1. 会議録本文
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000・会議録情報
委員會成立
本委員は昭和十五年三月十九日(火曜日)議長の指名を以て左の通選定せられたり
小柳牧衞君 長野高一君
勝田永吉君 長井源君
池本甚四郎君 塚本三君
卯尾田毅太郎君 出井兵吉君
羽田武嗣郎君 濱地文平君
簡牛凡夫君 田中好君
世耕弘一君 瀧澤七郎君
淺沼稻次郎君 青木作雄君
小田榮君 武田徳三郎君
同月二十日(水曜日)午前十時三十五分委員長理事互選の爲委員參集す
其の氏名左の如し
小柳牧衞君 長野高一君
長井源君 塚本三君
卯尾田毅太郎君 出井兵吉君
羽田武嗣郎君 濱地文平君
簡牛凡夫君 田中好君
世耕弘一君 小田榮君
〔年長者出井兵吉君投票管理者と爲る〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511826X00119400320&spkNum=0
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001・出井兵吉
○出井投票管理者 委員長ノ互選ヲ行フヘ
キ旨ヲ宣〓ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511826X00119400320&spkNum=1
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002・羽田武嗣郎
○羽田委員 投票ヲ用ヰス出井兵吉君ヲ委
員長ニ推薦スヘシトノ意見ヲ提出ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511826X00119400320&spkNum=2
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003・出井兵吉
○出井投票管理者 羽田君ノ意見ニ異議ナ
キヲ認メ自己ハ委員長ニ當選シタル旨ヲ宣
〓ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511826X00119400320&spkNum=3
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004・出井兵吉
○井出委員長 就任ノ挨拶ヲ述へ引續キ理
事ノ互選ヲ行フヘキ旨ヲ宣告ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511826X00119400320&spkNum=4
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005・羽田武嗣郎
○羽田委員 理事ハ其ノ數ヲ四名トシ委員
長ノ指名ニ一任スヘシトノ意見ヲ提出ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511826X00119400320&spkNum=5
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006・出井兵吉
○出井委員長 羽田君ノ意見ニ異議ナキヲ
認メ小柳牧衞君、長野高一、君羽田武嗣郞君
及田中好君ヲ理事ニ指名ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511826X00119400320&spkNum=6
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007・出井兵吉
○出井委員長 引續キ會議ヲ開クヘキ旨ヲ
宣告ス
(以下速記)
會議
昭和十五年三月二十日(水曜日)午前十時五
十五分開議
出席委員左ノ如シ
委員長出井兵吉君
理事小柳牧衞君理事長野高一君
理事羽田武嗣郞君理事田中好君
長井源君塚本三君
卯尾田毅太郞君濱地文平君
簡牛凢夫君世耕弘一君
小田榮君
出席國務大臣左ノ如シ
內務大臣伯爵兒玉秀雄君
出席政府委員左ノ如シ
內務政務次官鶴見祐輔君
内務省神社局長中野與吉郞君
內務省計畫局長松村光磨君
內務事務官山内逸造君
本日ノ會議ニ上リタル議案左ノ如シ
神宮關係特別都市計畫法案(政府提出、
貴族院送付)
都市計畫法中改正法律案(政府提出、貴
族院送付)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511826X00119400320&spkNum=7
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008・出井兵吉
○出井委員長 是ヨリ開會致シマス、神宮
關係特別都市計畫法案、都市計畫法中改正
法律案、之ヲ一括シテ議題ト致シテ議事ヲ
進行サセマス、此ノ際提案ノ理由ヲ政府ヨ
リ說明願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511826X00119400320&spkNum=8
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009・兒玉秀雄
○兒玉國務大臣 提案ノ理由ヲ御說明申上
ゲタイト思ヒマス、最初ニ神宮關係特別都
市計畫法案ニ付キマシテ、其ノ提案理由ヲ
御說明申上ゲマス、神宮ニ關シマスル施設ヲ
整備致シマシテ、以テ神宮ノ尊嚴ヲ保持シ、
皇國精神ノ昂揚ニ努メマスルコトハ、國體
ノ本義ニ照シマシテ、極メテ緊要ナルコト
ト存ズルノデアリマス、之ニ關シマシテハ、
曩ニ第六十四議會ニ於キマシテ、貴衆兩院
ヨリ建議ヲセラレマシタ次第モアリマス、
政府ニ於キマシテハ、神宮關係施設調査會
ヲ設ケマシテ、其ノ御審議ヲ煩ハシ、其ノ
答申ヲ得マシタノデ、之ニ基キマシテ來年
度ヨリ第一期十箇年繼續事業ト致シマシテ、
約一千八百万圓ヲ以テ事業ノ實現ヲ期シテ
居ル次第デアリマス、右ニ關シマスル豫算
