1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十五年三月二十二日(金曜日)
午後一時五十七分開議
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議事日程 第三十號
昭和十五年三月二十二日
午後一時開議
第一 青年禁酒法案(高橋壽太郎君外十三名提出) 第一讀會
第二 裁判所構成法改正法律案(野田文一郎君外二十三名提出) 第一讀會
第三 檢察廳法案(野田文一郎君外二十三名提出) 第一讀會
第四 計理士法中改正法律案(中野治介君外一名提出) 第一讀會
第五 農家世襲財産法案(林平馬君外三名提出) 第一讀會
第六 民事訴訟法中改正法律案(原夫次郎君外四名提出) 第一讀會
第七 農地國家管理法案(大石大君外十名提出) 第一讀會
第八 檢査計理士法案(森田重次郎君外二名提出) 第一讀會
第九 愛國航空奬券發行に關する法律案(安藤孝三君外三名提出) 第一讀會
第十 恩給法中改正法律案(片山哲君外二名提出) 第一讀會
第十一 建築士法案(野村嘉六君外七名提出) 第一讀會
第十二 助産師法案(紅露昭君外三名提出) 第一讀會
第十三 理容師法案(土倉宗明君外二名提出) 第一讀會
第十四 理容師法案(内藤正剛君外三名提出) 第一讀會
第十五 辯護士法中改正法律案(清瀬一郎君外三名提出) 第一讀會
第十六 刑事訴訟法中改正法律案(清瀬一郎君外三名提出) 第一讀會
第十七 行政書士法案(内藤正剛君外二名提出) 第一讀會
第十八 行政書士法案(塚本重藏君提出) 第一讀會
第十九 司法書士法中改正法律案(内藤正剛君外二名提出) 第一讀會
第二十 浴場法案(内藤正剛君外四名提出) 第一讀會
第二十一 治療師法案(長野綱良君外十二名提出) 第一讀會
第二十二 衆議院議員選擧法中改正法律案(今井健彦君外七名提出) 第一讀會
第二十三 樺太に衆議院議員選擧法施行に關する法律案(石坂豐一君外四名提出) 第一讀會
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〔左の報告は朗讀を經さるも參照の爲茲に掲載す〕
一議員より提出せられたる議案左の如し
地方食品卸賣市場法案
提出者
手代木隆吉君 澤田利吉君
片岡恒一君 松尾孝之君
東條貞君 板谷順助君
上田孝吉君 川島正次郎君
今井新造君 田代正治君
(以上三月二十日提出)
一議員より提出せられたる質問主意書左の如し
帝國議會會期算定に關する質問主意書
提出者 志賀和多利君
英國汽船ファムサム號の維新丸追突大破竝
堀川芳史氏溺死事件に關する質問主意書
提出者 山道襄一君
(以上三月二十日提出)
一去二十日委員長及理事互選の結果左の如し
神宮關係特別都市計畫法案(政府提出、貴族院送付)外一件委員
委員長 出井兵吉君
理事
小柳牧衞君 長野高一君
羽田武嗣郎君 田中好君
一去二十日衆議院規則第十五條但書に依り
議長に於て議席を左の通變更せり
三 北浦圭太郎君
四二 笠井重治君
一去二十日議長に於て辭任を許可したる常任委員左の如し
第二部選出豫算委員 板谷順助君
第六部選出決算委員 古島義英君
第三部選出請願委員 大内竹之助君
一去二十日常任委員補闕選擧の結果左の如し
第二部選出
豫算委員 眞鍋勝君(堤康次郎君補闕)
第三部選出
豫算委員 平川松太郎君(山道襄一君補闕)
第三部選出
豫算委員 清水徳太郎君(北れい吉君補闕)
第七部選出
豫算委員 川崎克君(長井源君補闕)
第四部選出
請願委員 田代正治君(江原三郎君補闕)
一去二十日に於ける特別委員の異動左の如し
日本肥料株式會社法案(政府提出)委員
辭任牧野良三君 補闕世耕弘一君
國民優生法案(政府提出)委員
辭任中崎俊秀君 補闕渡邊健君
辭任杉山元治郎君 補闕河合義一君
昭和十二年法律第九十號中改正法律案(米穀の應急措置に關する件)(政府提出)委員
辭任土田莊助君 補闕小泉純也君
辭任深澤吉平君 補闕高橋義次君
辭任堀内良平君 補闕山本粂吉君
一昨二十一日常任委員補闕選擧の結果左の如し
第二部選出
豫算委員 猪野毛利榮君(板谷順助君補闕)
第六部選出
決算委員 山田順策君(古島義英君補闕)
第三部選出
請願委員 紅露昭君(大内竹之助君補闕)
一昨二十一日特別委員理事補闕選擧の結果左の如し
昭和十二年法律第九十號中改正法律案(米穀の應急措置に關する件)(政府提出)委員
理事 山本粂吉君(理事深澤吉平君去二十日委員辭任に付其の補闕)
一昨二十一日に於ける特別委員の異動左の如し
日本肥料株式會社法案(政府提出)委員
辭任長野長廣君 補闕深澤吉平君
國民優生法案(政府提出)委員
辭任三浦虎雄君 補闕守屋榮夫君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=0
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001・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=1
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002・服部崎市
○服部崎市君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此ノ際政府提出、石炭
配給統制法案ヲ議題ト爲シ、委員長ノ報〓
ヲ求メ、其ノ審議ヲ進メラレンコトヲ望ミ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=2
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003・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=3
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004・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ハ變更セラレマシタ、石炭配
給統制法案、第一讀會ノ續ヲ開キマスー
委員長ノ報〓ヲ求メマス、委員長櫻井兵五
郞君
石炭配給統制法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報〓書
一石炭配給統制法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報告候也
昭和十五年三月二十二日
委員長櫻井兵五郞
衆議院議長小山松壽殿
〔別紙〕
(小字ハ委員會修正)
石炭配給統制法案中左ノ通修正ス
第十二條社長、副社長及理事ハ株主總
會ニ於テ之ヲ選任シ主務大臣ノ認可ヲ
受クルモノトシ其ノ任期ヲ四年トス
監事ハ株主總會ニ於テ之ヲ選任シ其ノ
任期ヲ三年トス
石炭鑛業ヲ監督スル官廳ノ官吏タリシ者ハ
其ノ職ヲ退キタル後五年間日本石炭株式會
社ノ役員ト爲ルコトヲ得ズ但シ主務大臣ニ
於テ特ニ必要アリト認メタルトキハ此ノ限
ニ在ラズ
附帶決議
勞務動員計畫ヲ整備シ以テ增產ニ違
算ナキヲ期スヘシ
二資材ノ一元的配給方策ヲ講スヘシ
三海陸ヲ通スル一元的輸送計畫ヲ樹立
シ其ノ運營ニ支障ナカラシムヘシ
四炭質低下ノ防止ニ關シ徹底セル措置
ヲ講スヘシ
五鑛區ノ整理併合ヲ斷行シ經營ノ合理
化ヲ圖ルヘシ
六炭鑛ノ災害豫防及救濟ニ關シ適切ナ
ル方途ヲ講スヘシ
七統制ニ支障ナキ限リ石炭ノ配給ニ關
シテハ既設及新規ノ炭鑛ニ對スル本法
以外ノ金融投資關係ヲ尊重スヘシ
八中小炭鑛業者ニ對スル金融投資ヲ簡
易敏速ニスヘシ
〔櫻井兵五郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=4
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005・櫻井兵五郎
○櫻井兵五郞君 只今議題トナリマシタ本
案ノ委員會ニ於ケル審議ノ經過ノ〓要竝ニ
結果ヲ御報告申上ゲタイト存ジマス
本法案ハ旣ニ御承知ノ如ク、特殊會社タ
ル日本石炭株式會社ヲ設立シ、之ヲシテ石
炭ヲ一手ニ買上ゲシメルト共ニ、更ニ買上
炭ヲ適正價格ヲ以テ配給セシメ、或ハ石炭
鑛業ニ對シ資金ノ融通及ビ投資ヲ爲サシメ
ル等ノ事業ヲ行ハシメ、以テ現下戰時經濟
ノ緊要事タル石炭需給ノ圓滑及ビ價格ノ公
正ヲ圖ラントスル趣旨デアリマシテ、別
本會社ノ機能發揮竝ニ一般石炭增產對策ノ
爲ニ八千三百六十万圓ノ經費ヲ伴ツタル
案件デアリマス
委員會ハ三月十二日ヨリ開會致シ、本日
マデニ十一囘開會致シ、別ニ三囘ノ懇談會
モ重ネタ次第デアリマスガ、此ノ間ニ於ケ
ル質疑ノ主要ナル點ヲ擧ゲマスレバ第
ニ、ハ、現下ノ石炭問題解決ノ爲ニハ、配給機
構ノ整備モサルコトナガラ、寧ロ問題ノ重
點ハ積極的ニ增產ヲ圖ルニアルデハナイ
カ、然ルニ政府ノ增產ノ對策ナルモノハ
極メテ姑息的デアリ、且ツ拔本的ノ方途ト
モ考ヘラレナイ、運用ノ如何ニ依ツテハ、
却テ減產ノ虞スラアルデハナイカトソ質疑
ガアツタノデアリマス、之ニ對シマシテ政
府ハ、石炭問題ノ解決ノ爲ニハ積極的ノ
增產ヲ圖ルト共ニ、適正ナル價格ヲ以テ、
而モ圓滑ナル配給ヲ爲スコトガ絕對ニ必要
デアル政府ハ增產ノ爲ニハ、別途要求シ
タル如ク、多額ノ奬勵金、助成金等ヲ交付
スル一方、必要ナル資材及ビ勞力モ、石炭
鑛業ニ對シテハ最優先的ニ供給スル方針ヲ
確定シテ居ル、又價格政策上ノ考慮ヨリ
低物價策ノ線ニ沿ヒ、單價ノ引上ヲ爲サズ
シテ、而モ增產ノ目的ニ背馳セズ併セテ
適正價格ヲ以テ圓滑ニ石炭ヲ配給スル爲ニ
ハ是非共本案ノ如キ機能ヲ有スル組織ガ
必要デアル、假ニ本案ガ理想的最善案デナ
イトシテモ、現下ノ我ガ諸事情ノ下ニ於テ
ハ、是以上ノ案ヲ政府トシテハ得ル能ハズト
信ジタノデアル、斯樣ナ答辯デアリマシタ
第二點ニ於キマシテハ、本案ハ抑、〓昨年中
央物價委員會ヨリ答申ノアツタ案ヲ變更シ
テ居ルヤウデアルガ、之ヲ變更シタル理由
ハ如何ナル理由デアルカ、又本案ヲ以テシ
テ果シテ眞ニ配給統制ノ目的ヲ完全ニ達成
シ得ルカドウカ又將來中央物價委員會ノ
答申案通リニ實行スル意思ガアルカドウカ
トノ問デアツタノデアリマス、之ニ對シマシ
テ政府ハ石炭業界ノ現狀及ビ石炭取引ノ
實情ニ鑑ミ、愼重ニ考慮致シタ結果、日本石
炭株式會社トシテハ、自ラ配給施設ヲ所有セ
ズ寧ロ從來ノ業者ノ經驗ヲ活用シ、其ノ
信用ト責任ノ下ニ配給ニ當ラシメルコトガ、
最モ適切ト認メテ本案ヲ決定シタ次第デア
ルガ、法律ノ運用ト相俟ツテ、十分配給統
制ノ目的ヲ達シ得ル確信ガアリ、尙又將來
物價委員會ノ答申案通リニ實施スルコトガ、
適當ト認メラレル事態ニ立至ツタナラバ、
之ヲ實施スルコトヲ考へタイトノ答辯ガア
ツタノデアリマス
第三點ニ於キマシテハ、本會社ヲ半官半
民ノ特殊會社ニシタノハ、如何ナル理由デ
アルカ、殊ニ近來特殊會社ハ餘リ成清ガ良
クナイ、特殊會社ト云フモノハ芳シカラヌ
實例ヲ示シテ居ル今日、又モヤ特殊會社ヲ
作ラントスル政府ノ所信ハ何處ニ在ルノデ
アルカ殊ニ資本ノ半額ヲ政府出資ト爲シ
タルガ如キハ、政府ノ說明カラ考ヘテ見テ
モ、無意義ノコトデハナイカ、又會社ノ事
業範圍ニ鑑ミテ、資本金ヲ五千万圓、社債
發行限度ヲ一億五千万圓トシタノハ過小デ
ハナイカ、此ノ程度ヲ以テ果シテ此ノ大目
的ニ副フ運用ガ出來ルカドウカ而シテ又
此ノ會社ノ役員ハ如何ナル方面ノ人ヲ之
ニ充ツル考デアルカ、斯樣ナ質疑ガアツタ
ノデアリマス、之ニ對シマシテハ、政府ハ
國家目的ヲ有スル本會社ノ事業ノ性質ニ鑑
ミテ、大要會社ノ運營ノコトハ、民間ノ人
ノ知識經驗ヲ活用シテ、其ノ適格者ヲ求メ
テ之ニ當ラシメル考デアル併シナガラ其
ノ大綱ニ於テハ、政府ガ實權ヲ收メテ居ル
必要ガアル、又純營利會社デナイ所ノ、本
會社ニ於ケル民間資本ノ優遇ヲ圖ル爲ニハ、
政府ノ半額ノ出資ノ下ニ特殊會社トスルコ
トガ適當デアルト考ヘタノデアル、尙ホ石
炭ノ賣買ニ要スル資金ハ借入金デ賄ツテ
行ケバ宜イノデアル、又會社ハ主務大臣ノ
認可ヲ受ケテ增資出來ルカラ、其ノ點ハ差
支ナイ、而シテ本會社ノ役員ニハ特ニ會社
カラ希望ガアツタ場合等ヲ除ク外ハ、官吏ヨ
リ人ヲ出スコトヲセズ、民間有能ノ士ヲ以テ
之ニ充テ、大イニ才幹ヲ振ハセテ、模範的ナ特
殊會社ヲ作ル考デアルトノ答辯ガアリマシタ
第四ニハ本會社ノ設立ニ依リ、中小石
炭生產業者、ハ、販賣先トノ從來ノ特殊關
係ヲ絕タレ、爲ニ金融ノ途ヲ失ヒ、之ニ
依ル社會問題ハ姑ク別トスルモ、國家ノ
目的タル增產ニ向ツテ、却テ減產ノ結果
ヲ來ス如キコトガナイカドウカ、玆ニ本案
ノ一大缺陷アリト思フガ如何トノ質疑ガア
ツタノデアリマス之ニ對シテハ政府ハ
本會社ハ買上ゲタ石炭ヲ直チニ買上ゲタ者
ニ賣戾シ、而モ賣戾シタ石炭ノ配給ニ付テ
ハ、全體ノ配給統制上支障ノナイ限リ、配
給先ヲ變更スルコトハセヌ方針デアル、又
本會社ハ、其ノ事業トシテ石炭鑛業ニ對シ、
事情ニ卽シ、思切ツテ資金ノ融通及ビ投資
ヲモ爲ス考デアルカラ其ノ點心配ハナイ
トノ答辯デアツタノデアリマス
次ニ第五ニハ石炭ノ配給ノ圓滑ヲ圖ル
爲ニハ陸海ヲ通ズル一元的輸送計畫ガナ
ケレバナラヌ、殊ニ現在不足シテ居ル貯炭
場、積卸シ施設、輸送用船舶等ノ新增設ヲ
爲サネバナラヌガ、本會社ヲシテ之ヲ經營
セシムル意思ガアルカトノ問ニ對シマシテ
ハ、政府ハ陸海ヲ通ズル一元的輸送計畫ハ
必ズ整備スル、亦本會社ハ必要ニ應ジ貯
炭場、積卸シ施設、輸送用機帆船等ヲ所有
シ、之ヲ運用シテ行クヤウニ、資金等モ
特ニ考慮シテアルトノ答辯デアリマシタ
更ニ第六ニハ、會社ノ買取價格及ビ販賣
價格ノ內容ノ說明ヲ要求スル、政府ハ「プー
ル」平準價格制ヲ採用スルト言フガ、其
ノ結果トシテハ生產者ノ創意ヲ喪失セシ
メ事業經營ノ生命タル合理化、技術ノ改
善等ニ對スル努力ヲ抛棄セシムルモノデハ
ナイカトノ問ニ對シマシテ、政府ハ買取
價格ハ各炭礦ノ生產條件ヲ考慮シ相當段
階ニ分チ、各段階ニ於テ炭質ニ應ジ之ヲ決
定スル、又販賣價格ハ買上炭ヲ「プール」シ、
會社ノ規格ニ依リ、同一市場ニ於テハ產
地ノ如何ヲ問ハズ、同一規格ノ石炭ハ同一
價格トナルヤウニ決定スル、買取價格決定
ノ際考慮スル生產費ハ、、健全ナル事業經營
ノ狀態ニ於ケルモノヲ基準トスルコト勿論
デアリ、隨テ各業者ハ益〓事業經營ノ合理
化技術ノ改善等ニ對スル努力ヲ拂ヒ、利
潤ノ增大ヲ圖ルコトトナルト信ジテ居ル
尙ホ買取價格及ビ販賣價格ハ、共ニ關係官
吏、學識經驗者及ビ業者代表ヲ加ヘタ委員
會ニ諮問シタル上決定スルコトトシテ、其
ノ適正ヲ圖ル考デアルトノ答辯ガアリマシ
タ
最後ニ第七ト致シマシテ、增產ノ目標及
ビ其ノ方策ハ如何、又勞務動員計畫ハ增產ノ
必須條件デアルガ、之ニ對スル計畫ノ內容ハ
ドウカ、更ニ資材ノ優先的且ツ一元的配給方
策ハ、增產ノ運命ヲ左右スルモノデアルガ、
其ノ內容ハドウナツテ居ルカ、尙又炭質低
下ノ防止方法ニ付テ、特ニ方策アリヤトノ
問ニ對シマシテ、增產ニ付テハ石炭需給フ
現狀ニ鑑ミ、可及的ニ多量ノ增產ヲ圖ル見
地ニ於テ、過去ノ實績、石炭鑛業ノ實情ヲ
檢討シ、目標ヲ決定シタノデアツテ、各種
增產對策ノ實施ニ依リ、豫定數量へノ到達
ニハ十分ノ確信ヲ有スル、又其ノ方法トシ
テハ幾多ノ考慮ヲ加ヘテ居ルガ、其ノ中
增產奬勵金、新坑開發助成金、石炭買取補
償金等ノ如キハ其ノ內容ノ一部ヲ成スモ
ノデアル、而シテ新坑開發助成金ハ、三箇
年ニ亙リ交付スル豫定デアツテ、增產奬勵
金買取補償金ハ、其ノ時ノ情勢ニ應ジ考
慮セネバナラヌト考ヘル又資材及ビ勞務
ニ關シテハ、特ニ他ノ產業ニ優先シテ供給
スルコトニ、旣ニ政府ノ方針ハ確定シテ居
リ、必要ニ應ジテハ資材配給ノ爲ノ機關ノ
設置モ考慮スル勞務對策トシテハ、半島
人勞務者ノ移入增加ヲ圖ル外、勞務移動ノ
防止、季節勞務ノ利用ニ努メ、尙ホ或ル他
ノ措置ヲモ講ズル考デアル而シテ炭質低
下ノ問題ニ關シテハ從來炭價ガ品質ニ應
ジ決定サレテ居ラナカツタノデ、今後ハ日
本石炭株式會社ニ於テ規格ヲ定メ、之ニ應
ジテ炭價ヲ決定スルコトトシ、炭價ノ決定
ニ當ツテハ良質炭ヲ有利ニナルヤウ考慮
シ、炭質ノ低下ヲ防止スルト共ニ、法規ニ
依リ、粗惡炭ノ市場流出ヲ禁止スルコトモ
考慮シテ居ルトノコトデアリマシタ
右ノ外、石炭需給現狀ノ內容、將來ノ見
透シ、增產所要ノ資材、勞務需給計畫ノ內
容將來ノ見透シ等ニ關シマシテ、嚴重ナ
ル質疑ガアリ之ニ對シ政府ヨリハ、二囘
ニ亙リ祕密會ノ要求ガアリ、又屢〓速記ヲ中
止シテ、詳細ナル、說明ガアリマシタガ、遺
憾ナガラ其ノ祕密會ノ內容ヲ申上グル自由
ヲ有シナイノデアリマス
斯クシテ質疑ハ終了致シマシタガ、尙ホ
委員諸君ニ於カレマシテハ、滿足セラレザ
ル點モアリ又修正等ノコトニ關シ、懇談
會ヲ開クコト數囘ニ及ビマシタ、本日午前
十時開會ニ當リテ、私ヨリ改メテ各派ノ意
向ヲ代表致シマシテ、左ノ各項ニ付キテ
政府ノ言明ヲ求メタノデアリマス、而シテ
政府ヨリハソレ〓〓之ニ對スル言明ガア
リマシタガ、今之ヲ申述ベタイト存ジマス
三項目アリマスガ、其ノ第一ハ、私ヨリ金
融投資ニ依リ生ズル損失補塡ノ爲、特別ノ
積立金ヲ設クル必要アリト認ムルガ、政府
ノ所見如何、斯樣ニ質シタノデアリマス
之ニ對シマシテ商工大臣ヨリ、金融投資ニ
依リ生ズル損失ヲ補塡スル爲、日本石炭株
式會社ニ相當額ノ特別ノ積立金ヲ爲サシメ
ル所存デアリマス
次ハ私ヨリ增產計畫ノ實施ニ關シ、適當
ナル監査ノ方法ヲ設ケ、以テ月々其ノ實績
ノ調査ヲ爲シ、不成績ナルモノノ原因ヲ究
明シ、遲滯ナク適當ノ方策ヲ講ジ、增產ノ
完遂ニ遺憾ナカラシムルノ要アリト認ムル
ガ、政府ノ所見如何、之ニ對シマシテ商工
大臣ハ、政府ハ增產計畫ノ完遂ヲ期スル爲、
十五年度追加豫算ニ於テ、技師三人、技手
十人、屬十二人ヲ增加シ、之ヲ燃料局及ビ
鑛山監督局ニ增置シテ、十分ナル監督指導
ヲ爲スコトニ致シテ居リマス、尙ホ成績監
査ニ關シ適當ナル方法ヲ考慮致シタイト存
ジマス、斯樣ニ答ヘマシタ
次ノ問ハ、日本石炭株式會社ノ買取價格
ノ決定ニ當リテハ昭和系、互助會系等ノ
建値ノ差ヲ認ムル旨言明アリタルガ、右ハ
石炭業ノ現狀ニ變更ナキ限リ、繼續スベキ
モノト思料スルモ、政府ノ所見如何、斯樣
ニ質シマシタニ對シ、商工大臣ヨリ、政府
ハ石炭業ノ現狀ガ持續セラルル間ハ、現在
ノ昭和系、互助會系等ノ生產條件ノ差異ヲ
認メ、之ニ依ツテ買收價格ヲ決定セシムル
方針デアリマス、斯樣ニ答ヘラレタノデア
リマス
斯クシテ討論ニ入リマシタ所、民政黨ノ
中井川浩君ヨリ各派ノ共同提案ニ係ル修
正案ガ提出セラレマシタ、卽チ同法案第十
二條ノ第三項トシテ
石炭鑛業ヲ監督スル官廳ノ官吏タリシ
者ハ其ノ職ヲ退キタル後五年間日本石
炭株式會社ノ役員ト爲ルコトヲ得ズ但
