第76回帝国議会　衆議院　蚕糸業統制法案委員会　第8号　昭和16年2月19日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  　　　　會議
  昭和十六年二月十九日（水曜日）午後一時二十分開議
  　出席委員左の如し
  　　委員長　高橋熊次郎君
  　　理事　小山邦太郎君　理事　高橋圓三郎君
  　　理事　最上政三君　理事　森幸太郎君
  　　　　飯田助夫君　　　植原悦二郎君
  　　　　小野寅吉君　　　岡崎憲君
  　　　　加藤知正君　　　長井源君
  　　　　紅露昭君　　　羽田武嗣郎君
  　　　　坂本宗太郎君　　　助川啓四郎君
  　　　　野溝勝君　　　平野力三君
  　　　　松岡俊三君　　　松村光三君
  　　　　芦田均君　　　宮澤胤勇君
  　　　　山田六郎君　　　吉田賢一君
  　　　　渡邊玉三郎君
  　出席國務大臣左の如し
  　　　　　　　　農林大臣　石黒忠篤君
  　出席政府委員左の如し
  　　　　　　　　農林次官　井野碩哉君
  　　　　　農林省蠶絲局長　吉田清二君
  　　　　　商工省纖維局長　梶原茂嘉君
  　委員長の許可を得て出席したる者左の如し
  　　議員　小山倉之助君　議員　高畠龜太郎君
  本日の會議に上りたる議案左の如し
  　蠶絲業統制法案（政府提出）

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• 001・高橋熊次郎

  ○高橋委員長　是ヨリ開會致シマス、小山
  倉之助君ハ委員外デアリマスケレドモ、特
  ニ質疑ヲ御許シ致シマス-小山君

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• 002・小山倉之助

  ○小山倉之助君　委員長ノ特別ノ御計ラヒ
  ニ依リマシテ、委員外ニシテ發言ヲ許サレ
  タコトヲ感謝致シマス、私ノ質問ハ多少根
  本ニ亙ル點ガアリマスガ、其ノ根本ニ付テ
  實ハ非常ナ疑ヒヲ持ツテ居ルノデアリマス、
  併シ此ノ數日間ニ亙ル蠶絲局長ノ丁寧懇切
  至ラザルナキ御答辯ニ依リマシテ、大體私
  ノ疑ヒハ實際ニ於テハ解ケテ居ルノデアリ
  マスガ、理論ノ上カラ申シマシテ、ドウシ
  テモ解ケナイ點ガアリマスノト、ソレヲ解
  イテ戴イタカラト云ツテモ、將來日本ノ產
  業上非常ナ變化ヲ來スコトヲ惧レマスノデ、
  大體〓ヘヲ乞フ意味ニ於テ御質問申上ゲマ
  スカラ、サウ云フ御積リデ御答辯ヲ願ヒタ
  イト思ヒマス
  第一ニ此ノ法案ノ全般ヲ通ジテ根幹ヲ成
  スモノハ第四條デアリマス、此ノ第四條ハ
  私カラ見マスレバ、國家管理ノ精神カラ出
  テ居ルト思ヒマスガ、此ノ點ニ付テドウ云
  フヤウナ御考ヘデアリマスカ、國家管理ト
  ハ言ハナイガ、實質ニ於テハ國家管理デア
  リマス、斯樣ニ思フノデアリマスガ、如何
  デアリマスカ

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• 003・吉田清二

  ○吉田政府委員　大體ニ於テ是ハ但書ノ場
  合ハ別問題トシマシテ、其ノ他ノ部分ニ付
  キマシテハ御說ノ通リ國家管理ト見テ差支
  ヘナイモノト存ジマス

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• 004・小山倉之助

  ○小山倉之助君　國家管理デアルト云フコ
  トハ御認メニナツタノデアリマス、ソコデ
  此ノ國家管理ノ必要ハ產業ヲ計畫化スルト
  云フ點ニアリマスコトハ勿論デアリマス、
  元來計畫經濟ハ共產主義竝ニ社會主義ニ通
  ズルノデアリマシテ、計畫ト云フ言葉ハ社
  會主義學者ニ依ツテ提唱セラレタモノト私
  ハ承知スルノデアリマス、ソコデ私ハ多少
  意見ヲ持ツテ御尋ネスルノデアリマスガ、
  近來ノ社會主義者ハ國有ト云フコトヲ嫌フ
  ノデアリマス、國有ト云フコトニスレバ
  或ル財產ヲ全部國家ガ公債ヲ以テ買フ、或
  ハ現金ヲ以テ買フ、公債ヲ以テ買ヘバ利息
  ヲ支拂ハナケレバナラヌ、結局國家ノ負擔
  ニナル、ソレヨリモ國有ニスルカ、社會ノ
  モノニスルカ、斯ウ云フ觀念カラ新シイ方
  法ガ發見セラレマシタコトハ旣ニ農林當局
  ニ於テモ御承知ノコトト存ジマス、其ノ最
  モ著シイ例ハ電力管理案デアリマス、此ノ
  電力管理案ニ於テ政府ハドウ云フ風ニシテ
  之ヲ國家ノ手ニ收メヨウト試ミタカト申シ
  マスト、先ヅ第一ニ會社ヲ作リマシテ、其
  ノ會社ノ株ヲ合併セラルベキ會社ニ與ヘレ
  バ、國家ハ勞セズシテ、何等金ヲ使ハズシ
  テ管理ガ出來ル、是ガ電力管理案ニ現ハレ
  タル一ツノ方法デアリマス、併シ斯樣ナ方
  法バカリデハナイ、最モ簡單ナ方法ハ國家
  ガ先ヅ管理ヲスル、統制ヲスル、左樣ニシテ
  產業ヲ國家ガ行フ、國家ガ生產手段ヲ民間
  カラ奪ツテシマフ、斯ウ云フノガ近來社會
  主義實行者ノ意見デアリマス、ソコデ所有
  權ニ手ヲ付ケルト面倒ダ、所有權ハ其ノ儘
  ニシテ置イテ宜シイ、併シ國家ガ之ヲ管理
  ヲシ統制ヲスレバ、所有權ハ恰モ國家ノ所
  有權ニ歸シタルガ如ク運用ガ出來ル、是ガ
  近來ニ於ケル社會主義者ノ思想デアリマシ
  テ、學者ハ之ヲ社會化ト言フノデアリマス、
  此ノ社會化ノ思想ガ此ノ法案ノ中ニ十分織
  込マレテ居リマス、此ノ社會化ノ思想ハ何
  處ニアルカト云フト個人ノ生產ヲ社會ニ
  移スノデアル、所得ハ社會ノ所得ダ、デア
  ルカラ其ノ得タル所ノ所得ヲ社會ガ之ヲ分
  配スルノダ、玆ニ「プール」計算ト云フモノ
  ガ出テ來ルノデアリマス、此處デハ社會
  トハ言ハナイ、國家ガ管理ヲスル、蠶絲局
  長ノ度々ノ御答辯ニアリマシタ所ノ表裏一
  體國家自ラ行フ代リニ會社ノ形デヤルノ
  ダ、管理スルノダ、昔ノ國有トカ或ハ國
  家ガ買上ゲルトカ云フ場合ニハ公債ナリ或
  ハ現金ヲ以テ買入レルノデアリマスガ、
  斯樣ナコトヲセズニ、民間ノ仕事ヲ國家自
  ラ行フ、サウシテ其ノ所得ハ社會ノモノト認
  メテ國家ガ之ヲ「プール」計算ニ依ツテ認メ
  テ行ク、是ガ近來ニ於ケル社會主義者ノ實
  行案デアリマシテ、之ヲ社會化ト言フノデ
  アリマス、隨テ管理スルカラ所有權ハ制限
  サレル、此ノ管理ト云フ言葉ニ經營ト云フ
  言葉ヲ換ヘ、所有權ト云フ言葉ニ資本ト云
  フ言葉ヲ換ヘレバ資本ト經營トガ分離サレ
  ル、斯ウ云ウ意味ニナルノデアリマス、併
  シ今日株式會社ノ資本ト經營ト云フモノガ
  分離セラレルト云フ形ガアリマスガ、ソレ
  ハ思想的ニ來テ居ルノデハナイ、是ハ絕對
  ニ思想的ニ來テ居ル、國家管理卽チ資本ト
  經營ノ分離、所有權ノ制限、卽チ管理ニ依
  ツテ所有權ノ制限ヲヤルノデアリマスガ、
  斯ウ云ウ思想カラ出テ居ルノデアツテ此ノ
  法案ノ內部ニ於テハ其ノ社會化主義ト云フ
  モノガ十分織込マレテ居ルト私ハ思フノデ
  アリマスガ、當局ハ如何ニ御考ヘニナリマ
  スカ、先ヅ其ノ點ヲ御伺ヒ致シマス

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• 005・吉田清二

  ○吉田政府委員　此ノ法案ニ於テ考ヘテ居
  リマスコトハ決シテ社會化トカ云フヤウナ
  考へ方デハナイノデアリマス、今日ハ非常ニ
  不安ナ狀態デアツテ、折角汗水出シテ造ツ
  タモノガ賣レナイデ腐ツテシマフシ、折角
  經費ヲ掛ケテ造ツタモノガ色々ナ關係カラ
  非常ナ安値デナケレバ處分スルコトガ出來
  ナイ、斯ウ云ツタ不安ガ蠶絲ノ方ニハ非常
  ニ多イノデアリマスノデ、此ノ點ヲ安心サ
  セル、造ツタモノハ必ズ一定ノ値デ賣レル、
  安心シテ業ニ勵シンデ行ケルヤウニト云フ
  考ヘ方ヲ持ツテ居ルノデアリマシテ、斯樣
  ナ安心ヲ與ヘル一ツノ手段ト致シマシテ其
  ノ生產手段ヲ管理或ハ國營ニスルト云ツタ
  ヤウナ考ヘ方ハ毛頭ナイノデアリマス、或
  ハ桑園ヲ國家管理ニシテヤルトカ、製絲設
  備ヲ國家ガ管理シテシマフトカ、斯ウ云フ
  ヤウナ考ヘ方デハナクテ、唯生產致シマシ
  夕品物ガ兎角場合ニ依ツテハ價格ノ關係カ
  ラ致シマシテ非常ニ低値ニ處分シナケレバ
  ナラヌ、或ハ場合ニ依リマシテハ折角造ツ
  タモノガ蛆ヲ出シ、蛾ヲ出シテシマハナケレ
  バナラヌ、今日斯ウ云ツタコトデ非常ニ不安
  ニ襲ハレテ居リマスノデ、此ノ不安ヲ除去
  シテ、安心シテ適當ナ値デ賣レルヤウニシ
  テヤル、斯ウ云フ考へ方カラ出テ居リ、又
  サウ云フコトヲ致シマス爲ニ、色々考ヘマ
  シタ上デ最モ適當ナ方法ナリト考ヘマシテ
  仕組ンデ居ル仕組デアルコトハ御諒承願ヒ
  タイト思ヒマス

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• 006・小山倉之助

  ○小山倉之助君　斯樣ナ御答辯ガアルベキ
  コトヲ期待シテ居リマシタシ、又左樣ナ考ヘ
  デ御進ミニナルデアリマセウ、私ハ其ノ點ハ了
  承致シマス、併シナガラ私ガ申上ゲルコト
  ハ大體管理ト云フコトハサウ云フコトカラ
  出發シテ居ル、ダカラ此ノヤリ方如何ニ依
  ツテハ社會主義ニ通ズル大キナ道デアルゾ
  ト云フコトハ御認メニナリマスカ、其ノ點
  ヲ伺ヒタイ

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• 007・吉田清二

  ○吉田政府委員　社會主義ニ通ズル道デア
  ルカドウカト云フ御質問デアリマスガ、私
  ガ今程申シマスヤウナ考ヘ方デアリマスガ
  故ニ、其ノ趣意サヘ徹底シ、其ノ目的ガ達
  成スレバ宜イノデアリマスカラ、更ニ進ン
  デモツト根本的ナ所マデ管理ヲ進メル、卽
  チ財產ノ國家管理或ハ國有ト云ツタヤウナ
  所マデ此ノ制度デ進ンデ行クベキデハナイ
  ノデアリマシテ、要スルニ先程申述ベマシ
  タ趣意ガ徹底スレバソレデ宜シイ、又其ノ
  限度デ止ムベキモノト考ヘテ居ルノデアリ
  マス

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• 008・小山倉之助

  ○小山倉之助君　勿論サウ云フ風ナ御考へ
  デアリマセウ、サウ云フ風ナ御方針デ行カレ
  ルト云フコトハ能ク分ツテ居リマス、ソコデ
  私ハ申上ゲタイ、私ノ此ノ理論ニ對スル考ヘハ
  動カナイノデアリマシテ、大體ハサウ云フ計
  畫經濟ノ系統ヲ辿ツテ行ク、計畫經濟トハ斯
  ウ云フヤウナヤリ方デアル、ソレハ皆社會化
  主義カラ來テ居ル原理デアリマシテ、蠶絲局
  長ニ於テ意識セラルルト否トニ拘ラズ、ソコ
  ニ共產主義ニ通ズル非常ニ大キナ道ガアル
  ト云フコトヲ私ハ一ツ御〓究願ヒタイト思
  フノデアリマス、ソコデ私ハ米穀統制法ノコ
  トヲ多少〓究シテ見タノデアリマスガ、昭和八
  年ニ米穀統制法ガ制定セラレマシテ、十一
  年ニハ米穀ノ自治管理案ガ制定セラレマシ
  タ、是ハ內地、朝鮮或ハ臺灣ニ於ケル過剩
  米ヲ統制スルト云フ目的ニ出タヤウデアリ
  マスガ、ソコニハ自治的統制ト云フモノガ
  甚ダ濃厚デアツタ、所ガ是ガ失敗デ旨ク行
  カナイ、ソコデ近來ノ人ハマダ統制ガ徹底
  シナイカライケナイトヨク言ヒマス、ダカ
  ラ自治統制デハイカヌノダ、何カ失敗スル
  ト、自治統制ダカライカヌノダト言ツテ、
  一步々々國家統制ニ向ツテ參リマス、其ノ
  證據ニハ昭和十四年度ニ米穀配給統制法
  案ガ通過致シマシタ、是ハ國家管理ニ進ム
  所ノ第一步デアル、ソレデ十五年度ニ初メ
  テ米穀管理規則ト云フモノガ農林省令トシ
  テ公布セラレマシタ、政府ガ統制策ヲ立テ
  テ最初ハ自治統制ヲ許スガ、自治統制デハ
  旨ク行カヌ、今度ハ强力ナル統制ニシヨウ、
  結局國家管理ニナリ、更ニ國有ト云フ道ニ
  通ジテ居リマス、所ガ今日ノ社會化主義者
  ハ國有ナンテ云フマダロコシイコトハ言ヒ
  マセヌ、先刻モ言フ通リソンナ馬鹿ナコト
  ハ言ハナイ、要スルニ所有權ヲ或ル程度制
  限シテ國家ガ自由ニスレバ宜シイ、此ノ法
  案ハ非常ニ巧ミデアリマス、一方カラ言ヘ
  バ會社ヲ設立シテ行クト云フ只今蠶絲局長
  ノ言ハレルヤウナ方法デアリマスケレドモ、
  實質ニ於テハ國家管理デアリマス、政府ノ
  ヤリ方如何ニ依ツテハ、政府ノ所期スルヤ
  ウナ目的ハ果シテ達セラレルカドウカト云
  フコトヲ非常ニ疑フ、一步進メバ是ハ全然
  國家社會主義ニナル、是ハ全然「ボリシェ
  ヴィズム」ニ進ムノデアリマス、ソコデ私ハ
  サウ云フ點ニ付テ申上ゲタイト思ヒマス、
  斯ウ云フ風ナ國家管理ヲ行ツテ政府ガ全部
  ヲ統制シテ、國家ノ强イカニ依ツテ統制ス
  ルト云フ場合ニ、其ノ案ヲ立テタ學者實際
  家ガドウ云フコトヲ言ツテ居ルカト云フコ
  トヲ少シ廻リ諄イヤウデアリマスルガ、
  ツ御記憶ヲ願ヒタイ、是ハ所謂常識論トシ
  テ官吏ヲ其ノ中ニ入レテハイカヌトカ宜イ
  トカ云フ議論ノ起ル根本ヲナスモノデアリ
  そっ、是ハ「シャハト」ノ言ツテ居ルコトデ
  アリマスルガ、「經濟指導者ハ自ラ最善ノ指
  導者的人格ヲ有シテ居ナケレバナラナイ、
  斯クシテ、其ノ日其ノ日ノ仕事ヘノ刺激ト
  必要ナル修正ガ生レテ來ルベキナノデアル」
  其ノ日其ノ日ノ修正ガ生レテ來ルト云フコ
  トハ、社會主義者ガ國家管理ヲ行ツタ場合
  ノ學者實際家ノ非常ニ注意スル所デアル、
  此ノ社會主義ヲ實唱シタ「ジーデー·エッチ·
  コール」ノ如キハロヲ酸ツパクシテ言ツテ
  居ル、ソレハドウ云フコトヲ言ツテ居ルカ
  ト申シマスト、「社會主義ノ最モ重要ナ機能
  ハ企業ノ直接取扱デハナク、政策ノ統一デ
  アル、卽チ重要ナル企業ヲ全經濟計畫ニ於
  テソレ〓〓其ノ適當ナル場所ニ置キ其ノ與
  ヘラレタル仕事ヲ完成セシムルコトヲ保證
  スルコトハ必要デアル、併シ之ヲナスニハ
  國家ガ直接ニ其ノ細カイ行政ヲナスコトヲ
  少クスル方ガ宜イノデアル、其ノ最モ危險
  ナルコトハ、其ノ手ニ餘リニ多クノ微細ナ
  機能ヲ持ツテ頭ガ重クナルコトデアル、國
  家ハ政策ノ統制ヲ行ハネバナラヌガ、出來
  ルダケ其ノ行政機能ニ參加スルコトヲ止
  メナケレバナラヌ」是ハ屢〓經驗シテ居リマ
  ス、更ニ「獨立シ且ツ責任アル委員會ニ權力
  ヲ委任スル所ノ組織ハ其ノ委員會ハ公共的
  支配ニ服從スルト云フ點ニ於テ新社會主義
  ノ實際問題解決上重大ナル部分ヲ占メル」ヤ
  ハリ委員會ノ相當重大ナル權力ヲ持タシテ
  其ノ委員會ニ、公共性ヲ持タシテ政府自ラ
  干涉シナイ方ガ宜シイノダ、「又元來實際上
  ノ經營ハ專門家ノ仕事デアル、旣ニ十分明
  白ニ引カレタ線ニ沿ウテ常規ノ經營ヲ實行
  スルコトハ問題デハナイ、卽チ從來出來上ツ
  テ居ル事業ヲ纒メテ國策會社トナシ、其ノ上
  ニ立ツテ經營スルコトハ素人デモ凡人デモ
  出來ル、要ハ日進月步ノ技術發達ニ依ル生
  產方法ノ急激ナル變化ニ應ジテ企業經營ヲ
  轉換セシメ、ソレ以上ニ先ヲ越シテ進ムコ
  トデナケレバナラヌ、斯クノ如キハ專門家
  ヲ主トシテ十分ナル權力ヲ與ヘ責任ヲ持タ
  シテ初メテ出來ルコトデアル」ソコデ此ノ發
  送電會社ノ問題ガ起ルノデアリマスガ、ド
  ウモ官吏ノ諸君ハ斯ウ云フ風ニ考ヘル、今
  マデ配當ガ出來テ居ル、ソレヲ一ツノ會社
  ヲ作ツテ纒メテヤレバ其ノ會社デ一生懸命
  働イテ生產カラ利潤ガ上ルノダカラ八分ノ
  保證ヲヤル、一割ノ配當保證ガ出來ルデア
  ラウト考ヘル、所ガソレガ四分ノ配當モ困
  難デアリ、六分ノ保證ヲシテヤツト今度ハ
  會社ノ維持ヲスル、今マデ人ノヤツタ仕事
  ヲ、唯其ノ儘乘ツカツテ行ツテソレガ出來
  ルト思フノハ、是ハ素人ノヨク考ヘルコト
  デアル、今マデヤツタコトソ上ニ立ツテ會
  社ヲ組織スルモノデアルナラバ、皆働イテ
  吳レルノデアルカラ利益ガ擧ツテ來ル、配
  當ガ出來ル、所ガ政府ガ餘リニ多クノ仕事
  ヲ持ツテ行政ニ携ツテ、専門家ニ委セナイ
  カラ發送電ノヤウナモノガ出來タ、素人ガ
  ヤツタカラ出來タ、ソコデ「シャハト」ガ言ツ
  テ居ル通リ、其ノ日〓〓ノ仕事ヘノ刺㦸ガ
  アツテ、其ノ刺戟ヲ修正スルコトニ依ツテ
  國策會社ノ運用ガ出來テ來ル、「コール」ハ
  又言ツテ居ル、ソンナ今出來テ居ル仕事ニ
  乘ツカツテ其ノ日〓〓ノ仕事ヲヤツテ行ク
  コトハ凡人デモ出來ル、併シナガラ日進月
  步ノ技術ノ發達ニ依ツテソレヲ改メテ行ク
  ト云フ所ニ所謂計畫經濟ノ妙味ガアルノダ、
  サウ云フコトヲシナケレバイカヌノダ、唯
  生產ノ管理ヲ行ツテ、生產手段ヲ國家自ラ
  M
  行フ、國家ノ權力ヲ强化スルト云フコトダ
  ケ學ンデ、其ノ實際ニ效果ヲ擧ゲル方法ヲ
  學バナイト云フコトハ、私ハ今日此ノ社會
  化或ハ計畫經濟ヲヤツテ居ル方々ニ非常ナ
  落度ガアルノデハナイカ、私共ハ屢〓ソレヲ
  警告スルノデス、學ブナラサウ云フ所ヲ學
  ンデ戴キタイ、デアルカラ、此ノ委員會ニ
  於キマシテモ屢〓論議ニナリマシタ通リ、官
  吏ノ古手ハ入レナイヤウニシテ、成ベク此
  ノ專門家ニ仕事ヲ委シテ行クガ宜イ、サウ
  云フコトガ論議セラレマス所以ハ此處ニ存
  スルノデアリマスカラ、私ハ此ノ點ニ付キ
  マシテハ十分御留意ヲ願ヒタイト存ズルノ
  デアリマス、蠶絲局長ハ此ノ點ニ付キマシ
  テモ懇切丁寧ニ御答辯ニナリマシタヤウ
  ニ、安心致スモノノ、兎角官吏ノ方ガ慣レ
  ナイ仕事ニ入ツテ、今マデ皆ガヤツテ居ツ
  タ上ニ乘ツカルノダカラ出來ルダラウト思
  フト、サウデハナイ、今マデハ今マデノ組
  織ダカラ十分能力ヲ發揮出來ルノデアリマ
  スガ、頭カラ抑ヘ付ケテ、サウシテ人間ヲ
  機械的ニヤラセヨウトシテモ働クモノデハ
  アリマセヌカラ、其ノ點ハ十分御留意ヲ願
  ヒタイト思フノデアリマス
  ソコデ私ハ第二ノ質問ニナリマス、餘リ
  シツコイコトヲ申上ゲマセヌガ、他ノ問題
  ニ付テ伺ヒマス、第一ニ蠶絲統制法案デ以
  テ農村ノ最モ大事ナ副產物デアル蠶絲ガ國
  家ニ全部抑ヘラレマス、此ノ會社ノ運用ニ
  付テ細カイコトデ御質問申上ゲタイ點モア
  リマスガ、ソレハ讓ルト致シマシテ、先ヅ
  玆ニ蠶絲ハ國家ノ手ニ抑ヘラレテシマフ、
  國家ノ自由ニナリマス、併シアナタノ仰シ
  ヤル通リ運用出來ルカドウカト云フコトハ
  私ハ非常ナ疑問ヲ持ツガ、先ヅ玆ニ蠶絲ヲ
  抑ヘル、米ハ國家ニ依ツテ管理サレテ居リ
  マイ、木材モ木材會社ノ統制ニ依ツテ相當
  ニ國家ノ干涉ヲ受ケルコトニナリマス、其
  ノ外ニ私ノ調ベル所ニ依レバ米穀應急措置
  ニ關スル法律案ノ改正ニ依リマシテ、米穀
  ノミナラズ混食又ハ代用品ニ付テモ、必要
  デアル場合ニハ强制買上ヲサレル、食糧、
  農產物及ビ其ノ加工品、米麥ソレカラ其ノ
  副產物、麵類マデモ國家ニ抑ヘラレル、併シ
  ナガラ木材統制案モ蠶絲統制案モ各〓其ノ
  特別ノ使命ガアリマシテ、是ハ洵ニ已ムヲ
  得ナイコトデアリマセウ、之ニ付テハ十分
  ナル理由ガアリマセウ、其ノ外總動員法ニ
  依リマスト、第四十七號ノ諮問案ニ於キマ
  シテハ生活必需物資ノ統制ニ關スル勅令案
  要綱ガ發表サレテ居ル、第四十八號ニ於キ
  マシテハ森林等ノ價格統制ニ關スル勅令案
  要綱ガ發表サレテ居ル、第四十九號ニ於キ
  マシテハ臨時農地價格ノ統制ニ關スル勅令
  案要綱ガ發表サレテ居ル、第五十號ニ於キ
  マシテハ臨時農地等ノ管理ニ關スル勅令案
  要綱ガ發表サレテ居ル、斯クノ如ク土地ガ
  管理セラレル、農產物ヲ生產スル其ノ本
  ガ管理サレテ居ル、農產品ノ最モ主ナル
  所ノ米麥其ノ外ノモノガ管理サレテ居
  ル、其ノ外山林ガ管理サレテ居ル、其ノ價
  格ガ管理サレテ居ル、サウスルト今ヤ農
  村ニ於ケル統制强化ト云フコトハ深刻
  ニナツテ來タ、併シナガラ此統制法案
  ト云フモノハ全部國家ノ必要カラ生ズ
  ルノデアリマシテ、其ノ法案々々各〓重大ナ
  ル使命ヲ持ツテ居ル、重大ナル使命ノ存ス
  ルコトハ分リマス、サウスレバ農村ニ殘ル
  仕事ト云フノハ何ガ殘ルカ、唯勞働ノミデ
  ハアリマセヌカ、自作農創定ト云フコトヨ
  リ論議セラレテ來タ、併シナガラ自作農創
  定ト云フモノハ農家ニ取ツテ蓄積ガナケレ
  バナラナイ、其ノ蓄積ガナケレバ自作農ヘ
  這上ル譯ニハ行カヌ、此ノ社會化ト云フモ
  ノハ旣ニ個人ノ利潤ト云フモノヲ或ル程度
  マデハ認メナイ思想デアリマス、其ノ個人
  ノ利潤ヲ認メナイ、國家ガ公平ニ「プール」
  ニ依ツテ配分サレルト云フコトヲ理想トス
  ルノデアリマス、ソレヲ內容トスル案デア
  リマス、斯クノ如クシテ進ンデ行ケバ、所
  謂資產階級「ブルジョア」ノ潰滅デアル、其
  ノ間ノ取引者ト云フモノノ廢止デアリマス、
  國家竝ニ國民、是ガ卽チ社會化ノ思想デア
  ル、斯樣ニ凡ユル方面カラ統制ガ强化セラ
  レテ、農民ニ殘ルモノハ單ニ勞働ダケデア
  ル、斯ウ云フ風ニナリマシタナラバ、一體證
  何處ニ農村ニ於ケル貯蓄トカ生活トカ云フ
  モノノ安定ガ得ラレルデアラウカ、何處ニ
  自作農ヲ誘致スベキ力ヲ農村ニ與ヘルデア
  ラウカ、何處ニ一體農村ニ感激ガアルカ、
  何處ニ國家ニ御奉公スルト云フ精神ガ勃興
  スルデアラウカ、唯統制案ノ如キモノデ抑
  ヘテ抑ヘテ行クト云フダケデハドウナルダ
  ラウカ、オ終ヒニハ此ノ政府ノ政策ニ對シテ
  呪ヒノ聲ガ揚ツテ來ナイダラウカ、政府ノ
  政策ニ對シテ協力スルト云フ其ノ精神ガ段
  段萎靡シテ來ハシナイカ、私ハ斯樣ナコト
  ヲ農村ノ方面カラ相當聞クノデアリマスガ、
  此ノ點ニ付テ非常ナ疑ヒヲ持ツノデアリマ
  ス、是ハ實ハ大臣ニ御伺ヒスベキ點デアリ
  マスガ、蠶絲局長ハ如何ニ御考ヘニナリマ
  スカ

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• 009・吉田清二

  ○吉田政府委員　統制ト云フコトハ見方ニ
  依リマスト、場合ニ依リマシテハ今小山サ
  ンノ仰シヤツタヤウニ一ツノ制限ト云フ風
  ニ見テモ差支ヘナイダラウト思ヒマス、隨
  ヒマシテ今例ニ擧ゲラレマシタ各種ノ統制
  等ニ付キマシテハ、形カラ見マストサウ云
  フコトモ言ヒ得ルト思フノデアリマスガ、
  他ノ土地デアルトカ米デアルトカ云フヤウ
  ナ方面ニ付キマシテハ、是ハ蠶絲トハ多少
  事情ヲ異ニ致シテ居リマシテ、專ラ是ハ全
  體的ノト申シマスカ、國民全體ニ公平ノモ
  ノヲ配給スル必要カラ或ル程度生產者ニ對
  シテノ制限ト申シマスヤウナ形ニナツテ居
  ルモノト考ヘルノデアリマスガ、蠶絲ハ
  其ノ點形ハ同ジヤウニモ見エルカモ知レマ
  セヌケレドモ、先程申シマシタヤウニ、趣
  意ト致シマス所ハ寧ロ社會全般、國民全般
  ノ爲ニ養蠶家ヲ抑ヘルト云フヤウナコトデ
  ハナクテ、是ハ寧ロ養蠶家自身ニ安心ヲサ
  セ、擁護サセル爲ニ、會社ガ寧ロ援護-
  防波堤ト申シマスカ、覆ヒヲシテヤル、斯
  ウ云フヤウナ考ヘ方ノ方ガ、餘程現在ノ事
  實カラ見マシテ、其ノ方ガ非常ニ私ハ强イ
  ト考ヘルノデアリマス、成程或ル程度値段
  ヲ決メテシマフト造ツタモノモ高ク賣レ
  ナイ、此ノ範圍ニシカ賣レナイト云フヤウ
  ナ見方ヲ致シマスレバ、是ハ折角造ツタ品
  物ガ、マダ高ク賣レル樂シミガアルモノヲ、
  如何ニモソレ以上ニハシナイヤウナ形ガア
  リマスカラ、サウ云フ見方カラ見レバ、非
  常ナ制限ニナルト見エルノデアリマスガ、
  寧ロ其ノ制限ト云フ意味ハ、此ノ法規ノ統
  制ノ趣意ト致シマスル所ハ、寧ロサウデハ
  ナクテ、ソレヲシナカツタナラバ、更ニ何
  處マデ行クカ分ラヌト云フノヲ寧ロ防護ス
  ル、斯ウ云フ考ヘ方、或ハ外カラ大浪ガ來
  ル虞ガ今日多分ニアル、大風ガ吹イテ來ル
  虞ガ多分ニアル、斯樣ナ浪風ニ曝シタ場合
  ニ於テハ、非常ナル打撃苦痛ヲ受ケナケレ
  バナラヌ心配ガアル、之ニ對シマシテ此ノ
  大浪、大風ヲ會社ガ支ヘテ行ク、斯ウ云フ
  意味デ出來テ居リマスシ、此ノ統制法ハ專
  ラサウ云フ趣意デ考ヘテ居リマス譯デゴザ
  イマス、併シナガラ是ハ見方ニ依リマスレ
  バ、小山サンノ仰シヤツタヤウナ形ニナリ
  マス、精神ヲ履キ違ヘマシテ、今後運用シ
  テ行クト云フヤウナコトニナリマスト、小
  山サンノ仰シヤツタヤウナコトニナル虞ノ
  アルコトハ、私モ認メルノデアリマス、能
  ク其ノ趣意ヲ履キ違へナイヤウニ、今後ノ
  運用ニ當リマシテハ、十分ニ注意ヲシテ行
  カナケレバナラヌモノト斯ウ云フ風ニ私
  ハ考ヘル次第デアリマス

