第76回帝国議会　衆議院　蚕糸業統制法案委員会　第5号　昭和16年2月15日

1. 会議録本文

本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。

• 000・会議録情報

  　　　　會議
  昭和十六年二月十五日（土曜日）午前十時二十分開議
  　出席委員左の如し
  　　委員長　高橋熊次郎君
  　　理事　小山邦太郎君　理事　森幸太郎君
  　　理事　高橋圓三郎君　理事　最上政三君
  　　　　飯田助夫君　　　植原悦二郎君
  　　　　小野寅吉君　　　岡崎憲君
  　　　　加藤知正君　　北原阿智之助君
  　　　　紅露昭君　　　佐藤洋之助君
  　　　　坂本宗太郎君　　　助川啓四郎君
  　　　　鈴木正吾君　　　野溝勝君
  　　　　平野力三君　　　松岡俊三君
  　　　　松村光三君　　　宮澤胤勇君
  　　　　百瀬渡君　　　山田六郎君
  　　　　山本粂吉君　　　渡邊玉三郎君
  　　　　芦田均君
  　出席政府委員左の如し
  　　　　　農林省蠶絲局長　吉田清二君
  　　　　　商工省纖維局長　梶原茂嘉君
  　　　　　　　貿易局長官　石黒武重君
  本日の會議に上りたる議案左の如し
  　蠶絲業統制法案（政府提出）

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=0

  ---

• 001・高橋壽太郎

  ○高橋委員長　ソレデハ是ヨリ開會致シマ
  ス、昨日ニ引續キ渡邊玉三郞委員ノ質疑ヲ
  御繼續願ヒマス-渡邊玉三郞君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=1

  ---

• 002・渡邊玉三郎

  ○渡邊(玉)委員　私ノ質問ハ第四條質疑ノ
  途中デアリマシタガ、農林當局ノ貿易部門
  ニ於テ有機的ニ發達シタル經濟機構ノ根本
  ニ動搖ヲ與ヘナイト云フ御考へ方ニ付キマ
  シテハ、一應御尤モト思ツテ居リマス、併
  シナガラ今日ノ國際情勢ヨリ貿易政策ノ上
  カラ相當ノ變革ニ對處スル考ヘガ必要デナ
  イカ、斯樣ニ考ヘルノデアリマス、昭和十
  三年ノ我ガ國ノ生絲輸出ハ約四十八万俵ト
  記憶致シマス、金額ニ於テハ三億六千万圓
  デアリマシテ、昭和十四年度ニハ十万俵少
  ク約三十七万俵デ、五億圓ヲ突破シタ量ニ
  於テ少イガ外貨ヲ多ク獲得シテ居ル、昨年
  ハ又國際經濟情勢ガ變ツテ來マシテ、輸出
  ハ減退シタノデアリマスケレドモ、併シナ
  ガラ外貨獲得ノ上カラ行ケバ、四十七八万
  俵輸出致シマシテ、昭和十三年トハ恐ラク
  違ヒガナイ、斯ウ云フコトニ對シテ、國際
  貿易ノ經濟情勢ト云フモノガ、生絲ニ甚大
  ナル影響ヲ及ボシテ來テ居ルノデアリマス、
  今後ノ貿易ノ對策ト致シマシテハ唯徒ラ
  ニ量ノ多キノミヲ好ムベキモノデハナイ、
  隨テ蠶絲ヲ統制シヨウトスル時ニ、其ノ海
  外ノ貿易部面ニ於テハ、野放シニシテ置ク
  ンダ、斯ウ云フ風デハ實際ニ於テ緊迫セル
  時局下ニ今後ノ貿易上宜クナイデハナイカ、
  斯ウ云フ點ニ一應疑問ヲ持ツノデアリマス、
  第四條ハ、第一項ニ於キマシテモ、「但シ命
  令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ」、第
  二項ニ於テモ「但シ命令ヲ以テ定ムル場合ハ
  此ノ限ニ在ラズ」ト云フ「此ノ限ニ在ラズ」ニ
  依リマシテ、第一項ニ於テハ蠶種、繭又ハ生
  絲ヲ會社ヘ賣ラナクテモ宜イ除外例ヲ設ケ
  ラレルヤウナ考ヘ方デアル、第二項ニ於テ
  ハ製絲、繭又ハ蠶種ヲ會社ヲ通ジナクテモ
  宜イト云フ考ヘ方デアル、其ノ考ヘ方デ統
  制ガ根本カラ崩レテ來ル虞ガアルノデハナ
  イカ、昨日モ申シマシタガ、昨年ノ一月農
  林、商工省令デ發布サレマシタ纖維統制規
  則ニ依ツテ、是ハ效果ハ十分アツタト思ヒ
  さく、アツタ效果ト云フモノハ、國內向ケ
  ノ生絲ノ買溜ヲナカラシムルダケノ效果ガ
  アツタダケデアツテ、事實ニ於テ配給ト云
  フ方面カラ言フナラバ、全ク零ト言ツテモ
  宜イト思ヒマス、昨日例ヲ申シマシタ通リ、
  或ル團體ニ於テハ配給セントスル百分ノ
  モ使用シ得ナイ、斯ウ云フヤウナ狀態デア
  ルノデアリマスガ、更ニ私ハ華中蠶絲ノ關
  係ハ旣ニ同僚カラ申シマシタカラ此ノ際申
  シマセヌ、申シマセヌガ、中支那ニ於キマ
  シテモ、又廣東方面ニ於キマシテモ、相當
  養蠶業ガ發達シテ居ル、之ヲ日支一元的ニ
  有機的ニ統制シテ行クコトガ必要デアル、
  斯ウ云フコトヲ考ヘルノデアリマスガ、今
  後ノ貿易對策等ニ付テノ御考へ方、ソレカ
  ラ第四條ノ第一項、第二項ノ「命令ヲ以テ定
  ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ」ノ運用ノ考ヘ方、
  斯ウ云フコトヲ詳細ニ御答辯ヲ願ヒタイト
  思フノデアリマス、私ハ昨日來引續イテ時
  間モ相當要シテ居リマスカラ、簡單ニ申シ
  マスガ、日本蠶絲統制會社ト云フ一ツノ「パ
  イプ」ヲ通ジテ總テ統制サルベキデアルノヲ、
  第一項、第二項ノ但書ニ依ツテ野放シニス
  ルト云フ點ヲ、ドウ云フ風ニ調整ガ出來テ
  行クカ、而モ本法ハ第四條違反ハ一番處罰
  ガ重イノデアリマス、罰則ニ於テモ五千圓
  以下ノ罰則ヲ設ケラレテ居ル、斯ウ云フ點
  ニ付テ詳細ナル御答辯ヲ御願ヒ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=2

  ---

• 003・吉田清二

  ○吉田政府委員　第四條ノ第一項ト第二項
  トハ裏表トナツテ居ルヤウナ規定デアリ
  マイク蠶絲ハ總テ原則トシテ會社ニ一手買
  取ヲスルト云フ規定ニナツテ居リマス、但
  書デ命令ヲ以テ除外スルト云フ方ニ想定致
  シマシタモノハ、昨日申上ゲマシタヤウ
  ニ、最モ之ニ重點ヲ置イテ居リマスモノハ
  輸出向ケニ販賣サレル場合ノ絲デアルノデ
  アリマス、是ハ日本蠶絲統制株式會社ニ纒
  メテ賣ル、一手ニ買取ラセルト云フコトハ
  適當デナイト考ヘマシタノデ、是ハ除クコ
  トニ致シタノデアリマス、其ノ他極ク僅カ
  ナ數量ノ繭デアリマストカ、或ハ原種デア
  リマストカ、或ハ種繭デアリマストカ、其
  ノ他田舍ノ方デ百姓ガ足踏ミデ造ツタ僅カ
  ナ絲デアルトカ云フモノヲ一々此ノ會社ヘ
  必ズ賣レ、サウシテ今仰シヤツタヤウニ、
  賣ラナカツタ場合ニハ重イ罰ニスル、斯ウ
  云ツタヤカマシイ規定デ取締ルト云フコト
  ハ適當デナイ場合ガ非常ニ多イト思ヒマス、
  吾々ガ今想像シテ居ル以外ニ、ヤツテ見マ
  スト、又實際上取締ルニ意味ノナイヤウナ
  モノガ出テ來ル場合ガ豫想サレマスノデ、
  隨ヒマシテ斯樣ナ場合ハ是ハ適當ニ命令デ
  以テ除外シテ、必ズシモ會社ニ賣ラヌデモ
  宜シイト云フ場合ヲ除外スルト云フコトヲ
  命令ニ讓ツテアル譯デアリマス、輸出ノ統
  制ノ問題デアリマスガ、輸出向ケノ生絲ト
  申シマシテモ、決シテ野放シニスルヤウナ
  放漫ナコトヲ考ヘテ居ル譯デハナイノデア
  リマス、其ノ數量ニ付キマシテハ、大體此
  處デ先日來申シマシタヤウニ、計畫的ニ海
  外ヘ出得ルダラウト思ハレル大體ノ數量ヲ
  豫定致シマシテ、無暗ニ多ク輸出絲ヲ造ラ
  セテ置イテ海外ヘ出ス積リデアツタモノヲ
  多クシテ置イタノデハ、一朝有事ノ場合ニ
  於テ狼狽スルヤウナコトニナルノデアリマ
  ス、出來得ル限リ見透シヲ付ケマシテ、其
  ノ程度ニ輸出絲ヲ制限致シマシテ、或ハ誰
  デモ造レルヤウナ形ニシテ置イタノデハ、
  又廣イ範圍デ狼狽スル人ガ多イト云フヤウ
  ナコトモアリマスカラ、是ハ技術ノ上ニ於
  テ適當ナ製絲家ヲ指定致シマシテ、其ノ範
  圍ノ人達ニ豫定サレタ數量ヲ割當テテ造ラ
  セテ行ク、斯樣ナ關係カラ數量ノ調節ハ之
  ヲヤリマシテ、價格ノ維持ニ努メルト云フ
  意味カラ、數量ノ統制ト申シマスルカ、調
  整ヲヤルコトハ當然デアリマス、問題ハ價
  格ノ問題デアリマスルガ、今モ仰セニナリ
  マシタヤウニ、殊ニ斯ウ云フ際デアリマス
  カラ取レルダケ海外カラ金ヲ取ルト云ツタ
  ヤウナ考ヘ方モ無論イケナイノデアリマス、
  海外デ買ツテ差支ナイ限リニ於テハ、値段
  ハ高ク取レルモノナラ取ル方ガ外貨獲得上
  宜シイ、斯ウ云フ考ヘハ持ツテ居ルノデア
  リマス、サウ云フヤウナ考ヘ方デ外貨獲得
  上最モ有利ナ販賣ノ方法ハドウ云フ手段ニ
  依ツタラ宜カラウカ、斯ウ云フコトガ最モ
  根本ノ問題ナノデアリマシテ、決シテ價格
  ニ付キマシテモ野放シ-暴騰シ放題、暴落
  シ放題ニシテ置クト云フヤウナコトハ考へ
  テ居ラヌノデアリマシテ、價格ノ安定ヲ圖
  ル爲ニ出來得ル限リ幅ノ狹イ範圍ニ於テ最
  高最低ヲ決メマシテ、最低ニ參リマスレバ
  市場カラ會社ガ絲ヲ買取リマシテ値下リヲ
  防止スル、ソレカラ一定値以上ニ、極端ニ
  上ツテ餘リニ海外フ消費者ニ迷惑ヲ掛ケル
  ヤウナコトノナイヤウニ、豫定サレタ値以上
  ニ上ラヌヤウニココデ抑ヘル、ソレハ會社
  ガ先ヅ第一ニ賣リ向フ、又政府モ御承知ノ
  ヤウニ相當澤山絲ヲ持ツテ居リマスカラ、
  政府モ賣出ス、斯ウ云フコトニ依ツテ確實
  ニ上値ヲ抑ヘマシテ、餘リニ暴騰スルコト
  ヲ防止スル、又下ツテ來マスル場合ニハ會
  社ガ一定値デ買取ツテ値下リヲ防止スル、
  斯樣ナ形ニ於テ數量ノ點ニ於キマシテモ、
  價格ノ點ニ於キマシテモ、決シテ野放シト
  云フコトヲ考ヘテ居ルノデハナイノデ、斯
  樣ナ形、斯樣ナ方法ニ依ツテ輸出ノ方ノ部
  面ヲ統制スルノデアリマス、全ク無統制ト
  云フコトニスルノデハナイノデアリマス、
  斯樣ナ方法ト考ヘ方デ統制シテ行ク方ガ外
  貨獲得上有利デアル、斯ウ考ヘテ居ルノデ
  アリマス、徹底シタ統制ヲシテ、會社ガ全部
  一手ニ買ツテ、自分ノ決メタ値デ賣ツテ行
  クト云フヤウナ方法ニ依ル統制ハ、外國ニ物
  ヲ流シ外貨獲得上有利ナ値段デ賣ツテ行クト
  云フ考ヘ方カラ見テ、果シテウマク行クカド
  ウカ、斯ウ云フ所ニ問題ガアルノデアリマシテ、
  先般來度々申シマシタヤウニ、會社ガ一手デ
  買ツテ、ソレヲ自分ノ都合ノ好イヤウニ
  外貨獲得上都合ノ好イヤウナ賣値ヲ、賣人
  側ノ會社ガ獨リデ抱へ込ンダ荷物デ決メテ
  置イテ、サウシテ賣向ツテ行クト云フヤウ
  ナコトハ、中々結果ガウマク行カヌ、斯ウ
  云フコトヲ考ヘマシテ、先程申シマシタヤ
  ウナ方法ニ依ル統制ヲ行ツテ行ク方ガ宜イ.
  ノヂヤナイカ、斯樣ニ考ヘテ居ル次第デア
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=3

  ---

• 004・渡邊玉三郎

  ○渡邊(玉)委員　大體御方針ハ私ニモ能ク
  分ルト思ヒマス、唯其ノ御方針ハ統制會社ト
  云フ「パイプ」ヲ通シテ考ヘラレナケレバナ
  ラヌノデハナイカ、サウシナケレバ國內ヘ
  ノ統制及ビ養蠶農家ノ安心ガ得ラレナイノ
  デハナイカ、殊ニ現在ノ我ガ國ノ進步ガ農
  林當局ノ言ハレマス通リ旣ニ化學ノ〓究モ
  積ミ、國內ノ纖維ノ補塡ニ有效適切ニ蠶絲
  ヲ役立テナケレバナラヌト云フ上カラ致シ
  マシテ、アナタノ仰シヤルヤウナ風デ、而モ
  此ノ「パイプ」ヲ通ス方法ヲ考究スベキモノ
  デハナイカ、斯ウ私ハ思フノデアリマス、
  若シ無理ニ輸出ト國內ト分離セラレルト云
  フヤウナ場合ガアリトスレバ、養蠶農家ハ夏
  秋蠶ノ羊毛ヤ木綿混用、所謂內地特殊繭ノ
  買上値段ニ大ナル疑問ヲ持ツ不安ガアルト
  思フノデアリマス、更ニ輸出繭ガ高ク賣レ
  タラ是カラ補塡セラレルノデアリマスケレ
  ドモ、安ケレバ其ノ統制會社ノ「プール」ニ
  ハ輸出部面カラ剩餘金ガ入ツテ來ナイ、隨
  テ御說明ノ生產費ト云フモノカラ繭ノ相場
  ヲ御出シニナルコトニナレバ國家ガ補償金
  ヲ出スト云フ方法デナケレバ御言葉トハ違
  ツテ來ルノデハナイカ、斯ウ云フコトヲ思
  フノデアリマス、養蠶家ガ生活ノ脅威ヲ感
  ジナイヤウニ、玆ニ農林當局ノ御考ヘ方ヲ
  尙ホ御答辯ヲ願ツテ置キタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=4

  ---

• 005・吉田清二

  ○吉田政府委員　養蠶家ニ對スル關係ニ於
  キマシテハ、會社ガ養蠶家カラ買入レル値
  段ハ生產費-是ハ色々調査シテ居リマス、
  ソレカラ又其ノ他ノ農產物等ト睨ミ合セテ
  適正ナル生產費ヲ出シテ、之ヲ保障スルヤ
  ウナ意味デ必ズ會社デハ買フ、海外ノ情勢
  ガ如何樣ニアラウトモ之ニ狼狽スルコトノ
  必要ノナイヤウナ狀態ニ置イテ置カウ、其
  ノ代リ非常ニ騰ルト云フコトハ無論期待出
  來ナイ、併シ如何樣ナ國際情勢ニナリマシ
  テモ先年ノヤウニ暴落シテ賣レルカ賣レナ
  イカト云フヤウナ心配モ皆無ニスル、斯樣
  ナコトニシテ養蠶家ヲ極メテ安心ノ狀態ニ
  置カウトスルノデアリマス、隨テ繭値ハ生
  產費ニ準ジタ値段ヲ以テ必ズ此ノ會社ガ買
  フ、作ツタモノハ必ズ此ノ會社ヘ賣ラレル
  ト云フコトニナツテ居リマスノデ、養蠶家
  側カラ申シマスレバ極メテ安心ノ狀態ニナ
  ルト思フノデアリマス、會社デハ買ツタ繭
  ヲ自己ノ計算ニ於テ之ヲ仕譯ヲシテ色々ノ
  用途ニ向ケテ行ク、一部ハ輸出向製絲ノ原
  料ニ向ケ、一部ハ國內向製絲ノ原料ニ向ケ、
  又一部ハ羊毛代用ノ原料ニ向ケルト云フヤ
  ウニ色々ノ用途ニ向ケテ行ク、此ノ賣リ
  値ニ付キマシテハ、此會社デ以テ向ケル用
  途ニ依ツテ値段ハ一樣ニハ行カヌ、生絲用
  ニ向ケル場合ニ於テハ相當儲カルヤウミス
  ル、ソレカラ羊毛代用ニ向ケル場合ニ於テ
  ハ養蠶家カラ買取ツタ値段ヨリ或ル程度以
  下ニ賣ラナケレバナラヌト云フコトモアル
  ノデアリマスガ、此間ニ於テ會社ノ懷ロ內ニ於
  テ「バランス」ヲ取ラセヨウト云フノデアリ
  マシテ、併シ其ノ影響ハ普通ノ養蠶家ニハ及
  ブ關係ニハナツテ居ラナイノデゴザイマス、
  サウ云フ風ニシテヤツテ行カウト云フノデ
  アリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=5

  ---

• 006・渡邊玉三郎

  ○渡邊(玉)委員　其ノ御方針ニ付テハ私共
  大體分ツテ居リマスガ、ソレガ私ハ非常ナ
  錯覺デナイカト思フノデス、先ヅ輸出ハ今
  後「アメリカ」依存ヲ變ヘテ、新市場ヲ開拓シ
  ナケレバナルマイ、又「アメリカ」ヘ出スニ致
  シマシテモ常ニ輸出ノ宣傳ト云フコトヲ怠
  ツテハイケナイ、隨テソレハ輸出デ相當高ク
  ク賣レマシテモ、宣傳費ヲ差引イテ是ダケ
  餘リマシタト云フヤウナコトニ成ラヌ事ガ
  常識的ニ想像シ得ル、斯ウ云フヤウナ結果デ
  アルナラバ、假ニ八千万貫ノ生產計畫ノ中デ、
  一千五百万貫ト云フ特殊繭ヲ作リ、後ノ六
  千五百万貫カラ五十五万俵ノ絲ヲ挽ク、サウ
  シマスト其ノ五十五万俵ノ生絲ノ中デ輸出
  ガ假ニ二十五万俵トスルナラバ、國內デ使フ
  モノガ三十万俵、此ノ特殊繭以外ノ三十万俵
  ノ價格ヲ高クシテ、サウシテ千五百万貫ノ特
  殊絲ノ値段ヲ背負ツテ行カナケレバナラヌ、
  今ノ御答辯ニ依ルト、會社ガ損ヲスルノデ
  ナイコトニナツテ居ルノデアリマスカラ、
  三十万俵ノ國內民需デ千五百万貫ノ特殊繭
  ヲ「カバー」シテ行カナケレバナラヌ、詰リ
  相當國內ノ在來生絲ヲ高ク賣ツテ行カナケ
  レバナラヌ、サウシマスト輸出ノ生絲ヨリ
  ハ內地ノ普通ノ在來ノ生絲ハ隨分ト高クナ
  ル虞ガアル、高クスルト云フ御考ヘノヤウ
  ニ承レル、サウシテ農家ノ生產費ヲ割ラナ
  イノダ、斯ウ云フヤウナ御說明デアリマス
  ケレドモ、結局泣ク子ト地頭ニハ勝テナイ
  ト云フヤウナ結果ニナルノヂヤナイカ、法
  文ヲ讀ミマシテモ、「蠶絲ノ需給狀況、物價
  其ノ他ノ經濟事情ヲ參酌シテ之ヲ定ム」ト
  アリマスカラ、唯其ノ前ノ「生產費ヲ基準
  トシ」ダケナラ結構デアリマスケレドモ、
  「其ノ他ノ經濟事情ヲ參酌」サレマス時ニ、
  モウ之レ以上ノ値段ヲ算術的ニ出來ナイノ
  ダ、斯ウ云フ風ニナツテ來ルノデハナイカ、
  ソコデ此ノ第七條ノ考へ方カラ價格ヲ御定
  メニナリマシテ、假ニ私ノ言フヤウニ國內
  民需ノ生絲ガ高クナルトスルナラバ、輸出
  用ノ生絲モ同ジ繭デアリマスカラ、其ノ繭
  ヲ作ル時ニ國內民需ノ方ニ流レル虞ガアリ
  マス、ソコデサウ云フ風ニ流レナイヤウニ
  第四條ノ命令ニ違反シタル者ニハ五千圓ト
  云フヤウナ本法デ一番重イ罰金ヲ課シテ、
  サウ云フコトノナイヤウニセラレテ居ルト
  思ヒマスガ、詰リハ農家ノ負擔ニナルノダ
  ト私ハ思フノデアリマスガ、其ノ點ニ付テ
  ハドウ云フ風ニ價格ノ調整ヲセラレテ行ク
  カ、更ニ國內ノ製絲家ハ二割五分カラ休ン
  デ居ル狀態デアル、サウシテ更ニ今度ノ本
  案ニヨリ統制サレマスレバ一層釜ガ休ミマ
  ス、其ノ休ンダ者ニモ從來ノ働イテ居ツタ
  實績デ、共助ノ精神ヲ以テソレヲ助ケテ行
  キタイ、斯ウ云フ考ヘガアルナラバ、益〓生
  絲ノ生產費ハ高クナツテ行ツテ、國內ニ普
  遍的ニ此ノ纖維ヲ使ハシムルト云フ考ヘ方
  ガ經濟的ニ違ツテ來ルノヂヤナイカ、斯ウ
  云フ疑ヲ深クスルノデアリマスガ、其ノ點
  ヲ御答辯ヲ願ヒタイト存ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=6

  ---

• 007・吉田清二

  ○吉田政府委員　繭ノ値ヲ決メマスノニ、
  生產費、物價、其ノ他ノ經濟事情ヲ參酌ス
  ル、斯ウ云フ抽象的ナ色々參酌スベキ各種ノ
  條件ヲ決メテ居ルノデアリマス、併シ絲ノ
  相場ガ今下ツテ來タカラ、直グニ繭ノ値ヲ
  生產費以下ニ決メル、斯ウ云ツタヤウニ不
  安定ナ決メ方ヲスル積リハナイノデアリマ
  ス、サウ云フ意味デ書イテアルノデハナイ
  ノデゴザイマス、無論蠶絲ノ需給狀況ト云
  フモノガ、マルキリ變ツテ、內地ニモ生絲
  ハ一俵モ使ツテナラヌト云フ國策デモ確立
  サレテ、生絲ガ一俵モ賣レヌトカ、或ハ「ア
  メリカ」ト事ヲ構ヘテ、海外ニ一俵モ出ナ
  イト云ツタヤウナ異常ナ狀態ニナリマスレ
  バ、是ハ需給條件ガ非常ニ變ツタト云フコ
  トニモナリマセウ、ソレカラ經濟事情ヲ參
  酌スルノダト云フコトハ、是ハ餘程物價其
  ノ他ノ事情ガ今日ト變リマシテ、一切ノ勞
  賃ガ下ツテ、總テ生活水準ガ下ツテ來タ、
  斯ウ言ツタ場合ニ、繭値獨リガ物價ノ高カ
  ツタ當時ノ生產費ヲ維持スルト云フヤウナ
  方策ヲ續ケテ行クト云フコトハ適當デナイ
  ト云フ時代ガ起ルカモ知レナイ、サウ言ツ
  タ場合ニ檢討致シマシテ、其ノ適正生產費
  ガ、ソレデハ不適正ノ生產費ニナツテ居ル
  ト云フ狀態ニナリマシタ際ニ、ソレヲ是正
  スルト云フコトハアリ得マスケレドモ、値
  ガ下ツテ來タ、或ハ一時賣レナクナツテ來
  タカラ、直グ是デハ採算ガ合ハナイカラ生
  產費以下デ繭値ヲ決メヨウト云フコトデ生
  產費ヲ決メル考ヘヲ持ツテ居ルノデナイコ
  トヲ御諒承願ヒタイト思フノデアリマス
  ソレカラ繭ノ方ガ高値ノ絲ノ方ニ流レル
  ダラウト云フコトデアリマスガ、ソレハ此
  ノ會社デキチツト製造家ニ一定種類ノ製造
  生絲ヲ割當テテ生產サセマシテ、ソレニ必
  要ナル原料ヲ配給致シマスコトデアリマス
  カラ、隨テ繭ノ方ハ完全ニ此ノ會社ニ一手
  ニ入リマシテ、會社カラ割當テテ配給スル
  コトニナリマスノデ、自由ニ横ニ賣買ヲス
  ルコトガナイ以上、御話ノヤウナコトハ私
  共ハ考ヘテ居ラナイノデアリマス、無論ソ
  レデ損ヲスルヤウナ製絲家デアレバ別デア
  リマスガ、是亦製絲家モ、國用ノ絲ヲ挽ク
  人モ、輸出絲ヲ挽ク人モ、現實ニ生產費ヲ
  「カバー」シテ貰ヘルコトデアリマスノデ、
  ソレ〓〓繭ヲ生絲ニスレバ飯ヲ食ツテ行ケ
  ルコトガ保證サレテ居ル限リニ於テ、繭ヲ
  橫ニ販賣スルト言ツタコトハ實際問題トシ
  テハナイモノト思ヒマス、隨テ片方ニ片寄
  ルトカ、流レルトカ轉賣ガ行ハレルト云フ
  コトハ起ラナイモノダ、斯樣ニ私共ハ見テ
  居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=7

  ---

• 008・渡邊玉三郎

  ○渡邊(玉)委員　私ハ價格ノ點ニ付キマシ
  テハ何ダカ御答辯ガ木ニ緣ツテ魚ヲ求ムル
  ヤウナ御答辯ノヤウニ考ヘラレマス、三本
  建ニ生絲ヲ分ケル、卽チ輸出ト國內民需ト
  特殊生絲、斯ウ云フヤウニ分ケマス時ニ、繭
  ガ一貫目十圓ダ、斯ウ云フ生產費ガ掛ルト假
  定シマスト、輸出ダケハ十圓デモ別ニ差支
  ナイガ、アトノ繭ハ生產費ガ十圓デアルケ
  レドモ特殊繭ノ方ハ安クシナケレバナラヌ、
  併シ生產費ガ十圓ダカラ、十圓マデ負ハシ
  テ行カナケレバナラヌトスルト、在來ノ國
  內ノ生絲ハ十圓ノ生產費ヲ割ツテモツト安
  クシナケレバ片方ヘハ特殊繭モ十圓デ買ツテ
  纖維關係ノ紡績ニ假ニ五圓ニ賣レバ生產費
  ハアナタノ仰シヤルヤウナ工合ニ出テ來ナ
  イノダ、斯ウ云フヤウニドウシテモ思フノ
  デアリマス、又私ノ考へ方ガ間違ツテ居レ
  バ結構デスケレドモ、コンナ分リ易イコト
  ハ間違フ筈ハナイ、其ノ點ニ付テ尙ホ御答
  辯ヲ願ヒタイト思ヒマス
  更ニ生絲ヲ國內ニ洽ク今後「セリシン」定着
  ヲ有效ニ利用シ民需ニ應用スルト云フ大方
  針ヲ御立テニナツテ、輸出ハ或ル程度限定
  スル、先刻申上ゲタ通リニ數ノ少イコトガ
  外貨獲得ヲ少クスル所以デハナイ、斯ウ云
  フコトハ從來ノ考ヘ方ヲ變更シテヨイト私
  ハ深ク信ズルノデアリマス、數ハ少クテ外
  貨獲得ノ多イ方ガ宜イコトハ言フマデモナ
  イ、今飛行機ノ「パラシュート」ニ致シマシテ
  モ紐ハ「ナイロン」デアリマスケレドモ、其ノ
  袋ハ生絲ニ限リマス、其ノ外ノ市場ヲ開拓ス
  レバ需要ガ相當アルノデス、サウ云フヤウ
  ナ關係カラ、餘リ數ヲ多ク賣リタイト云フ
  考ヘ方ヲ持タズニ進ンデ行クノガ得策ダト
  思ヒマスガ、農林當局ハ數量的ニ輸出ハ相
  手ガ買ヘバ突込ンデ幾ラデモ賣ルト云フ考
  ヘヲ持ツノカ、或ハ計畫經濟ノ今日トシテ
  ハ國內民需其ノ他輸出物ニ付テハ計畫的
  ニ御進ミニナルノカ、其ノ點ノ御答辯ヲ御
  願ヒ致シタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=8

  ---

• 009・吉田清二

  ○吉田政府委員　此ノ「バランス」ヲ取ルト
  云フ考ヘ方ノ問題ハ、先程來申シマシタヤ
  ウナ關係デアリマシテ、繭ノ方ハ固ヨリ會
  社トシテハ多少ノ赤字ヲ覺悟シナケレバナ
  リマセヌ、唯絲ノ販賣價格ニ付キマシテハ
  無論國內ニ處分致シマス物ハ、低物價時代
  デモアリマスカラ、高ク賣付ケルト云フヤ
  ウナ考ヘ方一點張リデ決メルベキモノデハ
  ナイノデアリマスガ、機屋ノ方トシテハ現
  狀ヲエラク崩スト云フコトハ寧ロ混亂ヲ
  起スコトニナリマスカラ、內外ヲ通ジテ絲
  ノ値ハ現在ノ價格維持ト云フコトヲ建前ニ
  シテ行クヤウニ吾々ハ考ヘテ居ルノデアリ
  マス、斯樣ニ考ヘマスト、內地ノ方ニ處分
  致シマス物ハ、或ハ會社ニ取ツテ有利ニ處
  分出來ルカ出來ヌカ、是ハ計算シテ見ナク
  テハ-計算シテ見ナクテハト云フノハ、
  値ガ決ツテカラデナケレバ明確ニナラヌノ
  デアリマスガ、現在ノ値ヲ維持シ、是レ以
  上高ク內地ニ向ツテ賣付ケルト云フ考ヘハ
  持ツテ居ラヌノデアリマスガ、多少其處ノ
  所デ有利ニナリ得ル場合ヲ想像出來ル、輸
  出生絲ノ如キハ、是ハモウ現ニ價格ヲ維持
  シテ居ルノデアリマシテ、今渡邊サンノ仰
  シヤツタヤウナコトハ、私モ同樣ナ考ヘヲ
  持ツテ居ルノデアツテ、海外ニ對シテハ出
  來得ル限リ內地ニ賣ル場合ト違ツテ高ク賣
  リタイ、數量ノ點ニ於キマシテハ、昔ハ兎
  二門、今日ノ斯ノ如キ逼迫シタ情勢ニ於キ
  マシテハ、餘リ數量ヲ餘計出スト云フヤウ
  ナ考ヘ方ヲ止メテ、値段ノ方デ高ク賣レル
  モノナラバ賣ル、斯ウ云フ考ヘ方ノ方ガ少
  クトモ此ノ緊迫シタ情勢ノ下ニ於テ、海外
  ニ生絲ヲ出ス場合ノ考へ方トシテハ其ノ
  方ガ宜イノデハナイカ、斯樣ニ考ヘテ居リ
  きくら。隨テ輸出ノ方面ノ賣値ト云フモノハ
  相當高クナル、此ノ方面ニ向ツテ、高ク賣
  レルモノデアルナラバ、此ノ高ク賣レタ生
  絲ヲ販賣シタ人カラ一定方法ニ依ル追徵的
  取立ヲ此ノ會社ガヤリマシテ、斯ウシテ集
  メマシタ金デ、例ノ羊毛代用原料ノ幾ラカ
  赤字ニナラザルヲ得ナイ方面ノ損失ヲカ
  バー」シ、此處デ「バランス」ヲ取ラウ、斯ウ云
  フ考ヘ方ナノデアリマス
  輸出ノ方面ノ問題ハ、關聯シテ申上ゲマ
  シタヤウニ、考ヘ方ハ渡邊サント大體同ジ
  考ヘヲ持ツテ居ルト云フコトヲ申上ゲマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=9

  ---

• 010・渡邊玉三郎

  ○渡邊(玉)委員　御答辯ハ殘念ナガラ私了
  解ニ苦ミマスケレドモ、此ノ程度デ止メテ
  置キマス
  次ハ第十二條ニハ「主務大臣ハ」トアリマス
  ガ、是ハ農林大臣ノコトデアリマスカ、ソ
  レカラ「纖維製品ノ製造ヲ業トスル者ニ對シ
  勅令ノ定ムル所ニ依リ蠶絲ノ生產、配給、
  消費、使用、輸出、輸入、移出又ハ移入ノ
  統制ニ關シ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得」ト
  アル此ノ條文ニ付テ、質問ヲシタイト存ジ
  マス
  ソコデ第十二條ノ蠶絲ノ需給云々ト云フ
  ヤウニナリマスト、昨日商工當局カラ御答
  辯ニナリマシタ絲ヤ織物ノ定義ト云フモノ
  カラ云ツテ、ソレガ此ノ條文ニ依ツテドウ
  ナツテ行クカ、更ニ織物消費稅ノ關係ニ付
  テ農林當局ハ大藏當局ト交涉シテ、何カ善
  處スル御考ヘガアルカドウカ、農林當局ガ
  大藏省ニ交涉ノ條件ハ國民ノ代用品トシテ
  綿ノ中ニ入レルノデアルカラ、之ヲ綿ト見
  ルヤウニ折衝スルコトガ本當デハナイカ、
  斯ウ云フヤウニ考ヘルノデ、御尋ネヲスル
  ノデアリマス、御答辯ヲ御願ヒ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=10

  ---

• 011・吉田清二

  ○吉田政府委員　此ノ十二條ノ問題ハ主務
  大臣トアリマスガ、決シテ是ハ農林大臣バ
  カリデハナイ、此ノ生絲ノ輸出ト云フ問題
  ハ、商工省ノ所管ニ入リマシタコトデアル
  シ、今後ハ殊ニ纖維製品ノ製造ヲ業トスル
  者ニ對シ云々ト云フヤウナコトモゴザイマ
  シテ、是ハ所管トシテハ商工大臣デアリマ
  スルノデ、十二條ノ主務大臣ハ農林大臣ノ
  場合モアリマセウシ、商工大臣ノ場合モア
  ルト斯樣ニ御諒解ヲ願ヒタイト思ヒマス
  ソレカラ稅金關係ノ問題デアリマスガ、是
  ハ私共詳シイコトハ能ク存ジマセヌノデア
  リマスガ、商工當局トモ昨日來ノ色々ノ御意
  見御質問ノ御趣旨ニ鑑ミマシテ、十分打合
  セヲ致シマシテ、適當ニ事ヲ決メテ、財務
  當局トモ稅金其ノ他ノ關係ニ於テ、ハツキ
  リ決メルト云フコトニ付テ打合セヲ致シマ
  シテ、努力ヲスル積リデ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=11

