1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十七年二月十日(火曜日)午後一時三十九分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=0
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001・溝口直亮
○委員長(伯爵溝口直亮君) 只今ヨリ委員
會ヲ開會致シマス、大藏大臣ガ御差繰リニナ
リマシテ御出席ニナリマシタノデ、同大臣
ニ對スル御質疑ヲ先ニ願ヒタウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=1
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002・舟橋清賢
○子爵舟橋〓賢君 今囘御改正ニナリマシ
夕日本銀行法案ヲ見マスルト、所謂大東亞
共榮圈ノ建設ト、ソレヲ目標トスル中央銀
行サウ云フ主トシテノ機能ヲ充足スル爲
ニ今迄ノ日本銀行デハ十分デナイト云フ理
由ニ依ッテ御改正ニナッタヤウニ拜承シテ居
リマスルガ、實ハ此ノ改正ノ法文ヲ能ク拜
見致シマスルト此ノ東亞共榮圈ニ於ケル
金融ノ中樞機能ヲ發揮スルト云フダケデ
ハ戰後平和ニナッタ時ニモ中央銀行トシ
テノ日本銀行ト云フ點ニ於テ少シ物足ラヌ
ヤウニ考ヘルノデアリマス、所謂世界ニ於
ケル日本ノ中央銀行トシテノ日本銀行ノ機
能ヲ十分ニ發揮スル爲ニハ、單ニ大東亞共
榮圈ト云フダケノ目標デハ少シク小サクナ
イカ、斯ウ思フノデアリマス、其ノ點ハ例
ヘバ管理通貨ト云フモノガ無制限ニ發行セ
ラレル共榮圈、所謂圓域「ブロック」·コメモ·ハン·
ハ日本銀行ノ機能ハ、或程度迄十分ニ參ル
ダラウト思フノデアリマスガ、將來ハ東亞
共榮圈「ブロック」ダケノ中央銀行トシテ日
本銀行ガ存在スルモノデハナイノデアッテ、
世界ノ通商經濟ノ一ツノ中樞機能トシテノ
日本銀行ト云フモノガ必要デアラウト思フ、
或ハ平和ニナリマシテモ、幾ツカノ「ブロツ
ク」ニ依ッテ世界ガ支配セラレルト云フコト
ニモナルダラウト思ハレマスルガ、併シソレ
ニシテモ各「ブロック」間ニ於ケル金融ノ一
ツノ中心トシテハ、此ノ日本銀行ノ改正法
律案ヲ一覽致シマスルト、何ダカ物足ラナ
イト云フ感ジガスルノデアリマス、或ハ觀
方ニ依リマシテハ斯ウ云フ觀察ガ出來ルト
モ限ラヌノデアリマスガ、卽チ今囘ノ日本銀
行ノ改正案ハ、此ノ戰爭目的ノ爲ニ非常ナ
通貨ヲ發行スル、無制限ニ通貨ヲ發行スル
必要ガアル、其ノ爲ニハ公債ヲ日本銀行ト
シテハ一應ハ引受ケル必要ガアル、ソレダ
ケノ、其ノ二ツノ目的ガ主タル日本銀行改
正ノ骨子トナッテ、今囘ノ御立案ガ出來テ
居ルノデハナイカト思ハレル節ガアルノデ
アリマスガ、是等ノ點ニ付テ大藏大臣ノ御
所見ヲ伺ッテ置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=2
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003・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 日本銀行ノ制度
ノ改正ニ付キマシテ本會議ニ於キマシテ、
又委員會ニ於キマシテモ理由ヲ申上ゲタノ
デアリマスガ、尙只今御質問ガアリマシタ
ノデ御答ヘ致シマス、只今御話ノヤウニ我
ガ國ハ、永久ニ大東亞「ブロック」內ニ於
テノミ經濟ヲ建テ、樞軸國以外ノ國ニ對シテ
ハ永久ニ戰爭シテ行クト云フ考ハナイノデ
アリマシテ、英米等ガ根本カラ今迄ノ考ヲ
新ニシテ、東洋ニ於ケル我ガ國ノ地位ヲ直
チニ諒解シ、之ニ卽應シテ參ルヤウニ考ヲ
改メマスレバ、世界ハ平和ニナルト思ヒマ
ス、其ノヤウナ意味ニ於キマシテ世界ノ金
融經濟ト云フモノガアルノデアリマス、唯
大東亞共榮圈ノ中心銀行ト申シマスノハ、日
本ノ中央銀行デアルト同時ニ共榮圈內、是
ハ未ダ戰後ノ統治組織ガドウナリマスル
カ、日本ノ領土ニナルモノモアリマセウ
シ、獨立ヲ致シ、日本ノ指導ノ下ニ參ルモ
ノモアリマセウ、色々ゴザイマセウガ、其
ノ相互間、我ガ國ノ國內ニ在ルモノハ勿論
デアリマスガ、別ノ國ニナリマスル相互間
ノ決濟ノ中心機關ニナルト云フ意味デゴザ
イマス、ソレ以上進ミマシテ、世界ノ金融
經濟、世界ノ國際決濟ノ中心機關ニナルコ
トハ、固ヨリ我ガ國威ノ發揚トシテ希望ス
ル所デゴザイマスガ、只今其處迄ヲ豫想致
シマシテ、世界ノ決濟ノ中心機關トシテド
ウスルト實ハ考ヘマシテモ、現在トシテハ
マダ机上論ニ過ギナイコトデアリマス、其
處迄ハ考ヘテ居リマセヌ、其處迄考ヘテ居
リマセヌト云フコトハ、東亞經濟「ブロッ
ク」ト他ノモノトノ、多クハ平和ニナリマ
シテ相互ノ交通貿易ヲ致ス、其ノ場合ノ決
濟ノコトヲ考ヘナイト云フ意味ヂヤ無論ナ
イ、中心ニナルト云フコトト、其ノ一分子
トシテノ働キト云フコトト是ハ又別デア
リマス、世界ノ中心ニナルコトモ必要デア
リマスガ、今實行論トシテ其處迄ノコトヲ
考ヘルノハマダ早イ、併シナガラ他ノㄱブ
ロック」トノ經濟交通、特ニ貿易ノ決濟ノ
部面ヲ受持ッテ參リマスル東亞共榮圈ノ中
心ナル、斯ウ云フ考ハ勿論間違ヒナイノデ
アリマス、尙今ノ御質問ハ、或ハ私ガ正當
ニ了解致サナカッタカモ知レマセヌガ、世界
ノ相互ノ決濟ヲ、各「ブロック」相互ノ決濟ノ
場合ニハ金本位デナクテハナラヌト云フ假
ニ考ガアルトシマスレバ私ハ斯樣ナ考ハ
持ッテ居ナイ、サウデナクテモ決濟ハ十分
ニ出來マスルシ、寧ロ金本位デアルト云フ
コトガ、或場合ニハ非常ニ經濟上惡結果ヲ
來ス問題デアル、尙是ハ本會議ニ於キマシ
テ私ハ財政經濟方針ヲ申述べマシタガ、金
ノ重要性ト云フコトトハ別問題デゴザイマ
ス、最近ニ於テ、「アメリカ」ト國交ノ斷絕
致シテ居リマセヌ資金凍結前ニ於テハ、金
ハ如何ナル經濟上ニモ是ハ一「オンス」三四
「ドル」幾ラデ、幾ラデモ「アメリカ」ニ持ツ
テ行ケバ賣レルモノデアッタ、是ガ其ノ效用
デアリマシテ、三十四「ドル」幾ラデアリマ
ス、ソレダケノ「ドル」ヲ出シマシテ、「ア
メリカ」カラ買ヒタイモノヲソレダケ買ヒ
マス、又「アメリカ」ガ國際經濟ノ中心デア
リ、其ノ前ハ「ロンドン」ガ左樣デアリマシ
タガ、「アメリカ」ノ資金ガ容易ニ「ロンド
ン」ノ資金ニナリ得ル、「アメリカ」ト「ロ
ンドン」ノ資金ヲ持ッテ居リマスレバ、世
界何レノ國カラ輸入致シマシテモ其ノ決濟
ニ使ヘタ、簡單ニ申スト、世界的安定價値
ヲ持ツ一種ノ商品ナリト私ハ心得テ居ル次
第デアリマズ、其ノ意味ニ於キマシテハ
管理通貨制度ニナリマシテモ、一向サウ云
フ事態ガ出來マシテモ關係アリマセヌ、事
實日本ハ管理通貨制度ノ實體ハ、モウ餘程前
カラ備ヘテ居ル所デアリマス、ソレ等ノ關係
ヲ端的ニ表示ヲ致シマスコトモ、本制度ノ制
定ノ上ニ現レテ居ル所デアリマス、從來ノ
日本銀行ノ制度ハ、沿革的ニハソレ〓〓理
由ガアリマシタガ、稅制ノ變遷、國家ノ活
動ノ分野等ノ相違致シマスル今日ニ於テ、
產業金融ノ上ニ於キマシテモ、亦信用ノ制
度ノ保持育成ト云フコトニ於キマシテモ、
通貨ノ調節ニ於キマシテモ、其ノ規定ハ適
切デハアリマセヌ、ソレヲ變へマスコトガ
必要デアリマス、是ハ獨リ戰時中ノミナラ
ズ、戰後ニモ長キニ亙ッテ必要デアルト云フ
コトヲ考ヘテ參リマシタ、唯公債引受ノ都
合ノ好イ爲ニ拵ヘル、斯ウ云フヤウナ簡單
ナ考デハアリマセヌ、現在デモ別ニ一向差
支アリマセヌシ、改正セヌデモ其ノ點ハ實
行上ハ差支ヘナイ、是ハ支那事變前カラ公
債引受ノ制度ハ行ハレテ居リマシタノデア
リマス、大體通貨ノ量ハ金ト關聯ヲ持タナ
ケレバナラヌト云フ考ハ政府ニナイノデア
リマシテ、寧ロ關聯ヲ持ツコトニ依ッテ、却
テ場合ニ依ッテ誤ヲ生ズルト云フ考ヲ持ッテ
居リマス、併シナガラ其ノ觀念ハ、通貨ノ
基礎ガ金ト離レタカラ、通貨ハ無制限ニ出シ
テモ宜シイノデアルト云フ考デハ絕對ニナ
イノデアリマシテ、兩者ハ別ノコトナノデ
アリマス、我々ハ金ヲ通貨ノ基礎トスルコ
トガ適當トスル所以ニアラズト、斯ウ思ッテ
居ルノデアリマス、然ラバ今後通貨ノ適量
ヲドウ云フ風ニシテ期スルカト申シマスル
ト、銀行的操作ト致シマシテハ日本銀法
ニ於テ今度新ニ規定致シマシタ規定ニ依ル
各種ノ操作デアリマス、無論一部ハ從前ヨ
リ多少條例等ノ範圍ヲ逸脫スルカモ知レマ
セヌガ、已ムヲ得ズ實際ノ必要ニ應ジテヤッ
テ居ッタモノガアリマス、是以上ニ尙是ガ正
當化サレマシテ、ハッキリヤッテ宜イコトニ
ナリ、一層其ノ範圍ガ擴ガルノデアリマス、
併シナガラ一國ノ通貨ハ現在ノ如ク國家總
力ヲ最モ有效ニ働カシ、戰爭ト云フ國家ノ
有ラユル力ヲ最モ綜合的ニ發揮致シマスル
時ニハソレダケノコトデハ到底適當ヲ期
スル譯ニ參リマセヌ、如何ナル方法デ適當
ヲ期スルカト申スコトハ、根本ハ斯ウ云フ考
ニアリマス、一國ノ購買力、假ニ通貨ノ面カ
ラ申シマシテ購買力、詰リ一國ノ物價ノ需
要ト云フモノガ或期間、或時ニ於テ其ノ供
給量ヲ逸脫シナイ、是ガ極メテ必要ナ所デ
アリマス、ソレヲ別ノ方面カラ申上ゲマスナ
ラバ、所謂世間ニ物ノ豫算ト云フヤウナコ
トヲ申シマス、是デアリマス、豫算モ徒ニ
金額ヲ增加致シマシテモ、其ノ豫算ヲ實行
シテ行ク上ニ、國家ノ支出ヲ致シテ行キマ
ス上ニ、ソレニ依ッテ調辨スベキ資材若シ
クハ勞力ト云フモノガ存在致サヌ場合ニ於
テハ、金ヲ支出シマシタ效果ハアリマセヌ、
ソレハ唯徒ニ物價騰貴ヲ起ス、所謂惡性「イ
ンフレ」ノ方向ニ向フノミデアリマス、從
ヒマシテ必ズ通貨ニハ、同時ニソレニ依ッテ
購入スベキ物資ノ存在ト云フコトヲ前提ト
致サナケレバナラヌ、況ヤソレガ國家全體
ノ經濟トシマシテハ國ノ豫算ノミナラズ、
民間ニ於テ國民生活ノ維持ノ爲ニ、或ハ生
產力擴充ノ爲ニ、之ニ出マスル金ガ同時ニ
ソレダケノ對象タル物資ガナケレバナラヌ、
斯ウ云フ風ニ考ヘマスカラ、結局之ガ物資
ノ一國ノ需給調節計畫、是ハ昭和十二年ニ
出來マシテ、事變ノ始リマス前カラ、經濟
上ノ重大方策トシテ政府ハ決定致シ、ソレ
ガ所謂物動計畫ト云フ名前デ、大體重要ナ
物資ニ付キマシテハ、皆行ハレルヤウニナッ
テ居リマスコトハ御承知ノ通リデアリマス、
一面ニ於テ物資ノ非常ナ生產ノ增强ト云フ
コトヲ圖リ、一面ニ於テ消費ノ規正、節約
ヲ圖リ、サウシテ戰爭ニ必要ナル、生產力
擴充ニ必要ナル物、國民生活ニ必要ナル物
ニ付キマシテ金ト物ヲ合セル、ソレガ根本
ノモノデアリマス、デアリマスルカラ一國
ノ豫算總額ト云フモノハ、架空ニ唯金錢デ
見積リマシテ、一國ノ物資ノ存在ヲ前提ニ
致シマシテ、此ノ制約ガ適當ニ行ハレマス
ルナラバ、所謂惡性「インフレーション」ト
云フコトモ起ラズ、通貨ノ膨脹ト云フコト
モ起リマセヌ、其ノ計畫ヲ維持スル手段ト
致シマシテ、其ノ消費ノ規正デアリ生產ノ
增加デアリマスルガ、通貨ヲ主ト致シマス
