1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十六年二月二十一日(金曜日)午前十時十七分開議
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議事日程 第十七號
昭和十六年二月二十一日
午前十時開議
第一 治安維持法改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第二 國民貯蓄組合法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第三 國民更生金庫法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第四 日本勸業銀行法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第五 北海道拓殖銀行法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第六 農工銀行法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第七 委員會等の整理等に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第八 蠶絲業統制法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第九 國家總動員法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十 昭和十二年法律第九十二號中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十一 衆議院議員の任期延長に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十二 府縣會議員、市町村會議員等の任期延長に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十三 樺太開發株式會社法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十四 恩給法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十五 義務教育費國庫負擔法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十六 小學校令の改正に伴ふ恩給法等の規定の整理に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=0
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001・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 報〓ヲ致サセマ
ス
〔白木書記官朗讀〕
一昨十九日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府
提出案ハ卽日裁可ヲ奏請シ又可決ツ旨ヲ衆
議院ニ通知セリ
帝都高速度交通營團法案
日本發送電株式會社法中改正法律案
關稅定率法中改正法律案
昭和十二年法律第五十七號改正法律案
相續稅法中改正法律案
臨時利得稅法中改正法律案
國稅徵收法中改正法律案
關稅法中改正法律案
健康保險法中改正法律案
同日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提出案
ハ卽日之ヲ衆議院ニ送付セリ
刑法中改正法律案
同日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
恩給法中改正法律案可決報告書
義務〓育費國庫負擔法中改正法律案可決
報告書
小學校令ノ改正ニ伴フ恩給法等ノ規定ノ
整理ニ關スル法律案可決報告書
樺太開發株式會社法案可決報告書
請願文書表(第五囘報告)
昨二十日委員會ニ於テ當選シタル正副委員
長ノ氏名左ノ如シ
外國爲替管理法改正法律案特別委員會
委員長男爵深尾隆太郞君
副委員長有賀光豐君
東亞海運株式會社法案特別委員會
委員長子爵松平忠壽君
副委員長男爵松田正之君
昭和十二年法律第九十號中改正法律案特
別委員會
委員長伯爵黑木三次君
副委員長男爵岩村一木君
同日委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
衆議院議員ノ任期延長ニ關スル法律案可
決報告書
府縣會議員市町村會議員等ノ任期延長ニ
關スル法律案可決報告書
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
治安維持法改正法律案
國民貯蓄組合法案
國民更生金庫法案
日本勸業銀行法中改正法律案
北海道拓殖銀行法中改正法律案
農工銀行法中改正法律案
委員會等ノ整理等ニ關スル法律案
蠶絲業統制法案
同日衆議院ヨリ本院ノ送付ニ係ル左ノ政府
提出案ハ同院ニ於テ之ヲ可決シ奏上セル旨
ノ通牒ヲ受領セリ
郵便貯金法中改正法律案
船舶保護法案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=1
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002・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 是ヨリ本日ノ會
議ヲ開キスマス、日程第一、治安維持法改正
法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、
柳川司法大臣
〔左ノ案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ
タメ玆ニ載錄ス以下之ニ倣フ〕
治安維持法改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十六年二月二十日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
治安維持法改正法律案
治安維持法
第一章罪
第一條國體ヲ變革スルコトヲ目的トシ
テ結社ヲ組織シタル者又ハ結社ノ役員
其ノ他指導者タル任務ニ從事シタル者
ハ死刑又ハ無期若ハ七年以上ノ懲役ニ
處シ情ヲ知リテ結社ニ加入シタル者又
ハ結社ノ目的遂行ノ爲ニスル行爲ヲ爲
シタル者ハ三年以上ノ有期懲役ニ處ス
第二條前條ノ結社ヲ支援スルコトヲ目
的トシテ結社ヲ組織シタル者又ハ結社
ノ役員其ノ他指導者タル任務ニ從事シ
タル者ハ死刑又ハ無期若ハ五年以上ノ
懲役ニ處シ情ヲ知リテ結社ニ加入シタ
ル者又ハ結社ノ目的遂行ノ爲ニスル行
爲ヲ爲シタル者ハ二年以上ノ有期懲役
二段夫人
第三條第一條ノ結社ノ組織ヲ準備スル
コトヲ目的トシテ結社ヲ組織シタル者
又ハ結社ノ役員其ノ他指導者タル任務
ニ從事シタル者ハ死刑又ハ無期若ハ五
年以上ノ懲役ニ處シ情ヲ知リテ結社ニ加
入シタル者又ハ結社ノ目的遂行ノ爲ニ
スル行爲ヲ爲シタル者ハ二年以上ノ有
期懲役ニ處ス
第四條前三條ノ目的ヲ以テ集團ヲ結成
シタル者又ハ集團ヲ指導シタル者ハ無
期又ハ三年以上ノ懲役ニ處シ前三條ノ
目的ヲ以テ集團ニ參加シタル者又ハ集
團ニ關シ前三條ノ目的遂行ノ爲ニスル
行爲ヲ爲シタル者ハ一年以上ノ有期懲
役ニ處ス
第五條第一條乃至第三條ノ目的ヲ以テ
其ノ目的タル事項ノ實行ニ關シ協議若
ハ煽動ヲ爲シ又ハ其ノ目的タル事項ヲ
宣傳シ其ノ他其ノ目的遂行ノ爲ニスル
行爲ヲ爲シタル者ハ一年以上十年以下
ノ懲役ニ處ス
第六條第一條乃至第三條ノ目的ヲ以テ
騷擾、暴行其ノ他生命、身體又ハ財產
ニ害ヲ加フベキ犯罪ヲ煽動シタル者ハ
二年以上ノ有期懲役ニ處ス
第七條國體ヲ否定シ又ハ神宮若ハ皇室
ノ尊嚴ヲ冒瀆スベキ事項ヲ流布スルコ
トヲ目的トシテ結社ヲ組織シタル者又
ハ結社ノ役員其ノ他指導者タル任務ニ
從事シタル者ハ無期又ハ四年以上ノ懲
役ニ處シ情ヲ知リテ結社ニ加入シタル
者又ハ結社ノ目的遂行ノ爲ニスル行爲
ヲ爲シタル者ハ一年以上ノ有期懲役ニ
處ス
第八條前條ノ目的ヲ以テ集團ヲ結成シ
タル者又ハ集團ヲ指導シタル者ハ無期
又ハ三年以上ノ懲役ニ處シ前條ノ目的
ヲ以テ集團ニ參加シタル者又ハ集團ニ
關シ前條ノ目的遂行ノ爲ニスル行爲ヲ
爲シタル者ハ一年以上ノ有期懲役ニ處
ス
第九條前八條ノ罪ヲ犯サシムルコトヲ
目的トシテ金品其ノ他ノ財產上ノ利益
ヲ供與シ又ハ其ノ申込若ハ約束ヲ爲シ
タル者ハ十年以下ノ懲役ニ處ス情ヲ知
リテ供與ヲ受ケ又ハ其ノ要求若ハ約束
ヲ爲シタル者亦同ジ
第十條私有財產制度ヲ否認スルコトヲ
目的トシテ結社ヲ組織シタル者又ハ情
ヲ知リテ結社ニ加入シタル者若ハ結社
ノ目的遂行ノ爲ニスル行爲ヲ爲シタル
者ハ十年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ處ス
第十一條前條ノ目的ヲ以テ其ノ目的タ
ル事項ノ實行ニ關シ協議ヲ爲シ又ハ其
ノ目的タル事項ノ實行ヲ煽動シタル者
ハ七年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ處ス
第十二條第十條ノ目的ヲ以テ騒擾、暴
行其ノ他生命、身體又ハ財產ニ害ヲ加
フベキ犯罪ヲ煽動シタル者ハ十年以下
ノ黴役又ハ禁錮ニ處ス
第十三條前三條ノ罪ヲ犯サシムルコト
ヲ目的トシテ金品其ノ他ノ財產上ノ利
益ヲ供與シ又ハ其ノ申込若ハ約束ヲ爲
シタル者ハ五年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ
處ス情ヲ知リテ供與ヲ受ケ又ハ其ノ要
求若ハ約束ヲ爲シタル者亦同ジ
第十四條第一條乃至第四條、第七條、
第八條及第十條ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第十五條本章ノ罪ヲ犯シタル者自首シ
タルトキハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除ス
第十六條本章ノ規定ハ何人ヲ問ハズ本
法施行地外ニ於テ罪ヲ犯シタル者ニ亦
之ヲ適用ス
第二章刑事手續
第十七條本章ノ規定ハ第一章ニ揭グル
罪ニ關スル事件ニ付之ヲ適用ス
第十八條檢事ハ被疑者ヲ召喚シ又ハ其
ノ召喚ヲ司法警察官ニ命令スルコトヲ
得
檢事ノ命令ニ因リ司法警察官ノ發スル
召喚狀ニハ命令ヲ爲シタル檢事ノ職、
氏名及其ノ命令ニ因リ之ヲ發スル旨ヲ
モ記載スベシ
召喚狀ノ送達ニ關スル裁判所書記及執
達吏ニ屬スル職務ハ司法警察官吏之ヲ
行フコトヲ得
第十九條被疑者正當ノ事由ナクシテ前
條ノ規定ニ依ル召喚ニ應ゼズ又ハ刑事
訴訟法第八十七條第一項各號ニ規定ス
ル事由アルトキハ檢事ハ被疑者ヲ勾引
シ又ハ其ノ勾引ヲ他ノ檢事ニ囑託シ若
ハ司法警察官ニ命令スルコトヲ得
前條第二項ノ規定ハ檢事ノ命令ニ因リ
司法警察官ノ發スル勾引狀ニ付之ヲ準
用ス
第二十條勾引シタル被疑者ハ指定セラ
レタル場所ニ引致シタル時ヨリ四十八
時間內ニ檢事又ハ司法警察官之ヲ訊問
スベシ其ノ時間內ニ勾留狀ヲ發セザル
トキハ檢事ハ被疑者ヲ釋放シ又ハ司法
警察官ヲシテ之ヲ釋放セシムベシ
第二十一條刑事訴訟法第八十七條第一
項各號ニ規定スル事由アルトキハ檢事
ハ被疑者ヲ勾留シ又ハ其ノ勾留ヲ司法
警察官ニ命令スルコトヲ得
第十八條第二項ノ規定ハ檢事ノ命令ニ
因リ司法警察官ノ發スル勾留狀ニ付之
ヲ準用ス
第二十二條勾留ニ付テハ警察官署又ハ
憲兵隊ノ留置場ヲ以テ監獄ニ代用スル
コトヲ得
第二十三條勾留ノ期間ハ二月トス特ニ
繼續ノ必要アルトキハ地方裁判所檢事
又ハ區裁判所檢事ハ檢事長ノ許可ヲ受
ケ一月每ニ勾留ノ期間ヲ更新スルコト
ヲ得但シ通ジテ一年ヲ超ユルコトヲ得
ズ
第二十四條勾留ノ事由消滅シ其ノ他勾
留ヲ繼續スルノ必要ナシト思料スルト
キハ檢事ハ速ニ被疑者ヲ釋放シ又ハ百
法警察官ヲシテ之ヲ釋放セシムベシ
第二十五條檢事ハ被疑者ノ住居ヲ制限
シテ勾留ノ執行ヲ停止スルコトヲ得
刑事訴訟法第百十九條第一項ニ規定ス
ル事由アル場合ニ於テハ檢事ハ勾留ノ
執行停止ヲ取消スコトヲ得
第二十六條檢事ハ被疑者ヲ訊問シ又ハ
其ノ訊問ヲ司法警察官ニ命令スルコト
ヲ得
檢事ハ公訴提起前ニ限リ證人ヲ訊問シ
又ハ其ノ訊問ヲ他ノ檢事ニ囑託シ若ハ
司法警察官ニ命令スルコトヲ得
司法察警官檢事ノ命令ニ因リ被疑者又
ハ證人ヲ訊問シタルトキハ命令ヲ爲シ
タル檢事ノ職、氏名及其ノ命令ニ因リ
訊問シタル旨ヲ訊問調書ニ記載スベシ
第十八條第二項及第三項ノ規定ハ證人
訊問ニ付之ヲ準用ス
第二十七條檢事ハ公訴提起前ニ限リ押
收、搜索若ハ檢證ヲ爲シ又ハ其ノ處分
ヲ他ノ檢事ニ囑託シ若ハ司法警察官ニ
命令スルコトヲ得
檢事ハ公訴提起前ニ限リ鑑定、通譯若
ハ翻譯ヲ命ジ又ハ其ノ處分ヲ他ノ檢事
ニ囑託シ若ハ司法警察官ニ命令スルコ
トヲ得
前條第三項ノ規定ハ押收、搜索又ハ檢
證ノ調書及鑑定人、通事又ハ翻譯人ノ
訊問調書ニ付之ヲ準用ス
第十八條第二項及第三項ノ規定ハ鑑定、
通譯及翻譯ニ付之ヲ準用ス
第二十八條刑事訴訟法中被〓人ノ召
喚、勾引及勾留、被〓人及證人ノ訊問、
押收、搜索、檢證、鑑定、通譯竝ニ翻譯
ニ關スル規定ハ別段ノ規定アル場合ヲ
除クノ外被疑事件ニ付之ヲ準用ス但シ
保釋及責付ニ關スル規定ハ此ノ限ニ在
ラズ
第二十九條辯護人ハ司法大臣ノ豫メ指
定シタル辯護士ノ中ヨリ之ヲ選任スベ
シ但シ刑事訴訟法第四十條第二項ノ規
定ノ適用ヲ妨ゲズ
第三十條辯護人ノ數ハ被〓人一人ニ付
二人ヲ超ユルコトヲ得ズ
辯護人ノ選任ハ最初ニ定メタル公判期
日ニ係ル召喚狀ノ送達ヲ受ケタル日ヨ
リ十日ヲ經過シタルトキハ之ヲ爲スコ
トヲ得ズ但シ已ムコトヲ得ザル事由ア
ル場合ニ於テ裁判所ノ許可ヲ受ケタル
トキハ此ノ限ニ在ラズ
第三十一條辯護人ハ訴訟ニ關スル書類
ノ謄寫ヲ爲サントスルトキハ裁判長又
ハ豫審判事ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス
辯護人ノ訴訟ニ關スル書類ノ閱覽ハ裁
判長又ハ豫審判事ノ指定シタル場所ニ
於テ之ヲ爲スベシ
第三十二條被告事件公判ニ付セラレタ
ル場合ニ於テ檢事必要アリト認ムルト
キハ管轄移轉ノ請求ヲ爲スコトヲ得但
シ第一囘公判期日ノ指定アリタル後ハ
此ノ限ニ在ラズ
前項ノ請求ハ事件ノ繫屬スル裁判所及
移轉先裁判所ニ共通スル直近上級裁判
所ニ之ヲ爲スベシ
第一項ノ請求アリタルトキハ決定アル
迄訴訟手續ヲ停止スベシ
第三十三條第一章ニ揭グル罪ヲ犯シタ
ルモノト認メタル第一審ノ判決ニ對シ
テハ控訴ヲ爲スコトヲ得ズ
前項ニ規定スル第一審ノ判決ニ對シテ
ハ直接上告ヲ爲スコトヲ得
上告ハ刑事訴訟法ニ於テ第二審ノ判決
ニ對シ上告ヲ爲スコトヲ得ル理由アル
場合ニ於テ之ヲ爲スコトヲ得
上告裁判所ハ第二審ノ判決ニ對スル上
告事件ニ關スル手續ニ依リ裁判ヲ爲ス
ベシ
第三十四條第一章ニ揭グル罪ヲ犯シタ
ルモノト認メタル第一審ノ判決ニ對シ
上〓アリタル場合ニ於テ上〓裁判所同
章ニ揭グル罪ヲ犯シタルモノニ非ザル
コトヲ疑フニ足ルベキ顯著ナル事由ア
ルモノト認ムルトキハ判決ヲ以テ原判
決ヲ破毀シ事件ヲ管轄控訴裁判所ニ移
送スベシ
第三十五條上〓裁判所ハ公判期日ノ通
知ニ付テハ刑事訴訟法第四百二十二條
第一項ノ期間ニ依ラザルコトヲ得
第三十六條刑事手續ニ付テハ別段ノ規
定アル場合ヲ除クノ外一般ノ規定ノ適
用アルモノトス
第三十七條本章ノ規定ハ第二十二條、
第二十三條、第二十九條、第三十條
第一項、第三十二條、第三十三條及
第三十四條ノ規定ヲ除クノ外軍法會議
ノ刑事手續ニ付之ヲ準用ス此ノ場合ニ
於テ刑事訴訟法第八十七條第一項トア
ルハ陸軍軍法會議法第百四十三條又ハ
海軍軍法會議法第百四十三條、刑事訴
訟法第四百二十二條第一項トアルハ陸
軍軍法會議法第四百四十四條第一項又
ハ海軍軍法會議法第四百四十六條第一
項トシ第二十五條第二項中刑事訴訟法
第百十九條第一項ニ規定スル事由アル
場合ニ於テハトアルハ何時ニテモトス
第三十八條朝鮮ニ在リテハ本章中司法
大臣トアルハ朝鮮總督、檢事長トアル
ハ覆審法院檢事長、地方裁判所檢事又
ハ區裁判所檢事トアルハ地方法院檢事、
刑事訴訟法トアルハ朝鮮刑事令ニ於テ
依ルコトヲ定メタル刑事訴訟法トス但
シ刑事訴訟法第四百二十二條第一項ト
アルハ朝鮮刑事令第三十一條トス
第三章豫防拘禁
第三十九條第一章ニ揭グル罪ヲ犯シ刑
ニ處セラレタル者其ノ執行ヲ終リ釋放
セラルベキ場合ニ於テ釋放後ニ於テ更
ニ同章ニ揭グル罪ヲ犯スノ虞アルコト
顯著ナルトキハ裁判所ハ檢事ノ請求ニ
因リ本人ヲ豫防拘禁ニ付スル旨ヲ命ズ
ルコトヲ得
第一章ニ揭グル罪ヲ犯シ刑ニ處セラレ
其ノ執行ヲ終リタル者又ハ刑ノ執行猶
豫ノ言渡ヲ受ケタル者思想犯保護觀察
法ニ依リ保護觀察ニ付セラレ居ル場合
ニ於テ保護觀察ニ依ルモ同章ニ揭グル
罪ヲ犯スノ危險ヲ防止スルコト困難ニ
シテ更ニ之ヲ犯スノ虞アルコト顯著ナ
ルトキ亦前項ニ同ジ
第四十條豫防拘禁ノ請求ハ本人ノ現在
地ヲ管轄スル地方裁判所ノ檢事其ノ裁
判所ニ之ヲ爲スベシ
前項ノ請求ハ保護觀察ニ付セラレ居ル
者ニ係ルトキハ其ノ保護觀察ヲ爲ス保
護觀察所ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判
所ノ檢事其ノ裁判所ニ之ヲ爲スコトヲ
得
豫防拘禁ノ請求ヲ爲スニハ豫メ豫防拘
禁委員會ノ意見ヲ求ムルコトヲ要ス
豫防拘禁委員會ニ關スル規定ハ勅令ヲ
以テ之ヲ定ム
第四十一條檢事ハ豫防拘禁ノ請求ヲ爲
スニ付テハ必要ナル取調ヲ爲シ又ハ公
務所ニ照會シテ必要ナル事項ノ報〓ヲ
求ムルコトヲ得
前項ノ取調ヲ爲スニ付必要アル場合ニ
於テハ司法警察官吏ヲシテ本人ヲ同行
セシムルコトヲ得
第四十二條檢事ハ本人定リタル住居ヲ
有セザル場合又ハ逃亡シ若ハ逃亡スル
虞アル場合ニ於テ豫防拘禁ノ請求ヲ爲
スニ付必要アルトキハ本人ヲ豫防拘禁
所ニ假ニ收容スルコトヲ得但シ已ムコ
トヲ得ザル事由アル場合ニ於テハ監獄
ニ假ニ收容スルコトヲ妨ゲズ
前項ノ假收容ハ本人ノ陳述ヲ聽キタル
後ニ非ザレバ之ヲ爲スコトヲ得ズ但シ
本人陳述ヲ肯ゼズ又ハ逃亡シタル場合
ハ此ノ限ニ在ラズ
第四十三條前條ノ假收容ノ期間ハ十日
トス其ノ期間內ニ豫防拘禁ノ請求ヲ爲
サザルトキハ速ニ本人ヲ釋放スベシ
第四十四條豫防拘禁ノ請求アリタルト
キハ裁判所ハ本人ノ陳述ヲ聽キ決定ヲ
爲スベシ此ノ場合ニ於テハ裁判所ハ本
人ニ出頭ヲ命ズルコトヲ得
本人陳述ヲ肯ゼズ又ハ逃亡シタルトキ
ハ陳述ヲ聽カズシテ決定ヲ爲スコトヲ
得
刑ノ執行終了前豫防拘禁ノ請求アリタ
ルトキハ裁判所ハ刑ノ執行終了後ト雖
モ豫防拘禁ニ付スル旨ノ決定ヲ爲スコ
トヲ得
第四十五條裁判所ハ事實ノ取調ヲ爲ス
ニ付必要アル場合ニ於テハ參考人ニ出
頭ヲ命ジ事實ノ陳述又ハ鑑定ヲ爲サシ
ムルコトヲ得
裁判所ハ公務所ニ照會シテ必要ナル事
項ノ報告ヲ求ムルコトヲ得
第四十六條檢事ハ裁判所ガ本人ヲシテ
陳述ヲ爲サシメ又ハ參考人ヲシテ事實
ノ陳述若ハ鑑定ヲ爲サシムル場合ニ立
會ヒ意見ヲ開陳スルコトヲ得
第四十七條本人ノ屬スル家ノ戶主、配
偶者又ハ四親等內ノ血族若ハ三親等內
ノ姻族ハ裁判所ノ許可ヲ受ケ輔佐人ト
爲ルコトヲ得
輔佐人ハ裁判所ガ本人ヲシテ陳述ヲ爲
サシメ若ハ參考人ヲシテ事實ノ陳述若
ハ鑑定ヲ爲サシムル場合ニ立會ヒ意見
ヲ開陳シ又ハ參考ト爲ルベキ資料ヲ提
出スルコトヲ得
第四十八條左ノ場合ニ於テハ裁判所ハ
本人ヲ勾引スルコトヲ得
-本人定リタル住居ヲ有セザルトキ
ニ本人逃亡シタルトキ又ハ逃亡スル
虞アルトキ
三本人正當ノ理由ナクシテ第四十四
條第一項ノ出頭命令ニ應ゼザルトキ
第四十九條前條第一號又ハ第二號ニ規
定スル事由アルトキハ裁判所ハ本人ヲ
豫防拘禁所ニ假ニ收容スルコトヲ得但
シ已ムコトヲ得ザル事由アル場合ニ於
テハ監獄ニ假ニ收容スルコトヲ妨ゲズ
本人監獄ニ在ルトキハ前項ノ事由ナシ
ト雖モ之ヲ假ニ收容スルコトヲ得
第四十二條第二項ノ規定ハ第一項ノ場
合ニ付之ヲ準用ス
第五十條別段ノ規定アル場合ヲ除クノ
外刑事訴訟法中勾引ニ關スル規定ハ第
四十八條ノ勾引ニ、勾留ニ關スル規定
ハ第四十二條及前條ノ假收容ニ付之ヲ
準用ス但シ保釋及責付ニ關スル規定ハ
此ノ限ニ在ラズ
第五十一條豫防拘禁ニ付セザル旨ノ決
定ニ對シテハ檢事ハ卽時抗告ヲ爲スコ
トヲ得
豫防拘禁ニ付スル旨ノ決定ニ對シテハ
本人及輔佐人ハ卽時抗告ヲ爲スコトヲ
得
第五十二條別段ノ規定アル場合ヲ除ク
ノ外刑事訴訟法中決定ニ關スル規定ハ
第四十四條ノ決定ニ、卽時抗〓ニ關ス
ル規定ハ前條ノ卽時抗〓ニ付之ヲ準用
ス
第五十三條豫防拘禁ニ付セラレタル者
ハ豫防拘禁所ニ之ヲ收容シ改悛セシム
ル爲必要ナル處置ヲ爲スベシ
豫防拘禁所ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ
之ヲ定ム
第五十四條豫防拘禁ニ付セラレタル者
ハ法令ノ範圍內ニ於テ他人ト接見シ又
ハ信書其ノ他ノ物ノ接受ヲ爲スコトヲ
得
豫防拘禁ニ付セラレタル者ニ對シテハ
信書其ノ他ノ物ノ檢閱、差押若ハ沒取ヲ
爲シ又ハ保安若ハ懲戒ノ爲必要ナル處置
ヲ爲スコトヲ得假ニ收容セラレタル者
及本章ノ規定ニ依リ勾引狀ノ執行ヲ受
ケ留置セラレタル者ニ付亦同ジ
第五十五條豫防拘禁ノ期間ハ二年トス
特ニ繼續ノ必要アル場合ニ於テハ裁判
所ハ決定ヲ以テ之ヲ更新スルコトヲ得
豫防拘禁ノ期間滿了前更新ノ請求アリ
タルトキハ裁判所ハ期間滿了後ト雖モ
更新ノ決定ヲ爲スコトヲ得
更新ノ決定ハ豫防拘禁ノ期間滿了後確
定シタルトキト雖モ之ヲ期間滿了ノ時
確定シタルモノト看做ス
第四十條、第四十一條及第四十四條乃
至第五十二條ノ規定ハ更新ノ場合ニ付
之ヲ準用ス此ノ場合ニ於テ第四十九條
第二項中監獄トアルハ豫防拘禁所トス
第五十六條豫防拘禁ノ期間ハ決定確定
ノ日ヨリ起算ス
拘禁セラレザル日數又ハ刑ノ執行ノ爲
拘禁セラレタル日數ハ決定確定後ト雖
モ前項ノ期間ニ算入セズ
第五十七條決定確定ノ際本人受刑者ナ
ルトキハ豫防拘禁ハ刑ノ執行終了後之
ヲ執行ス
監獄ニ在ル本人ニ對シ豫防拘禁ヲ執行
セントスル場合ニ於テ移送ノ準備其ノ
他ノ事由ノ爲特ニ必要アルトキハ一時
拘禁ヲ繼續スルコトヲ得
豫防拘禁ノ執行ハ本人ニ對スル犯罪ノ
搜査其ノ他ノ專由ノ爲特ニ必要アルト
キハ決定ヲ爲シタル裁判所ノ檢事又ハ
本人ノ現在地ヲ管轄スル地方裁判所ノ
檢事ノ指揮ニ因リ之ヲ停止スルコトヲ
得
刑事訴訟法第五百三十四條乃至第五百
三十六條及第五百四十四條乃至第五百
五十二條ノ規定ハ豫防拘禁ノ執行ニ付
之ヲ準用ス
第五十八條豫防拘禁ニ付セラレタル者
收容後其ノ必要ナキニ至リタルトキハ
第五十五條ニ規定スル期間滿了前ト雖
モ行政官廳ノ處分ヲ以テ之ヲ退所セシ
ムベシ
第四十條第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニ
付之ヲ準用ス
第五十九條豫防拘禁ノ執行ヲ爲サザル
コト二年ニ及ビタルトキハ決定ヲ爲シ
タル裁判所ノ檢事又ハ本人ノ現在地ヲ
管轄スル地方裁判所ノ檢事ハ事情ニ因
リ其ノ執行ヲ免除スルコトヲ得
第四十條第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニ
付之ヲ準用ス
第六十條天災事變ニ際シ豫防拘禁所內
ニ於テ避難ノ手段ナシト認ムルトキハ
收容セラレタル者ヲ他所ニ護送スベシ
若シ護送スルノ暇ナキトキハ一時之ヲ
解放スルコトヲ得
解放セラレタル者ハ解放後二十四時間
內ニ豫防拘禁所又ハ警察官署ニ出頭ス
ベシ
第六十一條本章ノ規定ニ依リ豫防拘禁
所若ハ監獄ニ收容セラレタル者又ハ勾
引狀若ハ逮捕狀ヲ執行セラレタル者逃
走シタルトキハ一年以下ノ懲役ニ處ス
前條第一項ノ規定ニ依リ解放セラレタ
ル者同條第二項ノ規定ニ違反シタルト
キ亦前項ニ同ジ
第六十二條收容設備若ハ械具ヲ損壞
シ、暴行若ハ脅迫ヲ爲シ又ハ二人以上
通謀シテ前條第一項ノ罪ヲ犯シタル者
ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ處ス
第六十三條前二條ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第六十四條本法ニ規定スルモノノ外豫
防拘禁ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以
テ之ヲ定ム
第六十五條朝鮮ニ在リテハ豫防拘禁ニ
關シ地方裁判所ノ爲スベキ決定ハ地方
法院ノ合議部ニ於テ之ヲ爲ス
朝鮮ニ在リテハ本章中地方裁判所ノ檢
事トアルハ地方法院ノ檢事、思想犯保
護觀察法トアルハ朝鮮思想犯保護觀察
令、刑事訴訟法トアルハ朝鮮刑事令ニ
於テ依ルコトヲ定メタル刑事訴訟法ト
ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第一章ノ改正規定ハ本法施行前從前ノ規
定ニ定メタル罪ヲ犯シタル者ニ亦之ヲ適
用ス但シ改正規定ニ定ムル刑ガ從前ノ規
定ニ定メタル刑ヨリ重キトキハ從前ノ規
定ニ定メタル刑ニ依リ處斷ス
第二章ノ改正規定ハ本法施行前公訴ヲ提
起シタル事件ニ付テハ之ヲ適用セズ
第三章ノ改正規定ハ從前ノ規定ニ定メタ
ル罪ニ付本法施行前刑ニ處セラレタル者
ニ亦之ヲ適用ス
本法施行前朝鮮刑事令第十二條乃至第十
五條ノ規定ニ依リ爲シタル搜査手續ハ本
法施行後ト雖モ仍其ノ效力ヲ有ス
前項ノ搜査手續ニシテ本法ニ之ニ相當ス
ル規定アルモノハ之ヲ本法ニ依リ爲シタ
ルモノト看做ス
本法施行前朝鮮思想犯豫防拘禁令ニ依リ
爲シタル豫防拘禁ニ關スル手續ハ本法施
行後ト雖モ仍其ノ效力ヲ有ス
前項ノ豫防拘禁ニ關スル手續ニシテ本法
ニ之ニ相當スル規定アルモノハ之ヲ本法
ニ依リ爲シタルモノト看做ス
〔國務大臣柳川平助君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=2
-
003・柳川平助
○國務大臣(柳川平助君) 只今上程ニ相成
リマシタ治安維持法改正法律案ヲ提出スル
ニ至リマシタ理由ヲ御說明申上ゲマス、御
承知ノ通リ、我ガ國ハ今ヤ內外共ニ實ニ重
大ナル時局ニ際會シテ居ルノデアリマス、
此ノ重大時局ヲ乘切ル爲ニハ、官民共ニ益〓、
肇國ノ精神ヲ發揚シ、一致協力シテ國體ヲ擁
護シ、聖業翼贊ノ信念ヲ堅持シテ進マナケ
レバナラヌコトハ申ス迄モナイ所デアリ
マンク、然ルニ永年ニ亙リ當局ガ銳意檢擧ヲ
續行致シタニモ拘ラズ、斯カル重大時局下
ニ於テ、共產主義其ノ他ノ詭激思想運動ガ
依然終熄致シマセヌノミナラズ、最近ニ於
キマシテハ再ビ擡頭シツヽアルヤニ認メ
ラレマスコトハ、誠ニ遺憾ノ次第デアリマ
ス、現下ノ我ガ國情ハ、官民一致ノ努力ニモ
拘ラズ、事變ノ長期化ト國際情勢ノ變化ニ
伴ヒ、各種ノ經濟現象ガ漸次複雜化シツ
アルノデアリマスガ、斯カル社會情勢ハ
動モスレバ詭激思想ヲ助成シ、詭激思想抱
懷者ヲシテ乘ズルノ機會ヲ與フルコトト相
成ルノデアリマス、從ヒマシテ是等不逞ノ
思想運動ニ對シマシテ、現在程强力ナル施
策ヲ必要トスル時機ハナイノデアリマス
而シテ之ガ對策ト致シマシテハ、〓育其ノ
他ノ方面ニ於ケル諸般ノ施設ヲ必要ト致ス
コト勿論デアリマシテ、啻ニ刑罰ヲ以テ之
ガ根絕ヲ期スルコトハ至難ノ業デアリマス
