1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十七年二月四日(水曜日)午前十時十分開議
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議事日程 第八號
昭和十七年二月四日
午前十時開議
第一 米穀需給調節特別會計法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第二 木炭需給調節特別會計据置運轉資本臨時補足に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第三 食糧管理法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第四 國民體力法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第五 國民醫療法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第六 健康保險法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第七 國民健康保險法中改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第八 戰時災害保護法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00819420204&spkNum=0
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001・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 報告ヲ致サ
セマス
〔高山書記官朗讀〕
一昨二日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提
出案ハ卽日之ヲ衆議院ニ送付セリ
大東亞戰爭ノ呼稱ヲ定メタルニ伴フ各法
律中改正法律案
同日本院ニ於テ採擇スルコトヲ議決シタル
商船ニ於ケル國旗取扱規則竝船員服裝規則
制定ノ請願外五件ノ請願ハ各〓意見書ヲ附シ
卽日之ヲ政府ニ送付セリ
同日委員會ニ於テ當選シタル正副委員長ノ
氏名左ノ如シ
南方開發金庫法案特別委員會
委員長伯爵兒玉秀雄君
副委員長男爵深尾隆太郞君
兵器等製造事業特別助成法案特別委員會
委員長侯爵西〓從德君
副委員長子爵米田國臣君
國民更生金庫法中改正法律案特別委員會
委員長伯爵溝口直亮君
副委員長男爵東久世秀雄君
同日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
戰時ニ於ケル領事官ノ裁判ノ特例ニ關ス
ル法律案可決報告書
戰時民事特別法案可決報〓書
戰時刑事特別法案可決報〓書
裁判所構成法戰時特例案可決報〓書
昨三日郵便法中改正法律案特別委員會ニ於
テ當選シタル正副委員長ノ氏名左ノ如シ
委員長子爵〓岡長言君
副委員長男爵神山嘉瑞君
同日衆議院ヨリ左ノ政府提出案ヲ受領セリ
昭和十七年度歲入歲出總豫算案竝昭和十
七年度各特別會計歲入歲出豫算案
豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲ス
ヲ要スル件
昭和十六年度歲入歲出總豫算追加案(第
読
昭和十六年度各特別會計歲入歲出豫算追
加案(特第一號)
昭和十七年度歲入歲出總豫算追加案第
號
昭和十七年度各特別會計歲入歲出豫算追
加案(特第一號)
豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲ス
ヲ要スル件(追第一號)
米穀需給調節特別會計法中改正法律案
木炭需給調節特別會計据置運轉資本臨時
補足ニ關スル法律案
食糧管理法案
國民體力法中改正法律案
國民醫療法案
健康保險法中改正法律案
國民健康保險法中改正法律案
戰時災害保護法案
同日衆議院ヨリ本院ノ送付ニ係ル左ノ政府
提出案ハ同院ニ於テ之ヲ可決シ奏上セル旨
ブ通牒ヲ受領セリ