ル大ナル政策ハ國民貯蓄ノ增加デアリマス、
之ニ依リマシテ年々通貨ノ發行量、收縮量
ト云フモノヲ豫定致シ、是ハ租稅及國民貯
蓄ノ增强ニ依ッテ其ノ目的ヲ達スル、其ノ方
策ガ昭和十三年以來行ハレテ居リマスコト
モ御承知ノ通リデアリマス、大體年々其ノ
目的ヲ達スルニ近イト申シマスカ、シテ參
リマシテ、今日ニ於テハ細カイ議論ヲ致セ
バ色々アリマセウガ、旣ニ何十億ト云フ通
貨ヲ每年發行致シ、新規發行總計モ隨分ノ
額ニ上ッテ居ルト思ヒマスガ、是ガ適切デ
アルカドウカト云フコトハ別デアリマスガ、
大部分ハ其ノ吸收ヲ圖リ、通貨ノ適量ヲ期
シテ居ル譯デアリマス、假ニ通貨ガ出セル
カラ幾ラデモ出セルヤウニスルト云フ考ハ
毛頭持ッテ居リマセヌコトハ、獨リ今ノ政府
ノミナラズ、歴代皆左樣デアリマシテ、
獨リ銀行ノ所謂金融操作以外ニ今日ノ日本
ノ經濟計畫、通貨金融計畫ニ依リマシテ、
適正ヲ期セムトシテ居ルヤウナ譯デアリマ
ス、大體右樣ノ考デヤッテ居リマス次第デア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=3
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004・舟橋清賢
○子爵舟橋〓賢君 非常ニ各般ニ亙ッテ詳
細ニ御意見ヲ拜承致シマシテ、厚ク御禮ヲ
申上ゲマス、私ハ此ノ日本銀行ノ只今ノ改
正案ト云フモノハ、今戰爭ガ始ッタ極ク初期
ニ於テ斯ウ云フ改正案ヲ御提案ナサルヨリ
モ、一應戰局ガ治リマシタ上ニ於テ、世界
各國ノ經濟通商ト云フモノガ大體平和ノ狀
態ニ還リマシタ際ニ、十分ニソレ等ノ關係
ヲ御見透シニナッタ上デ改正ヲナサルベキ
デアッタノデハナカラウカ、斯ウ一應疑問ヲ
持ツノデアリマス、戰爭ガ開始セラレマシ
テ間モナク、卒然トシテ今度ノ大改正ヲ爲
サッタガ爲ニ、只今大藏大臣ガ御說明ニ相成
リマシタ金トノ關係ト云フモノガ、表面管
理通貨ノ制度ヲ御採リニナツタ爲ニ斷絕シテ
居ルカノ如ク見エマスガ、又一面ニ於キマ
シテハ、貨幣法ノ第二條ハ今尙存續セラ
レテ居ルノデ一面ニ於テ尙關聯性ガアル
ヤウニモ思ヘル、斯ウ云フ點カラ見マスル
ト、今一ツ今度ノ改正案ガ貨幣法ノ改正ヲ
伴ハナイ改正デアルト云フ點カラシテ、謂
ハヾ臨時的ノ、一時的ノ大改正デアルト云
フコトニモ見ラレルノデアリマス、若シ臨
時的ノ、一時的ノ改正デアルナラバ、現在
各種ノ法規デ一應日本銀行トシテノ機能ハ
賄ッテ居ラレルノデアリマスルカラ、其ノ程
度デ現在改正ヲナサラナクテモヤッテ行ケ
ルノデハナイカト、斯ウ思フノデアリマス、
何故此ノ戰爭ノ途上ニ於テ斯ウ云フ大改正
ヲナサッタノデアリマスルカ、其ノ點ヲ一應
伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=4
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005・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 是ハ御言葉デハ
アリマスガ、實ハ相當前ニ出來タモノデ、
日本銀行條例ガ明治十五年デアリマスカ、
兌換銀行券條例ガ明治十七年デ、何シロ六
十年前ノモノデゴザイマスカラアレデハイ
ケナイノデ、例ヘバ今見返擔保デヤッテ居リ
マスガ、是ハ本當ハ違法カモ知レマセヌ、
工業ハ一切直接間接關係シテハナラヌト書
イテアリ、サウ云フコトハ事實行ハレナイ
コトニナッテ居リマスガ、ヤカマシク言ヘバ
ソレニ反スルコトモアリマセウ、併シ見返
擔保ノコトヲヤルト云フコトモ行ハレテ居
リマスガ、所謂古イ革ガ餘リニ古クナリマ
シテ、新シイ酒ヲ盛レナイ、愈、行詰ッテ參ッ
タノデ、數次ノ改正ト云フコトモ考ヘラレ
テ居リマシタ、ソレカラ金トノ關係ニ致シ
マシテモ、實ハ明白ニ離脫シタ一階段ハ、
昭和十二年ノ金準備ノ評價法デアリマス、
是等ハ明白ニ離脫シテ居ル一ツノ大キナ證
左デ、一匁五圓ガ十圓幾ラデアリマスカニ
改正シタ、從來貨幣ノ價値ノ觀念ガ金ヲ主
トスル觀念ガアリマシテ、ソレノ當否ハ別
ト致シマシテ、是ガ長年ノ間多數ノ人ノ頭
ノ支配ヲ致シテ居リマス、昭和十二年頃當
時ハ私丁度局ニ當ッテ居リマシタガ、初メテ
支那事變ガ起ッタ當時、我ガ國ノ財政經濟ト
云フモノハ非常ニ悲觀說ノ多イ時代デアリ
マス、又運用ノ仕方ニ依リマシテハ、相當
心配スベキ狀態ニナル可能性モナイコトハ
ナイ、當時金カラ離脫シテ適當ナリト私ハ
理論トシテハ考ヘタガ、各般ノ情勢ヲ考ヘ
マシテ、未ダ其ノ時期ニ非ズト云フノデア
ア云フ法律ヲ作ツタ、更ニソレガ非常ニ明瞭
ニナリマシタノガ昨年ノコトデアリマス、
是ハマア人々デ色々御說ガアリマセウガ、
大體ハ今日金本位ヲ離脫スルト云フコト
ハ、社會全體カラ考ヘマシテ經濟上何等ノ
不安ナシ、其處迄ニ參ッテ居ル、斯ウ云フ觀
察ヲ致シテ居ルノデアリマス、サウ云フ風
ニナリマシタラ早クヤリマシタ方ガ宜イノ
デアリマス、今後東亞共榮圈ノ各地域ノ指導
ニ當リマシテモ、矢張リ從來ノ金本位ノ觀
念ガ相當ニアル地域モアリ、是等ヲ漸次鞭
撻致シマシテ導ク上ニ於テモ、是非是ハ必
要ナコトデアル、其ノ意味ニ於キマシテモ
私ハ今ガ實ハ一番適當ナ時期デアル、或
晩キニ失シテハナラヌト思ヒマスコトガ一
ツデアリマス、ソレカラ一ツハ大東亞戰爭
ト云フモノハ、私共長期ニ亙ルモノト考ヘ
テ居リマス、幸ニシテ英米ヲ終極的ニ、極
メテ短期ニ屈服セシムレバ幸デアリマスガ、
ソレハ豫期ヲシテ參ルコトハ出來ナイコト
デアリマス、從ッテ大東亞戰爭ノ進ミマス迄
待チマスト云フコトハ、今後非常ナ長イ間
ヲ待ツト云フコトニナリマスノデ、ソレ迄
到底只今ノヤウナ狀況デハイカヌコトト思
ヒマス、從ッテ寧ロ此ノ機會ニ改正ヲシナケ
レバナラヌト思ッタヤウナ次第デアリマス、
尙貨幣法ヲ改正致スノガ當リ前デアリマス
ガ、本期議會ニハ實際ニ於テ必要ナルモノ
ノミノ提案ニ限ルト云フ方針デ參リマシタ
爲ニ、貨幣法自體ノ方ハ暫ク存在シマシテ
モ事實殆ド關係ガアリマセヌノデ、是ハ忍
ビ得マスノデ出シマセヌデシタガ、尙今後
ノ機會ニ於テアノ方ヲ改正ヲシテ參ル、コ
チラハ現在臨時的ノモノニナッテ居リマス
ノデ、コチラノ方ヲ改正シテ參ル、斯ウ云
フ考ヘ方ヲシテ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=5
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006・舟橋清賢
○男爵舟橋〓賢君 大體了承致シマシタ
ガ、貨幣法ノ問題ニ付テ一、二點伺ヒタイ
ト思ヒマスガ、今囘金準備評價法、其ノ他
金ノ評價ノ基準ニナル法律ガ廢止ニナッテ
居ルノデアリマス、卽チ日本銀行法案ノ第
七十八條ニ於テ日本銀行條例、兌換銀行劵
條例、ソレカラ其ノ他金準備評價法ト云フ
ヤウナ法律ガ廢止ニナッテ參ッタノデアリマ
シテ、ソコデ伺ヒタイノハ、此ノ法案ノ第
三十二條ノ末項ニ「日本銀行ハ第二項各號
及前項ノ保證ノ價格ヲ定メ主務大臣ノ認可
ヲ受クベシ」ト云フ規定ガアリマスルガ、
此ノ保證ノ價格ヲ主務大臣ガ定メルト云
フ、是カラ先ノ基準ト云フモノヲドウ云フ
處ニ御置キニナルノデアリマスカ、此ノ點
ガ今一ツハッキリシナイノデアリマス、サウ
シテ是迄ノ產金買上價格竝ニ爲替銀行ニ對
スル政府ノ金ノ拂下ノ價格ト云フヤウナモ
ノハ、大體金準備評價法ニ依リマスガ、二百
九十「ミリグラム」一圓、此ノ基準ニ依ッテ御
決定ニナッテ居ルト云フコトデアリマスガ、
今囘是ガ廢止セラレマスルト將來色々政策
上此ノ買上價格、拂下價格ト云フモノヲ
御變更ニナル場合ガアラウト思フノデアリ
マス、其ノ場合ニ於ケル金ノ價格ノ決定ノ
基準ト云フモノハドウ云フ處ニ御採リニ
ナリマセウカ、其ノ點ヲ伺ヒタイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=6
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007・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 只今ノ處ハ、今
ノ保有買上價格其ノ儘デ參ル積リデアリマ
ス、大體現狀其ノ儘ノ形、「レツテル」ヲ貼リ
變ヘタノニ過ギナイノデアリマス、將來ト
致シマシテハ金ハ一種ノ商品ト考ヘ、國際
決濟上ドノ位ノ程度デ使ヘルカト云フ觀點
カラ適當ニ決メテ參リタイト思ヒマス、他
ノ商品ト全然同ジデハアリマセヌガ、國際
決濟上此ノ程度ニ金ノ價格ヲ考ヘマシテ行
クノガ適當デアルト云フ點ニ大體依リタイ
ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=7
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008・舟橋清賢
○子爵舟橋〓賢君 サウ致シマスルト、此
ノ內地ニ於ケル產金ノ買上價格トカ、ソレ
カラ外地ニ於ケル產金ノ買上價格トカ、サ
ウ云フ場合ニ於キマシテ、將來其ノ都度サ
ウ云フ狀況ト言ヒマスカ、サウ云フ條件ヲ
入レテ御決定ニナリマスカ、現在ニ於テハ
暫ク二百九十「ミリグラム」一圓ト云フ標準
價格ニ於テオヤリニナルト、斯ウ了承シテ
宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=8
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009・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 是ハ金ヲ餘計利
用致シマス場合ニハ採算ノ惡イ山モ掘ラ
ナケレバナラヌ場合ガアリマス、サウ云フ
場合ニ買上價格ヲ增シテ參リマストカ、或
ハ補助金デアリマストカ、或ハ全體ノモノ
ヲ「プール」平準價格的ニ行キマスルカト云
フコトハ、其ノ時ノ時宜ニ依ッテ決定シタ
イト思ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=9
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010・舟橋清賢
○子爵舟橋〓賢君 ソレカラ尙一點伺ヒ
タイノデスガ、此ノ日本銀行ノ爲替賣買ニ
進出スルト云フコトニナルト、勢ヒ正金銀
行トノ取引ノ分野ニ或程度ニ於テ重複ト申
シマスルカ、交錯シテ來ルト云フヤウニ思
ハレルノデアリマスガ、此ノ點ニ於キマシ
テ當局トシテドウ云フ御考ノ下ニ今後ヤツ
テ御行キニナルノデアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=10
