1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
産業設備營團法案(政)
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委員氏名
委員長 伯爵 兒玉秀雄君
副委員長 男爵 安場保健君
公爵 桂廣太郎君
侯爵 井上三郎君
子爵 大河内正敏君
子爵 保科正昭君
子爵 高橋是賢君
藤原銀次郎君
塚本清治君
男爵 伊藤一郎君
男爵 宮原旭君
竹内可吉君
太田耕造君
稻畑勝太郎君
岩田宙造君
中山太一君
上野松次郎君
中野敏雄君
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昭和十六年十一月十九日(水曜日)午後六時三十六分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007701187X00119411119&spkNum=0
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001・兒玉秀雄
○委員長(伯爵兒玉秀雄君) ソレデハ只今
ヨリ委員會ヲ開會致シマス、商工大臣ノ御
說明ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007701187X00119411119&spkNum=1
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002・岸信介
○國務大臣(岸信介君) ソレデハ產業設備
營團法案ノ提案理由ヲ御說明致シマス、最
近ニ於ケル時局ノ緊迫化ハ軍需產業、生產
擴充計畫產業、代用品產業、不足物資產業
等ノ國家緊要產業ノ急速且大規模ナル增產
ヲ要請スル所ガ極メテ切ナルモノガアルノ
デゴザイマシテ、之ニ對シマシテ政府ハ從
來各種ノ事業法ノ制定、奬勵金、助成金等
ノ交付等各般ノ施設ヲ講ジテ參リマシタガ、
是等國家緊要產業ノ中ニハ、企業トシテノ
危險性相當高キ等ノ事由ニ依リマシテ其ノ
設備ノ建設又ハ維持ヲ一般事業者ニ期待ス
ルコトガ著シク困難ナルモノガ尠クナイノ
デアリマシテ、是等ノ設備ノ建設ニ付キマ
シテハ、國家トシテ新タニ積極的ナル施設、
援助ヲ行フコトガ現下ノ急務ナリト考フル
ノデアリマス、又第三國貿易ノ杜絕、輸送力
ノ窮屈化等ニ因リ近時著シク過大トナリマ
シタ未動遊休設備ハ我ガ國戰時經濟ノ運營
ニ幾多ノ好マシカラザル影響ヲ及シツヽア
ルノデアリマシテ、現有設備ノ高度ノ利用
ト我ガ國ノ經濟總力ノ發揮ノ見地ニ立ッテ
產業ノ再編成ヲ行ヒ、此ノ際是等設備ノ中
活用シ得ベキモノハ擧ゲテ之ヲ活用シ、整
理シテ差支ナキモノハ「スクラップ」トシテ整
理シテ、之ヲ再生活用ノ途ヲ圖リ、又ハ將來
ノ生產擴充上緊要ナル施設ハ之ガ維持ニ必
要ナル措置ヲ講ジ、以テ所謂重點主義生產
ノ果敢ナル實行ヲ可能ナラシムルト共ニ、
一面低物價政策ノ確保ニ資スルコトガ肝要
ナリト存ズルノデアリマス、而シテ是等ノ
施設ニ付キマシテハ統制會等ト緊密ニ連絡
協調シ、其ノ實行ノ適正圓滑ヲ期スルコト
ガ必要デアリマスルガ、施設自體トシテハ
國家トシテ行フヲ適當ト考ヘラレマスノ
デ、玆ニ是等ノ目的ヲ達成スル爲ノ母體
機關タル重要使命ヲ擔當スベキモノトシ
テ、金額政府出資ニ係ル特殊法人產業設