  ---

• 012・渡邊玉三郎

  ○渡邊(玉)委員　纖維製品製造ヲ業トスル
  者ニ對シテ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得ト
  云フ點ニ付テノ御考へ方ヲ御答辯願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=12

  ---

• 013・吉田清二

  ○吉田政府委員　是ハ今具體的ニ斯樣ナコ
  トヲスルト云フコトヲ考ヘテ居ル譯デハア
  リマセヌガ、唯豫想致シマスルニ、色々ト
  絹織物其ノ他ノ計畫生產ト云ツタヤウナコ
  トモ、將來必要ニ應ジテハヤラナケレバナ
  ラヌ場合モアリハシナイカ、且又色々ナ纖
  維ヲ混紡シテ行ク場合ニ、斯樣ナ範圍ノ物
  ニハ一定割合ノモノヲ必ズ入レサセル、纖
  維全體ヲ按配良ク使用シテ行ク上カラ、サ
  ウ云ツタヤウナコトモ起リ得ルノデハナカ
  ラウカ、斯樣ナコトガ豫想サレマスノデ、
  其ノ途ヲ開イテ方法ヲ付ケテ置カウト云フ
  意味デ、此ノ規定ガ出來テ居ルコトヲ御承
  知願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=13

  ---

• 014・渡邊玉三郎

  ○渡邊(玉)委員　此ノ蠶絲ノ統制ニ付テ今
  マデノ考ヘ方ガ農林商工兩省ノ問ニドウモ
  巧ク行カナカツタヤウナコトヲ聞イテ居リ
  マスガ、例ヘバ生絲ノ配給ニ致シマシテモ、
  纖維需給調整協議會デ今ヤツテ居リマスケ
  レドモ、消費割當ヲシテモ必要ナ者ニハ割
  當ヲ幾ラデモ增シ割當ヲスル、今後サウ云
  フ點ノ方針ニ付テ商工當局カラ一ツ御答辯
  ヲ願ヒタイト思ヒマス、ソレカラ此ノ法文
  ノ今ノ命令事項ニ付テモ御答辯ヲ御願ヒ致
  シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=14

  ---

• 015・梶原茂嘉

  ○梶原政府委員　十二條ノ關係ニ付キマシ
  テハ、只今蠶絲局長カラ御答ヘガアリマシタ
  ヤウニ、當面ノ進行狀況ニ依リマシテ、命
  令ヲ出ストカ云フヤウナコトヲ具體的ニ考
  ヘテ居ル譯デハナイノデアリマス、蠶絲業
  全體ノ統制ガ整備强化セラレルニ伴ツテ、
  適當ニ此ノ條項ヲ活用シテ參ルト云フ用意
  ノ爲ニ設ケラレタ條項ト考ヘルノデアリマ
  ス、是マデ蠶絲關係ニ付キマシテ、農林
  省ト商工省トノ間ニ必ズシモ圓滑ニ行カ
  ナカツタカノ御說デアリマスガ、私ハ左
  樣ニハ考ヘナイノデアリマス、現在生絲
  ノ配給ニ付キマシテモ、纖維需給調整協議
  會其ノ他ニ於テ色々計畫ヲ立テ實施シテ
  居ルノデアリマスルケレドモ御承知ノ
  ヤウニ生絲關係ニ付キマシテハ、輸出ノ
  關係モアリ、其ノ他色々ナ關係ガアリマ
  シテ、蠶絲業全體ニ付テノ統制ノ基礎ガ今
  囘確立セラレルト云フ風ナ事情ニアル譯デ
  アリマスノデ、外ノ纖維ニ比ベマシテ、
  統制ノ進涉ノ度ガ稍〓遲カツタト云フコト
  ガ或ハアルカト思フノデアリマズ、サウ云
  フ關係デ、渡邊サンノ御考ヘノヤウナ節ガ
  或ハアツタノデハナカラウカト存ジマス、
  併シナガラ今囘斯ウ云フ基本的ノ統制ノ制
  度ガ確立セラレタノデアリマス、生產部門、
  配給部門ヲ通ジマシテ、他ノ纖維關係ト關
  聯ヲシナガラ、統制ガ圓滑ニ十分ニ行ハレ
  得ルモノト信ズルノデアリマズ、其ノ間兩
  省ノ間ニ苟モ不圓滑ヲ來スト云フガ如キコ
  トハ萬ナイモノト確信致シテ居ル次第デア
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=15

  ---

• 016・渡邊玉三郎

  ○渡邊(玉)委員　第十五條ノ絲價安定施設
  特別會計ノ今日マデノ活動、今後ノ是ノ本
  案トノ關係ニ付テ御答辯ヲ伺ヒタイト存ジ
  マス、ソレカラ第十六條ノ第一一項ハ、國內
  生絲ノ檢査ニ付テハ何處ノ場所トカ、何箇
  所トカ云フコトハ、此ノ際承ハラウトハ思
  ツテ居リマセヌガ、此ノ檢査所ハ本會社ガ
  作ルノデアルカ、又製絲家ガ作ルノデアル
  カ、或ハ國家ガ檢査所ヲ設ケル考ヘデアル
  カ、又主要ナ生產地ニ設ケルカ、消費地ニ
  設ケルカ、斯ウ云フ點ニ付テノ考ヘ方ヲ御
  答辯願ヒタイト存ジマス、更ニ第三項ノ繭
  ノ檢定ハ、大體府縣ニ代行セシムルコトガ
  便利ダト思ヒマスガ、サウ云フヤウナ考ヘ
  方デアルカドウカ御尋ネ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=16

  ---

• 017・吉田清二

  ○吉田政府委員　十五條ノ問題デアリマス
  ガ、現在絲價安定施設法ニ於キマシテ、所
  謂制高制低トカ申シマスル制度ガアリマシ
  テ、ソレニ基キマシテ、政府ガ一定ノ資金
  ヲ以テ生絲ヲ買入レテ居ルノデアリマシテ、
  其ノ會計ガ出來テ居ルノデアリマスガ、ソ
  レトハ別個ニ、玆ニ十三條、十四條ニ於キ
  マシテ、此ノ會社ガ先ヅ一應生絲ヲ全部買
  入レルト云フコトニナリマスガ、此ノ會社
  ハ餘リ長ク荷物ヲ寢サセテ置イタノデハ、
  仕事ガ敏活ニ行カヌ場合ガアルノデアリマ
  ス、ソコデ此ノ會社ヲシテ餘リ資金ノ永久
  ニ固定スルヤウナコトノナイヤウニ考ヘテ
  ヤラナケレバナリマセヌノデ、ソンナ關係
  カラ此ノ會社デ一定數量、餘リ荷物ガ溜
  ルト云フヤウナ傾向ニアリマシタ際ニハ
  絲價安定施設法ニ基キマシテ買入レル場合
  ノ外ニ、玆ニ書キマシタ値段ニ依ツテ、要
  スルニ肩替リヲシテヤルト云フ途ヲ此ノ法
  律ニ依ツテ開イタノデアリマス、其ノ場合
  ニ絲價安定施設法ノ特別會計デ此ノ十三條、
  十四條ノ場合ノ仕事ヲスルノダ、斯ウ云フ
  コトヲ書イタ規定ナノデアリマス
  ソレカラ第十六條ノ二項ノ檢査所デアリ
  マスガ、檢査所ハ何處ニヤラセルノカ、斯
  ウ云フ問題デアルノデアリマス、大體昨日
  モ申シマシタヤウニ、生絲ノ檢査ハ出來ル
  限リ橫濱、神戶ノ檢査所ニ於キマシテ、今
  日ノ場合其ノ設備ヲ活用シテ檢査ヲシテ行
  キタイ、斯ウ云フ考ヘモ持ツテ居ルノデア
  リマスガ、國用絲ノ全部ニ付テ檢査スルト
  云フコトハ困難デアリ、又不得策ノ場合モ
  アラウト想像サレマスノデ、適當ノ地域ニ
  於テ生絲ノ檢査ヲ致シマスル施設ヲ作リタ
  イト考ヘテ居ルノデアリマス、大體私共ノ
  考ヘト致シマシテハ、此ノ會社ノ施設トシ
  テヤルノガ適當デハナイカト考ヘテ居ルノ
  デアリマス、何ダカ買人ガ其ノ檢査所ヲ設
  ケテ、自分ガ檢査スルヤウナ感ジモ致スノ
  デアリマスガ、此ノ會社ハ私共ノ期待致シ
  テ居リマスル會社トハ言フモノノ、是ハ殆
  ド政府ノ代行機關ミタイナモノデアリマシ
  テ、營利本位デハナイノデアリマス、此ノ
  會社ガ諸施設ヲ致シマシテ、完全ナ設備ヲ
  作ル方ガ宜クハナイカト考ヘテ居ルノデア
  リマス、如何ナル場所ニ何箇所、ドノ程度
  ノモノヲ作ルカト云フコトニ付キマシテハ、
  マダ決定致シテ居リマセヌ
  ソレカラ次ニ繭ノ檢定デゴザイマスルガ、
  是ハ數年前來設備ヲ作リマシテ、各府縣ニ
  於テソレ〓〓檢定ヲ致シマスル設備ガ完備
  致シテ居リマス、此ノ檢定所ヲ利用シテ檢
  定ヲ致シマシテ、其ノ檢定ニ依ツテ會社ガ
  買入レルト云フコトデ進ンデ參リタイト考
  ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=17

  ---

• 018・渡邊玉三郎

  ○渡邊(玉)委員　御答辯ニ依ツテ分リマシ
  タ、併シ本會社ガ資金ノ固定ヲシナイヤウ
  ニ御圖リニナルコトガ、養蠶家及ビ製絲家
  ノ金融ニ非常ナ障碍ニナルノデハナイカト
  云フコトヲ憂慮スル者デアリマス、總テ國
  家ノ統制ニ依ツテ指定セラルル運ビヲナス
  場合ニ、皆金ガ早ク手ニ入ラナイデ困ツテ
  居リマス、是ガ仰シヤルヤウナ工合ニ「スムト
  Zニ行クトハ考ヘラレナイ、ダカラ此ノ
  資金ノ固定ヲ御避ケニナルナラバ、其ノ外
  ニ何カノ方法ガ考ヘラレナケレバイケナイ
  ノデハナイカト思フノデアリマス、其ノ點
  ニ付キマシテ一應當局ノ御方針ヲ承リタイ
  ト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=18

  ---

• 019・吉田清二

  ○吉田政府委員　此ノ會社ハ繭ヲ買ツテ製
  絲家ニ賣ル、絲ヲ買ツテ生絲ノ消費者ニ賣
  ル、普通現在ノ狀態ニ於キマシテハ、ソレ
  ガ速カニ流レテ居リマスノデ、事ノ變調ヲ
  來サナイ限リニ於キマシテハ、極メテ敏速
  ニ物ガ金ニ替リ、直チニ金ガ物ヲ買フ資金
  ニナルト云フコトデ進ムモノト思フノデア
  リマス、此ノ會社トシテハ資金ハ原則トシ
  テ、金融業者カラ融通ヲ仰イデ、其ノ金ヲ
  活用スルコトニ依ツテ仕事ヲ敏活ニヤツテ
  行キタイト云フ考ヘデ居ルノデアリマス、
  所デ或ル程度無論一定量ノ絲ハ常ニ持ツテ
  居ルコトニハナリマセウガ、買ツタモノガ
  相當早ク賣レサウニ思ツテ居ツタ、所ガ何
  カノ變調デ溜ラザルヲ得ナクナツタ、斯ウ
  云ツタヤウナコトガアリマスト、遂ニ仕事
  ニ支障ヲ來スト云フヤウナコトモ考ヘラレ
  マスノデ、サウ云フ場合ニハ、其ノ物ヲ直
  グニ資金ニ換ヘル爲ニ特別會計デ肩代リヲ
  シテ、サウシテ其ノ物ヲ金ニ換ヘテ行ク、ソレ
  ヲ若シ後ニ至ツテ物ガ政府ノ方ノ會計ニ取
  ラレテシマツテ、今度ハ物ノ方ガ足リナイ
  ト云フヤウナ場合ガアリマスレバ、今度ハ
  此ノ會社ニ此ノ物ヲ出シテヤル、サウシテ
  所謂自給自足ヲ圖ラセル、斯ウ云フ途ヲ開
  ケテ置ク必要ガアルト思ヒマシテ決メタ問
  題デアリマシテ、斯樣ナ考ヘ方ヲシテ居ル
  譯デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=19

  ---

• 020・渡邊玉三郎

  ○渡邊(玉)委員　第十七條ノ期間デスガ、
  第十七條ノ第二項デ「輸出向生絲製造業者ノ
  輸出生絲檢査ヲ受クベキ數量又ハ品質ニ付
  期間ヲ定ムルコト」斯ウ云フコトガ命令事項
  ニ書イテアルノデアリマスガ、之ニ付テナ
  ゼ期間ヲ付ケナケレバナラナイカ、其ノ必
  要ナル理由ヲ御尋ネヲシマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=20

  ---

• 021・吉田清二

  ○吉田政府委員　是ハ輸出業者ニ一定數量
  ノ製造ヲ割當テテ、サウシテ檢査ヲ受ケテ
  輸出サセルト云フコトデアリマスガ、數量
  ヲ割當テマシテモ、ソレハイツカノ內ニ出
  セバ宜シイト云フノデハ困ルノデアリマシ
  テ、一定期間中ニ是ダケノ數量ヲ製造シテ
  輸出スルコト、斯ウ云フコトヲ決メル必要
  ガアルノデアリマス、サウ云フ關係カラ此
  ノ命令デハ主務大臣ガ輸出生絲ヲ製造スル
  人ニ數量ヲ割當テテ販賣ヲサセル場合ニ、
  此ノ命令ニハ併セテ期間ヲ考ヘテ置カナケ
  レバナラヌコトニナルノデアリマシテ、ソ
  コ等ノ點ヲ命令デ決メタイ、斯ウ云フ意味
  デ書イテアルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=21

  ---

• 022・渡邊玉三郎

  ○渡邊(玉)委員　第十八條ノ第一項ハ蠶絲
  業ヲ營マントスル者ニ對シ行政官廳ノ許可
  ヲ受クベシ、其ノ蠶絲業ノ者ハ豫メ玉絲製
  造及ビ座繰業ヲ御指定ニナル御豫定ノヤウ
  デアリマスガ、差當リサウ云フコトデ、其
  ノ後ニハドウ云フ御考ヘガアルカ、其ノ點
  ヲ御尋ネ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=22

  ---

• 023・吉田清二

  ○吉田政府委員　是ハ色々最近ニ纖維ガ不
  足致シマシテ、玉絲業者モ是ハ從來製絲業
  法ニ依ツテハ免許ノ營業ニナツテ居ル譯デ
  ハナイノデアリマスガ、非常ニ業者ノ方カ
  ラ玉絲製造業者ヲ免許ニシテハツキリト業
  者ヲ決メテ貰ヒタイト云フ要望モアリマシ
  テ、サウ云フヤウナ關係カラ現在他ノ方法
  ニ依リマシテ免許制度ヲ考ヘテ居ルノデア
  リマスガ、斯ウ云フ際デアリマスカラ茲ニ
  明カニ法規上ノ根據ヲ設ケタイ、今後座繰
  等ニ付キマシテモ、同樣ナ情勢ガ出マシテ、
  營業ヲ始メントスル者ニ對シテハ許可ヲ要
  スルト云フヤウナコトニスルコトノ必要ナ
  場合モアルヤウニ考ヘラレマスノデ、ソレヲ
  豫定致シタノデアリマス、差當リハ其ノ二
  ツ位ヂヤナイカト思ツテ居リマス、其ノ他
  ニハ製絲業者ハ御承知ノ通リ製絲業法デ
  免許制度ガ出テ居リマス、蠶種ノ方ハ出テ
  居リマセヌ、主ナル關係業者トシテハ今日
  ノ所デハ其ノ程度ヲ豫想サレテ居ルノデア
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=23

  ---

• 024・渡邊玉三郎

  ○渡邊(玉)委員　將來此ノ蠶絲業ト云フ中
  ニ養蠶家ヲ含ムヤウナ御考ヘハ持ツテ居ナ
  イノデアルカドウカ、此ノ問題デハ第十八
  條ニ千圓以下ノ罰金ガ付イテ居リマスカラ
  相當重要ナ條項デアルト思ヒマス、「公益ヲ
  害シ若ハ害スルノ虞アリト認ムルトキハ」ト
  云フ場合ハドウ云フ場合ヲ指スノデアル
  カ、ソレカラ第十九條ノ桑園許可制度デア
  リマスガ、愛知縣地方デハオ蠶ヲ飼フ者以
  外ノ者デ桑園ヲ澤山持ツテ居ル者ガアル
  ガ、サウ云フ者ニ對シテ將來ドンナ措置ヲ
  講ズルノデアルカ、又屋敷ニ僅カ桑ノ樹ヲ
  植ヱテ置ク所ガアルガ、是ハ桑園ト見ルカ
  ドウカ、此ノ點ヲ御答辯願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=24

  ---

• 025・吉田清二

  ○吉田政府委員　養蠶ト云フモノハ無論言
  葉ノ上カラ申シマスレバ、蠶絲業デアルノ
  デアリマスガ、此ノ十八條ニ依リマシテ養
  蠶家ヲ許可制度ニスルト云フコトハチツト
  モ考ヘテ居リマセヌコトヲハツキリ申上ゲ
  テ置キマス、其ノ後ノ二項ノ問題ハ是ハ如
  何ナル場合ト具體的ニ申上ゲルヨリモ、斯
  樣ナ場合ノ例文デアリマスノデ、如何ナル
  場合ト云フコトハ此處デ一寸申上ゲ兼ネル
  ノデゴザイマス、申上ゲ兼ネルト云フコト
  ハ申上ゲルノニ一寸頭ニ浮バナイト云フ
  コトデ御諒承願ヒタイト思ヒマス、十九條
  ノ桑園ノ新設擴張ト云フコトニ對シテハ地
  方長官ノ許可ヲ受ケル、此ノ趣旨ハ今度斯
  樣ナ制度ヲ設ケマシテ、先程來度々申シマ
  スヤウニ、適正ナル生產費ヲ基準ト致シマ
  シテ、養蠶家ハ繭ヲ製造致シマスレバ必ズ
  今後ハ之ヲ買ツテ貰ヘルト云フコトニ相成
  リマスト-是ハ見方ニモ依ル譯デアリマ
  スガ、從來ハ養蠶家ハ非常ニ絲値ガ高クナ
  リマシタ時ニハ繭モ高ク賣レル場合ガアリ
  マスガ、必ズ其ノ反動デエライ目ニ遭フノ
  ガ今マデノ例デアツタノデアリマス、併シ
  養蠶家ノ本當ノ希望トシテハ、一時的ニ高
  イ値段ヲ享樂スルヨリモ、生產費ヲ割ラナ
  イデズツトソレデ賣レルンダト云フ安心ヲ
  與ヘテ貰フコトガ、根本的ニ養蠶業安定デア
  リ、養蠶業ノ振興ニナル、斯ウ云フノガ今マ
  デ吾々聞カサレテ居ル本當ノ聲ノヤウニ思
  ツテ居ルノデアリマス、今度ノ制度ニ於キ
  マシテハ其ノ趣旨ニ依リマシテ編ミ立テテ
  居ル譯デアリマシテ、是ガ確立致シタ曉ニ
  於キマシテハ養蠶家ハ非常ニ安定ヲスルノ
  デハナカラウカ、要スルニ作ツタモノハ必
  ズ賣レ、而モ生產費ヲ「カバト」シテ貫ツ
  テ、決ツタ値デズツト將來賣ルト云フコト
  ガ決リマスト、動モスルト桑園ガ殖ヱル傾
  向ニナルノデアリマス、是ハ見方ニ依ルノ
  デアリマスガ、ナルノデハアルマイカト思
  ヒマス、是ハ第一今日ノ狀態カラ見マシテ
  食糧其ノ他ノ增產計畫、食糧ノ生產確保ノ
  見地カラ見マシテ、兎ニ角桑園面積ガエラ
  ク殖ヱルト云フヤウナコトデハ餘程其ノ方
  面ニ迷惑ヲ掛ケタリ、摩擦ヲ起スヤウナ傾
  向ニナリハシナイカト云フコトハ、樂觀ニ
  過ギル見方デアルカモ知レマセヌガ、サウ
  云フコトモ一ツ考ヘラレマス、又蠶絲ノ政
  策ト致シマシテモ、消費ノ非常ニ多イ時デ
  アリマスナラバ纖維ノ關係ハ宜イノデアリ
  マスガ、消費ノ增大ハ圖ルニ致シマシテモ、
  急激ニ增加スルト云フ傾向ニナリマシテ
  モ、是亦蠶絲ノ立場カラ見マシテモ適當デ
  ナイ場合モアリマスノデ、桑園ハ大體現在
  ノ程度以上ニハシナイ方ガ宜カラウ、斯ウ
  云フヤウナ考ヘデ新設擴張ト云フ場合ニハ
  許可ヲ受ケサセルト云フ途ヲ開キ得ル、情
  勢ヲ見タ上デモ宜シイカト思フノデアリマ
  スガ、許可ノ制度ヲ設ケルコトガ出來ルト
  云フコトヲ玆ニ書イテ置イタ譯デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=25

  ---

• 026・渡邊玉三郎

  ○渡邊(玉)委員　大體此ノ法案ニ付テノ御
  當局ノ所信ヲ知ルヲ得マシタガ、私ハ殘念
  ナガラ五十三万町步ノ我ガ國ノ桑園ガ何ト
  カ御考ヘニナラナケレバ、政府ノ仰シヤル
  六万町步ヲ減ラシテ、サウシテ農家ノ努力
  ニ依ツテ生產ヲ縮小シナイト云フ考ヘ方ガ、
  統制ノ適正ヲ缺ク時ニハ反對ノ結果ガ生ジ
  テ來テ、モツト桑園ハ減ツテ繭ノ生產ガ減
  ジテ行クヤウナ虞レガアルノデハナイカト
  云フコトヲ洵ニ深ク憂慮致シマス、併シサ
  ウデナカツタナラバ結構ナコトデアリマス
  ガ、五十三万町步ヲ六万町步少クシテ、サ
  ウシテ全生產能力ヲ發揮シテ五十三町步ノ
  桑園ノアル元ノ通リニシテ行キタイト云フ
  ノニ、如何ニモ農家ニ對スル不安ガ多過ギ
  ル、次ニ斯ウ云フヤウナ大事ナ會社ニ-第
  二十九條デアリマスガ、「社長及副社長ハ
  主務大臣之ヲ命ジ」云々ト書イテアリマスガヾ
  ドウ云フヤウ人ガ社長ニナルノデアルカ、
  其ノ點ヲ御聽キシテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=26

  ---

• 027・吉田清二

  ○吉田政府委員　マダ社長ハドウ云フ人ト
  ト云フヤウナコトニ付キマシテハ、私共無
  論承知致シテ居ル筋合ノモノデモナイノデ
  アリマス、此處デハ御質問ニ對シテハ何ト
  モ申上ゲ兼ネマスコトヲ御諒承願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=27

  ---

• 028・渡邊玉三郎

  ○渡邊(玉)委員　何時モ斯ウ云フ國策會社
  ニハ官吏ノ古手ガ入リ込ンデ來ル、業界ニ
  精通シタ者デナケレバイケナイダラウト思
  フ此ノ會社ニ、其ノ點ニ付テ何カ御考ヘガ
  アルベキ筈ヂヤナイカ、斯ウ思ツテ御尋ネ
  シタノデアリマスガ、御答辯ガ出來タラ願
  ヒタイ
  ソレカラ第四十二條ノ「日本蠶絲統制株
  式會社ハ繭及生絲ノ價格ノ安定ヲ圖ル爲命
  令ノ定ムル所ニ依リ繭絲價格安定資金ヲ設
  定スベシ」此ノ書イタル法文ハ分リマス、
  斯ウ云フヤウニ蠶絲統制會社ニ絲價安定資
  金ヲ溜メテ置クノダ、サウシテ其ノ金ヲ「プ
  ール」シテ置イテ、生產費ヲ割ラヌヤウニ其
  ノ金ヲ又要ルベキ場合ニ振リ當テルト云フ
  考ヘ方ガ、益〓今日ノ現狀カラ一ツノ「パイ
  プヲ通サザル統制ガ農家ノ不安ナ點デア
  ルト私ノ疑ヒガ晴レテ行カナイノデアリマス、
  此ノ第四十二條ノ考へ方、ドウシテサウ云
  フ金ヲ御集メニナルカ、ドノ位集マルカト
  云フ點等ヲ詳細ニ御答辯願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=28

  ---

• 029・吉田清二

  ○吉田政府委員　社長ノ問題ニ付テ重ネテ
  ノ御質問デアリマスガ、是ハ先程私ガ申上
  ゲタ程度デ一ツ御許シヲ願ヒタイト思ヒマ
  ス、次ニ四十二條ノ問題デアリマスルガ、
  是ハ無論事業ヲ始メナイ前カラドレダケノ
  積立ガ出來ルカト云ツタヤウナ見透シハ出
  來ルコトデハゴザイマセヌガ、出來ルコト
  ナラバ相當積立ヲ致シテ置キマシテ-是
  ハ主トシテ米國等ト一朝今後如何ナルコト
  ガナイトモ限ラナイ、斯樣ナ際ニ從來ナラ
  バ非常ナ大風、大浪ガ寄セテ來ルコトニナ
  ルノデアリマスガ、今後ハ此ノ會社ガ各業
  者ノ間ニ入リマシテ、防波堤ノ働キヲナス
  ヤウニナルノデアリマシテ、結局其ノ波ナ
  リ風ナリヲ直接的ニ受ケルノガ此ノ會社ト
  云フコトニナルノデアリマス、又ソレヲ受
  ケルコトヲ目的トシテ、一朝事ガアツタナ
  ラバ、蠶絲業全體トシテ狼狽ヲシナイヤウ
  ナ仕組ヲ作ツテ置カウト云フ趣旨ガソコニ
  アルノデアリマス、サウ云ツタ際ニ一時ハ
  非常ニ物モ溜ルト云フコトモ覺悟シナケ
  レバナラヌ、サウ云ツタ際ニ於ケル備ヘト
  致シマシテ此ノ積立金ヲ作リタイ、斯ウ云
  フノガ四十二條ノ趣旨デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=29

  ---

• 030・渡邊玉三郎

  ○渡邊(玉)委員　結局生絲ト云フ物ハ農家
  ノ努力-汗ト脂ガ滲ミ込ンデ居ルト思ヒ
  マスガ、我ガ國ノ百六十五万戶ノ養蠶家ガ
  御說明ノ如クデアルナラバ、輸出絲ノ方ヘ
  全部向ケテ行キタイ、斯ウ云フヤウニ押寄
  セテ來ルモノト思ヒマス、サウ云フ點ニ付
  テ玆ニ本法案デ命令ヲ以テ定ムル云々ト云
  フコトニナツテ來ルト思ヒマスガ、私ハ其
  ノ點ニ疑ヒヲ持ツノデアリマスガ、御當局
  ノ御意見ヲ承リタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=30

  ---

• 031・吉田清二

  ○吉田政府委員　輸出ノ方ノ生絲製造ノ希
  望者ガ非常ニ多クテ、ソツチノ方ヘ行クダ
  ラウト云フ意味ノ御質問ダツタト思フノデ
  アリマスガ、是ハハヅキリ致サナイコトト
  思ヒマス、見方ニ依リマスレバ、國用生絲
  ノ方ハ作ツタ物ハ一定値デ買ツテ貰ヘル、
  輸出生絲ノ方ハ無論制高制低デ相當不安ハ
  除去サレルコトト思ヒマスルガ、或ハ相場ガ
  其ノ一定範圍ニ於テ動キ、儲カル場合モア
  ルガ、損ヲスル場合モアル、斯ウ云ツタヤ
  ウナ形ニナリマスルコトカラ、或ハ希望シ
  ナイヤウナ人モアリハシナイカト考ヘラレ
  マン、是ハ實行シタ上デナケレバ分リマセ
  ヌガ、何レニシテモ渡邊サンノヤウナ見方
  モ出來マスルノデ、政府デ之ヲ指定スルト
  云フコトニ考ヘテ居ルノデアリマシテ、之
  ヲ指定ヲ致シマスルノニハ、設備、技能其
  ノ他從來ノ實績等ヲ能ク調ベマシタ上デ適
  當ナ範圍ニ指定シテ行キタイ、斯ウ云フ風
  ニ考ヘテ居ル譯デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=31

  ---

• 032・渡邊玉三郎

  ○渡邊(玉)委員　最後ニ一點ダケ御尋ネヲ
  シタイト思ヒマス、繭ノ仲買トカ桑ノ仲買
  ナドノ失業者ハ今後ドウスル御方針デアル
  カ、ソレカラ玆ニ書イタ物ガアリマス、全
  國繭市場組合聯合會ノ希望事項トシテ「一、
  繭市場ハ其ノ設備ヲ卽時買收セラルルコト、
  二、買收ニ際シテハ從來ノ實績ヲ加味セラ
  ルルコト、三、從業員ハ日本蠶絲統制會社ニ
  使用セラルルコト、四、買收價格評議委員會
  (假稱)ニハ繭市場代表一一一名ヲ加ヘラルルコ
  ト、附、一、萬一卽時買收ニ非ル場合ハ買收年
  次ト其ノ價格ヲ明示セラルルコト、二、前項延
  期ノ場合ハ其ノ間ノ利用方法ヲ左ノ如クセラ
  レ度シ、イ繭市場ハ日本繭絲統制會社直屬
  ()
  ノ荷捌所トセラルルコト、ロ養蠶業ハ各自產
  (
  繭ヲ荷捌所迄搬入スベキコト、ハ荷捌所ハ
  (
  前項搬入生繭ノ各人別看貫繰絲見本ノ採取
  繭代金ノ支拂及徵收生繭若クハ乾繭ノ配給
  其ノ他必要ナル處理ヲ爲スノ外養蠶實行組
  合ノ希望ニ依リ繭ノ品等別鑑定ヲモ爲スコ
  )
  ト二市場乾繭設備ノ優先的使用ハ勿論、
  荷扱範圍ハ尠クトモ從來ノ實績ヲ下ラザル
  )
  樣地盤ヲ確保セシメラルルコト、ホ繭ノ配
  (
  給ハ乾繭ヲ可トスルヲ以テ將來荷捌所ノ乾
  繭設備充足ヲ圖ラレ度シ」、斯ウ云フヤウナ
  コトヲ私ノ所ニ言ツテ參ツテ居ル陳情ガア
  リマス、各方面ニモ行ツテ居ルト思ヒマス
  ガ、之ニ對スル御答辯ヲ御願ヒシタイノデ
  アリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=32

  ---

• 033・吉田清二

  ○吉田政府委員　繭仲買人ノ今後ノ失業ニ
  對スル心配ニ對シテ如何ナル考ヘヲ持ツテ
  居ルカ、斯ウ云フ御質問デアリマス、是ハ
  先般來申シテ居ルノデアリマスガ、從來繭
  ノ部面ニ付キマシテモ、生絲ノ部面ニ付キ
  マシテモ、絹ノ部面ニ付キマシテモ、中間
  商人ト云フモノガ相當アルノデアリマス、
  餘リ合理化々々々ト云ツタヤウナ一本調子
  ノ考ヘ方デ之ヲ運用致シマスルト、兎角中
  間商人ト云フモノヲ失業者ニ引落ス傾向ヲ
  取リ易イモノト想像サレルノデアリマス、
  此ノ制度ヲ立テマスル根本的ノ考ヘ方ト致
  シマシテハ、此ノ業者ニ對シマシテハ出來
  ルダケ失業者ヲ出サナイ、要スルニ今日マ
  デ蠶絲業ノ一役ヲ勤メテ居ツタ總テノ業者
  デアルノデアリマスカラ、極力失業者ヲ出
  サナイ、サウシテ出來得ル限リ職場ヲ殘シ
  タイ、斯ウ云フヤウナ考ヘ方デ居ルノデア
  リマシテ、今後運用ニ當リマシテハ、此ノ
  考ヘ方ニ基イテ實行致シテ參リタイト思フ
  ノデアリマス、繭ノ仲買人ニ付キマシテハ、
  現在色々ト玉繭、中下繭等ヲ取扱ツテ居ル
  ノデアリマスガ、無論若シ會社デ買フト致
  シマシテモ、是等ノ業者ニ依ツテ集荷ヲシ
  タモノヲ買ハナケレバナラヌ、集メサセ
  テ買フ、唯實際問題ト致シマシテ、此ノ會
  社デ一手ニ集メテ一手ニ配給スルト云フコ
  トハ、今直チニ實行スルコトガ果シテ宜イ
  カ惡イカト云フコトニ付テ、マダモウ少
  シ〓究シナケレバナラヌ點モアルノデアリ
  マイク、直グ中下繭ノ如キヲ此ノ會社デ一手
  ニ買ツテ一手ニ配給スルコトハ、實際問題
  トシテ非常ニ困難デアラウト思ヒマス、唯
  サウ云フコトヲヤラナイコトニ依リマシテ、
  又弊害ガ起ルト云フコトモ想像サレマス、
  中下繭ト云フモノハ、今日マデハ座繰ノ製
  絲家トカ、比較的弱小ノ製絲家ノ原料ニナ
  ツテ居ルノデアリマスガ、若シ今後繭ノ配
  給ヲヤツテ、是等ノモノガ自由ニ賣買サレ
  ルト云フヤウナコトニナリマスト、或ハ其
  ノ大キナ製絲家ノ方ニ又獨占サレルヤウナ
  傾向ニナツテ、座繰ノ弱小製絲家ノ原料ガ
  足リナクナルト云フヤウナ關係ニモナリハ
  シナイカト云フ心配モゴザイマスガ、吾々
  ハ差當リノ問題トシテハサウ云フコトデナ
  シニ、從來通リニ取扱ハシテ宜シイモノト
  云フ風ニ感ジテ居ルノデアリマス、唯サウ
  云フ心配モアリマス、サウ云フコトニスレ
  バ、ドウセ集メテ會社デ公平ニ分ケルト云
  フ考ヘ方ヲ立テナケレバナラヌモノト思フ
  ノデアリマスガ、サウ云フ弊害ノナイ限リニ
  於キマシテハ、此ノ中下繭、玉繭等ニ付テ
  ハ會社ガ一手ニ買ツテ一手ニ配給スルト
  云フヤウナコトハ、餘リ潔癖ニヤラヌコト
  ニ致シマスレバ、相當是等ノ業者ノ仕事ハ
  殘ル、何レニシマシテモ、會社デ統制スル
  必要ガ今後生ジタト致シマシテモ、此ノ集
  荷ノ仕事ハ完全ニ仲買人ノ職場トシテ殘ル
  譯デアリマス、斯樣ナ點モ考ヘマシテ、仲
  買人トシテノ失業者ヲ極力防止致シタイ、
  斯樣ニ考ヘテ居ルノデアリマス、繭市場、
  其ノ他現在色々關係業者ノ施設等ノ問題ニ付
  キマシテハ出來得ル限リ之ヲ活用スルト
  云フ考ヘ方デアリマス、ソレ〓〓今日マデ
  是等ガ役ニ立ツタ施設デアリ、今後ト雖モ
  設備トシテハドウモ必要ナモノト考ヘテ居
  リマス、繭市場ノ設備ハ昨日モ植原委員ニ
  對シテ申上ゲタノデアリマスガ、是ハ出來
  ルダケ買上ゲタイ、或ハ貸シテ長ク料金デ
  ヤツテ行キタイト云フ人モアリマセウシ、
  或ハ話ノ付ク所モアリマセウ、サウ云ツタ
  方法ニ依ツテ活用シテ參リタイト考ヘテ居
  リマス、其ノ他色々アリマシタガ、此ノ統
  制ノ場合ニ一手ニ買上ゲテ一手ニ配給スル
  ト云フ場合ノ實行方法ニ付テハ、非常ニ色
  色問題モアリマス、是ハ各業者ニ旣ニ話ヲシ
  テ居リマシテ、役人ノ方デ豫メ方法ヲ決メテ
  斯ウスルノダト云フ形デ決メルコトハ適當デ
  ナイ場合ガ多イ、實情ヲ知ラナイコトガ相當
  多イノデアリマス、斯樣ナ問題ハ寧ロ實際ニ明
  ルイ業者ノ方デ最モ適當デアリ、又最モ有效
  デ「スムース」ニ行クト云フ方法ヲ御〓究願
  ツテ、サウシテ役所ノ方ト相談シテ決メヨウ
  ヂヤナイカト云フ風ナ考ヘ方デ、色々ナ實
  行上ノヤリ方ニ付キマシテハ、養蠶ノ方面、製
  絲ノ方面其ノ他實際ノ業者ノ方ニ斯ウ云フ
  コトニシタイ、ダカラ之ヲヤルノニハドウ
  云フヤウナ實際方法ヲ立テテヤツタ方ガ一
  番面倒ガナク進ムカ、其ノ方法ヲ一ツ〓究
  シテ貰ツテ、智慧ヲ貸シテ貰ヒタイト云フ
  ヤウナコトデ〓究願ツテ居ルノデアリマシ
  テ、是等ノ問題ハ法案ノ骨子-斯カル制
  度ガ確立致シマスレバ續ケマシテ、早ク實
  行方法ニ付テノ細末ノ問題ヲ決メテ行キタ
  イト考ヘテ居ルノデアリマス、要スルニ實
  際ニ合フヤウニ致シテ行キタイ、斯ウ云フ
  考ヘデ居ルコトヲ中上ゲテ置キタイト思ヒ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=33