簡易生命保險法中改正法律案
同日內閣總理大臣ヨリ左ノ通第七十九囘帝
國議會政府委員仰付ラレタル旨ノ通牒ヲ受
領セリ
政府委員
技術院總裁子爵井上匡四郞君
技術院次長和田小六君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00819420204&spkNum=1
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002・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 是ヨリ本日
ノ會議ヲ開キマス、一昨二日、子爵井上匡
四郞君ヨリ、職務上ノ都合ニ依リ豫算委員
辭任ノ申出ガゴザイマシタ、許可ヲ致シテ
御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00819420204&spkNum=2
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003・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス、就キマシテハ第五部ニ於テ其
ノ補關選擧ヲ行ハレムコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00819420204&spkNum=3
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004・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 此ノ際大藏
大臣ニ發言ヲ許シマス、賀屋大藏大臣
〔國務大臣賀屋興宣君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00819420204&spkNum=4
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005・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 玆ニ昭和十七年
度歲入歳出豫算ノ大要ヲ說明致シ、併セテ
我ガ國財政經濟ノ現狀ニ付所見ヲ述ブル機
會ヲ得マシタコトハ、私ノ最モ光榮トスル
所デアリマス、是ヨリ昭和十七年度歲入歲
出總豫算及同追加豫算第一號ニ付、曩ニ御
協贊ヲ得マシタ同追加豫算第二號ヲモ併セ
テ、大體ノ說明ヲ申上ゲタイト存ジマス、
先ヅ歲出豫算ノ金額ハ、本豫算計上ノ分六
十二億三千五百餘萬圓、追加豫算第一號計
上ノ分二十四億六千二百餘萬圓、追加豫算
第二號計上ノ分一億三千九百餘萬圓、合計
八十八億三千七百餘萬圓デアリマシテ、之
ヲ前年度豫算額、旣ニ成立致シマシタモノ
ニ更ニ本議會ニ提出致シテ居リマスル追加
豫算ノ金額ヲモ合セマシタ金額デアリマス
ルガ、ソレニ比較致シマスレバ、一億七千
九百餘萬圓ノ增加ト相成ッテ居リマス、尙右
ノ昭和十七年度歲出總豫算額ニ、曩ニ本議
會ニ於テ御協賛ヲ得マシタ臨時軍事費特別
會計ノ追加豫算額百八十億圓ヲ加算致シマ
スルト、二百六十八億三千七百餘萬圓デア
リマスルガ、此ノ內兩會計間ニ於テ重複致
シマス金額ヲ差引キ致シマスト、二百四十
三億千百餘萬圓ト相成ル次第デアリマス、
昭和十七年度本豫算ノ編成ニ際シマシテハ、
當時ノ情勢ニ顧ミマシテ、國策遂行ノ爲眞
ニ已ムヲ得ザル經費ノ中、義務的經費若シ
クハ之ニ準ズルモノ、又ハ從前ヨリノ施設
ノ繼續ニ要スル經費デアリマシテ情勢ノ變
化如何ニ拘ラズ引續キ必要ナルモノニ限定
ヲ致シテ、之ヲ計上スルコトト致シタノデ
アリマス、從ヒマシテ米英兩國ニ對スル戰
端ノ開始ト共ニ、新情勢ニ卽應致シマス爲
ニ、戰時緊要ナル施策ノ實施ニ關スル經費
ニ付キマシテ、追加豫算ヲ提案スルノ必要
ガ生ジタノデアリマス、而シテ其ノ編成ニ
當リマシテハ、重點主義ニ依リ物資、資金、
勞務等ノ政府需要ハ、戰勝ノ目的達成ノ爲
ニ必要缺クベカラザルモノニ之ヲ集中スル
ノ方針ニ依リマシテ、眞ニ緊急性ト實行可
能性トヲ有シ、且速急ニ效果ヲ期待シ得ル