備營團ヲ設立シ、右營團ヲシテ政府ノ意圖
ヲ奉ジテ國家緊要產業ノ設備ノ建設、貸與、
出資、未動遊休設備ノ賣買保有等ノ業務ヲ
行ハシメヨウトスル次第デアリマス、何卒
十分御審議ノ上御協賛ヲ與ヘラレムコトヲ
希望致シマス、尙右ハ提案理由ノ說明デア
リマスガ、產業設備營團ノ事業計畫ノ大要
ニ付テ御說明申上ゲテ置キマスコトガ御審
議ノ上御便宜カト存ジマシテ、是ノ說明ヲ
附加ヘテ致シマス、本營團ノ業務ハ今申シ
マシタ如ク、國家緊要產業ノ設備ハ事業者
ニ於テ建設又ハ維持スルコト著シク困難ナ
ルモノノ建設、貸付、出資、賣買ト云フノ
ガ第一ノ業務デゴザイマス、第二ノ業務ハ
未動遊休設備ノ賣買、保有活用ニ關スル業
務デアリマス、本營團ノ資金ハ自己資金、
自己資本二億、是ハ全部政府ノ出資ノ積リ
デアリマス、產業設備債劵ガ其ノ五倍ノ十
億利用資金合計十二億トナッテ居リマス、
但シ右資本金二億ノ內五千萬圓ハ政府カラ
國庫證劵ヲ以テ交付ヲ受ケテ、之ヲ基金ト
シテ積立テ、其ノ利息ヲ以テ營團ノ經費ニ
充當スル考デアリマスノデ、結局本營團ノ
事業資金ハ借入金ヲ別ト致シマスルト取
敢ズ十一億五千萬圓ト云フコトニナルノデ
アリマス、此ノ十一億五千萬圓ノ資金ヲ以
チマシテ、先程申シマシタ二ツノ業務ヲ行
フ譯デアリマス、ドウ云フ風ニ然ラバ之ヲ
割振ッテ事業ヲ行フカト云フ〓要デアリマス
ガ、御話申上ゲル譯デアリマスガ、豫メ御斷
リ申上ゲテ置キタイノハ何分ニモ本營團ノ
業務ハ全然新規ノ事業デアリマシテ、是カラ
申上ゲマスル數字モ今後設立委員ノ方々ニ
御審議ヲ願フ際、或ハ正式ニ營團ガ設立セ
ラレマシテ、具體的ニ事業計畫ヲ樹立致シ
マスル場合ニハ相當ノ變化モアルモノト豫
想セラレマスノデ、本營團設置ノ案ヲ御審
議ニナル御參考ノ程度ニ御聽キ取リヲ願ヒ
タイト思ヒマス、又此ノ種ノ特殊法人ヲ設
立致シマス場合ニハ、事業計畫ノ大要等ノ
資料ヲ配付申上ゲテ御審議ヲ煩ハスノガ、
御願ヒ致スノガ從來ノ例デアリマスガ、事
業ノ性質上色々ナ詳シイ數字等ニ付キマシ
テハ、對外的ニモ對內的ニモ此ノ關係數字
ヲ公表スルコトハ支障ガアリマシテ、不適
當ト考ヘマスノデ、誠ニ恐縮デアリマスガ、
サウ云フ資料ヲ御配付申上ゲテ居ラナイノ
デアリマス、從ヒマシテ是カラ申上ゲル數
字ニ付キマシテモ、サウ云フ意味デ御聽キ
取リヲ願ヒタイト思ヒマス、偖現在日本
ニ未動遊休設備ノ現在高ガドレダケアルカ
ト云フ問題デアリマスルガ、此ノ點ニ付キ
マシテ民間ノ方面ニ於キマシテモ之ヲ調査
シテ、此ノ位アルト云フ風ナ發表モ一、二ア
リマスケレドモ、私共各種重要產業ノ部門
ニ亙リマシテ、商工省トシテ相當ノ調査ヲ
致シマシテ、之ヲ基礎トシテ考ヘテ見マス
ルト云フト、大體二十四、五億程度デハナイ
カト、斯ウ思ッテ居リマス、處ガ民間團體等
ノ調査ニ依リマシテ、是ヨリモ非常ニ大キ
ナ數字ガ發表サレテ居ルモノモアリマスガ、
是等ノモノハ實ハ調査ノ基礎ガ違ッテ居ル
ノデアリマシテ、民間ノ調査ニ依リマスト
云フト、苟モ今日動イテ居ラナイ設備ハ
建設中ニアルモノハ悉ク未動施設トシテ計
算シテ居ル、處ガ私共ノ方デ未動施設トシ
テ擧ゲテ居リマスモノハ計畫ニ從ッテ建設
サレテ居ル、其ノ計畫通リ行ッテ居リマスモ
ノハ、若シクハ計畫ニ近イ形ニ於テ是ガ完
成サレルト云フ風ナモノハ玆ニ未動施設ト
シテ擧ゲテ居ラナイノデアリマス、色々ナ
關係デ建設ノ途上ニ於テ殆ド完成ノ見込ガ
