1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
會議
昭和十六年二月十四日(金曜日)午前十時二十分開議
出席委員左の如し
委員長 西村金三郎君
理事 木村淺七君 理事 菊池良一君
理事 中田儀直君
笠井重治君 太田理一君
作田高太郎君 武田徳三郎君
中島彌團次君 中原謹司君
粟山博君 森田福市君
同日委員田原春次君辭任に付其の補闕として河野密君を議長に於て選定せり
出席政府委員左の如し
大藏省銀行局長 相田岩夫君
大藏省爲替局長 原口武夫君
司法省刑事局長 秋山要君
本日の會議に上りたる議案左の如し
外國爲替管理法改正法律案(政府提出)
不動産融資及損失補償法中改正法律案(政府提出)
臨時資金調整法中改正法律案(政府提出)
兌換銀行券條例の臨時特例に關する法律案(政府提出)
朝鮮銀行法及臺灣銀行法の臨時特例に關する法律案(政府提出)
朝鮮銀行法中改正法律案(政府提出)
臺灣銀行法中改正法律案(政府提出)
産業組合中央金庫特別融通及損失補償法中改正法律案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=0
-
001・西村金三郎
○西村委員長 開會致シマス、通〓順ニ依
ツテ中島彌團次君ニ質問ヲ許シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=1
-
002・中島彌團次
○中島(彌)委員 外國爲替管理法改正ニ依
リマシテ、戰時體制ヲ整ヘラレタノデアリ
マスガ、私ノ第一ニ問ヒタイ所ハ、今年度
ノ追加豫算ト致シマシテ、豫算外國庫ノ負
擔トナル契約ニ關シマシテ、外國爲替損失
補償金ト云フモノハ「外國爲替管理法第三條
ノ規定ニ依ル政府ノ命令ニ基キ外國爲替銀
行其ノ他對外取引ヲ爲ス者ノ蒙ルコトアル
ベキ損失ヲ補償スル爲總額五億圓ヲ限リ昭
和十六年度以降五箇年度內ニ於テ國庫ノ負
擔トナルベキ契約ヲ昭和十六年度ニ於テ結
ブコトヲ得」トナツテ居リマス、ソレカラモ
ウ一ツハ商工省ノ輸出補償金ノ方デアリマ
スルガ、是亦四億一千二百二十一万圓ニ限
リマシテ、十五年度以降七箇年間ニ於テ國
庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ昭和十五年度以
降二箇年間ニ於テ之ヲ締結スルコトニナツ
テ居リマス、ソレカラモウ一ツハ戰時海上
保險ノ損失デアリマスルガ、是亦此ノ度昭
和十五年度以降六箇年以內ニ於テ一千万圓
ヲ限リ豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ
締結スルト云フコトニナリマシテ、從來昭
和十四年度以降二箇年間ニ於キマシテ、總
額一千万圓ヲ限リ海上保險ノ損失補償ヲ締
結シテアリマシタガ、其ノ後ノ情勢ニ依リ、
今度一千万圓ヲ增加スルコトニナツテ居ル
ノデアリマス、換言スレバ此ノ輸出補償ハ
商工省關係ノ輸出補償、今度ノ大藏省ノ外
國爲替損失補償金、ソレカラ海上保險ノ方ノ
損失補償、大體本年度ノ豫算ニ於キマシテ
此ノ三ツノ戰時體制ヲ强化サレテ、ニノフ
貿易振興ノ方策ガ打立テラレルノデアリマ
シテ、是ハ非常ニ重大ナルコトデアルト思
ヒマスガ、私共ノ疑問トシテ居ル所ハ、金
額ヲ申シマシテモ今申シマシタ通リ全部デ
十億近イ所ノ金ニナツテ居ルノデアリマス、
是ガ十六年度ニ一時ニ殺到シテ行ツテ、是
ダケノ金額ヲ出サネバイカヌト云フヤウナ
コトモアリ得ルト考ヘルノデアリマスルガ、
此ノ時局切迫シタル場合ニ於キマシテ、此
ノ問題ハドウ云フ風ニ之ヲ適用サレル御考
ヘデアリマセウカ、ソレガ第一點デアリマ
ス、例ヘテ申シマスルト、第一ニ外國ニ輸
出スル荷物ニ保險ノ付イテ居ル場合ハ、卽
チ船荷證劵ト云フモノモアリマスシ、其ノ
場合ニ於キマシテ保險ガ付イテ居ル荷物ガ
潜水艦ニ擊沈サレルトカ、或ハ其ノ他ノ理由
ニ依リマシテ荷物ガ着カナクナルトカ云フ
ヤウナ場合ニ於キマシテモ、ヤハリ爲替ノ
方ノ「ビル」ノ關係モアリマスノデ、當事者及
ビ銀行ノ方ガ損害ヲ被ツタ場合ニ於テハ
第一ニ於テ保險ノ掛ツテ居ルモノハ保險デ
之ヲ「カバー」シテ救濟ヲシテヤル、其ノ次
ニ商工省關係ノ輸出補償ハ平時的ノモノガ
十六年度豫算ニモ見積ラレテ居リマス、之
ヲ四億ノ豫算外國庫ノ負擔ヲナスト云フ關
係カラ考ヘテ見マスト「ビル」ガアル、何處
マデモ商工省關係ハ「ビル」ノ線ニ沿ウテ之
ヲ救濟シテヤル、「ビル」ガ落チナイト云フ
ヤウナ場合ニハ、手形本位ニヤツテ行クノ
デアリマス、ソレカラ大藏省關係ノ輸出補
償金ノ場合ハ、今讀上ゲマシタヤウナ工合
ニ大藏大臣ノ說明ニ依リマシテモ、此ノ外
國爲替管理法第三條ノ規定ニ依ル政府ノ命
令ニ基キ云々トアリマシテ、政府ノ命令シ
タ場合ノミニ輸出補償制度ノ五億万圓ヲ適
用サレルモノデアリマセウカ、サウシマス
ルト第三條ノ規定ノミニ依ル政府ノ命令ニ
基イテ、外國爲替銀行、其ノ他ノ對外取引
ヲ爲スモノヲ救濟スルト云フコトニナルト、
範圍ガ非常ニ狹メラレテ來ラレル、此ノ「リ
スク」カラ洩レルモノガアルヤウニモ思ハ
レル、又一方カラ見ルト是ダケノ多クノ金
ヲ投資シテヤルノデアリマスカラ、總テノ
輸出貿易ニ對シテ命令ヲナスト云フ考ヘヲ
持ツテ居レバ、全般的ニ此ノ方面ハ斯ウ云
フモノヲ賣出ス、此ノ方面ニハドウ云フモ
ノヲ賣レト云フヤウナ風ニヤラレルノデ
アリマセウカ、此ノ三者ノ適用ガダブル點
モアルシ、ドノ範圍ニ商工省關係ノ輸出命
令、大藏省關係ノ外國爲替補償制度-是
ハ豫算ノ問題デアリマスカラ豫算委員會ニ
於テモ聽イタコトデアリマスルガ、爲替ノ
問題ヲ中心ト致シマシテドウ云フ方法ニ依
ツテ此ノ三ツノ大キナ戰時體制ニ於ケル外
國貿易輸出振興、若シクハ補償制度ト云フ
モノヲ、適用サルル御見込デアリマスカ、
此ノ點ニ付テ御伺ヒヲ致シタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=2
-
003・原口武夫
○原口政府委員 御尋ネノ今囘ノ外國爲替
補償金ノ制度ト、從來ゴザイマシタ輸出補
償ノ制度、ソレカラ戰時保險ノ制度、此ノ
三者ノ制度ハ何レモ御承知ノ通リ今日ノ困
難ナ、而モ危險ノ多イ海外ノ情勢ノ下ニ於
キマシテ、積極的ニ我ガ國ノ通商貿易ヲ伸
シテ參リマス爲ノ土臺トシテ、第一線ニ働
ク爲替銀行或ハ輸出業者ト云フモノノ過度
ノ通常以上ノ損失、通常以上ノ危險、斯
ウ云フモノヲ政府ノ方デ受取リマシテ、サ
ウシテ貿易ヲ伸シテ行カウ、斯ウ云フ趣旨
ノコトハ中島サンモ旣ニ御諒承ノコトト存
ジマス、本問題ニ入リマス前ニ一寸經緯ヲ
申シマスルト、昨年ノ下半期ニ於キマシテ、
殊ニ三國條約ガ締結サレマシタ前後カラ、
我ガ國ノ輸出貿易ト云フモノハ各種ノ事情
カラ非常ニ減退シテ參リマシタ、ソコデ取
敢ズ政府ハ關係方面ト協議ヲ致シマシテ今
ノ戰時保險ヲモツト活用シヨウト云フコト
ガ一ツト、ソレカラ輸出補償ノ制度ヲモウ
少シ戰時的ニショウ、此ノ二ツノ應急措置
ヲ執リマシテ、何レモ議會ノ御協賛ヲ要シ
ナイ方法ト云フコトニナリマシタノデ、其
ノ範圍ハ限定サレマシタガ、幾分ノ效果ハ
アツタモノト思ツテ居リマス、其ノ內容ヲ
一寸申上ゲマスルト、戰時保險ノ方ハ從來
ハ御承知ノ通リ貨物ガ日本ヲ離レマシテ、
先方ノ國ノ港へ本船ガ入ル、ソコマデシカ
保險ハゴザイマセヌデシタ、ソレカラ艀ニ
載セマシテ倉庫ニ入レル、物ガ實際ノ買手
ニ行クマデニハ相手ノ國ノ陸地ニ於テ若干
ノ期間ヲ經過スルコトニナリマス、其ノ間
ニ於キマシテ色々ノ事故ガ起ル、「ヨーロツ
パニ於テハ多數ノ港ガ空襲ヲ受ケル、ソ
レニ因ツテ貨物ニ幾多ノ損害ヲ生ズル、斯
ウ云フ事例モゴザイマシタ、左樣ナモノハ
從來ノ戰時保險デハ一切保險ノ外ニナツテ
居リマシタ、所謂「オン·ボード」ダケヲ保險
スル、「オン·ランド」ハ保險外ニナツテ居リマ
シタ、ソレヲ是ハ商工省ノ關係ニナリマス
ルガ、法律ヲ變ヘズニ「オン·ランド」マデ行
ケル、斯ウ云フコトニ幸ヒナツテ居リマス、
勅令以外ノ修正デ延シテ行キ得ルヤウニナ
ツテ居リマシタノデ、其ノコトヲ昨年末ニ
至急ニ取運ビマシテ、兎ニ角應急措置ノ
ツト致シマシタ、ソレカラ輸出補償ノコト
デアリマスガ、是モ只今中島サンカラ仰セ
ノ通リ、元々平時的ノ輸出振興方策カラ生
レタ制度デアリマスガ、是モ何分議會ノ開
ケマス前、應急措置ト致シマシタノデ、輸
出補償法ヲイヂル譯ニモ參リマセヌシ、又
豫算外國庫ノ負擔モ殖ヤス譯ニモ參リマセ
又、豫算ヲ殖ヤス譯ニモ參リマセヌ、而モ
事ハ急ヲ要シマシタノデ、取敢ズ運用ト致
シマシテ、外國爲替管理ノ關係、或ハ戰時
ノ危險、斯ウ云フコトカラ手形ニ故障ノ起
ツタ場合ニ於テモ、或ル程度損失ヲ「カ
バー」出來ル、斯ウ云フ打合セヲ致シマシテ、
本年ノ初メカラ段々ト應急措置ヲ實行シテ
來テ居リマス、然ルニ是ハ元々臨時應急措
置デアリマシテ、到底今日ノ困難ナ國際貿
易戰ニ對處スル永久的ノ措置トシテハ、不
十分ナノデアリマスルカラ、此ノ度議會ニ
對シテ只今仰セノ三ツノ豫算上ノ措置ヲ講
ズルコトヲ、御願ヒスルヤウニナツタ次第
デアリマス、ソコデ本論ニ入リマシテ此ノ
三者ノ關係デゴザイマスルガ、戰時保險ノ
方ハ、是ハ私共ノ直接關係ハシテ居リマセ
ヌガ、只今申シマシタヤウニ應急措置トシテ
「オン·ランド」、卽チ艀ニ載セテカラ倉庫ニ
行ク間マデ、取敢ズ延バシマシタガ、實ハ
是ハ臨機應急ノ措置デアリマシテ、何レノ
國ニ於キマシテモ一般的ニハ左樣ナコトヲ
ヤツテ居リマセヌ、ソコデ是ハ商工省ノ關
係デアリマスガ、戰時保險ノ方ハヤハリ從
來ノ通リ「オン·ボード」、詰リ本船マデヲ本
體ニシマシテ、今日臨時的ニ延バシテ居リ
マスノハ輸出補償ノ方ガ完備致シマスト、
其ノ方へ吸收スル、斯ウ云フ內々ノ打合セ
デ今進ンデ居リマス、今日暫定的ニ「オン
ランド」デ戰時保險ヲ延バシテ居リマス方
法ハ、大體十五年度末卽チ本年三月末迄デ、
四月以降ハ只今御審議ヲ願ツテ居リマス輸
出補償法ノ方ガ擴充サレマスト、其ノ方ヘ
乘リ移ツテ行ク、斯ウ云フコトニナツテ居
リマス、次ニ輸出補償ノ制度デアリマスガ、
是ト今囘ノ外國爲替損失補償金、此ノ關係
ハ斯ウ云フ風ニ申上ゲタラ宜カラウカト思
ヒマス、外國爲替補償金ノ方ガ只今モ一寸
仰セノ通リ廣クナツテ居リマス、外國爲替
補償金ノ方ハ二ツノ性質ヲ持ツテ居リマシ
テ、一ツハ獨自ノ補償ノ分野ヲ持ツテ居リ
さゝ、一ツハ輸出補償制度ノ補完的作用ヲ
ナス、斯ウ云フ性質ヲ持ツテ居リマス、尙
ホ少シ詳シク申シマスト、輸出補償ノ今日
ノ制度ハ如何ニ之ヲ戰時的ニ直シマシテモ、
元々輸出手形ガ出テカラ銀行ニ手形ヲ賣リ
マシテ、ソレカラ先方ニ行ツテ手形ガ落チ
ル、ココマデノ期間ノ色々ノ事故ヲ補償ス
ル、サウ云フ範圍ニ限ラレテ居リマス、所
ガ貿易ノ實際カラ申シマスト、輸出業者ハ
手形ヲ實際銀行ニ買ツテ貰フ前ニ、旣ニ多
クハ爲替ノ豫約ヲ致シマス、ドチラカト申
シマスト豫約ノ方ガ輸出業者ノ採算ノ基準
トシテハ却テ重要性ヲ持ツテ居リマス、御
承知ノ通リ海外カラ引合ガ來マス、輸出業
者ハソレヲ引受ケマス場合ニ、商品ノ價格
其ノモノト、爲替ノ相場ト、此ノ二ツノ點
カラハヂキ出シマシテ採算ノ基準ト致スノ
デアリマスガ、其ノ際普通ハ直グ爲替ノ豫
約ヲ致シマス、今日ノ如ク將來ノ不安危險
ノ多イ場合ハ、殊ニ爲替ノ「カバー」ハ直グ取
ツテ置ク是ハ普通ノヤリ方ニナツテ居リマ
ス、ソレガ今日ノ輸出補償ノ制度デハマダ
銀行ニ手形ヲ賣ル前ノ取引デアリマスカラ
「カバー」ハサレヌ、斯ウ云フコトニナツテ
居リマス、ソレカラ段々貨物ガ外國ヘ出テ
行キマシテ、手形ガ落チル前ノ事故ハ、今
日ノ制度デ處置シ得ルノデアリマスガ、-
旦銀行ニ手形ガ落チル、其ノ後ニ銀行ノ資
金ニ樣々ノ故障ガ起ル、是ハ輸出補償法ノ
制度外ニナツテ居リマス、要約シテ申シマ
スト、今日ノ輸出補償法ト云フモノハ輸出
業者ヲ主ニシテ居リマシテ、輸出業者ガ負
擔スル危險ヲ政府デ分擔スル、斯ウ云フ點
ニ眼目ガ置イテゴザイマシテ、其ノ相手ニ
ナリマスル爲替銀行ト云フモノニ付テハ、
左程十分ニハ考ヘテ居リマセヌ制度デアリ
マス、所ガ貿易ト云フモノハ、輸出業者、
爲替銀行、是ガ一聯ノ關係ヲナシマスルノ
デ、今日ノヤウナ事態ニナリマスト、爲替
銀行自身ノ危險ト云フモノモ、或ル程度「カ
バー」スルト云フ制度ガ一方ニゴザイマセ
ヌト、中々進ンデ手形ヲ銀行デ買ハヌト云
フコトニナリマス、自然如何ニ商人ノ危險
ノミガ「カバー」サレマシテモ、物事ガ圓滑ニ
動イテ行カヌ、斯ウ云フコトニナリマスノ
デ、左樣ナ意味合ニ於キマシテ、只今申シ
マシタヤウニ今囘ノ爲替ノ方ノ制度ハ、輸
出補償ノ一ツノ補完的作用ヲナス、斯ウ云
フ點ガゴザイマス、ソレカラモウ一ツ固有
ノ分野ニ付テ申シマスト、今囘ノ外國爲
替損失補償金ハ全然貿易ニ關係ナイ場合
ニ幾多適用アルコトヲ豫想シテ居リマシ
テ、第三條ノ規定ハ可ナリ廣汎ナ分野ニ
亙ツテ居リマス、政府ハ爲替或ハ外貨債券
其ノ他外國ニアル財產、斯ウ云フモノヲ、
一言ニシテ申シマスレバ全部其ノ管理ノ下
ニ置ク、必要ニ應ジテハ之ヲ全部政府ノ
管理ニ移ス、斯ウ云フ命令モ出セルヤウ
ナ仕組ニナツテ居リマス、只今直グ左樣ナ
コトヲスル意思ハゴザイマセヌガ、必要
ニ應ジ左樣ナ場合ニ於テ是ハ貿
易トハ全ク關係ガゴザイマセヌガ、其ノ
財產ノ所有者或ハ關係者ニ多大ノ損害ヲ與
ヘ斯ウ云フコトモ豫想シ得ルノデアリ
マス、斯樣ナ場合ニ於キマシテ國トシテ其
ノ損失ヲ負擔スル、斯ウ云フ意味デアリマ
シテ、貿易ニ關係ノナイ分野ニ於キマシテ、
此ノ第三條ノ命令ヲ圓滑ニ運用スル爲ニハ
今囘ノヤウナ制度ガ相伴ツテ參リマシタ方
ガ適當デアルト思ツテ、立案致シタ次第デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=3
-
004・西村金三郎
○西村委員長 一寸中島君ニ御交涉申シタ
イノデスガ、實ハ司法省關係デ留保サレタ
笠井君ノ質問ガアリマシテ、今司法省ノ政
府委員ニ御多忙中ヲ一寸出席願ツタノデス
ガ、ソレデ此ノ間ニ一寸笠井君ニ御許シヲ
願ヒタイノデスガ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=4
-
005・中島彌團次
○中島(彌)委員 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=5
-
006・西村金三郎
○西村委員長 ソレデハ笠井君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=6
-
007・笠井重治
○笠井委員 私ハ昨日原口局長ニ御伺ヒシ
タ點ニ付テ司法當局ノ御意見ヲ伺ヒタイト
思ツテ居リマス、爲替局長ニ御伺ヒ致シマ
シタ點ハ本法卽チ外國爲替管理法ハ、主
トシテ圓「ブロック」以外ノ國ニ適用スルモ
ノデハナイカ、卽チ立法ノ精神ガ其處ニア
ルノデハナイカト云フコトヲ伺ヒマシタ所、
其ノ通リデアルト云フ御返事デアリマシタ、
然ラバ是ガ適用ノ場合ニ於キマシテハ又
當局トシテハ相當ニ考慮スベキ點ガアラウ
ト思フ玆ニ罰則ニ就テ見ルニ第七條ニ依
リマスト、違反者ニ對シテ相當苛酷ナル罰一
則ヲ加ヘテ居リマス、然ラバ圓「ブロック」
內ニ於テ此ノ法ヲ犯シタ者ト、圓「ブロッ
ク」以外ニ於テ此ノ法ヲ犯シタ者ト、法ヲ
適用スル場合ニ於テ差ハアリハシナイカ
ト云フ結論ニ達スルノデアリマス、昨日其
ノ點ニ付テ爲替局長ニ伺ヒマシタ所、正一
其ノ通リデアルト云フ御答辯デアリマシタ、
ソコデ、私ハ本日秋山刑事局長ガ御出席ニ
ナツテ居リマスカラ、刑事局長ニ司法省ノ
之ニ對スル御所見ヲ伺ヒタイト思ツテ居ル
ノデアリマス、第一條第二項ノ前段ニ斯ウ
云フコトガ書イテアリマス、「通貨若ハ外國
通貨ノ輸出若ハ輸入」トアリマスルノデ、此
ノ點ニ付テ御尋ネシタイノデアリマス、卽
チ最近本法ニ關スル問題ガ頻繁ニ起ツテ居
ルコトヲ聞キマシテ、ソレハ日本內地カラ
支那ニ旅行スル人、又支那カラ日本內地へ
輸入ヲ致スモノ、ニ付テ色々ナ問題ガ起ツ
テ居ルト云フコトヲ聞イテ居リマス、ソレ
故ニ此ノ點ヲ伺フノデアリマスル、日本通
貨又ハ外國通貨ヲ圓「ブロック」内ニ輸入又
ハ輸出シタ場合ト、圓「ブロック」以外ニ輸
入又ハ輸出シタ場合ト立法ノ精神ヲ推測シ