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• 010・小山倉之助

  ○小山倉之助君　其ノ蠶絲ノ統制ニ付テハ、
  御趣旨ノ通リデアリマセウガ、ソコデ此ノ
  蠶絲ノ統制ニハ將來物價ヲ操縱スルニ付
  テ二ツノ「チャンネル」ガアル、一ツノ「チャ
  ンネル」ハ短纖維、片方ノ「チャンネル」ハ外
  國貿易デアリマス、ソレデハ八千万貫ヲ目標
  ニシテ宜イノカ、或ハモツト多クヲ目標ニ
  シテ行クカト云フト、輸出ノ「チャンネル」ガ
  大キクナレバ、外貨獲得ノミナラズ、將來
  ノ發展性ヲ更ニ大キクスルコトガ出來マス、
  ソレカラ此ノ短纖維ノ方ヲ擴張スレバ、所
  謂外國ノ纖維ニ依存シナイデ、日本獨特ノ
  經濟ヲ立テルコトガ出來ルノデアリマス、
  ヘコデ蠶絲局長ノ御答辯ニ依リマシテモ、
  之ヲ將來增產スルトカ增產シナイトカ云フコ
  トニ付テハ、中々御明言ニナルコトハ困難
  デアリマセウ、併シナガラ此ノ二ツノ「チャ
  ンネル」ヲ利用スルコトハ、私ハ非常ナ卓見
  ダト思フノデアリマス、此ノ點ニ寧ロ主力
  ヲ盡セバ、蠶絲ノ統制ハ非常ニ良ク出來ル
  ノデアル、ソコデ輸出ノ「チャンネル」ヲ通
  シテ、其ノ或ル時期ヲ-或ル時期バカリ
  デナク、所謂非常時ニ對スル對策、ソレカ
  ラ常時貿易ヲ促進スルト云フ方面ニ、努力
  セラレルト云フコト、是ハ萬全ヲ期シテ戴
  カナケレバナリマセヌ、ソレニ付テ此ノ蠶
  絲統制會社ニ、一手買上ノ輸出ダケヲ除イ
  タト云フコトハ、私ハ同時ニ非常ナ卓見ダ
  ト、此ノ點ニ付テハ敬服スル、將來ドレダ
  ケ捌ケルカ分ラヌガ、一方ニ於テ短纖維ノ
  方ニ轉化シ得ベキ「チャンネル」ガアルノニ、
  自由貿易ヲ基礎トスル外國ヲ相手トシテ、
  而モ商取引ノ非常ナ敏活ナル時ト、非常ナ
  ル裁斷ヲ要スルモノヲ、一ツノ國策會社ノ
  手ニ委ネルト云フヤウナコトハ、非常ニ商
  機ヲ逸スル、サウ云フ點ニ付テ十分考慮セ
  ラレマシタノハ、私ハ非常ナ卓見ダト存ジ
  マシテ、此ノ勅令案ニ於テ、サウ云フモノ
  ヲ除カレルト云フトハ結構ダト存ジマス、
  デスカラ此ノ二ツノ「チャンネル」ハ、利用
  サレルコトハ宜シイガ、併シ此ノ最モ困難
  ナ二ツノ「チャンネル」ヲ利用スル以外ニ、
  內地ノ一元的統制ト云フモノガ、果シテ成
  功スルカシナイカト云フコトヲ非常ニ疑フ
  ノデス、ソレハナゼサウ云フ疑ヒヲ持ツカ
  ト云フト、電力ノヤウナアア云フ固定的ナ
  モノデ、餘リ時ト云フモノヲ考ヘナイ「トラ
  ンスアクション」ト云フモノニ付テ、時ヲ
  餘リ要サナイ或ル固定設備ヲスレバ、其ノ
  動キニ依ツテ「スヰッチ」一ツデ動カシ得ル
  ト云フモノデサヘモ、非常ナ失敗ヲ招イダ
  ノデアル、片方ハ外國ヲ相手トセズ、內地ト云
  フコトカラ考ヘテモ此ノ統制ニハ時ト云フ
  コトガ非常ニ大切デアリマス一ツノ工場デ
  織物ヲ造ラウトシテ、其ノ「ロー·マティリア
  ル」ヲ外カラ仰グ今マデハ自然ノ取引デ非
  常ニ敏活ニ行ツダノガ今度ハ會社ノ取引ニ統
  一セラレマスカラ、所謂官僚ノ今マデノ仕事
  ノヤウニ、直グ判ヲ捺ストカ云フヤウナ譯ニ
  ハ行カナイ、其ノ原料ヲ內地單位ニ受ケナイ
  ト云フコトカラ、結局其ノ工場ヲ休マセナケ
  レバナラヌ、ソコニ國民全體カラ能率ヲ落ス
  ト云フコトガアリマス、サウ云フ所謂商取引
  ノ敏活ヲ缺クト云フコトハ、統制經濟ニ於テ
  時ノ觀念ト、モウ一ツハ人間ノ觀念、此ノ人間
  ト云フモノヲ見ナイ所ニ、私ハ非常ニ大キ
  ナ缺點ガアルト思フノデアリマシテ、其ノ
  時カラ生ズル所ノ缺陷、人間ヲ自由ニ働カ
  セナイト云フ缺陷ヲ補フト云フコトガ、先
  程申シマシタ「コール」トカ「シャハト」ト
  カ-「コール」ナドハ唯ノ理論家デアリマス
  ガ、「シャハト」ノ如キ統制ヲ實際ニヤツタ
  人カラ見ルト是ハ實際家ニ任セロ、專門
  家ニ任セロ、サウシテ權力ヲ與ヘヨ、斯ウ
  云フ思想カラ出テ居ルト私ハ思フ、又私共
  モサウ云フコトハ始終見聞キシテ居ル點デ
  アリマスガ、此ノ點ニ付テハ私ハ寧ロFs
  イツ」流ニ、餘リニ深キ統制ヲセズニ、ヤ
  ハリ「ヒトラー」ノ言ツテ居リマス通リ血ト
  キ或ハ「ムッソリーニ」ノ言ツテ居ルヤウナ
  「バットル·オブ·ホウイート」、麥ノ戰爭トカ
  云フコトデ、農民ヲ食糧增產ノ爲ニ或ハ土地
  ヲ愛シ、國家ノ爲メ國家ノ血トナル食糧ヲ
  增產スル爲ニ、唯抑付ケルバカリデナク、
  農民ヲ奮起サセルヤウナ一ツノ運動ヲ起ス
  必要ガアル、此ノ運動ハ單ニ官吏諸君ヤ會
  社關係ノ人バカリデナク、是ハ國民的運動
  トシテ、國家ニ必要ナ物資ヲ增產スル方向
  ニ農民ヲ向ケテ行ク、唯斯ウ云フ統制ヲシ
  ク、斯ウ云フ會社ヲ作ツタト云フダケデ、
  人間ノ心ハ動キマセヌ、統制ト云フコトハ、
  人間ガ働キ、時ガ働クヤウニ、時ト人間ヲ
  十分ニ働カセルコトニ、御留意ヲ願ハナケ
  レバナラヌト思ヒマス、「ロシヤ」ノ統制ノ
  如キハ單ニ理論カラ行ツタカラ失敗シタ、
  今日ハ又資本主義ニ還リツツアルト云フ文
  獻ヲ、私共ハ散見スルノデアリマス、「ドイ
  ツ」ノ統制ハ本當ノ必要カラ生レテ來タ、
  「ムッソリーニ」ノ統制モヤハリ實體カラ生レ
  テ來タモノデアル、今ヤツテ居ル日本ノ統
  制ノヤリ方ハ、丁度「ヒトラー」ノ出現スル
  前ノ、所謂共和政治ノ時代ニ行ハレタ國策
  會社主義、國有主義ニ。墮シテ居ルト思フ、
  何デモ國家ガ抑ヘナケレバナラヌ、斯ウ云
  フヤウナ思想ニ出テ居ルヤウデアリマス、
  私ハ昨晩一寸暇ガアリマシタカラ「ヒト
  ラー」ガ何カ言ツテ居リハシナイカト思ツテ
  「マイン·カンプ」ノ一部ヲ讀ンデ見マシタ
  ガ、「ヒトラー」ハ何處デモ交通機關ノ統一
  ニサヘモ反對シテ居リマス、而シテ國內ニ
  於テ其ノ當時動モスレバ起ツタ國有化政策或
  ハ國家管理、斯ウ云フコトニ付テハ全面的ニ
  〓ヒトラー」ハ反對シテ來タ、「シヤハト」ハ
  卽チ其ノ當時行ハレタ國有主義ノ事業ト云
  フモノヲ殆ド全部民間ニ下ゲタ、民間ニ下
  ゲタト云フノハ、國家統一ト云フコトハ「ペー
  パト·プラン」トシテハ宜イケレドモ、人間
  ガ働カナイ、時ヲ無駄ニスル、ダカラ今マ
  デハ政府ハ、詰リ先程申シマシタル通リ米
  穀デモ何デモ、自治統制デハイカヌカラ、
  結局國家ノ力ヲ借リタ、國家ノ力デモマダ足
  リナイカラ、寧ロ國民ニシテシマツタガ宜
  イデハナイカ、斯ウ云フ思想ニナリ勝チダ、
  殊ニ農村ニ於キマシテハ、個人ノ自覺ト云
  フモノニ最モ賴ラナケレバナラヌ、私モ農
  家ニ生レテ草刈モ致シマシタシ、芋掘モ自
  分デシテ居ルノデアリマシテ、農家ノ仕事
  ト云フモノハ天然ヲ相手ダ、何時モ休ム時
  ハ土ダ、何時デモ天然ニ親シンデ、時ヲ無
  駄ニシナイヤウニ働クノガ農家ノ勤メダ、
  農家ハ自由ヲ欲シマス、然ルニ先程申シマ
  シタ通リ、四方八方カラ凡ユル網ヲ以テ壓
  迫シタカラト言ウテ、農民ハ國家ノ爲ニ奮
  起スルモノデハアリマセヌ、此ノ運動ヲ先
  ヅ起サナケレバナラヌト思フ、此ノ間モ「イ
  タリア」ノ統制官ガ參リマシテ、一體日本ハ
  統制ヲドン〓〓ヤツテ居ルガ、統制ト云フ
  フモノハ國民的〓育ガ必要ダ、何ト申シマ
  シテモ今日吾々ノ國家ヲ組織シテ居ルノハ
  國民デアル、個々ノ國民ガ善イトカ惡イト
  カ云フノハ、突如トシテ法律ヲ出シテ、其
  ノ法律ニ從ハナイカラ惡イト斯ウ云フ、サ
  ウ云フ無實ノ罪人ヲ今日作ツテ居ルノデア
  リマス、恐ラク蠶絲統制法案ニ於テモ、色
  色ナ違反ニ依ツテ罪人ガ起ルコトモ想像セ
  ラレルシ、又此ノ最低最高ノ價格ヲ以テ、商
  賣ヲ限定シテ居ルヤウナコトカラ、會社ニ對
  スル不安モ起ルデセウ、將來ニ於テ會社統
  合ト云フコトモ私ハ想像セラレル、破產者
  モ想像セラレレバ、或ハ又ソレガ爲ニ轉業
  シナケレバナラヌ者モ生ズルト云フコトモ
  想像セラレマス、併シ斯樣ナコトハ、他ノ
  諸君ニ於テ十分〓究セラレマシタカラ、私
  ハ斯樣ナ點ニ付テ更ニ十分ナル御留意アラ
  ンコトヲ希望致シマシテ、私ノ質問ハ打切
  リマスガ、先程申上ゲタ私ノ大體ノ思想、
  所謂此ノ道ハ「ボリシェヴィズム」ニ通ズル道
  ダ、「ローマ」ニ通ズル道ニアラズシテ、「モ
  スクワ」ニ通ズル道デアル、ダカラ私ハ昨日
  ノ豫算ノ祕密會ニ於テモ一寸質問シタノ
  デスガ、其ノ思想ガ一步進メバ「ボリシェ
  ヴィズム」デアル、社會主義デアル、今日此
  ノ國家管理ト云フモノハ平氣デ行ハレテ居
  ル、私有財產ヲ制限スルト云フコトガ平氣
  デ行ハレテ居ル、サウシテ雨後ノ筍ノ如ク
  多クノ會社ガ出來テ居ル、私ハ農林當局ノ
  或ハ感情ニ觸レルカモ知レヌガ、近頃ドウ
  デスカ、栃木縣ノ何處カデ麻ガ生產セラレ
  ルト、其ノ麻ノ會社ガ出來タ、千葉縣ニ叺
  ガ出來ルト叺ノ會社ガ出來タガ、ソレニ農林
  省ノ一部ノ人ガ入ツテ居ル、製粉ノ統制ヲ
  シタ、其ノ製粉會社ハ販賣會社ノ所有權ノ
  一部ヲ管理スルモノデアル、價格ノ統制
  ト云フ名目ノ下ニ販賣會社ヲ作リマス、
  其ノ販賣會社ニハ農林省ノ某役人ガ、二万
  五千圓ノ高給ヲ取ツテ居ルト云フコトヲ、
  私ハ或ル方面カラ聞イタノデアリマス、
  社長ガ二万五千圓、農林省カラ入ツタ人
  ガ二万五千圓、五万圓ノ俸給ヲ單ナル販賣
  會社ノ社長ニ拂フト云フコトハ是ハド
  ウモ國家國民ノ政府ニ對スル信賴ヲ贏チ
  得ル所以デハナイ、統制經濟論者ガ言ツテ
  居ル統制經濟ニ於テ一番危險ナコトハ
  國民カラ信賴ヲ失フコトデアル、國民カラ
  信賴ヲ失ツタナラバ統制經濟ハ崩レル、統
  制經濟ハ國家ガ行フノデスカラ、其ノ國家
  ノヤリ方ガ國民ノ信賴ヲ置ケナイト云フコ
  トニナツタラ、是ハ崩レルノガ當然デアリ
  マス、デアルカラ斯樣ニ所有權ヲ或ル程度
  マデ制限シ、國家自ラ行フヤウナ斯ウ云フ
  形式ヲ取ツテ居ル場合ニハ、其ノ統制ハヤ
  ハリ必要ノ限度ニ止メナケレバイカヌ、或
  ル會社ガ生產スル、其ノ生產ノ販賣割當ヲ
  スルダケデアル、其ノ割當ヲスルノハ實
  業家カラ言ヒマスレバ、最モ低級ナ人間デ
  出來ルノデアリマス、然ルニワザ〓〓大キ
  ナ會社ヲ作ラシテ、五万圓ノ俸給ヲヤツタ、
  其ノ會社ヲ維持スル爲ニ御承知ノ通リ、
  俵ニ付テ九錢トカ何トカ云フ其ノ費用ヲ使
  フト云フコトハ、甚ダ農林省トシテ不純デ
  ナイカ、國家ノ〓糧ヲ管理シ、國家ノ農產
  物ヲ管理シ、而モ國家的統制ヲヤツテオイデ
  ニナルノデアリマスカラ、特ニサウ云フ方
  面ニ付テ御留意ニナツテ、國民ノ信ヲ失ハ
  ナイヤウナ態度ヲ執ルベキデハナカラウカ、
  私ハ米ノ問題デ總動員法委員會ニ於テ申上
  ゲタノデアリマズガ、是ハ「エンゲルス」ノ如
  キモ言ツテ居ル、所謂生產手段ヲ全部國家
  ガ持ツテシマヘ、「カルテル」モ獨占會社モ皆
  國家ニ集メテ、厖大ナ會社ヲ作ツテ、ソレ
  ニ任セル、所謂生產機關ハ國家ノ有給ノ官
  吏ヲシテ之ヲ整理サセヨウ、是ハ最モ極端
  ナ「エンゲルス」或ハ「カウツキー」ト云フヤ
  ウナ人ノ思想デアリマス、今日米ノ配給ハ、
  オ終ヒニハ月給取ヲ以テ配給サセヨウト云
  フヤウナコトガ計畫サレテ居ル、農林大臣
  ニ之ヲ質問致シマシタ所ガ、月給取ダトハ
  云フガ、米屋ヲ以テヤルノデアルト仰セラ
  レタ、米屋デアラウガ何デアラウガ、殆ド
  政府ノ機關デアツテ、其ノ政府カラ月給ヲ
  貰ツテ居ルノダカラ、官吏ト同樣デアリマ
  ス、文官試驗ヲ通過シテ役所ニ勤メテ居ル
  者ダケガ官吏デハナイ、米屋デアツテモ月
  給ヲ以テヤラセルナラバ、ヤハリ官吏デス、
  サウ云フヤウナ譯デ結局是デモカ〓是
  デモキカヌノカ、國民ハ皆惡イノダ、官吏
  ヨリ外ニ信賴スルモノハナイノダ、斯ウ云
  フ統制經濟ニナツテ行キマス、ダカラ結局
  米ノ配給ハ米屋ニ月給ヲ與ヘテ、其ノ範圍
  デ働ケト言フガ、月給取ニナレバ不親切ニ
  ナル、橫柄ニナル、サウシテ國民ヲ誤ラス
  ト云フコトニナリマシタナラバ、此ノ一億
  一心ヲ目標トシテ進ンデ居ル農林政策ト致
  シマシテハ、本當ニ私ハ注意スベキ點デハ
  ナカラウカ、モツト他ニ執ルベキ方法ガナ
  カラウカ、斯ウ云フ風ニ考ヘマス、偶〓、玆ニ
  近頃ノ農林省ノ立テラレテ居リマスル所ノ
  色々ノ案ハ、ドウシテモ私ニハ社會主義化
  ノ如ク思ハレル、其ノ理論モヤリ方モ殆ド
  同樣デアリマシテ、寸分違ハナイ、蠶絲局
  長ハ此ノ數日來ノ御答辯ニ依リマシテ、斯
  樣ナ御考ヘデナイ、殊ニ農林大臣、農林次
  官共ニ最モ信賴スベキ役人デアリ、同時ニ
  政治家デアツテ、私共最モ信賴スル、決シ
  テ「モスクワ」ニ通ズル道ヲ通ツテ居ル譯デナ
  イト云フコトハ十分諒トスルガ、ドウゾ是
  デ〓ヒ止メテ戴キタイ、此ノ思想ニ乘ツテ
  新シイ共產主義ノ運動ニ入リ易イ、サウ云
  フ譯合ヒデアリマスカラ、私ハ寧ロ〓ヲ乞
  フ意味合ヒニ於テ、斯樣ナ議論ヲ申上ゲタ
  次第デアリマスガ、私ノ質問ハ大體是デ終
  ルノデアリマス、私ノ只今申上ゲタコトニ
  付キマシテ、何カ御答ガアレバ仕合セデア
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=10

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• 011・吉田清二

  ○吉田政府委員　只今小山委員カラ御述べ
  ニナリマシタ事柄ハ、全ク御尤モノコトニ
  存ズルノデアリマス、私共大イニ同感致ス
  所デゴザイマス、凡ソ統制ニハ仰セノ通リ
  ヤリ方ノ如何ニ依リマスト、反面非常ニ危
  險ナ所ガアリマスカラ、御意見ノ所ハ十分
  諒承致スノデアリマス、要ハ運用スル人ノ根
  本ノ考ヘ方ガ今御話ニナリマシタヤウナ危
  險ナ方ニ墮シテ行クコトノナイヤウニ、極
  力留意致スコトニ注意シナケレバナラヌ、
  斯樣ニ感ズルモノデアリマス、今後此ノ制
  度ガ出來マシテ、先程モ申シマシタヤウニ、
  此ノ制度ハ無論今小山サンガ御心配ニナツ
  タヤウナ方向ニ向ケルコトヲ根本ニ考ヘテ
  仕組ンダモノデハ毛頭ナイノデアリマス、
  併シナガラ運用ノヤリ方如何ニ依リマシテ
  ハサウ云フ方ニ脫スル危險モナキニシモア
  ラズトモ考ヘマスノデ、十分其ノ點ハ政府
  トシテモ運用ニ誤リナキヲ期シテ行カナケ
  レバナラナイト云フコトヲ痛切ニ感ズル次
  第デアリマス

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• 012・小山倉之助

  ○小山倉之助君　分リマシタ、私ハ是デ終
  リマスガ、簡單デモ宜シウゴザイマスカラ、
  大體私ノ申上ゲタコトニ對シテ若シ大臣ニ
  御答辯願ヘレバ結構デアリマス

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• 013・高橋熊次郎

  ○高橋委員長　一寸高橋圓三郞君ト紅露昭
  君ニ御相談致シマスガ、高畠龜太郞君ハ委
  員外デアリマスケレドモ、當局者ニ對スル
  質問ヲ希望サレテ數日來委員會ニ御臨ミニ
  ナツテ居ラレマスガ、此ノ場合ニ許シテ御
  異議アリマセヌカ-ソレデハ高畠龜太郞
  君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=13

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• 014・高畠亀太郎

  ○高畠龜太郞君　委員外ノ私ニ發言ヲ許サ
  レマシタコトヲ感謝致シマス、此ノ問題ニ
  付キマシテハ數日來委員會ガ繼續サレマシ
  テ、大抵各部門ニ亙ツテ質問モ繰返サレテ
  居ルト思ヒマスカラ、サウ云フ點ハ重複ヲ
  避ケマシテ、主ニ製絲部門ニ付テ二三御尋
  ネシテ見タイト思ヒマス、特ニ私ノ御尋ネ
  シタイノハ、此ノ統制法ガ實施サレヨウト
  スル現在ノ過渡時代ニ於ケル關係業者ニ及
  ボシテ居ル當面ノ問題デアリマス、勿論是
  程ノ劃期的ノ變革デアリマスルカラ、養蠶
  業ニモ、製絲業ニモ、總テノ關係業者ニ大
  ナル影響ヲ及ボシテ居ルノデハアリマスル
  ガ、特ニ製絲業者ニ對シテハ深刻ナル影響、
  ト申シマスルヨリハ、近來ノ動キガ大イナ
  ル打擊ニナツテ居ルト云フコトハ當局モ御
  承知デアラウト思ヒマス、就中規模ノ小サ
  イ中小製絲業者ニ至ツテハ實ニ慘澹タル狀
  態ニ相成ツテ居ルノデアリマス、其ノ一二
  ノ例ヲ申上ゲテ見マシテモ、昨年ノ七·七禁
  令ガ出マシテ以來織物界ハ殆ド從來見タコ
  トノナイ程ノ大打撃ヲ受ケマシテ、數箇月
  間苦境ニ陷ツタコトハ御承知ノ通リデアリ
  やく、是ハ一見蠶絲業ノ關係ヲ離レテ織物
  業者ノ利害ニナツテ居ルカノ如ク御考ヘニ
  ナルカモ知レマセヌケレドモ、其ノ織物業
  者ノ打擊ト一番離スコトノ出來ヌ關係ガア
  ル爲ニ、同樣ノ程度ノ苦痛ヲ嘗メマシタノ
  ガ中小製絲業者デアリマス、ナゼカト申シ
  マスト、大規模ノ製絲業者、例ヘバ三社ト
  言ハレテ居ルヤウナ會社、其ノ他ノ設備ノ
  大キナ所ハ元來輸出本位デアリマシテ、殆
  ド內地機業家ト關係ヲ有シテ居ラヌノデア
  リマスルケレドモ、中小製絲業者ニ至ツテ
  ハ大抵內地ノ消費ヲ當テニ致シテ居リマス、
  隨テ內地向織物ノ賣行如何ト云フコトハ立
  チドコロニソコニ響イテ來ルノデアリマス、
  所ガアノ七·七禁令デ大ナル衝動、衝撃ヲ受
  ケマシテ、金額ニ至リマシテハ是ハ見方ノ
  相違デアツテ、色々ナ推測ガサレテ居リマ
  スルガ、一億數千万圓ノ打擊デアツタト言
  ビ、二億圓ヲ超シタ打擊デアツタト言フノ
  デアリマスガ、兎ニ角織物業者ガ損失ヲ蒙
  ツタ爲ニ、中小業者ノ賣ル絲ガ數箇月間ニ
  亙ツテ殆ド停頓シテ賣レナカツタノデアリ
  やく、斯ウ云フコトハドウモ商工當局ト農
  林當局トノ連絡ガ缺ケテ居タ爲メデハナイ
  カト思ヒマス、全然御打合セガナカツタモ
  ノトハ考ヘマセヌケレドモ、是程マデノ大
  ナル打撃ヲ製絲業者ガ受ケルト云フコトニ
  付テ、今少シ御認識ガ深カツタナラバ、何
  トカアノ際ニ是程マデノ事態ヲ惹起サセナイ
  デ濟ミ得ル方法ガアツタノデハナイカト思
  ヒマス、左樣ナコトデアリマシテ、今後ト
  テモ國內ニ使用スル纖維ニ付キマシテハ商
  工當局ト一層緊密ナル提携ノ下ニヤツテ行
  カナケレバナラヌト思ヒマスガ、差當ツテ
  サウ云フ種類ノ比較的規模ノ小サナ、而モ
  數ニ於テハ割合ニ澤山ニアル小製絲工場ノ
  嘗メテ居リマスル苦痛ノ中ノ一ツハ今囘ノ
  出荷制限ノ事柄デアリマス、是ハ大局上製
  絲ノ製品ヲ制限スル必要ヲ感ジテ、二種一
  出荷制限モ行ハレタコトデアリマスルカラ、
  此ノコトニ付テハ規模ノ大小ト組織ノ如何
  ニ拘ラズ、大局ノ上カラ言ツテ否定スルコ
  トノ出來ヌ事柄デアリマシテ、是ハ甘ンジ
  テサウ云フ制限ヲ受ケルト云フコトニ了解
  ヲシテ居ル譯デアリマス、ガ其ノ受ケ方ニ
  付キマシテハ、私ノ考へマスル所ニ依ルト、
  昨年農林當局ハ輸出絲奬勵ノ見地カラ、外
  貨獲得ノ見地カラ命今的ニ全國ノ製絲工場
  ヘ指圖ヲシテ、輸出生絲ヲ製造セシメタノ
  デアリマス、命令ヲ以テセシメタノデアリ
  マン、其ノ場合ニハ只今申シマシタヤウナ
  中小業者ノ或ハ內地ヘ賣リ、或ハ輸出ニ賣
  リ、有利ナ方面ニ振向ケテ居タ所ノ工場ヲ
  モ、悉ク輸出ノ實績ノ一度アツタモノハ命
  令ヲ下シテ、是レ〓〓ノ數量ハ必ズ輸出ニ
  向ケネバナラヌト云フコトヲ言ツタノデア
  リマス、又忠實ニ當業者ハ之ヲ守ツテ居ルノ
  デアリマス、忠實ニ守ツテ居リマスガ、内地へ
  賣ルナラバ、アノ際ハ內地ノ賣行ノ極メテ
  好イ時デアリマシタカラ、遙カニ高ク遙カニ
  有利ニ賣レルニモ拘ラズ、國策ニ順應スル
  爲ニ、農林省ノ方針ガソコニアル爲ニ甘ンジ
  テ輸出生絲ヲ挽イタノデアリマスカラ、少ク
  トモ今囘ノ出荷制限ニ付キマシテハ、此ノ
  昨年ノ政府ノ命令ニ依ツテ輸出ヲ致シマシ
  タ數量ヲ本トシテ、ソレノ八割五分、一割
  五分減ト云フコトヲ算出サレタ數量ニ相成
  ルベキ筈ト存ジテ居タノデアリマスガ、實
  際ハサウデナクシテ、過去三年ノ實績ノ八
  割五分ト云フコトニ決マツタヤウデアリマ
  ス、農林當局ハ當初ヨリサウ云フコトニナ
  ルコトガ適當デアルト御考ヘニナツタノデ
  ハナカツタモノト想像ハ致シマスガ、體
  是ハ純理カラ申シマスルナラバ、命令ヲ以
  テ製造セシメタモノノ數量ノ八割五分ニ當
  ラスコトガ適當デアツテ、何ノ根據モナイ
  過去三年ノ實績ノ八割五分ニサセルト云フ
  コトニ付テハ、ドウモ理解ノ出來ヌ事柄ト
  存ズルノデアリマスガ、此ノ點ハ當局ハド
  ウ御考ヘニナツテ居ルノデアリマスカ