立タヌト云フ風ナモノ、又近ク迚モ完成ス
ル譯ニハ行カナイト云フヤウナモノヲ取リ
上ゲテ未動施設ニ考ヘテ居リマス、ソレカ
ラ中小工業方面ノモノハ大體更生金庫ガ丁
度之ニ代ルヤウナ仕事ヲスルコトニナッテ
居リマスノデ、其ノ方ノ設備等ハ之ニ含マ
レテ居ラナイト云フヤウナ關係上、今申シ
マシタヤウナ二十四、五億ト云フヤウナ數字
ニ相成ッテ居ルノデアリマス、尙又人造石油
デアルトカ、或ハ金屬鑛山等ノ施設ニ付キ
マシテハ御承知ノヤウニ從來投資、融資ノ
特別ノ機關ガ出來テ居リマスノデ、其ノ方
ノ設備等ニ付キマシテハ、此ノ營團ノ基礎
トシテノ數字ニ取入レテ居ラヌト云フヤ
ウナ關係デ、民間ノ方面デ發表サレテ居
ル數字トノ間ニ相當開キガアルノデアリ
マスガ、私共ノ方ハ各種重要產業ノ部門
ニ付テ、今申シタヤウナ標準デ、現實ニ當ッ
テノ計算デアルコトヲ御承知願ヒタイト
思ヒマス、處デ其ノ未動遊休設備ノ存在ガ
一面ニ於キマシテハ原價高ノ原因トナッ
テ經濟界ニ惡影響ヲ與ヘテ居ルト云フ
コトハ御推察出來ルト思フノデアリマシ
テ、現下ノ情勢ハ所謂重點主義生產ヲ敢行
シテ、我ガ國國民經濟ノ生產性、經濟性ヲ
昂揚スルコトガ極メテ急務デアルノデアリ
マス、此ノ重點主義ノ實行ハ反面ニ於テ、完
全ニ操業ノ出來ナイヤウナ工場モ出デ參リ
マスシ、從ッテ是等ノ工場ノ處理對策ト云フ
モノガ別途講ゼラレテ居リマセヌト云フ
ト、此ノ重點主義生產ヲ徹底スルコトガ實
際問題トシテ困難ノアルヤウナ狀況デアリ
マス、從ッテ重要產業ノ部門ニ於キマシテ
モ、徹底セル整理統合、再編成計畫ヲ樹テ
マシテ、之ヲ實行シテ行クト云フ上ニ於キ
マシテハ、未動遊休設備ニ付テ適當ナル處
理ヲ考ヘテ行クト云フコトガ、是非トモ必
要トナッテ來ルノデアリマス、又一面此ノ夏
以來、從來我ガ國ガ主トシテ資材、器材等
ヲ輸入シテ居リマシタ、英米其ノ他ノ國々
ガ日本ニ對シテ資產凍結ヲ行ヒマシタ結果、
外國カラ物ガ入ッテ來ナイ、急イデ自給經濟
ヲ樹テナケレバナラナイ、ソレニ生產設備
ノ今申シマシタヤウナ重點主義生產ヲ行ッ
テ行ク必要ガアルト共ニ、從來國內ニ於テ
色々ノ形デ蓄積セラレテ居ル所ノ資材ガ活
用サレテ居ラナイト云フナラバ、之ヲ總動
員シテ活用スル必要モ極メテ緊切ナルモノ
ガアルト思フノデアリマス、現ニ鐵、銅等
ノ「スクラップ」ノ囘收ヲ行ッテ居ルノモ其ノ
理由ニ出テ居ルノデアリマスルガ、現在ノ
日本ノ工場ヲ見マスルト云フト、未動遊休
施設ノ中或部分ハ「スクラップ」トシテ、鐵其
ノ他ノ再生ヲ圖ルニ適當ナ、又サウスルコ
トガ此ノ狀況ニ於テ緊要デアルト云フヤウ
ナ部面モアルト思ハレルノデアリマス、何
レニシロサウ云フ意味ニ於キマシテ、未動
遊休施設ノ活用ヲ圖ルト云フ事柄ガ極メテ
必要ナ狀況デアリマス、次ニ刻下緊要產業
ノ設備ノ建設モ必要デアリマスガ、是ハ從
來ト雖モ生產擴充計畫產業ニ付キマシテハ
資材、勞力、資金等ノ特別ノ計畫ノ下ニ配
給シテヤッテ來テ居リマスガ、併シ此ノ事
業ノ中ニハ一方ニ於テ斯ウ云フ狀態ニ差迫
リマシテ、一日モ早ク物ヲ生產シナケレバ
ナラヌト云フモノガアリナガラ、將來ノ
見透シカラ申シマスルト云フト、必ズシ
モ其ノ事業ガ將來長ク採算的ニ考ヘラレル
ト云フモノデモナク、又或物ハ技術的ニ相
當ムヅカシイト云フヤウナ事情モアリマシ
テ、單ニ今迄ノヤウナ方法デ事業者ニ之ガ
建設ヲ求メマシテモ、ナカ〓〓出來ナイト
云フヤウナモノモ段々出來テ來テ居ルノデ