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011・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 貿易業者、個々
ノ商社トノ爲替取引ハ正金銀行其ノ他ノ爲
替銀行ガ致スト云フコトハ、今ト變リガナ
イ行キ方デアリマス、日本銀行ガ自ラ貿易
業者等ノ、其ノ輸出爲替ヲドウスルト云フ
ヤウナコトハ致シマセヌノデ、寧ロ爲替銀
行ガ色々取引ヲ致シマスル其ノ爲替ノ尻ト
申シマスカ、サウ云フモノハ寧ロ集メテ行
ク、ソレカラ各共榮圈地域間ノ相互ニ於キ
マシテ必ズシモ受取、支拂ニハ各地相互間
ニ一致致ス譯デモナイト思ヒマス、支拂超
過ノ所モアリマスシ、受取超過ノ所モ出來
マスガ、サウ云フモノハ各地域ノ中央銀行
的ノ機關ヲシテ相互ノ預金其ノ他ニ付テ調
整ヲセシメタイ、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居リ
そう、日本銀行ハ、正金銀行或ハ臺灣銀行
其ノ他ノ爲替ヲ扱ッテ居ル銀行ニ付テハ、
サウ云フ風ナ爲替銀行ノ又中央銀行ト云フ
風ナ立場ヲ執ラシテ參リタイ、相互ノ詰
リ組合セデアリマシテ、他方ノ領域ニ侵入
ヲシテ行クト云フ考へ方デナク參リタイト
思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=11
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012・舟橋清賢
○子爵舟橋〓賢君 此ノ正金銀行、ソレカ
ラ臺灣銀行トカ、矢張リ今後共榮圈內ニ於
テ大イニ活躍シナケレバナラヌト思フノデ
アリマスルガ、是等ノ銀行ノ現在ノ機能デ
十分デアルト御考ニナリマスカ、將來斯ウ
云フモノヲモウ少シ內容ヲ擴充シテ、モット
積極的ニヤルト云フ必要ハナイモノデアリ
マセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=12
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013・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 日本ノ爲替銀行
ハ、米英ノ資產凍結ノ斷行ニ依リマシテ世
界的ニハ活動ノ範圍ガ狹クナル、其ノ代リ
ニ共榮圈內ニ於テハ從來ヨリモ活動ノ分量
ガ非常ニ多クナルダラウト思ヒマス、減ル
所モアリマスガ、殖エル所モアリマス關係
デ、今非常ナル機構ノ增大、改正ヲシナケ
レバ間ニ合ハヌト云フ風ニモ考ヘテ居リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=13
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014・舟橋清賢
○子爵舟橋〓賢君 大體了承致シマシタガ、
此ノ日本銀行ノ今囘ノ改正ノ案ヲ拜見致シ
マスルト、從來ノ日本銀行ヨリモ、日本銀
行當局ト言ヒマスカ、日本銀行自體ノ自主
性ト云フモノガ非常ニ少クナッテ居ルノデ
アリマス、而モ此ノ改正案ノ趣旨ハ、積極
的ニ中央銀行トシテノ使命ヲ完成スル、全
ウスルト云フ目的ニ存スルヤウニ窺ハレル
ノデアリマスルガ、此ノ自主性ト云フモノ
ガ非常ニ減少致シマスルト、例ヘバ國內ノ金
融ニ付キマシテモ、其ノ時々ノ金融界ノ變
動ニ臨機ニ處シテ行クト云フ、極メテ機敏
ナ處置ガ兎角機ヲ逸シ、遲レルト云フヤウ
ナ虞ガアルヤウニ一應思ハレルノデアリマ
スルガ、此ノ點ニ付テ大臣ノ御所見ヲ承リ
タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=14
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015・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 自主性ト云フコ
トニ付キマシテハ重要ニ考ヘラレマスルガ、
從來斯ウ云フ考ヘ方ガ一ツアリマシタ、日
本銀行ハ政府ノ意思如何ニ拘ラズ、獨自ノ
立場ヲ執ッテ居ルノダ、マア少シ言葉ガ惡イ
カモ知レマセヌガ、政府ガ其ノ時々都合ガ好
イヤウナコトガアルト思ッテモ、ソレヲサウ
シナイデ、金融ノ安全ヲ圖ッテ行クト云フヤ
ウナ考ヘ方モ、確カ世間ノ一部ニアッタト思
フノデアリマス、又制度モサウ云フ風ナ
考へ方ガ入ッテ居ル部分ガアル、是ハ今ノ日
本ニ於キマシテハ、今ト云フトホンノ戰爭ノ
アリマス二三年前ノコトデアリマスガ、是ハ
將來ノ國家ノ動向全般ニ亙ッテデアリマス
ルガ、モウ今後數十年國家ガ一丸トナッテ
的確ナル目的ヲ定メ、經濟其ノ他ノモノガ
皆一丸トナッテ、金融モ產業モ皆ソレデ行
ク、金融ノ安泰ヲ圖ル爲ニ產業ハドウデモ
宜イ、產業ハ金融ノ如何ヲオ構ヒナク自分
ダケ進ンデ行ク、サウ云フヤウナコトハ到
底許シマセヌ、總力ガ調和ヲ得テ集ッテ、最
大ノ力ヲ發揮スルト云フ方向ニ行カナケレ
バナラヌ、政府ト日本銀行ガ相抗爭スルト
云フヤウナ考ハ、左樣ナコトデハ到底國家
ハ戰爭ニ勝拔クコトガ出來マセヌ、ノミナ
ラズ、一旦得タ戰果ヲ確保スルト云フコトハ
到底出來マセヌ、其處ガ詰リ一元化スル政
府ノ政策ト卽應スルト云フコトヲ、極メテ明
瞭ニ致シマシタ點デアリマス、ソレデ今囘
ノ一元化、所謂自主性ガナクナルカト云フ
方面ハ其ノ方ニ寧ロアリマスルノデ、行動
ヲ致スコトニ付テハ從來ニ較ベテ何等制肘
ハアリマセヌ、寧ロ信用保持ナドニ付キマ
シテハ、從來特ニ法律デモ出シマセヌケレ
バ銀行ノ救濟ナドニ乘出シマセヌガ、銀行
ガ一時ノ原因、何カノ原因デ取付ナドニ會
ヒマシテ、之ヲ救濟スレバ又將來健全ナル
金融機關ニ還ル見込ガアリ、預金者モ亦債
務者モソレデ非常ニ急激ナル變動ヲ蒙ラズ、
損失ヲ蒙ラズ行キ得ルコトガ出來ル、サウ
云フコトニ俄ニ活動スルコトハ困難デアリ
マシタガ、今囘ノ制度ノ改正ニ依リマシテ
サウ云フコトモ非常ニ容易ニ相成リマス、
ソレカラ各種ノ資金ノ放出ノ途、吸收ノ
途モ從來ヨリ殖エマスノデアリマス、此ノ
行動ノ機敏サト云フコトニハ、寧ロ〓囘ノ
改正ノ方ガ能ク動ケルト云フコトニナッテ
居リマス、オ互ニ相控制スルト云フ點ガナ
ケレバ······是ハオ互ニ控制シテ惡イ事ヲナ
サヌト云フ爲ニハ宜シイ制度デアリマセウ
ガ、進ンデ善イ事ヲスルト云フコトノ爲ニ
ハ非常ニ又害ニナル方面ガアリマス、今ハ
オ互ニ惡イ事ヲスルノヂヤナイ、進ンデ最
善ヲ盡シテ尙且及バザル時代デアリマスカ
ラ、其ノ意味ニ於キマシテ從來ノ自主性ト
云フコトハ餘程ナクナル譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=15
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016・舟橋清賢
○子爵舟橋〓賢君 日本銀行關係ノ件ハ一
應是デ終リマス、ソレデ資金調整法中改正
法案ニ付テ一件ダケ伺ヒタイト思ヒマス、
此ノ法案自體ニ付テデハナイノデアリマス
ケレドモ、實ハ此ノ國債ガ百數十億モ發行
セラレルト云フ際デアリマスルノデ、同時
ニ各種ノ社債ガ矢張リ斯ウ云フ時局ノ必要
ニ應ジテ多額ニ發行ニナルノデアリマス、
之ニ對スル經濟界ニ於ケル消化能力ノ問題
ガアルノデアリマス、國債ノ購入ニ付テノ
勸誘等ニ付テハ、政府ハ非常ニ御盡力ニナッ
テ居リマスルガ、同時ニ社債類ニ對スル斯
ウ云フ消化ト云フモノガ、今後益〓其ノ增額
ニ應ジテ消化能力ト云フモノガ低下スルデ
ハナイカト思フノデアリマス、其ノ社債ニ
對シ政府ガ、ドウ云フ今後方針ヲ以テ御臨
ミニナルノデアルカ、此ノ資金調整法ニ於
テ大體ノ限度ト云フモノヲ、年々國債ト同
樣ニ見透シヲ御付ケニナッテ、或金額デ抑ヘ
ルト云フ方針ヲ御執リニナッテ居ルヤウデ
アリマスルガ、一方ニ於テハ又消化ト云フ
コトニ付テ相當ニ政府ガ援助ヲオシニナラ
ナイト、ナカ〓〓思ハシクヤッテ行ケナイノ
ヂヤナイカト、斯ウ思フノデアリマスルガ、
是等ノ點ニ付テモ政府ノ御方針ヲ承ッテ置
キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=16
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017・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 第一前提ト致シ
マシテ、私ハ國債モ社債モ同ジニ考ヘテ居
リマス、ト申シマスブハ、斯ウ云フコトガ
一ツ出來テ居リマス、今日ニ於テハ國家ノ
目的ヲ達シマスル爲ニ、詰リ戰爭ニ勝チ拔
キマスル爲ニ、ソレニ必要ナル生產力ノ維
持擴張ハ、是ハ無論生產ト申シマシテモ各
種ノ運輸交通カラ皆入リマスルガ、サウ云フ
モノニ必要ナラザルモノハ絕對ニ株式ノ拂
込ニシマシテモ、銀行ノ貸出ニシマシテモ、
無論會社ノ新設、社債ノ發行ニ致シマシテ
モ致サセヌ、是ハマア昭和十二年ニ資金調
整法ヲ、支那事件擴大已ムヲ得ズト決リマ
シタ後ノ臨時議會ニ御協贊ヲ經マシタ根本
ノ精神ハ其處ニアリマス、限ラレタル資
材、限ラレタル資金ヲ以テソレ以外ノモノ
ヲヤル餘裕ハ到底ナイノデアリマス、國家
必要ト認メラレルモノモ、ソレヲ設備致シ
マスル資材等ハナカ〓〓思フニ任サヌノデ
アリマス、必要ナラザル所ニハ一厘モ金ガ
行カナイヤウニスルト云フコトガ一ツノ考
ヘ方デアリマス、然ラバ是ガ社債ノ形デア
リマセウトモ、株ノ形デアリマセウトモ、
國債ノ形デアリマセウトモ、直接政府ガ利
用スルカシナイカノ差コソアレ、國家目的
ヲ達シマスル爲ニハ同質ト見ナケレバナラ
又、私ハ國債消化ニシロ、社債消化ニシ
口、兩方同ジ考デ行クベキモノデアルト、
斯ウ考ヘテ居リマス、一面サウ考ヘマス時
ニハドウシテ消化サスカト云フコトヲ考ヘ
マスト先程通貨ノ際デモ申上ゲマシタヤ
ウニ、國債ニ依ッテ結局ソレガ財源ニナリマ
シテ、必要トスル所謂戰用資材其ノ他ノモ
ノモ社債其ノ他ヲ本ニシマシテヤリマスル
生產擴充資材モ、是ハ限度ガアリマスガ、
ソレノ無論增產ニハ努メマス、又輸入ニ致
シマシテモ、或時ニ於テハ一定限度以外ニ
ハ行カナイノデアリマス、之ニ合フ程度ニ
止メル、是ガ物動計畫デアリマシテ、ソレ
ニ合フヤウニ致シマシテ社債ノ發行其ノモ
ノハ如何ナル事業ニドノ程度ト云フ風ニ制
限ガ出來マス、是ガ詰リ一國ノ資金計畫デ
アリマス、此ノ資金計畫ニ必要ナダケハ必
ズ國民貯蓄ノ增加デ作リマス、是ハ昭和十
三年春ニ初メテ國民貯蓄ソ增加ノ政策ヲ發
表致シマシタ時モ其ノ考デアッタノデアリ
マン、必要ナラザル金ハ一厘モ使用出來ナ
イヤウニスルト同時ニ、必要ナル金ハ必ズ
之ヲ貯蓄ノ增加ニ依ッテ即チ銀行劵ノ增發
ニ依ラズシテ作ルノデアリマス、而モ其ノ