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• 015・吉田清二

  ○吉田政府委員　昨年所謂七·七禁止令ノ
  結果ト致シマシテ、直接的ニハ織物業者ニ非
  常ナ打撃ヲ與ヘタ結果ニナリマシタガ、ソ
  レノミニ止ラズ、延イテハ其ノ原料ヲ作ツ
  テ居ル製絲業者ニ非常ナル打撃ヲ波及致シ
  マシタコトハ私共モ十分了承致シテ居ルノ
  デアリマス、此ノ問題ハ商工省方面ニ於キ
  マシテモ色々ト對策ヲ考究セラレマシテ、
  漸次七·七禁令ノ影響ノ緩和其ノ他落付カセ
  ルト云フコトニ付テ御努力ヲ願ツタノデゴ
  ザイマスガ、兎モ角斯ウ云ツタ國內ニ於ケ
  ル織物業竝ニ原料ノ製造家タル製絲業界ニ
  非常ナ打撃ト混亂ヲ惹キ起シマシタ事實ニ
  鑑ミマシテ、何トカ將來斯樣ナコトガ再ビ
  起ラナイヤウニ、又如何ナルコトガ起キマ
  シテモ左樣ナ際ニ業界ニ直接ノ打撃ヲ被ル
  コトノナイヤウニト云フ考ヘ方カラモ現在
  此ノ制度ニ致シマシタ理由ガ一ツアルノデ
  アリマス、今日國內ニ於キマシテモ非常時
  デアリマスカラ、大キナ國家目的達成ノ爲
  ニハ各種ノ制度施設ヲヤツテ行カナケレバ
  ナラヌ、七·七禁令ノ如キモ全ク其ノ趣意ニ
  出タモノデアリマス、是ハ申スマデモナク
  今日ノ時局柄國民ノ愼ムベキ所ヲ愼マセル
  ヤウナ趣意ノ下ニ出來タ制度デアリマス、此
  ノ制度自體ハ洵ニ結構ナ制度デアルト思ヒ
  マスガ、兎モ角一部ノ業界ニサウ云フヤウ
  ナ現實ノ打擊ヲ與ヘタコトハ事實デアリマ
  ス、隨ヒマシテ先程モ申シマスヤウニ、今
  後トモ斯樣ニ國內的ニモ色々ト國家最高ノ
  目的カラ割出サレタ各種ノ制度ガ出來、其
  ノ制度ノ結果ト致シマシテ一部ノ業界ニハ
  色々ト所謂打撃ト云ツタヤウナコトノ起キ
  ルコトモ豫想サレマス、斯樣ナ場合ニ業界
  ノ混亂不安ヲ極力ナクシテ行ク、斯ウ云フ
  風ニ考ヘタ點ガ此ノ制度ヲ立テタ一ツノ理
  由デアリマス、殊ニ國內ノ問題ノミナラズ、
  今度ハ外交轉換ト云フヤウナ對外的ナ一ツ
  ノ外交方針ノ轉換ト申スカ、サウ云フヤウ
  ナコトガ行ハレマシテ、今度ハ外カラノ脅
  威ト云フコトガ更ニ加ハリマシテ、斯樣ニ
  今後ハ外カラノ常時ノ脅威ガアリ、內ニ於
  テモ七·七禁令ノ打撃ハ緩和サレタニ致シマ
  シテモ、今後又如何ナルコトガ起キナイト
  モ限ラナイ、斯樣ナ兩方ノ點ヲ考ヘマシテ、
  斯樣ナ情勢下ニ於テ業界ヲ極力安固ナモノ
  ニシヨウト云フノガ此ノ制度ヲ作ルニ至ツ
  タ根本ノ動機デアリ理由デアルノデアリマ
  ス
  ソレカラ出荷制限ノ問題ニ付キマシテ、
  出荷シ得ル製絲家ノ範圍ヲ決メルノニ、昨
  年所謂出荷命令ヲ出シタ、昨年ハ內地ノ方
  ガ非常ニ有利デ、輸出ノ方ニ出スモノガ非
  常ニ不利デアツタ、其ノ時ニ已ムヲ得ズ政
  府ト致シマシテハ製絲家ノ一定範圍ノ人ニ
  對シマシテ輸出絲ノ出荷ヲ命令致シマシ
  タ、其ノ時ニ出荷命令ヲ受ケタ人ガ謂ハバ
  非常ニ損ヲ致シタト云フ事實ハ認メテ居ル
  ノデアリマス、今度其ノ逆ニ出荷制限ヲセ
  ザルヲ得ナイ情勢ニナツタ際ニ、此ノ出荷
  制限ヲサレル人ハ昨年命令ヲ受ケタ人以外
  ノ人ニ出スベキデアルト云フ御說御尤モト
  思フノデアリマス、吾々モ此ノ出荷制限ヲ
  致シマスノニ今高畠サンノ仰シヤツタヤウ
  ナ考ヘ方モ致シマシテ、大體昨年出荷ヲ致
  シマシタ實績ノ八割五分ト云フ風ニ決メ
  ルノガ適當デアラウカト思ツテ其ノ案モ考
  ヘタノデゴザイマス、理窟ハ一應サウ云フコ
  トニナリマスガ、併シ左樣ニ致シマスト、
  出荷シ得ル製絲家ノ人ノ範圍ガ非常ニ狹バ
  リマシテ、謂ハバ或ル特定ノ少數ノ人達ダ
  ケガ非常ニ多ク出荷出來ル、今日横濱、
  神戶ニ出荷致シマスモノハ比較的有利デ、
  內地ガ不利デアル、斯ウ云フ狀態ノ際ニ橫
  濱ニ皆出荷シタイノガ多勢デアリマス、其
  ノ時ノ制限ヲ昨年出荷ノ命令ヲ受ケテ非常
  ニ犧牲ヲ拂ツタ人達ニ有利ニナルヤウニ考
  ヘテヤルト云フコトハ一應御尤モニモ考ヘ
  ルノデアリマス、吾々ト致シマシテモ左樣
  ニ一應ハ考ヘタノデアリマスガ、是ハ結局
  其ノ有利ナ立場ヲ製絲家全體ガ公平ニ分配
  スルト云フヤウナコトモ一面考ヘナケレバ
  ナリマセヌシ、業界ノ色々ナ相談ノ結果モ
  成ベク人ノ範圍ヲ有利ナト申シマスカ、橫
  濱、神戶ヘ出シ得ル人ノ範圍ヲ今日ニ於テ
  相當擴メテ有利ナ立場ヲ公平ニ分ケルト云
  フヤウナ考ヘ方モゴザイマシタノデ、過去
  三箇年ノ間ニ於テ出シタモノノ平均ノ八割
  五分、サウスルト出荷數量ニハ大シタ違ヒ
  ハゴザイマセヌガ、出荷シ得ル人ノ範圍ニ
  於キマシテハ、相當廣クナツテ參リマス、
  此ノ人ノ範圍ヲ廣クスルカ、狹クシテ昨年
  犧牲ヲ拂ツタ人達ヲ本位ニ考ヘルカ、斯ウ
  云フ問題ニナルノデアリマスガ、現在出荷
  制限ト云フコトニ致シマシタノハ成ベク
  廣イ範圍ニ於テ其ノ出荷ノ利益ト申シマス
  カ、有利ナ立場ヲ受ケサセルコトガ宜カラ
  ウト云フ業界ノ輿論デモアリマシタノデ、
  ソレニ基キマシテ現在ノヤウニ決メタ次第
  デゴザイマス

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• 016・高畠亀太郎

  ○高畠龜太郞君　ドウモ其ノ點ガ私ニ腑ニ
  落チナイノデアリマス、昨年ノ出荷命令ニ
  依ツテ出荷シ、輸出命令ニ依ツテ輸出シタ
  モノダケニ行ケバ、頭數ガ少クナル、過去
  三年ノ平均デ行ケバ多クナルト云フコト自
  體ガ大ナル相違デハナイカト思フノデアリ
  マス、寧ロ反對ニ行ツタ方ガ一般ノ出荷シ
  夕者、輸出シタ者ニハ均霑スルコトニナリ
  マス、過去三年繼續シテ輸出シタモノハ〓
  シテ大製絲業者デアリマス、大製絲業者ハ
  輸出バカリデアリマスカラ、ドノ年ヲ取ツ
  テ計算致シマシテモ、大キナ開キハ出來ナ
  イノデアリマス、中小製絲業者ハ內地ガ好
  ケレバ內地へ出シ、輸出ガ好ケレバ輸出ヘ
  出スカラ、過去三年ノ平均ト、昨年ダケノ
  平均ハ大分違ツテ居ル、昨年ハ政府ノ命令
  ニ依ツテ犧牲ヲ拂ツテ輸出ニ變更ヲシタノ
  デアルカラ、少クトモ犧牲ヲ拂ツタ者ノ心
  持ニ適應スルヤウニ、ヤハリ昨年ノ數量ノ
  八割五分ダケハ認メテヤル、其ノ三年間ヲ
  平均スルト八割五分ガ三割ニモ當ラヌコト
  ニナツテ、殆ド有名無實ニ終ルカラ、昨年
  ノ政府ノ命令ニ依ツテ苦痛ヲ忍ンデヤツタ
  者ニ對スル八割五分ハ出荷ヲサセテヤルト
  云フ位ノ親切味ハ當然農林當局トシテ御持
  チニナラナケレバナラヌト思フノデアリマ
  ス、當業者關係ノ輿論ト言ハレマスケレド
  モ、當業者ノ輿論ト云ヘバ、恐ラク製絲組
  合聯合會アタリノ意向デハナイカト存ジマ
  ス、其ノ聯合會ノ意向ト云フモノカラシテ
  ガ、大體大組織ノ製絲ノ代表者ヲ以テ出來
  テ居ルヤウナ感ジヲ何時モ抱カセルヤウナ
  組織ニナツテ居リマスルシ、又中小製絲業
  者ノ聲ガ何事ニ付テモ甚ダ通リガ惡イノデ
  アリマス、デアリマスカラ、其ノ事柄ナド
  モ甚ダ實際ト副ハヌ事態ヲ生ジマシテ、
  要スルニ昨年苦痛ヲ忍ンダ者ガ甚ダ馬鹿
  ヲ見タヤウナ結果ニナツテ居リマス、併
  シ此ノコトヲ是レ以上追究致シマシテモ、
  大體ニ決マツタコトニ付テ今更變更ノ仕方
  ハナイ、是ハ非常ニ困難ナコトデアルト存
  ジマスガ、唯一ツ此ノ場合緩和シ得ル方法
  ト致シマシテハ、サウ云フ風ニ昨年政府ノ
  出荷命令ヲ忠實ニ守ツテ出荷シテ居ル者ノ
  數量ノ八割五分ガ過去二一年ノ平均ノ八割五
  分ニ屆カヌモノニ限ツテハ、昨年ノ八割五
  分ニシテ出荷セシメル、輸出檢査ヲセシメ
  ル、若シクハ一種ノ緩和方法ヲ執ツテ見ラ
  レルコトハ如何デアルカ、ソレ位ノ親切味
  ハアツテモ宜イノヂヤナイカ、是程ノ大打
  擊ヲ受ケテ居ル中小業者ニ對シテハ-併
  シ其ノ數量ガ今日出荷制限ヲスルト云フ時
  代ニ、甚ダシク大ナル影響ヲ及ボス程ノ增
  加デアルナラバ、是ハ大局ノ上カラ言ツテ
  容易ニ認メニクイ事柄デアリマスケレドモ
  其ノ點ハ業者ノ頭數ハ多イノデアリマスケ
  レドモ、幸ヒニ大體規模ガ小サイモノデア
  リマスカラ、全體カラ見マスルナラバ、先
  ヅ數量ト云フモノハ微々タルモノデアラウ
  ト思フノデアリマス、一人々々ヲ檢討スル
  コトハ今許シマセヌケレドモ、中ニハ三年
  平均ノモノモ、良イモノガ稀ニハアルカモ
  知レマセヌガ、要スルニ昨年ダケノ實績ノ
  八割五分ノ數量ガ三年平均ノ數量ニ達セヌ
  モノダケハ三年平均ダケニハ達セシメテヤ
  ル斯ウ云フコトニ扱ヒマシテモ全體ノ產
  額ヲサウ多ク增スコトニハナラヌト思フノ
  デアリマス、況シテ昨今ハ出荷制限ノ效キ
  目ガ現ハレテ參ツテ、寧ロ市場ニハ適品拂
  底ノ聲ヲ聞ク場合デアリマスカラ、此ノコ
  トニ付テハ當面ノ對策トシテ其ノ程度ノ緩
  和方法ハ講ゼラレナケレバナラヌモノデア
  ルト思フ、又當業者ノ聲トシテモ悲痛ナル
  要望ヲ聞クノデアリマスガ、當局トシテハ
  此ノ點ニ付テドウ云フ風ニ御考ヘニナツ
  テ居リマセウカ、ヤツテヤルト云フ御考へ
  ノ下ニ御調査ヲ進メテ貰フコトヲ私トシテ
  ハ切望ニ堪ヘヌノデアリマスガ、御考ヘノ
  程ヲ承ツテ置キタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=16

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• 017・吉田清二

  ○吉田政府委員　七〓七禁令ノ制定以後今
  日ノ織物業界ニ混亂ヲ來シマシテ織物業界
  ノ立直リガ相當遲延致シマシタ爲ニ、國內ノ
  生絲ノ賣行ト云フモノガ非常ニ圓滑ヲ缺キ
  マシタ、其ノ爲ニ國內向ノ生絲ヲ製造スル
  者ガ非常ナ無理ナ狀態ニ立ツタノデアリマ一ガ昨年ノ暮、本年ノ初メニ當リマシテ、漸次
  ス、政府ハ外貨獲得、輸出振興ノ見地カラ
  絲價維持ニ努メテ居ルノデアリマス、斯樣
  ナ國內事情ニ引摺ラレテ輸出生絲ガ下ルヤ
  ウナコトニナツテ、外貨獲得ニ遺憾ノ點ガ
  アツテハナラヌト云フ考ヘ方カラ輸出向生
  絲ニ對シテ價格ノ維持ヲ致シテ居ルコトハ
  御承知ノ通リデアリマス、斯樣ナ關係カラ
  横濱ニ出シテ輸出向ト申シマスカ、帝蠶ニ
  賣レバ相當値ニ出ルト云フ事實ノアルコト
  モ尤モデアリマス、併シナガラ此ノ絲價維
  持ハ其ノ後相當ノ金額ヲ以テ繼續致シテ居
  ルノデアリマスガ、何トカシテ此ノ政府ノ絲
  價維持ノ爲ニ使ツテ居ル金ヲ細ク長ク
  ケチニ申スノデハゴザイマセヌ、細ク長ク
  之ヲ使ツテ行ク、長ク掛ツテ市價ヲ維持ス
  ルト云フ效果ヲ擧ゲタイト云フ見地カラ、
  一時ニ橫濱神戶ニ賣レバ結局輸出トハ申
  シマスルガ帝蠶へ持ツテ行クト云フ形ニナ
  リマシテ其ノ爲ニ大急ギデ絲ヲ挽イテ橫濱、
  神戶ヘ出ス、斯ウ云フコトデハ折角ノ市價
  維持資金ガ極メテ短期間ニ使ハレテシマフ、
  サウシテ絲ノ相場ハ浮上ラナイ、外貨獲得
  上非常ニ損デアル、斯ウ云フヤウナ狀態カ
  ラモツト此ノ趣意ガ合理的ニ進ミマスルヤ
  ウニ色々ト考ヘマシタ結果、是ハ細ク長ク
  出サセテ、長ク絲價維持ヲシ得ルヤウナ、
  要スルニ效果的ナラシムルヤウニ吾々ハ考
  ヘマシテ、出荷ニ或ル程度ノ犠牲ト云フコ
  トヲ考ヘタノデアリマスガ、是ハ早クカラ
  考ヘタノデアリマスケレドモ内地ノ方ノ消
  費ノ圓滑ガ、依然トシテ停帶シテ居ルヤウ
  ナ狀態ノ際ニヤルコトハ、却テ國用ノ方ニ重
  リヲ掛ケルヤウナ逆結果ニナルコトヲ惧レ
  マシテ、其ノ時機ヲ見テ居ツタノデアリマス
  國用ノ方モ立直ツテ參リマシタ情勢ニナリ
  マシタノデ、ソコデ始メテ出荷制限ト云フヤ
  ウナコトヲ致シタノデゴザイマス、此ノコ
  トニ付キマシテハモウ少シ早クカラヤル方
  ガ宜カラウト云フコトデ考ヘテハ居ツタノ
  デアリマスガ、其ノ副作用ヲ惧レテ延バシ
  テ居ツタノデアリマス、幸カ不幸カ內地ガ
  動キ出シテカラト云フコトデヤリマシタ所
  ガ、幸ヒニ今日今御話ノ通リ生絲ノ相場モ
  浮上ツテ參リマシタ、輸出ノ生絲ノ相場モ
  相當浮上ツテ來マシテ效果ハ現ハレテ居ル
  モノト思ヒマス、國用生絲ノ方面モ動キ出
  シテカラヤリマシタ關係上、橫濱、神戶ノ
  相場ガ浮上ツタニ伴レマシテ內地ノ方モ相
  當活況ヲ呈スルヤウナ現狀ニナツテ參ツテ
  居ルノデアリマス、隨ヒマシテ、先程御話ニ
  アリマシタヤウニ、今日デハ漸次横濱ニ出
  スノモ內地ニ賣ルノモ價格ノ點ニ於テハ左
  程隔タリガナイヤウニ、要スルニ損得ノ關
  係デハ漸次甲乙ナシト云フヤウナ傾向ニナ
  リツツアルノデアリマシテ、是ハ主トシテ
  私共此ノ出荷制限ヲヤリマシタコトガ動機
  ニナリマシテ、是ガ確實ニ行ハレルト云
  フ、市場心理ニ對シマシテ左樣ナ好影響
  ヲ與ヘテ居ル結果ダラウト想像致シテ居ル
  ノデアリマス、今御話ノ點ハ此ノ數量其ノ
  他ニ付テ見マスレバ僅カナ數量カト思フノ
  デアリマスガ、玆ニ折角定メテ嚴重ニ實行
  致シテ居リマスル此ノヤリ方ヲ、實際算盤
  ヲ彈イテ今高畠サンガ仰ツシヤツタヤウナ
  風ニ致シマシテドレダケノ數量ガ出ルカ、
  僅カノ數量デアルカモ存ジマセヌガ、之ヲ
  變ヘル、緩和スル、嚴重ニ出荷制限ヲ厲行
  シテ居ルト云フ此ノ信賴カラ相場ガ浮上ツ
  テ居ル際ニ、幾分ナリトモ之ヲ緩和スル、
  之ヲ模樣替ヘスル、サウシテ緩和スル、其
  ノ爲ニ出荷ガ增ス、其ノ數量ハ僅カデアツ
  タニ致シマシテモ、斯樣ニ緩和スルト云フ
  コト自體、今日相場ヲ持上ゲテ居ル此ノ人
  氣、卽チ市場心理ニ非常ナ惡影響ヲ及ボシ
  ハシナイカ、斯樣ナ點ヲ懸念スルノデアリ
  マス、斯樣ナ見地カラ御話ハ御尤モノ點モ
  アルト思ヒマスガ、此ノ際現在定メテ實行
  シテ居ルヤリ方ヲ變ヘルコトハ適當デナカ
  ラウト考ヘテ居ルモノデアリマス、サウシ
  テ先程申シマシタヤウニ內地ノ方ノ相場モ
  相當上ツテ來テ居ルヤウデアリマスカラ、
  橫濱、神戶へ出荷致シマスルモノガ制限サ
  レタ爲ニ、內地ニ賣ラナケレバナラヌモノ
  トノ兩者ノ間ノ利害ノ關係ハ漸次差ガ無ク
  ナツテ參ツテ居ルヤウナ實情デアリマスカ
  ラ、此ノ際强ヒテ今行ツテ居ルヤウナ出荷
  制限ノヤリ方ヲ緩和スル意味ニ於テノ修正
  ト云フコトハ寧ロヤラヌ方ガ宜シイ、斯樣
  ニ見テ居ル者デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=17

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• 018・高畠亀太郎

  ○高畠龜太郞君　サウ致シマスト、玆ニ持
  越繭ニ付テ甚ダ困ツタ事態ガ生ジテ來ハセ
  ヌカト思フノデアリマスガ、當局ハ先日來、
  他ノ委員會ノ質問ニ對シテモ、昭和十五年
  產ノ繭ハ絲價維持ノ爲ニ現在出荷ヲ制限致
  シテ居ル結果持越トナツテ、十六年六月以後
  ニ殘ルモノガ生ズル、ソレニ付テハヤハリ
  大局的ニ絲價維持ノ爲ニサウシタモノデア
  ルト云フ見地カラ、又其ノ他ノ理由カラ兎モ
  角絲價維持ヲ中心トシテ十五年產ノ繭ハ十
  六年六月以降ニ亙ツテモ千三百五十圓ト云
  フ現在ノ絲價維持標準値ニ副フヤウニ生絲
  ヲ買上ゲルカラ同ジ理窟ニナルト云フ御說
  明ヲ繰返サレテ居ルノデアリマスガ、今言
  ハレマシタヤウナ風ニナリマスルト、中小
  製絲業者ノ輸出制限ヲ受ケテ居リマス者カ
  ラ言ヘバ之ヲ引離シテ六月以後マデ待ツテ、
  或ハ七月、八月、九月ニ亙ツテ初メテ千三
  百五十圓ニ相當スル生絲ヲ賣ル途ガ開ケル
  ヤウナ感ガスルノデアリマシテ、當分之ニ
  出會フコトガ出來ヌノデアリマス、然ルニ
  大規模ノ所デアリマシタナラバ、サウ云フ
  手モ事實上利クカモ知レヌノデアリマスガ、
  先刻來申シテ居リマス程度ノ中小業者ニ致
  シマシテハ假令其ノコトガ六月以降確實ニ
  行ヒ得ルモノト致シマシテモ、一月二月ヨ
  リ五月ニ至ル數箇月間生絲ヲ製造セズ、或
  ハ製造シタ生絲ヲ賣ラズニ持越スト云フコ
  トハ、理窟ノ上デハドウトモ言ヘルカモ知
  レマセヌガ、實際ニ於テハ不可能ナコトデ
  アリマシテ、ミス〓〓內地へ安ク賣ル外ナ
  イノデアリマス、內地ノ生絲ノ價格ガ接近
  シタト言ハレマスケレドモ、尙ホ今日ニ於
  キマシテモ十四中「エー」格ハ輸出ニ於テ千
  四百十圓デアリ、同ジモノガ內地へ向ケレバ
  ヤツト千三百圓デアリマス、二十一中「エー」
  格ハ輸出ニ賣レバ千三百二十圓デアリ、
  內地へ向ケレバ恐ラク千二百七、八十圓ヲ
  出ヌモノト思ヒマスカラ、尙ホ多大ノ懸隔
  ヲ生ズル、ソレダケノ懸隔ガアルニ拘ラズ、
  所謂大局ニ順應スルト云フコトノ爲ニミス
  ミス內地へ安ク賣ラネバナラヌ實情ニ出會
  ツテ居ルノデアリマス、是ハ理窟ノ上カラ
  ハ六月以降マデ持越セバ絲價維持ノ千三百
  五十圓ト云フ價格ニ均霑シ得ル理窟デハア
  リマスケレドモ、實際ハソコマデハヤリ切
  レヌト云フ實情デアリマス、其ノ事ハ當局
  モ恐ラク御考ヘニナリ得ル事態デアルト
  存ジマスルガ、ソレデモ只今ノ如キ御考へ
  デ進マレルコトハ私トシテハ甚ダ遺憾ニ存
  ズルノデアリマシテ、願クハ今一層愼重
  ニ、少クトモ調査ヲシテ見ラレル必要ガア
  リハシナイカト思フノデアリマス、尙ホ假
  ニ今ノ御說明ノ如キモノト致シマシテモ持
  越繭ヲ今ノ當局ノ言明ヲ忠實ニ守ツテ六月
  以降ニ所有致シマシタトシテ、ソレガ今度
  ノ機構變革ノ爲ニ不幸ニモ輸出向ノ生絲ト
  ナラズシテ內地向工場ニ指定サレマシタ場
  合ハドウナリマスカ、恐ラクサウ云フ規模
  ノモノハ、私ノ考ヘマスル所ニ依レバ大部
  分內地向生絲ヲ製造スルコトニナルノデハ
  ナイカト思ハレマスガ、サウシマスト表面ハ
  絲價維持ノ爲ニ千三百五十圓ト云フモノガ
  輸出ニ於テ堅持サレマスガ、內地向ニナレ
  バ恐ラクソレヨリ相當安イ價格ニナルコト
  ハ明カデアリマス、持越シタ繭ガ絲價維持
  ノ價格ニ均霑スルト云フコトハ有名無實デ
  アツテ、生絲ノ製造ノ向ケ方ガ變ツタ爲ニ
  何トモ話ニナラヌ結果ヲ見ハシナイカト云
  フコトヲ惧レルノデアリマスガ、農林當局
  ハ此ノ點如何ヤウニ處置ナサラウトスルノ
  デアルカ、假ニソレガ國用生絲工場ニ指定
  サレタト致シマシテモ、其ノ持越繭ニ付テ
  ハ千三百五十圓ニ相當スル價格ニ生絲ヲ賣
  リ得ル途ヲ開カレル御積リデアルカ、明確
  ナル御考ヘヲ伺ヒタイノデアリマス、今
  ツ是モ關聯シタコトデアリマスカラ御尋ネ
  シテ置キマスガ、製絲組合聯合會ニ於テ此
  ノ際減釜ヲ行ハウトシテ居ルコトハ御承知
  ノ通リデアリマス、減釜ヲ行ヒマシタ結果
  廢業致シマシタ工場ノ六月以降ニ亙ル持越
  繭ノ處理ニ付テ何カ適當ナ方法ヲ以テヤハ
  リ千三百五十圓ト云フ標準ニ繭ヲ處理シ得
  ル途ヲ開カレル御考ヘデアリマスカ、重要
  ナル事柄デアリマスノデ、此ノ際御明答ヲ
  煩ハシタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=18

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• 019・吉田清二

  ○吉田政府委員　出荷制限ニ依ツテ製造販
  賣ヲ或ル僅カナ數量、繰延ヲセザルヲ得ナ
  イヤウニナツタコトニ對スル或ル程度ノ苦
  痛ハ諒承致シマス、併シナガラ繰延ベタ僅
  カノ數量ノ生絲ニ付テノ面ダケヲ御覽ニナ
  ツテ貰ツテハドウカト思フノデアリマス、
  例ヘバココデ百俵出スモノガ八十五俵シカ
  出セヌコトニナツタ、今高畠サンノ仰シヤ
  ツタノハ少シ別ナ理由モアツタノデアリマ
  スガ、ソコデ十五俵今月賣リタカツタモノ
  ガ來月ニナツタ、六月マデニ片付クモノヲ
  七月マデ掛ツテ、或ル程度延バシテ賣ラナ
  ケレバナラナクナツタコトニ對スル不平ノ
  ヤウニ考ヘマスガ、十五俵ヲ延バスコトニ
  依ツテ八十五俵全體ノ値ガ浮上ツタ利益ト
  云フコトモオ互ヒ考ヘテ貰ハヌト困ルノデ
  アリマス、十五俵ハ今月早ク片付ケル積リ
  デアツタモノヲツイ延バサレテ出荷出來ナ
  カツタ、ソレダケヲ見マスルト成程無理デ
  アリ苦痛デアルヤウニ見エマスガ、後ノ八
  十五俵全體ガ其ノ結果トシテ値ガ浮ビ出テ
  全體ノ値上リニナツテ居ルト云フ事實ヲ御
  考ヘ願ヘレバ、私ハ先ニ延バサレタ荷物ニ
  對スル苦痛ト云フモノヲ緩和シテ、感ジテ
  貰ヘルト思フノデアリマス、狙ヒハ延バス
  コトデ窮屈ニサセルト云フコトニアルノデ
  ハナイ、果シテソレデ先程申シマシタヤウ
  ニ相當效キ目ガアリマシテ、相場ガ上ツタ、
  八十五俵全體ノ荷物ガ、十圓、二十圓ヅツ
  値ガ動イタ、ソレヲ遮二無二今月片付ケナ
  ケレバナラヌトスレバ、全體ノ荷物ノ「レベ
  ル」ガ下ツテ居ツタデアラウモノガ、サウ云
  フコトヲシタコトニ依ツテ上ツテ居ル、此
  ノ點ノ利益ハ默ツテ置イテ、延ビル方ノ苦
  痛ダケヲ論ズルヤウナコトデハ私ハ何時ニ
  ナツテモ製絲家ノ方ハ--中々價格維持ト
  云フコトハウマク行カヌト思フノデアリマ
  ス、是ハ何モ高畠サンダケノコトヲ言フノ
  デハナイノデアリマス、ココニハ大製絲、
  中小製絲色々デゴザイマス、斯ウ云ツタヤ
  ウナ點ヲ一ツ製絲家各位ニ於テ御考ヘ願ヘ
  ルナラバ、不平ト云ツタヤウナ點モ餘程緩
  和シテ御感ジ願ヘルコトト思フノデアリマ
  ス

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• 020・高畠亀太郎

  ○高畠龜太郞君　ソレハ仰シヤルヤウニ八
  十五俵ガ有利ニ賣レテ十五俵ガ殘ルナラ問
  題ハナイ、ソレ位ノ苦痛ハ何人ト雖モ斯ウ
  云フ時局デスカラ忍バナケレバナラヌノデ
  アリマスガ、先刻來言フヤウナ立場ニ居ル
  者ニ限ツテ十五俵ダケダガ有利ニ賣レテ、
  八十五俵ヲ持越スヤウナ結果ガ出テ來ルノ
  デアリマスカラ御考ヘ願ヒタイト云フ譯デ
  アリマス、尙ホ此ノ點ニ付テハ御〓究ヲ願
  ヒマス
  次ニ今度ノ新組織ニナリマシテノ繭配給
  ノ點デアリマスガ、製絲原料トシテ配給ナ
  サル繭ハ全國ノ數量ガドノ程度ニナリマス
  カ分リマセヌケレドモ、兎モ角出來タダケ
  ノモノヲ全國的ニ一定ノ率ヲ以テ御分ケ
  ニナルモノト私共ハ承知シテ居リマス、然
  ルニ近頃府縣當局ノヤツテ居ル所ヲ見マス
  ルト、寧ロ府縣別ニ割據的ニ、例ヘバ長野
  縣ハ長野縣、大分縣ハ大分縣、愛媛縣ハ愛
  媛縣ト云フヤウニ、府縣ノ產額ヲ調査シテ、
  ソレダケハ縣內ニ保持シテ、縣內デ分配ヲ
  スルト云フ考ヘ方ニ多クノ府縣當局ハナツ
  テ居ルノガ事實ナノデアリマス、是ハ恐ラ
  ク本省ノ方針ガ徹底致シテ居ラヌ、中間
  デアルカラサウ云フ事態ヲ生ジテ居ルノ
  デハナイカト存ジマスルガ、若シアア云
  フ風ニ行キマスルト、甚ダ不自然ナ結果ヲ
  招來スルノデアツテ、製絲業者ノ多クシテ、
  產額ノ少イ所ハ極メテ僅少ナ割當ニナル、
  然ラザルモノハ割合多量ノ割當ヲ見ルヤウ
  ニ相成リマシテ、益〓此ノ過渡期ニ於ケル物
  ノ調節ヲ不圓滑ナラシメル惧ガアルト思フ
  ノデアリマス、私ハ其ノ實例ヲ知ツテ居ル
  ノデアリマスガ、或ル府縣ニ依リマスルト、
  旣ニ製絲業者ニ對スル割當ヲモ縣當局デ取
  極メテ、ドノ工場ニハドレダケシカ渡サヌ、
  或ハ自分ノ縣カラ他ノ縣ヘ從來出シテ居タ
  數量ノ一割カ二割位シカ渡サヌト云フヤウ
  ニ、府縣ガ割據主義ニナツテ居ルト云フヤ
  ウナ事態ヲ生ジツツアルノデアリマスルガ、
  是ハ本省ノ方針ハ勿論サウデナカリサウニ
  思ヒマスルケレドモ、ドウ云フ點デ府縣當
  局ノヤリ方ニ只今申シマスルヤウナ事柄ヲ
  出來セシメテ居ルノデアリマスルカ、承リ
  タイノデアリマス

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• 021・吉田清二

  ○吉田政府委員　會社デ一手ニ買取リマシ
  タ新シイ繭ノ製絲家ニ對スル配給ニ付キマ
  シテハ、地方的ニ、各縣「ブロック」每ニ縣內
  ニ公平ニ配給スルト云フ考ヘ方デナクシテ、
  全國一率ニ公平ヲ期スルト云フ考ヘ方デ進
  ミタイト思ツテ居ルノデアリマス、隨ヒマ
  シテ生產サレタ繭ヨリモ消費ノ多イ府縣ニ
  於キマシテハ、何レ他府縣カラ繭ヲ廻シテ
  來ル、今日マデモソレハ必ズ何處カ餘所ノ
  地方カラ買ツテ來テヤツテ居ツタニ違ヒナ
  イノデアリマス、大體自ラ途モ付イテ居ル
  コトト存ジテ居ルノデアリマシテ、大體從
  來ノ徑路ヲ辿リ、餘リ遠方カラ來テ居ルヤウ
  ナ地方ニ於テハ適當ニ之ヲ修正スル、原則
  トシテ先ヅ附近ノ縣カラ買ツテ居ルモノニ
  ハ附近ノ縣カラ廻ス、斯ウ云フヤウナ考ヘ
  方デ、全體的ニ國家ヲ一元トシテ繭ガ公平
  ニ渡ルト云フコトヲ考ヘテ居ルノデアリマ
  ス、今「ブロック」的ニ縣々デ公平ニ分ケテヤ
  ラウト云フ風ニ府縣ノ當局ガ考ヘテ居ルヤ
  ウダト云フ御話ハ私モ最近耳ニスルノデ
  ゴザイマスルガ、ソレハ何モ指示シタコト
  デハナク、唯ドウ云フ風ニ繭ガ出來、
  ドウ云フ風ニ消費サレ、ドウ云フ徑路デド
  ノ地方カラ今マデ買ツテ居ツタカト云フ實
  情ヲ色々ト參考ノ爲ニ聞イテヤツテ居ルカ
  ト思ヒマス、其ノ調ベヲシテ居ルダケノ話
  デアリマスルガ、何カ縣内ノ繭ハ縣內デ分
  ケルコトト云フヤウニ感違ヒヲシテ居ルノ
  ノデハナイカト想像スルノデアリマスガ、
  考ヘ方ハ決シテサウ云フ風ニハシテ居ラナ
  イト云フコトヲ申上ゲテ置ク次第デアリマ
  ス

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• 022・高畠亀太郎

  ○高畠龜太郞君　サウ致シマスルト、何レ
  今後產額ヲ御調査ニナツテ適當ナル分配ヲ
  ナサル、要スルニ其ノ考ヘ方ハ、全體ノ增
  減ハ別ト致シマシテモ、各府縣ニ分配スル
  配給ニ至ツテハ同ジ割合デ行クモノト考ヘ
  テ宜シウゴザイマスカ

