1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十七年一月二十七日(火曜日)午前十時八分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=0
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001・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德)君) 只今ヨリ本委
員會ヲ開催致シマス、先ヅ戰時民事特別法
案ニ關シマシテ御質疑ヲ御許シ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=1
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002・次田大三郎
○次田大三郞君 今日此ノ委員會ニ、ワザ
ワザ法制局長官ノ御出席ヲ願ッテ質問ヲ致
シタイト云フ事柄ハ、今度御提出ニナリマシ
タ幾多ノ法案ノ中ニアリマスル「戰時」ト云フ
文句ノ解釋ニ關スルコトデアリマス、實ハ
昨日戰時民事特別法ニ關スル質疑ノ際ニ、戰
時民事特別法ニ書イデアル「戰時」ト云フノ
ハ如何ナル意味デアルカト云フコトヲ伺ヒ
マシタ所ガ、司法當局ノ御答辯ニ、此ノ「戰
時」ト云フノハ大東亞戰爭ノ時ト云フ意味デ
アル、抽象的ナ不特定ナ使ヒ方ヂヤナイノ
ダト、サウ云フ御答辯デアッタノデアリマス、
處デ昨日併託サレマシタ會計法戰時特例案
ノ中ノ、第一條ニ矢張リ「戰時」ト云フ文句ガ
使ッテアリマシテ、而モソレニハ、第一條ニ
「戰時」ト書イテ、其ノ下ニ括弧ヲシテ、「戰爭
ニ準ズベキ事變ノ場合ヲ含ム以下之ニ同ジ」
ト云フ字句ガ入ッテ居ルノデアリマス、ソレ
デ此ノ括弧ノ中ハ、是ハ如何ニ考ヘテ見テ
モ、將來起ルコトアルベキ事變ノ場合ヲ豫
想シテ書イタモノデアル、現實ノ問題デハ
ナイノデアリマス、サウシマスルト、直グ
ソレト竝ンデ書イテアル「戰時」ト云フ意
味ハ、現在ノ大東亞戰爭モ無論入ルノデア
リマスルガ、大東亞戰爭ガ濟ミマシテ後ニ、
其ノ間ニ平和ノ期間ガ幾ラカアッテ、更ニ起
ル戰爭ノ時ヲ意味スルノデハナイカト云フ
風ニ考ヘラルルノデアリマス、括弧ノ中ハ
特定ノモノヲ指サナイ、括弧ノ外ハ現在ノ
大東亞戰爭ト云フ意味ダト云フコトハ如
何ナモノカ、此ノ點ニ付テ、是ハ司法省ノ
法案デアリマセヌカラ、ワザ〓〓法制局長官
ノ御出席ヲ煩ハシテ御伺ヒスル次第デアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=2
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003・森山鋭一
○政府委員(森山銳一君) 次田委員ノ御質
疑ニ御答ヘ致シマス、只今御審議ニナッテ
居リマス司法省關係ノ法律案ハ、大體司法
省ノ御說明ニナッテ居ルヤウニ、此ノ大東亞
戰爭ヲ目標トシテ、戰時中ノ各種ノ犯罪ノ
處罰又ハ民事關係ノ或特例、又ハ手續法
トシテ或特例ヲ設ケテ、又裁判所ノ構成法
ニ或特例ヲ設ケルト云フ風ナコトニナッテ
居ルノデアリマス、而シテ會計法ノ戰時特
例案ト申シマスルノハ、是ハ單ニ大東亞戰
爭ダケノ爲ニ適用サレルノデハナイノデア
リマシテ、何ト申シマスカ、戰時恆久法ト
申シマスカ、恆久戰時法ト申シマスカ、此
ノ大東亞戰爭ノ際ニ適用ニナルコトハ當然
デアッテ、此ノ大東亞戰爭ガ終レバソレデ
一應眠ッテシマッテ、又新シイ戰爭ガ起レバ、
其ノ會計法ノ特例ハ復適用ニナルト云フ趣
旨ニ立案サレテ居ルノデアリマス、會計法
ノ戰時特例案ガ單ニ今囘ノ戰爭ノミヲ對象
トセズシテ、戰時ノ恆久法、恆久的戰時
法デアルト考ヘテ居リマスノハ、是ハ立案
ノ精神ガソコニアルノデアリマシテ、從前
長ク會計法ヲ適用シテ參ッタノデアリマス
ガ、其ノ實際ノ經驗ニ徵シマシテ、少クト
モ戰爭又ハ戰爭ニ準ズベキ事變ノ場合ニハ、
今度會計法ノ戰時特例案ノ中ニ盛リ込ンデ
居ルヤウナ事項ハ常ニ必要デアル、單ニ大
東亞戰爭ノ爲ニ必要ナルノミナラズ、
ドンナ戰爭ガ起ッテモ、又ドンナ戰爭ニ準
ズルヤウナ事變ガ起ッテモ、是ハ常ニ適用シ
テ宜シイ、又適用シナケレバナラヌヤウナ
事項デアルト考ヘテ、之ヲ戰時ノ恆久法、
恆久的戰時法ト云フ趣旨デ立案シタノデア
リマス、內容ヲ御檢討下サルト、大體此ノ
位ノコトハドウシテモ戰時中又ハ戰爭ニ
準ズベキ事變ノ際ニハ必要ナコトデアル
ト云フ風ナコトヲ御了解願ヘルト思フノ
デアリマス、又陸海軍當局ノ考トシマシ
テモ、斯ウ云フ風ナ事項ハ經理官ノ〓育上
モ、又其ノ他ノ色々ノ戰時ニ對スル準備ヲス
ルニ付テモ、常ニサウ云フ法規ガ存在シ
テ居ッテ、其ノ法規ヲ對象トシテ常ニ〓
究ヲ重ネテ置クト云フコトガ必要ダ、
戰爭トカ、又ハ戰爭ニ準ズベキ事變ガ起ッタ
カラト云フノデ、早急ニサウ云フ風ニ立法
ヲシテヤルト云フコトハ適當デナイ、應
是ハ恆久的ノ、所謂有事卽應ノ態勢ヲ取ッテ
置イテ、戰時又ハ戰爭ニ準ズベキ事變ガ起ッ
タナラバ、常ニ法律ガ自動的ニ働クト云フ
コトニシテ行キタイト云フ希望モアリ、極
メテ適當ナル考ト認メテ政府ハ此ノ案ヲ提
出シタ譯デアリマス、陸海軍ノ關係ニ於キ
マシテハ、戰爭又ハ戰爭ニ準ズベキ事變ヲ
對象トシテ恆久的戰時法ト云フモノヲ相當
澤山作ッテ居ルノデアリマス、會計法ノ戰時
特例モ亦其ノ一ツトシテ立法體制ヲ整ヘテ
置キタイ、斯ウ云フ趣旨デアリマス、會計
法ノ特例トシマシテハ、例ヘバ陸海軍ノ出
師準備ニ屬スル物品ノ會計檢査ト云フノ
ハ、是ハ會計檢査院ノ職掌ニ屬セナイト云
フノモ會計法トハ別ニ法律ガ出テ居ルノデ
アリマスガ、恰モサウ云フ風ナ趣旨デ之ヲ
特別ノ法律トシテ、而モ戰時ニハ何時デモ
働ク法規ニシタイ、斯ウ云フ風ナ趣旨デ立
案サレテ居ルノデアリマス、司法省關係ノ
法律案ハ、形ハサモ會計法戰時特例案ニ似
テ居ルノデアリマスケレドモ、是ハ大東亞
戰爭ノ爲ニ適用セムガ爲ニ立案シタノデア
リマシテ、大東亞戰爭ガ濟ミマシタナラバ
一定ノ時期ヲ經テ適當ナル機會ニ之ヲ廢止
スルト云フコトニスル積リデ居ルノデアリ
マス、サウ云フヤウナ例ハ、例ヘバ大正六
年ニ戰時海上再保險法ト云フヤウナ法律ガ
出來テ居ルノデアリマスガ、此ノ法律ハ戰
時海上再保險法、斯ウアリマシテ、是ハ戰
時ナラバ何時デモ働クヤウナ法律デアリマ
スケレドモ、是ハ立案ノ精神ガ其ノ時ノ戰
爭ヲ對象トシテ居ッタノデアリマシテ、是ハ
大正九年ニ至リマシテ廢止ノ法律ヲ出シテ
廢止シテ居ルノデアリマス、ソレト同ジヤ
ウニ司法省關係ノ只今御審議ニナッテ居ル
諸法律ハ、此ノ戰爭ニ關聯シテ適用シテ、
其ノ目的ヲ達シタ後ニ廢止ノ立法手續ヲ執
ル、サウ云フ風ニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=3
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004・次田大三郎
○次田大三郞君 會計法ノ戰時特例案ガ戰
時恒久法トシテ立案サレタモノデアルト云
フ御趣旨ハ能ク分リマシタ、ソレカラ司法
省關係ノ今此ノ委員會ニ付託ニナッテ居リ
マス諸種ノ所謂戰時法ハ、大東亞戰爭ヲ對
象トシテ居ルモノデアルト云フコトハ司法
省ノ方カラ能ク伺ッテ居リマス、唯私ガ疑問
トスル所ハ、同時ニ政府カラ出サルヽ法律
案ノ中ニ同ジク「戰時」ト書イテアッテ、一ツ
ハ恆久的ノ戰時法デアリ、一ツハ當面ノ臨
時ノ戰時法デアル、ソレヲ何故書キ分ケナ
イノデアルカ、司法省關係ノ法律ノ「戰時」
トアル所ヘ、唯「大東亞戰爭」ト云フコトヲ
書イテ置ケバモウソレデ私ガ申上ゲルヤウ
ナ疑問ハ起ラナイ「大東亞戰爭」ト云フ文
句ヲ法律文ノ中ニ書キ込ムコトハ今度御
提出ニナッテ居ル大東亞戰爭云々ト云フ法
律案モ出シテテアルヤウナ譯デアリマスカ
ラ、サウ云フ風ニシ疑ヲ生ジ得ナイヤウニ
シタ方ガ宜シイノヂヤナイカ、近頃法律ハ
難解デ困ルト云フ話ガ能クアルノデスガ、
是ナドモ其ノ最モ顯著ナル例デアラウト思
フノデアリマス、同ジク「戰時」ト書イテ
テッカー一方ハ此ノ戰爭ダケデハナイ、將來
戰爭ガ起ッタラ又生キ返ッテ適用ニナルノ
ダ、一方ハ此ノ戰爭ダケデアッテ、此ノ戰爭
ガ濟メバモウソレデナクナルノダト云フヤ
ウナコトハ如何ナモノデアリマセウカ、法
文ヲ書ク上ニ於テ非常ニ深切氣ガ足リナイ
モノヂヤナイカ、サウ云フ風ニ考ヘルノデ
アリマスルガ、是ハ如何ナモノデアリマセ
ウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=4
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005・森山鋭一
○政府委員(森山銳一君) 只今次田委員ノ
御說ハ、詰リ立法技術ニ於テモウ少シ考ヘ
テ適當ナル表現方法ヲ執ルベキデハナカラ
ウカト云フ風ナ御意見ノヤウデアリマスガ、
其ノ御意見大體適當ナ其意見、誠ニ尤モダ
ト申上ゲテ宜シイト思フノデアリマスガ、
此ノ會計法ノ戰時特例案ハ、規定ノ內容ヲ
見マスト、「戰時」トシテ其ノ次ニ括弧ガアッテ
「戰爭ニ準ズベキ事變ノ場合ヲ含ム」トアリマ
スカラ、是ガ今度ノ戰爭ダケデナイト云フ
コトハ是ハモウ法文上モ明瞭ダト思ヒマス、
他ノ司法省關係ノ法律案ニ於キマシテハ、
次ノ戰爭ヲ豫想シテ居ルト云フヤウナ趣旨
ノ規定ハ其ノ法律ノ中ニハ窺ハレナイノデ、
寧ロ反對ニ規定ノ內容ヲ見テ見マスト、之
ヲ次ノ戰爭ニ適用スルト云フコトガ果シテ
宜イカドウカ、寧ロ疑ハシイヤウニ規定ガ
出來テ居ル部分ガアルノデアリマス、例
ヲ申シマスレバ、裁判所構成法ノ戰時特例
案ノ中ノ條文ヲ見マスト云フト其ノ條文
ノ中ニハ全ク今囘ノ戰時ダケヲ目標トシテ
出來テ居ル法律ヲ引用シテ居ルノデアリマ
ス、サウ云フ風ナ形ノ法律ヲ次ノ戰爭ノ際
ニ適用スルト云フ風ニシテ行クノハ果シテ
ドウカト云フ風ナ感ジモシマスシ、是ハ司
法省ノ方カラモ說明ニナッタト思ヒマスガ、
裁判所構成法戰時特例案ノ附則等ニモ特殊
ノ規定ヲ置イテ居リマスシ、サウ云フ點カ
ラ考ヘマスト云フト、是ハマア大東亞戰爭
ヲ目標トシタト云フ風ナ解釋ヲシテ宜シイ
ノデアッテ、大體サウ云フ風ナ解釋ヲ自然ニ
サレルデハナイカト、斯ウ云フ風ニ考ヘマ
ス、デ是デ私ノ意見ヲ申上ゲタイト思フ
ノデスガ、司法省ノ關係ノ法律案ニ於キマ
シテハ、唯戰時ト云フコトニナッテ居リマス
カラ、法文ノ形式ノ上ニ於キマシテハ、是
ハ次ノ戰爭モ豫想シテ居ルト云フ風ニ一應
ハナルト思ヒマス、法文ノ形式ニ於テハ私
ハ確カニナルト思フノデアリマス、ケレド
モ政府ハ此ノ法律ハ次ノ戰爭ニ適用スル意
思ハナイノダ、此ノ大東亞戰爭ガ濟ンダナ
ラバ必ズ廢止ノ手續ヲスルト云フ政府ハ肚
デ居リマスノデ、其ノ意味ニ於テ此ノ法律
ガ戰時ノ恆久法ダト云フ風ニハ申上ゲテ居
ナイノデアリマス、法文ノ字句カラ直接私
ノ申上ゲルヤウナ解釋ガ出テ來ルカト申上
ゲマスレバ、是ハ私ハ出テ來ナイト思ヒマ
ス、是ハ私ノ見解デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=5
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006・次田大三郎
○次田大三郞君 色々ナ法文ノ書キ方デ以
テ、會計法戰時特例ノ方ハ恆久的ノ戰時法
デアルト云フコトハ明瞭デアル、司法省關
係ノ戰時法ノ方ハ色々ナ法律關係カラ推測
シテ臨時的ノ法律ダト云フコトガ推測出來
ルト云フ御說明ノヤウデアリマス、私ハソ
レガ疑ハシイト思ヒマス、果シテサウデア
ルカドウカト云フコトハ疑ハシイ、ソレハ
國民全部ガ法律家デアルナラバ、サウ云フ
疑ハ生ジナイト思ヒマスガ、國民ハ大多數
ハ法律ノ素人ナンデアリマスカラ、今法制
局長官ガ明カニ御認メニナリマシタヤウニ
「戰時」ト書イテアルノハ外ノ會計法戰時特例
ナンカノ例モ參照シテ恆久的ノ戰時法ヲ
意味スル、次ニ起ッテ來ル戰爭ヲ意味スル
モノデハナイカト云フ、少クトモ疑ヲ生ズ
ルコトハソレコソ有リ得ルト思フノデアリ
マンク、ソレデ實ハ私ハ戰時ト云フ文句ヲ大
東亞戰爭ノ時ト云フ風ナ文句ニ書キ改メタ
ナラバ何カ不都合ガ起ルノダラウカドウ
ダラウカ、サウスレバ少シモ疑ヲ生ジナ
イデ國民ハ仕合セヲスルト思フノデス、
是ハ私ノ意見デ强ヒテ御答辯ヲ煩ハシマセ
ヌガ、唯政府ガ斯ウ云フ肚ダカラ大丈夫ダ
ト云フ只今ノ御答辯ニハ一言セザルヲ得ナ
イノデス、立法ノ時ニドウ云フ議論ガアリ
マセウガ、又立法ノ時ニ政府ガドウ云フ肚
デアラレマセウガ、愈〓此ノ法律ガ適用ニ
ナル時ニハ、裁判官ガ其ノ法律ノ運用ヲ其
ノ文章ノ表面カラ、又前後ノ論理關係カラ
適當ニ解釋スルノデアリマシテ、政府ハサ
ウ云フ肚ダカラモウ心配ナイノダト云フコ
トハ私ハ言ヘナイト思ヒマス、ソレカラ愈〓
大東亞戰爭ガ濟ンダラバ、政府ハ司法省關
係ノ戰時法ハ廢スル考ダカラ心配シナイデ
宜イト云フコトデアリマスガ、政府ノ斯ウ
