1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案(追加)
裁判所構成法戰時特例案(政)
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昭和十七年一月二十六日(月曜日)午前十時十四分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=0
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001・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 只今ヨリ委員
會ヲ開會致シマス、先ヅ不動產登記法中改
正法律案、之ニ付キマシテ御質疑ガアリマ
スレバ御願ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=1
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002・岩田宙造
○岩田宙造君 先日チヨット伺ッタコトニ關
聯シテ居ルノデアリマスガ、十一條デ登記所
ガ家屋臺帳所管廳ニ通知スル場合ノ規定ガ
設ケテアリマスガ、其ノ場合ニ、建物ガ滅
失シテ其ノ登記ヲ抹消シタ場合ニハ通知ヲ
スル必要ガナイト云フ御說明ノ理由ト致シ
マシテ、其ノ場合ニハ滅失シタコトハ先ヅ
家屋臺帳所管廳ニ屆出テ、サウシテ其ノ滅
失ノ證明書ヲ家屋臺帳所管廳カラ取ッテ來
テ、サウシテ滅失ノ登記ヲスルノデアルカ
ラ、其ノ時ハ家屋臺帳所管廳ハ既ニ滅失ノ
事實ヲ知ッテ居ルノダカラ、登記所カラ通知
ヲスル必要ハナイノダト、斯ウ云フ御說明ニ
伺ッタノデアリマスガ、其ノ滅失ノ登記ヲス
ル時ニ、家屋臺帳所管廳ノ證明書ヲ添附シ
テ申請シナケレバナラヌト云フ規定ハ何ニ
設ケラレルト云フノデアリマシタカ、ソレ
ヲモウ一度伺ヒタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=2
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003・坂野千里
○政府委員(坂野千里君) 其ノ點ハ九十二
條デヤルノデアリマシテ、改正ノ九十二條
ニ依リマスト、「滅失、增減若クハ新築シタ
ル建坪竝ニ現在ノ建坪ヲ記載シ」ト斯ウア
リマシテ、此ノ申請ヲ致シマス時ニ、今度
出來マスノハ「建物ノ番號ノ變更」、其ノ後
ノ方ニ「家屋臺帳謄本ヲ添附シ」、斯ウ云フ
風ニアリマス、玆ニ家屋臺帳ヲ添附致シマ
スノデ、滅失シタト云フ家屋臺帳謄本ヲ添
附シテ申請スル、斯樣ナコトニ致シテ居リ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=3
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004・岩田宙造
○岩田宙造君 其ノ點ハ了解致シマシタガ、
サウ云フ理由デ此ノ滅失ノ場合ハ通知ヲ要
シナイト云フコトデゴザイマスルト云フト、
此ノ所有權保存ノ場合デゴザイマスネ、所
有權ノ保存登記ヲスル場合ニハ、此ノ法案
ノ百六條デ矢張リ家屋臺帳ノ謄本デ證明ヲ
シテ、サウシテ登記ヲスルコトニナッテ居リ
マスカラシテ、所有權保存ノ場合ハ尙更通
知ガ要ラナイヤウニ思フノデアリマスガ、
ソレハ如何デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=4
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005・坂野千里
○政府委員(坂野千里君) 其ノ點ハ御尋ノ
點モ考ヘマシテ、サウ云フ場合ニハ省令ニ
規定致シマシテ、一應滅失登記ヲシタ場合
モ通知スルコトニ致シマス、御說ノヤウニ
ソレハ省令ニ書クコトニ致シマス、チヨット
速記ヲ止メテ戴キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=5
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006・二荒芳徳
○委員長 (伯爵二荒芳德君)速記ヲ止メ
テ
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=6
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007・二荒芳徳
○委員長 (伯爵二荒芳德君)速記ヲ始メ
テ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=7
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008・坂野千里
○政府委員(坂野千里君) 只今岩田委員カ
ラ御尋ネニナリマシタ點ハ施行細則ニ規定
致シマシテ、滅失ノ登記ヲ登記所デ致シマ
シタ場合ニハ、家屋臺帳所管廳ニ其ノ旨ヲ
通知ズルコトニ規定致スコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=8
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009・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 不動產登記法
中改正法律案ニ付テ他ニ御質問ゴザイマセ
ヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=9
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010・山川端夫
○山川端夫君 イツデモ宜シウゴザイマス
ガ、民法中改正法律案ニ付テ一二點御尋ネ
シタイコトガアリマスガ、今デナクテモ宜
シウゴザイマス、イツデモ構ヒマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=10
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011・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 只今ドウゾ御
質疑ヲ御始メ下サイマシ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=11
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012・山川端夫
○山川端夫君 戶籍簿ノ改正デ前囘戶籍簿
ノ訂正等ニ付テ御質問致シマシタノデス
ガ、其ノ趣意ハ、戶籍簿ニ誤リガアッテモ裁
判所ニ行ケバ是ハハッキリ分ルコトデアリマ
スカラ、何モ問題ハナイノデアリマスガ、
併シ一般ノ者ハドウモ戶籍簿ニ誤リガアッ
タリ致シマスト、ソレヲ基ニシテ、或ハソ
レヲ誤解シテ色々ナ相續ト云フヤウナコト
ニ紛糾ヲ起スト云フコトガアルヤウナ危險
モアリマスカラ、此ノ點其ノ前ノ私生子ノ問
題ノ訂正モ、此ノ前ノ御答辯デハ機會アル
每ニ訂正スルト云フコトデアリマスケレド
モ、出來得レバ斯ウ云フノハ全般的ニ此ノ
法律ノ改正ト同時ニ御訂正ヲ願ヒタイト思
ヒマスケレドモ、是ハ大變實行困難デアリ
マスカラ、其ノ點ハ姑ク措キマシテ、少ク
トモ謄本、抄本ヲ作ルト云フヤウナ機會、
其ノ他適當ナ機會ニハ必ズ之ヲ職權ヲ以テ
訂正スルヤウニ司法省ノ方カラ戶籍ノ方ニ
御訓令アルコトガ出來ルカドウカ、サウ云
フ御考ガアルカドウカト云フコトヲ先ヅ伺
ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=12
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013・大森洪太
○政府委員(大森洪太君) 御趣旨ノヤウニ
訓令ヲ發シマシテ取扱ヲ一定スル用意ヲ致
シテ居リマス、左樣御了承願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=13
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014・山川端夫
○山川端夫君 モウ一點ハ戶籍ノ訂正ガ
大體今ノヤウナ場合デモドウカシマスト戶
籍吏ノ方ニ誤リガナイトモ限ラナイノデア
リマス、先程モ申シマシタヤウナ關係モア
リマスカラ、是ハ戶籍簿ノ取扱ニ付テハ
嚴重ニ御訓令ガアルトハ存ジマスケレドモ、
特ニ今囘ノヤウニ特別ノ訂正ヲスルト云フ
ヤウナ場合ニハ、總テ誤リガナイヤウニ更
ニ司法省カラ御訓令ガ願ヒタイト思フノデ
アリマス、戶籍ノ方デ誤記シテモ一般ノモ
ノヲ訂正スル時ハ非常ニ面倒ナ手續ヲ取ラ
ナケレバ訂正出來ナイト云フヤウナ、ナカ
ナカ是ハ面倒ナモノデアリマスカラ、誤リ
ガナイヤウニ特ニ注意スルト云フヤウナ御
訓令ヲ願ヒタイト思ヒマスガ、ソレニ付テ
ノ御意見ヲ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=14
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015・大森洪太
○政府委員(大森洪太君) 全ク御指摘ノ通
リニ取計ラヒタイト存ジテ居ルノデアリマ
ス、全國多數ニ亙ル戶籍吏デアリマスカラ、
相當ノ誤リモ實ハアルノデアリマシテ、常
ニ恐縮ニ存ジテ居ルノデアリマス、左樣ナ
場合ハ其ノ都度嚴戒ヲ加ヘテ居リマスケレ
ドモ、斯樣ナ改正ガアリマシタ際、之ヲ機
會ニシテ一般的ニ强キ訓戒ヲ與ヘタイト思
フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=15
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016・山川端夫
○山川端夫君 私滿足致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=16
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017・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 次ニ戰時民事
特別法案ニ付キマシテ政府委員ノ御說明ヲ
承リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=17
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018・大森洪太
○政府委員(大森洪太君) 司法大臣ハ只今
本會議ニ列席致シテ居リマスルカラ、御許
ヲ受ケマシテ僣越ナガラ私カラ適當ナ御說
明ヲ申上ゲタイト存ズルノデアリマス、只
今議題ニナリマシタ戰時民事特別法案ニ付
キマシテ提案ノ理由ヲ補足シテ御說明申上
ゲマス、此ノ法案ハ戰時ニ於ケル民事關係
ノ紛爭ノ處理ニ資セムトスルモノデアリマ
ス、御承知ノヤウニ戰爭ノ私法關係ニ及ボス
影響ハ千態萬樣デアリマシテ、之ニ適應ス
ル個々ノ規定ヲ設ケルコトニ致シマスルト、
實ニ複雜多岐ニ亙リマシテ、實ハ如何ナル
規定ヲ致シマシテモ、其ノ全部ヲ蔽フコトハ
殆ド不可能ニ近イト申シテモ過言デハナイ
ト考ヘラレマスルカラ、寧ロ條理ニ依ル互
讓妥協ヲ基調ト致シマスル調停制度ヲ擴張
致シマシテ、戰時下隣保相助ノ精神ノ下ニ
圓滿ニ各個ノ事案ヲ敏速妥當ニ解決スル方
ガ適當デアルト存ジマシテ、大體其ノ方針
ニ則リマシテ、之ニ加ヘテ民事實體法及手續
法ニ臨時應急ノ若干ノ特例ヲ設ケヨウトス
ルモノデアリマス、先ヅ第一章ノ通則デア
リマスルガ、是ハ實體法、手續法ニ共通ス
ルモノデアリマシテ、本法案ガ戰時ニ限リ
民事關係ニ付キ特例ヲ設クルノ趣旨ヲ明カ
ニ致シマスルト共ニ、戰爭ノ影響ヲ受ケマ
シテ所定期間內ニ定メラレタ行爲ヲ實行ス
ルコトガ出來ナイ場合、其ノ期間ヲ延バス
コトニ致シマシテ、尙法律上、裁判所ガ新
聞紙ニ公〓スベキモノト定メラレテアリマ
ス事項ハ甚ダ多ク、其ノ量モ極メテ澤山ニ
ナッテ居リマス、處ガ斯樣ナ狀態下デアリ
マスルカラ、新聞紙ニ公〓揭載ノ紙面ヲ得
ルコトガ殆ド不可能ニナッテ參リマシタカ
ラ、戰時中ニ限リ裁判所ハ官報ダケニ公告
ヲスルト云フコトニシタイト存ズルノデア
リマス、第二章ハ民事訴訟ニ關スル特例デ
アリマシテ、其ノ一ハ、銃後國民ノ戰時下
ニ於ケル勤務ノ關係、交通機關ノ狀態等ニ
鑑。ミマシテ、一般訴訟關係人ニ最モ便宜ノ
地ニ於テ裁判ヲ爲シ得ル爲ニ土地ノ管轄ニ
關スル規定ヲ緩和致シマシテ、又證人、鑑
定人ヲシテ裁判所ニ出頭セシムルコトナク
書面ノ提出ヲ以テ之ニ代ヘルノ途ヲ開カウ
ト致シマシタ、其ノ二ハ、訴訟ノ圓滑ナル進
行ヲ圖リマスル爲ニ裁判所ハ攻擊又ハ防禦ノ
方法ヲ提出スベキ期間ヲ定メ得ルモノト致
シマシテ、其ノ期間內ニ提出シナカッタモノハ裁
判所ノ許可ノアッタ場合ダケニ主張ガ出來ル
コトニシタイト思フノデアリマス、又電話
ヤ葉書等、簡單ナ方法デ以テ期日ノ呼出シ
ヲ爲シ得ルノ途ヲ開カウト致シマス、第三
ハ、訴訟書類ニハ機密ニ亙ル事項モ現レテ參
ルコトガアリマスルカラ、防諜、其ノ他公
益上ノ必要ノアリマスル場合ニ於テハ訴訟
書類ノ謄寫等ヲ制限シ得ルモノトスルコト、
其ノ四ハ誠實眞面目ナ債務者デアリナガ
ラ戰爭ノ影響ニ依リマシテ債務ヲ履行スル
コトガ出來ナイヤウナ場合ニハ債權者ノ經
濟ニ甚ダシイ影響ヲ與ヘナイコトノ明カナ
時ニ限リマシテ强制執行ヲ緩和シ得ルモノ
トスルコト、其ノ五ハ、裁判所構成法戰時
特例ニ依ル控訴審省略ニ伴フ手續規定ヲ設
ケルコト等ニ付テ其ノ趣旨ヲ明カニシヨウト
思フモノデアリマス、第三章ハ、破產及
和議ニ關スルモノデアリマシテ、强制執行
ニ付テ述ベマシタ所ト同樣ノ事情ノアリマ
スル場合ニハ破產宣告ヲ猶豫スルコトガ出
來ルヤウニスルコト、ソレカラ和議條件ハ
御承知ノヤウニ平等デナケレバナラナイコ
トニ現今ハナッテ居リマシテ、是ニ反スルモ
ノハ認メラレナイヤウニナッテ居リマスル
ケレドモ、ソレデハ極メテ不自由ナ場合
ガアルノデアリマシテ、債權者間ニ多少ノ
差等ヲ設ケマシテモ衡平ヲ害シナイヤウナ
場合ニハ之ヲ許シテモ差支ガナイト云フヤ
ウニシタイト思フノデアリマス、卽チ成ル
ベク破產手續ニ依ラナイデ解決ガ出來ルヤ
ウニシタイト云フ趣旨ニ外ナラナイノデア
リマス、第四章ニハ調停ニ關スル規定ヲ揭
ゲタノデアリマシテ現在行ハレテ居リマス
ル六種ノ調停法規ニ規定ノアリマスルモノ
ハ勿論ソレ〓〓其ノ規定ニ依ルノデアリマ
スルガ、其ノ以外ノ民事ノ紛爭ニ付キマシ
テモ冒頭ニ申述ベマシタルヤウナ理由カラ
ラ廣ク調停ニ付シ得ルモノト致シマシタ
ケレドモ、性質上、調停ニ適シナイ事業ハ
自ラ除外セラレルモノデアリマスルコト
ハ申ス迄モゴザイマセヌ、此ノ調停ノ手續
ハ大體借地借家調停法ト同樣ニナルノデア
リマスルガ、多少異リマスル點ハ、調停裁
判所ノ管轄ニ相當ノ餘裕ヲ設ケマシテ、場
合ニ依リマシテハ受訴裁判所ガ自ラ調停ス
ルコトモ出來ルモノト致シマシタ、又調停
ハ裁判所内一定ノ場所デ之ヲ行フコトヲ
原則トスルノデアリマスガ、必要ニ應ジマ
シテ所謂現地調停ヲ爲シ得ルモノト致シマ
シタ、又債權ノ存在其ノ他基本ノ關係ニ付
テ爭ガナク、些細ナ點ニ付テ話ガ纏マラナ
イト云ッタヤウナ場合ニ、金錢債務、臨時調
停法第七條ニ於ケルト同業ニ調停ニ代ル裁
判ヲ爲シ得ルコトニ致シマシタ、ソレカラ
辯護士ガ代理人トシテ出頭スル場合ニハ裁
判所ノ許可ヲ必要トシナイコトト致シマシ
タ、是等ガ變ッタ點デアリマシテ、是等ノ點
ハ他ノ調停モ之ニ步調ヲ合セルヤウニ致シ
タノデアリマス、此ノ法案ノ大要ハ以上ノ
通リデアリマシテ、現時ノ體制下、卽チ此
ノ大東亞戰爭下ニ於テ痛切ノ必要ヲ感ズル
事項ニ付テ應急臨時ノ特例ヲ設ケヨウトスル
モノデアリマス、何卒十分御審議ノ上ニ御
協賛ヲ賜ハリマスルコトヲ偏ニ御願ヒスル次
第デアリマス、尙逐條ニ付キマシテハ御指
圖ニ依リマシテ他ノ政府委員ヨリ御說明申
ゲタ方ガ御便宜カト存ズルノデアリマスル
ガ、如何致シマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=18
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019・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 他ノ政府委員
カラ逐條ニ付テノ說明ヲ伺ヒタイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=19
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020・坂野千里