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• 023・吉田清二

  ○吉田政府委員　製絲家ニ渡ル繭ノ數量ニ
  付キマシテハ、全國的ニ公平ニ分ケテ行ク
  ト云フ考ヘ方デ案ヲ立テル積リデ居ルノデ
  アリマス、是ハ製絲ノ各團體ノ會議ノ際ニ
  モ此ノ點ハ明瞭ニ申シテ居ルノデアリマ
  ス、併シマダ徹底致シテ居リマセヌガ、無
  論此ノ制度ガ出來ルト云フコトニナリマス
  レバ、直グニデモ業者ノ方ニ御集リ願ツテ、
  其ノヤリ方等ニ付テノ具體的方針ヲ定メ、
  書
  各府縣ノ技術者等モ集メテ、此ノ實行方法
  ニ付テトツクリト間違ヒノナイヤウニ致シ
  タイ、斯樣ニ今考ヘテ居ルノデゴザイマス

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• 024・高畠亀太郎

  ○高畠龜太郞君　繭配給ノ單位ハ、吾々ノ
  聞イタ所ニ依リマスルト、三百釜標準ニ行
  カウト云フヤウニ聞イテ居タノデアリマス、
  昨日他ノ委員ノ方カラアナタニ假ニ五百釜
  トスレバ云々ト云フ質問ガアリマシテ、別
  ニサウデナイト云フ御明言モナカツタヤウ
  ニ思ヒマスルガ、當局ノ考ヘハ三百釜ナノ
  デスカ、五百釜ナノデスカ

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• 025・吉田清二

  ○吉田政府委員　三百釜、五百釜ト云フコ
  トハ、大分間違ツテ傳ハツテ居ルカノ如キ感
  ガ致スノデアリマス、設備ノ大キイ製絲工
  場ニ對シマシテハ、此ノ會社カラ大口ナラ
  バ一人ノ製絲家ニデモ配給ガ出來ルト思ヒ
  マスガ、唯小サナ設備ノ製絲家ガ澤山アリ
  マスルノデ、此ノ會社カラ繭ノ配給ヲ致シ
  マスル際ニ、五百貫、七百貫ト小賣ヲスル
  ヤウナ賣リ方ハ餘程困難デアル、所ガソレ
  ガ圓滑ヲ缺ケバ兩方不便デアラウ、斯樣ニ
  考ヘマスルノデ、此ノ會社ト生絲ノ原料タ
  ル繭ノ賣買ヲスル單位ヲ、個人ノ製絲業者
  ニシナイデ、小サナモノハ組合ト云フ形デ、
  玆ニ一ツノ大キナ單位ヲ作ツテ貰ヒ、ソレ
  ヲ相手ニ卸賣的ニ、大量ノモノヲ一時ニ渡
  ス、無論ソレニハ各釜ニ付キマシテ公平ナ
  數量ヲ以テ計算シタモノヲ以テヤル譯デア
  リマスガ、大口ニ配給スルヤウニ致シタイト
  云フコトカラ、玆ニ固マツテ貰ヒタイ、要ス
  ルニ原料ノ購入、製品製造、生絲ノ販賣ノ
  關係ニ於テ固マツテ貰ヒタイト云フノガ骨
  子ナノデアリマス、ソレハドノ程度ト云フ
  コトデアリマスルガ、ソレハ大キケレバ大
  キイ程宜イノデアリマス、愛媛ナラ愛媛ノ
  大キナ人ガ總テノ小サナ人達ニ縣一圓デ集
  マツテ貰ツテ、全體デ此ノ會社カラ一擧ニ
  何十万貫ト配給シテ貰フヤウニ願ヘレバ益、〓
  結構ナコトト思ヒマスガ、サウ云フコト
  ハ實行ガ困難デアリマスノデ、出來得ル限
  リ購入スル小サナ製絲家ガ、會社ノ相手ト
  ナツテ賣買スル場合ニ、其ノ單位ノ數ヲ少
  クシタイ、斯ウ云フコトデアリマス、其ノ
  最小限度ドノ程度カト云フコトニ付キマシ
  テハ、先ヅ五百釜位ガ結構ト思ヒマスガ、
  三百釜程度デモ宜イ、基準トシテハ三百釜
  程度ト云フコトヲ一應ノ目標トシテ、サウ
  云フヤウニ纒マルヤウニ勸メテ居ルノデア
  リマス、併シソレガ五十釜足リナクテ、二
  百五十釜シカ纒マラナカツタト云フコトガ
  アツタト致シマスレバ、ソレモ已ムヲ得ナ
  イト思ヒマス、唯一ツノ纒メル基準ト致シ
  マシテハ、最初三百釜程度デハ如何ナモノ
  デアルカ、斯ウ云フコトヲ考ヘテ居ル標準
  ニ過ギナイコトヲ御諒解ヲ願ヒタイト思ヒ
  マス

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• 026・高畠亀太郎

  ○高畠龜太郞君　今一ツ御尋ネ致シテ置キ
  タイノハ、自然サウ云フコトニナリマシテ、
  今囘ノ機構變革ノ爲ニ何ト云ツテモ製絲業
  者ハ整理合同ヲシテ行ク必要ヲ生ズルノデ
  アリマシテ、殊ニ先刻來申シテ居リマスルヤ
  ウナ中小業者ハ此ノ場合合同ヲスルカ、或
  ハ繭配給ヲ受ケル上ノミカラ言ヘバ共同製
  絲組合ヲ作ツテ、繭ノ配給ヲ受ケルカ、何
  ニシテモ從來トハ違ツタ結合ニ依ツテ初メ
  テ生存シテ行クコトガ出來ル狀態ニナルト
  思フノデアリマス、サウ致シマスルト製絲
  業法ニ規定サレテ居リマスル一工場ノ釜數
  ハ百五十釜デアツテ、法實施前ノモノハ其
  ノ儘認メテアリマスルケレドモ、今後新ニ
  設置スル場合ハ百五十釜ト云フコトニナツ
  テ居ルノデアリマスルガ、斯ウ云フ非常ナ
  ル變化ノアツタ場合デアリマスルシ、又當
  業者モ此ノ大勢ニ順應シテ合同ヲシテ行カ
  ウ、減釜ヲ實行シヨウト云フ場合ニ生ジマ
  スル工場ノ併合ニ付キマシテハ、假ニ百五
  十釜以内ノモノガ土地ノ事情ニ依ツテ生ジ
  マシテモ、廢メル釜數ヨリ新ニ出來ル、合
  併サレタ釜數ガ多クナラヌ限リハ御認メニ
  ナル方針デアリマスルカ、御伺ヒシタイト
  思ヒマス

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• 027・吉田清二

  ○吉田政府委員　製絲工場ノ合併トカ整理
  トカ云フコトハ、直接ニ此ノ制度ノ上ニ於
  キマシテハ何ニモ考ヘテ居ラナイノデゴザ
  イマス、合併ノ問題ハ此ノ配給ノ問題トハ
  全然別デアリマシテ、配給ノ爲ニ單位ヲ少
  クシ、固マリヲ大キクシテ貰ヒタイト云フ意
  味ハ、合併ヲサセルト云フヤウナ考ヘ方デ
  ハ毛頭ナイノデアリマシテ、此ノ制度ト致
  シマシテハ、左樣ナ場合ヲ豫想シテ考ヘヲ
  決メテ居ル所ハ一ツモナイノデゴザイマス、
  斯ウ云フコトニナリマスレバ、漸次自然的
  ナ傾向トシテ、合同スル方ガ宜カラウト云
  フ自發的ナ各業者ノ考へ方デ合併サレルト
  云フヤウナ傾向ハ起ルカト存ジマスルガ、
  ソレハ決シテ此ノ制度デ企業ノ合同ト云ツ
  タヤウナコトハ何ニモ考ヘテ居リマセヌト
  云フコトヲ御諒解ヲ願ヒタイト思ヒマス

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• 028・高畠亀太郎

  ○高畠龜太郞君　勿論此ノ法自體ニ企業ノ
  合同ト云フ意味ハ含マレテ居ラヌノデアリ
  マスルケレドモ、是ノ運用ト、今後蠶絲界
  ノ進ンデ行キマスル方向カラ見マスルト、
  ドウシテモ小規模ノモノハ整理合同ヲスル
  ノ外ナイコトニナルト思フノデアリマス、
  デスカラサウ云フ場合ニヤハリ從來ノ百五
  十釜ト云フアレヲ堅持サレルノデアリマス
  ルカ、或ハ此ノ製絲聯ノ行ツテ居ル減釜ヲ
  實行スルニ付テハ、多少緩和シテ認可ヲ與
  ヘヨウト云フ御考ヘヲ持ツテ居ラレルノデ
  アルカ、此ノ製絲聯ガヤツテ居リマスル事
  柄デモ、全然農林省ガ御承知ニナツテ居ラ
  ヌノトハ違ツテ、始終農林省トハ緊密ナ提
  携ヲシテ、本旨ニ副フ如ク行ヒツツアルモ
  ノト思フノデアリマスカラ、サウ云フ減釜
  ノ計畫ガ各地方ニ於テ實現シマスル場合ニ、
  小サナモノガ、例ヘバ五十釜、七十釜、百
  釜ト云フヤウナモノガ集ツテ、サウシテ釜
  ヲ減シテ尙ホ殘ラウト云フモノノ合同サレ
  タ會社ガヤハリ百五十釜以內ノ場合デハイ
  ケナイノデアリマスルカ、多少ソレハ緩和
  シテ考ヘテヤツテモ宜イト云フ御方針ナノ
  デアリマスカ、此ノ點ヲ伺ヒタイト思ヒマ
  ス

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• 029・吉田清二

  ○吉田政府委員　今モ申シマスヤウニ、ソ
  レハ直接ノ制度トシテ考ヘテ居ルコトデハ
  アリマセヌノデ、今此處デハツキリ申上ゲル
  程考ヘガ纒マツテ居ルノデハゴザイマセヌ、
  併シ製絲業法ニ依リマスト新シイ免許ハ百
  五十釜ト云フコトニナツテ居リマスカラ、
  是ハヤハリ規則ヲ變ヘザル限リハソレデ行
  クヨリ仕樣ガナイト思フノデアリマス、併
  シ今斯ウ云フ變革ノアル時代デアツテ、已
  ムヲ得ザル結果トシテ出來テ來ル、ソレガ
  一釜缺ケタガ故ニ免許相成ラズト云フヤウ
  ナコトハ餘程實情ニ合ハヌノデアツテ、無
  理デアルト云フコトデアリマスレバ、十分
  考ヘマシテ適當ニ善處スルヤウナ途モ講ジ
  タイトハ考ヘマスガ、兎ニ角現在ハ新シク
  合併又ハ新設シテ新シイモノヲ作ル場合ニ
  ハ、先ヅ百五十釜ト云フ基準ガ現在ノ制度
  トシテハゴザイマスカラ、ソレデ行クヨリ
  外ナイト考ヘマス

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• 030・高畠亀太郎

  ○高畠龜太郞君　マア此ノ釜數ノコトバカ
  リデハゴザイマセヌガ、何分是程ノ變化ノ
  場合デアリマスカラ、色々細カク言ツテ行
  ケバサウ云フ細カイコトガ生ジテ來ルダラ
  ウト思ヒマス、關係各業者ニ一時ニ大ナ
  ル苦痛ヲ感ゼシメヌヤウニ、農林省ト致シ
  マシテ及ブダケ善處シテ戴キタイト云フコ
  トヲ希望致シテ置キマス、尙ホ色々トアリ
  マスケレドモ、餘リ細カイコトヲ此處デ申
  上ゲルコトハ避ケタイト思ヒマスノデ、ソ
  レハ各局課ニ就イテ御尋ネスルコトハアル
  ト存ジマスガ、私ノ質問ハ之ヲ以テ終リト
  致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=30

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• 031・高橋熊次郎

  ○高橋委員長　高橋圓三郞君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=31

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• 032・高橋圓三郎

  ○高橋(圓)委員　私ハ先般來質問ヲ伺ヒマ
  シテ、私ガ特ニ伺ハナケレバナラヌト思ツ
  テ居リマシタコトモ大體ハ御伺ヒ致シタノ
  デアリマスガ、併シ私ガ素人デアル爲ニ十
  分理解シ得ナイノカモ知レマセヌガ、尙ホ
  念ノ爲ニ今一應當局ノ御意見ヲ質シテ置キ
  タイ點ガゴザイマスノデ、二、三簡單ニ御
  尋ネヲ致シタイト思ヒマス
  從來ノ養蠶業指導ノコトデゴザイマス、
  是ハ私共ノ地方ハ特約取引ガ殆ド大部分デ
  アリマス、デ實際ハ今度ハ特約取引ガナク
  ナルト云フコトニナルト思ヒマスガ、此ノ
  養蠶業ノ指導ハ養蠶團體ガ從來デモヤツテ
  居リマスガ、之ニ一ツ此ノ機會ニ一元的ニ
  ヤラセル、サウシテ之ニ對シテ政府ナリ會
  社ナリカラ適當ノ助成ヲサレルト云フヤウ
  ナ方法ニシテ戴キタイ、斯樣ナ意向ガ相當
  强イノデアリマス、又私共ノ地方ノヤウナ
  所デハ、特約取引ガナクナツテ其ノ方面ノ
  指導ガナクナレバ、ドウシテモ一本デヤル
  ヨリ外ニ方法ガナイト思フノデアリマスガ、
  其ノ點ニ付テ一ツ當局ノ御意向ヲ伺ツテ置
  キタイト思ヒマス
  ソレカラモウ一ツハ養蠶ノ技術員等ニ付
  テモ、是ハ將來ノコトデアリマスガ、最近
  下級官吏ノ給與ノ改善、小學〓員ノ給與
  ノ改善ガ非常ニ切實ナ問題トシテ考ヘラレ、
  對策ガ決メラレルト云フヤウナ狀況デアリ
  マスカラ、是等ニ付テモ相當ノ考慮ヲ拂ハ
  レテ、或ハ政府デナサラナイデ此ノ新シイ
  會社等ガヤルト云フヤウナコトニナルノカ
  モ知レマセヌガ、ソレ等ニ付テモ當局トシ
  テハ十分ノ考慮ヲ拂ツテ戴キタイ、ヤハリ
  小學校〓員等ト同ジヤウニ、中等〓育ヲ受
  ケタ階級デアリマシテ、地方デハヤハリ一種
  ノ知識階級デアリマス、人ノ指導ニ當ル人
  間デアリマスカラ、ソレ等ノ地位境遇等モ
  考ヘラレテ、ソレ等ノ點モ併セテ御考慮ヲ願
  ヒタイト思フノデアリマス、此ノ二ツニ付
  テ先ヅ御意向ヲ伺ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=32

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• 033・吉田清二

  ○吉田政府委員　指導ノ問題デゴザイマス
  ルガ、是ハ今日謂フ所ノ特約取引ト云フモ
  ノハナクナルノデアリマスガ、併シ大體此
  ノ繭ノ配給ハ、養蠶家ガ作ツタ繭ノ行キ場
  所ト云フモノヲ餘リ搔キ亂スコトハドウ云フ
  モノデアラウカト思ヒマスノデ、所謂前ノ
  地盤ト申シマスカ、從來流レテ行ツタ其ノ
  流レヲ此ノ際混亂サセルコトハ適當デナイ
  ト思ヒマス、隨ヒマシテ、大キナ製絲家ニシ
  テソコニ工場ノアツタヤウナ所ヘ持ツテ行
  ツタ特約ノ養蠶家ノ繭ノ處理ニ付キマシテ
  ハ無論其ノ製絲家ニ直接賣買スル譯デハ
  ナイノデアリマスガ、物ノ流レハソコヘ持
  ツテ行キ、隨テ大體其ノ集マツタ所デ、其
  ノ人ノ所ニ割當テラレタ數量ノ範圍內ニ於
  テハ、其ノ製絲家ニ其ノ繭ヲ處分スル、斯
  ウ云フヤウナコトニヤラナケレバナラヌト
  思フノデアリマス、隨ヒマシテ、ソコニ從
  來地盤關係ト云フヤウナモノガアリマスナ
  ラバ、ソレハ事實上「リンク」ノ關係ハ認メテ
  行ク方ガ宜シクナイカト考ヘテ居ルノデア
  リマス、ソコデ從來斯樣ナ場合ニ、ヨク自
  分ノ所ニ彼處ノ繭ハ來ルノダ、ソコデ此ノ
  繭ハ立派ナ良イ繭ニサセタイト云フ考ヘ方
  カラ、自分ノ所ヘ來ルモノナリト云フコト
  ガ分レバ、自然製絲家ノ方デモ指導ニ力ヲ
  入レタイト云フ氣持ガ起キルダラウト思フ
  ノデアリマス、新シク製絲家ガ指導ヲ始メ
  ルト云フヤウナコトハ無論是ハ考ヘテ居ラ
  ヌノデアリマスガ、從來大製絲等ニ於キマ
  シテ、非常ニ優秀ナ技術員等ヲ持ツテ居テ、
  指導ヲ致シテ居ツタコトヲ、是ハ理想デハ
  ナイガ、實際問題トシテ直チニ之ヲ廢メテ
  シマツテ、一擧ニ之ヲ養蠶團體ニ統合スル
  ト云フコトハ實際問題トシテ如何デアラウ
  カト考ヘテ居ルノデアリマス、此ノ方ノ變
  革ハ徐々ニ致スベキデハナカラウカ、無論
  理想ト致シマシテ、養蠶指導ハ今後ハ養蠶
  團體ガ一元的ニ統合スルト云フ方向ニ向ツ
  テ行クベキデアルコトハ、申スマデモナイ
  ノデアリマス、此ノ會社ト養蠶團體トガ一
  體ニナツテ、漸次指導ニ當ルト云フヤウナ
  考ヘ方デ統合スルコトニ付キマシテハ、無
  論異論ハナイノデアリマスガ、來年カラ直
  グ其ノ指導者ヲ廢メテシマツテヽ養蠶團體
  ト云フモノニ急激ニ其ノ機構ヲ變ヘルコト
  ハ如何ナモノカト考ヘテ居リマスガ故ニ、
  此ノ特約ノ指導ニ付キマシテハ、斯樣ナ意
  味ニ於テ當分ハ認メテ行クノガ、實際問題
  トシテ宜シクナイカト考ヘテ居ルノデアリ
  マス、ソレカラ待遇改善ノ問題ニ付キマシ
  テハ御說御尤モデアリマス、是ハ年來問題
  モアリマスシ、要望モアリマシテ、政府ト
  致シマシテハ、每年豫算ヲ財務當局ニ要求
  致シテ居ルノデアリマスガ、何サマ斯ウ云
  フ人ノ經費ノ問題ニ付キマシテハ、非常ニ
  豫算ハ困難ナ問題デ、遺憾ナガラ其ノ目的
  ヲ達スルコトガ出來ナイデ、今日ニ至ツテ
  居ルノデアリマス、今後斯ウ云フヤウナ制
  度ガ出來マシテ、此ノ指導等ニ付キマシテ、
  會社モ相當力ヲ入レ、養蠶團體ト表裏一體
  ニナツテ指導ニ專念スルト云フヤウナ狀態
  ニナツテ參リマスルナラバ、敢テ國ノ方ノ
  豫算ヲ俟タナイデ、寧ロ出來ルコトナラバ
  會社ノ方面カラデモ此ノ方ニ力ヲ入レル施
  設ヲ講ジマシテ、隨テ人數ノ點ニ於キマシ
  テモ遺憾ナキヲ期スルト同時ニ、待遇ノ點
  ニ於キマシテモ十分考慮ヲシテ行ク方ガ宜
  カラウ、斯樣ニ考ヘテ居ル次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=33

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• 034・高橋圓三郎

  ○高橋(圓)委員　只今ノ特約ノ養蠶ニ關ス
  ル指導デアリマスガ、是ハ私共素人デアリ
  マスケレドモ、私共ノ地方デハ殆ド是ガ多
  イノデス、是ハ特約取引デ製絲家ガ其ノ繭
  ヲ買フカラ、指導ニモ力ガ入ル、實際ハ買
  フコトニナリマシテモ、直接ノ買取ル當事
  者デナイト云フコトニナレバ、其ノ間ニ指導
  スル方モサレル方モ、自ラ關係ガ多少變ツ
  テ來ルダラウト思フ、併シ優良ナ繭ヲ作ル
  爲ニハ、相當良イ指導員モ居ラナケレバイ
  ケナイシ、從來ノ養蠶團體デヤツテ居ル一
  般的ナヤリ方ダケデハイケナイト云フコト
  ハ固ヨリアルコトト思ヒマスガ、是等ガ
  詰リ優秀ナ技術員ヲ持チ得ル爲ノ待遇ノ問
  題、隨テ金ノ問題ト云フヤウナモノガ片付ケ
  バ、指導方針ナリ、技術的ノ協力ト云フヤウナ
  コトハ、養蠶團體ト製絲家トノ間ニ十分折衝
  ヲ保チ、協調ヲ保ツテ行ケバ、是ハヤレルノ
  ヂヤナイカト思ハレマス、デアリマスカラ、ソ
  レ等ノ點ハ-兎ニ角一應ハ現狀通リト云フ
  風ニ御考ヘニナルコトハ御尤モデアリマスガ、
  創業〓々ニ何モカモ手ヲ着ケル、此ノ廣イ
  範圍ノ事業ノ何處ニモ手ヲ着ケルト云フコ
  トハ出來ナイト思ヒマスガ、併シナガラソ
  レハ一應デアツテ、成ベカ早イ機會ニ於テ
  サウ云フ根本的ノ統一ト申シマスカ、一元化、
  統合ト云フヤウナ方向ニ進ムヤウニ、是非
  トモ御努力ヲ願ヒタイト思フノデアリマス
  ソレカラ今ノ待遇ノ問題デアリマスガ、
  是ハ金ノ出所モナイノデ中々困難ナ事柄デ
  アリマスケレドモ、又是マデ屢〓豫算ヲ御要
  求ニナツテモ旨ク行カナカツタノデアリマ
  スガ、今日人ノ待遇ノ問題ニ付テハ全國的
  ノ釣合モアルノデアリマスカラ、或ル方面
  ダケドウスルト云フコトモ出來ナイコトハ
  當然デアリマスケレドモ、恰モ今サウ云フ
  下級ノ公務員ナドノ問題ガ全般的ニ考慮サ
  レテ居ル時期ニ遭遇シテ居ルノデアリマス、
  併シ是ハ今直グ取ルト云フコトハ出來ヌデ
  アリマセウガ、斯ウ云フ機會ニドウカ十分
  御努力ヲ願ヒマシテ、ソレ等ノ希望ガ達シ
  マスルヤウニ御心配ヲ願ヒタイト思フノデ
  アリマス
  ソレカラ先般來ノ御答辯デ、玉繭、屑繭
  等ハ大體統制外ヘ置ク、サウシテ從來通リ
  ノ取扱業者ニ扱ハシメルト云フコトデアリ
  マシタガ、是ハ繭ノ集荷配給共ニ從來ノ業
  者ニ扱ハシメラレルノデアリマスカ、ドウ
  デアリマスカ、其ノ點大體斯樣ニ伺ツテ居
  リマシタガ、尙ホ念ノ爲ニ御答辯ヲ願ヒタ
  イト思ヒマス
  ソレカラ今一ツハ此ノ玉繭、屑繭等ヲ業者
  ヲシテ從來通リ扱ハシテ戴クノハ固ヨリ
  業者トシテ希望シテ居ル所デアリマスガ、
  唯差當リ從來通リニシテ置クト云フコトデ
  ナクテ、將來モ引續キ扱ハセルト云フヤウ
  ナ考デアレバ、ソレ等ノモノヲ扱フ者ダケ
  ノ組合デモ作ラシテ、ソレ等ノ組合ヲ公認
  シテヤルト云フ風ニシテ將來ノ營業ヲ確保
  シテヤリ、安心ヲ與ヘテヤルト云フヤウナ
  方向ニ向ケテヤルコトハ、實ハ是ハ當業者
  モ希望シテ居ル所デアリマスカラ、是ハ特
  別ノ指導ヤ御手數ハ掛ラナイダラウト思フ
  ノデアリマスガ、差支ヘガナケレバ、將來
  モソレヲ尙ホセシメルト云フ御見込デアレ
  バ一方サウ云フ風ニヤラシテヤツテ戴ク
  コトガ出來ナイモノカドウカ、之ヲ一ツ御
  伺ヒシタイト思ヒマス
  ソレカラ副蠶絲ハ從來副蠶絲ノ統制會社
  ガヤツテ居ラレマスガ、是ハ將來此ノ會社
  ニ統合サレテ行クノデハナイカト思フノデ
  アリマスガ、此ノ點モ將來ノ御見込ト申シ
  マスカ、御計畫ガアレバ伺ツテ置キタイト
  思ヒマス、一ツ〓〓ハ面倒デアリマスカラ、
  序ニ伺ヒマスガ、私ノ地方デハ只今申上ゲ
  マシタヤウニ、割合ニ優良繭ヲ作ル地方デ
  アリマシテ、殆ド大部分ハ輸出生絲ノ原料
  トシテ大製絲工場ノ分工場ガアツテ、是ガ
  殆ド消費シテ居リマス、此ノ私共ノ方ニ、
  是ハ誤解ニ違ヒナイト思ヒマスガ、念ソ爲
  ニ今一應伺ツテ置キタイノデアリマス、或
  ル大新聞ニ實ハサウ云フコトガ出テソレガ
  傳ハツテ非常ニ誤解ヲ生ジテ居ルノデアリ
  そう、又新聞デナイ方カラモサウ云フ風ナ
  何カ噂ガアツタト云フノデ非常ナ不安ヲ感
  ジテ居ルノデアリマスガ、輸出生絲ノ原料
  デアル繭モ他ノ繭ト同ジヤウニ、繭其ノモ
  ノハ此ノ統制會社ガ全部一手ニ買上ゲル、
  サウシテ今度繭ヲ配給スル時ニ、初メテ輸
  出向ト國用向ヲ分ケテ、輸出向ノモノダケ
  ヲ其ノ時カラ統制外ニ置カレ、買上ゲタ繭
  ヲ以テ輸出生絲ヲ作ラセルヤウニ、製絲會
  社ヘ是ハ輸出生絲ノ原料トシテ分ケルノダ、
  繭ヲ配給サレルノダカラ、輸出用ト云フモ
  ノガ統制外ニ出テ行クノダ、ソレマデハ繭其
  ノモノハ輸出生絲ノ原料モ、サウデナイ國
  用生絲ノ原料繭モ、一〓ニ統制會社ガ全部
  買フノダト云フヤウナ御答辯デアツタト思
  ヒマス、所ガ輸出生絲ヲ統制外ニ置ク關係
  上、其ノ輸出生絲ノ原料タル繭ノ買付モ自
  由買付ヲ許スノダ、統制外ニ置クノダ、斯
  ウ云フコトガ傳ハリマシテ、私共ノ地方ノ
  養蠶關係ノモノガ非常ナ心配ヲシテ居ルノ
  デアリマス、是ハ左樣ナコトデナイトハ思
  ヒマスガ、念ノ爲ニ其ノ點ヲモウ一遍ハツ
  キリ御答辯願ヒタイト思ヒマス
  ソレカラ今一ツハ、此ノ統制會社ガ繭ヲ
  買ツテ、ソレヲ製絲工場ニ配給スル場合ニ、
  輸出用ノ優良ナ繭モ、日用生絲ノ一般繭モ
  同一價格デ拂下ゲラレル結果、輸出生絲ノ
  製絲ニ當ル會社ハ非常ニ特殊ナ利益ヲ得ル
  コトニナルト思ヒマスガ、其ノ點ハドウデ
  アリマスカ、是モ此ノ際ニ伺ツテ置キタイ
  ト思ヒマス、大體ソレダケヲ一應伺ヒタイ
  ト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=34

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• 035・吉田清二

  ○吉田政府委員　中下繭ノ集荷配給ノ問題
  ニ付キマシテハ、先般來色々ト御質問ガア
  リマシテ申上ゲタノデアリマスガ、玉繭及
  ビ二等繭、三等繭ト云フモノハ此ノ會社デ
  一手買取リ一手販賣ト云フ形カラハ除外致
  スノガ宜イダラウ、斯樣ニ私共ハ考ヘテ居
  ルト云フコトヲ此ノ間申上ゲタノデアリマ
  ス、サウシテ現在ノ繭取扱業者ニ集荷配給
  サセルノガ宜カラウ、斯ウ云フ風ニ申シタ
  ノデアリマス、唯其ノ際私トシテ一ツ懸念
  致シマシタコトハ中下繭ト雖モ國用生絲
  トシテハ役ニ立ツノデアリマス、ソコデ上
  繭ニ付キマシテハ公平ニ現在ノ製絲家ニ分
  ケテヤリマス、ソコデ先般來申上ゲマスル
  ヤウニ、今度ハ生絲ノ製造高ガ餘リ供給
  過剩ニナラナイヤウニト云フコトヲ考ヘニ
  置キマシテ、豫定數量ヲ立テ、ソレニ必要
  ナル原料繭ヲ分ケルト云フコトニナリマス
  ト、一面今日釜數整理ヲシナケレバナラヌ
  ト云フ位ニ製絲家ガ感ジテ居リマスルヤウ
  ニ、原料繭ガ比較的窮屈ナ形ニナツテ來ル
  ト考ヘマス、サウ致シマスト、大キナ製絲
  家デ金ノアル人ハ、今度ハ商賣人ガ自由ニ販
  賣出來ルト申シマスカ、會社デ分ケルコト
  カラ除外スル結果、商人カラ金ノアル者ガ
  買集メルヤウナ結果ニナリハシナイカト云
  フ心配ヲ持ツノデアリマス、サウ致シマス
  ト中下繭ト云フモノハ從來ハ大製絲家ハ
  餘リ使ハナイ、座繰デアリマストカ小サナ
  製絲家ガ主タル原料トシテ之ヲ使ツテ居ツ
  タノデアリマス、從來通リ消費者ノ方ニ是
  ガ流レテ行クコトガ確保サレルカドウカト
  云フコトニ多少心配ヲ持ツテ居タノデアリ
  マン、サウ云フコトニナラヌト云フコトニ
  ナリマスト、非常ニ中小製絲家ノ方デ困ル
  結果ガ起ツテ來ヤセヌカ、斯ウ云フコトニ
  ナラザル限リハ、ソレデ宜シイト思ヒマス、
  若シサウ云フ心配ガアルトナルト-兎モ
  角集メルマデハ此處ニ集メテ、分ケル時ハ
  會社ノ手デ公平ニ分ケルト云フ方策ヲ立テ
  ナイト逆ノ結果ニナリハセヌカト云フ心配
  ヲ持ツテ居ルト云フコトヲ、私此ノ間カラ
  申上ゲテ居ルノデアリマス、サウ云フコト
  ニナラザル限リ畠デ宜イ、ソコデサウ云フ
  コトニナラナイヤウニスル爲ニハ集荷配給
  ハ商人ニサセルコトニシテ、集メテ來タモ
  ノヲ一定ノ値デ會社ガ買ツテ、之ヲ一定割
  合デ弱小會社ト言ツテハ惡イカモ知レヌガ、
  サウ云フ方面へ必ズ公平ニ分ケテヤル方法
  ヲ立テナイトソツチノ製絲業者ガ困ルコト
  ニナリハシナイカ、斯ウ云フ懸念ガアルト
  云フコトヲ此ノ間カラ申シテ〓居ルノデアリ
  やく、隨テサウ云フコトニナラナイ方策ト
  シテ、一手買集メヲヤツテ此ノ會社ノ手デ
  配給ヲスルト云フコトマデ行カズトモ、或
  ハ繭扱業者ニ配給ノ指圖ヲシマシテ、必ズ
  斯ク〓〓ノ中小製絲家ニ限ツテ之ヲ販賣ス
  ベシト云フヤウナ方策ヲ立テマシテ、他ノ
  金ノアル方ニ固マツテ行クヤウナコトニナ
  ラヌヤウナ方策ヲ考ヘタイ、斯ウ申シタノ
  デアリマス、ソレガ巧ク行カヌコトニナレ
  バ已ムヲ得ナイカラ集荷ダケハヤツテ貰ツ
  テ、配給ハ此ノ會社デヤラナイト使フ方ノ
  側デ困ルト云フ心配ガアリマスノデ、此ノ
  點ハ篤ト模樣ヲ見マシテ弊害ノナイヤウニ
  致シタイ、斯樣ニ考ヘテ居リマス
  副蠶絲會社ハ現在出來テ居ルノデアリマ
  シテ、操業〓々デアリマスシ、此ノ間カラ
  申上ゲマスヤウニ此ノ會社ガ非常ニ廣イ範
  圍ノ大キナ仕事ヲ致サナケレバナラヌノデ
  アリマスノデ、現在ノ所デハ別ニ一ツ出來
  テ居ル會社モアリマスカラ、副蠶絲會社ノ
  問題ハ今日此ノ會社トハ別ニ考ヘテ行キタ
  イ、斯樣ニ考ヘテ居ルノデアリマス、輸出
  原料繭ハ自由ナ買付ヲセヌコトハ間違ナイ、
  此ノ會社デ一切ノ繭ヲ買取リマシテ、唯此
  較的品質ノ優良ナモノヲ成ベクソツチノ方
  ニ向ケルト云フ考ヘデ配給ヲシタイト考ヘ
  テ居リマス、配給ハ全然此ノ會社デヤリマ
  シテ、輸出絲國用絲總テニ亙ツテ公平ニ行
  クヤウニ配當シタイ、斯ウ云フ考ヘ方デア
  リマス
  ソレカラ繭ノ製絲家ニ渡シマスノハ輸出
  生絲、國內生絲ヲ通ジマシテ、檢定成績ニ依
  ル格ノ違ヒニ依ツテ値段ノ違ヒハアリマス
  ガ、原則的ニハ一定値デ配給販賣ヲスルノ
  デアリマス、其ノ結果輸出生絲ガ値上リヲ
  致シマシテ、輸出生絲ノ製造業者ハ國用生
  絲ノ製造業者ヨリモ有利ナ結果ニナル場合
  ガ想像サレルノデアリマス、左樣ナ場合ニ
  ハ輸出生絲ノ製造業者ノ所謂生產費ガ適正
  生絲價格ヨリ「オーバー」ニナリマシタ値段
  ニ付キマシテハ、豫メ一定ノ方式ヲ定メテ
  置キマシテ、之ヲ會社ニ於テ、言ハバモウ
  少シ繭ヲ高ク賣ツテ置イテモ宜カリシ場合
  デアリマスカラ、繭代ノ追徵ト言ツテハオ
  カシイノデアリマスガ、サウ云フ意味ニ於
  テ、生絲ヲ販賣致シマシタ際ニ一定方式ニ
  依リマシテ、之ヲ會社ガ賣ツタ値段、生絲
  ノ數量ニ應ジマシテ、會社ガ取立テル、サ
  ウシテ會社ノ積立金ニ入レル、斯ウ云フ風
  ナ方式ヲ立テテ、國用絲ト輸出絲トノ業者
  ノ間ニ於テ餘リ利害關係ノ差等ノ出來ナイ
  ヤウナ途ヲ立テタイ、ソレヲ今〓究致シテ
  居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=35