作ル限度ハ一國ノ資材ノ制約ノ範圍內ニ置
〃、此ノ根本方針デ行キマスナラバ、國民
ノ日常生活ノ消費ガ收入ノ增加ニ連レテ膨
脹致シマセヌ限リ、殘額ハ租稅及國民貯蓄
ニナリマスカラ必ズ賄ヒ得ル譯デアリマス、
若干ノ場合ニ於テ今申上ゲマシタヤウナ
通貨ノ膨脹ハアリマシタガ、昭和十三年以
來ノ經過ハ大體右ノ根本方針ニ沿ヒ良好
デアリマシテ、是ガ困難ヲ感ジナガラモ生
產力擴充資金モ大體出來、國債モ大體ハ消
化致シ、惡性「インフレーション」モ起ラズ
ニ參リマシタ原因デアルノデアリマス、サ.
ウ云フ計畫ヲ一面ニ於テ强化シテ參ッタノ
デアリマス、簡單ニ申上ゲマスレバ、國民
貯蓄ノ增加、貯蓄奬勵ガ基本デアルノデア
リマス、ソレデ必ズ必要ナダケノ金ヲ作ル
ト同時ニ、初メカラ必要額ト云フモノヲ右
樣ニ無制限ニ致シマセヌデ抑ヘテ行キマシ
テ、ソコデ一國ノ資金計畫ガ出來、物動計
畫ト相俟ッテ生產擴充計畫ガ資材ノ方面ト
資金ノ方面デ出來上リマス譯デアリマス、
其ノ範圍ニ於テ按配宜シキヲ得レバ、必ズ
國債社債等ハ消化致ス譯デアリマス、併シ
ナガラ今迄ソレガ完全ニ參ッタトハ申セマ
セヌガ、大體ソレニ近ク行ッテ居リマス、又
一年間ヲ通ジテソレガ所期ノ如ク參リマシ
テモ、ドウモ工合ガ惡イコトガアリマス、
ソレハ場所ニ依ッテ資金ノ餘計アル所ガア
ルカラデアリマス、是ハ地域ト申スヨリモ、
金融機關ソレ自體ニ依ッテ餘計集ル所ガア
リ而モ需要ハ其ノ方ニハ餘計申込ンデ來
ナイ、又一方ニ於テ大キナ需要ハアルガ、
資金ハソレ程集ッテ來ナイ、又時期ニ依リ
マシテモウ少シ經テバ定期預金ナリ、郵便
貯金ニ蓄積ガ出來ルノデアリマスガ、資
金ノ需要ノ方ガ一足先ニ來ルト云フヤウナ
縱橫ノ喰違ヒガ相當起リマス、ソレカラ又
何シロ長イ間ノ情勢モアリマスノデ、銀行
ノ經營者等モ同種類ノ社債ヲ澤山持ツト云
フコトハ嫌ヒガアリマスガ、國家ノ政策ト
シテ社債ノミガ澤山出ルト云フヤウナコト
モアルノデアリマシテ、所謂好キ嫌ヒト申
シマスカ、單純ナル好キ嫌ヒデハアリマセ
ヌガ、長年ノ銀行ノ經營ヤ組織ノ上カラ氣
ノ向クモノト向カヌモノトガアルノデアリ
マス、右ノ樣ニ全體トシテ要ルダケノ金ガ
出來マシテモ、無理ニ初メカラ餘計社債ヲ出
スト云フコトヲヤリマスト、全體ヲ睨ミ合
スコトガ困難デアリマス、是ガ出來ナイ以
上ハドンナニ他ガウマク合ッテモ駄目ナノ
デアリマス、又ソレガ合ッテモ今申シマシタヤ
ウナ時間的ニ、又區域的ト申シマスカ、金
融機關ソレ自身等ニ於テノ喰違ヒガアリマス
カラ、根本ノ貯蓄奬勵ニ努メマスルト共ニ、
其ノ喰違ヒヲ相當是正シテ行クコトガ肝心
デアリマス、之ニ付テハ民間ノ金融業者ノ
·方ニ於テモ色々努力サレマシテ、或ハ金融
協議會ガ出來、或ハ時局共同融資團ガ出來
マシタリシテ、之ニ政府モ色々相談ニ乘リ、
又指導ヲシテ參ッタノデアリマス、此ノ金融
機關ノ資金ノ運用等ヲ尙一層ヨク行カセル
爲ニ、總動員法ニ基キマシテ全國金融統制
會其ノ外ニ各業態別ニ依ル組織ヲ作リマ
シテ、是等ノ機關ニ依ッテ金融機關ノ經營ノ
方面カラモ不合理ガナイヤウニ、詰リ申上
ゲレバ各機關ニ依ッテ資金、「コスト」等モ違
ヒマスノデ、何デモオ前ハ公債ヲ持テト言ッ
テ、利〓ノ惡イ公債バカリ持タセル譯ニモ
參リマセス、ソコデ經營ニ應ジテ利廻ノ高
イモノト安イモノトヲ組合セルトカ、色々
シテ相互ノ按配ヲシナガラ行クト云フ、要
スルニ資金ノ一ツノ配分計畫ト申シマス
カ、斯ウ云フ方ハ今後金融統制會ニ於テ、
相當ウマク致シタイト思ヒマス、ソレカラ
又今囘ノ日本銀行ノ改正モ時間的ノ調節ニ
相當役ニ立ツノデアリマス、此ノ改正デ產
業金融ニ日本銀行ガ乘出スノダト云フコト
ヲ能ク言ハレマス、又乘出スト云フコトヲ
申上ゲテ居リマシタ、ソレガ往々誤解ヲ受
ケマシテ、社債ヤ株式拂込ノ源泉ヲ銀行劵
ノ發行デヤル、日本銀行劵ヲ持ッテ行ケバド
ンドン出來ルト云フ風ニ取ル人モアリマス、
其ノ結果ガ日本銀行カラドン〓〓無制限ニ
金ガ出ル、非常ニ危イヂヤナイカト云フ御
心配ガ出ルコトモアリマスガ、私共ハサウ
云フ風ニ考ヘテ居リマセヌ、固定ノ產業資金
ハ必ズ一方ニ物的設備ガ伴フノガ原則デア
リマス、デスカラ國民ガ働イテ暮シニ使ッタ
餘リ、詰リ一方蓄積ト云フモノガ國民ガ其
ノ收入以上ニ消費ヲシナイデ全體的ニ出來
テ居リマス、サウ云フ國民ガ働イテ殘シタ
金デナケレバ、眞ノ戰費ヤ固定設備ヲ要ス
ル產業資本ニハナラナイト考ヘマス、ソレ
デスカラ無制限ニ日本銀行劵ヲ發行シテ、
株式ノ拂込資金ヤ社債ノ元ヲ作ルノデハア
リマセヌ、唯今日一般銀行ヤ、信託ヤ、郵
便局ニ資金ガ集ッテ參リマスノガ少シ遲レ
ルガ、片方デ金ヲ出サナケレバナラナイノ
デアリマシテ、或ハ二月トカ、四月トカ、
數箇月ノ時間的調節ヲ執ル必要ガアルノデ
スガ、ソレガ行カヌ爲ニ非常ニ摩擦ヲ感ジ
テ居ルト思ヒマス、ソレデ今囘ノヤウニ改
正ヲ致シテ、一面サウ云フヤウナ方法ヲ以
チマシテ社債ノ消化ガ從來ヨリモ圓滑ニ行
クヤウニ努メタイト思ヒマス、併シ經濟上
ノコトデアリマスカラ、此ノ途サヘ開カレ
レバソレデ何デモ行クト云フ譯ニハ參リマ
セヌ、最近國策會社ノ政府保證債ト云フモ
ノガ相當澤山出マスガ、是ナドハ馴染ノナ
イモノデアリマスノデ、ドウシテモ賣行ガ
惡イコトニナリマス、ソコデ是等ノ社債ノ
利子ニ對シマスル稅ヲ極ク少シデハアリマ
スガ、安ク致シテ居リマス、此ノヤウナコ
トガアリマスノデ、日本銀行ノ作用ト云フ
モノハ金融統制會ノ資金ノ適正ナル配分
ノ幹旋ト云フコトニ俟ツ場面ガ非常ニ多イ
ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=17
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018・舟橋清賢
○子爵舟橋〓賢君 私ノ質問ハ是デ終リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=18
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019・岩田宙造
○岩田宙造君 戰時金融金庫法ニ付テ一ツ
ダケ御尋ネシタイノデゴザイマス、是ハ實
ハ政府委員ニ御尋ネヲシテ、一應御答ヲ得
タノデアリマスガ、其ノ御答ガ少シ不明瞭
ノヤウニ感ジマスノデ、大臣ノ御說明
ヲ得テハッキリサシテ置キタイト思ヒマ
ス、ソレハ第一條ノ「戰時ニ際シ」ト云フコ
トデアルノデアリマス、此ノ「戰時ニ際シ」
ト云フノハ、外ノ法案ニモ澤山使ハレテ居
ル言葉デアリマシテ、今迄政府ノ御說明ニ
依リマスト戰時ト云フノハ、戰爭ノ御詔勅
ガ出テ平和克復迄ノコトヲ言フノデア
ル、從ッテ「戰時ニ際シ」ト言フノハ戰時中
ト云フ意味デアルノデ、平和克復スレバモ
ウ「戰時ニ際シ」ト云フコトハ言ヘナクナル
ト云フ御說明デアリ、サウ云フ風ニ略÷一定
シテ居ルヤウニ思フノデアリマス、從ッテ
本法モ自然サウ云フコトニ解釋サレルト思
ヒマスガ、サウ致シマスト、平和ガ克復致
シマスト、其ノ瞬間カラ本法ニ依ッテ新タ
ニ資金ヲ貸出ストカ、或ハ有價證劵ノ買入
ヲスルト云フコトハ出來ナクナルコトノヤ
ウニ思ハレマスガ、如何デゴザイマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=19
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020・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 御質問ノ通リデ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=20
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021・岩田宙造
○岩田宙造君 サウ致シマスト、實ハ政府
委員ハ其ノ點ニ付キマシテ平和ガ克復シテ
モ、暫クノ間ハ新タナ出資ト云フコトハ出
來テイカモ知レナイガ、併シ有價證劵ノ市
價安定ノ爲ニ有價證劵ヲ買入レルト云フヤ
ウナゴトハマア暫クノ間ハ戰爭ガ熄ンデ
モ出來ル積リダ、斯ウ云フヤウナ御說明ガ
アッタモノデゴザイマシタカラ、其ノ點ヲ實
ハハッキリシテ置キタイト思ッテ御尋ネシタ
ノデアリマスガ、今ノ御說明デ其ノ點ハ能
ク了解致シマシタ、併シ此ノ外ノ治安ニ關
スル事項デゴザイマストカ、或ハ戰爭完遂
ニ直接關係シテ居ルヤウナ事項ナラバ戰
爭中ト云フコトガ最モ適當ナ決メ方ノヤウ
ニ思ヒマスガ、本法ノヤウナ生產擴充、產
業再編成或ハ有價證劵ノ市價安定ト云フヤ
ウナコトハ平和ガ克復シタ後ニ矢張リ相
當必要ガアルノデハナイカト考ヘラレマス
ルノデ、只今ノヤウテ決メ方ハ少シ狹過ギ
ルノデハナイデアリマセウカ、私ハ戰爭ガ
熄ンデモ矢張リ暫クノ間ハ本法ノ適用ガア
ルヤウニシタ方ガ一層適切デハナカッタカ、
卽チ戰時ト云フ代リニ臨時ト云フヤウナ意
味ノ法律ニサレタ方ガ適當デハナカッタカ
ト思ハレルノデアリマスガ、其ノ點ニ付テ
ノ御考ヲ伺ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=21
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022・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 先ヅ是ハ御質問
外デアリマシテ、旣ニ御了解濟ミカト思ヒ
マスガ、戰時ニ於キマシテ融資ヲ致シマシ
タコトノ後始末ト申シマスカ、融資或ハ投
資致シマシタ場合ニ、戰爭ガ終レバ直グソ
レヲ囘牧スルトカ、賣リ放ストカ云フコト
ハ是ハ事實上出來ナイノデアリマシテ、
尙引續キ投資、融資ヲ致シタモノヲ繼續シ
テ持ッテ居リマシテ、又其ノ投資、融資ノ保
全ノ爲ニ必要ナル、又ソレカラ派生的ノ投
資融資等ハ私ハ致シ得ルト思ヒマスガ、
全ク新ニ始メルコトハ出來ナイト思ヒマス、
有價證劵ニ致シマシテモ、買入レテ居リマ
スモノノ、其ノ處置ニ付キマシテノ或方策
ハ爲シ得ルモノト存ジテ居リマス、併シサ
ウデナクシテ、有價證劵ノ市價安定ニ致シ
マシテモ、又所謂生產擴充等ニ對スル投資
或ハ融資ニ致シマシテモ、所謂戰爭ガ熄ン
デモ、戰後ノ經營ノ爲ニ引續イテ必要ナコ
トガ多分ニ想像サレルノデハナイカト云フ
御考ハ私モ同樣ニ感ジテ居リマス、唯立法
ニ際シマシテハ、ソレデハソレガ何時迄ガ
宜シイノカト云フコトニナリマスト、戰爭
ガ濟ミマシタ後何年間ト云フコトノハッキ
リシタコトハ、只今トシテハ無論豫測ガ困
難ナノデアリマス、大體戰爭ハ長期ヲ豫想
致シテ居リマスシ、今後ノ事情ニ依ッテ新
ナル立法ヲ致スカ、又此ノ法案ノ修正ト申
シマスカ、形式ハ何レニ致シマスカ、其ノ
邊ハ今後ノ情勢ニ應ジテ適當ニ處置ヲ執ッ
