタハ餘リ弱カツタノデ
  ハナイカ、アナタハ役人カブレシタノデハ
  ナイカ、私ハ之ヲ緩和スル方法ハアルト思
  フ、私ハ曩ニ稅務調査會ノ意見ヲ尊重シタ
  カト云フコトヲ申上ゲタノハ、御承知ノ通
  リ法人ノ所得計算ニ付テハ法人稅ヲ損金ト
  認メルコト、增徵ノ必要アレバ稅率ノ引上
  ニ依ツテ爲スベキコト、斯ウ云フ答申ガア
  ル、ダカラ若シ此ノ委員會ニ於テ各委員ノ
  諸君ガ修正スルト云フコトニ付テハ、アナ
  タノ主張ガ是ハ損金ニ見ルベキモノデアル
  ト云フヤウナ御主張ヲ一遍ナサツタトスレ
  バ或ハ修正案ガ出タナラバ其ノ際ニハ御考
  慮ヲ願ツテ同意ヲシテ貰ヒタイ

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• 109・櫻内幸雄

  ○櫻內國務大臣　稅制調査會ノ一部ノ意見
  二、サウ云フコトガアツタカトモ思ヒマ
  スガ、併シナガラ政府トシテハ此ノ案ノ建
  前ハ、ドウシテモ是ガ正當デアル、斯樣ニ
  考ヘテ居ルノデアリマシテ、御意見ノヤウ
  ナコトガ出マシテモ、政府トシテ之ニ御同
  意申上ゲルコトハ出來ナイ次第デアリマス

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• 110・板谷順助

  ○板谷委員　大藏大臣ニ對スル質問ハマダ
  相當ニアリマスガ、商工大臣ハ御急ギデス
  カ

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• 111・藤原銀次郎

  ○藤原國務大臣　ドウゾ

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• 112・板谷順助

  ○板谷委員　ソレデハ商工大臣ニ此ノ際御
  伺致シマスガ、アナタハ民間ニオ居デニナツ
  タ當時ニ於テ、屢〓御考ヲ述ベラレテ居リマ
  スガ、現在民間ニオ居デニナツタ當時ト意
  見ガ變ツテ居リマス、現在ノ經濟狀態ニ於
  テ統制ヲ强化シナケレバナラヌト云フヤウ
  ニ、意見ガ變ツタヤウナコトヲ仰シヤル、
  成程戰時經濟體制ヲ整フル上ニ於キマシテ、
  或ル程度ノ必要ハアリマセウ、アリマセウ
  ガ併シ現在ノ物資缺乏ヲ解決スルニハ、
  統制ノ力ニ依ルベキモノデナイ、言フマデ
  モナク物資動員計畫ニ依ツテ之ヲヤラナケ
  レバナラヌ、又物資ガ段々增シテ來タナラ
  バ、其ノ統制ヲ强化スル必要ハナイ、ソコ
  デ私ガ御伺シタイコトハ、統制ノ强化ノ結
  果、所謂極度ニ達スルト國營カ國家管理ト
  云フコトニナル、所ガ現在有ユル方面ニ於
  テ統制ガ强化サレテ、或ハ國策會社、特殊
  會社ト云フモノガ出來テ居ル、官僚ガ其ノ
  衝ニ當ツテ居ル跡ヲ顧ミルト云フト隨分失
  敗ガ多イ、私ハ此ノ統制强化ノ極度ト云フ
  モノガ、露西亞ノ組織ノヤウナコトニナリ
  ハシナイカト云フコトヲ非常ニ心配シテ居
  ル、アナタハドウ云フ御考ヲ持ツテ居ラレ
  マスカ

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• 113・藤原銀次郎

  ○藤原國務大臣　私ハ板谷君モ能ク御承知
  ノ通リデアリマシテ、一昨年マデ實業界ノ
  現役トシテ働イテ居リマシタケレドモ、
  般ノ經濟政策及ビ其ノ他經濟問題ニ付テ、
  其ノ現役ニ働イテ居リマスル間ハ、始終自
  分ノ意見ヲ公表シテ居ルコトハ能ク御承知
  ノ通リデアリマスガ、併シ其ノ間ニ此ノ
  統制問題ニ付テ統制ヲ强化スルトカ、之ヲ
  弱化スルトカ云フコトニ付テハ、一度モ私
  ノ意見ヲ發表シタコトハナイト存ジテ居
  リマス、ソレデ民間カラ此ノ度豫備役ノ私
  ガ入閣致シマシテ此ノ重大ナル責任ヲ負ウ
  テ、サウシテ此ノ國家ノ財政經濟ヲ能ク
  調ベテ見マシテ、今日ノ時局ヲ乘切ルト云
  フコトニ付テ、ドウシタラ宜カラウカト
  云フコトヲ考ヘマシテ、ドウシテモ是ハ統
  制ヲ强化シテ行クヨリ外仕方ガナイ、詰リ
  低物價政策デ生產擴充ヲシテ、サウシテ度
  度申上ゲル通リニ、氷炭相容レザルヤウナ
  政策ヲ能ク調和シテ、此ノ時局ヲ乘切ルト
  云フヨリ外仕方ガナイ、商工省トシテドウ
  シテモ此ノ統制經濟ヲ運用シテ行ク上ニ於
  テハ、自然々々ニ今日ノ統制ヲ强化スルト
  云フ結果ニナルヨリ外ニハ仕方ガナイ、之
  ヲ弱化シテ、後ノ方ニ戾シテ、サウシテ物
  資ノ增產ヲ圖ツテ、ソレデ若シ低物價政策
  ガ實行シ得ルナラバ、サウ云フコトモ考ヘ
  ラレマスケレドモ、低物價政策ヲ實行スル
  ノニハ、ドウシテモサウシナケレバナラヌ、
  斯ウ云フ積リデ統制ヲ强化スルヨリ外仕方
  ガナイ、其ノ方針デ政府ハ進ムノデアルト
  云フコトヲ申上ゲタノデアリマス

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• 114・板谷順助

  ○板谷委員　今モ申上ゲマスルヤウニ、物
  資ガ豐富デゴザイマスナラバ、何モ統制ヲ
  强化スル必要ハナイ、ソコデ私ハアナタノ
  御意見ヲ確メテ置キタイコトハ昨年ノ議
  會ニ於テ現在ノ總理大臣ハ、當時國務大臣
  トシテ、統制ニハ限度ガアル、統制ニ統制
  ヲ加ヘテ、之ヲ强化シテ行ツタナラバ、國
  ハ亡ビルト云フコトヲ仰シヤツタ、其ノ當
  時吾々ハ總理大臣ハ如何ニモ賢明ナ方デ、
  經濟界ノコトニモ明イノヂヤナイカト大イ
  ニ敬服ヲシタ、アナタハ此ノ總理大臣ノ御
  意見ニ御同意デアリマスカ、ドウ御考ニナ
  ツテ居リマスカ

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• 115・藤原銀次郎

  ○藤原國務大臣　ソレハ私ハ承知致シマセ
  ヌガ、私ハ今日ノ低物價政策ノ下ニ時局ヲ
  乘切ルノニハ、ドウシテモ統制ヲ强化シテ
  行クト云フ結果ニナル、斯ウ信ジテ居リマ
  ス、併シナガラ先刻第一段ニ御尋ニナリマ
  シタ通リ、統制ノ爲ニ統制ヲスル、斯ウ云
  フヤウナ積リヲ以テ、卽チ「イデオロギー」ニ
  依ツテ統制ヲ强化スルト云フヤウナ積リデ
  居ルノデハナイト云フコトヲ、玆ニハツキ
  リト申上ゲテ置キマス

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• 116・板谷順助

  ○板谷委員　アナタハ物價問題ニハ非常ナ
  誠意ヲ以テ御努力ニナツテ居ル、其ノ點ハ
  私共モ十分認メテ居リマス、併シ機會アル
  每ニ民間ノ意見ヲ尊重シ、民間ノ希望ヲ容
  レルト云フコトヲ仰シヤヅテ居ル、要スル
  ニ現在ノ統制ガ强化ヲサレテ、或ハ國營、
  國家管理ニナルト云フ。ヨリハ、民間ノ希望
  ヲ容レ意見ヲ尊重スルト云フコトハ、其ノ
  結論ガ民間ノ自治統制ニ任セテ行ツタ方ガ
  宜イ、斯ウ云フ風ニ私ハ解釋サレルノデス
  ガ、其ノ點ハ如何デセウカ

