1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十六年二月二十七日(木曜日)午前十時十五分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=0
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001・黒木三次
○委員長(伯爵黑木三次君) 是ヨリ委員會
ヲ開會致シマス、內田君ノ御質問ノ順ニナッ
テ居リマスカラ·発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=1
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002・内田重成
○內田重成君 私ハ大臣ニ伺ヒタイノデス
ガ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=2
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003・井野碩哉
○政府委員(井野碩哉君) 大臣ハ直グ參リ
やく、此ノ儘チヨット御待チ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=3
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004・黒木三次
○委員長(伯爵黑木三次君) ソレヂヤ坊城
サンニ御願ヒシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=4
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005・坊城俊賢
○男爵坊城俊賢君 私ハ極ク簡單ナコトヲ
御伺ヒ致スノデアリマス、先年來增產ト云
フコトガ盛ニ叫バレテ居リマシテ、農林省
ガ各府縣ニ、府縣ハ又各町村ニソレヲ連絡シ
テオヤリニナッテ居ルノデアリマスガ、實際
ニ於テ出來得ナイ數字ヲ町村ナラ町村デ引
受ケテ居ルガ爲ニ、今度實際收穫シテ見ル
ト減收デアルト云フヤウナコトガ、減收ノ
一ツノ原因ニナッテ居ルノデハナイカト云
フコトヲ危ブムノデアリマス、勿論早害デ
アルトカ、其ノ他勞力不足デアルトカ、資
材ノ不足デアルトカ云フヤウナ各種ノ原因
ニ依リマシテ、減收ト云フコトハ現レテ來
ルノデアラウトハ思ヒマスガ、無理ナ數字ヲ
强要スル爲ニ、又町村ニ於テハソレヲ引受
ケザルヲ得ナイ爲ニ、サウ云フコトニナル
ト云フコトガ、又一ツノ原因ヲナシテ居ル
ノデハナイカト云フコトヲ危ブンデ居ル次
第デアリマスガ、其ノ點ニ付キマシテ農林
當局ノ忌憚ノナイ御意見ヲ伺ヒタイト思ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=5
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006・井野碩哉
○政府委員(井野碩哉君) 昨年ノ增產計畫
ニ付キマシテハ、御承知ノ通リ七千百萬石
ト云フ目標デ致シタノデゴザイマスガ、是
ハ決シテ其ノ當時ノ事情カラ見マシテ、無
理ナ數字デハナカッタノデアリマス、其ノ前
三箇年ノ平均カラ考ヘテ見マシテ、農林省
ガ豫算上計畫致シマシタ事柄ガ十分ニ行ハ
レマスレバ、ソレダケノモノハ取レル、斯
ウ云フ見込ガ立チマシタノデ、各府縣ノ田
畑ノ面積ニ比例致シマシテ、ソレヲ割振リ
マシテ、縣、町村、部落ニ割當テテ參ッタノ
デアリマスカラ、其ノ時ノ實情カラ見マス
しや、無理ハナカッタト思フノデアリマス、
併シ豫算ノ執行其ノ他ノ上ニ於キマシテ、
資材關係或ハ肥料關係ニ於テ十分ノコトガ
行渡リマセヌデシタノデ、結果ニ於テ或ハ
多少私共モ今カラ考ヘテ見マシテハアノ目
標ハ無理デハナカッタカト思フノデアリマ
ス、本年ハサウ云フコトカラ能ク色々ノ事
情ヲ吟味致シマシテ、決シテ今御尋ノアリ
マシタヤウナ無理ノナイヤウナ增產目標ニ
向ヒマシテ、本年ハ努力致シタイト、斯ウ
云フ風ニ考ヘテ居ル次第デアリマス*発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=6
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007・坊城俊賢
○男爵坊城俊賢君 只今ノ御話デ能ク了解
致シマシタガ、私ガ特ニ之ヲ申上ゲタノハ、
木炭ノ問題ニ付キマシテ、木炭ノ政府カラ
ノ割當ノ數字ト云フモノハ、非常ニ無理デ
ハナカッタカト云フヤウナ懸念ヲ持ッテ居ル
ノデアリマス、實際ニ町村デハ出來ナイコ
トデアリマシタノガ、農林省ハ縣廳ニ、縣
廳ハ町村ニオ百度ヲ踏ンデ賴ンダ結果、是
ハ迚モヤリ切レヌト云フノデ、最後ニ其ノ
數字ダケハ引受ケルト云フノデ、引受ケテ
シマッタト云フヤウナコトヲチョイ〓〓聞ク
ノデアリマス、其ノ數字ガ逆ニ政府ノ方ニ
參リマスノデ、今年ハ是ダケノ增產ヲシテ
居ルノダト、數字上ニ實際ニ御發表ニナル
ガ、其ノ實、實際ノ炭ハソレダケノ數字ダ
ケ出來ナカッタト云フヤウナコトヲ、私ハ
チヨット耳ニシタノデアリマス、又ソレハ唯
政府ガ御集メニナッタ數字ノ外ニ、營林署ガ
ソレデハ此ノ資材ヲ民間ニ拂下ゲテ居リマ
スガ、其ノ數字トモスッカリ符合スルカラ、
決シテ是ハ誤ガナイ數字ダト云フコトヲ政
府トシテハ御答辯ニナルト思ヒマスガ、併
シ實際ニ於テハ炭ハソレダケノ數字ダケ生
產出來ナイノヲ、無理ニオヤリニナッテ居ル
ト云フヤウナ氣ガ致シタモノデアリマスカ
ラ、全般ノ食糧ニ付キマシテモサウ云フ懸
念ヲ持チマシテ、今ノ御質問ヲ申上ゲタ次
第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=7
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008・井野碩哉
○政府委員(井野碩哉君) 炭ノ問題ニ付キ
マシテ、今御話ノ通リノ事情モ多少アッタト私
共モ認メテ居ルノデアリマス、大體一昨年
ノ實績カラ見マシテ、努力目標ヲ八千四百
萬貫ト云フ所ニ置キマシテ、サウシテソレ
ヲ一應各府縣ニ割當テテ見タノデアリマス、
併シ是ハ一番初メ割當テマシタモノハ、ソ
レヲ以テ直チニ農林省ガ强要スルノデナク
シテ、是ダケノモノハ縣トシテ出來ルカド
ウカト云フコトヲ、縣廳ニ問合ハシタノデ
アリマス、其ノ結果縣カラハソレダケノモ
ノハ出來ナイ、ドウシテモ是ダケシカ出來
ナイト云フヤツヲ、二三遍會議ヲ開キマシ
テ、スッタモンダ致シマシテ、結局決リマシ
タモノヲ以テ、今日現ニ其ノ增產目標トシ
テ示シテ居ルノデゴザイマシテ、ソレハ前
年ノ檢査數量カラ見マシテ、決シテ我々ノ
方モ無理ノナイ數ト、斯ウ現在デモ認メテ
居リマス、其ノ增產目標ニ對シマシテノ實績
ハ今日相當ニ能ク行ッテ居リマス、デスカ
ラ其ノ實績カラ見マシテモ、決シテ目標ガ
無理デナカッタト考ヘテ居リマス、サウ云フ
次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=8
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009・坊城俊賢
○男爵坊城俊賢君 私ノ質疑ハ是デ終リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=9
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010・黒木三次
○委員長(伯爵黑木三次君) デハ內田君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=10
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011・内田重成
○內田重成君 私ハ農林大臣ニ伺フノデア
リマスルガ、私ノ伺ヒマスルノハ極ク大體
ノコトデゴザイマス、現今我ガ國デ唱ヘラ
レテ居リマス高度國防國家建設ハ、畢竟物
資ノ自給自足ニアルノデアリマス、國內產
業ノ生產ヲ增加スルコトガ要件デアル、此
ノ意味ニ於キマシテ食糧政策ノ對策ト致シ
テモ檢討セラルヽ所ノモノガ尠クナイ、
,就中集荷配給機構ノ整備ト生產ノ確保ト云
フコトガ、對策中ノ最大ナルモノデアルト
云フコトハ申ス迄モナイコトデアラウト考
ヘマス、生產ノ確保ハ徹底的ニ增產計畫ヲ
樹立スルニアルト云フコトモ、屢〓、申サレテ
居ルノデアリマスルガ、此ノ見地ニ於キマ
シテ農地開發法案ハ、〓糧需給ノ强化ヲ圖
ル爲ニ、農地ノ造成及ビ改良ヲ促進スル目
的ヲ以テ立案シタト云フ御說明デアリマス
ガ、誠ニ時代ノ要求ニ適應シタ法案デアル
ト考ヘテ居リマス、法案ノ其ノ內容ニ付キ
マシテハ、是迄ノ御說明竝ニ衆議院ノ議事
錄等ニ依リマシテ、大體了承致シテ居リマ
ス、私ハ只今大臣ヲ煩ハシマスモノハ、本
法案ニ直接ノ問題デハナイカモ知レマセヌ
ガ、食糧生產確保ノ見地カラ致シマシテ、
只今迄速記錄等ニ見當ラヌト考ヘマスル二
三ノ問題ニ付キマシテ、御意見ヲ伺ヒタイ
ト思ヒマス、併シナガラ私ノ是カラ伺ヒマ
スル點ハ、今ニ始ッタ問題デハアリマセヌ、
從來長イ間屢〓論ゼラレタ問題デアリマスガ
ドウモ今迄其ノ問題ニ對シテノ、徹底的ノ
檢討施設ガナイモノデアルト考ヘテ居リマ
スル點ニ付キマシテ、一二御伺ヲシタイ、
ソレハ普通ノ大臣デゴザイマスルナラバ、
別ニ御尋ヲセヌカモ知レマセヌガ、現大臣
ハ農政ノ權威デアラセラレルカラ、私ハ農
村振興ニ付テノ拔本的ノ御意見ガオアリト
考ヘテ居ル、假令其ノ御意見ガ現代又ハ近
キ將來ニ實現セザルモノデアッテモ、又實現
スルコトガ我ガ國ノ現狀ニ於テ非常ニ困難
ナモノデアッテモ、一ツ高邁ナ御意見ヲ承ッ
テ、將來ニ於テ其ノ實現ヲ期シタイト思ッテ
居ル、從ッテ假令如何ナル御意見ノ御發表ガ
アリマシテモ、私ハ之ヲ政策トシテ御實行
ノ責任ヲ要望スルモノデハナイノデアリマ
スノデ、ドウカ其ノ御積リデ御示ヲ願ヒタ
イト思ヒマス、其ノ拔本的對策、農村振興
ニ對スル拔本的對策ト言ヘバ、ソレデ大抵
分ルノデアリマス、其ノ中ノ一二ノ例ヲ以
テ私ガ申上ゲテ見タイト思ヒマスノハ、現
時ニ於キマシテ一番農村デ困ッテ居リマス
問題ハ、農村振興上ニ付キマシテモ非常ニ
ソレガ障碍トナリマスル點ハ、屢〓論ゼラレ
マス農村勞力不足ノ問題デアリマス、農村
勞力不足ノ原因ガ那邊ニアルカト云フコト
ニ付キマシテハ、之モ色々ノ原因ガアリマセ
ウト思ヒマス、其ノ一ツハ農村ノ人口ノ減少
スルコト、其ノ減少ハ離村者ノ多イコト、而シ
テ都市ニ集中スルコト、御承知ノヤウニ農業
ニ女子ノ勞力ガ最モ必要デアル、ニモ拘ラ
ズ現代ノ文化ガ都市ニ集中シマスル爲ニ、
女子ガ先ヅ農村ヲ去リ、若キ女子デ農村ニ
留ル者ハ甚ダ少イ、結婚條件トシテ、農業ヲ
爲サヌト云フコトヲ條件トスル者ガ多イノデ
アリマス、是ハ全ク僞ラザル事實デアル、從ッテ
男子モ亦已ムヲ得ズ農村ヲ去ッテ都市又ハ工
場、其ノ他俸給生活ニ入ルコトヲ餘儀ナクセ
ラレルノガ多イノデアリマス、其ノ外ニ色々ノ
理由ニ依ッテ、不必要ニ都市ニ趨ル者モ多
イノデアリマス、此ノ都市集中ノ弊ヲ、勢
ヒヲ防遏スルト云フコトガ國家的ニ見マシ
テモ、軍事的ニ見マシテモ、社會的、
衞生的ニ極メテ必要ノコトデアッテ、殊ニ農
村ノ振興、農產物生產確保ノ爲ニ、是ガ非
常ニ大切ナコトデアラウト思フ、先年モ私
ハ之ニ對シテ、農民ガ農村ヲ離レルコトヲ
防遏スル爲ニ、何等カ國家權力ヲ以テ之ヲ
引留メル方法ハナイモノデアルカト云フコ#
トヲ、豫算總會デアッタト思フノデアリマスガ、
伺ッタコトモアルノデアル、今度ノ法案ノ中
ニ關係シマス問題デアリマスルガ、農地開
發營團ガ事業ノ遂行ヲ爲スニハ十六年度ニ
於テ延人員約二千三百萬人、少クトモ二千二
百萬人ヲ要スルト云フコトデアリマス、此
ノ多數ノ人員ヲ一般ニ農業所要ノ人員ノ外
ニ得ルト云フコトハ、現時ノ事情上非常ニ困
難ナコトデアルト思フノデアル、此ノ勞力
ヲ賄ハレル上ニモ、農村人口ノ減少ト云フ
コトガ非常ニ考ヘラルベキコトデハナイカ
ト思フ、ソレハ只今デハ總テノ工業生產ノ
爲ニ工場等ニ於キマシテ、非常ニ農村ニア
ル勞力ヲ吸收スルニ汲々トシテ居ル、ソレ
等ノ農村勞力ノ爭奪戰ト云フモノハ、寶
深刻ヲ極メテ居ル狀態デアル、從ッテ勞賃ノ
上ニ於キマシテモ、非常ニ此ノ頃ハ暴騰ヲ
致シテ居ル、唯表面ノ賃銀バカリデハナイ
其ノ優遇方法等ガ非常ニ手厚クナッテ居ル
爲ニ、自然農村勞力ハ皆都市又ハ工業地帶
ノ方ニ移ッテ參リマス、之ガ自然食糧ノ增產
ノ上ニ於キマシテ重大ナル關係ヲ持ッテ居
ル、色々ノ點ニ於キマシテ其ノ弊ガ今顯著
ニ相成ッテ居ルノデアル、是ハドウシテモ國
土計畫ノ關係モアリマセウ、ソレカラ都市
ニ人口ノ集中スル此ノ弊ノ防遏ノコトモア
リマセウ、色々關係スル所ガ深イト思ヒマ
ス、是ハ唯困ッタモノ因ッタモノデハイケナ
イ、私ハヨク地方ト東京トヲグル〓〓廻ッテ
居リマスガ、東京大阪其ノ他大都市ノ人口ノ
溢レ方ト云フモノハ、田舍ヲ見タ眼ヲ以テス
ルト、非常ニ其ノ感ジガ格別ニ深イ、此ノ
點ヲ一ツ伺ヒタイト思ヒマズ、ソレカラ、
一ツヅヽ伺ヒマシテモ宜シイノデゴザイマ
シスガ、大シタ問題ハゴザイマセヌカラ、續
ケテ伺ッテ置キマセウ、ソレカラ農村ニ農村
人ヲ引留メマス方法トシテ、是ハ衆議院
ノ速記錄ノ中ニモチヨット見マシタガ、農林
大臣ノ御話ニナッテ居ッタ點デアリマシテ、
ドイツ」ノ農地世襲制度ノ問題デアリマス、
是ハ私モ、或程度日本ノ農地ニ付テモ〓究
スル必要ガアルノヂヤナイカト云フコトヲ
考ヘマス、成ル程日本ハ長子相續デ、或點
ハ大體同ジヤウニナッテ居リマスガ、現狀ハ
餘程土地ノ所有者、從來ノ所謂中小ノ地
主デアッタヤウナ人々ガ、最早農業ト云フ
モノニ付テソレ程大切ガラヌヤウニナリマ
シテ、好イ機會ガアレバ土地ヲ手離サウト
云フヤウナ氣分ガ、相當濃厚デアルノデア
リマスルガ、此ノ頃出マシタ農地管理令ダ
ケデハ、ソレハ防ギ得ナイト私ハ思ウテ居
ル、ソレデ斯ウ云フ何カ特殊ナ農地世襲制
度ノ如キニ類シタヤウナ特殊法制ヲ、更に
御檢討ニ相成ル必要ガアルノヂヤナイカト
云フコトヲ考ヘマスルガ、此ノ點ヲ一ツ御
說明ヲ願ヒタイト考ヘマス、ソレカラモウ
一ツハ農地ノ潰地ノ防遏デアリマス、御承
知ノ通リニ農地ノ荒廢ニ歸シマスル原因ハ
色々アリマセウガ、工場其ノ他住宅等ニ使
用スル爲ニ、又ハ使用スル目的ヲ以テ農地
トシテノ利用ヲ止メルト云フコトモ、其ノ
大ナル原因デアリマス、ソレカラ勞力不足
ノ爲ニ、之ヲ地目ヲ變換シテ山林ニスルト