シ主務大臣ニ於テ特ニ必要アリト認メ
タルトキハ此ノ限ニ在ラズ
之ヲ加フルトノ修正提議ガアリマシタ、尙
ホ同法案ニ對シ、是モ各派ノ共同提案ニ成
ル附帶決議ガ提出セラレマシタ、玆ニ附帶
決議ヲ朗讀致シマス
附帶決議
-勞務動員計畫ヲ整備シ以テ增產ニ違
算ナキヲ期スヘシ
二資材ノ一元的配給方策ヲ講スヘシ
三海陸ヲ通スル一元的輸送計畫ヲ樹立
シ其ノ運營ニ支障ナカラシムヘシ
四炭質低下ノ防止ニ關シ徹底セル措置
ヲ講スヘシ
五鑛區ノ整理併合ヲ斷行シ經營ノ合理
化ヲ圖ルヘシ
六炭鑛ノ災害豫防及救濟ニ關シ適切ナ
ル方途ヲ講スヘシ
七統制ニ支障ナキ限リ石炭ノ配給ニ關
シテハ既設及新規ノ炭鑛ニ對スル本法
以外ノ金融投資關係ヲ尊重スヘシ
八中小炭鑛業者ニ對スル金融投資ヲ簡
易敏速ニスヘシ
次ニ政友會ヲ代表セラレマシテ篠原義政
君、次ニ又政友會ヲ代表セラレマシテ松尾孝
之君ハ、何レモ第十二條ノ修正案竝ニ附帶
決議ニ贊意ヲ表セラレタノデアリマス、次ニ社會
大衆黨ヲ代表セラレマシテ加藤鐐造君ハ、第
一條第三號ヲ削除スルト云フ別個ノ修正案
ヲ提出セラレ、尙ホ第十二條ノ修正及ビ附
帶決議ニハ贊成ノ意ヲ述ベラレマシタ、次ニ
時局同志會ノ小池四郞君、第一議員倶樂部ノ
長谷長次君モ、各派共通ノ修正案竝ニ附帶
決議ニ贊意ヲ表セラレタノデアリマス、斯ク
致シマシテ、討論ヲ終リ直チニ採決ニ入リ、
社會大衆黨ノ第一條修正案ハ少數ヲ以テ否
決セラレ、各派一致ノ共同提案ニ係ル修正
案ハ、滿場一致ヲ以テ修正議決致シ、次ニ
修正ヲ除キタル原案ハ滿場異議ナク可決確
定致シ次ニ附帶決議ニ付テモ滿場一致ヲ
以テ決定セラレマシタ採決ヲ終リ私ヨ
リ修正竝ニ附帶決議ニ對スル政府ノ所見ヲ
求メマシタ所、商工大臣藤原銀次郞君ヨ
リ、修正案ニハ貴族院ニ於テモ同樣ノ修正
アリタル場合同意シ、附帶決議ハ十分ニ之
ヲ尊重シテ實施ニ遺憾ナキヲ期スル旨ノ言
明ガアリマシタ、以上ヲ以テ委員會ハ終了
致シタノデアリマス、詳細ハ速記錄ニ依リ
御諒承ヲ願ヒタイノデアリマス、右御報告
ヲ申上グル次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=5
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006・小山松壽
○議長(小山松壽君) 本案ニ對シテハ加藤
鐐造君ヨリ成規ニ依り修正案ガ提出サレテ
居リマス、仍テ討論ハ便宜上第二讀會ニ於
テ之ヲ爲スコトト致シマス、本案ノ第二讀
會ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=6
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007・小山松壽
○議長(小山松壽者) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=7
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008・服部崎市
○服部崎市君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=8
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009・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=9
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010・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマズ本案ニ對スル修
正案ノ趣旨辯明ハ、提出者ヨリ省略ノ申出
ガアリマシタ、是ヨリ討論ニ入リマス、通
告順ニ依ツテ發言ヲ許シマス-澤田利吉
君
石炭配給統制法案第二讀會
〔澤田利吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=10
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011・澤田利吉
○澤田利吉君 私ハ只今上程セラレマシタ
ル石炭配給統制法案ニ對シマシテ、立憲民
政黨ヲ代表シ委員長ノ報告ニ贊成スル者デ
アリマス
本案ノ骨子ハ、石炭ノ需給ノ圓滑及ビ價
格ノ適正ヲ圖リ、配給ノ統制、價格ノ統制、
規格ノ統一等、圓滑ナル運營ヲ爲サントス
ルモノデアリマス石炭ハ實ニ一切產業ノ
基礎的資源デアリマシテ、是ガ圓滑ナル配
給及ビ價格ノ統制ガ完全ニ行ハルル所ニ、
初メテ我國ノ現在行ツテ居ル生產ノ擴充、
低物價政策、此ノ實行ガ行ハレ隨テ各般
ノ產業ガ完全ニ運營サレル基デアリマス
隨テ此ノ目的ノ下ニ出シタル所ノ政府ノ法
律ニ對シ、其ノ趣旨ニ對シテハ何人モ之ニ
異存ヲ挿ムモノハナイノデアリマス、然レ
ドモ其ノ實際ノ事業ヲ行フニ當リマシテ
過去ノ獨善的ナ官僚等ノ容易ニ行ヒ得ザル
困難ガ多分ニアルノデアリマス、殊ニ過去
ノ國策會社、是ノ結果ニ對シテハ世上既
ニ定評ガアツテ)萬一此ノ運用ヲ誤ツタナ
ラバ增產セネバナラヌ所ノ其ノモノガ
却テ滅產トナリ配給ガ宜シキヲ得ヌト云
フコトニナリマスト、玆ニ產業上ノ一大不
幸ヲ見ルノデアリマシテ、玆ニ吾々ハ委員
會ニ於テ其ノ點ニ對シ十分政府ニ對シ追
究等ヲ致シタノデアリマス、此ノ點ニ關シ
マシテハ藤原商工大臣ハ責任ヲ以テ此ノ
目的ヲ達スルト、斯樣ニ言ハレテ居リマス、
吾々固ヨリ藤原商工大臣ノ人格ト、其ノ經
濟的手腕ニ信賴スル者デアリマスガ、內閣
ノ生命ハ決シテ永久デハアリマセヌ、大臣
ハ此ノ事業ノ重要性ニ考ヘマシテ、、先ヅ會
社ノ重役ノ選定ニ關シマシテハ、責任ヲ以
テ言明セラレタル通リ民間有能達識ノ士
ヲ之ニ選拔セラレマシテ、其ノ事業ヲ行フ
上ニ於キマシテハ敏活ニ圓滑ニ所期ノ目
的ヲ達セラルルコトヲ特ニ希望致シマス
尙ホ種々ナル點ニ對シマシテハ八箇條
ノ希望決議ヲ爲シテアリマシテ、ソレ等ノ
コトニ對シテハ敢テ贅言ヲ申述ブル必要
ガナイト思ヒマスガ、何ト致シマシテモ、
此ノ問題ヲ完全ニヤルト云フ所ニ、ソコニ
支障ナリト考ヘラレルコトハ勞働力ガ果
シテ十分ニ得ラルルカ、資材ガ果シテ十分
ニ得ラルルカト云フ此ノ二點ハ最モ中心
問題トシテ考ヘラルル問題デアリマス
政府ハ此ノ勞働者ニ對シマシテハ、半島
ヨリ勞働者ヲ移入シ、傍ラ農村或ハ漁村ノ
有閑期ニ之ヲ移動致シテ、サウシテ是等ノ
計畫ニ依ツテ)大體ノ目的ヲ達シ得ルト云
フ考ヲ持ツテ居ラレルノデアリマス、併シ
ナガラ既ニ現在ニ於テ農村及ビ漁村ニ於ケ
ル所ノ、勞働力ノ極度ニ不足ヲ告ゲテ居ル
ト云フコトハ御承知ノ次第デ、萬一何等ノ
計畫ナクシテ、ノ徒ニ此ノ方面ノ勞働者ヲ引
拔クト云フコトニナリマスルト、ソコニ又
由々シキ問題ガ起キマスカラシテ、此ノ點
ハ十分ニ考ヲ致サレナケレバナリマセヌ、
今十五年度ニ於ケル所ノ六百万瓲ノ增產ヲ
目的トスルソレニハ約三万七千人ノ勞働
者ガ要ルノデアリマスガ、是トテモ亦容易
ナ業デハアリマセヌ、又從ニ勞働者ノ數ヲ
增シテ、ソレニ依ツテ萬事足レリトスルカ
ト申シマスト、唯單ニ勞働者ノ數ヲ增スノ
ミニ依ツテ、是ガ達セラレルト考ヘルコト
ハ頗ル危險デアリマス、最近ノ統計ニ依
リマスト、鑛山勞働者ノ一箇月ニ於ケル所
ノ働ク日數ガ段々ト下リマシテ、今僅ニ一
箇月ノ中十七八日間シカ働イテ居リマセヌ、
隨テ一人當ノ採炭量ト云フモノハ段々ト
下ツテ來テ、昭和十一年ニハ一年一人當二
百十一瓲、昭和十二年ニハ二百三瓲、昭和
十三年度ニハ百九十七瓲ト、年ト共ニ低下
致シテ居ルノデアリマス、其ノ原因ハ種々
アリマスガ、雇主ガ互ニ勞働賃金ノ闇取引
ヲ爲シテ勞働者ノ爭奮ニ狂奔スルノモ
亦一ツノ大キナ理由デアリマス、其ノ結果
トシテ、炭礦勞働者ガ假ニ二十五万アルト
シマスト其ノ二十五万人ハ一年ニ全部移
動シテ居ルト云フ有樣デアリマス、是ハ勞
働者モ資本家モ共ニ過去ノ自由經濟主義思
想ニ依ル所ノ一ツノ弊風デアリマス、此ノ
ヤウナ有樣ニ於テ、唯如何ニ人ノミヲ增シ
マシテモ、到底增產ト云フモノハ覺束ナイ
ノデアリマス、殊ニ來年、再來年ト年ト
共ニ其ノ增產ノ必要ヲ痛感スル時、果シテ
斯ノ如キ多數ノ人ガ得ラレマセウカ、此ノ
點ニ對シテ爲政家ハ十分思ヲ致サナケレバ
ナラヌノデアリマス卽チ自由經濟時代ニ
於ケル勞働者ニ對スル觀念卽チ金錢ノ力ヲ
以テノミ使役シ得ルト云フ觀念ヲ改メテ、
人格的ニ之ヲ遇スル途ヲ考ヘナケレバナラ
ヌノデアリマス、殊ニ最近ノ統計ニ依リマ
スト、石炭百万瓲ヲ採掘スル爲ニ蒙ル死傷
者ノ數ハ一箇年ニ死者二十三人、負傷者
ガ千四百九十七人トナツテ居リマスカラ、
假ニ一箇年六千万瓲ヲ要スルトスルト、
箇年ニ其ノ爲ニ死スル人ノ數ガ千二百八十
人負傷スル者ガ實ニ八万九千八百二十人
ト云フ此ノ尊キ犧牲者ヲ出シテ居ルノデ
アリマスゝ我ガ國家產業隆昌ノ蔭ニ、此ノ
實ニ尊イ犠牲者ガアルト云フコトヲ忘レテ
ハナリマセヌ、(拍手)是ニ於テ政府ハ先ヅ
災害防止ト云フ點ニ十分ノ力ヲ入レラレマ
シテ是ガ救濟ノ方途ヲ講ゼンケレバナラ
ヌノデアリマス、又一面ニ於テハ、是等ノ
優良ナル勞働者ニ對シテハ產業戰士トシ
テ勳章ニ準ズベキ產業功勞章ト云フ如キ制
度ヲ設ケマシテ、之ヲ表彰スルト云フ點ナ
ドヲモ特ニ考慮ヲ拂ヒ、其ノ他住宅ノ改善、
娛樂ノ設備、或ハ文化施設等、精神的ニ慰
メヲ與ヘマシテ、勞働者ガ自發的ニ勞働ス
ルコトガ、是ガ國家ニ御奉公デアルト云フ
勞働報國ノ精神ニ生キテ、自ラ勇ンデ勞働
ニ從事スルヤウニシナケレバ、將來ノ眞ノ
鑛業ノ發達ヲ望ムコトハ出來ヌト思ヒマス
(拍手)隨テ勞働立法モ亦過去ノ所謂自由經
濟時代ニ於ケル精神ニ依ツテ制定セラレタ
勞働立法ハ時代ノ變化ト共ニ自ラ再認識
スル必要ガアルト私ハ考ヘマス
又次ニ資材ノ問題デアリマスガ、此ノ資
材ノ配給ニ付テハ政府ハ此ノ事業ニ對ス
ル所ノ優先ヲ十分ニ認メルト共ニ、鑛山ノ
機械化ヲ圖ルト云フコトニセンケレバ、今
マデノ低賃銀ヲ土臺トシテ、勞力ノミニ依
リテ石炭ヲ掘出スト云フ時代ハ、旣ニ過ギ
タト思ヒマス、此ノ點ニ對シテモ十分ニ御
考ヲ願フト共ニ、中小鑛業者ノ金融問題デ
アリマス、御承知ノ通リ現在中小鑛業者等
ハ、靑田賣等ノ如ク、石炭ヲ先賣シマシテ、
金融ノ途ヲ開イタリスルコトヲシテ居ル事
實ガアリマス、是ガ若シ此ノ會社ガ出來マ
シテ、銀行ノヤウナ取扱ヲスルニ至リマシ
テハ、是等ノ方向ノ石炭ノ產額ハ、全ク減
退スルノデアリマスカラ、此ノ社會ノ實情
ヲ十分認識スルト共ニ、是等ノ人々ニ對ス
ル資金ノ融通ニ對シテハヽ今マデノオ役所
的ノヤリ方デナク大膽ニ而モ簡易ニ是等
ノ貸付ヲ行ヒマシテ、營業ニ支障ナイヤウ
ニ圖ラレンコトヲ特ニ申上ゲテ置キマス
ソレカラ兎モスルト炭質ノ低下ヲ惧ルル
ノデアリマスガ、例ヘバ六千「カロリー」ヲ
基礎トスルナラバ、唯石炭ノ量バカリ出マ
シテモ、現在往々耳ニスル如ク、或ハ四千
「カロリー」或ハ三千「カロリー」ト云フコト
ニナリマスト貴イ運輸力ガ、唯徒ニ石ヲ
運ンデ居ルニ等シイ狀態ニナルノデアリマ
カラ、此ノ炭質ノ檢査ニ對シテモ、亦嚴重
ニ爲サンコトヲ希望致シマス
時間ガアリマセヌカラ、大體是等ノコト
ヲ申上ゲ、政府ニ注意ヲ喚起スルノデアリ
マスガ、如何ニ石炭ガ增產サレマシテモ、
海陸運輸連絡ノ設備ガ完全致シテ居リマセ
ヌト配給ノ圓滑ヲ圖ルコトハ出來ナイノ
デアリマス將來ノ石炭增產ハ、先ヅ九州
ヨリ軈テ北海道或ハ樺太ト云フ方向ニ進ミ
ツツアルノデアリマス先般石炭飢饉ヲ救
フ爲ニ、政府ハ非常ニ心配セラレテ、北海
道ニ澤山石炭ガアルト云フノデ、小樽ニ二
十數艘ノ大キナ汽船ヲ押寄セタノデアリマ
ス、然ルニ港灣ノ設備ガ完全致シテ居リマ
セヌカラ、其ノ多數ノ船ハ徒ニ繫留致ジ、
或ハ不足ナル勞働力ヲ盛ニ動カスナドシテ、
遂ニ勞働賃銀ハ七圓マデ上ツタ、石炭ノ運
搬ニ時間ヲ要シタノミナラズ、其ノ結果ト
シテ地方ノ有ユル部面ニ對シテ、非常ナ損
害ヲ與ヘタノデアリマス、デアルカラ是等
ノ事情ヲ考ヘマシテモ、石炭ノ積出等ニ對
スル要所ノ港灣ノ築設ニ對シテ、十分ニ御考
ニナラナケレバイケマセヌ、今マデノ役人
ガ、總テガ命令デ統制ガ行ハレルヤウニ考
ヘテ居ルコトハ大キナ問違デアリマス、
今日物價政策ニ對スル失敗ハ何デアルカ、
國民ノ所謂役人ニ對スル信用ノ失墜デアリ
PV、眞ニ國民ニ對シテ、國家ガ何ガ故ニ
此ノ低物價政策ヲ堅持シナケレバナラヌカ
ト云フ眞ノ意味ヲ、膝ヲ交ヘテ是ト語ルナ
ラバ彼ノ大陸ニ尊キ命ヲ捨テテ惜マザル
所ノ我ガ忠愛ナル國民ガ、何ガ故ニアノ闇
取引ヲ敢テ爲スカ卽チ國民精神總動員ト
云フモノガアリマスルケレドモ、ソレハ殆ド
死物デアリマス、唯政府ハ命令ニ依ツテ事
ガ行ハルルヤウニ考ヘテ居リマスガ、殊大
石炭ヲ掘出ス人ノ數ト云フモノハ凡ソ二
十五万乃至三十万アリマセウ、此ノ人々ガ
眞ニ我等ハ尊キ國家ノ產業ノ爲ニ盡スノデ
アツテ、唯一塊ノ石炭ヲ掘ツテモ、ソレガ
事變下ニ於ケル所ノ尊キ國家ノ產業ノ爲
ニ働クノダト云フ、此ノ觀念ガ若シ與ヘラ
レタナラバ、增產ノ一割ヤ二割ハ易々タル
モノデアルト考ヘマス(拍手)
私ハ終リニ臨ンデ商工大臣ニ此ノ際申上
ゲマスガ、大臣ハ自ラ陣頭ニ立ツテ、全國ニ行
脚シテ、勞働者ト共ニ、如何ニスレバ現下ノ
增產ヲシ得ルカ、膝ヲ交ヘテ談ジ、勞働報國
運動ノ第一線ニ立チ、玆ニ所謂新シキ日本、
皇國日本ノ新シキ新勞働運動ニ起タレルコト
ヲ希望致シマス、私ハ此ノ事タル藤原商工大
臣ニシテ、初メテ爲シ得ラレルト云フコト
ヲ痛感スルノデアリマス、石炭ノ豐富ナル、
石炭ノ餘ツタ時代ニハ石炭ノ有難サハ分
ラナカツタガ、愈〓石炭ガナクナツテ見ルト、
如何ナル產業モ此ノ石炭ガナクテハ何物モ
出來ナイ、肥料モ出來ナイ、「カーバイド」
モ出來ナイ、總テノ化學工業ガ出來ナイ、
先ヅ只今石炭ノ生產ノ擴充ヲ圖リ、此ノ價格
ノ統制ト相俟ツテ、配給ヲ潤澤ニスル所ニ、
軈テハ今日有ユル物ノ不足デアルト歎ゼラ
レテ居ル、其ノ歎聲ヲ絕ツ時ガ來ル我ガ
日本ハ物ガ足ラヌ如ク各國ニ宣傳セラルル
其ノ宣傳ガ、軈テ氷解セラレルノデアツテ、
此ノ事業ノ達成ハ實ニ聖戰目的達成ノ爲
ノ根本ノ問題デアリマス、隨テ吾々ハ此ノ
法律其ノモノハ、洵ニ漠タル法律デアリマ
シテ、唯法律ヲ表面カラ解スル時、是ハ否
決スルカ、巳ムヲ得ズンバ可決スルカト云
フ風ニ考ヘルノデアリマスケレドモ法、
死ンデ居リマシテモ、運用スル人ニ依ツテ
其ノ法ハ活キテ參リマス、ドウゾ國家ノ爲
ニ商工大臣ハ健在デアリ、此ノ法ノ運用ヲ
完全ニ行ハレテ、サウシテ此ノ目的ノ達成
セラレンコトヲ希望シハ玆ニ本案ニ贊成ノ
意思ヲ表明スル次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=11
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012・小山松壽
○議長(小山松壽君) 小山田義孝君
〔小山田義孝君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=12
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013・小山田義孝
○小山田義孝君 私ハ所屬政黨ヲ代表致シ
マシテ、石炭配給給制法案ニ對スル委員長
ノ報告ニ贊成ヲ致ス者デアリマス、今其ノ
趣旨ノ辯明ヲ致シタイト思ヒマス
石炭ハ申スママデモナク、有ユル產業ノ
源泉デアリマシテ、隨テ其ノ需要供給ノ調
節ハ全產業ノ有機的活動ニ缺クベカラザ
ル條件デゴザイマス、然ルニ我國今日ノ石
炭ノ需給關係ヲ見マスルニ極度ノ逼迫ト
混亂ヲ呈シテ居ルノデゴザイマス石炭不
足ノ爲ニハ電力ハ制限セラレ、有リ餘ル生
產設備ト大ナル需要ヲ有シナガラ、巳ムナ
ク生產ヲ「ストップ」シナケレバナラナイト
云フヤウナ現狀ニ置カレテ居ルノデアリマ
ス、生產力擴充ガ何ヨリモ緊要デアリマス
此ノ場合ニ於キマシテ、之ヲ阻碍シテ居リ
マス所ノ重大ナル原因ノ一ツハ石炭ノ不
足ト電力饑饉デアルト言ハナケレバナラナ
イノデアリマス、「セメント」ノ減產然リ、
硫安肥料ノ減產亦然リデアリマス、是等ハ
其ノ最モ顯著ナル事例デハアリマスガ、有
ユル重要物資ノ減產又ハ不足ハ直接間接ノ
別ハアリマスケレドモ、一ツトシテ石炭ノ
不足ニ負ハナイモノハナイノデアリマス、
洵ニ石炭ノ問題ハ、今日全產業界ヲ擧ゲテ
ノ焦眉ノ急ヲ〓グル問題デゴザイマシテ、
國民生活ヲ根底カラ搖ガス所ノ重大問題デ
アルノデゴザイマス、而シテ此ノ石炭配給
統制法ニ依ル所ノ增產計畫ハ、政府ノ所謂
低物價政策ト生產力擴充ト云フ、我國現下
ノ統制經濟ノ進行過程ニ於ケル、此ノ二大
政策ノ遂行ニ當ツテ、其ノ矛盾ヲ調節スル
所ノ、唯一ツノ方法トシテ生レテ來タモノ
デアリマス、今日マデノ政府ノ石炭政策ヲ
見マスルニ、配給ト消費ノ兩方面ニ對シマ
〓シテハ、稍〓積極的デアツタノデアリマスケ
レドモ、增產對策ト致シマシテハ、一昨年
ノ暮近クナツテカラ、坑木ノ配給ヲ圓滑ニ
スルトカ、或ハ勞働者ヲ優先的ニ配給スル
トカ、或ハ又勞力資材ノ配給ニハ、軍需會
社ト同等ニ取扱フト言フダケデアリマシテ、
極メテ消極的デアツタノデアリマス、從來
ノ生產力擴充計畫ハ)軍需產業ノミノ擴充
デアリマシテ石炭ハ軍需產業ノ基礎的物
資トシテ、第二義的ニ取扱ハレテ居ツクノ
デアリマス、然ルニ石炭企業ノ設備ハ、事
變前ニ於キマシテモ、殆ド「フル」ニ運轉サレ
テ居リマシタニモ拘ラズ、石炭ヲ軍需品同
樣ニ取扱ヒマシテ、必要ナル資材ヲ優先的
ニ配給スルコトヲ認メマシタノハヤツト
昨年後半期カラデアリマス而シテ石炭增
產對策要綱ナルモノガ決行サレマシタノ
ガ、昨年ノ十月初旬デアリマス大體戰時
下ニ於ケル所ノ石炭ノ異常ナル需要增加
ヲ豫期シテ、增產計畫ヲ圖ラナケレバナラ
ナイト云フコトハ、是ハ一昨年頃カラ既ニ
問題ニナツテ居ツタコトデアリマスガ、最
近ノ電力飢饉ガ、石炭ノ增產對策ノ重要性
ヲ、今更ノヤウニ政府當局ニ認識サセタカ
ノヤウナ感ジガアリマシテ、、是ハ甚ダ立
遲レノ感ガアルト同時ニ、歷代ノ政府ノ怠
慢デアルトモ言ハナケレバナラヌノデアリ
マス(拍手)石炭ガ一昨年ノ九月ニ値下ヲ
餘儀ナクサレマシテカラ勞力、資材ノ不
足ト相俟ツテ生產ハ停頓シ、漸次減產ノ方
向ニ逆轉シテ參リマシタコトハ今日見ル
如キ石炭飢饉ノ最大原因デアリマス、是ハ
見ヤウニ依リマシテハ、政府ノ公式的、觀
念的ノ低物價政策破綻ノ好箇ノ實例デアル
トモ見ラルルノデハアリマスガ、炭礦業
者ト致シマシテハ、炭價ノ引上ニ依ツテ高
クナリマシタ生產費ヲ償ハナケレバ、到底
增產ハ出來ナイト主張シテ居ル點ニモ、
應ノ根據ハアルカト思ハレマス、ト言ヒマ