○政府委員(坂野千里君) ソレデハ私カラ
逐條ニ付テ御說明申上ゲマス、第一章ガ通
則デアリマス、是ハ實體規定ト手續規定ノ
雙方ニ亙ルノデアリマス、第一章ノ第一條
ニ「戰時ニ於ケル民事ニ關スル特例ハ本法ノ
定ムル所ニ依ル」、是ハ戰時ト一般的ニ書イ
テゴザイマスガ、本案ノ趣旨ハ大東亞戰爭
ニ限ッテ此ノ特例ヲ設ケル、他ハ普通ノ他ノ
規定ガ及ビマスガ、特別ナ規定ヲ之ニ設ケ
ル、斯樣ナ考デゴザイマス、第二條ガ、是
ハ只今大體御說明ガアッタ譯デアリマスガ、
要スルニ只今ノ、現在アリマスル民法其ノ
他ノ規定、特ニ民法百六十一條トカ手形法
五十四條ニ規定ガアリマスモノハ、是ハ其
ノ規定ニ依ッテ働イテ行キマス、サウ云フ規
定ノ無イモノニ付キマシテ、戰爭ニ起因ス
ル避クベカラザル障碍ニ依ッテ期間ヲ守ル
コトガ出來ナカッタ時ニ其ノ期間ヲ伸長ス
ル、斯樣ニ考ヘテ居ル譯デアリマス、此ノ期
間ハ所謂法定期間、裁定期間及約定期間ヲ
含ム意味デアリマス、ソレデ此ノ伸長サ
レマシタ期間ハ障碍ノ止ンダ時カラ一週間
ノ經過ニ依ッテ滿了スル、斯樣ニ致シタ譯
デアリマス、次ニ第三條デアリマスガ、是
ハ非常ニ澤山ゴザイマシテ、民法九十七條
ノ二以下色々ナ規定ガ澤山アリマシテ、公
告ヲ官報及新聞紙ヲ以テ裁判所ハ爲スト、
斯ウ云フ規定ヲ設ケラレテアルノデアリマ
スガ、只今申述ベラレマシタヤウナ事情デ、
新聞紙ノ公〓ガ非常ニ困難ニナッテ居リマ
スノデ、戰時中官報ダケデ公〓ヲ致シテ行
カウ、斯樣ナ規定デゴザイマス、是迄ガ申
上ゲタヤウニ實體規定ニモ關係ガアル所デ、
ソレカラ各章ニ亙ッテ手續規定ニ付テ規定
ヲ置イタ迄デアリマス、第二章ガ民事訴訟
デアリマス、第四條ガ管轄ノ點デアリマス
ガ、是ハ管轄ノ規定ヲ、大體土地管轄ノ規
定デアリマスガ、土地管轄ノ規定ヲ緩和シ
テ自由ニシテ行カウト云フ考へ方デゴザイ
やっ、關係條文ハ民事訴訟法三十條及三十
一條ニ關係致シマス、專屬管轄ノ定アルモ
ノニ付テハ是ハ矢張リ適用シナイ、斯ウ云
フ立場ヲ執ッタ譯デアリマス、ソレカラ次ガ
第五條デアリマス、是ハ民事訴訟法ノ百三
十二條ニ關係致ス譯デアリマスガ、民事訴
訟法百三十二條ニ依リマスト云フト、裁判
所ハ口頭辯論ノ分離ヲ命ズルコトガ出來ル
ヤウニナッテ居ルノデアリマスガ、是ハ必ズ
シモ分離シナケレバナラヌ譯ヂャナイノデ
アリマス、處ガ今度裁判所構成法戰時特例
第三條ニ依リマスト、或事件ニ付キマシテ
控訴ヲ許サナイ、一審ト直グソレニ對シテ
上告ヲスルト云フ規定ヲ置イタ譯デアリマ
ス、左樣ニ致シマスト云フト、或訟ニ付テ
直グ飛ビ上告ヲスル請求ト、普通ノ控訴審
ヲ經テ上〓ヲスル事件トガ合ハシテ訴ヲ提
起サレル場合モ考ヘラレルノデアリマシテ、
サウ云フ場合ニハ手續ヲ別ニスベキガ妥當
デアルト云フコトカラ、此ノ場合ニハ必
ズ分離ヲシナケレバナラヌト斯ウ云フ規定
ヲ置イタ譯デアリマシテ、民事訴訟法百三
十二條ノ一部ノ例外、斯樣ニナル譯デアリ
マス、次ガ第六條デアリマスガ、是ハ民事
訴訟法百三十七條、百三十九條ニ關係致ス
譯デアリマス、民事訴訟法百三十七條ニ依
リマスト、原告トシテ主張スルコト、或ハ
提出スル證據又被〓トシテ答辯ス(ルコト、
或ハ其ノ主張ノ爲ニ出ス證據ナント云フモ
ノハ、口頭辯論ノ終結ニ至ル迄之ガ提出ヲス
ルコトガ出來ルト斯樣ニナッテ居リマシテ、
百三十九條デ其ノ提出ガ遲レタ場合ニ、故
意又ハ重大ナル過失ニ依ッテ時期ニ遲レテ
提出シタト云フコトデアルナラバ、サウシ
テソレガ爲ニ訴訟ノ完結ヲ遲延セシムルト
認メラレル時ハ、裁判所ハ申立或ハ職權ニ
依ッテ却下ノ決定ガ出來ルト斯樣ニアル譯
デアリマスガ、此ノ二ツノ働キニ依リマシ
テ、遲レタ攻撃又ハ防禦ノ方法ハ却下サレ
ルコトニハナルノデハアリマスケレドモ、
民事訴訟法百三十九條ハ故意又ハ重大ナル
過失ト云フヤウナコト、其ノ他ノ要件ガ相
當嚴重デアリマシテ、實際ノ適用ニハ躊躇
サレテ居ル譯ナンデアリマス、ソレガ爲ニ
矢張リ提出ガ遲レテ參ルコトガ相當アルヤ
ウデゴザイマシテ、此ノ戰時下ニ於テ成ル
タケ爭ヒヲ敏速ニ完結シテ行キタイト斯ウ
云フ立場カラ申シマスト寧ロ之ニ期間ヲ
定メテ置イテ、ソシテ其ノ期間ヲ遲レタモ
ノハ却下スル、併シナガラ遲レルト云フコ
トニ付テモ相當ノ理由ガアル場合モアル譯
デアリマスカラ、サウ云フ場合ニハ裁判所
ノ許可ヲ受ケテ又主張スルト斯ウ云フ立テ
方ヲ致シタ譯デアリマス、此ノ點ガ第六條
ノ三項デ、第二審ニ行ツテモ働ク、斯ウ云
フ考ヘ方ヲ致シタ譯デアリマス、次ガ第七
條デアリマスガ、是ハ民事訴訟法百五十一
條ニ關係ズルモノデアリマシテ、民事訴訟
法第百五十一條ニ依リ。マスト、色々ナ記錄
ノ謄寫又ハ謄本若クハ抄本ノ交付モ相當自
由ニナッテ居ル譯デアリマスガ、機密ノ保持
其ノ他公益上ノ理由ニ依リマシテ之ヲ寫シ
タ謄本トカ或ハ抄本ノ交付ガ適當デナイ、
サウ云フ場合モ相當アリマスルノデ、現ニ
色々ナ實例ガ出テ居ッタ譯デアリマスガ、斯
ウ云フ場合ニハ裁判所ハ之ガ交付ヲ禁止ス
ルコトガ出來ルト斯樣ニ致シタ譯デアリマ
スガ、次ハ第八條、是ハ民事訴訟法百五十
四條ニ依リマスト云フト、期日ニ於ケル呼
出ハ呼出狀ヲ送達シテ之ヲ爲ス、斯ウ云フ
ヤウニ致シマシテ送達ノ手續ニ依ッテ、此
ノ期日ノ呼出ヲ致シテ居ルノデアリマス
ガ、送達ハ御承知ノヤウニ相當複雜ナ手續
ヲ致ス譯デアリマシテ、此ノ際若シ簡單
ニ電話或ハ葉書等デ呼出ガ出來ルト云フ
コトガ非常ニ望マシイコトト考ヘル唯併
シナガラ斯樣ナ簡易ノ方法デヤリマシタ
コトニ依ッテ或ハ送達ガ十分デナカッタト
云フヤウナコトモ想像致サレマスノデ、左
樣ナ際ニ出頭セザル當事者、證人又ハ鑑定
人ニ對シテ不利益ヲ歸スルト云フコトハ妥
當デナイ、斯ウ云フ所カラ後段ニ於テ、其
ノ場合ニ於テハ法律上ノ制裁其ノ期日ノ懈
怠ニ依ル不利益ヲ歸スルコトガ出來ナイ、
斯樣ナ規定ヲ致シタ譯デアリマス、第九條、
是ハ我ガ民事訴訟法ニハ規定ハアリマセ
又、初メテ考ヘタ規定デアリマスガ、實際
只今「ドイツ」等ニ於テモ考ヘラレテ居ルコ
トデアリマス)證人、鑑定人ニ呼出ヲ受ケ
マシテ、是ハ必ズ出頭シナケレバナラヌ義
務ガアッテ、サウシテ訊問ニ答ヘナケレバナ
ラヌ譯デアリマスガ、其ノ呼出サレタ證人、
鑑定人ノ人ガ非常ニ重要ナ職場ヲ持ッテ居
ラレテ、其ノ職場ヲ離レルト云フコトハ色
色ナ方面ニ差障リガアル又其ノ人ハ相當
ナ立派ナ人デ、書面等ニ書カレテモ間違ガ
ナイト云フコトガ考ヘラレル場合ニハ、出
テ裁判所ノ訊問ニ答ヘルコトニ代ヘテ書面
ヲ出シテ、ソレニ依ッテ、裁判所ガ事實ノ判
斷ヲ致シテ、サウシテ證人、鑑定人ノ訊問
ヲシナイ、左樣ナ手續ニ致シタ譯デアリマ
ス、勿論若シ其ノ場合ニ出テ參ッタ書面ニ
依ッテ十分ニ心證ヲ得ラレヌ場合ニハ又證
人及鑑定人トシテ訊問スルコトモアル譯デ
アリマシテ、ソレハシテ宜イ譯デアリマス
ガ、其ノ出サレタ書面ニ依ッテ心證ヲ得マス
ヤウナ場合ニ於テハ、サウ云フ重要ナ位置
ニ居ル人ガ特ニ裁判所ニ出頭シテ訊問ニ答
ヘナケレバナラヌト云フコトヲ省略出來
ル、斯ウ云フ考へ方デアリマス、第十條、
是ハ民事訴訟法ノ第三百五十九條デアリマ
スガ、是ハ區裁判所ノ判決ガ簡略ニ出來ル
コトニ致シテアルノデアリマス、ガ、此ノ度
裁判所構成法戰時特例ノ第三條ノ第一項ニ
依リマスト云フト、區裁判所ノ判決以後控
訴ヲ許サズ、直ニ上〓ガ出來ル場合ガアル
譯デアリマス、左樣ナ場合ニ於キマシテ簡
略ナ判決ヲ區裁判所デ致シテ居ルト云フヤ
ウナ場合ニ於テハ、上告審ノ判斷ニ非常ニ
障碍ヲ與ヘル譯デアリマスカラシテ、サウ
シテ飛ビ上〓ヲ致スヤウナ判決ニ付テハ此
ノ簡易ナ判決ヲ許サナイ、認メナイ、斯樣
ニ致シタ譯デアリマス、次ニ第十一條デゴ
ザイマスガ、是ハ强制執行法ニ關係ガアル
譯デアリマシテ、大體ノ考ヘ方ハ民事訴訟
法第五百七十條ノ二ニ旣ニ物ノ差押ニ付テ
考ヘテ居リマス、其ノ考ヘ方ヲ取リマシテ
戰爭ノ影響ニ因ッテ債務ヲ履行スルコトガ
困難ナル場合ニ於キマシテ、債務者ガ誠實
デアリ、債務者ガ債務履行ノ意思ガアリ、
又債權者ノ方カラ見テモ其ノ經濟ニ著シク
影響ヲ及ボサナイト云フヤウナ事由ガアル
トキハ、裁判所ハ判斷ニ依リマシテ債務者
ノ申出ヲ俟ッテ擔保ヲ供セシメ又ハ供セシ
メズシテ强制執行ヲ停止シタリ、或ハ旣ニ
ヤッタ强制執行ヲ取消スコトガ出來ル、斯樣
ニ致シテ此ノ戰時ノ戰爭ノ影響ニ因ッテノ
不合理ヲ成ルベク緩和シテ行カウ、斯樣ニ
考ヘタ譯デアリマス、次ガ第三章デアリマ
シデ破產、和議デアリマス、第十二條ハ大
體只今强制執行ノ所デ申上ゲマシタ趣旨ヲ
破產ニ及ボシテ、破產ノ宣告ヲ猶豫シヨウ、
斯ウ云フ考ヘ方デアリマスガ、此ノ考ヘ方
ノ一部ハ旣ニ震災當時ニ勅令ニ依リマシテ
公布サレテ居ッタノデアリマシテ、其ノ一
部ヲ取入レ、サウシテ又戰爭ノ影響ノ方ニ
結ビ付ケマシテ斯樣ナ規定ヲ設ケタ次第デ
アリマス、次ニ第十三條ハ破產法ノ三百四
條、三百十條ニ關係アル譯デアリマシテ、
要スルニ和議ノ條件ガ平等デナケレバナラ
ヌト云フコトガ强ク主張サレマスルト云フ
ト、却ッテ衡平ヲ害スルヤウナコトガアリハ
シナイカ、色々ノ事情ヲ斟酌シテ少シデモ
差ガアル、一萬圓ノ債權者ト百圓ノ債權者
トノ間ニ少シノ差ガアッテモソレハ衡平ヲ
害シナイト云フコトガ多々考ヘラレルノデ
ハナイカ、サウ云フヤウナ場合ニハ、和議
ヲ許シテ破產ニ至ラズニ濟マスト云フコ
トガ望マシイノデハナイカ、斯ウ云フコ
トデアリマシテ、此ノ考ヘ方ノ基調ハ、
新商法ノ四百四十八條デ、整理ノ場合ニ
斯ウ云フ考ガ出テ居ルノデアリマシテ、
此ノ考ヲ復玆ニ强制和議ノ方ニ現シテ來タ
譯デアリマス、ソレガ和議法ニ依ル和議ニ
モ矢張リ準用スル、斯ウ云フノガ第十三條
デアリマス、第四章ハ調停デアリマスガ、
此ノ調停ニ依リマスルト云フト、サッキ說
明ガアリマシタヤウニ、今迄アリマス調
停ハ其ノ儘其ノ規定ニ依ッテ調停ヲスル、
ソレ以外ノモノニ付テ調停ガ出來ルト云フ
餘地ヲ開イタ譯デアルノデアリマス、デ十
四條ハ此ノ意味ヲ明カニ致シマシテ、ソレ
ニ必ズシモ區裁判所、地方裁判所ト限定ヲ
致シマセズニ、當事者ノ合意ニ依ッテモ地方
裁判所ニ調停ノ申立ガ出來ルコトニ致シマ
シタ、十五條ハ是モ非常ニ管轄ヲ緩和致
シマシテ、色々ナ處ニ依ッテ調停ノ申立ガ出
來ル、又裁判所ハ自ラ土地ノ管轄權ヲ持ッテ
居ラナイ場合デモ調停スルコトモ出來ル、
斯樣ニ致シタ譯デアリマシテ、是ハ旣ニ人
事調停ニ此ノ觀念ガ入ッテ居ル譯デアリマ
ス、十六條ハ是ハ今ノ所デハ事件ガ其ノ調
停ニ適當デアルト云フコトヲ裁判所ガ認メ
マシタ場合ニハ、ソレヲ調停ニ付スル決定
ヲ致シマスルト云フト管轄調停裁判所ノ方ニ
廻ッテ居ル譯デアリマスガ、モウ大體當事者
間ノ事情ガ熟シテ居ルト云フ場合ニ、其ノ
調停裁判所ニ廻サズニ其ノ裁判所ガ調停ヲ
ヤルト云フコトガ却ッテ妥當ナ結果ニ導ク
ト云フコトガ非常ニ考ヘラレルノデアリマ
シテ、サウ云フ場合ニハ自ラ調停ガ出來ル、
サウ云フ時ニ地方裁判所デアリマスナラバ、
主任判事ヲ調停主任ニ指定シテ、サウシテ
調停ガ出來ル、斯ウ云フ考ヘ方ヲ致シタ譯
デアリマス、十七條ハサッキノ說明ガアリマ
シテ大體御了承ヲ願ッタコトト思ヒマスノデ
省略致シマス、十八條デアリマスガ、是ハ
大體ニ於テ調停ハ他ヲ全部準用スル、斯樣
ニ致シタ譯デアリマスガ、準用ノ條文ハド
ウ云フ意味デアルカト云フコトヲ大體申上
ゲテ置キマス、借地借家調停法第二條ハ申
立ハ爭議ノ實情ヲ明カニシテナスベキコト、
斯樣ナ規定デアリマス、四條ノ二ハ受訴裁
判所ヲシテ職權ニ依ッテ調停ニ付スルコトガ
出來ル、斯ウ云フコトデアリマス、六條ハ期
日ノ指定、當事者ノ呼出シ、利害關係者ノ
參加等ノ規定デアリマス、八條ハ調停手
續非公開主義ヲ明カニシタモノデアリマシ
テ、九條ハ費用ノ豫納ニ關スルモノデアリ
マス、十條ハ申述ト陳述ハ書面又ハ口頭ニ
依ッテ爲シ得ル、十一條ハ調停調書ノ作製ニ關
スルモノデアリマシテ、十二條ハ調停ノ效
カ、和解ト同一ノ效力ガアル、十三條ハ調
停前ノ必要ナル處分ニ關スルモノデアリマ
シテ、十四條ハ調停委員會ヲ開ク場合デア
リマス、十五條ハ委員會ノ組織、十六條ハ
調停主任ノ指定ト、調停委員ノ指定ニ關ス
ルモノ、十七條ガ調停補助者ニ關スルコト、
十八條ガ委員及補助者ノ旅費、日當、止宿
料ニ關スルモノデアリマス、十九條ガ調停
主任ノ手續指揮權、二十條ガ委員會ノ議決
方法、二十一條ガ評議ノ祕密主義、斯ウ云
フ規定デアリマス、二十二條ガ期日ノ指定
ニ關スル委員會ノ權限、二十三條ガ證據調
等ニ關スル委員會ノ權限デアリマス、ソレ
カラ三十六條ガ裁判所ノ調停認否ノ決定デ
アリマス、二十七條ガ不認可決定ヲ爲シ得
ル場合ノ制限、三十八條ガ認可決定ト調停
ノ效力、二十九條ガ調停申立ノ手數料、三
十條ガ記錄謄寫ニ關スルコト、三十一條ガ
旅費、手數料ノ額ハ勅令ニ依ルト、斯ウ云
フヤウニ規定シタ譯デアリマス、三十二條
ガ出頭ノ當事者ニ對スル制裁、三十二條ノ
第一項デアリマス、二項ノ方ハ最早ヤ非訟
事件手續法ガ改正ニナリマシテ其ノ方デ賄
ヘルヤウニナリマシテ一一項ハ規定致シテナ
イ譯デアリマス、是ハ借地借家調停法ノ準
用デアリマス、金錢債務臨時調停法ノ準用
ハ第五條ニ不當ノ申立ハ却下スル、ソレカ
ラ委員會ガ不當ノ事由アリト認メル時ニ調
停ヲ爲サザルコトガ出來ルト云フ規定デア
リマス、六條ノ方ハ訴訟手續ノ中止、强制
執行ヤ競賣ノ執行ノ停止等ニ關スルモノデ
アリマス、七條ガ所謂裁判ニ依ル强制調停
デアリマス、是ガマア大體今度之ヲ準
用致シテ來ル譯デアリマスガ、要スル
ニ調停ガ出來上ラナカッタ場合ニ其ノコト
ヲ色々ノ方面カラ考へマスト云フト、大體
ノ基本的ノコトハ皆決ッテ居ルノデアル
ガ、或ハ利息トカ、期限トカ、サウ云フヤ
ウナチヨットシタ所デ調停ガ出來ナイ、サ
ウ云フ場合ニハ裁判所ハ雙方ノ利益ヲ公平
ニ考へ、資力其ノ他色々ノ事情ヲ斟酌致シ
マシテ調停ニ代ル裁判ガ出來ル、斯ウ云フ
規定デアリマシテ金錢債務臨時調停
ニ依ル此ノ調停ニ準用シテ來タ譯デアリ
マス、其ノ金錢債務臨時調停法ニ準用致シ
タ八條ハ其ノ裁判ニ對シテ非訟事件手續
法デヤルト云フ規定デアリマスシ、第九條
ハ其ノ裁判ニ對スル抗〓ノ方法ヲ規定シタ
譯デアリマス、ソレカラ第十條ハ其ノ裁判
ガドウ云フ效力ヲ有スルカ、裁判上ノ和解
ト同一ノ效力ヲ有スル、斯樣ナ規定ヲ致シ
タ譯デアリマス、次ニ準用サレテ居リマス
人事調停法六條及十條、是ハ辯護士ガ代人
トシテ出頭スル時ニ裁判所ノ許可ガ要ラヌ
ト云フ規定デアリマシテ、之ヲ特ニ準用シ
テ來タ譯デアリマス、是デ今度ノ調停ノ大
體ノ組立ガ明確ニナッタ譯デアリマス、次ニ
十九條デアリマスガ、是ハ今度ハ外ノ只今
ノ調停外ノ現ニアリマスル調停ニ付キマシ
テ、ドウ云フヤウニソレヲ調整シテ行クカ
ト云フコトカラシテ、只今申述ベマシタ所、
謂受訴裁判所デ自ラ調停ガ出來ルト云フ場
合ト、調停ガ必要デアル時ニ適當ノ場所デ
出來ルト云フ規定ヲ之ヲ他ノ法律ニ依リマ
ス調停ニモ準用シテ行ク譯デアリマス、ソ
レガ第一項デアリマシテ、第二項ハサッキ
申シマシタヤウニ、金錢債務臨時調停法ノ
所謂强制調停ト云フ言葉デ現シテ居リマス
ガ、調停ニ代ル裁判ヲスル規定ヲ借地借家
調停法、商事調停法ノ調停ニ準用シテ行ク
ノデアリマスガ、併シナガラ人事調停ニハ
準用致シマセヌ、是ハ要スルニ性質上人事
調停ニ付テハ强制調停ハ致スベキモノデハ
ナイ、斯樣ナ考ヘ方デアリマシテ、此ノ點
ハ準用致サズニ、人事調停ニ付キマシテハ、
今現ニアルヤウニ、强制調停ハ致サズニ何
處迄モ當事者間ノ合議ニ俟ツ、斯ウ云フ考
ヘ方ヲ致シタ譯デアリマス、ソレカラ第三
項ハ只今申シマシタ辯護士ガ當事者代人ト
シテ出頭スル時、許可ハ要ラヌト云フ規定
デアリマシテ、此ノ規定ヲ借地借家調停法、
小作調停法、商事調停法等ト人事調停法ヲ
大體調子ヲ合セテ行ク、斯ウ云フヤウニ致
シタ譯デアリマス、是ガ大體ノ戰時民事調
停ノ規定デアリマス、附則ト致シマシテ、
「本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム」、
是ハ若シ御協贊ヲ得マシタ曉ニ於キマシテ
ハ成ルタケ早イ時ニ於キマシテ、是ハ施
行致シテ行キタイト思ッテ居リマスノデノ
期日ハイツト云フヤウニハ考ヘテ居リマセヌ
ガ、成ルタケ早ク施行致シテ行キタイ、斯
樣ニ考ヘテ居リマス、第二項ノ「第五條及第
十條ノ規定ハ本法施行前裁判所ノ受理シタル
訴訟ニ付テハ之ヲ適用セズ」、是ハ裁判所構
成法ノ特例ノ規定ガアリマスノデ、ソレト
調子ヲ合セタノデアリマシテ、裁判所構成
法ノ趣旨ト同ジデアルト御諒察願ヒタイト
存ジマス、ソレカラ「戰時終了ノ際ニ於テ
必要ナル經過規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム」、
是ハ先程申シマシタヤウニ、此ノ戰時民事特
別法ハ大東亞戰爭ニ限ッテヤル、斯樣ニ致
シテ行キタイト思ヒマスノデ、戰爭ガ終了
致シマシタ場合ニハ通常ノ規定ニ乘移ッテ
參リタイト云フ考ヲ持ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=20
