1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十五年二月二十七日(火曜日)
午後一時十分開議
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議事日程 第十六號
昭和十五年二月二十七日
午後一時開議
第一 輸出資金及輸出品製造資金融通損失補償法案(政府提出) 第一讀會
第二 臺灣私設鐵道補助法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第三 市町村義務教育費國庫負擔法改正法律案(政府提出) 第一讀會
第四 現役小學校教員俸給費國庫負擔法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第五 會計檢査院法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第六 職業紹介法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第七 委託又は郵便に依る戸籍屆出に關する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第八 昭和九年法律第四十五號中改正法律案(貿易調節及通商擁護に關する件)(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第九 裝蹄師法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十 大正十一年法律第五十二號中改正法律案(統計資料實地調査に關する件)(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
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〔左の報告は朗讀を經さるも參照の爲茲に掲載す〕
一政府より提出せられたる議案左の如し
樺太鐵道株式會社所屬鐵道買收の爲公債
發行に關する法律案
商工組合中央金庫法中改正法律案
(以上二月二十六日提出)
一議員より提出せられたる議案左の如し
一億圓懸賞發明募集に關する建議案
提出者 星一君
水産の生産擴充に關する決議案
提出者
田原春次君 杉山元治郎君
山崎釼二君 前川正一君
(以上二月二十四日提出)
輕井澤親不知間國道改修に關する建議案
提出者 羽田武嗣郎君
自治功勞章制定に關する建議案
提出者
宮本雄一郎君 山口忠五郎君
坪山徳彌君 助川啓四郎君
輔弼道確立に關する建議案
提出者 曾和義弌君
(以上二月二十六日提出)
一去二十四日議長に於て辭任を許可したる常任委員左の如し
第二部選出豫算委員 櫻井兵五郎君
第三部選出豫算委員 馬場元治君
第七部選出懲罰委員 藤田若水君
一去二十四日辭任したる常任委員左の如し
第五部選出決算委員 工藤十三雄君
一去二十四日議長に於て選定したる委員左の如し
鑛業法中改正法律案(政府提出)外一件委員
櫻井兵五郎君 澤田利吉君
中井川浩君 松尾三藏君
山本厚三君 手代木隆吉君
岡野龍一君 内藤正剛君
村松久義君 小柳牧衞君
森下國雄君 長野長廣君
卯尾田毅太郎君 山田順策君
篠原義政君 小山田義孝君
匹田鋭吉君 井阪豐光君
木暮武太夫君 久山知之君
鶴惣市君 石井徳久次君
原口初太郎君 箸本太吉君
東條貞君 松尾孝之君
依光好秋君 瀧澤七郎君
川俣清音君 松本治一郎君
加藤鐐造君 朴春琴君
小池四郎君 長谷長次君
坂本宗太郎君 岩瀬亮君
一去二十四日に於ける特別委員の異動左の如し
昭和十五年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債發行に關する法律案(政府提出)外五件委員
辭任古田喜三太君 補闕原玉重君
一昨二十六日委員長及理事互選の結果左の如し
鑛業法中改正法律案(政府提出)外一件委員
委員長 櫻井兵五郎君
理事
澤田利吉君 中井川浩君
松尾三藏君 篠原義政君
小山田義孝君 依光好秋君
川俣清音君
一昨二十六日常任委員補闕選擧の結果左の如し
第二部選出
豫算委員 眞鍋儀十君(櫻井兵五郎君補闕)
第三部選出
豫算委員 小田榮君(馬場元治君補闕)
第五部選出
決算委員 小山田義孝君(工藤十三雄君補闕)
第七部選出
懲罰委員 八並武治君(藤田若水君補闕)
一昨二十六日に於ける特別委員の異動左の如し
鑛業法中改正法律案(政府提出)外一件委員
辭任松尾孝之君 補闕森田福市君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=0
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001・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス、日程第一、輸出資金及輸出品製造資金融
通損失補償法案ノ第一讀會ヲ開キマスー
加藤商工政務次官
第輸出資金及輸出品製造資金融通
損失補償法案(政府提出)第一讀會
輸出資金及輸出品製造資金融通損失補
償法案
輸出資金及輸出品製造資金融通損失
補償法
第一條政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ銀
行ガ本法施行地内ニ住所又ハ營業所ヲ
有スル者ニ對シ其ノ者ガ振出シタル約
束手形ノ割引ノ方法ニ依リ左ノ各號ニ
揭グル資金ヲ融通シ之ニ因リテ損失ヲ
受ケタル場合ニ於テ當該銀行ニ對シ帝
國議會ノ協賛ヲ經タル金額ノ範圍內ニ
於テ其ノ損失ノ百分ノ八十ヲ限度トシ
之ヲ補償スルノ契約ヲ爲スコトヲ得
本法施行地ヨリ主務大臣ノ指定ス
ル地域ニ內地、朝鮮、臺灣又ハ樺太
ニ於テ製造(生產又ハ加工ヲ含ム以
下之ニ同ジ)セラレタル商品ヲ輸出
スル爲其ノ者ガ必要トスル資金
二本法施行地ヨリ主務大臣ノ指定ス
ル地域ニ輸出セラルル商品ヲ內地、
朝鮮、臺灣又ハ樺太ニ於テ製造スル
爲其ノ者ガ必要トスル資金
第二條前條ノ契約ヲ爲シタル銀行ガ其
ノ契約ニ基キ資金ヲ融通シタルトキハ
命令ノ定ムル所ニ依リ補償料ヲ政府ニ
納付スベシ
第三條第一條ノ損失ハ銀行ガ約束手形
ノ滿期ニ支拂ヲ受クルコト能ハザリシ
金額トス但シ補償前ニ其ノ金額ノ全部
又ハ一部ノ支拂ヲ受ケタルトキハ之ヲ
控除スルモノトス
第四條銀行ハ補償ヲ受ケタルトキハ其
ノ手形ニ付遲滯ナク手形上ノ權利ヲ行
使スベシ但シ其ノ權利ノ行使ニ要スル
費用ガ其ノ行使ニ依リテ得ベキ金額ヲ
超ユルモノト認メラルル場合其ノ他特
別ノ事情アル場合ニ於テ主務大臣ノ認
可ヲ受ケタルトキハ其ノ權利ノ全部又
ハ一部ヲ行使セズ又ハ一時行使セザル
コトヲ得
銀行ハ命令ノ定ムル所ニ依リ前項ノ權
利ノ行使ニ依リテ得タル金額ヨリ滿期
以後ノ利息及銀行ガ其ノ權利ノ行使ノ
爲支出シタル費用ヲ控除シクル殘額ヲ
政府ニ納付スベシ
第五條第一條ノ契約ヲ爲シタル銀行ガ
本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ
契約ニ違反シタルトキハ政府ハ契約ヲ
解除シ、損失ノ全部若ハ一部ニ付補償
ヲ爲サズ又ハ損失補償金ノ全部若ハ
部ノ返還ヲ命ズルコトヲ得
第六條本法ノ適用ニ付テハ商工組合中
央金庫ハ之ヲ銀行ト看做ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔政府委員加藤鐐五郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=1
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002・加藤鐐五郎
○政府委員(加藤鐐五郞君) 輸出資金及輸
出品製造資金融通損失補償法案提出ノ理由
ヲ御說明申上ゲマス、申スマデモナク輸出
貿易ノ積極的增進ヲ圖リマスコトハ刻下ノ
急務デアリマス、而シテ是ガ對策ト致シマ
シテハ幾多ノ方策ガ考ヘラレルノデアリマ
スガ、特ニ現下國際情勢下ニ於キマシテ
ハ、國內ニ於ケル輸出前ノ金融ニ可及的便
宜ヲ講ジ、之ニ依ツテ輸出業者及ビ輸出品
製造業者ガ安ンジテ海外ヨリノ註文ノ引受
ヲ爲スコトガ出來ルヤウニ致シマシテ、輸
出ノ維持促進ヲ期スルコトガ、最モ有效適切
デアラウト存ジマス、此ノ趣旨ニ於キマシ
テ、從來豫算制度ノ運用ニ依リ輸出資金融
通損失補償及輸出品製造資金〓通損失補償
ヲ施行シテ參ツタノデアリマスガ、此ノ際
此ノ兩制度ヲ法律ノ根據ノ下ニ置イテ、制
度ノ恆久化ヲ圖リ、輸出補償制度ト互ニ相
牽聯呼應セシメテ、貿易金融制度ノ整備ヲ
期シ、最近ノ國際通商情勢ニ對處シテノ我
ガ輸出貿易政策ノ遂行ニ遺憾ナカラシメン
コトヲ期セントスル次第デアリマス、何卒
十分御審議ノ上御協賛ヲ與ヘラレンコトヲ
希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=2
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003・小山松壽
○議長(小山松壽君) 質疑ノ通〓ガアリマ
ス、之ヲ許シマス-中村高一君
〔中村高一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=3
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004・中村高一
○中村高一君 只今上程ニナリマシタ輸出
資金竝ニ輸出品製造ニ對シマシテノ損失補
償法ニ付キマシテ、商工大臣竝ニ農林大臣
ニ二三ノ質疑ヲ致シタイト思フノデゴザイ
マス
今日我國ノ輸出入貿易ノ現狀ヲ見マスル
ノニ、支那事變ノ起リマシタ當初ニ於テ、
輸入ノ統制ニ其ノ重點ヲ置カレマシタ貿
易統制ハ、今日事變ノ長期建設ノ段階ニ入
リマスルト共ニ、輸出ノ增進ニ其ノ目標
ガ置カレテ居ルノデアリマシテ、軍需竝ニ
民需資材ノ輸入確保ヲ致シマスルニハ第
三國ヘノ輸出貿易ノ增進ガ必要デアルコト
ハ固ヨリデアリマシテ、ソレデアルノニモ
拘ラズ、現在ハ圓「ブロック」ヘノ輸出ガ非
常ナ勢デ大陸ニ殺到ヲ致スト云フヤウナ現
狀デアリマシテ、昨年度ニ於キマシテ圓
「ブロック」へ輸出セラレマシタモノガ十三
億六千三百餘万圓デアリマシテ、八億一千
六百万圓ニ上ル輸出ノ超過ヲ致シテ居ルノ
ニモ拘ラズ、第三國貿易ハ十四億九百餘万
圓デアリマシテ、四億三千七百万圓ノ入超
ヲ見ルト云フヤウナ狀況デアリマス、今囘
政府ガ此ノ法案ヲ提出致シマシタコトハ、
恐ラクハ此ノ第三國ニ對スル輸出貿易ノ增
進ノ爲デアルコトハ、私ガ申上ゲルマデモナ
イト存ズルノデアリマス、併シナガラ只今
政府ノ提案ノ理由ニ說明セラレマシク通リ
ニ、從來ノ昭和五年以來實施セラレテ居リ
マスル輸出補償法ハ、商品ガ船ニ積出サ
レタ後ノ損失補償デアリマシテ、商品ガ船
ニ積込マレマスルマデノ間ノ損失補償デナ
カツタ爲ニ、多クノ輸出業者或ハ製造業者
ハ、此ノ船ニ積ムマデノ間ノ金融ニ非常ナ
支障ヲ來シテ居ツタノデアリマス、併シナ
ガラ十分ナル資力ヲ持ツテ居リマスル大資
本家、輸出商ト云フヤウナモノニ對シマシ
テハ、恐ラク金融ノ困難ト云フコトハナ
カツタカモ知レマセヌ、併シナガラ此ノ船
ニ積ミマスルマデノ間ニ於テ、中小商工業
者ハ如何ニシテ此ノ輸出ノ資金ヲ得ルコト
ガ出來ルカ、或ハ製造業者ハ如何ニシテ此
ノ資金ヲ得ルコトガ出來ルカト云フコトニ
付キマシテ、非常ナ困難ヲ來シテ居ツタノ
デアリマス、一昨年ノ八月カラ此ノ制度ガ
實施セラレマシタ現今マデノ狀況ヲ中心ニ
致シマシテ、先ヅ私ハ商工當局ニ向ヒマシ
テ、此ノ法律ガ實施ヲセラレマスルトシテ、
其ノ實施ノ適用ヲセラレマスル所ノ範圍竝
ニ其ノ運用ノ方針ニ付キマシテ、先ヅ二三
ノ要點ダケ質問ヲ致シタイト思フノデゴザ
イマス
今日實際ニ於キマシテ資金ニ困ツテ居ル
中小商工業者ガ、此ノ制度ノ實施ニ依リマシテ
銀行カラ資金ノ融通ヲ受ケルノデアリマス
ガ、今日マデノ實際ニ行ハレテ居リマスル現
狀カラ考ヘテ見マスルト、政府ハ此ノ制度
ヲ作リマシテモ、唯其ノ資金ノ運用ヲ銀行
ニダケ任セテ置クト云フコトデアリマスル
ナラバ、私ハ此ノ效果ヲ擧ゲルコトハ斷ジ
テ出來ナイト思ツテ居リマス、ナゼカト申
シマスルナラバ、今日輸出ノ資金竝ニ製造
資金ヲ借リルニ致シマシテモ、現狀ハ總テ
銀行ガ其ノ調査モ致シマス、或ハ貸付額ノ
決定モ全部銀行ニ任セラレテ居リマスル爲
ニ、折角此ノ制度ガアリマシテモ、調査其
ノ他ガ全部銀行ニ任セラレテ居リマスル爲
ニ、オ前ハ自分ノ銀行ト何等ノ取引モナイ
トカ、或ハ預金ノナイ者ハ御斷リダトカ云
フヤウナコトデ、事實ニ於テハ中々借入ガ
困難ナ現狀ニアルバカリデナク、政府ガ從
來指定ヲ致シテ居リマスル所ノ此ノ取扱銀
行ガ、一流ノ爲替銀行ニ限ラレテ居リマス
ル爲ニ、中小商工業者ガ直接取引ヲ致シテ
居リマスルヤウナ銀行デハナイノデアリマ
シテ、一流ノ大銀行ダケデアリマスルカラ、
小サキ工場主ヤ商人ガ此ノ大銀行ニ參リマ
シテ、資金ノ融通ヲ受ケルト云フコトニ付
テハ、頗ル困難ガアリマス、此ノ點ニ付テ
政府ハ制度ヲ作リサヘスレバソレデ宜イト
云フヤウナ考デナクシテ、積極的ニ運用ヲ
考ヘテ貰ハナケレバ、其ノ效果ハ擧ラナイ
ト云フコトヲ私ハ申上ゲマシテ、其ノ點ニ
付テノ御考慮ヲ願フト共ニ、政府ノ所見ヲ
承リタイノデアリマス、モツト本當ニ中小
商工業者ガ要求スルヤウナ小サナ銀行ニマ
デ其ノ取扱ヲ任セテ、サウシテ便宜ヲ與ヘ
ナカツタナラバ、折角此ノ法律ガ出來テモ
何ニモナラナイ、斯樣ニ私ハ考ヘルノデア
リマス
更ニ此ノ法律ガ實施セラレルト致シマシ
テ、輸出業者デハナクシテ、今度ハ製造業
者ノ方面ノコトデアリマスケレドモ、例へ
バ資金ノ融通ヲスルニ付テモ、輸出商カラ
下請ヲ致シマスル所ノ製造業者ガ資金ヲ借
リルノデアリマスルガ、問題ハ下請ノ其ノ
下請業者ニ對スル融通ト云フモノガ、今日
少シモ行ハレテ居ラナイ點デアリマス、御
承知ノ通リニ日本ノ商工業者ハ極メテ資金
ノ少イ小工場經營者ガ非常ニ多イノデアリ
マシテ、大部分ハ下請業者デアリマスケレ
ドモ、直接ノ請負ヲ致シタ者ニダケ資金ノ
融通ヲスル途ガアツテ、下請ノ其ノ下請ニ
對スル資金ノ融通ト云フモノヲ圖ラナカツ
タナラバ、此ノ法律ハ何ニモナラナイト云
フコトヲ私達ハ考ヘテ居リマスノデ、御所
見ヲ承ルノデアリマス
更ニ是ハ輸出ノ振興ニ對シマシテ直接關
聯ヲ致シマスカラ、此ノ機會ニ御質問ヲス
ルノデアリマスルガ、政府ガ音頭ヲ取リマ
シテ、六大都市ヲ中心ニスル府縣ト自治體
ニ勸メマシテ、御承知ノ通リ輸出振興株式會
社ト云フモノヲ作ラセテ居リマス、然ルニ此
ノ輸出振興株式會社ハ政府ガ勸メテ作ラセ
テ居ルノニモ拘ラズ、今日デハサツパリ政
府ノ熱意ガナク、勸メテ作ラセタダケデア
リマシテ、積極的ニ之ヲ働カセル方法ト云
フモノガナイ爲ニ、輸出振興會社ガ出來テ
居リマシテモ、效果ヲ擧ゲルコトガ出來ナ
イ現狀ニアリマス、特ニ材料ノ輸入ナドニ
付テハ、本年ノ二月僅ニ百万圓ノ認可ガア
ツタダケデアリマシテ、全國ノ此ノ輸出振
興會社ニ僅ニ百万圓位ノ材料ヲ與ヘタト致
シマシテ、ドウシテ輸出ノ振興ヲ圖ルコト
ガ出來ルカ、而モ今日ノ配給機關ガ一貫シ
テ居リマセヌ爲ニ、輸出振興會社ニ材料ノ
輸入ヲサセテ居リ、一方ニ於テハ從來ノ配
給機構ト云フモノガアリマシテ、此ノ二ツ
ガコンガラカツテオ互ニ相摩擦ヲ致シマシ
テ、配給ノ上ニ付テ非常ナ支障ヲ來シテ居
リマスルコトヲ、政府ハ御存ジナイ筈ハナ
イト私ハ考ヘルノデアリマス、振興會社ヲ
作ツタナラバ、從來ノ配給機構トノ間ニ於
テ調整ヲ取ルト云フコトガ、私ハ政府ノヤ
ルベキコトデハナイカト思フ、而モ輸出振
興會社ガ出來タケレドモ、ヤリ方ガマルデ小
役人カ何カガヤルヤウナ態度デアリマシテ、
極メテ手續ガ煩雜デアリマスルカラ、折角
此處ニ材料ヲ求メテ參リマシテモ、小役人式
ノ極メテ煩雜ナ手數ノ爲ニ、容易ニ品物ヲ
纏メルコトガ出來ナイ、例ヘバ輸出ノ箱ヲ
造ルニ致シマシテモ、見本ヲ持ツテ來ナケ
レバ駄目ダト言フ、箱デアリマスカラ、見
本ヲ擔イデ行ク譯ニハ行カナイカラ、箱ヲ
一遍造ツテ、其ノ釘ヲ又全部拔イテ、目方
ニ掛ケテ、サウシテ此ノ箱ニ付テハ是ダケ
ダト云フ程度マデヤラナケレバ、材料ノ配
給ガ受ケラレナイト云フコトデ、ソンナコ
トヲヤツテ居ツタノデハ商賣ニナラナイカ
ラ、一層ノコト二十圓ノ釘ヲ此處デ買フヨ
リハ、闇デ二十五圓ノモノヲ買ツタ方ガ宜
イト云フヤウナ氣持サヘ起シテ居ルノガ、
今日ノ輸出振興會社ニ對スル現狀デアリマ
シテ、政府ハ折角作ツタノデアリマスカラ、
ドウゾ責任ヲ感ジテ、熱意ヲ以テ指導シテ
戴キタイト云フコトヲ政府ニ要請スルト共
ニ、政府ノ之ニ對スル對策ヲ私ハ承リタイ
ト存ズルノデアリマス
尙ホ此ノ法律ノ適用ノ範圍ハ、圓「ブロツ
ク」ニ對スル輸出ニ對シテハ、補償ヲシナイ
ト云フコトニナツテ居ルノデアリマス、是
ハ今日圓「ブロック」ニ對スル非常ナ輸出增
加ノ步合カラ致シマシテ、之ニ適用ヲシナイ
ト云フコトニハ、固ヨリ反對ヲショウトス
ル者デハゴザイマセヌケレドモ、併シナガ
ラ同ジ支那ノ大陸ニ行クニ致シマシテモ、例
ヘテ見マスナラバ、斯ウ云フモノニ對シテ
ハドウスルノカ、宣撫用ニ使フトカ、或
難民ノ救護ノ爲ニ使フトカ、或ハ小學兒童
ノ學用品ト云フヤウナ、斯ウシタ公共的ナ
目的ヲ持ツテ居リマスル物モ圓「ブロック」
ノ輸出ノ中ニハ澤山アリマス、之ヲ一律ニ
金儲ケノ爲ノ圓「ブロック」向ケノ輸出ナリ
トシテ、除外ヲ致シマスルコトガ適當ナリ
ヤ否ヤ、此ノ點ニ對スル政府ノ御所見ヲ承
リタイノデゴザイマス
更ニ是亦本法ノ適用ニ直接ノ關係ガアル
ノデアリマスルガ、輸出ノ損失ヲ致シマシ
タ爲ニ補償ヲスルト致シマシテモ、其ノ原
因ニハ色々アルト思フ、例ヘテ見マスナラ
バ、海外ヨリノ註文ノ取消、或ハ日貨ノ排
斥、或ハ荷役ノ停止、爲替管理其ノ他ノ輸
出禁止、或ハ原料ノ入手難ト云フヤウナ幾
多ノ原因ガアルト思フ、併シ是等ハ今日ノ
國際情勢ノ極メテ危險ナ中ニ貿易ヲスルノ
デアリマスルカラ、斯ウ云フヤウナ者ニ對
スル補償ヲスルト云フコトハ、最モ適切ナ
リト思料スルノデアリマスルガ、多クノ貿
易業者ノ中ニハ、或ハ自分ノ商賣ノ手違
ヒニ-中ニハ思惑ノ爲ニ商賣ニ損失ヲ來シテヽ
業務ノ破綻ヲ來スヤウナ者モアルト思フ、
斯ウ云フヤウナ者ニ對シマシテモ、同樣ニ
補償ヲセラレルノカ、此ノ點モ政府ノ答辯
ヲ願ヒタイノデゴザイマス
更ニ私ハ輸出ニ關シマシテ直接ノ關聯ヲ
持ツテ居リ、而モ現在非常ナ問題ヲ起シテ
居リマスル所ノ生絲ノ暴落ト、是ガ對策ニ
付キマシテノ政府ノ御答ヲ願ヒタイト存ジ
やっ 、我國ノ輸出品ノ中デ、特ニ第三國貿
易ノ中ニ於キマシテ、最モ重要ナル役割ヲ
致シテ居リマスルモノハ、生絲竝ニ絹織物
デアリマシテ、我國ノ第三國ニ對スル貿易
ノ全輸出額ノ實ニ二割七分ハ、此ノ生絲竝
ニ絹織物デアリマス、綿織物ニ比ベマシテ
全部原料ハ純國產品デアリマス、綿織物ナ
ドモ其ノ輸出ハ非常ニ多イガ、併シ其ノ原
材料トシテノ七割ヲ引キマスルナラバ、實
際ニ外貨ヲ獲得シ得ラレルモノハ、其ノ三
割ニ過ギナイノデアリマス、併シ生絲竝ニ
絹織物ハ其ノ全額ガ外貨ノ獲得ニナルノデ
アリマス、然ルニ今日生絲ノ相場ヲ見テ居
リマスルナラバ、本年ノ一月ノ最高期ニ比
ベマシテ、約一千圓ニ近イ暴落ヲ致シテ居
リマシテ、我ガ日本ノ輸出貿易ノ上ニ於キ
マシテノ損失ハ、極メテ大ナルモノデアル
ト吾々ハ考ヘザルヲ得ナイノデゴザイマス、
而モ政府ニ於キマシテハ、農林省ラ中心ニ
致シマシテ、從來日本ノ纖維工業ニ付キマ
シテ、全部嚴重ナル統制ヲ執ツテ居ツタニ
モ拘ラズ、生絲ハ日本ノ重大ナル輸出品デ
一 〇、外貨獲得ノ上ニ於キマシテ最モ深イ
關係ヲ持ツテ居ルガ故ニ、農林省ハ此ノ生
絲ノ價格ノ統制其ノ他ニ付キマシテハ
從來反對ノ態度ヲ執ツテ來ラレタニモ拘ラ
ズ、本年ノ一月二十日ニ國用生絲ノ統制ヲ
行ツタノデアリマシテ、此ノ統制ヲ行フ
ト殆ド時ヲ同ジウ致シマシテ、生絲ガ大
暴落ヲ致シテ居ルノデアリマス、是ガ爲ニ
今日デハ日本ノ生絲商或ハ絹織物商、或ハ二
百万戶ノ養蠶農家ト云フモノハ、此ノ非常ニ
暴落ヲ致シテ居リマスル生絲ヲ目前ニ控ヘ
マシテ、非常ナ今動搖ヲ來シテ居ルノデア
リマシテ、業者ニ依リマスレバ、此ノ政府
ノ統制ガ間違ツテ居ツタカラ、斯ウ云フコ
トニナツタノデアル、卽チ國用生絲ニ對ス
ル所ノ配給統制ノ爲ノ切符制ノ斷行、更に
政府デハ國用生絲ノ價格ノ制定モ行ハント
致シテ居ルノデアリマスケレドモ、斯ノ如
キ政府ノ政策ガ、外貨獲得ノ上ニ於キマシ
テ最モ重大ナル關係ヲ持ツ生絲ニ對シテ損
失ヲ來シタルモノナリト言ハレテ居ルノデ
アリマスガ、政府ハ之ニ對シマシテ如何ナ
ル御所見ト對策ヲ御考ニナツテ居ラレマス
カ御尋ヲシタイノデアリマス、而モ今日生
絲ノ輸出市場ハ殆ド亞米利加ニ限ラレテ居
ルノデアリマス、日米通商條約ノ廢棄ト、
日米兩國間ノ今日ノ極メテ良カラザル空氣
ト云フヤウナモノヲ、吾々ガ考ヘテ見マス
ル時ニ當ツテ、日本ノ此ノ重大ナル所ノ產
業ガ、斯樣ニ不安ナ狀態ニ置カレテ居ル亞
米利加ニダケ依存スルト云フコトガ、果シ
テ正シイカ正シクナイカ、此ノコトヲ私ハ
御尋ヲシタイノデアリマス、成程政府ハ昭
和九年以來印度、南米、阿弗利加等ニ新市場
ノ開拓ヲ圖ツテ居リマスコトハ認メルノデ
アリマスケレドモ、併シナガラ今日ノ如キ
國際情勢ノ中ニ於キマシテ、日本ノ生絲ノ
約半分ヲ亞米利加ニダケ賣ル、斯ノ如キ方
法デ果シテ宜シイカドウカト云フコトニ付
テハ、吾々ハ重大ニ考ヘナケレバナラヌト
思フ、而モ亞米利加ニ於キマシテハ人絹
ノ發達ナドカラ、益〓日本ノ生絲ノ需要ニ對
スル影響ガ來ラントシテ居ル時デアリマス
カラ、政府ノ之ニ對スル率直ナル見透シ、
對策ヲ御尋シタイノデアリマス、吾々ハ今
日ノヤウニ生絲ノ價格ガ極メテ動搖シテ居
ルコトカラ考ヘテ見マシテモ、一步進メテ、
生絲ニ對シマシテハ國家ガ管理スル、今囘
統制命令ヲ出サナケレバナラナクナツタ其
ノ理由ガ、國內ニ於ケル問屋筋ノ思惑取引
ガ非常ニ原因シテ居ルノデアリマスガ、吾
吾ハ此ノ思惑取引ヲ禁止シ、國內ノ配給ヲ
確保スル上カラモ、國家ガ管理ヲスルト云
フコトガ必要デハナイカ、個人ノ貿易ノ時
代カラ、一步進ンデ國家ノ貿易ニ進マナケ
レバナラナイ、自由貿易主義ヲ抛棄シテ吾
吾ハ國家協定貿易ヘト進ムト云フ、サウシ
タ大英斷ニ出デラレル所ノ御所存ガアルカ
ドウカ承リタイノデアリマス
最後ニ一ツ御尋シマス、輸出品ノ原材料
ノ不足ト是ガ對策ニ付テデアリマスガ、極
ク簡單ニ質問ノ要點ダケヲ申上ゲマスト、
今日國際收支ノ均衡ヲ保ツ爲ニ、我國ハ
面ニ於テハ輸入ニ對シテ嚴重ナル統制ヲ行
ヒツツアル一方、軍需資材充實ノ爲、輸出
品ニ對スル原料獲得ハ、今日極メテ困難ナ現
狀ニアルノデアリマス、如何ニ政府ガ輸出
ノ奬勵ヲ圖リマシテモ、原料ガナクテハ輸出
ガ出來ナイコトハ論ズルマデモナイノデア
リマシテ、輸出業者ハ一體吾々ニ輸出シロ
ト言ツテ、何ヲ輸出スルノダ、輸出スル所
ノ物ガナイヂヤナイカトサヘ極言シテ居ル
ノデアリマス、併シナガラ吾々ハ今日ノ時
局ヲ考ヘテ見マスナラバ、原料入手ノ困難
ダト云フコトト、原料輸入ノ統制ヲ强化ス
ルト云フコトニ對シマシテハ、已ムヲ得ナ
イ自律デアルト吾々ハ考ヘテ居リマス、併
シナガラ輸出品ノ製造ニ對シテ、政府ハ根
本的ナ何等カノ指導方針ニ付テ御考ヲ廻ラ
サナケレバナラナイノデハナイカ、我國ノ
貿易ノ從來マデノ狀態ハ、何トカシテ安イ
品物ヲ作ツテ新タナル販路ヲ開拓スル、外
國貿易ノ進出ヲスルノニハ物ガ安クナラナ
ケレバナラナイト云フコトカラ、安イ物ヲ
多量ニ作ツテ、多少粗製品デアツテモ、此
ノ安イト云フコトニ依ツテ外國ノ市場ヲ席
卷スルノダト云フコトガ、我國貿易政策
ノ上ニ於キマシテ看過スコトノ出來ナカ
ツタ事實ダト吾々ハ思ツテ居リマス、併シ
戰時經濟ニナリマシテ、外貨ヲ獲得スル
ト云フコトガ急務デアル今日ニ於キマシ
テ、安イ品物ヲ多量ニ出スト云フ事柄ガ、
外貨獲得ノ上ニ於キマシテハ、其ノ量ハ多イ
ケレドモ、比較的效果ガ薄イト云フコトヲ
私達ハ考ヘナケレバナラナイト思フ、言ヒ
換ヘマスナラバ、吾々ハ原料資源ノ不足ナ
國デアリ、原料資源ノ統制ノ極メテ窮屈ナ
時デアリマスカラ、僅カナ資源ヲ活用シテ、
之ニ對シテ吾々ハ技術ヲ加ヘル、勞働力ヲ
加ヘル、サウシテ僅カナ、例ヘテ見マスナ
ラバ百圓ノ品物モ、從來ノヤウニ九十五圓
ノ材料デ、技術トシテハ僅ニ五圓シカ加ハ
ツテ居ラナイト云フヤウナ商品ノ製造デハ
ナクシテ、僅ニ材料ハ五圓デ宜イカラ、後
ノ九十五圓ハ技術ト、吾々ノ持ツテ居リマ
スル所ノ、其ノ勞働力ヲ加ヘルト云フヤウ
ナ商品ノ製造方法ニ、吾々ハ其ノ中心ヲ向
ケテ行カナケレバナラナイノデハナイカ、
特ニ原料資源ノ不足ナ獨逸ノ輸出製品ノ製
造等ニ付キマシテハ、吾々ガ採ツテ以ツテ
範トスルニ足ル點ガ澤山アルト思フ、吾々
ハ原料ヲ折角輸入シテ、再ビ原料ヲ外國ニ
輸出スルヤウナ品物ヲ造ラズ、吾々ハ技術
ヲ輸出スル、勞働力ヲ輸出スルト云フコト
ガ必要ナノダ、勞働價値ヲ政府ハ認メナケ
レバナラナイノダト云フコトヲ、吾々ハ聲
ヲ大ニシテ叫ビタイノデアリマス、兎角今
日ノ工場經營者ナドガ、何トカシテ輸出品
ヲ造ラウトスル時ニ當ツテ、勞働條件ヲ下
ゲルコトニ依ツテ品物ヲ安クシヨウト云フ
ヤウナ、ケチ臭イコトヲ考へズニ、製造業
者等ニ向ツテモ、吾々ハドウカサウシタケ
チ臭イ氣持ヲ持タズニ、モツト勞働力ノ價
値ヲ認メルヤウナ製品ヲ造ツテ、高價ナ品
