1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和十七年一月二十二日(木曜日)午前十時八分開議
━━━━━━━━━━━━━
議事日程 第三號
昭和十七年一月二十二日
午前十時開議
第一 恩給法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第二 右議案の審査を付託すへき特別委員の選擧
第三 國家總動員法第十八條の規定に依る法人等をして行政官廳の職權を行はしむることに關する法律案(政府提出) 第一讀會
第四 右議案の審査を付託すへき特別委員の選擧
第五 北支那開發株式會社法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第六 右議案の審査を付託すへき特別委員の選擧
第七 中支那振興株式會社法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第八 右議案の審査を付託すへき特別委員の選擧
第九 戰時に於ける領事官の裁判の特例に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第十 右議案の審査を付託すへき特別委員の選擧
第十一 國民貯蓄組合法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第十二 右議案の審査を付託すへき特別委員の選擧
第十三 日本勸業銀行法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第十四 右議案の審査を付託すへき特別委員の選擧
第十五 農工銀行法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第十六 右議案の審査を付託すへき特別委員の選擧
第十七 北海道拓殖銀行法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第十八 右議案の審査を付託すへき特別委員の選擧
第十九 税務代理士法案(政府提出) 第一讀會
第二十 右議案の審査を付託すへき特別委員の選擧
第二十一 社債等登録法案(政府提出) 第一讀會
第二十二 右議案の審査を付託すへき特別委員の選擧
第二十三 兵役法及共通法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第二十四 右議案の審査を付託すへき特別委員の選擧
第二十五 退役將校の豫備役復歸に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第二十六 右議案の審査を付託すへき特別委員の選擧
第二十七 陸軍刑法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第二十八 右議案の審査を付託すへき特別委員の選擧
第二十九 陸軍軍法會議法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第三十 右議案の審査を付託すへき特別委員の選擧
第三十一 船舶保護法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第三十二 右議案の審査を付託すへき特別委員の選擧
第三十三 海軍刑法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第三十四 右議案の審査を付託すへき特別委員の選擧
第三十五 海軍軍法會議法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第三十六 右議案の審査を付託すへき特別委員の選擧
第三十七 民法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第三十八 右議案の審査を付託すへき特別委員の選擧
第三十九 不動産登記法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第四十 右議案の審査を付託すへき特別委員の選擧
第四十一 戰時民事特別法案(政府提出) 第一讀會
第四十二 右議案の審査を付託すへき特別委員の選擧
第四十三 戰時刑事特別法案(政府提出) 第一讀會
第四十四 右議案の審査を付託すへき特別委員の選擧
第四十五 獸醫師法第二條の臨時特例に關する法律案(政府提出) 第一讀會
第四十六 右議案の審査を付託すへき特別委員の選擧
第四十七 明治四十五年法律第二十一號中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第四十八 右議案の審査を付託すへき特別委員の選擧
第四十九 小形船舶乘組員手帳法案(政府提出) 第一讀會
第五十 右議案の審査を付託すへき特別委員の選擧
第五十一 簡易生命保險法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第五十二 右議案の審査を付託すへき特別委員の選擧
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=0
-
001・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 諸般ノ報告ハ、
御異議ガナケレバ朗讀ヲ省略致シタイト存
ジマスガ、御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=1
-
002・松平頼壽
○講長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス
左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照
ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ傚フ
昨二十一日議決ニ係ル議員男爵〓誠之助君
ニ對スル弔辭ハ卽日之ヲ贈レリ
同日委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ
氏名左ノ如シ
資格審査委員會
委員長伯爵溝口直亮君
副委員長男爵赤松範一君
豫算委員會
委員長伯爵林博太郞君
副委員長男爵矢吹省三君
懲罰委員會
委員長侯爵大久保利武君
副委員長男爵大井成元君
請願委員會
委員長伯爵堀田正恒君
副委員長男爵近藤滋彌君
決算委員會
委員長男爵小畑大太郞君
副委員長子爵秋元春朝君
同日委員長ヨリ左ノ通分科ヲ決定シ及分科
擔當委員ヲ選定シタル旨ノ報告書ヲ提出セ
リ
豫算委員
第一分科(歲入、大藏省)
侯爵中元輔親君
伯爵林博太郞君
子爵大河內輝耕君
子爵八條隆正君
小原直君
下條康麿君
男爵矢吹省三君
河田烈君
西野元君
大澤德太郞君
兼務
男爵山川建君
男爵松平外與麿君
第二分科(外務省、司法省、拓務省)
公爵一條實孝君
伯爵黑木三次君
子爵野村益三君
小山松吉君
光行次郞君
男爵松田正之君
男爵渡邊修二君
遠藤柳作君
長岡隆一郞君
山隈康君
兼務
出淵勝次君
男爵岩倉道倶君
建部遯吾君
男爵稻田昌植君
第三分科(内務省、文部省、厚生省)
侯爵井上三郞君
子爵西尾忠方君
子爵實吉純郞君
廣瀨久忠君
建部遯吾君
堀切善次郞君
男爵山川建君
男爵松平外與麿君
澤田牛麿君
田澤義鋪君
岩田三史君
兼務
子爵野村益三君
子爵三島通陽君
犬塚勝太郞君
河田烈君
次田大三郞君
柴田兵一郞君
第四分科(陸軍省、海軍省)
公爵島津忠重君
侯爵中御門經恭君
男爵安保〓種君
子爵大河內正敏君
子爵谷儀一君
子爵伊東二郞丸君
男爵千田嘉平君
河原田稼吉君
次田大三郞君
中野敏雄君
渡邊甚吉君
兼務
侯爵細川護立君
小原直君
男爵矢吹省三君
男爵渡邊修二君
第五分科(農林省、商工省)
公爵鷹司信輔君
伯爵酒井忠正君
子爵曾我祐邦君
犬塚勝太郞君
男爵岩倉道倶君
吉野信次君
男爵稻田昌植君
有賀光豐君
米原章三君
柴田兵一郞君
兼務
下條康麿君
磯野庸幸君
中野敏雄君
第六分科(遞信省、鐵道省)
侯爵細川護立君
子爵井上匡四郞君
子爵三島通陽君
出淵勝次君
伍堂卓雄君
男爵久保田敬一君
坂野鉄次郞君
松本學君
結城安次君
磯野庸幸君
田中穗積君
兼務
男爵安保〓種君
請願委員
第一分科(大藏省、農林省、商工省)
公爵桂廣太郞君
伯爵堀田正恒君
子爵土岐章君
子爵酒井忠英君
松村眞一郞君
男爵伊藤一郞君
男爵明石元長君
千石興太郞君
光永星郞君
磯貝浩君
田部長右衞門君
第二分科(內務省、司法省、文部省、厚生
省
侯爵小村捷治君
子爵安藤信昭君
子爵高木正得君
田中館愛橘君
松井茂君
木村尙達君
男爵宮原旭君
男爵村田保定君
小坂梅吉君
出光佐三君
岩元達一君
第三分科(遞信省、鐵道省)
公爵島津忠承君
伯爵柳澤保承君
子爵松平忠壽君
子爵由利正通君
柴田善三郞君
男爵山中秀二郞君
長谷川赳夫君
男爵近藤滋彌君
竹下豐次君
唐澤俊樹君
松本勝太郞君
上野松次郞君
兼務
男爵向山均君
男爵加藤成之君
男爵宮原旭君
第四分科(內閣、外務省、陸軍省、海軍
省、拓務省)
公爵德川家正君
侯爵池田宣政君
子爵宍戶功男君
子爵河瀨眞君
男爵向山均君
仁井田益太郞君
橫山助成君
男爵加藤成之君
宮田光雄君
中山太一君
山上岩二君
兼務
男爵近藤滋彌君
男爵明石元長君
男爵村田保定君
小坂梅吉君
決算委員
一分科(歲八、一藏省)
公爵山縣有道君
伯爵大木喜福君
子爵梅園篤彥君
子爵北小路三郞君
男爵小畑大太郞君
男爵倉富鈞君
竹內可吉君
野村德七君
佐々木嘉太郞君
兼務
入江貫一君
第二分科(內務省、司法省、文部省、厚
生省)
侯爵前田利爲君
子爵今城定政君
平塚廣義君
安井英二君
男爵高崎弓彥君
佐々木八十八君
松井貞太郞君
佐藤助九郞君
仲村〓榮君
第三分科(陸軍省、海軍省)
侯爵四條隆德君
伯爵山本〓君
關屋貞三郞君
子爵大島陸太郞君
小野塚喜平次君
男爵北島貴孝君
男爵八代五郞造君
兒玉謙次君
菅澤重雄君
兼務
河西豊太郞君
第四分私(ケ務省、農林省、商工省、拓務
省
侯爵大炊御門經輝君
子爵保科正昭君
子爵入江爲常君
入江貫一君
男爵岩村一木君
太田耕造君
稻畑勝太郞君
安宅彌吉君
永瀨寅吉君
兼務
男爵小畑大太郞君
男爵安場保健君
諸橋久太郞君
佐藤助九郞君
第五分科(遞信省、鐵道省)
公爵岩倉具榮君
子爵秋元春朝君
子爵波多野二郞君
下村宏君
男爵安場保健君
男爵神山嘉瑞君
野村茂久馬君
河西豊太郞君
諸橋久太郞君
兼務
佐々木八十八君
同日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
請願文書表(第一囘報〓)
同日政府ヨリ左ノ決算及同檢査報〓ヲ提出
セリ
昭和十五年度歲入歲出總決算
昭和十五年度各特別會計歲入歲出決算
昭和十五年度歲入歲出決算檢査報告
同日内閣總理大臣ヨリ左ノ通第七十九囘帝
國議會政府委員仰付ラレタル旨ノ通牒ヲ受
領セリ
政府委員
內閣恩給局長平木弘君
企畫院部長柴田彌一郞君
森川覺三君
秋永月三君
同同同同同柏原兵太郞君
松田令輔君
龜山孝一君
企畫院書記官迫水久常君
興亞院部長松村盡君
興亞院書記官久保文藏君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=2
-
003・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 是ヨリ本日ノ會
議ヲ開キマス、日程第一、恩給法中改正法
律案、政府提出、第一讀會、森山法制局長官
(左ノ案ハ卽讀ヲ經サルモ參照ノ
タメ玆ニ載錄ス以下之ニ傚フ
恩給法中改正法律案
右
勅旨ヲ奉ジ帝國議會ニ提出ス
昭和十七年一月十八日
內閣總理大臣兼東條英機
內務大臣陸軍·大臣
部大橋田邦彦
林大臣井野碩哉
小泉親彥
臣臣臣臣臣臣兼臣岩村通世
鐵商大遞外海司厚拓農文藏信務軍法生務嶋田繁太郞
大大大大大大大大大東郷茂德
寺島健
臣賀屋興宣
工臣岸信介
道臣八田嘉明
恩給法中改正法律案
恩給法中左ノ通改正ス
第二十三條第二號中「看守、」ノ下ニ「〓
導、」ヲ加ヘ同條第三號ヲ左ノ如ク改ム
三消防士補、消防機關士補及判任官
ノ待遇ヲ受クル消防手
第二十五條第四號但書ヲ左ノ如ク改ム
但シ左ノ場合ニ於テハ之ヲ轉任ト看做
ス
(3)巡査又ハ判任官ノ待遇ヲ受ク
ル消防手警部補、消防士補又ハ消
防機關士補ニ任シタルトキ
(白)警部補、消防士補又ハ消防機
關士補巡査又ハ判任官ノ待遇ヲ受
クル消防手ニ就職スルトキ
(ハ)看守又ハ〓導副看守長ニ任シ
タルトキ
(A)副看守長看守又ハ〓導ニ就職
スルトキ
第二十六條第四號但書ヲ左ノ如ク改ム
但シ警部補、消防士補、消防機關士補
若ハ副看守長他ノ官ニ轉シ又ハ他ノ官
ヨリ警部補、消防士補、消防機關士補
若ハ副看守長ニ轉シタルトキハ之ヲ退
職ト看做ス
第三十二條戰爭又ハ戰爭ニ準スヘキ事
變ニ際シ公務員其ノ職務ヲ以テ戰務ニ
服シタルトキハ其ノ期間ノ一月ニ付三
月以內ヲ加算ス
戰爭又ハ戰爭ニ準スヘキ事變、加算ノ
程度、加算ノ認メラルヘキ期間及地域
竝戰務ノ範圍ハ勅裁ヲ以テ之ヲ定ム
第四十八條第一項第二號中「戰地ニ於テ」
ヲ「勅令ヲ以テ指定スル地域ニ於テ」ニ改
ム
第五十九條ノ二第一項第二號ヲ左ノ如ク
改ム
二前號ニ規定スル場合以外ノ場合ニ
於テ退職前一年內ニ昇給アリタルト
キハ其ノ昇給ノ直前ノ昇給ノ時ヨリ
退職ノ時迄ニ二年以上ヲ經過シタル
場合ニ限リ前號ノ規定ヲ準用ス
第七十二條ニ左ノ一項ヲ加フ
公務員又ハ之ニ準スヘキ者ノ死亡後認
知ノ裁判アリテ公務員、又ハ之ニ準スヘ
キ者ノ子トシテ認知セラレタル者ハ第
一項ノ規定ノ適用ニ付テハ公務員又ハ
之ニ準スヘキ者ノ死亡ノ時ヨリ之ト同
一戶籍內ニ在リタルモノト看做ス
第七十四條ノ二第一項ヲ左ノ如ク改ム
第七十二條第三項ノ規定ニ依リ公務員
又ハ之ニ準スヘキ者ノ遺族ト看做サレ
タル者ニ給スル扶助料ハ委託又ハ郵便
ニ依ル戶籍屆出ノ受理ノ日ヨリ、同條
第四項ノ規定ニ依リ公務員又ハ之ニ準
スヘキ者ノ遺族ト看做サレタル者ニ給
スル扶助料ハ認知屆出ノ受理ノ日ヨリ
之ヲ給ス
第七十五條第二項、中「前項」ヲ「第一項」ニ
改メ同條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
公務員カ死亡ノ際二級以上昇級シタル
場合ニ於テ前項第二號又ハ第三號ノ規
定ニ依リ別表第五號表又ハ第六號表ノ
率ヲ乘スヘキトキハ當該公務員ノ死亡
ノ際一級昇級シタルトキ乘スヘキ率フ
乘ス
同條ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ規定ニ依リ別表第八號表ノ率ヲ
乘シタル金額ヲ加給シタル扶助料年額
カ在職年數及死亡ノ原因同一ニシテ上
位ノ階等ノ公務員又ハ之ニ準スヘキ者
ノ遺族ニ給スヘキ扶助料年額ニ遺族ノ
員數同一ナル場合ノ同表ノ率ヲ乘シタ
ル金額ヲ加給シタル金額ヲ超ユルトキ
ハ其ノ超過額ヲ減シタル金額ヲ以テ其
ノ扶助料年額トス
階將官佐官大尉中尉少少尉准士官
親任奏任判
勅任三等乃太郎は等八等-等
至五等九等
等勅任奏任待遇判
待遇
割割割割割割
率〓云二八元元三三
別表第六號表ヲ左ノ如ク改ム
第六號表
階將官佐官大尉中尉少尉准士官
親任奏任判
勅任三等乃六等七等八等等
至五等九等
等勅任奏任待遇判
待遇
割割割割割割
率一九·二三八二二·四二〇二十五三百八元六四
別表第八號表ヲ左ノ如ク改ム
第八號表
階親任奏
遺勅任三等乃至五等
族等
ノ勅任待遇奏任
員
數將官佐官
割割
三人〇·五一·〇
者、
等ノ者、
下ノ者、
率トス
第九十一條第二項中「關東局職員」ヲ語
東局部内ノ職員」ニ改ム
別表第五號表ヲ左ノ如ク改ム
第五號表
曹長一車曹二伍長三
等兵曹等兵曹等兵曹陸軍兵陸軍上陸軍一陸軍二
長等兵等兵等兵
任
ニ等三等四等海軍一海軍二海軍三海軍四
任待遇等兵等兵等兵等兵
割割割割割割割
三九四四三四八五一三五一
曹長一軍曹二伍長三
等兵曹等兵曹等兵曹陸軍兵陸軍上陸軍一陸軍二
長等兵等兵等兵
任
二等三等四等海軍一海軍二海軍三海軍四
任待遇等兵等兵等兵等兵
割割割割割割割
三一·二三二·八三田中央長트EDA四三八四三八
任判任
六等乃至九等一等二等等四等
三
待遇判任待遇
尉官准士官下士官兵
割割割割
二·〇)二一〇二·五二·五
遺族ノ員數三人ヲ超ユル場合ノ率ハ三人ノ場合ノ率ニ三人ヲ超ユル一人ニ付想任動任ノ
勅任待遇者及將官ノ者ノ遣族ニ給スヘキ扶助料ニ在リテハ〇·五割、高等官三等乃至五
同待遇者及佐官ノ者ノ遺族ニ給スヘキ扶助料ニ在リテハ〇·七五割、髙等官六等以
同待遇者及尉官以下ノ者ノ遺族ニ給スヘキ扶助料ニ在リテハ一·○割ヲ加ヘタル
附則
第一條本法施行ノ期日ハ各規定ニ付勅
令ヲ以テ之ヲ定ム
第二條本法施行前ノ在職ニ付在職年ヲ
計算スル場合ニ於テ其ノ加算年ニ付テ
ハ仍從前ノ例ニ依ル
本法施行前從前ノ規定ニ依ル戰地ニ於
テ流行病ニ罹リタル公務員ニ付テハ仍
從前ノ例ニ依ル
第三條本法施行前給與事由ノ生ジタル
恩給ニ付退職前一年內ノ俸給ノ總額ヲ
計算スル場合ニ於テハ仍從前ノ例ニ依
ル
第四條本法施行ノ際現ニ從前ノ規定ニ
依リ扶助料ヲ受ケ又ハ受クベキ者ニシ
テ本法所定ノ金額ヲ受ケザルモノニハ
當該金額ニ其ノ金額ト本法所定ノ扶助
料ノ金額トノ差額ヲ勅令ノ定ムル所ニ
依リ增給ス
〔政府委員森山銳一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=3
-
004・森山鋭一
○政府委員(森山銳一君) 只今議題トナリ
マシタ恩給法中改正法律案ニ付テ提案ノ理
由ヲ御說明申上ゲマス、今囘ノ改正ハ數點
ニ亙ッテ居リマスガ、其ノ第一ノ點ハ、從軍加
算年ノ規定ノ改正デアリマス、現行法ニ於
テハ戰地ト戰地外トヲ區別シテ、戰地ノ
戰務ノ場合ニアリマシテハ、戰務期間一月
ニ付三月ヲ加算シ、戰地外ノ戰務ノ場合ニ
アリマシテハ、戰務期間一月ニ付一月ヲ加
算スルコトトナッテ居ルノデアリマスガ、今
次大東亞戰爭ノ實情カラ考ヘマスト、斯カ
ル區別ヲ爲ス制度ハ必ズシモ適當デハアリ
マセヌノデ、戰地戰務ト戰地外戰務トノ區
別ヲ撤廢シ、戰地ト戰地外トヲ問ハズ、戰
務ノ內容ニ應ジテ、戰務期間一月ニ付三月
以内デ適當ナル加算ヲ附ケルコトガ出來ル
コトト致シマシタ、改正ノ第二ノ點ハ遺
族扶助料ノ增額デアリマス、戰死者ノ遺族
及公務死亡者ノ遺族ニ給スル扶助料ハ、旣
ニ昭和十三年ニ增額ヲ爲シタノデアリマス
ガ、現下ノ情勢ニ鑑ミマスレバ、是等遺族
ノ援護ハ更ニ一層之ヲ厚クスル必要ガアル
ト認メラレマスノデ、一定額以下ノ扶助料
ヲ、最高約四割程度增額スルコトト致シマ
スト共ニ、遺族扶助料ノ遺族ノ〓數ニ因ル
加給額ハ、現行法デハ三人以上五人迄ハ順次
累增シ、六人以上ハ五人ノ場合ト同額トナツ
テ居リマスガ、今囘ハ人口政策ヲモ考慮シ
マシテ、六人以上ノ場合ニモ其ノ員數ニ應
ジテ扶助料ヲ累增スルコトト致シマシタ、
次ニ別途御協贊ヲ御顧ヒ致シテ居リマス民
法中改正法律案ニ依リマスレバ、父母ガ死
亡シタ後デモ、其ノ子ハ訴ニ依ッテ認知ヲ求
メルコトガ出來ルヤウニナリマスノデ、恩
給法モ亦之ニ照應シテ、公務員ノ死亡後ニ
認知ノ裁判ニ依ッテ其ノ子トシテ認知セラ
レタル者ヲ、遺族ノ範圍ニ加ヘテ、之ニ扶
助料ヲ給スルコトガ出來ルヤウニ致シ、
又昨年新タニ設ケラレマシタ豫防拘禁所ノ
〓導竝ニ消防關係ノ消防士補及消防機關士
補ヲ警察監獄職員ニ指定スルナドノ爲ニ、
二三點改正ヲ要スルコトトナッタノデアリ
マス、以上ガ本法律案ヲ提出スルニ至リマ
シタ理由デアリマス、何卒御審議ノ上速カ
ニ協贊ヲ與ヘラレムコトヲ御願ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=4
-
005・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 質疑ノ通〓ガゴ
ザイマス、赤池濃君
〔赤池濃君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=5
-
006・赤池濃
○赤池濃君 昨日陸海軍兩大臣ヨリ戰況ノ
詳細ナル御報告ガアリマシテ、今囘ノ世界
未曾有ノ大勝利ニ關スル所ノ眞相ガ明カニ
ナリマシタノハ、誠ニ感謝ノ至リニ堪ヘマ
その 、皇軍ノ赫々タル勳功ニ對シテハ、
億ノ國民ハ感嘆歡喜、自ラ暗淚ヲ催シマシ
テ、謝辭ヲ述ベムトスルモ其ノ言葉ヲ知ラ
ズ、敬意ヲ表セムトスルモ其ノ方法ニ苦シ
ムト云フ風ナ有樣デアリマス、而シテ軍人
ハ謙虛其ノ功ヲ誇ラズ、殊ニ〓戰ニ於ケル
大勝利ノ際ニ於キマスル所ノ報〓ノ如キモ
ノハ必ズ天佑神助ノコトヲ强調サレタノ
デアリマシテ、奥床シイコト限リナイノデ
アリマス、之ガ爲ニ國民ハ感激シテ、唯皇
軍ニ信賴ヲ致シマシテ、陣頭ノ將士ト銃後
ノ國民トハ呼吸ガピッタリ合ヒマシテ、眞ニ
軍民一體ノ實ガ現レテ參リマシタ、所謂一
億ノ國民ガ火ノ玉ノヤウニナリ、サウシテ
唯聖戰ノ貫徹ニ邁進スルト云フヤウナ風ノ、
此ノ擧國一致ノ事實ト云フモノハ獨リ我
ガ國ニ於テ見ルベキ現象デアリマシテ、世
界何レノ國ニ於キマシテモ之ヲ夢想ダニス
ルコトガ出來ナイノデアリマス、卽チ我ガ
國體ノ精華ハ玆ニ燦然トシテ光ヲ放チ世界
ヲ耀カシテ居ルノデアリマス、從ッテ此ノ際
我々ノ任務ハ一ニ此ノ國體ノ精華ヲ培養ス
ルニアリマシテ、苟モ之ヲ害スルヤウナモ
ノガアリマシタナラバ、早速之ヲ取除キ、
之ガ光ヲ曇ラセルヤウナモノガアリマシタ
ナラバ、直グニ之ヲ拭ヒ去ルト云フコトガ
肝腎ダト思フノデアリマス、私ハ、政府ハ
政治ニ於テ立法ニ於テ、格別ニ此ノコトニ
付テ御注意アルベキコトダト信ジテ居リマ
ス、偖、今囘提出サレマシタ所ノ恩給法改正
案ニ付テ、聊カ此ノ點疑義ヲ生ジマシタモ
ノデゴザイマスカラ、政府ノ御所見ヲ伺フ
ノデアリマス、此ノ法案ノ重點ハヽ敵ノ內
地ヲ襲擊スル場合ヲ豫想シマシテ、內
地勤務ノ人モ戰地勤務者ト同樣ニ取扱ッテ
其ノ恩給加算ヲ有利ニセムトスルノデアリ
マス、勿論內地勤務ノ人ヲ一律ニ戰地勤務
者ト同樣ニスルノデハナク、之ニ一定ノ條
件ヲ付シ、一定ノ地域ヲ限定シテ、此ノ特
典ニ浴セシメルト云フヤウナ風ニ感ゼラレ
マス、此ノ際第一ニ伺ヒタイノハ、法文ニ
アル戰地、戰地外ト云フ意味、竝ニ戰地恩
給加算制度ノ理由デアリマス、唯戰地ト申
シマスレバ戰爭スル土地、戰爭ノ土地ト
云フ風ニ解サレマシテ、內地モ海外モ共ニ、
戰爭サヘアレバ戰地ト言ハレルヤウニ思ハ
レマスルケレドモ、併シ我々ノ解釋スル所ニ
依リマスルト云フト、此ノ制度ハ、山紫水
明デ氣候溫和デアル所ノ我ガ國土ヲ去ッテ、
遠ク天涯萬里ノ異域ニ出征シテ、惡氣候ノ
下ニ勞苦スル將士ニ對シ、惻隱ノ情ヲ以テ
制定サレタモノト考ヘルノデアリマス、等
シク風雨ト申シマスルケレドモ、大陸ノ風
雨ト我ガ國ノモノトハ餘程變ッテ居ル、例へ
バ彼ニアッテハ朔風、朔風ト申シマスト云
フト凛烈膚ヲ擘クヤウナモノデアルシ、或
ハ黃塵萬丈咫尺ヲ辨ゼザル風モ吹イテ居リ
マス、雨ト言ヘバ百川ヲ決シテ倒サニシテ
空カラ落スヤウナ雨モアリマスルシ、又車
軸ヲ流スヤウナ雨モアルノデアリマス、又飮
料水ノ點カラ申シマシテモ、澄ンダモノハ殆
ドナク、否濁ツタ水デサヘモ、アレバ結構
デアッテ、遠ク水ヲ求メテ渇ヲ醫スト云フ場
合モ少クナイノデアリマス、加フルニ氣候
ハ嚴烈デ、炎熱酷寒、到底內地ノ比デナク、
其ノ上戰鬪狀況ニ依ッテハ、宿ルニ家ナク食
フニ物ナク、屢、飢餓ニ瀕スルコトモアリマ
シテ、萬事內地ト趣ヲ異ニシテ居ルノデア
リマスカラ、戰地勤務者ニ對シテハ所謂
海外ニ於ケル戰地ノ勤務者ニ對シマシテハ、
恩給加算ノ特典ガ設ケラレタモノト解スル
ノデアリマス、其ノ點政府ノ御所見ハ如何
デアリマスカ、卽チ我々ハ戰地ト云フノヲ
外地ト解釋致シマス、ソレカラ又外地ニ於
ケル所ノ特典ト云フモノハ、內地ト違フカ
ラト云フ、斯ウ云フ見地デ以テ御尋ネスル
ノデアリマス、次ニ政府ハ、敵ガ内地ヲ襲
擊スル場合ヲ豫想セラレテ居ルノデアリマ
スガ、果シテ「アメリカ」ナリ「イギリス」ナ
リノ軍隊ガ、隊伍堂々トシテ我ガ國ヲ襲ヒ
來ルコトガアルデアリマセウカ、昨日ノ陸