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021・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) チヨット御報
告ヲ致シマス、本會議ニ於キマシテ、裁判
所構成法戰時特例案ハ本委員會ニ併託ニナ
リマシタ、次ニ御諮リヲ致シマスガ、司法
大臣ガ御見エニナリマシタノデ、御異議ガ
ナケレバ戰時刑事特別法案ノ御說明ヲ承ル
コトニ致シタイト思ヒマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=21
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022・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 御異議ナイト
認メマス、司法大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=22
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023・岩村通世
○國務大臣(岩村通世君) 戰時刑事特別法
案ヲ提出致シマシタ理由ニ付キマシテハ、本
會議ニ於テ其ノ大綱ヲ御說明申上ゲマシタ
ガ、此ノ際更ニ其ノ理由ヲ若干補充シテ申
上ゲマスト共ニ、本法案ノ內容ニ關スル御
說明ヲ申上ゲマシテ御審議ノ參考ニ供シタ
イト存ジマス、國家ノ總力ヲ擧ゲテ大東亞
戰爭ノ完遂ニ邁進シテ居リマスル際、國內
ノ治安ヲ確保致シマシテ、國民ヲシテ安ジ
テ職域奉公ノ誠ヲ盡サシメマスルト同時
ニ、國防上有害ナル影響ヲ與フル犯罪ヲ芟
除スル爲、有效適切チル方策ヲ樹立致シマ
スコトハ最モ緊要ナルコトト存ズルノデ
アリマス、燈火管制中又ハ人心ニ不安
動搖ヲ生ゼシムルガ如キ事態ノ生ジマシタ
場合、其ノ他戰時下一般ニ於キマシテ、特
ニ社會生活ノ安全ヲ害シ又ハ國防上有害ナ
ル犯罪ガ頻發スルヤウナコトガアリマスレ
バ治安上誠ニ由々シキ問題デアルノミナ
ラズ、總力戰ノ遂行ニ影響スル所モ亦尠カ
ラザルモノアリト存ズルノデアリマス、而
シテ現行ノ刑法ハ、主トシテ平時ヲ對象ト
シタル法規デアルノミナラズ、其ノ制定ハ、
内外ノ情勢ガ今日ト格段ノ差アル三十有餘
年前ニ係リマシテ、總力戰下ニ於ケル刑罰
法規ト致シマシテハ、其ノ定ムル刑罰ノ程
度ニ於テ、將又其ノ規定スル犯罪ノ種類ニ
於テ、到底不十分ナルヲ免レナイノデアリ
マシテ此ノ際速カニ刑法ノ定ムル犯罪ノ
中、戰時下特ニ之ガ豫防鎭壓ヲ必要トスル
モノニ付キマシテ、其ノ刑罰ヲ加重致シマ
スルト共ニ、他面、總力戰ノ遂行ニ有害ナ
ル影響ヲ及スベキ犯罪ニ關スル(規定ヲ整備
致シマスルコトハ最モ緊要ニシテ缺クベ
カラザル措置ナリト確信致ス次第デアリ
マス、併シナガラ刑罰ニ關スル實體規定ト
之ガ實現ヲ任務ト致シマス刑事手續トハ
恰モ車ノ兩輪ノ如キモノデアリマシテ、兩
者相俟ツニアラザレバ犯罪ノ豫防竝ニ鎭壓
ノ目的達成ヲ期シマスル上ニ於テ十二分ノ
效果ヲ發揮シ得ザルモノナルコトハ敢テ申
上ゲル迄モナイト存ズルノデアリマス、如
何ニ刑罰ヲ加重整備致シマシテモ、犯罪事
件ノ處理ガ的確且迅速ニ行ハレナイト致シ
マスナラバ、刑罰ハ到底其ノ威力ヲ發揮ス
ルニ由ナク、犯罪ノ豫防鎭壓ノ目的達成ハ
得テ望ムベカラザル所ト存ズルノデアリマ
ス、從ッテ刑罰ニ關スル實體法ニ於テ、戰
時ニ相應ハシキ應急ノ措置ヲ講ジマスル以
上、刑事手續法ニ於キマシテモ亦之ニ照應
スル應急ノ措置ヲ講ズルコトニ依リマシテ
審判ノ的確且迅速ヲ圖リマスルコトハ蓋シ
必要缺クベカラザル要務トスル所デゴザイ
マス、卽チ本法案ハ、裁判所構成法戰時特
例案ト相俟ッテ、刑事ニ關スル實體法竝ニ手續
法ニ付キ戰時下緊急已ムベカラザル措置ヲ
定メ、以テ總力戰下ニ適應スル刑政ノ實ヲ
擧ゲムト致シタモノデアルノデゴザイマス、
以下實體規定竝ニ手續規定ニ關シ、法案ニ付
テ其ノ〓要ヲ御說明中上ゲタイト存ジマス、
實體規定ハ本法案第一章ニ罪ト題シテ
一括セラレテ居リマス、此處ニ規定致シマ
シタ犯罪ハ何レモ戰時下治安ヲ確保シ、國
防目的ヲ達成スル上ニ於テ絕對ニ其ノ豫防
竝ニ鎭壓ヲ必要ナリト思料致シタモノデア
リマシテ、第一條乃至第三條ハ放火ノ罪、
第四條ハ猥褻及姦淫ノ罪、第五條ハ窃盗及
强盗ノ罪、第六條ハ恐喝ノ罪、第七條ハ國
政變亂ノ目的ヲ以テスル殺人ノ罪、第八條
ハ防空ノ實施ニ從事スル公務員ノ職務執行
妨害ノ罪、第九條ハ騷擾ノ罪、第十條ハ公
共防空及氣象觀測妨害ノ罪、第十一條ハ公
共通信妨害ノ罪、第十二條ハ瓦斯又ハ電氣
ノ公共ノ利用妨害ノ罪、第十三條ハ國防上
重要ナル生產事業遂行妨害ノ罪、第十五條
ハ生活必需品ノ買占及賣惜ノ罪、第十六條
ハ往來妨害ノ罪、第十七條ハ住居侵入ノ
罪、第十八條ハ飮料水ニ關スル罪ニ關スル
規定デアリマス、而シテ放火ノ罪乃至恐喝
ノ罪卽チ第一條乃至第六條ニ規定セラレタ
ル犯罪ニ對シテハ、「戰時ニ際シ燈火管制中
又ハ敵襲ノ危險其ノ他人心ニ動搖ヲ生ゼシ
ムベキ狀態アル場合」ニ於テ犯サレタル時
ニ限リ刑罰ヲ加重致スコトニ致シタノデア
リマス、蓋シ此ノ種犯罪ハ斯カル特殊ナル
狀態ニ於テ犯サレタルモノニアラザル限リ
刑法ノ定ムル刑罰ヲ以テ其ノ豫防及鎭壓ニ
十分ナリト思料致シタルガ故デアリマス、
第七條ノ國政變亂ノ目的ヲ以テスル殺人ノ
罪ハ刑法所定ノ殺人罪ノ特別規定デアリマ
シテ、戰時下殊ニ斯カル犯罪ヲ防遏スルノ
必要アルニ鑑ミ、本條ヲ以テ之ニ對シ重キ
刑ヲ規定シ、且事ヲ未然ニ防止スルノ刑法
的措置ヲ講ズルコトニ致シタノデアリマ
ス、第十條乃至第十五條ノ規定ハ本法案
ニ依リ初メテ設ケラレタモノデアリマシテ、
何レモ治安ノ確保及國防經濟完遂ノ見地
ヨリ致シマシテ、缺クベカラザル規定ト存
ズルノデアリマス、殊ニ第十五條ニ規定致
シマシタ業務上不正ナル利得ヲ得ル目的ヲ
以テスル生活必需品ノ買占及賣惜行爲ノ如
キハ、物資ノ偏在ヲ招來シ、其ノ配給ノ圓
滑ヲ阻害致スコト甚シキ行爲デアリマシテ、
國民生活ノ安定ヲ期スル立場ヨリ致シマシ
テモ、之ガ防遏ヲ期サナケレバナラヌト存
ズル次第デアリマス、是等ノ規定ヲ通ジマ
シテ、刑罰ハ刑法ノ定ムル所ニ比シ、著シ
ク加重セラレテ居リマスガ、斯ク致シマシ
タ理由ハ、戰時ニ於キマスル此ノ種犯行ノ
鎭壓、豫防ノ爲メ此ノ程度ノ刑罰ヲ以テ望
ムモ亦已ムヲ得ザル所デアルト思料致シタ
ルニ因ルノデゴザイマス、手續規定ハ本法
案第二章及裁判所構成法戰時特例案ノ兩者
ニ其ノ事項ノ性質ニ從ッテ分屬セシメラレテ
居リマス、手續規定ニ關スル特例ノ要點ハ、
結局次ノ二ツノ事項ニ歸著致スト存ズルノ
デアリマス、其ノ一ツハ裁判所構成法戰時
特例案第四條ニ規定致シマシタル特殊ノ限
ラレタル罪ニ關スル控訴審ノ省略デアリ、
其ノ二ハ本法案第二十八條及二十九條ニ規
定致シマシタ上告手續ニ關スル特例デアリ
VV.而シテ控訴審ノ省略ニ付キマシテハ、
裁判所構成法戰時特例案ノ御審議ニ際シ讓
リタイト存ジマス、本法案第二十八條及第
二十九條ニ規定致シマシタ上告手續ニ關ス
ル特例ハ、上〓審ニ於ケル書面審理ノ手續
ヲ規定シ、戰時下ニ於ケル上告審ノ機能ヲ
發揮セシメムトスル趣旨ニ出ヅルモノデア
リマス、其ノ他裁判所ノ證據調ノ範圍及判
決書ノ方式等ニ關スル特例ハ、何レモ戰時下
ニ於ケル刑事手續ノ的確且迅速ノ爲蓋シ已
ムヲ得ザル所デアリマシテ、裁判所構成法
戰時特例案ト相俟ッテ、戰時刑事司法ノ機能
ノ發揮ニ遺憾ナキコトヲ期シタ次第デゴザ
イマス、何卒愼重御審議ノ程ヲ切望致シマ
ス、尙逐條說明ニ至リマシテハ御指圖ニ從
ヒマシテ政府委員ヲシテ說明致サセルコト
ニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=23
-
024・山岡萬之助
○山岡萬之助君 私議事ノ進行ニ付テチ
ヨット申上ゲタイノデゴザイマスガ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=24
-
025・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 宜シウゴザイ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=25
-
026・山岡萬之助
○山岡萬之助君 民事ノ質問應答ヲシテ刑
事ニ移リタイト云フコトヲ大體御決メニ
ナッタヤウデアリマスガ、只今民事ノ說明ガ
濟ンダ所デ、質問應答ナシデ、刑事ニ移リ
マシテハ、ドウモ其ノ點ガ進行上ドウカト
思ヒマス、速記ヲ御止メ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=26
-
027・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 速記ヲ止メテ
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=27
-
028・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 速記ヲ始メテ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=28
-
029・岩田宙造
○岩田宙造君 戰時民事特別法ニ付キマシ
テ少シ御尋ネシタイノデゴザイマスガ、第
一條ノ「民事ニ關スル特例」トアリマス文字
ト云フノハ、大體ノ觀念ハ分ルヤウデアリ
マスガ、是ハ何カ一應ドウ云フ範圍ヲ指ス
ノダト云フ御說明ガ願ヘレバ結構ダト思フ
ノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=29
-
030・大森洪太
○政府委員(大森洪太君) 御指摘ノ民事ト
云フ文字ハ甚ダ分ッタヤウナ分ラナイヤウ
ナ文字デアリマス、私共ハ別ニ深イ考ガ
アッテ之ヲ使ッタノデハナイノデアリマシテ、
御承知ノ裁判所構成法ニ使ッテ居リマス文
句其ノ儘ヲ踏襲シタノデアリマス、結局民
事訴訟法及ビ非訟事件、及ビ是等ニ類似ス
ル手續、左樣ニ御了承ヲ願ヒタイト存ズル
ノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=30
-
031・岩田宙造
○岩田宙造君 其ノ點ハ只今ノ御說明デ大
體分ルト思フノデアリマスガ、其ノ次ニ第
二條ノ期間デアリマスガ、此ノ期間ハ先刻
民事局長ノ御說明ニ依リマスト、矢張リ法
定期間竝ニ契約期間モ此ノ中ヘ入ッテ居ル
ヤウニ伺ッタノデアリマスガ、サウ致シマス
ト、其ノ期間ハ第二條ノ第一一項ニ依リマシ
テ「障碍ノ止ミタル時ヨリ一週間ノ經過ニ
依リテ滿了ス」ト斯ウナッテ居ルノデアリマ
スルガ、契約期間ニ依リマスト云フト、
週間ノ經過ニ依ッテ滿了シテハ困ルヤウナ
場合ガアルノヂヤナイカト思フノデアリマ
ス、例ヘバ造船ノ契約ヲシテ居リマシテ、
其ノ造船ノ契約ハ造船ヲ例ヘバ一箇年間
ニ其ノ船ヲ造リ上ゲル、斯ウ云フ約束ヲシ
テ居リマスルト、其ノ一箇年間ニ所謂此ノ
障碍ガ起ッテ參リマシテ、半年ハマルデ仕
事ヲスルコトガ出來ナカッタ、或ハ後ノ半
年デモ宜シウゴザイマスガ、一箇年掛ルモ
ノガ後ノ半年ハマルデ仕事ガ出來ナカッタ、
半年經ッテ止ンダ、止ムト云フトモウ一週間
デ其ノ期間ハ滿了シテシマッテ、一週間內
ニ其ノ船ヲ造リ上ゲナケレバナラヌ、是ハ
一例デアリマスケレドモ、サウ云フヤウナ
場合ガ起リハシナイカ、其ノ他ニモ色々困
ル場合ガ起リサウニ思フノデアリマスガ、
サウ云フ場合ハドウナサルノデアリマセウ
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=31
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032・坂野千里
○政府委員(坂野千里君) 只今御尋ノ此ノ
障碍ト申シマスノハ、大體ニ於テ期間ノ滿
了ノ時ニ於ケル障碍ト斯ウ云フ風ニ考ヘ
テ居ル譯デアリマス、民法ノ事項ノ所ノ考
ト大體ニ合致シテ考ヘテ居ル譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=32
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033・岩田宙造
○岩田宙造君 滿了ノ際ダケノ障碍ト之ヲ
解スルコトモ、ドウモ此ノ文字デハ私ハム
ヅカシイト思フノデアリマスガ、假リニ滿
了ノ際ノ障碍ト考ヘマシテモ、只今ノヤウ
ニ後半ノ六箇月間障碍ガ繼續シテ居ル場合
ニハ、滿了ノ際ニ障碍ガアルノデアリマス
カラ、矢張リ其ノ適用ガアッテ、サウシテ滿
了ノ翌日ニ障碍ガ止ンダ、サウ云フ時ニハ
矢張リ、ソレカラ一週間デ期間ハ滿了スルモ
ノデアルト解釋スル外ナイヤウニ思ハレル
ノデアリマスガ、如何デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=33
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034・坂野千里
○政府委員(坂野千里君) 御尋ノヤウニナ
ルト思ヒマスガ、サウ云フ場合ニハ事情ノ
變更ニ依リマシテ責任ヲ負ハナイト云フコ
トガ考ヘラレルノヂヤナイカト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=34
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035・岩田宙造
○岩田宙造君 ドウモ其ノ時ニ事情ノ變更
ニ依ッテト云フ又爭ヒヲシナケレバナラヌト
云フヤウナ規定ハ困ルノデハナイカト思フ
ノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=35
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036・坂野千里
○政府委員(坂野千里君) 具體的ニ一々ニ
付テハドウモソコハ端的ナ規定ガ置ケナイ
コトニナリマスノデ、大體ノ所ヲ抑ヘテ
週間、斯樣ニ考ヘテ居ル譯デアリマシテ、
特殊ナ約定關係トカ、特殊ナ事情ハ特殊ナ
事情トシテ別ニ殘ス、斯樣ニシタイ、斯ウ
云フ考ヘ方デアリマス、大キナ所ダケヲ抑
ヘタ譯ナンデアリマス、御了承願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=36
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037・岩田宙造
○岩田宙造君 先刻御指摘ニナリマシタ民
法ノ百六十一條デアルトカ、手形法ノ五十
四條デアルトカ云フヤウナ法定期間ハ、是
ハ多クハ或行爲ヲスルノニサウ云フ時ヲ要
シナイ事項ニ皆關係シテ居ルノデアリマス
カラ、ソレデ其ノ障碍ガ止ンダ時カラ遲滯
ナクトカ、或ハ何日間トカ云フコトデ少シ
モ差支ナイノデアリマスルガ、此ノ契約期
間ト云フヤウナモノガ今度入リマシタノ
デ、全ク其ノ法定期間ニハ商法ヤ民法ニア
リマスル場合ヨリモ違ッタ決メ方ヲ一體シ
ナケレバナラナカッタ性質ノモノデアルニ
拘ラズ、ソレヲ民法ヤ商法ノサウ長イ間ヲ
要シナイ場合ノ例ニ從ッテ規定セラレタ爲
二、サウ云フコトガ起ルノデナイカト云フ
感ジガスルノデアリマスガ、是ハ私ハドウ
シテモ何ダカ少シ考ヘテ見ナイト云フト
直キニ困ルト思フノデアリマス、ソレカラ
又契約期間ヲ、外ノ場合ヲ取ッテ見マスト、
例ヘバ契約ヲ履行シナイカラ、更ニ契約ヲ
履行スルニ相當テ期間ラ定メテ催〓スル、
サウ云フヤヴナ場合ヲ考ヘテ見マシテモ、
相當ノ期間ガ、二週間デアリ三週間ヲ要ス
ルノデ、相當ノ期間ヲ定メタ、處ガ其ノ期
間內モット障碍ガアッテ、サウシテ其ノ期間
ガ經過後ニ障碍モ止ンダト云フ時ニハ、相
當ノ期間ハ三週間デアルニ拘ラズ、一週間
ノ經過デ滿了スル、サウ云フヤウナ場合ガ
頻々トシテ起リ得ルノデアリマスカラ、ド
ウモ此ノ一週間ノ經過ト云フノヲ、或ハ相
當ノ期間ノ經過ト云フヤウナコトニシテ置
キマスレバ、其ノ事柄ニ依ッテ、或ハ一週
問、或ハ一年ト云フヤウニモ融通ガ附クト
思フノデアリマスケレドモ、一週間トキッチ
リ決メテ置クト云フト、ドウモ直グ私ハ差
支ガ生ズル場合ガ續出スルノデナイカト思
フノデアリマス、如何デゴザイマセウ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=37
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038・坂野千里
○政府委員(坂野千里君) 大體ハ私モ今ノ
契約解除ノ場合ニハ相當期間ト云フヤウナ
コトモ考ヘテ居ル譯ナンデアリマスガ、斯
樣ナ例ヲ見マシテ、今御指摘ニナッタヤウ
ニ、アトズット長イ期間ノ內半年モ續イテ
障碍ガアッテ、サウシテ又アト一週間ト云
フヤウナ斯ウ云フ場合ハ非常ニ少イノデ、
大體ニ於テハ此ノ一週間デ賄ヘルト、斯ウ