物ヲ造ツテ、外貨ヲ獲得スルト云フヤウナ
コトニ、其ノ主流ヲ向ケルコトガ當然ナリ、
斯樣ニ私ハ信ズルノデアリマスルガ、之二
對スル政府ノ御所見ヲ承リマシテ、私ハ之
ヲ以テ質疑ヲ終リタイト存ズルノデゴザイ
マス(拍手)
〔政府委員加藤鐐五郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=4
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005・加藤鐐五郎
○政府委員(加藤鐐五郞君) 中村君ノ御
質問ニ御答致シタイト存ジマス、圓「ブロツ
ク」ヘノ輸出ニ關シテノ御說ガゴザイマ
シタガ、本法案ノ狙ヒ所ハ、外貨獲得ノ爲
ニ第三國ヘノ輸出振興策トシテデアリマス
ルガ故ニ、圓「ブロック」向輸出ニ付テハ、
本法案ヲ適用シナイノデゴザイマス、次ニ
中村君ハ、本法案ガ中小輸出業者若クハ中
小輸出製造業者ノ方ハ、比較的銀行ニ信用
ガナイガ故ニ、サウ云フ方面ニハ融通ガ出
來ナイノデハナカラウカ、假令法ヲ作ツテ
モ無意義ニ終ルデハナカラウカト云フヤウ
ナ御質問デアツタノデアリマスルガ、本法
案ノ狙ヒ所ハ、ヤハリ中小輸出業者、中小
輸出製造業者ノ事業ヲ援助スル目的デゴザ
イマスルガ故ニ、銀行ニ向ツテモ、又其ノ
目的カラ申シマシテモ、左樣ナル御心配ハナ
カラウト存ズルノデゴザイマス、併シナガ
ラ中村君ハ、左樣ニ言フケレドモ、銀行自
體ガ貸サナイノデハナイカト云フヤウナ御
心配ハ、一應御尤モデゴザイマスルガ、本法
案ハ銀行ノ貸出ニ對シテ八割ヲ補償致シテ
居ルノデアリマス、又五六カノ府縣ニ依リ
マシテハ、其ノ後ノ二割ニ對シテ一割五分
ヲ補償致シテ居ルノデアリマスルガ故ニ、
輸出業者ガ一万圓借リマシタ時、銀行ガ一
万圓貸シマシタ時ハ、銀行ハ如何ニソレガ
間違ヒマシテモ、九千五百圓マデハ補償シ得
ルノデアリマスルガ故ニ、銀行モ安ンジテ
是ハ貸出スモノナリト信ジマシテ、左樣ナ
御心配ハナカラウト存ズルノデゴザイマス、
又中村君ハ、輸出製造業者ニハ一般銀行デ
左樣ニ貸出スケレドモ、其ノ下ノ更ニ下請
製造業者ニ於テハ借リル途ガナイデハナイ
カ、是ガ困ルデハナイカト云フ御質問デア
リマシタガ、一應御尤モノヤウニ存ジマス
ルガ、是ハ運用宜シキヲ得テ、左樣ナコト
モナカラウト私共ハ信ジテ居ルノデアリマ
ス、又手續ノ點ニ於テ、中村君ハ煩瑣ナ手
續ヲスルノデ困ルデハナイカト云フヤウナ
御心配モアリマシタガ、手續ハ極メテ簡易
デゴザイマシテ、何レ委員會ニ於テ御說明
致スデアラウト思ヒマスガ、左樣ナ御心配
ハナカラウト存ズルノデアリマス
ソレカラ中村君ノ輸出振興株式會社ニ關
シテノ御說デアリマスガ、洵ニ御尤モト存
ズルノデアリマス、今後ハ輸出振興株式會
社ニ於キマシテハ、輸入ノ資材ノ取扱ニ付
キマシテモ努力シ、其ノ活動ノ範圍ヲ廣メ
テ、以テ輸出振興ノ目的ニ進ミタイト存ジ
テ居ルノデゴザイマス
ソレカラ次ニ中村君ハ輸出業者ノ損失ノ
點ニ付テ、色々ノ點ヲ御擧ゲニナリマシタ
ガ、此ノ輸出法案ハ、例ヘバ輸出業者ガ第
三國ガ戰爭ノ結果、或ハ色々ノ災難ノコト
ガゴザイマシテモ、其ノ損失ハ政府ガ致ス
ノデアリマスルガ故ニ、是ハ左樣ナ心配モナ
カラウト存ズルノデゴザイマス、生絲ノ問題
ニ付キマシテハ、農林當局ヨリ御答辯ガアル
コトト存ジマシテ、私ハ省略サシテ戴キマス
更ニ中村君ハ、材料不足ノ場合ニ於テハ
輸出業者、政府トシテハ勞働力、技術、加
工賃ヲ高クシテ、以テ其ノ品質ノ價値ヲ高
クシテ、外貨ヲ獲得シナケレバナラヌデハ
ナイカト云フ御說ガゴザイマシタガ、至極
同感デアルノデゴザイマス、私共ハ此ノ點
ニ對シマシテ、從來ノ「リンク」制ガ或ハ
期間ガ少イト云フコトデ、素地ノ儘輸出ス
ルト云フヤウナ傾キモアルノデゴザイマス
ルガ故ニ、此ノ點ハ中村君ノ御說ノ如ク、
政府ニ於テハ篤ト考慮ヲ致シマシテ、今後
斯樣ナ資材不足ノ場合ニ於テハ、技術、品
質加工賃、勞働力ヲ高メ、之ニ依ツテ外
貨ヲ獲得スルヤウニ全努力ヲ致シタイト存
ズル次第デゴザイマス(拍手)
〔政府委員岡田喜久治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=5
-
006・岡田喜久治
○政府委員(岡田喜久治君) 農林大臣貴族
院出席中ノ爲、代ツテ私ヨリ御答ヲ申上ゲ
マス、中村君ノ御質問中、最近ニ於ケル絲
價ノ暴騰暴落ノ原因及ビ其ノ對策ハドウカ
ト云フ御問ニ對シマシテ御答ヲ致シマス
絲價暴騰ノ原因ハ何ト申シマシテモ、事
變ノ進展ニ伴ヒマシテ、內地ニ於ケル生絲
需要ノ旺盛ニ依ルモノデアリマスルガ、更
ニ又歐洲戰爭勃發ノ結果トシマシテ、爲替
相場ノ低落、又米國ニ於ケル景氣見越ノ假
需要ノ擡頭ニ依ルコトガ多イモノト考ヘテ
居リマス、併シナガラ昨年末カラ本年初頭
ニ於ケル異常ナ暴騰ニ付キマシテハ、是ハ
主トシテ內地ニ於キマスル極端ナル思惑買
ニ依ルモノト見テ居ルノデアリマス、仍テ
政府ニ於テハ生產市場ニ於ケル極端ナル思
惑ヲ是正致シマスルガ爲ニ、取引ノ內容ニ
付テ取調ベル方針ヲ執リマスト共ニ、國內
ニ於ケル生絲消費ノ顯著ナル增加傾向ヲ相
當程度ニ調整スル考ノ下ニ、生絲ノ配給統
制ヲ行フコトト致シタノデアリマスガ、其
ノ結果所謂輸出期ノ思惑買ガ整理セラレル
コトニナリマシテ、絲價低落ト相成ツタ次
第デアリマス、思惑買ガ行過ギテ居ルダケ
ニ、隨テ是ガ反落モ亦聊カ目立ツタ嫌ヒガ
アルノデゴザイマスガ、最近ハ大體ニ於キ
マシテ相場ノ安定ヲ見ツツアルカノヤウニ
思ツテ居リマス、又生絲輸出ニ關シマシテ
ハ、必ズシモ米國ニ於キマスル需要減退ニ
依ル異變トノミ思ハヌノデアリマスカラシ
テ、遠カラズ以上ノ次第ニ依ツテ、絲價ノ
安定及ビ輸出ノ囘復ヲ圖リ得ルモノト考ヘ
テ居リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=6
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007・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ニテ質疑ハ終了致
シマシタ、本案ノ審査ヲ付託スベキ委員ノ
選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=7
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008・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ議長指名二十七名ノ
委員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=8
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009・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=9
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010・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第
二、臺灣私設鐵道補助法中改正法律案ノ第
一讀會ヲ開キマス-松岡拓務政務次官
第二臺灣私設鐵道補助法中改正法律
案(政府提出)第一讀會
臺灣私設鐵道補助法中改正法律案
臺灣私設鐵道補助法中左ノ通改正ス
第一條第二項中「五年」ヲ「十年」ニ改ム
第一條ノ二前條ノ補助金ハ每營業年度ニ
於ケル建設費ニ對シ年五分ノ割合ニ相
當スル金額ヲ限度トス但シ每營業年度
ニ於ケル益金カ建設費ニ對シ年一分ノ
割合ニ相當スル金額ヲ超ユルトキハ其
ノ超過額ハ之ヲ補助金額ヨリ控除ス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス但シ本法
施行ノ際現ニ補助ヲ受クル鐵道ニ對スル
補助ニ付テ各現在ノ補助期間滿了ノ日ノ
屬スル營業年度ノ末日迄ハ改正規定ニ拘
ラズ仍從前ノ例ニ依ル
〔政府委員松岡俊三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=10
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011・松岡俊三
○政府委員(松岡俊三君) 只今拓務大臣ハ
貴族院ニ出席致シテ居リマスノデ、私カラ
御說明ヲ申上ゲマス、只今議題トナリマシ
タ豪灣私設鐵道補助法中改正法律案提出ノ
理由ヲ說明致シマス
臺灣ニ於ケル私設鐵道ニ對シマシテハ、
現行法ニ依リマシテ、該鐵道營業開始ノ日
ヨリ二十年マデハ補助金ヲ交付シ得ルコト
トナツテ居リマス所、現在補助金ム交付ヲ
受ケツツアル私設鐵道中、近ク其ノ補助期
間ノ滿了スルモノガアルノデアリマスガ、
右鐵道ハ未ダ其ノ業績豫期ノ如ク擧ラズ、
仍テ當分ノ間ハ政府ノ補助金ヲ離レテハ自
立シ難イ狀態デアリマス、而モ此ノ鐵道ハ
臺灣ノ地方開發上重要ナル路線デアリ、且ツ
國營代行ノ意義ヲ有シマスルノデ、今囘本法
ニ必要ナル改正ヲ加ヘ、之ガ助成ノ爲必要ア
ル場合ニ於テハ、現在ノ補助期間ヲ更ニ五年
間延長シ得ルノ途ヲ開カント致シタノデア
リマス、尙ホ補助方法ニ付キマシテモ、現下
經濟界ノ趨勢ニ鑑ミマシテ、適當ノ改正ヲ加
フルコトト致シマシタ、何卒御審議ノ上御
協賛アランコトヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=11
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012・小山松壽
○議長(小山松壽君) 本案ノ審査ヲ付託ス
ベキ委員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=12
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013・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ政府提出、船員保險
特別會計法案外四件委員ニ併セ付託セラレ
ンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=13
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014・小山松壽
○議長(小山於壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=14
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015・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第
三及ビ第四ハ、便宜上一括議題ト爲スニ御
異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=15
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016・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、日程第三、市町村義務〓育費國庫負擔
法改正法律案、日程第四、現役小學校〓員
俸給費國庫負擔法中改正法律案、右兩案ヲ
一括シテ第一讀會ヲ開キマス-松浦文部
大臣
第三市町村義務教育費國庫負擔法
改正法律案(政府提出)第一讀會
第四現役小學校〓員俸給費國庫負擔
法中改正法律案(政府提出)第一讀會
市町村義務〓育費國庫負擔法改正法律
案
義務〓育費國庫負擔法
第一條市町村立尋常小學校ノ〓員代
用〓員ヲ含ム)ノ俸給ノ爲北海道地方
費及府縣ニ於テ要スル經費ノ半額ハ國
庫之ヲ負擔ス
第二條前條ノ規定ニ依リ國庫ノ負擔ス
ル金額ハ每年度之ヲ北海道地方費及府
縣ニ交付ス
第三條第一條ノ規定ノ適用ニ付テハ市
町村立尋常高等小學校ニ於テ尋常小學
校ノ〓科ヲ授クベキ部分ハ之ヲ市町村
立尋常小學校ト看做ス
第四條第一條ノ代用〓員ノ範圍ハ勅令
ヲ以テ之ヲ定ム
附則
本法ハ昭和十五年四月一日ヨリ之ヲ施行
ス
昭和七年法律第二號ハ之ヲ廢止ス
現役小學校〓員俸給費國庫負擔法中改
正法律案
現役小學校〓員俸給費國庫負擔法中左ノ
通改正ス
第一條中「市町村ニ於テ」ヲ「北海道地方
費及府縣ニ於テ」ニ改ム
第二條中「市町村」ヲ「北海道地方費及府
縣」ニ改ム
第三條第一條ノ規定ニ依リ國庫ニ於テ
負擔スル市町村立小學校正〓員ノ俸給
費ハ義務〓育費國庫負擔法ノ適用ニ付
テハ同法第一條ノ俸給ノ爲北海道地方費
及府縣ニ於テ要スル經費ニ之ヲ算入セズ
第四條ヲ削ル
附則
本法ハ昭和十五年四月一日ヨリ之ヲ施行
ス
〔國務大臣松浦鎭次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=16
-
017・松浦鎭次郎
○國務大臣(松浦鎭次郞君) 只今上程致サ
レマシタ市町村義務〓育費國庫負擔法改正
法律案竝ニ現役小學校〓員俸給費國庫負擔
法中改正法律案ノ二件ニ付キマシテ、其ノ
提案理由ヲ御說明申上ゲマス
今囘中央地方ヲ通ズル稅制ノ改正ニ當
リ、財政上竝ニ〓育上ノ必要ヨリ、市町村
立小學校〓員ノ俸給ヲ、市町村ノ負擔カラ
北海道及ビ府縣ノ負擔ニ移スコトト相成リ
マシタノデ、從來市町村ニ交付致シテ居リ
マシタル市町村立尋常小學校〓員俸給ニ對
スル國庫負擔金ヲ、北海道及ビ府縣ニ交付
スルノ必要ヲ生ジ、且又此ノ國庫負擔金ニ
付キマシテモ、八千五百万圓ヲ下ラザル、
定額ヲ負擔スルノ現制ヲ改メマシテ、市町
村立尋常小學校〓員俸給ニ要スル經費ノ二
分ノ一ノ定率ヲ以テ負擔スルコトト致シマ
シタノデ、此ノ趣旨ニ從ヒマシテ市町村義
務〓育費國庫負擔法竝ニ現役小學校〓員俸
給費國庫負擔法ヲ改正致サントスルモノデ
アリマス、何卒御審議ノ上御協贊アランコ
トヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=17
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018・小山松壽
○議長(小山松壽君) 質疑ノ通告ガアリマ
ス、順次之ヲ許シマス-森田重次郞君
〔森田重次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=18
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019・森田重次郎
○森田重次郞君 只今上程致サレマシタ市
町村義務〓育費國庫負擔法改正法律案外一
件ニ關聯致シマシテ、文部大臣ニ二三ノ質
疑ヲ試ミタイト思ヒマス
第一點、我國ノ〓育ハ其ノ制度ノ體裁ニ
於テ、又初等〓育界ニ於キマシテハ、其ノ
普及徹底ノ程度ニ於テ、世界列强ト比較致
シマシテ遜色ノナイコトハ、學界ノ定評ニ
ナツテ居ル所デアリマス、然ルニ國運ノ進
展ニ伴ヒマシテ、更ニ國民全體ノ平均セル
〓養程度ノ昂揚ガ、國家ノ要求スル所トナ
ツテ參リマシタル關係上、義務〓育年限延
長ノ聲ガ多年〓育界ノ間題トナツテ居ツタ
ノハ、諸君ノ夙ニ御存ジノ通リデアリマス、
殊ニ今囘ノ事變ヲ契機ト致シマシテ、國民
ノ智能竝ニ技術ノ洗練徹底ノ要求ガ、極メ
テ迫ツテ居ルモノガアルノデアリマシテ、是
ハ如何ナル形ニ於テカ解決ヲセヌバナラヌ
コトニナツテ來タコトハ、〓育界ノ定論デアツ
タフデアリマス、聞ク所ニ依リマスト、文部
省ニ於テハ來ル昭和十六年度ヨリ從來ノ小
學校ノ名ヲ變更致シマシテ國民學校ト改メ、其
ノ修業年限モ亦八箇年ニ延長スルノ計畫ヲ御
持チニナツテ居ルト聞クノデアリマスガ、
果シテ之ヲ其ノ年度ヨリ實行ナサル御積リ
デゴザイマセウカ、若シソレヲ實行ナサル
ト云フコトニナツテ居リマスルナラバ、私
ハ文部省ニ對シテ色々ノ註文ヲ致サナケレ
バナラナイト思フノデアリマス、先ヅ第一
ニ考ヘテ見ナケレバナラナイコトハ、修業
年限ノ延長ニ伴ヒマシテ、現在ノ社會機構
下ニ於テハ若干ノ收入ヲ得能フ子供等ガ、
更ニ二箇年其ノ就學ヲ義務付ケラレルコト
トナリマスル爲ニ、貧困ナル家庭ニ於テハ
相當ノ打撃ヲ受ケルデアラウト考ヘルノデ
アリマス、隨ヒマシテ斯ノ如キ貧困ナル子
供等ニ對スル就學ノ機會ヲ與フル〓育上ノ
色々ノ施設、例ヘバ授業料等ノ全免等ノ問
題ニ對シテ、果シテ文部省ハ如何ナル考ヲ
御持チニナツテ居ラレルデアリマセウカ、
此ノ點ヲ一ツ御伺致シタイノデアリマス
次ニ各地方町村ニ於キマシテ、義務〓育
年限延長ニ伴フ校舍ノ增設ハ、是亦極メテ
必要ナルコトデアリマシテ、是等ノ施設ガ
整フノデアリマセヌケレバ、假令年限ヲ延
長ヲ致シマシテモ、ソハ唯形ヲ整ヘタニ止
マルノデアリマシテ、到底國家ノ要求スル
〓育ノ內容ヲ充實セシムル所以デハナイト
思フノデアリマス、文部省ハ果シテ地方
町村ノ貧困ナル財政狀態ニ對シテ、校舍增
築ノ爲ニ如何ナル程度ノ費用ヲ御補助ナサ
ル御積リデアラセラレルカ、此ノ點ニ對シ
テモ御伺致シタイノデアリマス、尙ホ舊來
ノ〓育ガ形式ニ囚ハレマシテ、記憶中心ノ
〓育トナツテ居ル點、此ノ點ヲ是正スルニ
アラズンバ、假令年限ヲ延長致シマシテ
モ、本當ノ意味ノ國民ノ養成ト云フモノニ
ハナラナイト考ヘルノデアリマスガ、此ノ
點ニ對シマシテ、果シテ文部省ガ初等〓育
界ニ如何ナル指導的ナル原理ヲ御示シナサ
ルノデアリマスルカ、此ノ點ニ付キマシテ、
文部大臣ノ御抱負、御經綸ヲ御伺致シタイ
ト思フノデゴザイマス(拍手)
第二點、假ニ只今申上ゲマシタヤウナ形
ニ於テ制度ガ整フコトトナツタト致シマシ
テモ、〓育ハ斷ジテ物的ナル環境ノ整備ノ
ミニ依ツテハ、其ノ目的ヲ達成スルコトガ
出來ナイノデアリマス、要ハ魂ノ問題デア
リマス、而シテ眞ニ魂ヲ育テ上グルニハ、
魂アル〓師ニ依ルニアラズンバ、到底其ノ
目的ヲ達スルコトハ出來マセヌ(拍手)古人
モ正師アルニアラズンバ我學バズト言ウテ
居リマス、正シキ師匠ガナケレバ學バザル
ニ如カズ、此ノ點ガ私ハ〓育ノ根本基調ヲ
爲スモノデアルト考へルノデアリマス、今
ノ初等〓育界ニ信念ノ人ノ多イコトヲ私ハ
認メマス、認メマスルガ、一ツノ制度トシ
テ旣ニ〓育施設ト云フモノガ設ケラレマシ
タル限リ、吾々ハ其ノ〓職ニ携ハル人々ニ、
信念ノ生活ヲ營マシムル物的基礎ヲ與フル
ト云フコトハ、吾々政治家ノ又之ニ應ジナ
ケレバナラナイ一ツノ務メデアルト考ヘル
ノデアリマス(拍手)果シテ今ノ小學校ノ〓
員ガ如何ナル待遇ヲ受ケツツアルノデアル
カ、師範學校ヲ卒業致シマシテ、初任給ハ
昔ノコトデアリマスルナラバ、他ノ者ト比
較致シマシテ必ズシモ低カツタトハ言ヒ得
ナイノデアリマスルガ、其ノ後ニ於ケル昇
給ノ率ヲ調ベテ見マスルト云フト、先ヅ三
十歲位ノ程度デアリマシテ、俸給ガ五十圓
前後ノヤウデアリマス、其ノ昇給率ハ一箇
年僅ニ一圓二十錢ト云フノガ、或縣ニ於ケ
ル平均率デアツタノデアリマス、今ノ日本
ノ初等〓育界全般ヲ通ジテ、恐ラク何處ノ
縣デモ共通ノ現象デアルト思フノデアリマ
スルガ、百圓以上ノ俸給ヲ戴イテ居ル方ハ
極メテ僅少デアル、況ヤ俸給令ニ依ツテ定メ
ラレタル一級俸ヲ戴イテ居ル方々ハ、東京、
大阪ノヤウナ大都市ニ於テハ、僅ニ存スル
モノノヤウデアリマスケレドモ、結局日本
全般ノ立場ヨリ致シマシテハ、空文ニ歸シ
テ居ルト云フコトハ顯著ナル事實ナノデア
リマス(拍手)此ノ本俸ニ加フルニ年功加俸
ナルモノガ設ケラレテ居リマシテ、五箇年以
上勤續致シマシタル者ニ、特別ナル手當ヲシ
テ居ツタノデアリマスルガ、是亦最近文部省
ノ怠慢ノ結果カ、殆ド規定通リ支給セラレ
テ居リマセヌ、年末賞與ハ果シテ如何、僅
ニ俸給ノ一割若クハ二割、現在ノ我國ニ於
テ或省ニ於テハ何十割、何百割ノ年末賞與
ヲ戴イテ居ル人ガアツタト仄聞スルノデア
リマスルガ、是ト比較致シマシテ、地方小
學校〓員ノ斯ノ如キ待遇ト云フモノハ、決
シテ看過シ能ハザル一ツノ現象デアルト私
ハ思フノデアリマス(拍手)小學校ノ先生ハ
人ノ子ハ育テテ居リマスルガ、自分ノ子供
ハ育テ得ナイノデアリマス(拍手)自分ノ子
供ヲ〓育スル機會ヲ得タイガ爲ニ、都會へ
集中セントスル傾向ヲ生ジテ居ル、隨ヒマ
シテ地方ノ農村ニハ、本當ノ信念ヲ持ツテ
居ル〓育者ガ容易ニ得ルコトノ出來ナイト
云フヤウナ事柄ガ、農村〓育ノ不徹底ヲ招
ク一ツノ原因ニナツテ居ルコトモ、吾々ト
シテ考ヘテ見ナケレバナラナイコトダト思
フノデアリマス、過般ノコトデアリマスル
ガ、私ハ或縣ヘ參リマシテ新聞ヲ拜見致シ
タ所ガ、縣知事ノ許可ナクシテ、雪搔キノ
人夫ノ中ニ覆面セル小學校ノ先生ガ何人カ
混ツテ居ツタト云フコトガ揭載セラレテ居
ツタノデアリマス、文部大臣ハ此ノ點ヲ能
ク御考ヲ御願致シタイト思フノデアリマス
(「ヒヤ〓〓」)〓員ノ體面ヲ汚スモノデアル
ト云フ、體面ハ汚シタクナイノデアリマス
ルガ、汚サズニ居ラレナイト云フ現實ノ生
活苦ト云フモノハ、吾々ハドウシテモ別個ニ
考ヘテヤラナケレバナラナイト思フノデア
リマス、其ノ結果小學校ノ先生方ガ最近ノ
軍需景氣ニ乘ジマシテ、他ノ方面ヘソレ/
御轉任ヲナサル、引止メヤウト致シマシテ
モ引止メルコトガ出來得ナイ、或縣ノ如キ
ハ、轉校ヲ絕對ニ認メナイ、退職モ認メナ
イ、若シ他ヘ轉ジヨウトスルナラバ、是ハ
嚴重ナル戒告附ノ解職ニスルノデアルト云
フ命令マデ出シタ事實ガアルノデアリマス、
隨ヒマシテ我國ニ於キマシテハ、小學校〓
員ノ質ガ非常ニ低下致シテ參ツテ居リマシ
テ、昭和九年度ニ於ケル小學校〓員有資格
者ノ數ガ六〇%、無資格者ノ數ガ四〇%デ
アツタノデアリマスルガ、昭和十三年度ニ
於キマシテハ、有資格者ト無資格者トノ割
合ガ半々ト云フ現象ヲ呈シテ參ツタノデア
リマス、國民學校ノ制度ヲ布イテ、新ニ日
本ノ〓育上ノ根本的ナ改造ヲ爲サウトスル
文部省ガ、此ノ點ヲドウ御考ニナリマスカ、
學校ノ制度ノ改革ハ、斷ジテ試ミニ爲シタ
モノデハナイト私ハ思フ、試ミニ爲シタモ
ノデナイト致シマスルナラバ、最初ニ申上
ゲマシタヤウニ、眞ノ先生ヲ得ルコトガ必
要デアル、眞ノ先生ニアラズンバ魂ノ〓育
ガ出來得ナイト云フコトヲ御考ニナリマス
ルナラバ、吾々ハ玆ニ現在ノ菲薄ナル小學
校〓員ノ待遇ヲ改ムルコトニ專念シナケレ
バナラナイト思フ、文部省ハ果シテ師範學
校ノ卒業生ニ對シテ、現在ノ物價ニ相應シ
イ初任給ノ昇給ヲ爲サル御考ガオアリニナ
ルカ、年功加俸ノ加給ニ付テハ如何、又小
學校〓員全般ノ待遇ヲ高クスルコトニ付テ
如何ナル御考ヲ御持チニナツテ居ラセラレ
ルノデアルカ、此ノ點ニ對シテ文部大臣ノ
確信ヲ御質シ致シタイト思フノデアリマス
(拍手)
第三點ハ師範學校ノ改造論ニ付テデアリ
マン·最近、新聞ノ傳フル所ニ依リマスル
ト、師範學校ノ入學希望者ガ順次低減シテ
參ツタ、東京市ノ如キニ至リマシテハ、募
集人員ノ一割カ二割ノ程度ニ過ギナイト云
フノデアリマス、何ノ爲デアルカ、要ハ現
在ノ社會狀態ニ於テ、小學校ノ〓員ニナル
コトソレ自體ヲ、若イ靑年諸君ガ望マヌト
云フ一點ニ私ハ歸著スルト考ヘテ居リマス、
明治時代ノ師範學校ト云フモノハ、中學校等
ノ設ケラレナカツタ時代デ師範ガ〓育機關
ノ中心ニナツタ時代デアリマスルカラ、幾
多ノ秀才ガ此ノ中ニ入リ込ミマシテ、ノ德川
時代ニ於ケル師道ト云フモノハ、其ノ儘師
範ニ傳ハリマシテ、本當ノ師道ノ確立ト云
フモノガ出來タノデアリマス、然ルニ其ノ
後我國ニ於テ資本主義ガ發展ヲ致シテ參リ
マシテ、其ノ結果唯物思想ガ盛ニ我國
ニ輸入セラレテ、學校ノ先生ノ待遇ノ如キ
ハ顧ミル所ハナイ、結局實業家、其ノ他
ノ方々ガ中心ニナル世ノ中トナツテ參ツ
ク、隨ヒマシテ先生ト云フモノノ値打ハ、
殆ド物的ナモノニ依ツテ左右セラルルト
云フヤウナ、不思議ナル現象ヲ呈シテ參
リマシタ、爲ニ我國ニ於キマシテモ〓師
ノ資格、ソレヲ養成スル方法等ニ付テモ、
幾多ノ變遷ヲ經テ參ツタノデアリマス、例
ヘバ戰爭時代ノ次ニ不景氣ニナツタ、不景
氣ニナツテ參リマスト、師範學校ノ經營方
針ガ變ツテ參リマス、中學校ノ卒業生ガ一
杯ニナツテ困ル、一杯ニナツテ困ルノデア
ルカラ、舊來ノ一部ノ制度ノヤウニ高等小
學校ヲ卒業シク者ヲ收容シテ、澤山ノ金ヲ
掛ケルヨリモ、中學校ノ卒業生ヲ此ノ中ヘ
導入シテ、僅カ一年カ二年ノ〓養ニ依ツテ
師範學校卒業ト同ジヤウナ資格ヲ與ヘルト
云フコトニナリマスレバ、全般的ニ經濟デ
アルト云フヤウナ考カラ、景氣ノ惡イ時ニ
ハ常ニ今申上ゲマシタヤウナ形ニナツテ、
二部生中心ノ經營ニ變ツテ參リマスルノデ
アリマス、然ルニ是ト反對ニナリマスル場
合ハ、ソレト反對ナ議論ガ出テ參リマスト
云フヤウナ工合デアリマシテ、景氣、不景
氣ト、師範制度ノ一部尊重カ一一部尊重トカ
云フヤウナ議論ハ、常ニ相交流スルト云フ
ヤウナ奇態ナ現象ヲ呈シテ參ツタノデアリ
ママ、デアリマスルカラ、今囘ノヤウナ軍
需景氣中心ノ世ノ中ガ出テ參リマスト、又
學校ノ先生ガ不足ニナツタカラ、ドウシテ
モ是ハ一部尊重デ行カナケレバナラナイト
云フヤウナ考ガ出テ參ツテ、サウシテ師範
學校へ入學セシムル爲ニハ、或ル程度國庫
カラ補助ヲシヨウト云フヤウナ形ニマデ變
ツテ參ツテ居ルヤウデアリマス、是ハ本當
ニ〓育ト云フモノガ大事ナモノデアルト云
フコトヲ御考ニナツテ、國家ノ〓育ノ根本
ガ〓師デアルト云フコトヲ御考ニナリマス
ルナラバ、景氣ノ好イ時ト景氣ノ惡イ時ト
デ、師範制度ガ變ルト云フヤウナ建前ヲ執