海軍大臣ノ詳細ナル御報告ニ依リマシテモ
明カナルガ如ク、我ガ忠勇義烈ナル陸海軍
將兵ノ勇戰奮鬪ノ爲ニ、幸ニモ「ハワイ」以
西「シンガポール」以東ニハ敵ノ艦隊ノ影ダ
ニ見ヘマセヌ、僅カニ少數ノ潜水艦ガ出沒
スルニ過ギナイノデアリコスルガ、是モ基
地ナキ彼等ハ間モナク其ノ影ヲ收メルデア
リマセウ、又香港、「マレ〓」、「フイリッピ
ンレㄱボルネオ」等ニ於ケル所ノ我ガ軍隊ノ
奮鬪ニ依ッテ、敵ノ軍隊ハ全ク殲滅サレルヤ
ウナ情勢デ、是等ノ地方ハ悉ク我ガ有ニ歸
シマシタ今日、米英ノ軍隊ガ我ガ本土ヲ襲
フト云フコトハ斷ジテアリマセヌ、唯想像
シ得ラレルモノハ飛行機ノ襲來ト潜水艦ノ
出沒トデアリマス、併シ其ノ飛行機ト雖モ、
今ノ所我ガ上空ヲ飛ブヤウナ飛行機ハ先ヅ
ナイ、又飛ブベキ術モナイ、問題ハ唯春ニ
ナッテカラ北方カラドレダケ來ルダラウカ、
或ハ敵ノ航空母艦ガ太平洋ニ出タ時ハドウ
デアルカト云フニ過ギマセヌ、私ハ此ノ際
「ソ」聯ノコトニ付テハ、友好關係ニアル今
日色々ノ臆測ヲ逞シウスルコトハ愼ミマス、
サウシマスルト云フト、萬々一敵ノ飛行機
ガ襲來スル場合ト雖モ、結局ハ一時ノ奇襲
ニ過ギマセヌ、奇襲ハ飽ク迄モ奇襲デアッ
テ、正々堂々タル攻擊デハアリマセヌ、全
ク變態現象デアルノデアリマス、時間的ニ
見ルモ地理的ニ考フルモ、懸軍萬里異域ニ
在ッテ交戰スル人ト、內地ニ居ッテ守ル人ト
ハ)全ク趣ヲ異ニスルト考フルノデアリマ
ス、而シテ飛行機ノ襲來ノ場合ニ於ケル
際我々ハ我ガ軍ガ必ズ之ヲ邀擊シテ、悉
クソレヲ殲滅スルコトヲ信ジテ疑ヒマセヌ、
不幸ニシテ彼等ガ若シ爆彈ヲ落シタ場合ハ
ドウカト申シマスルナラバ、其ノ時ハ軍民
擧シテ善後ノ措置ヲ講ズベキモノデアリマ
スルガ、其ノ場合ハ、恐ラクハ軍ヨリモ、
警官若シクハ人民ノ勞ニ俟ツコトガ多カラ
ウト思ヒマス、而シテ是等警官又ハ人民ハ
戰時恩給加俸ヲ夢想ダニモシテ居リマセ
又、次ニ潜水艦出沒ニ付テハ海軍ノ將士
ノ不眠不休ノ勞苦ニ對シテ滿腔ノ感謝ヲ捧
ゲマス、而シテ是ト稍〓類似スル所ノ船舶ノ
乘組員ニ付テ見マスルト、此ノ人々ハ潜水
艦ナリ浮流水雷ノ警戒ノ爲ニ、夜モ帶ヲ解
カズ死ヲ以テ職務ニ勵ンデ居ルノデアリマ
スガ、未ダ曾テ何人カラモ戰時恩給ノ話ヲ
聽キマセヌ、此ノ時此ノ際、軍人ニ限リ恩
給法改正ノ特別ノ理由ガアルノデアリマセ
ウカ、ドウデアリマセウカ、御說明ヲ願ヒ
タイノデアリマス、更ニ本土襲擊ノ場合ハ、
軍人ガ死力ヲ盡シテ防禦スルノハ軍人ノ
営然ノ義務デアリマス、國家ガ平素ヨリ軍
備ヲ嚴ニスルノハ此ノ日ノ來ラムコトヲ待
ツガ爲デアル、古人曰フ、兵隊ヲ養フハ千
日、用フルハ一日ニ在リト、又軍人ハ此ノ
日ヲ以テ、平素ノ修練ヲ示スノハ此ノ時ゾ
トバカリ勇ミ立ツノデアリマス、而シテ此
ノ時殊動ヲ奏シテ國土防衞ノ實ヲ完ウシタ
ナラバ陛下ハ其ノ動功ヲ錄サレルコト必
定デアリマス、唯其ノ恩賞ハ動章其ノ他名
譽ノ方法ヲ以テナサレルノガ原則ト心得テ
居リマスガ、ドウデセウカ、從ッテ動功ノ問
題ト恩給ノ問題トハ、結ビ付ケルヨリモ之
ヲ區別スベキモノダト思フノデアリマスル
ガ、政府ノ御所見ハドウデアリマセウカ、
最後ニ伺ヒタイノハ、政府ハ此ノ改正案ヲ
提出サレルニ付キマシテ、國民思想ニ及ス
影響ヲドウ云フ風ニ御考ニナッタカト云フ
コトデアリマス、此ノ議會ニハ未曾有ノ大
增稅案ガ提出サレマシテ、國民ノ負擔ハ頓
ニ激增スルノ外、計畫經濟デ事業ノ合併統
合ガ、强制的又ハ權力的勸誘ノ下ニ於テ行
ハルヽガ爲ニ、業ヲ失ヒ職ニ離レル者ガ日
ニ〓〓增加シテ居リマス、而シテ此ノ失業
離職ハ、政府ガ昨年經濟新體制ノ眼目タル
中小商工業維持育成ヲ改メマシテ、中小商
工業整理統合ト云フ方針ヲ執ッタ爲ニ、一層
其ノ勢ヲ激成シツヽアルノデアリマス、元
來計畫經濟ハ、物資缺乏ニ苦シムノ餘リ巳
ムヲ得ズシテ制定サレタモノデアリマスガ
故ニ、南洋ノ寶庫ヲ掌ノ中ニ收メ、窮乏國、
俗ニ持タヌ國カラシテ、有餘國、俗ニ持テ
ル國ト相成リマシタ所ノ今日、當然此ノ方
針ト此ノ制度ハ改ムベキモノダト考ヘルノ
デアリマス、卽チ其ノ消極性ヲ改メテ、積
極的ノ大經綸ヲ講ズルヤウナ風ニ大轉換ヲ
シナケレバナラヌモノダト考ヘルノデアリ
さゝ、假令目下ノ所ハ船舶其ノ他ノ都合ニ
於テ早急ニ是等ノ南洋ノ資源ヲ利用スルコト
ガ出來ナイトスルモ、出來ナケレバ出來ナ
イデ、努メテ其ノ障碍ヲ除去シテ一日は
早ク之ヲ利用スルヤウナ風ニ圖ラナケレバ
ナラヌコトダト思フノデアリマス、卽チ方
針ノ變更ト實施ノ改善トハ、時務ノ最モ急
ナルモノト考ヘルノデアリマス、而シテ中
小商工業階級ハ實ニ國家ノ中堅デアリマシ
テ、國家ノ安危ニ關スルコト大ナルモノガ
アルノデアリマスルガ、其ノ外、南洋貿易
ハ一ニ是等ノ階級ニ依存シテ居ルノデア
リマス、卽チ南洋住民ノ必要品、日常ノ
必需品ハ、全ク是等中小工業者ノ製造品卽
チ雜貨デアリマス、又其ノ貿易ハ主トシテ
中小商人ニ依ッテ營マレテ居ルノデアリマ
ス、中小商工業者ナクシテ何ノ南洋貿易ア
ルカ、南洋ノ發展ヲ講ゼムトスレバ、中小
商工業者ヲ度外視スルコトハ斷ジテ出來マ
セヌ、從ッテ今日程、中小商工業者ノ維持
育成ヲ必要トスル時ハナイノデアリマス、
若シ彼等ニシテ生計ニ苦シミ、窮迫ニ陷ル
モノガアルトスルナラバ、之ヲ整理統合
スルヨリハ、寧ロ進ンデ救濟援助シテ、將
來ノ南洋貿易ノ發展ニ備ヘルコトガ得策デ
ハナイデアリマセウカ、兎ニ角今ヤ空前ノ
大增稅ト多數ノ失業トニモ拘ラズ、何人ト
雖モ毫モ不平ヲ愬ヘズ、耐エ難キニ耐エ、
忍ビ難キヲ忍ンデ、只管聖戰ノ目的ノ貫徹
ニ努力シテ居ルノデアリマス、政府ハ此ノ
點ヲ十分ニ御了察サレテ居ルコトトハ信ジ
Wv2.併シ民言ハズト雖モ、否民言ハザル
ガ故ニ、爲政者タル者ハ益、、民ノ哀情ヲ酌ン
デ、鹽梅宜シキヲ得ルヤウニスルノガ卽チ
國家ニ忠ナル所以ト考ヘルノデアリマス、
仍テ政府ハ進ンデ自肅自制ノ範ヲ示シ、冗
費ヲ削ルコトハ勿論、苟モ節約シ得ベキモ
ノハ悉ク節約シテ、以テ租稅負擔ノ輕減ヲ
圖ルベキデアリマス、從ッテ恩給法ノ改正ニ
付テハ考慮ヲ要スルモノガ少クナイト存ジ
マシ、殊ニ國民思想ニ關スルコトニ付キマ
シテハ更ニ一層ノ考慮ヲ要スベキモノカ
ト存ズルノデアリマシテ、謹ンデ政府ノ御
所見ヲ承リタイノデアリマス
〔政府委員森山銳一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=6
-
007・森山鋭一
○政府委員(森山銳一君) 只今恩給法中改
正法律案ノ關係ニ於キマシテ政府ニ御質疑
ガアリマシタノデ、總理大臣ガ本議場ニ出
席サレテ居ルナラバ、總理大臣カラ御答ヲ
願フベキ筈デアリマスガ、只今他ノ用務ノ
爲ニ本議場ニ出席セラレテ居リマセヌカ
ラ、私ガ代ッテ一應御答辯致シタイト思ヒマ
ス、御質疑ハ大體三點ニ亙ッテ居ッタト存ジ
マス、順次各項目ニ付テ御答へ申上ゲマス、
御質疑ノ冒頭ニ於テ述ベラレマシタ我ガ國
體ノ精華ノ發揚ノ重要ナルコト、其ノ事ニ
付テハ全ク質疑者ト同感デアリマシテ、之
ニ付テハ何モ申上ゲルコトハナイノデアリ
マス、第一ノ戰地ト戰地外トノ恩給法上ノ
意義、竝ニ戰地ノ恩給ヲ厚クシ戰地外ノ恩
給ヲ薄クシテ居ルト云フ其ノ精神ハ何處ニ
アルカ、ト云フコトニ付テ御意見ヲ交ヘテ
御質疑ニナッタノデアリマスガ、此ノ點ハ、
御述ニナリマシタ戰地トハ外地デアルト
カ或ハ戰地外ハ內地ノコトデアルトカ云
フ其ノ御意見ニ付テハ、必ズシモ御贊成ヲ
申上ゲ兼ネルノデアリマス、此ノ御質疑ノ
點ハ、一々御質疑ノ點ヲ擧ゲテ御答辯申上
ゲルヨリモ、今度ノ改正ノ精神ノアル所ヲ、
改正ノ趣旨ヲ、ハッキリ申上ゲレバスッカリ
御了解願ヘルコトト思ヒマス、先程提案理
由ノ說明ニ於テ申上ゲマシタ如ク、現在ノ
從軍加算年ノ規定ガ稍〓、窮屈ニナッテ居リマ
シテ、今日ノ戰爭ノ實際ニ卽シナイ點ガア
ル、カルガ故ニ之ヲ改メヨウトスルノデア
リマシテ、卽チ現在ノ規定デハ、戰地ニ於
テ戰務ニ從事スル場合ハ、其ノ期間一月ニ
付テ一律ニ三箇月、戰地外ノ戰務ニ從事ス
ル場合ハ、其ノ期間一月ニ付テ一律ニ一箇
月ノ加算ヲ附ケルト云フコトニナッテ居ル
ノデアリマスガ、此ノ規定ハ極メテ窮屈デ
アリマシテ、今度ノヤウナ戰爭ニハ適合シ
ナイト考ヘルノデアリマス、其ノ理由ハ、
第一ニ同ジ戰爭ト申シマスケレドモ、此ノ
戰爭ニハ段々段階ガアルノデアリマシテ、
開戰ガアッテカラ愈〓休休ニ至ル迄ノ間ニ
ハ各種ノ段階ヲ經テ行クノデ一律ニ戰鬪狀
態ガ行ハレルモノトモ申サレヌノデアリマ
ス、然ルニ現在ノ規定ニ依リマスト、戰地
ノ戰務ノ場合ハ常ニ一月ニ付テ三箇月ノ加
算ヲ附ケルト云フコトニナッテ居リマスガ、
是ガ果シテ宜イカドウカ、或場合ニハ一月
ニ付テ二箇月デモ宜シイト云フ場合モアル
ノデアリマス、ソレガ現在ノ規定ニ於キマ
シテハ出來ナイヤウニナッテ居リマスカラ、
ソレヲ出來ルヤウニスル必要ガアルト云フ
風ニ考ヘルノデアリマス、更ニ戰地外ノ勤
務ニ付テハ、現在デハ一月ニ付テ一箇月ノ
加算ト云フ規定デアリマスガ、是モ實際ニ
適シナイ場合ガアルノデアリマス、色々御
意見モアリマシタガ、我ガ近海ニ於キマシ
テ敵ノ潜水艦ガ我ガ商船ヲ攻撃シナイト云
フコトヲ保證出來ルカト申シマスレバ、是
ハ保證出來ナイコトデアルト思フノデアリ
マス、又敵ノ飛行機ガ我ガ國土ノ上空ニ現
レナイトモ是ハ保證ガ出來ナイノデアリマ
ス、從ッテ敵ノ潜水艦ノ掃蕩、哨戒ニ從事
スル海軍ノ部隊トカ、或ハ國土及其ノ上空
ヲ防衞スル所ノ陸海軍ノ防衞部隊ハ決
シテ第一線ニ勤務シテ居ラレル所ノ部隊
ト敢テ劣ラナイヤウナ辛苦ヲ以テ戰務ニ
從事セラルヽモノガアルノデアリマス、
其ノ場合ニ我ガ國土ヲ戰地トスレバ、是ハ戰
地ノ加算ヲ附ケルコトガ出來ルノデアリマ
スケレドモ、我ガ國土全體ヲ戰地トスルコ
トハ果シテ宜イカドウカ、是ハ寧ロ避クベ
キコトデ、シタクナイコトダト考ヘルノデ
アリマスサスレバサウ云フ場合ニ戰地外
トナリマスレバ、一箇月ノ加算ヨリ出來ナ
イノデアリマスガ、ソレガ果シテ宜シイカ
ドウカト云フコトヲ考ヘテ見マスト、必ズシ
モサウハ言ヘナイノデ、或場合ニハ二箇月
トカヽ或場合ニハ三箇月トカ云フ加算ヲ要
スル場合ガアルノデアリマス、處ガ現行法
ハ規定ガ極メテ窮屈ニナッテ居リマスノデ、
今度ハソレヲ改正シマシテ、戰地ト戰地外ト
云フヤウナ區別ヲ撤廢シマシテ、戰務ニ從
事シタ人々ニ對シテハ三箇月ノ最高ノ制
限ヲ守ッテ、ソレ以內ニ於テ戰務ノ內容ニ應
ジテ最モ適當ナル加算ヲ附ケ得ルヤウニシ
タイト云フコトガ、改正ノ要點ニナッテ居ル
ノデアリマス、而シテ如何ナル戰務ニ對シ
テドレダケノ加算ヲ附ケルカト云フヤウナ
コトハ是ハ勅裁ヲ仰イデ御決メ願フト云
フコトニナルノデアリマス、以上ノヤウナ
改正ヲ致スノデアリマスカラ、今度ノ改正
法律ニ於キマシテハ、戰地トカ戰地外トカ
云フコトハ無クナルノデアリマシテ、從ッテ
今戰地ノ意味ガ何デアルカトカ、戰地外ノ
意味ガ何デアルカト云フヤウナコトヲ御答
スルノハ、最早無意味デハナイカトモ思フ
ノデアリマス、次ニ第二點トシマシテ是
ハ勳功ヲ御褒メニナル榮典ノ問題ト恩給ノ
問題トヲ、混淆スルコトハ宜クナイノデ、
是ハ區別シテ考フベキヂヤナイカト云フヤ
ウナ趣旨ヲ以テノ御亭ノヤウニ拜承シタノ
デアリマス敵ガ我ガ國土ヲ侵スト言フヤ
ウナコトハ殆ド考ヘラレナイノデアルト
言フ前提ノ下ニ御質疑ニナッタヤウニ拜承
スルノデアリマスガ、此ノ點ハ政府ノ方ハ
必ズシモサウハ考ヘテ居ナイノデアリマス、
全クサウ云フ危險ハナイト云フ保證ハ出來
ナイノデアリマシテ、サウ云フ必要ノアッタ
場合ニ處シ得ル、所謂有事卽應ノ態勢ヲ執ッ
テ法規ヲ整備スルコトガ、政府トシテハド
ウシテモ必要デアルト云フ意味ニ於テ今
度ノ改正ヲ致サウトシテ居ルノデアリマス、
勳功ヲ御褒メニナル榮典ノ制度ノ活用ガア
レバ恩給法ノ改正等ハ別ニ必要デナイト
云フ御考デ若シアルナラバ、ソレハ政府ト
全ク見解ヲ異ニスルノデアリマシテ、恩賜
榮典ノ問題ト恩給ノ問題トハ、各、適當ナル
規定ヲ整備スルト云フコトガ必要デアラウ
ト思フノデアリマス、第三ハ、今囘ノ改正
ト一般國民思想ニ及ス影響トニ付テ、色々
御所見ヲ述ベラレテノ御質疑デアリマシタ
ガ、今囘ノ改正ガ別ニ我ガ國民ノ思想上ニ
惡イ影響ヲ及スト云フヤウナコトハ毫モ
ナイト政府ハ考ヘテ居リマス、戰爭ニ關聯
シテ、失業者ノ對策デアルトカ、中小商工
業者ニ對スル對策デアルト云フヤウナコト、
サウ云フモノニ付テハ政府ハ別ニ適當ナル
施策ヲ計畫シテ之ヲ實行セムトシテ居ルノ
デアリマス、恩給ノ改正アラバ外ノ對策ハ
忽セニシテ宜シイトハ考ヘラレナイノデア
リマス、具體的ニ、中小商工業者ノ整理統
合ヲ爲スヨリモ、或ハ之ヲ救濟援助シテ南
洋貿易ニ當ラシメヨトノ御意見モアリマシ
タガ、是ハ立派ナ御意見ト拜承致シマス、
サウ云フ風ノ趣旨ニ於キマシテ、ソレん
政府ノ爲スベキ對策ハ之ヲ計畫シテ、將
之ヲ實行セムトシテ居ルノデアリマス、又
政府ハ自肅自制ヲシテ冗費ヲ省イテサウ
シテ成ルベク國民ノ負擔ヲ避ケルヤウニシ
ナケレバナラヌト云フ御言葉ガアリマシタ
ガ、ソレモ全ク御同感デアリマシテ、政府
ハ其ノ趣旨ニ依ッテ總テノ施策ヲ樹テツヽ
アルノデアリマス、恩給法ノ改正ニ依ッテ國
費ノ增加、國費ノ殖エルコトモアリマス
併シナガラ其ノ國費ノ殖エルノモ、例ヘバ
戰爭ノ爲ニ死ナレタ方ノ遺族ノ扶助料ト
カ、或ハ其ノ他ノ公務ノ爲ニ死亡セラレタ
ル所ノ其ノ遺族ノ方ニ對スル扶助料ヲ、ド
ウシテモ是ハ現下ノ情勢カラ考ヘテ增額ヲ
シナケレバナラヌト政府ハ考ヘテ、之ヲ增
額シタイト云フノデ今度ノ改正ヲシテ、其
ノ爲ニ相當ノ國費ノ增加ニハナルノデアリ
マスケレドモ、是ハ政府トシテ全ク巳ムヲ
得ナイ處置デアルト考ヘテ、今度ノ改正案
ヲ提出シテ居ルノデアリマス、以上デ大體
御質疑ニナリマシタ各項目ニ付テノ一應ノ
政府ノ所見ヲ明カニシタト存ジマス、總理
大臣自ラ御答辯ヲ申上ゲルノヲ私ガ代ッテ
御答辯ヲ申上ゲテ、誠ニ恐縮ニハ存ジマス
ガ、私ノ答辯ニ依ッテ大體政府ノ意ノアル所
ヲ御諒承願ヘレバ誠ニ幸デアルト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=7
-
008・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 赤池君ニチヨツ
ト申上ゲマスガ、赤池君ノ御希望ト致シテ
ハ總理大臣ノ御答辯ヲ御要求ニナッタヤ
ウニ伺ヒマシタガ、是ハ他日、第一讀會ノ續
ニ於テアルモノト議長ハ心得テ居リマスゝ
又法制局長官ヨリ總理ニモ御話ニナルコト
ト存ジマスカラ、此ノ程度デ如何デゴザイ
マセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=8
-
009・赤池濃
○赤池濃君 議長ニ於テドウゾ宜シク御取
計ラヒヲ御願ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=9
-
010・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽日) 宜シウゴザイマ
ス、他ニ御質疑ハゴザイマセヌカ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=10
-
011・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 他ニ御質疑ガナ
ケレバ、日程第二、特別委員ノ選擧ヲ議題
ニ供シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=11
-
012・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今議題トナリマシタ
特別委員ノ選擧ハヽ本會期中ヲ通ジ、特別
ノ場合ヲ除キ、其ノ特別委員ノ數ヲ九名ト
シ、其ノ委員ノ指名ヲ議長ニ一任スルノ動
議ヲ提出致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=12
-
013・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=13
-
014・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 戶澤子爵ノ動議
ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=14
-
015・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、特別委員ノ氏名ヲ朗讀致サセマス
〔佐藤書記官朗讀〕
恩給法中改正法律案特別委員
候爵前田利爲君子爵立見豐丸君
子爵松平保男君入江貫一君
男爵井田磐楠君廣瀨久忠君
江口定條君大西虎之介君
上野喜左衞門君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=15
-
016・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第三、國家
總動員法第十八條ノ規定ニ依ル法人等ヲシ
テ行政官廳ノ職權ヲ行ハシムルコトニ關ス
ル法律案、政府提出、第一讀會、鈴木國務
大臣
國家總動員法第十八條ノ規定ニ依ル法
人等ヲシテ行政官廳ノ職權ヲ行ハシム
ルコトニ關スル法律案
右
勅旨ヲ奉ジ帝國議會ニ提出ス
昭和十七年一月十八日
內閣總理大臣東條英機
農林大臣井野碩哉
厚生臣小泉親彥
大遞藏信大大大臣臣寺島健
賀屋興宣
第三六.臣岸信介
要求人臣八田嘉明
國家總動員法第十八條ノ規定ニ依ル法
人等ヲシテ行政官廳ノ職權ヲ行ハシム
ルコトニ關スル法律案
法令ニ定ムル行政官廳ノ職權ハ勅令ノ定
ムル所ニ依リ之ヲ國家總動員法第十八條
ノ規定ニ依ル法人其ノ他ノ法人ヲシテ行
ハシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ同項ノ法人ガ行政官廳
ノ職權ヲ行フ場合ニ於テハ當該職權ニ係
ル罰則ノ適用ニ付テハ同項ノ法人ハ之ヲ
當該職權ヲ行フ行政官廳ト看做シ同項ノ
法人ノ役員又ハ使用人ニシテ同項ノ職權
ニ屬スル車務ニ從事スルモノハ之ヲ掌該
事務ニ從事スル官吏ト毛做ス
前項ニ定ムルモノノ外第一項ノ相定ニ依
リ同項ノ法人ガ行政官廳ノ職權ヲ行フ場
合ニ於ケル必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之
フルト
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣鈴木貞一君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=16
-
017・鈴木貞一
○國務大臣(鈴木貞一君) 只今議題トナッ
テ居リマスル國家總動員法第十八條ノ規定
ニ依ル法人等ヲシテ行政官廳ノ職權ヲ行ハ
シムルコトニ關スル法律案提出ノ理由ヲ御
說明申上ゲマス、政府ハ先般國家總動員法
ニ基キ重要產業團體令ヲ制定公布シ、之
依リ產業經濟ニ關シ統制力アル團體ヲ組織
整備シ、其ノ團體ヲシテ政府ノ施策ノ立案
及遂行ニ緊密ニ協力セシムルト共ニ、右ノ
施策大綱ニ基キ、白律的ニ當該業界ノ統制
運營ニ當ラシムルコトト致シタノデアリマ
ス、敍上ノ趣旨ニ鑑ミマシテ、現在各種統
制法規ニ於テ行政官廳ノ職權ト定メラレテ
居リマスル事項ノ中、政府ノ施策方針ニ關
スルモノハ別トシ、爾餘ノ實施ニ關スル職
權事項ニ付テハ、實情ニ卽シ本法案ニ依リ
之ヲ當該統制團體ヲシテ執リ行ハシメルコ
トガ、生產配給等其ノ業界ノ內部ノ統制事
務ヲ、時局ニ適スル如ク圓滑且敏速ニ運營
スル所以デアルト存ズルノデアリマス、以
上ガ本案ヲ提出スル理由デアリマス、何卒
御審議ノ上御協賛アラムコトヲ庶幾フ次第
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=17
-
018・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今議題トナリマシタ
國家總動員法第十八條ノ規定ニ依ル法人等
ヲシテ行政官廳ノ隣權ヲ行ハシムルコトニ
關スル法律案ノ特別委員ノ數ヲ十五名ト
シ、其ノ委員ノ指名ヲ議長ニ一任スルノ動
議ヲ提出致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=18
-
019・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=19
-
020・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 戶澤子爵ノ動議
ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=20
-
021・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、特別委員ノ氏名ヲ朗讀致サセマス
〔丸龜書記官朗讀〕
國家總動員法第十八條ノ規定ニ依ル法人
等ヲシテ行政官廳ノ職權ヲ行ハシムルコ
トニ關スル法律案、特別委員會委員
公爵島津忠重君侯爵黑田長禮君
伯爵溝口直亮君子爵西尾忠方君
子爵織田信恒君犬塚勝太郞君
有吉忠一君男爵東久世秀雄君
𠮷田茂君石渡莊太郞君
柴田善三郞君黑崎定三君
男爵肝付兼英君男爵坊城俊賢君
秋田三一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=21
-
022・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第五、北支
那開發株式會社法中改正法律案、日程第七、
中支那振興株式會社法中改正法律案、政府
提出、第一讀會、是等ノ二案ヲ一括シテ議
題ト爲スコトニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=22
-
023・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、及川興亞院部長
北支那開發株式會社法中改正法律案
右
勅旨ヲ奉ジ帝國議會ニ提出ス
昭和十七年一月十八日
內閣總理大臣兼東條英機
陸軍大臣
海軍大臣嶋田繁太郞
外務臣東郷茂德
大大大臣賀屋興宣
藏
北支那開發株式會社法中改正法律案
北支那開發株式會社法中左ノ通改正ス
第三條第一項ヲ左ノ如ク改ム
政府ハ北支那開發株式會社ニ對シ資本
ノ半額以上ヲ出資スベシ
第四條ノ二政府第三條第二項ノ規定ニ
依リ金錢以外ノ財產ヲ以テ出資ノ目的
ト爲ス場合ニ於テハ其ノ財產ノ價格及
之ニ對シテ與フル株式ノ數ニ付、前條第
二項ノ規定ニ依リ金錢以外ノ財產ヲ以
テ其ノ所有スル株式ノ株金拂込ニ充ツ
ル場合ニ於テハ其ノ財產ノ價格ニ付政
府出資財產評價委員會ノ議ヲ經ベシ
政府出資財產評價委員會ニ關スル規程
ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五條政府ノ所有スル株式ノ數ガ政府
以外ノ者ノ所有スル株式ノ數ヲ超ユル
場合ニ於テハ政府ハ其ノ超ユル數ノ株
式ニ付議決權ヲ行使スルコトヲ得ズ
第八條ニ左ノ一項ヲ加フ
第五條ノ規定ニ依リテ行使スルコトヲ
得ザル議決權ノ數ハ前項ノ議決權ノ數
ニ之ヲ算入セズ
第十一條ニ左ノ一項ヲ加フ
理事又ハ監事ノ員數ガ其ノ任期ノ滿了
ニ因リ第九條ニ定ムル員數ヲ缺クニ至
リタルトキハ定款ノ定ムル所ニ從ヒ其
ノ任期ヲ伸長スルコトヲ得
第十四條ニ左ノ一項ヲ加フ
特殊ノ事情アル場合ニ於テハ北支那開
發株式會社ハ政府ノ認可ヲ受ケ前項各
號ニ揭グル事業ヲ自ラ經營スルコトヲ
得
第二十四條中「投資及融資」ノ下ニ一番
自營事業」ヲ加フ
第二十九條第一項中「投資及融資ニ因ル
收入」ヲ「投資、融資及自營事業ニ因ル收
入」ニ、「投資及融資ノ總額」ヲ「投資、融
資及自營事業資金ノ總額」ニ、同條第三
項中「投資及融資ニ因ル收入」ヲ「投資
融資及自營事業ニ因ル收入」ニ、「投資及
融資ノ總額」ヲ「投資融資及自營事業資金
ノ總額」ニ改ム
第三十四條第二項及第三十七條第三項ヲ