テ參リタイト思ヒマス、此ノ戰時金融金庫
法ニ依リマス投資、融資ハ極メテ必要ナコ
トデアリマスルガ、一面カラ申上ゲレバ採
算ノ如何ト云フコトハ極メテ判明致サヌモ
ノデアリマシテ、國庫ノ相當ナル損失モ覺
悟ノ上デシナケレバナリマセヌ、尤モ初メ
カラ採算ノ採レナイモノデアルト云フ風ニ
ハ實ハ原則的ニハ考ヘナイノデアリマス、
不明デアル、或ハ不明モ當事者ニハ明カデ
アリマシテモ、一般カラ見テ不明デアルト
云フヤウナモノモ致ス考デアリマス、ソコ
デ相當政府トシテハ之ニ援助ヲ致スコトニ
ナッテ居リマス、其ノ結果ト云フモノハ一面
ニハ十分ニ注意シテ參リマスガ、サウ申シ
テモ政府ガ補償スルト云フヤウナコトハ、
氣分ノ上ニ於テハ事業ノ經營ト云フモノガ
著實、堅實ニ行クト云フコトニ對スル弛ミ
ヲ生ズル點モアリマス、ソレデ原則的ニハ
一應今ノ戰時ノ必要ト云フコトニ制限致シ
マシテ、今後ノ事態ノ變遷ニ應ジテ適當ナ
ル立法的處置ヲ執リタイト、斯ウ考ヘテ居
ル次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=22
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023・溝口直亮
○委員長(伯爵溝口直亮)君) 大藏大臣ニ對
スル御質問ハ別ニゴザイマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=23
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024・松村眞一郎
○松村眞一郞君 此ノ度ノ法案ニ依リマス
ルト、貨幣法ノ關係カラ申シマシテ、第七
十五條ニ「當分ノ內貨幣法第二條ノ規定ニ
拘ラズ」ト云フコトガ書イテアリマスルシ、
「貨幣法第十四條ノ規定ハ當分ノ內之ヲ適
用セズ」ト云フコトガ七十六條ニアル譯デ
アリマス、貨幣法ノ規定ハ將來ドウ云フヤ
ウナ工合ノ方向ニ、政府ニ於カレマシテハ
改正ヲサレルヤウナ御考ヲ御進メニナッテ
居ルノデアリマセウカ、ソレハ現在ノ貨幣
法ノ第二條ニ於キマシテハ、價格ノ單位ハ
「純金ノ量目七百五十「ミリグラム」ヲ以テ價
格ノ單位ト爲シ之ヲ圓ト稱ス」ト云フコトニ
ナッテ居ル譯デアリマス、此ノ第二條ノ規定
ガ當分ノ內行ハレナイト云フコトニ進ンデ
參ル場合ニ於テ、法律上ノ疑義トシテ私ノ
考ヘマスノハ、日本ノ總テノ價格ノ單位ガ
圓デアルト云フコトヲ法制上決メテ居ル根
據ガナクナルノヂヤナイカ、唯色々ナ所ニ、
例ヘバ日本銀行法ノ第五條ヲ見ルト、「日本
銀行ノ資本金ハ一億圓」ト謂ッテ居ル、其ノ圓
ト云フコトソレ自身モ、何ニ基イテ單位ニ
ナッテ居ルカト云フヤウナコトモ分ラナク
ナッテシマフ虞ガアルト云フ感ジヲ致スノ
デアリマス、價格ノ單位ガ圓デアルト云フ
コトノ法律上ノ根據ハ、貨幣法第二條ノ外
ニ何處カニアルノデゴザイマセウカ、此ノ
貨幣法ヲ將來ドウ云フヤウナ方向ニ動カ
ス、或ハ改廢スルト云フヤウナコトノ御考
モ御持チニナッテ居ルノデアリマセウカ、サ
ウ云フ點ニ付テ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=24
-
025・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 貨幣法ハ追ッテ
改正ヲ致シタイト存ジテ居リマス、ドウ云
フ風ニ改正スルカト云フコトハ、是ハ多少
ノ腹案ヲ持ッテ居リマスケレドモ、案ガ纏マ
リマシテカラ申上ゲタイト思ヒマス、大體
金ヲ離脫スル方向ニ參ルノデアリマス、
尙此ノ日本銀行法第七十五條ハ、保有スル
金地金及金貨ノ價格ガ貨幣法ノ第二條ノ規
定ニ依ラナイ、斯ウ云フコトヲ法律論トシ
テハ規定シテアルノニ過ギマセヌ譯デゴ
ザイマス、從ヒマシテ御疑問ノヤウナ所迄
ニハ問題ガ進マナイヤウニ存ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=25
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026・松村眞一郎
○松村眞一郞君 ソレデ第七十八條ニ於キ
マスルト云フト、金準備評價法ト云ワモノ
ヲ廢止サレルコトニナルノデアリマス、今
ノ七十五條ニ依ッテ貨幣法ノ二條ニ依ラザ
ルコトニナル譯デアリマスカラ、凡ソ日本
銀行ノ保有シテ居リマスル所ノ金ト云フモ
ノヲ、如何ナル標準ニ於テ圓トノ結ビ附ケ
ヲスルカト云フコトハ、法律上明文ヲ失フ
コトニナルノデアリマスガ、ソレハソレデ
宜シウゴザイマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=26
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027・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 是ハ第七十五條
ノ二項ニゴザイマス、主務大臣ノ認可シタ
ル價格ヲ以テ評價致シマス、ソレニ依ツ
テ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=27
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028・松村眞一郎
○松村眞一郞君 ソレハ三十二條ノ末項デ
ゴザイマセウネ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=28
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029・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 間違ヒマシタ、
朝鮮トアリマスカラ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=29
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030・松村眞一郎
○松村眞一郞君 三十二條ノ末項ニ依ッテ
御決メニナルト思ヒマス、サウ致シマスト
私ノ疑問トスル所ハ、從來ノ法律ノ規定ニ
明瞭ニ金ト圓トノ關係ガ定メラレテ居ッタ
ノデアリマスガ、今後ハ法律上ニハハッキリ
シナイ、主務大臣ノ認可デ定メラレルノデ
アリマス、斯ウ云フコトニナルノハ當然ダ
ト思ヒマスガ、サウ致シマスト云フト、凡
ソドノ位ナ所ニ目標ヲ御置キニナッテ居ル
カト云フコトガ、法律ノ上デハチヨット見當
ガ付カナクナルト云フ感ジガスルノデアリ
マスガ、其ノ點ハドウデゴザイマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=30
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031・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) ソコガ世間デ所
謂管理通貨制度ト申シテ居ル所以デアリマ
シテ、金ト云フモノニ對シマシテハ、全ク
他ノ物資、資材ト同ジ關係ニ立ッテ、金ニ對
シテ特殊ノ關係ヲ持タナイ、斯ウ云フ觀念
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=31
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032・松村眞一郎
○松村眞一郞君 特別ナ關係ヲ持タナイト
云フ御議論デアリマスケレドモ、第三十二
條ヲ見マスト云フト「同額ノ保證ヲ保有ス
ルコトヲ要ス」トナッテ居リマス、銀行劵ノ
發行高ニ對シマシテハ此處ニ揭ゲテアルモ
ノガ保證ニナッテ居ル譯デス、保證ト云フコ
トノ間ニ關係ガ私ハアルト思ヒマス、關係
ナイ意味ニ於テ保證ガアル譯ハ私ハナイト
思フ、其ノ保證ノアリマス中デ、ドレガ一
番具體的ニ摑ミ得ルカト申シマスト私ハ地
金銀デアラウト思フ、何故カト申シマスト
商業手形トカ、或ハ貸付金デアルトカ、國
債トカ、債劵デアルトカト云フヤウナ一號、
二號、三號、四號ニ揭ゲテアリマスモノハ
總テ矢張リ圓デ示シテ居ル、圓デ示シテア
ルモノヲ圓デ保證シテ居ルト云フコトニナ
ルノデアリマス、圓ト圓トノ保證ト云フコ
トニナルト圓其ノモノノ物差ガ分ラナイ
ト云フコトニナリマス、結局地金銀ニ依ッテ
初メテ圓ト今大臣ノ仰セラレマシタ物資、
資材トノ關係ガ分ルノデス、今ノ手形トカ、
國債トカ、債劵トカト云フモノハ、是ハ物
資ヂヤナイ、此處デ三十二條デ書イテアル
所ノ物資ト云フノハ第六號ニ依ッテ初メ
テ分ルノデアリマスカラ、總テノ物資ヲ考
ヘラレルト言ハレマスケレドモ、兎モ角金
ト云フモノニ重點ヲ置イテ居ルト云フコト
ハ私ハ認メラレルノデハナイカト思フノ
デアリマス、其ノ點ハ如何デアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=32
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033・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 其ノ點ハ重點ヲ
置イテ居リマセヌ、外ノ物ガ圓デ宜シイノ
デアリマス、其ノ圓ト云フモノハ購買力ヲ
持ッテ居ル、其ノ物資トノ關係デ宜シイノデ
アリマシテ、地金銀ト云フモノノ保有ヲ認
メマスガ、之ニ特ニ重點ヲ置イテ居ル譯デ
アリマセヌデ、統一的ニ是ノミガ物資ニ繫
リヲ持ッテ居ルト云フ考ヘ方デハナイ、事實
上銀行劵ト云フモノガ空デ出ルノヂヤナ
イ、出ルダケノ背後ニ經濟的ノモノガ··
モノト云フノハ物資バカリノ意味デアリマ
セヌ、廣ク存在シテ居ル、力ガ存在シテ居
ル、是等ノ手形等ガ圓トシテ、皆ソレ〓
ノ間接ニハ設備物資ニ繫リヲ持ッテ居ル譯
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=33
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034・松村眞一郎
○松村眞一郞君 力ノ存在ヲ私ハ認メルノ
デアリマスガ、其ノ力ノ標準ヲ私ハ御聽キ
シテ居ル、圓ト云フコトデ示シテ居ラレル
ノデアリマスカラ、圓ハ何ニ關係ヲ持ッテ居
ルカト云フコトニナリマスト、結局玆ニ銀
行劵ヲ認メラレル以上ハ、其ノ銀行劵ハ交
換ノ媒介トシテ御認メニナルコトハ間違ヒ
ナイ、物々交換ノ手段トシテ玆ニ銀行劵ガ
アル、銀行劵ハ物差デアリマスカラ、物差
其ノモノノ値打ガ定ラナイト外ノ物價ガ定
ラナイト云フコトニナルダラウト思フ、物