ルト云フコトハ、私ハ誤ツテ居ルト思フノ
デアリマス、其ノ點カラ考ヘマスルト、私
等ハヤハリ師範學校ハ師範學校本來ノ使命
ヲ持ツテ居ツテ、本當ニ信念ニ滿チタ〓師
ヲ造ルモノデアルト云フヤウニ御考ニナリ
マスルナラバ、ヤハリ一部ヲ本體トスル立
場ヲ御執リニナツテ、二部ハ豫備的ナ形ニ
於テ之ヲ取扱フト云フノガ、本體デナケレ
バナラナイト思フノデアリマス、過般師範
制度ノ改正ニ關シマシテ、〓育審議會ノ答
申ヲ拜見致シマスルト、此ノ中ニ書カレテ
居ル事柄ハ、ヤハリ二部中心ノ行キ方ニ變
ツテ居ルヤウデアリマスルガ、是ハ恐ラク
其ノ答申ヲ爲サツタ時ノ現狀ニ卽シテ、斯
ウ云フ意見ガ立ツタモノダト思フノデアリ
マシテ、ヤハリ一箇ノ便宜主義ニ墮シタ一
ツノ考ヘ方デアラウト私ハ考ヘルノデアリ
マイ、ソレ故ニ私等ハヤハリ師範本來ノ立
場ヨリ致シマスレバ、今マデノ高等小學校
ヲ卒業致シマシタル者ヲ、國家ノ費用ニ於
テ之ヲソコニ收容シ、以テ俊秀ナル素質ノ
者ヲソコニ入學セシメテ、之ニ依ツテ本當
ノ先生トシテノ資格ヲ與ヘル、本當ノ信念
ノ人ヲ造ルト云フ、一貫不動ナル根本方針
ト云フモノヲ立テナケレバ、私ハ日本ノ師
道ト云フモノハ、常ニ經濟界ノ好景氣、不
景氣ニ左右セラレルト云フ缺點ヲ持ツモノ
デアルト思フノデアリマス、文部省ハ果シ
テ私ガ今御願申上ゲタ形ニ於テ、師道ノ確
立ト云フコトヲ念トシテオ居デニナラレル
ノデアルカ、若シサウ云フ風ニ御考ニナリ
マスルナラバ、師範學校ヲ舊來ノヤウナ縣立
ト云フ形デハナク、國費ヲ以テ經營爲サル、
國立ニ私ハシテ戴キタイト考ヘルノデアリ
マス、國立ト縣立トノ間ニ何等ノ差ガナイ
デハナイカト云フ議論モ、一部立テタ人ガ
アツタヤウデアリマスルガ、ナゼ修業年限
ガ同ジデ、專門學校程度ノ〓育ヲ受ケテ居
ナガラ師範學校ダケハナゼ府縣立デナケレ
バナラナイノデアルカ、師範學校ヲ府縣立
ニシテ置クト云フコトハ、何處カニ陰慘ナ
空氣ガ伴ウテ來ルノデアリマス、此ノ陰慘
ナル空氣ノ中カラ生レ出タ師範學校ニ、師
範臭ト云フ匂ガ付クコトハ、是ハ極メテ明
カナコトデアリマスルカラ、本當ノ意味ノ
師道刷新ヲ御考ニナリマスルナラバ、是
ハ國立ト致シマシテ、他ノ專門學校ト同
一程度ノ待遇ヲ與へ、ココヲ卒業スル方々
ニ明朗正大ナル氣分ヲ與ヘルト云フコト
ガ、私ハ大事デアルト考ヘル者デアリマス
ルカラ(拍手)此ノ點ニ於キマシテ文部省
ハ、果シテ師範學校ヲ國立トスル御見解ヲ
御持チニナツテオ居デニナルノデアルカド
ウカ、此ノ點ヲ御伺致シタイデアリマス、
尙ホ之ニ附加致シマシテ、其ノ師範學校ノ
〓員ノ養成ニ又一箇ノ考ヲ致サナケレバナ
ラナイト思フノデアリマス、現在ノヤウニ
私立大學ニ附屬セラレテ居ル無責任ニ近イ
高等師範制度、更ニ帝國大學ノ卒業生デ他
ニ就職ノナイト云フ人ガ、偶〓就職ナキガ故
ニ先生トナルト云フヤウナ形ノ師範學校ノ
先生デハ、到底現在ノ小學校ノ先生ニ魂ヲ
吹込ムヤウナ力ハアリ得ナイト私ハ思フノ
デアリマスカラ、此ノ點ニ於キマシテハ師道ノ
根本道場ト致シマシテ師範大學ヲ設立スルコ
コトガ、極メテ重要ダト思フノデアリマス、此
ノ點ニ付キマシテ文部省ハ如何ナル意見ヲ御
持チニナツテオ居デニナラレルノデアルカ、
此ノ點ニ付テモ御伺致シタイノデアリマス
第四點ト致シマシテ、私ハ表徵人國
費養成ニ關シテ、一言聽イテ見タイノ
デアリマス、一體一ツノ國家ガ强イカ弱
イカ、文化的ノ價値ノ上ヨリ考ヘマシテ、
本當ニ有用ナ國家デアルト考ヘラレルカド
ウカハ、要スルニ其ノ國家ノ中ニ組織トシ
テ入ツテ居リマスル個人ノ力ガ、非常ニ高
イモノデアルカドウカニ依ツテ定マルト私
ハ考ヘテ居ルノデアリマス、國家ノ根本性
格ト云フモノハ、其ノ民族ノ主觀的客觀的
ナ色々ノ要素カラ成ツテ居ルノデアリマス
ガ、要スルニ一ツノ國家トシテ綜合的ナ實
行ヲ爲サウト云フ場合ニ當リマシテハ、其
ノ國家ヲ表徵スル最モ能率ノ高イ人、私ヲ
シテ言ハシメマスト、私ハ之ニ表徴人ト云
フ名ヲ與ヘテ居ルノデアリマスガ、斯ル
人々ガ其ノ地位ニ於テ、其ノ意行ニ於テ、
本當ニ選バレタル人トシテ國家ヲ代表スル
ニ相應シイ人、斯ウ云フ偉イ表徵人ガ澤山
アル國家ニ依ツテ纏ツテ居ル所ノ國家ガ、
最モ强イ國家ナリト私ハ思フ、然ラバ斯ノ
如キ表徵人ハ如何ニシテ養成セラレネバナ
ラヌカト云フト、私ハ一ツノ國家ヲ形成致
シテ居リマスル、其ノ內容ヲ爲ス國民ノ有
ユル階級、有ユル層、有ユル地域、ソレ等ノ
中カラ惜ミナク其ノ有能トスル人ヲ簡拔致
シマシテ、之ニ國家的施設ニ於テ〓育ヲ
加ヘルコトガ、最モ大事ナル表徵人養成ノ
方法ダト思フノデアリマス(拍手)現在ニ於
テ〓育ノ機會ヲ與ヘラレテ居ル人ハ如何ナ
ル人デアルカ、金ヲ持ツタ人、金ヲ持ツタ人
ノ子供デナケレバ、最高ノ〓育、卽チ表徵人
トナル機會ハ與ヘラレテ居リマセヌ、然ラ
バ金ヲ持ツタ人ノ子供、果シテ表徵人トシ
テノ値打ヲ持ツテ居ルカト云ヒマスト、持
ツテ居ル人モアリマセウガ、最高〓育ハ受
ケタガ、表徴人トシテハ總テガ其ノ資格ヲ持
ツテ居ツタトハ言ヒ得ナイト私ハ思フ、故
ニ吾々ハ一般民間ノ間ニ本當ノ資格ヲ持ツ
テ居ツタ表徵人トシテ生レナガラ、己レ自
ラ如何ナル力ヲ持ツタカヲ知ラズシテ死ン
デ行キマシタ人、所謂草莽ノ間ニ生レ、草
莽ノ間ニ死ンデ行ツタ、現ハレザル表徵人
ト云フモノヲ吾々ハ考ヘテ見ナケレバナラ
ナイト思フ、佛〓ノ中ニ本事譚ト云フノガ
アリマスガ、正ニ斯ノ如キ現ハレザル表徵
人ノソレヲ、表徵的ニ現ハシタモノダト私
ハ考ヘテ居ルノデアリマス、故ニ率直ニ申
上ゲマスナラバ、貧乏人ノ子供デモ眞ニ優
秀ナ才能ヲ持ツテ居ル者ハ、國家ノ施設ニ
於テ、之ニ〓育ノ機會ヲ與フベキモノダト
云フノガ、私ノ議論トナルノデアリマス
(「ヒヤ〓〓」拍手)今ヤ我國ハ今囘ノ事變ニ
於テ本當ノ人材ヲ欲スル、本當ニ日本ノ國
ヲ背負ツテ起タウト云フ人材ノ出現ヲ翅望
スルコト、今日ヨリ急ナルハナシト私ハ思
フノデアリマス(拍手)之ニ對シテ果シテ日本
ノ國家ガ惜ミナク〓育ノ機會ヲ與ヘル御施
設ヲ爲サツテオ居デニナルカドウカ、省ミ
テ洵ニ忸怩タルモノガアルデアラウト私ハ
思フノデアリマス、今民間ニ育英施設ト云
フモノガアリマスケレドモ、餘リニ狹隘デ
アリマス、到底國家ノ要求スルヤウナ形ニ
於テハ到底之ニ應ジ切レナイノデアリマス、
私ハ文部省ノ舊來ノ消極的ナ態度、形式ニ
拘泥スルガ如キ態度ハ、ココデ御改メニナ
リマシテ、思切ツテ一般民衆ノ間カラ、人
村、卽チ表徴人ヲ拔イテ、〓育ノ機會ヲ均
等ニ與ヘルヤウナ施設ヲシテ戴キタイ、斯
ウ思フノデアリマスルガ、文部大臣ノ之ニ
對スル御抱負、御經綸果シテ如何デアリマ
スルカ、御伺致シタイノデアリマス
第五點、私ハ文部省ノ今日マデノ執リ來
ツテ居ル〓育ノ熊度ニ付テ、一言御伺ヲ致
シタイ所ガアルノデアリマス、題目ヲ申上
ゲマスナラバ、實踐的〓育觀ノ確立、農民
道場ノ示唆、斯ウ云フ題デ御伺致シタイノ
デアリマス、一體我國ノ〓育ハ偏知的ダト
云ヒマス、知識ニ偏スルノデアリマス、併
シナガラ是ガ本當ノ知識ナラバ我慢ガ出來
ルノデアリマスガ、ソレハ唯記憶中心ノ偏
知ナノデアリマス、文字〓育デアリマス、
實ニ漫然タル文字〓育ニ堕シテ居ルト云フ
コトハ、蓋シ否定シ能ハナイ一ツノ專實デ
アルト私ハ見ルノデアリマス、然ルニ我國
ノ具體的人生ト云フモノヲ見マスナラバ、
決シテ記憶中心ヤ知識中心デハ、具體的ナ
生活ト云フモノハ營マレ得ナイノデアリマ
ス、吾々ハ吾々ノ與ヘラレタル生活ノ場、
之ヲ考ヘテ見ル必要ガアルノデアリマス、
場所ノ場デアリマス、此ノ「場」ヲ考ヘテ見ル
必要ガアルノデアリマス、個人ニハ個人ノ
生活領域ガアリマス、ソレヲ假リニ「場」ト
云フ名ヲ付ケマスルナラバ、吾々ノ具體的
生活ト云フモノハ、其ノ個人ノ生活ノ場、
其ノ自治體ノ生活ノ場、更ニ擴充セラレタ
ル人格ト致シマシテハ、其ノ縣ノ生活ノ場、
國家ノ生活ノ場ト云フコトヲ考ヘサセラレ
ルノデアリマス、其ノ根本的ナ人生觀ハ、
何處ヨリ來テ居ルノデアルカト云ヒマスレ
バ要スルニ實在ヲ生命ダト見ル點ニ私ハ
アルト思フノデアリマス、其ノ生命ノ最モ
表徵的ナモノハ何デアルカト云フト、意志
ダト思フノデアリマス、意志ノ特徴ハ何デ
アルカト云ヘバ、目的ヲ確立スルコトダト
思フ、目的ヲ確立シテ之ヲ實行ニ移スコト
ダト思ヒマス、實行ニ移シテ再ビ其ノ實行
ニ錯誤ノアリヤナシヤヲ點檢スル所ニ、
ツノ反省ガ來ルト思ヒマス、目的ノ樹立ト、
實行ト、自己反省ト、サウシテ新タナル段
階ヘノ飛躍、之ヲ重ネ行ク所ニ、私ハ一ツ
ノ人生ノ進步ト云フモノガアルト考ヘテ居
ルノデアリマス、隨ヒマシテ〓育ハ單ナル
知識デハナイ、知識ハ目的樹立ノ一ツノ材
料デアリ、實行ノ上ニ過ナキヲ期スル一ツ=
ノ方法デシカアリ得ナイノデアリマスルカ
ラ、根本ノ問題ハ實踐的ナルモノデアリ、
意志的ナモノデアリ、全生命的ナモノデア
ルト云フ人生觀ニ立ツノデナケレバ、本當
ノ〓育者トシテノ資格ガナイト私ハ考ヘテ
居ルノデアリマス、其ノ意味ニ於テ我國ノ
〓育ノ方法ヲ根本的ニ改造セナケレバナラ
ナイモノダト云フ考ガ出テ參リマシテ、ソレ
ガ農村ニ現ハレタルモノガ卽チ農民道場ノ
形ニ依ツテ現ハレテ參ツタノデアリマス、
卽チ農村ニ於ケル一箇ノ個人ガ、農家ト致
シマシテ一ツノ經營ヲ爲ス、其ノ經營ヲ爲
スニ當ツテハ、常ニ目的ヲ樹立シ、之ヲ實
行シ、自己反省ヲ加ヘル、ソレガ擴充セラレ
テ一ツノ部落、一ツノ自治體ヘト波及シテ行
クヤウニスル爲ニハ、只今申上ゲマシタヤウ
ナ實踐的勤勞中心ノソレデナケレバイケナ
イト云フノガ、農民道場ノ起ツタ〓育上ノ原
因ダト私ハ考ヘルモノデアリマス、最初此ノ
問題ハ何處カラ起ツタカト云ヒマスルト、
農林省カラ起リマシタ、ナゼ農林省カラ起
ツタカト云フト、農林省自體ハ農民ノ生活
ニ直接ニ接著シテ居ルカラデアリマス、實
行ノ立場デ見ルカラ、實行的ノ〓育デナケ
レバナラヌト云フ考ガ起ツテ來ル、文部省
ハ其ノ時ニ何ヲ致シテ居リマシタカ、農林
省カラ斯ノ如キ〓育ニ依ルニアラザレバ、
日本ノ農村ハ救フコト能ハズト致シマシテ、
文部省ニ對シテ提案致シマシタル時ニ、〓
念化セラレタル〓育觀以外ニ持ツテ居ラナ
カツタ文部省ハ、ソレハ白分ノ方デヤル譯
ニハ參ラナイカラ、アナタノ方デオヤリナ
サイト、斯ウ言ハレタノガ、今日各縣ニ設
置セラレタ農民〓育道場ノ端〓トナツタノ
デアリマス、併シ是レハ農林省ノ管轄ノ〓
育ナノデアリマス、一體文部省ハ今日マデ
何ヲヤツテオ居デニナツテ居ツタノデアリ
マセウカ、形式ニ囚ハレ、知識中心ノ〓育
ヲヤツテ行カウト云フ文部省ノ批判的ナ、
傍觀的ナ、官僚的ナ、形式ニ囚ハレタル態
度ト云フモノハ、斯ノ如キ事變ニ卽應スル
ヤウナ意味ニ於テハ、餘リニモ時代遲レニ
ナツテシマツタンデハナイカト私ハ考ヘ
ル、文部省ハ其ノ意味ニ於テ極メテ〓念化
シテ、到底新ナル時代ヲ救フニ足ル〓育上
ノ信念ヲ持ツテ居ナイカノヤウニ私ニハ見
エマス、ドウカ其ノ點ニ付テ文部大臣ハ新
タナル〓育觀卽チ國民ノ實生活ニ卽シタ實
踐的〓育觀ヲ御立テニナツテ、サウシテ〓
育者ニ行クベキ途ヲ知ラシテヤル義務ガア
ルト私ハ考ヘルノデアリマス、今ヤ日支事
變ヲ契機ト致シマシテ、日本ノ國家ハ實行
的ナ立場ヨリ民族全體ノ自己反省ノ立場ニ
立チ、新ナル「イデオロギー」ヲ有ユル方面
ニ於テ立テナケレバナラヌ時代ニ際會シテ
居ルノデアリマス、文部大臣ハ過去ノ試行
錯誤ニ鑑ミテ、將來文部省所管ノ實業〓育
ヲ、只今私ガ申上ゲマシタヤウナ「イデオ
ロギー」ニ依ツテ御指導ナサル、御所信ガ
オアリニナリマスルカドウカ、此ノ點ニ付
テ大臣ノ御所見ヲ御伺致シタイノデアリマ
ス(拍手)
第六點、現代〓育ノ根本病弊ニ付テ一點
御伺致シタイノデアリマス、大體私ハ色々
ノ觀點カラ私ノ人生觀ヲ織込ミマシテ申上
ゲタノデアリマスルガ、只今モ申上ゲマシ
タヤウニ、我國ノ〓育ノ根本病弊ハ結局試
驗中心ナンダ、記憶中心ナンダ、注入中心
デ、形式ニ囚ハレテ居ル、ダカラ是等ヲ
貫シタル病弊ハ何デアルカト言ヒマスレバ、
私ハ魂ヲ忘レタル點ニアルト思フ、自己ノ
本體ヲ忘レタル點ニアルト思フ、玆ニ非常
ニ考ヘナケレバナラナイモノガアルト私ハ
思フ、ナゼ斯ノ如キ弊害ニ陷ツタノデアル
カ、是ハ明治維新此ノ方若カリシ日本ハ
歐米ノ燦爛タル文化ヲ取入レルニ急デアリ
マシテ、其ノ爲ニ唯鵜呑ニシテモ宜イカラ、
之ヲ早ク取入レルベキダト云フ國策ノ上カ
ラ、只今申上ゲマシタヤウナ形ノ〓育ニナ
ツタンダト私ハ思フノデアリマス、併シナ
ガラ今ヤ時代ハ變ツテ參リマシタ、此ノ變
ツタ時代ニハ變ツタ〓育方針ト云フモノガ、
私ハ立タナケレバナラナイト思フ、我國ニ
於ケル西洋カラ取入レタル資本主義的文化
ハ正ニ其ノ成長ノ頂點ニ達シタ、吾々ハ
此ノ頂點ニ達シタル殼ヲ破ツテ、新ナル生
活圈へ乘越エナケレバナラナイ、此ノ限界
ヲ破ツテ世界ノ再秩序ノ建設ヲ圖ルノデア
ル、世界ノ再秩序ノ建設ヲ圖ル其ノ第一階
段トシテ、東亞ノ再秩序ノ建設ヲ圖ルノデア
ル、是ガ今囘ノ事變ノ意義ダト私ハ思フノデ
アリマス、其ノ點カラ考ヘマスト、舊來ノ環境
ニ制止セラレタル物ノ見方、形式的ナル物
ノ見方ハ、國家全體ノ反省ノ上カラ考ヘマ
シテ、新ニ考ヘ直サナケレバナラナイト、
斯ウ思ツテ居ルノデアリマス、デアリマスカラ
私ハ現代ノ日本ノ〓育者ニ、眞ニ今囘ノ事變
ノ根本的意義ト、日本民族ノ抱イテ居ル八
紘一宇ノ大理想ノ存スル所ヲ體現セシメテ、
此ノ體現ノ上ニ立ツテ、本當ノ理想實現ノ爲
ニ邁進スルヤウナコトニセナケレバナラナ
イト考ヘテ居ルノデアリマス、ダカラ吾々
ハ我國ノ民族ヲシテ、最モ生命力ノ溢ルル
理想ニ燃ユルヤウナモノニスル第一階段ト
致シマシテ、私等ハ〓育者ニ本當ノ信念ヲ
持タセルト云フコトヲ、第一前提ト致サナ
ケレバナラナイト考へテ居ルノデアリマス、
=
我國ハ思想的ニ色々ノ國難ニ直面シタ時代
ガアルノデアリマスルガ、過去ノ歷史ヲ振
返ツテ見マシテモ、曾テ佛〓ガ入ツテ參リ
マシタ場合ニ聖德太子ガ現ハレ、〓麻呂ガ
現ハレ、平安朝ノ末期カラ鎌倉時代ニ於ケ
ル思想ノ國難ガアリマシタ際ニハ、道元ガ
現ハレ、日蓮ガ現ハレテ、日本ノ國民ノ向
アイツ、日本ノ國民ノ生命力ノアル所ヲ表徵
スルヤウナ立場ヲ御執リニナツタノデアリ
きく、今日ノ此ノ國難-今日思想的ニモ、
經濟的ニモ、財政的ニモ、軍事的ニモ、斯
ノ如キ國難ニ直面致シテ居リマスル場合
ニ、一人ノ日蓮現ハレズ、一人ノ道元ガ現
レザルハ、洵ニ歎カハシイコトデアルト私
ハ思フ、(拍手)此ノ制度ノ上ヨリ考ヘマシ
テモ、其ノ指導的役割ヲ持ツモノハ、正ニ
〓育者デナケレバナラナイト思フ
〔發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=19
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020・小山松壽
○議長(小山松澤君) 小田君ニ注意致シマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=20
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021・森田重次郎
○森田重次郞君(續) 〓育者デナケレバナ
ラナイト云フコトデアリマスケレドモ、ソ
レヲ期待スル爲ニハ先ヅ〓育ノ本家本元デ
アリマス所ノ文部大臣ガ、斯ノ如キ大理想
ニ燃エテ、先ヅ〓育者諸君ニ呼掛ケナケレ
バナラナイト思フノデアリマス、今ヤ漲リ
ツツアル民族ノ生命力、横溢シツツアル民
族ノ此ノ生命力ニ、眞理想ヲ與フ時デアル、
故ニ〓育ノ本家本元デアル所ノ文部大臣ハ、
私ノ今要求致シマシタヤウナ形ニ於テ、人
心ノ一大刷新ヲ圖ラネバナラヌト信ズル、
今ヤ日本ハ〓育界人心ノ一大刷新ヲ圖ルコ
トヲ、喫緊ノ急務トシテ居ルト考ヘルノデ
アリマスルガ、文部大臣ハ果シテ之ニ對シ
テ如何ナル抱負ヲ御持チニナツテ居ラルル
ノデアリマセウカ、此ノ點ニ對スル御所見
ヲ御伺致シマシテ、私ノ質問ヲ打切ル次第
デアリマス(拍手)
〔國務大臣松浦鎭次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=21
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022・松浦鎭次郎
○國務大臣(松浦鎮次郞君) 森田君ノ御質
問ニ對シテ御答ヲ申上ゲマス、我國ノ〓育
ハ其ノ普及發達ノ關係ニ於キマシテ、外國
ニ比シテ遜色ヲ見ナイモノデアルガ、併シ
ナガラ此ノ〓育ヲ益〓徹底普及セシメル爲ニ
義務〓育ノ年限ヲ、現在六年デアリマスモ
ノヲ、八箇年ニ延長スルコトガ必要デアル
ト云フ聲ハ、從前カラ屢〓聞ク所デアリマ
ス、文部省ト致シマシテモ、義務〓育年限
延長ノ必要ヲ感ジマシテ、昭和十九年度カ
ラ之ヲ實行スルト云フ案ヲ立テマシテ、其
ノ準備費トシテ十五年度ニ豫算ヲ要求致シ
テ居ルヤウナ次第デアリマス、斯ノ如ク昭
和十九年度カラ修業年限ノ延長ヲ見ルコト
ニ相成リマスレバ、從來六箇年デ學校ヲ出
マシテ社會ノ實務ニ就キ得タ者ガ、尙ホ一一
箇年間學校ニ在學スルコトニ相成リマスノ
デ、貧困ナ家庭ニ在ル者ハ、是ガ爲ニ就學
ノ機會ヲ二箇年延バサレテ、非常ニ困ルヤ
ウナコトガアリハシナイカ、サウ云フ家庭
ニ對シテハ相當ノ打擊ヲ與ヘルノデハナイ
カ、之ニ對シテ文部省ハ何等カノ方策ヲ持
ツテ居ルカ、斯ウ云フ御尋デアツタノデア
リマス、小學校ノ〓育ガ六年ト八年ト、僅
カ二年ノ違ヒデアリマスケレドモ、其ノ六
年ノ上ニ加フル二箇年ノ〓育、卽チ今日デ
申ス高等小學校ノ〓育ガ如何ニ有效デア
リ、如何ニ大切デアルカト云フコトハ、今
日少シク頭ノ働キヲ要シマスル職業ニ就ク
條件トシテ、必ズ高等小學校ノ卒業者ト云
フモノガ要求サレル、ドノ場合ニ於テモ高
等小學校ノ卒業者ト云フモノガ就職ノ要件
ニナツテ居ルト云フ事實ニ見マシテモ、此
ノ六年ノ上ニ更ニ加フル所ノ二箇年ノ〓育
ガ如何ニ有效デアルカト云フコトハ、之ヲ
證明シテ餘リアルト思フノデアリマス、況
ヤ今囘此ノ義務〓育ノ年限延長ヲ致シマス
ルニ付キマシテハ、唯現在ノ如クニ六年デ
アルモノヲ八年ニ致スト云フコトノミニ止
マラヌノデアリマシテ、義務〓育年限延長
ト同時ニ、其ノ內容ヲ全面的ニ刷新致シマ
シテ、眞ニ皇道精神ニ滿チタ大國民ヲ鍊成
シヨウト云フ目的デ、內容ヲ刷新スルノ
デアリマスカラ、此ノ八箇年ヲ通ジマ
シタ課程ヲ了ツテ、世ノ中へ出マスル
者ノ素養ガ如何ニ高クナルカト云フコ
トハ、是ハ申上ゲルマデモナイコトデ
アリマス、隨テ多少ノ不便ヲ忍ビマシテモ、
此ノ八箇年ノ〓育ヲ受ケルト云フコトハ、
其ノ兒童ガ學校ヲ了ツテ世ノ中ヘ出マスル
際ニ、非常ナ利益ヲ受ケルノデアリマシテ、
八箇年ノ義務〓育ト云フコトハ、ドノ點カ
ラ考ヘマシテモ非常ニ必要デアルト云フコ
トハ、是ハ無論森田君モ御同感ノコトデア
ラウト存ジマスガ、唯家庭ノ貧困ナルガ爲
ニ、學校ニ通學スルコトニ困難ヲ感ズルト
云フ者ニ對シマシテハ、是ハ相當就學奬勵
ノ手段ヲ講ジナケレバナラヌノデアリマシ
テ、勿論文部省トシテモ就學奬勵ニ相當ノ
方法ヲ講ズルト云フコトニ付テハ考ヲ」致シ
テ居ルノデアリマス、此ノ點ハ御安心ヲ願
ヒタイト思ヒマス
ソレカラ第二ノ御尋ハ、義務〓育年限延
長ノ實施ニ伴ツテ、市町村ニ於テ學校校舍
ノ增築、設備ノ增設ト云フヤウナモノニ經
費ヲ要スル譯デアルガ、之ニ付テハ文部省
ハ相當補助ヲ致スノデアルカト云フ御尋デ
アツタヤウニ承知シマシタガ、是ハ其ノ場
合ニ於キマシテハ、文部省ト致シマシテハ相當
ノ補助ヲ致シタイ考デ居ルノデアリマス、其ノ
次ノ御尋ハ假ニ制度ガ整ヒマシテ年限ガ延
長セラレルト云フコトニ相成ツタニ致シマ
シテモ、要スルニ學校ニ於テ最モ必要ナコ
トハ〓師其ノ人ノ改善デアル、〓師ニ其ノ
人ヲ得ナケレバ〓育ノ效果ハ擧ルモノデハ
ナイ、良イ〓師ヲ學校ニ迎ヘヨウトスルノ
ニハ物的ノ待遇モ必要デハナイカ、斯ウ云
フ趣意ノ御尋デアツタノデアリマスガ、之
ニ付キマシテハ今日小學校ノ〓員ノ物的待遇
ト云フモノガ十分デナイト云フコトニ付テ
ハ文部省モ切ニ之ヲ感ジテ居ルノデアリ
いく、現ニ明年度ノ豫算ニ年功加俸ノ補助
ト云フコトニ付テ豫算ヲ御要求致シテ居ル
ノモ、卽チ此ノ年功加俸ニ對スル補助金ヲ
增加致シマシテ、年功加俸ノ恩典ニ浴スル
者ヲ成タケ多クシヨウト云フ趣意カラ出タ
ノデアリマス、其ノ他〓員ノ物質的ノ待遇
ニ付テモ、是ハ今囘ノ案ニアリマスル通リ
〓員ノ俸給ガ府縣費ノ支辨ト相成リマスレ
バ、隨テ大キナ經濟ノ下ニ於テ其ノ俸給ノ
經理ヲヤルノデアリマスルカラ、自然待遇モ。
好クナルコトト考ヘルノデアリマス、今日
殷賑產業等ノ方面ニ向ツテ轉職者ガ相當ア
ルト云フコトニ付キマシテハ、是ハ事實デ
アリマシテ、是ガ防止ニ付テハ十分ニ考ヘ
ナケレバナラヌノデアリマシテ、一面ニ於
キマシテハ師範學校ノ生徒ヲ增募致シマシ
テ、之ニ對シテ學資ノ補給ヲヤルト云フヤ
ウナコトモ考ヘテ居ルノデアリマシテ、其
ノ事ハ十五年度ノ豫算ニモ御要求ヲ致シテ
居ルヤウナ譯デアリマス、兎モ角物的ノ待
遇モ無論之ヲ好クシナケレバナリマセヌガ、
同時ニ又精神的ノ待遇ト云フコトニ付テモ
十分ニ考ヘナケレバナラヌノデアリマシテ、
此ノ點モ文部省トシテハ十分考慮致シタイ
ト考ヘテ居リマス
ソレカラ其ノ次ノ御尋ハ、從前ハ此ノ師
範學校ト云フモノガ眞ニ指導ノ中心デアツ
ク、然ルニ段々世ノ中ガ推移スルニ從ヒマ
シテ、先生ノ價値ト云フモノガ物質的ノ待
遇デ判斷セラレルト云フコトニ相成ツテ、
隨ツテ先生自ラモ物質的ニ物ヲ考ヘルヤウ
ナコトニナツテ、收入ノ多イ方面ガアレバ
直チニ其ノ方へ向フ、直チニ其ノ方ニ職ヲ
轉ズルト云フヤウナ氣持ニナル、是ハ洵ニ
困ツタ點デアル、其ノ點カラ言フト此ノ高
等小學校ヲ出マシタ所謂一部ト云フ方ノ生
徒ガ宜シイノデアル、中學校ノ卒業者ヲ入
レマス二部ノ方ハ却テ宜シクハナイノデハ
ナイカ、二部ノ卒業者ハ動モスレバ轉職ヲ
スルト云フヤウナ傾キガ多イ、斯ウ云フ御
話デアリマシタガ、此ノ點ハ二部ノ卒業者
ガ必ズシモサウ云フヤウナ傾向ヲ持ツテ居
ルトハ限ラヌノデアリマシテ、此ノ一部、
二部ト云フコトニ付キマシテドチラガ宜シ
イカト云フコトハ、是ハ餘程問題デアリマ
シテ、一長一短各〓長ズル所モアリ、又短所
モアリ、必ズシモ一部ガ宜シイト云フノミ
ニハ考ヘラレヌノデアリマス、今囘〓育審
議會ニ於キマシテ師範學校ノ向上ト云フコ
トニ付テ答申ヲ致サレテ居リマスルガ、是
ハ要スルニ〓員ノ資質ノ向上ト云フコトニ
付テハ師範學校ヲ現在ノ儘デ置ク譯ニハ行
カナイ、之ヲモツト中學校ノ卒業者ヲ入レ
テ、修業年限ヲ延バシテ、サウシテモ
ツト立派ナモノニシナケレバナラヌト云
フ意味デアルノデアリマシテ、大體ニ於
キマシテ文部省ト致シマシテモ是ハ同感
デアリマシテ、此ノ〓育審議會ノ趣旨ヲ實
行スルコトニ致シタイト考ヘテ居ルノデア
リマスガ、是ハ出來ル限リ早ク其ノ點ヲ實
施ニ移シタイト考ヘテ居ル譯デアリマス
尙ホ師範學校ヲ專門學校程度ニシテ、國
立ニスル考ハナイカト云フ御尋デアリマス
ガ、師範學校ヲ專門學校ニ致スト云フコト
ニ付テハ、〓育審議會ニ於テモ、サウ云フ
答申ガアルノデアリマスガ、之ヲ直チニ國
立ニ致スト云フ考ハ只今ノ所持ツテ居リマ
セヌ、是ハ各地方ニアリマスル所ノ小學
校-將來ハ國民學校ト相成リマスガ、其ノ
〓員ノ養成機關デアリマスガ故ニ、ヤハリ
各府縣ニ於テ之ヲ經營セシムルコトニ依ツ
テ、一面ニ長所ヲ持ツテ居ル譯デアリマス
カラ、今日之ヲ直チニ國立ニ直スト云フ考
ハ只今ノ所ハ持ツテ居リマセヌ、之ヲ府縣
立ノ儘ト致シマシテ、十分ニ其ノ發展ヲ圖
リタイ、斯樣ニ考ヘテ居ルノデアリマス、
其ノ次ノ御尋ハ、秀才デアツテ家庭ノ貧困
ナルガ爲ニ學校ニ入學スルコトガ出來ナイ
ト云フモノヲ救濟シテ、所謂〓育ノ機會均
等ヲ與ヘル爲ニ、國家カラ相當ノ補助ヲ致
ス必要ガアルト思フガ如何デアルカ、足人
洵ニ仰シヤル通リデアリマス、私共全ク同
感デアリマスガ、現在之ニ付キマシテハ或
ハ民間ノ育英團體ガアリ、或ハ各地方等ニ
於キマシテモ、貧困ニシテ優秀ナル靑年ニ
就學ノ機會ヲ與ヘル爲ニ補助ヲ致スト云フ
施設ハ彼此レアリマスガ、併シナガラ今日
ノ儘デハ不十分デアリマスノデ、是ハ何等
カ組織的ニ育英制度ト云フモノヲ確立致シ
タイト考ヘテ居ルノデアリマス、之ニ付テ
ハ何等カノ方法ヲ以テ此ノ制度ヲ定メルト
云フコトニ付テ、考慮致シタイト考ヘテ居
ル譯デアリマス
其ノ次ノ御尋ハ、今マデノ實業〓育ト云
フモノガ兎角知的ニ偏シテ居ルノデアル、
其ノ點ニ付テ非常ニ缺點ガアル、ソコカラ
所謂農民道場ノ如キモノガ現ハレテ來タ、
是ハ卽チ實業學校ニ於ケル缺點ヲ反面ニ於
テ證明シタモノデハナイカ、文部省ハ實業
學校ノ改善ニ付テドウ云フ風ニ考ヘテ居ル
カ、斯ウ云フ御尋デアツタノデアリマス
ガ、實業學校ノ〓育必ズシモ知的ニ偏スル
ト云フ譯デハナクシテ、知德兩方面ニ亙
リ、又實踐ト云フコトニ付テモ相當重キヲ
置イテヤツテ居ツタノデアリマスケレド
モ、其ノ點ニ付キマシテハ尙ホ一層知ト行
ト、所謂知行合一ノ〓育ヲヤルコトガ必要
デアリマスシ、殊ニ今日ノ知キ重大ノ時局
ニ於キマシテハ、此ノ精神ヲ徹底セシムル
コトガ必要デアリマスノデ、實業學校ニ於
キマシテモ、所謂實踐道場的ノ精神ヲ十分
ニ吹込ンデ、之ヲ實行致シタイト云フノ
デ、特ニ此ノ點ニ於テ留意ヲ致シテ居リマ
シテ、實業學校ニ對スル國庫補助ノ中ニ
モ、特ニサウ云フ意味ヲ籠メテヤツテ居ル
ノデアリマス、又實習ニ〓員等ヲ時々招集
致シマシテ、其ノ意味デノ徹底ヲ圖ツテ居
ル次第デアリマス、其ノ次ノ御尋ハ、兎角
今日マデノ〓育ガ知識中心、記憶中心ノ〓