コトハ勿論デアリマスガ、苟モ國體ノ變革
ヲ企圖スルガ如キ不逞極リナキ詭激思想ノ
抱懷者ニ對シマシテハ、之ヲ徹底的ニ檢擧
處罰シ、彼等ヲシテ蠢動ノ餘地ナカラシム
ルコト亦必要缺クベカラザルコトデアリマ
ス、現行治安維持法ハ、御承知ノ如ク大正
十四年ノ制定ニ係リ、其ノ後昭和三年緊急
勅令ヲ以テ、其ノ一部ニ改正ガ加ヘラレタ
ニ過ギナイノデアリマシテ、大正末期ヨリ昭
和初年ニ掛ケテノ思想運動情勢ヲ背景トシ
テ規定セラレマシタル關係上、共產主義運
動、殊ニ日本共產黨ノ活動ヲ主タル對象ト
シテ規定セラレテ居ルノデアリマス、然ル
ニ運動情勢ノ變化ニ順應シ、治安維持ノ目
的ヲ達スルガ爲ニハ、一面共產主義運動ノ
ミナラズ、無政府主義運動、民族獨立運動
又ハ類似宗〓運動等、各種ノ詭激思想運動
二七亦之ヲ適用スル實際上ノ必要ガアリ
マスルト共ニ、他面共產主義運動ニ關シマ
シテモ、情勢ノ變化、殊ニ所謂人民戰線方
策ノ採用ニ依リ、其ノ運動形態ハ本法制定
當時ニ比シ極メテ複雜化スルニ至リマシタ
ノデ、現行治安維持法ハ事案ヲ處理致ス上
ニ於テ不備ノ點ガ多々存スルニ至ッタノデア
リマス、從ッテ事態ノ變化ニ對應シテ、取締ノ
完璧ヲ期スル爲、現行法ノ罰則ヲ整備强化ス
ル必要ガアルノデアリマス、ソレト同時ニ、
本法施行以來ノ實蹟ニ徵シ、且思想犯罪事
件ノ特質ニ鑑ミマシテ、搜査機關ノ搜査手
段ヲ强化致シ、其ノ迅速適正ヲ期スルト共
ニ、裁判手續モ亦之ヲ極メテ敏速化シ、且
又過去ニ於テ此ノ種事件ニ關シ屢〓行ハレ
タ所謂法廷鬪爭ヲ防止スル爲ノ制度ヲ設ク
ル必要ガアルノデアリマス、搜査及審査ニ
關スル現行刑事訴訟法ノ規定ハ極メテ不備
デアリマシテ、斯カル現下ノ必要ヲ十分ニ
充シ得マセヌノデ、其ノ不備ヲ補ヒ、其ノ
完璧ヲ期スルコトハ喫緊ノ要務デアリマス、
更ニ最近ノ共產主義運動ノ實情ヲ見マスル
ニ、活動ノ中心ヲ成スモノハ、多ク非轉向
ノ刑餘者又ハ執行猶豫者デアリマスノミナ
ラズ、思想犯人ノ特質ヨリ致シマシテ、
旦感染シタル危激思想ハ容易ニ拂拭致シ難
ク、刑ノ執行ニ依ルモ改悛セザル者其ノ數
ニ乏シクアリマセヌ、此ノ實情ニ鑑ミ、思
想犯罪ノ鎭壓ト豫防ノ效果ヲ完璧ナラシム
ル爲ニ、一定ノ條件ト手續ノ下ニ、所謂非
轉向分子ヲ社會ヨリ隔離シ、且其ノ改悛ヲ
促スコトヲ目的トスル豫防拘禁制度ヲ設ク
ル必要ガアルノデアリマス、之ヲ要シマスル
ニ現行治安維持法ヲ全般ニ亙ツテ改正シ、
罰則ヲ整備强化シテ其ノ完璧ヲ期シ、特別
刑事手續ヲ創設シテ檢擧ヨリ裁判ニ至ル
迄、其ノ手續ヲ迅速適正化シ、豫防拘禁制
度ヲ確立シ、非轉向分子ヲシテ乘ズル所ナ
カラシムルコトハ)現下喫緊ノ要務デアリ
マシテ、國體ヲ擁護シ、大義ヲ匡シ、以テ
高度國防國家體制ノ完璧ヲ期スル所以デア
ルト信ジ、玆ニ本案ヲ提出スル次第デアリ
マン、何卒愼重御審議ノ上速カニ御協賛ア
ラムコトヲ希望致ス次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=3
-
004・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今日程ニ上リマシタ
治安維持法改正法律案ハ十八名ノ委員ト
シ、其委員ノ指名ヲ議長ニ一任スルノ動議
ヲ提出致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=4
-
005・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=5
-
006・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 戶澤子爵ノ動議
ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=6
-
007・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、書記官ヲシテ委員ノ氏名ヲ朗讀致
サセマス
〔佐藤書記官朗讀〕
治安維持法改正法律案特別委員
公爵二條弼基君侯爵井上三郞君
伯爵兒玉秀雄君子爵岡部長景君
子爵舟橋〓賢君織田萬君
村上恭一君男爵井田磐楠君
田口弼一君堀切善次郞君
男爵伊江朝助君男爵渡邊修二君
山岡萬之助君次田大三郞君
長岡隆一郞君竹下豐次君
山隈康君上野喜左衞門君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=7
-
008・松平頼壽
○議長(伯爵松平頼壽君) 日程第二、國民
貯蓄組合法案、日程第三、國民更生金庫法
案、日程第四、日本勸業銀行法中改正法律
案、日程第五、北海道拓殖銀行法中改正法
律案、日程第六、農工銀行法中改正法律案、
政府提出、衆議院送付、第一讀會、是等ノ
五案ヲ一括シテ議題ト爲スコトニ御異議ゴ
ザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=8
-
009・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナシト認
メマス、河田大藏大臣
國民貯蓄組合法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十六年二月二十日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
國民貯蓄組合法案
國民貯蓄組合法
第一條本法ニ於テ國民貯蓄組合トハ左
ノ各號ノ一ニ揭グル者ヲ以テ組織シ
戰時(戰爭ニ準ズベキ事變ノ場合ヲ含
ム)ニ於ケル國民貯蓄ノ增强ニ資スル
爲組合員ノ貯蓄ノ斡旋ヲ爲スモノヲ謂
フ
一市町村(町村制ヲ施行セザル地ニ
在リテハ之ニ準ズベキモノ)ノ一部
ニシテ命令ヲ以テ定ムル區域內ニ居
住スル者
二官公署、學校、事務所、營業所、
工場、事業場又ハ之ニ準ズベキモノ
ニ勤務スル者
三產業組合、商業組合、工業組合其
ノ他同業者ノ組織スル團體ノ構成員
四前各號ニ揭グル者ノ外命令ヲ以テ
定ムル者
第二條國民貯蓄組合ノ斡旋ヲ爲ス貯蓄
ハ左ノ方法ニ依ルベシ
-郵便貯金又ハ郵便年金ノ掛金若ハ
簡易生命保險ノ保險料ノ拂込
二銀行ヘノ預ケ金又ハ定期積金
三信託會社ヘノ金錢信託
四產業組合其ノ他命令ヲ以テ定ムル
產業團體ヘノ貯金
五無盡會社ヘノ無盡ノ掛金ノ拂込
六生命保險ノ保險料ノ拂込
七國債、貯蓄債劵又ハ報國債劵ノ買
入
八其ノ他主務大臣ノ指定スルモノ
前項ノ貯蓄ノ幹旋ノ方法ハ命令ヲ以テ
之ヲ定ム
第三條國民貯蓄組合ヲ組織シタルトキ
ハ組合ノ代表者ハ命令ノ定ムル所ニ依
リ組合規約ヲ主務大臣ニ屆出ヅベシ組
合規約ヲ變更シタルトキ亦同ジ
國民貯蓄組合解散シタルトキハ組合ノ
代表者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ旨
ヲ主務大臣ニ屆出ヅベシ
第四條國民貯蓄組合ノ斡旋ニ依ル銀行
預金又ハ合同運用信託ニシテ命令ヲ以
テ定ムルモノノ元本ガ三千圓ヲ超エザル
トキハ其ノ利子又ハ利益ニ付テハ命令ノ
定ムル所ニ依リ甲種ノ配當利子所得ニ
對スル分類所得稅ヲ免除ス國民貯蓄組
合ノ斡旋ニ依リ買入レ命令ノ定ムル所
ニ依リ郵便官署ニ保管ヲ委託シ又ハ登
錄ヲ爲シタル國債ニシテ額面金額三千
圓ヲ超エザルモノノ利子ニ付亦同ジ
國民貯蓄組合ノ斡旋ニ依ル銀行貯蓄預
金產業組合貯金其ノ他ノ預金ニシテ
命令ヲ以テ定ムルモノノ元本ガ五千圓
ヲ超エザルトキハ其ノ利子ニ付テハ命
令ノ定ムル所ニ依リ甲種ノ配當利子所
得ニ對スル分類所得稅ヲ免除ス
前二項ノ場合ニ於テ預金又ハ合同運用
信託ガ組合ノ代表者ノ名義ヲ以テ爲サ
ルルトキハ元本ハ組合員每ニ其ノ預金
又ハ合同運用信託ニ付之ヲ計算ス
前項ノ規定ハ第一項ノ場合ニ於テ國債
ノ保管ノ委託又ハ登錄ガ組合ノ代表者
ノ名義ヲ以テ爲サルル場合ノ額面金額
ノ計算ニ之ヲ準用ス
前四項ノ元本及額面金額ハ命令ノ定ム
ル所ニ依リ之ヲ計算ス
第五條政府ハ豫算ノ範圍內ニ於テ國民
貯蓄組合ニ補助金又ハ奬勵金ヲ交付ス
ルコトヲ得
第六條主務大臣必要アリト認ムルトキ
ハ命令ノ定ムル所ニ依リ第一條各號ノ
一ニ揭グル者ニ對シ國民貯蓄組合ヲ組
織スベキコトヲ命ズルコトヲ得
第七條主務大臣ハ國民貯蓄組合ノ代表
者ニ對シ貯蓄ニ關シ報告ヲ爲サシメ、
帳簿書類其ノ他ノ物件ノ檢査ヲ爲シ又
ハ組合ノ代表者ノ改任其ノ他監督上必
要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第八條主務大臣ハ勅令ノ定ムル所ニ依
リ本法ニ定ムル鬱權ノ一部ヲ地方長官
ニ委任スルコトヲ得
地方長官ハ前項ノ規定ニ依リ委任ヲ受
ケタル職權ニ屬スル事務ノ一部ヲ市町
村長(市制第六條及第八十二條第三項
ノ市ニ在リテハ區長、町村制ヲ施行セ
ザル地ニ在リテハ之ニ準ズベキモノ)
ヲシテ取扱ハシムルコトヲ得
第九條貯蓄銀行ニ非ザル銀行ハ貯蓄銀
行法第一條ノ規定ニ拘ラズ命令ノ定ム
ル所ニ依リ國民貯蓄組合ノ斡旋ニ依ル
場合ニ限リ同法第一條第一項第一號又
ハ第三號ニ揭グル業務ヲ營ムコトヲ得
第四條第二項及第三項竝ニ所得稅法第
十一條、第二十一條及第二十九條中銀
行貯蓄預金ニ關スル規定ハ前項ノ規定
ニ依リ受入レタル預金ニハ之ヲ適用セ
ズ
第十條貯蓄銀行ニ非ザル銀行ハ命令ノ
定ムル所ニ依リ前條第一項ノ規定ニ依
リ受入レタル金額ノ三分ノ一以上ノ金
額ニ相當スル國債ヲ供託スベシ
前條第二項ノ預金ヲ爲シタル者ハ其ノ
預金ニ關シテハ前項ノ規定ニ依リテ供
託シタル國債ニ付他ノ債權者ニ先チ辨
濟ヲ受クルノ權利ヲ有ズ
前項ノ規定ニ依リ優先辨濟ヲ受クル範
圍ハ預金額ヲ限度トス
第十一條國民貯蓄組合ノ代表者本法若
ハ本法ニ基キテ發スル命令又ハ之ニ基
キテ爲ス處分ニ違反シタルトキハ三百
圓以下ノ過料ニ處ス
第十二條本法ニ規定スルモノノ外國民
貯蓄組合ニ關スル事項ハ命令ヲ以テ之
ファミナト
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行ノ際現ニ存スル團體ニシテ第一
條各號ノ一ニ揭グル者ヲ以テ組織シ戰時
(戰爭ニ準ズベキ事變ノ場合ヲ含ム)ニ於
ケル國民貯蓄ノ增强ニ資スル爲第二條ニ
揭グル貯蓄ノ斡旋ヲ爲スモノハ之ヲ本法
ノ國民貯蓄組合ト看做ス
前項ノ國民貯蓄組合ノ代表者ハ本法施行
後三月以內ニ第三條第一項ノ規定ニ準ジ
組合規約ヲ主務大臣ニ屆出ヅベシ
印紙稅法中左ノ通改正ス
第五條第九號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
九ノ二國民貯蓄組合ノ代表者カ組合
ノ業務ニ關シ發スル金錢ノ寄託若ハ
信託行爲ニ關スル證書若ハ通帳又ハ
委任狀
國民更生金庫法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十六年二月二十日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
國民更生金庫法案
國民更生金庫法
第一章總則
第一條國民更生金庫ハ時局ノ要請ニ應
ジ轉業又ハ廢業ヲ爲ス商工業者等ノ資
產及負債ノ整理ヲ促進シ其ノ更生ヲ圖
ルコトヲ目的トス
國民更生金庫ハ法人トス
第二條國民更生金庫ハ主タル事務所ヲ
東京市ニ置ク
國民更生金庫ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ
必要ノ地ニ從タル事務所ヲ設置スルコ
トヲ得
第三條國民更生金庫ハ主務大臣ノ認可
ヲ受ケ銀行其ノ他命令ノ定ムル法人ヲ
シテ業務ノ一部ヲ代理セシムルコトヲ
得
第四條國民更生金庫ノ資本金ハ二千萬
圓トス但シ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ
增加スルコトヲ得
第五條政府ハ千九百萬圓ヲ國民更生金
庫ニ出資スベシ
前項ノ出資ハ國債證劵ヲ交付シテ之ヲ
爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ交付スル國債證劵ノ
交付價格ハ時價ヲ參酌シテ大藏大臣之
ヲ定ム
第六條國民更生金庫ハ定款ヲ以テ左ノ
事項ヲ規定スベシ
-目的
二名稱
三事務所ノ所在地
四資本金額及資產ニ關スル事項
五役員ニ關スル事項
六業務及其ノ執行ニ關スル事項
七更生債劵ノ發行ニ關スル事項
八會計ニ關スル事項
九公〓ノ方法
定款ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ變更
スルコトヲ得
第七條國民更生金庫ハ勅令ノ定ムル所
ニ依リ登記ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依リ登記スベキ事項ハ登
記ノ後ニ非ザレバ之ヲ以テ第三者ニ對
抗スルコトヲ得ズ
第八條國民更生金庫ニハ所得稅、法人
稅及營業稅ヲ課セズ
北海道、府縣、市町村其ノ他之ニ準ズ
ベキモノハ國民更生金庫ノ事業ニ對シ
テハ地方稅ヲ課スルコトヲ得ズ但シ特
別ノ事情ニ基キ內務大臣及大藏大臣ノ
認可ヲ受ケタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第九條國民更生金庫ニ付解散ヲ必要ト
スル事由發生シタル場合ニ於テ其ノ處
置ニ關シテハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第十條國民更生金庫ニ非ザル者ハ國民
更生金庫又ハ之ニ類似スル名稱ヲ用フ
ルコトヲ得ズ
第二章役員
第十一條國民更生金庫ニ理事長一人、
理事三人以上及監事二人以上ヲ置ク
第十二條理事長ハ國民更生金庫ヲ代表
シ其ノ業務ヲ總理ス
理事ハ定款ノ定ムル所ニ依リ國民更生
金庫ヲ代表シ、理事長ヲ輔佐シテ國民
更生金庫ノ業務ヲ掌理シ、理事長事故
アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ、理事長
缺員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
監事ハ國民更生金庫ノ業務ヲ監査ス
第十三條理事長、理事及監事ハ主務大
臣之ヲ命ズ
理事長及理事ノ任期ハ三年、監事ノ任
期ハ二年トス
第十四條理事長ハ定款ノ定ムル所ニ依
リ從タル事務所ノ業務ニ關シ一切ノ裁
判上又ハ裁判外ノ行爲ヲ爲ス權限ヲ有
スル代理人ヲ選任スルコトヲ得
第十五條理事長及理事ハ他ノ職業ニ從
事スルコトヲ得ズ但シ主務大臣ノ認可
ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十六條國民更生金庫ニ評議員若干人
ヲ置キ主務大臣之ヲ命ズ
評議員ハ業務經營ニ關スル重要ナル事
項ニ付理事長ノ諮問ニ應ジ必要アルト
キハ之ニ對シ意見ヲ述ブルコトヲ得
評議員ハ名譽職トシ其ノ任期ハ二年ト
ス
第三章業務
第十七條國民更生金庫ハ左ノ業務ヲ行
フ
-轉業又ハ廢業ヲ爲ス商工業者等ノ
爲ニスル資產ノ管理又ハ處分
二轉業又ハ廢業ヲ爲ス商工業者等ノ
爲ニスル資金ノ融通
三轉業又ハ廢業ヲ爲ス商工業者等ノ
爲ニスル債務ノ引受又ハ保證
四前各號ノ業務ニ附帶スル事業
國民更生金庫ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ
前項ニ揭グル業務以外ノ業務ヲ行フコ
トヲ得
本法ニ規定スルモノノ外國民更生金庫
ノ業務ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以
テ之ヲ定ム
第十八條國民更生金庫ハ左ノ方法ニ依
ルノ外業務上ノ餘裕金ヲ運用スルコト
ヲタノ
ー國債、地方債又ハ主務大臣ノ認可
ヲ受ケタル有價證劵ノ取得
二大藏省預金部ヘノ預金又ハ郵便貯
金
三銀行ヘノ預金又ハ信託會社ヘノ金
錢信託
第四章更生債劵
第十九條國民更生金庫ハ拂込資本金額
ノ十倍ヲ限リ更生債劵ヲ發行スルコト
ヲ得
第二十條更生債劵ハ額面金額五十圓以
上トシ無記名利札附トス但シ應募者又
ハ所有者ノ請求ニ依リ記名ト爲スコト
ヲ得
更生債劵ハ割引ノ方法ヲ以テ之ヲ發行
スルコトヲ得
第二十一條國民更生金庫ハ更生債劵借
換ノ爲一時第十九條ノ制限ニ依ラズ更
生債劵ヲ發行スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ更生債劵ヲ發行シタル
トキハ發行後一月以內ニ其ノ發行額面金
額ニ相當スル舊更生債劵ヲ償還スベシ
第二十二條政府ハ更生債劵ノ元本ノ償
還及利息ノ支拂ヲ保證スルコトヲ得
第二十三條更生債劵ハ賣出ノ方法ヲ以
テ發行スルコトヲ得
第二十四條國民更生金庫ニ於テ更生債
劵ヲ發行セントスルトキハ主務大臣ノ
認可ヲ受クベシ
第二十五條更生債劵ノ消滅時效ハ元本
ニ在リテハ十五年、利息ニ在リテハ五
年ヲ以テ完成ス
第二十六條所得稅法及有價證券移轉稅
法中國債以外ノ公債ニ關スル規定ハ更
生債劵ニ之ヲ準用ス
第二十七條本章ニ規定スルモノノ外更
生債劵ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以
テ之ヲ定ム
第五章會計
第二十八條國民更生金庫ノ事業年度ハ
四月ヨリ翌年三月迄トス
第二十九條國民更生金庫ハ設立ノ時及
每事業年度ノ初ニ於テ財產目錄、貸借
對照表及損益計算書ヲ作成シ定款ト共
ニ之ヲ各事務所ニ備置タコトヲ要ス
出資者及債權者ハ業務時間內何時ニテ
モ前項ニ揭グル書類ノ閱覽ヲ求ムルコ
トヲ得
第六章監督及補助
第三十條主務大臣ハ國民更生金庫ノ業
務ヲ監督ス
第三十一條國民更生金庫ハ主務大臣ノ
認可ヲ受クルニ非ザレバ剩餘金ノ處分
ヲ爲スコトヲ得ズ
第三十二條國民更生金庫ハ業務開始ノ
際業務ノ方法ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ
受タベシ之ヲ變更セントスルトキ亦同
ジ
第三十三條主務大臣ハ國民更生金庫ニ
對シ業務及財產ノ狀況ニ關シ報告ヲ爲
サシメ、檢査ヲ爲シ其ノ他監督上必要
ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ
得
第三十四條主務大臣ハ國民更生金庫監
理官ヲ置キ國民更生金庫ノ業務ヲ監視
セシム
第三十五條國民更生金庫監理官ハ何時
ニテモ國民更生金庫ノ業務及財產ノ狀
況ヲ檢査スルコトヲ得
國民更生金庫監理官ハ必要アリト認ム
ルトキハ何時ニテモ國民更生金庫ニ命
ジテ業務及財產ノ狀況ヲ報告セシムル
コトヲ得
國民更生金庫監理官ハ國民更生金庫ノ
諸般ノ會議ニ出席シテ意見ヲ陳述スル
コトヲ得
第三十六條役員ガ法令、定款若ハ主務
大臣ノ命令ニ違反シ又ハ公益ヲ害スル
行爲ヲ爲シタルトキハ主務大臣ハ之ヲ
解任スルコトヲ得
第三十七條政府ハ國民更生金庫ニ對シ
第十七條ニ規定スル業務ニ因リテ受ケ
タル損失ヲ補償スルノ契約ヲ爲スコト
ヲ得
前項ノ契約パ之ニ基キ交付スベキ礼償
金ノ總額ガ帝國議會ノ協贊ヲ經タル金
額ヲ超エザル範圍內ニ於テ之ヲ爲スコ
トヲ要ス
第一項ノ損失ヲ決定スル基準ハ大藏大
臣之ヲ定ム
第三十八條前條第一項ノ損失及其ノ額
ハ國民更生金庫損失審査會之ヲ決定ス
國民更生金庫損失審査會ノ組織及權限
ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七章罰則
第三十九條左ノ場合ニ於テハ國民更生
金庫ノ理事長、理事又ハ監事ヲ千圓以
下ノ過料ニ處ス
本法ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受タ
ベキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ受ケザル
トキ
二本法ニ規定セザル業務ヲ營ミタル
トキ
三第十八條ノ規定ニ違反シ業務上ノ
餘裕金ヲ運用シタルトキ
四第十九條又ハ第二十一條第二項ノ
規定ニ違反シ更生債劵ノ發行ヲ爲シ
又ハ償還ヲ爲サザルトキ
五主務大臣ノ監督上ノ命令又ハ處分
ニ違反シタルトキ
六國民更生金庫監理官ノ檢査ヲ拒
ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ其ノ命ズル
報告ヲ爲サザルトキ
第四十條左ノ場合ニ於テハ國民更生金
庫ノ理事長、理事又ハ監事ヲ五百圓以
下ノ過料ニ處ス
一本法又ハ本法ニ基キテ發スル勅令
ニ違反シ登記ヲ爲スコトヲ怠リ又ハ
不正ノ登記ヲ爲シタルトキ
二第二十九條ノ規定ニ違反シ書類ヲ
備置カザルトキ、其ノ書類ニ記載ス
ベキ事項ヲ記載セズ若ハ不正ノ記載
ヲ爲シタルトキ又ハ正當ノ事由ナク
シテ其ノ閱覽ヲ拒ミタルトキ
第四十一條第十條ノ規定ニ違反シ國民
更生金庫又ハ之ニ類似スル名稱ヲ用ヒ
タル者ハ五百圓以下ノ過料ニ處ス
附則
第四十二條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以
テ之ヲ定ム
第四十三條主務大臣ハ設立委員ヲム印ジ
國民更生金庫ノ設立ニ關スル事務ヲ處
理セシム
第四十四條設立委員ハ定款ヲ作成シ政
府以外ノ出資者ノ出資ノ申込書ト共ニ
之ヲ主務大臣ニ提出シ設立ノ認可ヲ申
請スベシ
前項ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ
遲滯ナク出資ノ拂込ヲ爲サシムルコト
乙酸
第四十五條出資ノ拂込完了シタルトキ
ハ設立委員ハ遲滯ナク其ノ事務ヲ國民
更生金庫理事長ニ引繼グベシ
理事長前項ノ事務ノ引繼ヲ受ケタルト
キハ理事長、理事及監事ノ全員ハ設立
ノ登記ヲ爲スベシ
國民更生金庫ハ設立ノ登記ヲ爲スニ因
リテ成立ス
第四十六條本法施行ノ際現ニ國民更生
金庫又ハ之ニ類似スル名稱ヲ用フル者
ハ本法施行後六月以內ニ其ノ名稱ヲ變
更スルコトヲ要ス
第十條ノ規定ハ前項ノ期間內之ヲ前項
ニ揭グル者ニ適用セズ
第四十七條國民更生金庫ガ財團法人國
民更生金庫ノ權利ヲ讓受ケ又ハ其ノ義
務ヲ引受ケントスル場合ニ於テハ主務
大臣ノ認可ヲ受クベシ
前項ノ讓受又ハ引受ハ財團法人國民更
生金庫ノ解散ノ日ニ於ケル財產目錄ニ
記載シタル價額ニ依ルコトヲ得
國民更生金庫ガ前項ノ價額ニ依リ第一
項ノ讓受又ハ引受ヲ爲シタルニ因リ受
ケタル損失ハ之ヲ第三十七條第一項ノ
損失ト看做ス
第四十八條登錄稅法中左ノ通改正ス
第十九條第七號中「庶民金庫」ノ上ニ
「國民更生金庫、〓、「庶民金庫法」ノ
上ニ「國民更生金庫法、」ヲ加フ
同條第十七號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
十七ノ二國民更生金庫ガ國民更生
金庫法第十七條ニ規定スル業務ノ
爲ニスル權利ノ取得又ハ所有權ノ
保存ノ登記又ハ登錄
同條第十八號中「庶民金庫」ノ上ニ「國
民更生金庫、」ヲ加フ
第四十九條印紙稅法中左ノ通改正ス
第五條第五號ノ二ノ次ニ左ノ一號ヲ加
フ
五ノ三國民更生金庫ノ業務ニ關ス
ル證書帳簿及更生債劵
第五十條政府出資特別會計法中左ノ通
改正ス
第五條ニ左ノ一項ヲ加フ
公債ノ交付ニ依リ出資ヲ爲ス爲必要
アルトキハ政府ハ前項ノ規定ニ依ル
ノ外本會計ノ負擔ニ於テ公債ヲ發行
スルコトヲ得
日本勸業銀行法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十六年二月二十日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
日本勸業銀行法中改正法律案
日本勸業銀行法中左ノ通改正ス
第十四條日本勸業銀行ハ五十箇年以內
ニ於テ割賦償還ノ方法ニ依リ不動產ヲ
抵當トシテ貸付ヲ爲スモノトス
日本勸業銀行ハ不動產ヲ抵當トシ五箇
年以內ノ定期償還貸付ヲ爲スコトヲ得
但シ水產業ノ爲貸付ヲ爲ス場合ニ於テ
ハ漁業權又ハ漁船ヲ抵當ト爲シ、山林
ヲ抵當トシテ貸付ヲ爲ス場合ニ於テハ
二十箇年以內ノ定期償還貸付ヲ爲スコ
トヲ得
前項ノ貸付金額及第三十一條ノ二ノ貸
付金額ハ拂込資本金額及積立金總高ノ
二倍ヲ超過スルコトヲ得ス
法律ノ規定ニ依リ一箇ノ物ト看做サル
ル財團ハ本法ノ適用ニ付キテハ之ヲ不
動產ト看做ス
第十四條ノ二中「拂込資本金額」ノ下ニ
「、積立金總高」ヲ加フ
第十五條第二項中「年賦償還貸付」ヲ割
賦償還貸付」ニ、同條第三項中「重要輸出
品工業組合」ヲ「工業組合」ニ、「年賦償還
貸付」ヲ「割賦償還貸付」ニ改ム
同條第四項ヲ左ノ如ク改ム
五人以上ノ農業者、林業者、工業者又
ハ漁業者申合セ連帶責任ヲ以テ借用ヲ
申出タルトキハ其ノ信用ノ確實ナルモ
ノニ限リ五箇年以內ニ於テ定期償還ノ
方法ニ依リ又ハ十箇年以內ニ於テ割賦
償還ノ方法ニ依リ無抵當貸付ヲ爲スコ
トヲ得但シ農工銀行ノ存在スル府縣內
ニ於テハ此ノ限ニ在ラス
同條第五項中「年賦償還貸付」ヲ「割賦償
還貸付」ニ改ム
第十五條ノ二、第十六條及第十八條中「漁
業權」ノ下ニ「又ハ漁船」ヲ加フ
第十九條日本勸業銀行ハ財團ヲ抵當ト
スル貸付ヲ爲サントスル場合ニ於テ財
團設定ニ關スル登記又ハ登錄ノ申請アリ
テ其ノ財團ノ設定セラルルコト確實ト
認メタルトキハ抵當權設定ノ登記又ハ登
錄ノ完了前ト雖貸付ヲ爲スコトヲ得
第二十一條中「年賦償還」ヲ「割賦償還」
ニ、「据置年限」ヲ「据置期間」ニ、「年限
間」ヲ「期間內」ニ改ム
第二十一條ノ二中「年賦償還期限」ヲ
賦償還期限」ニ、「据置年限」ヲ「据置期間」
ニバンハ
第二十二條中「年賦金」ヲ「割賦金」ニ改
ム
第二十三條中「年賦償還」ヲ「割賦償還」ニ
改ム
第二十五條及第二十八條中「年賦金」ヲ
「割賦金」ニ改ム
第三十一條中「年賦償還貸付金」ヲ「割賦
償還貸付金」ニ、「年賦償還」ヲ「割賦償還」
二氏八
第三十一條ノ四中「拂込資本金額」ノ下ニ
「及積立金總高」ヲ加フ
第三十二條第一項ヲ左ノ如ク改ム
日本勸業銀行ハ左ノ方法ニ依ルノ外前
條ノ預リ金又ハ營業上ノ餘裕金ヲ使用
スルコトヲ得ス
預リ金四分ノ一以上ハ國債證劵若
ハ大藏大臣ノ認可ヲ受ケタル有價證
劵ノ應募、引受若ハ買入ヲ爲シ又ハ
大藏省預金部若ハ大藏大臣ノ認可ヲ
受ケタル銀行ニ預入ヲ爲スコト但シ
國債證劵以外ノ有價證劵ノ保有額ハ
預リ金ノ總額ヲ超過スルコトヲ得ス
二前號ノ證劵又ハ農產物、林產物、
水產物若ハ工業製造品ヲ擔保トスル
手形ノ割引又ハ短期貸付ヲ爲スコト
三產業組合、蠶絲共同施設組合、工
業組合、漁業組合若ハ其ノ聯合會又
ハ特別ノ法令ニ依リ設立セラレ農林
若ハ水產ニ關スル事業ヲ營ム法人ニ
シテ大藏大臣ノ認可ヲ受ケタルモノ
ニ對シ手形ノ割引又ハ當座預金貸越
ヲ爲スコト
四五人以上ノ農業者、林業者、工業
者又ハ漁業者申合セ連帶責任ヲ以テ
借用ヲ申出タルトキハ其ノ信用ノ確
實ナルモノニ限リ無擔保ニテ短期貸
付ヲ爲スコト但シ農工銀行ノ存在ス
ル府縣內ニ於テハ此ノ限ニ在ラス
五公共團體ニ對シ短期貸付ヲ爲スコ
ト
第三十四條中「年賦償還貸付金總高」ヲ
「割賦償還貸付金總高」ニ改ム
第三十五條ノ四ヲ第三十五條ノ五トス
第三十五條ノ四賣出ノ方法ニ依リ發行
シタル勸業債劵ニ付キテハ變更ノ登記
ハ之ヲ爲スコトヲ要セス但シ其ノ總額
ノ償還アリタルトキハ其ノ登記ヲ爲シ
且每年末ニ於ケル其ノ償還ヲ了ヘサル
額ノ合計額ヲ本店ノ所在地ニ於テハ四
週間、支店ノ所在地ニ於テハ五週間以
內ニ登記スルコトヲ要ス
第三十六條及第三十九條中「年賦償還貸
付金」ヲ「割賦償還貸付金」ニ改ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
復興貯蓄債劵法第九條及臨時資金調整法