削ル
第四十四條削除
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
中支那振興株式會社法中改正法律案
右
勅旨ヲ奉ジ帝國議會ニ提出ス
昭和十七年一月十八日
引越後理大阪府立英機
陸軍大臣東條
海軍大臣嶋田繁太郞
外務大臣東郷茂德
大藏大臣賀屋興宣
中支那振興株式會社法中改正法律案
中支那振興株式會社法中左ノ通改正ス
第三條第一項ヲ左ノ如ク改ム
政府ハ中支那振興株式會社ニ對シ資本
ノ半額以上ヲ出資スベシ
第三條ノ三政府第三條第二項ノ規定ニ
依リ金錢以外ノ財產ヲ以テ出資ノ目的
ト爲ス場合ニ於テハ其ノ財產ノ價格及
之ニ對シテ與フル株式ノ數ニ付、前條
ノ規定ニ依リ金錢以外ノ財產ヲ以テ其
ノ所有スル株式ノ株金拂込ニ充ツル場
合ニ於テハ其ノ財產ノ價格ニ付政府出
資財產評價委員會ノ議ヲ經ベシ
第四條政府ノ所有スル株式ノ數ガ政府
以外ノ者ノ所有スル株式ノ數ヲ超ユル
場合ニ於テハ政府ハ其ノ超ユル數ノ株
式ニ付議決權ヲ行使スルコトヲ得ズ
第七條ニ左ノ一項ヲ加フ
第四條ノ規定ニ依リテ行使スルコトヲ
得ザル議決權ノ數ハ前項ノ議決權ノ數
ニ之ヲ算入セズ
第十條ニ左ノ一項ヲ加フ
理事又ハ監事ノ員數ガ其ノ任期ノ滿了
ニ因リ第八條ニ定ムル員數ヲ缺クニ至
リタルトキハ定款ノ定ムル所ニ從ヒ其
ノ任期ヲ伸長スルコトヲ得
第二十九條第二項、第三十二條第三項及
第三十八條ノ二ヲ削ル
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔政府委員及川源七君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=23
-
024・及川源七
○政府委員(及川源七君) 只今議題トナリ
マシタ北支那開發株式會社法中改正法律案
及ビ中支那振興株式會社法中改正法律案ノ
提案ノ理由ヲ一括シテ御說明申上ゲマス、
政府ガ支那現地ニ於キマシテ臨時軍事費特
別會計ヨリ支辨シタル鐵道用財產ハ、其ノ
整理ガ付キ次第、政府ノ北支那開發株式會
社又ハ中支那振興株式會社ニ對スル出資
ニ充當シテ參ッタノデアリマスガ、未ダ充當
未濟ノモノ、及ビ將來充當豫定ノモノガ相
當ノ額ニ上リマスルニ拘ラズ、政府出資ノ
限度ガ法規デ限定セラレテ居リマスノデ、
之ヲ擴張致シ、是等物品ヲ右兩會社ニ對ス
ル政府出資ニ充當シ、企業資本トシテ、合
理的ニ運用シ得ルヤウ致シタイト存ジマス、
次ニ右兩會社ハ、北支又ハ中支ニ於ケル經
濟開發ノ中樞的機關トモ謂フベキデアリマ
スガ、中支那振興株式會社ガ特殊ノ事情ア
ル場合ニ於テ、所定ノ自營事業ヲ爲スコト
ガ出來ルコトニ法規上ナッテ居ルノニ反シ、
北支那開發株式會社ハサウ云フコトガ出來
ナイノデアリマシテ、此ノ爲北支經濟開發
促進上遺憾ナ點ガ往々ニシテ存シタノデア
リマスカラ、此ノ際中支那振興株式會社ノ
如ク、所定ノ自營事業ヲ爲シ得ルヤウ致シ
タイト存ジマス、又此ノ際商法ノ規定ト步
調ヲ合ハセテ、役員ノ任期ニ關スル特例ヲ
設ケタイト存ジマス、以上ガ本改正案ヲ今
期議會ニ提出致シマシタ所以デアリマス、
何卒十分御審議ノ上速カニ御協賛ヲ與ヘラ
レムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=24
-
025・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御質疑ガナ
ケレバ、兩案ノ特別委員ノ氏名ヲ朗讀致サ
七三八
〔高山書記官朗讀〕
北支那開發株式會社法中改正法律案外一
件特別委員會委員
侯爵西〓吉之助君子爵高橋是賢君
子爵綾小路護君小倉正恒君
男爵水谷川忠麿君赤池濃君
米山梅吉君橋本辰二郞君
吉村友之進君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=25
-
026・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第九、戰時
ニ於ケル領事官ノ裁判ノ特例ニ關スル法律
案.政府提出、第一讀會、東郷外務大臣
戰時ニ於ケル領事官ノ裁判ノ特例ニ關
スル法律案
右
勅旨ヲ奉ジ帝國議會ニ提出ス
昭和十七年一月十八日
內閣總理大臣東條英機
拓務大臣井野碩哉
司法大臣岩村通世
外務大臣東郷茂德
戰時ニ於ケル領事官ノ裁判ノ特例ニ關
スル法律案
第一條戰時ニ於ケル領事官ノ裁判ニ關
スル特例ハ本法ノ定ムル所ニ依ル
第二條領事官ハ明治三十二年法律第七
十號第八條ノ規定ニ拘ラズ死刑又ハ無
期若ハ短期一年以上ノ徵役若ハ禁錮ニ
該ル罪ニ付公判ヲ爲スコトヲ得但シ豫
審ヲ經ザルモノニ限ル
第三條裁判所構成法戰時特例第五條ノ
控訴院ハ領事官ノ爲シタル判決ニ對ス
ル上〓及上〓棄却ノ決定ニ對スル抗〓
ニ付テハ之ヲ長崎控訴院トス但シ中華
民國福建省、廣東省、廣西省及雲南省ニ
駐在スル領事官ノ爲シタル判決ニ對ス
ル上告及上〓棄却ノ決定ニ對スル抗〓
ニ付テハ之ヲ臺灣總督府高等法院覆審
部トス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法ハ本法施行前領事官ノ受理シタル訴
訟ニ付テハ之ヲ適用セズ
戰時終了ノ際ニ於テ必要ナル經過規定ハ
勅令ヲ以テ之ヲ定ム
(國務大臣東郷茂德君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=26
-
027・東郷茂徳
○國務大臣(東郷茂德君) 只今議題ト相成
リマシタ戰時ニ於ケル領事官ノ裁判ノ特例
ニ關スル法律案提出理由ニ付キマシテ簡單
ニ御說明致シマス、今次戰爭ニ際スル司法上
ノ特別措置ト致シマシテハ、今議會ニ戰時民
事特別法、戰時刑事特別法等ノ法律案ガ提
出セラレテ居ルノデアリマシテ、是等ノ特
例ハ、領事裁判ニモ適用セラルヽ次第デアリ
マスルガ、國內ノ裁判トハ幾分事情ヲ異ニ
シテ居ル領事裁判ニ關シマシテハ是ダケ
デハ不十分ナ點ガアリマス、又是等特例ヲ
領事裁判ニ適用スル上ニ於テ、當然設ケナ
ケレバナラナイ規定モアルノデアリマス、
殊ニ近時中華民國在留邦人ノ數ガ激增致シ
マシタニ伴ヒマシテ、領事官ノ裁判事務モ
急速ニ增加シツヽアルノデアリマスルガ、
大東亞戰爭勃發以來、日本、中華民國間ノ
海路連絡ハ制限セラルヽ懸念モ無シト致シ
マセヌ爲ニ、從來ノ制度デハ、今次戰爭下ニ
於ケル領事裁判ノ圓滑ナル運營ハ頗ル困
難トナルベキ情勢ニ立到ッテ參ッテ居ルノデ
アリマス、以上ノ如キ點ヲ考慮致シマシテ、
領事官ノ裁判ニ關シ特例ヲ設ケムガ爲、本
法案ヲ提出致シタ次第デゴザイマス、何卒
御審議ノ上協贊ヲ與ヘラレムコトヲ希望致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=27
-
028・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今日程ニ上リマシタ
戰時ニ於ケル領事官ノ裁判ノ特例ニ關スル
法律案ノ特別委員ノ數ヲ十五名トシ、其ノ
委員ノ指名ヲ議長ニ一任スルコトノ動議ヲ
提出致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=28
-
029・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=29
-
030・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 戶澤子爵ノ動議
ヲ御異議ハゴザイマセヌカ
「「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=30
-
031・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 異議ナイト認
メマス、特別委員ノ氏名ヲ朗讀致サセマ
ス
〔高山書記官朗讀〕
戰時ニ於ケル領事官ノ裁判ノ特例ニ關ス
ル法律案特別委員會委員
侯爵細川護立君侯爵淺野長武君
伯爵二荒芳德君子爵秋月種英君
子爵舟橋〓賢君宮城長五郞君
山川端夫君男爵伊江朝助君
男爵島津忠彥君男爵村田保定君
山岡萬之助君次田大三郞君
澁澤金藏君岩田宙造君
二瓶泰次郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=31
-
032・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第十一、國
民貯蓄組合法中改正法律案、政府提出、第一
讀會、賀屋大藏大臣
國民貯蓄組合法中改正法律案
右
勅旨ヲ奉ジ帝國議會ニ提出ス
昭和十七年一月十八日
內閣總理大臣東條英機
大藏大臣賀屋興宣
國民貯蓄組合法中改正法律案
國民貯蓄組合法中左ノ通改正ス
第二條第一項中第八號ヲ第九號トシ第七
號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
八地方債又ハ社債(特別ノ法令ニ依
リ設立セラレタル法人ニシテ會社ニ
非ザルモノノ發行スル債劵ヲ含ミ
前號ニ揭グル債劵ヲ除ク以下同ジ)
ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノノ買
入
第四條第一項中「銀行預金」ノ下ニ「、貯蓄
銀行預金、產業組合貯金其ノ他ノ預金」ヲ、
「國債」ノ下ニ「、地方債又ハ社債」ヲ加ヘ
「三千圓」ヲ「七千圓」ニ改メ同條第二項ヲ
削ル
同條第三項中「前二項」ヲ「前項」ニ改ム
同條第四項中「國債」ノ下ニ「、地方債又ハ
社債」ヲ加フ
同條第五項中「前四項」ヲ「前三項」ニ改ム
第九條第二項中「第四條第二項及第三項
竝ニ」ヲ削ル
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣賛厚興宣君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=32
-
033・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 只今議題トナリ
マシタ國民貯蓄組合法中改正法律案ニ付キ
マシテ、提案ノ理由ヲ說明申上ゲマス、戰時
財政經濟ノ運行ヲ確保シ、以テ今次戰爭ノ
完遂ヲ期セムガ爲ニハ購買力ヲ吸收シテ
通貨ノ膨脹ヲ抑制シ、巨額ノ資金ヲ蓄積シ
テ、國債ノ消化ト生產力擴充資金ドニ充ツル
ノ要、益〓多キヲ加ヘテ參リマシタノデ、政
府ニ於キマシテハ、此ノ目的ヲ達成致シマ
スル一手段トシマシテ、國民貯蓄組合ヲ利
用スル組合貯蓄ノ增加ニ更ニ一層促進ヲ加
ヘタイト存ジマシテ、本法案ヲ提出致シタ
次第デアリマス、改正ノ要點ヲ申述ベマス
しや、第一ハ、國民貯蓄組合ノ幹旋ヲナス
貯蓄ノ運用ノ範圍ヲ擴大致シマシテ、地方債
又ハ社債ノ買入ヲ追加シタ點デアリマス、
是ハ地方債及社債モ亦貯蓄組合ノ貯蓄ト致
シマシテ、適當デアルト認メマシタカラデ
アリマスルガ、其ノ種類トシテハ、適當ナ
ルモノヲ選ブ爲ニ命令ヲ以テ定メムトスル
モノデアリマス、第二ハ、免稅規定ノ改正
デアリマシテ、從來ハ貯蓄ノ種類ニ依リマ
シテ、免稅ノ限度ニ差別ヲ設ケテ居リマシ
タガ、組合貯蓄ノ性質上、斯カル差別ヲ設
クル必要ナシト認メマシテ、今囘之ヲ總テ
同一ニ取扱フコトニ改メタイノデアリマス、
而シテ組合貯蓄ノ增加ヲ圖リマス爲ニハ、
或程度ノ免稅限度ヲ引上ゲルコトガ必要デ
アリマシテ、此ノ際郵便貯金ノ預入限度引
上等トノ關係ヲモ考慮致シマシテ、免稅ト
ナル元本又ハ額面金額ヲ、一律ニ七千圓ニ
引上ゲタ次第デアリマス、何卒御審議ノ上
速カニ協賛ヲ與ヘラレムコトヲ希望致シマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=33
-
034・戸澤正己
○子爵戸澤正已君 只今議題トナリマシタ
國民貯蓄組合法中改正法律案ノ特別委員ノ
數ヲ十五名トシ、其ノ委員ノ指名ヲ議長ニ
一任スルノ動議ヲ提出致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=34
-
035・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=35
-
036・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 戶澤子爵ノ動議
ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=36
-
037・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、特別委員ノ氏名ヲ朗讀致サセマス
〔佐藤書記官朗讀〕
國民貯蓄組合法中改正法律突特別委員
公爵一條實孝君侯爵小村捷治君
伯爵橋本實斐君子爵大河內輝耕君
子爵大岡忠綱君村上恭一君
三井〓一郞君田口弼一君
男爵關義壽君男爵益田太郞君
男爵西酉乙君黑田英雄君
竹下豐次君河西豊太郞君
栗林德一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=37
-
038・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第十三、日
本勸業銀行法中改正法律案、日程第十五、
農工銀行法中改正法律案、日程第十七、北
海道拓殖銀行法中改正法律案、政府提出、
第一讀會、是等ノ三案ス一括シテ議題ト爲
スコトニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=38
-
039・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、賀屋大藏大臣
日本勸業銀行法中改正法律案
右
勅旨ヲ奉ジ帝國議會ニ提出ス
昭和十七年一月十八日
內閣總理大臣東條英機
大藏大臣賀屋興宣
日本勤業銀行法中改正法律案
日本勸業銀行法中左ノ通改正ス
第十四條第三項ヲ削ル
第十五條第三項ヲ左ノ如ク改ム
左ノ各號ノ一ニ該當スル法人中農林
業〓〓畜產業、水產業、工業又ハ不動產
ニ關スル事業ヲ行フモノニシテ大藏大
臣ノ認可ヲ受ケタルモノニ對シテハ抵
當ヲ徵セスシテ定期償還貸付又ハ割賦
償還貸付ヲ爲スコトヲ得
特別ノ法令ニ依リ設立セラレタル
法人
二法令ニ依リ組織セラレタル組合又
ハ其ノ聯合會
第十六條削除
第十八條中「鑑定シタル價格ノ三分ノ二
以内」ヲ「鑑定シタル價格以內」ニ改メ同
條ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ場合ニ於テ先順位又ハ同順位ノ
抵當權者アルトキハ日本勸業銀行ノ貸
付クル金額ハ前項ノ鑑定價格ヨリ先順
位又ハ同順位ノ抵當權者ノ貸付金額
(先順位ノ抵當權者ノ貸付金中日本勸
業銀行又ハ之ト同順位ノ抵當權者ノ貸
付金ヲ以テ償還セラルヘキ分アルトキ
ハ之ヲ控除ス)ヲ控除シタル額以内ト
ス
第二十六條第一項中「貸付金償還殘額ニ
對シ。第十八條ノ割合ニ」ヲ「日本勸業銀行
ノ貸付今償還殘額又ハ先順位若ハ同順位
ノ抵當權者アルトキハ其ノ貸付金償還殘
額ト日本勸業銀行ノ貸付金償還殘額トノ
合計額ニ對シ」ニ改ム
第三十一條ノ二第二項中「第十六條第一
項、」ヲ削ル
第三十二條第一項中「前條ノ預リ金又ハ」
ヲ削リ第三號ヲ左ノ如ク改ム
三第十五條第三項ノ法人ニ對シ手形
ノ割引又ハ當座預金貸越ヲ爲スコト
同條同項ニ左ノ一號ヲ加フ
六前各號ノ外大藏大臣ノ認可ヲ受ケ
手形ノ割引、當座預金貸越又ハ短期
貸付ヲ爲スコト
同條第二項ヲ削ル
第三十二條ノ三日木勸業銀行ハ大藏大
臣ノ認可ヲ受ケ他ノ法人ノ爲ニ金錢ノ
出納又ハ有價證劵ノ受拂保管ノ取扱ヲ
爲スコトヲ得
第五十六條中第二號ヲ削リ同條第三號中
「預リ金若ハ」ヲ削ル
同條第三號ヲ第二號トシ以下順次繰上グ
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
不動產融資及損失補償法中左ノ通改正ス
第三條削除
第四條第一項中「第十四條第三項及」及
「貸付金額」ヲ削ル
農村負債整理資金特別融通及損失補償法
中左ノ通改正ス
第三條削除
臨時農村負債處理法中左ノ通改正ス
第十三條中「農村負債整理資金特別融
通及損失補償法第三條竝ニ」ヲ削ル
農工銀行法中改正法律案
右
勅旨ヲ奉ジ帝國議會ニ提出ス
昭和十七年一月十八日
內閣總理大臣東條英機
大藏大臣賀屋興宣
農工銀行法中改正法律案
農工銀行法中左ノ通改正ス
第六條第二號ヲ左ノ如ク改ム
二五箇年以內ニ於テ定期償還ノ方法
ニ依リ不動產ヲ抵當トシテ貸付ヲ爲
スコト但シ山林ヲ抵當トシテ貸付ヲ
爲ス場合ニ於テハ二十箇年以內ノ定
期償還貸付ヲ爲スコトヲ得
第七條ノ二中「第六條第二號ノ制限内ニ
於テ」ヲ削ル
第七條ノ三第一項中「第六條第二號ノ制
限內ニ於テ」ヲ、同條第二項中「第八條
第一項、」ヲ削ル
第七條ノ五農工銀行ハ左ノ各號ノ一ニ該
當スル法人中農林業、畜產業、水產業、
工業又ハ不動產ニ關スル事業ヲ行フモ
ノニシテ大藏大臣ノ認可ヲ受ケタルモ
ノニ對シテハ無抵當ニテ第六條第一號
又ハ第二號ノ貸付ヲ爲スコトヲ得
一特別ノ法令ニ依リ設立セラレタル
法人
二法令ニ依リ組織セラレタル組合又
ハ其ノ聯合會
第八條削除
第十條中「鑑定シタル價格ノ三分ノ二以
內」ヲ「鑑定シタル價格以內」ニ改メ同條
ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ場合ニ於テ先順位又ハ同順位ノ
抵當權者アルトキハ農工銀行ノ貸付ク
ル金額ハ前項ノ鑑定價格ヨリ先順位又
ハ同順位ノ抵當權者ノ貸付金額(先順
位ノ抵當權者ノ貸付金中農工銀行又ハ
之ト同順位ノ抵當權者ノ貸付金ヲ以テ
償還セラルヘキ分アルトキハ之ヲ控除
ス)ヲ控除シタル額以内トス
第十八條第一項中「貸付金償還殘額ニ對
シ第十條ノ割合ニ」ヲ「農工銀行ノ貸付金
償還殘額又ハ先順位若ハ同順位ノ抵當權
者アルトキハ其ノ貸付金償還殘額ト農工
銀行ノ貸付金償還殘額トノ合計額ニ對
シ」ニ改ム
第二十三條中「前條ノ預リ金又ハ」及第二
號但書ヲ削リ第三號ヲ左ノ如ク改ム
三第七條ノ五ノ法人ニ對シ手形ノ割
引又ハ當座預金貸越ヲ爲スコト
同條ニ左ノ一號ヲ加フ
六前各號ノ外大藏大臣ノ認可ヲ受ケ
手形ノ割引、當座預金貸越又ハ短期
貸付ヲ爲スコト
第二十四條ノ二農工銀行ハ大藏大臣ノ
認可ヲ受ケ他ノ法人ノ爲ニ今錢ノ出納
又ハ有價證劵ノ受拂保管ノ取扱ヲ爲ス
コトヲ得
第四十六條中第二號ヲ削リ同條第三號中
「預リ金若ハ」ヲ削ル
同條第三號ヲ第二號トシ以下順次繰上グ
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
北海道拓殖銀行法中改正法律案
右
勅旨ヲ奉ジ帝國議會ニ提出ス
昭和十七年一月十八日
內閣總理大臣東條英機
大藏大臣賀屋興宣
北海道拓殖銀行法中改正法律案
北海道拓殖銀行法中左ノ通改正ス
第八條第四項ヲ左ノ如ク改ム
左ノ各號ノ一ニ該當スル法人中農林業、
畜產業、水產業、工業又ハ不動產ニ關ス
ル事業ヲ行フモノニシテ大藏大臣ノ認可
ヲ受ケタルモノニ對シテハ割賦又ハ定
期償還ノ方法ニ依リ無抵常貸付ヲ爲ス
コトヲ得
特別ノ法令ニ依リ設立セラレタル
法人
二法令ニ依リ組織セラレタル組合又
ハ其ノ聯合會
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣賀屋興宣君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=39
-
040・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 只今議題ト相成
リマシテ日本勸業銀行法中改正法律案、農
工銀行法中改正法律案、及ビ北海道拓殖銀
行法中改正法律案ヲ一括致シマシテ、提案
ノ理由ヲ說明致シマス、日本勸業銀行、農
工銀行及北海道拓殖銀行ハ、年來順調ナル
發展ヲ遂ゲ、是等ノ銀行ニ於ケル資金ノ供
給能力ハ相當大ナルモノガアリマスル處、
從來其ノ業務ニ對シマシテハ尙相當嚴重
ナル制限ガ設ケラレテ居ルノデアリマス、
然ルニ現下ノ時局ニ於キマシテハ軍需產
業其ノ他國家緊要產業ニ對スル事業資金ノ
供給ノ圓滑化ヲ圖ルコトハ、愈〓緊切トナッ§
テ居リマスルノデ、是等ノ銀行ヲシテ右時
局ニ緊要ナル資金ノ融通ヲナサシムルヤ
ウ、現行法中ニ於ケル有抵當定期貸付總額
ノ制限、其ノ他ノ諸制限ヲ緩和又ハ撤廢ス
ルコトト致シ、玆ニ本案ヲ提出致シマシタ
次第デアリマス、何卒御審議ノ上速カニ協
贊ヲ與ヘラレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=40
-
041・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御質疑ガナ
ケレバ、三案ハ之ヲ北支那開發株式會社法
中改正法律案外一件ノ特別委員ニ併託致シ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=41
-
042・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第十九、稅
務代理士法案、日程第二十一社債等登錄
法案、政府提出、第一讀會、是等ノ二案ヲ
一括シテ議題ト爲スコトニ御異議ハゴザイ
マセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=42
-
043・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、賀屋大藏大臣
稅務代理士法案
右
勅旨ヲ奉ジ帝國議會ニ提出ス
昭和十七年一月十八日
內閣總理大臣東條革、機
大藏大臣賀屋興宣
稅務代理士法案
稅務代理士法
第一條稅務代理士ハ所得稅、法人稅、營
業稅其ノ他命令ヲ以テ定ムル租稅ニ關
シ他人ノ委嘱ニ依リ稅務官廳ニ提出ス
ベキ書類ヲ作成シ又ハ審査ノ請求、訴
願ノ提起其ノ他ノ事項(行政訴訟ヲ除
ク)ニ付代理ヲ爲シ若ハ相談ニ應ズル
ヲ業トス
第二條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ稅
務代理士タル資格ヲ有ス
辯護士
二計理士
三命令ヲ以テ定ムル官廳ニ於テ高等
官又ハ判任官ノ職ニ在リテ三年以上
國稅ノ事務ニ從事シタル者但シ其ノ
職ヲ退キタル後一年ヲ經ザル者ハ此
ノ限ニ在ラズ
四前各號ニ揭グル者ノ外租稅又ハ會
計ニ關シ學識經驗ヲ有スル者
第三條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ稅
務代理士タル資格ヲ有セズ
-無能力者
二破產者ニシテ復權ヲ得ザルモノ
三國稅滯納處分ヲ受ケタル後一年ヲ
經ザル者
四六年ノ懲役若ハ禁錮以上ノ刑ニ處
セラレ又ハ舊刑法ノ重罪ノ刑ニ處セ
ラレタル者
五六年未滿ノ懲役又ハ禁鋼ノ刑ニ處
セラレ其ノ刑ノ執行ヲ終リ又ハ執行
ヲ受クルコトナキニ至ル迄ノ者
六國稅ヲ浦脫シ又ハ通脫セントスル罪
ヲ犯シ罰金又ハ科料ノ刑ニ處セラレ
其ノ裁判確定ノ後五年ヲ經ザル者
七懲戒ノ處分ニ因リ免官又ハ免職セ
ラレタル後二年ヲ經ザル者
八第五條第四號ノ規定ニ依リ許可ノ
效力ヲ失ヒ又ハ第十八條ノ規定ニ依リ
許可ノ取消アリタル後二年ヲ經ザル者
九第二十一條、第二十二條、第二十三
條第三號、第二十四條又ハ第二十五
條ノ罪ヲ犯シ懲役又ハ罰金ノ刑ニ處
セラレ其ノ刑ノ執行ヲ終リ又ハ執行
ヲ受クルコトナキニ至リタル後五年
ヲ經ザル者
第四條稅務代理士タラントスル者ハ命
令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ許可ヲ
受クベシ
主務大臣前項ノ許可ニ關スル處分ヲ爲
サントスルトキハ稅務代理士銓衡委員
會ノ議ヲ經ベシ
稅務代理士銓衡委員會ニ關スル規程ハ
勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五條税務代理士左ノ各號ノ一ニ該當
スル場合ニ於テハ前條第一項ノ許可ハ
其ノ效力ヲ失フ
第一條ニ規定スル業務(以下稅務
代理業ト稱ス)ヲ廢止シタルトキ
