1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十五年三月五日（火曜日）
午後一時十八分開議
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議事日程 第十九號
昭和十五年三月五日
午後一時開議
質問
一 北海道廳長官の白米卸賣價格指定に關する質問（北勝太郎君提出）
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第一 日本肥料株式會社法案（政府提出） 第一讀會
第二 商業組合法中改正法律案（政府提出） 第一讀會
第三 家畜傳染病豫防法中改正法律案（政府提出、貴族院送付） 第一讀會
第四 軍用電氣通信法中改正法律案（政府提出、貴族院送付） 第一讀會
第五 牧野法中改正法律案（政府提出、貴族院送付） 第一讀會
第六 輸出毛織物取締法案（政府提出、貴族院送付） 第一讀會
第七 船員保險特別會計法案（政府提出） 第一讀會の續（委員長報告）
第八 船員保險事業の經營に伴ふ關係各會計間の分擔及關渉に關する法律案（政府提出） 第一讀會の續（委員長報告）
第九 臺灣事業公債法中改正法律案（政府提出） 第一讀會の續（委員長報告）
第十 臺灣官設鐵道用品資金會計法中改正法律案（政府提出） 第一讀會の續（委員長報告）
第十一 朝鮮事業公債法中改正法律案（政府提出） 第一讀會の續（委員長報告）
第十二 臺灣私設鐵道補助法中改正法律案（政府提出） 第一讀會の續（委員長報告）
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〔左の報告は朗讀を經さるも參照の爲茲に掲載す〕
一政府より提出せられたる議案左の如し
日本肥料株式會社法案
商業組合法中改正法律案
（以上三月四日提出）
一昨四日貴族院より受領したる政府提出案左の如し
家畜傳染病豫防法中改正法律案
軍用電氣通信法中改正法律案
牧野法中改正法律案
輸出毛織物取締法案
一議員より提出せられたる議案左の如し
恩給法中改正法律案
提出者
片山哲君 松本治一郎君
菊地養之輔君
建築士法案
提出者
野村嘉六君 増田義一君
手代木隆吉君 多田滿長君
小柳牧衞君 熊谷直太君
志賀和多利君 岡田忠彦君
全國の湖沼水利開發に關する建議案
提出者
中山福藏君 長野綱良君
（以上三月二日提出）
養鷄飼料對策確立に關する建議案
提出者
立川平君 岡本實太郎君
鷄卵の適正價格制定に關する建議案
提出者
岡本實太郎君 立川平君
支那事變に於ける公用船舶乘組員に從軍記章竝同乘組員にして公傷を被りたる者に傷痍記章及年金給與制制定に關する建議案
提出者
米窪滿亮君 岡崎憲君
（以上三月四日提出）
一去二日米内内閣總理大臣より左の通發令ありたる旨の通牒を受領せり
對滿事務局次長 荒川昌二
第七十五囘帝國議會政府委員被仰付
一去二日議長に於て辭任を許可したる常任委員左の如し
第三部選出豫算委員 冨吉榮二君
第九部選出豫算委員 吉田賢一君
第四部選出懲罰委員 田中邦治君
一去二日議長に於て選定したる委員左の如し
金華山軌道株式會社及朝倉軌道株式會社所屬軌道の經營廢止に對する補償の爲公債發行に關する法律案（政府提出）委員
山田清君 小泉純也君
小山倉之助君 村松久義君
木原七郎君 愛野時一郎君
山田順策君 小平重吉君
羽田武嗣郎君 簡牛凡夫君
本田義成君 名川侃市君
田中好君 伊東岩男君
淺沼稻次郎君 小山亮君
安藤孝三君 行吉角治君
一去二日に於ける特別委員の異動左の如し
會計檢査院法中改正法律案（政府提出）委員
辭任泉國三郎君 補闕星一君
辭任村瀬武男君 補闕長井源君
辭任松井郡治君 補闕則元卯太郎君
辭任眞鍋勝君 補闕福田關次郎君
昭和十五年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債發行に關する法律案（政府提出）外五件委員
辭任原玉重君 補闕長井源君
鑛業法中改正法律案（政府提出）外一件委員
辭任石井徳久次君 補闕川崎巳之太郎君
輸出資金及輸出品製造資金融通損失補償法案（政府提出）委員
辭任武田徳三郎君 補闕岩瀬亮君
所得税法改正法律案（政府提出）外三十件委員
辭任佐竹晴記君 補闕永江一夫君
一昨四日委員長及理事互選の結果左の如し
金華山軌道株式會社及朝倉軌道株式會社所屬軌道の經營廢止に對する補償の爲公債發行に關する法律案（政府提出）委員
委員長 名川侃市君
理事
山田清君 小泉純也君
小平重吉君 田中好君
一昨四日議長に於て辭任を許可したる常任委員左の如し
第四部選出豫算委員 坂本宗太郎君
一昨四日常任委員理事補闕選擧の結果左の如し
請願委員
理事 杉山元治郎君（理事川俣清音君去二十八日委員辭任に付其の補闕）
一昨四日常任委員補闕選擧の結果左の如し
第三部選出
豫算委員 西尾末廣君（冨吉榮二君補闕）
第九部選出
豫算委員 小池四郎君（吉田賢一君補闕）
第四部選出
懲罰委員 卯尾田毅太郎君（田中邦治君補闕）
一昨四日特別委員理事補闕選擧の結果左の如し
會計檢査院法中改正法律案（政府提出）委員
理事 則元卯太郎君（理事松井郡治君去二日委員辭任に付其の補闕）
一昨四日に於ける特別委員の異動左の如し
市町村義務教育費國庫負擔法改正法律案（政府提出）外一件委員
辭任小野廉君 補闕大内竹之助君
所得税法改正法律案（政府提出）外三十件委員
辭任板谷順助君 補闕田中好君
昭和十二年法律第九十號中改正法律案（米穀の應急措置に關する件）（政府提出）委員
辭任國光五郎君 補闕小串清一君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=0
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001・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス、諸君、議員高木条太郞君ハ昨四日逝去
セラレマシタ、洵ニ痛惜哀悼ノ至リニ堪ヘ
マセヌ
此ノ際春名成章君ヨリ發言ヲ求メラレテ
居リマス、之ヲ許シマスー-春名成章君(拍
手)
〔春名成章君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=1
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002・春名成章
○春名成章君 只今議長ヨリ御報〓ニ相成
リマシタ故高木条太郞君ノ御逝去ニ對シマ
シテ、院議ヲ以テ弔詞ヲ贈呈シ、其ノ起草
ハ之ヲ議長ニ一任スルノ動機ヲ提出致シマ
ス(拍手)
此ノ際私ハ僣越ナガラ皆樣ノ御許ヲ得マ
シテ、議員一同ヲ代表シ哀悼ノ意ヲ表シタ
イト存ジマス(拍手)
高木君ハ靜岡縣賀茂郡安良里村ニ慶應二
年十月生レマシタガ、其ノ出生地ノ關係上、
早クヨリ水產業ニ心ヲ注ガレマシテ、靜岡
縣水產會長、帝國水產會副會長、其ノ他水
產業ニ關シマスル重要ナル職ニ御就キニナ
リマシテ、地方竝ニ全國ノ水產業ノ發展ニ
盡瘁セラマシタル、其ノ功績ハ顯著ナルモ
ノガアリマス、又君ハ大正八年靜岡縣縣會
議員ニ當選セラレマシテ以來、四囘續イテ
當選セラレ、縣政ノ功勞者トシテ表彰サレ
マシタコトモアリマスガ、特ニ昭和十一年
〓黨ヨリ選バレテ、本院議員ニ當選セラレ
マシタ、以來請願委員トシテ、或ハ幾多重
要ナル特別委員會ノ委員トシテ、其ノ豐富
ナル水產業ニ對スル知見ヲ發表致サレマシ
タルコトハ、諸君御存知ノ通リデアリマス
斯カル次第デアリマスカラ、今後尙ホ我國
水產業確立ノ爲、或ハ水產行政ノ整備擴充
ノ爲ニ、同君ノ知識經驗ニ俟ツモノ益〓多
キモノアルベキヲ信ジテ居リマシタルニモ
拘ラズ、俄ニ病ヲ得テ急逝サレマシタルコ
トハ、國家ノ爲大ナル損失デアリマシテ、
洵ニ痛惜ノ至リニ堪ヘマセヌ(拍手)玆ニ謹
ミテ哀悼ノ意ヲ表スル次第デアリマス(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=2
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003・小山松壽
○議長(小山松壽君) 春名君提出ノ動議ニ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=3
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004・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ハ可決セラレマシタ-茲ニ
議長ノ手許ニ於テ起草シタル弔詞ヲ朗讀致
シマス
弔詞
衆議院ハ議員高木条太郞君ノ長逝ヲ哀悼
シ恭シク弔詞ヲ呈ス
〔拍手起ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=4
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005・小山松壽
○議長(小山松壽君) 此ノ弔詞ノ贈呈方ハ
議長ニ於テ取計ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=5
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006・服部崎市
○服部崎市君 質問一ハ後〓シトセラレン
コトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=6
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007・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=7
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008・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ質問一ハ後〓シト致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=8
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009・服部崎市
○服部崎市君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此ノ際日程第七乃至第
十二ヲ繰上ゲ一括上程シ、其ノ審議ヲ進メ
ラレンコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=9
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010・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=10
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011・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ日程ノ順序ハ變更セラレマシ
タ-日程第七、船員保險特別會計法案、日
程第八、船員保險事業ノ經營ニ伴フ關係各
會計間ノ分擔及關涉ニ關スル法律案、日程
第九、臺灣事業公債法中改正法律案、日、程
第十、臺灣官設鐵道用品資金會計法中改正
法律案、日程第十一、朝鮮事業公債法中改
正法律案、日程第十二、臺灣私設鐵道補助
法中改正法律案、右六案ヲ一括シテ第一讀
會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求メマ
ス-委員長中野治介君
第七船員保險特別會計法案(政府提
四第一讀會ノ續(委員長報〓)
第八船員保險事業ノ經營ニ伴フ關係
各會計間ノ分擔及關涉ニ關スル法律
案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第九臺灣事業公債法中改正法律案
(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第十臺灣官設鐵道用品資金會計法中
改正法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第十一朝鮮事業公債法中改正法律案
(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
第十二臺灣私設鐵道補助法中改正法
律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報〓書
一船員保險特別會計法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十五年三月二日
委員長中野治介
衆議院議長小山松壽殿
報告書
一船員保險事業ノ經營ニ伴フ關係各會計
間ノ分擔及關涉ニ關スル法律案(政府
提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十五年三月二日
委員長中野治介
衆議院議長小山松壽殿
報告書
一臺灣事業公債法中改正法律案(政府提
出
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十五年三月二日
委員長中野治介
衆議院議長小山松壽殿
報告書
一臺灣官設鐵道用品資金會計法中改正法
律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十五年三月二日
委員長中野治介
衆議院議長小山松壽殿
報〓書
一朝鮮事業公債法中改正法律案(政府提
四
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十五年三月二日
委員長中野治介
衆議院議長小山松壽殿
報告書
一臺灣私設鐵道補助法中改正法律案政
府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十五年三月二日
委員長中野治介
衆議院議長小山松壽殿
〔中野治介君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=11
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012・中野治介
○中野治介君 只今上程セラレマシタ各法
案ニ對スル委員會ノ經過ノ〓要及ビ結果ヲ
御報告申上ゲマス、右法案ノ中デ船員保險
關係ノ二法案ニ付キマシテハ、高木、中川、
田代、一ノ瀨、岡崎、小山各委員ヨリ、ソ
レゾレ熱心ニ有益ナル質疑ガアリマシテ、
且ツ漁船員、小型船舶員等ノ保護向上ニ關ス
ル對策ヲ速ニ講ゼラレタキ旨ノ希望ヲ述ベ
ラレタノデアリマス、其ノ他ノ外地關係ノ
四法案ニ付キマシテハ、沖島、濱地、中野、
田中、前川、眞鍋各委員ヨリ、是亦熱心ニ
有益ナル質疑ト、時局ニ鑑ミ緊要ナル意見
ノ開陳ガアツタノデアリマス、之ニ對スル
政府當局ノ答辯モ、亦懇切丁寧大イニ參考
トナルベキモノモアツタノデアリマスルガ、
其ノ詳細ハ速記錄所載ノ通リデアリマスル
カラ、之ヲ詳述スルコトヲ省略致シマス
右ノ如ク致シマシテ、愼重審議、質疑ヲ
終リ、討論ニ入リマシテ、中川重春君、濱
地文平君、中野寅吉君、前川正一君、岡崎
憲君、小山亮君ヨリ、各〓所屬黨派ヲ代表セ
ラレマシテ、原案贊成ノ意ヲ表セラレテ後、
討論ヲ終リ採決ニ入ツタノデアリマス、總
員起立、滿場一致、孰レモ原案ノ通り可決
致シマシタ、此ノ段御報告申上ゲマス拍
手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=12
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013・小山松壽
○議長(小山松壽君) 六案ノ第二讀會ヲ開
クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=13
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014・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ六案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
タ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=14
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015・服部崎市
○服部崎市君 直チニ六案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=15
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016・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=16
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017・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ六案ノ第二讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
船員保險特別會計法案
第二讀會(確定議)
船員保險事業ノ經營ニ伴フ關係各會計
間ノ分擔及關涉ニ關スル法律案
第二讀會(確定議)
臺灣事業公債法中改正法律案
第二讀會(確定議)
臺灣官設鐵道用品資金會計法中改正法
律案第二讀會(確定議)
朝鮮事業公債法中改正法律案
第二讀會(確定議)
臺灣私設鐵道補助法中改正法律案
第二讀會(確定議)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=17
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018・小山松壽
○議長(小山松壽君) 別ニ御發議モアリマ
セヌ、第三讀會ヲ省略シテ、六案トモ委員
長報告通リ可決確定致シマシタ(拍手)日程
第一、日本肥料株式會社法案ノ第一讀會ヲ
開キマス-島田農林大臣
第日本肥料株式會社法案(政府提
出第一讀會
日本肥料株式會社法案
日本肥料株式會社法
第一條日本肥料株式會社ハ肥料ノ需給
ノ圓滑及價格ノ公正ヲ圖ル爲必要ナル
事業ヲ營ムコトヲ目的トスル株式會社
トス
第二條日本肥料株式會社ノ資本ハ五千
萬圓トス但シ政府ノ認可ヲ受ケ之ヲ增
加スルコトヲ得
第三條日本肥料株式會社ノ株式ハ記名
式トシ政府、公共團體、帝國臣民又ハ
帝國法人ニシテ社員、株主若ハ業務ヲ
執行スル役員ノ半數以上又ハ資本ノ半
額以上若ハ議決權ノ過半數ガ外國人又
ハ外國法人ニ屬セザルモノニ限リ之ヲ
所有スルコトヲ得
勅令ノ定ムル法人ニシテ特ニ政府ノ許
可ヲ受ケタルモノハ前項ノ規定ニ拘ラ
ズ日本肥料株式會社ノ株主ト爲ルコト
ヲ得
第四條政府ハ二千五百萬圓ヲ限リ日本
肥料株式會社ニ出資スベシ
政府所有ノ株式ノ株金拂込ハ其ノ他ノ
株式ノ株金拂込ト之ヲ異ニスルコトヲ
得
第五條日本肥料株式會社ニ非ザルモノ
ハ日本肥料株式會社又ハ之ニ類似ノ名
稱ヲ以テ其ノ商號ト爲スコトヲ得ズ
第六條日本肥料株式會社ニ役員トシテ
理事長副理事長各一人、理事五人以上
及監事三人以上ヲ置ク
理事長ハ日本肥料株式會社ヲ代表シ其
ノ業務ヲ總理ス
副理事長ハ理事長事故アルトキハ其ノ
職務ヲ代理シ理事長缺員ノトキハ其ノ
職務ヲ行フ
副理事長及理事ハ理事長ヲ輔佐シ定款
ノ定ムル所ニ依リ日本肥料株式會社ノ
業務ヲ分掌シ又ハ之ニ參與ス
監事ハ日本肥料株式會社ノ業務ヲ監査
ス
第七條理事長及副理事長ハ政府之ヲ命
ジ其ノ任期ヲ五年トス
理事ハ株主總會ニ於テ選擧シタル候補
者中ヨリ政府之ヲ命ジ其ノ任期ヲ四年
トス
監事ハ株主總會ニ於テ之ヲ選任シ其ノ
任期ヲ三年トス
第八條理事長、副理事長及業務ヲ分掌
スル理事ハ他ノ職務又ハ商業ニ從事ス
ルコトヲ得ズ但シ政府ノ認可ヲ受ケタ
ルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第九條日本肥料株式會社ハ左ノ事業ヲ
營ムモノトス
一肥料ノ買入及販賣
一一肥料ノ輸出、輸入、移出及移入
三肥料ノ製造、肥料製造事業ニ對ス
ル投資其ノ他肥料ノ供給確保上必要
ナル事業
四其ノ他肥料ノ需給ノ圓滑及價格ノ
公正ヲ圖ル爲必要ナル事業
前項ノ肥料ハ硫酸アンモニア、石灰窒
素、過燐酸石灰、カリ塩及命令ヲ以テ
定ムル其ノ他ノ肥料トス
第一項第三號又ハ第四號ニ揭グル事業
ヲ營マントスルトキハ政府ノ認可ヲ受
クベシ
第十條日本肥料株式會社ハ前條ノ肥料
以外ノ肥料ノ配給統制事業ヲ行フ株式
會社ニ對シ政府ノ認可ヲ受ケ投資スル
コトヲ得
第十一條政府第九條ノ肥料ノ供給確保