育デアル、斯ウ云フ〓育ハ此ノ重大時局ニ
際シテ、所謂東亞新秩序ノ建設ヲ翼贊致ス
ベキ國民ノ養成トシテハイケナイノデア
ル、〓育ノ精神ヲ全ク入替ヘテ、本當ノ大
國民ヲ養成スルト云フ意味ヲ以テ改善ヲ加
ヘナケレバナラヌノデハナイカ、此ノ點ニ
付テ如何ニ考ヘテ居ルカト云フ御尋デアリ
マシタガ、無論此ノ點モ御同感デアリマ
ス、此ノ時局ニ於キマシテ、又將來東亞新
秩序ノ聖業ヲ翼贊シ奉ルベキ次代ノ國民ヲ
養成スルト云フ點ニ付キマシテハ、第一ニ
〓育者ガ十分ニ目覺メナケレバナラヌ、而
シテ唯知的ノ方面ノ養成ト云フコトデハイ
カヌノデアリマシテ、眞ニ時局ニ目覺メ、
新シイ時代ニ卽應シタ〓育ヲヤラナケレバ
ナラヌ、ソレニ對シマシテハ總テノ種類ノ
學校ヲ通ジテ、其ノ信念ヲ持ツテヤラナケ
レバナラヌト云フコトニ付キマシテハ、全
ク御同感デアリマシテ、此ノ點ニ付キマシ
テハ私ハ出來ル限リノ努力ヲ致シマシテ、
此ノ實現ヲ圖リタイト考ヘテ居ル次第デア
リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=22
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023・小山松壽
○議長(小山松壽君) 羽田武嗣郞君
〔羽田武嗣郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=23
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024・羽田武嗣郎
○羽田武嗣郞君 我ガ〓育界ノ多年ノ懸案
ト致シマシテ、全國二十五万ノ小學校ノ〓
員ノ生活ノ安定、全國一万ノ町村財政ノ癌
ヲ打開スベク立案サレマシクル此ノ二案ノ
上程ニ際シマシテ、私ハ以下數項目ニ亙リ
マシテ文部大臣、內務、大藏兩當局ニ對シ
テ質問ヲ致ス次第デアリマス
先ヅ第一ノ問題ト致シマシテハ小學校〓
員ノ俸給ノ不拂問題ニ付テ、今日ドウ改善
セラレテ居ルカト云フコトニ付テ大臣ニ御
尋致シタイノデアリマス、私ハ昭和十一年
ノ夏ニ約半箇月ニ互リマシテ、窮乏ノドン
底ニ喘イデ居ル東北地方ヲ初メ、東日本ノ
各地ノ〓育ノ視察ヲ致シタノデアリマス、
私ノ最モ心ヲ痛メマシタモノハ、貧弱町村
ニ於ケル小學校ノ〓員ノ月給ノ不拂問題デ
アツタノデアリマス、栃木縣ニ於キマシテ
ハ五十六箇町村デアリマス、其ノ金額ガ十
九万圓、福島縣ニ於テハ百五十箇町村デ、
ヤハリ十九万圓、秋田縣ガ九十五箇町村デ
十四万圓ヲ算ヘテ居ツタノデアリマス、斯
クシテ殆ド全國的ニ〓員ノ月給ノ不拂ガ滔
滔トシテ行ハレテ居ツタノデアリマス、引
續ク農村ノ不況ノ爲ニ村稅ノ滯納ガ甚シク、
先生ノ月給ガ拂ヘナカツタノデアリマス、
ソレバカリカ、小學校ノ先生ニ多額ノ戶數
割ヲ課ケタリ、或ハ寄附金ヲ强要スル等ノ
事實ガ各方面ニ見受ケラレタノデアリマス、
月給ガ貫ヘナイ爲ニ仕方ナク暮夜窃ニ村內
ノ有力者ノ所ニ行ツテ、月給ノ前借ヲ致シ
タリ、或ハ米、味噌ヲ借リテ來ルト云フヤ
ウナ、洵ニ氣マヅイ思ヲスル先生ガ澤山ア
ツタノデアリマス、秋田縣ノ某小學校長ノ
如キハ、東京ニ遊學スル所ノ子供ノ學資ノ
爲ニ、細君ノ著物ヲ質ニ入レテ學資ヲ貢イ
デ居ツタノデアリマスガ、遂ニ是モ支ヘ切
レズニ中途退學ヲサセナケレバナラナイト
云フヤウナ悲慘ナ事實ヲ耳ニ致シマシテ、
私ハ黯然タルモノガアツタノデアリマス、
先生モ亦生活者デアリマス、家族ノ生活ノ
脅威ニ脅サレマシテハ、如何ニ神聖ナル〓
育ト雖モ、眞ニ魂ヲ打込ム所ノ〓育ハ出來
ナイノデアリマス、其ノ爲ニ他ノ職業ニ轉
ジタリ、窮乏ノ農漁山村カラ月給ノ高イ、
又能ク支拂ツテ吳レル所ノ都會方面ニ轉任
スルト云フヤウナコトノ爲ニ、有ユル〓劣
ナル手段ヲ講ズルト云フコトモ、亦是ハ人
情トシテ已ムヲ得ナイ一面ガアルト私ハ考
ヘテ居ルノデアリマス、經濟更生ニ、生活
改善ニ、思想ノ善導ニ、其ノ指導者トシテ、
文化ノ低イ、指導者ノ少イ所ノ農漁山村程
立派ナ先生ガ澤山必要デアルノデアリマス、
然ルニ拘ラズ只今申スヤウナ事情ノ下ニ、
良イ先生ガ農村ニ居著カズニ、佳給ノ安イ
先生ヤ代用〓員ニ農村ノ〓育ヲ任シテ置ク
ト云フヤウナ實情デアルノデアリマス、ノ
レバカリカ、實ハ小學校ノ經費ト云フモノ
ハ町村財政ニ於キマシテ殆ド二分ノ一、更
ニ七八割マデモ要シテ居ル地方ガ多イノデ
アリマス、サウ云フ貧弱町村ニ於キマシテ
ハ月給ノ高イ立派ナ先生ヲ雇ツテ置クト
云フコトガ困難ノ爲ニ、寧ロ月給ガ高クナ
ルト先生ヲ追出シテ、サウシテ安イ先生ヲ
後釜ニ入レマシテ辻褄ヲ合セルト云フヤウ
ナ實活デアルノデアリマス、斯ウシタ村ニ
參リマスト、學校ノ校舍モ設備モ全ク見窶
ラシイモノデアリマシテ、〓材ノ掛圖ナド
モ、滿洲國獨立ノ以前ノ古イモノデ間ニ合
セテ居ルト云フヤウナ所ヲ屢〓見受ケタノデ
アリマス、併シナガラ斯ウシタ生活ノ脅威
ノ中ニ在リナガラモ、月給ノ不拂ニ對シマ
シテ文句モ言ハズニ、村ノ更正運動ニ協力
シテ、村民ニ感激ヲ與ヘマシテ、父兄ノ心
ヲ改メサセテ、〓育環境ヲ良クサセルコト
ガ〓育者ノ使命デアリ、同時ニ又不拂問題
ノ根本對策デアル、斯ウ云フヤウナ立場カ
ラ、校長先生ヲ初メ全校ヲ擧ゲテ、村ノ全
面〓化ニ、經濟更生運動ニ、眞劍ニヤツテ
居ル所モ屢、見受ケマシテ、私ハ幾度カ泣カ
サレタノデアリマス、殊ニ最近銃後ノ第一
線ニ於キマシテモ、小學校ノ先生ノ思想的
ナ指導力ト云フモノハ、非常ニ顕著ナコト
デアリマシテ、吾々ハ當ニ是等ノ先生方ニ
對シテハ感謝ヲ致シテ居ル次第デアリマス、
最近ハ農村モ農產物ノ値上リデ懷ロ工合モ
宜シイシ、又戰時下ノ緊張ノ爲ニ納稅ノ成績
モ良クナリマシテ、〓員俸給ノ不拂問題ト
云フヤウナモノモ段々少クナツテ居ルト存
ジマスルガ、此ノ現狀ハドウナツテ居リマ
スルカ、特ニ文部大臣ニ御尋ヲ致シタイノ
デアリマス、何レニ致シマシテモ市町村ノ
財政ノ現狀カラ見マシテ、國カラノ交付金
ガ約八千五百万圓アリマスルガ、此ノモノ
ヲ含メマシテ約二億圓近イ金ヲ、〓員ノ爲
ニ月給トシテ市町村ガ負擔ヲ致シテ居ルノ
デアリマス、此ノ〓昌給ノ爲ニ市町村ノ財
政ハ非常ニ壓迫セラシマシテ、地方自治本
來ノ必要ナル經費マデモ、其ノ支出ニ困難
ヲ來シテ居ルヤウナ今日ノ實情デアリマ
ス、今囘此ノ法案ニ依リマシテ、〓員給ヲ
市町村カラ國竝ニ道府縣ニ移管致シマシ
テ、〓員給ノ不拂ノ如キ聖代ノ不祥事ヲ再
ビ繰返サナイヤウニ致シマシテ、〓員ノ生
活ノ安定ト、〓育ノ都會地方ノ機會均等ヲ
圖リ得ルコトガ出來マスルコトハ、洵ニ御
同慶ノ至リデアリマス
第二ノ問題ト致シマシテハ〓員ノ待遇ノ
問題デアリマス、只今森田君カラモ御話ノ
ヤウニ、今回ノ事變以來軍需工業會社方面
ニ小學校ノ先生ガ轉向シタ人ハ、數千人ノ多
キニ上ツテ居ルノデアリマス、神聖ナル〓
壇ヲ拾テテ軍需會社方面ニ走ラセマシタコ
トニ付キマシテハ、當局ハ大ナル反省ヲ致
サナケレバナラヌコトデハナイカト私ハ思
ツテ居ルノデアリマス、國家ノ義務〓育ニ
携ハル所ノ小學校ノ先生ニ對シマシテハ、
物心兩方而カラ之ヲ優潤ヲ致シテ、先生ノ
生活ヲ安定シテ、自尊ノ念ヲ高ク持タセ、
名聞利達ノ念カラ遠ザカリマシテ、古武士
ノヤウナ節操ヲ小學校ノ先生ニ保持サセル
ト云フコトガ、私ハ肝要デアルト思フノデ
アリマス、曾テ石川啄木ガ其ノ友人ニ宛テ
マシタ手紙ノ一節ニモ「斯ル境ニアリテ我ガ
唯一ノ樂ミハ、故山ノ子弟ヲ〓化スルノ大
任也、小生ハ蓋シ日本一ノ代用〓員ナラ
ム、兄ヨ願ハクバ此ノ小サキ自負ヲ公言ス
ルヲユルセ、人生ニ對スル予ノ不平ハ日ニ
益〓多シ、生活ノ苦鬪モ亦日ニ甚ダシ、八
圓ノ月給ガヨク一家五人ヲ養ヒ得ルノ理遂
ニナキナリ、然レドモ一切ノ不平ハ却テ予
ガ精神ヲ鼓舞スルノ良藥ナリ、鼓舞セラレ
タル精神ノ火ハ日夜我ガ紅唇ヨリ迸リ出デ
テ、神ノ如ク無垢ナル子弟ノ血ニ燃エ移リ
ツツアリ、感化ハ畢竟救濟ナリ、一國ノ王
トナラムヨリモ、一人ノ人ヲ救濟スルハ大
ナル事業ナリ、今ノ世ニ於テ愉快ナル、若
クハ壯大ナル事業ト稱セラルルモノ、多ク
ハ却テ空虛ナリ、吾人ハ事ヲナサントスル
ニ先ダチテ先ヅ何モノガ眞ニ充實シタル事
業ナルヤヲ考ヘザルベカラズ」斯ウ云フ言葉
ヲ言ツテ居リマスルガ、私ハ此ノ氣魄ト信
念ト〓育ヲ愛スル燃エルヤウナ情熱ト、ソ
レニ加フルニ八紘一字ノ皇謨〓贊ノ若キ選
士ヲ養成スル所ノ新シキ日本ノ〓育精神
ヲ、全國二十五万ノ先生方ニ眞劍ニ持ツテ
戴キタイト思フノデアリマス、ト同時ニ、
文部當局ト致シマシテハ、此ノ先生方ガ安
ンジテ〓育ニ從事出來マスルヤウニ各般ノ
施設ヲ講ジテ戴キタイト思フノデアリマ
ス、本案ニ依リマスレバ確ニ俸給ノ不拂ノ
禍根ヲ斷ツコトガ出來マスケレドモ、唯併
シ俸給ノ出所ガ市町村カラ國ヤ府縣ニ移ツ
タダケノ、事務的ナ、平面的ナモノデアツ
テハナラナイト私ハ考ヘテ居リマス、今日
ノ物價高ノ時代ニ處シテ、小學生ノ先生ノ
生活ガ確保セラレマシテ、安ンジテ〓壇ニ
止マルダケノ增俸ノ準備、或ハ戰時手當ノ
用意ガ、文部省ニ於テ出來テ居ル、ドウ
カ、之ヲ私ハ文部大臣ニ御伺致シタイノデ
アリマス
又、就學兒童ハ年々人口ノ增殖ニ依リマ
シテ增加致シテ居リマス、其ノ爲ニ學級ノ
自然增加モ相當ニ上ツテ居リマス、小學校
〓員ノ俸給ノ自然增加ハ年々約三四百万圓
ニ上ツテ居ルノデアリマス、果シテ道府縣
ガ將來此ノ負擔ノ增加ニ堪ヘルコトガ出來
ルカ、又時勢ニ卽シテ增俸ガ出來ルダケノ
財源ヲ持ツコトガ出來ルヤウニ、今囘ノ稅
制案ノ中ニ其ノ用意ガ十分ニ盛ラレテ居ル
カドウカ、之ヲ私ハ內務當局ニ御尋致シタ
イノデアリマス、又全體ノ俸給ノ額ガ決
ツテ居リマスルト、結局個々ノ先生ノ俸給
モ釘付ニナル傾向ガアルト思ヒマスルガ、
其ノ點ニ付テ十分ナル御用意ガアルカドウ
カ、之ヲ御伺致シタイノデアリマス、尙ホ
大藏當局ニ伺ヒタイコトハ、俸給ノ半額ハ
國庫ガ之ヲ負擔スルコトニナツテ居ルノデ
アリマスルガ、旣定ノ豫算ニ不足ヲ生ジタ
場合ニ於キマシテ、此ノ補充ノ爲ニ第二豫
備金マデモ支出シテ、十分ニ先生ノ生活ノ
安定ヲ圖ツテ戴ケルカドウカ、此ノ御用意
ヲ承リタイノデアリマス
次ニ文部省ノ、只今松浦文部大臣カラモ
御話ニナリマシタガ、昭和十九年カラシテ
現在ノ尋常小學校ヲ國民學校ニ改メ、高等
小學ヲ高等國民學校ニ致シテ、八箇年ノ〓
育制度ヲ實施スルコトニナツテ居ルサウデ
アリマスガ、十九年度カラハ當然高等小學
校ハ義務〓育制度ニ編入セラレルノデアリ
マス、昭和十九年ト云ヘバ今カラ四年シカ
ナイ、デアルナラバ寧ロ今囘ノ稅制改革ヲ
機會ト致シマシテ、來年度カラ直チニ高等
小學校ノ〓員ノ俸給ヲ國家ニ於テ、或ハ府
縣ニ於テ支辨スルコトガ、然ルベキデハナ
イカト思ヒマスルガ、之ニ對スル御考ヲ承
リタイノデアリマス、又同ジク義務〓育デ
アリマスルガ、靑年學校モ亦然リデアリマ
ス、義務〓育デアルナラバ靑年學校ノ〓員
費モ、國庫ニ於テ、或ハ縣ニ於テ、ヤハリ
負擔セラレマシテ、此ノ財政窮乏ニ惱ム所
ノ地方農漁山村ノ爲ニ圖ツテ戴キタイト御
願ヲ申上ゲル次第デアリマス
次ニ私ハ精神方面ノ優遇ニ付キマシテ御
尋致シタイノデアリマスルガ、今日小學校
長ガ奏任待遇ノ恩典ヲ受クルニハ、少クト
モ二十年以上ヲ勤續致シ、功績顯著ナルコ
トヲ必要ト致シテ居リマス、又敍勳ノ恩命
ノ如キモ、ヤハリ在職二十數箇年ヲ經タ者
デ、特ニ功勞アリト云フコトガ、必要條件
ニナツテ居ルノデアリマスルガ、營々孜々
トシテ第二國民ノ薰育ニ當ル小學校ノ先生
ニ對スル、國家ノ此ノ精神的ナ恩典ヲ更ニ
厚ク致シマシテ、小學校先生ノ社會的地位
ノ向上ヲ圖ルコトガ、私ハ必要ト考ヘルノ
デアリマスガ、文部大臣ハ之ニ對シテドウ
云フ御考ヲ持ツテ居ラレルカ、之ヲ御伺致
シタイノデアリマス
第三ニハ私ハ今囘提案サレマシタル所ノ
制度ノ運用ニ付テ、數箇點ニ付キマシテ文
部大臣ニ御伺致シタイノデアリマス、其ノ
第一點ハ本制度ノ實施ニ依リマシテ、今マ
デ俸給支拂者デアサ、增俸ノ鍵ヲ握ツテ居
ツタ所ノ市町村ノ村長サン其ノ他有力者ニ
對シマシテ、小學校ノ先生ハ卑屈ナ位ニ氣
兼ヲ致シテ居ツタ樣子モ、時ニ見受ケルコ
トガ出來タノデアリマスルガ、是カラハ村
ノ人ノ容喙干涉ト云フヤウナコトヲ、此ノ
制度ガ布カレレバ、直接村カラ月給ヲ貰ハ
ナイト云フ關係カラ致シマシテ、自分ノ信
念ニ基イテ〓育ノ方針ヲ立テルコトガ出來
マシテ、所謂〓權ノ確立ヲ見ル譯デアリマ
スルガ、一面ニ私ハ此ノ制度ノ爲ニ〓員ガ
役人風ニナリ官僚化シマシテ、地方民ト離
レテ、〓員ト町村當局ガ色々ノ問題デ對立
ヲ致シ、〓育ノ地方化ト云フヤウナコトヲ
害スル虞ガナカラウカト云フコトヲ心配致
シテ居リマス、小學校ノ先生ト村ノ當局ト
ハ、互ニ協調シ連絡シテ、眞ニ好キ〓土ノ
建設ノ爲ニ、若キ者ノ〓育ヲ致シテ行カナ
ケレバナラヌノデアリマスガ、此ノ點ニ付
キマシテハ、村當局竝ニ學校ノ先生方ニ於
テモ、餘程考ヘテ貰ハナケレバナラヌノデ
アリマスガ、是等ノ指導監督ニ付テ文部大
臣ハ餘程注意ヲシテ戴キタイ、是ハ註文ヲ
致シテ置キマス
次ハ〓員ノ異動デアリマス、先生ノ轉任
ノ問題デアリマスルガ、縣廳ノ手ニ依リマ
シテ頻繁ニ異動ガ行ハレマスト云フト、自
然ニ役人根性ト云フモノガ益〓釀成サレル
ノデハナイカト思フノデアリマス、所
一年カ二年居レバ、村ノ人ノ顏モ知ラナイ
中ニ次ノ場所ニ移ツテ行クト云フヤウナ關
係デ、自然劍突クバツテ、所謂役人根性ガ
助長サレルノデハナイカト云フコトヲ心配
スルノデアリマス、デアリマスルカラ、〓
員ヲシテ其ノ市町村ニ愛著ヲ持タセ、圓
身ヲ挺シテ村ノ〓育ニ從事シ得ルノ〓育環
境ヲ作リ、村ノ更生ニ向ツテ進ムト云フヤ
ウニスル爲ニハ、ドウシテモ適材ヲ選ンデ
長イ間一ツノ場所ニ、一ツノ學校ニ勤務サ
セルコトガ、私ハ必要デアルト思フノデア
リマス、自分ノ〓育スル所ノ子供ヲ通ジマ
シテ町村民ト親シ味ヲ持ツ、ソコニ自然美
シイ情誼關係ガ結成サレマシテ、學校〓育
ト相俟ツテ、地方民ノ信賴ト貧敬トヲ受ケ
テ、地方〓化ノ中心ニ學校ノ先生ガ成ツテ
行ケルノデハナイカト私ハ思フノデアリマ
ス、サウスルナラバ官僚化ト云フヤウナ、
役人根性ヲ起スト云フヤウナコトガナクテ
濟ムノデハナカラウカ、斯ウ思フノデアリ
マス、サウ云フ意味ニ於キマシテ文部當
局竝ニ縣ノ學務當局ヲ十分ニ督勵致シマシ
テ、所謂將棋ノ駒ヲ動カスヤウナ〓育ノ
異動ハ愼ンデ戴キタイト思フノデアリマ
ス、幸ニモ本案ニ依リマシテ貧弱町村ニモ
高級ナル先生ガ置ケルコトニナリマシタ
ノデアリマスカラ、ドウカ是等ノ先生ニ對
シマシテハ十分ニ增俸ノ途ヲ講ジマシテ、
適材ヲ長ク其ノ地ニ留メ、〓土ノ先生トシ
テ一生ヲ村ノ〓化ニ捧ゲルコトノ出來マス
ルヤウニ、〓員ノ進退等ニ付テハ特段ノ御
注意ガアリタイノデアリマス、殊ニ今日
ノ銃後農漁山村ノ振興ト思想ノ指導ノ上カ
ラ行キマスト、窮乏ノ町村程人格識見ノ高
イ高級ノ先生ヲ配置スルコトニ依ツテ、國
民〓育ノ、殊ニ農村方面ハ文化モ低イ所デ
アリマスルガ、此ノ文化ノ低イ所ニ於テ十
分ニ國民〓育ノ機會均等、〓土〓育ノ完成
ヲ期サナケレバナラヌト思フノデアリ.マ
ス、就キマシテハ〓員配置ノ根本方針ニ付
テノ文部大臣ノ御考ヲ承リタイト思フノデ
アリマス、先程モ一寸觸レマシタノデアリ
マスガ、私ハ第二點ト致シマシテ兎ニ角〓
員ノ異動ハ、地方事情ノ分ラナイ若イ縣ノ
學務課長ヤ學務部長ノ手ニ依リマシテ、無
雜作ニ異動ヲスルト云フヤウナコトヲ避ケ
ナケレバナラヌト考ヘテ居ルノデアリマ
ス、現在ノ制度ニ於キマシテハ、學務部長
ナリ學務課長ノ監督權ト云フモノハ、內務
大臣ガ持ツテ居ツテ、一國ノ文〓ノ中心タ
ル文部大臣ガ其ノ手足トモ言フベキ所ノ、
縣ノ學務部長、學務課長ノ任免權ニ付テ、
一ツノ發言權ヲモ有シテ居ラナイノデアリ
マス(拍手)私ハ斯ノ如キ現行制度ハイケナ
イト考ヘテ居リマス、內務、文部兩大臣ノ
共管ノ人事々項トシテ、〓育ニ十分理解ア
リ、德望一縣ヲ率ユルニ足ル人物ヲ學務部
長ナリ學務課長ノ地位ニ置イテ、眞ニ文〓
ノ刷新ヲ圖ルノ御考ガアルカドウカ、之ヲ
文部大臣ニ御尋致シタイノデアリマス
ソレカラ私ハ府縣ニ俸給ノ支給權ガ移管
サレル關係カラ致シマシテ、縣視學ノ權力
ガ非常ニ增大スルノデハナイカト云フコト
ヲ考ヘテ居ルノデアリマス、其ノ爲ニ又
種々ナル弊害ガ生ジテ來ハシナイカト云フ
コトヲ惧レテ居ルノデアリマス、視學ノ人
選ト監督ハ餘程細心ナル注意ヲ拂ハナケレ
バナラナイト考ヘテ居リマス、此ノ立場カ
ラ致シマシテモ、學務部長トカ、學務課長
等ニ其ノ人ヲ得ナケレバナラヌト云フコト
ハ、益〓切ナルモノガアルコトヲ感ズルノ
デアリマス
次ニ第三點ト致シマシテ、今日マデノ〓
員ノ俸給ガ市町村支辨ノ爲ニ、町村財政ノ
關係カラ致シマシテ、練達堪能ノ高給者ヲ
敬遠シテ、四十ソコ〓〓デ以テ小學校ノ先
生ガ〓壇ヲ去ルト云フヤウナ傾向ガ、洵一
今日マデ强カツタノデアリマスルガ、家庭
的ニモ數人ノ子供ヲ持ツ年配ニナツテ、初メ
テ子供ニ對スル所ノ理解モ得ラレマシテ、
社會的ニモ、社交的ニモ經驗ガ積ンデ、マ
ア四十以上ニナツテ初メテ活キタ人間ノ〓
育ガ出來、人間ノ陶冶ガ出來ルノデハナイ
カト思フノデアリマス、是カラ眞ノ人間〓
育ガ出來ヤウトスル中年ノ立派ナ先生方ヲ
首ニスルト云フコトハ、實ニ國家ノ不經濟
デアリ、國民〓育ノ徹底ヲ缺クコトデア
リ、知行合一ノ〓育ノ完璧ヲ期スル上ニ於
テ、洵ニ遺憾デアルト私ハ思ツテ居ルノデ
アリマス、ドウカ縣費支辨制度ノ實施ヲ機
會ニシテ、先生ヲ永ク〓壇ニ留マラシメ
テ、一生白髪ノ生エルマデモ〓育ノ聖業ニ
捧ゲ得ルコトノ出來マスルヤウニ、特段ノ
注意ト御配慮ガアツテ然ルベシト考ヘルノ
デアリマスルガ、之ニ對スル文部大臣ノ御
考ハ如何デアリマスルカ、之ヲ御伺致シタ
イノデアリマス
最後ニ私ハ第四點ト致シマシテ、六大都
市ノ市ノ〓育局ノ處置問題ニ付テ御尋致シ
タイノデアリマス、今囘ノ改正ノ眼目ハ、
市町村ノ俸給ノ支辨權ヲ道府縣ニ委讓スル
ト云フ所ニアルノデアリマスルガ、六大都
市ニ對シマシテモ、ヤハリ同樣ニ市長カラ
此ノ權限ヲ奪ツテ、サウシテ府縣知事ガ此
ノ任ニ當ルノデアラウカドウカ、此ノ點ノ
御建前ヲ文部大臣ニ御尋致シマス、ソレカ
ラ尙ホ六大都市ニ於キマシテハ、完備シタ
ル所ノ〓育機構ガ整ツテ居リマス、東京市
ノ如キモ實ニ立派ナル局長ヲ戴イテ居ルノ
デアリマスルガ、斯ウ云フヤウナ局長以下
ノ此ノ〓育監督機構ヲ、此ノ法案ノ通過ニ
依ツテ如何ニ處置サレルカ、此ノコトニ付
キマシテ文部大臣ニ御尋致シタイノデアリ
マー、尙又全國ノ市長ニハ小學校ノ先生ノ
任用ニ關シテ內申權ヲ現在與ヘテ居ルノデ
アリマス、此ノ全國ノ市長ノ內申權ハ、之
ヲドウ處置セラレル方針デアルカ、ヤハリ
今後府縣ニ委讓サレマシテモ、同樣ニ之ヲ
續ケテ行ク積リデアルカドウカ、是等ノ點
ニ付キマシテ文部大臣竝ニ關係當局ノ懇切
ナル御答辯ヲ煩ハシマシテ、私ノ質疑ヲ終
リマス(拍手)
〔國務大臣松浦鎭次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=24
-
025・松浦鎭次郎
○國務大臣(松浦鎭次郞君) 御答ヲ申上ゲ
マス、內務大臣、大藏大臣ニ對スル御質疑
ハ、其ノ方面カラノ御答辯ガアリマセウカ
ラ、私ニ對スル御尋ニ對シテ御答ヲ申上ゲマ
ス、靑年學校ノ〓員ノ俸給モ、旣ニ國民學
校、今日デハ小學校デアリマスガ、尋常小
學校ノ〓員俸給ヲ府縣費支辨ニ移ス以上
ハ、靑年學校ノ〓員俸給モ府縣費支辨ニ致
シタラドウデアラウカト云フ御尋デアリマ
スガ、是ハ靑年學校ハ、今日ハマダ男子ノ
靑年學校ハ義務ニ相成ツテ居リマスルガ、
女子ノ靑年學校ハマダ義務制デハアリマセ
ヌシ、〓員ノ配置等モ小學校トハ趣ヲ異ニ
致シマスルノデ、之ヲ今日府縣費ノ支辨ニ
致ス考ハアリマセヌ、是ハ全ク將來如何ニ
スベキカト云フコトハ、其ノ際ニ於ケル問
題デアリマシテ、今日其ノ考ハ持ツテ居ラ
ヌノデアリマス
ソレカラ小學校長ノ待遇向上ノコトハ、
是ハ先刻森田君ノ御尋ニ對シテ御答申シマ
シタ通リ、精神的ノ待遇ニ付テモ、十分考
慮ヲ致シタイト考ヘテ居ルノデアリマスト
云フコトヲ御答ニ致シマス
ソレカラ今囘俸給ガ府縣費支辨ニ移リマ
スト、小學校ノ先生ガ市町村ノ當事者ト游
離スル虞ハナイカト云フ御尋デアリマスガ、
是ハ市町村當事者ト小學校ノ先生トガ全ク
心ヲ一ニシテ參ル場合ニ於テコソ、初メテ
小學校ト云フモノガ市町村〓化ノ中心トシ
テ働キヲ爲スノデアリマシテ、市町村住民
ノ子供ヲ預ツテ〓育ヲシテ居ル〓員ハ、唯
俸給ノ支辨ガドチラニ移ツタト云フコトノ
爲ニ、決シテ市町村當局者ト游離スルト云
フヤウナコトハ、萬々アリ得ナイト考ヘテ
居ル次第デアリマス
其ノ次ハ〓員ノ異動ト云フモノガ屢〓アル
ガ、是ガ府縣費支辨ニ移ルニ從ツテ、府縣
當事者ノ唯心一ツデ、勝手ニ〓員ニ轉任ヲ
命ズルト云フヤウナコトガアリハシナイカ
ト云フ御尋デアリマスガ、今〓員俸給ヲ府
縣費支辨ニ移シマスト云フコトノ精神ハ、
市町村ノ豫算ニ拘束サレルコトナクシテ、
地方長官ガ全ク適材ヲ適所ニ配置スル市
町村ノ豫算ノ少イガ爲ニ、立派ナ先生ヲ市
町村ニ置クコトガ出來ズシテ、已ムヲ得ズ
他ニ轉任シナケレバナラヌト云フヤウナ現
在ノ狀態ヲ排除シマシテ、適當ナル〓員ハ
俸給ガ高クナツテモ、其ノ市町村ニ何時マ
デモ永ク勤務セシムルト云フヤウニ致スコ
トガ、第一ノ理由ニナツテ居ルノデアリマ
スカラ、府縣費支辨ニ相成リマスレバ、〓
員異動ト云フコトハ少クナル、決シテ多ク
ナルト云フコトハナイト考ヘマス
其ノ次ノ御尋ハ、地方廳ノ學務部長其ノ
他ノコトニ付キマシテ、全ク內務省ノ系統
ニ屬シテ居ツテ、文部省トシテハ少シモ發
言權ガナイ、是ハ改メナケレバナラヌデハ
ナイカト云フ御趣意フヤウナ御尋デアリマ
スガ、此ノ地方學務行政ノコトニ付キマシ
テハ、一般ノ地方行政ト色々關係スル點ガ
アリマスルノデ、是ハ篤ト考慮ヲ致サナケ
レバナラヌ問題ト存ジマス、直チニ今日御
答ヲ致ス譯ニハ參リマセヌ
其ノ次ハ〓員ノ俸給ガ高クナルガ爲ニ、却
テ退職ヲシナケレバナラヌト云フヤウナ場
合ヲ防ガナケレバナラヌデハナイカト云フ
御尋デアリマスケレドモ、是ハ先刻申シマシ
タ通リ、府縣費支辨ニ相成リマスレバ、市町
村ノ豫算ニ拘束サレズニ、地方長官ガ全體ヲ
見渡シテ、適材ヲ適所ニ置クト云フ方針ヲ執
リマスガ故ニ、却テ高給ニナツタガ爲ニ已ム
ヲ得ズ退職シナケレバナラヌト云フ、サウ云
フ弊害ハ今後ハ少クナルト考ヘテ居リマス
其ノ次ニ今囘俸給ヲ府縣費支辨ニ移スニ
付テ、現在アリマス市ノ〓育局其ノ他ノ機
構ト云フモノニ、何等カ變更ヲ來スノデハ
ナイカト云フ御尋デアリマスガ、是ハ府縣
ノ支辨ニ移シマスガ爲ニ何等變更スルコト
ハアリマセヌ
其ノ次ニ市長ノ內申權ト云フモノハドウ
ナルカト云フ御尋デアリマスガ、此ノ點モ
內申權ハヤハリ從前通リ之ヲ存續セシムル
考デアリマシテ、此ノ點ニ付テハ少シモ變
更ハ致シマセヌ積リデアリマス是ダケ申上
ゲテ置キマス
〔政府委員木村正義君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=25
-
026・木村正義
○政府委員(木村正義君) 只今羽田君カラ
義務〓育費ノ國庫負擔ノ關係ニ付テ御尋ガ
アリマシタガ、御答致シマス、羽田君御承
知ノ通リニ、今日マデハ市町村義務〓育費
國庫負擔法ノ規定ニ依リマシテ、小學校〓
員給ノ一部ハ國庫ガ之ヲ負擔スル、其ノ國
庫負擔ノ金額ハ每年度八千五百万圓ヲ下ラ
ザルモノトス、斯ウ云フ規定ニ依リマシテ、
豫算ノ上ニ於テハ八千五百万圓ヲ計上致シ
テ居リマシタガ、只今議題トナツテ居リマ
ス義務〓育費國庫負擔法ノ第一條ニ依リマ
シテ、小學校〓員ノ俸給ノ爲ニ、北海道ナリ
府縣ガ支拂フ所ノ經費ノ半額ハ國庫之ヲ負
擔ス、斯ウ云フ風ニ明瞭ニ半額ハ國庫ガ負
擔スルト云フコトニ規定致シマシタガ爲
二、豫算ノ關係ニ於キマシテハ補充費途ト
相成ツタ次第デアリマス、隨テ十五年度ニ
於キマシテハ、御承知ノヤウニ九二二百餘
万圓ヲ計上シテ居リマスガ、先程羽田君カ
ラ御話ニナリマシタヤウニ、就學兒童ガ年々
非常ニ增加致シマシテ、俸給ノ關係カラ
申シマスト、每年四百万圓カラ約六百万圓
程度ノ俸給ノ增加ヲ來シテ居リマス、隨テ
其ノ半額ト致シマスレバ二百万圓乃至三百
万圓ノ國庫負擔ガ增加スルコトト相成ルデ
アラウト思ヒマス、隨テ十五年度ニ於テ九
千二百餘万圓デ若シ不足ヲ生ジマシタル時
分ニハ當然是ハ第一豫備金カラ支出致ス
ノデアリマス、第一豫備金ガ不足ヲ致シマ
シタ時ハ、是ハ當然追加豫算トシテ更ニ要
求致シマシテ、國庫負擔ノ關係ニ於テハ、
〓員給ニ付キマシテ毫モ心配ナカラシムル
考デアリマスカラ、是ダケヲ申上ゲマス
〔政府委員鶴見祐輔君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=26
-
027・鶴見祐輔
○政府委員(鶴見祐輔君) 只今羽田君ノ御
質問ノ中デ內務省ニ關スル分ニ付テ御答ヲ
申上ゲマス、羽田君ノ御話ニアリマシタヤ
ウニ、〓員俸給費ハ年々必要ナ額ハ增加シ
テ居リマスカラ、此ノ點ニ關シマシテハ內
務當局ニ於テモ十分ニ考慮シテ居ルノデア
リマシテ、今囘改正ノ地方稅制ニ於キマシ
テモ、市町村其ノ他ノ地方ニ對シテハ、獨
立財源トシテ物稅ヲ本旨ト致シテ居リマス
ガ、之ニ配スルニ更ニ伸張力ノアリマス配
付稅ヲ配シテ居リマスカラ、將來增額致シ
マス〓員俸給費ニ付テハ、十分彈力性ヲ以
テ之ニ對處シ得ルモノト、斯樣ニ考ヘテ居
リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=27
-
028・小山松壽