云フヤウニ考ヘタ譯デアリマシテ、色々ナ
事例ヲ調ベテ見マシタ結果、餘リ長ク致シ
マスト云フト、是亦、是ガアルガ爲ニ却ッテ
適正ナ法律上ノ結果ヲ害スルヤウニナッテ
參ル譯デアリマシテ、此ノ所位デ大體ヲ抑
ヘテ宜インヂヤナイカト、斯樣ニ考ヘマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=38
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039・岩田宙造
○岩田宙造君 只今ノ點ハ御趣意ダケハソ
レデ了解致シマシタカラ、其ノ程度ニ止メ
テ置キマスガ、第六條ニ付テ少シ御尋ネ致
シマス、此ノ裁判所ガ訴訟ニ付テ攻撃防禦
ノ方法ヲ提出スル期間ヲ定メル場合デアリ
マスガ、是ハ裁判所ガ必要アリト認ムルト
キトナッテ居リマスルガ、ドウ云フ場合ヲ
豫想サレルノデアリマセウカ、其ノ必要ト
認ムルト云フ場合デアリマス、是ハ直キ空
襲デモアリサウデアルトカ、或ハ何カ非常
ニ擾亂デモ起ッテ、悠々ト訴訟ナンカヲヤッ
テ居レナイ事情ガ切迫シタトカ云フヤウナ
場合ヲ想像サレルノデアリマセウカ、ドウ
云フ場合ヲ此ノ必要ナリト豫想サレテ居ル
ノデアリマスカ、ソレヲ伺ヒタイノデアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=39
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040・坂野千里
○政府委員(坂野千里君) 大體此ノ特ニ必
要アリト認メル場合ハ、訴訟ガ遲延スル虞
レガアル場合ト、斯樣ニ考ヘテ居ル譯デア
リマスガ、百三十九條ニ依リマスト云フト、
故意又ハ重大ナル過失ニ因ッテ訴訟ヲ遲延
セシメタルトキト、斯ウ云フヤウニナッテ居
ル譯デアリマスガ、玆ニ又重大ナル過失ト
云フコトノ限定問題ニ色々觸レマスノデ、
斯樣ナ問題ニ觸レズニ、訴訟ノ遲延ト云フ、
遲延サセル虞レガアルト云フ場合ニ此ノ期
間ヲ定メテ行カウト、斯樣ニ考ヘタ譯デア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=40
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041・岩田宙造
○岩田宙造君 本法ハ戰時ノ特例デアリマ
スカラ、其ノ必要アリト認ムル事ト云フモ
ノガ、何等カ戰時ニ關聯ヲ持ツ事柄ヲ豫想
シテ居ラレルノデハナイカト思フノデアリ
マスガ、只今ノ御說明ニ依リマスト、ソレ
トハ無關係ニ、平素ト雖モ起リ得ルコトヲ
想像シテ居ラレルヤウデアリマスガ、是デ
宜シイノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=41
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042・坂野千里
○政府委員(坂野千里君) 御尋ノヤウニ、
大體平素デモ起リ得ル所デアリマスガ、戰時ニ
於テハ尙一層斯ウ云フ爭ヲ長引カセテ行キ
タクナイ、斯ウ云フ立場カラ特ニ此處ニ規
定シテ置イタ譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=42
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043・岩田宙造
○岩田宙造君 只今ノ御說明ハサウ伺ッテ
置キマスガ、假ニサウ云フ必要アリト認メ
テ、攻撃防禦ノ方法ヲ提出スベキ期間ヲ定
メラレマシタ時ニ、期間ヲ遵守スルコト能
ハザル、戰爭ニ起因スル障碍ガ起リマシタ
時ニハ、矢張リ第二條ニ依ッテ此ノ期間ハ伸
張サレルノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=43
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044・坂野千里
○政府委員(坂野千里君) 御尋ノ通リデア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=44
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045・岩田宙造
○岩田宙造君 ドウモ私ハ此ノ第六條ノ此
ノ「必要アリト認ムル」ト云フコトヲ私ハ戰
時ニ基因スル關係ト離レテ、ソレトハ全然
關係ノナイ場合デアッテモ、此ノ攻擊防禦ノ
方法ヲ提出スル期間ヲ定メルト云フ規定ヲ
設ケルト云フコトハ、戰時特例ノ法トシテ
ハ如何カト考ヘルノデアリマスケレドモ、
假ニサウ、致シマシタトシテモ、矢張リサウ
云フ障碍ガ起ッテ來レバ仲スノデアル、斯ウ
云フコトデアリマスト、ドウモ折角期間ヲ
定メテモ、一方デ又同時ニ打チ壞ス規定ヲ
此ノ法律ニ依ッテ作ルト云フヤウナ關係ニ
ナッテ、何ダカ前後相容レナイヤウナ氣ガ致
シマスガ、是ハ差支ヘナイノデアリマセウ
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=45
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046・大森洪太
○政府委員(大森洪太君) 民事局長ノ答ニ
補足ヲスル次第デアリマスルガ、此ノ第六
條ノ規定ハ御承知ノ通リ、或ハ戰爭ニ極メ
テ直接ナモノダトハ言ヘナイカモ知レマセ
ヌケレドモ、私共之ヲ立案致シマシタ趣旨
ハ御承知ノ通リニ斯樣ナ戰時狀態ニナリ
マスルト、ドウシテモ職員ノ方デ手不足ニ
相成ルノデアリマス、又訴訟關係者ノ方ニ
於キマシテモ、交通障碍等ノ爲大變ナ不便
ヲ感ズル譯デアリマシテ、斯樣ナ戰時狀態
ニ於テコソ成ルダケ訴訟ノ圓滑迅速ナル進行
ヲ圖リタイ、斯樣ニ存ズルノデアリマス、御
承知ノヤウニ此ノ訴訟遲延ノ目的ノ爲ノ或
事柄ニ付テハ、民事訴訟法第百三十九條ニ
適當ナ規定ガアリマスルケレドモ、是ダケ
デハ戰時ニ於テハ足リナイヤウニ存ズルノ
デアリマス、卽チ右戰時下ノ必要ニ應ジマ
シテ、此ノ第六條ヲ設ケタ次第デアリマス、
處ガ此ノ第六條ニ付キマシテモ第二條ノヤ
ウナ事由ガ生ジマスルガ、ソレニモ拘ラズ
早クヤッテシマヘト云フコトハ、是ハ氣ノ毒
ナ話デアリ、無理ナコトデアリマスカラ、
第六條ノ期間ヲ定メマシテモ、矢張リ第二
條ノ適用ノ餘裕ハ置イテ置カナケレバナラ
ナイト存ズルノデアリマス、ソレカラ實際ノ
場合ヲ考ヘテ見マスルト、第六條ニ依リマ
シテ攻撃方法又ハ防禦方法ノ提出期間ヲ定
メマシテモ、大抵ハ其ノ最後ノ瞬間アタリ
ニ出スノガ多クノ事例ダラウト思フノデア
リマス、用意ヲシテ置キマシテ、サウシテ
實際ノ提出ハ最後ノ瞬間デアル、其ノ瞬間
ガ、例ヘバ惡イ豫想デアリマスルケレドモ、
空襲等ニ依ツテ妨ゲラレルト云フヤウナコ
トヲ考ヘマスルナラバ、矢張リ第二條適用
ノ餘裕ヲ存シテ置クノガ相當ダラウト斯樣
ニ考ヘタ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=46
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047・岩田宙造
○岩田宙造君 十一條ノ規定ト其ノ趣旨ニ
於テ關聯シテ居リマスルノデ、或ハ質問ト
シテハ第二條ノ質問ニナルカトモ考ヘマス
ガ、御尋ネシタイト思ヒマス、此ノ第十一
條ニ「債務者ガ戰爭ノ影響ニ因リ債務ヲ履
行スルコト困難ナル場合ニ於テ」云々、斯
ウアリマスノハ、戰爭ノ影響ニ因ッテ例ヘバ
金錢債務ノヤウナ場合ニ其ノ金策ガ出來ナ
カッタト云フ場合モ、第十一條ノ「戰爭ノ影
響ニ因リ債務ヲ履行スルコト困難ナル場合」
ト云フノニ入ルノデアラウト考ヘルノデア
リマスガ、サウ致シマスト、其ノ爲ニ契約
期限ニ債務辨濟ガ出來ナイト云フヤウナト
キニハ第二條ノ「戰爭ニ起因スル避クベ
カラザル障碍ニ因リ期間ヲ遵守スルコト能
ハザル」ト云フノニ矢張リ入ルノデアリマ
セウカ、ソレハ入ラナイノデアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=47
-
048・坂野千里
○政府委員(坂野千里君) 御尋ノ點ハ大體
入ラナイト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=48
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049・岩田宙造
○岩田宙造君 サウ云フコトハ此ノ第二條
ノ障碍ト云フ中ニ入ラナイト云フコトニナ
ルノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=49
-
050・坂野千里
○政府委員(坂野千里君) 御尋ノ通リデア
リマス、障碍ト云フノハ餘程嚴シク考ヘテ
行キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=50
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051・岩田宙造
○岩田宙造君 サウ致シマスト、第十一條
ニ依ッテ此ノ强制執行ノ一時停止ヲ命ジマ
シタヤウナ場合ニハ、其ノ停止ヲシテカラ
以後ノ期間ニ對スル遲延利息ノ損害ハドウ
ナルノデアリマセウカ、損害賠償ノ責任ハ
免レルノデアリマセウカ、矢張リ負擔スル
ノデアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=51
-
052・坂野千里
○政府委員(坂野千里君) ソレハ遲延利息
ハ支拂フベキモノダト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=52
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053・岩田宙造
○岩田宙造君 其ノ點ハソレデ宜シウゴザ
イマス、第十二條デアリマスガ、破產ノ場
合デアリマス、此ノ十二條ニ依リマシテ、
支拂停止ノ狀況ニアル責務者ニ付テノ是ハ
規定デアルト考ヘルノデアリマスケレドモ、
支拂停止ノ狀況ニアル債務者ハ是ハ債務ヲ
辨濟シテモ破產宣告ヲ受ケレバ否認ヲサレ
ル關係ニナリマスノデ、法律ハ寧ロ債務ノ
履行ヲサセナイ趣旨デアルト思フノデアリ
マスガ、サウ云フ債務者ガ「誠實ニシテ債
務履行ノ意思アリ」云々ト云フコトハ破
產法ノ精神ト相容レナイヤウニ思ハレマス
ガ、是ハドウ云フノデアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=53
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054・坂野千里
○政府委員(坂野千里君) 是ハ債務者ノ心
持ノ方カラ規定シテ居ルノデアリマシテ、
イツデモ此ノ破產宣告ガナクテ普通ノ狀態
ニアレバ眞面目ニ履行ヲシタイ、斯ウ云フ
考ヲ持ッテ居ル債務者ノ立場ヲ保護シヨウ、
斯ウ云フ考ヘ方デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=54
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055・岩田宙造
○岩田宙造君 サウスルト此處デ謂ヒマス
「債務履行ノ意志アリ」ト云フノハ、現實ニ
債務履行ノ意思アリト云フコトデナクシテ、
支拂不能ノ狀態ニナカッタラ債務ヲ履行シ
タデアラウ、斯ウ想像サレルト云フ意味デ
アリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=55
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056・坂野千里
○政府委員(坂野千里君) 御尋ノ通リ抽象
的ニ考ヘテ居ル譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=56
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057・岩田宙造
○岩田宙造君 ソレハサウ伺ッテ置キマス
ガ、假ニ此ノ十二條ノ規定ニ依ッテ支佛停止ノ
狀況ニアル債務者ニ付テハ破產ノ宣告ヲ中
止スル、シナイデ置ク、斯ウナリマスト云
フト、其ノ債務者ハドウナルノデアリマセ
ウカ、誰モ相手ニハシテ吳レナイ營業者
トシテモ自分ノ營業ハ一向出來ナイ、債務
ノ辨濟モ出來ナイト云フノデ、ドウモ進ム
コトモ退クコトモ出來ナイ、甚ダ不安定ナ
狀況ニ置カレルト云フコトニナリマスガ、
其ノ關係ハドウナルノデアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=57
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058・坂野千里
○政府委員(坂野千里君) サウ云フ場合ニ
ハ、債務者ノ更生ヲ待ツ譯デアリマシテ、色
色ナ事情ガ段々改善サレテ行キマスト云フ
ト、旣ニ辨濟ガ出來テ、最早破產ノ宣〓ヲ
スル必要ガナクナッタ、斯ウ云フコトモアリ
得ルノデアラウト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=58
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059・岩田宙造
○岩田宙造君 是ハチヨット意見ガ違フカ
ト思ヒマスガ、一體サウ云フヤウナ場合ニ
ハ何カ積極的ニ和議ヲ成立セシムルトカ、
或ハ調停ナリ和解ヲ成立セシムルヤウナ規
定ヲ設クベキデアッテ、唯其ノ破產ノ宣告ヲ
止メル、サウシテ進ムコトモ退クコトモ出
來イナヤウナ狀態ニ置ク如キ規定ヲ設ケル
ト云フコトガ、一體間違ッテ居ルノヂヤナ
イカ、サウデナシニ積極的ニ何カ救濟ヲシ
テヤルヤウ、ナ規定ヲ設ケレバ差支ヘナイノ
デアリマスガ、サウデナシニ唯積極的ニ破
產宣告ダケヲ免レシムル、サウスレバソレ
ヲ免レシムルコトニ依ッテ平常通リニ營業
ナリ業務ガ出來ルナラ宜イノデスガ、出來
ナイ狀態ニ、半殺シニシタヤウナ狀態ニ置
クト云フヤウナ形ノ規定ニシタカラサウ云
フ差支ヘガ起ルノデアッテ、寧ロサウデナシ
ニ積極的ニ救濟スルヤウナ規定ヲ設クベキ
デハナカッタノデアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=59
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060・大森洪太
○政府委員(大森洪太君) 御言葉ヲ返スヤ
ウデ恐縮デアリマスガ、積極的ニ總テノ場
合ヲ通ジテ救濟スルヤウナ規定ガ出來ルナ
ラバ之ニ越シタコトハナイノデアリマスガ、
ソレハ司法法規トシテハ大變ニ困難デアラ
ウト存ズルノデアリマス、要スルニ資金ノ
出所ノ問題デアリマスカラ、資金ノ出ルヤ
ウニ計ラッテヤラナケレバナラナイカト存
ズルノデアリマス、唯斯樣ニ致シマシテ破
產ノ宣告ヲ猶豫致シ置テキマスルナラバ
其ノ猶豫期間內ニ恐ラクハ同情者ガ出テ來
ルデアリマセウ、又後援者ガ出テ來ルデア
リマセウ、又個々ノ事案ニ付キマシテ和解
ナリ、調停ナリニ依リマシテソレ/〓〓處理
ヲ付ケルデアリマセウ、ソレ等ノコトニ望
ミヲ囑シマシテ、ソレガ出來ルナラバソレ
ガ出來ルダケノ期間ヲ與ヘテヤリタイト云
フ趣旨ニ外ナラナイノデアリマス、デアリ
マスカラ、猶豫期間內ニ後援者モ出テ來ズ、
金策ノ途モ出來ナカッタ、個々ノ事案ニ付テ
和解モ調停モ出來ナカッタト云フコトニナ
リマスレバ、是ハ結局破產ノ宣〓ヲセザル
ヲ得ナイノデアリマス、何時迄モ破產ニセ
ズニ置イテ置クノデハナク、破產ノ宣告迄
ノ一步手前ニ多少ノ猶豫ヲ存シテ置ク、斯
樣ナ趣旨カラ立案シタヤウナ次第デアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=60
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061・岩田宙造
○岩田宙造君 其ノ御趣意ハ能ク分ルノデ
アリマスガ、此ノ規定ニ依リマスト、唯破
產手續ノ中止ト云フダケデアッテ、延期スル
トカ、猶豫スルトカ云フコトデナクシテ、
唯破產ノ手續ガ出來ナイト云フコトニナッ
テ居リマスカラ、此ノ規定ダケデハ只今ノ
御趣意ノヤウナ效果ハ擧ラナイノヂヤナイ
カト云フコトヲ心配スルノデアリマス、尤
モアトハ意見デアリマスカラ、只今ノ私ノ
質問ハ此ノ程度デ止メテ置キマス、其ノ次
ハ調停ノ方ノ第十六條デアリマスガ、第十
六條デ受訴裁判所ガ調停ヲ行フト云フコト
ニナリマシタ場合ニハ、其ノ調停主任タル
判事ハ裁判所之ヲ規定スト、特ニ此ノ場合
ニ限ッテ調停主任タル判事ヲ指定スルト云
フ規定ガ設ケテアルノハ、ドウ云フ必要カ
ラデアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=61
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062・坂野千里
○政府委員(坂野千里君) 此ノ點ハ每年調
停主任判事ヲ地方裁判所長ガ指定スルト云
フコトニナッテ居ルノデアリマス、其ノ受訴
裁判所ノ判事ガ必ズシモ調停主任ニナラヌ
譯デアリマス、ソレガ普通ノ裁判所ノ行キ
方デアリマス、ソコデ其ノ裁判所ヲ構成シ
テ居ル判事ガ調停主任トナッテ調停ヲ導イ
テ行ク方ガ非常ニ良イ結果ニナリ得ルト云
フ場合ニハ、其ノ裁判所ノ構成ヲシテ居ル
判事ガ主任判事ニナリマシテ、此ノ調停ヲ
指導シテ行ク、斯ウ云フヤウニ考ヘテ居ル
譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=62
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063・岩田宙造
○岩田宙造君 此ノ第十四條ニ依リマシテ
當事者ガ合意ニ依ッテ、定メタ地方裁判所ニ
調停ノ申立ヲ爲シマシタヤウナ場合ハ、其
ノ地方裁所ガ調停ヲスルノカト思フノデア
リマスガ、其ノ場合デモ同ジヤウニ必要ガ
アルノデハナイノデアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=63
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064・坂野千里
○政府委員(坂野千里君) 此ノ場合ニハマ
ダ事件ガ受訴裁判所ニ繫ッテ居ラナイ場合
デアリマシテ、調停ダケノ關係デアリマス
カラ、是ハ地方裁判所長ガ前以テ地方裁判
所ノ判事ノ中デ豫メ調停主任ヲ定メテ居リ
マス、其ノ調停主任ニヤラシテ足ル、斯樣
ニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=64
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065・岩田宙造
○岩田宙造君 サウ致シマスト、此ノ第十
六條ノ方ハ受訴裁判所トアリマスケレドモ、
モウ少シ狹イ意味デ、例ヘバ何部カアルヤ
ウナ場合ニ其ノ繫屬シテ居ル受訴裁判所ノ
其ノ部デ定メルト云フ意味デアリマスカ、
其ノ部カラ選任スルト云フ意味デアリマス
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=65
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066・坂野千里
○政府委員(坂野千里君) 其ノ方カラ特ニ
考ヘテ居ル譯デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=66
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067・岩田宙造
○岩田宙造君 私ハ一應此ノ程度デ質問ヲ
終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=67
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068・山川端夫
○山川端夫君 私ハ極ク素人ノ立場カラ御
尋ネシタイノデアリマスルガ、本案ノ規定
ノ中デ例ヘバ第六條、是ハ裁判ノ進行ヲ成
ルベク敏速ナラシメルト云フ御趣旨デ出來
テ居ルノデアリマスガ、民事訴訟ニ付テハ
司法省ノ御努力ニ依ッテ餘程今早ク行キツ
ツアルヤウデアリマスケレドモ、マダ聞ク
所ニ依ルト可ナリ事件ガ長引クモノガ非常
ニ多イヤウデアリマス、サウ云フ點カラ行
キマスト、是ハ戰時ニ限ラズ何デモ早ク裁
判ヲ進行スル、終結スルト云フコトガ一般
ノ者ノ爲ニハ非常ニ必要ヲ感ジラレルノデ
アリマス、ソレデ此ノ第六條ノ規定ノ如キ
ハ先程岩田君ノ御質問ノ中ニモチヨットア
リマシタガ、寧ロ是ハ戰時法デナクテ平常ノ
方ニ斯ウ云フコトヲ御規定ニナッタ方ガ宜ク
ハナイカト思フノデアリマス、戰時ニ限ラナイ
問題デ平常カラ斯ウ云フ規定ガアル方ガ宜
クハナイカ、戰時法デナイ方ニ御改正ニナク
タ方ガ宜イノデハナイカト云フヤウナ感ジ
ガスルノデアリマス、同ジク第九條ニ付キ
マシテ同樣ノ感ジヲ持チマス、ソレカラ第
十七條、第十九條、之モ平常カラ斯ウ云フ
規定ヲ適用サレル方ガ宜イノデハナイカ、
必ズシモ戰時ニ限ルコトデナイヂヤナイ
カ、戰時ニモ無論必要ガアルケレドモ、平
常ニモ尙必要ガアルト見受ケララレルノデ
アリマス、一般ノ規定ニ於テ御改正ニナル
方ガ宜イノデハナイカト云フ氣ガスルノデ
アリマス、ソレニ付テノ御意見ヲ伺ヒタイ
ノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=68
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069・大森洪太
○政府委員(大森洪太君) 民事訴訟ノ實績
ガ今尙至難ノ狀態ニアリマスコト、實ニ私
共慙愧ニ存ジテ居ル次第デアリマス、實ハ
種々畫策ハ致シテ居ルノデアリスマケレド
モ、私共微力ノ爲ニ民事訴訟促進ノ成績ヲ
十分ニ擧ゲルコトノ出來ナイノハ甚ダ汗顏
ノ次第ニ存ジテ居リマス、先ヅ第十六條ニ
付テノ御意見デアリマスガ、私共矢張リ戰
時法トシテ之ニ臨ミタイ積リデアリマス、
ト申シマスルノハ、成ルベク自由ニ攻擊、
防禦ノ方法ヲ盡サシメルト云フコトガ、是ハ
訴訟ノ通則デアリマスガ、之ニ對スル例外
規定ヲ設ケルコトハ戰時ニ止メテ置キタイ
ト存ジテ居リマス、併シソレガ爲ニ今日我
我ノ訴訟促進ノ努力ヲ緩メルト云フ意味ハ
固ヨリナイノデアリマシテ、訴訟促進ハ訴
訟促進トシテ考ヘナケレバナラヌケレドモ、
第六條ノ方法ニ依リマシテ促進シマスコト
ハ戰時ノ特例トシテ之ニ臨ミタイト斯樣ニ
考ヘテ居ル次第デアリマス、其ノ他ノ法
規ニ付テ御述ベニナリマシタコトモ矢張リ
同樣デアリマシテ、第九條ニ付キマシテモ、
便法ハ便法デアリマスケレドモ、平時ニ及
ボシマスルノニハ、言葉ハ甚ダ變デアリマスケ
レドモ、餘リニ荒療治ニ過ギルト私共考ヘ
テ居ル次第デアリマス、次ニ第十七條デアリ
マス、調停ノ場所ノ問題デアリマス、是亦御
尤ナル御意見デアリマシテ、私共不斷種々
左樣ナル意見ヲ聽イタコトガアリマス、唯併
シナガラ私共ト致シマシテハ、調停ハ裁判所デ
之ヲ行フト云フ所ニ有難味ガアルノデアリマ
シテ、困ッテ居リマスル當事者ハ裁判所ヘ行ッテ
御助ケヲ乞フ、斯ウ云フヤウナ風ヲ是カラ馴
致シテ行キタイ、斯樣ニ考ヘタノデアリマス、
又ソレト同時ニ裁判ト民衆ト相親シム、何ダ
カ裁判所ト云フ所ハ戰慄スベキ場所ダト云フ
ヤウナ感ジヲ徐々ニ除イテ行クノニハ此
ノ調停ヲ裁判所ニ於テ行フト云フコトガ大
變結構ヂヤナイカ、斯樣ナ考カラ致シマシ
テ、調停ト正義ノ殿堂ト云フモノト不可分
不可離ノ關係ニ致シタカッタノデアリマス、
併シ戰時下ニ於キマシテハ、交通ノ障碍等多
少ノ不便ガアリマスルカラ、是亦戰時下
特例ノ、例外トシテ之ヲ行ッテ行キタイ、斯樣
ニ考ヘタノデアリマス、第十九條ニ付テモ
同樣デアリマス、卽チ便利ハ便利デアリマ
スケレドモ、成ルベク普通ノ方法ニ依ッテ訴
訟ハ平時ハ促進シテ行キタイ、唯併シナガ
ラ戰時ニ於テハ已ムヲ得ナイ關係ガアリマ
スルカラシテ、寧ロ望マシカラザルコトデ
ハアリマスケレドモ、是ダケノ便法ハ御勘
辨ヲ願ヒタイ、斯ウ云フ趣旨デ立案ヲ致シ
タヤウナ次第デアリマス、右御了承ヲ願ヒ
タイト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=69
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070・山川端夫
○山川端夫君 御趣意ハ分リマスガ、是以
上ハ或ハ議論ニナルノデアリマスケレドモ、
第六條ノ說明ヲ伺ッテモ、直グ此ノ攻撃防禦
ノ方法ニ付テノ期間ヲ設ケル趣旨デハナイ
ノデ、特ニ必要ヲ認メル、而モソレガ重大
ナ故意又ハ重大ナル過失ニ依ッテ訴訟ガ遲
延スル虞レアル場合ト云フコトヲ大體御考
ニナッテ居ルヤウデアリマスガ、サウスレバ
必ズシモ戰時ニ限ラヌデモ宜イノヂヤナイ
カ、不斷デモサウ云フ特殊ナ場合ニハ斯ウ
云フ規定ヲ御設ケニナル方ガ宜クハナイカ
ト云フヤウナ意見ヲ私ハ持ッテ居ルノデア
リマス、第九條等ニ付テハ是ハ荒療治デハ
ナクテ、先ヅ書面ヲ提出セシメルト云フコ
トハ大變宜イコトヂヤナイカト思ヒマス、
是ハ書面ダケデ、出シ放シデハナクテ、後
デ必要ガアレバ裁判所ニ呼ビ出シテ訊問ガ
出來ルト云フヤウナ御趣意デアレバ此ノ方
ガ却ッテ宜イノヂヤナイカ、殊ニ裁判所デヤ
ラレルト云フコトハ大變宜イコトデアリマ
スケレドモ、又一般ニハ非常ニ關係スル民
衆ノ利益、便宜ト云フコトヲ考ヘル必要ガ
大イニアルノヂヤナイカト云フ風ニ考ヘル
ノデアリマスガ、其〓他ノ條ニ付テモ大體
同ジヤウナコトデアリマスガ、併シ是ハ少
シ意見ニナリマスカラ、此ノ位ノ程度デ止
メテ置キタイト思ヒマス、ドウカ御考慮ヲ
願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=70
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071・大森洪太
○政府委員(大森洪太君) 民事訴訟ノ遲延
ノ實情ニ對シマシテ、我々ハ十分ナル努力
ヲシタイノデアリマスガ、尙此ノ上共是等
ノ點ニ付テハ御警告ナリ御援助ヲ御願ヒシ
タイノデアリマシテ、其ノ趣旨ニ於キマシ
テ只今ノ御意見ハ私共篤ト十分拜承ヲシ
タヤウナ次第デアリマス、尙第九條ノ訊問
ニ關スル書面ノ提出デアリマスガ、全ク御
尤ナ次第デアリマシテ、裁判所へ出テ來ル
コトハ確カニウルサイノデアリマスガ、是
ハ宣誓ノ手續ヲモ省略サセヨウト云フノデ
アリマシテ、宣誓ノ手續ヲ省略シテ尙且書
面ヲ出サセルト云フ場合デアリマスカラ、
多クノ場合ニ之ヲ擴ゲテ行クト云フ積リハ
ナイノデアリマス、是亦右ノ意味合ヲ御了
承ヲ願ヒタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=71
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072・山川端夫
○山川端夫君 モウ一點、極ク小サイコト
デアリマスガ、條文ノ書キ方デアリマス、
第二條ノ但書ニ「他ノ法令ニ定アルモノニ
付テハ其ノ定ニ從フ」トアリマス、是ハ內
容ノ問題ニ付テハ異議ハアリマセヌガ、此ノ
書キ方デ見マスト、期間ハ延長スルガ、他
ノ法令ニ別ノコトガ書イテアレバソレニ
依ッテヤル、其ノ法令ノ定ニ依ッテヤルト云
フコトデアリマスガ、御趣意ハ、或ハ期間
ノ延長ニ關スル他ノ法令ニ特別ノ規定ガア
ル時ニハ、其ノ規定ニ依ルト云フコトデア
ラウト思ヒマスケレドモ、此ノ書キ方ダケ
ヲ見マスト、期間ノ延長ヲスルガ他ノ法令ニ
イケナイト書イテアレバ、ソレデヤレナイ
ト云フヤウニ非常ニ廣ク解釋セラレルヤウ
ニ讀メルノデアリマスガ、此ノ趣意ヲ御說
明ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=72
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073・坂野千里
○政府委員(坂野千里君) 此ノ趣旨ハ、今
御尋ノ通リノ趣旨デアリマシテ、他ノ法令
ニ此ノ趣旨ノ規定ガアル時ニハソレニ從ッ
テ行ク、伸長サセテイト云フ意味ハ無論ナ
イノデアリマス、初メ別段ノ定ト云フコト
ヲ考ヘテ見タノデアリマスガ、サウスレバ
却ッテサウ云フ虞レガアルト云フノデ、言葉
トシテハ少シ足ラヌヤウニ考ヘルノデアリ
マスガ、前後ノ關係カラ讀メルト云フノデ、
「定」ト云フコトニシテ、別段ヲ削リマシテ提
案ノ通リニシタノデアリマス、趣旨ハ御尋
ノ通リニ考ヘタノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=73
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074・山川端夫
○山川端夫君 サウスルト、他ノ法令ニ期
間ノ延長ニ關スル別段ノ定アル時ニハ、ソ
レニ從フト云フ趣意デアリマスカ、餘リ文
字ヲ省略サレル爲ニ却ッテ分リニククナッタ
ヤウナ氣ガ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=74
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075・坂野千里
○政府委員(坂野千里君) 御尋ノ通リデア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=75
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076・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 午前中ハ此ノ
程度ニ致シマシテ、午後一時半カラ再開致
シタイト思ヒマス
午前十一時五十八分休憩
午後一時三十四分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=76
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077・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 委員會ヲ再開
致シマス、民法中改正法律案、此ノ法律案
ニ付キマシテ御質問ハゴザイマセヌカ··
御質問ナイモノト認メマス、次ニ不動產登
記法中改正法律案、此ノ法律案ニ付キマシ
テノ御質問ハゴザイマセヌカ······御質問ナ
イモノト認メマス、然ラバ此ノ兩法案ノ討
議ニ移リタイト思ヒマス、御意見ハゴザイ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=77
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078・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 御異議ナイモ
ノト認メマス、然ラバ此ノ兩法案ノ採決ヲ
致シタイ存ジマス、民法中改正法律案竝ニ
不動產登記法中改正法律案、此ノ兩案ハ政
府提出ノ通リ可決ヲ致シマシテ御異議ゴザ
イマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=78
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079・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 全會一致御異
議ナイモノト認メマス、此ノ兩法律案ハ此
ノ委員會ニ於キマシテハ可決ノコトニ確定
ヲ致シマシタ-次ニ戰時民事特別法案ニ
付キマシテ質疑ヲ御許シ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=79
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080・村田保定
○男爵村田保定君 此ノ第十四條ノ調停ノ
コトニ付テ御伺ヒ致シタイノデアリマス、
裁判所ノ和解ハ此ノ儘ニシテ、和解ハ和解
デ別ニ御取扱ニナッテ、サウシテ調停ノ申立
ガアレバ調停ノ方デ取扱ヲスルト云フコト
ニナルノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=80
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081・大森洪太
○政府委員(大森洪太君) 御指摘ノ通リデ
アリマシテ、和解ハ和解トシテ途ヲ開イテ
居リマスシ、其ノ外別途ニ調停ノ途ヲ開イ
テ居リマス、左樣ニ御了承ヲ戴キタイノデ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=81
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082・次田大三郎
○次田大三郞君 私何ー謂フカ極メテ幼稚
ナ質問ヲ致スノデスガ、此ノ法律ニ戰時ト
云フ字ガアルガ、是ハ先程ノ御說明ニ依リ
マスト大東亞戰爭ヲ意味スル)是ハ此ノ戰
時民事特別法案バカリデナク、今後出マス
法案ニモ「戰時」ト云フ文字ガ非常ニ廣ク使ハ
レルト思ヒマス、本委員會ニ付託サレマシ
タ戰時民事特別法案モ戰時刑事特別法案モ
裁判所構成法案モ皆「戰時」ト云フ字ガ付イ
テ居ルガ、「戰時」ト書イテ、ソレヲ大東亞戰