二辯護士又ハ計理士ナル場合ニ於テ辯
護士名簿又ハ計理士登錄簿ノ登錄ノ
取消又ハ抹消アリタルトキ
三第三條第一號乃至第六號又ハ第九
號ニ該當スルニ至リタルトキ
四第十四條ノ規定ニ依リ退會セシメ
ラレタルトキ
第六條第四條第一項ノ許可ヲ受ケタル
者ニ非ザレバ稅務代理士其ノ他之ニ類
似スル名稱ヲ用フルコトヲ得ズ
第七條稅務代理士ハ命令ノ定ムル所ニ
依リ稅務代理業ニ關シ事務所ヲ設クベ
シ
第八條稅務代理士ハ命令ノ定ムル所ニ
依リ稅務代理業ニ關スル帳簿ヲ作成シ
之ニ必要ナル事項ヲ記載スベシ
第九條稅務代理士ハ國稅ノ通脫ニ付指
示ヲ爲シ、相談ニ應ジ其ノ他之ニ類似
スル行爲ヲ爲スコトヲ得ズ
第十條稅務代理業ニ關シ稅務代理士ノ
受クベキ報酬ハ所屬稅務代理士會ノ會
則ノ定ムル所ニ依ル
稅務代理士ハ前項ノ會則ニ定ムルモノ
ヲ除クノ外何等ノ名義ヲ以テスルヲ間
ハズ稅務代理業ニ關シ報酬ヲ受クルコ
トヲ得ズ
第十一條稅務代理士ハ財務局ノ管轄區
域每ニ稅務代理士會ヲ設立スベシ但シ
命令ヲ以テ定ムル市ニ在リテハ市ノ區
域每ニ別ニ之ヲ設立スベシ
稅務代理十稅務代理士會ヲ設立セント
スルトキハ會則ヲ定メ主務大臣ノ認可
ヲ受クベシ
第十二條稅務代理士會ハ前條第一一項ノ
認可アリタルトキ成立ス
稅務代理士會ハ法人トス
稅務什理士會ハ稅務代理土ノ品位ノ保
持及稅務代理業ノ改善進步ヲ圖ルヲ以
テ目的トス
第十三條稅務代理士會ノ區域内ニ事務
所ヲ有スル稅務代理士ハ其ノ稅務代理
士會ノ會員トス
第十四條稅務代理士會ハ主務大臣ノ認
可ヲ受ケ稅務代理士ノ品位ヲ失墜シ若
ハ失墜スル虞アル會員又ハ稅務代理士
會ノ會則ニ違反シ若ハ違反スル虞アル
會員ヲ退會セシムルコトヲ得
第十五條前四條ニ規定スルモノヲ除ク
ノ外稅務代理士會ニ關シ必要ナル事項
ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十六條主務大臣ハ監督上必要アリト
認ムルトキハ稅務代理士若ハ稅務代理
士會ヨリ報〓ヲ徵シ又ハ當該官吏ヲシ
テ其ノ業務ニ關スル帳簿書類ヲ檢査セ
シムルコトヲ得
第十七條主務大臣ハ稅務代理士會ノ目
的達成上必要アリト認ムルトキハ稅務代
理士會ニ對シ會則ノ變更其ノ他必要ナ
ル事項ヲ命ズルコトヲ得
第十八條稅務代理士本法、本法ニ基キテ
發スル命令若ハ稅務代理士會ノ會則ニ
違反シタルトキ又ハ稅務代理士ノ品位
ヲ失墜スベキ行爲若ハ業務上不正ノ行
爲ヲ爲シタルトキハ主務大臣ハ其ノ許
可ヲ取消シ又ハ一年以内稅務代理業ノ
停止ヲ命ズルコトヲ得
第十九條稅務代理士會ハ共同ノ目的ヲ
達スル爲會則ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ
受ケ稅務代理士會聯合會ヲ設立スルコ
トヲ得
第二十條主務大臣ハ命令ノ定ムル所ニ
依リ本法ニ定ムル職權ノ一部ヲ財務局
長又ハ稅務署長ニ委任スルコトヲ得
第二十一條第四條第一項ノ許可ヲ受ケ
ズシテ稅務代理業ヲ行ヒタル者ハ六月
以下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第十八條ノ規定ニ依ル稅務代理業ノ停
止期間內稅務代理業ヲ行ヒタル者ノ罰
亦同ジ
第二十二條第六條ノ規定ニ違反シタル
者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十三條稅務代理士左ノ各號ノ一ニ
該當スルトキハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第七條ノ規定ニ依ル事務所ヲ設ケ
ザルトキ
二第八條ノ規定ニ依ル帳簿ノ記載ヲ
怠リ若ハ詐リ又ハ帳簿ヲ隱匿シタル
トキ
三第十條第二項ノ規定ニ違反シタル
トキ
四第十六條ノ規定ニ依ル當該官吏ノ
檢査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタルトキ
第二十四條稅務代理士第九條ノ規定ニ
違反シタルトキハ二年以下ノ懲役又ハ
三千圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十五條稅務代理士又ハ稅務代理士
タリシ者稅務代理業ニ關シ取扱ヒタル
事項ニ付知得タル祕密ヲ故ナク漏洩シ
タルトキハ一年以下ノ懲役又ハ千圓以
下ノ罰金ニ處ス
第二十六條稅務代理士ハ其ノ使用人其
ノ他ノ從業者ガ其ノ稅務代理士ノ業務
ニ關シ第二十三條第二號若ハ第三號又
ハ第二十四條ノ違反行爲ヲ爲シタルト
キハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ
處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
前項ノ場合ニ於テハ懲役刑ヲ科スルコ
トヲ得ズ
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
第二條ノ規定ハ本法施行ノ際現ニ稅務代
理業」ヲ行フ者ガ命令ノ定ムル所ニ依リ本
法施行ノ日ヨリ二月以內ニ第四條第一項
ノ許可ノ申請ヲ爲ズ場合ニハ之ヲ適用セ
ズ
本法施行ノ際現ニ稅務代理業ヲ行フ者ハ
本法施行ノ日ヨリ四月間ヲ限リ第四條第
一項ノ規定ニ与ラズ主務大臣ノ許可ヲ受
ケズシテ引續キ稅務代理業ヲ行フコトヲ
得
第十條ノ規定ハ稅務代理士會成立スルニ
至ル迄ハ之ヲ適用セズ
社債等登錄法案
右
勅旨ヲ奉ジ帝國議會ニ提出ス
昭和十七年一月十八日
內閣線理大臣東條英機
司法大臣岩村通世
大藏大臣賀屋興宣
社債等登錄法案
社債等登錄法
第一條本法ハ資金ノ蓄積及金融機關ノ
資金ノ合理的運用等ニ資スルヲ以テ目
的トス
第二條社債ノ登錄ハ勅令ヲ以テ定ムル
法人(以下登錄機關ト稱ス)ヲシテ之ヲ
取扱ハシム
第三條社債ノ登錄ハ社債權者ノ請求ニ
依リテ之ヲ爲ス
登錄機關ハ正當ノ事由アルニ非ザレバ
社債ノ登錄ヲ拒ムコトヲ得ズ
第四條登錄ヲ爲シタル社債ニ付テハ債
劵ハ之ヲ發行セズ
登錄機關債劵ヲ發行シタル社債ニ付登
錄ヲ爲ストキハ其ノ債券ヲ回收スルコ
トヲ要ス
第五條登錄ヲ爲シタル無記名社債ヲ移
轉シ若ハ之ヲ以テ擔保權ノ目的ト爲シ
又ハ之ヲ信託財產ト爲シタルトキハ其
ノ登錄ヲ爲スニ非ザレバ之ヲ以テ社債
ヲ發行シタル會社其ノ他ノ第三者ニ對
抗スルコトヲ得ズ
登錄ヲ爲シタル記名社債ヲ移轉シ若ハ
之ヲ以テ擔保權ノ目的ト爲シ又ハ之ヲ
信託財產ト爲シタルトキハ其ノ登錄ヲ
爲シ且社債原簿ニ其ノ旨ノ記載ヲ爲ス
ニ非ザレバ之ヲ以テ社債ヲ發行シタル
會社其ノ他ノ第三者ニ對抗スルコトヲ
得ズ
第六條法令ニ依リ擔保トシテ社債ヲ供
託スル場合ニ於テハ登錄ヲ爲シタル社
債ニ付テハ其ノ登錄ヲ受ケ之ニ代フル
コトヲ得
第七條社債權者ハ登錄ヲ爲シタル社債
ニ付何時ニテモ登錄ノ抹消ヲ請求スル
コトヲ得
第八條登錄機關ハ社債登錄簿ヲ備置ク
コトヲ要ス
第九條主務大臣ハ登錄專務ニ關シ登錄
機關ヲ監督ス
第十條主務大臣ハ必要アリト認ムルト
キハ登錄機關ヲシテ登錄事務ニ關スル
報告ヲ爲サシメ又ハ當該官吏ヲシテ登
錄事務ヲ檢査シ若ハ社債登錄簿其ノ他
ノ書類ヲ檢査セシムルコトヲ得
第十一條左ノ場合ニ於テハ登錄機關ノ
業務ヲ執行スル役員ヲ五千圓以下ノ過
料ニ處ス
ー本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令
ニ違反シタルトキ
二前條ノ規定ニ依ル當該官吏ノ檢査
ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタルトキ
第十二條登錄事務ニ從事スル登錄機關
ノ職員ハ之ヲ法令ニ依リ公務ニ從事ス
ル職員ト看做ス
前項ノ職員ノ範圍ハ命令ヲ以テ之ヲ定
第十三條本法ハ命令ヲ以テ定ムル社債
ニハ之ヲ適用セズ
第十四條本法ハ地方債、特別ノ法令ニ
依リ設立セラレタル法人ニシテ會社ニ
非ザルモノノ發行スル債劵及命令ヲ以
テ定ムル外國又ハ外國法人ノ發行スル
公債又ハ社債ニ之ヲ準用ス
第十五條本法ニ規定スルモノヲ除クノ
外登錄竝ニ登錄ヲ爲シタル社債、地方
債特別ノ法令ニ依リ設立セラレタル
法人ニシテ會社ニ非ザルモノノ發行ス
ル債劵及命令ヲ以テ定ムル外國又ハ外
國法人ノ發行スル公債又ハ社債ニ關シ
必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
有價證劵移轉稅法第三條中「甲種國債登
錄簿ニ登錄シタル國債ニ付テノ名義變
更」ノ下ニ「、社債等登録法ニ依リ登錄シ
タル社債、地方債又ハ外國若ハ外國法人
ノ發行スル公信若ハ社債ニ付テノ名義變
更」ヲ加フ
〔國務大臣賀屋興宣君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=43
-
044・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 只今議題トナリ
マシタ稅務代理士法案外一件ニ付キマシテ、
提案ノ理由ヲ說明致シマス、先ヅ稅務代理
士法案ニ付說明申上ゲマス、中上ゲル迄モ
ナク租稅ハ國家財政上極メテ重要ナ地位ヲ
占メテ居ルノデアリマシテ、其ノ運營ノ適
否ガ、直チニ國政ノ全般竝ニ國民ノ利害ニ
重大ナル影響ヲ與ヘルノデアリマス、而シ
とテ社會經濟情勢ハ愈〓、雜雜多岐ニ亙リマシテ、
之ニ伴ヒ稅務行政ノ運行及ビ國民ノ經濟生
活モ亦複雜且困難トナッテ參ッタノデアリマ
ス、殊ニ戰時下ニ於キマスル財政需要ノ增
加ニ伴ヒマシテ、相次イデ增稅ヲ行ヒ、更
ニ今囘相當程度ノ增稅ノ措置ヲ行フコトト
致シタノデアリマスルガ、此ノ傾向ハ今後
モ一段ト加重セラルヽ方向ニアルト考ヘラ
レルノデアリマス、從ッテ稅務行政ノ適正ナ
ル運營ヲ圖リマスコトハ現下喫緊ノ要務
デアルノデアリマス、此ノ見地ヨリ致シマ
シテ、新タニ稅務代理士法ヲ制定シ、稅務
代理士ノ制度ヲ設ケ、其ノ素質ノ向上ヲ圖
リマスルト共ニ、是等ノ者ニ對スル取締ノ
徹底ヲ期シ、之ニ依リ戰時ニ於ケル稅務行
政ノ圓滑ナル運用ニ資セムトスルノデアリ
やくろ、卽チ本法案ニ於キマシテハ、稅務代
理士ノ素質ノ向上ヲ圓リ、其ノ業務ノ公正
ヲ期スル爲、稅務代理士ノ資格ヲ限定シ、
一定ノ資格ヲ有スル者ガ主務大臣ノ許可ヲ
受ケタ場合ニ限リ、稅務代理士タルコトヲ
得ルコトト致シマシテ、同時ニ稅務代理士
ニノミ限リマシテ、所得稅、法人稅其ノ他
ノ租稅ニ關シ、他人ノ委囑ニ依リ稅務官廳
ニ提出スベキ書類ヲ作成シ、審査ノ請求等
ニ付代理ヲナシ、又ハ其ノ相談ニ應ズルコ
トヲ業ト爲シ得ルコトト致シタノデアリマ
ス、其ノ他稅務代理士會ヲ組織セシメ、自
治的ニ品位ノ保持、稅務代理業ノ改善進步
ヲ四ラシメ、又是等ノ者ガ受クベキ報酬ニ付
キマシテモ取締ヲ爲スコトトシ、而シテ是
等ノ者ガ國稅ノ通脫ニ付指示ヲ爲シ、相談
ニ應ジ、不當ノ報酬ヲ受ケタ場合等ニ於キ
マシテハ、許可ノ取消又ハ業務ノ停止ノ處
分ヲ爲ス外、特ニ罰則ヲ適用スルコトト致
シタノデアリマス、次ニ社債等登録法案ニ
付說明申上ゲマス、本法案ハ、戰時下ニ於
ケル資金ノ蓄積及金融機關ノ資金ノ合理的
運用ノ緊要ナルニ顧ミマシテ、社債等ノ保
有者ニ對シ、租稅上ノ善典ヲ與ヘマス等ノ
爲新タニ社債等ノ登錄制度ヲ設ケムトス
ルモノデアリマス、卽チ別ニ提出致シマス
ル臨時租稅措置法中改正法律案及國民貯蓄
組合法中改正法律案ニ於キマシテハ登錄
ヲ爲シタル公社債等ノ保有者ニ對スル分類所
得稅ヲ輕減又ハ免除スルコトト致シマシテ、
長期貯蓄ノ奬勵及金融機關ノ資金ノ合理的
運用ニ資スルコトト致シタノデアリマスル
ガ、是等ノ措置ヲ講ズル必要上、玆ニ新タ
ニ國債登錄制度ニ倣ヒ、社債等ノ登錄制度
ヲ設ケムトスルモノデアリマス、以上申述
ベマシタ趣旨ニ依リ本制度ヲ創設セムトス
ルモノデアリマスルガ、本制度ノ設ケラレ
マシタ場合ニハ、社債等ノ發行手續ノ簡易
化、高級印刷能力ノ節約等ニ資スル所モ尠ク
ナイト存ズル次第デアリマス、以上二件ノ
法律案ニ付キマシテハ何卒御審議ノ上速カ
ニ協贊ヲ與ヘラレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=44
-
045・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今上程セラレマシタ
稅務代理士法案外一件ノ特別委員ハ、國民
貯蓄組合法中改正法律案ノ委員ニ併託セラ
レムコトノ動議ヲ提出致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=45
-
046・秋田重季
○子爵秋円重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=46
-
047・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 戶澤子爵ノ動議
ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=47
-
048・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=48
-
049・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第二十三、
兵役法及共通法中改正法律案、日程第二十
五、退役將校ノ豫備役復歸ニ關スル法律
案、政府提出、第一讀會、是等ノ兩案ヲ一
括シテ議題ト爲スコトニ御異議ハゴザイマ
セヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=49
-
050・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、東條陸軍大臣
兵役法及共通法中改正法律案
右
勅旨ヲ奉ジ帝國議會ニ提出ス
昭和十七年一月十八日
內閣總理大臣東條革、機
兼陸軍大臣
拓務大臣井野碩哉
司法大臣岩村通世
海軍大臣嶋田繁太郞
兵役法及共通法中改正法律案
第一條兵役法中左ノ通改正ス
第八條第一補充兵役ハ十七年四月ト
シ現役ニ適スル者ニシテ其ノ年所要
ノ現役兵員ニ超過スル者ノ中所要ノ
人員之ニ服ス
第二補充兵役ハ十七年四月トシ現役
ニ適スル者ノ中現役兵又ハ第一補充
兵トシテ徵集セラレザル者之ニ服ス
第二十一條ニ左ノ一項ヲ加フ
國民兵ニシテ疾病其ノ他身體又ハ精
神ノ異常ニ因リ當該兵役ニ服シ難キ
者ニ對シテハ兵役ヲ免除ス
第二十四條ノ二前二條ニ規定スル年
齡及時期ハ戰時又ハ事變ノ際其ノ他
特ニ必要アル場合ニ於テハ勅令ノ定
ムル所ニ依リ之ヲ變更スルコトヲ得
第三十九條第一項ニ左ノ一號ヲ加フ
七治安維持法ノ定ムル所ニ依リ豫
防拘禁中又ハ假收容中ナルトキ
第六十條中「及補充兵」ヲ「、補充兵及國
民兵」ニ改ム
第六十一條中「又ハ補充兵」ヲ「、補充兵
又ハ國民兵」ニ改ム
第六十九條第一項中「兵役(第二國民兵
役ヲ除ク)ニ在ル者」ヲ「兵役ニ在ル者
(第二國民兵ニシテ未ダ徵兵檢査ヲ受
ケザル者ヲ除ク)」ニ改ム
第二條共通法中左ノ通改正ス
第三條第三項ヲ左ノ如ク改ム
戶籍法ノ適用ヲ受クル者ハ兵役ニ服
スルノ義務ナキニ至リタル者ニ非サ
レハ他ノ地域ノ家ニ入ルコトヲ得ス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
退役將校ノ豫備役復歸ニ關スル法律
案
右
勅旨ヲ奉ジ帝國議會ニ提出ス
昭和十七年一月十八日
內閣總理大臣兼東條英機
陸軍大臣
退役將校ノ豫備役復歸ニ關スル法律案
一年志願兵又ハ一年現役兵ヨリ豫備役ノ
將校ト爲リタル者ニシテ本法施行ノ際現
ニ退役ノ將校タルモノハ傷痍疾病ノ爲永
久服役ニ堪ヘザルニ因リ退役ヲ命ゼラレ
タル者及年齡五十年ニ滿ツル年ノ三月三
十一日ヲ過ギタル者ヲ除クノ外之ヲ豫備
役ニ復セシム
前項ノ規定ニ依リ豫備役ニ復シタル者ノ
服役ニ關シテハ勅令ラ以テ之ヲ定ム
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
〔國務大臣東條英機君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=50
-
051・東條英機
○國務大臣(真條革機君) 只今議題ニ相成
リマシタ兵役法及共通法中改正法律案ノ提
出理由ニ付キマシテ御說明ヲ申上ゲマス、
尙海軍關係ノ事項モアリマスルガ併セテ申
述べマス、改正ノ第一ハ、海軍ノ第一補充兵
役期間ノ延長デゴザイマス、現在海軍ノ第
一補充兵役ハ一年デアリマスルガ、戰時要
昌補充上ノ必要ニ依リマシテ、之ヲ陸軍同樣
十七年四箇月ニ延長致サウトスルノデアリ
やっ、第二ハ、徵兵適齢又ハ徵兵適齡屆提
出期日ノ臨時變更ニ關スルモノデアリマス、
支那事變勃發以來、出戰兵力ハ逐次增加致
シテ居ルノデアリマス、幸ニシテ戰局ハ極
メテ有利ニ進展ヲシ、兵員ノ損耗亦豫想以
上ニ僅少デアリマスルガ、政府ト致シマシ
テハ、最惡ノ專態ニ對處シ得ベキ萬全ノ方
策ヲ常ニ攻究シ、準備シ置カナケレバナラ
ヌコトハ申ス迄モナイコトデゴザイマシテ、
豫想セラルヽ最惡ノ事態ヲ設想致シマスル
二、兵員資源ノ現況ハ必ズシモ樂觀ヲ許サ
ヌモノガアルノデアリマス、從ヒマシテ兵
員補充上ノ必要ニ依リ、或ハ徵兵檢査ノ實
施ヲ早メ、又ハ更ニ進ミマシテ、徵兵適齡
ヲ低下セナケレバナラヌト云フ事態モ起ル
コト、必ズシモ豫想セラレヌコトデハナイ
ノデアリマシテ、斯クノ如キ必要アル場合
ニ於キマシテハ隨時敏速ニ徵兵適齡、又
ハ徵兵適齢屆ノ提出期日ヲ變更シ得ルノ
途ヲ開キ置カウトスルノデアリマス、第
三ハ國民兵ノ取扱ニ關スルモノデアリ
マス、國民兵ノ戰時ニ於ケル必要性ハ、
從來ニ比シマシテ頗ル增大致シテ參リマ
シタノデ、其ノ召集準備等ニ遺憾ナカラ
シムル爲ニ、國民兵ニ對シマシテモ平
時簡〓點呼ヲ行ヒ得ル如ク致シマスルト共
ニ、第二國民兵役ニ在ル者ニ付キマシテ
モ、戶籍ニ兵役ノ略符號ヲ附サウト致ス
ノデアリマス、尙戶籍法ノ適用ヲ受ケテ居
ル者ハ、兵役ニ服スルノ義務ノ無クナッタ
後デナケレバ、他ノ地域ノ家ニ入ルコトハ
出來ナイコトニナッテ居リマスルガ、徵兵
終結處分ヲ經マシテ、第二國民兵役ニ在ル
者ハ、齊シク兵役義務者デアルニ拘ラズ、
特ニ其ノ制限カラ除外セラレテ居ルノデア
リマス、然ルニ第二國民兵ト雖モ戰時其ノ
心要性ハ著シグ增加シテ參リマシタノデ、
今後ハ假令第二國民兵ト雖モ、他ノ兵役義
務者同樣、兵役ニ服スルノ義務無キニ至ッタ
後デナケレバ他ノ地域ノ家ニ入ルコトハ出
來ナイヤウニ致ス必要ガアルノデアリマス、
第四ハ治安維持法ノ改正ニ伴フ改正デア
リマシテ、昨春治安維持法ヲ改正セラレ、
新タニ豫防拘禁ニ關シマスル規定ガ加ヘラ
レタノデアリマスルガ、此ノ治安維持法ニ
*依ル豫防拘禁中ハ徵集ノ延期ヲ爲シ得ルコ
トト致サムトスルノデアリマス、本法律案
提出ノ理由ハ〓要以上ノ通リデゴザイマス、
次ニ退役將校ノ豫備役復歸ニ關スル法律案
デアリマス、退役將校ノ豫備役復歸ニ關ス
ル法律案ノ提出理由ハ次ノ通リデアリマス、
支那事變勃發以來、陸軍ノ出戰兵力ハ遂次
增大致シマシテ、之ニ伴ヒマシテ軍隊幹部ノ
所要數ハ著シク增加致シマシタ、其ノ在〓
資源モ漸次減少シツヽアル狀況デアリマス、
之ガ爲軍隊幹部ノ增加養成ニ關シマシテハ
有ラユル手段方法ヲ講ジテ居ル次第デアリ
マシテ、曩ニ大學學部、專門學校等ノ在學
年限又ハ修業年限ヲ短縮致シマスルト共
ニ、臨時徵兵檢査ヲ行ッテ、速カニ人營セシ
ムルノ措置ヲ執リマシタノモ、全ク幹部急
速補充ノ必要ニ基イタノデアリマス、而シ
テ現在幹部候補生出身將校ノ服役ハ、年齡
五十年ニ滿ツル年ノ三月三十一日迄ト定メ
ラレテ居リマスルガ、是ト本質全ク同一ナ
ル從前ノ一年志願兵又ハ一年現役兵出身將
校ノ服役期間ハ十七年四箇月デアリマシテ、
幹部候補生出身將校ノ服役ニ比シマシテ可
ナリ短カカッタノデアリマス、然ルニ以上申述
ベマシタルヤウニ、國軍ノ現況ハ幹部ノ補
充ニ特別ノ手段ヲ要スル狀況デアリマスル
ノデ、一年志願兵又ハ一年現役兵出身將校
ノ中、旣ニ退役トナッテ居ル者ヲ豫備役ニ
復歸セシメマシテ、幹部候補生出身將校ト
同程度ノ服役ニ服セシメムトスルノデアリ
マス、本法律案提出ノ理由ハ以上ノ通リデ
ゴザイマス、何卒兩者御審議ノ上速カニ協
贊ヲ與ヘラレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=51
-
052・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御質疑ガナ
ケレバ兩案ハ之ヲ恩給法中改正法律案ノ
特別委員ニ併託致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=52
-
053・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第二十七、
陸軍刑法中改正法律案、日程第二十九、陸
軍軍法會議法中改正法律案、政府提出、第
一讀會、是等ノ兩案ヲ一括シテ議題ト爲ス
コトニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=53
-
054・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、東條陸軍大臣
陸軍刑法中改正法律案
右
勅旨ヲ奉ジ帝國議會ニ提出ス
昭和十七年一月十八日
內閣總理大臣東條英機
兼陸軍大臣
陸軍刑法中改正法律案
陸軍刑法中左ノ通改正ス
目次中「第五章暴行脅迫ノ罪」ヲ「第五
章暴行脅迫及殺傷ノ罪」ニ、「第九章
掠奪ノ罪」ヲ「第九章掠奪及强姦ノ罪」
三の人
第十條中「陸軍將校相當官、」ヲ削ル
第十一條中「下士」ヲ「下士官」ニ、「陸軍下
士」ヲ「陸軍下士官」ニ改ム
第十二條中「兵卒」ヲ「兵」ニ改ム
第十三條中「同相當官、」ヲ削ル
第十四條中「豫備又ハ」ヲ削ル
第十六條中「兵卒」ヲ「兵」ニ、「下士勤務上
等兵」ヲ「下士官勤務ノ兵」ニ改ム
第二十條第一號但書ヲ左ノ如ク改ム
但シ戰地以外ノ地ニ在ル部隊ニシテ對
敵狀態ニ在ラサルモノヲ除ク
第五十五條第一號及第二號ヲ左ノ如ク改
ム
敵前ナルトキハ死刑又ハ無期若ハ
五年以上ノ懲役ニ處ス
二戰時、軍中又ハ戒嚴地境ナルトキ
ハ六月以上七年以下ノ懲役ニ處ス
三其ノ他ノ場合ナルトキハ五年以下
ノ懲役ニ處ス
第五十七條第二號中「一年以上七年以下
ノ禁錮」ヲ「一年以上十年以下ノ禁錮」ニ、
同條第三號中「二年以下ノ禁錮」ヲ「五年
以下ノ禁錮」ニ改ム
第五十八條第二號中「無期又ハ五年以上
ノ禁錮」ヲ「無期又ハ七年以上ノ禁錮」ニ、
「一年以上十年以下ノ禁錮」ヲ「一年以上
ノ有期禁錮」ニ、同條第三號中「三年以上
十年以下ノ禁錮」ヲ「三年以上ノ有期禁
鋼」ニ、「五年以下ノ禁錮」ヲ「七年以下ノ
禁錮」ニ改ム
「第五章暴行脅迫ノ罪」ヲ「第五章暴
行脅迫及殺傷ノ罪」ニ改ム
第六十條上官ヲ傷害シ又ハ之ニ對シ暴
行若ハ脅迫ヲ爲シタル者ハ左ノ區別ニ
從テ處斷ス
一敵前ナルトキハ一年以上ノ有期ノ
懲役又ハ禁錮ニ處ス
二其ノ他ノ場合ナルトキハ十年以下
ノ懲役又ハ禁錮ニ處ス
第六十一條第二號中「五年以上ノ有期ノ
懲役又ハ禁錮」ヲ「無期若ハ五年以上ノ懲
役又ハ禁錮」ニ、「十年以下ノ懲役又ハ禁
錮」ヲ「六月以上十年以下ノ懲役又ハ禁
錮」ニ改ム
第六十二條中「上官ニ對シ兵器又ハ兇器
ヲ用ヰテ暴行又ハ脅迫ヲ爲シタル者」ヲ
「兵器又ハ兇器ヲ用ヰテ第六十條ノ罪ヲ
犯シタル者」ニ改ム
第六十三條ノ二前四條ノ罪ヲ犯シ因テ
上官ヲ死ニ致シタル者ハ左ノ區別ニ從
テ處斷ス
一敵前ナルトキハ死刑ニ處ス
二其ノ他ノ場合ナルトキハ死刑又ハ
無期ノ懲役若ハ禁錮ニ處ス
第六十三條ノ三上官ヲ殺シタル者ハ死
刑ニ處ス
第六十三條ノ四前條ノ罪ヲ犯ス目的ヲ
以テ其ノ豫備ヲ爲シタル者ハ二年以上
ノ有期ノ懲役又ハ禁錮ニ處ス
第七十二條中「第六十條乃至第七十條」ヲ
「第六十條乃至第六十三條、第六十三條ノ
三及第六十四條乃至第七十條」ニ改ム
第七十五條第二號中「五年以下ノ懲役又
ハ禁錮」ヲ「六月以上七年以下ノ懲役又ハ
禁錮」ニ、同條第三號中「二年以下ノ徵役
又ハ禁錮」ヲ「五年以下ノ黴役又ハ禁錮」
三菱ハム
第七十六條第二號中「五年以上ノ有期ノ
懲役又ハ禁錮」ヲ「無期若ハ五年以上ノ懲
