1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十五年二月九日（金曜日）
午後一時四分開議
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議事日程 第九號
昭和十五年二月九日
午後一時開議
第一 所得税法改正法律案（政府提出） 第一讀會（前會の續）
第二 法人税法案（政府提出） 第一讀會（前會の續）
第三 特別法人税法案（政府提出） 第一讀會（前會の續）
第四 配當利子特別税法案（政府提出） 第一讀會（前會の續）
第五 外貨債特別税法中改正法律案（政府提出） 第一讀會（前會の續）
第六 相續税法中改正法律案（政府提出） 第一讀會（前會の續）
第七 建築税法案（政府提出） 第一讀會（前會の續）
第八 鑛區税法案（政府提出） 第一讀會（前會の續）
第九 臨時利得税法中改正法律案（政府提出） 第一讀會（前會の續）
第十 營業税法案（政府提出） 第一讀會（前會の續）
第十一 地租法中改正法律案（政府提出） 第一讀會（前會の續）
第十二 酒税法案（政府提出） 第一讀會（前會の續）
第十三 清涼飮料税法中改正法律案（政府提出） 第一讀會（前會の續）
第十四 砂糖消費税法中改正法律案（政府提出） 第一讀會（前會の續）
第十五 織物消費税法中改正法律案（政府提出） 第一讀會（前會の續）
第十六 揮發油税法中改正法律案（政府提出） 第一讀會（前會の續）
第十七 物品税法案（政府提出） 第一讀會（前會の續）
第十八 遊興飮食税法案（政府提出） 第一讀會（前會の續）
第十九 取引所税法中改正法律案（政府提出） 第一讀會（前會の續）
第二十 通行税法案（政府提出） 第一讀會（前會の續）
第二十一 入場税法案（政府提出） 第一讀會（前會の續）
第二十二 印紙税法中改正法律案（政府提出） 第一讀會（前會の續）
第二十三 骨牌税法中改正法律案（政府提出） 第一讀會（前會の續）
第二十四 狩獵法中改正法律案（政府提出） 第一讀會（前會の續）
第二十五 明治四十四年法律第四十五號中改正法律案（砂糖消費税織物消費税等の徴收に關する件）（政府提出） 第一讀會（前會の續）
第二十六 大正九年法律第五十一號中改正法律案（内地臺灣又は樺太より朝鮮に移出する物品の内國税免除に關する件）（政府提出） 第一讀會（前會の續）
第二十七 支那事變特別税法及臨時租税増徴法廢止法律案（政府提出） 第一讀會（前會の續）
第二十八 營業收益税法廢止法律案（政府提出） 第一讀會（前會の續）
第二十九 資本利子税法廢止法律案（政府提出） 第一讀會（前會の續）
第三十 法人資本税法廢止法律案（政府提出） 第一讀會（前會の續）
第三十一 臨時租税措置法中改正法律案（政府提出） 第一讀會（前會の續）
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〔左の報告は朗讀を經さるも參照の爲茲に掲載す〕
一政府より提出せられたる議案左の如し
政府出資特別會計法案
（以上二月八日提出）
一昨八日貴族院に於て本院の送付に係る左の政府提出案を可決したる旨同院より通牒を受領せり
（第一號）昭和十四年度歳入歳出總豫算追加案
一議員より提出せられたる議案左の如し
靜岡市火災復興助成に關する建議案
提出者
添田敬一郎君 中島彌團次君
勝田永吉君 池田秀雄君
佐藤謙之輔君 中村三之丞君
平野光雄君 山田順策君
高木粂太郎君 坂下仙一郎君
津倉亀作君 今井健彦君
野方次郎君 山口忠五郎君
宮本雄一郎君 春名成章君
倉元要一君 牧野良三君
深澤豐太郎君 塩川正藏君
増永元也君 瀧澤七郎君
小串清一君 河上丈太郎君
山崎釼二君 松永義雄君
川俣清音君 太田正孝君
清瀬一郎君 大石大君
椎尾辨匡君 平野力三君
北勝太郎君
（以上二月八日提出）
一昨八日常任委員補闕選擧の結果左の如し
第五部選出
懲罰委員 今井新造君（田中養達君補闕）
一昨八日議長に於て選定したる委員左の如し
昭和十五年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債發行に關する法律案（政府提出）外五件委員
紫安新九郎君 宇賀四郎君
矢野庄太郎君 古田喜三太君
林平馬君 田中邦治君
駒井重次君 釘本衞雄君
南雲正朔君 川副隆君
内藤守正君 横川重次君
八角三郎君 春名成章君
木村作次郎君 小野廉君
鶴惣市君 森幸太郎君
小谷節夫君 小串清一君
高畠龜太郎君 河合義一君
前川正一君 三木武夫君
小野謙一君 笠井重治君
田中源君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01019400209&spkNum=0
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001・小山松壽
○議長(小山松壽君) 會議ヲ開キマス、政
府ノ都合ニ依リマシテ午後二時マデ休憩致
シマス
午後一時五分休憩
午後三時七分開議発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01019400209&spkNum=1
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002・小山松壽
○議長(小山松壽君) 休憩前ニ引續キ會議
ヲ開キマス、御諮リ致シマス、請願委員長
ヨリ、本日本會議中委員會ヲ開キタイトノ
申出ガアリマス、之ヲ許可スルニ御異議ア
リマセスカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01019400209&spkNum=2
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003・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ之ヲ許可致シマス-議事日程第
一乃至第三十一ノ三十一案ヲ一括シテ第一
讀會ヲ開キ前會ノ議事ヲ繼續致シマス-
池本甚四郞君
第所得稅法改正法律案(政府提出)
第一讀會(前會ノ續)
第二法人稅法案(政府提出)
第一讀會(前會ノ續)
第三特別法人稅法案(政府提出)
第一讀會(前會ノ續)
第四配當利子特別稅法案(政府提出)
第一讀會(前會ノ續)
第五外貨債特別稅法中改正法律案
(政府提出)第一讀會(前會ノ續)
第六相續稅法中改正法律案(政府提
出第一讀會(前會ノ續)
第七建築稅法案(政府提出)
第一讀會(前會ノ續)
第八鑛區稅法案(政府提出)
第一讀會(前會ノ續)
第九臨時利得稅法中改正法律案政
府提出)第一讀會(前會ノ續)
第十營業稅法案(政府提出)
第一讀會(前會ノ續)
第十一地租法中改正法律案(政府提
出)第一讀會(前會ノ續)
第十二酒稅法案(政府提出)
第一讀會(前會ノ續)
第十三〓涼飮料稅法中改正法律案
(政府提出)第一讀會(前會ノ續)
第十四砂糖消費稅法中改正法律案
(政府提出)第一讀會(前會ノ續)
第十五織物消費稅法中改正法律案
(政府提出)第一讀會(前會ノ續)
第十六揮發油稅法中改正法律案政
府提出)第一讀會(前會ノ續)
第十七物品稅法案(政府提出)
第一讀會(前會ノ續)
第十八-遊興飮食稅法案(政府提出)
第一讀會(前會ノ續)
第十九取引所稅法中改正法律案政
府提出)第一讀會(前會ノ續)
第二十通行稅法案(政府提出)
第一讀會(前會ノ續)
第二十一入場稅法案(政府提出)
第一讀會(前會ノ續)
第二十二印紙稅法中改正法律案(政
府提出)第一讀會(前會ノ續)
第二十三骨牌稅法中改正法律案(政
府提出)第一讀會(前會ノ續)
第二十四狩獵法中改正法律案(政府
提出)第一讀會(前會ノ續)
第二十五明治四十四年法律第四十五
號中改正法律案(砂糖消費稅織物消
費稅等ノ徵收ニ關スル件)(政府提出)
第一讀會(前會ノ續)
第二十六大正九年法律第五十一號中
改正法律案(內地臺灣又ハ樺太ヨリ
朝鮮ニ移出スル物品ノ內國稅免除ニ
關スル件)(政府提出)
第一讀會(前會ノ續)
第二十七支那事變特別稅法及臨時租
稅增徵法廢止法律案(政府提出)
第一讀會(前會ノ續)
第二十八營業收益稅法廢止法律案
(政府提出)第一讀會(前會ノ續)
第二十九資本利子稅法廢止法律案
(政府提出)第一讀會(前會ノ續)
第三十法人資本稅法廢止法律案(政
府提出)第一讀會(前會ノ續)
第三十一臨時租稅措置法中改正法律
案(政府提出)第一讀會(前會ノ續)
〔池本甚四郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01019400209&spkNum=3
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004・池本甚四郎
○池本甚四郞君 今囘ノ稅制改革ハ、昨日
ノ質問者モ申サレマシタ如ク、其ノ增收額
ニ於テ、又特ニ中央地方ヲ通ジ體系ヲ根本
的ニ改メラレマシタ點ニ於テ、我國稅制史
上ニ一新紀元ヲ劃スルモノデアリマス、而
シテ數年來議會ガ希望シテ參リマシタ根本
改革ガ、兎モ角モ實現致シマシタモノトシ
テ、當局ノ勞ヲ多トスルモノデアリマス、
現政府ハ之ヲ前內閣ヨリ承ケ繼ガレマシテ、
其ノ儘提案セラレタノデアリマスガ、之ヲ
拜見致シマシテ多少ノ疑點ヲ持チマシタノ
デ、以下聊カ之ヲ申述べマシテ、當局ノ御
所見ヲ伺ヒタイト思ヒマス
偖テ此ノ案ヲ前ニ致シマシテ吾々ハ如何
ナル角度ヨリ之ヲ見ルベキカ、申スマデモ
ナク、同ジ案デアリマシテモ、見マスル時、
又見マスル心構ヘニ依リマシテ、異ツタ結
論ガ出テ參ルコトハ。當然デアリマス、此ノ
點ニ於テ只今ハ事變ノ眞只中デアル、事ハ
吾々ガ當初ニ豫期致シマシタ以上ニ困難ナ
ル狀態ヲ呈シテ居ル、而モ前途ハ尙ホ容易
デハナイ、吾々ガ只今此ノ案ニ對シマスル時
三、此ノ立場ヨリ眺ルベキハ固ヨリデア
リマス、此ノ見地ヨリ致シマシテ第一ニ考
ヘサセラレマシタコトハ今囘ノ增稅額ノ
目標如何デアリマス、政府ハ四大目標ノ中
ニ增收ヲ圖リト言ツテ居ラレマスガ、併シ
ドノ程度ニ、或ハ如何ナル目標ニトハ申シ
テ居ラレマセヌ、事變以來今日マデノ增稅
ハ、當局ノ說明ノ如何ニ拘ラズ、事變以來
發行致サレマシタル公債ノ支拂利子額ニ略〓〓
見合ツテ居ツタノデアリマス、然ルニ昨
日モ小笠原君ガ申サレマシタル如ク、今囘
ノ增稅額ハソレニモ當ツテ居ラナイ、然ラ
バ其ノ公債利子ニ事變關係ノ年金恩給額デ
モ加ヘラレタモノデアリマセウカ、ドウモ
私ニハ分ラナイノデアリマス、仍テ御伺致
シマスルガ、此ノ增稅額ノ目標ハ如何、若
シ目標ガアルト致シマスルナラバ、ハツキリ
ト御說明ヲシテ戴キタイト思ヒマス、又若
シ其ノ目標ガナイト仰シヤルノデアルナラ
バ、ソレハ唯單ナル算盤ノ出合ト云フ解釋
ヲシテ宜イノデアリマセウカ、昨日此ノ點
ニ付キマシテ御答辯ガアツタヤウニモ思ハ
レマスルガ、私ハ今一ツハツキリ致シマセ
ナカツタノデ、玆ニ重ネテ御伺致ス次第デ
アリマス、此處デ私ハ順序ト致シマシテハ
一應此ノ質問ヲ切リマシテ、御答辯ヲ得テ
更ニ質問ヲ續ケルベキモノト思ヒマスル
ガ、ソレガ出來マセヌノデ、引續キ申上ゲ
マス
私ハ此ノ時局下ノ財政計畫ノ全體的立場
ヨリ、此ノ額デ宜イノカドウカト云フコト
ヲ考ヘテ見タイト思ヒマス、我國ハ事變以
來今議會ニ提案サレマシタル分、是ガ假ニ
成立ヲ致スモノトシテ、之ヲ加ヘテ見マス
ルト、事變費ハ申スマデモナク百六十五億
圓ニ相成ツテ居リマス、併シ其ノ間軍事公
債ハ百四十三億圓デアル、增稅額ハ約十億
圓ニナルト思ヒマス、是ニテ明年度總稅收
ハ三十二億デアリマス、仍テ此ノ公債ト稅
額トノ割合ハ四·八對一デアリマス、曩ノ歐
洲大戰當時ノ英米等ハ三對一デアツタ、假
ニ之ヲ標準ト致シマスルナラバ、尙ホ增徵
シ得ル、而モ我國ノ現狀ハ言フマデモナク
アレバアル程入用デアル、況ヤ今後事變ガ
終了致シマシテモ、尙ホ當分ハ每年ノ豫算
ハ數十億圓ヲ下リ得ナイト申サレテ居リマ
スル以上ハ、出來ルナラバ尙ホ此ノ上ニモ
增收ヲ得タイト考ヘルノハ當然デアラウト
思ヒマス、ソコデ問題ハ是レ以上ニ他ニ大
キナ支障ナクシテ出シ得ルカドウカト云フ
點デアリマス、昨日ノ質問ニ於キマシテ租
稅ノ負擔ノ重イコトヲ論ゼラレマシタ、如
何ニモ個々ノ擔稅者ノ負擔額ニ付テ見マス
ルト、近來非常ニ多額ニナツテ居リマス、
或者ハ地方稅ヲ合セマスト六割一分七厘モ
增シテ居ル、又或者ハ四割七分五厘ニナツ
テ居ルヤウナ譯デアリマシテ、是等ノ點ヨ
リ見マスルト、固ヨリ容易ニ是レ以上ノ增
稅ナドハロニシ得ナイノハ當然デアリマ
ス、併シソコニドウモ私トシテ割切レナイ
所ノ或ルモノヲ始終感ジサセラレテ居ルノ
デアリマス、ト申シマスノハ一方ニ高イ〓〓
ト惱ンデ居ル者ガアリマスガ、他方ニハ朝