ヲ本議會ニ提出致シマシテ、旣ニ本議會ノ
御協賛ヲ得タ次第デアリマス、右ノ施設ノ
中、都市計畫ニ關スルモノハ、之ヲ都市計
畫事業ト致シマシテ、內務大臣ニ於テ直接
執行致シタイト思フノデアリマス、然ルニ
現行都市計畫法ニ於キマシテハ不十分ナル
點ガアリマスノデ、玆ニ本案ヲ提出シタ次
第デアリマス、其ノ內容ノ主ナル點ヲ申上
ゲマスレバ、先ヅ第一ハ本事業ノ執行主體
ニ付テデアリマス、本事業ノ特殊性ニ鑑ミ
マシテ、國卽チ行政官廳ニ於テ之ヲ執行ス
ベキコトヲ明ニ致シタノデアリマ
ス
第二ハ本事業執行ニ要シマスル經費ノ點
デアリマスガ、從來行政官廳ガ事業ヲ執行
スル場合ニ於キマシテハ、都市計畫法第六
條ノ規定ニ依リマシテ、國ガ其ノ費用ヲ負
擔スベキデアルノミナラズ、事業ノ性質カ
ラ見マシテモ、其ノ費用ハ國ニ於テ負擔ス
ベキモノト存ズルノデアリマスガ、一面事
業ノ內容ヨリ致シマシテ、地元公共團體ト
ハ密接ナル關係ガアリマスノデ、本事業
ニ協力セシムル趣旨ヨリ致シマシテ、其ノ
費用ノ一部ヲ關係公共團體ニ分擔セシメ得
ル規定ヲ設ケタ次第デアリマス
第三ハ本事業執行ノ一ノ方法トシテ、土
地區劃整理ニ依ルコトトシタノデアリマス、
ソレハ神宮宮域ノ擴張、參宮道路、廣場等
ノ新設擴張ニ伴ヒマシテ、相當多クノ民有
地ノ買上ト、多數家屋ノ移轉ヲ要スル實情
デアリマスノデ、附近一帶ニ亙リマスル土
地區劃整理ノ施行ニ依リマシテ、環境ノ整
備ヲ圖リマスルト共ニ、事業ノ執行ノ圓滑
適正ヲ期スルコトト致シタノデアリマス、
然ルニ現行都市計畫法ニ於キマシテハ、行
政官廳ガ土地區劃整理ヲ施行スル場合ノ規
定ガ不十分デアリマスノデ、此ノ缺點ヲ補
ヒ、併セテ必要ナル規定ヲ設ケタ次第デア
リマス
次ニ都市計畫法中改正法律案ニ付キマシ
テ、其ノ提案ノ理由ヲ御說明申上ゲタイト
思ヒマス、御承知ノ通リ都市計畫法ハ、其
ノ施行以來、我國都市施設ノ整備、改善ニ
付キマシテ相當ノ實績ヲ收メテ參ツタノデ
アリマスガ、時勢ノ推移ト、過去ノ實績ニ
徵シマシテ、一部ノ改正ノ必要ヲ感ジマシ
タノデ、玆ニ本案ヲ提出シタ次第デアリマ
ス、改正ノ主ナル點ヲ申上ゲマスレバ、都
市計畫ノ基本觀念ト致シマシテ防空ノ重要
ナルコトヲ明確ニ致シタル點デアリマス、
防空ノ施設ノ充實ヲ圖リマスルコトハ、現
下諸般ノ情勢ニ照シ、特ニ緊要ノ事項ト認
メマシタノデ、第一條ニ此ノ點ヲ加ヘマシ
テ明カニ致シタ次第デアリマス
次ニ公園、綠地、廣場ノ施設ハ、都市民
ノ保健增進上カラ見マシテモ、防空、防火
又ハ避難上ノ點カラ見マシテモ緊要ナル施
設デアリマシテ、是等ノ施設ハ何レモ早急
ニ實現セシムルノ必要ガアリマスルノデ、
都市計畫ト致シマシテ決定致シタルモノニ
付キマシテハ、事業ノ實施上著シク障碍ト
ナル虞アリマスル建築物ニ付キマシテハ之
ヲ制限シ、事業ノ執行ヲ容易ナラシメ、以
テ時代ノ要求ニ應ゼントスル次第デアリマ
ス
尙ホ都市計畫トシテ内閣ノ認可ヲ受ケ決
定致シマスル土地區劃整理ハ、ソレ〓〓特
殊ナ事情ニ基クモノデ、都市計畫上重要ナ
ル事業デアリマシテ、一定ノ期間內ニ事業
ニ著手スル者ノナイ場合ニ於キマシテハ、
公共團體ヲシテ其ノ事業ヲ施行セシムルコ
トニナツテ居リマスル關係上、是亦速ニ事
業ノ執行ヲ必要ト致シマスルノデ、建築物
ニ付前同樣ノ制限ヲ爲サントスル次第デア
リマス
次ニ土地區劃整理ノ施行ニ當リマシテ、
墳墓地ヲ其ノ地區ニ編入スル場合ニ於キマ
シテハ、現行法規ニ於キマシテハ其ノ所有
者ノ同意ヲ得ナクテハナラナイト云フコト
ニナツテ居リマス、併シナガラ現在各都市
ノ內外ニ點々トシテ所在シマスル墓地ハ、
種々ノ事情デ全部ノ同意ヲ得ルコトガ中々
困難ナル事情ガアリマス、是ガ爲ニ土地區
劃整理施行ノ圓滑適正ヲ期シ難イ場合ガ多
イノデアリマシテ、此ノ點ヲ考慮致シマシ
テ、同意ヲ得ラレナイ場合ニ於キマシテモ
地區ニ編入シ得ルヤウ改メタイト考ヘテ居
ル次第デアリマス
次ニ土地區劃整理ノ施行ニ依リマシテ道
路廣場、運河、公園等、公共ノ用ニ供ス
ベキモノトナリマシタル土地ハ、現行法ニ
於キマシテハ從前ノ國有地ニ代ルベキモノ
ノミヲ國有地ニ編入スルコトトナツテ居リ
マシテ、其ノ他ノモノハ寄附ノ手續等煩雜
ナ手數ヲ要シマスルノデ、此ノ點ヲ改正致
シマシテ公共施設ノ確保ヲ期スルコトト致
シタ次第デアリマス
次ニ都市ノ内外ニ綠地ヲ適當ニ配置スル
ハ、都市民ノ保健增進竝ニ都市防衞上緊要
ナルコトデアリマスノデ、新タニ綠地ニ關
スル規定ヲ設ケマシテ、之ニ要スル土地ノ
收用又ハ使用ヲ爲シ得ルコトトシ、其ノ實
現ヲ容易ナラシムルコトト致シタ次第デア
リマス
尙ホ右二案ハ過般都市計畫中央委員會ノ
答申ヲ經マシテ立案致シタル次第デアリマ
ス、何卒二案ニ付御審議ノ上御協賛アラン
コトヲ御願致ス次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511826X00119400320&spkNum=9
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010・出井兵吉
○出井委員長 是ヨリ質疑ニ入リマス、其
ノ前ニ議事進行ニ付テ皆サンノ御諒承ヲ得
テ置キタイト思ヒマス、質疑ハ只今說明ノ
如ク兩案一括シテ御質疑ヲ願ヒタイト思ヒ
マス、質疑ノ順序ハ申出ノ順序ニ依ツテ許
可シタイ、斯ウ考ヘマス、尙ホ特ニ理事諸
君ニ御願ヲ致シテ置キマスガ、委員長甚ダ
未熟者デアリマスカラ、理事諸君ニ於キマ
シテ政府ト折衝ヲ保タレマシテ、委員會進
行上些ノ遺憾ノナイヤウニ御取計ヲ特ニ御
願致シテ置キマス、ソレデハ是ヨリ質疑ニ
入リマス-長井源君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511826X00119400320&spkNum=10
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011・長井源
○長井委員 大臣ハモウオ出デニナラナイ
ノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511826X00119400320&spkNum=11
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012・兒玉秀雄
○兒玉國務大臣 今日ハ貴族院ノ稅制ノ方
ヘ行ツテ居リマスノデ、御申出ヲ願ヒマス
レバ直グ出席致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511826X00119400320&spkNum=12
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013・出井兵吉
○出井委員長 只今申上ゲマシタガ、尙ホ
質疑ニ入ル前ニ、政府ヨリ計畫ノ內容ヲ詳
細說明申上ゲタイト云フ申出ガアリマス、
皆サンノ質疑モ其ノ方ガ却テ便利ダラウト
考ヘマスノデ、サウ云フ順序ニ取計ヒマス
カラ左樣御諒承願ヒマス、デハ政府ノ說明
ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511826X00119400320&spkNum=13
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014・松村光磨
○松村政府委員 私カラ此ノ際兩案ニ付キ
マシテ少シ詳シク御說明ヲ申上ゲテ御參考
ニ供シタイノデアリマス、尙ホ神宮施設ノ
事業ノ内容ニ付キマシテ附加ヘテ申上ゲル
コトニ致シタイト存ジマス
神宮關係特別都市計畫法ノ方カラ逐條的
ニ御說明ヲ申上ゲタイト存ジマス、第一條
ハ本法適用ノ範圍ヲ定ムルモノデアリマシ
テ、卽チ神宮ニ關係ノアル宇治山田都市計
畫事業中、主務大臣ノ指定スルモノニ限ツ
テ本法ヲ適用スルコトト致シタノデアリマ
ス、隨テ神宮ニ關係アル宇治山田都市計畫
事業デアリマシテモ、主務大臣ノ指定ノナ
イモノハ本法ノ適用ナク、一般都市計畫法
ノミニ依リマシテ事業ヲ執行スルコトトナ
ルノデアリマス、尙ホ先刻大臣ヨリ御說明ガ
アリマシタ通リ本事業ハ行政官廳、卽チ內
務大臣ニ於テ執行スル旨ヲ明ニ致シマシタ
第二條ハ關係公共團體ニ對スル費用負擔ノ
規定デアリマス、現在ノ行政官廳ノ行ヒマ
スル都市計畫事業ノ費用ニ付キマシテハ、
都市計畫第六條ノ規定ニ依リマシテ國ニ於
テ之ヲ負擔スルコトニ相成ツテ居リ、又本
事業ノ性質ヨリ致シマシテモ國ノ負擔タル
ベキモノト存ジマスルガ、一面事業ノ內容
ヨリ見マシテ、地元公共團體トハ密接ナ關
係ヲ有スルモノガアリマスルノト、本事業
ニ協力セシメル趣旨ニ基キマシテ費用ノ一
部ヲ關係公共團體ニ分擔セシメ得ル規定ヲ
設ケタノデアリマス、第二條第二項ハ公共
團體ガ前項ニ依リマシテ分擔金ヲ課セラレ
マシタ場合ニ於テハ、其ノ財源ニ充ツル爲
都市計畫法第六條第一項ニ依ツテ負擔スベ
キ費用トシテ受益者負擔金及ビ都市計畫特
別稅ヲ課シ得ル旨ヲ明ニ致シタノデアリマ
ス
第三條以下ハ大體土地區劃整理ニ關スル
規定デアリマシテ、第三條ニ於キマシテハ
土地區劃整理上最モ重要ナル事項デアル設
計及ビ換地處分竝ニ補償金ノ決定ニ付キマ
シテハ、土地區劃整理委員會ノ意見ヲ聽イ
テ定ムルコトトシ、事業施行ノ適正ヲ圖ラ
ントスルモノデアリマス、而シテ同委員會
ノ組織等ニ付キマシテハ勅令ヲ以テ定ムル
コトニ致シタノデアリマス
第四條ハ土地區劃整理ノ爲、建物、工作
物等ノ移轉ヲ必要トスル場合ノ規定デアリ
マシテ、現在デハ耕地整理法第一一十七條ノ
規定ニ依リマシテ、整理施行者ガ直接之ヲ
執行シ得ルコトニナツテ居リマスガ、建物
ノ相當密集スル地域ニ於キマシテハ、整理
施行者ガ直接執行スルコトハ頗ル至難ノコ
トデアリマス、仍テ物件所有者ニ命ジ所有
者自ラ之ヲ行ハシムル方ガ、一層事業施行
上便宜デアルト共ニ、適正ヲ期シ得ルモノ
ト思ハレマスノデ、換地豫定地ヲ指定シ、
相當ノ期間ヲ定メテ、所有者ニ移轉ヲ命ジ
得ルコトトシ、是ト同時ニ物件占有者ニ對
シ立退ヲ命ジ得ルコトトシタノデアリマス、
而シテ移轉又ハ立退ニ因リテ生ズル通常受
クベキ損失ハ之ヲ補償スルコトトシタノデ
アリマス
第五條ハ土地區劃整理ニ因ル減歩補償ニ
關スル規定デアリマシテ、一般ニ土地區劃
整理ヲ施行致シマスト、道路其ノ他ノ公共
用地ハ從前ニ比シ增加ヲ來シ、爲ニ民有地
ハ相當減少スルノデアリマスガ、整理施行
ノ結果、土地ノ利用ガ增大スル爲ニ、土地
所有者ト致シマシテハ、所有地ノ面積ガ減
少シマシテモ、地價ノ値上ニ依リ結局利得
ニナルコトガ通例デアリマス、然ルニ今囘
施行スル宇治山田ニ於キマシテハ、神宮宮
域道路、廣場等ノ新設擴張ノ爲相當減步
致シマスノデ、事業ノ性質其ノ他ヲ考慮致
シマシテ、減步一割ヲ超ユルトキハ其ノ超
過面積分ヲ補償スルコトトシテ、土地所有
者ノ負擔ヲ輕減スルコトトシタノデアリマ
ス
尙ホ補償金ヲ交付スベキ者、補償金ノ算
出標準等ニ付テハ、勅令ヲ以テ定ムルコト
ト致シタノデアリマス
第六條ハ移轉補償金及ビ減步補償金ヲ交
付スル場合ニ於テ、其ノ土地又ハ建物ニ付
擔保權ノ設定ガアリマストキハ、耕地整理
法第二十五條ノ趣旨ニ則リ、債權者ノ同意
ナキ限リ之ヲ供託スルコトトシテ、擔保權
者ヲ保護スルコトトシタノデアリマス
第七條ハ換地處分ニ因ル〓算金ヲ納付ス
ル者ガ、一方ニ於テ減步補償金ノ交付ヲ受
クル場合ニ於キマシテハ、之ヲ相殺シ得ル
コトトシ、之ニ依ツテ徵收交付ヲ各別ニ行
フノ煩ヲ避クルト共ニ、〓算金ノ徵收ヲ確
保セントスルモノデアリマス、但シ其ノ補
償金ヲ供託セナケレバナラヌ場合ニ於キマ
シテハ、其ノ土地ニ付テノ〓算金トダケ相
殺スルコトヲ認メ、擔保權者ノ利益ヲ侵害
スル虞ヲ避ケタノデアリマス
第八條ハ行政官廳ガ土地區劃整理ヲ施行
スル場合ニ於キマシテ、耕地整理法ヲ其ノ
儘準用シ難キ事項ガアリマスノデ、都市計
畫法第十三條第二項ノ趣旨ニ則リマシテ、
同條ヲ準用致シ、勅令ヲ以テ必要ナル規定
ヲ設ケ得ルコトト致シタノデアリマス
第九條ハ移轉及ビ減步補償金額ニ對スル
不服アル者ヲ救濟スル爲ノ規定デアリマシ
テ、不服アル者ハ通常裁判所ニ出訴シ得ル