云フ肚ダト言ハレルコトノ信賴スルコトノ
出來ナイ顯著ナ例ハ、先達テ本會議デ申上
ゲマシタ柳川司法大臣ノ委員會ニ於テ言明
セラレマシタ言明ニ徵シテモ明瞭ナノデア
リマス、サウ云フコレハ國民ノ大キナ權利
義務ニ關係スルコトデアリマスカラ、疑ノ
ナイヤウニシテ置ク方ガ宜シイノデハナイ
カト私ハ思フノデアリマスガ、政府ハドウ
云フ風ニ御考ヘデアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=6
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007・森山鋭一
○政府委員(森山銳一君) 只今ノ御質疑ニ
對シテ法制局長官トシテ所見ヲ申上ゲルノハ
如何カトモ思ヒマスガ、一應私カラモ私ノ
考ヲ申述ベタイト思ヒマス、司法省關係ノ
各法律ハ法文ノ形式カラ言ヒマスレバ、次
田委員ノ御指摘ノヤウニ大東亞戰爭トカ、
今囘ノ戰爭トカ云フコレハ明示サレテ居リ
マセヌカラ、假ニ此ノ大東亞戰爭ガ終了シ
テ一應目的ハ達シタ、處ガ此ノ法律ガ其ノ
儘ズット殘ッテ居ッテ、又戰爭ガ起ッタトスル
場合ニ裁判官ハ此ノ法ヲ適用スベキカドウ
カト云フコトニナレバ、私ハ裁判官ハ此ノ
法ヲ適用シナケレバナラヌト思ヒマス、立
法ノ精神ガソコニアッテモ法文ノ形式ノ上
ニサウ云フヤウニアル以上ハ私ハ適用シナ
ケレバナラヌト思ヒマス、ケレドモ、先程カ
ラ私申上ゲテ居リマスヤウニ、此ノ法律ハ
政府トシテ大東亞戰爭ヲ目標トシテ立案シ
タノダカラシテ、此ノ大東亞戰爭ニ付テ此
ノ法律ヲ適用シテ、其ノ目的ヲ達シタナラ
バ、適當ノ時期ニ是等ノ法律ノ廢止法律案
ヲ議會ニ提出シテ、ノ廢止シマスト云フコト
ヲ申述ベテ居ルノデアリマシテ、政府ガ若
シ之ヲ廢止シナケレバ、帝國議會ハ發案權
ヲ當然有セラレルノデアリマスカラ、之ヲ
廢止サレルコトモ出來ルノデアリマス、政
府ハハッキリ本法ノ精神ガ大東亞戰爭ヲ目
標トシテ居ルノデ、次ノ戰爭ニモ適用シヨ
ウト云フヤウナ考ハナイト申シテ居ルノデ
アリマスカラ、其ノ精神ハ無論政府ハ一體
ノ關係デ必ズ是等ノ法律ノ廢止ノ法律案ヲ
出スコトト思ヒマス、司法省ノ從來ノ措置
ニ付テ聊カサウ云フ點ニ付テノ信用ヲ受ケ
ナイヤウナコトガアルト云フヤウナ仰セ
デアリマスガ、ソレト之トハ私ハ少シ事柄
ノ筋モ違フト思フノデアリマシテ、此ノ問
題ハソレ程御心配ヲ願ハナクテモ、政府ノ
言明シタコトガ必ズ私ハ實行サレルノデハ
ナイカト考ヘテ居リマス、尙司法大臣ニ一ツ
願フコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=7
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008・次田大三郎
○次田大三郞君 モウ一ツ伺ッテ置キタイ
ノデアリマス、是ハ司法省ノ政府委員カ
ラ御答ヘ下スッテ宜シウゴザイマス、ソレハ
大東亞戰爭ガ濟ミマシタ場合ニ、先日來ノ
御說明ニ依ルト、當然此ノ法律ガ效力ヲ失ハ
ナイ、其ノ效力ヲ失ハスノニハ、別ニ立法
ノ手續ヲ執ルノダト云フ御說明デアリマス、
大東亞戰爭ガモウ戰時デハナクナッタト云
フコトハドウ云フ形式デ決マリマスカハ
知リマセヌガ、私ノ想像スル處デハ平和條
約ガ締結サレルカ、或ハ平和克服ノ御詔勅
ガ下ルトカ云フヤウナコトニ依ッテ戰時デ
ナクナルノデハナカラウカト思ヒマス、處
ガ戰時民事特別法トカ、戰時刑事特別法ト
カ云フヤウナ特別法ハ、ソレデハ直チニ效
力ヲ失ハナイデ、更ニ立法ノ手續ヲスルト
云フコトデアルト、其ノ間ニ場合ニ依レバ
相當ノ時間ガアルト云フコトヲ考ヘナケレ
バナラヌト思ヒマス、サウスルト既ニ戰時
デハナクナッタ、我々ガ此ノ法案ヲ協賛スル
ノハ戰時ト云フコトヲ條件トシテ斯クノ如
キ特別法ヲ認メヨウト云フノデアリマスカ
ラ、モウ戰時デナクナッタニモ拘ラズ、矢張
リ廢止ノ立法手續ガ濟ム迄ハ此ノ法律ニ拘
束セラレルンダ、簡單ナ例ヲ申上ゲマスレ
バ、モウ戰爭ハ濟ンダンダケレドモ、此ノ
戰時刑事特別法案ノ規定ニアリマスヤウナ
犯罪ヲ犯シタナラバ嚴罰ニ處セラレル、戰
時ト同樣ニ嚴罰ニ處セラレル、私共ガ此ノ
法案ヲ協贊スルトスレバ、サウ云フコトハ
考ヘナイデ、戰時ニ必要デアルカラト云フ
ノデ協賛スルノデ、ソコノ所ニ齟齬ヲ生ズ
ルヤウニ思ハレルノデアリマスガ、其ノ邊
ハ如何デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=8
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009・岩村通世
○國務大臣(岩村通世君) 重要ナ事柄デア
リマスカラ私カラ一應考ヲ申上ゲマス、尙
其ノ前ニ、先程法制局長官カラ戰時ニ付テ
ノ御說明ガアリマシタガ、私モ同一ノ考ヲ
有ッテ居リマス、其ノコトダケヲ申上ゲテ置
キマス、尙只今問題ニナッテ居リマスル大
東亞戰爭ガ終ッテシマヘバ直チニ效力ヲナ
クスベキモノデアラウト思フガドウカト云
フヤウナ御注意ノ御尋デアリマス、實ハ裁
判所構成法戰時特例ノ附則ニモアリマス通
リ「戰時終了ノ際ニ於テ必要ナル經過規定
ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム」ト云フ規定ガアル
ノデアリマス、刑事ノ事件ハ、實體法ハ別
ト致シマシテモ、戰爭ガ終リ講和條約ニ依ッ
テ大東亞戰爭ガ終了シタト云フコトニナレ
バ、訴訟手續ニ新タナル影響ヲ及ス譯デア
リマス、ソレデ大東亞戰爭ガ濟ミマシタナ
ラバ、通常ノ規定ニ特別規定ヲ移ス經過ノ
手續ヲドウシテモ執ラナケレバナラヌト思
ヒマス、ソレデゴザイマスカラ、ソコニ若
干餘裕ガゴザイマセヌト、直チニ總テノ戰
時ノ訴訟ガ平時ノ訴訟ニ其ノ瞬間ニ移リ
變ッテシマフト云フコトハ非常ニ困難ナ場
合ガアルト思ヒマス、ドウシテモ通常ニ移
ル經過ノ規定、例ヘバ控訴省略ニシテアリ
マスガ、是ハ戰爭ガ終了致シマスト、普通
ノ手續ニ還レバ三審制度ニ變ルノデアリマ
ス、スルト今二審デヤッテ居ル事件ヲドウ
スルカ、是ハ戰爭ガ終了スレバ三審ニナル
ト云フ事柄ガ起ッテ來ヨウト思ヒマス、サウ
云フヤウナ手續ヲ大體濟マセマシテ、此ノ
附則ガアリマスカラ大東亞戰爭ガ終リマ
シタナラバ其ノ手續ガ行ク譯ナノデアリマ
ス、戰時カラ通常手續ニ移ッテ行ク經過ノ
規定ヲ作ッテ、サウシテ近イ機會ニ此ノ法
律ヲ廢止スルト云フ手續ニ致シマセヌト、
非常ニ法律現象ガ混亂ヲ生ズル虞レガアラ
ウカト思ヒマス、ソレデサウ云フヤウナ點
モゴザイマスノデ、此ノ三ツノ法案ノ戰
時ト云フ事柄ハ今囘ノ戰爭目當ニ規定シ
タノデアリマス、是ガ濟メバ必ズ經過規定
ヲ置カナケレバナラヌト云フコトハ此ノ附
則ニモアル譯デアリマス、左樣ナ次第デア
リマシテ、戰爭ガ濟メバ直チニ廢止スルト
云フコトモ手續上ニ非常ニ混亂ヲ生ズル虞
レガアリマス、尙半年デ此ノ法律ヲ廢止ス
ルト云フコトヲ言明致シマシテモ、訴訟ニ
依ッテハ色々長ク掛カルノモアリ短カイノ
モアリマスガ、其ノ機會ニ適當ニ處置致シ
タイト思ヒマス、尙實體法ニ付キマシテハ
此ノ法律ガ廢止サレナケレバ戰時ニ於ケル
特例トシテ相當戰時中ノ犯罪ト云フモノガ
戰後ニ於テ廢止スル迄ハ活キテ居リマスカ
ラ、戰爭終了後ニ戰爭中ノ、戰時ニ際シテ
ノ犯罪ヲ如何ニスベキカト云フコトハ起ラ
ウト思ヒマス、併シサウ云フ場合ニハ、十
分サウ云フ犯罪ノ檢擧ニ付テハ、戰爭終了
後ニ於テハ能ク斟酌致シマシテ適正ニ取扱
ヲスルヤウニ致サナケレバナラヌ場合ガ起
ル、左樣ナ次第デゴザイマシテ、此ノ三ツ
ノ法案ハ戰時ト云フコト、大東亞戰爭ト云
フモノヲ目當ニシテ作ッテ居リマスカラ、特
別ノ訴訟ノ色々ノ事情等ガゴザイマスルノ
デ、裁判所構成法ノ戰時特例ノ附則ニアリ
マスヤウナ規定ヲ設ケマシタ趣旨カラ致シ
マシテモ、此ノ戰爭ガ濟ミマシタナラバ廢
止セラレ、又廢止スベキモノデアルト云フ
コトハ御了承ガ御願ヒ出來ルト考ヘテ斯ウ
云フ立案ヲ致シマシタ譯デアリマス、以上
申上ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=9
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010・次田大三郎
○次田大三郞君 只今御說明ノ訴訟手續ニ
關スル法規ニ付テハ是ハ御說明ノ通リダト
思ッテ居リマス、問題ハ實體法ノ問題デア
リマシテ戰爭ガ濟ンデカラ愈〓廢止セラレル
迄假ニ一年ノ間トスル、其ノ間ニ、例へ
バ戰時特別刑事法ニ規定シテアルヤウナ犯
罪ヲ犯シタ、而シテ直グニソレガ檢擧サレ
テソレヲ審査スル、之ヲ調ベルノハ矢張リ
此ノ裁判所構成法ノ戰時特例ニ依ッテ調ベ
ル、サウスルトドウモ斟酌仕樣ガナイノヂ
ヤナイカト云フ風ニ思ハレマスガ、其ノ點
ヲ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=10
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011・大森洪太
○政府委員(大森洪太君) 只今刑事實體法
規ニ付テノ御質問ト拜承致シマシタガ、戰
時刑事特別法案ニ付テマダ御審議ニハ入ッ
テ居リマセヌケレドモ、此ノ第一章ニハ御
承知ノ實體法規ヲ網羅シテ居ルノデアリマ
シテ、其ノ總テノ條文ニ付キマシテ、總テ悉
ク戰時ニ際シト云フ條件ガ加ヘラレテ居ル
ノデアリマス、デアリマスカラ斯樣ナ刑罰
加重ヲ以テ臨マレマス犯罪ハ其ノ必要條件
トシテ戰時ニ際シ犯サレタコトヲ條件トス
ルノデアリマス、戰時ガ濟メバ加重ハ利カ
ナイモノト御了承願ヒタイト思フノデアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=11
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012・次田大三郎
○次田大三郞君 民事ノ方ハドウナリマス
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=12
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013・大森洪太
○政府委員(大森洪太君) 民事特別法ノ方
ニ於キマシテハ第一條ニ其ノコトヲ包括的
ニ明カニシテ居ル趣旨デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=13
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014・次田大三郎
○次田大三郞君 一應了承致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=14
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015・山川端夫
○山川端夫君 今ノ問題ニ關聯致シマシテ、
經過規定ノ關係ニ少シ疑ヲ起シマシタカラ
御伺ヒシタイノデス、戰時終了ト云フコト
ニナッテ、或ハ平和克服ノ詔勅ナリ、平和條
約ノ締結ナリト云フコトニナリマセウガ、
其ノ時ノ實際ノヤリ方ヲドウナサルノカ、
今ノ御話デ疑ヲ起シタノデスガ、經過規定
ノ、勅令デ以テ之ヲ定メル、是ハハッキリ法
文ニ規定シテアリマスガ、此ノ經過規定ハ
今大臣ノ御說明ニ依リマスト、一方ニハ經
過規定ヲ出シナガラ尙本法ノ廢止ト云フコ
トハ其ノ後ニナルカモ知レナイト云フヤウ
ナ意味ニ取レタノデアリマス、本法廢止ト
云フコトハ戰爭ガ濟メバ直グ必要ナ手續法
令法律ヲ御出シニナルカ、或ハ已ムヲ得
ナイ場合ニハ緊急勅令デモ出シテ廢止ニナ
ル、其ノ廢止シタ時ニ裁判ニ繫屬シテ居ル
事件ヲドウスルカト云フコトガ此ノ經過規
定ニナルノデアリマス、斯ウ思ハレルノデ
アリマスガ、其ノ點ヲハッキリ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=15
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016・森山鋭一
○政府委員(森山銳一君) 次田委員カラモ
御質問ガアリ、山川委員カラモ御質問ガア
リマシタカラ、其ノ點ニ付テ私カラ一應御
答辯申上ゲタイト思ヒマス、今度ノ司法省
關係ノ法律ノ廢止ノコトヲ申サレタノデア
リマスガ、成程サウ云フ御疑問ヲ起サレタ
ノモ尤モダト思ヒマス、先ヅ實體法ノ關係
カラ申上ゲマスガ、實體法デモ「戰時ニ際
シ」ト云フ言葉ガハッキリアリマスカラシ
テ、例ヘバ戰時ニ際シテ處罰ヲ加重スルト
云フヤウナ規定ハ、此ノ戰時ノ狀態ガナク
ナリマスレバ其ノ規定ハ働カナイコトニナ
リマス、是ハ陸軍刑法、海軍刑法等ノ中ニ
モ、「戰爭ニ際シ」ト云フ言葉ガアッテ、長クサ
ウ云フ風ナ規定ガ行ハレテ居ルノデアリマ
ス、實際ノ適用關係ハソレト少シモ變ラナ