差デアルト云フコトハ御認メニナルダラウ
ト思フ、其ノ物差ガドレ位アルカト云フコ
トハ、圓其ノ物以外ノ物デ見ナケレバ、圓
ハ圓デアルト云フノデハ物差ノ値打ガ分ラ
ナイコトニナルカラ、其ノ意味ニ於テ金ハ
矢張リ一ツノ見返リトシテ御覽ニナッテ居ル
ノヂヤナイカ、ソレデアレバ私ノ結論ハ
金準備評價法ニアリマスヤウナ比率ハ、今
後ドウ云フヤウナ程度ニ御尊重ニナルノデ
アリマスカ、金準備評價法ニアリマス「當分
ノ内貨幣法第二條ノ規定ニ拘ラズ純金ノ量
目二百九十ミリグラムニ付一圓ノ割合ヲ以
テ評價スベシ」ト云フ、此ノ規定ヲ尊重サ
レテ宜クハナイカト云フコトガ私ノ結論デ
アリマス、從ッテ是ハ明文ニ置カレテ宜クハ
ナイカ、其ノ規定ヲ日本銀行法ノ中ノ今ノ
金及金地金ノ評價ノ標準トシテ、當分ノ內
之ヲ尊重スルノデアルト云フコトヲ御揭ゲ
ニナルト云フコトハ、金ト云フモノト銀行劵
トノ間ノ相關關係ガ此處ニハッキリスルト
云フヤウニ考ヘル、卽チ圓ト云フモノト他
ノ物資トノ相關關係ガハツキリスル、斯ウ云
フ意味ナンデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=34
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035・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 是ハ御意見ガ相
違致シマシテ、私共ハ圓ハ各種ノ物資トノ
交換比率ガ圓ノ價値デアルト思ッテ居ル、金
トノ交換比率ト云フモノハ圓ノ極メテ小部
分デアリマス、金トダケノ換算率ヲ持ッテ行
クト云フコトハ寧ロ間違デアル、一般的ノ
綜合物價ト云フモノガ圓ノ價値デアルト云
フ、斯ウ云フ考ヘ方ヲ致シテ居ルノデアリ
マス、從ヒマシテ金ニ一定ノ換算比率ヲ持
ツト云フ考ハ持ッテ居リマセヌ、當分ノ處置
ト致シマシテハ、現在ト同樣ヲ保有關係デ
參ル積リデアリマスルガ、是ハ世界的ニ日
本ノ通貨ト外國ノ通貨トノ換算率ノ自ラ定
リマスル所、世界的ニ金ト云フモノガ通貨
トドウ云フ換算率ニナリマスルカ、是等ヲ
睨ミ合セマシテ時々其ノ處、時ニ依リマシ
テ適當ニ定メタイ、金ニノミ確定換算率ヲ
持タナイ、斯ウ云フ風ナ考ヘ方ヲ致シテ居
ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=35
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036・松村眞一郎
○松村眞一郞君 金ニノミ依ラナイト云フ
コトハ御意見ノ通リデ、私共モサウ云フヤ
ウニ考ヘテ居リマス、併シナガラ今御話ニ
ナリマシタ如ク、世界的ニ金ガ通貨ト如何
ナル關係ヲ持ツテ居ルカト云フコトヲ御覽
ニナルト云フコトヲ仰シヤッテ居ルノデア
リマスカラ、其ノ御覽ニナル範圍內ニ於テ
金ト圓トノ關係ヲ示シテ置イテ宜クハナイ
カト云フコトニナルンデス、意見ト云フコ
トデアレバ意見ノ相違デアリマスカラ、金
ダケハ見ナイ、併シ金ヲモ見ルト云フコト
ハ御認メニナッタコトデアラウト思フ、金モ見
ル、其ノ見ルモノノ一ツダケハハッキリシ
テ置イテ宜カラウト思フ、何モ分ラナイノ
デアリマスカラ、金ダケハハッキリシテ置
イタラ宜カラウト思フ、私ハ綜合的ニ考ヘ
テ他ノ國ノ物價ト通貨トノ間ノ値段ヲ御定
メニナルト云フ、今度ノ法律ノ法案ノ御趣
旨ニハ異議ヲ持ツモノヂヤアリマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=36
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037・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 今申上ゲマシタ
ヤウニ其ノ時ノ時宜ニ依ッテ定メマスモノ
デアリマシテ、從ヒマシテ法律デ一定ニ定
メテ置クト云フコトハ、寧ロ適當デナイノ
デアリマス、從ヒマシテ主務大臣ノ認可デ
之ヲ定メタイ、斯ウ思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=37
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038・松村眞一郎
○松村眞一郞君 意見ノ相違ニナリマスカ
ラ······併シナガラ金準備評價法ニ書イテア
ル純金量目二百九十「ミリグラム」ノ割合
ヲ以テ評價スルト云フコトハ、當分ノ內ソ
レデ御實行ニナルト云フコトデ、了解シテ
宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=38
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039・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宜君) 當分ハソレデ實
行致シマス、併シソレハ拘束的ノ考ハ持チ
マセヌ、狀況如何ニ依ッテハ始終必要ガア
レバ變ヘテ參リマス、當分ハ變ヘル考ハ
持ッテ居リマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=39
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040・松村眞一郎
○松村眞一郞君 勿論當分ノ內デ宜シイ、
法律ハ主務大臣ガ認可ヲ以テ定メルト云フ
建前ニナッテ居リマスカラ、是ハ變ヘナイ
ト云フコトニナレバ、是ハ又認可ノ必要ハ
ナイト思ヒマスカラ、勿論御變ヘニナルコ
トハ當然ト考ヘテ居リマス、拘束力ヲ永久
ニ持ツモノトシテ質問ヲ致シテ居ルノデハ
ナイノデアリマス、結局スル處、金準備評
價法ノ第一條ノ規定ハ、當分ノ內ハ尊重シ
テ行ク積リデアルト云フコトニ了解シテ宜
シイノデスネ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=40
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041・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 實體ノ保有價格
ヲ變ヘテ行クト云フ譯デアリマシテ、アレ
ガ圓トノ結ビ付キノ一ツノ目安ト云フヤウ
ニハ見ナイノデアリマス、只今ノ法律ノ制
定ハサウ云フ點ニ於テハ實體ノ變更ヲ認
メテナイノデアリマスガ、今後或ハ買上價
格ガ變リマスルトカ色々致シマシタラ變ヘ
マスガ、只今直グ變ヘル必要ハ認メテ居ナ
イ次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=41
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042・松村眞一郎
○松村眞一郞君 日本ノ價格ノ單位ガ圓デ
アルト云フコトハ、今日矢張リ貨幣法ノ外
ナイノデゴザイマセウネ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=42
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043・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宜君) 其ノ通リデゴザ
イマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=43
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044・松村眞一郎
○松村眞一郞君 ソレカラ日本銀行ノ監督
ノ點デアリマスガ、是ハ會計檢査院トノ關
係ハドウ云フコトニナリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=44
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045・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 檢査院法ニ依リ
マシテ、政府ガ補助等ヲ致シマス法人ニ對
シテハ、會計檢査院ニ檢査權能ガアルト云フ
コトニナリマスガ、日本銀行ニ今ノ四分配
當ヲ保證致スコトニナッテ居リマスカラ、
會計檢査院ノ檢査ニ服スベキ範圍ニ入ルト
存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=45
-
046・松村眞一郎
○松村眞一郞君 會計檢査院法第十三條ノ
第四號ノ規定デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=46
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047・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 左樣デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=47
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048・松村眞一郎
○松村眞一郞君 政府ハ此ノ規定ダケデナ
ク、モウ少シ日本銀行ト會計檢査院トノ間
ノ檢査ヲ、政治的ニ行フト云フヤウナ御考
ハナイノデアリマセウカ、此ノ十三條ノ規
定ハ、唯會計檢査院ノ任意デアリマスカラ、
檢査シテモ宜イ、檢査シナイデモ宜イト云
フコトニナルト思フノデアリマス、是ハ日
本銀行ニ付テノミデハナク、國務大臣トシ
テ一般的ノ御考慮ヲ煩ハシタイト思フノデ
アリマス、色々ナ營團ガ出來マスルシ、大
藏省關係ノ金庫ト云フヤウナモノモ近頃非
常ニ澤山出來テ居ルノデアリマス、是ハ民
間ノ普通一般ノ營利會社デアリマセヌカラ
會社等經理令ト申シマスカ、サウ云フヤウ
ナ方面ノ監督ヲ受ケテ居ナイ、從ッテ何等
カ或基準ノ下ニ檢査ヲ致サレルコトガ、非
常ニ必要デナイカト私ハ思フノデアリマス、
會計檢査院ノ方ノ增員カ何カシテ貰ッテ、
近頃多ク出來マス所ノサウ云フ特設ノ營團
トカ、日本銀行ハ勿論デアリマスガ、サウ
云フモノニ付テ、何等カ政府ヨリ離レタ所
カラ、極ク局外的ニ冷靜ニ檢査ヲシテ貰フ
ト云フヤウナ施設ガアッタ方ガ宜クハナイ
カト私ハ考ヘルノデアリマス、ソレ等ノ點
ニ付テ大臣ノ御考ハ如何デゴザイマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=48