上必要アリト認ムルトキハ日本肥料株
式會社ニ對シ肥料ノ製造業者ト協議ノ
上其ノ製造工場ノ經營ノ管理ヲ爲スベ
キコトヲ命ズルコトヲ得
第十二條日本肥料株式會社ハ拂込ミタ
ル株金額ノ五倍ヲ限リ肥料債劵ヲ發行
スルコトヲ得肥料債劵ヲ發行スル場合
ニ於テハ商法第三百四十三條ニ定ムル
決議ニ依ルコトヲ要セズ
第十三條肥料債劵ヲ發行セントスル場
合ニ於テハ政府ノ認可ヲ受クベシ
第十四條政府ハ肥料債劵ノ元本ノ償還
及利息ノ支拂ニ付保證スルコトヲ得
第十五條肥料債劵ハ無記名式トス但シ
應募者又ハ所有者ノ請求ニ因リ記名式
ト爲スコトヲ得
第十六條肥料債劵ノ所有者ハ日本肥料
株式會社ノ財產ニ付他ノ債權者ニ先チ
テ自己ノ債權ノ辨濟ヲ受クル權利ヲ有
ス
第十七條日本肥料株式會社ハ每營業年
度ニ準備金トシテ資本ノ缺損ヲ補フ爲
利益金額ノ百分ノ八以上ヲ積立ツベシ
第十八條日本肥料株式會社ハ拂込ミタ
ル株金額ニ對シ勅令ヲ以テ定ムル割合
ヲ超エテ利益ノ配當ヲ爲スコトヲ得ズ
第十九條日本肥料株式會社ハ每營業年
度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金額ガ政
府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタ
ル株金額ニ對シ年百分ノ四ノ割合ニ達
スル迄政府ノ所有スル株式ニ對シ利益
ノ配當ヲ爲スコトヲ要セズ
日本肥料株式會社ノ每營業年度ニ於ケ
ル配當シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ
者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額
ニ對シ年百分ノ四ノ割合ヲ超過スル場
合ニ於テ政府以外ノ者ノ所有スル株式
ニ對シ年百分ノ四ノ割合ヲ超エ利益配
當ヲ爲サントスルトキハ其ノ超過スル
利益金額ハ利益配當ガ總株式ニ付拂込
ミタル株金額ニ對シ均一ノ割合ニ達ス
ル迄政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂
込ミタル株金額及政府ノ所有スル株式
ノ拂込ミタル株金額ニ對シ一ト三トノ
割合ヲ以テ之ヲ配當スベシ
第二十條政府ハ日本肥料株式會社ノ業
務ヲ監督ス
第二十一條日本肥料株式會社借入金ヲ
爲サントスルトキハ政府ノ認可ヲ受ク
ベシ
第二十二條日本肥料株式會社ノ定款ノ
變更、利益金ノ處分、合併及解散ノ決
議ハ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其
ノ效力ヲ生ゼズ
第二十三條日本肥料株式會社ハ每營業
年度ノ事業計畫ヲ定メ政府ノ認可ヲ受
クベシ之ヲ變更セントスルトキ亦同ジ
第二十四條日本肥料株式會社ハ命令ヲ
以テ定ムル場合ヲ除クノ外政府ノ認可
ヲ受ケタル價格ニ依ルニ非ザレバ第九
條ノ肥料ノ買入、販賣、輸出、輸入、
移出又ハ移入ヲ爲スコトヲ得ズ
第二十五條政府必要アリト認ムルトキ
ハ日本肥料株式會社ニ對シ第九條ノ肥
料ノ配給統制上又ハ供給確保上必要ナ
ル事業ヲ行フベキコトヲ命ズルコトヲ
得
政府ハ日本肥料株式會社ニ對シ其ノ業
務及財產ノ狀況ニ關シ報告ヲ爲サシ
メ、檢査ヲ爲シ其ノ他監督上必要ナル
命令又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第二十六條政府ハ日本肥料株式會社監
理官ヲ置キ日本肥料株式會社ノ業務ヲ
監視セシム
日本肥料株式會社監理官ハ何時ニテモ
日本肥料株式會社ノ帳簿書類、金庫其
ノ他ノ物件ヲ檢査スルコトヲ得
日本肥料株式會社監理官必要ト認ムル
トキハ何時ニテモ日本肥料株式會社ニ
命ジ業務ニ關スル諸般ノ計算及狀況ヲ
報告セシムルコトヲ得
日本肥料株式會社監理官ハ株主總會其
ノ他諸般ノ會議ニ出席シ意見ヲ陳述ス
ルコトヲ得
第二十七條政府日本肥料株式會社ノ決
議又ハ役員ノ行爲ガ法令、法令ニ基キ
テ爲ス處分若ハ定款ニ違反シ又ハ公益
ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリト認ムルト
キハ其ノ決議ヲ取消シ又ハ役員ヲ解任
スルコトヲ得
第二十八條重要肥料業統制法第十條第
一項ノ規定ハ日本肥料株式會社ニ付テ
ハ之ヲ適用セズ
第二十九條日本肥料株式會社ハ第九條
ノ肥料ノ價格ノ調整ヲ圖ル爲命令ノ定
ムル所ニ依リ價格平衡資金ヲ設定スベ
シ
前項ノ規定ニ依リ價格平衡資金ニ繰入
レタル金額ハ法人稅法ニ依ル所得、營
業稅法ニ依ル純益及臨時利得稅法ニ依
ル利益ノ計算上之ヲ損金ニ算入ス
第三十條第九條ノ肥料ニシテ主務大臣
ノ指定スルモノノ製造業者及其ノ肥料
ノ取扱ヲ爲ス者ハ命令ノ定ムル所ニ依
リ其ノ製造又ハ取扱ニ係ル肥料ヲ日本
肥料株式會社ニ賣渡スベシ
前項ノ肥料ノ取扱ヲ爲ス者ノ範圍ハ命
令ヲ以テ之ヲ定ム
政府ハ第一項ニ揭グル者ニ對シ其ノ業
務及財產ノ狀況ニ關シ報告ヲ爲サシメ
又ハ帳簿書類其ノ他ノ物件ノ檢査ヲ爲
スコトヲ得
第三十一條第二十五條第一項ノ規定ニ
依ル命令又ハ第二十四條若ハ前條第一
項ノ規定ニ違反シタル者ハ五千圓以下
ノ罰金ニ處ス
第三十二條第三十條第三項ノ規定ニ依
ル報〓ヲ爲サズ又ハ虚僞ノ報告ヲ爲シ
タル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十條第三項ノ規定ニ依ル檢査ヲ拒
ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者亦前項ニ同
ジ
第三十三條法人又ハ人ノ代理人、戶主、
家族、雇人其ノ他ノ從業者ガ其ノ法人
又ハ人ノ業務ニ關シ第三十一條又ハ前
條第一項ノ違反行爲ヲ爲シタルトキハ
其ノ法人又ハ人ハ自己ノ指揮ニ出デザ
ルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ
得ズ
第三十四條第三十一條及第三十二條第
一項ノ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ
理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執
行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產者
ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用
ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力
ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在
ラズ
第三十五條日本肥料株式會社左ノ各號
ノ一ニ該當スルトキハ理事長又ハ理事長
ノ職務ヲ行ヒ若ハ代理スル副理事長ヲ
五千圓以下ノ過料ニ處ス副理事長又ハ
理事ノ分掌業務ニ係ルトキハ副理事長
又ハ理事ヲ過料ニ處スルコト亦同ジ
-本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令
ニ依リ認可ヲ受クベキ場合ニ於テ其
ノ認可ヲ受ケザルトキ
二第九條第一項ノ規定ニ依ラズシテ
業務ヲ營ミタルトキ
三第十二條第一項ノ規定ニ違反シ肥
料債劵ヲ發行シタルトキ
四第二十五條第二項ノ規定ニ依ル命
令又ハ處分ニ違反シタルトキ
日本肥料株式會社ノ理事長、副理事長
又ハ理事第八條ノ規定ニ違反シタルト
キハ千圓以下ノ過料ニ處ス
第三十六條第五條ノ規定ニ違反シタル
者ハ千圓以下ノ過料ニ處ス
附則
第三十七條本法施行ノ期日ハ各規定ニ
付勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十八條日本硫安株式會社及臨時肥
料配給統制法第一條第一項ノ規定ニ依
リ過燐酸石灰ノ配給統制上必要ナル事
業ヲ行フベキコトヲ命ゼラレタル株式
會社(燐酸肥料配給株式會社)ハ命令ノ
定ムル所ニ依リ商法第二一百四十三條ニ
定ムル株主總會ノ決議ヲ以テ日本肥料
株式會社ト爲ルコトヲ得
日本硫安株式會社及燐酸肥料配給株式
會社前項ノ決議ヲ爲シタルトキハ政府
ノ認可ヲ受クベシ
第三十九條前條ノ認可ヲ爲シタルトキ
ハ政府ハ設立委員ヲ命ジ日本硫安株式
會社及燐酸肥料配給株式會社ヲ日本肥
料株式會社ト爲ス爲ニ必要ナル事務ヲ
處理セシム
前項ノ設立委員ノ中少クトモ二人ハ日
本硫安株式會社ノ取締役中ヨリ、少ク
トモ二人ハ燐酸肥料配給株式會社ノ取
締役中ヨリ之ヲ命ズルコトヲ要ス
設立委員ノ任命アリタル後ハ日本硫安
株式會社及燐酸肥料配給株式會社ノ取
締役ハ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ
會社ノ常務ニ屬セザル行爲ヲ爲スコト
ヲ得ズ
第四十條設立委員ハ定款ヲ作成シ政府
ノ認可ヲ受クベシ
第四十一條前條ノ認可アリタルトキハ
設立委員ハ總株式ヨリ日本硫安株式會
社及燐酸肥料配給株式會社ノ株式ニ引
當テラルベキ株式竝ニ政府ニ割當ツベ
キ株式ヲ控除シタル殘餘ノ株式ニ付株
主ヲ募集スベシ
第四十二條株式申込證ニハ商法第百七
十五條第二項第二號及第四號乃至第七
號ニ規定スル事項ノ外定款認可ノ年月
日ヲ記載スベシ
第四十三條設立委員ハ株主ノ募集ヲ終
リタルトキハ株式申込證ヲ政府ニ提出
シ其ノ檢査ヲ受クベシ
第四十四條設立委員ハ前條ノ檢査ヲ受
ケタル後遲滯ナク各新株ニ付第一囘ノ
拂込ヲ爲サシムベシ
第四十五條前條ノ拂込アリタルトキハ
設立委員ハ遲滯ナク創立總會ヲ招集ス
ベシ
第四十六條創立總會ニ於テハ第七條ノ
規定ニ準ジ理事ノ候補者ノ選擧及監事
ノ選任ヲ行フベシ
第四十七條創立總會終結シタルトキハ
設立委員ハ其ノ事務ヲ日本肥料株式會
社理事長ニ引渡スベシ
第四十八條日本肥料株式會社ノ成立ニ
因リ日本硫安株式會社及燐酸肥料配給
株式會社ハ之ニ吸收セラルルモノトシ
日本硫安株式會社及燐酸肥料配給株式
會社ノ權利義務ハ日本肥料株式會社ニ
於テ之ヲ承繼ス
第四十九條前條ノ規定ニ依リ日本硫安
株式會社及燐酸肥料配給株式會社ガ日
本肥料株式會社ト爲リタルトキハ法人
稅法、營業稅法及臨時利得稅法ノ適用
ニ關シテハ日本硫安株式會社及燐酸肥
料配給株式會社ハ之ヲ合併ニ因リテ消
滅シタル法人ト看做シ日本肥料株式會
社ハ之ヲ合併ニ因リテ設立シタル法人
ト看做ス
日本肥料株式會社ガ設立ノ登記ヲ受ク
ルトキハ其ノ拂込株金額中日本硫安株
式會社及燐酸肥料配給株式會社ノ拂込
株金額ニ相當スル部分ニ付テハ登錄稅
ヲ課セズ
第五十條第三十八條乃至前條ニ規定ス
ルモノヲ除クノ外日本硫安株式會社及
燐酸肥料配給株式會社ガ日本肥料株式
會社ト爲ル場合ニ於テ必要ナル事項ハ
勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十一條第三十八條第一項ノ決議ナ
キ場合又ハ其ノ決議ガ效力ヲ生ゼザル
場合ニ於テ日本肥料株式會社ノ設立ニ
關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定
△
第五十二條第五條ノ規定施行ノ際現ニ
日本肥料株式會社又ハ之ニ類似ノ名稱
ヲ以テ商號ト爲ス會社ハ同條ノ規定施
行後六月以内ニ其ノ商號ヲ變更スルコ
トヲ要ス
第五條ノ規定ハ前項ノ期間内同項ニ揭
グル者ニ之ヲ適用セズ
第五十三條登錄稅法第六條第一項第十
一號中「硫安債劵」ヲ「肥料債劵」ニ改ム
第五十四條硫酸アンモニア增產及配給
統制法中左ノ通改正ス
第六條ヲ削リ第七條ヲ第六條トス
第八條ヲ第七條トシ同條第二項中「日
本硫安株式會社」ヲ「日本肥料株式會
社」ニ改ム
第九條乃至第三十七條ヲ削ル
第三十八條ヲ第八條トシ同條中第
八條」ヲ「前條」ニ改ム
第三十九條ヲ削ル
第四十條ヲ第九條トシ同條中「本法
若ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之
ニ基キテ爲ス處分ニ違反シタルト
キ」ヲ「前條ノ違反行爲ヲ爲シタルト
キ」二段、
第四十一條ヲ第十條トシ同條中「本
法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依
リ適用スベキ罰則」ヲ「第八條ノ罰
則二六人
第四十二條乃至第四十四條ヲ削ル
第五十五條前條ノ規定施行前硫酸アン
モニア增產及配給統制法ノ罰則ヲ適用
スベキ行爲アリタルトキハ同條ノ規定
施行後ト雖モ仍其ノ罰則ヲ適用ス
〔國務大臣島田俊雄君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=18
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019・島田俊雄
○國務大臣(島田俊雄君) 只今議題トナリ
マシタ日本肥料株式會社法案ニ付キマシテ、
提案ノ理由ヲ御說明申上ゲマス、政府ハ肥
料ノ重要性ニ鑑ミマシテ、其ノ需給ノ圓滑
及ビ價格ノ公正ヲ圖リマス爲、從來各般ノ
施設ヲ講ジテ參ツテ居リマスガ、特ニ支那
事變勃發以來、是ガ供給ノ確保ト配給ノ圓
滑トヲ圖リマスコトガ一層緊要トナリマシ
タ爲、臨時肥料配給統制法、竝ニ硫酸「アン
モニア」增產及ビ配給統制法ノ制定、肥料配
給割當制度ノ實施、其ノ他諸般ノ施設ヲ致
シテ、是ガ對策ヲ講ジテ參ツタノデアリマ
ス、然ル所、現在重要肥料ノ配給ハ、硫酸
「アンモニア」ニ付キマシテハ日本硫安株式
會社、過燐酸石灰ニ付キマシテハ燐酸肥料配
給株式會社、其ノ他石灰窒素等ニ付キマシ
テハ、又別個ノ中樞配給機關ガアリマシテ、
是等ノ手ニ依ツテ、各別ノ系統ニ依リ行ツ
テ居ルノデアリマスガ、此ノ際各種肥料ノ
配給ヲ綜合致シマシテ、一元的ニ、且ツ最モ
計畫的、能率的ニ、之ヲ行フ必要アリト認
メ、卽チ窒素、燐酸及ビ加里ノ調和アル施
用ニ遺憾ナカラシムル爲、現在ノ配給中樞
機關ヲ統合シテ、更ニ强力ナルモノト爲ス
コトヲ致シタノデアリマス
又現下ノ肥料事情ニ鑑ミマスル時ハ、肥
料ノ需給ノ圓滑ヲ圖リマス爲、配給ノ統制
ヲ致シマス外、更ニ根本ノ問題タル肥料ノ
供給確保ノ爲ノ施設ヲ要スルノデアリマシ
テ、是ガ爲强力ナル機關ニ於テ、肥料ノ製
造肥料製造工場ノ經營ノ管理、肥料製造
事業等ニ對スル投資、其ノ他肥料ノ供給確
保上、必要ナル施設ヲ爲シ得ルコトト致ス
コトヲ必要トシテ居ルノデアリマス
以上ノ如キ理由カラ、玆ニ現ニ存スル肥
料ニ關スル中樞機關ヲ統合致シマスト共ニ
政府モ之ニ出資ヲ致シマシテ、日本肥料株
式會社ヲ設立シ、重要肥料ノ一手買取、販
賣及ビ更ニ進ンデハ、自ラ製造シタルモ
ノノ販賣ヲモ爲スノ計畫ノ下ニ、各種肥料
ヲ通ズル供給確保ノ施設及ビ配給統制事業
ヲ爲サシメマシテ、以テ肥料ノ需給ノ圓滑
ト價格ノ公正トヲ圖ラントシ、玆ニ本法案
ヲ提出致シタ次第デアリマス、何卒御審議
ノ上速ニ御協賛ヲ與ヘラレンコトヲ希望致
シマス(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=19
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020・小山松壽
○議長(小山松壽君) 質疑ノ通告ガアリマ
ス、順次之ヲ許シマス-長野長廣君
〔長野長廣君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=20
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021・長野長廣
○長野長廣君 私ハ日本肥料株式會社法案
ニ付島田農林大臣竝ニ拓務大臣、商工大臣、
遞信大臣ノ御答辯ヲ求メタイト存ジマス、
我國ノ農業經營ハ、良質ニシテ低廉且ツ豐
富ニ肥料ヲ供給スルコトニ依ツテ、其ノ收
穫ヲ增大シ、又收益ヲ高メ、而シテ報酬漸
減ノ法則ヲ相當程度ニ遠ザケ得ルモノデア
ルト考ヘルノデアリマス、殊ニ現下農村ニ
於ケル勞力不足ノ爲ニ憂慮セラレテ居ル生
產減退ノ如キ問題モ、若シ肥料ノ供給ニシ
テ完璧ヲ期シ得ラレマスナラバ、容易ニ相
當程度ニ之ヲ解決スルコトガ出來得ルモノ
ト考ヘルノデゴザイマス、此ノ意味ニ於キ
マシテ、肥料ハ我國農業經營諸要素ノ中デ
嶄然タル地位ヲ占メテ居ル、此ノ優位ナル
地步ヲ占メテ居リマス肥料ニ對スル政策コ
ソ、洵ニ我ガ日本農業ノ振否ニ係ル重要問
題デアルト考ヘルノデアリマス、然ルニ政
府ハ本問題解決ノ爲日本肥料株式會社法案
ヲ玆ニ提出セラレタノデアリマスルガ、之
ヲ以テ我ガ農民ハ安心スルコトハ出來ナイ、
肥料ニ關スル幾多ノ重要問題ハ農民ノ眼
前ニ展開ヲシテ、而シテ農民ヲバ生產不安
ニ陷レツツアルカノ感ガアルノデアリマス、
私ハ是等ノ實情ニ鑑ミマシテ、數項ニ亙ツ
テ質問致シタイト存ズルノデアリマス
第一ニ、政府ハ肥料ノ配給ヲバ、米麥ヲ
中心トスル所ノ重心主義ニ依ツテ爲サント
シテ居ルノデアリマス、私ハ之ニ加フルニ
地域的生產配給ノ計畫ヲ立テテ、國土計畫
ノ上ニ完璧ヲ期セナケレバナラヌト考ヘル
ノデアリマス、若シ夫レ重點主義ニ依リマ
シテ、肥料ガ一タビ農民ノ手ニ入リマスル
ヤ、農民ハ先ヅ農業ノ本質ニ基キマシテ、
作付ノ時ニ從ヒ、早ク仕付ケルモノカラ順
次ニ其ノ肥料ヲ施スコトニ相成ルノデアリ
やく、米麥ニ重心點ヲ置クモ、先ヅ一番ニ
作付シナケレバナラヌノハ東北ニ於テ麥、
中部地方以西ニ於キマシテハ桑デアルノデ
アリマス、果樹、蔬菜等之ニ次ギ、サウシ
テ稻ニ對スル所ノ肥料ハ、最後ニ施用セラ
レルコトトナツテシマフ、後ニナルカラ當
然稻ノ作付ニハ、肥料ノ不足ヲ招來ヲ致ス
ノデゴザイマス、是ニ於テ政府ト致シマシ
テハ、若シ肥料ノ此ノ統制ノ完璧ヲ期セン
ニハ、須ク農村ノ中ニ一ツノ機構ヲ設ケテ、
所謂肥料ノ配給ト、配給セラレタル肥料ヲ
使フ其ノ狀態ニ向ツテ正シキ觀察ヲ爲シ、
之ヲ指導シ、之ヲ監督締制スル所ノ新機構
ヲ作ラナケレバ今日ノ儘デハ到底重點主義
ノ肥料配給ノ目的ヲ達スルコトハ出來ナイ
ノデアリマス、農林大臣ハ此ノ農村機構ノ
確立ニ付テ、何等カノ御計畫ガアルノデア
リマセウカ、更ニ國家ノ大局ヨリ眺メマス
ルト、米麥ノ如キ食糧作物ハ、勿論最モ大
切ナモノデアリマスルケレドモ、之ニ加フルニ
外貨ノ獲得ヲ爲スニ必要ナル所ノ貿易作
物卽チ桑トカ或ハ果樹、蔬菜ノ如キモノ
三や、相當ノ肥料ヲ供給ヲ致サナケレバナ
ラナイノデアリマス、故ニ私ハ此ノ肥料配
給ノ問題ニ付キマシテハ、須ク地域的ニ考
ヘナクテハナラナイノデアル、桑作ノ多イ
地方ハ桑ヲ基調トシ、稻作ノ多イ地方ハ稻
ヲ基調トシ、果樹、蔬菜ノ多キ地方ハ、其ノ
園藝作物ヲ中心ニ考ヘナケレバナラヌト存
ズルノデアリマス、況ヤ我國ハ南ハ臺灣ヨ
リ北ハ樺太ニ至ルマデ、蜿蜒長蛇ノ如ク相
成ツテ居リマシテ、其ノ地方々々ニ依ツテ
土地ノ利用率ガ違フノデアル、東北、北海
道等ハ年ニ一二囘、西南地方ニ參リマスト、
同ジ土地ヲ年ニ四囘、五囘、或ハ六囘ト耕
シテ居ルノデアル、一反ノ田地ガ延反別ニ
シテ五反六反ニ使ハレル、此ノ高度ナル土
地利用ノ實體ヨリ致シマシテ、肥料ノ配給、
土地利用率ニ向ツテ、十分ナル檢討ヲ遂ゲ
タ上ニ於テ、地域的ニ決メナケレバナラヌ
ト思フノデアリマス、然ルニ現在農林當局
ノ行ハレテ居ル狀態ヲ眺メテ見マスト、是
等ノ地域的ノ實體ニ對シテ、頗ル見當ガ違
ツテ居ル、役所ノ窓カラ眺メマシテモ、到
底農民ノ要求ヲ摑ムコトハ出來ヌノデアリ
ひと、爲ニ西部或ハ中部地方ノ農民ハ、肥
料ノ供給甚少ナルコトニ向ツテ、非常ナル
不安ヲ來シテ居ル、生產不安ヨリシテ今日
ノ農民ハ脅カサレテ居ルノデアリマス、農
林大臣ハ此ノ實情ニ立脚致シマシテ、單十二
米麥中心ノ重心主義ヲ是正シテ、之ニ加フ
ルニ地域的配給ノ計畫ヲ立テル必要ガアリ
ハシナイカ、農相ノ御見解ヲ率直ニ御發表
願ヒタイノデアリマス
更ニ第二ニ現今肥料ノ不足ハ排作反別ヲ
減少シ、竝ニ小作爭議ヲ誘發シツツアルカ
ノ嫌ヒガアリマス、又將來相當憂慮スベキ
狀態デアルト共ニ、生產不安ニ陷リツツア
ル、凡ソ國民ノ不安ハ生活不安-生活不
安ト云フコトハ從來唱ヘラレマシタガ、生
產不安ト云フコト程、又吾々ガ深刻ニ考ヘ
ナケレバナラヌコトハナイノデアル、肥料
ガナイカラ田畑ヲ十分ニ耕スコトガ出來ナ
イ、現ニ私ハ最モ純粹ノ農山村ト認ムベキ
二郡ノ地帶ニ於キマシテ、三十二箇町村ヲ
精密ナル調査ヲ爲シタルモノヲ持ツテ居ル
ノデアリマス、之ニ依リマスルト實ニ三十
二箇町村ニ於テ田畑ガ山トナツタモノ、卽
チ木ヲ植付ケルニ至ツタモノガ五十七町
步、小作人ガ到底耕作ニ堪ヘ得ズシテ、地
主ニ返還シタモノガ二百九十三町步ト相成
ツテ居ルノデアリマス、此ノ現象ハ大小ノ
差コソアレ、全國農村ニ展開シツツアル所
ノ憂フベキ事實デアルノデアリマス、是一
於テ吾々愼重ニ考慮スベキ點ハ、此ノ勞力
不足ノ爲ニ起ツテ來ル所ノ生產ノ減退、耕
作ノ減退、肥料及ビ飼料等ノ供給不足ニ依
ツテ來ル此ノ耕作ノ減退、此ノ陰慘ナル農
村問題ヲ農政上ニ於テ何カラ一番手ヲ著ケ
タナラバ宜イカト云フ問題デアルノデアリ
やく、私ハ之ニ向ツテ肥料ノ增給ニアリト
斷言ヲ致シタイトノデアリマス、是ハアト
ヨリ漸次申上ゲルコトト致シマスルケレド
モ、兎モ角肥料ノ增給策コソ、高度ニ發展
セル我ガ日本ノ農業振興ノ上ニ於ケル、最
重要ノ政策デアルト考へル、是ニ於テ私ハ窒
素肥料ノ供給ニ向ツテ大イニ力ヲ加ヘナケ