モノニ限リ之ヲ計上致シマシタ次第デアリ
マス、今本豫算及追加豫算ヲ通ジテ、昭和
十七年度豫算ノ編成上特ニ重點ヲ置キ新規
經費トシテ計上致シマシタモノハ、第一、
生產力擴充竝ニ低物價維持ニ關スル經費デ
アリマス、卽チ石炭增產對策等ニ要スル
經費ノ增加、銑鐵買取價格補償ニ要ス
ル經費等、合計三億八千三百餘萬圓デア
リマス、尙右ノ外政府出資特別會計ニ於
キマシテ、生產力擴充ニ資スル投資ト致シ
マシテ二億七千四百餘萬圓ヲ計上致シテ居
ルノデアリマス、第二ハ、產業再編成ニ關
スル經費デアリマス、卽チ產業設備營團ニ
關スル經費、中小商工業ノ再編成ニ要スル
經費、轉廢業者援護ニ要スル經費、國民更
生金庫損失補償金等、合計一億二百餘萬圓
デアリマス、第三ハ、國民保健其ノ他國民
生活及人口對策ニ關スル經費デアリマシテ、
米穀生產奬勵金其ノ他主要食糧增產ニ關ス
ル經費、國民健康保險ニ關スル經費ノ增加、
日本醫療團設立ニ要スル經費、國民體力法
施行ニ要スル經費等、合計三億八千百餘萬
圓デアリマス、尙茲ニ一言申加ヘタキハ政
府ハ國民保健ノ向上ト國民生活ノ維持安定
ニ特ニ留意致シマシテ、今囘ノ稅法改正ニ
於テモ所得稅ノ課稅ニ當リ扶養家族ニ對ス
ル控除金額ヲ二倍乃至三倍ニ增加シ、又官
公吏等ノ臨時家族手當ノ制度ヲ擴充致シマ
シテ、支給家族數ノ制限ヲ撤廢シ、家族一
人當支給額ヲ若干增加シテ、以テ多子家庭
ヲ保護シ人口政策ニ資セムト致シタノデア
リマス、第四ハ、重要物資ノ貯藏ニ關スル€
經費ト致シマシテ、重要食糧貯藏施設ニ要
スル經費、重要物資管理ニ要スル經費等、
合計五千餘萬圓デアリマス、第五ハ、軍人
援護ニ關スル經費ト致シマシテ、軍事扶助
費ノ增加、傷痍軍人保護ニ要スル經費、軍
人援護事業助成ニ要スル經費等、合計一億
三千五百餘萬圓デアリマス、第六ハ、科學
及技術ノ振興ニ關スル經費ト致シマシテ、
技術院ニ關スル經費、科學技術ノ刷新向上
ニ要スル經費、〓究試作費補助ニ要スル經
費、官立無線電信講習所設立ニ要スル經費、
航空機乘員養成ニ關スル經費等、合計五千
六百餘萬圓デアリマス、第七ハ、防空ニ關ス
ル經費ト致シマシテ、防空設備資材整備費
補助ニ要スル經費、防空實施ニ要スル經費
等合計三千六百餘萬圓デアリマシテ、何
レモ現下ノ時局ニ顧ミ緊急差措キ難キ經費
ヲ計上致シタモノデアリマス、尙國庫豫備
金ニ付キマシテハ、豫算超過又ハ豫算外支
出ノ增加ノ必要ニ備フル爲之ヲ增額致シマ
シテ、本豫算及追加豫算ラ通ジ、旣定額ト
合ハセテ第一豫備金五千萬圓、第二豫備金
八億圓ト致シタノデアリマス、又臨時軍事
費特別會計ヘノ繰入金額ハ、一般會計ニ於
キマシテハ本豫算及追加豫算第一號ヲ通
ジ、合計二十五億二千五百餘萬圓デアリマ
ズ、之ニ各特別會計ニ於テ本豫算及追加豫
算特第一號ヲ通ジ計上致シマシタ金額、合
計五億一千四百餘萬圓ヲ加ヘマスレバ、總
計三十億四千餘萬圓ニ上リマシテ、前年度
ニ比較致シ十九億一千八百餘萬圓ノ增加ト
相成ル次第デアリマス、次ニ既定經費ニ付
キマシテハ、嚴密ナル再檢討ヲ行ヒ、極力
壓縮ヲ加ヘマシタル結果、文治各省ノ所管
ニ於テ三億八百餘萬圓ノ減少トナッタノデ
アリマス、尙陸海軍兩省所管ノ經費ニ付キ
マシテハ、部隊艦船ニ於テハ勿論、其ノ他
各部ニ於ケル諸般ノ實情ニ鑑ミ、今囘ハ大
部分ヲ臨時軍事費支辨ト致シマシタ爲、旣
定經費ニ於キマシテ三十六億六千八百餘萬
圓ヲ減少致シテ居ルノデアリマス、次ニ歲
入豫算ニ付說明ヲ致シマス、一般會計歲入
豫算ノ金額ハ、本豫算計上ノ分六十二億四
千八百餘萬圓、追加豫算第一號計上ノ分二
十四億五千餘萬圓、追加豫算第二號計上ノ
分一億三千九百餘萬圓、合計八十八億三千
七百餘萬圓デアリマシテ、其ノ內譯ハ本豫
算及追加豫算ヲ通計致シ、租稅其ノ他ノ普
通歲入ガ七十二億五千七百餘萬圓、借入金
ガ五千四百萬圓、公債金ガ十五億二千六百
餘萬圓デアリマス、普通歲入ノ大宗タル租
稅收入ハ、經常臨時ノ各部ヲ合セマシテ其
ノ總額五十七億六千餘萬圓デアリマス、之
ヲ前年度豫算額ニ比較致シマスレバ、十八
億九千七百餘萬圓ノ增加ト相成ッテ居リマ
ス、此ノ中、前年度ニ於ケル間接稅等ノ增稅
ニ基キマスル分ガ四億六千百餘萬圓デアリ