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• 117・藤原銀次郎

  ○藤原國務大臣　斯ウ云フ風ニ御說明申上
  ゲタイト存ジマス、私ハ統制經濟ヲ運用ス
  ル上ニ於キマシテ、今日政府ノ實行致シテ
  居リマスル色々ノ組織ノ上ニ於テ、動モス
  レバ民間ト摩擦ヲ生ズルト云フヤウナコト
  ガ澤山アルト存ジマス、ソレガ爲ニ民間ニ
  於テ色々ナ苦痛、非難ガ多カラウト存ジテ
  居リマス、ソレ故ニ成ベク民間ノ聲ヲ容レ
  テ、サウシテ民間ノ苦痛ヲ少クシテ、此ノ
  統制經濟ノ運用ヲ滑カニシテ行キタイ、斯
  ウ云フノガ私ノ希望ナノデアリマス、詰リ
  不必要ナル摩擦ヲ生ジテ居ルト云フヤウナ
  コトガ若シアリトスレバ、ソレハ遺憾ナコ
  トデアルカラ、私不肖ナガラ民間カラ入ツ
  テ、民間ノ實情ヲ能ク知ツテ居ル者デアル
  カラ、此ノ運用ニ付テハ出來ルダケ民間ノ苦
  痛トカ、不幸トカ云フモノヲ少ク致シタイ、
  斯ウ云フ希望デ總テノモノヲ計畫シ、又考
  ヘテ居ル次第デアリマス

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• 118・板谷順助

  ○板谷委員　アナタハ物價問題ニ付テ非常
  ニ御苦心ニナツテ居リマスガ、率直ニ國民
  ノ考ヘテ居ルコトヲ申上ゲマスト、政府ノ
  物價統制ニ對スル實行能力ニ對シテ、國民
  ハ或ル一種ノ疑惑ヲ持ツテ居ヤシナイカ、
  隨テ政府ノ威令ト云フモノガ行ハレテ居ラ
  ヌノデハナイカト思フ、總理大臣ガ仰シヤ
  ツタヤウニ、國ガ亡ビルト云フ風ニハ勿論
  考ヘテハ居リマセヌガ、經濟界ガ動搖シテ
  先ハドウナルカト云フノデ、非常ニ不安ヲ
  持ツテ居ル、ダカラ先刻道家君モ色々御心
  配ニナツタコトデアリマスガ、此ノ際アナ
  タガ民間ノ意見ヲ尊重シ、民間ノ意見ヲ
  容レルト云フコトデアルナラバ、官僚統
  制ト云フモノハ或ル程度マデ止メテシマ
  ツテ-勿論自由經濟主義ニ戾ル譯ニハイ
  カヌデアリマセウガ、物ヲ殖ヤスニハドウ
  シタラ宜イデセウカ、增產計畫ヲ行フニ付
  ハ、如何ナル方法ヲ執ツタラ宜シイカ、是
  ハアナタハ屢〓仰セニナツテ居リマスガ、
  併シ之ニ付テハ私ハ此ノ稅ニ結付ケルト云
  フ譯デハナイガ、生產擴充ハ如何ナル方法
  ニ依ツテヤルカ、アナタハオ居デニナラナ
  カツタケレドモ、今ノ稅制改正ノ結果、自己
  資金ニ依ル所謂生產擴充ノ資金ト云フモノ
  ガナクナツテ、サウシテ借金シテヤツタ方
  ガ宜イト云フヤウナ結論ニナル、是デハ日
  本ノ將來ノ事業界ト云フモノハ、非常ニ不
  堅實ニナルト云フコトヲ御話ヲシタ、ダカ
  ラ此ノ生產擴充ヲ行フニ付テハ、國民ニ相
  當ノ餘力ヲ殘シテ、先ヅ第一ニ政府ノ方針
  トシテハ、生產擴充、低物價政策ヲ斷行シ
  テ、又經濟界ノ動搖ガ治マルノヲ待ツテ、
  然ル後ニ增稅ヲヤツタラドウカ、軍事費ニ
  六億圓入レルトノ御話デアルガ、私ハ本年
  度ノ自然增收ガ、果シテ政府ノ豫期シテ居
  ル程アルカドウカト云フコトヲ、非常ニ疑問
  ニ思ツテ居ル、從來ハ二億、三億アツタカモ
  知レヌガ、今ノヤリ方デ行ツタラ自然增收
  ハ減リヤシナイカ、ダカラ軍事費ニ六億圓
  入レルト云フナラバ、半分位ハ國民ノ資力
  ヲ緩和スル意味ニ於テ、適當ニ按排ナサツ
  タラドウカト思フ、アナタハ經濟界ノ事情
  ヲ能ク御分リニナツテ居リマスガ、私ノ今
  申上ゲル意見ニ對シテドウ御考ニナリマス
  カ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=118

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• 119・藤原銀次郎

  ○藤原國務大臣　極ク率直ニ私ノ考ヲ申上
  ゲマスガ、若シモ是ガ平素ノ狀態デアレバ、
  大體板谷君ノ御考へ通リ私モソレニ御贊成
  ヲ申上ゲル、併シナガラ何分ニモ今日ハ色々
  ナ點ニ於テ非常時デアリマシテ、總テノ問題
  ガ容易ナラナイ狀態ヲ呈シテ居ルコトハ能
  ク御承知ノ通リデアリマス、ソレデアリマ
  スカラ、一方ニ於テハ生產擴充ヲシナケレ
  バナラヌガ、一方ニ於テハ低物價政策ヲ遂
  行シナケレバナラヌ、同時ニ又一方ニ於キ
  マシテハ國民ノ收益ヲ成ベク蓄積シテ、
  ソレヲ以テ生產ノ資ニ充テテ行クト云フ
  ヤウナ方針ヲ執リタイコトハ山々デアリ
  マスケレドモ、此ノ時局ノ際ニ增稅ヲス
  ルト云フコトモ亦必要デアル、ソレデア
  ルカラ斯ウ云フヤウナ時局ニ際シテハ、ド
  ウシテモコチラノ方ニモ我慢ヲシ、アチラ
  ノ方ニモ我慢ヲシテ貰ヒ、コチラノ方モ
  色々ナ苦痛モアリ、又ソチラノ方ニモ苦痛
  ガアリマセウガ、結局ニ於テハ是ダケノ
  國費ヲ使フノデアリマスカラ、國民モ增稅
  ヲ負擔スルト云フコトハ已ムヲ得ナイコト
  デアリマス、ソレデ國民ニ此ノ增稅ヲ負擔
  サセテモ生產擴充ニハ大イナル支障-ソ
  レハ若干ノ支障ガアルカモ知レマセヌガ、
  甚シキ支障ヲ與ヘナイヤウニシテ、之ヲ調
  節シテ行クト云フノガ一國ノ政治デハナイ
  カト思フ、サウ云フコトニ付テ大藏大臣ハ
  苦心ヲセラレテ、此ノ增稅案ヲ編成セラレ
  タノデアリマスカラ、吾々ハ之ニ贊成シテ、
  其ノ方針ノ下ニ生產擴充モシ、增產モシタ
  イ色々ナコトヲ苦心慘憺ヲシテ低物價政
  策ヲヤツテ行カウト云フ譯デアリマス

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• 120・板谷順助

  ○板谷委員　アナタハ增稅サレルトソレダ
  ケ產業資金ガ減ズルトカ、或ハ生產擴充ニ
  對シテモ相當ノ支障ガアルト云フヤウナ意
  味ノ御答辯ニナツテ居ルガ、アナタモ民間
  カラ役人ニナラレテ役人カブレシテ、結局
  サウ云フ御氣持ニナツタノデバナイカト思
  ス、此ノ點ハ此ノ程度ニシテ置キマシテ、
  更ニ御伺シタイノハ物價政策ノ上ニ於テ
  配給機構改革ノ點デアル、御承知ノ通リ多
  年ノ間產業組合ト商業組合トハ摩擦相剋ヲ
  起シテ爭ツテ居ル、ソコデ此ノ度產業組合
  ニ對シテモ或ル程度稅ガ課カルコトニナツ
  ク、其ノ理由トシテハ產業組合ハ所謂相互
  ノ協同主義ヲ以テ臨ンデ居ルノデアツテ、
  農村ノ生產園體トシテ其ノ重大ナ使命ヲ持
  ツテ居ルト云フコトハ言フマデモナイ、所
  ガ經濟ニ幾ラカ關係シテ居ルト云フ所カラ、
  剩餘金ト云フモノハ經濟ノ活動ニ依ル利
  益是ハ見ヤウニ依ツテハ營利的デナイカ
  モ知レナイガ、所謂利益デアル、ソコデ此
  ノ機構ノ改革ニ付テ御承知ノ通リ有ユル問
  題ニ付テ農林省ト商工省トハ爭ツテ居ル、
  私ヲシテ率直ニ言ハシムルナラバ、從來ノ
  商工省ハ農林省ニ引摺ラレ、其ノ農林省ハ
  產業組合ニ引摺ラレテ居ルヤウナ傾向ガア
  ル、ダカラ今囘ノ配給機構改革ニ付テ其ノ
  分野ヲ明カニシ、所謂相互協同主義カラ言
  ツタラ、何デモヤレルコトニナルノデハナイ
  カト思フ、御承知ノ通リ最近產業組合ガ保
  險事業ヲヤラウトシテ、中止ハサレマシタ
  ケレドモ、恐ラク何カ別ノ形ニ於テヤル方
  針ヲ以テ進ムト思フ、是ハ分野ヲ明カニシ
  テ、將來摩擦ノナイヤウニアナタハ一ツ大
  英斷ヲ以テ、農林大臣ト對等ノ立場ニ於テ
  御解決ニナツタラドウカト思フ、而モ配給
  機構ト云フ今改革シナケレバナラヌ重大ナ
  問題ガアル、之ニ對スル御意見ヲ伺ツテ置
  キタイ