ニタニ暖衣飽食、酒池肉林三昧ノ徒モアル
ヤウナ有樣デアル、或者ヨリハ儲ツテノ
仕樣ガナイト放言セラレタコトモアリマス、
統制違反ノ嫌疑ヲ受ケタル所ノ某々大綿絲
業者ガアリマシタガ、數日致シマスルト新聞
ニ麗々シク百万圓何々獻金ト云フコトガ出
テ居ツタ、私ハ結局儲ケノアル所ニハ儲ケ
ガアルモノダト云フ感ジヲ禁ジ得ナイノデ
アリマス、ソコデ國民所得ト租稅トノ割
合ヲ見マスルト、昨十四年度ノ國民所得ヲ
二百二十六億圓ト推算致シマシテ、稅金ハ
約三十億圓、一割三分三厘ニ當ツテ居リマ
ス、所ガ昭和五年度ニ國民所得ハ百四億圓
ト致シマシテ、稅金ハ十四億三千万圓デア
リマシテ、ヤハリ一割三分七厘デ、却テ十
四年度ノ方ガ此ノ率ニ於テハ減ジテ居ルヤ
ウナ有樣デアル我國デモ明治二十七年ニ
ハ國民所得ハ二億二千六百万圓デアリマシ
テ、稅金ハ國稅ダケデ七千五百万圓デアリ
マシタカラ、旣ニ其ノ當時二割五分ノ負擔
ヲ致シタコトガアルノデアリマス、最近ノ
外國ノ例デハ英國ガ二割七分五厘、獨逸ハ
二割七分デアリマス、以上カラ見マスルト、
個々ノ負擔ハ激增致シ、而シテ全體ノ統計
ト致シマシテハ尙ホ餘力ヲ示シテ居ル、此
ノ事實ハ何處カニ尙ホ引上ゲニ堪ヘ得ル
方面ガアルコトヲ示スモノニ外ナラナイト
考ヘテ居ルノデアリマス(拍手)小人玉ヲ懷イ
テ罪アリ須ク斯樣ノ者カラハ、ソレガ分
ルナラバ、或ル程度以外ハ勘辨ヲ致スモノ
トシテ、ソレ以上ハ取上ゲルガ宜シイ、ソ
レハソレ等ノ者ノ個人ノ身ノ爲デモアル、
固ヨリ私ハ謂ハレナクシテ取上ゲヨト申ス
ノデハアリマセヌ、併シナガラ其ノ引上ゲ
ガ軈テハ凝ツテ國策トナルノデアル、今ハ
最モ必要ナル所ノ惡性「インフレ」防止等ノ
大役ヲ勤メルノデアリマス、ソコデ然ラバ
生產擴充ニ影響ガアルデハナイカト云フ御
說モ出マセウガ、ソレハ或ル程度ノモノハ
殘シテヤルノデ、ソレ以上ノ餘レルモノヲ
取ルノデアリマスカラ、此ノ點ニ於テ私ハ
別段ニ影響ハナイト思フ、ソレデモ尙ホア
ルト仰シヤルナラバ、ソレハ此處デ其ノ物
動計畫デモハツキリト說明ヲシテ戴ケバ分
ルカラ、又考へ直シテモ見マセウ、ソコデ
次ノ問題ハ、然ラバ其ノ餘地ガ何處ニアル
カト云フコトデアル、斯ク申シマスルト直
グニ上層階級ノ方面ガ考ヘラレルデアラ
ウト思ヒマスガ、併シ今日ノ景氣ハ私思ヒ
マスルニ、必ズシモ左樣ナル方面ノミニア
ルモノトハ私ハ考ヘナイ、ソコニハ呑舟ノ
魚モアリマスガ、又細鱗ノ魚モアル、何レニ
致シマシテモ當局ハ能ク其ノ眞ノ姿ヲ突止
メラレマシテ、捉ヘルベキモノハ捉へナケ
レバナラナイト考ヘルノデアリマス、以上
私ハ我國現下ノ財政計畫的ノ立場ヨリ致シ
マシテ、又生產擴充ト時局經濟政策ニ、支障
ナク、而シテ又惡性「インフレ」ヲ防止徹底
致ス所ノ立場カラ見マシテ、尙ホ徵收シ得
ルナラバ徵收ヲシテ宜シイ、尙ホ增收ヲ圖
ルベシ、而シテ幸ニ其ノ餘地モアルカノヤ
ウニ思ハレルノデアリマスガ、此ノ點ニ對
シマスル當局ノ御所見ヲ伺ヒタイト思フノ
デアリマス
第二ハ負擔均衡ノ點デアリマス、凡ソ戰
時財政ト云フ立場ヨリ見マスナラバ、所謂
負擔均衡ナルモノハ、必ズシモ私ハ第一義ト
ハ思ツテ居リマセヌ、ソレハ平時ニ於テハ
最モ必要ナルコトデアリマスガ、現下ノ戰
時ト致シマシテハソレハ昨日小山議員モ
申サレマシタ如クニ、其ノ負擔均衡ハ或ル
意味ニ於キマシテハ全國民ガ齊シク難ニ
赴ク態ノ普遍化ノ意味ニモ解サレルモノト
思フノデアリマス、併シ此ノ際ト雖モ勿論
出來得ル限リ此ノ負擔衡平ノ線ニ沿フベキ
コトハ當然デアリマス、又政府モ之ヲ四大
目標ノ中ニ揭ゲラレマシテ、昨日藏相モ現
ニ御說明ガアツタノデアリマスカラ、一應
御伺ヲ致スノデアリマス、今囘ノ改正ニ於
キマシテハ當局ガ此ノ點ニ努力ヲ拂ハレマ
シタ跡ハ認メマス、併シソレナラバ此ノ案
ノ全部ガ是デ十分デアルカドウカ、是ハ少
シ小サクナルカモ知レマセヌガ、其ノ一例
トシテ揭ゲルノデアリマス、不動產所得ト
營業所得ノ分類所得稅ヲ取ツテ見マスト、
ココニ同ジ千圓ノ所得ガアル、田畑所得ハ
ソレニ對シマシテ百九十三圓ノ課稅ガ致サ
v、營業ハ百十一圓デアリマスカラ、田畑
ハ一倍七分四厘ニ當ルノデアリマス、
同ジ三千圓階級ヲ押ヘテ見マスト、田
畑ハ千五百五十七圓、營業ハ千百八十一
圓、丁度田畑ガココデモ一倍五分四厘
ニナツテ居ルノデアリマス、ソコデ此
ノ田畑所得ノ千圓、三千圓デアリマスガ、
是ガ一塊ノ土クレヨリ生ズル收入ト云フ風
ニ唯物的ニ私ハ見タクナイ、此ノ收入程度
ノ者ハ二町、三町ノ小地主階級デアリマシ
テ、現在地方ニ於キマシテ實際ニ疲弊ヲ對
シテ居ルノハ此ノ階級デアル、此ノ對象ト
ナリマシタ營業者ハ、無論中小商工業者ト
致シマシテ、是モ大切ナル階級デハアリマ
ス、併シ此ノ小地主階級コソ地方ノ農山村
ニ於キマスル指導階級デアリマシテ、絕對
存在ヲ必要トスルモノデアリマス、然ルニ
此ノ五割モ致シマス負擔表ヲ平氣デ發表致
サレマスル氣ガ私ニハ分ラナイ
次ニハ土地ト配當利子トニ付テ、同ジ所
得ニ對シマスル分ハドウカト見マスト、土
地ノ一〇〇ニ對シマシテ配當利子ハ五八·
六ノ正ニ半額デアル、是等ニハ固ヨリ色々
ト制度ヲ立テラレル上ニ於テ、當局モ御考
ニナツタデアリマセウ、ソレデ私モ色々ト
考ヘテハ見マシタガ、色々ノ事情ヲ考慮致
シマシテモ、是ハ餘リニ差ガ酷イデハナイ
カト私ハ思フ、右ハ一例デアリマスガ、是
等ノ不均衡ニ對シマスル政府ノ御所見ヲ御
伺致シマス、先程一言致シマジタ負擔均衡
ヲ今ノ時局的ノ立場ヨリ見マシテ、之ヲ普
遍化スルヤウナ場合ニ於キマシテ、玆
軈テ直接稅ト間接稅ニ對シマスル課稅ノ步
合問題等ガ出テ參リマセウガ、ソレハ次ニ
御伺ヲ致スコトニ致シマス
第三ハ只今申シマシタル此ノ租稅ノ課稅
方向デアリマス、增稅ノ方向トデモ申シ
マスルカ、卽チ直接稅ト間接稅課稅ニ對ス
ル一般的ノ大方針ヲ政府ニ御伺致シタイ、
私ハ玆ニ其ノ稅額デアルトカ、或ハ率ニ付
テトカ云フヤウナ問題ヲ申スニハアラズシ
テ、ソレ等ノ兩種ノ稅ニ對スル課稅ニ付テ
ノ政府ノ心組ミ、其ノ根本的ノ御見解ヲ承
リタイト思フノデアリマス、近時我國ノ增
稅ノ方向ハ急激ニ直接稅ノ步合ガ增シテ參
ツテ居リマス、諄イヤウデアリマスルガ、
少シ數字ヲ申シマスルナラバ、昭和四年度
ニハ總稅ヲ一〇〇ト致シマシテ其ノ中ノ四
二·二ガ直接稅デアツタ、十三年度ニハソ
レガ五八·三ニ增シテ居リマス、十四年度
ニハ六〇·一ニ相成ツテ居ル、今囘ノ增稅
ノ內容ハ凡ソ直接稅ガ七、間接稅ガ三位ニナ
ツテ居ルモノト思ヒマス、ソコデ私ハ之ニ
ハ平時ト戰時トノ見方ノ相違ガアルベキダ
ト思フノデアリマス、卽チ平時的ニ、或ハ
舊自由主義的觀念ニ依リマスルナラバ、成
ベク直接稅ニ多ク間接稅ニ少クト云フノガ
常識デアルコトハ、是ハ申スマデモアリマ
セヌ、併シナガラ此ノ戰時難局ニアリマシ
テハ國民皆之ヲ擔フノ精神ニ於キマシテ、
將又所要ノ稅額ヲ調達致シマスル點ニ於キ
マシテ、奢侈抑制等ノ見地ニ立チマシテ、
消費稅ノ增徵モ强ヒテ否ムベキデハナイト
思フノデアリマス、固ヨリ私ハ有ユル間接
稅ニ付テ之ヲ申スノデアリマセヌ、併シナ
ガラ特ニ其ノ中例ヘバ奢侈稅ノ如キモノハ、
今囘モ御引上ニハナツテ居リマスルガ、尙ホ
一層ノ考慮ガ可ナルモノデハナイカト思フ
ノデアリマス、此ノ點ニ於キマシテ政府ノ
態度ハ寧ロ消極的デハナカツタカト思ヒマ
ス、此ノ點ニ關シマスル政府ノ御所見ヲ承リ
タイト思フノデアリマス、私ノ國稅ニ對シテ御
伺致シマスルコトハ大體以上デアリマス
第四ニ地方稅革ニ付キマシテ少シク御伺
致シマス、其ノ第一ハ分與稅制度ト地方自
治ノ獨立性ニ付テデアリマス、是ハ昨日小
山議員モ質問致サレマシタノデ多クハ申
シマセヌ、併シ實際ニ計算ヲ致シテ見マス
ルト、餘リニ數字上ノ影響ガ大キイノデア
リマス、ソコデ念ノ爲ニ重ネテ此ノ點ニ觸
レテ見ルノデアリマスガ、之ヲ全體的ニ見
マスルト、申スマデモナク今囘ノ案デハ
地方稅ノ總額ガ十億三千万圓デアル、其
ノ中分與稅トシテ交付セラレマス分ガ、
是ハ調整交付ノ分デアリマシテ、原地還付
ノ還付稅ニ入ツテ居リマセヌ、讓與稅ト申
シテ居リマスガ、其ノ讓與稅ハ入ツテ居
リマセヌ、調整交付ノ分ノ交付稅ガ約三億
五六千万圓、卽チ總額中ノ三割四分ニ相成
ツテ居リマス、是ハ先年ノ馬場案ノ時ノ財
政調整交付金ガ二億九千万圓デアツタト思
ヒマスガ、其ノ時ノ地方稅總額ニ對スル割
合ニ優ルトモ劣ラナイ率ダト私ハ思ヒマス、
立場ヲ變ヘマシテ、此ノ制度ヲ受ケマス地
方ノ團體側ヨリ見マスト、第一ニハ府縣財
政デアリマスガ、例ヲ私ノ方ノ京都府ニ取
ツテ見マス、十五年度ノ當初豫算デアリマ
スガ、各稅ノ合計ガ當初豫算ニ於キマシテ
ハ九百八十四万三千圓デアリマシタガ、此
ノ改正ニ依リマシテ五百五十七万二千圓ト
ナリ、其ノ減少額ハ差引四百二十七万千圓、
減少步合ガ四割三分四厘デアリマス、併シ
之ニ伴ヒマシテ、例ヘテ申シマスナラバ、
警察費ノ國庫負擔金ガ增サレテ參ツタ、併
シナガラ支出ノ殖エル部分ト致シマシテ
ハ町村ヨリ繰上ゲラレテ參リマシタ小學
校〓員給ノ正味ノ負擔金、是等ノ出入ヲ差
引キマシテ、結局稅ニ於キマスル減收ニ
加ヘテ二百二十七万五千圓ガ減ズル、總計六
百五十四万八千圓ガ減ズルノデアリマス、
京都府ノ豫算ハ總額千七百万圓デアリマス
カラ、其ノ中三割八分五厘ト云フモノハ無
クナツテシマフ、今度之ヲ分與交付セラレ
ルノデアリマセウ、次ニハ町村財政デアリ
マスガ、是ハ諄クナリマスカラ數字ハ申シ
マセヌ、併シナガラ是モ亦歲入減ガ約三割
以上ノ見込デアリマス、特ニ此ノ市町村ニ
付テ考フベキコトハ、府縣ト異リマシテ、
原地還付ノ分與稅ト云フモノガナイ、唯
本ノ調整交付金デアリマス、ソコデ町村ノ
立場ハ、府縣ヨリモ尙ホ或ル意味ニ於テハ
弱イト言ハナケレバナラナイ、抑〓此ノ分與
稅ノ性質ニ付キマシテハ色々ニ申サレマス
ガ、兎ニ角其ノ影響ハ餘リニ大デアル、其ノ
爲ニ町村自治ノ獨立性、地方財政ノ彈力性
ガ脅カサルルコトナキヤヲ惧レルノデアリ
やっ、要ハ制度ノ運用ニアリマセウ、金額
ヲ減ラセバ其ノ私ノ虞モ減ツテ參ルヤウナ
譯デ、制度ノ根本ガドウト云フ譯デハナ
イ、運用ノ問題デアルト考ヘマスガ、應
此ノ點ニ付キマシテ內相ノ御所見ヲ伺ツテ
置クノデアリマス、尙ホ此ノ場合ニ地方財
政運用ノ圓滑ヲ期スル爲ニ、地方〓體中央
金庫ノ設置ガ、當局ニ於テ〓究セラレツツ
アルト聞キマスガ、之ニ對シマスル御所見
ヲモ併セテ承ツテ置キタイト思ヒマス
其ノ次ハ市町村民稅デアリマスガ、之二
付キマシテ、私ハ可ナリ多ク御伺致シタイ
事ヲ持ツテ居リマスガ、是ハ他ノ機會ニ讓
ルコトニ致シマス
以上デ私ノ質問ハ終リマスガ、玆ニ稅、
卽チ國民、地方民ノ負擔ニ關聯スルモノ
ト致シマシテ、二ツノ希望ヲ簡單ニ申述
ベテ、御考慮ヲ煩ハシテ置キタイト思ヒ
マス、其ノ一ツハ單價ノ引下ト、會社內
部ノ經理監督强化ノ問題デアリマス、申
スマデモナク政府ハ最大ノ消費者デアリ
マスノデ、買入單價ノ如何ハ直チニ豫算ニ
影響シ、延イテ稅金ニ關係ヲ致シマス、全
國民ノ犠牲ニ於テ一箇半箇ノ者ニ過當ナ利
益ヲ得セシメテハナラナイ、此ノ點ニ於テ
單價ノ引下ガ絕對ニ必要デアルト思ヒマス、
政府モ固ヨリ今日マデ此ノ點ニ關シマシテ、
色々企圖致サレテ居ルヤウデハアリマス
ガ、實際ノ社會ノ現狀ヲ見マスト、尙ホ極
メテ不十分ダト云フ感ヲ私ハ禁ジ得ナイノ
デアリマス、故ニ出來得ル限リ急速ニ、
層其ノ徹底ヲ期セラレルヤウニ要望致シテ
置ク次第デアリマス
其ノ二ハ、國ト地方負擔區分整理ノコト
デアリマスガ、是ハ內相ニ申上ゲテ置キマ
日
ス、地方財政ノ整理ト共ニ必要デアリマス
ノハ、此ノ國、地方負擔區分ノコトデアリ
マイ、今囘小學〓員給ノ定率負擔制度、又
警察連帶支辨ノ均整等ヲナサラウト致シテ
居リマスガ、此ノ點ハ私ハ洵ニ結構デアル
ト思ヒマス、併シ尙ホ地方ニ於キマス委任
事務ハ實ニ多キニ過ギテ居ル、少シ統計ハ
古クアリマスガ、昭和九年度豫算ニ於ケル
數字ヲ見マスト、市町村費總額中、委任事
務費ハ實ニ四割二分一厘ヲ占メテ居ル、之
ニ對シマシテ國庫ノ支出ハ其ノ中ニ僅ニ一
割三厘ニ過ギナイ、特ニ此ノ事變以來ハ又
是ガ非常ニ增加ヲ來シテ居リマス、中ニハ
上級官廳ノ事務ノ不統一ヨリ來リマス所ノ
二重三重ノ無用ナ事務モ甚ダ多イノデアリ
やっ、明年度ノ豫算ニハ是等ニ對スル町村
ニ向ツテノ多少ノ考慮ガ拂ハレテ居ル點ガ
アルヤウデアリマスケレドモ、尙ホ一層此
ノ點ニ付キマシテ御考慮ヲ煩ハシテ置ク次
第デアリマス
以上質問ノ部分ニ付キマシテ、何卒當局
ノ明確ナル御答辯ヲ煩ハシタイト思ヒマス
(拍手)
〔國務大臣櫻內幸雄君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01019400209&spkNum=4
-
005・櫻内幸雄
○國務大臣(櫻內幸雄君) 池本君ノ私ニ對
