1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
會議
昭和十六年二月八日(土曜日)午前十時二十分開議
出席委員左の如し
委員長 林平馬君
理事 宮本雄一郎君 理事 森田重次郎君
樋口善右衞門君 熊谷五右衞門君
椎尾辨匡君 杉山元治郎君
曾和義弌君 仲井間宗一君
則元卯太郎君 福田悌夫君
本田英作君 村瀬武男君
吉植庄亮君
二月七日委員作田高太郎君辭任に付其の補闕として樋口善右衞門君を議長に於て選定せり
出席國務大臣左の如し
文部大臣 橋田邦彦君
出席政府委員左の如し
恩給局長 平木弘君
文部次官 菊池豊三郎君
文部省專門學務局長 永井浩君
文部省普通學務局長 中野善敦君
文部省社會教育局長 纐纈彌三君
文部省體育局長 小笠原道生君
文部省圖書局長 松尾長造君
文部省宗教局長 阿原謙藏君
本日の會議に上りたる議案左の如し
恩給法中改正法律案(政府提出)
義務教育費國庫負擔法中改正法律案(政府提出)
小學校令の改正に伴ふ恩給法等の規定の整理に關する法律案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=0
-
001・林平馬
○林委員長 開會致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=1
-
002・杉山元治郎
○杉山委員 此ノ際資料ヲ御願ヒシタイト
思ヒマス
最近五箇年ニ於ケル小學校〓員ノ疾
病別退職數
二、全國ニ於ケル〓員保養所數ト收容人
員
三、小學兒童ノ學年別肺病罹病者比率
四、小學校〓員ノ年功加俸ヲ受ケテ居ル
者ト受ケザル者ノ割合
五、恩給金庫利用者數ト其ノ金額ノ大小
六、巡査、看守、守衞ノ受ケテ居ル恩給
金額ノ最大ト最小
若シ重複致シマスナラバ省イテ戴イテ結構
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=2
-
003・曾和義弌
○會和委員 私モ文部省當局ニ御願ヒシタ
イノデアリマス、國民學校令ハ未ダ公布サ
レテ居ナイヤウデアリマスケレドモ、旣
成案ハ出來テ居ルダラウト思ヒマスカラ、
之ヲ御示シヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=3
-
004・林平馬
○林委員長 ソレデハ御申込ノ順序ニ依リ
マシテ御質問ヲ願フコトニ致シマス-曾
和君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=4
-
005・曾和義弌
○曾和委員 私ハ只今議題トナツテ居リマ
ス本案ニ關聯シマシテ、根本的ナ問題ニ付
キマシテ、數項ニ亙ツテ文部大臣ノ御所見
ヲ承リタイト思フノデアリマス、〓育ノ義
務制ト云フコトニ付キマシテハ、我ガ國ニ
於テハ明治十二年ノ〓育令ニ其ノ端ヲ發シ
テ居リ、爾後漸次强化セラレマシテ、今日
ニ及ンデ居ルノデアリマスガ、次代ノ國民
ヲ鍊成スル上カラ考ヘマスナラバ、單ニ父
兄ニ義務ヲ負ハセルノミデハ適當デハナイ、
卽チ子供ト云フモノハ單ニ家庭ノ人トシテ
デハナク、國民トシテノ〓養ヲ積マサナケ
レバナラナイノデアルカラ、子弟ニ一定ノ
〓育ヲ受ケサセルコトハ、保護者ノ義務デ
アルト云フ建前ハ勿論デアリマス、併シナ
ガラソレヨリモ、寧ロ今日マデハ或ハ閑却
サレテ居ツタノデハナイカト思ハレマスル
ノハ國家ノ之ニ對スル義務デアリマス、此
ノ點ニ付テハ私ハ今日マデノ所ニ於テ、甚
ダ遺憾ナ點ガアツタト考ヘルノデアリス、
其ノ第一點ト致シマシテハ、〓育ノ經費ノ
問題デアリマス、今度ノ改正案ニ依リマス
レバ、國家ハ〓員俸給ノ半額ヲ支給サレル
コトニナツテ居リマス、尙ホ從來ハ市町村
ガ其ノ殘額ヲ支出スルト云フ制度デアリマ
シタガ之ヲ改メラレマシテ、府縣ニ於テ支
辨スルコトニナツタノデアリマス、私共ハ
此ノ改正ニ對シマシテハ、其ノ方針、精神
ニ於テ滿腔ノ同意ヲ表スル者デアリマス、
從來市町村、殊ニ町村ガ此ノ〓育費ノ爲ニ
非常ニ財政上困難ニ立至ツテ居リマシテ、
常ニ負擔ノ輕減ヲ要望シテ居ツタノデアリ
マスガ、次第ニ改善サレマシタコトハ、洵
ニ私ハ國家ノ爲ニ喜ブ者デアリマス、隨ヒ
マシテ此ノ相互ノ義務性ノ觀念カラ考ヘマ
スルト、保護者ノ側ニ於キマスル所ノ義務
ト云フモノハ、最近ノ情勢ニ依ツテ見マス
ト、殆ド百「。パーセント」ニ近ク履行サレテ
居ル、其就學率ニ於テ、出席步合ニ於テ、
國民ニ〓育思想ガ普及致シマシタ結果、殆
ド保護者ノ方ニ於テハ百「パーセント」ニ實
行サレテ居リマス、併シ國家トスレバ半額
ヲ國費デ出スト云フコトデナシニ、私ハ尙
ホ將來進ンデ全額ヲ國庫カラ支辨シテ戴キ
タイト云フ希望ヲ持ツテ居リマス、ソレハ
何故デアルカト申シマスト、地方廳ト雖モ
國家ノ一部ノ政務ヲ執ツテ居ル、ダカラ國
庫カラ全額ヲ出スモ、又府縣ガ其ノ半額ヲ
負擔スルモ同ジナンダト云フ考ヘ方ハ勿論
私共ハ是認シマス、是認シマスガ、同ジコ
トデアルナラバ、府縣ノ財政制度ト云フモ
ノヲ改メマシテ、〓員給全部ヲ國庫カラ出
ス、其ノ結果ドウ云フ影響ヲ國民ニ與ヘル
カト云フト、國家ガ如何ニモ國民〓育ト云
フモノヲ重大視シテ居ル、隨テ〓育者自身
モ今日マデノ現狀ニ見マスガ如キ、自己ヲ
卑シクスルト云フヤウナ感ジガナクナル、
其ノ上カラ考ヘマスナラバ、〓育ノ效果ヲ
シテ、ヨリ適切ニ、ヨリ深刻ナラシメル爲
三、ドウシテモ私ハ小學校〓員給ノ全額
ヲ國庫カラ支給スベキモノデアルト信ズル
者デアリマスガ、此ノ點ニ付キマシテ近キ
將來ニ於テ左樣ナ方針ヲ實現サレルト云フ
コトノ御考ヘヲ御持チデアルカ否ヤヲ先ヅ
承リタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=5
-
006・橋田邦彦
○橋田國務大臣 義務制ニ關スル國庫負擔
ニ付テノ御意見ハ全ク御尤モダト存ズルノ
デアリマス、既ニ〓育審議會ニ於テ決議シ
マシタ方針モ、全額國庫負擔ト云フコトヲ
明カニ要求シテ居ルノデアリマシテ、又私
ト致シマシテモ、ソレガ當然デアルト考へ
テ居リマス、併シ色々財政ノ問題其ノ他
ニ付キマシテ、種々考慮シナケレバナラヌ
點モアルカト思ヒマスガ、出來ルダケ近イ
將來ニ於テ、全部國庫負擔ト云フコトガ實
現サレルヤウニ努力スル積リデ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=6
-
007・曾和義弌
○曾和委員 只今ノ御答辯ヲ承リマシテ、
私ハ非常ニ喜ビニ堪ヘナイノデアリマス、
又國家ノ爲ニ一日モ早ク實現サレンコトヲ
切望スル次第デゴザイマス
次ニ今一ツ茲ニ義務者ガアルト私ハ考ヘ
ル、ソレハ後繼者ヲ〓育シテ行クト云フコ
トハ、直接ノ親デアル者ノ義務ハ勿論デア
ル、又一方ニ於テ鞏固ナル國家體制ヲ整ヘ
テ居ル國家ニ於テハ、勿論國家ノ義務ガ必
要デアリマスルガ、モウ一ツハ其ノ國家ノ
一員デアル國民ノ中デ、人格高潔デアリ、而
モ國家ノ隆盛ヲ冀フ人士ハ、努メテ後繼者
ノ〓養ト云フ〓イ職ニ就ク義務ガアルト私
ハ思フノデアリマス、然ルニ今日マデノ我
ガ國ノ實際ヲ見マスルト、ドウモ俊秀ナル
人々ガ〓育者トナルト云フコトニ赴カナイ
デ、他ノ方面ニ走ル、ソレハ何故デアルカト
云フト、恐ラク今日マデ我ガ日本ノ國内ニ
ハ功利主義ガ實ニ渦卷イテ居ル、恐ラク國
民ノ大多數ト云フモノガ利己主義デアリ、
功利主義デアル、隨テ國家トシテ次代ノ國
民ヲ錬成〓養スルト云フ風ナ高潔ナル仕事
ヨリモ、他ニ自己ノ收入ノ多イ方面ニ走ル
ト云フ傾向ガアリ、隨テ〓育者ニナツテ居
ル人々ノ一部ニハ、自分ガ〓育者ト云フコ
トヲ選ブ動機ガ何處ニアルカト云フト、比
較的安全ナ職業デアル、或ハ又比較的樂ナ
仕事デアル、而シテ一方ニ於テハ相當人ニ
モ尊敬ヲ受ケル、斯樣ナ消極的ナ意味ニ於
テ〓育者ニナツテ居ル、デアリマスルカラ
シテ、ドウモ其ノ思想ガ卑屈デアリ、考、
方ガ狹小デアル、隨テ其ノ職務ヲ行フ態度
ガ其ノ日暮シノヤウナ狀態デアツテ、本當
ニ次代ノ國民ヲ鍊成スルト云フ自覺ヲ持ツ
テ、之ニ一身ヲ捧ゲテ居ルト云フ人ガ私ハ
稀デアルト云フ實情ヲ屢。見セ付ケラレテ居
ルノデアリマス、是ハ要スルニ日本ノ國民
思想ノ全體ヲ功利主義カラ脫却セシメ、所
謂利己主義カラ脫却セシメテ、眞ニ赤心奉
公ノ一念ヲ以テ自分ノ職域ニ奮勵スルト云
フ所ノ思想ヲ養ヒ、其ノ結果今申シマスル
通リ、〓育者トシテ適切ナル人格、識見、
身體、技能ヲ有スル人々ガ、サウ云フ特長ト
申シマスルカ、優レタ要素ヲ持ツテ居ル人
人ガ、次代國民ヲ〓育スルノ義務ガアルモ
ノデアル、甚ダ下卑タ例デアリマスガ、賢
ウハ隣ノ阿呆ニ使ハレルト云フ言葉ガ世俗
ニアル、賢イ人間ガ使ハレルンダ、サウ云
フ一種ノ社會生活ト申シマスカ、國家生活
ニ於テ、自分ハサウ云フ天職ヲ授ツテ居ル
ノデアルト云フ自覺ノ下ニ、〓育者ガドン
ドン出テ吳レルト云フ風ナ狀態ニ導カネバ
ナラヌモノダト私ハ考ヘルノデアリマスガ、
斯ノ如キ國民思想ヲ從來ノ舊イ殼カラ脫却
セシメル、サウ云フ計畫ニ付キマシテ文部
省ニ於テ何カ御考ヘニナツテ居ルコトガア
リマセウカ、御伺ヒシテ置キタイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=7
-
008・橋田邦彦
○橋田國務大臣 只今ノ御高說、洵ニ有難
ク拜聽致シマシタ〓育義務ト云フ問題ハ
考ヘ方ニ依リマスト、洵ニ廣汎ナ問題デゴザ
イマシテ、是ハ所謂國家ト謂ヒ、或ハ政府當
局ノ義務デ、モアレバ、父兄ノ義務デモアリ、又
廣ク言ヘバ國民一般ノ義務デアル、斯ウ考ヘ
テ居リマスモノデ、今ノ御說ト御同感ノ次第
デアリマス、殊ニ〓育ト云フモノガ直接〓育ニ
携ハツテ居ル者ダケニ依ツテ完成サレルモノ
デハナク、直接携ハラナイ一般ノ國民各〓ガ
〓育ト云フコトニ唯關心ヲ持ツノミナラズ、
自ラ間接ニ關與スルト云フコトニ於テノミ
本當ノ〓育ハ完成セラレルト考ヘテ居ルノ
デゴザイマシテ、其ノ意味ニ於キマシテ、
國民思想ノ根本的ナル是正ト云フ事柄ガ、
唯〓育ノ問題ダケデハアリマセヌガ、凡
ル方面ニ於テ、最モ大切デアルト云フコト
ハ御說ノ通リデアリマス、政府ニ於キマシ
テ〓學ノ刷新ト云フコトヲ國內體制問題ノ
第一ニ揭ゲマシタ所以ノモノハ、正ニソレ
ヲ目的トシテ居ルノデゴザイマス、併シナ
ガラ是ハ結局例ヘバ本年度カラ實施セント
シテ居ル國民學校〓育ト云フモノヲ徹底サ
セルト云フヤウナコトニ依ツテ實際化サレ
ル問題デアルト考ヘテ居ルノデアリマス、
尙ホ其ノ他ニ學校或ハ社會ト云ハズ適當ナ
方策ヲ講ジテ、皇國民タルノ自覺ヲ喚起シ
ナケレバナラナイコトハ勿論デゴザイマス
ガ、先ヅ最モ重要ナルモノハ、幼キ時カラ
此ノ思想ヲ涵養シテ、何事ガアツテモ崩レ
ナイダケノ信念ヲ持タセルト云フコトニ力
ヲ盡スベキモノト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=8
-
009・曾和義弌
○曾和委員 次ニ私ノ御伺ヒシタイノハ國
家ノ義務ノ中ノ精神的方面デ、只今文部大
臣カラ色々御高說ヲ拜聽シマシタガ、私モ
全ク同感デアリマス、然ルニ遺憾ナガラ今
日マデノ小學校〓育ノ效果ト云フモノハ、
知識、技能ノ方面ニ於テハ相當效果ヲ認メ
ルノデアリマスルガ、小學校令第一條ニ示
サレテ居ル所ノ道德〓育及ビ國民〓育ノ基
礎ヲ養フト云フ點ニ於テハ非常ニ遺憾ナ點
ガ多イ、ソレハ何故デアルカ、ト云フト、
前刻申シマシタ通リ〓育者ニ其ノ人ヲ得ナ
イカラデアル、此ノ問題ニ付テハ十分モウ
御諒承ノコトデアラウカラ申シマセヌガ、
更ニ其ノ〓育者ノ指導監督ト云フ國家ノ働
キニ於テ、私ハ遺憾ナ點ガアルト思フノデア
リマス、卽チ政府ニ於カレテハ中央或ハ地
方ヲ通ジテ督學官制度或ハ視學官制度、或
ハ視學制度ヲ設ケラレマシテ、〓育者ノ指
導監督ニ當ラレテ居ルノデアリマスルガ、
此ノ機關ガ又十分其ノ效果ヲ擧ゲテ居ルカ
ト云ヘバ遺憾ナガラ左樣ニハ思ヘナイノデ
アリマス、何故デアルカト申シマスルト、
第一ハ其ノ指導監督ノ任ニ當ル人ヲ得テ居
ナイト思ハレル向キガアル、殊ニ從來ノ小
學校ノ直接ノ指導監督ニ當ル所ノ地方廳ノ
視學デアリマスルガ、此ノ視學ノ任用、銓
衡ト云フモノニ多々第三者カラ見テ遺憾ナ
點ガアルノデアリマス、卽チ一ツハ視學ノ
質ノ問題デアリマス、次ニハ量ノ問題デア
リマス、視學ノ員數ガ足ラナイト云フ問題、
此ノ二ツノ缺點ガ往々認メラレマスルガ故
ニ其ノ機能ヲ發揮スルト云フコトガ甚ダ困
難ナ狀態ニアルノデアリマス、デアリマス
カラ私共ハ此ノ視學ノ選任ニモツト切實ナ
ル考慮ヲ拂ヒ、更ニ其ノ員數ヲ增サレテ、
是等視學ガ他ノ事務ニ煩ハサレルト云フコ
トナクシテ、先ヅ其ノ人々ガ自己ノ人格ヲ
磨ク、自分ノ德操ヲ鞏固ニシ、識見ヲ廣メ、
サウシテ眞ニ國民〓育者ノ指導者トシテ遺
憾ナキ程度ノ修養ヲ積マシメ、更ニ國家ガ
之ヲ强化擴充シナケレバナラヌト思ヒマス、
之ニ對シテ文部省ニ於カレテハ如何ナル御
用意ト御計畫ヲ御持チデアラウカ、御伺ヒ
シタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=9
-
010・橋田邦彦
○橋田國務大臣 小學〓員ノ監督ト云フコ
トニ付キマシテ甚ダ不十分ノ點ガアルト云
フ事柄ハ率直ニ認メザルヲ得ナイコトヲ甚
ダ遺憾トシテ居リマス、殊ニ只今ノ視學其
ノモノノ宜シキヲ得、又其ノ數ヲ增サナケ
レバナラヌト云フコトニ付テモ全ク御同感
デゴザイマシテ、ソレハ直接文部省ダケノ
問題デモゴザイマセヌガ、十分ニ關係省ト
適當ニ相談ノ上監督ガ十分ニ行クヤウニ是
カラ速カニ考慮シタイト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=10
-
011・曾和義弌
○會和委員 更ニ私ハ重要ナル問題ニ付テ
御伺ヒシタイノデアリマスガ、ソレハ〓育
ノ本旨ニ關スル問題デアリマス、私ハ〓育
ト申シマシテモ知識、技能ノ方面ヲ別ト致
シマシテ、道德〓育及ビ國民〓育ノ基礎ヲ、
授クルト云フ點ニ付テ御伺ヒシタイノデア
リマス、今日マデノ小學校〓育ノ本旨ハ何
レニアリヤト申シマスレバ、勿論小學校令
第一條ニ明記サレテ居ルト云フコトニナ