スノハ彼ノ近衞內閣當時ニ於キマシテ、
當時ノ商工大臣池田成彬氏ガ、低物價政策
ノ出發點トシテ、先ヅ何ヨリモ最初ニ價格
ノ引下ヲ行ツタノハ石炭ト鐵デアツタノデ
アリマス、其ノ際他ノ一般物價モ漸次引下
ゲルト云フ建前ヲ執ツタノデアリマスガ、
其ノ後石炭ト鐵以外ハ一齊ニ騰貴シタノデ
アリマス、ソコデ阿部内閣ノ時代ニ至リマ
シテ、已ムヲ得ズ昨年ノ九月、所謂九·一八
價格停止令ヲ發シマシテ、一般物價ト賃金
ノ釘付ヲ策スルニ至ツタノデアリマスガ
今日是ハ無力化シテ居ルコトハ御承知ノ通
リデアリマス、隨テ生產「コスト」ハ上ル一
方デハアリマスガ、石炭ノ値段ノミハ獨リ
据置カナケレバナラヌト云フコトデハ、勢
ヒ減產、炭質低下ノ問題ヲ惹起スルノハ
當然デアルト云フノデアリマシテ、此ノ際
低物價政策ト生產力ノ擴充トノ調和ヲ圖ル
ニハ一般物價水準ノ全體ニ對シテ壓力ヲ
加ヘナケレバナイノデハアルガ、石炭ト云
フヤウナ生產ノ基礎的物價ニ付キマシテハ、
增產ヲ刺戟スル爲ニ非常ナ値上ヲヤルベキ
デアツテ、ソレニ依ツテ增產ノ目的ガ達成
スルナラバ、石炭ノ値段モ、延イテハ一般
物價モ、自然ニ低位ニ保タレルト云フノデ
アリマス、換言スレバ生產力擴充第一主義
ニ依リマシテ、物資需給關係ノ均衡ヲ保タ
シメマシテ、其ノ結果トシテ低物價ノ目的
ヲ達シヨウトスル理論デアリマス、斯ル民
間當業者ノ炭價引上論ガ、果シテ議論通リ
ニ低物價政策ノ遂行ニ役立ツモノナラバ
勿論文句ハナイノデアリマケスレドモ炭
價ノ引上ニ依ツテ、果シテ石炭ノ增產ニ
ソレ程大キナ期待ガ持タレルカドウカト云
フコトハ是亦甚ダ疑ハシイノデアリマス、
卽チ現在ノヤウニ勞力、資材、輸送關係、
其ノ他ノ條件ニ於テ、大ナル制約ヲ受ケナ
ケレバナラナイ場合ニアリマシテハ、唯單
ニ價格ヲ引上ゲマシテモ、ソレダケ增產ガ
期待出來ルモノトモ吾々ハ考ヘラレナイノ
デアリマス殊ニ石炭工業ノ如ク固定資本
ノ設備ガ嵩ンデ、而モ資金囘轉ノ比較的緩
慢ナル事業ニ於キマシテハ少シ位ノ値段
ノ引上ナドデハ速急ニ、敏速ニ增產ヲ刺戟
シ得ラレルトハ思ハレナイノデアリマス、
斯ノ如ク業者ニ對シテヨリ以上ノ利潤ヲ與
ヘル場合ニ、效果ガ擧ラナイ炭價ノ引上ト
云フコトニ對シテハ勿論贊成スルコトガ
出來ナイバカリデハナク、惡クスレバ現在
ノ物價體系ヲ根柢カラ覆ス虞ノアリマスル
コトニ想到致シマスレバ深ク考慮ヲ要ス
ベキ問題デアルト思フノデアリマスソコ
デ價格引上ニ依ラズシテ、而モ引上ト實際
上殆ド同樣ナ結果ヲ齎スベキ方策トシマ
シテハ、本法ノ如キ補助金制度ニ依ル所ノ
增產計畫ト云フコトガ、一應考ヘラレルノ
デハアリマスルガ、然ラバ此ノ制度ニ依ル
所ノ增產計畫、卽チ此ノ石炭配給統制法ニ
依リマシテ、果シテ政府ノ「プラン」通リニ、
六百万瓲ノ增產ガ出來ルカドウカト云フコ
トニ對シテハ、吾々ハ又少ナカラザル不安
ヲ抱カザルヲ得ナイノデアリマス、本法ハ
御承知ノヤウニ石炭增產對策トシテ、增產
奬勵金、新坑開發助成金、又ハ石炭買取補
償金ノ交付ト云フ、三本建ニ依ツテ其ノ實
績ヲ期セントスルモノデアリマスルガ、私
ハ本法ニ對シテ固ヨリ全幅ノ信賴ト期待ハ
持チ得ナイノデアリマシテ、寧ロ少カラズ
不安ヲ抱クモノデアリマス、第一增產ニ主
要ナル條件トシテ、勞力、資材ノ供給ヲ確
保スルト云フコトハ、申スマデモナイコト
デアリマスガ、今勞力ノ需給關係ニ付テ考
ヘテ見マスルニ、專變以來多數熟練鑛夫ノ
應召者ヲ出シテ居ル外ニ、軍需殷賑產業等
ニ依ツテ地下勞働カラ漸次地上勞働ニ向
ツテ多數移動シテ居ル狀況ニアルノデア
リマス、從來ハ團體訓練ヲ經タ在〓軍人ヲ
多ク使ツテ居ツタ關係上、應召者ガ比較的
多カツタノガ、其ノ補充ニ素人ヲ得タ爲ニ
技術ガ著シク低下シタト云フコトハ、是八、
免レナイコトデアリマス同時ニ人間一人
當リノ出炭量モ漸次減產スルニ至ツテ居ル
ノデアリマス、北海道、樺太方面ニ多ク見
ラレマスル彼ノ季節勞働者ガ、農村ノ好
況ニ依リマシテ、豫定日數ヲ早ク切上
ゲル者ノ多イコトナドヲ見マシテモ、勞
力不足ニ拍車ヲ加ヘテ居ルヤウナ狀況
ニ相成ツテ居ルノデアリマス、坑內勞働
ハ地下數十尺或ハ數百尺ノ地下勞働
ト云フ特殊勞働ノ外ニ、賃金モ他ノ軍需產
業ニ比ベマシテ、決シテ良好デアルトハ言
ヒ難イノデアリマス、是等移動鑛夫ノ補充
ハ非常ナ困難ガ伴ツテ居ルノデアリマス、
是ガ對策ト致シマシテ、半島人ヲ入レテ居
ルノデハアリマスルガ、一月中旬マデニハ
約一万五千人ヲ各炭礦ニ割當テマシテ、今
後モ續々入坑スル豫定ノヤウデハアリマス
ルケレドモ是等ノ半島勞働者ガ、採炭作
業ヲ習得致シマシテ稼業ニ就クマデニハ
相當長イ日數ヲ要スルノデアリマス、差當
ツテノ增產ニハ果シテドノ位ノ期待ガ出
來ルカト云フコトハ、甚ダ疑ハシイノデア
リマス、又本年度、卽チ十五年ニ於テハ
政府ノ計畫通り六百万瓲增產ノ爲ニハ現
在ノ採炭能力ヲ有スル鑛夫ガ、常時四万人
增員サレテ居ラナケレバナラナイト云フコ
トヲ併セテ考ヘテ見ルト、政府ノ勞務動員
計畫ガ、果シテ實際ニ此ノ需要ヲ滿シ得ル
カドウカト云フコトハ、甚ダ疑問トシナケ
レバナラナイノデアリマス、其ノ上有ユル
資材ノ確保ト云フコトガ、是亦極メテ困難
ナル事情ニアルノデアリマス、現在ニ於ケ
ル炭礦用資材ノ供給狀態ヲ見マスルニ、鐵
銅材ニ於キマシテハ所要數量ノ約五割、
「カーバイド」ノ供給數量ハ、需要數量ノ四
割以下ニ激減シテ居ルノデアリマス、其ノ
他地下足袋ノ如キモ、昨年十月時分ノ割當
ニ依リマスト、鑛夫二人六分ニ對シテ一足
ノ割當デアル、斯樣ナ配給量ヲ以テシマシ
テハ、甚シイ供給不足ニナルノデアリマス、
斯ル狀態デハ坑內夫ノ勞働能率ニ非常ナ影
響ノアリマスコトハ申スマデモナイノデ
アリマシテ、其ノ他坑木、綿製品、「セメン
さ「マニラ·ロープ」、護謨製品等ノ必要
物資ハ、共ニ甚シイ供給不足ノ現狀ニ置カ
レテ居ルノデアリマス、而シテ政府ノ勞務
動員計畫ニ依リマシテ、增產ノ爲ノ炭礦勞働
者ノ激增シタ場合、果シテ此ノ需要ヲ滿シ
得ルカドウカト云フコトモ、甚ダ心許ナイ
感ジガ致サレルノデアリマス、成程政府ニ
於キマシテハ石炭增產ノ爲ノ必要ナ資材
ノ配給ヲ百「パーセント」ニ認メマシテ、物
動計畫ノ中ニモ之ヲ優先的ニ配給スルノ方
針ヲ執ラレルヤウニ拜承致シマシクガ、是
ハ甚ダ結構ナコトデアリマスケレドモ、他
ノ產業ヲ犠牲ニシテマデ、果シテドノ程度
ニ優先權ヲ認メルカト云フ、此ノ實際問題
ニ付キマシテハ吾々一派ノ不安ナキヲ得
ナイノデアリマス此ノ勞力資材ノ供給ニ
付テ、萬端手落チナク愼重ニヤラナケレバ、
勢ヒ無理ナ增產ヲ强行スルト云フ結果ニナ
リマシテ、生產サレマスル石炭ガ半面ニ於
*キマシテ粗惡化スルト云フコトニモナル
デアリマシテ、增產奬勵金ヲ交付シテ粗惡炭
ノ出炭ヲ奬勵スルト云フ逆作用ヲ惹起シテ、
實際的ニハ減產ノ危險サヘアルノデアリマ
ス、夥シイ種類ノ石炭ニ對シ、又數ノ多イ
何百ト云フ炭礦ニ對シテ、一瓲四圓ト云フ
奬勵金ヲ交付スルト云フコト自體ガ、既
粗惡炭ノ奬勵ニ堕スル危險ヲ包藏シテ居ル
ノデアリマシテ、此ノ粗惡炭生產ノ防止ニ
付キマシテハ、徹底的措置ヲ講ジテ違算ナ
キヲ期サナケレバナラナイト考ヘマス、卽
チ炭質ト炭礦ノ實情ヲ究メマシテ、其ノ資
格ニ應ジテ、其ノ間適宜ニ等級ヲ定メルコ
トニ依ツテ、奬勵金交付ノ合理化ニ努メナ
ケレバナリマセヌガ、一千以上モノ石炭ノ種
類ニ對シテ、檢炭檢量ノ正確ヲ期スルト云
フコトハ是亦極メテ至難ノコトノヤウデ
アリマシテ、現在ノ鑛山監督局ノ能力ヲ以
テシテハ果シテ所期ノ成績ヲ擧ゲ得ルカ
ドウカト云フコトニ付キマシテハ、少カラ
ズ疑ナキヲ得ナイノデアリマス、又新坑
開發ニ對スル助成金トシマシテハ坑道掘
進一米ニ付キ三十五圓ヲ交付スルコトニナ
ツテ居リマシテ、總額千六百八十万圓ヲ計
上サレテ居ルノデアリマス新坑開發ハ先
ヅ炭礦業者ヲシテ其ノ机上計畫ヲ提出セシ
メ之ヲ審査シタル上、合格シタルモノニ
付テ、更ニ實地調査ヲ爲シテ決定スルモノ
デアリマスガ、手續ガ非常ニ煩雜デアツ
テ、)到底迅速ナル取運ビハ期待シ得ナイト
云フ憾ガアルノデアリマス助成金千六百
八十万圓ハ一米三十五圓ノ助成金トスレ
バ、總延長四十八万米トナルノデアリマス、
之ヲ一鑛區平均四百米著炭トスレバ實ニ
千二百ノ新シイ鑛區ヲ開發スルコトニナル
ノデアリマシテ、其ノ開發ニ要スル所ノ費
用ハ蓋シ莫大ナルモノガアリマス、ソレガ
爲ニ炭礦業者ハ巨額ノ資金ヲ必要トスルノ
デアリマスガ、大炭礦業者ハ別ト致シマシ
テモ、中小炭礦業者ニ對スル金融ノ途ガ、
十分ニ且ツ迅速ニ取計ハレナケレバ當業
者ハ政府ニ協力シヨウトシテモ、事實協力
シテ行ケヌト云フ結果ニナルノデアリマス
ルカラ、此ノ點ニ付キマシテハ、尙ホ一段
ノ御留意ヲ願ハナケレバナラナイト思フノ
ノデアリマス
尙ホ此ノ金額ノ問題ニ付キマシテハ、本
案ノ配給統制ノ範圍內ニ於キマシテ、從來
ノ取引關係ヲ認メルコトニ依ツテ中小炭
礦業者ノ增產ヲ圖ルト云フコトニ付テモ
積極的考慮ヲ煩サナケレバナラナイト思ヒ
マス、買取補償金ニ付キマシテハ、生產費
高ノ爲ニ採算不引合ノ石炭ヲ、「プール」平準
價格ニ依ル販賣價格ヨリモ高價ニ買取ルモ
ノデアリマシテ、實質的ニハ炭價ノ値上ヲ
誘致スルモノノヤウデアリマスガ、瓲當リ
平均一圓四十錢ノ損失補償ニ依ツテ、三千
二百万瓲トシテ之ヲ買取ルト云フノデアリ
マスケレドモ、尙ホ此ノ外ニモ生產「コスト」
高ノ相當數量ノ石炭ガ出テ、買取補償金ノ恩
典ニ浴シ得ナイト云フモノガアリマシタ場
合ハ、全面的ノ增產ヲ期待シ得ナイト云フ
コトニナルノデアリマスカラ、斯ル場合ニ
對スル處置ニ付キマシテハ十分考慮サレ
ナケレバナラナイト思フノデアリマス
次ニ石炭增產計畫ト不可分ノ關係ニアリ
マスル輸送ノ問題デアリマス殊ニ船舶
運輸トノ關係ニ付テ、政府ノ注意ヲ喚起ス
ル必要ガアルト存ジマス、今日ノ增產計畫
ガ、計畫通リニ實現ヲ見ルコトニナリマシ
テモ、其ノ增產セル所ノ石炭ハ、之ヲ運搬
スルコトガ出來ナイデ、各地ノ積出港ハ捌
クコトノ出來ナイ石炭ノ山ヲ以テ埋マルヤ
ウナ、從來ノ輸送ノ混亂狀態ヲ繰返スヤウ
ナコトデハ、折角ノ增產モ何等ノ效果モナ
イト云フ結果ニナルノデアリマスルカラ
再ビ斯樣ナ失態ノナイヤウニ、海陸ヲ一貫
セル一元的輸送計畫ヲ立テマシテ、運輸ノ
圓滑ヲ圖ラナケレバナラナイト思ヒマス
其ノ他增產計畫ノ强行ハ、勢ヒ設備ノ不
完全、或ハ無理ノ伴ヒマスル場合ノ多イ關
係カラ考ヘマシテ、災害ノ頻發スル危險ガ
多イモノト見ナケレバナラナイノデアリマ
ス、是等災害ノ頻發ニ依ツテ、勞力ノ吸收
ガ計畫通リニ進行セヌコトトモナリマスレ
バ、增產計畫ノ一大支障ヲ結果スルコトア
ルベキヲ留意シテ、資材配給ノ圓滑ヲ期ス
ルト共ニ、坑內設備ノ全キヲ圖リ、他面勞
働條件ノ向上ニ依ツテ、銃後產業戰士トシ
テノ能率ノ向上ニ努力シナケレバナラナイ
ト考ヘル者デアリマス、石炭增產對策トシ
テ此ノ法律ハ、固ヨリ萬全ヲ期スルモノデ
ハナク、幾多ノ缺陷ヲ包藏スルモノト思フ
ノデアリマスガ、差當ツテハ焦眉ノ急ニ適
應セントスル臨時應急ノ手段ト致シマシ
テ、之ヲ認メザルヲ得ナイノデアリマス
此ノ際ト致シマシテハ、官民ハ一體トナツ
テ、此ノ法律ノ缺陷ヲ補修シ、其ノ運用ニ
協力シテ、石炭饑饉ノ解消ニ向ツテ對處シ
ナケレバナラナイト考ヘマス、政府トシマ
シテモ今度コソハ官民協力シテ事ニ當ラ
ウトシテ、日本石炭株式會社ノ役員ノ如キ
モ、民間ノ「エキスパート」ヲ之ニ當テテ、
其ノ實際的經營ヲ一任シヨウト決意シテ居
ルヤウナ次第デアリマスルカラ、吾々ハ此
ノ際小異ヲ捨テテ大同ニ就キ、眞ニ國家ノ
利益ノ上ニ立ツテ、一瓲デモ多クノ良イ石
炭ヲ生產スルコトニ協力シナケレバナラナ
イト信ズル者デアリマス
而シテ石炭當面ノ增產對策ハ、本法ニ依
リマシテ假ニ實現ヲ見ルト致シマシテモ、
今後長期ニ亙ル恆久的、根本的ノ石炭計畫
ニ付キマシテハ、此ノ法律ノ實施ダケデハ
全ク不十分デアルノデゴザイマス、政府ハ
竿頭更ニ一步ヲ進メマシテ、旣設炭礦會社
ノ合同デアルトカ、或ハ炭礦區ノ整理ト云
フコトニ付テ、一段ノ考慮ヲ拂ハレマシテ、
將來ノ增產ニ資スル所ガナケレバナラナイ
ト考ヘマス
更ニ根本的ニ視野ヲ擴大スルナラバ、增
產、需給關係調節ノ要件トシテ、石炭資源
其ノモノノ檢討ガ問題デアリマス卽チ日
滿支ヲ一體トスル興亞ノ新經濟體制ノ立場
カラ致シマシテ、飽クマデ重點主義ニ則リ
マシテ石炭ノ生產、配給、消費ノ全部門
ヲ貫ク所ノ、綜合的、一元的計畫ガ確立サ
レナケレバナラヌト考ヘル者デアリマス
卽チ石炭ノ根本的計畫ノ確立ト、之ニ基
ク所ノ應急對策ガ、合理的ニ組合ハサレマ
シテ、是ガ增產ニ向ツテ邁進セラレネバ
ナラヌモノト、斯樣ニ信ズル者デアリマ
ス
最後ニ一言致シタイト存ジママルコトハ、
各派共同提案ノ附帶決議ハ、是ハ單ナルオ
座ナリノ決議デハナイノデアリマシテ、增
產ヲ確保スル爲ノ必須的要件デアリマス
政府ハ是マデ附帶決議ト云フモノヲ、輕視
スルヤウナ傾向ガ多分ニアツタノデアリマ
ス、是ハ獨リ院議ヲ尊重シナイト云フコト
バカリデハナクシテ官僚獨善ニ依ル形式
主義ガ、往々ニシテ法律ノ實質的效果ヲ稀
薄ナラシムル結果トモナルノデアリマス、殊
ニ本法案ノ如キ、非常時日本ノ國力增進ノ
上ニ至大ノ關係ヲ持ツ所ノ法律ノ運用ニ
當リマシテハ、必ズ此ノ附帶決議ノ各項ヲ
實行ニ移サレマシテ、所期ノ成果ヲ期セラ
レタイト思フノデアリマス、以上ヲ以チマ
シテ私ノ委員長ノ報〓ニ對スル贊成意見ト
致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=13
-
014・小山松壽
○議長(小山松壽君) 東條貞君
〔東條貞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=14
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015・東條貞
○東條貞君 立憲政友會ヲ代表致シマシテ、
委員長ノ報〓ニ對シ贊成ノ理由ヲ申述ベタ
イト思ヒマス、石炭ノ增產ガ焦眉ノ急デア
リマスコトハ、申スマデモナイノデアリマ
ス、ソレガ爲ニハ資材、技術、勞力ノ充足
ト、適正ナル利潤ヲ與ヘマスルコトガ必要
デアルコトハ申スマデモアリマセヌ、併シ
政府ハ低物價政策ヲ堅持サレマスル建前カ
ラ、炭價ノ引上ト云フ方法ハ之ヲ避ケテ、
サウシテ茲ニ本案及ビ石炭ノ增產ヲ奬勵致
シマスル案トヲ以テ、此ノ急需ニ應ゼント
サレテ居ルノデアリマス此ノ案ニ對シマ
シテ吾々ハ大イニ檢討ヲ加ヘテ見タノデア
リマスガ、遺憾ナガラ之ニ依ツテ石炭ノ增
產ヲ爲シ得ルト云フ確信ヲ得マスルコトニ
ハ大イニ苦シマザルヲ得ナカツタノデア
リマス、併シ政府ノ言明セラレル所ヲ聽キ
マスト、石炭ノ增產ニ對シ必要ナル資材ハ、
優先的ニ之ヲ配給ヲスルト云フコトヲ言明
セラレテ居リマス、併シ同ジ委員會ニ於キ
マシテ、鑛業法ノ改正ニ際シマシテモ、二
万ニ亙ル多數ノ試掘鑛區ニ對シテ試掘探
鑛ヲ進メル爲ニ必要ナル資材ハ、之ヲ優先
的ニ配給スルト云フコトヲ言ハレテ居リマ
ス、先般本院ヲ通過致シマシタ豫算案、是
ノ審議ニ際シテ、資材ノ不足ノ爲ニ、是ダ
ケノ豫算ノ實行ハ出來ナイノデハナイカト
云フコトガ、多數ノ人ノ見ル所デアツタノ
デアリマス、優先配給ヲ受クルモノハ是バ
カリデハアリマセヌ、最先第一ニ軍需ニ振
向ケナケレバナラヌ、有ユル部門ノ生產擴
充計畫ノ方面ニ振向ケナケレバナラヌ、斯
樣ナ點ヲ考ヘマスト、政府ガ言明セラレマ
シタ通リ、果シテ優先的ニ必要ナル資材ガ
配給サレルヤ否ヤト云フ點ニ於キマシテハ、
大イニ疑問ヲ抱カザルヲ得ナイノデアリマ
ス(拍手)
又技術、勞力ノ問題デアリマス、百五十
億ノ豫算、其ノ中ニ含マレテ居リマスル國
ノ行ヒマスル新規ノ事業ニモ、多數ノ技術
者及ビ勞働力ガ必要ナノデアリマス其ノ
他生產擴充ノ有ユル部面、殊ニ最近ニ此ノ
議場ニ上程セラルベキ筈デアリマス木炭ノ
增產計畫、或ハ米ノ增產計畫、所謂增產、
增產、新シキ仕事、生產ノ擴充、有ユル方
面ニ、現在アリマスル勞力以上ノ勞力ヲ要求シ
テ居ルノデアリマスガ、現ニ產業ノ各部面ニ於
テ、勞力ノ不足ヲ愬ヘテ居リマスルコトハ、御
承知ノ通リ現實ノ事實デアル、此ノ點ヲ考ヘ
マスト、果シテ政府ノ言明セラルルガ如ク、石
炭ノ增產ニ必要ナル勞力ガ、サウ易々ト充足
サレルトハ考ヘラレナイノデアリマス、例
ヘバ米ノ增產ヲ圖リマスル爲ニ、農村方面
ニ於ケル勞力ヲ十分ニ確保致シマスルナラ
バ、木炭ノ增產、石炭ノ增產ノ方面ニ振向
ケルベキ勞力ハナイノデアリマス、之ヲ石
炭ガ取ツテシマヘバ米ヤ木炭ノ方ガ空ク
ノデアリマス、是ニ於テカ足リナイモノハ
外ヨリ移入スル外ハナイノデアリマスガ
此ノ勞力ノ移入ニ關シマシテ、旣往ノ實情
ヲ見マスト、政府部內ニ於テ立場ノ變リマ
スル方面ノ人々ハ其ノ立場カラノ意見ヲ
唱ヘテ、中々意見ガ一致致サナイ、爲ニ必
要ナル勞力ヲ入レルコトニ、少ナカラザル
支障ヲ生ジテ居リマシタコトハ實際ノ事
實デアリマス、斯樣ナ點ヲ考ヘテ見マスト、
勞力ノ方面ニ於キマシテモ、政府ガ委員會
ニ於テ言明セラレマシタ如ク、此ノ石炭ノ
增產ニ對シテ、必要ナル技術者及ビ勞働者
ガ得ラレルトハ信ジ得ラレナイノデアリマス、
先般陸軍大臣ハ此ノ點ニ付テ、銃後ノ產業
ノ爲ニ適當ナル技術者、勞働者ヲ得セシム
ルノ途ヲ開クト云フコトヲ、御言明ニナツ
テ居リマス、其ノ御配慮ハ大イニ多トスル
ノデアリマスルガ、此ノ石炭ノ增產ノミナ
ラズ、生產擴充ノ有ユル部面ニ於テ、熟練
ナル技術者、勞働者ヲ要望致シテ居リマス、
之ヲ充足センガ爲ニハ、歐羅巴ニ於テ戰爭
ヲ致シテ居ル國々ノヤツテ居リマスルヤウ
ニ二年ト限ラズ、モツト〓〓寛容ナル態
度ヲ示サレテ、熟練ナル技術者、勞働者ヲ
歸還セシメラレルコトヲ希望セザルヲ得ナ
イノデアリマス
更ニ政府ノ計畫シテ居ラレマスル增產ガ
出來タト致シマシテ運輸方面ノ狀態ガ今
日ノ如キデハ決シテ豫期ノ成果ヲ擧ゲル
コトガ出來ナイノデアリマス、昨年ノ事
實-發送電ニ石炭ガナイ、彼處ニ石炭ガア
ルカラ積ンデ來ヨウト云プノデ、配船ヲ致
シマスルト豈圖ランヤ石炭ハ山ニハアル
ガ海岸ニ出テ居ナイ、九州方面ニ於キマシ
テハ燃料油ノ配給ニ手違ヒヲ生ジタ爲
=百幾十艘ノ機帆船ガ唯空シク繫船ヲ致
シテ居ルト云フヤウナ狀態デハ增產バカ
リ圖リマシテモ、眞ノ成績ヲ擧ゲルコトガ
出來ナイノデアリマス貨車ヲ澤山造ツタ
ダケデハイケナイ、此ノ配給ガ圓滑デナケ
レバナラヌ積ンダモノハ遲滯ナク積出港
ニ運轉サレナケレバナラヌ積出港ニ運バ
レレバ直チニ是ガ置場ニ下サレナケレバナ
ラヌ、石炭ヲ積ンダ貨車ガ列ヲ成シテ、構
內ニ空シク停頓ヲ致シテ居ルヤウナ狀態デ
ハイカヌノデアリマス、荷役ノ設備、山カ
ラ消費者ノ消費場マデ遲滯ナク運バレマス