第十五條中「第三十五條ノ二、第三十五
條ノ三、」ヲ「第三十五條ノ二乃至第三十
五條ノ四、」ニ改ム
北海拓殖銀行法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十六年二月二十日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
北海道拓殖銀行法中改正法律案
北海道拓殖銀行法中左ノ通改正ス
第七條第一項中「年賦償還」ヲ「割賦償還」
ニ、「又ハ漁業權」ヲ「、漁業權又ハ漁船」ニ
改メ同項第二號ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ山林ヲ抵當トシテ貸付ヲ爲ス場合
ニ於テハ二十箇年以内ノ定期償還貸付
ヲ爲スコトヲ得
同條第三項中「漁業權」ノ下ニ「又ハ漁船」
ヲ加フ
同條第四項ヲ左ノ如ク改ム
法律ノ規定ニ依リ一箇ノ物ト看做サル
ル財團ハ本法ノ適用ニ付テハ之ヲ不動
產ト看做ス
第八條中「年賦」ヲ「割賦」ニ、「十人以上
ノ農業者、」ヲ「五人以上ノ農業者、林業
者、」ニ、「年賦償還」ヲ「割賦償還」ニ、「重
要輸出品工業組合」ヲ「工業組合」ニ改ム
第八條ノ三中「年賦償還」ヲ「割賦償還」
ニ、「据置年限」ヲ「据置期間」ニ、「年賦償
還期限」ヲ「割賦償還期限」ニ改ム
第十一條ノ二中「年賦金」ヲ「割賦金」ニ改
ム
第十二條中「年賦償還貸付金總高」ヲ割
賦償還貸付金總高」ご依人
第十三條、第十四條及第二十條中「年賦
償還貸付金」ヲ「割賦償還貸付金」ニ改ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
農工銀行法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十六年二月二十日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
農工銀行法中改正法律案
農工銀行法中左ノ通改正ス
第六條中「年賦償還」ヲ「割賦償還」ニ、「十
人以上ノ農業者、」ヲ「五人以上ノ農業者、
林業者、」ニ改メ同條第二號ニ左ノ但書ヲ
加フ
但シ山林ヲ抵當トシテ貸付ヲ爲ス場合
ニ於テハ二十箇年以内ノ定期償還貸付
ヲ爲スコトヲ得
第六條ノ二及第七條中「拂込資本金額」ノ
下ニ「、積立金總高」ヲ加フ
第七條ノ二中「漁業權」ノ下ニ「又ハ漁
船」ヲ加フ
第七條ノ五中「重要輸出品工業組合」ヲ
「工業組合」ニ改ム
第七條ノ六、第八條及第十條中「漁業權」
ノ下ニ「又ハ漁船」ヲ加フ
第十一條農工銀行ハ財團ヲ抵當トスル
貸付ヲ爲サントスル場合ニ於テ財團設
定ニ關スル登記ノ申請アリテ其ノ財團
ノ設定セラルルコト確實ト認メタルト
キハ抵當權設定ノ登記ノ完了前ト雖貸
付ヲ爲スコトヲ得
第十三條中「年賦償還」ヲ「割賦償還」ニ、
「据置年限」ヲ「据置期間」ニ、「年限間」ヲ
「期間內」ニ改ム
第十三條ノ二中「年賦償還期限」ヲ「割賦
償還期限」ニ、「据置年限」ヲ「据置期間」
三次人
第十四條中「年賦金」ヲ「割賦金」ニ改ム
第十五條中「年賦償還」ヲ「割賦償還」ニ改
ム
第十七條及第二十條中「年賦金」ヲ「割賦
金」ニ改ム
第二十二條中「拂込資本金額」ノ下ニ「及
積立金總高」ヲ加フ
第二十三條中「農產物、」ノ下ニ「林產物、」
ヲ加ヘ同條中「重要輸出品工業組合」ヲ
「工業組合」ニ、「十人以上ノ農業者、」ヲ
「五人以上ノ農業者、林業者、」ニ改ム
第二十四條中「年賦償還貸付金」ヲ「割賦
償還貸付金」ニ、「年賦償還」ヲ「割賦償還」
二酸六
第二十六條中「年賦償還貸付金總高」ヲ
「割賦償還貸付金總高」ニ改ム
第二十七條及第三十條中「年賦償還貸付
金」ヲ「割賦償還貸付金」ニ改ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣河田烈君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=9
-
010・河田烈
○國務大臣(河田烈君) 只今一括上程セラ
レマシタ日程第二乃至第六ニ付キマシテ御
說明致シマス、先ヅ國民貯蓄組合法案ニ付
テ申上ゲマス、政府ニ於キマシテハ、今次
事變ノ勃發以來、戰時財政經濟ノ圓滑ナル
運行ヲ圖ル爲、國民貯蓄ノ奬勵ニ力ヲ致シ
テ參ッタノデゴザリマスガ、就中國民貯蓄組
合ノ結成ニ依リマシテ貯蓄ノ奬勵ヲ行フコ
トノ極メテ重要ナルヲ認メマシテ、之ガ普
及發達ニ力ヲ注イデ居ル次第デゴザイマス、
卽チ組合ヲ結成シ、團體的ニ、組織的ニ、國
民貯蓄ヲ實行セシメ、以テ戰時資金ノ蓄積
ニ遺憾ナキヲ期シテ參ッタ次第デゴザイマ
ス、而シテ國民貯蓄組合ノ運營ニ付キマシ
テハ、適當ナル指導監督ヲ加ヘ、大體ニ於
テ所期ノ發達ヲ見テ參ッテ居ルノデゴザリ
マスルガ、今後一層此ノ組合ヲ核心トシテ、
國民貯蓄ノ增强ヲ圖ラネバナラヌ秋ニ際會
致シマシテハ更ニ之ヲ整備シ、一面助成
ノ途ヲ拓クト共ニ、他方一層ノ指導監督ヲ
加ヘマシテ、組合ノ健全ナル發達ヲ圖リマ
シテ、以テ現下ノ財政經濟ノ運行ニ對處致
シタイト存ジマシテ、本法案ヲ提出致シタ
次第デゴザイマス、次ニ國民更生金庫法案
ニ付キマシテ申上ゲマス、我ガ國經濟組織
ニ於テ重要ナル地位ヲ占メテ居リマスル中
小商工業者ニ對シマシテハ、常ニ適切ナル
施策ヲ講ジ、國民生活ノ安定ニ資スルノ要
ガアリマスコトハ、今更申上ゲル迄モナイ
所デアリマス、而シテ支那事變ノ進展ニ伴
ヒ、殊ニ最近ノ如ク緊迫セル國際情勢ノ下
ニ於キマシテハ、國內經濟ノ締制ガ更ニ强
化セラレルノハ已ムヲ得ナイ所デゴザリマ
ス、其ノ結果、一部ノ中小商工業者ニ對シ
マシテハ少カラザル影響ヲ與フルコトト
ナルモノト考ヘラレル節モアルノデアリマ
ス、政府ハ、是等中小商工業者ニ對シマシ
テハ、低利資金ノ融通、中小商工業資金融通
損失補償制度ノ擴充、商工組合中央金庫ノ
活動ノ促進ナドノ措置ヲ講ジマシテ、之ガ
維持育成ニ努メテ居ルノデゴザリマスガ、
ソレニモ拘ラズ、轉業又ハ廢業ノ餘儀ナキ
ニ立到ッタモノニ對シマシテハ軍需產業
其ノ他ノ方面ヘノ轉換ヲ指導シ、補助金ノ
交付、低利資金ノ融通ナド諸般ノ施策ヲ實
行シテ參ッタノデアリマス、而モ尙之ガ十全
ヲ期スルガ爲ニ、政府ハ此ノ度國民職業指導
所及國民勤勞訓練所ト相竝ビマシテ、國民更
生金庫ヲ設ケルコトト致シタノデゴザイマス、
卽チ國民更生金庫ニ付キマシテハ、暫定的ノ
措置トシテ、昨年十二月民法ニ基ク財團法人
國民更生金庫ノ設立ヲ見タ次第デアリマス、
併シナガラ業務ノ性質上、民法上ノ法人デハ
不十分ノ憾ミガゴザリマスノデ、此ノ度特
別ノ法律ヲ制定シ、特別法人ヲシテ之ニ當
ラシムルコトニ致シタノデゴザイマス、國
民更生金庫ハ、時局ノ要請ニ應ジ、轉廢業
ヲ爲サントスル所ノ中小商工業者等ノ爲
ニ、其ノ資產及負債ノ整理ヲ容易ナラシメ、
是等ノ者ヲシテ容易ニ新シイ職域ニ進出
シ、奉公ノ誠ヲ致サシメルコトヲ目的トス
ルモノデゴザイマシテ、現下ノ事態ニ顧ミ
緊要ナル施設デアルト信ズル次第デゴザイ
マス、次ニ日本勸業銀行法中改正法律案竝
ニ北海道拓殖銀行法中改正法律案及農工銀
行法中改正法律案、此ノ三件ヲ一括シテ說
明致シタイト存ジマス、日本勸業銀行法及
農工銀行法ハ明治二十九年、又北海道拓殖
銀行法ハ明治三十二年ノ制定ニ係ルモノデ
ゴザイマシテ、是等ノ法律ハ、當初不動產
銀行ノ堅實ナル發達ヲ期スルガ爲ニ其ノ業
務ニ對シマシテハ嚴重ナル制限ヲ設ケタノ
デアリマス、併シナガラ是等ノ銀行ハ、創
立後何レモ順調ナル發展ヲ示シ、其ノ信用
モ漸次高マルニ從ヒマシテ、是等法律ニ依
ル制限ガ餘リ嚴ニ失スルノ嫌アルニ至リマ
シタノデ、今日迄屢〓其ノ改正ヲ行ヒマシ
テ、時勢ノ進運ニ卽應セシメテ參ッタノデ
ゴザイマス、然ルニ今次事變ノ進展ニ伴ヒ、
我ガ國經濟界ガ飛躍的ナ發展ヲ遂グルニ際
シマシテ、是等銀行ガ今日ノ時局下ニ於テ
擔當致スベキ任務モ亦一層重大トナッタノ
デゴザイマス、而シテ斯カル情勢ニ對處ス
ル爲ニハ是等ノ銀行ノ機能ヲ一層擴充ス
ルノ必要ガ認メラレマスノデ、玆ニ本案ヲ
提出致シタ次第デゴザイマス、以上各案ニ
付キマシテ何卒御容議ノ上速カニ協贊セラ
レムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=10
-
011・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今議題トナリマシタ
國民貯蓄組合法案外四件ノ特別委員ノ數ヲ
十八名トシ、其ノ委員ノ指名ヲ議長ニ一任
スルノ動議ヲ提出致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=11
-
012・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=12
-
013・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 戶澤子爵ノ動議
ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=13
-
014・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、特別委員ノ氏名ヲ朗讀致サセマス
〔佐藤書記官朗讀〕
國民貯蓄組合法案外四件特別委員
侯爵前田利爲君侯爵筑波藤麿君
侯爵久我通顯君伯爵堀田正恒君
子爵梅園篤彥君子爵三島通陽君
子爵由利正通君宇佐美勝夫君
河原田稼吉君男爵松平外與麿君
男爵加藤成之君男爵西酉乙君
大塚惟精君光永星郞君
磯貝浩君山隈康君
吉村友之進君岩元達一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=14
-
015・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第七、委員
會等ノ整理等ニ關スル法律案、政府提出、
衆議院送付、第一讀會、星野國務大臣
委員會等ノ整理等ニ關スル法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十六年二月二十日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
委員會等ノ整理等ニ關スル法律案
第一條米穀自治管理法中左ノ通改正ス
第四十二條削除
第五十五條及附則第二項中「米穀自治
管理委員會ニ諮問シテ」ヲ削ル
第二條對支文化事業特別會計法中左ノ
通改正ス
第九條中「對支文化事業調査會ニ諮問
シ」ヲ削ル
第三條著作權法中左ノ通改正ス
第三十六條ノ三第一項ヲ左ノ如ク改
ム
第二十二條ノ五第二項又ハ第二十
七條第二項ノ規定ニ依ル償金ノ額ニ
付主務大臣ノ諮問ニ應ゼシムル爲著
作權審査會ヲ置ク
第四條映畫法中左ノ通改正ス
第十九條削除
第五條特別都市計畫法、大正十四年法
律第四號及大正十五年法律第五十二號
ハ之ヲ廢止ス
第六條日本銀行特別融通及損失補償法
中左ノ通改正ス
第一條第三項及第四項ヲ削ル
第七條政府所有米穀特別處理法中左ノ
通改正ス
第二條削除
第八條家畜保險法中左ノ通改正ス
第九十六條及第九十八條中「家畜再保
險審査會」ヲ「農林保險審査會」三六人
第九條漁船保險法中左ノ通改正ス
第三十五條中「漁船再保險審査會」ヲ
「農林保險審査會」ニ改ム
第十條森林火災國營保險法中左ノ通改
正ス
第二十二條中「森林火災國營保險審査
會」ヲ「農林保險審査會」三郎人
勇十一條農業保險法中左ノ通改正ス
第七十七條第二項中「農業再保險審査
會」ヲ「農林保險審査會」ニ、同條第四
項中「農業再保險審査會及」ヲ「農林保
險審査會及」ニ改ム
第十二條農村負債整理資金特別融通及
損失補償法中左ノ通改正ス
第九條中「負債整理資金特別融通損失
審査會」ヲ「農林金融改善特別融通損失
審査會」ニ改ム
第十五條中「本法第九條ノ負債整理資
金特別融通損失審査會」ヲ「農林金融改
善特別融通損失審査會」ニ改ム
第十三條臨時農村負債處理法中左ノ通
改正ス
第十八條中「農村負債整理資金特別融
通及損失補償法第九條ノ負債整理資金
特別融通損失審査會」ヲ「農林金融改善
特別融通損失審査會」ニ改ム
第十四條原蠶種管理法中左ノ通改正ス
第四條削除
第十五條製鐵事業法中左ノ通改正ス
第二十五條削除
第十六條石油業法中左ノ通改正ス
第八條削除
第十七條重要鑛物增產法中左ノ通改正
ス
第十九條第一項ヲ左ノ如ク改ム
政府第十六條第二項ノ規定ニ依ル補
償ヲ爲サントスルトキハ重要鑛物委
員會ノ議ヲ經ベシ
第十八條百貨店法中左ノ通改正ス
第二十一條削除
第十九條自動車製造事業法中左ノ通改
正ス
第十八條削除
第二十條輕金屬製造事業法中左ノ通改
正ス
第三十四條第一項ヲ左ノ如ク改ム
政府第二十條ノ規定ニ依ル補償金額
ノ決定ヲ爲サントスルトキハ輕金屬
製造事業委員會ノ議ヲ經ベシ
第二十一條有機合成事業法中左ノ通改
正ス
第二十四條第一項ヲ左ノ如ク改ム
政府第二十條ノ規定ニ依ル補償金額ノ
決定ヲ爲サントスルトキハ有機合成事
業委員會ノ議ヲ經ベシ
第二十二條昭和十二年法律第七十三號
ハ之ヲ廢止ス
第二十三條電氣事業法中左ノ通改正ス
第三十二條主務大臣ハ第二十四條第
一項第二十六條ノ二又ハ第一一十八
條第一項ノ規定ニ依ル命令又ハ處分
其ノ他電氣事業ニ關スル重要事項ニ
付テハ電力審議會ニ諮問スベシ
第二十四條船員職業紹介法中左ノ通改
正ス
第六條削除
第二十五條航路統制法中左ノ通改正ス
第八條削除
第二十六條臨時船舶管理法中左ノ通改
正ス
第十三條中「船舶管理委員會」ヲ「海事
審議會」ニ改ム
第二十七條造船事業法中左ノ通改正ス
第十六條政府ハ前條第二項ノ補償金
額ノ決定ヲ爲サントスルトキハ勅令
ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外海
事審議會ノ議ヲ經ベシ
第二十八條航空機製造事業法中左ノ通
改正ス
第六條第一項中「航空機技術委員會ノ
議ヲ經テ」ヲ削ル
同條第三項ヲ削ル
第十八條中「第十六條若ハ前條第一項
第一號ノ命令又ハ」ヲ削ル
第二十九條大日本航空株式會社法中左
ノ通改正ス
第五十三條ヲ削ル
第三十條小運送業法中左ノ通改正ス
第十二條第二項及第三項ヲ削ル
第三十一條國立公園法中左ノ通改正ス
第一條中「國立公園委員會ノ意見ヲ聽
キ區域ヲ定メ主務大臣」ヲ「主務大臣區
域ヲ定メ」ニ改ム
第三條中「國立公園委員會ノ意見ヲ聽
キ」ヲ削ル
第八十二條削除
第三十二條健康保險法中左ノ通改正ス
第八十條中「第一次健康保險審査會」ヲ
「地方社會保險審査會」ニ、「第二次健康
保險審査會」ヲ「中央社會保險審査會」
ニ改ム
第八十二條中「第三次健康保險審査會」
ヲ「中央社會保險審査會」ニ改ム
第八十三條及第八十五條中「健康保險
審査會」ヲ「社會保險審査會」ニ改ム
第三十三條勞働者災害扶助責任保險法
中左ノ通改正ス
第九條及第十條中「勞働者災害扶助責
任保險審査會」ヲ「中央社會保險審査
會」ニ改ム
第三十四條國民健康保險法中左ノ通改
正ス
「第五章國民健康保險委員會、訴願及
訴訟」ヲ「第五章審査會、訴願及訴訟」
二九六人
第四十八條乃至第五十一條中「國民健
康保險委員會」ヲ「地方社會保險審査
會」ニ改ム
第三十五條職員健康保險法中左ノ通改
正ス
第八十一條中「第一次職員健康保險審
査會」ヲ「地方社會保險審査會」ニ、第
二次職員健康保險審査會」ヲ「中央社會
保險審査會」ニ改ム
第八十三條中「第二次職員健康保險審
査會」ヲ「中央社會保險審査會」ニ改ム
第八十四條中「職員健康保險審査會」ヲ
「社會保險審査會」ニ改ム
第三十六條船員保險法中左ノ通改正ス
第六十三條中「第一次船員保險審査會」
ヲ「地方社會保險審査會」ニ、「第二次船
員保險審査會」ヲ「中央社會保險審査
會」ニ改ム
第六十五條中「第二次船員保險審査會」
ヲ「中央社會保險審査會」ニ改ム
第六十六條中「船員保險審査會」ヲ「社
會保險審査會」ニ改ム
附則
第三十七條本法施行ノ期日ハ各規定ニ
付勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十八條第五條ノ規定施行前行政官
廳ガ執行シタル特別都市計畫事業ノ費
用ノ負擔、特別都市計畫法ニ依ル土地
區劃整理ノ〓算金及補償金竝ニ同法ニ
依ル處分ニ對スル訴願及訴訟ニ關シテ
ハ仍從前ノ例ニ依ル
第三十九條第八條乃至第十條ノ規定施
行前家畜再保險審査會、漁船再保險審
査會又ハ森林火災國營保險容査會ニ於
テ爲シタル事件ノ受理其ノ他ノ手續又
ハ審査ノ決定ハ農林保險審査會ニ於テ
之ヲ爲シタルモノト看做ス
第四十條第十二條又ハ第十三條ノ規定
施行前農村負債整理資金特別融通及損
失補償法第九條ノ負債整理資金特別融
通損失審査會ニ於テ爲シタル決定ハ農
林金融改善特別融通損失審査會ニ於テ
之ヲ爲シタルモノド看做ス
第四十一條第二十二條ノ規定施行前從
前ノ昭和十二年法律第七十三號ノ罰則
ヲ適用スベカリシ行爲ニ付テハ仍從前
ノ例ニ依ル
第四十二條第三十二條又ハ第三十四條
乃至第三十六條ノ規定施行前第一次健
康保險審査會、國民健康保險委員會、
第一次職員健康保險審査會又ハ第一次
船員保險審査會ニ於テ爲シタル事件ノ
受理其ノ他ノ手續又ハ審査ノ決定若ハ
意見ノ答申ハ當該審査會又ハ委員會ノ
管轄シタル區域ヲ管轄スル地方社會保
險審査會ニ於テ之ヲ爲シタルモノト看
做ス
第三十二條、第三十三條、第三十五條
又ハ第三十六條ノ規定施行前第二次健
康保險審査會、第三次健康保險審査會、
勞働者災害扶助責任保險審査會、第二
次職員健康保險審査會又ハ第二次船員
保險審査會ニ於テ爲シタル事件ノ受理
其ノ他ノ手續又ハ審査ノ決定ハ中央社
會保險審査會ニ於テ之ヲ爲シタルモノ
ト看做ス
〔國務大臣星野直樹君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=15
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016・星野直樹
○國務大臣(星野直樹君) 只今議題トナリ
マシタル委員會等ノ整理等ニ關スル法律案
ニ付キマシテ提案ノ理由ヲ說明申上ゲマス、
現在各種委員會、調査會等各廳ニ設置セラ
レテ居リマス調査察議機關ハソレ〓〓相
當ノ效果ヲ擧ゲテ參ッタノデアリマスガ、何
分ニモ其ノ總體ノ數ガ頗ル多數ニ上ッテ居
ルノデアリマシテ、却テ行政事務ノ處理ヲ
複雜煩瑣ナラシメテ居ルト認メラレルモノ
モナイデハナイノデゴザイマス、仍テ政府
ハ是等ノ調査審議機關ニ付キマシテ、十分
檢討ヲ加ヘタル上、今日尙眞ニ必要ト認メ
ラレルモノニ限リ之ヲ存置致シマシテ、總
體ト致シマシテノ數ヲ、出來得ル限リ少ク
スルコトト致シタ次第デアリマス、尤モ官
民協力一致致シマシテ、行政事務ノ適正ナ
ル運用ヲ期シマスルコトノ必要ナルコトハ
申ス迄モナイ所デゴザイマスノデ、之ガ爲
ニハソレ〓〓ノ場合ニ應ジ、最モ適切有效
ナル方途ヲ講ジ遺憾ナキヲ期スル考デゴザ
イマス、以上ノ趣旨ニ依ッテ政府ハ委員會
等ノ整理案ヲ立テ、之ガ爲ニ必要ナル法律
ヲ制定セムトスルモノデアリマス、何卒十
分御審議ノ上御協賛ヲ與ヘラレムコトヲ希
望スル次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=16
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017・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御質疑ガナケレ
バ本案ノ特別委員ノ氏名ヲ朗讀致サセマ
ス
〔高山書記官朗讀〕
委員會等ノ整理等ニ關スル法律案特別委
員
公爵岩倉具榮君子爵秋月種英君
下條康麿君賀屋興宣君
男爵大森佳一君男爵山川建君
結城安次君澁澤金藏君
松本勝太郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=17
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018・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第八、蠶絲
業統制法案、政府提出、衆議院送付、第
讀會、石黑農林大臣
蠶絲業統制法案
右政府提出案本院ニ於テ修正議決セリ因
テ議院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十六年二月二十日
衆議院議長小山松壽
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
(小字ハ衆議院ノ修正ナリ)
蠶絲業統制法案
蠶絲業統制法
第一條本法ハ蠶絲ニ對スル內外ノ需要
ニ應ジ蠶絲業ノ統制ヲ行ヒ以テ其ノ安
定及發達ヲ圖ルト共ニ蠶絲業ニ對スル
國民經濟上ノ要求ヲ充足スルコトヲ目
的トス
第二條本法ニ於テ蠶絲トハ蠶種、繭、
生絲其ノ他命令ヲ以テ定ムル蠶絲類ヲ
謂フ
第三條主務大臣ハ蠶絲委員會ニ諮問シ
命令ヲ以テ定ムル蠶絲ノ生產ニ關スル
計畫ヲ定ム
主務大臣ハ勅令ヲ以テ定ムル蠶絲業者
ノ團體ニ對シ勅令ノ定ムル所ニ依リ其
ノ團體員(其ノ團體員ノ團體員ヲ含ム)
ニ對スル生產數量又ハ品種ノ指定其ノ
他前項ノ計畫ノ實施ニ關シ必要ナル統
制ヲ行フベキコトヲ命ズルコトヲ得
前項ノ團體員ハ同項ノ規定ニ依リ團體
ノ行フ指定其ノ他ノ統制ニ從フベシ
蠶絲委員會ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ
之ヲ定ム
第四條蠶種、繭又ハ生絲ノ生產、輸入
又ハ移入ヲ業トスル者ハ命令ノ定ムル
所ニ依リ其ノ生產、輸入又ハ移入ニ係
ル蠶種、繭又ハ生絲ヲ日本蠶絲統制株
式會社ニ賣渡スベシ但シ命令ヲ以テ定
ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
命令ヲ以テ定ムル蠶絲業者ハ其ノ生產
ノ用ニ供スル蠶種又ハ繭ヲ日本蠶絲統
制株式會社以外ノ者ヨリ買入ルルコト
ヲ得ズ但シ命令ヲ以テ定ムル場合ハ此
ノ限ニ在ラズ
第五條繭ノ生產數量ノ減少其ノ他ノ事
由ニ因リ特ニ必要アル場合ニ於テ日本
〓絲統制株式會社ハ主務大臣ノ認可ヲ
受ケ生絲ノ生產ヲ業トスル者ニ對シ其
ノ所有スル繭ノ買取ノ申込ヲ爲スコト
ヲ得
前項ノ申込ヲ受ケタル者ハ其ノ申込ニ
應ジ繭ノ賣渡ヲ爲スコトヲ要ス但シ命
令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第六條主務大臣繭又ハ生絲ノ價格ノ調
整上必要アリト認ムルトキハ日本蠶絲
統制株式會社ニ對シ其ノ行フ繭又ハ生
絲ノ買入又ハ賣渡ニ關シ必要ナル命令
ヲ爲スコトヲ得
第七條主務大臣ハ蠶絲委員會ニ諮問シ
前三條ノ規定ニ依リ日本蠶絲統制株式
會社ガ買入又ハ賣渡ヲ爲ス蠶種、繭及
生絲ノ標準買入價格及標準賣渡價格ヲ
定ム
前項ノ標準買入價格及標準賣渡價格ハ
夫々蠶種、繭又ハ生絲ノ生產費ヲ基準
トシ蠶絲ノ需給狀況、物價其ノ他ノ經
濟事情ヲ參酌シテ之ヲ定ム
第八條日本蠶絲統制株式會社ハ前條ノ
標準買入價格及標準賣渡價格ニ準據シ
テ蠶種、繭及生絲ノ買入價格及賣渡價
格ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
主務大臣前項ノ認可ヲ爲シタルトキハ
命令ノ定ムル所ニ依リ〓示ス
第九條第四條乃至第六條ノ規定ニ依ル
蠶種、繭又ハ生絲ノ買入及賣渡ハ前條
ノ規定ニ依リ主務大臣ノ認可シタル價
格ニ依ルニ非ザレバ之ヲ爲スコトヲ得
ズ
第十條主務大臣ハ第八條ノ規定ニ依リ
其ノ認可シタル價格ヲ除クノ外蠶絲ノ
價格ノ指定ヲ爲スコトヲ得
主務大臣前項ノ指定ヲ爲シタルトキハ
命令ノ定ムル所ニ依リ告示ス
第十一條前條ノ場合ニ於テハ蠶絲ノ買
入及賣渡ハ同條ノ規定ニ依リ主務大臣
ノ指定シタル價格ニ依ルニ非ザレバ之
ヲ爲スコトヲ得ズ但シ命令ヲ以テ定ム
ル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第十二條主務大臣ハ〓絲ノ需給ノ調整
又ハ輸出ノ振興上特ニ必要アリト認ム
ルトキハ蠶絲委員會ニ諮問シ蠶絲ノ生
產、加工、輸出、輸入、移出、移入若
ハ取扱ヲ業トスル者又ハ勅令ヲ以テ定
ムル纖維製品ノ製造ヲ業トスル者ニ對
シ勅令ノ定ムル所ニ依リ蠶絲ノ生產、
配給、消費、使用、輸出、輸入、移出
又ハ移入ノ統制ニ關シ必要ナル命令ヲ
爲スコトヲ得
第十三條政府ハ日本蠶絲統制株式會社
ノ所有スル生絲ガ命令ヲ以テ定ムル數
量ヲ超ユル場合ニ於テ生絲ノ價格又ハ
數量ノ調整ヲ圖ル爲必要アリト認ムル
トキハ日本蠶絲統制株式會社ノ所有ス
ル生絲ノ買入ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ政府ノ買入ルル生絲
ノ買入價格ハ其ノ時ニ於ケル日本蠶絲
統制株式會社ノ買入價格ニ準據シテ主
務大臣之ヲ定ム
第十四條政府ハ生絲ノ價格又ハ數量ノ
調整ヲ圖ル爲必要アリト認ムルトキハ
蠶絲委員會ニ諮問シ日本蠶絲統制株式
會社ニ對シ其ノ所有スル生絲ノ賣渡ヲ
爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ政府ノ賣渡ス生絲ノ
賣渡價格ハ其ノ時ニ於ケル日本蠶絲統
制株式會社ノ賣渡價格ニ準據シテ主務
大臣之ヲ定ム
第十五條前二條ノ規定ニ依ル生絲ノ買
入及賣渡ニ關スル一切ノ歳入歲出ハ絲
價安定施設特別會計ニ屬セシム
第十六條生絲ハ命令ノ定ムル所ニ依リ
國ノ生絲檢査所ノ檢査ヲ受ケタルモノ
ニ非ザレバ之ヲ輸出スルコトヲ得ズ
生絲ハ前項ノ檢査又ハ命令ヲ以テ定ム
ル檢査ニ依ル正量及品位ニ依ルニ非ザ
レバ其ノ賣買取引ヲ爲スコトヲ得ズ
繭ハ命令ノ定ムル所ニ依リ道府縣ノ行
フ檢定ニ依ル品位ニ依ルニ非ザレバ其
ノ賣買取引ヲ爲スコトヲ得ズ
主務大臣前三項ノ規定ヲ適用スル必要
ナシト認ムル場合ハ命令ヲ以テ其ノ適
用ヲ除外スルコトヲ得
第十七條主務大臣ノ指定スル生絲ノ生
產ヲ業トスル者ニ非ザレバ其ノ生產ニ
係ル生絲ニ付前條第一項ノ檢査ヲ受ク
ルコトヲ得ズ
前項ノ者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務
大臣ノ指定スル數量又ハ品種ノ生絲ニ
付前條第一項ノ檢査ヲ受クルコトヲ要
ス
第十八條主務大臣必要アリト認ムルト
キハ勅令ノ定ムル所ニ依リ蠶絲業ヲ營
マントスル者ニ對シ行政官廳ノ許可ヲ
受クベキコトヲ命ズルコトヲ得
行政官廳ハ前項ノ許可ヲ受ケタル者ノ
行爲ガ本法若ハ本法ニ基キテ發スル命
令又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シ又
ハ公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリト認
ムルトキハ其ノ許可ヲ取消シ又ハ其ノ
業務ヲ制限シ若ハ停止スルコトヲ得
第十九條主務大臣必要アリト認ムルト
キハ勅令ノ定ムル所ニ依リ桑園ヲ新設
又ハ擴張セントスル者ニ對シ地方長官
ノ許可ヲ受クベキコトヲ命ズルコトヲ
得
第二十條主務大臣必要アリト認ムルト
キハ蠶種、繭又ハ生絲ノ生產又ハ取扱
ヲ業トスル者其ノ他命令ヲ以テ定ムル
者ニ對シ其ノ業務及財產ノ狀況ニ關シ
報〓ヲ爲サシメ又ハ帳簿書類其ノ他ノ
物件ノ檢査ヲ爲スコトヲ得