レバナラヌト云フコトヲ主張シタイ、殊ニ
我ガ日本ノ土地ハ、世界ニ於テ最モ窒素肥
料ヲ要求致シテ居ルノデアリマシテ、一町
步ノ土地ニ對シテ十九瓩餘ヲ要シテ居ルノ
デアル、然ルニ英國、米國ノ如キハ其ノ九
分ノ一、アノ丁抹デサヘ此ノ五分ノ二ニ過
ギナイノデゴザイマス、斯樣ニ世界ニ於テ
最モ窒素肥料ヲ要求スル國土ナルニ拘ラ
ズ、此ノ窒素肥料ノ供給ト云フモノガ、甚
ダ遺憾ノ狀態ニアツタノデアリマス、然ル
ニ本年ニ於テハ稻ニ於テモ昨年ノ八割、
般ノ作物ニ於テモ五割六分ト云フ風ニ減少
シテ居ルノデアリマス、ココデ私共特ニ考
ヘナクテハナラナイコトハ、此ノ肥料不足
ハ農民ニ對シテ生產不安ヲ與ヘル、生產不
安ヲ與ヘラレタ農民ハ、例ヘバ五反ノ土地
ヲ耕スニシテモ、四反步ニ米ヲ作リ、アトノ
一反步ハ極メテ粗放ナル作物ヲ作ルカ、場
合ニ依ツタナラバ休閑地トナシ、之ニ草ヲ生
ヤスト云フコトニナツテ來ルノデアル、サ
ウシテ其ノ粗放乃至休閑セラレタル土地ノ
收穫ガ、減退乃至皆無トナリマスカラ、大ハ
以テ我國ノ農產ノ減收ト相成リマスルシ、
小ハ以テ小作人ノ土地ガ地主ニ返還ヲ
サレルト云フヤウナ、所謂小作爭議ノ
發端ヲ玆ニ生ンデ來ルノデアリマス、
農林大臣ハ今後ニ於テ現ハレテ來ルベキ
是等ノ農民ノ生產不安問題、小作問題
ノ如キ社會問題ニ對スル政策ニ付テ、御〓
究ニナリ、御計畫ニ相成ツテ居ルノデゴザ
イマスルカ、之ニ付テ御說明ヲ戴キタイノ
デアリマス
第三ニ肥料ノ生產、輸入ニ付テ、的確ナ
ル政策ヲ從來誤ツテ居ツタ、爲ニ化學肥料
及ビ有機肥料ノ缺乏ヲ來シタト認メラレル
ノデアリマス、政府ハ是等ノ問題ニ付テ如
何ナル見解ヲ有セラレルカ、幾多ノ疑問ヲ
私ハ持ツテ居ルノデアリマス、抑化學肥
料ノ中デ硫安ノ減產ハ、直チニ桑ニ大ナル
打擊ヲ與ヘマス、隨テ養蠶業ノ衰退ヲ來ス
ノデアリマス、硫酸「アンモニヤ」ハ畑ノミ
ナラズ、田ニ最モ適スルモノデアリマス、
政府ノ輸入計畫ヲ致シテ居リマスル智利硝
石ハ、水田ニ不適當デアル、畑地ニ專門ニ
施サナケレバナラヌノデアリマス、故ニ田
畑ヲ多數ニ持ツテ居リマス所謂六百万町步、
之ニ朝鮮、滿洲等ノ大陸ノ農業經營ト關聯
ヲシテ考ヘマスルト、窒素肥料ノ增產、特
ニ硫安ノ增產ト云フコトニ、絕大ナル要求
ヲ持ツテ居ルノデアリマス、是ニ於テ私ハ
先ヅ農林大臣竝ニ遞信大臣ニ御尋申上ゲタ
イト思ヒマスルコトハ、硫酸「アンモニヤ」
ノ增產ヲ爲ス爲ニ、電力及ビ石炭ノ不足ヲ
償フベキ如何ナル努力ヲセラレタノデアル
カ、是ガ第一デアリマス、第二ニ拓務大臣
ニ御尋申上ゲタイト思フコトハ、朝鮮ニ於
ケル鴨綠江ノ水力、或ハ滿洲ニ於ケル所ノ
幾多ノ「ダム」ヲ活用スル所ノ、此ノ水力電氣
ニ基ク所ノ大窒素工業ト云フコトノ御考ヲ
持ツテ居ラレルノデアルカ、苟モ大陸發展
ノ大方針ヲ持ツテ居ル我ガ日本ノ農業經營、
農業問題ヲ考ヘル時ニ於キマシテ、私ハ特
ニ此ノ大電力ノ活用ニ十分ノ力ヲ注ガナケ
レバナラヌコトヲ痛感スルノデゴザイマス、
殊ニ又內ニ於キマシテモ、遞信當局ノ執ラ
レテ居リマスル所ノ電力政策ノ中ニ、相當ニ
是正ヲ要スルモノガアリハシナイカ、卽チ
從來縣營ヲ以テ電氣ヲ起シテ居リマシタ諸
縣ノ如キハ、〓シテ電力ガ豐富デアル、是
ハ單ニ現在ノ制度ニ依ルノミデナク、發電
事業ニ經驗アル縣ヲシテ、モウ少シ積極的
ニ開發ヲ爲サシメタナラバ、相當ノ硫安或
ハ石灰窒素用ノ電力ヲ供給スルコトガ出來
ルト思フノデアル、遞信大臣ハ申スマデモ
ナク、農林大臣ハ國務大臣トシテ、此ノ水
力電氣ノ供給ニ付、國內ノ水力電氣資源
開發ニ付テ、縣ヲ大イニ活動セシムルノ御
意圖ハナイノデアルカ、斯ノ如ク致シマシ
テ水力電氣ニ基ク所ノ窒素肥料ノ大供給ヲ
爲スコトハ現下ノ急務デアルト存ズルノデ
アリマス、更ニ私ノ最近ノ調査ニ依リマス
ト硫安ヲ製造致シテ居ル所ノ某大肥料會
社ノ如キハ、本年一月ニ至ツテ最大ノ減產
ヲ致シテ居ルコトヲ知リ得テ居ルノデアリ
マス、是等ニ對シマシテ農林當局ハ、其ノ
直接當局ト連絡ヲ取ラレテ、如何ニ此ノ缺
陷ノ是正ニ努メラレル積リデアルカ、之ヲ
伺ヒタイノデアリマス
更ニ第四トシテ、私ハ農林大臣ノ特ニ明
確ナル御答辯ヲ求ムルノデゴザイマスガ、
今後ノ農業政策ハ、單ニ我ガ國內ノミニ於
テスル所ノ農業ト云フコトニ泥ンデ居ツタ
ノデハ駄目デアルト思フ、或ハ北支、中支
ニ於ケル所ノ棉花、滿洲ニ於ケル所ノ〓
糧或ハ工業用ノ作物ノ大增產モ考ヘナケ
レバナラヌノデアリマス、故ニ肥料ノ配給
ト云フガ如キコトノミヲ考ヘナイデ、進ン
デ肥料ノ十分ナル生產ニ力ヲ入レル、配給
ヨリ進ンデ生產、增產ヲスル、肥料ノ增產ト
云フコトニ十分考ヲ及ボサナケレバナラヌ
ノデアルガ、之ニ付テハ現在ノ私營ノ肥料
會社ノミニ賴ルト云フコトハイケナイ、宜
シク國ハ進ンデ國營ヲ以テ肥料ノ供給ヲ爲
ス必要ガアルト思フノデアリマス、米、鹽ノ人
生ニ於ケル關係ハ、恰モ肥料ノ農業經營ニ於
ケル關係ニ一致スルノデアリマス、而シテ此ノ鹽
ノ專賣ガ非常ニ低廉ニ、平均シタル値段デ以
テ、國民生活ヲ安固ナラシメテ居ルコトハ、
申上ゲルマデモナイコトデゴザイマスルガ、
肥料モ亦同樣ニ出來ル限リ生產費ヲ低メテ、
安クテ良質ナルモノヲ豐富ニ、而モ値段ニ
波ヲ打タセナイデ、安ンジテ農民ニ使ハセル
コトニシナケレバナラヌ、而モ之ヲ十分豐
富ニシナケレバナラヌ、之ニハ是非トモ國
家ノ力ヲ發動スル必要ガアルト思フノデア
ル、卽チ肥料ノ國營デアリマス、肥料ノ國
營ヲ基調トスル所ノ專賣制度ノ實現デアリ
マス、今囘ノ日本肥料株式會社ナルモノハ、
此ノ國營ヘ上ルベキ所ノ一段階トシテ私ハ
認メタイノデアル、須ク政府ハ此ノ最モ徹
底セル肥料ノ國營問題ニ〓究ヲ進メラレ、
是ガ實現ニ向ツテ手ヲ著ケラレル必要ガア
ルト思フノデアル、而モ是ハ非常ニ急速ヲ
要スルノデアル、農林大臣ノ御覺悟ハ如何
デアルカ、之ヲ承リタイノデアリマス
更ニ第五ニハ、我國ノ農業ハ技術的ニ非
常ニ進ンデ居ル、而モ肥料ノ經營要素トシ
テノ威力ノ强イコトハ、旣ニ申上ゲタ如ク
デアリマス、然ルニ農林省ノ肥料政策ヲ眺
メテ見マスルト、之ヲ遠慮ナク申上ゲルナ
ラバ、封建主義的色彩ニナリハシナイカ、進
步主義的色彩ニ於テ缺クル所ガアリハシナ
イカト云フコトヲ痛感スルノデアリマス、
ソレハ肥料ノ不足ニ對スル對策ト致シマシ
テ、現在農林大臣ハ自給肥料ノ供給ニ力ヲ
入レラレテ居ル、然ルニ此ノ自給肥料ハ、
緣肥ニシテモ、堆肥ニシテモ、爾餘ノ各種
ノモノニ致シマシテモ、何レモ勞力ヲ多ク要
スル、所謂勞力ノ變化シタルモノ、自給肥
料ナリト申サナケレバナラヌノデアリマス、
然ルニ今日農村ノ勞力ハ減退ヲ致シマシテ、
到ル處ニ田地ガ荒廢シツツアルコトハ、前
ニ申上ゲタ如クデアル、此ノ意味カラ考ヘ
マシテ、私ハ農林當局トセラレテハ、固ヨ
リ自給肥料ハ必要デアリマス、大ニ力ヲ入
レルガ、更ニ進ンデ合理的ナル配合肥料ノ
基礎タルベキ所ノ、化學肥料及ビ有機肥料
ノ大增產ヲスル必要ガアルト思フガ、斯ル
御意思ハナイカ
最後ニ私ハ商工大臣竝ニ農林大臣ニ御尋申
上ゲタイト思フノデアリマス、農林大臣ハ
施政演說ニ對スル高田議員ノ御質問ニ對シ
マシテ、卽チ米ノ價格ノ問題ニ付キマシテ
米ノ價格ハ需給關係ヲ基調トシテ決定スベ
キモノデアルカノ如ク、詰リ需給關係ノミ
カラ米價問題ニ對スル御見解ヲ述ベラレテ
居ルノデアリマス、是ハ苟クモ農村ノ爲ニ
而モ今日ノ如キ經濟狀態下ニアル農村ノ爲
ニ起タレテ居ル農林大臣トシテハ、實ニ遺
憾ナ御答辯デアツタ、凡ソ農產物ノ價格ナ
ルモノハ、需給ノミデ決定スルモノデハア
リマセヌ、詰リ生產費ヲ十分ニ考ヘナケレ
バナラヌノデアル、殊ニ生產條件ノ中デモ
土地デアル、此ノ土地ト云フモノニ付テ、
十分ナル檢討ヲ致ス必要ガアル、今ヤ都市
ノ發展、工業ノ發展ニ伴ヒマシテ、都會ニ近
イ所ノ最モ優位ニアル土地ト云フモノハ、
片ツ端カラ潰レテ行ツテ居ルノデアリマス、
故ニ政府ハ或ハ干拓ニ依リ、或ハ開墾ニ依
リマシテ、田地田畑ヲ盛ニ殖ヤシ、開拓ヲシ
テ居ルノデアル、田畑ノ開拓ハ當然比較的
不便デアリ、土地ノ質モ劣ツテ居ル所ヲ、
漸次ニ開拓スルコトニ相成ルノデアル、而
モ農產物價格決定ノ根本原理ハ、惡質ノ土
地ヲ耕セバ耕ス程、ソレダケ其ノ價格ハ騰
貴スルノデアリマス、農產物價格決定ノ根
本法則ハ、地味ノ劣惡ナルモノ程其ノ生產
物ノ價格ガ高イ、斯ウ申上ゲルコトガ出來ル
ト思フノデアリマス、隨テ今日ノ如ク開墾
政策ガ漸次ニ普及實現セラレテ行クコトニ
伴ツテ、當然米ヲ初メトシテノ農產物ノ價
格ハ、上ラナケレバナラヌ傾向ヲ持ツテ居
ルノデアリマス、況ヤ今日ニ於キマシテハ、
農業ニ對スル各種資材ノ價格ガ上ツテ居ル、
又供給ガ少クシテ、土地ノ生產條件ハ益、ゝ
劣惡化シテ行クノデアリマスカラ、玆ニ農產
物ノ價格ト云フ問題ニ付テハ、深刻ニ需給
關係以外ニ思ヲ及ボサナケレバナラヌノデ
アル、然ルニ農林大臣ノ先日ノ御答辯ノ中
ニ於テ、此ノ問題ニ言及セラレナカツタト
云フコトハ、或ハ之ヲ閑却シテ居ラレハシ
ナイカトマデ、吾々ヲシテ疑ハシメザルヲ
得ナイ狀況ニアツタノデゴザイマス、殊
ニ最近ニ於キマシテハ、商工大臣ノ御所
管ニ於テ、農產物ガ決定ヲセラレツツアル
ノデアリマス、是ニ於テ商工大臣ヨリモ此
ノ點ニ付テ、十分納得ノ行クヤウナ御答辯
ヲ願ハナケレバナラヌト思フノデアル、卽チ
耕地ガ益〓、劣惡ナルモノニ擴ガツテ行ク、又
各種農業資材ノ供給ガ不圓滑デアツテ、農
民ヲシテ殆ド嗟嘆セシメツツアル、而モ
其ノ價格ハ高イ、闇取引ガ橫行スル、斯ク
シテ極メテ零碎ノ利得ヲ狙ツテ居ル我ガ日
本ノ農業ガ立行キマスカ、須ク是等ノ情勢
ニ伴ウテ、農產物ノ價格ヲ合理的ニ引上ゲ
ルト云フコトサヘ必要ナノデゴザイマスガ、
更ニ一步退イテ考ヘマスルニ、今日國民生
活ノ困窮困難ト云フコトヲ考ヘマスルナラ
バ、農產物ノ價格ヲ引上ゲルト云フコトハ
大問題デアル、是ニ於テ此ノ趨勢ニ對處ス
ベク、農產物ノ價格ヲ引上ゲタト同樣ノ效果
ヲ收メルヤウニシテ、農民ヲシテ安心シテ
有利ニ農業ノ營メルヤウニ、農林大臣及ビ
商工大臣ノシツカリシタ政策ヲ立テラレル
必要ガ起ツテ來ルノデアリマス一ハ卽チ
農業生產ニ於ケル諸條件ニ對シテ、農林大
臣及ビ商工大臣ハ、如何ナル具體的政策ヲ
持ツテ居ルノデアルカ、他ハ以テ更ニ進ン
デ兩大臣ハ、農產物ノ價格ヲ決定スル上ニ
於テ如何ナル基礎條件ニ依ツテ決定シテ來
タノデアルカ、過去ニ於テ若シ誤レル點ガ
アルナラバ、將來ニ於テハ斯ク〓〓ノ條件
ニ基イテ農產物ノ價格ヲ決定スルモノデア
ルト云フコトヲ、玆ニ直截簡明ニ御答ニナ
リマシテ、全國三千万農民ヲシテ、否國民
全體ヲシテ安心セシメ得ルヤウナ御政策ノ
御發表ヲ願ヒタイノデアリマス
最後ニ私ハ凡ソ我ガ日本ノ國程、精神的
又物質的ニ惠マレテ居ル國ハアリマセヌガ、
此ノ惠マレタル物心兩面ノ其ノ淵源ハ、申
スマデモナク、農山漁村地帶デアルノデア
リマス、故ニ農本主義、農業ヲ根本トシテ
有ユル政治ヲ考ヘルコトガ大切デアル、是
ニ於テ農林大臣ハ國務大臣中ニ於キマシテ
モ、特ニ其ノ點ニ御考ヲ置カレマシテ、恐
ラク著々種々ノ計畫ヲ御立テニナツテ居ラ
レルコトトハ存ジマスケレドモ、此ノ物質的
方面、精神的方面ニ於テ農村ヲ如何ニ發展
セシムベク御考ニナツテ居ルカ、及ビ是カ
ラ我國農村社會ヲ堅實ニ發展セシムル上ニ
於テ、農本主義ノ政治ヲ立テテ、愈〓高調セ
ラレ、力說セラレ、國務大臣全體ヲ引具シ
テ行ク位ノ慨ヲ以テオヤリニナル御考ガア
ルカ、農林大臣ノ御決心ノ程ヲ此ノ機會ニ
於テ御發表願ヒタイノデアリマス、之ヲ以
テ私ノ質問ヲ終ルコトト致シマス(拍手)
〔國務大臣島田俊雄君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=21
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022・島田俊雄
○國務大臣(島田俊雄君) 只今ノ長野君ノ
御質問ニ對シテ御答申上ゲマス、肥料ノ問
題ニ付キマシテ、米麥重點主義ト云フセウ
ナコトノ外ニ、更ニ地域的ニ配給ノ問題ヲ
考慮スルノ必要ガアルデハナイカト云フ御
質問ニ對シテハ、其ノ通リニ考ヘマス、隨
テ大體サウ云フヤウナ考ヘ方ヲ以チマシテ、
早場ノ地方トカ、或ハ其ノ他ノ特殊ノ事情
ノアル地方ニ對シマシテハ、左樣ナ考ヘ方
ヲ以テ此ノ配給ノ上ニ處シテ行キタイト云
フ考ヲ持ツテ居リマス
次ニ肥料ノ供給不足ノ問題カラ、小作地
ノ返還等ノコトガ起リ、或ハ小作爭議ニ及
ブ虞ガアル、斯樣ナ問題ニ付テ御心配ノ上
カラ御質問デゴザイマスガ、之ニ付キマシ
テハ、低廉ナル肥料ヲ豐富ニ供給スルコト
ガ固ヨリ理想デアリマスガ、肥料ニ付キマ
シテハソレ等ノ問題ノ外ニ分配、配給ヲ公
平ニシテ行クコトガ、最モ肝要ナコトト考
ヘテ居リマスノデ、配給ニ當リマシテ、之
ヲ簡便ニ且ツ豐富ニスルコトヲ心掛ケルト
共ニ、其ノ分配ヲ出來得ル限リ公平ニスル
コトヲ心掛ケマシテ、サウシテ農民ノ心理
ニ大ナル刺戟ヲ與ヘナイヤウニ仕向ケテ行
カナケレバナラヌ、斯ウ云フ考ヘ方ヲ以テ、
配給ノ點ニ付キマシテハ、特ニ注意ヲ拂フ
必要ガアルト考ヘテ居ル次第デアリマス
次ニ窒素肥料ノ增產ニ關係シマシテ、電
力ノ問題ニ付テノ御意見モゴザイマシタ
ガ、此ノ度ノ化學肥料ノ供給問題ニ關シマ
シテ、電力ノ問題ガ其ノ根本ニ横ハル極メ
テ重要ナル事柄デアルト云フコトハ、國民
モ等シク之ヲ認メテ居ル次第デアリマシテ、
有機質肥料ニ相對シテ最モ重要ナル部面ヲ
占メテ居ル化學肥料ノ問題ニ關シマシテ、
電力ノ豐富ナル供給ノアルコトヲ希望スル
コトハ固ヨリデアリマシテ、是ガ關係當局
ニ於キマシテ、其ノ開發ニ付テ萬全ノ對策
ヲ立テテ、進行セラレルコトヲ希望致シテ
居ル次第デアリマス、本年ハ早天ノ爲ニ電
力不足ヲ來シマシテ、肥料ノ供給ニ相當窮
屈ヲ致シタ次第デアリマスガ、只今ノ御質
問ニ現ハレマシタヤウニ、二三ノ工場ニ對
シテ製造能力アルニ拘ラズ、電力ノ供給ガ
十分ニナカツタ爲ニ、意外テ減產ノ事實ヲ
見タト云フコトハ、洵ニ遺憾デアリマシタ
ガ、最近ニ至リマシテ所要ノ石炭ノ關係、
ソレカラ又降雨ノアリマシタ爲ニ、電力ノ
供給ガ相當順調ニナツテ來マシタノデ、是
等ノ工場ニ對シテ、其ノ製造能力ヲ相當程
度ニ發揮セシムルコトガ出來ルヤウニナリ
マシテ、硫安ノ國內生產ニ付テハ、稍〓順調
ニ動イテ居ルト云フ現狀デアリマス、隨テ
是等ノ工場ニ對シマシテハ、ソレ〓〓常ニ
注意シテ所要ノ電力ノ流レテ行クヤウニ、
努力ヲ致シテ居ル次第デアリマス
尙ホ日滿支ノ合體ヲ通ズル關係カラ、化
學肥料ノ需要ガ年々增加ヲスルト云フヤウ
ナ點カラ考ヘマシテ、一步ヲ進メテ肥料ノ
國家管理、或ハ專賣ト云フ所ニ行クベキデ
アルト云フ見地カラ、今囘ノ此ノ會社法案
ハ、ソレニ至ルノ一段階ト見ルト云フ意味
ノ御意見ニ對シマシテハ、政府トシテ直チ
ニ肥料ノ專賣ヲ行フト云フ點ニ、一足飛ニ
行ク計畫ハ持ツテ居リマセヌ、ケレドモ、
其ノ傾向ハ確ニ其ノ方向ニ向ツテ居ル、斯
ウ云フヤウニ御考下サツテ、政府ノ意見ト
少シモ違ツテ居ル所ハアリマセヌ、尙ホ自
給肥料ト勞力ノ問題ニ關聯シマシテ、配給
肥料ノコトニ付テ御尋ガアリマシタガ、是
ハ政府ニ於テモ其ノ必要ヲ認メマシテ、十
三年肥料年度ニ配給致シマシタ程度ニ於
テ、完全ナル配合肥料ノ配給ヲ致シタイ、
斯ウ云フ考ヲ以テ努力中デアリマス
尙ホ米價ノ問題ニ付キマシテ、是ハ他ノ
機會ニ於テモ段々御意見ヲ承ツタ事柄デア
リマスガ、米穀ノ價格ニ付キマシテハ、米穀
統制法ノ規定ニ依リマツテ、ソレ〓〓ノ標
準生產費、又家計ノ關係、一般物價ノ傾向
ヲ參酌スル、斯ウ云フヤウナ點カラ、年々
生產收穫ノ後ニ於キマシテ、最高最低ノ價
格ヲ決メルト云フコトニ、法律ガ規定シテ
居リマスノデ、此ノ法律ノ規定ニ依リマシ
テ、本年ノ產米ニ付テハ、所謂生產費ハ固
ヨリ家計ノ關係、又物價ノ關係等ヲ參酌致
シマシテ、最高最低ヲ決メル次第デアリマ
シテ、只今長野君ノ御話ノ中ニアリマシタ
所謂生產費ト云フモノハ、相當ナ重點ヲ價
格決定ノ上ニハ持ツテ居ル次第デアリマス、
唯本年ノ米ノ出來タ結果ニ依リマセヌト、
今日豫メ此ノ點ニ付テ、或ハ上ルトカ下ル
ト云フコトハ、言明ガ出來ニクイト云フ事
情ニアル次第デアリマス
農產物ノ價格ノ問題ニ付キマシテ、物價
ノ問題ニ關聯シテノ御質問ガアリマシタ、
此ノ場合私ハ農林大臣トシテ特ニ申上ゲテ
置ク次第デアリマスガ、物價ノ全體ニ付キ
マシテハ、是ハ商工大臣ガ主トシテ御考ガ
アリ、內閣ノ意見トシマシテ、成ベク統一
ヲシテ行クベキ筈デアリマスガ、唯此ノ農
作物ハ、御承知ノ如ク普通ノ製造品ト云フ
ヤウナモノト違ヒマシテ、全ク特別ナ關係
ヲ以テ生產セラレルモノデアリマスカラシ
テ、其ノ點ニ於キマシテ、他ノ製造工業ニ
係ル品物ト性質ヲ異ニシテ居ル、米ノ如キ
モ、是ハ增產計畫デ色々ナ觀點カラヤリマ
スケレドモ、結局ハ一年ニ一作デアリマシ
テ、臺灣ノ如ク二回作モアリマスケレドモ、
其ノ時期ト云フモノガ決ツテ居リ、又其ノ
政策ニ付テハ、人工ヲ加ヘテモ尙ホ及バザ
ル所ガアリマシテ、結局其ノ成績ト云フモ
ノハ、單純ニ人力ノミヲ以テ支配スル製造
工場ニ於ケル生產品ト云フヤウナモノトハ、
趣ヲ異ニシテ居ルノデアリマスカラ、其ノ點
ニ付テハ農產物ノ價格決定ト云フ時ニハ、其
ノ農產物ノ特殊性ニ付テ、深キ理解ヲ以テ
決メナケレバナラヌモノデアルト、斯ウ云フ
點ダケハ國民モ理解シテ居リ、又價格決定
ニ付テノ原則トテシ、之ヲ見テ行カナケレ
バナラヌコトト思フノデアリマス、此ノ頃問題
ニナツテ居リマス蔬菜類デアリマストカ、或ハ
果物デアルトカ、或ハモツト變化ノ甚シイ
生鮮ノ魚ト云フヤウナモノニ付キマシテハ、
是ハ全ク製造シタ品物ナドハ性質ヲ異ニシ
テ居ルノデアリマスカラ、之ニ付キマシテ
ノ價格ノ決定ニ付テハ、其ノ特質ラ十分ニ
考ヘテ、之ニ對處スルノ方法ヲ講ズルノ外
ハナイモノト考ヘテ居ルノデアリマス、此
ノ點ハ商工當局ト致シマシテモ十分ニ理解
ヲシテ、是等ノ問題ニ對處セラレルコトト
信ジテ居ル次第デアリマス
尙ホ最後ニ、我國ノ農業ノ重キヲ爲シテ
居ル點カラシテ、農本主義ト云ヒマスカ、
サウ云フ點ニ付テ私ノ所感ヲ御尋ニナリマ
シタガ、此ノ島國デアル我國、今日ハ朝鮮、
大陸ニ一部ヲ持ツテ居ルノデアリマスケレ
ドモ、大體ニ於テ島國デアル我國ト致シマ
シテ、食糧問題ノ最モ重要デアルト云フコ
トハ、是ハ論ヲ俟チマセヌ、隨テ國ガ如何
ナル事情ニ遭遇シタ場合デモ、〓糧ニ付テ
缺クル所ガナイ、憂フル所ガナイト云フ準
備ヲ、常ニ整ヘテ置クト云フ意味カラ、又
有ユル人口資源ノ關係カラ見マシテ、農村
ト云フモノニ最モ重キヲ置キ、農業ニ重キ
ヲ置カネバナラヌト云フ事柄ニ付キマシテ
ハ、是ハ吾人共ニ齊シク十分ニ理解シテ居
ルコトデアラウト考ヘマスルノデ、農林大
臣ト致シマシテ、自分ハ其ノ考ヲ深ク持ツ
テ、此ノ時局ニ對處シテ行キタイト云フコ
トダケヲ申上ゲテ置キマス(拍手)
〔國務大臣小磯國昭君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=22
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023・小磯國昭
○國務大臣(小磯國昭君) 外地ノ問題ニ付
テ御答申上ゲマス、外地ニ於ケル肥料ノ問
題ハ、外地ニ於ケル農產物ノ生產計畫ト一
律不可分ノ關係ニアリマス、サウシテ其ノ
農產物ノ生產ニ付キマシテハ、米ニ付テハ
各種ノ機會ニ於テ申述ベマシタカラ、此ノ
數量ハ略スルト致シマシテ、地域每ニ之ヲ
申上ゲマスナラバ、朝鮮ニ於テハ米ノ外大
麥、小麥、亞麻、棉花、臺灣ニ於テハ米ノ
外砂糖黍、薩摩薯、黄麻、苧麻、蓖麻、棉
花ニ付テ、又樺太ニ於テハ小麥ト甜菜ニ付
テ、サウシテ南洋ニ於テハ砂糖黍ニ付テ各
增產計畫ヲ立テテ居リマス、此ノ生產ヲ確
保致シマスル爲ニハ、肥料ノ供給ヲ確保ス
ルト云フコトガ、絕對必要ナル條件デゴザ
イマス、サウシテ今囘內地ニ於テハ、此ノ
肥料ノ確保ノ爲ニ製造及ビ移輸入ニ對シ補
助金ヲ交付致シマシテ、農民ノ負擔ヲ輕減
スルト同時ニ、現在ノ公定價格ヲ維持シテ
行カウト云フ計畫ヲ進メラレマスル所、外
地ニ於キマシテモ、亦相當ノ補助金ヲ交付
スルニアラザレバ、到底肥料ノ供給確保ガ
困難デアルト云フ著意ニ基キマシテ、今囘
硫安ヲ初メ石灰窒素、過燐酸石灰及ビ加里
鹽ニ付テ、各〓地域每ニ補助金ヲ交付シテ
貰ヒ得ルヤウニ計上ヲシタ譯デゴザイマス、
尙ホ御質問ノ中ニ、朝鮮ニ於テハ鴨綠江水
力ヲ將來肥料生產ノ爲ニ利用スル著意ナキ
ヤト云フ御質疑デゴザイマシタガ、鴨綠江
水力ハ、御承知ノ如ク豫テ來電力ヲ發生サ
セル爲ニ工事ヲ進メツヽアリマスノデ、其
ノ第一期計畫タル約七十万「キロ」弱ノ工事
モ、遠カラズ完成スルト思ヒマス、サウシ
テ此ノ電力ガ工業發展ノ爲ニ寄與スルコト
ハ勿論、其ノ相當大ナル部分ガ又肥料生產
ノ爲ニ利用セラレルコトハ必然デゴザイマ
ス、隨テ御承知ノ、從來朝鮮ニアリマスル
肥料製造ノ機關タル朝窒竝ニ日鐵ノ兼二浦
ノ工場、是ノ生產ト併セマシテ、啻ニ朝鮮
ニ於ケル肥料ノ需給ニ對シ貢獻スルノミデ
ナク、將來ハ恐ラク相當ノ量ヲ、內地ノ肥
料供給ノ爲ニ寄與シ得ルモノト確信シテ居
リマス、左樣御諒承願ヒマス
〔國務大臣藤原銀次郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=23