リマス、併シナガラ法制ノ上カラ小學校令
第一條ニ斯ウ明記シテアルカラ是デ宜イノ
ダト御考ヘニナルト私ハ大變ナ間違ヒデア
ラウト思フ、要ハ此ノ小學校令ト云フモノ
ヲ讀ンデ、サウシテ事實〓育ノ事業ニ携ツテ
居ル人々ガ、果シテ之ヲ讀ンデハツキリト
國家ノ指針ト云フモノガ會得出來ルカト思
フノデアリマス、所ガ幸ヒニモ之ニ付テハ
小學校令施行規則ノ第一章第一節ニ〓則ト
シテ之ヲ敷衍シ說明シテアル、所ガ此ノ〓
則ヲズツト通讀シマシテモ、日本ノ國ノ特
殊ナ國體ト云フモノガ是デハ分ラナイ、ア
ノ小學校令竝ニ小學校令施行規則ト云フモ
ノヲドノ點ヲ捉ヘテ是ハ日本ノ小學校令デ
アル、是ハ日本ノ小學校令施行規則デアル
ト云フ點ガドコニアルカト申シマスト、有
難イコトニハ先ヅ第一ニ施行規則ノ第二條
ニ修身ハ〓育ニ關スル勅語ノ趣旨ニ基キテ
云々ト記サレテアリマス、私ハ常ニ此ノ施
行規則ヲ讀ミマスル時ニ、此ノ條文ニ至ツ
テ非常ニ心强サヲ感ズルノデアリマス、尙
ホモウ一ツハ第五條ニ國史ノ〓授ニ於テ我
日本ノ國體ノ尊嚴ナルコトヲ〓授スベシト
云フコトガ記サレテ居ル、所ガ〓育ニ關ス
ル勅語ト云フモノヲ今日ノ〓育者ガドウ云
フ風ニ扱ウテ居ルカ、卽チ今日マデ少クト
モ滿洲事變以後幸ヒニモ我ガ國民ガ本當ニ
魂ノ底カラ我ガ國家ノ有難イト云フコトガ
漸次分ツテ來タ、ダガソレマデノ國民ハ容
易ニサウ云フ感ジガシナカツタノデアリマ
ス、大正ノ末年ニ至ルマデモ日本ノ民族ハ
歐米民族ヨリ劣ツテ居ル民族デアル、斯ウ
云フコトヲ考ヘテ居ツタ、併シナガラ流石
ニ國體ニ付キマシテハ萬國無比デアルト云
フコトハ國民ハ知ツテ居ル、知ツテ居ルケ
レドモ、ソレハ唯觀念ダケデアリマス、卽
チ天祖ノ御神勅ヲ初メ奉リ、萬世一系ノ皇
室ヲ戴キ、君臣ノ分ガ炳乎トシテ明カデア
ルガ、而モ尙ホ一大家族國家デアルト云フ
觀念ハ持ツテ居ル、ケレドモ其ノ觀念ニ卽
シタ〓育ト云フモノガ更ニナカツタ、總テ
ノ〓育ノ根本精神ト申シマスルモノハ、昔
ハ大體儒〓思想ニ依ツテ居ル、或ハ家庭等
ニ於テハ佛〓思想ニ依ツテ居ル、明治維新
後ニ至リマシテハ、西洋思想ニ依ツテ居ル、
私ハ必ズシモ儒〓思想ヲ棄テルノデハアリ
マセヌ、佛〓思想ヲ排斥スルノデハアリマ
セヌ、西洋思想ヲ日本カラ斥ケヨウトスル
モノデハアリマセヌ、是等ノ思想ノ中ヲ採
ツテ以テ我ガ國ノ國民〓育ニ資スベキ點ハ
十分之ヲ採ラナケレバナラヌ、採ラナケレ
バナラヌガ、其ノ凡ユル方面カラ來タ各思
想ト云フモノヲ、渾然一體トシタル日本學
ト申シマスカ、サウ云フモノガ未ダ成立ツ
テ居ナイ、隨テ從來子弟ヲ〓育スルニ當リ、
マシテモ、ドウ云フ態度デアツタカト云フ
ト、或ハ論語デアルトカ、孟子デアルトカ
大學デアルトカ云フヤウナ儒〓ノ色々ナ書
籍ノ一部々々ヲ引張ツテ來テ授ケル、或
佛〓ノ經文ノ中ノ一句一節ヲ以テ〓育ス
ル、斯ウ云フ狀態デアル、所ガ明治二十三
年ニ〓育ニ關スル勅語ヲ御煥發遊バサレテ
カラ後モ、〓育者ハ此ノ〓育ニ關スル勅語
ヲドウ云フ風ニ御扱ヒ申シテ〓育ニ當ツテ
居ルカト云フト、何カ德目ニ付テ兒童ニ〓
ヘル場合、此ノコトニ付テハ〓育勅語ニ
モ斯樣ニ仰セラレテ居ルカラト、一部分
ヲ引張ツテ來テカラニ說明スル、是ハイ
ケナイ、其ノ場合ニ唯其ノ勅語ノ中ノ一
句ダケヲ持ツテ來テ生徒ニ授ケルト云フ
ノデハイケナイ、ソレデハ他ノ倫理書、
或ハ古典ノ一部ノ中ニ重大ナ日本ノ國體ニ
合シナイコトマデモ書イテアルガ、サウ
云フ中ノ極ク一部ニアル所ダケ採ツテ來
テ說明シタ昔ノ日本ノ〓育ノヤリ方デア
ル、卽チ是ガ皇國〓育ノ大本ヲ示スノモノ
ダト云フ中心ニナル經典ノナカツタ時代ノ
ヤリ方ト同樣デアル、而モ文部省アタリ、
或ハ地方廳ガ小學校ノ〓育者ニ指示スル印
刷物ノ中ニモサウ云フコトヲ書イテ居ル、
卽チ或ル德目ヲ授ケル時ニハ常ニ御勅語
ト關聯シテ〓ヘナケレバナラヌ、斯ウ云フ
ヤウニ書イテ居ル、孝行ト云フ時ニハ「父母
ニ孝ニ」ト云フコトヲ引張ツテ來イ、義勇ト
云フヤウナコトヲ〓へル場合ニハ「一旦緩
急アレバ義勇公ニ奉ジ」、アノ御言葉ヲ引用
シテ〓ヘヨト云フ、成程是デモ宜イ、之ヲ
私ハ强チ惡イトハ言ハナイ、言ハナイガサ
ウヂヤナイ、〓育ニ關スル勅語ハアノ最初
カラ終リマデ一字一句ヲ殘サズ全文ヲ通ジ
タル所ノ一貫シタル大御心ヲ、兒童ノ觀念
ニ植ヱ付ケルノデナクシテ、魂ノ底ニ之ヲ
十分注ギ込マナケレバナラヌ、例ヘバ佛〓
者ガ自分ノ奉ズル經文ヲ常ニ初メカラ終ヒ
マデズツト讀誦スル、朝ニ晩ニ之ヲ讀誦ス
ル、之ヲ世間デハ何等意味モ分ラズシテ讀
ンダ所デ何ニモナラヌヂヤナイカト云フ、
斯フ云フ考ヘガアルガ、其ノ人達ハ吾々ノ
靈ノ働キト云フモノヲ知ラナイ、朝ニ晩ニ
尊ミ畏ム心掛ヲ以テ讀ミマスルト、單ニソ
レガ觀念的ノ知識デ解釋シタル所ノ會得ト
云フモノデナクシテ、其ノ文全體ヲ通ジタ
ル所ノ魂ト云フモノガ自然々々ニ吾々ノ魂
ノ底ニ浸透スル、入ツテ來ル、デアリマス
ルカラ〓育ニ關スル勅語ニ付キマシテモ同
樣ニ云ヘルノデアツテ、唯德目ヲ羅列シテア
ルト云フ風ナ考ヘ方デ、〓育者ガ今日マデ
之ヲ扱ウテ居ルト云フコトハ實ニ私ハ畏多
イト思フ、アノ勅語ト云ヒマスルモノハ一
ト所ヲ切ツテ奉讀スベキモノヂヤナイ、
字一句モ缺クベカラザル金玉ノ文字デアル、
況ンヤ我ガ國ニハ昔カラ「言靈ノ幸ハフ國」
ト云フ言葉ガアル、日本ノ國民ノ先祖ノ靈
ト云フモノニ對スル考ヘ方ハ他ノ民族トハ
違フ、卽チ言葉ト云フモノニモ靈ガアル、
其ノ意味ニ於テ常ニ日本國民ハ先祖カラ成
タケ不祥ナ言葉ヲ使ハナイ、幸多イ言葉ヲ
使フト云フコトニナツテ居ルノデアリマス、
卽チ道德〓育及ビ國民〓育ノ基礎トシテハ、
今申シマス通リ〓育ニ關スル勅語ノ趣旨ニ
基クト云フノデアリマスルガ、其ノ基キ方
ト云フモノヲ、私ハ今日ノ〓育者ガ辨ヘテ
居ナイト思フ、是モ私ハ國家ガ此ノ〓育者
ヲ指導監督スル上ニ付テノ手拔カリデアル
ト思フノデアリマスガ、今後此ノ〓育ニ關
スル勅語ヲ、學校〓育、殊ニ國民〓育上如
何ニ〓育者ヲシテ之ヲ取扱ハシムベキデア
ルカト云フ確カナ方針ヲ定メラレテ、サウ
シテ之ヲ〓育者ニ指示サルルノデナカツタ
ナラバ、本當ノ日本ノ新時代ニ應ズル國民
〓育ノ基礎ト云フモノハ出來ナイノヂヤナ
イカト思ヒマスガ如何デゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=11
-
012・橋田邦彦
○橋田國務大臣 〓育ノ根本ニ關スル御高
見ヲ拜聽致シマシテ全ク御同感ニ存ズル次
第デゴザイマス、我ガ國ノ〓育ノ根幹ハ〓
育ニ關スル御勅語ノ奉戴實踐ニアルト云フ
コトハ是ハ誰モ承知シテ居ル通リデアリマ
ス、ニモ拘ラズ明治二十三年ニ御煥發ヲ戴
イテ以來、此ノ本旨ガ今日マデ十分ニ徹底
シ切ツテ居ナイト云フコトハ甚ダ畏多イ次
第デゴザイマシテ、是ハ是非トモ只今仰セ
ノ如キ方針ニ向ツテ〓育御勅語ノ御精神ヲ
唯文字ニ於テノミ、又觀念ニ於テノミ解釋
スルト云フニ止マラズ、魂大和魂ノ問題
トシテ之ヲ取扱フヤウナ方針ヲ定メテ行カ
ナケレバナラナイト云フコトハ是亦御同感
デゴザイマシテ、出來ルダケ急イデ其ノ方
針ヲ具現シタイト思ツテ居ルノデゴザイマ
ス、私自ラノ問題ヲ申シテ甚ダ恐縮デアリ
マスケレドモ、實ハ〓育御勅語ノ御精神ガ
那邊ニアルカト云フ事柄ヲ本當ニ辨ヘマシ
タノハ頭ガ白クナツテカラデゴザイマス、
申スモ畏多イコトデゴザイマスケレドモ、
事實サウナンデアリマス、實ニ〓育御勅語
ノ中ニ仰セラレテ居ル大御心ノ深キコト、
大イナルコト、是ハ一朝一夕ニ窺ヒ知リ得
ナイ程宏遠ナル大御心ダト拜察シ奉ルノデ
ゴザイマシテ、ソレヲ眞實ニ體得シ、觀喜
シ、隨順セシメヨウトスルニハ是亦多大
ノ努力ヲ用ヒナケレバナラヌコトト存ズル
ノデゴザイマス、唯文部省等ニ於テソレヲ
或ル方策ヲ立テテ、一般ノ小學校〓育ニ徹
底セシメヨウトシマシテモ、一日ヤ二日デ
出來ルトハ私ハ思ヒマセヌ、併シナガラ是ハ
是非トモヤラナケレバナラヌ問題デアリマ
スカラ、當局トシテモ十分力ヲ盡シタイト
思ヒマスガ、是コソハ先程申シマシタ〓育
ハ國民一般ノ問題デアルト云フコトノ意
味ニ於キマシテ、全國ノ國民擧ツテ此ノ方
針ニ向ツテ進マレテ、一面ニ於テハ〓育者
ト云フモノガアラネバナラナイ姿ヲ自ラ茲
ニ顯ハシテ來ルヤウニ御協力サレンコトヲ
切ニ希望シテ置ク者デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=12
-
013・曾和義弌
○會和委員 文部大臣ノ只今ノ御熱誠ナル
御答辯ハ洵ニ私共欣快ニ堪ヘナイ次第デア
リマス、所ガ一般國民ハ勿論此ノ點ニ付キマ
シテハ餘程認識不足デアルト思ヒマスガ、
少クトモ私ハ〓育者ニダケデモヨリ深ク認
識ヲ持タシメル、サウシテ誤リナク〓育事
業ニ携ツテ行カシメルト云フコトガ必要ダ
ト思フ、殊ニ我ガ國體ニ關スル考ヘ方デアリ
マスガ、是モ先程一寸申シマシタガ、日本
ノ國體ノ尊嚴デアルト云フコトハ、今更知
ラヌ人ハアリマスマイガ、是モ大多數ハ私
ハ觀念的ダト思フ、先ヅ我ガ國ノ肇國ノ宏
遠ナルコトハ、最近凡ユル方面ニ於テ口ニ
サレマス、或ハ又肇國精神ト云フヤウナ言
葉ガ頻リニ用ヒラレル、或ハ又日本精神ナ
ドト言フ言葉ガ寧ロ亂用サレテ居ルヤウ
デアル、我ガ國ノ國史ヲ見マスルノニ、
神武天皇ガ國トシテノ肇メヲ御樹テナサレ
テ旣ニ今日デ二千六百一年デアリマス、勿論
此ノ年數モ決シテ短イモノデハアリマセヌ、
併シナガラ私ノ考ヘ方ニシマスルナラバ
我ガ國ノ今日マデノ歷史ニ於キマシテハ
寧ロ二千六百一年ノ年數ハホンノ短イモノ
デアル、寧ロ其ノ以前ニ何十万年ト申シマ
スルカ、吾々日本民族ノ先祖ガ、吾々國
民ノ固有ノ思想ノ素質ヲ持傳ヘ、特殊優
秀ナル性能ヲ持傳へ漸次之ヲ啓發展開シマ
シテ今日ノ域ニ發展シテ來タノデアル、デ
アルカラ先ヅ我ガ國ノ悠久ナルコト二千六
百年ニ限ラナイノダ、畏多クモ御勅語ニ國
ヲ肇ムルコト宏遠ニト仰セラレタ大御心
モ、私ハ其ノ邊ニアルノデハナイカト畏ナ
ガラ拜察スルノデアリマスルガ、一方又日本
民族トシテノ始マリト云フコトニ付キマシ
テモ、今日明カニナツテ居リマスル國史デ
ハ、高天原カラ高千穗峰ニ御降リニナツタ、
之ヲ近代的ナ西洋風ナ學問ヲシタ人達ハ、
色々之ニ付テ說ヲナス、中ニハ洵ニ不祥ナ
ル言辭ヲスラナス者ガアルノデアリマス、
私ハ決シテ一片ノ感情的ニ我ガ大和民族ノ
祖先ト云フモノヲヒタブルニ神祕ナモノニ
考ヘタイト云フノデハナイ、言ヒ換ヘマス
レバ、今日ノ歴史以前ニ於ケル所ノ日本民
族ノ祖先ノ文化ト云フモノ或ハ今日ノ文
化マデ發展致シテ來タ根本ト申シマスカ、
ソレノ査察糺明ト云フコトガ足ラナイ、勿
論是ハ大問題デアリマス、之ヲ濫リナ〓究
ヲナシ、濫リナ發表ヲスルト云フコトハ實ニ
大問題デアリマスケレドモ、此ノ點ガ足ラナ
イ、所ガ幸ニ近時三千年四千年以前ノ色々
ノ資料ト云フモノガ國内ニモ現ハレ、國外カ
ラモ現ハレテ居ル、殊ニ古代ノ日支關係ニ於
ケル所ノ、此ノ日本ノ文化ヲ證明スルニ足
ル貴重ナル文獻ガ、今度ノ支那事變デ支那
ノ北京、天津ト云フヤウナ中樞部デナクシ
テ、僻村ニ於テ深ク祕シテ藏セラレテ居ツ
タモノガ、次第ニ現ハレテ來テ居ル、殊
サウ云フモノガ軍ノ特務機關ノ手ニ依ツテ
モ集メラレテ居ルモノガアルト云フコトハ、
私ハ非常ニ喜ブベキコトダト思フノデアリ
マス、隨ヒマシテ我ガ國ノ國體ト云フモノ
ヲヨリ一層明確ニスルト云フ上カラ言ヒマ
スナラバ、此ノ問題題先先問題デアツテ、
部ノ西洋カブレノ學者ガ云フヤウナ、日本
ニハ昔文化ガナカツタトカ、或ハ實ニ輕率
ナル、片々タル所謂學者ガ、日本民族ハ昔
何處カラ來タノカ分ラヌトカ、實ニ吾々ガ
憤激措ク能ハザルヤウナ言辭ヲナサシメナ
イ爲ニ、寧ロ此ノ〓究ハ從來政府ニ於テ施
設サレテ居ルヤウナ程度デハ到底駄目デア
ル、一層此ノ機關ヲ强化シ擴充シ、サウシ
テ以テ本當ニ日本ノ國體ト云フモノガ文化
ノ上カラ云ツテモ總テノ點ニ於テ今日是
ダケノ發達スル國民デアルカラ、昔ハソレ
ガマダ養成サレナイ、鍛練サレナイ、
〓養サレナイデアツタケレドモ、旣ニ其
ノ萠芽ハアツタノデアル、吾々ノ祖先ノ魂
ノ中ニハ旣ニサウ云フ風ナ素質ト云フモノ
ヲ持ツテ居ツテ、絢爛タル文化トシテノ發
揚ハナカツタケレドモ、決シテ今カラ五千
年前、一万年前ダカラト云ツテ現在ノ野蠻
人ノヤウナ狀態デハナカツタ、考ヘノナイ
ト人々ハサウ云フコトヲ考ヘテ居ル、
我ガ日本國民ハ何千年前ニハ今ノ南洋邊リ
ノヤウナ野蠻人ト同ジヤウナ、殆ド德義モ
ナク、節操モナイ、獸類ニ近イヤウナ生活
ヲシテ居ツタカノ如ク考ヘテ居ル〓育者モ
居ル、是ハ以テノ外ノコトデアル、デアリ
マスカラ、サウ云フ點ヲ明カニシテ、サウ
シテ吾々ノ祖先ガ持ツテ居ツタ文化ト云フ
モノ、竝ニ文化ノ萌芽ト云スモノハ、斯ク
ノ如キモノデアツタト云フコトヲ知ラシメ
ナケレバ、單ナル國體ノ大綱、骨組ダケガ
觀念的ニ分ツテモソレハ國民性ニナラヌ、
吾々ノ情操、德ノ上ニ影響スル所ハナイ、恰
モソレハ立派ナ素質ヲ持ツタ子供デモ他人
ニ育テラレタモノガ自分ノ生ミノ親ニ親シ
ミヲ感ジナイ、頭デハアレハ私ノ生ミノ
親アノ人ハ育テテ吳レナイケレドモ、親
ダカラ大事ニシナケレバナラヌト云フ考ヘ
ハアリマスガ、是ハ單ナル觀念ダケデアツ
テ、其ノ人ノ傍ヘ行ツテ實ニ痛切ナル感ジ
ヲスルカト云フト、感ジハシナイ下世話ニ
謂フ通リ、生ミノ親ヨリ育テノ親ト云フコ
トニナル、私ハ日本ノ現在ノ國民ノ大多數
ハサウ云フ狀態デハナイカト思フ、昔アレ
ダケノ立派ナ文化ヲ持ツテ居ツタ國民デア
ルニ拘ラズ、之ヲ政府ニ於テ、國家ニ於テ
明カニシテ國民ニ知ラスト云フコトガ手拔
カリデアツタ、一ニモ二ニモ西洋々々ト走
リ步イテ、我ガ國民ノ眞題目ヲ玆ニ明カニ
シテ國民ニ〓ヘナカツタ、ソレガ結局今日
日本ノ國民性ヲシテ斯ノ如キ狀態ニ至ラシ
メタ原因デアルト私ハ思フ、此ノ點ニ於テ
此ノ施設ヲ一層擴充セラレタイト云フ希望
ヲ持ツテ居ルノデアリマスガ、當局ノ御考
ヘヲ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=13
-
014・橋田邦彦
○橋田國務大臣 國體ガ唯觀念的ニダケ理
解サレテ居ルト云フ點ノ多イコトモ御說ノ
通リダト存ジマス、又一面ニ於キマシテハ、