コトヲ認メタノデアリマス
第十條ハ行政救濟ノ規定デアリマシテ、
本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ規定シ
タル事項ニ付行政廳ノ爲シタル處分ニ付キ
マシテハ、都市計畫法第二十五條及ビ第二
十六條ノ規定ト同樣、訴願又ハ訴訟ヲ認ム
ルコトニ致シタノデアリマス
次ニ都市計畫法ノ改正法律案ヲ逐條ニ御
說明申上ゲタイト存ジマス、先ヅ第一條ノ改
正デアリマスガ、「防空」ト云フコトヲ加ヘ、
都市計畫ノ基本觀念ニ防空ト云フコトヲ明
確ニシタノデアリマス、是ハ申スマデモナ
ク、近來ノ情勢ヨリ致シマシテ、都市ノ防
空ト云フコトガ極メテ緊要ノコトト考ヘラ
レルニ至ツタ結果デアリマシテ、之ニ依リ
都市防衞ノ完璧ヲ期サウト云フ次第デアリ
そう、現行法ノ上ニ於キマシテモ、必ズシ
モ防空都市計畫ノ實施ガ出來ナイト云フ譯
デハゴザイマセヌ、從來モ防空上必要ト認
メラルル施設ハ、都市計畫トシテ實施シテ
來タノデアリマスガ、第一條中ニ都市計畫
上ノ防空ノ觀念ヲハツキリ致シマシタ次第
デアリマス
次ニ第十一條ノ二デゴザイマスガ、本條
ハ新ニ追加セントスルモノデアリマシテ、
都市計畫トシテ內閣ノ認可ヲ受ケマシタル
公園、綠地、廣場ノ境域内、及ビ都市計畫
トシテ內閣ノ認可ヲ受ケマシタル土地區劃
整理區域內ニ於ケル建築ニ付制限ヲスルト
云フモノデゴザイマス、現行法ニ於キマシ
テハ、計畫街路ニ付キマシテ、市街地建築
物法ニ依ル建築線ノ制限ガ付サレテ居ルノ
デゴザイマシテ、其ノ他ノ施設ニ付キマシ
テハ事業著手前ハ、此ノヤウナ制限ガ無カ
ツタノデゴザイマス、隨ヒマシテ直接事業ヲ
執行致シマスル場合ニ、種々支障ガ生ジタ
事例ガ多カツタノデゴザイマス、殊ニ最近
ニ於キマスル各種ノ情勢ヨリ致シマシテ、
公園、綠地、廣場等ハ保健施設ヨリ尙ホ一
步ヲ進メマシテ、都市ノ防衞トカ、都市發
展ノ統制等ノ方面カラモ深ク考ヘナクテ
ハナラナイコトニナツタ次第デアリマシテ、
成ベク早急ニ事業トシテ實施スルコトガ要
求サレテ參ツタノデアリマス、仍テ其ノ事
業實施ヲ容易ナラシムル爲ニハ、著シク障
碍トナルヤウナ建築ハ之ヲ制限シテ、其ノ
境域ノ保全ヲ計ル必要ガアルト思フノデア
リマス、次ニ都市計畫トシテ決定シタ土地
區劃整理デアリマスガ、是ハ大面積ノ災害
跡地デアルトカ、鐵道、工場等ノ關係カラ、
急激ニ市街化スルコトヲ豫想セラルル土地
デアリマシテ、此ノヤウナ土地ハ放ツテ置
キマスト、所謂過密市街地ヲ形成シ、不衞
生地區トナリ、保安上、衞生上憂慮スベキ
狀態ニ陷ルノデアリマス、隨テ是ハ都市計
畫土地區劃整理トシテ決定シ、整理方針ヲ
確立致シマシテ、一年內ニ整理ヲ施行スル
者ガ無カツタ場合ニハ、內務大臣ハ都市計
畫事業トシテ公共團體ニ施行ヲ命ズルコト
ニナルノデアリ、特別ナ災害復興等ト云フ
ヤウナ場合ニハ、一箇年以內デモ命ジ得
ルノデアリマシテ、此ノヤウニ都市計畫的
ニ見テ特ニ重要デアリ、且ツ短イ期間內ニ
事業化サレルト云フヤウナ事情ヲモ考慮致
シマシテ、事業實施上著シク障碍トナル虞
ノアル建築物ニ付キマシテハ、一定ノ制限
ヲ致シタイト存ズル次第デアリマス
次ニ第十五條ノ二デゴザイマス、本條ニ
於キマシテハ土地區劃整理ヲ施行スル場合、
地區へ墳墓地ヲ其ノ所有者ノ同意ナクモ編
入シ得ルト云フコトヲ追加致シタノデアリ
やく、現行法ニ於キマシテハ、土地區劃整
理ヲ施行スル場合ニ於テハ、耕地整理法ヲ
準用致シテ居リマスル關係上、同法ノ第四
十三條ニ依リ、土地所有者又ハ關係人ノ同
意ガナクテハ、地區ニ編入スルコトガ出來
ナイト云フ規定ニナツテ居リマスガ、現在
都市ノ郊外等ニ付テ見マスルニ、點々トシ
テ墓地ガ散在シテ居リマシテ、土地區劃整
理ヲ施行スル場合ニハ、ドウシテモ地區ニ
編入シナケレバ、折角ノ道モ曲ゲナクテハ
ナラヌコトトナリ、都市ノ發展上面白クナ
イノデアリマス、隨テ帝都復興ニ關スル特
別都市計畫法ノ先例ニ傚ヒ、之ヲ建物デア
ル宅地ト同樣、用意ガナクトモ編入シ得ル
コトト致シマシテ、土地區劃整理事業ノ圓
滑適正ナル實施ヲ期セントスル次第デアリ
マス
次ニ第十五條ノ三デゴザイマス、本條モ
新ニ追加致シマシタノデゴザイマス、其ノ
要旨ハ土地區劃整理ノ施行ニ因リ道路、廣
場、運河、公園等公共ノ用ニ供スベキモノ
トナリマシタルモノヲ、國又ハ公共團體ノ
新有地ニ編入スルコトニ致シタイト云フノ
デゴザイマス、現行規定ニ於キマシテハ、
耕地整理法ヲ準用致シテ居リマスル關係上、
同法ノ第十一條ニ依リマシテ、從前カラ其
ノ地區內ニアリマシタ道路トカ、水路トカ
ニ代ルモノハ國有地ニ編入スルト云フ規定
ニナツテ居リマスガ、土地區劃整理ノ如キ
種々ト複雜ナ施設內容ヲ持ツテ居リマスル
都市構築事業ニ於キマシテハ耕地整理ト
異リマシテ非常ニ不便ヲ感ジテ居ツタノデ
アリマス、卽チ土地區劃整理事業ニ依リ新
ニ作リマシタル公園トカ、運河トカ云フヤ
ウナ從來其處ニナカツタ施設ハ、整理施行
者ニ於テ永久ニ維持管理ヲヤツテ行クカ、
或ハ又寄附ト云フヤウナ手續ヲ執ルカ致サ
ナクテハナラナイノデアリマシテ、是ガ爲
種々ト煩雜ナ手續ガ掛リマスノト、種々面
白クナイ結果ヲ招來スルコトモアリマスル
ノデ、此ノ點ヲ改メル爲、今囘特別規定ヲ
設ケマシテ、整理施行ニ因リ新ニ公共ノ用
ニ供スベキモノトナリマシタル土地ハ、其
ノ施設ノ本來ノ性質デアルトカ、或ハ又ハ
事業費ノ負擔關係トカ云フヤウナ點ヲ考慮
致シマシテ、國又ハ公共團體ノ所有地ニ編
入スルコトトシ、公共施設ノ確保ヲ致サン
トスル次第デゴザイマス
次ニ第十六條ノ改正デゴザイマスガ、都
市計畫事業トシテ執行スルニ必要ナ土地ハ
收用スルコトガ出來ルト云フ其ノ事業ノ
中ニ綠地ヲ追加致シタノデアリマス、最近
ニ於キマスル大都市發展ノ趨勢ハ、特ニ顯
著ナルモノガアリマシテ、是ガ爲種々ノ都
市的弊害ヲ釀成スルノ虞ガ濃厚ト相成ツテ
參ツタノデアリマシテ、保健衞生上竝ニ防
空上ノ見地等ヨリ致シマシテ、是ガ對策ヲ
考慮スル必要ガアルノデアリマス、此ノ趣
旨ニ於キマシテ新ニ綠地ニ關スル規定ヲ設