カ、又ハ其ノ變換ノ手續ヲセズシテ荒廢ニ歸
セシメテ居ルトカ云フヤウナ事情ガ多イノ
デアリマス、マア之ニ付キマシテハ土地管
理令ニ依ッテ、此ノ工場等ノ關係ハ多少取締
ガ出來ルヤウデアリマスルガ、農地ノ潰地
ガ內地ニ於キマシテハ相當ニ多イ、其ノ原
因ノ一ツトシテ近頃、此ノ表ニモアリマス
ルガ、工場等ニ使フ爲ニ農地ヲ買取ラル
ルト云フヤウナトコトカラシテ、自然農地
ガ潰レテ行クト云フコトニナッテ居リマ
スルガ、本法ノ中ニモ多少ノ、開發會社
ガスル仕事ノ關係上、漁業權ノ問題ニ付テ
規定ガシテアリマスルガ、開發會社ノ問題
バカリデハアリマセヌ、工場ガナカ〓〓
農地ヲ一纏メニスルコトガ困難デアル爲
ニ、沿岸ノ埋立ヲスルト云フヤウナコトガ
多イノデアリマス、沿岸埋立ハ是ハ國土
ノ擴張デアッテ、一體奬勵スベキコトデア
ルト思フ、然ルニ多クノ沿岸ニ持ッテ行ッテ
皆漁業權ガ附イテ居ル、此ノ漁業權者ノ同
意ヲ得ナケレバ埋立ノ出願ハ出來ナイ、其
ノ漁業權者ト云フモノハ、大抵皆大キナ漁
業權者デナクシテ、遊ビ半分ニ漁業組合ヲ
作ッテ居ッテ、釣竿一本モ持ッテ居ッテ、日曜
カ何カニ遊ビニ行ク爲ニ漁業組合ヲ作ッテ
居ルト云フノガ非常ニ多イ、ソレヲ生業ニ
シテ居ルノデハナイ、然ルニ其ノ埋立ヲ致
シマス爲ニハ、漁業組合ノ同意ヲ得ナケレ
バナラヌ、處ガ其ノ漁業組合ト云フモノハ、
海面一坪ニ付テ非常ニ高イ賠償ノ要求ヲス
ルノデアリマス、ソレデ埋立出願ヲ致シマ
スモノハ、其ノ漁業組合等ト協議ヲスル上
ニヒドク難儀ヲシテ居ル狀態ニ見受ケルノ
デアリマス、權利金ヲ多大ニ出サナケレバナ
ラヌ爲ニ、埋立經費ガ非常ニ嵩マルト云フ
ヤウナコトカラシテ、熟田ヲ買受ケタ方ガ非
常ニ有利デアル、却テ其ノ方ガ宜イト云フ
ノデ、皆熟田ニ手ヲ出ス、是ガ潰地ヲ生ズ
ル大キナ原因ニ近頃ハナッテ居ル、是ハ全體
デハアリマセヌ、地方ニ依ッテ違ヒマス、是
等ハ何カ本法ニ、漁業關係ノ分ヲ規定ハシ
テアリマスガ、アレニ類シタヤウナ規定ハ
此ノ國土擴張ノ爲ニ、沿岸埋立ノ問題ニ付
キマシテ、殊ニ軍需工業ノ如キモノニ付キ
マシテハ、一ツ漁業法ニ關係モアリマス
ガ、速カニ〓究サルベキモノデハナカラ
ウカト云フコトヲ考ヘマス、詰リソレハ工
場地帶等ニ熟田ヲ取ラレルノヲ防グ一ツノ
方法デ、間接ニ農地開發ノ精神ヲ活カス譯
ニナルノダラウト思ヒマス、次ニハ私ノ見
ル所デ農村ニ大切ナモノハ、自作農創設モ
大切デアリマスガ、近頃ノ事情デハ自作者
ガ寧ロ小作ノ方ガ宜イ、有利ダト云フコト
ヲ申シテ居ル、中小地主ト云フモノハ是迄
非常ニ虐待サレテ居ル、農村ノ地主ト云フ
モノハ不勞所得ニ依ッテ飯ヲ食ッテ行ク人間
ダト云ッテ、非常ニ虐待サレテ居ル、成ル程
不在地主ノ方ハ餘リ感心ヲセヌノデアリマ
スガ、農村ニ居ル從來カラノ中小地主ト云
フモノハ、是ハ其ノ農村開發ノ上ニ付テ非
常ニ大切ナ役目ヲ持ッテ居ル、之ガ今ノ農村
文化及ビ農村ノ中心ニナリ、農村ヲシテ品
位アルモノニスルノハ此ノ中小地主デア
ル、此ノ中小地主ト云フモノハ成ル程自分
デ農業ヲスルノヂヤナク、皆小作ニ掛ケル
ノデアル、土地制度ト云フモノニ付テ、根
本的ノ改革ヲスルナラバ格別デアッテ、從來
ノ如キ土地ノ所有權ヲ個人ニ認メルト云フ
コトニナッテ居ル我ガ國ノ地主制度ト云フ
モノガ、矢張リ維持サレテ居リマスル上ハ、
今日ノ農村文化ノ中堅トシテ、又農村知識
階級ノ中心トシテ、農村指導ノ階級者トシ
テ、此ノ中小地主ト云フモノハ、農村ニ於
テハ最モ大切デアルト云フコトヲ私ハ深ク
感ジテ居ル、ソレガ近頃デハ全ク繼子扱ヒ
ニナッテ居ッテ、中小地主ト云フモノノ地位
ハ將ニ潰滅セムトシテ居ル、之ガ農村ノ自
治問題等ニ付キマシテモ、非常ニ惡イ影響
ヲ及シテ居ル、ソレデ此ノ中小地主ノ保護
ト云フコトニ付キマシテ、是ハ從來ノ儘ニ
シテ置イテ宜シイモノデアルカ、相當之ニ
付テハ考ヘテ行クベキモノデアルト思フ、
之ニ付テ一ツ御示ヲ願ヒタイト思フノデア
リマス、ソレカラ最後ニ、要スルニ農村問
題ニ付キマシテハ、私ハ農村及ビ農人ノ公
的私的ニ於ケル尊敬精神ヲ發揮スルコトデ
アラウト思フ、詰リ農業精神ヲ作興スル爲
ニ、農人ヲ尊敬スルト云フ制度、又ハ社會
的ノ制度、斯ウ云フモノガ大切デアッテ、是
ガ明治維新以後申ス迄モナク資本主義ノ旺
盛ナル爲ニ、農人、農村ト云フモノガ閑却
サレタノデアラウト思フノデアリマスガ、
殊ニ農人ト云フモノガ卑シメラレタ風潮
ガ、今日ノ農村衰亡ノ最大原因デアラウト
思ッテ居ル、此ノ農村、農人ヲ尊敬スルコ
ト古ノ如クナルナラバ、私ハ暮年ナラズシ
テ農村ト云フモノハ進步スル、サウシテ農
產物增產ノ目的モ、勞セズシテ成シ得ルト
云フコトニ考ヘルノデアリマシテ、ソレニ
ハ農村農人ノ生活ノ問題、ソレカラ農村文
化ノ問題、色々アリマセウガ、此ノ農人ニ
對シテノ經濟上ノ問題バカリヂヤナイ、
精神的ニ農村ヲ尊敬スル、農人ヲ尊敬ス
ルト云フコトガ最モ大切ナヤウニ考ヘ
テ居ル、何カ新シイサウ云フ方面ノ考ヲ
以テ、拔本的ニ農村振興ヲ策スルニ非ズ
ンバ、單ニ末梢的ト申シマスルカ、少シバ
カリノ問題ガ〓究サレマシテモ、根本ニ觸
レヌ問題デハ、大シテ今日ノ現在ノ農村ヲ
救フニ足ラヌノヂヤナイカト云フコトヲ惧
レルノデアリマス、ソレダケ一ツ伺ヒタイ
ト思ヒマス、ソレカラ此ノ法案ニ付キマシ
テハ私ハサシテ伺フ點モゴザイマセヌガ、
後デ政府委員ニ二三伺ヒマスルガ、甚ダボ
ンヤリシタコトヲ申上ゲテ恐縮デスガ、御
抱負ヲ伺ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=11
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012・石黒忠篤
○國務大臣(石黑忠篤君) 只今內田サンカ
ラ根本ノ問題ニ付キマシテ御尋ガアリマシ
タガ、私ノ考ヲ遠慮ナク言フヤウニト云フ
御話デゴザイマスガ、實ハサウ云フ根本ノ
問題ニ付キマシテ、長イコト農事行政ノ方
ニ關係シテ居リマシタ者デアリマスカラ、
常ニ色々考ヘテハ居ルノデアリマスガ、非
常ニムヅカシイ問題デアリマシテ、十分ニ
斯ウ云フ風ニト云フヤウナ大キナ意見モ持ツ
テ居ルノデハナイノデアリマス、何時モ心
配シテ居リナガラ、ハッキリシタ結論ヲ得ラ
レナイト云フ狀態ニ居ルコトハ、甚ダ自分ナ
ガラ遺憾ニ思ッテ居リマス、從ッテ御答ヘ申
上ゲルコトモ、到底御滿足ヲ戴ク譯ニハ行
カヌト思ヒマス、第一ノ問題ノ農民ノ都市
集中ノ勢ヒヲ防グト云フコト、何等カ國家
權力ヲ以テスルト云フヤウナコトヲシナケ
レバ、到底之ヲ防ゲヌノヂヤナイカ、從ッテ
之ガ農村ヲ振興スルト云フコトノ、大キナ
障リニナッテ居ルノヂヤナイカト云フ點ノ
御尋ノヤウニ思ヒマス、誠ニ私モ同感デゴ
ザイマス、只今農村ガ御示ノヤウナ狀態ニ
ナッテ居リマスルコトヲ防ギマスルノニハ、
經濟上バカリデハナク、色々ノ方法ヲ講ジ
ナクチヤナラナイノデ、後ニ御示ニナリマ
シタヤウニ、色々ノ方面ニ付テ考ヘナケレ
バナラヌ、併シ都市集中防遏ト云フダケヲ
考ヘマシテモ、國家的ニ色々ナ施策ヲ講ジ
ナケレバ、自然ノ儘デ放任シテ置キマスト、
今ノヤウナコトデ何處迄モ離村ノ情勢、都
市集中ノ情勢ト云フモノハ續イテ行クノヂ
ヤナイカト考ヘルノデアリマス、ソレニ對
シマシテ國トシテドウ云フ風ニスルカト云
フコトハ、御指摘中ニアリマシタ國土計畫
ト云フモノデ考ヘテ行クコトガ、極メテ必
要ダト思フノデアリマス、只今迄都市計畫
ト云フモノハ、御承知ノ通リ十數年前カラ
ゴザイマシタ、是ハ寧ロ現代都市ノ設備ヲ
十分ニ備へ得ルヤウニ、我ガ國現在ノ都市
ヲ改善シテ行ク計畫ヲ立テルト云フコトガ、
主ナヤウデアッタノデアリマス、其ノ觀點カ
ラ一ツ上ニ突キ拔ケマシテ、サウシテ國ト
シテ國土ヲドウ云フ風ニ、國土保安及ビ利
用ノ上ニ於テドウ云フ風ニシテ行クノガ宜
イカト云フ、各方面ニ亙ル計畫、同時ニ人
口ノ配分ト云フヤウナコトヲ考ヘマシテ、
都市農村ノ關係ヲ國家的見地カラ見テ、色
色計畫ヲ立テルト云フコトガ、國土計畫ニ付
テ大事ナコトダラウト思フノデアリマス、
而シテソレ等ノ物及ビ人ノ間ノ連絡ヲ付ケ
マスル交通ノ問題ヲ考ヘル、他面一國トシ
テノ廣イ意味ノ國防ノ關係上、ソレヲドウ
云フ風ニヤッテ行ッタラ宜イカト云フコトヲ
更ニ附加ヘテ、心ヲ込メマシテ案ヲ完備ス
ルト云フコトニ至ラナケレバナラヌト思フ
ノデアリマス、サウ云フ國家的見地カラ致
シマシテ、都市、農村ト云フモノヲ考ヘル
ト云フ所ニ一步進メマスル必要ガ今生ジテ
來テ居ルコトハ、一面都市集中ト云フコト
ガ、殊ニ我ガ國ニ於テハ無統制ニ、度ヲ
過ギテ自然ノ儘ニ放置サレテ居ルコトダト
思ヒマス、是ハ都市自體ノシッカリシタ本
當ノ發達ニハナラナイノデハナイか、都市
自體ノ方カラモ問題ヲ起シテモ、宜イノデハ
ナイカト云フ風ニ考ヘラレテ參ッタノデアリ
マス、殊ニ國防關係カラ致シマシテモ、最近
ノ防空ノ事情ナドカラ考へマシテ、今迄ノ
我ガ國ノ都市ト云フモノガ餘程引締ッテ「ソ
リッドㄴナモノニナラナケレバナラヌヤウナ
必要ガ生ジテ參ッタノデアリマス、サウ云フコ
トヲ考ヘナケレバイケナイト云フ風ニナッ
テ來テ居リマス、サウシテソレガ同時ニ工
業工場ノ問題ト聯關ヲ致シマシテ、國內人
口配分ヲモウ少シ偏倚的デナク、地方分散
的ニヤッテ行クト云フコトニナッテ行クト思フ
ノデアリマス、其ノ際ニ現レマスコトハ、
地方ニ都會ト工場トガ分散ヲサレルト云フ
コトニナラウト思フ、是ハ地方ノ都會、又
ハ地方ノ工業ノ地方的中心ニ農村人口ガ集
リマスト云フコトニナレバ、矢張リ其處ニ
離村ノ現象ハ出ルノデアリマス、ソレニ致
シマシテ餘程、數ノ少イ大都會ニ無統制ニ
吸込マレルノトハ餘程事情ガ違ッテ來テ、健
全ニナルノデハナカラウカト考ヘテ居リマ
ス、併シソレニ致シマシテモ、例ヘバ地方
工業分散ト云フヤリ方ニ付キマシテモ、餘
程工場ガ分散ヲシテ、其ノ爲ニ地方ノ農村
衞生狀態ガ非常ニ惡クナルトカ、或ハ農村
ノ氣分ガ非常ニ搔キ亂サレルコトノナイヤ
ウニ、ソレニ寧ロ工場ノ分散デナクシテ、
工業ノ分散ト云フ形デ行クヤウニアリタイ
ト云フ風ナ、マア色々細カイ註文ハ附イテ
來ルコトト思ヒマスガ、餘程サウ云フ點ニ
關シマシテ、從來ノ有リノ儘ノ都會ノ無統
制ノ膨脹ト云フモノニ委シテ居ック時ヨリ
千、餘程良クナルコトト思ヒマス、又サウ
云フ風ニスルト云フコトニ國家權力ヲ用ヒ
テ行カナケレバナラヌト思フ、廣イ意味ノ
國防上ノ關係カラ致シマシテモ、サウ云フ
コトヲスルコトハ極メテ必要ナ、緊要ナコ
トニ只今ナッテ來テ居ルヤウニ思ヒマスカ
ラ、是ハ從來ト變リマシテ、或程度國ノ權
力ヲ以テ實現サルベキコトト考ヘテ居ルノ
デアリマス、其ノ外ニ於キマシテ國ガ積極
的ニ都市集中ヲ防止シ、農村人口ノ引留ト
シテヤル方法ト致シマシテハ、次ニ御指摘
ニナリマシタ世襲農場ノコトナドハ、是ハ
引留策トシテ或程度積極的ニ考ヘテ宜イ問
題ヂヤナイカト仰セニナッタノデアリマス
ガ、私モ是モ一ツノ積極策ダト考ヘルノデ
アリマス、世襲農場ノ問題ニ付テ少シ話ス
ヤウニト云フコトデアリマスガ、是ハ御承
知ノ通リニ、、二十數年前ニ我ガ國デモ一
遍問題ニナッタコトデゴザイマシテ、此ノ當
時ニハ所謂家產法設定ト云フ名目デ、斯ウ
云フコトガ問題ニナッタコトガアル、其ノ當
時外國ニ於キマシテモ、新シイ立法ト致シ
マシテ色々考究サレタノデアリマス、「スイ
ス」デアリマストカ、「フランス」デアリマ
ストカ云フ所デハ、新シイ立法ヲ見タノデ
アリマス、是ヨリ前ニ「アメリカ」デモ行ハ
レタ州ガアルノデアリマス、「スラヴ」ノ民
族ノ中ニモ、非常ニ古クカラ此ノ制度ガ特
殊ノ發達ヲシテ居ッタ所ガアルト云フコト
モ聞イテ居リマス、唯其ノ當時行ハレマシ
タ直後ノ事情デハ、ヤッテハ見タモノノ、相
續制度ガ多子均分ノ相續デアル所ガ多イノ
下、ソレカラモウ一ツニハ農民ガ土地ヲ持
ツト云フコトノ大半ノ實益ハ、ソレヲ元ト
致シマシテ、金融ノ便宜ガ得ラレルト云フ
ヤウナコトニナッテ居ルノデアリマス、而モ
家產制度ニ依ッテ金融ノ便ヲ得ル爲ニ普通
行フ抵當ニ入レルト云フコトハ、是ハ禁止
サレテ居リマス、家產ヲ永久ニ持チ傳ヘル
爲ニサウ云フコトハ禁止ヲシテ、不融通ニ
ナッテ居ルト云フコトニナル爲ニ、ソレデハ
土地ノ所有ヲシテモ、實際ノ實益ト云フモノ
ガ得ラレナイ、成ル程長ク持チ傳ヘルト云
フコトニハシテ居ルケレドモ、經營運用ノ
上ニ於テ普通考ヘテ居ルヤウナ實益ガナイ
ト云フヤウナコトカラ、餘リ行ハレナカッタ
ト云フコトヲ聞イテ居ッタノデアリマス、
ドウモ其ノ時カラ我ガ國ノ事情ヲ考ヘルト
云フト、一子相續、長子相續ヲ全國ニ行ッテ
Rp.極メテ僅カナ地方ニ末子相續ノ特
殊ノ慣行ガアルヤウデアリマスガ、ソレニ
シテモ一子相續、「ヨーロッパ」アタリハ全ク
サウ云フコトノナイ方ガ多イ、均分相續ガ
通常デアリマス、一子相續ハ「ドイツ」アタリ
デハ「ライン」州、「ライン·プロヴインス」ア
タリガアリマスケレドモ、其ノ以外ノ所ニ
ハナイト云フコトデアリマスガ、此ノ邊ノ
事情アタリカラ考ヘマスト、非常ニ第一ノ
障碍ガナイヤウ思ヒマス、日本ノ農民トシ
テハ、先祖カラノ土地ト云フモノヲ、チヤ
ント傳ヘテ行クコトガ誠ニ望マシイ狀態デ
アルノデアリマスガ、極ク合ッテ居ルヤウニ
思フ、併シ第二點ノ土地ノ所有ト云フコト
ニ付テモ、實益······之ヲ金ノ必要ナ時ニカ
タニ入レテ、融通ヲ付ケテ貰フト云フコト
ヲ禁止スルト云フコトニナリマスト、是八
非常ニ困ルト云フコトニナリマスコトハ
同ジヤウナ實情ガアルノヂヤナイカト思ヒ
さく、土地ノ永代賣買ノ禁止ト云ッタヤウ
ナコトハ、實際ハ兎モ角ト致シマシテ、或
程度法制上强行サレテ居ルノデアッテ、併シ
之ヲカタニ入レテ金融ヲヤルト云フコトガ、
其ノ半面ニ於テ相當ニ行ハレテ從來モ來テ
居ッタ、ソレノ特殊ノ禁止ノ時代ニモ行ハレ
テ來テ居ッタノデアリマス、ソレガイケナイ
ト云フコトニナルト、土地ノ所有ノ實益ヲ
得ラレナクナッテ、目的ノ大半ヲ失スルト云
フコトニナルト云フ缺點ハ、ドウシテモ是
ハ我ガ國デモ受ケナケレバナラヌコトダト
思フノデアリマス、其ノ點ガ何カ特別ナ家
產ニ致シ、或ハ家產ト申シマスカ、新シイ
言葉デハ世襲農場ト譯シテ居リマスガ、最
近ノ考デ言ヘバ世襲農場ニ致シテ特別ノ、
外ノ物ト違フ金融施設、機構ヲ考ヘテヤル
ニ非ズンバ、此ノ點ハ救濟ガ出來ナイ、ソ
レデドウ云フ法制ニシ、機構ニシテ行クカト
云フ問題ガ、此ノ制度ヲ採入レルノニ付キ
マシテハ、ドウシテモ解決シナケレバナラ
ヌ問題ト思フノデアリマス、ソレガ出來マ
スレバ、是ハ非常ニ我ガ國ノナニニハ合ヒ
マシタ制度ダト思フノデアリマス、殊ニ長
年ノ關係デ、マダ沿革的ニ日本デハ土地ノ
所有ト云フコトガ、社會的ニ非常ニ重キヲ