ルコトガ必要ナノデアリマス、幸ニ海運ノ
方面ニ於キマシテハ、遞信當局ガ機船、帆
船、艀所謂海運ノ各部面ニ亙リマシテ
組織的ニ運營ノ計畫ヲ立テテヤツテ居ラレ
やく、是等ヲ適當ニ利用セラレテ、眞ニ此
ノ運輸ノ圓滑ヲ圖ル準備ヲ、今日カラ十分
ニ整ヘテ置カレナケレバナラヌ、一貫セル
輸送計畫ガ必要ナノデアリマス、然ルニ此
ノ點ヲ衝イテ見マスルト、未ダ何等ノ成案
ガ出來テ居ナイノデアリマス、石炭ノ配給
ヲ一手ニ握ラウトスル斯樣ナ會社ノ計畫ヲ
立テラレナガラ、此ノ計畫ガ出來テ居ナイヤ
ウデハ、洵ニ心配ニ堪ヘヌト申サナケレバ
ナラヌノデアリマス、願クバモツト〓〓深
ク御考ニナリマシテ、公用船ト雖モ其ノ本
務ニ支障ナキ限リ、或ハ復航ノ船腹ヲ利用
致シマスルトカ、待機ノ爲ニ繫船ヲ致シテ
居リマス期間ヲ利用スルトカ致シテ、之ヲ
モ使フ位ノ御配慮ヲ願ハナケレバナラヌト
存ズルノデアリマス
更ニ終リニ臨ミマシテ、當局ノ深甚ナル
御考慮ヲ願ハナケレバナラヌ點ガアルノデ
アリマス事變以來物動計畫ト云ヒ、生產
擴充ト云ヒ、經濟統制ト云ヒ、色々ト御苦
心ニナツテ居リマスル其ノ御誠意、御熱心
ハ十分之ヲ認メマス、併シナガラ其ノ成績
ハ甚ダ擧ツテ居ラヌノデアリマス、ノミナ
ラズ徒ニ澤山ノ前科者ヲ作ツテ居ル、或ル
地方ニ於キマシテハ經濟警察ノ對象十万
戶バカリ)然ルニ二年間ニ檢擧サレタル者
六万幾千ト云フヤウナ數字サヘモ現バレテ
居ルノデアリマス、然ラバ是等ノ犯則者ハ
皆不良不逞ノ輩カト申セバ決シテサウデ
ハナイ、一死報國ノ誠ヲ持ツタ、所謂忠良
ナル陛下ノ赤子デアル、又一社會人ト致
シマシテモ、忠實勤勉ナル善良ナル人デア
ルノデアル、一體空虛ナ理想ヤ冷イ理論ニ
囚ハレテ、國民ノ性格、思想、感情、經濟
生活ノ狀態、斯ウ云フ點ヲ一向ニ御考ニナ
ラズ、唯一令ノ下ニ國民ヲ自由ニ爲シ得ルガ
如クニ御考ニナリマスルコトガ、有ユル失敗ノ
因デアル、精神總動員運動ノ失敗モ、或ハ又官
僚獨善ノ非難ガ盛ニアリマスルノモ、原因ハ玆
ニアルノデアル、一塊ノ石炭ガ山カラ掘出サ
レテ、消費者ノ手ニ移リマスルマデノ過程、
是ハ皆人ノ心ノ動キデアリマス、之ヲ御考
ニナラナケレバナラヌ、此ノ見地カラ致シ
マシテ、卽チ物價ノ上リ下リ、物資ノ流レ
モ皆人ノ心ノ反映デアルト云フ點カラ本案
ヲ見マスルト、更ニ〓〓憂慮ニ堪ヘナイモ
ノガアルノデアリマス、此ノ建前カラ致シ
マスルナラバ、立派ナ炭脈ヲ持ツタ、設備ノ
完全ナ、サウシテ能率ノ高イ技術者、勞働
者ヲ持ツテ居リマスル山ヲ、一生懸命ニ努力
ヲシテ掘リマシテモ、比較的ニ粗惡ナ炭層、
不完備ナ設備、低能率ノ勞働者、是デ當リ
前ニ稼ギマシテモ、其ノ結果ハ所謂適正利
潤ダケデアルノデアリマス、斯ウ致シマス
ルト決シテ企業心ハ湧起ラナイノデアリ
やっく、唯時局認識、愛國的熱情、奉公ノ至
誠斯ウ云フモノニ愬ヘテ、一生懸命ノ努
力ヲ求メル外ハナイノデアリマスルガ、
併シナガラ現在ノ國民ノ實生活ノ狀態、國
民ノ性格、思想、感情ト云フ方面カラ考へ
マスルナラバ、斯樣ナコトヲ以テ本當ニ成
績ヲ擧ゲ得ルトハ考ヘラレナイノデアリマ
ス、此ノ點カラ致シマシテ、果シテ豫期ノ
如キ成績ヲ擧ゲ得ラルルヤ否ヤト云フ點ニ
付キマシテハ大イナル疑問ヲ存セザルヲ
得ナイノデアリマス、要スルニ本案ハ政府
ガ言明セラレテ居リマスル所ガ、皆悉ク言
明ノ通リニ實行サレルモノトノ假定ノ下ニ
立ツテ、初メテ增產ノ結果ガ得ラレルカト
云フ望ミガ僅ニ存スルニ過ギナイ、資材ノ
點ニ於テモ、必要ダケハ必ズ配給スル技
術者勞働力モ必ズ配給スルト云フ、此ノ假
定ノ下ニ於テ增產ガ望ミ得ラルルカト思ハ
レルニ過ギナイノデアリマス、然ルニ前來
·中述ベマシタ如ク、此ノ政府ノ言明ガ如實
ニ行ハレルト云フコトニ付テ多大ノ疑問ガ
アリマス、又從來設ケラレマシタル所謂國
策會社ナルモノハ成績甚ダ芳シカラヌコ
トハ周知ノ事實デアリマス、此ノ點カラ致
シマシテモ、又失敗ヲ繰返スニアラズヤト
思ハレル點ガアルノデアリマス、併シナガ
ラ石炭ノ增產ガ急務デアルコト、及ビ爲政
當局ガ責任ヲ以テ、此ノ計畫ヲ實現セント
スル其ノ熱意ニ對シテ、姑ク信賴ヲ致シマ
シテ本案ニ贊成ヲ致スノデアリマス、全責
任ハ政府ニアリ、政府ハ此ノ重大ナル責任
ヲ痛感セラレマシテ、今マデ本案ノ審議ニ
當ツテ言明セラレマシタル諸點ニ付テハ
有ユル努力ヲ拂ツテ之ヲ實際ニ現ハシ、以
テ刻下ノ急務デアリマスル石炭增產ノ成績
ヲ、如實ニ擧ゲラレタイト云フ希望ヲ申述
ベマシテ、本案ニ贊成ノ理由ト致ス次第デ
アリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=15
-
016・小山松壽
○議長(小山松壽君) 只今ノ東條君ノ演說
中ニ祕密會ノ內容ニ亙リタルヤノ疑ノア
ル點ガアリマス、議長ニ於テ速記錄調査ノ
上適當ニ處理致スコトニ致シマス-加藤
鐐造君
石炭配給統制法案(政府提出)ニ對ス
ル修正案(加藤鐐造君提出)
石炭配給統制法案中左ノ通修正ス
第一條第三號ヲ削ル
〔加藤鐐造君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=16
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017・加藤鐐造
○加藤鐐造君 私ハ社會大衆黨ヲ代表致シ
マシテ、所見ヲ述ベント致ス者デアリマス
ルガ、先ヅ共同提案ノ修正案竝ニ附帶決議
ニ贊成致シマシテ更ニ我黨獨自ノ修正案
ニ付キマシテ、其ノ提案ノ理由ヲ說明致シ
タイト存ジマス
本法案ノ提出セラレマシタ理由ハ、我國
國防經濟ノ基本產業タル石炭不足ノ現情ニ
鑑ミテ、「プール」平準價格制ノ採用ニ依リ、
價格ノ調整ト配給ノ圓滑ヲ圖リ、更ニ增產
奬勵金ト新坑開發助成金ヲ支出シテ、約
五百五十万瓲ノ增產ヲ圖ラントスルニア
ルノデアリマスヽ要スルニ統制ノ强化ヲ
圖リ、以テ石炭增產ノ實ヲ擧ゲントスル意
圖ニ外ナラナイノデアリマス、然ルニ第
一條第三號ハ之ニ除外例ヲ設ケテ、政
府ノ說明スル所ニ依リマスレバ、約七百万
瓲ノ石炭ヲ統制外ニ置カウト云フノデアリ
マス本邦全產額ノ一割何分カノモノヲ除
外スルト云フコトハ、本案ノ目的トスルㄱプ
ール」平準價格制ノ操作機能ヲ縮小スルコ
トトナリ此ノ除外例ガ今後主務大臣ノ許
可ニ依リ如何樣ニモ取扱ハレルト云フコト
ニナリマスト、現在ノ七百万瓲ガ軈テ其ノ
幾倍トナリ、遂ニ今日ノ例外ガ原則トナル
ガ如キ結果ヲ招來シナイトハ、何人モ保證
シ難イノデアリマス(拍手)而モ此ノ自家用
炭礦ノ所有者ガ、利潤率ノ高イ重工業デア
リマスルカラ、屢〓自家闇取引ガ行ハレル
モノト見ナケレバナラナイノデアリマス
然ル時ハ資材勞力ガ、ソレ等ノ所有スル炭
礦ヘ向ツテ集中スルト云フ危險ガ多分ニア
ルノデアリマス、他ノ共同販賣會社、例
バ銅、鐵層等ノ場合ハ、例外規定ガ設ケラレ
テ居ナイニモ拘ラズ、石炭ニ限ツテ例外規
定ヲ設ケラレルト云フ理由ガ、私ニハ不明
デアリマス、小企業ノ自家使用ヲ認メズ、
大企業ニノミ認メルト云フコトモ、亦甚ダ
不公平デアルト考ヘルノデアリマス、仍テ
斯ル例外規定ヲ設ケズ、山元自家用炭ヲ除
イテ、全部ヲ一應「プール」ニ通スコトガ、
統制强化ヲ圖ル上ニ於テモ必要デアルト云
フノガ本修正ノ理由デアリマス
次ニ私ハ本案全體ニ對スル所ノ所見ヲ述
ベタイト存ジマス、現在ノ石炭增產計畫ノ
前ニ橫ハル障碍ハ多々アリマスガ、其ノ主
タルモノハ勞力技術ノ不足、資材ノ缺乏等
デアリマス、是等ノモノヲ如何ニシテ充足
セシムルカト云フコトガ、增產ノ先決問題
デナケレバナラナイノデアリマス然ルニ
政府ハ是等ノ根本問題ニ觸レタル對策ヲ、
今日立テテ居ラナイノデアリマス今日勞
務勳員計畫ノ遂行ガ最モ困難ナ仕事デアル
ノデアリマスガ、之ニ對シテ政府ハ本案ノ
審議中色々ナ計畫ヲ發表シタノデアリマス
ルガ、是ナラバ必ズ必要ナル勞務者ヲ集メ
ルコトガ出來ルト吾々ヲ納得セシムルヤ
ウナ確固タル方針ヲ見ルコトガ出來ナカツ
タノデアリマス、私ハ以下數項ニ亙ツテ此
ノ問題ヲ論ジテ見タイト存ジマス
第一ニハ、如何ニシテ五百五十万瓲ノ增產
ニ必要ナ鑛夫ヲ補給スルカト云フコトデア
リマス、政府ハ四万五千人ノ鑛夫ノ增員ヲ
行フ爲ニ、三万三千人ノ半島人ヲ入レル計
畫デ、旣ニ一万九千人ハ入ツテ居ルカラ
豫定人員ダケ人レルコトハ困難デナイト言
ツテ居ルノデアリマスガ、併シ私ハ昨年半
島人ノ入植ガ容易デアツタカラト云ツテ、
此ノ問題ヲ簡單ニ片付ケルコトハ早計デア
ルト考ヘルノデアリマス、昨年ハ朝鮮ハ非
常ナ旱魃デアツタ爲ニ、半島人ノ移動ハ比
較的容易デアツタノデアリマス、半島ニ於
テモ今日勞働者ハ非常ニ不足シテ居ルノデ
アリマスルカラ、決シテ簡單ニハ參リマセ
又、此ノ點ニ關シテ特別ナ對策ハ、政府ノ
說明ニ依ツテ見ルコトガ出來ナカツタノデ
アリマス、又政府ハ農閑期農民ヲ出來ルダ
ケ動員スル計畫デアルト言ツテ居リマスル
ガ、是ハ既ニ昨年度ニ相當動員サレテ居ル
ノデアリマシテ、更ニ幾許ノ人ヲ動員スル
コトガ出來ルカト云フコトハ疑問デアリマ
ス、而モ何縣デ何人動員スルカト云フコト、
又何處ノ炭礦ニ何人向ケルカト云フヤウ
ナ、具體的動員計畫ハ少シモ立ツテ居ラナ
イノデアリマス
第二ハ、鑛夫ノ移動防止ノコトデアリマ
スルガ、移動率ハ近年非常ニ高クナツテ居
リマス、北海道ノ或ル小炭礦デハ、一年以
上ノ勤續者ハ約五〇%ニ過ギナイト嘆ジテ
居ツタノデアリマス、又比較的移動率ノ低イ
ト言ハレテ居リマスル昭和系ノ炭礦デモ、
移動ノ多イノニ惱マサレテ居ルノデアリマ
ス、ヤハリ北海道デアリマスルガ、或ル大
キナ炭礦デハ、現在約八千人ノ鑛夫ガ居ル
中デ、昭和十四年度ニ於ケル所ノ平均一箇
月ノ移動ハ、採用者數四百七十一人、除籍
者數五百五十六人ト云フ數字ガ現ハレテ居
ルノデアリマスガ、政府ハ此ノ點ニ關シテ
モ何等具體的ナ對策ヲ示シテ居ラナイノデ
アリマス
第三ニハ鑛夫ノ稼働率ガ低下シ、又一人
當リノ一年ノ出炭量ガ減ツタト云フ事實デ
アリマス政府ノ發表セル調ニ依リマシテ
モ十三年度カラ著シク稼働率ガ低下シ、
出炭量ガ減ジテ居ルノデアリマス、此ノ問
題ニ付テ相當深ク掘下ゲタ〓究ト、サウシ
テソレニ對スル對策ガ必要デアルト思フノ
デアリマスガ、政府ニハ此ノ點ニ付テノ持
合セガナイノデアリマス以上述べマシタ
如ク勞務動員ニ付テハ、政府ハ單ニ希望數
字ヲ述ベテ居ルニ過ギナイノデアリマシテ、
具體的計畫ニ基イタ責任數字デハ決シテナ
イノデアリマス昭和十四年度職業紹介所
ニ於ケル鑛夫ノ募集狀況ハ、充足率二三%デ
アリマス、各炭礦ニ於テ鑛夫募集ニ狂奔シ
テ居リマスガ、ソレハ徒ニ鑛夫ノ爭奪戰ト
ナツテ、移動率ヲ高メル結果トナツテ居ル
ノデアリマス今日國家ノ手デ行ハレテ居
ル職業紹介所ト雖モ、殆ド役ニ立ツテ居ラ
ナイ現狀デアリマス、本議場或ハ本案委員
會ニ於テ屢〓論ゼラレタ如ク、現在勞働者ノ
華トモ言ハレテ居ル軍需工場方面ニ於テ
モ著シク勞働力ノ不足ヲ告ゲテ居リマス
時ニ、地下幾百尺ノ暗黑ノ中ニ於キマスル、
ジメ〓〓トシタ勞働ヲ厭フノハ當然デアリ
マシテ、ソコニ何等カノ特別ナ工夫ガナケ
レバ此ノ問題ヲ解決スルコトハ出來ナイ
ノデアリマス、勞務規制ヲ强化シテ、鑛夫
ヲ炭礦ノ中ニ縛リ付ケルト云フヤウナ主張
ガ、屢〓本案審議中ニモ行ハレタノデアリマ
スガ、是ハ甚シイ暴論デアルト言ハナケレ
バナリマセヌ、勞働强化ニ依ツテ出炭量ヲ
增大セシメルト云フヤウナコトハ、絕對ニ
出來ナイノデアリマス、鑛夫ヲシテ喜ンデ
炭礦ニ働カスコトノ出來ルヤウニ、鑛夫生活
ト云フモノヲ樂シイモノニシナケレバナラ
ヌト云フノガ、最モ根本的ナ問題デアリマ
ス、假令炭鑛ノ中ノ勞働ガ辛イモノデアツ
テモ、一步地上ヘ出レバ、ソコニハ極樂ノ
世界ガ待ツテ居ルト云フ風ニマデ、鑛夫ノ
福利施設ノ徹底ヲ圖ラナケレバナラヌノデ
アリマス、又炭礦夫ハ常ニ非常ナ危險ニ
曝サレテ居リマス、地上勞働者ノヤウニ、
長イ年月ノ間、勞働ヲ續ケルコトガ出來ナ
イカラ、健康保險制度ノ擴充、鑛夫年金制
度ノ制定等ガ急務デアリマス、單ニ物質的
ナ待遇改善ノミニ限ラズ、鑛夫ノ國家ニ對
スル功勞ヲ表徴スル爲ニ、產業功勞章トモ
云フベキ勳章ヲ贈リ軍人ニ次イデ名譽ト
國民ノ感謝トヲ表現スル制度ガ、必要デア
ルト考ヘルノデアリマス、最近鑛山ノ災害
ガ特ニ多イノデアリマス、是ハ單ニ災害ヲ
起シタ炭礦ノ出炭量ヲ減ズルバカリデナ
ク、鑛夫募集ノ上ニ於テモ、大キナ障碍ト
ナツテ居ルノデアリマスカラシテ、政府ハ
通風、排氣、排水等ノ設備ノ充實ヲ督勵シ
テ、瓦斯ノ爆發、落磐、溢水等ノ慘害ヲ未
然ニ防止シナケレバナラナイノデアリマス
(拍手)現地ニ於ケル技術者ヨリ聞イタ話デ
アリマスガ、是等ノ所謂災害防止設備ノ充
實ヲ、極力技術者ノ側ヨリ主張致シマスケ
レドモ、炭礦主側ニ於キマシテハ、固定資
本ノ多クナルコトヲ惧レテ、技術者側ノ要
求ニ應ジナイト云フ歎聲ヲ、吾々ハ現地ニ
於テ屢〓聞イタノデアリマス(拍手)私ハ增
產奬勵金ノ如キ、弊害ノミ多クテ效果ノ薄
イ所ニ多大ノ支出ヲスルヨリモ、災害豫防
施設ノ助成ニ多クヲ投ジタ方ガ、、出炭量ヲ
增加スル上ニ於テ幾倍モ效果ガアルト云フ
コトヲ、固ク信ジテ居ル者デアリマス(拍手)
資材ノ供給ニ付テハ、此ノ際重點主義ニ依
ツテ、優先的ニ配給スルト政府ハ言ツテ居
リマスガ、政府ハ現在ドノ程度マデ、資材
不足ヲ認メテ居ルカト云フコトガ先ヅ問題
デアリマス、例ヘバ政府ノ發表ニ依リマス
レバ、炭礦用資材ノ配給率ハ、壓延鋼材ノ
七五%ヲ最低トシテ、坑木ノ一〇〇%ヲ最高
トシテ居リマスガ、果シテ實際是ダケ現在
配給サレテ居ルノデアラウカト云フ點ニ、
疑問ガアルノデアリマス、個々ノ炭礦ニ就
テ現地ニ於テ吾々ガ調査シタ所ニ依リマス
レバ、大手筋ノ炭礦ニ於テスラ四〇%、구
ウトサイダー」ニ至ツテハ、皆無ノ所ガ相當ア
ルト云フ現狀デアルノデアリマス、此ノ甚
シイ見解ノ相違、此ノ上ニ將來必ズ資材ノ配
給ニ付テハ、或ハ十分デアルトカ、或ハ不
十分デアルトカ云フ爭ガ起ツテ、來ルト私ハ
思フノデアリマス、吾々ノ資材ト云フノハ
勿論鑛夫ノ生活必需品ヤ、勞働用具ヲ含ン
デ居ルノデアリマスガ、例ヘバ地下足袋ガ
非常ニ不足シテ居ルノデアリマス、有機化
學局デハ現在ノ二倍ノ配給ヲスルト言ツテ
居リマス燃料局デハ又鑛夫一人當リ月一
足ノ配給デ、十分デアルト云フコトヲ言ツ
テ居リマス、併シ是ハ決シテ私共是デ十分
デアルトハ考ヘナイ、殊ニ一日炭礦ノ水ノ
中ニ浸ツテ、又翌日濡レタ儘ノ足袋ヲ履イ
テ出掛ケルノデアリマスカラ、今日ノヤウ
ナ「スフ」入リノ地下足袋ハ、一月モ半月モ
持ツモノデハナイノデアリマスソコデ是
ハ十分ナ必要數量ノ調査ノ上ニ立ツテ、責
任配給ト云フモノガ行ハレナケレバナラナ
イト考ヘルノデアリマス
不十分ナ勞力資材ヲ以テ、十分ナル能率
ヲ擧ゲル爲ニハ鑛區ノ整理合併ト云フコ
トガ、絕對ニ必要デアリマスヽ現在ノ鑛區
ト云フモノハ經營ノ合理的基礎ノ上ニ分
割セラレタモノデハアリマセヌサウシテ
我國ノ炭礦ノ經營單位ト云フモノハ、非常
ニ小サイノデアリマスカラ資材勞力ト云
フモノガ非常ニ不經濟ニ使ハレテ居ルノ
デアリマス、此ノ點ニ著眼シタ所ノ政府ハ、
一昨年ノ議會ニ重要鑛物增產法ヲ提出シテ、
現在施行サレテ居ルノデアリマスガ政府
ハ之ヲ今日殆ド活用シテ居ラナイノデアリ
きく、此ノ法律ガ施行セラレテ、旣ニ二箇
年ニ及バントシテ居ルノデアリマスガ同
法ノ第四條、第五條ニ基キ業者間ノ協議ヲ
爲サシメツツアルモノガ今日二十一件、協
議ノ整ヒタルモノガ僅ニ二件デアリマシ
テ、政府ガ協議命令ヲ爲シタルモノハ、
一件モナイト云フ有樣デアルノデアリマス、
現地デ聽イテ見マスト、少シ面倒ナモノハ
鑛山監督局デハ取上ゲナイト云フ不平ガ、
隋分アツタノデアリマス是デハ幾ラ立派
ナ法律ヲ作ツテ見テモ駄目デアル、國家ノ
統制力ト云フモノハ國民ノ上ニ平等ニ働
カナクテハ其ノ效果ヲ奏シナイモノデア
ルト考ヘルノデアリマス、炭價ノ引上ガ增
產ノ捷徑デアルト云フ議論ガ、業者側カラ
屢〓出テ居リマスルガ、政府ノ今囘執ラント
致シテ居リマス所ノ增產奬勵金政策ト云フ
モノモ、結局炭價引上ノ一步手前ノモノニ
過ギナイノデアリマス、炭價引上論ノ理由
ハ「コスト」高ニ依ル採算難ト云フ點デア
リマスガ、今日ノ炭礦經營ガ、少クトモ小
炭礦ヲ除イテ、ソレ程困難ナモノデアルト
ハ信ジナイノデアリマス、此處ニ昭和系ノ
會社ノ中カラ、九州炭礦、北海道炭礦、入山
炭礦、磐城炭礦、太平洋炭礦、東邦炭礦ノ六
社ヲ選ンデ昭和十一年上期ヨリ昭和十四
年上期ニ至ル間ノ綜合シタ業績ノ調査ガア
リマスガ、昭和十一年上期利益率一割九分
三厘、十二年上期二割二厘、十三年上期三
割三厘ト云フ風ニ、順次利益率ヲ增シテ來
タモノガ、昭和十四年上期二割二分四厘、
同年下期ニ一割九分六厘トナツテ居リマス、
サウシテ此ノ間ニ拂込資本金ハ一倍八分强
ニ增加シテ居ルノデアリマス、互助會ノ方
ノ調査モアリマスルガ、大體大同小異デア
リマス、此ノ數字ヲ見マシテモ分ル通リ
昭和十四年度ガ成績ガ惡イト云フノデハ決
シテナイ十二年十三年ガ儲カリ過ギタ
ニ過ギナイノデアリマス、勿論何時マデモ
高度ノ利益率ヲ維持シタイト云フノハ營
利ヲ目的トスル經濟機構ノ下ニ於キマシ
テ、其ノ要求ハ當然デアルカモ知レマ
セヌガ、戰時經濟ノ基礎產業タル石炭
ノ値上ハ、總テノ國內物價引上ノ誘因
トナルノデアリマス是ハ低物價政策ノ破
綻デアリ延イテ戰時國防經濟ノ基礎ヲ危
クスルモノデアルト信ズルノデアリマス、
私益經濟ノ下ニ於ケル低物價政策ト、增產
計畫遂行トノ間ニ橫ハル矛盾ガ、玆ニ大キ
ク現ハレテ來ルト思フノデアリマス、私ハ
此ノ矛盾ヲ明確ニ解決スル所ノ方策ガ立テ
ラレナケレバ石炭ノ增產ハ不可能デアル
ト信ズル者デアリマス我國ノ炭礦經營者
ハ最小ノ資本ヲ以テ最大ノ利潤ヲ擧ゲル
コトニ汲々トシテ、固定資本ヲ出シ吝ンデ
居ルノデアリマス、吾々ハ炭礦ノ高度ナル
機械化、竝ニ鑛區ノ併合ニ依ル資材勞力ノ
能率化ハ、最早國營ヲ斷行スルコト以外
ニ、其ノ途ガナイト云フ結論ニ到達スルモ
ノデアリマス(拍手)藤原商工大臣ハ本案ノ
審議ニ當リマシテ、最初ノ內ハ本法ガ石炭
增產ノ最上ノ案デアルト言ツテ居ラレマシ
タ、所ガ其ノ內ニ是ハ次善ノ案デアルト訂
正セラレマシタ、更ニ最後ニハ、他日ハ他
日トシテ、目下ノ所此ノ案デヤツテ行キタ
イト云フ風ニ讓歩シテ來ラレタノデアリマ
ス、私ハ商工大臣ノ信念ヲ疑フ者デアリマ
ス、若シ政府ノ所信ヲ裏切ツテ、此ノ案ヲ
以テ石炭ノ增產ガ出來ナイト云フコトニナ
ツタナラバドウナルデアリマセウカ我
國ノ產業界ハ大混亂ニ陷リ、國防經濟ハ危
殆ニ瀕スルノデアリマス、此ノ時ノ責任ハ
一體誰ガ負フデアリマセウカ、藤原商工大
臣ハ大臣ヲ辭メテ逃避セラレレバ、最早何
人モ其ノ事ヲ追究シナイデアリマセウ、併