吾々ガ日常空氣ヲ知リナガラ空氣ノ有難サ
ヲ知ラナイト云フ意味モアルカト思ヒマス、
一度振リ返レバツク〓〓有難イト云フコト
ヲ感ジラレルモノヲ、餘リニ有難サヲ感ジ
テ居ナイト云フ點モアルト存ジマス、觀念
的ニダケ理解シテ居ルモノガ多イト云フヤ
ウニモ見ラレマスケレドモ、私ハ我ガ國民
ノ魂ノ奧底ニハ必ズ其ノ有難サヲ感ズルダ
ダケノモノガアルト信ジテ居ル若シソレガ
ナカツタナラバ、幾ラ努メテ觀念的ナラシ
メザラントシテモ到底是ハ出來ルモノデハ
ナイ、併シナガラ其ノ國體ニ隨順歡喜スル
心ハ知ラズ〓〓誰モ持ツテ居ルモノデアル、
ソレヲ十分ナル自覺的ニマデ持チ來セルト
云フコトガ吾々ノ務メデアルト云フヤウニ
モ考ヘテ居ルノデアリマス、其ノ點ニ付テ
歴史或ハ文化ト云フコトニ關シマシテモ、
從來ノ所謂唯科學的ナ或ハ〓念的ナ考ヘ方
ダケニシテ、歷史ノ眞ヲ把握シ、文化ノ精髓
ヲ摑ムコトガ出來ナイトモ考ヘテ居ルノデ
アリマス、其ノ點ニ付キマシテハ西洋デ云
フ所謂歷史、西洋デ云フ所謂文化ト云フ、
吾々ガ假リニソレヲ譯語トシマスナラバ、
西洋ノ言葉ノ譯語トシテノ歷史デハナク、
西洋ノ言葉ノ譯語トシテノ文化デハナク、
吾々ノ歷史ハ何デアルカ、吾々ノ文化ト云
フ意味ハ何デアルカト云フコトヲ能ク考ヘ
テ參リマスレバ、國體ノ尊嚴ナル所以ガ觀
念的デナク十分明カニナルト思フノデアリ
やく、是ハ言葉ノ表現ハ違ヒマスガ、御說
ノ通リダト存ジマス、將來ニ向ヒマシテ、
殊ニ歷史又我ガ國民ノ文化性ト云フヤウナ
根本ノ問題ニ付キマシテハ、十分ニ〓究ヲ
致シマシテ、理想トシテハ餘所カラ指一本
モ觸レサセナイ確乎タルモノヲ作上ゲテ行
キタイ、斯ウ考ヘテ居ルノデアリマス、其
ノ施設其ノ他ニ付キマシテハ、十分ニ考慮致
シマシテ、出來ルダケ速カニ實現ノ方法ニ
着手致シタイト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=14
-
015・曾和義弌
○會和委員 次ニ御伺ヒ致シタイノハ、國
民〓育ト宗〓トノ關係デアリマス、學校〓
育ニ既成宗〓ヲ加ヘテハイケナイト云フ方
針ガ立ツテ居ルコトハ結構デアリマス、所
ガ去ル昭和十一年十月ダツタト思ヒマスガ、
時ノ文部次官ノ通牒トシテ、各地方長官竝
ニ直轄學校長ニ對シテ學校〓育ニ於テハ宗
〓情操ノ涵養ニ意ヲ用ヒルヤウニト云フ達
シガアツタノデアリマス、此ノ問題ニ付キ
マシテハ、先年モ私ハ或ル委員會デ時ノ文
部大臣ニ聽イタノデアリマスケレドモ、滿
足スル御答ヘハ得ラレナカツタノデアリマ
ス、是ハ私ガ單ニ滿足スル答ヘガ得ラレナ
カツタコトヲ不滿ニ思フノデハアリマセヌ、
寧ロ其ノ根本デアル、私共ノ滿足スル答ヘ
ヲ得ラレナカツタト云フコトハ、同時ニ此
ノ通牒ヲ御出シニナツテ、學校職員ニ對シ
テ宗〓情操ヲ涵養セシムル上ニ付テノ眞意
ガ明カデナイト云フコトヲ物語ツテ居ル、
隨テ私ハ先年當局ニ質問シタ時ニモ申シタ、
斯ウ云フ通牒ヲ戴イテ、府縣知事ガ又管內
ノ中等學校、小學校長ニ依命通牒ヲシタ、
ケレドモドウシテ宜イカサツパリ分ラナイ
ト云フノハ殆ンド全部デアルト云ツテ宜
イ、宗〓情操ヲ養ヘト云フコトハドウスル
コトデアルカ、而モ既成宗〓ハ用ヒテハナ
ラナイ、サウシテ宗〓的情操ヲ養ヘト言フ、
凡ソ私ハ思フノデアリマス、旣成宗〓ニ依
ラズシテ宗〓的情操ヲ養ヘト云フコトハ非
常ニ困難デハナカラウカ、又現ニ〓育ノ實
際家ハ皆其ノ點ニ於テ迷ツテ居ルノデアル、
或ル中等學校ノ校長ニ私ハ聽イタノデアリマ
ス、「アナタノ所ニ斯ウ云フ通牒ガ來タデセウ」
「來マシタ」、「ドウヤツテ居ルノデスカ」、「私ノ
方デハ神社ニ參拜サセテ居リマス」、斯ウ言フ、
左樣ナ例ガ多々アル、併シナガラ是ハ後程
私ハ御伺ヒスル問題デアリマスカラ姑ク措
キマスガ、兎ニ角斯ウ云フ通牒ヲ御出シニ
ナルナラバ、斯ク〓〓ノ方針ニ依ツテ、斯
ク斯クノ方式ヲ以テ、或ハ斯ク〓〓ノ具體
的方針デ宗〓的情操ヲ涵養スル〓育ヲ行ヘ
ト云フコトヲ明カニ御示シニナラナケレバ
ナラヌト思フノデアリマス、實ヲ申シマス
ト、今日デハ餘程年數モ經チマスシ、最近
聽イテ見テモ實際〓育家ハ今日デハ之ヲ問
題ニシテ居リマセヌ、デアルカラ私ハ此ノ
通牒ノ趣旨ニ付テ現在ノ當局ハ果シテ如何
御考ヘデアルカ、ヤハリ此ノ通リヤラセル
ト云フ趣意ニ御變リナイノデアルカ、或
御變リナイトスルナラバ、ドウ云フ方法デ
ヤラシメヤウトスルノデアルカ、今一ツ重
大ナ問題ハ、此ノ宗〓情操ト云フコトト、
〓育ニ關スル勅語トドウ云フ風ナ關係ニ立
ツノデアルカト云フコトノ御見解ヲ御伺ヒ
シタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=15
-
016・橋田邦彦
○橋田國務大臣 宗〓ト云フコトハ先ヅ第
一ニ問題ニ取上ゲテ來ナケレバナラヌコト
デアラウト思ヒマスケレドモ、是ハ宗〓其
ノモノガ何デアルカト云フコトハ自身ハ
言葉ニ依ツテハ解決出來ナイ程複雜ナモ
デモアリ、端倪スベカラザルモノデアリマ
ス、或ル人ノ言フ所ニ依レバ、宗〓ト云フ
コトノ-無論此ノ意味ガ西洋ノ「レリジ
オン」ト云フコトヲ譯シテ宗〓ト言ツテ居
ルノデアリマス、「レリジオン」ト云フコトノ
定義ハ八十幾ツアリマス、八十幾ツノ定義
ガアルト云フコトハ、言葉ニ依ツテ決メラ
レナイト云フコトヲ一面ニ於テ物語ツテ居
ルニ過ギナイノデアリマス、又旣成宗〓ト
云フモノニ於テモ、唯ソレヲ政府ニ於テ宗
〓ト認メテ居ルカラ宗〓ダト言ヘバ申サレ
マスケレドモ、果シテソレデ宗〓ト云フコ
トガ分ルカト申シマスト、是亦決シテ分ル
モノデハナイ、唯併シナガラ宗〓的情操ト
云フコトナラバ、吾々ノ立場ニ於テ或ル程
度マデ意味ガ了解出來ルカト私ハ考ヘルノ
デアリマスガ、ソレハ隨順スベキモノニ隨順
スル、歡喜スベキモノニ心カラ己ヲ忘レテ
歡喜スルト云フ事柄ガ宗〓的情操ト考ヘル
ノデアリマス、從來ノ〓育ニ於キマシテ理
智的ナモノヲ體得サセルト云フヨリハ、〓
念トシテ〓ヘタガ故ニ、隨順スルト云フコ
ト、歡喜スルト云フコトニ甚ダ缺ケテ居ツタ
點ガアツタト云フ弊害ヲ認メマシテ、〓育
等ニ宗〓的情操ヲ養成スベシト云フコトヲ、
其ノ當時發令サレタモノダト私ハ考ヘテ居
ルノデアリマス、今ニ於キマシテモ隨順ス
ベキモノニ己ヲ忘レテ隨順シ、歡喜スベキモ
ノヲ心カラ歡喜スルト云フ心持ハ、吾々國
民トシテ陛下ニ歸一シ奉ツテ、我ガ日本ヲ
日本トシテ傳上ゲテ行カウト云フノニハ
是非トモ其ノ心構ヘガ大切デアルト考ヘル
ノデアリマス、例ヘバ〓育勅語ヲ遵奉ト申
シマスコトモ、大御心ニ隨順シ、大御心ノ
有難サニ歡喜スル心ガ養ハレナケレバ、言
葉ダケデイケナイト云フコトハ先程申シタ
通リデアリマス、其ノヤウナ心構ヘヲ何カ
ニ依ツテ-〓育勅語ヲ日々奉體スルト云
フコトモ一ツノ方法デアリマスガ、有ユル
手段ヲ講ジテ宗〓的情操ヲ養フト云フ事柄
ガ、人間ヲ人間ラシクスルト云フ上ニ於テ、
非常ニ大切ナコトデアラウト云フコトハ今
デモ私考ヘテ居ルノデアリマシテ、御示シノ
通リ如何ニスベキガ宜シイカト云フコトヲ、
從來十分知ツテ居ナカツタト云フコトハ洵
ニ申譯ノナイ當局ノ缺點デゴザイマス、其
ノ點ニ付キマシテハ適當ニ考慮致シマシテ、
唯併シナガラ形式ニ堕シテ其ノ本旨ヲ忘レ
ナイヤウナ方法ニ進メルヤウナ方策ヲ一ツ
立テタイト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=16
-
017・曾和義弌
○會和委員 只今ノ御答辯デ宗〓的情操ト
云フコトニ付テノ文部大臣ノ御見解ヲ承リ
マシタガ、私ハソレニ對シテ議論ガマシク
是非ハ申シマセヌ、申シマセヌガ、宗〓ニ
關シマスル問題ハ、之ヲ如何ニ取扱フカト
云フコトハ今後所謂眞日本ヲ顯現シテ、サ
ウシテ最近國民ノ間ニ漸ク自覺シテ來マシ
タ所ノ日本國ニ與ヘラレタル天職ト申シマ
スカ、雄大ナル使命ヲ遂行シマスル上ニ、
此ノ問題ガ最モ重要ナ問題ダト思フ、只今
申サレタ通リニ今日宗〓ト云フ言葉ニ對ス
ル定義ハ數十ニ上ツテ居ル、其ノ點ニ付キ
マシテモ、私ハ一昨年ノ議會ニ於テ當時ノ
文部大臣ニ、然ラバ我ガ國ノ政府ハドノ定
義ヲ良イトスルノカト云フコトヲ聽イタノ
デアリマスガ、其ノ時ノ答辯ハ、ソレハド
レガ良イト云フコトデモナイ、一ツニ決メ
ラレナイカラ之ヲ竝ベテ書イタノダト云フ
答辯デアリマシタ、サウシマスト日本ノ國
トシテ、日本國ノ政府トシテ洵ニ不都合デ
ハナイカ、學說ト云フモノハ色々立ツデア
ラウガ、政府ガ大政補弼ノ重大ナル立場ニ
於テ、サウシテ日本ノ國ヲ治メテ行ク、而
モ此ノ我ガ國ハ他國ニ比類ナキ大使命ヲ持
ツテ居ルノデアル、此ノ使命ヲ完遂スル爲
ニハ國民ノ心靈上ノ作用ト云フモノガ實ニ
大切ナモノデアツテ、隨テ其ノ心靈上ニ作
用スル所又頗ル大キイ所ノ此ノ宗〓ノ問題
ヲ取上ゲテ見テモ、日本ノ國トシテ、宗〓
ト云フモノハ斯ク〓〓ノモノヲ謂フト云フ
一定ノ定義ヲ持タズシテ臨ンデ居ルト云フ
コトハ、私ハ非常ニ遺憾デアルト思フ、併
シナガラ一應考ヘテ見マスルト、私ハマダ
全體ガ其ノ程度ニシカ行カヌ、人間全體ノ
能力ガ甚ダ低級ナカラダト思ツテ居ル、モ
ツト高度ニ上ゲナケレバナラヌ、現在ノ我
ガ國ノ當面シテ居ル問題トシマシテハ、高
度國防國家ノ建設、是ハ焦眉ノ急務デアリ
マス、ドウシテモ之ニ吾々ハ全力ヲ注ガナ
ケレバナラヌ、ガ將來ノ人類ノ文化ト云フ
モノハドウナルカト云フト、尙ホ一層高度
ニナルベキモノデアル、其ノ時代ガ來レバ、
宗〓ト云フモノニ對スル取扱モハツキリス
ルノダラウガ、今ノ程度デハ私ハ致シ方ア
ルマイト存ジテ居リマス、ケレドモ爲政者
トシテハソレデ滿足シテ居ツテハイカヌト
思フ、殊ニ次官通牒トシテ、明文ヲ以テ國
內一般ニ通達シタモノガ、宗〓的情操ト云
フノハ斯ク〓〓ノ如キモノヲ謂フト云フダ
ケデハイカヌ、問題ハ其ノ情操ヲ如何ニシ
テ養フカト云フコトヲ、具體的ニ〓育作業
ノ上ニ示サナケレバナラヌ、デナケレバ〓
育者ニハ分ラナイ、隨テ重要視サレル所ノ
此ノ宗〓的情操ト云フモノヲ涵養スル手段
ガ講ゼラレテ居ナイ、デアルカラ私ハ此ノ
問題ニ付キマシテハ、只今文部大臣ニ於テ
ハ〓究ト仰シヤツタカ、考慮ト仰シヤツタ
カ、兎ニ角此ノ儘、棄テテ置クノデハナイ
ト云フ御意思ヲ承ツタノデアリマスガ、私
ハ一日モ早ク之ヲ決定サレテ、サウシテ明
カニ御示シ願ヒタイト思フノデアリマス
尙ホ小學校ノ〓育上重要ナル點ハ、小學
校ノ〓育ニ對スル神社ノ問題デアリマス、
日本ノ此ノ特殊ナ祭祀デアリマスル神社ニ
付テノ行政上ノ取扱ハ、內務省ノ方ノ所管
デアリマスガ、國民ヲシテ如何ナル心構ヘ
デ以テ神社ニ參拜セシムルカ、更ニ遡ツテハ
我ガ國ノ神々ニ對シ奉ツテ、國民ガ如何ナ
ル考へ方ヲシナケレバナラヌカト云フコト
ハ、私ハ寧ロ我ガ國ノ〓學ノ基本デアルト
思ヒマスノデ、敢テ之ヲ御伺ヒスルノデア
リマス、現在政府ニ於テハ、我ガ國ノ神社
ハ宗〓デハナイト云フ建前ヲ執ツテ居ラレ
ル、是ハ私ハ同感デアリマス、是モ先程申シ
タ所ノ宗〓情操ヲ涵養セヨト云フ通牒ト同
ジコトデアツテ、神社ハ宗〓デハナイト云
フ建前ヲ執ラレテ居ナガラ、何ガ故ニ宗〓
デハナイノデアルカト云フ本質ノ上カラノ
國民ニ對スル所ノ御指圖ガナイノデアリマ
ス、或ハ神社ハ國家ノ宗祀ナリト云フ言葉
ヲ用ヒラレテ居ル、併シ此ノ國家ノ宗祀ナ
リト云フ御說明モ、果シテ國民ハ如何ニ解
釋シテ居ルデアリマセウカ、先ヅ全體ノ國
民ハ別ト致シマシテモ、少クトモ次代ノ國
民ヲ〓育スル天職ニアル所ノ〓育者ガドウ
解釋シテ居リマスカ、是モアノ人々ハ殆ド
理解シ得ナイ、日本ノ神社ト寺院ニ對スル
考へ方、日本ノ神々ト佛〓、「キリスト」〓
或ハ日本ノ旣成神道ノ主齋神、本尊トドウ
違フノカ分ラナイ、是モ私ハ甚ダ日本ノ政
府トシテハ如何カト思フノデアリマス、ナ
ゼ之ヲ明カニサレナイカ、是ハ實ニ〓學ノ
根本デアリマス、殊ニ〓學ノ刷新ヲ叫バレ
ル現文部大臣ニ於カレテハ、此ノ點ニ最モ
私ハ力ヲ入レラルベキデアルト思フ、卽チ
今日ハ凡ユル方面ニ於テ日本ガ自己ニ歸ラ
ナケレバナラヌ、日本ノ本來ノ姿ニ歸ラナ
ケレバナラヌ、今マデノ〓育モ其ノ效果ガ
少イ、寧ロ思想ノ混亂ヲ來スト云フヤウナ
狀態ニ立至ツタト云フコトハ、切詰メテ申
シマスナラバ、此ノ根本ニ於テ、神社ハ宗〓
ニアラズト云フコトガ、ハツキリシナカツ
タカラダト思フ、之ヲハツキリサセテ參リ
マスナラバ、玆ニ初メテ國民ガ本當ノ日本
ノ國體ノ中心仁核ガ分ル、更ニ日本ノ古代
ノ吾々ノ先祖ノ考ヘテ居ツタ人間ノ靈ニ對
スル考ヘ方、ソレト他ノ民族ガ考ヘテ居ル
考ヘ方、或ハ日本ノ吾々ノ先祖ノ幽顯一致
ト云フ考ヘ方、是ト他ノ民族ノ幽顯異別ノ
考ヘ方、或ハ各宗〓ニ於ケル所ノ神人隔別、
佛〓デハ佛ト言ヒマスガ、ソレハ隔ツテ居
ル、別ナモノデアルト云フ考ヘ方ト、吾々
ノ先祖ノ神人同格ト云フ考へ方、斯ウ云フ
點ニ付キマシテモ、私ハマダ〓〓政府トシ
テハ日本ノ國本ヲ鞏クシ、而シテ將來ノ大
飛躍ノ基礎ヲ作リ上ゲル上カラ考ヘマシテ
モ、一日モ早ク之ヲ明示シナケレバナラナ
イモノダト考ヘルノデアリマスガ、如何デ
アリマスカ、発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=17
-
018・橋田邦彦
○橋田國務大臣 先程ノ宗〓ノ根本問題ト、
神社ハ宗〓ニアラザル所以ノ問題トヲ明瞭
ニシマスコトガ、〓學刷新ノ根本ノ問題デ
アルト云フ考ヘ方ハ、甚ダ傾聽ニ値ヒスル
御說ト承リマス、併シナガラ、事重大ナル
問題デゴザイマシテ、十分ナル〓究ヲシテ、
妥當ナル解釋ヲ得マセヌケレバ、唯單純ニ
ドウ斯ウト云フ譯ニ行カナイ問題デアリマ
スカラ、十分ニ〓究ヲ致シマシテ、問題ヲ
明カニシタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=18
-
019・曾和義弌
○曾和委員 私ハアトモウ二點ニ付テ御伺
ヒシテ私ノ質問ヲ終リタイト思フノデアリ
マスルガ、其ノ一點ハ、聊カ國民〓育ト緣
ガ遠イト申シマスカ、否、寧ロ本案トハ少
シ離レテ居リマスルケレドモ、是モ重大ナ
問題デアリマスカラ御伺ヒシタイノデアリ
やく、ソレハヤハリ宗〓ニ關スル問題デア
リマス、最近新體制ガ唱ヘラレタ結果、凡