○議長(小山松壽君) 福田關次郞君
〔福田關次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=28
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029・福田關次郎
○福田關次郞君 只今日程ニ上ツテ居リマ
スル義務〓育費國庫負擔法中改正法律案ニ
付キマシテ、關係常局ノ御所見ヲ御伺致シ
タイト思フノデアリマス、本法御提出ノ理
由ハ、先程來御述ニナツタノデモアリマス
ルガ、事實ヲ申シマスレバ、今囘ノ地方稅
制改正ノ結果是ガ生レタノデアルト云フコ
トモ、其ノ理由ノ一ツデアラウト思フノデ
アリマス、今大臣ノ御話デハ、今日マデノ
負擔ハ八千五百万圓デアリマスガ、是カラ
ハ實際ノ入用ニ應ジテ、其ノ半額ヲ負擔ス
ルト云フコトデアリマス、然ラバ其ノ改正
ト申シマスルモノハ、唯要ルダケノ半額ト
シタト云フコト、八千五百万圓ト云フモノ
ヲ改メテ、サウシタト云フダケノ改正デア
リマス、隨テ總テ地方民ノ受ケマスル利害
ト云フモノハ極ク僅カデゴザイマスルガ、
併シ是ガ及ボシマスル影響ハ、相當ナル波
紋ヲ描イテ居ルコトヲ御諒承願ヒタイト思
ヒマス、此ノ重大ナル問題ヲ議シマスルニ
當ツテ、內務大臣ノ御出席ガナイト云フコ
トハ、私ハ甚ダ遺憾ニ思フノデアリマスルガ、
ドウカ私ノ申上ゲマスルコトヲ能ク御聽ノ
上デ、十分ナル御答辯ヲ願ヒタイト思フノ
デアリマス
元來義務〓育ト云フモノハ、義務ト云フ
文字ヲ附ケテ地方自治體ニ御任セニナツテ
居リマスケレドモ、實際ヲ申シマスレバ、
是ハ國家ノ仕事デナクテハナリマセヌ、地
方財政ノ今日非常ナ窮迫ヲ來シテ居リマス
ル所以モ、ヤハリ其ノ矛盾ガ此處ニアルノ
デハナイカト私ハ思フノデアリマス、ソレヲ
姑息的ニ先生ノ給料ノ半額ヲ御支給ニナリ
マシテモ、或ハ學校ノ兒童增加ニ依リマス
ル所ノ營造物、或ハ備品、或ハ經當費、或ハ〓
員給、或ハ退職資金、慰勞金、是等ノ大部分
ハヤハリ地方ノ民衆ニ此ノ負擔ガ懸ツテ參
ルノデゴザイマスルガ、此ノ點ハ政府トサレ
マシテ將來少シク御考慮ヲ願ハナケレバナ
ラヌノデハナイカ、現在ノ國情ヨリ致シマス
レバ、政府ノ本改正案ハ時勢ノ現狀ヨリ見
テ非常ニ不徹底デアリマス、僅カノ改
正ヲ意圖セラレマスルノニ、今日御質問
ニナラウト云フ方ガ斯ク多數ニ上ツテ居ル
ト云フノハ、之ニ依ツテ日本全國全般ノ利
害ガ相當重大デアルカラデアラウト推察致
シマス、而シテ政府ハ稅制改革ニ當リマシ
テ、其ノ理由ノ一ツニ獨逸ノ法律ヲ御利用
ニ相成ツテ居リマス、獨逸ノ法律ニハ斯ウ
云フコトヲ申シテ居リマス、「國ハ邦又ハ市
町村ニ必要ナル財源ヲ與ヘタル限度ニ於テ
新ニ國ノ事務ヲ委任スルコトヲ得」トアル
ノデア、リマス、今囘ノ稅制改革ニ於カレマ
シテハ、政府ハ此ノ事ヲ有ユル機會ニ御述
ニナツテ居ルノデアリマス、若シ獨逸ノ其
ノ法律ニ規定サレタ如ク、新ニ國ヨリ費用
ヲ與フルコトニ依ツテ、地方團體ニ向ツテ
國家ノ事務ヲ委任スルコトヲ得ルト云フ御
精神デアレバ洵ニ結構デアリマス、斯ク相
成ツテ貰ハナケレバナリマセヌ、獨逸ノ政
策及ビ各計畫ニ付キマシテモ、中ニハ無用
ナ燒直シモアリマスルケレドモ、斯ウ云フ
コトハ吾々ノ非常ニ之ヲ痛感スル所デアリ
マス、然ルニ今日ノ我ガ日本ノ實際ヲ見マ
スルト如何デゴザイマセウカ、稅制改革ニ
引用サレマシタ一ツノ理由タルベキ、斯ウ
云フ結構ナ御趣意ガ何レニ徹底致シテ居リ
マスルカ、此ノ點ヲ私共ハ非常ニ憂慮致シ
テ居リマス、例ヘバ今次事變ニ依リマシテ
地方自治團體ノ行ヒマスル國家ノ委任事務
ト云フモノハ、洵ニ多大デアリマス、洵
激增シテ居リマス、之ニ對セラレマシテ政
府ハ如何ナル財源ヲ御與ヘニナツテ居リマ
スカ、今囘ノ地方稅制改革ノ如キ小事ヲ以
テハ、是等ノ負擔增加ヲ緩和スルコトハ出
來マセヌ、隨テ地方一般民心ノ生活ノ安定
ヲ確保スルコトモ、亦困難デアルノデゴザ
イマス、而モ此ノ〓育ハ、一時日本ハ義務
〓育トシテ之ヲ市町村自治體ニ御委任ニナ
ツテ居リマスケレドモ、先程申シマスルヤ
ウニ國家ノ重大ナル職責デアリマス、今日
大學ノ〓育ト、地方ノ國民〓育トガ何レガ
大事デゴザイマセウカ、我ガ日本ノ現時カ
ラ見マスレバ國民ノ再組織モ必要デアル、
國民精神及ビ東亞建設及ビソレガ經營ニ當
リマスル大國民ヲ造ラント致シマスルノニ
ハ、今日ノ如キ一定シタ型ニ依ツテ、國民〓
育ノミヲ以テ足レリト爲サルノデゴザイマ
セウカ、私共ハ非常ナ矛盾デアルト思フノ
デアリマス、大學ニ入リマス者ハ、先程誰
カノ御話ニゴザイマシタガ、大體ハ有產階
級ノ人々デ、特殊ナ部分デアリマス、其ノ
有產階級ノ特殊ナ部分ノ方ノ入學ナサレル
所ノ學校ハ、之ヲ國民ヨリ取リタル所ノ國
費ヲ以テ、經營シ、而シテ今國家國民ノ眞
ノ再組織、國民ノ眞ノ〓導ヲシナケレバナ
リマセヌ重要ナル國民〓育費ハ、之ヲ中產
以下ノ大衆ノ負擔ニ委スルト云フコトハ、
私ハ現下ニ於キマスル政策ト致シマシテハ、
矛盾撞著ノ大ナルモノデアルト信ズルモノ
デゴザイマスルガ、政府ハ之ニ對セラレマ
シテ何等カノ御考ヲ御持チニナツテ居リマ
スルカ、所謂現時我ガ日本ノ國家運營ノ土
ニ於テ、斯ウ云フ方面ニモ一大革新ヲ爲サ
レル必要ガアルコトヲ痛感致シマスルガ、
政府ハサウ云フヤウナ御信念ト御理想ヲ御
持チニナツテ居リマスルカドウカ、伺ヒタ
イノデアリマス、而モ國家事務ハ增加致
シマスル、先程來御話モゴザイマシタ靑
年〓育ノ問題ニ致シマシテモ、今御拵ヘニ
ナリマシタ靑年學校ハ、農村ト都會ト其
ノ增加率ハ何レガ大デゴザイマセウカ、文
部當局ハ既ニ此ノ邊ハ承知ノ筈デゴザイマ
ス、ツレハ農村ノ小學校生徒ニ對シマスル
靑年學校生徒ノ增加率ハ非常ニ少數デアリ
マイ、然ルニ大都市、少クトモ六大都市ニ
於キマスル靑年學校生徒ノ增加率ト云フモ
ノハ、農村生徒ニ比較致シマスルト其ノ比
デハゴザイマセヌ、是ハ何故都會ダケガソ
レダケ靑年學校ノ〓育費ガ增額スルカト申
シマスルト、都會ニ於ケル人口ノ增加デハ
ゴザイマセヌ、農村ニ於キマシテハ小學
ノ〓育ダケヲ授ケテ居ルガ、悉ク五反百姓
デアリマシテ、一家一人ヨリ農村ニ殘リテ生
活スルコトハ出來マセヌカラ、後ノ殘リシ
女モ男モ悉ク之ヲ都會ニ出スニアラザレバ、
一家ノ生活ハ出來ナイノデアリマス、是ガ
現在ノ日本ニ於キマスル農村生活ノ實體デ
アリマス、而シテ此ノ都會ヲ指シテ來テ、
小學校ヲ卒業シテ靑年學校ニ入レナケレバ
ナラヌモノハ、之ヲ今日ノ大都會ニ御委任
ニ相成ツテ居ルデハアリマセヌカ、然ラバ
此ノ六大都市ニハ財源ヲ與フルベキデアル
ニ拘ラズ、却テ今囘ノ稅制改革ニ於キマシ
テ、此ノ都市ヨリ財源ヲ奪ヒ去ラントスル
如キハ、私共ハ時代錯誤ノ大ナルモノト言
ハナケレバナラヌト思ヲノデアリマスガ、
全ク正反對ノ現象デアル、斯ウ云フ矛盾撞
著ガ我ガ日本ノ政治ノ上ニハ續々ト現ハレ
テ居ルフデアリマス、此ノ點ニ於キマシテ
政府ハドウ云フ風ニ、斯ウ云フ不自然ヲ是
正サレヨウトサレルノデゴザイマスカ、今
日ノ農村ハ固ヨリ窮乏デゴザイマス、今日
ノ農山漁村ハ憐ムベキモノデゴザイマス、
サリナガラ此ノ憐ムベキ子弟ハ何レニ依ツ
テ生活ヲスルノデアリマスカ、日本ノ今日
ノ實際デハ、折角農村ニ生レタ者ガ親ノ膝
下ニ長ク共同生活スルコト能ハズ、遂ニ異境
ノ空ニ、父母ニ別レテ都會ニ集中スルノ外ハ
生活ハ出來ナイノデアリマス、其ノ生活ノ
出來ナイ國民ノ悉クヲ成人トスルマデノ〓
育ヲ授ケルノハ、六大都市ガ中心デゴザイ
さい。今日人口增加ノ約四割ハ悉ク六大都
市ニ集中サレテ居ルノハ、政府ノ統計ガ之
ヲ立證シテ居リマス、然ルニ是等ノモノカ
ラ財源ヲ取上ゲテ、サウシテ地方ニ向ツテ
ノ財政調整交付金等ニナサラウトスルガ如
キハ、甚シキ矛盾デハアリマスマイカ、政
府ノ是等ニ對シマスル御所見ヲ伺ツテ、天
下萬民ノ批判ヲ私ハ乞ヒタイト思フノデア
リマス、而シテ都會ノ文化、都會ノ有ユル
社會施設ハ、要スルニ農村民ノ一般的救濟
及ビ是等ニ對シマスル所ノ施措デアリマス、
是等モ亦御忘レニナツテハ相成ラヌ、政府
ハ十分此ノ邊ニ御留意ヲシテ戴カナケレバ
ナラヌト思フノデアリマス、又政府ガ今ノ國
民〓育ト云フモノニ對シテ、啻ニ給料ダケ
ト云フコトデアルガ、今申シマスルコトハ
本當ヲ言ヒマスレバ義務〓育ノ方ガ大切デ
アリマス、大學〓育ノ如キハ、ソレ等ニ入
學スル者ニ任シテ、今日私立學校ノ經營ハ
相當出來マス、之ニ無用ナル所ノ厖大ナル
國費ヲ投ズル必要ハアリマセヌ、私立學校
ノ經營ニ依ツテ出ル所ノ人物ハ、相當ノ者
ガ輩出シテ居リマス、是等ニ付テモ是非是
ハ是正ヲナサイマシテ、サウシテ大學ニ用
ヒマスル經費ヲ以テ國民〓育ニ集中シ、以
テ今日ノ地方自治體ニ義務ヲ命ズルナラ
が其ノ命ズルニ必要ナル經費ハ國家ヨリ
悉ク之ヲ交付スルコトガ當然ノ歸結デア
リ、行政執行上ノ公正ナル基礎デアルト思
フノデアリマス、而モ本案ノ中心ノ〓員給
ノ府縣移管ニ付テ御伺シタイノデアリマス
先程カラ一部御質問モゴザイマスルシ、大
臣ノ御答辯モ伺ヒマシタガ、私ハソレデハ
承服ヲ致シ難イノデアリマス、詰リ政府ノ
此ノ改正案ハ、〓員給ヲ府縣負擔ニ移サレ
ルト云フコトデアリマスガ、事實ハ其ノ費
用ハ誰ガ出スノデアリマスカ、本當ハ悉ク
其ノ市町村民ガヤハリ負擔ヲシテ、ソレヲ
政府ガ取上ゲテ、再ビ之ヲ府縣ニ渡スノデ
アリマス、謂ハバ要ラザル無用ノ手數、能
率ノ不增進ヲ增加ナサルノデアリマス、或
ハ地方財政調整交付金等ニ於キマシテモ、
或ハ分與稅中ノ分與金等ニ於テモ、悉ク取
上ゲテ再ビ之ヲ渡ス案デアリマスカラ、是
ハ察シマスルニ、私唯何デモ官ニ凭レヨ、
何デモ中央ニ凭レヨ、斯ウ云フ一ツノ官僚
獨善ノ强化ヲ御圖リニナルノ外ニハ、矛盾
デアルシ、無益デアルシ、能率ノ不增進ノ
模範デアルト思フノデアリマス、ソレデア
リマスカラ玆ニ府縣ニ與ヘルト申サレマシ
テモ、其ノ費用ハ悉ク府縣民ガ負擔スル、
政府ガ取上ゲテ府縣ニ渡スト云フノデアリ
マスカラ、是位時代錯誤デアツテ、政府ノ
濫費ヲ助長スル途ハナイト思フノデアリマ
ス、ソレデアリマスルカラ今マデニ、私ハ
全體トハ申シマセヌガ、今日ノ文化ト云フ
モノハ、一體六大都市ヲ措イテ何處ニゴザ
イマス、今日世界ニ誇リマスル有ユル施設
有ユル社會政策、社會施設ノ今日ノ模範ハ、
六大都市ヲ除イテ何ガアルカ、而モ之ニ對
シテ國ハ何ノ御助力ヲナサツタカ、殆
ド自治體ニ生存致シマスル吾々ガ協心
戮力シテ其ノ負擔ヲ分チ、非常時局ニ於ケ
ル必要ナル施設、或ハ軍事扶助、或ハ軍人
救護ニ至ルマデ、税金外ニ多大ナル負擔ヲ
甘受致シマシテ、今日ノ六大都市ノ經營ヲ
シテ、世界ニ對シテ恥カシカラザル所ノ施
措ヲ致シテ居ルノデアリマス、ソレヲモ顧
ミズ僅カナ町村ト同一ニ之ヲ御覽ニナルト
云フコトニ付テ、ドウ云フ必要ガアツテ、
此ノ六大都市モ小サキ町村ト同一ニ、今マ
デノ市長ノ所謂〓員ノ任免權ニ付キマシテ
之ヲ取上ゲテ、府縣ニ御移管ニナルト云フ
必要ハ何レニアルノデゴザイマセウカ、而
モ此ノ實際ヲ見マスルト、內務省方面デハ
警察費連帶支辨ト云フモノガアリマス、其
ノ項ノ中ニ〓員ノ府縣移管ト云フコトヲサ
レテ居ル、政府ハ今日ノ國民〓育ヲ掌ル潑
刺タル氣風ヲ養ヒ、以テ我ガ日本國民ノ
基礎ヲ爲スベキ國民ヲ養成致シマスル其ノ
先生ヲ、法律ヲ適用スル單純ナル警察官ノ
如クニ官僚化セントセラレルト云フ外ニ
ハ、何等得ルモノハゴザイマスマイ、所謂
今日ノ〓員ヲ警察官ノ如クニ官僚化サウト
スル意圖ノ外ニハ何物モナイ、此ノ點ハ內
務大臣ガ常ニ貴族院ノ會議ニ於テモ、亦當
議場ニ於キマシテモ、委員會ニ於テモ申サ
レマスル獨善ヲナサレテ、サウシテ地方自
治權ヲ剝奪サレルト云フコトニ徐々ト御進
ミニナルト云フコトハ、事變下日本ノ行ク
ベキ對策デアリマセウカ、理想ト致スコト
ガ出來ルノデゴザイマセウカ、嘗テ前內閣
ハ地方自治體ノ改正法案ヲ出サウトサレタ
ノデアリマス、吾々六大都市選出ス貴衆兩
院議員、其ノ他ガ中心トナツテ、斯ル地方
ニ於ケル國民代表ノ權限ヲ縮小シ、之ヲ奪
ツテ、サウシテ官僚化セントセラレルト云
フコトハ宜シクナイト云フコトデ、私共ハ
之ニ反對致シマシタ、現內閣ハ聰明デアリ
マシテ、是ガ御提出ヲ見合サレタコトハ一
步進ンデ居リマス、此ノ點ハ私共ハ感謝致
スノデアリマスガ、今囘ノ此ノ改正案ニ付テ
地方町村モ、六大都市モ-六大都市ト云
ヒマシテモ、今日ハ御承知ノ通リ歐羅巴ニ
於ケル一國デゴザイマスハソレヲ小サイ町
村ト同一ニ御取扱ニナツタト云フコトガ、
私ハ非常ニ間違ツテ居ルノデハナイカト思
フノデアリマス、ソレデアリマスカラ是等
ノ點ニ付キマシテハ、六大都市ダケハ之ヲ
切離サレマシテ、今マデノ通リニ之ヲナサ
ツタラ、ドウ云フ弊害ガアルノデゴザイマ
スカ、政府ノ本案御提出ノ御意見ハ、〓育
ノ機會均等ト財政ノ均衡化ヲ圖ルノデアル
ト云フヤウニ受取レルノデアリマスガ、〓
員ノ圓滑ナル任免、財政ノ所謂均衡ヲ圖ル
ト云フコトガ、之ヲ地方府縣移管ノ御理由
ニナツテ居リマス、然ラバ是ガヤハリ財政
調整ノ一ツデアリ、農山漁村ニ於テハ、先
程來ノ御質問ノヤウニ、〓員俸給不拂ト云
フ事實モ現ハレテ居ルカラ、是等ヲ能ク按
排シテ平均化シナケレバナラヌト云フ御理想
ハ大變結構デアリマス、併シナガラソレ等
ノ點ニ於キマシテハ、何ノ爲ニ地方分與稅ト
云フ制度ヲ御設ケニナツタノデゴザイマセウ
カ、地方分與稅ハ讓與稅ト交付稅トノ二ツニナ
ツテ居リマス、其ノ交付稅ニ於キマシテハ、
其ノ原地ニ還付シマスルガ、政府ノ言ハレ
マスルヤウニ、是ハ薄イ、是ハ厚イト云フ
風ニ按排シテ、自由ノ裁量ニ依ツテ之ヲ御
交付ニナルデアリマセウ、其ノ莫大ナル金
額ヲ以テ、此ノ調整ヲナサル所ハ政策ハ出
來ルノダカラ、是ハ稅制改革ノ理想化ダト
仰セニナルガ、然ラバ八千万圓ヤ九千万圓
ノ小學校ノ先生ノ給料ノ方面ヲ取ツテ來
テ、何ガ是ガ地方財政ノ所謂調整ノ效力ガ
ゴザイマセウカ、農山漁村ニ於キマシテ其
ノ金ハアナタ方ニ御與ヘシテアリマス、此
ノ稅制案ガ通過致シマスレバ、其ノ半額ハ
アナタ方ノ御自由裁量ニシテアル、故ニサウ
云フ必要ガアルトスルナラバ、其ノ方カラ
持ツテ來テ之ヲ補ハレルコトガ至當デハゴ
ザイマセヌカ、小學校〓員俸給ノ如キ少額
ノモノヲ以テ、地方財政ノ所謂調整ヲス
ル、之ヲ均一化スルト云フガ如キハ、私ハ
稅制ヲ御改革ニナリマシタ理想カラ言ツ
テ、矛盾ノ甚シキモノト言ハナケレバナラ
ヌト思フノデアリマスガ、政府ハ此ノ所謂
二本建ヲ俟タナケレバ地方ノ財政ノ健全化
ハ期セラレヌト仰セニナルノデアリマス
カ、此ノ點ヲ關係各相ニ御伺致シタイノ
デアリマス、若シソレヲシナケレバ出來ヌ
ト言フノナラバ、今日ノ稅制改革ハ不徹底
極マルモノデアリマシテ、之ヲ政府ハ責任
ヲ以テ完全ナリト仰セニナツタ言質ハ如何
ニ相成ルノデアリマスカ、之ヲ伺ヒタイト
思フノデアリマス
又政府ガ何カ一ツノ事ヲ御改革ニナリマ
スル度ニ、所謂官僚ノ勢力ノ增大ヲ御圖リ
ニナルト云フ一ツノ「イデオロギー」ハ、是
ハ非常ニ誤ツテ居リマセウ、今囘小學校ノ
〓員幾十万人ガ、警察官ノ如クニ採用セラ
レテ、サウシテ所謂官僚化シテ居ル、官僚
化ハ化石化デアリマス、失禮デアリマスケ
レドモ、大體官吏ト云フ者ハ、勇往邁進獨
自ノ力ノアル者ハ、今ノ上官ハ中々之ヲ使
ヒコナセマセヌ、本當ヲ言フト、唯々諾々
トスル侫人デナケレバ、本當ノ人物ハ中々
今日ノ官界ニハ入ツテ居ラレヌ、私共ノ友
人デモ本當ニ出來ル者ハ排斥セラレ、眞ニ
唯々諾々トシテ侫人化シタ者ハ之ヲ拔擢ス
ル、是ガ現在ノ日本ニ於ケル官界ノ通弊デ
アリマス、斯樣ニ官僚化スルコトハ化石化
スルコトデアリマス、併シナガラ〓育ハ活
キタ國民ヲ〓養シ、此ノ帝國ノ將來ヲ擔當
スベキ重要ナル人物養成ノ重大機關デアリ
さく、是等ノ者ヲ單純化シタ、化石化シタ、
官僚化シタ〓員デ以テ造リマスルナラバ、
日本ノ國ハ日ト共ニ所謂自主獨往ノ精神ヲ
失ヒ、勇往猛決ノ決心ヲ失ツテ、唯侫人ノ
ミガ輩出スル所ノ國家トナルノデハゴザイ
マスマイカ、是等ノ點ニ於テ私ハ唯大言壯
語ヲスルヤウデアリマスガ、餘程御注意ヲ
願ハナケレバナラヌコトハ、アノ「コミン
テルン」ノ世界政策デアリマス、之ニ付テ
ハ文部大臣モ、其ノ他內務方面モ皆御承知
デゴザイマセウガ、其ノ第一ハドウデゴザ
イマセウカ、先ヅ運動スル者ハ右傾化ヲ假
裝スルコトデアリマス、其ノ次ニハ其ノ國
ニ於ケル大人物ヲ抹殺スルコトデアリマス、
其ノ次ニハ其ノ國ノ總テフ諸機構ヲ改造シ
テ、眞ノ建國以來ノ「スビリット」ヲ奪フコト
デアリマス、其ノ次ニハ人物ノ輩出ヲ防グ
コトデアリマス、是等カラ見マスルト、斯
ウ云フ〓育制度ノ改惡ト云フモノハ餘程考
ヘンケレバ、斯ウ云フヤウナ政策ニ乘ゼラル
ルコトナシトシナイノデアリマス、斯カルガ
故ニ近時大學ノ〓育ヲ見マシテモ、如何デゴ
ザイマセウカ、中ニハ偉イ先生モゴザイマ
スカラ、悉クトハ申シマセヌ、皆私共ノ若
キ時ニハ、國家重大問題ノ蜂起スルヤ、七
大博士ト云フ者ガ敢然ト起ツテ、憂世〓國、
至誠一貫ノ所謂理想ヲ說イテ、天下民心ノ
向フ所ニ貢獻サレタコトハ、今日國民ノ悉
クガ記憶スル所デアリマス、然ルニ現時大
學ノ先生ト稱スル者ハ、果シテ如何デアリ
マスカ、此ノ非常時局ニ對シテモ侫人ノミ
生ジテ、自主獨往ノ精神ト理想ト主義トヲ
發表シテ、天下ノ民心ノ嚮フ所、國家ノ向
フ所ヲ示サレル程ノ人ハ、誰ガ居リマスカ、
顧ミテ「コミンテルン」ノ世界政策ト云フモ
ノガ、之ニ關係ガナカツタナラバ大變結構
デアリマス、斯ウ云フ大人物ヲ抹殺シ、大
人物ノ輩出ヲ防ギ、其ノ國ノ「スピリットㄴ
ヲ奪フト云フ所ノ世界政策ニ感染シテ居ラ
ナカツタナラバ、今日ノ官僚統制モ結構デ
ゴザイマス、吾々モ及バズナガラ御協力申
上ゲマス、併シナガラ官僚統制ニ藉口シテ、
國ノ內部的崩壞、內部的混亂、國民生活ノ
脅威ヲ助長スルガ如キコトニハ、斷乎トシ
テ反對セザルヲ得ナイノデゴザイマス
斯樣ナ點カラ申シマシテ、私共ハドウシ
テモ此ノ〓育ニハ發剌タル氣風ヲ與ヘテ戴
キタイ、現文部大臣ハ〓育行政其ノ他〓育
ニ付キマシテハ全ク「オーソリチー」デア
リマス、吾々モ信賴致シマス、ドウカ此ノ
機ヲ一ツ利サレマシテ、今マデノヤウナ逡
巡姑息退嬰ノ〓育ニアラズシテ、國民ヲシ
テ何處マ。デモ發剌有爲ノ國民タラシメ、
人殘ラズ此ノ東洋ニ於ケル日本ヲ背負フダ
ケノ大人物養成ニ御著眼アランコトヲ、私
ハ御願シタイノデアリマス
其ノ次ニハ六大都市ノ特異性ニ付テデゴザ
イマス、六大都市ハ先程來カラ申シマスヤウ
ニ、今日〓育ノ機關ト致シマシテハ視學制度
ヲ設ケ、サウシテ此ノ下ニハ卽チ學務委員制度
ヲ設ケ、或ル地方ニ於キマシテハ、自分ノ學
校ハ祖先傳來ノ我ガ本家ナリト痛感シテ居ル
所ガアリマス、是ハ學區制度ノ行ハレテ居ル
所デアル、其處デ總テノ〓育ヲシ、總テノ考
ヲ其處ニ持ツテ行キマシテ、總テノコトヲ
其處デ處理ヲシテ、今日ノ非常時局ニ對應
シテ居リマスカラ、今日ノ小學校ハ啻ニ小
學校〓育ト云フグケデナク、他ノ社會的方
面ニ非常ニ貢獻ヲシテ居ルコトヲ見テ戴カ
ナケレバナリマセヌ、ソレト同時ニ六大都
市ニハ御承知デゴザイマセウガ、今文部大
臣ハ〓育ノ平均化、所謂均等化ト云フコト
ヲ御唱ヘニナツテ居リマスガ、ソレハ中々
理想デアツテ、實際行ツタラ大變ナ問違ヒ
ガ生ズルノデアリマス、何トナレバ都會ノ
生徒ニ向ツテ舟ノ漕ギ方ヤ、農產物ノ生產
ノ方法ヲ講義スル、是ハ都會ノ生徒ニハ何
等ノ效果ガゴザイマセヌ、中小商工業ヲ中
心トシテ生活致シマスル國民ハ、ソレニ相
應ハシイ所ノ方面ニ指導誘掖シテ行カナケ
レバナリマセヌ、農山漁村ノ子弟ニ向ツテ、
中小商工業者ノコトヤ、都會ノ文化ノミヲ
說イタノデハ是亦用ヲ爲シマセヌ、仍テ〓
育ノ所謂均等化、〓育ノ平等化ハ結構デア
リマスケレドモ、是等ノ內部的政策ニハ檢
討ヲ要スルコト大ナルモノガアルコトヲ御
讀承願ハナケレバナリマセヌ、今文部大臣
ノ御話デハ、〓育ノ均等化ヲ爲サラウトス
ルノデアリマスルガ、サウ云フ矛盾ヲ飽ク
マデ强調サレテ、强行シヨウトセラレルノ
デアリマセウカ、ドウデアリマスカ、ソレ
カラ都會ノ〓育ハ今申シマスヤウニ、日本
全國ノ文化ノ代表デアリマス、此ノ點ヲ一
ツ御認識願ハナケレバナリマセヌ、隨テ今
日マデ六大都市ノ負ヒマスル責任ハ、靑年
學校ニ致シマシテモ有ユル設備ヲ完備シテ、
サウシテ第二ノ國民トシテ遺憾ナキヲ期サ
ウト云フコトニ非常ナ努力ヲシテ居リマス、
斯ウ云フ所ニ於キマシテハ、今マデノ市長
ノ任免權ヲ、ヤハリ御認メニナラナケレバ
ナラヌノデハナイカト私ハ思フ、市長ハ普
通ノ東京府知事、或ハ其ノ他ノ六大都市ニ
居リマス知事ヨリモ、大ナル仕事ヲシテ居
ルノデアリマス、豫算ニ於キマシテモ數倍
ヲ超過シテ居リマス、隨テ其ノ機關、其ノ
設備、有ユル方面ニ於テ府縣ヲ凌駕シテ居
リマス、其ノ凌駕シテ居ルアノ折角ノ設備
ノアルモノヲ無視シテ、サウシテ新タニ貧
弱ナル府縣ニ向ツテ之ヲ移管セントスルガ
如キハ、是レ時代錯誤デアリマシテ、益〓〓
育ノ退化退嬰ヲ立證スルモノト言ハナケレ
バナラヌノデアリマス、只今文部大臣ハ、
市長ニハ內申權ヲ與ヘルノデアルト云フ御
話デアリマス、結構デゴザイマス、內申權
ヲ御與ヘニナリマシテモ、今マデ市長ガ持
ツテ居リマシタ任免權ハ勅令ノ命ズル所デ
アリマス、併シナガラ此ノ退職或ハ解職、
或ハ慰勞金等ニ付キマシテハ勅令ノ何モノ
ニモ據ル所ハゴザイマセヌ、然ラバ之ヲド
ウナサルノデアルカ、此ノ內申權ガアルト
云フコトハ空文デゴザイマス、〓員ニ向ヒ
マシテ眞ニ所謂給料ヲ交付スル權利ナクシ
テ、內申ダケヲ申スト云フコトハ、ソレハ
空文デゴザイマシテ、文部大臣ノ御意思ハ
專實ニ於テハ何等ノ效ヲ奏シマセヌカラ、
其ノ邊ヲ實際政治トシテドウナサイマスカ、
確固タル御信念ヲ一ツ御伺致シタイノデア
リマス、今マデノ市長ノ任免權ハサウデア
リマスケレドモ、ソレナラバ給與其ノ他慰
勞手當等ニ付テハ、何等ノ據ルベキモノガ
ナイ、サウスルト〓育ノ均等化ト言ハレマ
シタガ、均等化デアリマスト斯ウナリマス、
都會ハ物價ガ高ウゴザイマス、田舍ノ先生
ハヤハリ生徒ガ菜ヤ大根ヲ持ツテ來テ吳レ
マスガ、都會デハ左樣ナコトハ中々出來マ
スマイ、併シ郡部ニ居リマス者ハ非常ニ不
公平デアルカラ、交付金其ノ他ニ於テ、或
ハ〓員給ニ於テモ是ハ半額ヲ增ス、其ノ他ノ
足ラヌ所ハ交付金デ十分ニシテヤラナケレ
バナラヌ、ソレハ言フマデモナイ、併シナガラ
都會ハ家賃ニ致シマシテモ數倍高ウゴザイマ
ス、是ハ政府ニ於カレテモ能ク御承知ニナツテ
居リマセウガ、其ノ他ノ物價モ悉ク高イ、
其ノ高イモノト、農村ニ於ケル郡村ノモノ
ト給料ヲ平等化シタ時ニハ、今日ノ都會ノ
〓員ハ果シテ生活ノ安定ヲ得ルコトガ出來
マセウカ、サナキダヲ今日ノ都會ニ於ケル、
又農村ニ於ケル〓員ノ給料ハ、先科カラ御
話ガアリマシタヤウニ、根本ノ待遇改善ヲ
シテ戴カナケレバナラヌコトハ言フヲ俟チ
マセヌ、ソレデアルノニ此ノ時ニ當ツテ郡
村ト同一ニ平等化セラレルト云フコトニナ
リマスト、玆ニ斯ウ云フコトガアリマス、
是ハ京都ノ〓育會ガ此ノ頃調べマシタ例デ
アリマスガ、京都市ハ退職スル時ハ在職年
限ヲ最終俸給額ニ乘ジ、校長ハ其ノ四割程
ヲ渡スコトニナツテ居リマス、然ルニ郡村
ニ於キマシテハドウナルカトシマスルト、
現在マデノ在職年限數ヲ乘ジマスルト、現
在都市ニ於キマシテハ、校長ハ數千圓ニナ
ツテ居ルノデアリマス、然ルニ今マデノ郡
村平均、例ヘバ六大都市ニ於ケル郡村ニ於
テハ、最高六百圓デアリマス、此ノ退職慰
勞金ニ非常ナ差額ノアル點ヲドウ云フ風ニ
ナサイマスカ、勅令モ何モナイト言ツテ平
等化サレルト云フコトハ、都會ニ於テハ非
常テ苦勞ヲスル、靑年學校ノ兼職ガ非常ニ
多イノデアリマスルガ、之ニ就テ見マスト
三圓五十錢位シカ手當ハ與ヘ居リマセヌ、
靑年學校ハ殖エ、職務ハ激增スルノニ、タ
タツ三圓五六十錢ノ手當ノ增加ニ依ツテ、
數日間働カナケレバナラヌト云フコトニナ
ル、ソレカラ定期慰勞金デアリマス、月俸
ノ七割五分ヲ多クノ都市、殊ニ吾々ノ京都
ニ於テハ渡シテ居ル、然ルニ郡村ニ於キマ
シテハ月俸ノ五割程度デアリマスカラ、此
ノ點ニ於テ二割五分ノ差ヲ生ジテ居リマス、
是ガ平均化致シマシタナラバ、府縣財政
ハ困難デアリマスカラ、必ズ五割ニ低下サ
レルモノト思フ、此ノ點ヲドウナサル御考
デアリマスカ、住宅料ニ於キマシテ、現在
京都市ハ校長ニ五圓、訓導ニ三圓五十錢、
代用〓員ニ二圓渡シテ居リマス、然ルニ郡
村ニ於キマシテハ、一圓乃至二圓前後デア
リマス、之ヲドウ云フ風ニナサツテ行カウ
ト云フ御考デアリマスカ、又疾病ノ爲ニ在
職ニ耐ヘザル者ニ對シテハ、休職中三分ノ
二ヲ現在都市ハ給與シテ居リマスガ、其ノ
取扱ハ郡村デハ致シテ居リマセヌ、斯ウ云
フ恐ルベキ結果ガ生ジマスガ、全國ノ折角
致シテアル所マデモ斯樣ニシテヤルト云フ
コトニナレバ、〓育ノ平等化、財政ノ平等
化ハ期セラレナイト思フノデアリマス、都
會デハソレダケ物價ガ高イノデアリマスカ
ラ、此ノ邊ヲ考慮シテ-地方財政及ビ六
大都市ノ財政ハ窮乏シテ居リマスガ、此ノ
邊ヲ考慮シテ、サウシテ學校ノ〓員ガ安心
シテ其ノ職ニ就キ得ルヤウニシナケレバナ
ラヌト思フカラ、此ノ財政窮乏ノ時ニモ拘
ラズ、斯ルコトヲ致シテ居ルノデアリマス、
先程カラ待遇改善ニ付テハ非常ニ御同情ア
ル御意見ガアリマシテ、私共ハ洵ニ感謝致
シテ居ルノデアリマスガ、私ハ今玆ニ生活
ノ實際ヲ簡單ニ申上ゲテ、待遇改善ノ必要
ヲ叫ンデ置キタイト思ヒマス
京都市〓育會ガ今年一月、學校ノ先生五
百九十四世帯ニ就テ大體調ベタノデアリマ
スガ、六十圓未滿ノ收入者ニ對シマシテハ、
十五圓八十錢乃至二十圓ノ不足ヲ每月生ジ