テ見マスト二者同一デナク、隨テ法ノ適用
ノ上ニ於テモ亦自ラ兩者ノ間ニ相違アルベ
キ筈ダト思ヒマスルガ、此ノ點ハ如何デゴ
ザイマスカ、卽チ日本內地カラ圓「ブロツ
ク區域內ニ向ケテ日本ノ貨幣ヲ密送シタ
場合ト、日本內地カラ外國ノ貨幣ヲ-例へ
バ「ドル」トカ「ポンド」トカ「フラン」トカ外
國ノ貨幣ヲ密送シタ場合ト、何レモ管理法ニハ
違反ヲシテ居ルノニ相違ナイガ、犯罪ノ性
質ニ於テハ聊カ相違ガアルト思フ其ノ點
ニ付テハ司法當局ノ御考ヘハ如何デアリマ
スカ、卽チ茲ニ甲ナル者ガアリマシテ、內
地カラ圓貨ヲ持ツテ行ツテ、サウシテ圓「ブ
ロック」內ニ之ヲ密送持參ヲスル、サウシテ
ソレヲ以テ支那方面ヨリ國家ノ必要トスル
軍需品デアリマストカ、或ハ銅、錫鉛ト
云フ風ナモノヲ輸入スル者ガアリ又一方
ニ於テハ日本內地カラ、外國ノ貨幣「ドル」
「ポンド」「フラン」等ヲ持ツテ、密カニ之ヲ
送ツテ上海方面、或ハ香港「マニラ」方面カラ
贅澤品ヲ假リニ輸入シタトスレバ、其ノ場
合ハドウデアルカ、此ノ二ツノ場合ニ於テ
甲乙共ニ何レモ外國爲替管理法ニハ觸レテ
違反シテ居ルノデアリマスカラシテ、何レ
モ此ノ七條ニ係ハルコトト思ヒマスガ、其
ノ精神ニ於テハ相當ニ大ナル相違ガアラウト
思フ、斯樣ナ場合ニ於テ之ヲ同一ニ處罰ス
ベキモノデアルカ、或ハ又法ノ運用ノ際ニ
於テ、是ハ其ノ精神ニ於テモ違ツテ居ルノ
デアルカラシテ、司法省ハ或ル程度ニ之
ヲ緩和斟酌シテ解釋スベキモノデアルト思
フガ如何、近年上海或ハ天津-天津ハ
昨年マデハ「イギリス」ノ勢力ガ相當ニア
ツテ「イギリス」人モ多數居リマシタシ、
又「イギリス」ノ軍艦ヲ以テ銀ヤ銅ノ支那
ノ貨幣等ヲ「イギリス」本國ニ現送シタノデ
アル、又最近ハ支那ノ聯銀ノ爲替ノ「レー
トレガ外國ニ對シテ非常ニ安イ爲ニソレヲ
利用致シマシテ「ドイツ」ノ如キハ相當ニ物
資ヲ支那デ買集メテ、之ヲ「シベリヤ」鐵道經
由ニテ本國ニ現送シテ居リマス、若シ日本
人ガ斯ル物資ヲ買ツテ、內地ニ之ヲ持ツテ
來ルトスル、而シテ其ノ場合ニ於テ、向フ
ニアリマスル資金ガ足ラナイ爲メ內地カラ
之ヲ密送シタトキニハ、取扱ニ於テ軍事上
必要ナモノデアリマスカラ、之ヲ寛大ニ見
テヤツテ宜カリサウナモノダト思ヒマス、
斯カル場合ニハ司法當局ハ果シテ如何ナル
態度ヲ以テ之ニ御臨ミニナルノデアルカ、
此ノ點ニ付テ伺ヒタイト思ツテ居リマス、
是ハ近來日支間ニ頻々トシテ起ツテ居リマ
ス問題デアリ、且ツ相當ニ重大ナル問題デ
アリマス故ニ、私ハ昨日ノ聯銀問題ト關聯
シテ御伺ヒスルノデアリマス、之ニ對シテ
若シ大藏當局ノ御意見ガアリマスルナラバ、
大藏當局ノ御意見モ伺ヒタイ、本日ハ主ト
シテ司法當局ノ之ガ取扱ニ對スル御意見ヲ
伺ヒタイト思ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=7
-
008・秋山要
○秋山政府委員 第三國ト圓「ブロック」ト
ノ間ニ刑ノ適用上、差ガアルカドウカト云
フ御尋ネデアリマスガ、爲替政策ト致シマ
シテハ、或ハ差ヲ設ケルコトガ必要デアラ
ウカト思ヒマスガ、刑ノ適用ノ上ニ於キマ
シテハ差ハナイト思ヒマス、唯併シ個々ノ
事案ニ付キマシテ、其ノ情狀等ニ於キマシ
テ、或ハ差ヲ設ケナケレバナラヌヤウナ場
合ガ生ズルカモ知レマセヌガ、ソレハ犯狀
ノ問題デアリマシテ、刑ノ適用ノ上ニ於キ
マシテハ先ヅ差別ガナイ、斯ウ申上ゲテ宜
イト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=8
-
009・笠井重治
○笠井委員 刑事局長ニモウ一ツ伺ヒマス、
然ラバ圓貨ヲ密送シテ軍事上ニ必要ナモ
ノヲ買フトカ云フ風ナ場合ト、日本ニアリ
マスル外貨、卽チ「ポンド」「ドル」「フラン」
等デアレバ「ゴールド」ト同ジモノデアリマ
スガ、之ヲ密送致シマシテ、一般的ニ許シ
テ居ラナイヤウナ贅澤品等ヲ持チ歸ル場合
ニ於キマシテ差ガアルト思フ、之ニ對スル
司法當局ノ御見解ハ如何デゴザイマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=9
-
010・秋山要
○秋山政府委員 ソレハ要スルニ犯狀ノ問
題デアリマシテ、何レガ犯狀重キカト云フ
コトハ、ヤハリ抽象的ノコトデハツキリ申
上ゲルコトガ出來ナイト思ヒマス、圓貨ヲ
密送スル場合デアリマシテモ、或ハ外貨ヲ
密送スル場合デアリマシテモ、其ノ間ノ色
色ノ事情ガアリマセウカラ、ソレ等ノ事情
ヲ綜合檢討シテ見マセヌケレバ何レヲ重
ク見ルカト云フコトハ申上ゲ兼ネルノデア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=10
-
011・笠井重治
○笠井委員 只今ノ刑事局長ノ御答辯ニ依
リマスト斯ウ云フ場合ニハ個々ノ事情ニ
照シテ考ヘナケレバナラヌト云フコトノヤ
ウニ見エマス、次ニ私ガ伺ヒタイコトハ
第七條ノ罰則ニ就テデアツテ之ハ非常ニ過
重デアルト思フ、今日日支間ノ旅行者ハ僅
カニ一一百圓ノミ持チ行クコトガ許可サレテ
居ルガ、是デハ餘リニ輕少デアル、日支ノ政
治的及ビ經濟的提携ヲ希望セバ、少クモ多
數ノ同胞ヲシテ支那ノ現情ヲ知ラシメネバ
ナラヌ、政治家、實業家、中小商工業者、新聞
記者及ビ一般旅行者等多數ノ同胞ヲシテ、支
那ノ現狀ヲ視察セシムル必要ガアルト思ヒ
マス、然ルニ今日ノ如ク非常ニ峻嚴ナル爲
替管理法アリ、且ツ持參金ガ極メテ少額ニ
失スル故ニ、國家的目的遂行ハ不可能デア
ル、其ノ結果日支間ノ經濟提携ヲシテ益〓困
難ナラシメルコトハ、非常ニ憂慮ニ、堪ヘナ
イ次第デアリマス、一方ニ於テハ國策會社ノ
如キモノガ多數アリト雖モ更ニ其ノ成果ヲ擧
ゲテ居ラナイコトハ遺憾デアル、故ニ大藏當
局ハ爲替管理ノ際ニ於テ、特ニ日支間ヲ往來
スル人ニ對シテハ、少シク緩和シテ、取扱フコ
トガ必要デアルト思フ、而シテ司法當局モ此
ノ點ニ注意スベキデアルト思フ、現在旅行者
ガ持チ行クコトガ出來ル金額ガ少額ナル爲ニ、
或ル場合ニハ之ヲ故意ニ非ズトモ二百圓デハ
少イカラ三百圓、五百圓持ツテ行ク人ガア
リ、途中ニ於テ發覺サレタヤウナ場合ガ往
往アルコトヲ聞イテ居リマス、故ニ本法ヲ
適用スル場合ニ於テ、司法當局ハ十分是等
ノ點ヲ考慮シテ-事變處理ノ將來ニ對シ
マシテモ、或ハ我ガ日本ノ支那ニ對スル經
濟的及ビ政治的發展ヲ期スル上ニ於テモ、
モウ少シ寛大ナル態度ヲ以テ之ニ臨マレン
コトヲ、特ニ司法當局ニ希望スル次第デア
ル、此ノ點ニ付テ刑事局長ノ御所見ヲ伺ヒ
タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=11
-
012・秋山要
○秋山政府委員 只今御尋ネノ日支間ヲ往
來スル者ガ非常ニ多クナツテ、僅カ二百圓
ノ現金ヲ携帶スルダケデハ容易ニ用ヲ辨ジ
得ナイ場合ガアル、然ルニ其ノ額ヲ超エテ、
三百圓若シクハ五百圓位ノ超過額ニ依ツ
テ罰ヲ受ケルコトハ、刑事政策ノ上カラ言
ツテモ非常ニ考ヘナケレバナラヌノヂヤナ
イカト云フ御趣旨ノヤウニ伺ヒマシタガ、
御意見ハ御尤モト思ヒマス、サウ云フ比較
的輕微ノ者ニ付キマシテハ出來ルダケ寛大
ナ處置ヲ執リタイト考ヘテ居リマス、唯併
シ僅カ百圓若シクハ二百圓ヲ超過シタカラ
ト申シマシテ、ソレガ犯狀ノ上ニ於キマシ
テ甚ダ面白クナイト云フヤウナモノニ付キ
マシテハ、ヤハリ嚴ニ之ヲ罰スル必要モア
ラウト思ヒマス、金額ノ多寡如何ニ拘ラズ
情ノ輕イモノニ付キマシテハ出來ルダケ
寛大ノ處置ヲ執ルコトニ現ニ致シテモ居リ
マスルシ、將來モ其ノ方針デ處置致シタイ
ト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=12
-
013・西村金三郎
○西村委員長 中島君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=13
-
014・中島彌團次
○中島(彌)委員 只今原口局長ノ御懇切ナ
ル御說明ニ依リマシテ大體諒承致シマシタ
ガ、サウシマスト海上保險ト商工省ノ輸出
奬勵ト、此ノ度大藏省ノ提出シタル外國爲
替損失補償金トノ間ニ於テハ、ダブツテ
居ル點ガアル、或ル點デ申シマスト、外國
爲替損失補償金ダケヲ出セバ全部「カバー」
シテシマヘル、是一ツニ纒メテヤレルト云
フコトハ言ツテ宜イデセウネ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=14
-
015・原口武夫
○原口政府委員 若シモ只今ノ仰セノヤウ
ニ、外國爲替損失補償金一本建ニシ、サウ
シテ今日ノ海上保險ナリ或ハ輸出補償ノ目
的ヲ達シヨウト云フコトハ)出來ナイコト
ハナイト思ヒマスガ、此ノ根本ハ貿易、海
運爲替ト云フモノガ一體ニナツテ居リマ
スシ、又貿易官廳ガ只今方々ニ分レテ居リ
やく、左樣ナ關係カラ色々ノ貿易ノ各段
階-海運ノ段階ニ於テ、保險ノ段階ニ於テ、
或ハ爲替ノ段階ニ於テ、或ハ輸出入自身ノ部
分ニ於キマシテ、可ナリ複雜ナ取引ノ連續
ガ貿易上起ツテ居リマスノデ、其ノ各段階
ヲ通ジテ危險ヲ保障スル
〔委員長退席、菊池(良)委員長代理着
席
斯ウ云フ場合ノ實際ノ行政ノ運用ト致シ
マシテハ、若シ爲替ノ損失金一本立ニナリマ
スト、今日ノ行政機構ノ上カラ申シマシテ、
又貿易取引ノ複雜性ト云フ點カラ申シマシ
テ、實際ノ運用ハ可ナリ複雜ナ込入ツタモ
ノニナルトハ存ジマスガ、理窟ト致シマシ
テハ爲替ノ補償金デ全部「カバー」シ得ルト云
フコトモ言ヒ得ルトハ存ジテ居リマスガ、實際
上ハ中々複雜ニナツテ來ルト思ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=15
-
016・中島彌團次
○中島(彌)委員 是ハ豫算編成ノ問題デア
リマスカラ、其ノ點ダケニ留メテ置キマス、
ソレカラ商工省ノ方ノ輸出補償ノ四億ト云
フ金額ノ算出ノ根據ト、大藏省ノ五億ト云
フ算出ノ根據ハドウ云フ點カラ出テ來タノ
デアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=16
-
017・原口武夫
○原口政府委員 五億ノ方カラ先ニ申上ゲ
やく、實ハ此ノ五億ノ算出ノ根據ヲ私共段
段〓究致シマス場合ニ、一體ドウ云フ損失
ガアリ得ルカ、是ハ今後色々ナコトガゴザ
イマスノデ、其ノ損失トシテハ一體ドウ云
フ問題ガ考ヘ得ルカ、斯ウ云フ所カラ入ツ
タノデアリマスガ、先ヅ先刻申シマシタ爲
替相場ノ問題ガ一ツノ大キナ問題トシテ入
ツテ參リマス、ソレニヤハリ含マレル問題
デゴザイマスガ、銀行ト云フモノハ御承知
ノ通リ始終外貨ヲ一方ニ賣ツテ一方カラ買
フ、而モ今日ノ外貨ト云フモノハ一種ノ品
物デアリ、而モ非常ニ危險ナ品物ニナツテ
居リマス、何時相場ガ變ルカモ知レヌ、
隨ヒマシテ銀行トシマシテモ、是ハ商人モ
同ジデアリマスガ、右デ外貨ガ手ニ入ルト
直グ左デ餘所ノ人ニ渡シテシマフ、其ノ最
後ノ尻ガ爲替銀行ニ參リマス、而モ爲替銀
行ニ來タ其ノ又最後ガ正金銀行アタリニモ
集マツテ來ル、斯ウ云フコトニナリマシテ、
所謂銀行ノ持高ト申シマスカ、左樣ナモノ
モ一ツノ要素トシテ考ヘテ居リマス、ソレ
カラモウ一ツノ要素トシテ、銀行ト云フモ
ノハ始終輸出爲替ヲ買ツテ居リマス、而モ
買入レタ輸出爲替ニ付キマシテ、マダ先方
カラ外貨ヲ貰ハヌ、輸出業者カラハ手形ヲ
受取ラヌ、斯ウ云フ殘高、輸送中ノモノ
輸出手形、是ガ始終億ヲ超エル額デ、相當ゴ
ザイマス、左樣ナモノモ一ツノ根據トシテ
計算致シマシタ、ソレカラ凍結資金、是ハ
ㄱヨーロツパ」或ハ西「アフリカ」關係ガ多イ
ノデアリマスガ、左樣ナモノガ今日一體ド
ノ位アルカ、是モ如何ナル資金ヲ以テ凍結
資金ト謂フカト云フコトガ困難デアリマス
ノデ、正確ニハ申上ゲ兼ネルノデアリマス
ガ、大體「ヨーロツパ」戰爭後過去一年餘リ
ノ經驗ニ依ツテ、左樣ナ目途ヲ付ケマシテ、
サウ云フ點モ參酌致シマシタ、ソレカラ今
後動員シ得ベキ外貨資產ガドレ位アルカト
云フ點モ、一ツノ根據ト致シマシタ、左樣ナ
各種ノ項目ヲ拾ヒマシテ、過去ノ實蹟ヲ基
礎トシテ今後ノ見透シヲ付ケマシテ、其ノ
中先刻來御話ノヤウニ輸出補償法ト重複ス
ル部分ガゴザイマス、左樣ナモノガドノ位
アルカト云フコトモ推定致シマスガ、サウ
云フモノニ付テノ大見當、是ハホンノ腰溜
的ノモノデアリマスガ、サウ云フモノヲ付
ケマシテ大體五億圓ト云フ數字ヲ彈キ出シ
タ譯デアリマス
尙ホ輸出補償法トノ關係ニ付テハ、是ハ
商工省カラ申上ゲタ方ガ適當ト思マスガ、
昭和十五年ノ一月カラ十一月マデ、十二月
一箇月ダケ拔ケテ居リマスガ、其ノ實蹟ニ
依リマスト、補償手形ノ割合ハ輸出總額ノ
五%ニシカ當ツテ居リマセヌ、隨ヒマシテ
輸出手形ノ中相當部分ト云フカ、大部分ハ
補償手形ニナツテ居ラヌ、斯ウ云フ實蹟ニ
ナツテ居リマス、今後金額モ殖エルコトニ
ナリマスレバ、段々補償手形ノ割合モ殖エ
テ行クカト思ツテ居リマスガ、ソレニ致シ
マシテモ、僅カノ金額デ我ガ國ノ全部ノ輸
出手形ヲ補償スル譯ニハ到底參リマセヌカ
ラ、只今申上ゲマシタヤウナ各種ノ材料カ
ラ算出シタ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=17
-
018・中島彌團次
○中島(彌)委員 大體諒解致シマシタガ、
輸出貿易ノ三月分位ニ當ル金額ヲ持ツテ居
レバ、輸出手形ヲ補償シ得ルト云フヤウナ
コトヲ業者ハ言ツテ居ルガ、大體ソンナ見
當デ輸出補償ノ方ヲ見テ居ルノデアリマス
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=18
-
019・原口武夫
○原口政府委員 商工省ノ方デ今囘御審議
ヲ願ツテ居リマスル輸出補償法ノ算出ノ基
礎ニナツテ居リマス輸出手形ノ見込ハ、四
箇月ト一應押ヘマシテ、サウシテ其ノ中カ
ラ或ルモノヲ差引イテ居リマスカラ、結論
ハ御話ノ所ト大體差異ノナイ見當ヲ押ヘテ
居ルノヂヤナカラウカト思ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=19
-
020・中島彌團次
○中島(彌)委員 能ク分リマシタ、ソレカ
ラ外國人關係ノ內地ニ於ケル財產ヲ取締ル
ト云フヤウナ規定ニナツテ居リマスルガ、
又サウ云フ必要モ是カラ起ツテ來ルト思ヒ
マスルガ、斯樣ニ致シマスルト日本人ガ在
外ニ持ツテ居ル所ノ財產ニ對シマシテ、其
ノ當該國カラ-例ヘバ「アメリカ」人ナラ
「アメリカ」人ノ日本國內ニ於テ持ツテ居ル
所ノ財產ノ取締ヲ、相當嚴重ニスルト云フ
コトニナレバ、米國ニ於ケル日本人ノ財產
ニ付キマシテ、報復的ナ處置ヲ取ラルル所
ノ懸念ハナイノデアリマセウカ、其ノ點ニ
對シテドウ云フ御考ヘヲ持ツテ居ラレマセ
ウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=20
-
021・原口武夫
○原口政府委員 御懸念ノ點ハ洵ニ御尤モ
ニ存ジマスガ、當該ノ條文デ申シマスト、
今囘ノ改正法案ノ第一條ノ第九號、第十號
ト云フモノガ、御話ノ點ニ該當シテ居リマ
ス、實ハ此ノ改正ヲ致シマシタ趣旨ハ、此
ノ條文ニ依リマシテ相手國ガ本邦ニ對シテ
同樣ナコトヲスル、非友誼的行爲ト申シマ
スルカ、經濟壓迫ト申シマスルカ、サウ云
フモノニ對スル報復ト云フ趣旨デハゴザイ
マセヌノデ、況ヤコチラカラ之ヲ發動シテ
却テ日本側ノ在外財產ニ付テ報復的ニ外國
カラ對抗策ヲ講ゼラレル、斯樣ナ事態ヲ惹
起スト云フヤウナコトモ、本文ノ趣旨デハ
ゴザイマセヌ、第一ニ此ノ改正デ狙ツテ居
リマスノハ、若シモ外國ガ我ガ國ニ對シ
テ左樣ナ非友誼的行爲ニ出ルコトガアレ
バ、已ムヲ得ズ我ガ國トシテモ之ニ對スル
對應策トシテ、斯樣ナ統制ヲヤル用意ハ何
時デモアル、斯ウ云フ態勢ヲ整ヘテ置ク、
是ガ最モ大ナル狙ヒ所ニナツテ居リマス、之
ニ依リマシテ、外國カラ左樣ナ非友誼的經濟
壓迫ガ來ナイコトヲ第一ニ狙ツテ居リマス、
左樣ナコトヲ兩國デオ互ヒニヤリ合フト云
フコトハ、結局兩國ノ損失ニナリマスルノ
デ、極力左樣ナ事態ハ避ケタイト云フ攻擊
的防禦手段ト申シマスルカ、左樣ナ意味デ
此ノ改正ヲシテ居リマスノデ、隨ヒマシテ
是ガ運用ニ付キマシテハ、國際情勢ノ推移
ニ應ジマシテ、最モ愼重ニ致シタイト存ジ