役又ハ禁錮」ニ、「六月以上七年以下ノ懲
役又ハ禁錮」ヲ「一年以上十年以下ノ懲役
又ハ禁錮」ニ、同條第三號中「一年以上七
年以下ノ懲役又ハ禁錮」ヲ「二年以上ノ有
期ノ懲役又ハ禁錮」ニ、「三年以下ノ懲役
又ハ禁錮」ヲ「六月以上七年以下ノ懲役又
ハ禁錮」ニ改ム
第七十九條中「船舶、」ノ下ニ「航空機、戰
車、」ヲ、「電車」ノ下ニ「、自動車」ヲ加フ
第八十一條ノ二陸軍ノ航空機ヲ墜落、
〓覆若ハ覆沒セシメ又ハ破壞シタル者
ハ死刑又ハ無期懲役ニ處ス
「第九章掠奪ノ罪」ヲ「第九章掠奪及
强姦ノ罪」ニ改ム
第八十八條ノ二戰地又ハ帝國軍ノ占領
地ニ於テ婦女ヲ强姦シタル者ハ無期又
ハ一年以上ノ懲役ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯ス者人ヲ傷シタルトキハ
無期又ハ三年以上ノ懲役ニ處シ死ニ致
シタルトキハ死刑又ハ無期若ハ七年以
上ノ懲役ニ處ス
第九十七條第一項中「三年以上ノ懲役」ヲ
「五年以下ノ懲役」ニ改メ同條第二項ヲ左
ノ如ク改ム
在〓軍人召集ヲ免ルル目的ヲ以テ前項
ノ行爲ヲ爲シタルトキハ三年以下ノ懲
役ニ處ス
第九十九條中「三年以下ノ禁鋼」ヲ「七年
以下ノ懲役又ハ禁錮」ニ改ム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行前刑法第二十二章ノ罪ヲ犯シタ
ル者ニシテ第八十八條ノ二第一項ノ改正
規定ニ該當スルモノハ本法施行後ト雖モ
〓訴アルニ非ザレバ其ノ罪ヲ論ゼズ
陸軍軍法會議法中改正法律案
右
勅旨ヲ奉ジ帝國議會ニ提出ス
昭和十七年一月十八日
內閣總理大臣兼東條英機
陸軍大臣
陸軍軍法會議法中改正法律案
陸軍軍法會議法中左ノ通改正ス
第三十一條中「陸軍法務官」ヲ「法務官」ニ
改ム
第三十五條法務官ハ司法官試補タルノ
資格ヲ有シ勅令ノ定ムル所ニ依リ實務
ヲ修習シタル陸軍ノ法務部將校ヲ以テ
之ニ充ツ
第三十六條乃至第四十一條削除
第五十一條第二項第一號中「尉官一人」ノ
下ニ「又ハ將官一人佐官一人尉官一人」ヲ
加フ
第六十九條及第九十六條第一項但書中
「法務官試補」ヲ「實務修習中ノ法務部將
校」ニ改ム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法ハ本法施行前ニ生ジタル事件ニモ亦
之ヲ適用ス
前項ノ規定ハ本法施行前從前ノ規定ニ依
リ爲シタル訴訟手續ノ效力ヲ妨ゲズ
本法施行ノ際現ニ陸軍法務官タル者ニシテ
陸軍ノ法務部將校ニ任ゼラレザルモノハ退
職ノ陸軍法務官トシテ本法施行後ト雖モ
其ノ官ヲ保有セシメ其ノ身分取扱ニ關シ
テハ從前ノ例ニ依ル
本法施行ノ際陸軍法務官(兼官ヲ含ム以
下同ジ)ヨリ陸軍ノ法務部將校ニ任ゼラ
レタル者ニ對シ恩給法第三十條ノ規定ヲ
適用スル場合ニ於テハ其ノ陸軍法務官ト
シテノ在職年ノ計算ニ付テハ同條中十分
ノ七トアルハ十七分ノ十三トス
勅令ヲ以テ別段ノ定ヲ爲シタル場合ヲ除
クノ外他ノ法律中陸軍ノ理事トアリ又ハ
陸軍法務官トアルハ法務官タル陸軍ノ法
務部將校トス
本法施行ノ際必要ナル規定ハ勅令ヲ以テ
之ヲ定ム
〔國務大臣東條英機君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=54
-
055・東條英機
○國務大臣(東條英機君) 只今上程セラレ
マシタ陸軍刑法中改正法律案ノ提出ノ理由
ヲ御說明申上ゲマス、現行陸軍刑法ハ明治
四十一年ヨリ施行セラレマシテ、爾來一囘
ノ改正モ見ズシテ三十餘年ヲ經テ今日ニ至ッ
テ居ルノデアリマスガ、時勢ノ推移、又戰
爭形態ノ變遷、支那事變ノ經驗、是等ニ鑑
ミマシテ、又最近ノ一般ノ刑罰法ノ改正等
ニ徵シマシテ戰時下特ニ緊要ナル規定ヲ
新設又ハ整備致シマシテ、以テ軍紀ヲ愈〓振ゝ
肅シ、大東亞戰爭ノ完遂ニ遺憾ナキヲ期セ
ムトスルモノデアリマス、而シテ改正ノ主
要ナルモノハ五點デアリマシテ、第一ハ、軍
中ト云フモノノ定義規定ヲ整備スルコト、
第二ハ、從軍及兵役ヲ免レムトスル所ノ罪、
抗命ノ罪、逃亡ノ罪竝ニ造言飛語ノ罪ノ刑
ヲ加重スルコト、第三ハ、上官ニ對スル加
害ノ罪ヲ設クルコト、第四ハ、軍用物損壞
ノ罪ノ規定ヲ整備スルコト第五ハ、戰地
又ハ占領地ニ於キマスル所ノ姦淫ノ罪ヲ設
一クルコト、以上ガ本法律案ヲ提出スルニ至
リマシタ理由ノ趣旨デゴザイマス、次ノ陸
軍軍法會議法中改正法律案デゴザイマスガ、
此ノ提出ノ理由ハ軍法會議ガ特別裁判所
トシテ軍ニ設置セラレアル所以ノモノハ
司法權ト締帥トヲ密接不可分ノ關係ニ置キ
マシテ、司法權ノ作用ノ上ニ、統帥上ノ要
求ヲ全幅的ニ反映セシメムガ爲デアルト信
ズルノデアリマス、之ガ爲ニハ軍司法ノ運
營ヲ本務ト致シマスル法務官ヲシテ統帥上
ノ要求ヲ十分ニ理解シ得ル武官ト致シマシ
テ)一層軍事ニ精通シ、身ヲ以テ軍紀ニ徹
スル軍人タラシメマシテ、以テ大東亞戰爭
ノ下愈、重大ヲ加ヘツヽアリマスル軍司法ノ
運營ヲ建軍ノ本旨ト等師ノ要求トニ透徹セ
シメマシテ、益〓其ノ完璧ヲ期スルノ要アリ
ト存ズルノデアリマス、卽チ陸軍軍法會議
法ニ規定セラレテアリマスル所ノ軍法會議
ノ職員中、文官デアリマスル陸軍法務官ヲ
廢シマシテ、軍法會議法務官トシテノ職ハ、
陸軍武官タル法務部將校ヲ以テ之ニ充テル
コトニ致シタイト思フノデゴザイマス、而
シテ法務部將校ノ補充、服役、分限、微罰
等ハ、總テ陸軍ノ將校ニ關シマスル規定ノ
適用ヲ受クルモノト致シマシテ、之ニ關係
アル現行法第三十一條、第三十五條乃至第
四十一條等ノ規定ヲ整備セムトスルモノデ
ゴザイマス、次ニ高等軍法會議ノ裁判官デ
アリマス所ノ判士ノ區分ニ付キマシテ、現
行法第五十一條ノ一部ノ改正ヲ行ヒマシテ、
運用ノ適正ヲ期セシメムトスルモノデアリ
マイク以上ガ本法律案ヲ提出致シマシタ理
由ノ要旨デゴザイマス、兩者何卒御審議ノ
上速カニ御協賛アラムコトヲ御願ヒ致シマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=55
-
056・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今議題トナリマシタ
陸軍刑法中改正法律案外一件ノ特別委員ノ
數ヲ十五名トシ、其ノ委員ノ指名ヲ議長ニ
一任スルノ動議ヲ提出致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=56
-
057・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=57
-
058・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 戶澤子爵ノ動議
ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=58
-
059・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、特別委員ノ氏名ヲ朗讀致サセマス
〔近藤書記官朗讀〕
陸軍刑法中改正法律案外一件特別委員
侯爵中御門經恭君侯爵東〓彪君
伯爵山本〓君子爵伊東二郞丸君
子爵大島陸太郞君織田萬君
男爵淺田良逸君內田重成君
坂西利八郞君男爵柴山昌生君
長谷川赳夫君男爵奧田剛郞君
唐澤俊樹君大谷五平君
飯塚知信君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=59
-
060・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第三十一、
船舶保護法中改正法律案、政府提出、第
讀會、嶋田海軍大臣
船舶保護法中改正法律案
右
勅旨ヲ奉ジ帝國議會ニ提出ス
昭和十七年一月十八日
內閣總理大臣東條英機
農林大臣井野碩哉
兼拓務大臣
海軍大臣嶋田繁太郞
遞信大臣寺島健
船舶保護法中改正法律案
船舶保護法中左ノ通改正ス
第十條ノ二海軍大臣ハ必要アルトキハ
命令ノ定ムル所ニ依リ第三條第一項及
第四條第二項ニ規定スル職權ノ一部ヲ
海務院長官ヲシテ行ハシムルコトヲ得
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣嶋田繁太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=60
-
061・嶋田繁太郎
○國務大臣(嶋田繁太郞君) 船舶保護法中
改正法律案ノ提出理由ヲ說明申上ゲマス、
船舶保護法ハ第七十六議會ニ於キマシテ、
御協贊ヲ經マシタモノデゴザイマスガ
〔副議長侯爵佐佐木行忠君議長席ニ著
乞
今回虚信省管船局ガ改組セラマシテ、新タ
ニ海務院ガ設置サルヽコトトナリマシテ
其ノ機構ガ頗ル擴大强化セラルヽニ至リマ
シタノミナラズ、其ノ職員中所要ノ位置
ニ、海軍ノ現役士官ヲ配員セラルヽコトトナ
リマシタノデ、船舶保護法第三條第一項及
第四條第二項ノ規定ニ依ル海軍大臣ノ職
權ノ一部ヲ、必要アルトキ海務院長官ヲシ
テ行ハシメマスルヲ適當トスルコトト相成ッ
タノデアリマス、以上申述ベマシタ理由
ニ依リマシテ本改正法律案ヲ提出致シマシ
タ次第デゴザイマス、何卒御審議ノ上御協
贊アラムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=61
-
062・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐住太行忠君) 御質疑ガナ
ケレバ本案ノ特別委員ノ氏名ヲ朗讀致サ
セマス
〔高山書記官朗讀〕
船舶保護法中改正法律案特別委員會委員
公爵山縣有道君候爵久我通顯君
子爵立花種忠君子爵波多野二郞君
大橋八郞君男爵中村謙一君
三浦新七君熊谷三太郞君
小野耕一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=62
-
063・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 日程第三十
三、海軍刑法中改正法律案、日程第三十五、
海軍軍法會議法中改正法律案、政府提出第
一讀會、是等ノ兩案ヲ一括シテ議題ト爲ス。
コトニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=63
-
064・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス、嶋田海軍大臣
海軍刑法中改正法律案
右
勅旨ヲ奉ジ帝國議會ニ提出ス
昭和十七年一月十八日つ
內閣總理大臣東條英機
海軍大臣嶋田繁太郞
海軍刑法中改正法律案
海軍刑法中左ノ通改正ス
目次中「第五章暴行脅迫ノ罪」ヲ「第五
章暴行脅迫及殺傷ノ罪」ニ、「第九章
掠奪ノ罪」ヲ「第九章掠奪及强姦ノ罪」
ニバル
第八條海軍軍人ト稱スルハ海軍ノ高等
武官、候補生、准士官、下士官及兵ニ
シテ左ニ記載シタル者ヲ謂フ
現役ニ在ル者但シ未タ入營セサル者
及召集中ニ非サル歸休下士官兵ヲ除ク
二現役以外ノ兵役ニ在リテ召集中ノ
者及召集中ノ身分取扱ヲ受クル者
三前二號ニ記載シタル者ノ外海軍制
服著用中ノ者
第十二條第二項中「卒」ヲ「兵」ニ改ム
第五十三條第一號及第二號ヲ左ノ如ク改
ム
-敵前ナルトキハ死刑又ハ無期若ハ
五年以上ノ懲役ニ處ス
二戰時ナルトキハ六月以上七年以下
ノ懲役ニ處ス
三其ノ他ノ場合ナルトキハ五年以下
ノ懲役ニ處ス
第五十五條第二號中「一年以上七年以下
ノ禁錮」ヲ「一年以上十年以下ノ禁錮」ニ、
同條第三號中「二年以下ノ禁錮」ヲ「五年
以下ノ禁錮」ニ改ム
第五十六條第二號中「無期又ハ五年以上
ノ禁錮」ヲ「無期又ハ七年以上ノ禁鋼」ニ、
「一年以上十年以下ノ禁錮」ヲ「一年以上
ノ有期禁錮」ニ、同條第三號中「三年以上
十年以下ノ禁錮」ヲ「三年以上ノ有期禁
鋼」ニ、「五年以下ノ禁錮」ヲ「七年以下ノ
禁錮」ニ改ム
「第五章暴行脅迫ノ罪」ヲ「第五章.暴
行脅迫及殺傷ノ罪」ニ改ム
第五十八條上官ヲ傷害シ又ハ之ニ對シ
暴行若ハ脅迫ヲ爲シタル者ハ左ノ區別
ニ從テ處斷ス
敵前ナルトキハ一年以上ノ有期ノ
懲役又ハ禁錮ニ處ス
二其ノ他ノ場合ナルトキハ十年以下
ノ懲役又ハ禁錮ニ處ス
第五十九條第二號中「五年以上ノ有期ノ
懲役又ハ禁錮」ヲ「無期若ハ五年以上ノ懲
役又ハ禁錮」ニ、「十年以下ノ懲役又ハ禁
鋼」ヲ「六月以上十年以下ノ懲役又ハ禁
錮」ニ改ム
第六十條中「上官ニ對シ兵器又ハ兇器ヲ
用ヰテ暴行又ハ脅迫ヲ爲シタル者」ヲ「兵
器又ハ兇器ヲ用ヰテ第五十八條ノ罪ヲ犯
シタル者」ニ改ム
第六十一條ノ二前四條ノ罪ヲ犯シ因テ
上官ヲ死ニ致シタル者ハ左ノ區別ニ從
テ處斷ス
一敵前ナルトキハ死刑ニ處ス
二其ノ他ノ場合ナルトキハ死刑又ハ
無期ノ懲役若ハ禁錮ニ處ス
第六十一條ノ三上官ヲ殺シタル者ハ死
刑ニ處ス
第六十一條ノ四前條ノ罪ヲ犯ス目的ヲ
以テ其ノ豫備ヲ爲シタル者ハ二年以上
ノ有期ノ懲役又ハ禁錮ニ處ス
第七十條中「第五十八條乃至第六十八條」
ヲ「第五十八條乃至第六十一條、第六十一
條ノ三及第六十二條乃至第六十八條」=
改ム
第七十三條第二號中「五年以下ノ懲役又
ハ禁錮」ヲ「六月以上七年以下ノ懲役又ハ
禁錮」ニ、同條第三號中「二年以下ノ懲役
又ハ禁錮」ヲ「五年以下ノ懲役又ハ禁錮」
三六六
第七十四條第二號中「五年以上ノ有期ノ
懲役又ハ禁錮」ヲ「無期若ハ五年以上ノ懲
役又ハ禁鋼」ニ、「六月以上七年以下ノ懲
役又ハ禁錮」ヲ「一年以上十年以下ノ懲役
又ハ禁錮」ニ、同條第三號中「一年以上七
年以下ノ懲役又ハ禁錮」ヲ「二年以上ノ有
期ノ懲役又ハ禁錮」ニ、「三年以下ノ懲役
又ハ禁錮」ラ「六月以上七年以下ノ懲役又
ハ禁錮」ニ改ム
第七十八條中「艦船、」ノ下ニ「航空機、戰
車、」ヲ、「電車」ノ下ニ「自動車」ヲ加フ
第八十一條ニ左ノ一項ヲ加フ
海軍ノ航空機ヲ墜落、〓覆若ハ覆沒セ
シメ又ハ破壞シタル者亦前項ニ同シ
「第九章掠奪ノ罪」ヲ「第九章掠奪及
强姦ノ罪」ニ改ム
第八十八條ノ二戰地又ハ帝國軍ノ占領
地ニ於テ婦女ヲ强姦シタル者ハ無期又
ハ一年以上ノ懲役ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯ス者人ヲ傷シタルトキハ
無期又ハ三年以上ノ懲役ニ處シ死ニ致
シタルトキハ死刑又ハ無期若ハ七年以
上ノ懲役ニ處ス
第九十六條中「歸休兵及豫備役、後備役ニ
在ル者」ヲ「歸休下士官兵及現役以外ノ兵
役ニ在ル者」ニ改ム
第九十七條第一項中「三年以下ノ懲役」ヲ
「五年以下ノ懲役」ニ改メ同條第二項ヲ左
ノ如ク改ム
歸体下士官兵及現役以外ノ兵役ニ在ル
者召集ヲ免ルル目的ヲ以テ前項ノ行爲
ヲ爲シタルトキハ三年以下ノ懲役ニ處
ス
第百條中「三年以下ノ禁錮」ヲ「七年以下
ノ懲役又ハ禁錮」ニ改ム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行前刑法第二十二章ノ罪ヲ犯シタ
ル者ニシテ第八十八條ノ一一第一項ノ改正
規定ニ該當スルモノハ本法施行後ト雖モ
〓訴アルニ非ザレバ其ノ罪ヲ論ゼズ
海軍軍法會議法中改正法律案
右
勅旨テ奉ジ帝國議會ニ提出ス
昭和十七年一月十八日
內閣總理大臣東條英機
海軍大臣嶋田繁太郞
海軍軍法會議法中改正法律案
海軍軍法會議法中左ノ通改正ス
第八條第四號中「要港部軍法會議」ヲ一番
備府軍法會議」ニ改ム
第九條第一項中「要港部軍法會議」ヲ書
備府軍法會議」ニ、同項但書中「要港部」ヲ
「警備府」ニ改ム
第十條第三項中「要港部軍法會議」ヲ一番
備府軍法會議」ニ、「要港部司令官」ヲ「警
備府司令長官」ニ改ム
第十三條第二號中「海軍區」ヲ「警備區」ニ
改ム
第十四條中「要港部軍法會議」ヲ「警備府
軍法會議」ニ、「要港部司令官」ヲ「警備府
司令長官」ニ改ム
第十五條ニ左ノ一項ヲ加フ
警備區ヲ有スル艦隊ノ艦隊軍法會議ニ
在リテハ其ノ警備區內ニ在リ又ハ警備
區內ニ於テ罪ヲ犯シタル第一條乃至
第三條記載ノ者ニ對スル被告事件ニ付
亦前項ニ同シ
第三十一條中「海軍法務官」ヲ「法務官」ニ
改ム
第三十五條法務官ハ司法官試補タルノ
資格ヲ有シ勅令ノ定ムル所ニ依リ實務
ヲ修習シタル海軍ノ法務科士官ヲ以テ
之ニ充ツ
第三十六條乃至第四十一條削除
第四十四條、第四十九條第一項及第五十
條中「要港部軍法會議」ヲ「警備府軍法會
議」ニ改ム
第五十二條第二項第一號中「尉官一人」ノ
下ニ「又ハ將官一人佐官一人尉官一人」ヲ
加フ
第六十三條中「要港部軍法會議」ヲ「警備
府軍法會議一ニ改ム
第六十九條中「法務官試補」ヲ「實務修習
中ノ法務科士官」ニ改ム
第七十條中「要港部軍法會議」ヲ「警備府
軍法會議」ニ改ム
第七十三條ノ二海軍大臣ハ海軍ノ武官
又ハ文官中ヨリ戰地又ハ占領地警備區
內ニ於テ海軍司法警察官トシテ勤務ス
ル者ヲ指定スルコトヲ得
第七十七條第二項中「巡査」ノ下ニマハ
第七十三條ノ二ノ規定ニ依リ海軍司法警
察官トシテ勤務スル者ノ部下ニ屬スル者」
フォロ,
第九十六條第一項但書中「法務官試補」ヲ
「實務修習中ノ法務科士官」ニ改ム
第三百十二條第一項、第四百二十條及第
四百六十一條第二項中「要港部軍法會議」
ヲ「警備府軍法會議」ニ改ム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法ハ本法施行前ニ生ジタル事件ニモ亦
之ヲ適用ス
前項ノ規定ハ本法施行前從前ノ規定ニ依
リ爲シタル訴訟手續ノ效力ヲ妨ゲズ
本法施行ノ際現ニ海軍法務官タル者ニシ
テ海軍ノ法務科士官ニ任ゼラレザル者ハ
退職ノ海軍法務官トシテ本法施行後ト雖
モ其ノ官ヲ保有セシメ其ノ身分取扱ニ關
シテハ從前ノ例ニ依ル
本法施行ノ際海軍法務官(兼官ヲ含ム以
下同ジ)ヨリ海軍ノ法務科士官ニ任ゼラ
レタル者ニ對シ恩給法第三十條ノ規定ヲ
適用スル場合ニ於テハ其ノ海軍法務官ト
シテノ在職年ノ計算ニ付テハ同條中十分
ク
ノ七トアルハ十七分ノ十三トス
勅令ヲ以テ別段ノ定ヲ爲シタル場合ヲ除
クノ外他ノ法律中海軍ノ主理トアリ又ハ
海軍法務官トアルハ法務官タル海軍ノ法
務科士官トス
本法施行ノ際必要ナル規定ハ勅令ヲ以テ
之ヲ定ム
〔國務大臣嶋田繁太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=64
-
065・嶋田繁太郎
○國務大臣(嶋田繁太郞君) 只今議題トナ
リマシタ海軍刑法中改正法律案及海軍軍法
會議法中改正法律案ニ付キマシテ、提案ノ
理由ヲ說明申上ゲマス、現行海軍刑法ハ明
治四十一年ノ制定ニ係リマシテ、爾來三十
有餘年、一囘ノ改正ヲ見ズシテ今日ニ至ッタ
モノデアリマスガ、時勢ノ變遷、戰爭形態
ノ進步、新兵器ノ採用等ニ伴ヒマシテ、其
ノ全般ニ亙ッテ改正ヲ考慮スベキ箇所ガ尠
カラザルヤニ認メラルヽノデアリマス、海
軍刑法ハ刑法ト相關聯スル所ガ多ク、彼此
步調ヲ一ニスルノ必要アルノミナラズ時
局緊急ノ際全面的改正ヲ施スハ適當デアリ
マセヌノデ、現行法實施後ノ制度ノ改變、
支那事變ノ經驗等ニ鑑ミ、特ニ緊急ナル部
分ニ付テノミ改正セムトスルモノデアリマ
ス、其ノ主モナル點ハ六點デゴザイマス、
第一ハ、兵役法ノ改正其ノ他制度ノ改變
ニ伴ヒ、海軍軍人ノ名稱例ニ關スル規定等
ヲ改正シタコトデゴザイマス、第二ハ、抗
命ノ罪、逃亡ノ罪、從軍ヲ免レ又ハ危險ナ
ル勤務ヲ避クル罪、兵役ヲ免ルヽ罪等、主
要ナル軍紀犯罪ノ刑ノ一部ガ稍≧輕キニ失
シ、一般警戒的效果ニ乏シキ憾ガアリマス
ルノデ、是等ノ罪ノ刑ヲ强化シ以テ軍紀ノ振
肅ニ遺憾ナキヲ期シタルコトデアリマス
第三ハ、上官ニ對スル殺傷ノ罪ハ、現行法
制ノ下ニ於キマシテハ刑法ノ規定ニ委シテ
居ルノデアリマスガ、斯カル罪ハ軍紀侵害
ノ甚ダシキモノデアリマスカラ、軍事犯ト
シテ海軍刑法中ニ規定スルノ要アリト認メ
ラレマスノデ、上官殺傷ノ罪ニ關スル規定
ヲ設ケタコトデアリマス、第四ハ、最近目
覺マシイ進步ヲ遂ゲ、顯著ナル功績ヲ擧ゲ
ツヾアル軍用航空機、戰車、自動車ノ保護
ニ關シ現行法上不備ノ點ガアリマスノデ、
軍用物損壞ノ罪ノ章中ニ此ノ點ヲ整備致シ
タコトデアリマス、第五ハ、戰地又ハ占領
地ニ於テ婦女ヲ强姦スル罪ハ、戰地又ハ占
領地ノ治安確保ニ任ズル軍ノ威信ヲ損スル
ト共ニ、軍紀ヲ紊ルコト大ナルモノナルニ
鑑ミマシテ、之ヲ軍事犯トシテ非親告罪タ
ラシムルノ要ガアリマスノデ、刑法ノ姦淫
罪ノ特別規定トシテ、戰地又ハ占領地ニ於
ケル婦女强姦ノ罪ヲ新設シタコトデアリマ
ス、第六ハ、近代戰ガ宣傳戰ノ一面ヲ備ヘ
テ居ルコトニ對處スル爲、軍事ニ關スル造
言飛語ノ罪ノ刑ヲ引上ゲ、以テ宣傳戰乃至
ハ敵ノ謀略ニ對スル備ヲ完カラシメムトシ
タコトデアリマス、次ニ海軍軍法會議法中
改正法律案ニ付キマシテ、提案ノ理由ヲ申
上ゲマズ、本改正法律案ノ主ナル點ハ、三
點デゴザイマス、第一ハ海軍軍法會議ノ職
員中海軍法務官ヲ武官ニ改メ、是ガ關係法
規ヲ整備シタコトデアリマス、軍法會議ガ
特設裁判所トシテ設置セラレテ居リマスノ
ハ、一ニ司法權ノ運用ニ付、軍紀ノ維持振肅
ト云フ軍結帥上ノ要求ヲ全面的ニ反映セシ
メンガ爲デアリマス、之ガ爲ニハ現行制度
ノ下ニ於テモ海軍大臣、鎭守府司令長官、
警備府司令長官、艦隊司令長官等ヲシテ、
軍法會議ノ長官トシテ八訴及搜査ノ指揮ニ
當ラシムル外、審判機關タル軍法會議ノ裁
判官ニハ將校タル判士ラ以テ其ノ大部分ヲ
占メシムル等ノ方法ヲ講ジテ居リマスガ、
眞ニ軍裁判ノ本質ヲ發揮スル爲ニハ全裁
判官ガ軍締師ノ要求ヲ最モ理解セル軍人タ
ルコトガ一層滴切デアリマシテ、是ガ軍法
會議トシテ最モ適當ナル制度ト認メラレル
ノデアリマス、沿革ニ徵シマスルニ、現行
海軍軍法會議法ノ前身タル海軍治罪法時代
ニ·、右ノ見地ヨリ裁判官ハ將校タル判士
長判士ノミヲ以テ之ニ充テ、法律專門家
タル主理ハ助言者タルノ地位ニ立ツニ過ギ
ナカッタノデアリマス、併シナガラ軍法會議
法ノ制定ニ依リ軍司法ノ敕備サルヽニ伴
ヒ、裁判官中ニ專門法官ヲ加フルコトガ必
要トナルニ至リマシタノデ、專門法官ニシ
テ文官タル海軍法務官ヲ裁判官中ニ加フル
理行制度ガ出來タ譯デアリマスガ、此ノ文
官裁判官制度ニテハ尙十分ナラザルヤノ感
ガアリマスノデ、今次大東亞戰爭ヲ遂行ス
ルニ當リマシテハ、軍司法ヲシテ更ニ其ノ
本質ニ徵シ締帥ノ要求ニ卽應シ間然スル所
ナカラシムル爲、文官タル海軍法務官ヲ廢
シ專門法律家ニシテ將校相當官タル法務科
士官ヲ以テ之ニ代ラシムルコトトシ、之二
伴フ所要ノ規定ヲ〓備シタ次第デアリマス、
第二ハ、要港部令ノ改正、商港警備府令、
鎭守府及警備府ノ警備區ノ制定等、諸制度
ノ改變ニ伴ヒマシテ、海軍軍法會議法中改
正スベキ箇處ガゴザイマスノデ、所要ノ改
正ヲ加ヘタコトデアリマス、第三ハ、大東
亞戰爭ノ進展ニ伴ヒマシテ、戰地又ハ占領
地中、海軍司法警察官タル憲兵ノナイ場合
モ考ヘラレマスノデ、海軍大臣ハ海軍ノ武
官又ハ文官中ヨリ海軍司法警察官トシテ勤
務スル者ヲ指定シ得ル規定ヲ設ケ、以テ斯
カル不便ヲ除去セムトシタコトデアリマス、
以上申述ベマシタ理由ニ依リマシテ、本改
正法律案ヲ提出致シマシタ次第デゴザイマ
ス、何卒御審議ノ上速カニ御協賛ヲ與ヘラ
レムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=65
-
066・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今議題トナリマシタ
海軍刑法中改正法律案外一件ハ、陸軍刑法
中改正法律案外一件ノ特別委員ニ併託セラ
レムコトノ動議ヲ提出致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=66
-
067・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=67
-
068・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 戶澤子爵ノ
耐議ニ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=68
-
069・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐大行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=69