アリマス、適例ノ一ツトシマシテ、最近「ア
ルミニウム」ニ付テ申シマスト云フト、從
來南洋方面カラ「ボーキサイト」ヲ輸入シテ
製造シテ居リマシタガ、然ルニ資產凍結ニ
因リマシテ「ボーキサイト」ノ輸入ガ杜絕シ
ク、而モ「アルミニウム」ノ生產ハ國防上極
メテ緊要デアル、此ノ際國產ノ礬土頁岩ヲ
原料トシテ之ヲ造ラセヨウ、斯ウシマスト
從來ノ「ボーキサイト」ニ依ル「アルミニウ
ムㄴノ製造設備ダケデハ足リナイノデアリ
マシテ、之ニ「セメント」ノ遊休設備タル
「ロータリーキルン」ヲ使用シテ礬土頁岩ヲ焙
燒スル附席設備ガ必要デアリマスガ、處ガ此
ノ設備ハ將來「ボーキサイト」ガ再ビ輸入サ
レルト云フ時ニナリマスト不要ニナル譯デ
アリマス、斯樣ナ設備ニ付キマシテ假令
資材、資金等ノ方法ハ立チマシテモ、ナカ
ナカ事業者トシテハ、サウ云フ意味ニ於テ
之ノ全部ヲ負擔シテ、國家ノ爲ニヤルト云
フコトハナカ〓〓困難デアリマス、又其ノ
危險ヲ慮ッテ「アルミニウム」ノ價格生產費
ヲ振リ掛ケテ非常ニ高クスルト云フコトハ
是ハ亦色々ノ意味デ許サナイト云フ事情モ
アリマスノデ、斯ウ云フ場合ニ於テ此ノ營團ガ
代ッテ其ノ「ロータリーキルン」ヲ設備シテ、
之ヲ出來ルダケ低廉ナ賃貸料ヲ取ッテ會社ニ
使用サセル、サウスルト會社トシテハ礬土頁
岩ヲ原料トシテ立派ナ「アルミニウム」ヲ造ツ
テ、「アルミニウム」ノ原價ヲ高クセシメズニ
出來ルト云フ場合ガ適例ノ一ツデアルト思
ヒマス、是モ御承知デアルト思ヒマスガ、
「アメリカ」ニ於キマシテモ斯ウ云フヤウ
ナ制度ヲ以テ數年前カラヤッテ居リマシテ、
貸付等ニ付キマシテハ、極ク「ノミナル」
ナ設備ヲ年一「ドル」デ貸スト云フヤ
ウナ事例モアルヤウニ聞イテ居リマス、
又其ノ他戰時中ニハ非常ナ需要ガアルガ、
戰後ニ於キマシテハ需要ガ激減スルト云フ
見透シノモノニ相當ナ設備ヲシナケレバナ
ラヌ、ソレヲ作レ、斯ウ申シマシテモナカ
ナカ業界ガ一切ノ危險ヲ負擔シテハ出來ナ
イ、又技術上ニモ色々ナ不安ガアリ、ヤッテ見
ナイトヨク分ラナイト云フモノニ付キマシ
テハ、ナカ〓〓事業家トシテ手ヲ出シ兼ネル
ト云フモノガアルト思ヒマス、斯ウ云フヤ
ウナ部面ニ關シマスモノハ此ノ營團ガ必要
ナ設備ヲシテ貸付スルト云フヤウナ形ヲ採ッ
テ參リタイト考ヘルノデアリマス、最後ニ
事業ノ大要ト之ニ對スル資金ノ割當、收支
目論見ノ〓要ヲ御說明申上ゲマスト、戰時
中維持ヲ必要トスル設備ノ買取保有、是ハ
又將來色々ナ時代ガアリマスノデ、今「スク
ラップ」トシテ廢棄スル譯ニイカナイ、此ノ
營團ガ代ッテ維持シテ置カナケレバナラヌ
ト云フヤウナ設備ノ買取保有ノ案デアリマ
スガ、是モ色々ナ見方モアリマセウガ、私共
三億乃至四億ノサウ云フモノガアルノデハ
ナイカト考ヘテ居リマス、サウシテ斯ウ云
フ設備ノ維持費、倉敷料、移轉費、總テ營團
ノ損失トナリマスガ、先ヅ一應昭和二十年
度迄ノ間ノ計算ヲシテ見ルト、其ノ累計一
億一千七百萬圓ノ損失ニナルモノト思ハレ
ルノデアリマス、ソレカラ整理廢棄スベキ
未動遊休設備、是ハ此ノ營團ガ引受ケテ之ヲ
整理廢棄シマシテ、「スクラップ」トシテ他ニ用
ヒルト云フヤウナモノデアリマシテ、其ノ
總額ハ約二億六千萬圓程度ニ之ヲ豫想致シ
テ居リマス、此ノ場合ニハ之ヲ「スクラップ」
トシテ賣ッテ、「スクラップ」ノ價格ヲ差引イ
タモノガ損失ニナリマスノデ、損失トシマ
シテハ一億二千五百萬圓程度ノ損失ガアル