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• 121・藤原銀次郎

  ○藤原國務大臣　此ノ產業組合ト商業組合
  トカ、從來ノ民間ノ經濟機構等ノ間ニ多年
  摩擦ガアリマシテ、ソレガ爲ニ動モスレバ
  種々ノ問題ヲ惹起シテ居リ、又サウ云フ問
  題ヲ挾ンデ商工省ト農林省トノ間ニ、種々
  ノ意見ノ衝突ト云フヤウナコトガアツタコ
  トモ能ク承知致シテ居リマス、併シ今度
  私任官マダ日ガ淺クシテ、其ノ內容ニ付テ
  能ク承知致シマセヌケレドモ、兎ニ角今日
  ノ斯ウ云フ重大ナル時局デアリマシテ、此
  ノ時局ヲ乘切ルト云フコトニ付テハ政府ハ
  全體ノ機構ヲ擧ゲテ、驀地ニ國家ノ爲ニ努
  力シナケレバナラナイ時デアリマス、今日
  ノ時局ハ平時トハ違ツテ容易ナラザル時局
  デアリマスカラ、板谷サンノ御指摘ニナリ
  マシタヤウナコトニ付テハ、十分ニ努力致
  シタイト考ヘテ居リマス
  〔小山委員長代理退席、委員長著席〕
  併シ私ノヤウナ微力ナ者ガ、果シテアナタ
  ノ只今ノヤウナ御希望ニ副ヒ得ルヤ否ヤハ
  申上ゲ兼ネマスケレドモ、出來ルダケヤツ
  テ見タイ、斯ウ云フ積リデ努力ヲ致シマス
  カラ、出來ルダケ御後援ヲ願ヒタイト思ヒ
  マス

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• 122・板谷順助

  ○板谷委員　私ハ別ニ產業組合、商業組合
  ノドツチニ贊成シテドウト云フノデハナイ
  ガ、アナタガ捨身ニナレバ此ノ大問題ヲ解
  決出來ルト思フノデ捨身ニナツテ貰ヒタイ、
  是ハ多年ノ問題デ中々容易ニ解決シナイ問
  題デアルガ、配給機構ノ改革ヲヤラウト云
  フ此ノ時機ニ於テ、アナタハ出來ルダケ
  微力々々ト仰シヤルガ、アナタハ實業界ニ
  於ケル權威者デアツテ、體驗經驗ヲ持ツタ
  偉イ方デス、何モサウ卑下ナサル必要ハナ
  イカラ、捨身ニナツテ此ノ際此ノ問題ノ解
  決ヲ願ヒタイ、サウセヌト何時マデ經ツテ
  モ此ノ相剋摩擦ハ絕エヌ、同ジ國民デアリ
  ナガラ爭フト云フコトハ、國論ノ統一ト云
  フ點ニ於テモ甚ダ遺憾ナコトデアルト私ハ
  思ヒマスノデ、是ハ是非一ツ希望シテ置キ
  マス、商工大臣ニ對スル質問ハ此ノ程度ニ
  シテ引續イテ大藏大臣ニ御尋致シマス
  株式配當ニ對スル控除ノ點ハ、各位カラ
  本會議ニ於テモ委員會ニ於テモ色々御意見
  ガアツタノデアリマスガ、私ハ尙ホ政府ノ
  御答辯ニ疑ガアルノデ之ヲ質シテ置キタイ
  ト思ヒマス、御承知ノ通リ從來ノ二割ガ四
  割トナツタノハ、株式取得ニ要シタ負債利
  子ノ代リトシテ、一率ニ控除シタモノデハナ
  イト私ハ思フ、卽チ法人ト個人ノ二重課稅
  ヲ緩和スルト云フ意味ト、又公社債、銀行
  預金利子トノ負擔ノ不均衡ヲ避ケテ、產業
  資本ヲ保護スル爲ニトノ意味ヲ含ンデ居ル
  モノト思フノデアリマス、然ルニ是モ屢〓委
  員會ニ於テ問題ニナツタノデアリマスガ、同
  ジ資本利子ニ對シテ、一方デハ高額所得者
  ニ對シテハ四割ノ控除ヲ致スノミナラズ、
  源泉、綜合ノ選擇ヲ與ヘ、小額所得者ニ對
  シテハ二割控除ヲ全廢スルコトハ、如何ニ
  モ負擔ノ不均衡デハナイカト思フ、假ニ舊
  所得稅法ト今囘ノ改正案ヲ比較シテ見ルト、
  十万圓ノ所得ノ者ハ二倍七分ノ增徵ニナリ、
  又五十万圓ノ所得ノ者ハ三倍二分ト云フ計
  算ニナル、如何ニモ急激ナ增稅ダト思フ、
  假ニ十万圓ノ所得者ノ國債三分六厘五毛七
  糸ニ當ルモノノ手取ハ二分九厘六毛、定期
  預金利子三分三厘ハ二分四厘七毛五糸ニナ
  リ、株式ハ五分五厘ノ配當ヲ受ケルモノト
  スレバ、手取ガ二分七厘五毛ニシカナラヌ
  ノニ、五十万圓ノ所得トスルナラバ、公債、
  定期預金ハ別ニ變ラヌガ、株式ノ五分五厘
  ノ手取ハ一分六厘五毛ト云フ結果ニナル
  御承知ノ通リ生產擴充ニ付テハ、言フマデ
  モナク無論大衆的ニ各方面カラ株式ヲ集メ
  ル必要モアリマスガ、日本ノ從來ノ法人ハ
  所謂大口ノ投資ニ依ツテ成立ツテ居ル仕事
  ガ多イ、所ガ斯ウ云フ結果デアルト、產業
  資本ニ對スル投資ガ非常ナ壓迫ヲ受ケルト
  云フ結果ニナリハシナイカト思フ、ソレカ
  ラ又更ニ負債利子ヲ引クト云フコトニ付テ、
  此ノ委員會デモ色々御意見ガ出タノデアリ
  マスガ、利子ヲ引ク方法其ノ他ト云フモノ
  ハ中々實行出來ルモノデナイ、主稅局長ハ、
  將來新シク株式ニ投資スルガ爲ニ借金ヲシ
  一場場合ニハ、其ノ借金ノ利息ハ控除スルト
  云フ制度ニナリマスカラ、其ノ適用ヲ受ケ
  ヤウトスル人ハソレニ對シテ相當ノ用意ヲ
  シテ掛カルコトト存ジマス、是ハ株式取得
  ニ要シタ借金デアルカドウカハ、常識デ判
  斷シテ付ケ得ラレルモノト思ヒマス、斯ウ
  云フ御答辯デアル、是ハ稅務官吏ニ認定權ヲ
  與ヘルコトニナルノデアリマシテ、是程危
  險千萬ナコトハナイ、是ハ事實ニ於テ非常
  ニ困難デアリ、又隨テソコニ色々ナ情實ガ
  起ルコトト思フノデアリマス、デアルカラ
  或ハ從來ノ通リ二割引ニスルカ、但シハ又
  第二種所得ノヤウニ選擇主義ニ依ルカ、何
  等カヤハリ緩和ノ方法ヲ一ツ御考ニナル必要
  ガアルデハナイカト思フ、株劵ニ對スル利子
  デアルト云フ判斷ハ、稅務官吏ノ認定ト云
  フコトデアルナラバ、是ハ非常ナ情實モ行
  ハく事實ニ於テ私ハ不可能デアルト思
  フ、又例ヘバ其ノ株ヲ見返抵當トシテ金ヲ
  借リテ居ル場合ニ於テ、其ノ借金ト云フモ
  ノハ必ズ始終動イテ居テ一定シテ居ルモノ
  デナイ、デアルカラ此ノ點ニ對スル御意見
  ハドウデスカ、是モ屢〓、質問ニ出タコトデア
  リマスガ、ドウモ主稅局長ノ御答辯ガ要領
  ヲ得マセヌカラ、私ハ重ネテ伺ヒマス