成シテ居ル觀念ガアルノデアリマス、金融
ノ問題サヘ解決ガ附ケバ、誠ニ適シタ施設
ヂヤナカラウカト云フ風ニ考ヘルノデアリ
マス、而シテ若シソレガ擧ゲラレテ實現ヲ
スルト云フ場合ニ於キマシテハ、私一個ノ
考ト致シマシテハ、其ノ家產ト申シマスカ、
世襲農場ト申シマスカ、其ノモノノ經營ハ、
必ズ家族ヲ中心トシタ自作農業ヲヤルト云
フコトガ、必要條件デナクチヤナラヌト云
フ風ニ思フノデアリマス、此ノ點ガ後ニ第
四點トシテ御述ニナリマシタ在村ノ中小地
主ト云フモノガ自ラ農業ハ營マナイケレド
モ、農村ノ指導者トシテ從來ハ大切デアッタ
シ、現在モ亦或程度ノ地位ヲ保ッテ居リ、非
常ニ必要ナル役割ヲ演ジテ居ルト思フト云
フ御尋ガアリマシテ、之ノ保護ト云フコト
ノ必要ハナイカト云フ御尋ガアリマシタ點
ニ多少觸レルト思ヒマスガ、私ハ是ハ耕作
ヲシナイ地主デアッテハナラヌト思フノデ
アリマス、サウ云フ主義ノ下ニ、新シク斯
ウ云フ制度ヲ速カニ〓究ヲ致シ、採ルベキ
モノナリト云フ結講ガ出タラバ、實施ヲス
ルト云フコトガ都市集中ノ勢ヒヲ相當ニ防
グ積極政策トシテ考ヘラレルモノダト思ヒ
マスル點ハ、全ク內田サンノ御意見ト同意
見デアリマス、其ノ外離村ノ防止ト云フコ
トノ爲ニハ、御話ノヤウニ農業ヲ重ンジル
ト云フコトヲ世間デモヤッテヤリ、ソレト
同時ニ農村民自體ガソレヲ左樣ニ信ジルヤ
ウナ氣持ニ引向ケテ行ク必要ガ非常ニアル
ト思フ、或意味ニ於キマシテ農民精神ト云
フモノヲハッキリサセルコトダト思フノデ
アリマス、サウシテ都會地ノ娛樂ト云フヤ
ウナモノヲ農村ニ送ッテヤッテ引ッ著ケテ
モ、ナカ〓〓多クノモノハソグハナイモノガ
多イト思フ、或ハ寧ロ都會ニ走ル因ヲ成ス
ヤウナ效果ニ働クヤウナコトサヘモアルノ
ヂヤナイカト私ハ考ヘマス、ソレデ農業自
體ニ付テノ特殊ナ點、都會生活者ガ味ヘナ
イヤウナ特殊ノ點ガ斯ウ云フ所ニアルノダ
ト云フコトヲ强ク認識サセテ、ソレヲ樂シ
ミ滿足ヲスルト云フ氣持ヲ持ツ人間ガ、農
村ニ殘ッテ居ルト云フコトガ必要ナンヂヤ
ナイカト思フノデアリマス、其ノ意味ニ於
キマシテ、色々每日從事シテ居ル農山村ノ
仕事ニ付テノ興味及ビ自然觀察ト云ッタヤ
ウナコトニ目ヲ覺マサセテ、其ノ方ニ於ケ
ル興味ヲ持タセル、或ハ自分ノ作ッタ物ヲ
自分デ以テ段々良ク致シテ參ッテ、金ニ依ル
生活ノ向上デナクシテ、自己ノ生產物ニ依
ル生活ノ改善向上ト云フコトヲ圖ラセルヤ
ウニスルコトモ宜イノデハナカラウカト云
フ風ニ思ヒマス、「ドイツ」ノ農民ヤ又農業
經濟ノ指導ノ學者ナドモ、自己ノ農場カラ
穫レル物ニ依ル自給自足、進ンデハ生活ノ
改善向上ト云フコトニ相當實際ニモ努力ヲ
シテ居ルヤウデアリマスルシ、强調シテ居
ルヤウデアリマス、北海道アタリノ開拓者
ガ何モナシニ入ッタ人アタリデ、本當ノ篤
農ト見ラレルヤウナ人ハ相當農場モ擴張シ
テ行クト同時ニ、自己ノ生活モ開墾地ノ山
ノ中デ、自己生活生產物デ以テドン〓〓高
メテ行ッテ居ルヤウナ實例ガ多々アルノデ
アリマス、サウ云フ人ハ非常ニ落著イテ居
ルノデアリマス、道會議員ニナルトカ云ッタ
ヤウナ政治ノ方面ニ走ラナイ、ズット落著イ
テ居ル、老人ナドニサウ云フ人ヲ能ク見掛
ケルノデアリマス、サウ云フ氣持ヲ多クノ
人ニ持タセルヤウニ仕向ケテ行クト云フコ
トガ、非常ニ必要ヂヤナイカト考ヘマス、
國ノ方カラノ働キ掛ケト致シマシテハ之
ヲドウ云フ風ニ現ハシテ宜イカチヨット分
リマセヌガ、農民自體ヲシテサウ云フ風ニ
目覺メサセルヤウニシテ行クト云フコトガ
必要ヂヤナイカト考ヘテ居リマス、ソレカ
ラ第三點ノ潰地、荒廢地ノ件デアリマスガ、
是ハ段々御手許ニ配リマシタ表デ御覽戴ク
ヤウニ、相當ニアルノデアリマス、サウ云
フ事情ニ對シマシテ、是ハドウシテモ復舊
シナクチヤナラヌノデ、近年之ヲ開墾助成
ノ中ニ採入レマシテ、サウ云フヤウナ所ヲ
復舊スル爲、開墾助成ニ依ッテヤルト云フコ
トニ致シマシテ、十五年度ニ於キマシテハ
約一萬九千町步、サウ云フ潰地、荒廢地ト
云ッタヤウナモノヲ再ビ農地ニ取返シマシ
タ、十六年度ニ於キマシテハ只今ノ豫定デ
ハ七千五百町步程サウ云フモノヲ開墾助成
ニ依ッテ復舊ヲ致シタイト云フ考ヲ持ッテ居
ルノデアリマス、マアソレト最近出マシタ
臨時農地等ノ管理令ニ依リマシテ出來ルダ
ケ努メタイト思フノデアリマスゝ開發營團
ノ事業ノ爲ニ漁業權ノコトナドモ書イテア
ルノデアリマスガ、是ハ御指摘ノヤウニ、
工場ガ敷地ヲ埋立地ニ求メルト云フヤウナ
場合ニモ、不當ナ要求ヲ漁業權、殊ニ遊漁、
樂シミノ爲ノ漁業ト云ッタヤウナモノガ漁
業組合ノ形ヲ取ッテ要求ヲスルト云ッタヤウ
ナコトハ、出來ルダケナイヤウニ努力ヲ
致シタイト考ヘテ居ルノデアリマス、併シ
御承知ノ通リニ、沿岸漁業ハズット到ル
處ニ從來行ハレテ居ッタノデアリマスガ、
最近漁獲ガ少クナッタト云フヤウナコト
カラ、段々漁業專門ノ生業ヲヤッテ行ク
譯ニ行カナイノデ、外ノコトヲヤリナガラ
漁業ヲヤッテ行クト云フ片手間ニナッテシ
マッタヤウナ事實ガ沿革的ニ出來タヤウナ
所ニ於キマシテハ、尙相當漁業ノ收入ト云
フモノガ家ノ收入ノ半分ノ手助ケヲシテ居
ルヤウナ所ガアルノデアリマス、サウ云フ
ヤウナ所ハ或程度ノ漁業權ノ賠償ハシテヤ
ラナケレバナラヌト思フノデアリマス、併
シソレ等ノ爲ニ國土擴張ノ大キナ目的ガ著
シク禍ヒサレルヤウナコトハナイヤウニ考
ヘナケレバナラヌト思フノデアリマシテ、
ソレガ又一面水田ノ潰地ニナルノヲ防グト
云フコトニハ相成ラウカト思フノデアリマ
ス、開墾ノ方デ之ヲヤリマシタ最近ノ大キ
ナ例ハ、巨椋池ノ國營開墾ノ際ニ、アノ巨
椋池ノ中ニハ漁業ヲヤッテ居リマシタ人達
ガ相當ニアルノデアリマス、ソレ等ハ話合
ヲ十分ニ付ケマシテ、サウシテ巨椋池ノ開
墾ヲヤッテ、水田ヲ作リマシタモノヲ漁業權
者ニ或話合ノ下ニ分與スルト云フヤウナコ
トデ、半農半漁デアリマシタモノガ、池ノ
漁場ガナクナルト同時ニ、純然タル農業者
ニ還ッテ、サウシテ肥料ナクシテ數年ハ十分
ノ收穫ヲ得ラレル土地ヲ其處ニ獲得ガ出來
タト云フヤウナ割合ニ能ク解決ヲシテ居リ
マス、埋立ノ場合ニ對シマシテ、サウ云
フヤウナ方面ヲ考ヘテ、計畫ノ中ニ入レル
コトガ漁業權ノ對象ナドニハ非常ニ必要ナ
コトヂヤナカラウカト考ヘテ居ルノデアリ
マス、ソレカラ先程、チヨット關係ガアルノ
デ······、自作農創定ト云フモノモ宜シイガ、
今日ハ小作農ガ有利ダト言フヤウナ者ガア
ル、サウ云フ時代ニナッテ來テ居ルシ、不在
地主ト云フモノハ是ハ宜クナイト思フケレ
ドモ、在村ノ中地主ト云フモノハ大事ナモ
ノダト云フ御指摘デゴザイマス、私モ從來ノ
農村事情カラ見マシテ、在村地主ト云フモ
ノハ、大キイ地主モ亦中位ノ地主モ相當ニ
從來ハ農村ノ文化ノ中心デアリ、又指導者
的地位ヲ以テ、色々村ノ自治ノ世話ヲヤッテ
居ルト云フ貢獻ハ、是ハ認メナケレバナラ
ヌト思ヒマス、而モソレ等ノ人々ガ儒〓ノ
〓育ヲ受ケテ誠ニ高イ〓養ヲ持ッタ農村人
トシテハ是等ノ階級ノ人々ガ確カニ文化ノ
中心ヲ成シテ居ルカト思フ、唯段々ト時
代ガ變ッテ參リマシテ、中小ノ地主ト云フモ
ノハ、ドウモ今ノ農業經濟ノ上カラ、從來
ノヤウニ之ヲ以テ農村ニ於ケル比較的高イ
〓養ヲ受ケルヤウナ子弟ノ〓育モヤッテ生
活モ高イ程度ノ生活ヲ營ンデ行クト云フコ
トハ、非常ニ困難ニナッテ來テ居ルヤウニ思
フ、ソレヲドウ云フ風ニシテ維持シテヤル
カト云フ問題ハ、是ハナカ〓〓ムツカシイ
問題デアリマシテ、時代ガ非常ニ變ッテ來テ
居ルヤウニ思フ、而シテ農作ノ關係ニ於キ
マシテ之ヲドウスルカ、或ハ國家ノ機關ト
シテ農業ノ指導ノ專任者トシテ之ヲ認メ
ルカト云フト、ドウモ今ノ國ノ組織デハサ
ウ云フ譯ニハ行カナイ、或程度村々ノ農業
指導員ト云フモノヲ、其ノ村ニ於ケル農業
〓育ヲ受ケタ人ヲ、其ノ在所ノ指導員ニス
ルト云フコトガ宜イノデアリマス、併シ是
モナカ〓〓年齡ノ工合ダノ家柄ノ工合デウ
マク行カナイ場合ガ多々アルノデアリマシ
テ、總テヲサウ云フヤウニシテシマフト云
フ譯ニ行カナイ、假ニサウシマシテモ、
二ノ人ガソレデサウ云フ風ニ變ッテ參ルノ
ニ、爾餘ノ人ハドウカト云フト、矢張リ困
難ナ地位ニ立ツヤウニ思フ、我ガ國ノ農地ノ
分配ト云フモノハ外國ノヤウナ、非常ニ大キ
ナ地主サント、ソレカラソレヲ借リテヤル大キ
ナ借地農等デ以テ出來上ッテ居リ、農業勞働ハ
賃銀勞働ト云ッタヤウナモノデ組合ハサレテ居
ルノデハナイノデアリマシテ、割合ニ中小地主ガ
多イ、是ハ土地ノ分配ノ上カラ言フト、不
動產ノ分配ガ偏倚シテ居ラナイト云フコ
カラ言フト大變宜シイノデアリマスケレド
モ、其ノ土地所有者ガ土地ノ借料デ以テ生
活ヲ立テ、子弟ヲ〓育シテ行クト云フコト
ニナリマスト、是ハ非常ニ小サナ土地ノ
上デ、地主、小作ニ家族ガ生活ヲ致シテ行
カナクチヤナラヌト云フコトハ非常ナ無理
ガ生ズルヤウニ思フ、其ノ意味ニ於キマシ
テ、土地ノ分配ハ結構デアルガ、更ニ其ノ
分配ヲ細カクシタ人ハ······持ッテ居ル人達
ガ直接農業ヲヤッテ吳レルト云フコトニナッ
テ居ルコトガ必要ダト思フ、此ノ點ガドウ
シテモ自作農ト云フモノヲ中心ニシテ考ヘ
ナケレバナラヌ、唯サウ致シマスト、御指
摘ノヤウニ、自作農ト云フモノハ忙シイノ
デアリマスカラ、公共ノコトヲヤルトカ
指導ニ時ヲ取ラレルト云フコトニナルト、
自ラ家業ガ疎ニナル、家業ヲシッカリヤッテ
居ルト云フトサウ云フ暇ガナイ、斯ウ云フ
コトニナルノデアリマス、ソコガナカノ
ムツカシイ點デアリマスガ、或程度粒ノ大
キナ自作農ニナリ多少ノ土地ハ場合ニ依ッ
テハ人ニ貸スト云ッタヤウナ程度ニナッテ參ッ
テ行クノガ將來ノ中心トナルベキコトヂヤ
ナカラウカ、若シ中小地主ノ人々ニシテ、
農村ノ將來ニ對シテ中心ニナッテ貰フコト
ガ出來ルヤウナ人ガアレバ、ソレ等ハ全ク
手作ヲシナイト云フヤウナ狀態デナクシテ、
或程度進ンデ大キナ農業モヤッテ行クト云
フコトニ將來向ッテ行クコトガ必要ヂヤナ
イカ、サウスルト、今貸付ケテ居ル小作地
ヲ上ゲナケレバナラヌト云フ事情ニナルノ
デアリマス、ソレ等ノ點ニ關シマシテハ、
開拓移住ト云ッタヤウナコトト結ビ合セマ
シテ、適當ナ整理ヲ地主、小作人間ニ於テ
スルト云フコトガ必要ニナッテ來ルヤウニ
思フノデアリマス、大體ソンナコトヲ考慮
ニ入レマシテ、先程モ申上ゲマシタ世襲農
場ヲ作ルノナラバ、將來トシマシテハ矢張
リ家族勞働ヲ中心トシテ、サウシテ主人ハ
必ズ農業經營ヲヤルト云フコトノ新ラシイ
農村中心ノ農場主ガ出來ルト云フ點デ、新
制度ヲ取上ゲテヤッテ行クト云フコトニナ
ルノガ宜イノヂヤナイカト私ハ考ヘテ居リ
マス、ソレカラ農業及農人ヲ尊敬スルト云
フコトヲ、公的私的ニ大キニ主張スル必要
ガアリヤセヌカト云フ御話デアリマスガ、
是ハ非常ニ私共モ御同感デアリマス、明治
以後ノ資本主義ノ爲ニ閑却サレタト云フコ
トハアリマスガ、併シドノ國デモ農業ノ重
要性ト云フモノハ國家ヲ成ス以上認メラレ
テ居ルノデ、又其ノ特殊性モ外ノ產業トハ
非常ニ違ッテ居ルト云フコト、サウシテ近代
ノ資本主義的產業發達ニハドチラカト云フ
ト、ソグハナイ點ガ割合ニ多イ仕事デアル
ト云フコト、新ラシイ時代ニハ寧ロ國家目
的トピッタリト副ウテ發達ヲスル農業ト云
フモノノヤリ方ト云フモノガ、外ノ產業ニ
於テモ參考セラレ、顧ミラレテ宜イノヂヤ
ナイカト云フヤウナ點ヲ指摘シテ居ル人々
ガ各國ニ現レテ來テ居ルヤウニ思フ、從來
モ是等ハアリマシタ、「アメリカ」ノ太平洋鐵道
ノ社長ヲシテ居リマシタ、「ゼームス·ヒル」
ノ如キハ鐵道王ト稱セラレナガラ、非常ニ
農業ト云フモノニ重キヲ置イテ米國ノ將來
ト云フモノハ農業ヲモット周密ニ、集約的ニ
進ムト云フコトニ一ニ懸ッテアル、サウシ
テ國民ハ總テ農業ト云フモノヲ重ク考ヘナ
ケレバイカヌ、斯ウ云フコトヲ申シテ居
ル、聞ク所ニ依ルト自分ノアノ大鐵道會社
ノ社員ノ採用ニモ、農業ノ經驗ノアッタ者
ヲ必ズ採用スルト云フ方針デアルト云フコ
トモ聞イテ居リマス、、色々論說等モ出テ
居ル、譯シタモノモゴザイマスカラ、ーソ
御覽ヲ戴キタイト思ヒマス、最近ノ米
國ノ副大統領ニナリマシタ「ウォーレス」ノ
如キモ農務大臣ヲヤッテ居リマシタ時ニ初
メニ書キマシタ「ニュー·フロンテヤ」ト云
フ本ガアリマスガ、ソレニハ御說ノヤウニ
農業ヲ尊敬スル、ソレカラ農業ト云フモノ
ガ資本主義的ノ方針ヨリモ餘程國家的色彩
ノ强イモノデアルカラ、之ヲ新シイ「ルール」
トシテ總テノ產業家ハ考ヲ變ヘテヤッテ行
カナケレバイカヌ、サウ云フ風ニ進ムト云
フコトガ米國ノ所謂「ニュー·ディール」ノ目
標ダト云フコトヲ極度ニ唱ヘテ來テ居ルヤ
ウナ人モ出テ來テ居ル、サウ云フヤウナ意
味デ農業ノ重要性ト云フモノハ、世界ガ斯
ウ云フ狀況ニナッテ國々ヤ各民族ガソレゾ
レ自分ノ所ヲ固メテ行カナケレバナラヌ
ト云フ氣持ニナッタ場合ニ再ビ顧ミラレテ
參ッテ來テ居ルヤウニ私ハ思ヒマス、日本ト
シテモ此ノ點ヲ非常ニ反省ヲシナケレバナ
ラヌ時機ニ逢著シテ居ルト思ヒマスノデ、
幸ニサウ云フ點ニ御氣付ニナッテ御指摘戴
キマシタノデアリマスカラ、將來ト致シマ
シテハソレヲドウ云フコトデ公的私的ニ現
シテ行クカト云フコトヲ十分注意ヲ致シマ
シテ、目的ヲ達成スルヤウニ努メタイ、斯
ウ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=12
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013・内田重成
○內田重成君 只今私ノ伺ヒマシタボンヤ
リシタ問題ニ對シマシテ、極メテ周到ナル御
高見ヲ承リマシテ有難ウゴザイマス、謹ン
デ承リマシタ、私ハ只今伺ヒマシタ點ニ對
シマシテ再ビ伺ハウトハ考ヘマセヌ、唯
點本案ニ關係ノアル問題デアリマスガ、是
ハ大臣ノ御答辯ヲ伺ハナクトモ宜シイノデ
ゴザイマスルガ、序ニドナタカ政府委員カ
ラ御答へ下サッテモ宜シウゴザイマス、此ノ
潰レ地ノ開墾ガ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=13
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014・黒木三次
○委員長(伯爵黑木三次君) チヨット御言
葉中甚ダ失禮デゴザイマスガ、大臣ハ少シ
御急ギノヤウデアリマスカラ、他ニモ大臣
ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=14
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015・内田重成
○內田重成君 是ハ大臣デナクテモ宜シウ
ゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=15
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016・黒木三次
○委員長(伯爵黑木三次君) ソレデハ御話
置キ下サイマシテ、答辯ハ後ニ廻シテ宜シ
ウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=16
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017・松村眞一郎
○松村眞一郞君 私ハ大臣ノ居ル所デ伺ッ
テ置カナケレバ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=17
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018・黒木三次
○委員長(伯爵黑木三次君) チヨット御待
チ下サイ、ソレデハ順序ガ大分狂ヒマスカ
ラ、デハ內田君御發言下サイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=18
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019・内田重成
○內田重成君 私ハ極ク簡單デス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=19
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020・黒木三次
○委員長(伯爵黑木三次君) 御答辯ハ後カ
ラ致スト云フコトニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=20
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021・内田重成
○內田重成君 只今農地潰レ地開發ガ最モ
重要ナモノデゴザイマスガ、農地開發······
此ノ營團ノ開發スル土地ハ五十町步以上ト
云フコトニナッテ居ル、五十町步以下ハ普通
開墾助成法等ヲ適用シテヤルト云フコトデ
アリマス、實際地方ヲズット見テ步キマスト、
箇々ノ潰レ地ガ非常ニ多イ、其ノ潰レ地ガ
二三年續キマスト、遂ニハ皆ガソレヲ植林
ヲスル、桐ヲ植ヱルトカ、櫟ヲ植ヱルトカ
云フヤウナコトヲシテ居ルヤウデアリマス、
ソレ等ガ集團的ノモノデハナイ、從ッテアレ
等ヲ皆原ニ復舊スルト云フコトガ極ク重要
ナ問題ダラウト思フ、之ニ對シマシテ開墾
助成法ノ適用ヲナシ得ベキ場合デモ四割ノ
補助ト云フコトニナル、此ノ開發營團ノナ
スノニハ六割ト云フコトデアル、ソコニ今
二割違ヒマスガ、現在ニ於キマシテハ色々
ナモノガ高イノデアリマス、勞力モ物資モ
皆高イノデ、復舊工事ニモ相當費用ガ掛ル
ノデアリマス、此ノ潰レ地囘復ガ非常ニ重要
ナ生產ノ增加ニ關係ヲ持ツノデアラウト思
フノデアリマスガ、誠ニ私ハ土地ガ惜シイト
思ッテ之ヲ見ルノデアリマシテ、是ハ矢張ル開
發營團ニ渡サレマスル六割ノ補助金ト同樣
ナ風ニ、此ノ開墾助成法ノ規定モ、是ハ此ノ
際一ツ變ヘルト云フ譯ニハ參ラヌモノデアリ
マスカ、ソレハ成ル程此ノ開發營團ノナス開
墾ト、ソレカラ潰レ地復舊トハ難易ノ差ハア
リマスケレドモ、是ハ割合デ參リマス、經費
ノ割合デ參リマスカラ、難易ノ問題ニハサウ
影響ハナイノデハナイカト云フ考ヲ持ツノ
デアリマス、其ノ點ヲ一ツ、ソレカラモウ一
點ハ是ハモウ明瞭カモ知レマセヌガ、チヨツ
ト分リマセヌノハ、此ノ開發營團ノ活動ノ
區域ト申シマスノハ、是ハ內地ニノミ適用
サレル問題デアリマスカ、又ハ外地、卽チ
朝鮮、臺灣等ニモ適用サレマスカ、又進ンデ
滿洲ニモ是ハ其ノ活動區域ハ及ブモノデア
リマスカ、其ノ點ヲ私一ツ不明デアリマスガ、
御說明ヲ願ヒタイ、是ダケ私質問致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=21
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022・黒木三次
○委員長(伯爵黑木三次君) チヨット速記
ヲ止メテ下サイ
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=22
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023・黒木三次
○委員長(伯爵黑木三次君) 速記ヲ始メテ
下サイ、暫時休憩致シマシテ、午後一時半
ヨリ又再開致シマス
午前十一時三十九分休憩
午後一時三十四分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=23
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024・黒木三次
○委員長(伯爵黑木三次君) ソレデハ是ヨ
リ午前ニ引續イテ開會致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=24
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025・岩村一木
○男爵岩村一木君 此ノ第六十八條ニ「本
法施行ノ期日ハ各規定ニ付勅令ヲ以テ之ヲ
定ム」斯ウ云フコトガアリマスガ、此ノ勅
令ノコトハ書イテアリマセヌシ、ソレカラ
又或規定々々ニ依シテ施行ノ期日ガ違フト
思ヒマスガ、若シカ此ノ農地開發法ガ成立
致シマシタナラバ、政府トシテハ何條ト何
條ハ大體何年何月頃實施スルト云フ御考デ
アルカ、其ノコトヲ伺ヒイタト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=25
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026・岸良一
○政府委員(岸良一君) 只今御尋ノ施行ノ
期日デゴザイマスルガ、是ハ當初ニ於キマシ
テハ議會ノ方モ三月末日迄アル、サウ云フコ
トヲ豫想致シマシタノデ、從來ヤッテ居リマス
ル開墾助成ノ關係ハ成ルベク早クヤル、營團
ノ關係ハ準備ヲ整ヘル必要ガアルノデ、期日
ヲ延バシタイト斯ウ云フ風ニヤッテ參リタイ
ト思ッテ居リマシタ處ガ、今囘ノヤウナ情勢
デ三月カラ休會ニナリマスレバ、準備モ早ク
濟ミマスカラ成ルベク此ノ施行ハ四月〓々
ニヤリタイト斯ウ云フ風ニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=26
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027・岩村一木
○男爵岩村一木君 サウ致シマスト、是一
皆大體一〓ニ四月匆々ニ實施爲サルト云フ
御積リナンデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=27
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028・岸良一
○政府委員(岸良一君) 御話ノ通リデアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=28
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029・黒木三次
○委員長(伯爵黑木三次君) 午前ノ內田君
ノ事務當局ヘノ御質問ノ答辯ヲ只今政府當
局カラシタイト申出ガゴザイマシタカラ許
可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=29
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030・岸良一
○政府委員(岸良一君) 內田サンノ御尋ニ
ナリマシタ第一點ハ、潰レ地ニ對スル代地
增成ノ事業ニ對スル助成ガ只今四割、ソレ
ヲ現在ノ實情デアルカラ營團ト同ジヤウニ
六割程度ニスルコトハ出來ナイカ、斯ウ云
フヤウナ御尋デゴザイマシタ、此ノ助成ノ
率ヲ變ヘテ居リマスコトニ付キマシテハ、
大臣カラモ御話ノアリマシタヤウニ營團ノ
ヤル仕事ハ區域モ廣大デアリ、仕事モ多少
之ニ伴ッテ困難ナモノデアリマスノデ、率ヲ
六割ニシ、ソレカラ一般ノ開懇ノ方ニ付キ
マシテハ地區モ小サク、比較的利便ノ所ニ
モアルデアラウ、サウシテ勞力ノ調整等モ
附近ヨリ容易ニ得ラレルダラウ、色々ナ條
件ガ比較的良イカラ、サウ云フヤウナ譯デ
率ヲ變ヘテ居ル譯デアリマス、又從來ノ四
割ニ依ッテモ仕事ヲ相當進メテ居ルノデゴザ
イマスカラ、ソコニ區別ヲ致シテ仕事ヲ進
メルコトニ致シテ居ルノデアリマス、是等
ニ對シマシテハ御同樣ナ要望ガ衆議院デゴ
ザイマシタ、ソレニ對シマシテ私共サウ云
フヤウナ御事情デアルナラバ、重ネテ之ヲ
十分ニ調ベテ、サウシテ愼重ニ考慮シタイ
斯ウ云フコトヲ述ベテアルノデアリマス、
同樣ニ私モ考ヘテ居リマシテ善處シタイト、
斯ウ云フ風ニ考ヘテ居リマス、ソレカラ第
二點ノ營團ノ活動ノ區域デゴザイマスガ、
是ハ內地ニ限ッテ居ル譯デゴザイマス、此ノ
營團ノ滿洲、外地ニ出テ仕事ヲスルト云フ
コトハアリマセヌ、北海道ハ矢張リ事業ヲ
施行スル對象ニナッテ居リマス、是ハ勿論昨
日モ御質問ノアリマシタヤウニ、北海道ノ
拓殖計畫ニ付テハ十分考ヘテ打合セヲシテ
ヤルヤウニ仕事ヲ進メテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=30
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031・黒木三次
○委員長(伯爵黑木三次君) ソレデハ、暫
時休憩ヲ致シマス
午後一時四十一分休憩
午後四時四十八分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=31
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032・黒木三次
○委員長(伯爵黑木三次君) ソレデハ是ヨ
リ開會致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=32
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033・佐藤助九郎
○佐藤助九郞君 今囘政府ハ將來ノ食糧自
給政策ヲ解決セムガ爲ニ本營團ヲ發案サレ
タノデアリマスガ、私ハ本案ニハ別ニ反對
スル者デハアリマセヌ、唯本營團ノ事業遂
行ニ當リマシテ、勞働力ノ問題、肥料ノ問
題、水利ノ問題、又之ニ伴ヒマシテ工事ノ資
材ノ問題等デ容易ナラヌ問題ト考ヘテ居ル
ノデアリマス、殊ニ現在ノ未開發地ハ農民ノ
開拓シ切ッタ殘リモノデアリマシテ、結局豐
富低廉ヲ目指シテ立ッタ發送電會社ノ如キ
狸ノ皮算用ニナリハシマイカト案ジテ居ル
次第デアリマスガ、遲レ馳セナガラ、折角
オヤリ願ヒタイト考ヘテ居ル次第デアリマ
ス、併シナガラ私ノ只今申上ゲテ御意見ヲ
承リタイコトハ、當面ノ差迫ッタ實際問題ト
シテ、今年ノ作付ヲ前ニ控ヘマシテ、今年
ハ如何ナル方法デ增產サレルカ、如何ナル
助成ニ依ッテ增產サレルカト云フコトト、米
價ノ問題デアリマス、此ノ問題ハ自ラ表裏
一體ノ關係ヲ持ツモノデアリマシテ、度々
各委員カラ繰返サレテ居ルノデアリマスガ、
農村民ニ對シテハ非常時局ダ、滅私奉公ダ、
公益優先ダト大聲疾呼シテ見テモ、自ラ赤
字ヲ出シテ、又借金ヲ承知ノ上デ米ヲ作ル
人ハ極メテ少イノデアリマス、先般二瓶委
員カラモ地方農村ノ狀況ヲ詳細ニ報〓サレ
マシタ通リニ、農村ノ現狀ハ事變以來勞力
ノ拂底ハ豫想外デアリマシテ、現在田畑ノ
耕作力ニサヘモ不足ヲ來シテ居ル狀況デア
リマス、又農村ノ子弟ハ安イ米ヲ作ルヨリ
モ軍需工場、軍需工場ヘト農村ヲ棄テヽ行
クヤウナ狀態デアリマシテ、農村トシテハ
此ノ勞力ノ移出ヲ防グ爲ニ、何時モ職業紹
介所ト村トノ間ニ軋轢ヲ起シテ居ル狀態デ
アリマス、而モ玆ニ最モ憂フベキ現象ハ此
ノ勞力不足ノ結果、手數ノ掛カル安イ米ヲ
作ルヨリ手數ノ掛ラヌ高イ雜穀ヲ主力ニシ
テ行ク傾向ガ現ハレテ居ルノデアリマシテ、
生產者ト致シマシテハ是ハ理ノ當然デア
ルト考ヘルノデアリマス、之ヲ放ッテ置キマ
スト、米麥ノ生產ハ巨額ノ減產ノ一路ヲ辿
ルコトハ明カデアリマシテ、吾々農村ノ經
營者ハ此ノ「ヂレンマ」ニ陷ッテ苦ンデ居ル譯
デアリマス、試ミニ帝國農會ノ調査ニ依ル
前三ヶ年、一石當リノ生產費ト最高價格ヲ
對照シテ見マスルト、昭和十二年度ハ生產
費ガ二十五圓八十七錢、最高價格ガ三十四
圓二十錢、昭和十三年度ハ生產費ガ二十八
圓四十五錢、最高價格ガ三十五圓二十錢、
昭和十四年度ハ生產費ガ三十一圓八十三
錢最高價格ガ四十三圓、何レモ是ハ最高
價格ニ賣ッタ場合デアリマシテ、生產者ノ收
益ハ七圓乃至八圓、高クテ十圓ノ見當ニナッ
テ居ルノデアリマス、元來農民ハ今迄商人
側ニドウシテモ欺サレ勝デアリマシテ、斯
ノ如ク高値ニ賣ル場合ハ絕對ニナイノデア
リマス、何時モ底値デ買占メラレテ、大體
ニ於テ一石六、七圓モ取レレバ精々デアリマ
シテ、之ヲ御覽下サレバ農家收入ハ極メテ
貧弱デアルコトハ御察シ出來ルト思ヒマス、
昭和十五年度ノ產米ニ付テハ何レカラモ發表
ガナイノデアリマスガ、私ハ約五段步ノ試
作田ヲ持ッテ居リマシテ、先祖代々之ヲ耕シ
テ居リマス、此ノ收穫カラ割出シテ見マス
ルト、十五年度ノ生產費ハ一石當リ約三十
三圓二十二錢、我ガ縣デハ時價ガ四十圓七
十六錢ガ公定價格デアリマスカラ······差引
キ七圓五十四錢ノ收益ガアル譯デアリマス、
但是ハ金利、公課ハ計算シテアリマセヌシ、
私ハ馬二頭飼ッテ居リマスルノデ、殆ド金
肥ヲ用ヒズ、自給肥料ヲ以テヤッテ居ルノデ
アリマシテ、恐ラク何人ヨリモ生產費ハ安イ
ト思ッテ居リマス、併シナガラ先程申上ゲマシ
タ通リノ金利及ビ稅金ヲ算入致シマスト、勿
論私ノ耕作田モ赤字デアリマス、算用ニ合
ハヌコトハハッキリシテ居リマス、斯ウ云フ
風ナ現狀デアリマシテ、何ト言ッテモ米ハ
現在ノ物價中ノ最モ安イモノデアルト
私ハ考ヘルノデアリマス、併シナガラ
米價ハ上ゲラレヌト仰シヤイマス、肥料モ
是ヨリ安クハ出來ナイト仰シヤイマス、剩
サヘ容レ物ハ只デアルト云フノデアリマス、
結局農業生產者ハ全ク浮ブ所ガナイノデア
リマシテ、斯樣ニ申シマスト、政府ハ助成