-
070・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 日程第三十
七、民法中改正法律案、日程第三十九、不
動產登記法中改正法律案、日程第四十一、
戰時民声特別法案、日程第四十三、戰時刑
車特別法案、政府提出、第一讀會、是等ノ
四案ヲ一括シテ議題ト爲スコトニ御異議ゴ
ザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=70
-
071・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス、岩村司法大臣
民法中改正法律案
右
勅旨ヲ奉ジ帝國議會ニ提出ス
昭和十七年一月十八日
內閣〓、理大臣東條英機
司法大臣岩村通世
民法中改正法律案
民法中左ノ通改正ス
目錄中「第二款庶子及ヒ「私生子」ヲ「第
二款嫡出ニ非サル子」ニ改ム
第七百三十五條家族ノ子ニシテ嫡出ニ
非サル者ハ戶主ノ同意アルニ非サレハ
其家ニ入ルコトヲ得ス
嫡出ニ非サル子カ父ノ家ニ入ルコトヲ
得サルトキハ母ノ家ニ入ル母ノ家ニ入
ルコトヲ得サルトキハ一家ヲ創立ス
第四編第四章第一節中「第二款庶子及
ヒ私生子」ヲ「第二款嫡出ニ非サル子」
二次大
第八百二十七條第一項中「私生子」ヲ「嫡
出ニ非サル子」ニ、同條第二項中「私生子」
ヲ「子」ニ改ム
第八百二十八條及第八百二十九條第一項
中「私生子ノ」ヲ削ル
第八百三十條中「私生子」ヲ「子」ニ改ム
第八百三十五條子、其直系卑屬又ハ此
等ノ者ノ法定代理人ハ認知ノ訴ヲ提起
スルコトヲ得但父又ハ母ノ死亡ノ日ヨ
リ三年ヲ經過シタルトキハ此限ニ在ラ
ス
第八百三十六條第二項中「私生子」ヲ「子」
ご依頼人
第九百七十條第一項第四號ヲ左ノ如ク改
ム
四親等ノ同シキ者ノ間ニ在リテハ女
ト雖モ嫡出子及ヒ庶子ヲ先ニス
第九百七十四條ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ規定ノ適用ニ付テハ胎兒ハ旣ニ
生マレタルモノト看做ス但死體ニテ生
マレタルトキハ此限ニ在ラス
第九百九十五條ニ左ノ一項ヲ加フ
第九百七十四條第二項ノ規定ハ前項ノ
場合ニ之ヲ準用ス
第千四條中「庶子及ヒ私生子」ヲ「嫡出ニ
非サル子」ニ改ム
附則
第一條本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之
ヲ定ム
第二條第八百三十五條ノ改正規定ハ父
又ハ母ガ本法施行前ニ死亡シタル場合
ニモ亦之ヲ適用ス
第三條第九百七十四條第二項及第九百
九十五條第二項ノ改正規定ハ相續人タ
ルベキ者ガ本法施行前ニ死亡シ又ハ相
續權ヲ失ヒタル場合ニモ亦之ヲ適用ス
但シ本法施行前相續ガ開始シタル場合
ハ此ノ限ニ在ラズ
第四條戶籍法中左ノ通改正ス
第六十九條第二項第二號中「私生子」ヲ
「嫡出子」ニ改ム
第七十二條第二項中「私生子出生ノ屆
出」ヲ「嫡出子又ハ庶子ニ非サル子ノ出
生ノ屆出」ニ改ム
第八十一條中「私生子認知」ヲ「認知」ニ
改ム
第五條人事訴訟手續法中左ノ通改正ス
第二十九條ノ二子ノ認知ノ訴ニ於テ
ハ父又ハ母ヲ以テ相手方トス
第三十九條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加
フ
第二條第三項ノ規定ハ子ノ認知ノ訴
ニ之ヲ準用ス
第六條法例中左ノ通改正ス
第十八條第一項中「私生子認知」ヲ子
ノ認知」ニ改ム
不動產登記法中改正法律案
右
勅旨ヲ奉ジ帝國議會ニ提出ス
昭和十七年一月十八日
內閣總理大臣東條英機
司法大臣岩村通世
不動產登記法中改正法律案
不動產登記法中左ノ通改正ス
第十一條ニ左ノ一項ヲ加フ
登記所ハ建物ニ付キ所有權ノ保存、移
轉若クハ登記名義人ノ表示ノ變更ノ登
記ヲ爲シタルトキハ遲滯ナク其旨ヲ
家屋臺帳所管廳ニ通知スルコトヲ要
ス
第三十七條第二項中「前項」ヲ「第一項」ニ
改メ同條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
前項ノ申請書ニハ家屋番號ヲ記載スル
コトヲ要ス
第九十一條第二項中「敷地ノ番號」ノ下
ニ「又ハ家屋番號」ヲ加フ
第九十二條中「敷地ノ新番號」ノ下ニ「若
クハ新家屋番號」ヲ、「且」ノ下ニ「建物ノ
番號ノ變更ノ登記ヲ申請スル場合ヲ除ク
外家屋臺、帳謄本ヲ添附シ尙」ヲ加フ
第百條中「敷地ノ番號」ノ下ニ「若クハ家
屋番號」ヲ加フ
第百條ノ二第一項中「土地ノ番號」ノ下ニ
「又ハ家屋番號」ヲ、「土地臺帳所管廳」
ノ下ニ「又ハ家屋臺帳所管廳」ヲ加フ
第百六條未登記ノ建物所有權ノ登記ハ
左ニ揭ケタル者ヨリ之ヲ申請スルコト
ヲ得
-家屋臺帳謄本ニ依リ家屋臺帳ニ所
有者トシテ登錄セラレタルコトヲ證
スル者
二判決ニ依リ自己ノ所有權ヲ證スル
者
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行前ニ登記シタル建物(昭和十六
年十二月三十一日以前ニ滅失シタルモノ
ヲ除ク)ニ付本法施行後最初ニ登記ノ申
請ヲ爲ス者ハ申請書ニ家屋臺帳謄本ヲ添
附スルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ登記
官吏ハ登記用紙中表示欄ニ家屋番號ヲ記
載スルコトヲ要ス
家屋稅ヲ課セザル建物ニ關スル登記ニ付
テハ當分ノ內仍從前ノ例テ依ル
前項ノ建物ガ家屋稅ヲ課スル建物ト爲リ
タルトキハ家屋豪帳所管廳ハ遲滯ナク其
ノ建物ノ所在、家屋番號、種類、構造、床面
積竝ニ所有者ノ住所及氏名又ハ名稱ヲ登
記所ニ通知スルコトヲ要ス此ノ場合ニ於
テハ登記官吏ハ登記用紙中表示欄ニ家屋
番號ヲ記載スルコトヲ要ス
家屋稅法ヲ施行セザル地域ニ在ル建物ニ
關スル登記ニ付テハ仍從前ノ例ニ依ル
戰時民事特別法案
右
勅旨ヲ奉ジ帝國議會ニ提出ス
昭和十七年一月十八日
內閣總理大臣東條英機
司法大臣岩村通世
戰時民事特別法案
戰時民事特別法
第一章通則
第一條戰時ニ於ケル民事ニ關スル特例
ハ本法ノ定ムル所ニ依ル
第二條戰爭ニ起因スル避クベカラザル
障碍ニ因リ期間ヲ遵守スルコト能ハザ
ル場合ニ於テハ其ノ期間ヲ伸長ス但シ
他ノ法令ニ定アルモノニ付テハ其ノ定
二粒四
前項ノ規定ニ依リテ伸長セラレタル期
間ハ障碍ノ止ミタル時ヨリ一週間ノ經
過ニ依リテ滿了ス
第三條裁判所ガ官報及新聞紙ヲ以テ爲
スベキ公告ハ官報ノミヲ以テ之ヲ爲ス
第二章民事訴訟
第四條裁判所適當ト認ムルトキハ土地
ノ管轄ニ關スル規定ニ拘ラズ申立ニ依
リ又ハ職權ヲ以テ訴訟ノ全部若ハ一部
ヲ他ノ裁判所ニ移送シ又ハ自ラ裁判ヲ
爲スコトヲ得
前項ノ規定ハ訴ニ付專屬管轄ノ定アル
場合ニハ之ヲ適用セズ
第五條裁判所構成法戰時特例第三條第
一項ノ訴訟ノ請求ガ他ノ請求ト併セ一
ノ訴ヲ以テ提起セラレタル場合ニ於テ
ハ裁判所ハ口頭辯論ヲ分離スルコトヲ
要ス
第六條裁判所特ニ必要アリト認ムルト
キハ攻擊又ハ防禦ノ方法ヲ提出スベキ
期間ヲ定ムルコトヲ得
前項ノ期間經過後ニ於テハ攻擊又ハ防
禦ノ方法ハ裁判所ノ許可ヲ受クルニ非
ザレバ口頭辯論ニ於テ之ヲ主張スルコ
トヲ得ズ
第一審ニ於テ前項ノ規定ニ依リテ主張
法人數錢所ノ字子字號可充滿火焰之戰防空之防
訴審ニ於テ之ヲ主張スルコトヲ得ズ
第七條裁判所ハ機密ノ保持其ノ他公益
上ノ理由ニ依リ訴訟記錄ノ膽寫又ハ其
ノ謄本若ハ抄本ノ交付ヲ相當ナラズト
認ムルトキハ之ヲ禁止スルコトヲ得
第八條期日ニ於ケル呼出ハ民事訴訟法
第百五十四條ニ定ムル方法以外ノ相當
ト認ムル方法ニ依リテ之ヲ爲スコトヲ
得此ノ場合ニ於テハ期日ニ出頭セザル
當事者、證人又ハ鑑定人ニ對シ法律上
ノ制裁其ノ他期日ノ懈怠ニ依ル不利益
ヲ歸スルコトヲ得ズ
第九條裁判所相當ト認ムルトキハ證人
又ハ鑑定人ノ訊問ニ代へ書面ノ提出ヲ
爲サシムルコトヲ得
第十條民事訴訟法第三百五十九條ノ規
定ハ裁判所構成法戰時特例第三條第一
項ノ判決ニハ之ヲ適用セズ
第十一條債務者ガ戰爭ノ影響ニ因リ債
務ヲ履行スルコト困難ナル場合ニ於テ
債務者ガ誠實ニシテ債務履行ノ意思ア
リ且債權者ノ經濟ニ甚シキ影響ヲ及ボ
サザルモノト認ムベキ顯著ナル事由ア
ルトキハ裁判所ハ債務者ノ申立ニ依リ
擔保ヲ供セシメ又ハ供セシメズシテ强
制執行ノ一時ノ停止又ハ旣ニ爲シタル
執行處分ノ取消ヲ命ズルコトヲ得
民事訴訟法第五百七十條ノ二第二項及
第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用
ス
第三章破產及和議
第十二條破產ノ原因タル事實ガ戰爭ノ
影響ニ因リテ生ジタル場合ニ於テ債務
者ガ誠實ニシテ債務履行ノ意思アリ且
債權者一般ノ利益ヲ甚シク害セズト認
ムベキ顯著ナル事由アルトキハ裁判所
ハ破產ノ宣告前ニ限リ債務者ノ申立ニ
依リ破產手續ヲ中止スルコトヲ得
民事訴訟法第五百七十條ノ二第二項ノ
規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十三條强制和議ノ條件ガ各破產債權
者ニ付平等ナラザルトキト雖モ裁判所
ハ債權ノ額其ノ他一切ノ事情ヲ斟酌シ
債權者間ニ差等ヲ設クルモ衡平ヲ害セ
ザルモノト認ムルトキハ强制和議認可
ノ決定ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ハ和議法ニ依ル和議開始ノ
決定及和議認可ノ決定ニ之ヲ準用ス
第四章調停
第十四條民事ニ關シ紛爭ヲ生ジタルト
キハ當事者ハ相手方ノ住所、居所、營
業所若ハ事務所ノ所在地ヲ管轄スル區
裁判所又ハ當事者ノ合意ニ依リテ定ム
ル地方裁判所若ハ區裁判所ニ調停ノ申
立ヲ爲スコトヲ得但シ他ノ法律ニ定ア
ルモノニ付テハ其ノ定ニ從フ
第十五條裁判所其ノ管轄ニ屬セザル事
件ニ付申立ヲ受ケタルトキハ決定ヲ以
テ事件ヲ管轄裁判所ニ移送スルコトヲ
要ス但シ事件ノ處理上適當ト認ムルト
キハ之ヲ他ノ地方裁判所若ハ區裁判所
ニ移送シ又ハ自ラ處理スルコトヲ妨ゲ
ズ
裁判所其ノ管轄ニ屬スル事件ニ付申立
ヲ受ケタルトキト雖モ事件ノ處理上適
當ト認ムルトキハ決定ヲ以テ之ヲ他ノ
地方裁判所又ハ區裁判所ニ移送スルコ
トヲ得
前二項ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツ
ルコトヲ得ズ
第十六條受訴裁判所適當ト認ムルトキ
ハ事件ヲ調停ニ付シ自ラ調停ニ依リテ
之ヲ處理スルコトヲ得此ノ場合ニ於テ
調停主任タル判事ハ受訴裁判所之ヲ指
定ス
第十七條調停ハ特ニ必要アリト認ムル
トキハ適當ノ場所ニ於テ之ヲ爲スコト
ヲ得
第十八條借地借家調停法第二條、第四
條ノ二、第六條、第八條乃至第二十三
條第二十六條乃至第三十一條及第三
十二條第一項、金錢債務臨時調停法第
五條乃至第十條竝ニ人事調停法第六條
及第十條ノ規定ハ第十四條ノ調停ニ之
ヲ準用ス
第十九條第十六條及第十七條ノ規定ハ
他ノ法律ニ依ル調停ニ之ヲ準用ス
金錢債務臨時調停法第七條乃至第十條
ノ規定ハ借地借家調停法及商事調停法
ニ依ル調停ニ之ヲ準用ス
人事調停法第六條及第十條ノ規定ハ借
地借家調停法、小作調停法(農地調整法
第十三條ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)、
商事調停法及金錢債務臨時調停法ニ依
ル調停ニ之ヲ準用ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五條及第十條ノ規定ハ本法施行前裁判
所ノ受理シタル訴訟ニ付テハ之ヲ適用セ
ズ
戰時終了ノ際ニ於テ必要ナル經過規定ハ
勅令ヲ以テ之ヲ定ム
戰時刑事特別法案
右
勅旨ヲ奉ジ帝國議會ニ提出ス
昭和十七年一月十八日
內閣總理大臣兼東條英機
陸軍大臣
司法大臣岩村通世
海軍大臣嶋田繁太郞
戰時刑事特別法案
戰時刑事特別法
第一章罪
第一條戰時ニ際シ燈火管制中又ハ敵襲
ノ危險其ノ他人心ニ動搖ヲ生ゼシムベ
キ狀態アル場合ニ於テ火ヲ放チテ現ニ
人ノ住居ニ使用シ又ハ人ノ現在スル建
造物、汽車、電車、自動車、艦船、航空機
若ハ鑛坑ヲ燒燬シタル者ハ死刑又ハ無
期若ハ十年以上ノ懲役ニ處ス
戰時ニ際シ燈火管制中又ハ敵襲ノ危險
其ノ他人心ニ動搖ヲ生ゼシムベキ狀態
アル場合ニ於テ火ヲ放チテ現ニ人ノ住
居ニ使用セズ又ハ人ノ現在セザル建造
物、汽車、電車、自動車、艦船、航空機若
ハ鑛坑ヲ燒燬シタル者ハ無期又ハ三年
以上ノ懲役ニ處ス
前項ノ物自己ノ所有ニ係ルトキハ一年
以上ノ有期懲役ニ處ス但シ公共ノ危險
ヲ生ゼザルトキハ之ヲ罰セズ
第一項及第二項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第一項又ハ第二項ノ罪ヲ犯ス目的ヲ以
テ其ノ豫備又ハ通謀ヲ爲シタル者ハ十
年以下ノ懲役ニ處ス
第二條戰時ニ際シ燈火管制中又ハ敵襲
ノ危險其ノ他人心ニ動搖ヲ生ゼシムベ
キ狀態アル場合ニ於テ火ヲ放チテ前條
第一項及第二項ニ記載シタル以外ノ物
ヲ燒燬シ因テ公共ノ危險ヲ生ゼシメタ
ル者ハ一年以上ノ有期懲役ニ處ス
前項ノ物自己ノ所有ニ係ルトキハ十年
以下ノ懲役ニ處ス
第三條第一條第二項及前條第一項ニ記
載シタル物自己ノ所有ニ係ルトキト雖
モ差押ヲ受ケ、物權ヲ負擔シ又ハ賃貸
シ若ハ保險ニ付シタルモノヲ燒燬シタ
ルトキハ他人ノ物ヲ燒燬シタル者ノ例
(コ)
第四條戰時ニ際シ燈火管制中又ハ敵襲
ノ危險其ノ他人心ニ動搖ヲ生ゼシムベ
キ狀態アル場合ニ於テ刑法第百七十六
條若ハ同條ノ例ニ依ル同法第百七十八
條ノ罪又ハ此等ニ關スル『注位百七十
九條ノ罪ヲ犯シタル者ハ三年以上ノ有
期懲役ニ處シ同法第百七十七條若ハ同
條ノ例ニ依ル同法第百七十八條ノ罪又
ハ此等ニ關スル同法第百七十九條ノ罪
ヲ犯シタル者ハ無期又ハ七年以上ノ懲
役ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ傷害ニ致シタ
ル者ハ死刑又ハ無期若ハ十年以上ノ懲
役ニ處シ死ニ致シタル者ハ死刑ニ處ス
刑法第百八十條ノ規定ハ第一項ノ罪ニ
付テハ之ヲ適用セズ
第五條戰時ニ際シ燈火管制中又ハ敵襲
ノ危險其ノ他人心ニ動搖ヲ生ゼシムベ
キ狀態アル場合ニ於テ刑法第二百三十
五條、第二百三十六條、第二百三十八條
若ハ第二百三十九條ノ罪又ハ此等ニ關
スル同法第二百四十三條ノ罪ヲ犯シタ
ル者竊盗ヲ以テ論ズベキトキハ無期又
ハ三年以上ノ懲役、强盜ヲ以テ論ズベ
キトキハ死刑又ハ無期若ハ十年以上ノ
懲役ニ處ス
戰時ニ際シ燈火管制中又ハ敵襲ノ危險
其ノ他人心ニ動搖ヲ生ゼシムベキ狀態
アル場合ニ於テ刑法第二百四十條前段
若ハ第二百四十一條前段ノ罪又ハ此等
ニ關スル同法第二百四十三條ノ罪ヲ犯
シタル者ハ死刑又ハ無期黴役ニ處シ同
法第二百四十條後段若ハ第二百四十一
條後段ノ罪又ハ此等ニ關スル同法第二
百四十三條ノ罪ヲ犯シタル者ハ死刑ニ
處ス
第一項ノ强盜ヲ爲ス目的ヲ以テ其ノ豫
備又ハ通謀ヲ爲シタル者ハ一年以上十
年以下ノ徵役ニ處ス
第六條戰時ニ際シ燈火管制中又ハ敵襲
ノ危險其ノ他人心ニ動搖ヲ生ゼシムベ
キ狀態アル場合ニ於テ刑法第二百四十
九條ノ罪又ハ之ニ關スル同法第二百五
十條ノ罪ヲ犯シタル者ハ一一年以上ノ有
期懲役ニ處ス
第七條戰時ニ際シ國政ヲ變亂スルコト
ヲ目的トシテ人ヲ殺シタル者ハ死刑又
ハ無期ノ懲役若ハ禁錮ニ處ス
前項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第一項ノ罪ヲ犯ス目的ヲ以テ其ノ豫備
又ハ陰謀ヲ爲シタル者ハ一一年以上ノ有
期ノ徵役又ハ禁錮ニ處ス
第一項ノ罪ヲ犯スコトヲ〓唆シ又ハ幫
助シタル者ハ被〓唆者又ハ被幫助者其
ノ實行ヲ爲スニ至ラザルトキハ二年以
上ノ有期ノ徵役又ハ禁錮ニ處ス
第一項ノ罪ヲ犯サシムル爲他人ヲ煽動
シタル者ノ罰亦前項ニ同ジ
第三項乃至前項ノ罪ヲ犯シタル者自首
シタルトキハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除ス
第八條戰時ニ際シ防空ノ實施ニ從事ス
ル公務員ノ當該職務ヲ執行スルニ當リ
之ニ對シテ暴行又ハ脅迫ヲ加ヘタル者
ハ七年以下ノ懲役ニ處ス
第九條戰時ニ際シ刑法第百六條ノ罪ヲ
犯シタル者ハ左ノ區別ニ從テ處斷ス
首魁ハ死刑又ハ無期若ハ三年以上
ノ懲役ニ處ス
二他人ヲ指揮シ又ハ他人ニ率先シテ
勢ヲ助ケタル者ハ一年以上ノ有期懲
役ニ處ス
三附和隨行シタル者ハ三年以下ノ懲
役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
戰時ニ際シ暴行又ハ脅迫ヲ爲ス爲多衆
聚合シ當該公務員ヨリ解散ノ命令ヲ受
クルモ仍解散セザルトキハ首魁ハ十年
以下ノ懲役ニ處シ其ノ他ノ者ハ三年以
下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第十條戰時ニ際シ公共ノ防空ノ爲ノ建
造物、工作物其ノ他ノ設備ヲ損壞シ又ハ
其ノ他ノ方法ヲ以テ公共ノ防空ノ妨害
ヲ生ゼシメタル者ハ死刑又ハ無期若ハ
三年以上ノ懲役ニ處ス
戰時ニ際シ氣象ノ觀測ノ爲ノ建造物、
工作物其ノ他ノ設備ヲ損壞シ又ハ其ノ
他ノ方法ヲ以テ氣象ノ觀測ノ妨害ヲ生
ゼシメタル者ハ十年以下ノ懲役ニ處ス
第十一條戰時ニ際シ郵便又ハ電氣通信
ノ用ニ供スル建造物、工作物其ノ他ノ
設備ヲ損壞シ又ハ其ノ他ノ方法ヲ以テ
公共ノ通信ノ妨害ヲ生ゼシメタル者ハ
無期又ハ一年以上ノ懲役ニ處ス
第十二條戰時ニ際シ瓦斯又ハ電氣ノ用
ニ供スル建造物、工作物其ノ他ノ設備
ヲ損壞シ又ハ其ノ他ノ方法ヲ以テ瓦斯
又ハ電氣ノ公共ノ利用ノ妨害ヲ生ゼシ
メタル者ハ無期又ハ一年以上ノ懲役ニ
處ス
第十三條戰時ニ際シ國防上重要ナル生
產事業ノ設備其ノ他當該生產ノ用ニ供
スル物ヲ損壞若ハ隱匿シ又ハ其ノ他ノ
方法ヲ以テ其ノ物ノ效用ヲ害シ當該事
業ノ遂行ノ妨害ヲ生ゼシメタル者ハ無
期又ハ一年以上ノ懲役ニ處ス
第十四條前四條ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第十五條戰時ニ際シ業務上不正ノ利益
ヲ得ル目的ヲ以テ生活必需品ノ買占又
ハ賣惜ヲ爲シタル者ハ五年以下ノ懲役
又ハ一萬圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者ニハ情狀ニ因リ
懲役及罰金ヲ併科スルコトヲ得
第十六條戰時ニ際シ刑法第百二十四條
第一項ノ罪ヲ犯シタル者ハ一年以上ノ
有期懲役ニ處ス因テ人ヲ死傷ニ致シタ
ル者ハ死刑又ハ無期若ハ三年以上ノ懲
役ニ處ス
戰時ニ際シ刑法第百二十五條ノ罪ヲ犯
シタル者ハ無期又ハ五年以上ノ懲役ニ
處ス
戰時ニ際シ刑法第百二十六條第一項又
ハ第二項ノ罪ヲ犯シタル者ハ死刑又ハ
無期若ハ七年以上ノ懲役ニ處ス因テ人
ヲ死ニ致シタル者ハ死刑コ處ス
第二項ノ罪ヲ犯シ因テ刑法第百二十七
條ニ定ムル結果ヲ生ゼシメタル者亦前
項ノ例ニ同ジ
第一項前段、第二項及第三項前段ノ未
遂罪ハ之ヲ罰ス
第十七條戰時ニ際シ刑法第百三十條ノ
罪ヲ犯シタル者ハ五年以下ノ懲役又ハ
千圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第十八條戰時ニ際シ刑法第百四十三條
又ハ第百四十四條ノ罪ヲ犯シタル者ハ
一年以上ノ有期懲役ニ處ス因テ人ヲ死
傷ニ致シタル者ハ死刑又ハ無期若ハ三
年以上ノ懲役ニ處ス
戰時ニ際シ刑法第百四十六條前段ノ罪
ヲ犯シタル者ハ死刑又ハ無期若ハ七年
以上ノ懲役ニ處ス因テ人ヲ死ニ致シタ
ル者ハ死刑ニ處ス
戰時ニ際シ刑法第百四十七條ノ罪ヲ犯
シタル者ハ無期又ハ三年以上ノ懲役ニ
處ス
第一項前段、第二項前段及前項ノ未遂
罪ハ之ヲ罰ス。
第二項前段ノ罪ヲ犯ス目的ヲ以テ其ノ
豫備又ハ通謀ヲ爲シタル者ハ十年以下
ノ懲役ニ處ス
第二章刑事手續
第十九條戰時ニ於ケル刑事手續ニ關ス
ル特例ハ本章ノ定ムル所ニ依ル但シ第
二十條ノ規定ハ裁判所構成法戰時特例
第四條第一項ニ揭グル罪竝ニ刑法第七
十三條、第七十五條及第二編第一一章ノ
罪ニ關スル事件ニ限リ之ヲ適用ス
第二十條辯護人ノ數ハ被告人一人ニ付
二人ヲ超ユルコトヲ得ズ
辯護人ノ選任ハ最初ニ定メタル公判期
日ニ係ル召喚狀ノ送達ヲ受ケタル日ヨ
リ十日ヲ經過シタルトキハ之ヲ爲スコ
トヲ得ズ但シ已ムコトヲ得ザル事由ア
ル場合ニ於テ裁判所ノ許可ヲ受ケタル
トキハ此ノ限ニ在ラズ
第二十一條辯護人ハ訴訟ニ關スル書類ノ
謄寫ヲ爲サントスルトキハ裁判長又ハ
豫審判事ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス
辯護人ノ訴訟ニ關スル書類ノ閱覽ハ裁
判長又ハ豫審判事ノ指定シタル場所ニ
於テ之ヲ爲スベシ
第二十二條裁判書又ハ裁判ヲ記載シタ
ル調書ノ謄本又ハ抄本ハ機密ノ保持其
ノ他公益上ノ理由ニ依リ裁判所ニ於テ
之ヲ被〓人其ノ他訴訟關係人ニ交付ス
ルコトヲ相當ナラズト認ムルトキハ之
ヲ交付セザルコトヲ得
第二十三條豫審判事ハ商工會議所其ノ
他ノ團體ニ對シ必要ナル事項ノ報〓ヲ
求ムルコトヲ得
裁判所ハ公判期日前前項ノ團體ニ對シ必
要ナル事項ノ報告ヲ求ムルコトヲ得
刑事訴訟法第三百四十二條ノ規定ハ前
項ノ規定ニ依リ集取シタルモノニ付之
ヲ準用ス
第二十四條刑事訴訟法第三百三十四條
ノ規定ハ第五條第一項竝ニ昭和五年法
律第九號第二條及第三條ノ竊盜ノ罪ニ
關スル事件ニ付テハ之ヲ適用セズ
第二十五條地方裁判所ノ事件ト雖モ刑
事訴訟法第三百四十三條第一項ニ規定
スル制限ニ依ルコトヲ要セズ
第二十六條有罪ノ言渡ヲ爲スニ當リ證
據ニ依リテ罪ト爲ルベキ事實ヲ認メタ
ル理由ヲ說明シ法令ノ適用ヲ示スニハ
證據ノ標目及法令ヲ揭グルヲ以テ足ル
第二十七條國防保安法第三十四條第二
項ノ規定ニ依リ上〓裁判所原判決ヲ破
毀スル場合ニ於テ其ノ事件裁判所構成
法戰時特例第四條第一項第二號ニ揭グ
ル罪ニ關スルモノナルトキハ檢事ノ意
見ヲ聽キ決定ヲ以テ事實ノ審理ヲ爲ス
ベキ旨ヲ言渡スベシ
裁判所構成法戰時特例第四條第一項第
二號ニ揭グル罪ヲ犯シタルモノト認メ
タル第一審判決ニ對シ控訴院ニ上告ア
リタル場合ニ於テ其ノ罪ガ外國ト通謀
シ又ハ外國ニ利益ヲ與フル目的ヲ以テ
犯サレタルモノナルコトヲ疑フニ足ル
ベキ顯著ナル事由アルモノト認ムルト
キハ控訴院ハ決定ヲ以テ事件ヲ大審院
ニ移送スベシ此ノ場合ニ於テハ事件ハ
上〓ヲ爲シタル時ヨリ大審院ニ繫屬シ
タルモノト看做ス
第二十八條上告裁判所訴訟記錄ノ送付
ヲ受ケタルトキハ速ニ其ノ旨ヲ上告申
立人及對手人ニ通知スベシ
上〓申立人ハ前項ノ通知ヲ受ケタル日
ヨリ三十日以內ニ上告趣意書ヲ上告裁
判所ニ差出スベシ
上〓ノ對手人ハ第一項ノ通知ヲ受ケタ
ル日ヨリ三十日以內ニ附帶上告ヲ爲ス
コトヲ得
刑事訴訟法第四百二十一一條、第四百二
十三條及第四百二十四條第一項ノ規定
ハ之ヲ適用セズ
第二十九條上告裁判所上告趣意書其ノ
他ノ書類ニ依リ上〓ノ理由ナキコト明
白ナリト認ムルトキハ檢事ノ意見ヲ聽
キ辯論ヲ經ズシテ判決ヲ以テ上〓ヲ棄
却スルコトヲ得
第三十條裁判所構成法戰時特例第四
條第一項ニ揭グル罪ニ該ル事件(陪審
法第四條ニ規定スルモノヲ除ク)ハ之
ヲ陪審ノ評議ニ付セズ
第三十一條刑事手續ニ付テハ別段ノ規
定アル場合ヲ除クノ外一般ノ規定ノ適
用アルモノトス
第三十二條第二十一條乃至第二十四
條、第二十六條及第三十一條ノ規定ハ軍
法會議ノ刑事手續ニ付之ヲ準用ス此ノ
場合ニ於テ刑事訴訟法第三百四十二條
トアルハ陸軍軍法會議法第三百八十八
條又ハ海軍軍法會議法第三百九十條ト
シ刑事訴訟法第三百三十四條トアルハ
陸軍軍法會議法第三百六十七條又ハ海
軍軍法會議法第三百六十九條トス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
昭和十六年法律第九十八號ハ之ヲ廢止ス
第二十條及第二十四條乃至第三十條第
二十四條及第二十六條ニ付テハ第三十二
條ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ規定ハ
本法施行前公訴ヲ提起シタル事件ニ付テ
ハ之ヲ適用セズ
戰時終了ノ際ニ於テ必要ナル經過規定ハ
勅令ヲ以テ之ヲ定ム
昭和十六年法律第九十八號ニ違反シタル
者ノ處罰ニ付テハ仍舊法ニ依ル
戰時刑事特別法案中議院法第三十條ニ依
リ別紙ノ通修正ス
昭和十七年一月二十二日
內閣總理大臣兼東條英機