ユル機構ガ漸次整理統合サレテ居ル、所ガ
最近承ル所ニ依ルト、文部省ニ於カレテハ、
從來ノ宗〓團體ヲ統合サセヨウト云フ御計
畫ノ下ニ着手ナサレタヤウデアリマス、卽
チ神道十三派、佛〓五十六派、或ハ「キリス
ト」〓二十數派ト云フモノヲ適當ニ統合サ
レヨウトシテ居ル、所ガ最近ソレガ行惱ン
デ居ルカノヤウニ承ツテ居ルノデアリマス、
勿論此ノ宗〓ノ沿革ヲ見マシテモ、最初ハ
決シテ斯カル分派ニ分レテ居ツタモノデハ
ナイノデアルガ、世ハ末法ニナツタト申シマ
セウカ、實ニ我ガ國ニ於キマシテハ多數ノ宗〓
上ノ分派ガアル、サウシテ奉齋シ或ハ歸依ス
ル本尊ガ總テ違フ、私ハ日本國民ガ斯クノ
如キ萬國無比ナ國體ヲ戴キ、畏多クモ上御
一人ヲ仰ギ奉ツテ本當ニ一億一心ニナラナ
ケレバナラナイノニ、尙ホ今日ニ於テ種々
遺憾ナ點ガアルト云フノハ、私ハ、此ノ宗
〓團體ガ他ノ諸外國ニ見ラレナイ程多數ノ
分派ニ分レテ、各〓異ナツタル本尊ヲ立テ、
主齋神ヲ立テテ禮拜サセ、各〓勝手々々ト言
フト語弊ガアルカモ知レマセヌガ、勝手勝
手デアル、勝手々々ノ〓理ヲ作ツテ信奉サ
セ、唯一無二ノ如ク信奉シ、絕對歸依ヲ捧
ゲテ居ルト云フ所ニ餘程國民精神歸一ヲ妨
ゲテ居ル原因ガアルト思フノデアリマス、
此ノ見地カラシマスレバ、私ハ宗〓團體ノ
統合ヲ計畫サレタト云フコトハ非常ニ時宜
ヲ得タモノダト思フノデアリマスケレドモ、
偖テ其ノ實際ハ中々困難デアルト私ハ思ヒ
そう、最初私ハ斯ウ云フ計畫ニ着手サレタ
ト聞イタ時、旣ニ自分デサウ思ツタ、是ハ
文部省ニ於テ良イ計畫ヲサレタノダケレド
モ、是ハ難カシイ、ナゼカト云フト、宗〓
ガ人心ニ或ル魅惑ヲ與ヘルノハ異ナツタ所
ニアル、コチラノ宗〓トコチラノ宗〓ト異
ナツタ所ニ人ガ魅惑ヲ感ズル、是ハ吾々日
常ノコトデモ同ジデアリマス、此ノ菓子ハ
俺ハ嫌ヒダガ、此ノ菓子ハ好キダト云フノ
ハ其ノ異ナツタ點ニ魅惑ガアル、同ジ甘
サデアリ、同ジ風味デアルナラバ、魅惑ハ
感ジナイモノデアル、ソコニ異ツタ特殊ナ
點ガアルカラ魅惑ヲ感ズル、隨テ宗〓モ同
ジコトデアル、異ナツタ〓理ガアリ、異ナ
ツタ神ヲ拜ミ、異ナツタ本尊ニ禮拜スルト
云フ所ニ魅惑モアル、其ノ證據ハ、遠イ所
ノ神樣ハ有難イト云フ諺モアル、併シ宗〓
ニ關シテハ是ハ間違デアル、私ハ是程問違
ツタ考ヘ方ハナイト思ヒマス、是ガ日本精
神ニ反シタ考へ方ダト私ハ思フノデアリマ
ス、隨テ此ノ宗〓團體ノ統合ニ付キマシテ、
文部當局ハ、私ノ聞イテ居ル所デハ難關ニ
逢着サレテ居ルサウデアリマス、勿論文部
當局トシテハ決シテ無理ニヤラセヨウト
シタノデハナイト仰シヤラレルニ違ヒナイ
ガ、宗〓家ノ間ニ於テハ、色々之ニ付テ取
沙汰モシテ居ル、ダカラ私ノ伺ヒタイノハ
文部當局トシテハ飽クマデモ、昨年ノ九月
頃カニ着手サレタ、此ノ宗〓團體ノ統合ト
云フモノヲ決行サレル御積リデアルカ、或
ハ若シ難關ニ打突カツタ場合ニハ、マン·
時見合ハセヨウト云フ態度デ御進ミニナル
ノカ、御伺ヒシタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=19
-
020・橋田邦彦
○橋田國務大臣 宗〓團體ノ合同ト云フコ
トニ付キマシテハ漸次順調ニ行ツテ居ル
ト解釋シテ居ルノデアリマスガ、其ノ詳細
ニ付キマシテハ宗〓局長カラ一應御答ヘ致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=20
-
021・阿原謙藏
○阿原政府委員 私カラ御答ヘ致シマス、
宗〓ノ統合問題ガ問題ニナツテ參リマシタ
ノハ昨年ノ九月ノ十六日ダト思ツテ居リマ
スガ、神道、佛〓、「キリスト」〓ノ各派ノ
代表者ニ御集リヲ願ヒマシテ懇談會ヲヤツ
タノデアリマス、其ノ席上愈〓宗〓トシテハ
皆力ヲ協セテ報國ノ誠ヲ致サナケレバナラ
ヌト云フヤウナ御氣持カラ、先ヅ第一ニ「キ
リスト」〓方面ニ於キマシテ、其ノ前ニ多
少救世軍デアルトカ云フ所ニ色々世間カラ
疑惑ヲ受ケルヤウナ問題ガアツタモノデア
リマスカラ、サウ云フコトモ私ハ一ツノ契
機デアツタト思ヒマスガ、サウ云フ關係デ
一ツ此ノ際小サイモノハ集マツテ從來ノ派
閥ヲ捨テテ、大キナ力ニナツテ日本的ニ大
イニ働イテ行カウヂヤナイカト云フヤウナ
御考ノ下ニ、先ヅ第一ニ「キリスト」〓ノ統
合問題ガ起ツテ來タノデアリマス、是ハ主
トシテ所謂「プロテスタント」ニ屬スル各〓會
ノ統合ノ問題デアリマス、之ニ付キマシテ
ハ、私共兎ニ角宗〓ノ問題ハ苟クモヤハリ
信仰ガ中心ノ問題デアルカラシテ、何處マ
デモ宗〓家ノ御力ニ俟チタイ、私共御相談
ガアレバ御相談ニ與カリマスガ、出來ルダ
ケ宗門ノコト、宗〓ノコトハ宗〓家ノ御力
ニ俟チタイト云フコト申上ゲテ居ツタノデ
アリマス、其ノ後「キリスト」〓ノ方ハ十月十
七日ニ全「キリスト」〓ノ方々ガ靑山學院ニ
集マラレマシテ、其ノ際決議ヲサレマシテ、
全「キリスト」〓會ノ合同ノ完成ヲ期スト云
フヤウナ決議マデサレマシテ、其ノ方針ノ下
ニ現在進ンデ居ラレマスガ、現在ノ狀態デハ
大體凡ソ本月ノ終リ頃或ハ來月ノ初メ頃ニ
「プロテスタント」ノ大部分ガ一緒ニナツテ、
サウシテ日本的ナ「キリスト」〓ヲ樹立シヨ
ウト云フヤウナ所マデ大體御話ガ進ンデ居
ルヤウニ聞イテ居リマス、勿論內部ニ入ツテ
見マスト色々難カシイ問題モアルヤウニ聞
イテ居リマスガ、私ノ見ル所デハ大體順調
ニ進ンデ居ルノデハナイカト考ヘテ居リマ
ス
次ニ佛〓ノ問題デアリマスガ、佛〓ハ御
承知ノヤウニソレ〓〓ノ歷史傳統ガアリマ
シテ、今日十三宗五十六派ニ分レテ居リマ
スケレドモ、中ニハ非常ニ小サクテ十分活
動ガ出來ナイ、又オ互ヒニ派閥ノ爭ヒガア
ルト云フコトデ、一向宗〓トシテノ實ガ擧
ツテ居ラヌモノガアルヤウニ私共考ヘルノ
デアリマス、サウ云フ點カラ宗務當局ニ於
カレマシテモソレ〓〓〓話ヲサレマシテ、出
來ルナラバ、宗祖ニ還ツテ此ノ際大キナ力
ニナツテ御奉公ヲショウヂヤナイカト云フ
ヤウナ機運ガ是モ宗派自體ニ起ツテ參ツタ
ノデアリマス、併シナガラソレ〓〓各宗派
ニ於テモ派ガ分レル原因ガアリマシテ、或
ハ〓義ノ上ニ於キマシテ色々ノ點ニ於テ難
カシイ問題モアルヤウニ聞イテ居リマス
ガ、現在ノ所大體話合ヒガ付イテ居ルト認
メラレマスモノヲ具體的ニ申上ゲマスト
臨濟宗ガ全部トハ行キマセヌデセウガ、大
多數ノモノガ一ツニ統合シヨウヂヤナイカ
ト云フヤウナ氣持ガ動イテ居ルヤウデアリ
やく、ソレカラ天台宗ノ三派ガ此ノ際力ヲ
協セテ御奉公シヨウヂヤナイカト云フヤウ
ナ氣持ガ大分强硬ニ動イテ居リマス、ソレ
カラ淨土系ニ屬スル西山三派ガ相當ノ動キ
ヲ見セテ西山三派ダケデ纒マラウヂヤナイ
カト云フヤウナ氣持モ動イテ居リマス、ソ
レカラ日蓮宗ニ於キマシテハ、是ハ〓義ニ
付キマシテ非常ニ難カシイ問題デゴザイマ
ス、吾々モ其ノ難カシイコトハ十分ニ承知
シテ居ル積リデアリマス、併シ兎ニ角日蓮
宗ハ小サク分レテ居リマスル派モアリマス
ノデ、大體〓義ノ內容カラ來ルダラウト思
ヒマスガ、現在アリマス九派ノ中、八派ガ
大體二ツ位ニ分レテ纒マラウヂヤナイカト
云フヤウナ機運ガ動イテ居ルヤウニ現在ノ
所存ジ上ゲテ居リマス、ソレカラ最後ニ最
近話ヲ聞キマスト眞言ノ各派ニ於キマシテ
ハ、是ハ多少難シイ問題ガアルヤウニモ聞
イテ居リマスガ、京都ニ於テ會合ヲ進メラ
レテ居ルト云フコトヲ承ツテ居リマス、私
共ハ斯ウ云フ非常時局下デアリマスカラ、
宗〓家ハ率先推輓サレマシテ、宗門ノ總力
ヲ擧ゲテ國家ニ御奉公出來ルカト云フコト
ヲ御考ヘ願ヒタイト云フコトヲ私共御話ア
ル度ニ申上ゲテ居ルノデアリマス、其ノ方
法トシテ宗派ノ合同ヲ主トスル所ニ於キマ
シテハ合同モ結構デアリマスシ、又布〓ノ
强化ヲヤラナケレバナラヌ所ニ於キマシテ
ハソレヲ一生懸命ヤルコトモ結構デアリ
やく、又〓學ノ刷新ヲヤラレル必要ガアル
所ハ大イニヤツテ戴キタイ、其ノ方法ニ付
キマシテハ、ソレ〓〓各宗派ニ御任セスル
カラ、其ノ宗派ニ於テ最モ適切ト思フ方法
ニ依ツテ是非此ノ際其ノ實現ヲ御願ヒシタ
イ、斯ウ云フ立場デ申上ゲテ居ルノデアリ
マス、尤モ今日マデ其ノ問題ガ起リマシテ
僅カ半年ニ足ラナイ時期デアリマス、叉
面宗〓團體法ノ實施ト云フコトガ、所謂〓
規、宗制、〓團規則ノ認可ノ期間ガ大體來月
末ニ迫ツテ居ルヤウナ關係デアリマシテ、サ
ウ云フ關係カラ此ノ僅カノ期間ノ間ニ無理
ヲシテマデヤルコトハ困難ナ狀態ノアル所
モアルヤウニ聞イテ居リマスカラ、サウ云フ
所ハ一應ソレ〓〓單獨ニ〓規、宗制、〓團規
則ノ認可ヲサレマシテ、更ニ又發足シテ時
機アラバ統合ノ方向ニ進ンデ行クト云フコ
トガ必要デハナイカト云フ風ニ考ヘテ居ル
ヤウナ次第デアリマス、大體最近ノ狀況ヲ
申上ゲマスト以上ノヤウデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=21
-
022・椎尾辨匡
○椎尾委員 今具體的ニ詳シク說明ガアリ
マシタノデ、一寸關聯シテ伺ヒマスガ、宗
〓團體法ガ成立チマス時ニ、私共ハ統合的
指導ヲスル必要ガアルト云フコトヲ相當ニ
感ジタノデアリマシテ、其ノ點カラ當局ニ
質問シタノデアリマスガ、此ノ立法ハ歷史
的基礎ニ立ツ立法デアルカラ、現在立ツテ
居ル宗派〓團ハ其ノ儘〓義其ノ他ニ付テ宗
〓團體法ノ第六條等ノ條項ニ依リマシテ整
備シテ出サセレバ直グ認可スルノデアル、
斯ウ云フコトデアリマシタ、唯將來ニ向ツ
テハ分離サセナイデ統合サセル方針デア
ルト云フコトヲ示サレタダケデアリマス、
然ルニ法ガ發布サレマシテカラハ、當局ハ
多少其ノ時ノ言明ト違ツテ、細目ニマデ干
涉スルヤウニ見エ出シタノハ昨年ノ五月カ
ラデアリマス、サウシテ新體制ノ問題ハ成
程起リマシタガ、ソレガ爲ニ又宗派ノ合同
ノ問題ニ付テモ多少ノ干涉的態度ヲ以テ取
扱ハレタヤウニ存ジマス、所ガ私共ハ干涉
的態度ヲ執ツテ取扱ハレタ其ノコトヲ彼此
レ申スノデハナイ、其ノ態度ガ一貫シテ居
リマセヌト、徒ラニ紛糾ヲ來スモノデアル
ト考ヘテ居ルノデアリマス、然ルニ只今御
話ノ九月十六日トナリ、其ノ後局長ガ京都
ノ方ニ行ツテ指導スルト言ハレタヤウナ問
題ガ變更致シマシタリ等々ノ事柄ニ依リマ
シテ、當局ノ態度ハ屢、動搖シテ居ルヤウデ
アリマス、其ノ點ハ一體大臣ノ意向力或ハ
モツト大キイ形デモ小サイ形デモ兎ニ角確
定シタ考ヘヲ以テ干渉サレタノデアルカ
局長ガ一個ノ私案トシテ試ミラレタモノデ
アルカ、第一其ノ點ト次ニハ其ノ干涉サレ
マシタコトハ、初ハ統合サセヨウト云フコ
トデアツタト思ヒマスケレドモ、某々ノ運
動ニ依リマシテソレヲ變更サレタ爲ニ、ソ
レ等ノ人ハ合同ナドノ必要ハナイ、現在ノ
通リデ宜イト云フヤウナコトヲ有力者ガ公
言スル爲ニ、各方面デハ非常ナ齟齬ヲ來シ
テ、文部省ガ一貫シタ方針デ指導スレバ出
來ルモノヲ、一二ノ運動ニ依ツテ又動搖ヲ
ナシテ困ツテ居ル、斯ウ云フコトガ相當擴
ガツテ居ルノデアリマスガ、ソレハ事情ニ
依ツテ變更サレタノハ變更サレタデ宜シウ
ゴザイマスガ、動搖ガアツタカナイカ、又
今後ハ省議トカ其ノ他ノ方法ニ依ツテ決メ
テ居ラレル程度ガドウ云フコトデアルカ、
其ノ確實ナルコトヲ承リタイノデアリマス、
殊ニ宗〓團體法ノ從來ノ歷史事實ノ儘デ認
可スルト云フコトデアレバ、ソレヲ認可ス
ルモノハシテ置イテ、統合ハ統合デ指導サ
レルト云フコトデアリマスト、二年ノ期間
中ニヤリマシタコトガ着々進ムモノデアリ
マスノニ、當局ガ態度ヲ豹變シマシタ爲ニ、
五月頃ノ態度、九月頃ノ態度、十一月頃ノ
態度、屢〓態度ガ違ツテ居リマスカラ、ソレ
等ノ〓派ハ頗ル迷惑シテ、常ニ宗〓團體法
ノ實施ニ關シマスル寺院〓會等ノ實行ハ何
モ出來ヌコトニナツテ居リマス、是ガ實行
ガ出來マセヌ爲ニ、此ノ重大ナル時局ニ當
ツテ國家ノ爲ニ御奉公スルトカ、開〓活動
スルト云フヤウナコトガ非常ニ阻碍サレル
コトニナツテ居ルノデアリマスガ、サウ云
フ點ニ付テハ來月ハ兎ニ角總テ認可スルト
云フ今御話ガアリマシタガ、其ノ通リナサ
レルノデアルカ、或ハ又動搖スルヤウナコ
トガアリハシナイカ、サウシテ茲デ打切ツ
テ統合スルモノハスル、直グ出來ヌモノハ
他日ヲ期スルト云フ只今ノ御話ノ通リナノ
デアルカ、其ノ點ハ昨年ノ五月以來三變モ
四變モシテ居ル所カラ見マスルト、頗ル疑
ヒガアリマスルカラ、モウ一遍念ヲ押シテ
置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=22
-
023・阿原謙藏
○河原政府委員 御答へ申上ゲマス、勿論
宗派ノ統合ノ問題ニ付キマシテハ、私個人
ノ考ヘデヤツタモノデハ全然アリマセヌデ、
大臣ノ御指圖ヲ受ケテヤツタコトニ付テハ
間違ヒガナイト云フコトヲ此ノ際申上ゲテ
置キタイト思ヒマス、ソレカラ宗〓關係ノ
新聞ニ色々ナコトヲ書キマス關係上、或
當局ノ方針ガ途中デ變更シタト云フ風ニ御
感ジニナツタカトモ思フノデアリマスガ、
私共ノ關係ト致シマシテハ當初カラ變ツ
タ考ヘヲ持ツタ譯デハアリマセヌ、何處マ
デモ是ハ無理ヲシテ押シテ行クト云フ考ヘ
ハ全然アリマセヌデ、初メカラ希望トシテ
サウ云フ話ガ出タ時ニ私共カラ申上ゲタ程
度ナノデアリマスカラ、其ノ點ニ付テモ一
ツ御諒解ヲ願ツテ置キタイト思ヒマス、唯
サウ云フヤウナ誤解ヲ生ジマシタコトハ私
自身ノ不明デアリマスルカラ、サウ云フ誤
解ヲ若シ起シタト致シマスレバ、是ハ此ノ
際私カラ御詫ビ申上ゲテ置キタイト思ヒマ
ス、現在ノ狀態ニ付キマシテハ、三月末日
モ最早餘日ガ少イノデアリマスルカラ、
現在ノ狀態ヲ以テ合同ノ可能性ガアルト
思フモノニ付キマシテハ、今暫ク其ノ合同
ノ機運ノ出來ルノヲ待チタイト思ツテ居リ
マスルガ、サウ云フヤウナコトノ全然ナイ
宗派ニ付キマシテハ、三月末日マデニ必ズ
單獨デ認可ヲシテ行キタイト云フ考ヘヲ持
ツテ居リマシテ、現在着々內閱モ進メテ居
リマスルシ、又宗〓局ト致シマシテソレゾ
レ下審査ヲヤリマシテ、三月末日マデニハ
全部認可ヲ與ヘルヤウニ進メテ行キタイト
云フ考ヘノ下ニ進ンデ居リマスルコトヲ御
承知願ツテ置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=23
-
024・曾和義弌
○會和委員 最後ニ一ツ御伺ヒシタイノハ