ケマシテ、都市民ノ體位向上ニ資スルト共
ニ、都市ノ防衞又ハ過大都市ノ抑制ヲ圖リ、
以テ其ノ合理的發展ヲ促サントスル次第デ
アリマス、而シテ此ノ綠地ハ成ルベク速ニ
都市計畫事業トシテ執行スルノ必要ガアリ
マスノデ、道路、公園、廣場等ト同樣、其
ノ用地ヲ收用又ハ使用シ得ルコトニ致シタ
次第デアリマス
以上大體御說明ヲ申上ゲマシタガ、尙ホ
詳シイコトハ御質問ニ應ジテ申上ゲタイト
存ジマス
尙ホ神宮關係施設事業ノ內容ニ付キマシ
テ他ノ政府委員ヨリ御說明申上ゲタイト存
ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511826X00119400320&spkNum=14
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015・山内豐景
○山內政府委員 ソレデハ私カラ神宮施設
ノ〓要ニ付キマシテ圖面ニ付テ御說明申上
ゲマス、神宮關係施設ニ付キマシテハ、昭
和十一年九月ニ内務大臣ヲ會長ト致シマシ
テ神宮關係施設調査會ガ設ケラレマシテ、
其ノ調査會ニ於カレマシテ愼重ニ御調査ニ
ナリマシタ結果、十三年ノ七月ニ御答申ヲ
得タノデアリマス、本議會ニ協賛ヲ御願致
シマシタ豫算ハ、其ノ答申ヲ其ノ儘採用致
シマシテ、計畫ヲ致シタ事業ニ付キマシテ
テ提案ニナツテ居ル次第デアリマス、今其
ノ計畫ニ基キマシテ、此ノ圖面ニ依リマシ
テ事業ノ〓要ヲ申上ゲルコトニ致シマス、
〓括シテ申上ゲマスト、神宮關係施設ハ、
第一ハ內宮竝ニ外宮ノ宮域ノ擴張整備ニ關
スル事項デアリマス、其ノ次ハ神宮關係ノ
建物其ノ他ノ施設ノ整備ニ關スル事項ガ一
ツデアリマス、次ニハ河川ノ工事デアリマ
スルガ、是ハ主トシテ五十鈴川ノ水源涵養
竝ニ淨化ニ關スルヤウナ河川ノ工事デアリ
マス、ソレカラ次ニハ鐵道、軌道ノ整理、
施設ト云フコトニナツテ居リマス、其ノ次
ニ新參道ノ新設デアリマスルトカ、御幸道
路ノ改修デアリマストカ、道路ニ關スル仕事
ニナツテ居リマス、其ノ他上水道トカ、下水
工事デアリマストカ云フヤウナモノガアル
ノデアリマシテ、〓要サウ云フ事項ニ分レ
ルノデアリマス、御手許ニ差上ゲテ居リマ
スル、神宮關係施設整備事業ト云フ印刷物
ガゴザイマス、先ヅ御覽ヲ願ヒマスル便宜
上、此ノ印刷物ノ順序ニ從ツテ申上ゲテ見
タイト思ヒマス
第一ニ內宮宮域ニ關スル施設ト致シマシ
テ、宇治橋外宮域ノ擴張整備ト云フ事項ガ
ゴザイマス、宇治橋ノ外ノ宮域ノ擴張デア
リマス、此ノ宮域ノ擴張事業ハ、樺色ニ塗
ツテアリマス地區ト、靑色ノ方ト二ツニ分
レテ居リマスガ、此ノ最初ノ樺色ノ部分ハ、
此處ニ宇治ノ町ガアリマスガ、此ノ民有地
約七千四百坪ヲ買收致シマシテ、宇治橋外
ノ神苑地ヲ擴張シヨウト云フノデアリマス、
ソレカラ靑ク塗ツテアリマスノハ宇治橋
ノ前面ノ山林地帶デアリマスガ、是ガ民有
林ニナツテ居リマスカラ、此ノ民有林約二
万六千百坪ヲ買收致シマシテ、此處ニ林苑
工事ヲ施シマシテ、內宮前面ノ神嚴ヲ維持
シタイト云フ仕事ニナツテ居リマス、次ヘ
ハ五十鈴川右岸宮域ノ擴張整備ト云フ見出
シニナツテ居リマスガ、五十鈴川右岸ト申
シマスト、此ノ邊一帶デアリマスガ、是モ
二ツニ分レルノデアリマシテ、樺色ノ部分
ト靑イ部分デアリマス、樺色ノ部分ハ館町
ト申シマスガ、此ノ平坦ノ土地一帶約六万
二千九百坪ヲ買收致シマシテ、內宮ノ宮域
ヲ擴張致シマシテ、此ノ地點ニ勅使館デア
ルトカ、神宮司廳デアリマスルトカ、或へ
祭主官舍デアリマスルトカ云フ、神宮ニ關
係致シマスル建物ヲ集中シマシテ、改築又
ハ新築ヲ致スト云フコトニナツテ居リマス、
サウシテソレニ要スル以外ノ土地ハ、神宮
宮域ト致シマシテ神苑地ニ致スコトニナツ
テ居リマス、ソレカラ此ノ山一帶ハ島路山
ノ地續キニナツテ居リマスル山デアリマス、
御幸道路カラ參拜致シマス時ニ、一番眞先
ニ眼ニ著ク山デアリマシテ、ソレガ現在神
域ニナツテ居リマセヌノデ、神宮宮域ヲ擴
張致シマシテ一層尊嚴ヲ維持シタイト云フ
計畫ノ下ニ、約二十万一千四百坪ニ亙リマ
シテ買收スル計畫ニナツテ居リマス
其ノ次ガ五十鈴川ノ整備デアリマスガ、
五十鈴川ノ水ヲ常ニ豐富ニ、而モ〓淨ニ保
チマスルコトハ、內宮ノ尊嚴ヲ維持スル爲
ニ、最モ重要ナコトデアリマス、然ルニ五
十鈴川ノ水源地ニナリマス島路山、神路山
ノ地域ニ亙リマシテ、多數ノ民有地ガ散在
ヲ致シテ居リマス、又宮域林ノ中ニモ所々
ニ民間ニ貸下ゲテアル土地ガアリマス、是
等ノ神路山、島路山ニ散在シテ居リマス民
有地ハ之ヲ買收スルコトトシ、貸下ゲテア
ル土地ハ補償ヲ致シマシテ之ヲ囘收シ、サウ
シテ此ノ水源地ガ汚サレルコトヲ豫防シタイ
ト云フ計畫ニナツテ居リマス、ソレガ第一
段ノ宮域内ノ民有地買收竝ニ貸付地囘收ト
云フ項目ニ擧ゲラレテ居ルコトデアリマス、
其ノ次ハ水源地砂防工事トシテ擧ゲラレテ
居リマスガ、是ガ神路川ノ流域ニナツテ居
リマスガ、神路川ノ方ハ地質ノ關係上荒廢
ガ少イノデアリマス、島路川、殊ニ其ノ支
流彥谷ノ方ハ非常ニ荒レテ居リマシテ、是
非此ノ砂防ヲヤル必要ガアルノデゴザイマ
ス、隨テ此ノ上流一帶ニ亙リマシテ堰堤護
岸、谷止ノ工事ヲ施シマシテ土砂ノ流出ヲ
防止スル工事ヲヤルコトニナツテ居リマス、
其ノ次ハ宇治橋附近ノ改修工事デアリマス
ガ、島路川ト神路川トノ合流地點カラ下流
約三「キロ」ニ亙リマシテ、五十鈴川一帶ヲ
改修スル工事ニナツテ居リマス、御手洗ノ
前面一帶ニ土砂ガ堆積致シマシテ、水ガ僅
ニ御手洗ノ附近ヲ迂囘シテ流レテ居ル程度
ノモノデアリマスガ、アレガ更ニ宇治橋カ
ラ下流ニナリマスト、段々ノ下ニ濳リマシ
テ、特ニ夏季渴水等ニ於キマシテハ、全ク
地下ニ潜ツテシマヒマシテ、サウシテ下流
ニ至ツテ再ビ湧キ出スト云フ、狀況デアリマ
シテ、誠ニ五十鈴川トシテ神代ナガラノ感
ジヲ保持スルノニ畏多イコトト思フノデア
0
リマス、隨テ此ノ川全體ニ亙リマシテ、兩
岸ニ護岸工事ヲ施シ、又河床ニハサウ云フ
水ガ河床ニ浸透シテ行クコトヲ豫防スル工
事ヲ致シマシテ、伏流水ヲ河表へ浮カセル