テ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=21
-
022・中島彌團次
○中島(彌)委員 第一條ノ九號ノ點ハ非常
ニ重大ナル點ガアリマシテ、外交關係若ク
ハ貿易關係ニモ非常ニ影響ヲ及ボスヤウニ
憂慮ヲサレテ居ツタ點デアリマス、今局長ノ
御說明ニ依レバ、攻擊的ナ防禦手段デアル
ト申サレタノデアリマスガ、「外國居住者、
本邦內ニ居住スル外國人又ハ命令ノ定ムル
本邦法人ノ本邦內ニ於テ爲ス財產(事業若ハ
營業又ハ之ニ對スル出資ヲ含ム以下同ジ)ノ
取得若ハ處分、預ケ金ノ引出又ハ貸出金ノ
囘收」トナツテ居ツテ、本邦內ニ居住スル外
國人關係ノ利害ニモ、影響スル點ガ重大デ
アルト思ヒマスガ、此ノ規定ヲ設ケタガ爲
ニ利害得失ハ、ドウ云フヤウナ關係ニナツ
テ來ルデアリマセウカ、「アメリカ」ニ於テ
日本人ガ持ツテ居ル財產ト、日本ニ於テ「ア
メリカ」人ガ持ツテ居ル財產其ノ他ヲ比較
シテ見マシテ、斯ウ云フ規定ガ發動サレル
トスルナラバ-此ノ規定ガ議會ヲ通過シ
タ後ニ於キマシテ、在留「アメリカ」人ト云フ
モノハ、是ハ大變ダ、日本ニ於ケル「アメ
リカ」人ハ之ニ依ツテ非常ナル攻擊的ナ手
段ヲ執ラレルノダト云フコトヲ感ジ、向フ
ノ米國官憲モ亦日本ガ斯ウ云フモノヲ拵ヘ
ルノナラ、之ニ對シテ米國內ニ於ケル日本
人ノ財產ニ付テモ、相當ノコトヲヤラネバ
イカヌト云フヤウナコトデ、外交的紛糾ノ
端〓ヲ第一條ノ第九號ニ依ツテ生ズルヤウ
ナ憂ヒハナイデセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=22
-
023・原口武夫
○原口政府委員 御心配ノ點ハ御尤モト存
ジマスガ、此ノ改正案ノ趣旨ガ只今申上ゲ
マシタ點ニアリマスノデ、左樣ナコトモ能ク
海外ニ傳ヘマシテ、御心配ノヤウナ事態ガ
外國ニ於テ生ジマセヌ爲ニ、出來ルダケノ
措置ヲ執リタイト思ツテ居リマス、尙ホ又此
ノ種ノ立法ハ必ズシモ我ガ國ノ今囘ノ改正
ガ、前例ガナイト云フモノデモゴザイマセヌ
ノデ、慥カ只今御引例ノ「アメリカ」ニ於キマ
シテモ、尙ホ其ノ他ノ國ニ於テモ例ハアラ
ウト存ジマスルガ、昨今新聞デ傳ヘラレテ
居リマスル所謂資金凍結令、斯ウ云フモノ
干、特定ノ國ヲ指定致シマシテ、サウシテ
其ノ國及ビ當該國民ノ在米資產ニ付テ或ル
種ノ特別ノ制限、統制ヲヤツテ居リマス、
無論其ノ目的ハ本改正案ノ狙ヒ所ト違フト
ハ存ジマスルガ、形ニ現ハレマシタ所ハ非
常ニ能ク似テ居リマス、御心配ノ點ニ付キ
マシテハ能ク誤解ノナイヤウニ、十分說明
ヲ致ス手段ヲ執ラウト思ツテ居リマス、尙
ホ又萬一ノ場合不幸ニシテ此ノ條文ヲ發動
シナケレバナラヌ、斯ウ云フ場合ニ、一體
オ互ニヤリ合ツテドチラニ損失ガ行クノ
カ、斯ウ云フ御質問ノヤウニ伺ヒマシタデ
スガ、實ハ私共是ハ決シテ特定國ヲ頭チ置
イテ起案ヲ致シテ居リマセス、今日ノヤウ
ナ複雜ナ國際情勢ニ於キマシテ、如何ナル
國ガ我ガ國ニ對シテ非友誼的行動ニ出ルカ
モ知レマセヌ、一方日本側ノ海外ニ於ケル
財產ト云フモノモ、今日相當各方面ニゴザ
イマスノデ、實ハ特別ニドノ國ト云フコト
ハ毛頭此ノ改正案ニハ考ヘテ居リマセヌ、
左樣ナ具體的ナ計數モ實ハ今日持ツテ居リ
マセヌシ、斯ウ云フ種類ノ爲替管理ハ、現
行法デハ無論權限ハ與ヘラレテ居リマセヌ
ノデ、左樣ナ資料モ今日十分整ツテハ居リ
マセヌガ、段々此ノ改正案ガ施行ニデモナ
リマシタナラバ、今御話ノヤウナ資料、材
料ノ調査ト云フヤウナコトハ、是ハドウシテ
モ今日ノ事態ニ於キマシテ、政府ト致シマ
シテ整ヘテ置カナケレバナラヌト思ツテ居
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=23
-
024・中島彌團次
○中島(彌)委員 此ノ點ニ付キマシテハ利
害關係ガ非常ニ米國在留同胞ニ對シマシテ
ハ深刻ナルモノガアラウト思ヒマスカラ、
向フモ凍結令ミタヤウナモノヲ出シテ、コ
チラニ對シテ挑戰的ニヤツテ來テ居ル點モ
アリマスケレドモ、米國人ガ日本ニ持ツテ
居ル財產ト、日本人ガ米國ニ持ツテ居ル財
產トノ間ニ於テハ、大變ナ差ガアルダラウ
ト思ヒマスカラ、施行ニ當リマシテハ十
分ニ御留意サレマシテ、ヤラレンコトヲ希
望致シマス
次ニ今囘ノ改正ニ依リマシテ、爲替管理
ノ戰時體制ハ、略〓、完備サレタノデアリマス
ルガ、本邦側ノ商社ノ資本ヲ以テ設立サレ
タ外國法人ニ對シマシテ、本法ノ適用ハ、是
ハアルノデアリマセウカ、若シ適用ガナシ
トシマスナラバ、何カノ手段ニ依リマシテ、
容易ニ法ヲ潜ラレルヤウナ心配ガアルノデ
アリマスルガ、其ノ點ハドウ御考ヘデアリ
マセウカ、次ニ實際上本邦商社ノ支店タル
實質ヲ有スルニモ拘ラズ、法律上外國法人
タル者ハ南洋方面ニ於キマシテモ澤山アリ
マスガ、本邦商社ノ支店ナラバ取締ヲ受ケ、
外國法人トスレバ取締ヲ受ケヌト云フコト
ハ、餘リニ形式的デアツテ、折角今囘ノ改
正ニ依リマシテ法律ヲ强化シナガラ、大キ
ナ拔ケ道ガ殘ツテ居ルヤウニ感ジマスガ、
斯クノ如キ場合ハドウシテ御取締ニナルノ
デアリマセウカ、此ノ點ニ付テ詳細ナル御
說明ヲ願ヒマス
〔菊池委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=24
-
025・原口武夫
○原口政府委員 御尋ネノ本邦系ノ外國法
人例ヘテ申シマスルト、北米、南米或ハ
南洋方面ニ於キマシテ我ガ國ノ資本ヲ以テ
構成サレテハ居リマスルガ、法律上ハ先方
ノ國ノ法人ト云フモノガ隨分今日ゴザイマ
ス、左樣ナ法人ニ對シテハ本法ハ適用ガゴ
ザイマセヌ、隨ヒマシテ只今御述ベノヤウ
ナ御心配ガ起ルコトト存ジマスガ、實ハ今
囘ノ改正法案ヲ立案致シマスニ際シマシテ、
只今御指摘ノ點ニ付キマシテモ、或ル意味
ニ於キマシテ御言葉ノ通リ法ノ不備ト云フ
謗リヲ免レマセヌノデ、法制局、司法省其
ノ他ノ關係當局ト愼重ニ審議ヲ致シマシタ
ガ、如何ニモ是ハ形式的ニハナリマスガ、法
律論ト致シマシテ、全然我ガ法域ノ外ニア
ル法人、而モ外國ノ法律ニ依ツテ出來テ居
ル法人、斯ウ云フ形ヲ整ヘラレマスト、何
トシテモ日本ノ國內法ヲソコマデ延バシテ
行クト云フコトハ是ハコチラデ法律ヲ作
レバ宜イヤウナモノデアリマスルガ、從來
ノ法律論カラ申シマシテ穩當デナイト云フ
點ガ一點ト、假ニ左樣ナ法律ヲ作リマシテ
モ、愈〓罰罰ヲ適用スルト云フ場合ニドウス
ルカ、斯ウ云フ難點モゴザイマシテ、實ハ御
言葉ノヤウナ缺點ハゴザイマシタガ、今囘
ノ立案カラハ除イタ次第デアリマス、殊ニ
御指摘ノヤウニ實質ハ日本法人ノ支店デア
ル、而モサウ云フモノガ事實多イノデアリ
マス、外國ニ於テ色々ノ鑛山ノ仕事ヲス
ル、國ニ依リマシテハ自分ノ國ノ法人デナ
ケレバ鑛業權ヲ與ヘナイ、特許權ヲ與ヘナ
イ、斯ウ云フ法制ヲ持ツテ居リマスル國ガ
隨分ゴザイマス、左樣ナ理由カラ本邦系ノ
資本デ出來タ外國法人、斯ウ云フモノガ私
共現ニ調ベマシタダケデモ百以上ゴザイマ
ス、尤モ支那ヲ入レマスト是ハ隨分多クナ
リマス、支那ハ今日特殊ノ事態ニゴザイマ
スノデ、支那ニハ隨分是ハ多クゴザイマス
ガ、第三國ニ於キマシテモ可ナリ多數ゴザ
イマス、ソコデドウ取締ルカ、卽チ本邦法
人ノ支店ト、斯樣ナ本邦系ノ外國法人、是
ハ實質的ニハドウシテモ一體ノ取締ヲスル
必要ガゴザイマス、段々玆ニ實ハ調ベテ
見タノデアリマスガ、大體ニ於テ此ノ資
本系統ガ我ガ國ト繋ガリノゴザイマス
日本人或ハ內地ノ日本法人ト、斯ウ云フ
モノノ子會社的ノモノガ大多數デゴザイマ
ス、左樣ナ資本系統ヲ通ジマシテ、或ハ送
金關係、或ハ有價證劵ノ取得、斯ウ云フ今
日改正法案ニ於キマシテ取締リ得ル行爲モ
ゴザイマスカラ、大體ニ於キマシテ親會社
ヲ通ジ、或ハ關係會社ヲ通ジマシテ、實質
的ニハ管理ノ手ヲ延バシテ行クコトガ出來
ル、此ノ大部分ノ本邦系外國法人ハ、其ノ
事業資金ニ付キマシテモ、本邦カラノ送金、
斯ウ云フ事態ガ絕エズ起ツテ居リマスノデ、
ソレヲ通ジテ取締ルコトモ出來マスシ、尙ホ
其ノ生產品ハ是ハ大體ニ於キマシテ日本ガ
買フ、是ガ自然デモアリ、又多クノ會社ハソ
レヲ希望シテ居リマス、我ガ國トシマシテ
モサウ致シマシテ本邦側ノ海外事業ノ發展
ヲ助長スル、斯ウ云フ政策ヲ執ツテ居リマ
ス、左樣ナ場合ノ輸入關係ニ於キマシテモ、
內地ノ統制法規ニ服スル、斯ウ云フ慣例モ
ゴザイマシテ、御指摘ノヤウナ缺點ハ多少
ゴザイマスガ、此ノ改正法案ニ依ツテ、實
質上大體不公平ナク取締リ得ルト、斯ウ存
ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=25
-
026・中島彌團次
○中島(彌)委員 是ハ重大問題デアリマス
ガ、大體今申上ゲマシタヤウナ法人ハ、支
那、滿洲、南洋其ノ他ニ於キマシテドレ位
アルデアリマセウカ、御承知ノ通リ外國法
人企業カラ日本ノ國內ニ無爲替デ輸入シテ
來ル所ノ品物ハ、物動計畫ノ中ニモ入ツテ
居リマシテ、是ハ非常ニ現在ノ日本ノ物動
計畫及ビ生產擴充計畫ニモ、重大ナル役割
ヲ持ツテ居ルノデアリマス、是等ニ對スル
所ノ取締ニ付キマシテハ、特ニ此ノ爲替管
理法ヲ嚴重ニ强化セラレマシテ、成ベクソ
レ等ノ生產スルモノヲ日本ニ持ツテ、來サ
セ、又今局長ガ仰シヤラレマシタヤウニ、
生產物ノ輸入關係カラモ取締マラレル、又
親會社ノ關係ヲ通ジテモヤレル、ソレカラ
資本系統カラモヤレル、有價證劵ノ移動若
シクハ送金ト云フヤウナ點カラモヤレルト
申サレマシテ、ヤレルヤウナ途ハアリマス
ケレドモ、法律上此ノ點ガ完備シテ居ナイ
ト、大キナソコニ拔ケ穴ヲ生ジテ參リマシ
テ、御承知ノ通リ國内ニ於テモ、品物ニハ
公定價格ガ決マツテ居ルカラ、外國カラ日
本ヘ持ツテ來テモ引合ハヌト云フ關係デ、
何時物ヲ外國ニ賣渡スカモ知レマセヌ、併
シ物動計畫上物ヲ取ルコトニ付テハ、非常
ナ急場ノ場合デアリマスカラ、此ノ點ニ付
テハ局長サンモ、法ノ不備デアルト云フコ
トヲ認メテ、今御答辯アラレマシタノデ、
尙ホ今ノ御答ヘノアツタ點カラモ、取締ガ
出來ルデアリマセウケレドモ、此ノ施行細
則其ノ他ノ點ニ於キマシテ、十分ニ本法ノ
不完全ナル所ヲ補ツテ規定スルヤウナ手段
方法ハナイノデアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=26
-
027・原口武夫
○原口政府委員 先ヅ本邦系外國法人ノ數
ニ付テ、御尋ネガゴザイマシタノデ、是一
非常ニ的確ナ數トハ實ハ申上ゲ兼ネマスガ、
一應私共ノ調べ上ゲマシタ所ニ依リマス
ト、支那ニ所在シテ居リマスモノガ、約五
百五十バカリゴザイマス、ソレカラ支那以
外ノ純粹ノ第三國ニゴザイマスモノガ、百
三十バカリゴザイマス、此ノ第三國ノモノ
ノ半數ハ「ハワイ」北米合衆國ニゴザイマス、
其ノ他ハ英領ト中南米、大體斯ウ云フ分布
ニナツテ居リマス、ソレカラ只今ノ法ノ不
備ノ點デアリマスガ、之ニ付キマシテハ尙
ホ能ク今後〓究致シマス、是ハ全ク法律論
カラ參リマシタ點デアリマシテ、從來ノ屬
地主義ト申シマスカ、屬人主義ト言ヒマス
カ、日本ノ法律ノ法域ニ付テ、從來ノ色々
ノ學說ガゴザイマス、昨今ノヤウニ國際關
係ガ複雜ニナツテ參リマシテ、外國トノ色
色ノ經濟取引ヲ規制スル法律ヲ、各〓ノ國ニ
於テ作ル、斯ウ云フ事態ニナリマスト、左
樣ナ屬人主義或ハ屬地主義ト云フ簡單ナ法
域ヲ以テハ、中々一國ノ利益ト言ヒマスカ、
一國ノ自主的ナ地位ヲ守ルト云フコトハ困
難ニナリマスノデ、段々將來ニ於キマシテ
ハ、經濟的ニ屬人主義ヲ考ヘル、斯ウシテ
法域ヲ擴メル方面ニモ、〓究ヲ致シタイト
思ツテ居リマス、尙ホ其ノ間實際ノ必要モ
ゴザイマスカラ、只今御話ノヤウナ缺點ニ
付キマシテハ、實行上今囘ノ改正ニ依リマ
ス各條文ヲ、適當ニ運用致シマシテ、缺陷ヲ
補ヒタイト思ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=27
-
028・中島彌團次
○中島(彌)委員 今ノ御答辯ハ洵ニ適切ナ
御答辯デアリマシテ、私共ノ考ヘモ現在ノ
經濟狀態ヲ律スルニ當リマシテハ、ドウシテ
モ法理論的ナ屬地主義、屬人主義デハイカヌ
ト思ヒマス、ヤハリ必要ニ應ジ、形式ハ外國
法人デアツテモ、實質上ニ於テハ日本法人タ
ルノ性質ヲ具ヘテ居ルモノハ、日本法人ト
看做スト云フヤウナ規定ヲ、本項ニ入レテ
貰ヒタカツタノデアリマスガ、今囘ノ改正
上ニ於キマシテ、ソレガナイト致シマスナ
ラバ、經濟的ナ屬人主義ノ方法ニ依ラレマシ
テ、施行細則其ノ他適用ニ於キマシテ、十
分ナル御監督ト又法ノ適用ヲサレンコトヲ
希望致シマス、ソレカラ日本ノ爲替ノ管理
ノ最モ大ナル爲替管理法ヲ潛リ、若シクハ
爲替相場ヲ攪亂スル所ノ要素ト云フモノハ、
昔カラ決ツテ、居リマシテ、經濟的ニハ何
時モ支那ノ、殊ニ上海ノ圓安ノ現象ト云フ
モノガ、非常ニ日本ノ爲替相場ニ影響シ、又
日本ノ爲替相場ヲ攪亂シ、而シテ是ガ本法
爲替管理法ノ管理ニ、最モ痛イ所デアリマ
スガ、是ガ昔カラ今モ依然トシテ其ノ態度
ガ執ラレテ居ル、殊ニ南支ニ於キマシテ
ハ、御承知ノ通リニ舊法幣ガアリ、新法幣
ガ出來、軍票ガ國民ノ中ニ入ツテ居ツテ、軍
票自體ハヤハリ圓ヲ代表シテ居ルト云ツテ
モ宜イノデアリマス
此ノ間分科會デモ理財局長トノ間ニ質問應
答致シマシテ、新法幣ハ舊法幣ニ「リンク」ヲ
シテ居ツテ、軍票ハ圓ト同ジモノデアル、
サウスルト、新法幣ト軍票トノ關係ヲドウ
云フ風ニニシテ、其ノ價格ヲ調整シテ行ク
カト云フ點ニ付キマシテ、質問申上ゲマシ
タケレドモ、興亞院ノ經濟部長及ビ理財局
長ノ間ニモ、十分ナル明答ガナカツタノデ
アリマス、支那人ハ御承知ノ通リ所謂貨幣
ノ價値ノ差額ヲ利用シテ、非常ナ利益ヲ巧
妙ニ得テ居ルノデアリマス、此ノ「スペキュ
レーション」ト云フモノハ、世界的現象デ
アリマスガ、此ノ上海ノ圓安現象ニ對シマ
シテハ、之ニ對シテ政府ハドウ云フヤウナ
對策ヲ執ラレマシテ、軍票ノ價値ノ維持或
ハ上海圓安ガ圓ニ及ボス所ノ影響、ソレカ
ラ新法幣ニ對シマシテモ、是ハ日本ガ支援
シテ居ル汪兆銘政權ノヤツテ居ルコトデア
リマスカラ、是亦相當ニ考慮シテヤラレナケ
レバナラヌコトト存ズルノデアリマスガ、
是等ニ對シマシテ本法爲替管理ノ、最モ大
ナル攪亂的要素タル上海ノ圓安現象ニ對シ
マシテ、ドウ云フヤウナ對策ヲ今後執ラレ
テ行クノデアリマスカ、此ノ點ハ洵ニ重大
ナル點デアリマシテ、日本ノ經濟財政上ニ
モ及ボス至大ナル點ト感ズルノデアリマス
カラ、政府ノ之ニ對スル對策ヲ承リタイノ
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=28
-
029・原口武夫
○原口政府委員 支那ニ於キマス圓安ノ現
象ト云フコトニ付キマシテハ、御話ノ通サ
私共內地ノ爲替政策ト緊密ナル關聯ヲ執リ、
又最モ重大ナル關心ヲ拂フベキ問題ト存ジ
テ居リマス、御尋ネノ之ニ對スル對策ト致
シマシテハ、第一ハ現地ニ於ケル圓ノ資金
ノ放出ヲ成ベク抑制スル、斯ウ云フコトガ
一番必要ナコトト思ツテ居リマスガ、ソレガ
爲ニハ先ヅ軍事費ノ支辨ヲ最少限度ニ節約
スル、是ガ第一點デアリマス、第二ニハ現
地デ色々ノ經濟關係ノ事業、其ノ他公共事
業等モゴザイマスシ、文化的ノ事業モゴザ
イマスガ、斯樣ナモノハ何レモ資金ヲ要シ
マス、資金的觀點カラ左樣ナル事業ニ對シ
テ適當ニ統制ヲ加ヘテ行ク、是ガ第二デア
リマス、第三ト致シマシテハ支那ニハ多數
ノ本邦側ノ銀行ガゴザイマスガ、其ノ在支
店舗ニ於キマスル貸出ト云フモノヲ、適當
ニ統制致スベキモノト思ツテ居リマス、次
ニ支那ニ對スル爲替ノ送金デアリマストカ、
或ハ通貨ノ携帶高デアリマストカ、斯樣ナ
モノモ何レモ先方ニ行キマスト、圓資金ノ
增加ト云フ形ニナツテ現ハレマスノデ、之
ヲ適當ニ制限スル、是ガヤハリ必要ト思ツ
テ居リマス、尙ホ又直接經濟關係デハゴザ
イマセヌガ、他ノ理由モゴザイマシテ渡航
ノ制限、支那行ノ旅行者ヲ制限スル、澤山
人ガ參リマスト、ドウシテモ銘々幾ラカヅ
ツノ金ヲ使ヒマスノデ、金圓ノ放出トナリ
マスカラ、左樣ナ各種ノ手段ヲ執リマシテ、
現地ニ於ケル圓資金ノ放出ヲ抑制スル、是
ガ第一ニ必要ナコトト思ツテ居リマス、次
ニ斯樣ニシテ放出サレマシタ圓資金ノ囘收