モノデハナイカト云フコトヲ豫想致シテ居
リマス、又未動遊休設備ノ活用ノ爲ニスル
賣買、活用シ得ル未動遊休設備ハ私共ノ調
査ニ依リマスト云フト、約二億六千萬圓餘
ニ達シテ居リマスガ、其ノ大部分ガ政府直
接ノ活用措置、又營團ノ斡旋ニ依ッテ活用
出來ルト思フノデアリマシテ、本營團ガ此
ノ意味ニ於テ一時買取ッタ上デ適當ナ利用
者ニ賣却スルト云フ部面ハ比較的少イノデ
アリマス、先ヅ三千萬圓程度ヂヤナイカト
豫想致シテ居リマス、右ノ買取設備ノ一時
的保有ニ要スル金利トカ、或ハ買受價格ト
賣却價格トノ差損金モ此ノ營團ノ損ニナル
譯デアリマシテ、是ハ極ク僅カデ、六百萬
圓餘ヂヤナイカト云フヤウニ見テ居リマス、
ソレカラ次ニ國家緊要產業設備ノ建設、貸
與出資、賣買デアリマスガ、國家緊要產
業トシテ此ノ際ヤラナケレバナラヌ仕事ハ
色々アリマスガ、是等ノ國防上其ノ他ノ關
係デドウシテモ是ダケノモノヲ急速ニヤラ
ナケレバナラヌト考へラレマスルモノヲ合
計シテ見マスルト、約七億八千萬圓程度ノ
モノガ其ノ方面ニ要ルノヂヤナイカト云フ
ヤウニ考ヘテ居リマス、是ハ建設設備ノ出
來上リマシタ上デハソレヲ賃貸スルカ、或
ハ業者ニ現物出資スルカト云フヤウナ方法
ヲ採ル譯デアリマシテ、何レニシテモ賃貸
料及ビ現物出資シタ場合ニ於キマシテハ
現物出資ニ對スル配當金ノヤウナモノガ豫
定出來マスノデ、或種ノ收入ガ考ヘラレル
ノデアリマス、併シソレハ餘リ多額ノモノ
デハナイト思ヒマスガ、兎ニ角サウ云フモ
ノガ考ヘラレマス、尙債劵ヲ發行シマスレ
バ債劵ノ利拂ガアルノデアリマス、總額十
億ノ債劵ガ發行サレマシタトシマシテ、利
拂ハ一億一千六百五十萬圓ニ上ル譯デアリ
マス、從ヒマシテ是等ノ方面ニ、大體資金
ヲ振當テテ、今申シタヤウナ各方面カラノ
損失金ト云フモノガ此ノ營團ガ受ケル、斯
ウ云フコトニナルト思フノデアリマスガ、
大體其ノ損失金ハ昭和二十年度迄ノ分ヲ合
計シマスト、約三億一千萬圓程度ニ上ル見
込デアリマス、從ヒマシテ其ノモノニ對シ
マシテハ豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約
ヲ御願ヒ致ス譯デアリマスガ、本議會ニハ
取敢ズ八百五十萬圓ノ損失補償金ヲ計上
致シテ居リマス、是ハ昭和十六年度ノミノ
業務ニ依リマシテ、昭和十九年度迄ニ被ル
ベキ損失ヲ豫想シテ斯ウ云フ風ナ案ヲ立テ
テ居リマス、ソレハ更ニ通常議會ニ其ノ他
ノモノハ追加スルコトニ相成ルト思フノデ
アリマス、尙先程カラ申シマシタ未動遊休施
設ノ中、更ニ營團ガ引受ケルモノハ其ノ一
部デアリマシテ、其ノ他ノ部分ハ結局業者個
個ニ、若シクハ業者ノ團體ニ依ッテ之ガ保有
サレルト云フコトニ相成ルト思フノデアリ
やっ、言フ迄モナク現在ノ未動遊休施設ノ
多クノモノハ他日日本ノ東亞共榮圈ガ確立
セラレ、東亞ニ於ケル貿易關係ガ正常ノ形
ニ歸リ、更ニ第三國ニ對スル貿易關係ト云
フヤウナモノヲ考慮シテ見マスト、今日ハ
未動遊休施設ト一口ニ申シマスケレドモ、
是ハ其ノ時ニ於キマシテハ、日本ノ海外ニ
發展スル產業ノ基礎トシテ相當大事ナモノ
デアリマシテ、之ヲ保有シテ置クコトハ無
論必要ナノデアリマス、併シ一面其ノ設備
ノ中ニハ旣ニ廢棄スベキモノ、又國家ノ現
實ノ必要ヲ充タス爲ニハ或場合ニ於テハ惜
シイ物デアッテモ、ヨリ大キナ現實ノ必要ガ
アッテ、之ヲ他ニ轉用スルトカ、或ハ之ニ依ッ