工事ヲ致シマシテ、サウシテ五十鈴川ノ水
ガ常ニ涸レナイデ流レテ居ルヤウナ工事ヲ
スルト云フコトニ致シマシテ、五十鈴川ノ
淨化ヲシテ行キタイト云フ工事ヲスルコト
ニナツテ居リマス、又同時ニ五十鈴川ハ御
覽ノ通リ中途ニ於キマシテ、此ノ部分デ非
常ニ迂囘シテ居リマス、此ノ彎曲シテ居ル
部分ヲ或程度直シマシテ、サウシテ河道ノ
整理ヲスルコトニナツテ居リマス、五十鈴
川ノ宇治橋附近ノ改修ニ當リマシテハ、大
體ソレ等ノ工事ヲスルコトニナツテ居リマ
ス、コチラノ圖面デスト多少能ク分ルト思
ヒマスガ、此ノ川ガ此處デ斯ウ廻ツテ行ツ
テ居ルノデアリマスガ、ソレガ此ノ圖面ノ
ヤウニ、大體此ノ程度ニ直スコトニナツテ
居リマス、ソレト共ニ、夏季等ハ時々洪水
ノ虞ガアリマスノデ、川幅モ多少擴張スル
コトニナツテ居リマス、斯クノ如ク五十鈴
川ノ上流ノ方ヲ整備致シマスル關係上、隨
テ其ノ工事ニ引續キマシテ下流ノ方モ改修
スル必要ガアリマスルノデ、下流約四千三
百米位ニ亙リマシテ河幅ノ擴張竝ニ屈曲部
ノ緩和ヲ圖ル工事ヲスルコトニナツテ居リ
マスガ、大體此ノ程度マデ、今ノ省線ノ鐵
橋ノアリマス少シ上ノ所マデ下流ノ方ヲ改
修スルコトニナツテ居リマス
次ハ外宮宮域ニ關スル施設デアリマスガ、
外宮宮域ノ前面ハ御承知ノ通リ、非常ニ民
家ガ近接シテ居リマシテ、洵ニ畏多イ次第
デアリマスガ、之ヲ外宮ノ前面約二万一千
坪位ニ亙リマシテ民家ヲ買收致シマシテ、
宮域ヲ擴張スルコトニナツテ居リマス丁
度外宮樣ノ御宮ガア此處ニナツテ居リマス
ガ、民家ガ此ノ邊マデ來テ居リマスカラ、
外宮前面ノ此ノ樺色ニ塗ツテアル部分ノ民
家ヲ買收致シマシテ擴張スルコトニナツテ
居リマス、ソレト共ニ此ノ宮域ト民家トノ
境ヲハツキリ致シマス爲ニ、此處ニ幅二十
米ノ道路ヲ付ケルコトニナツテ居リマス
其ノ次ハ外宮ノ東側デアリマスガ、最近
此ノ地帶ハ一體ニ埋立ヲ施行致シマシテ、
盛ニ宅地ニ利用サレル傾向ガ强クナツテ參
リマシタノデ、自然其ノ結果、俗化ノ虞ガ
アリマス爲、此ノ地帶一帶ヲ買收致シマシ
テ、此ノ神域ヲ擴張スルト云フコトニナツ
テ居リマス、ソレカラ此處ニ流レテ居リマ
ス川ハ勢田川ト申シマスガ、是モ時々氾濫
ヲスル虞ガアリマスノデ、河道ヲ整理致シ
マシテ、河水ノ疏通ヲ良クスル工事ヲ併セ
テ施行スルコトニナツテ居リマス、其ノ次
ニ建築物ノ整備、其ノ他ニ關スル事項トシ
テ擧ゲテアリマスルコトハ、先程モ申上ゲ
マシタガ、此ノ機會ニ於キマシテ勅使館ヲ
新築シ、祭主官舍、竝ニ神宮司廳ハ、現在
宇治ノ町ノ中ニ在ルノデアリマスガ、之ヲ
今度擴張致シマスル館町ノ平坦地帶ノ宮域
ノ中ニ移轉改築ヲスルコトニナツテ居リマ
ス、又神宮文庫ヲ整備致シマシテ、其ノ內
容ノ充實ヲ圖ルコトニナツテ居リマス、神
宮徵古館、農業館モ亦內容ノ充實ヲ圖ルト
云フコトニナツテ居リマス、神宮皇學館ハ
今囘大學ニ昇格致シマシテ、一層其ノ機能
ヲ發揮スルヤウニ努メルコトニナツテ居リ
マスガ、其ノ結果將來ハ內務省所管カラ文
部省所管ニ移ルト云フコトニナルノデアリ
マス、其ノ外ニ修養施設ト致シマシテ、
定ノ修養施設ニ對スル助成ヲスルコトニナ
ツテ居ルノデアリマスガ、神宮文庫デアリ
マストカ、神宮皇學館ノ擴充デアリマスト
カ、其ノ外修養施設ニ對スル助成デアリマ
ストカト云フヤウナモノヲ合セマシテ、
般ニ精神施設トシテ神宮ノ他ノ施設ト相俟
ツテ、益〓皇國精神ノ〓揚ニ資スル計畫ニナ
ツテ居ル次第デアリマス
次ニ鐵道軌道ノ整理ニ關スル事項デアリ
マスガ、現在省線ガ非常ニ外宮ノ近クニ入
ツテ居リマスノデ、其ノ騷音ト煤煙ヲ防止
致シマシテ、外宮宮域ノ靜肅ヲ圖リ、叉
面ニ於キマシテハ參拜者ノ利便ヲ考ヘマシ
テ、省線ハ外宮ノ前カラ約五百米ノ所ニ省
線ノ驛ガアルノデアリマスガ、更ニ之ヲ約
五百米後退サセマシテ、此ノ後退シタ所ニ
新シイ驛ヲ作リマシテ、驛前ノ廣場竝ニ參
道ノ整理ニ資スルコトニナツテ居リマス、
參宮急行電鐵ハ現在此ノ山田驛ノ裏ヲ廻リ
マシテ、此ノ邊マデ入ツテ居リマスガ、之
ヲ今度新設致シマスル省線ノ新驛ノ前ニ出
來マスル廣場ノ西ニ接シマシテ參急電鐵終
端驛ヲ作リマシテ、サウシテ省線トノ連絡
竝ニ表參道トノ連絡ヲ便利ニ致シマシテ、
參拜者ノ便宜ニ資シタイト云フ計畫ニナツ
テ居リマス、其ノ次ハ市內電車デアリマス
ルガ、市內電車ハ御承知ノ通リ非常ニ外宮
前近クヲ通過シテ居リマス、現在其處カラ
デハ御覽ニナリニクイカモ知レマセヌガ、
是マデ市內電車ガ入ツテ居リマス、ソレカ
ラ斯ウ〓ツテ來テ居リマシテ、是ハ餘リニ
外宮近クニ接シテ居リマス爲、其ノ音ヲ防
止スル爲ニ、別ニ新設ノ道路ヲ作リマシテ、
是ガソレニナツテ居リマスガ、ソレヲ造リ
マシテ、此ノ邊マデ後退サセルコトニナツ
テ居リマス、宇治ノ方ニ於キマシテモ現在
此處カラ此處マデ斯ウ入リマシテ、宇治橋
ノ前近クマデ電車ガ入ツテ居リマスガ、之
ヲ今度新設スル此ノ道路ニ入レヨウト云フ
計畫ニナツテ居リマス、其ノ外ニ參宮伊勢
線ト稱スルモノガアリマス、是ハ外宮ノ直
グ西北側ニ接シマシテ御宮近クニ入ツテ居
リマスガ、餘リニ外宮ニ近イノデ之ヲ五百
米位後退ヲサスコトニナツテ居リマス、此
ノ靑イ色ノ所マデ後退サセマシテ、此處ニ
新シイ驛ヲ造ラセルコトニナツテ居リマス、
次ハ道路ニ關スル施設デアリマスガ、山田驛
ハ先程申上ゲマスルヤウニ現在ノ所カラ約五
百米後退サセマシテ、サウシテ驛前ニ此ノ圖面
ニアリマスルヤウニ、驛前ノ廣場ヲ造ルコト
ニナツテ居リマスガ、其ノ驛前廣場カラ外
宮前ノ廣場ニ至リマスル間、詰リ現在ノ驛
前道路ノ西側ニ竝行致シマシテ、幅三十六
米ノ新參道ヲ造リマシテ、一面ニ於キマシテハ
神宮ノ尊嚴ヲ增シ、一面ニ於キマシテハ交
通ノ整理ニ資スルト云フ計畫ニナツテ居ル
次第デアリマス、尙ホ此ノ道路ノ眞中ニ中
間廣場ヲ設ケマシテ、一層其ノ美觀ヲ添ヘ、
且ツ參拜者ノ便宜ニ資スルト云フコトニナ
ツテ居リマス、更ニ又此ノ外宮前ノ宮域ニ
接シマシテ一ツノ廣場ヲ設ケルコトニナツ
テ居リマスノデ、此ノ道路ハ驛前廣場ト中
間廣場ト、外宮前ノ廣場ト三ツヲ合セ結ブ
一ツノ道路ニナルノデアリマス、其ノ次ニ