ヲ成ベク速カニナダラカニ行フ、囘收促進
ノ手段ガ必要ト思ツテ居リマス、是ガ爲ニ
ハ第一ニ本邦或ハ滿洲等ヨリノ物資ノ供給
ヲ增加スル、成ベク多クノ物資ヲ供給致シ
マシテ、中支デ申シマスレバ軍票ノ價値ヲ
維持スル、是ガ爲ニ御承知ノ通リ昨年カラ
所謂調整料ノ制度ト云フモノヲヤツテ居リ
やく、是ハマダ實行後時日モ餘リ經過シマ
セヌノデ、之ニ付テハ色々ノ御議論、御意
見モオアリノコトト思ツテ居リマスガ、不
完全ナガラ最近調整料制度ト云フモノヲ始
メマシテ、內地カラ假ニ百圓デ出タ品物ヲ
アチラデ、物ニ依ツテ異リマスガ、百五十
圓デ賣ル、五十圓ト云フモノヲ調整料トシ
テ取ツテ置キマシテ、サウシテアチラカラ
輸入スル棉花其ノ他ノモノヲソレデ調整ヲ
致シマシテ、安ク內地へ入レル、斯樣ニシ
マシテ、現地ノ圓資金ノ價値ヲ維持致シマ
スト共ニ、內地ノ物價政策ト云フモノトモ
調和ヲ取ツテ行ク、此ノ仕組ハ中島サンモ
十分御承知ノコトト存ジマスノデ、詳シクハ
申上ゲマセヌガ、是デ一番必要ナコトハ現地
ノ輸入機構ヲ整備スルト云フコトデアリマシ
テ、中支デ申シマスト段々機構モ整備サレマ
シテ、軍票關係ノ配給組合、物動物資關係ノ
配給組合、其ノ他ノ配給組合、大體此ノ三
本建ニ整備サレテ居リマス、斯樣ニシテ本
邦及ビ滿洲カラ供給シマシタ物資ガ正當ナ
徑路ニ十分餘計ニ流レテ行ク、正當ナ徑路
ト申シマスノハ、ソレガ敵地ニ行キマシテ、
却テ重慶政府ノ經濟ヲ助ケル、斯ウ云フ風
ナ徑路ニ流レマセヌヤウニ、只今申シマシ
タ配給組合ヲ通シテ、現地ノ圓系通貨ノ價
値維持ニ役立チマスヤウニ、內地ノ物資ヲ
使ツテ行ク、是ガヤハリ必要ト思ツテ居リ
マス、ソレカラモウ一ツ囘收促進ノ手段ト
致シマシテ、本邦ノ投下資本ノ收益、斯ウ
云フモノノ本邦向送金、或ハ現地ニ於キマ
スル銀行預金ノ奬勵、之ニ付キマシテハ隨
分支那デモ從來事變公債ヲ賣ツテ居リマス
シ、日本勸業銀行デ扱ツテ居リマス色々ノ
債劵類、斯ウ云フモノモ現地ニ於テ可ナリ
賣レテ居リマス、左樣ニシマシテ一方ニ於
キマシテ圓資金ノ放出ヲ抑制シマシテ、必
要已ムヲ得ズ出テ行ツタモノハ成ベク早ク
囘收スル、此ノ外ニ中支ニ於キマシテハ成
ベク色々ノ物資ノ取引ヲ軍票建ニスル、圓
建ニシテ、流通面ヲ擴大シテ行ク、此ノ爲
ニ色々ノ方策ヲ講ジテ居リマス、例ヘバ國
策會社等ノ軍票ノ收入、上海ノ「バス」會社
ノ切符、其ノ他鐵道會社ノ切符、斯ウ云フ
モノモ軍票ニ對シテノミ賣ル、斯ウ云フ方
策モ併セ行ヒマシテ、軍票ノ流通面ヲ漸次
擴大致シテ居ルノデアリマス、斯樣ナ方法
ニ依リマシテ今日ニ於テハ一時ト比較致シ
マシテ、支那ニ於ケル圓安ノ現象ト云フモ
ノノ、我ガ國ノ爲替管理ニ及ボシテ居リマ
シタ惡イ影響ト云フモノハ、段々ト減少シ
テ居ル次第デアリマスルガ、今日尙ホ此ノ
點ハ中々面倒ナ問題ニナツテ居リマス、今
後トモニ事態ノ推移ニ應ジマシテ、適切ナ
ル方策ヲ講ジテ行キタイト思ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=29
-
030・中島彌團次
○中島(彌)委員 今マデ御說明ノアリマシ
タ中デハ、最モ御懇切ナ御答辯デ、滿足致
シタノデアリマスガ、實際行ツテ見マスト
非常ナ食違ヒガアルノデアリマシテ、御承
知ノ通リ此處ニ支那ノ店ガアツテ、隣リニ
日本ノ店ガアル、其ノ日本ノ店ダケニ對シ
テハ公定價格デ賣ラシテ居ルノデ、日本ノ
品物ヲ支那ノ店ニ持ツテ行ツテ、三倍ニ賣
ツテ居ルト云フヤウナコトモ、吾々ハ行ツ
テ見テ來テ居リマスノデ、日本ノ品物ガ重
慶政府マデモドン〓〓行ツテ居ルト云フコ
トモアルヤウナ狀態ニナツテ居リマス、向
フニ於ケル所ノ取締ガ御承知ノ通リノ混亂
狀態ニアルノデ、中々容易デナイノデアリ
マスカラ、此ノ點ニ付キマシテ十分ニ合理
的ナ方法ヲ講ジテ戴キタイ、調整制度ノ問
題ニ付キマシテモ、私共視察シテ參ツタノ
デアリマスケレドモ、是デ却テ物資ノ交
流ガ妨ゲラレテ、商賣人ガ手ヲ束ネテ仕事
ヲセヌト云フヤウナ點モアルヤウニモ聞イ
テ居ルノデアリマス、中々是ハ難カシイ狀
況モアリマシテ、日本ガ物デ戰爭シテ行ク、
軍票ハヤハリ物ヲ以テ裏付ケテ行カナケレ
バ軍票ノ價値ガ維持サレナイ、物ヲ出ス
コトハ內地ノ血ノ一滴ト云フヤウナ國家生
活ニ影響スル、是ハ內外ヲ通ジテノ日本ノ
物價政策、支那ニ於ケル軍票ノ價値維持、
戰爭ノ遂行、軍費ノ支拂ト云フコトカラ達
觀ヲシテ見マスト、是ハ非常ニ大キナ重大
ナ點ガアルノデアリマシテ、此ノ狀態ヲ上
手ニ整備ヲシテ行クニアラズンバ、爲替管
理圓安ハ固ヨリ、延イテハ內地ノ物價ニ
モ至大ナル影響ヲ及ボスノデアリマスカラ、
此ノ點ニ付キマシテハ十分ニ御〓究サレマ
シテ、現在ニ於キマスル幾多ノ之ニ對スル
非難、不平等モ、內外商人ノ間ニ於テハア
ルヤウデアリマスカラ、私マダ質問シタイ
コトハ澤山アリマスケレドモ、大體此ノ爲
替ニ關スル限リニ於キマシテハ、此ノ程度
ヲ以テ質問ヲ打切リタイト思ヒマスルガ、
此ノ點ハ重大デアリマスルカラ、十分ニ御
〓究サレマシテ、實際ニ卽サレマシタ制度
ヲ御施設アランコトヲ希望シテ、私ノ質問
ヲ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=30
-
031・太田理一
○太田(理)委員 先程中島君ノ御質問ニ對
スル爲替局長ノ御說明中、輸出爲替損失補償
ノ基準トナルモノハ爲替ノ持チ、詰リカ
バー」ノ未濟ノ損失デアルト云フコトヲ承
ツタノデアリマスガ、其ノ爲替ノ持チハ、爲
替銀行カラ一々當局ニ報告シテ居ルノデア
リマセウカ、ソレトモ「ドル」「ポンド」總テヲ
通ジテ、或ル限度マデヤルト云フ必要ハナ
イト云フコトニナツテ居リマスカ、多少事
務的ノ點デゴザイマスガ、一點伺ヒタイノ
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=31
-
032・原口武夫
○原口政府委員 每日詳細ナル報〓ヲ取ツ
テ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=32
-
033・太田理一
○太田(理)委員 甚ダ事務的ニ亙ルヤウデ
アリマスガ、損失補償ノ場合モ、其ノ時ノ「レー
トレデ政府ガ肩替リスルノデアリマスカ、
或ハ爲替會議デ決ツタ相場ニ依ツテ損失補
償ヲスルノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=33
-
034・原口武夫
○原口政府委員 私先刻中島サンノ御質問
ニ對シマシテ、爲替銀行ノ持チノコトヲ、
五億圓ノ歲出ノ基礎トナツテ居ル一ツノ項
目トシテ申シマシタ、昨今ノヤウニ外貨ノ
處分ガ中々圓滑ニ行カナイ時期ニナリマス
ト、是ハ時ニ依ツテ往々違ヒマスルガ、時
ニ可ナリ一時的ニ多ク持高ガアルコトガゴ
ザイマス、左樣ナモノヲ今囘ノ豫算外國庫
ノ負擔ノ契約ニ依リマシテ、如何ナル場合
ニ於テモ全部ヲ政府ガ損失ヲ負擔スルト云
フヤウナ計算ヲ實ハヤツテ居リマセヌ、時
ニ依リマシテ是ハ非常ナ大キナ金額ニナリ
マス、隨ヒマシテドウ云フ「レート」デ以テ
ソレヲ補償スルカト云フ點ニ付キマシテモ、
實ハ私少シ立入ツタ御話ニナリマシタガ、
左樣ナ場合ニハソレガ何處カラ出テ來タ、
ドウ云フ原因カラ起ツテ來タモノデアルカ
ト云フコトニ重キヲ置キマシテ、サウシテ
左樣ナモノハドウシテモアノ契約ニ依ツテ
政府ガ損失ヲ負擔シナケレバイカヌト云フ
コトニナリマシタナラバ、大體ニ於キマシ
テ全額補償ト申シマスルカ、其ノ時ノ「レー
ざト前ノ契約ノ時ノ「レート」ノ開キハ
全部取リマスガ、其ノ原因ガ政府ガ面倒ヲ
見ナケレバイカヌ、斯ウ云フモノカラ生ジ
タモノデアレバ、大體ノ仕組トシテハ、全部
ノ損失ヲアノ契約ニ依ツテ負擔シタイト思
ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=34
-
035・西村金三郎
○西村委員長 森田福市君ヨリ質問ノ通〓
ガアリマスガ、缺席シテ其ノ席ニ居ラレヌ
ヤウデ、今見ニヤツテ居リマス、モウ暫ク
待ツテ貰ヒタイト思ヒマス、森田君ノ質問
デ終ル譯デスガ、若シ見當ラナケレバ權利
ヲ抛棄シタモノト認メマス-大分探シマ
シタケレドモ見當ラヌヤウデアリマス、仍
テ森田君ハ質問ノ權利ヲ抛棄サレタモノト
シテ取扱ヒマス、御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=35
-
036・西村金三郎
○西村委員長 然ラバ左樣致シマス、サウ
スルト是デ質問ハ全部終了致シマシタ
本案ニ付テハ色々ノ關係上明日ノ午後ニ採
決致シタイト思ヒマス、本日ノ午後ハ不動產
融資及損失補償法中改正法律案、產業組合
中央金庫特別融通及損失補償法中改正法律
案臨時資金調整法中改正法律案、之ヲ一
括シテ議題ニ上セテ、質問ヲ進メルコトニ
致シマス、時間モ參ツタヤウデアリマスカラ、
午前ハ是デ休憩致シマシテ、午後ハ引續キ
一時カラ開會スルコトニ致シマス
正午休憩
午後二時開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=36
-
037・西村金三郎
○西村委員長 開會致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=37
-
038・木村淺七
○木村(淺)委員 只今議題トナツテ居リマ
スル三件ニ附加ヘマシテ、兌換銀行劵條例
ノ臨時特例ニ關スル法律案外三件ヲ一括シ
テ議題トセラレンコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=38
-
039・西村金三郎
○西村委員長 サウスルト殘餘ノ案件ヲ悉
ク議題ニセヨト云フ御發議デスネ-諸君
ニ御諮リ致シマス、今ノ御發議ニ御異議ア
リマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=39
-
040・西村金三郎
○西村委員長 御異議ナイヤウデアリマス、
仍テ殘餘ノ四案ヲ全部議題ト致シマス、是
ヨリ通〓順ニ依リ質問ヲ許シマス-武田
德三郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=40
-
041・武田徳三郎
○武田(德)委員 私ハ主トシテ兌換銀行劵
條例ノ臨時特例ニ關スル法律案ニ對シテ御
伺ヒヲ致シタイト思ヒマス、最近兌換劵ノ
發行狀況ヲ見ルト、年々非常ニ多額ノ發行
高ガアルヤウデアリマス、日支事變ガ始マ
ツテ以來、每年二億、又ココ一兩年ハ一年
ニ四億位ヅヅ兌換劵ガ發行サレテ居ルノデ
アリマス、殊ニ昨年卽チ昭和十五年ヲ十四
年ニ比ベテ見マスト、著シク發行高ガ增シ
テ居ルノデアリマス、卽チ十億以上ノ
增加額ニ平均發行高ニ於テナツテ居ルト
思ヒマス、之ヲ最高發行高ニ比較シテ見
マシテモ、稍〓ソレニ類シタ發行高ノ增嵩
ノ傾向ヲ見テ居ルノデアリマス、此ノ度ノ
改正案ヲ御提出ニナツタノモ、要スルニ斯
樣ナ事實ニ鑑ミラレテ、之ヲ抑制スルト云
フ意味モ、相當强イ原因ノ一ツニナツテ居
ルト思フノデアリマス、勿論最近保證準
備ガ二十億、正貨準備ガ七億デ、詰リ二十
七億ノ平常ノ發行高トナルベキ所ヘ、平均
發行高ニ於テモ三十六七億ニモナリ、最高
發行高ハ殆ド五十億ニナツテ居ルト云フ事
實デアリマシテ、限外發行ガ殆ド常習的ニ
ナツテ居ルノデ、ソレ等ニ鑑ミラレテ、此
ノ改正案ヲ立案セラレタコトモ勿論デアリ
マセウガ、一面ニ於テハ私ハ發行高ノ餘リ
ニ急激ニ增加シテ居ルコトニ對シテ、之ヲ
「チェック」シヨウト云フ考ヘモ此ノ立案ノ
中ニアルト思フノデアリマスガ、此ノ點如
何デアリマセウカ、ソレカラ斯樣ニ兩三年
來著シク發行高ノ增加シタル原因ハ、何レ
ニアルカト云フコトニ關シテ大藏當局ノ御見
解ヲ伺ヒタイノデアリマス、物價騰貴ノ割合
ヲ見マスト、左程甚ダシイ騰貴ヲ見ナイノデ
アリマス、一昨年マデハ相當著シキ物價騰貴
ヲ見タノデアリマスガ、昨年カラ本年ニ亙ツ
テハ微騰ノ程度デ、ソレ程甚ダシキ增加ヲ見
ナイノデアリマス、然ルニドウモ發行高ノ方
ハ非常ニ多クナツテ居リマス、私ノ見タ所デ
ハ發行高ノ方デハ昭和十三年ノ百二十八ニ對
シテ十四年ガ二百七十六ト云フヤウナ非常
ナ急激ナ增加ノ數ヲ示シテ居リマス、然ル
ニ物價ノ指數ハ、十二年卽チ戰爭ノ起リマ
シタ年ガ二百五十八デ、昨十五年ガ三百九
ニナツテ居リ、多少上ツテ居リマスケレド
モ、兌換劵ノ發行高ノ指數ト比ベマスト、
其ノ間ニ非常ナ差ガアルノデアリマス、サ
ウスルト價格騰貴ノ爲ニ兌換劵ガ增發サレ
タト云フコトモ、是ハ適當ナ解釋トモナラ
ヌヤウニ思ハレル、然ラバ生產數ハドウ
カト云フト、是レ亦多少ハ殖エテ居リマス
ケレドモ、殆ド餘リ多クノ增加ヲ見ナイ、
殊ニ昨年ノ下半期ニ至リマシテ、御承知ノ
通リニ生產高ハ寧ロ減ツテ居ルト言ウテ宜
イヤウナ、實ニ悲シムベキ狀態デアリマス、
ソレニ近來生產ノ擴充ト云フ點ニ向ツテ、
政府モ全力ヲ注イデ御盡力ニナリ、又當院
ニ於テモ屢〓其ノ事ガ論ゼラレテ居ルノデア
リマス、生產數ノ少イコトハ一面ニ取引
數ノ少イコトヲ示スモノデアリマスカラ、
物價モ餘リ上ラズ、生產指數モ寧ロ足踏ノ
狀態デアリ、隨テ商品ノ取引モ餘リ殖エナ
イ、然ルニ兌換劵ノ發行高ノミガ急激ノ增
加ヲスルト云フコトハ、如何ニモ私共ハ分
ラナイコトデアリ、又隨テ是ハ國家ノ爲ニ
憂フベキ事柄デアルト思フノデアリマス、
其ノ原因ヲ先ヅ明カニスルト云フコトガ、
是ノ救濟ノ第一ノ手段デハナイカト考ヘマ
スルノデ、之ニ向ツテ政府ノ御見解ヲ伺ヒ
タイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=41
-
042・相田岩夫
○相田政府委員 先ヅ第一ノ御質問ハ、兌
換銀行劵ノ發行高ヲ抑制スルト云フ考ヘ
ガ、今囘ノ兌換銀行劵發行制度改正案ノ要
素ニナツテ居ルカドウカト云フ御尋ネノヤ
ウニ伺ツタノデアリマスガ、其ノ點ニ付キ
マシテハ此ノ改正ノ制度ニ依リマシテ、最
高發行限度ヲ決メマス時ニハ、各般ノ金融
經濟情勢ヲ勘案シ、且ツ政府ノ金融經濟ニ
關スル政策トモ睨合ハセテ之ヲ決定スルノ
デアリマスカラ、其ノ意味ニ於テ通貨ノ量
ヲ適當ニ調整スルト云フ考ヘハ、勿論入ツ
テ居ル譯デアリマス、尙ホ他ノ一般ノ金融
通貨政策トモ相俟ツテ、通貨ノ量ガ國民經
濟ノ活動ニ比較シマシテ過度ニナリマセヌ
ヤウニ、通貨ノ價値、信用ノ維持ヲ圖ルコ
トヲ目標ニシマシテ、此ノ發行制度ノ運用
ノミナラズ、他ノ各般ノ政策モ實行シテ行
キタイト考ヘテ居リマス、次ニ兌換銀行劵
ノ增加ノ原因ニ付キマシテ、ドウ考ヘルカト
云フ御尋ネデゴザイマス、事變以來兌換銀行
劵ノ發行高ガ漸次增加シテ參リマシタコトハ、
只今ノ仰セノ通デアリマシテ、從來其ノ主要
ナル原因トシテ考ヘラレテ居リマスモノハ、
第一ニハ軍事費ノ支出ガ增大シマシテ、政府
資金ノ撒布ガ巨額ニ上リ、殊ニ軍需品關係
會社ノ勞働人員ノ增加竝ニ賃銀ノ昂騰ニ依
リマシテ、現金通貨ノ需要ガ增大シテ、其ノ市
場滯留ガ多量ニ上ツテ居ルコトガ一ツデア
ルト存ゼラレマス、第二ニハ物資ノ生產ノ關
係デアリマスガ、只今御話ノヤウナ事情モ
最近ニ於テハ或ハアルカモ知レマセヌガ、
事變以來ノコトヲ考ヘテ見マスルト、何ト
言ツテモ物資ノ生產ノ增加、其ノ取引ニ伴
フ通貨ノ需要ガ增大シテ居ルコトハ否ムコ
トガ出來ナイト思フノデアリマス、第三ニ
ハ朝鮮銀行及ビ臺灣銀行、兩行ノ銀行劵ノ
準備ニ充當セラレマスル兌換銀行劵ノ額ガ、
相當增加シテ居ルコトデゴザイマス、サウ
云フヤウナ原因デ漸次兌換銀行劵ノ發行
高ハ增加シテ參ツタノデアリマス、特ニ昨
年ニ入リマシテカラ其ノ增加ガ顯著デアル
ト云フ原因ハ、大體先ヅ第一ニハ歐洲戰爭ノ
影響ニ依リマシテ、海外輸入物資竝ニ生絲
等ノ輸出物資ノ價格騰貴ノ爲ニ、直接間接
ニ物價高ヲ來シマシテ、ソレダケ通貨ノ需要
ガ殖エテ居ルト云フコト、第二ニハ米ヤ繭
ト云ツタ農產物ノ價格ノ昂騰ニ因リマシテ、
農村方面ニ流出シテ居リマスル通貨ノ相當
部分ガ、其ノ儘農村ニ滯留シテ居ルヤウニ
見ラレルト云フコト、第三ニハ特ニ最モ大
キナ原因トシテ考ヘナケレバナリマセヌコ
トハ、現金取引ノ一般ニ增加シテ參リマシタ
コトデアリマス、米トカ炭トカ云フ生活必