  ---

• 034・渡邊玉三郎

  ○渡邊(玉)委員　是デ私ノ質問ハ終リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=34

  ---

• 035・高橋壽太郎

  ○高橋委員長　次ニ森幸太郞君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=35

  ---

• 036・森幸太郎

  ○森(幸)委員　先日來各委員カラ各方面ニ
  亙ツテノ御質疑ガアリマシテ、御尋ネセント
  スル點ニ付テ大體了解ハ致シタノデアリマ
  スガ、尙ホ一、二特ニ御尋ネ致シタイコトガ
  アルノデアリマス、政府委員トシテ御出席
  ニナツテ居ラレマス局長ニハ)今日マデ法
  案ニ關係シマシテ、色々ナ機會ヲ得テ御尋
  ネモシ、又御伺ヒモシテ居ルノデアリマス
  カラ、御考ヘニナツテ居ル點ノ大體ハ、今
  日マデ諒察シ、又推察シ得テ居ルノデアリ
  マスガ、此ノ委員會ニ現ハレタ御說明ニ依
  リマシテ、今日マデ、了解シテ居リマシタ
  考ヘト違ツタ御說明ヲ承ルコトヲ甚ダ遺憾
  ニ思フノデアリマス、今日マデノ本法案ニ
  對スル論議ノ重點ハ、輸出部門ヲドウスル
  カト云フ點ト、一元統制ニ付テ各部門ニ失
  業者ヲ出サシメナイ、ソレガ爲ニハドウ云
  フ風ナ方策ヲ講ズルカト云フ點ト、今一ツ
  ノ第三點トシテハ、此ノ計畫ハ生產計畫デ
  アルガ、此ノ生產計畫タルヤ國內ノ消費計
  畫ニ基礎ヲ置カナケレバナラヌノデアルガ、
  國內ノ消費ガ果シテ此ノ生產計畫ヲ完全ニ
  受入レラレルヤウニ出來テ居ルカドウカ、
  斯ウ云フ三點ニ集中サレタヤウニ考ヘテ居
  ルノデアリマス、併シ私ハ此ノ法案ヲ政府
  ガ立法サレルニ至リマシタ其ノ理念ト申シ
  マスカ、此ノ問題ヲ解決スレバ自ラ是等ノ
  問題ハ解決スルノデハナイカト思フノデア
  リマス、今マデ色々ノ國策會社ガ濫立ト言
  ハレル程ニ出來マシタガ、是ハ國家ガ必要
  ト感ジテ、業者ノ意思ニ拘泥セズシテ設立
  サレタモノガ多イノデアリマス、其ノ結果
  國策會社ガ國民ノ意思ニ反シタル業務ノ執
  行ニ依ツテ色々非難ヲ受ケテ居ルコトハ、
  今日ノ統制經濟ニ轉換セントスル過渡期ト
  致シマシテハ已ムヲ得ナイコトデハアリマ
  スルガ、其ノ統制會社、國策會社ノ創立ガ
  其ノ當初ノ目的ヲ完全ニ遂行スルニ困ツテ
  居ル點ハココニアルト思フノデアリマス、
  併シ今囘設立サレマス蠶絲統制會社ハ國策
  會社ノ形式ヲ持ツテ居リマスケレドモ、此
  ノ會社タルヤ今マデノ國策會社トハ非常ニ
  意味ガ違フノデアリマス、ナゼカト申シマ
  スト、今日マデノ蠶種製造業者、養蠶業者
  製絲業者、此ノ生產部門、工業部門ニ屬シ
  マスル主ナル蠶絲業者ガドウ云フ風ナ狀態
  ニナツテ居ツタカ、蠶絲ノ業タルヤ隨分古
  イ歷史ヲ持ツテ居リマスルガ、是ガ相當ノ
  位置ノ下ニ置カレタノハ過去百年以前カラ
  ノコトデアリマスガ、此ノ長イ間ノ惰性ヲ
  根本的ニ改正スルト云フノガ此ノ統制會社
  ノ目的デナケレバナラヌト思フノデアリマ
  ス、蟬ガ皮ヲ脫グノデアリマスカラ、ソコニ相
  當ノ苦痛ガアル、其ノ苦痛ヲ受ケナイヤウニ
  唯樂々ト皮ヲ脫ガウトスル、ソコニ私ハ蠶
  絲局長ノ御說明ガ不徹底デアリ、或ハ此ノ
  會社創設ノ目的ニ矛盾スルヤウナ御說明ガ
  餘儀ナク出ルノデハナイカト思フノデアリ
  マス、今日マデノ養蠶家ノ狀態ハ御承知
  ノ通リデアリマス、今年ハドレダケノ繭ノ
  値段ガスルノカ一ツモ分ラナイ、營々ト苦シ
  ンデ繭ヲ取上ゲマスガ、其ノ繭ガ幾ラニ賣
  ラレルカ分ラナイ、値段ノミナラズ、其ノ
  繭ガ何處ノ製絲ニ買取ラレルカ、ソレサヘ
  分ラヌ、唯年々一ツノ年中行事トシテ蠶ヲ
  飼フガ、其ノ繭ノ嫁入先モ分ラナケレバ、値
  打モ分ラズシテ生產シテ參ツタノデアリマス
  ソレデアリマスカラ年ニ依リマスト、一貫目
  十二、三圓ト云フ豫想外ノ値段ヲスルコトモア
  リマス、又時ニ依ツテハ一貫目一圓二、三十錢
  デ馬鹿ラシクテ絲ニスルヨリ川ニ捨テテシマ
  ハウト云フヤウナ極端ナ上リ下リガアツタコ
  トハ御承知ノ通リデアリマス、斯ウ云フ狀態
  ニ置カレル養蠶業者、又ソレニ附隨シテ居
  ル所ノ蠶種製造業者-今日ノ蠶種製造業
  者ニ產ヲ成シタ者ハ一人モナイト言ツテモ
  宜シイ、此ノ國家ノ大產業デアル所ノ蠶絲
  業ノ根元ヲナス蠶種製造業者ガ經濟上ニ今
  日マデ惠マレテ來ナカツタコトハ、結局蠶
  種製造業者ト云フモノヲヤマコ仕事ノ如ク
  考ヘタノデアリマス、種屋ガ苦心シテ作上
  ゲタ蠶種ガ翌年養蠶家ノ手ニ渡ツテ繭ニナ
  ル、サウスルト既ニ製絲方面カラノ要求ト
  品種ノ相違ガ出來テ、其ノ繭ハ來年ニハ買
  ハレナイ、又新シイ品種ヲ作ラナケレバナ
  ラナイ、斯ウ云フヤウニ猫ノ目ノ如クニ製
  絲ノ消費方面ガ變ル每ニ蠶種製造業者ガ品
  種ノ選擇ニ惱マサレ、サウシテ折角作ツタ
  蠶種ガ賣レナイ、遂ニ產ヲ成サヌノミカ、
  洵ニ經濟上惠マレナイ狀態ニナツテ來テ居
  ルノデアリマス、蠶種製造業者ガ其ノ數ヲ
  減ラシタコトヲ御考ヘニナツテモ分ルノデ
  アリマス、又最後ノ加工部門デアル製絲業
  者ハドウデアリマスカ、七圓八圓ト云フハ
  ツキリシタ値段ニ依ツテ繭ヲ買ハサレ、其
  ノ繭ヲ四箇月、五箇月先ノ値段ニ依ツテ賣繫
  ゲバ助カルノデアリマスガ、其ノ繭ヲ絲ニ
  シテ賣ル時分ニハ非常ナ暴落ヲシテ繭代モ
  取上ゲラレルヤウナ情勢デアリマス、斯樣
  ナ洵ニ危險ニ曝サレタ三ツノ業者ガ聯關シ
  テ苦シミ〓〓數十年ノ間ヲ經過致シマシタ、
  其ノ原因ハドコニアルカ、ソレハ輸出部門
  ニ於ケル暴騰暴落ノ由テ來サシメタコトト
  私ハ思フノデアリマス、コンナコトデハ迚
  モ吾々ハ行ケナイ、蠶絲業ハ日本ノ外貨獲
  得ノ爲ニ營マナケレバナラヌ重要ナル產業
  デアル、斯ウ云フ氣持デ、養蠶業者或ハ蠶
  種業者、製絲業者ガ如何ニ努力致シマシテ
  モ、コンナ危險ナ狀態ニ曝サレテ居ルヤウ
  ナコトデハドウシテモ此ノ業ヲ繼續スル
  コトハ出來ナイ、金ガ儲カラナイカラ蠶飼
  ヒヲ止メヨウ、錢ガ儲カツタカラ種屋見タ
  イナモノハ止セ、製絲業者見タイモノハ止
  メニセイ、斯ウ云フ氣持デ此ノ自由經濟ノ
  中ヲ泳イデ來テ居ツタノデアリマス、ソコ
  デドウシテモヤラネバナラヌコトハ業界ノ
  安定デアリマス、ソレニハドウスルカ、ア
  ノ米ガ〓糧問題カラ喧シクナツテ四十三圓
  デ釘付ケセラレテ居リマスガ、決シテアノ米
  ノ値段ガ適正價格デアルトハ思ヒマセヌ、ア
  レハ勝手ニ決メタ公定價格デアリマスカラ
  適正ナ市價デハアリマセヌケレドモ、兎ニ
  角四十三圓ト云フコトデ價格ガ決マレバ
  米作農家ト致シマシテハ、四十三圓ヨリ買
  ツテ吳レナイノダカラ、生產「コスト」ヲ
  下ゲテ其ノ間ニ出來ルダケ安イ生產費ニ依
  ツテ米ヲ作ツテ、此ノ四十三圓ニ應ヘヨウ
  ト努力スルノデアリマス、サウ云フ風ニ、
  若シ繭ガ一年ヲ通ジテ少クトモ五十五掛デ
  アルトカ、六十掛デアルトカ、七十掛デア
  ルトカ云フコトニハツキリ決ツタナラバ
  其ノ掛目ニ依ツテ今年ノ繭ハ努力スレバ絲
  量ノ多イダケソレダケ此ノ掛目ニ依ツテ繭
  代ガ酬ヒラレノデアル、暴落モナケレバ、
  暴騰モナイ、此ノ氣持ニ養蠶家ヲ落付ケナ
  ケレバナラナイト云フコトヲ養蠶業者團體
  ト致シマシテモ考ヘタノデアリマス、蠶種
  製造業者トシマシテモ、賣レルダケノ蠶種
  ヲ作ツテソレガ完全ニ賣レ、完全ナル作柄
  ヲ齎ラス所ノ蠶種デアツタナラバ、今ノ蠶
  種製造業者ト云フモノハ安定シ、蠶種代ハ
  安クナツテモ自分ノ業態ハ落付イテ來ル、
  又製絲業者ニ於キマシテモ、思ハザル所ノ
  利益ヲ得ルコトガナクトモ、損ヲシナイ、
  一定ノ繭代ニ依ツテ原料ヲ買ツテ相當ノ加
  工利潤ガアルナラバ工業トシテ成立ツテ
  行クノダカラ、暴騰暴落ノ危險ニ曝サレル
  コトガナカツタナラバ、製絲業ト云フモノ
  ハ落付イテ行クノデアル、此ノ三者ノ考ヘ
  方ガ一致致シマシテ、此ノ時局ガドウデア
  ラウガ、サウ云フ問題カラ懸離レテ、昨年
  末以來何トカシテ業界ノ安定ヲシタイ、落
  付キタイト云フ已ムニ已マレヌ所ノ希望ガ
  各種團體ノ統制決議トナリ、一元化養蠶絲統
  制ノ希望トナツテ湧起ツテ來タノデアリマ
  ス、政府モ之ヲ認メラレタコトト思ヒマス
  ルガ、偶〓、事變ノ進展ニ依ツテ米國ノ敵性ガ
  愈〓深深ラントシテ、來マシタ、此ノ矢先ニ
  此ノ當業者ノ已ムニ已マレヌ所ノ希望ヲ酌
  入レテ、一元統制會社ノ法案制定ヲ御考ヘ
  ニナツタコトト私ハ考ヘテ居ルノデアリマ
  ス、然ルニ去ル二十八日ノ豫算委員會ニ於
  テ、農林大臣ノ御說明ニナツテ居ル一端ヲ
  考ヘマスト、非常ニ私ノ今マデ考ヘテ居ツ
  タ蠶絲統制會社ニ對スル期待ヲ裏切ツタヤ
  ウニ思フノデアリマス、ソレハ今後米國ニ
  生絲輸出ガ出來ナクナルヤウナ場合ニ立至
  ルナラバ、少シモ慌テルコトナクヤツテ行
  ケルヤウナ施設ヲ設ケタイ、其ノ意味デ次
  ニ提出致シタイト考ヘテ居ルノガ蠶絲業
  統制案デアル、是ガ提出ノ曉ハ十分御說明
  ヲ申上ゲルガ、其ノ內容ハ我ガ國デ生產出
  來ル繭ノ約四割ハ國用絲ニ向ケルコトガ出
  來ルト思フ、ソレカラ繭生產ノ約一割見當
  ノモノヲ生產スルニ必要ナ桑園ハ減反シテ、
  〓糧增產ノ方ニ向ケル殘リノ五割ヲ出來
  ルコトナラ繭ノ短纖維-繭ヲ絲ニシナイ
  デ直グ毟ツテシマフト云フ方面ニ專門ニ持
  ツテ行クコトモドウカト思ハレル筋ガア
  ル、長短兩纖維ノ兼用ノ蠶品種ヲ先ヅ採用
  スルコトニシテ、之ニ依ツテ只今逼迫シテ
  居ル各種纖維ノ不足ヲ補フコトガ出來ルト
  思フ、問題ハ價格ノ點ニアルガ、價格ハ斯
  樣ナ國情ノ下ニ於テハ纖維價格ノ適當ナ按
  配ニ依ツテ、相當ニ解決スルコトガ出來ル
  ト考ヘテ居ル云々ト說明サレテ居ルノデア
  リマス、サウシテ終ヒニ、斯樣ナ次第デア
  ルカラ假ニ時局ガ急變シテ米國ガ生絲ヲ買
  ハヌト云フコトニナツテモ、續イテ提出ス
  ル蠶絲業統制案ヲ諸君ガ直チニ御協贊下サ
  レバ、何モ驚クコトハナイノデアル、斯ウ
  說明サレテ居リマス、サウシマスト蠶絲業
  統制案ト云フモノハ米國ニ對シテ愈〓≧日本ノ
  生絲ヲ買ハナイト云フコトニナツテモ、此
  ノ法案ガハツキリ出來、此ノ統制ガ實現ス
  しや、日本トシテハ敢テ差支ヘナイ、斯ウ
  云フ氣持デ御出シニナツテ居ルト思ハレル
  ノデアリマス、私ハ「アメリカ」ニ對シテ外
  貨獲得ノ爲ニ出來ルダケ生絲ヲ賣ラナケレ
  バナラヌト思フ、是ハ必要デアリマス、併
  シソレガ段々減ツテ今二十五万俵ニナツテ
  居リマスガ、之ヲ捨テテ置イテ、支那絲ヲ
  アノ儘盛ンニ宣撫上宣傳シテ行クト、段々
  一號カラ二號ニ移ツテシマフ譯デアリマス、
  サウシテ此ノ「アメリカ」ニ對シテ何處マデ
  モ金ヲ獲得ノ爲ニ絹絲ヲ賣リタイ、斯ウ言ツ
  テ行クト、「アメリカ」ノ方ハ何モソンナモ
  ノヲ買ハナクテモ、コチラノ方ニ良イモノ
  ガアル、斯ウ云フ風ニ橫向キヲスル、ソレ
  ヲドウカ逃ゲテ吳レルナトオ上手ヲ言ツテ
  「アメリカ」ニ絹絲ヲ賣込マントシテ居ルヤ
  ウナ氣持モ見エル、サウカト思フト今農林
  大臣ノ御考ヘニナツテ居ルヤウニ、「アメリ
  カ」ガ買ハヌヤウニナツテモ、此ノ統制サヘ
  出來レバ決シテ心配ハナイ、斯ウ言ハレル
  ノデアリマス、一步讓ツテ農林大臣ノサウ御
  考ヘナサルコトヲ承認致シマシテモ、私等
  ノ考ヘタコトハ、一體日本ノ纖維ガドウナ
  ツテ居ルカ、日本ト云フヨリハ寧ロ東亞共
  榮圈內ニ於ケル纖維ノ狀態ガドウデアルカ
  物動計畫ノ上カラ見マシテ、其ノ內容ヲハ
  ツキリ御說明ニナリマセヌ、吾々ハ表向キ
  知ルコトガ出來マセヌケレドモ、相當私ハ
  窮屈ニナツテ居ルト思フ、棉花ノ輸入、「パ
  ルプ」ノ輸入ト云フヤウナ點カラ見マシテ
  モ、相當ニ私ハ窮屈ナコトニナツテ居ルト
  思ヒマス、サウ云フ風ナ東亞共榮圈ヲ作ツ
  テ自給自足ニナツテ、サウシテ所謂米國英
  國ノ依存カラ脫却シテ、獨立自治デ行カ
  ウ、此ノ覺悟ヲ決メタ時、マダ未練ガマシク
  昔ノヤウナ外貨獲得ノ爲ニ「アメリカ」ニオ
  上手ヲ言フ必要ガドコニアル、私ハ「アメリ
  カ」ガ絹絲ヲ欲シイト云フナラバ賣ツテヤツ
  テ宜シイ、根性惡ニ何モオ前ハ俺ノ方ニ屑
  鐵ヤ石油ヲ賣ラヌカラ、ゴチラモ絹絲ハ賣
  ツテヤラヌト云フヤウナ、エラサウナコト
  ヲ言フ必要ハナイト思ヒマス、併シ今マデ
  ノ政府當局ノ御說明ヲ聽イテ居リマスルト、
  輸出部門ニ對シテ、「アメリカ」ノ自由市場ニ
  對シテ色々ト御心配ニナツテ居ル、所ガ山
  田君カラ此ノ間値段ト云フモノハ賣ル者ガ
  崩シテ買フ者ハ崩サナイト云フ御話モアリ
  マシタガ、此ノ絹絲ト云フモノハ、「アメリ
  カ」ノ市場デ、社會組織ト云ヒマスカ、經濟
  組織ノ上ニドウ云フ重要性ヲ持ツテ居ルカ
  ト云フト、アレダケ傲慢ナ「ヤンキー」ガ「ナ
  イロン」ヲ造リ上ゲテ絹絲ト競爭シテ居リマ
  シテモ、ドウシテモ斯ウシテモ或ル一定量ハ
  絹絲ガ要ルデハナイイカ、靴下ノ上下ヲ綿
  絲人絹ニ振替ヘテモ、ヤハリ途中ハ絹絲デ
  ナケレバ彼等ハ穿カヌノデアル、サウシテ
  「ナイロン」ガ如何ニ化學纖維トシテ威張リマ
  シテモ、軍用ノ「パラシュート」ニハ出來ナ
  イ、是デハ開カヌ、ドウデモ斯ウデモ絹絲
  ト云フモノハ或ル一定ノ分量、彼等ガ軍事
  ヲ擴張スレバスルニ從ツテ必要ガアル、ソ
  レダカラコチラハ欲シケレバ賣ツテヤルト
  云フ立場ニナツテ宜イト思フ、ソレヲ値段
  ヲ決メルト賣レナイトカ、イヤドウトカス
  レバ向フガ買ハナイト云フノハ昔ノ話デア
  ル、今「イタリア」ハ戰爭ノ中ニ卷込マレテ居
  ルカラ、絹絲ガ出來ルノハ支那ト日本ダケ
  デス、是デ日支協調シタ蠶絲統制ト云フモ
  ノガ必要デアル理論モ茲ニアルノデアリマ
  スルガ、必要ナレバ是ダケノモノヲ賣ツテ
  上ゲヨウ、併シオ前ノ方カラ羊毛モ吳レナ
  イ、又英領ノ方カラ棉花モ吳レナイノデア
  ルカラ、日本ハ纖維ニ非常ニ缺乏シテ居ル
  ノデアル、ソレデ其ノ分ダケコチラハ絹絲
  ヲ使フカラ、君ノ方ニ絹絲ヲ賣ツテヤル餘
  分ガナイ、併シ今マデ長イ間ノオ得意サン
  デアツタカラ、ソンナ薄情ナコトヲ言フノ
  ハイカヌカラ、少シハ賣ツテ上ゲョウ、コ
  チラノ餘ル分ダケデモ裾分ケシテヤツテ宜
  シイ、此ノ立場デ私ハ「アメリカ」ヘ絹絲ヲ賣
  ツテヤレバ宜イノデハナイカ、斯ウ考ヘテ
  居ルノデアリマス、所ガ斯ウ云フ風ニシテ
  行キマスルト、政府ノ御考ヘニナツテ居ル
  コトニ、幾ツモノ疑問ガ出テ來ルノデアリ
  マス、渡邊サンカラモ御質問ガ出テ居リマ
  シタガ、八千万貫ニ繭ノ生產見込ヲ立テタ、
  斯ウ仰シヤル、一昨年ハ九千三百万貫出來
  マシテ、去年ハ八千何百万貫、マア九千万
  貫デアリマスガ、ソレヲ十六年度ハ八千万
  貫ニ計畫ヲ立テナケレバナラヌ、サウシテ
  大臣ノ言ハレルニハ、四割ハ內需デ、五割
  ハ羊毛代用デ、一割ヲ減ス、斯ウ云フノデ
  スガ、ドウモ八千万貫ト云フ基礎ガ一體何
  處カラ出テ來タノカ、今マデノ繭ノ生產ニ
  對シテ、生產部面ニ付テハ中々色々ナ施設
  ガ出來テ居リマシタガ、是ガ消費部面ニ於
  テ何等ノ計畫モナイ、ソレデスカラ「スフ」
  ノ原料ガナクナツタ、棉花ノ輸入ガナクナ
  ツタ、羊毛ノ原料ガナクナツタト云フノデ、
  日本ノ工業界ハ慌テ返シテ居ル、此ノ八千
  万貫ヲ政府ガ御考ヘニナル場合ニ付テハ、
  是ダケハ短纖維トシテ斯ウ云フ紡績ノ方ヘ
  入レテ行ク、サウシテ是ダケハ絹絲トシテ
  內地ノ方面ニ必要ガアル、斯ウ云フハツキ
  リシタ計畫ガ玆ニ出來ナケレバ、其ノ八千
  万貫ノ生產モ立タウ筈ハナイト思フ、唯徒
  ラニ八千万貫ト云フ計畫ヲ拵ヘテ、之ヲ目
  標ニ、養蠶家ガ今マデ九千万貫作ツタカラ
  一割減シテ約八千万貫ニシテ、サウシテソ
  レヲヤツテ行カウト云フコトヲ御考ヘニナ
  ルコトハ、甚ダ根據ノナイ御考ヘデアル、
  今日マデ「アメリカ」ト細々ナガラ貿易ヲヤ
  ツテ居リマス、今日先ヅ一一十五万俵ガ「アメ
  リカ」ヘ行キ、三十五万俵ガ內需ノ方面ニ使
  ハレテ居ルノデアリマスガ、更ニ之ヲドウ
  云フ程度マデ殖ヤサレルノデアルカ、假ニ千
  二百万人ノ人口ガ一年ニ百匁ノ生絲ヲ要ス
  ル一反ノ絹織物ヲ消費スルト假定致シマシ
  テモ四十五万五千俵ト云フモノガ要ル、
  卽チ四十五万五千俵ト云フモノハ玆ニ新シ
  キ需要ガ起ツテ來ルノデアリマス、現在旣
  ニ三十五万俵乃至四十万俵ハ使ツテ居ル、
  三十五万俵ニ負ケテヤツタ所ガ、一人一反
  ヅツノ絹織物ヲ使ヘバ忽チソコニ八十万俵
  ト云フヤウナ消費ガ起ツテ來ル、ソレデハ
  九千万貫繭ヲ取ツテモマダ足ラヌノデ「ア
  メリカ」ニヤル絲ガナクナル「アメリカ」ガ
  買ハウト言ウテモ、一寸待ツテ吳レ、俺ノ
  方ノ纖維ガ足ラヌト云フコトニナル、マダ
  此ノ他ニ軍需ノ方モ別ニアリマスガ、サウ
  云フヤウナ譯デ、此ノ東亞共榮圈ニ於ケル
  纖維ノ現在及ビ將來ヲ考ヘテ見マスト、多
  多益〓國內デ生產スル纖維ノ原料デアル所ノ
  養蠶ト云フモノノ奬勵ハシナケレバナラヌ、
  今ノ纖維局長カラハ私ハ承ラヌデスケレド
  モ、先ノ纖維局長ニ繭ヲ纖維トスルコトニ
  付テノ商工省ノ御意見ハドウデアルカト云
  フコトヲ御尋ネシタ時ニ、繭ノ減產ナンカ
  考ヘテ吳レテハ困ル、モツト〓〓繭ヲ作ツ
  テ貰ハナケレバ、此ノ纖維ハ足ラヌノデア
  ルト言ハレタ、是ハ吾々當業者ノ立場ト
  シテ聽カサレタ御意見デアリマス、然ルニ
  玆ニ、桑園ヲ整理シヨウ、サウシテ「ア
  メリカ」ガ絲ヲ買ハヌヤウニナルト養蠶業
  ト云フモノハ全ク前途悲觀シナケレバナラ
  ヌト云フヤウナ空氣ヲ玆ニ釀成致シマシタ
  コトハ、私ハ東亞共榮圈ノ纖維ノ問題トシ
  テ甚ダ遺憾ニ存ズル次第デアリマス、ソレ
  デスカラ、政府ハ一體此ノ統制案ヲ作ルノ
  ニ「アメリカ」ヘ絹絲ガ賣レヌヤウニナルカモ
  知レヌカラ、其ノ準備トシテ此ノ統制會社
  ヲ作ルノデアルカ、或ハ將來戰爭ガアラウ
  ガアルマイガ、兎モ角斯ウ云フ風ナ養蠶農
  業者ヲ投機的ナ立場ニ置イテハイケナイ、
  之ヲ落着ケナケレバイケナイト云フ氣持デ
  此ノ統制會社ヲ興サレタノデアルカ、之ヲ
  ハツキリシテ置カナケレバ、此ノ法案ノ審
  議ニ問題ニナツテ居リマス所ノ輸出生絲ノ
  問題、或ハ失業者ノ問題、或ハ消費部門ニ
  於ケル價格問題ト云フコトニ關聯ヲ來シテ
  來ルノデアリマスガ、一體大臣ノ御說明ト
  云ヒ、サウシテ先般局長カラモ是ハ御話ニ
  ナツタト思ヒマスガ、國際情勢ノ變化ニ伴
  ウテ斯ウ云フ法案ノ制定ガ必要デアルト云
  フ御說明ガアツタヤウニ思ヒマスガ、此ノ
  時局ニ已ムヲ得ズ斯ウ云フ統制案ヲ作ラナ
  ケレバナラヌト云フ御考ヘデアツタカ、或
  ハ我ガ蠶絲業ノ根本ニ遡ツテ、是ハドウシ
  テモ斯ウ云フ風ニシテ行カナケレバナラヌ
  ト云フ御考ヘガ此ノ法案ノ想定デツタカ、
  此ノ點ヲ第一ニハツキリシテ戴キタイト思
  ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=36

  ---

• 037・吉田清二

  ○吉田政府委員　今日マデノ蠶絲業ハ、御
  承知ノ通リ、製造シタ生絲ヲ外國ヘ出ス、
  サウシテ其ノ外國ヘ出シマス生絲ノ値段如
  何ニ殆ド身體ノ全體ガ凭レ掛ツテ居ツタヤ
  ウナ恰好ニナツテ居ツタノデゴザイマス、
  隨ヒマシテ問題ハ輸出サレル生絲ノ相場ノ
  如何ニ依リマシテ是ガ動クコトニナリマシ
  テ、獨リ製絲業者ノミナラズ、養蠶家、種
  屋、凡ユル隅々ノ業者ニマデ是ガ波及スル、
  斯ウ云フヤウナ恰好ニナツテ居ツタノデア
  リマス、蠶絲業ノ全般ヲ擧ゲマシテ總テノ
  身體ノ重ミヲ輸出生絲ノ値段ニ凭セ掛ツテ
  居ルト云フヤウナ恰好ニナツテ居ツタコト
  ハ今森サンカラ仰シヤツタ通リナノデゴザ
  イマス、斯樣ナ狀態ガ果シテ良イカ惡イカ
  ト云フコトハ長年是ハ問題ニナツテ居ルコ
  トデアリマス、其ノ具體的ノ問題トシテ
  ハ、此ノ輸出生絲ノ相場ノ不安定ト云フコ
  トヲ適當ニ動搖ヲ少クスルト云フコトニ歸
  着スルノデアリマス、此ノ問題ハ長年論議
  サレテ色々〓究サレタ結果、數年前絲價安
  定施設法ト云フモノガ出來マシテ、制高制
  低値ト云フコトノ制度ヲ維持シテ價格ノ安
  定ヲ圖ルト云フ所ニ具體化シテ來テ居ルノ
  デアリマス、併シ見方ニ依リマスレバ是ハ
  一種ノ市場操作デ、全體的ニ見マシテハ
  一部ノ重要ナ「ポイント」デアリマスガ、ソ
  コニ對シテ一種ノ操作ヲスルト云フ意味ノ
  程度ノモノニシカ過ギナイノデアリマシテ、
  根本的ニ考ヘマスルナラバ、今森サンノ仰
  シヤツタヤウニ、養蠶業者ガ養蠶業者トシ
  テ安心ガ出來、種屋ハ種屋トシテ其ノ職ニ
  勵ミ、製絲家ハ製絲家トシテ出來得ル限
  リ安心シテ生絲ノ製造業ニ從事出來ル、斯
  ウ云フヤウニスルノガ最モ宜シイコトト考
  ヘテ居ルノデアリマシテ、是ハ御說ノ通リ
  ト私ハ考ヘマス、唯併シナガラ、サウ云フ
  コトニスルコトハ理想デアリマスガ、中々
  是ハ一朝一夕ニサウ云フ根本的ナ仕組ト申
  シマスカ、機構ト云フモノハ出來ルモノデ
  ハナク、相當困難ナ問題デアルト思フノデ
  アリマスガ、此ノ外交轉換ト申シマスカ、
  「アメリカ」トノ緊迫狀態ニナリマシテ以來、
  是ハ問題ハ困難ダ、理想ダケレドモ中々旨ク
  行カヌ、ト云フヤウナコトヲ言ツテ居ラレ
  ル時代デナクナツテ來マシタ爲ニ、謂ハバ
  是ガ動機ト云フコトデ根本的ノ仕組ノ改善
  ト云フコトヲ考ヘルニ至ツタノデアリマス、
  隨ヒマシテ此ノ統制ノ仕組ヲ立テマシタ理
  由ハ、申上ゲルマデモナク、蠶絲業ノ全面ニ亙
  リマシテ根本的ニ安定ヲサスヤウナ、サウ
  シテ永遠ニ〓絲業ヲ安固ナモノニシヨウト
  云フ考ヘ方カラ出テ居ル恆久的ノ考ヘ方デ
  アルノデアリマシテ、斯樣ニ致シマスレ
  バ「アメリカ」カラドウ云フコトガアリマ
  シテモ、打撃ガ全面ニ及ンデ蠶絲業ヲ擧ゲ
  テ此ノ爲ニ轉落スルヤウナ危險ハナイ、斯
  ウ云フ確信ヲ持チ得ルコトニナル、斯ウ云
  フ風ニ存ジテ居ルノデゴザイマス、從來全
  體ヲ提ゲテ輸出値ニ凭レ掛ツテ居ツタヤウ
  ナコトデハイカヌノデ、玆ニソレ〓〓區劃
  ヲ作リ、養蠶ハ養蠶デ輸出値ニ依リテ脅カサ
  レ、種屋マデ輸出値ノ如何ニ依ツテ脅カサレ
  ルヤウナ、斯樣ナ形デハイケナイ、ソレ〓
  生產費ハ高イケレドモ、儲ケルコトモアル
  ガ損ヲスルコトモアルト云フ狀態デハイカ
  ヌカラ、ハツキリト生產費ト云フ所デ總テ
  ガ滿足ヲシ、觀念ヲスルト云フカ、サウ云
  フコトニシテソレヲ確保スル、ソレノ
  ノ業者ガ生產費ト云フ範圍內ニ於テ確保ス
  ルト云フコトデ此ノ考ヘ方ガ出來テ居ルノ
  デアリマシテ、隨テ從來全體ガ一ツニナ
  ツテ同ジ方向ニ向ツテ生產ヲシテ居ツタ
  ヤウナ事柄ヲ止メマシテ、計畫ニ仕分ケヲ
  致シマシテ、ソレ〓〓ノ區劃ヲ設ケテ其
  ノ一定ノ生產費ノ範圍內ニ於テ仕事ヲシテ
  行クト云フヤウナ仕組ヲ立テテ、此ノ仕組
  ガ運營出來ルヤウナコトニスルト云フコト
  ガ此ノ統制ノ目的デアリマスルノデ、狙ヒ
  所ハ森サンノ仰シヤツタ所ニ全ク一致シテ
  居ルモノト御諒承願ヒタイノデアリマス、
  斯樣ニ致シマシテ、蠶種ハ蠶種デ生產費デ
  保障サレルコトニナリ、養蠶ハ養蠶デ保障
  サレルコトニナリ絲ノ値ガ上ラウガ下ラ
  ウガ、ソレニハ關係ガナク、生產費デ將來
  永遠ニ安全ニ賣ルコトガ出來ル、斯ウ云フ
  風ニナル、製絲ノ方ハ製絲ノ方デ、少クト
  モ國用ノ方ニ向ケラレルモノハ安全ニナル、
  斯ウ云フヤウニシテソレ〓〓出來得ル限リ
  生產費ヲ基準ニシテ安全ニスル、斯ウ云フ
  ヤウナ仕組ガ今後確實ニ出來テ行クモノト
  思フノデアリマス、ソレカラ、大臣ガ仰シ
  ヤツタ言葉デアリマスガ、同ジコトヲ仰シ
  ヤツタノデアリマスガ、斯樣ナ仕組ヲ立テ
  テ、計畫化ヲ圖ツテ用途ニ向ケテ行ケルト
  云フ仕組ガ出來サヘズレバ、一時「アメリ
  カ」ヘ絲ガ流レテ行クモノガ止ツタトシテ
  モ、是ハ一時ハ會社ノ懷ロニ停滯スルヤウ
  ナ結果ニナルカ知ラヌガ、是ハ計畫的ニ他
  ノ用途ニ轉用サセルコトニ依ツテ此ノ會社
  ガ始末ヲ付ケルコトガ出來ル、何モ「アメリ
  カ」ノ買ハナイモノヲ右カラ左ニ內地デ消費
  出來ルト云フヤウナ簡單ナ意味デ言ハレタ
  譯デハナイノデアリマスガ、若シ「アメリ
  カ」ヘ出テ居ツタモノガ買ハヌト云フコト
  ニナレバ、是ハ當然直接ニハ會社ノ懷ロニ
  溜ルコトニナリマス、併シソレヲ相當ノ期
  間中ニ會社ノ危險、會社ノ計算ニ於テ一定
  計畫ノ下ニ之ヲ始末シテ行クコトニナリマ
  シテ、各業者ノ狼狽ト混亂ヲ惹起スコトヲ
  ココデ食止メルコトガ出來ル、斯樣ニシテ
  行ケバ纖維不足ノ今日デアリマスカラ驚ク
  コトハナイ、要スルニ各業者ハ狼狽シタリ
  心配スルコトナシ、斯ウ云フコトヲ大臣ガ
  申サレタノデアリマス、大體考ヘ方ト致シ
  マシテハ森サンノ御心配ニナツテ居ル所、
  從來問題ニナツテ居ル所ヲ此ノ際出來得ル
  限リ根本的ニ改善ヲ致シタイト云フ趣旨カ
  ラ此ノ制度ガ出來テ居ルコトヲハツキリ申
  上ゲテ置ク次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=37