第二十一條主務大臣ハ勅令ノ定ムル所
ニ依リ本法ニ規定シタル職權ノ一部ヲ
地方長官ニ委任スルコトヲ得
第二十二條日本蠶絲統制株式會社ハ〓
絲ノ價格ノ安定又ハ需給ノ調整ヲ圖ル
爲必要ナル事業ヲ營ムコトヲ目的トス
ル株式會社トス
第二十三條日本蠶絲統制株式會社ノ資
本ハ八千萬圓トス但シ主務大臣ノ認可
ヲ受ケ之ヲ增加スルコトヲ得
第二十四條日本蠶絲統制株式會社ノ株
式ハ記名式トシ政府、公共團體、帝國
臣民又ハ帝國法人ニシテ社員、株主若
ハ業務ヲ執行スル役員ノ半數以上、資
本ノ半額以上若ハ議決權ノ過半數ガ外
國人若ハ外國法人ニ屬セザルモノニ限
リ之ヲ所有スルコトヲ得
第二十五條政府ハ四千萬圓ヲ限リ日本
蠶絲統制株式會社ニ出資スベシ
政府所有ノ株式ノ株金拂込ハ其ノ他ノ
株式ノ株金拂込ト之ヲ異ニスルコトヲ
得
第二十六條日本蠶絲統制株式會社ニ非
ザルモノハ日本蠶絲統制株式會社又ハ
之ニ類似ノ名稱ヲ以テ其ノ商號ト爲ス
コトヲ得ズ
第二十七條日本蠶絲統制株式會社ニ役
員トシテ社長副社長各一人、理事三人
以上及監事二人以上ヲ置ク
第二十八條社長ハ日本蠶絲統制株式會
社ヲ代表シ其ノ業務ヲ總理ス
副社長ハ社長事故アルトキハ其ノ職務
ヲ代理シ社長缺員ノトキハ其ノ職務ヲ
行フ
副社長及理事ハ社長ヲ輔佐シ定款ノ定
ムル所ニ依リ日本蠶絲統制株式會社ノ
業務ヲ分掌ス
監事ハ日本蠶絲統制株式會社ノ業務ヲ
監査ス
第二十九條社長及副社長ハ主務大臣之
ヲ命ジ其ノ任期ヲ四年トス
理事ハ株主總會ニ於テ之ヲ選任シ主務
大臣ノ認可ヲ受クルモノトシ其ノ任期
ヲ三年トス
監事ハ株主總會ニ於テ之ヲ選任シ其ノ
任期ヲ二年トス
蠶絲業ヲ監督スル官廳ノ官吏タリシ者ハ其ノ職ヲ退キタ
ル後五年間日本蠶絲統制株式會社ノ役員ト爲リ又ハ其ノ
給與ヲ受クル事務ニ從事スルコトヲ得ズ但シ主務大臣ニ
於テ特ニ必要アリト認メタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第三十條社長、副社長及理事ハ他ノ職
務又ハ商業ニ從事スルコトヲ得ズ但シ
主務大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ
限ニ在ラズ
第三十一條日本蠶絲統制株式會社ハ蠶
種繭及生絲ノ買入及賣渡ヲ爲スモノ
トス
日本蠶絲統制株式會社ハ主務大臣ノ認
可ヲ受ケ前項ノ事業ノ外本會社ノ目的
達成上必要ナル諸事業ヲ營ムコトヲ得
第三十二條日本蠶絲統制株式會社ハ每
營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益
金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ
拂込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ四ノ
割合ニ達スル迄政府ノ所有スル株式ニ
對シ利益ノ配當ヲ爲スコトヲ要セズ
第三十三條日本蠶絲統制株式會社ノ每
營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金
額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂
込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ四ノ割
合ニ達セザルトキハ政府ハ初營業年度
及爾後五年間ヲ限リ之ニ達セシムベキ
金額ヲ補給スベシ但シ其ノ額ハ政府以
外ノ者ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株
金額ニ對シ年百分ノ四ノ割合ニ相當ス
?ル額及當該營業年度ニ於テ支拂ヒタル
借入金ノ利息額ノ合計額ヲ超ユルコト
ヲ得ズ
每營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益
金額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ
拂込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ四ノ
割合ヲ超過スルトキハ其ノ超過額ハ先
ヅ之ヲ前項ノ規定ニ依ル補給金ノ償還
ニ充ツベシ
初營業年度及爾後五年間ニ於ケル配當
シ得ベキ利益金額ガ政府以外ノ者ノ所
有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ對シ
年百分ノ四ノ割合ヲ超過スルトキハ其
ノ二分ノ一ヲ配當準備ノ爲別ニ積立ツ
ベシ
第二項ノ規定ニ依リ補給金ヲ償還シ尙
殘餘アリタルトキハ之ヲ前項ノ拂込ミ
タル株金額ニ對シ年百分ノ四ノ割合ヲ
超過シタル當該營業年度ノ利益金ト看
做ス
前二項ノ規定ニ依ル積立金ハ後營業年
度ニ於ケル第一項ノ規定ニ依ル補給金
ノ計算ニ付テハ之ヲ配當シ得ベキ利益
金ト看做ス
第三十四條日本蠶絲統制株式會社ハ每
營業年度ニ於ケル配當シ得ベキ利益金
額ガ政府以外ノ者ノ所有スル株式ノ拂
込ミタル株金額ニ對シ年百分ノ四ノ割
合ヲ超過スル場合ニ於テ政府以外ノ者
ノ所有スル株式ニ對シ年百分ノ四ノ割
合ヲ超エ利益配當ヲ爲サントスルトキ
ハ其ノ超過スル利益金額ハ利益配當ガ
總株式ニ付拂込ミタル株金額ニ對シ均
一ノ割合ニ達スル迄政府以外ノ者ノ所
有スル株式ノ拂込ミタル株金額及政府
ノ所有スル株式ノ拂込ミタル株金額ニ
對シ一ト三トノ割合ヲ以テ之ヲ配當ス
ベシ
第三十五條主務大臣ハ日本蠶絲統制株
式會社ノ業務ヲ監督ス
第三十六條日本蠶絲統制株式會社借入
金ヲ爲サントスルトキハ主務大臣ノ認
可ヲ受クベシ
第三十七條日本蠶絲統制株式會社ノ定
款ノ變更、利益金ノ處分、合併及解散
ノ決議ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非
ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ
第三十八條日本蠶絲統制株式會社ハ每
營業年度ノ事業計畫ヲ定メ主務大臣ノ
認可ヲ受クベシ之ヲ變更セントスルト
キ亦同ジ
第三十九條主務大臣ハ日本蠶絲統制株
式會社ノ業務ニ關シ監督上必要ナル命
令ヲ爲スコトヲ得
第四十條主務大臣ハ日本蠶絲統制株式
會社監理官ヲ置キ日本蠶絲統制株式會
社ノ業務ヲ監視セシム
日本蠶絲統制株式會社監理官ハ何時ニ
テモ日本蠶絲統制株式會社ノ帳簿書類、
金庫其ノ他ノ物件ヲ檢査スルコトヲ得
日本蠶絲統制株式會社監理官必要ト認
ムルトキハ何時ニテモ日本蠶絲統制株
式會社ニ命ジ業務ニ關スル諸般ノ計算
及狀況ヲ報〓セシムルコトヲ得
日本蠶絲統制株式會社監理官ハ株主總
會其ノ他諸般ノ會議ニ出席シ意見ヲ陳
述スルコトヲ得
第四十一條主務大臣ハ日本蠶絲統制株
式會社ノ決議又ハ役員ノ行爲ガ法令、
法令ニ基キテ爲ス處分若ハ定款ニ違反
シ又ハ公益ヲ害シ若ハ害スルノ虞アリ
ト認ムルトキハ其ノ決議ヲ取消シ又ハ
役員ヲ解任スルゴトヲ得
第四十二條日本蠶絲統制株式會社ハ繭
及生絲ノ價格ノ安定ヲ圖ル爲命令ノ定
ムル所ニ依リ繭絲價格安定資金ヲ設定
スベシ
前項ノ規定ニ依リ繭絲價格安定資金ニ
繰入レタル金額ハ法人稅法ニ依ル所得、
營業稅法ニ依ル純益及臨時利得稅法ニ
依ル利益ノ計算上之ヲ損金ニ算入ス
第四十三條第四條、第九條若ハ第十一
條ノ規定又ハ第六條若ハ第十二條ノ規
定ニ依ル命令ニ違反シタル者ハ五千圓
以下ノ罰金ニ處ス
第四十四條第十六條第一項又ハ第一一項
ノ規定ニ違反シタル者ハ三千圓以下ノ
罰金ニ處ス
第四十五條第三條第三項、第五條第二
項若ハ第十六條第三項ノ規定又ハ第十
八條第一項ノ規定ニ依ル命令ニ違反シ
タル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第四十六條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
-第十七條ノ規定ニ違反シタル者
二第二十條ノ規定ニ依ル報〓ヲ爲サ
ズ又ハ虛僞ノ報告ヲ爲シタル者
三第二十條ノ規定ニ依ル檢査ヲ拒ミ、
妨ゲ又ハ忌避シタル者
第四十七條第十九條ノ規定ニ依ル命令
ニ違反シタル者ハ三百圓以下ノ罰金ニ
處ス
第四十八條日本蠶絲統制株式會社ノ役
員又ハ使用人其ノ職務ニ闘シ賄賂ヲ收
受シ又ハ之ヲ要求シ若ハ約束シタルト
キハ二年以下ノ懲役又ハ三千圓以下ノ
罰金ニ處ス因テ不正ノ行爲ヲ爲シ又ハ
相當ノ行爲ヲ爲サザルトキハ五年以下
ノ懲役又ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ場合ニ於テ收受シタル賄賂ハ之
ヲ沒收ス若シ其ノ全部又ハ一部ヲ沒收
スルコト能ハザルトキハ其ノ價額ヲ追
徵ス
第四十九條前條第一項ニ揭グル者ニ賄
賂ヲ交付シ又ハ之ヲ提供シ若ハ約束シ
タル者ハ二年以下ノ懲役又ハ五百圓以
下ノ罰金ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキ
ハ其ノ刑ヲ減輕シ又ハ免除スルコトヲ
得
第五十條人又ハ法人ノ代理人、戶主、
家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ガ
其ノ人又ハ法人ノ業務ニ關シ第四十三條
乃至第四十五條、第四十六條第一號若
ハ第二號又ハ第四十七條ノ違反行爲ヲ
爲シタルトキハ其ノ人又ハ法人ハ自己
ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰
ヲ免ルルコトヲ得ズ
第五十一條第四十三條乃至第四十五
條、第四十六條第一號及第一一號竝ニ第
四十七條ノ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルト
キハ理事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ
執行スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產者
ナルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用
ス但シ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力
ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在
ラズ
第五十二條日本蠶絲統制株式會社左ノ
各號ノ一ニ該當スルトキハ社長又ハ社
長ノ職務ヲ行ヒ若ハ代理スル副社長ヲ
五千圓以下ノ過料ニ處ス副社長又ハ理
事ノ分掌業務ニ係ルトキハ副社長又ハ
理事ヲ過料ニ處スルコト亦同ジ
本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令
ニ依リ許可ヲ受クベキ場合ニ於テ其
ノ認可ヲ受ケザルトキ
二第三十一條第一項ノ規定ニ依ラズ
シテ業務ヲ營ミタルトキ
三第三十九條ノ規定ニ依ル命令ニ違
反シタルトキ
第五十三條日本蠶絲統制株式會社ノ社
長、副社長又ハ理事第三十條ノ規定ニ違
反シタルトキハ千圓以下ノ過料ニ處ス
第五十四條第二十六條ノ規定ニ違反シ
タル者ハ千圓以下ノ過料ニ處ス
附則
第五十五條本法施行ノ期日ハ各規定ニ
付勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十六條政府ハ設立委員ヲ命ジ日本
蠶絲統制株式會社ノ設立ニ關スル事務
ヲ處理セシム
第五十七條設立委員ハ定款ヲ作成シ主
務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第五十八條前條ノ認可アリタルトキハ
設立委員ハ株式總數ヨリ政府ニ割當ツ
ベキ株式ヲ控除シタル殘餘ノ株式ニ付
株主ヲ募集スベシ
第五十九條株式申込證ニハ定款認可ノ
年月日竝ニ商法第百七十五條第二項第
二號及第四號乃至第七號ニ規定スル事
項ヲ記載スベシ
第六十條設立委員株主ノ募集ヲ終リタ
ルトキハ株式申込證ヲ主務大臣ニ提出
シ其ノ檢査ヲ受クベシ
第六十一條設立委員ハ前條ノ檢査ヲ受
ケタル後遲滯ナク各株ニ付第一回ノ拂
込ヲ爲サシムベシ
前項ノ拂込アリタルトキハ設立委員ハ
遲滯ナク創立總會ヲ招集スベシ
第六十二條創立總會ニ於テハ第二十九
條ノ規定ニ準ジ理事及監事ノ選任ヲ行
フベシ
第六十三條創立總會終結シタルトキハ
設立委員ハ其ノ事務ヲ日本蠶絲統制株
式會社社長ニ引渡スベシ
第六十四條商法第百六十七條、第百八
十一條及第百八十五條ノ規定ハ日本蠶
絲統制株式會社ノ設立ニハ之ヲ適用セ
ズ
第六十五條第二十六條ノ規定施行ノ際
現ニ日本蠶絲統制株式會社又ハ之ニ類
似ノ名稱ヲ以テ商號ト爲ス會社ハ同條
ノ規定施行後六月以內ニ其ノ商號ヲ變
更スルコトヲ要ス
第二十六條ノ規定ハ前項ノ期間內同項
ニ揭グル者ニ之ヲ適用セズ
第六十六條產繭處理統制法ハ之ヲ廢止
ス
第六十七條輸出生絲檢査法ハ之ヲ廢止
ス
第六十八條絲價安定施設法中左ノ通改
正ス
第二條乃至第九條、第十三條乃至第二
十八條及第三十一條ヲ削除ス
第十條中「絲價安定施設組合」ヲ「政府」
ニューム
第十二條第一項及第三十條中「絲價安
定委員會」ヲ「蠶絲委員會」ニ改ム
第十二條第二項及第三十三條乃至第四
十條ヲ削ル
第六十九條絲價安定施設組合ハ前條ノ
規定施行ノ日ニ於テ解散ス
絲價安定施設組合ノ清算ニ關シ必要ナ
ル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七十條絲價安定施設特別會計法中左
ノ通改正ス
第一條中「交村、」ヲ削ル
第六條中「七千萬圓」ヲ「二億五千萬圓」
三四人
第八條中「交付」ヲ削ル
第七十一條第六十六條乃至第六十八條
ノ規定施行前產繭處理統制法、輸出生
絲檢査法又ハ絲價安定施設法ノ罰則ヲ
適用スベキ行爲アリタルトキハ第六十
六條乃至第六十八條ノ規定施行後ト雖
モ仍其ノ罰則ヲ適用ス
〔國務大臣石黑忠篤君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=18
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019・石黒忠篤
○國務太臣(石黑忠篤君) 只今議題トナリ
マシタ蠶絲業統制法案ニ付キマシテ、提案
ノ理由ノ說明ヲ申上ゲマス、蠶絲業ハ、我
ガ國輸出產業ノ大宗ト致シマシテ、時局下
ニ於キマシテモ、戰時經濟ノ目的ヲ遂行ス
ル上ニ多大ノ貢獻ヲ致シテ居ルコトハ申ス
迄モナイノデゴザイマス、現在竝ニ今後ニ
於ケル國際情勢ニ顧ミ、又大東亞共榮圈內
ニ於キマスル自給自足ヲ基調ト致シマ
ス
國防經濟ノ完成ト云フ大方針ニ照シマシテ、
從來輸出ニ依存スルコトガ過多デアリマシ
タ所ノ我ガ蠶絲業ニ付キマシテハ、玆ニ之
ヲ根本的ニ考慮ヲ致ス必要ガ生ジマシタコ
トト存ズルノデアリマス固ヨリ我ガ方カ
ラ生絲ノ輸出ヲ否認スルモノテハゴザイマ
セヌノデ、今後モ出來ルダケ此ノ輸出ニ努
メルコトハ勿論デゴザイマスルガ、情勢ノ
赴ク所、如何ナル事態ガ發生致シマスルカ
豫斷ヲ許サザル事情ニ鑑ミマシテ、豫メ蠶
絲トシテノ最惡ノ場合ヲ覺悟ヲ致シマシテ、
之ニ備フルノ體制ヲ急速ニ樹立致シテ置ク
必要ガアルト存ゼラレルノデアリマス、蠶
絲業ハ、之ニ關係致シテ居リマスル業者ガ、
養蠶農家ヲ始メト致シマシテ各種多數デゴ
ザイマス、是等ノ各種多數ノ業者ヲシテ、
安ンジテ其ノ業務ニ從事セシメマスルト共
ニ、我ガ國ト致シマシテ、繭生絲ノ織維
資源ヲ、國民ノ實生活ニ必要ナル方面ニ十分
ニ利用致ス方途ヲ講ジナケレバナラヌカト
存ズルノデアリマス、斯クノ如ク蠶絲業ト
致シマシテ、國內纖維資源ノ充足ニ重點ヲ
移シマシテ、其ノ根柢ヲ鞏固ニ致シマスト
共ニ、輸出ニ力ヲ致シナガラモ一朝事ガ
起リマシタ場合ニ、迅速圓滑ニ其ノ轉換ヲ
遂ゲシメマスルヤウニ、玆ニ蠶絲業全體ヲ
通ジテ生產、消費、輸出ノ計畫化ヲ行ヒマ
スルト共ニ、綜合的統制ノ下ニ之ヲ運營シ
得ルノ機構ヲ確立スルコトガ緊要デアルト
存ズルノデアリマス、本法案ハ以上ノ目的
ヲ以チマシテ、此ノ事態ニ卽シタル一定計
畫ノ下ニ蠶絲類ノ計畫生產ヲ爲スト共ニ
日本蠶絲統制株式會社ヲ設立ヲ致シ、原則
ト致シテ蠶絲類ノ一手買入及賣渡ヲ行ハシ
メ、以テ蠶絲業ヲ統制運營スルノ制度ヲ樹
テムトスルモノデゴザイマス、而シテ是
ト同時ニ、政府ノ絲價安定ニ對シマスル調
節力ヲ擴充致シマスルガ爲ニ、絲價安定施
設特別會計法ノ蠶絲證券發行限度ヲ、現在
ノ七千萬圓カラ二億五千萬圓ニ擴張致シテ、
此ノ兩者相俟ッテ蠶絲業統制ノ萬全ヲ期ス
ルコトト致サムト欲スルモノデゴザイマス、
何卒愼重御衆議ノ上ニ御協贊アラムコトヲ
希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=19
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020・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 質疑ノ通告ガゴ
ザイマス、飯島雷輔君
〔飯島雷輔君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=20
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021・飯島雷輔
○飯島雷輔君 私ハ茨城縣デ蠶絲業ヲ營ン
デ居リマス飯島デアリマス、今囘政府ガ御
提案ニナリマシタ蠶絲業統制法案ハ、極メ
テ重要ト思ヒマスノデ、殊ニ熱心ニ檢討ヲ致
シマシテ茲ニ質問ヲ致ス次第デアリマス、千
古未曾有ノ國難ニ遭遇シ、此大艱難ヲ突破
シマスルニハ蠶絲、繭生絲ノ計畫生活
ヲシ、配給ノ統制ヲシテ、繭價ノ公定、政
策的ニハ需給方面モ轉換ヲセシメル爲ノ國
策ヲ樹テルノガ、此ノ蠶絲業統制法デアルコ
トハ申ヌ迄モアリマセヌガ、實ニ此ノ問題
ハ重大ナル問題デアリマス、現在ノ蠶絲業ガ
世界ニ覇ヲ成シテ居ル程進步發展ヲシマシ
タノハ、畏レ多クモ御承知ノ通リ宮中ニ御養
蠶所ヲ御設ケニナリマシテ、畏クモ皇后陛下
ニハ御養蠶ヲ遊バサレ、蠶絲業ノ御奬勵御指
導ヲ賜ッタ結果デアリマス、本法案ハ實ニ重大
ノ法案デアリマスルカラ、愼重ニ愼重ヲ重ネ
審議ヲ致サナケレバナラナイト存ジマス、
只今法案ニ付テ農林大臣ヨリノ御說明デ大
體分リマシタガ、殊ニ衆議院ノ委員會デ十
二日ヨリ昨日迄數日ニ亙リ質疑應答ヲ重
ネ、大臣、次官、局長閣下ヨリ懇ロナル御答
辯ガアリマシテ、正ニ蠶絲界ノ權威者ダケ
アリマシテ、敬服シタ點多々アリマス、デ
スカラ私ハ本案ニ大體賛成ノ意ヲ表スルモ
ノデアリマスルガ、輸出生絲ニ付テ御尋ヲ
シタイト思ヒマス、第一、輸出生絲ニ付テ
ノ取扱ノ方法ヲ御尋ネ致シマスルガ、卽チ
第四條デアリマス、第四條デアリマス、第
四條ノ法規ヲ見マスルト、〓種、繭、生絲、
國內絲モ、輸出絲モ全部綺制會社ガ買入又
ハ賣渡ストナッテ居リマスルガ、輸出生絲迄
統制會社ニ於テ賣買シテハ、極端ニ海外輸
出ハ萎靡沈滯ヲ來スト思ハレルガ、海外ニ
賣ルノハ金貨ヲ貰フノデス、又物ト交換ヲ
スルノデス、輸出貿易ト云フモノハ國際的
外交交渉ヲスルノト同樣デアッテ、重大ノ役
柄デアリマスノデ、國內デ取リ遣リヲスル
モノト同ジヤウニ考ヘテ、不慣レノ統制會
社ガヤルコトハ大失敗ヲ起スダラウト私ハ
思ヒマス、尤モ第四條ノ第一項、第二項デ
「命令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ」ト
アリマスガ、此ノ但書ヲ適用シテ輪出生絲
ヲ取扱フノト思ヒマスルガ、外貨獲得ノ大
宗タル輸出生絲ダケハ是非共「輸出生絲ハ
此ノ限ニ在ラズ」ト法文ニ現シテ、日本輸
出商ニ十二分ノ援助ヲ與ヘ、補償ヲ適用シ
テ縱橫無盡ノ活動ヲサセルコトガ、此ノ非
常時局ニ適シタ國策デアリハセヌカト私ハ
申上ゲルノデアリマス、幸ヒ貿易局モ出來、
輸出ニ對シテハ補償モスルト云フコトデス
カラ、無論國外ニ向ッテ大發展ヲシヨウト云
フ意氣込ト存ジマスルガ、輸出關係業者ガ
安心シテ活動ノ出來ルヤウニ判然トシテ置
ク必要ガアルト思ヒマス、御當局ノ御答辯
ヲ煩ハシタイト存ジマス、第二ハ、輸出生
絲ノ滯貨生絲ノ問題デ御尋ネシテ見タイト
思ヒマス、滯貨生絲ハ只今橫濱ト神戶ノ兩
港ニ十三萬俵アリマス、此ノ滯貨生絲ヲ保
管シマスルコトハナカ/〓容易ノ業デハア
リマセヌ、保管ノ仕樣ガ惡ケレバ蟲ガ付イ
テ役ニ立タナクナルノデアリマス、此ノ保
管ニ要スルノハ、「ブリキ」ノ箱ニ入レテ、又
厚イ箱ニ入レテ、生絲ノ保管ト云フモノハ
非常ニ鄭寧ニ致シマセヌト、生マ絲デアリ
マスカラ、皆蟲喰ヒニナッテ役ニ立タナクナッ
テシマフノデアリマス、之ニ要スル手數、
之ニ要スル物資、近ク私ハ十五萬俵位ノ滯
貨ニナルダラウト見込ヲ立ッテ居リマス、十
五萬依ノ滯貨ノ保存ト云フモノハナカ/
容易ノコトデハアリマセヌ、此ノ滯貨生絲
ニ付テ想起シマスルノハ昭和五年ニ强制
共同保管致シマシタモノガ、數量デ十萬俵
アッタ、只今ノ俵數デ十萬俵、之ヲ處分致
シマシタノガ昭和十四年ノ六月デ、全部完
了致シマシタ、丁度十箇年掛ッタ、併シ此
ノ不慣レノ爲トソレニ何モノカアッタノカ、
ドウモ滯貨生絲ノ處分ハ極メテ評判ガ惡
カッタノデアリマス、此ノ滯貨生絲ノ昭和
五年ニ强制共同保管ヲシタ滯貨生絲ノ處分
ハ極メテ評判ガ惡ウゴザイマシタ、デスカ
ラ私ハ此ノ滯貨生絲ニ付テ三ツニ分ケテ御
尋ヲシタイト思ヒマス、此ノ十五萬俵ノ尨
大ナル滯貨生絲ハ如何ナル用途ニ振向ケル
ノデアリマセウカ、第二、如何ナル方法デ
處分ヲ致シマスノデセウカ、第三、其ノ處
分ノ時期ハ何時ナノデアリマスカ、此ノ三
點ニ付テ御尋ヲシタイト思ヒマス、私ハ此
ノ滯貨生絲ニ付テ改メテ要望ヲシタイト思
ヒマス、私ハ此ノ滯貨生絲ヲ以テ、大不足
ヲシテ居ル必需方面ニ使用サセルコトガ急
務中ノ急務デアルト存ジマス、私ガ昨年各
陸軍病院ヲ御慰問申上ゲマシタ時ニ、痛切
ニ感ジマシタコトハ被服デゴザイマシタ、
白衣ノ軍人ガ外出ヲスル時ニ御召シニナル
白衣ガ極メテ惡イノデアリマス、サウシテ聽
キマシタ處ガ、軍ノ其ノ名譽アル傷兵病兵
ニ尋ネマシタ處ガ、ドウモ外出ヲスル時ハ
綺麗ナノヲ借リテ、オ互融通シ合ッテ外出ヲ
スルノダト云フ迄、不足ヲシテ居ルヤウナ
狀態デアリマス、軍ノ病院ニ之ヲ供シテ、名
譽アル傷兵病兵勇士ニ不自由ヲサセナイコ
トガ極メテ必要ナコトト私ハ存ジマス、此
ノ勇士ニ供スルコトハ、皇軍全軍ノ士氣ヲ
鼓舞スルモノデアリマスシ、大陸ニ生命奉
還ヲ實行シツヽアル內良ナル皇軍將兵ハ、銃
後私等銃後國民ノ總蹶起ニ依リ酬イラレ
ルモノデアリマス、是ハ申上ゲマスト、各
省ニ關係ガアルカラト農林大臣ハ仰シヤル
デゴザイマセウガ、農林大臣ガ全力ヲ盡セ
バ各省モ同意、卽時實行出來ルト私ハ存ジ
マイ·總理大臣ガ此ノ間、最期ノ御奉公
トシテ飽ク迄御奉公ヲ致スト申サレタ時ハ、
感極マッテ私ハ目ガ熱クナリマシタ、日本國
民全體ガ眞ニ迫ッタデハアリマセヌカ、此ノ
滯貨生絲ヲ以テ、大不足ヲシテ居ル軍ノ方
面ニ活用サセルコトガ最モ良キコトデハア
リマセヌカ、十五萬俵トナリマシタ其ノ十
五萬俵ノ內、五萬俵ダケデモ十分デアルト私
ハ思ヒマス、五萬俵ハ日本服デ計算ヲ致シ
マスト五百萬枚出來ルノデアリマス、五萬
俵ハ日本服デ袷ニ致シマシテ五百萬枚出來
ル計算ガ立ツノデアリマス、皇軍ノ御用ヲ
足スコトハ十二分デアルト思ヒマス、卽時
實行セムコトヲ要望致シマシテ私ノ質問ハ
是デ打止メマス
〔國務大臣石黑忠篤君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=21
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022・石黒忠篤
○國務大臣(石黑(忠篤君) 只今飯島サンカ
ラノ御質問デリマス、第一ハ今囘ノ蠶絲業
統制方策ノ實行機關トシテノ統制會社ニ於
テ買上、賣渡シヲ致スモノノ中デ生絲、
其ノ又生絲ノ中デ、輸出生絲ヲ取扱物品ト
致シマシテ除外ヲスル方針デアルナラバ、
ソレヲ明確ニ規定ノ中ニ明記ヲスルコトガ
宜カラウト云フ御尋デアリマス、第四條第
一項及第二項ニ各〓、但書ガ附イテ居リマシ
テ、ソレニ依ッテ取扱スル物品ノ除外例ヲ開
クコトニ法ハ仕組ンデアルノデアリマシテ、
此ノ除外例ノ中ニハ勿論御指摘ノ輸出生
絲ガ最モ大イナルモノデゴザイマスガ、決
シテソレグケデハナイノデアリマシテ、產
業組合製絲ニ對シマシテ供給ヲ致シマス繭
其ノ他、種々ノ取除ケノ場合ガ必要デアル
ノデアリマシテ、ソレ等ヲ併セマシテ命令
ヲ以テ除外ヲ致サウト考ヘテ居ル次第デア
リマス左樣御承知ヲ願ヒタイノデアリマ
ス、第二ハ滯貨生絲ト仰シヤッタノデアリマ
スガ、只今政府ガ絲價安定施設ト致シマシ
テ買上ゲテ居リマス生絲ガ五萬俵、帝蠶會
社ヲシテ買上ゲシメテ居リマス生絲ガ六萬
俵餘アルノデゴザイマス、之ヲ如何樣ニ保
管ヲシテ行クカト云フコトノ御尋デアリマ
ス、生絲ノ保管ハ、從來過去ノ經驗カラスル
ト云フト、保管ヲ餘程注意ヲシナイト蟲ガ
付ク、而シテ其ノ滯貨生絲ノ過去ノ處理ハ
誠ニ評判ガ惡カッタ、斯ウ云フ御話デアリマ
スガ、過去ノ滯貨生絲保管ノ經驗ハ、十分
ニ保管技術ノ上ニ於キマシテ見込ノアル經
驗ヲ得タノデアリマス、而シテ長年ニ亙リ
マシテ之ヲ處分致シマシタノハ、政府ノ持ッ
テ居リマス滯貨生絲ヲ一時ニ放出ヲ致シマ
シテ絲價ニ惡影響ヲ與ヘルト云フコトヲ
ヤッテハナラヌト云フコトノ爲ニ、長イ時
期ガ經ッタノデアリマス、而シテ其ノ間ニ
於キマシテ、或ハ新販路ノ開拓或ハ新用途
ノ開拓ト云フヤウナコトヲヤリマシテ、殊
ニ新用途ノ開拓ノ如キハ、此ノ滯貨生絲ノ
利用ニ依リマシテ非常ニ見据エガ付イタノ
デアリマシテ、有效ナル働ヲシテ居ルト考
ヘルノデアリマス、尙殘リマシタ生絲ニ關
シマシテハ、絲價ガ暴騰ヲ致サウト致シマ
シタ際ニ之ヲ抑壓スルノ作用ヲ十分ニ呈シ
タノデアリマシテ、政府モ其ノ爲ニ相當ノ
資金ヲ得ルコトガ出來マシテ、此ノ資金
ヲ得タノガ基ニナリマシテ只今ノ絲價安定
施設ガ出來上ッタコトハ御承知ノ通リデア
リマス、故ニ滯貨生絲ノ處分ガ評判ガ惡
カッタト云フ御話デアリマスガ、政府ト致シ
マシテハ、先ヅ十分ニ目的ヲ達シテ今日ノ
絲價安定施設ノ基ヲモ開キ得タト考ヘテ、
喜ンデ居ル次第デアリマス、只今持ッテ居リ
マス政府買上生絲、及帝蠶會社ヲシテ買上
ゲセシメテ居ル生絲ノ處分ノ方法ヲドウス
ル積リカト云フ御尋デアリマス、是ハ千三
百五十圓ノ絲價ヲ堅持致シマス爲ニ買上ゲ
タモノデアリマスカラ、無論暫クノ間放出
ヲ致ス考ハ持ッテ居リマセヌ、絲價ノ高價ノ
抑壓、卽チ千七百圓以上ニ上ガル場合ニ於
キマシテハ是ハ高價抑壓ノ爲ニ放出ヲ致
スコトハアリマセウト存ジマスガ、然ラザ
ル限リ之ヲ市場ニ放出スル考ハ持ッテ居リマ
セヌ、第三ノ御尋ノ、處分ノ時期如何ト云
フコトハ、從ッテ御諒解ヲ戴クコトガ出來ヨ
ウト考ヘルノデアリマス、尙之ヲ軍部ノ需
要ニ向ケルヤウニト云フ御話デゴザイマス
ガ、農林大臣ト致シマシテハ只今左樣ナ考
ハ持ッテ居リマセヌ、將來之ヲ何等カ處分ヲ
シナケレバナラヌト云フヤウナコトガ出テ
參リマシタナラバ、或ハ軍部ノ用ニ充テル
ト云フコトモ考ヘテモ宜カラウカト考ヘマ
ス、又軍部カラ進ンデ處分ヲ要求ヲセラレ
マシタ場合ニハ十分ニ考慮致シタイト考ヘ
テ居リマス