シ遁レル所ヲ持タナイ國民ハドウナルデア
リマセウカ、攪亂セラレ破壞セラレタ戰時
經濟ノ再建ノ爲ニ、更ニ幾倍カノ血ト脂汗
ヲ搾ラナケレバナラナイノデアリマス、私
ハ玆ニ私ノ所信ヲ披瀝シテ政府ノ猛省ヲ促
シ、最善ノ努力ヲ熱望スル所以デアリマス
最後ニ我黨提出ノ希望條項ヲ朗讀致シマ
ス
希望條項
政府ハ勞力不足ノ現狀ニ鑑ミ鑛夫ノ
稼働時間ノ短縮榮養ノ補給其ノ他福利
施設ノ徹底社會的地位ノ向上ヲ期シ鑛
夫年金制度產業功勞章制度等ヲ速ニ制
定シ以テ勞務動員ノ萬全ヲ期スベシ
尙ホ政府ハ技術員現場係員ノ指導養
成保護等ニ最善ノ努力ヲ爲スベシ
二、近時鑛山災害ノ頻發ハ必要ナル勞務
動員計畫ノ遂行ニ著シキ支障ヲ來シ石
炭增產ヲ阻碍スルヲ以テ政府ハ速ニ災
害防止ノ爲ノ通風、排氣、排水ノ設備
ノ指導助成ヲ行フベシ
三石炭增產ニ必要ナル生產資材(鑛夫
ノ生活必需品及ビ勞働用具ヲ含ム)ノ
優先的責任配給ヲ行フベシ
四政府ハ國防經濟ノ確立ノ爲石炭鑛業
ハ其ノ企業ノ特殊性ニ鑑ミ速ニ國家管
理ヲ斷行スベシ
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=17
-
018・小山松壽
○議長(小山松壽君) 是ニテ討論ハ終局致
シマシタ、是ヨリ第二讀會ノ採決ニ入リマ
スガ、其ノ順序ハ先ヅ本案ニ對スル加藤君
提出ノ修正案ニ付採決シ、次ニ委員長ノ報
告ニ係ル修正ニ付採決スルコトト致シマス、
採決致シマス、加藤君提出ノ修正案ニ贊成
ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=18
-
019・小山松壽
○議長(小山松壽君) 起立少數、仍テ修正
案ハ否決セラレマシタ次ニ本案ノ委員長
報告ニ係ル修正ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メ
マス
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=19
-
020・小山松壽
○議長(小山松壽君) 起立多數、仍テ委員
長報告ニ係ル修正ハ可決致サレマシタ拍
手)其ノ他ハ原案ノ通リ御異議アリマセヌ
カ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=20
-
021・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ其ノ他ハ原案ノ通リ決シマシタ、
是ニテ本案ノ第二讀會ハ終了致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=21
-
022・服部崎市
○服部崎市君 直チニ本案ノ第三讀會ヲ開
カレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=22
-
023・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌガ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=23
-
024・小山松壽
○議長(小山松喜君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ本案ノ第三讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
石炭配給統制法案第三讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=24
-
025・小山松壽
○議長(小山松壽君) 別ニ御發議モアリマ
セヌ、本案ハ第二讀會議決ノ通リ確定致シ
マシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=25
-
026・服部崎市
○服部崎市君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此ノ際政府提出、昭和九
年法律第四十五號中改正法律案、昭和十五
年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲公債追
加發行ニ關スル法律案、支那事變ニ關スル
一時賜金トシテ交付スル爲公債發行ニ關ス
ル法律案、外國爲替管理法中改正法律案、
右四案ヲ一括議題ト爲シ、委員長ノ報告ヲ
求メ、其ノ審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=26
-
027・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=27
-
028・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ハ變更セラレマシタ-昭和
九年法律第四十五號中改正法律案、昭和十
五年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲公債
追加發行ニ關スル法律案、支那事變ニ關ス
ル一時賜金トシテ交付スル爲公債發行ニ關
スル法律案、外國爲替管理法中改正法律案、
右四案ヲ一括シテ第一讀會ノ續キヲ開キマ
ス、委員長ノ報〓ヲ求メマス-委員長紫
安新九郞君
昭和九年法律第四十五號中改正法律案
(貿易調節及通商擁護ニ關スル件)(政
府提出、貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
昭和十五年度一般會計歲出ノ財源ニ充
ツル爲公債追加發行ニ關スル法律案
(政府提出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
支那事變ニ關スル一時賜金トシテ交付
スル爲公債發行ニ關スル法律案(政府
提出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
外國爲替管理法中改正法律案(政府提
出、貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一昭和九年法律第四十五號中改正法律案
(貿易調節及通商擁護ニ關スル件)(政
府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十五年三月二十二日
委員長紫安新九郞
衆議院議長小山松壽殿
報〓書
一昭和十五年度一般會計歲出ノ財源ニ充
ツル爲公債追加發行ニ關スル法律案
(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十五年三月二十二日
委員長紫安新九郞
衆議院議長小山松壽殿
報〓書
一支那事變ニ關スル一時賜金トシテ交付
スル爲公債發行ニ關スル法律案(政府
提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十五年三月二十二日
委員長紫安新九郞
衆議院議長小山松壽殿
報告書
一外國爲替管理法中改正法律案(政府提
四
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十五年三月二十二日
委員長紫安新九郞
衆議院議長小山松壽殿
〔紫安新九郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=28
-
029・紫安新九郎
○紫安新九郞君 只今上程セラレマシタル
昭和九年法律第四十五號中改正法律案其ノ
他三件ノ委員會ニ於ケル經過及ビ結果ヲ申
上ゲマス
昭和九年法律第四十五號ハ貿易調節及ビ
通商擁護ニ關スル法律デアリマス、其ノ施
行期間ノ三年ヲ六年ニ改正シタノデアリマ
スルガ、其ノ改正法律ノ施行期間モ、昭和
十五年四月三十日マデトナツテ居リマスノ
デ、現下ノ國際通商ノ情勢ニ鑑ミルニ、世
界各國ハ本邦ニ對シテ如何ナル經濟上ノ措
置ヲ執ルヤモ測ラレザルノ現狀ニアリマス
ノ六、此ノ際本法ノ施行期間ヲ更ニ三年間
延長セントスルノデアリマス、委員會ハ全
會一致ヲ以テ可決致シマシタ
次ニ昭和十五年度一般會計歲出ノ財源ニ
充ツル爲公債追加發行ニ關スル法律案ノ委
員會ニ於ケル經過竝ニ結果ヲ申上ゲマス
昭和十五年度歲入歲出總豫算追加第二號ニ
計上セル經費ノ所要財源總額二億一千六百
六十餘万圓ヨリ普通歲入及ビ前年度剩餘
金ヲ以テ充當スベキ分三千八百三十餘万圓
ト道路公債法ニ依ル公債金ヲ以テ充當ス
ベキ分六十餘万圓トヲ差引キタル殘額一億
七千七百七十万餘圓ヲ公債ニ依ラントスル、
モノデアリマス、委員會ハ全會一致ヲ以テ
可決致シマシタ
次ニ支那事變ニ關スル一時賜金トシテ交
付スル爲公債發行ニ關スル法律案ノ委員會
ニ於ケル經過及ビ結果ヲ申上ゲマス、今囘
ノ支那事變ニ關シ功勞アリタル陸海軍人其
ノ他ニ對シ一時賜金トシテ交付スル爲、昭
和十五年度分トシテ總額一億六千四百二十
万圓ヲ限リ公債ニ依ラントスルモノデアリ
マス本公債ハ其ノ性質ニ顧ミ、受賞者ヲ
シテ長ク保有セシムル爲、之ヲ登錄國債ト
シ、之ニ對シ特別ナル證劵ヲ發行スルコト
トシ、且ツ我國現下ノ財政經濟事情ニ鑑ミ、
之ヲ政府ニ於テ買上グル場合ノ外、讓渡又
ハ擔保ニ供スルコトヲ得ザラシムルコトト
ナツテ居ルノデアリマス、委員會ハ全會一
致ヲ以テ可決致シマシタ
次ニ外國爲替管理法中改正法律案ノ委員
會ニ於ケル經過竝ニ結果ヲ申上ゲマス、近
來海外ニ於テ本邦銀行劵ノ相場ガ下落致シ
マシタ結果、輸出貨物代金ノ決濟又ハ貿易
外受取勘定ノ本邦向ケ送金等ニ際シマシテ、
本邦銀行劵ヲ送付又ハ携帶輸入スル者ガ增
加シ、本邦外貨資金ノ獲得保全上憂慮スベ
キ事態ガ生ジマシタノデ、其ノ抑制ヲ圖ル
爲ノ外國爲替管理法ニ基ク大藏省令ニ對
シ、其ノ法的根據ニ疑惑ヲ挿ム向キガアリ
マスノデ、外國爲替管理法上ノ根據ヲ明ニ
スルト共ニ、通貨ニ關スル爲替管理法規ヲ
整備スルモノデアリマス、委員會ニ於キマ
シテハ全會一致ヲ以テ可決致シマシタ、此
ノ段御報〓申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=29
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030・小山松壽
○議長(小山松壽君) 四案ノ第二讀會ヲ開
クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=30
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031・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、四案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=31
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032・服部崎市
○服部崎市君 直チニ四案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報〓ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=32
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033・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=33
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034・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ四案ノ第二讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
昭和九年法律第四十五號中改正法律案
(貿易調節及通商擁護ニ關スル件)
第二讀會(確定議)
昭和十五年度一般會計歲出ノ財源ニ充
ツル爲公債追加發行ニ關スル法律案
第二讀會(確定議)
支那事變ニ關スル一時賜金トシテ交付
スル爲公債發行ニ關スル法律案
第二讀會(確定議)
外國爲替管理法中改正法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=34
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035・小山松壽
○議長(小山松壽君) 別ニ御發議モアリマ
セヌ、第三讀會ヲ省略シテ、四案トモ委員
長報告通リ可決確定致シマシタ(拍手)
日程第一、靑年禁酒法案ノ第一讀會ヲ開キ
そう、提出者ノ趣旨辯明ヲ許シマス-提
出者高橋壽太郞君
第一靑年禁酒法案(高橋壽太郞君外
十三名提出)第一讀會
靑年禁酒法案
靑年禁酒法
第一條本法ニ於テ靑年ト稱スルハ滿二
十歲以上二十五歲未滿ノ者ヲ謂フ
第二條靑年ハ酒類ヲ飮用スルコトヲ得
ス
營業者ニシテ其ノ業態上酒類ヲ販賣又
ハ供與スルモノハ靑年ノ飮用ニ供スル
コトヲ知リテ酒類ヲ販賣又ハ供與スル
コトヲ得ス
第三條警察官署ハ前條第一項ノ規定ニ
違反シタル者ニ對シ戒告ヲ爲スコトヲ
得
第四條靑年カ其ノ飮用ニ供スル目的ヲ
以テ所有又ハ所持スル酒類及其ノ器具
ハ行政ノ處分ヲ以テ之ヲ沒收シ又ハ廢
棄其ノ他ノ必要ナル處置ヲ爲サシムル
コトヲ得
第五條第三條ノ戒告ヲ受クルコト三囘
ニ及ヒ仍第二條第一項ノ規定ニ違反シ
タル者ハ科料ニ處ス
第二條第二項ノ規定ニ違反シタル者ハ
科料ニ處ス
第六條營業者カ未成年者又ハ禁治產者
ナルトキハ本法ニ依リ之ヲ適用スヘキ
罰則ハ之ヲ法定代理人ニ適用ス但シ其
ノ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有
スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
營業者ハ其ノ代理人、戶主、家族、同
居者、雇人其ノ他ノ從業者ニシテ其ノ
業務ニ關シ本法ニ違反シタルトキハ自
己ノ指揮ニ出テサルノ故ヲ以テ處罰ヲ
免ルルコトヲ得ス
明治三十三年法律第五十二號ハ本法ニ
依ル犯罪ニ之ヲ準用ス
附則
本法ハ昭和十五年四月一日ヨリ之ヲ施行
ス
本法施行ノ際滿二十歲ニ達シタル者ニ付
テハ本法ハ之ヲ適用セス
〔高橋壽太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=35
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036・高橋壽太郎
○高橋壽太郞君 禁酒ノ望マシイコトハ、
現ニ我ガ衆議院ニ於テ、多年禁酒ヲ實行シ
テ居ルコトニ徵シテモ明カデアリマス、卽
チ昭和七年八月二十二日、各派協議會ノ申
合セニ依リマシテ、院內ニ酒類ノ搬入及ビ
販賣ヲ禁止スルコト、但シ儀禮ノ場合ハ此
ノ限ニ在ラズト云フ申合セヲ致サレタノデ
アリマス爾來茲ニ八年、衆議院ハ最モ嚴
肅ニ此ノ禁酒ヲ實行サレタノデアリマス、
此ノ事ハ我國ニ於ケル禁酒運動ニ取ツテ
ハ特筆大書スベキ事實デアリマス然ル
ニ此ノ事ガ廣ク國民ニ周知サレナイト云フ
コトハ)私共ノ甚ダ遺憾トスル所デアリマ
ス、仍テ此ノ機會ヲ利用シテ、本議場ヲ通
ジテ我ガ國民ニ、衆議院コソハ禁酒運動ノ
先覺者デアリ、忠實ナル禁酒團體デアルト
云フコトヲ言明致シタイト存ジマス(拍手)
畢竟衆議院ニ於テ禁酒ノ申合セヲナサレマ
シタコトハ酒ノ害ヲ認メラレタ上ノコト
ハ申スマデモアリマセヌ、若シ酒ガ假ニ百
藥ノ長デアリマスレバ、衆議院ハ禁酒ノ申
合セトハ反對ニ、議員ニ酒ヲ奬メ、場合ニ
依ツテハ酒ヲ强制シテ飮マセルト云フ方策
ニ出ヅベキデアツタト存ジマス、議員諸君
ノ如ク、國民ノ儀表トシテ、學德竝ビ進ミ、
齡〓ネ不惑ヲ過ギ、中ニハ心ノ欲スル所ニ
從ツテ矩ヲ踰エナイト云フ境地ニ達セラレ
タ方々モ多イノデアリマスガ、而モ尙ホ禁
酒ノ必要ヲ認メラレタノデアリマス、然ル
ヲ況ヤ靑年ニ於テヲヤデアリマス、靑年時
代コソ人生一代ニ取ツテ洵ニ一大危機デア
リマス、最モ誘惑サレ易ク、最モ迷ヒヲ起
シ易ク、而シテ心身尙ホ發育ノ途上ニアル
人々デアリマス、之ニ對シ禁酒ヲセシムル
コトノ必要デアルコトハ、言ヲ俟タザルコ
トト存ジマス、是ガ吾々靑年禁酒法案ヲ提
出致シマシタ根本ノ理由デアリマス
靑年禁酒法案ノ內容ト致シマス所ハ、二
十歲以上ヨリ二十五歲マデノ靑年ニ對シテ
禁酒ヲ求メルノデアリマス、併シナガラ一
擧ニ二十歲カラ二十五歲マデノ靑年ニ禁酒
ヲ求メルト言フノデハアリマセヌ、現行ノ
未成年者飮酒禁止法ニ依ツテ、飮酒ノ惡習
ヨリ免レテ居リマシタ人達ガ、丁年ニ達シ
テモ、更ニ二十五歲マデ酒ノ害カラ守立テ
テ行カウト云フ案デアリマス、謂ハバ靑年
禁酒五箇年計畫トモ申スベキモノデアリマ
ス、隨ヒマシテ此ノ靑年禁酒法ノ對象トス
ルカー最早現ニ丁年ニ達シテ、飮酒ノ自
由ヲ有シテ居ル人達ヲ相手ニスルノデハア
リマセヌ、此ノ點ガ兎角誤解ガアルヤウデ
アリマスカラ、念ノ爲ニ申添ヘテ置キマス
又靑年禁酒法ニ於テハ儀禮ノ場合、或
ハ職業上喇酒ト云ヒマスカサウ云フコト
ヲ致シマス場合等ニハ之ヲ除外シテ居ル
ノデアリマス、其ノコトハ大正十一年四月
十三日、未成年者飮酒禁止法ガ公布ニナリ
マシタ時ニ、時ノ內務次官小橋一太氏ガ各
地方長官ニ示達ニナリマシタ所デ明カデア
リマス又靑年禁酒法ノ罰則ノ如キモ、極
メテ寛大ナルモノデアリマシテ、多クハ警
察官ガ戒〓ヲ與ヘ戒〓三タビニシテ尙ホ
改メザル者ハ輕イ科料ニ處スルト云フ程
度ノモノデアリマス
私ハ此ノ機會ニ於テ一三附言シテ置キタ。
イコトガアリマス、其ノ第一ハ酒ト軍隊
トノ關係デアリマス、當世風ニ申シマシタ
ナラバ酒ト兵隊デアリマセウ、併シナガ
ラ軍隊ト云フモノハ、本質的ニ酒ヲ必要ト
スルモノデハアリマセヌ、是ハ軍隊ノ中ノ
酒飮ミガ必要トスルノデアリマシテ、決シ
テ軍隊ノ必需品デハナイノデアリマス若
シ酒ガ本當ニ士氣ヲ鼓舞シ、戰鬪能力ヲ發
揮スルモノデアルナラバ、イザ戰爭ト云フ
場合ニ酒ヲ飮マスコトガ適當デアリマセ
ウ、併シナガラ世界各國何處ノ軍隊ト雖
モ、戰鬪ヲ前ニシテ酒ヲ呷ラスト云フ國ハ
ナカラウカト存ジマス、丁度競技ニ_臨
ム選手ガ、イザ競技ニ掛ラウトスル時
分ニ、一滴ノ酒ヲモロニシナイト同ジク、
一國ノ興廢ヲ肩ニ荷ウテ生死ノ巷ニ飛込ン
デ、精密ナル科學兵器ヲ操作セントスル者
ガ、酒氣ヲ帶ビテ宜イカ惡イカ、旣ニ議論
ノ餘地ハナイノデアリマス)尙ホ去ル二月
十六日ノ豫算委員會第四分科會ニ於テ、社
大ノ田原議員ノ質問ニ答ヘテ、畑陸軍大臣