金ヲヤッテ居ル、補助金ヲヤッテ居ルト仰シ
ヤルカモ知レマセヌガ、昨年度ノ農村關係
ノ補助金ヲ色々合計シテ見マスルト、大體
六千圓程度デアッタト思フノデアリマスル
ガ、之ガ所謂最尖端ノ農村ニ頂戴シテ如何
ナル形ニ使用サレテ居ルカト云フコトヲ、
ニ、三例ヲ以チマシテ其ノ御參考ニ供シタ
イト思ヒマス、約二百五十町步程度ノ寒村
デアリマスルガ、昨年度一箇年ノ政府カラ
頂戴シタ補助金ヲ明細ニ申上ゲマスルト、
早稻作付奬勵金四百九十八圓、水稻多收穫
品種購入補助金十圓、水稻ノ防蟲防除助成
金八圓、水稻耕種改善奬勵金五圓、水稻耕
種改善競技會ノ補助金ガ三十圓、水稻改善
督勵委員設置費助成金ガ五十圓、部落團體
活動施設助成金百三十五圓、生產計畫指導
及肥料消費調整指導員設置費助成金百八十
圓自給肥料增產及施設改善奬勵金二百七
十圓、麥病害防除奬勵金十圓、米穀增產獎
勵金四百五十九圓、水稻苗代助成金ガ四十
圓米穀管理施設補助金ガ百八十圓、是ト
同ジ共同作業ニ對シテ百五十圓デアリマ
ス、大麥ノ增產施設奬勵金ガ三十八圓、合
計致シマスト、二千五十四圓ニナリマス、
斯ウ云フ風ナ我ガ縣ノ狀態デアリマスガ、
之ヲ一般ニ調ベテ見テモ多少ノ相違ハアリ
マスルガ、殆ド同樣デアリマス、又他ノ縣
ノ靜岡ニ付テ調ベテ見マシタ、是モ御參考
迄ニ一應申上ゲマス、米穀增產補助金百八
十四圓、同樣デアリマス、部落團體活動促
進施設補助金ガ七十八圓、小麥增產補助金
三十圓、自給肥料增產施設改善普及促進補
助金ガ百九十圓、農山漁村勤勞奉仕施設補
助金三十圓、食糧增產資源開發施設補助金
千八十圓、臨時飼源開發施設補助金ガ四百
圓、大麥及稞麥增產助成金十四圓、藷增產
補助金二十圓、重要農林水產物助成金ガ六
十五圓、自給共同桑苗圃助成金三十五圓、
桑園害蟲防除事業助成金三圓五十錢、稻熱
病防除奬勵金七十二圓、螟蟲防除奬勵金
十七圓三十五錢、多收穫品種普及奬勵金二
十四圓、大麥稞麥改善實踐奬勵金二十二圓、
大麥稞麥病害防除奬勵金三圓八十三錢、合
計致シマスト二千二百六十圓見當デアリマ
ス、之ヲ色々同樣ナ村落ニ比較シテ見テモ、先
ヅサウ大シタ開キガナイノデアリマシテ、
之ヲ一段當リノ補助金ニ直シテ見マスト、
先ヅ一圓内外、我ガ縣デハ一段當リ二石八
斗ノ收穫ト見マスト、一石當リ三十五錢程
度ノ補助金トナリマシテ、全ク雀ノ淚同樣
デアリマス、而モ此ノ煩雜ナ項目デ分配サ
レルノデアリマスカラ、其ノ繁文縟禮ハ、
地方自治體ノ勞力不足ノ折柄全ク有難迷惑
ナ狀態デアリマス、先日坊城男爵カラ御話
ガアリマシタガ、第二豫備金カラ支出サレ
ル三千萬圓ノ使途モ斯カル形式デ地方ニ下
サルナラバ是亦矢張リ有難迷惑デアリマス、
私ハ此ノ三千萬圓ノ助成金モ餘程考ヘテ御
出シニナラヌト、結局大枚ノ金ガ無意味ニ
終リハシナイカト考へルノデアリマシテ、此
ノ點此處デハッキリ如何ナル方法ニ依ッテ、
如何ナル方便ニ依ッテ之ヲ御出シニナルカ
ト云フコトヲ御言明願ヒタヒイト斯ウ思フノ
デアリマス、此ノ助成金ニ付テハ私ハ希望
ヲ持ッテ居リマス、出來ルコトナラバ一纏メ
ニシテ村落ニ下サイマスレバ、此ノ頂戴シ
タ金ハ各々其ノ地方ニ卽應シマシテ之ヲ有
效適切ニ使ッテ增產ニ邁進スルノデアリマ
スルカラシテ、ドウカ助成金ナドハ斯ウ云フ
細カイ項目デポツリノ〓ト御出シニナラズ
二、一纏メニシテ地方團體ニ交付サレレバ
非常ニ結構ト考ヘルノデアリマス、更之
モウ一ツ之ニ關聯シテ御伺ヒシタイノデ
アリマスルガ、米價ト容レ物ノ問題デア
リマス、是モ度々衆議院ナドデモ問題ニ
ナッテ居ッタノデアリマスガ、今日容レ物
共ニ價格ヲ付ケラレテ居ルノハ米ダケデ
アリマス、容レ物ノ俵ハ我ガ縣デハ石當
リ素俵デ八十七錢五厘、輸出用外俵及檢査
料共デ七十五錢デアリマシテ、合計一圓
六十二錢五厘、之ガ我ガ縣ノ大體ノ公定値
デアリマスルガ、實際調査シテ見マスルト、
少クトモ二圓以上掛ッテ居リマス、今日藁
工品ハ軍部方面カラ半强制的ニ繩、莚、叺
ヲ欲シイト言ッテ參リマス、此ノ半面ニ於
テ農林省ハ容レ物ハ只デアルト仰セラレル
ノデアリマスルガ、私ハ此ノ際米價ヲ引上
ゲルコトガ出來ナケレバ、政府ノ買上米ノ
三千萬石ナリ、三千五百萬石ナリノ容レ物
ダケヲ生產者ノ農民ニ補助出來ナイカト云
フコトヲ特ニ强調シテ申上ゲル次第デアリ
マイク、尙此ノ外色々細カイ資料モアリマシ
テ申上ゲタイコトモアリマスルガ、此ノ二、
三點ニ付テ御伺ヲ致シマシテ私ノ質問ヲ終
ルコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=33
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034・石黒忠篤
○國務大臣(石黑忠篤君) 私只今參リマシ
タノデ御質問ノ全部ヲ伺ッテ居リマセヌガ、
米價ガ引合ハナイカラ、之ガ引上ゲラレナ
イトスルナラバ何カ助成ノ方法ハナイカ、
其ノ助成ノ方法モ餘リ複雜多岐デアッテハ
イケナイト云フコトデゴザイマス、政府ト
致シマシテハ米價ノ問題ニ關シマシテハ、
物價ノ中デ非常ニ重大ナ問題デアリ、廣ク
關係ヲ持チマスル方面ガ多イノデアリマス
カラ、愼重ニ考ヘナケレバナラヌコトハ勿
論デアリマス、其ノ以外ニ於キマシテ政府
ト致シマシテハ、斯樣ナ重大ナモノニ付テ
ハ一應決メマシテ國民ニ公表致シマシタモ
ノハ或程度之ヲ補助ヲシテ行カナケレバナ
ラヌコトハ勿論デアリマス、此ノ點ニ關シ
マシテ十五年產米ニ於キマシテハ、前內閣
ニ於キマシテ早場米ノ生產ヲ奬勵致シマス
ル爲ニ特別ノ奬動金ヲ交付スルト云フ約束
ヲ致シタノデアリマス、之ニ對シマシテハ
確カ一圓六十錢デアッタト思ヒマスガ、其ノ
中一圓ヲ旣ニ交付致シタノデアリマスガ、
六十錢ガ交付ヲシテ無イノデアリマス、此
ノ約束ハ是ハ實行シナケレバナリマセヌカ
ラ、現內閣ニ於キマシテモ其ノ約束ヲ實行
スルガ爲ニ、政府ハ十五年度追加豫算ニ六
十錢分ヲ計上致シマシテ御協賛ヲ仰イダ次
第デアリマス、此ノコトハ十五年產米ニ對
シマシテ早場米ノ特別取扱ヲスルト云フコ
トノ約束デアリマスカラ、ヤッタノデアリマ
ス併シ其ノ半面ニ於キマシテ早場米ニア
ラザル米ニ付キマシテハ從來ノ通リノ米價
ヲ以チマシテ、又特別ノ生產ノ補助ハ致サ
さい、斯ウ云フコトガ約束サレテ居ル譯デ
アリマス、其ノ以外ノ米ニ關シマシテハ別
ニ生產ノ補助ハシナイケレドモ、早場米ニ
對シテハ特別ノ補助ヲスル、斯ウ云フコトデ
來テ居リマス、故ニ此ノ方針ト云フモノハ
現內閣ト致シマシテモ之ヲ繼承致シマシテ、
今日迄私ハ十五年產米ニ付キマシテノ米價
ノ値上トカ、或ハ特別ノ生產奬勵金ヲ追加
交付ヲスルト云フヤウナコトハ致ス意思ハ
ナイト云フコトヲ明確ニ申上ゲテ居ル譯デ
アリマス、而シテ將來ノ米價ニ關シマシテ
ドウスルカ、或ハ將來ノ米ノ生產ニ對シマ
シテ奬勵金ヲ交付シタラ宜イヂヤナイカ、
斯ウ云フヤウナ御說ハ色々承ッテ居リマス、
又米ノ價格ガ他ノ農產物又ハ他ノ物價ト均
衡ヲ失シテ居ルト云フヤウナコトモ屢〓承ッ
テ居ルノデアリマス、將來ノ問題ニ關シマ
シテハソレ等ノ御說モ十分ニ參酌致シマシ
テ、關係スル所ガ廣イノデアリマスカラ、
愼重考慮ノ上デ善處ヲ致シタイ、斯ウ云フ
考ヲ持ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=34
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035・野村益三
○子爵野村益三君 マダ大臣ハ宜シイノデ
ゴザイマスカ、チヨット十分間程度··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=35
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036・石黒忠篤
○國務大臣(石黑忠篤君) 木材統制法ガ始
リマス迄ノ間··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=36
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037・佐藤助九郎
○佐藤助九郞君 チヨット只今ノ質問ニ關
聯シテ御伺ヒシタイノデスガ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=37
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038・黒木三次
○委員長(伯爵黑木三次君) ソレデハ佐藤
君、簡單ニ御願ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=38
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039・佐藤助九郎
○佐藤助九郞君 只今米價ノ問題ニ付テ大
臣カラ御答辯ヲ承リマシタガ、三千萬圓ノ
第二豫備金ノ支出ノ件ハ如何ナル方法デ助
成サレルカト云フコトヲ、差支ナイ限リ御
答辯願ヘレバ大變結構デアリマス、ソレカ
ラモウ一ツ只今容レ物ノコトヲ申上ゲマシ
タガ、今日容レ物ト共ニ價格ヲ附ケラレテ
居ルノハ農民ダケデアリマス、若シモ容レ
物ノ代金ヲ政府ノ買上米ニ對シテ御出シ下
サラヌナラバ、一步讓ッテ政府ノ買上米ノ容
レ物ダケハ直チニ生產者ニ御返シ願ヒタイ
ノデス、若シモ之ガ出來レバ、或ハ良イモ
ノハ其ノ儘二度使ヒ出來マスシ、惡イモノ
ハ堆肥ト云フヤウニ色々應用スル途ガ澤山
アルノデアリマシテ、何シロ今日ハ資材拂
底ノ折柄デモアリ、農村ハ困リ果テテ居ル
ノデアリマス、此ノ二點ヲ御伺ヒシタイト
思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=39
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040・石黒忠篤
○國務大臣(石黑忠篤君) 三千萬圓ノ金ヲ
農村ノ方面ニ增產獎勵ノ爲ニ交付ヲスルト
云フコトハ、三千萬圓程度ト云フコトデア
リマシテ、衆議院ノ御希望ニ依リマシテ申
込ガアリマシタ三ッノ點ヲ主トシテ考慮ノ中
ニ入レマシテ、三千萬圓程度ニ於テドウ云
フ風ニ實現ヲ致スカト云フコトハ只今財務
當局ト相談中デアリマシテ、マダ決マッテ居
リマセヌ、左樣御承知ヲ願ヒタイト思ヒマ
ス、ソレカラ容レ物ノ儀ニ付キマシテハ是
モ屢〓、同フ所デ、今日モウ有ラユルモノガ容
レ物ニ付テハ困ッテ居ルコトハ御述ベノ通リ
デアリマス、先日モ申上ゲマシタヤウニ外
米ヲ入レテ來ルノニモ麻袋ヲ供給シナイト
云フコトデ困ラサレテ居ルト云フ狀態デア
リマス、コチラカラ袋ヲ持ッテ行ッテ買ッテ
來ルト云フ狀態デアリマス、從ヒマシテ空
俵モ可ナリ昔ト違ヒマシテ大變方々デ又引ッ
張リ凧ニナッテ居ルヤウナ譯デアリマス、農
村ニ於ケル資財ノ不足、殊ニハ勞力ヲ省略
致シマスル關係ニ於キマシテモ、空袋、空
俵ヲ返シテ貰ヒタイト云フ御要求ハ、可ナ
リ具體的ノ實情ニ卽シタ御要望ト思フノデ
アリマス、是等ヲドウ云フ風ニ致シマスカ、
將來愼重ニ考慮致シマシテ、成ルベク都合
ノ好イヤウニ取計ヒタイト考ヘテ居リマス
ルガ、何分多量ノ物ヲ斯ク輸送ヲ致シテ消
費地ニ持ッテ來ナケレバナラヌノデ、其ノ間
ノ關係ガナカ〓〓容易ニ行カナイヤウニ思
ヒマスノデ、御要望ハ十分ニ考慮致シマシ
テ將來善處致シタイト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=40
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041・黒木三次
○委員長.(伯爵黑木三次君) 速記ヲ止メ
テ·····
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=41
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042・黒木三次
○委員長(伯爵黑木三次君) 速記ヲ始メテ
下サイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=42
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043・野村益三
○子爵野村益三君 私ハ久シ振リデ農業ニ
關スル特別委員ニ當ッテ、開始以來皆樣方ノ
御論ヲ傾聽シテ來タノデアリマス、是ト共
ニ色々ノ資料ヲ戴イテ益〓此ノ農業問題、農
政問題ニ關スル興味ヲ新タニシタ、併シナ
ガラ御尋ネスル事柄ハ大分根本的ノ問題デ、
且大キイ問題ナンデアリマス、併シナガラ
本計畫ニ無論關聯シマス、見ヤウニ依ッテハ
農村問題或ハ全國土ノ問題、斯ウ云フヤウ
ニナル、尙委員ノ方々カラ、或方カラ御述
ニナッタコトニ付テモ、多少私申シ添ヘテ置
キタイコトモアル、從ッテ隨分其ノ埒ガ、範
圍ガ大キクナルダラウト思フ、ソレハ一ツ
御迷惑ナガラ御含ヲ願ッテサウシテ進行ヲ願
ヒタイ、勿論餘リ埒ガ大キクナッテ是ハド
ウモ工合ガ惡イト云フ風ニ御感ジニナリマ
シタラ、ドウゾ委員長カラ御遠慮ナク仰シ
ヤッテ戴キタイト思ヒマス、御尋ネシタイコ
トハ都合三點アル、一ツハ斯ウ云フコトデ
アル、農村勞力ノ減退ト滿洲拓殖計畫ト云
フノガ第一問ナノデアリマス、ソレデ農村
ノ勞力ノ不足ト云フコト是ハ掩フベカラザ
ル事實、本計畫ヲ實行スルニ付キマシテモ
勞力ヲ如何ニスルカト云フコトハ深甚ノ考
慮ヲ要スル譯デアリマス、當局ハ所謂餘剩
勞力ガアル、ソレヲ借リテ本計畫ヲ達成ス
ル、斯ウ云フ御言葉デアリマスケレドモ、
併シ此ノ農村ニ於ケル勞力ノ不足ト云フコ
トハ、大體論ニ於テ掩フベカラザル事柄ナ
ンデアリマス、其處ニ我々ノオ互ノ心配モ
アル、他方此ノ滿洲開拓ノ如何ニ重要デア
ルカ、之ガ國策デアルト云フコトハ是ハ今
更言フ迄モナイ、處デ戴イタ資料ニ依ッテ
檢討シテ見マスト云フト、今迄ノ滿洲ノ拓
殖詰リ入植者ノ數ト云フモノハ計畫通リ
ニ行ッテ居ラナイ、元々拓務省デ立ッタ計畫
ハ御承知ノ通リ二十箇年ニ百萬戶ヲ入レル
ト云フノデアリマスガ、ソレハマア是正サレ
テ、サウシテ近クハ五年間ニ十萬戶入レル
ト云フコトニ査定サレテ居ル、二三日前ニ
拓務大臣ハ衆議院ノ特別委員會デ、決算委
員會デシタカ、言ハレタコトニハ、拓殖計
畫ハ十分ニ進行シテ居ルノダ、現ニ十六年
度ノ入植者ヲ合算スルト、豫定ノ如ク行ッテ
居ルノダ、卽チ十萬人以上ニナルノデアリ
マス、斯ウ云フ御說明デアッタ、併シ私ハ是
ハ果シテサウデアルカドウカ分ラナイ、兎
ニモ、角ニモ斯ウ云フ際ニ農村ガ非常ニ勞力ノ