  ---

• 038・高橋壽太郎

  ○高橋委員長　森サンニ御相談致シマスガ、
  モウ時刻デスカラ此ノ場合休憩シテ午後ニ
  繼續ヲ願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=38

  ---

• 039・森幸太郎

  ○森(幸)委員　宜シウゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=39

  ---

• 040・高橋壽太郎

  ○高橋委員長　ソレデハ此ノ程度ニ休憩致
  シマシテ、午後ハ一時半ヨリ開會致シマス
  午後零時十二分休憩
  午後一時四十七分開議

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=40

  ---

• 041・高橋壽太郎

  ○高橋委員長　ソレデハ開會致シマス-
  森君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=41

  ---

• 042・森幸太郎

  ○森(幸)委員　先刻本法案制定ニ對スル政
  府ノ御方針ヲハツキリシテ戴キマシタガ、
  其ノ意味ニ於テ質問ヲ繼續致シタイト思フ
  ノデアリマス、此ノ機會ニ商工省當局ニ御
  尋ネ致シタイノデアリマスガ、纖維局長ハ
  マダ御就任後間モナイコトデアリマスカラ、
  若シ何デシタラ說明員カラ御說明下サツテ
  モ結構デアリマス、今我ガ國ハ高度國防國
  家建設ト云フコトヲ標傍致シテ居ルノデア
  リマス、此ノ高度國防國家ノ建設ト云フコ
  トハ、要スルニ東亞ニ於ケル共榮圈ナルモ
  ノヲ作ツテ、其ノ間ニ於テ自給自足ノ生活
  ヲ致シテ行カウト云フコトヲ理念トシテ考
  ヘラレルト思フノデアリマス、今日東亞ト
  申シマシテモ、マダ生活程度ノ低イ消費經
  濟ノ餘リ振ハナイ、地方モ澤山アリマス、
  殊ニ四億ノ民族ヲ持ツテ居リマスル支那大
  陸ノ現狀カラ見マシテモ、此ノ高貴品トシ
  テ取扱ハレテ居ル絹絲ノ消費方面ニ付テハ
  マダ十分徹底シテ居ラナイト思フノデアリ
  マス、併シ何レノ民族ニ致シマシテモ纖維
  ナクシテ生活ハ出來ナイノデアリマス
  其ノ纖維ト申シマスレバ、綿絲、羊毛、絹
  絲、其ノ他化學的ノ纖維モ含マレテアルノ
  デアリマスガ、此ノ東亞ノ自主圈內ニ於ケ
  ル纖維ノ狀況ハ、遺憾ナガラ今日マデ此ノ
  自主圈以外ニ依存致シテ居ツタヤウナ狀況
  デアルノデリマス、羊毛ニ致シマシテモ、綿
  花ニ致シマシテモ、此ノ圈內ニ於テ十二分
  ニ生產シ得ラレルトハ考ヘラレヌノデアリ
  やく、支那大陸ニ相當ノ棉花ガ生產サレマ
  スケレドモ、其ノ棉花タルヤ色々ノ事情ニ
  束縛サレテ居リマシテ、支那大陸民ノ全部
  ノ消費ニ充ツルニハ勿論足ラナイノデアリ
  マン、斯ウ云フ自主圈、共榮圈ヲ作ツテ以
  テ進マントシマス場合ニ於テ、今マデ顧ミラ
  レナカツタ所ノ天然絹絲ト云フモノガ非常
  ナル役割ヲ今後スルノデハナイカト思フノ
  デアリマス、此ノ意味カラ我ガ東亞ノ共榮
  圈ニ於ケル所ノ纖維ノ狀態ヲ左樣ニ感ジマ
  シタ時ニ、絹絲ト云フモノハ如何ナル立場
  ニ居ルカト云フコトヲ探索シナケレバナラ
  ヌノデアリマスガ、第一我ガ國ニ於ケル事變
  以來ノ纖維ノ窮屈ナルコトハ申上ゲルマデ
  モナイノデアリマス、表面化サレテ居リマ
  セヌケレドモ、一層窮屈サヲ年々加へ來ツテ
  居ルノデアリマスルガ、此ノ場合ニ今囘ノ
  法案制定ノ目的ガ、先程私ガ質問致シマシ
  タ蠶絲業界各段階ノ安定デアルト云フ氣持
  トサウシテ此ノ時局ニ遭遇致シマシテ兩
  兩相俟ツテ業界ノ安定ト東亞共榮圈內ノ纖
  維ノ需給ト云フコトヲ充シ得ル機會ガ玆ニ
  現ハレテ來タノデアリマス、此ノ機會ニ於
  ケル我ガ日本ノ纖維ノ狀況ハドウナツテ居
  リマスカ、此ノ諸纖維ニ對シテ絹絲ト云フ
  モノガドレダケノ負擔ヲ背負ハサレテ居ル
  カ少シ抽象的ノヤウニ聞エマスルガ、羊
  毛ガ入ツテ來ナイ棉花ガ入ツテ來ナイ、「ス
  フ」人絹ノ原料ハ色々ノ事情ニ依ツテ今マデ
  通リデナイ、此ノ情勢ニ於ケル我ガ國ノ纖
  維業界ニ於テ、絹絲ガドノ程度マデニ考ヘラ
  レテ居ルカ、期待サレテ居ルカ、此ノ點ヲ
  商工當局カラ承リタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=42

  ---

• 043・梶原茂嘉

  ○梶原政府委員　東亞共榮圈ノ資源ニ對ス
  ル御考ヘ、吾々モ全然同感デアリマス、ド
  ウシテモ日本ハ勿論、東亞共榮圈ニ於キマ
  スル纖維資源ニ付テ自給自足ノ方針デ進マ
  ナケレバナラナイコトハ申上ゲルマデモナ
  イ譯デアリマス、然ル所現實ノ問題ト致シ
  マシテハ中支北支ニ於キマスル綿花ノ增產
  計畫、滿洲ニ於キマスル各種纖維作物ノ增
  產等、ソレ〓〓計畫ガ立テラレテ進行シテ
  居リマスケレドモ、各種ノ事情ニ依ツテ十
  分ニ進ンデ居ルトハ、必ズシモ考ヘラレナ
  イノデアリマス、隨テココ數年來日本ニ於
  キマシテモ羊毛棉花ノ輸入數量ノ極度ノ減
  少ニ伴ツテ、相當强イ纖維資源ノ不足ノ狀
  況デアリマス、隨テ相當長キニ亙ツテ絹纖
  維以外ノ纖維資源ニ於テ相當ノ窮窟ノ度ヲ
  增シナガラ續イテ行クモノト考ヘルノデア
  リマス、ソレニ對シマシテハ從來衣料等ニ
  ナラナカツタ各種ノ纖維、之ヲ出來ル限リ
  利用シテ參ルト云フコトガ先ヅ第一ノ方法
  ダト考ヘマス、卽チ「パルプ」ノ材料ト致シマ
  シテモ、木材以外ノ各種ノ纖維作物ヲ「パル
  プ」化シテ參ルト云フコトガ現ニ〓究サレ、
  實現ヲ見ツツアルノデアリマス、ソレト同
  時ニ合成纖維ト申シマスルカ、純然タル化
  學製品トシテノ合成纖維ノ〓究ト云フコト
  モ、是亦我ガ國ト致シマシテハ、忽セニ出
  來ナイ問題ト存ジマス、現ニ此ノ方面ノ〓-
  究ヲ進メテ居ル譯デアリマス、之ニ關係シ
  テ日本自體ニ持ツテ居リマスル最モ重要ナ
  ル纖維資源デアリマスル絹ニ付テ、纖維資
  源全體ノ關係カラ考ヘマシテ、吾々ト致シ
  マシテモ極メテ之ヲ重要ニ考ヘ、重要ニ取
  扱フ必要ガアルト存ジテ居ルノデアリマス、
  唯從來ノ絹ニ對スル考へ方ナリ、)絹ヲ使ヒ
  マスル方法ナリ、製品等ニ付テ現在ノ纖維
  全體ノ關係カラ相當變ツタト申シマスカ、
  從來ト違ツタ觀點デ之ヲ取扱ツテ行ク必要
  ガアラウト存ジテ居ルノデアリマス、卽チ
  出來ルダケ大衆的ニ之ヲ利用シ得ルヤウニ
  考ヘテ行クコト、一部ノ特殊ノ製品ニ止メ
  ナイデ、出來ル限リ一般ガ使用シ得ルモ
  、例ヘテ申シマスレバ服地デアリマスト
  カ、着物ニ致シマシテモ、サウ高級デハナ
  イモノニ之ヲ用ヒテ行クト云フ點ニ於テ工
  夫ヲ凝ラス必要ガアラウト存ズルノデアリ
  マス、隨ヒマシテ、價格等ノ關係モアリマ
  スケレドモ、生產ノ方ニ於テモ、「コスト」
  ノ點、ソレカラ製造技術ノ點ニ於キマシ
  テ、サウ云フ點ヲ篤ト考究致シテ一般ガ消
  化シ得ルヤウニ努メル必要ガアラウト存ジ
  テ居リマス、サウシテ參リマスレバ、我ガ
  國ノ生絲ト云フモノガ、我ガ國自體竝ニ東
  亞共榮圈內ニ於キマスル重要ナル纎織資源
  トシテ相當重要ナル役割ヲ果シ得ルモノ、
  斯樣ニ考ヘテ居ル次第デアリマス、先日來
  問題ニナツテ居リマスル短纖維ノ利用ト
  云ワ風ナコトモ、是カラ先ノ生絲ノ利用
  方面ニ於テ一ツノ轉機ヲ劃スルモノデハナ
  カラウカト非常ナ關心ト期待トヲ持ツテ居
  ル次第デアリ、マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=43

  ---

• 044・森幸太郎

  ○森(幸)委員　御方針ハ承リマシタ、大體
  論デアリマシタガ、現在國內ニ消費サレテ
  居リマスモノハ、御示シノ如クニ十五年度ニ
  於テ三十五万七千九百二十三俵ト計上サレ
  テ居リマス、七十万俵生產致シマシタ中デ、
  約六割ト云フモノガ國內消費ニ充テラレテ
  居ルノデアリマス、若シ「アメリカ」ヘ少シ
  モ輸出ガ出來ナイト云フコトニナレバ、ソ
  レダケノモノハ新用途トシテ現在使用サレ
  テ居ル約三十六万俵以外ノ新シキ用途ニ振
  向ケラレル譯デアリマス、此ノ問題ハ今起
  キタ問題デハナイノデアリマスカラ、商工
  省デモ相當御〓究ニナツテ居ルコトト思ヒ
  マスガ、現在ヨリ更ニドレダケ多ク國內ニ
  絹絲類ノ織物原料トシテ、或ハ其ノ他ノ用
  途方面ニ付テ、ドノ程度ハ包容シ得ラレル
  カ、其ノ點ヲ承リタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=44

  ---

• 045・梶原茂嘉

  ○梶原政府委員　昨年ヨリモ本年ニ於キマ
  シテ、今囘ノ蠶絲統制ノ新シイ制度ニ卽應
  致シマシテ、一般ノ從來使ツテ居リマシタ
  用途ニ振向ケル分、及ビ新シイ用途トシテ
  開拓シテ參リマス分等ヲ合セテ、勿論昨年
  以上ニ消費ガ增加ヲスル企畫ノ下ニ、檢討
  ヲ進メテ居ル次第デアリマス、相當ノ分量
  ガ昨年以上ニ消化シ得ルモノト考ヘテ居リ
  ママ、唯ドノ程度ノ數量ヲ、具體的ニドノ
  方面ニ〓ハスカ、之ニ付キマシテハ色々ノ
  想定ノ下ニ色々ノ案ヲ具體的ニ〓究ハシテ
  居ルノデアリマスケレドモ、何レ此ノ法制
  ノ施行ニ伴ヒマシテ、委員會ガ設ケラレル
  豫定デアリマスカラ、過般蠶絲局長モ言ハ
  レマシタ通リ、其ノ委員會ニ於テ篤ト審議
  檢討致サレルコトニナラウト思フノデアリ
  マシ、吾々ト致シマシテハ色々ノ場合ヲ前
  提ト致シマシテ、檢討ハ進メテ居ルノデア
  リマス、唯御話ノ如ク「アメリカ」トノ關係ノ
  萬ガ一ノ時ヲ想定致シマスナラバ、恐ラク
  其ノ場合ニ於キマシテハ使用ノ部門、消費
  ノ部門ニ於キマシテモ、ソレニ應ジタ一ツ
  ノ方策ガ必要ニナリハシナイカト存ズルノ
  デアリマス、隨ヒマシテ今商工省トシテ檢
  討ヲ進メテ居リマス程度ニ於キマシテハ、普
  通ノ進ミ方ト致シマシテノ前提ノ下ニ、出
  來ル限リ價格ノ點ニ於テモ、一般ノ消費ニ差
  支ナイト云フコトヲ前提ニシテ、檢討ヲ進
  メテ居ルノデアリマス、ソレデモ相當ノ量
  ヲ消化シ得ルモノト考ヘテ居ル譯デアリマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=45

  ---

• 046・森幸太郎

  ○森(幸)委員　マダハツキリ何俵デアルト
  云フコトノ數字ヲ御擧ゲニナレナイノガ本
  當ダラウト思ヒマス、然ラバ政府ニ御尋ネ
  致シタイノデアリマスガ、將來八千万貫ト
  云フコトヲ目標トシテ生產スルト云フ其ノ
  根據ハ、何處カラ出タノデアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=46

  ---

• 047・吉田清二

  ○吉田政府委員　八千万貫ノ數字ト云フモ
  ノハ、一種ノ蠶絲ノ生產ノ見透シカラ來テ
  居ルノデゴザイマス、此ノ間來色々話ガ出
  ルノデアリマスガ、本年農林省ニ於テ計畫
  致シテ居リマスル食糧增產確保ノ施設ト致
  シマシテ、桑園ヲ其ノ方面ニ相當向ケルコト
  ニナリマス、蠶絲當局ノ考ヘ方ト致シマシ
  テハ、爾餘ノ面積デ出來ルダケ多クノ繭ヲ
  生產シテ、纖維ノ補給ニ努メル積リデアリ
  マスガ、何ト申シマシテモ多少面積ガ斯樣
  ナ形ニ於テ、他ノ方ニ轉向スルト云フコト
  ニナリマスレバ、將來ニ於テハ兎モ角トシ
  テ、差當リノ問題トシテハ多少ノ影響ガア
  ルアルノハ已ムヲ得ナイト存ジマス、斯樣
  ナ狀況ヲ考へ合セマシテ、極力爾餘ノ面積
  デ繭ヲ取ルト云フコトヲ考ヘテ見マシタ際
  ニ於テハ、先ヅ此ノ邊ノ所ノ生產見込ハ、
  中ラズト雖モ遠カラザル數量デハナカラウ
  カ、斯フ云フ風ニ考ヘマシテノ八千万貫ト
  云フ數字デアルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=47

  ---

• 048・森幸太郎

  ○森(幸)委員　養蠶ニハ豐凶ガアリマス、必
  ズシモ十年同ジキ作柄ヲ得ルト云フコトハ
  困難デアリマスルガ、八千万貫ト云フモノ
  ガ唯今御示シニナツタ理由ノ下ニ計畫サレ
  テ居ルト云フコトハ、甚ダ遺憾ニ思フノデ
  アリマス、纖維ノ需給關係カラドウシテモ
  是ダケノ繭ガ要ルト云フ理由ノ下ニ、數字
  ガ出テ來ナケレバナラヌト思フノデアリマ
  ス、農林大臣ノヤウニ簡單ニ四割ハ斯ウス
  ルノダ、一割ハ減ラスノダ、五割ハ國用
  ニスルノダト云フヤウニ、ザツクバランニ
  原始產業、所謂小サイカニ依ツテ土カラ盛
  上ツテ來ル生產力ヲ、制限スルト云フコト
  ハ甚ダ宜シクナイ、殊ニ畑ヲ一割減ラス、
  サウシテ其ノ畑ニ薩摩芋、馬鈴薯、小麥、
  大麥或ハ水稻ヲ植エルト云フコトニナツテ
  居リマスガ、是ハ机上ノ計畫デアリマシテ、
  恐ラク私ハ食糧政策カラ言ツテ中々難カシ
  イコトダト思フ、桑園ト云フモノハ申スマ
  デモナク七年カ十年經テバ更新シナケレバ
  ナラヌ、如何ニ立派ナ桑園デアリマシテモ、
  七年、八年、九年トナルト荒廢シテ參ツテ
  來ルノデアリマス、如何ニ肥培管理ガ徹底
  致シマシテモ、今日ノ桑苗木ノ生產狀況カ
  ラ見マスト、老衰期ニ入リマシテ、ドウデ
  モ斯ウデモ植ヱ替ヘナケレバナラヌ更新期
  ニ入ツタモノガ、所謂荒廢桑園ト考ヘラレ
  テ、之ヲ掘起シテ他ノ作物ニ使フト云フコ
  トハ(五十、二年ハマア他ニ良イ桑園ガア
  ルカラ、桑ノ生產力ヲ維持スルコトガ出來
  ヤウト思ヒマスガ、次ノ更新期ガ來タ場合
  ニ、更新スル年度ガ繰上ツテ來ナケレバナ
  ラヌコトニナツテ來マスカラ、此ノ桑園ノ
  一割減反ト云フコトハ、蠶絲業政策ノ上カ
  ラ言ツテ、非常ニ惡イヤリ方デアルト思ヒ
  やっ、殊ニ一割減反ト云フコトガ蠶絲業者
  ノ心理狀態ニ及ボス影響ハ非常ナモノガ
  アラウト思ヒマス、過去ニ於テ掘リ拔キセ
  ヨ、拔キ取リセヨ、或ハ換地セヨ、或ハ轉
  作セヨト云フヤウナ、色々ノ奬勵政策ヲ行
  ツタコトモアルノデアリマスガ、其ノ當時
  養蠶農家ノ蠶絲業ニ對スル考へ方ニ、非常
  ニ不安動搖ヲ與ヘタコトハ事實デアリマス、
  斯ウ云フ風ナ點カラ見マシテモ、桑園ヲ減
  反スルト云フコトハ宜シクナイノミナラズ
  桑園ヲ減反シテ一割減ラスガ、殘リノ桑園
  ノ能率ヲ高メテ、サウシテ八千万貫乃至九
  千万貫ノ生產額ヲ確保シヨウ、斯ウ考ヘル
  ノデアリマスルガ、政府ハサウ云フ計畫ヲ
  御立テニナルノハ宜イデアリマセウガ、サ
  ウ云フコトヲスルニハ現在桑園一反步カラ
  十五貫或ハ十七貫カノ繭生產額ニナツテ居
  リマス、ソレヲ一割上ゲテ十七貫ニ或ハ十
  九貫ニ、一反步ノ收繭量ヲ殖ヤシテ行カナ
  ケレバナラヌ、其ノ用意ガ政府ニアルカナ
  イカ、食糧生產以外ノ肥料配給ハ六割五分
  デアリマス、サウシテ畜業ニ依ツテ單肥ノ
  增產、或ハ追肥ノ增產ト云フコトガ桑園栽
  培上最モ必要デアリマスルガ、畜業ハ御承
  知ノ通リ飼料關係カラ年一年其ノ數ヲ低下
  シテ行キマス、其ノ他ノ有機質肥料ニ於キ
  マシテモ勿論無機質肥料ニ於キマシテモ
  食糧生產ニ第一ニ配給セラレルノハ勿論デ
  アリマスガ、此ノ〓糧生產ノ犧牲ニナツテ
  其ノ犠牲ヲ取返スダケ桑園ニ對スル肥料ヲ
  十分ニ政府トシテ配給スルノ覺悟ガアルカ、
  其ノ準備ナクシテ殘ツタ桑園ニ於テ一割減
  少ノ補ヒヲサセテ行カウト云フコトハ是
  ハ洵ニ無理ナ考ヘ方デアル、恐ラク養蠶農
  家ノ失望狀態、サウシテ桑園ノ維持管理ガ
  出來ナイト云フ結果カラ、或ハ八千万貫ト
  云フモノガ豫想通リ行カナイノデハナイカ
  ト云フコトモ心配サレルノデアリマス、此
  ノ原料ガ若シ計畫通リニ生產サレザル場合
  ニ於テ其ノ及ボスコトハ、今マデノヤウニ
  輸出ノ絲ノ値ガ高クナツテ輸出商ガ儲ケ
  ル或ハ製絲加工者ガ思ハヌ儲ケヲシタト
  云フコトニ止マラナイ、今繭ノ生產ガ輸出
  ト云フコトヲ脫却シテ、サウシテ國內ノ纖
  維ノ一環ヲ背負ツテ立ツテ居ル、又立タサ
  ナケレバナラナイノデアリマスカラ、此ノ
  豫定計畫ガ來レバ忽チニ纖維ノ部門ニ不都
  合ヲ來タスコトニナルノデアリマス、サウ
  云フ風ナ點カラ考ヘテ八千万貫ト云フヤウ
  ナコトヲ豫想サレルコトハ餘リニモ危險率
  ヲ含ンデ居ラナイ、或ル程度ノ危險率ヲ含
  メテ九千万貫ナラ九千万貫ト云フヤウナコ
  トニ將來考ヘテ行カナケレバナラヌト思フ
  ノデアリマスルガ、餘リガツチリ計數ヲ出
  シテ、サウシテ八千万貫ト云フコトヲ基礎
  トスルコトハ危險ノヤウニ思フノデアリマ
  スガ、政府ハドウ御考ヘニナツテ居リマス
  カ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=48

  ---

• 049・吉田清二

  ○吉田政府委員　養蠶ニ對スル考ヘ方ニ付
  キマシテハ私、森サンノ仰セト全ク同ジ氣持
  ヲ持ツテ居ルノデアリマス、食糧ノ增產ト
  云フ緊迫シタ必要ノ前ニ桑園モ或程度轉向
  サセルコトハ、是ハ全ク今日ノ事態已ムヲ
  得ナイ結果トシテ起キテ來タ問題デアリマ
  スガ、蠶絲ト致シマシテハ只今御話ノヤウ
  ニ、今後不足勝チノ國內ノ纖維ノ充足ニ當
  テル爲ニ極力增產ヲ考へナケレバナラヌ關
  係ニアリマスノデ、爾餘ノ面積デ極力增產
  ニ努メルト云フコトヲ考ヘナケレバナラヌ
  デアリマス、ソレニ付キマシテ肥料ガ十分
  デナイ、是モ洵ニ困ツタ狀態デアリマスガ、
  是亦所謂食糧方面ト云フコトニ付キマシテ
  ハ更ニ重點ヲ置イテ考ヘナケレバナラヌコ
  トカラ、洵ニ遺憾ノ狀態ニナツテ居ルト申
  サザルヲ得ナイノデアリマス斯樣ナ點カラ
  極力爾餘ノ面積デ增產致スト致シマシテ、
  ドレダケ採レルカト云フヤウナ見透シヲ付
  ケマシタノガ八千万貫、一昨年ハ現在五十
  三万町步ノ面積デ九千三百万貫ト云フモノ
  ガ採レマシタ、是ハ中國等ニ早魃ガアリマ
  シテ、多少思ハシクナイ部面モアツタノデ
  アリマスガ、殆ド全面的ニ非常ナ養蠶家ノ
  熱意又幸ヒニ作柄ガ好カツタト云フコトカ
  ラ九千三百万貫程度モ採レテ居リマス、隨
  ヒマシテ玆デ面積ガ多少滅リソレニ依ツテ
  影響ヲ受ケル、肥料ハ足リナイガ、色々工
  夫ヲ致シマシテ自給肥料ナドニ極力專念シ
  養蠶ノ飼育ニ付テモ十分注意ヲシ、桑ノ使
  ヒ方ニ付テモ餘程無駄ノナイヤウニ使ツテ
  行ク、斯ウ云フヤウナコトニ付テ非常ナ熱
  意熱心ヲ以テヤリマスレバ、八千万貫ト
  云フコトハ無論收穫出來ルノデハナカラウ
  カ、無論ソレ以上收穫ガ出來ルコトヲ願ツテ
  居ル譯デアリマシテ、唯此ノ數字八千万貫
  ト抑ヘテ是以上採レルコトヲ好マナイノダ
  )、或ハ困ルト云ツタ考へ方デ抑ヘテ居ル
  ノデハナイノデアリマス、要スルニ養蠶ノ
  方ハ極力增產ニ努力スルコトニ依ツテドノ
  程度出來ルデアラウト云フ見透シヲ付ケマ
  シテ、ソレヲ基礎トシテ其ノ爾餘ノ生絲ニ
  幾ラ、繭纖維ニ幾ラ、輸出ニ幾ラト云ツタ
  之ヲ基礎ニ致シマス一ツノ見透シニ致シテ
  居ル譯デアリマス、必ズシモ八千万貫ト云
  フコトガ、ソレヨリ殖エテハ困ル或ハ減ツ
  テハ困ルト云ツタ關係ニナツテ居ラナイコ
  トヲ御諒承願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=49

  ---

• 050・森幸太郎

  ○森(幸)委員　玆デ御尋ネ致シタイノハ、
  十六年度ノ八千万貫ト云フコトガ公表サレ
  マシテ其ノ八千万貫ガ、玉繭、屑繭ハ勿論含
  ン居リマスガ、輸出向、國用向生絲ニ供ス
  ル繭トシテ六千四百万貫、新用途ニ供スベ
  キ繭トシテ千五百万貫、種繭ニ供スベキ繭
  トシテ百万貫ト、此ノ內譯ヲ製絲業關係ガ
  區分シテ考ヘテ居ルヤウデアリマスガ、政
  府當局ハ之ヲドウ御考ヘニナリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=50

  ---

• 051・吉田清二

  ○吉田政府委員　ソレハ製絲ノ方デ色々ト
  今後ノ生絲ノ製造數量ト云フモノニ付テノ
  見透シヲ付ケル一ツノ考ヘ方トシテ、先ヅ
  八千万貫ノ繭ノ處理ノ仕方ハ斯樣ナ形ニナ
  ルコトヲ假定致シマシテ、ソレニ卽應致シマ
  シテ設備ノ合理化ト申スコトデ考ヘテ居ル
  一ツノ參考トシテ見テ居ルノデアリマス、
  是ハ皆ソレ〓〓一ツノ考ヘ方デヤツテ居ル
  ノデアリマシテ、今後斯樣ナ問題ニ付キマ
  シテ正式ニ確定サレマスニハ、此ノ制度ガ
  出來マシテ蠶絲委員會ガ出來マシテ、ソレ
  ニ政府カラ諮問致シマシテソコデ御決定ニ
  ナリマシタモノガ正式ニ決ルコトニナルモ
  ノト考ヘテ居ル次第デアリマシテ、今製絲
  聯合アタリデ一應ノ考へ方ヲ致シテ居リマ
  スモノハ、ソレハ全ク業者ノ私的ナ考ヘ方
  デアルト考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=51

  ---

• 052・森幸太郎

  ○森(幸)委員　蠶絲委員會ニ依ツテ用途別
  數量其ノ他決定サレルコトハ法文ニ明カデ
  アリマス、今申上ゲタコトガ御說明ニナリ
  マシタ通リ實業團體ノ假定ノ目標デアルト
  云フコトヲ御承認願ツタ譯デアリマス、然
  ルニ此ノ製絲聯合會、組合製絲聯合會ニ於
  キマシテハ、此ノ時局ニ處スベク三割六分
  ノ滅釜ヲ決議セント致シテ居ルノデアリマ
  ス、不日中央會ノ問題ト致シマシテ、サウ
  シテ其ノ決議實行ノ統制命令ヲ本省ノ指揮
  ニ仰ガント致シテ居ルノデアリマス、卽チ
  假定ノ數字ニ依ツテ自分等ノ產業ノ生產ノ
  基礎ヲ改革セント致シテ居ルノデアリマス、
  此ノ假定ガ蠶絲委員會ニ於テ此ノ儘承認サ
  レルナラバ宜イト私ハ思ヒマス、「アメリカ」
  トノ關係ガ變ツテ來ル、或ハ國內ノ新用途
  ノ繭ノ需給ガ今日考ヘテ居リマスルヨリモ
  更ニ短纖維トシテ供給サレルヤウナ場合ガ
  アルカモ知レヌ、或ハ又現在考ヘテ居ル短
  纖維ノ數量ガ今日マデ機業界ニ容レラレヌ
  ヤウナ情勢ニアルカモ知レマセヌ、ソレハ
  蠶絲委員會ノ決定ニ依ツテ決定スル譯デア
  リマスルガ、サウ云フ情勢ニアル現在、此
  ノ假定ノ下ニ自分ノ生產力ヲ縮小シヨウト
  云フ決議ヲ致シタ場合ニ、政府ハソレニ統
  制命令ヲ出サレル意思ガアルカ、此ノ點ヲ
  伺ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=52

  ---

• 053・吉田清二

  ○吉田政府委員　製絲ノ設備ノ問題ト製絲
  ノ繭ヲ消化致シマスル可能量ノ問題トハ極
  メテ裕リノアルモノデゴザイマス、現在ノ
  狀態デ一釜一年ニ三俵半程度挽クト云フノ
  モアリマスルシ、五俵七俵挽クト云フノモ
  アリマス、是ハ色々設備ノ善惡ニモ關係致
  シマスルガ、現狀ニ於キマシテハ、地方ニ
  モ依リマスルガ、非常ニ休ミガ多クアル所
  モアツテ見タリ、或ハ餘リ「デリケート」デ
  ナイヤウナ絲ヲゾンザイニ挽イテモ宜シイ
  ト云フヤウナ考ヘ方デ挽クヤウナ場合、色
  色ナ關係カラ致シマシテ繭ノ消化力ト云フ
  モノハ一釜四俵ト云フヤウニキチツト決マ
  ツテ居ルモノデハナイノデアリマス、隨ヒ
  マシテ例ヘバ製絲聯合デ絲ニ致シマスル原
  料トシテハ是ダケアル、ソレカラ大體計算
  シテ見ルト此ノ位ノ釜デヤレバ宜シイト云
  ツタヤウナ計算ヲ何レハシテ居ルダラウト
  思フノデアリマスケレドモ、之ニハ一體三
  百六十五日ノ中ニ何日働クヤウナ計算ニナ
  ツテ居ルノデアリマスルカ、又絲ヲ多ク造
  ル必要ガアリマスル場合ニ於テハ、ソレハ
  絕對ニソレ以上ノ日數ヲ繰絲出來ナイト引
  詰メテアルモノカドウカ、斯樣ナ點ヲ色々
  考ヘテ見マスルト、必ズシモ此ノ釜數ヲ何
  釜減シタラバ何千万貫以上ノ繭ハ一寸モ消
  化ノ出來ナイモノダト云ツタ程ニ窮屈ナモ
  ノデハナイノデ、可ナリ使ヒ方ニ依リマシ
  テ裕リガアルノデアリマス、無論決議ヲ致
  シマシタ場合ニ能ク其ノ由ツテ來ル所ヲ檢
  討致シマシテ、私共ト致シマシテハ、業者
  ガ新情勢ニ對應致シマシテソレ〓〓經營ノ
  合理化ヲ考ヘテ行クト云フ其ノ考へ方自體
  ニ、尤モノ所ガアラウト考ヘテ居リマス
  ルガ、實施ノ具體的ノヤリ方ニ付キマシテ
  ハ、今申シマシタヤウナ色々ナ方面カラ十
  分〓究致シマシテ、之ヲ是認スルトカ、或
  ハ直サセルトカ、或ハ其ノ他條件ヲ付ケテ
  是認スルト云フヤウナコトヲ決メテ行キタ
  イト考ヘテ居ルノデアリマス、設備ノ問題
  ハキチツト機械デ作ルヤウナ關係デナク、
  設備ト繭ノ消化力ニ付キマシテハ色々ナヤ
  リ方ニ依リマシテ、多クモ使ヘルシ少クモ
  使ヘルト云フヤウナ裕リノアルモノデアル
  コトヲ御諒承願ヒタイト思フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=53