テ居リマス、ソレカラ百十圓マデノ生活者
五百九十六世帶ニ就テ調ベテ見マスルト、
飮食物費、住宅費、電燈、燃料費、被服
費兒童〓育費其ノ他ノ諸費ヲ合算致シマ
スト、每月不足ガ一番少イノデ十五
圓多イノハ三十圓以上ニ上ツテ居ル、
月額ノ不足ノ統計ヲズツト出シテ居リマス
ガ、此處デハ詳シク申上ゲマセヌ、斯ウ云
フ物價騰貴ノ際、五十圓トカ、六十圓ト
カ、或ハ七八十圓デ、サウ斯ウスル中ニ
妻帶スル、妻帶スレバ子供ガ生レマス、是
等ガアル爲ニ給料ガ或ル程度殖エテモ、借
財ノ方ハ增加致シテ居リマス、是ハ子供ノ
多ク生レマス結果、世帶ニ於キマスル費用
モ增加スルノデアリマス、斯ウ云フ點モ併
セ御考ヲ願ハナケレバナラス、現狀デハ到
底小學校ノ先生ハ安心シテ生活ヲシ、〓育
ニ專念スルコトガ出來ナイト云フ實情ニゴ
ザイマス、今日滿洲ニ行カウト云フ希望者
ガ多イ、何處ニオ前ハ行クノカト聽キマス
、、滿洲ニ行ケバ數割待遇ガ好イト言フヨ
リ外ハナイ、先ヅ御聽キニナツテ御覽ナサ
イ、百人中九十九人マデハ滿洲ノ方ガ待遇
ガ好イノデ、離職シテ滿洲ニ〓員トシテ行
クノデアリマス、此ノ邊ハ政府ニ於カレマ
シテモ能ク御承知デアラウト思フ、斯ウ云
フコトニナリマスト、續々ト前途有爲ノ〓
員ハ退職致シマスカラ、段々ト准〓員デア
ルトカ、其ノ他代用〓員トカ云フヤウナ者
ヲ、之ニ充當スルノ外ハナイノデアリマス、
今ヤ國民〓育ヲ一層擴充シナケレバナラヌ
時ニ於キマシテ、斯樣ナ現象ノ現ハレマス
コトハ、國家ノ爲ニモ遺憾千萬デゴザイマ
スカラ、先ヅ是ト相俟チマシテ〓員ノ待遇
ノ根本的ノ改善ヲ如何ニナサルカ、唯此ノ
場限リノコトデナクシテ、眞ニ御實行ノ御
決意ガアルカドウカヲ伺ツテ置キタイノデ
アリマス
ソレカラ次ニ都市ノ問題ヲ最後トシテ終
リタイト思ヒマス、都市ノ〓育事情ハ今述
ベマシタヤウナ事情デゴザイマシテ、退職
慰勞金デアルトカ、其ノ他ノ給與金ト云フ
モノハ勅令モ法律モ何モゴザイマセヌ、ソ
コデ例ヘバ知事ガ之ヲ平等化シタラ宜カラ
ウト云フト、市會ハ知事ノ言フ通リニ總テ
ノ學校ノ〓員給料、退職資金、慰勞金ヲ平
等化シマス、サウスルト財政上カラ自分ガ
助カルノデアルカラ、市會ガ減少シテ決議
シタ時ニハ如何ニシテモ知事ハドウスルコ
トモ出來マスマイ、ソレハ困ルカラ減スナ
ト命令ヲスレバ金ヲ下サイト言フ、知事ハ
豫算ノ伴フ問題ニ付テ地方自治體ニ向ツテ
命令ヲ發スル權能ハゴザイマセヌ、是ハ如
何ニナリマスカ、是等モ御伺シタイノデア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=29
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030・小山松壽
○議長(小山松壽君) 福田君、時間ヲ御注
意致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=30
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031・福田關次郎
○福田關次郞君(續) サウ云フ點ハ飽クマ
デ維持スルト云フ風デハゴザイマスケレド
モ、此ノ點ヲドウ云フ風ニナサルカト云フ點
デアリマス、故ニ私共ガ大體ヲ通觀致シマス
ルト、六大都市ニ限リマシテハ、其ノ財源
ヲ直接市長ニ與ヘルト云フ特例ヲ設ケテ戴
キタイノデアリマス、之ヲナサラヌト云フ
ノハ、何カソコニ弊害ガアルカラダラウト
思フ、其ノ弊害ニ數ヘラレルモノニ市町村
會議員ヤ、市町村長ガ〓員ニ壓迫干涉ヲス
ルト云フコトガ、一ツノ理出ニナツテ居リ
マス、小サイ町村ニ於キマシテハ別ニ大シ
タ仕事ハゴザイマセヌ、學校〓育ガ中樞デ
ゴザイマス、豫算ニ於キマシテモ其ノ殆ド
大部分ハ〓育費デアリマスカラ、ソコニ留
意ヲサレ、仕事モ簡單デアリマスカラ、學
校ニ參ツテ先生ニ色々ナコトヲ言フ人モア
リマセウ、六大都市ニ於キマシテハ〓育費
ノ如キハ總豫算ヨリ見マスレバ、殆ド共ノ
一小部分ニ過ギマセス、今日六大都市ノ市
會議員ヤ、其ノ他ハ學校ノ校長ヤ先生ニ對
シテ壓迫干渉スルドコロデハアリマセヌ、
話ヲスル暇モアリマセヌ、サウ云フヤウナ
所ト學校ヲ中心トスル所ノ町村ト同一ニ考
ヘラレテ居ル、之ヲ歐羅巴ノ一國ニモ匹敵
スル六大都市ト同一ニ御覽下サイマス所ニ、
大變ナ誤謬ガアルノデハナイカ、此ノ點ヲ
私共ハ申上ゲタイノデゴザイマシテ、今日
學校ノ先生ニ向ヒマシテハ絕對ニ何等干
渉ガマシイコトヲシタコトハアリマセヌ、
ソレデアリマスカラ私共ハ今マデ市長ノ持
ツテ居リマシタ內申權ノ權限ヲ事實化スル
上ニ於キマシテ、六大都市ニ限リ市ニ財源
ヲ與ヘル、此ノ精神ヲ以テ是非政府ノ計畫
ヲ御進メニナリ、又此ノ方面ニ御變更ヲ顧
ヒタイト思フノデアリマス、然ラザレバ折
角今ヤ完成セントシテ居リマス都市〓育ガ
一大動搖ヲ來シ、是ガ破壞セラレルト云フ
結果ニナルノデハアリマスマイカ、此ノ點
ヲ能ク御考下サイマシテ、都市〓育ハ此
ノ日本文化、都市國民生活ト國家生活ニ對
シテ重大ナ意義ヲ有スルモノデアリマスカ
ラ、此ノ點ニ鑑ミマシテ是非トモ之ヲ改正
シテ直接交付ヲシテ、市長ノ內申權保
持ニ付テハ現狀通リト云フコトニナサルヤ
ウニ、特ニ御考慮ヲ煩ハシタイノデアリマ
ス
以上數項ニ亙リマシテ御質問申シタ點ニ
付キマシテ、何卒明瞭ナル御答辯アランコ
トヲ希望致シマシテ、私ノ質問ヲ終ル次第
デゴザイマス
〔國務大臣松浦鎭次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=31
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032・松浦鎭次郎
○國務大臣(松浦鎭次郞君) 只今福田君カ
ラ色々御質疑ガアリマシテ段々御述ニナリ
マシタガ、要スルニ今回ノ〓員俸給道府縣
費支辨ニ關シマシテ、六大都市ダケヲ特別
ニ扱フコトハ出來ナイカト云フ御趣意ニ歸
著致スト考ヘマスガ、今囘〓員俸給ヲ道府
縣支辨ニ致シマシタノハ、〓員ノ任免權ヲ
持ツテ居リマスル地方長官ガ、道府縣全體
ヲ通覽シテ、〓員ヲ適當ニ配置シ、適當ニ
異動スル、而シテ其ノ待遇モ偏頗ノナイヤ
ウニ、僻村、又比較的疲弊シタ町村等ニ勤
務スル者ニ對シマシテモ相當ノ待遇ヲ致
シ、サウシテ〓員ヲシテ安ンジテ其ノ職
ニ勤メシムルト云フ效果ヲ擧ゲシムルコト
ニアルノデアリマシテ、此ノ點カラ申シマ
スト、六大都市ダケヲ特別ニ扱ハナケレバ
ナラヌト云フ理由ハナイト思フノデアリマ
ス、尤モ〓員ノ待遇ヲ比較的均等ナラシメ
マシテ、餘リ差別ノナイヤウニ致スト云フ
コトニ方針ヲ定メマシタ所ガ、六大都市ノ
如キ經濟上ノ情勢カラ申シマシテモ、其ノ
他社會上ノ情勢カラ申シマシテモ、特別ニ
生活費等ニ於テ他ノ農村ト比較シテ〓員ノ
俸給ヲ良クシナケレバナラヌト云フ所ニ於
キマシテハ、地方長官ニ於テ適當ニ考慮致
シマツテ、現在都市ニ在職シテ居リマスル
〓員ノ待遇ヲ、今日ヨリモ惡クスルト云フ
コトハ絕對ニナイノデアリマス、唯全體ヲ
見渡シマシテ、比較的疲弊シタ町村ニ勤務
シテ居ル者ノ待遇ヲ良クスル、其ノ待遇ヲ
一般ト比較的近付ケシメルト云フ所ニアル
ノデアリマシテ、現在ノ六大都市ノ〓員ノ
待遇ヲ惡クスルト云フコトハアリ得ナイノ
デアリマス、今囘ノ如ク道府縣支辨ニ移シ
マシテモ、六大都市ノ〓員ニ何等不利ナ結
果ヲ來スコトハ決シテナイノデアリマス、ソ
レカラ福田君ハ市長ニ任免權アリト仰セラ
レマシタガ、是ハ今日デモ任免權ガアルト
云フノデハナイノデアリマシテ、是ハ內申
權ガアルノデアリマシテ、任免ハ地方長官
ガ致シテ居ルノデアリマス、今囘道府縣支
辨ニ移リマシテモ、內申權ハ從來ノ通リ存
續スルノデアリマスカラ、其ノ他ノ六大都
市ニ於キマシテハ、地方長官ト豫算ノ狀況
ヲ能ク打合セマシテ、ソレニ依ツテ內申權
ヲ行フト云フコトニ、少シモ不都合ハナイ
ノデアリマス、ソレカラ六大都市ハ特異性
ガアルト云フ御話デアリマシタガ、今囘道
府縣支辨ニ移シマスノハ俸給デアリマシテ、
其ノ他ノ諸給與、慰勞金ノ如キモノハヤハ
リ市町村ニ從來ノ通リ殘スノデアリマスカ
ラ、其ノ點ニ付テハ府縣支辨ニ移ツタガ爲
ニ從來給與サレテ居リマシタモノガ、特上
惡クナルト云フコトハナイノデアリマスカ
ラ、此ノ點ハドウゾ御安心ヲ願ヒタイト考
ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=32
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033・小山松壽
○議長(小山松妻君) 庄司一郞君
〔庄司一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=33
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034・庄司一郎
○庄司一郞君 諸君、私ハ只今上程サレテ居
リマス法案ニ關シマシテ、極メテ簡單ニ二三
ノ質問ヲ文部大臣ニ中上ゲタイト思ヒマス
〔議長退席、副議長著席〕
第一ハ、國民〓育ニ於キマシテ、良キ國
民〓育、良キ初等〓育ヲ靑少年ニ與ヘマ
スル爲ニハ、先ヅ以テ根本的ニ、基本的
ニ、文部省御自身ガ時代ニ順應サレタル所
ノ改革ト、革新ガナケレバナラナイト私ハ
信念シテ居リマス、ソコデ文部省ニハ文部大
臣ノ下ニ、督學官、或ハ視學官、或ハ地方
府縣ニハ地方視學官、或ハ府縣視學ト云フ
ヤウナモノガゴザイマスルガ、此ノ官吏ノ
ノ諸君ノ多クハ、學校其ノモノヲ監督スル所ノ
方法ハ知ツテ居ラルルカモ知レナイケレド
モ、〓育者ヲ實際的ニ指導サルル所ノ、其
ノ體驗ト、其ノ力量ト、其ノ識見トヲ、現
在ニ於テ御持チニナツテ居ルカドウカト云
フコトヲ私ハ長イ間疑ツテ居リマス、私、
〓ニ在ツテハ町長ノ現職ニ在リマスガ故
二、左樣ナ實際問題ニ直接體驗ト見聞ヲ極
メテ豐富ニ長イ間持ツテ參リマシタ、文部
省ノ督學官ハ、學校其ノモノノ監督ハ或ハ
出來ルカモ分リマセヌ、天降リ的ノ官僚ノ
力ニ依ツテ、學校其ノモノノ監督ハ出來ル
カモ分リマセヌケレドモ、或ハ〓育行政上
ノ權力ヲ振廻ハスコトハ出來ルカモ分リマ
セヌケレドモ、〓育者自身ヲ指導誘掖スル
所ノ、本當ノ實力ヲ御持チデアルカドウカ
ト云フコトヲ、長イ間私ハ疑ツテ居リマ
ス、又此ノ督學官、或ハ視學官、府縣視學
ト云フモノハ、甚ダ社會的常識ト云フモノ
ノ持合セガナイノデアリマス、私ハ此ノ事
ヲ甚ダ遺憾ニ思ツテ居ル、今日アナタノ部
下デアル所ノ督學官或ハ〓育課長、斯ウ云
フ方々ガ地方町村ニ出張サレマシタ時ニ、
如何ニ常識ノナイ、「コンモンセンス」ノ
「ゼロ」ナヤリ方ヲオヤリニナツテ居ルカ
ト云フ一ツノ實例ヲ文部大臣ニ提供スルコ
トヲ、私ハ幸ヒトスル者デアリマス、ソレハ
或ル靑年學校ガ、春ノ養蠶ニ於テ春繭ガ出
來上ツタ、ソコニ文部省ノ督學官ガ視察ニ
參ラレマシタ、私ハ文部省ノ督學官ガ、靑
年學校ノ實習ニ於テ行ヒマシタ所ノ養蠶ノ
繭ノ取上ノ狀態ヲ視ニ來ラレタコトヲ、非
常ニ欣快ト致シマシテ、其ノ現場ニ御案內
ヲ致シマシタ、所ガ其ノ靑年學校生徒ノ生
產ヲシタル所ノ繭ハ玉繭デアリマス、東北
地方ノ田舍デ謂フ所ノ玉繭デアル、繭ノ形
ガ極メテ大キイ、長クテ丸イ所ノ出來損ヒ
ノ繭デアリマス、之ヲ玉繭ト稱スルノデア
ル、所ガ普通ノ繭トハ別ニ其ノ玉繭ダケヲ
特別ニ集メテ居リマシタ、ソレヲ督學官ガ
手ニ取ツテ、農村ノ靑年學校ノ生徒ガ澤山
見テ居ル所デ、アヽ是ハ大キテ結構ナ繭ヲ
取ツタナ、斯ウ云フ繭ヲ取ツテ外貨獲得ノ
爲ニ靑年諸君大イニ頑張ツテ吳レ給ヘ、ド
ウデス、普通ノ繭ノ値段ヨリハ半額以下ノ
出來損ヒノ繭ガ玉繭デアリマス、ソレヲ見
テ、農村ノ靑年學校生徒ノ前ニ於テ、國家
ノ爲ニ、外貨獲得ノ爲ニコンナ大キナ繭ヲ
取ツタト云フコトハ、諸君平素ノ努力ヲ大
イニ感謝シナケレバナラスト云フヤウナ御
話ヲ伺ツタノデアル、私ノ地方ニ於テハ
其ノ督學官ニ對シテ、ソレ以來玉繭督學官
ト云フ「ニックネーム」ヲ贈呈シタノデアリ
ひと、ソコデ私ハ文部省ニ御勤務ナサレテ
居ル所ノ督學官、或ハ視學官、或ハ其ノ系
統ハ違ヒマシテモ、同ジ文部行政ニ携ツテ
居ル所ノ地方府縣ノ府縣視學、斯ウ云フ方
方ニ對シテ、眞ニ〓育者ヲ、或ハ靑少年ヲ
〓育シ得ル所ノ信念ト識見ト學力ヲ授ケル
所ノ工夫ハアルマイカ、具體的ニ申上ゲル
ナラバ、文部省内ニ或ハ〓育〓究所、或
〓育調査所ト云フヤウナモノヲ設ケテ、根
本的ニ國民〓育ハ此ノ方針デヤツテ行ク、
初等〓育ハ此ノ方針デヤツテ行ク、農村ノ
靑年學校ハ此ノ方針、漁村ノ靑年學校ハ此
ノ方針、斯ウ云フヤウニ文部省內ニ於テ文
部省御自身ニ於テ〓育上ノ〓究所、或ハ調
査所ト云フモノヲ御設ケニナリ、サウシテ
此ノ百年ノ大計デアリマス所ノ〓育ノ大計
ヲ確立シテ、而シテ後學校ヲ監督シ、或ハ
〓員諸君ヲ指導誘披サレルト云フヤウナ順
序ニ行キマシタナラバ、或ハ大過ナク、斯
樣ナ玉繭督學官ヲ出スコトナク、相當ナル
所ノ〓育上ノ成果ヲ擧ゲ得ルデハナイカト
考ヘテ居リマスガ、文部省ニ於カレマシテ
ハ、文部省内ニ〓育〓究所、或ハ調査所ト
云フヤウナモノヲ御設ケニナリマシテ、〓
育行政上根本的ナ、基本的ナ、此ノ與亞〓育
ノ基礎的ナル御〓究ヲナサル所ノ御對策ヲ
御持チデアルカドウカト云フコトヲ、御伺一
申上ゲタイノデアリマス
現下ニ於ケル小學校ノ〓員諸君、或ハ靑
年學校ノ〓員諸君ノ經濟的待遇ヲ改善シナ
ケレバナラヌト云フコトハ、先程以來森田
君其ノ他ノ諸君ニ依ツテ力說高調サレタコ
トデアリマスガ、是ハ其ノ通リデアリマス、
只今現在ニ於ケル全國一万四千ノ町村ノ小
學校職員ノ現實支給ノ俸給ト云フモノハ、
全國平均五十七圓デアリマス、靑年學校ノ
〓員職員ノ現實支給ノ俸給ト云フモノハ、
ソレヨリ五圓安イノデゴザイマス、五十三
圓位ニナツテ居ル、斯樣ナ薄遇ニ甘ンジテ、
默々トシテ此ノ興亞ノ〓育ノ爲ニ健鬪サレ
テ居ル所ノ〓育者諸君ニ對シテ、私モ亦森田
君ト同樣ニ、此ノ帝國議會ノ一角ヨリ、ソ
レ等ノ〓員諸君ニ對シテ、私ハ深イ感謝ノ
念ヲ捧ゲザルヲ得ナイノデアリマス、ケレ
ドモ之ヲ以テ唯精神的ナ、感情的ナ御褒メ
ノ言葉ヲ以テ、此ノ〓職員ヲ遇シテハナラ
ナイ、生活ヲ爲シ得ル最小限度ノ保障ヲ文
部大臣ガ與ヘラルルコトニ依ツテ、初メテ
名實共ニ〓師諸君ガ本當ニ或ハ貧民ノ中ニ
入ツテ、或ハ特殊部落ノ中ニ入ツテ、農漁
山村ノ窮乏セル町村ニ入ツテ、「ペスタロツ
チ」的ナ〓育ヲ施スコトガ出來ルノデアリ
マヽ 、此ノ十二分ナ待遇ノ改善ニ付テハ、
是ハ先程來カラ御答辯モアリマシタ故ニ、
改メテ御答辯ヲ求メマセヌ、是ハ是非此ノ
建國二千六百年ノ意義アル所ノ大盛典ヲ記
念シテ、文部行政ニ體驗ヲ持タレテ居ル所
ノ松浦文部大臣ニ於カレテハ、ドウカ眞劍
ニ此ノ問題ヲ解決シテ欲シイノデアリマス
先程獨リ小學校〓員ノ俸給ノミガ道府縣
ノ支辨トナリマシテ、靑年學校方面ノ〓員
ノ俸給ハ、是ハ相變ラズ市町村方面ニ從來
通リ任シテ置ク、靑年學校方面ノ〓員ノ俸
給ハ道府縣デ支辨スル意思ガアリマセヌト、
アナタハハツキリ御答辯ニナラレテ居リマ
シタガ、是ハ甚ダ不合理ナル所ノ、靑年學
校其ソモノニ對スル文部大臣ノ認識ノ不足
ヲ暴露スルモノデアリマス、私ハサウ考へ
テ居ル、只今申上ゲタヤウニ、小學校〓員
ニ全國一万三千六百ノ町村ガ現實ニ支給シ
テ居ル平均ノ俸給ガ五十七圓デアル、靑年
學校〓員ノ給與ハソレヨリ五圓モ安イ、是
ハ義務〓育ト云フ法律ノ强制力ノ下ニ、市
町村ガ餘儀ナク此ノ靑年學校ヲ經營シテ居
ルノデアリマス、餘儀ナクト云フノハ、經
濟的窮迫ノ中ニモ無理ニ頑張ツテ、國家ノ
〓育國策ニ協力シテ居ルノデアル、然ルニ
一方小學校方面ノミ之ヲ道府縣ニ俸給支辨
ヲ移管サレマシテ、靑年學校ノ方ハ移管ス
ル意思ハ毛頭アリマセヌト云フ、先程ノアナ
タノ極メテ明瞭ナル御答辯ガ、全國二十万
靑年學校〓員ノ耳ニ明日入リマシタナラバ、
靑年學校〓育者ノ爲ニ如何ニ無理解ナ文部
大臣デアルヨト、明日全國靑年學校〓育者諸
君ハ、アナタニ對シテ多大ナル失望ヲ爲シ、
同時ニアナタヲ文〓ノ府ノ親玉ニ仰グコトヲ、
彼等ハ一體ドウ考ヘルデアリマセウ、是八、
信念ノ問題デアル、此ノ差別待遇ガイケナ
1、吾々ハ小學校〓員デアリマシテモ、靑
年學校〓員デアリマシテモ、市町村ノ公立ノ
學校デアル、況ヤ靑年學校ハ昨年以來義務〓
育トナツテ居リマス、而モ靑年學校ノ方ハ小
學校同樣ニ道府縣ノ支辨ニ移管スル意思ガ
アリマセヌト、ハツキリ明瞭ニ御答ニナツタ
ト云フコトハ、確ニ全國二十万ノ靑年學校
〓員ニ對シテ、アナタハ差別的ノ御考ヲ御
持チニナツテ居ル、アナタハ以前大學ノ總
長ヲナサレタサウデアル、大學ノ總長ハ必
ズシモ靑年〓育ノ理解者デアルトハ、私ハ
毛頭考ヘテ居リマセヌ、左樣ナ無理解、左樣
ナ認識不足、私ハ洵ニ慨歎ニ堪ヘマセヌ、
ドウカ今一遍熟慮サレテ御答辯願ヒタイ、
靑年學校〓員ノ俸給ヲ道府縣ニ移管シナイ
ト云フ其ノ論理的根據、實際的根據、ソレ
ハ那邊ニアリヤ、吾輩ニ納得ノ行クマデ、
議會ガ納得ノ行クマデ、明瞭ナル御答辯ヲ
願ヒタイト思フノデアリマス
次ニハ小學校〓員ノ保健衞生上ノ問題デ
アリマス、只今全國小學校男女〓員ノ中、
肋膜或ハ肺結核、卽チ胸ノ病ノ爲ニ學校ヲ
休ンデ、保養所其ノ他ニ於テ治療ヲサレテ
居ル所ノ〓員諸君ガ約五千名、此ノ統計ハ
私ヨリモ文部大臣ニ於カレマシテハ能ク御
承知デアラウト思フノデアリマスガ、斯ノ
如ク小學校〓員ダケデ五千名ト云フ肺結核
患者ヲ出シテ居ルト云フコトハ、是ハ一體
何ヲ意味スル、小學校〓員ノ俸給ガ安イ爲
ニ、榮養不良ト云フコトモ、或ハ一ツノ原
因デアルカモ分リマセヌ、或ハ靑年團ノ仕
事、靑年學校〓員ノ兼務、或ハ村ノ婦人團
體方面ノ仕事等デ、餘リニ過勞ナルガ爲
ニ、小學校〓師ノ肉體ガ斯ノ如ク蝕マレテ
居ル、是モ一ツノ原因デアルト考ヘマスガ、
是等ニ對シテ根本的ノ對策ヲ、文部省當局
ニ於テハドウ云フ風ニ御考ニナツテ居ル
カ、是ハ厚生省ニモ聽キタイノデアリマス
ガ、敢テ求メマセヌ、文部大臣ハドウ御考
ニナツテ居ルカ、此ノ五千人、是ハ表面ニ
現ハレタ所ノ肺結核患者デアル、所謂潛伏
期ニアル、或ハ自覺症狀ノナイ、此ノ五千
人以外ノ何千或ハ何万ノ、其ノ患者ガ現存
シテ居ルノデハナイカト云フコトヲ想像ス
ル場合ニ於テ、洵ニ全國一千万ノ小國民ヲ
〓育スベキ小學校〓員ノ保健衞生ノ爲ニ、
表面ニ現ハレタ所ノ此ノ結核〓員五千名ノ
問題ヲ通シテ考ヘテモ、吾々ハ慄然タラザ
ルヲ得ナイノデアリマス、此ノ結核患者〓
員ノ對策ノ爲ニ、多少ノ助成金ヲ與ヘラレ
テ、府縣ニ對シ肺結核療養所ナルモノヲ奬
勵サレテ居ルヤウデアリマスガ、其ノ本省
ノ助成金タルヤ、補助金タルヤ、洵ニ貧弱、
寥々トシテ曉ノ星ノ如ク、資大學目藥ヲ
二階カラ點ケルト云フコトガアリマスガ、
實ニ眞劍ニ此ノ問題ノ解決ノ爲ニ御考ニナ
ツテ居ルカドウカヲ疑ハレル程、左樣ニ貧
弱ナル所ノ助成金或ハ補助金ヲ計上サレテ
居ルニ過ギナイ、之ヲ私ハ慨歎シテ居ルノ
デアリマス、全國數千万ノ生徒兒童ノ健康
保持ノ爲ニ、結核患者ノ〓員ノ吐ク所ノ黴
菌「バチルス」ガ、如何ニ少年少女ノ身體ヲ蝕
ンデ行クカト云フ大キナ問題デアリマスガ
故ニ、其ノ對策ニ付キマシテ文部大臣ノ御考
ヲ是非承ツテ置キタイト思フノデアリマス
次ニハ或ハ足ヲ痛メハ或ハ片手ヲ失ツテ
居ル、所謂不具ノ生徒兒童ガ府縣立其ノ他
公立ノ中等學校以上ニ入ル場合ニ於テ、其
ノ少年ガ不具者デアリマスガ故ニ、公立ノ
府縣立其ノ他ノ中等學校ニ入ルコトガ出來
ナイト云フ現實ノ問題ニ付テ、文部省ハ如
何ナル御感想ト御意見ヲ御持チデアルカ、
或ハ赤ン坊時代ニ於テ、或ハ幼年ノ時代ニ
於テ小兒麻痺ニ罹リ、片手ガ不具トナリ、
片足ガ不具ニナツタト云フ、其ノ可哀相ナ
小國民ガ、身體ガ片輪デハアル、片手或ハ
片足ガ片輪デアルケレドモ、頭ガ銳イ所ノ
優秀ナル兒童デアル、ソレデモ身體ガ不具
デアルト云フ意味ニ於テ、中等學校ハ彼ノ
爲ニ其ノ門ヲ開イテハ吳レテ居リマセヌ、
固ヨリ不具者デアリマスカラ、軍人其ノ他
ニナルコトハ出來得ナイノデアリマセウケ
レドモ、彼ガ中等學校ノ〓育ヲ終リ、或
大學ノ課程ヲ終ツタ場合ニ於テ、彼ハ將來
第二ノ野口英世ニナルカモ分リマセヌ、彼
ハ第二ノ大隈內閣總理大臣ニナルカモ知レ
ナイ、永井柳太郞君ヤ中
野正剛君位ニナルカモ分リマセヌ、片手ガ不具
デアル、片足ガ不具デアルト云フ意味ニ於テヽ
我ガ可愛イ子ヲ中等學校ニ進學サセルコトノ
出來ナイ、其ノ兩親、父母ノ心ヲ考フル時ニ
於テ、又其ノ片輪ナル兒童ノ心根ヲ考ヘル
時ニ於テ、我國ハ今ヤ聾啞〓育或ハ盲啞〓
育ノ點ニ於テ、世界先進文明國ニ劣ラナイ程
度ニ進ンデ居ルノデアリマスガ、私ノ只今
申上ゲタヤウナ片手片足ノ、不幸ニシテ不
具ナ者ニ對スル〓育機關、〓育機構ガマダ
整備シテ居ラヌノデアリマス、特ニ新シク
左樣ナ學校ヲ設ケヨトハ私ハ要望致シマセ
ヌ、不具者デアツテモ、中等學校ニ向フ五
箇年ノ間ノ〓育ヲ受クルコトガ出來得ル其
ノ體力ヲ持ツテ居リマスナラバ、進學サセ
テモ宜イデハナイカ、文部大臣ハ斯樣ナル
實際問題ニ對シテ如何ナル御意見ヲ御持チデ
ゴザイマセウカ、是非アナタノ本當ノ御意
見ヲ承ツテ置キタイト思フノデアリマス、
最後ニ一言ヲ呈シタイノハ、義務〓育デ
アル所ノ靑年學校〓育ハ、國家興隆ニ極メ
テ重大ナ問題デアル、其ノ〓員諸君ノ俸給
ガ、市町村ヨリ道府縣支辨ニ昇格シナイト
云フコトヲ、明瞭ニ文部大臣ハ只今御答ニ
ナツタノデアリマスガ、若シ文部省ニ於テ
何等カ〓育行政上ノ關係ニ於テ、靑年學校
〓員ノ俸給ヲ道府縣支辨ニ之ヲ昇格サセル
コトガ出來得ナイ場合ニ於キマシテハ、第
二ノ次善ノ策トシテ、市町村ニ對シマシテ、
現在ノ國庫補助法ニ依ル所ノ靑年學校補助
金額ヲ、思切ツテ增額ナサル御意思ヲ御持
チデアルカドウカト云フコトヲ承リタイノ
デアリマス、唯市町村長ニ對シテ、文部
省ガ一片ノ勅令ヲ以テ義務付ケタノデア
ル、義務ヲ强ヒタノデアリマス、然ルニ、
現在多少增額サレタトハ云ヒナガラ、市町
村ニ對スル現在ノ靑年學校國庫補助法ニ依
リマシテ補助サレテ居ル金額ハ、豫算ヲ見
マスルト昭和十五年度ニ於キマシテハ四百
六十八万圓デアル、四百六十八万圓ト云フ
ノハ、全國一万一千四百ノ市町村ニ對シマ
シテハ約三百圓、二百三十万人ノ靑年學校
生徒一人當リニ致シマスレバ僅ニ二圓九十
錢文部大臣ヨ、此處ヲ聽イテ下サイ、官
立ノ帝國大學生一箇年一人當リノ〓育費ハ
一千三百圓、高等學校專門學校生徒一箇年
ノ一人當リノ政府支辨ノ經費ハ御承知ノ如
ク三百九圓、府縣公立中等學校生徒一箇年
一人當リノ經費ハ六十八圓、靑年學校生徒
一箇年一人當リハ、本年彼此レ一般臨時部
ニ於テ增額サレタリト雖モ、四百六十八万
圓デハ、僅ニ三圓弱デアリマス、同ジ官立
大學デ醫科大學ノ生徒ノ如キハ一千七百圓
出シテ居ル、義務〓育ヲ强ヒテ居ル靑年學
校而モ中等學校以上ノ學校ヘ進學シ能ハ
ナイ、多クノ農漁山村、或ハ都會ニ於テモ
中產階級以下ノ子弟ガ收容サレテ居ル此ノ
靑年學校ニ對シテ、一方ハ三圓弱、一ノ八
一千三百圓デアル、物平ナラザレバ則チ鳴
ルト孟子ハ言ツタノデアリマス、況ヤ昭和
ノ第二國民タルベキ、國家ノ干城タルベキ
靑年學校生徒ヲ〓養スルニ、唯義務〓育デ
アルゾト云フ掛聲ダケデ、實際與ヘテ居ル
〓育費ハ三圓弱デアル、靑年〓育ノ重大性、
興亞〓育ノ重大性果シテ何處ニアリヤ、寛
政ノ三奇人六無齋林子平先生ハ、國家五十
年ノ大計ハ殖產興業ニアリト雖モ、國家百
年ノ大計ハ人ヲ造ルニアリト言ツタノデア
リマス、文部大臣ニ於カレマシテ、今囘小
學校〓員ノ俸給ヲ道府縣支辨ニ昇格ヲサレ
タ其ノ意氣ハ壯ナルモノデアリマス、吾々
ノ理想トハマダ遠イケレドモ、一歩前進ノ
上ニ於テ吾々ハ尊敬スル、ダガ靑年學校〓
員ノ俸給問題ニ關スル限リ、左樣ナ意思ハ
毛頭アリマセヌナドト云フコトヲ、ハツキ
リ御答ニナルノハ、靑年〓育ニ對シテ全ク
理解ガナサ過ギル、無理解デアリ、認識不足
デアルト云フコトヲ絕叫シ、アナタノ反省
ヲ求ムルト共ニ、願クバ靑年學校ノ國庫補
助金ヲ增額シ、否此ノ補助法ヲ改正シテ、
速ニ國庫負擔法ニ之ヲ改定サレル御意思ガ
有ルカ無イカヲ最後ニ御伺シテ、私ノ簡單
ナ質問ヲ終ル次第デアリマス(拍手)
〔國務大臣松浦鎭次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=34
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035・松浦鎭次郎
○國務大臣(松浦鎭次郞君) 第一ノ御尋ハ
〓育ノ刷新ヲ圖ル爲ニハ、先ヅ文部省自ラ
刷新改善ヲ行フ必要ガアルト云フ御趣旨ヲ
以テ、督學官ガ地方ヘ出張シタ場合ノ例ヲ
御引キニナリマシタノデアリマスガ、熱
左樣ナコトハ萬アルマイト存ジマスガ、若
シアリマシタラ、サウ云フコトハ早速改メ
サセナケレバナラヌノデアリマスガ、要ス
ルニ文部省自體ト致シマシテハ、此ノ重大
ナ時局ニ際シマシテ、〓育ノ刷新改善ノ爲
ニ、機構ノ上ニモ十分ニ注意ヲ致シタイト
考ヘテ居リマス
ソレカラ靑年學校〓員ノ俸給ヲ、小學校
〓員ノ俸給ト同ジヤウニ道府縣費支辨ニ移
サナカツタコトガ、靑年學校ヲ何ダカ輕ク
視ル意味デハナイカト云フ趣旨ノ御尋デア
リマスガ、決シテ左樣ナコトハアリマセ
ス、靑年學校ノ重大ナ任務、其ノ使命ト云
フコトニ付テハ、私ハ十分承知致シテ居リ
マン、決シテ靑年學校ヲ輕視スルナドト云
フ意味ハ少シモナイノデアリマスガ、先刻
申シマシタ如ク、今日靑年學校ハ男子ニハ
義務制ガ布カレテ居リマスガ、マダ女子ニ
ハ義務制ガ布カレテ居リマセヌシ、〓員ノ