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049・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 日本銀行ハ從來
極メテ几帳面過ギル程几帳面ニ內容ガ出來
テ居ル所デアリマス、國庫事務ニ付キマシ
テハ、特ニ檢査院ガ政府ト同ジヤウニ檢査
ヲ致シマスルシ、只今日本銀行ト致シマシ
テ、特ニ會計檢査院ノ檢査ヲ之ニ付テ特設
ニ致スト云フ必要ハ認メテ居リマセヌ、尙
其ノ他ノ各種ノ營團的ノモノニ付テ御說ガ
アリマシタガ、是等ノモノハ經理ガ極メテ
適正嚴格ニ行カナケレバナラヌコトハ御
說ノ通リデアリマス、檢査ヲ致シタイト思
ハイ、致シ得ルコトニナッテ居ルノデアリ
マシテ、皆適正嚴正ニ經理ヲ致シテ居リマ
スルガ、必要ニ應ジテハ、檢査院ノ檢査ヲ
受クルヤウニ考ヘテ宜イト思ヒマス、又檢
査院モ是等ノ國策會社ト云フヤウナモノニ
對シテハ、時々實際ニ檢査ヲ致シテ居ラレ
ルヤウニ私モ存ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=49
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050・溝口直亮
○委員長(伯爵溝口直亮君) 他ニ質問ハゴ
ザイマセヌカ、ソレデハ大藏大臣ニ對スル
質問ハ是デ終ッタトシテ宜シウゴザイマス
カ、ソレデハ是カラ一般ノ御質問ヲ願ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=50
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051・竹下豐次
○竹下豐次君 戰時金融金庫法ノ資本金ノ
問題ニ付テ簡單ニ御尋ネ致シタイノデアリ
マス、第三條ヲ拜見シマスルト云フト、資
本金ハ三億圓ト云フコトニナッテ居リマス、
其ノ第二項ニ主務大臣ノ認可ヲ受ケテ之ヲ
增加スルコトガ出來ル、第五條ニハ政府ハ
二億圓ヲ限リ出資スルコトガ出來ル、斯ウ
云フコトニナッテ居リマスノデスガ、將來資
本金ヲ增加サレル場合ニ於キマシテモ、政
府ノ出資ハ矢張リ二億圓ヲ超シテハイケナ
イノダト云フコトニナルノデアリマセウ
カ、チヨット此ノ條文ヲ拜見シタダケデハ、
サウ云フコトニ受取レルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=51
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052・田中豐
○政府委員(田中豐君) 左樣デゴザイマス、
將來增資ヲ致シマシテモ、第五條ノ政府出資
ノ金額ヲ變更致サナイ限リ、政府ノ出資ハ
二億圓ニ限ラレテ居ル譯デアリマスガ、實
際問題ト致シマシテハ增資致シマス際ハ
此ノ五條ノ規定ノ改正ヲ致シマシテ、政府
出資ヲ增加スルト云フヤウナコトガ考慮サ
レルカト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=52
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053・竹下豐次
○竹下豐次君 將來ノ改正ヲ御見込ニナッ
テ居ルト致シマスレバ、寧ロ是ハ二億圓ト
云フ風ニ御書ニナラナイデ、モウ少シ外ノ
言ヒ現ハシデ御ヤリニナッタ方ガ、再ビ改正
ノ必要ガ生ジタ時ニ、其ノ點ヲ省クコトニ
ナリハシナイカト思ヒマスガ、尤モ增資ス
ルト云フコトハ、モウ殆ドナイ見込ダト云
フヤウナ御考デアッタラ別デゴザイマスケ
レドモ、其ノコトヲ御伺ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=53
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054・田中豐
○政府委員(田中豐君) 御說ノ通リ此ノ五
條ノ書キ方ヲ、例ヘバ資本金ノ三分ノ二ハ
政府出資トスルト云フヤウナコトヲ書イテ
置ケバ、自然ニ政府ノ出資ガ增加スルト云
フヤウナコトニナルカラ、サウ云フ點カラ
ハ便利デアルト存ジマス、併シナガラ一應
此ノ戰時金融金庫ハ主トシテ資金ハ債劵デ
賄フコトニナッテ居リマシテ、現在ハ拂込資
本金ノ十倍ノ債劵ヲ發行シ得ルコトニナッ
テ居リマスガ、更ニ資金ガ足リナケレバ之
ヲ增加シテ行クノデ、資本金ノ增加ヨリモ
債券ノ發行限度ヲ增加スルト云フヤウナコ
トモ考ヘラレマス、ソレモ矢張リ法律ノ改
正ヲ要スルノデ、規定ト致シマシテハ三
分ノ二ハ必ズ政府出資トスト云フノハ御
說ノ通リ第五條ハ三分ノ二ト書イタガ宜
カッタト思ヒマスガ、何レニシテモ資金ハ主
トシテ債劵カラ出スベキデアルト考ヘマシ
テ、資本金ノ方ノ增資ハ只今ノ處勿論豫想
ハ致シテ居ラヌ譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=54
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055・竹下豐次
○竹下豐次君 三分ノ二以內ト書キマシテ
モ矢張リイケナイノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=55
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056・田中豐
○政府委員(田中豐君) 三分ノ二以內ト書
キマスレバ宜イ、宜イト申シマスノハ、增
資ノ際ニ政府ガ三分ノ二以内デ出資額ヲ增
加シ得ルト思ヒマスガ、サウ書クコトガ宜
イカドウカト云フ問題ハ、先ヅ增資ヨリモ
債劵ノ發行限度ノ改正ト云ッタヤウナコト
ヲ考慮スベキ問題ヂヤナイカト思フノデア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=56
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057・竹下豐次
○竹下豐次君 次ニモウ一ツ御尋ネ致シタ
イノデアリマスガ、此ノ金融金庫ニ協同證
劵會社ヲ統合サレマスル際ニ、相當額ノ配
當ヲ株主ニ爲サイマシテ、其ノ殘金ハ全部
金庫ニ引繼グト云フヤウナ御考ノヤウニ
承ッタノデゴザイマスガ、ソレハサウ云フコ
トニナッテ居ルノデゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=57
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058・田中豐
○政府委員(田中豐君) 日本協同證券株式
會社ハ現在相當有價證劵ノ最近ノ値上リ
等ニ依ッテ或程度ノ利益ガ擧ッテ居ルヤウデ
ゴザイマス、之ヲ戰時金融金庫ニ合併致シ
マス際ハ、協同證劵ノ方ガ設立以來無配デ
參ッテ居ル關係モアリマスノデ、或程度ノ配
當ヲ致シテ、殘餘ノ財產ハ戰時金融金庫ニ
引繼ギタイ、斯樣ニ考ヘテ居ル次第デアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=58
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059・竹下豐次
○竹下豐次君 重ネテ御尋ネ致シタイノデ
アリマスガ、實ハ法律關係ハ私ハ能ク了解致
シ兼ネルノデ、其ノ點ヲ御伺ヒシタイノデ
アリマス、商法ノ關係カラ見マスルト云フ
ト全部配當爲サルベキモノデアッテ、配當ノ
殘リヲ金庫ニ引繼グト云フヤウナコトハド
ウ云フ法律ニ依ッテ出來ルモノカ、何カ法ノ
根據ガオアリダラウト思ッテ居リマス、能ク
調ベマスレバ何處カニ規定ガアルカト思ヒ
マスガ、見當リマセヌノデ、其ノ點ヲチヨツ
ト御說明願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=59
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060・田中豐
○政府委員(田中豐君) 五十七條ノ規定ニ
依リマシテ、「戰時金融金庫ノ成立ニ因リ日
本協同證劵株式會社ハ之ニ吸收セラルルモ
ノトシ日本協同證劵株式會社ノ權利義務ハ
戰時金融金庫ニ於テ之ヲ承繼ス」、デ戰時金
融金庫ノ成立ノ際ニ於ケル日本協同證券株
式會社ノ權利義務ハ一切戰時金融金庫ニ引
繼グコトニナリマスノデ、日本協同證劵株
式會社時代ニ於テ、或一定ノ事業年度ニ或
程度ノ配當ヲ致シマシタ殘餘ノ財產ハ、全
部戰時金融金庫ニ引繼グコトニ相成ルト考
ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=60
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061・竹下豐次
○竹下豐次君 私ハ是デ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=61
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062・松村眞一郎
○松村眞一郞君 產金ノ問題ニ付テ商工省
ノ方ノ政府委員ノ御方カラカ御說明ヲ承リ
タイト思フノデゴザイマスガ、御出ニナッテ
居リマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=62
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063・溝口直亮
○委員長(伯爵溝口直亮君) 只今呼ビニ參
リマシタカラ、暫ク御待ヲ願ヒマス、ソレ
デハ如何デゴザイマセウカ、便法ト致シマ
シテ、戰時金融金庫法竝ニ臨時資金調整法
中改正法律案、此ノ二案ノ御質問ハ略〓終了
シタモノト考ヘマスガ、此ノ方ヲ先キニ片
附ケチャドウデゴザイマスカ、御差支ナケ
レバサウ致シタイト思ヒマス、此ノ二案ヲ
同時ニ掛ケマシテ、御討論ヲ願ヒマス、別
ニ御發言ガナケレバ採決ヲ致シタイト存ジ
マス、此ノ二案ハ政府原案通リ決定致シマ
シテ宜シウゴザイマスカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=63
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064・溝口直亮
○委員長(伯爵溝口直亮君) ソレデハ滿場
一致可決致シマシタモノト認メマス、次ニ
日本銀行法案ニ付テハ只今商工省ノ政府委
員ヲ呼ビニ參リマシタカラ、暫ク御待ヲ願
ヒマス、ソレデハ商工省ノ政府委員ガ見エ
マシタカラ、松村君カラ御質問ノ御趣旨ヲ
御述ニナッテ下サイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=64