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024・藤原銀次郎
○國務大臣(藤原銀次郞君) 長野君ニ御答
ヲ申上ゲマス、農業用資材ノ供給ガ今日ニ
於キマシテ不圓滑ヲ來シ、是ガ爲ニ農民ニ
幾多ノ苦痛ヲ與ヘ、又其ノ不便ヲ與ヘテ居
ルト云フコトハ、政府ニ於キマシテモ頗ル
之ヲ遺憾ト致シテ居リマスノデアリマスカ
ラ、何事ヲ措キマシテモ、他ノ產業ニ優先
シテ農業用資材ノ圓滑ヲ圖ルト云フコトハ、
政府ニ於テモ十分ニ努力ヲ致シマシテ、今
後固イ決心ヲ以テ進ンデ參リタイト存ジテ
居リマス
尙ホ又米價ノコトニ付キマシテ御尋ガア
リマシタカラ此ノ機會ニ一言私ノ所感ヲ申
上ゲテ置キタイト存ジマス、只今農林大臣
カラ御述ニナリマシタ通リ、大體ニ於テ
商工大臣ト致シマシテ私ハ同ジ考ヲ持ツテ
居リマスガ、併シ是ニ於テ一言申上ゲテ置
キタイノハ、只今政府ハ低物價政策ヲ堅持
致シマシテ、今日ノ時局ヲ乘切リマスニ
付キマシテハ、如何ナル努力、如何ナル
困難デモ之ヲ排除シテ、サウシテ低物價政
策ヲ以テ之ヲ乘切リタイト存ジテ、各般ノ
施設ヲ致シマシテ、卽チ肥料ノ如キモ成ベ
ク其ノ値段ヲ低廉ニシテ且ツ之ヲ豐富ニシ
テ、サウシテ農產物ノ價格ヲ引上ゲナイヤ
ウニ致シタイ、斯ウ云フコトノ爲ニ、一面
ニ於テハ石炭ノ增產ヲ圖リ、一面ニ於テハ
肥料ノ製造ノ奬勵ヲ圖ルト云フヤウナ工合
ニシテ、努力ヲ致シテ居リマスコトハ、長
野君ニ於テモ能ク御承知ノ通リデアリマス、
尙又一般物價ニ對シマシテハ、生產業者ニ
多少ノ赤字ガ出來ルト云ヤフウナコトガア
ツテモ、出來ルダケ我慢ヲシテ戴イテ、又
配給業者ニモ協力シテ戴キ、旁〓以テ物價ヲ
成ベク引上ゲナイデ、低物價政策ノ主義ヲ
遂行致シタイト思ヒマシテ、百方努力致シ
テ居リマスルヤウナ今日ノ狀況デゴザイマ
ス、無論農產品ノ價格ニ付テハ、政府ニ於
テモ農業ガ我國ノ非常ナ重要ナ產業デアル
ト云フコトハ承知致シテ居リマスルカラ、
其ノ價格決定等ニ對シテハ、十分ニ同情シ、
協力致シマシテ考慮致スコトハ、是ハ申上
ゲルマデモナク當然ナコトデハアリマスル
ガ、一面ニ於テ又低物價政策ノ爲ニハ、國
家ノ各層ニ於キマシテ、皆此ノ時局ニ協力
スル意味ヲ以テ、若干ノ我慢ヲシテ戴イテ、
サウシテ此ノ時局ヲ乘リ切リタイ、斯ウ云
フ積リデ居リマスルカラ、其ノ政府ノ意ノ
アル所モ、ドウゾ御諒察ヲ願ヒタイト云フ
コトヲ、此ノ機會ニ一言申添ヘテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=24
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025・小山松壽
○議長(小山松壽君) 濱地文平君
〔濱地文平君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=25
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026・濱地文平
○濱地文平君 私ハ只今上程中ノ日本肥料
株式會社法案ニ關聯致シマシテ、極メテ簡
單ニ、サウシテ私ノ一番心配シテ居ルコト
ダケヲ取上ゲテ、質問ヲ申上ゲタイト思フ
ノデアリマス、萬國農事統計協會ノ發表ニ
依リマスルト、四十「エーカー」ノ耕地ニテ
扶養ヲ要スル人口ハ、米國ニ於キマシテハ
百九十五人、佛蘭西ニ於キマシテハ二百九
十五人、獨逸ハ三百二十一人、伊太利ハ三
百三十一人デアリマシテ、日本ハ實ニ一千
百四十人ト云フ多數ニナツテ居ルノデアリ
をくる、畢竟我國ハ耕地面積ガ狹隘デアリマ
シテ、人口ガ稠密デアリマスルカラ、反當
リノ扶養人口ハ、他ノ各國ニ比シテ三倍乃
至五倍ニナツテ居ルノデアリマス、玆ニ我
國ノ農業ガ、肥料ト勞力ニ集約デナケレバ
ナラナイ必然性ガアルノデアリマシテ、現
ニ我國ノ農業ハ世界ニ類例ノナイ多收穫ノ
成績ヲ擧ゲテ居リマス爲ニ、反當リ扶養人
口ノ三分ノ一或ハ五分ノ一ニシカ過ギナイ
各國ガ、尙ホ〓糧不足ノ爲ニ非常ナル苦心
ヲ致シテ居ル中ニアリマシテ、兎ニモ角ニ
モ食糧ノ需給ガ出來テ居リマシタコトハ、
何ト申シマシテモ、我國農業ノ非常ナ誇デ
アリマスト同時ニ、吾々ハ農民ニ對シテ深
甚ノ感謝ヲセナケレバナラナイ事デアルト
思フノデアリマス(拍手)
〔議長退席、副議長著席〕
併シソレバ前申シマシタヤウニ、肥料ト
農民ノ粒々辛苦デアル勞力トニ集約ナルガ
爲デアリマシテ、隨テ農業ニ對スル肥料ノ
重要性ハ、他ノ何レノ國ニモ比較スベクモ
ナイノデアリマス、而シテ政府ノ本年度ニ
於ケル農業生產ノ計畫ヲ伺ヒマスト、米穀
ニ於テ七千百万石、小麥一千三百万石ヲ初
メ、各種農產物ニ關シ飛躍的ナ增產計畫ヲ
立テテ居ラレルノデアリマス、蓋シ此ノ生
產目標ハ需給推算カラ生レタ數字デアリマ
シテ、理窟ハドウアラウト、是非是ダケノ
モノハ生產シナケレバナラナイ、是ダケノ
生產ヲ擧ゲナケレバ國民生活ノ維持ガ出來
ナイト云フ、切羽詰ツタ實情カラ、是等ノ
生產計畫ハ立テラレタノデアルト思フノデ
アリマス、而シテ是等ノ生產目標ニ付テ考
ヘマスノニ、過去ニ於テ米ノ一番收穫ノア
ツタノハ、御承知ノ通リ昭和八年度ノ七千
八十万石デアリマスガ、本年度ハ此ノ未曾
有トモ云フベキ增收ヨリモ、尙ホ更ニ多ク
ノ收穫ヲ擧ゲヨウトスルノデアリマス、此
ノ收穫ヲ確保セネバナラナイ實情ニアルノ
デアリマス、小麥ニ致シマシテモ、昨年ガ
未曾有ノ增收デアリマシタノニ、是亦本年
ハソレヨリモ更ニヨリ多クノ生產目標ヲ立
テテ、サウシテ其ノ生產ヲ確保セネバナラ
ナイ實情ニアルシデアリマス、斯ル厖大ナル
增產計畫ガ、我國ノ現狀ニ於テ、飽クマデ其
ノ完遂ヲ期セネバナラナイ餘儀ナキ運命ニ
置カレテ居ルコトヲ考へ、飜ツテ我國農業
生產ノ立地條件ヲ檢討スル時ニ於キマシ
テ、洵ニ心配ニ堪ヘザルモノガアルノデア
リマス、肥料ト勞力トニ集約デアル必然性ヲ
持ツ我國ノ農業ニ於キマシテ、勞力ノ不足
ハ愈〓顯著ナラントシツツアルノデアリマス、
全國ノ何レノ地方ニ於キマシテモ、年期勞
働者ノ雇入レハ、非常ニ困難ナ實情ニアル
ノデアリマシテ、愈〓本年ノ農繁期トモナリ
マスルナラバ、農村ノ手不足ハ實ニ深刻ナ
ルモノアルニ至ルデアラウト存ジマス、此
ノ際更ニ肥料ノ不足ヲ來スガ如キコトガア
リマシタナラバ、我國農業生產ノ上ニ容易
ナラヌ難局ニ立ツモノト申サネバナラナイ
ノデアリマス、更ニ農業資材ノ供給モ甚シ
キ不足ヲ〓ゲツツアリマス、斯ル狀況ノ下
ニアリマシテ、今マデニ例ノナイ程ノ增產
ヲ圖ラウ、圖ラナケレバナラナイトスルノ
デアリマスルナラバ、勞働者ノ不足ハ、戰
時下ニ於キマシテ、如何トモ致シ方ハアリ
マセヌガ、セメテ肥料ノ供給ヲ確保シ、生
產ノ確保ニ遺憾ナキヲ期セネバナラナイト
存ズルノデアリマス、肥料ノ供給不足ハ、
肥料ノ不足ニ因ル直接的ナ生產減退ニ止マ
ラナイノデアリマシテ、農民心理ニ及ボス
影響ノ甚大ナルモノアルヲ思ハネバナラナ
イノデアリマス、近時肥料供給ニ不足ヲ來
スデアラウト傳ヘラレマスルヤ、農民ノ失
望譬フルニモノナク、殆ド積極的奮鬪精神
ヲ失ウテ、自暴自棄的態度ニ出ル者サヘア
ルノデアリマシテ、斯ルコトガ農業生產ニ
及ボス影響モ、決シテ輕視スル譯ニハ參ラ
ナイト存ズルノデアリマス(拍手)政府ハ有
ユル手段ヲ盡シテ、肥料ノ供給確保ニ邁進
セネバナリマセヌ、食糧生產減退ノ爲ニ、
食糧不安ヲ招來セシムルガ如キコトガアツ
テハナラナイノデアリマシテ、食糧生產ヲ
增進シ、其ノ供給ヲ確保スル爲ニハ、有ユル
努力ヲ惜ンデハナラナイノデアリマス、私
ハ斯ル考ヲ以チマシテ、玆ニ數項ニ付キマ
シテ政府ノ御所見ラ御伺致シタイト思ヒマ
ス
其ノ一ハ、政府ハ自給肥料ノ增產奬勵ニ、
一段ノ努力ヲ加ヘラレントシツツアルノデ
アリマスガ、其ノ事ハ至極結構デアリマス
ルケレドモ、若シソレニ依ツテ金肥ノ不足
ヲ補ハントスル考ヲ持ツテ居ラルルトセバ、
ソレハ非常ナ間違ヒデアルト思フノデアリ
やく、自給肥料ノ增產ハ勿論必要デアリマ
ス、併シ農村ノ今日ノ狀況ニ於テハ、之ニ
依ツテ金肥ヲ補フ程ノ增產ヲ期スルコトハ
到底望ミ得ナイノデアリマシテ、金肥ハ金
肥トシテ其ノ供給ヲ確保スルノ方策ヲ立テ
ラレナケレバナラナイト信ズルノデアリマ
スガ、政府ノ御所見ヲ承リタイノデアリマ
ス(拍手)
第二ハ、政府ハ硫安八〇%、過燐酸ハ殆
ド一〇〇%ノ供給ガ可能ナリト、各種ノ機
會ニ言明セラレテ居ルヤウデアリマスガ、
現在ノ狀況ニ於テハ、斯ル供給力ハ到底期
待シ得ラレナイト考ヘラレル者デアリマス、
今日トナツテ農民ニ氣安メヲ言ウテ居ル場
合デハナイノデアリマシテ、硫安、過燐酸
ノ供給ニ關シテ、政府ハ如何樣ナル成算ガ
アラセラレルカ、是モハツキリト信念ヲ持
ツテ御答辯願ヒタイノデアリマス(拍手)
第三、農林當局ハ、硫安ノ生產減退ハ遁レ
得ナイ、約八〇%ノ供給量ト見込ンデ、其ノ
不足分ハ大豆粕ヲ以テ補フベシト言明サレ、
本年度滿洲カラハ大豆粕百七万瓲、大豆九
十万瓲ノ輸入ヲ確保スルコトニ、滿洲國ト
ノ協定ガ成立シタト言明サレマシテ、次イ
デ更ニ大豆十八万瓲ノ增加輸入ノ協定ガ成
立シタト言ハレテ居ツタノデアリマス、全
國ノ農民ハ政府ノ此ノ言明ニ多大ノ期待ヲ
持ツテ居タノデアリマシタガ、大豆及ビ大
豆粕輸入ノ狀況ハ、全ク政府從來ノ言明ヲ
裏切ルガ如キ實情ニアルノデアリマス、政
府ハ果シテ大豆及ビ大豆粕ノ輸入ニ關シテ、
其ノ言明ヲ裏切ラナイダケノ確信ガアルノ
デアリマスカドウカ、是モハツキリト承ツ
テ置キタイト思ヒマス(拍手)
第四ハ、政府ハ從來ノ單肥配給獎勵ノ方
針ヲ棄テテ、本年ハ配合肥料ノ配給ニ重點
ヲ置カルル方針ヲ立テラレタノデアリマシ
タガ、配合原料ガ中々揃ハナイノデアリマ
ス、硫安ガナイ、或ハ大豆粕ガナイ等ノ爲
ニ配合ガ出來ナクテ、其ノ配給ガ非常ニ遲
レル狀況ニアリマス、此ノ際單肥ノ配給又
ハ無機ノ配合ヲ許可スル積リノ方針ハナイ
カ、アリヤ承ツテ置キタイト思ヒマス
第五、大豆粕ノ買入ニ關シマシテ、大連
及ビ滿洲ニ於テ、臺灣トノ間ニ競合ヒガア
ツテ洵ニ面白カラヌ噂サヘ傳ヘラレタノデ
アリマスガ、大豆及ビ大豆粕ノ輸入ニ關シ
マシテハ、内外地ヲ一貫シタル統制方策ヲ
立ツルノ必要アリト思フノデアリマスガ、
政府當局ノ御意見ヲ承リタイノデアリマス、
以上ノ質問ニ對シテハツキリト、主トシテ
農林大臣ノ御答辯ヲ承ツテ置キタイト思ヒ
マス(拍手)
〔國務大臣島田俊雄君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=26
-
027・島田俊雄
○國務大臣(島田俊雄君) 濱地君ノ御質問
ニ御答致シマス、自給肥料ノ增產ニ付テ、
政府ガ努力シテ居ルコトハ御尋ノ通リデア
リマス、併シナガラ之ヲ以テ金肥ノ不足ヲ
補フ、斯ウ云フ意味ニ考ヘテ、金肥ニ付テ
ノ努力ヲ緩メルト云フヤウナ考ヲ持ツテ居
リハシナイカト云フヤウナ意味ノ御尋ガア
ツタト思ヒマスガ、左樣ナ事ハ全ク考ヘテ
居リマセヌ、金肥ノコトニ付キマシテハ、
政府ハ是マデ他ノ機會ニ於テ屢〓御答ヲ致
シマシタヤウニ、有機質、無機質總テニ付
テ出來ルダケノ努力ヲシテ、其ノ供給ヲ圖
ツテ居ル次第デアリマス、同時ニ此ノ自給
ノ肥料ノ增產ニ付キマシテ努力ヲ致シテ居
ルト云フ意味ニ、御諒解ヲ願ヒタイノデア
リマス
第二ニ、硫安ニ付テ米麥重點主義デ、昨年
割當ヲ致シマシタ八〇%、又過燐酸ニ付キ
マシテハ、大體一〇〇%、此ノ割合ヲ以テ
行クコトニ付テ、確信ヲ持ツテ其ノ實行ガ
出來ルカト云フコトニ付キマシテハ、屢〓申
上ゲマシタヤウニ、此ノ硫安ノ製造ニ付キ
マシテ、電力ノ關係カラ非常ナル不安ガ一
時アツタノデアリマスケレドモ、現時ノ狀
況ヲ以テ致シマスレバ、只今政府ガ考ヘテ
居リ、又旣ニ割當ヲ致シタ數量ニ付キマシ
テハ、是ハ確信ヲ以テ間違ヒナク配給ガ出
來ル、斯ウ云フコトヲ申上ゲテ置キマス、
尙ホ此ノ硫安等ノ不足ニ付テ、大豆粕及ビ大
豆ノ問題ニ關シマシテハ、是ハ既ニ滿洲ト
ノ間ニ協定ヲ爲シ、努力ヲ致シテ居リマシ
テ、本省カラモ常置ノ如ク長ク滯在スル人
ヲ派シテ居リマシテ、刻々此ノ出荷ニ付テ
督促ヲ致シテ居ルヤウナ次第デアリマシテ、
是亦今日ノ狀況ニ於キマシテハ、豫定ノ數
量ヲ獲得スルコトニ自信ヲ持ツテ居リマス、
尙ホ是ハ努力ヲ致シテ居ル次第デアリマス
ルカラシテ、其ノ努力ヲ弛メズニ、豫定ノ
數量ノ獲得ニ努メル積リデアリマス
次ニ配合肥料ノ問題デアリマスガ、是八
配合肥料ノ原料ニ付キマシテ、色々ナ變動ガ
アリ、變化ガアリマス爲ニ、此ノ配合肥料
ノヤリ方ノ計畫ニ付テ之ヲ改メテ、サウシ
テ改メタ計畫ノ下ニ於テ、豫定ノ配合肥料
ヲ配分スルヤウナ考ヲ以テ只今計畫ヲシ、
當局ニ於テ日夜其ノ點ニ付テ努力ヲ致シテ
居ル次第デアリマスカラ、左樣ニ此ノ點モ
御承知ヲ願ヒタイト思フノデアリマス、尙
ホ外地トノ間ニ一貫ノ方策ニ依ツテ、肥料
ノ問題ニ付テ考ヘロト云フコトニ付キマシ
テハ、洵ニ御質問ノ通リデアリマシテ、政
府ト致シマシテハ、其ノ方針ヲ以テ總テノ
コトニ付キマシテ協力ヲシ、連絡ヲ執ツテ
ヤリタイ、又其ノヤル方針ヲ以テ進ンデ居
ルト云フコトヲ申上ゲテ、簡單ナガラ御答
ニ致シテ置キマス(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=27
-
028・田子一民
○副議長(田子一民君) 河野一郞
〔河野一郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=28
-
029・河野一郎
○河野一郞君 私ハ只今上程ニ相成ツテ居
リマスル日本肥料株式會社法案ニ付テ、極
ク簡單ニ二三ノ點ニ付テ御尋ヲ致シテ見タ
イト思フノデアリマス、本案ハ政府ニ於キ
マシテ現下ノ肥料事情ヲ如何ナル認識ノ下
ニ御提案ニナツタノカハ存ジマセヌガ、吾
吾ト致シマシテハ、甚ダ其ノ內容ノ不徹底
ナルニ驚ク者デアリマス、例ヘバ本案ノ如
キ單ナル旣設ノ會社ヲ合同經營シ、旣設ノ
施設ヲ其ノ儘運用スルコトニ依ツテ、現下
ノ肥料事情ヲ打開スルコトハ、斷ジテ不可
能デアルト考ヘル者デアリマス、是等ノ點
ニ付キマシテ、少シク現在ノ農村事情、肥
料事情ト併セ關聯致シマシテ、政府ニ本質
的ナ御尋ヲ致シテ見タイト考ヘルノデアリ
マス
先ヅ第一ハ、戰時下ニ於キマシテモ、最
低ノ必要數量ハ、絕對ニ確保セラルベキモ
ノナリト私ハ考ヘルノデアリマスケレドモ、
最近政府ノ執ツテ居ラレマスル所ノ肥料政
策ヲ拜見致シマスルノニ、戰時下ナルガ故
ニ七割デ我慢セヨ、八割デ我慢セヨ、六割
デ我慢セヨ、無イモノハ仕方ガナイカラ、
此ノ儘デヤツテ行ケト云フヤウナ態度ヲ執
ツテ、以テ農村ニ必要ナル食糧資源、其ノ
他農產資源ヲ要求セラルル所ニ、非常ナ無
理ガアルト私ハ思フノデアリマス、而シテ
此ノ情勢ヲ、政府ハ例ヘバ電力ノ問題、石
炭ノ問題、其ノ他爲替ノ問題等ニ關聯シテ、
マア暫ク〓〓ト云フコトデ、遂ニ今日ノ農
村ニ於キマスル所ノ、絕對的肥料不安ノ實
情ニ追込ンダモノト私ハ思フノデアリマス
ルガ、更ニ政府ハ本案ヲ以テ致シマシテ、
將來ニ於キマスル肥料事情ヲ改善スル確信
アリヤ否ヤ、具體的ニ申上ゲマスレバ、明
肥料年度、此ノ七月ヨリ致シマスル所ノ肥
料年度ニ於テ、本案ニ依ツテ幾許ノ硫安ノ
製造ガ期待セラレルカ、何程ノ過燐酸ヲ農
村ニ配給ガ出來ルカ、其ノ他ノ必要ナル肥
料資材ヲ、ドノ程度配給スルコトガ出來ル
カト云フ點ニ付テ、率直ナル御答辯ヲ願ヒ
タイト思フノデアリマス、只今前質問者ニ
對スル農林大臣ノ御答辯ハ、私甚ダ意ニ滿
タナイモノガアリマス、例ヘバ我國ニ於キ
マスル硫安ノ製造可能量ハ恐ラク二百万
瓲乃至二百十万瓲アル筈デアリマス、今日
ニ於キマシテ政府ガ配給計畫セラレツツア
ル數量、卽チ只今農林大臣ガ確信ヲ以テ配
給スルト申サレマシタ量ハ幾許デアルカ、
此ノ製造可能數量ニ對シテ、四五十万瓲內
輪ニ見積ツタ數量デアリマス、吾々ハ少ク
トモ硫安ニ對シマシテハ、此ノ製造可能數
量、卽チ二百万瓲乃至二百十万瓲ノ製造ヲ
致シテ以テ、之ヲ全農村ニ配給シ、更ニ進ン
デ此ノ資源ヲ以テ大豆粕ニ代ヘルダケノ積
極性ヲ持タナケレバナルマイト思フノデア
ル、果シテ此ノ會社ニ依ツテ、只今上程セ
ラレテ居リマスル本案ニ依ツテ、此ノ製造
ガ可能ナリヤ否ヤト云フ點ニ付テ御答辯ガ
願ヒタイ、更ニ進ンデ過燐酸ニ付テハドウ
カ、燐鑛石ノ輸入ニ付テハ如何ナル確信ヲ
持ツテオヰデニナルカ、從來ノ如クニ過燐酸
ハ百「パーセント」配給スルト申サレマスル
ガ、此ノ百「パーセント」ハ甚ダ吾々農村側
ニ於キマシテハ意ニ滿タザル百「パーセン
산デアリマス、更ニ又進ンデ申上ゲマス
レバ、大豆粕ノ只今ノ農林大臣ノ御答辯ノ
如キハ、最モ私ノ不滿ニ堪ヘザルモノガア
リマス、斯ノ如キコトヲ此ノ機會ニ申上ゲ
マスコトハ、ドウカト考ヘマスルケレドモ、
私ノ調査致シマシタ所ニ依リマスレバ、少
クトモ農林大臣ノ只今ノ言明トノ間ニ、三
四十万瓲ノ開キガアルノデアリマス、政府
ノ屢〓議會ヲ通ジテノ御答辯ニ依リマスレ
バ、大豆粕ニ於テモ百六七万瓲、大豆ニ
於テ九十五万瓲、之ヲ內地ニ輸入シテ以テ
硫安ノ不足分ニ窒素ヲ補フモノデアルト云
フコトヲ聲明セラレテ居リマスケレドモ、之ヲ
更ニ詳細ニ點檢致シマスレバ、現在滿洲國ニ
於キマスル所ノ大豆ノ出廻リ事情ハドウナ
ツテ居ルカ、滿洲國ニ於キマシテハ、當初大豆
ノ生產豫定數量ハ四百五六万瓲ト發表セラ
レタ筈デアリマス、政府ハ恐ラク此ノ四百五六
万瓲ノ中カラ、地場ニ消費スル所ノ百三一四
十万瓲ヲ「マイナス」致シ、更ニ支那其ノ他ノ
第三國ニ輸入スルモノヲ「マイナス」致シマ
シテ、內地ヘ向ツテノ輸入數量ヲ、只今申上
ゲマシタ大豆デ九十五万瓲、豆粕ニシテ百
六七万瓲、之ヲ全部大豆ニ換算致シマシテ、
二百二十万瓲程度ノモノヲ、內地ニ持ツテ
來ル計畫ヲ御立テニナツタコトト考ヘマス、
併シナガラ今日滿洲國全體ヲ通ジテ、吾々
ガ他ノ方面ヨリ調査致シマスル所ニ依リマ
スレバ、先月ノ中旬、卽チ舊正月マデノ出
廻ハ僅ニ百十万瓲、其ノ後舊正月以後ニ於
キマスル所ノ出〓ガ、業界全體ノ觀測ト致
シマシテハ、多クテ七十万瓲、少ク見テ六
十万瓲カラ五十万瓲ダラウト云フ、悲觀的
豫想ガ民間全部ノ聲デアリマス、之ヲ全部
合計致シマシテ割當テマシテ、之ヲ內地ノ
豆粕ノ消費ニ向ケマス時ニハ、ドウ計算致
シマシテモ、政府ガ豫期シテ居ラレマスル
數字トノ間ニハ、三四十万瓲ノ開キガアル
筈デアリマス、今日只今ノ問題ニ付テ三四
十万瓲ノ開キノアルコトヲ、農林大臣ガ確
認セラレザル所ニ、私ハ非常ナ不安ヲ持ツ
者デアリマス、農林大臣ハ只今係官ヲ派遣
シテ最善ノ努力ヲ盡シテ居ラレルト申サレ
マスケレドモ、係官ノ御調査モ民間ノ調査
モ食違ヒノアル筈ハアリマセヌ、現實ノ問
題トシテ斯ノ如ク傳ハリマス聲ガ、農村津
津浦浦ニ不安トナツテ現ハレテ居ルノデア
リマス、如何ニ政府ガ大豆ハヤル、大豆粕
ハ配給スルト仰セニナリマシテモ、此ノ吾
吾ノ調査、民間ノ聲其ノモノガ、大豆粕ノ
不足ヲ斯ク全農村ニ意識セシメテ、政府ガ
最近大豆粕ヲ四圓五十錢デ配給スルト申シ
テモ、今尙ホ六圓、六圓五十錢、七圓ノ闇
取引ガ、全農村ニアルコトヲ吾々ハ甚ダ遺
憾ニ思フノデアリマス、農林大臣ハ速ニ是
等ノ事情ヲ再檢討セラレマシテ、本當ニド
ウナルカ、吾々ハ四月、五月、六月ノ此ノ
當面セル肥料最盛期ニ於テ、農村ハドウ云
フ問題ガ起ルダラウカ、何ガ起ツテ來ルカ
ト云フコトヲ、非常ニ憂慮致ス者デアリマス、
是等ノ點ニ付キマシテハ、農林大臣ハ重ネ
テ此ノ議場ニ於テ明確ナル答辯ラセラレン
コトヲ望ム者デアリマス、繰返シテ申シマ
ス、戰時下ニ於テハ、最小限度ノ肥料ノ絕
對確保ヲ吾々農村ハ要求スル、然ラザレバ
必要ナル農產物ノ確保ハ絕對ニ不可能デア
ル(拍手)過去數年ニ於キマスル如クニ、八
割デヤレ、七割デヤレト云フヤウナコトハ、
非常ナ間違ヒデアル、斯ノ如キ事態ガ長ク
續クモノデハナイ、ソレ等ガ〓算セラレテ、
現下ニ於ケル所ノ農村ノ肥料不安事情ガ起
ツテ居ルノデアル、是等ヲ深ク認識セラレ
マシテ、明確ナル御答辯ガ願タイト思フ
ノデアリマス
第二ニハ、此ノ法律案ニ依リマスレバ、
第十一條ニ於テ、政府必要ト認メタル場合
ニハ、各會社ニ向ツテ協議ノ上ニ、ソレ〓〓
ノ工場ヲ此ノ日本肥料株式會社ニ經營セシ
メルコトガ出來ルコトニナツテ居リマス、
卽チ新會社ハ工場ノ管理ヲスルコトガ出來
ルヤウニ規定セラレテ居リマス、政府ハ恐
ラク此ノ條項ヲ以テ、是カラ業績ノ擧ラザ
ル工場ヲ振興スルヤウニ御考デゴザイマセ
ウケレドモ、私ハ此ノ點ニ對シテ多大ナル
不滿ヲ持ツ者デアリマス、何故ナレバ戰時
下ニ於テハ苟クモ絕對ニ國家ノ必要ナル資
源國家ノ必要ナル資材ニ付テハ、業界ニ
於ケル所ノ採算、業界ニ於ケル所ノ希望、
ソレ等ヲ超越シテ、取ツテ以テ國家的ニ公
益的ニ提供シナケレバナラナイト私ハ思フ
ノデアリマス、然ルニ政府ノ御示ニナツテ
居ルヤウニ、業者ト相談ヲシタ上デ、業者
ガ承知ヲシタナラバ、其ノ管理ヲ會社ガ出
來ルト云フコトデハ、業者ガ採算ノ合フ所
ハ、採算點ニ達スルマデハ管理ニ同意ハシ
ナカラウト私ハ思フノデアリマス、全部不
利益ナ、不採算ナ、率ノ合ハナイモノダケ
ガ、工場管理ニ同意致シマシテ、儲ツテ居
ル、採算ノ合フモノハ工場管理ニ同意ヲシ
ナイ、此ノ結果ト致シマシテ、硫安工業ノ