缺乏シテ居ル其ノ結果、本計畫ノ進行ニ付
テモ多大ノ關心ヲ寄セラレテ居ルト云フ時
ニ、前ノ計畫通リニ滿洲拓殖ヲ實行スルト
云フコトハ其處ニ無理ガアルノヂヤナイ
カ、ト言ッテ只今申スヤウニ滿洲ノ拓殖計畫
ト云フモノハ國策ナンダカラ、之ヲ打切ル
トカ、或ハ非常ニ之ヲ縮小スルト云フコト
ハ出來ナイ、詰リサウ云フ狀態ニアリマス
カラ、我々トシテ考ヘルト、此處デ次ノ五
年位ニハ農林當局、拓務當局トガ能ク協調
サレテ此處ニ又一ツノ案ヲ立テラレテ、其
ノ案ヲ立テラレタラソレヲ實行スル、今迄
ノヤウニ案ヲ立ッタケレドモ、其ノ實ハ實行
サレナイト云フヤウナ不安ノコトデナシ
ニ、案ヲ立テヽ、然ルベク案ヲ立テヽ、立テ
タ案ハ實行スル、斯ウ云フコトガ必要デア
ル、ソレニハ農林當局ト拓務當局ガ須ラク
能ク御話合ヲ願ヒ、其ノ御話合ト云フモノ
ガ付イテ居ルノデアルカト云フコトヲ伺ヒ
タイ、ソレカラソレニ關聯シテ又申添ヘテ
置キタイコトハ此ノ間モ或御方カラ南洋ニ
於ケル拓殖民ハ餘リ望ガナイノヂヤナイカ
ト云フヤウナ御話ガアリマシタ、ソレカラ
此ノ現在ハ南洋方面デハ日本人モ澤山行ッテ
繁榮振リヲ示シテ居ルガ、之ガ幾多ノゼ
ネレーション」ヲ經タ時ニ一體ドウ云フ人
ガ出來ルカト云フ點ニ付テ心配ノヤウナコ
トガアリマシタ、ソレニ付テ多少ノ自分ノ
意見ヲ述ベテ見タイト思フ、南洋拓殖ノ、
南洋ニ向フ所ノ拓殖ノ事ハ、結論ヲ申セバ
私ハ非常ニ有望ダト思ッテ居ル、今日外南洋
デアレバ、此ノ「ダバオ」ノ隆盛ナル樣、「ア
ポ」ノ山麓カラ山腹ニ掛ケテ溪ヲ渡リ峰ヲ
渡ッテノアノ盛觀ト云フモノヲ見レバ、「ダバ
オ」ノ街ハ二萬ニ垂ントスル邦人ニ依ッテ打
建テラレタ事實ヲ見レバ、是ハモウ單ニ「プ
ランテーション」ト云フダケデナイ、其ノ宜
シキヲ得レバ拓殖民ガ相當入リ得ルト云フ
確信ガ付クノデアリマス、ソレカラ今ノ內
南洋ノ狀態ハ、此ノ前下村君ガ仰シヤッタ通
リ實ニ比類ナキ繁盛振リヲ示シタモノデ
アル、私ガ行ッタ時ニモ實ハ島民ノ人口減少
ト云フコトニ付テ危惧致シタガ、成程離島、
其ノ方面デハ例ヘバ「サムソン」トカ、「トコ
ベ」ト云フヤウナ所デハ、人ロガ減少ノ傾ヲ
見テ居ル、併シナガラ大體ヲ大觀シテ見ル
下、島民デモ私ハ少クトモ著シイ減少ハナ
イ、之ヲ北方ノ「アイヌ」民族ノ悲慘ノ現狀
ニ比ベテ見レバ、サウ云フヤウナ現象ハ南
ノ方デハ認メラレナイ、斯ウ思フ、此處デ
其ノ科學的ノ根據デアル、此ノ問題ハ御承
知カト思ヒマスガ、我々ハ一體南洋ニ向
クベク出來テ居ル、而シテ「ヨーロッパ」人、
「アメリカ」人ハ南洋ニ行クベカラザルヤウ
ニ出來テ居ル、處ガ日本人ハ身體ガ例ヘバ
眼モ黑イ、眼ト云フモノハ非常ニ日光ニ
耐ヘラレルダケノ構造ヲ持ッテ居ル、處ガ西
洋人ハサウデナイ、「アメリカ」人ハサウデ
ナイ、ソレカラ我々ハ非常ニ良イ「メラニ
ン」ガアル、「メラニン」ハ日光ヲ受ケレバ
ソレニ對應シテ、「メラニン」色素ト云フモ
ノハ日光ニ對スルトソレガ一ツノ膜ニナル、
斯ウ云フモノハ日本人ト「ヨーロッパ」人、
「アメリカ」人トハ非常ナ違ヒナンダ、我々
ハソレニ富ンデ居ル、優勢ナ地位ヲ占メテ
居ル、モウ一ツ食ヒ物ノ問題、我々ハソン
ナニ肉ヲ餘計食フ必要ハナイ、「バター」ヲ
嘗メル必要ハナイ、處ガ歐米人ハサウデナ
イ、暑イ處ヘ行ッテモ相當量ノ肉食ヲ、詰リ
動物質ト蛋白質ヲ攝ラナケレバナラヌ、日
本人ハサウデナイ、魚ヲ食ッテ居レバ宜イ、
サウ云フ元カラノ特徵ヲ日本人ハ具ヘテ居
ル、我々ハ南方ニ向ッテ移植スルダケノ茲ニ
一ツノ資格ヲ生レナガラニシテ得テ居ル、
ソレカラ最モ賴リニナル、內外ニ認メテ貰
ハナケレバナラヌ事ハ、我ガ國ノ南方統治
ノ有樣、御承知ノ通リ「ヨーロッパ」人、「ア
メリカ」人ノ南方統治ノ本體ハ言フ迄モナ
ク搾取主義デアル、處ガ日本ハサウデナイ、
南洋ノ統治ヲ御覽ニナッテモ決シテ搾取主義
デナクテ、隨分低等ノ文化ニアッタ島民ハ、
今ハ〓育モ受ケラレル、相當ナ文化ノ露ニ
潤ヒ得ル、而シテ鼓腹撃攘シテ此ノ昭和ノ
御代ヲ壽イデ居ル、サウ云フヤウナコトハ
外ノ方デハ見ラレナイ、ソレデ科學上ノ基
礎、統治上ノ特別ニ優レタ方法ニ依ッテ益〓
我ガ國ト云フモノハ南方ニ進出シ得ル、
又我ガ日本人ハ南方ニ於テ繁榮ヲ來スコト
ガ出來ル、若シ相當ナ地積ヲ、土地ヲ與ヘ
サヘスレバ此處デ繁榮スル、併シナガラ御
承知ノヤウニ南ノ方デハ我々ノ進出ヲ阻ン
デ居ル、ソレダカラ相當ノ地積サヘ得レバ
十分ニ拓殖移民モ行ハレ得ル、又繁榮モス
ル、斯ウ云フコトヲ我々ハ考ヘテ居ル、ソ
レデハ其ノ土地ハドウダト云ヒマスト今
ハナイ、我々ガ二十何年モ前ニ往ッタ時
ニハ蘭領印度總督ノ話デハ、東經百三十度
以東ナラドウデモナサイト云フヤウナコト
迄言ッテ居ッタ、卽チ「ニユーギニア」ト云フヤ
ウナモノヲ勝手ニ······言葉ヲ換ヘテ言フト
勝手ニ開拓ナサイト言ハムバカリノ狀態デ
アッタ、併シナガラ土地ヲ得ルト云フコトハ
今ハナカ〓〓ムツカシイ、政治上ノ手腕ニ
依ッテ〓ノ入國ノ制限ヲ撤廢セシムルト云
フコトモ一ツノ方法デアリマスケレドモ、
今現ニ滿洲拓殖公司ガ滿洲デヤッテ居ルヤ
ウナ方法デ、近キ將來ノ問題トシテ適當
ノ土地ヲ獲得スルトスレバ拓殖移民ガ出來
ル、ソレガ暑イ所デ困ルト云フヤウナコト
ヲ當リ前ノ人ガ話シマスケレドモ、同ジ南
洋ニ行ッテモ大キナ島デ、サウシテ高原地帶
ガアル、其ノ高原地帶ニハ菊ノ花ガ咲クト
云フヤウナコトデアル、而モ其ノ地積ニハ
一千萬町步ノ耕地ガアル、日本ノ今ノ全農
民ヲソックリ持ッテ行ッテモ其處ニ當嵌メ得
ルト云フヤウナ土地サヘ備ヘラレテ居ル、
ソレダカラ私ハ決シテ土地柄ト雖モ望ミガ
ナイノデナイ、望ミガアル、若シモット進メ
バ買ッテモ宜イト思フ、嘗テ我々ノ先輩ハ樺
太ヲ買ハウトシタ、値段ノ點デ此ノ纏マリ
ガ附カナカッタ、値段ノ點モアリマスケレド
モ、事變ガ突發シタ爲ニ到頭其ノ交渉ガ出
來ナカッタ、我々ノ方デモ七、八年前ニハ
3コニューギニア」買收論サヘアッタ、ダガ私ハ
或方法ノ下ニ適當ナ値デ相當ナ地積ヲ買ッ
テ、サウシテ其處ニ南方ノ拓殖ヲ實現セシ
ムルト云フコトモ出來得ルト思フ、是ハ
マア私ノ考ダケヲ申上ゲル、ソコデ今ノ數
度ノ「ゼネレーション」ヲ經タラ南方ニ移住
シタ國民ハドウナルカト云フ問題デアリマ
スガ、私ハ斯ウ云フコトダケハ言ヘルト思
フ、ソレハ我々トハ多少違フ人ガ出來ルニ
シテモ、外ノ國ニ比シテハ最モ優秀ナル住
民ガ出來ル、斯ウ云フコトハ確カダト思
フ、是ハ今ノ南方進出竝ニ南方ニ於ケル育
成ノ問題デアリマスガ、ソコデ大臣ニ一ツ
御考慮願ヒタイコトハ、是モ此ノ前ニ御話
ガ出マシタガ、アノ農林省ノ中ノ委員會ニ
矢張リサウ云フ方面ノ人ヲ委員トシテ御入
レニナルコトガ宜イト思フ、嘗テ農林審議
會デ私ガ述ベタ、何シロ我々ノ生活必需品
ト云フモノハ內地ダケデハ考ヘラレナイ、
米ヲ御覽ナサイ、牛ヲ御覽ナサイ、木材ヲ
御覽ナサイ、緬羊ヲ御覽ナサイ、是ハ日本
ダケデ出來マスカ、ドウシタッテ外地ノ力ヲ
借ラナケレバナラナイ、然ルニ此ノ農林審
議會ノ委員ノ顏振ヲ見ルト拓務省關係ノ人
ハ一人モ居ラヌ、是ハドウ云フ譯デスカト
云フコトヲ、時ノ大臣ニ御問ヒシタ處ガ、
何トカ言ッテ居ラレマシタガ、幸ヒニモ、是
ハ石黑サンノ御心配カト思ヒマスガ、近頃
ノ農林計畫委員會ノ中ニハ拓務省ノ人ガ出テ
居ル、併シ御承知ノ通リ、拓務省デモ拓務局
ガ分レテ拓北、拓南トナリ、私ガ希望スル
所ハ矢張リ從前拓務局長ガ委員トシテ入ッテ
居ッタノダカラ、其ノ拓務局ガ二ツニ分レタ
タ以上ハ、殊ニ今ノ南方ノ問題モアリマス
カラ、矢張リ此ノ委員ノ中ニ拓北、拓南兩
局長位ハ御入レニナレバ宜イト思フ、多分
今其ノ委員ガ備ッテ居ラヌト思フ、重ネテソ
レダケノ希望ヲ申上ゲテ置キタイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=43
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044・黒木三次
○委員長(伯爵黑木三次君) 野村君ニ申上
ゲマスガ、成ルベクドウゾ御本論ヲ御急ギ
ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=44
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045・野村益三
○子爵野村益三君 私ハ先程モ申シタヤウ
二、ピッタリ今度ノ計畫ニハ卽サナイノデ、
ソレニハ無論密接ナ關係ガアリマスガ、事
ハ根本論ニナルノデスカラ、成ルベク其ノ
考ニ依リマスケレドモ、一ツ今ノ御話、御
所見ヲ伺ッテ見タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=45
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046・石黒忠篤
○國務大臣(石黑忠篤君) 南方ニ我ガ民族
ガ發展ヲスルト云フコトハ、私ト致シマシ
テモ前々カラ可ナリ熱心ニ考ヘタ時代ガア
ルノデアリマス、出來レバ其ノ方ノ發展策
ヲモ考ヘタイト云フヤウニ思ヒマス、殊
御話ノヤウニ、必ズシモ暑イ所ダケデハナ
イノデ、又暑イ所デモ熱帶產物ト云フモ
ノハ、ドウシタッテ今日ノ國家生存上必要デ
アリマスルカラ、南方デナケレバ出來ナイ
物モ、是ハ澤山ノ植民ヲ出スト云フ譯ニハ
イカヌカ知レマセヌガ、「プランテーショ
ン」トシテ採ルト云フ仕組ヲ內地人ガ持ツ
ト云フヤウナコトハ結構ナコトダト考ヘテ
居リマス、氣候ノ暑クナイ所ニハ植民ヲ十
分ニシタラ結構ダト考へテ居ル次第デアリ
きく、而シテ農林省關係ノ農林計畫委員會
其ノ他ニ出來ルダケ拓殖方面ノ人モ入レル
ト云フコトハ、私全ク御同感デアリマシテ、
大キク考ヘナケレバイカント思ッテ居リマ
ス、拓務省ノ局ガ分レマシテ、拓北、拓南
ニナリマシタノハ最近ノコトデアリマスカ
ラ、御指摘通リ拓南局長ト云フモノヲ將來
考ヘテ之ヲ適當ニ入レルヤウニト云フ御趣
旨ハ結構ダト考ヘマス、大體ニ於キマシテ
今迄ノ農林省ノ委員會ノ構成ト致シマシテ
ハ)殖產局長ヲ入レテ居リマスノデアリマ
ス、是デ連絡ヲ執ッテ貰ッテ居リマスヤウナ
次第デアリマス、尙將來ノ點ニ付キマシテ
ハ能ク御趣旨ハ考慮ニ入レテ決メタイト
思ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=46
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047・野村益三
○子爵野村益三君 第二ノ問題ニ移リマス
ガ、第二ノ問題ハ、農民道ノ昂揚ト、農民
道ノ鼓吹ト云フコトデアリマス、既ニ物資
ガ不足デアル、勞力モ不足デアル、スレ
バ本計畫ノ遂行、大キク言ヘバ農村ノ振
興ト云フコトハ、所謂精神力デ行カナケ
レバイカヌ、是ハ今日矢張リ委員ノ中カ
ラ御話ガ出マシタ、ソコデ私實ハ感ジラ
レタコトガアルノデスガ、是ハ當局ト雖ト
モ御氣附ト思ヒマスガ、此ノ農村ノ靑年
ニ向ッテ、農村ヲ離レルナト云フコトヲ申
シマスト、靑年ノ中ニハ、ソレハ御話ノ
ヤウニ農村デ農業ニイソシムノモ報國ノ道
ダ、併シ工場ニ出テ工業ノ振興ヲ圖ルノモ
國ニ報ユル所以ダ、斯ウ云フコトヲ言フ者
ガ澤山アル、是ハ當リ前ノモノダト云フト、
ナカ〓〓ソレニ返ス言葉ハナイヤウニ思フ
ガ、サウ云フヤウナ僻見、偏見ヲ逞シウサセル
ト云フコトニナル、ドウモ是デハ私ハイカ
又、矢張リ精神的ニ農村ヲ離レナイ、農村
デ農業ニイソシムコトガ最モ自分ノ名譽デ
アル、報國ノ最モ重要ナルモノダト云フコ
トヲ自覺サセナケレバイカヌ、處ガソレヂ
ヤ、ソレガ私ノ所謂農民道ノ〓揚ト云フソ
レノミヂヤイカヌ、矢張リ農業關係以外ノ
者ニモ所謂農民精神ノ、所謂農民道ノ鼓吹
ヲシナケレバイカヌ、今日農業ト云フモノ
ニ對シテ、農業以外ノ者ガドウ見テ居ルカ
ト云フト、我々ガ、御同樣ガ若イ時ノヤウ
ナ考ヂヤナイト思フ、是ガ私ハ農村振興ノ、
大キク言ヘバ國土繁榮ノ基デアル、是ハマ
ア謂フ迄モナイ話デ、皆樣モ御存ジデアリ
マスケレドモ、唯問題ハソレデハドウシタ
ラ農民道ノ〓揚ヲ圖ルカト云フコトニ在
ル、ソレデ石黑サンハ農村更生協會ヲ御立
テニナリ、或ハ道場ニモオイデニナリ、內
原ノ方ヘハ屢〓オイデニナッテ、所謂農民道ノ
鼓吹ヲサレテ、其ノ點ニ於テハ私ハ大イニ
感謝シテ居リマス、ケレドモソレヲモウ少
シ具體的ニモット廣ク御考ヘニナルノガ宜
クハナイカ、ソレデ農民道トハ何カト云フ
コトニナリマスト、是モ實ハ昨夜モ考ヘタ、
ドウ云フコトガ一體農民道ダト云フコトヲ
考ヘテ見タンデスガ、是ハ皆サンモオイデ
デアリマスルカラ、一ツ御檢討ヲ願ヒタイ
ト思ヒマスガ、農業ノ特質ト謂ヒマスカ···
デアッテ、而モヨリ以上〓揚〓吹ヲ圖ラナケ
レバナラナイト云フコトガアル、私ハ斯ウ
云フ風ニ考ヘル、一ツハ誠實、ソレカラ第
二ハ公明、第三ハ自覺、是ガ我ガ農業ニ從
來傳ハッテ來タ所ノ美德デアル、或ハ德目デ
アル、是ハヨリ以上之ヲ發揚サセナケレバ
イカヌト思ヒマス、此ノ發揚ニ依ッテ勤勞ト
云フ德目モ得ラレル、ソレカラ農民ノ所謂
素朴質朴ト云フコトモ生ズルト思ヒマス、
殊ニ自覺ノ問題ニ至ッテハ只今申スヤウニ、
我々ガ日本人ニ、我ガ同胞ニ糧ヲ與ヘル、
是レ程重大ナ務ハナイ、サウシテ我ガ國民
ニ血ヲ與ヘル、軍隊或ハ戰士、サウ云フモ
ノニ對シテハ農村カラ之ヲ供給シナケレバ
イカナイ、此ノ我ガ國民ニ糧ヲ與ヘル、我ガ
國民ニ血ヲ與ヘルノデアル、是ヨリ大キナ
仕事ハナイ、サウ云フ自覺ノ下ニ立テバ、
私ハ恐ラク農村ノ頽廢ト云フヤウナコトモ
起ラナイダラウト思ヒマス、靑年ノ離村ト
云フコトモ自ラ減退スルト思フ、ソレカラ
伺ヒタイコトハ、所謂農民道ノ昂揚竝ニ鼓
吹ト云フコトガ必要デアルガ、何カ良キ御
名案デモゴザイマセウカト云フコトヲ御伺
ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=47
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048・石黒忠篤
○國務大臣(石黑忠篤君) 誠ニ根本的ナ點
ノ御指摘デアリマスガ、私モ御同樣ニ考ヘ
テ居リマス、農民ニ對シテ農民精神、農民
道ト云フモノヲ說クコトバカリデナク、廣
ク今日ノ社會全般ニ此ノ事ヲ認識サセルヤ
ウニト云フコトモ非常ニ大事ダト思フ、其
ノ意味ニ於キマシテ、先頃內田委員ノ御尋ニ
申上ゲマシタヤウニ、私ハ是ハ農業關係以外
ノ人デ能ク分ッタ人ハ、農業ト云フモノノ特別
ナ點及ビ非常ニ重要ナ點ヲ能ク了解シテ吳レ
テ居ルト思フ、ドノ國デモ、今日ノ人トシテノ
〓養ノ高イ人ト云フモノハ、此ノ點ハ分ッテ