  ---

• 054・森幸太郎

  ○森(幸)委員　其ノ釜數整理ニ付キマシ
  テ、色々ノ補償金ヲ出スコトニナツテ居ル
  ヤウデ居リマス、聞ク所ニ依リマスト、營
  業製絲ノ今醵出シナケレバナラナイ金ガ約
  七百九十万圓、組合製絲ノ整理ニ要スル經
  費ガ百二十三万圓ト豫想サレテ居ルヤウデ
  アリマス、ソレノ外ニマダ先ニ整理シナケ
  レバナラナイ借金モアル譯デアリマスカラ
  サウ云フモノヲ合シマシテ一俵當リ六圓三
  十錢ト云フモノヲ將來製絲ノ負擔トシテ認
  メテ行カウト云フヤウナコトガ計畫豫定サ
  レテ居ルヤウデアリマス、此ノ六圓三十
  錢ト云フモノハ、何處ノ負擔ニナツテ行
  クノカ、過去ノ震災燒絲ノ負擔ガ一俵七
  圓ト云フモノ、ガ製絲原料費、所謂加工
  費ノ中ニ加算サセラレマシテ結局養蠶家
  ノ繭代ニ加ハツテ來テ、養蠶家ガ之ヲ
  負擔シテ今日マデ來テ居ルノデアリマス
  ガ、先日來ノ御說明ニ依リマスト、今囘
  繭ノ値段ヲ決メルノニハ養蠶家ノ生產費ヲ
  基礎トスル、サウシテ經濟事情、諸物價ノ
  上リ下リヲ斟酌致シテ決メルノダ、ソレデ
  アルカラ輸出絲ノ上リ下リ、又國內需要生
  絲ノ價格ト云フモノハ全然繭代トシテ繭ノ
  値段ニハ影響ヲ及ボサナイノダト云フコト
  ヲハツキリ御說明ニナツタノデアリマス、
  併シ製絲ノ方ハドウカト云ヒマスト、所謂
  掛目ニ於ケル繭ヲ原料ト致シマシテ、サウ
  シテ相當ノ加工利潤ヲ認メテ、ソコデ內需
  用ノ絲ノ中心價格ガ決マル譯デアリマガ、
  其ノ品等査定ニ依ツテ中心ヨリ下ルモノハ
  安イシ、良イ物ハ高イノハ勿論デアリマス、
  サウ云フコトニシマスト當然製絲業ノ生產
  スル生絲、養蠶家ノ生產スル繭ノ價格ト云
  フモノハ全ク玆ニ安定ヲスル譯デアリマス、
  併シ今御尋ネシマシタヤウナ釜數整理ニ於
  ケル負擔ト云フモノガ何處ニ轉嫁サレルト
  モ分ラ生イノデアリマス、又昨日モ渡邊君
  カラノ御質問ノ中ニモアツタヤウニ伺ツタ
  ヤウナ譯デアリマスガ、妙ナコトニナリハ
  シナイカ、ソレハ養蠶家ニハ今生產費ヲ段
  段キチント決メテ、安心サセテ之ヲ落着ケ
  ル、又製絲家ニハ繭代ヲ基礎トシテ、ソレ
  ニ加工費ニ相當ノ利潤ヲ認メテ生絲代ヲ決
  メテ行ク、生產部門ハソレデ落著イタ譯デ
  アリマス、所ガ今度ハ之ヲ織物原料トシテ
  持ツテ行カナケレバナラヌ、織物原料トシ
  テ持ツテ行ツタ時ニ、ソンナ高イ絲ニシテ
  吳レテハコチラノ方ハ原料トシテ貰ヘヌ、
  其處ニ食ヒ違ヒガ出來ヤシナイカ、是ハ吾
  吾苦キ經驗ヲ持ツテ居ルノデアリマス、ト
  云フコトハ今副蠶絲統制株式會社ニ統制サ
  レテ居リマスガ、繭ノ毛羽デアリマス、繭
  綿ガ當時闇取引ガ無論アリマシテ、三十圓
  乃至三十五圓デ取引ガ出來テ居ツタ、是ガ
  統制會社ヲ拵ヘルカラ價格ヲ公定スルト云
  フコトヲ農林省デアツタカ商工省デアツタ
  カ、吾々ヲ御集メニナツテ意見ヲ徴サレタ
  ノデアリマス、所ガ現在是ガ三十三圓、三
  十五圓デ賣レテ居ル、此ノ賣レテ居ル物ヲ
  原料トシテ玆ニ絲ヲ造リ織物ヲ造ツテ儲ケ
  テ居ル、ソレダカラ現在ノ價格ト云フモノ
  ハ所謂需給關係カラ出タ市場相場-市價
  デアル、此ノ市場相場ヲ根據トシテ之ヲ公
  定シテ、是ハ上ゲサセヌ、是ハ下ゲサセヌ
  トフ云コトニ持ツテ行クノガ、最モ事實ニ
  卽シタヤリ方デアルト吾々ハ主張シタ、所
  ガ商工省ハ纖維ト云フ立場カラ考ヘルト、
  吾々ガ三十三圓ト云フモノヲ十八圓デナ
  ケレバナラナイト理論サレル、ナゼ十八圓
  デアルノカト言ヘバ、繭綿ヲ加工シテ更生
  絲ヲ造ツタ、其ノ更生絲ノ價格カラ打算シ
  テ行ケバ、繭綿ト云フモノハ十八圓カツ
  カツシカナイ、斯ウ云フコトデ議論ガ對立
  致シマシテ、容易ニ是ガ纒マラナクテ、結
  局二十三圓ト云フトテツモナイ、吾々ノ豫
  想シナイヤウナ價格ニ定メラレタノデアリ
  マス、今此ノ統制會社ガ考ヘラレテ居ル繭
  代カラ絲代ヲ決メテ行クト云フコトカラ見
  ルト、吾々ノ方ニハ少シモ無理ガナイ生產
  費ヲ見テ-百姓ダツテ食ツテ行クノデア
  リマスカラ相當ノ利潤ヲ見テ居ル、今マデ
  ノ繭ノ生產費ハ各府縣別ニ農林省ヤ蠶絲業
  組合等ノ色々ノ方面デ調査シテ居リマスカ
  ラ、大體十目ノ視ル所ハ其處ニ落付イテ居
  リマス、ソレヲ基礎トシテ之ニ幾ラカノ利
  潤ヲ認メテ繭ノ値段ヲ決メレバ、製絲原料
  ノ價格ガ決マル、サウスルト製絲工業部門
  ニ於テ之ニ相當ノ利潤、工費ヲ見テ行ケバ
  是ヨリハ割引ノ出來ナイト云フ絲ノ價格ガ
  玆ニ出テ來ルト思フ、此ノ價格ハ動カスコ
  トガ出來ナイ、所謂先程申シマシタ繭綿ナ
  ラ三十五圓ト云フ此ノ價格ヲ持チ續ケテ、
  偖テ織物原料トシテヤツテ吳レト云フ時ニ、
  織物業界、機業界ニ於テ果シテ其ノ價格ニ
  依ツテ原料ヲ消化シテ吳レルカドウカ、斯
  ウ云フ私ハ心配ガアルノデアリマス、殊
  今申シマシタ一俵六圓三十錢ト云フヤウナ
  僅カナ負擔デアリマスケレドモ、サウ云フ
  モノガ今度ハ消費者ノ方ニ掛ツテ來ル譯デ
  アリマス、サウスルト國用向ノ絲ハ之ニ決
  メタケレドモ、ドウモ織物界ガソレヂヤ原
  料トシテ使ヘナイ、ダカラモツト安クシロ
  ト言フト、段々ソレガ終ヒニ繭代ニモ及バ
  ナイト云フ建前デアリマシテモ、結局ハ絲
  ニナルノガ繭ノ目的デアリマス、織物ニナ
  ルノガ絲ノ目的デアリマス、其ノ目的ノ織
  物ニナラナイ、高イ原料ヲ抑ヘラレレバ、
  隨テ繭ノ原價ヲ安クシテ來ナケレバナラヌ
  ト云フコトニ歸納シテ來ルト思フノデアリ
  やく、此ノ點ヲドウ御考ヘニナツテ居リマ
  スカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=54

  ---

• 055・吉田清二

  ○吉田政府委員　現在生絲ノ値段ニ付キマ
  シテハ輸出向ノ生絲ニ付キマシテ直接的ニ
  絲價ノ維持ヲ致シテ居リマス、此ノ關係ハ
  今後トモ堅持致シテ行キタイト考ヘテ居ル
  ノデアリマス、國用ノ値段ハ輸出生絲程直
  接ト云フ譯ヂヤアリマセヌヌケレドモ、現
  在ノ相場機構ニ於キマシテ、自然有機的關
  係ニ於テ相場ガ維持サレテ居ルノデアリマ
  ス、今生產費ノ方カラ積上ゲテ行ツテ出來
  マシタ生絲ノ値段ハ、要スルニ會社ガ製絲
  家カラ買取ル値段デアリマス、是ハ如何ナ
  ルモノニナルカ、是ハ無論今ノ所何トモ申サ
  レナイ狀態デアルノデアリマスガ、現在ノ
  生絲ノ國內ノ相場ハ、一時七·七禁令等ノ爲
  ニ非常ナ混亂ノ狀態ニアリマシタガ、幸ヒ
  漸次軌道ニ乘ツテ來テ、比較的輸出生絲ト
  有機的ナ結ど付キノアル「レベル」マデ上ツ
  テ居ル、内地ノ機屋ノ方モ先ヅ大體ソレニ依
  ツテ漸次落付イテ、仕事ヲ致シテ居ルト云
  フノガ現狀デアリマス、ソコデ今ココデ急
  ニ機屋ガ現在買ツテ居ル絲ニ付テ、エラク
  下ゲルト云フコトニ致シマスト、消費者ノ
  側カラ申シマスト原料ノ値ガ下レバ宜イヤ
  ウナモノデアリマスケレドモ、必ズシモサ
  ウ云フ譯デナク、手持チノ原料ノ値下リニ
  ナルヤウナコトニナリ、或ハ製品ノ値マデ
  混亂スルヤウナコトニナリマスト、機屋モ
  困ル關係ニナリマス、斯樣ナ關係カラ致シ
  マシテ、國用生絲ノ「レベル」ト云フモノモ、
  長イ將來トシテハ低物價ト云フコトデ考ヘ
  ナケレバナラヌコトハ別問題ト致シマシテ
  モ、差當リ此ノ實施ニ當リマシテハ、現在
  ノ價格ノ「レベル」ヲ變動サセナイト云フ考
  へ方デ行カナケレバナラナイト思フノデア
  リマス、是ハ見込ノ問題デアリマスガ、下
  カラ積上ゲテ、今森サンノ仰シヤツタヤウ
  ナ形ニナツテ行キマス生產費ト云フモノハ、
  果シテソレト餘程違フカドウカト云フ問題
  デアリマシテ、是ハ計算シタ後デナケレバ
  何トモ申サレナイノデアリマスガ、私ハ現
  在ノ事情ニ於キマシテハ、今申サレルヤウ
  ナ現在ノ「レベル」デ之ヲ始末スルノニモ、
  餘程生產費ノ方カラ更ニ再檢討ヲ加ヘナケ
  レバ、嵌込ムコトガ出來ナイト云ツタヤウ
  ナ狀態ニハナラヌデ濟ムノデハナイカト思
  フノデアリマス、併シナガラソレガ餘程食
  違ヒガアリマシテ、生產費カラ計算シテ參
  リマシタモノデ處分ヲスルノニハ現在ノ
  相場ヲ更ニ一段上ゲテ機屋ノ方ニ迷惑ヲ掛
  ケナケレバナラヌヤウナコトデアリマスレ
  バ、ソレハ餘程考ヘナケレバナラヌト思ヒ
  マス、是ガ僅カノ點デ事濟ムコトデアリマ
  スナラバ、物價ノ方面モ十分考慮致シマシ
  テ-何樣蠶絲ノ方ハ生產費ヲ割レバ、要
  スルニ生產ガ出來ナイト云フ意味ノ限度デ
  アリマスカラ、ココノ點ヲ能ク物價ノ方面ト
  モ協議致シマシテ、諒解ヲ願ツテ、價格ノ修
  正ヲスル必要ガアルナラバ修正ヲスル、賣
  値ヲ多少上ゲサヘスレバ生產費ノ「カーバー」
  ガ出來ルト云フ關係デアリマスレバ、其
  ノ方面トモ協議致シマシテ適當ニ處シテ參
  リタイ、斯樣ナ心組デ居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=55

  ---

• 056・森幸太郎

  ○森(幸)委員　絹絲ガ今割込マントシテ居
  リマス相手ハ「スフ」人絹、綿絲デアリマス、相
  手ガ惡イ、相手ガ惡イト云フコトハ値段ガ
  安イノデアリマス、其ノ安イモノト今マデ
  高級品トシテ取扱ハレテ居ル絹絲ト置換へ
  ヨウト云フノデアリマスカラ、織物消費階
  級ニ對シテハ價格ヲ上ゲナケレバナラヌ、
  詰リ「スフ」ニ一割ノ絹絲混紡ヲスレバ、價
  格ガ二倍ニナル、二倍ニナルケレドモ、耐久
  力ガ四倍ニナル、物ニ依ツテハサウ云フ風
  ナ試驗モ出テ居ルヤウデアリマスガ、耐久
  力ガ四倍ニナルケレドモ、價格ガ倍ニナル
  ノダ、斯ウ云フ苦シイ絹絲ノ性格ヲ持ツテ
  居ルコトヲ、私ハ認識シテ掛ラナケレバイケ
  ナイト思ヒマス、併シモウ一ツハ如何ニ安イ
  「スフ」ニシマシテモ、人絹ニシマシテモ、綿絲
  ニシマシテモ、其ノ根源タルヤ金貨ガ掛ツテ
  居ル品物デアリマス、併シ絹絲ハ純國產デ、
  ツトシテ外貨ニ關係ガナイノデアリマスカラ、
  縦シ幾ラカ高クテモ所謂國家經濟ノ上カラ
  ハ、洵ニ利用價値ノ高イモノデアルト思フノ
  デアリマス、所ガ所謂絹織物ハ相當破格ノ價格
  ヲ以テ市場ニ現ハレテ居ル、是ハ絹絲ト
  シテ一言釋明シナケレバナラヌ立場ニアル
  コトヲ私ハ情ナク思フノデアリマスガ、丸
  帶一本一万圓スルトカ、或ハ安クナツテモ
  五六千圓シテ居ル、或ハ此ノ頃デモ三百圓、
  五百圓ノ丸帶ガ陳列サレテ居リマスガ、丸
  帶ト云フヤウナ特殊ナモノニ依ラズ、寧ロ
  着尺物デモサウデアリマスガ、着尺物デ一
  反八十圓、九十圓、百圓ノモノガマダ出テ
  居リマス、併シ其ノ百圓ノ着尺ノ原料タル
  絹絲ガ何ボ掛ツテ居ルカト云フト、ソレハ
  十圓カ十二圓ノ價格デアリマス、十圓カ十
  二圓ノ原料價格デアルモノガ色々ノ染色、
  織物加工ト云フ工業部門ノ化學階段ヲ潜ル
  コトニ依ツテ絹織物ハ高イト云フ風ニ所謂
  寃罪ヲ蒙ツテ居ルト思フノデアリマス、私
  ハ絹織物ノ或ル程度ノ價値ハ經濟上ノ價値
  トシテ認メナケレバナラヌト思フノデアリ
  マスガ、一般大衆ハ「スフ」綿絲ノ安イ織物ニ
  長イ間馴化サレテ居ルノデアリマスカラ、
  ドウシテモ出來ルダケ安イ絹絲ヲ織物界ニ
  送ラナケレバ十分ニ綿絲、羊毛、「スフ」ニ乘
  替ルコトガ難カシイト思フ、テ是ハ何トシテモ
  乘替ラナケレバ、安イモノデアツテモ棉花
  羊毛、「スフ」ハモウナクナツテ來ルノデアリ
  マスカラ、ドウデモ斯ウデモ自給自足ノ立場
  カラ絹絲ヲ持ツテ行カナケレバナラヌノデ
  アリマス、ソレデスカラ價格ヲ協定サレル
  上ニ於キマシテモ、十分織物業界ノ事情ニ
  卽シタ價格ヲ以テ貰ハナケレバナラヌコト
  ハ勿論デアリマスガ、生產部門ニ於ケル養
  蠶家、製絲家ト云フモノハ相當ノ利潤ヲ認
  メナイマデニ之ヲ切詰メテ行クコトハ吾々
  トシテ認メルコトガ出來ナイ、サウシナイ
  ト足リナイ繭ガ又減ツテ來ルト云フコトニ
  ナル譯デアリマスカラ、此ノ實施ニ當ツテ
  ハ十分ナル御用意ト〓究ヲ煩ハサナケレバ
  ナラナイ、殊ニ是ハ商工省ニ所屬スル部門
  トシマシテ十分ナル〓究ヲ加ヘテ、サウシ
  テ繭絲ノ信用ノ少シデモ廣クセラレンコト
  ヲ切望シテ已マナイノデアリマス、昨日渡
  邊君カラ申サレタノモ此ノ點デアリマス、
  繭ハ決マツタ、絲ハ決マツタ、サウシテ其
  ノ決マツタ絲デ織物ガ承知スルカシナイカ
  玆ニ一ツノ不安ガアルノデアリマス、此
  法案制定ハ當業者ノ今日マデ苦シンダコト
  ヲ落付ケルト云フ意味ニアルト云フコトヲ
  政府當局カラ承ツタノデアリマス、而シテ
  百年ノ長イ間自由取引ノ下積ミトナツテ養
  蠶家、製絲家其ノ他之ニ關係シテ居ル業者
  ハ非常ナル苦シミヲ受ケテ來タノデアリマ
  ス、又政府モ斯ウ云フヤウナコトヲサセテ
  置イテハイケナイ、農村ノ爲ニ養蠶業ヲ落
  付ケサセナケレバイカヌト云フ立場カラ、
  斯ウ云フ法案ヲ御考ヘニナツテ、サウシテ
  今偶〓此ノ時局ニ「アメリカ」ノ敵性行爲ニ對
  シテ準備ヲ整ヘヨウト云フ一石二鳥ノ政策
  トシテ御考ヘニナツタコトハ洵ニ結構ナコ
  トト思フガ、サウ云フ法案デアレバ、玆
  百年ノ間ノ古着ヲ脫グノデアリマスカラ、
  現狀ノ儘之ヲヤル譯ニハ行カナイ、此ノ古
  着ヲ脫グコトニ依ツテ此ノ法案ノ目的ガ達
  成スルノデアリマス、併シ人情ノ深イ現蠶
  絲當局ト致シマシテハ、ドウカシテ失業者
  ヲ出サヌヤウニ、此ノ業者モ可愛ガリタイ
  此ノ業者モ失業サセナイヤウニト云フヤウ
  ナ御親切ノ意味カラ、先日來ノ御答辯ヲ承
  ツテ居リマスルト、理想ハサウダ、併シ今
  サウ俄カニハ行ケナイノダカラ、此ノ業者
  モ生カシテ行ク、此ノ業者モ泣クカラ救ツテ
  ヤラウ、斯ウ云フヤウニ私ニハ窺ハレル、
  サウ云フヤウナ人情味ヲ以テヤツテ下サル
  コトハ結構デアリマスガ、サウ云フ氣持デ
  此ノ古着ガ脫ゲルダラウカ脫ゲヌダラウカ
  ト云フコトヲ私ハ心配スル、ソレデスカラ
  一元統制會社トシテ仕事ヲヤツテ行クニハ、
  ドウシテモ事實出來ナイ點ガアルノデアリ
  そう、例ヘバ玉繭ノ價格決定、ソレカラビ
  シヨ繭、二等繭、中繭ノ價格ト云フモノハ
  檢定所ニ持ツテ行ツテモ分リマセヌ、絲量
  ハ分リマスケレドモ、價値ト云フモノハ中
  中出セルモノデハナイ、斯ウ云フモノハ
  從來長イ經驗ノアル當業者ガ、是ハ此ノ位
  ノ價値ガアルト云フ風ニシテ、商賣人ノ方
  ガ上手ニ値ヲ決メルサウ云フヤウナモノ
  ハドウシテモ一元化シヨウトシテモ出來ルモ
  ノデハナイ、ヤハリソレバサウ云フ專門
  的ナ業者ニ引續イテ活動シテ貰ハナケレバ
  ナラヌト思ノデアリマスガ、コチラノ部
  門ニモ泣ク者ガアル、コチラノ部門ニモ
  泣ク者ガアル、ソレハサウ云フ失業者ヲ
  出來ルダケ出サナイヤウニシテ行ツテ貰ハ
  ナケレバナラナイガ、ソレガ爲ニ折角日本
  ノ此ノ重大ナル蠶業ノ革命的ナ政策ガ根本
  的ト云ハナクテモ一部的カラデモ碎ケテ來
  テハ私ハ大變ダト思フ
  ソレカラ最後ノ問題ト致シマシテ、是ノ
  御答辯ヲ受ケテモ結局同ジコトダラウト
  思ヒマスガ、輸出問題デアリマス、是ハ
  私カラ申上ゲルマデモナク御承知ノコト
  ト思ヒマスガ、昨日モ御說明ガアツタ通
  リ、日本ダケデハイケナイ、支那ヲ脱ン
  デ行カナケレバナラヌ、私ハ昨日ハ承ル
  コトガ出來ナカツタノデアリマスガ、宇佐
  美政府委員モ恐ラク祕密會デデモナケレ
  バ思切ツタコトハヨウ仰シヤレナイト思
  ヒマスガ、是ハ餘程考ヘナケレバナラヌ、
  輸出生絲ヲ今マデノヤウニ自由奔放ニサセ
  テ居ル、又サウスルコトガ宜イト仰シヤル
  ノデアリマスガ、之ニ對シテ吾々ハ今日マ
  デ苦シンデ來タ、所ガ輸出生絲ノ價格ハ決
  シテ繭代、國內生絲代ニハ關係サセナイ、
  斯ウ云フコトヲ仰シヤルノデアリマスガ、
  吾々ハ關係スル、關係セヌト云フヨリモ、
  寧ロ「アメリカ」ニ對シテサウ云フコトガ我
  ガ日本トシテ宜イカ惡イカト云フ問題デア
  リマス、此ノ間カラ度々此ノ問題ニ付テハ
  局長トシテノ御意見モ承ツタノデアリマス
  ガ、「アメリカ」ノ自由市場ト、日本ノ統制
  經濟ト斯ウ云フ木ニ竹ヲ接グヤウナコトハ、
  其ノ接ギ目ニ困ル、ヤハリ向フハ自由市場
  ヲ殘シテ置イタ方ガ宜イノダト云フコトヲ
  或ル方面カラ結論トシテ承ツタノデアリマ
  スガ、是ハ吾々ハドウシテモ承認出來ナイ、
  「アメリカ」ハ先程申シタヤウニ、或ル一定
  量ノ絹絲ハ何デモ彼デモ欲シイ、ヤラヌト
  言ツタラ、支那ノ手ヲ潜ツテモ買ヒマス、
  或ハ「ロシヤ」ノ手ヲ潛ツテモ日本ノ生絲ヲ
  買フ、買ハナケレバ生活出來ナイ部門ガア
  ル賣リタクテ仕方ガナイノデナク、向け
  ハ買ヒタクテ仕方ガナイノデアル、ソンナ
  買ヒタクテ買ヒタクテ仕方ノナイ部門ガア
  ルモノニ對シテ、オ氣ニ入ルヤウニ御自由
  ニ儲ケテ下サイナンテ、ソンナコトヲヤル
  必要ハナイ、而モイマ日本ハ纖維ニ飢渴シ
  テ居ル、君ノ方ハ長イ間ノオ得意ダカラ特
  ニ是ダケ分ケテヤラウ、是ハ大切ナ絲デ內
  地ニ使ヒタイガ、仕方ガナイカラオ前ニ分
  ケテヤラウト云フノデ、一一十万俵ナリ二十五
  万俵ナリヲ確保シテ、之ヲ千六百圓ナラ千六
  百圓ト云フ或ル一定ノ價格デ、是デ氣ニ入
  ツタラ買ヘ、厭ヤナラ買ツテ貰ハヌデモ宜
  イト云フ態度ニ出レバ、向フハ必ズ其ノ價
  格デ下サイト言ツテ來ル、今マデノヤウニ
  ㄱアメリカ」ニ依存スル氣持ヲ止メナケレバ
  ナラヌト思フ、片方ニ新シキモノガ出來テ
  此ノ古イモノヲ捨テナケレバコツチヘ行ケ
  ナイノニ、コツチニモオ上手ヲシ、アツチ
  ニモオ上手ヲスルト云フコトデ今日行ケル
  モノデハナイ、東亞共榮圈ヲ作ツテ高度國
  防國家ヲヤツテ行ケバ、綿モ羊毛モ要ラヌ、
  屑鐵モ石油モ要ラヌ、今マデハオ前ノ方カ
  ラ貰ツテ居タカラコツチカラモヤツタガ、
  オ前ノ方ガヤラヌト云フナラ貰ハヌデモ宜
  イ、併シ金貨獲得ガ大事ナ仕事デアルカラ、
  戰爭ノナイ限リハ出來ルダケ賣リタイ、又
  ソレハ賣ル方法ガアリマス、假令「アメリ
  カ」ト戰爭シテモ幾ラデモ「アメリカ」ニ日
  本ノ絲ハ賣レマス、「アメリカ」人ハ國家觀
  念ヨリモ營利觀念ノ强イ國民デアルカラ、
  戰爭ハ戰爭トシテ置イテ、船ガ〓ハラナケ
  レバ世界中一周リシテデモ必要ナ生絲ダケ
  ハ買ヒマス、是ガ向フノ性質デアル、サウ
  云フ毅然タル立場ニ立ツテ、棉花ナド貰ハ
  ナクテモ宜イ「ス·フ」原料ハ貰ハナクテモ宜
  イ、俺ノ方ハ斯ウ云フ資源ヲ持ツテ居ルカ
  ラ、之ニ依ツテ自活ヲシテ行ケルンダ、欲
  シイモノナラ二十万カ二十五万デません
  是レノ價格デ賣ツテヤツテモ宜イ、拂下ゲ
  テヤルト言ツテモ宜イ、ソレニハ支那ト云
  フモノヲ抑ヘテ置カネバナラヌ、此ノ支那
  ト云フモノニ對シテ今マデ支那ノ蠶絲業ト
  云フモノガ輕ク見ラレテ居ル、コンナコトハ
  專門ノアナタ方ニ吾々ガ申上ゲルノハドウ
  カト思ヒマスケレドモ、蔣介石ガ日本ニ對シ
  テ抗日ノ第一手段トシテ執ツタノハ支那ノ
  蠶絲業勃興ダト私ハ考ヘテ居ル、ソレハ戰爭
  デ打壞ハサレテシマツタ、サウシテ今度ハ事變
  ガ始マツテカラハ宣撫工作デ又蠶絲業ヲ日本
  ノ手ニ依ツテ之ヲ復活サシテヤツタ、サウシテ
  去年ハ御承知ノ通リ七万俵ヲ輸出シテ居ル、
  サウシテ日本ノ絲ガ減ツテ居ル、所謂重慶
  ニ按配良ク嵌ツテ居ル譯デス、ソレデハ大
  變ダト云フノデ、此處デハ餘リ多ク言ヘナ
  イケレドモ、或ル工作ガ軍部ノ方デ講ゼラ
  レテ居ル、ソレデアリマスルカラ日本ガサ
  ウ云フ毅然タル態度ヲ執ルナラバ、支那ナ
  ンカトモ相當日支協調シテ、支那ノ絲ニ對
  シテモ統制ヲ加ヘナケレバナラヌ、ソレヲ
  日本ノ統制ニ加ヘルナント云フ橫着ヲシタ
  ラ支那ノ人ガ日本ヲ惡ク思ヒマスカラ公
  ケニハ言ヘナイケレドモ、ソコハ日支經濟
  ヲ圓滿ニ行カセル上カラ手ヲ握ツテ行ク、
  ソレニハ日本ノ生絲ヲ自由ニ業者ニ任シテ
  置イテハ困ル、蠶絲當局モ御承知ダト思ヒマ
  スガ、上海ノ支那ノ生絲統制ヲ誰ガ邪魔ヲ
  シタカ、ソレハ或ル一方デ日本ノ財閥ガ邪
  魔ヲシテ居ル、ソレハ御承知ノ通リ、ソレ
  ダカラ日本ト戰爭ガ始マラウガ始マルマイ
  ガ、「アメリカ」ガ欲シケレバ賣ツテヤル、戰爭
  デ賣レナイト云ツテモドウデモ欲シケレバ
  日本ノ生絲ヲ外カラ〓シテデモ持ツテ行ク、
  ソレニハヤハリ支那ト云フモノヲハツキリ
  摑ンデ、支那ト日本ガ手ヲ握ツテ行ク、ソ
  レニハ四本建、五本建デ自由ニ輸出サシテ、
  ソレデ行カウタツテ承知シナイ、吾々養蠶
  家ニハ輸出生絲ノ騰落ガ影響スル、國內需
  要ノ絹絲ノ生產、製絲家ニ輸出絲ノ騰落ガ
  影響スルト云フ、ソンナ小サイサモシイ考
  ヘデナシニ、日支提携ノ上ニ於テドウシテ
  モ此ノ絹絲ト云フモノハ兩國共同ノ上ニ統
  制ヲツケテ行カナケレバナラヌ、ソレニハ
  斯ウ云フ會社ヲシテ一元的統制ニ持ツテ行
  クト云フコトガ-ソレハ氣ノ毒ナ部面モ
  出來マセウケレドモ、國策ノ上カラ考ヘ、
  蠶絲業ノ將來ヲ眺メタ場合ニ於テ、私ハサ
  ウ云フ風ニシテ行カナケレバナラヌト思フ、
  ソレガ東亞共榮圈ヲ作ル上ニ於テ御互ヒニ
  東亞トシテノ進ムベキ途デアル、斯樣ニ私
  ハ考ヘルノデアリマス、俳シ此ノ答辯トシ
  テハ現在ノ政府當局ノ立場トシマシテハ、
  ヤハリ四本建デ行ク方ガ宜イ、又「アメリ
  カ」ノ商人ノ御機嫌ヲ取ル方ガ宜イト云フ、
  斯ウ云フ風ナ軟弱外交デアリマスカ、媚態
  貿易デアリマスカ、サウ云フ御說明御答
  辯ガアラウト思ヒマスルカラ御答辯ハ要シ
  マセヌガ、唯委員諸君ノ十分ナル御〓究ヲ
  煩ハシテ吾々ハ吾々トシテ善處スルヨリ外
  ナイト考ヘテ居ルノデアリマスルガ、ドウ
  カ一ツ此ノ意味カラ蠶絲當局モ十分ナル御
  〓究ヲ更ニ加ヘラレンコトヲ御願ヒ致シマ
  シテ、色々小サイ問題モアリマスルガ、ソ
  レハ措キマシテ、是デ私ノ質問ヲ終ルコト
  ニ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=56

  ---

• 057・高橋壽太郎

  ○高橋委員長　鈴木正吾君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=57

  ---

• 058・鈴木正吾

  ○鈴木(正)委員　委員諸君ト政府當局トノ
  連日ノ御努力ニ依リ本法ノ意圖スル蠶絲國
  策ノ大綱ハ略〓諒解スルコトガ出來マシタ
  本法ノ如キ蠶絲業界全般ニ亙ル劃期的法
  律ガ關係各業界ニ深刻ナル影響ヲ及ボス
  コトハ勿論デアリマスガ、同ジク影響ト云
  フ中ニモ之ヲ利害ノ觀點ニ於テ批判シ得ル
  業者ト、之ヲ死活ノ問題トシテ當面スル業
  者トガアルコトハ當局モ十分御明察ノコト
  ト存ジマス、卽チ全國蠶種ノ製造販賣業者、
  繭市場關係業者及ビ繭絲業者等ハ本法ノ成
  行如何ヲ端的ニ各自ノ死活問題ト觀ジ、憂
  慮ノ餘リ全國各府縣ヨリ馳セ參ジタル各業
  界ノ代表者數十名ハ、早朝ヨリタ刻マデ連日
  本院ノ面會所ニ集合シテ一喜一憂、本法案審
  議ノ經過ヲ見守リツツアル實情デアリマス、
  幸ヒニモ當局ノ御答辯ニ依リ政府ハ極力失
  業者ヲ出サナイヤウ留意セラレテ居ルコト、
  萬一失業者ヲ生ジタ場合ニ於テハ成ベク之
  ヲ統制會社ノ職員トシテ吸收シ、生計ノ途
  ヲ與ヘラルルコトヲ知リ、聊カ愁眉ヲ開イ
  タ者モアリマスガ、尙ホ大多數ハ不安焦燥ノ
  裡ニヨリ好キ安心ノ糧ヲ得タイト翹望致シ
  テ居リマス、ソコデ私ハ是等業者ノ不安ヲ一
  掃スルトハ云ヘナイマデモ、少シデモ無用
  ノ取越苦勞ヲ除イテヤラウト云フ當局ノ親
  心ヲ引出ス意味ニ於テ、一切ノ議論ハ拔キ
  ニ致シマシテ、簡單ニ三四ノ點ヲ御尋ネ致シ
  マス、何卒當局ニ於カレテモ業者ノ苦痛ヲ諒
  トセラレ、血ト淚ノアル御明示ヲ賜ハリタイ、
  許セルモノハ許セル、許セナイモノハ許セ
  ナイトハツキリ御示シヲ願ツテ置ク方ガ、
  後日ノ紛清ヲ避ケラレルノミナラズ、業者
  ニ對スル眞ノ親切デモアリマス
  先ヅ第一ニ本法成立後ニ於ケル蠶種製造
  業者竝ニ販賣人ノ地位如何ト云フ問題デア
  リマスガ、其ノ中製造業者ノ方ハ略〓〓從來
  ノ實績ニ依リ、統制會社カラ蠶絲業者ニ蠶
  種ヲ註文スルトノ御言明ニ依リ、一應不安
  ハ一掃セラレタ譯デスガ、販賣業者ハドウ
  ナリマセウカ、蠶種販賣業者ト云フモノガ
  舊來通リ稼業シ得ルノカ、若シ統制會社ノ職
  員トシテ採用シ、蠶種販賣ノ實務ニ當ラシ
  ムル御方針ダトスレバ、其ノ際當該業者ガ
  是マデ多大ノ努力ニ依リ獲得保持シテ來タ
  所謂御得意ト云フ財產ハ如何ニ計量サレル
  ノデアリマセウカ、其ノ點ヲ御伺ヒ致シマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=58