イヤウニ適用サレルト思ヒマス、「戰時ニ際
シ」ト云フ言葉ノアル、サウ云フ風ナ處罰規
定ハ一旦戰時ガ濟ンデシマッタナラバ、新シ
ク其ノ處罰規定ハ働クコトハナイケレド
モ、戰時中ニ犯シタ其ノ罪ヤウナモノハ公
訴ノ時效ニカカラヌ限リハソレハモウ加罰
性ヲ持ッテ居ルノデアリマスカラ、是ハ當然
其ノ法律ニ依ッテ處罰ガ出來ルノデアリマ
ス、處ガ之ヲ大東亞戰爭ガ濟ンダ後ニ或一
定ノ時期ニハ之ヲ廢止スルト云フコトニナ
リマストドウナルカト申シマスト、是ハ色
色考ヘ方ガアルノデアリマスガ、一應戰時
中ニ其ノ犯罪ヲ犯シテ處罰サレルヤウナモ
ノニナッテ居ルノダカラ、卽チ加罰性ガアル
ノダカラ其ノ法律ヲ廢止シテシマッタ後ニ
モ、尙法律ガナクナッテモ、ソレハ矢張リ其
ノ者ニ對シテ、其ノ當時規定シテアッタ所ノ
ソレ〓〓ノ刑罰ヲ課スルコトガ出來ルノダ
ト云フ解釋ト、其ノ當時法律ヲ犯シテ居ッタ
ノダケレドモ、實際ニ刑罰ヲ課スル時ニ、
其ノ法律ガナクナッテシマッテ居ルト、モウ
處罰ハ出來ナイノダ、適用スル法規ハナク
ナッテ居ルカラ處罰出來ナイト云フ解釋ト
二ツノ解釋ガ成立ッノデアリマスガ、私共ノ
解釋トシマシテハ矢張リ本當ニ處罰ヲスル
時ニ其ノ法規ガ存在シテ居ナイナラバ所謂
適用スベキ法規ガナイノダカラ、モウ處罰
スルコトガ出來ナイト云フコトニ私共ハ解
釋シテ居リマス、從ッテ戰爭ガ終レバ、或
定ノ時期迄其ノ法律ヲズット抛ッテ置ケバ、
ソレハソレデモ宜シイケレドモ、若シ此ノ
法律ヲ廢止スルト云フコトニナリマスレ
バ、其ノ廢止法律ノ中ニ持ッテ行ッテ從前此
ノ法律ニ違反シタヤウナ行爲ヲシタ者ノ處
罰ニ關シテハ尙舊法ニ依ルトカ、從前ノ例
ニ依ルト云フヤウナ經過規定ヲ作リマシテ、
サウシテ矢張リ處罰サレルノダ、處罰サレ
ル關係ニ於テ此ノ法律ハ活キテ居ルノダ、
新シク處罰スルヤウナコトハシナイケレド
モゝ前ニ惡イ事ヲシタ、其ノ惡イ事ハ決シ
テ其ノ事實ハ無クナラナイノデ、ソレニ對
シテ法ハ矢張リ處罰スルコトニナルノダゾト
云フハッキリシタ所ノ經過規定ハ要スルコ
トニナルト思ヒマス、ソレカラ手續法ニ付
テハ是ハ司法大臣及ビ司法次官カラ相當
詳シク御述ベニナリマシタカラ、ソレハ申
上ゲルコトモ殆ドナイト思ヒマスガ、戰爭
ガ終リマスルト云フト、戰爭中ハ此ノ手續
規定デヤッテ居リマスケレドモ、戰爭ガ終ツ
タ瞬間ニハ此ノ規定ハ働カナイコトニナリ
マスカラ、サウスルト手續ガ途中デ變ナコ
トニナリマスカラ、ソレハ適當ナル手續
ノ繼續、其ノ他ニ付テ勅令デ適當ナ方策ヲ
講ジヨウト云フコトニナッテ居リマス、サ
ウスルト今度、或一定ノ時期ニ又其ノ手續
規定ヲ廢シテシマフトドウナルカト云フ
ト、是モ其ノ儘抛ッテ置ク譯ニハ行カナイ
ノデ、矢張リ其ノ委任ノ勅令ニ依ッテ或手
續ヲ決メラレテ居レバ、其ノ手續ヲズット
先迄持越ス爲ニハ其ノ廢止スル法律ノ附則
デ、ソレハ矢張リ有效ナンダトカ何トカ
云フ、サウ云フヤウナ經過規定ヲ尙要スル
コトト思ヒマス、隨ッテ此ノ各種ノ司法省關
係ノ法律ヲ廢止スル際ニハ、其ノ廢止法律
ノ中ニ色々ナ經過規定ヲ要スルノヂヤナイ
カト思ヒマス、併シソレガドンナ規定ニナ
ルカト云フコトハ、今考ヘテ居リマセヌ、
是ハ大體今迄支那事變中ニ、支那事變ニ關
聯シテ應急措置ノ法律ヲ出シテ居リマスガ、
其ノ中ニ、本法ハ支那事變終了後一年以內
ニ之ヲ廢止スルモノトスル、斯ウ云フヤウ
ニ規定シテ居リマシテ、是ハ一年以內ニ廢
止スルノダ、何故一年以內ト謂ッテ居ルカト
云フト、帝國議會ハ每年一囘ハ必ズ開カレ
ルノダカラ、一年以内ニ廢止スルト云フコ
トニシテ置ケバ、必ズ立法手續ヲ執ルコト
ノ機會ガアルノダ、其ノ機會ニ政府ハ法律
案ヲ提出シテ、サウシテソレヲ廢止シテ、
其ノ廢止ノ際必要ナル規定ハ其ノ廢止法律
ト同時ニ適當ナル規定ヲ設ケルト云フヤウ
ナ趣旨デ、法律ハ支那事變終了後一年以內
ニ廢止スルト云フコトニ、唯將來一年以內
ニ廢止スルト云フ方針ダケヲ示シテ、サウ
シテ具體的ナ經過規定ハドウナルカト云フ
ト、其ノ時ノ立法ニ委スト云フ形式ヲ採ッテ
居ルノモアリマス、今度ノ此ノ手續法ニ
付キマシテハサウ云フ風ナ一年以內ニ廢
止スルモノトスト云フヤウナ悠長ナ言葉ハ
困リマスガ、戰爭ガ終レバ、直グアトハド
ウナルカト云フコトヲ措置シナケレバナリ
マセヌカラ、ソレデ此ノ手續ニ關スル限リ
ニ於テテハ戰爭終了ノ際ニ於テ必要ナ經過
規定ハ勅令ヲ以テ定ム、委任規定ヲ置イテ居
ル、斯ウ云フヤウナ關係ニナッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=16
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017・山川端夫
○山川端夫君 私ノ御尋ネシタ所ニマダ
ピッタリ合ハナイ點ガアルヤウニ思フノデ
ゴザイマスカラ、少シ御尋ノ仕方ヲ變ヘテ
申上ゲテ見タイト思ヒマス、先程カラノ御
說明ニ依リマスト、戰時刑事法デモ戰時民
事法デモ、戰時ニ於テ適用サレルト云フコ
トヲ皆書イテアル、戰時ガナクナレバ法律
ガアッテモ適用サレナイト云フヤウナコト
ニ解釋ガ出來ルノデアリマスルカラ、ソレ
デ例ヘバ講和條約ガ出來上ッテ、平時ニナツ
ク、併シ此ノ法律ハ緊急勅令カ何カデ御廢
止ニナレバ別デゴザイマスガ、サウデナケ
レバ、其ノ間若干ノ廢止スル迄ニ時間ガ掛
カルト云フコトガ有リ得ルノデアリマス、
サウスルト現ニ繼續シテ居ル問題ニ對スル
經過規定ハ勅令デオヤリニナリマセウガ、
廢止スル迄ノ間ニ此ノ法律ヲ適用サレテ、
此ノ儘行ケバ此ノ法律ガ其ノ儘適用サレル
ト云フヤウナコトニナリマスルト、手續法
ノ經過規定ト云フモノハアルケレドモ、實
體法其ノモノハ矢張リズット戰時ト云フコ
トガ講和條約ノ締結ニ依ッテ平時ニナッテ
モ、此ノ實體法ガ更ニ行ハレル時間ガアル
ノヂヤナイカ、斯ウ云フ疑ガアルノデアリ
Wvl.ソコデ講和條約ガ締結サレテ平時ニ
ナッタハッキリシタ場合ニ此ノ法律ガ殘ッテ
居ッテモ、此ノ法律ノ內容ハ、實體法ハ戰時
ニ於テ云々ト云フコトガアルカラ、其ノ場
合ハ此ノ實體法ハ適用サレナイモノダ、斯
ウ云フ風ナハッキリシタ御說明、御意思デア
レバソレハ能ク分リマスケレドモ、其ノ點
ガ先程カラマダハッキリ私ノ頭ニ入ラヌモ
ノデスカラ、ソレデ更ニ伺ヒタイノデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=17
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018・大森洪太
○政府委員(大森洪太君) 全ク御說ノ通リ
デアリマス、此ノ法律ヲ廢止シマスル迄ハ、
假令平時ニナリマシテモ形式上此ノ法律ハ
殘リマセウケレドモ、御指摘ニナリマシタ
ヤウナ刑事實體法規ハ戰爭ニ際シ云々ト云
フ條件ガ加ハッテ居リマスルカラ、平和克復
ニナリマス以上、此ノ實體法規ハ當然直チ
ニ適用ノ餘地ナキモノニナル、斯樣ニ明白
ニ考ヘテ居リマス、左樣御了承ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=18
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019・岩田宙造
○岩田宙造君 先程カラノ御說明デ大分分ツ
テ參ッタヤウニ思フノデアリマスガ、此ノ戰
時ト云フコトノ意味ニ付テ、モウ少シハッキ
リシタイト思フノデ御尋ネ申シタイト思フ
ノデアリマスガ、此ノ戰時ト云フノガ、先
日來司法省ノ御說明ニナッテ居リマスル大
東亞戰爭ヲ意味スルノダト云フ、其ノ意味
スルト云フコトガ、戰時ト云フコトニ代フ
ルニ大東亞戰爭ト云フコトヲ以テシテモ、
其ノ法律上ノ效果ハ全然同ジデアルト云フ
意味デアルカ、ソレカラサウデナイ、戰時
ト云フノハ言葉ハ廣イノデアルケレドモ、
併シ此ノ法律ノ狙ッテ居ル所ハ其ノ廣イ中
ニ包含シテ居ル、形カラ言ヘバ一部分デア
ルケレドモ、大東亞戰爭ト云フモノヲ狙ッテ、
居ルノダ、其ノコトデ大分效果ガ違フト私
ハ思フノデアリマスガ、若シ大東亞戰爭ヲ
意味スルノダト云フコトガ、ソレハ戰時ト
云フ言葉ニ代フルニ大東亞戰爭ト云フコト
ヲ以テ來タ場合ニハ、ソレハ唯言葉ガ違フ
ダケデアッテ、法律上ノ效果ハ何等違ハナイ
意味デ言ッテ居ラレルノカ、サウデナク、ソ
レハ言葉ダケデハナイ、效果モ違ッテ來ルノ
ダ、併シ此ノ立法ハ大東亞戰爭ノコトヲ目
的トシテ居ルノダカラ、大東亞戰爭ガ濟メ
バ其ノ時廢止スルノダ、斯ウ云フ趣旨トハ
少シ法律上ノ效果ガ違フト思フノデアリマ
スガ、ソレハドチラノ意味ニ解シテ宜シイ
ノデアリマスカ、今一應確メ申シテ置キタ
イ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=19
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020・大森洪太
○政府委員(大森洪太君) 只今御示シノ第
二ノ意味デ御解釋ニナッテ結構ダラウト思
フノデアリマス、私共最初立案致シマシタ
時ノ唯感ジデアリマスガ、今日我々ハ大東
亞戰爭ニ臨ンデ居ルノデアリマス、大東亞
戰爭以外ニ果シテ將來戰爭ト云フモノガ有
ルノデアルカ無イノデアルカ、左樣ナコト
ハ固ヨリ豫測出來マセヌ、デ戰爭ト云フモ
ノハ卽チ大東亞戰爭ト云フ位ナ意氣込デ立
案ヲ致シマシタ、デアリマスルカラ私共ノ
感ジト致シマシテハ第一ニ御指摘ノ通リデ
アリマスガ、併シ戰時ト云フ文字ハ文字的
ニ直チニ大東亞戰爭ヲ意味スルモノデナイ
コトハ是ハ明白デアリマスカラ、第二ノ意
味ニ御解釋下サッテ勿論結構デアラウト思
ヒマス、又私共モ第二ノ意味デ進ンデ行ッテ
宜カラウト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=20
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021・岩田宙造
○岩田宙造君 只今ノ御說明ニ依リマスレ
バ、·先刻來次田委員モ色々論議シテ居ラレ
マシタガ、外ノ法律ニ使ッテアル戰時ト云フ
コトト意味ガ違フノハ不都合デアルト云フ
コトハ全クナノデアリマシテ、矢張リ此處
ニ謂フ戰時モ、戰時會計法デアリマスカ、
サウ云フモノニ謂フ戰時モ實ハ同ジ意味デ
アッテ唯立法ノ狙ヒ所ガ違フダケダト云
フコトニナレバ、次田委員ト同ジヤウニ私
モ懸念シテ居リマシタ立法上ノ不統一ト云
フコトハ免レルコトガ出來ルノデ、其ノ點
ハ大變ハッキリシタト思フノデアリマス、唯
附則ニ戰時終了ノ際ニ於ケル必要ナ經過規
定ノコトガ書イテアルガ、勅令デ定ムルト
云フコトニ書イテアルガ、是ハドウモ此ノ
本法ヲ法律デ以テ廢止シナクテモ、戰時ガ
終了スレバ當然是ハ廢止ニナルノダ、ダカ
ラ其ノ際ニ法律ト同ジヤウナ效力ヲ持ツ
經過規定ヲ勅令デ定メルノダ、斯ウ云フ考
ヘ方カラ是ハ出發シテ居ルノヂヤナイカ、
斯ウ思ハレルノデアリマスガ、若シサウデ
ナクテ、此ノ經過規定ハ勿論本法ガ廢止サ
レテ初メテ必要ヲ生ズルノデ、アリマスカラ、
若シ廢止スルニハ立法上ノ手續ヲ以テ初メ
テ廢止サレルノダト云フナラバ、實ハ斯ウ
云フコトヲ書カナクテモ、其ノ廢止スル時
ニ同時ニ經過規定ノコトヲ書ケバ宜イノデ
アリマスカラ、ソレヲワザ〓〓此處ニ勅令
デ出來ルト云フコトヲ書イタノハドウ云フ
理由デアリマスカ、其ノ點ヲ御伺ヒシタイ
ノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=21
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022・大森洪太
○政府委員(大森洪太君) 只今御話ニナリ、
マシタ通リニ、此ノ法律其ノモノハ大東亞
戰爭ヲ目標トスルモノデアリマスケレドモ
旣ニ此ノ法律ノ使ッテ居リマスル文句ハ「戰
時」ト云フ一應抽象的ニ讀マレル文句デアリ
マスカラ、其ノ趣旨ノ片鱗ヲ少クトモ此處
ニ現シタイ、斯ウ云フ意味デ附則ヲ書イタ
ノデアリマシテ、卽チ廢止ノ方針ト此ノ附
則末項ノ文句ト相俟ッテ大東亞戰爭ノミニ
適用セラルベキモノダト云フ趣旨ヲ明カニ
シタイト、斯樣ナ趣旨カラ此ノ附則末項ヲ
置イタヤウナ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=22
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023・岩田宙造
○岩田宙造君 サウ致シマスト、此ノ經過
規定ヲ勅令デ定ムルト云フ時ハ、立法手續
ニ依ッテ是ガ廢止サレテ、少クトモ其ノ以後
ニ於テ此ノ經過規定ハ定メラレルト斯ウ解
スルコトハ差支ヘナイノデスネ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=23
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024・大森洪太