ハ次ノ如ク述ベテ居ラレマス「就テハ酒
ト云フコトモ國民ノ體位向上ニ非常ナ影
響ガアルノデアリマスガ戰時ハ無論デア
リマスガ、平時ニ於テモ、軍隊ニ於テハ酒
ヲ禁ジテ居ル隊ガ少クナイノデアリマス」
「又事變中ニ於キマシテモ、段々犯罪ヲ調ベ
テ見マスト、ドウモ酒ガ動機ニナツテ居ル
場合ガ多イヤウデアリマス、殊ニ醇良ナル
日本酒ニアラズシテ、)猛烈ナ支那ノ酒ヲ引
ツ掛ケテ、ソレガ爲ニ氣ガ一變シテ罪ヲ犯
スト云フコトガ、段々統計上現ハレテ居リ
マスコトハ遺憾デアリマスガ、事實其ノ通
リデアリマスデアリマスカラ軍隊ト致シ
マシテハ、體位向上竝ニ軍規-ト言フヨ
リカ、風紀維持ノ見地カラシマシテ、酒ノ
害毒ハ認メテ居リマス」云々ト述ベテ居ラ
レマス
次ハ米國ニ於ケル禁酒法撤廢ノコトニ付
テ申添へテ置キタイト思ヒマス、如何ニモ米
國ガ十三箇年間ニ亙ツテ禁酒法ヲ布イテ居
ツタノヲ撤廢致シマシタ是ハ米國ノ聯邦
憲法ノ中カラ、禁酒ノ條項ヲ削除致シタノデ
アリマシテ、亞米利加ノ如キ高度ノ自治制
ノ布カレテ居リマス國ニ於キマシテハ今
尙ホ儼然トシテ禁酒ヲ行ツテ居ル州ガ少ク
ナイノデアリマス其ノ數ハ四十八州中七
州ニ及ビ、他ノ三十州モ部分的或ハ地方的
禁酒ヲ行ツテ居ルノデアリマス嘗テ亞米
利加ニ於テ七千ノ町村ガ、飮酒カ禁酒カト
云フコトヲ一般投票ニ依ツテ決シマシタ時
分ニ、投票ノ結果五千ノ町村ハ禁酒ヲ採用
スルコトニナリ、現ニ禁酒ガ實行セラレテ
居ルノデアリマス、隨ヒマシテ米國ニ於ケ
ル禁酒法ガ失敗シタカラト云フ故ヲ以テ、
輕々シク靑年禁酒法ニ反對スルコトハ間違
ヒデアラウト存ジマス
併シナガラ吾人ヲシテ言ハシムレバ、亞
米利加ノ禁酒法ハ、如何ニモ一大英斷デハ
アリマスケレドモ、其ノヤリ方ガ頗ル突飛
デアル、酒ヲ飮ンダ習慣ノアル者モ、、飮ン
ダコトモナイ者モ、一律ニ之ニ禁酒ヲ强制
シタノデアリマスカラ無理ガアリマス、飮
酒ノ習慣ノアル者、所謂「アル」中患者ハ、ド
ウシテモ酒ヲ飮マズニ居レナイノデアリマ
ス其ノ結果法ヲ濳リ、隱レテ飮ミ、隱レ
テ賣リ、隱レテ酒ヲ造ルト云フコトニナツ
テ、遂ニ聯邦憲法カラ禁酒ノ條項ヲ削除セ
ザルヲ得ナイコトニナツタノデアリマス、
吾々ノ提唱スル靑年禁酒法ノ如ク、漸進的
ニ著實ニ步ヲ進メテ行キマシタナラバ急
ガバ〓レ、亞米利加ノ禁酒法モ、立派ナ成
績ヲ擧ゲ得タラウト存ズルノデアリマス
時間ガ參リマシタカラ、殘リノ部分ハ議
長ノ御許ヲ得テ、速記錄ニ載セテ戴クコト
ニ御願致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=36
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037・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ議長指名十八名ノ委
員ニ付託サレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=37
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038・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=38
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039・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第
二及ビ第三ハ關聯セル議案デアリマスカラ、
一括議題ト爲スニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=39
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040・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、日程第二、裁判所構成法改正法律案、
日程第三、檢察廳法案、右兩案ヲ一括シテ
第一讀會ヲ開キマス、提出者ノ趣旨辯明ヲ
許シマス-提出者中山福藏君
第二裁判所構成法改正法律案(野田
文一郞君外二十三名提出)第一讀會
第三檢察廳法案(野田文一郞君外二
十三名提出)第一讀會
裁判所構成法改正法律案
裁判所構成法
第一章總則
第一條裁判所ハ民事及刑事ヲ裁判ス
第二條裁判所ハ區裁判所、地方裁判所、
控訴院及大審院トス
司法事務上必要アルトキハ法律ヲ以テ
或ル地方裁判所ヲ民事ノミヲ管轄スル
裁判所又ハ刑事ノミヲ管轄スル裁判所
ト爲スコトヲ得
第三條裁判所ニ判事ヲ置ク
第四條裁判ニ關スル職務ノ執行ニ付テ
ハ判事ハ獨立ノ地位ヲ有ス
第五條區裁判所ニ於テハ判事單獨ニテ
裁判ヲ爲ス
地方裁判所ニ於テハ三人ノ判事、控訴
院ニ於テハ五人ノ判事、大審院ニ於テ
ハ七人ノ判事ヲ以テ組織シタル部ニ於
テ合議ニ依リ裁判ヲ爲ス
第六條裁判所ノ設置及管轄區域ハ別ニ
法律ヲ以テ之ヲ定ム
第七條裁判所ニ於テハ國語ヲ用フ
第八條司法年度ハ一月一日ニ始マリ十
二月三十一日ニ終ル
第九條裁判所ノ事業章程ハ司法大臣之
マルナム
大審院ハ自ラ事業章程ヲ定ム
第二章區裁判所
第十條區裁判所ハ民事訴訟ニ於テ左ノ
事件ニ付管轄權ヲ有ス
千圓ヲ超過セサル金額又ハ價額千
圓ヲ超過セサルモノニ關スル事件
二價額ニ拘ラス左ノ事件
イ住家其ノ他ノ建物ノ賃貸關係ニ
基ク事件
ロ占有ノミニ關スル事件
反訴ニ付テハ前項ノ規定ニ拘ラス訴訟
法ノ定ムル所ニ依リ管轄權ヲ有ス
第十一條區裁判所ハ刑事訴訟ニ於テ左
ノ事件ニ付管轄權ヲ有ス但シ豫審ヲ經
タルモノ及特ニ大審院ノ管轄ニ屬セシ
メタルモノハ此ノ限ニ在ラス
拘留又ハ科料ニ該ル罪ノ事件
二短期一年以上ノ懲役又ハ禁錮ニ該
ル罪ヲ除ク外有期ノ懲役若ハ禁錮又
ハ罰金ニ該ル罪ノ事件
第十二條區裁判所ハ破產事件ニ付管轄
權ヲ有ス
第十三條區裁判所ハ法律ニ別段ノ定アル
場合ヲ除ク外非訟事件ニ付管轄權ヲ有ス
非訟事件中登記事務ハ錄事ヲシテ之ヲ
取扱ハシムルコトヲ得
第十四條區裁判所ノ權限及權限行使ノ
方法ハ本法ニ規定スルモノノ外訴訟法
其ノ他ノ法律ノ定ムル所ニ依ル
第十五條司法大臣ハ區裁判所ノ事務ノ
一部ヲ同一地方裁判所ノ管轄區域內ノ
他ノ區裁判所ヲシテ取扱ハシムルコトヲ得
第十六條司法大臣ハ區裁判所ノ事務ノ
一部ヲ取扱ハシムル爲區裁判所出張所
ヲ設置スルコトヲ得
第十七條判事二人以上ヲ置キタル區裁
判所ニ於テハ司法大臣ハ其ノ一人ヲ監
督判事トス
第十八條監督判事又ハ判事一人ノ區裁
判所ニ於テハ其ノ判事ハ其ノ廳ノ行政
事務ヲ掌ル監督判事差支アルトキハ他
ノ判事席次ノ順序ニ依リ之ヲ代理ス
判事一人ノ區裁判所ニ於テ其ノ判事差
支アルトキハ裁判事務ノ代理ヲ爲ス判
事之ヲ代理ス
第十九條區裁判所ノ事務ハ各判事ニ分
配ス
第二十條判事差支アルトキハ其ノ區裁
判所又ハ他ノ區裁判所判事之ヲ代理ス
第二十一條區裁判所ニ於ケル事務分配
及代理順序ハ地方裁判所長每年豫メ之
ヲ定ム
第二十二條司法大臣ハ區裁判所カ事務
ヲ取扱フコトヲ得サル事由ヲ生シタル
場合ニ於テハ地方裁判所長ノ每年豫メ
定メタル順序ニ依リ他ノ區裁判所ヲシ
テ代リテ之ヲ取扱ハシムルコトヲ得
第二十三條事務ノ分配ハ司法年度中之
ヲ變更セス但シ判事事務分擔著シク不
均衡ト爲リタル場合又ハ轉職、退職、
疾病其ノ他ノ事故ニ因リ引續キ差支ヲ
生シタル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第二十四條區裁判所判事差支ノ爲或ル
事件ヲ取扱フコトヲ得ス裁判所ノ判事
中其ノ代理ヲ爲シ得ヘキ者ナキ場合ニ
於テ其ノ事件緊急ナリト認ムルトキハ
地方裁判所長ハ地方裁判所判事ニ其ノ
代理ヲ命スルコトヲ得
第三章地方裁判所
第二十五條地方裁判所ハ民事訴訟ニ於
テ左ノ事件ニ付管轄權ヲ有ス
第一審トシテ
區裁判所ノ管轄ニ屬スルモノヲ除キ
其ノ他ノ事件
二第二審トシテ
イ區裁判所ノ判決ニ對スル控訴
ロ區裁判所ノ決定及命令ニ對スル
抗〓
第二十六條地方裁判所ハ刑事訴訟ニ於
テ左ノ事件ニ付管轄權ヲ有ス
第一審トシテ
區裁判所ノ管轄ニ屬スルモノ及特ニ
大審院ノ管轄ニ屬セシメタルモノヲ
除キ其ノ他ノ事件
二第二審トシテ
イ區裁判所ノ判決ニ對スル控訴
ロ大審院ノ管轄ニ屬スルモノヲ除
ク外區裁判所ノ決定命令ニ對スル
抗〓
第二十七條地方裁判所ハ非訟事件ニ關
スル區裁判所ノ決定及命令ニ對スル抗
告ニ付管轄權ヲ有ス
第二十八條地方裁判所ニ一又ハ二以上
ノ民事部及刑事部ヲ置ク
部ノ數ハ司法大臣之ヲ定ム
第二十九條地方裁判所ニ所長ヲ置ク
部ニ部長ヲ置ク
第三十條所長ハ部長ト爲リ且其ノ廳ノ
行政事務ヲ、部長ハ裁判長ト爲リ部ノ
行政事務ヲ掌ル
第三十一條所長差支アルトキハ席次ノ
順序ニ依リ部長之ヲ代理ス
部長差支アルトキハ席次ノ順序ニ依リ
部員之ヲ代理ス
第三十二條豫審事務ヲ取扱フヘキ判事
ハ司法大臣之ヲ命ス
第三十三條地方裁判所ノ事務ハ之ヲ各
部各豫審判事及其ノ他ノ各判事ニ分配
ス各部長、部員ノ配置及所長、部長、部
員差支アル場合ニ於ケル代理ノ順序ハ
部長及上席判事ト協議シテ所長每年豫
メ之ヲ定ム
第三十四條地方裁判所判事差支ノ爲或
ル事件ヲ取扱フコトヲ得ス且其ノ廳ノ
判事中代理ヲ爲シ得ヘキ者ナキ場合ニ
於テ所長ハ其ノ管轄區域內ノ區裁判所
判事又ハ豫備判事ニ其ノ代理ヲ命スルコ
トヲ得但シ豫備判事ハ各部一人ニ限ル
前項ノ場合ニ於テ緊急ノ必要アリト認
ムルトキハ控訴院長ハ管轄區域内ノ他
ノ地方裁判所判事ヲシテ豫審事務ヲ取
扱ハシムルコトヲ得
第三十五條民事地方裁判所及刑事地方
裁判所アル場合ニ於テ裁判事務上必要
アリト認ムルトキハ控訴院長ハ民事地
方裁判所又ハ刑事地方裁判所ノ判事ニ
其ノ管轄區域ヲ同シクスル刑事地方裁
判所又ハ民事地方裁判所ノ判事ノ代理
ヲ命スルコトヲ得
第三十六條第十四條及第二十三條ノ規
定ハ地方裁判所ニ之ヲ準用ス
第三十七條司法大臣ハ地方裁判所ノ事
務ノ一部ヲ取扱ハシムル爲支部ヲ設置
スルコトヲ得
支部ノ上席ノ部長又ハ上席ノ判事ハ支
部ノ行政事務ヲ掌ル
上席ノ部長又ハ上席ノ判事差支アル場
合ニ之ヲ代理スヘキ者ハ司法大臣ノ定
ムル所ニ依ル
第四章控訴院
第三十八條控訴院ハ左ノ事件ニ付管轄
權ヲ有ス
地方裁判所ノ第一審判決ニ對スル
控訴
二大審院ノ管轄ニ屬スルモノヲ除ク
外地方裁判所ノ第一審トシテ爲シタ
ル決定及命令ニ對スル抗〓
第三十九條控訴院ニ院長ヲ置ク
部ニ部長ヲ置ク
第四十條院長ハ部長ト爲リ且其ノ廳ノ
行政事務ヲ掌ル
部長ハ裁判長ト爲リ其ノ部ノ行政事務
ヲ掌ル
第四十一條院長ハ判事差支ノ爲或ル事
件ヲ取扱フコトヲ得ス且其ノ廳ノ判事
中代理ヲ爲シ得ヘキ者ナキ場合ニ於テ
其ノ事件緊急ナリト認ムルトキハ管轄
區域內ノ地方裁判所判事ニ其ノ代理ヲ
命スルコトヲ得、但シ豫備判事ニ之ヲ命
スルコトヲ得ス
第四十二條第十四條、第二十三條、第
二十八條、第三十一條及第三十三條ノ
規定ハ控訴院ニ之ヲ準用ス
第五章大審院
第四十三條大審院ハ左ノ事件ニ付管轄
權ヲ有ス
終審トシテ
イ上告
ロ地方裁判所ノ第二審トシテ爲シ
タル決定及命令竝控訴院ノ決定及
命令ニ對スル抗〓
ハ地方裁判所又ハ區裁判所ノ爲シ
タル上告棄却ノ決定ニ對スル抗〓
二第一審ニシテ終審トシテ
刑法第七十三條、第七十五條、第七十
七條乃至第七十九條及第八十一條乃
至第八十九條ノ罪竝治安維持法第一
條第一項ノ罪及其ノ未遂ノ罪ノ事件
第四十四條大審院ニ院長ヲ置ク
部ニ部長ヲ置ク
第四十五條院長ハ部長ト爲リ且其ノ廳
ノ行政事務ヲ掌ル
部長ハ裁判長ト爲リ其ノ部ノ行政事務
マッチン
第四十六條院長ハ判事差支ノ爲或ル事
件ヲ取扱フコトヲ得ス且其ノ廳ノ判事
中代理ラ爲シ得ヘキ者ナキ場合ニ於テ
事件緊急ナリト認ムルトキハ控訴院ノ
判事ニ其ノ代理ヲ命スルコトヲ得
第四十七條法律上ノ點ニ付爲シタル大
審院ノ裁判ハ當該事件ノ裁判ニ付裁判
所ヲ覊束ス
第四十八條大審院ニ於テ法律上ノ點ニ
付前ニ爲シタル裁判ト異ル裁判ヲ爲サ
ントスルトキハ事件ノ性質ニ從ヒ民事
若ハ刑事ノ總部又ハ民事及刑事ノ總部
ヲ聯合シタル部ニ於テ審判ヲ爲ス
聯合審判ハ當該事件ヲ擔任スル部ノ請
求ニ因リ院長之ヲ命ス
第四十九條聯合部ハ相當ト認ムルトキ
ハ當該法律上ノ點ニ限リ裁判ヲ爲スコ
トヲ得此ノ場合ニ於テハ聯合審判ノ請
求ヲ爲シタル部ニ於テ事件ヲ完結ス
第五十條聯合部ノ審判ハ聯合部ノ判事
三分ノ二以上關與シテ之ヲ爲ス
前項ノ場合ニ於テハ聯合部ノ判事中席
次最高キ者ヲ部長トス但シ院長ハ自ラ
部長ト爲ルコトヲ得
第五十一條院長ハ第一審ニシテ終審タ
ルヘキ刑事ノ事件ニ付其ノ廳ノ判事ニ
豫審ヲ命ス但シ便宜ニ依リ他ノ裁判所
ノ判事ニ豫審ヲ命スルコトヲ得
第五十二條第十四條、第二十三條、第
二十八條、第三十一條及第三十三條ノ
規定ハ大審院ニ之ヲ準用ス
第六章判事
第五十三條判事ハ三年以上辯護士トシ
テ實務ニ從事シタル者ヨリ之ヲ任ス
第五十四條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ判事ニ任セラルルコトヲ得ス
一禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者
破產ノ宣告ヲ受ケ復權セサル者
三懲戒處分ニ因リ免官モラレタル者
又ハ辯護士法ニ依リ除名セラレタル
者
第五十五條新ニ判事ニ任セラレタル者
ハ一時豫備判事トシテ地方裁判所ニ勤
務セシムルコトヲ得
第五十六條判事ハ終身官トシ親任、勅
任又ハ奏任トス
第五十七條大審院長ハ親任判事ヲ以テ
之ヲ親補ス
控訴院長、大審院部長及地方裁判所長
ハ司法大臣ノ上奏ニ因リ勅任判事ヲ以
テ之ヲ補シ其ノ他ノ判事ノ職ハ勅任判
事又ハ奏任判事ヲ以テ司法大臣之ヲ補
ス
第五十八條五年以上判事タル者ニ非サ
レハ控訴院判事ニ補セラルルコトヲ得
ス
第五十九條十年以上判事タル者ニ非サ
レハ大審院判事ニ補セラルルコトヲ得
ス
第六十條判事タル資格ヲ有スル者ニシ
テ左ニ揭クルモノノ在職ハ前二條ノ適
用ニ付テハ之ヲ判事ノ在職ト看做ス
一朝鮮總督府判事
二臺灣總督府法院判官
關東廳法院判官
四三南洋廳判事
六五實務ニ從事スル辯護士
帝國大學令又ハ大學令ニ依ル大學
ニ於テ民事又ハ刑事ニ關スル法律學
ノ〓授ヲ擔任スル〓授、助〓授又ハ
專任〓員
七行政裁判所長官及行政裁判所評定
官
八司法次官、司法省各局長及司法書
記官
九訴訟事件及非訟事件ニ關スル事務
竝登記事務ニ、從事スル領事官
第六十一條判事ハ在職中左ノ諸件ヲ爲
スコトヲ得ス
-公然政事ニ關係スルコト
二政黨ノ黨員又ハ政社ノ社員ト爲ル
こ
三帝國議會ノ議員又ハ道府縣市町村
ノ議會ノ議員ト爲ルコト
四行政事務ニ關スル公務ヲ兼ヌルコ
ト
五商業ヲ營ミ又ハ營利ヲ目的トスル
法人ノ役員ト爲ルコト
第六十二條司法事務上必要アルトキハ
司法大臣ハ控訴院又ハ大審院ノ總會ノ
決議ニ依リ判事ニ轉職ヲ命スルコトヲ
得
第六十三條判事身體又ハ精神ノ衰弱ニ
因リ職務ヲ執ルコト能ハサルニ至リタ
ルトキハ控訴院又ハ大審院ノ總會ノ決
議ニ依リ之ニ退職ヲ命スルコトヲ得
疾病此ノ他已ムコトヲ得サル事由ア
ル場合ニ於テハ本人ノ願ニ依リ前項ノ
規定ニ拘ラス之ニ退職ヲ命スルコトヲ
得
第六十四條前二條ノ總會ニ關スル事項
ハ司法大臣之ヲ定ム
第六十五條法律ヲ以テ裁判所ノ組織ヲ
變更シ又ハ之ヲ廢シタル場合ニ於テ其
ノ判事ヲ補スヘキ關位ナキトキハ司法
大臣ハ之ニ俸給ノ半額ヲ給シテ闕位ヲ
待タシム
第六十六條判事禁錮以上ノ刑ニ處セラ
一レタルトキハ其ノ官ヲ失フ
第六十七條判事ハ第六十二條ノ規定ニ
依ルノ外懲戒ノ處分ニ因ルニ非サレハ
其ノ意ニ反シテ轉官、轉職又ハ免官セ
ラルルコトナシ
前項ノ規定ハ豫備判事ニ對シ勤務スヘ
キ裁判所ノ變更ヲ命スルコトヲ妨ケス
第六十八條判事ニ對シ懲戒訴追又ハ刑
事訴追ヲ始メタル爲法律上職務ヲ執ラ
シムルコト能ハサル期間內ハ俸給ノ三
分ノ一ヲ減ス
第六十九條判事ノ席次ハ司法大臣之ヲ
定ム
第七章錄事及通譯官吏
第七十條裁判所ニ錄事ラ置ク錄事ハ奏
任又ハ判任トス
錄事ハ民事及刑事ノ審議ニ關スル準
備法廷ノ立會、調書ノ作成、記錄ノ
整理保管其ノ他法令ノ定ムル事務ヲ取
扱フ
錄事ニ前項ノ外上官ノ指揮ヲ承ケ裁判
所ニ於ケル諸般ノ事務ヲ取扱フ
第七十一條地方裁判所及錄事二人以上
ヲ置キタル區裁判所ニ監督錄事、控訴
院及大審院ニ錄事長ヲ置ク
錄事ノ職ハ司法大臣之ヲ補ス
監督錄事及錄事長ハ上官ノ命ヲ承ケ錄
事ノ事務ヲ監督ス
第七十二條裁判所ニ通譯官及通譯吏ヲ
置クコトヲ得
通譯官ハ奏任、通譯吏ハ判任トス
通譯官及通譯吏ノ職ハ司法大臣之ヲ補
ス
第八章開延
第七十三條開延ハ裁判所又ハ支部ニ於
テ之ヲ爲ス
事務ノ處理上必要ナル事情アルトキハ
司法大臣ノ許可ヲ受ケ管轄區域內ノ
定ノ場所ニ於テ開廷ヲ爲スコトヲ得
第七十四條開延中秩序ノ維持及審判ノ
指揮ハ裁判長ニ屬ス
第七十五條開延ハ定數ノ判事列席シテ
之ヲ爲ス但シ裁判所ノ長ハ裁判長ノ請
求ニ因リ補充判事ヲ命スルコトヲ得
補充判事ハ審判ニ立會ヒ判事差支アル
トキ之ニ代ルモノトス
第七十六條安寧秩序又ハ風俗ヲ害スル
ノ虞アルトキハ裁判所ハ決定ヲ以テ對
審ノ公開ヲ停ムルコトヲ得
第七十七條對審ノ公開ヲ停ムルノ決定
ハ理由ヲ開示シテ之ヲ言渡スヘシ
第七十八條判決ノ言渡ハ之ヲ公開ス但
シ理由ニ付テハ安寧秩序又ハ風俗ヲ害
スルノ虞アルトキハ裁判所ハ決定ヲ以
テ公開ヲ停ムルコトヲ得此ノ場合ニ於
テハ前條ノ規定ヲ準用ス
第七十九條公開ヲ停メタルトキト雖裁
判長ハ相當ト認ムル者ノ入廷ヲ許スコ
トヲ得
第八十條裁判長ハ未成年者、裁判所ノ
威儀ニ適セサル風體ヲ爲ス者其ノ他秩
序維持ニ害アリト認ムル者ノ入廷ヲ禁
シ又ハ之ヲ退廷セシムルコトヲ得
第八十一條裁判長ハ法廷ノ秩序維持ノ
爲必要ト認ムルトキハ開延中審判ヲ妨
ケ又ハ不當ノ行狀ヲ爲ス者ヲ閉廷迄留
置スルコトヲ得
裁判所ハ決定ヲ以テ前項ノ違反者ヲ五
百圓以下ノ過料又ハ五日以內ノ勾置ニ
J處スルコトヲ得
留置命令及其ノ理由ハ之ヲ訴訟記錄ニ
記載スヘシ
第八十二條過料又ハ勾置ヲ命スル裁判
ニ對シテハ該事件ノ手續ニ從ヒ卽時抗
告ヲ爲スコトヲ得
勾置ニ付テハ勾留ニ關スル規定ヲ準用
ス
第八十三條第八十一條ノ場合ニ於テ其
ノ行爲刑ヲ科スヘキモノナルトキ及法
廷ニ於テ僞證其ノ他ノ犯罪アリタルト
キハ裁判長ハ事實ヲ明確ニシテ事件ヲ
檢事ニ送致スヘシ此ノ場合ニ於テ必要
アルトキハ裁判長ハ違反者ノ逮捕ヲ命
スルコトヲ得
第八十四條第七十四條及第七十六條乃
至前條ノ規定ハ區裁判所判事、豫審判事
及受命判事ノ審判ニ之ヲ準用ス但シ裁
判長ノ權限ハ審判ヲ爲シタル判事之ヲ
行フ
第八十五條豫審判事又ハ受命判事ノ爲
シタル過料又ハ勾置ノ裁判ニ對シテハ