小學校ノミナラズ、中等學校等ニモ施設シテ
居リマスル御眞影奉安殿ニ付テデアリマス、
御眞影奉安殿ヲ設ケマスルニ付キマシテハ、
他ノ學校設備ト同樣ヲ輕イ考へ方デ文部省
ガ臨マレテ居ルノデハナイカト私ハ思ヒマ
ス、ソレデアルナラバ非常ニ遺憾ダト思ヒ
マス、ソレハドウ云フ點デアルカト言フト、
卽チ其ノ位置ニ於テ其ノ構造ニ付テ區々ニ
ナツテ居ル、是ハ洵ニ畏多イコトデアルト
思フ、他ノ建物ナラバ雨天體操場ガアル所
モアレバナイ所モアル、ソレハ構ヒマセヌ
ガ、畏多クモ御眞影ヲ奉安シマスル設備ハ
校舍內ノ最モ神聖ナル所ニ適當ナル設備ヲ
シテ奉安シ奉ルノガ宜イノデアルカ、或ハ
最近漸次各地方ニ行ハレテ居ルヤウニ、校
地ノ一隅ニ特別ノ奉安殿ヲ御建テ申シテ奉
安スルノガ正シイ作法デアルカ、私個人ノ
考ヘ方トシマスレバ、寧ロ校舍內ノ最モ神
聖ナ所ニ奉安シ奉ルノガ本當デアラウト考
ヘマスルガ、之ニ付テ文部省ノ御意見ヲ承
リタイ、今一ツハ其ノ構造デアリマス、屋
外校地ノ一部ニ鐵筋「コンクリート」ナドヲ
以テ設備致シテ居リマスル奉安殿ニハ學校
ニ依ツテ最モ重大ナ相違ガ一ツアル、ソレ
ハ或ル所ニ於テハ千木鰹木ヲ設ケテ居ルノ
デアリマス、卽チ奉安殿ノ屋根ノ上ニ千木
ト鰹木トヲ設ケテ居ル、他ニハ千木ト鰹木
ノ設ケテ居ナイ奉安殿モアル、果シテ文部
省ハ之ヲ此ノ儘デ宜イト御覽ニナルノデア
ルカ、卽チ我ガ國ノ神社ニ於ケル千木鰹木
ノ特殊ナル意味カラ申シマシテ、是ハ濫リ
ニ設ケ、濫リニ設ケザルト云フコトハ許サ
レナイ、殊ニ事苟クモ奉安殿ニ關シ奉ルコ
トデアル、奉安殿ニハ千木鰹木ヲ設ケルノ
ガ正シイノデアルカ、設ケナイノガ正シイ
ノデアルカ、之ヲ明カニ全國學校ニ明示セ
ナケレバナラナイト思フ、其ノ點ヲ御伺ヒ
シタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=24
-
025・橋田邦彦
○橋田國務大臣 只今奉安殿ノ統一ノ問題
ニ付キマシテ御意見ヲ拜聽シマシテ、甚ダ
恐縮ニ存ジテ居リマス、其ノ形式等ニ付キ
マシテハ文部省ノ所存ニ依ツテ決定サルベ
キモノデハゴザイマセヌノデ、能ク宮內省
等ト協議ノ上ニ適當ニ致シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=25
-
026・曾和義弌
○會和委員 勿論私ハ文部省ニ於テ指示サ
レテ居ラレナイト云フコトハ存ジテ居リマ
ス、指示サレテ居ラナイト云フコトガ寧ロ
私ハ手拔カリデハナイカ、最近校舍外ノ校
地ニ奉安殿ヲ御設ケスルト云フコトハ、形
ノ上カラ見マスナラバ、大イニ尊崇スル赤
誠ノ上カラシテ、私有難ク思ツテ居ル、大
切ニシ奉ツテ居ルト云フコトヲ現ハシテ居
ルコトガ見エル、而モ忠誠ナル日本國民ハ
到ル處ニ漸次其ノ風ガ及ンデ居ルノデアリ
マスルカラ、一日モ早ク之ニ對シテ適當ナ
ル指示ヲ與ヘルコトガ必要デアルト私ハ存
ズル、以上ヲ以チマシテ私ノ質問ヲ終リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=26
-
027・林平馬
○林委員長 ソレデハ時間モ參リマシタカ
ラ是デ休憩致シマシテ、午後ハ本會議ノ關
係モゴザイマスカラ二時半カラ引續イテ質
疑ヲ續ケタイト思ヒマス、休憩致シマス
午後零時十分休憩
午後二時四十四分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=27
-
028・林平馬
○林委員長 休憩前ニ引續キ開會致シマ
ス-椎尾君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=28
-
029・椎尾辨匡
○椎尾委員 午前ニ同僚ノ曾和委員カラ〓
育上極メテ重大ナ諸點ニ付テ質疑ガアリマ
シテ、文部大臣ハソレ〓〓親切且ツ明晰ナ
御答ヘヲ與ヘラレタノデアリマスシ、又最
近ニ於キマシテ、種々ノ論議ニ對シテ信念
ノアル御意思ヲ承ル機會ガ非常ニ多カツタ
ノデアリマシテ、〓學ノ爲ニ欣快ニ存ズ
ルノデアリマス、併シ〓育ノ過去ノ立派ナ
成績ト同時ニ各方面ニ行詰リヲ持ツテ居
リマスル點ハ顯著ナコトデアリマシテ、
其ノ改革ハ頗ル困難ナモノト考ヘラルルノ
デアリマス、大臣ノ御熱意ニ依ツテ着々ト
改善サレテ行クト存ジマスケレドモ、是ハ
御一人ダケデハ難カシイ點モ多々アルト存
ゼラルルノデアリマス、此ノ〓育上ノ重大
ナ難關ヲ切拔ケ、解決シテ行ク爲ニ、何等
カ機構ニ付テ御考ヘガアルカヲ承リタイ
ノデアリマス、ソレハ本年ノ豫算ニ於
キマシテモ、科學振興其ノ他ニ關シテ相當
ノ豫算ノ成立ヲ見マシテ、幾多ノ發達ガア
ルト存ジマスガ、企畫院其ノ他ノ方面カラ
ノ意見ト致シマシテ、調査會等ニ現ハレテ居リ
マスル所デハ、大學其ノ他ノ機關ハ箇々別
別ニナツテ居ツテ、其ノ連絡協力ガナイ、折
角豫算ハ出來テモ、結局豫算ハ分捕リニナ
ツテ本當ノ成績ヲ出スコトガ出來ナイ、科
學總動員ニ依ツテ幾ラカ之ヲ充シタイト考
ヘルケレドモ、大學方面ナドノ連絡ニ於テ
ハ甚ダ期待薄デアルト云フヤウナコトヲ報
告サレテ居リマスガ、私共ハサウ云フコト
ヲ聽キマシテ頗ル遺憾ニ思フノデアリマス、
サウ云フ點ニ付キマシテ、眞ニ各大學ノ〓
究室ナリ學徒ガ、互ヒニ總動員的ニ連繫〓
究スルト云フコトニ付キマシテモ、何等カ特
別ナル方法ヲ御考ヘニナツテ居リマスカド
ウカ、又同樣ニ〓育審議會ガ〓育ノ刷新ノ
爲ニ上諭ニ依ツテ開カレテアルコトハ私ガ
申スマデモナイコトデ、其ノ事實ガ〓育ノ
革新ノ重大性ヲ示シテ居ルノデアリマスガ、
十二年以來御承知ノ通リソレハ第一號諮問
案ニ付テ終始シテ居ルノデアリマス、此ノ
諮問案ハ〓育一般ノコトデアリマスカラ、
固ヨリ長ク掛ルニ不思議ハアリマセヌケレ
ドモ、此ノ諮問案ニ終始シテ大體ノ〓究ガ
恆久的ノ〓育ノ動キ方ヲ決メルト云フコト
デアリマス、恆久的ノ動キ方ヲ決メルコト
ハ必要デアリマスガ、其ノ恆久性ガ從來考
ヘルヤウナ恆久性デハナク、獨リ時局ガ急轉
スルノミデハナイ、世相一切ノモノガドン
ドン急轉シテ行クノデアリマシテ、〓育其
ノモノノ動キ方モ非常ナ活動性的ニ〓究セ
ネバナラヌ筈ダト存ジマス、殊ニ時局ガ當
初一部當局者ノ考ヘマシタヤウナ短期ノモ
ノデナク、私共ガ當時カラ爭ツタヤウニ、
五年以上ニ亙ルモノダト云フコトハ、旣
ソレ以上ニ亙ルコトニナツテ參リマシテ、
尙ホ前途測ルベカラザルモノガアリマスカ
ラ、此ノ時局ノ長期變轉ニ應ズル〓育ト云
フコトガ當然考ヘラレネバナラヌノデアリ
マス、サウ云フ意味ニ於テ〓育審議會ガ考
ヘルト云フコトデアリマスレバ、或ハ考ヘ
サセルト云フコトデアリマスレバ、別途ノ
諮問案等ニ依ツテ其ノ方法ハ開カレルノデ
アリマスケレドモ、恆久性ノ調査ト云フコ
トニ名ヲ藉リテ、此ノ時局ニ應ズル本當ノ
審議審査モ行ハレテ居ラヌノデアリマス、
是ハ前大臣ニ於キマシテハ昨年ノ議會ニ於
テ、恆久的ノコトダケヲ〓育審議會ニ託シ
テ、此ノ時局ニ卽應スルコトハ文部省内ノ
機構ニ於テ之ヲヤル積リデアル、斯ウ云フ
答ヘデアリマシタガ、今ノ大臣閣下モ同樣
ナ御考ヘデアリマスカ、審議會ニサウ云フ
コトヲ託スルカ、或ハ他ノ機關ヲ設ケルカ、
何トカシナケレバ、單ニ文部省ノ從來ノ機
構ダケデハ出來ニクイ問題ガ多々アルト思
フノデアリマスガ、ドウ云フ風ニ御考ヘニ
ナツテ、此ノ時局ナリ將來ニ對スル〓育
ノ根本的ノ動キヲ全ウシヨウトナサレテ居
ルノデアルカ、此ノ點ヲ伺ヒタイノデアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=29
-
030・橋田邦彦
○橋田國務大臣 科學振興ニ最モ大事デア
リマスル〓究所或ハ〓究者相互間ノ連絡統
合ト云フ事柄ガ、從來甚ダ缺ケテ居リマシ
タコトハ科學振興ノ爲ニ甚ダ遺憾ナコト
デゴザイマシテ、ソレハ色々ナ方面カラ是
非トモ連絡統合ノ實ヲ擧ゲルヤウニシナケ
レバナラナイト云フ聲モ高マリマシテ、又
科學振興自體ニ是非トモ必要ナ問題デアル
ノデアリマシテ、是ハ目下企畫院ト相談中
デゴザイマスガ、間モナク成案ヲ得テ適當
ナ處置ヲ講ズルコトニ相成ルコトト考ヘテ
居リマス
第二ノ〓育審議會ノ問題ニ付キマシテハ、
今ノ所委員會ヲ成ベク少クシヨウト云フ政
府ノ方針ニ基キマシテ、〓育審議會モ成ル
ベク早ク一應纏メ上ゲテ貰ヒタイ、斯ウ云
フ希望ノ下ニ、今進行ヲシツツアルノデゴ
ザイマスガ、仰セノ通リ時局ニ對應ノ策ト
シテノ審議ヲドウスルカ、斯ウ云フ問題ハ
極メテ重要ナ問題デゴザイマシテ、色々其
ノ點ニ付テハ文部省內ニ於キマシテ出來ル
ダケノコトヲ今ヤツテ居ルノデゴザイマス
ケレドモ、仰セノ通リ文部省內ダケニ於テ
十分出來ルコトトハドウモ考ヘラレマセヌ、
從來ノ型ノ如キ委員會デナク、有力ナル委
員會ヲ適當ニ組織シテ御相談ヲ申上ゲルコ
トニ相成ラウカト考へテ居リマス、マダ具
體的ニ何時カラ設ケルト云フ所マデハ參ツ
テ居リマセヌガ、何レサウ云フ社會一般ノ
方面カラノ有識者、有力者ノ御集リヲ願ツ
テ、何カノ形ニ於テ御相談ヲ申上ゲナケレ
バナラナイカト存ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=30
-
031・椎尾辨匡
○椎尾委員 次ニ御伺ヒシマスノハ、直接
ノ國民〓育ニ關シマスル議案其ノモノハ極
ク簡單デアリマスガ、國民學校トシテ改革
サレマスルコトハ、實ニ申スマデモナク、
多大ノ期待ヲ以テ五十年來ノ〓育ヲ改メテ
行ク、又七十年來ノ歐米ノ模做デアリマシ
タ〓育カラ、日本ラシイ〓育ヲスル、其ノ
內容ニ於キマシテモ、方法ニ付キマシテモ、
全然改メラルベキ必要ガ迫ツテ居ルノデア
リマスガ、今日ニナツテ見マスレバ、旣
其ノ要綱ヲ審議シテ成案ナリトシタ人々モ、
當時ノ少數意見ノ方ガ本當デアツテ、舊來
ノ形式方法ヲ組織シタ人々ガ考ヘテ居ツタ
コトハ、寧ロ間違ツテ居ルト云フコトヲ氣
付カレタ位デアルト思ヒマス、此ノ三、四
年間ノ急激ナ變化ニ於キマシテハ、三、四
年前ニアノ要綱ヲ決メ、或ハ現實ニナツテ來
ヤウトシテ居ル考ヘ方ヨリモ、モツト違ツ
テ行カネバナラヌト考ヘラレル程、急激ナ
變化ヲ持ツテ居リマシテ、日本的ノ〓育ガ
徹底的ニ實行サレナケレバナラヌ譯デアリ
マスガ、ソレニ付キマシテハ、此ノ四月カラ
行ハルベキコトハ銳意準備サレタトハ存ジ
マスルケレドモ、洵ニ準備不十分ダト感ズ
ルノデアリマス、指導者ノ〓員ガ三、四箇月
ノ講習デ根本的革新ノ〓育ガ出來ル筈ハナ
イノデアリマシテ、當初考ヘテ居リマスヤ
ウナ師範〓育ノ改善ハ〓員其ノ人ノ態度動
向ヲ全面的ニ改革ヲシナケレバナラナイノ
デアリマスルノニ、其ノ師範〓育ノ改善モ
僅カニ再〓育ノ三、四箇月ノコトニ依ツテ間
ニ合ハセテ行カウトスルノデアリマスルガ、
同樣ニ〓科書ガ十分ニ準備サレテ、之ヲ論
究檢討シテ、新〓育ヲ行フト云フコトデナ
ケレバナリマセヌノニ、是亦間ニ合ハセノ綜
合〓育ニ類似スル資料ヲ與ヘタニ過ギヌ行
キ方ト思フノデアリマスガ、大體ニ於キマ
シテ、一時ノ間ニ合ハセニ必要ナ程度デア
リマスガ、是ハ根本的ニ斯ウ云フ師範〓育
や、斯ウ云フ〓科書デハイケナイノデアツ
テ、必ズヨリ完全ナル師範〓育ノ革新充實、
及ビ眞ノ國民學校〓育ノ〓科書ノ充實ニ向
ツテ御進ミニナルノデアルカドウカト云フ
コトヲ伺ヒタイノデアリマスガ、特ニ其ノ
中ニ國民〓育ノ充實ハ修身ガ其ノ一ツニ加
ヘラレテ居リマス、修身ノコトハ午前ニモ
〓育勅語ヲ中心トスル施行令等ニ基イテノ
質疑應答ガアリマシタガ、〓育勅語ヲ中心
トシテ、全體的ニ日本ノ御勅語ヲ中心ニス
ル修身〓育ト云フモノガ完成サレテ、是ガ
實行サレナケレバナラヌト存ジマス、從來
ノ修身ハ申スマデモナク、東西古今ノ人々
ノ善言佳行ヲ大體ノ判斷ニ任セテ扱ツテ、
善ナリトシテ兒童ニ授ケテ居ルノデアリマ
スガ、斯ノ如キ拾ヒ集メノ修身〓育ト云フ
モノハ、他國ニ於テハ已ムヲ得マセヌケレ
ドモ、他國デスラソレハ餘リニ任意的ノ非
學術的ノコトデアルガ爲ニ、修身ガナイヤ
ウナ狀態デモアリマシテ、若シ多少纒ツテ
居ルモノト言ヘバ、「バイブル」其ノ他ノ稍〓、
纒ツタ思想ヲ材料トシテ修身〓育ヲヤツテ
居ル狀態デアリマス、修身ニ代ヘルニハ
倫理思想ヲ以テヤル場合ガアリマシテ、我
ガ國モ上級ノモノハ倫理ヲ標準ニスルノデ
アリマスガ、是亦此處デ批判スル必要モナ
ク大體主樂主義ヤ直覺主義ニ依ツテノ倫理
ト云フモノニ於テハ本當ノ標準ガアリマセ
又、歐米ノ諸國ニ於テハ人間ガ樂ガシタイ
トカ、人間ガ眞ヲ感ズルトカ云フヤウナコ
トニ依ツテ定メルモノト存ジマスガ、サウ
云フ國土ニ於テハ致シ方ガナイトシマシテ
モ、日本ニ於テハ全然日本的〓育デナケレ
バナラナイ、日本的〓育ハ單ニ任意ニ東西
古今ノ人物ノ善言佳行ヲ善ナリトスル考ヘ
方ヤ、或ハ主樂、直覺等ノ善ナリトスル考ヘ
方ヲ標準トスルノデハナクテ、實ニ古今萬世
ヲ貫イテ段々ニ現ハレテ參リマスル一貫セ
ル御詔勅ノ發達ガ國民修身ノ根本標準デナ
ケレバナラヌト存ジマス、隨テ修身〓科書
ヲ從來ノヤウナ拾ヒ集メデハナクシテ、古
今ノ御詔勅ヲ基礎トシテ修身ノ發達、卽チ
國民ガ元日カラ大晦日マデ平常老若ヲ通ジ
テ行ツテ居ルコト及ビ行ハネバナラヌコト
ヲ御詔勅ヲ基礎トシテ其ノ發達ヲ繹ネテ修
身ノ編纂ニ當ルト云フコトガ屢〓論議サレ
タノデアリマスガ、現實ハ修身〓科書ノ斯ウ
云ツタ根本的改善ノ方ニマデハ進ンデ居ラ
ヌヤウニ存ジマスガ、ソレヲ充實スルヤウ
ニナツテ居ルノデアマリスカ、ドウデアリ
マスカ、同ジヤウニ歷史ニ付キマシテモ、
是亦午前ニ一寸論議ガ出マシタケレドモ、
日本ハ日本ノ歴史デナケレバナリマセヌガ、
併シ午前ノ論議デ私ノ滿足シマセヌノハ、
日本ノ歷史ト云フダケノ單獨ナ歷史デアツ
タナラバ、是ハヤハリ日本的〓育ヲナスコ
トハ出來ナクシテ、偏狹固陋ノ〓育ニナル
虞ガアリマス、私ハ日本ノ歷史ハ世界ノ歷
史デアルト考ヘマス、民族トシテモ、交涉
關係ニシマシテモ、又朝鮮、支那、「インド」、
「ペルシヤ」其ノ他色々ナ歐米文物ガ時ヲ追
ウテ流入致シマシテ、而モソレガ批判サレ
同化サレテ日本ノ發達トナツテ居ル點カラ
見マシテモ、日本ハ自然史ニ於テモ亦文化
史ニ於テモ、人類世界ノ本當ノ歷史ノ中核
體デアル、斯ウ云フ考ヘカラ見タル日本ノ