○政府委員(大森洪太君) 御趣旨ノ通リデ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=24
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025・山岡萬之助
○山岡萬之助君 段々承ッテ居リマシテ、少
シ疑義ガ生ジタノデスガ、モウ少シハッキリ
ト御說明ヲ願ッタ方ガ宜ラウト思ヒマス、
此ノ戰爭終了ノ際ニ於ケル必要ナル經過規
定其ノ戰爭終了ト云フ其ノコトニ付テ廢
止法律ガ要ルカ要ラナイノデアルカ、法制
局長官ノ御說明ダト、廢止法律ヲ直チニ出
スト云フヤウナ御考ノヤウニ承レタノデア
リマスガ、其ノ廢止法律ヲ出ストシマスト、
議會ガナケレバ緊急勅令デヤルヨリ外ナイ、
議會ヲ開イテ居レバ結構デアリマスガ、
年內ト云フ時ニハ次ノ通常議會ニ出テ來ル
カラ都合ガ好イト云フ御說明モゴザイマシ
タガ、是ハ一年ト書イテナイ、從ッテ緊急勅
令デ行クカ、或ハ臨時議會デ以テ、此ノ法
律ノ爲ニ臨時議會ヲ開クカ、或ハ戰爭終了
ノ爲ニ臨時議會ヲ開クコトモアリマセウケ
レドモ、ソレヲドウモ豫定シテ行クヨリ、
此處デ寧ロハッキリシテ置イタ方ガ立法ト
シテモ、適當デアル、卽チ大東亞戰爭
ダケシカ使ハナイト云フナラバ、大東亞戰
爭ガ終了スレバ此ノ法律ハ效力ヲ失フ、而
シテ其ノ經過規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
ル、サウ云フ風ニハッキリシテ置キサヘス
レバ疑義ハ生ジナイノデアリマス、唯戰爭
終了ノ際ニ於テデハ何時ノ戰爭デアルカ分ラ
ナイ、ダカラ此ノ法律ガ此ノ大東亞戰爭ニ
働キ、サウシテ更ニ次ノ戰爭ガ起ルト其ノ
戰爭ニモ働ク、其ノ戰爭終了ノ際ニハ斯ウ
ナルト云フヤウニ、サウ云フヤウニ解釋出
來ルノデアリマスカラ、從ッテ段々御話ニ
依リマスルト長イ恆久法ノ形ニモナッテ居
ル、恆久法ノ形ニナッテ居ルガ、精神ハ大東
亞戰爭ダ、斯ウ云フ御說明ニナルカラサッパ
リ分ラナクナル、ソコデ其ノ點ノ問題ニ付
テ具體的ノ御說明ヲ願ヒタイノデアリマス
ガ、戰爭終了後ニ法律ヲ以テ廢止スルノデ
アルカ、或ハ戰爭ノ終了ノ後ニ法律ヲ以テ
廢止ハシナイ、此ノ戰爭ガ終了スレバ兎ニ
角效力ハ働カナイノダカラ、手續法ニナリ
マシテモ此處ニチヤント書イテアリマスガ、
第十九條ニ於テ「戰時ニ於ケル刑事手續」云々
ト斯ウ云フ風ニ書イテアリマスガ、アトノ所
ニハ「戰時」ト云フコトガ書イテナイ、戰時ガ
ナクナルト此ノ法律ハ動カナクナル、動カ
ナクナルナラバ經過規定ヲ書カナケレバナ
ラヌ、此處デ大東亞戰爭ト言ッテナクテモ、
後ノ戰爭ガ起キテモ働クヤウニニハ出來テ
居ルケレドモ、大東亞戰爭ガ濟メバ兎ニ角
必要ナ經過規定ヲ勅令デ書イテ宜イ、此ノ
附則ガ働クノダト云フコトニナレバ廢止手
續ガ要ラヌデ行ケルヤニモ思ヘル、何レニ
スルカ、ソレヲ明カニシマセヌト此ノ議
事ノ進メヤウガナイ、ソレカラモウ一ツ實
體法ノ問題デスガ、實體法ノ御說明ハ刑事
法トシテハ法制局長官御說明ノ通リダト思
フノデアリマス、唯法律關係ト致シテハ現
行法第六條ニ新舊法比較ノ規定ガチヤント
出來テ居ルノデアリマスカラ、ソレデ賄ヘ
ルノデアッテ、別ニ私共經過規定デ書ク必
要ハナイヤニ思ヒマスソレハ實體ノ問題
ハ法制局長官ノ御話ノ通リデ宜シイガ、併
シ法律關係トシテハソコハ少シ違フヤウニ
思ヒマスガ、ソレハドチラデモ宜シイ、重
要ノ點ハ廢止スルカシナイカ、廢止シナク
テモ此ノ戰爭ガ終了スレバ直チニ經過規定
デ書ケル、斯ウ解釋スベキカ、其ノ點ヲ明
カニシテ戴キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=25
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026・森山鋭一
○政府委員(森山銳一君) 山岡委員ノ御質
問誠ニ御尤ダト存ジマス、御審議ノ上ニ極
メテ重要ナ關係ガアルト思ヒマスカラハッ
キリ御答へ申シタイト思ヒマス、此ノ經過
規定ハ假ニ此ノ法律ヲ大東亞戰爭ニ關シト
カ、或ハ今次ノ戰爭ニ關シトカ、サウ云フ
意味ノ規定ニスルト、或ハ此ノ現在提案シ
テ居ルヤウナ形式ニスルトニ拘ラズ、此處
ニ書イテアルヤウナ經過規定ハ矢張リ要ル
ノデアリマス、私ガ廢止ノ法律ヲ要スルト申
シマシタノハ唯是ダケノ意味デ、假ニ今度
ノ戰爭ヲ第一戰爭ト申シマシテ、次ニ來ル
ベキ戰爭ヲ第二戰爭ト申シマスト、第二戰爭
ノ起ッタ場合ニ是等ノ法律ヲ適用シナイト
云フ意味ニ於テノミ廢止法律ヲ要スルノデ
アリマス、サウデナクテ第一戰爭ダケノ關
係カラ申シマスト、此ノ法文ノ文句ガ大東
亞戰爭ニ際シト書イテアラウガ、或ハ戰時
ニ際シト書イテアラウガ、此ノ經過規定ハ
同ジ經過規定ガ要ルノデアリマス、其ノ理
由ハ戰爭ノ終了ト云フノハ是ハ一瞬間デア
リマスカラ、其ノ戰時ニ際シトナッテ居リ
マスカラ、其ノ戰時ガ過ギレバ實體法タル
ト手續法タルトヲ問ハズ、其ノ戰時ノ關係
ダケ考ヘテ居リマスカラシテ、戰時ガ過ギ
レド、殊ニ此ノ手續法ニ至ッテハ普通ノ手
續法ニ戾ッテシマヒマスカラ、直グ戾ッテシ
マッテ宜イカドウカト云フコトハ餘程檢討
ヲ要スルト思ヒマスカラ、其ノ移リニシマ
シテモ、其ノ移リ變リニ何カ立法手續ヲ要
スルノデ、ソレヲ勅令ニ委任シテ經過規定
トシテ規定シヨウ、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居
ルノデアリマス、繰返シテ申シマスト、今
囘ノ法律案ノ中ニ規定シテ居ル所ノ經過規
定ハ、臨時的ナ戰時法トスルト恆久的ナル
戰時法トスルトニ拘ラズ、何レニ於テモ同ジ
ヤウナ規定ヲ要スル、而シテ法律ヲ廢止ス
ルノ必要ハ何處ニアルカト言ヘバ、此ノ大
東亞戰爭ノ結末ヲ付ケル爲ニハ必要デハナ
イノデアッテ、次ニ來ルデアラウト云フ所
ノ第二ノ戰爭モ亦此ノ規定ヲ適用スルコト
ハ不適當デアル、カルガ故ニモウ廢止シテ
シマフノダト云フ意味ニ於テ廢止法律ヲ要
スルト、斯ウ云フヤウニ御了解願ヒタイト
思ヒマス、ソレカラ實體法ノ問題ニ付テハ、
先程私ノ申上ゲタコトヲ大體御了承下サイ
マシタカラシテ、更ニ申上ゲル必要ハナイ
ト思ヒマスガ、是ハ私ノ申上ゲタノハ刑法ノ總
則ノ規定ニ必ズシモ依ラナイデ置イテ、詰
リ戰時中ノ犯罪ハ何時デモ重ク罰スルノデ
アル、詰リ戰時中犯シタ犯罪デアルカラシテ
常ニ重イ處罰ヲスルノダ、重ク罰スルノダ
ト云フ意味ニ於テ、若シアノ刑法ノ總則デ
スト、刑ガ變ッタ場合ニハ輕イ方デ罰スル
ト云フヤウナ風ニナルト思フノデスガ、
サウデハナクテ矢張リ重ク罰スルノデアル
ト云フ趣旨ニ於テ、矢張リ特別ノ規定ヲ要
スルノヂヤナイカ、サウ云フ意味ニ於キマ
シテ實體法ヲ廢シタ場合ニ、尙一應廢止ス
ルケレドモ、戰時中ニ犯シタ其ノ犯罪モ罰
スルト云フ意味ニ於テ其ノ法律ガ矢張活キ
テ居ルト云フ經過規定ヲ作ルト、斯ウ云フ
ヤウナ趣旨デ申上ゲタノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=26
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027・山岡萬之助
○山岡萬之助君 大抵話モ、質問應答ノ趣
旨モ濟ンダヤウデアリマスカラ、少シ懇談
ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=27
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028・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 速記ヲ止メテ
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=28
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029・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 速記ヲ始メ
テ、モウ別ニ御質疑ハゴザイマセヌカ····
御質疑ハナイモノト認メマス、然ラバ裁判
所構成法戰時特例案ニ付キマシテ質疑ヲ開
始致シマス、別ニ御質疑ハゴザイマセヌカ
御質疑ハナイモノト認メマス、次ニ戰
時ニ於ケル領事官ノ裁判ノ特例ニ關スル法
律案ヲ議題ニ供シマス、政府委員ノ說明ヲ
求メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=29
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030・西春彦
○政府委員(西春彥君) 只今議題トナリマ
シタ戰時ニ於ケル領事官ノ裁判ノ特例ニ關
スル法律案ノ理由ヲ御說明申上ゲマス、數
日來此ノ委員會ニ於テ御審議ニ相成ッテ居リ
マスル戰時民事特別法、戰時刑事特別法及
裁判所構成法戰時特例等ニ關スル法律案
ハ何レモ戰時ニ於ケル司法上ノ特別措置
ニ關スルモノデアリマシテ、其ノ成立施行
ノ曉ニハ原則トシテ領事裁判ニモ當然適
用セラルヽコトト相成ルノデアリマス、併
シナガラ領事裁判ハ國內ノ裁判トハ著シク
趣ヲ異ニ致シテ居ル點ガアリマス爲、是等
ノ特別措置ヲ以テシテモ尙足ラザル點ガア
ルノデゴザイマス、殊ニ近時中華民國在留
邦人ノ急激ナル增加ニ伴ヒマシテ、領事官
ノ裁判事務モ年々急速ニ增加シツツアルノ
デアリマスルガ、大東亞戰爭勃發以來日華
間ノ海路ノ連絡ハ船腹ノ不足、戰爭ノ危險
等ノ理由カラ致シマシテ、著シク制限セラ
ルヽ情勢ニ立至ッテ參リマシタノデゴザイ
マスガ、現行ノ領事裁判制度ニ於キマシテ
ハ、領事官ノ豫審ヲ爲シタ罪ノ公判及領事
官ノ爲シタ裁判ニ對スル上訴ハ、何レモ國
內ノ裁判所ニ於テ管轄スルコトトナッテ居リ
マシテ、就中所謂此ノ重罪ニ當ル罪ニ付テ
ハ如何ニ簡單輕易ナル事件ト雖モ、領事官
ハ常ニ豫審ヲ行フニ止マリマシテ、公判ヲ
爲シ得ナイト云フ嚴格ナル制限ガアリマス
爲領事裁判ノ圓滑ナル運營ハ頗ル困難ト
ナル事態ニ直面スルニ至ッタノデアリマス、
然ルニ領事裁判ノ行ハレテ居リマス地域ハ、
何ト申シマシテ現ニ戰鬪行爲ガ行ハレテ居
ル現地デアリマスル爲、刑政强化ノ必要ハ國
內ノ場合ヨリ一層切實ナルモノガアルノデ
アリマスルガ、只今申上ゲマシタヤウナ戰
時下ニ於キマスル領事裁判運營ノ困難ナル
事情ヲ併セ考慮致シマスルトキハ、所謂重
罪ニ當ル罪ニ付テハ領事館ハ如何ナル場合
ト雖モ常ニ豫審ヲ爲スニ止マリ、公判ヲ爲
スヲ得ズトスル現行制度ノ制限ハ、餘リニ
モ窮屈ニ過ギ、單ニ事件處理上非常ナル困
難ヲ生ズルバカリデハナク、戰時下ニ於ケ
ル刑政强化ノ必要ニ卽應スル所以デモナイ
ト信ズルノデアリマス、從ヒマシテ所謂重
罪ニ當ル罪ト雖モ比較的簡單輕易ナル事件
ニ關スルモノニ付キマシテハ、國內ノ裁判
ト同樣、直接公判ヲ爲スノ途ヲ開ク趣旨カ
ラ致シマシテ、本法律案ヲ提出スルニ至ッ
タノデアリマス、尙本法律案ニ於キマシテ
ハ、裁判所構成法戰時特例ヲ領事裁判ニ適
用スル上ニ於キマシテ當然必要トスル規
定ヲモ設ケムトスルモノデアリマスガ、各條
ニ付テノ詳細ナル說明ハ關係局長ヨリ申上
グルコトト致シタイト存ジマス、何卒十分
御審議アラムコトヲ希望致ス次第デアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=30
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031・松本俊一
○政府委員(松本俊一君) 私ヨリ多少詳
細ナ點ニ亙リマシテ次官ノ說明ヲ補足申上
ゲタイト思ヒマス、逐條ノ說明ヲ致シマス
前ニ、領事裁判ノ現狀ニ付キマシテ簡單ニ
御說明申上ゲルコトガ御審議ノ便宜カト考
ヘマシタノデ、其ノ點ニ付キマシテ一言申
上ゲタイト存ジマス、領事裁判ノ現狀ニ付
キマシテハ時勢ノ推移ニ伴ヒマシテ、領
事裁判モ其ノ制度竝ニ運用上非常ナル變革
ヲ遂ゲテ居リマスノデ、其ノ狀況ニ付キマ
シテハ、外務省ノ方ニ於キマシテ簡單ナル
小册子ヲ作ッテ御手許ニモ配付致シテ置キマ
シタノデ、詳細ハソレニ付テ御覽ヲ願ヒタ
イト思フノデゴザイマス、其ノ中デ最モ重
要ナル改革ノ點ヲ申上ゲマスルト、現在領
事裁判ハ大體ニ於テ專門家ノ手デ裁判ハ行
ハレテ居ルト云フ點デゴザイマシテ、領事
裁判ト申シマスルト固ヨリ沿革ハ日支間ニ
通商條約ガ締結致サレマシタ明治三十二年
ニ遡ルノデアリマシテ、其ノ當初ニ於キマ
シテハ、領事裁判ハ極メテ不完全ナル裁判
ノ制度デアッタノデアリマス、裁判ヲ致シマ
ス者モ普通ノ領事官ガ片手間ニヤッテ居ル
ト云フヤウナ狀況デアリマシテ、其ノ當時
ハ外交官ノ試驗ヲ通リマシタ者ガ領事官補
ニ任命サレマシテ支那各地ニ派遣サレマス
ルト、先ヅ第一ニ其ノ當テガハレタ仕事ハ
領事裁判デアッタノデアリマシテ、從ヒマシ