配置其ノ他ニ於キマシテ、マダ小學校トハ
稍〓趣ヲ異ニシテ居ル點ガアリマシテ、今日
之ヲ只今直チニ道府縣支辨ニ俸給經理ヲ移
スト云フコトハ、考ヘテ居ラヌト云フコト
ヲ申上ゲタノデアリマシテ、此ノ點ハドウゾ
誤解ノナイヤウニ御願致シタイト思ヒマス
ソレカラ小學校〓育ノ保健衞生上ノ問
題是ハ洵ニ注意ヲ要スル問題デアリマシ
テ、此ノ點ニ付テハ痛切ニ考ヘタイト思ヒ
ママ、ソレカラ不具者ガ中學校ニ入レヌト
云フコトハ不都合デハナイカ、或ハ入レヌ
トスレバ、別ニサウ云フ特殊ノ學校ヲ作ル
必要ガアルノデハナイカト云フ意味ノ御尋
デアリマスガ、不具者ト申シマシテモ、是
ハ程度ニ依ルコトデアリマシテ、中等學校
ニ入ツテ就學ニ耐ヘル者ハ、之ヲ入レナイ
ト云フ譯デハナイノデアリマシテ、又全ク
中等學校ノ就學ニ耐ヘナイ者ニ對シマスル
特別ノ學習機關ト云フコトニ付テハ、是人
相當考ヘル必要ガアルト思ヒマスガ、今日
ノ所不具者デアルカラ必ズ入レヌト、斯ウ
云フ譯デハナイノデアリマスカラ、此ノ點
ハドウゾ御承知ヲ願ヒマス、要スルニ靑年
學校ノ〓員ノ俸給支辨ヲ道府縣ニ移サナカ
ツタト云フコトニ付テハ、靑年學校ヲ輕視
シタト云フ意味ハ毛頭持ツテ居リマセヌト
云フコトヲ、重ネテ御答致シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=35
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036・庄司一郎
○庄司一郞君 先程ノ私ノ質疑中ニ、野口
英世君ノ名前ヲ表ハシマシタ其ノ以下ニ於
テ、政治家トシテノ一二先輩ノ身上ニ涉リ、
多少ノ遺憾ノ疑アル言葉ヲ申上ゲタヤウニ
記憶ヲシテ居リマスノデ、其ノ點ノ御取消
ヲ御願ヒ致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=36
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037・田子一民
○副議長(田子一民君) 山崎釼二君
〔山崎釼二君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=37
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038・山崎釼二
○山崎釼二君 只今議題ニナツテ居リマス
ル市町村義務〓育費國庫負擔法改正法律案
ニ對シマスル二三ノ御質疑ヲ申上ゲテ見タ
イト思ヒマス、簡單ニ箇條書ニシテ御伺ヲ
致シマスルカラ、ドウゾ其ノ積リデ御答ヲ
願ヒタイト思ヒマス
昭和十五年度ニ於キマシテ、全國ノ義務
〓育ノ聖職ニ就イテ居リマスル〓員ノ不足
ヲ來スカ來サナイカト云フコトハ、〓育上ニ
於テ至大ナル關係ガアルノデアリマス、今日
軍需工業竝ニ一般產業ノ殷賑ニ依リマシテ、
可ナリ多クノ〓員ガ退職シテ居ルコトハ、
當局御承知ノ通リデアリマス、之ヲ昭和十
五年度ノ所要〓員ノ數ヲ、東京市ノ例ニ取
ツテ見マシテモ、大體千六百人ノ所要人員
中、東京ヲ中心トスル師範學校卒業生ガ七
百名、此ノ東京市ダケノ割當ガ、此ノ中五
百八十五名、約千名ノ不足ヲ來シテ居ル、
之ニ對シマシテ地方カラ約三百名ヲ採リ、
二部〓育ニ依ツテモ、此ノ外ニ三四百名ノ
〓員ガ要ルノデアリマスルカラ、都合四五百
名ノ不足ヲ東京市一市ダケデモ來シテ居ル
ト云フコトヲ、私ハ新聞記事其ノ他ニ依ツ
テ聞イテ居ルノデアリマス、是ハ東京市ダ
ケノ例デアリマスルガ、全日本ノ義務〓育
ノ〓員ノ數ハ、如何ニナツテ居ルノデアリ
マスカ、十五年度ニ於テ十分ニ充足シ得ル
ト云フ手配ガ整ツテ居ルノデアリマスルカ、
或ハ不足ヲ來シマシタ場合ニ於テハ、臨時
何等カノ方法デ、是ガ對策ヲ十分ニ立テル
ト云フ工合ニナツテ居ルノデアリマスルカ、
此ノ點ヲ先ヅ一點御伺致シテ見タイト思ヒ
マス
第二點ハ小學校〓員ノ再〓育ノ問題デア
リマス、昨今ノ〓員不足カラ、退職シテ居
ツタ者ヲ又復活セシメテ、代用〓員ニスル
トカ、或ハ准〓員ヲ入レルトカ、其ノ他旣
ニ老齡ニ達シテ退職シテモ宜イト云フヤウ
ナ者ヲ、退職セシメズニ其ノ職ニ留メテ置
クト云フ傾向ガ、相當長期ニ亙ツテ續クノ
デハナイカト吾々ハ考ヘルノデアリマス
勿論〓育ハ十分ニ老練ニシテ經驗ヲ持ツタ
ル者ヲ必要トハ致シマスケレドモ、可ナリ
早イ「テンポ」ヲ以テ〓育文化ト云フモノハ
進ンデ行クノデアリマス、師範學校ヲ出テ
何等再〓育サレズニ、十五年、二十年、三
十年ト同ジ職ニ停滯シテ居ルト云フコトハ、
ノコニ〓育上ノ緩ミガナイ、或ハ淀ミ
ガナイトハ言ヒ得ナイノデアリマス、現
在ニ其ノ職ニ在ル者ハ、四十歲ニ近ク
ナツテ居ル者ト、二十歲ヲ出タ勿々ノ者
トニ於テハ、一ツノ學校ノ〓員室內ニ於キ
マシテモ、其ノ〓育ニ對スル心構ヘ、理解、
或ハ其ノ方法、ソレ等ニ相當ノ開キヲ持ツ
テ來ルコトハ事實デアリマス、其ノ爲ニ少
クトモ此ノ小學校〓員ヲ再〓育致スベキ機
關ガ、私ハドウシテモ必要デアルト考ヘル
ノデアリマス、爾來文部省ノ〓育ニ對スル
所ノ方針ハ、文部省ガ大學、專門學校中心、
府縣ガ中等學校中心、義務〓育ノ如キハ殆
ド文部省カラ全ク緣ノ遠イ市町村ニ任セラ
レテ居ル關係デアリマス、勿論市町村ニ任
セテ置クコトニ依ツテ良イ點モ多々アルデ
アリマセウガ、併シナガラソレニ依ツテ本
當ノ國家的統一ヲ取ツタル、新シキ一ツノ
文部省ノ〓育方針ト云フモノガ、徹底シナ
イト云フ憾モ亦アルノデアリマス、殊ニ文
部省ニ於キマシテハ、專門學校、大學ニ對
シマシテハ、相當ノ理解ヲ持ツ者モアルヤ
ウデアリマスガ、文部省ヘ行ツテ義務〓育
ノコトヲ聽キマシテモ、霞ヲ隔テテ山ヲ見
ルドコロノ話デハナイ、殆ド別ノ世界ノヤ
ウナ取扱ヲ受ケルヤウニ、私達ニハ二三ノ
實例ヲ以テシテモ痛感シテ居ルノデアリマ
ス、今日ハ國民學校制ヲ全國的ニ施行致サ
ウト云フ、大キナ義務〓育上ノ一轉機ニ立
ツテ居ルノデアリマスカラ、少クトモ全國
ノ小學〓員ニ對シテ、文部大臣ガ直接乘出
シテ、此ノ再〓育ヲ爲シ、單ニ此ノ〓員俸
給ヲ道府縣ト國家ガ支辨スルト云フヤウナ
事務的問題デナク、此ノ國民學校制度實施
ヲ控ヘマシテ、少クトモ國家ノ方針トシテ、
此ノ小學校〓員ノ再〓育ヲ爲スト同時ニ、
之ニ對スル〓育改革ニ乘出ス必要ガアルト
私ハ考ヘテ居ルノデアリマス、幸ヒ文〓出
身ノ文部大臣ガ久シ振リニ大臣ニナラレタ
ノデアリマスカラ、此ノ際此ノ大キナ學制
改革ヲ前ニ致シマシテ、抱負アル所ノ御方
針ヲ承ツテ見タイノデアリマス
第三點、是ハ前議員カラモ質問ヲサレタ
ノデアリマスルガ、大臣ノ御答辯ガ不徹底
デアルシ、滿足ヲシ切レマセヌカラ、重ネ
テ御質問ヲ致シマス、ソレハ小學校ノ〓員
加俸令ニ關シテデアリマス、今日小學校〓
員ノ俸給ノ安イコトハ、旣ニ御承知ノ通リ
デアリマス、之ニ對シマシテ市町村小學校
〓員加俸令ヲ、吾々ハ制定サレテ居ルコト
ヲ知ツテ居ルノデアリマスガ、是ハ公立學
校ノ〓員ノ年功加俸令ト非常ニ相違ヲ致シ
テ居ルノデアリマス、玆ニ小學校ノ〓員ニ
對スル取扱上ノ不公平ガアルト信ジマスル
ノデ、此ノ際公立學校ノ〓員ニ對スル年功
加俸令ト同一ノ取扱ヲ爲スベキデアル、斯
樣ニ私ハ考ヘテ居ルノデアリマス、因ミニ
之ヲ引用致シマスト、公立學校職員年功加
俸令ノ第一條ニハ「師範學校竝公立ノ高等學
校尋常科、中學校、高等女學校、實業學校、
靑年學校、盲學校、聾啞學校及靑年學校〓
員養成所ノ學校長、所長、〓諭、助〓諭、
舍監、訓導及保姆ニシテ五年以上勤續スル者
ニハ年功加俸ヲ給ス」斯樣ニナツテ、絕對支
給ノ制度ニナツテ居ルノデアリマス、隨ヒマシ
テ靑年學校ニ勤務致シテ居リマス職員ニ
ハ、五年經テバ完全ニ第一次ノ年功加俸ガ
附クノデアリマスガ、靑年學校ノ〓師ヲ兼
務致シテ居リマス小學校ノ校長、〓員ニハ、
何年經ツテモ、此ノ加俸令ト云フモノガ適
用サレルヤウニナツテ居リマシテモ、絕對
支給ノ制度デナイノデアリマスカラ、豫算
ノ都合デ中々適用サレナイ場合ガアルノデ
アリマス、市町村立小學校〓員加俸令第三
條ヲ引用致シテ見マスト、第三條ニハ「小
學校〓員ニシテ五年以上同一府縣內ノ市
町村立小學校ニ勤續シ地方長官ニ於テ成績
佳良ナリト認メタル者ニハ年功加俸ヲ給
ス、年功加俸ハ本科正〓員ニ在リテハ年額
二十四圓乃至六十圓トシテ專科正〓員及准
〓員ニ在リテハ年額十二圓乃至二十四圓ト
ス、但シ年功加俸ヲ受ケタル後勤續五年ヲ
加フル每ニ本科正〓員ニ在リテハ年額十八
圓乃至三十圓專科正〓員及准〓員ニ在リテ
ハ年額十二圓乃至十五圓ヲ加フルコトヲ得」
第六條ニ於キマシテハ「年功加俸ヲ受クル
者ニシテ地方長官ニ於テ成績佳良ナラス
ト認メタルトキハ年功加俸ノ支給ヲ止ム」斯
樣ニナツテ居ルノデアリマス、是ハ制度上
ノ非常ナ不公平デアルト考ヘルノデアリマ
ス、殊ニ公立學校ノ〓職員全部ニ絕對支給
ノ制度ヲ布イテ居ルノデアリマスルカラ、
今日道府縣支辨或ハ國庫半額負擔ノ法制ガ
改マルト同時ニ、私ハ此ノ小學校〓員ノ年
功加俸制度モ、絕對支給ノ制度ニ改ムベキ
ガ公平ナル處置デアルト考ヘルノデアリマ
ス、併シナガラ先程ノ同僚議員ノ質問ニ對
スル大臣ノ御答辯ニ依レバ、補助額ヲ相當
與ヘルヤウニスルト云フ御趣旨デアリマシ
タケレドモ、是デハ私達ハ不滿足デアリマ
ス、國家ノ豫算ハ其ノ必要ニ依ツテハ時々
是ガ變更ヲ加ヘラレルノデアリマス、絕對
支給ノ制度ニナツテ居リマスレバ左樣ナコ
トハアリマセヌケレドモ、若シ之ヲ將來豫
算ノ關係、其ノ他情勢ノ變化ニ依リマシテ、
依然トシテヤハリ不公平ナル支給狀態ニ逆
戾リヲシ、或ハ從來ト變ラヌ狀態ニナルト
云フヤウナ場合ニ於キマシテハ、サラデダ
ニ小學校〓員ノ實質上ノ待遇ノ惡イ所ニ、
又何等ノ改革ガ施サレナイト云フ結果ニナ
ルノデアリマスカラ、此ノ際文部當局ハ有
ユル關係當局ト十分ニ强腰ニ談判ヲ致シマ
シテ、此ノ位ノ制度ノ改正ト云フコトニ大臣
ガ御乘出シニナラナケレバ、折角文〓ノ府カ
ラ出身サレテ、大分期待サレテ居ル大臣ガ、
何等期待ニ添ハナイト云フ結果ヲ生ジタノ
デハ、甚ダ大臣ノ爲ニ惜シイト吾々ハ考ヘ
ルノデアリマスカラ、此ノ際十分腰ヲ据エ
テ、此ノ位ノ制度ノ改革ヲシテ貰ヒタイト
考ヘルノデアリマス、敢テ前議員ノ御答ニ
對シマシテ私不滿デアリマスルカラ、重ネ
テ此ノ點ヲ御答辯願ヒタイノデアリマス
次ニ第四點ト致シマシテ、小學校ニ學校
醫竝ニ看護婦、事務員等ガ設置サレテ居ル
學校ハ、大體ニ於テ都市ヲ中心ニ完備致シ
テ居ルヤウデアリマスガ、未ダ山間僻地竝
ニ一般貧弱町村ニ於テハ、制度ノ上デハ學
校醫モアリ、或ハ學校齒科醫モアリ、其ノ
他形ノ上ニ於テハ非常ニ完備致シテ居ルヤ
ウニ見エテ居リマスケレドモ、實際問題ニ
就テ見マスルト、小都市ノ如キニ於キマシテ
モ、此ノ制度ハ空文ニ化シテ居ル結果ガ多
イノデアリマス、例ヘバ地方ノ五万人程度
ノ小都市ニ於キマシテノ例ヲ擧ゲテ見マス
ルト、其ノ市ニハ五ツノ小學校ガアリ、
ツノ學校ハ二千七百人ヲ收容致シテ居リマ
スル、今其ノ學校ニ就テ參考ニ調ベテ見マ
スルト、耳鼻咽喉科ト、眼科ト、內科ト、
三人ノ學校醫ニ年額一人當リ二十圓ヅツシ
カ手當ガ行カナイヤウナ實際ノ結果ヲ來シ
テ居ルノデアリマス、是デハ多クノ生徒ト
多クノ先生トニ對シテ、十分ナル醫療ト診
察ヲ徹底スルコトハ出來ナイノデアリマス、
此ノ際小學校ノ〓員ノ俸給ガ道府縣ノ支辨
ニナツタト云フナラバ、市町村ニ對シテモ
ツト澤山ナ金ヲ支出致サセマシテ、各專屬
的ナル學校醫或ハ學校看護婦、事務員ナド
ヲ置カレテ、之ニ對シ十分ナル國家ノ補助
ナリ、道府縣ノ補助ナリヲ與ヘ、此ノ際小
學校〓員ノ俸給ガ道府縣支辨ニナツタト云
ツテ、安易ナ考ヲ市町村ニ持タセズ、層
此ノ學校ニ於ケル所ノ保健衞生養護ノ施設
ヲ完備サセナケレバナラヌト考ヘルノデア
リマス、私ハ出來ル事ナラバ、寧ロ進ンデ
學校醫竝ニ學校看護婦或ハ學校事務員ノ俸
給ノ如キモ、併セテ道府縣支辨ト爲シテ、
之ヲ國家ガ五割補助スルト云フ程度ニ行カ
ナケレバ徹底致サヌ、斯樣ニ考ヘテ居ルノ
デアリマス、此ノ點ニ付キマシテノ當局ノ
御方針ヲ伺ヒタイノデアリマス
一第五點、是ハ中等程度ノ學校ヲ今日增設
スル對策ノ事デアリマス、是ハ試驗地獄ヲ
救ヒ、一面國民全般ノ向學情勢ニ對應スル
爲ニ公立ノ中等學校ガ殖エマシタ、或ハ財
團法人組織ノ中等學校ガ殖エ、私立制度ノ
中等學校ガ殖エテ居ルフデアリマス、併シ
ナガラ之ニ對シマシテハ、之ヲ徹底的ニ助
成シ育成スベキ法制モ完備シテ居ナイノデ
アリマスカラ、中ニハ隨分如何ハシイ雜駁
ナ學校ガ出來ル傾向ヲ示シテ居ルノデアリ
マス、殊ニ私立學校ノ如キハ、試驗地獄カ
ラアブレテ來タ人達ヲ吸收スル爲ニ、弱イ
立場ニ於ケル所ノ生徒ノ父兄カラ、可ナリ
苛酷ナル寄附金ヲ强制シテ、〓育事業ヲ最
モ忌ムベキ營利事業ノ如ク考ヘマシテ、外
觀ノ美、體裁ダケヲ整ヘ、內ニハ〓員ニ對
スル其ノ素質、其ノ待遇ト云フモノガ劣惡
デアリマスルカラ、中々感心シナイ結果ヲ
來シテ居ルモノモ多々アルノデアリマス、
又〓員ノ立場ニ於キマシテモ、何等保護育
成ノ途ノナイ此ノ學校ニ入ツテ居ルノデア
リマスカラ、多クハ他デ失業シタ者ガ一時
腰掛的ニ入ルト云フヤウナ傾向モナキニシ
モアラズデアリマス、私達ハ今日試驗地獄
ガ非常ニ問題トサレテ、學科試驗ガ宜イト
カ、或ハ口頭試問ガ宜イトカ云フコトヲ論
議シテ居リマスケレドモ、孰レガ宜シイト
致シテモ、相當數ノ生徒ガ學校へ入レナイデ
居ルト云フコトヲ認メナケレバナラヌノデ
アリマス、是等ノ人達ニ完全セル〓育、完
全セル學校ヲ備ヘテヤツテコソ、初メテ眞
ノ試驗地獄、試驗制度ト云フモノガ救ハレ
ルモノデアルト私ハ考ヘルノデアリマス、
單ニ此ノ際學科試驗ガナクナツタカラト云
ツテ、決シテ生徒或ハ父兄ガ安心シタリ、
文部省當局ガ今度ノ新試驗制度ガ旨ク行キ
サウダト言ツテ、鼻ヲ高クスル必要モナイ
ト思フノデアリマス、日本ノ國民〓育ノ情
勢ト云フモノガ急激ニ上昇シタニ拘ラズ、
之ニ對應スル國家ノ〓育機關完備ノ政策ガ
貧困デアル爲ニ、斯樣ナ結果ニナツタノデ
アリマスカラ、併セテ此ノ點ニ文部當局ガ
十分ニ留意サレマシテ、少クトモ學校法人
ヲ律スベキ法律ノ一ツ位ヲ作リ、中央ニ大
キナル財團デモ作リマシテ、此ノ公立ノ學
校、財團法人ノ學校ニ、又ハ私立ノ學校ニ、
無利子ニ等シイ低利資金ヲ融通致シマシ
テ、此ノ方面ノ〓育ニ從事スル〓員ニ對ス
ル手當ト云フモノニマデ意ヲ用ヒマシテ、
此ノ種學校ノ充實ヲ圖ラシメマシタナラバ、
私ハ試驗地獄ト云フモノモ本當ノ意味ニ於
テ救ハレ、日本國民ノ〓育文化モ一層向上
スルト考ヘルノデアリマス、是等ニ對スル
當局ノ御抱負ヲ承ツテ見タイノデアリマス
最後ニ私ハ今日ノ義務〓育ノ學校設備ガ
非常ニ狹隘デアリマス爲ニ、大都市ニ於キ
マシテハ相當數ノ二部〓授ヲ行ツテ居リ、
地方町村ニ於キマシテモ、普通〓室ノ不足
カラ、特別〓室ハ全部無クシテシマフトカ、
或ハ講堂ノ如キ殆ドナイ學校モ多イノデア
リマス、サウシテ一〓室ニ六七十人、多キ
ハ八十人ニ達スルヤウナ生徒ヲ收容致シマ
シテ、之ニ一人ノ先生ガ〓育ニ從事シテ居
ルノデアリマスカラ、其ノ一人ノ持分ノ〓
育ト云フモノガ多キニ失シテ、本當ニ血ノ
通ツタ、精神ノ交流シタル〓育ガ出來ナイ
ノデアリマス、是ハ實際問題トシテ、當局
モ此ノ際學級ノ增加ヲ爲サシメ、或ハ設備
ノ充實ヲ爲サシメル爲ニ、內務當局ト十分
ニ御相談ヲサレマシテ、必要ナ費用ハ大藏
當局カラモ出サセマシテ、國民ノ基礎トモ
ナルベキ所ノ學校〓育ニ對スル設備ヲ、十
分ニ充實セシメルノ必要ガアルト考ヘルノ
デアリマス、殊ニ其ノ爲ニハ小學校令ノ施
行細則ヲ改メマシテ、現行ノ如ク一級室八
十名マデハ宜シイト云フ程度ノ無理解ナ制
度ヲ改正致シマシテ、少クトモ一級室五十
名以下ト云フコトニ限度ヲシテ、ソレ以上
ニ亙ツタモノハ全部新シキ〓室ヲ建テテ〓
育ヲ致スベシト云フ、强イ方針ヲ文部當局
ガ立テマシテ、之ヲ全日本ノ市町村其ノ他
ニ强制スル、ト言フト語弊ガアルカモ知レ
マセヌケレドモ、之ヲ强硬ニ實施セシムル
ヤウナ態度ヲ持チマシタナラバ、兒童ハ僅カ
ナ期間ニ言葉ノ使方カラ、或ハ文字ヲ書ク術
カラ、本當ノ人間トシテノ第一步ノ〓育ト云
フモノヲ、親切丁寧ニ且ツ先生ト密著シタ心持
ヲ以テ〓育ヲ受ケルコトガ出來ルト私ハ考ヘ
ルノデアリマス、今日多クノ偉人ヤ偉イ學者ニ
ナツタ人達ガ、小學校當時ノ老先生ヲ偲ビ、
之ヲ讚ヘルノ會ヲヨク催スコトモ、新聞ニ
依ツテ見テ居ルノデアリマス、又天災地變
ニ當リマシテハ、身ヲ以テ女〓師或ハ男〓
師ガ、其ノ子供ノ生命ニ代ツテ之ヲ庇フト
云フコトモ見テ居ルノデアリマス(拍手)〓
育界ニ於ケル美談ノ多クハ、小學校〓師ノ
中カラ生レテ來ルト云フコトヲ考ヘマスル
時ニ、今日私達ハ全國ニ最モ數ノ多イ大都
市ニモ、亦如何ナル邊鄙ナル土地ニモ、普
遍的ニ存在シテ居リ、サウシテ日々休ムコ
トナク、其ノ〓育ニ携ツテ居ル小學校〓員
ノ影響力ト云フモノハ、非常ニ大キナモノ
ト吾々ハ考ヘルノデアリマスカラ、少クト
モ此ノ小學校〓育竝ニ小學校〓員ト云フモ
ノヲ輕視セズニ、每月一囘デモ宜イノデア
リマスカラ、文部大臣ハ全國ノ小學校ノ先
生ヲ府縣別ニ分ケテ東京ニ呼寄セ、サウシ
テ自分ト膝ヲ交ヘテ、此ノ普通〓育ニ對ス
ル改善案ヲ御相談ナサリ、オ互ニ胸襟ヲ披
イテ日本ノ基礎〓育ニ對スル良キ意見ヲ練
リ出シマシテ、之ヲ實行ニ移スト云フ位ノ、
生命ヲ交流サセタ事ヲ致シマセヌト、到底
今マデノ如ク惰性デ進ンデ來タヤウナ感ガ
アル義務〓育ハ、如何ニ國民學校制度ノ實
施ヲ致シマシテモ、或ハ其ノ俸給ヲ國家ガ
半分持ツテヤルト致シマシテモ、是等ハ形
式ノミニ流レテ、本當ニ血ノ通ツタ〓育ト
云フモノハ出テ來ナイト思フノデアリマス、
少額ノ給料ヲ增シテヤル程度ノ事デハ、ソ
コニ將來希望ヲ持ツテ、此ノ天職ニ十分腰
ヲ落付ケテ從事スル〓員ガ生レテ來ナイト
考ヘルノデアリマスガ、以上ノ點ニ付キマ
シテ、甚ダ雜駁デアリマシタガ、大臣ノ御
抱負ヲ承リタイト思フノデアリマス(拍手)
〔國務大臣松浦鎭次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=38
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039・松浦鎭次郎
○國務大臣(松浦鎭次郞君) 昭和十五年度
ニ於キマシテ小學校〓員ニ不足ヲ來スコ
トハナイカ、其ノ對策ハ如何ト云フ御尋デ
アリマスガ、成程小學校〓員ニシテ產業方
面ニ轉職ヲ致ス者モ、相當多數ニ上ツテ居
ルコトハ事實デアリマス、是ガ爲ニ學校ニ
於キマシテ、其ノ補充ニ色々苦心致シテ居
ルコトモ亦事實デアリマス、而シテ一方ニ
ハ〓員ニ講習ヲ施シマシテ、其ノ資格ヲ與
ヘル方法、又ハ已ムヲ得ズ代用〓員ヲ利用
スル方法等ニ依ツテ、兎ニ角〓授ノ上ニ不
都合ヲ來スト云フコトハナイノデアリマス、
而シテ當局ト致シマシテハ、〓員ノ養成ト
云フコトノ上カラ見マシテ、師範學校ノ學
級ヲ增加シテ、成ベク優秀ナル〓員ヲ養成
スルコトニ致シテ居リマシテ、旣ニ明年度
ノ豫算ニ於テ、其ノ意味ノコトデ御協贊ヲ
仰イデ居ルヤウナ譯デアリマス、是ハ其ノ
方法ニ依リマシテ、〓育ノ上ニ不都合ヲ來
サナイヤウニ方策ヲ講ジテ居ル次第デアリ
マス、尙ホソレニ關聯致シテ小學〓員ノ再
〓育ノコトニ付テモ御尋ガアリマシテ、其
ノ必要ハ御說キニナツタノデアリマスガ、
是ハ講習會等ノ方法ニ依リマシテ、常ニ〓
員ノ學力ノ增進、人格ノ陶冶ト云フコトニ
付キマシテハ、注意ヲ致シテ居ルノデアリ
そく、之ヲ直接文部省デヤル意思ハナイカ
ト云フ御尋デアリマスガ、是ハヤハリ實際
勤務致シテ居ル地方ニ緣ノ近イ各府縣ニ於
テ之ヲヤラセルコトガ、效果ガアル方法ト
考ヘマシテ、直接文部省ニ於テハ施行致シ
マセヌデ、府縣ニ之ヲヤラセル、斯ウ云フ
方針ヲ執ツテ居ル譯デアリマス
尙ホ小學校〓員ノ加俸令ニ付テノ御尋モ
アリマシテ、之ヲ中等學校ノ〓員ノ加俸令
ト同ジヤウニスル意思ハナイカト云フ御尋
デアリマス、是モ成ベク左樣ニ致シタイト
考ヘマスガ、先ヅ差當リ今日實際ニ此ノ加
俸令ニ依リマシテ加俸ノ支給ヲ受ケテ居ル
者ガマダ七割餘デアリマスガ、ソレデ今囘
ハ補助費ヲ增額致シマシテ、先ヅ八割以上
位ニハ實際加俸ノ支給ヲ受ケル者ノ數ヲ、
其ノ位ニ增加致シタイト云フヤウニ考ヘテ
居ルノデアリマス、是モ御趣意ハ洵ニ御同感
デアリマシテ、出來ル限リ全體ノ者ニ漏レ
ナク加俸ヲ受ケラレルヤウニ致シタイト思
ツテ考ヘテ居リマス
ソレカラ其ノ次ニ小學校ニ學校醫、看護
婦ノ設置ヲ奬勵スルコトニ付テノ御尋デア
リマシタ、是モ成ベク督勸ヲ致シマシテ、
總テフ學校ニサウ云フ設置ヲ實現スルヤウ
ニ努メテ參リタイト考ヘマス、ソレカラ私
立學校ノ助成ノコトニ付キマシテモ、是八
何等カ案ヲ具シテ其ノ實現ヲ圖リタイト考
ヘテ居リマス、暫ク御猶豫ヲ願ヒタイト思
ビマス、必ズ何等カノ案ヲ具ヘテ、其ノ目
的ヲ達スルヤウニ致シタイト思ヒマス、ソ
レカラ小學校長ノヤウナ人ト親シク膝ヲ交
ヘテ〓育ノコトニ付テ話ヲスルト云フヤウ
ナコトヲ、文部省自ラヤツタラドウカト云
フ御話デアリマスガ、是モ其ノ御趣意ニ於
テハ洵ニ御同感デアリマシテ、全體ノ〓育
ノ實際ニ當ル人ト、成ベク意思ノ疏通ヲ圖
リマシテ〓育ノ刷新ヲ圖リタイ、斯ウ云フ
考ヲ持ツテ居リマス、是ダケ御答致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=39
-
040・田子一民
○副議長(田子一民君) 椎尾辨匡君
〔椎尾辨匡君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=40
-
041・椎尾辨匡
○椎尾辨匡君 只今上程ニナツテ居リマス
ル法案ニ付テハ段々質疑ガアリマシタカラ、
漏レテ居リマシテ伺ヒタイ點ヲ數點簡單ニ
御伺致シマス
第一、〓育ヲ尊重スルカト言ヘバ、國家
ガ尊重スルト言ハレルニ相違ナイノデアリ
マスルガ、併シ明治以來段々〓育尊重ノ事
實ガ薄ライデ居リマス、近クハ近衞內閣ニ
於キマシテ上諭ヲ仰イデ〓育奉議會ヲ設ケ
ラレル等デ、或ハ〓育尊重ノ實ガ擧ルカト
考ヘラレタノデアリマスルガ、ソレモ日ヲ
加へ內閣ガ迭リマスルニ從ツテ、段々ト貧弱
ニナツテ參ツタノデアリマス、ソコデ現內
閣ハ〓育尊重ニ付テ特ニ如何ナル重大方針
ヲ持ツテ居ラレルカト云フコトヲ總理カラ
ハツキリト言明ヲ受ケタイノデアリマス、
具體的ニ申シマスルト、一ツハ〓育審議會
デアリマス、〓育審議會ハ之ヲ通シマシテ
我ガ〓育ノ根本的革新ヲ圖リ、制度ヨリモ
內容ニ向ツテ革新ヲ圖ルト云フコトガ出立
デアリマシタ、然ルニ其ノ後ノ經過ヲ見マ
スルト、單ニ現在ノ制度ノ置換ヲ考ヘテ居
ルコトガ主ナモノニナリマシテ、此ノ重大ナ
ル時局ニ對シテ時局對應ノ途ヲ如何ニスル
カト云フコトハ文部省ガ別ニヤルト云フコ
トニシテ、〓育審議會ハ七年、十年先ニ稍〓く
效果ヲ見ルベキ制度ノ問題ノミニ沒頭シテ
歲月ヲ重ネテ居ルノデアリマス、然ラバ
文部省ハ別ニ時局ニ對應スル本當ノ〓育問
題ヲ、ドン〓〓トヤツテ居ルカト云フト、是
モヤラナイデ、殊ニ現文部大臣ノ如キハ、
此ノ〓育審議會ノ決議ヲ實行スルト云フコ
トヲ以テ能事足レリトスルガ如キコトヲ、
先頃來數次言ウテ居ラレルノデアリマスガ、
〓育審議會ニ依リマシテハ時局對應ノ問題
ヲ解決スルコトハ出來ヌノデアリマス、ド
ウ云フ方法ニ依リテ〓育審議會ヲ通シテ解
決サセルカ、或ハ文部方面ニ於テ別ニ之ヲ
解決スル方法ヲ講ゼラレルカ、時局對應ト
云フコトハ申スマデモナイコトデアリマス
ガ、我國空前ノ轉換期ニ當ツテ、東亞ノ新
秩序ヲ建設スルト云フ此ノ重大問題ハ、〓
育ノ充實ヲ基礎付ケラレンケレバナラヌコ
トデアリマス、ソレニ何等ノ方法ヲ講ゼズ、
單ニ小學校、靑年學校、大學制度ノ改廢變更
ニ依ツテ處置シヨウト云フガ如キコトデハ、
到底此ノ重大問題ノ〓育尊重ノ途トナルモ
ノデハナイト考ヘルノデアリマスルガ、之
ニ對シテドウ云フ態度ヲ執ラルルカ
其ノ次ニハ同ジク〓育尊重ノ立場カラ考
ヘマスレバ、現ニ支那ノ今日ノ蔣介石政權
ガ力ヲ持チマシタコトハ、申スマデモナク
〓育ノ力デアツタ、更ニ最近中央政府ガ樹
立サレルト云フコトニナリマシテ、其ノ力
ハ、北支ノ方面ナドハ相當別物ニ行カレル
ヤウニ聞クノデアリマスケレドモ、實際ハド
ウアリマスルカ、稍〓其ノ政權ノ成立ノ日ガ
近付クヤウニ見エマシタ時ハ、忽チ國民黨
〓育方針ガ北支ニマデ瀰漫シテ參リマシテ、
昨年ノ十二月以降新民會ノ〓育スラ旣ニ國
民黨〓育ノ方へ段々變ツテ行ク、卽チ蔣介
石指導〓育ノ方へ段々變ツテ行クト云フコ
トニマデナツテ居ル、サウ云フヤウナ足元
カラ引繰返サレルヤウナコトニマデボンヤ
リシテ居ルヤウナコトデ、本當ニ我ガ內國及ビ
國際ニ立ツテ行ク所ノ將來ノ指導ガ出來ルカ
ト考ヘマスルト、洵ニ寒心ニ堪ヘナイノデアリ
マス、斯ウ云フ點ニ對シテドウ云フ〓育指導ヲ
シテ行カウト云フノデアルカ、我ガ國民ヲ如
何樣ニ新シイ形ニ向ケテ行カウト云フノデアル
カヲ承リタイノデアリマス、又精神總動員ハ
總理モ既ニ言明セラレ、マシタ通リ、新シイ組
織ノ下ニ國民ヲ基礎トシテ立ツテ行クト云
フコトデアリマスルガ、是ハ一面カラ考ヘ
マスト、官僚ノ古手ダケデヤツテ居ル中央
聯盟ノヤリ方ヲ止メテ、モツト國民ニ直接
セラルル所ノ政黨諸君ヲ多ク入レルト云フ
コトノヤウニモ聞エマスケレドモ、政黨諸
君ヲ入レルト云フコトハ惡イトハ私ハ申シ
マセヌガ、ソレ以上ノ本當ノ國民ヲ基礎ト
シテヤル國民精神總動員ナリ、再組織ナリ
ト云フモノハ、實際ハドウ云フ形ニ於テ行