〔國務大臣東條英機君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=22
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023・東條英機
○國務大臣(東條英機君) 只今生絲ノ利用
ト軍需品ノ關係ニ於キマシテノ御質問ガゴ
ザイマシタノデ、一應私カラ御答ヘ致シマ
ス、生絲ノ需要ニ付キマシテ、軍ト致シマ
シテハ落下傘ニ要スル所ノ部分、斯ウ云フ
點ニ相當使ッテ居リマスガ、是ハ日本ニ於ケ
ル所ノ生絲ノ全體カラ申シマスレバ目下
ノ所デハサウシタ大シタモノデナイノデア
リマス、併シナガラ是等ノ用途ガ逐時擴大
スルト云フ點ニ付キマシテモ十分考慮シテ
居リマシテ、農林當局ト打合セテ遺憾ナキ
コトヲ期シテ居リマス、羊毛ニ代用スルト
云フヤウナ點ニ付キマシテモ〓究中デアリ
きく、サウ云フ方面ニ於キマス所ノ生絲ノ
利用ニ付キマシテハ只今御話申上ゲタ通リ
デアリマシテ、先程御尋ノ病衣ニ之ヲ用フ
ルヤ否ヤト云フ點デアリマスガ、結論的ニ
申シマスレバ、病衣ニ利用ト云フコトニ付
キマシテハ目下考慮致シテ思リマセヌ、ト
言フノハ、〓潔ト云フ點、ソレカラ質實剛健
ト云フ二點カラ來ルノデアリマシテ、質實剛
健ト云フ點カラ申シマスレバ、生絲ト云フ
絹物ヲ著セルト云フコトハ日本古來ノ觀
念カラ申シマシテ餘リ私ハ贊成致シ兼ネル
ノデアリマス、ソレカラ常ニ〓潔ナモノヲ
病衣トシテ著セテ行キタイト云フ觀點カラ、
矢張リ現在ノ姿勢ニ於テ進ンデ行キタイ、
卽チ絹物ヲ以テ之ニ當テルト云フコトハ、
ソコニ〓潔ヲ維持サシテ行キタイト云フ點
ニ障碍ガアルヤウニモ考ヘラレルノデアリ
マス、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居リマスノデ、目
下ノ所病衣ニ絹物ヲ用ヒルト云フ點ニ付キ
マシテハ考ヘテ思リマセヌ、是ダケ御答へ
致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=23
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024・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今上程セラレマシタ
蠶絲業締制法案ハ、十八名ノ特別委員トシ、
其ノ委員ノ指名ヲ議長ニ一任スルノ動議ヲ
提出致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=24
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025・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=25
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026・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 戶澤子爵ノ動議
ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=26
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027・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、特別委員ノ氏名ヲ朗讀致サセマス
〔高山書記官朗讀〕
蠶絲業統制法案特別委員
公爵贋司信輔君侯爵四條隆德君
伯爵酒井忠正君子爵米津政賢君
子爵八條隆正君子爵柳澤光治君
有吉忠一君橫山助成君
男爵三須精一君男爵稻田昌植君
男爵肝付兼英君今井五介君
瀧川儀作君野村德七君
吉村友之進君大澤德太郞君
片倉兼太郞君大西虎之介君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=27
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028・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第九、國家
總動員法中改正法律案、日程第十、昭和十
二年法律第九十二號中改正法律案、政府提
出、衆議院送付、第一讀會ノ續、委員長報
〓、是等ノ兩案ヲ一括シテ議題ト爲スコト
ニ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=28
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029・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、委員長前田子爵
〔左ノ報〓ハ朗讀ヲ經サルモ參照
ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ做フ〕
國家總動員法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十六年二月十九日
委昌長子爵前田利定
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
昭和十二年法律第九十二號中改正法律
案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十六年二月十九日
委員長子爵前田利定
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔子爵前田利定君演壇ニ表ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=29
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030・前田利定
○子爵前田利定君 國家總動員法中改正法
律案竝ニ併記サレマシタ昭和十二年法律第
九十二號中改正法律案ノ委員會ニ於ケル審
査ヲ御報告スルニ先ダチマシテ、一應諸君
ノ御諒承ヲ得テ置キタイト思ヒマス、ソレ
ハ此ノ法案ハ申上ゲル迄モナク緊迫致シ
マシタ現時ノ時局ニ卽應シマシタ誠ニ緊要
ナ目、當然ナ改正デアリマスケレドモ、之ノ
運用ニ當リマシテハ、國民經濟上竝ニ國民
生活上ニ至大ノ關係ヲ持チマスルガ故ニ、
委員會ニ於キマシテハソレニ鑑ミマシテ
愼重ニ審議ヲ致シ、種々ノ觀點カラ質疑應
答ガ重ネラレタノデアリマス、故ニ此ノ議
場ニ於キマシテ報告ヲ致スニ當リマシテ、
成ルベク丁寧ニ詳細ニ委員會ノ消息ヲ御傳
ヘ申スト云フコトハ、委員長トシテノ當然
ナサネバナラヌ責任ト感ジマスルガ故ニ、
ソレニ相應スル時間ヲオ與ヘ下サイマスル
コトヲ前以テ御願ヒ致シテ置キマス、先ヅ
結果カラ申上ゲマス、去ル二月十九日ノ午
後ニ兩案トモ全會一致ヲ以テ無修正デ可決
セラレマシタ今其ノ經過ヲ順次ニ申上ゲ
ヨウト思ヒマス、先ヅ國家總動員法中改正
法律案ノ、改正ノ趣旨ニ付キマシテハ過
般此ノ議場ニ於キマシテ、星野國務大臣カ
ラ詳細ナ御說明ガアッタコトデアリマスルカ
ラ重ネテ之ヲ申シマセヌ、唯皆樣方ノ御記
憶ヲ新タニスルガ爲ニ、改正ノ要點ヲ申上
ゲタイト思ヒマス、本案ノ改正ノ要點ハ七
ツニ歸趨致シマス、第一ハ勞務統制ノ强化、
第二ハ統制物資ノ範圍ノ擴張、第三ハ重要
產業ニ對スル資金ノ集中强化、第四ガ現有
技術及設備ヲ必要方面ニ集中利用、第五ガ
重要產業ヲ整備統合シテ最高能率ヲ發揮セ
シムル爲ノ基本條項ノ整備、第六ハ物價統
制ニ關スル條項ノ擴充、第七ハ惡質ナル經
濟統制違反ヲ防止スル爲ニ罰則規定ノ改正、
以上ニ歸著スルト思ヒマス、而シテ此ノ法
案ノ運用ニ付キマシテハ、過般本議場ニ於
キマシテモ亦委員會ノ席上ニ於キマシテ
モ、星野企書院總裁カラ、ソレノ政府ノ心
構ヲ申述ベラレマシタ、是モ皆樣方ノ御注
意ヲ喚起スル爲ニ申添ヘタイト思ヒマス、
言語ヲ間違ヘルトイケマセヌカラ速記錄ヲ
引用致シマス、二月十三日ノ國家總動員法
中改正法律案特別委員會ノ席上ニ於キマシ
テ、原案ヲ說明ノ後段ニ於テ、星野企畫院
總裁ハ斯樣ナコトヲ申サレテ居ルノデアリ
マス、「今囘ノ改正ニ依リマシテ、本法ヲ
更ニ强化整備シマスレバ、」······「之ニ處シテ
國家ノ全能力發揮ニ遺憾ナキヲ期シ得ルモ
ノト考ヘテ居リマス、勿論法規ノ濫用ヲ致シ
マスコトハ嚴ニ愼ムベキコトデアリマスガ
殊ニ本法ハ其ノ本質ニ鑑ミマシテ、特ニ其
ノ運用ヲ愼重ニスベキコトハ言ヲ俟チマセ
又、現在迄國家總動員法ニ基ク勅令ノ公布
セラレマシタルモノハ、既ニ五十餘ノ多キ
ニ達シテ居リマスガ、何レモ本法ニ基イテ
設ケラレマシタル國家總動員審議會ノ愼
重綿密ナル審議ヲ經マシテ制定セラレマシ
タモノデアリマシテ、是等ノ法令ガ現下ノ
時局下ニ於キマシテ、國家總動員法ノ目的ノ
達成ニ大イナル働キヲ爲シテ居リマスコト
ハ玆ニ改メテ申上ゲル必要モナイト考ヘマ
ス、政府ト致シマシテハ、今後モ愈〓本法ノ
運用ヲ愼重ニ致シマスト共ニ、必要ニ應ジ
マシテハ躊躇ナク之ヲ發動致シマシテ、以テ
時局對處ニ遺憾ナキヲ期シタイト考ヘテ居
ル次第デアリマス」、下略ス、以上ノ通リニ
申サレマシテ、政府ニ於テハ本案ノ運用ニ
付キマシテハ、愼重ニ之ヲ致スト云フコト
ヲ言明サレテ居ルノデアリマス、而シテ委
員會ニ於キマシテハ、會議中ニ於キマシテ
ノ質問應答ハ相當數ニ上ッテ居リマスルケ
レドモ、皆樣方ガ本案ニ對シマシテ御協賛
ヲナサル上ニ於テノ御參考ニナルモノヲバ、
玆ニ搔摘ミマシテ申述ベタイト思ヒマス、
第一ハ行政機構ノ改革ニ關聯シテ總理大臣
ノ權限ノ强化ト云フコトニ付テノ質問デア
リマス、一委員ヨリハ、行政機構ノ改革ニ
關聯シテ、總理大臣ガ人事、豫算及法制ヲ
一手ニ掌握スルコトノ出來ルヤウナ鞏固ナ
ル機構ヲ作リ、總理ノ權限ヲ强化スル必要
アリト考ヘルガ如何、之ニ對シマシテ星野
國務大臣ハ、總理ノ權限ヲ强化スルコトハ
必要デアルガ、法制的ノ權限ヲ强化スルコ
トニ依ッテ、十全ヲ期シ得ルヤ否ヤハ問題デ
アル閣議ニ於ケル事實上ノ總理ノ優位ヲ
確保スルコトニ依ッテ、此ノ目的ハ達シ得ル
モノト思フ、現在ノ諸機構ヲ整理運用スル
コトニ依ッテ、御尋ノ目的ヲ達シ得ルト思フ
トノ答辯デアリマシタ、第二ハ、經濟中樞
機關ニ付テノ質問デアリマス、同委員ハ、
現在政府ニハ經濟ニ關スル中樞機關ガ散在
シ過ギテ居ル、又企畫院ノ現在ノ機構デハ、
經濟界全體ヲ差配スル上カラ言ヘバ不足ヲ
感ズルガ故ニ、新タニ經濟中樞機關ヲ設ク
ル考ハナイカ、之ニ對シマシテ同國務大臣
ハ官民一致シタ經濟ノ中樞機關ハ勿論必
要デアルガ、、形式的ナ改革ヲ離レテ、現機
構ノ運用ニ依ッテ實質的ニ目的ヲ達シテ行
キタイト思フト答へラレマシタ、第三ハ
官吏制度ノ改革ニ付テ、同ジ委員ハ、官吏
ニ對スル信賞必罰ニ付テノ實ヲ擧ゲルガ爲
ニ監察制度ヲ設クル考ハナイカ、竝ニ官吏
ノ再訓練ヲ行フ必要ガアルト思フガ如何、
之ニ對シマシテ、同國務大臣ハ、監察制度
ハ特徴ノアルコトハ認メルガ、一面弊害ヲ
伴フコトモアル、自分ハ原則トシテハ所
屬長官ニ委ネルコトガ宜シイト信ズル官
吏ノ再訓練ノ必要ハ十分之ヲ認ムルト申サ
レマシタ、第四總動員審議會ノ擴充ニ付テ
ノ問、他ノ一委員ヨリ、本法ノ改正ニ關聯
シテ、總動員審議會ヲ如何ニ變更シ、又ハ
擴充シテ、適正ナ官民協力ノ實ヲ擧ゲサセ
ル計畫ガアルカ、現在ノ審議會ノ委員ハ、
大部分貴衆兩院議員ガ占メテ居ルガ、擴充
スルトスレバ如何ニスルカ、此ノ問ニ對シ
マシテ、同國務大臣ハ、現在ノ委員ノ中ニ
ハ貴衆兩院議員ガ多イガ、此ノ狀態ハ本改
正ニ當ッテモ繼續シテ差支ナイト思フ、今後
ハ臨時委員ノ制度ヲ活用シテ、各方面ノ權
威者ノ登用ヲ爲セバ宜シイト思フ、又委員
數ヲ增加スルコトハ考へテ居ラナイト述べ
ラレマシタ、第五臨時措置法ト總動員法ト
ノ關係ニ付テノ質疑、同委員ヨリ、將來臨
時措置法ト總動員法トノ關係ニ付テ如何ニ
セラルヽヤトノ問ニ對シテ、同國務大臣ハ、
總動員法ヲ主トシ、臨時措置法ヲ從トシテ
行クガ、將來ハ出來ルダケ總動員法中ニ纏
メテ行キタイト思フ、今迄ノ法令ヲ早急ニ
總動員法中ニ採入レルコトハ如何デアラウ
カト思フ、將來發布スベキ法令ハ總動員法
ニ纏メル考デアルトノコトデアリマシタ、
第六、經濟新體制ニ對スル各方面ヨリノ意
見ニ對シ、政府ハ如何ナル態度ヲ執ルヤト
ノ一委員ヨリノ質問ニ對シ、同國務大臣ハ、
各方面ノ意見ニハ大體妥當ナルモノモアル
ガ故ニ、總動員法ノ運用ニ當リ出來ルダケ
其ノ趣意ヲ尊重スルトノ答デアリマシタ、
第七、經濟統制ノ方針ニ付テ、一委員ヨリ、
政府ハ經濟統制ニ當ッテ、其ノ大綱ヲ握ルニ
止メテ、其ノ他ハ業界ノ團體ニ任ス方針ナ
ルカニ對シマシテ、同國務大臣ハ、政府ノ
方針ハ統制ノ大綱ニ止メ、業界多年ノ經驗
ヲ大イニ活用スル考デアル、所謂經濟新體
制モ此ノ趣旨デアルト答ヘラレマシタ、第
八、軍需工場ノ資材、設備、勞力等ヲ確保
スベキ計畫如何、現在ノ國家政策ニハ種々
缺陷ガアルト思フガ如何、又適正物價政
策ニ付テノ政府ノ所見如何、及支那ニ於
ケル通貨政策ニ付テ如何トノ一委員ヨリ
ノ質疑ニ對シマシテ、同國務大臣ハ軍需
工場ノ資材等ノ確保ニ付テハ、現在ノ不
要不急ノ設備ヲ出來ルダケ利用スル積リ
デアル、又第十四條ノ特許權ノ實施モ考ヘ
テ居ル、又今日ノ物價政策ハ、大體成功シ
テ居ルト思ッテ居ル、低物價政策ヲ何處迄モ
堅持スル積リデアルト申サレマシタ、最後
ノ支那ノ幣制ニ關スルコトニ付キシテハ、
速記ヲ中止シテ政府當局ト委員トノ間ニ數
次ノ質疑應答ガ續行サレマシタト云フコト
ニ止メテ置キタイト思ヒマス、第九、軍需
省ノ設置ニ付テ、一委員ヨリハ、本法案ノ
實際ニ行政ニ移ス爲ニハ、軍需省ノ如キモ
ノヲ設置シナクテハナラヌト思フガ如何ト
力說セラレマシタニ對シ、同國務大臣ハ
左樣ノ具體的計畫ハナイガ、御趣旨ニ付テ
ハ考慮致ス旨ノ答デアリマシタ、第十、能
率增進ニ付テノ質疑、一委員ヨリ諄々トシ
テ、戰時體制下ニ於テ限リアル物資ト人的
資源ヲ統制動員スルコトハ當然デアルケレ
ドモ、其ノ綜合的計畫經濟ノ實行ニ際シテ、
餘リニ物ニ囚ハルヽノ觀念ヲ是正シ、精神
的協力ノ方面ヲ十分ニ考慮ニ入ルヽニアラ
ザレバ、其ノ樹立スル計畫ニ大ナル誤差ヲ
生ズルコトニナルデアラウ、右ノ意味ニ於
テ、計畫經濟ニハ政治的、精神的指導ヲ
必要トスルモノデアッテ、國民ヲシテ精神的
ニ協力スル方途ニ付テハ、將來ニ對スル希
望ヲ付與スルコトガ肝要デアル、其ノ方法
ノ一ツトシテ、政府ハ計畫ヲ樹テヽ國民ニ
協力ヲ求メタル事項ノ結果ヲ、軍事上其ノ
他ノ機密ヲ除キ每年報告スルコトトスル、
是ハ國民ニ希望ヲ與ヘ計畫立案ニ當リ責
任感ヲ與フル所以デアルカラデアル、其ノ
二トシテ、軍隊ノ特命檢閱ノ制度ニ傚ヒ、
一般中央官廳ニ於テモ事務ヲ整理、敏活ナ
ラシムルノ意味ニ於テ、一種ノ推進班ノ如
キモノヲ設置スルコトトシテハ如何、尙第
二ニ國防經濟ト國民經濟トハ車ノ兩輪ノ如
キモノデアルガ、自給自足ノ經濟體制ヲ採
ルニ當リ、資材、原料ガ兎角前者ニ
(副議長侯爵佐佐木行忠君議長席ニ著
ク〕
吸收セラルヽコトガ通例デアル、而モ國民
經濟ノ破壞ハ又前者ノ破滅ナルガ故ニ、國民生
活ノ安定ヲ確保スベキ「ライン」ヲ劃スベキコ
トハ困難ナル事柄デアルケレドモ、肝要ナコ
トデアル、而シテ右ノ「ライン」ヲ考究スル
ニ當リ、國柄ニ依ッテ其ノ目標ヲ異ニスルコト
アルベキモ、我ガ國ニ於テハ中產階級ヲ以テ
社會ノ中堅層タルノ事實ニ立脚シ、十分ナ
ル考慮ヲ拂ハレムコト肝要ナリト思フ、政
府ノ所見如何ト云フ是等ノ質疑ニ對シマシ
テ、同國務大臣ハ、御尤モノ御所見デアル
ト申サレマシテ、同感ノ意ヲ表サレ、唯特
命檢閱的ノ監査ノ點ニ付キマシテハ、前述
ノ監察官制度ノ質問ニ對スルト同樣ノ答辯
ガアリマシタガ、他ノ點ニ對シマシテハ皆
肯定サレタ答辯デアリマシタ、尙能率增進、
生產擴充ニ關シマシテハ、他ノ委員ヨリモ
數次質疑ヲ繰返サレ、熱辯强調サレマシテ、
自己ノ所見ヲモ交ヘテ質問セラレマシタニ
對シ、軍部當局ヨリモ之ニ對シ、軍部ノ現
下此ノ問題ニ關シ實施シテ居ル實情ヲ縷述
サレ、質問者ヲシテ相當滿足セシメラレタ
ヤウニ見受ケラレタノデアリマス、第十一、
總動員法第二條、第三條ノ九ヲ繞ッテ、一委
員ヨリ、總動員法ハ非常立法デアルガ故ニ、
適用範圍ヲ最モ狹義ニ解スベキデアル其
ノ適用範圍ヲ原則トシテ總動員物資業務ニ
限ルベキデアル、然ルニ改正案ハ其範圍ヲ
廣メルコトニシテ居ルガ、實際上ノ必要ア
リヤ、又實際ニハ法律ノ改正ニ依ラズトモ、
勅令ノ方法デ處理出來ルデハナイカトノ質
問ニ對シマシテ、星野國務大臣ハ、本法ノ
適用範圍ハ嚴格ニ解スベキデアル、第二條
ノ九號、第三條ノ九號デ、殆ド何事ヲモ爲
シ得ルコトニナッテ居ルガ、併シ之ヲ狹義ニ
解スルガ故ニ、外ニ適用範圍ヲ廣メル必要
ヲ生ジ、明瞭ナ形ニ於テ、本法ノ擴張ヲ企
圖シタモノデアルト答ヘラレ、又一委員ヨ
リ現行法ハ勅令ニ委任シタ規定多ク、爲
ニ衆議院デ昭和十三年ノ議會デ、將來出來
ル限リ立法化サレタイト云フ希望決議モ
アッタ、故ニ緊急ヲ要スルモノ以外ハ法律
化スル方針ニ出テ貰ヒタイ、自分ハ政府當
局ノ心持ハ宜イト思フト云フニ對シ、同國
務大臣ハ將來出來ル限リ勅令等ノ方法ニ
依ラズ、法律ニ依リタイト考ヘテ居ルト
ノ答辯デアリマシタ、第十二、低物價
政策ニ付テノ質疑、物價局長官ニ對シマシ
テ一委員ヨリ數次質疑應答ヲ重ネラ
レマシタガ、其ノ問答ノ歸結シタル所ノモ
ノハ、公定價格ニモ種々無理ガアルト思フ
ガ、必要ニ依ッテハ之ヲ是正スル氣持ナリヤ
ニ對シマシテ、長官ハ、公定價格ニモ不適
當ノモノガアレバ是正スルニ吝カデナイ
低物價政策堅持ノ爲ニハ消費ノ規正、規格
ノ整理等ノコトヲ考ヘラレルト思フトノ答
ガアリマシテ、第十三、翼贊會ト經濟新體
制トノ關係ニ付テ、一委員ヨリ、會社經理
統制令ノ缺陷ハ運用上是正スルト云フ趣旨
ヲ執ッテ居ラレルガ、運用ニ付テ內規ノ如キ
モノガアレバ公表サレタシ、此ノ質疑ニ對
シマシテ大藏大臣ハ、本法ノ制定ノ時ニ於
テ運用ニ付テハ相當〓究サレタ、之ニ付テ
ハ具體的事情ヲ考ヘネバナラヌ、其ノ一般
的方針ハ昨年十月發表シテアルト答ヘラレ
マシタ、同委員ハ、經濟統制令ハ政府ニ成
案ガアッテ總動員審議會ニ掛ケタモノト考
ヘルガ、斯カル重要勅令ノ審議ハ、民間人
ノ自由ナル討議ノ下ニ愼重ニナサネバナラ
ヌト思フガ如何、又總動員審議會ノ重大性
ハ將來益〓大トナル、從ッテ官制ヲ變更シ各省
次官ヲ委員トスルコトヲ止メテ、實業界ノ
知識經驗アル者ヲ、臨時委員デハナク常置委
員トシテ任命スベキガ可ナリト思フガ如何、
此ノ問ニ對シマシテ星野國務大臣ハ、專門
的知識ヲ要シ迅速ナル實施ヲ要スル時ニ、
各省次官ガ委員トナッテ居ルコトハ都合ガ
好イト思フガ、尙考慮シタイ、常置委員ニ
多少ノ經濟人ヲ增加セシメル積リデハアル
ガ、原則トシテハ臨時委員ヲ活用シタイト
思ッテ居ルトノ答辯デアリマシタ、同ジ委員
ハ經濟新體制要綱ニ政府ハ經濟團體ノ組
成發達ヲ促進スル爲大政翼贊會ト協力スル
トアルガ、ドウ云フ意味ナリヤ、此ノ質疑
ニ對シマシテ星野國務大臣ハ官民一致ノ
精神ヲ推進セシメルモノデアルカラ、官民
協力ヲ必要トスル經濟問題ニ付テハ是ト協
力スルト云フ意味デアルト答ヘラレマシタ、
又同委員ハ、翼賛會ガ推進班ヲ作ッテ經濟
新體制ヲ强行スルト云フノデ、不安ヲ持ッテ
居ルモノモアルカラ、大政翼贊會ト協力ス
ルト云フ語句ハ削除シテハ如何、之ニ對シ
マシテ星野國務大臣ハ、御趣旨ハ分リマシ
タ、翼贊會ノ將來ノ發達ニ依リ、又事情モ
異ッテ來ルモノト思フガ、今ノ所削除スル意
思ハナイ、運用ニ於テ萬全ヲ期シタイト思
フトノ答デアリマシタ、第十四、重役ノ退
職金ニ付テノ質疑、一委員ヨリ、重役ノ退
職金ハ段々減少セシメル積リナルカ、將來
企業家ノ企業心ヲ妨ゲルヤウナコトハシナ
イヤウニスルノガ宜イデハナイカトノ問ニ
對シマシテ、大藏大臣ハ重役ノ退職金ハ、業
績或ハ現在ノ報酬ニ適應セシメテ行クベキモ
ノト思フ、其ノ運用ニ付テハ、實情ニ鑑ミ彈
力性ヲ持タス積リデアルト申サレマシタ、此
ノ際一委員ヨリ、圓系通貨ノ調整等ニ付テ大
藏大臣トノ間ニ質疑應答ガアリマシタケレド
モ、速記中止間ニ行ハレタコトデアリマスカ
ラ差控ヘマス、第十五、本改正案直後ニ發動
スル豫定ニ付テ、一委員ヨリ、今般ノ改正ハ
一般事業ニ對シ直チニ關係スルモノデアル
ガ、國家ノ爲スベキ企業、民問ノ自由ニ委ス
ベキ企業等、具體的ニ示サレタシニ對シマ
シテ、星野國務大臣ハ、原則トシテ民間ニ委
ネル方針デアル、政府ガ直接ニ企業ヲ爲スコ
トハ考ヘテ居ナイ、同ジ委員カラ、將來ノ腹
案アレバ示サレタシニ對シ、星野國務大臣
ハ、本改正案ハ非常時中ノ非常時ニ對處ス
ル積リデアル、農業ニ付テハ農業團體法ガ
考ヘラレテ居ルガ、成ルベク現團體ノ活用
ニ俟ツ積リデ、今ノ所此ノ法ヲ行フ積リハ
ナイ、企業ニ付テハ、增產ヲ期待シ得ルモ
ノニ付テ團體結成ヲ促進スルコトガ考ヘラ
レルト、斯ウ答ヘラレマシタ、同ジ委員カ
ラ更ニ、本法發動ノ際政府ハ審議會ニ諮ル
カニ對シマシテ、同國務大臣ハ、本法ハ濫
リニ發動シナイ、發動ノ方法トシテハ具體
的ニ勅令ヲ以テ出シ、其ノ際審議會ニ諮ル
方針デアルトノコトデアリマシタ、尙同ジ
委員ヨリ中小企業ノ合併ガ相當行ハレ
ルト思フガ如何トノ問ニ對シマシテ、同
國務大臣ハ、中小企業ハ生活ト密接ナ關
係ガアルカラ、維持育成ヲシ、當リヲ軟
カニシテヤラネバナラヌト思フトノ答
デアリマシタ、第十六、民間團體組織ニ
付テノ質疑、一委員ヨリハ、民間團體ヲ
組成スル時ニ既存ノモノヲ統一シテ行クノ
カ、又ハ官ガ新シク設立スルノデアルカ、
又其ノ團體ハ如何ナル性質ヲ持ツコトニナ
ルノカニ對シマシテ、星野國務大臣ハ、民
間團體ノ組成ハ出來ル限リ民間ニ機運ガ生
ジタ時ニソレニ對シテ政府ガ斷ヲ下ス程度
ノモノトナルコトガ望マシイ、團體ハ公益
法人デアルガ、此ノ法律ニ依ッテ出來ルモ
ノデアルカラ、民法ノ公益法人ヨリハ多少
力ガ强イト思フトノコトデアリマシタ、第
十七、產業團體ニ付テ一委員ヨリ、經濟新
體制中ニ、緊急ナルモノヨリ實行ニ移スト
明記サレテアルガ、緊急ナルモノハ本改正
案ニ網羅サレテ居ルノカ、經濟團體法ノ如
キ內容ヲモ之ニ依ル方針ナルカニ對シマシ
テ、星野國務大臣ハ、今日ノ事態ニ於テ緊
急ナルモノハ本法ニ依ル積リデアル、產業
團體ノ如キモノヲ全體的ニ作ル積リハナ
イ、石炭トカ鐵トカニハ個々別々ニ作ル積
リデアルトノ答辯デアリマシタ、第十八、
中小業者ノ轉業ニ付テノ質問、同シ委員
ヨリ、中小業者ノ轉業ノ原因トシテ配給物
資ノ減少、能率增進ノ爲必要ナル場合及配給
機構ノ整備ノ三ツガ考ヘラレル、故ニ轉業
ハ避クベカラザル現象ナリト思フ、故ニ本
法ニ依ッテノ轉業ノ必要ナシト誤解シテ居
ル者ニ對シテハ、眞相ヲ明カナラシメテヤッ
テハ如何、此ノ問ニ對シマシテ、星野國務
大臣ハ轉業ノ必要ノ爲原因ヲ三ツ擧ゲラ
レタガ、自分ノ考ハソレト異ッテ居ル、私ハ
彼等ヲ安心セシムベキ態度ヲ執ルベキモノ
ト思フ、事實轉業ノ必要アル時モ、安心シ
テ轉業スル途ヲ講ジテヤリタイト思フ、商
工業ヲ維持セシメタイトノ方針ヲ執ッテ居
ルト申サレマシタ、同ジ委員ヨリ、尙又第
十六條ニ依ンテ會社ノ解散ガ出來ルヤウニ
ナッテ居ルガ、本法ハ解散セシメルコトヲ豫
期シテ居ルカニ對シマシテ、同國務大臣
ハ廢止解散ノ如キハ輕々ニ命ジ得ベキモ
ノデハナイト答ヘラレマシタ、第十九、失
業者ニ對スル對策ニ付テ、一委員ハ、本法
適用ニ當ッテ失業者ヲ生ズベキコトハ豫メ
想像サレテ居ルコトデアルガ、政府ハ如何
ナル對策ヲ樹テテ居ルカニ對シマシテ、厚
生大臣ハ之ニ對シ、失業者ハ本人ガ工業方
面ニ就職スル考ガアルナルナラバ何時デモ
就職シ得ル狀態デアル、要ハ轉業ノ決心一
ツデアル、此ノ爲ニ知事ヲ會長トスル職業
轉換協議會ヲ設ケ、轉職ニ當ラシメテ居ル、
又國民職業指違員ヲ設ケ、轉業ヲ要スル個
個ノ者ニ付相談相手トナッテ居ル、最近轉業
ヲ要スルモノハ十萬八千人デアルガ、假
更ニ激增シテモ、完全ニ工業方面ニ就職セ
シメ得ル自信ガアル、轉業幹旋ニ自信タッ
プリノ答辯デアリマシタ、更ニ同一委員ヨ
リ、政府ハ轉業指導ヲ如何ニスルカニ付テ、
星野國務大臣ヨリ、現實ノ失業者ハ約一萬
人是等ノ對策トシテ先ヅ出來ルダケ維持
育成スル、次ニ年少者ヲ先ヅ轉業セシメ、
老年者ヲ後ニ殘ス、又副業ヲ持ッテ居ル者
ハ先ヅ轉業サセル積リデアルト答ヘラレマ
シタ、更ニ同ジ委員カラ、本法改正ノ趣旨
ハ人ト物トノ動員デアルガ、心ノ動員ガ伴
ハナケレバ其ノ效果ハ薄イノデアルダラ
ウ、之ニ對シテ如何ニ指導スル計畫ガアル
ノカ、全國民ノ心的動員ガ這般ノ基礎的役
割ヲ爲スト思フガ如何ニ對シマシテ、同國
務大臣ハ、心ノ動員ガ必要ナリトノ質問ハ
御尤モデアル、人ノ本ハ心デアル、法案ノ
目的達成スルコトハ此ノ點ニ付テ心ノ方
法ヲ執ラナケレバナラナイト思フ、官民一
致ノ障碍ヲ徹底的ニ拂ヒ除ケルベク諸工作
ヲ講ズルト共ニ、一方ニハ國民ヲシテ時局
ヲ認識セシメテ、國民皆自ラ此ノ國難ヲ突
破スルノ覺悟ヲ持ツヤウニナラナケレバイ
ケヌト思フ、是ト同時ニ、日滿支ノ間ニ於
テモ經濟的ニ相互依存ノ關係ニ止マラズ、
能ク大陸政策ノ本旨ヲ秀徹スル方法ヲ執ラ
ウト思フトノ答デアリマシタ、之ニ關聯致
シマシテ文部省ノ政府委員ヨリモ、前述ノ
問ニ對シマシテハ、現在學校其ノ他ニ於テ
實踐シテ居ル精神的結合ノ指導〓養ノコト
ニ付詳細ナル陳述ガアリマシタ、第二十、
株價低落ニ付テ、一委員ハ、株式市價ノ低
落ハ所有者ヲ始メ各方面ニ影響スル所ガ多
イガ、政府ハ株式市價ガ低落スルノヲ放置シ
テ置クノカニ對シマシテ、星野國務大臣
ハ、昨年下期ノ株價下落ノ原因トシテ資
金統制ヲ考ヘラレルガ、株價ガ現今下落ス
ルコトハ宜クナイコトデアルカラ、出來ル
ダケ下落シナイヤウニ努メルベキダト思フ、
是ト同時ニ、株ノ下落ハ政府ノ事業ニ不信
ナルコトヲ示スモノデアルカラ、深甚ノ注
意ヲ拂ヒタイト述ベラレマシタ、同ジ委員
ヨリ、本案ノ實施運用ニ付テハ、之ニ處スル
企畫ヲ樹立スル上ニ於テ、從來ヨリモ一層周
到完全ナルコトガ伴ハナケレバナラナイ、
是ハ企書院ダケデハ出來ナイコトデアラウ、
民間ノ協力ヲ求メ、生產擴充ニ付テハ大イ
ニ科學技術ヲ綜合スルコトニ依ッテ、囘轉
率ヲ最大ニ爲スコトヲ努メナケレバナラナ
イト思フガ、定メシ政府ニ於テハ計畫ガア
ルデアラウト思フガ如何、ト云フニ對シマシ
テ、星野國務大臣ハ、本法ニモ規定ハアル
ガ、其ノ他モ考究ヲシタイ、現在ハ企畫院
ニ科學部ガアルト答ヘラレマシタ、第二十
一、本法案中ノ「戰時ニ際シテ」ノ語ニ付テ、
一委員ヨリハ、本法ノ運用ハ平面的デアル
ト思フ、動員計畫ハ立體的ニ又恆久的ニ爲サ
ルベキモノデアルカラ、「戰時ニ際シテ」ト云
フ言葉ヲ用ヒル必要ハナイト思フガ如何、
同星野國務大臣ハ、本法ハ戰時ニ際シ發動
スル積リデアル、或ハ結果ガ事變終了後迄續
クコトモアルト思ハレルガ、ソレハ其ノ時
ニ對策ヲ講ズレバ宜イト述ベラレマシタ、
第二十二、第十三條、第十四條、第十八條
ノ一一、第十九條、第二十七條ニ付テノ質疑、
一委員ヨリ、十四條ニ關スル特許發明等ノ實
施ニ付テ、業務者ハ必要ノ場合ニハ實施ガ
出來ルガ、政府ノ場合ハ特許法デ出來ルト
政府當局者ハ言ハレルガ、ソレハ平時ノ場