陸軍大臣
司法大臣岩村通世
海軍大臣嶋田繁太郞
第三十條ヲ削リ第三十一條ヲ第三十條ト
ス
第三十二條ヲ第三十一條トシ同條中「第
三十一條」ヲ「前條」ニ改ム
附則第三項中「第三十條」ヲ「第二十九條」
ニ、「第三十二條」ヲ「第三十一條」ニ改ム
〔國務大臣岩村通世君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=71
-
072・岩村通世
○國務大臣(岩村通世君) 先ヅ第一ニ只今
議題トナリマシタ民法中改正法律案ニ付キ
マシテ、提案ノ理由ヲ御說明致シマス、本
案ハ私生子ノ名稱ヲ廢止スルト共ニ、父又
ハ母ノ死亡後ニ於ケル裁判上ノ認知ノ道ヲ
開イテ、私生子ノ保護ヲ圖リ、且相續ニ關
スル胎兒ノ地位ヲ改善スル爲、民法及關係
法律ニ必要ナル改正ヲ加ヘムトスルモノデ
アリマス、御承知ノ如ク婚姻ニ依ラズシテ
生マレ、父ノ認知ヲ受ケザル子ハ民法上私
生子ト呼バレ、社會生活ノ上ニ於キマシテ
モ一般ニ偏見ヲ以テ冷過セラレ、之ガ爲不
幸ナ一生ヲ送ル者モ尠クナイノデアリマシ
テ私生子ノ救濟ハ多年ノ懸案トナッテ居
ルノデアリマス、之ガ對策トシテ立法上考
慮スベキ事項ハ數々アルノデアリマスガ、
就中私生子ト云フ特別ノ名稱ヲ以テ呼バレ
ルコトガ、本人ニ甚ダシイ苦痛ヲ與ヘテ居
ル實情ニ照シマシテ、先ヅ民法上此ノ名稱
ヲ廢止スルコトガ夙ニ各方面カラ要望セラ
レテ居ルノデアリマス、又現行法ニ依リマ
スト、私生子ハ父又ハ母ノ死亡シタ後ハ、
其ノ認知ヲ受ケ、法律上ノ親子トナルコト
ヲ得ナイノデアリマスガ、是モ私生子保護
ノ立場カラ見テ甚ダ遺憾ニ思ハレルノデア
リマス、殊ニ現在ノ制度ノ下ニ於キマシテ
ハ儀式ヲ擧ゲナガラ戶籍ノ屆出ヲ濟マサ
ナイ所謂內緣ノ夫婦ノ間ニ生マレマシタ子
モ、父ノ認知ナキ限リ、私生子トサレルノ
デアリマシテ、現行法ニ於テハ、父ノ死亡
後ハ認知ヲ受クルニ由ナイノデアリマスガ、
此ノ種ノ私生子ノ中ニハ、出征軍人軍屬等
ノ子デ、父ガ婚姻屆又ハ認知屆ヲスル暇
モナク應召シ、名譽ノ戰死ヲ遂ゲタ爲、嫡
出子又ハ庶子トナルコトノ出來ナイ者モ含
マレテ居ルノデアリマシテ、斯樣ナ事情ニ
鑑ミ、私生子ノ名稱ノ廢止ト共ニ、父又ハ
母ノ死亡後ニ於テモ、認知ヲ受ケル途ヲ拓
クコトガ、戰時下ニ於キマシテ特ニ緊要デ
アルト存ズルノデアリマス、次ニ民法ニ依
リマスト、家督相續人又ハ遺產相續人タル
ベキ者ガ、相續開始前ニ死亡シ、又ハ相續
權ヲ失ック場合、其ノ者ニ直系卑屬ガアレ
バ、是ガ代ッテ相續人トナルノデアリマス
ガ、相續人タルベキ者ノ死亡又ハ相續權喪
失ノ當時胎兒デアッテ、其ノ後ニ生マレタ
ル者ハ相續人ニナラヌト解釋セラレテ居ル
ノデアリマス、併シナガラ我ガ國相續制度
ノ精神ニ鑑ミマシテ、斯カル場合ニハ胎
兒タリシ直系卑屬ヲ相續人トスルノガ適當
デアリマシテ、此ノ點モ豫テ相續人ノ戰死
ノ場合ニ關聯シテ、立法上ノ措置ヲ要望セ
ラレテ居リ、速カニ之ヲ改正スル必要アリ
ト存ズルノデアリマス、以上申述べマシタ
理·由ニ依リマシテ、本案ヲ提出致シタノデ
アリマスガ、何卒十分ニ御春議ノ上本案ニ
御協賛アラムコトヲ切望致ス次第デアリマ
ス、次ニハ不動產登記法中改正法律案提出
ノ理由ヲ御說明申上ゲマス、只今上程ニナ
リマシタ不動產登記法中改正法律案ノ提
案ノ趣旨ヲ御說明申上ゲマス、曩ニ昭和
十五年七月家屋稅法ガ施行セラレ、本年
一月一日ヲ以テ全國稅務署ニ、家屋稅徵收
ノ基礎トナル家屋臺帳ガ備へ付ケラルヽ
コトトナリマシタ、之ニ依リマシテ建物
登記簿ト新タニ設ケラレタ家屋臺帳
トノ關係ハ、恰モ彼ノ土地登記簿ト土地臺
帳トノ間ノ如ク、極メテ緊密ナルモノヲ生
ズルニ至リマシタノデ、戰時下デハアリマ
スガ、不動產登記法中ノ建物登記ニ關スル
規定ノ一部ヲ、土地登記ノ規定ノ如ク改正
スルコトヲ必要トスルニ至ッタノデアリマ
ス、從來臺帳制度ニ依存スル方法ノナカッタ
建物登記ハ、臺帳ニ依存シテ居ッタ土地登記
ニ比シ、建物ニ關スル權利ノ公示力ガ幾分
薄弱ナルヲ免レナカッタノデアリマスガ、本
法中家屋番號ヲ建物登記ノ登記事項ト爲シ、
又未登記建物ノ所有權登記及旣登記建物ノ
變更登記ノ申請書ニ、家屋臺帳謄本ヲ添附
スルコトヲ要スルモノト致シマシタ今回ノ
改正規定ハ、建物登記ノ公示力ヲ補强シ、
併セテ徴稅ノ確實ヲ期スルニ、相當ナル效
果ヲ擧ゲ得ルモノト確信スル次第デアリマ
ス、何卒愼重御容議ノ上速カニ御協賛ヲ與
ヘラレムコトヲ希望致シマス、次ニハ戰時
民事特別法案提案ノ理由デゴザイマス、只
今議題トナリマシタ戰時民事特別法案ニ付
キマシテ提案ノ理由ヲ御說明申上ゲマス、
戰時ニ際シマシテハ、國ヲ擧ゲテ外敵ニ當
ラナケレバナラナイコトハ申上ゲル迄モナ
イノデゴザイマス、從シテ私權關係ニ付テ
紛爭ヲ生ジマシタ場合ハ、常ニモ增シテ敏
速貝妥當ニ解決ヲ致サナケレバナラナイト
存ジマス、其ノ見地カラ考ヘマスト、戰時
ニ於キマシテハ平時ト異ナル應急臨時ノ特
別規定ヲ設ケルコトヲ必要ト致スノデゴザ
イマス、仍テ本法案ニ於キマシテハ、戰爭
ニ起因スル障碍其ノ他ノ影響ヲ考慮致シマ
シテ、訴訟上ノ期間等ニ相當ノ餘裕ヲ設ケ、
一定ノ條件ノ下ニ强制執行ノ一時ノ停止、
執行處分ノ取消又ハ破產ノ宣告ノ猶豫、和
議ノ條件ノ相當ナル緩和等ヲ爲シ得ルモノ
トシ、尙訴訟手續ノ圓滑ナル進行ヲ圖ル爲、
管轄ノ規定ヲ緩和シ、攻擊防禦ノ方法ヲ提
出スベキ期間ヲ定メ得ルモノトシ、證人、
鑑定人ノ訊問ニ代ル書面ノ提出、簡易ナル
呼出ノ方法ヲ認メマス外ニ、調停制度ヲ擴
張シ且其ノ運用ノ適正ヲ期セムトスルモノ
デゴザイマス、尙之ニ加ヘマシテ防諜其ノ
他公益上ノ必要アルトキハ訴訟記錄ノ謄寫
等ヲ制限シ、用紙ノ關係カラ裁判所ノ爲ス
ベキ公告ハ官報ノミニ依ルモノトシ、裁判
所構成法戰時特例ノ制定ニ伴フ手續上ノ規
定ヲ設ケムトスルモノデゴザイマシテ、以
上何レモ現時ノ體制下痛切ノ必要ヲ感ズル
事項ヲ揭ゲタモノデゴザイマス、十分御審
議ノ上本案ニ對シ御協賛ヲ與ヘラレムコト
ヲ切望致ス次第デアリマス、最後ニ戰時刑
事特別法案提案ノ理由ヲ御說明致シマス、
只今上程ニ相成リマシタ戰時刑事特別法案
ヲ提出スルニ至リマシタ理由ヲ御說明申上
ゲマス、御承知ノ通り大東亞戰爭ハ國家總
力戰デアリマス、而シテ其ノ目的ノ完遂ヲ
期シマスル爲ニハ、國內ノ治安ヲ確保シ、
國民ヲシテ安ンジテ職域奉公ノ誠ヲ盡サシ
メマスト共ニ、國防上有害ナル犯罪ニ付キ
マシテモ、之ガ豫防及鎭壓ノ爲有效適切ナ
ル方策ヲ講ジマスコトガ、此ノ際最モ緊要
ナルコトト存ズルノデアリマス、然ルニ現
行ノ刑法及刑事訴訟法ハ、專ラ平時ニ於ケ
ル犯罪ト刑事手續トヲ規定シテ居リマスル
關係上、戰時犯罪ノ豫防及鎭壓ノ法規トシ
テ其ノ儘運用スルニ適切ナラザルモノガア
ルノデアリマシテ、戰時下特ニ公共ノ安寧等
ヲ甚ダシク阻害スル犯罪ニ對シマシテハ、其
ノ刑罰ヲ加重整備シテ一般豫防ノ目的ヲ達
シマスルト共ニ、刑事手續ニ付キマシテモ亦戰
時ニ相應シキ特例ヲ設クルノ必要ヲ痛感致
スノデアリマス、仍テ政府ニ於キマシテハ之ガ臨
時應急ノ措置ト致シマシテ本法案ヲ立案致
シ、先般ノ臨時議會ニ於テ御協賛ヲ得マシタ
戰時犯罪ノ外、放火、縣擾、住居侵入及往來
妨害等ノ犯罪ニ對スル刑法所定ノ刑罰ヲ加
重シ、且新タニ國政變亂ノ目的ヲ以テス
ル殺人、公共防空及公共通信ノ妨害、瓦斯、
電氣ノ公共利用ノ妨害竝ニ國防上重要ナル
生產事業ノ遂行妨害等ノ犯罪ニ關スル規定
ヲモ整備致シマシテ、治安ノ確保ニ資シマ
スルト共ニ、手續規定ニ於キマシテモ證據
ノ取調、判決ノ方式及上告審ノ手續等ニ關
スル臨時ノ特例ヲ設ケ、裁判所構成法戰時
特例ト相俟ッテ事件ノ迅速且適正ナル處理
ヲ圖リ、以テ戰時下ニ於キマスル犯罪ノ豫
防及鎭壓ニ萬遺憾ナカラムコトヲ期シタ次
第デゴザイマス、何卒愼重御審議ノ上御協
贊アラムコトヲ切望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=72
-
073・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 戰時刑事特
別法案ニ付キマシテ質疑ノ通〓ガゴザイマ
ス、次田大三郞君
〔次田大三郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=73
-
074・次田大三郎
○次田大三郞君 只今ノ司法大臣ノ御說明
ニ依リマスルト、此ノ戰時刑事特別法案ハ
戰時下ノ國內治安ヲ維持スルガ爲ニ必要デ
アルトシテ提出セラレタト云フコトデアリ
マス、就キマシテハ、私ハ此ノ法案ニ關聯
シテ一ツノ簡單ナル質問ヲ致シタイノデア
リマス、ソレハ治安維持法ノ改正法律案ニ
關スルモノデアリマス、御承知ノ如ク政府
ハ昨年ノ通常議會、卽チ第七十六囘ノ議會
ニ於テ、治安維持法改正法律案ヲ必ズ今期
議會ニ提出スルト云フ約束ヲ貴族院デサレ
タノデアリマス、然ルニ未ダ其ノ提出ガア
リマセヌ、加之、政府ハ今期議會ニハ之ヲ
提出シナイ考デアルト云フ者モアリマス、
此ノ治安維持法ノ改正案ノ提出サルヽヤ否
ヤト云フコトハ戰時刑事特別法案ノ第七
條戰時ニ際シ國政ヲ變亂スルコトヲ目的
トシテ人ヲ殺ス罪ヲ重ク罰スルト云フ規定
ヲ審査スル上ニ於キマシテモ、承知スルコ
トガ必要ナコトナノデアリマスルカラ、此
ノ際政府ハ、果シテ今期議會ニ治安維持法
ノ改正法律案ヲ提出セラルヽノデアルカド
ウカ、若シ提出セラレナイノナラバ、如何
ナル理由ニ依ッテ提出セラレナイノカト云
フコトニ關スル御說明ヲ願ヒタイノデアリ
マス
〔國務大臣岩村通世君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=74
-
075・岩村通世
○國務大臣(岩村通世君) 只今ノ御質疑ニ
對シテ御答ヲ申上ゲマス、此ノ前ノ通常議
會ノ貴族院ニ於キマシテ、當時ノ司法大臣
ガ治安維持法改正法律案提出ニ關スル言明
ヲ致シタコトハ、速記錄等ヲ通ジマシテモ
能ク承知ヲ致シテ居リマス、然ルニ今囘ハ、
戰時下ニ於ケル當議會ノ特殊事情ニ鑑ミマ
シテ、政府ニ於キマシテハ提出法律案ヲ出
來得ル限リ限定ヲ致シマシテ、今次ノ戰爭ノ
目的完遂ノ爲必要缺クコトノ出來ナイ直接
關聯ノ事項ト認メラレマシタモノニ付テノ
ミ、法律案ヲ提出スルコトニ致シマシタ次
第デアリマス、左樣ナ次第デゴザイマシテ、
今囘ハ治安維持法改正案ハ提出致サナイ方
針デゴザイマス、併シ尙此ノ點附加ヘテ市
上ゲタイト存ジマスルガ、無論先ノ通常議
會ニ於テハ、其ノ當時ノ內閣ノ司法大臣ガ
言明ヲ致シタモノデアリマシテ、此ノ內閣
ニ至ッテ、此ノ議會ニ如何ナル法案ヲ提出ス
ルカト云フコトハ、此ノ内閣デ勿論定ムベ
キコトデアリマスガ、司法省ト致シマシテ
ハ、前ノ司法大臣ガ、御示シノヤウナ大體
趣旨ノ言明ヲ致シテ居リマスルカラ、私ト
致シマシテハ前任者ノ言明ハ十分尊重致シ
マシテ檢討致シテ居ルノデアリマス、先
程モ御話ガゴザイマシタガ、此ノ第七條ノ
問題等モ、兎角此ノ國政ヲ變亂スルコトヲ
目的トシテ殺人等ノ行爲ガアルト云フコト
ハ誠ニ遺憾デアリマス、左樣ナ點ハ、前司
法大臣ノ言明セラレテ居ル或一部ノ改正意
見ニ觸レテモ居ラウカト思フノデアリマス、
只今次田議員ヨリ御話ノアリマシタノモ、
サウ云フ點ニ觸レテ居ルノデアラウト思ヒ
マス、ソレカラ尙此ノ前ノ臨時議會ニ、言
論出版、集會、結社等ノ臨時取締法ガ制
定セラレテ居リマス、斯ウ云フ事柄モ、前
司法大臣ノ言明セラレタ治安維持法改正案
ニ多少ノ關聯ヲ持ッテ······思想的ニハ多少
ノ關聯ヲ持ッテ居ルノデハナイカト思ヒマ
ス、マア斯樣ナ次第デ、前ノ內閣ノ司法大
臣ノ言明デハアリマスルガ、私ト致シマシ
シテハ十分〓究ハ致ス積リデゴザイマス、
是ダケノコトヲ御答ヘ申上ゲマス
〔次田大三郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=75
-
076・次田大三郎
○次田大三郞君 只今ノ司法大臣ノ御答辯
ハ謹聽致シマシタ、併シナガラ私共十分了
解スルコトガ出來ナイノデアリマス、體
本議場若シクハ委員會等ニ於キマシテ、議
員カラ希望意見ガ出タリ、註文ガ出タリ
シマシタ場合ニ、政府ガ、是ハ政府ニ於テ
考慮スルトカ、〓究スルトカ云フヤウナ答
辯ヲサレマシテ、後日其ノ實行ヲ迫ラレマ
シタ場合ニハ又其ノ場合々々ニ然ルベキ
答辯ヲシテ其ノ場ヲ切拔ケルト云フコトハ、
能クアルコトデアリマス、併シ私共ハサウ
云フヤウナ場面ニ遭遇スル每ニ、實ニ不誠
實ナル答辯ヲシタモノダト云フ印象ヲ與ヘ
ラレマシテ、非常ニ不愉快ニ感ズルノデア
リマス、處ガ此ノ治安維持法ノ改正案ヲ今期
議會ニ提出スルト云フ政府ノ約束ハ、考慮
スルトカ〓究シテ置クトカ云フヤウナ、ソ
ンナモノデハナカッタノデアリマス、勿論只
今司法大臣ガ御述ニナリマシタヤウナコト
デ帳消シニナルヤウナ言明デハナカッタノ
デアリマス、此ノ問題ハ、貴族院ニ於キマ
シテハ實ニ昭和九年以來ノ問題デアリマス、
卽チ昭和九年第六十五議會ノ際ニ政府カラ
治安維持法ノ改正案ガ提出ニナリマシタ、
其ノ內容ハ昨年議會ヲ通過シタモノト略〓同
一ノモノデアッタト記憶致シマス、處ガ是ガ
貴族院ノ委員會ニ付託セラレマスルト、色
色議論ガアッタノデアリマス、中デモ、政府原
案ガ共產黨卽チ所謂左翼運動ノ取締ニ局限
シテ所謂右翼運動ノ取締ニ及バナイト云フ
コトハ不都合デアルト云フ議論ガ非常ニ强
カッタノデアリマス、ソレハ其ノ當時所謂右
翼ノ「テロ」行爲ガ頻リニ行ハレマシテ、井上
準之助氏ヤ團琢磨男ヲ暗殺シタ血盟團事
件、犬養總理大臣ヲ官邸ニ襲擊シテ之ヲ殺
シタ五·一五事件、續イテ事前ニ檢擧ハサレ,
マシタガ、若シ實行サレタラバ大變デアッタ
ラウト考ヘラレル神兵隊事件、又鈴木政友
會總裁ヲ暗殺シヨウトシタ埼玉縣ノ挺身隊
事件ト云フヤウナ事件ガ續々起リマシテ、
人心ハ極度ニ動搖シテ居タ時デアッタノデ
アリマス、斯ウ云フ社會情勢デアリマシタ
カラ、委員會デハ共產黨ノ取締ヲ强化スル
コトハ無論贊成デアルガ、同時ニ所謂右翼
ノ「テロ」行爲ヲ鎭壓スルガ爲ニ適當ナル取
締規定ヲ此ノ治安維持法中ニ加フベシト云フ
主張ガ、委員會ニ於テ壓倒的デアッタノデア
リマス、然ルニ何故デアリマスカ、政府當
局ハ、斯クノ如キ取締法規ヲ設ケル必要ガ
ナイ、詰リ普通ノ刑法ノ規定デ以テ十分取
締レルト云フコトヲ力說シテ之ニ反對サレ
タノデアリマスルガ、結局委員會ヲ納得セシ
ムルコトガ出來ナイノデ、委員會ハ遂ニ原
案ヲ修正致シマシテ「憲法ノ定ムル統治組
織ノ機能ヲ不法ニ變壞スルコトヲ目的トシ
テ結社ヲ組織シタル者又ハ情ヲ知リテ結社
ニ加入シタル者若ハ結社ノ目的遂行ノ爲ニ
スル行爲ヲ爲シタル者ハ十年以下ノ懲役又
ハ禁錮ニ處ス」ト云フ修正ヲ加ヘタノデア
リマス、斯ウ云フ規定ヲ政府ノ原案ニ加ヘ
ルコトト致シマシテ、本會議ニ報告シ、本
會議ニ於キマシテモ委員會報〓通リ大多數
ヲ以テ修正案ガ可決サレタノデアリマス、
斯クノ如クシテ結局兩院協議會ヲ開イタノ
デアリマスルガ、其ノウチニ會期ガ盡キマ
シテ、治安維持法案ハ其ノ際ハ成立致サナカツ
タノデアリマス、併シナガラ所謂右翼運動
ノ取締ヲ强化セザルベカラズト云フ貴族院
ノ主張ハ、其ノ際院議ヲ以テハッキリト決定
表示サレタノデアリマス、其ノ後約十年、
貴族院ガ所謂右翼運動ノ取締ヲ强化セザル
ベカラズト主張スルコトヲ已ムヲ得ザラシ
メタ世ノ中ノ情勢ハ毫モ改善セラレナイ
デ、寧ロ益〓其ノ必要ヲ痛感セシムルモノガ
アルニ拘ラズ、昨年第七十六議會ニ政府ガ
治安維持法改正法律案ヲ提出シマシタ際ハ、
右貴族院ノ院議ヲ全然無視シテ、第六十
五議會提出案ト略〓同一ノモノヲ提出サレタノ
デアリマス、玆ニ於テ委員會ニ於テ私共ハ、
政府ガ貴族院ノ院議ヲ無視シタコトヲ咎メ
マシテ、昭和九年ノ時ト同樣、所謂右翼運
動取締ヲ强化スルノ法文ヲ加フル必要ヲ力
說致シタノデアリマス、政府ハ當初ハ、斯
クノ如キ取締規定ヲ設ケズトモ所謂右翼運
動ノ取締ハ出來ル、斯カル規定ヲ設クル必
要ガナイトシテ、大イニ陳辯ニ努メラレタ
ノデアリマスルガ、併シ最後ニ至ッテ、私
共ガ第六十五議會ノ際ニ於ケルト同樣ノ修
正案、卽チ憲法ニ定ムル統治組織ノ機能ヲ
不法ニ變壞スル目的ヲ以テスル結社ヲ禁ジ、
又其ノ結社ノ目的遂行ノ爲ニスル行爲ヲ禁
ズル趣旨ノ規定ヲ加フルノ案ヲ提出スルニ
及ンデ、政府ハ遂ニ貴族院ノ主張ニ屈シタ
ノデアリマス、卽チ所謂右留運動ノ取締ヲ强化
スルノ必要ハ之ヲ認メル、唯修正條文ノ文句ガ
十分デナイ、又之ニ代ハルベキ適當ノ文句
ガ見付カラナイカラ、藉スニ時日ヲ以テシ
テ貰ヒタイ、少シ待ッテ貰ヒタイ、能ク調査
シテ來議會、來議會ト云フノハ詰リ此ノ今
期議會ノコトヲ指スモノト了解致シマス、
來議會ニハ必ラズ治安維持法改正案ヲ提出
スルト云フ意味ノ言明ヲサレタノデアリマ
ス、念ノ爲政府ノ言明ヲ一句々々其ノ通リ
ニ繰返シテ見マス、「國務大臣柳川平助君、
修正案ノ要點ハ憲法ノ定ムル統治組織ノ機
能ヲ不法ニ變壞セムトスル者ヲ取締ラムト
スルニアリマシテ、御趣旨ノアル所ニ付キ
マシテハ、十分諒承致シマスノデアリマス
ガ、之ヲ法文ニ現シマスニ付キマシテハ、
更ニ周到ナル考究ヲ要シマスノデ、藉スニ
時日ヲ以テセラレタイト存ズル次第デアリマ
ス、此ノ趣旨ヲ以チマシテ、愼重〓究ノ上
近キ將來ニ於テ、立法ノ手續ヲ執ルコトニ
致シタイト存ジマス」、此ノ「近キ將來ニ於テ」
ト云フノガ昧曖デアルト云フノデ、委員中
ノ舟橋子爵ガ念ヲ押シテ居ラレマス、「現下
ノ社會ノ情勢ハ、只今大臣ガ仰セラレマシタ
御言葉ノ如キ、藉スニ多大ノ日子ヲ以テス
ルコトヲ許サナイ事情ガゴザイマス、只今
大臣ノ御言明中、近キ將來ニ云々ト云フ御
言葉ノ意味ニ付テ、此ノ際念ノ爲ニ承ッテ
置キタイト思ヒマス」ト云フ念ヲ押サレタノ
デアリマス、ソレニ對シテ國務大臣柳川君
ハ「只今近キ將來ト申シマシタノハ、議會提
出ノ以前ニモ必要ヲ痛感シ、且適當ナ法案
ヲ得マスレバ、緊急ノ勅令ニ於テモ致シタイ
ト考ヘマス、然ラザレバ次ノ議會ニ提出致シ
タイ考デアリマス」、此ノ「次ノ議會」ト云フノ
ハ今期議會ヲ指スモノト考ヘマス、是レ迄
ニ二度モ臨時議會ガアリマシタガ、其ノ臨
時議會ト云フ意味デハナカッタラウト思ヒ
マス、今期議會ニ必ズ提出スルト云フ言明
ヲサレタノデアリマス、私共ハ此ノ言明ニ
對シマシテ、政府ガ斯ウ云フ約束ヲシテモ
ソレハ當テニナラヌ、普通ノ場合ニハ、政
府ガソコ迄言明ヲサレマシタ以上ハ之ニ信
賴シテ私共ノ修正案ハ之ヲ撤回スルノガ常
識デアリマセウ、併シ、本件ニ付テハ、政府
ガ斯カル言明ヲサレテモ之ヲ信用スル譯ニ
ハ參ラナイト申シタノデアリマス、何トナ
レバ、政府ハ本來所謂右翼運動ノ取締ヲ强
化スルコトヲ元カラ欲シナイノデアリマス、
法文ノ文句ニ難ガアルト云フコトデアルナ
ラバ、ソレナラバ政府側ニ於テ適當ナ文句
ヲ示サレタナラバ我々ハソレニ贊成スルニ
吝デナイ、政府、殊ニ司法部內ニハ人材雲
ノ如クニ居ルノデアル、ソレデ適當ナ文句
ガ見付カラナイト云フノハ、是ハ見付ケル
氣ガナイカラ見付カラナイ、所謂能ハザル
ニ非ズシテ爲サザルナリ、失禮ナガラ政府
ノ斯クノ如キ辯解ハ一時逃レノ口實デアル
ト考ヘザルヲ得ナイ、來議會ニハ貴族院ノ
意見ヲ取入レタ改正法律案ヲ提出スルト言
ハレタガ、ソレ迄ニハ內ノノ更迭ガアルカ
モ知レナイ、サウデナクテモ、其ノ時ニハ
又何トカ適當ナ辯解ノ辭ガ見付カルコトデ
アリマセウ、デアルカラ貴族院トシテハ政
府ノ意見ニ拘束サレル必要ハナイ、獨自ノ
立場ニ於テ修正案ヲ以テ進ムベキデアルト
主張致シタノデアリマス、併シナガラ大多
數ノ委員ノ方々ハ、政府ガ是レ程ハッキリ
言明スル以上ハ之ヲ信賴シテ、治安維持法
案ハ無修正デ通スコトガ穩カデアル、穩當
デアルト云フ御意見デアリマシテ、卽チ治
安維持法案ハ原案通リ委員會ヲ通リ、本會
議ニ於テモ委員長ヨリ右ノ經緯ヲ詳シク御
報告ニナリマシタ上デ原案通リ可決サレタ
ノデアリマス、斯樣ノ次第デアリマスルカ
ラ、政府ハドウシテモ治安維持法ノ改正案
ヲ今期議會ニ提出サレナケレバナラナイト
云フコトニナッテ居ルノデアル、然ルニ政府
ハ、今期議會ニハ戰時ニ關係ノアル法案ダ
ケヲ提出スル方針デアルカラ、治安維持法改
正案ノ提出ハ、約束ハシタケレドモモウ提
出シナイコトニスルノダト云フ只今ノ御說
明デアリマス、併シ所謂戰爭ニ關係ノアル
法案トハ何ヲ意味スルモノデアリマスカ、
平時ニハ其ノ必要ガナイ、併シナガラ戰時
ナルガ故ニ特ニ必要トスル法律案、是ガ戰
爭ニ關係ノアル法案ノ中ニ入ルコトハ是ハ
問題ナイデアリマセウ、ソレト同時ニ、平
時ニ於テモ必要デアルガ、同時ニ戰時ニ於
テモ必要デアルト云フ法律案ハ、矢張リ戰
時ニ關係ノアル法律案ト云フ中ニ含マレナ
ケレバナラナイコトハ営然然デアリマス、例へ
バ只今モ上程ニ相成ッテ居リマスル民法中改
正法律案ノ民法ノ中カラ私生子ト云フ文字
ヲ削ルト云フ法律案、是ハ平時デモ必要デ
アリ而シテ戰時ニ於テモ亦必要デアルサ
ウ云フ趣旨デアレバコソ永久法ノ改正トシ
テ提案サレタノデハナイカト思フノデアリマ
ス、デアルカラ問題ハ、昨年ハ政府ハ所謂
右翼運動取締强化ノ必要ヲ認メタ、此ノ必
要ハ戰時下ニ於テハ無クナッタノデアルカ
ト云フコトデアリマス、昨年ハ貴族院ノ主
張通リモット右翼運動ノ取締ヲ强化シナケ
レバナラヌト云フ其ノ主張ヲ容認シタ、併
シナガラ其ノ必要ハ今日ハモウ無クナッタノ
ダ、戰時下デ無クナッタノダト云フコトデア
リマスルナラバ、治安維持法改正ハ戰時法
デナイ、戰爭ニ關係ガナイ、故ニ提出セヌ
デモ宜シイト云フ議論ガ成立ツカモ知レマ
セヌ、併シ私共が昨年右翼運動取締ヲ强化
スルノ必要ヲ認メザルヲ得ナカッタ其ノ社
會情勢ハ、今日ニ於テモ尙引續キ存續シテ居
ルト考ヘルノデアリマス、否其ノ必要ハ、戰
時下擧國一致ヲ絕對ニ必要トスル今日、及
ビ今日以後ニ於テモ益〓其ノ切實ナルモノガ
アルト信ズルノデアリマスルガ、政府ノ御
所見ハ果シテ如何デアリマスルカ、是ガ私
ノ質問ノ第一點デアリマス、次ニ司法大臣
ハ只今日程ニ上ッテ居リマス戰時刑事特
別法案ノ第七條ニ、戰時ニ於テ國政ヲ變亂ス
ルコトヲ目的トシデ人ヲ殺ス者ノ刑ヲ重ク
スル規定ヲ設ケタ、是デ以テ右翼運動、左翼
ノ「テロ」行爲ヲ取締ルノニ間ニ合フカラ、
貴族院ノ主張ハ其處デ取入レタノダ、ソレ
以上治安維持法改正ノ必要ハナイト云フガ
如キ御說明デアッタト拜承致シマシタ、此ノ
第七條ノ條文ハ、之ヲ貴族院ガ嘗テ主張致
シマシタ治安維持法改正案ト比較シテ見
マスルト、其ノ取締ノ範圍ガ非常ニ違ッテ
居ルノデアリマス、此ノ第七條ハ、國政ヲ
變亂スル目的ヲ以テ人ヲ殺ス場合ダケニ關
スルモノデアリマス、懸案ノ治安維持法ノ
修正ハ、憲法上ノ統治組織ノ機能ヲ不法ニ
變壞セムトスル一切ノ行爲ヲ禁ゼムトスル
モノデアリマス、卽チ第七條ハ昨年約束セ
ラレマシタモノヨリモズット寛大ナ〓締規
定ニ過ギナイノデアリマス、治安維持法ノ
改正案ハ出サナイガ戰時刑専特別法第七條
ノ規定ヲ設ケタカラ、ソレデ我慢シロト言
フノハ、例ヘバ百圓ノ金ヲ借リタ者ガ、期
限ガ來テ十圓持ッテ行ッテ十圓拂フ、百圓借
リタケレドモ、モウアトノ九十圓ハ拂ハヌ
ト云フノト同ジコトデアリマス、ドンナオ
トナシイ、ドンナ氣ノ好イ債權者デモ、ソ
レデハ困ルト言ハザルヲ得ナイダラウト思
ヒマス、若シ是ガ訴訟沙汰ニナリマシタナ
ラバ、裁判沙汰ニナリマシタナラバ、日本
國中何處ノ裁判所へ行ッテモ債務者ノ敗訴
ニナルコトハ明白デアリマス、然ルニ其ノ
全國ノ裁判所ノ總元締デアル所ノ司法大臣
ガ、右ノ債務者ガ言フヤウナ、百圓ノ金ヲ
借リタ者ガ、拾圓拂ッテ是デ我慢シロト言
フ、ソレト同ジヤウナ意味ノコトヲ此ノ議
場デ仰セニナルコトハ果シテ政治道德ニ反
シナイモノデアリマセウカ、是ガ私ノ質問
ノ第二點デアリマス、ドウカ御答辯ヲ煩シ
タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=76
-
077・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 岩村司法大
臣
(國務大臣岩村通世君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=77
-
078・岩村通世