需品ノ購入ニモ現金ヲ必要トスルコトガ段
段多クナツテ參リマシタ爲ニ、家庭ニ於
キマシテモ現金ノ手持高ガ多クナケレバナ
ラヌヤウニナツテ來テ居リマスシ、商人間
ノ商品ノ買付ニ致シマシテモ、現金ノ授受
ノ行ハレルモノガ多イト云フヤウナ工合
二、一般的ニ現金取引ノ增加シテ來テ居リ
マスコトガ、兌換銀行劵發行高ノ非常ニ殖
エテ來テ居リマス重要ナ原因デハナイカト
考ヘル次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=42
-
043・武田徳三郎
○武田委員 只今ノ銀行局長ノ御說明ハ大
體諒承致シマシタ、今御說明ノ事實ハ其ノ
通リデアルト思ヒマスガ、併シ其ノ中デ例
ヘバ軍ノ買上ニ對スル資金ノ撒布ガ多クナ
ツタト云フコトモ事實デアリマセウシ、隨
テ又工場ノ勞働者ガ多クナツテ、勞働賃ノ
支拂等ニ現金ヲ要スルヤウニナツタト云フ
コトモ是モ事實ダト認メマス、又農產物ノ
價格ガ高クナツタ爲ニ、農村ヘ落チタ金ガ
其ノ儘ニ停滯シテ居ルト云フコトモ認メル
ノデアリマス、併シソレ等ハ分析シテ見レ
バサウデアリマスガ、政府ノ豫定サレ希望
サレテ居ル通リニ、ソレ等ガ貯蓄トナツテ
還流シ、公債消化ニ向ケラレルト云フコト
デアレバ、私ハソレガ兌換劵增發ノ一時的
ノ原因ニナルト致シマシテモ、絕エズ斯樣
ニ前年度ニ比較シテ十億圓以上ノ兌換劵、
平常增發シナケレバナラヌ原因トハ認メラ
レナイノデナイカ、要スルニ其ノ勞働者ノ
手ニ落チタ金、若クハ農村ニ落チタ金ガ金
機關ニ還流シナイト云フコトガ、本當ノ原
因ヂヤナイカト思ヒマス、若シ左樣ナ、現
金デ支拂ツタ金ガ還流シナイト云フコトデ
アレバ、公債ノ消化ハ絕對不可能ト云フ結
論ニナルノデハナイカト私ハ思フノデアリ
マス、ソレカラ今ノ御說明ニナツタ事實ハ
認メマスケレドモ、更ニ其ノ働キノ上カラ
見レバ、ソレガ還流シテ公債消化ニ向フダ
ケノ働キガ出來ヌト云フコトハ、本當ノ原
因ト見ルベキモノヂヤナイカト、斯ウ云フ
風ニ私ハ考ヘルノデアリマスガ、如何デゴ
ザイマスカ、更ニモウ一ツハ一昨年來闇取
引ガ非常ニ盛ニナツテ、普通ニ大キナ取引
ハ言フマデモナク小切手デヤリマス、闇取
引トナレバドウシテモ現金取引デナケレバ
ナラナイノデ、是ガ兌換劵增發ノ事實上ノ
重大ナル原因ヲ成シテ居ルノヂヤナイカ
下、私ハ見テ居ルノデアリマスガ、今ノ御
說明ニ最モ重大ナル一ツノ「ファクター」ダ
ト思フモノガ落チテ居ルノハ、ドウ云フ譯
デアラウカト私ハ思フノデスガ、寧ロ或ハ
大藏當局ハソレヲ御承知デアルケレドモ、
兎ニ角闇取引ガ多クナツタト云フ事實ヲ裏
書スルヤウナコトヲ惧レテ、今ノ原因ノ中ニ
御數ヘニナラヌノデハナイカ、併シ事實ハ
事實トシテ經濟ノ問題ハ其ノ事實ニ基イテ
互ヒニ考察シナイト、本當ノ救濟策ハ立テ
ラレヌノヂヤナイカト考ヘマスカラ、此ノ
二點ニ對シテ銀行局長ノ御意見ヲ今一應御
伺ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=43
-
044・相田岩夫
○相田政府委員 政府資金ノ撒布等ニ依リ
マシテ、市場ニ出マシタ通貨ノ還流ガ惡ク、
其ノ爲ニ公債ノ消化モ十分ニ行カナクナ
ル虞ガアリハセヌカ、兌換劵ノ發行高ノ增
加ガ其ノ還流ガ惡イ、金融機關ニ資金ノ集
マツテ來ルコトガ惡イノガ最大ノ原因デハ
ナイカト云フ點ニ付テ考ヘテ見マスルト、
撒布サレタ資金ガ還流致シマスマデニハ相
當ノ時日ヲ要シマスルシ、兎ニ角先程申シ
マシタヤウニ事情ニ依リマシテ、世間デ需
要サレル通貨ノ分量ト云フモノガ殖エテ居
ルノデアリマスカラシテ、自然發行高ガ餘
計ニナルト云フコトハ、是ハ已ムヲ得ナイ
ノデアリマス、併シ其ノ爲ニ公債ノ消化ガ
惡クナルト云フヤウナコトガアツテハ、是
ハ勿論イケマセヌ、出來得ル限リ撒布サレ
夕資金ハ之ヲ貯蓄奬勵ニ依リマシテ、金融
機關ニ集メ、或ハ直接公債ヲ賣出スコトニ
依リマシテ、之ヲ集メルト云フヤウナ方法
デ、出來得ル限リ之ヲ公債消化、其ノ他生
產力擴充ニ必要ナ方面ニ是ガ〓ハリ得ルヤ
ウニ、各種ノ金融政策ハヤツテ行カナケレ
バナラヌモノト存ジ、又サウ云フ風ニ現ニ
努力ヲ致シテ居ル次第デゴザイマス、公債
ノ消化ガ惡イ、ソレガ兌換銀行券ノ發行高
ノ殖エテ居ル原因ニナツテ居ルノデハナイ
カト云フコトモ、屢〓論ゼラレルノデアリマ
スガ、併シ是ハ先程申シマシタヤウナ原因
ニ依ツテ通貨ノ所要量ガ殖エタ爲ニ、ソレ
ダケ何ト言ヒマスカ、通貨ノ需要ガ殖エタ
爲ニソレダケ公債消化ノ方ニ〓ハル金ガ少
ナカツタト云フ風ニ其ノ點ハ言ヘルト思フ
ノデアリマス、全體トシテ見マシテ、取引
方法ノ變化ト云フコトガ一番大キナ發行高
增加ノ原因ダト思ハレマスノデ、此ノ點ニ
付キマシテ、今後漸次改善ヲ加ヘテ行キマ
スルナラバ、卽チ現金取引ノ今日多クナツ
テ居リマスル原因ハ、取引ノ機構ガ從來ノ自
由經濟カラシテ、段々ニ統制主義ニ變ツテ
來ツツアル此ノ過渡期ノ現象トシテ、特上
現金取引ト云フモノガ多クナツテ居ルト思
ハレマスノデ、此ノ取引ノ機構ガ更ニ改善
セラレマシテ、信用取引ガ又多クナルト云
フコトニ之ヲ向ケテ行キマスルナラバ、將
來此ノ方面カラノ原因ニ依ル通貨ノ增發ト
云フコトハ大イニ之ヲ「チエック」シ得ル
モノデハナイカト考ヘテ居ル次第デゴザイ
マス、ソレカラ闇取引ノ橫行ガ兌換銀行劵
發行高ノ增加シテ居ル大キナ原因デハナイ
カト云フ御尋ネデゴザイマスガ、物價政策
ノ徹底ニ依リマシテ、闇取引モ非常ニ少ク
ナリツツアルヤウニ思ハレマス、私ガ先程
現金取引ノ多クナツタト云フコトヲ原因ノ
一ツトシテ申上ゲマシタガ、是ハ別ニ闇取
引ガ多クナツタカラト云フコトヲ申上ゲテ
居ルノデハアリマセヌガ、闇取引ト云フモ
ノガ假ニ原因デアツタトシマシテモ、此ノ
闇取引ト云フモノハ漸次取締ノ勵行ニ依ツ
テ少クナツテ居リマスルシ、今後一層サウ
云フコトガナクナルノデハナイカト考ヘテ
居ル次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=44
-
045・武田徳三郎
○武田委員 今ノ銀行局長ノ御說明ヲ承ル
ト、現金取引ガ餘計ニナツタ爲ニ、兌換劵
ノ增發ニナツタノデアルガ、併シソレハ統
制經濟ノ過渡的ノ現象デアツテ已ムヲ得ナ
イノデアツテ、何レ將來ニハ左樣ナルコト
ハ漸次改善サレルデアラウト云フヤウナ意
味ノ御答辯ヲ承リマシタガ、果シテサウ云
フ御見込デアリマスト、今日ノ此ノ澤山ノ
通貨ノ流通モ左程危險性ガナイ、先ヅソレ
ハ當然ノ結果ダ、將來ハ適當ニ「チェック」
ヲサレル見込ガ十分アルト云フ御考ヘデ、
詰リ是ハ所謂法案ニアル如ク眞ニ臨時特例
ニ關スルダケノモノデアツテ、將來ハ又、
尤モ此ノ法案ニモ一年限リトアリマスカラ、
此ノ法案ノ趣旨カラ言ヘバ、眞ニ一時的臨
時的ノモノト云フ法律案ニ相違ナイノデア
リマスガ、遠カラザル將來ニ於テ、又「ノル
さんナ狀態ニ復シ得ルト云フ御見込ノ下
ニ、御立案ニナツタノデアリマスカ、更ニ
同ジ意味ノコトヲ他ノ方面カラ、モウ一ツ
伺ツテ置キタイノデアリマス、今日ハ名義
ハ兌換銀行劵トアリマスケレドモ、申スマ
デモナク決シテ兌換銀行劵デハナイノデア
リマス、今日ハ事實上最早數年來管理通貨
ニナツテ居ルノデアリマス、ソレデ歐米ノ
方面ノ學者、實際家ノ意見ノ趨勢カラ見マ
シテモ、我ガ國ニ於ケル經濟界ノ實情、竝
ニ評論家ナドノ意見ヲ見マシテモ、ドウシ
テモ將來ハ管理通貨ニナル傾向ガアルト云
フコトガ、殆ド常識ノヤウニナツテ居ルト
私ハ信ズルノデアリマス、是ハ私モ亦管理
通貨ハ、最早必然ノ運命ダト云フヤウナ考
ヘ方ヲシテ居ルノデアリマス、大藏當局ニ
ハ、ヤハリ是ハ法律ノ通リ、一年ノ內カ二
年ノ內カ知リマセヌガ、又完全ナ兌換銀行
劵トシテ存置スル時ガ、遠カラズ來ルト云
フ御見込ノ下ニ、此ノ立案ヲサレテ居ルノデ
アリマセウカ、又隨テサウ云フ兌換ノ方法
ニ依ツテ發行高ノ增額スルコトモ「チェック」
出來ルヤウナ時代ガ遠カラズ來ルト云フ御
見込デアリマセウカ其ノ點ヲ一ツ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=45
-
046・相田岩夫
○相田政府委員 私ガ先程申上ゲマシタノ
ハ、此ノ經濟統制ノ過渡的現象トシテ、現
金取引ガ多クナツテ居ルガ、此ノ原因ニ依
ル通貨ノ增發ト云フコトハ、是ハ取引機構
ガ又新シイ制度ノ下ニ整備シテ來レバ、防
ゲルデアラウト云フコトヲ申上ゲタノデア
リマシテ、此ノ兌換銀行劵ノ發行制度其ノ
モノニ付キマシテハ、此ノ法案ハ仰セノ通
リ臨時立法デアリマス、併シ將來更ニ恆久
的ナ立法ヲ致シマス場合ニ於テ、果シテ從
來ノヤウナ正貨準備ト云フモノノ增減ニ依
リマシテ、通貨量及ビ通貨ノ價値ヲ、自動
的ニ調節スルト云フ建前ノ通貨制度ガ、執
リ得ルカドウカ、其ノ點ハ自ラ其ノ時ノ情
勢ノ如何ニ依ルコトト思ヒマス、併シ私ガ
考ヘル所ニ依リマスレバ、此ノ改正案ニ
盛ツテアリマスヤウナ發行制度ノ思想、只
今御話ノ中ニモアリマシタ管理通貨ノ思想
ト云フモノハ、今後ノ通貨制度トシテハ、
寧ロソレガ主體ニナツテ行クノデハナイカ
ト、私共モ考ヘテ居ル次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=46
-
047・武田徳三郎
○武田委員 次ニ伺ヒタイコトハ、此ノ法
案ニモアリマスル如ク、最高發行額ヲ決メ
ルノハ、法律ニ依ラズシテ、大藏大臣ニ委
任サルルコトニナルヤウデアリマスガ、其
ノ場合ニ大藏大臣ガ最高額ヲ決定サルル場
合ノ標準ハ、如何ナルモノヲ標準トサルル
御見込デアリマセウカ、此ノ點ヲ一ツ伺ヒ
タイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=47
-
048・相田岩夫
○相田政府委員 要スルニ大キク抽象的ニ
申シマスレバ、通貨ノ健全性ヲ保持スルト
同時ニ、經濟界ノ必要トスル通貨量ヲ圓滑
ニ供給スルト云コトヲ目標ト致シテ決定ス
ルノデアリマス、而シテ其ノ場合ニ於キマ
シテハ、内外諸般ノ經濟金融事情ト云フモ
ノヲ十分〓究シマシテ、之ニ照應スルヤウ
ニ、且ツ政府ノ各般ノ經濟金融政策ト睨合
ハセテ、其ノ發行限度ヲ決メルノデアルト
申上ゲナケレバナラヌノデアリマス、此ノ
內外諸般ノ經濟金融情勢ト云フ中ニハ、生
產、配給、物價、國ノ財政、金融等、般
經濟取引活動ノ狀況ニ付テ考慮スルノハ勿
論特ニ通貨ノ狀況、就中銀行劵發行ノ趨
勢ニ十分意ヲ用ヒマシテ、且ツ是ガ徹底ニ
當リマシテハ、事柄ノ重要性ニ鑑ミテ、特
ニ愼重ナル取扱ヲ致スベキモノト考ヘテ居
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=48
-
049・武田徳三郎
○武田委員 私ハ只今ノ御答辯ニハ甚ダ滿
足致シ兼ネマス、元來貨幣ノ發行ト云フコ
トハ國民生活ニ重大ナル影響ノアルコト
デアツテ、本來申セバドウシテモ是ハ法律ニ
其ノ標準ヲ規定スベキモノデアルト私ハ思
フノデアリマス、現ニ御承知ノ通リニ「フラ
ンス」ノ如キハ、多年ノ間最高發行額制度ヲ
執ツテ居リマシタガ、ソレハ皆法律デ規定
ヲ致シテ居ツタノデアリマス、是ハ當然サ
ウアルベキコトダト思フノデアリマスガ、
併シ今日ハ戰時デモアリマシテ、急速ニ事
態ニ卽應スルヤウニ機敏ナ措置ヲ執ルコト
ヲ要スルノデアリマスカラ、私共モ此ノ發
行額ヲ決定スル權能ヲ大藏大臣ニ委任スル
コトニ、敢テ反對スルモノデハアリマセヌ
ガ、ソレニハ元來法律ニ規定スベキモノ
ヲ大藏大臣ニ委任スルノデアリマスカラ、
其ノ條件ト云フモノハハツキリ定メテ置
イテ願ハナケレバナラヌ、今銀行局長ノ仰
シヤル如クニ、經濟上ノ諸般ノ情勢ト睨合
ハスト云フコトハ、當然ナコトデアリマス
ケレドモ、サウ云フ空漠ナ、抽象的ナコト
デハ、甚ダ不滿足ダト申上ゲナケレバナラ
ナイシ、又左樣ナ抽象的ナコトシカ御示シ
ニナラヌト云フコトハ、如何ナルモノデア
ラウカト私ハ思フノデアリマス、或ハ前年度ノ
最高發行額ヲ標準トシテ、之ニ向ツテ斯ウ云
フ斟酌ヲ加ヘルトカ、或ハ前年ノ平均發行額
ヲ標準トシテ、ドウ云フ場合ニハソレニドウ云
フ割增ヲスルカ、ドウ云フ場合ニハ之ヲ割下
ゲヲスルトカ、或ハ最モ强イ「ファクター」ト
シテ物價ノ指數ヲドウ云フ工合ニソレニ加味
スルトカ、或ハ又取引ノ狀況、生產額ノ狀況
ト云フヤウナモノヲ、ソレニドウ云フ工合
ニ加味スルカト云フヤウナコトヲ、大體ニ
於テ具體的ナ標準ヲ御定メニナラヌト云フ
コトハ、如何ナモノデアラウカ、近來兌換
劵ノ臨時措置ニ關スル法律案ガ出ルト云フ
コトガ世間ニ噂サレマシテ、新聞ヤ雜誌ニ
ハ屢〓其ノコトガ論ゼラレテアツタ、大藏省
デハ前年度ノ最高發行額ヲ標準トスルカ、
平均發行額ヲ標準ニスルカ、ソレ等ノコト
ニ向ツテハ〓究中デアル、何レイヅレカニ
決定スルダラウト云フヤウナ新聞ノ報道モ
アツタノデアリマス、是ハ極メテ國民ノ經
濟生活ニ重大ナ影響ノアル事柄デアルコト
ハ申マスデモナイコトデアリマスカラ、大
藏當局トシテハ餘程愼重ニ其ノ點ハ御〓究
ニナツタモノダト思フノデアリマス、又吾
吾立法ニ參與スル者ト致シマシテモ、先程
來申上ゲタ通リニ、本來ナラバ是ハ法律ニ
規定スベキ事柄デアルト私共ハ信ジマスル
見地カラ、モウ少シク具體的ニ其ノ標準ヲ
御示シニナラヌデハ、ドウモ滿足致シ兼ネ
ルヤウナ氣ガスルノデアリマスガ、ドウ云
フ御見解デアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=49
-
050・相田岩夫
○相田政府委員 御尋ネノ御趣旨ハ洵ニ御
尤デアリマシテ、大藏大臣ガ發行限度ヲ決
定スルコトハ、是ハ見方ニ依リマシテハ或
ハ何ヲ基準ニシテ大藏大臣ガ決メルノデア
ルカ、サウ云フ大キナ權限ヲ與ヘルト云フ
コトニ付テ不安ガアル、ソコデ何カ之ニ一
定ノ基準ヲ與ヘルコトガ出來ナイダラウカ
ト云フコトハ、實ハ私共モ色々〓究ヲシテ
見タノデアリマスガ、今日ノ經濟界ノ趨勢
ニ鑑ミマシテ、適當ナ基準ヲ法文ノ上デ明
定スルト云フコトハ、實際上困難デゴザイ
マシテ、之ヲ强ヒテ法定スルト致シマシテ
モ、或ハ基準タル實際上ノ意味ヲ喪失シテ
單ナル空文ニ終ツテシマフ、或ハ窮屈ニ過
ギテ臨機ニ彈力性ノアル措置ヲ執リ得ナイ
結果ニナルカ、何レカヲ出デナイモノニナ
ツテシマフノデゴザイマス、若シ强ヒテ何
等カノ基準ヲ設ケヨウトシマスレバ、例ヘ
バ兌換銀行劵ノ發行ノ過去ノ實例ヲ取リマ
シテ、前年中ノ最高發行高ヲ以テ一應ノ限
度トスルト云フヤウナコトガ、考ヘラレル
ノデアリマスガ、ソレモ單ニ過去ニ於テ其
ノ程度ノ發行ガアツタト云フ以外ニハ、ド
ウモ考ヘテ見テ合理的ナ根據モ見出スコト
ガ出來マセヌノデ、法律上大藏大臣ガ發行
限度ヲ決メルニ付テ、之ヲ覊束スルヤウナ
基準ヲ設ケルコトハ、之ヲ採ラナカツタノ
デアリマス、併シナガラ大藏大臣ガ其ノ發
行限度ヲ決メルト致シマシテモ、決シテ唯
好イ加減ニ決メルノデハゴザイマセヌノデ、
先程私ガ一應申上ゲマシタコトヲ、銀行劵
ノ趨勢ニ付テハドンナ考ヘ方デヤツテ行ク
カト云フコトヲ、更ニ御話申上ゲマスト、
今考ヘテ居リマス所デハ、兌換銀行劵ノ年
中ニ於ケル平均發行高ガドノ位ニナルデア
ラウカト云フコトヲ標準ニスルコトハ勿論
デアリマス、又年中ノ最高發行高、或ハ年
末ニドノ位ニナルデアラウカト云フヤウナ
各般ノコトヲ見ルノデアリマスガ、平均發
行高ヲ見ルニ致シマシテモ、過去ニ於ケル
平均發行高ノ趨勢ガドンナ風デアツタカ、
又各般ノ經濟活動ヲ出來ル限リ考ヘマシテ、
此ノ經濟活動ト只今仰セノ物價ノ關係トヲ
能ク見マシテ、之ニ依ツテ兌換銀行劵ノ平
均發行高ガ、ドノ位ニナルデアラウカト云
フヤウナコトモ見ルノデアリマス、又財政
トノ關係ニ付キマシテハ、國債發行ト銀行
劵ノ關係ニ付キマシテ事變以來ノ趨勢、及
ビ今後ノ見透シト云フモノヲ立テマス、是
等ノ見透シヲ立テルニ付キマシテハ、政府
ノ政策ガ加味サレルノデアリマシテ、例へ
バ事業活動ヲ見ルニ付キマシテモ、非常ニ
細カニ申上ゲルトキリガナイノデアリマス
ガ、例ヘバ就業人員トカ、動力、燃料デア
ルトカ、生產ノ豫想デアルトカ、或ハ運
輸取引、取引ノ中デモ貿易ノ趨勢ハドウ
ナルカ、預金通貨ノ取引ノ趨勢ハドウナ