歷史ノ本質ヲハツキリト現ハシ、其ノ本質
ガ神武天皇ノ身ヲ以テ長髓彥ヲ退治遊バ
サレタコトカラ始マリマシテ、ハツキリシ
タ文獻カラ見テモ、御歷代ノ天皇ガ常ニ
大難ニ當リ缺乏ニ當ツテ御盡シニナツテ居
リマスル其ノ古今ノ史實ノ國民的ノ長所ヲ
本當ニ摑ンデ描キ出シタ歷史デナケレバナ
ラナイト存ジマスルガ、サウ云フ意味ニ於
テノ歷史ハ、簡單ニ言ヒマスルト、明治以
來ヤツテ居リマスル資料ノ寄セ集メト其ノ
羅列ニ依ツテハ十分ニ得ラレヌノデアリマ
シテ、モツト眞劍ナ日本史ノ〓究カラ入ツ
テ來ナケレバナラヌノデアリ、サウ云フ點
ニ於テ歷史〓科書ノ編纂ナドニ付キマシテ
モ、非常ナ御準備ガ要ルモノダト思フノデア
リマスガ、ソレヲドウ云フ風ニ御準備ナサ
レヨウトスルノデアルカ、更ニ國語ハ國民
ノ魂デアリ、之ヲ主トシテ國語讀本ニ依ツ
テ行ハナケレバナラヌト云フコトハ、大體
ノ論議ハ其ノ意ヲ得テ居リマスケレドモ、
國語ガ如何ナル國語トシテ全ウセラルベキ
カ、「ルーテル」ガ宗〓改革ヲ致シマシタヨリ
モ、其ノ「ドイツ」語ニ依ツテ「バイブル」ヲ
編纂シ、新「ドイツ」語ヲ造ツタト云フコト
ガ、今日ニナツテ見マスルト、過去四百年
間ノ「ルーテル」ノ評價ヨリモ、國語ニ對ス
ル「ルーテル」ノ努力ト云フモノガ尊イコト
ニ考ヘラレルノデアリマスガ、サウ云フ意
味ニ於テ日本ノ言葉ハ、殘念ナガラ大和言
葉ノ純ナルモノガ樣々ノ民族、文物ノ混入
ニ任セマシテ、非常ナ混亂ノ狀態ニナツテ
居リマス、儒〓トカ佛〓トカノ良イ點モ澤
山入ツタコトハ違ヒナイカモ知レマセヌケ
レドモ、國語ノ混雜ヲ來シテ居ルト云フコ
トハ非常ニ殘念ナコトデアリマス、今マデ
ノヤウニ鎖國的ニ日本ダケニ使ヒマスルモ
ノヲ日本ノ國語ダト言ツテ居レバ差支ヘア
リマセヌケレドモ、大陸ニ發展シテ日本ガ
進出致シマスルニハ、日本ノ國語ト云フモノ
ハ本當ノ系統ノアリマスル、又組合セノ出
來ル新シイ言葉ガ出來テ、而モ學術語トナ
リ、國際語ニナリ得ル日本語ニ仕上ゲレバ
ナラナイノデアリマシテ、斯樣ナ國際語ニ
ナリ得ル本當ノ國語ヲ國民〓育ニ於テハ與
ヘナケレバナラナイノデアリマスガ、此ノ
國語ノ〓究ト云フモノハ數千万圓、或ハ數
億圓ヲ費サナケレバ出來ヌモノト思フノデ
アリマスガ、文部省ハ此ノ重大ナル國民〓
育ノ改善ニ際シマシテ、此ノ修身、歷史、
國語ノ〓科書ガ斯フ云フ根柢カラ出ベキモ
ノデアルト云フコトカラ御考ヘニナツテ御
準備ニナリマスルナラバ、非常ニ重大ナル
問題ガ澤山アルト思フノデアリマシテ、ソ
レナケレバ到底大陸〓化、東亞共榮圈ノ本
當ノ指導力トナル國民ヲ將來育成スルコト
ハ出來ヌコトト存ジマスガ、ソレニ對スル
御準備ハドウ云フ風ニ御考ヘニナツテ居リ
マスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=31
-
032・橋田邦彦
○橋田國務大臣 國民學校制實施ニ當リマ
シテ、準備ガ十分ニ出來上ツテ居リマセヌ事
柄ハ洵ニ申譯ノナイ次第デゴザイマス、國
民學校ト云フ制度ヲ一日モ早ク實行シナケ
レバナラナイ狀勢ヲ一面ニ看取シマシタガ
故ニ、一時ノ便法トシテ萬已ムヲ得ナイモ
ノトシテ行ツテ居リマスル旨ヲドウゾ御諒
承願ヒタイト思フノデアリマス、師範〓育
ノ改善ニ付キマシテモ、此ノ意味ニ於キマ
シテ、旣ニ今議會ノ豫算ニ於キマシテ改善
ノ準備ヲ致スベキ經費ヲ御協贊ヲ得テ居ル
ノデアリマス、出來ルダケ近イ將來ニ於キ
マシテ現下ノ時局、サウシテ又將來ノ發
展ニ向ツテノ適當ナル師範學校制度案ト云
フモノヲ得タイト苦心シ、努力シテ居ル
ノデアリマス、殊ニ〓科書ノ編纂ニ付キマ
シテ非常ニ有益ナ御〓示ヲ得マシタコト
ヲ深ク感謝スル次第デアリマス、修身、歷
史竝ニ國語ニ付キマシテノ御高見ハ全ク同
感ニ存ズルノデゴザイマシテ、〓科書編纂
ノ方針ナドモ從來トハ餘程相違シテ、國民學
校ノ內容ニ相應シイモノデアルヤウニ向ケ
ラレツツアルモノト信ズルノデアリマス、
歷史ノ問題ニ付キマシテハ、是ハ單ニ國民
學校ダケノ問題デハナイト存ジマスガ、仰
セノ通リ日本歷史ト吾々ガ考ヘナケレバナ
ラヌモノハ、所謂孤立シタ日本ノ歷史ト云
フコトデアツテハナラナイノデアリマシテ、
御說ノ通リ世界ノ歷史ガ日本ノ歷史デアリ、
日本ノ歷史ハ吾々ノ建前ニ於テハ世界ノ歷
史デアル、結局申上ゲマスレバ、肇國ノ御
詔勅ノ中ニアリマス御精神ニ則ツタ歷史ト
云フモノガ編纂サレ、ソレニ依ツテ國民ガ
日本ト云フモノノ正シイ姿ヲ知ル方ヘ向ケ
ナケレバナラヌコトハ、御說ノ通リデゴザ
イマスガ、甚ダ遺憾ニ存ジマスコトハ、從
來歷史ノ〓究ガ、歐米ノ歷史〓究ト云フモ
ノニ範ヲ取リマシタ爲ニ、其ノ方向ニ向ツ
テ餘リ詳シク〓究サレテ居ナイコトハ、甚
ダ遺憾デゴザイマシテ、今速急ニ日本歷史
ト云フモノヲ、アラネバナラナイ、姿ニ於
テ作上ゲルト云フコトハ、極メテ困難ナ
コトト存ジマスケレドモ、是ハ御趣旨ノ
通リ、又私ガ今述ベマシタヤウナ趣旨ニ
於キマシテ、出來ルダケ十分ナル〓究ヲ
早ク遂ゲルヤウニ助成シマシテ、內容ノ充
實シマシタ曉ハ、卽時適當ナル方策ヲ講ジ
タイト考ヘテ居ルノデゴザイマス
國語ノ問題ニ付キマシテモ、全ク御說ノ
通リデゴザイマシテ、我ガ日本ノ國語ハ、
八紘一宇ノ御精神ニ則ツテ、吾々ガ活躍シ
ナケレバナラナイト云フコトヲ自覺シマシ
タ以上、單ニ狹イ日本ダケノ國語デアツテ
ハナラナイノデゴザイマシテ、·軈テ世界ノ
何處マデモ行渡ツテ差支ナイ國語ト云フモ
ノニナラナケレバナラナイノデゴザイマス、
ソレニ付キマシテ御說ノ通リ、從來餘リニ
複雜混沌トシテ居リマス事柄ハ、是亦甚ダ遺
憾ナコトデゴザイマシテ、之ヲ整理統合ス
ルト云フコトハ、啻ニ吾々文〓ニ携ハル者
カラノ聲ダケデナク、凡ユル方面カラ今澎
湃トシテ起ツテ居ル問題デアリマス、是ハ
何レ十分ナル〓究ノ出來ル方策ヲ講ジナケ
レバナラヌト存ジテ居ルノデゴザイマス、
併シ大陸方面ノ進出ニ向ツテノ僅カナル工
作ハ、極メテ微々タルモノデハアリマスケ
レドモ、今文部省內デモ一步ヲ踏出シテ居
ルノデゴザイマシテ、漸次其ノ方針ニ向ツ
テ善處シタイト存ジマス、若シ〓科書ノ編
纂方針ノ內容等ニ付テ、詳シク御說明ヲ申
上ゲル要ガゴザイマスレバ、政府委員ヲシ
テ御說明申上ゲマス
シ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=32
-
033・椎尾辨匡
○椎尾委員 大分了解致シマシタガ、勿論
是等ノ問題ハ短期ニ出來ルモノトハ存ジマ
セヌ、國民學校ガ此ノ四月カラ出來ルトシ
マシテモ、十九年デ一通リ八年制度ガ出來
上ル御案デアリ、十九年度ニナリマシタ所
デ、結局一通リ出來ルノデアツテ、稍〓適正
ナル師範〓育ハ、マダ其ノ後デナケレバ出
來上ツテ參ルマイト存ジマス、ソレ故ニ其
ノ次ノ四五年ヲ費シテ、發案シテ居ル、國
民學校ト云フモノガ稍〓型ニ乘ツテ、本當ノ
國民學校ガ國民學校ノ目的ノヤウニ現ハレ
ルノハ、大凡二十年後ダラウト考ヘテ居ル
ノデアリマス、サウ云フヤウナコトニシテ、
長クトモ着實ニヤツテ行クト云フヤウナ考
へ方ガ甚ダ徹底シテ居ラヌヤウデアリマス、
今度僅カニ變リマスル事柄、所謂八年制ニ
ナルトカ、或ハ國民學校ト名ヲ變ヘルトカ、
サウ云ツタ末節ノ點ニコダハツテ居リマシ
テ、本當ノ國民學校ノ向ハントスル趣旨ガ、
ドノ方面ニ行ツテ見マシテモ、十分ニ行屆
イテ居ラヌト思フノデアリマス、是ハ講習指
導ノ上ニモ尙ホ缺點ガアツタカト思ヒマス
ルシ、或ハ訓令御指導ナサル上ニモ足リナイ
點ガアツタカト思ヒマスケレドモ、ドウモ
各府縣ニ參リマシテ接シマスル所デハ、極
メテ簡單ナ改革方面ダケヲ見テ居リマシテ、
根本ノ日本〓育ガ之ニ依ツテ出來ルノダ、
今マデノヤウナ〓育トハ違フト云フコトハ、
是ハ師範〓育ヲヤル方カラ見テモ餘リ言ヒ
タクナイコトデアリ、〓員自身ニ取ツテモ、
今マデノ〓育ハ餘リ良イ〓育デナカツタト
云フヤウニナツテ、自己批判ヲ外部ニ暴露ス
ルヤウニ見エマスカラ、成ベクサウ云フコ
トニ觸レナイヤウナ態度ヲ執リマスガ、是
デハ本當ノ國民學校ト云フモノノ目的ハ達
セラレナイト存ジマス、此ノ點ニ付テ尙ホ
徹底セル指導ヲ與ヘラレタイト云フコトヲ
希望致シマスト同時ニ、ソレハドウセ長期
ニナリマスカラ、長期的建設ノ方法トシテ、
曩ニ申スヤウナ日本的ナ修身ナリ、歷史ナ
リ、國語ナリヲ確立シテ行ク、是ハ一ツハ
國民學校ニ直接スル問題デアリマスケレド
モ、無論歷史ヤ國語ハモツト廣イ大キナ問
題デアリマス、ソレニ對シテ、何分ニモ今
マデノ國語調査機關ト云フモノハ貧弱
至極デアリマシテ、稍〓擴大セラレタト言
ツテモ到底此ノ時勢、國策ノ要求スルモ
ノニ向ツテ居ラヌノデアリマスカラ、モ
ツト十分ナル擴大充實ヲ圖ラレマスコ
トガ必要ダト存ジマス、氣象學ガ飛行
機ノ關係カラ、アノ數千万圓ヲ繼續的ニ
使ツテ〓究スルコトガ出來ルヤウニナリマ
シタガ、精神的ニハ、國語ハアレト同ジヤ
ウナ重要性ヲ、國際的ニ持ツテ行クモノダ
ト存ジマスノデ、大規模ナ氣象學ノ〓究ガ
出來ルヤウニ、國語ノ〓究改善ノ爲ニモ、
餘程根本的ニ御考ヘ直シニナツテ、大規模
ナ施設ヲセラレナケレバナラヌト存ジマス、
御同意下サツテ居ル御趣意ハ諒トシテ居リ
マスガ、其ノ點ニ付テモウ一應重ネテ御伺
ヒ申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=33
-
034・橋田邦彦
○橋田國務大臣 御趣旨ノアル所ハ能ク拜
承致シマシタ、十分ニ考究シテ、出來ルダ
ケ御趣旨ニ沿フヤウニ善處致シタイト存ジ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=34
-
035・椎尾辨匡
○椎尾委員 〓科書ノコトニ付テハ、圖書
局長ニモオイデヲ願ツテハ置キマシタガ、
サウ云フ事情デ、現在オヤリニナツテ居リ
マスコトガ、私ノ蒙ヲ啓クニ適切デアリ、
或ハ同ジヤウナ道デ民間ガ考ヘテ居ルヨリ
ハ、モツト深ク進ンデ居ルト云フコトデア
リマシタナラバ、此ノ際モツト簡單ニ御說
明ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=35
-
036・松尾長造
○松尾政府委員 只今ノ椎尾サンノ御話ハ
洵ニ御尤モト存ジマス、隨テサウ云フ考ヘ
ヲ以チマシテ、當局ト致シマシテハ可ナリ
久シキニ亙ツテ愼重審議ノ上、根本方針ヲ
確定致シマシテ、大體御趣意ノヤウナ方針
デ根本方針ガ確立シタヤウニ存ジマス、隨
テソレニ基イテ着手致スノデアリマスガ、
一時ニ澤山ノ〓科書ヲ作ルト云フコトハ、是
ハ只今仰セノ通リ、杜撰ニ陷ル弊害モアリ
マスノデ、御承知ノ通リ十五年ニ於キマシ
テハ、一年生二年生ノ二學年ヲ編纂致シタ
ノデアリマス、逐次一年ニ二學年ヅツヲ編
纂致シマシテ、十九年ニ至ツテ終了スルコ
トニ相成リマス、隨テ椎尾サンノヤウナ方
方カラ御覽ニナリマスト、或ハアチラコチ
ラニ缺點モアラウカト存ジマスガ、先ヅ從
來ノ〓科書ヨリ立派ナモノデアリ、眞ニ皇
國臣民タルノ基礎錬成ノ出來ルモノニ、數
步進メタモノガ現ハレルダラウト考ヘテ居
ル次第デアリマス、修身、歷史、國語等ニ
付キマシテ御述べニナリマシタ點ニ付キマ
シテモ、私共トシテ篤ト諒解致サレルノデ
アリマスガ、ソレ等ノ點ニ付キマシテモ十
分ニ注意致シマシテ、修身等ニ付キマシテ
モ、或ハ拾ヒ集メト云ツタヤウナ從來ノ弊
ガ見ラレナイデモアリマセヌノデ、サウ云
フヤウナコトノナイヤウニ注意ヲ致シテ、
編纂ニ從事シテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=36
-
037・椎尾辨匡
○椎尾委員 單ナル國民〓育、國民學校問
題ヨリハ少シ擴ガツテ參リマスガ、國民
學校ノ〓育ヲ完全ニシマスニハ、師範〓
育、高等師範的〓育、サウシテ中心トナル
ノハ最高學府ノ〓育ガ極ク完全シタモノニ
シナケレバ期待シ得ヌコトデアリマス、
申スマデモナク從來歐米ノ學風ヲ模倣シテ
進ンデ參リマシタコトハ、過去ニ於テ已ム
ヲ得ナイコトデアリマスケレドモ、今日日
本ノ使命トシ、立場トシテ、日本的ノ學ノ
獨立徹底ヲ圖ルコトガ必要デアルコトハ明
瞭デアリマスカラ、其ノ意味ニ於キマシテ
大學〓育ト云フモノハ、頗ル不十分ナモノ
ト考ヘルノデアリマス、此ノコトハ長年申
シテ居ルノデアリマスガ、纔カニ其ノ大キ
ナ缺陷ヲ暴露致シマシタ所ニ、多少ノ解決
トカ彌縫ヲ見ルダケデアリマシテ、根本的
ノ學ノ改造、變革ト云フモノハマダ出來ナ
イノデアリマス、是ハ頗ル緊要ナ重要ナ事
柄デ、モツト御考ヘ直シニナケレバナラヌ
問題ダト存ズルノデアリマス、大體ニ於キ
マシテ法學部、經濟學部等ノ某々ノ〓授ノ
〓案ガドウダ斯ウダト云フコトヲ議會ナド
デ論議致シマシテ、其ノ論議サレル所ニ從
ツテ、ソレ等ノ人ガ失脚シタリ、或ハ司法
處分ニ依ツテソレ等ノ問題ガ解決スルト云
フコトハ、私ハ學ソレ自ラノ非常ナ醜態デア
リ、病態デアルコトヲ現ハシテ居ルモノデ、
健全ナル學ハ學府自ラガ、他ノ論難等ニ先
ダツテ、能ク學ノ新タニ進ムベキ途ヲ明カ
ニシテ、非難セラレル所デハナク、自ラ改メ
テ先ヘ進ンデ行クモノデナケレバナラヌト
思フノデアリマス、ソレガ議會ノ議論ニナリ、
司法處分ノ發動ヲ見テ其ノ〓ヘヲ受ケマシ
タ判檢事ガ、ソレヲガア〓〓言フト云フコト
ハ、當事者モ迷惑ナ話デアラウガ、言ハレテ
先生ガ說ノ再檢討ヲ始メルト云フヤウナコ
トデハ、何處ニ學的權威ガアルカト言ハナ
ケレバナラヌノデアリマス、此ノコトハ決
シテ一、二ノ〓授ノ問題デハナイ、卽チ學
府ガ從來ノ學法ヲ以テ足レリトシテ居リマ
ス中ニ、時代ハ進步シ、社會ハ急展シテ居
リマシテ、サウ云フ歐米模倣デハイケナイ
ト云フ事實ガ、餘リニ着々トシテ露呈シテ
居ル所カラ起ツテ來タ事件ダト思フノデア
リマスガ、其ノ事件ガ起リマシテモ、漸ク
其ノ指摘サレル若干ノ〓授ニ動搖ヲ見ル位
ノコトデ、本當ノ學法ガ立直リマセヌト云
フコトデハ、是ハ問題ノ根本的解決ハ出來
テ居ラヌノデアリマス、先ノ荒木文相ノ時
ニ大學ノ改善ノコトニ一步進マウトシテ、
遂ニ其ノコトハ出來ズシテ終ツテ居リマシ
テ、結局議會ガ指摘スルヤウナ問題ニ終始
シテ居リマス、斯ウ云フコトデアレバ議會