  ---

• 059・吉田清二

  ○吉田政府委員　蠶種ノ製造會社ハ今度ノ
  制度ニ依リマシテ、先程來申シマスルヤウ
  ニ生活ガ非常ニ安定ニナルモノト思ヒマス、
  唯其ノ製造業者カラ蠶種ヲ買取リマシテ從
  來養蠶方面ニ販賣ヲ致シテ居リマシタ蠶種
  ノ中間業者ト云フモノガアルノデアリマス、
  是ハ日本全國ト云フ狀態デハアリマセヌガ
  主トシテ關東方面ニ相當沿革ノアル一ツノ
  業者トシテ存在致シテ居ルノデアリマス、
  是ガ若シ〓種ノ製造業者ニ對シマシテ會社
  ガ蠶種ヲ註文シ、ソレヲ會社ガ取ツテ、會
  社ガ直接ニ養蠶家ニ配給スルト云フコトニ
  ナルト、其ノ間ノ從來ノ仕事ガ奪ハレルト
  云フ形ニナルノデアリマス、今御話ノ通リ
  心配致シテ居ルコトト承知致シテ居ルノデ
  アリマス、此ノ問題ハ私共前々カラ直接ニ
  愬ヘラレテ居ル問題デアリマシテ、此ノ救
  濟ト申シマスルカ、斯樣ナ制度ノ實施サレ
  タ後ニ於キマシテモ何等カノ方法ニ依リマ
  シテ、職場ヲ殘シ得ルヤウニト云フコトニ
  付キマシテ苦慮致シテ居リマスノデ、色々
  ト案ハ考ヘテ居ルノデアリマス、配給ニ當
  リマシテ會社ガ製造業者カラ買取ル、併シ
  事實ハ買取ツタ相手方ハ會社デアリマスル
  ガ、物ハ製造業者カラ配給スベキ養蠶家ノ
  方ニ流スルコトニナルノデアリマス、其ノ
  際ニ此ノ業者ノ手ヲ經テ流スト云フヤウナ
  コトニ付テ、其ノ間幾ラカノ手數料ヲ割リ、
  斯ウ云フ考ヘ方ガアルノデアリマス、是ノ、
  洵ニ私共トシテモ同感ナ方法ト考ヘテ居ル
  ノデアリマス、其ノ他マダ色々ト適當ナ方法
  ガアレバト思ヒマシテ今〓究モ致シテ居ル
  ノデアリマスガ、何レニシマシテモ、私共ト
  致シマシテハ、特殊ノ地方ノ問題デモアリ
  マスルシ、制度全體ト云フ問題デハゴザイ
  マセヌガ、農林當局ト致シマシテ、今後之
  ヲ運用致シマス上ニ於テ、府縣當局、又府
  縣ノ從來關係致シマシタ蠶種ノ業者、斯ウ
  云フモノトノ間ニ於テ今ノ配給ノ問題ニ付
  テ參畫ガ出來、隨テ手數料ト申シマスルカ、
  サウ云フヤウナモノニ依ツテ-從來ヨリ
  ハ無論或ル程度窮屈ナ點ガアルト云フコト
  ハ覺悟シテ貰ハナケレバナラヌト思ヒマス
  ケレドモ、此ノ際直チニ失業スルト云フヤ
  ウナコトノナイヤウニ方策ヲ立テタイト云
  フ考ヘデ居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=59

  ---

• 060・鈴木正吾

  ○鈴木(正)委員　御親切ナ答辯ヲ感謝致シ
  やく、第二ハ繭市場業者ノ問題デアリマス
  ガ、是モ先日來ノ御答辯ニ依リマシテ設備
  ヲ買收、又ハ賃借リスル御方針デアルコト
  ハ既ニ御示シニナリマシタガ、此ノ場合賃
  借リスルト云フコトハ單ニ市場ノ持ツテ居
  ル倉庫、乾繭等ノ必要設備ダケヲ賃借リス
  ルノデアリマスカ、或ハ繭ノ糶賣、糶買行
  爲ハ之ヲ禁止スルガ市場業者ヲ其ノ有スル
  設備ノ範圍ニ於テ統制會社ノ代行機關トシ
  テ賃金制度ニ依ツテ繭ノ保管ヤ、繭ノ乾燥
  ヲヤラセルト云フ意味デアリマスカ、ソコ
  ヲ御伺ヒ致シタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=60

  ---

• 061・吉田清二

  ○吉田政府委員　此ノ間來設備ノ問題ニ付
  テ御質問ガアリマシタノデ、設備ハ或ハ買
  收ヲスル方針デ居ル、或ハ貸シテ宜シイト
  云フ者ガ居ルナラソレデモ宜シイト云フ風
  ニ物的設備ダケノ話ガアリマシタノデ、サ
  ウ云フ風ニモ言ヒマシタ、之ニハ從來カラ
  色々從業員等ガ居リマスノデ、唯設備ヲ借
  リタダケデ宜イモノデハナイノデアリマシ
  テ、ソコニハ設備ヲ買收スルナリ、借リル
  ナリスルナラバ之ヲ活用シテ集荷配給ノ中
  心ト云フコトニナリマスノデ、相當ノ從業
  員モ要ルコトト私ハ考ヘルノデアリマス、
  斯樣ナ場合ニ於キマシテハ、固ヨリ從來ソ
  コヲ職場トシテ働イテ居ツタ人ハ優先的ニ
  無論採用シテ行キタイト云フコトハ十分考
  ヘテ行キタイト云フ積リデ居ルノデアリマ
  ス、是非サウ云フコトニ致シタイ心組デ居
  ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=61

  ---

• 062・鈴木正吾

  ○鈴木(正)委員　大體諒承シマスガ、私ガ
  御伺ヒ申上ゲタ「ピント」ガ一寸御分リニナ
  ラナカツタカ知レヌト思ヒマス、詰リ今マ
  デ繭ヲ乾燥シタ、サウ云フ乾燥ノ仕事ヲ會
  社カラ賃金ヲ出シテ請負ヲヤラシテ下サル
  御思召ガアルカドウカ、其ノ點ヲ御明示願
  ヒタイト思フノデス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=62

  ---

• 063・吉田清二

  ○吉田政府委員　乾燥請負ト云フト、要ス
  ルニ乾燥賃ヲ會社カラ貰ツテ獨立デ事業ヲ
  シタイト云フコトデゴザイマスネ-ソレ
  ハ私ハ場合ニ依ツテ宜シイカト思フノデア
  リマス、乾燥料ヲ拂ツテ-要スルニサウ
  云フ設備ノアルモノニ其ノ設備ヲ活カシテ
  ヤツテ自分ノ經費ヲ拂フト云フコトモ宜イ
  デアラウシ、養蠶家ガ持ツテ來タモノヲ一
  定ノ料金デヤラセルト云フコトハ今初メテ
  御質問ニ依ツテ私共モ考ヘ浮ンダノデアリ
  マスガ、是ハサウ云フコトガアツテ十分差
  支ヘナイコトト考ヘテ居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=63

  ---

• 064・鈴木正吾

  ○鈴木(正)委員　第三ハ本法實施ノ曉ニ於
  ケル繭絲業者ノ地位如何ト云フ問題デアリ
  やっ、此ノ問題ニ付テハ私ハ旣ニ本委員會
  ニ於ケル當局ノ御答辯ト、其ノ他ノ場所ニ
  於ケル當局ノ御話等ニ依リマシテ、次ノ諸
  點ヲ明カニシタト信ジマス、卽チ一、上繭
  ヲ除ク玉二等以下ノ繭ノ集荷ハ從來通リ繭
  絲業者ノ手ニ殘ス一、上述ノ繭ノ配給ニ付
  テハ之ヲ統制會社ニ於テナスベキカ、或八
  斯カル面倒ナル仕事ハ從來通リ繭絲業者ニ
  扱ハセテ置ク方ガ宜イカハ目下考慮中デア
  ル一、繭取引ノ實際ニ於テ特殊ノ事情アル
  地方ニ對シテハ別ニ考慮ス一、玉二等以下
  ノ繭ノ集荷、配給ヲ繭絲業者ノ手ニ殘シテ
  置ケバ不十分ナガラモ失業者トナラズニ食
  ツテ行ケルデアラウトノ認識ヲ有セラルル
  コト
  此ノ四ツハ大體私ハサウ考ヘテ居リマス
  ケレドモ、斯ウ考ヘルコトハ感違ヒデアリ
  マスカ、若シ感違ヒデアリマスナラバ、其
  ノ違ツタ點ヲ御指摘ガ願ヒタイシ、若シ間
  違ツテ居ナカツタラ其ノ通リデアル旨ノ御
  答ヲ得タイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=64

  ---

• 065・吉田清二

  ○吉田政府委員　今マデ申シマシタ私ノ言
  葉及ビ氣持ハ其ノ通リデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=65

  ---

• 066・鈴木正吾

  ○鈴木(正)委員　有難ウゴザイマシタ、ソ
  コデ私ノ質問ハ大體ソレデ終ルノデスケレ
  ドモ、以下質問ト云フヨリハ本法ヲ繞ル國
  民ノ希望乃至御願ヒヲ申シ添ヘテ、下情上
  通ノ一助タラシメタイト云フ意味デ申上ゲ
  ルノデアリマスカラ、左樣御承知ノ上、幸
  ヒニ答辯ヲ得ラレル點ガアリマシタラ御答
  ヘ置キヲ願ヒタイト思ヒマス
  當局ノ御見込デハ玉二等以下ノ繭ヲ繭絲
  業者ノ手ニ殘シテ置イテヤレバ、不十分ナガ
  ラモ失業者トナラズニ食ツテ行ケルデアラ
  ウトノコトデアリマスケレドモ、業者ノ側デ
  言ヘバ、此ノ玉二等ダケデハ食ツテ行ケナ
  イ、特ニ玉二等ノ集荷ダケヲ許サレテ、配給ガ
  ナクナツテハ迚モ食ツテ行ケナイ、斯ウ云フ
  聲ガアリマス、幸ヒニ玉一一等ヲ集荷、配給共
  ニ許シテ戴ケレバ、現在六百万ト稱スル業者
  ノ中ノ稍〓半バマデハソレデドウカ斯ウカ生
  計ガ立ツデアラウト申シテ居リマス、此ノ
  業者ノ希望ヲ十分御參酌ヲ願ヒタイト思フ
  ノデアリマス、隨テ玉二等ノ配給ハ是非從
  來通リ業者ノ手ニ於テヤラシテ戴キタイ、
  切ニ御願ヒ申上ゲマス、ソレカラモウ一ツ
  ハ養蠶家ノ希望ハ懸ツテ繭代金ノ支拂ヲ
  停滯ナカラシムルコトニアリマス、是ハ此
  ノ委員會ノ開會以來會社ノ資本金問題ヲ繞
  ツテ繭代金ノ支拂ガ遲延スルノデハナイカ
  ト云フ御懸念ガアリマシタノニ對シテ、當
  局者ハ努メテ御辯明ニナリマシテ、聊カ不
  安ハ感ジマスケレドモ、併シサウ行ツテ
  吳レレバ宜イト切ニ願ツテ置キマス、是モ
  農村一般ノ切ナル希望トシテ十分手違ヒノ
  ナイヤウニ御考慮ヲ願ヒタイト思フノデア
  リマス、次ニ失業者ヲ統制會社デ職員トシ
  テ採用シヨウト云フ思召ハ有難イガ、事實
  ノ問題トシテハ其ノ範圍ハ極メテ狹ク、
  部ノ從業員ハ救ハレテモ商店主ハ救ハレナ
  イト云フ歎キガ多イノデアリマス、ソコデ
  是非トモ現在ノ業態ヲ存續セシメテ、統制
  會社ノ代行機關トシテ會社ノ業務ヲ請負ハ
  シテ貰ヒタイ、丁度先程ノ乾繭ノ仕事ヲ賃
  仕事トシテ請負ヒタイト云フ希望ト共通ナ
  精神デアリマスケレドモ、自分ノ今ヤツテ
  居ル仕事ヲ失フノデハナイカ、仕事ハ其ノ
  儘ニシテ今マデノヤウナ-詰リ繭ヲ橫ニ
  流シテ儲ケヨウト云フヤウナ根性ハ棄テマ
  スケレドモ、會社ノ代行機關トシテ請負ハ
  シテ貰フ、會社ガ繭ヲ生產者ニ配給スルニ付
  キマシテハ、何レ會社デモ相當ノ人手ガ要
  ル、今マデ熟練シテヤツタ人ガ必要ナ機關
  ダケハ相當要ル、尤モ繭ノ配給單位ヲ大キ
  クナサレバ、今マデ程混ミ入ツタコトデハ
  ナイト思ヒマスケレドモ、兎ニ角賃仕事
  トシテ請負ハシテ吳レレバ、會社ト消費者
  ニ聊カノ迷惑損害ヲ及ボサズシテ、國家目
  的達成ニ協力スルコトガ出來ルト云フノガ
  業者一般ノ熱望デアリマス、私ハ此ノコト
  ガ能ク分ラナカツタノデスケレドモ、業者
  ノ方ニ言ハセルト、生產者カラ繭ガ統制會
  社ニ入ツテ、統制會社カラ繭ガ消費者ニ流
  レテ行ク間ノ所謂中間ノ業者ヲ、一般ノ繭
  ニ付テハ政府ノ方デハ原案デ御認メニナツ
  テ居ラヌヤウニ解釋シテ居リマス、其ノ間
  ヘ所謂代行機關トシテノ今マデノ繭絲業者
  ヲ入レレバ、理窟ノ上カラ言ヘバ、統制會
  社カラ直チニ消費團體ヘ繭ガ行ク方ガ手數
  料ガナクテ宜イデハナイカト、私共モ常識的
  ニ考ヘテ居リマシタ、所ガ業者ニ言ハセル
  ト、統制會社カラ消費團體ニ繭ヲ流シテヤ
  ル場合ニ、吾々ノ手ヲ通シテ流シテモ、決
  シテ統制會社カラ直接ニ流スヨリ消費者ニ
  高クナラズニ渡スコトガ出來ルト申シマス、
  私其ノコトガドウモ能ク呑込メナカツタケ
  レドモ、段々聽イテ見ルト、統制會社カラ
  消費團體ニ繭ヲ流シテ行クニハソレ相當ノ
  人ガ要ル、ソレ相當ノ費用モ掛ルノダ、其
  ノ費用ノ中デ吾々ニ請負ハセテ吳レレバ、
  吾々ノ多年ノ熟練シタ經驗ト、自分達ノ技
  術ト言ヒマスカ、サウ云フモノニ依ツテ自
  分達ノ食扶持ダケヲ稼ギ出シテ、結局ニ於
  テ會社ニモ、消費者ニモ損害ヲ掛ケナイノ
  ミナラズ、繭ノ配給ノ圓滑ヲ期シテ働クコ
  トガ出來ルト斯ウ云フ風ニ言ウテ居リマス、
  此ノ言ヒ分ハ私ニハ分ツタヤウナ分ラヌヤ
  ウナ點ガアリマスケレドモ、滿更分ラナイ
  ノデモナイ、斯ウ考ヘマスガ、政府ノ御心
  持デハ統制會社カラ消費者ニ直接流セバ費
  用ガ樂デ濟ムケレドモ、中ヘサウ云フモノ
  ガ入ツテ來レバ結局會社カ消費者ガ餘分ナ
  モノヲ負擔シナケレバナラヌト云フ御考ヘ
  デアリマセウカ、私ハ自分ニモ分ツタヤウ
  ナ分ラナイヤウナコトデアリマスカラ、十
  分ナ說明ハ屆キマセヌケレドモ、此ノ點ニ
  付テ政府ガ若シ御理解ガ出來ヌト云フナ
  ラ、業者ノ間デ相當シツカリ說明スル者モ
  アラウト思ヒマスケレドモ、兎ニ角一應御
  尋ネ致シタイノハ業者ニ代行サセル、是ハ
  代行者ガ自己ノ計算ニ於テ繭ヲ流スニアラ
  ズシテ、會社ノ計算ニ於テ繭ヲ流シテ行ク、
  自分達ハ唯其ノ間ニ於テ僅カナ手數料ヲ貰
  フ、現ニ豐橋ノ繭問屋ノ經驗カラ申シマス
  下、百一ト云フノガ手數料ノ常識ニナツテ
  居ル、百圓ニ對シテ一圓、サウ云フ安イ手
  數料デハ會社デヤツテモ中々出來ナイダラ
  ウト云フコトヲ言ツテ居ルノデアリマスケ
  レドモ、サウ云フ點ニ付テ當局ノ御心持ヲ
  伺ツテ見タイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=66

  ---

• 067・吉田清二

  ○吉田政府委員　只今玉二等ダケノ配給ヲ
  許サレルトシテモ、ソレダケデハ到底ヤツ
  テ行ケナイカラ、モウ少シ職場ヲ殘シ得ル
  途ガアルナラバ、ソレヲ考慮ニ入レテ篤
  ト考慮シテ貰ヒタイ、斯ウ云フ御希望ハ私
  共モ氣持ハ同ジデアリマス、十分其ノ心持
  デ考ヘテ見タイト思ツテ居リマス、ソレカ
  ラ繭ノ代金ノ支拂等ニ付テ、此ノ間カラ申
  上ゲマシタコトニマダ不審ノ點モアツテ、
  不安ガアルカラ注意シロト云フ御注意ハ洵
  ニ御尤モデアリマス、私共モ素人デアリマ
  スシ、是ハ非常ナ重大ナ問題ダト思ツテ居
  リマスノデ、吾々役人ダケデハナク、業者
  トモ能ク實際問題ヲ〓究致シマシテ、遺憾
  ノナイヤウニ致シタイト思ヒマス、ソレカ
  ラ第三點ノ或ル種類ノ者ニ代行サセテモ、
  格別會社ノ方ニモ損ガナケレバ消費者ノ方
  ニモ損ガナシニ繭ノ配給ガ出來ルト云フ御
  話デアリマスガ、是ハ原則的ノ理論トシテ
  ハアナタ自身モ疑ヒヲ持タレルヤウニ、
  私モサウ思ヒマス、併シ唯特殊ノ場合ニ於
  テ非常ニ小サナ製絲家-會社ヘ買ヒニ行
  クニモ非常ニ困ル、結局サウ云フヤウナ人
  ノ世話ニナツテ繭ノ配給ヲ會社カラシテ貰
  フ、會社ノ方カラ配給スルノモ面倒臭イ、
  取リニ來イト言ツテモ面倒ダト云フヤウナ
  相當廣範圍ナ所謂小サナ製絲家ト云ツタヤ
  ウナモノガアルノデハナイカト思ヒマス、大
  製絲家ナラ無論問題ハナシニ直接行ケバ、
  其ノ間ニ入ルト云フコトハ無論アリ得マセ
  ヌケレドモ、サウ云ツタ要スルニ製絲設備
  ヲ持ツテ居ル人達ノ中デ、兎角自分自ラガ
  ヤラズニ、斯ウ云フ人ヲ通ジテヤル方ガ寧
  ロ便利デアリ、又サウ云フ經費ヲ豫メ覺悟
  シテ、今日マデデモ繭ノ購入ヲシテ居ルヤ
  ウナ業者ガアルノデハナカラウカト察スル
  ノデアリマシテ、ソコ等ノ點ハ、實情ニ無
  理ノナイ限リハ一向差支ヘナイノデハナイ
  カト、今御話ヲ聽イテ考ヘマスノデ、能ク
  實情モ見マシタ上デ、根本ノヤリ方ニエラ
  イ支障ヲ起ストカ、混亂スルトカ云フヤウ
  ナ大ナル弊害ヲ惹キ起サザル限リハ、私ハ
  實情ヲ出來ルダケ尊重シテ行ツテ、今ノ希
  望ニモ副ヒ得ルモノナラバ副ヒタイ、斯ウ
  云フ氣持デ是ハ一ツ實情ヲ聽イテ見タリ、
  調ベテ見タリ致シタイト考ヘマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=67

  ---

• 068・鈴木正吾

  ○鈴木(正)委員　今ノ御答ヘデ私自身ハ十
  分デアリマスケレドモ、唯此ノ際其ノ話ガ出
  マシタカラ御參考マデニ私ノ地方ノ實情ヲ
  一寸申上ゲテ見タイト思ヒマス、豐橋市地
  方ノ蠶絲業ノ實狀ハ、其ノ發達ノ歷史ニ於
  テハ最初ニ座繰ノ自家用製絲ガ自己ノ生產
  セル繭ヨリ生絲ヲ繰絲シタノガ初メデアリ
  マシテ、徐々ニ發達シ、養蠶業ノ發達ト共
  ニ產繭額ノ增加ニ依リ繭賣買ノ事實ガ發生
  致シマシテ、是ガ盛ンニナルト共ニ全國ノ
  製絲家ヲ集メテ、繭賣買仲立業ガ頗ル旺盛
  ヲ極メルヤウニナリマシタ、而モ此ノ繭賣
  買業トハ普通ノ繭賣買業ノ如ク、自己ニ於
  テ繭ヲ買入レ、之ヲ適當ノ時ニ販賣シ、其
  ノ間ノ値開キヲ以テ自己ノ利益トスル業ト
  ハ異ナリマシテ、賣買兩者ノ中間ニ在ツテ
  賣方ト買方、卽チ養蠶者ト製絲者トノ中間
  ニ立ツテ、其ノ商談ヲ成立セシメ、其ノ報
  酬トシテ一定率ノ口錢ヲ收入スルト云フ仲
  立業ノ純粹ノ形態ニ於テ發達シテ參ツタモ
  ノデアリマス、此ノコトハ豐橋地方ニ於テ
  中小製絲ヲ開業スルニ當リ、他地方ノ如ク
  當初ヨリ莫大ナル資本ヲ要セズシテ開業ス
  ルコトヲ可能ナラシメ、隨テ中小製絲業者
  ガ群立シテ、今日ノ所謂蠶都大豐橋ナルモ
  ノヲ實現シタノデアリマス、卽チ豐橋附近
  ノ現狀ハ製絲釜數ニ於テ、機械製絲ガ約八
  千釜、此ノ中約六千釜ハ設備釜數百五十釜
  以下ノ中小國用製絲デアリマシテ、其ノ他
  玉絲製絲三千五百釜、座繰製絲ガ二千釜ア
  リマス、是等ノ中小製絲業者ハ、其ノ殆ド
  全部ノ原料繭ヲ直接養蠶者又ハ其ノ團體ヨ
  リ購入セズシテ、繭賣買仲立業者、卽チ所
  謂繭問屋ニ依存シテ、繭問屋ガ全國ノ製絲
  業者ノ過剩繭、及ビ生繭市場ノ賣繭、及ビ
  乾繭、倉庫ノ賣繭、竝ニ豐橋ノ問屋業者ノ
  生繭市場へ出廻ル生繭、竝ニ乾繭等ヲ蒐收
  シテ來タ原料繭ニ依存シテ居リマス、是ガ
  現狀デアリマシテ、而モ是等中間業者ガ全
  國ヨリ繭ヲ蒐收スル方法ハ、上述ノ如ク自
  己ノ思惑ニ依ツテ其ノ値開キヲ利スルノ方
  法デハアリマセヌノデ、所謂橫ニ流スト云
  フ性質ノモノニアラズシテ、前述ノ如ク賣
  方及ビ買方ノ委託ニ依ツテ商談ヲ運ビ、賣
  買代金ノ百分ノ一ノ手數料ヲ以テ世話ヲシ
  テ居ルト云フ營業ノヤリ方デアリマス、全
  業者六十三軒、從業員四百名、重要物產同業
  組合法ニ依ル東三繭絲問屋同業組合ヲ大正
  六年組織シテ今日ニ及ンデ居リマス、年 一
  依ツテ勿論繭ノ扱ヒ量ハ違ヒマスケレドモ、
  玆ニハ昭和十三年度カラ十四年度ニ至ル實
  際ニ繭ノ取扱ヲシタ數量ヲ調ベタモノガア
  リマス、是ハ公ニ認メラレテ居ル數量ト稱
  シテ居リマスケレドモ、後デ御參考マデニ
  御手許ニ差上ゲテモ宜シウゴザイマス、大
  體上繭ガ三百万貫玉繭ガ二百五十万貫、中
  下繭ガ百五十万貫ニ達シテ居ルノデアリマ
  シテ、全豐橋ノ消費數量ノ七割ガ此ノ所謂
  賣買仲立業者ニ依ツテ配給セラレテ居ルト
  云フ實情デアリマス、斯ウ云フヤウナ特殊
  ナ事情ハ單ニ豐橋地方バカリデハナシニ、
  全國ニモ部分的ニ存在スルコトト存ジマス
  ガ、サウ云フ特殊ノ事情ヲ御賢察下サイマ
  シテ、法文第四條ノ繭ノ賣渡ニ對スル項目
  ノ中ノ「但シ命令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限
  リニ在ラズ」、繭ノ買ヒ方ノ場合ニ「但シ命令
  ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ」ト云フ
  此ノ命令事項ハ、御示シ下サイマシタ命令
  事項ノ內容ヲ見マシテモ此ノ點ハハツキリ
  分ツテ居リマセヌケレドモ、希クバ此ノ命
  令事項ノ中ノ一要素トシテ御考慮ヲ煩ハシ
  タイト云フコトヲ御願ヒ申上ゲル次第デア
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=68

  ---

• 069・吉田清二

  ○吉田政府委員　豐橋方面ノ色々ナ繭ノ賣
  買、又消費ノサレ方ニ付キマシテハ非常ニ
  特殊ナ事情ノアルコトハ承知致シテ居リマ
  ス、同ジヤウナ形モ無論餘所ノ土地ニモア
  ルコトト思フノデアリマス、要スルニ此ノ
  今度ノ制度ト云フモノハ非常ニ大キナ大綱
  ノ所ヲ決メテ置イテ、ソコニ落着カセヨウ
  ト云フ所ニ趣意ガアルノデアリマスカラ、
  根本ノ原則ニ矛盾ヲ來サザル限リハ、先程
  モ申シマシタヤウニ實情ニ合フヤウニ、混
  亂ノ起キナイヤウニ、心配ヲシナイヤウニ
  ト云フ意味デ、シナイデモ宜イコトハ成ベ
  ク現狀ノ儘ニシテ之ヲ紊サナイ、斯ウ云ツ
  タ氣持デ居ルノデアリマスカラ、今ノヤウ
  ナ場合ハ私能ク實情モ〓究致シマシテ、出
  來ルダケ御希望ニ副ヒタイト云フ氣持ヲ以
  テ考ヘテ見タイト思ヒマス、併シマダ私其
  ノ實情ガ能ク頭ニモ入ツテ居リマセヌデ、
  分リマセヌカラ、豐橋ノ繭ノ取扱ダケハ例
  外ダト云フヤウナコトニ御考ヘヲ願ツテハ
  困ルノデアリマス、豐橋ノ場合ハサウ云フ
  場合デアルカトモ思ヒマスガ、若シ違ツテ
  居ルト云フト、豐橋繭ダケニハ例外ノ取扱
  ヲスルノダト云フヤウナ意味ニ御了解願フ
  ト困ルコトガアルノデアリマスカラ其ノ點
  ハ御諒承ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=69

  ---

• 070・鈴木正吾

  ○鈴木(正)委員　御心持ハ能ク分リマシタ、
  是非今申上ゲタ大綱ヲ破レトハ無論註文ス
  ル者デモアリマセヌカラ、御差支ヘノナイ
  限リ此ノ際ニ於テ成ベク失業者ヲ出サヌヤ
  ウニ十分御考慮願ヒタイト云フコトヲ申上
  ゲテ私ノ質問ハ打切リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=70

  ---

• 071・高橋壽太郎

  ○高橋委員長　松岡君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=71

  ---

• 072・松岡俊三

  ○松岡委員　私ノ質問ハ貿易局長官ニ御出
  席ヲ願ヒタイノデス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=72

  ---

• 073・宮澤胤勇

  ○宮澤(胤)委員　貿易局長官ガ御見エニナ
  ルマデノ間鈴木君ノ質問ニ關聯シテ一寸······

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=73

  ---

• 074・高橋壽太郎

  ○高橋委員長　ソレデハ此ノ場合、松岡君
  ガ貿易局長官ガ來ラレルマデ保留サレテ居
  リマスカラ、鈴木君ニ關聯シマシテ宮澤君
  ニ御許シ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=74

  ---

• 075・宮澤胤勇

  ○宮澤(胤)委員　今ノ蠶種賣買業者ヲ何ト
  カ取入レヨウト云フ御心持ト、ソレカラソ
  レニ對スル案ガ幾ツモアルト云フヤウナ御
  話デ、ソレハ結構デアリマス、是ハ何年カ
  此ノ統制ガ續イテ行ケバ知リマセヌケレド
  モ、今日ノ場合ハヤハリ蠶種賣買業者ガ
  中間ニ在ルコトガ蠶種ノ配給ニ私ハ必要ダ
  ト思フノデアリマス、之ヲ一遍ニ外シテ會
  社デ直接ヤルナンテ言ツテモ、是ハ出來ツ
  コアリマセヌ、僅カ一週間カ三日ノ間ニ每
  日出テ來ル蠶種ヲズツト適當ニ配給スルノ
  デスカラ、之ヲ一ツヤリ損ヘバ大變ナコト
  ニナル、隨テ蠶種賣買業者ヲ間ニ入レルコ
  トハ私ハ當分ノ間必要デアルト思フ、サウ
  スルト今ノ蠶種賣買業者ノ扱ツテ居ルノガ
  三割トカ四割ト云フノデアリマスガ、此ノ
  蠶種賣買業者ニ對シテソレダケノ御心持ガ
  アルナラバ、蠶種業者デ直接配給シタ者ト、
  直接配給シナイ賣買業者ヲ一ツニシテ組合
  デモ作ラセテ配給機關ヲ設定スル、斯ウ云
  フ具體的ノ方法ヲ一ツ御採リニナルコトヲ
  言明サレタラドウカト思ヒマスガ、ドウデ
  セウ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=75

  ---

• 076・吉田清二

  ○吉田政府委員　色々關係スル所モアリマ
  スカラ私共色々〓究致シテ居ルノデアリマ
  ス、今仰シヤツタヤウナ御議論モ承知致シ
  テ居リマシテ、〓究致シテ居ルノデアリマ
  ス、ドノ方法ガ宜シイカト云フコトハ役所
  ダケデハナイ、是ハ又養蠶家ノ方ノ團體デ
  是非トモ取ルト云フコトモ出テ來マセウ、
  又個々ノ養蠶家ニ配給スルヤウナ形ガ宜シ
  イト云フコトデアリマスレバ、今仰シヤツ
  タ通リノ配給ノサセ方ガ宜イト思ヒマス、
  併シ品種ヲ決メテ一定ノ團體デ買取ツテ、
  團體デ始末ヲスルト云フヤウナ養蠶家ノ方
  ノ主張モアルノデゴザイマシテ、ソレダト
  スルト、其ノ團體ニ渡スニ當リマシテ唯會
  社カラ中間ノ業者ノ手ヲ經テ團體的ニ渡ス
  ト云フコトヲヤル、斯ウ云フ所モ今後起キ
  テ來ヤウカト思フノデアリマシテ、一件は、
  ハ行カナイヂヤナイカ、斯ウ思ヒマシテ、
  其ノ地方々々ノ事情ニ應ジタヤウナ考ヘ方
  デ、要スルニ此ノ蠶種屋ノ方ニ何等カノ程
  度ノ扱料ヲ殘スト云フ考ヘノ下ニ地方々々
  ニ合ツタヤウナ方法ヲ考ヘル方ガ宜カラウ、
  斯ウ云フ風ニ思ツテ居ルノデスカラ、斯ウ
  云フ方法デヤリマスト云フコトヲ此處デ私
  トシテハ言明スルノハ如何カト思ツテ居ル
  ダケデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=76

  ---

• 077・宮澤胤勇

  ○宮澤(胤)委員　大體早急ニ作ツタノデス
  カラ無理ダト言ヘバ無理デスケレドモ、是
  ダケノ統制ヲヤルノニハ、今ノヤウナコト
  ニハ具體的ノ御考ヘガアツテ然ルベキダト
  思フノデアリマスガ、今御話ノヤウニ、養
  蠶家ノ方ノ團體ニ於テ一纒メニシテ受取リ
  タイト云フヤウナコトガ今後生ズルト思ヒ
  マスガ、ソレハ今日ノ大體ノ生產費ト云フ
  モノヲ大マカニ考ヘレバ、其ノ中ニ蠶種賣
  買業者ノ取ツタ口錢モ入ツテ居ルノデアリ
  マスカラ、サウ云フ場合ニモ一應蠶種賣買
  業者ノ配給機關ヲ認メテ、ソレカラ三年ト
  カ五年トカノ間ニ是ガ本當ニ無駄ダト云フ
  ナラバ、徐ロニ轉業其ノ他ノ問題ヲ考慮ス
  ルトシテ、此ノ場合ハ當局ガ失業サセナイ
  ト云フ根本ノ方針ニ副フ所以デスカラ、是
  ハサウ云フ風ニ認メテ行ク、隨テ今度斯ウ
  云フ統制ヲシテ値段ヲ一元的ニヤルノデス
  カラ、必ズシモ其ノ配給ヲ受ケタ養蠶家ニ
  背負ハセナイデモ、會社デソレヲ背負フ方
  法モアルノデスカラ、其ノ點ヲモウ少シハ
  ツキリ御答辯ヲ御願ヒシタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=77

  ---

• 078・吉田清二

  ○吉田政府委員　色々ト方法ハアリマスル
  カラ、私ノ氣持、政府當局トシテノ是カラ
  後運用上ニ如何ナル考ヘ方デ方策ヲ立テヨ
  ウトスルカノ氣持ダケハ呑込ンデ戴イタノ
  デアリマスルカラ、ドウ云フ方法ニスルカ
  ト云フヤウナ具體的ノコトヲ今此處デ言明
  シテモ、考ヘテ見タラ尙ホ宜シイ方法ガア
  ツタト云フコトモナイトモ限ラナイカト思
  ヒマスカラ、此處デ其ノ方法マデヲハツキ
  リ言明スルト云フヤウナコトマデセズトモ、
  一ツ申シマシタ所ヲ篤ト御諒解願ツテ信用
  シテ戴キタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=78