合ヲ規定シテ居ルノデ、非常立法タル本法
ニ依ッテ實施スルコトトハ違フト思フ、矢張
リ政府ガ實施ノ場合モ、本法ニ依リ實施ス
ルコトガ妥當ナリト認メルガ如何、此ノ問
ニ對シマシテ企畫院政府委員ハ、御質問ハ
御尤モデアルガ、戰時規定デナクテモ政府
ハヤッテ行ケル、總動員業務者ノ規定ヲ追加
スルコトニ止メタルノデアルト答ヘラレマ
シタ、之ニ關シ法律堪能ノ同委員ト政府當
局トノ間ニ、此ノ點ヲ中心トシテ數次質疑
應答ヲ繰リ重ネラレマシタガ、兩者ノ意見ハ
遂ニ融合スルニ至リマセヌデシタ、同一委員ハ、
第十九條ノ「其ノ他ノ財產的給付」ト云フ言
葉ハ漠然トシテ居ルガ、其ノ內容如何、此ノ
問ニ對シマシテ企〓院政府委員ハ、價格統
制ノ完璧ヲ期スルニ必要ナルモノデ、修繕
料、請負料、手數料等ヲ意味セシメル積リ
デアル對價タル性質ヲ有スルモノニ限ル
コトハ勿論デアルト答ヘラレマシタ同
委員ハ、法人ガ合併スル時ニ損失ノ保障ガ
ナイガ如何ナル譯デアルカノ問ニ對シマシ
テ、同政府委員ハ合併ノ時ハ兩法人ノ目
的ヲ併存セシムルコトヲ考ヘテ居ル故ニ、
目的變更ノ實質ヲ生ズル時ハ讓渡シノ方法
モ考ヘラレル、政府デモ斡旋シテ損失ヲ生
ゼシメナイヤウニ努メタイト答ヘラレマシ
ク、此ノ二問題ニ付テハ、問者タル所ノ委
員ハ政府委員ノ答辯ニ滿足セラレナイヤウ
ニ見受ケマシタ、是等ノ諸點ノ問題ニ付キ
マシテハ、討議ノ際ノ御報告ヲ致ス時ニ稍、と
詳細ニ御聽取リヲ願ヒマス、第二十三、日
滿支ヲ一環トセル經濟體制ニ付テ、一委員
ヨリハ、今後ノ經濟體制ハ日滿支ヲ一環ト
シテ建設セラルベキモノデアルカラ、本法
案ノ法域ハ帝國主權內デアッテモ、實質的ニ
ハ共榮圈ノ樞軸タル日滿支ニ及ブベキデア
ルト思フ、滿支ヲ如何ナル方針ノ下ニ律シ
テ行クカ、此ノ問ニ對シマシテ星野國務大
臣ハ、滿洲ニハ議會ガナイカラ事情ガ異ル
ガ、本法トハ略〓同樣ナモノガ施行セラレテ
居ル、此ノ改正ニ伴ヒ滿洲ニ於テモ變化ヲ
生ジテ來ルコトト思フ、支那ハ法律施行ノ
狀態ニ至ッテ居ナイガ、興亞院其ノ他トモ協
力シ本法ノ趣旨トスル所ノモノヲ行ヒタイ
ト申サレマシタ、同ジ委員ハ更ニ本案改正
ノ目標ニ付テ質疑ヲ爲サレマシタ、卽チ內
ニハ民族ノ力ヲ集結シ、外ニ向ッテハ民族
的ノ見地ニ基イテ大東亞民族ニ向ッテ民族
對策ヲ樹立スルコトガ根本問題ノ一ツデア
ルト思フ、東亞諸民族ハ勿論民族的ノ性格
等ヲ〓究シ、以テ之ヲ把握スルコトガ遂行
上肝要ナリト思フガ如何ニ對シマシ
テ、星野國務大臣ハ、御尤モデアル、一個
力ヲ用ヒムト思フト答ヘラレマシタ、第二
十四、本法及臨時措置法ノ罰則適用ニ付テ
ノ質疑、一委員ヨリハ本法及臨時措置法
ノ罰則ヲ適用スル時、具體的ニハ下級警察
官ガ行使スルノデアルガ、物價問題等
ニ付テノ巡査ニ〓練指導ハナカ〓〓困難ナ
コトデアラウ、從ッテ實際上ニ種々ノ支障ヲ
生ズルコトデアルト思フ、之ニ對シ政府ハ
如何ナル措置ヲ講ジテ居ルカ、之ニ對シテ
警保局長ハ、中央デハ經濟保安課長會議ヲ
開キ、警察官ニ對シ企畫院、商工省等ノ方
面、關係ノアル法令ノ專門的ノ知識アル人
ノ力ヲ借リテ、二箇月ニ一囘、東京ニ於テ
經濟警察取締ノ會議ヲ開キ、講習會、打合
會ヲ催シテ居ル、地方ニ於テハ警察署ヲ單
位トシテ經濟警察懇談會ヲ開キ、法令ノ檢
討取締ノ上ニ付テノ〓究ニ努メテ居ル
極ク最近ニハ國民生活相談所ヲ置キ、主任
ノ者ガ中心トナッテ會合ヲ催シ、溫カイ深切
ナ氣持ヲ以テ相談ヲ爲スヤウニシテ居ルト
ノ答デアリマシタ、尙同一委員ヨリ、經濟
警察ニ付テハ巡査任セニシテ居ルカト云フ
問ニ對シマシテ、同局長ハ、巡査任セニハ
シテ居ラナイ、總テ上級主任ノ指揮ヲ受ケ、
原則トシテハ檢事ノ指揮ノ下ニ檢擧ヲスル
ノデアルトノ答デアリマシタ、第二十五、
第五條ト大政翼贊會トノ關係ニ付テノ質
疑一委員ヨリ、第五條ノ「其ノ他ノ團體」
ト云フ中ニハ大政翼賛會ガ入ルヤ否ヤ、
之ニ對シ星野國務大臣ハ、大體ニ於テ總動
員法ニ依ッテ大政翼賛會ヲシテ行動セシム
ルコトハ如何ナル意味ニテモ無シトノ答デ
アリマシタ、尙同委員ハ、警防團、靑年團
其ノ他ノ團體ハ五條ニ依ル勅令ニテヤルコ
トアリヤニ對シマシテハ、同國務大臣ハ、
アリトノ答デアリマシタ、以上ハ數ノ多イ
質疑ノ中カラ諸君ノ御參考ニ資スル爲ニ簡
拔シテ申上ゲタノデアリマシテ、尙幾多ノ
質疑ガアッタノデアリマスルケレドモ、餘リ
時間ヲ要シマスルカラシテ是ハ此ノ際省略
ヲサシテ戴キマシテ、他日速記錄ガ出來マ
シタ節ニ諸君ニ於カレマシテユックリト御覽
ヲ願ヒタイト思ヒマス、質疑ガ終了致シマ
シテ討論ニ入リマシタ、討論ニ入リマスト
劈頭ニ修正動議ノ提出ガアッタノデアリマ
ス、其ノ修正動議ノ案ヲ御聽キ苦シイダラ
ウト思ヒマスケレドモ、一應案ヲ讀ミ上ゲ
マス、「國家總動員法中改正法律案修正案、
第十三條第二項中「其ノ從業者ヲ供用セシ
メ」ヲ「其ノ從業者ヲ供用セシム」占庭
以下ヲ削ル第十四條中「使用又ハ收用シ、
以下ヲ「特許發明及登錄實用新案ヲ實施シ
又ハ總動員業務ヲ行フ者ヲシテ之ヲ使用若
ハ收用シ又ハ實施セシムルコトヲ得」ト改
ム」、是ハ十三條ニアリマシタノヲ十四條ノ
方へ挿入シタノデアリマス、「第十八條ノ二
ノ中「其ノ擔保」ノ次ニ「竝其ノ讓渡若ハ出
資ノ目的タル物件ノ上ニ存スル擔保」ト云
フノヲ加フ、第十九條中「其ノ他ノ財產的
給付」ト云フノヲ「其ノ他物價ニ影響ヲ及
ホスヘキ財產的給付」ニ改ム、第二十七條
中「若ハ第十六條ノ二ノ規定ニ依ル處分」ヲ
「若ハ第十六條ノ二ノ規定ニ依ル命令」ト改
メ「事業ノ委託、讓渡、廢止若ハ休止若ハ
法人ノ目的變更若ハ解散」ト云フノヲ削ル」
ト云フノデアリマシテ、動議提出者ノ修正
案理由ノ說明セラレマシタ其ノ要旨ヲ申上
ゲマス、修正案ノ理由ノ要旨デアリマス、
第十三條ト第十四條トハ相牽聯シテ居リマ
スノデ、先ヅ第十四條ノ方カラ申シマスト、
之ニハ二ツアリマシテ、第一ハ、原案ニ依
ルト、民間業者ニハ汎ク特許發明及登錄實
用新案ヲ實施スルコトヲ得セシムルニ拘ラ
ズ、政府ニハ此ノ權利ヲ認メテ居リマセヌ
ガ故ニ、政府ニモ民間業者ト同樣ノ實施權
ヲ與ヘムトスルコト、第二ハ、鑛業權等ニ付
政府ハ之ヲ使用スルコトノ外、收用スル權
利ヲ有シテ居ルニ拘ラズ、民問業者ニハ收
用權ガ與ヘテナイ、併シ收用スルニ非ザレ
バ目的ヲ達スルコトガ出來ナイ場合ガアル
コトハ、民間業者ニアリテモ政府ト異ナル
所ガナイカラ、後者ニモ收用スル權利ヲ與
ヘヨウトスルノデアル、現行法第十三條第
二項ハ、特殊ノ限ラレタル場合ニ於テ政府
ニモ特許權等ノ實施權ヲ與ヘテ居ルモ、右
第十四條ノ修正ニ依ッテ政府ニ廣範圍ノ實
施權ヲ與フル結果、自ラ其ノ中ニ包含セ
ラルヽ第十三條第二項ノ實施權ハ不必要
トナルノデ之ヲ削除スルモノデアル、
政府當局ノ說明ニ依レバ、政府ハ特許法、
實用新案法等ノ規定ニ依リ實現スルコトガ
出來ルカラ、本法ノ規定ヲ要セヌトノコト
デアルガ、特許法等ノ規定ハ平時法デアッ
テ、其ノ手續其ノ他總テ本法ニ依ルモノト
異ナルノミナラズ、政府ノ場合ハ平時法規
ニ依リ、民間業者ノ場合ハ戰時法規ニ依ル
ト云フコトハ不都合ナコトデアル、現ニ限
ラレタ場合トハ言ヘ、政府ニ付テモ第十三
條第二項ハ平時法デアル、特許法等ニ依ラ
ナイ規定ヲ設ケテ居ルノデアルヽ第十八條
ノ二ハ、第十六條ノ二又ハ第十六條ノ三ノ
規定ニ依リ設備、權利又ハ事業ノ讓渡若シ
クハ出資ガ命ゼラレタル場合ニ、其ノ讓渡
又ハ出資ノ目的タル設備等ガ、讓渡者若シ
クハ出資者以外ノ第三者ノ債務ノ爲ニ、擔
保ノ目的トナッテ居ル時ハ、折角讓渡若シク
ハ出資ヲ受ケテモ擔保權ノ行使ニ依ッテ之
ヲ奪ヒ去ラレル虞ガアルガ故ニ、讓渡者又ハ
出資者ノ負擔スル債務及ビ擔保ノ處理ニ付
原案ニ於テ勅令ヲ以テ必要ナル事項ヲ定ム
ルコトト爲シタルト同樣、右第三者ガ有ス
ル擔擔ノ處理ニ付テモ勅令ヲ以テ必要ナル
定メヲ爲サムトスルモノデアル、第十九條
ハ、原案ニ於テ修繕料ト併セ列擧セラレタ
ル「其ノ他ノ財產的給付」ナル言葉ハ餘リニ
モ無制限デ廣汎ニ失シ、法規ノ體ヲ爲サザル
モノデアルカラ、政府當局ノ說明ニ基キ、
適當ナル制限的意義ヲ附加セムトスルモノ
デアル第二十七條前段ハ、政府當局ノ說
明ニ依レバ、第十條及第十六條ノ二ニ付テ
モ、兩條ノ規定ニ依ル總テノ命令ニ關シ、
其ノ命令ニ依リ生ジタル損失ヲ補償セムト
スルモノナルニ拘ラズ、原案ノ文句ニテハ
其ノ命令ノ一部ヲ逸脫シ、其ノ場合ニハ損
失ノ補償ガ不可能トナルヲ以テ、立法ノ趣
旨ト規定ノ文句トヲ一致セシメムトスルモノ
デアル、後段ハ原案ニ依レバ第十六條ノ三
ノ規定ニ依ル命令中、事業ノ開始、共同經
營及法人ノ合併ノ命令ヲ除外シ、是等ノ命令
ニ依ル損失ハ之ヲ補償セザルモノナルモ、
是等ノ場合ニ於テハ損失ノ生ジ得ルコトハ
政府當局モ亦認ムル所ナルノミナラズ之
ヲ同條ニ於テ補償スル事業ノ讓渡、目的變
更、又ハ解散等ノ場合ニ比シ、著シク權衡
ヲ失スルモノナルヲ以テ、前示事業ノ開
始共同經營及法人ノ合併ニ關スル命令ニ
付テモ、之ニ依リ生ズル損失ヲ補償スベキ
モノト爲サムトスルモノデアル、以上ノ修
正勤議ノ理由ヲ說明セラレタノデアリマス、
ソレニ對シマシテ政府ハ、卽チ星野國務大
臣ハ、次ニ政府ノ意見ト致シマシテ、此ノ
修正意見ニ對シ同意ノ出來ナイト云フコト
ヲ演述サレタノデアリマス、第十三條第二項
中「其ノ從業者ヲ供用セシメ」ヲ「其ノ從業者
ヲ供用セシム」ト改メ以下ヲ削ルト云フ修正
ニ對シテハ、政府ハ同意出來ナイ、ソレハ
第十四條ニ於テ政府ガ特許權等ノ使用、收
用ヲ行フ場合ハ特許法等ノ規定ニ依ルト云
フ以上、本條中特許權ノ使用、收用ヲ規定ス
ルハ蛇足ナリトノ御意見デアルダラウケレ
ドモ、本條ノ場合ハ、工場、事業場ノ使用、收
用ト不可分ノ關係ニアル場合ナルヲ以テ、
其ノ手續等モ單一勅令ニ規定スル要ガアル、
又主務大臣モ工場、事業場、使用、收用ノ
主務大臣ト單一ニスル必要アルヲ以テ、特
ニ本條ニ規定ヲ設ケタモノデアル、右ノ如
キ事由ニ依ッテ修正案ニハ同意ガシ難イト
云フコトデアリマシタ、第十四條中ノ「使用
又ハ收用シ」以下ヲ「特許發明及登錄實用新
案ヲ實施シ又ハ總動員業務ヲ行フ者ヲシテ
之ヲ使用若クハ收用シ又ハ實施セシムルコ
トヲ得」ト改ム、之ニ對シマシテ、政府ガ
特許權ノ收用、使用ヲ必要トスル時ハ、特
許權ノ規定ニ基キ之ヲ行ヒ得ルトノ建前ヨ
リ、本條ニ規定セザルモノデアル、右ノ理
由ニ依ッテ修正案ニハ同意ガシ難イノデア
ル、第十八條ノ二ノ中「其ノ擔保」ノ次ニ
「竝ニ其ノ讓渡若ハ出資ノ目的タル物件ノ
上ニ存スル擔保ヲ」加フト云フ修正ニ對シ
テハ、政府トシテハ、例外規定ハ成ルベク
必要ナル最小限度ニ止ムル方針ニテ立案シ
タルモノニシテ、本案ハ債務承繼ニ附帶ス
ル擔保ノ處理ニ付例外規定ヲ定メムトスル
モノデアル、實際問題トシテハ御意見ノ如
キ不便アル場合モ想像セラルヽモ、實際ノ
「ケース」ハ多カラザルベク現行法規ノ許
ス限リニ於テ便宜ノ處置ヲ執リタイト思フ
ガ故ニ、修正案ニハ同意ガ致シ難イ、第十
九條中「其ノ他ノ財產的給付」ヲ「其ノ他物
價ニ影響ヲ及ホスヘキ財產的給付」ニ改ム
ト云フ修正ノ意見ニ對シテハ、政府ニ於テ
ハ、本條ニ所謂財產的給付ト云フノハ、例
示サレタル價格、運送賃等ト同ジク、滯貨
タル性質ヲ有スルモノニ限ラレルコトハ、
旣ニ說明セル如ク、本條ガ本來物價統制ノ
基本的條項タル性質ヲ毫モ變更セザル點ヨ
リ明カナルコトデアル、又改正條項ノ發動
ニ當リテモ、物價政策上眞ニ統制ノ必要ア
ル場合最モ妥當ナル方法ヲ執ル積リデアル
ガ故ニ、修正案ニ對シテハ不同意デアル、
第二十七條中「若ハ第十六條ノ二ノ規定ニ
依ル處分」ヲ「若ハ第十六條ノ二ノ規定ニ依
ル命令」ト改メ、「事業ノ委託、讓渡、廢止
若ハ休止若ハ法人ノ目的變更若ハ解散ノ」ヲ
削ルト云フ修正ニ對シテハ、政府ニ於テ
一、原案ニ於テ「第十六條ノ二ノ規定ニ依
ル處分」トハ第十六條ノ二ノ規定ニ依ル
出資、使用又ハ移動ニ關スル行政處分ノ
意味ニシテ、命令ト意義異ラズ、右ノ點ハ
現行ノ規定ニ於テ存在シ、誤解ヲ生ズルコ
トナシ、二、事業ノ開始ニ關スル命令ハ許
可制等ニ依ル一般的制限ヲ考慮シ居リ、補
償スベキ場合ナシ、共同經營及合併ヲ命ズ
ルハ、之ニ依リ當事者ノ企業ノ能率ヲ發揮
セシメムトスル場合デ、性質上當事者ガ好
マザルニ命令ヲ發動スルガ如キ場合ハ考ヘ
得ラレズ、且共同經營及合併ノ條件ニ付テ
ハ、原則トシテ當事者ヲシテ協議セシメ、
協議調ハザル場合ニハ政府ニ於テ愼重調
査ノ上、例ヘバ合併ニ付評價委員會ヲ設ク
ル等、公正ニ之ヲ決定スル方針デアル、從ッ
テ共同經營及合併ノ命令ニ依リ損失ヲ生
ズルコトナシト考ヘル、右ノ事由ニ依リ修
正案ニハ同意シ難イ、ト云フ說明デアリマ
シタ、此ノ際此ノ修正動議ニ付テ贊成ノ諸
君ガアルカト云フ委員長ノ問ニ對シマシテ、
委員中ノ一人ガ立タレマシテ、右ノ修正
動議ニハ贊成デアルト云フコトヲ表明サレ
マシタニ依リマシテ、此ノ修正動議ガ成立
致シマシテ議題トナッタノデアリマス、ソ
レヨリ討議ニ入ラムト致シマシタ時ニ、一委
員ヨリシテ、此ノ際懇談會ヲ一ツ開イテ、
能ク胸襟ヲ披イテ意見ノ交換ヲシタラ宜カ
ラウト云フコトニナリマシテ、諮リマシタ
處ガ、委員會ハ異議ナク之ヲ認メマシタ
ニ依リマシテ、懇談會ヲ開催致シタノデア
リマス、懇談會ノ趣旨ハ、成ルベク論議
表決ノ法ニ依リマセヌデ、何トカ此ノ問題
ノ局面ヲ打開ヲ致シタイト云フノデアッ
タノデアリマスルケレドモ、併シナガ
ラ懇談會ハ遂ニ纏ルコトヲ得マセヌデアリ
マシタノデ、懇談會ヲ閉ヂマシテ、再ビ委
員會ヲ再開シ、討議ニ入ッタノデアリマス
其ノ時ニ先ヅ此ノ修正案ヲ議題ト致シマシ
タノデアリマシテ、一委員ヨリ修正案ニ
對シマシテ反對ノ意見ノ開陳ガアリマシタ、
其ノ要旨ヲ申上ゲマスレバ本問題ハ愼重
ニ考察シテ取扱ハナケレバナラナイ、修正
案ニ對シテハ、法律的方面ト政治的方面ノ
兩方面ヨリ判斷ヲシテ意見ヲ申上ゲルト云
フコトヲ前提サレマシテ、修正案ニ對スル
反對ノ意見ヲ申述ベラレタノデアリマス
而シテ、修正案提出者ノ說カレタ所ハ、正
シイヤウニハ思ハレルケレドモ、修正案ハ
本法案ノ主眼點ニ觸レタ修正デハナイノデ
アッテ、政治方面カラ考察シマシテ、此ノ際
ハ原案其ノ儘デ可決通過サス方ガ妥當デハ
アルマイカト信ズルノデアル、併シナガラ
提議者ノ意見ハ尊重シナケレバナラヌ筋モ
アルト思フカラ、政府ニ於テハ修正意見ノ
趣旨ヲ取入レラレテ、立法技術ノ上ニ、勅
令ヲ出サレル場合ニハ、十分考慮セラレタ
イサウシテ委員長ヨリ議場ニ報告願フ際
三ハ詳細此ノ邊ノ消息ヲ織込ンデ報告セ
ラレタイト述ベラレタノデアリマシタ、之
ニ續キマシテ他ノ一委員ヨリ、修正案ニ對シ
テ贊成ノ意見ガ表明セラレマシタ、其ノ要
旨ハ、修正案ノ趣旨ハ、提案者ノ質疑ラサ
レテ居ッタ時カラ屢〓同委員ハ演述サレテ居
ルカラ、自分ハ今更修正案ヲ可トスル趣旨
ノ演述ハ省略ヲスル、政府ハ修正案ニ對シ
テ原案ト大差ナキヤウニ申サレルガ、自分
ハ重大ノ關係ヲ持ツト思フガ故ニ、其ノ內
容意味ハ明確ニシテ置ク方ガ宜シイト思
フノデアル、修正案ハ其ノ法文ノ意味ヲ明
確ニスルト云フ爲ノ修正ノ意見デアルカラ
シテ、是ハ貴重ナリト考ヘテ、此ノ修正案
ノ成立ヲ欲スルモノデアルト云フ意味ノ
御意見デアリマシタ、次イデ一委員ヨリ修
正案ニ對シテ反對ノ意見ヲ表明サレマシタ、
國家總動員法ハ、非常ニ廣イ法律デ保護セ
ラレテ居ル人的、物的ノ關係ニ付キマシテ、
國家ノ必要上制限ヲ加へタモノデアリマス、
此ノ廣イ法律關係ニ此ノ僅カノ條文ヲ以テ
規定スルノデ、色々ノ點ニ困難ガアリ、拔
ケ目モ自然ニ出來ル譯デ、完璧ヲ期スルト
云フコトハ容易デナイノデアリマス、修正
案ノ第十三條、第十四條ニ關シマシテ、總
動員業務ヲ行フ者ヲシテ鑛業權等ノ收用ヲ
ナサシムルト云フコトガ、原案ヲ擴張シタ
修正ノ點デアリマシテ、其ノ餘ノ修正點ハ
原案デモ運用ガ出來ルノデアリマス、而シ
テ其ノ收用デアリマスガ、是ハ非常時局、
卽チ戰時其ノ他ノ場合デアリマスカラ、鑛
業權等ノ使用ダケデ滿足スベキデ、之ヲ收
用スルコト迄許ス必要ハナイト思ヒマス、
十八條ノ二ニ付テ申セバ物上ノ擔保ニ付
出資者ノ關係ダケ規定シ、第三者ノ規定ガ
ナイカラ、折角設備ヲ整理シテモ、擔保ノ
實行ニ依ッテ權利ヲ喪フ虞ガアルノデアルト
云フノデアリマスガ、之ニ付テハ代位辨濟
其ノ他ノ方法ニ依ッテ解決スルコトガ出來ル
ノデ、是非共修正シナケレバナラヌトハ思
ヒマセヌ、又十九條ニナリマスト、勅令ニ
依ッテ明カニスレバソレデ足リルノデアリマ
スカラ、其ノ程度デ宜シカラウト思ヒマス、
第二十七條ガ最モ重大ナ修正デアリマス、
私ハ此ノ損害賠償ノ規定ハ、私有財產保護
ニ付テ、憲法ノ擁護スル關係デアリマスカ
ラ、正確ニ規定シタイト思ヒマス、ソコデ
總動員法全體ヲ眺メマスト、損害ノ起キサ
ウナ事項ニ付テ二十七條ニ入ッテ居ラナイモ
ノガアリマス、ソコデ二十七條ノ修正案ヲ
見マスルニ、事業開始ノ制限、共同經營、合
併ヲ加ヘテ、之ニ損害ヲ賠償セムトスルノデ
アリマス、併シ是等ハ何レモ事業ノ經營ヲ本
人カラ奪フノデハナイノデアリマス、政府原
案ハ經營ヲ本人カラ奪フ時ニ、損害ヲ賠償
スルト云フコトガ大體ノ建前デアリマスカラ、
其ノ程度デ宜シカラウト思フノデアリマス、
仍テ私ハ原案デ進ミタイト思ヒマス、ト云
フ主張デアリマシタ、次ニ他ノ一委員ヨリシ
テ、修正案贊成ノ意見ヲ表陳サレマシタ
其ノ要旨ハ專門的ニ豐富ナル知識カラシ
テ發セラレタ所ノ此ノ問題ニ關スル過般來ノ
質疑セラレタル點ニ付テハ、深ク傾聽シテ
居ッタノデアルガ、此ノ修正案ハ法案其ノモ
ノノ根本趣旨ニ反シテ居ラナイデ、疑義ア
ル點ヲ、法文ノ上ニ後々迄殘ルカラト云フ
ノデ、深ク吟味シテ修正ヲサレタノデアッ
テ、法文ヲシテ完璧ナラシメムトスルモノ
デアル、完全ニ完璧ヲ期スルト云フコトハ
ムツカシイ事デアルカモ知レナイガ、見ツ
ケ出シタ所ノモノ、發見シタ所ノ缺點ハ
之ヲ充塡ヲシテ、少クトモ完璧ニナサウト
スルコトハ我々ノ職責ト存ズルガ故ニ、本
修正案ニ贊成ヲ表スルモノデアルトノ論旨
デアリマシタ、以上デ討論ハ終結サレマシ
テ、表決ニ付シタノデアリマスガ、少數デ
修正案ハ否決ニ相成ッタノデアリマス、ソレ
ニ依リマシテ更ニ法案全部ヲバ議題ニ致シ
マシテ討論ニ入ッタノデアリマス、一委員ヨ
リシテ原案贊成ノ理由ヲ申サレマシタ、本
案立法ノ趣旨ハ時宜ニ合シテ居ルモノト思
フ、殊ニ此ノ度ノ改正ハ、重要ナル產業ノ
能率ノ增進擴充ヲナスノ外、其ノ他總動員
物資使用又ハ收用シ得ル者ノ範圍ヲ擴張スル
ガ如キ、產業ノ整備統合ヲ圖ルガ爲ニ、十
六條ノ二ヲ新タニ追加シタト云フコトハ、
生產ノ增强ノ爲ニ結構ノコトト思フ、時局
ニ對應スル當然ノコトデアルガ、將來此ノ
法案ノ運用ノ上ニ付テ考ヘルト重大ナコト
ヲ感ゼラレル、卽チ政府ノ考ヘ方ニ依リテ
ハ統制經濟ノ上ニ支障ヲ來スコトアルカ
モ知レヌ、本委員會ニ於テ表ハレタ幾多ノ
質疑應答ニ依ッテ、政府ハ各委員ノ考ノ奈邊
ニアルカヲ御諒承出來タコトト思ヒマスカ
ラ改正案ヲ運營セラルヽ上ニ參考ニ資セ
ラレタイ、委員ヨリノ質疑ニ對シ答辯ニ立
タレタ當局者タル星野國務大臣ハ、大體質
疑者ノ憂トサレタ點ニ付テハ同感ノ意ヲ表
サレテ、質問者ノ憂ヲ憂トスルト共ニ、本
法實施ノ曉ニハ支障ナク遂行セムトノ誠意
ヲ示サレタコトハ自分ハ之ヲ多トスルモ
ノデアル而シテ此ノ改正案ハ從來モ同樣
ノコトダガ、更ニ重要ナル立法ニ付テ政府
ニ委託スルノデアルガ、其ノ委任ノ內容ガ
或ハ國民經濟ニ、或ハ國民生活ニ、至大ノ
關係アルコトナレバ、實施ノ際新タニ作成
セラルル所ノ勅令案ノ內容ニ付テハ、十分
ノ注意ヲ請フ必要ガアルカラ、之ニ付テハ
民間ノ意思ヲ採用スルコトガ必要ナコトデ
アルト思フ、從來實施上遺憾ノアリシ點ハ、
將來之ヲ絕無ニスル政府ニ考アリヤニ付テ
ノ質問アリタルニ當リ、政府ハ常ニ誠意ヲ
以テ答ヘラレ、又一委員ノ質問ニ對シテ、
官吏制度ノ改革ヲ出來ルダケ早イ時期ニ於
テ行フト申サレタ如キ、又ハ將來十分ニ官
僚獨善ノ弊ヲ避クル深キ御考ガアラレルコ
トガ分ッタノデアル、又自分カラモ勅令作成
竝ニ審議會ノ運用ニ付テ、民間ノ經驗者識
者ノ意見ヲ尊重シ、何等カノ方法ニテ民間
ノ意見ヲ反映スル措置ヲ執ルトノ御答辯ガ
アッタガ、我々ガ協賛セムトスル場合、政府
ノ所見ヲ伺ヒ、斯カル安心ト信賴ガナケル
バ贊成ハ固ヨリ出來ナイノデアルガ、只今
委員會ニ示サレタ政府ノ誠意アル態度ト、
民間ノ意見トヲ尊重シテ、國民ノ憂ヲ除ク
御考ガアルト信ジマシテ、本原案ヲ贊成ス
ルノデアルト十二分ニ念ヲ押サレテノ演述
デアリマシタ、次ニ一委員カラシテ贊成ノ
意見ヲ發表サレマシタガ、其ノ理由トセラ
ルヽ所ノ要旨ハ、曩ニ國家總動員法ナルモ
ノヲ成リ立タシタガ、今囘ハ其ノ重要重大
ノ法案ヲ、更ニ物資、人ノ關係ニ於テ有ラ
ユル廣ク行ハレルヤウニスルノデ、法律的
ニ申セバ廣ク何處迄デ止マルノカ、限界
ガ計リ兼ネル點ガ一番問題ニナル所デアル、
其ノヤウニ廣イ權限ヲ持ツノデアルガ、今
日迄ノ政府ノ說明ニ依レバ、今日ノ必要ノ
程度ニ止メルト申サレテ居ル、唯私ハ法令
ヲ決メルコトニ付テハ、尤モ整備シタル法令
トシテ官ガ運用スルノデアルガ、ソレヲ受
クル人民ノ側ニ於テ能ク理解スルコトニナ
ラヌト、官民一體ノ氣分ガ出テ來ナイ
故ニ勅令、閣令、其ノ他ノ諸案ノ制定ノ上
ニ於テ、特ニ深キ制限ガ經濟界ニ加ルノデ
アルカラ、國民ガ理解シテ喜ンテソレニ趣
クヤウニ仕向ケナケレバナラナイ、犯罪ニ
依ッテ處罰サレテ初メテ氣ガ付クヤウナコ
トガアッテハイケナイ、案ノ制定ニ當ッテハ
總動員察議會ニ懸ケ、十分ニ考慮サシテ熟
シタル成案ヲ得ルヤウニシタイ、民間ノ意
見ヲ問ハレルヤウデアルガ、實際ニ於テソレ
ガ案中ニ表現サレルヤウニ、形式的デナク願
ヒタイト思フ、法律ニ變化サレタ事柄デアル
カラ特ニ左樣ニ願ヒタイ、行政機構ノ刷新ニ
付テ一委員ヨリノ質問ガアッテ、之ニ對シ政
府當局ノ明答ガアッタガ、產業省ハ他省ト異リ
事務ヲ取當フ人ガ時々交替シ爲ニ責任ノ歸
著ガ分ラナクナル、特ニ此ノ點ハ留意セラレ
タイ、次ニ企業者ニ對スル官民一體ノ實ヲ擧
ゲルニ付テ、職域ヲ嚴守スルコトガ大切テア
ル、物動計畫ニ依ッテ企業者ニ擔當サセル上ハ、
生產ノ責任ヲ負ハセル企畫院總裁ハ民間ノ
責任ガ不十分ダトノコトデアルガ、民間ノ
擔當者ガ責任ヲ以テ盡スコトニナラナクテ
ハ不可デアルソレニハ業務者ノ意見ヲ參
酌シナケレバナラヌ、官界ハ企業界トノ人
事ノ交流ヲ行ハレルコトモ宜イ傾向ト思フ、
委員トカ參議トカシテ參畫セシムルノ必要
ガアル、運用上ニ於テ實際ノ經驗知識ヲ徵
スルコトヲ、實際的ニ出來ルヤウニシナケ
レバナラヌ、民間經濟團體ノ組成ハ、公益法
人デアルトノコトデアルガ、之ヲ相當ノ權威
ノモノニスルト云フコトデアルガ、經濟團
體下部團體ニ對スル上ニモ、相當力ヲ與
ヘルコトガ必要デアル、適度ニ力ヲ行使ス
ルコトニ致シタイト深ク思フ者デアリマス、
法其ノモノガ宜シクトモ、人ガ宜シクナケ
レバ何ニモナラナイカラ、其ノ理事者ト云
フ者ハ長ク其ノ位置ニ留ッテ居ル者デナケ
レバナラヌト思フ、經濟團體組成ハ重要ノ
モノヨリスルト云フコトデアルガ、鐵石
炭ノ外ハナカ〓〓困難ナルコトデアラウト
思フ、相當指導シテ上下一體ヲナス企業關
係ヲ、出來ルナラバ指導シテ組織ヲ作リ上
ゲルヤウニナサレタイ、最後ニ國務大臣デ
アルト同時ニ此ノヤウナ法律ヲ運營スル長
官デアラレルカラ、法規ガ善イ方へ向ッテ行
カネバナラヌ時デアルカラ、委員ヨリ質問
ノ箇所ハ數々アッテ、政府ガ之ニ對シテ熱心
ニ說明ニナリ、尤モダト答ヘラレタ所ノコ
トハ必ズ實行サレルコトト思フ、法ノ運用、
立法ニ付テ、唯考ノ儘デ行キ進ム如キ簡單
デ行カナイヤウニ、萬違算ナキコトヲ要望
スト贊成論ヲ結バレマシタ、又一委員ヨリ
本案ニ贊成スル、其ノ理由ハ大體同樣デア
ルカラ省略ヲスルガ、本案ノ實施ニ付テノ
希望モ、只今他ノ委員兩君カラ述ベラレタ
コトデ盡キテ居ルガ、將來此ノ法案ヲ實行
セラレルニ當リ政府當局者ニ考慮ヲ希ヒタ
イコトヲ簡單ニ申述べヨウト思フト言ウテ、
次ノ如キコトヲ申サレマシタ、改正ノ趣旨
ハ國民ノ協力ニ依リ國家ノ總力ヲ擧グル
點產業ノ生產擴充ト能率ノ增進、卽チ人
ト人、物ト物ト、心ト心トノ協力ニ依ッテ達
成スルモノデアルガ、是ト又同樣ニ、法ト
法トノ協力ニ付テ一言述べヨウト思フ是
ダケノ法ガ整備スル以上、如何ナル場合ニ
モ機宜ニ滴應スルコトガ出來ルト云フノデ
アルカラ、恐ラク此ノ法律ニ伴ッテ各條ニ關
聯スル各種ノ勅令ガ相當數ニ上ルデアラウ、
統制經濟ノ法規モ既ニ幾多出來テ居ル、複
雜多岐ノ爲經濟違反モ玆ニ原因シテ居ルコ
トハ質問ノ際ニ申述ベタノデアルガ、今
後ハ一層複雜多岐ニナルコトデアウカラ
法ト法トノ間ヲ整理統合シテ明確ニスルヤ
ウニセラレタイト云フコトハ、企畫院總裁
モ此ノ趣旨ヲ述ベラレテ居ラレルガ、第二
點トシテ能率增進、技術科學ノ最高度ニ發
揮スルコトデアル、技術ノ活用ハ政府ノ政
策トシテ要綱中ニモ述ベラレテアルガ、大
切ナル問題デアルノニ、本案中ニ的確ニ現
レテ居ラナイ、技術ト技術トノ協力、智能
ト智能トノ協力ヲ、法文ニ拘ラズ最善ノ御抱
負アルモノト信ジマスカラ、技術ノ動員ニ
付テモ一段ノ御力ヲ願フ次第デアルト述べ
ラレマシテ贊成論ヲナサレタノデアリマス、
玆ニ於テ討論ガ終結致シマシタノデ、採決
ニ付シマシタ處ガ、全會一致ヲ以テ原案無
修正デ可決議了相成リマシタ、國家總動員
法中改正法律案ニ付キマシテノ審査ノ經過
竝ニ結果ハ以上ノ通リデアリマス、次ニ昭
和十二年法律第九十二號中改正法律案ニ付
テ御報告ヲ申上ゲマス、昭和十二年法律第
九十二號中改正法律案ハ、御承知ノ通リ輸
出入品等ニ關スル臨時措置ニ關スル法律デ
アリマス、此ノ改正趣旨モ、過般本議場ニ於キ
マシテ關係政府當局カラ御說明ガアリマシ
タカラ、此ノ際之ヲ省略致シマス、此ノ委
員會モ去ル二月十九日ノ午後ニ全會一致ヲ
以テ原案ヲ可決議了致シタノデアリマス、
續イテ經過ノ大要ヲ申上ゲマス、委員會開
會中ニ現ハレマシタル質疑モ、サウ澤山ハ
ゴザイマセヌデアリマスガ、其ノ一二ヲ申
上ゲマス、惡質違反者ニ對シテ嚴罰ヲ加フ
ル爲ノ本法ノ强化ハ、誠ニ妥當デアルケレ
ドモ、統制經濟ノ何モノタルカノ認識ニ乏
シク、自由經濟時代ノ考ガ隋性トナッテ居ッ
テ、不知不識ノ間ニ罪ヲ犯シテ犯罪人トナル
者ガ多クアルト思ハレル、政府ハ法定刑ノ
强化ヲ運用スルト共ニ、統制經濟ノ趣旨ヲ
國民ニ徹底セシメ、啓蒙スルノ道ヲ取ッテ
貰ヒタイ、、啓蒙宣傳ニモット努メテ貰ヒタイ
ト思フ、是ガ爲ニハ商業組合トカ、同業組
合ヲ通ジテ、犯罪豫防ノ爲ニ法令遵法ノ精
神ノ向上ヲ圖ル要ガアルト思フガ如何トノ
質疑ト、今一ツハ統制經濟法制下ノ犯罪ニ
付テハ、固ヨリ犯シタル者ノ罪ナルコトハ
勿論デアルケレドモ、斯ク多クノ犯罪者ヲ
出スト云フコトニ付テハ政府側ニ於テモ
其ノ責任ノ一半ハ負フベキモノデハナイカ
ト思フ、人民ヲシテ多クノ犯罪人タラシム
ル原因ニ付テハ物價政策ニ無理ガアルト
カ、配給機構ガ十分滑カデナカッタト云フ
所カラシテ、生活上ノ不安ニ及ンダ所カラ、
又統制經濟ノ認識ノ乏シイコトト相俟ッテ、
不知不識ノ間ニ罪ヲ犯ス羽目ニ陷ル者モア
ルノデアッテ、人民ノミガ罰セラレテ、斯カ
ル犯罪者ヲ出スニ至ッタ手落ノアル官吏側
ガ何等責任ヲ負ハナイト云フヤウナ、信賞
必罰デナケレバナラヌ官吏道ニモ批評スベ
キ廉ハアル、故ニ本法ノ運用ニ當ッテハ、人
民ガ苦シマナイヤウニ、價格政策ニシロ、無
理ダト認メタモノガアッタ時ニハ是正スル
ニ吝カデナイヤウニシテ行カナイト、國民