ハ何處マデモ、大學〓授ノ〓案ノ一々ヲ調
ベテ論議シナケレバナラヌノデアリマスケ
レドモ、サウ云フコトハ議會トシテモヤリ
タクナイコトデアリマスシ、日本ノ學ノ非
常ナ汚辱デアルト存ジマス、一體是ハドウ
云フ所ニ病氣ガアルノデアルカ、先ヅ第一
ニ文相ハドウ云フ風ニ此ノ病氣ノ根柢ヲ考
ヘテオイデデアルカ、其處ヲハツキリ承リ
タイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=37
-
038・橋田邦彦
○橋田國務大臣 大學ノ學風ノ問題ニ付キ
マシテ、色々不十分ナ點ノアリマス事柄ハ、
私モ能ク承知シテ居リマス、其ノ原因ニ付
キマシテハ是ハ要スルニ日本ノ國全體ノ社
會的ナ情勢ノ集マリガ釀サシテ居ルノデア
ツテ、唯何ガ原因デアルト云フコトヲ一、
二指摘スルト云フ譯ニハ參ラナイカト存ジ
マスルケレドモ、其ノ大キナルモノノ一ツ
トシテ、是ハ他ノ機會ニ於テモ旣ニ御答辯
申上ゲタ通リデゴザイマスガ、從來大學
ノ〓授ガ、〓究ヲスルノハ宜シイガ、〓究
ヲシテ〓授ヲスル、〓究シ且ツ〓授スルト
云フ所ニ、大學ノ〓授ノ職責ガアルト云フノ
ハ是ハ當然デアリマスガ、其ノ際ニ〓授
ヲスルトハ〓ヘルコトデアリ育テルコトデ
アル、大學ノ〓授ハ〓育者デナケレバナラ
ナイ、而モ其ノ〓育者ト申シマスノハ、日
本ニ於テハ日本人ヲ〓育スルモノデアルト
云フコトハ申スマデモナイコトデゴザイマ
ス、子弟ヲ預ツテ皇國民トシテ〓育スルノ
ダト云フコトガ、大學〓授ノ大イナル職責
デアルト云フコトノ自覺ガ、非常ニ足リナ
カツタト存ズルノデアリマス、自ラ日本人
トシテ日本人ヲ〓育スルト云フコトガ、自
己ノ職責デアルト云フ事柄ヲ自覺シテ參リ
マスト、自己ノ學問ヲ如何ナル方向ニ向ツ
テ進メナケレバナラナイカ、大學ノ學風ヲ
如何ナルモノニ作リ上ゲナケレバナラナイ
カト云フコトガ、自ラ生レ出ル問題デアラ
ウ、斯ウモ考ヘルノデアリマス、ソレハ一
ツノ面デアリマシテ、他ノ面ニハ又歐米ノ
學術ヲ輸入スルト云フコトニ急デアツタ
爲ニ、自ラノモノトナツテ居ナイモノヲ唯
受傳ヘルト云フコトガ、大學〓授ノ職責デ
アルト云フヤウニ考ヘ誤ラレテ居ツタ時代
ガ、相當長クアツタノデゴザイマス、其ノ
爲ニ眞ノ師弟ノ關係ト云フヤウナ事柄ガ、
全然無クナツテ來タト云フコトモ考ヘラレ
ルノデゴザイマス、其ノヤウナ事柄ハ大學
ノ學風ヲ是正スル上ニ於テ、先ヅ大學ノ內
面ノ問題トシテ、第一着手ニ考ヘテ貰ハナ
ケレバナラナイコトダト私ハ考ヘテ居ルノ
デゴザイマス、其ノ他尙ホ引續キマシテ、
殊ニ思想的ナ背景ヲ持チマス、或ハ思想的
ナ基礎ヲ持チマス學問ニ於キマシテハ、其
ノ思想ノ根柢トナルモノハ、我ガ國家デア
ル、我ガ日本國デアルト云フコトヲ能ク考
くつ、學問ノ方針ヲ決メテ貰ヒタイト思ツ
テ居ルノデゴザイマス、併シ其ノ點ニ付キ
マシテハ、モウ既ニ或ル部門ニ於キマシテ
ハ或ル程度マデ進行シツツアル所モアル
ノデゴザイマス、是亦卽時解決ノ出來ル問
題デハナイト存ジマスケレドモ、一應其ノ
ヤウナ方針ニ大學ガ向クヤウニ適當ナ指導
又指令等ニ依リマシテ、一日モ早ク大學ガ
眞ニ我ガ國ニ於ケル大學ノ姿ヲ現ハシテ來
ルヤウニ努力シタイト存ジテ居ルノデゴザ
イマス、旣ニ大學總長、官公私立ノ學長其
ノ他ヲ招集致シマシテ、能ク其ノ意ノアル
所ヲ傳ヘマシテ、學內ノ組織改組ト云フヤ
ウナコトニ付テモ十分考慮ヲ願ツテ居ルノ
デゴザイマシテ、何レ何カト具體的ナ案ガ
提出サレルデアラウト期待シテ居ルノデゴ
ザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=38
-
039・椎尾辨匡
○椎尾委員 大臣ノ銳意御盡力ニナツテ居
リマスルコト、又御訓示等ニナツテ居リマ
スコトモ承知致シテ居リマスガ、無論ソレ
ガ永ク持續シテ革新ノ實ヲ擧グルヤウニ御
續ケガ願ヒタイノデアリマスガ併シ政治上
ノコトヲ見マスト、必ズシモ永ク續イテ行
クト云フコトハ期待出來ナイノデアリマス、
此ノ政治的ノ變化デ大臣ガ迭ハラレマシタ
リナドスル度ニ、唯訓示、指導ト云フヤウ
ナ形デ行キマスルモノハ、必ズ次ノ大臣ノ
時ニ又變ツテ行キマシテ、却テ從來ハサウ
云フコトニ餘リ動カサレナカツタ大學ガ、
代々變ヘラレルト云フヤウナコトニナリマ
スト、是モ相當困難ガ起ルト思フノデアリ
やく、私ガ〓育機構ニ付テ何カ御考ヘガア
ルカト云フコトヲ尋ネタ理由ノ一ツハソコ
ニアルノデアリマシテ、假ニ-斯ウ云フ
コトヲ申シテハ濟ミマセヌガ、政治的ノ異
動ガアル譯デアリマスカラ、大臣ガ御迭ハ
リニナツテモ、ソレハ一貫シテサウ云フ風
ニ進ンデ行クノダト云フコトニナル、或ハ
モウ數年斯ウ云フ途ガ續イテ、一轉期ヲ轉
向シ終リマスレバ、相當後歸リスルト云フ
コトハナイト思ヒマスケレドモ、今日ノ所
デハ、洵ニ失禮ナ申分デハアリマスケレド
モ、若シ御迭ハリニデモナルト云フコトガ
數年ノ內ニデモアリマスレバ、ソレハ必ズ
又別途ノ指導精神ニナリ、別途ノ方向ヘ動
イテ行クト云フコトニナツテ、徒ラニ混雜
ヲ惹キ起スコトニナルノデアリマスカラ、
大臣ノ御指導ハ洵ニ結構デアルト思ヒマス
ケレドモ、サウ云フコトダケデハ決シテ解
決ガ付クマイト思フノデアリマス、只今御
話ニナリマシタ公私大學ノ總長、學長等ヲ
集メテ、是ガ繼續的ノ〓究機關或ハソレガ
組織的ノモノニデモナリマスルト、又多少
ノ意義ガアルカト存ジマスガ、集メテ御訓
示ヲナサル程度ノモノデアリマシタノデ
ハ少クトモ、此ノ頃ノ機構ナドノ如キモ
ノデハ、大シタ持續的效果ハ出テ來ヌノダ
ト考ヘルノデアリマシテ、サウシテ是ハ從
來地方ノ學務部長ガ迭ハル度ニ中等〓育ガ
動搖シテ、中等學校長ガ眞面目ニヤラヌヤ
ウニナツタト同ジ結果ヲ來スノデハナイカ
ト云フコトヲ心配シテ、却テ變動ノ基デハ
ナイカト思フノデアリマスガ、之ニ對シテ
一寸御考ヘヲ伺ヒタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=39
-
040・橋田邦彦
○橋田國務大臣 大學ノ問題ニ付キマシテ
ハ全ク御尋ネノ通リデアリマシテ、目下ノ
所其ノヤウナ方法デヤツテ居ルト云フコトヲ
申上ゲタノニ過ギナイノデアリマシテ、實
ヲ申上ゲマスレバ、先程學問ノ權威ト云フ
コトカラ申シマシテ、大學ノ內カラ溢レ出
ルモノヲ實ハ欲シイノデアリマスケレドモ、
ソレモ今急ニ望ムト云フ譯ニ參ラナイカモ
知レマセヌ、併シ出來ルダケ早ク內カラ溢
レ出ルモノヲ實ハ欲シイト云フコトヲ望ン
デ居ルノデアリマスガ、其ノヤウナモノニ
付キマシテモ、今仰セノ通リ大臣ガ大學總
長ヲ招イテ訓示的ノ話ヲスルト云フヤウナ
コトデ出來ルトハ考ヘテ居リマセヌ、十分ニ
恆久的ニオ互ヒニ〓鑽シ合ツテ、日本ノ大
學ヲ日本的ノ大學タラシムルヤウニ、如何
ナル組織ニナルカ知リマセヌガ、恆久的ナ
組織ガ其處ニ出來マセヌト、一旦出來タ指
導方針モ、直チニ崩レテ行クト云フコトニ
ナリマシテハナリマセヌ、御趣旨ノアル點
ハ私全ク同感ニ存ズルノデアリマスカラ、
適當ニ善處シタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=40
-
041・椎尾辨匡
○椎尾委員 日本思想ノ充實シタ〓究デア
リ、日本學ノ發達デナケレバナラヌ、サウ
云ツタ考ヘ方ヲシテモ、中々サウ云フ風ニ
向ヒマセヌ時ニ、大正十一年頃共產思想ノ問
題カラ大キナ動揺ヲ與ヘマシテ、日本思想、
日本學的ノ方向へ眼ハ着ケラレルヤウニナ
リマシタ、併シナガラソレハ共產思想ガイ
ケナイ、「ロシヤ」ノ「コミンテルン」ノ行キ
方ヲ防ガネバナラヌト云フコトカラ動イタ
ダケデアリマシテ、本當ノ日本的解決ヲ見
マセヌ、學生ニハ赤化事件ガ續發致シマシ
テ、主事其ノ他ガ其ノ取扱ニ困ツテ、主事
ノ講習ヲ文部省デ開カレタ、其ノ指導ノ大
學〓授ガ指導力ガナイ、自分等ハサウ云フ
コトヲ〓究シテ居ラヌカラ知ラヌノダ、御
尤モデアリマス、ドウスレバ指導力ガ出來
ルカ、藉スニ十年ヲ以テ〓究セシメヨ、是
亦御尤モデアリマス、ソコデ〓究所ガ出來
マシタガ、此ノ〓究機關ガ大學ノ本當ノ指
導力ニナルヤウニハナラナイ、別置ノ一ツ
ノ〓究機關ニ過ギナイ、帝大ノ中ニ思想指
導的ノ講座ヲ設ケルト云フコトデ豫算ガ出
マスレバ、結局文學部、法學部等ニ一、二
ノ講座ガ付イタダケデアリマシテ、本當ノ
思想〓究ト云フモノハ大學ニ出來テ居ラヌ
ノデアリマス、斯ウ云フ情勢デ是マデ參リ
マシタガ、一番根本ニハ大臣ノ仰セラレ
ル科學スル心ト言ヒマスカ、自然科學的ノ
堅實ナル根據ト言ヒマスカ、サウ云フモノ
ガ十分ニ究明サレテ來ナケレバナラヌト考
ヘルノデアリマス、我ガ國體ノ優越ナル、
日本ノ文化ノ優レテ居リマスル事柄ハ、此
ノ自然ノ根據ノ上ニ日本ノ國ガ發達シ得タ
所ニ多大ノ理由ガアルト存ジマス、潮流ナ
リ、風俗ナリ、氣象ナリ、天災地變ノ多カ
ツタコトナリ、其ノ自然界ノ條件ヤ東亞ノ
島々ニナツテ居ルト云フ事情ガ日本民族ノ
移動、文物ノ流通ニ於キマシテモ特殊ノ好
條件ヲ以チマシテ我ガ國ノ國體、文物ノ發
達ヲナシタモノデアルト存ジマス、隨テ日
本國ノ建設ハ自然科學ノ上ニ大キナ基礎ガ
ナケレバナラヌト云フコトヲ私ハ年來主張
致シマシテ、理學部諸學、卽チ理學ヲ中心
ト致シマシテ農工醫科等ノ各部ガ國體的ノ
〓究ヲ充實スルコトニ依ツテ法文學部、經
濟學部、商學部等ハ軈テ國體的ニ動クコト
ガ出來ルヤウニナル、法文系統ダケガ國
體的ニ動クダケデハヤハリ上層部ノ建設ニ
過ギナイノデアツテ、基礎的建設ガナイカ
ライケナイノデアル、斯ウ云フノデ理學部
建設ヲ要求シテ居ルノデアリマスガ、特上
サウ云フ方面ノ御出デアツテ、サウシテ科
學スル心ノ高調サレル閣下ニ於カレマシテ
ハ其ノ理學部的國體〓究ト云フモノハド
ウ云フ風ニカヤラウト云フ御計畫ガアルノ
デアリマスカ、御趣意ガアルノデアリマス
カ、其ノ點ヲ伺ヒタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=41
-
042・橋田邦彦
○橋田國務大臣 我ガ日本ノ相ヲ眞ニ把握
シマスノニ、日本的ナ意味ニ於ケル自然科
學、吾々ノ唯客觀的ナ存在トシテノ自然デ
ナク、吾々ヲ包ミ吾々ヲ育クンデ吳レタ我
ガ國デアル、自然ト云フモノニ關シマシテ
十分ナ科學的ナ探究ヲ致シマシタ上ニ日本
人ノ姿ヲ摑ムノミナラズ、其ノ眞實ヲ眞實
トシテ摑ム心構ヘヲ以テ自ラ持ツテ居ル眞
實ナルモノヲ摑ミ出スト云フコトニアリタ
イト云フコトハ、私ノ多年ノ念願デゴザイ
マス、啻ニ此ノ日本的ナルモノノ建設、日
本的ナルモノノ把握ト云フ方針ハ法文學或
ハ經濟學ト云フヤウナ點ニ止マラナイデ、
自然科學ノ方面ニ於テモ十分ニ其ノ點ヲ把
握シテ貰ヒタイト思フノデアリマス、是ハ
差當リドノ方策ト云フ具體的ナ方策ヲ申上
ゲルマデニ至ツテ居リマセヌケレドモ、此
ノ點モ亦御話ノ通リ大學ノ根本使命ト云フ
意味ヲ能ク一應了解シテ貰フコトニ努メマ
シテ、ソレニ關スル方針ヲ確固不動ノモノ
トシテ、大學ノ學風ヲ建設スル上ニ適當ナ
方策ヲ講ジタイト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=42
-
043・椎尾辨匡
○椎尾委員 先程御話ノアリマシタ大學ノ
學風ガ恆久的ニ根本的ニ直ツテ行クヤウニ
ト云フコトカラ見マシテ、結局私共ハ現在
ノ主要ナ講座ヲ持ツテ居ラレル人々ハ當面
ノ任務ヲ果サレルモノデハアツテモ、本當
ノ將來性ヲ期待スルコトハ出來ヌト存ズル
ノデアリマス、ドウシテモ時代ノ變化、學
問ノ更新デアリマスカラ、是ハ若イ助〓授、
助手以下ニハ少シ難カシイト思フ、現在
ノ學生若クハ高等學校以下ノ靑年學徒ノ向
フ所ヲ指導シテ、是等ノ新シイ〓究ニ期待
スルモノデナケレバナラヌト考ヘルノデア
リマス、斯ウ云フ意味ニ於キマシテ私ハ此
ノ問題ダケヲ餘リ論ズルコトハ好ミマセヌ
ガ、學生協會ノヤツテ居リマスコトガ此ノ
議會ニモ一二囘發言サレタヤウニ思ヒマス、
私モ聞イテ居リマスケレドモ、私ハ學生ト
シテハサウ云ツタ問題ヲゴテ〓〓シナイデ、
〓究ニ邁進シテ、自ラノ新シイ日本國ノ〓
究成績ニ依ツテ國家ニ貢獻スルコトニ努力
セイト言ウテ居ルノデアリマシテ、決シテ
彼等ガ運動スルカラ私ガ此處ニ言議スルト
云フ意味ハ持タヌノデアリマス、併シナガ
ラ兎ニ角アア云ツタ問題ニ於キマシテモ、
若イ學徒ガ日本學建設ニ燃エテ出テ來レバ、
〓授ハ大體サウ云フコトニ素養ガナイト云
フコトハ不思議ナコトデナイノデアリマス
カラ、〓授モ若返ツテ一緒ニ〓究スルト云
フ態度ヲ執ツテ然ルベキモノダト思フノデ
アリマス、僅カナ文書ノ往復位デ、其ノ後
ハ面會モ拒絕スルト云フ〓育ノヤリ方ガ一
體許サルベキデアルカドウカ、ソレガ依然
トシテ〓育者デアル、〓授デアルト果シテ
言ヘルカドウカ、ソレガ學ノ育成ト云フコ
トニ適ツテ居ルノデアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=43
-
044・橋田邦彦
○橋田國務大臣 仰セノ問題ハ御說ノ通リ
甚ダ遺憾ニ存ズルノデアリマシテ、其ノ意
味ニ於キマシテ先ヅ〓育者ト云フコトノ自
覺ガ從來缺ケテ居ツタト考ヘルノデアリマ
ス、先ヅ一應〓育者トシテノ自覺ヲ十分ニ
喚起シテ貰ヒタイト言ヒ出シタノモ斯樣ナ
點ヲ十分含ンデ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=44
-
045・椎尾辨匡
○椎尾委員 洵ニ學ノ變化ノ場合ニ根本カ
ラ改造スル大任務ヲ持ツテ居ラレル大臣ハ
中々御尤モナコトト存ジマスガ、大學ノ革
新ニ向ツテハ餘程ノ御決意ヲ以テ邁進サレ
ルヤウニ希望シテ已ミマセヌ、サウシテ日
本學ノ建設ト云フコトニ付キマシテ、日本ノ
オ國ノ本當ノ特色ヲ發揮シ、優越サヲ發揮
スルコト、自然方面ニモ精神方面ニモ物心
一如ノ上ニ之ヲ十分ニ發揮スルコトガ當然
デアルト思ヒマス、私ハ先程御尋ネヲシタ
ノニ對シ一應ノ御答ヘハ得マシタケレドモ、
學的方法ノ建設ガマダ全クナツテ居ナイト
思フノデアリマス、極メテ簡單ニ申シマス
レバ、論理的證明或ハ客觀的觀察ニ基イテ
學ヲ構成シテ居ルノガ今日ノ〓究方法デア
リマスケレドモ、斯ル論理ヤ觀察モ一ツノ