如ク非常ニ技術ヲ要スル、非常ニ難シイ仕
事ニ於キマシテハ、儲ツテ居ル會社デナケ,
レバ、立派ナ技術者ハ居ルマイト私ハ思フ
ノデアリマス、今日肥料界ニ於テ、殊ニ硫安
製造界ニ於テ最モ必要ナルモノハ、貴重ナ
モノハ、優秀ナル技術者デアルノデアリマ
ス、機械設備ト致シマシテハ、只今私申上
ゲマシタ通リニ、二百數十万瓲ノ機械設備
ガアル筈デアリマス、所ガ遺憾ナガラ此ノ
機械設備ヲ全能力的ニ運轉スルダケノ
技術者ニ缺ケテ居ルノデハナイカト私ハ思
フノデアリマス、政府ハ果シテ是等消極的
ナ工場管理ニ依ツテ優秀ナ技術ヲ獲得スル
コトモ出來ズ、如何ニシテ全能力ヲ發
揮スルコトガ出來ルカ、斯ノ如キ消極的ナ
會社ヲ作ツタ所ガ、「マイナス」ノモノダケ
管理スルコトニナツテ、結局所期スルダケ
ノモノヲ獲得スルコトガ出來ナイノデハナ
カラウカ、何故ニ進ンデ全企業合同ヲオヤ
リニナラナカツタカ、全部ノ硫安工場ヲ其
ノ儘合同セシメテ、取ツテ以テ最大能力ヲ
發揮スルダケノ意圖ニオ出デニナラナカツ
タカ、ソコマデ徹底シタ案ヲ御立テニナツ
テ、初メテ所期スル所ノ硫安ヲ期待スルコ
トガ出來タノデハナカラウカト吾々ハ思フ
ノデアリマスガ、政府ノ御所見ハ如何デア
リマスカ
次ニ御尋致シタイノハ、歐米各國ノ事情
ヲ見マシテモ、我國ノ今日ノ肥料政策ノ如
クニ、貧困ナルモノハナカラウト私ハ思フ
ノデアリマス、ナゼナレバ、現在農林當局
ノ御考ニナツテ居リマスルコトハ、肥料ハ有
機質ト無機質デアル、無機質ノ肥料ハ窒素
ト燐酸ト加里デアル、此ノ程度ニ出ナイ考
ヘ方ガ、果シテ妥當デアラウカドウカ、私
大シタ〓究モアリマセヌケレドモ、第一次
歐洲大戰以後ニ於キマスル英米其他獨佛、
何レノ國ノ肥料ノ進步改善ノ跡ヲ見マシテ
モ、單ナル窒素、燐酸、加里ヲ取扱ツテ居
ル國家ハナイノデアリマス、獨リ我國ノミ
ガ依然トシテ窒素デアル、燐酸デアル、加
里デアルト云フモノヲ扱ハナケレバナラヌ
理由ガ果シテアリマセウカ、何故ニモウ少
シ進步シタ、モウ少シ高級ナ肥料ヲ造ルコ
トニ政府ハ御考ニナラヌノカ、ナゼモウ少
シ肥料政策ニ對シテ進步シタル〓究ヲナサ
ラウト致サレヌノカ、依然トシテ十年二十
年昔ノ歐米ヲ模倣シテ、其ノ儘ノ狀態ニ於
テ國策ヲ樹立セラレルト云フコトハ、餘リ
ニモ消極的デハナカラウカト思フノデアリ
マス、例ヘバ英吉利ニ於キマス所ノ硫燐安、
獨逸ニ於キマス所ノ「ニトロホスカ」是等ノ
高度ノ合成肥料、化成肥料ト云フヤウナモ
ノヲ、取ツテ以テ國策ニ入レラレルコト
ガ-今日運送ノ關係、包裝ノ關係、是等ノ
非常ニ窮屈ヲ來シテ居リマスル際ニ、モウ
少シ成分ノ高イ肥料ヲ奬勵〓究サレルコト
ガ、絕對ニ必要デハナイカ、其ノ域ニ達シ
テコソ、初メテ新東亞建設ノ第一線ニ立ツ
テ、是等ノ農村開發ニ本當ニ資スル所以デ
ハナイカト私ハ思フノデアリマス、卽チ政
府ハ進ンデ大企業合同ヲヤリ、是等企業合
同ノ上ニ立テ積極的ナ肥料ノ〓究ヲ進メ、
以テ肥料全般ノ大進展ヲスル、大革新ヲス
ルダケノ意圖ハ政府ニハナイノカ、其ノ必
要ヲ御認メニナラヌノカト云フコトヲ御尋
致シタイト思フノデアリマス
第四ニハ、現下肥料政策ノ一般ニ於キマ
シテ非常ニヤカマシク論議セラレマス配給
ノ問題ハ、中央ニ於ケル配給ノ問題ニアラ
ズシテ、地方ニ於ケル問題デアリマス、卽
チ一方ニハ闇取引ノ橫行トナリ、更ニ又各
府縣知事ノ命令ニ依ツテ、縣令ニ依ツテ、地
方割據主義ノ肥料價格ノ續出トナリ、仍テ
以テ各地方ニ肥料ノ偏在トナリツツアル實
情ガ、最モ憂慮スベキ問題デアリマス、然
ルニ今囘ノ法案ニ依リマスレバ、中央ニ於
ケル所ノ肥料ノ配給ニ付テハ、此ノ會社ヲ
以テ萬全ト考ヘルコトガ出來ルカモ知リマ
セヌケレドモ、何故ニ最モ急務中ノ急務デ
アリ、最モ難事中ノ難事デアル所ノ、地方ノ
配給機構ニ付テ御考ニナラナカツタノカ、
此ノ點ニ付テ積極的ニ政府ガオヤリニナラ
ナケレバ、決シテ今日ノ肥料問題ハ解消ス
ルモノデハナイト私ハ思フノデアリマス、
卽チ各府縣、各市町村ニ於ケル肥料ノ配給
ノ問題ニ付テ、政府ハ如何ニ御考ニナツテ
居ルカ、將來之ヲドウショウトナサルノ
カ、此ノ日本肥料株式會社成立ノ後ニ於
テ、此ノ會社ト地方トノ關係ハ、ドウ云フ
風ニ御進メニナル積リカ、此ノ點ニ付テ御
答ヲ願ツテ置キタイト思フノデアリマス
第五トシテ御尋致シタイノハ、先程申上
ゲマシタル通リ、大豆粕ニ於テ非常ニ政府
ノ發表ニ違算ガアリ、現下ノ國內配給事情
ニ於テ不圓滑ナル事情ノアリマスル際ニ、
此ノ大豆粕ヲ以テ非常ニ主要ナル飼料ト致
シテ居リマスル部分ニ於テ、肥料ト飼料トノ關
係ヲ如何ニ政府ハ御取扱ニナル積リカ、此ノ
點ニ付テハ政府ハ速ニ本問題解決ノ方途ヲ御
示ニナルコトガ、地方農村ノ事情ヲ明朗ナラ
シメル所以デアルト考ヘルノデアリマス、之ニ
對スル所見モ、此ノ機會ニ質シテ置キタイト
思フノデアリマス
更ニ一言、商工大臣御出席デアリマスル
カラ、此ノ機會ニ御尋致シテ置キマス、先
程來農林、商工兩大臣ノ御答辯乃至ハ本議
場ヲ通ジテノ政府ノ御意見等ヲ承ツテ居リ
マスルト、低物價政策ナル故ニ、米ノ値段
モ安クシテ置ク、肥料ノ値段モカルガ故ニ
安クシテ置クト云フコトデ、肥料ノ價格ヲ
下ゲテ置クカラ、米ノ價格モ下ゲテ置イテ
宜シイト云フ、肥料、米ノ線ニ沿ウテ低物
價政策ヲ達成シヨウトスルヤウナ御話デア
リマス、併シナガラ私ノ考ヘマスル所デハ、
肥料ノ値段ヲ下ゲテ、米ノ値段ヲ下ゲルカ
ラト云ウテ、政府所期ノ目的ガ達セラレル
トハ斷ジテ考ヘナイノデアリマス、何故ナ
ラバ肥料ノ値段ヲ下ゲテ、米ノ値段ヲ下ゲ
ルト云フコトハ、政府ガ所謂重點主義ニ依
ツテ、米ニ對シテ八割ノ肥料ヲ配給スルト
申サレマシテモ、米ガ安ケレバ折角ノ安イ
肥料ヲ米ニ使フトハ斷ジテ限ラヌノデアリ
マス、卽チモツト割高ノ農產物ニ對シテ肥
料ガ流出ル虞ガ多分ニアル、肥料ガ安ケレ
バ米ガ安クテモ宜イト云フコトハ、決シテ
戰時下ニ於キマスル所ノ食糧政策ヲ完遂ス
ル所以デハナイト私ハ信ズル者デアリマス
(拍手)何處マデモ公正ナ價格、適正ナ價格
ヲ以テ進ムコトガ、絕對ニ必要ナモノナリ
ト私ハ確信スルモノデアツテ、政府ノ意圖セ
ラレマスル如クニ、肥料ヲ安クシテ米ヲ安
クスルト云フヤウナ線デ、斷ジテ濟ムモノ
デハナイト云フコトヲ考ヘルモノデアリマ
スルケレドモ、之ニ對シテ商工大臣ハ物價
政策上如何ニ御考ニナリマスカ、又農林大
臣ノ之ニ對スル御所見ヲ伺ヒタイト思フノ
デアリマス、右諸點ニ對シテ明確ナル御答
辯ヲ御願スルモノデアリマス
(國務大臣島田俊雄君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=29
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030・島田俊雄
○國務大臣(島田俊雄君) 只今ノ河野君ノ
御質問ニ對シテ御答ヲ致シマス、戰時下ニ
於テ必要ナル肥料ノ分量ヲ確保スルノ必要
ガアルト云フコトニ付キマシテハ、是ハ御
意見ノ通リニ考ヘテ居リマス、而シテ其ノ
點ニ付キマシテハ、昨年來政府ガ執ツテ居
リマス所ノ處置ニ付キマシテハ、屢〓御答シ
タ通リデアリマシテ、昨年末割當テタ肥料
ノ割當ニ付キマシテハ、所謂米麥重點主義
ニ依ツテ、大體其ノ決定ニ從ツテ肥料ノ分
配ヲヤル考デアリマシテ、之ニ付テハ先刻
モ御答致シマシタヤウニ、政府トシテハ確
信ヲ以テ是ガ可能デアルト考ヘテ居ル次第
デアリマス、次ニ本法案ノ十一條ニ依ル不
徹底ナル所謂工場管理、經營ト云フヤウナ
コトニ依ツテ、肥料ノ增產ノ計畫ガ出來ル
カ、斯ウ云フ點デアリマスガ、是ハ此ノ會
社ヲ設立スルニ付キマシテハ、只今御話ノ
アツタ、全部ノ工場ヲ合同シテ、一大進展
ヲスルノ擧ニ出デナカツタカト云フ點ニ關
聯シテ居ル次第デアリマスガ、只今現存シ
テ居ツテ、配給ノ任ニ當ツテ居ル會社ヲ先
ヅ合同ヲシテ、漸次ニ大成ヲシテ有機質、
無機質ヲ通ジテ肥料ノ全體ニ及ボシテ行ク
ト云フヤウナ考ヘ方カラシテ、先ヅ現在ア
ル大キナ二ツノ會社ヲ一ツニシマシテ、政
府モ亦出資ヲ致シテ此ノ會社ヲ設立シ、以
テ現在ノ差向キノ需要ニ應ジタイ、斯ウ云
フ考ノ下ニヤル譯デアリマシテ、卽チ此ノ
十一條ノ開カレテ居ル道ハ、或ハ協議スル
ト云フヤウナ微弱ナ規定デアルト云フヤウ
ナコトデアリマスケレドモ、實情ニ卽シテ、
設立後ニ於テ、此ノ規定ノ活用ニ依リマシ
テ、相當ナル效果ヲ擧ゲルコトガ出來ルモ
ノト考ヘテ居リマス、尙ホ大々的ニ國家ノ
必要ニ應ジテ、全體ニ於テ無機質肥料ノ增
產ヲ圖ルコトノ計畫ニ付キマシテハ、是ハ
此ノ會社ノ計畫トハ別ニ、若クハ是ト竝ン
デ、政府トシテハ尙ホ考ヲ以テ進マナケレ
バナラヌモノデアル、斯樣ニ考ヘテ居ル次
第デアリマス
次ニ新種肥料ト云フモノニ付テ、政府ハ
〓究ノ步ヲ進メテ行ク考ハナイカト云フ意
味ノコトデアリマシタガ、是ハ洵ニ政
府トシテ其ノ必要ヲ感ジテ居ル、殊
現時ノ如キ狀態ニ鑑ミマシテ、效果ノ多
イ新シイ種類ノ肥料ニ付テ〓究ヲシ、又ソ
レ等ノモノニ付テノ生產ヲ圖ルト云フ
コトハ、現下ノ事態ニ照シマシテ、最モ緊
要ナコトト考ヘルノデアリマス、唯此ノ
點ニ付キマシテ、從來遺憾ナガラ〓究ト云
フ方面ニ付テ、十分ノ手ガ伸ビテ居ラナカ
ツタト思フノデアリマスガ、自分ハ是等ノ
點ニ付キマシテハ、十分ナ努力ヲ致シマシ
テ、肥料ノ問題ニ付テ國ノ根本ノ基礎ヲ固
メテ行クヤウニ努力ヲ致シタイト考ヘテ居
ル次第デアリマス
次ニ此ノ會社ガ出來テ、配給ノ點ニ付テ
ハドウ云フ風ニスルカ、殊ニ地方ノ配給ニ
付テノ御心配ノ點ニ付キマシテハ、御承知
ノヤウナ實情デアリマスノデ、大體ニ於キ
マシテハ現在ノ機構ニ依ツテ流シテ行キ、
サウシテ漸次ニ之ヲ改良シテ行クト云フヤ
リ方ニ依ルノ外ハ、只今特別ナ事柄ニ付テ
考ヘル餘地ガナイノデアリマスガ、現在ノ
機構ニ於テ、既ニ地方々々ニ色々ナ問題ノ
アルコトヲ知ツテ居ルノデアリマスガ、先
ヅ此ノ會社ノ設立ヲ見マシテ、サウシテ地
方ノ問題ニ付キマシテハ、ソレニ適應シテ
指導ヲシ、此ノ配給ヲ圓滑ナラシムルノ方
途ニ出タイト、斯樣ニ考ヘテ居ル次第デア
リマス
次ニ飼料トノ關係ニ付キマシテハ、海
御尤モデアリマス、卽チ肥料ガ飼料ニナル、
隨テ配給セラレタル大豆粕ハ飼料ニスルカ、
肥料ニスルカト云フコトニ付テ、之ニ色々
ナ問題ノアルト云フコトハ承知致シテ居リ
やく、是ハ兩者ノ需要ヲ睨ミ合セマシテ、
飼料タルベキ部分ト、肥料トスベキ部分ニ
付テ、適當ナ配給ノ割合ヲ定メテ行クヤウ
ニ致シタイト、斯樣ニ考ヘテ居ル次第デア
リマシテ、此ノ問題ハ直チニ今起ツテ居ル
必要ナ問題デアリマスカラ、之ニ對シマシ
テハ相當ナ處置ヲ執ツテ、今申上ゲルヤウ
ナ方針ニ依ツテ、處置ヲシテ行キタイト考
ヘテ居リマス、以上一應私カラ御答申上ゲ
マス
〔國務大臣藤原銀次郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=30
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031・藤原銀次郎
○國務大臣(藤原銀次郞君) 河野君ニ御答
ヲ申上ゲマス、只今私ノ申上ゲマシタノハ、
政府ハ此ノ時局ヲ乘切ルガ爲ニハ、ドウシ
テモ低物價政策デ參リタイ、ソレニ付キマ
シテハ、我國ノ最モ重要ナル生產品ノ米ノ
如キ、之ヲ若シ値段ヲ上ゲルト云フヤウナ
コトニ致シマシタナラバ、低物價政策ハ直
チニ根本カラ覆ヘルト云フコトハ、是ハ私
カラ申上ゲルマデモナイコトト存ジマス、
ソレ故ニ兎ニ角農民ノ負擔ヲ出來ルダケ少
クスル、卽チ肥料ノ如キハ、之ヲ値上ヲス
ルト云フヤウナコトヲ、根本的ニナイヤウ
ニシテ、サウシテ之ヲ低廉ナ價格ヲ以テ澤
山ニ供給スルト云フヤウナ政策ヲ實行シテ、
同時ニ又他ノ一般物價ヲ騰貴セシメルト云
フヤウナ虞ノアル、例ヘバ石炭ノヤウナ、
斯ウ云フ品物ニ對シテモ、ヤハリ値上ヲシ
ナイヤウニシテ、サウシテ出來ルダケ農民
ノ負擔ヲ少クシテ、低物價政策ヲ遂行致シ
タイ、斯ウ云フ趣旨ヲ以テ進ンデ居ルノデ
アリマシテ、決シテ肥料ヲ安クシタカラ米
ヲ安クシテモ宜イデハナイカト云フヤウナ、
サウ云フ積リデ出發シテ居ルモノデナイト
云フコトヲ、ドウゾ御承知ヲ願ヒタイト思
ヒマス
〔河野一郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=31
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032・河野一郎
○河野一郞君 只今農林大臣ノ御答辯ハ、
最初ニ私申上ゲマシタル通リニ、現下ノ肥
料事情、農村事情ニ對スル大臣ト私トノ認
識ノ間ニハ、相當ノ距離ノアルコトヲ遺憾ニ
思フノデアリマス、卽チ私ノ御尋ハ、明肥料
年度、卽チ來ル八月ヨリ來年七月マデノ明
肥料年度ニ於ケル、政府ノ肥料ニ對スル確
保ノ條件ハ、ドノ程度ニ考ヘテ居ルノカ、
卽チ百「パーセント」ニ與ヘテヤル、今マデ
言ウタ通リニハヤル積リダト仰シヤイマス
ケレドモ、今マデヤル積リダト仰シヤル、
其ノ仰シヤル言葉ハ、卽チ八割デアリ、六
割デアルノデアリマス、大臣ハ過般吾々ノ
同志ヨリ御尋致シマシタ際ニモ、本質的ニ
數字的基礎ヲ間違ヘテ御答辯ニナツタコト
ガアル、例ヘバ硫安ニ付テハ、增產分ニ付
テハ、增產ニ要スル部分ニ付テハ加ヘテナ
イケレドモ、其ノ他ノモノニ付テハ斯ウ
斯ウ爾カ〓〓デ、今マデ政府ガ言ウタ通リ
ニヤルト云フヤウナ御答辯ニナツテ居リマ
スケレドモ、是等モ全ク違フノデアリマス、
モウ少シ事情ヲ十分ニ御調査ノ上、現在ノ政
府ノ地方ニ配給セントスル肥料ノ數量ガ、農
村ノ要求トドノ程度ニナツテ居ルカト云フ
コトヲ御調査願ヒタイ、昨年-度ニ於キマシテ
ハ、一昨年カラノ肥料ノ持越ガ相當ニ多カツ
タ爲ニ、政府ノ分配致シマシタ肥料デ、或ル
程度農村ハ肥料ノ分配ガ出來タノデアリマス、
今年ハ昨年ヨリ引續ク持越「ゼロ」ノ事情ニ
於テノ植付時ヲ迎ヘルノデアリマスカラ、昨年
ト今年トノ事情ノ間ニハ全クノ違ヒガアル、
而モ明年度ヲ考ヘマス時ニ、只今ノ大臣ノ
御認識ノ程度デハ、農村ハ益〓〓肥料ノ不足ヲ
深刻ニ傳ヘ、更ニ生產ニ於テ非常ナ不安ガ
生レテ來ルト私ハ思フノデアリマス、故
少クトモ明肥料年度ニ於テハ、今年ノ如ク
セズシテ、積極的ニ二割、三割、四割、卽チ
硫安ニ於キマシテハ、生產可能數量ノ全部
ヲ獲得スルダケノ御決心ガナケレバナルマ
イト私ハ思フノデアリマス、此ノ點ニ付テ
十分ナル御認識ヲ戴イテ、更ニ御答辯ヲ願
ヒタイ、是ニ於テ大臣ヨリ明確ニ將來ノ肥
料問題ニ對スル政府ノ御決意ヲ御發表ニナ
リマスルコトハ、農家ニ於テ肥料ヲ將來段
段ナクナルダラウト思ツテ買溜シテアル、
持ツテ居ルト云フヤウナモノヲ有無相通ジ
テ、オ互ニ分ケ合ツテ使フコトガアル、是
等ノ事情ヲ十分緩和スルニ足ルコトト考ヘ
マスカラ、私ハ大臣ヨリ此ノ機會ニ於テ、
明瞭ニ明肥料年度ニ對スル大臣ノ認識ヲ、
御說明願ヒタイト申上ゲルノデアリマス
第二ノ點ニ付キマシテモ、現下ノ事情ガ、
平時デアリマスルナラバ、先ヅ今アル會社
ヲ纏メテ、ソレカラ其ノ次ニ企業ノ點ニ付
テモ、工場ノ點ニ付テ考ヘルト云フコト
モ、一ツノ順序デゴザイマセウ、併シ苟モ
今日ノ事情ヲ吾々ハ考へマスル時ニ、サウ
云フ普通ノ考へ方ノ順序ヲ追ツテ居ルヤウ
ナコトデハ間ニ合ハナイ、吾々ハ此ノ議會
ガ濟ムカ濟マナイカニ、全國ニ肥料問題ノ
大キナ渦卷ノ卷クコトヲ豫想シテ居ルノデ
アリマス、甚ダ申上ゲ方ハ怪シカラヌカモ
知レマセヌケレドモ、其ノ事ノナカランコ
トヲ期待致シマスケレドモ、益〓深刻ニ急
「ビッチ」ニ其ノ方向ニ今進ンデ居リマス、
大臣ノ御考ニナツテ居ルコトトハ、非常ニ
距離ノアルコトヲ私ハ玆ニ申上ゲザルヲ得
ヌノデアリマス、失禮デアリマスケレドモ、
重ネテ御所見ヲ御發表ニナランコトヲ御願
シテ質問ヲ打切リマス(拍手)
〔國務大臣島田俊雄君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=32
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033・島田俊雄
○國務大臣(島田俊雄君) 私ガ河野君ニ御
答ヲシテ居ルノハ、此ノ七月ニ至ルマデノ
事柄ニ付テ、主トシテ御答ヲシテ居ツタノ
デアリマスガ、七月以降ノ事柄ニ付キマシ
テハ、是ハ原狀ニ復シ、卽チ百「パーセン
ト」增產計畫ニ付キマシテ、必要ナルモノ
ニマデ及ブダケノ能力ヲ發揮シ、供給ノ出
來ルト云フコトノ確信ヲ、將來ニ付テハ持ツ
テ居ル次第デアリマス、今年ノ難關ヲ
切拔ケルニ付テ苦心ヲシテ居ルコトヲ、私
ハ申上ゲテ居ルノデアリマス、左樣ニ此ノ
點ハ御諒解ヲ願ヒタイ、サウシテ此ノ會社
ノ出來タコトニ付キマシテ-之ヲ拵ヘル
ト云フコトニ付キマシテ、成程時局下ニ於
テ、非常時デアルカラ、急速ニ大キナ計畫
ヲ實現スルト云コトノ必要デアルト云フコ
トモ、是ハ御意見トシテ承リマス、併シナ
ガラ之ヲ實行スルト云フ時ニハ、又自ラ其
ノ間ニ段階ノアルト云フコトハ申スマデモ
ナイ次第デアリマシテ、卽チ政府ハ先ヅ此
ノ肥料業ノ關係者ノ作ツテ居リマスル、現
在ノ二ツノ配給會社ヲ集メテ一ツト爲シ、
サウシテ此ノ會社ノ成立ノ基礎ノ出來ルノ
ヲ待ツテ、更ニ其ノ次ノ「ステップ」ニ向ツ
テ行キタイト、斯ウ云フ考ヲ持ツテ居ルト
云フコトハ、先程申上ゲタ通リデアリマシ
テ、此ノ會社ガ出來タカラシテ、直チニ此
ノ肥料ノ增產ガ實現スルト云フコトヲ、斷
言シ得ナイ點ガアルカモ知レマセヌガ、是
等ノ會社ノ株主トナルベキ小會社ハ、何レ
モ製造工場ヲ持ツテ居ルモノデアリマスカ
ラ、之ニ對シテ電力ノ供給其ノ他ニ付テ優
先的ナ配當ガ出來ル以上ハ、只今問題ニセ
ラレマシタ全能力ヲ「フル」ニ働カセタ二百
万瓲程度ノ生產ト云フコトハ、決シテ難ク
ナイモノデアラウト思フノデアリマス、尙
ホ此ノ微弱ナル工場ノ管理ヲシ、經營ヲ併
セテスルコトガ出來マシタナラバ、相當ナ
增產ヲ期待スルコトガ出來ルヤウニ考ヘテ
居リマスカラ、私ハ只今河野君ノ御質問ノ
機會ヲ通ジテ、全國ノ農民諸君ニ對シテ、
明年度ノ七月以降ノ肥料ノ供給ニ付テハ政
府ハ不安ヲ持ツテ居ラヌ、斯ウ云フコトヲ
言明致シテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=33
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034・田子一民
○副議長(田子一民君) 野溝勝君
〔野溝勝君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=34
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035・野溝勝
○野溝勝君 上程ニナリマシタ日本肥料會
社法案ニ付テ、數點ニ亙ツテ質問ヲ致シタ
イト思ヒマス、大體質問ノ順序ヲ申シテ置
キマス、第一增產計畫ト肥料確保ニ於テ、第
二點ガ法案ノ性格ニ付テ、第三點ガ肥料ノ
價格政策ニ付テ、第四點ガ配給機構ノ確立
ニ付テ、第五點ガ肥料ノ國家管理ニ付テ、
以上五點デアリマス、爾カ致シマシテ此ノ
質問ヲ試ミル前ニ、私ト大體內容ヲ一ニ致
シマシタ同僚諸君ノ質問デ、重複シタ點ハ
省略致シタイト思ヒマス
第一點ノ增產計畫卜肥料ノ確保ニ付テデ
アリマスガ、政府ハ十五米穀年度ノ需給推
算ニ於キマシテ、厖大ナル計畫ヲ立テラレ
テ居ルノデアリマス、今日ノ戰時目的ヲ遂
行スルニハ、アノ食糧生產計畫ハ巳ムヲ得
ナイト私ハ思フノデアリマスガ、食糧生產
計畫ヲ立テルニハ、大臣モ御承知ノ通リ、
現下ノ農村ノ實情ヲ今少シク深ク掘下ゲテ
認識ヲ持ツテ貰ハナケレバナラヌト私ハ思
フノデアリマス、ナゼカナラバ、食糧生產
計畫ハ言フマデモナク天カラ降ツテ來ル譯
デモナク、地カラ湧イテ來ルモノデモナイ、
之ニハ勞力、資材、畜力ト云フモノガ、三
位一體的ニ之ニ力ヲ注グノデナケレバ、食
糧生產計畫ノ確保ト云フコトハ斷ジテ出來
ルモノデハナイ(拍手)然ルニ現下ノ農村ノ
實情ハドウカ、何百万人ト云フ出征軍人ノ大
部分ハ農村ノ子弟デアル、又畜力方面ニ於
キマシテモ軍ノ需要ガ多ク致シマシテ、是
ハ物動計畫デ-企畫院デ發表ハ致シマセ
ヌケレドモ、亦私モ此處デ發表スルコトヲ
避ケマスガ、折角增產計畫ヲ立テマシテモ、
軍ノ需要ガ多クアリマシテ、遂ニハ畜產增
產計畫モ中々思フヤウニ行カヌト云フ事情
ニアル、シテ見マスルト、折角ノ食糧生產
確保ガドウシテ出來マスカ、唯一點望ミヲ
掛クベキモノハ、肥料以外ニハナイ、此ノ
肥料ナクシテ〓糧ノ生產確保ト云フコトハ、
斷ジテ出來ナイノデアリマス、然ルニ今囘
ノ法案ノ精神ヲ見マスルト、從來ノ肥料法
案ト何等變ル所ガナイヤウニ私ハ認メル、
少シノ進步ハアルカモ知レマセヌケレド
モ、大體ニ於テ大同小異ト私ハ認メテ居ル、
少クトモ食糧ノ生產確保ヲセントスルナラ
バ、先ヅ肥料ノ生產方法ニ急激ナル變革ヲ
加ヘナケレバナラヌ、微溫的ナ寄木細工ノ
ヤウナ、接木細工ノヤウナ、右ノモノヲ左
ヘ持ツテ行ツタ程度ノ、コンナ肥料會社法
案位デ、此ノ食糧生產確保ト云フ重大ナル
問題ヲ解決スルナント云フコトハ出來ルモ
ノデハナイ(拍手)ソコデ先程同僚諸君ガ申
サレマシタガ、日本ハ多肥農業デアリマス、
輪作農業ヲヤツテ居ル所モ一部ハアリマス