テ法律ノ知識モ唯試驗ヲ通ッタダケト云フ
位ノ知識ノ者ガ裁判ノ事務ニ當ッテ居リマ
シタ、其ノ運用モ極メテ不滿足ナモノデアッ
タノデゴザイマスルガ、大正十二年ニ至リ
マシテ段々中華民國ニ居リマスル在留民ノ
數モ殖エテ參リマシタノデ、斯樣ナル不完
全ナル制度デハ居留民ノ保護ニモ缺クル所
ガ多イト云フ趣旨カラ致シマシテ、當時、
此ノ委員會ノ委員ニモナッテ居ラレマス山川
サンガ條約局長ヲシテ居ラレマシテ、非常
ナル御努力ノ結果、司法省ト打合セヲ行
ヒマシテ、司法省モ非常ナル便宜ヲ與ヘラ
レマシテ、所謂司法領事ノ制度ト云フモノ
ガ確立サレタ次第デアリマス、司法領事ノ
制度ト申シマスルモノハ、詰リ領事官及外
務書記生ノ任用ニ特別ノ任用令ヲ定メマシ
テ、訴訟事件及非訟事件ニ關スル事務竝ニ登
記事務ニ從事スル領事官ハ裁判所構成法ニ
依ル判事又ハ檢事タル所ノ資格ヲ有スル者
ノ中カラ、特ニ之ヲ任用スルコトヲ得ト云
フコトニ致シマシタ、詰リ支那各地ノ領事
裁判ニ於テ、訴訟事件及非訟事件ニ關スル
事務ニ從事スル者ハ官名ハ領事デアリマス
ルケレドモ、其ノ實質ハ裁判所構成法ニ依
ル判事又ハ檢事タル資格ヲ有スル者ヲ任用
シ得ルト云フコトニ致シマシタ、サウ云フ
風ニシテ任用致サレマシタル領事ハ通常之
ヲ司法領事ト申シテ居ルノデアリマスガ、
外務大臣ノ指定ヲ受ケマシテ、領事官トシ
テ司法事務ヲ專掌スルト云フコトニ相成ッ
タノデアリマス、其ノ當時ハ司法領事モ三
四名ニ過ギマセヌデ、而モ滿洲モ當時ハ治
外法權ガアリマシタノデ三、四名ノ領事ヲ
各地、主ナ地ニ配置致シマシタニ止マッタ
ノデアリマス、其ノ後段々其ノ制度ハ擴充
致シマシテ、現在ニ於キマシテハ、支那各
地ニ十四名ノ司法領事ガ居リマシテ、支那
各地ノ主要公館ニハ殆ド一名ヅツ配置シテ居
リマシテ、主ナ北京、上海ト云フヤウナ所
ニ二名ヅツ配置致シテ居リマス、又少シ奧地
ノ方ニハ其ノ司法領事ヲ皆兼勤致サセマシ
テ、時々出張致シマシテ、定期或ハ必要ニ
應ジマシテ出張致シマシテ、司法事務ヲ處
理シテ居ルノデアリマス、斯樣ナ狀況デア
リマシテ、領事裁判ハ制度上ニ於キマシテ
ハ、普通ノ領事ガ裁判ヲ爲シ得ルヤウニナッ
テ居リマスルケレドモ、現在ニ於キマシテ
ハ專門家以外ノ者ニハ或ハ督促手續トカ、
略式手續ト云フヤウナ、極メテ簡單輕易ナ
モノヲ、ソレモ例外的ニヤラシテ居リマス
ルダケデ、實際ニ於キマシテハ、公判竝ニ
豫審ノ如キハ全部專門家ノ領事ガヤッテ居
ル譯デアリマス、ソレカラ又此ノ檢察事務
ニ付キマシテモ、是ハ領事官ノ職務ニ關ス
ル、法律ノ上カラ申シマスルト檢察事務ハ
外務省ノ警察官ガ行ッテ宜イコトニナッテ居
ルノデアリマスガ、ソレモ漸次改善スル必
要ガアリマスノデ、最近ニ至リマシテ司法
省ト打合ヲ致シマシタ結果、檢察專門ノ領
事ヲ檢事ノ中カラ專任致シマシテ、目下四
名主ナ土地ニ配置シテ檢察事務ニ當ラシテ
居ルヤウナ現狀デアリマス、其ノ點ヲ特ニ
御了承ヲ御願ヒシタイト思ヒマス、次ニ此
ノ度提案致シマシタ此ノ法律案ノ各條ニ付
キマシテ、御說明ヲ申上ゲタイト思ヒマス、第
一條ニ付キマシテハ別ニ御說明ヲ申上ゲ
ルコトモナイノデゴザイマスガ、第二條ガ
此ノ法律案ノ最モ主要ナ條文デゴザイマス
ガ、是ハ先程次官カラモ說明申上ゲマシタ
ヤウニ、中華民國ノ在留邦人ノ犯ス所謂重
罪ニ當ル罪ニ付キマシテ、目下ハ領事官ハ
豫審ヲヤラナケレバナラナイト云フ嚴格ナ
ル制限ガアリマスノヲ、現地ニ於テ公判ヲ
モ行ヒ得ルト云フ途ヲ開クコトニ致シタイ
ト思フノデアリマシテ、現在ノ制度デハ領
事官ノ職務ニ關スル法律ノ第八條ニ於キマ
シテ、「領事官ハ死刑又ハ無期若ハ短期一年
以上ノ懲役若ハ禁錮ニ該ル罪」卽チ重罪ニ
當ル罪ニ付キマシテハ、公判ヲ爲スコトヲ得
ナイノデアリマシテ、此ノ種ノ罪ニ付キマ
シテハ豫審ヲ爲スベキ旨ヲ規定シテ居ルノ
デアリマシテ、領事官ノ豫審ヲ爲シタル罪
ノ公判ハ、內地又ハ臺灣ノ裁判所ニ於テ管
轄スルコトニナッテ居ルノデアリマス、此ノ
點領事裁判ハ國內ノ裁判トハ著シク制度ヲ
異ニシテ居ルノデゴザイマス、此ノ制度ノ
下ニ於キマシテハ、重罪ニ當リマス罪ニ付
キマシテハ、如何ニ簡單輕易ナル事件ト雖
モ、領事官ハ單ニ常ニ豫審ヲ爲シ得ルニ止
マリマシテ、其ノ公判ハ犯罪ノ現地ヲ遠ク
離レマシテ、之ト著シク事情ヲ異ニシテ居
リマスル國內デ行ハレルト云フ不便ガアル
ノデゴザイマシテ、豫審ヲ經テ公判ニ付シ
マシタ場合ニ、記錄トカ證據物件ノ送付竝
ニ被〓人ノ押送等ニ相當ノ日子ト尠カナラ
ヌ人的、物的ノ負擔ヲ要スルノデアリマス、
殊ニ支那事變以來中華民國ニ於キマスル在
留民ガ非常ニ殖エマシタ爲ニ、犯罪事件、
殊ニ重罪ニ當ル犯罪事件モ年々增加ノ傾向
ニアルノデアリマス、處ガ其ノ大部分ハ比
較的簡單輕易ナモノデアリマシテ、內地デ
アリマシタナラバ、當然豫審ノ手續ヲ省略
致シマシテ、所謂直公判ト致シマシテ、直
接公判ヲ請求スルヤウナ事件デアルノデア
リマス、處ガ今議會ニ提出サレテ居リマス
ル戰時刑事特別法ニ於キマシテモ、戰時下
ノ特殊ノ狀態ニ於テ犯シタ或種ノ犯罪ニ付
キマシテ、法定刑ノ過重ヲ企圖シテ居リマ
スノデ、其ノ結果從來所謂輕罪ニ當ル罪デ
アッタモノガ、重罪ニ當ル罪トナルモノモ相
當アルノデゴザイマス、將來領事裁判ニ於
テ取扱フ所謂重罪ニ當ル犯罪事件ノ內ニハ
簡單輕易ナル罪デアッテ、而モ豫審ヲ是非ヤ
ラナケレバナラナイト云フ制限ニ縛ラレル
モノガ益〓增加スルコトトナルト思ハレルノ
デアリマス、サウ云フ狀態デアリマスルノ
ニ、此ノ點ハ特ニ御留意願ヒタイト思ヒマ
スルノハ只今日本ト支那トノ間ノ海路ノ
連絡ハ非常ニ惡クナッテ居ルノデアリマシ
テ、之ニハ色々ナ事情ガゴザイマスガ、其
ノ點ハ御想像ニ御任セ致スコトニ致シマシ
テ、兎ニ角交通狀態ハ非常ニ惡ク、被〓人
ヲ押送スルト云フ爲ニハ色々ナル不便ガア
ルノデアリマス、ソレカラ一方又戰時ニ、
大東亞戰爭ガ勃發致シマシテ、支那各地ニ
於キマスル狀態ハ所謂支那事變中ヨリハ
一層萬事形勢ガ差迫ッタ事態ニナリマシタ
ノデ、犯罪事件ノ處理ニ付キマシテモ、從
來ノヤウナ緩漫ナ手續デハ、何カト困難ヲ
生ズルト云フ事態ガ段々濃化致シテ參リマ
シタ、從ヒマシテ此ノ居留民ノ取締リ又
保護ノ見地カラ申シマシテモ、此ノ手續ノ
簡易迅速化ヲ圖リマスコトガ喫緊ト相成リ
マシタノデ、ソコデ國內ニ於キマシテハ、
裁判所構成法ノ戰時特例ト云ッタヤウナ法
律案ニ於キマシテ色々手續上簡易化ヲ圖
ラレタノデアリマスルガ、領事裁判ニ於キ
マシテハ先程申上ゲマシタヤウナ重罪事件
ニ付テ豫審シカ行ヘナイ、公判ハ行ヘナイ
ト云フ點ガ最モ手續ヲ困難ナラシメ、又煩
雜ナラシメテ居ル所デアリマスノデ、其ノ
點ヲ戰時中ニ限ッテ緩和シテ行クト云フコト
ニシタイト思ヒマシテ、此ノ第二條ヲ設ケ
タ次第デアリマス、唯茲ニ特ニ御注意願ヒ
タイト思ヒマスルコトハ、本條ハ法文ノ建
テ前ト致シマシテハ領事官ハ總テノ所謂重
罪ニ當ル罪ニ付テ公判ヲ爲シ得ルコトトナッ
テ居ルノデゴザイマスデガ、是ハ所謂重罪
ニ當ル罪ニ付テハ領事官ハ常ニ公判ヲ爲ス
ベシト云フ趣旨デハ決シテナイノデアリ
マス、此ノ種ノ罪ニ付キマシテハ從前通
リ豫審ヲ爲シテ、サウシテ國內ノ裁判所ノ
公判ニ附スルト云フコトヲ原則ニ致シテ居
ル點ハ同ジデアリマシテ、此ノ原則ヲ覆ス
趣旨デハナイノデアリマス、唯此ノ原則ハ
今迄餘リニモ嚴格デアリマシテ、之ヲ一步
モ動カスコトガ出來マセヌノデ、色々ナ不
便ヲ生ジマスノデ、本條ノ企圖致シマスル
コトハ、主トシテ比較的簡單輕易デアリマ
シテ、豫審ヲ經ルコトヲ要シナイ、而モ現
地ニ於テ公判ノ裁判ヲ爲スコトヲ相當ト認
メラレルモノニ付キマシテ直接公判ヲ爲ス
ノ途ヲ開カムトスルノデアリマス、從ヒマ
シテ其ノ實際ノ運用ニ際シマシテハ、右ノ
趣旨ヲ明カニ致シマシテ、控訴提起前ノ搜
査ニ依ッテ證據蒐集ノ困難ナル事件ハ勿論
ノコト死刑又ハ無期若シクハ特ニ重イ懲
役若シクハ禁錮ニ處スルコトヲ相當ト認ム
ル事件等ノ如キ、特ニ愼重審理ヲ要スル事
件ニ付キマシテハ、從前通リ豫審ヲ爲サシ
メテ、ソレヲ國内裁判所ノ公判ニ附スルヤ
ウニ取計ラハシムル方針デゴザイマシテ、
此ノ點ニ付キマシテハ、特ニ司法省トモ十
二分ノ連絡ヲ致シタ上デ、其ノ運用ニ遺憾
ナキヲ期スル積リデ居リマス、次ニ第三條
デゴザイマスガ、第三條ハ所謂讀ミ替ヘノ
規定デゴザイマシテ、裁判所構成法戰時特
例ノ第五條ニ於キマシテ此ノ控訴ガ禁止ニ
ナッテ居リマス事件ノ第一審ノ判決法ニ對ス
ル上〓、又ハ其ノ上告棄却ノ決定ニ對スル
抗〓ヲ控訴院ニ管轄セシメテ居ルノデアリ
マスガ、其ノ控訴院ハ領事裁判ニ於テハ長
崎控訴院デアルト云フコトヲ明カニ致シマ
シタ、ソレカラ又所謂南支ニ於キマシテハ、
從來モ長崎控訴院ト同樣ノ地位ニアリマス
ルノハ、臺灣總督府ノ高等法院覆審部ニナッ
テ居リマスノデ、南部支那ニ於キマスル事
件ニ付キマシテハ、此ノ控訴院ヲ臺灣總督
府ノ高等法院覆審部ト讀ミ替ヘル規定ヲ置
キマシタ、詰リ斯樣ニ致シマシテ、裁判所
構成法戰時特例ノ第五條ト步調ヲ合セタイ
ト思ッテ居ル次第デゴザイマス、附則ニ付キ
マシテハ、司法省カラ提出ニナリマシタ法
律案ト全ク同趣旨デゴザイマスノデ、其ノ
說明ハ省略致シタイト思ヒマス、以上簡單
ナガラ御說明申上ゲマシタ、宜シク御審議
ノ程ヲ御願ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=31
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032・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 只今ヨリ本法
律案ノ質疑ニ移リマス、御質疑ハゴザイマ
七九九発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=32
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033・山岡萬之助
○山岡萬之助君 法文ハ極メテ簡單デアリ
マスルシ、又構成法ノ改正ニ伴ウタ改正デ
アリマシテ、唯重要ナ點ハ公判ノ權能ヲ擴
大シタ點ニ在ルノデアリマシテ、此ノ點モ
御說明デ能ク了承致シマシタ、デ法文自體
デハナイノデスガ、此ノ際唯一言承ッテ置キ
タイコトハ、領事裁判ト云フコトハ是ハ古
イ制度デアリマシテ、東亞ノ新秩序ヲ立テ
テ行キマス以上ハ、裁判ト云フコトノ實體
ガ、我ガ法權ガドノ邊迄働クカ働カヌカノ
問題デアリマセウケレドモ、兎ニ角領事裁
判ト云フ舊態ヲ其ノ儘ニ置イテ置クベキモ
ノデハナカラウ卽チ何トカ新秩序ノ下ニ
適當ナ改革ヲ要スルモノデハナカラウカト
私ハ思ウテ居ルノデアリマスガ、政府ニ於
テハ何カサウ云フコトニ付テ御考ガアリ、
多少ノ用意モアルデアリマセウガ、兎ニ角
斯ウ云フ重大ナル戰局ガ進行中デアリマス
カラ、今サウ云フコトヲ御尋ネスルコトモ
如何デセウカ知リマセヌガ、兎ニ角東亞ハ
新秩序ヲ樹立シテ全ク面目ヲ一新シテ、舊
態ヲ改メテ行カナケレバナラヌノデアリマ
スルカラ、從ッテ有ラユル意味ニ於テ領事裁
判ナント云フ古イ形ハ、何トシテモ取リ去
ルガ宜シイ、實體ハ如何ニシテ殘スカ、是
ハ別問題デアリマスガ、少クトモ形式ニ於
テモ改メル必要ガアル、ソンナ風ナコトヲ
考ヘテ居ルノデアリマスルガ、ソレニ關シ
テ何カ政府ノ御所見ヲ承ルコトガ出來マス
レバ幸デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=33
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034・松本俊一
○政府委員(松本俊一君) 只今ノ山岡委員
ノ御質疑ハ誠ニ御尤デアリマシテ、斯ウ云
フ新事態ニナリマシテ、領事裁判ト云ッタヤ
ウナ舊時代ノ遺物ヲ何時迄モ存シテ置キマ
スコトハ許サレナイコトニ相成ルダラウト
思フノデアリマシテ、現ニ此ノ領事裁判ノ
撤廢、卽チ治外法權ノ撤廢ト云フコトニ付
キマシテハ、前々カラ問題ニナッテ居ルノ
デゴザイマスルガ、一昨年ノ十一月ニ日華
間ニ締結致サレマシタ所謂日華基本條約ニ
於キマシテモ、特ニ其ノ第七條ニ於キマシ
テ、日華間ノ新關係ノ發展ニ照應シテ、治
外法權ヲ撤廢スルト云フ明文ガ設ケラレテ
居ルノデアリマシテ、此ノ點ニ付キマシテ
ハ中華民國側ニ於キマシテモ、從來非常ナ
要望ガアルノデアリマシテ、此ノ日華基本
條約ニ特ニ一條ヲ設ケタノモ、其ノ要望ニ
對應致シマシテ、成ルベク明確ナル字句デ
其ノ要望ニ應ジタ形ニナッテ居ルノデアリ
マス、其ノ根本方針ニ從ヒマシテ、今後支
那ニ於ケル、治外法權ノ撤廢ト云フコトハ、
追々實現シテ行クコトニナルダラウト思ヒ
マス、唯山岡委員モ申サレマシタヤウニ、
目下ハ戰時中デアリマスルシ、又是ハ諸外
國トノ關係モ色々「デリケート」ナ點モアリ
マスルシ、又中華民國ニ於キマスル一般ノ
治安ノ確立ト云フヤウナ點ニモ關係ゴザイ
マスルノデ、愈〓撤廢ニ至リマス迄ニハ、更