ハ政府ヲ恨ミ、國ノ政治ヲ呪フヤウニナル
カラ、此ノ點ハ深ク留意シテ貰ハナケレバ
ナラヌ、又他ノ一二ノ委員カラ地方ノ實例
ヲ引用サレマシテ質問ガゴザイマシタ、商
工省ノ政府委員ハ是等ノ質疑ニ對シマシ
テ、誠ニ御尤ノコトデアル、法ノ運用ニ當ッ
テハ深甚ナル態度、敬虔ナル氣持ヲ以テ當
ラナケレバナラヌト思ッテ居ルト思フト云
フ旨ノ答辯ガアリマシタ、質疑ヲ終リマシ
テ討議ニ入リマシタ、一委員ヨリ原案贊成
ノ意見ヲ表明サレマシタ、其ノ要旨ハ惡質
者ニ對スル刑罰ヲ加重スルト云フコトハ
極メテ今日ノ場合當然ノコトデアルガ併シ
ナガラ一言申述ベタイコトハ、罪ヲ犯シタ
ル者ガ惡質者デアルカ善良者デアルカノ判
別ト云フモノハ、蓋シ困難デナイカト思フ
犯罪者ノ中ニハ、政府ノ政策ノ爲ニ元善良
ノ質ノ者ガ知ラズシテ法禁ニ觸レルニ至ル
モノガアルコトハ想像スルニ難クナイコト
デアル、此ノ點ニ關シテ十分ニ政府ニ於テ
モ人民ニ過チヲシ出カサナイヤウニ、法令
運用上ニ遺憾ナイヤウニ、犯罪者ガ出テ來
ナイヤウニ御考慮シテ貰ヒタイ、法規タル
以上、其ノ法規ノ解釋ト運行ノ如何ニ依ッテ
ハ或者ハ罰セラレ、或ル者ハ罰セラレナイ
ト云フコトガアリ、又地方々々ニ依ッテソレ
ゾレ異ッテ一樣ニ律セラレナイ、區々ニナツ
テ居ル實情デアル、兎マレ、人民ノ中カラ
罪人ヲ出スト云フコトハ國政上面白カラザ
ルコトデアルカラ、苟モ罪ヲ犯ス者ガアッタ
時ニハ直チニ拉致シ加罰ヲ以テ臨ムト云フ
コトヲ避ケテ、萬已ムヲ得ザル場合、惡質
者トカ、再三連續、引續イテ犯スモノト認
メタル者ニ科スルヤウニセラレタイモノデ
アル、左モナクテ、罰ヲ行フ如ク法ヲ運用
スル者アラムニハ、是レ惡法トナルモノデ
アル、國家ノ上カラ見テ必要已ムヲ得ズト
認メル時ニ發動サレタイト思フ旨ノ贊成ノ
意見ヲ表サレマシタ、又一委員ヨリハ、經
濟統制ニ基イテ、夥シキ迄ニ法令ガ實施サ
V、皆ソレ〓〓ニ罰則ガ伴ッテ居ル、今後ハ
政府ノ方針ニ於テハ大體總動員法ニ因ルト
云フコトデアルガ、此ノ點ハ十分ニ進マナ
クチヤナラヌコトデアルガ、元來此ノ法律
ハ輸出入品ニ限ルベキモノデアッタモノヲ、
ソレヲ其ノ他ト云フコトデ、廣ク及ボサレ
タコトハ已ムヲ得ナイコトデアルケレド
モ、總動員法ノ强化擴大シタ以上、從前
ノ省令ヲ整理スルコトヲバ是非シテ貰ヒタ
イ、罰則ヲ擴大サレルコトハ必要デアルガ、
運用ニ依ッテ統制違反ヲ看過スル譯ニハイ
カナイカラ、此ノ度ノ改正ハ斯ク〓〓ノ意
味ダト云フコトヲ明カニシテ、罰則ガ擴大
シタカラ、擴大シタ法律デ臨ムノダト思ハ
セナイヤウニシタイト思フト云フ贊成ノ意
見ヲ表サレマシタ、又一委員ヨリハ總動
員法ト此ノ法律ヲ設ケラレルノハ已ムヲ得
ナイガ、當局ノ誠意アル說明ニ依ッテ之ヲ
贊成スルト同時ニ、政府當局者ノ心構ヘガ
適用上ニ大切ナコトデアル、嚴罰主義ト云
フ當局談トシテ出テ居ッタガ、ソレデハイケ
ナイ、御答ニナッタ御心構ヘガ宜イト思フ、
戰爭目的達成ノ上ニ於テ、人民ヲ弱體者
トナルヤウニスルノハ相手方ヲシテ有利
ニスルコトニナル、是ハドウシテモ情味
アリ淚アル日本ノ武士道的宗〓的情
操ヲ以テ宜シク深切ニ、泣イテ法令ノ
本旨ヲ說明シ、〓へ導ク底ノ政府當局ノサ
ウ云フ心持ガ、一般下僚ニモ、國民ニモ徹
底貫通スルコトニナラナケレバナラヌ、サ
ウシテ實際ニ犯罪者ノ出ヌヤウニ指導シ、
〓育ヲサシテ貰ヒタイト云フコトヲ申述べ
ラレマシテ、原案ニ贊成ヲ表サレタノデア
リマス、之デ以テ討論ヲ終結シマシテ、前
申上ゲマシタ通リ採決ニ付シマシタ處ガ、
全會一致ヲ以テ原案無修正デ可決議了ニ相
成ッタ次第デアリマス、以上御報告ヲ終リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=30
-
031・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 別ニ御發言
モナケレバ兩案ノ採決ヲ致シマス、兩案
ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異議ゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=31
-
032・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=32
-
033・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ兩案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=33
-
034・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=34
-
035・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 西大路子爵
ノ動議ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=35
-
036・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=36
-
037・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 兩案ノ第二
讀會ヲ開キマス、御異議ガナケレバ、全部
ヲ問題ニ供シマス、兩案全部、委員長ノ報
告通リデ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=37
-
038・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=38
-
039・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ兩案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=39
-
040・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=40
-
041・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 西大路子爵
ノ動議ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=41
-
042・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=42
-
043・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 兩案ノ第三
讀會ヲ開キマス、兩案全部、第二讀會ノ決
議通リデ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=43
-
044・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス、是ニテ休憩致シマス、午後ハ
二時ヨリ開會致シマス
午後零時二十九分休憩
午後二時七分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=44
-
045・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 報〓ヲ致サ
セマス
〔佐藤書記官朗讀〕
本日委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
重要機械製造事業法案可決報告書
工作機械製造事業法中改正法律案可決報
〓書
貸家組合法案可決報告書
住宅營團法案可決報告書
醫療保護法案可決報告書
國民勞務手帳法案可決報〓書
日本製鐵株式會社法中改正法律案可決報
〓書発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=45
-
046・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 是ヨリ休憩
前ニ引續キ會議ヲ開キマス、御諮ヲ致スコ
トガゴザイマス、伯爵松平賴壽君、子爵井
上匡四郞君ハ本院議員トシテ既ニ在職三
十年以上ニ達セラレ、常ニ精勵恪勤、克ク
議員タルノ職責ヲ盡サレマシタ、松平伯爵
ハ、現ニ貴族院議長トシテ、嚴正公平ニ其
ノ職務ヲ執ラレテ居リマスルコトハ申上ゲ
ル迄モナイノデアリマス、就キマシテハ
先例ニ依リマシテ、此ノ際院議ヲ以テ兩君
多年ノ功勞ヲ表彰致シタイト存ジマス、尙
其ノ表彰文ノ起草ハ之ヲ議長ニ御委セヲ
願ヒタイト思ヒマス、以上議長ノ發議ニ御
同意ノ諸君ノ起立ヲ願ヒマス
〔起立者多數〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=46
-
047・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 松平伯爵、
井上子爵ヲ除キマシテ全會一致ト認メマス、
就キマシテハ議長ノ手許ニ於テ起草致シマ
シタ表彰文案ヲ、是ヨリ朗讀ヲ致シマシテ
御諮ヲ致シマス
從二位勳二等伯爵松平賴壽君貴族院議員
ノ任ニ在ルコト三十年精勵恪勤力ヲ憲政
ノ濟美ニ效セリ貴族院ハ君ガ積年ノ功勞
ヲ憶ヒ玆ニ院議ヲ以テ之ヲ表彰ス
昭和十六年一一月二十一目
正三位勳二等子爵井上匡四郞君貴族院議
員ノ任ニ在ルコト三十年精勵恪勤力ヲ憲
政ノ濟美ニ效セリ貴族院ハ君ガ積年ノ功
勞ヲ憶ヒ玆ニ院議ヲ以テ之ヲ表彰ス
昭和十六年二月二十一日
只今朗讀致シマシタ表彰文案ニ、御異議ゴ
ザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=47
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048・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス、尙表彰文ノ贈呈方ハ議長ニ於
キマシテ之ヲ取計ラヒマス、此ノ際、松平
伯爵ヨリ發言ヲ求メラレテ居リマス、松平
伯爵ノ御登壇ヲ願ヒマス
〔伯爵松平賴壽君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=48
-
049・松平頼壽
○伯爵松平賴喜君 只今井上子爵ト私ガ、
院議ヲ以テ御鄭重ナル表彰ヲ戴キマシタコト
ハ、誠ニ身ニ餘ル光榮デゴザイマシテ、感
激ノ至リニ堪ヘマセヌ、我々兩人ハ甚ダ微
力デゴザイマシテ、何等功勞トシテ認メラ
ルベキモノガナカッタノデアリマス、然ルニ
幸ヒ大過ナク今日ニ至リマシテ此ノ光榮ニ
浴シマシタルコトハ、偏ニ先輩同僚各位ノ
御懇篤ナル御指導ト御援助ノ賜ト深ク感銘
致シテ居ル次第デゴザイマス、現下非常時
局ニ際シマシテ、私共兩名淺學短才微力デ
ハゴザイマスルガ、憲政ノ爲ニ一層ノ努力
ヲ致サムコトヲ期シテ居ル次第デゴザイマ
ス、極メテ簡單デゴザイマスガ、御決議ニ
對シ茲ニ深甚ナル謝意ヲ〓シマシテ、皆樣
方ニ御挨拶ヲ申上ゲル次第デゴザイマス
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=49
-
050・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 日程ニ移リ
きっ、日程第十一、衆議院議員ノ任期延長
ニ關スル法律案、日程第十二、府縣會議員、
市町村會議員等ノ任期延長ニ關スル法律案、
政府提出、衆議院送付、第一讀會ノ續、委
員長報告、是等ノ兩案ヲ一括シテ議題ト爲
スコトニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=50
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051・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス、副委員長大塚君
衆議院議員ノ任期延長ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也多
昭和十六年二月二十日
副委員長大塚惟精
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
府縣會議員、市町村會議員等ノ任期延
長ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十六年二月二十日
副委員長大塚惟精
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔大塚惟精君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=51
-
052・大塚惟精
○大塚惟精君 委員長ノ德川公爵ガ御差支
ガアリマスノデ、私ヨリ御報〓ヲ申上ゲマ
ス、衆議院議員ノ任期延長ニ關スル法律案、
府縣會議員、市町村會議員等ノ任期延長ニ
關スル法律案、右二案ノ委員會ニ於ケル審
議ノ經過ト其ノ結果トヲ御報告申上ゲマス、
衆議院議員ノ任期延長ニ關スル法律案ハ、
現任衆議院議員ノ任期ヲ一年延長スルコト
ガ骨子デアリマス、府縣會議員、市町村會
議員等ノ任期延長ニ關スル法律案ハ、昭
和十七年三月三十一日迄ニ任期滿了ス
ベキ府縣會議員ニ付テハ、其ノ任期ヲ
同年四月一日迄、市會議員、市町村會議員
等ニ付テハ其ノ任期ヲ同年五月二十日迄、
之ヲ延長スルコトヲ規定シテアリマス、衆
議院議員ノ任期延長ニ關スル法律ハ、憲法
附屬ノ法律ノ規定ヲ改正シ、實質的ニハ國
民ノ大切ナル選擧權ヲ一年間停止セムトス
ルモノデアリマシテ、我ガ國ノ憲法史上先
例ナキ所ノ法案デアリマス、從ッテ委員會ニ
於キマシテハ極メテ愼重ナル審査ヲ遂ゲマ
シタ、尙此ノ法案ハ衆議院ト密接ナル關係
ニアルモノデアリマスカラ、同院ニ於ケル
審査ノ情況ハ十分ニ參考ニ致シマスシ、又
其ノ決議ニ對シマシテモ、特ニ之ヲ重ンゼ
ヌケレバナリマセヌケレドモ一面ニ於キ
マシテハ衆議院ハ餘リニ緊密ナル關係ヲ
有シマスルガ故ニ、此ノ種ノ法案ハ貴族院
ニ於テコソ一層愼密ニ之ヲ審査スルノ要ア
ルヲ思ヒマシテ、委員會ハ一層愼重ニ審議
致シマシタ、政府ニ對シマシテモ、其ノ質
スベキモノハ之ヲ質シ、確カムベキモモノ
ハ之ヲ確カメタノデアリマス、從ッテ質疑ハ
極メテ多岐ニ亙リマシタガ、今其ノ質疑應
答中ノ主ナルモノヲ御報〓致シマス、先ヅ
第一ニ、政府ハ現下ノ時局ニ鑑ミ、本年四
月ノ末ニ行ハルベキ衆議院議員ノ選擧ヲ一
年延期シ、又之ニ準ジテ地方議會ノ議員ノ
選擧ヲモ延期セムトスルモノデアルガ
〔議長伯爵松平賴壽君議長席ニ著ク〕
寧ロ今日ノ如キ時局ナレバコソ、進ンデ總
選擧ヲ行ッテ、擧國一致一億一心ノ實ヲ擧ゲ
テ、國民ヲシテ一層時局ノ認識ヲ深メシム
ルト共ニ、外國ニ對シテモ總選擧ニ依ッテ現
レタル擧國一致ノ情況ヲ示スベキデハナイ
カ、日〓戰役ノ時ニハ、明治二十七年ノ八
月一日宣戰ノ布〓ガアリマシテ、同年九月
一日ニ總選擧ガ行ハレテ、擧國一致ノ實ヲ
示シテ居リマス、日露戰爭時ニハ、三十七
年ノ二月十日ニ宣戰ノ布告ガアリマシテ、
三月一日ニ總選擧ガ行ハレテ擧國一致ノ實
ガ現レテ居ル、斯クノ如ク日〓日露ノ兩役
二、當時ノ爲政家、明治ノ元動方ガ執ラレ
タ態度コソ、現政府ガ今日ニ於テ執ラルベ
キ態度デハナイカ、斯フ云フ問ニ對シマシ
テ、内務大臣ノ御答ト致シマシテハ日本
ノ擧國一致ノ態度、是ガ外國人ノ觀察シテ
居ル所ト日本ノ實際ノ情況ト餘程隔リガア
ルヤウニ考ヘテ居ル、然ルニ今總選擧ヲ行ッ
テ、國內ニ相剋摩擦ガアルト云フ事實ヲ見
セテ、誤解ヲ生ゼシメルコトハ、非常ニ不
利益ダト考ヘル、此ノ際ハ出來ルダケ擧國
一致ノ體制ヲ示シテ外國ヲシテ誤解ナカラ
シムルコトニ極力努メナケレバナラナイ、
國民ガ一時的デモ選擧ニ沒頭シ、投票ヲ爭
フ候補者ハ勿論デアルガ、總テ選擧ニ關係
スル者ガ相剋摩擦ヲ選擧ノ時ニ生ズルコ
トハ、出來ルダケ止メタ方ガ宜イト思フ、
日〓日露戰役ノ事例ヲ採ッテノ御質問デ
アルガ、擧國一致ノ體制ハ現今デハマア
大體整ッテ居ル、總理大臣ガ祕密會等ノ說明
ニナッテ居リマス所カラ見テモ、今後ノ所謂
緊迫シタ狀態、之ヲ考ヘマスト日〓日露ノ
戰役トハ大分事態ガ異ッテ居ルトノ答ガア
リマシタ、次ノ質問ハ選擧ニ際シ相剋摩擦
ヲ生ズルトノ見方ヲナサル內務大臣ノ選擧
ニ對スル御理念ハ、我々ノ考ヘル所ト大分
違フヤウニ思フガドウデアルカ、明治元年
五箇條ノ御誓文中ニ、萬機公論ニ決スベシ
ト云フ有難キ詔ヲ戴イテ居ル、ソレニ依ッテ
著々トシテ憲法實施ガ準備サレ、憲政ガ布
カレタノデアリマス、選擧ト云フモノハ、
國民ノ國政ニ參與スル所ノ尊イ國家奉仕デ
アル、選擧ト云フモノハ實ニ尊イ神聖ナモ
ノデアルト思フ、今迄ノ政府モ、何時モ上
述ノ如キ選擧ノ理念ヲ以テ國民ヲ〓育シ、
指導シテ來テ居ル、然ルニ現政府ハ選擧權
ト云フモノハ、國民ガ不必要ナル摩擦競爭
ヲシ、互ニ喧嘩テモスルカノ如キ考デアル
ヤウデアル、法律案ノ說明ニ當ッテモ、斯ク
信ゼシムル如キ文字ヲ用ヒラレテ居ルノヲ
見ルト、選擧理念ニ付テノ內務當局ノ御考
ガ少シ從來ト異ッテ居ルデハナイカト云フ
疑ヲ持ツ、內務大臣ノ選擧ニ對スル御考ヲ
承リタイトノ質問デアリマシタ、是ニ對シ
テ內務大臣ハ、選擧ノ理念ニ關シテハ決シ
テ從來ト異ッタ考ハ持ッテ居ナイ、質問者
ノ考ト全ク同ジデアル、選擧其ノモノ
ガ決シテ國民ノ間ニ相剋摩擦ヲ生ズベ
キ性質ノモノデハナイガ、唯總選擧ヲ行
フ結果、一部ニサウ云フ事象ヲ生ジ易
イト云フコトガ、過去ノ經驗ニ於テ認ム
ルコトガ出來ルノデ、此ノ際ハ斯カル事象
ノ生ジナイヤウニ努メタイト云フノガ、主
タル目的デアルト云フ御答デアリマシタ、
次ノ質問ハ、政府ハ、現在衆議院議員ノ任
期ヲ一年延長スルコトニ此ノ法律デ定メラ
レテ居ルガ、一年ノ後ニハ果シテ衆議院議
員ノ選擧ヲ行ヒ得ル自信ヲ御持チデアルデ、
アラウカ、此ノ時局ノ見透シ如何ト云フ問
デアリマシタ、是ニ對シテ內務大臣ハ、時
局ノ見透シニ付テハ御答ヲ避ケラレタノデ
アリマス、是ハ後ニ祕密會ニ於テ是ニ相當
御答ニナッタ所ガアリマシタ、次ニ衆議院議
昌選學法改正法案ト、此ノ法案トノ關係如
何ト云フ質問デアリマス、衆議院議員ノ選
擧法改正案ハ次ノ議會ニ御提案ノ積リデア
ルカ、若シ御提案ニナルトセバ、其ノ改正
選擧法實施ノ準備ノ爲ニ、衆議院議員選擧
ヲ更ニ相當期間延期ノ必要アルノデハナイ
カト云フ問ニ對シテ、選擧法ノ改正案ハ次
ノ議會ニ提案スル積リデアル、從ッテ其ノ實
施準備ノ爲ニ相當ノ期間ヲ要スルカラ、結
局衆議院議員ノ選擧ハ、來年ノ或ハ秋頃ニ
ナルカモ測ラレナイト云フ御答デアリマシ
タ、次ニ府縣會議員、市町村會議員等ノ任
期延長ニ關スル法律ガ實施セラレマス結果
ハ、縣會ニ於テハ三ツ、旣チ三縣、市會ニ
於テハ七十餘、町村會ニ於テハ九千五百、
區會ニ於テハ十五ト云フ數ニ適用セラル
コトトナルノデアリマシテ、卽チ全國ノ
萬二千餘ノ市町村中、其ノ八割以上ニモ適
用ガ及ブコトニナルノデアリマス、從ッテ是
ハ地方行政ニ關シ重大ナル影響ヲ與フルノ
虞アルト思フ、現在ノ市町村等ニ於ケル理
事者ニハ、必シモ適當ナラザルモノモアル
ト思フガ、選擧民等ハ是等ノ理事者ニ對シ
テハ、選擧ニ際シ、正シキ適當ナル議員ヲ
選擧シテ、地方議會ノ空氣ヲ〓新、明朗ナ
ラシメテ、其ノ結果ニ依ッテ、適當ナラザル
理事者ノ交代ヲ望ミ得ル現狀ナノニ、今全
國ニ亙ッテ八割以上ニ及ブ大多數ノ地方議
會ノ選擧ガ延バサルヽコトニナッテハ、其ノ
地方行政ニ及ボス惡イ影響ハ極メテ大ナルノ
デハナイカト云フ問デアリマシタ、之ニ對
シテ内務大臣ハ、御說ノ如キコトモ一部ニ
ハ起ルデアラウケレドモ、大局カラ見テ此
ノ際選擧ヲ延スト云フ利益ノ方ガ大ナル點
ヲ見テ、此ノ案ヲ提出シタノデアルト云フ
御答デアッタノデアリマス、以上ノ外、或ハ
衆議院ノ解散權トノ關係、又本法律案提出
ト衆議院ニ於ケル質問取止メトノ關係ノ有
無內閣ノ基礎ト政黨トノ關係、又言論取
締トノ關係等、其ノ他有益ナル質疑ガアリ
マシタケレドモ、其ノ詳細ハ速記錄ニ御讓
リ致シマス、尙祕密會ニ於テ相當突込ンダ
質疑。應答ガアリマシタ、斯クシテ質疑ヲ終
リ、討論ニ入リマシタガ、一委員ヨリ、政
府ノ說明ニ依ッテ現下ノ時局ニ鑑ミテ已ム
ヲ得ズシテ此ノ兩法律案ヲ提出セラレタル
事情ハ篤ト諒承ヲ致シタ、去リナガラ選擧
ハ憲政ノ根軸デアル、今囘ノ如ク議員ノ任
期ヲ延長シ、從ッテ選擧ヲ一時取止ムルガ如
キコトハ、我ガ國憲法發布以來未ダ曾ッテ見
ザル異例ノコトデアルガ故ニ、政府ハ將來
此ノ種異例ノ立法ヲ繰返スガ如キコトノナ
イヤウニ、深甚ノ注意ヲ拂ハレムコトヲ望
ム旨ノ意見ヲ加ヘラレマシテ、此ノ兩案ニ
對シテ贊成ノ旨ヲ述べラレタノデアリマス、
而シテ採決ニ入リマシテ、此ノ兩法律案共
全員一致ヲ以テ可決致シマシタ次第デアリ
やく、右御報〓申上ゲマズ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=52
-
053・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 討論ノ通告ガゴ
ザイマス、大河內輝耕子爵
〔子爵大河內輝耕君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=53
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054・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 會議ガ午後ニ亙リマ
ス際ニ皆サンヲ煩ハシテ誠ニ恐縮ニ存ジマ
ス、併シ斯ウ云フ重大ナ案ノ上程サレルニ付
キマシテ、玆ニ其ノ贊成ノ理由ヲ述ブルト
共ニ、又我々ノ希望スル所ヲ述ベテ置
キマスルノガ必要ナコトカト存ジマシテ、
甚ダ恐縮ニ存ジマスルガ、少シノ間ノ
時間ヲ拜借致シタイ、只今大塚委員長カラ
ノ御報告ニ依リマシテ、此ノ案ニ付キマ
シテハ、貴族院トシテハ最モ鄭重ナル審議
ヲ盡サレ、殆ド問題ノ有ラユル疑點ヲ茲ニ
晴ラサレマシタコトハ、議院トシテ感謝ニ
堪ヘナイ次第デゴザイマス、私モ暇ガゴザ
イマシテ、其ノ委員會ニ傍聽致シテ居リマ
シタノデ、其ノ樣子ハ能ク存ジテ居リマス、
斯カル愼重ナ審査ガアルニツケテモ、此ノ
議案ハ不幸ニシテ委員ノ數ハ少ウゴザイマ
シタガ、非常ナ重要法案ト貴族院ガ認メテ
居ルト云フコトヲ言ッテ差支ナイト存ジマ
ス、ソレデ是ガ通過致シマシタ曉ニ、只今
委員長ヨリ御說明ノ通リ一年半ノ後ニ選擧
ハ延長サレマス、此ノ一年半ノ期間ト云フ
モノハ、日本ノ政治上ニ取リマシテ重大ナ
ル時期ダト私ハ考ヘル、此ノ重大ナル時期
ニ於キマシテ、政界ニ居ラレル御方々ガ、
ドウ云フ行動ヲ執ラナケレバナラヌカト云
フコトニ付キマシテ、甚ダ私ハ僣越デゴザ
イマスルガ多少ノ希望ヲ述ベサシテ戴キタ
イ、勿論貴族院ノコトデゴザイマスカラ、
衆議院ノ御方ノ御行動ニ付キマシテ彼此批
評ガマシイコトハ決シテ申シマセヌ、併シ
ソレニ付キマシテ多少ノ希望ハ述ベタイト
思ッテ居リマス、是ハ御許ヲ願ヒタイ、ソレ
デ今日ノ我々ノ現實ノ問題ハ······モット根
本カラ言ヘバ色々ゴザイマセウガ、現實ノ
我々ノ爲スベキ任務ハ何カト云フト、是ハ
生產力ノ擴充ト云フコトダラウト思ヒマス、
ソレカラ消極的ニ言ヘバ物資ノ節約、此ノ
二點ニ向ッテ我々ノ努力ヲ傾注シナケレバナ
ラヌコトダラウト存ジマス、斯ウ云フコト
ヲヤリマスニ付キマシテハ、今朝前田子爵
カラ御報〓ガゴザイマシタ通リ、民間ノ方
ノ意見ヲ重ンジテ、サウシテ何處迄モソレ
ニ依ッテ此ノ生產力ノ擴充ヲシテ行クト
云フコトガ必要デアラウト云フコトハ政
府ガ御認ニナッテ居ル、ソレトモウ一ツ必要
ナコトハ、議會ノ權能ヲ十分ニ發揮サシテ、
殊ニ民間ノ代表デアル所ノ衆議院ノ權威ヲ
モット强クシテ、其ノ權限ヲ擴張サセル、十
分ニ其ノ機能ヲ發揮セシムルト云フコトガ、
政治的ニ見レバ必要ナコトデアル、經濟的
ニ見テ、今民間ノ經濟團體ノ力ヲ借リルノ
ト同ジ意味ダト存ジマス、處ガ今日ノ情勢
ヲ見マスルト、必ズシモ之ニ卽應シテ居ラ
ナイ、法案ヲ見マシテモ、今朝ノ總動員法
ノ如キハ、是ハ決シテ惡イト申スノデハゴ
ザイマセヌ、委員ノ方々ノ御審査ニ對シテ
十分ノ敬意ヲ表シテ居リマスルガ、アノ內
容ヲ見テ見マスト云フト、ドウモ何デモ彼
デモ勅令ニ委シテ、政府ハ何デモ勝手次第
ノ事ガ出來ルヤウニ出來テ居ル、一ニ是ハ
運用ニ俟タナケレバナラヌト云フヤウナコ
トニナリマシテ、考ヘ方ニ依ッテハ如何カト
思ハレル節モゴザイマス、寧ロ斯ウ云フモ
ノハ法律ヲ以テ定メラレテ、何カノ場合ニ
ハ緊急勅令ト云フヤウナ便法モアル、サウ
云フ方法ニ出ラレルコトモ一ツデアラウシ、
又私ノ關係致シマシタ關稅定率法ニ於キマ
シテモ同樣ナ感ガアル、殊ニ今度ノ衆議院
議員選擧法ナドハ人數ヲ減少シヨウト云
フノデアル、是ナドハ能率カラ言ヘバ非常
ナ違ヒデアル御承知ノ通リ、此ノ議案山
積ノ時ニハ一人ノ議員ガ三ツモ四ツモ委員
ヲ兼ネナケレバナラヌ、コンナ狀態ノ時ニ、
人數ヲ減ラシタラドウシテ仕事ガ出來ルカ、
迚モヤリ切レルモノヂヤゴザイマセヌ、ド
ウシテコンナコトヲ政府ガ御考ニナルカ
サッパリ私ニハ分ラナイ、平常〓究シテ置ケ
ト云フ御話デアルガ、平常ノ〓究ハ出來ル
モノヂヤナイ、何故カト云フト、政府ノ意
見ガ決ラナイ、重大ナ問題ニ付テモ政府ノ
意見ガ間際ニナラナケレバ決ラナイ)ソレ
デアルカラ、何ニモ材料ガ出テ來ナイカラ、
其ノ時ニナラナケレバ議員ノ方ハ調ベヨウ
ニモ調ベルコトガ出來ナイ、衆議院ノ方ハ
存ジマセヌガ、貴族院ナンカ三ツモ四ツモ
委員會ヲ掛ケ持チシテ居ラレル方モアル
サウ云フ狀態デアル、ソレデアルノニ、サ
ウ云フコトヲヤッテ居ル、又是ハ本當カ噓カ
知リマセヌガ、議事ヲ促進シテ吳レト云フ
要求ヲサレタヤウニ聞イテ居ル、是ナドハ
殆ド常識デハ分ラナイ、我々ハ是ダケ努力
シテ居ル、サウシテ夜モ遲ク迄ヤッテ居ル
ノニ、何デ促進ナント云フコトヲ言ッテ
來ルノカ、モットユックリヤッテ貰ヒタイ、
モット愼重ニヤッテ貰ヒタイト言フノガ當リ
前デアル、如何ニモ政府ノ態度ハ不思議ニ堪
ヘナイ、斯ウ云フヤウニ政府ノ態度ナリ一
般ノ空氣ガ、議會ノ權限ヲ縮小スルト云フ
コトニ向イテ居ルト云フコトハ爭フベカラ
ザル事實デアル、唯議會ニ對スル問題ノミ
ナラズ、言論機關ニ對シテモ亦然リ、何デ
モ新聞ハ構ハズ止メテシマフ、警視廳カラ
御布令ヲ出シテ勸〓シテ止メサセル、斯ウ
云フヤウナコト迄頻リニヤッテ居ラレル
サウデアル、ソレカラ此ノ間モ私ハ聞キ
マシタガ、翼贊會ニ對シマシテハ憲法ニ
違反シテ居ルトカ或ハ幕府的存在ナリト云
フヤウナコトハ一切言ッテハナラヌ、斯ウ云
フ依命通牒ガ警保局長カラ出テ居ル、是ナ
ドモドウ云フ譯デ出テ居ルノカ、法律上ノ
根據如何ト聞イタラ、或政府委員ハ答ヘラ
レナカッタ、又更ニ內務大臣ニ御尋シタ所
ガ、是ハ治安ヲ維持スル爲ダト仰ッシャル、
ドウモ憲法論ヲヤルノガドウ云フ譯デ治安
ヲ害スルカ、私ニハサッパリ分ラナイ、斯ウ
云フ狀態デサウ云フコトヲヤラレル以上、