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• 036・高橋圓三郎

  ○高橋(圓)委員　先刻ノ中下繭ノ取扱業者
  ノ組合デモ作ラセテ、何カ公認シテヤツテ戴
  クヤウナ方法ハ御考ヘ願ヘナイカト云フ點
  下、今一ツハ、今ノ點ニ付テハ、輸出生絲
  ノ原料タル繭ヲ賣ラレタ場合ニ、其ノ輸出
  生絲ノ製絲業者ガ國用絲ヲ作ルヨリ以上ニ
  非常ニ特別ノ利得ヲシタ場合ニ、之ヲ追徵
  シテ會社ノ積立金等ニスル、斯ウ云フコト
  デゴザイマシタガ、特殊ノ利益ト云フモノ
  ガ、結局優良ナル繭ヲ作ツタモノ、ソレカラ
  サウデナイモノ、サウ云フモノヲ買上ゲラ
  レル時モ單一ノ價格デ買上ゲラレルト云フ
  コトニナリマスノデ、結局特殊ノ利益ヲ生
  ジタノハ何ガシカ其ノ根源タル養蠶家ノ方
  ニ還元サレルベキモノダト思フノデス、是
  ハ餘リ話ガ細カイヤウデアリマスガ、サウ
  云フモノハ何カ養蠶ノ指導ノ方面ニ振向ケ
  ルトカ、或ハ養蠶業ノ發展ノ爲ニ貢獻スル
  ヤウナ方向ニ使フト云フヤウナ意味デ、サ
  ウ云フ方面へ還元サセルヤウナ方法ヲ考ヘ
  ラレタイト、斯樣ニ思ヒマスガ、如何デ
  ゴザイマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=36

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• 037・吉田清二

  ○吉田政府委員　繭賣買業者ノ組合ノ問題
  ハ現在サウ云フ制度モ出來テ居リマス、ヤ
  ル途ガアルノデアリマスカラ、是ハ御趣旨ニ
  付キマシテハ十分考へテ見マシテ、サウ云
  フ團體ヲ作ル必要ガアリ、希望ガゴザイマ
  スレバ、ソレハ直チニ實行シテ宜シイコト
  ト考ヘテ居リマス、ソレカラ輸出生絲ト國
  用絲トノ原料ハ一本値ト云フヤウナ譯デハ
  ナイノデアリマス、一定値ト申シマスルガ
  是ハ無論檢定ノ結果七等格ニ分レテ居ルノ
  デアリマス、繭ノ段階ト申シマシテモ、現
  在ノ檢定成績ニ依リマシテ、一條六二等、
  三等ト七等ノ段階ニ分レテ居リマス、隨テ
  一定値ト云フコトハ、ソレ〓〓格差ノアル
  一定値ト云フコトデアリマシテ、何處モ彼
  處モ何掛、良イ繭モ惡イ繭モ皆何圓ト云フ
  一本値ニスルノデハナイノデアリマス、ソ
  コデ自ラ段階ガアリマスルカラ、ソコニ格
  差ト云フモノガ必然起ルノデアリマス、隨
  テ本當ノ優良ナ繭ニ付キマシテハ、下等ノ
  繭カラ比較致シマスト、無論養蠶家ノ實入
  ニ段階ノアルコトハ當然ト考ヘテ居リマス、
  先程申シマシタヤウナ、會社ニ積立テマシ
  タモノハ、個々ノ養蠶家ニ後デ追拂ミタイ
  ナ形デ戾スト云フコトハ是ハ困難ト思ヒマ
  スルガ、先般來申シマスルヤウニ、此ノ會
  社ハ或ハ指導ノ施設ヲ致シマストカ、災害
  ノ救濟ノ施設ヲ致シマストカ、結局ハ養蠶
  家ノ方面ニ全般的ニ還元サレル各種ノ施設
  ヲヤツテ行カナケレバナラヌノデアリマス
  カラ、サウ云フ方面ニ主トシテ之ヲ使用シ
  テ行ク、斯樣ニ致シタ方ガ宜カラウト考ヘ
  テ居ル譯デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=37

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• 038・高橋圓三郎

  ○高橋(圓)委員　絲ノ檢査所ノ問題デアリマ
  スガ、此ノ前小山委員カラモ質問ガゴザイ
  マシタガ、一箇所デモ多イ方ガ宜イヤウデ
  アリマシテ、豫算等ノ關係モゴザイマセウケ
  レドモ、成ベク既存ノ設備ヲ使フトカ、或
  ハ檢査ノ內容ハ檢査ヲ統一スル爲ニ政府ノ
  檢査員ガヤラレナケレバナリマセヌガ、設
  備トカサウ云フモノハ府縣ヲシテナサシメ
  ル、サウ云フヤウナ方法モアルノデアリマ
  スカラ、豫算ノ款項ノ決メ方等デドウナツ
  テ居ルカ知レマセヌガ、出來得ル限リ最
  大限度ニ豫算ヲ使ハレテ-實際問題トシ
  テハ地方デハ隨分遊休設備ガ出來テ來テ
  居ルノデアリマスカラ、是等ヲ御使ヒニナ
  レバ、大シタ經費ヲ掛ケナクテモ場所ハ作
  ルコトガ出來ルト思ヒマス、ドウカ其ノ點
  ニ付キマシテハ、是ハ希望デゴザイマスガ、
  出來ルダケ御心配ニナツテ、一箇所デモ多
  ク全國ニ設置サレルヤウナ御配慮ヲ願ヒタ
  イト思フノデアリマス
  ソレカラ最後ニ、先般來色々質問應答ガ
  繰返サレマシタ輸出生絲ノ問題デアリマス
  ガ、私共輸出生絲ノコトハ全然素人デアリ
  マスケレドモ、政府ノ屢〓ノ御答辯ヲ伺ツ
  テ居リマシテ、第四條ノ規定ハ、輸出生絲
  ヲ統制ノ中ヘ全部引括メテ一本ニシテ、ヤ
  ハリ統制會社ヲシテ統制セシムルト云フコ
  トニ付テハ、原則トシテ政府當局ハ違ツタ
  意見ヲ御持チニナツテ居ルノデハナイヤウ
  ニ聽イタノデアリマス、原則トシテ、或ハ理
  想トシテハ其ノ方ガ宜イト思フノデアル
  ガ、現在ノ國際情勢等カラ考ヘテ、或ハ現在
  ノ情勢ノミナラズ、更ニ近イ將來ニ於テ起ル
  コトノアルベキ色々ナ變化ガ豫想サレルヤ
  ウナ狀況ニ於テ、此ノ際直チニ從來ノ取引
  關係其ノ他ニ變更ヲ生ゼシメルヤウナコト
  ヲ敢テシナイデモ、モウ少シ此ノ儘デ行ツ
  テ、適當ナ時期ニヤツタ方ガ宜イ、斯樣ニ
  御考ヘニナツテ居ルヤウニ、印象ト云ヒマ
  スカ、感ジヲ得タノデアリマスルガ、左樣
  デアリマスルカドウカ、此ノ際念ノ爲ニ聽
  カシテ戴キタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=38

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• 039・吉田清二

  ○吉田政府委員　其ノ問題ニ付キマシテハ
  私共此ノ間申シマシタコトハ、今高橋サン
  ノ仰シヤツタヤウナ意味ノコトヲ申シテ居
  ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=39

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• 040・高橋圓三郎

  ○高橋(圓)委員　尙ホ私ハ細カイコトヲ伺
  ヒタイト思フ點モアリマスガ、大體此ノ程
  度デ質問ヲ終リマシテ、大臣ガオイデニナ
  リマシタラ、一點ダケ質問スルコトヲ保留
  サシテ戴キタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=40

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• 041・高橋熊次郎

  ○高橋委員長　了承致シマシタ、此ノ際渡
  邊玉三郞君カラ、過日來補充ノ質問ヲ簡潔
  ニ致シタイト云フ希望ガアリマスカラ、之
  ヲ許シマス-渡邊玉三郞君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=41

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• 042・渡邊玉三郎

  ○渡邊(玉)委員　只今委員長ノ御言葉ノ如
  ク、極メテ簡潔ニ質問ヲシテ見タイト思ヒマ
  ス、質問ノ要綱ヲ讀ミマス、蠶絲織物用國內
  配給ニ關スル希望質問デアリマス、「一、現
  在配給生絲ヲ以テ生產スル織物ハ其ノ種別
  ヲ生產者ノ所屬スル工業組合聯合會ニ屬セ
  シメ檢査檢閱ヲ爲サシムベキコト、二、絹服
  地ノ公定價格ヲ設定セラレ現在ニ於テ毛
  織物登錄織機ヲ以テ製造スレバ毛織物ハ公
  定價格ニ從フ故ニ夏物用ノ服地ノ如キ輕目
  ノモノノ外ハ採算上損失トナリ生絲消費ノ
  不合理ヲ改正スルコト、二一、毛紡式ニテ紡績
  シタル絲ハ絲ノ呼稱ガ異ナルト雖モ毛絲ト
  看做シタル取扱ヲスルコト、四、蠶絲業統制
  法第十二條ニ依リ生絲ヲ以テ生產シタル服
  地ハ主トシテ毛織物工業者ニ製織セシムル
  コト、五、絹纖維ノ國內織物ニ普遍化ヲ圖ル
  計畫ノ下ニ、一定數量ヲ生絲及ビ羊毛代用
  混紡絲共ニ毛織物業者ニ配給スルコト」、以
  上デアリマス、此ノ五ツノ點ニ付キマシテ
  詳細ナル御答辯ヲ御願ヒシタイト存ズルノ
  デアリマス、私ノ觀點カラ致シマスレバ
  生絲ノ統制ノ結果、農林省ノ御意見ノ通リニ
  國內需要ハ或ル程度、目的通リ需要ガアル
  モノト存ジマス、併シナガラ過去ニ御執リ
  ニナツタヤウナ配給統制デアルナラバ極メ
  テ跛行ガ多過ギル、過日モ申シタ通リ或ル
  部面ニハ配給サレタ百分ノ一モ使用シナイ
  所ガアル、ナゼサウ云フ缺點ガアルカト申
  シマスレバ、是ハ配給機構ガ整備サレテ居
  ナイ結果デアルノデアリマス、左樣ナコト
  デアリマスナラバ、今後纖維ノ飢饉時代ガ
  來マシタ時ニ、寧ロ其ノ跛行ガモツト極端
  ニ來ハシナイカ、斯ウ云フコトヲ慮ルノデ
  アリマス、殊ニモウ一ツ私ノ觀點ヲ附加ヘ
  テ申シマスト、此ノ統制ノ結果必ズヤ輸出
  ノ生絲ヨリハ內地ノ生絲ガ高クナルト云フ
  觀點ヲ持ツテ居ルノデアリマス、政府ハ餘
  程此ノ點ニ心ヲ致サレタイト思ヒマスガ、
  中下繭、玉絲等ノ問題ヲ此ノ統制會社カラ
  除外シテ宜イノデアラウカ、ナゼ輸出ヨリ
  ハ內地ノ方ガ高クナルカト申シマスト、內
  地ノ全體ノ數量ガ減ツテ居ル所ニ、相當ノ部
  分ガ、毛、綿ノ代用絲ニ使ハレテ來マスノデ、
  從來ノ生絲ノ數量トハ大變違ツテ來ルト云
  フコトガ一點デアリマス、又他ノ一點ハ、是
  ハ甚ダ。憾憾ナ見方カモ知レマセヌガ、此ノ
  頃日曜ニ淺草方面ニ行キマシテモ、活動寫
  眞ナンカハ非常ナ列ヲナシテ居テ入レナ
  イ、斯ウ云フ狀態デアリマスカラ、購買力
  ハ抑ヘナケレバ旺盛デアルベキ筈デアリマ
  ス、斯ウ云フ諸點カラ考ヘマシテ、配給ノ
  公正ヲ期スル上ニ於テハ、此ノ點ニ付テ要
  望ノ如ク御考究ニナラナケレバナラナイト
  存ズルノデアリマス、私ノ此ノ要求ハ要項
  デ出シテ置キマシタカラ、適當ナ時期ニ御
  答辯ニナツテモ差支ヘアリマセヌ、其ノ點
  ハ適當ニ委員長ニ御取計ヒヲ願ツテ置キマ
  ス

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• 043・梶原茂嘉

  ○梶原政府委員　御答ヘ申シマス、御質問
  ノ事項ハソレ〓〓非常ニ具體的ニナツテ居
  リマスノデ、此ノ際一々具體的ニ御答ヘ申
  上ゲルコトハ聊カドウカト思フノデアリマ
  ス、御意見ノ大體ノ御趣旨ハ能ク了承致シ
  テ居リマスノデ、本制度實施ニ當リマシ
  テ、ソレ〓〓實際ニ適スルヤウニ考究致シ
  テ決定シテ參リタイ、斯樣ニ考ヘテ居ル譯
  デアリマス
  尙ホ一二附加シテ申上ゲマスナラバ、第一
  點ノ織物ト工業組合ノ關係デゴザイマスガ
  現在ハ御承知ノヤウニ織物ノ種類ガ決マツ
  テ居ルノデアリマス、ソレト工業組合聯合
  會トノ關係ニ付キマシテハ、篤ト其ノ取扱
  方等ニ付テ考慮致シタイト考ヘテ居リマス
  第二ノ價格ノ點デアリマスガ、價格ノ點
  ニ付キマシテハ、今囘ノ統制制度實施ニ當
  リマシテ色々檢討ヲ要スル點ガアラウト存
  ジマス、隨ヒマシテ物價局トモ連繫ヲ執ツ
  テ考究致スコトニ致シタイト存ジマス
  ソレカラ毛紡式デ紡績致シマシタ絲ニ付
  テハ、絲ノ呼稱ハ異ナツテ居リマスケレド
  モ、其ノ點ハ實態ニ卽シテ考ヘマシテ、現
  在ニ於キマシテモ生絲ト同樣ノ取扱ヲナシ
  テ居ルノデアリマス、今後モ同樣ノ取扱方
  デ進ミタイ、斯樣ニ存ジテ居リマス
  第四點ノ服地ニ付キマシテモ大體同樣ニ
  考ヘテ居ル譯デアリマス
  第五ノ毛織物業者ニ對シマスル配給ノ點
  デアリマスガ、此ノ點ハ此ノ前ノ御質問ニ
  對シマシテ御答ヘ申上ゲタト思フノデアリ
  マスガ、毛織物業者ニ對シマシテモ用途ニ
  依リマシテ配給致スヤウニ考ヘタイ、斯樣
  ニ現在ノ所考ヘテ居ル譯デアリマス

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• 044・渡邊玉三郎

  ○渡邊(玉)委員　大體梶原纖維局長ノ御答
  辯ハ當ヲ得テ居ルト思ヒマスガ、併シ第一ノ
  點ニ付キマシテハモウ少シハツキリ御答辯
  ヲ願ツテ置キタイ、卽チ國家ガ配給シタモ
  ノヲ織ルコトハ織ツテモ宜イガ、工聯ニ所
  屬シナイカラ檢査ヲ受ケル方法ガナイ、ダ
  カラ先刻申上ゲマシタ通リニ、アナタノ方
  デ配給シテモ、百分ノ一以下シカ使用ガ出
  來ナイ、斯ウ云フコトデハ配給統制ノ精神
  ニ背クノデハナイカ、ダカラ此ノ第四項ニ
  アルヤウニ、本法ノ第十二條ニ依ツテ配給
  サレテ、ソレデ織ツタモノハ工聯デ總テノ
  檢査、檢閱ヲシテ宜イト云フコトガ、之 h
  關聯シテ考ヘラレテ來ルト思フ、若シ之ヲ
  オヤリニナラナケレバ、曾テ申上ゲマシタ
  通リ、各月三千俵配給ニナツテ居ツタモノ
  ガ三十俵カソコラシカ使ハレナイ、甚ダシ
  イ時ニハ其ノ半分シカ使ヘナイ、斯ウ云フ
  結果ニナツテ來ルノデアリマス、隨テ毛織
  物業者ニ配給シタ場合、其ノ織機デ織ツタ
  モノハ、其ノ工聯デ檢査ヲスルト云フコト
  ガ關聯シテ考ヘラレル、今ノヤウナ御答辯
  デハイカヌノデアリマスカラ、ドウ御取扱
  ニナルノカ、其ノ點ヲ局長カラ詳細ニ御答
  辯願ツテ置キマス

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• 045・梶原茂嘉

  ○梶原政府委員　毛織物業者ニ配給ハ致シ
  マスケレドモ、其ノ所屬致シマスル工業組
  合聯合會ニ於テ直チニ檢査檢閱ヲ致スト云
  フコトハ、御說ノヤウニ實態ニ合フヤウニ
  モ考ヘラレマスケレドモ、現在直チニ之ヲ
  シテ檢査、檢閱ヲ實施セシムルト云フコト
  ハ御答ヘ申上ゲ兼ネルノデアリマシテ、其
  ノ點ハ先程申シマシタヤウニ篤ト考究致シ
  タイ)斯樣ニ考ヘテ居ル譯デアリマス

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• 046・渡邊玉三郎

  ○渡邊(玉)委員　重ネテ是以上言ヒマセヌ
  ガ、只今ノ御答辯デアレバ無理ヲ强ヒルコ
  トニナツテ、結局配給ガ適正ニ行カナイノ
  デス、幸ヒ大臣ガ見エラレマシタカラ此ノ
  布ヲ御覽ニ入レマシテ、私ハ是デ質問ヲ打
  切リマス

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• 047・高橋熊次郎

  ○高橋委員長　大臣ガ御出席ニナリマシタ、
  質問ノ通〓ノ順序ニ依リマシテ順次農林大
  臣ニ對スル質疑ヲ保留サレタ方々ノ御發言
  ヲ許可致シマス-加藤知正君

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• 048・加藤知正

  ○加藤(知)委員　色々御尋ネ申上ゲタイト
  思ヒマスケレドモ、成ベク省略致シマシテ
  簡潔ニ御尋ネ致シマス
  先ヅ第一ニ御伺ヒ致シタイノハ、米國ヘ
  輸出スル我ガ生絲デアリマスガ、是ハ大臣
  ノ御考ヘトシテ、國策上太ク短ク之ヲヤ
  ラセヨウト云フ御考ヘデアルカ、ソレトモ
  又細ク長ク之ヲヤラセヨウト云フ御考ヘデ
  アルカドウカ、之ヲ御伺ヒシタイト思ヒマ
  ス、太ク短クト云フ意味ハ御案內ノ如ク競
  爭纖維ノ關係モアリ、又日米國交ノ關係モ
  アルカラ、蠶絲ノ將來性ハサウ永クハアル
  マイ、殊ニ支那蠶絲業ノ關係等カラ考ヘマ
  スト、日本ノ蠶絲業ノ將來ト云フモノハ樂
  觀ヲ許サナイ、斯ウ云フヤウナ考ヘ方カラ
  スレバ、今ノ內ニ米國ヘ輸出ノ出來ルモノ
  ハ輸出サシテ、所謂外貨ヲ出來ルダケ獲得
  サセヨウ、斯ウ云フヤウナ考ヘデオイデニ
  ナルノカ、ソレトモ今申シタヤウナ、如何ナ
  ル事情ガアラウトモ、所謂磐根錯節ヲ排シテ、
  細ク長ク我ガ邦ノ生絲ガ米國へ輸出ノ出來
  ルヤウニシテ行カウ、斯樣ナ御方針デアル
  ノカ、之ヲ一ツ私ハ御伺ヒシタイト思フノ
  デアリマス、此ノ政府ノ御方針ニ依ツテ當
  業者ノ覺悟モアリ考ヘ方モアルト私ハ思ヒ
  やく、ドウ云フ御方針ノ下ニ此ノ蠶絲國策
  ヲ立テテ行カウト云フ御考ヘデアルカ、是
  ハ私ハ極メテ重要ナ問題デアリマスカラ、
  之ヲ私ハ農林大臣ニ特ニ御伺ヒシタイト思
  フノデアリマス

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• 049・石黒忠篤

  ○石黑國務大臣　只今加藤サンノ御尋ネデ
  ゴザイマスガ、我ガ國ノ生絲ノ輸出ト云フ
  モノヲ、只今ノ非常ナ逼迫ヲ致シマシタ時
  代ノ下カラ考ヘマスルト、御尋ネノヤウナ
  太ク短クト云フ問題ニ付テ考慮ガ拂ハレル
  ヤウナ傾キモアルカモ知レヌト思ヒマス、
  併シナガラ私ガサウ云フ主義ヲ執ツタカラ
  ト云ツテ、ソレデ當業者諸君ガ、ソレナラ
  バ其ノ方針デト云フ風ニハ實ハ私ハ行カナ
  イノデハナイカト思ヒマス、私モ多少蠶絲
  ノ行政ニハ關係致シテ居リマスガ、農林大
  臣一個ノ考ヘデ以テ此ノ間題ヲ太ク短ク決
  メテシマフト云フヤウナコトハ中々執リニ
  クイノデアリマス、出來ルナラバ太ク長ク
  ヤリタイト云フコトハ是ハモウ皆サン御一
  致ノ意見デアルト私ハ思フ、唯ソレガ出來
  ナイ場合ニ於テドウスルカト云フ問題デア
  リマス、只今ノ事情ハ最初加藤サンノ御尋
  ネニアリマシタヤウニ、非常ニ前途悲觀ヲ
  致シマシテ考ヘレバ太ク短クト云フコトモ
  考ヘラレマスガ、ソコマデ考ヘルト云フコ
  トニハ唯未練ガ殘ツテ居ルバカリデハナイ、
  未練デハアリマセヌ、出來ルダケ長クト云
  フコトハ誰モ努メナケレバナラヌコトト思
  フ、而シテ細クト云フノハ、生絲ハ細イ程
  結構デアリマスガ、貿易ハ出來ルダケ太イ
  方ガ宜イト思ヒマス、出來ルダケノ太サヲ
  以テ出來ルダケ長クヤツテ行クト云フノガ
  是ハモウ皆サンノ御一致ノ御考ヘダラウト
  思フ、併シソレヲヤツテ行クノニドウシタ
  ラ宜イカト云フコトニ付テ色々御考ヘモ違
  ツテ來ル、方法トシテノ御意見モ違ツテ來
  ルノデハナカラウカ、斯ウ思ヒマス、主義
  トシテドウ云フ主義ヲ採ルカ、太ク短ク行
  クカ、細ク長ク行クカト云フコトデアリマ
  スガ、是ハ主義トシテハ出來ルダケ太ク出
  來ルダケ長クト云フコトヲ望ムコトハ、モ
  ウ皆サン問ハズシテ明カナコトデアルト思
  フ、ソコデ私共ハ米國ヘノ輸出モ出來ルダ
  ケ太ク長ク行キタイト考ヘテ居リマス、併
  シ是ハ絲ノ貿易ダケデ以テ國ノ方針ガ立ツ
  譯デハゴザイマセヌカラ、ソレ以上ノ重大
  ナ問題デ國ノ政策ハ決ル、其ノ決ツタ結果
  絲ノ貿易ト云フモノガ、貿易カラ見レバ實
  ニ忍ビナイコトダケレドモ、是ガ斷タレル
  ト云フコトモアリ得ルト考ヘマス、其ノ時
  ニ內地ノ國民ノ多數ノ關係ヲ致シテ居リマ
  スル蠶絲業ト云フモノニ出來ルダケ打擊ノ
  少イヤウニ、又今後ニ於キマシテ殆ド需要
  ガ一國ニ限ラレテ居ル爲ニ死命ヲ制セラレ
  ルト云ツタヤウナコトノナイヤウニト云ツ
  タコトヲ、應急及ビ恆久ニ亙リマシテノ考
  ヘヲココデ決メマシテ、其ノ對策ヲ立テテ
  行カナケレバイケナイノダト云フ時期ニ今
  際會シテ居ルヤウニ思フ、ソレガ當統制案
  ヲ出シマシテ御審議ヲ戴キ御贊成ヲ願ツテ
  居ル次第ナノデアリマス、國ノ最大ノ運命
  カラ參リマスル斷交ト云フコトノナイ限リ
  ハ出來ルダケ賣リタイ、斯ウ考ヘテ居ル
  次第デアリマス、而シテ賣ル貿易ニ關シマ
  シテハ、相變ラズ「アメリカ」へノ輸出ヲ最
  モ主ニ考ヘテ居リマスガ、併シソレ以外ニ
  於テモ出來ルナラバ出シタイト云フコトヲ
  考ヘテ居リマスノデ、「ヨーロッパ」方面
  ノコトモ只今ノ狀態デハ色々困難ガアリマ
  シテ、決シテ右カラ左ニハ出テ行キマセヌ、
  是モ永イ先ヲ考ヘマシテ、「ドイツ」ノ方へ
  大使ガ參ラレマシタ時、大島大使及ビ永井
  商務官等ニハ將來ノコトモ考ヘテ、何トカ
  是等ノ方面ニ付テモ「ドイツ」「「フランス」ア
  タリノ方面ニ、斯フ云フ際ニ端〓ガ開ケルヤ
  ウナ機會ガアツタナラバ心掛ケテヤツテ貰
  ヒタイト云フコトヲ懇々賴ンデ置キマシタ
  ヤウナ次第デアリマス、而シテ米國ノ貿易
  ニ對シマシテハ、國交ノ間柄ガ甚ダ險惡ニ
  ナリマシテモ、アチラデモ相當多數ノ需要
  者ガ居ルノデゴザイマスカラ、アチラトシ
  テモ之ヲ强ヒテ斷ツト云フコトハ必ズシモ
  欲シテ居ラヌノヂヤナイカト云フ風ニ思ヒ
  マス、唯國交ノ險惡ニナリマシタ際ニ於キ
  マシテハ、痛イ所ガアツテモ、思ヒ切ツテ
  他ニ打撃ヲ與ヘルコトヲヤラナケレバナラ
  ヌコトモアリ得ルノデアリマス、之ニ對シ
  マシテハ出來ルダケ刺戟ヲ少クシテ行カナ
  ケレバナラヌト考ヘテ居リマス、米國デハ
  平常ノ場合ニ於キマシテモ、何ノ品ニ拘ラ
  ズ國ノ力ガ輸出物ニ付テ色々程度ヲ强ク及
  ボスト云フ場合ニ於キマシテハアチラノ
  輸入ノ關係ニ於テ色々考慮ヲスベシト云フ
  議論ガ多ク起ルノデアリマス、蠶絲ノ絲價
  安定法ヲ一番初メニ拵ヘマシタ時ナドハ、
  加藤サン御承知ノ通リ、アチラカラ「ラモン
  ト」ガヤツテ參リマシテ、委員會デ以テ議論
  ヲシテ居リマシタ絲價安定法ノ買上方ト云
  フモノニ對シテ、直チニ自分カラ異議ノ申
  出ニ來タト云ツタヤウナ事情ガアツタコト
  ヲ想ヒ起シテ戴クコトガ出來ヤウト思ヒマ
  ス、實際ニ於キマシテハ、國際關係極メテ
  機微ナ點ガアリマスカラ、成ベク之ニ關シ
  マシテハ、從來ノ通リヤリマシテ、從來ノ
  通リ貿易ガ續イテ參リマスヤウニ致シタイ、
  斯ウ云フ考ヘヲ持ツテ居ル次第デアリマス