ニ愼重ナル準備ガ必要デアルト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=34
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035・山岡萬之助
○山岡萬之助君 御說明デ大要承リマシタ
ガ、支那ニ於ケル法制ノ關係ハ、形式上ハ
法典モ前カラ段々出來テ來テ居リマスカ
ラ、從ッテ裁判所モ舊イ時代カラ段々出來
テ來テ居リマスガ、ドウモ法ノ運用ト云フ
コトニナリマスト、支那ノ裁判所ニ於キマ
スル運用ハ甚ダ面白カラザル狀態ニアルノ
デアリマス、ソコデ治外法權ヲ撤廢致シマ
スルト、サウ云フヤウナ形ノ下ニ裁判ヲ受
ケナケレバナラヌヤウナ事態ニナルノデア
リマスカラ、之ニ付テハ相當準備ガ必要デ
アルガ、併シナガラ準備ノ爲ト云ッテ長イ
コトサウジテ置クコトモドウモ適當デナイ
ノデ、何トカ一日モ早ク善キ裁判ヲ受ケラ
レルヤウナコトニナリ、從ッテ治外法權モ撤
廢サレルト云フコトニナレバ、之ニ越シタ
コトハナイノデアリマス、其ノ一ツノコト
トシテ、今迄司法領事檢察領事ト云フモノ
ヲ外務省ニ於テ御進メニナッタ、是ハ今日
カラ見マシテ非常ニ好イ結果ニナッテ來テ
居ルト思フノデアリマス、速カニ之ヲ增員
シテ、支那ノ法制ト云フモノモ多少ハ違ッテ
居ルガ、大體日本ノ法制ヲ參考トシタコト
ガ多イノデ、日本ノ裁判官ニハ直グ支那ノ
法制ニ分ルヤウニ思フノデアリマス、速カ
ニ增員シテ領事館其ノ他ニ配置シテ、支那
ノ法制慣習等ヲ知ル人ガ多ク出來ルト云フ
コトハ、同時ニソレ等ノ人ガ治外法權ガ撤
廢サレタ後ニモ、何物カノ働キヲスルヤウ
ニナルト思フノデスカラ、此ノ司法領事、
檢察領事ト云フヤウナモノヲ速カニ增員シ
テ、ソレコソ思ヒ切ッテ增員シテ、彼ノ地ニ
殘シテ置クト云フコトガ何物カニ貢獻シヤ
シナイカト思ヒマスガ如何ナモノデセウ
カ、御所見ヲ承リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=35
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036・松本俊一
○政府委員(松本俊一君) 御說ハ御尤デゴ
ザイマシテ、我々ノ方デモ司法領事ノ增員
ヲ前カラ要求致シテ居ルノデアリマスガ、
色々豫算等ノ關係ガアリマシテ、マア徐々
ニ增强致シテ行クヨリ致シ方ナイ狀況デア
リマスガ、本年モ豫算ノ上ニ多少增員ガ計
上致サレテ居ルノデアリマス、漸次增强致
シマシテ、ソレカラ又國民政府ノ司法部等
トモ色々ナ點ニ於キマシテ連絡ヲ執ルヤウ
ニ努メテ居リマス、將來共サウ云フ連絡ヲ
益〓密接ニ致シマシテ、成ルベク早ク中華民
國ノ治外法權ガ好イ條件ノ下ニ撤廢サレル
ヤウニ仕向ケタイト考ヘテ居ル次第デアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=36
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037・二瓶泰次郎
○二瓶泰次郞君 第三條ニ、「中華民國福建
省廣東省、廣西省及雲南省」云々トアル
ノデアリマスガ、昨年私ハ海南島ニ參リマ
シテ色々視察シタノデアリマスガ、目下在
留邦人ガ非常ニ多イノデアリマシテ、三千
人以上ニナッテ居リマス、尙又立派ナ領事館
モアリマスガ、此ノ海南島ノ領事官ノ爲ス
所ノ裁判ニ對スル抗告ト云フモノハ今後、
福建省トカ廣東省トカ云フモノニ包含シテヤ
ルノデスカ、ソレトモ又獨自ノ立場デオヤ
リニナルノデアリマスカ伺ヒタイノデアリ
マス、次ニ此ノ南支及ビ海南島ニハ檢察領
事ト云フモノガナイヤウニ思フノデアリマ
スガ、斯ウ云フ方面ハ南京トカ上海方面ノ檢
察領事ガ兼務スルノデアルカ、或ハ檢察事
務取扱ト云フモノデモ置キマシテ、特殊ニ
此ノ方面ノ檢察事務ヲヤルノデアルカ伺ヒ
タイノデアリマス、第三ハ海南島ニハ三
省會議ト云フモノガアリマシテ、是ハ外務
當局モ御分リデアリマセウガ、陸軍、海軍、
外務、此ノ三ツノ機關ガ相談シ合ッテ、其ノ
決定ニ依ッテ海南島ニ於ケル開拓事業、或ハ
經濟、文化、治安ト云フヤウナ有ラユルモ
ノガ此ノ三省會議ノ決定ニ俟タナケレバナ
ラヌト云フコトニナッテ居ルノデアリマスガ、
斯ウ云フ風ナ領事裁判ノ特例ヲ設ケマシテ
モ、果シテ陸海軍ヲ無視シテ領事ガ此ノ裁
判ヲ執行スルコトガ出來ルカドウカ、矢張
リ實際問題トシテ陸海軍ノ掣肘ヲ受ケルカ、
或ハ三省會議ノ結果ト云フモノニ俟ツコト
ニナルノヂャナイカト云フヤウナ懸念ヲ有
ツノデアリマスガ、此ノ三點ニ付テ御伺ヲ
シタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=37
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038・松本俊一
○政府委員(松本俊一君) 只今ノ御質問ノ
第一點デゴザイマスガ、海南島ハ只今ハ廣
東省ノ管轄ニナッテ居リマス、海南島ノ事件
モ廣東省ノ事件ト同ジニ取扱ハレル譯デア
リマス、ソレカラ第二點ノ檢察領事ノ點デ
ゴザイマスガ、檢察領事ハ何分ニモマダ制
度ヲ始メマシテ日ガ淺イノデゴザイマシテ、
南支方面ニハマダ實施サレテ居リマセヌノ
デ、追々廣東等ニ於キマシテ或ハ海南島ヲ
兼務致サセルト云フヤウニ致シマシテ、其
ノ制度ノ完璧ヲ期シテ行キタイト存ジテ居
リマス、第三ノ點デゴザイマスガ、此ノ點
ハ支那各地ニ於キマシテ色々ナ制度ガ事變
中カラ三省ノ連絡ニ依ッテ出來テ居ルコト
ハ我々モ能ク承知致シテ居リマス、此ノ
領事官ノ行ヒマス裁判ニ付キマシテ他カラ
掣肘ヲ受ケルト云ッタヤウナ事例ハ、私ノ存
ジテ居リマスル限リマダ一件モナイヤウデ
アリマス、其ノ點ハ御安心ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=38
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039・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 本日ハ午後一
時半カラ更ニ開會ヲ致シタイト存ジマス、
午前中ハ此ノ程度デ休憩ヲ致シマス
午前十一時五十四分休憩
午後一時三十七分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=39
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040・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 午前ニ引續キ
マシテ委員會ヲ再會致シマス、戰時ニ於ケ
ル領事官ノ裁判ノ特例ニ關スル法律案ニ付
キマシテ、質疑ヲ御許シ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=40
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041・岩田宙造
○岩田宙造君 ツマラナイ質問デスガ、是
ハ刑事ニ關スル規定ダケアルヤウデスガ、
民事ノ方ハ何カ斯ウ云フ特例ヲ設ケル必要
ハナイデアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=41
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042・松本俊一
○政府委員(松本俊一君) 差當リ法律案ト
致シマシテハ刑事ダケデ足リルト思ッテ居
リマス、民事ニ付キマシテハ戰時民事特別
法ガ矢張リ領事裁判地域ニモ適用ニナリマ
スガ、ソレデ賄ッテ行キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=42
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043・岩田宙造
○岩田宙造君 分リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=43
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044・二瓶泰次郎
○二瓶泰次郞君 午前中チヨット御伺ヒシ
タノデアリマスガ、諄イヤウデアリマスケ
レドモ、モウ一度御尋ネシタイノデアリマ
ス、ドウモ海南島ノヤウナ三省會議ヲ開イ
テ治安其ノ他有ラユルモノヲ決定シテ實行
スルト云フヤウナ地域ガ、今後占領區域ガ
多クナルニ從ッテ擴大サレルト思フノデアリ
マスガ、實際行ッテ見マシテ、外務行政ノ方
ニ遺憾ノ點ガアルンヂャナイカト思ハレル
節モアルノデアリマシテ、陸海軍ノ掣肘ヲ
受ケルトカ、或ハ位負ケシテ、兎ニ角外務
行政ニ多少ノ支障ヲ來シテ居ルノヂャナイ
カト云フヤウナ點モ想像サレルノデアリマ
シテ、單ニ是ハ其ノ事實ナシト簡單ニ之ヲ
片付ケルト云フコトデナシニ外務當局ノ方
方モ十分ニ其ノ點ニ思ヲ置カレマシテ、將
來共ニ外務行政トシテ、何レノ地帶ニ於キ
マシテモ其ノ權威ト實質トガ伴フヤウニ十
分御配慮ヲ戴キタイト斯樣ニ考ヘテ居ルノ
デアリマス、ドウモ實地ニ行ッテ見マスト色
色想像サレル點ガ多イノデアリマス、多數
居留民ニモ關係スルコトデアリマスカラ、
其ノ點十分御考慮ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=44
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045・松本俊一
○政府委員(松本俊一君) 私今朝御答辯申
上ゲマシタノハ此ノ領事館ノ行ッテ居リ
マス裁判ニ付キマシテハ制肘ヲ受ケルヤウ
ナ事實ハナイト云フコトヲ申上ゲマシタ、
一般ノ領事館ノヤッテ居リマスル居留民其
ノ他ノ行政ニ付キマシテハ、遠隔ノ地ニ於
キマシテハ或ハ御注意ノヤウナ不備ノ點モ
アルト思ヒマスガ、其ノ點ハ將來共十分注
意致シマシテ萬遺漏ナイヤウニ其ノ方ノ當
局ニモ傳ヘテ置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=45
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046・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 戰時ニ於ケル
領事官ノ裁判ノ特例ニ關スル質疑ハ暫ク此
ノ程度ニ止メテ置キマシテ、戰時刑事特別
法案ニ付テノ質疑ヲ御許シ致シマス、政府
委員カラ條文ニ付テノ御說明ヲ煩ハシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=46
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047・池田克
○政府委員(池田克君) 戰時刑事特別法案
ニ關シマスル細目ノ點ニ付キマシテ御說明
申シタイト思ヒマス、第一章ハ、司法大臣
カラモ御說明申上ゲマシタ通リニ、長期戰
ヲ豫想セラレテ居リマスル今次ノ戰時ニ際
シマシテ、國內ノ治安確保ノ爲ノ刑法的ノ
措置ヲ致シタノデゴザイマス、戰時下ニ於
キマシテ、國內治安ノ確保ノ爲ニハ是ダケ
ノモノハ是非共必要ダト考ヘラレマスモノ
ヲ特ニ取上ゲマシテ、其ノ刑罰ヲ加重整備
致シマシテ、大東亞戰爭下ニ於ケル刑政ノ實
ヲ擧ゲヨウ、斯樣ニ考ヘマシタ次第デゴザ
イマス、刑罰加重ノ基準ニ付キマシテハ
先般ノ臨時議會ニ於テ御協賛ヲ賜ハリマシ
タ戰時犯罪處罰ノ特例ニ關スル法律ノ趣旨
ト同樣デアリマシテ、此ノ一章ニ揭ゲラレ
テ居リマスル犯罪ニ付キマシテハ國家ガ
嚴罰ヲ以テ臨ムコトヲ明示致シマシテ、
般豫防率ヲ擧ゲマスルト共ニ犯罰ヲ敢ヘテ
シタ者ニ對シマシテハ、嚴重ニ之ヲ處斷致
シマシテ科刑ノ威力ヲ發揮ショウト斯樣
ニ考ヘタ次第デアリマス、固ヨリ此ノ法案
ガ幸ニ致シマシテ御協賛ヲ得マシテ、實施
ノ曉ニ於キマシテハ其ノ運用ニ付キマシテ
努メテ法ノ機械的ナ適用ニ亙リマセヌヤウ
十分ニ注意ヲ致ス積リデゴザイマス、此ノ
第一條乃至第三條ノ規定ハ、戰時ニ於キマ
スル放火罪ノ特別的ナ措置デゴザイマス
デ此ノ中デ特ニ申上ゲテ置クベキ事項ト致
シマシテハ、此ノ第一條ノ第一項、第二項
ノ放火ノ目的物ノ中ニ自動車ト航空機等ヲ
加ヘタ點デゴザイマス、是等ノモノガ御承
知ノ通リ非常ナ重要性ヲ持ッテ居リマスルニ
鑑ミマシテ、特ニ此ノ二ツノモノヲ加ヘ
タ次第デゴザイマス、更ニ第一條ノ末項ニ
於キマシテ、放火罪ノ豫備行爲ヲ處罰スル
外ニ放火ノ目的ヲ以テスル通謀行爲ヲ新タ
ニ加ヘマシタ點デゴザイマス、此ノ通謀行
爲ハ、其ノ危險ナルコトニ於テ豫備行爲ト
何等軒輊ナシト云フ、斯樣ナ立場ニ於テ豫
備ト同ジク相當ニ重ク處罰スル必要アリト