爭ト云フ意味ニ讀マスト云フ方ガ無理デハ
ナイカ、大東亞戰爭ト云フナラバ大東亞戰
爭ト書イタ方ガ宜イノヂヤナイカト云フ疑
ヲ持ッテ居ルノデアリマス、ソレカラ大東亞
戰爭ト云フ意味ニナリマスト、此ノ法律ハ
大東亞戰爭ガ濟ミマシタラバ、是ハマア何
カノ形式デ濟ンダト云フコトヲ表示スルコ
トニナルダラウト思フノデスガ、濟ミマシ
タラバ、モウソレト同時ニ此ノ法律ハ效力
ヲ失フモノデアリマスカ、或ハ此ノ法律ノ
效力ヲ失ハス爲ニ特別ノ立法ヲ必要トスル
ト云フ御考ナノデアリマセウカ、此ノ二ツ
ノ點ニ付テ御說明ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=82
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083・大森洪太
○政府委員(大森洪太君) 只今御質疑ノ第
一點デアリマスル「戰時」ノ文字ニ付テノ解
釋ノ問題デアリマスガ、御尤ノ御質疑ト存
ズルノデアリマス、御承知ノヤウニ民法ナ
リ、商法ナリ、或ハ民事訴訟法ナリ、其ノ
他ノ法規ニ於キマシテモ、單ニ「戰時」ト規
定ヲ致シマシテ、所謂抽象的ニ總テノ戰時
ヲ指ス用例モ確カニアルノデアリマス、卽
チ斯樣ナ使ヒ方ニ依リマスルト、日〓戰爭
デモ、日露戰爭デモ、或ハ將來何等カノ場
合ニ起リマス戰爭デモ、總テ指稱スル譯デ
アリマスルガ、今囘御審議ヲ願ッテ居リマ
スル裁判所構成法ノ特例案、戰時民事特別
法案及戰時刑事特別法案、此ノ三案ニ於テ
「戰時」ト申シマスルノハ、大東亞戰爭ニ限
ルノ趣旨デアリマス、サウスルト文字上甚ダ
疑ハシイヂヤナイカト云フ御非難モアルカ
ニ存ズルノデアリマスガ、實質的ニ申シマ
スルト、此ノ三案ハ實體法規竝ニ訴訟手續
ニ相當重大ナル變更ヲ加ヘムトスルノデア
リマシテ、此ノ大東亞戰爭ノ如キ大規模ノ
戰爭、卽チ今次ノ戰爭ヲ目標トシテ規定ヲシ
タモノデアリマシテ、大東亞戰爭以外卽チ
此ノ以後ニ如何ナル戰爭ガ起リマスルカ、ソ
レハ私共モ勿論豫測ハ出來マセヌケレドモ、
此ノ以外ノ戰爭タルヤ、必ズヤ此ノ戰爭ト同
ジ程度、同ジ規模ノモノダトハ思ハナイノ
デアリマス、詰リ此ノ三法案ハ、今囘ノ斯
カル大規模ナル大東亞戰爭ノミニ適用スル
ト云フ積リデ立案ヲシタノデアリマス、第
二點ノ御質疑デアリマスル戰爭終了ハ、固
ヨリ平和克復ニ依ッテ決スルノデアリマセウ
ガ、此ノ三法案ニ付キマシテハ、若シ幸ヒ
是ガ御協贊ヲ得マシテ、法律ニナッテ實施セ
ラレテ居リマスナラバ、別ニ法律ヲ以テ之
ヲ廢止スルコトヲ明カニスル積リデアリマ
ス、其ノ方針ト、ソレカラ此ノ三法案ノ附
則ノ末尾ニ書イテアリマスル經過ニ關スル
規定、此ノ二點ガ相俟チマシテ、此ノ三法
案ノ內容ニハ唯「戰時」ニト簡單ニ書イテア
リマスルケレドモ、大東亞戰爭ヲ意味スルノ
ダト云フ御了解ガ願ヘル積リデアッタノデ
アリマス、以上御答ヲ致シタ次第デアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=83
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084・次田大三郎
○次田大三郞君 シツコイヤウデスガ、「戰
時」ト云フノハ、「大東亞戰爭ノ時ニ於ケル」
ト云フヤウニ書イテハ何カ不都合ナコトガ
アルノデアリマセウカト云フ疑問ガ續イテ
生ズル譯デアリマス、ソレカラモウ一ツハ、
大東亞戰爭ニ限ルト云フノナラバ、別ニ戰
爭ガ濟ンダナラバモウ目的ガナクナッテ、當
然消滅スル、當然效力ガナクナル、別ニ立
法手續ヲスルト云フノハ、却ッテ疑ヲ生ズル
ノヂャナイカト云フ風ニ思ヒマスガ、如何デ
ゴザイマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=84
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085・大森洪太
○政府委員(大森洪太君) 第一點デアリマ
スルガ、御指摘ノ通リニ、今次ノ戰爭、或
ハ大東亞戰爭ト云フコトヲ法文ノ中ニ現ハ
スコトハ勿論差支ハナイノデアリマシテ、
ソレヲ故意ニ避ケタ譯デハナイノデアリマ
ス、唯立案ニ當リマシタ樂屋內ノ話デアリ
マスケレドモ、私ノ氣持ダケヲ申述べマス
ルト、此ノ大東亞戰爭、是ハ勿論今次ノ戰
爭デアリマシテ、此ノ戰爭ヲ我々目標トシ
テ進ンデ居ルノデアリマシテ、此ノ大東亞
戰爭ガ終了ノ後ニ我ガ日本ニ關スル限リ、
果シテ戰爭ト云フモノガアルノデアルカ、
ナイノデアルカ、左樣ナコトヲ豫想スル迄
モナイノデアリマシテ、此ノ大東亞戰爭ニ
目標ヲ集中シテ規定スレバソレデ宜イ、斯
樣ナ心持デアッタノデアリマス、是ハ理窟ノ
問題デハナイノデアリマシテ、斯樣ナ感情
ヲ持チツヽ法案ヲ書イタ、左樣ニ御了承願
ヒタイノデアリマス、第二點ハ誠ニ御尤ナ
ル御見解デアリマシテ、此ノ法案ガ實質ハ
只今申述ベタ通リ、形式上大東亞戰爭ニ關
スルモノデアルコトハ毛頭モ疑ガナイモノ
デアリマスルナラバ是ハ形式上ノ問題デ
アリマス、ソレハ御指摘ノ通リニ當然戰爭
終了ト共ニ失效スル、斯ウ見ルノガ至當デ
アリマセウ、併シ丁度斯ウ云フヤウナ恰好
デアリマスルカラ、是ハ改メテ法律ヲ以テ
之ヲ廢止スルニ如クハナシ、其ノ方ガ丁寧
デアル、其ノ方ガ明カデアル、斯樣ニ考ヘ
タ次第デアリマシテ、其ノ方針ヲ以テ臨ン
ダ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=85
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086・次田大三郎
○次田大三郞君 御說明ヲ伺ヒマスルト、
大東亞戰爭ト云フ文字ヲ表ハシテモ差支
ガナイ、ソレナラバ其ノ文字ヲ表ハサレタ
方ガ、今ノ疑ヲ除去スル爲ニ戰爭ガ濟ンダ
時ニ特別ノ立法ヲシテ、其ノ效力ヲ失ハシ
ムルト云フ面倒ナ手續ヲスル必要モナクテ
非常ニ親切ナンヂャナイカ、サウ云フ風ニ
思ヒマスガ、併シ是ハ議論デアリマスカラ
此ノ位ニ致シテ置キマス、後デ又申上ゲル
コトガアルカモ知レマセヌ、唯私ガ此ノ疑
問ヲ起シマシタノハ、實ハ今日初メテ承ッタ
ノデアリマスガ、會計法ノ戰時特例ト云フ
特別ノ法律ガ政府カラ提出サレテ居リマス、
ソレニハ第一條ニ「國務大臣ハ戰時(戰爭ニ
準ズベキ事變ノ場合ヲ含ム以下之ニ同ジ)
ニ際シ軍ノ需要充足其ノ他ノ爲必要アル場
合ニ限リ勅令ノ定ムル所ニ依リ會計法第二
十一條但書ノ規定ニ拘ラズ前金拂若ハ〓算
拂ヲ爲シ又ハ手形ノ保證ヲ爲スコトヲ得」
ト云フ規定ガ揭ゲラレテ居ルノデアリマス、
同ジ內閣カラ同ジ議會ニ提出ニナリマシタ
所謂戰時特例ニ關スル法律ノ一ツデアリマ
スルカラ、此處ノ戰時ト云フノモ、大東亞戰
爭ヲ含ムノカト思ハレルノデアリマス、サ
ウスルト括弧ノ中ノ「戰爭ニ準ズベキ事變
ノ場合ヲ含ム」ト云フコトガドウモ分ラナ
クナルノデアリマス、括弧ノ中ハ現在ハ不
特定ノ事變ハナイ譯デアリマスカラ、將來
起ルコトアルベキ事變ト云フ意味デ書キ、
ソレカラ括弧ノ外ノ戰時ト云フノハ、此ノ
大東亞戰爭ノ意味デアルト云フコトハド
ウモ無理ナ解釋ノ仕方ノヤウニ思フノデア
リマシテ、此ノ質問ヲ出シタノデアリマス
ガ、併シ是ハマア司法省關係ノコトデアリ
マセヌカラ、明日デモ法制局長官ノ御出席
ヲ求メマシテ、御說明ヲ願ヒタイト思ヒマ
ス、私ノ質問ハ是デ宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=86
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087・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 速記ヲ止メテ
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=87
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088・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 速記ヲ始メテ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=88
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089・山岡萬之助
○山岡萬之助君 戰時民事特別法案、之二
付キマシテ段々御質問ガアリマシテ殆ド問
題モ盡キテ居リマスルガ、二三點擧ゲテ政
府ニ承ッテ置キタイト思ヒマス、午前中ノ質
問應答ノ中ニ此ノ立法ハ戰時法デアル、ガ併
シ法文ノ中ニハ戰時以外卽チ平時ニ於テモ
適用スルコトガ望マシイヤウナ法規モアル、
殊ニ訴訟ノ遲延ヲ防グ點ニ付テハサウ云フ
風ニ考ヘテ行クベキ問題ニ付テ政府ニ於テ
ハ是ハ戰時立法デアルカラ何處迄モ戰時ニ
限ルト斯ウ云フ御說明デアリ、而シテ更ニ
民事訴訟ハ非常ニ遲延勝デアル之ヲ是正
スルコトハ司法當局トシテハ非常ニ苦心ヲ
拂ッテ居ル、將來ニ付テモ是ガ努力ニ努メル
ト云フコトデ其ノ政府ノ心構ニ付テハ私モ
誠ニ結構ナコダト思フノデアリマス、唯併
シ私ノ伺ッテ置キタイコトハモウチヨット進
ンダ根本的ナ考ヘ方ニ付テ伺ヒタイノデア
リマシテ、戰時立法ハ成ル程非常立法ニ外
ナラヌノデアリマスカラ、戰爭ガ濟メバナ
クナルノハ當然ナコトデアリマスケレドモ、
兎ニ角此ノ戰時狀態ト云フモノハ旣ニ事變
トシテハ長ク續ク、之カラモ相當長期ニナ
ルト云フコトハ覺悟シナケレバナラナイ、
其ノ長期ノ間ニ條文コソ少ケレ、民事刑事
ニ亙ッテ殆ド總テノ動キニ對シテ規定ヲ致
サレテ居ルノデアリマス、サウスルト相當
長イ期間之ヲ運用シテ參リマスト」云フト、
ソコニ實際ノ裁判慣習、其ノ他廣イ意味ニ
於ケル司法慣習ト云フモノガ出來テ來ル、
サウナリマスト云フト之ヲ全然元ヘ戾シテ
古イ法律觀念デヤッテ行カウト云フコトハ
ドウカト思フノデアリマス、私ハ望マナイ
ノデアリマス、何故カト申シマスレバ既ニ
時代ハ經過致シマシテ今日ハ國家ノ有ラユ
ル事態ハ改革ヲシナケレバナラヌ、是ハ私
今更申ス必要モナイコトデ、卽チドウシテ
モ諸般ノ事物ハ改革ヲ要スル、斯ウ云フコ
トニナルト云フト司法ニ於テモ日本法律ト
云フコトヲ言ハレテ色々御〓究ニナッテ居ル
ノデアリマス、サウスルトサウ云フ見地カ
ラ改革ヲシナケレバナラヌト云フ考ヘ方カ
ラ行クト云フト、此ノ戰時立法ト云フモノ
モ其ノ見地カラ出テ相當迄改メル卽チ正
シイモノニ改メル、改ムベカラザルモノハ
成ルベク控ヘ目ニスル、改メテ宜イモノハ
控ヘ目ニスル必要ハナイ、大イニ進ンデ規
定ヲシタ方ガ宜イ譯デ、ソコデ是ハ私ノ考
トシテハ、諸般ノ事物ハ改革シナケレバナ
ラヌノデアルカラ、改革ニ必要ノアル限リ
ハ其ノ考デ此ノ立法モシ又運營モシテ行ク、
是ガ宜イノデアルト思フノデアリマスガ、午
前ノ御說明ニ依レバ戰時立法デアルカラ戰
時ガ濟メバ是ハ止メテ元ヘ戾ルノダ、斯ウ
云フ風ナ意味ノ御說明デアリマス、私ハ元
ヘ戾ルト云フ考ヘ方ガドウカト思フノデア
リマス、戾ルト云フノハ戰時ニ於ケル特殊
ナモノダケ止メルノデアリマスケレドモ
宜イモノハ何モ戾ス必要ハナイ、戰時立法
ニ依ッテ長期ノ戰爭ガ行ハレタナラバ良イ
モノハ其ノ儘進ンデ行ケバ宜カラウ、デス
カラサウ云フ根本ノ考へ方ニ付テ午前ノ御
說明デハ私ニハドウカト疑ガアリマスカラ
今一應御說明願ヒタイ、ソレカラ第二ニ
民事訴訟ノ停頓勝デアルコトニ付テハ當局
ノ憂ヘラレル通リデアリマス、民間ニ於テ
モ頗ル困ッテ居リマス、我ガ國ニ於ケル民事
訴訟ノ發展シナイ所以ハ凡ソ訴訟ガ長ク掛
カッテ費用ノ爲ニ權利ノ執行ト云フモノハ殆
ド出來ナイ、サウ云フ狀態ニアル、加フルニ
民事執行强制執行ト云フモノガドウモ思フ
ヤウニ行ッテ居ラヌ、不動產競賣ニ至ッテハ
非常ニ長ク掛カッテ居ル、ソレデアルカラ、
斯ウ云フ際ニ唯六條ノ規定ニ依ッテ、攻擊防
禦ノ期間ヲ定メ、ソレニ依ッテ攻擊防禦ガ出
來ナイヤウニスルノハ消極的ノ規定デ、モッ
ト事實ノ眞相ヲ積極的ニスルヤウニ規定ス
ル一體民事訴訟ガ當時者ノ處分權ヲ土臺
ニシテ居ルト云フコトヲ一ツ考ヘ直サナケ
レバナラヌデハナイカ、凡ソ裁判所ノ事務
ニ現レタ以上ハ、中ニ原告ガ主張セヌデモ
或ハ被〓ガ言ハヌデモ、眞相ニ卽シタ裁判
ヲ求メルコトガ當事者ノ考デアル以上、裁
判所ガ相當ノコトヲスルコトガ望マシイ、殊
ニ我ガ國ニ於テハサウデナケレバナラヌ、
然ルニ個人主義ニ偏シテ主張ヲセズニ、權
利ノ上ニ眠ッテ居レバ其ノ儘トスル、斯ウ
云フ裁判形式ハ此ノ際考ヘ直サナケレバナ
ラヌト思フ、サウスルト凡ソ訴ヲ提起
スル迄ハ民事ノコトダカラ裁判所ガ進ンデ
處置スルト云フコトハ適當デナイ、個人ノ
權利ニ干涉スルコトヲシテナラヌコト
ハ問題ニナリマセヌガ、當事者ガ之ヲド
ウカシテ貰ヒタイト云フ意味デ訴ヲ出
シ、權利ガアルヤウニシテ貰ヒタイト云フ
コトヲ云フナラバ、攻擊防禦ノ方法ヲ一々
言ハナイデモ、職權ヲ以テ適當ノ取扱ヲス
ルコトガ望マシイ、然ラズシテ今日迄ノヤ
ウニ何囘モ開廷シテヤッテ行クコトハ、
裁判官ノ能率ヲ增進スル所以デナイ、其ノ
點ガ法文ニ現レテ居ラヌヤウニ思フ、殊ニ
休止デスガ、是ハ當事者ガ相談シテ訴訟ノ
進行ヲ止メレバ、ソレデ休止サレル、何年
デモサウ云フ風ニシテ行ク、ダカラ御示シ
ノ如ク統計ニ三年以上ノ審理期間ノモノガ
凡ソ二千五百件位地方裁判所ダケデアル、
區裁判所デサヘ千二百件位アリマス、區裁
判所ノ事件アタリガ三年モ續イテ居ルノガ
アルヤウニ思フガ、刑事事件ヲ斯ウ云フ見
地カラ行クコトハドウカト思フノデアリマ
ス、併シ訴ヲ受理シタ以上ハ、間違ッタ裁判、
卽チ權利ノ上ニ眠ッテ居ルモノハ構ハナイ、
權利ノアルモノハ與ヘタガ宜イト云フヤウ
ナコトハ寧ロ時代ノ進ミ方デハナイ、サウ
云フ風ニ思ハレマスノデ、其ノ根本問題ニ
付テソレ等ノ規定ヲ缺イテ居ルト云フノハ
ドウ云フモノカ、モウ少シサウ云フ規定ヲ
置ク方ガ宜イデハナイカト思フノデアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=89
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090・大森洪太
○政府委員(大森洪太君) 先ヅ第一點ニ對
スル御答デアリマスガ、御示シノ通リニ今
日ノ司法法規ニ改善ノ餘地ノ多分ニ存スル
ト云フコトニ付テハ全ク御同感デアリマス、
唯法規ガ不備デアルト云フバカリデナク、
其ノ運用ニ付キマシテモ、我々ト致シマシ
テ十分ニ改善ヲ試ミナケレバナラナイモノ
ガアルト、政府ニ於テモ全ク徹頭徹尾御同
感デアリマス、ソレデ假令戰時中ニ於キマ
シテモ、是等一般的司法法規ヲ如何ニ改善
スベキデアルカ、又其ノ司法法規ノ下ニ於
テ運用ヲ如何ニ改善スベキカト云フコトニ
付テ、十分努力ヲシテ〓究シタイト思フノ
デアリマス、デアリマスカラ戰時中一般的司
法法規ノ運用ニ關シテ何等其ノ改善ヲ考ヘ
ナイト云フ積リハ固ヨリナイノデアリマシ
テ、平時ニ比シテ特ニ其ノ〓究ヲ戰時ニ於テ
ハ十分ニシナケレバナラヌト思ッテ居ル
ノデアリマス、サウシテ改善スベキモノハ
又其ノ時々ニ應ジテ改善シタイト思ヒマス
ガ、唯茲ニ御審議ヲ願ヒマスルノハ、主ト
シテ、勿論例外モアリマスルケレドモ、主
ニ手續ヲ戰時ノ關係上、已ムヲ得ザル程度
ニ於テ簡捷ニスル規定デアリマス、デアリ
マスルカラ、斯樣ナ規定ハ戰時ガ濟ミマス
ルナラバ、是ハ平時ニ復スベキガ當然デア
ラウト思フノデアリマス、卽チ此ノ三法律案
ハ何處迄モ戰時ニ關スル特例デアリマシテ、
戰時ガ濟ミマスルナラバ平時ノ狀態ニ復シ
タイト思フノデアリマス、但シ其ノ平時ノ法
規其ノモノガ、又其ノ法規ニ對スル運用其ノ
モノガ、之ニ付テハ勿論刻々改善ヲ〓究シ
テ行キタイト思ッテ居ル次第デアリマス、第
二點デアリマスル、今日午前ニモ申述べマ
シタ通リ民事訴訟法ノ促進ノ實績ニ付キマ
シテモ、全ク私共申譯ガナイヤウニ思ッテ居
ルノデアリマス、大分傾向トシテハ早クナ
リマシタケレドモ、今尙相當ニ日時ヲ要ス
ルモノガアリマシテ、慚愧ノ至リニ存ジテ
居ルノデアリマス、ソレニ付キマシテ御指
摘ノヤウニ職權主義ヲ加味スルノガ宜カラ
ウト云フ御意見モアリマシタ、御尤ニ考ヘ
ルノデアリマス、舊民事訴訟法ニ比シマシ
テ、現行民事訴訟法ハ御承知ノ通リ釋明ナ
リ送達ナリノ點ニ於キマジテ職權ノ趣旨ヲ
大分加味シ得ルノデアリマスガ、是ダケデ
ハ確カニ十分デナイト思ヒマス、併シ今日
此ノ際職權主義ヲ如何ニ加味スルカト云フ
コトヲユル〓〓考ヘテ居ルコトハ、勿論結
構デアリマスルケレドモ、差當リ取敢ヘズノ
必要トシテハナカ〓〓〓究ガ屆キ兼ネル實
情ガアルノデアリマス、デアリマスルカラ
此ノ職權主義ヲ民事訴訟法ニ如何ニ、雨上
加味スベキヤト云フ問題ハ暫ク今後ニ御委
セヲ御願ヒスルコトニ致シマシテ、此ノ戰
時特例ヲ以テ臨ミタイト思フノデアリマス、
尙職權主義ヲ加味セザル點ニ付テノ御非難
デアリマスルガ、先程來御說明ヲ致シマシ