スル御質疑ニ對シテ答辯致シマス、第一ハ
增稅ノ目標ヲ何處ニ置イタノデアルカ、從
來ノ增稅ノ目安ハ大體ニ於テ公債ノ利子ヲ
支辨スル程度デアツタガ、此ノ度ハ此ノ金
額ヲ超シテ居ル、其ノ目標ハソコニ置イタ
ノデハナイカト云フ風ナ御尋デアリマシタ
ガ、要シマスルノニ、現下ノ時局カラ考ヘ
マシテ、色々ナル點ニ於テ非常ナ巨額ノ國
費ノ要ルコトハ御承知ノ通リデアリマス、
隨ヒマシテ事變下ニ於ケル財政ト致シマシ
テハ、或ル部分ハ稅收入ニ俟ツ、或ル部分
ハ公債財源ニ俟ツト云フコトハ、已ムヲ得
ナイ實情デアリマス、而シテ出來得ル限リ
多クノ部分ヲ國民ノ負擔力ニ俟ツト云フコ
トガ宜イノデアリマスケレドモ、併シナガ
ラ經濟界ノ實情ヲ考慮シ、又產業界ニ打擊
ヲ與ヘザルヤウニ致シ、而シテ國民生活ニ
不安ナカラシムル見地カラ致シマシテ、此
ノ稅額ヲ定ムルコトハ可ナリ容易ナコトデ
ハナイノデアリマス、今囘ノ增稅ノ目標ハ
今日ノ時局下ニ於テ此ノ程度ノ御負擔ヲ願
ツテモ、其ノ爲ニ經濟上ノ不安ヲ喚ビ起サ
ナイト云フ程度ヲ目標ト致シタノデアリマ
ス、其ノ金額ハ今日ト致シマシテハ、所謂
公債ノ利子ヨリハ多イカモ知レマセヌ、併
シナガラ今後尙ホ相當長キニ亙ツテ巨額ノ
經費ノ要ルコトハ、長期建設ノ段階ニ於テ
已ムヲ得ザルコトデアリマスノデ、此ノ點
ヲ睨ミマシテ、大體ニ於テ此ノ程度ナラバ
差支ナカラウト考へマシテ、其ノ見地カラ
之ヲ定メタ譯デアリマス、更ニ今日日本ノ
經濟上ノ實情カラ見レバ、此レ以上或ハ增
稅ヲ致シテモ差支ナイヤウニ見ルガ、其ノ
點ニ付テドウ考ヘテ居ルカト云フ風ナ御意
見デアツタト思ヒマスガ、固ヨリ今日ノ我
ガ經濟界ノ實情ヲ具サニ考ヘテ見マスト、
或ル一部分ニ於テハ是ダケノ稅デモ非常ナ
重稅デアルト思ハレマスケレドモ、又一面
ニ於テ尙ホ是レ以上ノ擔稅力ノアル方面ノ
アルコトモ認メラレルノデアリマス、併シ
ナガラ兎ニ角現在ノ實情ヲ考慮致シマシテ、
此ノ程度ノ增稅ヲ致シテ、サウシテ經濟界
ニ及ブ影響等モ之ヲ見ルト云フ必要ガアル
ト思フノデアリマス、隨ヒマシテ本增稅案
ガ通過シタ曉ニ於キマシテ、差當リ之ニ對
シテ更ニ增稅ヲ致スト云フ考ハ持ツテ居リ
マセヌケレドモ、經濟界ノ今後ノ推移ニ依
リマシテ、或ハ更ニ之ニ對シテ〓究致サナ
ケレバナラヌコトガ起ツテ來ルカトモ思フ
ノデアリマス
次ニ負擔ノ均衡ニ付テノ御質疑デアリマ
シタガ、御質疑中土地ノ所得、營業上ノ所
得配當上ノ所得ニ付テノ種々ナル實例モ
御示ニナリマシタガ、其ノ點ニ付キマシテ
ハ少シク數字ニ對シテ私疑問ヲ持ツテ居リ
マスノデ、別ノ機會ニ於テ申上ゲマスガ、
不動產ノ所得ガ他ノ營業所得竝ニ配當所得
等ニ對シテ、高キニ失スルデハナイカト云
フ風ナ御意見ニ付キマシテハ、是ハ種々ナ
ル方面カラ〓究ヲ致シマシテ、大體此ノ程度
ニ於テ差支ナイモノト考ヘマシタト同時ニ、所
謂家族控除デアルトカ、サウ云フモノガアルコ
トモ考慮ヲシテ決メタ譯デアリマシテ、私
共ハ是デ大ナル不都合ガナイト思ツテ居ル
ノデアリマス
次ニ直接稅ト間接稅トニ付テノ御意見ガ
アリマシテ、直接國稅ガ年々殖エテ行ツテ、
間接稅ガ稍〓減リツツアルト云フ狀況デア
ルガ、更ニ間接稅ニ付テ考慮ヲシテ見テハ
ドウカト云フ御意見デアリマス、御承知ノ
通リ今囘ノ五億圓ノ增收ノ中デ大體三億圓
ハ直接國稅デアリマス、二億圓ハ間接稅デ
アリマス、此ノ比率ガドウデアルカト云フ
コトニ付キマシテハ今マデノ實際ノ經驗
上カラ大體之ニ依ツテ差支ナイト思フノデ
アリマス、殊ニ消費稅ノ點ハ一般大衆ガ多
ク負擔スルノデアリマスカラシテ、出來得
ル限リ此ノ點ニ付テハ注意ヲ拂ヒマシテ、
此ノ消費稅ニ於キマシテハ奢侈品デアルト
カ、或ハ國民生活ニ直接關係ノ薄イ方面ニ
多クノ增稅ヲ致シタノデアリマス、今後ニ
於キマシテ消費稅ノ點ニ付キマシテ考慮ヲ
拂フト云フコトハ固ヨリデアリマスケレド
モ、今日ノ實情カラ申セバ、此ノ奢侈的方
面及ビ國民生活ニ直接ニ影響ノ薄イ方面ニ
增稅ヲ致スト云フコトガ適當デハナイカト
思ツテ、斯樣ニ決メタ譯デアリマス
地方稅ノ問題ニ對シマシテハ內務大臣ニ
對シテノ御質疑デアリマスカラ、私ハ此ノ
際差控ヘテ置キマスガ、政府ノ豫算實行ニ
對シテ單價ノ引下ヲ致スト云フコトニ對シ
テ、十分ナル努力ヲシナケレバ相成ラヌ
デハナイカト云フ御意見ニ對シマシテハ、
全然同感デアリマス、若シ此ノ單價ニ付テ
政府ノ注意ガ足ラズ、監督ガ不十分デアリ
マシタナラバ、ソレハ豫算ノ膨脹ヲ招キマ
スノミナラズ、低物價政策ニモ背クノデア
リマシテ、此ノ點ニ付テハ十分力ヲ致ス次
第デアリマスガ、現在ニ於テモ陸海軍其ノ
他ニ於キマシテ、或ハ檢査官或ハ經理官ト
云フモノヲ各工場其ノ他ニ派遣致シマシテ、
十分監督ヲ致シテ居リマスガ、更ニ一層此
ノ點ニ付テハ深甚ノ注意ヲ拂ヒタイト、斯
樣ニ考ヘテ居ルノデアリマス(拍手)
〔國務大臣伯爵兒玉秀雄君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01019400209&spkNum=5
-
006・兒玉秀雄
○國務大臣(伯爵兒玉秀雄君) 分與稅ト地
方自治ノ關係ニ付テノ御質問ニ對シマシテ、
此ノ問題ハ地方稅制ヲ定メマス上ニ於テ最
モ重要ナル一點デアルノデアリマス、稅制
ヲ定メマスル上ニ於キマシテ、地方自治根
本ノ精神ヲ破壞シナイヤウニ、而シテ地方
ノ財源ノ確立ヲ期シマスヤウニト考ヘテ、
本案ヲ制定致スコトニ致シタノデアリマス
ガ、其ノ趣旨ニ於キマシテ、分與稅ニ於テ
地方ノ獨立財源トシテ與ヘタルモノハ、昨
日モ申上ゲマシタル通リニ地租、家屋稅及
ビ營業稅ノ如キ最モ强力ナル財源デアル
ノデアリマス、隨ヒマシテ此ノ財源ニ依リ
マシテ地方ハ其ノ自治的活動ヲ十分ニシ得
ルモノト考ヘテ居リマス、ノミナラズ貧弱
ナル町村ニ對シマシテハ、分與稅ノ制度ニ
依リマシテ新ニ財源ヲ與フルコトニナリマ
スルカラ、地方一般ノ自治的ノ活動ハ之ニ
依ツテ活氣ヲ呈シ、十分ニ自治的制度ノ活
用ヲ見ルコトト考ヘテ居ルノデアリマス、
尙ホ數字ニ付テノ御說明ガアリマシタガ、
是ハ他日本案ノ提案ニナリマシタル際ニ讓
リタイト思ヒマス
第二ノ點ハ地方團體中央金庫ヲ設ケテハ
ドウカト云フ御說デアリマスルガ、是ハ地
方財政ノ運用ヲ圓滿ニ致ス上ニ於テ、有力
ナル一ツノ考デアルノデアリマス、此ノ點
ニ於テハ特ニ〓究ヲ致シテ居リマスルガ、
マグ此ノ可否ヲ申上ゲルマデノ機會ニ達シ
テ居ラヌノヲ遺憾ト致スノデアリマス
最後ニ國費ト地方費ノ分擔區分ノ問題デ
アリマス、是ハ地方財政ノ確立ノ上ニ於キ
マシテ、最モ重要ナル他ノ一點デアルノデ
アリマス、而シテ之ヲ適當ニ解決スルコト
ハ國ノ財政等ニ睨合セテ困難ヲ感ズベキ
問題デアルノデアリマスルガ、今囘ノ稅制
改正ニ於キマシテハ、只今御指摘ニナリマ
シタ警察費ノ國庫分擔金ヲ、地方ノ分ヲ三
割五分ニ增加シ、又義務〓育ノ負擔金ヲモ增
加ヲ致シマシテ、地方ニ對シマスル國庫ノ
援助ヲ濃厚ニ致シマシタノデアリマス、尙
ホ此ノ點ニ於キマシテハ國家ノ財政ト伴ヒ
マシテ、今後ニ於キマシテモ大イニ考ヘナ
ケレバナラヌ點ガ殘サレテ居ルト考ヘテ居
リマス、御質問ニ御答申上ゲマス(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01019400209&spkNum=6
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007・池本甚四郎
○池本甚四郞君 簡單デアリマスルカラ、
此ノ席上ヨリ發言ノ御許ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01019400209&spkNum=7
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008・小山松壽
○議長(小山松壽君) 許可致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01019400209&spkNum=8
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009・池本甚四郎
○池本甚四郞君 只今大藏大臣ノ御答辯中
負擔均衡ノ點ニ付キッマシテ、私ガ擧ゲマシ
タル數字ニ疑問ヲ持ツテ御居デノヤウデア
リマスガ、是ハ實ハ大藏省ヨリ發表ニナリ
マシタ數字ヲ基礎ト致シタモノデアリマス
ルカラ、左樣ニ御承知ヲ願ヒマス、其ノ他
兩大臣カラノ御答辯ニ付キマシテ、了解致
シマシタ點モアリ、尙ホ稍〓了解解シ難キ
點モアリマスルガ、是等ニ付キマシテハ又
他日ノ機會ニ讓ルコトニ致シマス、是デ私
ノ質問ハ打切リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01019400209&spkNum=9
-
010・小山松壽
○議長(小山松壽君) 森田福市君
〔森田福市君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01019400209&spkNum=10
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011・森田福市
○森田福市君 私ハ總理大臣、大藏大臣、
內務大臣、商工大臣、農林大臣ノ方々ニ御
尋申上ゲタイト存ジマス、昨日來ノ御質問
ノ方々ニ對スル答辯ヲ拜承致シマシテ、
大體同ジヤウナ趣旨ニナルノデアリマスガ、
私ノ御尋セント考ヘマスル所ハ、極ク率直
ニ、一ツ具體的ニ御尋申上ゲテ答辯ヲ煩ハ
シタイト存ジマス
今囘ノ稅制ノ改革ハ、中央ト地方ヲ通ジ
タル負擔ノ公正竝ニ負擔ノ均衡ヲ保ツト云
フコトト、稅制ノ簡易化、增收トガ主ナル
目的デアルト述ベラレテ居ラレルノデアリ
マスガ、私ハ今囘ノ增收ハ或ハ其ノ通リニナ
ツテ居ルカモ存ジマセヌガ、他ノ負擔ノ均
衡デアルトカ、或ハ稅制ノ簡易化デアルト
カ云フヤウナコトハ、御述ニナツタコトト
實際トガ間違ツテ居リハシナイカト考ヘル
ノデアリマシテ、此ノ點ヲ大藏大臣ニ御尋
シタイト思フノデアリマス
負擔ノ公正ト云フコトデアリマスルガ、
昨日來モ御話ガアツタノデアリマス、私ハ
負擔ノ公正ハ今度ノ稅制ニ依ツテ一層不公
平ニナツタト思ハレル節ガ多々アルノデアリ
マイ、御承知ノ通リニ分類所得稅ニ於テ百
分ノ六ヲ課スルト云フノハ六百圓以上ノ勤
勞所得デアル、又事業所得ニ對シテ百分ノ
八·五ヲ課ケルノハ、四百圓以上ノ所得者デ
アルト云フノデアリマス、是等ハ何レモ六
百圓以上或ハ四百圓以上ノ、五千圓以下ノ
者ニ課セラレルノデアリマスガ、勤勞所得
デ月給五十圓ノ者ト云ウタラ今日最低ノ月
給取デアリマセウ、其ノ最低ノ月給取モ
百分ノ六ヲ課セラレ、勅任官ノ二等ドコロ
ノ年俸四千八百圓程度ノ者モヤハリ百分ノ
六ノ割合ヲ課セラレルトシタナラバ、以前
ノ第三種所得稅デ課ケテ居ツタ段階トハ非
常ナ相違ガアルノデアリマス、是デ果シテ
負擔ノ公正ト言ハレルノデアリマセウカ、
四千八百圓ノ方ハ綜合課稅ニハ入ツテ參
リマセヌ、綜合課稅ニ入ツテ來ナイヤウ
ニシテアル、要スルニ此ノ稅制ヲ作リ上
ゲタ人々ノ便利ヲ頭ノ中ニ置イテヤラレ
タノデハナイカト疑ハレル節ガアルノデ
アリマス(拍手)事業所得ノ方面デモ年四百
圓ノ所得デ一家ノ生計ハ保ツテ行カレルト
ハ考ヘラレマセヌ、年四百圓ノ事業所得ニ
對シテハ、年六百圓ノ勤勞所得ヨリモ稅率
ハ高クナツテ居リマス、稅率ハ二·五ト云フ
モノガ高クナツテ居ルノデアリマスカラ、
此ノ稅制ヲ御作リニナルニ際シテハ、決シ
テ負擔ノ公平ト云フヤウナコトヲ仰シヤツ
テモ、事實トハ合ツテ居リマセヌ、殊ニ御
承知ノ通リニ分類所得稅ヲ課ス外地ニ住居
ヲ有シテ居ル人々ハ綜合課稅ハ課セラレマ
セヌ、分類所得稅ダケ課セラレル、分類所
得稅ガ現行法ニ依ルト十二·半デアリマシ
タ、支那事變ニ依ル特別增稅共ニ加ヘテ十
二·半デアツタモノガ、今度ハ僅ニ二·半ノ增
稅ダケデアツテ、分類所得稅ハ百分ノ十五
ヲ納ムレバ、其ノ綜合所得稅ハ悉ク免レル
コトニナルノデアリマス、斯ウ云フヤウニ
御話申上ゲルト、私ハ負擔ノ公正ハ全然
期セラレテ居ラヌ、又稅制ヲ簡易化スルト
云フ約束デアツタニモ拘ラズ、今度ノ新稅
法ハ十一件アリマス、サウシテ舊法ノ廢ス
ルモノガ四件アリマス、差引七件ハ稅種類
ガ多クナツタ、是デ稅制ヲ簡易化シタトハ
私ハ言ハレヌト思フ、又改正セラレルモノ
ガ十五件アル、稅制ハ一層複雜多岐ニナツ
テ參ツタノデアリマスカラ、單純化スルト云フ
御話トモ全然違ヒマス、斯ウ云フ風ニ杜撰ト
申上ゲレバ失禮カモ知レマセヌガ、當ヲ得
ナイ、最初提案ヲスルト、昨年ノ春ノ議會ニ
稅制ノ委員會ノ席上デ、時ノ大藏大臣ノ
石渡サンガ、突如トシテ言明ヲサレタノデ