カウト云フノデアリマスカ、殊ニソレハ文
〓ガ中心ニナリ、全國ノ總テノ〓員ガ總動
員セラレ、總テノ宗〓家ガ總動員セラレ、
總テフ思想的ニ動ク者ガ總動員セラルルト
云フコトガ、何トシテモ重大ナル問題デナ
ケレバナリマセヌ、サウ云フ意味カラ言ヒ
マシタナラバ、文〓ノ府ガ中心ニナツテ此
ノ精神總動員、國民ノ再組織ニハ斯樣ナ途
ヲ執ツテ行カウト云フコトヲ念願シテ居ル
ト云フコト位ハ、旣ニ確立シテ居ラナケレ
バナラヌ筈デアリマスガ、ソレヲ明瞭ニ御
答願ヒタイノデアリマス
是ハ私ハ〓育尊重ト云フ問題ニ付テ伺ツ
タノデアリマスルガ、次ニ其ノ指導精神ニ
付テ御伺シタイノデアリマス、明治以來文
明開化、富國强兵ト云フヤウナ歐米思想ヲ
標準ト致シマシタ題目ヲ揭ゲ、更ニ其ノ下
ニハ英國ニ做ヒマシテハ功利主義、英佛米
ニ倣ヒマシテハ個人自由主義、獨逸ニ做ヒ
マシテハ强力主義、斯ウ云フヤウナ主義ヲ
以テ〓育ノ指導精神トシテ居ツタノデアリ
マスルガ、今日ハ斯ノ如キ指導精神ヲ根本
カラ排除致シマシテ、是非共ソコニハ本當
ノ個人、功利、唯物、自由主義ヲ打破致シ
マシタ所ノ日本主義デアリ、東亞主義デア
ル所謂大精神ガナケレバナラヌノデアリマ
ス、ソレニ付テハ勿論剛健質實デアリ、協
心戮力デアリ、尙步主義デアリ、ソレノ
ノモノガアリ、若シ一言ニ言ヒマスナラバ、
ソレハ皇國主義デアリ、國體ノ精華デアル
ト御答ニナルニ相違ナイノデアリマスケレ
ドモ、其ノ皇國精神ナリ、國體ノ精華ナリ
ヲ、ドウ云フ風ニ實現シテ行カウトシテ、
文〓カラ指導ヲシヨウトセラレルノデアル
カ、此ノ指導精神ヲ最モ具體的ニハツキリ
與ヘテ、全國ノ〓育家ノ活動ヲ促シ、〓育
ニ關心ヲ持チマス人々ノ、卽チ全國父兄子
弟ノ總動員的活動ヲ促スト云フコトデナケ
レバナラヌノデアリ、マスガ、ソレニ對シマ
シテ老練ナル文相ハ、御老練デハアリマス
ケレドモ、其ノ老練ト云フ點ニ付テ私共ガ
心配致シマスノハ、〓育審議會ニ於テモ何
時デモ現狀維持ノ保守的熊度ヲ以テ、總テ
ヲ指導シテ居ラレタノガ松浦氏デアリマス、
サウ云フヤウナ現狀維持的ナ保守的態度ヲ
以テ國民精神ノ總動員ヲシ、將來ノ文〓ヲ
指導スルト云フコトナラバ大イナル間違ヒ
デアリマス、最近各所デ御話ニナリマス所
デハ、時局ガ變ツテ居ルカラ大イニ〓育ヲ
振作シ、大イニ改善シテ行クノデアルトハ
言ハレマスケレドモ、〓育ヲ振作シ、改善
シヨウト云フコトニ付キマシテハ、文相ノ
如キ過去ノ〓育組織ニ至大ノ貢獻ヲ持チ、
關係ヲ持ツテ居ラレマス方ハ、根本的ニ自
己反省ヲセラレマシテ、根本的ニ改善セラ
ルル、自己カラ改造セラルルノデナケレバ、
到底文〓ノ改造ナドハ出來ヌコトデアルト
信ズルノデアリマス(拍手)ソレニ付キマシ
テハ過去ニハ過去ノ必要ナルコトヲ爲サツ
タニ相違アリマセヌケレドモ、今マデヲ以
テ將來ヲ律スルノデハナクシテ、第一自分
ノ心境ヲ斯ノ如ク改メテ、斯ノ如キ念願ニ
依ツテ國民ト共ニ動イテ行キタイト云フコ
トデナケレバナラヌト存ジマスガ、願クハ
茲ニ心境ヲ新ニセラレマシタ〓育振興ノ精
神ヲ明ニサレンコトヲ希望スルノデアリマ
ス(拍手)、
更ニ之ヲ支那問題ニ付テ申シマスナラバ、
支那ハ其ノ新中央政權ノ成立致シマスノ
二、再三表明致シテ居リマス通リ、孫文以
來ノ法統ヲ基礎トスルト云フコトヲ以テ、
三民主義ヲ立テルト云フコトヲ言ツテ居リ
マスルガ、三民主義ハ要スルニ民族、民權、
民生ニ於テ民族政治經濟ノ獨立解放ヲ要求
スルノデアリマス、若シ斯ウ云フヤウナ建
前カラ言ヒマシタナラバ、今日歐羅巴ノ制
約ヲ受ケテ居リマスル所カラ獨立解放ヲ要
求致シマスモノハ、明日又新シイ獨立解
放ヲ要求スル運動ニナルノデアリマス、
斯ノ如キ思想ヲ根絕致シマシテ、提携親善
ノ上ニ協同一體ノ上ニ立ツテ行クト云フコ
トヲ、原理トシナケレバナラヌモノデアリ
マスノニ、ドウ云フ風ニ支那ヲ指導シヨウ
トセラレテ居ルノデアルガ、此ノ點ニ付テ
曩ニ安藤議員其ノ他ト應答セラレマシタコ
トガアリマスガ、未ダ明瞭ニナツテ居リマ
セヌケレドモ、閣議ヲ經テ十分御答ガアル
ベキコトニナツテ居ルサウデアリマスシ、
最早十分ナル閣議ガアツタ筈デアルカラ、
之ヲ明瞭ニ御答アランコトヲ希望スルノデ
アリマス、卽チ以テ內外ニ亙ル日本ノ指導
精神ガ如何ナル上ニ立ツテ居ルカト云フコ
トヲ、明ニサレタイノデアリマス
第三ニ私ガ伺ヒマスコトハ、〓育立法ノ
問題デアリマス、今日ハ厚生政治ガ行ハレ
マシテ、勞働立法モ行ハレ、國民ノ健康保
險ノコトニ關シマシテモ、或ハ職業運營ノ
コトニ關シマシテモ、新シイ立法ヲ以テ行
ハレルヤウニナツタノデアリマス、昔ハ斯
樣ナコトハ各人ノ自由損得ニ一任サレテ居
ツタノデアリマスガ、今日ハ國家ガ立法ヲ
以テ行クノデアル、サウ云フ時代ニ〓育ノ
ミガ依然トシテ勅令ノミニ基イテ蔭ノ仕事
ニナツテ居ルト云フコトハ、大キナ間違ヒ
デアルト存ジマス、〓育ハ法制政治ノ使命
カラ考ヘマスナラバ、ドウシテモ亦法規ヲ
以テ此ノ議場ニ於テ論議セラレテ、確實ナ
ル國家ノ〓育方針ト云フモノガ確立シ、其
ノ法規ニ依ツテ實行セラレルコトニ致サレ
ナケレバナラヌ時代ニナツテ居ルト思フノ
デアリマスガ、〓育立法ト云フコトニ付テ、
文相ハドウ云フ御考ヲ持ツテ居ラレルカ、
或ハ〓育ハ黨爭ノ間ニ動カサレテハナラヌ
ト云フコトデ、嘗テ愛媛縣ヤ大分縣アタリ
ノ政爭激甚ナル所デ、小學〓育ガ混亂セシメ
ラレタト云フコトガアルヤウニ、今日モ政
黨ノ弊害ガ甚シイカラ、政黨ニ〓育ノ立法
ニ參與サセタナラバ、非常ナ間違ヒヲ惹起
スルデアラウト云フ御認識カラ、斷ジテヤ
ラヌト云フコトデアレバ、サウ云フ意味ヲ、
ハツキリシテ貰ヒタイノデアリマス、若シ
サウデハナイ、サウ云フ弊害ハ旣ニアツタ
ケレドモ、其ノ弊ノ甚シイ大分縣カラハ、
選擧肅正運動ガ發揮サレルコトトナツテ改
善サレタヤウニ、今日ハ黨弊黨爭位ノ爲
ニ、此ノ〓育ノ重大事ガ議場デ論議セラレ
タカラトテ、破壞セラルル虞ハナイト云フ
コトデアルナラバ、〓育立法ノ方へ邁進セ
ラレルコトガ當然デアルト考ヘルノデアリ
マスガ、ソレニ對シテ文相ノ所見ハ如何デ
アリマスカ、更ニ又其ノ〓育立法ガ行ハレ
ナイト云フコトガ、私ハ今日非難セラレマ
ス所ノ官僚獨善ト云フ聲ノ起ル病弊ノ根源
デアルト考ヘルノデアリマス(拍手)ナゼカ
ト申シマスルノニ、地方ノ優良ナ〓育者デ
モ洵ニ若々シイ所ノ〓育課長、或ハ縣ノ視
學ナドノ前ニ參リマスト、平身低頭シテ居
ツテ〓育家ノ尊嚴ハ何處ニアルカト云フヤ
ウナコトニナリマス、サウシテ旣ニ論ゼラ
レマシタ通リ、新任ノ部長級ノ第一ニナル
學務部長ハ、必ズ新シイガ爲ニ何等カノコ
トヲシナケレバナラヌト云フノデ、著任シ
テ一年カ一年半ヨリ居ラヌクセニ、何時デ
モ變ツタコトヲヤルノデ、〓育ガ始終破壞
サレルト云フコトハ分リ切ツタコトデアリ
そう、斯樣ナ情勢ノ下ニ、而モソレヲ胸ニ
滿シツツ平身低頭シテ居ナケレバナラヌ、
斯樣ナ情勢カラ段々進ンデ結局文〓ト云フ
モノガ勅令ノ中ニ定メラレ、此ノ議會ニ於テ
堂々ト論議サレズ、國民ノ正シキ認識立法
ノ上ニ立ツテ居ラヌト云フコトノ爲ニ、始
終上ニ向ツテハ縮ミ上ツテ、下ニ向ツテハ
尊大ニナルト云フ惡弊ガ、此ノ官憲ノ中ニ
隱レテ立法ノ論議批判ヲ免カレテ居ルト云
フコトガ、養ヒ場所ニナツテ居ルト云フコ
トニナル、殊ニ此ノ官吏養成ノ根本トシテ、
伊藤公ナドガ計畫シタ所ノ東京帝國大學ナ
ドハ、思想的ニ色々ナ缺陷ヲ生ジマシタケ
レドモ、ヤハリ官吏トナリマス上ニ於テハ、
上ニ向ツテハ頭ヲ下ゲ、下ニ向ツテハ尊大ニ
構ヘルト云フコトヲ〓養シテ居ル官吏ノ惡
弊ノ根源トナツテ居ルノデアル、斯ウ云フヤ
ウナ狀態ニ於テ〓育ガ本當ノ立法ノ上ニ、
國民ノ本義ノ上ニ始終動イテ行カナイト云
フコトガ、弊害ノ根本ニナルト考ヘマスル點
カラ、愈〓以テ官僚獨善ノ惡弊ヲ根絕シヨ
ウト云フナラバ、之ヲ〓育ノ組織カラ改メテ
來ナケレバナラヌ、制度カラ改メテ來ナケ
レバナラヌガ、一番根本ハ〓育法規ヲ勅令
デナク、立法ニ依ル立法タラシメルト云フ
コトデナケレバ、本當ノ途ハ開カレヌト考
ヘルノデアリマスガ、文相ハ之ニ對シテ如
何ナル考ヲ持ツテ居ラレルノデアリマスカ
(拍手)
第四ニハ皇民〓育ト私ハ申上ゲテ置キタ
イガ、是ハ公デハナイ、皇道、皇國ト言
ハレテ居リマス皇民デス、最近ニ小學校ハ
國民學校ト爲スト云フコトニ、審議會モ答
申ヲ致シタニ違ヒアリマセヌケレドモ、小
學校ヲ改メマスルナラバ、其ノ際ニハ寧ロ
國民學校ト云フヨリモ皇民學校トシテ、皇
道日本ノ精神ノ〓育デアルト云フコトヲハ
ツキリスル方ガ、一層適シテ居ルカトモ考
ヘルノデアリマスガ、其ノ皇民學校トシテ
行クコトニ付テハ、如何ニ御考デアルカト
云フコトト、又ソレハ皇民學校デアリマシ
テモ、國民學校デアリマシテモ何レニシ
テモ〓育ヲ改メヨウト云フコト、充實シヨ
ウト云フコトカラ今進ンデ行ク譯デアリマ
スガ、サウ云フ點カラ見マシタ時ニ、我ガ
日本ノ國民トシテ同胞一家ノ生活ヲ全ウス
ルト云フコトガ中心デアリ、此ノ大君ノ御
前ニ身命ヲ擲ツテ行クト云フ犧牲奉仕ノ精
神忠孝ノ生活ヲ〓養スルコトガ本デアリ
マスルガ、其ノヤウナコトヲ致シマスルニ
ハ、先ヅ總テガ同ジヤウニ育テラレルト云
フコトガ根本デアリマシテ、兄弟トシテ立
チマスルニハ、起居寢〓ヲ共ニスルト云フ
コトニ一番强イ力ガアル、同ジヤウナ服ヲ
著テ居ルト云フコトニ力ガアリマスルカラ、
國民學校ナリ、皇民學校ナリニ改メテ行カ
ウト云フニ付テハ、先ヅ其ノ服制ヲ如何ニ
スルカ、貧富同ジヤウナ著物ヲ著ルコトガ
出來ルヤウニ、服ヲ同ジウスルト云フコト
ニ付テ如何ナル御用意ガアルカ、今ヤ織物
ノ飢饉時代ガ來ルノデアリマスカラ、今日
ニ於テ服制ヲ强要スルト云フコトハ困難デ
アラウト存ジマスルケレドモ、併シナガラ
將來ニ亙ツテノ〓育ノ改善ヲスルト云フナ
ラバ、假令卽時ニ其ノ服ヲ同ジウスルコト
ハ出來ナイデモ、服ヲ同ジウスルト云フ制
服制度ニ付テ、何處マデ考ヘテ居ルカ、又
小學卽チ國民學校ノ幼キ者カラガ寢食ヲ共
ニスルト云フコトニ付テ、如何ナル方法ヲ
考ヘテ居ルカ、又今マデノヤウニ個人競爭、
試驗競爭ノ〓育デハナクシテ、共學協力ヲ
スルト云フコトノ〓育ニ付テ、如何ナル方
法ヲ考ヘテ居ルカ、先程來御話ノアリマシ
タ魂ノ先生ニ依ツテ、魂ノ〓育ヲセンケレ
バナラヌト云フコトデアリマスルガ、是ハ口
ニ言フコトハ甚ダ易イノデアリマスケレド
モ、眞ニ魂ヲ與ヘルト云フコトニ付テ十分ナ
考慮準備ヲ進メテ居ルカ、又其ノ仕事ガ實
業ニ進ム所ノ力デナケレバナラヌコトハ極
メテ明瞭デアリマシテ、七八年生ニ於テハ
業務〓育ヲスルト云フコトニハナツテ居リ
マスルケレドモ、業務ヲスルト云フコトガ
勞働デアル、骨ノ折レルコトデアリ、疲レル
コトデアリ、而シテソレハ儲ケル爲ニヤル
ト云フ、此ノ勞働營利ノ思想ヲ打破シタ所
ノ日本ノ尊キ國業ヲ營マシテ戴クノデアリ、
人類ノ大使命ニ參與スルノデアルト云フ、
サウ云フ業務精神ガ十分ニ養ハレンケレバ
ナラヌモノダト思ヒマスガ、サウ云フヤウ
ナ點ニ於キマシテ、此ノ精神的內容ヲ充實
スルコトニ付テ、明年カラ改善サレル所ノ
國民學校ナリ、皇民〓育ナリニ付テ、實質
的ノ御準備ガ著々ト進ンデ居ルカ、唯僅ニ
制度ヤ形式ダケノ變更ニ止マリ、從來ノ邪路
ヲ相變ラズ辿ツテ行クモノデナイカト云フ
コトノ心配ガ、頗ル深イモノガアリマスルカ
ラ、サウ云フ實質上ノ改善ノ御準備ガドレ
程出來テ居ルカト云フコトヲ御伺ヲスル
ソレヲ御伺スルト同時ニ、皇民〓育デア
リ、日本精神ノ〓育デアリマシタナラバ、
是等ノ兒童ニ外國人ヲシテ其ノ校長タラシ
メ、主任タラシメテ行クヤウナ外國人經營
ノ日本人小學校ト云フモノハ、此ノ際全廢
セラルベキモノデアルト考ヘルノデアリマ
スルガ、之ヲ全廢セラレル御用意ガアリマ
スルカ、兎角貴族ヤ富豪ニ阿リ、外國人ニ
阿ツテ、此ノ當然爲スベキコトガ今マデ出來
ズニ居リマスガ、之ヲ斷行スルダケノ勇氣
ト決意ヲ持ツテ居ラレルカヲ御伺申スノデ
アリマス、是ハ大體皇民〓育ノ實行ニ伴ヒ
マシテ、特ニ御伺申シテ置キタイコトデア
リマス
最後ニ先頃來論議サレマシタ都市ノ〓育
ニ付テ一言ヲ加ヘタイノデアリマスガ、結
局今日ノ立法ニ依リマシテ、農山漁村、貧
弱町村ニ於キマシテハ、ソレガ良クナルト
云フコトデアリマスケレドモ、良クナルト云
フ根本ノ資源ヲ何處ニ盛出シテアルノデア
リマスカ、根本ノ資源ヲ別ニ盛出サズシテ
良クスルト云フコトハ、結局都市ノモノヲ
奪ツテ農村ニ與ヘル、貧弱町村ヘ與ヘルト
云フコトニ過ギナイコトニナリマスガ、ソ
レハ都市ノ進ンダル〓育ヲ破壞シ、低下セ
シメルト云フコトニナルノデアリマスガ、
サウ云フコトデナクシテ、別ニ此ノ法ノ實
施ニ依リマシテ、貧弱町村ガ有利ニナリ、
確實ニナリ、向上スルト云フコトデアリマ
スルナラバ、其ノ條項ト準備トヲ明ニサレ
タイノデアリマス、サウデナイナラバ何ト
言ハレマシテモ都市ノ方ハ其ノ儘デ置イ
テ、サウシテ貧弱町村ダケヲ良クスルト云
フコトハ口頭禪デ、唯胡麻化サレルノデア
リマシテ、決シテ本當ノ實績ハ擧ガラヌト
思フノデアリマス、ソレ以上ノ細カイ問題
ニ付キマシテハ、私ハ委員會ニ於テ論ジタ
イト思ヒマス、尙ホ今日ハ總理ガ御出席ノ
筈デアリマシタガ、御出席ガナイヤウデア
リマスガ、總理ニ求メマスコトハ、如何ニ
現內閣ガ此ノ重大ナル時局ニ於テ〓育ヲ尊
重シテ、將來ノ國家活動ノ根本ヲ培フト云
フ點ニ付テ、斯ク〓〓ノ案ヲ持ツ、斯ク〓〓
ノ熱意ヲ以テヤルト云フコトノ御答ガ願ヒ
タイノデアリマス、殊ニ過日來ノ御答ヲ見
ルト、マダ三民主義ナドニ付テ全ク御認識
ガナイヤウデアリマスカラ、サウ云フ點ヲ
明ニシタ御答ガ願ヒタイノデアリマス、文
相ノ方ハ御出席デアリマスカラ全體ニ關シ
マシテ、十分ナル御答ヲ希フ次第デアリマ
ス(拍手)
〔國務大臣松浦鎭次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=41
-
042・松浦鎭次郎
○國務大臣(松浦鎭次郞君) 只今椎尾君ヨ
リ數點ニ亙ツテ御質疑ガアリマシタ、之二
對シテ御答ヲ申上ゲマス、曩ニ上意ヲ拜シ
テ設ケラレマシタ〓育審議會ニ於テハ、唯
制度ト云フヤウナコトニ付テ色々論議ヲシ
テ居ルガ、此ノ重大ナル時局ニ於テ直チニ
實行シナケレバナラヌヤウナコトニ付テ
ハハ是ハ〓育審議會ノ答申ヲ待ツテヤルト
云フコトデハイカ、ヌノデハナイカ、是ハ文
部省自ラヤラナケレバナラヌノデハナイカ、
斯ウ云フヤウナ御尋デアツタノデアリマス
ガ、〓育審議會ハ必ズシモ長キニ亙ル制度
ノコトバカリデハナクシテ、目下ノ差當ツ
テノ問題ニ付テモ、無論審議ヲ致スコトニ
ナツテ居ルノデアリマス、唯今日マデ主ト
シテ制度或ハ內容ト云フコトニ付テ審議ヲ
シテ居リマシテ、其ノ答申モ既ニ著々ト現
ハレテ居ルノデアリマス、併シナガラ目下
差當リ此ノ時局ニ於テ文部省トシテヤルベ
キコトハ、無論〓育審議會ノ斯ウ云フ制度
파
ナドニ付テノ決議ヲ待タズニ實行スベキモ
ノデアリマス、之ニ付キマシテハ此ノ時局
ニ於キマシテ第一ニ〓育者ノ時局ニ對スル
認識ヲ深メテ此ノ難局ヲ突破スル、サウシ
テ國威ヲ宣揚シ、聖戰ノ目的ヲ貫徹スル爲
二、是ハ國民擧ツテ最善ノ努力ヲシナケレ
バナラヌノデアリマスカラ、〓育者モ此ノ
意味ニ於テ其ノ信念ヲ深クシテ、此ノ聖業
翼贊ノ道ニ當ラネバナラヌト云フ意味ニ於
キマシテ、文部省トシマシテモ常ニ之ガ制
度ノ改正改善ト云フコトニ必ズシモ依ルノ
デハナクシテ、常ニ其ノ精神ヲ以テヤツテ
居ルノデアリマシテ、之ニ對シテ文部省ト
シテハ常ニ最善ノ努力ヲ致シテ居ル次第デ
アリマス、私ガ何ダカ唯現狀維持ノ頭
ヲ持ツテ居ルカラ、到底サウ云フコト
ハ出來ナイダラウト云フヤウナ意味ノ御尋
デアリマシタガ、私ハ決シテ唯現狀維持ト
云フコトヲ以テ能事トシテ居ル者デハア
リマセヌ、必要ニ依ツテ改メナケレバナラ
ヌ點ハ、無論改メナケレバナラヌノデア
リマシテ、此ノ重大時局ニ處シテ參ルノニ
ハ〓育者モ亦大イナル覺悟ヲ持ツテヤラ
ナケレバナラヌコトハ申スマデモハイノデ
アリマス、私モ決シテ其ノ點ニ於テ唯現狀
維持ト云フヤウナ頭ヲ以テ、ヤツテ居ル譯
デハ絕對ニナイノデアリマス
a
ソレカラ精神總動員ノコトニ付テモ御尋
ガアリマシタガ、是ハ所謂官民一致ノ努力
ニ俟タナケレバナラヌノデアリマシテ、精
神總動員ノ機構ノ改善ニ付キマシテハ、目
下色々考究致シテ居ルノデアリマスガ、要
スルニ是ハ唯中央カラ地方ニ向ツテ働キ掛
ケルト云フコトヨリモ-無論ソレモ必要
デアリマスガ、地方自ラノ實踐ト申シマス
カ、下カラ盛リ上ル力ト相俟ツテヤラナケ
レバイカヌノデアリマシテ、サウ云フ意味
ニ於キマシテ、此ノ精神總動員運動ノ刷新
ミ付テハ、目下大イニ考ヘテ居ルノデアリ
マス
ソレカラ此ノ重大時局ニ際シテ國民ヲ率
テ行クノニハ指導精神ハドウデアルカ、
是ハ無論國體ノ本義ヲ體シテ、皇運扶翼ノ
精神ヲ以テ行カナケレバナラヌコトハ勿論
デアルガ、ソレニ付テノ指導精神ハ如何ニ
スルカト云フコトデアリマスガ、是ハ要ス
ルニ一君萬民、皇運扶翼ノ精神ヲ以テ之ルヲ
總テノ行動ニ現ハシ、總テノ場合ニ其ノ精
神デ行クト云フコトヨリ外ニ、別ニ指導精
神ハ私ハアリ得ナイノデハナイカ、ソレガ
詰リ指導精神デアル、國體ノ明徴、國民精
神ノ昂揚、ソレガ卽チ指導精神デアツテ、
ソレ以外ニ指導精神トハ-ドウ云フコト
ヲ意味スルノデアリマスカ、恐ラクハ其ノ
點ハ椎尾君モ其ノ意味デ御尋ニナツテ居ル
ノデアラウト考ヘマス
ソレカラ支那ノ三民主義ニ付テノ御尋モ
アツタノデアリマスガ、是ハ所謂歪曲サレ
ザル三民主義ハ之ヲ認メテモ差支ナイト云
フコトデ、是ハ旣ニ總理大臣カラモ御答辯
ガアリマシタカラ、私ハ此處デ別ニ申シマ
セヌガ、サウ云フ意味ニ御諒解ヲ願ヒタイ
ト存ジマス
ソレカラ〓育ノ制度ヲ勅令ニ依ラズシテ
立法ニ依ルコトニシタラドウデアルカ、從
來〓育ノコトハ總テ勅令デ規定サレテ居ル
ノデアルガ、之ヲ立法ニ依ルコトニスル考
ハナイカ、斯ウ云フ意味ノ御質問デアリマ
シタガ、〓育ニ關スルコトハ明治二十三年
ニ小學校令ガ初メテ設ケラレマシタ時カ
ラ、總テ勅令事項トシテ規定スル、斯ウ云
フコトニ相成ツテ居ルノデアリマシテ、是
ハ今日マデ其ノ傳統ニ依ツテ繼續シテ參ツ
テ居ルノデアリマシテ、私ハ今日之ヲ別ニ
變更スルト云フ考ハ持ツテ居リマセヌ
ソレカラ國民學校ヲ造ルニ付テノ制度ノ
調ハシテ居ルデアラウガ、之ヲ實質的ニ眞
ニ國民學校タラシメル準備ヲシテ居ルノデ
アルカドウカト云フ御話デアリマシタ、是
モ制度ノ準備、內容ノ準備モ無論致シテ居
リマスガ、ソレヲ活カシテ國民學校ノ實質
ヲ良クスル、其ノ所謂實質的ノ準備ニ付キ
マシテハ、是ハ〓員ノ講習、再〓育ト云フ
コトニ付テ、十五年度ノ豫算ニモ御要求ヲ
致シテ置キマシタ、ソレニ依リマシテサウ
云フ方法ニ依ツテ、所謂實質的ノ準備モ致
スコトハ勿論デアリマス
ソレカラ外國人ヲ校長トスル學校ヲ、總
テ廢止スル意思ハナイカト云フ御尋デアリ
マスガ、是ハ元來國民學校ノ如キ基礎〓育
ヲヤル學校ハ、外國人ニヤラセルコトハ出
來ナイト云フコトガ本則ニナツテ居ルノデ
アリマス、是ハ主トシテ外國人ナドヲ〓養
スル學校ニ於テハ、サウ云フコトガ例外ト
シテ認メラレマスケレドモ、國民學校ニ代
ル學校トシテハ、サウ云フモノハ認メナイ
ノデアリマスカラ、是ハ其ノ意味ニ於テ御
諒承ヲ願ヒタイト思ヒマス
ソレカラ今囘小學校〓員ノ俸給ヲ道府縣
費支辨ニ移シマスノハ、〓員ノ俸給ノ不平
均ヲ直ス、比較的疲弊シタ町村ニ在勤スル
者ニモ、相當ナ待遇ヲ致スト云フコトカラ
考ヘテ、道府縣費支辨ニ移シタ方ガ便利デ
アルト申シマシタニ付キマシテ、都市ノ財
源ヲ奮ツテ農村ノ方ヲ好クスルト云フ外ニ
ハナイノデハナイカ、若シ農村ノ〓員ヲ好
クシヨウトスレバ、都市ノ〓員ニ對スル
財源ヲ奮ツテ持ツテ行ク外ハナイノデハ
ナイカ、斯ウ云フ御話デゴザイマシタガ、
サウ云フ意味デハゴザイマセヌ、別ニ都
市ノ〓員ノ俸給ヲ持ツテ行ツテ農村ノ方ニ
移ス、斯ウ云フ意味デハゴザイマセヌガ、
道府縣全體カラ見マシテ、〓員ノ俸給ガ非
常ニ不平均ニナツテ居リマスカラ、ソレヲ
道府縣費支辨ニ移シテ全體ヲ見テヤレバ其
ノ點ガ好クナル、一市町村ノ豫算ニ拘束サ
レテ、其ノ範圍內ニ於テ俸給ヲ支給スルト
云フ場合ニ比ベマスト、非常ニ好クナルト
云フコトヲ申シタノデアリマシテ、道府縣
費支辨ニ移シタガ爲ニ、都市ノ〓員ノ待遇ガ
惡クナルト云フコトハ、絕對ニアリ得ナイノ
デアリマスカラ、此ノ點ハドウゾ御安心ヲ
願ヒタイト思ヒマス、ソレデ特別ノ財源ヲ
考ヘテ居ルカト云フ御話デアリマスガ、是
ハ比較的彈力性ノアル道府縣費ノ支辨ニ致
シマスレバ、卽チサウ云フコトガ自ラ出來
ルノデアリマスカラ、是ガ爲ニ都市ノ金ヲ
持ツテ行ツテ農村ニ移ス、斯ウ云フ意味ヲ
持ツテ居ル譯デハアリマセヌカラ、此ノ點
ハドウゾ御安心ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=42
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043・椎尾辨匡
○椎尾辨匡君 此ノ席カラ····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=43
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044・田子一民
○副議長(田子一民君) 簡單ナラバ自席デ
許シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=44
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045・椎尾辨匡
○椎尾辨匡君 只今ノ御答辯ニ付テハ色々
再質問シタイコトガアリマスガ、ソレハ委
員會ニ讓リマシテ、唯一ツ此處デ申上ゲテ
置キタイコトハ、旣ニ〓育審議會ガ四年ニ
モナリマシテ、重大ナ時局ノ間ニ、時局ニ
對應スルコトヲヤツテ居リマセヌト云フ點
ハ、ヤラレルト云フコトト、ヤラナイト云
フコトトノ食違ヒデアルノデアリマス、ソ
レヲヤラセルナラバヤラセルヤウニ文部大
臣ガ指導セラルルガ宜シイシ、又昨年ノ議
會ニ於キマシテハ、時ノ文相ハ時局ニ對應
スルコトハ文部省ニ於テヤルノデアツテ、
〓育審議會ヲ俟タナイノデアルト云フ答辯
ヲ與ヘテ居ラレルノデアリマスカラ、サウ
云フ意味ニ於テ文部大臣ガモツト積極的
二、時局對應ノ途ヲ講ゼラレルコトデナケ
レバナラヌノデアツテ、ソレヲ唯出來ルト
云フコトノ下ニ解決シナイト云フコトハ、
甚ダ遺憾デアルト思ヒマスガ、サウ云フ意
味ニ於キマシテ、私ハ更ニ徹底スル態度ヲ
御執リニナルコトヲ願フト言フニ止メテ置
キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=45
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046・田子一民
○副議長(田子一民君) 是ニテ質疑ハ終了
致シマシタ、各案ノ寧査ヲ付託スベキ委員
ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=46
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047・服部崎市
○服部崎市君 日程第三及ビ第四ノ兩案ヲ
一括シテ議長指名二十七名ノ委員ニ付託サ
レンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=47
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048・田子一民
○副議長(田子一民君) 服部君ノ動議ニ御
異義アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=48
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049・田子一民
○副議長(田子一民君) 御異議ナシト認メ
Rゞ、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=49
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050・服部崎市
○服部崎市君 殘餘ノ日程ヲ延期シ、本日
ハ之ヲ以テ散會セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=50
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051・田子一民
○副議長(田子一民君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=51
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052・田子一民
○副議長(田子一民君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、次會ノ
議事日程ハ公報ヲ以テ通知致シマス、本日
ハ之ヲ以テ散會致シマス
午後六時二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X01719400227&spkNum=52
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