  ---

• 079・高橋壽太郎

  ○高橋委員長　松岡君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=79

  ---

• 080・松岡俊三

  ○松岡委員　私ハ國家ノ現況カラ考ヘテ見
  テ、高イ所カラ萬事ヲ眺メネバナラヌカト
  信ズル者デアリマス、斯ノ如ク事變ガ數年
  ニ亙ツテ、國費ヲ費スコト斯ノ如ク巨額ニ達
  シ、今後益〓此ノ方面ニ主力ヲ用ヒナケレバ
  ナラヌノデアリマス、是等ノ消費セラレタ
  ル實力ノ囘復ニハ、國民悉ク擧ツテ內ニ於
  テハ大イニ自ラヲ戒メ、外ニ向ツテハ大イ
  ニ發展スルヤウニセネバナラヌト信ズルノ
  デアリマス、卽チ國內ニ於テハ出來ルダケ
  自分ヲ抑ヘ、國外ニ向ツテハ出來ルダケ發
  展セナケレバナラヌノデアリマス
  〔委員長退席、高橋(圓)委員長代理着
  席
  斯樣ニ國外ニ向ツテ大發展シヨウトシマ
  スル上ニ付テハドウシテモ立派ナモノヲ
  安ク生產シテ、之ヲ海外ニ賣ツテ外貨ヲ獲
  得スルヤウニ努メナケレバナラヌト思フノ
  デアリマス、事變ガ長引キ國力ガ消耗セラ
  ルルニ從ツテ、一段ト玆ニ力ヲ用ヒナケレバ
  ナラヌ情勢ニアルト信ズルノデアリマス、
  是ガ卽チ初メテ貿易ニ重點ヲ置イテ、新シ
  イ機構トシテ貿易局ナルモノガ出來、サウ
  シテ長官マデモ出來タト云フヤウナ工合ニ
  ナツテ居ルト信ズルノデアリマス、從來ノ
  如クデアレバ斯樣ニ機構ヲ擴大シテ一生懸
  命ニナル必要ハナイノデアリマス、茲ニ國
  民悉ク高イ所カラ眺メテ忍ブベキ所ハ忍
  ビ、伸バスベキ所ハ大イニ伸バスト云フヤ
  ウニ行カナケレバナラヌト思フノデアリマ
  ス、單ナル國內ノ問題ノミニ跼蹐シテ-勿
  論國民ノ幸福ヲ增大セシムルコトハ政治
  ノ要諦デアリマスケレドモ、吾々後年ノ子
  弟ノ爲ニ今日踏臺トナリ捨石トナツテ將來
  ノ幸福ヲ確保スル如クニ覺悟セネバナラヌ
  ト思フノデアリマス、是ガ本當ニ今次事變
  ニ際會シタル現代ノ吾々ガ覺悟セネバナラ
  ヌ所デアルト思フノデアリマス、斯樣ニ考
  ヘテ見マスル時ニ於テ、國內ノコトハ斯ク
  斯クナサネバナラヌト云フヤウナ點ハ多々
  アラウト思フノデアリマス、サウ云フ意味
  カラ私ハ御尋ネ致スノデアリマスルカラ、其
  ノ御積リデ御答辯ヲ煩ハシタイト思ヒマス
  先般來ノ本委員會ニ於テ現ハレタル質
  問應答ノ狀況ヲ一語モ漏スコトノナイヤウ
  ニ努メテ伺ツタノデアリマス、昨日營林當
  局ノ御說明ニ依リマシテ、取引機能ノ必要
  ナル所以ヲ詳述セラレタノデアリマシタ、
  私ハ之ヲ拜聽致シマシタ、所ガ去ル二月五
  日或ル所ニ於テ、斯樣ナル取引機能ハ最早
  必要ハナクナルノダ、農林當局カラ本案ノ
  內容ヲ聽イタ結果トシテ全ク必要ノナイモ
  ノダ、ダカラ之ニ付テハ輸出方面ヲモ總テ
  全體買入レテ一元統制ニスルト云フ案ニ贊
  成シテハドウカ、·取引所買收ノ上ニ付テ盡
  力シテヤルカラドウデアルカト言ウテ、當
  業者ヲ呼ンデ、懇談ト言フカ何ト言フカ、
  一種ノ壓力ヲ以テ向ツタ狀況ガアルノデア
  リマス、之ニ對シテ輸出當業者及ビ取引業
  者ガトンデモナイコトダト猛烈ナ反駁ヲ試
  ミテ質問應答ガ行ハレタ事實ガアルノデ
  アリマス、是ハ二月五日デアリマス、所ガ
  昨日ノ本委員會ニ於ケル農林當局ノ御說明
  ニ於テハ、是ハ損失ヲ少カラシムルヤウニ
  保險的ナ機能ヲ持ツ所ノ取引所デアツテ、絕
  對ニ必要デアルト云フ農林當局ノ御說明デ
  アリマス、一方ニ於テハ政府ノ本案ノ內示
  ヲ受ケタルモノト稱スル人々ガ集マツテ、
  當業者ヲ呼ンデ、斯樣ナモノハ必要ハナイ
  ノデアル、ソレダカラ一刻モ早ク贊成シテ
  行ツタラドウカ、其ノ買收ニ付テハ盡力シ
  テヤルゾト云フコトヲ言ハレテ居ルノデア
  リマス、無論本委員會ニ於ケル農林當局ノ
  言ヲ私ハ信ズル者デアリマスケレドモ、斯
  ウ云フヤウナ內面的ナ狀況ヲ承リマスルト
  其ノ間ニ若干ノ疑ヒナキヲ得ナイノデアリ
  マス、殊ニ銳敏ナル取引所、或ハ輸出業方
  面ニ影響スル所頗ル大ナル本問題ノ扱ヒニ
  付テハヽ昨日ノ御言明モアリマシタケレド
  モ、モウ一應之ニ付テノ御所見ヲ承リタイ
  ト思フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=80

  ---

• 081・吉田清二

  ○吉田政府委員　〓算市場ノ問題ニ付キマ
  シテハ、昨日農林次官カラ申述ベマシタ通
  リデアリマス、製絲家ガ自分ノ製造致シマ
  シタモノノ先ニ行ツテノ値ノ動キカラ測ラ
  ザル損害ヲ蒙ラナイヤウニ、豫メ所謂保險
  繋ギヲスルト云フコトハ必要ナ一ツノ保護
  方法デアルノデアリマシテ、又輸出業者ガ
  海外デ註文ヲ受ケテ賣リマシテ、ソレヲ現
  物デ市場デ十分ニ買埋メガ出來ナイヤウナ
  場合ニ、是亦保險的ニ市場ニ於テ其ノ數量
  ダケ少クトモ買埋メヲ致シテ置キマシテ、
  漸次現物ニ於テ氣持ニ合ツタモノヲ出來ル
  ダケ獲得シテ行クト云フヤウナ意味ノ繋ギ
  ニ於テモ極メテ必要ナノデアリマス、現物
  市場ダケデ物ガ忽チニシテ得ラレルト云フ
  コトガナイノデ、相場ノ安心ノ爲ニ賣人側
  買人側、共ニ斯ウ云フ特殊ノ市場ヲ利用致
  シマシテ、安全ナル商賣ヲ行ツテ行キマス
  ル上ニ於テ極メテ必要ト私共考ヘテ居ルノ
  デアリマス、唯時折色々ノ現象ガ現ハレマ
  シテ弊害ノ起ル場合モアルノデアリマスガ、
  私共ハ其ノ弊害ノ方面ニ付テハ、改ムベキ
  ハ改メテ行ケバ宜イノデ、本質的ニハ昨日
  モ次官カラ申シマシタ通リ、又私ガ申シマ
  シタヤウナ考ヘヲ持ツテ居ルノデアリマス、
  清算市場ト云フモノハ、此ノ取引ノ圓滑ナ
  ル流レニ對シテ非常ナ貢獻ヲナス「マーケッ
  ト」デアル、斯樣ニ信ジテ居ルノデアリ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=81

  ---

• 082・松岡俊三

  ○松岡委員　只今ノ農林當局ノ御說明ヲ得
  マシテ、去ル二月ノ五日、一團ノ當業者ヲ
  招キ其ノ說ヲ述べ、而シテ取引所ヲ買收ス
  ル爲ニ盡力シテヤル、本案ノ內示ヲ受ケタ
  ルモノナリト云フヤウナ前提ノ下ニ於テノ
  只今ノ話ハ、殆ド何等ノ根據ノナイ事實デ
  アルト云フコトガ極メテ明瞭ニナツタコト
  ヲ喜ブモノデアリマス、本案ノ成立ノ上ニ
  ハ斯樣ニ外界ニ於テ種々ナル問題ガ現ハ
  レテ居ルノデアリマス、ソコデ私ハ貿易局
  長官ニ御尋ネ致シタイノデアリマス、我ガ
  日本ハドウシテモ海外ニ發展シテ外貨ヲ獲
  得センケレバナラヌト云フ上ニ付テハ如何
  樣ナ方法デ行ツタラ宜シイカ、私ノ尋ネン
  トスル所ハ、本統制案ノ一ツノ問題ニナル
  ノデアリマスガ、一方ニ於テハ輸出ヲ自由
  放任ニスルコトハ宜シクナイト云フ意味ニ
  於テノ御質疑ガ盛ンニアリマシタ、一 四.
  於テハ相手ノアルモノデハナイカ、左樣ナ
  譯ニハ行カナイト云フコトモ言ハレテ居リ
  マス、或ハ之ヲ米國依存ノ媚態外交デアル
  媚態商業デアルト云フ程マデニ申サレルコ
  トモアルノデアリマス、私ノ見ル所ニ於テ
  ハ今日此ノ事變ニ依ツテ是ダケノ消耗ヲ
  スル、各般ノ囘復ノ上ニ於テ-單ナル囘
  復デナク、更ニ力ヲ增大シテ他日ノ飛躍ヲ
  期スル上ニ於テノ執ルベキ途ハ、唯獨リ外
  國ヘノ發展デアル、國民擧ツテ玆ニ集中力
  ヲ持タナケレバナラヌト云フ程ニ熱力ヲ持
  ツテ居ルノデアル、ドチラガ宜イノカ、本
  案ノ判斷上ニ於テハ最モ有力ナ問題デナイ
  カト思フ、當局ノ說明ニ依リマスレバ、之
  ヲ一元統制ニシテモ品位ガ惡クナラヌト云
  フコトヲ言ツテ居ル、一面カラ申シマスト
  サウデナイ、此ノ輸出ヲ自由ニシテ居ル結
  果、絲價ヲ左右サレテ農民ガ之ニ依ツテ困
  ル、斯ウ言ウテ居リマスガ、左樣ニ絲ノ値
  上リ、値下リニ依ツテ左右サレル程ニ弱イ
  モノデアルトシタナラバ、一元統制サレタ
  時ニ於テノ品位ノ低下ナドハナイト言フコ
  トガ出來ナイヤウナ矛盾シタ結果ニナルノ
  デアリマス
  〔高橋(圓)委員長代理退席ハ委員長着
  席
  品位ガ低下シタナラバ信用ヲ失ツテ、支那
  ノ絲ガ品位ヲ下ゲテ安賣スルト云フコトニ
  對抗スルコトノ出來ナイヤウナ工合ニナル
  ノデアル、此ノヤウナ工合ニ貿易方面ニ國
  民ガ全力ヲ注ガナケレバナラヌ、國家トシ
  テモ一大重點ヲ茲ニ置カナケレバナラヌト
  云フ、時ニ於テ、一面國內ヲ思ツタナラバ、
  農民ノ窮狀如何ト云フコトモ無論考ヘナケ
  レバナラヌコトデアル、一面貿易方面ヲ考
  ヘレバ其ノ通リデアル、國家全體トシテ高イ
  所カラ眺メテ、此ノ兩者ヲ如何ニスベキカ
  ト云フ所ニ政治ノ妙味ガアリ、苦心ガアリ、
  當局ガ玆ニ容易ニ言明シ得ナイコトモアル
  ノデハナイカト思フ、本當ニ〓算市場ヲ輸
  出方面ノ一元統制ノ中ニ入レズシテ、除外セ
  ラレテ居ルト云フヤウナコトガ宜イカ惡イ
  カト云フ問題ヲ決スルノガ、卽チ貿易局長
  官、本當ニ國家ヲ思ウテノ海外發展-吾
  吾現代ニ於テ將來ノ子孫ノ爲ニ捨石トナル
  ベキ今日ニ於テ如何ニセンケレバナラヌト
  云フヤウナ點ニ付テハ、アナタノ見タ所ヲ
  率直ニ申シテ戴カナケレバナラヌト思フノ
  デアリマス、私ハ斯樣ナ意味ニ於テ、農林
  當局ガ〓算市場ノ必要ナル所以ヲ昨日モ言
  明セラレ本日更ニ明カニセラレテ、暗雲
  一掃ノ形デアリマスケレドモ、マダ其ノ事
  柄ニハ一部ノ失業者ヲ生ズルガ爲ニ何等カ
  殘シテ居ルカノ如ク、當局ノ說明ニ慊ラナ
  イヤウナ點ガアルノデアリマスカラ、貿易
  局長官トシテドウ云フ御所見デアルカ、確
  タル御信念ヲ承リタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=82

  ---

• 083・石黒武重

  ○石黑政府委員　只今ノ御質問ニ御答ヘ致
  シマス、今日我ガ國ノ輸出貿易關係ニ付キ
  マシテハ、餘リ詳シイコトマデ申上ゲル譯
  ニハ參リマセヌケレドモ、此ノ生絲ニ付キ
  マシテ萬一「アメリカ」其ノ他ノ國ガ買ハナ
  イ場合ニハ、我ガ國トシテドウスルカト云
  フコトニ付キマシテハ、慥カ豫算總會ノ席
  上デゴザイマシタカ農林大臣カラ御答ヘガ
  アリマシタ通リ、我ガ國トシマシテハソレ
  相當ノ備ヘガアル譯デアリマシテ、犧牲ヲ
  拂ツテマデモ是非共外國ヘ出サナケレバナ
  ラヌト云フモノデハナイトハ存ジマスケレ
  ドモ、只今御話ノアリマシタ通リ、今日國
  力ノ增强ヲ圖リマス上ニ、國是ノ根本ヲ搖
  ガサナイ限リニ於キマシテハ出來得ル限
  リ外貨ノ獲得ヲ致シマシテ、國內整備ヲ圖
  ツテ行ク必要ガアルコトハ申スマデモナイ
  コトデゴザイマス、生絲ノ輸出ニ付キマシ
  テハ、私共モ大體農林省ノ方面ノ御考ヘト
  同感ニ考ヘテ居ルノデゴザイマシテ、今貿
  易全般ニ亙リマシテ、我ガ國ト致シマシテ
  モ成ベク輸出ヲ圖リタイトハ言ヒマスモノ
  ノ自ラ其處ニ物資ニモ限リガアルノデア
  リマシテ、同ジ輸出ヲ致シマスナラ成ベク
  條件ノ好イ輸出ヲ進メテ行クコトガ今日私
  共トシテ努メナケレバナラナイ點ダト考へ
  テ居リマス、此ノ點ニ於テ少クトモ現下ノ
  情勢ニ於ケル生絲輸出ノコトヲ考ヘテ見マ
  スト、何ト申シマシテモ實際ニ於テ我ガ生
  絲ヲ需要スル相手先ハ主トシテ「アメリカ」
  其ノ他ノ全然我ガ國トハ經濟思想ナリ、或ハ
  機構ナリノ違ツテ居ル市場デアリマスカラ、
  之ニ對シテ生絲ヲ成ベク餘計輸出ヲシテ參
  ルト云フコトノ爲ニハヤハリソレ相當ノ
  備ヘガアツタ方ガ宜シイト考ヘラレルノデ
  アリマス、從來蠶絲業ノ問題トシテ繰返シ
  繰返シ問題トナツテ參リマシタ所謂絲價安
  定ノ問題ニ致シマシテモ、需要先タル「アメ
  リカ」ニ於ケル第一次ノ需要者タル絹業家
  ガ如何ナル絲價安定ヲ要望シテ居ルカト申
  シマスト、私共ノ見ル所ニ依リマスト、何
  モ必ズシモ一本ノ固定シタ値段ヲ要望シテ
  居ルノデハナイノデアリマシテ、或ル程度
  ノ波瀾ヲ寧ロ望ンデ居ルヤウニ思ハレルノ
  デアリマス、一昨年ノ秋カラ段々ニ上リ昨
  年ノ春急落致シマシタヤウナアア云フ變動
  ハ、勿論大體ニ於テ望マナイ所デハゴザイ
  マスケレドモ、或ル程度ノ多少ノ高下ト云
  フモノハ却テ彼等ノ希望スル所デアリマシ
  テ、此ノ點ハ現在ノ米國市場ニ於ケル生絲
  ニ對スル競爭纖維タル人絹ト生絲トノ、機業
  家ニ取ツテノ便益ト云フコトヲ能ク比較シ
  テ見マス場合ニ、人絹ヲ使フ場合ニ於テハ
  米國ノ絹業家ニ取ツテ色々ト便益ガアルノ
  デアリマスガ、唯一ツ人絹ヲ使フ場合ヨリ
  モ生絲ヲ使フ場合ノ方ガ絹業家ニ取ツテ都
  合ガ宜シイト云フコトヲ申シマスル點ハ、
  實ヲ言フト人絹ガ非常ニキチント價格ガ決
  マリ過ギテ居ル、開ケ放シデアルヽ然ルニ
  生絲ノ方ガ兎ニ角多少フ動キガアル、是ガ
  絹業家ニ取ツテ其ノ事業ヲ進メテ行ク上ニ
  寧ロ都合ガ宜シイト云フコトヲ、私共구
  メリカ」ニ勤務致シマシタ頃ニ、私バカリデ
  ナク同僚何レモヨク聞イタ所デアリマシテ、
  當時私ハ其ノコトヲ農林省ニモ報〓致シタ
  コトガゴザイマス、此ノ關係ハ今日ト雖モ
  變リガナイト信ズルノデアリマシテ、若シ
  非常ナル統制ヲ輸出生絲ニマデ及ボスコト
  ニ依ツテ價格ガ非常ニ安定スル、ソレハ恐
  ラク米國絹業家ノ喜ブ所デアラウ、斯樣ニ
  考ヘラレルコトハ洵ニ無理ノナイトコデハ
  アリマスケレドモ、仔細ニ立入ツテ彼等ノ
  希望スル價格安定ナルモノヲ檢討シテ見マ
  スト、今申シマシタヤウナコトニナルノデ
  アリマシテ、若シ左樣ナコトニスルト却テ
  ソコニ思ハザル不利ガ生ズルノデハナイ
  ダラウカト憂フルノデアリマス、其ノ他
  今モ御話ガ一寸出マシタガ絲質ノ低下、
  或ハ絲格ノ變異ト云フヤウナコトハ是
  モ旣ニ農林當局カラ御話ガアツタト存ジ
  マスガ、需要者ト生產者トノ間ニ責任ヲ
  以テ全部買取ル一元統制ノ一ツノ機關ガ出
  來マスコトハ、ドウシテモソコニ打切ラレ
  タル取引關係ヲ生ズルノデアリマシテ、詰
  リ生產者カラ統制機關ニ賣ラレルト云フコ
  トデ一應其ノ取引ハ打切ラレテ、ソレカラ
  又改メテ取引ガ發足スルコトニナルノデア
  リマスガ、之ニ依ツテ需要者ノ慾求ガ十分
  ニ反映シナイヤウナコトガ起リ勝チナノデ
  アリマス、唯左樣ナ不利ガアツテモ其ノ不
  利ヲ忍ベバ尙ホ大キナ利益ガ得ラレルト云
  フヤウナ場合ニハ、或ル程度サウ云フ統制
  機關モ必要ニナツテ參リマスガ、生絲ノ場
  合ニハ旣ニ最低價格ノ保障ガ國家ノ財力ヲ
  以テ行ハレテ居リマスルシ、又絲ノ品質ニ
  付テハ御承知ノ通リ國立檢査所ノ精密詳細
  ナル檢査ガアルノデアリマシテ、之ヲ例へ
  バ今日ノ他ノ輸出品タル雜貨其ノ他ニ付テ
  ノ雜然タル生產トソレカラ輸出ノ部門トノ
  取引ノ如キモノトハ、餘程其ノ趣キガ違フ
  ヤウニ考ヘラレルノデアリマス、サウ云フ
  ヤウナ點カラ見マシテ只今ノ品質ノ低下ト
  云フヤウナ問題ニ付キマシテモ、私共ト致
  シマシテハ、若シ願ヘルモノナラバ製絲家
  カラ輸出商へノ直接取引、ソレカラ米國ノ
  絹業家ニ賣ラレル、其ノ間ニ段階ハアリマ
  シテモ、需要者ノ意向ヲ供給者ガ受ケテソ
  レニ忠實ニ生產ナリ供給ナリヲスルト云フ
  ヤウナ機構ニシテ置イタ方ガ現在ノ事情ニ
  於テ適切デハナカラウカト思フノデアリマ
  ス、現在貿易關係ニ於キマシテ、所謂買取
  會社ト云フモノガ色々ノ輸出品ニ付テアル
  ノデアリマスガ、是等ノモノニ付キマシテ
  ハ要スルニ非常ナ廉賣競爭ガ行ハレル危
  險ガアル、或ハ見掛ケダケハ同ジヤウナモ
  ノデ、內容ノ惡イ粗惡品ヲ賣ル危險ガア
  ル、例ヘバ或ル一ツノ商品ニ付テ或ル商社
  ガ市場ヲ獲得スル、其ノ後カラ直グ非常ナ
  値ノ安イ、一見シテ同ジヤウナモノデ、而
  モ非常ニ不良ナモノガ入ツテ來テ競爭ス
  ルト云フヤウナコトガ行ハレマシテ、トモ
  スルト日本人同士ノ謂ハバ不當ナ競爭ニ依
  ツテ徒ラニ輸出貿易ヲ阻碍シテ居ルト云フ
  ヤウナ憂ヒノアルモノニ付キマシテハ、今
  日色々ト所謂買取會社ト稱スル輸出部門ニ
  於ケル統制會社ノ設置ヲ見テ居ルノデアリ
  マス、是ハソレ〓〓ノ商品ノ事情ナリ何ナ
  リヲ餘程能ク實質的ニ檢討致シマシテ、其
  ノ必要ナ部面ニ於テ必要ナル處置ヲシタ方
  ガ宜シイデハナイダラウカト云フ風ニ考ヘ
  マスノデ、生絲ノ關係ニ於キマシテハドウ
  モ其ノ事情ガ違フヤウニ感ジテ居ルノデア
  リマス、尙ホ此ノ國內製品ノ價格其ノ他ノ
  關係ト、ソレカラ輪出品ノ價格トノ關係ニ
  付キマシテモ、申スマデモナク今日我ガ國
  ノ輸出品ノ主ナルモノトシマシテハ、生絲
  ノ外ニ御承知ノヤウニ各種ノ纖維ノ織物其
  ノ他ノモノガゴザイマスガ、ソレ等ニ付キ
  マシテハ、國內ノ生產配給等ニ付キマシテ
  ハ、御承知ノヤウニ今日ノ場合其ノ必要已
  ムヲ得ズシテ行ハレテ居ルノデハアリマス
  ケレドモ、非常ニ周密ナル統制ガ行渡ツテ
  居ルノデアリマス、併シナガラ其ノ輸出品
  ニ付キマシテハ、是ハ努メテ需要地ノ需要
  ニ適合シタルモノヲ成ベク有利ニ販賣スル
  ト云フコトノ爲ニ、生產者ニシマシテモ、
  優秀ナル生產者ヲシテ之ニ當ラシメルシ、
  ソレカラ又販賣値ニシマシテモ、是ハ別段
  御承知ノヤウニ公定價格デ制限サレルト云
  フコトノナイヤウニ致シテ居ルヤウナ譯デ
  アリマス、是ハ今日ノ我ガ國ノ物動計畫、
  貿易計畫、其ノ他ノ現下ノ情勢ニ於ケル非
  常ニ難カシイ問題ニ付テ、色々考ヘレバ考
  ヘル程中々難カシイノデアリマシテ、何ト
  カ致シマシテ出來得ル限リヤハリ有效ナ貿
  易ヲ進メテ行カナケレバナラナイヤウニ感
  ジテ居リマス、是等ノ點ト、ソレカラ年來
  ノ問題デアリマス我ガ蠶絲業ノ安定ト云フ
  問題ト、兩者兼ネ合セテ考ヘテ見マシテ、
  此ノ輸出部門ニ付キマシテノ農林當局ノ御
  考ヘノヤウナコトヲ進メマシテモ、ソレ等
  ノ諸點ヲ能ク御諒承戴キマシタナラバ、我
  ガ國ノ蠶絲業ノ安定ト云フコトニ付キマシ
  テ、ヤハリ其ノ目的ガ十分ニ達成サレルヤ
  ウニ思ハレマスノデ、色々ト御意見ノアル
  コトモ承知致シテ居リマスケレドモ、若シ
  願ヘマスコトナラバ、ドウカ一ツ此ノ原案
  デ今日ノ蠶絲ノ統制ノコトヲ御進メ願ヒマ
  シテ、今日ノ此ノ非常ニ難カシイ我ガ國ノ
  現狀ニ於テ對外的ニ遺憾ノナイヤウニ致シ
  タイト思フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=83

  ---

• 084・松岡俊三

  ○松岡委員　海外ニ發展シテ外貨ヲ獲得シ
  國力ヲ增進セシメル上ニ付テ最モ有力ナル
  部面ヲ占メル貿易局長官ノ只今ノ縷〓御說明
  ニ依リマシテ頗ル明瞭ニナツタノデアリマ
  ス、獨リ相撲デハイケナイ、相手ノアル場
  合ニ於テ、其ノ裕リヲ持タナケレバナラヌ
  ト云フコトハ當然デアル、斯樣ナ極メテ明
  白ナル御答辯ヲ得タノデアリマス、今日マ
  デ連日ニ亙ツテ御質問及ビ應答ヲ更ニ明瞭
  ニシタカノヤウニ私ハ感ズルノデアリマス
  更ニ私ハ農林當局ニ御伺ヒ致シタイト思
  フノデアリマスガ、製絲家ガ非常ニ懸念シ
  テ居ラレルノハ、値下リニ依ツテノ損失、輸
  出貿易ニ依ツテ、其ノ絲ノ値下リニ依ツテ
  甚ダシク損失ヲ受ケルノヲ心配スルト云フ
  コトガ私ノ知リ得タ範圍ニ於テバ非常ナ御
  心配ノヤウデアリマス、サウシテ此ノ結果
  トシテ繭ニ及ボシ養蠶家ニ及ボス、斯ウナ
  ツテ居ルヤウニ承ツタノデアリマスガ、先
  日ノ蠶絲局長サンノ御答辯中、暴騰ノ際ニ
  於テハ、政府ノ持品ガアルカラ是デ賣ツテ
  抑ヘテ行ク、安イ時ニ於テハ最低値デ之ヲ
  引受ケル、少シモ心配ナイト云フヤウニ承
  ツタノデアリマスガ、何ガ故ニ是ガ製絲家
  ノ間ニ映ラナイノデアルカ、卽チ今日デ申
  シマスレバ、絲價安定法ニ依ツテ千三百
  五十圓ノ値ヲ保持シテ居ル、今後出來ル所
  ノ絲價委員會ニ於テ更ニ決メラレル所ノ最
  低ノ値段、ソレヲ確保スルト云フコトガド
  ウシテ製絲家ニ安心ヲ與ヘ得ナイノデアラ
  ウカ、私ハアノ言明ニ依ツテ製絲家諸君ハ
  安クテ損スルヤウナ時ニ於テモ、卽チ千三
  百五十圓ヨリ斷ジテ下ゲヌト云フ此ノ確信
  ヲドウシテ製絲家諸君ガ安心シ得ナイノダ
  カ私ニハ分ラヌ、ソレデスカラ、是ハ製絲
  家ニ御聽キスルノヂヤナクシテ、斯ウ云フ
  點ヲ心配シテ居ルノヂヤナイカト云フ御當
  局ノ見タル所ヲ御示シヲ願ヒタイト思フノ
  デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=84

  ---

• 085・吉田清二

  ○吉田政府委員　輸出向生絲ノ販賣部面ニ
  於キマシテ、値幅ノ狭イ制高制低ヲ設ケマ
  シテ、暴騰暴落ヲ阻止スベク强力ナル制度
  ヲ立テテ行クカラ、エラク値ガ下ツテ心配
  スルト云フヤウナコトハ私共ノ見ル所デハ
  必要ガナイト云フコトハ業者ノ方ニハ私共
  屢〓、申シテ居ルノデアリマス、又之ニ關聯致
  シマシテ、現在千三百五十圓ヲ基準ニシテ
  絲價維持ニ努メテ居ルノデアリマスガ、是
  モ今後堅持シテ行ク方針デアルト云フコト
  ハモウ旣ニ大臣初メハツキリト申サレマ
  シタノデ、私共モ機會アル每ニ業者ノ集マ
  リニ於キマシテハ申シテ居ルノデアリマス
  ガ、此ノ點ハ能ク業者ノ方ニモ徹底致シテ居
  ルモノト存ズルノデアリマス、或ハアア云フ
  コトヲ言ツテ居ツテモ、千三百五十圓ナント
  云フコトハ、金デモナクナツタラ、ソレヲ機
  會ニ止メルノデハナカラウカト云フヤウナ、
  或ハ私共ニ對スル一種ノ不信用カラカモ知
  レマセヌガ、サウ云フヤウニ私共ガハツキ
  リ申シマシテモ、政府ハサウ言ツテマア非
  常ニ金ノ要ルコトデハアルシスルカラ、是
  ハ止メルノデハナイダラウカ、斯ウ云フヤ
  ウチ不安ガアルカモ知レナイト思フノデア
  リマス、兎モ角申シテ居ルコトハ度々申シ
  テ居リマスシ、私共カラ見マスレバ能ク徹
  底シテ居ルコトダラウト、信ズルノデアリ
  マスケレドモ、尙ホ今申シマシタヤウナ意
  味合カラノ不安ヲ、或ハ持ツテ居ルノカモ
  知レヌト思フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=85

  ---

• 086・松岡俊三

  ○松岡委員　只今ノ御確信ノ程ヲ承リマシ
  テ、全國ノ養蠶家モ之ニ依ツテ安心スルコ
  トト存ジマス、製絲家モ亦從來ノヤウナ倒
  產ヲ見タナドト云フコトハ再ビ見ルコト
  ガナイト云フコトモ、之ニ依ツテ明ラカダ
  ト云フ點ヲ、明瞭ニ致シタ次第デアリマス、
  又此ノ事變中デアルト雖モ、七千万圓ヲ二
  億五千万圓ニ改メテ、シツカリシタ準備ヲ
  シテ、決シテ製絲家及ビ養蠶家ニ心配ナカ
  ラシムルト云フ點ヲ、此ノ金ト相俟ツテ事
  實ノ上ニ現ハサレタコトヲ私ハ喜ンデ諒承
  致シマス、更ニ御尋ネヲ申上ゲタイノデア
  リマスルガ、「アメリカ」ニハ「シャーマン」
  法トカト云フ法ガアルヤウニ聞イテ居リマ
  ス、先程貿易局長官ハ、「アメリカ」方面ニ於
  テハ、幅ガ若干アルコトヲ喜ンデ居ルヤウ
  デアルト云フコトヲ極メテ明瞭ニ申サレタ
  ノデアリマスガ、サモアルコトト私ハ思フ
  ノデアリマス、獨リ我ガ日本ガ統制セラレ
  テ居ツテモ、我ガ日本ノ力ガ果シテ眞ニ、
  滿洲及ビ文那ニ及ンデ居ルカ、斯ウ云フコ
  トヲ種々考ヘマスト、前途容易ナラヌ努力
  ヲ必要トスルノデアリマス、支那ニ於テモ
  上海ノ如キ國際都市ニ於テノ仕事ハ、相
  當ニ難儀セザルヲ得ナイト思フノデアリマ
  ス、萬一日本ノ輸出全體ヲ一元化シタモノ
  ニスルト云フヤウナ場合ニ於テハ、此ノ「シャ
  ーマン」法ニ牴觸スルヤウナコトガ、或
  ハアリハセヌカトモ實ハ思フノデアリマス
  ガ、ドンナ風ニ御覽ニナツテ居ラルカ、
  一寸伺ツテ見タイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=86

  ---

• 087・吉田清二

  ○吉田政府委員　「アメリカ」ノ國內法ト致
  シマシテ、團結ヲ致シテ利益ヲ貪ツテ、取
  引ノ自由、隨テ値段ノ公正ヲ妨ゲルヤウナ、
  サウ云フ取引ヲ防止スル目的デ、今ノ御話
  ニナリマシタ法律ガアルノデアリマス、要
  スルニ徒黨ヲ組ンデ獨占的ナ價格ヲ作ツテ、
  商賣ヲシテ儲ケヨウト云フヤウナコトヲ、
  防止シヨウト云フ趣旨デ出來テ居ル法律ト、
  諒承致シテ居ルノデアリマス、此ノ蠶絲ノ
  統制問題ハ、先年來蠶絲業ノ改善問題トシ
  テ、度々論議サレタノデアリマス、サウシ
  テ販賣統制ト一時申サレマシテ、此ノ輸出
  部面ノ機構ヲ合同シテ、獨占的ニ「アメリ
  カヘ輸出シタラ宜カラウ、斯ウ云フ論議
  ガ先年來アツタノデアリマス、當時色々論
  議サレマシタ際ニ、今ノ御話ノ、サウ云フ
  コトヲヤレバ「シャーマン」法ニ反スルトカ、
  隨テ「アメリカ」カラ非常ナ問題ヲ起ス虞ガ
  アルト云フ、サウ云フ議論ノアツタコトモ
  承知致シテ居リマス、無論問題ガ起キテ裁
  判所ノ問題ニナツタ譯デハアリマセヌカラ、
  「アメリカ」ノ法律カラ見マシテ、サウ云フ
  コトガ問題ニナツテ、果シテ制裁ヲ受ケル
  ヤウナ結果ニナルモノデアルカ、ドウカニ
  付キマシテハ、私モ詳シクナイカラ能ク存
  ジマセヌガ、當時向フニ店ヲ持ツテ居リマ
  スル日本ノ生絲ノ輸出業者ガ、關係ノ「ロー
  ヤー」ニ付テ色々〓究ヲサレタ結果、サウ
  云フコトヲヤツテ「アメリカ」ヘ來テ一手デ
  賣レバ、所謂「シャーマン」法ニ反スル虞ガ
  アルト云フヤウナコトモ、當時私共ハヨク
  聞カサレタノデアリマス、唯私ハ其ノ際ニ、
  詳シク法律ハ存ジマセヌガ、要スルニ是ハ
  「アメリカ」ノ國內法デアリマスカラ、日本
  ノ國內デ賣人ガ一ツニナツテ居ツテモ、之
  ヲ受ケテ買ツテ行ツタモノガ、「アメリカ」
  ニ於テ數軒ノモノニナツテ、バラ〓〓ニ賣
  ルト云フコトニナレバ、ソレハ「アメリカ」
  ノ國內法ダカラ差支ヘナイデハナイカト當
  時私ハサウ思ヒマシダ、若シ此ノ會社ガ「ア
  メリカ」ノ「ニューヨーク」ニ出張所ヲ設ケ
  マシテ、生絲ノ販賣ヲ獨リデヤル、斯ウ云
  フヤウニ出張所ヲ「ニューヨーク」ニ於テ設
  ケルヤウナコトニデモシタラ、或ハ其ノ會
  社ノ支店ハ此ノ法律カラ見テ、疑ハレルヤ
  ウナ立場ニ置カレルノデハナカラウカ、要
  スルニサウ云フ會社ヲ一ツニシテ輸出屋ト
  云フバラ〓〓ノモノニ賣ラセテ、向フデサ
  ウ云フモノガバラ〓〓ニ商賣スルト云フコ
  トニナレバ、ソレデ差支ナイノデハナイカ、
  當時色々ナ議論ガアリマシタ際ニ、私共ハ
  サウ云フ風ニ問題ヲ解釋シテ居ツタノデア
  リマス、併シ是ハサウ云フヤウナ具體的ナ
  問題ニ至ラズニ、唯議論ノ程度デ終ツテ居
  リマスケレドモ、今日此ノ問題ニ關聯致シ
  マシテ、此ノ會社ガ輸出絲ヲ一手ニ買ツテ、
  是ガ向フニ支店デモ設ケマシテ、此ノ會社
  ガ直輸ヲヤツテ、向フデ一手販賣ヲスルト
  云フヤウナコトヲ致シマスト、先程申上ゲ
  マシタヤウナ關係カラ、或ハ問題ニナリハ
  シナイカト想像モ致サレマスガ、橫濱、神
  戶デソレトハ別個ノ店ノモノガソレヲ買受
  ケテ、サウシテ現在通リニ行ツテ賣ルト云
  フコトデアリマスレバ、或ハ牴觸シナイト
  云フ風ニ私ハ考ヘルノデアリマス、是ハ甚
  ダ理窟トシテ成立ツテ居ラヌカモ知レマセ
  ヌガ、サウ云フ風ニ御質問ニ對シテハ思フ
  次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=87