ガ、我ガ信州ヲ初メ、日本全體カラ見ルナ
ラバ、大體ニ於キマシテハ多肥農業デアリ
マス、輪作農業デハアリマセヌ、シテ見レ
バ農業經營ノ唯一ノ條件ト致シマシテハ肥
料以外ニハナイ、然ルニ今囘ノ肥料法案カ
ラ見ルナラバ、其ノ事ヲ一ツモ考ヘテ居ナ
イヤウニ見受ケルノデアリマス、肥料ハソ
レ自體米デアリ、麥デアリ、繭デアル、シ
テ見ルナラバ、此ノ肥料ヲ解決スルコトニ
依ツテ、繭米、麥ト云フヤウナ、日本重
要農產物ノ解決モ自ヅト付クト斷ゼザルヲ
得ナイノデアリマス、爾カ致シマシテ今囘
ノ肥料法案ノ內容ヲ、ヨリ一層之ヲ檢討シ
テ見マスルト、私ハ容易ナラザルモノガア
ルト思ヒマス、今日政府ノ示サレタ肥料供
給量ト云フモノハ、同僚諸君ノ言葉ヲ藉リ
テ言フ譯ヂヤナイガ、實ニ危カシイモノデ
アル、米麥ニ於テ八〇%、其ノ他ノ物ニ於
テ六〇%、ソレモ完全ニ確保スルト云フコ
トヲ言明サレテ居リマスケレドモ、私カラ
之ヲ具體的ニ點檢スルナラバ、確保サレナ
イト見ル、何故カナレバ、申上ゲルマデモ
ナク硫安ソレ自體ニ於テノ現下ノ狀態ハド
ウカ、硫安ハ製造能力可能量一一百万瓲モア
ルト言ハレテ居リマスケレドモ、私達ハソ
ンナ大キナコトヲ言ヒタクナイ、現ニ一月
カラ七月ニ於ケル供給量六十六万五千瓲ノ
確保スラ不安デナラヌ、御承知ノ如ク內地
ノ生產量ノ外ハ外安十万瓲、滿洲方面カラ
少シ移入致シマシテ、ソレデ六十六万五千
瓲ノ供給量ト室明サレテ居ルノデアリマス
ケレドモ、先ヅ第一ニ內地ノ生產狀況ヲ見
ナサイ、電力調整令ノ發動ニ依リマシテ、漸
ク見込ガ付イテ來タラシイノデアリマスケ
レドモ、唯單ニ內地ノ生產量ダケデハ、政
府ノ考ヘテ居ルダケノ見込量ト云フモノノ
確保ハ出來ナイ、旣ニ問題デアルノハ滿洲
化學會社ハドウカ、是ハ政府ハ莫大ノ金ヲ
投ジテ滿洲國トノ間ニ出來タ會社デアル、
生產量二十四万瓲ノ可能生產量ガアル、然
ルニ前年度ハ何ダ、十二万五千瓲シカ出來
ナイヂヤナイカ、ソコデ內地ニ持ツテ行ク
十万瓲移入ノ豫定ガ、十二万瓲シカ出來ヌ
爲ニ、遂ニ滿洲ダケデ消費シテ、內地移
入ガ出來ナイ、外安ニシテモサウデアリマ
ス、十万瓲カラ輸入サレルト云ツテ居リマ
スケレドモ、恐ラク此ノ外安モ船舶ノ不足、
或ハ積出ノ困難、肥料ノ暴騰等ノ關係カラ
見テ、政府ガ考ヘテ居ルヤウナ譯ニ行カヌ
ト思ヒマス、電力調整令モサウデアリマス、
戰前ト今日トヲ比較シテ御覽ナサイ、戰前
ハ「フル」ニシテ有力會社ノ一時間ノ發電量
ト云フモノハ八万「キロワット」アツタ、今
日ハ電力調整令ガ發令ニナツタ後ト雖モ、
僅カ三万「キロワット」シカ復活シテ居ラナ
イ、シテ見ルト戰前ト今日ノ戰爭ノ際ニ於
ケル一時間ノ發電量ニ於テ、大體五万「キロ
ワット」ノ差ガアルノデアリマス、斯ウ云
フ心細イ情勢デハ、幾ラ大臣ガ言明サレマ
シテモ、私ハ今年度ノ供給量ヲ確保スルト
云フコトニ對シマシテハ、不安ヲ持タザル
ヲ得ナイノデアリマス、ソレバカリデハア
リマセヌ、硫安ヲ「カバー」スル爲ニ、智利硝
石ト云フモノヲ硫安可能量ニ見込ンデアル、
是ガ「インチキ」デアル、智利硝石ト云フモ
ノハ、成程窒素肥料デアリマスケレドモ、
是ハ水ニハ役立タヌ、特ニ私共ソヤウナ山
村デハ冷エマスカラ、此ノ智利硝石ハ役立
タナイ、冷エルバカリデハナイ、田圃ニ於
テハ役立タナイ、水トハ仲ガ惡イコトハ御
承知デセウ、此ノ仲ノ惡イ智利硝石ヲ十万
瓲輸入シテ、硫安ノ不足分ヲ「カバー」スル
ト言ツテ居リマスケレドモ、コンナコトハ
當ニナラヌ、肥效性分ニ於テ遙ニ劣ル、斯
ウ云フモノヲ硫安供給量ノ中へ織込ムト云
フコトハ、旣ニ私ハ當局ノ考へ方ガ狹クハ
ナイカト云フヤウニ思フノデアリマス、ソ
レバカリデハアリマセヌ、加里ニ致シマシ
テモ、或ハ石灰窒素ニ致シマシテモ言フコ
トハ澤山アリマス、加里ノ如キニ於キマシ
テモ、三万五千瓲ノ供給ガアルト云フヤウ
ナコトヲ言ツテ居リマスケレドモ、恐ラク
是モ醫藥ノ方ニ取ラレタリ、或ハ工業方面
ニ取ラレタリスルナラバ、此ノ三万五千瓲
ト云フモノハ、ヤハリ不安デアル、石灰窒
素ニ於テモ然リ、私ハソレ等ノ點ヲ一々此
處デ申上ゲテ居ルト時間ガアリマセヌカラ
申上ゲマセヌガ、兎ニ角供給量確保ト云フ
コトヲ大臣ハ言明サレテ居リマスケレドモ、
以上ノ點カラ推論スル時ニ、本年度米麥八
〇%、其ノ他六〇%ノ確保ニ對シマシテハ、
私ハ先ヅ此處デ相當確タル具體的ナ事實デ
モ示シテ貰ハザル以上、政府當局ノ言ヲサ
ウデスカト云ツテ鵜呑ニスル譯ニハ行カナ
イノデアリマス、此ノ點ニ付キマシテ當局
ハ若シ自信ガアルト云フコトデアルナラバ、
甚ダ僭越デアリマスガ、此處デ此ノ無機質
肥料ニ對スル月別計畫表ト云フモノヲ、御
發表願ヒタイト思フノデアリマス、是ハ唯
單ニ無機質バカリデハアリマセヌ、肥料政
策ハ-特ニ窒素成分ハ有機質モ關係ガア
ルノデアリマスカラ、此ノ窒素ノ不足分ヲ
大體有機質ニ依ツテ「カバー」シヨウトシテ
居ルヤウデアリマス、此ノ點モ同僚諸君ガ
先程述ベラレマシタノデ、私ハ重複スル所
ハ避ケマスガ、一點ダケ申上ゲテ置キタイ
ト思ヒマス
昨年私ハ滿洲へ行ツテ來マシタ、滿洲へ
行ツタノハ、唯滿洲へ行ツタト云フダケデ
ハナイノデアリマス、ソレハ先年來問題ニ
ナツテ居リマスル肥料ノ調査ニ行ツタノデ
アリマス、特ニ有機質ノ問題ニ付キマシテ
ハ、掘下ゲテ調査ヲシテ來ナケレバ、十五
肥料年度ガ心配ニナリマスノデ、特ニ調査
ニ參リマシタ、滿洲ニ於テハ國策會社ガ幾
ツモ出來テ居リマス、特ニ大豆專管公社ガ
大豆ヲ扱ツテ居リマス、糧穀方面ニ於テハ、
糧穀會社、或ハ生活必需品會社ト云フモノ
モアリマス、是等ノ會社ハ各〓大豆ヲ扱ツ
テ居リマス、此ノ大豆專管公社ノ能力タル
ヤ、實ニダラシナイモノデアリマシタ、サウ
申シテハ失禮デアリマスガ、大豆專管公社
ノ命令ガ行ハレテ居ラナイノデアリマス、
居ラナイドコロカ、統制ガヤカマシイト云
フノデ、大豆ノ本質的性分ヲ其ノ儘トシ、
規格ヲ變ヘ所謂小豆板ニシタリ、大豆粉末
ニシタリシテ、ドン〓〓送リ出シテ居ル、
甚シキニ至ツテハ臺灣ノ役人マデ來テ、ド
ンドンヤツテ居ル、何ガ日滿支「ブロック」
デアルカ、何ノコトカ分ラヌ、斯ウ云フコ
トデハ私達ハ全ク國民ニ對シテ斯クアルベ
キデアルト云フコトヲ言切ルコトガ出來ナ
イ、國策會社ト云ツテモ、其ノ會社ノダラ
シノナイヤリ方ハ、實ニ見下ゲタモノデア
ル、ソコデ大豆專管公社ガ慌テテ一生懸命
デ關東軍、或ハ滿洲國アタリヘ話込ンデ、
ドウニカ大豆ノ出廻リヲ宜クスル爲ニ、協
力シタ結果、統制ヲ强化スルコトニナツタ、
例ヘバ輸送方面、大豆一切ノ原料ニ至ルマ
デ、統制ヲ大豆專管公社デヤルコトニナツ
タ、ソレニ依ツテ漸ク出〓ルヤウニナツタ
ガ、聞ク所ニ依ルトマダ〓〓完全ナ統制デ
ハナイヤウデアリマス、斯樣ナ次第デ政府
ガ考ヘテ居ルヤウニ安心出來マセヌ、大豆
ニ於テ前年度七十五万瓲、本年度九十万瓲、
大豆粕ニ於テ前年度八十一万瓲、本年度百
七万瓲ト云フヤウナ計數ヲ發表サレテ居マ
スケレドモ、私ハ此ノ計算ニ對シテハ、只
今ノ事情カラ非常ナ不安ガアリマス、ソレ
バカリデハナイ、魚肥ニ於テハドウデスカ、
釜石アタリニ於テハ、重油ガナイ爲ニ一統
五六隻トシテ百統、三千隻ガウロ〓〓シテ
居ツタサウデアリマス、此ノ連中ハ魚獲リ
ヲヤリタイガ、遺憾ナコトニ發動機ヲ動カ
ス石油ガナイ爲ニ、漁獲ニ向フコトガ出來
ナイト云ツテ、非常ニ憤慨シテ居ツタノデ
アリマス、斯樣ナ實情カラ見マシテモ、魚
粕ノ點ニ於テモ非常ナ不安ガアル、ソレバ
カリデハナイ、各縣ガ一「ブロック」ヲ作ツ
テ、自分ノ所デ獲ツタ魚ハ成ベク他ヘ出ス
ナト云フコトカラ、遂ニ魚粕ノ出〓リガ惡
クナツタ、仕方ガナイカラ政府ハ朝鮮ヘ飛
ンデ行ツテ、魚粕ノ出廻ヲ少シヅツ付ケテ
貰フト云フ狀態デアツタ、斯樣ナ點カラ見
テ不安ハ多イノデアリマシテ、右ノ事情カ
ラ見ルト、政府ノ供給量確保ト云フ言明ニ
對シテハ、信ヲ置クコトガ出來ナイノデア
リマス
ソコデ結論ト致シマシテ、第一ノ質問ヲ
要約スルト、次ノ三點ニナリマス、第一點、
政府ノ米麥八〇%、其ノ他六〇%トアルモ、
目的達成ノ爲ニハ國家權力ヲ發動シテモ供
給確保ヲスル自信ガアルカドウカ、第二點、
肥料確保八〇%トカ、六〇%トカ言フガ、
戰時食糧生產確保ヲスル爲ニ電力ヲ「フル」ニ
出シテ、米麥繭等ヲ一〇〇%位ニ改編スル
ト云フ意思ヲ持タレテ居ルカドウカ、第三
點ハ、本年度肥料供給量デ、果シテ農產物
ノ增產計畫ノ目的ヲ達シ得ラレルヤドウカ
ト云フコトヲ御聽シタイノデアリマス
次ハ本法案ノ性格デアリマス、本法案タ
ルヤ前法案ト餘リ代リ榮エノシナイ法案デ
アリマシテ、此ノ點ニ付キマシテハ、同僚
諸君ノ御質疑ノ中ニモアリマシタ通リ、私
ハ同感デアリマス、併シ同感デハアリマス
ケレドモ、マア前ノ法案ヨリハ一步前進デ
アルダケハ認メルモノデアリマス、併シ一
步前進デハアリマスガ、政府ハ御承知ノ如
ク、今日肥料界ガ混亂シタノハ何處ニ原因
ガアルカト云フコトヲ、先ヅ檢討シタ上ニ
此ノ法案ヲ出サレタノカドウカ、私ハ其ノ
點ニ疑問ヲ持ツモノデアリマス、今囘ノ肥
料界ノ混亂ハ、重要肥料ノ統制バカリヤリ
マシテ、有機質ノ肥料ノ統制ヲヤラナカツ
タ爲ニ、ソツチノ方カラ爆發致シマシテ、
肥料界ガ大混亂シタコトハ御承知ノ通リデ
アリマス(拍手)一生懸命ニ硫安ノ公定ダ、
ヤレ過燐酸ノ公定ダ、加里ノ公定ダト云ツ
テ騒イデ居ル中ニ、片方ガ拔ケテ居リマス
カラ、片方カラ鰌ヤ鰻ノヤウニズル〓〓ト
辷リ出テシマツタ、ソコデ結局闇相場ト云
フモノガ起ルノデアリマシテ、遂ニ有機質
ノ暴騰トナリ、〓騰トナツテ、之ヲ抑ヘル
コトガ出來ズシテ、肥料界ガ大混亂ニ陷ツ
タノデアリマス、ソコデ肥料ニ對スル統制
ハ、唯單ニ無機質バカリノ統制デハ駄目ダ
ト云フコトノ結論ガ得ラレタ譯デアリマス、
無機質ダケノ統制デハ駄目ダ、有機質ヲモ
一〓ニシタ、卽チ無機質、有機質其ノ他
內地生產、外地生產、一切ノ肥料ニ對スル
所ノ一貫シタ統制ヲシナケレバ、到底肥料
價格ノ公定、需給ノ圓滑ト云フヤウナコト
ハ圖リ得ラレナイ事實ヲ、賢明ナル政府ハ
既ニ體得サレタノデハナイカト思フ(拍手)
然ルニ又コンナ程度ノ法案ヲ出サレルヤウ
デハ、是ハ又心細イ次第デアル、政府ニ對
シテ申上ゲタイコトハ、眞ニ本法案ノ目的
タル需給ノ圓滑、價格ノ公正、先程誰カモ
言ヒマシタケレドモ、廉價配給ト云フコト
ノ目的ヲ達成セントスルナラバ、政府ハ思
切ツテ、肥料ニ對スル一貫シタ統制ヲ行フ
意思ガアリヤ否ヤト云フコトヲ御聽シタイ
ノデアリマス、又本法案モ國策會社ニ依ツ
テ統制サレルヤウニ出來テ居リマス、國策
會社洵ニ結構デアリマス、併シ其ノ國策會
社タルヤ、他ノ方面ハ知リマセヌケレド
干、私ノ知ツテ居ル範圍ノ國策會社ハ、恐
ラク其ノ目的通リヤツテ呉レタコトハ一囘
モアリマセス、肥料會社ニ致シマシテモ、
飼料會社ニ致シマシテモ、揭ゲル看板、旗
印ハ非常ニ宜シイ、金魚ヤ鮒ヤ鯉デハナイ
ガ、餌ガ來タト思ツテ直グニ飛ビ付ク、飛
ビ付イタノハ宜シイガ、飛ビ付イタ所ガ、
其ノ中ニ鈎ガアツタト云フヤウニナツテシ
マツタ、是ハ噓僞リデモ何デモナイ、今農
民ノ憤激シタ氣持ヲ聞イテ御覽ナサイ、オ
前達ハ何ノ爲ニ一體議會ニ出テ居ルノデア
ルカ、大臣達ニ騙マサレテ居ルンダト云フ
碌デモナイコトヲ言フ、私ハ憤慨致シマシ
タガ、併シドウモ大衆ニハ勝テナイ、自分
ダケハ信ジテ居リマスケレドモ、大勢ノ口
デアリマスカラ、其ノ大勢ノ口ニ對シマシ
テ私ハ一々抗辯ハ出來ナイ、私達ハ斯ウ云
フコトヲ聞ク時ニ、決シテ私ハ大臣達ガ嘘
僞リヲ言フトハ思ツテ居リマセヌケレドモ、
少クトモアナタ方ガ折角太鼓判ヲ捺シテ決
裁ヲシテ提案シ、可決シタ法律ノ精神ガ、
國民ニマデ浸透シテナイト云フコトニナリ
マスト、又其ノ方針ガ國民ノ下ニ浸透スル
時ニハ、逆ナ方向ニ向ツテ居ルトスルナラ
バ、結論ハ何ト言ツテモ噓ニナツテシマツ
タ、私達ハ其ノヤウナ國策會社ヲ今日マデ
多ク見受ケテ居ル、今囘ノ國策會社モ大體
ニ於テ其ノ轍ヲ覆ムノデハナイカト云フコ
トヲ、私達ハ憂慮スル者デアリマス、特〓
此ノ國策會社ハ、旣ニ聞ク所ニ依リマス
ト、大體ノ機構ハ出來テ居ルサウダト言ヒ
やっ、大體ノ機構ガ出來テ居ツテ、此ノ法
案ヲ出スト云フコトハ、甚ダ偕越ノヤウニ
思ヒマスガ、ソレハ噂ダト思ヒマスカラ、
深入シテ詮議シタクハナイケレドモ、斯ノ
如キ半知半解ノ內容ヲ持ツテ居ル國策會社
デ、此ノ肥料法案ノ目的ヲ達シ得ルコト
ガ、果シテ出來ルヤ否ヤ、之ヲ御聽シタイ
ノデアリマス
次ニ肥料ノ價格政策ニ付テ申上ゲテ見タ
イト思ヒマス、本法案ガ肥料ノ買上販賣或
ハ輸入、移入等ノ統制ヲ强化シタルハ當然
デアリマスガ、生產ニ關シテハ一ツモ觸レ
テナイノデアリマス、先程河野君ノ御話ニ
依リマスシ、餘程觸レテ居ルヤウニ言ハレ
マシタガ、私カラ見ルナラバ逆ナ見方ヲシ
テ居リマス、私ハ寧ロ觸レ方ガ少イト思ツ
テ居リマス、是ハモツト徹底的ニ觸レナケ
レバナラヌト思ヒ、マス、デアリマスカラ、
大體ニ於テ此ノ肥料案モ七八分マデハ統制
シタガ、後ノ二三分ガ拔ケテ居リマスカ
ラ、中氣ノ肥料統制ニナツタ、中氣ノ肥料
會社法案ニナツタ、是ハ甚ダ殘念ニ思ヒマ
ス、ソコデナゼ政府ハ販賣カラ買上カラ輪
入移入ノ一切ヲ統制シテ、肝腎ナ生產
ヘドウシテソレニ手ヲ染メナイカ、何處カ
オツカナイ所ガアルノデスカ、アナタ方ハ
權力ヲ持ツテ居ルヂヤナイデスカ、實力ヲ
持ツテ居ルヂヤナイデスカ、議會ダケガオ
ツカナクテ、外ノ所ハオツカナイ所ハナイ
デセウ、議會ハ氣味ガ惡イ、早ク濟メバ宜
イト思フデセウガ、其ノ他ニハ苦痛ナ所ハ
ナイデセウ、然ラバナゼ之ニ手ヲ染メナイ、
自治的統制ニ任スト云フコトヲ能ク言ツテ
居リマスガ、今綺制經濟ヲ主張シテ居ツテ
自治的統制トハ何デスカ、ソンナ統制經濟
ガアリマスカ、一方ニ於テハ自治的統制、
一方ニ於テハ自由經濟、一方ニ於テハ統制
經濟、是ハ何デスカ、私達ハソンナ經濟論
ヲ今日マデ〓ハツタコトハナイ、サウ云フ
コトカラ官僚獨善ト言ハレテ居ルガ、私カ
ラ言ハセルナラバ官僚獨善デハナイ、官僚
腰拔ケデアル、官僚ガ腰拔ケニナツテシマ
フカラ、中氣ノ統制經濟ニナツテシマツテ、
問題ガ起ツテ來ル、サウ云フ點ヲ能ク御考
ニナルナラバ、製造ニ對シマシテ自治的統
制ナント云フコトハ、實際是ハ見樣ニ依ツ
テハ、資本家統制デアルト私ハ思ヒマス、
サウ云フ點ニ付キマシテ、ナゼ一體政府ハ
思切ツテ生產方面マデモ統制シヨウトシナ
イカ、先程モ申シマシタ通リ、肥料界ノ混
亂ハ-消費方面ノ統制、價格方面ノ統制
ハシタケレドモ、惜シイ哉生產方面ニ對ス
ル統制ガシテナカツタ爲ニ、肥料ノ生產力
ガ減リマシテ、遂ニ闇相場ヲ起シテ今日ノ
狀態ニ至ツタノデアリマス、玆ニ思ヲ及ボ
スナラバ、何ガ故ニモウ一步進ンデ生產統
制ニ手ヲ染メナカツタカト云フコトニ付テ
遺憾ニ存ズルモノデアリマス、政府ハ生產
統制ニ、今後力ヲ入レル氣カドウカト云フ
コトヲ御伺シタイノデアリマス、而シテ今
囘ノ法案、價格政策ノ點デアリマスガ、外
地生產ノ肥料、例ヘバ硫安ニスルナラバ、
日本デハ瓲當リノ生產費ガ百圓近ク掛ル、
所ガ外國カラ持ツテ來ル硫安ハ二百圓乃至
二百五十圓掛ルサウデス、最近三井ノ輸入
シタ二万瓲ノ肥料ノ瓲當リノ生產費ヲ見ル
ト、三百圓ニ達シテ居ルト云フコトヲ言ツ
テ居リマス、シテ見ルト內地ニ於テハ百圓、
外國カラ輸入シタ所ノ硫安ニ付テハ三百圓、
一體此ノ價格調整ヲドウシテ行クノデアリ
マスカ、又最近ニ於テ硫安ノ公定値ト云フ
モノヲ決メマシタケレドモ、外安ト內地ノ
硫安トノ生產費ヲ、ドウ睨合セテ最近ノ硫
安ノ公定値ト云フモノヲ決メマシタカ、ソ
レヲ御伺シテ置キマス
次ニ商工大臣ニ御尋致シマスガ、アナタ
ハ一月十日ノ豫算總會デ、肥料、石炭ニ對ス
ル値上ハセヌト云フコトヲ言明サレテ居リ
マシテ、是ハ新聞ニモ出テ居リマス、又農
林大臣ハ二月二十八日ノ閣議ニ於テ、滿洲
輸入ノ有機質肥料ニ對シマシテハ、二月十
八日以來二割ヲ上ゲタト云フコトヲ報告サ
レテ居リマス、是ハ何ノコトデスカ、上ゲ
タコトガ低物價ニナルノデスカ、私ハ經濟
論モ何モサウ學ンダ者デハナイガ、物ノ上
ルノハ高物價ダト思ツテ居ル、物ノ下ルノ
ハ低物價ダト思ツテ居ル、此ノ通リ解釋シ
テ間違ヒナイデセウ、然ルニ一方商工大臣
ノ方ハ低物價ト言ツテ居ル、一方農林大臣
ノ方ハ高物價ヲ實行シテ居ル、是ハ何ノコ
トデスカ、斯ウ云フ一ツノ具體的ノ事實ヲ
以テ私ハ質問スルノデアリマスカラ、何モ
アナタ方ガ答辯技術デ以テ、ココデ胡麻化
サウトシテモ、其ノ手ニハ私ハ乘ラナイ、
ソコデ是ハ今日ノ國民ノ要求トシテ、肥料
ハ何トシテモ政府ニ要請シ、出廻リヲ宜ク
シテ貰ハンコトニハ生產ガ出來ヌノデ、當
局ニ賴ム、當局ハ國民ノ要望ニ應ヘテ、何
ヲ偖テ措キ高クテモ何デモ肥料ヲ出シテヤ
ラウ、出廻リヲ宜クシテヤラウト云フアナ
タ方ノ氣持ニハ相違ナイト思ヒマス、其ノ
氣持ハ能ク分ルノデアリマスガ、ト云ツテ
政府ニ價格政策ニ一定ノ方針ガナイト云フ
コトハ、又非常ニ危險デアリマス、所謂一
方ニ於テハ販賣方面ヲ扱ツテ居ル商工大臣
ノ價格政策ハ低物價、又生產指導方面ニ當
ツテ居ル農林大臣トシテハ高物價、是デハ
價格政策ノ混亂デス、甚ダ困ル、仍テ此ノ
際先ヅ兩關係大臣ニ於キマシテ、此ノ肥料
ノ價格政策ヲ內外地脱合セマシテ、ドウ調
整シ價格公定ヲシテ行クカ、商工大臣、農
林大臣ノ責任アル御答辯ヲ御願シマス
續イテ奬勵金ノ問題デアリマスガ、奬勵
金ヲ出スコトハ、是ハ肥料代ヲ上ゲタト云
フ譯ニハナラヌ、斯ウ言ヒマスケレドモ、
是モ見樣デアルト思ヒマス、奬勵金ハ直グ
ソレハ肥料代ノ値上ニハナリマセヌケレド
モ、私ハ間接ノ値上ニナツテ來ルト思フ、
ソレバカリデハナク、肥料公定値ノ肥料代
ト奬勵金トノ幅ガ、是ハ闇取引ヲヤツテモ
宜シイゾヨト云ツタヤウナコトニモ解釋出
來ル、ソンナコトハ勝手ナ解釋ダト言ヘバ
ソレマデデスガ、兎ニ角今日ハ一モ闇、二
モ闇、三モ闇デ、闇ト云フ常套語ニ使ハレ
テ居ル時代デアリマス、善イカ惡イカハ別
問題ト致シマシテ、闇ヲヤツテモ屁デモナ
イヤウニ考ヘテ居ル今日ノ世ノ中デアリマ
ス、ソコデ奬勵金ヲ政府ガ出スコトニナリ
マスト、政府ニ於テモソレマデ面倒ヲ見テ
ヤルト云フコトナラバ、尤モ無理ハナイ、
マアソレ位ハ闇ガアツテモ宜イト云フ風ニ
解釋サレル、此ノ奬勵金問題ニ對シマシテ、
公定價格トノ間ニ於テ闇ヲ起サセルト云フ
コトニナルガ、商工大臣ハ此ノ點ニ付キマ
シテドウ考ヘテ居ルカ伺ヒタイ
最後ニ肥料ノ配給機構ニ付テ御尋致シタ
イ配給機構ノ點ニ付キマシテハ、私ハ急イ
デ確立シテ貰ハナケレバナラヌト思ヒマス、
配給機構ニ付テハ色々努力サレテ居ルコトモ
見受ケマス、私達モ能ク其ノ事ハ承知シテ居
リマス、併シ今ノヤウナ狀態デアルト、殆ド
地方ノ行政ト云フモノハ、每日商人ト農民
ト、ソレカラ農村ノ中デモ生產者團體ノ農會
ト配給團體ト、又其ノ間ニ富農ト貧農ノ間ニ
於キマシテ、物資ヲ繞リマシテ色々ナ相剋
摩擦ガ展開サレテ居ルノデアリマス、此ノ
原因ハ、配給機構ノ不整備カラデアリマス、
配給機構ガ打テバ響ク頭ノ天邊カラ爪先マ
デ一貫的ニ作用サレルナラバ、コンナ問題
ハ起ラナイ、地方廳ニ行ツテ御覽ナサイ、
政府カラ言テツ來ルコトハ實ニ困ル、上ノ
頭ノ方デ決メテ置イテ、ウルサイコトハオ
前達ノ方デ何トカ調整シテヤテツ行ケト云
フ、是デハ吾々ハ全ク人ノ相剋摩擦ノ調停
役ニナツテ來タヤウナモノデ、コンナ地方
長官ナラ有難クナイト言ツテ居ル、地方長
官ノ言フコト必ズシモ正シクアリマセヌガ
兎ニ角今日ノ配給機構ト云フモノハ、實
私ハ徹底ヲ缺イテ居ル點ガアルト確信スル
者デアリマス、何故ナラバ、今日ノ配給機
構ハ、旣ニ實績數量ヲ基準ニシテ作ツタ配
給機構デアリマス、實績數量ノ多イ者ニ多
ク流シ込ムノデアリマスカラ、ドウシテモ
商人方面ニ偏在スル傾向ガ相當多イ、ソコ
デ私ハ此ノ實績數量ニ依ル配給內容ハ色々
ナ相剋ガアリマスルカラ、此ノ實績數量ハ
配給方針ヲ變ヘナケレバナラヌ、今マデノ
實績數量デハ金ノアル者ハドン〓〓買ツテ
金ノナイ者ハ買ヘナイ、昭和四年以來百姓
ハ農業恐慌ノ不景氣デ肥料ガ入ラナイ、幸
ニ近頃ニナツテ漸クドウニカ肥料モ少シ買
ヘルヤウニナツタノデアリマス、斯ウ云フ
狀態デ百姓ハ相當困ツテ居ツタ、ダカラ百
姓ノ肥料ノ實績數量ハ少ナカツタ、斯樣ナ
譯デ、今日ノ百姓ハ其ノ實績數量デ割當テ
ラレルト相當困ル、ソコデ割當方針ヲ改メ
ナケレバナラヌ、然ラバドウ改メタラ宜イ
カト云フト、先ヅ私ハ作付段別、土壤ノ性
質ソレカラ農作物ノ種別ヲ中心ニ割當テ
ルコトガ正シイト思フ、例ヘバ此ノ農作物
ニ對シテハ「アンモニア」ガ必要カ、加里ガ
必要カ、燐酸ガ必要カ、種類ニ依ツテ各〓
違ヒマス、ソレカラ氣候ノ關係モ同樣デア
ル、此ノ點ヲ科學的ニ綜合的ニ調査ヲ致シ
マシテ、其ノ上ニ立ツタ配給方針デナケレ
バ今ノヤウニ唯單ニ實績數量ダケノ目安ニ
依ツテ配給方針ヲ立テルコトハ、私ハ誤ツ
テ居ルト思フノデアリマス、ソコデ機構上
ノ問題デアリマスガ、此ノ機構ノ問題ニ付
キマシテハ、今日ハ商人ト產業組合ニナツ
テ居リマスガ、是モ亦變ヘナケレバナラヌ
肥料商ト產業組合、此ノ關係ヲモツト私ハ
一元化シナケレバナラヌト思ヒマス、サウ
スルニハ先ヅ生產者ヲ中心ニシテ、機構ノ
改革ヲシロト云フコトヲ言フ者デアリマス、
生產者ヲ中心ニ、生產團體ヲ中心ニ、生產
團體ト云フナラバ農會ト云フコトニモナリ