アリマスカラ、次ノ議會ニ出サナケレバナ
ラナイ關係上、私ハ非常ニ御急ギニナツタ
結果ガ、斯ウ云フ風ナモノガ生レテ出タノ
ヂヤナイカト思フ、而モ今ノ大藏大臣ハ檢
討ノ結果、前內閣デ作リ上ゲタ此ノ稅制ヲ
踏襲スルコトニシタト仰シヤルノデアリマ
スガ、果シテ一日カ二日、三日ノ檢討デ此ノ
複雜多岐ナ稅制ノ御檢討ガ出來タノデアリ
マセウカ、私ハ此ノ點ニモ非常ナ不審ヲ持
ツテ居ルノデアリマス
大藏大臣ニ對スル質問ノ具體的ノ第一點
ヲ申上ゲマスナラバ、昨日ノ本案ノ提案ノ
御說明ニ際シマシテ、平年度ノ稅增收ガ八
億一千四百万圓、十五年度ノ分ハ六億四百
万圓ノ增收ガアルト御話ニナツタノデアリ
そう、此ノ平年度ノ八億一千四百万圓、十
五年度ノ六億四百万圓ノ增收ノ算出ノ根據
ハ示サレテ居リマセヌ、是ガ從前ノヤウナ
稅制デアツテ、在來ノ稅制ニ依ツテ唯稅率
ヲ高メテ行クダケナラバ、收入ノ點ヲ〓算
シテ、稅收入ノ增加ヲ算出スルコトガ出來
マス、併シナガラ今囘ノ如ク稅制ヲ根本的
ニ改メテ、サウシテ此ノ新シイ稅制ノ下ニ
是ダケノ稅收入ガ增加ヲスルト云フ算出ノ
根據ハ、何レニ御據リニナツタノデアリマ
セウカ、此ノ增收額ノ算出ノ根據ヲ明ニシ
テ戴カヌト、私ハ此ノ數字ヲ信ジ兼ネルノ
デアリマス、又政府ノ御出シニナル稅增收ノ
豫算ト云フモノハ、實際トハ何時デモ大キナ
差ガアル、從來臨時利得稅ヲ創設セラレル
時デモ、又昨年ノ遊興飮食稅ヲ創設セラレ
ル時デモ、悉ク此ノ議會ヤ特別委員會デ言
明セラレタ所ノ數字ト、後日ノ實績トガ曾
テ一囘デモ合ツタコトガアリマスカ、恐ラ
クハ何時モ駈引ヲヤツテ、吾々國民代表ニ向
ツテ眞ノ數字ヲ御示シニナツテ居リマセヌ
ガ、ソレハ駈引デアルノカ、當時ノ計畫ガ
杜撰ナフカ、此ノ孰レカニ屬スルノデアリ
マス、計數ヲ御出シニナル頭ガナカツタノ
カ、アツタノナラバ吾々ニ實際ノ計數ヲ御
示ニナラヌノハ、是ハ不都合デアリマス、
其ノ何レデアルカ、今回ノハ明瞭ニ其ノ數
字ノ算出ノ根據ヲ示サレテ、ドウカ責任ノ
アル答辯ヲ願ヒタイ、一兩年後ニハ實績ガ
現ハレテ來ルノデアリマスガ、私ハ今度ノ
增稅ハ其ノ數字トハ大變懸離レタ增稅デア
よう
ルト考ヘルノデアリマス、是ガ第一點ノ質
問デアリマス
第二點ノ質問ハ、大キナ增稅ヲ御ヤリニ
ナル、サウスルト低物價政策ニ反スル點ハ、
昨日來屢〓論ジラレマシタ、殊ニ物品稅ニ
於テ私ハ此ノ低物價政策ノ、一般所得稅ト
カ營業收益稅、營業稅或ハ法人稅ト云フヤ
ウナ色々ナ所得カラ生ズル稅金ハ別ト致シマ
シテモ、物品稅ノ增稅ハ必ズ其ノ物品ヲソ
レ以上ニ値上ヲシテ賣ラスコトハ政府モ認
メテ居ル、サウ云フコトニナリマスト、私
ハ一番疑ヲ持チマスノハ、此ノ百億圓以上
ノ豫算ヲ遂行シテ行ク上ニ於テ、先ヅ今囘
ノ物品稅ノ値上リヲ見マスルノニ、大體五
分乃至一割ノ增稅ヲシテアリマス、サウス
ルト恐ラクハ一割程度ノ物價ノ上リ、政府
ノ公認スル所ニ依ル値上リガソレニナルモ
ノト見ナケレバナリマセヌ、サウスルト今、
昨年ノ八月、九月頃ニ豫算ヲ編成セラレタ
時ノ物價ハ、今日ヨリ勿論一割以上安カツタ
コトハ明カデアリマス、サウスルト玆ニ實
行ニ當ツテ二割ノ〓違ヒハ少クモ出テ來ル、
百億ノ豫算ヲ遂行シテ行カウト思ヘバ、此
ノ値上リニ依ル二割ノ二十億ハドウ云フ風
ニシテ政府ハ賄ツテ行クカ、ソレダケノ計
畫ヲ縮メテ行クカ、又ハソレハ追加豫算カ
何カデ取ルノカ、ドウ云フ方法ニ依ツテヤ
ルノカ、吾々ノ考ヘル所デハ、斯樣ナ增稅
ヲヤツテ、一番消費ヲ多クヤル所ノ政府ガ、
其ノ豫算ノ遂行ニ難澁ヲ來スヤウナ政策ヲ
採ラズニ、增稅ヲヤラズニ政府ノ豫算ノ遂
行ヲシタ方ガ、却テ低物價政策ニモ副フシ、
又實現モ其ノ方ガ易々タルコトニナルノデ
ハアリマスマイカ、此ノ點ハ私ハ十分ニ一ツ解
イテ戴キマセヌト當ヲ得スト考ヘル、一番
大キナ消費者デアル政府ガ値ヲ上ゲサセテ
置イテ、サウシテ安カツタ時ノ豫算ヲ遂行
シテ行カウト云フ所ニ大キナ無理ガアリマ
ス、大藏大臣ハ此ノ無理ヲドウ云フ方法ニ
依ツテ解消ヲスル積リデ居ラレマスカ、此
ノ點ヲ拜承致シタイノデアリマス
今一ツハ、ソレニ續イテ、昨日ノ御答辯
ニ、大藏大臣ノ答辯デアツタト思ヒマス
ガ、生產ノ擴充ヲ邪魔ヲシハセヌカト云フ
質問ニ對シテ、大藏大臣ハ、生產ノ擴充ニ
多少ノ邪魔ガアツテモ巳ムヲ得ヌト云フ答
辯ヲサレテ居ルノデアリマス、サウスルト、
政府ハ低物價政策ヲ行フ、低物價政策ハ、
此ノ政府モ從來ノ政府ト同樣ニ、此ノ主義
ハ變ヘナイト云フコトヲ仰シヤツタノデア
リマスガ、果シテ昨日ノ答辯ガ眞デアルナ
ラバ、低物價政策ノ主張、低物價政策ノ主
義ハ破棄サレタノデアリマスカ、此ノ點ヲ
明瞭ニシテ戴キタイト思ヒマス、尙ホ斯ウ
云フ大キナ增稅デアリマスカラ、我國ノ財
政ヤ經濟ニ及ボス點ハ非常ナモノデアルト
考ヘマスカラ、此ノ點モ大藏大臣ニ一ツ承
ツテ置キタイト思フノデアリマス、大藏大
臣ハ通貨ノ囘收ヲ圖ル、卽チ購買力ノ吸收
ヲ爲スノニハ增稅ヲ力說シ、サウシテ一面
ニハ節約ト緊縮ヲ力說シテ居ラレルノデア
リマス、私ハ增稅ガ必ズシモ購買力ノ吸收
トハナラナイト思フ、節約勿論ノコトデア
ル、節約ト云フ、卽チ郵便貯金ヲヤルトカ、
銀行預金ヲヤルコトガ節約ニナルノデアリ
セウカ、ナゼナラバ購買力ノ吸收ニハナラ
ナイノデアリマス、郵便貯金ト銀行預金ト、
自分ノ懷ロニアル金トヲ合セテ、自分ガ現
金トシテ自由ニナルモノデアルト云フ頭
ハ、各人皆アルコトハ分リ切ツタコトデア
リマス、サウシテ行クト、果シテ其貯金ヤ
預金ガ購買力ヲ吸收シタ結果ニナルノデア
リマセウカ、私ハアア云フ低物價政策ヲ執
ルノニハ斯ウ云フヤウナ通貨ノ囘收ノ方
法デ低物價政策ヲ行フコトハ頗ル困難デ
アルト考ヘマス、現政府ハヤハリサウ云フ
建前ヲ執ツテオヤリニナルカノ如ク、施政
方針ノ御演說以來拜承シタノデアリマスガ、
其ノ通リデアリマスカ、預金ヤ貯金ガ購買
力ヲ起サヌト云フ所ノ御話ヲ、一ツ明瞭ニ
此ノ議會ヲ通ジテ國民ニ御知ラセ願ヒタイ
ト存ズルノデアリマス
尙ホ大藏大臣ニ條文ニ入ツテ御尋スルコ
トガ澤山アリマスガ、質問ノ順序上私ハ商
工大臣ニ一ツ此處デ間ニ挾ンデ聽イテ置キ
タイコトガアルノデアリマス、昨日來藤原
商工大臣ノ增稅ニ對スル御答辯ハ、增稅ノ
爲ニ生產ノ縮小ハシナイ、產業ノ萎縮スル
ヤウナコトハナイカラ安心シテ可ナリト云
フヤウナ御答辯ガアツタノデアリマス、私
ハ常ニアナタノ御意見ハ直接ニモ間接ニモ
拜承致シテ居ルノデアリマス、增稅ハ產業
ノ萎縮ニナルト云フコトヲ屢〓聞イテ居ルノ
デアリマスガ、野ニ在ル時ト朝ニ立ツ時ト
ニ依ツテ、御主張ガ變ツテ來タノデアリマ
スカ、增稅ヲヤルコトニ依ツテ資金ガ資本
家、事業家ノ手カラ政府ニ吸收サレルダケ
デハアリマセヌ、今日ノ增稅ノ一番最高
ノ率ハ分類所得稅、綜合所得稅ヲ合シテ見
ルト百分ノ七十五デアリマス、百分ノ七十
五ノ大キナ高率ノ稅ヲ事業家ガ拂フ、ソレ
モ本當ニ百圓ノ收入ニ對シテ七十五圓取ル
ノナラバ、マダ差引二十五圓殘ツテ來ルカ
モ分ラナイガ、恐ラク稅務署ノ査定ト云フ
モノハ、是ハ國民何人モ經驗ノアル所デア
リマスガ、稅務署ハ百圓ノ實益ニ對シテ必
ズソレノ何割カヲ增シタ數字ヲ以テ、其ノ
人ノ所得ト決定シテ來ルコトハ御承知ノ通
リデアリマス、是ハ民間ノ經驗シテ居ル者
ナラバ皆知ツテ居ル、藤原サンノ如キハ營
利法人ノ經營者デアルカラ、アナタノ會社
ノ所得決定ニ際シテ恐ラクハ稅務署ガ否認
シテ來タ所ノ支出ハ澤山アルデアラウト思
フノデアリマス、是ハ營業費トハ認メナイ、
アレモ營業費トハ認メナイト言ツテ否認ス
ル所ノ支出ガ、澤山出來テ來ルノデアリマ
ス、個人デハサウ云フ否認支出ヲヤルト云
フヨリモ、眞向フカラ幾ラノ賣上ヲシテ居
ルカラ、何ボ所得率ヲ掛ケテ行クト、オ前
ノ收益ハ是ダケニナルト云フ風ニ、御査定
ニナルノデアリマスカラ、恐ラク百圓儲ケ
テ百圓出スヤウニナルノデハナイカ、否百
圓儲ケテ百圓以上出スヤウニナルノデハナ
イカ、サウナツテ來テモ、尙且ツ國民ガ眞
ニ產業ニ努力スルデアリマセウカ、私ハ最
近此ノ議場デ聽イテ居ルト、利潤ニ付
テ彼此レ議論ガアリマス、勿論今日ノ時
局デアリマスカラ、利潤ニ對スル程度ノ
問題ハ國民ハ十分ニ深ク考ヘテヤラナケ
レバナリマセヌガ、併シ掛ケタ資本ニ
利潤ノ囘收ガ明ニナイト云フコトガ分ツテ
モ、產業ヲ盛ニヤルカドウカ、私ハ此ノ
點ニ付テ非常ナ憂慮ヲ致ス者デアリマス、
併シナガヲ只今ノヤウナ生產擴充ニ事業家
ガ本氣デヤルカ、ヤラヌカ非常ニ危ブマレ
ルト同時ニ、アナタノ御答辯ヲ聽イテ居ルト
通貨ノ收縮ノ一端トナル購買力ヲ、政府ハ
吸收スルコトガ出來ルト云フヤウナ御演說
モ爲サツテ居ルカト思ベバ、是ハ新聞紙ヲ
通ジタノデスカラ、果シテ事實カドウカト云
フコトハ、今日此ノ席上デ藤原商工大臣カ
ラ拜承致シタイト思フノデアリマスガ、石
炭ノ生產助成金ヲ瓲當リ五圓出スト云フヤ
ウナコトヲ新聞デ見タノデアリマス、果シ
テサウカドウカ、石炭ノ助成金ヲ瓲當リ五
圓出シテ行クコトニ依ツテ、本當ニ石炭增
產ノ目的ノ遂行ガ出來ルカドウカ、其ノ目
的ヲ果サズニ、政府ガ折角色々ノ名目ヲ設
ケテ通貨ノ囘收ヲ圖ツテモ、又一面通貨ノ
膨脹ヲ政府自ラガ行フノデハアリマセヌカ、
石炭ノ今日ノ實情ヲ申上ゲレバ、五圓ノ助
成金ヲ與ヘタカラトテ、私ハソレデ闇取引
ガ無クナリモセズ、又ソレガ爲ニ石炭ノ增
產ガ圖ラレルトハ考へラレマセヌ、今日石
炭ハ御承知ノ通リニ公定價格ヨリ五圓乃至
十圓ノ闇取引ガ行ハレテ居ルシ、尙ホ日本
ニ無クテハナラヌ粘結炭ノ如キモノハ、瓲
四十圓五十圓デ取引ガ行ハレテ居ル今日デ
ハアリマセヌカ、ソレニ五圓ノ助成金ヲヤ
ツタナラバ、闇取引ガ止マウトカ、生產ノ
擴充ガ出來ヨウトカ、如何ニモ當局ハ實社
會ニ暗過ギルト私ハ考ヘルノデアリマス、
而モ其ノ五圓ノ助成金ハ何ヲ目標ニヤルカ、
恐ラクハサウ云フコトヲヤルコトニ依ツテ、
石炭ノ質ヲ低下サスコトハ分リ切ツテ居リ
マス、凡ソ從來ノ石炭ハ一等炭、二等炭、
三等炭ト色々種類ガ分レテ居リマス、ソレ
ハ何デ分ケルカ、能ク議會ナドデハ乃〓
リ〓」ダケヲ論ゼラレマスガ、「カロリーㄴ
ダケデハアリマセヌ、灰分ト水分ヲ十分ニ
檢討ヲ加ヘテアル、灰分ガ百分ノ十以內、
附著水分ガ百分ノ三以內、「カロリー」ハ六
千八百「カロリー」以上、是ガ一等炭デス
併シナガラ石炭ニ助成金ヲ瓲當リ五圓ヤル
ト云フコトニスルト、出テ來ル石炭ハ恐ラ
ク選炭ナドヲ行ハナイデ、所謂土塊ナドガ
混ツテ來ルノヂヤアリマセヌカ、サウ云フ
助成ヲ行フ結果ハ、石炭ノ質ハ一層低下シ
テ行キマス、但シ斯ウ云フ答辯ナラ私ハ求
メマセヌヨ、ソレハ「カロリー」ヤ、品種ヲ
試驗シテ助成金ヲヤルカラ心配ナイト仰シ
ヤルナラバ、私ハ肯定致シマセヌ、何故ナ
ラバ此ノ多量ノ石炭ノ中、分析試驗ニ持ツ
テ行ク石炭ハ、水洗ヲシ選炭ヲ施シテ十分
ナ質ノモノヲ持ツテ行クデアリマセウ、併
シナガラ本當ノ取引ヲ行フ何百万瓲、何千
万瓲ノ石炭ニ一々サウ云フ檢査ガ出來ルモ
ノデハアリマセヌ、政府ハドウモ一面ニ於
テ購買力ノ吸收ヲヤルト言ツテ大キナ增稅
ヲ行ヒ、一面ニ於テハ此ノ助成金ヲ呉レテ
ヤツテ、通貨ノ膨脹ヲ圖リ購買スル人ノ
懷ロカラ其ノ金ヲ五圓上ゲテヤツテ拂ハ
ス、十圓上ゲテヤツテ拂ハスノナラバ、或
ハ通貨ハ膨脹シマセヌデセウ、政府ガ助成
スルト云フ通貨ハ、稅金カラ取上ゲルノニ
アラズシテ、何カ特別會計ニ依ルニセヨ、
普通會計ニ依ルニセヨ、是等ハ何レハ公債
ニ財源ヲ求メラレルモノデアルト考ヘナケ
レバナラヌノデアリマス、公債ニ財源ヲ求
メテヤルコトハ卽チ通貨ノ膨脹デアリマ
ス、一方ニ於テハ通貨ノ囘收ヲ圖リ、極力
膨脹ヲ制止シ、一方ニハ政府自ラガ通貨ノ
膨脹ヲ圖ルヤウナ政策ヲ執ル、一體一貫セ
ル主義政策ト云フモノハ現內閣ニハナイノ
デアルカ、之ヲ一ツ明瞭ニシテ戴キタイト
思フノデアリマス(拍手)
ソレカラ統制經濟ノコトデ御伺シタイノ
デアリマスガ、後ニ廻シマシテ、內務大臣
ニ二點バカリ御尋スルコトガアリマス、內
務大臣ニハ今池本サンカラ御述ニナリマシ
タ要綱ノ中デ御答辯ガアリマシタガ、私
ハ十分會得出來マセヌカラ拜承シタイト思
フノデアリマス、今囘ノ稅制ノ改革ニ依ツ
テ地方ノ稅源ハ悉ク中央ニ取上ゲラレタノ
デアリマス、殆ド獨立ノ稅源ト云フモノハ
地方ニハ是デ無クナツタノデアリマス、然
ルニ從來ノ例ニ依ツテ見ルト云フト、國家ガ
色々ナ法律ヲ作ツテ地方ノ自治團體ニ强制
スル施設ハ、洵ニ數限リナク枚擧ニ遑ガナ
イ程澤山アルコトハ御承知ノ通リデアリマ
ス、ソコデ地方ハ從來ドウヤツテ居ルカト
云フト、國庫ノ助成若タハ補助ヲ貰ウテ足
ラザル所ハ悉ク起債ニ依ツテ居ツタノデア
リマス、國民ガ負擔スルコトハ國債デアラ
ウト、地方債デアラウト私ハ同ジダト思フ、
國債ト地方債トハ別々ノ人ガ負擔スルノデ
ハナイ、同ジ國民ガ負擔ヲスルノデアリマ
ス、財源ヲ取上ゲタ以上ハ、國家ハ今後法