考ヘタ次第デアリマス、第四條、第五條ハ、
先程モ申上ゲマシタ戰時犯罪處罰ノ特例ニ
關スル法律ノ第一條及第二條ヲ其ノ儘ニ此
處ニ移シ入レタ次第デゴザイマス、第六條
ハ戰時下ニ於キマス脅喝行爲ノ相當ニ頻
發ガ豫想サレル所デアリマスルシ、殊ニ是
等ノ項ニ依リマシテ一般豫防ノ目的ヲ達成
スル爲ニ重ク處罰スルコトヲ要シマスル點
ニ鑑ミマシテ、第六條トシテ特別ノ刑法
的ナ措置ヲ致シタ次第デゴザイマス、第
七條ハ、「戰時ニ際シ國政ヲ變亂スルコトヲ
目的トシテ、人ヲ殺シタル者ハ死刑又ハ無
期ノ懲役若ハ禁錮ニ處ス、前項ノ未遂罪ハ
之ヲ罰ス、第一項ノ罪ヲ犯ス目的ヲ以テ其
ノ豫備又ハ陰謀ヲ爲シタル者ハ二年以上ノ
有期ノ懲役又ハ禁錮ニ處ス、第一項ノ罪ヲ
犯スコトヲ〓唆シ又ハ〓助シタル者ハ被〓
唆者又ハ被幫助者其ノ實行ヲ爲スニ至ラザ
ルトキハ二年以上ノ有期ノ懲役又ハ禁錮ニ
處ス、第一項ノ罪ヲ犯サシムル爲他人ヲ煽
動シタル者ノ罰亦前項ニ同ジ、第三項乃至前
項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキハ其ノ
刑ヲ減輕又ハ免除ス」トアリマス、是ハ戰時
ニ於キマシテ鞏固ナル政治組織ト强力且不
變ナル政策ノ遂行トガ缺クベカラザル要請
ダト考ヘマス、之ヲ不法ニ破壞或ハ阻害セ
ムトスル行爲、殊ニ暴力ノ手段ニ依ルモノ
ニ付キマシテハ極力之ガ防遏ヲ圖ル必要ア
リト考ヘタ次第デアリマス、サウシテ斯カル
行爲ノ中デ此ノ殺人ノ方法ニ依リマスルモ
ノハ、所謂國政ノ變亂ノ目的ヲ達スル爲ニ
最モ效果的ナ行爲ダト云フヤウナ關係カラ
致シマシテ從來屢〓行ハレタ所デアリマスル
シ、今後モ亦行ハルル虞レガ多分ニアル譯
デ、之ヲ國家的ナ見地カラ見マスレバ、其ノ
危險ガ最モ大ナルコトハ言フ迄モナイコト
デアリマス、然ルニ現在之ヲ特ニ重ク處斷ス
ベキ規定ガ存シマセヌノデ、戰時下殊ニ斯ク
ノ如キ犯罪ヲ防遏スルノ必要アルニ鑑ミマ
シテ、此ノ第七條ヲ以テ之ニ對シマシテ
重キ刑ヲ規定シ且事ヲ未然ニ防グ趣旨ヨリ
致シマシテ、豫備、陰謀ヲ處罰シ、〓唆、
幫助、煽動等ヲ獨立シテ、獨立罪トシテ處
罰スルコトトスル一面ニ於キマシテ、出來
ルダケ事ヲ未然ニ防止スル趣旨ヨリ自首減
免ノ規定ヲ設ケタ次第デゴザイマス、此ノ
本條ノ中ニ於キマシテ國政ト申シマスルノ
ハ、國家ノ基本的ナル政治ヲ意味致シマス、
サウシテ國政ノ變亂トハ此ノ國家ノ基本的
ナル政治ヲ不法ニ變更ヲ加ヘル、或ハ混亂
ヲ生ゼシムル意味デゴザイマス、而シテ此
ノ「人ヲ殺シタル者」ノ此ノ「人」ト申シマス
ノハ其ノ人ヲ殺セバ國政ノ變亂ヲ生ゼシ
ムルト云フヤウナ重要ナル關係ヲ有スル人
ノ意味デゴザイマシテ、之ヲ極ク端的ニ申上
ゲマスレバ、國政ニ重大ナル關係ヲ有スル
人ヲ意味スルノデゴザイマス、尙本條ノ先
例的ナ立法ト致シマシテハ舊刑法ノ百二十
三條ニゴザイマス、更ニ尙司法省ヨリ發表
サレテ居リマスル刑法ノ改正假案ノ第百六
十七條乃至百七十一條ニ同樣ノ規定ガ設ケ
ラレテ居リマス、第八條ハ此ノ戰時下ニ於
キマシテ防空ノ重要性ニ鑑ミマシテ、此ノ
防空ノ實施ニ從事スル公務員ノ當該職務ヲ
執行スルニ當ッテノ暴行脅迫、所謂刑法ノ公
務執行妨害罪中特ニ此ノ防空ノ公務ニ從事
スル職員ニ對シマス執行妨害ノ罪ヲ重ク處
罰スル規定デゴザイマス、此處ニ防空ト申
シマスノハ燈火管制或ハ僞裝、消防、防
火或ハ防彈、防毒、救護或ハ應急ノ復舊
竝ニ是等ニ關シマスル必要ナル監視、通信
及ビ警報等戰時ニ際シマシテ航空機ノ來
襲ニ因ッテ生ズベキ危害ヲ防止シ、又ハ之ニ
因ル被害ヲ輕減スル爲ニ必要缺クベカラザ
ル行爲ノ意味デゴザイマス、第九條ハ戰時
ニ際シマシテノ騒擾行爲ニ對シマスル特別
ノ刑法的ノ手當デゴザイマス、第十條ハ是
ハ一項二項トナッテ分レテ居リマスルガ、第
一項ハ、防空ノ國土防衞ニ於キマスル重要
性ニ鑑ミマシテ、之ガ妨害行爲ヲ嚴重ニ處
罰セムトスル規定デゴザイマス、此ノ一項
ニ規定シテアリマスヤウナ方法ニ依ッテ、
公共ノ防空ノ遂行ヲ阻害スベキ具體的危險
ヲ生ゼシメタル者ヲ處罰スル趣旨デゴザイ
マス、第二項ハ氣象觀測ガ軍事、航空、航
海等ト密接重要ナル關係ヲ有シマスルコト
ニ鑑ミマシテ、戰時下之ガ妨害行爲ヲ嚴重
處罰セムトスル規定デゴザイマス、第十一
條ハ通信ノ軍事上其ノ他ニ於キマスル重要
性ニ鑑ミマシテ、之ガ妨害行爲ヲ嚴重處罰
セムトスル規定デゴザイマス、此處ニ電氣
通信トアリマスルノハ、電信、電話、或ハ
無線電信、無線電話、或ハ高周波電流、サ
ウ云フモノヲ總テ抱括スル所ノ觀念デゴザ
イマス、第十二條ハ瓦斯、電氣ノ軍事上或
ハ產業上等ニ於キマスル重要性ニ鑑ミマシ
テ、之ガ妨害行爲ヲ重ク處罰セムトスル規
定デゴザイマス、第十三條ハ戰時下ニ於キ
マシテ、國防上重要ナル生產事業ノ遂行ヲ
確保セムガ爲ノ規定デゴザイマシテ、國防
上重要ナル生產事業トハ、例ヘバ國防目的
達成上重要ナル生產事業ヲ謂フノデゴザイ
マシテ、所謂重工業ノ如キガ之ニ當ルト考
ヘマス、デ事業設備、或ハ當該生產ノ用ニ
供シマスルモノヲ損壞スル或ハ隱匿スル其
ノ他ノ方法ヲ以テ其ノ物ノ效用ヲ害シマシ
テ、事業遂行妨害ノ具體的危險ヲ發生セシ
メタルモノヲ、嚴重ニ處罰セムトスル刑法
的ノ手當デゴザイマス、第十四條ハ先程申
上ゲマシタ第十條以下ノ行爲ノ重要性ニ鑑
ミマシテ、特ニ未遂罪ヲ處罰スル必要アリ
ト考ヘタ次第デアリマス、第十五條ハ戰時
下ニ於キマスル國民ノ日常生活ニ對スル必
要ナル物品供給ノ確保ヲセムガ爲ニ、此ノ
種物品ノ買占、賣惜行爲ヲ取締ラムトスル
規定デゴザイマス、本條ニ於キマシテ業務
上ノ場合ニ限リマシタノハ、我國ノ統制經
濟ノ根本方針ガ、一般消費者ヲ刑罰ノ對象ト
シテ居リマセヌ爲ニ、本條ニ於テモソレニ
依ッタノデゴザイマシテ、不正ノ利益ト申
シマスルノハ、不相當ナル利益ト云フヤウ
ナ意味デゴザイマス、第十六條ハ刑法ノ往
來妨害罪ニ對スル戰時的ナ特別ノ手當デ
ゴザイマス、第十七條ハ刑法百三十條、卽
チ住居侵入罪ニ對シマスル戰時的ナ特別ナ
手當デゴザイマス、之ヲ住居侵入罪ヲ一般
的ニ此ノ刑罰ヲ加重スルコトニ依リマシテ、
廣大ナル戰線ニ於テ軍務ニ鞅掌サレテ居ラ
レマスル所ノ、將兵ノ方々ヲシテ後顧ノ憂
ナカラシメル、左樣ナ意味合ヲ以チマシテ、
本條ノ規定ヲ設ケタ次第デゴザイマス、第
十八條ハ刑法ノ飮料水ニ關シマスル規定ノ
戰時的特別ナ手當デゴザイマス、此ノ罪ニ
關シマスル規定ハ以上ノヤウデアリマスル
ガ、第二章ノ刑事手績デゴザイマス、是ハ
第十九條ニモ規定ガゴザイマスル通リニ、
今次ノ戰時ニ對シマスル刑事手續ニ關シマス
ル特例トシテ規定致シタ次第デゴザイマス、
但シ次ノ第二十條ニ規定ガゴザイマス辯護
人ノ數ノ制限、辯護人ノ選任ノ時期ニ關シ
マスル制限ノ規定ハ、裁判所構成法戰時特
例第四條第一項ニ揭グル罪竝ニ危害罪、皇
室ニ對スル危害罪及內亂罪ノ罪ニ關シマス
ル事件ニ限ッテ之ヲ適用スルト云フコトニ
致シタ次第デアリマス、第二十條ハ只今申
シマシタ通リニ、辯護人ノ數竝ニ辯護人ノ
選任ノ時期ニ關シマスル制限ノ規定デゴザ
イマスルガ、是ハ此ノ犯罪ノ特殊性ニ鑑ミ
マシテ、訴訟ノ促進、機密ノ保持、左樣ナ
必要上此ノ程度ノ數ノ制限ヲ加ヘルコトガ
相當デアルト考ヘマシタノト、更ニ第二項
ニ於キマシテモ、裁判所ニ於キマシテ記錄
ヲ讀ミマシテ、公判ノ開延ノ準備ヲシテ居
ル處ガ色々ノ理由カラ致シマシテ、辯護
人ノ選任屆ガ出ヌト云フヤウナ關係デ、期
日ガ先キ〓〓ヘト延ビテ行クト云フ風ナコ
トハ戰時下ニ於キマシテハ避クベキコトデ
アル斯樣ナ趣旨ニ於キマシテ此ノ第二項
ノ規定ヲ設ケマシタノデアリマシテ、國防
保安法ノ第三十條ニ先例ガアリマス通リデ
アリマス、第二十一條ハ訴訟ニ關シマスル
書類ノ謄寫、閲覧ニ關シマスル制限ノ規定
デゴザイマス、訴訟法ニ依リマスレバ、訴
訟記錄ノ謄寫ハ自費デ以テ爲スベキデアリ
マシテ、其ノ謄寫物ハ固ヨリ辯護人ノ所有
ニ歸スル譯デゴザイマス、併シナガラ軍事
上ノ機密或ハ治安ヲ害シマスル事項等ノ記
載セラレテ居リマスル所ノ訴訟記錄ガ謄寫
セラレマシテ、個人ノ手ニ殘リマスルコト
ハ國家的ノ立場カラ見マシテ適當デハナイ、
殊ニ其ノ爲ニ不用意ノ間ニ或ハ其ノ內容ガ
他ニ漏泄スル、或ハ又ソレガ公ニセラレル、
或ハ探知、收集セラレルト云ッタヤウナ虞レ
モナシトシナイ譯デゴザイマスノデ、此ノ
謄寫ニ關シマスル制限ヲ設ケル必要ガアル
ノデアリマス、殊ニ閲覽ニ關シマシテハ
今日ニ於テモ裁判所ノ許可ヲ條件トシテ居
リマスルケレドモ、此ノ第二項ニ於キマシテ
ハ更ニ制限ヲ設ケマシテ、例ヘバ裁判所內
ノ特定ノ部屋ノ中デ書類ノ閱覽ヲ爲スベキ
モノトスル趣旨デゴザイマス、第二十二條
ハ裁判書或ハ裁判ヲ記載致シマシタ調書ノ
謄本或ハ抄本ニ付キマシテ被〓人其ノ他ノ
關係人カラ自費ヲ以テ請求ガアリマシタ場
合ニ於テハ交付シナケレバナラヌコトニ只
今迄ハナッテ居リマスルケレドモ、機密ノ保
持其ノ他公益上ノ理由ニ依リマシテ、裁判
所デハドウモ交付スルコトガ相當デナイト
認メラレマシタ場合ニ於テ、ソレヲ交付セ
ザルコトヲ得セシメムトスル規定デゴザイ
マス、ソレカラ第二十三條ハ豫審判事、或
ハ裁判所ガ公判期日前ニ商工會議所其ノ他
ノ團體ニ對シテ必要ナル事項ノ報告ヲ求ム
ルコトヲ得シムル規定デゴザイマスガ、是
ハ殊ニ經濟事件ニ付キマシテハ取調準備
ノ爲ニ、例ヘバ配給組織、或ハ物資ノ割當、
其ノ他統制ノ實情、或ハ經濟界ノ例ヘバ用
語デアルトカ慣例デアルトカ、更ニ又物資
ノ銘柄デアルトカ、サウ云ッタヤウナ事項
ヲドウシテモ知リタイ、斯ウ云フ風ナ場合
ガ相當多イノデゴザイマス、サウ云フ場合
ニ書面ニ依ッテ可能ナル範圍ノ報〓ヲ求メ
マスルコトガ、訴訟ノ的確敏速ノ目的ヲ達
シマス上ニ於テ極メテ適切ナル處置ダト
斯樣ニ考ヘマス次第デアリマス、尙此
ノ法文上ニ於キマシテハ、「商工會議所其ノ
他ノ團體」トアリマシテ、相手方ノ制限ヲ
設ケテ居リマセヌケレドモ、其ノ報〓ノ信
憑力ヲ擔保スル上カラ見マシテモ、此ノ規
定ヲ實際上運用スルニ當リマシテハ商工
會議所、或ハ統制會ト云フヤウナ、公務所
ニ準ズルモノカラ報告ヲ求ムルコトヲ豫定
シテ居リマス次第デアリマス、尙裁判所ガ
公判期日前ニ報告ヲ求メマシタモノニ付キ
マシテハ、公判ニ於キマシテハ必ズ證據調
ヲ爲スベキコトニナッテ居リマス、ソレハ本
條ノ第三項ニ「刑事訴訟法第三百四十二條
ノ規定ハ前項ノ規定ニ依リ集取シタルモノニ
付之ヲ準用ス」トアリマスノガ其ノ趣旨デア
リマス、第二十四條ハ裁判所構成法ノ戰時
特例ニ於キマシテ、新タニ區裁判所ノ事物
管轄ニナリマスル所謂戰時竊盜及常習竊盗
ノ罪ニ關シマシテハ所謂强制辯護、卽チ
必要辯護制ノ規定ニ據ラシメナイト云フ趣
旨ノ規定デゴザイマス、第二十五條ハ「地
方裁判所ノ事件ト雖モ刑事訴訟法第三百四
十三條第一項ニ規定スル制限ニ依ルコトヲ
要セズ」トアリマス、是ハ地方裁判所ノ事
件ノ證據調ニ關シマスル戰時特例デゴザイ
マシテ、戰時犯罪中ニ於キマシテハ從來
ノ區裁判所ノ事件デアリマシタモノガ、地
方裁判所ノ事件ニナルニ至リマシタモノモ
多ウゴザイマス、事件ノ圓滑ナル運用ヲ期
シマスル爲ニ、其ノ他地方裁判所ノ事件ニ
付キマシテモ、證據上ノ制限ニ依リマスル
取調ノ重複、或ハ關係人ノ煩勞、左樣ナコ
トヲ避ケル、或ハ內容ガ簡單ナル事件ニ付
キマシテハ、豫審ヲ經由セシメズ、直接地
方裁判所ノ公判ヲ請求ヲスルコトヲ得セシ
メマシテ、訴訟ノ的確敏活ヲ期スル、斯樣ナ
意味合ニ於キマシテ、本條ノ如キ戰時特例
ヲ設ケルコトニシタイト考ヘテ居ルノデア
リマス、殊ニ長期戰下ニ於キマシテ、色々
手不足ノ問題モ考ヘラレル、更ニ又非常時
デアルト云ッタヤウナ意味ノコトモ考ヘマ
シタ場合ニ、本條ノ如キ手當ヲ致シマスル
コトガ最小限度ニ於テ必要デハナカラウ
カ、斯樣ニ考ヘマシタ次第デゴザイマス、
此ノ規定ニ依リマシテ、檢事ニ致シマシテ
モ、司法警察官ニ致シマシテモ、愈〓益〓責任
ノ輕カラザルコトヲ感ジマシテ、此ノ調書
ノ作成ナドニ付キマシテハ更ニ一層改善セ
ラルベキコトヲ疑ハナイノデゴザイマス、
尙此ノ司法警察官ニ對シマシテハ數年前ヨ
リ、銳意其ノ指導訓練ヲ實施シテ居リマシ
テ、成績ニ付キマシテモ、相當ニ見ルベキ
モノガアルノデゴザイマス、司法當局ト致
シマシテハ此ノ法案ノ制定ノ上ハ、此ノ趣
旨ヲ十分ニ徹底スルコトニ努メテ、調書ノ
作成ニ遺憾ナキヲ期シタイ、斯樣ニ考ヘマ
ス次第デゴザイマス、第二十六條、是ハ戰
時下ニ於テ裁判所ガ有罪ノ言渡ヲ爲ス判決
ノ方式ニ關シマスル戰時特例デゴザイマス、
讀ンデ見マスト「有罪ノ言渡ヲ爲スニ當リ
證據ニ依リテ罪ト爲ルベキ事實ヲ認メタル
理由ヲ說明シ法令ノ適用ヲ示スニハ證據ノ
標目及法令ヲ揭グルヲ以テ足ル」トアリマ
ス、此ノ現行ノ手續法ニ於キマシテハ有
罪ノ判決ヲ爲スニ當リマシテ、證據上ノ理
由ヲ示スニハ此ノ證據ノ如何ナル部分ヲ
採用シタルカヲ少クトモ事實ノ理由ト相
俟ッテ明カニシ得ル程度ニ於テ、當該證據
ヲ內容的ニ示スコトヲ要スル、又ハ法令ノ
適用ニ付キマシテモ、精細ナル記述ヲ爲ス