方法デアリマスルガ、幾万年、幾千年ヲ通
ジテ滅ビズ發達致シマシタ國體、日本史ノ
事實、是ガ世界最大ノ權威アル證明方法デ
アル、又史的證明ト云フモノヲ本當ニ用ヒ
テ行クト云フ學的〓究ハ日本ニ依ツテノミ
完成サルベキモノダト思フノデアリマス、
論理的方法ヤ客觀的考察モ無論必要デアリ
マスケレドモ、理窟ハ付ケヤウ、物ハ見方
デアリマシテ、ソレ等ノ如何ニ拘ハラズ、
幾百年ヲ通ジマスレバ動カスベカラザル批
判ガ出ルノデアリマス、此ノ歷史的證明法
ヲモツト立派ニ使ハセル、是ハ日本ノ學問
ノ一ツノ建設方法デアルト考ヘルノデアリ
マス、又ソレハ個在的、個人的ニ扱フト云
フコトガ當然起ルコトデアリマシテ、東西
文物ハ其ノ個在個人的ニ成立ツテ居ルコト
ハ申スマデモアリマセヌ、併シナガラ個在、
個人ガ沒落致シマシテモ、大生命ガ本當ノ
生命トシテ發展スルト云フコトヲ明示シテ
居リマスルノガ此ノ日本ノ國體デアリマス
ルカラ、此ノ大生命的ノ發達、自然ハ生命
ガアルト見タナラバ、自然ノ〓究ガ行詰ル
ト云フヤウナ考ヘ方デナシニ、大自然ハ大
生命的ノ發展デアル、斯ウ云フコトヲ明瞭
ニスルコトニ依リ、生キル日本ノ國體モハ
ツキリシマスシ、世界ヲ指導スルコトガ出
來ルト思フノデアリマス、此ノ大生命的ノ
〓究ト云フヤウナ方法ニ於キマシテ歷史的
ノ方法、或ハ唯年代ヲ逐ツテ色々ナ變化ヲ
見ルノデハナクシテ、此ノ歷史ニ依ツテ證
明サレタル幾万年ヲ通ジテ進ム所ノ姿ハ
何デアルカ、個々ノ生存沒落デハナク
シテ、大生命トシテ發展スルモノハ何
デアルカ、斯ウ云フコトヲハツキリスル
所ニ日本學ノ學法ガアルノダト考ヘマス、
同樣ニ又基礎ノ事實、分子、電子、原子ト
云フヤウナ風ニ扱ヒマス基礎ノ原理ニ關シ、
「ユニット」ニ關シマシテ、扱ヒ方ガ是亦西
洋自然分柝科學ノ跡ノミヲ學ンデ居リマシ
テ、本當ノ日本ノ元ノ取扱ヒト云フモノガ、
少シモ學ニ出テ居ラヌト云フコトガ缺點デ
アルト存ジマス、其ノ元ハ何處ニアルカト
言ヘバ生活元デアリマシテ、其ノ生活元ノ
一番中心ハ陛下ノ大御心ノ上ニ拜スルモノ
ダト存ズルノデアリマス、サウ云フ意味ニ
於テノ學的〓究ト云フモノガ出來テ居ラヌ、
卽チ學ノ對象ノ單位ト云フモノガ、ハツキ
リ扱ハレテ居ラヌト云フコトガ、誤リデアル
ト存ジマス、更ニ又其ノ進ンデ參リマスル
進ミ方ニ付テノ總テノ對象ノ取扱ヒ方モ出
來テ居リマセヌガ、私ハサウ云ツタコトヲ
縷〓申上ゲルコトハ恐縮デアリマスカラ、
略シマスガ、總テ學的方法デモ、或ハ基礎
ノ扱ヒ方デモ、全體ニ於キマシテ、サウ云
フ方策ガ殆ド缺ケテ、唯特異ノ或ル事件ヲ
擧ゲテ、日本ノ特色ハ斯ウダト云フヤウナ
現代ノ〓究ニ過ギヌデハ、何遍ヤツテ居リ
マシテモ、大學ノ本當ノ行キ方ハ出來ヌト
思フノデアリマス、故ニ斯ウ云ツタ根本
ノ方法ヲ何處マデモ樹立スルト云フ御覺悟
ガアリマシタナラバ、必ズヤ其ノ道ハ付ク
ノデアリマス、日本ノ精神ヲ樹ツルノハ
本當ノ歷史ダ、信念ノ歷史ダ、精神ノ歷史
ダト云フコトデ水戶學ガ立ツテ、兎ニ角明
治維新ヲ成スニ至リマシタヤウニ、相當ノ
力ガアリマスカラ、斯ウ云フ點ニ付テ、學理、
學的基礎ヲ樹立セシムルコトニ付テノ御努
力ヲ願ヒタイト云フコトト、殊ニ後進學徒
ヲ努メテ〓究セシメルヤウニ、其ノ方面ニ
向ツテ邁進サセルヤウニ指導スル、從來ノ
模倣的ノ、歐米ノ學風ニノミ追隨シテ行ク
ト云フコトデナイヤウニスル、更ニ、是ハ
人ニ關スルコトデ洵ニ言ヒニクイコトデア
リマスルケレドモ、私ハ學校ノ、殊ニ大學
ノ〓授ノドウ云フ關係ノ人ガ其ノ後繼者ニ
ナツテ居ルカト云フコトヲ一ツ御考ヘニナ
ツテ、之ヲ直サレタイト思フノデアリマス、
其ノ子弟ノ關係ガ餘リシツカリ行カヌト言
ハレマスケレドモ、大學〓授ノ後ヲ繼ギマ
ス者ハドウ云フ系統ニ依ツテ繼イデ行クカ
ト云フコトヲ考ヘマスト、學問ガ細カクナ
ツテ、薄クナツテ行ク理由ハココニ基クノ
デアツテ、本當ノ廣イ立場カラ人材ガ現ハ
レテ、其ノ人材ガ進步シテ行クモノデアレ
バ、アンナ風ニ細クナリマセヌ、段々自分
ノ門下生、自分ノ婿ノ關係ニアルヤウナ者、
サウ云フ間カラ集ツテ參リマスルカラ、次ナ
ル者ハ前ノ者ノ學風以外ニ出ルコトガ出來
ナイト云フ缺點ガ大學ヲシテ細ラセル根本
ダト考ヘルノデアリマシテ、斯ウ云フ點ニ
付テモ將來〓究ナリ、昇進ナリ、任命ナリ、
總テヲ扱ハレル上ニ於テ一大注意ヲ加ヘラ
レタイト思ヒマス、是等ノ點ニ付テ何等カ
御意見ヲ承ルコトガ出來レバ幸ヒデアリマ
ス、兎モ角私ハ現在ニ於テ其ノ後進學徒ノ
本當ノ日本學的〓究ノ道ガ開カレテ居ラナ
イ、ソレヲ十分ニ幇助シテ居ラナイト思フ
ノデアリマスガ、其ノ點ニ付テ伺ヒタイト
思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=45
-
046・橋田邦彦
○橋田國務大臣 御意見ノアル所ハ全ク同
感デアリマシテ、日本生命、吾々ヲ活カシ
テ居ル此ノ我ガ國、生キテ居ル我ガ國、此
ノ生命ニ基イテ學問ト云フモノガ發展シテ
行クヤウニ考ヘナケレバナラヌト云フ御說
ハ私全ク御同感デゴザイマシテ、之ヲ他ノ
言葉デ言ヘバ主客一如ト言ヒマスカ、自然
科學ニ於キマシテモ、唯客觀的ナ結果ダケ
ガ眞ノ自然科學デハナクシテ、ソレヲ動カ
シテ居ル主體ノ働キニ依ツテ自然科學ガ眞
ノ自然科學ノ相ヲ現ハシテ來ルト云フコト
ハ言フマデモナイコトデアリナガラ、動、モ
スレバソレガ忘レラレテ居ルト云フ所ニ只
今ノ御話ノヤウナ問題ガ出テ來ルノデゴザ
イマス、是ハ全ク御同感デゴザイマシテ、
是非其ノ方向ヘ向ケナケレバナラヌト思ツ
テ居ルコトデゴザイマスケレドモ、是亦從
來ノ學問ノヤリ方カラ考ヘテ參リマスト非
常ニ至難ナコトニ屬スルトハ存ジマスガ、
是モ出來ルダケ其ノ方面ニ向フヤウナ方策
ナリ、方法ナリヲ考究シタイト存ジテ居リ
マス、殊ニ其ノ意味ニ於キマシテ、靑年學
徒ヲ此ノ方向ヘ向ケルト云フコトガ重大デ
アラウト仰セラレマスコトハ是亦全ク同感
デゴザイマシテ、將來日本ヲ背負ツテ立チ、
又學問ヲ背負ツテ立ツ者ニ根本的ナ精神ト
シテ斯樣ナ方向ヲ與ヘルト云フコトハ十分
ニ考究シナケレバナラヌコトト思フノデアリ
マス、又更ニ〓授ノ後繼者ト云フ問題ニ付キ
マシテモ、色々御話ヲ申上ゲレバ申上ゲタ
イコトモゴザイマスケレドモ、大體御趣旨
ノアル所ハ了承致シマシタカラ、適當ニ善
處スルコトヲ此處デ申上ゲテ御答辯ニ代ヘ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=46
-
047・椎尾辨匡
○椎尾委員 今問題ニナツテ居リマスル大
政翼贊會ガ公事結社デアルトカドウトカ云
フコトハ別ニ政府ガ聲明セラレルト存ジマ
スガ、結局今マデ精神總動員ガ巧ク行ツテ
居ラナイト云フコトハ明瞭デ、此ノ重大ナ
時局ニ當リマシテ一層的確ナル精動ナリ、
〓化ナリヲ行フ必要ガアルト思ヒマスガ、
其ノ動キ方ハ此處デ詳シク論ジヨウトハ存
ジマセヌ、存ジマセヌガ、〓育ノ上カラハ、
從來由ラシムベシ知ラシムベカラズト云フ
コトハ專制的デアツテイケナイ、知ラシム
ベシト云フコトガ〓育デアル、是ハ平常ノ
〓育ニ於テハ一應サウダト思ヒマス、ケレ
ドモ非常時局ニ當リマシテハ、知ラシメテ
ハナラヌノダ、先ヅ知ラヌノガ宜イノダ、
昔封建時代軍機ニ携ハツテ居ツタ者ガ、敵
ヲ欺クニハ先ヅ我ガ妻子カラ欺イテ掛ツタ
ト云フ程ニ祕密ヲ要スルモノナノデアリマ
ス、隨テ國民ニ時局ヲ周知セシメルコトガ
一ツノ精動デアルト云フヤウナ考ヘ方ニ大
キナ間達ヒガアリ、〓育ガ知ラシムベシト
云フコトヲ中心ニシテ居ル所ニ間違ヒガア
ルノデアツテ、知ラズシテ從ツテ行クト云
フ所ニ非常ニ大事ナモノガアル、殊ニ午前
ニ宗〓情操ニ付テ御話ガアリマシテ、隨順
スベキニ隨順シ、歡喜スベキニ歡喜スルト
云フ所ニ宗〓情操ハアルト御考ヘニナツテ
居ルト云フコトハ、其ノ通リト存ジマス、
實ニ敬虔ナル隨順的ノ態度ヲ執ツテ行クト
云フコトガ〓育ノ最モ重大ナモノデアツテ、
知ツテ行ヘルト云フ程度ハ極メテ僅カナ部
分デアル、而モ本當ニ知ルト云フコトハ少
1知ツテモ行ヘナイ方ガ非常ニ多イノデ
アリマスカラ、ソレヨリモ〓養ノ中心ハ信
ジテ隨順シテ行クト云フコトガ非常ニ大事
ナコトダト存ジマス、其ノ意味カラ、一般
ニ知ラシムベシト云フコトヲ中心ニスルノ
デハナクシテ、由ラシムル、隨順スベキニ、
隨順スル、其ノ隨順スベキモノハ何デアル
カト言ヘバ、玆ニ大キナ標準サヘアレバ隨
順ガ出來ル、言フマデモナク是ハ聖旨デア
リ、國家ノ活動デアルト存ジマス、サウ云
フ點ニ於キマシテ徹底的ニソレニ從ツテ行
ク、又戰爭ニナレバ〓糧ノ缺乏スルコト、
物資ノ不足スルコトハ明瞭デアリマスカラ、
米ガドレダケ足リナイカ、物資ガドレ程不
足カト云フコトヲ知ラナケレバ節約ヲシナ
イナドト云フ氣持ヲ捨テテ、足リナイニ決
マツテ居ルカラ、ドレダケ足リナイカト云
フコトハ聽カズニ節約スル、生產增加ヲス
ルト云フヤウニ指導セネバナラヌノデアリ
マスガ、指導者ノ多クハ知ラシムベシト云
フコトヲ考ヘ、聽キ手ノ多クモ何カ聽ケル
ダラウ、聽キ出セルダラウト云フコトデ動
イテ居ル所ニ多クノ弱點ガアルト考ヘルノ
デアリマス、是ハ非常ノ〓育、宗〓情操的
〓育、眞ノ國民的〓育ガ足リナイ結果ダト
考ヘルノデアリマシテ、〓育ノ方面カラハ
其ノ點ヲ改メラレタイト思フノデアリマス
殊ニ宗〓情操ハサウ云フ敬虔隨順ノ氣持デ
アリマスガ、私ハ此ノ宗〓情操〓育ヲ、聖
德太子ガ詔ヲ承ケテハ必ズ謹シメ、禮ヲ以
テ本トスルト仰セラレタヤウニ、禮ヲ中心
ニスル敬虔ナ氣持デ、〓壇ニ立チマス時ニ
ハ先ヅ陛下ノ御姿ニ對シテ禮シ、〓育ノ
神聖ニ對シテ禮シ、國運ノ進步ニ對シテ禮
シ、之ヲ爲スノガ兒童ノ發育ナリトシテ、
其ノ兒童ノ發育ヲ念願シ、其ノ重大サニ感
激シテ禮スルト云ツタヤウナ、斯ウ云ツタ
禮ヲ中心トスル〓育デナケレバナラヌ、是
ハ審議會ノ方デモ禮ヲ中心ニシタ趣意ハゾ
コニアリマスケレドモ、サウ云フコトガ一
般ノ〓育者ノ方ニハ中々徹底シテ居ラヌ、
通ジテ居ラヌノデアリマス、非常時ニ處ス
ル道トシマシテモ、〓育ノ革新カラ致シマ
シテモ、禮ヲ根本トシテ改メル敬虔ナル態
度ヲ充實セシメルト云フコトニ付テ、
段ノ御工夫ガ願ヒタイト存ジマス
時間ガアリマセヌカラ、モウ一ツ序ニ續ケ
テ御伺ヒ致シマス、サウ云フ意味ニ於キマ
シテ一寸疑ヒヲ持ツテ居ルノデスカラ、司
法關係ノ方ガ御見エニナツテ居ルヤウデス
ガ、刑法ノ改正ガアルト云フコトデ-マ
ダドウ云フ風ニナルカ議案ハコチラヘ出テ
居リマセヌカラ知リマセヌガ、新聞デ見マ
ス所デハ幾多ノ改正ノ條項ノ中ニ、神社、
佛堂、禮拜所等ニ對シテ不敬、侮蔑スル場
合、或ハサウ云ツタ宗〓儀式ニ對シテ侮
蔑スル場合ニ對スル罰則ヲ今度ハ削ラレル
ヤウデアリマスガ、ソレモ私ハ全體ヲ能ク
知リマセヌデ、私ノ間違ヒデアレバ間違ヒ
ダト云フコトヲ御指摘戴ケバ宜イノデス
ガ、其ノ代リニ國幣社、官幣社ニ對スル敬
意ノ問題ト、ソレカラ一般神社ニ對スル禮
拜ノ問題ガ出テ、佛堂ヤ禮拜所ヤ墓所ニ對
スル敬意ノ問題ガ除カレルヤウニ新聞デハ
見エルノデアリマスガ、一體之ヲ御除キニ
ナルノデアリマスカ、敬神固ヨリ必要デア
リ、殊ニ神ニ對シマジテハ大神宮ヲ中心ト
シテ神社ノ純化ト云フヤウナコトガ非常ニ
必要デアリマスシ、又墓所ニ對シマシテモ
將來ハドウ云フ風ニ墓所ヲ保タセテ行クカ
ト云フヤウナコトハ無論考慮スル餘地ガア
ルト存ジマスケレドモ、併シナガラ敬神崇
祖ノ根本トシテ墓所ヲ尊ブトカ、サウ云フ
宗〓禮儀ヲ尊崇スルト云フ民風ヲ養ツテ行
クト云フコトハ當然デアツテ、之ヲ除クト
云フコトハナイコトダト存ジマスガ、此ノ
二點ダケ御伺ヒシテ終リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=47
-
048・林平馬
○林委員長 一寸椎尾サンニ申上ゲマスガ、
只今ノ御尋ネノ中ニ司法省關係ノ所モオアリ
ノヤウニ聞エマシタガ、司法省ノ方ハ只今
御見エニナツテ居リマセヌカラ、ソレハ後
ニ致シマシテ、其ノ部分ヲ除イタ點ダケ御
答ヘ願ツタラ宜シウゴザイマセウ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=48
-
049・椎尾辨匡
○椎尾委員 結構デス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=49
-
050・橋田邦彦
○橋田國務大臣 由ラシムベシ知ラシムベ
カラズト云フ言葉ノ解釋ニ付キマシテハ、
色々議論スレバ限リノナイコトト存ジマス、
併シナガラ〓育ノ根本ハ師ニ從ハシムルト
一云フコトニアル意味ニ於キマシテ、卽チ〓
育ニ於テハ由ラシムコトニ於テ知ラシム
ルノデアルト云フコトガ本義デアルト仰セ
ラレルコトハ全ク御同感デゴザイマシテ、
殊ニ其ノ際禮ヲ以テ正シクスルト云フ所ナ
ドハ御說ノ通リノ次第デゴザイマシテ、其
ノ點ノ徹底シナイ所ガアルコトハ甚ダ遺憾
ニ存ズルノデゴザイマシテ、將來ニ向ヒマ
シテ十分ニ工夫ヲ施シタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=50
-
051・椎尾辨匡
○椎尾委員 時間デモアリマスカラ私ハ是
デ終リマシテ、司法省ノ部分ハ別ノ機會ニ
御答ヘヲ戴クコトニ御願ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=51
-
052・林平馬
○林委員長 宜シウゴザイマス、今日ハ此
ノ程度デ散會シタイト思ヒマスガ如何デゴ
ザイマセウカ
〔「贊成」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=52
-
053・林平馬
○林委員長 ソレデハ今日ハ是ニテ散會致
シマス、明日ハ休ミマシテ、明後日午前十
時ヨリ開會致シマス
午後四時五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610164X00219410208&spkNum=53
-
本文はPDFでご覧ください。
3. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。