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065・松村眞一郎
○松村眞一郞君 日本銀行ノ法案ノ關係カ
ラ申シマシテ、銀行劵ノ發行ヲ致シマスル
保證ノ規定ガ三十二條ニアルノデアリマス
ガ、其ノ中ニ「地金銀」ト云フモノヲ其ノ保證
ノ一ツトシテ加ヘテ居ルノデアリマス、從
來產金法ガ制定セラレ、金ノ生產ヲ奬勵セ
ラレテ居リマスル關係ハ、國內ニ於ケル元
ノ日本銀行ニ於ケル兌換劵ノ基礎ヲ確實ニ
スルト云フ意味モ入ッテ居ルト私ハ思ッテ居
ルノデアリマスガ、尙對外爲替關係ノ決濟
ニ於テ金ヲ必要トスルト云フヤウナ事情モ
アッタノデアラウト思フノデアリマス、サウ
云フ關係カラ產金法ノ制定ヲ見、政府ハ補
助金ヲ出シテ十分ニ其ノ增產ノ出來ルヤウ
ニ努力サレタノデアリマスガ、其ノ從來ノ
經過、結果及將來ドウ云フヤウナ見透シニ於
テ進メテ行カレルノデアリ、ドウ云フヤウ
ナ方向ニ國內ノ銀行劵ト云フヤウナモノニ
對スル保證ノ關係ニ貢獻シ、對外決濟ニモ
寄與スル所ガアラウト云フヤウナ工合デ、
ドウ云フヤウナ御方針デ御進ミニナッテ居
リマセウカ、大體ニ於ケル金ノ產額ノ關
係ハドウ云フヤウニ處置サレテ居ルカト云
フコトニ付テ承リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=65
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066・津田廣
○政府委員(津田廣君) 只今ノ御尋ハ產金
政策ニ對シマスル政府ノ今迄ノ實績、竝
今後ノ方針ト云ッタヤウナモノハドウデアル
カト云フ御尋デゴザイマス、御承知ノヤウ
ニ從來產金法竝ニ日本產金振興株式會社法
ト云ッタヤウナ法律ニ基キマシテ、政府ハ極
力金ノ增產ニ邁進シテ參ッテ居ル譯デゴザ
イマス、一時ハドンナ低品位ノ山デモ、兎
ニ角一「グラム」デモ何デモ餘計出サナケレバ
ナラヌト云フコトデ、有ラユル小サナ鑛山
ニ對シマシテモ、此ノ增產ト云フコトニ付テ
ハ有ラユル手段ヲ講ジテ參ッテ居ル譯デ
アリマス、政府ト致シマシテハ探鑛奬勵金
ヤ選鑛場設置、精鍊所設置ト云ッタヤウ
ナモノニ對シマスル補助金ト云フヤウ
ナモノヲ相當年々計上致シマシテ、日本產
金株式會社ヲ通ジテ此ノ增產ニ努メテ參ッ
タノデアリマス、其ノ實績ニ付キマシテハ
只今年々ノ產額ノ數字ヲチヨット此處デ申
上ゲ兼ネルノデアリマスガ、年々相當殖エテ
參ッテ居リマス、處ガ最近ニ至リマシテ昨年
ノ英米諸國等ノ資金凍結以來、金ニ對シマシ
テ今後ハモウ其ノ價値ガナイノヂヤナイカ、
產金政策ト云フモノハ此ノ際思切ッテ方
向ヲ變ヘテ、モウ金ナンカ出サヌデモ宜シ
イト云フヤウナコトデハナイカト云フ風說
ガアチコチニ起ッテ居ル譯デアリマス、差當
リ國際資金ノ決濟ト云フヤウナ意味ニ於キ
マシテ、今サウ必要トシナイト云フヤウナ
一部ノ點カラ致シマシテ、サウ云ッタヤウナ
考ヘ方ガ方々ニ蔓延シテ居ルト云フコトハ
甚ダ私共ト致シマシテハ遺憾ニ存ジテ居ル
次第デアリマス、金ニ對シマシテハ今後
モ少ク共現狀程度ノ生產ハ極力維持シテ行
カナケレバナラヌト云フ風ニ考ヘテ居リマ
シテ、來年度ニ於キマシテモ此ノ探鑛奬勵
金其ノ他ノ補助金等モ殆ド前年ニ近イ金額
ノ計上ヲ見テ居ル譯デアリマス、今後ノ見
透シカラ致シマシテハ何處迄モ此ノ現狀程
度ノ生產ノ維持ト云フコトニ付テ邁進シタ
イト、斯ウ考ヘテ居ル譯デアリマス、唯其
ノヤリ方ニ付キマシテ最近重點主義ト云フ
コトヲ執ッテ居ル譯デアリマス、從來ノヤウ
ニドンナ貧弱ナ山デモ、ドンナニ金ヲ掛ケ
テモ掘出サナケレバナラスト云フ建前ハ、
是ハ變更ヲ漸次加ヘツヽアルノデゴザイマ
ス、今後ハ專ラ重點主義ノ徹底ト云フヤウ
ナコトニ力ヲ盡サナケレバナラヌト考ヘテ
居ルノデアリマス、其ノコトハ別ニ金ガ要
ラナクナッタカラサウ云フコトニスルト
云フノデハナイノデアリマシテ、他ノ一般中
小企業ニ對シマスル整理統合ト云ッタヤウナ
考ヘ方ト同ジヤウニ、矢張リ資材ナリ、勞務
者ト云ッタヤウナモノガ非常ニ廻リ兼ネテ
參ッテ居リマスノデ、ドウシテモ徹底的ニ重
點主義ト云フモノヲ執リマシテ、能率ガ良
イ山ニ生產ノ增强ヲ圖ッテ貰フ、斯ウ云フ意
味合カラ致シマシテ、今後ハ有力ナ山ニ重
點ヲ置イテ增產ヲ圖ルト云フコトニナラザ
ルヲ得ナイト考ヘルノデアリマス、其ノ爲
ニ若干「コスト」ノ高イ製品ヲ買フト云ッタ
ヤウナ貧弱ナ鑛山等ノ中ニハ、整理ヲ加ヘテ
行カナケレバナラヌト云スヤウナモノモ出
テ來ヤシナイカト考へラレマス、其ノコト
ハ別ニ金ニ對スル將來ノ價値ガ無クナル爲
ニサウ云フコトヲスルノデハナイノデアリ
マシテ、全ク他ノ資材其ノ他ノ理由カラ致
シマシテノ重點主義、斯ウ云フコトデゴザ
イマス、御承知ダラウト存ジマスガ、一般
ニ鑛產物ニ付キマシテハ今直グ是ダケノモ
ノガ欲シイト云フコトデ、急激ニ其ノ大量
ノモノヲ要求サレマシテモ、ナカ〓〓直グ
出セナイヤウナ狀態ニアルノデアリマス、
石炭等ノ如キ比較的鑛脈等ノハッキリ致シ
テ居リマスモノニ付キマシテモ思ヒ切ッタ
增產ヲヤルト云フノニハ、ドウシテモ二、三
年ノ少クトモ年月ヲ要スル、色々ナ準備ヲ
シナケレバナラヌト云フヤウナ狀態ナノデ
アリマス、金等ニ於キマシテハ殊ニ色々ノ
準備ガ必要ナノデアリマシテ、是ハモウ御
承知ダラウト思ヒマス、今俄ニ一年、二年
ノ中ニ急激ニ是ダケノモノヲ出セト言ハレ
マシテモ、其ノ場合ニ追ヒ付カナイト云フ
ヤウナコトモアリマスノデ、是ハ是非相當
ノ有望ナ山ニ付キマシテハ、今後トモ其ノ
生產ノ維持增强ト云フコトニ矢張リ政府ト
シテ有ラユル方面カラ援助シテ行カナケレ
バナラヌト考ヘデ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=66
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067・松村眞一郎
○松村眞一郞君 私ハソレデ結構デゴザイ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=67
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068・舟橋清賢
○子爵舟橋〓賢君 チヨット速記ヲ止メテ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=68
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069・溝口直亮
○委員長(伯爵溝口直亮君) 速記ヲ止メテ
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=69
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070・溝口直亮
○委員長(伯爵溝口 直亮君)速記始メ
テ······日本銀行法案ニ付テ御質問ハ終ッタ
ト見テ宜シウゴザイマスカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=70
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071・溝口直亮
○委員長(伯爵溝口直亮君) ソレデハ只今
ヨリ討論ニ移リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=71
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072・松村眞一郎
○松村眞一郞君 私ハ質問致シマシタ所デ
御了解ヲ得タカト存ジマスルガ、此ノ度ノ
銀行法ハ一方ニ於テ貨幣法ヲ其ノ儘存置
シ、價格ノ單位ハ金ヲ以テ示シテ居ルト云
フ規定ハアルノデアリマスケレドモ、事實
上適用シナイガ如キ形ニ於テ取扱ハレテ居
ルノデアリマス、元ハ兌換銀行劵制度デア
リマシタカラ、此ノ點ハ非常ニ明瞭デアリマス
ケレドモ、今度ハ此ノ關係ハ非常ニ不明確
ニナルノデアリマス、且大臣ノ御答、政府
委員ノ御答辯ニ依リマシテモ、金準備評價法
ノ第一條ニ揭ゲテ居ル比率ハ、是ハ尊重シ
テ行クト云フコトヲ申シテ居ラレルノデア
リマス、此ノ規定ハ圓ト云フモノト金トノ
關係ヲ一ツノ物差トシテ示シテ居ルコトニ
ナルノデアリマス、物差ナクシテ價格ノ單
位ヲ論ズルト云フコトハ、私ハ當ヲ得ナイ
コトト考ヘマスカラ、第三十二條ノ末項ニ
但書ヲ附ケルト云フ修正意見ヲ提出スルノ
デアリマス、其ノ但書ハ「案、第三十二條、
第五項ニ左ノ但書ヲ加フ、但シ第二項第六
號ノ金地金(金貨ヲ含ム)ハ當分ノ內純金ノ
量目二百九十ミリグラムニ付一圓ノ割合ヲ
以テ評價スベシ」之ヲ但書トシテ附ケタイ
ト云フ意見ヲ申述ベル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=72
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073・溝口直亮
○委員長(伯爵溝口直亮君) 只今ノ松村委
員ノ修正案ノ御發議ハ贊成者ガゴザイマユヌ
カラ成立致シマセヌ、原案ニ付テ採決致シ
やっく、原案全部政府原案通リデ御差支ゴザ
イマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=73
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074・溝口直亮
○委員長(伯爵溝口直亮君) ソレデハ全會
一致可決致シマシタ、是ニテ本委員會ヲ終
リマス
午後三時三十九分散會
出席者左ノ如シ
委員長伯爵溝口直亮君
副委員長男爵東久世秀雄君
委員
公爵鷹司信輔君
侯爵嵯峨實勝君
侯爵蜂須賀正氏君
子爵曾我祐邦君
子爵加藤泰通君
子爵裏松友光君
子爵梅園篤彥君
子爵舟橋〓賢君
松村眞一郞君
後藤文夫君
小倉正恒君
男爵伊藤文吉君
男爵八代五郞造君
男爵倉富鈞君
竹下豐次君
土方久徵君
米山梅吉君
瀧川儀作君
岩田宙造君
秋田三一君
仲村〓榮君
國務大臣
大藏大臣賀屋興宣君
政府委員
大藏次官谷口恒二君
大藏省理財局長山住克已君
大藏省銀行局長山際正道君
大藏省會社部長田中豐君
大藏書記官櫛田光男君
同伊原隆君
預金部長官相田岩夫君
商工省鑛產局長津田廣君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007901036X00519420210&spkNum=74
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