律ニ依ツテ地方ノ自治團體ニ强制スル必要
ナ經費ハ、悉ク國家ガ負擔スルコトハ、勿論
御覺悟ニナツテ居ルコトトハ思ヒマスガ、
念ノ爲ニ拜承致シテ置キタイノデアリマス、
內務大臣ニ對スル今一點ハ、內務大臣ニ對
スルト云フヨリ、分與稅ノ分與方法ノコト
デアリマス、大體我黨ガ多年主張シテ居ツ
タ所ノ地租及ビ營業收益稅ガ形ヲ變ヘテ地
方ニ委讓ヲサレルヤウニナツタコトハ私
ハ洵ニ可ナリ、卽チ結構デアルト考ヘマス、
併シ吾々ガ主張シテ居ツタノハ地租ト營
業收益稅ハ、其ノ稅源ヲ地方ニ委讓シテ貰
ヒタイト主張シテ居ツタ、政府ガ之ヲ中央
ニ取上ゲテシマツテ、之ヲ又分ケテ吳レル
コトハ、必ズシモ地方ノ發展ヲ策スル所以
デハアリマセヌ、私ハ此ノ點ニ疑ヲ持ツテ
居ルコトガ多々アルノデアリマス、此ノ取
上ゲタ地租及ビ營業稅-今度ハ營業收益
稅ト言ハズニ營業稅デアリマス、斯ウ云フ
二ツノ稅金ヲ取上ゲテ、政府ハ其ノ分與ノ
方法ハ近ク此ノ議會ニ法律ヲ出スト仰シヤ
ルノデアリマスガ、法律ニハ一體ドウ云フ
分與ノ方法ヲ御決メニナツテ居リマセウカ、
若シ夫レ從來ノ法律ノ如ク分與ノ方法ヲ悉
ク勅令ヤ省令ニ御讓リニナツタノデハ
向法律甲斐ガナイト私ハ思フ、ソレガ又勅
令ヤ省令ニ依ツテ、政府ノ官僚ノ手ニ於テ、
其ノ實情ニ卽セザル分與ノ方法ガ實現スル
虞ガアリ、其ノ虞アル結果ハ、地方ノ自治
團體ノ當局ハ、中央ヤ地方官廳ニ又日參シ
ナケレバナラヌヤウナ結果ニナルノデアリ
ママ、此ノ分與方法ノ點ヲ明白ニ法律ヲ以
テ規定ガアリタイト思ウテ居ルノデアリマ
スガ、ドウ云フ風ナ內容ニナツテ居ルカ、
アナタノ御手許デ分ツテ居ルノデアルカラ、
之ヲ明瞭ニシテ戴キタイ、何故ナラバ斯ウ
云フ風ニ考ヘナケレバナラヌ、今ノ政府ノ
考ヘテ居ルノハ附加稅、或ハ今ノ稅ノ上ル
所ニ必ズシモ分與ヲ多ク與ヘナイ、多ク上
ル所ノモノヲ取ツテ、サウシテ少ク納メタ
所ノ方ニモ之ヲ公平ニ分配シテヤラウト云
フ趣旨デアルト、答辯ガ出來テ居ルノデア
リマスガ、若シサウデアルナラバ、サウ云
フ多ク稅ノ上ル所ノ自治團體ハ、多クノ施
設ヲシナケレバナラヌノデハアリマスマイ
カ、人口ニセヨ、上水道ニセヨ、下水ニセ
ヨ、有ユル自治團體ノ費用ヲ以テ行フ施設
ガ、ソレダケ多ク要ルノデアリマス、人口
ガ多イカ、事業ガ多イカ、何カノ理由デ左
樣ナ稅源ヲ多ク持ツテ居ルノデアリマス、
其ノ稅源ヲ中央ガ取上ゲテ、此ノ施設ダケ
ハ其ノ地方ハ依然トシテヤラナケレバナラ
ヌ、併シ分與シテ貰フ金ハ、自分ノ所カラ
納メタモノヨリモ、貧弱町村ニ廻ツテ行ク
ダケ、ソレダケ少ク玆ニ分與サレルノデア
リマス、其ノ地方ハ非常ニ困ツテ來ルヤウ
ナ結果ニナルト私ハ考ヘル、共存共榮デア
ルトカ、或ハ又サウ言ハズニ、今日政府ノ
此ノ稅ノ立テ方ヲ私ハ見テ居ルガ、兎角漸
進的ノ共產主義ニカブレテ居リハセヌカト
云フ虞ヲ十分ニ持ツテ居ル、有ル所カラ取
上ゲテ無イ所ニヤル、有ル所ハ殘リノ事業
ヲ行フ爲ニハ又起債ヲスルノデアリマスカ、
ドウ云フ方法ヲ執ルカ、而モ國ノ產業ヲ發
達サス爲ニハ、工場ノ誘致トカ、事業ノ誘
致ハ、努メテ地方ノ自治團體デハ運動マデ
シテヤツテ居ルノデアリマス、サウヤツテ
行ク結果ガ、地方モ良クナリ、國モ良ク
ナルモノデアルト考へテ居ルノデアリマ
スガ、若シ政府ガ今度ヤラウト云フ方
法ニ依ルト、折角左樣ナ事業ヲ地元ニ
誘致シテ、盛ニシテ稅源ヲ作ツテ見タ所デ、
ソレハ悉ク中央ニ取上ゲラレテ、中央ガ分
與シテ吳レル時ニハ、納メタ稅額ヨリモ少
ク分與スルト云フ風ニナルト、事業ノ誘致ナ
ドハ努メテ今後避ケナケレバナラヌヤウ
ナ狀態ニナル虞ガアルノデアリマス、斯ウ
云フ點ニ關シテハ內務大臣ハドウ御考ニナ
リマセウカ、一ツアナタノ御考ニナヅテ居
ル所ヲ極ク率直ニ承リタイト思フノデアリ
マス
後戾リヲシテ條文ニ入ツテ大藏大臣ニ要
所要所ヲ、一ツ御尋ヲシテ見タイト思ヒマ
ス、營利法人トカ特別營利法人ナドニ向ツ
テハ別デアリマスガ、個人ニ向ツテ今囘所
得稅ヲ二重ニ課セラレル理由如何ト云フコ
トデアリマス、分類所得稅ト云フモノデ-
應取ツテ置キ、又二重ニ綜合所得稅ト云フ
モノヲ御取リニナルノハドウ云フ建前カラ
デアルカ、又私ノ見ル所デハ從來ハ事業家
ハ營業收益稅ト、第三種ノ所得稅ヲ納メテ
居レバ宜カツタノガ、今度ハ營業稅ト分類
所得稅、綜合所得稅ト、一ツノ所得ニ對シ
テ直接三ツノ稅ヲ設ケラレタノデアリマス、
唯ソレハ營利法人ニダケハサウナツテ居リ
マセヌ、個人ニダケ二重ノ所得稅ヲ課セナ
ケレバ衡平ガ期セラレヌト云フ所ヲ、私ハ
聽ケバ宜シイノデアリマス、個人ニダケハ一
ツノ所得ニ對シテ、一一重、三重ノ所得稅ヲ
課セナケレバ-少クトモ營利法人ヨリ一
段階多クノ所得稅ヲ課セナケレバ、公正ガ
期セラレヌト云フ理由ヲ私ハ拜承致シタイ
ノデアリマス
次ハ昨日モ論ゼラレタノデアリマスガ、
大藏大臣ノ御答辯デハ、私ハドウモ腑ニ落
チナカツタ點ガアル、卽チ所得稅法ノ第三
十條ニ元本ヲ得ルニ要スル負債ノ利子ハ控
除スル、其ノ具體的ノ答辯ニハ、株劵ヲ擔
保ニ入レテ借リタ負債ノ利子ハ控除スルト
云フヤウナ意味ノ御答辯ガアツタノデアリ
マスガ、私ハ此ノ點ガ肯定ヲ致シ兼ネルノ
デアリマス、株劵ヲ買フ爲ニ借リタ負債ノ
利子デアルカドウカト云フコトハ、何ヲ以
テ當局ハ御見別ケニナルノデアリマスカ、
株劵ヲ擔保ニ入レズニ借リタ負債ハト仰シ
ヤルガ、株劵ヲ擔保ニ入レタ金ハ必ズ又株
劵ヲ買フデアリマセウカ、株劵ヲ擔保ニ入
レタ金コソ土地トカ建物トカ、船舶、山林、
有ユル方面ニ使途ハアルデハアリマセヌ
カ、而モ株劵ヲ擔保ニ入レテ借リタ金ハト
仰シヤツテモ、·アナタモ實業界ノ御出身デ
アリマセウカラ、能ク御承知ダト思ヒマス
ガ、株劵ヲ擔保ニ入レテ借リタモノハ、其
ノ株劵ノ代金ヲ拂ツテ名義ノ書換ヲ行フ、
委任狀ヲ添付シテヤラナケレバ銀行ハ金ヲ
貸シテ吳レマセヌ、前貸ヲサシテ吳レヌコ
トハ御承知ノ通リデアリマス、其ノ株劵ヲ
擔保ニ入レテ借リタ金ノ利子デト云フヤウ
ナコトハ、到底行ヒ得ラレヌコトデアルト
私ハ考ヘル、株劵ヲ擔保ニ入レテ金ヲ借リ
テ買ツタ代金デアルト、ドウシテ肯定ガ出
來マスカ、ドンナ偉イ人ガ出テ來テモ、株
劵ヲ擔保ニ入レテ銀行カラ先借ヲシテ株ヲ
買ウテ來ルト云フコトノ出來ナイコトハ、
是ハ今日ノ實情デアリマス、否ズツト前カ
ラ其ノ仕來リデアル、若シ株劵ヲ擔保ニ入
レテ借リタ金デ他ノ株劵ヲ買フナリ、他ノ
株劵ノ增加ヲ圖ルカ、或ハ他ノ不動產ニ之ヲ
投資スルカ、若シ假ニ他ノ不動產ニ投資シタ
リ、或ハ他ノ動產ニ其ノ金ヲ投ジタ時ニハ、
其ノ關係ノナイ負債ノ利子ヲ、然ラバ控除
シテヤルコトニナルノデアリマスカ、私ハ
從來二割ノ輕減ヲヤツテ居ツタ時ノ方ガ、
是ヨリハ餘程宜イト思ヒマシタ、一層引ク
ノナラバ、此ノ前年來屢〓論ゼラレテ居ルヤ
ウニ、負債ノ利子ハ株劵ヲ買フ爲デアラウ
ガ、然ラザルモノデアラウト、ソレハ悉ク
負債ノ利子ヲ所得稅ヲ決定スルニ當ツテハ、
差引イテヤルノガ當然デアリマス、サウス
ルコトニ依ツテ產業界ニ多少ナリトモ私ハ
爲ニナルコトデアルト考ヘル、今日ノヤウ
ニ此ノ高率ナル稅ヲ今度課ケテ行クノデア
リマスガ、時節柄、時局柄已ムヲ得ナイコ
トデハアルカモ知レヌガ、此ノ高率ナル稅
ヲ納メテ行ク上ニ、只今ノ銀行カラ金ヲ借
リテ株劵ヲ得ル、或ハ株劵ヲ得ズニ、御承
知ノヤウニ會社デモ必ズシモ株式會社ニ決
ツテ居リマセヌ、產業ヲ行フ會社ニハ株劵
ノナイ合名會社、合資會社、或ハ有限會社
等、澤山會社ノ種類ガアツテ、株劵ノ出來ヌ
專業モアル、サウ云フヤウナ事業ニ投資シ
テ行ク人ノ負債ノ利子ハ、全部引イテヤラ
ナイ時ニハ、恐ラク稅金ト銀行ニ持ツテ行
ク利子トデハ、大キナ不足ヲ來シマセウ、
殊ニアナタノ所デハ配當制限令ヲ御出シニ
ナツテ、年一割以上ノ配當ハ如何ナル場合
デモ御許シニナツテ居リマセヌ、サウスル
ト年一割ヲ貰フニハ、投資ノ額面ニ對シテ
デアリマスカラ、拂込額面ヘノ一割ヂヤナ
イ、株劵ハ五十圓ノ株ヲ六十圓デ買フカ、
百圓デ買フカ、ソレハ時ノ相場デ得ルノデ
アリマスガ、其ノ買ウタ代金ノ金利ヲ銀行
ニ拂ヒ-一面ニハ銀行ヘ利子ヲ拂ヒ、稅
ヲ拂ツテ差引何ガ殘ルト御勘定ニナルノデ
アリマセウカ、私ハ是ハヤハリ今日此ノ場
合我國ノ產業、銃後ノ產業ハ出來ル限
リ-擴充ハ出來ヌデモ維持シテ行カナケレ
バナラヌト考ヘルノデアリマス、今日生產
擴充トカ、產業ノ發達發展トカ云フヤウナ
コトハ、望ンデ得ラレヌ社會ノ實情デアル
カラ、現在ノ產業ヲ維持シテ行ク爲ニモ、
此ノ點ハ深キ考慮ヲ要スルト思フガ、大藏
大臣ハ昨日ノヤウナ答辯デナク、實際ノ社
會ニ於ケル狀態ヲ基トシテ、御答辯アラン
コトヲ希望致シマス
次ニ是ハ極ク簡單デアリマス、足·
屢〓從來ノ增稅ノ委員會デ論ゼラレタガ、
所得稅ノ調査委員會ノ權能ノコトデアリ
さい、現在ノヤウナ諮問機關デアルナラ
バ、有ルハ無キニ優ル、卽チ無用デア
ル、手間暇潰スダケノコトデアツテ、結
局ハ稅務署ノ思ヒガ儘ノ稅金ヲ課シテ行
クノデアルカラ、何ノ效果モナイ、決議機
關トシテ此ノ所得調査委員ト云フモノノ權
能ヲ、十分ニ認メテヤル調査委員會デナケ
ラネバ效果ガナイ、隨ツテ機會ガアレバサ
ウ云フ方法ニ改メラレタイト云フ希望ノ議
論ガアツタコトハ、今ノ大藏大臣モ御承知
デアラウト思ヒマスガ、書記官長ノ石渡サ
ンナドハ能ク御承知ノ筈デアリマス、ソレ
ガ今回ヤハリ實現致シテ居リマセヌ、是一
ドウ云フ譯デアルカ
次ハ昨日モ論ゼラレテ居ツタヤウニ私ハ
聞イテ居リマシタガ、是亦大藏大臣ノ答辯
ハ私ハ肯定致シ兼ネルノデアリマス、相續
稅ノ問題デアルガ、今囘ハ最高ノ千分ノ五
百五十ニナツテ居ルノデアリマス、此ノ千
分ノ五百五十ノ徵稅ヲサレレバ、恐ラク其
ノ人ハ一錢一厘モ後ニ殘ル財產モナイ、卽
チ遺產相續、家督相續、是等ハ御承知ノ通
リニ稅務署ガ其ノ人ノ持ツテ居ル土地、建
物株劵、有ユル動產、不動產ヲ稅務署ガ
勝手ニ評價スル、評價委員會ガアルノデモ
何デモアリマセヌ、勝手ニ評價ヲシテ、オ
前ノ財產ハ是ダケニナルト言ツテ、ソレニ
對シテ此ノ稅率ヲ課ケテ行クノデアルガ、
斯樣ナコトヲシテ行ク場合ニハ、恐ラク百
圓ノ財產カラ五十五圓ノ稅金ヲ納メルノダ
カラ、マダ四十五圓殘ルト云フ勘定ガ出テ
來マセウ、私ハ恐ラク是ハ全財產ヲ賣拂ウ
テモ、此ノ稅額ヲ得ルコトハ困難デアルト
考ヘマス、今日マデデモ屢、ソレハ實現シテ
居リマス、主稅局ノ方々ハ知ツテ居ラナケレ
バナラヌ、此ノ相續稅ヲ拂フ爲ニ破產ヲシ
テ困ツテ居ル人ガ澤山アル、ヨウ納メナイ
人ノアルコトモ御承知デアリマセウ、斯ウ
云フ風デアルカラ、殊ニ我國ハ日本主義デ、
卽チ我ガ國ノ家族制度ノ美ヲ益〓發揮シテ行
カウト云フヤウナコトヲ朝野ノ人々ガ言ツ
テ居ル時ニ、獨リ稅務當局ダケハ、二代三
代ト續カセナイヤウニシテ行クコトガ、國
家ノ爲デアリ、家族制度ノ爲デアルト御考
ニナツタノデアリマス、殊ニ私ハ斯ウ云フ
コトヲ許セバ、稅務署ノ過當評價ガ多少デ
モ寛ニナルト思フノハ、英吉利ナドガヤツ
テ居ルヤウニ物納ノ制度ヲ認メル、評價シ
タ價格ガ、若シ本當ノ市場ノ實價ヨリモ高
イ場合ハ、納稅者ハ其ノ物ヲ以テ稅ヲ納
メル、サウスルト政府當局ノ人ハ斯ウ云
フコトヲ言フ、英吉利ニ於テハ物納ヲ認
メテ居ルガ、サウ物納ハナイ、何故ナイナ
ラバ物納ガ來テハ困ルカラ、成ベク實際ノ
價格ト同等ニ、或ハソレ以下ニ評價シ
テ行クカラ、物納ヲ申出デル者ガナイ、
日本ニ於テモ物納ノ制度ヲ認メタナラバ、
今日ノ過當ノ評價ハ改マルコトデアラウト
考ヘラレルノデアリマス、然ルニ何囘稅制
ノ改革ヲヤツテモ、幾囘是ガ論ゼラレテ居
ツテモ、相變ラズ此ノ物納ヲ認メナイヤウ
ナ稅制ガ又出テ來タ、ソレハ如何ナル譯カ、
ヤハリ過當ノ評價ヲヤリタイ爲デアルト云
フヨリ外ニハ、私ハ考ヘヤウガナイ、若シ
過當ノ評價ヲセヌト云フナラバ、物納ヲ認
メタカラトテ、政府ハ惧ルルコトハナイデ
ハアリマセヌカ(拍手)此ノ點ハドウ御考ニ
ナルカ、承リタイノデアリマス
尙ホ最近ノ社會問題ノ一番大キナ問題
ハ、住宅ノ拂底デアリマス、此ノ住宅ノ拂
底ノ時ニ建築稅ト云フ新タナ稅法ヲ設ケ
タ、一ツノ獨立稅法ヲ設ケテ、此ノ小サナ
一万圓カラノ建築ニ對シテ課稅ヲシヨウト
云フ問題デアリマスガ、一體今日ノ一万圓
ハ大體建築材料、及ビ勞銀ノ上ツテ居ルコト
カラ考ヘテ見マスト、事變前ノ三千圓ノ程
度ノ家ニ相當致シマセウ、其ノ程度ノ家ニ
此ノ高率ナ建築稅ヲ課ケテ行ク、私ハサウマ
デセヌデモ、一體家賃ハ事變前ノ所デ、釘付
ニシテ置イテ、サウシテ家主ノ負擔トナルベ
キ所ノ所得稅、家屋稅、受益者負擔稅ト、
隨分事變以來增稅ニ增稅ヲ重ネラレテ、家
主ノ負擔ハ相當ヒドクナツテ居リマス、ヒ
ドクナツテ居ル證據ニハ更ニ此ノ住宅ノ建
築ヲスル、所謂貸家ヲ建築スル人ガナイデ
ハアリマセヌカ、貸家ヲ建築スル者ガ居ナ
イカラ、今日ドン〓〓人口ノ增加シテ居ル