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• 050・加藤知正

  ○加藤(知)委員　只今大臣ノ仰セノ如ク、
  何人モ太ク長クヤリタイト云フコトハ、是
  ハモウ言フマデモナク希望スル所デアリマ
  スルガ、併シ蠶ノ吐キマス絲モ、太ク吐キ
  マスレバヤハリ其ノ纖維ガ短カクナルシ、
  細ク吐キマスレバ長クナル、私ガ今申上ゲ
  タ細ク長ク太ク短カクト云フ意味ハ、ドウ
  セ蠶絲業ノ將來ハ長イコトハアルマイ、何
  時米國ト開戰ニナラヌトモ限ラヌ、ダカラ
  今ノ內ニ取ラレルダケ取ツタ方ガ宜カラウ、
  斯樣ナ考ヘガ動モスレバアルノデハナイカ
  ト云フヤウナ風ニ想像セラレル點ガ多々ア
  ルノデアリマス、ソレハ私共ノ興セザル所
  デアリマシテ、所謂細ク長クト云フ意味
  ハ堅實ニ之ヲヤラナケレバナラナイ、今
  ハ如何ナル狀態ニアリマシテモ、必ズヤ始
  マツタコトハ收マル時期ガ來ルノダ、今ハ
  日米間ハ洵ニ厭ナ狀態ニ置カレテ居ル、太
  平洋ノ波ハ高イ、ケレドモ必ズ鎭マル時ガ
  來ルニ違ヒナイ、又蠶絲業ノ將來モ、私ハ
  屢〓政府當局ニ對シテ申上ゲマスヤウニ、
  非常ニ悲觀シテ居ル人モアリマスケレドモ、
  決シテ私ハ悲觀スル必要ハナイト思フ、併
  シナガラ現在ノ狀態ヲ此ノ儘ニシテ置クナ
  ラバ、悲觀ヲセナケレバナラナイ、併シ
  ナガラ此ノ際蠶絲對策其ノ宜シキヲ得レ
  バ、私ハ蠶絲業者ノ將來必ズシモ悲觀スル
  ニ及バヌト考ヘマスガ、併シナガラ太ク短
  クヤラウトスレバソレハ出來ルデアリマセ
  ウガ、ソレデハ蠶絲業ノ將來ハ悲觀セナケ
  レバナリマセヌ、-出來ルダケ太ク長ク
  ト云フコトハ何人モ希望スル所デアリマス
  ガ、ソレハ希望シテモ事實ハ得ラルルモノ
  デハナイ、出來レバ結構ダガ、ソレハ出來
  ルモノヂヤナイ、是ハ蠶絲バカリデハアリ
  マセヌ、總テガサウト私ハ考ヘテ居ルモノ
  デアリマス、カルガ故ニ細ク長ク所謂堅實
  ノ道ヲ辿ルベシ、細ク長ク之ヲヤラセヤウ
  斯樣ナコトデナケレバナラヌト私ハ考ヘル
  ノデアリマス、只今大臣ノ御說明ヲ伺ヒマ
  シテモ、私ノ此ノ趣旨ト違ハヌヤウニ思ハ
  ルルノデアリマスルガ、ソコデ我ガ國蠶絲
  業ノ將來ヲ細ク長ク堅實ニヤラセヨウト云
  フ御考ヘデアルナラバ、私ハ本邦生絲ノ需
  要者、卽チ米國絹業者ノ實情ヲ能ク調査シ
  テ向フノ氣持ニガツチリト合フヤウナ方法
  ヲ講ズルコトガ急務デアルト、斯樣ニ考ヘ
  ルノデアリマス、此ノ意味ニ於テ私共ハ今囘
  ノ蠶絲業ノ統制ナルモノハ、願ハクバ米國絹
  業者ノ滿足スルヤウナ方法ヲ執ツテ戴キタ
  イ、斯樣ニ實ハ考ヘテ居ツタノデアリマス、
  然ルニ今囘ノ此ノ蠶絲業統制法案ヲ見マス
  ルト、洵ニ遺憾ノ念ヲ禁ズルコトガ出來ナ
  イノデアリマス、ソレハ何デアルカト云
  フト、卽チ此ノ蠶種、繭生絲ノ生產統制、
  內地向ノ生絲其ノ物ニ對シマシテハ統制ガ
  出來ルケレドモ、最モ大切ナル輸出方面ノ
  統制ガ吾々ノ希望スルガ如ク出來テ居ラナ
  イト云フ風ニ實ハ考ヘルノデアリマス、サ
  ウシマスレバ細ク長ク、之ヲ堅實ニヤラセ
  ヨウト希望シテモ、果シテ其ノ希望ヲ達シ得
  ルカドウカト云フコトニ付テ多大ノ疑問ガ
  アルノデアリマス、恐ラク是ハ全國ノ蠶絲業
  者ガ此ノ一點ニ非常ナル關心ヲ持ツテ居ル
  コトデアルト思フノデアリマス、デアリマ
  スカラ、私ハ折角ココマデ、御心配ヲ戴イ
  タノデアルカラ、生產統制モ無論必要デア
  ル、ダガ輸出統制ト云フコトニ付テ、一四、
  御考慮ヲ戴キタイ斯樣ニ實ハ思フノデアリ
  やっ、然ラバ米國ノ機業者、絹業者ガドウ
  云フコトヲ希望シテ居ルカト言フト、ソレ
  ニ付テハ價格ノ安定デアルトカ、絲質ノ改
  良デアルトカ、生絲ノ宣傳、此ノ三ツハ吾
  吾共ガ先年向フニ參リマシタ際ニ、向フノ
  絹業協會ノ代表者、幹部ノ連中ガ悉ク此ノ
  希望ヲ述ベテ特ニ此ノ絲價安定ニ付テハ切
  ナル希望ヲ述ベテ居タノデアリマス、所ガ
  此ノ絲價安定ハ無論必要ダガ多少ノ旨味ガ
  ナクテハイカヌ波ガナクテハイカヌ斯樣ナ
  コトヲ屢〓〓蠶絲局長ノ說明カラ伺フノデアリ
  マス、ケレドモ米國絹業者ハ其ノ波ヲ嫌フ、
  小サナ波デモ之ヲ嫌ツテ居ル、價格ノ安定
  ト云ツテモ其ノ安定ハ一定デハナイト言ハ
  レルケレドモ、吾々ガ向フデ多クノ絹業者
  ヤ、機業者ニ付テ聞ク所ニ依リマスレバ「ワ
  ン·プライス」ヲ彼等ハ希望シテ居ルノデア
  リマス、故ニ彼等ノ希望ニ應ズルヤウニシ
  テヤルト云フコトガ、所謂細ク長ク我ガ生
  絲ヲ「アメリカ」ニ輸出スルコトノ出來ル唯
  一ノ途ダト、斯樣ニ考ヘルノデアリマス、
  此ノ點ニ付テ農林大臣ノ御所見ヲ伺ヒタイ
  ト思ヒマス

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• 051・石黒忠篤

  ○石黑國務大臣　蠶絲ノ貿易ヲ堅實ニ長ク
  ヤルト云フコトガ將來ノ方針デナケレバナ
  ラヌ、其ノ爲ニハ太ク長クト云フコトハ事
  實望ンデモ出來ヌコトダト云フ御話デスガ、
  其ノ通リダト思ヒマス、出來ルダケ從來ノ
  幅ヲ狹メルコトナシニ堅實ニ長クヤルト云
  フコトガ結構デアルト考ヘルノデアリマス、
  其ノ爲ニハ需要者ノ心ニ通フヤウニシナケ
  レバナラヌ、斯ウ云フ御話デアリマシテ、
  其ノ點カラ見ルト、輸出ノ統制ガ出來ヌト
  云フコトガ本案ノ〓點ダト思フト云フ御意
  見デアリマス、是ハ加藤サンガ先年「アメ
  リカ」ニオイデニナリマシテ、當業者ヲ歷
  訪セラレタ結果、擧ゲラレタ三ツノ點ト云
  フモノハ何レモ尤モナモノダト考ヘマス、
  ソレデ絲價ノ安定ニ付キマシテハ無論
  安定ヲ欲スルト云フコトデアラウト思ヒマ
  ス、安定ト云フコトハ希望ヲ致スノデアリ
  マセウガ、限ラレタ會社ノ化學纖維ノヤウ
  二、一本ノ價格ニ釘付ケルト云フコトハ中
  中蠶絲トシテハ望ンデモ難カシイコトデハ
  ナカラウカト、私ハ其ノ性質上考ヘマス、
  出來ルダケ安定ヲ致スト云フコトニ關シマ
  シテモ、又其ノ方法手段ニ依ツテハヤハリ
  色々ナ御意見モアリマセウガ、一手買入、
  一手販賣トスルノガ宜イカ、或ハ只今御審
  議ヲ願ツテ居リマスヤウナ案ノヤウナ考ヘ
  方ニ依ル方法ガ宜シイカ、之ニ付テハ色々
  御意見モゴザイマセウト思ヒマスガ、一手
  買入、一手販賣ハ理想トシテハ考ヘ得ルコ
  トデハゴザイマスガ、併シ其ノ理想ヲ實現
  スルト云フ爲ニハ實行問題ト致シマシテ
  ハ種々ノ點ヲ考ヘテ參リマセヌト、俄カ
  ニ之ヲ實行致シマスト、サナキダニ細ツテ
  來タ絲ノ貿易ガソレ等ノ混亂ノ爲ニ外カラ
  切レズシテ、內カラ混亂ノ爲ニ切レルト云
  フコトガアツテハ相成ラヌト、斯ウ私共ハ
  考ヘテ居ル次第デアリマス、決シテ理想ニ
  於テ絕對ニ相容レザル反對意見ヲ持ツテ居
  ルト云フ譯デハゴザイマセヌ、併シ只今ノ
  所、斯ウ云フ急迫シタ事態ニ於キマシテ、
  アチラガ買フダケノモノハ續ケテ長ク賣ツ
  テ行キタイ、而シテ何時ソレガドウナルカ
  分ラナイ、蠶絲貿易以上ノ問題デドウナル
  カ分ラヌト云フ國情ニアル場合ニ、國內ノ
  多數ノ養蠶業者、製絲業者、ソレ等ノ間ノ
  配給ノ業者ト云フモノヲ引括メマシテ、其
  ノ事態ノ急ニ應ジマスル施設ト云フモノヲ
  取敢ズ取纒メテ行クト云フコトニ力ヲ盡サ
  ナケレバナラヌコトト考ヘテ、此ノ案ヲ出
  シテ居ル譯デアリマスカラ、輸出統制ヲ理
  想的ニヤリ得ナイト云フコトニ付テノ御指
  摘ノ點ハ、左樣ナ缺陷ガアルカモ存ジマ
  セヌガ、ドウゾ其ノ點ハ目下ノ事情ニ鑑ミ
  マシテ、本案ニ御贊成下サランコトヲ御願
  ヒ致シマス

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• 052・高橋熊次郎

  ○高橋委員長　一寸加藤君ノ御發言ノ前ニ
  御注意申上ゲマスガ、大臣ハ非常ニ國務多
  端ノ際デアリ、且ツ特ニ御忙シイ御事情ヲ
  承ツテ居リマス、ソレデ委員ノ諸君ニ於カ
  レテモ農林大臣ニ對スル質疑ヲ留保サレタ
  數氏ノ方々ガゴザイマス、ソレデ御發言ハ
  大臣ガ此ノ席ニ居ラレマセヌデモ、他ノ政府
  委員ヲ通ジテ略〓御承知置キノコトト思ヒマ
  スカラ、其ノ趣旨ヲ成ベク簡潔ニ御述べ下
  サルヤウ御願ヒ致シマス、大臣カラモ簡潔
  ナ御答辯デ宜カラト存ジマスカラ、是モ御
  注意申上ゲマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=52

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• 053・加藤知正

  ○加藤(知)委員　御尤モト思ヒマス、私モ
  成ベク簡潔ニ申上ゲマス、併シソレカラソ
  レヘト段々御尋ネ申上ゲマスト、中々絲ノ
  如ク縷々トシテ盡キナイト思ヒマスカラ大
  〓ナコトハ申シ述ベヌコトニ致シマスガ、
  併シ大臣ハ、私ガ理想案デナイカラ反對スル
  ト云フヤウニ考ヘテ居ラルルヤウニ思ヒマ
  スガ、若シ大臣ガ左樣ニ考ヘテ居ラルルト
  スレバ、私ハ決シテサウ云フ意味デ御尋ネ
  シテ居ラルノデナイト云フコトヲ申上ゲ
  ナケレバナリマセヌ、又私ノ之レマデ申上
  ゲテ居タコトハ決シテ理想的ナコトヲ申上
  ゲタノデハナイ、私ガ蠶絲貿易上現實ノ問
  題トシテ是非サウヤラナケレバ日本ノ生絲
  ヲ細ク長ク賣出スト云フコトハ出來ナイノ
  デアルト、斯樣ニ實ハ考ヘテ申上ゲテ居ル
  ノデアリマス、併シ此ノ上彼此レ申上ゲマ
  スト段々長クナリマシテ、他ノ諸君ニ御迷
  惑ニモナリマスカラ、是レ以上ノコトハ申
  上ゲマセヌ、ソコデ一ツ私ガ簡單ニ御尋ネ
  シテ置キタイト思フコトハ、此ノ間局長ヲ
  通ジテ大臣ノ御答ヲ戴キタイト云フコトヲ
  申上ゲマシタノハ、昨年蠶絲科學〓究所ガ
  百七十万圓ノ寄附金デ出來マシテ、政府ガ
  之ニ對シテ八万圓ノ助成金ヲヤツテ居ル、
  十六年度ニ於キマシテモヤハリ昨年同樣デ
  アルヤウニ吾々承知シテ居リマスガ、實際
  科學纖維、競爭纖維トノ比較〓究ヲ要スル
  場合ニ、十分ノ經費ガナクテハ到底滿足ナ
  試驗〓究ハ出來ナイノデアリマスカラ、政
  府ノ助成金ヲモツトウント增額シテ、シツ
  カリ試驗〓究ガ出來ルヤウニスルコトガ急
  務ダト思ヒマスガ、大臣ハドウ御考ヘデア
  ルカ
  今一ツハ各府縣ノ蠶業試驗場デアリマス、
  現在ノヤウナ狀態デハ全ク吾々一般ノ蠶絲
  業者ノ希望ニ副フコトガ出來ナイト思ヒマ
  ス、是ハウント整理改廢シテシツカリト試
  驗〓究ヲヤラセルナラヤラセル蛇ノ生殺シ
  ノヤウナコトデハイカヌト思フガ、之ニ對
  シテ大臣ハドノヤウナ考ヘヲ持ツテ居ラレ
  ルカ、此ノ二點ヲ御尋ネ申上ゲタイト思ヒ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=53

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• 054・石黒忠篤

  ○石黑國務大臣　蠶絲科學〓究所ニ關シマ
  シテハ設立間モナイコトデアリマスノデ、
  國家ノ助成金モマダ少クテ甚ダ相濟マヌト
  考ヘテ居リマスガ、政府ハ十分ニ援助ヲシ
  テ〓究ヲ進メテ參リタイト云フ考ヘヲ持ツ
  テ居リマス、其ノ一ツノ現ハレト致シマシ
  テハ、先般〓究所長ヲ決メルニ當リマシテ、
  色々ト考ヘテ人選シテモ平塚博士以外ニハ
  人ガナイ、國立ノ蠶絲試驗場長ヲシテ居ル
  者ヲ其ノ儘兼ネサセテ居ルコトハ非常ニ難
  カシイダラウガ、是非割愛サセテ吳レロト
  云フ御要望ガ當業者ノ方カラアリマシタ、
  大學ノ方モ兼ネテ居リ、中々多忙ナ身デア
  ラレマスケレドモ、是非斯ウ云フコトハ大
  事ナコトデアルカラ綜合的ノ指導ヲスルヤ
  ウニト云フコトデ同氏ニ奮發ヲシテ貰ヒ、
  又官廳關係ノ面倒ナ手續ガアリマシタガ、
  之ヲ割愛シテ時間的ニ兼ネルコトノ特例ヲ
  開イテ貰フト云フヤウナコトヲヤリマシタ、
  之ニ依ツテ私共ノ蠶絲科學〓究所ニ對スル
  氣持ヲ御諒解願ヒタイト思ヒマス
  各府縣ノ蠶業試驗場ノ件ニ關シマシテ御
  指摘ノ點ハ十分ニ注意ヲ致シマシテ改善
  ヲ致シタイト考ヘテ居リマス

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• 055・加藤知正

  ○加藤(知)委員　モウ一點御尋ネ致シマス、
  此ノ間モ桑園ノ減反ノコトニ付テ申上ゲタ
  ノデアリマスガ、此ノ間段々伺ヒマスト、
  桑園ハ五十三万町步ノ中六万六千町步ヲ整
  理スル、サウシデ食糧生產ノ方ニ〓ス、斯
  ウ云フコトデアツタノデアリマスガ、或ル
  委員モ申サレタヤウニ此ノ問題ハ非常ニ蠶
  絲業者ノ人氣ニ、容易ナラザル影響ヲ與ヘ
  ルト思フノデアリマスカラ、此ノ場合餘程
  考ヘナケレバナラヌコトデアルト思ヒマス、
  此ノ意味ニ於テ私ハ轉作減反ト云フヨリモ
  間作的減反デヤラレルコトガ人氣ニモ影響
  ヲ與ヘズ、又桑モ良ク出來、間作物モ良ク
  出來ル、ト私ハ斯樣ニ考ヘルノデアリマス、
  所ガ蠶絲局長ノ答辯ニ依マリスト、間作ノ成績
  ハ良クナイト云フ御答辯デアリマシテ、私
  共ガ全國的ニ調査致シマシタコトトハ全ク
  反對ナ御考ヘノヤウニ思フノデアリマス
  併シ轉作減反ト御方針ノ決マツタ今日致方ハ
  アリマセヌガ、萬一將來再ビ桑園ノ減反ヲ
  ヤラルヽト云フヤウナ場合ニハ今一段ノ調
  査〓究ヲナサル必要ガアルノデハナイカ、
  ト私ハ考ヘテ居リマスガ、此ノ點ニ付テ大
  臣ノ御所見ヲ此ノ際承ツテ置キタイト思ヒ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=55

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• 056・石黒忠篤

  ○石黑國務大臣　桑園ノ減反ト云フコトニ
  付テ御尋ネデアリマスガ、是ハ前ニモ局長
  カラ申上ゲタコトト存ジマス、今日食糧ノ
  關係上荒廢地休閑地等モソレ〓〓極力〓糧
  作物ニ利用シテ行キダイト云フヤウナ事情
  ニナツテ居リマス、サウシテ尙ホ桑園ニ關
  シマシテモ、古クナツテ收穫量ノ少イヤウ
  ナ所ハ〓糧作物ニ轉換シテ行ク必要ガアル
  ヤウニ考ヘテ計畫ヲ致シタ次第デアリマス、
  其ノコトガ蠶絲業ニ關係シテ居ル人々ノ人
  氣ニ關スルト云フヤウナ御話ハ御尤モト存
  ジマス、無論今日ハソレヲ致シマセヌデモ
  蠶絲業關係者ハ非常ナ事態ニ直面シテ居ル
  ノデアリマス、デアルカラ其ノ際ニ更ニ人
  氣ニ打撃ヲ與ヘルヤウナコトハ愼ムヤウニ
  ト云フ御話ダラウト思フノデアリマスガ、
  桑園ノ減反ノコトヲヤラナクテモ、ヤツテ
  モ、此ノ際ニ於テ蠶絲業關係者ト云フモノハ
  非常ナ事態ニ直面シテ居ルト云フコトデ、
  自覺ヲ十分ニシテ戴カナケレバナラヌコト
  ト思フ、ソレハ蠶絲業自體ニ及ンデ參リマ
  シタ直接ノ問題、ソレト國全體トシテ受ケ
  テ居ル大問題カラ、延イテハ〓糧ノ問題ガ
  來テ居ルノデアリマス、農業者ニシテ尙ホ
  殆ド養蠶專門ニナツテ居ル所ト云フヤウナ
  所デモ、非常時下ノ食糧ト云フコトニ付テ
  ハ農業者デアル限リ、從來トハ時代ガ變ツ
  タノデアリマスルカラ、或ル程度經營方面
  ノ考ヘヲ變ヘテ行ツテ貰ヒタイト云フ風ニ
  考ヘマス、省令ヲ以テサウ云フヤウナコト
  ヲ自覺シテ貰フト云フヤウナコトヲヤツテ
  行クベキ時期ニ達シテ居ルヤウニ思フノデ
  アリマス、從來ノ養蠶專門ノ地方ニ於キマ
  シテ吾々ハ調ベタコトガアル、農家ノ食べ
  ル蔬菜或ハ漬物類マデモ東京市ヲ經テ移入
  ヲシテ居ツタト云フヤウナ地方ノアリマス
  コトヲ、現ニ私ハ調査ニ參ツテ知ツテ居リ
  マス、サウ云フコトデ、御指摘ノ間作ニ依
  ル食糧作物ノ生產ト云フヤウナコトハ、無
  論出來ルダケ奬勵シテヤリタイト云フ風ニ
  思ツテ居リマス、ソレト同時ニ桑園ノ如キ
  モノモ、古クナリマシテ收量ノ少クナツタ
  ヤウナモノハ或ル程度ニ於テ切替ヘテ〓糧
  生產ニ向ケルト云フコトハ、只今ノ情勢上
  已ムヲ得ナイコトト斯ウ考ヘテ居ルノデア
  リマス、將來ソレヲドウ云フ風ニ實行シテ
  進ンデ參ルカト云フ問題ニ關シマシテハ、只
  今御指摘ノヤウナ事情モアルノデ、十分愼
  重ニ考慮致シマシテ、其ノ上必要トシマス
  ナラバ十分愼重ナ調査ノ上ニ於テ考慮ス
  ルコトト致シタイ、斯ウ考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=56

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• 057・加藤知正

  ○加藤(知)委員　モウ一點ダケ、是モ大臣
  ハ御承知ノコトデスカラ、詳シクハ申上ゲ
  マセヌガ、養蠶指導員ハ他ノ農事指導員等
  ニ比ベマシテ非常ニ待遇ガ惡イト云フノデ、
  吾々モ絕エズ不平ノ聲ヲ聞イテ居ルノデアリ
  やく、特ニ斯ウ云フ時代ニナリマスト、他
  ヘ轉向スル、轉職スルト云フヤウナ者ガ中
  中多イノデアリマシテ、是ハ洵ニ困ル現象
  デアルカラ何トカ養蠶指導員ヲ優遇スル方
  法ヲ講ジテ貰ヒタイト云フ要望ノ聲切ナル
  モノガアルノデアリマス、之ニ對シテ特ニ
  大臣ノ御考ヘノアル所ヲ伺ツテ置キタイト
  思フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=57

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• 058・石黒忠篤

  ○石黑國務大臣　養蠶指導員ガ他ノ指導員
  ヨリモ從來待遇ガ惡カツタト云フコトガア
  ルヤウニモ存ジマスガ、色々ナ社會ノ職業、
  又職員的任務ノ如何ニ應ジマシテ、我ガ國
  ノ如キ所デハ待遇ニ凸凹ガアツテ、其ノ當
  事者カラ見レバ不滿ノ點ガアリマセウガ、
  大體カラ見ルト、ソレ〓〓ノ社會的理由及
  ビ沿革的理由ニ於キマシテ、色々ナ物ニ價
  格ノ相違ガアルヤウニ、先ヅ大體ニ於テハ
  ソレ〓〓ノ理由ガアツテ定マツテ居ルト見
  ナケレバナラヌト思フノデアリマス、特別
  ニ不當ナル待遇ヲ特殊ノ理由カラ受ケテ居
  ルヤウナ所ハ、是ハ進ンデ是正シナケレバ
  イカヌト考ヘテ居ルノデアリマスガ、總テ
  ガ良イ方〓〓ト均霑致シマスレバ、モウ鼬
  ゴツコデ何處マデ行ツテモ盡キルコトハナ
  イノデアリマス、ソコデソレ等ノ點ニ關シ
  マシテ、特別ニ是ハ何トカ致サナケレバナ
  ラヌモノカドウカ私ハ未ダ能ク最近ノ事情
  ヲ承知致シマセヌ、十分ニ調査ヲ致シマシ
  テ愼重ニ考慮致シタイト思ヒマス、特ニ之
  ヲ優遇スルト云フヤウナコトハ、只今ノ時
  代ニハ少シ難カシイコトデハナカラウカト
  考ヘマスガ、十分ニ調査ヲ致シマシタ上デ、
  不當ナ待遇ニナツテ居ルヤウデアリマシタ
  ナラバ十分之ニ對シテ施設ヲ致シタイ、
  斯ウ考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=58

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• 059・加藤知正

  ○加藤(知)委員　實ハ大臣ノ質問應答ヲ徹
  底的ニ重ネタイト考ヘテ居リマシタガ、時
  間其ノ他ノ關係ガアリマシテ、洵ニ遺憾ナ
  ガラ此ノ程度デ打切ルコトニ致シマス

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• 060・高橋熊次郎

  ○高橋委員長　野溝君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=60

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• 061・野溝勝

  ○野溝委員　私ハ二點ダケ質問ヲシテ見タ
  イト思ヒマス、大臣ガ本法案ヲ御提出ニナ
  ツタコトニハ非常ニ感謝致シマス、私ノ聽
  カントスル所ハ、筋書ヲ申シマスト、政府
  ハ本法ノ上程ニ當リマシテ、他ノ蠶絲關係
  法規ノ改正法案ヲ本議會ニ上程スルト思ツ
  テ居リマシタ所ガ、絲價安定施設法、產繭
  處理統制法、生絲檢査法ト云フ點ダケノ改
  正ガ同時ニ行ハレルノミデアリマシテ、其
  ノ他蠶絲ニ關係ヲ持ツタ諸法案ガ改廢サレ
  ナカツタノデアリマス、此ノ點ハ政府ト致
  シマシテ如何ナル御所見デ同時ニ改正法案
  ヲ出サナカツタノカ、將又將來ニ於テハ本
  法案ニソレ等ノ關係法案ヲ一切吸收、改廢
  シヨウト云フ意思デアルカドウカト云フ點
  ヲ先ヅ御質問致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=61

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• 062・石黒忠篤

  ○石黑國務大臣　只今ノ野溝サンノ御質問
  ハ、一二ノ關係法令ヲ本案ニ聯關シテ改訂
  ヲ致シタガ、他ノモノヲヤラナイノハドウ
  云フ理由デアルカト云フコトデアリマス、
  詰リ直接關係ノ極メテ密接不可分ノモノヲ
  取リマシテ、本案ノ改正ト共ニ改正ヲシタ
  ト云フニ止メタ譯デアリマス、ソレ以外ニ
  於キマシテ改正ヲ要スルモノモ、御意見ノ
  ヤウニ多々アラウカト存ジマスガ、ソレ等
  ヲ提案致シマセナンダコトハ、兎モ角モ本
  案ノ如キ極メテ急イデ强度ノ統制ヲ實現ス
  ルト云フコトヲヤラナケレバナラヌ必要ニ
  迫ラレテ居ル時代ハ、爾餘ノモノヲ平常時
  ノヤウニ之ヲ改正シテ行クト云フヤウナ所
  マデ實ハ手ガ及ビマセヌ、サウ云フ事情デ
  已ムヲ得マセナンダノデアリマシテ、別
  他意ゴザイマセヌ、將來之ニ一切ヲ吸收ス
  ルカト云フ御尋ネデアリマスガ、成ベク統
  制ニ關係ノアルモノハ、統制法デスカラ是
  デ統制ヲ致シタイト云フ考ヘハ持ツテ居リ
  マスガ、併シ物ノ性質ニ依リマシテ、一切
  ヲヤルト云フ譯ニモ行カヌモノガアルダラ
  ウ、ソレハソレデ又必要ナル改正ヲ加ヘテ
  行ツタラ宜イデハナイカ、斯ウ考ヘテ居リ
  さい、團體ニ關スル分ニ付キマシテハ、是
  ハ御承知ノ通リニ農林、水產團體ノ整備統
  合ト云フコトハモウ年來ノ懸案デアリマシ
  テ、大分事態ガ熟シテ參リマシテ、其ノ方
  ニ進ンデ參ツテ居リマシタ所ニ、產業全體
  ニ亙リマシテ產業經濟ノ新體制ヲ整ヘテ行
  ク、其ノ大キナ一部門ト致シマシテ、產業
  團體ノ統制整備ト云フコトガ大キナ一項
  目トシテ揭ゲラレテ居ル譯デアリマス、
  サウシマスト、ヤハリソレニ對應致シマ
  シテ農林、水產關係ニ於キマシテモ年來
  ノ整備統合ノ問題ニ附加ヘテ、サウ云フ
  產業新體制ノ時代ニナツタト云フコト
  ノ新シイ理由ガ出來タ譯デアリマス、
  ソコデ成ベク之ヲ外トモ連絡ヲ執ツテ行キ
  タイト云フ考ヘヲ持ツテ居ルノデアリマス、
  外ノ方ハドウカト申シマズト、全ク自由ニ
  出來マシタ會社ガ商業ニ於キマシテモ工業
  ニ於キマシテアル譯デアリマシテ、商工會
  議所ト云フモノハ大分半官ト申シマスカ、
  公法人的存在トシテ法規ノ示シテ居ル所デ
  アリマスガ、ソレ以外ハ極メテ自由ナルモ
  ノガ多イ、農林、水產、蠶絲ト云フヤウナ
  系統ノ下ニヤツテ居ラレマスル團體ハ比較
  的少イ、ソコデ新シク團體制度ヲ定メラル
  ルニ付テモ比較的自由デアルノデアリマス、
  コチラノ方面ハ系統モ既ニ付イテ居リ、又
  沿革モ古イノデアリマシテ、ソレ〓〓ガソ
  レゾレノ長イ沿革ヲ持チ、サウシテ財產モ
  持チ、組合員或ハ會員ト云フモノガ非常ニ
  澤山居ル、經濟行爲ヲシテ居ルモノニ付テ
  ハ、團體ト團體員トノ間ニ經濟關係、債權
  債務ノ關係ガ個々別々ニ出來テ居ル、團體
  自體ノ外部ニ對スル債權債務モアリ、財產
  モアリ、役員、職員ト云フモノモ相當アル
  其ノ待遇ガソレ〓〓違フト云フコトガアリ
  マスノデ、大分時機ガ熟シテ立案モ進ミマ
  シタ爲ニ拘ラズ、急迫シタ事態ニ直面ヲ致
  シマシタ際ト致シマシテハ、ソレ等ノ整備
  統合ヲ致シマス爲ニ非常ナ再組織ノ爲ノ紛
  亂ヲ方々ニ生ジ、ヤリ掛ケデ時ガ過ギル、
  片方ハ出來上ツタ、片方ハマダ出來上ラナ
  イノガアルト云フヤウナ狀態デ、非常時中
  ノ非常時ニ突入スルト云フコトハ如何ナモ
  ノデアルカト云フコトデ提案ヲ止メタヤウ
  ナ次第デゴザイマス、左樣ナコトデ此ノ法
  ノ改正ニ付キマシテハ一應考ヘヲ及ボシタ
  ノデアリマスガ、併シ他ノ團體統制ト同
  ジヤウニ蠶絲關係ノ團體ニ付キマシテモ現
  狀ノ儘デ-團體ハ旣ニアルノデアリマス
  カラ、ソレニ新シイ非常時ノ氣分ヲ盛ツテ
  蠶絲方面ノ報國ヲシテ戴クヤウ呼掛ケマス
  コトニ於テヤリタイト考ヘマシテ、此ノ法
  案ノ提案ハ差控ヘタ譯デゴザイマス

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• 063・野溝勝

  ○野溝委員　ソレニ關係シテ此ノ點ダケ聽
  イテ置キマス、只今大臣ノ答辯ニ依リマス
  下、大體是ハ統制法案デアルカラ之ニ關聯
  シタ一切ノ關係法ハ名ノ如ク統制吸收スル
  方針デアルト云フ風ニ私ハ聽取ツタノデア
  リマスガ、サウ云フヤウニ解釋シテ宜シウ
  ゴザイマスカ

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• 064・石黒忠篤

  ○石黑國務大臣　ドノ法案モ色々ナ方面ニ
  關係ガアリマスノデ、ドノ方面ニ關係シタ
  モノガ多イト云フコトハ認定ノ問題ニナル
  ダラウト思ヒマス、統制法ニ關シマシテハ
  統制法ノ主目的ト致シテ居リマス所ノ蠶絲
  業統制ト云フ方面ニ直面ヲ致シマシテ、主
  ナモノハ之ニ統合致シタイ、其ノ他ノモノ
  デソレ〓〓厚薄ノ關係ハ多少ノ違ヒハアリ
  マシテモ、外ノ方デ獨立サセテ宜シイモノ
  モアルト思ヒマス、一切ヲヤルト云フ譯デ
  ハアリマセヌ、又物ノ見方ニ依ツテハ何レ
  モ皆統制ト云フコトニ引張ツテ解釋ガ出來
  ルモノデゴザイマス、併シソレダカラト云
  ツテ皆入レルト云フ譯ニモイカヌト思ヒマ
  ス、例ヘバ團體法ノ如キモノヲドウスルカ、
  斯ウ云フコトニナリマスト、ソレハ統制ノ
  爲ニ必要ナ團體ト云フコトニハナリマウ、
  併シ團體ヲ整理統合シテ系統アル團體ニス
  ルコトガ他面ニ要求セラレ、而モ農家ノ關係
  シテ居ル團體ト云フモノガ色々ノモノニ亙
  ツテ居ルノヲ整理統合シヨウト云フヤウナ
  コトガ唱ヘラレテ居ル時デアリマスト、ソ
  レヲ蠶絲ニ關スル限リハ蠶絲統制法ノ方ニ
  入レルト云フ譯ニ行カナイ場合モアラウト
  考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=64