テ他ノ重要物資ノ生產ノ資材ニ充テルト云
フ風ナ事柄ガ必要デアルモノニ付キマシテ
ハ、其ノ方面ニ活用スルト云フコトニ相成
ルト思フノデアリマス、大體業務ノ極ク〓
要ニ付テ御參考迄ニ御說明申上ゲタ次第デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007701187X00119411119&spkNum=2
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003・兒玉秀雄
○委員長(伯爵兒玉秀雄君) 只今商工大臣
ノ御說明ヲ承ッタノデアリマスルガ、此ノ際
ニ何カ參考資料ノ御要求ガアリマスレバ御
申出ヲ願ヒタイト思ヒマス、御手許ニ差上
ゲマシタ參考資料ハ、衆議院ニ提出セラレ
マシタ全部ノ物デアルサウデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007701187X00119411119&spkNum=3
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004・伊藤一郎
○男爵伊藤一郞君 先程チヨット御話ガア
リマシタケレドモ、遊休設備ノ表ハ、衆議
院デ請求シテ居ラレマスガ、先程ノヤウナ
理由デ以テ戴ケマセヌデゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007701187X00119411119&spkNum=4
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005・岸信介
○國務大臣(岸信介君) 是ハ實ハ詳シイ表
ハ出サヌコトニ致シテ居リマスルガ、唯委
員會ノナンデ以テ衆議院デモ祕密會ニシマ
シテ、或程度ノ數字、各業種ニ付テノ我々
ノ調査ニ基ク所ノモノハ申上ゲタノデアリ
やく、或ハ之ヲ委員會ノ御審議ノ際ニモ、
一應サウ云フコトモ申上ゲル必要ガアルト
思ヒマスガ、表トシテハ差出スコトハ、差
控ヘタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007701187X00119411119&spkNum=5
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006・兒玉秀雄
○委員長(伯爵兒玉秀雄君) 其ノ外ニ何カ
御發言ゴザイマセヌデスカ、-御發言ガ
ナケレバ、又他日必要ナル資材ハ頂戴スル
コトニ致シマシテ、今日ハ此ノ程度ニ止メ
テ置キマシテ、明日午前十時カラ質疑ニ入
リタイト思ヒマス、ソレデハ今日ハ是デ散
會致シマス
午後七時二分散會
出席者左ノ如シ
委員長伯爵兒玉秀雄君
副委員長男爵安場保健君
委員
公爵桂廣太郞君
侯爵井上三郞君
子爵保科正昭君
藤原銀次郞君
塚本〓治君
男爵伊藤一郞君
男爵宮原旭君
太田耕造君
岩田宙造君
上野松次郞君
中野敏雄君
國務大臣
商工大臣岸信介君
政府委員
商工省總務局長神田暹君
商工書記官赤間文三君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007701187X00119411119&spkNum=6
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