ルカ、現金取引ハドンナ工合ニ推移スルデ
アラウカト云フヤウナ細カイ點ニ付キマシ
テ、出來ルダケ十分ノ見當ヲ付ケマシテ、
ソレデ以テ此ノ兌換銀行劵ノ平均發行高ト
云フモノヲ見、且ツ其ノ他ニ年末ノ最高發
行高ト云フヤウナモノモ豫想致シマシテ、
ソレデ大體每年度一囘位最高發行高ヲ大藏
大臣ガ決メルコトニ豫定致シテ居ルノデア
リマス、此ノ最高發行限度ヲ法律上一定シマ
シタ「フランス」ノ元ノ發行制度ニ付テ御話
ガゴザイマシタガ、現在ニ於テ外國ノ立法
例ト致シマシテハ、此ノ案ト同ジヤウナモ
ノハナイノデアリマスガ、「ドイツ」、、「イタ
リア」、、「フランス」等ノ現在ノ發行制度ハ
事實上或ハ制度上、發行限度內ニ等シイヤ
ウナ狀態デアリマシテ、我ガ國ニ於テ執リ
マス此ノ制度ガ、審ロサウ云フモノニ比べ
スレバ、一定ノ基準トナルベキ最高發行
額ヲ決メマシテ、之ニ依ツテ經濟界ニモ一
ツノ指標ヲ與ヘ、信用ノ維持ト通貨量ノ調
節ヲ目標ニシテ、ヤツテ行カウト云フ點ニ
付テ、愼重ナ態度ヲ執ツテ居ルモノト考ヘ
ルノデアリマス、此ノ最高發行額ヲ決メル
ニ付テ、先程申シマシタヤウナ各般ノ要素
ヲ取入レテ考ヘ、且ヅ日本銀行其ノ他各方
面ノ意見ヲ十分ニ取入レマシテ、獨斷ニ陷
ルコトノナイヤウニ、適當ナル金額ヲ發行
限度トシテ決定シタイ、申上ゲルコトガ大
變御分リニクカツタカモ知レマセヌガ、大
體左樣ニ考ヘテ居ル次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=50
-
051・武田徳三郎
○武田(德)委員 細カニ御答辯ヲ得マシテ
洵ニ有難ク存ジマス、色々御說明ヲ承リマ
シタガ、要スルニ其ノ時々ノ經濟界ノ狀況
ニ卽應シテ、適當ニ大藏大臣ガ決メルト云
フ結論ノヤウニ承ルノデアリマス、ソレナ
ラバ寧ロ日本銀行ノ總裁ニ御任セニナツタ
方ガ宜イデハナイカ、大藏大臣ハ勿論一國
ノ財政ハ勿論、金融ノ樞機ヲ握ツテ居ラレ
ル方ニハ相違ナイガ、併シ實際ノ其ノ時々
ノ金融ノ情勢ニ通曉シテ居ルモノハ、ドウ
シテモ日本銀行ノ總裁デアルノデアリマス
ガ、サウシテソレヲ又眞ニ經濟界ノ實情ニ
卽應スルト申セバ、外國貿易ノ關係モアリ
マセウシ、季節的ニ商品ノ出〓ルモノモアリ
マセウ、例ヘバ養蠶業デ言フナラバ、繭ノ
出〓ル時期トカ、農產物ノ出〓ル時期トカ、
サウ云フ季節的ノ關係モアリマス、色々ナ
事情デ、ソコニ普通ノオ役所ノ方々デハ
中々敏感ニ感ジ得ナイヤウナコトヲ、金融
業者若クハ實業家ノ方ニハ早ク之ヲ感ズル、
一口ニ申セバ詰リ經濟界ノ實情ニ卽應スル
ト云フノダカラ、結局他ノ言葉デ以テ言ヘ
バ、腰ダメト云フコトニナル、一定ノ標準
ヲ立テ、法律デ規定シナイデ、假令內規デ
アツテモ、先程私ノ申上ゲマシタ通リ、何
等カソコニ二三、若クハ四五ノ「ファクター」
ヲチヤント決メテ、ソレヲ內規トシテ斯ウ
スルノダト云フコトデアルナラバ、是ハ首
肯出來ル、サウデナクテ結局腰ダメデ其ノ
時々ノ財界ノ狀況ニ卽應シテ決メルト云フ
ノデアルナラバ、寧ロ大藏大臣ヨリハ寧ロ
其ノ實際ノ金融ノ衝ニ當ツテ居ル人ガ決メ
テ、サウシテソレニ對シテ大藏大臣ノ認可
ヲ受ケルト云フ形ヲ執ツタ方ガ、實際ノ經
濟界ニ卽應スルコトガ出來ルノデハナイカ
ト思フガ、ドウデセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=51
-
052・相田岩夫
○相田政府委員 最高限度ヲ決メルニ付キ
マシテハ、單ニ客觀的ナ金融經濟ノ情勢ヲ
見テ、ソレニ卽應スルト云フダケデハアリ
マセヌ、更ニ政府ノ金融、經濟政策ヲソコ
ニ反映サセマシテ、之ヲ決メル必要ガアラ
ウト存ゼラレルノデアリマス、隨ヒマシテ
今日金融政策ヲ掌ツテ居リマス大藏大臣ニ
於テ、之ヲ決定スルコトガ適當デアルト存
ゼラレマス、尙ホ念ノ爲ニ申上ゲテ置キマ
スガ、此ノ最高類ヲ決メマスノハ、此ノ法
文ヲ讀ミマスレバ、隨時何時デモ頻繁ニ變
更シ得ル建前ニナツテ居リマスガ、實際ノ
考ヘ方ハ、是ハ大體ニ於テ基準トナルベキ
發行高ヲ決メルト云フ考ヘ方デアリマス、
隨テ先程申上ゲマシタヤウニ、恐ラク每年
度初メ一囘之ヲ定メルコトニナルモノト存
ゼラレマス、サウシテ年末等特ニ臨時的ナ
金融ノ繁忙期ニ於キマシテハ、制限外發行
ニ依ツテ之ヲ賄フノデアル、其ノ制限外發
行ノ制度ハ現在通リデアリマシテ、日本銀
行ガ申請ヲシテ之ヲ大藏大臣ガ認可スル、
此ノ建前デ行ク、斯ウ考ヘテ居ルノデゴザ
イマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=52
-
053・武田徳三郎
○武田(德)委員 只今ノ御說明デハ尙ホ私
ハ十分滿足シナイノデアリマスガ、併シ同
ジコトヲ繰返シ論議シテ見テモ仕樣ガアリ
マセヌカラ、大藏當局ノ御意見ヲ唯承ルト
云フコトニ致シテ置キマシテ、更ニ今申上
ゲタコトニ關聯シテ、最高發行制度ヲ執ル
場合ニハ、外國ノ例ナドヲ見マシテモ、ド
ウシテモ兎角發行高ガ多クナル傾向ハ、是
ハ免レヌノデアリマス、現ニ其ノ標本トシ
テ、「フランス」ノ如キハ御承知ノ通リ相當
長イ間最高發行制度ヲ執ツテ來タノデアリ
マスガ、遂ニ餘リニ發行高ノ增嵩スルニ堪
ヘ兼ネテ、御承知ノ通リ一九二八年ニ之ヲ
廢メテシマツタノデアリマス、私ノ承ル所
ニ依ルト、前ノ「ヨーロッパ」戰爭ノ一、二
年前、卽チ一九一一年ニハ、「フランス」ノ
最高發行高ハ法律ヲ以テ六十九億「フラン」
ト決メテアツタノダサウデアリマス、ソレ
ガ之ヲ廢止シタ一九二八年ニハ五百九十億
「フラン」ニ增加シタ事實モアルノデアリマ
ス、勿論是ハ唯濫發シタト云フコトデナク
テ、「フランス」モ一種ノ「インフレーショ
ン」ニ襲ハレテ、遂ニ「ポアンカレー」ノ手
デ平價切下ヲシタヤウナ時代モアリマスカ
ラ、之ヲ以テ總テヲ律スルコトハ勿論出來
マセヌケレドモ、ドウモ此ノ兌換ノシナイ
銀行劵ト云ヘバ卽チ政府紙幣ト變ラヌノデ
アリマスガ、管理通貨ノ制度ニ於テ一番恐
ルベキコトハ、申スマデモナクドウシテ適
當ナル發行額ヲ決メルカ、サウシテソレヲ
經濟ノ實情ニ副ハシメルカト云フコトガ、
一番重大ナ問題デ、ソレガ旨ク行ケバ此ノ
管理通貨ハ最早滿點ノモノデアツテ、疾ク
ニ是ハ實際ニ行ハレテ居ナケレバナラヌ筈
ナノデアリマス、如何ナル金屬貨幣論者ト
雖モソレハ異論ノアラウ筈ハナイガ、唯此
ノ兌換ノ出來ナイ政府紙幣ノヤウナ發行劵
デ、最高發行劵制度ヲ執ルト云フ場合ニ、
ドウシテ其ノ最高發行額ヲ適當ニ決メルカ
ト云フコトニ、實ハ難點ガアルノデアリマ
ス、ソレ故ニ是ハ、抽象的ナラバ、今銀行
局長ガ言ハレル通リ、諸般ノ政府ノ政策、
經濟界ノ實情、物價ノ情勢、凡ユル情勢ヲ
見極メテ、ソレニ適當スルヤウニト云フコ
トハ、ソレハ洵ニ結構ナコトデアルガ、偖テ
實際ニ當ルト中々サウハイカヌノデアリマ
ス、私ハ寧ロ理想カラ申セバ、最初ノ一囘
ハ、凡ユル大藏當局ノ御意見ヲ中心トシテ、
吾々ノ意見モ十分ニソレニ織込ンデ、其ノ
時ノ社會情勢ヲモ十分考察致シテ、サウシ
テ最初ノ一囘ハ法律デ決定ヲシテ、ソレヲ
基準ト致シマシテ、今度ハ年々ドウ云フ標
準デドウ云フ「ファクター」ニ依ツテソレヲ
取捨スルカト云フ其ノ決メ方ヲ法律ニ決メ
テ、之ヲ大藏大臣ニ一任スルカ、日本銀行
總裁ニ一任スルト云フヤウナコトガ私ハ宜
クハナイカト思フ、是ハ私ノ試案デアリマ
スガ、併シ旣ニ法律案ガ出テ居ルノニ左樣
ナコトヲ申シテモ、是ハ實行不可能ノコト
デアリマセウカラ、私ハサウ云フ風ナ考ヘ
方ヲシテ居ルト云フコトヲ唯申上ゲルダケ
デアリマスガ、ソレニ致シマシテモ、ドウ
シテモ之ヲ濫リニ增發ニナラナイヤウニ、
而モ又餘リニ「デフレーション」ニナツテモ
是亦困ルコトデアリマスカラ、之ヲ本當ニ
今局長ノ言ハレル通リニ、財界ノ實情ニ卽
應セシムルト云フコトハ餘程至難ナコトデ
アルト思ヒマスガ、已ムヲ得ズンバ、前年
度ノ平均發行額ニ物價ノ指數ヲ織込ンデ、
ソレヲ基準ト致シマシテ、其ノ他ノ狀況ハ
大藏大臣ガ腰ダメデ、今ノ政府ノ政策其ノ
他ノ狀況ヲ織込ンデ御決メニナルト云フ位
ナコトノ、具體的ナ意見ヲ御定メニナツテ
置クコトガ必要デハナカラウカ、私ガ最高
發行額ヲ採ラズニ平均發行額ト云フコトヲ
申シタノハ、最高發行額ノ中ニハ近來ノ
日本ノ實例カラ申シテモ、ドウシテモ年末
デアルトカ六月ノ半期決算ノ時トカト云フ
時ニハ限外發行ノ出ルノハ當然デアリマ
ス、デアルカラ寧ロ私ハ、此ノ最高發行額
ハ何レカト云ヘバ、幾ラカ少ナイ方ニ定メ
テ置イテ、サウシテ限外發行ヲ認メテ、其
ノ代リ限外發行ニ付テハ、今日ノヤウナ三
分ト云フ率ヲモツト上ゲテ、四分若クハ五
分位ニ限外發行稅ト云フモノヲ上ゲテ、サ
ウシテ其ノ增發ヲ「チェック」スルト云フ手段ヲ
御執リニナツタラ如何ナモノデアラウカ、
斯樣ニ思フノデアリマスガ、其ノ點ニ付テ
政府ノ御所見ハ如何デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=53
-
054・相田岩夫
○相田政府委員 只今色々示唆ニ富ンダ御
意見ヲ伺ツタノデアリマスガ、前年ノ平均發行
高ニ物價指數ヲ勘案シテ、サウ云フモノヲ基
礎ニシテ、更ニ他ノ「ファクター」ヲ附加ヘテ決
メタラト云フ御意見ニ付キマシテハ、私共ノ
考ヘテ居リマス所モ亦、大體同ジヤウデア
リマシテ、各般ノ要素ヲ考ヘル中ニハ、平均
發行高ノ過去ニ於ケル趨勢ト云フヤウナモ
ノハ勿論之ヲ見マシテ、他ノ諸般ノ要素ト
綜合シマシテ之ヲ決メテ行キタイト思ツテ
居ルノデアリマス、ソレカラ發行最高額ハ
少ナ目ニ決メテ、限外發行稅ヲ高クシテ、
之ニ依ツテ通貨ノ膨脹ヲ阻止スルコトガ適當
デハナイカト云フ御意見ノヤウニ拜承致シ
タノデアリマス、限外發行ノ場合ニ於ケル
發行稅ヲ高ク致シマシテモ、實際問題トシ
テ金利ノ引上ヲソレニ依ツテ結果スルコト
ハ、中々困難デハナイカト思ハレマスノデ、
制度ノ上ニ於キマシテハ三分ヲ下ラザルト云
フ今マデノ制度ヲ其ノ儘踏襲致シテ居ルノ
デアリマスカラ、必要ニ應ジマシテハ御
意見ノヤウナ點モ考ヘナケレバナラヌ場合
モ或ハアルカモ知レマセヌガ、限外發行稅ヲ
今日引上ゲルコトニ依ツテ、金利引上ヲス
ルコトガ出來ルカドウカ、ソレハ可ナリ問
題デアルト考ヘルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=54
-
055・武田徳三郎
○武田委員 次ニ御伺ヒ申シタイコトハ、
今度此ノ改正ニ依リマスト〓日銀ノ正貨準
備竝ニ保證準備モ日本銀行ノ自由ニナルヤ
ウニ私ハ解シテ居リマス、先程局長ノ御話
ニ依ルト、通貨管理ハ將來ノ幣制ノ行先
ハサウ云フ方向ニ向フダラウト云フコトヲ
旣ニ御認メニナツテ居ルノデ、管理通貨ハ
大勢デアルト云フ私共ノ意見ト同ジデアル
ト云フコトヲ御發表ニナツタノデアリマス、
サウト致シマスレバ、現在日本銀行ノ持ツ
テ居ル五億ノ正貨ハ、政府ノ金資金特別會計
ヘ移ス方ガ適當デハナイカト私ハ思ヒマス、
現ニ「イングランド」銀行モ御承知ノ通リニ、
戰爭ガ始マツテ以來、程ナクシテ其ノ持ツ
テ居ル相當多額ノ「イングランド」銀行ノ正
貨準備ニ充テラレテ居ル金ヲ、政府ノ爲替
調整勘定ニ移シ替ヘタノデアリマス、元來
今日此ノ管理通貨ヲ認メルト云フコトハ、國
內的ニハ最早兌換ノ必要ガナイ、唯外國ト
ノ貿易尻ノ決濟ニノミ正貨ガ要ルノダト云
フ觀念カラ出テ居ルノデアリマスカラ、殊ニ
四十億モ通貨ヲ出ス今日ニ於テ、實際國民ニ
對スル信用ト云フ上カラ言ツテモ、何モ日
本銀行ニ五億ノ正貨ガアツタカラ、國民ガ
信用スルトカ、シナイトカ云フ問題デハナ
イト思フ、日本ノ國民程日本ノ政府ヲ全幅
的ニ信賴スル國民ハ私ハナイト思フ、日本
ノヤウナ金融制度ノ不備ナ-尤モ今日ハ
整備シテ居リマスケレドモ、二十年三十年
前ノ金融制度ノ極メテ幼稚ナ時代デアツテ
モ、日本ノ國民ハ政府ノ發行シテ居ル紙幣、
若クハ政府ノ許可ノ下ニ日本銀行ノ發行シ
テ居ル紙幣ニ對シテ、何等ノ疑ヒヲ持ツテ
居ナカツタ、何レノ國へ行キマシテモ、勿
論兌換劵若クハ政府紙幣ヲ使ツテ居リマス
ガ、同時ニ正貨ヲ使ツテ居ル、何處デモサ
ウデアル、日本ノヤウニ金貨國デアリナガ
ラ、民間ニ補助貨以外ニ正貨ガ殆ド流通シ
ナイト云フ國ハ、世界ニ私ハナカラウト思
フ、ソレ程政府ヲ信賴シテ居ル國民デアル、
ダカラ何モ兌換紙幣ノ國民ノ信賴ヲ得ルガ
爲ニト云フ單純ナル理由ノ下ニ、今日五億
ヲ正貨準備トシテ日本銀行ノ勘定ニ持ツテ
居ナケレバナラヌト云フコトハナイヤウニ
思フ、何故ニ之ヲ政府所有ニ御移シニナラ
ヌカト云フ點ニ付テ、御伺ヒ致シタイト思
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=55
-
056・相田岩夫
○相田政府委員 日本銀行ガ現在保有シテ
居リマス金ノ職能ニ付キマシテ、否廣ク今
日ニ於ケル金ノ職能ニ付キマシテノ只今ノ
御意見ハ實ニ御尤モデアリマシテ、金ノ今
日ニ於テル職能ハ只今ノ御意見ノ如ク之ヲ
考ヘナケレバナラヌモノト存ゼラレルノデ
アリマス、唯日本銀行ノ今日持ツテ居リマ
ス金ヲ全部金資金特別會計ニ移シテ、之ヲ
今日ノ場合最モ適當ナ方法ニ依ツテ活用ス
ル途ヲ開クカドウカト云フコトニ付キマシ
テハ、是ハ今後必要ニ應ジテ之ヲ考慮致シ
タイト申上ゲルヨリ外ナイト存ジマス、此
ノ發劵制度ノ改正ト、日本銀行ノ現在ノ發
劵準備デアル金ヲ如何ニスルカト云フコト
ハ、當然ノ關聯ハ持ツテ居ナイ問題トシテ
考ヘタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=56
-
057・武田徳三郎
○武田委員 今ノ御答辯、私一寸實ハハツ
キリ意味ガ分リ兼ネマス、必要ニ應ジテ或
ハ政府ノ所有ニ移スコトガアルカモ知レナ
イト云フ御話デアリマスガ、必要ニ應ジテ
移スト云フ御考ヘハ、私ノ先刻申上ゲル通
リニ、正貨準備トシテ日本銀行ハ正貨ヲ持
ツ必要ガナイト云フコトヲ旣ニ前提トサレ
テ居ルノデ、其ノ點ハ私ト同ジ意見カラ出發シ
タノデハナイカト思ヒマス、サウト致シマス
レド、今ノ內ニ移シテモ差支ヘナイノデハ
ナイカ、ソレデ私ノ伺フノハ、幾分ナリトモ
兌換準備ニ正貨ヲ持ツテ居ナケレバナラヌ
ト云フ理由ガアツテ、此ノ儘ニシテ居ルノカ
ドウカ、斯ウ云フコトナノデス、ソレハ最早
實際管理通貨ニナツテ居ルノデアルカラ
正貨準備ハ要ラヌ、斯ウ云フノナラバ全然
私ノ考ヘト同ジナノデ、ソレナラ不必要ノ所
ニ置カズニ、必要ニ應ジテ政府ガ何時デモ使
ヘル所ニ置ケバ宜イ、旣ニ一昨年デシタカ、
三億圓ノ金ヲ爲替資金トシテ運用サレテ居
ツテ、昨年ノ議會ナドデハ其ノ三億圓ノ運
用デ、貿易上非常ニ便利ヲ得タト云フコト
ヲ御話ニナツテ居ル、然ラバ更ニ五億ヲ其
ノ方ニ向ケテ-何モソレヲ無用ニ使フ譯
デハナイ、適當ニ。貿易關係ニ之ヲ運用スル
途ハ幾ラデモアルデアラウ、況ヤ今日ノ如
ク我ガ國ト貿易關係ノ最モ深イ「スターリ
ング·ブロック」「ドル·ブロック」ノ方面カ
ラ中々物ガ取リ得ナイ狀態デアリ、何時如
何ナル事變ガ起ラナイトモ限ラナイ今日ノ
狀態デアリマスカラ、極論スルナラバ、此
ノ通貨管理ノ場合ニ、正貨ナドアツテモナ
クテモ宜イ、「ドイツ」ノ如キハ殆ド正貨ハ
ナイト言ツテモ宜イ位ニ、ソレヲ以テ外國
カラ必要ナル物資ヲ入レテ居ル、ソレナラ
バ今日ハ非常ニ窮屈ニ相違ナイケレドモ、
本當ニ國家ノ急ニ應ズルナラバ、出來得ル
ダケ早ク此ノ軍事上ノ必要品ヲ買入レルト
云フヤウナ、急ニ迫ツテ居ルノヂヤナイカ
ト思フ、其ノ點國民トシテ之ヲ有效ニ利用
スルノハ、今ガ一番宜イノデハナイカ、必
要ノアツタ時ニ入レルノダト云フ御意見
ハドウモ何ダカ煮エ切ラヌヤウニ私ハ思
フ、兌換劵ニ對スル國民ノ信用ヲ維持スル
爲ニ、ヤハリ保證準備ダケデハイカヌ、幾
分ノ正貨準備ガアルト云フコトハ、國民ノ
貨幣ニ對スル「コンシェンス」ヲ維持スル爲
ニ必要ダト云フ御議論ナラバ、一應尤モデ
アリマスケレドモ、必要ガアツタラ移シテ
宜イト云フ御考ヘデアリマスレバ、兌換準
備トシテ正貨ハ要ラヌト云フ前提ノ下下ナナ
ケレバ、左樣ナ御考ヘノ出ル筈ハナイ、
サウスレバ根本論トシテ私ノ考ヘト同ジデ
アリマスカラ、寧ロ今日御移シニナルト云
フコトハ、適當ナ準備デハアルマイカト思