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• 123・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　株式配當ニ對スル從來ノ
  第三種所得稅ノ課稅ノ方法、二割控除ヲ致
  シテ居ルニ付テ今板谷サンカラ色々御說
  明ガアリマシタガ、是ハ度々申上ゲテ置キ
  マシタ通リ、大正九年株式配當ヲ綜合課稅
  スル場合ニ、政府ノ原案ハ全額綜合課稅デ
  アツタノデアリマスガ、議會ニ於キマシテ
  ハ、餘リニ急激ニ負擔ノ變化ヲ生ズルト云
  フコトヲ理由ト致シマシテ、四割控除ニナ
  ツテ居ルノデアリマシテ、施行後十數年經
  チマシテ其ノ當初ノ理由モ漸次薄ライデ來
  タノデ、昭和十二年ニ二割控除ニ改メタノ
  デアリマス、ソレヲ此ノ度全額綜合課稅ス
  ルガ、一面ニ於テ元本取得ニ要シタ借入金
  ノ利息ハ引カウ、斯ウ云フノデアリマシテ、
  是ハ寧ロ株式ヲ所有シテ居ル者ノ負擔ノ實
  際ニ適應シタ課稅ノ方法ダト信ズルノデア
  リマス、要スルニ從來株式配當ニ對シマシ
  テ四割控除、或ハ二割控除等ノ措置ヲ執ツ
  テ居リマシタノハ、過渡期ニ於ケル負擔ノ
  不平均ヲ避ケル意味ヲノデアリマシテ、隨
  ヒマシテ此ノ度公社債、銀行預金等ヲ綜合
  課稅スルニ當リマシテハ、ヤハリ負擔緩和
  ノ趣旨ヲ以チマシテ四割控除ヲ致スト云フ
  建前ヲ採ツテ居リマス、尙ホ事變下ノ金融
  界ノ特ニ微妙ナ點モ考慮致シマシテ、源泉、
  選擇ノ制度モ、是ハ暫定措置デアリマスケ
  レドモ、併セ採ツテ居ルノデアリマス、此
  ノ事由ニ付キマシテハ大臣カラモ屢〓御答
  シテアル通リデアルノデアリマシテ、此ノ
  度ノ配當利子所得ニ對スル課稅ノ方法ノ變
  更ハ、所謂產業資本ニ酷ニシテ金融資本ニ
  厚クスルモノデハナイト考ヘテ居リマス、
  ソレカラ私ハ社債、銀行預金ノ如キモノヲ
  金融資本ト稱シ、株式ヲ產業資本ト稱スル
  コトニ付テモ、多少疑ヲ持ツテ居ルノデア
  リマシテ、產業資本ハ株式ニ俟ツ所ガ多イ
  ト同時ニ、又社債ニ俟ツ所モ多イノデアリ
  マシテ、社債モ株式ト同ジヤウニ產業資本
  ト見テ宜イデハナカラウカト思ヒマス、又
  今日ノ國家ノ財政狀況カラ見マシテ、國債
  ノ消化ト云フノハ非常ニ大キナ働キヲ爲シ
  テ、今日產業界ノ活動ノ原動力トナツテ居
  ルトモ見ラレマスノデ、國債ノ消化ニ支障
  ヲ來スヤウナコトガアツテハ產業界ノ一大
  事ダト考ヘマス、此ノ意味ニ於キマシテ銀
  行預金、公社債ニ對スル課稅ハ、ヤハリ產
  業界自體カラ見テモ、十分ニ考慮シナケレ
  バナラヌモノダト存ジマス、產業資本、金
  融資本ト云フ言葉ノコトヲ强ヒテ爭フ譯デ
  ハアリマセヌケレドモ、兎ニ角公社債、銀
  行預金等ニ對スル課稅ニ付キマシテモ、十
  分產業界ノ事情ヲ考慮シテ、斯ノ如ク致シ
  テ居ルト云フコトヲ申上ゲテ置キタイト存
  ジマス
  ソレカラ株式ハ五分五厘配當シテ居ル云
  云ト云フコトデアリマスケレドモ、是ハ今
  日ノ所謂時局產業ト云フヤウナモノハ五
  分五厘ノ配當デハナク、モツト高イ配當率
  ダト思フノデアリマス、國家總動員法ニ於
  キマシテモ、初メノ配當ハ六分、漸次每事
  業年度一分ヅツノ增配ハ認メテ、一割マデ
  ハ認メヨウ、隨テ株式配當五分五厘ト云フ
  コトヲ前提トシテ計算スルノハ、斯ノ如ク
  利益配當ノ漸次向上シテ行クモノニ對シマ
  シテ、サウ云フ前提ノ下デ國債、社債、銀
  行預金ノ如ク低利子ノモノト比較シテ其ノ
  厚薄ヲ論ズルト云フノハ、根本ニ於テ大キ
  ナ誤謬ヲ犯シテ居ルモノト考ヘルノデアリ
  マス
  次ニ借入金利子控除ノ問題デアリマス
  ガ、是ハ稅務官吏ニ認定權ヲ與ヘルノハ非常
  ニ危險ダト仰セラレマス、併シナガラ從來
  ニ於キマシテモ營業所得、貸家ノ所得等
  ヲ見ル場合ニ於テハ、ヤハノ元元取得ニ
  要シタ借入金ノ利子ハ、經費ト見テ控除
  シテ居リマス、s是ハ現實控除シテ居ルコ
  トハ事實デアリマス、但シ之ニ付キマシ
  テハ或ハ納稅者ノ方ニ於キマシテ、稅
  務署ガ十分ニ認定シテ吳レナイト云フ御
  不滿ガアル向キモアルゴトカト存ジマス、
  是ハ課稅サレル者ト課稅スル者トノ立場ニ
  於テ、時ニサウ云フモノガアルカトモ存ジ
  マスケレドモ、兎ニ角現在マデヤツテ來マ
  シタ、ソレデ此ノ度株式ノ配當ニ付キマシ
  テモ、是ト同ジヤウナ方法デヤツテ行カウ
  ト云フノデアリマシテ、今囘新シク始メル
  ノデハナイノデゴザイマス、而シテ借入金
  デ以テ株式ヲ取得シタ者ト、何等借入金ナ
  シニ株式ヲ所有シテ居ル者トニ於キマシテ
  ハ、ソコニ負擔力ノ相違ガアルノデアリマ
  スカラ、其ノ兩者ヲ區分スルノハ、負擔力
  ニ相應スル課稅ノ趣旨カラ言ツテ適當カト
  存ジマス、尙ホ事業ヲ經營スル者ハ悉ク自
  己資金ノミデ株式ヲ持ツテ居ルモノデハア
  リマセヌ、或ル程度借入金デ以テ經營スル
  者モアルノデアリマス、斯ウ云フ方面ニ對
  シマシテ借入金ノ利息ヲ經費ニ見ル措置ヲ
  執リマスト、事業經營上非常ニ便宜ニナ
  ル、ソレダケヤハリ產業界ノ進展ニ寄與ス
  ル、斯ウ云フ結果ニナルコトカト存ジマス

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• 124・板谷順助

  ○板谷委員　主稅局長ハ稅ヲ取ル方ダカラ
  色々辯解ノ御話ガアツタガ、大臣ハ此ノ稅
  制調査會ノ答申案ニハ一一割控除ヲ認メル、
  又利息ヲ見ルナラバ全部ノ負債ヲ認メル、
  委員ノ多數ガヤツタノカ或ハ少數カ、其ノ
  點ハ分リマセヌガ、之ニ對シテアナタガ此
  ノ法案ヲ檢討ナサル時分ニ此ノ點ノ御主張
  ハドウデアツタノデスカ

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• 125・櫻内幸雄

  ○櫻內國務大臣　今御話ノ點ハ稅制調査會
  ノ少數意見トシテアツタト云フコトヲ承ツ
  テ居リマス、勿論私ガ檢討致シマシタノハ
  案ガ出來タ後デアリマス、併シ此ノ問題ニ
  付テハ最初カラ二割控除ヲ廢メテ、借入金
  ノ利息ヲ引クモノダト云フ風ナ固イ考ヲ持
  ツテ居リマス、大正九年原內閣ノ時ニ、所
  謂控除率ナシニ金額綜合課稅ニスルト云フ
  問題ガ起リマシテ、實ハ私ハ高橋大藏大
  臣、ソレカラ原總理大臣ニ向ツテ、若シサ
  ウ云フコトヲスレバ、現在株式ヲ持ツテ仕
  事ヲシテ居ル人ハ、全部銀行カラ金ヲ借リ
  テ居ル、自分ノ金デ株劵ヲ持ツテ、ソレヲ
  金庫ニ入レテ居ル者ハ恐ラク半數モナイデ
  アラウ、アトノ人ハ總テ銀行カラ金ヲ借リ
  テ仕事ヲシテ居ル、然ルニ借金ノ利息ヲ少
  シモ見ズニ、全部ソレヲ收得金トスルト云
  フコトニナレバ吾々假リニ株ヲ持ツテ居
  ルトスレバモウ株ヲ持ツテ仕事ハ出來ヌ、
  卽チ金ヲ溜メナケレバ仕事ガ出來ヌト云フ
  コトニナルノデアツテ、金ヲ溜メル爲ニ仕
  事ヲスルト云フ風ナ事柄ハ行ヘナイ、卽チ
  多クノ企業家ハ仕事ガシタイ、仕事ラスル
  人ト金ヲ持ツテ居ル人トハ自ラ違フノデア
  ツテ、卽チ仕事ヲスル人ハ借金ヲシテドン
  ドン仕事ヲ大キクシテ行ク、其ノ內ニ資產
  ガ出來ルノデアルカラ、ドウシテモ是ハ銀
  行ノ利子ハ引カナケレバナラヌ、斯ウ云フ
  議論ヲ實ハ閣議室ノ隣リニ行ツテ、山本條
  太郞君ト今泉嘉一郞君デアリマシタカ、夜
  ノ二時マデモ私ハ話シテ居ツタヤウナ譯デ
  アリマス、私ハ其ノ時ノ意見ハ今日尙ホ捨
  テテ居リマセヌ、ソレデ色々內閣ニ陳情
  シ、閣僚諸公ニモ話合ツテ、ソレデ二割ヲ
  控除シテ貰フコトトナリ、文貴族院ニ於テ
  二割ト云フコトニナツテ、最初ハ四割控除
  スルコトニナツタノデアリマスガ、ドウモ
  今日デモドウシテモ利息ト云フモノハ引ク
  ベキコトガ當リ前デアル、殊ニ況ヤ今囘ノ
  如キ稅制ヲ行ヒマシテ、累進稅率ニナレバ
  上ノ方ニナリマスト相當高ク取ラレマス
  ガ、是ガ若シ借金ノ利息ヲ引カヌデ、借金
  ノ利子ヲ拂フト致シマスト、稅金ト利息ト
  デ、先ヅ七朱、八朱位ノ配當デハ、二三十
  万圓位ノ收得ノアル人ハ全然足リナクナル
  結果ニナルト私ハ思ツテ居リマス、隨ヒマ
  シテ所得稅ノ性質カラ言ヒマスト、實際ノ
  收得金ノアル人ハ、是ハ多ク取ラレテモ仕方
  ガナイ、收得金ノ少イ人ハソレニ準ジテ少
  イ稅金デ然ルベキモノデアル、斯樣ニ考ヘ
  ルノデアリマシテ、私ハ此ノ二割ト云フモ
  ノヲ引クト云フ事柄ハ廢メテ、サウシテ借
  金ノ利子ヲ控除スル、卽チ株劵ヲ取得スル
  ニ要スル所ノ利子ヲ控除スルト云フ方ガ私
  ハ正當デハナカラウカ、斯樣ニ信ジテ居リ
  マシタノデ、此ノ問題ニ對シマシテハ私ハ
  何等ノ反駁意見ヲ加ヘズ、之ヲ認メタ譯デ
  アリマス