二日以內ニ判事所屬ノ裁判所ニ異議ノ
申立ヲ爲スコトヲ得
抗告ハ異議ニ付テノ裁判ニ對シテ之ヲ
爲スコトヲ得
第八十六條法廷ニ於テハ審判ニ關與ス
ル判事、檢事、錄事及辯護士ハ一定ノ
制服ヲ著ス
第九章合議
第八十七條裁判ノ合議ハ裁判長之ヲ開
キ且之ヲ整理ス
合議ハ之ヲ公行セス
合議ノ〓末竝各判事ノ意見及多少ノ數
ニ付テハ嚴ニ祕密ヲ守ルヘシ
第八十八條合議ニ於テハ席次低キ判事
ヨリ順次意見ヲ陳述シ裁判長ヲ終トス
判事ハ意見ノ陳述ヲ拒ムコトヲ得ス
第八十九條裁判ハ過半數ノ意見ニ依ル
數額ニ付判事ノ意見三說以上ニ分レ何
レモ過半數ニ達セサルトキハ過半數ニ
達スル迄多額ノ意見ヨリ順次寡額ニ合
算ス
刑事ニ付意見三說以上ニ分レ何レモ過
半數ニ達セサルトキハ過半數ニ達スル
迄被告人ニ不利ナル意見ヨリ順次利益
ナル意見ニ合算ス
第十章司法行政ノ監督
第九十條司法大臣ハ裁判所ヲ監督ス
大審院長、控訴院長及地方裁判所長ハ
各其ノ廳及管轄區域內ノ下級裁判所ヲ
監督ス
區裁判所ノ監督判事又ハ一人ノ判事ハ
其ノ廳ヲ監督ス
第九十一條司法大臣及監督權アル判事
ハ不適當ナル事務取扱ニ關シテ注意ヲ
爲シ且職務ノ內外ヲ問ハス地位ニ不相
應ナル行狀ニ對シテ諭〓ヲ爲スコトヲ
得但シ處分前當該官吏ヲシテ辯明ヲ爲
サシムヘシ
第九十二條前條ノ規定ハ法令ニ依ル懲
戒ノ事由アル場合ニハ之ニ適用セス
第九十三條本章ノ規定ニ依ル監督權ノ
行使ハ事件ノ裁判ニ關スル判事ノ職務
ノ實行ニ影響ヲ及ホスコトナシ
第九十四條司法事務取扱ノ延滯又ハ不
適當ナル事務取扱ニ對シテハ利害關係
人ハ司法大臣又ハ監督權アル判事ニ之
ヲ申告スルコトヲ得
附則
第九十五條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以
テ之ヲ定ム
第九十六條裁判所構成法施行條例ハ之
ヲ廢ス
第九十七條本法施行前裁判所ノ受理シ
タル訴訟ノ管轄ニ付テハ從前ノ規定ニ
依ル但シ本法ニ依リ其ノ裁判所ノ管轄
ニ屬スルモノハ此ノ限ニ在ラス
第九十八條本法施行前ニ聯合審判ヲ命
シタル事件ノ聯合審判ニ付テハ仍從前
ノ規定ニ依ル
第九十九條本法施行ノ際現ニ從前ノ規
定ニ依ル判事ノ資格ヲ有スル者ハ本法
施行後ト雖仍其ノ資格ヲ有ス大審院判
事又ハ控訴院判事ニ補セラルル資格ニ
付亦同シ
第百條舊刑法ノ重罪ノ刑又ハ禁錮ニ處
セラレタル者ハ第五十四條ノ規定ノ適
用ニ付テハ之ヲ禁錮以上ノ刑ニ處セラ
レタルモノト看做ス
第百一條本法施行ノ際現ニ從前ノ規定
ニ依リ裁判所書記タル資格ヲ有スル者
ハ本法施行後ト雖仍裁判所錄事タル資
格ヲ有ス
第百二條本法施行前從前ノ規定ニ依リ
罰金又ハ拘留ニ處スヘキ行爲ヲ爲シタ
ル者ニシテ本法施行ノ際未タ其ノ裁判
ヲ受ケサルモノハ本法ニ依リ處罰ス但
シ過料ノ額ハ從前ノ規定ニ依ル額ヲ超
ユルコトヲ得ス
第百三條本法施行前從前ノ規定ニ依リ
爲シタル罰金又ハ拘留ノ裁判及陳述禁
止處分ニ付テハ仍從前ノ規定ニ依ル
第百四條本法施行ノ際現ニ裁判所勤務
ノ裁判所書記又ハ書記長ハ別ニ辭令ヲ
用ヒス同官等俸給ヲ以テ裁判所錄事ニ
任セラレ各其ノ現ニ勤務スル裁判所ノ
錄事又ハ錄事長ニ補セラレタルモノト
ス
第百五條違警罪卽决例、明治三十二年
法律第七十號及刑事交涉法ハ本法ノ爲
ニ變更ヲ受クルコトナシ
第百六條他ノ法令中裁判所勤務ノ裁判
所書記ニ關スル規定ハ之ヲ裁判所錄事
ニ關スル規定トシ裁判所書記長ニ關ス
ル規定ハ之ヲ裁判所錄事長ニ關スル規
定トス
第百七條裁判所勤務ノ裁判所書記ノ職
務上ノ行爲ハ之ヲ裁判所錄事ノ職務上
ノ行爲ト看做ス
檢察廳法案
檢察廳法
第一條檢察廳ハ區檢察廳、地方檢察廳、
檢察院及總檢察院トス
司法大臣ハ地方檢察廳ノ事務ノ一部ヲ
取扱ハシムル爲支廳ヲ設置スルコトヲ得
第二條檢察廳ニ檢事ヲ置ク
第三條檢事ハ公訴ヲ實行シ、裁判ノ執
行ヲ指揮シ其ノ他公益上必要ナル事項
ニ付法令ノ定ムル職權ヲ行フ
第四條區檢察廳ノ檢事ハ區裁判所ノ管
轄ニ屬スル事項、地方檢察廳ノ檢事ハ
地方裁判所ノ管轄ニ屬スル事項、檢察
院ノ檢事ハ控訴院ノ管轄ニ屬スル事
項、總檢察院ノ檢事ハ大審院ノ管轄ニ
屬スル事項ニ付其ノ職務ヲ行フ
第五條總檢察院ニ檢事總長、檢察院ニ
檢事長、地方檢察廳ニ檢事正ヲ置ク
檢事二人以上ヲ置キタル區檢察廳ニ於
テハ其ノ一人ヲ首席檢事トス
第六條檢事總長ハ總檢察院ノ長、檢事
長ハ檢察院ノ長、檢事正ハ地方檢察廳
ノ長ト爲リ各其ノ廳ノ行政事務ヲ掌ル
支廳ノ上席ノ檢事、首席檢事又ハ檢事
一人ノ支廳若ハ區檢察廳ニ於テハ其ノ
檢事ハ檢事正ノ命ヲ承ケ其ノ廳ノ行政
事務ヲ掌ル
第七條檢察廳ノ設置及管轄區域ハ別ニ
法律ヲ以テ之ヲ定ム
第八條檢事ハ左ニ揭グル者ヨリ之ヲ任
ズ
-三年以上辯護士トシテ實務ニ從事
シタル者
二判事及判事タル資格ヲ有スル朝鮮
總督府判事及朝鮮總督府檢事
第九條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ檢
事ニ任ゼラルルコトヲ得ズ
禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル者
二破產ノ宣〓ヲ受ケ復權セザル者
三懲戒ノ處分ニ因リ免官セラレタル
者又ハ辯護士法ニ依リ除名セラレタ
ル者
第十條檢事ハ親任、勅任又ハ奏任トス
檢事總長ハ親任檢事ヲ以テ之ヲ親補ス
檢事長ハ司法大臣ノ上奏ニ因リ勅任檢
事ヲ以テ之ヲ補シ其ノ他ノ檢事ノ職ハ
勅任檢事及奏任檢事ヲ以テ司法大臣之
ヲ補ス
第十一條新ニ檢事ニ任ゼラレタル者ハ
一時豫備檢事トシテ區檢察廳又ハ地方
檢察廳ニ勤務セシムルコトヲ得
第十二條檢事總長年齡六十五年、其ノ
他ノ檢事ノ職ニ在ル者年齡六十三年ニ
達シタルトキハ退職トス但シ司法大臣
ハ三年以内ノ期限ヲ定メ仍在職セシム
ルコトヲ得
第十三條檢事身體又ハ精神ノ衰弱ニ因
リ職務ヲ執ルコト能ハザルニ至リタル
トキハ總檢察院ノ總會ノ決議ニ依リ
之ニ退職ヲ命ズルコトヲ得
疾病其ノ他已ムコトヲ得ザル事由アル
場合ニ於テハ本人ノ願ニ依リ前項ノ規
定ニ拘ラズ之ニ退職ヲ命ズルコトヲ得
第一項ノ總會ニ關スル事項ハ司法大臣
之ヲ定ム
第十四條法律ヲ以テ檢察廳ノ組織ヲ變
更シ又ハ之ヲ廢シタル場合ニ於テ其ノ
檢事ヲ補スベキ關位ナキトキハ司法大
臣ハ之ニ俸給ノ半額ヲ給シテ闕位ヲ待
タシム
第十五條檢事禁錮以上ノ刑ニ處セラレ
タルトキハ其ノ官ヲ失フ
第十六條檢事ハ懲戒ノ處分ニ因ルニ非
ザレバ其ノ意ニ反シテ轉官又ハ免官セ
ラルルコトナシ
檢事ノ懲戒ニ關シテハ別ニ法律ヲ以テ
之ヲ定ム
第十七條檢事ニ對シ懲戒訴追又ハ刑事
訴追ヲ始メタル爲法律上職務ヲ執ラシ
ムルコト能ハザル期間內ハ俸給ノ三分
ノ一ヲ減ズ
第十八條檢察廳ニ錄事ヲ置ク
錄事ハ奏任又ハ判任トス
錄事ハ書類ノ作成、記錄ノ整理保管其
ノ他法令ノ定ムル事務ヲ取扱フ
錄事ハ前項ノ外上官ノ指揮ヲ承ケ檢察
廳ニ於ケル諸般ノ事務ヲ取扱フ
第十九條地方檢察廳及錄事二人以上ヲ
置キタル區檢察廳ニ首席錄事、檢察院
及總檢察院ニ錄事長ヲ置ク
錄事ノ職ハ司法大臣之ヲ補ス
首席錄事及錄事長ハ上官ノ命ヲ承ケ錄
事ノ事務ヲ監督ス
第二十條檢察廳ニ通譯官及通譯吏ヲ置
クコトヲ得
通譯官バ奏任、通譯吏ハ判任トス
通譯官及通譯吏ノ職ハ司法大臣之ヲ補
ス
第二十一條司法大臣ハ公訴ノ實行ニ付
檢事ヲ指揮ス
檢事總長以外ノ檢事ニ對スル指揮ハ檢
事總長ヲ經由シテ之ヲ爲ス但シ緊急ノ
必要アルトキハ此ノ限ニ在ラズ
前項但書ノ規定ニ依リ指揮ヲ爲シタル
トキハ司法大臣ハ檢事總長ニ其ノ指揮
ヲ爲シタル事項ヲ通〓ス
第二十二條檢事總長、檢事長及檢事正
ハ公訴ノ實行ニ付各其ノ廳及管轄區域
內ノ檢察廳ノ檢事ヲ指揮ス
檢事總長、檢事長及檢事正ハ公訴ノ實
行ニ付各其ノ廳及管轄區域內ノ檢察廳
ニ於テ或ル檢事ノ取扱フベキ事務ヲ自
ラ取扱ヒ又ハ之ヲ他ノ檢事ニ移スコト
ヲ得
第二十三條檢事ハ犯罪ノ搜査其ノ他職
務ノ執行ニ付司法警察官吏ヲ指揮ス
第二十四條司法大臣ハ檢察廳ヲ監督ス
第二十五條檢事總長、檢事長及檢事正
ハ各其ノ廳及管轄區域內ノ檢察廳ヲ監
督ス
區檢察廳ノ首席檢事又ハ一人ノ檢事ハ
其ノ廳ヲ監督ス
第二十六條檢事總長、檢事長及檢事正
ハ各其ノ廳ノ檢事ヲシテ監督事務ノ
部ヲ取扱ハシムルコトヲ得
第二十七條檢事總長、檢事長、檢事正、
支廳ノ上席ノ檢事又ハ首席檢事差支ア
ルトキハ各其ノ廳ノ檢事席次ノ順序ニ
依リ之ヲ代理ス
檢事一人ノ支廳又ハ區檢察廳ノ檢事差
支アルトキハ其ノ廳ヲ監督スル檢事正
ハ其ノ職務ヲ代理スベキ者ヲ命ズ
檢事ノ席次ハ司法大臣之ヲ定ム
第二十八條司法警察官及司法警察官ノ
職務ヲ行フ者ニ對スル監督ハ前四條ノ
例ニ依ル
第二十九條檢察廳ノ事務取扱ノ延滯又
ハ不適當ナル執務若ハ處分ニ對シテハ
利害關係人ハ直近上級ノ監督官廳ニ抗
告ヲ爲スコトヲ得但シ裁判所ニ於テ取
消又ハ變更ヲ命ズルコトヲ得ル檢事ノ
處分ハ此ノ限ニ在ラズ
抗告ハ原檢察廳ヲ經由シテ書面ヲ以テ
之ヲ爲スベシ
第三十條抗告ニ對スル處分ハ抗告申立
人ニ通知スベシ
第三十一條檢察廳ノ事務章程ハ司法大
臣之ヲ定ム
附則
第三十二條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以
テ之ヲ定ム
第三十三條區檢察廳ノ檢事ノ職務ハ當
分ノ内司法警察官又ハ其ノ職務ヲ行フ
者ヲシテ之ヲ取扱ハシムルコトヲ得
第三十四條本法施行ノ際現ニ從前ノ規
定ニ依リ檢事タル資格ヲ有スル者ハ本
法施行後ト雖仍其ノ資格ヲ有ス
第三十五條從前ノ檢事局ハ第八條ノ適
用ニ付テハ之ヲ檢察廳ト看做ス
第三十六條舊刑法ノ重罪ノ刑又ハ禁錮
ニ處セラレタル者ハ第九條ノ適用ニ付
テハ之ヲ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル
モノト看做ス
第三十七條本法施行ノ際現ニ從前ノ規
定ニ依リ裁判所書記タル資格ヲ有スル
者ハ本法施行後ト雖仍檢察廳錄事タル
資格ヲ有ス
第三十八條本法施行ノ際現ニ檢事ノ職
ニ在ル者ハ別ニ辭令ヲ用ヒズ同官等俸
給ヲ以テ檢事ニ任ゼラレタルモノトシ
各區裁判所檢事局ノ檢事ハ當該區檢察
廳ノ檢事ニ、各地方裁判所檢事局ノ檢
事又ハ檢事正ハ當該地方檢察廳ノ檢事
又ハ檢事正ニ、各控訴院檢事局ノ檢事
又ハ檢事長ハ當該檢察院ノ檢事又ハ檢
事長ニ大審院檢事局ノ檢事又ハ檢事
總長ハ總檢察院ノ檢事又ハ檢事總長ニ
補セラレタルモノトス
本法施行ノ際現ニ休職中ノ檢事又ハ退
職檢事タル者ハ別ニ辭令ヲ用ヒズ各体
職又ハ退職ノ儘檢事ニ任ゼラレタルモ
ノトス
第三十九條本法施行ノ際現ニ檢事局勤
務ノ裁判所書記ハ別ニ辭令ヲ用ヒズ同
俸給ヲ以テ檢察廳錄事ニ任ゼラレタル
モノトシ各區裁判所檢事局勤務ノ書記
ハ當該區檢察廳ノ錄事ニ各地方裁判
所檢事局勤務ノ書記ハ當該地方檢察廳
ノ錄事ニ、各控訴院檢事局勤務ノ書記
ハ當該檢察廳ノ錄事ニ大審院檢事局
勤務ノ書記ハ總檢察院ノ錄事ニ補セラ
レタルモノトス
第四十條本法施行前區裁判所檢事局ニ
於テ受理シタル事件ハ其ノ地ノ區檢察
廳ニ於テ之ヲ處理ス
本法施行前地方裁判所檢事局ニ於テ受
理シタル事件ハ其ノ地ノ地方檢察廳ニ
於テ之ヲ處理シ地方裁判所支部檢事局
ニ於テ受理シタル事件ハ其ノ地ノ地方
檢察廳支廳ニ於テ之ヲ處理ス
本法施行前控訴院檢事局ニ於テ受理シ
タル事件ハ其ノ地ノ檢察院ニ於テ之ヲ
處理ス
本法施行前大審院檢事局ニ於テ受理シ
タル事件ハ總檢察院ニ於テ之ヲ處理ス
第四十一條他ノ法令中檢事局ニ關スル
規定ハ之ヲ檢察廳ニ關スル規定トス
他ノ法令中區裁判所檢事局ニ關スル規
定ハ之ヲ區檢察廳ニ關スル規定トシ地
方裁判所檢事局又ハ地方裁判所支部檢
事局ニ關スル規定ハ之ヲ地方檢察廳又
ハ其ノ支廳ニ關スル規定トシ控訴院檢
事局ニ關スル規定ハ之ヲ檢察院ニ關ス
ル規定トシ大審院檢事局ニ關スル規定
ハ之ヲ總檢察院ニ關スル規定トス
第四十二條他ノ法令中區裁判所ノ檢事
ニ關スル規定ハ之ヲ區檢察廳ノ檢事ニ
關スル規定トシ地方裁判所ノ檢事又ハ
檢事正ニ關スル規定ハ之ヲ地方檢察廳
ノ檢事又ハ檢事正ニ關スル規定トシ地
方裁判所支部ノ檢事ニ關スル規定ハ之
ヲ地方檢察廳支廳ノ檢事ニ關スル規定
トシ控訴院ノ檢事又ハ檢事長ニ關スル
規定ハ之ヲ檢察院ノ檢事又ハ檢事長ニ
關スル規定トシ大審院ノ檢事又ハ檢事
總長ニ關スル規定ハ之ヲ總檢察院ノ檢
事又ハ檢事總長ニ關スル規定トス
第四十三條他ノ法令中第一審裁判所、
上訴裁判所、控訴裁判所、上告裁判所
又ハ管轄裁判所ノ檢事ニ關スル規定ハ
之ヲ各當該裁判所ノ管轄ニ屬スル事項
ニ付職務ヲ行フ檢察廳ノ檢事ニ關スル
規定トス
他ノ法令中裁判ヲ爲シタル裁判所ノ檢
事ニ關スル規定ハ之ヲ其ノ裁判所ノ管
轄ニ屬スル事項ニ付職務ヲ行フ檢察廳
ノ檢事ニ關スル規定トス
第四十四條他ノ法令中檢事所屬ノ裁判
所ニ關スル規定ハ之ヲ當該檢事ノ職務
ヲ行フベキ事項ニ付管轄權ヲ有スル裁
判所ニ關スル規定トス
第四十五條他ノ法令中檢事局勤務ノ裁
判所書記ニ關スル規定ハ之ヲ檢察廳錄
事ニ關スル規定トス
第四十六條從前ノ檢事又ハ檢事局勤務
ノ裁判所書記ノ職務上ノ行爲ハ各之ヲ
檢事又ハ檢察廳錄事ノ職務上ノ行爲ト
看做ス
〔中山福藏君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=40
-
041・中山福藏
○中山福藏君 玆ニ只今上程セラレマシタ
ル裁判所構成法改正法律案提出ノ理由ヲ說
明致シマス
我國ニ於テ數年來人權蹂躪問題ガ頻發致
シ世論喧々囂々洵ニ慨嘆ノ極ミデアリマ
シテ、斯ル事態ハ昭和聖代ニ於ケル所ノ一
大痛恨事ト言ハナケレバナリマセヌ、仍テ
此ノ際其ノ病源ノ那邊ニアリヤヲ探究シ
之ニ妥當適正ナル改革ヲ加ヘ、以テ司法權
ノ尊嚴ヲ維持シ、國民ノ信賴ヲ高メ、法治
國本來ノ面目ヲ發揮セネバナラヌト存ズル
ノデアリマス而シテ諸君、御承知ノ如ク
昭和十二年第七十一議會ニ於キマシテ、司法
制度革正ニ關スル決議案提出セラレ、滿場
一致可決セラレマシタケレドモ、政府ハ未
ダ自ラ本制度改革ノ熱意ヲ示サズ、且一又
方ニ司法制度調査會ナルモノガ存在致シテ
居リマスケレドモ、何等成績ノ見ルベキモ
ノガナイノデアリマシテ、之ニ多キヲ求ム
ルハ恰モ百年河〓ヲ俟ツノ類デアリマスカ
ラ、以下六項目ニ重點ヲ置キ、裁判所構成
法ヲ改正シテ司法部ノ革新ヲ圖ラントスル
者デアリマス
第一點ハ檢事局ト裁判所ノ分離ノ問題デ
アリマシテ、檢事局ヲ裁判所ニ附置スル現
行制度ヲ改メ、之ヲ裁判所ヨリ分離シテ、
司法權行使ノ機關ト、司法權ノ發動ヲ求ム
ル所ノ檢察權行使ノ機關トノ區別ヲ明確ニ
シテ、兩者各〓獨立ノ地位ヲ保タシムルコ
トト致シタイノデアリマス、惟フニ憲法第
五十七條ハ司法權ハ天皇ノ名ニ於テ裁判
所之ヲ行フト規定シ、行政廳ノ外ニ獨立セル
裁判所ヲシテ之ヲ行使セシムル趣旨ヲ明ニ
致シテ居ルノデアリマス、隨テ司法權發
動ヲ求ムル檢察機關ハ、固ヨリ司法機關タ
ル裁判所ノ外ニ存在スルコト勿論デアリマ
スケレドモ、現行制度ガ行政官タル司法大
臣ノ指揮監督ニ服スベキ檢察機關ヲ、裁判
所構成法ニ依ツテ支配シ、且ツ裁判所ニ附
置スルモノト致シマシタ結果、檢事局ト裁
判所トガ恰モ同一官廳ナルカノ如キ奇觀ヲ
呈シ、國民ヲシテ裁判所モ亦司法大臣ノ指
揮監督ニ服スルニアラズヤトノ誤解ヲ抱カ
シメマスル虞ガアルノデアリマス而モ一
方ニ檢察機關ハ、檢事一體ノ原則ニ則ツテ、
上ハ司法大臣ヨリ下ニ區裁判所檢事ニ至ル
マデ緊密ナル連絡ヲ保チ、渾然一體トシテ
活動スベキ體制デアリマスカラ自ラ强大
ナル所ノ勢力ヲ有シ、動モスレバ司法權行
使ノ重任ヲ、有スル司法官ガ檢察官ノ爲ニ掣
肘セラルルノ疑惑ヲ抱懷セシメ、又檢察官
ト司法官トガ同一廳舍ニ執務シ、極メテ密
接ナル關係アルガ爲ニ、司法官ガ檢察官ニ
對シ、嚴然トシテ能ク其ノ獨立性ヲ發揮シ
得ルヤニ付テノ疑念ヲ挾マシムルニ至ツテ
居リマス、加之最近ニ於ケル所謂司法部ニ
對スル非難ナルモノヲ靜ニ檢討致シマスル
時ニ、檢察機關ノ失態ガ累ヲ裁判所ニ及ボ
シタル場合モ洵ニ多イノデアリマシテ檢
事局ヲ裁判所ニ附置スル制度ハ、如實ニ司
法部百弊ノ根源タルコトヲ物語ツテ居ルト
謂ハナケレバナリマセヌ、カルガ故ニ檢事
ノ機構ニ關スル現行規定ハ、裁判所構成法
中ヨリ之ヲ削除致シマシテ、別箇ノ法律ヲ
以テ之ヲ規定シ、兩者ヲ分離スルコトニ致
シタノデアリマス(拍手)
第二點ハ大審院長ノ權限擴張ニ關スル問
題デアリマス、現行制度ニ於キマシテハ
控訴院長ハ其ノ管轄內ノ下級裁判所全部ニ
對シテ監督權ヲ有スルコトニナツテ居リマ
スケレドモ、大審院長ハ最高ノ地位ヲ有シ
ナガラ、單ニ大審院ノミヲ監督スルノ地位
ニアルニ過ギマセヌ、斯ル制度ハ司法權ノ
獨立ヲ保障スル意味ニ於テ不合理タルヲ免
レナイノデアリマス、現ニ衆議院ハ昭和二
年二月、裁判所ヲシテ司法大臣ノ監督ヨリ脫
セシメテ、總テ最高裁判所タル大審院長ヲ
シテ之ニ當ラシムベシトスル、司法權獨立
ノ保障ニ關スル建議案ヲ可決致シタノデア
リマス、又往年全國控訴院長モ時ノ大木司
法大臣ニ對シマシテ、大審院長ニ大審院ノ
外下級裁判所ヲモ監督スルノ權限ヲ附與
スベシトスルノ建議ヲ致シタコトモアルノ
デアリマス、此ノ意見ハ朝野法曹大部分ノ
意見デアリマシテ、當然此處ニ重點ヲ置キ
改革ノ步ヲ進メナケレバナラヌト信ジテ疑
ハナイノデアリマス
第三點ハ審級制ノ合理化ノ問題デアリマ
ス、申スマデモナク、司法權ハ天皇ノ名ニ
於テ裁判所之ヲ行フソデアリマスガ、司法裁
判ハ憲法上國務大臣輔弼ノ外ニアルノデア
リマシテ、隨テ裁判ニ對シテハ、議會ノ監
督モ之ニ及バナイノハ當然デアリマスヽ唯
不當ナル裁判ニ對シテ權利ヲ侵害セラレマ
シタル場合ニ於テハ上級裁判所ニ上訴シ
テ其ノ審判ヲ求ムルノ一途ヲ有スルニ過ギ
ナイノデアリマス、然ルニ現行法ハ控訴院
地方裁判所共ニ三名ノ判事ヲ以テ部ヲ構成
シテ居ルノデアリマシテ、控訴院ハ同數ノ
判事ヲシテ地方裁判所ノ裁判ノ適否ヲ判斷
セシムルト云フコトニナツテ居ルノデアリ
マンク、斯ノ如キ有樣ニ放置スルニ於キマシ
テハ理論上審級制度ヲ設ケタル趣旨ヲ全
ク沒却スルト云フコトニナルノデアリマシ
テ當然其ノ改革ハ斷行セラレナケレバナ
ラヌモノデアルト私ハ信ズルノデアリマス
(拍手)加之現行法ノ下ニ於キマシテハ時
ニ或ハ地方裁判所ノ部長ガ控訴院ノ部長ヨ
リモ上級官タル場合ガアルノデアリマシテ、
斯ル場合ニ於テハ、下級判事ガ上級判事ノ
裁判ニ對シテ覆審ヲ爲スト云フ奇觀ヲ呈ス
ルニ立至ルノデアリマス、之ヲ實際ニ徵ス
ルモ五名ノ判事ノ合議ガ、三名ノ判事ノ
合議ニ比シテ、更ニ愼重トナリ、事案ノ實
相ヲ發見スル上ニ遙ニ有效ナコトハ、私共
ノ常ニ實驗スル所デアリマシテ、裁判所構
成法制定當時ニ於ケル立法者ノ卓見ハ正
ニ賞賛ニ値スルモノガアルノデアリマスル
カラ須ク現行裁判所法制定前ノ建前ニ還
元致シマシテ、控訴院ハ五名、大審院ハ七