都市デハ住宅難ヲ來シテ居ルコトハ、御承
知ノ通リデアリマス、政府デモ眞先ニ立ツ
テ、十分ニ是ガ新築ヲシテ、此ノ住宅ノ緩
和ヲ御圖リニナルナラバ、洵ニ結構デアル
ト思フガ、ソレモ爲サラズ、サリトテ家主
ニ持ツテ行ツテ、建築ヲサスヤウナ方法ヲ
モ御採リニナラヌノミナラズ、今度ノヤウ
ナ、是等ノ小サナ家屋ニ對シテ重稅ヲ課シ
テ、建築ヲ困難ナラシメヨウト云フコトガ、
住宅ヲ一層困難ニ陷レルコトデアリマス、
私ハ起案者ガ此ノ點ノ緩和ヲ御考ニナツテ
居ルノデアルカ、甚ダ失禮ナコトヲ言フヤ
ウデアリマスガ、稅金ハ上ツテ家主ノ負擔
ハ多クナツテモ、吾等ハ月給取ダカラ家賃
ガ上リサヘシナケレバ宜イト云フ御考カラ
此ノ案ヲ起シテ居ルカラ、左樣ニナツテ居
ルノダト思フ(拍手)ソレヨリ外ニ考ヘヤウ
ガナイ、家主ノ修繕費ノ如キハ、事變前ノ
三倍四倍ニナツテ居ル、是等ガ上ツテ居ツ
テモ家賃ヲ上ゲテハナラヌ、釘付デアル、
ソレデハ家主ノ立チヤウ筈ガナイ、家賃ガ
多少上ツテモ住宅ノ緩和ガ出來タ方ガ、全
體ノ國民ノ利益デハナイカト云フ所ニ、御
考ガ及バヌノデアリマセウカ(拍手)
ソレカラ此ノ次ハ支那事變ノ特別稅及ビ
臨時利得稅ハ、御承知ノ通リ臨時稅デアル、
支那事變ガ濟ンデ一年シタナラバ斯ウ云フ
モノハ廢止シヨウト云フ稅ノ主義デアル、
ソレガ今度ハ悉ク恒久稅ニ變ツタ、今度ノ
稅法ニ依ルト此ノ臨時稅法ガ悉ク恒久稅ニ
何等ノ說明モ加ヘズシテ變ツテ居ルガ、洵
ニ不親切ナヤリ方デアルト思フ、支那事變
ガ濟ンダラ此ノ稅ハ取止メルト云フ、其ノ
支那事變ノ濟ム所ハ何處デ線ヲ引クカ、卽
チ支那事變ガ濟ンダト云フコトハ大體明確
ニナルカラ、ソコノ線カラ一年後ニ此ノ稅
ヲ廢止シヨウト云フコトノ稅デアル、此ノ
稅ガ今度ハ恒久稅ニイツノ間ニカ變ツテシ
マツタ、是ハドウ云フ譯ダ、今一ツ杜撰
ナ-杜撰ナト言フト甚ダ失禮デアリマスガ、
私カラ見レバ此ノ稅法ノ中ノ杜撰ナ所ヲ申
上ゲル、其ノ積リデ御聽ヲ願ヒタイ、酒稅
法ノ第五十條ニ何ト書イテアルカト云フト、
酒ニ持ツテ行ツテ、水以外ノ物ノ混入ハ政
府ノ許可ヲ要ス、水ダケハ幾ラ混入シテモ
宜イト書イテアル(拍手)今日ノ酒ハ、是ハ
大藏當局ニ一人モ酒呑ガ居ラヌト云フ譯デ
ハアリマスマイ、酒ニ水ガ混ツテ居ルト云
フヨリ、水ニ酒ガ混ツテ居ル、今日ノ酒ハ
決シテ從前ノヤウニ酒ニ水ヲ割ルニアラズ
シテ、水へ酒ヲ割ツテ居ル、是ハ御承知ノ
通リデアル、此ノ元モ子モ要ラナイ、所謂
稅金モ課ラヌ、米モ要ラヌ此ノ水ニ持ツテ
行ツテ、斯ル多額ナ金ヲ國民ニ消費サスコ
トハ、ヤハリ購買力ノ吸收ヂヤト仰ツシヤ
ルノデアリマセウカ、ドウ云フ譯デ斯ウ云
フ水ニ大變ナ金ヲ拂ハスヤウナコトヲス
ルノカ、私ハ進ンデ「アルコール」ノ精分ナ
ドハ此ノ際取締ツテ、何つパーセント」
以上ノモノヲ以テ日本酒類ダト云フヤウ
ナ明瞭ナコトヲ、ヤツテ欲シイト思ヒマス
ガ、水ハ幾ラ混ゼテモ宜イト云フヤウナコ
トヲ、奬勵ノヤウナ酒稅法ノ第五十條ヲ、
私ハ甚ダ遺憾ニ考ヘテ居ル、斯ウ云フヤウ
ナ法律ハ私ハ贊意ヲ表シ兼ネル、而モ低物
價政策ヲ主張シテ居ル政府ガ、水ニ持ツテ
行ツテ一升三圓四圓ノ金ヲ拂ハスヤウナ計
畫ヲ御立テニナルト云フコトガ間違ツテ居
ル(拍手)
モウ一ツ杜撰ナ所ヲ御尋申上ゲタイ、狩
獵稅ノ中ニ一等二等三等ノ鑑札ノ區別ガシ
テアル、成程從來モ其ノ通リデアル、併シ
ナガラ今度出來ヌコトガ一ツ私ハアルト思
フ、一等ハ綜合所得稅ヲ納メル人ニ鑑札ヲ
ヤル、二等ハ分類所得稅ヲ納メル人、三等
ハ所得稅ヲ一切納メナイ者ニ三等ノ鑑札ヲ
ヤル、標準ハ之ヲ否ムモノデハナイ、標準
ハ宜シイガ、一體分類所得稅ノ納稅者ハ誰
ガ決定スルカ、分類所得稅ハ御承知ノ通リ
殆ド其ノ大部分ハ源泉課稅デアリマス、源
泉課稅デアル限リ、市町村役場ハ之ヲ知ル
コトガ出來マセヌ、然ルニ鐵砲ノ鑑札ヲ受
ケル時ハ、市町村役場ノ納稅證明ヤ其ノ他
ノ證明ヲ得テ、警察デ取ルデハアリマセヌ
カ、分類所得稅ノ納稅者デアルヤ否ヤハ、
ドウ云フヤウナ所デ決メテオヤリニナルノ
カ、玆ニ如何ナル名人ガ出テ來テモ、分類所
得稅ヲ證明スル市町村ハ、今ノ法律ノ建前
デハ出來ナイ、支拂人ガ違フ、源泉所得稅
デアリマスカラ、ソレハ支拂人ガ違ツテ居
ルカラ、出來ヨウ筈ハナイ、此處マデハ大
藏大臣モ御讀ミニナツテ居リマスマイ、前
ノ方ダケダラウト思フガ、此ノ邊モ肝腎ナ
所デス(拍手)
農林大臣ニ一ツ御尋申上ゲタイノデアリ
マスガ居ラレナイ、ドウゾ農林大臣ニハ、ド
ナタカ農林省ノオ役人ガ出テ居ラレマセウ
カラ、書取ツテ置イテ、此處ニ出席シテ答
辯シテ貰ヒタイト思ヒマス、今囘ノ課稅ニ
於テ特別法人、卽チ產業組合ニ課稅スルヤ
ウニナツテ居リマス、私ハ此ノ產業組合ニ
課稅ヲスルト云フノガ、ドノ程度ノ產業組
合ニ課稅ヲスルノカ、所謂全部ノ產業組合、
商業組合、工業組合、縣聯合會、國ノ聯合會
ト云フ方面全部ニ課稅ヲスルヤウニナツテ
居ルコトニ對シテ、農林大臣ハ同意ヲ與ヘ
ラレタノカ、與ヘラレタレバコソ提案シテ
居ルト言ハレルデアリマセウ、サウスルト
私ノ聽キタイノハ、私ハ斯ウ考ヘテ居ル、
實情ヲ多少知ツテ居リマスカラ、產業組合
ノ所謂國ノ聯合會、卽チ全產聯デアルト
カ全購聯デアルトカ或ハ縣聯合會デア
ルトカ云フヤウナ所ガ、有價證劵ノ保有ト
カ、色々ナ事業ヲ行ツテ、商工業者以上ノ
事業ヲ行ツテ居ルカラ、可ナリナ收益モ擧
ツテ居リマセウガ、地方ノ町村ニアル產業
組合ノ單一組合ニ對シテ、今日果シテ稅ヲ
課ケラレルダケノ餘裕ガアリト農林大臣ハ
御考ニナツタデアリマセウカ、私ハ地方ノ
農村ナドノ產業組合ハ、決シテアノ數字ニ
現ハレテ居ルヤウナ利益ハ擧ラヌト思フ、
利益ガ擧ツテ居ラヌノニ何故ソレナラバ考
課狀ニ、決算報告ニ利益ガ擧ツタヤウニ書
イテ居ルカ、ソレハ本當ノ產業組合ノ內容
ヲ、ソレ〓〓檢討致シマシタナラバ、相當
貸倒レモアリマス、或ハ其ノ他ニ手持商品
ナドノ下リモ喰ツテ居リマス、併シナガラ
本當ノ決算ヲ現ハスト、預金ト云フモノヲ
吸收スルノニ大キナ關係ガアルノデアリマ
ス、此處ガ「デリケート」ナ所デアル、ガツ
チリシタ決算ヲヤツテ整理シタイガ、整理
ヲシタナラバ損失ヲ計上シナケバレナラヌ、
損失ヲ計上スルナラバ預金ノ取付ニ遭フ虞
ガアルシ、預金ガ今後取レヌ虞モアル、斯
ウ云フ幾多ノ惱ミヲ持ツテ居ルノデアリマ
スカラ、此ノ產業組合ノ、少クトモ地方ノ一
番一線ニアル產業組合ニ對シテノ課稅ハ、餘
程ノ考慮ヲ要スルト私ハ考ヘル、併シナガ
ラ農林大臣ハ御同意ニナツテ居ルノデアリ
マスカラ、此ノ點ハドウ御〓究ニナツテ、
課稅シテモ宜イ、漸ク今產業組合ト云フモ
ノハ成長ノ域ニ達シ、靑年期ニ達シタモノ
デアリマス、ソレニ直グ此ノ重壓ナル稅ヲ
課シテ、此ノ發達、發展ヲ阻止スルコトガ、
地方發展ノ爲ニ適正ナルコトデアラウカド
ウデアラウカ、非常ナル考慮ヲ要スル問題
デアラウト考ヘルノデアリマス(拍手)
最後ニ總理大臣ニ一ツ御尋申上ゲタイト
思ヒマス、私ハ米內內閣總理大臣ハ軍人ノ
御出身デアリ、サウシテ皆國民モ非常ナ信
賴ヲ與ヘテ居ルノデアリマスカラ、强イ政
治ヲオヤリニナツテ、賴リアル政治ヲオヤ
リニナツテ、國民ガ安心シテ居ラレルヤウ
ナ政治ヲ行ツテ貰ヒタイ、サウシテ此ノ內
閣ハ出來ル限リ長ク續イテ貰イタイト云フ
希望ニ變リハアリマセヌ、ソコデ私ハアナ
タニ御尋シタイノハ、現在非常ニ惡性「イ
ンフレ」ヲ恐レテ居リマス、國民全體皆恐
レテ居ル、併シナガ政府自ラモ「インフレ」
ヲ恐レルト言ヒナガラ、只今ノヤウニ色々
ナ名目ヲ設ケテ、公債ヲ發行シテ通貨ノ膨
脹ヲ圖ツテ居ラレル、私ハ此ノ場合斯ウ云
フ考ハナイカ、ソレハアナタノ常識デ御返
答ヲ願ヘバ宜イノデアリマス、現在ノ公債
政策ハ從來ノ不景氣ノ時ニヤツテ居ツタ公
債政策デアリマス、從來不景氣救濟ノ爲ニ
交付式公債ヲ發行シテ居ツタ、政府ガ印刷
シタ公債ヲ日本銀行ニ交付シ、日本銀行ハ
ソレニ依ツテ札ヲ政府ニ納メテ、政府ガ支
拂勘定ニソレヲ廻シテ居ツタ、デアルカラ
通貨ハ非常ニ膨脹シテ居ル、通貨ヲ膨脹サ
スコトハ景氣ノ囘復ノ爲ニハ宜イノデス、
景氣ノ囘復ノ爲ナラ其ノ方法ガ一番宜シイ
ガ、ゾレハ不景氣ノ時代ニ高橋大藏大臣ガ
行ハレタコトデアリマス、今日ハ通貨ガ膨
脹シテ、通貨ノ吸收ヲ急ガネバナラヌ時デ
アリマスカラ、斯ウ云フ時ニハ郵便局ノ窓
口ヤ、銀行ノ窓ロデ公債ヲ賣出スナリ、或
ハ强制保有ヲサスナリ、有ユル手段方法ヲ
講ジテ公債ト紙幣トヲ取換ヘテ、紙幣ヲ吸
收スルヤウニシタラドウカト思ヒマス、日
〓日露ノ戰爭時代ニヤツテ居ツタヤウナ公
債ノ發行方法ヲヤレバ、現在ノ如キ通貨ノ
膨脹ハ起リマセヌ(拍手)又現在ノ如キ日本
銀行ニ保有ノ公債ハ殖エマセヌ、此ノ點ハ
技術的ノ答辯ヨリモ、ソレガ宜イト思ハレ
ルカドウカ、此ノ點ガ一點ト、次ハ通貨ノ膨
脹ノ一番大キナ原因ハ玆ニアル、政府ノ方
カラ放送スル金ヨリ物ノ方ガ大切デアルト
云フ宣傳ガ非常ニ强ク發セラレル爲ニ、國
民ハヤハリ、ソコハ財產ニ執著ガアルカラ
出來得ル限リ物ヲ持ツ、物ヲ買フ、ソレガ
不動產ヤ株劵ヘノ投資テラマダ宜シイガ、
衣類デアラウト、食料品デアラウト何デモ
宜イ、手當リ次第ニ預金ヲ引張リ出シテ來
テ、物ヲ買ウテ貯藏スル慣習ガ出來テ來テ
居ル、ナゼ然ラバサウ云フ風ナコトヲ政府
ハ進ンデ宜傳シタカ、是ハ昨日來問題ニナ
ツテ居ル企畫院ト云フモノガ惡イ、企畫院
ガ、兎ニ角日本ニハ紙幣ハ幾ラデモアルカ
ラ、ソレハ心配ガナイガ、物ガ無イ、金ヨ
リモ物ガ大事ダト云フ宣傳ヲオヤリニナル
モノデアリマスカラ、國民ハソレニ對シテ、
サウカ、政府ノ一番偉イ所デサウ云フ風ニ
言フナラバ、物ハ無イノダ、物ガ無イナラ
ト云フノデ、預金ナドハ引張リ出シテ物ニ
換ヘテシマツテ居ル、然ラバ企畫院ガアツ
テ物動計畫ガ完全ニ出來テ、何等違算ヲ生
ゼヌナラバ是モアツテモ宜シイカモ知レ
文、先ヅ詳シイコトヲ言ハヌデモ御承知ノ
通リダ、企畫院ガ發表シタ數字ガ合ツタコ
トガナイ、机上「プラン」ガ實際ト合ツタコ
トガ一囘モアリマセヌ、サウシテ見ルト企
畫院ト云フモノハ無イ方ガ國家ノ爲デアル
(拍手)アルガ爲ニ物ト金トノ問題ニ大キナ
累ヲ及ボス、企畫院ガナカツタナラバ恐ラ
ク金ヨリ物ガ大事ダト云フヤウナ宣傳ヲセ
ヌカラ、今日國民ガ賣惜、買溜ナドハ致シ
マセヌ、國民ガ之ヲ勝手ニヤツタナラバ、
財界攪亂ヲスルト言ツテ引縛ルカモ知レマ
セヌケレドモ、是ハ政府自ラガヤツタノダ
カラ、ドウモ縛ツテ行ク譯エモ行カヌ、斯
ウ云フ風ナコトニ考ヲ及ボシテ見タナラバ、
今日ノ時局デ企畫院ヲ作ツテカラ以來ト云
フモノハ會社デモ、他ノ省デモ、地方廳
デモ、皆之ヲ看做ツテ、企畫課トカ、企畫
局トカ云フモノヲ設ケテ、人ヲ澤山殖シテ、
實際ハサノミ實行ノ出來ナイモノヲ拵ヘ
テ、ソレヲ國民ニ强ヒタ、斯ウ云フ眞似ヲ
ヤツタ、是ガ又國家ノ爲ニ有害ナコトト私
ハ考ヘル、此ノ際總理大臣ハ思切ツタ政策
ヲ遂行セラレナケレバ、本當ニ而モ力强イ
政治ヲ行フ賴リアル總理大臣ダト國民ニ信
賴サス爲ニハ、斯ウ云フ屋上屋ヲ架シテ居
ル有害無益ナ官廳ヲ、第一著ニ廢止セラレ
ル考ガアルカ、以上御尋申上ゲマシテ、私
ノ質問ヲ終リマス(拍手)
〔國務大臣櫻内幸雄君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01019400209&spkNum=11
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012・櫻内幸雄
○國務大臣(櫻内幸雄君) 森田君ノ御質問
ニ對シテ御答致シマス
第一ハ負擔ノ均衡ニ付テ力ヲ盡シタト言
フガ、事實ハサウデハナイデハナイカ、卽
チ五千圓以下ニ對シテハ一定ノ比例稅率デ
ヤツテ居ルノデアツテ、要スルニ極ク少額
ノ人々ニ對シテハ比較的負擔ガ重イ、其ノ
點ハドウ云フ考ヲ持ツテヤツタノカ、斯ウ
云フ御尋デアリマスガ、今囘ノ稅ニ於テ、
勤勞所得ニハ御承知ノ如ク六百圓ト云フ控
除額ヲ決メテ居リマス、又事業所得ニハ四
百圓ト云フ控除額ヲ決メテ居リマス、隨ヒ
マシテ千圓ノ人ハ四百圓ダケニ對シテ稅ヲ
負擔スルノデアリマス、ソレガ二千圓ニナ
リマスレバ千四百圓ニナルノデアリマス、
三千圓ニナリマスレバ一一千四百圓ニナルノ
デアリマシテ、其ノ負擔割合ハ凡ソ累進率
的ニナルノデアリマス、殊ニ少額ノ所得者
ニ對シマシテハ、家族控除ヲ行ツテ參ツテ
居ルノデアリマシテ、幾分ヅツ累進的ナ狀
況ニナリマスト同時ニ、少額所得者ニ對シ
マシテ負擔ノ輕減ヲ圖ツテ居ルノデアリマ
ス
ソレカラ簡易化ノ間題ニ對シテ、現在ア
ル所ノ稅法ヨリモ更ニ稅ガ增加致シテ居ル
ノデハナイカ、卽チ簡易化ニアラズシテ、
反對ノ傾向ヲ取ツテ居ルノデハナイカト云
フ御質疑デアリマスガ、從來ノ稅ノ建前ハ
繼ギハギノ稅デアリマシテ、
釋ガ出來ナイノデアリマスケレドモ、此ノ