ハ山田町地内ニ於キマスル「軌道移設道路」
デアリマスガ、只今申上ゲマシタ通リ、現
在通ツテ居リマス市內電車ヲ外宮前カラ相
當後退サセマス爲ニ、別ニ軌道移設道路ヲ
新設致シマシテ、其ノ道路ノ中ニ電車ヲ入レ
ルコトニナツテ居リマス、卽チ山田驛ノ驛前
ノ廣場ノ東側カラ中間廣場ノ東端ヲ經マシ
テ、サウシテ外宮前廣場ノ近クニ參リマシ
テ左折シテ、此處ニ錦水橋ト云フ橋ガアリ
マスガ、此ノ錦水橋ノ所マデ行キマシテ、
從來ノ專用軌道ニ接續スル、隨テ其ノ電車
ハ外宮カラ遠ザカリマスノトモウ一ツハ
國道カラ全然電車ガナクナル譯デアリマス、
詰リ御幸道路カラ電車ヲ取除キマシテ、御
幸道路ノ整備ニモ資スルト云フコトニナツ
テ居リマス、此ノ道路ハ大體驛前カラ中間
廣場ニ至ル間ハ幅二十米デアリマス、ソレ
カラ其ノ先ハ十八米デアリマス、宇治町地
內ニモ同樣ノ目的デ幅員二十米ノ道路ヲ設
クルコトニナツテ居リマス、其ノ次ハ國道
一號ノ改修デアリマスガ、此ノ御幸道路ト
稱シマスル外宮前カラ內宮ニ至リマスル道
路デアリマスガ、是ハ只今申上ゲマスヤウ
ニ、國道カラ全部電車ヲ取除クト云フコト
ニナリマシタ爲ニ、電車ヲ取除イタ後ノ整
備ヲスル必要ガアリマスカラ、其ノ整備ヲ
致シマス、ソレカラ現在ノ御幸道路ハ步道
ガ狹イノデアリマスカラ、其ノ步道ヲ整備
擴張スルコトニナツテ居リマス、更ニ宇
治町ヘ參リマシテ、宇治町ノ平坦地へ入リ
マシテ、國道ガ斯ウ通ツテ居リマスガ、此
處ノ坂ヲ下ツタ此ノ平坦地ノ所カラ浦田町
ノ交叉點ニ至ルマデノ間ノ兩側十「メート
ル」ニ綠樹地帶ヲ設ケマシテ、景觀ヲ添ヘル
コトニナツテ居リマス、浦田町交叉點カラ
宇治橋前ノ神苑地ニ至ル間ハ現在ノ道路ヲ
外宮前參道ト同ジヤウニ幅三十六米ノ幅員
ニ擴張致シマシテ、內宮參道トシテ整備ス
ルコトニナツテ居リマス、ソレカラ御幸道
路ノ中間ニ於キマシテ、丁度倉田山ノ下、
徵古館ノ下邊ニナリマスガ、其ノ箇所ニ廣
場ヲ設ケマシテ、學生生徒ノ休憩、或ハ晝
食等ノ便宜ニ資スル爲ニ、中間廣場ヲ設ケ
ルト云フ施設ニナツテ居リマス、次ニ圖面
デ此處ニ靑ク塗ツテアリマスガ、現在國道
一號線ハズツト此ノ津、松阪ノ方カラ非常
ニ複雜シタ經路ヲ取ツテ此處へ入リマシテ、
外宮ノ前ヲ通ツテ御幸道路ニ接續スルコト
ニナツテ居リマスガ、非常ニ狹クモアリマ
スシ、曲ツテモ居リ、線形モ非常ニ惡イノ
デアリマス、此ノ機會ニ於キマシテ此處カ
ラ先ヲ今度ノ事業ト致シマシテ國道ヲ新設、
又ハ改良スルコトニナツテ居リマス、卽チ
小俣町カラ宮川ヲ渡リマシテ、或ル程度一
部省線ノ廢線跡地ヲ利用致シマシテ、先程
ノ外宮ノ新參道ノ中間廣場ニ連續スルヤウ
ニ國道ヲ新設スルコトニナツテ居リマス、
其ノ次ニ兩宮連絡道路ノ新設デアリマスガ、
現在外宮、內宮兩宮間ハ市內電車ガアリマ
ス、其ノ外ニ御幸道路ガアリマス、其ノ外
昔カラアリマス所ノ古市街道ガアリマス
ガ、是等ノ道路ニ依リ電車、又ハ自動車ニ
依ツテ兩宮間ノ交通ノ連絡ヲ圖ツテ居ル次
第デアリマスルガ、參拜者ガ年々增加スル
一方デアリマスルシ、殊ニ年末年始ノ參拜
者ノ非常ニ多イ時ニ於キマシテハ、到底此
ノ地方ノ交通機關デハ運ビ切レナイノデア
リマシテ、多數ノ參拜者ガ徒步デ兩宮間ヲ
往復參拜シテ居ル實情ニアルノデアリマ
ス、又學生、團體參拜者等ノコトモ考ヘマ
シテ、新シク內宮外宮間ヲ結ブ新道路ヲ設
ケタイト云フコトニナリマシテ、殊ニ丁度
其ノ中間ニ非常ニ徑捷ナ、而モ道路ヲ設ケ
ルニ最モ相應ハシイ所ガアリマスノデ、
其處ニ新シイ兩宮間ヲ結ブ所ノ道路ヲ
造ルト云フ計畫ニナツテ居リマス、現
在此處ニ僅ニ細イ道ガアリマス、地圖デ御
覽ニナリマス通リ、外宮、內宮ヲ結ブ道
ト致シマシテハ最モ徑捷ナ一番近イ所ニ當
リ、此ノ兩側ハ最モ風致ニ富ンダ地デアリ
マス、此ノ間ヲ通リマシテ幅一一十五米ノ道
路ヲ設ケマシテ、兩宮間ノ徒步連絡參拜道
路ニ資シタイ、斯ウ云フ計畫ニナツテ居ル
次第デアリマス、ソレト同時ニ此ノ道路ノ
兩側ニ特ニ綠地施設ヲ致シマシテ、兩側ノ
風致ヲ增進シ、一層景觀ヲ添ヘル計畫ニナ
ツテ居ル次第デアリマス、其ノ次ニハ丁度
御手洗ノ對岸ニ五ケ所街道ト云フ道路ガア
リマシテ、其ノ道路ガ餘リニ御手洗ニ接近
シテ居リマシテ、內宮ノ靜肅ヲ保チマスル
上ニ遺憾ト存ジマスノデ、此ノ五ケ所街道
ヲ御手洗カラ見エナイヤウニ適當ナ地ニ改
修スル、一部分ハ「トンネル」ニ致シマシテ
改修スルト云フコトニナツテ居リマス、ソ
レカラ内宮ノ御神殿ノ後方ニ當リマシテ、宇
治山田波切線ト云フ縣道ガ通ツテ居リマス
ガ、其ノ縣道ノ位置ガ少シ高クナツテ居リ
マシテ、其ノ道路ヲ流レマス汚水ガトモス
ルト神域ヘ流込ム虞ガアリマスノデ、其ノ
道路ノ背面ヲ切下ゲマシテ、サウシテ道路
ヲ流レマス汚水ガ神域ノ方ヘ流込マナイヤ
ウナ工事ヲスルコトニナツテ居リマス、其
ノ他五十鈴川沿ニ道路ヲ付ケルコトニナツ
テ居リマス、是ハ五十鈴川ニ景觀ヲ添ヘル
爲ニ五十鈴川ニ背面ヲ向ケル建物ノナイヤ
ウニ、此處ニ道路ヲ付ケルコトニナツテ居
リマス、ソレカラ此處ニ樺色ノ線ガアリマ
スガ、此處ハ只今申上ゲマシタヤウニ、館
町ニ神宮司廳デアリマストカ、祭主官舍デ
アリマストカ、神宮ニ關係ノアル樞要ナ建
物ガ集リマス爲ニ、此處トノ連絡ヲ付ケル
爲ニ、此處ニ道路ヲ付ケルコトニナツテ居
リマス、ソレカラ外宮ノ前ニ月夜見宮ト云
フノガアリマスガ、月夜見宮ノ前ハ現在非
常ニ狹クナツテ居リマシテ、自動車ノ廻轉
モ困難デアリマスノデ、月夜見宮ノ前ニ廣
場ヲ設ケマシテ差當リ自動車ノ〓轉位出來
ル程度ニ致スコトニナツテ居リマス、ソレ
カラ此處ニ樺色ニ塗ツタ線ガアリマスガ、
是ハ海軍ノ軍人ナドハ神社港ヘ入リマシテ、
コチラノ道路ヲ通リマシテ參拜スルコトニ
ナツテ居リマスガ、此處ノ間ハ立派ナ道路
ガアルノデアリマスガ、其ノ先連絡道路ガ
アリマセヌノデ、神社港ヲ經テ參拜スル參
拜者ニ對シテ便宜ノ爲ニ、特ニ神社港ノ方
ト外宮トノ間ノ連絡道路ヲ設ケルコトニナ
ツテ居リマス、道路ニ關シマスルノハ大體
以上ノ通リデアリマス
次ハ上下水道ニ關スル施設デアリマスガ、