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• 126・小山倉之助

  ○小山委員　關聯シテ一寸······株式二割控
  除デアリマスガ、成程借金シタ人カラ利息
  ヲ引ク、借金シナイ者カラハ利息ヲ引カ
  ヌ、ソレハ擔稅力ガソコニアルカラ······斯
  ウ仰セラレマス、併シナガラ現在ノ制度デ
  ハ借金ヲセズニヤル人ト、借金ヲシタ人ト
  ヤハリ區別ガアリマスガ、此ノ稅法ガ施行
  サレルヤウニナリマシタナラバ、今マデハ
  堅實ニ自分ノ財產ヲ保持スル爲ニ、或ハ堅
  實ナ事業ヲスル爲ニ、借金ヲセズニ株ヲ持
  ツテ居ツタ人モ借金スルコトニナルカモ分
  ラヌ、斯ノ如キハ堅實ナル家庭ノ財產ヲ保
  持スル所以デモナケレバ又會社ヲ堅實ニス
  ル所以デハナイ、ドウセ稅金ガソレダケ引
  カレルノダカラ借金ヲシテ置カウ、或ハ借
  金ヲ假裝シヨウ、斯ウ云フコトニナリマシ
  タナラバ、是ハ大變デス、ソコニ稅收ノ缺
  陷ガ起ツテ來ハシナイカ、大藏省デ大體豫
  定シタ稅收ヨリモツト減ルノヂヤナカラウ
  カ、斯ウ云フ結果ニナルノデハナカラウカ
  ト思フノガ一ツ、ダカラ今度ノ稅制ハ寧ロ
  借金ヲシテ株ヲ持ツト云フコトヲアベコベ
  ニ奬勵スル、サウ云フ結果ニナリハシナイカ
  ソレカラモウ一ツハ、五千圓マデハ綜合
  所得稅ハ課リマセヌ、一般所得稅ハ課セマ
  セヌ、サウスルト五千圓以下ノ收入ノ者デ
  株ヲ持ツテ居ル者ハ、借金ノ利子ヲ引カレ
  ル恩典ニ與ラナイ、デスカラ其ノ點ニモ不
  合理ガアル、同ジク株ヲ持ツテ借金ヲシタ
  者ハ利息ヲ引カレル、借金シナイ者ハ利息
  ヲ引カレヌ、斯ウ云フコトニナルヨリハ、ヤ
  ハリ其ノ株ニ對スル關係デアリマスカラ二
  割控除トシテ、サウ云フモノヲ全部均一ニ
  處理シタ方ガ宜イヂヤナイカ、借金ノ利息
  ヲ引カウトシテモ、果シテ其ノ爲ノ借金デ
  アルカドウカ、所謂認定問題デ色々面倒ナ
  問題ヲ起スヨリハ二割控除ノ方ガ簡單ニ
  シテ明瞭デアリハシナイカ、理窟モ通ツテ
  居ハシナイカ、斯ウ云フヤウニ考ヘルノデ
  アリマスガ、如何デスカ

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• 127・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　本案ガ施行サレタ場合ニ
  ハ、借金ヲシテ株ヲ持ツコトヲ奬勵スルヤウ
  ニナリ、不堅實ニナルデハナイカ、斯ウ云
  フノデアリマスルガ、是ハ私ハ堅實ニ投資
  シテ居ル場合ニハ借金シテ居ルモノハ其
  ノ利息ヲ引クノハ當然ダト思フノデアリマ
  ス、或ハ小山サンノ仰セニナルノハ何カ投
  機市場ニデモ手ヲ出シテ居ル人ノコトヲ豫
  想シテ居ラルルモノカト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=127

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• 128・小山倉之助

  ○小山委員　イヤ、サウヂヤアリマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=128

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• 129・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　サウデナケレバ、堅實ナ
  ル借金ヲシテ株ヲ持ツテ居ル場合ニ、其ノ
  借金ノ利息ヲ引クカラ、負擔ガ輕クナルカ
  ラ投機的ノモノニ走ル·····

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=129

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• 130・小山倉之助

  ○小山委員　サウ云フ意味ヂヤアリマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=130

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• 131・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　斯ウ云フ譯ハドウモ出テ
  來ナイ、ソレダケノ所得シカナイカラ、所
  得ノアルダケハ全額課稅サレテ行ク、斯ウ
  云フ譯デアリマスカラ、私ハソレハ其ノ負
  擔力ニ應ジタ課稅ニナルノダ、是ガ爲ニ不
  堅實ナ株ノ持チ方ヲ奬勵スルヤウニハナリ
  ハシナイ、現在ノ如ク借入金ノ利息ハ少シ
  モ引カナイ場合ニハ、堅實ナル投資ハ到底
  出來ナイノデアリマシテ、寧ロサウ云フ方
  面ノ投資ヲ樂ニシ得ル途ヲ開イテヤル、斯
  ウ云フ風ニ考ヘマス
  ソレカラ五千圓マデハ借入金ノ利息ヲ經
  費ニ見ナイガ綜合所得稅ニ於テノミ見ル
  斯ウ云フ御話デアリマス、分類所得稅ハ五
  千圓以下ノ人モ、五千圓ヲ超ユル所得ノア
  ル人モ一樣ニ適用ヲ受ケルノデアリマシテ、
  分類所得稅ニ於テハ借入金ノ利息ヲ見ナイ
  ト云フノガ大所得者、小所得者ニ付テモ同
  樣デアリマス、但シ分類所得稅ニ於キマシ
  テモ、借入金ノ利息ヲ見タラ宜イヂヤナイ
  カト云フノハ、私一ツノ立派ナ御意見デハ
  ナイカト存ジマス、併シナガラ今囘ノ稅制ニ
  於キマシテハ株式ニ對スル課稅ハ、源泉課
  稅スルコトニシテ居リマスルノデ、借入金
  ノ利息ヲ見テ此ノ源泉デ課稅スル場合ニ
  其ノ分ヲ差引クト云フコトハ實行難ナノガ
  一ツデアリマス、併シ是ハ是非實行シナケレ
  バナラヌ性質ノモノデアレバ、是ハ何カノ
  方法デヤル必要ガアルカト思ヒマスケレド
  モ、大體投資ノ狀況等カラ見マシテ、サウ
  シテ稅率モ百分ノ十程度ト致シマスルト、
  一面「コスト」トモ見ラレル分モアルノデア
  リマシテ、平均一割程度ノ課稅ヲ受ケルト
  云フコトヲ前提ニシテ投資シテ行ク、斯ウ
  云フコトニナリマスカラ、經濟上ノ實情カ
  ラ見テ、ソレ程支障ハナイデハナカラウ
  カ、而シテ是ハ五千圓以下ノ人ノミニ限ラ
  ズ、五千圓ヲ超エル所得者ニ付テモ、分類
  所得稅ニ於テハ一樣ノ扱ヒヲシヨウ、斯ウ
  云フ譯デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=131