フガ如何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=57
-
058・相田岩夫
○相田政府委員 金ノ國內通貨ノ基礎トシ
テノ作用ニ付キマシテハ御意見ト全然同
感デアリマス、ソコデ日本銀行ノ現在持ツ
テ居ル金ト云フモノハ、國內ニ於ケル通貨
ノ價値ト云フコトカラ見レバ、全然意味ノ
ナイモノト思ハレマス、ソコデ是ノ活用ニ
付キマシテハ先程モ申上ゲマシタヤウニ、
最モ之ヲ有效ニ使用スルヤウニ今後ノ事情
ニ應ジマシテ措置致シタイト考ヘテ居ルノ
デアリマス、サウ云フ考ヘデ居リマスノデ、
左樣御諒承願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=58
-
059・武田徳三郎
○武田委員 次ニ御伺ヒ申シテ置キタイコ
トハ、先程モ申上ゲタ通リ最高發行額制度
ヲ執ルト共ニ、最モ大藏當局トシテ御注意
ヲ願ハナケレバナラヌコトハ、銀行劵ノ增
發ニ陷ラナイヤウニト云フ用意ガ、極メテ
必要ナコトダト思フノデアリマシテ、是ハ
當然ノコトデ申上ゲルマデモナイコトデア
リマス、唯如何ナル手段ニ依ツテ過發ニ陷
ラヌヤウニスルカト云フ其ノ手段方法ハ、
中々私ハ面倒ダト思フ、「イギリス」ノ實情ヲ
見マスト、戰爭始ツテ以來一向通貨ガ殖エテ
居ナイ、最近新聞ニ現ハレテ居ル所ヲ見マ
スルト、一日ノ戰費ガ千五百万「ポンド」モ
使ツテ居ル、卽チ我ガ國ノ金ニシテ二億五
千万圓位每日使フ程ノ多大ノ戰費ヲ使ヒナ
ガラ、依然トシテ今日通貨ノ流通ガ「イギ
リス」邊リハ-新聞雜誌ノ報道スル所ヲ
眞ト致シマスレバ、六億「ポンド」位ダト云
フコトデス、六億「ポンド」ト云ヘバ戰時
前ト大差ナイ發行額デアル、是程マデ澤山
ノ戰費ヲ使ヒナガラ、一向通貨ノ量ハ殖エ
ナイト云フノニ、我ガ國デハ先程申上ゲタ
ヤウナ割合デ非常ニ殖エテ居ル、先程銀行
局長ノ通貨增發ノ原因ニ對スル御說明ガア
リマシタガ、私ガソレニ對シテ慊ラヌト申
上ゲタノハ「イギリス」ナドノ實例ヲ見マ
スト、ドウモ先程局長ノ御指摘ニナツタヤ
ウナ事情モアルデセウ、然ルニ「イギリス」
ニ於テハ餘リ增發ニナラヌノニ、我ガ國ニ
於テ增發ニナルノハ何故デアルカ、此ノ原
因ヲ大藏當局ハ御考ヘ下サツテ、之ニ對應
スル適當ナル措置ヲ御執リ下サラヌト、私
ハ經濟界ニ大變ナ困ツタコト-恐慌ト云
フ言葉ハ不適當カ知レマセヌガ、相當ナ困
難ガ起キルノヂヤナカラウカト私ハ思フ、
ソレデ私モ餘リ「イギリス」ノ實情ヲ知リマ
セヌガ、「イギリス」ノ近來ノ財政經濟ノ狀
況ヲ「イギリス」ノ雜誌其ノ他ニ依ツテ見マ
スト、私ノ解釋スル所デハ、「イギリス」デ
銀行劵ノ發行ノ餘リ甚シクナイ理由トシテ
ハ幾ツモアリマセウケレドモ、主トシテ考
ヘラレルコトハ、公債ノ發行ヲ、我ガ國ニ
於テハ日本銀行引受ニシテ後カラ賣出スト
云フ所謂「マーケット·オペレーション」ヲヤ
ツテ居ルノニ反シテ、先ニ一般募集ヲシテ居ル
ト云フコトガ最モ强イ理由デアルト私ハ思
フ、モウ一ツハ戰費ノ支辨ヲ、主トシテ增稅ニ
依ツテヤツテ居ル、尤モ今日ノヤウニ一日ニ
二億モ二億五千万圓モ使フト云フ時ニ、其ノ大
部分ヲ增稅デ賄フト云フコトハ出來ルモノデ
ハナイノデアリマスカラ、絕對數カラ言ヘ
バ公債ノ募集ハ多イノデアリマスケレドモ、
比較的ニ見テ增稅デ賄フト云フ方針ヲ執ツ
テ居ルコトハ、御承知ノ通リデアリマス、是
ハ「イギリス」ノ傳統的精神デ、第一次歐洲
大戰ノ時モサウデアツタガ、今度ハ一層其
ノ事ヲ思ヒ切ツテヤツテ居ルコトモ御承知
ノ通リデアル、私ハ是ガ相當大キナ理由デ
ナイカト實ハ思フノデアリマス、勿論我ガ
國ト「イギリス」ノ經濟狀態ハ違ヒマシテ「イ
ギリス」ハ海外ニ澤山ノ債權ヲ持ツテ居リマ
ス、隨テ其ノ在外ノ債權其ノ他ノ要求權ヲ
動員シテ居ルト云フ事實モアリマス、併シ
ナガラ最近一ツハ-是ハ宣傳ダト云フコ
トデアリマスケレドモ、「アメリカ」ノ財務
長官モ「イギリス」ノ「アメリカ」ニ於ケル軍
需品買入ノ資金ハ、殆ド盡キントシテ居ル
ト云フコトヲ言ツテ居リマスカラ、我ガ國
ト比較シテハ豐カデアルカモ知レマヌガ、
サウ無限ニ豐豊デアルトハ考ヘラレナイ、
然ルニ此ノ兌換劵發行高ノ上カラ見レバ「イ
ギリス」ノ經濟界ハ餘リ憂フベキ狀態ヲ示
シテ居ラヌ、是ハ我ガ國ト致シマシテモ、
戰時經濟ヲ運營スル上ニ於テ、十分ニ參考
ニスベキコトデナイカト思フ、若シ私ノ考
ヘガ或ル程度大藏當局ノ御同意ヲ得ラレル
モノデアリマスナラバ、私ハ其ノ方法トシ
テ-是ハ銀行局長カラ承ルノガ宜イカ、
或ハ大臣ナリ次官ナリカラ承ルノガ宜イカ
知リマセヌガ、旣ニ銀行局長モ此ノ點ニ付
テハ非常ニ御苦心ヲナサツテ居ルデアリマ
セウカラ、一應伺ツテ置キタイノデアリマ
スガ、私ハ「イギリス」其ノ他ノ國ノ如ク、
公債ノ募集ヲ全部日本銀行引受ニセズシテ、
一般募集ニスルト云フコトハ、我ガ國ノ實情
トシテハ甚ダ不便デアラウト思ヒマスガ、
其ノ幾分ヲ、或ハ三分ノ一ガ宜イカ、四分
ノ一ガ宜イカハ其ノ時ノ事情ニ依リマスガ、
兎モ角〓今日ノ軍事公債ヲ或ル程度一般募集
ニスルノ方法ヲ御執リニナルト云フ必要ガ
アリハシナイカ、ソレカラ更ニ軍費ノ支辨
ヲ今日ヨリ一層增稅ニ依ルノ方針ヲ執ル必
要ガアリハシナイカ、ソレカラ貯蓄ノ奬勵
ヲ今日ノヤウナ方法ヨリ更ニ一層强化スル
ノ必要ガアルノデハアルマイカト、斯樣ニ
實ハ思フノデアリマス、ソレデ增稅ノ問
題トカ貯蓄ノ奬勵ノ間題ハ、銀行局長ノ直
接ノ御所管デアリマセヌカラ、必ズシモ承
ラヌデモ宜シイ、若シ承ルコトガ出來レバ
尙ホ結構デアリマスガ、公債ノ一般募集ハ
或ル程度ヤツテ見テハドウカト云フ點ニ付
テノ御意見ダケ伺ツテ見タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=59
-
060・相田岩夫
○相田政府委員 「イギリス」ノ狀況ニ付テ、
「イギリス」ハ多額ノ戰費ヲ支辨シテ居ルニ
拘ラズ通貨ノ膨脹ガ割合ニ少イト云フ御話
ガゴザイマシタ、此ノ點ニ關シマシテハ私
今手許ニ資料ヲ持ツテ居リマセヌガ、「イギ
リス」ニ於テハ現金通貨ノ膨脹ハ少イガ、信
用通貨ノ膨脹ト云フ點ニ至リマスト「イギ
リス」ニ於テモ可ナリアルノデハナイカト
想像セラレルノデアリマス、此ノ前ノ歐洲
大戰ノ時ニ於ケル交戰各國ノ通貨膨脹ノ比
較〓究ヲシタモノヲ見マシテモ、「イギリス
ニ於テモ信用通貨マデ合セレバヤハリ通貨
膨脹ガ可ナリアツタノダト云フコトヲ論斷
シテ居ル學者ガ多イヤウニ考ヘマス、ソレ
カラモウ一ツ、「イギリス」ノ通貨膨脹ガ少イ
トシテ、其ノ原因トシテ考ヘラレマスコト
ハ、在外資金ト言ヒマスカ、在外資產ト言
ヒマスカ、サウ云フモノヲ「イギリス」ハ比
較的多ク持ツテ居ツテ、是ノ動員ニ依ツテ
戰爭資材ノ購入等ガ相當出來タノヂヤナイ
カト想像サレルノデアリマス、公債發行ノ
方法ニ付キマシテハ、我ガ國ト違ツテ一般
公募ノ方法ヲ執ツテ居ルト云フ點ニ付テ申
シマスレバ、我ガ國ハ戰爭以來唯一囘ダケ
「シンヂケート」引受ニ依リマシテ、發行ヲ
致シタノデアリマスガ、其ノ後ハ總テ御承
知ノヤウニ日本銀行ノ引受ニ依ツテ發行致
シ、政府ノ撒布資金ガ又金融機關ニ集マツテ
來ルノヲ待ツテ、金融機關ニ於ケル消化ヲ
圖ル、併シ國債ノ民衆化モ圖ルト云フ趣旨
カラ致シマシテ、郵便局賣出シノ方法モ時
時講ジテ居ル、其ノ他御承知ノヤウナ各般
ノ消化方法ヲ執ツテ居ルノデアリマス、之
ヲ改メテ、又幾部分デモ一般公募ヲヤルコ
トガ宜クハナイカト云フ御意見デアリマス
ガ、今マデノ通リノ方法ヲ繼續致シマシテ
モ、今日ハ金融ノ統制モ實質的ニ相當程度
行ハレテ居リマスシ、又制度ト致シマシテ
ハ銀行等資金運用令ニ於ケル資金ノ用途、資
金計畫ノ指定ノ方法モアル譯デアリマシテ、
一旦日本銀行引受ニ依ツテ發行ヲシテ、サ
ウシテ之ヲ金融機關其ノ他ニ於ケル消化ヲ
圖ルト云フコトニ致シマシテモ、直接公募
ヲスルヨリモ寧ロ却テ諸般ノ點ニ於キマシ
テ、消化上都合好ク行ク場合ガ多イノヂヤ
ナイカ、今全ク別ノ意味ニ於テ、ト申シマ
スノハ、例ヘバ公債ノ强制引受ト云フヤウ
ナ意味ニ於テ、直接引受ヲサセルト云フコ
トデアレバ別問題デアリマスガ、强制引受
ノヤウナコトヲ考ヘテ居ラヌト云フコトハ、
大藏大臣モ當議會ニ於テ言明サレタ通リデ
アリマス、現在ノヤウナ日本銀行引受ノ方
法ニ依ツテ發行シテ、ソレヲ更ニ日本銀行
カラ賣却スルト云フ方法ヲ執ルコトハ、今
日ノ所敢テ行詰リガ來テ居ルトモ考ヘラレ
マセヌシ、一般公募ニ變ヘルト云フコトハ、
今日ノ所考ヘテ居ラナイ次第デゴザイマス、
貯蓄奬勵ノ徹底、戰費ヲ租稅デ成ベク賄フ
ト云フヤウナ問題ニ付キマシテモ、過般來
大藏大臣カラ屢〓答辯ノアリマシタコトデモ
アリマスルシ、私カラハ御答スルコトヲ差
控ヘテ置キタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=60
-
061・武田徳三郎
○武田委員 只今局長ノ御話デハ一般公募
ヲスル積リハナイト云フ御答辯デアリマス
カラ、私ハソレダケヲ承ツテ置ク外ナイノ
デアリマス、併シ唯念ノ爲ニ申上ゲテ置キ
マスガ、今ノ局長ノ御話デ-是ハ結局考
ヘ方ノ違ヒカモ知レマセヌケレドモ、日本
銀行引受ニシテモ、一般公募ニシテモ、今
日金融統制ガ十分デアルカラ、其ノ結果ニ
於テハ餘リ相違ノアルモノデハナイト云フ
前提ノ下ニ、一般公募ヲシナイト云フ御答
辯ハ、私ハ其ノ前提ニ非常ナ疑ヒヲ持ツテ
居ルノデアリマス、私ハ左樣ナ考ヘ方ハア
ルベキヂヤナイト思フノデアリマス、議論
ニ亙リマスカラ、多クヲ申シマセヌガ、殊
ニ其ノ點ハ多分理財局長ノ御所管ノコトト
思ヒマスカラ、銀行局長ニ餘リ議論ガマシ
イコトヲ申上ゲルノハ如何カト思ヒマスノ
デ差控ヘマスガ、一應申上ゲテ置キタイト
思ヒマス、ドウモ今ノ御考ヘハ御考へ違ヒ
ヂヤナイカト思フ、成程先ニ日本銀行ガ引
受ケテ、後カラ一般ニ賣出ス、先ニ募集ス
ルノモ、民間カラソレダケノ金ヲ引上ゲテ
囘收スルト云フ其ノ結果ハ、ソレハ變ラヌ
デセウ、併シナガラ先ニ政府カラ金ヲ放出
シテ、其ノ放出シタ金ガ直チニ銀行ニ戾ツ
テ來テ、其ノ銀行ガ直チニソレデ日本銀行
引受ノ公債ヲ買入レレバ、ソレハ何デモナ
イ一般募集トチヨツトモ變リハナイケレ
ドモ、サウ云フ事實ハアリヤウガナイ、其
ノ時々ノ情勢ニ依ツテ色々變化ハアリマス
ケレドモ、政府ハ財界ニ買入資金其ノ他ト
シテ放出ヲ致シ、或ハ給料其ノ他トシテ放
出致シマシタ金ガ、銀行ニ戾ツテ來ルマデ
ノ間ニ相當長イ時間ヲ要スルコトハ申スマ
デモナイ、サウシテ其ノ間ニ其ノ金ガジツ
トシテハ居リマセヌ、相當轉々シテ働イテ
居ルノデアリマス、其ノ金ガ働クコトニ幾
分ノ利益ヲ生ンデ居ルノデアリマス、唯ジ
ツトシテ居ルノデハアリマセヌ、其ノ利益
ハ卽チ其ノ利益ヲ受ケタ人ノ購買力ニナル
ノデアリマス、働ク金ハ一ツデアリマスケ
レドモ、殆ド手ガ變ル每ニソレニ利益ガ附
イテ居ル、サウシテ其ノ爲ニ購買力ガ殖エ
テ行クノデアリマスカラ、今銀行局長ノ仰
シヤツタ、先ニ日本銀行ガ引受ケタモノ
干、一般募集シタモノモ、同一ノ結果ダト
言ハレルノハ、ソレハ非常ナ違ヒデアルト
思フ、今日ノ資金ノ統制法ノアノ建前カラ
致シマシテハ、會社若シクハ個人ガ持ツテ
居ル購買力ソレ自身ヲ統制スル統制デハナ
イ、アノ資金ノ統制法ニ依ツテ、各自ガ其
ノ金ヲ働カシテ利益ヲ生ムト云フコトヲ
「チェック」スルコトハ勿論出來ル筈ガナイ、又
サウ云フコトヲシテハ大變デアル、其ノ金
ヲ働カシテ、ソレ〓〓利益ヲ得テ、其ノ人
ノ購買力ヲ增スト云フコトニシナケレバ、
貯蓄ガ增加シナイノデアリマス、サウ云フコ
トヲ「チェック」スルト云フ理窟ハナイト思
ヒマス、又今日ノ資金統制法カラ言ツテ
モ、サウ云フ働キガアル筈ハナイト私ハ思
フ、其ノ前提ハ全然御考へ違ヒデナイカト
思フノデアリマスガ、是ハ議論ニ亙リマス
カラ多クヲ申シマセヌケレドモ、左樣ナ御
考ヘデアレバ、私ハソレハ御考ヘ直シヲ願
ヒタイ、詰リ日本銀行引受ニシテヤルト云
フコトハ、大藏省トシテハ洵ニ所謂「イー
ジー·ゴーイング」デ、簡單明瞭デ宜イコト
デアリマセウ、又急ニ應ズルコトデアリマ
セウ、元來日本銀行引受ニシタコトハ、事
變始マツテ以來最初ニ賀屋君ガ大藏大臣ニ
ナツテ居ラレタ時ニ、一億圓「シンジケー
ト」ニ引受ケサセテ、一寸縮尻ツタヤウナ
形ガアツタ、ソレハ私ヲシテ言ハシムルナ
ラバ、時期ヲ誤ツタノデアル、ソレ以來大
藏省ハ手ヲ燒イテ、「イージー·ゴーイング」
ニ移ツテ、日本銀行引受一點張リニヤツテ
オイデニナリマスケレドモ、是ハドウモ一
兩年來少シク考慮スル餘地ハナイカト私
ハ思ツテ居タノデアリマスガ、私ハドウ
モ今ノ銀行局長ノ御意見ハ此ノ點ニ於テ
御再考ヲ願ヒタイト思ヒマス、幸ヒ私ト同
ジ意見ニ歸着致シマスレバ-私ハ此ノ或
ル部分、全部トハ申シマセヌ、全部ハ出來
ルモノデハナイ、サウスレバ餘リ多クヲ一
般募集ニ致シマスレバ、甚シキ「デフレー
ション」ヲ生ジマス、昨年ノ下半期ノデ
フレーション」狀態ノ如キハ、寧ロ日本銀
行引受ノ方ガ宜イノデアリマス、又多少金
融界ガ緩ンダト思フ時ハ一般募集ヲサレ
ルノハ手心ヲ適宜ニ加へルベキデアツテ、
法律ノ上デ決メルベキモノデハナイノデア
リマスカラ、適宜ニオヤリニナルコトガ當
然デアリマス、私ハ念ノ爲ニ私ノ考ヘ方ヲ
申上ゲテ、銀行局長ノ御考慮ヲ願ヒタイト
存ジマス、御答辯下サルナラバ承ツテモ宜
シイシ、必ズシモ是ハ御答辯ヲ願ハナケレ
バナラヌト云フ筋ノ問題デモナイノデアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=61
-
062・相田岩夫
○相田政府委員 一應申上ゲマスガ、御意
見ハ一般公募ト致シマシテ、金融機關以外
ノ個人或ハ事業會社等ニモ引受ヲサセルト
云フノデゴザイマセウカ、金融機關ニ關ス
ル限リニ於キマシテハ、實ハ直接引受ケマシ
テモ、一旦日本銀行ノ引受ケマシタモノヲ
更ニ賣却シマシテモ、今日餘リ違ヒハナカ
ラウカト存ゼラレルノデアリマス、一般個
人方面ニ對スル消化策トシテ今日ヤツテ居
リマス國債ノ郵便局賣出シ、ソレカラ貯蓄
債劵、報國債劵ノ賣出シト云フモノハ是
ハ結局民衆方面ニ對スル一般公募ト謂ツテ
モ宜イト思ヒマスガ、金融機關ヲ相手ニシ
テ直接公募ヲヤルト云フ方法ハ、今日ノ所
大藏省トシテハ考ヘテ居ラヌ次第デゴザイ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=62
-
063・武田徳三郎
○武田委員 今ノ問題ハ是レ以上申スト意
見ノ相違ト云フコトニナリマセウカラ、餘
リ多クハ申上ゲマセヌガ、唯私ノ言フ一般
公募ト申スノハ、今局長ノ言ハレタヤウニ
貯蓄債劵トシテ賣出ストカ、或ハ郵便局
デ賣出ストカ云フ意味ノコトヲ申スノデ
ハアリマセヌ、勿論ソレハ一般公募ニ違ヒ
アリマセヌ、ソレハ現在オヤリニナツテ居
ルコトデ、ソレヲ良イトカ惡イトカヲ申ス
ノデハナイノデアリマス、私ノ一般公募ト
云フノハ、日本銀行引受ニシテ後カラ賣出
スノヲ、幾分ヲ先ニ一般ニ公募スルト云フ
ノデアリマス、前後ダカラ同一ダト仰シヤ
ルケレドモ、私ノ解釋ハサウデハナイ、先
ニ一般カラ募集シテ、其ノ募集シタ金ヲ政
府カラ拂出スノト、日本銀行ニ公債ヲ與ヘ
テ、公債ノ代リニ兌換劵ヲ政府ノ預金ニシ
テ、サウシテソレヲ民間ニ拂ヒ出スノトデ
ハ、其ノ金ノ働キニ於テ非常ナ相違ガアル
ト云フコトヲ申スノデアリマス、ソレヲ今ノ
局長ノ御意見デハ、ソレハ同ジコトデアル、
先ニ金ヲ集メテ置イテ出シテモ、先ニ出シ
テ置イテ後カラ其ノ金ヲ取ツテ來テモ結果
ハ同ジコトデアル、斯ウ云フ御考ヘノヤウ
デアリマスケレドモ、其ノ御考ヘハ私ハ餘
リニ素朴デハナイカト思フ、其ノ點ハ是レ
以上申シマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=63
-
064・西村金三郎
○西村委員長 武田君、マダ長クナリマセ
ウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=64
-
065・武田徳三郎
○武田委員 モウ直グ終リマス、實ハ今日
ハ質問者ハ私一人ナモノデスカラ······委員