度ノ稅法ノ改正ハ、申スマデモナク一定ノ
方針ノ下ニ定メタノデアリマシテ、隨テ此
ノ稅ガ實行サレマスト、國民全體ニ會得ヲ
シテ戴クコトガ易シイノデアリマス、同時
ニ現在ハ單行稅法ノ外ニ、臨時租稅增徵法
デアルトカ、支那事變特別稅法デアルトカ、
二段三段ノ構ヘト相成ツテ居マシテ、極メ
テ複雜難解ノモノトナツテ居ルノデアリマ
スガ、此ノ際是等ノ臨時的法規ヲ整理統合
シマシテ、ソレ〓〓各稅ニ付テ單一ノ稅法
ヲ制定スルコトト致シタノデアリマス、稅
法ノ數ノ如何ハ別問題ト致シマシテ、相當
分リ易キモノト相成ツテ居ルモノト認メル
ノデアリマス、又其ノ他法人超過所得稅ト
臨時利得稅トヲ統合致ストカ、或ハ第一種
所得稅ト法人資本稅ノ統合ヲ致ストカ、或
ハ酒類ニ對シマシテモ各稅法ノ統合ヲ致シ
マシテ、稅制ノ一定ノ基準ニ從ツテ稅ヲ課
ケルコトト相成ツテ居リマスノデ、私ハ稅
法ノ上カラ言ヘバ、簡易化シタト言フコト
ガ出來ルダラウト思ヒマス
此ノ大增稅案ヲ出スノニ、新任匆々之ニ
對スル所ノ檢討ガ不十分デハナイカト云フ
御話デアリマスガ、平素カラ此ノ稅ノ問題
ニ對シマシテハ、多少〓鑽ヲ致シテ居リマ
スト同時ニ、今囘ノ此ノ增稅案ハ御承知
ノ如ク有ユル方面ノ權威者ヲ網羅シタル所
ノ稅制調査會ニ於テ、實ニ二十八囘ノ多キ
ニ亙ツテ檢討致シタ結果ニ依ツテ出來上ツ
タモノデアリマスノデ、私ハ自分ノ觀念ト
同時ニ、今囘ノ增稅案ヲ至當ナリト認メタ
ノデアリマス
ソレカラ平年度ニ於テ約八億千四百万
中々簡單ニ解一圓、本年度六億四百万圓ノ增稅トナツテ居ル
ガ、ソレハドウ云フ風ナ關係デアルカト云
フ風ナ御話デアリマスガ、ソレハ過渡期ノ
爲デアリマシテ、此ノ期ニ跨ツタ部類ガ、舊
稅ト新稅トニ依ツテ分レル結果デアリマス
ソレカラ物品稅ノ增加ハ物價ノ値上トナ
ルデハナイカ、斯ウ云フ御話デアリマスガ、
固ヨリ增稅サレタダケ値ガ上ル結果トナリ
マセウ、併シナガラ今囘ノ物品稅ハ、所謂
奢侈的物品ニ對シテ多ク增稅ヲ致シテ居リ
マス、又國民生活ニ關係ノ薄イ方面ニ增稅
ヲ致シテ居ルノデアリマシテ、今日ノ時局
ニ於テソレ等ノ品物ヲ買ハレル人ガ、多少
ノ負擔ヲセラレルト云フコトハ是ハ已ム
ヲ得ザルコトト考ヘルノデアリマス
豫算トノ關係ニ付テ、物價ガ上ツタ、サ
ウシタラバ豫算ノ實行ガ出來ヌデハナイ
カ、斯樣ナ御懸念ノヤウデアリマスガ、豫
算ニ關係ノアル物資ノ價格ノ變動ハ比較的
少イノデアリマシテ、是等ノ點ニ付キマシ
テハ豫算ノ範圍內ニ於テ、是非共實行致シ
タイト考ヘテ居ルノデアリマス
今囘ノ增稅ニ付テハ、生產ノ擴充ニ差支
ガアツテモ差支ナイト云フ風ナコトヲ、私
ガ申シタヤウニ御話デアリマスガ、此ノ度
ノ增稅ニ付キマシテハ、生產擴充ノ方面ニ
對シテハ、出來ルダケ支障ノナイヤウニ致
スト云フコトヲ主眼ト致シマシテ、第一ニ
ハ一割以下ノ利益ノ事業ニ對シマシテハ
此ノ增稅ノ上ニ付テ十分ニ留意シテアルノ
デアリマス、生產擴充ガ今日ノ急務デアル
コトハ固ヨリデアリマス、此ノ生產擴充ニ
影響ヲ少シデモ少クスルヤウニト云フコト
ニ付キマシテハ、十分注意ヲ拂ツタ考デア
リマス
又增稅トカ或ハ節約ト云フコトニ依ツテ、
購買力ノ收縮ヲ圖ルト言フガ、ソンナコト
ハ到底出來ナイコトデハナイカト云フ風ナ
御意見ノヤウデアリマシタガ、私ハソレハ
或ル程度效果ガアル、斯樣ニ考ヘルノデア
リマス
ソレカラ個人ニ對シテ分類所得稅、綜合
所得稅、或ハ營業稅ト、三段構ヘノ課稅ヲス
ルト云フ風ニナツテ、甚ダ複雜ニナツテ居
ルガ、斯ウ云フ點ニ對シテハドウ考ヘルカ
ト云フ御話デアリマスケレドモ、御承知ノ
通リ分類所得稅ハ一般ノ所得ニ對シ課稅ス
ルモノデアリマシテ、或ル程度、卽チ五千圓
以上ノ收入ノアル人ニ對シマシテハ、之ヲ
綜合シテ相當程度ノ高率ナル課稅ヲ致スコ
トト致シマシタノハ、日本ノ今日ノ經濟上
カラ見マシテ、五千圓以上ノ收入ノアル人
ハ、今日ノ如キ時局ニ於テ相當ノ負擔ヲ願
ツテ差支ナイモノト斯樣ニ考ヘテ決定致シ
タヤウナ譯デアリマス
次ニ所得稅ノ中デ配當所得ノ中カラ二割
ノ控除ヲシテ居ルノヲ廢止シテ、而シテ株
式ヲ得ル爲ニ要スル所ノ借入金ノ利子ヲ控
除スルト云フコトニシテ居ルガ、如何ナル
場合ニ於テモ銀行カラ借金致スノニモ一度
ハ必ズ自分ノ金ヲ出シテ、ソレヲ持ツテ來
テ其ノ上デナケレバ金ヲ借リルコトガ出來
ヌト云フ御話デアリマシタガ、ソレハ大體
ニ於テ左樣デアリマス、併シナガラ現在ノ
經濟上ノ事情カラ申セバ或ル一定ノ預金ヲ
銀行ニ持ツテ行ツテ、直チニ銀行カラ其ノ
買ツタ株劵ヲ受取ル方法モアルノデアリマ
ス、何レニセヨ兎ニ角株劵ヲ擔保ニシテ金
ヲ借リタ部分ニ對シテハ、大體其ノ負債ノ
利子ヲ控除スルト云フコトハ是カラ先仕
事ヲスル人ノ爲ニモ、亦經濟界ノ實情ニモ
適合シタルモノデアルトシテ之ヲ採ツタノ
デアリマス、唯森田君ハ他ノ總テノ負債ニ
對シテ其ノ利子ヲ控除スルノガ至當デハナ
イカト云フ御話デアリマスガ、是ハ事業デ
アルトカ、或ハ其ノ利益ヲ生ム仕事ニ對シ
テ、ソレニ要スル所ノ費用ヲ引クト云フ意
味デアリマシテ、例ヘバ個人ノ家ニ於テ營
業スル爲ニ借入金ヲ致シテ居ル、ソレハヤ
ハリ借入金トシテ控除サレルノデアリマシ
テ、唯或ハ贅澤ヲスルトカ、或ハ奢侈ヲス
トルカ云フ爲ニ大キナ邸宅ニ住ムトカ何トカ
云フコトノ爲ニ金ヲ借リタトカ云フコトハ、
是ハ生產ヲ意味シナイモノデアリマスガ
故ニ、ソレ等ノ借金ノ利子マデ政府ガ控除
スルト云フコトハ適當デナイト思フノデア
リマス
相續稅問題ニ對シテ御話ガアリマシタガ、
此ノ問題ハ常ニ相當議論ノアル問題デアリ
マスケレドモ、昨日來大體ニ於テ御答辯申
上ゲタ通リデアリマス、唯物納ト云フ問題
ニ付キマシテハ、是モ多年ノ問題デアリマ
スガ、事實ニ於テ之ヲ實行スルコトハ容易
デアリマセヌノミナラズ、今日只今物納制
度ヲ實行スルト云フコトハ、其ノ實行上差
支ガアルノデアリマシテ、今囘ハ採用シナ
カツタ譯デアリマス
建築稅ニ付テノ御話デアリマスガ、建築
ガ今日足ラヌト云フコトハ吾々モ認メテ居
リマス、政府ニ於キマシテモ、小住宅ヲ建
テルコトニ付キマシテハ相當力ヲ致シテ居
ルノデアリマス、唯一万圓ト云フ家ガ今日
ノ時代カラ見レバ極メテ小サイ家デアル、
一万圓位ノ家ヲ建テルノニ稅金ヲ取ルト云
フノハ不都合ダト云フ御話デアリマスケレ
ドモ、私共ハ現在日本ノ全體ノ狀況カラ見
テ、一万圓ノ家屋ヲ御建テニナル人ハ幾分
カノ負擔ヲサレル力ガアルモノト信ジテ居
ルノデアリマス(拍手)
狩獵稅ニ於テ所得稅ヲ納メテ居ル者ニ付
テハ高クナツテ居ルガ、サウ云フコトガ實
際ニ於テ取調ガ付クカト云フ御尋デアリマ
スガ、此ノ問題ニ對シマシテハ、命令ニ依ツ
テ適當ナル方法ヲ講ジマシテ分ルヤウニス
ル考デ居リマス、大體私ノ御答ハ之ヲ以テ
終リマス(拍手)
〔國務大臣伯爵兒玉秀雄君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01019400209&spkNum=12
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013・兒玉秀雄
○國務大臣(伯爵兒玉秀雄君) 森田君ノ御
質問ニ御答申上ゲマス、森田君ノ第一ノ質
問ハ今囘ノ稅法ハ地方ノ財源ヲ涸渴セシム
ル虞ガアルト云フ御話デアリマシタガ、是
ハマダ法案ガ御手許ニ差上ゲルマデニ參リ
マセヌノデ、御心配ヲ掛ケタト思フノデア
リマスガ、先程モ御說明申上ゲタ通リ、大
體地方自治活動ヲ阻碍スルコトハナイト云
フ考デ居ルノデアリマスガ、之ヲ數字ノ方
面カラ御說明ヲ申上ゲテ見マスト一層明白
デハナイカト思フノデアリマス、地方稅ノ
總額ガ約十億三千万圓デアリマス、其ノ中
獨立財源トシテ地方ニ與ヘマシタ地租、家
屋稅、殊ニ彈力性ニ富ンデ居リマス營業稅、
此ノ獨立財源ノ收入ガ五億二三千万圓アリ
そう、ソレカラ今囘新ニ設ケマシタル市町
村民稅ガ五千万圓、雜種稅、特別稅等ヲ合
セマシテ一億圓、合計十億五千万圓ノ中ニ、
地方財源トシテ與ヘラレタルモノガ六億八
千万圓程度ニアルノデアリマス、此ノ數字
ヲ御覽ニナリマシテモ如何ニ地方ノ財源ガ
豐富ニナツタカト云フコトノ御了解ガ付ク
コトト考ヘテ居リマス
次ニ國ノ委任事務ニ關スル問題デアリマ
スガ、最近地方ノ情勢ヲ見マスルト、國ノ
委任事務ノ增加ガ著シイモノガアリ、是ガ
爲ニ地方ノ官廳ガ頗ル困難ヲ感ジテ居ル、
又財政上ニモソレガ影響ヲ及ボシテ居ルコ
トハ事實デアルノデアリマス、是等ノコト
ヲ考ヘマシテ、今囘分與稅中ノ配付稅ヲ設
ケマシタノモ幾分其ノ意味ヲ含ンデ居ルノ
デアリマスルガ、將來主義ト致シマシテ國
ノ委任事務ヲ町村ニ委ネマスル場合ニ於テ
ハ、國費ヲ以テ之ヲ分擔スルト云フ考ヲ以
テ進ンデ行キタイト思ツテ居リマス
次ニ地租營業稅等ハ地方カラ取上ゲテシ
マツテ居ルノデハナイカト云フ御話デアリ
マシタガ、是ハ全然異ツタル見解ヲ持テ居
リマスノデ、今囘地方ニ獨立稅トシテ地租
營業稅及ビ家屋稅ヲ與ヘマシタノハ地方
ニ財源トシテ之ヲ與ヘタモノデアリマスノ
デ、是ガ徵收ノ便宜方法ト致シマシテ分與
稅トシテ之ヲ取扱ツタル次第デアリマスノ
デ、其ノ稅源ハ全然地方民ニ之ヲ與ヘタノ
デアリマス、隨テ分與稅トシテ徵收致シマ
シタル此ノ三稅ノ稅額ハ、之ヲ全部地方ニ
還元スルコトニ相成ツテ居ルノデアリマ
ス、次ニ分與稅ニ付キマシテハ成ベク細カ
イ規定マデモ法律ニ於テ規定致シマシテ、
森田君ノ御心配ノナイヤウニ致シタイト考
ヘテ居リマス、最後ニ申上ゲテ置キタイノ
ハ此ノ新稅法ノ結果トシテ資力ノアル地
方ハ獨立稅ニ依ツテ其ノ事務ヲ處辨シ、貧
弱ナル町村ハ分與稅ニ依ツテ之ヲ救濟シ、
斯クシテ全國ノ市町村ガ綜合的ニ圓滿ナル
發展ヲ期シ得ルト考ヘテ居ルノデアリマス
(拍手)
〔國務大臣藤原銀次郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01019400209&spkNum=13
-
014・藤原銀次郎
○國務大臣(藤原銀次郞君) 森田君ニ御答
ヲ申上ゲマス、先以テ私ノ此ノ時局ニ對シ
テ抱イテ居リマスル所ノ考へ方ヲ申上ゲマ
シテ、同君ノ御諒解ヲ得テ置キタイト存ジ
やっ、私ハ度々此ノ壇上ヨリモ申上ゲタノ
デアリマスガ、今囘ノ此ノ時局ニ際シマシ
テ、財政經濟ノ政策ヲ樹立シテ參ルノニ
ハ、從來ノ自由主義經濟ノヤウナ考へ方デ
ハ到底之ヲ切拔ケルコトハ出來ナイ、ドウ
シテモ統制經濟、或ハ計畫經濟ト云フヤウ
ナコトデ、之ヲ切拔ケナケレバナラナイモ
ノデアルト云フコトハ繰返シテ申上ゲタ積
リデアリマス、ソコデ若シモ其ノ方針ヲ以
テ參リマスナラバ、我ガ國民ハ皆多少ノ不
便不利ト云フモノガアリマシテモ、之ヲ忍
ンデ協力シテ之ヲ突破シナケレバナラナイ
コトデアルト信ジテ居リマス、是ガ只今私
ガ考ヘテ居リマス所ノ考ヘ方デアリマシ
テ、時局以前十年若クハ五年以前ニ、森田
君ト共ニ色々經濟政策ニ付テ主張致シタ
コトナドヲ御考へ下サイマシテ、今日ノ時局
ニ際シテモ相變ラズ私ガ同樣ノ考ヲ持ツテ
居ルト云フ風ニ御考ニナリマシタナラバ、
少々私ノ考ヘテ居リマスコトト相違シテ居
リマスト云フコトヲ、玆ニ明ニ言明致シテ
置キマス(拍手)
ソレカラ又同君ニ申上ゲタイノハ、低物
價政策ヲ實行シマシテ、サウシテ生產擴充
ヲスルト云フコトハ、一寸考ヘルト容易ナ
コトデハゴザイマセヌ、併シナガラ是ハ出
來ナイコトデハアリマセヌ、否今日ノ時局
ニ於テハドウシテモ是デ行カナケレバナラ
ナイノデアリマス、ソレ故ニ吾々ノ苦心シ
テ居ル所ハ、之ヲ如何ニ運用シテ、如何ニ
實行シテ行クカト云フコトガ、私共ノ大イ
ニ苦心ヲ致シテ居ル所デゴザイマス
偖テ是カラ只今御質問ノ各論ニ入リマシ
テ御答ヲ申上ゲマスガ、先ヅ第一問ハ、今
日百圓ノ利益ニ對シテ七十五圓モ稅ヲ取ツ
a
テ居ル、斯ウ云フ巨額ナ稅ヲ取ツテ、ソレ
デ生產擴充ガ果シテ出來ルカ、資本家ハ斯ノ
如キ巨額ナ稅ヲ課セラレタナラバ、事業ヲ
擴張スルト云フ精神ガ消耗シテシマフカ
ラ、生產擴充ノ反對ノ效果ヲ爲スノデハナ
イカ、斯ウ云フ御趣意ノヤウニ承リマシ
タ、御議論トシテハ御尤モト拜聽致シマシ
タガ、又他ノ一面カラ考ヘテ見マスレバ
今日ノ時局ニ際シテ巨額ノ利益ヲ得ル者
ガ、此ノ國家ノ情勢ニ應ジテ多額ノ租稅ヲ
納メルト云フコトハ、是ハ當然ノコトデハ
ナイカト思ヒマス(「ヒヤ〓〓」)ソレ故ニ時
局產業又ハ其ノ他ノ產業ニ從事シテ、サウ
シテ時局ノ爲ニ思ヒモ寄ラナイ巨額ノ利益
ヲ得タ者ニ對シテハ、政府ガ割合ニ高率ノ
課稅ヲスルト云フコトモ、是ハ已ムヲ得ナ
イコトト信ジマス、併シサウ云フコトハ一
面カラ已ムヲ得ナイトハ存ジマスルガ、他
ノ一面ニ於テ事業經營ノ意氣ヲ沮喪セシメ
テ、生產擴充ニ妨害ヲ來スヤウナコトハ又
避ケナケレバナラナイ、森田君モ能ク御承
知ノコトト存ジマスガ、只今時局ニ直接又
ハ間接ニ關係ノアル事業ハ相當巨額ノ利益