呉レテ居ル人ト私ハ思フ、處ガ存外物ニ支
配ヲセラレ、金ニ支配ヲセラレルコトガ非
常ニ多イ時代デアリマスカラ、動モスルト
サウ云フコトハ、多クノ人ニハ輕視サレル、
ソレデ引戾シテ行クト云フコトガ非常ニ大
事ダト思フ、而シテソレヲ引戾シテ農業ヲ
重ク視ルト云フコトハ、結局國家トシテノ
存在ヲ重ク視ルト云フコトニ歸著スルト私
ハ思フノデスカラ、其ノ點ニ留意ヲ致シマ
シテ、私共モ出來ル限リ、例ヘバ銀行集會
所ノ會デアルトカ、或ハ工業倶樂部ノ會デ
アルトカト云フ時ニ來テ話スヤウニト云フ
御要求ガアレバ、必ズ都合ヲ附ケテ參ッテ御
話ヲシテ居ル、此ノ御話ノ仕方ナドガ非常
ニ工夫ヲ要スルモノデアラウト思フ、例
バ農家ト云フモノガ米ノ値段ナンカヲヤカ
マシク云フコトハ非常ニ變ニ思ハレルカ知
レヌケレドモ、百姓トシテハ一生涯ニ一一十
遍カ二十五遍米ノ生產ヲサレルト云フヤウ
ナコトニナルンダカラ、之ニ依ッテ一年ノ計
ガ決マル、非常ニ是ハ大事ナコトニナルト
云フコトハ一箇月ニ何遍モ資本ヲ繰廻ハ
シテ、引合ハナケレバ止メテ置ケト云フ工
業政策ト違フト云フコトヲ能ク申上ゲルト、
サウ云フ說キ方ヲスルト能ク分ッテ呉レル、
ソレハサウダナト云フヤウナ話ニナル、斯
ウ云フ方面へノ了解ヲ十分ニ附ケテ行クヤ
ウニ我々ハ努メナケレバナラヌト考ヘルノ
デアリマスガ、ドウゾ其ノ點ニ御著意ニナッ
テ、野村子爵モドウゾ外部カラ御助ケ戴キ
マシテ、能ク了解ヲ社會ノ幹部ガサレルヤウ
ニ御努力ヲ願ヒタイト考ヘマス、而シテ農
民道ト云フモノニ付テノ內容等ヲ色々御考
察下サッタノデアリマスガ、其ノ通リダト思
フ、私ハ特ニ、若シ御擧ゲニナリマシタ諸
點ニ附加ヘテト云フコトデアリマスレバ、此
處デ私氣付キマシタコトハ、農業ガ生命ノ
アル物ヲ取扱ッテ居ルト云フ點デアリマス、
初中終取扱ッテ居ル物ガ生キ物デアル、デア
リマスカラ、ドウシテモ農民ト云フモノハ
誠實ト云フコトニナリマスカ知レマセスガ、
生命ノ有ルモノニ對スル思遣リト云フモノ
ガ深イト云フ感ジガ、或意味ニ於ケル職業
心理トシテアルト思フ、旱魃ノ時ノ稻ニ水
ヲ掛ケテヤルト云フコトニ付テハ、必ズシ
モ損得ノ關係カラバカリ來テ居ルノヂヤナ
イ)又自分ノ苦勞ガ枯ラシテシマフト云フ
コトダケデナク、稻ガ枯レルト云フコトヲ
見ルニ忍ビナイト云フ氣持ガソコニアルト
云フヤウナコトガ、職業上生命ノアル物ヲ、
動物植物ヲ扱ッテ居ル、之ヲ扱フト云フコト
ニ於テ知ラズ識ラズ農民ノ心理ニサウ云フ
點ガ著シクアルト思フ、而シテ其ノ結果ガ
ドウデアルカ、サウ云フモノヲ扱ッテ居ッテ、
一家ノ生命、國民ノ生命ト云フモノヲ大キ
ク發展シ、長ク續ケテ行クコトノ仕事ニ從
事シテ居ル、外ノ者デモソレハ皆國民ノ必
要物ヲ生產シテ居ルノデアリマス、間接直
接ヲ問ハズ、皆國民ノ發展存續ニ資スルモ
ノヲヤッテ居ルノデアリマスガ、殊ニ生命ノ
問題ニ直接シタモノヲ取扱ヒ、又目的ヲ其
處ニ直接續ケテ行クト云フ所ニ相違ガアル
ヤウニ思フ、之ヲ捉ヘテ以テ此ノ心理ヲ明
確ニシ、自覺サセテ行クコトガ非常ニ必要
デアルト私ハ思フノデアリマス、モウ一ツ
ハ色々ノコトヲ急ニ變へルコトヂヤアリ
マセヌガ、長イ間ニ移リ變リガゴザイマスガ、
兎モ角モ長ク色々ナ力ヲ續ケテ行クト云
フコトガ必要デアルト思ヒマス、其ノ意味
ニ於テ、繰返シテ使フ國土ノ地力ト云フモ
ノヲ衰ヘサセナイヤウニシテ、同ジ所ヲ使ッ
テ、サウシテ始終生々發展シテ行ク基ヲ
枯ラサナイヤウニシテ行ク、是ガ非常ナ大
事ナコトダラウト思ヒマス、或天然物ヲ自
由ニ採ッテ來ルト云ッタヤウナコトトハ違
ヒ、又採掘シテシマッテ物ガ無クナッテ來ル
ト云フノト違ッテ、長キニ亙ッテ國土ヲ培養
シツツ、生產ニ使ッテ行ク、從ッテ今日ノ農民
ノ義務ハ、次ノ時代ニ傳ヘルノニ地力ヲ增
加シテ傳ヘルベキ義務ガアルノデ、之ヲ枯
渴セシメテ傳ヘテハ相成ラヌト云フヤウナ
所ニ非常ナ重點ガアルヤウニ考ヘマス、之
ヲ强調シナケレバナラヌト云フヤウナ二點
ヲ特ニ卽座ニ氣ガ附キマシタ譯デアリマス、
併シ其ノ他ノ點ニ付テ色々考察致シマシ
テ、本當ニ百姓ラシイ、誠ニ麗ハシイ氣持
ヲ、能ク自覺サセルヤウニ努ムルト云フコ
トニハ有ラユル觀察ヲ致シマシテ、子爵ノ
所謂農民道ヲ〓揚シテ行クコトガ非常ニ大
事デアルト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=48
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049・野村益三
○子爵野村益三君 誠ニ結構ナ御話ヲ承ッ
テ有難ウゴザイマシタ、ソコデ今ノ農民道
ノ鼓吹デスガ、是ハ私ノ氣附キデアリマス
ガ、今ノ御話ノ外ニ、學校ノ方面、殊ニ靑
年學校、或ハ今度改組サレタ靑少年團、斯
ウ云フ方面ニモ一ツ働キカケテ戴キタイ、
旣ニ國民學校モ此ノ四月カラ出來テ、我々
ガ二百囘モ會議ヲ重ネテ出來マシタ學制ノ
改革案ト云フモノガ漸ク實行ノ〓ニ就イ
タ、殊ニ靑年學校ハドウシテモ擴充シナケ
レバナラヌト云フノデ、マア形モ出來タ、
斯ウ云フ方面ニ所謂農民道ノ鼓吹ト云フモ
ノヲ、色々ナ方法ニ依ッテ御働キ掛ケニナ
ル、サウシテ將來ノ國民ヲ、我々ヨリヨリ
以上農業ノ神聖ナル、農村ノ大切ニスベキ
コトヲ感得セシメルト云フコトガ、私ハ最
モ必要デアルト思フノデアリマス、ドウカ
其ノ點ニ付テモ御考慮ヲ願ヒタイ、只今仰
セラレタ萬物生々、生物成育、是等ハ丁度
人間ト同ジヤウニ思フノデス、人間ヲ育テ
ル、農作物ヲ育テルト云フヤウナコトハ、
非常ニ能ク似テ居ル、共通シタ點ガアリマ
スカラ、〓育ノ方面ニモサウ云フ精神ヲ植
ヱ込ムト云フコトヲ御考ヘ願ヒタイ、斯ウ
思フノデアリマス、ソレカラ端折ッテ次ニ
移リマスガ、第三ハ、國民體力ノ向上ニ考
慮ヲ加ヘラレテ、ヨリ以上此ノ方面ニ協力
ヲ願ヒタイ、斯ウ云フ譯デアリマス、此ノ
前ニ榮養ノ問題ヲ御話シテ、食糧ノ問題ニ
遡及シテ御話シタノデアリマスガ、結局榮
養問題ト云フコトヲ私共ガ言フノハ、國民
體力向上ト云フコトヲ志ス譯デアリマス、
此ノ前御尋シタ時ニハ、御答辯ヲ得テ有難
ゴザイマシタガ、何ダカ水產ニ關シタヤウ
ナ風ニ御取リニナッタカト思ヒマス、私ハ此
ノ榮養ノ問題ト云フモノハ水產以上ニ考
ハハ尙此ノ榮養物トシテ水產物ヲ攝レト
云フコトガ結論デス、趣旨ハ、榮養ト云フ
モノハ水產以上、況ンヤ國民體力ノ向上ト
云フノハドウシタッテ今ヤラナケレバイケ
ナイ、ソレヲ怠ッタラトンダコトニナルト
云フ風ニ實ハ考ヘテ居ル、而シテ其ノ榮養
物トシテノ供給サレル元ハ農林省ノ手ニ在
ル、ソコデ農林省ハ生產ノ擴充ト云フコト
ヲ考ヘラレルト共ニ、國民ノ榮養ト云フコ
トヲ考ヘテ、結局我々ノ熱望スル、又期待
スル國民體力ノ向上ト云フコトニ、一層ヲ
御努力ト御協力トヲ願ヒタイト云フノガ私
ノ考ナノデス、ソコデ此ノ榮養ノ問題ヲ私
御話シヨウト思フ、此ノ前ハ時間ガナクテ
實ハ徹底シナカッタ、デアリマスガ、結局是ハ
マア御承知ノコトト思ヒマスガ、腹ガ膨レル
ノガ決シテ皆榮養ニハナラナイ、榮養ノ〓
究ハ、此ノ前申上ゲタヤウニ、榮養〓究所
デ十分ニモウ基礎ガ出來テ居ル、〓究モ何
モナイ、決マッテ居ル、ソレハ、是モ御承知
ト思ヒマスガ、先ヅ大人デ中等程度ノ勞ヲ
スル者ハ「カロリー」ニシテ一日二千四百「カ
ロリー」而シテ蛋白質ハ八十「グラム」ヲ攝ル、
其ノ八十「グラム」ハ植物性デハイカヌ、ドウ
シテモ其ノ約四分ノ一、二十「グラム」ト云フモ
ノヲ動物質カラ攝ラナケレバイカヌ、是ハモ
ウ定論デス、其ノ點ニ付テハモウ疑フ餘地
ハナイ、之ヲ基準ニシテ色々ノ地方ニ應ジ
タ榮養食ヲ考ヘル、ソシテ國民ノ榮養、延
イテハ體力ノ向上ト云フモノヲ圖ラナケレ
バイカヌ、是ガ基準ナンデス、デ此ノ前ニ御
話ノ、日本デハ農產物ノ總「カロリー」ト水產
物ノ總「カロリー」ヲ合セタモノデ十分ニ國
民ノ食糧ニ資スルコトガ出來ルト斯ウ云フ
御話デアリマシタガ、私ハソレハマダモウ
少シ實ハ伺ヒタカッタンデス、現ニデス、中
央物價統制協力會議デ非常ナ苦心ヲシテ食
糧ニ付テ發表サレタモノガアル、是ガ私ハ
非常ニ權威アルモノト思ヒマスガ、其ノ計
算ニ依ッテモ、動物質ノ蛋白質ト云フモノハ
少イ、其ノ基準ノ量ニ比較シテ少イ、アレハ
確カ十五「グラム」ト思ヒマス、現ニ二十「グ
ラム」ニ比較スレバ五「グラム」減ッテ居ル、
ソレデハ標準量ニナラヌ、デ我々ノ方ノ計
算ニ依リマスト、ドウシテモ矢張リ足リナ
イ、足リナイ所ハドウスルカト云フト、ソ
レハ水產物ヲ以テ補フノガ一番合理的デア
ル、併シソレヂヤドレダケノ水產物ヲ加ヘ
タラ宜イカト云フト、是ハマア非常ナコト
ニナリマスガ、率直ニ申上ゲマスト今供給
シテ居ルモノヲ、ソレダケ供給シナケレバ
標準量ニナラナイ、斯ウ云フコトニ我々ハ
考ヘテ居ル、是ハ大變ナコトニナル、若シ
サウ云フヤウナ勞養額ニ達シナクテ非常ナ
勞働ヲスル、或ハ非常ナ疾病ニ冒サレルト
ナルト、ソレコソ大變、トテモ將來ノ日本
ヲ背負ッテ立ツコトノ出來ナイコトニナッテ
シマヒハシナイカト云フコトヲ恐レル、是
ハ一ツ十分ニ御認識ヲ願ッテ置キタイト思
フノデアリマス、處デ今日現在ノ實情ヲ見
マスト云フト、モウ農村ト云ハズ都會ト云
ハマ、非常ニ此ノ保健衞生ノ點ガ不滿デア
ル、御話ニナラヌ、都會デ申シマスレバ、
非常ニ近眼ガ多イ、小學校ノ者ヂヤ、數
シテ十八「パーセント」近眼者デアリスガ、
段々學校ガ進ムニ從ッテ殖エテ行ク、大學程
度ニナルト五十八「パーセント」ハ近視眼者、
之ニ厚生省アタリガ大慌テニ慌テテ、現
其ノ對策ニ付テ諮問ヲシテ居ル、是モ矢張
リ榮養ノ關係デス、ソレカラ農村ノ方へ行ク
ト云フト「トラホーム」ガ今モ昔モ變ラナイ、
農村デモ一番特徴ガアルノハ寄生虫ノ害デ
アリマス、是ハドレダケ生產力ヲ害シテ居
ルカ分ラナイ、ドコノ農村ヲ見テモ六十五
「パーセント」、甚ダシイ所デハ千分ノ七百八
十ト云フノガ皆寄生虫ヲ持ッテ居ルガ、
向御構ヒナシ、ソレカラ東京·······花ノ御江
戶ノ眞中ニハ「チブス」ガアル、天然痘ガアリ、
猩紅熱ガ流行ル、ナッテ居ラヌ、サッキ申上
ゲタヤウニ、日本國民ニ血ヲ供給スル軍隊
ト、戰資ヲ供給スル農村ノ狀態ハドウカト
云フト、衞生保健ノ設備トシテ、驚クナカ
レ無醫村ガ三千七百アル、保健所ハ五百五
十箇所ニ置イテ十分ニ働カセル設計デハア
リマスケレドモ、今幾ラアルカ、甚ダ以テ
心許ナイ、現狀ハサウデアッテ、保健衞生ノ
設備ト云フノガナイ、壯丁ノ體格ガ段々低
下スルト云フコトハ是ハ事實デアリマス、
私ハ非常ニ驚イタコトハ、此ノ前ノ兵役法
ノ改正ノ時ニ、文部大臣厚生大臣陸軍大臣、
ニ來テ貰ッテ、私ハ大イニ論議ヲシタガ、斯
ウ云フ驚クベキ事實ヲ發見シタ、ソレハ大
正七年生デ昭和十三年ニ適齡デアル、サウ
シテ檢査ヲヤッタ數ヲ遡ツテ調ベテ見ルト、
同ジ大正八年生レデサウシテ昭和十四年ニ
適齡デ檢査ヲスル、ソレガドウ云フ風ナ數
ニナルカト云フト、調べタ處ヲ手ッ取早ク申
シマスルト、生レタ者ガ二十迄ニナッテ、
御國ノ爲ニ役ニ立タウト云フ者ハ多クテ七
十「パーセント」、今御話シタ數ハ六十「パー
セント」、百人デ以テ二十歲迄永へル數ト
云フモノハ六十八デ七十ナイ、是ハ私ハ等
閑ニ出來ナイト思フ、蝶ヨ花ヨト愛デ育テ
タ其ノ母性愛ノ結果ガサウ云フコトデハ非
常ニ大事ダ、而モ其ノ適齢デ壯丁檢査ヲ受
ケル數ハサウデアリマスケレドモ、其ノ中
デ甲種合格、卽チ詰リ本當ニ御國ノ爲ニナ
ルノハドノ位アルカ、ソレハ前ノ百人ニ
較ベテ五十二シカナイ、是ハ驚クベキ
コトデアリマス、是ハ餘リ多クノ人ハ知ッテ
居リマセヌケレドモ、斯ウ云フ狀態ニ在ル、
榮養ノ問題ト云フモノハ等閑ニ出來ナイ、
榮養ノ問題ヲ考ヘテ國民ノ體位ノ向上ヲ圖
ル、ソレニハ農林省ガ重大ナル、重要ナ又
廣イ立場ヲ持ッテ居ラレルト思フ、如何ニ厚
生省ガ彼此レ言ッテモ、國民ノ榮養ト云フモ
ノヲ農林省ガ供給シナカッタラ駄目デアル、
私ハサウ云フ意味ニ於テ、生產擴充モ結構
ダ、其ノ生產擴充ニ付テハ榮養ト云フコト
ヲ考ヘナケレバナラヌ、其ノ榮養ト云フコ
トヲ考ヘラレテ、究極スル所國策ニ協力サ
レテ、國民體位向上ト云フコトヲ目當ニ
ツ此ノ上ノ御盡力ヲ願ヒタイ、斯ウ云フノ
ガ私ノ熱望ナンデアリマス、此ノ點ニ付テ
大體御所見ヲ承リタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=49
-
050・石黒忠篤
○國務大臣(石黑忠篤君) 榮養ノ問題、究
極シテ國民體力向上ノ問題ニ對シマスル野
村子爵ノ御意見大イニ御同感至極ノコトデ、
農林省ト致シマシテハ、唯物ヲ增產スレバ
宜イト云フノデハゴザイマセヌ、御指摘ノ
通リニ、國民榮養トシテ最モ役立ツヤウニ增
產ヲ致シ、又配合ノ上カラ言ッテ國民全般ガ
要求シテ居ル水陸ノ食糧資源ヲ涵養シツヽ
供給ヲスルト云フコトニナラナケバナリマ
セヌ、ソレ等ニ付テハ十分ニ注意ヲ致シ、
結局國民體力ノ向上ニ資スル爲ニ必要ナル
國民食、榮養ノ適當ナル供給ト云フコトニ
考ヲ向ケテ參リタイト考ヘテ居リマス、ソ
レカラソレ等ヲヤリマスニ付キマシテハ、
矢張リ同ジ穀物ノ中デモ、穀粉ト申シマシ
テモ色々ナ種類ガアリ、又喰ウテ見テノ熱
ニ變ルノニ色々ナ違ガアルヤウデアリマス、
サウ云フコトモ十分ニ注意致シマシテ、將
來ハヤッテ行カナクチヤナラヌト考ヘルノ
デアリマス、同ジ米ノ中デモ、今迄ノ取引
ノ市場ノ關係カラ云ッテ、品質ト云フコトヲ
言ッタガ、商人ノ關係デ、實ハ非常ニ科學的
意義ガナカッタガ、品質上ニ對スル注文トシ
テ現レテ來タト云フヤウナコトモアルサ
ウ云フモノヲ斯ウ云フ時代ニナリマスト、
引換ヘテ、差當リハ數量ノ多イ物ト云フコト
ニ重キヲ置イテヤラナケレバナラヌ差向キ
ノ事情デハアリマスケレドモ、將來ハ矢張
リ品質ト云フコトニ付テモ、モット科學的根
據ノアル品質ニ付テノ注文ガ出テ來ルヤウ
ナ試驗調査ヲシナクチヤナラヌト考ヘテ居
リマス、ソレ等ハ只今學術振興會ノ方デ各
種ノ米ニ付テ、人ガ喰ウテ見テ、サウシテ
本當ノ榮養上、排泄シタ結果ヲ巨細ニ調ベ
テ居ル委員會ガゴザイマス、ソコラノ結果
等モ十分ニ考慮ノ中ニ入レテ、將來少シ長
キニ亙ルコトト思ヒマスガ、十分考慮シテ
ヤッテ參リタイト斯ウ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=50
-
051・野村益三
○子爵野村益三君 私ハ是デ質問ヲ終リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=51
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052・黒木三次
○委員長(伯爵黑木三次君) チヨット速記
).