外宮ハ御承知ノ通リ非常ニ民家ニ接近シテ
居リマシテ、今度ノ宮域擴張ヲ致シマシテ
モ尙ホ非常ニ外宮ノ前面ハ民家ガ接近シテ居
ルノデアリマスカラ、ドウシテモ火防施設
ト云フカ、消防施設ト云フコトヲ考ヘル必
要ガアリマスノデ、宮川カラ水源ヲ取リマ
シテ、外宮神域ヲ防護スル所ノ防火水道ヲ
設ケルコトニナツテ居リマス、此ノ圖面デ
此處ノ靑イ線、宮川ニ水源ヲ取リマシテ、
サウシテズツト外宮ノ周圍ニ消火栓ヲ置キマ
シテ外宮ノ火災豫防ニ資スル施設ヲヤルコ
トニナツテ居リマス、ソレカラ此處ニハ伊
勢離宮ノ豫定地ガアリマス、現在伊勢離宮
ハ出來テ居リマセヌガ、宇治山田ニ水道ガ
アリマセヌノデ、水ヲ供給スル方便ガナイ
ノデアリマス、ソコデ離宮御造營ノ場合ヲ
考ヘマシテ、此ノ山カラ水ヲ取リマシテ、
此ノ離宮御豫定地ニナツテ居リマス所ヘ水
道ヲ造ルト云フ豫定ニナツテ居リマス
現在宇治町ニ於キマスル汚水ハ畏多イコト
デアリマスルガ、五十鈴川へ大體其ノ儘捨
テテ居ルノデアリマスガ、五十鈴川ノ下流
ニ當リマシテ、此ノ邊ニ御神田ガアルノデ
アリマス、此ノ御神田ノ上流へ汚水ガ流込
ムト云フコトハ甚ダ畏多イコトデアリマス
ルノデ、ソレヲ避ケル爲宇治町ニ下水ヲ
設ケマシテ、サウシテ大體此ノ御神田ノ
下流ニ至ツテ五十鈴川ニ放流スルト云フ
豫定ノ下ニ、此ノ下水ヲ此ノ線ニ沿ヒマシ
テ施設スルコトニナツテ居リマス、モヨハ
ツ外宮前面ニ下水ガアリマスガ、此處ヲ擴
張致シマシテ道路ヲ付ケ替ヘル關係カラ、
此ノ下水ノ幹線ヲ移設スル必要ガアリマス
ノデ、是モ下水ノ幹線ヲコチラヘ移轉スル
コトニナツテ居リマス
以上デ大體ノ事業ニ付テ申上ゲマシタノ
デアリマスガ、此ノ仕事ハ只今申上ゲマス
ルヤウニ、神宮宮域ノ擴張デアリマスルト
カ、或ハ新シイ參道ヲ造リマストカ、或ハ
又相當方々ニ廣場ヲ造リマスルトカ云フヤ
ウナ工合ニ致シマシテ、相當多クノ公共用
地ヲ新設致シ、又擴張致シマスル關係トカ、
又外宮前ノ如ク民家ガ多數櫛比シテ居リマ
スル土地ヲ買收シテ擴張スルト云フ關係カ
ラシマシテ、多數ノ民家ノ移轉立退キヲサ
セナクテハナラヌト云フ非常ニ困難ナル仕
事デアルノデアリマス、隨テ此ノ困難ナ仕
事ヲ圓滑ニ遂行致マス爲ニ、單ナル買收、
普通ノ事業執行ノ方法デハ到底圓滑ニ行カ
ヌト思ハレマスルノデ、宇治町竝ニ山田町
ノ兩區域ニ亙リマシテ、土地區割整理ヲ施
行致シマシテ、サウシテ此ノ事業ノ圓滑適
正ヲ期シテ行キタイト思ツテ居ル次第デア
リマス
尙本事業ハ第一期、第二期ニ分レテ居リ
マシテ、只今申上ゲマシタ事業ハ第一期、
第二期ノ全部ヲ申上ゲタノデアリマスルガ、
此ノ圖面ノ中ノ樺色ニ塗ツタ部分ヲ第一期
事業トシテ執行スルコトニナツテ居リマス、
靑色ノ分ヲ第二期事業トシテ執行スルコト
ニナツテ居リマシテ、隨テ內宮ノ宮域擴張
ニ致シマシテモ、島路山ノ山林ヲ買フノハ
第二期ニナツテ居リマス、宇治橋前面ノ廣
場ヲ擴張スルノハ第一期デアリマスガ、同
前面ノ民有山林ヲ買フノハ第二期ニナツテ
居リマス、ソレカラ五十鈴川ノ改修ト致シ
マシテハ、上流ハ第一期デアリマス、宇治
橋カラ下流三粁ノ改修モ亦第一期デアリマ
スガ、其ノ下流ノ改修工事ハ第二期ニ入ツ
テ居リマス、ソレカラ外宮、內宮、連絡道
路ハ遺憾ナガラ第二期ニ入ツテ居リマス、
ソレカラ國道ノ改修モ一部第二期ニ入ツテ
居リマス、其ノ他樺色ハ第一期、靑色ハ第
二期ト云フ風ニ御諒解ヲ御願ヒ致シマス、
尙ホ只今申上ゲマシタ中デ、鐵道軌道ノ整
備施設ヲヤルト云フコトヲ申上ゲタノデア
リマスガ、鐵道ノ方ハ計畫ト致シマシテハ
サウ云フコトニナツテ居リマスガ、事業執
行ト致シマシテハ省線ノ方ハ鐵道省デ直接
ニヤツテ戴クコトニナツテ居リマス、大體
以上デ仕事ノ內容ヲ御話申上ゲタ次第デア
リマス、尙ホ御分リニクイ點ガアリマシタ
ラ御質問ニ應ジマシテ御答致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511826X00119400320&spkNum=15
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016・小田榮
○小田委員 議事進行ニ關シテ一言申上ゲ
マス、本委員會ニ御提案ノ案件ハ、現下皇國
政治翼贊ノ下ニ於テ、最モ重要ナルモノト
思料致シマス、仍テ委員長ハ委員ヨリ出席
ヲ要求サレテ居ル大臣ノ出席方ニ關シテハ
十分御善處アツテ、其ノ審議ヲ全カラシメ
ラレルヤウ御願致シテ置キマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511826X00119400320&spkNum=16
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017・出井兵吉
○出井委員長 只今ノ小田君ノ御意見ハ了
承致シマシタ、委員長ニ於テ善處致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511826X00119400320&spkNum=17
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018・羽田武嗣郎
○羽田委員 本日ハ此ノ程度デ打切リマシ
テ、散會セラレンコトヲ希望致シマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511826X00119400320&spkNum=18
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019・出井兵吉
○出井委員長 本日ハ是ニテ散會致シマス、
次ノ會議ハ公報ヲ以テ御知ラセ致シマス
午後零時三分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007511826X00119400320&spkNum=19
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