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• 132・小山倉之助

  ○小山委員　ソレハ詰リ分類所得稅ハ課力
  リマス、綜合所得稅ハ課カラヌ、綜合所得
  稅ノ場合ニ利息ヲ引クノデアリマスカラ、
  五千圓以下ノモノハ引イテヤラヌ、五千圓
  以上ノモノハ引イテヤル、斯ウ云フコトニ
  ナレバ、ソコニ詰リ小所得者ヲ虐待スルト
  云フ結果ニナリハシナイカ、斯ウ云フ意味
  デアリマス、ソレカラ主稅局長ハサウ云フ
  民間ノヤリ繰リノ經濟ハ御承知アリマスマ
  イガ、私共カラ申シマスト、詰リ相當ノ株
  ヲ持ツテ居ツテ二割控除デアレバ、其ノ儘
  ニシテ置クガ、併シ借金ノ利息ヲ引クト云
  フコトニナリマスレバ、ソレハ借金ヲシテ
  買ツタ方ガ宜シイ、或ハ持ツテ居ルモノヲ
  借金ニ入レタ方ガ宜シイ、斯ウ云フコトニ
  ナルノデアリマシテ、ヤハリ皆借金ヲ假想
  スルコトモ出來レバ、或ハ事實借金ヲスル
  コトモ出來ル、サウ云フコトハ決シテ所謂
  脫稅ヲ奬勵スル結果ニコソナレ、堅實ナ投
  資家ト云フモノヲ堅實ニ導ク所以デハナカ
  ラウ、斯ウ云フ風ニ考ヘルフデアリマシ
  テ、ソコハ一ツ餘程御〓究ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=132

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• 133・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　分類所得稅ニ於テハ借入
  金ノ利息ハ引カナイ、綜合所得稅ニ於テノ
  ミ引クノハ大所得者ノミヲ優遇スルコトニ
  結果ニ於テナルノデハナカラウカト云フ仰
  セデアリマスルガ、私共ハ綜合所得稅ハ所
  得額ガ多額ニアリ、ソコニ負擔力ガアルカ
  ラ特ニ累進稅率デ課稅シテ行ク、所ガ實際
  ノ手取ハ配當金ノ中カラ借入金ノ利息ヲ引
  クカラシテ、サウ澤山ナイ、借入金ノ利息
  ヲ差引イタ殘リダケガ本當ノ實所得ナノデ
  アル、其ノ所得ガ五千圓以上ヲ超エタ場合
  三ハ、綜合累進稅ヲ課稅シテ宜イケレド
  千、借入金ノ利息ヲ差引イタ所ガ五千圓以
  下ニ落チタ、斯ウ云フ場合ニハヤハリ是ハ
  負擔餘力ガアル、斯ウハ言ハレナイデハナ
  カラウカ、斯ウ考ヘル次第デアリマス、ソレ
  カラ借入金ヲスレバ負擔ガ輕クナルト言ヒ
  マスケレドモ、一方借入金ヲスレバ、ソレ
  ダケ利息ヲ拂ツテ行カナケレバナラヌ、隨
  テ實際借入金ヲシナイデ株ヲ持チ得ル能力
  ノアル者ガ、稅ノ負擔ヲ輕クシヨウト思ツ·
  テ借金シテ利息ヲ拂ツテ居ツタンデハ引合
  ハナイヤハリ借金セズニ自分ノ資金デ株
  ヲ持ツテ居タ方ガ、例ヘバ相當高イ稅率ヲ
  課稅サレテモ、其ノ方ガ有利ダト、斯ウ云
  フコトニナルト思ヒマス、ソレカラ借入金
  ヲ假想シテ脫稅ガ橫行スルノデハナカラウ
  カト云フコトハ、是ハ一ツノ見方デアリマ
  スケレドモ、是ハ全國ニ於キマシテ此ノ五
  千圓以上ノ所得納稅者ト云フモノハ二十五
  六万カト存ジマス、隨ヒマシテ是等少數ノ
  人ノ實體ニ付キマシテハ、稅務署ニ於テモ
  相當調査ヲ致シマスレバ假想ノ借入金ヲシ
  テ、サウシテ脫稅ヲ圖ルト云フヤウナコト
  ハ防止シ得ルモノト、斯ウ云フ風ニ考ヘテ
  居リマス

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• 134・中島彌團次

  ○中島委員　關聯事項デ····臨時資金調整
  法ト此ノ株ヲ擔保ニシテ借金ヲスル關係ニ
  付テハ、ドウ云フ風ニ今考ヘテ居ラレルノ
  デアリマスカ

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• 135・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　是ハ要スルニ臨時資金調
  整法デ其ノ資金ノ用途ガ認メラレテ、銀行
  カラ貸出スト云フコトニナリマスレバ株ヲ
  擔保ニ致シマシテモ、或ハ其ノ外ノモノヲ
  擔保ニ致シマシテモ、信用ニ致シマシテモ
  銀行ノ方デ差支ナイト思フノデス、貸出セ
  バソレデ行ケルモノト斯ウ云フ風ニ考ヘテ
  居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=135

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• 136・中島彌團次

  ○中島委員　私ハサウ云フ風ナコトハ問ウ
  テ居ルノデハナイ、實際ドウ云フ風ニ行ハ
  レテ居ルカ、例ヘバ株屋ガアツテ、株ヲ擔
  保ニシテ銀行カラ借金シテ來テ、ソレデ又
  株ヲ買ウテ居ル、其ノ時ニハ今度ノ新法ニ
  於テ適用サレルトシマスレバ、茲ニ借錢ノ
  利子ニ付テ考慮サレルト云フコトニナル、
  サウナツテ來ルト「マージン」ヲ取ツテ株ヲ
  買ウテ賣飛バシ、ソレカラ借金ヲシテ又株
  ヲ買ウテハ賣飛バシテ、又借金ヲシテ行
  ク、斯ウヤツテ行クト非常ニ其ノ成行ヲ株
  式界ニ於テハ憂慮シナケレバナラヌ、斯ウ
  云フ現行法ヲ認メラレルト、非常ニ投機取
  引ト云フモノヲ助長ヲスル結果ニナリハセ
  ヌカト思フ、其ノ點ニ付テ、其ノ間ニ臨時
  資金調整法ト云フモノガアルノデアルガ、
  現實ノ銀行ニ對スル株式ノ貸出ニ付テノヤ
  リ方ハ、臨時資金調整法ニハ書イテアル
  ガ、私ノ調ベタ所ニ依ルト違ツテ居ル、ヤ
  ハリ臨時資金調整法ト云フモノノ範圍ヲ逸
  脫シテ居ル所ガ澤山アリマス、其ノ證據ニ
  ハ銀行檢査ハヤツテ居ルケレドモ、臨時資
  金調整法ニ基ク所ノ檢査ハ一囘モヤツテ居
  ナイ、ソンナ風ナ關係デ此ノ臨時資金調整
  法ト云フモノガ、運用ノ關係ニ於テハ公正
  妥當ニ法ノ目的ニ達スル所マデ行ハレテ居
  ナイ、隨テ株式投資ニ於テモ借金ヲシテ株
  ヲ買ウテソレヲ賣飛バシ、ソレカラ又株ヲ
  買ウテ又ソレヲ旨クヤツテハ儲ケ「マージ
  ンレヲ取ツテハ繰返ス、鞘取、利鞘ト云フ
  コトガ此ノ二割控除ヲ止メテ借金ノ利息ヲ
  取ルト云フコトニナリマスト、却テ株屋ヲ
  擁護スルト云フコトガ今度ノ改正法ヂヤナ
  イカト私ハ思ツテ居ル、其ノ點ニ付テ主稅
  局長ノ明確ナル御答辯ヲ求メマス、田中國
  稅課長カラ答ヘテ戴イタ方ガ或ハ宜イカモ
  知レヌ

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• 137・田中豐

  ○田中政府委員　御指名デゴザイマスカラ
  御答致シマスガ、臨時資金調整法ト此ノ關
  係ノ運用ノ問題デアリマスガ、サウ云フ投
  機資金ハ貸サナイモノト考ヘテ居リマス、
  併シ實際ニ於テハ貸シテ居ルヂヤナイカト
  云フ前提ノ下ノ御話デアリマスガ、實際ニ
  於テ只今貸スニ致シマシテモ、此ノ借金ノ
  利子ヲ拂ツテ株ヲ持ツト云フコトハ、借金
  シナイデ株ヲ持テル者ガサウ云フ方法ヲシ
  テ株ヲ持ツ方ガ得ダト云フヤウナコトニハ
  絕對ニナラナイト考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=137

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• 138・中島彌團次

  ○中島委員　私等ノ知ツテ居ル人ニ現在借
  リテヤツテ居ル人ガアル、採算ヲ取ツテ見
  ルト其ノ方ガ事實ニ於テ得ダト云フコトデ
  アリマス、本法案ハソレガ一番ノ弱點デハ
  ナイカト私ハ思フ、ナラナイト言ウテモ、
  ソレハナツテ居ル、又現行法ガ改正サレテ
  改正法案ガ通過シタラバ、洵ニ便利ニナル
  ト言ウテ彼等ハ欣喜雀躍、殆ド自分等ノ別
  天地ガ展カレタト言ツテ居ル、事實サウデ
  ス