コトニナッテ居リマス、之ニハ勿論解釋ノ
餘地ハゴザイマセウト思ヒマスケレドモ、
兎ニ角手續法ニ於キマシテハ、有罪ノ判決
ヲ爲シマスル場合ニ、總テ證據ニ依ッテ事
實ヲ認メマシタ理由ヲ說明スルコトニナツ
テ居リマスル爲ニ、只今モ一言致シマシ
タ通リニ、證據ノ內容ヲ一々詳細ニ說明
シテ居リマス、法令ノ適用ニ付キマシテ
モ精細ナル記述ヲナスコトニナッテ居リ
やべり、之ガ爲ニ事件ニ依リマシテハ、判決
ノ方式ガ鄭重ニ過ギマシテ、勞多クシテ之
ニ報ユル、何ト申シマスカ、實益ガナイト
デモ申シマスカ、サウ云ッタヤウナ場合
ガ相當ニアリマスルシ、又大都市ニ於キマ
シテ、日々多數ノ事件ヲ取扱フ者ヲシテ、
之ガ爲ニ判決ノ作成ガ常ニ遲レ勝ニナルト
云フ風ナ實情デゴザイマスガ、本條ニ於キ
マシテハ、戰時下ニ於キマシテ、此ノ甚ダ
言葉トシテハ卑近デゴザイマスケレドモ、
無駄ヲ省キタイ、無駄ノ省キ得ルモノヲ省
キマシテ、裁判所ヲシテ其ノ中心職務タル
審理裁判ニ專ラ力ヲ注グコトヲ得セシメム
トスル、サウシテ裁判ノ的確迅速ニ運行サ
レムコトヲ庶幾シタ次第デゴザイマス、固
ヨリ本條ヲ設ケマシタカラト申シマシテモ、
事件ノ何タルカヲ問ハズ、本條ノ特例ニ據
ルコトヲ要スルノダト云フノデハナイノデ
ゴザイマシテ、或ハ複雜ナ事件、或ハ上訴
ノ申立ノアルベキ事件等ニ付キマシテハ
當該事實ニ付テ心證ヲ得タル理由ヲ說明ス
ルコトハ言フ迄モナイト存ズルノデゴザ
イマス、第二十七條ハ此ノ特別刑事手續ニ
於キマシテハ、裁判所構成法ノ戰時特例ニ
依リマシテ、控訴審ガ省略サルヽ事件ガゴ
ザイマス、或ハ又控訴審ガ省略サレルベキ
事件トシテ、ソレガ上告審ニ繫屬スルト云
フ場合モゴザイマシテ、ソレ等ノ場合ニ於
ケル手續的ナ規定ヲ設ケル必要ガアルト考
ヘマシテ、此ノ第二十七條ノ規定ヲ置イタ
ノデアリマスガ、第一項ハ上〓裁判所、卽
チ此處デハ大審院デゴザイマスガ、所謂防
諜事件、詰リ外國ノ爲ニ、或ハ外國ヲ利ス
ル爲ニ犯シタノヂヤナイト、斯ウ云フ風ニ
認メマシタ場合ニ、本來ナラバソレハ三審、
何ト申シマスカ、普通ノ事件トシテノ取扱
ヲスベキデアリマスカラ、本來ナラバ其ノ
管轄ノ控訴院ニ事件ヲ破毀移送シナケレバ
ナラヌト思フノデアリマスルガ、併シ此ノ
國防保安法ノ違反トシテ上告審タル大審院
ニ繫屬シテ居リマスル關係上、左樣ナ場合
ニ於テハ、檢事ノ意見ヲ聽イテ、決定ヲ以
テ大審院自ラガ判決ヲスルト云フ意味デゴ
ザイマス、第二項ハ裁判所構成法戰時特例
ニ依ッテ審級ガ省略サルヽ事件、ソレニ付テ
例ヘバ控訴院ニ上告ガアッタ、處ガ此ノ上告
審タル控訴院ニ於キマシテ、其ノ罪ハ國防
保安法ノ違反タルノ疑ヒガ顯著デアル、斯
樣ナコトヲ發見致シマシタ場合ニ、是ハ國
防保安法ノ手續ニ依ッテ、取扱ヲスルコトガ
相當デアリマスカラ、決定ヲ以テ事件ヲ大
審院ニ移送スル、斯樣ナ趣旨ノ規定デアリ
きく、其ノ他ノ點ニ付キマシテハ、此ノ刑
事訴訟法ニ於キマスル上〓審ノ刑事手續ノ
適用ニ依ル趣旨デゴザイマス、第二十八條
ハ上告審ニ於キマスル手續ヲ規定シタノデ
ゴザイマシテ、現在ニ於キマシテハ此ノ上
告裁判所ガ現裁判所カラ訴訟記錄ノ送付ヲ
受ケマスルト云フト此ノ最初ノ公判期日ト詰
リ期日トノ間ニ五十日以上ノ間ヲ置キマシ
テ、公判期日ノ指定ヲスル譯デゴザイマス、
サウシテ上〓ノ申立人ハ、其ノ公判期日前
十五日迄ニ上〓趣意書ヲ提出スルコトニナッ
テ居リマスルガ、此ノ本條ニ於キマシテハ、
訴訟記錄ノ送付ヲ大審院、上〓裁判所ガ受
ケマスト、速カニ其ノ事ヲ上告申立人及大
審院ニ通ズル、上告申立人ハ其ノ通知ヲ受
ケマシタ日カラ、三十日以内ニ上告趣意書
ヲ上告裁判所ニ提出スル、左樣ニ致シマシ
テ、上告審ニ於キマスル手續ノ運行ヲ更ニ
一層機能的ナラシメムトスル趣旨デゴザイ
さく、第二十九條ハ「上告裁判所上告趣意
書其ノ他ノ書類ニ依リ上告ノ理由ナキコト
明白ナリト認ムルトキハ檢事ノ意見ヲ聽キ
辯論ヲ經ズシテ判決ヲ以テ上告ヲ棄却スル
コトヲ得」、是ハ斯樣ナ場合ニ於キマシテ、
書面審理ニ依ッテ判決ヲ爲シ得ルト云フ途
ヲ開イタ趣旨デゴザイマス、第三十條ハ本
章ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外刑事手
續ニ付キマシテ一般ノ規定ヲ適用スルト云
フ趣旨デゴザイマス、第三十一條ハ軍法會
議ノ刑事手續ニ依ッテ準用スル規定デゴザ
イマス、附則ニ付キマシテハ特ニ三項デゴ
ザイマシテ、辯護人ノ數及選任時期ノ制限
ニ關スル二十條ノ規定、强制辯護ニ關シマ
スル二十四條ノ規定、證據調ノ範圍ヲ擴張
致シマス所ノ第二十五條ノ規定及ビ判決書
ノ方式ニ關シマスル第二十六條ノ規定、其
ノ他上告審ニ於キマスル手續ハ、本法施行
前公訴ヲ提起シタ事件ニ付テハ之ヲ適用シ
ナイ、本法施行後公訴ヲ提記シタ事件カラ
之ヲ適用スル趣旨ヲ規定致シタ次第デゴザ
イマス、甚ダ粗雜デゴザイマスケレドモ、
細目ニ亙ル所ノ御說明ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=47
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048・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 此ノ法律案ニ
付テ御質疑ヲ許シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=48
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049・次田大三郎
○次田大三郞君 私少シ事實ヲ伺ッテ見タ
イト思ヒマス、ソレデ御配付ニナリマシタ
參考書類「戰時刑事特別法案立法資料、參
照條文」ノ內部、「戰時刑事特別法第一章ノ
罪ニ關スル參考犯罪統計」ト云フモノヲ御
配付ニナッテ居リマス、ソレニ付テ少シ不審
ナ所ヲ伺ヒタイノデス、其ノ統計ノ一番初
メニ「昭和十四年」トアリマスガ、是ハ十四
年ノ統計デゴザイマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=49
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050・池田克
○政府委員(池田克君) 左樣デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=50
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051・次田大三郎
○次田大三郞君 モウ少シ新シイ統計ハナ
イノデゴザイマセウカ、例ヘバ昭和十五年
トカ十六年トカ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=51
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052・池田克
○政府委員(池田克君) 是ハ司法省ニ於キ
マスル一番新シイ統計デゴザイマス、十四
年迄出來テ居ル次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=52
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053・次田大三郎
○次田大三郞君 第七條關係國政變亂殺人
ノ統計、檢事局ノ受理件數ガ千二百四十四
トアルノデガ、是ハ昭和十四年ニ是ダケ多
數ノ事件ガアッタ譯デアリマスカ、國政變亂
殺人ヲヤッタ事件ガ千二百四十四件アッタノ
デアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=53
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054・池田克
○政府委員(池田克君) 是ハ統計ノ誤リデ
ゴザイマシテ、唯國政變亂殺人ノ關係ト云
フ意味デ一般殺人ニ關シマスル統計ヲ集錄
シタ譯デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=54
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055・次田大三郎
○次田大三郞君 國政變亂殺人、今度ノ第
七條ニ該當スルト考ヘラレル犯罪事實ノ數
ハ分ラナイノデゴザイマスカ、ソレヲ私承
知シタイノデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=55
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056・池田克
○政府委員(池田克君) 御承知ノ通リ從來
ニ於キマシテ、國政變亂ヲ目的トシタ所ノ
殺人事件ガ相當發生シテ居リマシタノデゴ
ザイマス、其ノ點ニ付キマシテ取敢ヘズ昭
和五年以來最近ニ至リマスル迄ノ國政變
亂ヲ目的トスル殺人事件ヲ取調ベテ見マス
ルト、御承知ノ昭和五年ニ濱口總理大臣ヲ
狙擊致シマシタ、佐〓屋留雄外一名ニ對ス
ル殺人未遂事件ヲ初メト致シマシテ、今日
ニ至リマスル迄、百九十人ノ起訴ヲ見テ居
リマス、昭和七年、昭和八年、昭和九年、
昭和十年、昭和十二年、昭和十三年、昭和
十四年、昭和十六年ト最近ニ至リマスル迄、
百九十人ノ起訴ヲ見テ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=56
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057・次田大三郎
○次田大三郞君 其ノ詳細ノ御調ベヲ配付
シテ戴ケナイデセウカ、御都合惡ウゴザイ
マスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=57
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058・池田克
○政府委員(池田克君) 差支ゴザイマセヌ
カラ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=58
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059・次田大三郎
○次田大三郞君 ドウゾ願ヒマス、ソレカラ
最近ノ事例デデスネ、マダ豫審中ノモノモ、
取調中モアルダラウト思ヒマスガ、最近ノ
事例ヲ若シ御差支ヘナカッタラバ此處デ御
說明願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=59
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060・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 祕密會ニ致ス
コトニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=60
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061・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 御異議ナイモ
ノト認メマス、ソレデハ只今ヨリ祕密會ニ
入リマス
午後二時三十分祕密會ニ移ル
午後四時二十三分祕密會ヲ終ル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=61
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062・二荒芳徳
○委員長(伯爵二荒芳德君) 之ヲ以チマシ
テ祕密會ヲ解キマス、今日ハ此ノ程度ニ於
テ散會致シマス、明日午前十時ヨリ再ビ開
催ヲ致シマス
午後四時二十四分散會
出席者左ノ如シ
委員長伯爵二荒芳德君
副委員長男爵伊江朝助君
委員
侯爵淺野長武君
子爵秋月種英君
子爵舟橋〓賢君
山川端夫君
男爵島津忠彥君
男爵村田保定君
山岡萬之助君
次田大三郞君
澁澤金藏君
岩田宙造君
二瓶泰次郞君
國務大臣
司法大臣岩村通世君
政府委員
法制局長官森山銳一君
法制局參事官入江俊郞君
外務次官西春彥君
外務省條約局長松本俊一君
陸軍少將田中隆吉君
司法次官大森洪太君
司法省民事局長坂野千里君
司法省刑事局長池田克君
司法省調査部長齋藤直一君
司法書記官石田壽君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007902027X00319420127&spkNum=62
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