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=52
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053・黒木三次
○委員長(伯爵黑木三次君) ヂヤ速記ヲ始
メテ下サイ、質疑ハ是ニテ終了致シマシテ、
討論ニ移リマス、下村君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=53
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054・下村宏
○下村宏君 今此ノ時局デ各省ガ非常ナ御
努力デ、殊ニ農林省デ非常ニ大臣以下御奮
勵下サッテ有難イコトト思フノデアリマ
ス、デモウ是ハ當局デ御考ニナッテ居ラウ
ト思ヒマスガ、私ハ希望ヲ添ヘテ贊成ノ意
ヲ表シタイノデス、過般內地ト外地トノ聯
繫ト云フコトヲ申シタノデスガ、ソレニ伴
ウテ、此ノ內地ノ各省ノ間ノ聯繫ト云フ
コトモ私申スコトヲアノ時ニ失念シテ
居ッタノデス、ナカ〓〓良イ案ガ出テ來
ナイノデスガ、私共ガ物價委員會カラ
物價審議會へ移ッテ其ノ後、私ハ〓糧ノ專門
價格委員長ヲシテ居リマシタガ、此ノ食糧
ノ方ヲ專門委員ノ方ナドハ生鮮〓糧ト言ハ
ズ、其ノ他雜穀、或ハ砂糖、醤油、麥酒、
酒他其ノ他總テノモノガ更ニ今度農林省ノ
方へ纏ッタサウデスガ、是ハ此處デ御意見ヲ
伺フト云フヨリモ御考慮ヲ願ッテ置キタイ
ノハ、私ハ纏ッタ成案ハナイガ、寧ロ此ノ米
穀統制委員會ト云フ所デ、米穀ノ問題ハア
ノ法律ノ下デヤッテ居リマスルガ、其ノ米穀
ノ現在及將來ヲ考察スル時ニハ、ドウシテ
モ此ノ〓糧品ガ御互ニ有無相通ズル關係ガ
アリマスカラ、ソレデ矢張リ名前ハドウナ
リマスルカ、又米穀統制法モ變リマセウ
ガ、要スルニアア云フ特別ノ米穀ト云フ
モノガ物價ノ中心デアリ、又生活ノ中心デ
アリマスカラ、ソレニ伴フ雜穀ナリ、其ノ他
ノ食糧品全部ヲアアシタ會デ審議サレルト云
フコトガ矢張リ一ツノ方法デアラウト思ヒ
ママ、過般ナド私共ガ食糧ノ委員會ノ方デ
小麥トカ、醬油トカ、酒トカ云フモノヲ頻
リトヤッテ居ルト、御承知ノヤウニ米ノ値ガ
急ニ騰ッタ、是ハ米穀統制委員會デモ問ハレ
タサウデスガ、アノ時ハ非常ニ早急ナ事情
ガアッテ、之ヲモウ此所デアノ時ノ內容ヲ申
ス迄モナイコトデアリマスガ、更ニアノ時
ニ我々考ヘラレタノハ、ソレカラ後又直グ
煙草ノ値ガ騰ッタ、一般民衆ニハ大藏省ノ所
管デアラウト、所管ガ變ッテ居ラウガ、ソン
ナコトハ構ハナイデ、日常ノ物價ノ中デ矢
張リ大衆ガ飮ム煙草ノ値モ亦アノ時ニ他ノ
物價ノ委員會ナリ、サウ云フ組織ト全然聯
繫ナシニアレハ騰ッタ、サウ云フコトガ詰リ
我々ハトテモ此ノ物價ノ統制ト云フヤウナ
コトニ責任ガ持テヌト云フコトデ、我々モ
多少決意シタコトガ、今度物價審議會ガ出
來タ所以ニモナッテ居ッテ、是等ノ事情ハ農
林大臣ハモウ萬々御承知ダラウト思フ、其
ノ物價審議會モ其ノ儘又立消エ見タイニ
ナッタノデアリマスガ、今度ノ衆議院デモ貴
族院デモ、豫算總會其ノ他ニ於テ、此ノ物
價ノ統制、或ハ價格ト云フコトニ付テ根柢
カラ一ツ又再檢討スルト云フヤウナコトガ、
大分質疑應答ガアッタヤウデアリマス、少ク
トモ食糧品ダケハ御互ニ有無相通ジテ、我
我ガ其ノ食糧ノ中ノ卵ナラ卵、肉ナラ肉ダ
ケヲ審議シテ居ッテモ、其ノ需給ダケデハナ
イ、外ノ食糧ノ需給ニ依ッテ、皆影響ヲ受ケ
テ居リマスカラ、或ハ是等ヲ何カ纏メテ審
議サレルト云フヤウナコトハドウデアラウ
カト云フコトヲ、私是ハモウ萬々御了知ノ
コトデアラウト思ヒマスガ、申添ヘテ置キ
マス、ドウカ此ノ前ニモ申上ゲマシタガ、
モウ內閣ハ幾ラ長クッテモ或時ニハ迭ラネ
バナラヌノデアリマスガ、大體二十年位經
テバ一億ニナルト言ッテモ、現在ノ人口ノ約
三分ノ一ト云フモノガ殖エテ行クト云フコ
トヲ見込ンデ掛カラナケレバナラヌ、ソレ
カラ先モ考ヘテ行カナケレバナラヌ、結局
先程モ野村委員ナリ、其ノ他カラ申サレタ
ヤウニ、ドウシテモ民族ハ膨脹スルト云フ
コトニナルト、大陸ト云フコトト或ハ南洋
ト云フコトモ考ヘナケレバナラヌ、又其ノ
外地モ、今丁度大臣ノ御話ガアッタヤウニ、
ソコニ人口ガ非常ニ激增シテ行クコトト、
ソレガ又ドン〓〓米ヲ消費シ出スト云フコ
トニナル、滿洲モ矢張リ其ノ通リデアラウ
ト思ヒマス、ドウカ一ツソレ等ノ各角度カ
ラノ觀點ニ依ッテ、ドウカ御在職中ニ日本ノ
民族ノ發展、人ノ膨脹ト云フコトト之ニ對
處スル食糧ト云フ問題ニ付テノ一ツノ成案
ヲ作ッテ戴キタイ、サウ云フ希望ヲ述ベマシ
テ當局ノ御苦勞ヲ感謝シテ、私ハ此ノ案ニ
贊成ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=54
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055・松村眞一郎
○松村眞一郞君 私質問ヲ一言致シタク思ツ
タノデスガ、餘リ煩瑣ニナリマスルノデ、
省略致シテ居ッタノデアリマス、討論ノ際モ
實ハ差控ヘヨウト思ヒマシタケレドモ、ド
ウモ私ノ自分ノ感ジハ、如何ニモ此ノ法制
ノ上デ自分トシテ不滿足ニ感ズルノデアリ
マシテ、別ニ纏ッテ玆ニ述べル積リモナ
カッタノデスガ、政府ガ此ノ主要食糧自給强
化施設〓要ト云フモノヲ、此ノ法律ノ第一
條ノ規定ニ照應シテ斯ウ云フ參考書ヲ御配
布ニナッタノデアリマス、ソレヲ見マスルト
云フト、第四頁ノ所ニ「會社經營」ト云フ字ガ
使ッテアルノデス、開墾總面積ノ中デ會社經
營ガ二十五萬町步、ソレカラ其ノ次ノ第五
頁ヲ見マスト云フト、「農業水利改良事業」ト
云フ中ニ、會社經營十五萬町步、斯ウ書イ
テアリマス、ドウモ營團ト云フコトガ、初
メハ會社ト云フヤウナ積リデヤッテ置イテ、
後デ營團ト云フコトデ急ニヤラレタノヂヤ
ナイカト思フ、斯ウ參考書ニ麗々シク書イ
テアルコトヲ見テ、私ハ餘リ練ラレタ案ヂ
ヤナイト云フコトヲ實ハ思フノデ、サウ云
フコトヲ言ヒタクハナイノデスケレドモ、
何トナクドウモ私不備ニ感ジルモノデスカ
ラ······元來勸業銀行ナリ中央金庫ナリノ事
業ノ目的ト云フモノハ法律デ大抵決ッテ居
ルノデスカラ、勸業銀行ガ此ノ民事局長ノ
言ハレル所謂中間法人ト云フヤウナモノニ
出資スルト云フコトハ法律上許サレルモノ
デアルカドウカト云フコトモ私實ハ疑問ニ
シテ居ル、寧ロ勸業銀行法ノ中ニ一箇條書
イテ、「營團ニ對シテ出資スルコトヲ得」、ト
云フコトヲ書カナイト云フト、是ハ貸金ヂ
ヤナイノデスカラ······之ヲ見マスト云フト
損ヲスル場合ノコトハ書イテナイノデス、
利益ガナイノデス、利益ガナカッタ場合ニド
ウ云フコトニナルノカ、利益配當ノ保證ト
云フヤウナコトモ規定ハナイヤウデアリマ
スカラ、マア補償金ヲ貰ッテヤルノダカラ、
適當ニ貰ッテヤルノダラウト思ヒマスケレド
モ何トナクドウモ私法制上ノ立場カラ見
ルト云フト、餘リ整ッテ居ラナイヤウナ感ジ
ガ非常ニスルノデアリマス、民事局長ナド
トノ質問應答ニ付テモ御聽願ッタト思ヒマス
ガ、企畫院總裁トノ間デ色々御聽キシタ所
デモ、何トナク整ッテ居ラナイヤウナ感ジガ
致シマス、ソコデ結論的ニ纏メテ申シマス
ト斯ウ云フコトニナルノデス、私ノ感ジハ、
農地開發ノ根幹ハ水利施設デアルト考ヘル
ノデアリマス、公共性ト云フノハ其ノ水利
施設ニ在ルト云フヤウニ私ハ考ヘテ居ルノ
デス、古來歷史ニ殘ッテ居ル色々ナ國家的施
設トシテ行ハレテ居ル所ハ、水利ノ方ヲヤ
ラレテ居リマス、色々ナ溜池ヲ作リマスト
カ、水路ヲドウスルトカ、堤塘ヲ造ルトカ、
ソコニ公共性ガアルノデアッテ、後カラ其ノ
結果田畑ガ生レテ來ルト云フコトハ、次ニ起
ル私ハ目的ダト思ヒマス、ダカラ手段ト云
フ所ニ非常ニ重點ガアルノデ、水利ト云フ
ノガ手段ニナッテ、ソコニ田畑ガ出來ルト
云フ目的ノ爲ニ、其ノ次ノ目標ハ〓糧ノ增
產ニ在ルト斯ウ云フ風ニ考ヘテ居ル、ド
ウシテモ目的ハ水利デナケレバナラヌト考
ヘマス、農業ハ水利ヲ根幹トシ、農地其ノ
モノニ關スル法制ヲ整ヘラルベキモノト考
ヘト此ノ點農林省ニ於テモ御考ヲ願ヒタ
イト云フノガ私ノ希望デゴザイマス、此ノ
法案ノ內容ハ、是ハ非常ニ結構ナコトデ、
食糧自給强化ヲ圖ル爲ニ、斯ウ云フ農地ノ
增成、改良ヲサレルト云フコトハ非常ニ結
構ダト思ヒマス、其ノ趣旨ニ於テハ同感
ナノデアリマス、併シ能クサウ云フ法制ノ
コトヲ考ヘテ戴カナイト、唯ドウモ仕事サ
ヘスレバ宜イノダ、ドンナ形デモ宜イノダ
ト云フコトハ私トシテハ感服シナイ、今度
ノ議會ノ法案ニ隨分サウ云フノガアルヤウ
ニ私ハ感ジマス、其ノ點御考慮ヲ煩ハシタ
イト云フコトノ希望ヲ申添ヘテ本案ニ贊成
スル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=55
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056・黒木三次
○委員長(伯爵黑木三次君) 他ニ御發言モ
ゴザイマセヌケレバ、本案ノ採決ヲ致シマ
ス、本案ニ贊成ノ方ノ擧手ヲ望ミマス
〔總員擧手〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=56
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057・黒木三次
○委員長(伯爵黑木三次君) 滿場一致ト認
メマス、仍テ本案ハ可決サレマシタ、是一
テ散會致シマス
午後六時二十五分散會
出席者左ノ如シ
委員長伯爵黑木三次君
副委員長男爵岩村一木君
委員
侯爵蜂須賀正氏君
子爵野村益三君
子爵織田信恒君
松村眞一郞君
內田重成君
男爵小畑大太郞君
下村宏君
永田秀次郞君
男爵坊城俊賢君
三浦新七君
大藪守治君
米原章三君
二瓶泰次郞君
佐藤助九郞君
國務大臣
農林·大臣石黑忠篤君
政府委員
農林次官井野碩哉君
農林省總務局長周東英雄君
農林省農政局長岸良一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007601724X00719410227&spkNum=57
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