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• 139・田中豐

  ○田中政府委員　御話デアリマスガ、ソレ
  ハ要スルニ借金ヲシテ其ノ利子ヲ拂ツテ配
  當トノ間ニ鞘ヲ取ツテ利益ニナルト斯ウ云
  フ問題ダト思フノデアリマス、其ノ點ニ付キ
  マシテハ現行法ノ下ニ於キマシテモ同樣ナ
  例ヲ取リ得ル譯デアリマシテ、是ハ借金ノ
  利子ヲ引クコトニナリマシテ、多少其ノ利
  益ガ多クナルト云フ問題ハアリマセウケレ
  ドモ、借金ヲシナイデ株ヲ持ツテ居ル者
  ガ、借金ヲシテ株ヲ持ツト云フ方法ニ乘移
  ツテ行クト云フヤウナ場合ハ絕對ニアリ得
  ナイノデハナイカ、斯樣ニ申上ゲテ居ルノ
  デアリマス

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• 140・中島彌團次

  ○中島委員　配當ナドハ殆ド眼中ニナイ、
  配當ニ於テモ利益ニナリマスケレドモ、兎
  ニ角借金シテ轉賣シテ行ク、一ツノ上リ下
  リノ株自體ノ利鞘ヲ取ツテ行クト云フコト
  ニナツテ來ルノデス、是ハサウ云フコトノ
  奬勵ニハ確ニナルト思フ

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• 141・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　要スルニ見方ニ多少相違
  ガアルト思フノデアリマスガ、私ハ株式ノ
  元本取得ニ要シタ借入金ノ利息ヲ所得ノ計
  算上經費ニ見ルト致シマスレバ、中島サン
  ノ仰セノヤウナ方面モナイトハ申シマセヌ
  ケレドモ、併シナガラソレガアル爲ニ借金
  ノナイ者ニモ二割控除ヲ存置シテ置カナケ
  レバナラヌト云フ理由ハ毫モナイ、寧ロ判
  定ガ付クナラバ、中島サンノ仰セニナルヤウ
  ナ場合ニハ其ノ借金ノ利息ヲ經費ニ見ナイト
  云フ方法ヲ執ツテ行クベキデハナカラウカ
  ト存ジマス、稅率ハ段々重クナツテ負擔ノ均
  衡ト云フモノガ特ニ考慮セラレナケレバナ
  ラナイ今日ト致シマスト、株式ニ對シマシテ
  二割控除ヲ、借金ノナイ人ニ對シマシテモ存
  置シテ置クト云フノハ如何カト考ヘル次第デ
  アリマス、一面ニ於テ元本取得ノ爲ニ借入
  金ヲシテ居ル人モ相當アルノハ、是亦私ナ
  ドヨリモ皆樣ノ方ガ遙ニ能ク御存ジノコト
  カト存ジマス、此ノ方面ニ對シマシテハ今度
  ノ稅制改正ハ確ニ適切妥當ナモノデアル、
  問題ハ中島サンノ仰セニナルヤウナ分子ガ
  多少アルガ、ソレガ著シク其ノ弊ニ堪ヘナ
  イモノデアルカドウカ、サウ云フ弊ガアル
  場合ニ、之ニ對シテ如何ナル防止方法ヲ租
  稅上講ジタラ宜イカト云フ問題ニ歸著スル
  ノデハナカラウカト思ヒマス、私共ト致シ
  マシテハ先ヅ負擔ノ均衡上カラ致シマシテ、
  此ノ案ノヤウニスルノガ適當デアラウ、斯
  ウ云フ風ニ考ヘル次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=141

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• 142・中島彌團次

  ○中島委員　主稅局長ノ修正意見ハ洵ニ贊
  成デアリマス、私共ノ申シマシタ點ニ付テ
  其ノ弊ノアルト云フコトハ確ニ認メラレタ、
  主稅局長ハ此ノ點ニ付テ修正ニ應ズルト云
  フコトヲ述ベラレタモノデアルト私ハ諒承
  致シマス、ソレナラバ此ノ借金ノ云々ト云
  フコトヨリモ、ヤハリ現行法ノ如クニ一一割
  控除トカ三割控除シテ行ツタ方ガ曖昧デナ
  クテ宜イ、實際ノ稅務官吏ノ認定ニ依リマ
  スト、此認定ガ悉ク借金ハ認メナイ方へ傾
  イテシマフノデス、ソレカラ主稅局長モ御
  承知ノ通リ、現在ノ稅務署ノ狀態ヲ見マシ
  タナラバ戰慄スベキ狀態デアル、其ノ戰慄
  スベキ狀態ト云フモノハドウ云フ狀態デア
  ルカト申シマスト、此ノ一二年間ニ於キマ
  シテ殆ド恩給ヲ持ツテ居ル人ハ半減シタ、
  或ハ十分ノ一ニ減ツタ所モアル、或ル都下
  ノ稅務署ノ如キハ二十五人恩給ヲ持ツテ居
  ル人ガ居ツタノガタツタ五人ニナツテシマ
  ツタ、サウシテ去年、一昨年採ツタ人ダケ
  デ稅務ヲヤツテ居ル始末デ、アトハ軍需工
  業ヘドン〓〓行ツテシマツタ、殘ツテ居ル
  人々ハ經濟關係、法規、典例、解釋ト云フ
  モノハ餘リ知ラナイ、其ノ人々ガ此ノ法案
  全體ヲコナシテ行ケルカ行ケヌカ、是ハ大
  問題デアルト思フ、今度徵稅費ヲ取ツテ人
  員ヲ殖ヤスコトニナツテ居リマスガ、是亦
  貧弱ナル八十圓見當ノ月給取デヤレルカド
  ウカ問題デアル、サウ云フ人々ニ持ツテ行
  ツテ借金ノ控除ヲ言ウタ所デヨウ調ベ得ル
  モノデハナイ、實情ノ問題トシテ調ベラレ
  ナイ、悉ク是ハ否認シテシマフ、サウシマ
  スト、結局株式ト云フモノニ付テハ何モ引
  カナイト云フコトニナツテシマフ、結論ト
  シテ玆ニ私共ノ唯一ノ恃ミトシテ居ル所
  ハ、臨時資金調整法ガ完全ニ施行セラレ
  テ、所謂臨時資金調整法ノ目的通リニヤツ
  テ行ケバ、投機取引其ノ他ニ付キマシテモ
  抑ヘテ行ケルデセウ、是亦不安ナ狀態ニア
  ルトスレバ、ソコマデ大藏省ノ目ガ屆カヌ
  シ、日本銀行ノ目ガ屆カヌトスレバ、此ノ
  改正法案ノ今論點トナツテ居ル點ガ頗ル私
  共ハ心配ニ堪ヘナイノデス、今主稅局長ハ
  中島委員ノ仰シヤラレル所ハ幾分カアル、
  著シク濃厚デナイト云フコトヲ認メラレ
  タコトヲ以テ私ハ滿足シマスルガ、餘程是
  ハ考ヘテ戴カナケレバナラヌト思フ、又財
  界ノ實情ニ通ゼラレ、我黨ノ重鎭トシテ居
  ラレル所ノ藏相ニ於カレマシテモ亦此ノ點
  ハ認識セラレンコトヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=142

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• 143・堀切善兵衞

  ○堀切委員長　モウ意見ガ雙方能ク分リマ
  シタカラ此ノ程度デ-ーアトハ是ハ理論デ
  ハ解決出來ナイ、投票デモシテ解決致スヨ
  リ外ナイノデスカラ、其ノ點ハ此ノ程度デ
  宜シイト思ヒマス-板谷君、マダ續ケラ
  レマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=143