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• 065・野溝勝

  ○野溝委員　ソレデハ私希望ダケ述ベテ置
  キマス、實ハ過般來此ノ委員會デ問題ニナ
  ツタノデアリマスガ、輸出業ノ問題、ソレ
  カラ產業組合製絲ノ問題、支那ニ於ケル蠶
  絲業調整ノ問題等々之ニ關係シタ問題ガ非
  常ニ派生シテ、今日ニ至ルマデ其ノ結論ヲ
  得ラレナイ譯デアリマス、私ハ此ノ農家農
  家ト言ハレマスケレドモ現在蠶絲業ト云ヒ
  マシテモ農業全體トシテ考ヘナケレバ、從
  來ノ如ク唯蠶絲業ト云フ一ツノ固着シタ考
  ヘデナク、農業全體ノ立地性ヲ持ツタ所マ
  デ發展シタ考ヘヲ持ツテ行カナケレバナラ
  ヌト云フ風ニ考ヘテ居ルノデアリマス、サ
  ウ云フ一ツノ理想サヘモ此ノ法案ニ付テ論
  議ヲ進メマスト只今ノヤウナ問題ガ起ツテ、
  其ノ結論ヲ得ラレナイヤウナ狀態ニアリマ
  ス、ドウカ一ツ大臣御願ヒデアリマス、農
  業團體ノ統制モ非常ニ結構、大贊成デアリ
  マスガ、併シソレヨリモ職業別ノ團體ダケ
  ハ是非統合シテ貰ヒタイト思ヒマス、是ハ凡
  ユル方面ニ影響ノアル問題デアリマスカラ、
  是非一ツ大臣ノ御記憶ニ留メラレテ來ルベ
  キ議會ナリ或ハ其ノ施行上ニ當リマシテ一
  ツ御考ヘヲ實行ニ移シテ戴クヤウニ希望申
  上ゲテ置キマス
  第二點是モ簡單ニ御答辯ヲ伺ヒマス、蠶
  絲生絲ノ利潤算定ニ關スル大臣ノ御所見ヲ
  伺ヒタイト思フノデアリマス、過般來ノ委
  員諸兄ノ質問ニ對スル政府委員カラノ御答
  辯ハ生產費ヲ保障スル、サウシテ利潤ヲ保
  障スルト云フコトデアリマス、實ハ漠トシ
  テ分ラヌノデアリマスガ、私ハ利潤ナドト
  云フコトハ斯ウ云フ時局デアリマスカラ餘
  リ論議シタクナイ、併シ生產費ト云フモノ
  ガ或ル程度保障サレヌコトニハ生活ガ出來
  マセヌシ、生產擴充ガ出來マセヌカラ、此
  ノ點ハドウシテモ保障シテ貰ハナケレバナ
  ラヌト思フノデアリマス、ソコデ問題ハ何
  ト言ヒマシテモ生產階級ハ養蠶家デアリマ
  ス、生產費ノ問題ニ對シテハ旣ニ絲價安定
  委員會ニ於テハ前年度ノ繭値ガ大體決定ニ
  ナツテ居ル、ココデ政府ガ發表シタ所ガソ
  レガ何モ今後ニ於ケル繭價デアルト云フコ
  トヲ當局ガ決定的ニ申サレルモノデモナイ
  ノデアリマス、大體吾々ガ昨年度ニ於ケル
  挺入以來ノ繭價ト云フモノガ是ハ逆算デア
  リマセウカ、或ハ生產費カラノ掛目デアル
  カ知リマセヌガ、大體決ツテ居ル、ソレヲ
  以テ私ハ今後ニ於ケル繭價ノ基準、基本値
  デアルト云フ風ニハ受取リマセヌ、參考ト
  シテ、當局ノ期待ニ副ツテ、生產擴充、品
  質ノ改良ト云フコトニ一生懸命デアリマス
  カラ、一ツ此處デ御發表願ヒタイト存ジマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=65

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• 066・石黒忠篤

  ○石黑國務大臣　繭ノ價格ニ關シマシテノ
  御尋ネデアリマス、其ノ基準ヲドウ見テ居
  ルカト云フコトノヤウニ伺ヒマシタ、之二
  關シマシテハ生產費ヲ基準ト致シマシテ決
  定ヲ致シマス、其ノ決定ノ仕方ハ出來ルダ
  ケ生產費ヲ精密ニ調査致シマシタ資料ヲ十
  分ニ備ヘマシテ、ソレヲ資料ト致シマシテ
  蠶絲委員會ニ諮問ヲシテ決定致スト云フ方
  針ヲ立テテ居ルノアデリマス、此ノ生產費
  ヲ中心ト致シマシテ蠶絲委員會ノ諮問ニ付
  シ、蠶絲委員會ハ色々ナ方面ノ權威者ガ集
  マラレテ活キタ御判斷ニ依ル色々ナ御意見
  ヲ綜合致シマシテ決メタイト考ヘテ居ルノ
  デアリマス、今日生產費ガ幾ラデアツテ凡
  ソ幾ラヲ以テ繭値ト見ルカト云ツタヤウナ
  コトハ、此ノ際ニ於テハ御答ヘヲ差控ヘタ
  イト思ヒマス

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• 067・野溝勝

  ○野溝委員　先程來私御願ヒシテ居ツタノ
  デアリマスガ、ドウモ大臣ノ御答辯モナイ
  ノデ、甚ダ遺憾ニ思フノデアリマスガ、大
  體是ハ絲價安定委員會デ決メル値段ヲ、吾
  吾ハ參考ニシヨウト思フノデス、ソレヲ發
  表ニナラヌト云フトドウモ困ルノデスガ、
  斯ウ云フ風ニ見テ宜イデスカ、是ハ蠶絲局
  長カラ御答辯ヲ願ヒタイ、大體挺入レ生產
  價格五十圓ト云フモノカラ逆算致シマスト、
  大體五、六十掛ト云フ風ニ私ハ見テ居ルノ
  デスガ、ソレデ間違ヒナイノデアリマスカ

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• 068・吉田清二

  ○吉田政府委員　生產費ヲ基準ニシテ繭ノ
  買値ヲ決メルト云フコトニナツテ居リマシ
  テ、絲價カラ逆算シテ繭値ヲ決メルト云フ
  ヤウニハナラナイノデアリマス、今ノ御話
  ハ絲價カラ逆算スル値デアリマスガ、今度
  決メマスモノガ、其ノ程度ニナリマスカ、
  ソレヨリ上ニナリマスカ、下ニナリマスカ、
  今大臣カラ申サレマシタヤウニ、相當生產
  費ヲ基準トスル凡ユル精密ナ資料ヲ基礎
  ニシテ、大臣ノ仰セラレタ通リ、生キタ御
  判斷ヲ願ツタ上デ、決定ヲスルト云フコト
  ニナリマスカラ、ドノ程度ニナリマスカハ
  私モ申上ゲルコトハ出來ナイノデアリマス

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• 069・野溝勝

  ○野溝委員　先程ノ大臣ノ御答辯ニ依リマ
  スト、生產費ハ各方面ノ養蠶家ニ當ツテ、
  精密ナ調査ヲシテ決メル、勿論精密ナ調査
  ト云フト、蠶種代、諸掛リ或ハ稅金ト云フ
  ヤウナモノヲ、全部入レタモノヲ基準ニサ
  レルノデアリマセウケレドモ、大體養蠶實
  行組合聯合會ノ、十五年度ノ生產費ト云フモ
  ノハ、九圓十六錢ニナツテ居ル譯デス、サ
  ウ云フ一ツノ養蠶實行組合聯合會アタリノ
  生產調ベガ、發表ニナツテ居リマスノデ、
  養蠶·家モソレヲ參考ニシテ進ンデ居ルノデ
  アリマスケレドモ、大體養蠶組合聯合會ア
  タリノ生產調ベト、政府ノ見解ハ餘リ大差
  ハナイヤウニ、御考ヘニナツテ居ラレマス
  カドウデスカ

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• 070・吉田清二

  ○吉田政府委員　是ハ政府ノ見解トカ何ト
  カ云フ問題デハナイト思フノデアリマシテ、
  精密ナ資料ガ出テ參リマスルカラ、其ノ資
  料ニ依リマシテ、委員會デ能ク精査シテ參
  リマシテ、ソコニソレコソ能ク生キタ判斷
  ヲスルコトニナツテ、適當ニ決メテ貰フノ
  デアリマス、決メテ貰ヒマスモノガドノ程
  度デアルカト云フ見透シハ、吾々ニハ絕對
  ニ申上ゲ得ラレヌモノト、御諒承願ヒタイ
  ト思ヒマス

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• 071・野溝勝

  ○野灌委員　ドウモ其ノ點甚ダ遺憾ニ考ヘ
  マスケレドモ、マサカ養蠶家ニ不利ニナル
  ヤウナコトハナイデセウ、其ノ點ハ過般來
  ノ御答辯ニ依ツテ、ハツキリシテ居ルノデ
  スカラ私ハ申上ゲマセヌ、政府モ御存ジダ
  ト思ヒマスケレドモ、昨年ノ十一月郡是
  アタリデハ五十五掛デ繭ヲ賣出シタ、ソレ
  ガ爲ニ非常ニ繭價ニ影響ヲ來シタト云フコ
  トガアル、斯ウ云フ思惑的ナコトヲヤラレ
  テハ幾ラ政府ガ生產費ヲ保障シテヤルト
  云ツテモ、ソレニ荒サレテ來マスカラ、其
  ノ點ハ十分御注意願ヒタイト思ヒマス

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• 072・高橋熊次郎

  ○高橋委員長　山田六郞君

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• 073・山田六郎

  ○山田(六)委員　極ク簡單ニ一、二御伺ヒ
  致シタイト思ヒマス、先達テ農林大臣ヨリノ
  御說明ヲ拜聽致シタノデアリマスガ、本法
  案ニ對シテ第一項ヨリ、第七項マデノ御話
  ガアツタノデアリマス、其ノ中デ寧ロ本案
  ニ對シテ重要ナルコトハ、第一ノ蠶絲業生
  產計畫ノ設定、第二ノ會社ノ設立、此ノ二
  ツノ問題ガ蠶絲業ノ骨子ヲ成シテ居ル、斯
  ウ云フ風ニ見ラレルノデアリマス、殊ニ此
  ノ目的達成ノ手段トシテ會社ヲ設立スル、
  斯ウ云フコトデアリマスガ、ソレガ第四條
  ニ規定サレテ居ルノデアリマシテ、是ハ統
  制機關ノ會社ニ對スル命令デアリマス、此
  ノ第四條ニ蠶種、繭生絲ヲ日本蠶絲統制
  株式會社ニ賣渡スベシ、斯ウ云フヤウニハ
  ツキリ規定シテアルノデアリマス、更ニ生
  產ノ用ニ供スル蠶種又ハ繭ハ、日本蠶絲統
  制株式會社以外ノ者カラ買入レルコトヲ得
  ズ、斯ウ云フ工合ニ規定シテアルノデアリ
  やく、卽チ蠶絲業者ノ生產ニ依ルモノ、或
  ハ生產資材トシテ入用ナルモノハ、蠶絲統
  制株式會社カラ買入レルコト、或ハ蠶絲統
  制會社ニ賣渡スコト、此ノ二ツノコトガ
  此ノ統制ノ眼目トナツテ居リマス、之二
  依ツテ統制ノ完璧ヲ期サウト云フノガ、第
  四條ノ目的デアリマスカラ、本統制法ニ於
  キマシテ、第四條ハ極メテ重要ナル部面ヲ
  占メテ居ル條項ト思フノデアリマス、私ハ
  是デ宜シイト思フノデス、斯ウスルコトニ
  依ツテ、初メテ統制ノ實ヲ擧ゲ得ラレルコ
  トト、信ズルノデアリマス、併シナガラ此
  ノ中ニ但書ガアル、此ノ「但シ命令ヲ以テ定
  ムル場合ハ此ノ限ニ在ラズ」ト云フ條項ハ、
  今日マデノ日本ノ立法原理ト云ヒマスカ、立
  法技術ト云ヒマスカ、一般法令ノ上カラ申
  シマシテ、極メテ異例ナモノニ對スル救濟
  法ト云フコトガ、通則ニナツテ居ルノデア
  リマス、所謂極メテ少數ナル品物ニシテ、
  或ハ地方ノ特殊ナル需要ノ關係、消費ノ關
  係等ヨリモ、此ノ四條ノ目的ヲ此ノ儘用フ
  ルコトニ依ツテ、非常ナ迷惑ヲ掛ケルヤウ
  ナコトガアツテハ困ルト云フノデ、救濟條
  項トシテ使ハレテ居ルノガ、今日マデノ日
  本ノ立法ノ常習ナノデアリマス、而シテ此
  ノ第四條ニ對シテハ、五千圓以下ト云フ非
  常ニ過大ナ罰金ヲ以テ、此ノ違反者ヲ罰ス
  ルコトニナツテ居ルノデアリマス、デアリ
  マスカラ、斯ウ云フ强イ大ナル罰則ヲ付ケ
  テアル所ノ第四條、卽チ生產品ヲ賣渡スベ
  シ、統制會社以外カラ買ツテハ相成ラヌト
  云フ、此ノ二ツノ金科玉條トモ言フベキ重
  大ナル條項ハ、何處マデモ遵守シナケレバ
  ナラヌ、若シ之ニ反シタ者ハ、五千圓以下
  ノ罰金ニ處スルコトニナツテ居リマスカラ、
  是ハ動カスベカラザル條項デアル、併シ
  ナガラ此ノ但書ト云フモノハ、斯ウ云フ高
  イ罰金ヲ以テ、命令ヲ嚴格ニ實行セシムル
  ト云フコトハ酷ニ失スル、或ハ實際ニ行フ
  トシテ考ヘモノデアルト云フヤウナ、情狀
  酌量スベキ特例ノモノニ臨ム救濟法トシテ、
  此ノ但書ガ存在スルト云フコトデナクテハ
  ナラヌト思フノデアリマス、然ルニ先日來政
  府當局ノ御說明ニ依リマスト、全ク此ノ條
  項ニ反シタルコトヲヤラウト云フ、御計畫
  ガアルヤウデアリマスガ、是ハ此ノ法律ノ表
  面カラ言ヒマシテ、實ニ私ノ理解シ得ナイ
  御說明ダト思フノデアリマス、日本ノ生絲
  ハ海外ノ輸出、日本內地ノ需要、此ノ二ツ
  ノ目的ガ日本蠶絲業ノ大ナル消費方面ニナ
  ルノデアリマス、日本ノ蠶絲業ノ消費方面
  ハ輸出ニアラズンバ內地需要、此ノ二ツデ
  アリマス、此ノ二大眼目ガヤハリ第四條ノ
  中ニ支配サレルコトハ是ハ當然過ギル程
  當然ダト吾々ハ思フノデアリマス、而シテ
  其ノ以外ノ各地方々々ニ種々ナル生產ヤ消
  費ガ行ハレルノデアリマスカラ、ソレ等ノ
  モノニ此ノ五千圓ト云フヤウナ、斯ウ云ウ
  ヤウナ嚴格ナ命令條項ヲ以テ臨ムト云フコ
  トハ、是ハ理窟ニ合ハナイ、救濟スル方法
  ガナクテハナラヌ、此ノ但書ヲ以テサウ云
  フ部面ノ救濟ニ充テルト云フモノガナケレ
  バ、法律ノ體ヲナサヌト考ヘラレルノデア
  リマス、其ノ點ニ對シマシテ、今日マデノ
  政府當局ノ辯明ニ非常ニ深キ疑ヒヲ抱ク者
  デアリマスカラ、其ノ點ヲ御伺ヒ致シタイ
  ト思フノデアリマス

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• 074・石黒忠篤

  ○石黑國務大臣　山田サンノ御尋ネニ御答
  ヘ致シマスガ、本法第四條ハ本法ノ目的ノ
  重要ナル一ツデアルト云フコトハ御指摘ノ
  通リデアリマス、而シテ之ニ依リマシテ會
  社ニ對シテ賣買ヲ致スト云フ原則ヲ執ツテ
  居ルノデアリマスノデ、御話ノ通リ生絲ト
  致シマシテハ一半ハ輸出用、一半ハ國內
  用ト云フコトニナツテ居ルノデアリマス
  生絲ノ問題ニ付テ只今マデ動モスレバ輸出
  ト云ヘバ生絲、生絲ト云ヘバ輸出ト云フ風
  ニ考ヘテ居リマスガ、併シ他ノ一半ハ國內
  ノ需要ニ向ケラレテ居ルノデアリマス、最
  近ニ於キマシテハ、國內需要ガ御承知ノ通
  リ段々餘計ニナツテ來テ居ルト云フヤウナ
  事情デアリマス、將來ノ問題ト致シマシテ
  ハ只今ノ急迫事情ノ下ニ於キマスルヤウ
  ナコトハ、是ハ長續キモ致スマイト思ヒマ
  スシ、長續キシテハナラヌノデアリマシテ、
  先程加藤サンノ御尋ネノヤウニ、吾々ハ出
  來ルダケ早ク通常ノ貿易狀態ニ戾シテ、出
  來ルダケノモノヲ輸出致シタイト云フ考ヘ
  ヲ持ツテ居ルノデアリマス、ソレニ致シマ
  シテモ、相當長期ニ亙ツテ、是等ニ對シテ
  ハ多少ノ差ノアルコトハ已ムヲ得ナイコト
  ト考ヘテ居ルノデアリマス、併シ輸出生絲
  ガ全部デナイト云フコトハ事實デアリマス、
  而シテ此ノ會社ノ取扱ヒマスルモノハ、啻
  ニ絲ニ限ラナイノデアリマス、蠶絲ノ大部
  分、繭ノ殆ド大部分ニ付キマシテハ、此ノ
  會社ガ中心ニナツテ賣買ヲ致サセル、斯ウ
  云フコトニ致シテ居リマス、故ニ第四條ノ
  本文ニ於キマシテ、之ヲ包括的ニ書クト云
  フコトハ少シモ差支ヘナイト考ヘルノデア
  リマス、但書ニ於テ除外例ヲ付ケルト云フ
  コトハ、御話ノヤウニ、是ハ取除ケノ場合
  ヲ言フノダト云フコトニナルノデアリマス、
  之ニ根據致シマシテ、輸出生絲ヲ取扱ハナ
  イト云フコトニ致シマシテモ、只今申上ゲ
  マシタヤウナ關係上、統制會社ノ取扱物品
  ノ價格ノ上カラ申シマシテ、必ズシモ不當
  ノコトハナイト私ハ考ヘマス、而シテ出來
  ルナラバ、ソレ等ノ輸出生絲モ將來ノ理想
  ト致シマシテハ、當會社ニ於テ統制ヲ及ボ
  スト云フコトニ付テハ色々御意見ガアリマ
  スガ、國ニ於テモサウ云フ反對ノ理想ヲ持
  ツテ居ルノデハナイ、理想ト致シマシテハ
  全クサウアリタイト考ヘテ居ルノデアリマ
  ス、尙更之ヲ本文ニ於テ廣ク書イテ置キマ
  シテモ、一向差支ヘナイト考ヘテ居ル譯デ
  アリマス

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• 075・山田六郎

  ○山田(六)委員　私モ少シ疑問ガアルノデ
  アリマスガ、此ノ買入レ、賣渡シト云フヤ
  ウナコトガ、此ノ法律ノ眼目ニナツテ居ル
  ノデアリマスカラ、省令、勅令等ヲ以テ、
  法律ノ精神ニ反シタ規定ヲ設ケルト云フコ
  トハ相成ラヌト私共ハ思フノデアリマス、
  是ハ法律ノ精神ニキチント決メテアル範圍
  內ニ於テ、勅令、省令ト云フモノガ發セラ
  レルノガ當然デアリマスケレドモ、法律ヲ
  勅令ヤ省令ヲ以テ左右シ得ルト云フコトハ
  絕對ニ許スベカラザルコトデアルト云フ風
  ニ考ヘラレルノデアリマス、而シテ日本ノ
  蠶絲ノ大部分ト云フモノハ、輸出及ビ國用
  ノ二途ニ向ツテ使フノデアリマスカラ、此
  ノ大ナル流レハ此ノ法律ヲ以テ流レヲ決メ
  テ置ク、賣渡スベシ、買入レルベシト云フ
  流レヲキチント決メテ行ク、此ノ二ツノ大
  キナ流レハ、此ノ法律ノ命ズル儘ニ、買入
  V、賣渡シヲ統制シナケレバナラヌ、而シ
  テ勅令ヤ省令ヲ以テ之ニ當嵌メルコトガ無
  理デアルト云フモノニ對スル救濟方法トシ
  テ、此ノ但書ニアルガ如キコトガ行ハレル
  場合ニ於テモ、勅令ヤ省令ニ依ツテ此ノ第
  四條ノ精神ニ反シタコトヲ規定スルト云フ
  コトハ所謂立法權ヲ無視シタモノデアル
  ト云フ風ニ見エルノデアリマスガ、其ノ點
  ニ付テ今一應御所見ヲ御聽キシタイノデア
  リマス

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• 076・石黒忠篤

  ○石黑國務大臣　法律ノ規定ノ仕方ノコト
  ニ關シマシテハ、決シテ立法權ヲ無視シテ
  居ルトハ考ヘナイノデアリマス、是ハ專門
  ノ法制局等ニ於テモ認メラレテ來テ居ルノ
  デアリマス、私共ハ左樣ニハ考ヘテ居ラヌ
  ノデアリマス、而シテ輸出生絲ヲ除キ、生
  絲ヲ買入レルト云フ風ニ致スコトガ宜シイ
  カモ知レマセヌケレドモ、色々御希望ニモ
  アリマスヤウニ、私共ハ出來ルダケ理想ト
  シテ、サウ云フ場合ニ立到リタイト云フ念
  願ハ持ツテ居リマス、其ノ時ニナツタラ又
  變ヘテ廣クスルト云フヤウナコトヲシナク
  テモ宜カラウト考ヘルノデアリマス、左樣
  御承知ヲ願ヒマス

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• 077・山田六郎

  ○山田(六)委員　私共ハ其ノ輸出ヲ除外ス
  ルコトガ宜イトカ惡イトカ云フ意味デハナ
  イノデアリマス、第四條ノ本文ノ上カラ此
  ノ法律ヲ解釋致シマス時ニ、此ノ日本ノ生
  絲ノ二ツノ流レ、此ノ二ツノ大キナ流レハ、
  此ノ第四條ニアル規定ニ依ツテ處置スベキ
  モノデアツテ、其ノ他ノ小ナル此ノ規定ヲ
  利用シ得ナイモノニ對シテ救濟ノ方法トシ
  テ但書ガ挿入サレタト見ルノガ當然デアル
  カラ、勅令等ヲ以テ此ノ法律ノ趣旨ニ反シ
  タル指導ヤ命令ヲスルコトハ、是ハ勅令若シ
  クハ省令ヲ以テ改廢スルガ如キ結果ヲ招來
  スルノデハナイカト云フコトヲ惧レルノデ
  アリマス、先達テ來政府當局ノ御說明ニ
  依リマスト)此ノ第四條ノ精神ヲ無視シテ
  今後指導シヨウ、斯ウ云フ御計畫ガアルヤ
  ウデアリマスガ、第四條ヲ此ノ儘生カシテ
  置イタノデハ、サウ云フコトヲヤルベキデ
  ハナイ、ヤルコトハ極メテ違法ノ處置デハ
  ナイカト考ヘタカラ御尋ネ申上ゲタノデア
  リマス、此ノ方面ハ是以上繰返シテモ同ジ
  コトデアリマスカラ、此ノ程度デ止メマス
  ガ、極ク簡單ニ今一ツ御伺ヒシタイコトハ、
  先達テノ御說明ニモアリマス通リ、生產計
  畫ノ設定ト云フノガ本法律ノ目的デアルト
  云フコトデアリマシタガ、此ノ計畫生產ト
  云フコトハ過去ノ如キ增產奬勵ノ時代ヲ抛
  棄シマシテ新タニ計晝生產ノ時代ニ入ツ
  ク、斯ウ云フ風ニ見ルベキデアルト思フノ
  デアリマスガ、生產計畫ト云フモノノ出發
  ハ、消費ノ計畫カラ出發シナケレバナラヌ
  ト云フコトハ申スマデモナイノデアリマス、
  然ルニ此ノ法律ニハ生產計畫ニ對シマシテ
  ハ種々ナル統制ガ行ハレルコトニナツテ居
  リマスガ、消費方面ニ對シマシテ如何ニモ
  其ノ觸ルル所ガ少ナイノデアリマス、ソレ
  ハドウ云フ點ヲ惧レルカト云フト、此ノ法
  律ハ其ノ點ニ觸ルルコトハ困難ナリトシテ
  モ、計畫生產デアリマスカラ消費ヲ基礎ト
  シタ生產ノ計畫、消費ノ基礎ガ確立シマセ
  ヌケレバ、此ノ生產計畫ト云フモノハ始
  終消費方面ノ動搖ニ依ツテ左右サレナケレ
  バナラヌト云フ結果ニナルノデアリマス、
  デアリマスカラ先達デモ一寸御聽キシタノ
  デスガ要領ヲ得ルコトガ出來ナカツタノデ
  アリマス、ケレドモドウシテモ計畫生產ト
  云フモノヲ、今後ヤツテ行カウトスル以上
  ハ消費部面ニ對スル計畫ガ確立サレナケ
  レバ相成ラヌ、若シ其ノ方ガ確立シナイデ、
  此ノ計畫生產ノミヲヤツテ居リマスレバ
  生產者ニ及ボス危險ト云フモノハ非常ニ多
  イ、イツ何時消費方面ノ變動ノ爲ニ其ノ生
  產計畫ナルモノニ動搖ヲ來スカモ知レナイ
  ト云フ心配ガ始終絕エナイノデアリマスガ、
  其ノ點ニ對シマシテノ御所見ヲ御伺ヒシタ
  イト思フノデアリマス

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• 078・石黒忠篤

  ○石黑國務大臣　生產計畫ハ消費計畫ヨリ
  出發ヲシナケレバイカヌガ、本法案ニ付テ
  ハ消費方面ニ觸レルコトガ少イ、消費方面
  ノ計畫ガ確立シナケレバ生產計畫ガ立タナ
  イ立テテモ必ズ食ヒ違ヒガ出來ルノデア
  ル、其ノ結果生產者ニ思ハザル結果ヲ來ス、
  斯ウ云フ風ニ伺ヒマシタガ、是ハ計畫生產
  ノ爲ニ消費ノ計畫ヲ出來ルダケ確立シテア
  リタイモノダト云フコトハ御話ノ通リデア
  リマス、少クトモソレニ對シマシテ或ル程
  度確カナ見透シヲ付ケルト云フコトハ、私
  ハシナケレバナラヌト思フノデアリマス、
  ソコガ生產計畫ヲ立テマスノニ非常ニ難カ
  シイ點ダト考ヘルノデアリマス、其ノ點ニ關
  シマシテ消費ノ見透シヲ付ケルベク、消費方
  面ノ趨勢ト云フモノヲ常ニ調ベマシテ、十分ノ
  資料ヲ備ヘテ置ク必要ガアル、ソレノミナ
  ラズ委員會等ニ於キマシテ、各方面ノ權威者
  ニ御參加ヲ願ヒマシテ、十分ノ見透シヲ付ケ
  ルト云フコトハ、消費ノ見透シヲ付ケテ、ソ
  レニ基イテ生產計畫ヲ立テテ、出來ルダケ
  誤リナキヲ期シマスルニ必要ナ點ダト考ヘ
  マス、蠶絲委員會ニ於キマシテハ生絲ノ生產
  ヲ將來ドウ云フ風ニ計畫シテ宜イカ、短纖
  維ヲドウ見テ宜イカト云フヤウナコトヲ十
  分ニ出來ルダケノ資料ヲ以テ、各方面ノ權
  威者ニ十分ノ御審議ヲ戴イテ計畫ヲ立テテ
  行ク、斯ウ考ヘテ居ルノデアリマス、而シ
  テ是等ノ點ガ萬一-見透シモ出來ルダケ
  ハヤリマスガ、食ヒ違ヒガ起ルト云フヤウ
  ナコトガ豫メ分ツテ、サウシテソレヲマダ
  改メルコトノ出來ル時代デアリマシタナラ
  バ同ジク蠶絲委員會ニ速カニ御諮リヲ致
  シマシテ計畫ノ改討ト云フコトモナサナケ
  レバナラヌト考ヘテ居リマス、而シテ尙ホ
  食ヒ違ヒ等ノ爲ニ一ツノ不都合ガ起リマシ
  タヤウナ場合ニハ是ハ會社ニ於テ保管ヲ
  餘計ニ致ストカ或ハ色々均衡ヲ圖リマス爲
  ノ施設ヲ致シマシテ、生產者ニ負擔ノ及バ
  ナイヤウニ圖ル仕組ハ出來ルダケ講ジテ參
  リタイ、斯ウ考ヘテ居ル次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=78

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• 079・山田六郎

  ○山田(六)委員　今一ツ御尋ネヲ致シタイ
  ト思ヒマス、先達テカラ政府委員ノ御說明ヲ
  拜聽致シテ見マスルト、此ノ價格ヲドウス
  ルカト云フ問題ニ付キマシテハ生產消費ヲ
  基礎ト致シマシテ、經濟事情ヲ斟酌シテ需
  給ノ狀況ヲ織入レテ、サウシテ價格ヲ決定
  スルンダト云フコトノ御說明ハ數囘拜聽致
  シタノデアリマス、私ハ其ノ點ニ付テ先刻
  野溝君ガ御問ヒニナツタノト同一ノ意味デ
  アリマスルガ、昨年十二月七日ニ御決定ニ
  ナリマシタ經濟新體制要綱ト云フモノノ中
  ニハ「主要物資ノ價格ヲ公定スルニ當リテ
  ハ中庸生產費ヲ基礎トシ適正利潤ヲ計上
  ス」ト斯ウ云フコトニ相成ツタノデアリマ
  ス、現內閣ノ經濟新體制要綱トシテ中庸生
  產費ヲ基礎トシテ適正利潤ヲ計上スルノダ
  ト斯ウ云フコトヲ天下ニ發表サレテ居ルノ
  デアリマスカラ、此ノ繭ノ價格ヲ決定スル
  上ニハ所謂生產費、或ハ其ノ他ノ經濟事情
  等ヲ斟酌シ、更ニ適正利潤ヲ計上シテ決定
  スルト云フ御答辯ノアルノガ當然ノヤウニ
  考ヘテ居ツタノデアリマスガ、今日マデ其
  ノ點ニ一度モ言及サレタコトガナイト思フ
  ノデアリマス、是ハ養蠶家ニ對スル心理上
  ノ影響モ非常ニ重大デアルト思フノデアリ
  マスガ、總テノ物價ハ斯ノ如キ方針ニ依ツ
  テ決定スルト云フ以上ハ、繭ノ價格ヲ決定
  スル上ニ於キマシテモ適正利潤ヲ計上スル
  ト云フコトガ極メテ適當ダト考ヘラレルノ
  デアリマスガ、此ノ點ニ付テ御所見ヲ御伺
  ヒ致シタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=79