タ通リニ、此ノ法案ニ於キマシテハ調停制
度ヲ適當ニ擴張スルコトニ致シマシテ、問
題ハ固ヨリ別デアリマスルケレドモ、此ノ
調停制度ノ擴張ニ依リマシテ、御指摘ノ點
ハ大分緩和ガ出來ルノデハナイカト思ッテ
居ル次第デアリマス、休止ノ點ニ付キマシテ
モ尙他ノ民事訴訟法ノ一般ノ問題ト牽連シ
テ大イニ〓究ヲ要スル必要ガアリマスルケ
レドモ、此ノ戰時ノ特例トシテハ先ヅ暫ク
手ヲ觸レナイコトニシテ、是ダケニ付テ特
例ヲ拓キタイ、斯樣ニ考ヘタ次第デアリマ
ス、右ノ經過ヲ御了承願ヒタイノデアリ.マ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=90
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091・山岡萬之助
○山岡萬之助君 御說明ハ了承致シマシタ
ガ、ソレニ關シテ職權主義ノ法規ヲ以テ時
局ノ必要ヲ充タスト云フコトハ私ハモウ少
シ進ンダ規定ガ望マシイノデアリマスガ、
政府ハ御〓究ノ結果、此ノ提案ヲ爲サッタト
云フコトデ左樣ニ承リマス、次ノ問題ニ移
リタイト思ヒマス、次ノ問題ハ和解調停ノ問
題デアリマス、民事訴訟ガ右述べマシタヤ
ウニ非常ニ遲延ノ狀態ニアリマスル所カラ
案出サレタモノガ此ノ數年前ノ調停、金錢
債務調停法カラ、一般ノ民事訴訟ガ之ニ移ツ
テ居ルノデアリマス、ソレニ依ッテ總テノ民
事訴訟ノ遲延ヲ防ガウト云フコトハ枝葉ノ
立法デ民事ノ裁判ヲ緩和シヨウト云フコト
デ、此ノ點ヲ私ハドウカト思フノデアリマ
ス、職權主義ヲ加味シテ根本ヘ戾ッタ規定ヲ
シ、斯カル非常時ニ實行シテ見ルト云フコ
トハ望マシイコトニ思ヒマスルガ、金錢債
務調停法以來ノ調停ノ形ヲ益〓擴大シテ行ク
ト云フコトハ)若シ調停法ニシテ萬全ナモ
ノデアリマスレバ、勿論爭ノ形ヲ採ラナイ
デ、調停デ行クト云フコトハ、民事ノ救濟
ニハ宜イト云フコトニナル、ソレナラバソ
レヲ擴張スルコトニハ贊成シナケレバナラ
又、併シ金錢債務調停法以來ノ調停ト云フ
モノガ、統計上ニ於テハ非常ニ能ク、片付
イテ居ル、ダカラ統計的ニ言ヘバ好イ結果
ヲ見テ居ルト云フコトニナリマスケレド
モ、ドウモ內容的ニ申シマスト、是ハドウ
モ相當考ヘナケレバナラヌ點ガアルノデア
リマス、當時本法實施期限ヲ限定シテ、此
ノ調停法ハ一時ノコトデアルト云フノデ議
會ガ承認シタモノデアル、其ノ後期限規定
ヲ止メテ、當分ノ間ト改メタ、其ノ後今日
ニ至ッタ、是ハ何トシテモ當分ノ意味デナケ
レバナラナイ、サウスルト云フト、之ヲ整
理シテ、勿論爭フヨリモ和解調停ニ越シタ
コトハナイト云フコトハ誰モ言フコトデア
リマス、併シ今日ノ實績カラ申スト云フト、
無論大體ニ於テ片付イテ居ル、訴訟ガ片付
イテ居ルコトハ確カデアル、內容カラ見ル
ド云フト、ドウモ權利ガ無イ者ニモ拂ッテヤ
レト云フヤウナ、財力ガアル人ニハ丁度本
案十二條、强制執行ヲ緩和スル規定デアリ
マス、之モ其ノ氣分ノ現レデナイカト思ヒ
マス、サウ云フ氣分ガ調停ニハ多分ニ現ハ
レテ、債權者ニシテ力ガアレバ負ケテヤレ、
又債務者ニ力ガアレバ拂ッテヤレ、請求ガア
レバ幾ラカデモ拂ヘ、斯ウ云フ風ナ調停ノ
仕方ガ實際アルノデス、此ノヤウナコトヲ
シナイヤウニシタイモノデアル、卽チ何處
迄モ正義ノ上カラ立ッタ司法デアリマスカ
ラ、サウ云フコトガアレバ司法的ニ處理シ
タトハ云ヘナイト思ヒマス、權利ノナイモ
ノチラバ何處迄モ拂ハナイデ宜イ、假令拂
フ力ハアッテモ、其處ヘ持ッテ行カナケレバ
ナラヌ、ソレガ今日モ御說明ノアリマシ
タ金錢債務調停法ノ第七條ニ債務ノ內容迄
變ヘテシマフト云フヤウナ强イカヲ有ッテ
居リマスカラ、此處ガドウモ正義ノ觀念カ
ラ言ッタナラバ考ヘナケレバナラヌ重點デ
アリマス、而シテ是ガ力ニナッテ調停ト云フ
モノガドン〓〓片付イテ行ク、ダカラ調停
ガグン〓〓片付クニハ斯ウ云ヲ規定ガナケ
レバナラヌシ、又之ガ背景ニ於テ權利ノ無
イ者ニ與ヘルヤウニナル結果ニナル、サウナ
レバ結局此ノ兩點ノ調停ハ運用ダト云フコ
トニナリマスガ、確ニソレハ運用デアリマ
セウ、ソコデ裁判官ハ何處迄モ中心トナッテ
最後ノ決定ヲ與ヘルト云フコトガ此處ニ書イ
テアリマスガ、裁判官ガサウ云フヤウナ債
務ノ內容迄變ヘテ行クト云フヤウナコト
デ、權利ト云フモノガ實際ニ存在シタモイ
ト認メルカ認メナイカノ問題ヲ解決スル、
此處ハ運用スル人ガ餘程注意シナケレバナ
ラヌモノト思フ、サウ云フ關係デアルノニ
此ノ調停法デ今度ノ戰爭ノ必要ニ應ジヨウ
トシテ居リマスカラ、立法ノ初メノ考カラ
見レバ擴大スベカラザル所ニ擴大シテ居ル
ト云フ嫌ヒガアル、實際ノ結果カラ見レバ
ソンナ風ナ結果デアル、ソレカラ今一ツ問
題トシテ伺ヒタイノハ、今度ノ此ノ法律十
八條以下ノ準用、更ニ再準用、ソレデグル
グルト〓ッテ殆ド幾ツモノ調停法規ト云フ
モノガ大體根柢ガ同ジモノニ歸著スル、果
シテ然ラバ斯ウ云フモノヲ一纏メニシ、民
事訴訟法ニ於ケル和解ト云フ觀念モ統合
シ、和解調停ト云フ名前ヲ整備スル、又民
事訴訟ヲスル前ニ調停スル、古イ制度ノコ
トモ考ヘ、裁判ノ方ニ於テモ和解ヲ骨子ト
シテ調停シテヤル調停自體カラ云ヘバ言
フマデモナク和解デアル、受訴裁判所ガ調
停ガ出來ルト云フ迄本案デ進ンデ來テ居
ル、要スルニ是ハ發達ノ經過デアリマス、
此ノ邊ハモウ相當長イコトデ、當分ノ間ト
云フコトデ議會ガ承認シテ餘程間ガアルノ
デス、サウ云フ當分ト云フヤウナコトニ依ッ
テ大部分ノ事件ヲ片付ケルヤウナコトヲセ
ヌデ、永久調停和解ノ關係ヲ立テラレマシ
テ、速カニ斯ウ云フ非常時ノ際、戰時立法
ヲ爲サル時ニ於テモ、サウ云フ簡單明瞭ナ
モノヲ以テ臨ムコトデアレバ非常ニ宜イト
思フノデスガ、サウ云フ〓究ガ出來テ居ッ
タトスレバ、何ガ故ニ斯ウ云フ運用的ナ再
準用ヲ爲サッタカ、又未ダ出來テ居ラヌトス
レバドウ云フ意味ニ於テ斯樣チ狀態デアル
ノカト云フコトヲ伺ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=91
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092・大森洪太
○政府委員(大森洪太君) 第一點ノ御質問
ハ調停ノ實績ニ關スル問題デアルヤウニ
拜承致シタノデアリマス、調停ノ實績ニ付キ
マシテ、私共是亦今日決シテ完全ナル狀態ニ
アルトハ申シマセヌケレドモ、實ハ私共モ是
迄數年來相當苦心ニ苦心ヲ重ネマシテ、良好
ナル成績ヲ擧ゲツヽアルモノデアルト私共
ハ思ッテ居ルノデアリマス、尤モ率直ニ申シ
マスルト、例ヘバ金錢債務臨時調停法實施
ノ當初ニ於キマシテ、調停委員ノ不馴レノ
問題モアリマシタシ、又裁判所側ニ於テ
モ不馴レノ點ハ少クナカッタノデアリマス、
又中ニハ調停委員ニ於キマシテ唯事件ノ成
績ヲ擧ゲル爲ニ調停ヲ急イダト云フヤウナ
缺點モ確ニアリマシタ、又調停ノ本旨ヲ誤
解致シマシテ、唯眞中ニ決スレバ宜イノダ
ト云フヤウナ、好イ加減ナモノモ多少アッタ
ヤウニ存ズルノデアリマス、或ハ又判事ガ調
停委員ニ委セテシマッテ、調停ガ裁判所ノ
本務デアルト云フコトヲ閑却シタヤウナモ
ノモ稀ニハアッタヤウデアリマス、併シソ
レ等ハ諸方面カラノ御注意御指摘ニ依リマ
シテ、私共ハ十分ニ改善シ了ッタヤウニ存ズ
ルノデアリマス、但シ決シテ今日ノ成績ヲ
以テ滿足スベキモノデナイノデアリマシテ、
私共ハ明日ヲ今日ヨリモ更ニ善クシタイト
云フ努力ヲ以テ續ケテ居ル譯デアリマス、
兎ニ角努力ハ致シマスルケレドモ、今日ノ
調停ハ先ヅ私共ノ希望シタヤウナ實績ニ向
ヒツヽアルヤニ存ズルモノデアリマスシ、
而モ此ノ調停タルヤ根本ニ於テ其ノ趣旨ハ
惡カラウ筈ハナイノデアリマスルカラ、ソレ
デ戰時ニ於キマシテ之ヲ擴張スルト云フコ
トハ最モ望マシキ一ツノ處理方法デハナイ
カト思ッタ譯デアリマス、第二點デアリマス
ルガ、調停ヲ前提トスル手續ヲ何故置カナ
カッタカ、例ヘテ申シマスルト、和解ナリ調
停ナリヲ經ナケレバ訴訟ニ進マナイ、以前
サウ云フヤウテ手續ガアッタヤニ承ルノデ
アリマス、勸解ト申シマスカ、其ノ手續ヲ
何ガ故ニ復活シナカッタカ、斯ウ云フ御趣旨
ノヤウニ拜承致シマシタ、勿論ソレモ考ヘ
タノデアリマス、併シ私共ハ如何ニ戰時デ
アルト申シマシテモ、必要ナル限度ニ於テ
ハ已ムヲ得マセヌケレドモ、成ルベク急激
ナル變化ヲ避ケヨウト思ッタノデアリマス、
卽チソレガ民心ニ與ヘマスル不安ト云フヤ
ウナコトヲモ考ヘマシテ、出來得ル限リ變
更ヲ少クシタイト考ヘマシタ、從ツテ調停
ヲ必要的前提手續トスルコトハ止メタノデ
アリマス、勿論是ハ止メッ放シト云フ譯デ
ハナイノデアリマシテ、將來〓究ハ致シマ
スルケレドモ、今日ノ狀態ニ於テハ調停ヲ
必要手續トシテ臨マナケレバナラナイ程ノ
緊迫狀態デハナイ、斯樣ニ考ヘタ次第デア
リマス、是ハ見込違ヒデアルカモ知レマセ
ヌケレドモ、私共ノ考ヲ率直ニ申シマスル
ト、左樣ナ次第デアリマス、ソレカラ第三
點ノ、總テノ調停ヲ一ツノ法規ニ統一スル、
或ハ民事訴訟法中ニ編入シテシマヘバ宜イ、
斯ウ云フ御意見デアリマシテ、是ハ御尤
デアリマス、是ハ朝野ヲ問ハズ法曹ノ殆ド
各方面カラ左樣ナ註文ナリ、建言ナリガ參ッ
テ居ルノデアリマシテ、私共ハソレハ結構
デアラウト、實ハ著手中デアリマス、完成
ハ致シテ居リマセヌ、併シソレハマア平時
法典整備ノ問題デアリマシテ、差當リノ必
要ニ應ズルト云フ問題トハ多少違フヤニ考
ヘタモノデアリマスルカラ、兎ニ角此ノ戰
時ノ法案トシテハ此ノ法案ノ形デ先ヅ賄ヘ
ハシナイカ、其ノ程度デ御勘辨ヲ願フコト
ニシタノデアリマシテ、之ガ爲調停法規統
一ト云フ望ヲ捨テタノデハナイノデアリマ
ス、左樣御了承ヲ願ヒタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=92
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093・山岡萬之助
○山岡萬之助君 大體今迄ノ說明デ一應承
リマシタカラ、斯ウ云フ場合デアリマスル
カラ是以上御尋ヲシマセヌガ、此ノ調停ヲ
訴訟ノ前提ニスルト云フコトヲ、私ハ强ク、
絕對條件ト云フコトニハ考ヘテ居ラヌノデ
アリマス、卽チ民事訴訟法ニ和解ノ手續ガ
アル、サウ云フ場合ニ裁判所ト云フモノニ
結ビ付ケタ調停ノ考ヘ方ヲシテ行クコトガ
一ツノ考へ得ベキ點デハナイカト云フ程度
デ考ヘテ居ルノデアリマス、ソレダケ申上ゲ
テ、私ノ質問ハ此ノ問題ニ付テハ是ダケデ
終了致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=93
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094・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 戰時民事特別
法案ニ關シテ外ニ御質問ハゴザイマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=94
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095・岩田宙造
○岩田宙造君 若シ御質問ガ誰方ニモナケ
レバ、チヨット速記ヲ止メテ戴イテ懇談ヲ致
シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=95
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096・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 速記ヲ止メテ
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=96
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097・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 速記ヲ始メ
テ······外ニ御質疑ハゴザイマセヌカ、御質疑
ガナイモノト認メマシテ裁判所構成法戰時
特例案、之ニ付キマシテ先ヅ司法大臣ノ御
說明ヲ伺ヒタイト思ヒマス、司法大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=97
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098・岩村通世
○國務大臣(岩村通世君) 裁判所構成法戰
時特例案ノ提出ニ至リマシタ理由ノ要旨
ハ、本會議ニ於テ申上ゲマシタ如ク、今囘
ノ大東亞戰爭中ニ限リ適用致ス趣旨ノ下ニ、
裁判所及檢事局ノ本來ノ機能ヲ昂メ、裁判檢
察ノ運行ヲ迅速的確ニシ、以テ國內治安ノ
維持ト國民權義ノ保全等ニ付キ、司法本來
ノ職責ノ遂行ニ遺憾ナラカシメムトスルノ
デアリマシテ、特ニ戰時下第一線竝ニ占領
地域ニ相當多數ノ司法部職員ヲ進發セシム
ルノ必要ヲモ考慮シ、且現在ニ於テ既ニ豫
想セラルヽ交通上ノ問題ヲモ參酌シツヽ
同ジク本委員會ニ付託セラレテ居リマス
戰時民事特別法案及戰時刑事特別法案ト相
俟ッテ、裁判所構成法ニモ、今次大戰爭ノ現段
階下ニ於テ、是非共必要ナリト思量スル最
小限度ノ應急臨時ノ特例ヲ設ケ度イト存ズ
ルノデアリマス、而シテ其ノ特例ガ大體四
項目デアルコトト、其ノ內容ノ大略ハ本會
議デ申述ベマシタガ、尙之ヲ敷衍シテ申シ
マスレバ、第一ノ要點ハ第三條及第四條ニ
規定スル所デ、現在裁判所構成法ノ原則ト
シテ居ル訴訟ノ三審制ノ一部ヲ改メ、或特
殊ナル民事刑事ノ事件ニ限リ、控訴審ヲ省
略シテ二審制ト爲サムトスルモノデアリマ
ス、卽チ民事ニ付テハ裁判所構成法第十四
條第二ノ訴訟、例ヘバ賃貸借ニ基ク建物明
渡ノ訴ノ如キモノ及民事訴訟法第六編(强制
執行編ニ)定メテアル訴訟、例ヘバ執行判決
ヲ求ムル訴、請求異議ノ訴、假差押、假處
分異議ノ訴ノ如キモノノ第一審ノ判決ニ對
シテハ、控訴ヲ爲スコトヲ得ズ直チニ上告
ヲ爲シ得ルモノト致シマシタ、前者ハ現在
デモ特ニ迅速ナル審判ヲ要スルモノトシテ、
訴訟物ノ價格ニ拘ラズ之ヲ區裁判所ノ管轄ニ
屬セシメテ居ルモノデアリマスルシ、後者
ハ債務名義ヲ有スル債權者ガ既ニ强制執行
ニ著手シテ後ノ手續上ノ問題、假ノ權利保
全處分等ニ關スル事項デアリマスノデ、何
レモ戰時下特ニ迅速ナル處理ヲ爲スヲ相當
ト考ヘマス、尤モ民事訴訟法第六編中ニハ、
執行手續ニ關聯シテ生ジマスル配當加入者
ノ債權ノ確定ノ訴及差押債權者カラ第三債
務者ニ對スル取立ノ訴ニ付規定スル所ガア
リマスガ、之ハ性質上通常ノ訴訟デアリマ
スカラ除外致シマシタ、次ニ刑事ニ付キマ
シテハ、戰時下ニ於ケル國內ノ治安ヲ確保
シ、國防經濟ノ完遂ニ資シ、併セテ防諜ノ
完璧ヲ期スル爲ニ、特ニ事件處理ノ迅速ヲ
圖ラネバナラヌ種類ノ犯罪ヲ最小限度ニ取
上ゲテ、之ニ關スル訴訟審ヲ省略スルコトニ
致シマシタ、卽チ刑法系統ノ犯罪中安寧秩
序ニ對スル罪、一般ノ竊盜、强盗ノ罪、常
習竊盗及强盗ノ罪等及戰時刑事特別法第一
章各條ニ定ムル罪、例ヘバ戰時放火、戰時
騷擾、戰時國政變亂等ノ如キモノ竝ニ言論、
出版、集會、結社等臨時取締法中ノ造言飛
語等ノ罪ノ如キハ、戰時下ニ於ケル公共ノ
安寧ヲ阻害スルコト甚シキモノガアリマス
ルシ、國家總動員法、昭和十二年法律第九
十二號(輸出入品等ニ關スル臨時措置ニ關ス
ル法律)等ノ違反ノ罪ハ經濟統制ヲ紊リ、
國防經濟ノ完遂ニ著シキ支障ヲ來スモノデ
アリ、又軍機保護法、軍用資源祕密保護法、
等ノ違反ノ罪ハ主トシテ軍機ノ保持防諜ノ
立場カラ、訴訟審理途中ニ於テモ之ニ關シ
テ機密ノ漏洩ヲ極度ニ防止セネバナラヌノ
デアリマスノデ、是等犯罪ニ關スル事件ノ
第一審判決ニ對シテハ、控訴ヲ許サズ直接
上告ヲ爲シ得ルモノトシタノデアリマス、
尤モ以上ノ犯罪中、外國ト通謀シ又ハ外國
ニ利益ヲ與フル目的ヲ以テ犯シタルモノ
デ、現在國防保安法ニ規定シテアルモノニ
付テハ、同法ガ現ニ二審制ヲ採用シテ居ル
次第デアリマスノデ、總テ同法ヲ適用スル
趣旨デゴザイマス、第二ハ第五條及第六條
ニ規定スル所デ、現在上〓ハ總テ大審院ノ
ミガ其ノ裁判權ヲ有シテ居リマスガ、其ノ
一部ヲ控訴院ノ管轄ト爲スノ特例ヲ設ケ、
且此ノ場合ニ於ケル法律解釋ノ統一ヲ圖ル
爲ノ方策ヲ講ゼムトスルモノデアリマス、
卽チ前述ノ民事、刑事ニ付キ控訴審ヲ省略
スルコトトシタ事件中、第一審ヲ區裁判所
デ審判シタモノニ付テハ其ノ上〓ヲ控訴
院ニ管轄セシメムトスルノデアリマス、蓋
シ是等ノ事件ハ、前述ノ如ク戰時下特ニ處
理ノ迅速ヲ圖ラネバナラヌモノデアリ、事
案モ割合ニ複雜デナク、寧ロ輕微ナルモノ
ガ多イノデアリマスカラ、當然豫想セラル
ル交通ノ障害等ヲモ考慮ニ入レマシテ、成
ルベク地元ニ近イ控訴院ニ於テ上〓審ヲ處
理セシムルノヲ相當トスル次第デアリマス、
從ッテ之ガ爲、同一ノ法律點ニ付大審院及控
訴院相互間ニ相牴觸スル判決ノ爲サレル虞
モアリマスノデ、之ガ統一ヲ圖ル爲、控訴