長ノ御都合デ何時デモ止メマスガ·····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=65
-
066・西村金三郎
○西村委員長 敬意ヲ拂ツテ十分御質疑願
ツテ居ルノデスガ、ドウゾ一ツ成ベク簡單
ニ御願ヒシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=66
-
067・武田徳三郎
○武田委員 承知シマシタ-ソレデハモ
ウ一ツ二ツ簡單ニ御伺ヒシテ終リマス、モ
ウ一ツ伺ツテ置キマスガ、今日生產擴充ト
云フコトハ朝野共ニ熱心ニ唱ヘラレテ居テ、
又我ガ國ノ戰時體制ト致シマシテモ、何レ
ノ點カラ見マシテモ絕對的必要ナコトハ當
然デアリマス、此ノ爲ニ今日其ノ衝ニ當ツ
テ居ル者ガ一番困ル事ハ工業金融ノ機關
ガ十分デナイコトデアリマス、今日工業金
融トシテハ興業銀行ガソレニ當ツテ居ルダ
ケデアリマス、併シナガラ銀行局長御承知
ノ通リ、興業銀行ハ滿鐵トカ或ハ其ノ他ノ
大キナ主トシテ半官半民ノ會社、若クハ民
間會社デアツテモ非常ニ大キナ會社ヲ相手
トシテヤツテ居ルノデアツテ、三百万トカ
五百万トカ位ノ小サナモノハ餘リ相手ニサレ
テ居ラヌ、又ソレヲ相手ニスル程ノ力モ興業
銀行ニハナイデアリマセウ、併シ一般普通銀
行ニ工業金融ヲシロト云フノモ無理ナ話デア
リマス、今日ノ預金ノ狀態ヲ見ルト、定期預金
ヨリハ當座預金、通知預金ガ多イト云フヤウ
ナ狀態ニ於テ、其ノ預金ヲ以テ工業金融ヲ
一般普通銀行ニヤレト云フコトモ、是ハ無
理ヲ强ヒルモノデアリマスカラ、サウハ行
カヌデアリマセウ、ソコニ於テ私ハ特殊ノ
中小工業者ニ取ツテハ、ソレ〓〓商工中央
金庫トカ何トカソレ等ノ方法ヲ政府ガ講ゼ
ラレテ居リマス、又大藏省預金部カラサウ云
フモノニ特別貸付ヲスルヤウナ途モ開カレ
テ居ル、所ガ日本ノ工業ノ中心ニナツテ居
ル四、五百万カラ二、三千万ノ資本ヲ持ツ
テ居テ、主トシテ軍需工業若クハ輕工業ニ當
ツテ居ルモノ、詰リ工業ノ中心トナツテ居
ルヤウナ方面ニ對シテノ金融ハ、今日非常
ニ困ツテ居ル、殊ニ昨年以來-是ハ銀行
ノミヲ責メラレナイケレドモ、大藏省殊ニ
銀行局アタリデハ、私ハ御考ヘニナツテ然
ルベキコトデハアルマイカト思フコトハ
一昨年アタリカラ昨年ノ春アタリマデハ、
可ナリニ金融ガダブツイテ居タモノデアル、
サウシテ銀行業者ハドウシテソレヲ放資
シヨウカト云フコトニ焦ツテ居タ氣味ガア
ル、サウシテ工業家ハ其ノ金融ノダブツキ
ヲ利用シテ金ヲ借リテ、殊ニ大藏省デモサ
ウ云フ方針ヲ御執リニナツテ居タヤウデス、
成ベク增資ニ依ラズシテ借入金デヤツタ方
ガ宜イト云フ方針ヲ御執リニナツテ居ツタ、
大藏省ガ其ノ方針デアリ、銀行モ金ガダブ
ツイテ居タシ、工業者ノ方モ株式ノ增資ニ
依ツテ資金ヲ調達スレバ、相當高イ配當ヲ
シナケレバナラヌガ、其ノ當時ノヤウナ安
イ金利デ銀行カラ借入レテスレバ、經營ノ
上ニ於テ非常ニ便利ガアリマス、殊ニ大藏
省ハサウ云フコトヲ御奬勵ノヤウナ態度デ
アツタカラ、普通銀行カラ運轉資金ハ勿論
ノコト、或ハ設備資金サヘモ借入金デ賄ツ
タモノモ相當アル、然ルニ昨年下期ニナツ
テ少シク金融ガ逼迫シテ來ルト、銀行ハ急
ニ囘收ヲ始メテ、無理無體ニ囘收シテ居ル
事實ガアル、其ノ爲ニ非常ニ困難ヲ來シテ、
昨年十一月頃ニハ或ハ恐慌ヲ來シハシナイ
カト云フ位ニナツタノデアリマス、一ツハ
株式ノ低落ト云フコトモ一ツノ原因デアツ
テ、株式ヲ擔保ニシテ借リテ居ツタ者ハ、內
入金若クハ增擔保ヲ要求サレルト云フヤウ
ナ事態デ、是モ一ツノ原因デアツタデセウ、
兎ニモ角ニモ、銀行ガ餘リ資金ノ囘收ニ焦リ
過ギタ爲ニ、非常ニ工業家ニ苦痛ヲ與ヘテ、
非常ナ困難ニ陷ツテ、今日尙ホ其ノ狀態デ
アリマス、ソレハ大藏省モ御承知ノ通リデ
アラウト思ヒマス、之ニ對シテ之ヲドウ打
開スルカト云フ當面ノ問題モ、大藏省トシ
テ御考ヘニナツテ居ルデアリマセウ、併シ
ナガラ又預金ヲ持ツテ運用シテ居ル金融業
者ニ對シテ、危險ガアツテモ囘收スルナト
云フノモ多少ノ無理ガアリマセウシ、又短
期資金ヲ主トシテヤツテ居ル商業銀行ニ向
ツテ、設備資金ヲ澤山貸出セト云フコトモ、
是モ無理デアリマセウ、是ニ於テ此ノ工業
金融ヲ今日ノ興業銀行一手ニノミ賄ハスト
云フダケデハ本當ニ私ハ工業金融ガ圓滑
ニ行カナイデハナイカト思フ、之ニ向ツテ
何等カノ構想ヲナスツテオイデニナルカド
ウカ、ソレヲ一ツ伺ヒタイ、ソレトモウ一
ツハソレヲドウスルカト云フコトニ向ツ
テハ中々困難デアリマセウシ、假ニ或ル種ノ
計畫ガアツタトシテモ、ソレヲ實現シテ工
業金融ノ圓滑ナル結果ヲ得ルマデニハ、相
當ノ時間ガ要ル、其ノ間ダケヤハリ今日ノ
普通銀行ヲシテ、工業金融ノ一部ヲ負擔セ
シムルト云フコトモ、是ハ現在モ將來モ已
ムヲ得ヌデアリマセウ、ソコニ於テ私ハ普
通銀行ヲシテ、工業金融或ハ長期金融ニ便
ナラシムル爲ニハ、其ノ預金ニ對シテ預金
者ノ安心スルヤウナ方法ヲ一ツ考ヘナケレ
バナラヌデハナイカト思フ、其ノ爲ニハ政
府ハ銀行ノ預金ノ保證ヲスルト云フコトヲ
御考ヘニナツテ居ルカドウカ、是ハ其ノ方
法ニ於テハ色々アリマセウ、私モ多少ノ腹
案ヲ持ツテ居リマスガ、其ノ詳細ナコトハ
先ヅ別トシテ、大體ニ於テ政府ハ普通銀行
若クハ普通銀行ニ限ラズ、貯蓄銀行デモ、
總テ民間ノ預金ニ對シテ政府ガ保證ヲスル
ト云フ方法ヲ執ツテハドウカ、勿論其ノ保
證ヲスルニ於テハ其ノ準備金トシテ日本銀
行ニ預ケシムルト云フヤウナ方法手段ハ色
色アリマセウ、ガ兎ニ角サウ云フ方法ヲ執
ルガ宜シ、又サウシナケレバナラヌノデハ
ナイカト思フ、「アメリカ」ノ如キ御承知ノ
通リ相當長イ間銀行ノ預金ニ對スル保證ヲ、
政府ガシテ居ル事實モアリマス、非常ニ「ア
メリカ」ノ農業金融ハ此ノ爲ニ促進ヲ
シ-是ハ工業金融ノミデハアリマセヌガ、其
ノ爲ニ預金ガ非常ニ增加シ、サウシテ金融
ガ圓滑ニ行ツテ居ルト云フ事實モ御承知ノ
通リデアリマス、私ハソレ等ノ寶例カラ考
ヘテ見マシテモ、我ガ國ノ今日ノ工業金
融ノ實情カラ考ヘテ見マシテモ、左樣ナ
手段ヲ執ルコトモ、一ツノ考ヘ方デハアル
マイカト思フガ、此ノ點ニ付テ大藏省ノ御
意見ハ如何デアリマセウカ、伺ツテ見タイ
ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=67
-
068・相田岩夫
○相田政府委員 只今ノ御質問ニ對シテ御
答へ致シマス前ニ、一寸先程私ノ申上ゲマ
シタコトヲ補足ヲ致シテ置キタイト思ヒマ
ス、ソレハ國債發行ノ方法ト致シマシテ、
日本銀行引受デ發行シテ、然ル後ニ金融機
關ニ之ヲ賣却スルノト、直接金融機關ニ引
受ヲサセルノト、餘リ違ヒガナイヤウニ思フ
ト云フコトヲ申上ゲマシタノハ、今日ノ現
狀ヲ基礎トシテ申シテ居ルノデアリマシテ、
今日ノ現狀ト申シマスノハ、每日相當額ノ
國債ガ連續發行セラレテ居ル狀態ヲ、私ハ
申シテ居ルノデゴザイマス、ソレカラ只今
ノ御質問デアリマスガ、工業金融ノ緊要ナ
ルコトニ付キマシテノ御意見ハ、洵ニ御尤モ
デアリマス、今日ノヤリ方ト致シマシテハ
生產力擴充資金ノ供給ト云フモノハ、多年
其ノ方面ノ金融ニ熟練シテ居リマス興業銀
行ヲ中心ニシテ、之ニ當ラセテ居リマスコ
トハ仰セノ通リデアリマスガ、興業銀行ト
雖モ必ズシモ大口ノモノニ限ツテ居ルノデ
ハアリマセヌノデ、中小工業部面ニ於キマ
シテモ、出來ルダケ金融ノ便ヲ圖ルヤウニ
努力ヲ致サセテ居ルノデアリマス、普通銀
行ノ資金ヲ工業金融ニ動員致シマスコトニ付
キマシテハ、只今ノ御意見モゴザイマシタ
ヤウニ、資金ノ性質上難點モゴザイマスガ、
併シ是モ近來謂ハバ銀行ノ「プール」制的チ
コトヲヤリマシテ、共同ニ融資ヲスルト云フ
ヤウナ方法モ漸次行ハレツツアリマスルシ、
其ノ他地方銀行資金ヲ工業部面ニ活用シマ
ス爲ニ、地方銀行ニ興業債劵ヲ引受ケサセ
マシテ、ソレデ以テ興銀ノ此ノ方面ニ對ス
ル資金融通ノ力ヲ付ケルト云フコトモ致シ
テ居ルノデアリマス、刻下ノ是非必要ナ時
局產業デアリマシテ、而モ其ノ囘收確實性
ニ付テ稍〓心配ガアルト云フヤウナモノニ付
キマシテハ、銀行ノ性質トシテ自分自身ノ
危險デヤレナイ場合モアリマスガ、斯ウ云
フモノニ對シテハ今日ノ建前トシテハ銀行
等資金運用令ニ依ル融資命令ニ依ツテ、之
ヲ融資スルト云フヤリ方ヲヤツテ居ルノデ
アリマシテ、別ノ方面カラ普通銀行等ノ預
金ヲ國家ガ保證シテ、銀行ガ斯ウ云フ工業
方面ノ而モ多少危險ノアルヤウナ方面ニモ
安心シテ貸出ヲ爲シ得ルヤウナ風ニスルコ
トガ宜イカドウカ、是ハ十分〓究ノ餘地ノ
アル問題ダト思ツテ居リマス、尙ホ工業金
融ノ問題ニ付キマシテハ、勸業銀行モ、其
ノ本來ノ使命ハ農村方面ニアツタノデアリ
マスガ、近年農村ノ方ハ比較的資金ノ需要
ガ少クテ、其ノ方面ノ餘裕ヲ以チマシテ、
生產力擴充方面ノ資金ノ融通ニモ相當活動
ヲ致シテ居ルノデアリマス、又此ノ活動ヲ
便宜ナラシムル爲ノ改正法律案モ、提案ニ
ナツテ居ル次第デゴザイマス、工業金融ノ
コトニ付キマシテハ、只今申上ゲタヤウナ
方法ニ依ツテヤリタイト考ヘテ居リマス、
又銀行預金ニ對スル保證問題ニ付キマシテ
ハ是ハ〓究スベキ大キナ問題デアリマス
ルガ、只今ノ考ヘ方トシテハ寧ロ普通銀行
等ガ自分自身ノ責任ダケデハ貸出シ得ナイ
ヤウナ資金デアツテ、而モ國家トシテ必要
ナ資金ヲドウシテモ出サナケレバナラヌト
云フ場合ニハ、融資令ニ依ツテ國ノ保證ノ
下ニサウ云フモノヲ融通スル、斯ウ云フヤ
リ方デ行ク方ガ宜イノデナカラウカト一應
考ヘテ居ル次第デアリマス、融資補償制度
ニ付テモ十分ニ〓究シテ見タイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=68
-
069・武田徳三郎
○武田委員 モウ一ツ伺ツテソレデ止メマ
ス、今伺ツタコトモ一應御尤モデスガ、結
局スル所私ノ申上ゲタコトハ大キナ〓究
題目トシテ他日ニ保留スルト云フコトデア
リマスカラ、宜シク御〓究ヲ願ヒタイト思
ヒマス、併シナガラ餘リ之ヲ長ク打チヤツ
テ置クベキ問題デハナイノデアリマス、今
日ノ銀行業者ノ態度ヲ大藏省トシテ一面嚴
重ナル監督ヲ加ヘルト同時ニ、又一面ニ於
テ銀行業者ハ安心シテ金融業ニ從事スルヤ
ウナ措置ヲモ執ツテヤラナケレバナラヌト
思フノデアリマス、今銀行局長ノ御話ノヤ
ウニ、國家目的ニ副フヤウナ場合ニハ融
資令ノ運用ガアルト仰シヤル、ソレハ慥カ
ニサウ云フコトガアルノデアリマシテ、洵
ニ結構ナコトデアリマス、併シナガラ今日
ソレガ實際ニ行ハレタノハ算フル程モナ
イ、サウシテ指名サレタ所ノ銀行ハ興業
銀行ト朝鮮銀行デスカ、一ツ二ツシカナイ
ノデアリマス、又實際ノ實例ト云ツテモ
殆ンドナイ、サウ云フモノハ飾海老デアツ
テ、本當ノ御馳走ニハナラヌ、併シソレハ
ソレト致シマシテ、先程銀行業者間ニ「プー
ル」制ヲ考慮シテ居ルト云フ御話ガアツタ、
ソレモ私共伺ツテ居リマス、併シナガラ「プー
ル」制ノ如キモノヲ本當ニ運用スルト云
フコトニ付キマシテハ、ヤハリ國家ノ預金
保證制ト兼ネ合セテ、ソコニ其ノ組織ノ中ニ
取入レルノデナケレバ、私ハ本當ノ效果ハ
ナイノデハナイカト思フ、併シ是等ノ點モ
一應サウ云フコトヲ考ヘル途モアルト云フ
コトデナク、眞劍ニ一ツ善イカ惡イカ、善
イトスルナラバ、如何ナル方法ヲ以テ之ヲ
實行シタラ宜イカト云フコトニ向ツテ、具
體的ナ問題トシテ御取上ゲ願ヒタイト思ヒ
そい、是ハサウ云フヤウニ希望ダケヲ申上
ゲテ置キマス
次ニ私ノ先程申上ゲタ點ニ付テ御答辯ガ
ナイノデアリマスガ、最近ノ銀行業者ガ
餘リニ貸金ヲ急激ニ囘收スルト云フコト
ハ、今重大ナ問題ニナツテ居ルト思フ、
先程モ申上ゲマシタ通リニ大藏省ハ一昨
年アタリカラ、成ベク設備資金モ運用
資金モ借入金デ賄フヤウニト云フ風ニ、寧
ロ御奬勵ニナツタ立場カラ言ツテモ、今日
銀行ガ少シク景氣ガドウカト云フコトデ、
貸出金ヲ澁ツタリ、或ハ之ヲ無理ニ回收ス
ルト云フヤウナ狀態ヲ、大藏省トシテ看過
ナサレテ居ルト云フコトハ、私ニハ一寸受
取レナイト思フ、元來近來ノヤウニ政府ガ
聲ヲ大ニシテ公益優先ト云フコトヲ天下ニ
聲明サレテ居ルヤウナ場合ハ勿論デアルガ、
公益優先ナドト云フコトヲ宣傳シナイ時デ
モ、銀行ハ多數大衆ノ預金ヲ預ツテ、ソレ
ヲ運用スルト云フ意味カラ、銀行業ハ諸事
業ノ中デモ極メテ公共性ノ多イモノト一般
ニ認メラレテ、他ノ產業ハ自由主義經濟時
代ノ政府ノ監督ノナイ時デモ、銀行ニ限ツ
テ特別ノ監督ヲシ、特別ノ法規モアツタ、
然ルニ其ノ最モ公共性ヲ持ツテ居ナケレバ
ナラヌ筈ノ金融業者ガ、最モ今日利己主義
ヲ發揮シテ居ル、自分ノ金ノ遊ンデ居ル時
ハ自分ノ方カラ使ツテ吳レ、使ツテ吳レト
言ツテ貸出ニ狂奔シテ置イテ、サウシテ人
ニウント使ハセテシマツテカラ、少シ金融
ガ引緊ツタカラト云フノデ、今マデノ佛顏
ガ遽カニ鬼ノ顏ニ變ツテ、一刻モ猶豫ハ相
成ラヌ、イザト言ハバ執達吏ヲ向ケルゾト
言ハヌバカリノ態度デ、貸金ヲ急激ニ囘收
スルト云フコトデハ、日本ノ將ニ芽生エン
トスル產業ヲ、金融業者ノ恐ロシキ手デ無
理ニ摘ミ取ツテシマフト云フ結果ニナリハ
セヌカト思フ、之ニ對シテ大藏省ハ如何ナ
ル方法手段ヲ御執リニナツテ居ルカ、之ヲ
何等カ緩和スルト云フ途ヲ執ツテ居ルト云
フコトヲ私ハ未ダ曾テ聞カヌガ、之ニ對シ
テ大藏省ハ如何ニ御考ヘデアルカ、又如何
ナル手段ヲ執ツテオイデニナルカ、更ニ將
來如何ナル方法ヲ御執リニナラントスルノ
デアリマスカ、其ノ點ヲ一ツ伺ヒタイト思
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=69
-
070・相田岩夫
○相田政府委員 昨年ノ九月、日獨伊三國
同盟締結ニ伴ヒマシテ、經濟界ニ多少ノ警
戒的氣分ト申シマスカ、サウ云フヤウナ氣
分ガアリマシテ、此ノ場合銀行ニ於キマシ
テモ、貸出ヲ急激ニ引緊メルトカ、或ハ貸
出シテアルモノヲ急ニ囘收ヲ圖ルト云フコ
トガアリマシテハ、財界ニ非常ニ惡イ結果
ヲ及ボシマスコトハ御說ノ通リデゴザイマ
スルノデ、其ノ際ニモ金融機關ニ對シマシ
テ、サウ云フ貸出ノ急激ナ引緊メヤ、急激
ナ囘收等ヲシナイヤウニト云フ注意ヲ發シ
タノデアリマス、金融機關ノ中デ、已ムヲ
得ズ貸出ヲ囘收スルトカ、新シイ貸出ヲ手
控ヘルト云フ必要ノアルモノニ對シマシテ
ハ、之ヲ興業銀行ナリ、勸業銀行ナリニ肩
替リサセルコトニ付テモ相當斡旋ヲ致シタ
ノデアリマス、今後共ニ金融機關ガ濫リニ
囘收ヲ急イダリ、或ハ新規貸出ヲ手控ヘタ
リスルコトノナイヤウニ、十分注意致シタ
イト思ヒマス、唯是ト同時ニ考ヘナケレバ
ナリマセヌコトハ、借主ノ方ニ於キマシテ
モ、長期資金ヲ短期ノ手形デ泳イデ居ルト
云フヤウナ者ガ往々アリマシテ、サウ云フ
者ガ金融ノ引緊リ狀態ニナル時ニ非常ニ困
ツテ來ルト云フ事例モ、屢〓見受ケラレマス
ルノデ、金融機關ノ側ニ於テ其ノ態度ニ付
テ十分注意ヲ致シマスト同時ニ、企業者ノ
方面ニ於キマシテモ資金ノ調達方法ニ付キ
マシテ、更ニ改善スベキ餘地モアルノデハ
ナイカト考ヘラレル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=70
-
071・武田徳三郎
○武田委員 私ノ質疑ハ是デ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=71
-
072・西村金三郎
○西村委員長 武田君ノ御質問ハ是デ終リ
ヲ〓ゲタヤウデアリマス、實ハ本日午前中
殘餘ノ七件ニ對シテハ、全部議題ニ上サナ
カツタノデアリマスガ、午後ノ本委員會ニ
於テ木村委員カラ動議ガアツテ、全部上シ
タノデアリマス、隨テソレヲ知ラナイ委員
ノ諸君ガ居ラレヤウト思ヒマス、仍テ明日
午前十一時カラ、午後ハ一時カラモ引續キ
開キマス、而シテ午前中ニ質問ガナケレバ
打切ツテ、午後ハ外國爲替管理法案ト共ニ
採決ニ入ラウト思ヒマス、左樣御承知ヲ願
ヒマス、本日ハ是ニテ散會致シマス
午後四時二十分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007610288X00419410214&spkNum=72
-
本文はPDFでご覧ください。
3. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。