名ノ判事ヲ以テ其ノ審理ニ當ラシムルト云
フコトニセナケレバナラヌト思料スル次第
デアリマス
第四點ハ法曹ノ一元化問題デアリマス、
複雜ニシテ多岐多端ナル所ノ現代社會ニ於
キマシテハ訴訟審判ノ職司ハ社會ノ表裏
ヲ洞察シ得ル所ノ眼識ヲ備ヘタ裁判官ヲ以
テ之ニ當ラシムルト云フコトハ當然デアリ
マセウ(拍手)少クトモ健全ナル常識ヲ具フ
ル人デアツテ、初メテ其ノ職務ヲ完遂スル
コトガ出來ルト確信致シマス隨テ纔ニ學
園ヲ出デテ一兩年間其ノ實務ニ携ハツタル
所ノ極ク若キ裁判官ヲ以テ、審判ノ大任ヲ
全ウスルト云フコトハ到底不可能デアリ
マスルカラ、將來ハ一定年間辯護士ノ職務
ニ從事シ、實際社會ノ表裏ヲ體驗シ、尊イ
其ノ體驗ヨリ流レ出ヅル所ノ判斷力ヲ持ツ
タ裁判官ノ任命制度ヲ、確立シナケレバナ
ラヌト私ハ考ヘテ居ルノデアリマス(拍手)
第五點ハ判事ト檢事ノ人事交流廢止ノ問
題デアリマス、判事ト檢事トノ人事交流ヲ
認メテ居リマスル所ノ現行制度ハ、種々ノ
弊害ヲ伴フコトヲ免レナイノデアリマス
抑〓檢事ハ公訴ヲ提起シ、司法權ノ發動ヲ求
ムル所ノ原告官デアル、判事ハ司法權ノ行
使ヲ職司トスルモノデアリマスルカラ、體
制上判事ハ檢事ノ上位ニ立タシメナケレバ
ナラヌト私ハ考ヘル然ルニ現行制度ハ
判事ト檢事ノ交流ヲ認メマスルガ故ニ、往
往ニシテ裁判ノ經驗ニ乏シキ檢事ガ判事ニ
轉官シテ其ノ監督長官タル地位ヲ占ムル
ガ如キ事例ナキニシモアラズデアリマス、
斯ノ如キハ裁判官ノ地位ヲ輕視シ、延イテ
司法權ノ獨立性ヲ侵害スルモノト謂ハナケ
レバナリマセヌ(拍手)仍テ判事ヨリ檢事ニ
轉官スルコトハ之ヲ認メテモ差支ナイノデ
アリマスガ、檢事ヨリ判事ニ轉官スルコト
ハ斷ジテ之ヲ禁止シナケレバナラヌト私ハ
考ヘテ居ルノデアリマス(拍手)
第六ノ點ハ判事停年制ノ廢止ノ問題デア
リマス、凡ソ刑事タルト民事タルトヲ問ハ
ズ、訴訟審判ノ職司ハ、長キ社會生活ノ經
驗ヲ積ミタル所ノ練達堪能ノ士ニアラザレ
バ斷ジテ之ヲ全ウスルコトヲ得ベキモノ
デハアリマセヌ、現行法ガ能力ノ如何ヲ顧
ミズ、一定ノ年齡ニ達シタル者ヲ、畫一的
ニ退職セシムルト云フコトハ決シテ妥當
ナル態度デハナイト私ハ思フノデアリマス、
仍テ無能ノ判事ハ年齡ノ如何ニ拘ラズ之ヲ
退職セシメ、有能ノ判事ハ長ク其ノ地位ヲ
保チ職務ニ專念セシムルノ制度ニ改メ、裁
判官ニ對スル國民ノ尊敬ヲ厚カラシメ、司
法ノ威信ヲ確保スルコトト致シタイト存ズ
ルノデアリマス(拍手)以上ノ理由ニ依リ本
案ヲ提出致シマシタ
次ニ檢察廳法案提出ノ理由ヲ說明致シタ
イト思ヒマス、併シナガラ理由ハ裁判所構
成法改正法律案ノ趣旨辯明第一點ト符合ス
ルガ故ニ、此ノ場合茲ニ之ヲ援用シテ省略
致シタイト存ズルノデアリマス、何卒兩案
トモ御審議ノ上、速ニ御協賛ヲ賜ハランコ
トヲ御願シテ此ノ壇ヲ下ル次第デアリマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=41
-
042・服部崎市
○服部崎市君 日程第二及ビ第三ノ兩案ヲ
一括シテ議長指名十八名ノ委員ニ付託サレ
ンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=42
-
043・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=43
-
044・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=44
-
045・服部崎市
○服部崎市君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此ノ際日程第二十二ヲ
繰上ゲ上程シ、其ノ審議ヲ進メラレンコト
ヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=45
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046・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=46
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047・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ノ順序ハ變更セラレマシタ
日程第二十二、衆議院議員選擧法中改正法
律案ノ第一讀會ヲ開キマス、提出者ノ趣旨
辯明ヲ許シマス-提出者金井正夫君
第二十二衆議院議員選擧法中改正法
律案(今井健彥君外七名提出)
第一讀會
衆議院議員選擧法中改正法律案
衆議院議員選擧法中左ノ通改正ス
第六十八條第二項中「十分ノ一」ヲ「七分
ノ一」ニ改ム
第七十三條當選人數選擧區ヨリ當選ノ
告知ヲ受ケタルトキハ一一十日以內ニ其
ノ孰レノ選擧區ノ當選ヲ承諾スルヤヲ
選擧長ニ屆出ヅベシ
選擧長前項ノ規定ニ依ル屆出ヲ受ケタ
ルトキハ直ニ其ノ旨ヲ地方長官ニ報〓
ストン
當選人ノ當選ヲ承諾セザル選擧區ニ付
テハ第一項ノ屆出ニ因リ其ノ當選ヲ辭
シタルモノト看做ス
第七十四條削除
第七十五條第一項中第六號ヲ削ル
第七十六條地方長官第七十二條第一項
ノ報告ヲ受ケタルトキハ直ニ當選人ニ
當選證書ヲ付與シ其ノ氏名ヲ〓示シ且
之ヲ內務大臣ニ報〓スベシ當選人數選
擧區ニ於テ當選シタル場合ニ於テ第七
十三條第二項ニ依ル報〓ヲ受ケタルト
キ亦同ジ
第七十九條ノ二第百三十六條ノ規定ニ
依リ當選無效ト爲リタル者ハ之ヲ闕員
ト看做ス
第八十九條第一項ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ選擧委員ハ豫メ選擧事務長ノ承諾
ヲ得テ選擧運動ノ爲使用スル勞務者ヲ
選任スルコトヲ得
第九十五條ノ二ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ立候補準備ノ爲ニスル行爲ハ此ノ
限ニ在ラズ
第九十六條第二項但書ノ末尾ニ左ノ如ク
加フ
前項但書ニ依リ第三者ガ演說又ハ推薦
狀ニ依ル選擧運動ヲ爲ス場合ニ於テ之
ト同居スル親族、家族及常傭ノ使用人
ニ付亦同ジ
第九十六條ノ二選擧運動ノ一部ノ仕事
ヲ專屬的ナラザル請負契約ニ依リ行フ
トキハ該請負人及其ノ使用人ハ勞務者
ニ非ズト雖モ之ニ從事スルコトヲ得
第九十七條ニ左ノ一項ヲ加フ
選擧事務長、選擧委員及選擧演說會ニ
出演スル者ハ前項ノ規定ニ依ル實費辨
償ノ外命令ノ定ムル所ニ依リ日當ヲ受
クルコトヲ得
第九十八條ノ四選擧演說會ハ選擧ノ當
日ハ之ヲ開クコトヲ得ズ
第百三十四條中「一年以下ノ禁錮」ノ下ニ
「又ハ五百圓以下ノ罰金」ヲ加フ
第百三十六條中「本章ニ揭グル罪」ノ下ニ
「(第百三十二條第二項ノ罪ヲ除ク)」ヲ
加フ
附則
本法ハ次ノ總選擧ヨリ之ヲ施行ス
〔金井正夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=47
-
048・金井正夫
○金井正夫君 只今上程ニナリマシタ衆議
院議員選擧法中改正法律案ニ付キマシテ、
提案者ヲ代表致シ、提案ノ理由ヲ御說明申
上ゲマス
現行選擧法ハ御承知ノ通リ昭和九年第六
十五議會ニ於テ改正セラレタモノデアリマ
スルガ之ニ依ツテ既ニ二囘ノ衆議院議員
選擧ト二囘ノ區會議員選擧及ビ其ノ他多
數ノ地方議會ノ選擧ガ行ハレタノデアリマ
ス、然ルニ其ノ適用ニ當リマシテ、甚ダ遺
憾ナ點ガアリ、又法條自體ニ於テモ、聊カ
時勢ニ副ハザルモノガアリ選擧ノ實際ニ
臨ンダ候補者及ビ選擧運動者ハ固ヨリ選
擧ノ取締ニ當ラレタ官憲ニ於テモ、幾多ノ
矛盾ト不便ヲ感ジタコトヲ發見シタノデア
リマス、ソコデ昭和十一年ノ第六十九特別
議會ニ於キマシテハ院議ヲ以テ選擧法改
正ニ關スル決議案ガ可決セラレ之ニ基イ
テ廣田內閣ガ特ニ選擧制度改正委員會ヲ設
ケ、朝野ノ識者ヲ集メテ愼重考究ノ上、其
ノ答申案ガ出來タノデアリマス、然ル所廣
田內閣ノ總辭職ノ爲、遂ニ其ノ改正案ハ議
會ニ提出セラレズシテ、林內閣ノ時ニ於テ
政友會及ビ民政黨カラ選擧法ノ改正案ガ提
出セラレタノデアリマス而シテ是ハ委員
會ニ於テ修正ノ上、衆議院ハ通過致シマシ
タガ、議會解散ノ爲、貴族院ニテ審議未了
トナツテ居ルノデアリマス其ノ後近衞內
閣ニ於キマシテモ選擧法ノ改正ヲ痛感セ
ラレ、特ニ審議會ヲ設ケテ選擧法ノ改革ヲ
企テ、選擧區制ノ變改、選擧公營ノ徹底、
選擧方法ノ改善ニ關スル案ヲ得マシタケレ
ドモ、是亦政變ノ爲議會ニ提出スルニ至ラ
ズシテ今日ニ至ツテ居ルノデアリマス斯
ノ如ク歷代ノ內閣ニ於テ選擧法ニ不備缺陷
ヲ認メ、其ノ改正ヲ痛感シテ居ルコトハ事
實デアリマス、選擧法ハ國民大衆ヲ相手ト
スル法律デアリマスカラシテ、國民誰シモ
分ルヤウニ平易ニ、餘リ疑義ノナイヤウ
ニシナケレバナリマセヌ、又選擧ハ自由ニ
シテ公平ニ、明朗ニ運動ガ出來ルヤウナ方
針ヲ規定スベキデアリマスガ、現行選擧法
ハ動モスルト疑義ガ起キ、自由公平ヲ缺キ、
却テ選擧民ヲ萎縮セシメ、其ノ明朗性ヲ失
ハシムル規定ガ多イノデアリマス、併シ選
擧法ニ限ラズ、何レノ法律デモ同ジコトデ
アリマスガ、其ノ缺點アルコトヲ發見ヲ致
シマスレバ、直チニ是ハ改正シナケレバナ
ラヌモノト吾々ハ考ヘテ居リマス然ルニ
政府ハ實際ニ於テ中々之ヲ實行シナイコト
ハ甚ダ遺憾ニ存ジマス、政界革新ノ根源ヲ
成スモノハ、何ト申シマシテモ選擧制度ノ
改善ニアルノデアリマシテ、吾人ハ其ノ意
味ニ於テ選擧法ノ根本的改正ヲ要望スルコ
ト固ヨリデアリマス、現內閣ハ成立猶ホ日
淺キガ爲ニ、自ラ改正案ヲ作ツテ本議會ニ
提出スルコトガ出來ナイ事情ニアリマスガ、
ソレカト云ツテ衆議院議員ノ總選擧ノ期日
ハ一年ノ後ニ迫ツテ居ルノデアリマスカラ、
根本的改正ハ他日ニ讓ルコトニ致シマシテ、
應急的改正案ヲ本議會ニ提出スルコトニシ
タノデアリマス、此ノ改正案ハ曩ニ政府ニ
於テ成案ヲ得テ居リマスル改正要綱ノ中ヨ
リ吾々ガ是マデノ體驗上、最モ不合理、
不便ヲ感ジタモノヲ搔摘ンデ提出シタ次第
デアリマシテ極メテ簡單明瞭ナモノデア
リマシテ、別ニ玆ニ其ノ內容ニ付テ御說明
ヲ加ヘル必要ハアリマセヌガ、唯念ノ爲メ
其ノ要點ダケヲ指摘シテ見マスレバ
第一選擧事務長、選擧委員及ビ選擧演說
會ニ出演スル辯士ニハ現行法上日當ヲ支給
シ得ザルコトニナツテ居リマスガ、是ハ社
會一般ノ通念ニ反シタ規定デアリマスカラ
之ヲ改正シテ、以上ノ者ニハ命令ノ定ムル
所ニ依ツテ日給ヲ支給シ得トシタコトデア
リマス
第二ニハ、現行法ニテハ勞務者ヲ選定ス
ルコトハ選擧事務長ノミニ限ラレテ居ルノ
デアリマスガ是ハ實際ニ於テ甚ダ不便ガ
アリマスカラ、選擧委員モ豫メ選擧事務長
ノ承諾ヲ得テ、勞務者ヲ選定スルコトガ出
來ルト致シタコトデアリマス
第三ハ所謂再選擧ニ於テ選擧違反ニ引
掛ツテ失格シタル場合ニハ補關選擧ト同
樣ニ缺員ノ數二名ニ達スルヲ待チテ選擧ヲ
行フコトトシタノデアリマス
第四ハ供託金ノ沒收點ハ從來有效投
票ヲ議員定數ニテ除シタル數ノ十分ノ一デ
アリマシタノヲ、引上ゲテ七分ノ一ニ改メ
タコトデアリマス
第五ハ、當選人ハ原則トシテ當選ノ承諾
ノ屆出ヲ爲サザルモ議員タリ得ルヤウ改メ
タコトデアリマス
其ノ他二三ノ事項ニ過ギナイノデアリマ
スガ、是ハ餘リニ簡單ナモノデアリマスカ
ラ、別ニ說明申上ゲルコトヲ省略致シマス
兎ニ角選擧法ノ改正トシテハ先刻申上
ゲマシタ通リ、根本的改正ヲ要スル點ガ
多々アリマシテ、例ヘバ選擧權ノ擴張、選
擧區制ノ變更、比例代表、或ハ別表ノ改正、
其ノ他色々ナ問題ガアルノデアリマスガ、
是等ノ問題ハ凡テ他日政府カラ提案ヲ願フ
コトニ致シテ、今囘ハ唯應急的ノモノニ限
ルコトニ致シタノデアリマス
最後ニ此ノ法律案ヲ提出スルニ至リマシ
タ動機竝ニ經過ニ付テ一言致シマス、此ノ
選擧法改正法案ニ付、前陳ノ如ク政府ニ於
テ改正ノ大體ノ法案ガ出來テ居リマスノニ
一向出サレナイ本議會ニ於テモ議員カラ
度々之ニ關スル質問ガ行ハレ、之ニ對シテ
唯政府ハ善處スルトカ、又是ガ改正ニ付テ
ハ熱心ナル再檢討ヲ加へテ見タイトカ言ハ
ルルノミデアリマシテ、來年ニ總選擧ヲ控
ヘテ居ル今日、本議會ニ其ノ提出セントス
ル氣配モナイ、ソレデ私ハ去ル二月二十一
日、第二分科會ノ席上ニ於テ、內務大臣ニ
對シ、若シ政府カラ本法案ヲ提出セラレ
ズ議員ノ方カラ是ガ提出ノアツタ場合
ニ、政府ハ之ヲ如何ニ取扱フカト云フ質問
ヲ致シシマタガ、之ニ對シ內務大臣ハ敢テ
御反對デモナイヤウナ御答辯デアリマシタ
ノ六、議員カラ提出スルコトニ致シタノデ
アリマス
尙ホ此ノ法案ハ議員各位ニ及ボス影響モ
大ナルモノガアルノデアリマスカラ、當初
各派共同提案トスルコトトシ、各派ヨリ二
名宛ノ代表者ヲ出シ、合計十二名ノ委員ヨ
リ成ル選擧法改正協議會ヲ作リ、此ノ協議
會ニ於テ數囘ニ亙リ案ヲ練ツタノデアリマ
ス、而シテ愈〓成案ヲ得テ提出セントスルニ
當リ、如何ナル理由ニ基クノカ、民政黨ガ
之ニ對シテ餘リ氣乘リサレナイ、又政府モ
其ノ内容ガ全ク選擧改正委員會ノ答申ニ基
キテ出來テ居ルノニ拘ラズ、曩ノ私ニ對ス
ル御答辯トハ違ツテ、今度ハ消極的態度ニ
出ラレタ爲、各派共同提案トスルコトガ出
來ズ、而モ本議場ニ上程セラルルコト斯ノ
如ク會期切迫ノ今日マデ遲レタコトヲ甚ダ
遺憾トスルモノデアリマス此ノ度ノ選擧
法改正法案ノ提出ニ對シ、餘リ是ガ事情ヲ知
ラナイ人々ハ議員ガ自分勝手ノ法案デモ
出スカノ如ク誤解セラレテ居ルコトヲ聞イ
テ居ルガ、吾々ハ決シテソンナ。氣持ハ毛
頭持ツテ居ル者デハアリマセヌ、モツト大
局カラ選擧ヲ自由公平ニ、且ツ明朗ニサセ
タイト云フノガ吾々ノ氣持デアリマス、人
ハ働ケバ報酬ヲヤルト云フノガ一般通念デ
アリマスガ、現在ノ選擧法デハ選擧ニ働イ
タ選擧事務長、選擧委員及ビ辯士ハ少シノ
日當モ取ルコトガ出來ナイ、若シ之ヲ取ツ
タガ最後、選擧違反ニ引掛ル之ニ依ル選
擧違反ガ現在ハ多イノデアリマス、此ノ不
合理ナル規定ノ有ル無シデ、恐ラク多數ノ
違反者ガ救ヒ得ラルコトヲ確信シテ居リ
やっ、政治家ハ此ノ世ノ中カラ犯罪者ヲ出
サヌヤウニスルノガ其ノ任務デアリマス
此ノ戰時下ニ於テ、若シ來年ニ迫ル總選擧
ニ於テ、戰場ニアル勇士ノ父兄カラデモ多
數ノ違反者ヲ出スヤウナコトガアリマシタ
ラ、政府ハ一體ドウシマスカ、戰線ノ勇士
ノ士氣ニモ非常ナ惡影響ヲ及ボスコトト考
ヘルノデアリマス、又物資、殊ニ紙ノ缺乏
ヲ來シテ居ル今日、來年果シテ此ノ儘ニテ
選擧ガ出來ルト思ハレルカ、吾々ハ之ヲ憂
慮シテ居ルノノアアル、少クトモ此ノ意味ニ
於テ、政府ガ本會議ニ選擧法ノ改正案ヲ出
サレヌコトハ又怠慢モ甚ダシキモノト謂ハ
ナケレバナリマセヌ
一體日本ノ議會ハ外國ノ議會ト違ヒ、政
府ハ動モスルト衆議院カラノ提出法案ヲ輕
視スルノ嫌ヒガアル、如何ニ內容ガ良クテ
モ之ヲ阻止セントスルノ傾向ガアル是ガ
卽チ官僚獨善ノ誹ヲ免レナイ所以デアルト
思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=48
-
049・小山松壽
○議長(小山松壽君) 時間デスカラ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=49
-
050・金井正夫
○金井正夫君(續) 時間ガ來テ居リマスカ
ラ、詳細ハ委員會ニ於テ辯明スルコトニシ
テ、以上ヲ以テ提案ノ理由ト致シマス、何卒
政府モ滿場ノ諸君モ、御贊成ヲ以テ速ニ通過
スルコトヲ希望致ス次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=50
-
051・服部崎市
○服部崎市君 本案ハ議長指名十八名ノ委
員ニ付託セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=51
-
052・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=52
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053・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=53
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054・服部崎市
○服部崎市君 殘餘ノ日程ハ延期シ、本日
ハ是ニテ散會セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=54
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055・小山松壽
○議長(小山松壽君) 服部君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=55
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056・小山松壽
○議長(小山松壽君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、次會ノ議
事日程ハ公報ヲ以テ通知致シマス、本日ハ
是ニテ散會致シマス
午後四時五十分散會
〔高橋壽太郞君演說參照〕
靑年二十五歲ニモ達シマスレバ心神發育モ
十分ニアリ、男子ハ衆議院議員選擧資格モ
得ラレ、一通リ思慮分別モ出來得ルノデア
リマスカラ、爾後ハ酒ヲ飮ムモ飮マヌモ
其自由意思ニ委カシテ大過ナカルベシト存
ジマス、之レ本法ニ於テ二十五歲禁酒制ヲ
設ケントスル所以デアリマス
最後ニ申上ゲタイ事ハ東亞新秩序ノ建
設ニ關シテデアリマス、此大業ヲ完遂スル
爲ニハ)日滿支三國民ノ相互ノ理解ト尊敬
トヲ基調トセネバナリマセヌ、然ルニ漢民
族ハ古來人前ニ醉態ヲ演ズルコトヲ無上ノ
恥辱ト致シテ居ルノデアリマス、我々ガ彼
ノ地ヲ旅行致シマシテモ、都會ノ大通ハ勿
論如何ナル陋巷ニ於テモ醉客ヲ發見スル
コトガナイノデアリマスガ獨リ我ガ國民
ハ醉步蹣跚、酒ヲ被ツテ勢ヲ成ス如キ行動
ヲ敢テスル者甚ダ少シトシナイノデアリマ
ス、此ノ如キハ決シテ彼等國民ノ尊敬ヲ博
スル所以デハアリマセヌ從テ八紘一宇ノ
大理想ヲ實現スルタメニハ少クモ靑年禁
酒法ヲ制定シテ、國民ヲシテ「國家ガ靑年
ノ飮酒ヲ欲セザル」旨ノ、國民的規範ヲ示
スノ必要アリト存ジマス
以上ヲ以テ靑年禁止法提案ノ理由ト致シマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007513242X03119400322&spkNum=56
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