院ガ上告裁判所タル場合ニ、法律ノ同一ノ
點デ、曾テ大審院ヤ上〓裁判所タル控訴院
ノ爲シタ判決ト相反スル意見ノアリマス時
ハ、決定ヲ以テ事件ヲ大審院ニ移送シ、大
審院ニ於テ之ガ判決ヲ爲スコトト致シマシ
タノデゴザイマス、第三ハ第二條ノ規定スル
所デ、區裁判所ニ於ケル刑事事件ノ事物管
轄ヲ必要ナル限度ニ於テ擴張セムトスルモ
ノデアリマス、現在區裁判所デハ、有期ノ
懲役及禁錮ニ該ル罪ニ付テハ、短期一年未
滿ノモノニ限リ裁判權ヲ有シテ居ルノデア
リマス、然ルニ戰時刑事特別法案第五條第
一項中ニアル戰時非常狀態下ニ於ケル竊盜
罪ト、昭和五年法律第九號(盜犯等ノ防止
及處分ニ關スル法律)、第二條及第三條ノ
常習竊盗罪トノ短期ガ何レモ三年デアリマ
スノデ、地方裁判所ノ管轄ニ屬スルノデア
リマスガ、是等ハ法定刑コソ重イノデアリ
マスルケレドモ、罪質ハ竊盜ニ外ナラナイ
ノデアリマスカラ、豫審ヲ經ル必要ノナイ
モノニ限リ之ヲ區裁判所ノ管轄ニ屬セシ
メ、以テ其ノ處理ノ迅速化ヲ圖ルコトト致
シマシタノデアリマス、第四ハ第七條ニ規
定スル點デアリマスガ、民事ニ付、訴訟事
件以外ノ法定事件ノミニ付キマシテ、抗〓
裁判所ノ爲シタ裁判卽チ決定ニ對シマシテ
ハ、更ニ抗〓ヲ爲シ得ザルコトト爲サムト
スルモノデアリマス、現在ハ法令ニ違背シ
タコトヲ理由トスル場合ニ限リ大審院ニ
再抗告ガ出來ルノデアリマスガ、實例ハ抗
〓裁判所ノ決定ガ取消サルヽコトハ極メテ
僅少デアリ且手續上ノ問題ニ關スルモノ
ガ大多數デアリマスカラ、戰時下大審院ノ
機能ノ發揚ト云フ點ヲモ考慮シタ次第デゴ
ザイマス、以上ガ本法案ノ大體ノ內容デア
リマスガ、本法ハ施行前ニ裁判所ガ受理致
シマシタ訴訟ニ付テハ適用致シマセヌ、又
昭和十六年法律第九十八號(戰時犯罪處罰
ノ特例ニ關スル法律)ハ、戰時刑事特別法
ノ施行ト共ニ廢止サレマスガ、全ク同ジ規
定ガ戰時刑事特別法中ニ設ケラレマスノ
デ、同法廢止前ニ犯シタ同法ノ罪ニ關スル
事件デ、本法施行後公訴ヲ提起スルモノニ
付テモ、本法中必要ナル規定ヲ適用スルコ
トトシ、其ノ規定ヲ附則第三項ニ設ケマシ
タ次第デゴザイマス、何卒御審議ノ程ヲ御
願ヒ致シマス、條文ハ少ウゴザイマスガ、
相當重要ナ規定デゴザイマスカラ、次官ヨ
リ大體ノ御說明ヲ申上ゲタラドウカト思ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=98
-
099・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) ソレデハ政府
委員発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=99
-
100・大森洪太
○政府委員(大森洪太君) 御指圖ニ依リマ
シテ簡單ニ逐條ノ說明ヲ補足シテ置キタイ
ト存ズルノデアリマス、第一條ハ申上ゲル迄
モナク戰時ニ於ケル特例ダト云フコトヲ現
シタニ過ギナイノデアリマシテ、此ノ戰時
タルヤ大東亞戰爭ノ戰時、斯ウ云フ意味デ
アルコトハ旣ニ申述ベタ通リデアリマス、
第二條ハ區裁判所ノ事物ノ管轄ヲ擴張シタ
問題デアリマシテ、戰時刑事特別法第五條
第一項ト申シマスノハ、戰時ノ暗ガリニ乘
ジマスル竊盜デアリマス、此ノ間ノ臨時議
會ニ於テ御協賛ヲ經マシテ、既ニ實施ニナツ
テ居リマスルアノ法律ノ中ノ竊盜ノ部分、
ソレト全ク同ジモノデアリマス、今度ノ戰
時刑事特別法案ニ於キマシテハアノ法律
ヲ廢止シマシテ、戰時刑事特別法ノ中ニ挿
入シタイト云フ考デアリマス、ソレカラ昭
和五年法律第九號ト申シマスノハ、御承知
ノ通リ俗ニ盜犯防止法ト謂ハレル法律デア
リマシテ、其ノ內ノ竊盜罪此ノ二ツハ御承
知ノヤウニ短期ガ三年デアリマシテ、現在
ノ裁別所構成法ノ規定ニ依リマスト、短期
一年ヲ越エテ居リマスカラ、地方裁判所ニ
參ル筈デアリマスケレドモ、只今司法大臣
ヨリ申述ベマシタ通リ、罪質ハ矢張リ竊盜、
ニ外ナラナイノデアリマスカラ、一般竊盜
同樣ニ區裁判所ノ管轄ニシタイ積リデアリ
マーク、併シ豫審ヲ經過スル必要アル事件ニ
付キマシテハ、是ハ地方裁判所ニ屬スルコ
トハ勿論デアリマスカラ、但書ヲ置イタ次
第デアリマス、第三條ハ、民事事件ニ付キ
控訴審ヲ省略スルコトヲ玆ニ規定シタノデ
アリマス、卽チ第一審、上告審、此ノ二審
級ニ致シマシテ、控訴審ヲ省略シタイト思
フノデアリマス、是ハ固ヨリ重大ナル變更
デアリマスルカラ、其ノ事件ノ種類ヲ決メ
テ限定シタ積リデアリマス、ソレガ第一項
ノ第一號ト第二號トデアリマシテ、此ノ訴
訟ノ種類等ニ付テハ、御質問ニ依リマシテ
後ニ他ノ政府委員ヨリ詳細申述ベタイト存
ズルノデアリマス、卽チ私共ト致シマシテ
ハ出來得ル限リ此ノ訴訟ノ種類ヲ限定シ
タ積リデアリマス、第二項ハ、控訴審ハ省
略シマスケレドモ、上〓ハ出來ルノデアリ
マスカラ、其ノコトヲ明カニシタ次第デア
リマス、末項デアリマスガ、御承知ノ附帶
訴訟ヲドウスルカノ問題デアリマス、此ノ
末項ノ文字ハ「果實、損害賠償、違約金又ハ
費用」ト云フヤウナ術語ヲ用ヒテアリマスガ、
是ハ御承知ノ通リ現ニ民事訴訟法中ニアル
規定ノ其ノ文字ヲ蹈襲シタノデアリマス
斯樣ナ附帶訴訟ハ本訴ノ運命ニ從フベキモ
ノトスルノガ適當ダラウト思ヒマシテ、從ッ
テ例ヘテ申シマスト、第三條第一項ニ、賃
貸人ト賃借人トノ間ニ起リマス家屋明渡ノ
問題ガアルト致シマス、卽チ賃貸人カラ賃
借人ニ對シテ家屋明渡ノ訴訟ヲ起シマス、
サウ云フ場合ニ、多ク實例ヲ見マスト、家
屋明渡及賃料又ハ損害金ノ請求ト云フモノ
ガ附帶シテ居リマス、本訴ハ明渡デアリマ
スカラ、此ノ附帶訴訟モ本訴ノ運命ニ從ハ
シメルト云フコトニ致シマシテ、卽チ明渡
訴訟、今申シマシタ賃貸借ニ基ク家屋ノ明
渡ハ控訴審省略ノ訴訟ニ屬シマスカラ、從ウ
テ附帶訴訟タル損害賠償請求又ハ家賃ノ請
求是亦同樣ニ二審級ニナルト云フコトヲ
明カニシタノデアリマス、後ニ申述べマス
ガ、御承知ノヤウニ刑事訴訟ニ於キマシテ
ハ此ノ附帶訴訟ノ關聯ガナイモノデアリ
マスカラ、刑事訴訟ニ於キマシテハ、是ハ
所謂附帶訴訟ヲ本訴ノ運命ニ從ハシメル譯
ニ行キマセヌカラ、別々ノ審級ニ從フト云
フ蓋シ已ムヲ得ザルノ結果ヲ招來スル譯
デアリマス、第四條ハ刑事ニ付テ審級省略
ノ種類ヲ擧ゲタモノデアリマス、御覽ノ通
リニ第四條第一項ノ書出シト第三條第一項
ノ書出シトガ違フノデアリマス、第三條ニ
ハ「左ニ揭グル訴訟ハ第一審ノ判決ニ對シテ
ハ」トアリマシテ、第四條ニハ「左ニ揭グル罪
ニ付言渡シタル第一審ノ判決ニ對シテハ云
云トアリマス、言ハムトスル趣旨ハ全ク同
樣デアリマス、御承知ノ如ク刑事ノ特質ニ
顧ミマシテ斯樣ナ文字ヲ使ハザルヲ得ナク
ナッタノデアリマス、御承知ノ通リニ刑事デ
ハ事件ノ標目ヲ揭ゲマスルノニ、起訴ノ罪
名ニ依ル譯デアリマス、處ガ例ヘバ竊盜罪、
是ハ此處ニ書イテアリマスル通リニ、二審
級ニナル控訴審省略ノモノデアリマスルガ、
例ヘバ橫領罪ハ左樣デハアリマセヌ、處ガ
竊盜デ起訴サレマシタナラバ、其ノ事件ハ
竊盜被〓事件デアリマシテ、縱令其ノ事件
ニ付キマシテ判事ガ是ハ竊盗デハナイ、横
領ダト認メマシテ、横領トシテ判決ヲ致シ
マシテモ、竊盜被告事件ニ相成ル譯デアリ
マス、サウスルト、何ダカ橫領事件ニ付テ橫領
トシテ言渡シタ判決ニ付テモ控訴審ガ省略
サレル、斯ウ云フヤウニ見エマスルカラ、其ノ
疑ヲ避ケマスル爲ニ、斯樣ナ罪ヲ中心トシテ、
斯樣ナ罪ニ當ルモノトシテ有罪トシ、又斯樣
ナ罪ニ當ルモノトシテ起サレタ訴ニ付テ無
罪トシテ、有罪無罪共ニ、其ノ種類ノ事件ニ
付テ、其ノ種類ノ罪ニ付テ、問題ヲ中心トシ
テ爲サレタル判決ニ付テハ控訴ガ出來ナイ、
斯樣ナ趣旨ヲ明カニシヨウト思ッタノデアリ
やく、御承知ノ旣ニ實施サレテ居リマスル
國防保安法ノ第三十三條ニハ、之ヲ苦心サ
レタノデアリマセウ、有罪ト認メタル第
一審ノ判決ト云フヤウニ相成ッテ居リマス、
左樣ニナリマスルト、有罪ノ判決ハ控訴審
省略ダガ、無罪ノ判決ハドウナルノダト云
フ、少クトモ疑ヲ生ジマスルカラ、本案デ
ハ有罪無罪ヲ問ハズ、其ノ問題ニ付テ言渡
サレタ第一審ノ判決ニ付テハ、控訴審ヲ省
略スルノダト云フコトヲ明カニスルガ爲ニ、
斯樣ナ文句ヲ使ハザルヲ得ナクナッタノデ
アリマス、第一項ノ第一號、第二號ハソレ
等ノ事件ヲ限定シタモノデアリマス、是亦
後ニ御質疑ニ依リマシテ擔當政府委員ヨリ
說明ヲ申シマスルガ、此ノ中デ列擧シテア
リマスル一號、二號ノ中デ、刑法犯デ申シ
マスルト、刑法ノ第二編第七章ノ二ハ御承
知ノ安寧秩序ニ付テノ罪デアリマス、第三
十六章ハ竊盗强盗ノ罪、第三十九章ハ職物
ニ付テノ罪デアリマス、ソレカラ刑法ノ第
七十四條、第七十六條、是ハ不敬罪デアリ
w 〓 〓サウシテ第二項デアリマスルガ、是
ハ前條卽チ第三條ノ第一一項ト同趣旨デアリ
マシテ、控訴審ハ省略セラレルケレドモ、
上告審ハ勿論省略ハシナイ、土〓ハ出來ル
ト云フコトヲ明カニシタノデアリマス、然
ルニ此ノ第三項デアリマスルガ、是亦第三
條トハ異レルモノデ、是ハ尤モ第三條ニハ
ナイコトヲ規定シタノデアリマス、是ハ刑
事訴訟法特有ノ問題デアリマシテ、御承知
ノヤウニ刑事訴訟法ノ第四百十六條ニ、第
一審判決ニ對スル上〓ト云フモノヲ特ニ認
メテ居リマシテ、サウシテ其ノ上〓ノ理由
ヲ限定シテ居リマスルカラ、左樣ナモノデ
ナク、現在ノ刑事訴訟法上ノ第二審ノ判決
ニ對シテ上告ヲ爲シ得ル理由ヲ以テ此ノ問
題ノ上告モ出來ルノダト云フコトヲ明カニ
シタノデアリマス、卽チ刑事訴訟法第四百
十六條ニ特別ノ規定ガアリマスルガ爲ニ、
此ノ項ヲ特ニ置カナケレバナラナカッタノ
デアリマス、末項モ同樣デアリマシテ、上
〓裁判所ハ第二審ノ判決ニ對スル上告事件
ニ關スル手續ニ依ッテ本文ノ上告審ヲ取扱
フノダト云フコトヲ明カニシタノデアリマ
ス、ソレカラ先程申上ゲマシタヤウニ、刑
事ニ付テハ本訴附帶訴訟ト云フ關係ハアリ
マセヌカラ、例ヘテ申シマスルト、第四條
第一項第一號ニ依リマシテ、竊盜罪ニ付テ
ハ審級省略デアリマスルガ、横領罪ニ付テ
ハ審級省略デハナイ譯デアリマス、デアリ
マスルカラ同一ノ被〓人ガ竊盜ト横領ト二
ツノ罪ヲ犯シマスルナラバ、卽チ竊盜ト横
領ト併合罪的關係ニ立チマスナラバ、是八
ドウシテモ分ケテ審理判決ヲシナケレバナ
ラナイノデアリマシテ、竊盗ハ二審級ニナ
リマスルシ、横領ハ原則通リ三審級ニナル
譯デアリマス、是ハ竊盜ヲ橫領ノ方ニ吸收
スル譯ニハ參リマセヌシ、又勿論橫領ヲ竊
盜ノ方ニ吸收スルコトハ不都合デアリマス
ルカラ、勢ヒ別々ニセザルヲ得ナクナッタ
ノデアリマス、手續上實際ニ於テ些少ノ錯雜
ハ免レナイデアリマセウケレドモ、少クト
モ或種ノ事件ニ限ッテ審級ヲ省略スルト云
フコトニナリマスルト、斯樣ナコトハ起ラ
ザルヲ得ナイ已ムヲ得ザル結果デアラウカ
ト存ズルノデアリマス、第五條ハ前二條ノ
第一審ノ判決デアリマスルガ、是ハ御承知
ノ通リ地方裁判所ガ第一審ノ管轄ノコトモ
アリマスルシ、區裁判所ガ管轄ノコトモア
リマスルガ、其ノ中デ區裁判所ガ第一審ト
シテ致シマシタ判決ニ付テノ上〓、是ハ控
訴院ト云フコトニ改メタノデアリマス其
ノ理由ハ交通障碍等ヲ顧慮シタノデアリマ
スルガ、少ク共此ノ部分ニ付テハ丁度大正
二年、前ノ裁判所構成法ニ復歸スルヤウナ
恰好ニナルノデアリマス、ソレカラ第二項
デアリマスルガ、是ハ御承知ノ刑事訴訟法
第四百二十條カラ來ルソレダケノ問題デア
リマシテ、民事ニ付テ適用ノナイ規定デア
リマス、御承知ノヤウニ刑事訴訟法第四百
二十條ニ依リマシテ、第一審タル區裁判所
ガ上告棄却ノ決定ヲスルコトガ出來ルコト
ニナッテ居リマス、其ノ場合ニ此ノ第二項ノ
特例ヲ設ケナイト致シマスナラバ、其ノ區
裁判所ノ上〓棄却ノ決定ニ對スル抗〓ニ付
キマシテハ、大審院ヘ行クコトニナラウカ
ト思フノデアリマス、サウ致シマスルト第
一項ト權衡ヲ失シマスカラシテ、斯樣ナ第
二項ニ揭ゲテ居リマスル上告棄却ノ決定ニ
對スル抗〓ハ、矢張リ控訴院ヘ行クノダト
云フコトヲ此處デ明白ニ致シタ次第デアリ
マス、第三項ハ控訴院ガ上告審タル場合デア
リマスルガ、其ノ上告審タル控訴院ガ或決定
ヲ致シタトシマスルナラバ、其ノ決定ニ對
シテ抗〓ヲシマスルト大審院ヘ參リマスル
カラ、本案ト其ノ決定ト審級ヲ異ニスルヤウ
ニナッテ甚ダ首尾一貫シナイコトニナリマス
ルカラシテ、ソレデ是ハ其ノ事件ノ抗〓ハ
出來ナイノダト云フコトヲ、此處ニ明カニ
シタ次第デアリマス、末項ニ準用シテ居リ
マスル裁判所構成法第四十八條ノ規定、是ハ
御承知ノ通リ大審院ノ裁判ハ下級裁判所ヲ
覊束スルト云フ有力ナ規定デアリマス、此
ノ規定ヲ第一項ノ場合、卽チ控訴院ガ上告
審トシテ裁判ヲスルト云フ場合、之ニ持ッテ
來タノデアリマシテ、卽チ控訴院ガ上告審
トシテ致シマシタ判決ハ、是ハ矢張リ大審
院ガ上告審トシテ爲シタル裁判ト同樣ニ、
下級裁判所ヲ覊束スルト云フコトヲ明カニ
致シタノデアリマス、第六條ハ右申シマシ
タヤウニ、控訴院ガ上告審トシテ裁判ヲ爲
シマス關係上、御承知ノ、今全國ニ控訴院
ガ七ツアリマスカラ、恐ラクハ法律解釋ノ
不統一ト云フ結果ヲ來スノ虞レガアルノデ
アリマス、ソレヲ救濟スルガ爲ノ規定デア
リマシテ、控訴院ガ上告審トシテ裁判ヲシ
ヨウト思ヒマス場合ニ、旣ニ其ノ事件ニ付
テ法律上ノ見解ニ關シマシテ異レル上告判
決ガアル、自分ノ方デハソレト違ッタ別箇ノ
新判例ヲ下シタイト思ヒマス場合、又例へ
バ旣ニ自分達ガ裁判シヨウト思ヒマス同ジ
問題ニ付テ、二簡以上ノ控訴院デ異レル裁
判ガ出テシマッテ居ル、斯ウ云フヤウナ場
合、何レノ場合ニ致シマシテモ、判例ヲ統
一スルノ必要ガアリマスカラ、控訴院カラ
逆ニ上ニ、卽チ大審院へ事件ヲ移牒シテ、
大審院デ裁判ヲシテ貰フ、サウシテ法律解
釋ノ統一ヲ期スル、斯樣ナ途ヲ拓イタノデ
アリマス、二項ハ手續上是ハ當然ノ問題デ
アラウト思ヒマス、第七條ハ御承知ノ民事
ノ再抗〓ノ問題デアリマス、是ハ勿論訴訟
ニ對スル判決デハナク、唯決定ノ問題デア
リマスガ、此ノ大審院ニ對スル再抗〓ハ實
ニ事件ガ多イノデアリマス、サウシテ現ニ
起ッテ居リマス種別ヲ見マスルト、何等カ訴
訟遲延ノ爲ヲ目的トスルモノガ相當多數ヲ
占メテ居ルヤウニ思フノデアリマシテ、而
モ其ノ種類々々ニ當ッテ見マスルト、殆ド手
續上ノ些末ナ點ニ關スル問題ガ多イノデア
リマス、デアリマスカラ戰時中ハ少クトモ
此ノ再抗告ヲ廢シマシテ、ソレダケニ沒頭
シテ居リマス餘力ヲ本當ノ判決、生粹ノ裁
判ノ方ニ傾注シタイ、斯樣ナ趣旨カラ致シ
マシテ第七條ヲ設ケタヤウナ次第デアリマ
ス、附則ニ付キマシテハ既ニ司法大臣ヨリ
一應ノ御說明ヲ致シマシタカラ、重ネテ逐
條的御說明ヲ申上ゲル必要ハナイカト存ズ
ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=100
-
101・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 御質問ヲ御許
シ致シマス、御質問ゴザイマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=101
-
102・山川端夫
○山川端夫君 議事ノ進行デアリマスガ、
本日ハ此ノ程度デ終リニシテ戴キタイ、モ
ウ少シ能ク〓究シテ見タイト思ヒマスカラ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=102
-
103・次田大三郎
○次田大三郞君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=103
-
104・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 山川委員ノ御
動議ニ御贊成ノ方ガゴザイマシタカラ、御
諮リ致シマスガ、ソレデハ今日ハ此ノ程度
ニ致シマシテ、明日午前十時カラ再開致シ
タイト思ヒマス、御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=104
-
105・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) ソレデハ左樣
ニ致シマス、今日ノ委員會ハ之ヲ以テ散會
致シマス
午後二時五十九分散會
出席者左ノ如シ
委員長伯爵二荒芳德君
副委員長男爵伊江朝助君
委員
侯爵細川護立君
子爵秋月種英君
子爵舟橋〓賢君
宮城長五郞君
山川端夫君
男爵島津忠彥君
男爵村田保定君
山岡萬之助君
次田大三郞君
澁澤金藏君
岩田宙造君
二瓶泰次郞君
國務大臣
司法大臣岩村通世君
政府委員
陸軍少將田中隆吉君
司法次官大森洪太君
司法省民事局長坂野千里君
司法省刑事局長池田克君
司法省調査部長齋藤直一、君
司法書記官石田壽君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00219420126&spkNum=105
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