マスガ、兎ニ角生產團體ヲ中心ニ、而シテ
產業組合ナドニ付キマシテモ、私ハ今日ノ
富農ト貧農トノ間ニ於ケル產業組合ノ組織
機構ガ、少シ缺點ガアリマスノデ、ソレヲ
修正スルナラバ、生產團體ト同一ニ認メテ
ヤツテモ宜イノデアリマスケレドモ、先ヅ
產業組合ガ今日個人全般ノ農民ガ全部加入
シ得ル所ノ機構ニナツテ居ナイ以上ハ、取
敢ヘズ生產者團體タル農會ヲ中心ニシテ、
配給機構ノ一元化ヲ圖ル意思アリヤ否ヤト
云フコトヲ聽キタイノデアリマス
最後ニ肥料ノ國家管理ニ付テデアリマス、
此ノ點ニ付キマシテハ、先程同僚長野君、
濱地君-河野君ハ言ヒマセヌデシタケレ
ドモ、オ二人ノ意見ハ、完全ニ國家管理ヲ
力說シテ居リマシタ、大臣ノ之ニ對スル答
辯ハ、漸次其ノ方向ニ向ヒツツアルト云フ
コトヲ言明サレテ居ル、又向ハナケレバナ
ラナイト云フヤウナ意思表示モサレテ居リ
マシタ、私ハ非常ニ心强ク感ジテ、又期待
ヲシテ居ル者デアリマスガ、此ノ際政府ノ
御意見モ分リマシタカラ、私ハ國家管理ニ
對スル質問デナク、希望ダケヲ申シテ置キ
マス、ソレハ第一ガ肥料ノ生產、集荷、配
給消費、各分野ノ一貫的統制ヲスルコト、
二ガ全肥料輸移出入ヲ計畫化スル爲、輸移
出入ノ肥料ト、輸移出入農產物ノ綜合「リン
ク制ヲ採用スルコト、第三ガ物動計畫ハ
食糧ト肥料トノ關聯ニ於テ優先的ニ配給ヲ
サレルコト、是ガ實行サレルナラバ、國家
管理ト何等選ブ所ハナイト思ヒマス、之ヲ
取敢ヘズ大馬力ヲ掛ケテヤツテ貰ヒタイト
思ヒマス、政府ハ電力ノ國營ヲ實行致シマ
シタ、マダ今日ハ配電方面ニハ電力國營ハ
實行サレテ居リマセヌケレドモ、大體發送
電方面ノ電力ハ國營化サレタノデアリマス、
次ニヤラナケレバナラヌモノハ、肥料ト石
炭デアルト思フ、右ニ肥料ノ國營、左ニ石
炭ノ國營ヲ實行スルナラバ、日本ノ產業部
面ト云フモノハ、農業、工業ノ全分野ニ於
テ、國家意思ニ基イタ所ノ計畫的統制ガ行
ハレルト思フノデアリマス、私ハドウカ左
樣ナ計畫的統制經濟ヲ實行スルコトガ、今
日長期戰下ニ於ケル目的ヲ遂行スル最モ重
要ナルコトデアルト信ズルガ故ニ、特ニ此
ノ點ヲ要望シテ私ノ此ノ質問ヲ打切ル者デ
アリマス(拍手)
〔國務大臣島田俊雄君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=35
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036・島田俊雄
○國務大臣(島田俊雄君) 野溝君ノ御質問
ニ御答致シマス、食糧作物ノ增產ニ關シテ、
肥料ノ確保ト云フコトニ付テ、政府ノ言明
ニ對シテ疑ヲ持ツト云フ御言葉デアリマシ
タガ、政府トシテハ屢〓、御答ヲ申上ゲマスヤ
ウニ、肥料ノ供給ニ付キマシテハ、相當ノ
確信ヲ以テ實行ヲ努力シテ居ル次第デアリ
マスカラ、此ノ點ニ付テハ帝國政府ノ責任
アル當事者ノ言明ヲ、ドウゾ御信用ヲ願ヒ
マシテ、唯不安デアルヤウナ氣分ヲ國民ノ
間ニ流布スルヤウナコトノ虞ヲ妨グ意味ニ
於テ、御協力ヲ願ヒタイト思ヒマス
次ニ本法案ノ本質ト云フコトニ關シテ、
色々ノ御意見ガアリマシタガ、是ハ曩ニモ
提案ノ際ニ申上ゲマシタヤウニ、此ノ會社
ノ設立ヲ以テ肥料問題ガ全部解決スルト、
斯樣ニ政府ハ考ヘテ居ル譯デハナイノデア
リマス、現在ノ肥料界ノ情勢ニ鑑ミマシテ、
先ヅ肥料ノ配給ノ意味カラ致シマシテ、需
給ノ調整ヲ圖ルト云フ意味カラシテ、無機
質肥料ノ方面ニ於テ、本會社ノ成立ヲ以テ、
此ノ方面ニ對スル應急ノ處置トシテ之ヲヤ
リタイ、而シテ之ヲ有機質ノ肥料ト相結ビ
テ、肥料全體ノ問題ノ解決ニ進ムヤウニ致
シタイ、斯ウ云フ考ヲ提案致シタ次第デア
リマシテ、本會社ノ成立ヲ以テ、總テノ問
題ノ解決ニ至ルモノト申シテ居ル譯デハア
リマセヌ、卽チ其ノ一ツノ有力ナ手段デア
ル、斯樣ニ考ヘテ提案ヲ致シテ居ル次第デ
アリマス
次ニ肥料ノ價格ノ問題ニ付キマシテ、色
色ノ御意見ガアリマシテ、殊ニ大連ノ大豆
其ノ他ノ値上ノ問題ニ關聯シテノ御意見ガ
ゴザイマシタガ、滿洲國ニ於テ大豆ノ値上
ヲシタト云フコトニ付キマシテ、是ハ內地ノ
肥料ノ事情、飼料等ノ關係カラ致シマシテ、甚
ダ其ノ事柄ニ付テハ、內地トシテハ困ル次
第デアリマスケレドモ、日滿支一體「ブロック」
ト云フコトヲ謂ヒマスガ、滿洲國ハ獨立ノ國家
デアリマスカラ、連絡ハ十分ニ取リマスケ
レドモ、滿洲國ニ於テ、滿洲國自體ノ事情
カラ致シマシテ、大豆ノ値上ヲシタト云フ
コトニ付テ、帝國ノ側ニ於キマシテ、物價
政策ノ變更ヲ來シタト云フヤウナ意味ノ御
考ヲ御持チ下サルコトハ、寧ロ御考直シヲ
願ヒタイト思フノデアリマス
次ニ配給機構ノ事柄ニ付キマシテハ、一元化
シテヤルト云フコトニ付テノ御理想ハ、政府
モ持ツテ居ルノデアリマス、併シナガラ現在
ノ事情ニ於テ、產組、商業團體、是等ヲ通シテ
ヤツテ居ル所ノ地方ノ配給ノ事情ニ付キマ
シテハ、暫ク此ノ實情ニ卽シテ之ニ依ツテ
ヤツテ、漸次此ノ改良ヲ圖ツテ行クノ途ヲ
執ルコトガ適當デアル、斯ウ云フコトヲ繰
返シテ御答シテ居ルノデアル、理想論トシ
テハ、一元化ト云フコトハ結構デアリマス
ケレドモ、事實ニ於テ是ハ現在ノ方法ニ依
ルノ外ハ。途ガナイト考ヘテ居ル
次ニ國家管理ニ關スル事柄ニ付テ、段々
御意見ノ御開陳ガアリマシタガ、是ハ只今
直チニ國家管理ニ行ク、專賣ニ行クト云フ
次第デハアリマセヌケレドモ、其ノ道程ニ
於テ野溝君ノ御述ニナリマシタ各種ノ御意
見ハ、政府ハ有力ナル參考トシテ拜聽致シ
テ置クコトヲ申上ゲテ置キマス(拍手)
〔國務大臣藤原銀次郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=36
-
037・藤原銀次郎
○國務大臣(藤原銀次郞君) 野溝君ニ御答
申上ゲマス、肥料價格ニ付キマシテハ只今
農林大臣カラ御答辯ガゴザイマシタ通リ、
私モ同樣ナ考ヲ持ツテ居リマシテ、政府ニ
於テ價格問題等ニ付テ、所信ヲ異ニスルト
云フヤウナコトハ絕對ニゴザイマヌカラ、
左樣御承知ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=37
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038・野溝勝
○野溝勝君 自席ヨリ御許ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=38
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039・田子一民
○副議長(田子一民君) 簡單ナラ自席デ許
シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=39
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040・野溝勝
○野溝勝君 商工大臣ニ對シテ二點質問シ
タノデアリマスガ、奬勵金問題ト價格公定
ノ問題ニ對スル御答辯ガアリマセヌ、ソレ
ヲ御願致シマス
〔國務大臣藤原銀次郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=40
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041・藤原銀次郎
○國務大臣(藤原銀次郞君) 奬勵金ヲ交付
致シマスルコトハ、肥料ノ價格ヲ引上ゲル
コトガ、農民ノ負擔ヲ增加スル所以デアル
カラ、此ノ際ハ肥料ノ價格ヲ引上ゲナイ
デ、肥料ノ增產ヲ圖リタイト云フ趣旨カラ
出マシタモノデアリマシテ、政府ニ於キマ
シテハ是ガ爲ニ闇取引ガ行ハレルトカ云フ
ヤウナコトハ考ヘテ居リマセヌカラ、左樣
御承知ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=41
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042・田子一民
○副議長(田子一民君) 吉田賢一君
〔吉田賢一君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=42
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043・吉田賢一
○吉田賢一君 私ハ政府ニ向ツテ肥料生產
ノ問題ト、輸入肥料ノ問題、價格ノ問題、
損失補償ノ問題、肥料資金融通等ノ問題ニ
付テ、數項質疑ヲ致シテ見タイト思ヒマス
申スマデモナク肥料ノ問題ハ、米ノ問題
ニ關聯ヲ持チマシテ、國家ノ重要問題ノ
ツト信ジマス、肥料事情ガスツカリ安定致
シマスルト、恐ラク米穀事情モ安定ニ赴ク
モノト思ヒマス、斯クテ政治モ安定スルノ
デアリマセウ、肥料ハ申スマデモナク優良
質ノ增產ト、價格ノ安定ト、潤澤ナ供給、
此ノ三ツノ要素ガ備ハリマシテ、玆ニ肥料
問題ノ解決ノ途ガアラウト信ジマス、然ル
ニ現在ノ狀況ハ增產ノ面ニ於キマシテモ、
種々ノ事情カラ非常ニ悲觀スベキ狀況ニア
ルト信ジテ居リマス、今大臣ハ野溝君ノ質
問ニ對スル答辯トシテ、相當御安心ノヤウ
ニ仰シヤイマシタケレドモ、少クトモ豫定
サレテ居リマシタ有ユル化學肥料ガ、過去
ノ種々ナ原因ニ因リマシテ夥シク減產致シ
マシタ其ノ數量、其ノ缺陷ヲ生ジテ居リマ
スル數量ハ、今後ノ努力ガドンナニアリマ
シテモ、囘復スルコトハ不可能ト信ジマス、
然ル時ニソレダケハ供給面ニ於キマシテ自
ラ缺陷ヲ生ジテ參リマスルノデ、今日ノ米
穀其ノ他農產物ノ大增產ヲ必要ト致シマス
ル時ニ、極メテ重大ナ影響ヲ持ツテ居ルモ
ノタルコトハ勿論デアリマス、併シナガラ
增產ニ付キマシテハ、出來ルダケ諸般ノ手
段ヲ盡スベキコトハ申スマデモゴザイマセ
又、私ハ增產ノ問題ニ付テ色々手段ハアリ
マセウケレドモ、斯ウ云フコトガ取上ゲラ
ルベキ問題デナイカト思ツテ居リマス、卽
チ凡ソ化學肥料ノ工場ハ、最新ノ工場ニ
ナル程設備ガ優秀デゴザイマシテ、日進
月步ト謂ハルル變遷ヲ遂ゲツツアリマス、
併シ厖大ナ資金ヲ本トシマス關係上、俄ニ
古イ設備ヲ取替ヘルコトハ困難デアリマ
ス、ソコデ幾十カノ製造會社ノ中、優良ナ
ル設備ヲ持チ、優レタ能率ヲ學ゲツツアル
會社ノ製品ト、サウデナイ劣ツタ設備能率
ノ會社ノ製品トノ間ニ、三段位ノ價格ノ等
差ヲ設ケマシテ、能率ノ低イ設備ノ會社ニ
對スル價格ヲ成ベク引上ゲテヤル、斯ウ云
フヤウナ方法ヲ執リマスト、ソレハ生產ノ
有力ナ奬勵ニナリ、又色々ナ設備ノ百「パー
セント」ノ活用ニナルノデハナイカト思
ヒマス、統計ニ現ハレタ所ニ依リマスルト、
例ヘバ硫安會社ニ致シマシテモ、總計二百
四十万瓲ノ生產力ガアルト言ハレテ居リマ
ス、是等ノ方面ヲ十分ニ活用スルコトガ、
增產ノ基本的ナ條件ノ一ツデアルコトヲ思
ヒマスル時ニ、價格ニ等差ヲ設ケマシテ、
劣ツタモノヲ出來ルダケ導イテヤル、斯ウ
云フ風ニスルノガ宜クハナイデアラウカ、
優秀ナ成績ヲ持ツテ居ル會社ハ、〓シテ日
本ノ有力ナル財閥ノ會社デゴザイマスカ
ラ、斯ウ云フ等差ヲ設ケル國策ノ行キ方ニ
對シテ、恐クハ反對スマイト思ヒマス、就
テハ其ノ點ニ付テ政府ノ御所見ヲ伺ヒタイ
ノデアリマス
第二ニハ、本法律案ニモ新會社ノ事業ト
致シマシテ、肥料ノ製造ナルモノガ規定サ〓
レテアリマス、私ハ國家總動員法ノ第八條
ヲ適用致シマシテ、生產命令、配給命令ヲ
肥料ニ對シテ出シテハドウカ、是ハ隨時用
ヒ得ラレル簡便ナモノデアリマスノデ、其
ノ方法ヲ何時モ用意シテ居ルト云フコト
ヲ、此ノ法律ノ運用ト共ニ考ヘテ置クベキ
デハナイデアラウカ、ソレ程肥料ノ增產ハ、
國家ノ重大ナル緊迫シタル問題デアルト考
ヘマスルガ故ニ、此ノ點ニ付キマシテ政府
ノ御考ヲ伺ヒタイノデアリマス
次ニ生產ノ重要ナ基礎條件ト致シマシテ、
電力ニ付テハ相當優遇サレルコトニナツタ
ヤウデアリマスルケレドモ、更ニ廣ク原料
タル石炭ニ付キマシテ、是ハ多クノ他ノ工
業生產部門ノ需要モアルコトデアリマスル
ケレドモ、肥料生產國策ノ重大ナルコトニ
鑑ミマシテ、思切ツテ石炭電力等ヲ有ユル
化學肥料ノ生產工場ニ對シテ優先的ニ配給
シ、生產計畫ヲ確保スルコトニ協力スルコ
トガ、此ノ際最モ望マシイコトデハナイカ
ト思ヒマス、殊ニ石炭ニ付キマシテハ、法
律的ナ關係ハ別ト致シマシテ、經濟的ナ資
本構成ノ關係ハ、昭和肥料系統ト日本ノ大
キナ肥料會社ノ資本系統ハ大體似テ居リマ
スルノデ、サウ云フ種々ノ便宜モアリマス
ルカラ、ココハ一ツ國家ノ大キナ目的ノ爲
ニ、商工大臣ハ御奮鬪ト言ヒマスヨリモ、
其ノ方針ヲ御立テニナツテハ如何カ、
層徹底的ニ其ノ方へ進マレテハ如何カト思
ヒマスルノデ、御所見ヲ伺ヒタイノデアリ
マス
ソレカラ更ニ生產ニ關シマシテハ、工場
ノ能率ヲ擧ゲマスル爲ニ勞働者ニ對シマシ
テ、例ヘバ總動員法第六條ノ關係ノ勞働者
雇入ノ制限等ニ付キマシテハ、是ハ肥料製
造業者ニ優先權ヲ與ヘルト云フ風ニ致シマ
シテ人員ヲ增加シ、休養時間ヲ更ニ與ヘル
コト等ガ、工場ノ能率ヲ擧ゲ得ル最モ重要
ナ方法デアラウト考ヘルノデアリマス、就
キマシテハ肥料國策ニ協力スル意味ニ於テ、
厚生省當局ノ御所見ヲ拜聽シタイノデアリ
マス
次ニ價格ノ問題ニ付キマシテ、價格ハ無
機質ノ肥料ハ大體公定サレテ居リマスルケ
レドモ、併シ有機質ノ肥料ハ、數日前ニ大豆
粕ガ公定サレマシタ以外ハ、成行キ放任デ
アリマスル爲ニ、到ル處デ闇ガ行ハレテ、
品ガ拂底シテ居ルコトハ申スマデモゴザイ
マセヌ、ソコデ私ハ廣ク是等ノ闇ノ成行キ
ヲ憂慮致シマシテ、其ノ暴騰ヲ抑壓スル爲
ニ、一刻モ早ク有ユル有機質肥料ニ向ツテ、
價格ヲ適正ニ統制スルコトガ必要デハナイ
カ、サウシマセヌト無機質肥料ガ入手難
デアリマスノデ、有機質ノ肥料ノ方へ買氣
ガ段々ト募ツテ行クコトガ、勢ヒ闇取引增
大ノ拍車ニナリマス、目下農村ハ、殊ニ吾
吾ガ平素接シテ居リマスル關西ノ地方ニ於
キマシテハ、昨年ノ大旱魃ニ依リマシテ、
肥料ヲ僅カ蓄積シテ居ル者モアリハ致シマ
スルケレドモ、大部分ハ肥料資金ニマデ窮
シテ居ル現狀デアリマス、サウ云フ農民
ガ無機質ノ肥料、配合肥料ノ入手ニ困リ、有
機質ノ諸肥料ヲ眼ノ出ルヤウナ高イ値デ買
ハサレルト云フ窮狀ニ置カレテ居リマスル
コトヲ思ヒマスト、一刻モ早ク適切ナル價
格政策ノ實行ガ、農村ノ爲ニ最モ望マシイ
コトト考ヘルノデゴザイマス、サウ云フ方
面ヲ完全ニ爲スノデナカツタナラバ、本法
案ノヤウナ制度ガドンナニ完備致シ、中央
ニ於ケル配給機關ガ完成致シマシテモ、
肥料國策ハ地方的ニ破綻シテシマフ、價格
ノ方面カラ破綻シテシマフト云フ結果ニナ
ラト存ズルノデアリマス、就キマシテハ一
刻モ早ク有ユル有機質ノ肥料ニ對スル價格
ノ公定ヲ爲サレル御意思アリヤ否ヤニ付
テ、御伺シタイノデアリマス
次ニ目下ハ過燐酸石灰ヤ加里鹽ナドハ、
事實配給ガ行ハレテ居ラヌト思ヒマス、或
ハ私ノ見聞ガ狹イカモ分リマセヌガ-ソ
コデ加里鹽或ハ燐礦石ナド、殊ニ加里鹽ニ
付キマシテハ、歐洲大戰ノ爲ニ輸入杜絕ト
云フ窮狀ニナツテ居ルコトハ、百モ承知致
シテ居リマスルガ、併シナガラ日本ノ此ノ
肥料國策ノ重大ナルニ鑑ミマシテ、加里鹽
モ、燐礦石其ノ他從來輸入シテ居リマシタ
所ノ輸入肥料ニ付キマシテモ、ヤハリ事變前
ノ實績ニ近似ノ數量ヲ確保スルト云フ目標
ニ向ツテ、有ユル努力ヲ傾注サレンコトヲ
願ヒタイノデアリマス、加里肥料ナドハ數
量ガ少イカラト云フヤウナ見方ガ、若シア
リト致シマスナラバ、洵ニ是ハ農村ノ民心
ニ與ヘル影響ノ危險ナルノコトヲ考ヘネバナ
ラヌノデゴザイマシテ、何カ知ラヌケレド
モ、入手出來ヌトカ、無イトカ云フヤウナ
コトハ、農家ノ不安ヲ增大スルノミデアリマ
シテ、他ノ方面ニ對スル惡イ刺戟、影響ノア
ルコトヲ考慮シナケレバナリマセヌ、ヤハリ
肥料ハ必要ナル有ユル種類、要素ヲ準備スル
コトノ方向ニ向ツテ、肥料國策ガ遂行セラレ
テ行カレンコトガ望マシイノデアリマシテ、
ソレニ對スル御用意、乃至ハ現狀ト將來ニ
付テノ御意見ヲ拜聽シタイノデアリマス
次ニ肥料ノ潤澤ニ配給サレルコト、配
給確保ト云フコトハ、是ハ農家ノ立場カ
ラハ、終局ノ問題トシテ實ニ重要ナ「ポイ
ント」デゴザイマス、然ルニ現在スル肥料
ノ絕對數量ハ別ト致シマシテ、農家ノ手許
ト云フ立場ニ於キマシテハ、缺乏ノ狀態デ
ゴザイマス、是ノ影響シマス所ハ實ニ重大
ト考ヘマシテ、密カニ憂ヘル所ハ、例ヘバ
農家ニ米作ヲ抛棄スルヤウナ思想ガ生ジハ
シナイデアラウカトサヘ憂ヘマス、若シ夫
レ供米ガ進マナカツタリ、膏惜ガ出來タリ
必要量以上ニ貯藏スルト云フ傾向ヲ助長シ
タリ、サウ云フコトハ日常見ル所デゴザイ
マスガ、何レニ致シマシテモ、茲ニ肥料增
產ノ計畫ヲ立テ、適正安價ナル價格ヲ据置
キ、而シテ潤澤ニ配給スルト云フ、此ノ最
後ノ段階ニ於キマシテハ、是ハ非常ニ末梢
ニ亙リ、ソレダケ分野ガ全農村ニ亙リ廣ウ
ゴザイマスカラ、吾々ハ萬全ノ方法ヲ講ズ
ルノ必要ガアルデアラウト存ジマス、中央
ニ於キマシテ本案ノヤウナ會社ヲ拵ヘマス
ルコトハ、至極簡單ニ出來ルカモ分リマセ
ヌガ、此ノ現實ノ地方々々ノ配給面ニ至リ
マシテハ、實ニ複雜多岐デアリマスカラ、
ソレニ關スル一二ノ問題ヲ御尋致シマス、
一ツハ肥料資金ノ融通ノコトデアリマス、
資金ガナクシテ商人ニ已ムヲ得ズ一割以上
ノ利息デ肥料ヲ借リル、サウ云フ場合ニハ
文句ナシニ肥料ヲ受ケマシテ、良質、惡質
ナドヲ見分ケルコトスラシナイ、左樣ナ立
場カラ農家ヲ救フコトハ、單ナル肥料配給
ノ問題ト申スヨリモ、肥料國策ノ重要ナ
眼目デゴザイマス、一方玆ニ一ツノ資料ト
シマシテ、信用組合ガ持ツテ居リマスル貯
金ハ、推定二十八億圓ト言ハレテ居リマス、
此ノ二十八億圓ノ金ハ、ソレ〓〓ト用ヒラ
レテ居リマセウ、又組織サレテ一ツノ資本
ノ形態ヲ成シ得ルモノテゴザイマス、之ヲ
地方へ還元致シ、農村ニ還元シマシテ、農
家ノ不自然ナル窮狀ヲ救フト云フ方ヘ、積
極的ニ利用スルト云フコトハ、最モ重要ナ
手段デハナイカ、私ガ見聞スル所ニ依リマ
シテモ、關西ノ早害地帶ニ於キマシテ、小
作農家ガ早害ノ爲ニ、肥料ヲ買フ爲ニ支拂
フベキ金モナク、已ムヲ得ズ平素心易ク願
ツテ居ル商人ニ、數百圓ノ新シイ借金ガ出
來タト云フ實例モ多々存ジテ居リマス、
是ハ特異ナ例デハナク、一般的ナ例デゴ
ザイマスルノデ、サウ云フ方面ニ對スル
徹底的ナ救濟ノ途ヲ講ズルコトガ、肥料
ノ配給獲得ノ機會ヲ均霑セシムル意味ニ
於テ、非常ニ重要デアラウト存ジマス、就
キマシテ只今ノ信用組合ノ持テル貯金
ヲ、此ノ問題ニ利用スルコトニ對スル御所
見ヲ伺ヒタイノデアリマス、モウ一ツハ
旱害地帶ニ對シマシテ、肥料ヲ貸付ケルト
云フ方法ハ出來ナイモノデアラウカ、或ル
地方ニ於キマシテハ、ヤハリ資金難ガ原因
デアリマスルカ、信用組合ノ振ハナイコト
モ原因致シマシテ、三千圓以上ノ資產ヲ持
ツテ居ル者ガ保證シナイト、產業組合カラ
モ肥料ヲ供給シナイト、斯ウ云フ村ガゴザ
イマス、サウ云フヤウナ人々ニ對シマシテ
モ、私ハ融資ノ外ニ現物ノ貸付ト云フ方法
ガ何トカ出來ナイモノデアラウカ、就テ
ハソレニ對スル御所見モ伺ヒタイノデアリ
ママ、配給ノ機構トカ、或ハ方法トカ等ニ
付キマシテ、幾多ノ問題ガアリマスルケレ
ドモ、他ノ諸君ノ御質問モアツタヤウデア
リマスルカラ、此ノ二點ニ付テ私ハ御伺シ
タイノデアリマス
ソレカラ先ニ野溝君ガ御尋ニナツタ奬勵
金其ノ意味ト私ガ問ハウトスルノト同ジ
デアルカモ存ジマセヌガ、本年ノ一月カラ
十二月マデニ、化學肥料ノ製造會社ニ五千
万圓限度ニ助成金、奬勵金ナドヲ交付スル
ト云フコトデアリマスガ、之ニ付テ私ハ其
ノ必要ガアルノカドウカト云フコトト、ソレ
ハ一體何時マデ續クノデアラウカト云フヤ
ウナコトヲ御伺シタイノデアリマス、三菱
經濟〓究所ノ調査ニ依リマスルト、日本窒
素其ノ他ノ六大肥料會社ノ純益ハ、昭和十
二年ノ下半期カラ十四年ノ下半期ノ十月ニ
至リマスルマデ、拂込資本金ニ對シマシテ一
割二分カラ一割八分マデノ純益ヲ擧ゲテ居
マス、此ノ會社ノ利益配當モ勅令デ制限ヲ
受ケマスカ、斯樣ニ一割以上ノ純益ヲ擧ゲ
テ居ルト云フコトハ、非常ニ優良ナ事業會社
ト申サネバナリマセヌ、勿論化學肥料ノ會
社ハ構成、營業ナド、非常ニ複雜デアリマ
スノデ、單ニ肥料ノミヤツテ居ルノデハナ
イコトハ知ツテ居リマスケレドモ、何レニ
シマシテモ、會社ノ計算ト致シマシテハ、
一割以上ノ純益ヲ擧ゲテ居ルノデアリマス、
サウ云フ場合ニ年額五千万圓ヲ補助、若ク
ハ奬勵助成ノ爲ニ與ヘルト云フコトハ、是
ハ今日ノ物價政策、或ハ一般ノ物資增產ノ
政策ノ根本ニ影響ヲ持ツ、重大ナル問題デ
ハナイカト思ハレマス、サウ云フ風ニ會社ト
シテハ優良ナ收益ヲ擧ゲテ居ル場合ニ、斯
ク國家ガ多額ノ金額ヲ補償スルコトガ、原
則トシテ認メラレルコトニナリマシタナラ
バ、例ヘバ日本全國ノ五百六十万ノ農家ハ、
一體ドウナルノデゴザイマセウカ、一般生
產農家ノ生產費ト農業收支、或ハ小作農ガ小
作料ヲ支拂ツタ殘リノ收益等ノ經濟的收支
ノ關係ハ、嚴密ニ言フナラ損失デゴザイマ
ス、小作農、生產農家ガ現下ノ物資、物價
ノ諸事情カラ考ヘテ見マシテ、皆損ヲシツ
ツアルノデアリマス、サウスルトサウ云フ
人々ニ對シマシテ、是モ一齊ニ補助ヲセナ
ケレバナラヌノデハナイカト、斯ウ云フ問
題モ起ツテ參リマス、又年額五千万圓ヲ補