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• 080・石黒忠篤

  ○石黑國務大臣　中庸生產費ヲ基礎トシテ
  適正利潤ヲ計上スルト云フコトニ經濟新體
  制ガ定メラレテ發表サレタ、繭ノ生產費ニ
  對シテ生產費、經濟事情ト云フコトヲ言ハ
  レルガ、適正利潤ト云フモノハ言ハナイガ、
  ソレハドウカト云フ御尋デアリマス、是ハ
  我ガ國ノ農業養蠶ト云フモノノ經營狀態ガ
  工業會社等ノ經營狀態ト規模モ違ヒ、又經
  營組織モ非常ニ違ツテ居ル、自家勞働ト云
  フモノヲ最モ大キナ中心トシテヤツテ居ル
  ト云フヤウナ關係上、工業要品ニ對シマス
  ル適正利潤ト云フ言葉ト同ジ意味ノ利潤ト
  云フコトヲ我ガ國ノ農業經營、養蠶經營ト
  云フヤウナモノニ言ヘルカドウカト云フ問
  題ハ、可ナリ色々ナ議論ノアル所ト考ヘル
  ノデアリマス、故ニ其ノ意味ニ於キマシテ
  經濟新體制ト云フコトハ主トシテ工業關係
  ノコトヲ申シテ居ルノデアリマス、ソレト
  同ジ文句ヲ用ヒマシテ、此ノ性質ニ付キマ
  シテ特殊ノ性質ヲ持ツテ居リマスル農業、
  養蠶ノ經營ニ對シマシテ、ソレヲ當嵌メテ
  申スコトガ適當デアルカドウカト云フコト
  ニ付テハ私ハ疑問ヲ持ツテ居リマス、全ク
  同一ニ行クト云フ性質ノモノデハナイダラ
  ウカト思ツテ居リマス、併シサウカト云ツ
  テ自家勞働ヲ主トシテ居ルモノデアルカラ、
  ソレハズツト低ク勞働報酬ト云ツタヤウナ
  モノヲ値切ツテ見テ宜イト云フ觀念ハ全然
  ゴザイマセヌ、是等ニ關シマシテハ相當ニ
  見方ニ依リマシテハ自家勞働ト云フモノハ
  外ニ賣ル所ノナイ勞働デアルカラ、此ノ勞
  働ノ價値ヲ安ク見テ宜シイト云フ說ヲ
  唱ヘテ居ル人モアルヤウデアリマス、
  併シ又見方ニ依リマスレバ、自家勞働ト云
  フモノハ非常ニ品質ノ良イ勞働ナノデ、是
  ハ高ク買ハレテ然ルベキモノデアラウト云
  フ風ニモ思フノデアリマス、要ハ養蠶家ニ取
  リマシテ非常ナ利益ト云フヤウナコトハ
  考ヘラレマセヌケレドモ、採算ヲ採ル上ニ
  於テ非常ナ損ニナルヤウナコトヲ考ヘルト
  云フコトハ到底許スベカラザルコトデアリ
  マン、繭價ノ安定ト云フコトヲ一方ニ十分
  ニ顧念致シツツ、養蠶家ガ十分ニ立行クセ
  ウニ此ノ繭價ノ問題ヲ決定シテ行クト云フ
  所ニ價格ノ基準ノ決定ノ苦心ガ結局存スル
  コトト思フノデアリマス、ソレ等ハ十分ナ
  ル資料ヲ集メマシテ、サウシテ前申シマシ
  タヤウニ、蠶絲委員會ニ於キマシテ十分ノ
  御審議ヲ願ヒマシテ決メテ行キタイ、斯ウ
  考ヘテ居ル次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=80

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• 081・山田六郎

  ○山田(六)委員　私ノ質問ハ是デ終リマシ
  タ、此ノ機會ニ希望ヲ一寸述ベテ置キタイト
  思フノデアリマスガ、只今ノ御話ハ御尤モデ
  アリマス、唯私共ガ恐レルノハ、丁度今日ノ
  日本ノ農家ガ米作ニ對スル熱意ヲ失ヒシ如
  ク、政府ノ方針ノ如何ニ依ツテ蠶絲ニ對シ
  テ非常ナル惡影響ヲ及ボスヤウナコトノア
  ルノヲ非常ニ恐レルノデアリマス、ドウゾ
  其ノ邊ノ所ヲ御考慮ニ御入レ下サイマシテ、
  何分ノ御配慮ヲ御願ヒ致シタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=81

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• 082・高橋熊次郎

  ○高橋委員長　植原君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=82

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• 083・植原悦二郎

  ○植原委員　私ノ一番重要ナ點トシテ御尋
  ネ申上ゲタイト思ツタコトハ今山田サンニ
  依ツテ御尋ネニナリ、農林大臣ノ答辯ガア
  リマシタノデ宜シイヤウナモノデアリマス
  ガ、私ハ此ノ法案ヲ見マシタ時ニ又政府ノ
  說明ヲ聽キマシタ時ニ、輸出生絲ハ此ノ統
  制會社ノ除外ニ置クノダト云フコトヲ聽キ
  マシテ、其ノ規定ハ一體何處ニアルカト云フ
  御尋ネヲ致シタ、然ルニソレハ第四條ノ但
  書デアル、其ノ他ニハナイカト御尋ネシタ
  時ニ、其ノ他ニハナイト云フ御答辯デアリ
  マシタ、只今山田サンノ御話ノ如ク、第四
  條ガ此ノ統制法ノ總テノ基礎工事ダト私ハ
  思ツテ居リマス、隨テ農林大臣ノ御答ヘニ
  私ハ逆ラフノデハアリマセヌケレドモ、
  立法ノ原則ト申シマスレバ、基礎觀念ヲ規
  定シテ、其ノ限定サレタモノノ中デ一部ヲ
  變更スル時ニ但書ガ附クノガ本則デアツ
  テ、此ノ統制法ハ繭、絲之ヲ此ノ會社ガ
  買ツテ賣ル、是ガ第四條ノ規定デアル、ソ
  レガ此ノ法律ノ根本ノ規定デアリマス、其
  ノ規定ヲ但書ニ依ツテ-輸出ノ方ダト一
  部ダカラ差支ヘナイト申シマセウケレドモ、
  其ノ根本ノ基礎ヲ但書デ變更スルヤウナ立
  法ハ多ク立法例ニナイヂヤナイカ是ガ議
  會ノ立法權ヲ左右スルナドトハ私ハ思ヒマ
  セヌケレドモ、從來ノ立法行爲ノ變則デア
  ルト云フコトダケハ、是ハ何トシテモ御認
  メニナラナケレバナライヂヤナカラウカ、
  之ヲ此處ニ御入レニナルニ至リマシタ所ノ
  御苦心ハ、私只今農林大臣ノ御言葉ノ中ニ
  モ現レテ居ツタヤウダカラ之ヲ追究致シマ
  セヌ、御苦心ノ程ハ察シマスケレドモ、立
  法ノ技術トシテハ許シテモ、立法ノ今マデ
  2ノ根本精神ト稍〓異ナル所ノ變則的ノ取扱デ
  アルト云フコトダケハ是ハ何トシテモ認
  メナケレバナラヌコトダト思ヒマス、其ノ
  一點ニ付テハ是以上ヲ彼此レ申シマセヌ
  私ハ成ベク皆樣方ノ御迷惑ニナラナイヤ
  ウニト思ヒマシテ質問ノ條項ヲ此處ニ書キ
  竝ベマシタ、一問一答デナクテ之ヲ連續的
  ニ述ベテ置キマスカラ、後デ此ノ委員會ノ
  最後ノ決定ヲ終フマデニ御答へ下サレバ宜
  シイト思ヒマスガ、此處デ御答ヘ下サレバ
  尙ホ結構ダト思ヒマス
  私ハ此ノ法案提出ニ付テ截然ト區別サル
  ベキ二ツノ根本的相違ノアル理由ノ潜在ス
  ルコトヲ先ヅ認識スベキデアルト思ヒマス、
  卽チ其ノ一ツハ現下ノ緊迫セル時局ニ對シ
  日米兩國ノ經濟關係ニ如何ナル事態ガ勃發
  シテモ我ガ國ノ養蠶家、製絲業者、蠶種製
  造家、其ノ他之ニ關係スル所謂蠶絲業家ハ
  意ヲ安ンジテ其ノ業ニ勵ミ得ルコトヲ確保
  セントスル非常時立法ノ意味、而シテ是ガ
  此ノ立法ヲ促進セシメシ動機デアルニ違
  ヒナイト思ヒマス、此ノ爲ニ只今ノ第四條
  ノ變則的規定モ挾ツタデハナカラウカト
  推測致シマス、併シ是ハ此ノ法實施ノ根本
  的意思デアツテハナラヌコト、而シテ第二
  ノ理由ハ、我ガ國ノ生產業中對外關係ヲ有
  スル最モ重大ナル生產業ノ一ツ、卽チ多年
  ノ懸案タル〓絲業ノ根本對策樹立ニ關スル
  コトデ、而モ是ハ恆久的性質ノモノデア
  ルコト、固ヨリ此ノ兩者ハ相剋矛盾スルモ
  ノデモナク、又相反スルモノデモナイ、
  互ニ竝立スルモノデアルケレドモ、此ノ
  二ツノ理由ガ此ノ法案中ニ潜在スルコト
  ヲ能ク認識シテ掛ラナケレバ此ノ法案實施
  ノ完璧ヲ期スルコトハ出來ヌト私ハ信ジマ
  ス
  ソコデ先ヅ第一ニ此ノ統制會社ハ評價委
  員ノ議ヲ經テ繭ノ値段ヲ桑、蠶種等ノ原價、
  勞働賃銀其ノ他ノ經費ヲ含メテ公定スル、
  之ニ依リテ全國ノ繭ヲ一手ニ買收スル而
  シテ此ノ會社ハ此ノ一手ニ買收セル繭ヲ製
  絲業者ニ原價計算ニ依リテ賣渡ス、製絲業
  者ハ之ヲ生絲トシ、繭ノ原價ニ操業費一切
  ト幾分ノ利益ヲ加算シタルモノニ依リテ公
  定セラレタル絲價ニテ、全部此ノ統制會社ニ
  其ノ製品ヲ賣渡ス、斯クテ統制會社ハ此ノ
  買收セル生絲ヲ機業家其ノ他ノ加工業者ニ
  一定ノ價格ヲ以テ賣却スルノデアリマスガ、
  會社ガ買收シタ生絲ノ價格ト賣渡値段トノ
  間ニハ相當ノ鞘ガアラウト思ハレル、併シ
  是ハ會社ノ經費ヲ賄フ手數料式ノモノデ、
  利益ヲ目標トスルモノデアツテハナラヌ、
  隨テ養蠶家ハ限定サレタ範圍デハアルガ安
  心シテ養蠶ヲ營ムコトガ出來ル、又製絲家
  ハ一種ノ賃挽式ノモノト化スルガ、一七シ
  確實ナル工費、工賃ヲ得テ安固ナル一工業
  家トシテ存在スルコトガ出來ル、是ハ非常
  時デモ平時デモ同樣デアル、而シテ萬一-
  是ハ望ムコトデハナイガ、萬一日米兩國間
  ニ經濟的斷交ガ生ジテモ、此ノ法式デ進メ
  バ我ガ國ノ一切ノ蠶絲業ハ全ク安定スルノ
  デアル、併シ此ノ法案ノ非常時方面ヲ想定
  シ、日米兩國間ニ萬一ノコトガ生ジタトス
  レバ、此ノ會社ハ輸出方面ノ生絲ヲモ迅速
  ニ此ノ會社ノ手一手ニ買ハネバナラヌコト
  ガアルト思ハレル、此ノ點果シテ如何、是
  ガ第一デアリマス
  法案現在ノ儘トシテ、原則トシテ此ノ會
  社ハ輸出生絲ヲ自由放任スルノデアルガ、
  是ハ絕對デアツテハナラヌ、前段ノ場合ニ
  ハ是ガ非デモ會社ハ輸出生絲ヲ全部背負ヒ
  込マネバナラヌ、又斯樣ナ場合デナク、平
  時ノ場合トシテモ、輸出生絲製造業者ガ其
  ノ製品ノ買收ヲ會社ニ要請セントセバ、會
  社ハ之ニ對シテ如何ナル措置ヲ執ルノデア
  ルカ、之ニ對シテ確乎タル方針ヲ伺ヒタイ、
  是ガ第二ノ質問デアリマス
  會社ガ非常時ニ臨ミ輸出生絲ヲ背負ヒ込
  ムトスレバ、此ノ會社ノ四千万圓ヤ八千万
  圓ノ資本金ヲ以テシテハ、決シテ時宜ニ適
  スル敏活ナル行動ヲナシ能ハヌト思フガ、
  政府ハ此ノ資本金ヲ以テ是デ足レリトスル
  ノカ、又斯カル萬一ノコトガナイトシテモ、
  輸出生絲製造家ノ要請ニ依リテ、輸出生絲
  ヲ買收スル行爲ヲナストスレバ、ソレダケ
  デモ此ノ會社ノ如キハ八千万圓ノ資本金、
  四千万圓ノ拂込ニテハ決シテ此ノ會社ノ目
  標トスル所ノ機能ヲ十分ニ發揮シ能ハザル
  モノト思惟スルガ、之ニ對スル政府ノ所見
  如何、是ガ第三デアリマス
  資本金ニ關聯シ、私ハ此ノ會社ノ運營ニ
  付キ更ニ懸念スル一事ガアル、ソレハ集荷
  ノ場合デアル、政府ハ繭ノ生產ヲ一箇年大
  體八万貫ト狙ツテ居ル、繭ノ建値ヲ假ニ七
  十掛見當ト見積ツテモ、大體七億内外ノ代
  金ニナル、繭ハ生物デアル、養蠶家ハ〓シ
  テ卽金拂ヲ欲求シテ居ル、而シテ從來ノ取
  引狀態ニ於テハ製絲家ノ直接拂ノ外、繭市
  場ノ經營者ヤ、繭仲買人ヤ、乾繭業者ヤ、
  乾繭組合等ガ大部分立替拂ヲシテ居ツタ、
  勿論組合製絲ニ屬スル養蠶家ヤ、特約組合
  ノ養蠶家ニ付テハ別問題デアルガ、製絲家
  ノ直接拂ノ外、是等ノ業者ノ立替拂ニ依ツ
  テ生繭取引ガ圓滑ニ行ハレテ居ツタ、政府
  ハ是等諸種ノ業者ノ營業ハ成ベク其ノ儘繼
  續セシムル方針ダト言明サレテ居ル、ソレ
  ニ違ヒナイト思フガ、繭ノ値段ガ從來ト異ナ
  ツテ全ク釘付ニサレルノダカラ商賣ノ旨味
  ハ非常ニ少イ、隨テ是等ノ業者ガ從前ノ如
  ク進ンデ金融上ノ責任マデ持ツトハ想像出
  來ナイ、隨テ此ノ會社ガ是等ニ對スル卽時
  拂ノ金融マデ十分ニ用意スルニアラザレバ
  此ノ會社ノ發足ニ於テ集荷ノ敏速ヲ缺キ、
  養蠶家ニ對スル支拂ヲ遲滯セシメ、各方面
  ニ不滿ヲ生ズル虞ナシトハ言ヒ難イノデア
  ル、之ニ徵スルモ資本金ノ少額ヲ感ズルガ、
  政府ノ所見果シテ如何、是ガ第四デアリマ
  ス
  次ニ此ノ法案ノ恆久的方面ニ關シテデア
  リマスガ、從來我ガ國ノ重要ナル產業デア
  ル蠶絲業ガ屢〓不安狀態ニ曝サレタノハ、主ト
  シテ米國へノ輸出ニ依存シテ居ツタ爲メデ
  アリマセウガ、是ハ米國ニ生絲ヲ賣ツテ居ツ
  タノガ惡イト云フノデハナク、其ノ商取引
  ノ慣習ガ惡カツタノデアルト云フコトニ付テ
  ハ何人モ異存ナカラウト思ハレマス、是マデ
  輸出生絲ノ相場ハ米國ノ需給關係以外ニ、生
  產市場ノ思惑ヤ、日米兩國ノ輸出入業者等
  ニ依リテ左右セラレ、時トシテハ甚ダシキ
  暴騰暴落ヲ惹起シ、其ノ結果是ガ我ガ國ノ
  繭價及ビ國用絲ノ價格ヲ決定スル指標トナ
  リ、爲ニ我ガ蠶絲業ハ頗ル不安定ナモノニ
  ナツタノデアリマス、故ニ輸出生絲ヲ統制シ、
  其ノ價格ヲ安定セシムルコトガ、我ガ蠶絲
  國策確立ノ根本デアルトハ斯業界多年ノ所
  說デアツタコトハ申スマデモゴザイマセヌ、
  戰時下ト平時トヲ論ゼズ、我ガ國ハ海外ト
  ノ通商貿易ヲ極力發展セシメナケレバナラ
  ヌノデアル、現在モ將來モ鎖國主義ヲ以テ國
  ヲ律スベキデハナイ、而シテ何ト言ウテモ
  生絲ハ我ガ國ノ輸出貿易品ノ王座ヲ占メテ
  居ルノデアリマス、過去ニ於テ我ガ國ノ生
  絲ハ米國ヘノ供給ニ對シテ稍〓獨占的地步ヲ
  有セシガ故ニ其ノ販路擴張ニ付テハ自然怠
  慢ガアツタ、將來ハ大イニ是等ニ努力シ、
  現狀維持ノ輸出高ノミナラズ、更ニ大イニ
  此ノ販路ヲ擴張スベキデアル、敢テ米國ガ
  我ガ生絲ヲ買ツテ吳レナクテモ宜イト云フ
  ガ如キ態度ハ通商貿易上執ルベキ態度ニア
  ラズト私ハ確信致シマス、之ニ對シテ政府
  モ異論ナシト思ヒマスガ、御異論ガアルナ
  ラバ此ノ點ニ付テモ承リタイ、勿論精々生
  絲ノ販路ノ擴張ヲ圖ルト云ツテモ生產費ヲ
  割ルガ如キ安價ヲ以テ澤山ノ生絲ヲ賣ルト
  云フコトデハナイ、出來ルダケ高價ニ、出
  來ルダケ多量ニ賣ル販路ヲ求メ、巨額ノ外
  貨獲得ニ資スルト云フコトデアル、此ノ方
  針ニ付テ政府ハ同意ヲ表セラレルニ違ヒナ
  イト思ヒマスガ、政府ノ所見果シテ如何、
  此ノ委員會ニ於ケル質疑應答ノ言論ニ徹ス
  レバ、輸出生絲ノ統制ト云フコトハ一本建
  ノ値段ニテ總テノ輸出生絲ヲ米國ニ販賣ス
  ルモノナルガ如クニ解セラルル虞レガアルヤ
  ニ思ハレルガ、是ハサウアルベキ筈ノモノデ
  ハナイ、國用絲ノ場合ニハ會社ガ製絲家カ
  ラ生絲ヲ買入レル價格モ一本建、又會社ガ
  之ヲ販賣スル價格モ一本建デアルベキデア
  ルガ、輸出生絲ノ統制ヲスル場合、會社ガ
  製絲家カラ買收スル價格ハ一本建デモ、米
  國へ販賣スル價格ハ先方ノ自由市場ニ依ツ
  テ如何程高價デモ、又其ノ間ニ段階ガ出來
  テモ差支ヘナイ譯デアルト思フガ、之ニ關
  スル政府ノ所見如何、勿論輸出生絲ガ全部
  統制セラレル場合、〓算市場ノ存在ハ其ノ
  意義ヲ失フハ當然デアル、米穀ノ統制ニ付
  テハ米穀取引所ヲ消滅セシメタ、旣ニ蠶絲
  統制法ヲ樹立スルニ至ツタ以上ハ軈テ生絲
  モ統制スベキハ當然デ、〓算市場ノ解消ハ
  單ニ時ノ問題デアルト思フ、之ニ對スル政
  府ノ所見如何、而シテ是ガ一日早ケレバ早
  イダケ蠶絲業ノ統制ハ完成セラレルモノト
  思ハレル、此ノ根本的ノ見解ニ對シテハ政
  府モ果シテ異論ナシト思フガ、又アツテハ
  ナラヌ筈デアルガ、政府ノ所見如何
  次ニ繭價及ビ絲價ノ評價委員會ノ構成ニ
  關スルコトデアル、是等ハ非常ナル難事業デ
  アル、是等兩者ノ價格決定如何ハ〓絲業全體
  ノ運命ニ關スルコトト言ウテモ過言デハア
  ルマイ、サレバ其ノ人選ニ付テハ事業ニ關係
  アル各方面ノ人材ヲ網羅スベキデアルト思
  フ、之ニ對スル政府ノ御用意如何、又此ノ時局
  下幾多ノ國策會社ガ出來、又現在出來ツツ
  アルガ、是等ノ國策會社ノ多數ハ〓シテ成績
  頗ル不良ト言ウテモ政府ニ恐ラク辯解ノ辭
  ハナカラウ、而シテ此ノ會社ハ營利ヲ目的
  トスルモノデハナイ、單ニ蠶絲業ノ統制ヲ
  目的トスル一種ノ商事機關デアル、隨テ國
  用絲ノ買收販賣ニ對シテモ、利益ヲ標準トシ
  テ之ヲ取扱フモノデアツテハナラヌ、國用絲
  ノ買値ト賣値ノ鞘、開キハ手數料ヲ超ユルコ
  トガアツテハナラヌト思フガ政府ハ之ニ對
  シテ如何ナル方針ヲ有セラレルカ、若シ是
  ガ政府ノ方針デアルトスレバ國用絲ノ賣買
  ノミヲ以テシタノデハ資本金ニ對シテ四分
  ノ配當サヘ出來ル可能性ハ極メテ稀薄ナリ
  ト信ズル、ノミナラズ絲價安定保證積立金
  ヲ豫想スルガ如キコトハ思ヒモ依ラザルコ
  トデアル、之ニ對スル政府ノ見解果シテ如
  何、此ノ場合政府ハ輸出生絲ニ對スル過剩
  利益ノ收得ニ依ツテ會社ガ十分利益ヲ見込
  ミ得ルト言ハレルカモ知レヌ、サウシテソ
  レハサウカモ知レヌガ、此ノ場合ニハ輸出生
  絲製造ノ製絲家ヨリ過剩ノ利益ヲ精算シテ、
  之ヲ會社ニ收得セシムル途ハ容易デハナイ、
  否或ル場合ニ於テハ實行不可能ト思ハレル、
  〓算市場ヤ問屋ヲ經テ輸出シタ者ハ或ハ計算
  可能デアラウガ、直輸出ヲシテ先方ニ於テ賣却
  スル者ノ如キハ容易ニ計算出來ヌデアラウ、
  而シテ茲ニ統制ノ破綻ヲ生ズル虞レナシト
  ハ斷言出來ナイ、政府ノ之ニ對スル所見果
  シテ如何、然ルニ輸出生絲ヲ統制シ、會社
  ニテ全部ノ輸出生絲ヲ買收シ、之ニ或ル利
  潤ヲ加算シタルモノヲ底値トシテ輸出ヲ計
  畫スレバ、一面ニ於テハ絲價ガ安定スルト
  共ニ、他面ニ於テハ其ノ販路ヲ擴張スルコ
  トモ容易ナルノミナラズ、會社ハ輸出生絲
  ニ依ツテ確實ナル利益ヲ獲得シ、且ツ外國
  ニ於ケル絲價昂騰セル場合ニハ絲價安定保
  證金ノ積立ラモ十分可能トナル、斯クテ理
  想トシテモ又實際トシテモ輸出生絲ヲ一元
  的ニ統制スルコトニ對シテ異論ナカルベシ
  ト思ハレルガ、若シ之ニ對シテ政府ニ異論
  ガアルナラバ伺ヒタイ、之ニ對シテ異論ハナ
  カラウガ、唯諸種ノ事情ノ爲ニ、時ノ問題
  上巳ムヲ得ナイト仰シヤラレルカモ知レヌ
  次ニ支那ノ輸出生絲ノ、現在或ル意味ニ
  於テ統制サレテ居ルコトハ御承知ノ通リデ
  アル、將來一層此ノ統制ヲ强化シナケレバ
  ナラヌコトハ當局者ノ言明デアル、而シテ
  日支經濟提携ノ見地ヨリ、日本ノミガ之ヲ
  自由放任スルコトハ國策上矛盾デアリ、又
  兩國ニ於ケル蠶絲業ノ健全ナル發達ト調整
  トヲ期スル所以ニアラザルコトハ議論ノ餘
  地ガナイト考ヘル、政府モ此ノ根本論ニハ
  御同意ナルベシト思ハレルガ、之ニ反スル
  御所見ガアルナラバ承リタイ、是ガ大體私
  ノ大臣カラ御答ヘ願ヒタイ所ノ項目デアリ
  マス
  次ニ最後ニ此ノ委員會ヲ通ジマシテ、政
  府委員ヨリ繭市場、〓種業者、乾繭取引所、
  乾繭組合、是等ノモノハ場合ニ依ツテハ政
  府ニ於テ買收スル、又買收スルコトガ出來
  ナイ場合ニハ相互話合ヒヲシテ之ヲ借入利
  用スルコトモアル、成ベク是等ノ現存スル
  モノヲ認メテ、其ノ「チャンネル」ヲ通シテ
  此ノ事業ノ圓滑ナル遂行ヲ期シタイ、從業
  員ハ成ベク失業セシメナイヤウニ凡ユル注
  意ヲ傾倒スル、蠶種賣買業者ハ全國ニ普遍
  的ノモノデナイケレドモ、蠶種製造家ト養
  蠶家ノ間ニ、從來可ナリ重要ナ役目ヲナシ
  テ來タコトハ之ヲ認メル、隨テ是等ノ存在
  ニ對シテハ、將來其ノ職ヲ奪ハナイヤウニ、
  之ヲ利用スルヤウニ考慮スル、玉繭、中下
  繭等ノ取扱ハ此ノ會社デ取扱フコトガ原則
  カモ知レナイガ、其ノ複雜ナル狀態ニ鑑ミ、
  是ハ從來通リノ取引ニ委ネテ置ク、斯ウ云
  フ御答辯デアツタト思ヒマス、此ノ點ハ此
  ノ委員會バカリデナク、委員會ガ濟ミマシ
  テ全國ノ養蠶家、蠶種製造家、繭絲市場ヲ
  經營セル者、乾繭組合ヲ經營セル者、之 h
  從事スル所ノ從業員ニ對シテ重大ナル影響
  ガアルコトデアリマスカラ、是等ニ對シテ
  ハ政府委員ガ答辯シタ通リ、政府ハ之ヲ實
  行ニ當ル積リデアルト云フコトヲ、此ノ場
  合大臣カラ御辯明ヲ得テ置クコトガ必要ダ
  ラウト思ヒマスカラ、之ニ對シテモ大臣ノ
  御辯明ヲ得タイト思ヒマス、以上ノ問題ニ
  對シテ御答ガアレバ仕合セデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=83

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• 084・石黒忠篤

  ○石黑國務大臣　植原サンカラ非常ニ包括
  的ニ、各方面ノ重要ナ點ニ付テ政府ニ御意
  見ノ御尋ネガアリマシタ、初メノ御言葉ノ
  中ニ今日直チニ御答ヘガ出來ナクテモ宜シ
  イト云フコトデアリマシタ、重要ナ點ガ多
  多アリマスノデ、ツイ漏シテハナラナイト
  思ヒマスカラ、御尋ネノ點ハコチラデ筆記
  モ致シテ居リマシタガ、若シ御差支ガナケ
  レバ其ノ御書上ゲニナツテ居リマスノヲ頂
  戴シマシテ、後日ソレニ依ツテ御答ヘ致シ
  タイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=84

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• 085・高橋熊次郎

  ○高橋委員長　是デ大體ノ質疑ハ盡シタモ
  ノト思ヒマス、爾餘ニ若シ本案審議上重要
  ナル質疑漏レガアツタト御氣付ノ點ハ、委員
  會ノ最後ニ決定ヲ見マス機會ガゴザイマ
  ス、其ノ機會ノ前ニ御陳述ヲ簡明ニ願ヒタ
  イト考ヘマス、大體ノ質疑ハ此ノ程度デ打
  切リタイト思ヒマスガ御異議ゴザイマセヌ
  カ
  〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=85

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• 086・小山倉之助

  ○小山倉之助君　私ニ對スル大臣ノ答辯
  ハ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=86

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• 087・高橋熊次郎

  ○高橋委員長　小山倉之助君ハ委員外デア
  リマスガ、洵ニ重要ナ御發言ガアリマシタ、
  ソレハ大臣ヲ目標トシテ御尋ネニナツタノ
  デアリマスガ、御出席ガナカツタ爲ニ政府
  委員ガ之ヲ伺ツテ居リマシテ、大臣ニ傳ヘ
  ルコトニナツテ居リマス、是等ノ質疑モ能
  ク御聽取ニナリマシテ、而シテ他ノ機會ニ
  於テ御答辯アランコトヲ望ミマス、小山君、
  ソレデ宜シウゴザイマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=87

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• 088・小山倉之助

  ○小山倉之助君　結構デス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=88

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• 089・高橋熊次郎

  ○高橋委員長　次會ノ日程ハ公報ヲ以テ御
  知ラセ致シマス、重要ナ案件デアリマスカ
  ラ、今後ノ議事進行ニ付テハ委員長ニ於テ
  然ルベク取計ラヒタイト思ヒマス、此ノ點
  モ御諒承ヲ豫メ御願ヒシテ置キマス、皆サ
  ンノ御登院ヲ煩ハス爲ニ、或ハ開會ヲ致シ
  タバカリデ休憩ヲ致スカモ知レマセヌガ、
  公報ヲ以テ御知ラセ致シマスカラ、其ノ場
  合ハ重大ナル法案ニ鑑ミラレマシテ、御登
  院アランコトヲ希望致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=89

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• 090・小山邦太郎

  ○小山(邦)委員　委員長ノ御意見ニ大體同
  意デアリマスガ、可ナリ法案ヲ中心ニ長キニ
  입
  亙ツテ〓究サレタコトデアリマスカラ、此
  ノ取扱ニ付テハ成ベク取急イデ、委員長ニ
  於テ御心配ヲ願ヒタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=90

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• 091・高橋熊次郎

  ○高橋委員長　了承致シマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=91

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• 092・平野力三

  ○平野(力)委員　一寸伺ヒマスガ、只今缺席
  サレテ居ル委員モアリマスガ、若シ開會セ
  ラレテ特ニ重要ナ協議デモアルト云フコト
  デアリマスレバ公報ダケデナシニ、別
  方法デモ能ク徹底スルヤウニ御傳ヘ願ヒタ
  イ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=92

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• 093・高橋熊次郎

  ○高橋委員長　承知シマシタ、然ルベク取
  計ラヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=93

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• 094・高橋圓三郎

  ○高橋(圓)委員　委員會ハマダ終ツタノデ
  ハナイノデアリマス、質疑ヲ打切ツタダケ
  デアリマシテ、只今委員長カラモ御話ガア
  リマシタヤウニ、次囘ニ尙ホ會合ヲシテ、
  サウシテ其ノ樣子ニ依ツテ其ノ儘休憩スル
  コトガアルカモ知レマセヌト云フ御話ガア
  リマシタ、サウ云フ意味ノ諒解マデアル位
  ナラバ、寧ロ此ノ際明朝午前十時ナラ十時ニ
  此處へ一應集マツテ、サウシテ直グ休憩ヲス
  ルトカ云フコトニシテ、一應サウ云フ風ニ
  決メテ置カレタラドウカト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007611218X00819410219&spkNum=94

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• 095・高橋熊次郎

  ○高橋委員長　ソレハ高橋理事ノ御發言ノ
  通リ委員長ニ於テ豫メ用意ヲ致シテ置キマ
  ス、ソレデアリマスカラ、此ノ際改メテ
  明日午前十時ニ開會ノ御通知ヲ申上ゲテ、
  一應諸君ノ御參集ヲ願フ豫定デアルト云フ
  コトヲ此ノ場合申上ゲテ置キマス、ソレデ
  ハ本日ハ此ノ程度デ散會致シマス
  午後六時散會

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