  ---

• 088・野溝勝

  ○野溝委員　議事進行ニ付テ-只今ノ松
  岡君ノ質疑ハ、非常ニ本法案ノ審議ノ上ニ
  付テ重大ナ意義ヲ持ツモノデアルト思フノ
  デアリマス、ソレデ此ノ際輸出問題ニ付テ、
  「アメリカ」方面デハ非常ニ生絲ノ價格ニ彈
  力アルコトヲ歡迎シテ居ルヤニ、今政府ノ
  答辯ヲ聞キ及ンダノデアリマス、デアリマ
  スカラ「アメリカ」ニ於キマシテハ、大體生
  絲業者ノ、例ヘバ「ブローカー」ハドノ位ア
  ルカ、或ハ輸入商ガドノ位アルカ、消費者
  ハドンナ工合ニナツテ居ルカト云フコトノ
  數量的ノモノガ、大體政府ニ於テアツテノ
  上ノ御答辯ト思ヒマスカラ、此ノ「ブロー
  カー」及ビ輸入商ノ數量ヲ資料トシテ此處ニ
  御提供願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=88

  ---

• 089・高橋壽太郎

  ○高橋委員長　只今ノ野溝君ノ御發言ハ、
  御聞キ及ビノ通リデアリマス、其ノ要求ニ
  應ゼラレンコトヲ望ミマス-松岡君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=89

  ---

• 090・松岡俊三

  ○松岡委員　蠶絲局長ノ御說明ニ依リマシ
  テ、輸出方面ヲ一元統制ノ上カラ除外シタ
  ト云フコトニ付テハ、何カ「アメリカ」ノ法
  律關係ニデモ依ル所アリハセヌカト思ツテ、
  若干ナリトモ、サウ云フ點ガアリハセヌカ
  ト思ツテ御質問シタ所ガ、全然是等ノコト
  ハ考慮ニ入ツテ居ラヌ、向フハ向フデ解釋
  スルノデアツテ、何等之ニ關係ナイト云フ
  コトガ明瞭ニナツタ、又先程來ノ貿易長官
  ノ御說明ニモ依リマシテ、連日來ノ質問應
  答ガ明カニナツタコトヲ、私ハ喜ブノデア
  リマス、本案ハ私ガ最初ニ申上ゲタ如ク、
  外貨獲得ノ上ニ於テ重大ナ役割ヲ持ツテ居
  ルト云フコトガ、刻下ノ貿易關係ノ上カラ
  見テ極メテ大切ナル地位ヲ占メテ居ルト云
  フコトモ、明カニナツタノデアリマス、是
  デ私ノ質問ヲ終リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=90

  ---

• 091・高橋壽太郎

  ○高橋委員長　松岡君ノ質問ニ關聯シタル
  部分ニ付テ、加藤サンノ御發言ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=91

  ---

• 092・加藤知正

  ○加藤(知)委員　松岡君ノ御質間ニ對シテ、
  貿易局長官ノ御答ヘニナリマシタ其ノ一節
  ニ付テ、特ニ貿易局長官ニ御尋ネヲ申上ゲ
  タイト思フノデアリマス、貿易局長官ノ御
  話ヲ伺ヒマスト、向フノ絹業者ハ價格ガ一
  定シテ居ルヨリモ波瀾ノアル方ヲ喜ンデ居
  ル、斯ウ云フヤウニ今御說明ニナツタヤウ
  ニ承知シテ居リマス、其ノコトハ旣ニ自分
  モ向フニ居ツテ、日本ヘ歸ヘルナリ本省ノ
  方へ報〓シテ居ル、斯ウ云フ御話デアリマ
  ス、ソコデ私ガソレニ對シテ實ハ異樣ニ感
  ジマスノハ、丁度貿易局長官ガ向フカラ御
  歸ヘリニナルノト行キ違ヒニ、私共ハ向フ
  ノ方ヘ行ツタノデアリマス、私共ガ向フノ
  絹業者ニ付テ出來ルダケ調査ヲ致シタ其ノ
  結果ニ依リマスト、向フノ絹業者ハ波瀾ノ
  アルコトヲ非常ニ迷惑ニ感ジテ居ル、ソコ
  デ此ノ席上ニ於テ此ノ間モ私ハ申上ゲマシ
  タガ、貿易局長官モ蠶絲局長モ能ク御承知ノ
  通リ、「シカゴ」在ニ居ル所ノ「ハイネマン」此
  ノ人ハ絹絲業者デアル、而シテ一面ニ於テ
  ハ相場ヲヤツテ居ル人デアル、「ヂャーリーL
  ト相對峙シテ、中々日本ノ生絲ニ付テハ思
  ヒ切ツタ相場ヲヤツテ居ル人デアルコトハ、
  御承知ノ通リデアリマス、其ノ「ハイネマ
  ンンニ對シテ、私ガ此ノ老軀ヲ提ゲテワザ
  ワザ此處マデ來タノハ、アナタノ日本ノ生
  絲ニ對スル所ノ眞ニ遠慮ノナイ御批評ヲ戴
  キタイ、是ハ日本ノ蠶絲業ノ興廢ニ關スル
  問題デアル、アナタガ日本贔屓ダト云フコ
  トヲ承ツテ居リマシタガ、アナタノ御意見
  ヲ率直ニ伺ヒタイ、斯ウ言ウテ私ハ特ニ「ハ
  イネマン」ヲ訪ネテ意見ヲ叩イタ、其ノ時通
  譯ヲシテ吳レタノハ中里ト云フ人デアリマス、
  二時間餘ニ亙ツテ色々意見ノ交換ヲシタノ
  デアリマス、其ノ際ニ其ノ「ハイネマン」氏
  ハアナタガ私ヲ賴リニ來ラレタト云フコ
  トナラ、私ハ商賣ヲ離レテ自分ノ考ヘテ居
  ルコトヲ、日本蠶絲業ノ爲ニ率直ニ申上ゲ
  マセウ、斯ウ云フコトヲ言ツテ居ラレタ、
  其ノ一例ニ絲價ノ安定ノコトヲ言ツタノデ
  アル、其ノ安定ト云フコトハ一定ト云フコ
  トデアル、絲價ガ一定スレバ、價ハ少々高
  クテモ、吾々共ハ喜ンデ之ヲ買フノダ、我
  ガ米國ニ於ケル絹業者ハ、喜ンデ之ヲ買フ
  ノダト言ツテ、三ツノ重要ナ話ヲシテ吳レ
  タ、其ノ一ツハ生絲ノ宣傳デアリ、三ツ
  絲質ノ改善、此ノコトニ付テ話ヲシテ吳レ
  タ、其ノ中デ最モ力ヲ入レテ話ヲシタノ
  ガ、今申上ゲル絲價ノ安定デアル、安定ト
  云ヒマスノハ、私共ハ其ノ當時一定ト聞
  イテ居ツタ、ソコデ私共ハ段々「ハイネマ
  ン」以外ノ向フノ絹業者ニ付テ、アチラコ
  チラト訪問ヲシテ、其ノ話ヲ聞イタ譯デア
  リマス、所ガ何レノ絹業者モ、自分等ハ商
  業利潤デ飯ヲ食ツテ居ルノデナイ、工業利
  潤デ飯ヲ食ツテ居ルノダ、所謂工賃ダ、ソ
  レニ甘ンジテ居ルノダ、ダカラ日本ノヤウ
  ニ斯ウ云フ暴騰暴落ガアツテハ、恐ロシク
  テ日本絲ハ買ヘナイノダ、斯ウ云フコトヲ
  皆言ツテ居ル、御承知ノ如ク「ペンシルヴァ
  ニア」初メ、其ノ他南部四州ニ亙リマシテ、
  四百二ノ絹靴下工場ガアル譯デアリマス、
  ソレ等ノ絹靴下工場ノ人達ハ、全ク田舍ニ
  居ルノデアリマシテ、工業ヲ經營シタ上ニ
  更ニ商業的ナ經營ヲヤルト云フコトニ付テ
  ハ十分意ノ如クニハ行カナイ、行カナイ
  カラ、相場ノ上リ下リノ變動ニハ、非常ニ
  迷惑スルコトハ當然ナ話デアル、デアルカ
  ラ價格ノ一定ヲ希望スル譯デ、サウナレバ
  安心シテ仕事ガ出來ル譯デアル、-デアルカ
  ラ左樣ナ希望ヲ吾々ニ漏ラスコトハ當然デ
  アルト私共ハ實ハ聞イタ譯ナノデアリマス、
  而シテ日本生絲ハドウ云フ狀態ニ依ツテ取
  引セラレテ居ルカト云フコトハ、是ハ今私
  ガ申上ゲルマデモナイ、向フニ日本生絲ヲ
  輸出スル所ノ三井、三菱ヲ初メ、原トカ、旭
  ㄱシルク」トカ、郡是、片倉ト云フヤウナ七、
  八軒ニ過ギナイ、ケレドモ、其ノ大部分ハド
  ウ云フヤリ方ヲシテ居ルカト申シマスト、
  卽チ賣子ヲ使ツテ賣買シテ居ル、其ノ賣
  子ナルモノハ賣上高ニ應ジテ「コミッショ
  ン」ヲ貰ツテ居ル譯デアル、此ノ生絲貿易
  其ノモノニ依ツテ其ノ時〓〓ノ相場ヲ利用
  シテヤツテ居ル者ハ、所謂コチラニ於ケル
  所ノ輸出商、向フニ於ケル所ノ輸入商デア
  ル、是等ノ人達ガ所謂暴騰暴落ノ鞘ヲ利用
  シテ儲ケヨウト云フヤウナヤリ方ヲシテ居
  ル譯デアル、「ニューヨーク」ニ於ケル所ノ
  取引所ヲ利用シテ居ルノハ大部分ハ日本人
  デアル、八割五分ハ日本人デアル、サウ云
  フヤウナ實情ニアルコトハモウ私ガ申上ゲ
  ルマデモナイソレ等ノ人達ハヤハリ相場
  ノ變動ニ旨味ヲ持ツテ居ル譯ナノデアルカ
  ラ、是ガナケレバドウモ旨ク行カヌト云フ
  ヤウナコトヲ申スノハ是ハ當然ナ話ナノデ
  アル、ケレドモ今申上ゲテ居ル所ノ絹靴下
  工場ノ人達ハ皆價格ノ一定、安定ヲ冀ツテ
  居ルノデアリマス、ソレヲ吾々ハ能ク聞イ
  ダノデ實ハ此ノ間モ此ノ絲價ノ安定ト云フ
  コトニ付テ申上ゲタ譯デアリマス、デアリ
  マスカラ只今貿易局長官ノ仰シヤツタコト
  ハ吾々ノ聞イタコトトハ全ク反對デアル、
  此ノ點ニ付テ今一應私ハ貿易局長官ノ御說
  明ヲ伺ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=92

  ---

• 093・石黒武重

  ○石黑政府委員　先程私ガ御說明申上ゲマ
  シタ時モ、萬々言葉ガ足リナカツタトハ思
  ヒマセヌケレドモ、萬一言葉ガ足リマセヌ
  トイケマセヌカラ申シマスガ、勿論安定ハ
  希望シテ居ルノデアリマス、併シ一定シタ
  値段ヲ希望シテ居ルカト言フトドウモサウ
  デハナイヤウデアリマス、相場師ハ是ハ別
  ト致シマシテ、機業家ハ要スルニ、英語デ
  言フト「スタビリゼーション」ハ勿論大體ニ
  於テ希望シテ居ルノデアリマスガ、必ズシ
  モ「フイックス·プライス」ヲ希望シテハ居
  ラナイ、一定値段ヲ希望シテ居ル譯デハナ
  イノデアリマス、是ハ私共ハ絹ヲ使ツテ居
  ル、今御話ノヤウナ撚絲業者トカ或ハ絹業
  者ト云フ方面ダケニ付テ左樣ナコトヲ聽イ
  タノデハナイノデアリマシテ、詰リ現ニ人
  絹絲ヲ使ツテ色々ノ製品ヲ造ツテ居ル工場
  ヲ訪ネタリ、サウ云フ業者ノ人達ニ會フ機
  會モゴザイマシタノデ、其ノ時ニ聽イテ見
  テノコトナノデアリマス、人絹ノ織物ナリ
  編物モ結構ダガ、ドウモ儲ケガナイノデ面
  白クナイト言ツテ居ル、是ハ人絹ガ使ハレ
  始メタ頃ノ話デハアリマセヌ、モウ人絹ガ
  普及シテシマツタ後ノコトデアリマスガ、
  サウ云フコトヲ申シテ居ツタノデアリマス、
  ソレハ詰リ原絲ノ値段ハ鏡ニ掛ケタヤウニ
  ハツキリ分ツテ居ルシ、ソレニ生產費モハツ
  キリシテ居ル、其ノ爲ニ製品ノ買手ノ方カラ
  叩カレダケ叩カレル、結局働クダケ非常ニ働
  カサレテ、競爭ガ多イ爲ニ利潤ガ乏シクナ
  ル、其ノ點カラ寧ロ生絲ヲ安定スルコトハ
  必要デアルケレドモ、餘リ一定シテシマフコ
  トハ考ヘモノダト云フコトヲ申シテ居ツタ
  ノデアリマス、ソレデ私共モ絲價ノ安定ト
  云フコトハ非常ニ必要デアルト云フコトヲ
  豫ネ〓〓聞イテモ居リマシタシ、私共モ左樣
  ニ感ジテ居リマシタガ、左樣ナ話ヲ聽キマ
  シテ、成程細カク言ヘバサウ云フコトデア
  ルカト云フコトヲ感ジタヤウナ次第デゴザ
  イマス、デアリマスカラ私モ先程波瀾ト云
  フ言葉ヲ確カニ使ヒマシタガ、波瀾ト云フ
  言葉ハ少シ强過ギル言葉デアリマシテ、左
  樣ナ言葉ハ使フベキデハナカツタト思ヒマ
  ス、詰リ大キナ變動ハイカヌガ、多少ノ動
  キノアル方ガ、却テ現在ノ「アメリカ」ノ實情
  カラ見マシテ、之ヲ賣ツテ行ク上ニ都合ガ
  好イヂヤナイカト云フコトヲ考ヘテ居ルノ
  デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=93

  ---

• 094・加藤知正

  ○加藤(知)委員　モウ一言-之ニ付テハ私
  ハ纖維局長ノ御說明モ得タイト思ヒマスケ
  レドモ、唯貿易局長官ニ對スルダケヲ申上
  ゲテ置キマス、只今絹業者ノ中デハ聽カヌ
  ト云フ御話モアリマシタ、吾々ガ行ツタ時
  モ此ノ人絹ニ付テ、ドウモ價格ガ一定シテ
  居ツテ旨味ガナイト云フ話ガアリマシタ、
  ソレハドウ云フ人達ガ言ツテ居ルカト云フ
  ト、「ブローカー」ガ言ツテ居ル、眞面目ナ
  ル絹業者ハ一人モサウ云フコトヲ言ツテ居
  ラナイ、其ノ「ブローカー」ガ言ツテ居ルコ
  トヲ眞面目ニ御聽キニナツテ、米國ノ絹業
  者ガ絲價ノ一定ヲ嫌ツテ居ルト云フコトヲ
  御話ニナルコトハ非常ニ誤リト思フ、向フ
  ノ絹業者ハドウシテモ一定ト云フ話ヲス
  ル、其ノ一定ト云フコトニ付テ吾々ニ對シ
  テ人絹ノ例ヲ引イテ居ル、人絹ノ方ハ價格
  ガ一定シテ居ル、ダカラ吾々ガ商賣ヲヤル
  ニハ便益デアル、安心シテ商賣ガ出來ル、
  絹業者ハ皆サウ云ツテ居リマス、ケレドモ
  之ニ反シテ「ニューヨーク」邊リニ居ル7
  ローカー」連中、先刻申上ゲタ一割位ノ利
  益ノアル「ブローカー」ノ連中ニ言ハセル
  トドウモ多少ノ上リ下リガナクテハイカ
  ヌ、斯ウ云フコトヲ言ツテ居ル、ダカラ「ブ
  ローカー」ノ言フコトト、眞面目ナル絹業
  者ノ言フコトニハ非常ナル相違ガアルト云
  フコトダケヲ私ハハツキリ申上ゲテ置キマ
  ス、尙ホ色々御尋ネセンケレバナラヌコト
  モアリマスケレドモ、ソレハ後ニシテ私ノ
  質問ハ是デ打切ツテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=94

  ---

• 095・高橋壽太郎

  ○高橋委員長　關聯シテ芦田君ヨリ貿易局
  長官ニ質疑ヲシタイト云フコトデアリマス、
  關聯シタ事項ダケニ付テ御發言ヲ願ヒマ
  ス-芦田君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=95

  ---

• 096・芦田均

  ○芦田委員　絲價安定ノ問題ガ此ノ委員會
  ノ重要ナル議論ノ題目トナツテ居ルコトハ
  御承知ノ通リデアリマス、此ノ委員會デ農
  林省ノ蠶絲局長ノ御答辯ノ輸出生絲ノ絲價
  安定ノ問題ニ付テハ、多少吾々共納得ノ行
  カナイ點ガアルト思フノデアリマス、只今
  貿易局長官カラノ御答辯ヲ伺ツテ居ルト
  ドウモ政府側ノ御答辯ガ必ズシモ統一シテ
  居ナイヤウニ感ジマス、私ノ聽誤リデナケ
  しっく今朝ノ委員會デアリマシタカ、蠶絲
  局長ノ方デハ生絲ヲ「アメリカ」ニ輸出スル
  際ニハ數量ガ少々減ツテモ出來ルダケ高
  イ値デ賣リタイノダト云フヤウナ御意見ガ
  アツタ、ソレカラ貿易局長官ノ方ハ、ハツ
  キリハ御示シガナカツタガ、恐ラク現在ノ
  挺入レ値段千三百五十圓程度ガ値頃デア
  ル、但シソレニ多少ノ含ミヲ持タセルコト
  ガ味ガアル、斯ウ云フ御答辯ダラウト推測
  スルノデアリマス、私個人トシテノ立場ヲ
  申上ゲマスガ、現在ノ挺入レ價格千三百五
  十圓ハ現在ノ「アメリカ」ノ經濟狀況ノ下ニ
  於テハ略、〓適正値段デアラウト考ヘテ居ル、
  申スマデモナク濱渡シ千三百五十圓ト云フ
  値段ハ米貨ニ計算致シマシテ「ポンド」當リ
  ガ大體二「ドル」五十「セント」前後、卽チ二
  「ドル」二十五「セント」カラ二「ドル」七十五
  「セント」ノ間デアリマス、ソレデ靴下ヲ造
  リ上ゲテ大體原價計算ガ七十九「セント」ト
  云フコトニナツテ居ル、御承知ノ如クデ
  メリカ」ニ於ケル靴下ニ對スル購買力ハ一
  「ドル」以上ニナツテハ賣レマセヌ、好景氣
  ノ絕頂デアツタ一九二九年ニ於テサヘモ四
  千圓ノ絲ヲ持ツテ行ツテ靴下ヲ造ツテ相當
  高イ値段デ賣ツテ見タガ、ドウシテモ賣レ
  ナイ、「アメリカ」ノ市場デハ一足ノ靴下ニ
  付テ一「ドル」以上ノ價格デハ賣リニクイト
  云フコトガ大體ノ常識デアリマス、ドウシ
  テモ七十九「セント」程度ノ靴下ヲ造ルニ
  ハ、現在ノ計算カラ參リマシテ絹靴下ノ一
  「ダース」ノ製造家ノ利益ガ二十五「セント」
  デアリマス、所ガ「ナイロン」ノ靴下ヲ一
  「ダース」造ル場合ニハ利益計算ガ三F
  ル」ト云フコトニナツテ居ル、隨テ製造家
  ハ生絲ヲ使フヨリモ「ナイロン」ヲ使ツタ方
  ガ一「ダース」ニ付テ二「ドル」七十五+3)
  ト」ノ利潤ガアル、ソレデ「ナイロン」ノ
  生產ガ少イニ拘ラズ「ナイロン」ガ業者カラ
  希望サレルト云フ理由ニナツテ居ルト思フ、
  僅カニ一「ダース」ニ付テ二十五「セント」ノ
  利益ヲ取ツテ千三百五十圓ノ絲デ靴下ガ出
  來ル、斯ウ云フ現狀デアリマスカラ、昨年
  ノヤウニ暴騰ヲ重ネテ千七百圓臺ニナツタ
  ラ既ニ引合ハナイ、況ヤ二千圓以上ノ生絲
  ニナツテハ靴下業者ハドウシテモ生絲ヲ消
  費スルコトガ出來ヌ、斯ウ云フ狀況デアリ
  マスカラ、現在ノ「アメリカ」ノ經濟狀態カラ
  言ツテ、千三百五十圓ノ挺入値段ガ適正値
  段ダト斯樣ニ私共ハ考ヘテ居ル、隨テ將來
  「アメリカ」ノ經濟狀況ガ變レバ別デスガ、
  大體ノ目安トシテハ千三百五十圓ノ價格ヲ
  標準ニシテ絲價ヲ安定シテ行カレルト云フ
  コトガ適當ダト私共ハ考ヘル、之ニ對シテ
  農林省側ノ御意見ハ少シ其ノ點ニ於テ私共
  ハ納得ガ出來ナイ、ナゼナラバ分量ハ少々
  減ラシテモ宜イガ、値段ハ高ク賣リタイ、
  斯ウ云フ御意見ノヤウニ聽イタ、或ハ其ノ
  點ハ間違ヒデアツタカモ知レマセヌガ、併
  シサウ云フ考ヘ方デハ生絲ノ輸出ハ益〓不
  振ニナル、ヤハリ適正値段ヲ目標ニシテ輸
  出增進ヲ圖ラナケレバナラヌ、値段ヲ出來
  ルダケ高ク上ゲテ、分量ハ少クテモ宜イト
  言ツタヤウナ貿易政策デハ、生絲貿易ノ前
  途ト云フモノハ甚ダ心細イト思フ、ソコデ
  貿易局長官ニ伺ツテ置キタイノハ、現在ノ
  千三百五十圓臺ヲ大體ノ標準トシテ絲價ヲ
  安定シテ行ク御考ヘデアルノカ、先程ノ御
  答辯ノ中ニハ、多少委員會トノ間ニ行違ヒ
  ガアツテ、誤解ガ生ジタヤウデアリマスガ、
  其ノ點ヲモウ一度ハツキリト御答ヘヲ願ヒ
  タイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=96

  ---

• 097・石黒武重

  ○石黑政府委員　御答ヘ致シマス、一般的
  ニ輸出値段ノコトヲ見マスルト、非常ニ少
  イ品物ヲ輸出致シマス場合ニハ是ハ成ベ
  ク高ク賣ル方ガ宜イト思ヒマス、ソレカラ
  相當ニ品物ガアルト云フ場合ニ於キマシテ
  ハ結局生產費ヲ割ルヤウナ安イ値段デハ
  イケマセヌガ、生產費以上ノ良イ値段ニ於
  キマシテ、要スルニ價格ト數量ヲ掛合ハシ
  タモノノ積ノ大キイヤウナモノニナルコト
  ガ現在ノ我國ノ經濟狀況カラ申シマシテ一
  番宜イノデアラウ、是ハ何事ニ付ケテモ當
  然左樣デアラウト思フノデアリマス、所デ
  此ノ生絲ニ付キマシテハ、農林當局ノ方カ
  ラ、詳細ニハドウ云フ御答辯ニナツタカ存ジ
  マセヌケレドモ、何時モ話合ツテ居リマス
  ノデ、意見ハ大體同ジヤウニ持ツテ居ル譯
  デアリマス、御承知ノヤウニ假ニ「アメリ
  カ」市場ニ於ケル生絲ノ需要ト云フコトニ
  付テ申シマスナラバ、一番確カナ生絲ニ對
  スル需要ハ一般的ニ申シマシテ、云フマデ
  モナク婦人ノ「フル·ファツション」ノ靴下
  デアリマス、ソレカラ下着類デアルトカ、
  或ハ一般ノ「ブロード·シルク」ト云フヤウ
  ナ風ニ、段々一般人絹トノ關係ガ難シクナ
  ツテ來ル譯デアリマス、斯ウ云フ場合ニ或
  ル程度澤山ニ生絲ヲ賣ラウト云フノニハ多
  少値段ヲ下ゲルコトニ依ツテ澤山賣ル、而
  モ生產費ヲ割ラナイ、十分採算ガ取レルト
  云フナラバ宜シウゴザイマスガ、色々伺フ
  所ニ依リマスト、相當ニ値段ヲ下ゲナケレ
  バウント擴張スルコトガ出來ナイト云フヤ
  ウナコトガ事實ノヤウデアリマス、恐ラク
  ソレヲ前提トシテノ蠶絲局長ノ御話デハナ
  イカト思フノデアリマス、例ヘバ二割値段
  ガ土ルコトニ依ツテ、需要ガ一割減退シタ
  ト云フ程度ノ減退ナラバ、是ハヤハリ二割
  上ツテ、ソレガ堅持出來ルモノナラバ、二
  割高ク賣ツテ、一割ノ數量減退デモ差支ナ
  イダラウト思フノデアリマス、唯サウ云フ
  ヤウナコトヲヤルコトニ依ツテ、又今度ハ
  ドウモソレヲ持切レナクナツテ、ドンノ
  下ガルコトガアツテ、玆ニ絲價ノ變動ヲ起
  スヤウナコトガアリマスト、是ハ長イ目カ
  ラ見マスト宜シクアリマセヌ、サウ云フ點
  ノ憂ヒハ勿論アリマスカラ、サウ云フコト
  ヲ考ヘテノ上デ成ベク高ク賣ルト言ヒマシ
  テモ、玆ニ事實上ノ限度ガアルノダラウト
  思フノデアリマス、詰リ左樣ナ趣旨ニ於テ
  農林當局ノ方デモ同ジコトナラバ高ク賣ツ
  タ方ガ宜イト云フヤウナコトヲ御話ニナツ
  タノデアラウト思フノデアリマス、尙ホ最
  近ニ於ケル「アメリカ」ノ經濟界ノ現狀カラ
  見テ、千三百五十圓位ノ線デ安定スルノガ
  適當デハナイカト云フヤウナ御話ニ付キマ
  シテハ、左樣ナ趣旨ノコトヲ仰シヤツテイ
  ラツシヤル方モアルコトハ私共モ聞イテ居
  リマスガ、御承知ノヤウニ絲價安定ノ關係
  ハ農林省ノ方デヤツテオイデハナリマシテ、
  私共ノ方ト致シマシテハ、最近輸出關係ガ所
  管ニ入リマシタヤウナ譯デ、公的ニハ別ニ
  詳細ナル調査ヲ持ツテ居リマセヌノデ御諒
  承ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=97

  ---

• 098・吉田清二

  ○吉田政府委員　私カラモ一言申上ゲテ置
  キタイト思ヒマス、先程私ノ申シタ所謂今
  ノ時代ニ於テハ向フデ買ツテ吳レルナラバ、
  高ク賣レル限リ高ク賣ラウ、サウシテ外貨
  獲得ニ效果ノアルヤウニスル方ガ宜イト思
  フ、數量ハ多少減ツテモト、斯ウ云フコト
  ヲ申シタ譯デアリマス、ソレハ唯先程モ斷
  ツテ置イタカト思フノデアリマスガ、唯高
  クサヘアレバ宜イ、賣レル時ニハ賣リ付ケ
  テヤレト云ツタヤウナ氣持デ申シタノデハ
  決シテナイ、無論餘リ高クナルコトハ後ノ
  祟リガアルコトヲ餘程考ヘナケレバナラヌ
  コトデアリマシテ、サウ云フ無鐵砲ナ意味デ
  申シタ譯デハナイノデアリマス、向フデ買
  フ限リ高ク賣リタイ、多少ノ數量ハ減ルコト
  モ宜カラウ、斯ウ抽象的ニ申シタ意味デア
  ルコトヲ一ツ御諒承願ヒタイト思ヒマス、
  ソレカラドノ程度ノ値ガ適正値デアルカト
  云フコトノ決メガ非常ニ難カシイノデアリ
  マシテ、今芦田サンノ仰シヤツタココラノ
  値頃ガ宜カラウト云フコトヲ相當觀察シテ
  居ル業者ノアルコトモ聞イテ居リマス、唯
  日本ノ相場デ申シマスルト僅カナ所ナノデ
  アリマス、靴下ノ例ヲ一寸引イテ見マシテ
  モ、數字ニ亙ツテ甚ダ恐縮デゴザイマスル
  ガ、靴下一足ニ付テ「アメリカ」デ一「セン
  トㄴ上ゲタト致シマスルト、大體今日向フ
  デ一「ポンド」ノ原料デ以テ一「ダース」半、
  薄イモノニナリマスト二「ダース」、假ニ二
  十足ヲ一「ポンド」ノ生絲デ造ツタト致シマ
  スト一「ポンド」ノ原料ニ付テ二十「セント」
  上ガツテ差支ヘナイコトニナリマス、一「ポ
  ンド」ニ付テ二十「セント」ト云フコトハ
  使え日本ノ百斤ニ付テハ百三十三「ポン
  ド」デアリマスカラ二十六「ドル」六十「セン
  ざニナルノデアリマス、二十六「ドル」六
  十「セント」ハ今ノ爲替カラ申シマスルト約
  百二十圓、結局日本ノ相場ニ於テ百二三十
  圓相場ガ上ガツタト云フコトハ百二三十
  圓百斤ノ生絲ニ付テ上ガツタト云フコトデ、
  千三百五十圓ノモノガ千四百七十圓ニナツ
  タト云フコトニナリマス、サウスレバ一
  「ポンド」ニ付テ二十「セント」向フノ相場ニ
  スレバ上ガツタト云フコトニナリマス、
  「ポンド」ノ相場ニ付テ一一十「セント」上ガル
  ト云フコトハ靴下ニ當テテ見マスト、一足
  ニ付テ一「セント」窮屈ニナツタト云フコト
  デ、是ハ理窟デアリマスガ、ソレダケノ影
  響ナノデアリマス、八十錢カラ八十五錢、
  九十錢程度ノモノガ大衆向キノ靴下ト言ハ
  レテ居ルノデアリマスルガ、原料ト致シマ
  シテハ大體一足ノ靴下ニ付テ十二、三「セ
  ント」カ十五「セント」程度ノモノガ原料代
  デ、アトハ「アメリカ」ニ落チテ居ルモノデ
  アリマス、ソレヲ一「セント」ダケ窮屈ニシ
  テ貰フト云フコトニ依ツテ百圓バカリ上ガ
  ルト云フコトニナルノデアリマシテ、値上
  リハ圓ノ相場デ見マスルト非常ニ上ツタヤ
  ウニ見エルノデアリマスガ、今日ノ爲替ニ
  於テ本當ノ靴下マデ及ボシテ考ヘテ見マス
  ルト僅カノモノデアリマス、斯樣ナ考ヘデ
  居リマスカラ先程申シタコトハ多少上ゲテ
  モ餘リ後ノ崇リノナイ限リニ於テハ高ク取
  ル方ガ宜カラウ、斯樣ナ意味デ申シタコト
  ヲ御諒解願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=98

  ---

• 099・森幸太郎

  ○森(幸)委員　今貿易局長官ノ御說明ニ付
  テ少シ私諒解ニ苦シム點ガアルノデ承リタ
  イト思ヒマス、輸出絲ヲ一元化シテハイケ
  ナイト云フコトニ付テ色々御說明ガアツタ
  譯デアリマスガ、此ノ會ノ初メカラ一本値
  一本値ト云フ言葉ガ出テ居ルノデアリマス、
  是ハ一本ニハ違ヒナイノデアリマスルガ、申
  上ゲルマデモナク十四中「ビー」格ヲ標準ト
  シテ輸出生絲ノ價格ガ協定サレテ居ルノデ
  アリマス、今長官ノ說明ヲ承ツテ居リマス
  ルト、向フノ機業者ガ人絹ヲ原料トシタ場
  合ニ餘リ人絹ト云フモノガ規格ガ單純デア
  ル、ソレデアルカラ原料ガドウ云フヤウナ
  規格ノ絲、ドウ云フヤウナ價格ノ絲ヲ使ツ
  タカト云フコトガ直グ分ル、ソレダカラ機
  業者トシテ面白味ガナイ、ダカラ絹絲ニナ
  レド、ソコニ色々ナ動キガアル爲ニ、原料
  ノ價格ガハツキリシナイト云フ所ニ妙味ガ
  アルト云フ御說明ノヤウニ承ツタノデアリ
  マス、サウシマスト絹絲ニ仕上ゲタ上ニ、
  是ハ「ツー·エー」ノ格ノ絲ヲ使ツタカ、「ディ
  ー」格ノ絲ヲ使ツタカ、「ビー」格ノ絲ヲ
  使ツタカト云フコトガ分ラナイ筈ダラウト
  思フ、「アメリカ」ノ市場ニ出テ居リマスモ
  ノモ「ディー」格以上ノ絲ガ色々種々雜多ニ
  出テ居ルモノデアリマスカラ、其ノ機業者
  ガ原料ガ必ズシモ「エー」格デナケレバ靴下
  ガ出來ナイト云フ譯デハナイノデアツテ、
  「ディー」格ノ絲モ或ハ格外ノ絲モ二十一中
  ノ絲モ使ツテ居ル譯デスカラ、是ハ少シモ
  第三者カラ見テ何格ノ絲ヲ、何ボノ値段ノ
  原料ヲ使ツテ居ルンダト云フコトヲ明ケツ
  放シニ見透カサレルコトノナイヤウニ吾々
  素人トシテ考ヘルノデアリマス、ドウモ少
  シ動キノアルコトガ「アメリカ」ノ市場ニ於
  テ宜イト云フ御說明ニ付テノ實例ヲ御擧ゲ
  ニナツタコトニ付テ少シ腑ニ落チナイカラ
  承ツテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=99

  ---

• 100・石黒武重

  ○石黑政府委員　御答ヘ致シマス、靴下ニ
  付キマシテハ御承知ノヤウニ同ジ婦人用ノ
  「フル·ファツション」ノ靴下ニ付キマシテ
  モ、所謂二本ノモノ、三本ノモノ、四本ノモ
  ノ等色々アル譯デアリマシテ、例ヘバ「ツー·
  ツゥイスト」ノ二本撚絲ノ靴下モ造ル、而
  モ疵ノナイモノヲ造ルト云フコトノ爲ニハ、
  ドウシテモ、例ヘバ「スペシァル·スリー
  エー」位ハ使ハナケレバナラヌ、「スペシァル·
  スリーエー」格ノ中デモ又良イモノヲ使ハ
  ナイト疵物、「ローズ」物ガ出ル、或ハ三本
  撚ノ場合ニハドウト云フ風ニ、大體ハ標準
  ガ出來テ居リマシテ、ソレデ若シ例ヘバ
  「ディー」格位ノ絲デ二本合セノ靴下ヲ造ツ
  タト致シマスト、非常ニ疵ノ多イモノデ、
  餘程値段モ下ツテ來テ却テ工合ガ惡イト云
  フヤウナコトニモナル譯デアリマシテ、大
  體出來上リ品ヲ見マストドウ云フ程度ノ絲
  ヲ使ツタカト云フコトハ靴下ナドデモ分ル
  ヤウデゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=100

  ---

• 101・高橋壽太郎

  ○高橋委員長　ソレデハ本日ハ此ノ程度デ
  散會致シマス、明後日ハ午前十時カラ、午
  前午後ニ亙ツテ開會致シマス
  午後五時散會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00519410215&spkNum=101

4. 会議録のPDFを表示

この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。