助致シマシテ、五年モ繼續スルト二億五千
万圓ニ上リマス、左樣ナコトナラバ、百尺
竿頭一步ヲ進メテ、寧ロ是等ノ會社ヲ國家
ガ買收致シマシテ、ソレ等ノ工場ノ經營者
ヲ官吏ニ登用シテ優遇シ、技能ヲ十分ニ發
揮セシメマシテ、之ヲ經營スルト云フ所マ
デ行ツテハドウカトサヘ私ハ考ヘルノデゴ
ザイマス、何時マデ續クノデゴザイマセウ
カ、ナゼ左樣ナ補償ヲ御出シニナルノデア
リマセウカ、御答辯ヲ拜聽シタイノデゴザ
イマス
最後ニ全體トシテ、此ノ會社案ヲ見ルト、
肥料配給ノ一面デゴザイマシテ、生產ニ付
テハ規定ハアリマスルケレドモ、是ハ第九
條第三號ニナツテ居リ、或ハ經營管理
ノコトモアリマスガ、是モ第十一條ニ
アルガ、非常ニ重大デナイヤウナ規定ト
見マスノデ、ヤハリ本案ノ重點ハ、中央ニ於
ケル配給機構ノ綜合統一確立ト云フ點
ニ、此ノ法案ノ狙ヒノ重點ガアラウト思ヒ
やっ、ソレデハ日本ノ肥料國策ノ全體ノ建
前カラ致シマシテ、非常ニ不徹底ノモノト
存ジマスルノデ、是ハヤハリ生產面カラ
配給ヘ、最後ノ消費ニ至リマスマデ一貫シ
タ計畫ガナケレバ、大時局ニ直面シタ肥料
國策ノ確立ニハナルマイト考ヘテ居ルノデ
ゴザイマス、之ニ付キマシテモ御意見ヲ拜
聽出來レバ仕合セデアリマス、以上ヲ以チ
マシテ私ノ質疑ト致シマス(拍手)
〔國務大臣島田俊雄君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=43
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044・島田俊雄
○國務大臣(島田俊雄君) 吉田君ノ御質問
ニ御答致シマス、增產ノ方法ニ付テ優秀ノ
設備ヲシテ居ルモノト、設備ノ劣等ナルモ
ノトノ間ニ區別ヲ付ケテ、サウシテ生產品
ノ價格ニ付テ適當ナ段階ヲ設ケテノ奬勵ノ
方法ニスルナラバ云々ト云フコトニ付キマ
シテハ、政府ト致シマシテモ、大體サウ云
フヤウナ考ヘ方ヲ以テ進ムコトガ適當デア
ルト云フ考ヲ以テ、處置シテ行ク計畫ヲ
シテ居ル次第デアリマス
次ニ肥料生產ニ付テ、總動員法ノ發動ニ
依ツテ、生產命令ヲ出スト云フヤウナコト
ノ御意見デアリマスガ、是ハ臨時措置法ノ
發動ト致シマシテ、省令ヲ以テ此ノ生產ノ
命令ヲ爲スコトガ出來ルノデアルカラ、必
要ノ場合ニハ此ノ規定ヲ運用シテ、其ノ目
的ヲ達シタイト考ヘテ居リマス、次ニ無機
に
質肥料ノ價格ニ關聯シテ、有機質肥料ノ價
格ニ付テ、公定ヲ爲スノ意思ガアルカト云
フコトデアリマスガ、是ハ御說ノ通リニ、
無機質ノ肥料ノ價格ノ公定ヲ爲ス以上ハ、
有機質肥料ニマデ之ヲ及ボスコトハ當然デ
アリマシテ、出來得ル限リニ於テ、之ヲヤ
ル方針ヲ以テ進ンデ居ルノデアリマス、大
豆ノ油粕デアルトカ、サウ云ツタヤウナモ
ノニ付テハ、旣ニ價格ヲ公定シタ物モアリ
マス、又魚肥ニ付キマシテハ、是ハ其ノ集
荷方法等ニ付テ相當困難ガアリマスノデ、
ソレ等ノ方法ニ付テ順序ガ立チマスレバ、
之ニ關シマシテモ價格ヲ公定スルノ必要ガ
アルト、斯樣ニ考ヘテ居ル次第デアリマス、
是ハ御話ノ通リニ公定ノ必要ノアルコトヲ、
政府トシテハ認メテ居ルト云フコトヲ御答
申上ゲテ置キマス·
尙ホ各種肥料、原料タル礦石ノ輸入等ニ
關シマシテ、色々ナ御意見ガゴザイマシタ
ガ、之ニ付キマシテハ御說ノ通リニ、或物
ハナイト、農民ニ對シテサウ云フコトヲシ
マスコトハ、農民心理ノ上ニ刺戟ヲ與ヘル
ト云フ御意見ハ、御尤モト考ヘマスガ、政
府トシマシテハ、此ノ輸入ニ付テハ、各種
ノ礦石ニ付テ出來ルダケノ手段ヲ講ジテ、
此ノ事變中デアリマシテモ、又歐羅巴ノ戰
爭ノ事情ガアリマシテモ、ソレ等ノ關係カ
ラ、輸送力、船等ノ關係ニ色々變動ハアリ
マスケレドモ、ソル等ノ事情ヲ克服シテ、
出來ルダケノ必要量ヲ輸入スルコトニ努メ
テ居ル次第デアリマシテ、大體ニ於キマシ
テハ、或ル特殊ノ物ヲ除クノ外ハ、其ノ目
的ヲ達スルコトハ出來ルト、斯樣ニ考ヘテ
居ル次第デアリマス
尙ホ配給ノ確保ノ點カラシテ、肥料ノ購
入ニ因ル場合ニ、購入資金ノ融通ト云フコ
トニ付テ御意見ガアリマシテ、信用組合ノ資
金ヲ融通スルト云フヤウナ御意見モアリマ
シタガ、政府ト致シマシテハ、此ノ點ニ付
キマシテハ、年々肥料ノ資金トシマシテ四
千万圓以上ノ低利資金ヲ融通スルト云フ方
法ヲ執ツテ居ルノデアリマスガ、尙ホ是ハ
只今御意見ノヤウナ點モ大イニ參考ニ致シ
マシテ、此ノ肥料ノ購入資金ニ困ツテ居ル
方面ニ向ツテ、適當ニ肥料ノ手ニ入ルヤウ
ナ方法ヲ講ズルト云フコトハ、十分ニ〓究
シテ行キタイ、實施シテ行キタイト、斯樣
ニ考ヘテ居ル次第デアリマス
尙ホ肥料生產ニ付テノ助成金ノコトデア
リマスガ、是ハ昨年以來ノ肥料ノ需給ニ鑑
ミマシテ、只今公定ノ價格ト輸入ノ肥料ノ
價格、或ハ實際ノ生產費等ノ關係カラ致シ
マシテ、水力ガ石炭ニナツタ爲ニ生ズル電
力量ノ差額トカ、サウ云フ種々ノ點ヲ考ヘ
テ、臨時ノ處置トシテ助成ヲシテ、肥料ノ
生產確保ノ爲ニ、之ヲ實際處置シテ居ル次
第デアリマシテ、此ノ意味カラ臨時ニヤツ
テ居ル次第デアリマスカラ、更ニ其ノ肥料
事情ノ變ル先ノ問題ニ付キマシテハ、更之
根本的ニ是ハ、考ヘテ行ク必要ガアラウト考
ヘテ居ル次第デアリマス、助成金ノ點ハ、
左樣ナ意味ニ御了解ヲ願ツテ置キタイト思
ヒマス(拍手)
〔國務大臣藤原銀次郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=44
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045・藤原銀次郎
○國務大臣(藤原銀次郞君) 吉田君ニ御答
申上ゲマス、吉田君ハ十分御承知ノコトト
存ジマスガ、只今我國ノ肥料製造會社ニ於
キマシテハ、製造ノ能力ヲ持ツテ居リマス
ニモ拘ラズ、其ノ能力ヲ十分ニ發揮セシメ
テ生產ヲ增加スルト云フコトガ、不可能ノ
狀態ニ相成ツテ居リマスノハ、色々ノ事情
モゴザイマスケレドモ、先般來ノ電力、石
炭ノ不足ト云フヤウナコトガ、主ナル原因
デアルト云フコトハ能ク御承知ノコトト存
ジマス、ソレ故ニ此ノ電力若クハ石炭ノ缺
乏ノ爲ニ、折角持ツテ居リマスル工場能力
ヲ十分ニ發揮セシメルコトガ出來ナイデ、
其ノ爲ニ或ハ農民ニ不自由ヲ掛ケ、若クハ
高イ外國ノ肥料ヲ輸入シナケレバナラヌト
云フヤウナコトハ、國家トシテ是ヨリ不經
濟ナコトハナイノデアリマスカラ、政府ニ
於キマシテハ、兎ニ角至急ニ此ノ石炭ノ增
產ヲ圖リマシテ、電力及ビ石炭ヲ十分ニ肥
料會社ニ供給致シマシテ、サウシテ此ノ休
眠的ノ機械設備ヲ至急ニ運轉セシメテ、肥
料ノ增產ヲ圖リタイト云フ方針ヲ以テ、不
日石炭增產ニ關スル議案ヲ本議場ニ提出シ
テ御協賛ヲ願ヒタイ存ジテ居リマス
尙又サウ云フ事情デアリマスカラ、此ノ
石炭ニ關係致シマス所ノ物資ノ配給トカ、
若クハ勞力ノ點ナドニ付キマシテハ、他ノ
產業ニ優先シテ之ニ配給致シマシテ、サウ
シテ肥料增產ニ支障ノナイヤウニシテ、農
民ノ爲ニ幾分デモ多量ニ、且ツ安イ肥料ヲ
供給致シタイト、斯ウ云フ積リデ努力致シ
テ居リマスノデ、左樣御承知ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=45
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046・田子一民
○副議長(田子一民君) 是ニテ質疑ハ終了
致シマシタ、本案ノ審査ヲ付託スベキ委員
ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=46
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047・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ議長指名十八名ノ委
員ニ付託サレンコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=47
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048・田子一民
○副議長(田子一民君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=48
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049・田子一民
○副議長(田子一民君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程
第二、商業組合法中改正法律案ノ第一讀會
ヲ開キマス-藤原商工大臣
第二商業組合法中改正法律案(政府
提出)第一讀會
商業組合法中改正法律案
商業組合法中左ノ通改正ス
第四條商業組合ハ其ノ名稱中ニ商業組
合ナル文字ヲ用フベシ但シ
第十七條ノ二又ハ第二十七條ノ二ノ規
定ニ依ル商業組合ハ統制商業組合ナル
文字ヲ用フベシ
商業組合ニ非ザルモノハ其ノ名稱中ニ
商業組合ナル文字ヲ用フルコトヲ得ズ
第十七條ノ二又ハ第二十七條ノ二ノ規
定ニ依ル商業組合ニ非ザル商業組合ハ
其ノ名稱中ニ統制商業組合ナル文字ヲ
用フルコトヲ得ズ
第十一條第一項ヲ左ノ如ク改ム
本法ニ依リ登記スベキ事項ハ本法ニ別
段ノ規定アル場合ヲ除クノ外其ノ事實
ノ生ジタル後二週間以內ニ之ヲ登記ス
ベシ
第二十一條ノ三行政官廳監督上特ニ必
要アリト認ムルトキハ第三條第一項第
二號ノ事業ヲ行フ商業組合ノ理事又ハ
監事ノ選任又ハ解任ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ選任セラレタル理事
又ハ監事ノ解任ハ行政官廳ノ認可ヲ受
クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第二十六條ニ左ノ一項ヲ加フ
特別ノ事情アル場合ニ於テハ行政官廳
ハ第三條第一項第二號ノ事業ヲ行フ商
業組合ノ定款又ハ第七條ノ規程ノ變更
ヲ爲スコトヲ得
第三十二條ノ二商業小組合ハ小商業者
ヲ以テ之ヲ組織シ組合員ノ共同ノ利益
增進ヲ圖ルヲ以テ目的トシ組合員ノ取
扱商品ノ仕入、保管、運搬其ノ他組合
員ノ營業ニ關スル共同施設ヲ爲スモノ
トス
前項ノ小商業者ノ範圍ニ關シ必要ナル
事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
商業小組合ハ法人トス
商業小組合ハ第一項ノ事業ノ外組合員
ノ營業ニ關スル指導、〓究、調査其ノ
他組合ノ目的ヲ達スルニ必要ナル施設
ヲ爲スコトヲ得
商業小組合ハ其ノ名稱中ニ商業小組合
ナル文字ヲ用フベシ
第三十二條ノ三商業小組合ノ組合員ノ
總數ハ十人ヲ超エザルヲ以テ例トス
第三十二條ノ四商業小組合ヲ設立セン
トスルトキハ組合員タラントスル者全
員設立者ト爲リ定款其ノ他必要ナル事
項ヲ定メ行政官廳ノ認可ヲ受クベシ
商業小組合ニハ理事及監事ヲ置クベシ
理事及監事ハ總會ニ於テ之ヲ選任ス但
シ組合設立當時ノ理事及監事ハ定款ヲ
以テ之ヲ定ムベシ
第三十二條ノ五組合員タル資格ヲ有ス
ル者ハ組合員ノ四分ノ三以上ノ同意ヲ
得テ商業小組合ニ加入スルコトヲ得
第三十二條ノ六商業小組合ハ當該商業
ニ關スル商業組合ノ組合員タルコトヲ
得
小商業者商業小組合ノ組合員ト爲リタ
ルトキハ當該商業ニ關スル商業組合ノ
組合員タルコトヲ得ズ但シ特別ノ事情
アル場合ニ於テ行政官廳ノ認可ヲ受ケ
タルトキハ此ノ限ニ在ラズ
行政官廳必要アリト認ムルトキハ商業
小組合ニ對シ當該商業ニ關スル商業組
合ニ加入スベキコトヲ命ズルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル命令アリタルトキハ
當該商業小組合ハ當該商業組合ノ組合
員トス
第三十二條ノ七商業小組合ノ定款ニハ
左ノ事項ヲ記載スベシ
-目的
二名稱
三事務所
四組合員タル資格ニ關スル規定及組
合員ノ總數
五組合員ノ加入及脫退ニ關スル規定
六出資一口ノ金額及其ノ拂込ノ方法
七剩餘金ノ處分及損失分擔ニ關スル
規定
八準備金ノ額及其ノ積立ノ方法
九組合員ノ權利義務ニ關スル規定
十事業及其ノ執行ニ關スル規定
十一役員ニ關スル規定
十二會議ニ關スル規定
十三會計ニ關スル規定
十四存立ノ時期又ハ解散ノ事由ヲ定
メタルトキハ其ノ時期又ハ事由
第三十二條ノ八商業小組合ハ出資ノ第
一囘ノ拂込アリタル後一週間以內ニ各
事務所ノ所在地ニ於テ設立ノ登記ヲ爲
スペシ
登記スベキ事項左ノ如シ
-前條第一號乃至第三號、第六號及
第十四號ニ揭ゲタル事項
二出資ノ總口數及拂込ミタル出資ノ
總額
三設立認可ノ年月日
四理事及監事ノ氏名及住所
前項ニ揭ゲタル事項中ニ變更ヲ生ジタ
ルトキハ其ノ登記ヲ爲スベシ但シ前項
第二號ニ揭ゲタル事項ニ付テハ每事業
年度末日ノ現在ニ依リ事業年度終了後
一月以內ニ登記ヲ爲スコトヲ得
第三十二條ノ九商業小組合ニハ營業稅
ヲ課セズ
第三十二條ノ十第四條第二項、第十五
條ノ二、第十七條第一項、第十八條、
第二十條、第二十二條(但書ヲ除ク)、
第二十五條、第二十六條第一項、第二十
七條、第三十三條乃至第三十六條及第
三十八條、民法第四十五條第二項第三
項、第四十八條、第五十條及第六十六
條、非訟事件手續法第百三十八條、第百
三十八條ノ三、第百四十一條乃至第百
五十一條ノ六、第百五十四條乃至第百
五十八條、第百六十五條、第百七十五
條、第百七十六條及第百七十八條竝ニ
產業組合法第五條、第十一條第一項、第
十二條、第十八條乃至第一一十一條、第二
十四條、第二十六條乃至第三十四條、第
三十四條ノ二第一項、第三十五條、第三
十六條、第三十九條乃至第四十一條、第
四十三條乃至第四十六條、第四十八條、
第四十八條ノ二、第五十一條乃至第五
十七條、第六十條、第六十條ノ二、第
六十二條(第一項第三號及第四號ヲ除
ク)、第六十三條第一項、第六十五條、
第六十九條乃至第七十三條ノ三、第七
十四條第一項、第七十四條ノ二第一
項、第七十五條、第九十六條、第九十
七條及第百四條ノ規定ハ商業小組合ニ
付之ヲ準用ス但シ產業組合法中地方長
官又ハ監督官廳トアルハ之ヲ行政官廳
トス
第三十七條但書ヲ左ノ如ク改ム
但シ產業組合法中地方長官又ハ監督官
廳トアルハ之ヲ行政官廳トス
第三十八條ニ左ノ一號ヲ加フ
十六商業組合監査員ノ行フ監査ヲ拒
ミタルトキ
第三十九條第四條第二項(第三十二條
及第三十二條ノ十ノ規定ニ依リ準用ス
ル場合ヲ含ム)又ハ第三項(第三十二
條ノ規定ニ依リ準用スル場合ヲ含ム)
ノ規定ニ違反シタル者ハ十圓以上二百
圓以下ノ過料ニ處ス
第四十條削除
第五十四條ノ二商業組合中央會其ノ所
屬ノ商業組合及商業組合聯合會ノ事業
及財產ノ狀況ニ付監査ノ事業ヲ行フ場
合ニ於テハ商業組合監査員ヲ置クベシ
商業組合監査員ノ選任及解任ハ行政官
廳ノ認可ヲ受クベシ
商業組合監査員ハ商業組合中央會所屬
ノ商業組合及商業組合聯合會ノ事務
所、倉庫其ノ他ノ場所ニ臨ミ、金錢、
物品、帳簿其ノ他ノ物件ヲ調査シ當該
商業組合及商業組合聯合會ノ事業及財
產ノ狀況ヲ監査スルコトヲ得
商業組合監査員及其ノ行フ監査ニ關シ
必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十四條ノ三行政官廳ハ商業組合中
央會又ハ商業組合監査員ニ對シ商業組
合又ハ商業組合聯合會ノ監査上必要ナ
ル命令ヲ爲スコトヲ得
第五十四條ノ四商業組合監査員前條ノ
命令ニ違反シタルトキハ十圓以上三百
圓以下ノ過料ニ處ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
登錄稅法第十九條第七號、印紙稅法第四
條第一項竝ニ商工組合中央金庫法第一條
第一項、第七條第一項、第二十八條第一
項第六號及第二十九條第一項第三號中
「商業組合聯合會、」ノ下ニ「商業小組合、」
ヲ加フ
〔國務大臣藤原銀次郞君登壇〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=49
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050・藤原銀次郎
○國務大臣(藤原銀次郞君) 商業組合法中
改正法律案提案ノ理由ヲ簡單ニ說明致シマ
ス
商業組合ノ制度ハ、昭和七年創設以來、
極メテ順調ナル發達ヲ遂ゲテ參ツタノデ
アリマスルガ、支那事變勃發以來、物資ノ
配給機關竝ニ物價ノ統制機關トシテ、統制
經濟上重要ナル地位ヲ占ムルニ至リマシタ
ノデ、一昨年ノ本議會ニ於キマシテ、組合
事業ノ擴充ノ外、統制商業組合制度ヲ樹立
致シマシテ、以テ右ノ事情ニ卽應セシメタ
ノデアリマスルガ、最近ノ中小商業ノ實情
ハ、現行ノ商業組合制度ヲ利用スル程度ニ
達シマセヌ多數ノ弱小商業者ノアリマスル
コト、竝ニ商業組合ノ物資統制上占ムル重
要性ニ照應致シマシテ、其ノ監督取締ヲ更
ニ强化スルノ要アリマスルコト等ニ鑑ミマ
シテ、今囘本法ノ一部ヲ改正致シタイト考
ヘルノデアリマス
今改正ノ主要ナル點ヲ擧ゲマスレバ、第
一ニ從來弱小商業者ニ取リマシテハ、商
業組合制度ノ利用ハ兎角不便デアリマシタ
ノデ、是等ノ弱小商業者ノ爲ニ、別ニ一個
ノ共同經營的ナル小組合制度ヲ創設シマシ
タルコト、第二ニ、最近物資配給統制竝ニ
物價統制ノ進展ニ伴ヒマシテ、商業組合制
度ノ公共的使命ガ極メテ增大シテ參リマシ
タノデ、是ガ監督ノ强化ヲ圖リマス爲ニ、
監督取締ニ關スル規定ヲ整備致シマシタル
コト、次ニ商業組合中央會ニ商業組合監査
員ヲ設置シマシテ、自治監査制度ヲ創設シ
マシタルコト等デアリマス
尙ホ詳細ハ委員會等ニ於テ申上ゲルコト
ニ致シタイト存ジマス、何卒御審議ノ上御
協賛アランコトヲ希望スル次第デアリマス
(拍手)発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=50
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051・田子一民
○副議長(田子一民君) 本案ノ審査ヲ付託
スベキ委員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=51
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052・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ政府提出、輸出資金
及輸出品製造資金融通損失補償法案委員ニ
併セ付託サレンコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=52
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053・田子一民
○副議長(田子一民君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=53
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054・田子一民
○副議長(田子一民君) 御異議ナシト認メ
マス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-此ノ
際御諮リ致シマス、工藤鐵男君ヨリ歸省展
墓ニ付三月六日ヨリ十三日マデ請暇ノ申出
ガアリマス、之ヲ許可スルニ御異議アリマ
セヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=54
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055・田子一民
○副議長(田子一民君) 御異議ナシト認メ
そう、仍テ許可スルニ決シマシタ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=55
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056・服部崎市
○服部崎市君 殘餘ノ日程ヲ延期シ、本日
ハ是ニテ散會セラレンコトヲ望ミマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=56
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057・田子一民
○副議長(田子一民君) 服部君ノ動議ニ御
異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=57
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058・田子一民
○副議長(田子一民君) 御異議ナシト認メ
そう、〓仍テ動議ノ如ク決シマシタ、次會ノ
議事日程ハ公報ヲ以テ通知致シマス、本日
ハ是ニテ散會致シマス
午後四時五十四分散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X02019400305&spkNum=58
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