ヲ得テ居リマス、其ノ他關係ガナクテモ一
般ニ所謂殷賑產業ト稱セラレテ、相當多額
ノ利益ヲ得テ居ルモノモゴザイマシテ、都
會ノ景氣ト云フモノハ非常ニ良好デアリマ
スガ、是等ハ要スルニ政府ノ豫算ガ相當ニ
巨額ニ上リマシテ、政府ガ案外巨額ノ購買
ヲ致シマスル、其ノ購買力ノ結果デアルコ
トハ御承知ノ通リデアリマス、是等ノ殷賑
產業ガ得マス所ノ多額ノ收入ヲ囘收シテ資
本化シテ、サウシテ生產擴充ノ資源トスル
ト云フコトガ、政府ノ狙ツテ居リマス所デ
アリマスカラ、一面ニ於テハ多少ノ苦痛ハ
アリマスケレドモ、又斯ウ云フ半面ノ生產
擴充ニ好都合ナル理由モゴザイマスノデ、
彼此レ之ヲ睨ミ合セマシテ、以テ生產擴充
ニ妨害ヲ來サザルヤウニスルト云フコト
ガ、私共ノ苦心シテ居ル所デゴザイマス、
尙又事業家ハ御承知ノ通リニ事業慾ト云フ
モノガ旺盛デアリマスカラ、之ヲ能ク指導
シテ參リマシタナラバ、續々ト此ノ生產擴
充ニ投資スル者モ出テ參リマスシ、又政府
モ其ノ方針ヲ以テ指導致シタイ考デゴザイ
マイ、其ノ次ニ是ハ度々申上ゲルコトデア
リマスガ、今日生產擴充ノ最大障碍トナ
ツテ居リマスモノハ、何ト申シマシテモ資
材ノ配給ノ圓滑ヲ缺イテ居ルコトデアリマ
ス、其ノ次ニハ勞力ノ供給ガ段々窮屈ニナ
ツテ來タコトデアリマス、其ノ次ハ資金ノ
供給デアリマスガ、此ノ第一ノ資材配給ニ
付キマシテハ度々申上ゲタ通リニ、此ノ
民間ノ平和產業ニ對シテモ成ベク資材ノ供
給ヲ圓滿ニシテ、サウシテ生產擴充ニ妨
害ニナラナイヤウニスル爲ニハ、色々關係
諸官衙ノ間デ努力ヲ重ネテ居ルノデアリマ
シテ、出來ルダケノ努力ヲシテ此ノ配給ノ
圓滿ヲ圖リタイト存ジテ居リマス
其ノ次ニ勞力ノ供給ノコトデアリマスガ、是
亦御承知ノ通リノ狀態デアリマスカラ、出來
ルダケ此ノ勞力ノ供給モ圓滿ニシタイト存ジ
テ居リマス、併シ此ノ點ニ付キマシテハ
是ハ私ノ獨自ノ考デゴザイマスガ、一寸簡
單ニ申上ゲレバ、我國ハ古來勞力ガ過剩ノ
國デアリマシテ、勞働力ガ非常ニ多カツタ
國デアリマス、ソレ故ニ總テノ事業ニ於キ
マシテ、產業ニ於テモ、諸會社ニ致シマシ
テモ、政府ニ致シマシテモ、歐米各國ニ比
較致シマスレバ、實ニ豫想以上ノ人ヲ使ツテ
居リマシテ、斯樣ニ澤山ナ人ヲ使ツテ仕事
ヲシテ居ルコトハ、恐ラク日本ハ世界デ以
テ有名ナ國デアラウト存ジマス、ソレデ吾
吾ハ今マデ我國ノ工業ノ經營ニ付テハ、成
ベク勞力ノ節約ヲシタイト云フ方針ヲ執ツ
テ居リマシタケレドモ、又一面ニ於テハ失
業者ヲ多クスルト云フコトモ國家ノ爲ニ宜
シクナイト存ジマシテ、彼レ此レ勞力節約
ト云フコトハ考ヘハ致シマシタケレドモ、
徹底的ニ之ヲ實行スル機會ガナカツタノデ
アリマス、今日ハ勞力ガ非常ニ不足ヲシテ
參リマシタ、斯ウ云フ機會ニハ是非トモ勞
力ノ節約ト云フコトヲ實行シテ、例ヘバ諸
會社銀行ニ致シマシテモ、諸官衙ニ致シマ
シテモ、出來ルダケ人手ヲ省イテ、僅カナ
人ヲ以テ多クノ仕事ノ能率ヲ擧ゲ、其ノ勞
務者ニ對シテハ出來ルダケ給與ヲ良クシテ
其ノ幸福ヲ圖ルト云フコトニシテ、歐米各
國デ盛ニ行ハレテ居リマス所ノ能率主義ノ
經營法ニ移シテ參ルト云フコトハ、今日ガ
絕好ノ機會ト信ジテ居リマス、ソレ故ニ斯
ウ云フヤウナ政策ヲ用ヒテ行キマシタナラ
バ、段々ニ勞力ノ供給ノ不足ト云フモノモ
補フコトガ出來ルヤウニナリマシテ、生產
擴充ニハ非常ナ好イ結果ヲ來スノデハナイ
カト信ジテ居リマス
尙又其ノ次ニハ學術的、技術的ニ於テモ
我國ノ產業ノ改良スベキ所ハ澤山アリマス
ノデ、漸次サウ云フ手段ヲ講ジマシタナラ
バ生產擴充ニハ少シモ心配ガナイ、益〓生產
擴充ヲ實行スルコトガ出來ルノデアル、斯
ウ云フ工合ニ信ジテ居リマス
又石炭增產ニ付テ色々ノ御說ガゴザイマ
シタ、是ハ度々申上ゲマス通リニ、成案ヲ
得マシタナラバ、其ノ節ニ何レ御協賛ヲ願
フト云フヤウナコトニ相成ルカト存ジマス
カラ、只今ハ其ノ御答辯ハ省略致シテ置キ
タイト存ジマス
尙又物品稅ノコトニ付キマシテ色々御說
ガゴザイマシタガ、是ハ殆ド全部奢侈品
ニナツテ居リマシテ、其ノ外ノ生活必需品
ナドニ付テハ、殆ド課稅セラレテ居ラヌト
申シテモ宜シイ位デアリマスカラ、是亦低
物價政策ニ餘リ大シタ影響ハナイト信ジテ
居リマス(拍手)
〔國務大臣米內光政君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01019400209&spkNum=14
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015・米内光政
○國務大臣(米內光政君) 御答ヲ致シマス、
御質問ノ第一ハ公債ノ發行方法ニ關スルコ
トデアリマスガ、能ク考ヘテ見マス、第二
ハ企畫院ノ問題デアリマスガ、企畫院ハ必
要ナ官廳デアリマスルカラ、是ハ廢止スル
考ハ持ツテ居リマセヌ
〔國務大臣島田俊雄君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01019400209&spkNum=15
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016・島田俊雄
○國務大臣(島田俊雄君) 森田君ノ御質問
中產業組合ノ課稅ニ關スル點ニ付テノ御尋
ニ御答致シマス、產業組合ニ對スル課稅ノ
點ニ付キマシテハ、產業組合ノ本質ノ上カ
ラ考ヘマシテ、相當考慮ヲスベキコトガア
ルト存ズルノデアリマスルガ、唯今日ノ時
局ノ下ニ於キマシテ、臨時當分ノ處置ト致
シマシテ、擔稅力ノアル者ガ幾分ニテモ租
稅ノ負擔ヲスルト云フ此ノ建前カラ致シマ
シテ、他ノ特別法人ト共ニ應分ノ負擔ヲ致シ
テ、財政ノ上ニ協力ヲスルト云フコトハ已
ムヲ得ナイモノデアルト云フ考カラ之ヲ認
メタ次第デアリマス、此ノ事ハ昨日大藏大
臣提案ノ理由說明中ニモ述ベタ所デアリマ
スガ、隨テ其ノ課稅ノ點ニ付キマシテハ、
必要テル經費ヲ差引キマシテ、剩餘金ノア
ルモノニ付テノミ課稅ヲスルト云フ方針ヲ
執リ、尙ホ此ノ町村區域ノ產業組合ニ付キ
マシテハ、更ニ御說ノ通リノ點ニ付キマシ
テ、擔稅力ノ點ニ付テ考慮致シマシテ、剩
餘金ノ極メテ少イモノニ對シマシテハ課稅
ヲ致サナイト云フヤウナ立テ方ニナツテ居
ル次第デアリマシテ、工業組合、商業組合、
其ノ他ノ所謂特別法人ト併セテ考ヘマシテ、
此ノ程度ノ課稅ハ巳ムヲ得ザルモノト、斯
樣ニ考ヘテ之ヲ認メタ次第デアリマス(拍
手ノ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01019400209&spkNum=16
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017・森田福市
○森田福市君 簡單デアリマスカラ自席カ
7.発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01019400209&spkNum=17
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018・小山松壽
○議長(小山松壽君) 許可致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01019400209&spkNum=18
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019・森田福市
○森田福市君 只今各大臣カラ御答辯ガア
リマシタガ、甚ダ遺憾ナガラ更ニ要領ヲ得
マセヌ、他ノ一問一答ノ機會ニ於テ明瞭ニ
致シタイト思ヒマスガ、唯大藏大臣ハ私ノ
御尋シタコトヲ履違ヒニナツテ居ル點ガ多
多アリマス、平年度ノ八億一千四百万圓、
十五年度ノ六億四百万圓ハ其ノ數字ノ算出
ノ根據ハ何ニ依ツタカト私ハ問フタノデア
リマス、アナタガ御答ニナツタノハ平年度
ト十五年度トノ差額ヲ御述ニナツタノデア
リマスガ、私ハ差額ハ問ヒマセヌ、此ノ數
字ノ生ジタ根據ヲ尋ネタノデアリマスカラ
左樣ニ御諒承ヲ願ヒタイ、其ノ他酒ノ問題
ニ對シテモ、或ハ購買力ノ吸收ニ對シテモ、
御答辯漏レガ澤山アリマス、內務大臣ハ私
ノ御尋申上ゲタ要旨ノ答辯ニハ一ツモ當ツ
テ居リマセヌ、私ハ色々ナ中央官廳ノ委任
事項ニ依ル地方ノ施設ニ對シテハ、全部國
家ガ負擔スル覺悟ガ出來テ居ルカト云フコ
トヲ御尋シタノデアリマス、アナタノ答辯
ハ前者ノ答辯ヲ其ノ儘御讀ミニナツタノデ、
私ノ質問トハ全然相違シテ居ルノデアリマ
スカラ、又速記錄デモ御覽ニナツテ機會ヲ
見テ御答辯ニナラヌト、只今ノ答辯ハ的ガ
外レテ居リマス、ソレカラ商工大臣ノ御答
辯ハ私ハ肯定致シマセヌ、是モ他ノ機會ニ
讓ツテ置キマス、總理大臣ノ答辯ノ中デ企
畫院ハ必要デアルト仰シヤツタノデアリマ
スガ、吾々モ今日、マデ必要デアラウト思ツ
テ居ツタノデアリマス、併シ必要ナ官廳デ
アルナラバ、今一番國家ノ大切テ此ノ通貨
ノ膨脹シテ居ル時ニ、金ヨリモ物ガ大事デ
アルト云フヤウナ宣傳ヲヤルコトガ良クナ
イト思フノデアリマス、ソレニ對シテハ何
ノ御返事モナサラズニ、唯企畫院ハ必要デ
アルト言ハレル、サウスルトヤハリ今放送シ
テ居ルヤウニ、物ガ大切デアツテ金ハドウ
デモ宜イト云フヤウナコトヲ繼續サセル御
考デアリマスカ、果シテサウデアルナラバ
通貨ノ膨脹ハ彌ガ上ニモ增大致シマス、此
ノ滔々タル紙幣ノ價値ノ下ルノヲ、如何ナ
ル方法ニ依ツテ御食止メニナルノデアリマ
スカ、私ハ此ノ點ハ重大ナ問題デアルト思
ヒマス、斯ルアナタノ簡單ナ考ヲ以テ片付
ケ得ラレル問題デハナイト考ヘタノデアリ
マスガ、再ビ此ノ席上デ御答辯ニナルカ、
或ハ委員會ノ席上マデニ御考ニナツテ置イ
テ御答辯ニナルカ、是ハ最モ重點ヲ置クコ
トデアルト考ヘテ居ルノデアリマスカラ、
各大臣ノ御答辯ハ滿足セザル旨ヲ申上ゲテ
質問ヲ打切ツテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01019400209&spkNum=19
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020・小山松壽
○議長(小山松壽君) 企畫院總裁ヨリ物資
動員計畫ニ付テ說明ノ爲發言ノ通〓ガアリ
マス、尙ホ之ニ對シ政府ヨリ祕密會議ヲ要
求セラレマシタ、仍テ是ヨリ會議ノ公開ヲ
停メマス、傍聽人ノ退場ヲ命ジマス
物資動員計畫ノ說明ニ關スル件
〔午後五時二十八分祕密會ニ入ル〕
〔午後六時五分祕密會ヲ終ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01019400209&spkNum=20
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021・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ヨリ會議ヲ公開致
シマス、傍聽人ヲ入場セシメマス-祕密
會議ニ於キマシテハ、企畫院總裁ヨリ物資
動員計畫ニ付テ說明ヲ聽取致シマシタ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01019400209&spkNum=21
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022・服部崎市
○服部崎市君 殘餘ノ質疑ヲ延期シ、次會
ニ之ヲ繼續スルコトトシ、本日ハ是ニテ散
會セラレンコトヲ望ミマズ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01019400209&spkNum=22
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023・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01019400209&spkNum=23
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024・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、次會ノ議
事日程ハ公報ヲ以テ通知致シマス、本日ハ
是ニテ散會致シマス
午後六時七分散會
衆議院議事速記錄第九號中正誤
頁段行誤正
一三二二一〇第四條第十條発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01019400209&spkNum=24
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