何ダッテ彼ダッテ何カ言ヘバ直グ引掛ル、誠
ニ勝手極マル解釋ト言ハナケレバナラヌ、
之ニ付キマシテ我々ガ考ヘナケレバナラヌ
コトハ、國防保安法デアル、アレヲ此ノ調
子デヤラレタラドウナルカ、殆ド國民ト云
フモノハ言論ノ自由ヲ失ッテシマフ、サウス
ルト何處デヤラレルカト云フト議院デアル、
議院ダケガ、此ノ議會デ、貴衆兩院デヤル
ダケガ勝手ナコトガ言ヘル、言ヘルノハ宜
イガ、肝腎ナコトニ至ッテハ新聞ニ出サナイ、
屹度私ノ今日言ッタコトナドモ新聞ニハ出
ナイダラウ、一ツモ出ヤシナイ、其ノ顯著ナ
ル一例ハ斯ウ云フ事ガアル、衆議院ノ豫算
委員會ノ第四囘ノ速記錄ノ四十四頁ノ第一
段ニ、川崎委員ガ斯ウ云フ質問ヲシテ居ラ
レル、「翼贊會ト云フモノハ政府ノ仕事ヲ補
充スルモノデアルト云フコトデアルガ此ノ
補充ヲスルト云フ法律上ノ根據ハアリマセ
又、是ハ何處ニモ其ノ規定ガナイ、憲法義
解ノ一番劈頭ヲ御覽ニナレバ斯ウ云フコト
ガ書イテアル、卽チ「大臣ノ輔弼ト議會ノ翼
會トニ依リ機關各〓其ノ所ヲ得テ而シテ臣
民ノ權利及義務ヲ明ニシ、益〓其ノ幸福ヲ進
ムルコトヲ期セムトス、此レ皆祖宗ノ偉業
ニ依リ其ノ源ヲ疏シテ其ノ流ヲ通ズル者ナ
リ」トアッテ、此ノ機關以外ニハ無ノイコトヲ
ハッキリ明確ニセラレテ居ル、ソレカラ私ハ
前ニ申上ゲタヤウニ、此ノ明治二十六年ノ
詔書ノ中ニモハッキリト此ノコトガ仰セラ
レテ居リマス、機關ノ紛淆ト云フコトヲ飽
クマデモ御避ケニナッテ居ル」マダ色々中ニ
モ言ッテアル、處ガ新聞ニハコンナ事ハ一ツ
モ書イテナイ、一ツモ書イテナイモンダカ
ラ川崎君ハ、我々御懇意ニシテ居ル關係
デモアリマセウガ、之ヲ皆ニ配ラレタ、配ッ
テ讀ンデ吳レト云フ御話、私バカリデナイ、
皆サンニモ御配リニナッタト思フ、斯ウ云フ
ヤウニ、マルデ言論ト云フモノハ非常ニ狭
メラレテ居ル、折角適法ニヤラウトシテモ、
此ノ調子ヂヤ適法ニヤルコトガ出來ナイ、
斯ウ云フ情勢ニ持ッテ行ッテ拍車ヲ掛ケテ來
タノガ翼贊會、翼贊會ノ性質ハ暫ク私ハ今
日ハ避ケマスガ、此ノ間モドナタカ此處デ
御話ガゴザイマシタヤウニ、是ハ憲法上、
政治上重大ナ問題デアル、所謂時局ヲ楯ト
シ、法規ヲ彈丸トシ、「イデオロギー」ノ遊
〓ニ耽ルモノハ卽チ是デアル、是デアルト
ハ仰シヤラナカッタガ、サウ云フヤウナ疑ガ
アル、疑ヲ挾ムニ十分ノ根據ガアルト云フ
コトヲ伺ッタヤウニ聞イテ居ル、是ハ國民皆
ノ疑フ所デアル、ドウ云フ譯デ、ソレヂヤ
斯ウ云フ疑ガ出來テ來タカト云フコトガ言
ヘルカ、是ハ何デモナイ、翼賛會ニ左翼ガ
潛入シテ來タカラ······近衞公ハ敷居ヲ取
外シタダケヂヤイケナイ、中ヲ引搔キ廻シ
テシマヘト仰シヤッタ、ソレガ善イカ惡イカ
分リマセヌ、敷居ヲ取外シタダケヂヤイケ
ナイカラ、中ヲ引搔キ廻スト云フノハ、
應ノ御議論カモ知レマセヌガ、其ノ爲ニ赤
イ「インキ」モ黑イ「インキ」モ滅茶々々ニ引
繰リ返シテシマッタ、赤イ「インキ」ハ赤イ
「インキ」ニ殘シテ置ケバ安全ダ、黑イ「イ
ンキ」ハ黑イ「インキ」ニ殘シテ置ケバ安全
ダ、赤ト黑ヲ引搔キ廻シタ所カラ、後デド
ウシテ赤ダケヲ取出セルカ、實ニ危イコト
ナンデアリマスカラ、上ハ幹部ノ方カラ、
下ハズット使ハレテ居ル人達迄、斯ウ云フ
分子ガ多數潛入シテ居ルト世間デハ言ッテ
居ル、又顯著ナ一例トシテハ講師佐々木
某ノ放言トナリ、是ハ何デモ檢擧サレテ居
ルサウデス、豫算委員會ニ問題トナリマシ
テ、立派ニ速記錄ニ殘ッテ居ル、サウ云フコ
トモアル、或ハ傳フル所ニ依レバ某幹部
ガ財產奉還論ヲヤッタ、或ハ北陸ノ某縣ニ於
テハ諸方ニ不穩ナ立看板ガ立ッテ大イニ人
心ヲ惑ハシタ、或西南ノ學務部長ガ不穩ナ
放言ヲヤッテ、サウシテ〓育界ヲ混亂セシメ
ク、色々ソンナ事實ガ澤山ニ起ッテ居ル、斯
ウ云フ事カラシテ、左翼ガ潛入シテ居ルト
云フコトヲ人ガ疑フヤウニナッテ來タ、我々
モ之ニ對シテハ重大ナル關心ヲ以テ見ナケ
レバナラヌコトダト存ジマス、ソレヂヤ左
翼ハドウ云フ風ナ方針デ行クノカ、之ニ付
キマシテハ一度述ベタコトモゴザイマスガ、
一向徹底シナイ氣味ガアル、甚ダ恐縮デゴ
ザイマスガ、一應繰返サシテ戴キタイ、左
翼ノ指令ト云フモノハ、近頃ハドウ云フコ
トカト言ヒマスト、先ヅ忠君愛國ヲ助長ス
ル、決シテ國體等ニハ觸レナイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=54
-
055・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 大河內君、成ル
ベク範圍內ニ御止メヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=55
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056・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 承知シマシタ、ソレ
カラ戰爭ヲ煽シ、或ハ議會制度ヲ崩壞セシ
メル、或ハ資本主義ヲ崩壞セシメ、或ハ企
業ヲ國營化シテ財產ヲ平等ニセシメヨ、或
ハ商人ヲ潰セ、或ハ地主農民ヲ壓迫セヨ、
或ハ贅澤ヲ禁止シテ技術ヲ低下セシメル、
貿易收入ノ絕滅ヲ圖レ、或ハ金ヲ無シニシ
テシマヘ或ハ官僚ノ益制ヤ經濟警察ヲ非
常ニ妙ニヲカシクヤッテ、官民ヲ離間シロ
或ハ支那事變ノ長期化ヲ圖レ、サウシテ最後
ニ遂ニ非常ナ危險ナコトハ斯ウシテ段
段·····其ノ者ノ言フ通リニ申セバ、斯ウナ
レバ國モ段々弱ッテ行クカラ、其ノ間ニ軍政
デモ布イテ、人民戰線ヲ煽動セヨ、何デモ
「ケレンスキー」ガヤッタヤウナコト迄言ッテ
居ル、實ニ危險ナコトデアリマス、斯ウ云
フ風ニスル爲ニハ、色々ノ勢力ヲ麻痺サセ
ナケシバナラヌ、ソレニハ重臣ノ勢力、議
會政黨ノ勢力、或ハ財閥ノ勢力、或ハ言
論機關ノ勢力、是ダケヲ皆麻痺サセテシマ
へサウシテ狙ヒ所ハ何處ニアルカト云フ
ト、極ク純心無垢ナ靑年階級ニ働キ掛ケテ、
サウシテ之ヲ實行シテ行ケ、モウ危險思想
ナント云ッタッテ、迚モ日本デハ耳ニ向ケナ
イカラ、斯ウ云フ純心無垢ナ人ニ持ッテ行ッテ
「フアッショ」ヲ行へ······「フアッシヨ」ト云ッテ
モイケナイノデ、ソレヘ持ッテ行ッテ斯ウ云
フヤウナコトヲ、知ラズ識ラズニ焚キ付ケ
テ行ケ、ト云フヤウナ作戰計畫ダ、斯ウ云フ
ヤウニ聞イテ居リマス、ソレデ斯ウ云フヤウ
ナ風ニナリマスルト、此ノ一年半ノ間ニ如何ナ
ル狀態ガ起ルカ、若シコンナモノガ盛ニ行
ハレルヤウナコトニナレバ、治安維持法ヲ百
出シテ見タ處デ何ニモ追付カナイ、是ハ私
ハ此ノ一年半ニ於ケル······所謂一年半ノ任
期ヲ與ヘラレタ衆議院ノオ方々ノ責任ダラ
ウト思フ、詰リ斯ウ云フ不穩分子ヲ總テ除去
シテ、一部官僚ノ政治的ノ介入ヲ排除シテ、サ
ウシテ「イデオロギー」ノ遊戲ハ止メテ、サウ
シテ生產ノ擴充ニ持ッテ行ッテ全力ヲ注グ、
ソレデ國力增進ヲ圖ル、是ヨリ一年半延バ
サレタ今日此處デ議了サレタ法律ノ精神ハ、
卽チ此處ニアルノヂヤナイカト思フ、是私
ハ善イトモ惡イトモ申シマセヌガ、人ガ言
フノニハ、先達テ衆議院デ、本會議ノ質問ガ
ナカッタノハ甚ダ残念ダッタ、アレガアッタナ
ラモット衆議院ノ意嚮モ能ク聽カレタラウニ
ト云フヤウナコト迄言ッテ居ル人モアリマス、
又今度ノ衆議院ニ於ケル豫算審議ニ付キマシ
テモ、是非一ツアレハ明カニシテ貰ヒタイ、
何カ質問ガ少クナルヤウナ風ニ、本當カ嘘
カ、新聞ニアルガ、アヽ云フモノヲ明カニ
スルダケハ明カニシテ置イタ方ガ宜イヂヤ
ナイカト云フヤウナコトヲ言ッテ居ル人ガア
リマス、私ハハッキリ何デモ伺ヒタイコトハ
伺ヒタイ、國民ノ一人トシテ······併シ貴
族院デ衆議院ニ對シテ、御審議ノコトヲ彼
此申ス譯デハナイ、デスカラサウ云フコト
ヲ私ハ考ヘテ居ルカドウカト云フコトハ差
控ヘテ置キマスガ、兎ニ角斯カル危險思想
ノアルト云フヤウナコトヲ、人ガ言ハレテ
居ル時代ニ於キマシテハ、此ノ一年半ノ努
力ト云フモノガ、非常ナ好イ效果ヲ後ニ殘
スカ、或ハ非常ナ惡イ效果ヲ殘スカ、此ノ
點ニ付テ重大ナル關心ヲ持ツト云フコトハ
申上ゲテ差支ナイト思フ、併シ是ハ努力次
第デ行カナイコトハナイト思フ、現ニ經濟
統制ニ付キマシテモ、今朝委員長カラ御報
告ガゴザイマシタ通リ、政府ニ於カレテハ、
今迄ノ官僚統制ノ惡イコトヲスッカリ感ジラ
レマシテ、サウシテ官僚統制ハ止メテ、民
意ニ依ッテ絲制ヲヤッテ行カウト云フ方針
ニ、段々變ヘテ來ラレルト云フコトハハッキ
リシテ居ル、恐ラク是ハ政治上ニ付テモ、
何人モ政界ニ居ラルヽ方々ガ十分ニ努力サ
レタナラバ、政府ト言ハズ、又外ノ方面ト
モ言ハズ、全然好轉シテ來ルコトカトモ存
ジマス、此ノ任期ノ延長ノ案ガ可決サレル
ニ付キマシテモ、政界ニ居ラレル方々ノ責
任ハ非常ニ重イ、我々ハ斯ウ云フ所ニ居リ
マスルカラ、何等表面ニ立ッ者デモナケレバ、
中樞部ニ居ル者デモゴザイマセヌ、衆議院
ノ方々ハ中樞部ニ居ラルヽト思ヒマス、此
ノ重大ナル時局デアルト云フコトヲ能ク御
考ヘ下サイマシテ、不斷ヨリモ一層ノ努力
ヲシテ戴キタイ、是ガ我々ガ此ノ一年半任
期ヲ延長スルコトニ贊成シタ理由デアリマ
ス、其ノ理由ヲ以テ、私ハ此ノ案ニ贊成致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=56
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057・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 他ニ御發言モナ
ケレバ兩案ノ採決ヲ致シマス、兩案ノ第
二讀會ヲ開クコトニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=57
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058・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=58
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059・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ兩案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=59
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060・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=60
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061・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=61
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062・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=62
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063・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 兩案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナケレバ、全部ヲ問
題ニ供シマス、兩案全部、委員長ノ報告通
リデ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=63
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064・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=64
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065・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ兩案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=65
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066・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=66
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067・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=67
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068・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=68
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069・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 兩案ノ第三讀會
ヲ開キマス兩案全部、第二讀會ノ決議通
リデ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=69
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070・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=70
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071・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第十三、樺
太開發株式會社法案、政府提出、衆議院送
付、第一讀會ノ續、委員長報〓、委員長兒
玉伯爵
樺太開發株式會社法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十六年二月十九日
委員長伯爵兒玉秀雄
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔兒玉秀雄君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=71
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072・兒玉秀雄
○伯爵兒玉秀雄君 只今議題トナリマシタ
樺太開發會社ノ委員會ノ審査ノ經過竝ニ結
果ヲ御報告致シマス、委員會ハ四囘開會致シ
マシタ、先ヅ政府委員ノ說明ヲ求メマシテ、
直チニ質疑ニ入ッタノデアリマス、元來、本
會社ノ創立ノ理由ハ、本會議ニ於キマシテ
大略述ベラレタル如ク、近時國際情勢ノ推
移ニ伴ヒマシテ、南方ノ基地トシテ臺灣ノ
重要性ガ加リマシタルト同樣ニ、樺太ハ北
方ノ生命線ト致シマシテ、國防上經濟上其
ノ認識ニ一大變化ヲ促スニ至リマシタコト
ハ爭フベカラザル事實デアリマス、卽チ
高度國防國家體制ヲ確立スル上ニ於キマシ
テ時局下重要資源タル石炭及木材ノ供給
ヲ潤澤ナラシムル爲、之ヲ樺太ニ求ムルノ
必要ニ迫ラレタノデアリマス、又樺太ハ地
理的關係上、島民ノ糧食ハ悉ク之ヲ內地ニ
仰イデ居ルノ現況デアリマス、萬一此ノ狀
況ヲシテ何時迄モ抛擲シテ置クナラバ、
朝有時ノ際ニ臨ミマシテ、海上ノ交通ガ杜
絕サレルニ至リマシタ場合ニ於キマシテ、
島民ノ窮狀ハ實ニ寒心ニ堪ヘザルモノガア
ルノデアリマス、依ッテ此ノ危急ニ備フル
爲島內ニ於キマシテ寒地ニ適應スル農作
物ノ增產ヲ計畫スルハ、國策上何ヨリ必要
ナコトデアリマス、ソレ故ニ一面樺太廳ニ
於キマシテハ、農事ノ振興ヲ奬勵シマスル
ト共ニ、今囘會社ヲシテ農事經營ヲ致サシ
ムルノ方途ヲ講ゼシメタノデアリマス、卽
チ豐富ニシテ良質ナル石炭ノ採掘、木材ノ
積極的開發ト合理的利用ヲ圖リマスルト共
ニ、機械化農業ヲ經營セシメテ、島內ノ糧
食ノ白給ノ一助タラシメムトスル所以デア
リマス、而シテ之ガ會社ノ組織及政府ノ補
助監督ノ點ニ至リマシテハ、大略他ノ國策
會社ト其ノ揆ヲ一ニスルコトヲ認ムルモノ
デアリマス、質疑ノ主ナルモノニ付キマシ
テ御說明申上ゲタイト思ヒマス、樺太ニ於
キマスル石炭分布、及本會社ノ經營スベキ
炭鑛ノ狀況ニ關シマシテハ、今囘本會社ノ
經營スベキ炭鑛ハ、樺太西海岸ノ南部ニ位
シテ居リマス南名好附近ニアリマシテ、其
ノ利用炭量ハ約三千五百萬「トン」ニ上ッテ
居ルノデアリマス、次ニ樺太ニ於キマス石
炭業ニ付キマシテ、最モ困難ニ感ジマスノ
ハ、海上輸送ノ不便デアリマス、此ノ點ニ
關聯致シマシテ、會社ハ差當リ山元カラ南
名好迄鐵道ヲ敷設シマシテ、木造棧橋ヲ新
築シテ、艀荷役ニ依リマシテ之ヲ內地ニ搬
出セムトスル計畫デアリマスガ、尤モ來年度
豫算ニ於キマシテ惠須取、眞岡、本斗ノ築
港ノ擴張、ソレト同時ニ、新線鐵道ノ建設ヲ
計畫シテ居リマス、更ニ將來內幌トノ間ニ
鐵道ヲ敷設スル計畫ニナッテ居リマスカラ、
其ノ結果、不凍港デアル所ノ本斗港ヲ利用
シテ、內地へ輸送スルノ途ガ開ケル順序ニ
ナッテ居ルノデアリマス、而シテ石炭輸送ニ
關係致シマシテハ、目下時局下ニ於キマシ
テ船舶管理ノ運營上、本會社ガ自ラ船舶ヲ
所有スルコトノ利益ヲ認メマセヌノデ、當
分ノ間民間ノ汽船會社ト連絡利用スルノ途
ヲ講ズルト云フコトデアリマス、本會社ノ
經營ト、資材及勞働力トノ關係ニ付キマシ
テハ、資材ノ最モ多量ニ要スルモノハ石炭
採掘ニアルノデアリマスガ、之ニ要スル資
材ハ物動計畫中ニ計上セラレテアリマスル
ガ故ニ、不便ヲ感ズルノ虞ハナイノデアリ
マン、木材ノ伐採ニ付キマジテハ、餘リ多
クノ資材ヲ要シナイノデアリマス、又機械
化農業ニ關シマシテハ萬一不足ヲ生ジタル
場合ニ於キマシテハ、樺太廳ノ現ニ所有ス
ル所ノ器具機械ヲ一時融通シテモ開拓ニ差
支ナイコトヲ圖ルノ計畫デアルサウデアリ
やく、勞力ニ關係致シマシテハ、主トシテ
之ヲ朝鮮ニ求ムルヨリ外ハナイノデアリマ
スルガ、僅カニ三、四千人ノ勞働者ヲ要スル
ニ過ギナイノデアリマスルカラ、之ヲ充實
スル爲ニハ左程困難ヲ感ジナイト說明サレ
テ居ルノデアリマス、次ニ樺太林制ニ付キ
マシテ、樺太ニ於キマシテハ要存林ガ八億
三千餘萬石、不要存林ガ一千四百萬石デア
リマシテ、內、利用シ得ル所ノ率ハ五億五千
萬石ニ上ッテ居ルノデアリマス、斫伐計畫ニ
依リマスレバ、年伐量一千三百萬石デアリ
マスルガ、現下ノ時局ノ必要ニ應ジマシテ、
昭和十五年度ニ於キマシテハ二千五百萬
石ヲ伐採スルコトニナッテ居リマス、而シテ
右ノ內、會社ニ於テ伐木スベキ分量ハ五百
萬石ノ豫定デアリマス、而シテ其ノ一部ハ公
用資材デアリマスルシ、他ノ一部ハ現ニ炭鑛
ガ伐採シテ、其ノ伐採シツヽアル所ノモノヲ
此ノ會社ニ於テ引受ケテ經營スルノデアリ
マスルカラ、從ッテ從來ノ木材業者ノ業務ヲ壓
迫スルノ虞ハナイノデアリマス、而シテ人
工植林ノ豫定ハ十五箇年間ニ三十五萬
町步デアリマシテ、假令斫伐量ヲ增加致シマシテ
モ、年伐量ノ保持ニ遺憾ナキヲ期シ得ルト云
フ計算デアリマス、次ニ機械化農業ハ殆ド
創始ノ事業デアリマスケレドモ、島内ノ食糧ノ
一部ヲ補給スルヲ目的ト致シマシテ、從來ノ
實驗ノ結果ニ鑑ミマシテ麥類、豆類及牧草
類ヲ主トシテ耕作セシメテ、一區劃二百町
步ヲ單位トシ、一年ニ五箇所、十一箇年後
ニ於キマシテ一萬町步ヲ成功セシムル豫定
デアルノデアリマス、而シテ各區劃ニ付キ
マシテ、最初ノ三年間ハ缺損ヲ生ズル見込
デアリマスルガ、全部完成シタル上ニ於テ
ハ、其ノ損失ヲ補フニ足リルトフ計算デア
リマス、會社ノ創立ノ趣旨ハ、時局ニ對應
シテ重要資源デアル石炭木材ノ開發ヲ第一
義トシ、未經驗デアル所ノ機械化農業ハ先
ヅ之ヲ試驗的ノ程度ニ止メルコトヲ可トセ
ズヤ、又石炭木材モ當分之ヲ委託經營ニス
ル方ガ、急ニ應ズル所以デハナイカト云フ
質問ニ對シマシテ、農業經營ニ關係致シマ
シテハ、其ノ品種ノ選定宜シキヲ得マスレ
バ、必ズ好成績ヲ擧グルコトデアラウ、又
木材石炭ノ經營ニ關シマシテモ、之ヲ委任
經營ト致シマスルヨリモ、幸ヒ今囘ノ鑛區
ガ一獨立炭區ヲ形成シテ居リマスルガ故ニ
之ヲ獨立會社ヲシテ經營セシムルヲ利益ト
スルト云フ說明デアリマシタ、又本會社ノ
資金融通ノ關係ニ付キマシテ、東洋拓殖會
社竝ニ北海道拓殖銀行トノ關係ニ付キマシ
テ、本會社ハ主トシテ他ノ會社ノ株式引受
ニ限ル積リデアルガ故ニ、北海道拓殖銀
行ト兩立スルコトガ出來ルシ、東洋拓殖會
社ハ本會社ノ主タル出資者ト相成リマスル
關係上、東拓ノ營業區域ニ認メル方ガ却テ
便宜ナリト云フ說明デアリマシタ、附帶事
業ト致シマシテ、電氣事業、水產業及肥料
ニ關心ヲ有スルノ必要ナキヤト云フ質問ニ
關シマシテ、樺太廳ニ於キマシテハ、從來
各地ニ於キマシテ經營セル自家用ノ發電ヲ
統合シテ、之ヲ合理化スルノ用意ガアリマ
ス、水產業ニ付キマシテハ、一面地元漁業
ヲ保護スルノ必要ヲ認ムルト共ニ、遠海漁
業竝ニ肥料等ノ加工ニ關シテハ、會社ノ附
帶事業トシテ之ヲ經營スルノ適切ナルヲ認
ムル旨ノ答辯ガアリマシタ、又我ガ國ニ於
キマシテハ、地下資源ハ之ヲ國有トシ、法
律上先願權ヲ認メ、之ヲ無償ニテ何人ニモ
許可スルコトヲ根本方針ト致シテ居リマス
ルノニ反シマシテ、政府ガ今囘石炭ヲ出資
スルニ之ヲ評價シテ出資スルハ不當ニ非ズ
ヤトノ質問ニ對シマシテ、政府ハ一應御尤
ナル御意見デアリマスルガ、國策會社ニ於
キマシテハ、之ヲ評價シテ出資ノ一部ニ充
テルコトヲ先例トシテ居ルノデアリマス、
而シテ之ニ對シマシテ、政府ノ出資ニ對シ、
或程度迄配當免除ノ特典ヲ認メマシテ、之
ヲ調節スルノ方法ヲ執ッテ居リマスルガ故
ニソレト同樣ノ趣意ニ於キマシテ、今囘
ノ規定ヲ致シタノデアルト云フコトデアリ
マシタ、又事業ノ經營ニ付キマシテハ、大
綱ハ政府自カラ監督スルノガ當然デアルケ
レドモ、實際ノ仕事ニ付キマシテハ、會社
ノ理事者ニ、廣範圍ニ於キマシテ自由手腕
ヲ揮ハシメルコトガ最モ肝要ナリトノ意見
ニ對シマシテ、政府ハ全然同感ノ意ヲ表シ
テ居リマス、株ノ割當ニ關シマシテ、資本
總額五千萬圓ノ半額ヲ、民間出資ニ俟ツコ
トト致シマシテ、其ノ割當方法ハ未ダ確定
ヲ致シテ居リマセヌケレドモ、主ナル金融
業者、樺太ニ關係ヲ有スル企業家竝ニ一般
公募シテ、樺太島民ニモ適當ニ按配スル積
リナリト申サレテ居リマス、尙其ノ他農民
及鑛山勞働者ノ收入ノ比較、農民助成ノ方
法、樺太移民ト滿洲移民トノ助成上ノ比較、
農業移民ノ計畫確立ノ必要、會社業務ノ監
贅罰則ニ關スル規定、樺太ニ於ケル工業
奬勵ノ必要、機械化農業經營ノ困難、竝之
樺太ニ於ケル水產、石油、「ツンドラ」工業、
養狐業、馬匹改良、鐵道及電氣ニ關スル等
ノ質問ガアッタノデアリマス、最後ニ本會社
ハ國策會社ト致シマシテ國策上必要ナル
事業ヲ營ムノハ當然デアルガ、會社資本ノ
半額ヲ民間ニ求ムル關係ニ於キマシテ、全然
利益計算ヲ無視スルノ理由ハナイノデアル、
而シテ會社ノ事業中石炭、木材ノ經營ハ、利
益確實デアルケレドモ、植林竝ニ機械的農
業ノ事業ハ、必ズシモ利益ヲ伴フモノト認
メラレナイモノガアル、故ニ事業別ニ其ノ
收支ヲ明カニシテ、損益計算及ビ配當率ノ適
否ヲ明白ニスル必要ガアルトノ質問ニ對シ
マシテ、政府ハ次ノ如キ說明ヲ與ヘテ居リマ
ス、第一年度ニ於キマシテハ、石炭採掘ニ
於テ三十四萬餘圓、木材斫伐ニ於キマシテ
六十二萬餘圓ノ利益ヲ得、造林ニ於テ四萬
九千圓、其ノ他ニ於テ二萬八千餘圓ノ損失
ヲ見テ、差引第一年度ニ於テ六十三萬餘圓
ノ利益ヲ擧ゲルノ計算デアル而シテ拂込
資本ニ對シマシテ二分六厘ノ利益率ヲ示シ
テ居ルノデアリマス、而シテ第二年度ヨリ
ハ、五分又ハ六分以上ノ配當ヲ爲シ得ルノ
計算ト相成ッテ居ルノデアリマス、第五年度
ニ至リマシテ、石炭ニ於キマシテ三百一一十
餘萬圓、木材ニ於キマシテ二百八十餘萬圓
ノ利益ヲ示シ、造林ニ於テ二十三萬餘圓、
農業經營ニ於テ十萬餘圓、其ノ他ニ於テ百
七十餘萬圓ノ損失ヲ計上致シマスルノ結果、
拂込資本ニ對シマシテ七分九厘ノ利益率ヲ
示シテ居リマス、而シテ配當率ト致シマシ
テハ民間七分、政府ニ四分ヲ計上シ得ルノ
豫想デアリマス、斯クノ如キ計算デアリマ
スルガ故ニ、本會社ニ對シマシテハ政府
ノ配當保證ヲ要スルコトナクシテ、單ニ政
府ノ配當免除ノ特典ノミヲ以テ優ニ經營シ
得ルノ計畫デアルト云フ說明デアッタノデ
アリマス質疑ノ大體ハ前述ノ通リデアリ
マスガ、質疑ヲ終リマシテ討論ニ入リマシ
テ、一委員ヨリ、本計畫ノ提案ハ寧ロ遲キ
ニ過ギルモノガアル、樺太ノ開拓ハ木材、
石炭等ノ天然資源ノ開發ニ依リ生ズル利益
ニ俟ッヨリ外ハナイノデアル、之ヲ行フニハ
國策會社ノ經營ニ依ルヲ最善トスルノ理由
ニ依リマシテ、原案ニ贊成ノ意ヲ表セラレ
タノデアリマスガ、唯從來國策會社ノ成績
ハ兎角不良デアル、政府ハ此ノ點ニ深キ注
意ヲ拂ッテ、會社ノ發展ニ助力ヲ與フルト共
ニ、旣存ノ業者ニ對シマシテモ、之ヲ助長
スルノ方針ヲ執ラレムコトヲ望ムノ希望ヲ
添ヘラレマシテ、贊成ノ意ヲ表セラレタノ
デアリマス、又他ノ一委員ハ、本會社ハ北
支及ビ中支ノ開發會社ト同樣ノ重大使命ヲ
有スルモノデアル、殊ニ對「ソ」ノ關係上、本
會社ニ期待スル所ハ頗ル大ナルモノガアル、
樺太ニ於ケル石油其ノ他各種ノ天然資源ノ
開發ニ關シ、本會社ノ活潑ナル活動ヲ希望
スル旨ヲ述ベラレテ、贊成ノ意ヲ表セラレ
タノデアリマス、斯クシテ討論ヲ終リ直チ
ニ採決ニ入リ、全會一致原案ニ贊成セラレ、
本案ハ可決セラレタノデアリマス、右御報
告申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=72
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073・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本日ハ議事ノ都
合上、是ニテ延會致シタイト存ジマスガ御
異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=73
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074・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、次會ノ議事日程ハ決定次第彙報
ヲ以テ御通知ニ及ビマス、本日ハ是ニテ散
會致シマス
午後三時八分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007603242X01719410221&spkNum=74
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