○國務大臣(岩村通世君) 只今重ネテ御質
問ガゴザイマシタカラ、要點ダケ御答ヲ申
上ゲタイト思ヒマス、治安維持法改正法律案
ヲ提出スルカ、シナイカト云フ點デアリマ
ス、是ハ前司法大臣ハ如何ナル考ヲ持ッテ
居リマシタカ、私親シク聽キマセヌカラ分
リマセヌガ、治安維持法ト云フ法律ノ規律
スルモノハ、國體關係及ビ、國際共產黨ハ
國體變革、私有財產制度否認ヲ目的トシテ
居ルノデアリマスルガ、是ガ我ガ國ニ及シ
マシタ過去ノ行動ヲ觀察致シマスルト、我
ガ國ニ對シテハ私有財產制度否認ノ目的
ト同時ニ國體變革ヲ目的トシテ居ル、此ノ
二ツノ思想ガ常ニ牽聯致シテ居ルノデアリ
マス、ソレデアリマスルカラ、治安維持法
ハ幾度カ改正ヲセラレマシタガ、今日ニ至
リマシテハ數囘ノ改正ニ依リマシテ、治安
維持法ノ規律スルモノハ國體ニ關スルモノ
デアル、私有財產制度ニ關スルモノハ、國
際共產黨ノ主義トスルモノガ我ガ國ニ働ク
トキニハ必ズ國體變革ヲ目的トシテ居ル、
斯ウ云フコトデ治安維持法ハ制定セラレテ
居リ、其ノ後ノ改正モ又此ノ線ニ沿ウテ改
正セラレタモノト私ハ考ヘテ居リマス、前
司法大臣ハ如何ナル考デアッタカ存ジマセ
ヌガ、治安維持法ヲ改正致シマシテ、國體
ノ變革、私有財產制度ノ否認、此ノ以外ノ
思想行動ヲ取締ル趣旨ノ規定ヲ、治安維持
法改正ノ法案トシテ提出スル考ハ私ハ持ッ
テ居リマセヌ、是ダケ申上ゲテ置キタイト
思ヒマス、唯御話ノゴザイマシタ右翼、ト
云フコトガ正確デアルカ、ドウカ分リマセ
ヌガ、近頃革新運動ト云フコトモ申シマス
ガ、中ニハ革新ヲ名トシテ所謂左翼ノ運動
ヲシテ居ルモノモアルト色々ノ批評ヲ聞キ
マスガ、マア左樣ナ治安維持法ニ觸レル
モノハ別ト致シマシテ、然ラザル方面ニ
於テ、或ハ憲法ノ大綱ヲ破壞スルトカ、其
ノ他ノ國體ニ關係ナキ部分デアリマス、憲
法ノ大綱ヲ破壞スルト云フヤウナコトヲ目
的トシテ行動ニ出ヅル、マア甚ダシイモノハ
內亂罪ノ如キガ其ノ一ツデアラウト思ヒマ
ス、今日ノ解釋デハ、朝憲ヲ紊亂スル目的
ヲ以テ暴動ヲ爲シタルモノハ內亂罪ニナッ
テ居ル、左樣ナ色々他ノ法律ニ觸レル犯罪、
刑法犯等ニ觸レル犯罪行爲モゴザイマス、併
シ左樣ナ行爲ヲ治安維持法中ニ設ケルト云
フコトニハ、私一個ノ考トシテハ反對デア
リマス、是ダケハハッキリ申上ゲテ置キマ
ス、他ノ法律ヲ以テ、左樣ナ國家ノ政治ニ
非常ナ妨害ヲ與ヘルヤウナ犯罪行爲ハ他ノ
法律ノ形ニ於テ處罰ヲスルト云フコトハ、
考ヘル餘地ガ私ハ十分アルト思フ、前司法
大臣ノ言明ヲ尊重シテ、私ガ十分此ノ治安
ヲ保持スル上ニ於テ必要ナル程度ノ何モノ
カヲシナケレバナラヌノデハナイカト云フ
考デ檢討シテ居ルノハ、ソレガ爲デアリマ
ス、私ノ只今ノ考ト致シマシテハ御說ノ
如キ目的ヲ持ッタ行爲ハ、治安維持法中ニハ
規定スベキモノデナイト云フコトダケハッ
キリ申上ゲテ置キタイト思ヒマス、ソレカ
ラ今囘ノ刑法ノ特例ニ付キマシテ、第七條
ノ規定ヲ以テ······曩ニ七十六議會ニ於テ前
ノ政府ガ約束シタ事柄ニ對シテ、第七條ヲ
以テ、言葉ハ違フカモ知レマセヌガ、我慢
ヲシロト云フヤウナ趣意デ出シタノカト云
フ御話デアリマシタガ、私ハ左樣ナ考デ提
出シタノヂヤゴザイマセヌ、先程百圓ノ金
ヲ貸シテアルノニ、十圓トカ幾ラトカヲ返
濟シテ、我慢ヲシロト云フヤウナ例ヲ以テ
御示ニナッタノデアリマスガ、私ハ左樣ナ
考ハ持ッテ居リマセヌ、併シ今囘ノ戰時ニ關
スル一ツノ立法ト致シマシテ、七十六議會
ニ前司法大臣ガ言明シタモノノ何モノカデ
モ、若干デモ、出來ルダケデモ、之ヲ取入
レタイト云フ考ヲ持ッテ居リ、實ハ之ニ關聯
シテ國政變亂ヲ目的トスル殺人以外ニ、案
トシマシテハモウ一條實ハ案ハ考ヘマシタ
ノデアリマスガ、國政變亂ニ關聯スル案ヲ
考ヘマシタガ、ナカ〓〓字句ガウマク參リ
マセヌ、私共不敏デ適當ナ文字ヲ發見シ得
ナカッタノデアルカモ知レマセヌ、非常ニ、
其ノ規定ノ仕方ニ依ルト非常ニ廣クナッテ
シマフノデ、餘リ廣クナリマスト、他ノ規
定ヲ皆包含スルヤウナ規定ニナッテシマッテ
誠ニ面白クナイ、要スルニ過ギタル點モナ
ク及バザル點モナイ、丁度好イ所ヲ如何ニ
シテ規定スルカト云フコトニ苦心ヲ致シマ
シタコトモゴザイマス、ソレデ第七條ガア
ルカラ我慢シロト云フコトハ、決シテ私ハ
申上ゲマセヌ、唯前ノ七十六議會ニ前司法
大臣ガ言明致シマシタモノノ中、出來ル
ダケノコトハ考ヘテ、考慮致シタ結果、サ
ウ云フ思想ガ第七條ニモ入ッテ居ルト云フ
コトダケヲ申上ゲマシタ譯デアリマス、之
ヲ以テ決シテ御滿足ヲシテ戴キタイト云フ
考ハ持ッテ居ラナイト云フコトダケ申上ゲ
テ置キタイト思フ、併シ前ノ內閣ノコトデ
ハアリマスルケレドモ、私共司法部ト致シ
マシテハ、前任者ノ思想ヲ承ケ繼イデ司法
部ノ仕事ヲ致シテ居リマス、出來ルダケ、
前司法太臣ノ言明致シタコトニハ十分尊重
ヲ拂ッテ〓究ヲ致シマシタ、前ノ御答ト重複
スルヤウデゴザイマスガ是ダケ申上ゲテ置
キマス
〔次田大三郞君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=78
-
079・次田大三郎
○次田大三郞君 只今司法大臣ガ述ベラレ
マシタ治安維持法ハ國體ニ關スル罪、ソレ
カラ私有財產制度ヲ犯サムトスル罪、其ノ
線ニ限ラレテ居ルノデアッテ、ソレ以外ノモ
ノハ治安維持法ノ中ニ規定シナイガ宜シ
イト云フ意味ノコトハ、是ハ私共ガ昭和
九年以來幾度トナク承ッタ議論デアリマス、
併シ昭和九年ニ於テハ、必ズシモ國體ニ關
スル罪、私有財產ニ關スル罪ノミニ局限シ
ナケレバナラヌト云フ理由ハナイヂヤナ
イカ、憲法ノ定メタル統治組織ノ機能ヲ變
壞セムトスルモノニ關スル取締規定ヲ、此
ノ治安維持法中ニ規定シテモ差支ナイヂヤ
ナイカト云フ貴族院ノ主張デアッタノデア
リマス、昨年ノ委員會デモ、政府當局ハ頻
頻今ノ司法大臣ノ言ハレマシタヤウナコト
ヲ言ハレタノデアリマスガ、結局議論ヲ
シタ結果、マア其ノ當時ノ司法大臣ハ、
貴族院ノ趣旨ハ之ヲ諒承スル、今度ノ議
會來議會ニハ治安維持法ノ改正案ヲ提出
スル、斯ウ言ハレタノデアリマス、處ガ又
人ガ迭ッテ新ラシイ司法大臣ガ出來マスト、
又同ジ議論ニナッテ、我々ハ又同ジ議論
ヲシナケレバナラヌコトニナル、併シ
私共ハ必ズシモ其ノ治安維持法ノ中ニ規定
シナケレバナラヌトハ思ッテ居ナイ、治安維
持法以外デモ、所謂右翼運動ノ取締ヲ强化
スル規定ヲ設ケル必要ヲ痛感スルモノデア
リマス、名前ハ治安維持法ヂヤナクテモ、
外ニ單行法ヲ御出シニナッテモ、無論差支
ナイノデアリマス、必ズ治安維持法ノ中ニ、
治安維持法改正ノ形式ニ於テ、サウ云フ規
定ヲ設ケナケレバナラヌト云フ形式論ハ致
シマセヌ、唯問題ハ、今日ノ社會情勢ヲ考
ヘテモット右翼ノ取締ヲ强化シナイト國危
シ、ト考ヘマスルカラ、コンナヤカマシイ
コトヲ申シテ居ルノデアリマス、是レ以上
質問ヲ致シマシタ所ガ結局水掛論ニナルコ
トト思ヒマスルカラ、私ノ質問ハ此ノ程度
デ止メルコトニ致シマス、唯私一言附加ヘ
テ置キタイコトハ、政府ハ只今ノ御話ニ依
リマスルト、相當右翼方面ノコトモ御心配
ニナッテ居ルヤウデアリマスルガ、併シドウ
カ、殊ニ戰時下ニ於テ國內ニゴタ〓〓ガ生
ズルト云フヤウナコトハ本當ニ國家ノ深憂
デアリマスルカラ、十分ニ氣ヲ御付ケ下スッ
テ、尙只今モ能ク考ヘテ居ルト云フ御話デ
アリマシタガ、尙能ク御〓究下スッテ、治安
維持法改正ノ形式ガナクテモ宜シウゴザイ
マス、右翼ノ運動ノ取締ヲ强化スルコトニ
付テ最善ノ御考慮ヲ賜ハラムコトヲ希望致
シマシテ、私ノ質問ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=79
-
080・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今上程セラレマシタ
民法中改正法律案外三件ハ、戰時ニ於ケル
領事官ノ裁判ノ特例ニ關スル法律案ノ特別
委員ニ併託セラレムコトノ動議ヲ提出致シ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=80
-
081・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=81
-
082・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐本行忠君) 戶澤子爵ノ
動議ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=82
-
083・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=83
-
084・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 日程第四十
五、獸醫師法第二條ノ臨時特例ニ關スル法
律案、日程第四十七、明治四十五年法律第二
十一號中改正法律案、政府提出第一讀會、
是等ノ兩案ヲ一括シテ議題ト爲スコトニ御
異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=84
-
085・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス、井野農林大臣
獸醫師法第二條ノ臨時特例ニ關スル法
律案
右
勅旨ヲ奉ジ帝國議會ニ提出ス
昭和十七年一月十八日
內閣總理大臣東條英機
農林大臣井野碩哉
獸醫師法第二條ノ臨時特例ニ關スル法
律案
農林大臣ハ當分ノ內獸醫師法第二條第二
號ノ規定ニ拘ラズ未成年者ニ對シ獸醫師
ノ免許ヲ爲スコトヲ得
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
明治四十五年法律第二十一號中改正法
律案
右
勅旨ヲ奉ジ帝國議會ニ提出ス
昭和十七年一月十八日
內閣總理大臣東條英機
農林大臣兼井野碩哉
打務大臣
明治四十五年法律第二十一號中改正法
律案
明治四十五年法律第二十一號中左ノ通改
正ス
同法ニ左ノ題名ヲ附ス
臘虎膃肭獸獵獲取締法
第一條政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ臘
虎又ハ〓肭獸ノ獵獲ヲ禁止又ハ制限ス
ルコトヲ得
第二條及第三條削除
第四條中「本法」ヲ「第一條ノ規定ニ依ル
禁止若ハ制限」ニ改ム
第五條第一項中「第一條ノ規定ニ違反シ
又ハ私ニ第二條ノ獵獲ヲ爲シタル者」ヲ
「第一條ノ規定ニ依ル禁止又ハ制限ニ違
反シタル者」ニ改メ同條第二項ヲ削ル
第六條中「前條第一項」ヲ「前條」ニ、「本法
ニ違反シテ獵獲輸入又ハ移致シタル」ヲ
「第一條ノ規定ニ依ル禁止若ハ制限ニ違
反シテ獵獲シタル」ニ改ム
第八條ヲ削ル
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行前從前ノ罰則ヲ適用スベカリシ
行爲ニ付テハ仍從前ノ例ニ依ル
參照
明治四十五年法律第二十一號ハ臘虎膃
肭獸獵獲禁止ニ關スル法律ナリ
〔國務大臣井野碩哉君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=85
-
086・井野碩哉
○國務大臣(井野碩哉君) 只今議題トナリ
マシタ獸醫師法第二條ノ臨時特例ニ關スル
法律案外一件ニ付テ提案理由ヲ御說明申上
ゲマス、先ヅ獸醫師法第二條ノ臨時特例ニ
關スル法律案ニ付テ申上ゲマスレバ、本法
案ハ、昨年十月公布セラレマシタ勅令第九
百二十四號ニ依ッテ大學、專門學校等ノ卒業
期ガ繰上ゲラレ、之ガ卒業者ヲシテ常時ヨ
リモ相當期間早ク國家ノ要務ニ從事セシメ
ルコトト相成リマシタ結果、右修業年限ノ
臨時短縮ニ伴ヒマシテ、獸醫學ヲ專攻スル
是等專門學校ノ卒業者ノ中ニハ未成年者ガ
相営數アルノデアリマスルガ、未成年者ハ
獸醫師法第二條ノ規定ニ依リマシテ獸醫師
ノ免許ヲ與ヘラレザルコトトナッテ居リマ
スノデ、臨時的措置ト致シマシテ當分ノ內
右ノ規定ニ拘ラズ是等ノ者ニモ獸醫師ノ免
許ヲ與へ得ルコトトシ、人的資源ノ剩ス所
ナキ活用ニ依リ、戰時下畜產資源確保ノ萬
全ヲ期セムトスルモノデアリマス、次ニ明
治四十五年法律第二十一號中改正法律案ニ
付キマシテ御說明ヲ致シマス、此ノ法案ハ
膃肭獸ニ關スル法律案デアリマシテ、膃肭
獸ニ關シマシテハ明治四十四年日英米露ノ
四國間ニ保護條約ヲ締結シ、其ノ保護ニ努
力シテ參リマシタガ、近年〓肭獸ノ蕃殖增
加スルニ伴ヒマシテ、我ガ國近海ニ洄游ス
ル獸類ガ激增シ、我ガ漁業ニ及シマスル損
害ガ相當著シキモノアルニ至リマシタノ
デ、漁業ヲ主要產業トスル帝國ト致シマシ
テハ、本條約ノ存續ハ却テ不利益ヲ齎スモ
ノト認メ、之ガ廢棄ノ通〓ヲ致シマシテ、
昨年十月二十二日ヲ以テ本條約ハ失效致シ
タ次第デアリマス、仍テ本條約ノ規定ニ基
キ從來臘虎及〓肭獸ノ獵獲ヲ禁止シテ居リ
マシタノヲ、本法律案ニ依リマシテ之ヲ改
メ、今後ハ政府ニ於テ必要ニ應ジ之ガ禁止
又ハ制限ノ措置ヲ執リ得ルコトト致シマシ
テ、海洋獸皮資源ノ統制アル利用ヲ圖ルニ
遺憾ナキヲ期シタイト存ズルノデアリマス
何卒御審議ノ上速カニ御協贊アラムコトヲ
希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=86
-
087・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御質疑ガナ
ケレバ、兩案ノ特別委員ノ氏名ヲ朗讀致サ
七つ八
〔近藤書記官朗讀〕
獸醫師法第二條ノ臨時特例ニ關スル法律
案外一件特別委員
侯爵四條隆德君子爵植村家治君
子爵牧野康熙君宇佐美勝夫君
男爵三須精一君竹內可吉君
下出民義君塩田團平君
佐々木長治君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=87
-
088・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 日程第四十
九小形船舶乘組員手帳法案、政府提出、
第一讀會、寺島遞信大臣
小形船舶乘組員手帳法案
右
勅旨ヲ奉ジ帝國議會ニ提出ス
昭和十七年一月十八目
內閣總理大臣東條英機
遞信大臣寺島健
小形船舶乘組員手帳法案
小形船舶乘組員手帳法
第一條左ニ揭グル日本船舶(漁船ヲ除
ク)ニ乘組ム命令ヲ以テ定ムル船員(以
下小形船舶乘組員ト稱ス)ハ小形船舶
乘組員手帳ヲ受有スルコトヲ要ス
-總噸數五噸以上二十噸未滿ノ船舶
二總噸數五噸以上ノ端舟及櫓櫂ヲ以
テ運轉スル舟
三平水區域ヲ航行スル總噸數二十噸
以上ノ船舶
本法ニ定ムルモノヲ除クノ外小形船舶
乘組員手帳ニ關シ必要ナル事項ハ命令
ヲ以テ之ヲ定ム
第二條小形船舶乘組員ハ其ノ雇傭契約
ノ成立、終了、更新又ハ變更アリタルト
キハ命令ノ定ムル所ニ依リ小形船舶乘
組員手帳ヲ管海官廳ニ提出シテ其ノ證
明ヲ受クルコトヲ要ス
前項ノ規定ハ命令ノ定ムル所ニ依リ雇
傭契約ニ依ラズシテ乘組ム小形船舶乘
組員ニ之ヲ準用ス
第三條小形船舶乘組員、小形船舶乘組
員タラントスル者、船舶所有者又ハ船
長ハ小形船舶乘組員手帳ニ關シ必要ア
ルトキハ小形船舶乘組員又ハ小形船舶
乘組員タラントスル者ノ戶籍ニ關シ戶
籍事務ヲ管掌スル者又ハ其ノ代理者ニ
對シ無償ニテ證明ヲ求ムルコトヲ得
第四條管海官廳必要アリト認ムルトキ
ハ船舶所有者又ハ小形船舶乘組員手帳
ノ交付ヲ受ケタル者ニ出頭ヲ求メ又ハ
其ノ者ヨリ報〓ヲ徵スルコトヲ得
第五條本法及本法ニ基キテ發スル命令
中船舶所有者ニ關スル規定ハ船舶共有
ノ場合ニ在リテ船舶管理人ヲ置キタル
トキハ船舶管理人ニ、船舶貸借ノ場合
ニ在リテハ船舶借入人ニ之ヲ適用ス
第六條本法又ハ本法ニ基キテ發スル命
令ニ依リ管海官廳ノ行フベキ事務ニ付
テハ主務大臣ハ市町村長、町村制ヲ施
行セザル地ニ在リテハ之ニ準ズル者ヲ
シテ之ヲ行ハシムルコトヲ得
第七條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ六
月以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰金ニ
處ス
一詐欺其ノ他ノ不正行爲ヲ以テ小形
船舶乘組員手帳ノ交付ヲ受ケタル者
二第二條ノ規定ニ違反シ證明ヲ受ケ
ザル者
三詐欺其ノ他ノ不正行爲ヲ以テ第二
條ノ規定ニ依ル證明ヲ受ケタル者
第八條第四條ノ規定ニ違反シ出頭ニ應
ゼズ又ハ報〓ヲ怠リ若ハ虚僞ノ報〓ヲ
爲シタル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第九條船舶所有者ハ其ノ代理人、戶主、
家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ガ其
ノ業務ニ關シ前條ノ違反行爲ヲ爲シタ
ルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ
以テ其ノ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第十條第八條ノ罰則ハ船舶所有者ガ法
人ナルトキハ理事、取締役其ノ他ノ法
人ノ業務ヲ執行スル役員ニ、未成年者
又ハ禁治產者ナルトキハ其ノ法定代理
人ニ之ヲ適用ス但シ營業ニ關シ成年者
ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テ
ハ此ノ限ニ在ラズ
第十一條國又ハ北海道、府縣、市町村其
ノ他之ニ準ズベキモノノ所有ニ屬スル
船舶ニ乘組ム小形船舶乘組員ニ付テハ
命令ヲ以テ別段ノ定ヲ爲スコトヲ得
本法及本法ニ基キテ發スル命令中船舶
所有者ニ適用スベキ罰則ハ國又ハ北海
道、府縣、市町村其ノ他之ニ準ズベキモ
ノニハ之ヲ適用セズ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣寺島健君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=88
-
089・寺島健
○國務大臣(寺島健君) 只今議題トナリマ
シタ小形船舶乘組員手帳法案ニ付キマシテ
提案ノ理由ヲ御說明申上ゲマス、戰時下ニ
於ケル海上物資輸送ノ完遂ヲ圖ルニハ船舶
乘組要員ノ確保竝ニ整備ガ缺クベカラザル
要件デアルコトハ改メテ申ス迄モアリマセ
又、之ガ爲ニハ船員ノ就業狀況ヲ明確ニ
シ、移動防止其ノ他ノ勞務規制ヲ强化スル
必要ガアルノデアリマス、然ルニ船員法ノ
適用ヲ受クルモノニ關シテハ、旣ニ船員手
帳ノ制度ガアリ、勞務規制ノ基礎ニ缺クル
所ハナイノデアリマスルガ、二十「トン」未
滿ノ船舶乘組員、其ノ他船員法ノ通用ヲ受
ケナイ船員ニ關シマシテハ、海上勞務ノ重
要ナル資源デアルニモ拘ラズ手帳制度ガ完
備シテ居ラナイ爲、使用統制其ノ他ノ勞務
規制ノ運用ハ極メテ困難ナル現狀ニアルノ
デアリマス、仍テ船員法ノ適用ヲ受ケナイ
小形船舶ニ乘込ム者ニ對シテモ船員手帳ヲ
受有セシメ、其ノ就業狀況ヲ明カニシ、移
動ヲ規制スルト共ニ、徴用船員ノ不斷ノ補
充源タラシムル基礎ヲ整備スルコトト致シ
タイト存ズル次第デアリマス、以上申上ゲ
マシタル必要ニ基キマシテ此ノ法律案ヲ提
出スルコトト致シタ次第デゴザイマス、何
卒御審議ノ上速カニ御協贊アラムコトヲ希
望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=89
-
090・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御質疑ガナ
ケレバ、本案ハ之ヲ船舶保護法中改正法律
案ノ特別委員ニ併託致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=90
-
091・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 日程第五十
一、簡易生命保險法中改正法律案、政府提
田、第一讀會、小泉厚生大臣
簡易生命保險法中改正法律案
右
勅旨ヲ奉ジ帝國議會ニ提出ス
昭和十七年一月十八日
內閣總理大臣東條英機
拓務大臣井野碩哉
厚生大臣小泉親彥
簡易生命保險法中改正法律案
簡易生命保險法中左ノ通改正ス
第四條第一項中「七百圓」ヲ「千圓」ニ改ム
第四條ノ二乃至第四條ノ五竝ニ第三十四
條第二項及第三項中「十一一歲」ヲ「十歲」ニ
改ム
第九條保險契約者カ保險金額ヲ受取ル
ヘキ者ヲ指定セサルトキハ被保險者又
ハ其ノ遺族ヲ以テ保險金額ヲ受取ルヘ
キ者トス
前項ノ遺族ノ範圍及順位ハ勅令ヲ以テ
之ヲ定ム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行前ノ保險契約ニ付テハ第四條ノ
二ノ改正規定ニ拘ラズ仍從前ノ規定ニ依
ル
〔國務大臣小泉親彥君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=91
-
092・小泉親彦
○國務大臣(小泉親彦君) 只今上程サレマ
シタ簡易生命保險法中改正法律案提出ノ理
由ヲ御說明申上ゲマス、本案ハ戰時下國民
生活ノ保障ヲ厚クシ、併セテ浮動購買力吸
收ノ增强ヲ圖リマスル爲ニ、簡易生命保險
ノ保險金最高制限ヲ千圓ニ引上ゲマスルト
共ニ、此ノ機會ニ制度ノ整備ヲ圖リマスル
爲簡易生命保險法ヲ改正セムトスルモノデ
アリマス、幸ヒ今囘ノ改正ガ實現致シマス
レバ、之ニ依リマシテ本制度ハ益〓其ノ特色
ヲ發揮スルコトトナリ、戰時下誠ニ意義深
キモノアルコトヲ確信致シテ居ル次第デゴ
ザイマス、何卒十分御容議ノ上速カニ御協
贊アラムコトヲ切望スル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=92
-
093・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今議題トナリマシタ
簡易生命保險法中改正法律案ハ、國民貯蓄
組合法中改正法律案外二件ノ特別委員ニ併
託セラレムコトノ動議ヲ提出致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=93
-
094・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=94
-
095・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 戶澤子爵ノ
動議ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=95
-
096・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス、是ニテ本日ノ議事日程ハ終リ
マシタガ、御諮ヲ致スコトガゴザイマス、
本會期ヲ通ジマシテ、本會議ノ開會中ニ委
員會開會ノ要求ガアリマシタ場合ニ、議事
ニ差支ナキ限リ、議長ニ於テ之ヲ許可スル
コトニ致シタイト存ジマス、御異議ゴザイ
マセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=96
-
097・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス、次ニ御諮ヲ致シマスコトハ、
本會期ハ戰時下ノコトデモアリマスルカ
ラ、議事ノ進捗ヲ圖ル爲、此ノ際議案配付
後、及ビ各讀會間ニ於ケル定規ノ日數ヲ經
ズシテ、議事ヲ開クコトニ致シタイト存ジ
やく、御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=97
-
098・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス、次會ノ議事日程ハ、決定次第
彙報ヲ以テ御通知ニ及ビマス、本日ハ是ニ
テ散會致シマス
午後零時五十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00319420122&spkNum=98
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。