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• 144・板谷順助

  ○板谷委員　モツトハツキリ致シタイト思
  ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=144

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• 145・大矢半次郎

  ○大矢政府委員　私ハ委員長ノ今ノ御言葉
  ニ依リマシテ、此ノ點ニ付テハ深ク申上ゲ
  ヌ積リデアリマスガ、但シ結論ト致シマシ
  テ、今囘提出シタ案ヲ以テ最モ適當ト認メ
  ルト云フコトダケハ再度申上ゲテ置キタイ
  ト思ヒマス、ソレカラ今稅務署ノ仕事ノコ
  トニ付テ色々御話ガアリマシタ、確ニ最近
  ノ稅務署ノ實情ニ於キマシテハ或ル程度
  仰セニナツタヤウナ事情モアルノデゴザイ
  マス、隨ヒマシテ今度ノ稅制改正ニ於キマ
  シテモ斯ウ云フ點モ十分ニ考慮致シタノデア
  リマス、所得稅ノ體系モ斯ノ如ク改メマシ
  テ、出來ルダケ源泉デ比例稅デ課稅シヨウ
  ト云フ趣旨モソコニ出テ居ルノデアリマシ
  テ、勤勞所得者ノ課稅人員ハ二百八九十万
  ニナツテ居ルノデアリマスガ、是モ殆ド源
  泉デ俸給支拂ノ際ニ課稅スル、ソレカラ配
  當利子ニ付キマシテモ、分類所得稅デ總テ
  源泉課稅デスル、斯ウ云フ風ニナリマシ
  テ、從來支拂ノ所デ支拂調書ヲ提出シテ、
  各稅務署ハ全部千圓以上ノモノニ付テ綜合
  シテ課稅シテ居ル、其ノ間ニ色々通報漏
  トカ、計算ノ違ヒトカ、或ハ住所ノ變更
  ダトカ色々アリマシテ、誤謬ヲ重ネ、納稅
  者ニ迷惑ヲ掛ケルト云フコトモアツタノ
  デアリマシテ、今後殊ニ產業ノ發達ニ連
  レマシテ俸給所得者、配當利子所得者ノ
  數ガ增加シテ行キマシテ、現情デモ尙ホ今
  御話ノアリマシタヤウナ狀況モアルノデア
  リマスガ、將來ノコトヲ思ヒマスト云フト、
  從來ノ如ク總テ綜合課稅スルノハ「ペーパ
  ー〓プラン」トシテハ洵ニ結構デアリマスケ
  レドモ、稅務ノ實際ノ實行方法カラ行キマ
  スト、ドウシテモ是ハ適シナイ、玆ニ一大英斷
  ヲ揮ツテ課稅方法、納稅方法ニ改善ヲ加ヘ
  ナケレバナラヌト云フコトガ非常ナ大キナ動
  機ニナツテ、分類所得稅ノ制度、源泉課稅ノ
  制度ヲ執ツタノデゴザイマス、隨ヒマシテ
  五千圓以下ノ給料所得者、配當利子所得者
  ハ總テ源泉デ天引デ納稅シテソレデ濟ム、
  斯ウ云フコトニナツテ非常ニ事務ガ簡捷ニナ
  ル、サウシテ又納稅者ノ苦痛ヲ感ズルコトガ
  少クナル、是ハ今度ノ稅制改正ノ一ツノ眼
  目ニナツテ居ル次第デアリマス、多少色々
  基礎控除トカ、家族控除トカ、理論ニ徹シ
  ナイト云フ御非難ガ屢〓アリマス、ソレカラ
  又比例稅ニスル結果下ノ方ガ重キ感ガアル
  デハナイカト云フヤウナ御話モアリマシテ、
  多少サウ云フ點ガアリマスケレドモ、稅務
  ノ實際ノ狀況カラ見マシテ、今後ノ行キ方
  ト致シマシテ成ベク手數ヲ掛ケナイ、徵稅
  費モ掛ケナイデ、サウシテ誤謬モ少クスル、
  官民相互ノ手數ヲ省略スル上ニ於キマシテ
  ハ此ノ行キ方ヨリ外ハナイト斯ウ確信致シ
  テ、斯ウ云フ案ヲ拵ヘタ次第デアリマス
  尙ホ辯解ガマシクナリマスケレドモ、此
  ノ綜合所得稅ノ納稅者ハ全國デ二十五六万、
  隨ヒマシテ一稅務署當リノ負擔モ非常ニ少
  クナルノデアリマス、今ハ第三種所得納稅者
  ハ百八九十万、其ノ約一割程度ニナルノデ
  アリマスカラ、此ノ綜合課稅ノ適用ヲ受ケ
  ル人ニ付キマシテ借入金ノ有無ヲ見ルト云
  フノハ、稅務署ニ於キマシテモ相當上ノ方
  ノ事務ニ練達堪能ナ人ヲ當ラセ得ルモノト
  考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=145

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• 146・櫻内幸雄

  ○櫻內國務大臣　私一寸中座ヲ致シマシタ
  ノデ、質問ノ要旨ヲ或ハ履キ違ヘテ居ルカ
  モ知レマセヌガ、私ハ此ノ利息ヲ控除スル
  ト云フコトハ、日本ノ事業界ノ發達ノ上ニ
  最モ必要ダト思ツテ居ルノデアリマス、ソ
  レデ今中島君ノ御話ハ、株屋ガ「スペキユ
  レーション」卽チ投機ヲヤル爲ニ株ヲ買ツテ鞘
  取ヲヤツテ居ル、サウ云フモノガ非常ニ繁
  昌スルデハナイカ、斯ウ云フ御話デアリマス
  ガ、今ノ鞘取ノヤリ方ハ、實際ノ投機ト關係
  ヲ持ツモノト、今一ツハ稅金逃レノモノト、
  此ノ二ツアルヤウニ私ハ考ヘテ居リマス、
  ツノヤリ方ハ、株劵ヲ配當期ガ過ギタ後ニ
  買ツテ、サウシテ其ノ次ノ決算期ノ前ニ其
  ノ株劵ヲ賣ツテ、サウシテ配當落ノ株劵ヲ買
  フ、配當附ト配當落トハ必ズ違ヒマス、其
  ノ鞘ガ二錢ニナルトカ、一錢八厘ニナルト
  カ、一錢六厘ニナルトカ、サウ云フ日步ヲ
  勘定シテヤツテ居ル者ガアルヤウデアリマ
  ス、ソレハ可ナリ資產家ノ方面ニ私ハアル見
  込ヲ付ケテ居リマス、其ノ鞘取ニ對スル所ノ
  課稅ノ方法ハ、私ハマダ是ハ完全ニ行ツテ居ナ
  イト斯ウ思ツテ居リマス、私ハ鞘取ニ課
  稅スルト云フ途ハ自ラ是ハ考ヘナケレバナ
  ラヌコトダト思ヒマス、今一ツハ、此ノ場合
  ニ於テ逆ニ其ノ期末ニ株劵ヲ買ヒマシテ、
  サウシテ配當ヲ取ツテ、配當ヲ取ツタ後ニ
  於テ賣ツテ居ル者ガアルノデアリマス、其
  ノ配営ヲ取ツタ人ガ其ノ株劵ヲ擔保ニ入レ
  タ、擔保ニ入レテ其ノ利息ヲ引イテ貰フ、
  斯ウ致シマシテモ、ソレハ銀行家ガ實際其
  ノ人ノ拂ツタ預金利子シカ控除致サナイコ
  トニナルノデアリマシテ、私ハ一箇月寢セ
  タ金額ニ對シテノミノ利息ニ止マルト思ヒ
  マス、サウシテソレヲ配當カラ引クノデア
  リマスカラ、其ノ間ニ不正ガ行ハレルト云
  フ事柄ハ考ヘ得ナイ、ソレカラ若シ之ヲ少
  シモ利息ヲ控除シナイ、斯ウ云フコトニナ
  リマスレバ、モウ極ク明ナ一例ヲ申セバ一
  万圓ノ金ヲ持ツテ居ル人ト、二千圓カ幾ラ
  ヲ以テ同一ノ株劵ヲ持ツテアト銀行カラ借
  リテ居ル人ヲ比ベテ見マシタ時ニ、片方ハ
  非常ニ大キナ負擔ヲシテ居ル、然ラバ總テ
  ノ株劵ト云フモノハ、銀行カラ借金ヲセズ
  シテ、全部自分ノ金デ株劵ヲ持ツ人以外ハ
  株劵ヲ持タセヌト云フコトノ根本方針ヲ決
  メレバ、ソレハソレデ宜シイノデアリマスケ
  レドモ、兎ニ角仕事ニ對シテ、此ノ仕事ハ
  發展スル、ダカラ此ノ仕事コソ自分獨リノ
  單獨ノ力デハイカヌカラ、多數ノ人ト寄
  合ツテ其ノ仕事ヲ起サウト云フ企業家ノ方
  面カラ言ヒマスト、借金ヲシテサウシテ仕
  事ヲシタ人ニ對シテハ、其ノ借金ノ利息ヲ
  引イテヤルノガ私ハ至當ダト思フ、殊ニ今
  ノ所ハ事業所得ニ付テハ、事業ヲシテ銀行
  カラ金ヲ借リテ居レバ其ノ利息ヲ引イテヤ
  ルノデアリマス、ダカラ同ジ程度ニ於テ株
  劵ヲ持ツテモ當然引イテ宜イノデハナイカ、
  斯樣ニ考ヘテ原案ノ方ガ宜シイト私ハ考ヘ
  テ居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=146

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• 147・堀切善兵衞

  ○堀切委員長　ドウデス、先程委員長モ言
  ヒマシタガ、成タケ進捗シタイト思ヒマス
  ガ、政府委員ノ方カラ娓々トシテ御說明ニ
  ナレバ進捗致シマセヌカラ-今日ハ土曜
  日デモアリマスシ、板谷サン、ドウセ今日
  アナタハ終リニナリマセヌデセウ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=147

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• 148・板谷順助

  ○板谷委員　終リマセヌ、私マダ相當アリ
  マス
  〔「政府委員ノ方デ娓々トシテ答辯ニナ
  ルナラコチラモ娓々トシテ質問致シマ
  ス」「明後日ニシヨウ」ト呼ブ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511581X01419400302&spkNum=148

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• 149・堀切善兵衞

  ○堀切委員長　質問モ相當聽キマシタカ
  ラ、ソレデハ是デ散會致シマス、月曜日ニ
  又午前十時ヨリ開會致スコトニ致シマス
  午後四時五十六分散會
  衆議院所得稅法改正法律案外三
  十件委員會議錄第五囘中正誤
  頁段行誤正
  六一四三四東京府東京市
  六三二二造ツテ殘ツテ
  衆議院所得稅法改正法律案外三
  十件委員會議錄第十一囘中正誤
  頁段行誤正
  一九九四一二·石井政府委員石井委員

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