マス、今期議會提案ニ係ル直接稅等ノ增稅ニ
基ク分ガ九億六千七百餘萬圓デアリマス、自
然增收等ニ屬スル分ガ四億六千八百餘萬圓
デアリマス、尙本年度租稅收入豫算額ヲ、
事變前卽チ昭和十一年度ノ租稅收入豫算額
九億六千五百餘萬圓ニ比較致シマスレバ、
實ニ六倍ニ相成ッテ居ルノデアリマス、租稅
以外ノ普通歲入ノ增加ノ中顯著ナルモノヲ
申上ゲマスレバ、印紙收入ノ增加ガ增稅ノ
分ヲモ含メマシテ一千七百餘萬圓、森林收
入ノ增加ガ二千餘萬圓、專賣局益金ノ增加
ガ一億三千四百餘萬圓、日本銀行納付金ノ
增加ガ五千百餘萬圓等デアリマス、次ニ借
入金ハ、陸軍航空工廠資金臨時補足ノ財源
トシテ三千五百萬圓、陸軍工廠資金臨時補
足ノ財源トシテ千萬圓、及ビ木炭需給調節
特別會計据置運轉資本臨時補足ノ財源トシ
テ九百萬圓ヲ豫定致シテ居ルノデアリマス、
又公債金收入ハ、震災善後公債百餘萬圓、
道路公債千七百餘萬圓、歲入補塡公債十五
億七百餘萬圓、計十五億二千六百餘萬圓デ
アリマシテ、前年度ニ比シ十四億七千七百
餘萬圓ノ減少ト相成ッテ居ルノデアリマス、
右一般會計ニ於ケル公債發行豫定額ニ、朝
鮮臺灣、帝國鐵道、通信事業及政府出資
ノ各特別會計ニ於ケル公債發行豫定額合計
八億三千百餘萬圓、及ビ曩ニ御協賛ヲ經マ
シタ臨時軍事費財源タル公債發行豫定額百
四十億餘萬圓ヲ加ヘマスレバ、本年度歲出財
源タル公債發行豫定總額ハ、百六十三億五
千八百餘萬圓ト相成ルノデアリマス、女ヘ
各特別會計豫算ニ於キマシテモ、本豫算及
追加豫算ヲ通ジ、ソレ〓〓前ニ申述べマシ
タル一般會計豫算ノ編成方針ニ準據シ、極
力節約ヲ旨トシ、時局ニ鑑ミ眞ニ緊急缺ク
ベカラザル經費ヲ計上致シタ次第デアリマ
ス、政府ハ曩ニ開戰ノ宣セラレマスルヤ、
直チニ金融等ニ關スル非常對策ヲ講ジ、又
戰爭保險臨時措置法ヲ制定スル等、戰時ニ
於ケル經濟界ノ混亂ヲ避ケ、國民生活ノ維
持安定ヲ期スル爲必要ナル措置ヲ執ッタノ
デアリマスルガ、開戰後玆ニ二箇月近ク相
成リマスルガ、皇軍ノ赫々タル大戰果ノ下
ニ國民ノ志氣ハ愈〓旺旺デアリマシテ、我ガ
經濟界ハ極メテ平靜ニ推移シ、諸般ノ非常
對策モ殆ド其ノ實施ノ要ヲ見ザルガ如キ狀
況ノ下ニ戰爭第二年ヲ迎ヘ得マシタコトハ
誠ニ慶賀ニ堪ヘナイ所デアリマス、是レ實
ニ御稜威ノ下、我ガ忠勇ナル陸海軍將兵ノ
力戰奮鬪ノ賜デアリマシテ、衷心ヨリ感謝
感激ノ外ナキ次第デアリマス、私ハ前線ニ
奮鬭セラルヽ陸海軍將兵ノ武運長久ヲ祈願
致シマスルト共ニ、尊キ護國ノ英靈ニ對シ
敬弔ノ意ヲ表スルモノデアリマス
〔議長伯爵松平賴壽君議長席ニ著ク〕
昨年中ニ於ケル金融界ノ情勢ハ終始平穩デ
アリマシテ、大東亞戰爭ノ勃發ニモ拘ラズ、
何等ノ波瀾モナク經過ヲ致シタノデアリマ
ス、卽チ政府資金ノ撒布ハ引續キ巨額ニ達
シタノデアリマスルガ、其ノ還流ハ〓ネ順
調ニ行ハレ、昨年末ノ兌換銀行劵最高發行
高ハ六十二億三千百餘萬圓ニ達シ、一昨年
末ノ四十九億三千餘萬圓ニ比シ、十三億百
餘萬圓ノ增加ヲ示シタノデアリマスルガ、
越年後ニ於ケル收縮狀況ハ極メテ順調デア
リマス、銀行預金ハ昨年中ニ六十六億千百
餘萬圓ヲ增加致シテ居リマス、郵便貯金ハ
同期間ニ十六億五千餘萬圓ノ增加ヲ示シテ
居リマス、又起債界モ順調ニ推移致シマシ
テ、昨年中ノ社債新規發行額ハ二十六億四
千九百餘萬圓ノ多額ニ上ッタノデアリマス、
昨年中ニ於ケル國債ノ發行額ハ八十七億八
千二百萬圓ニ上ッタノデアリマスルガ、同
年中ニ於テ其ノ八割三分九厘、七十三億六
千六百餘萬圓ヲ消化致シタノデアリマス、
又支那事變發生以來本年一月末日迄ノ國債
發行總額二百十五億六千百餘萬圓ノ中、消
化致シマシタ額ハ二百三十億九千七百餘萬
圓デアリマシテ、八割三分八厘ノ消化率ヲ
示シ相當ノ成績デアリマス、併シナガラ昭
和十七年以降ニ於キマシテハ、國債發行豫
定額ハ益〓巨額ニ達スルノデアリマシテ、國
債ノ完全ナル消化ニ努ムルコト愈〓、緊要トナッ
テ居ル次第デアリマス、戰時財政ノ運營上
租稅ノ重要ナルコトハ申ス迄モナイノデア
リマスルガ、銃後國民ノ熱烈ナル愛國的精
神ハ、納稅ニ付キマシテモ遺憾ナク發揮セ
ラレマシテ、數次ノ增稅ニ依リ負擔ノ加重
セラレタルニモ拘ラズ、納稅ノ成績ノ極メ
テ良好デアリマスルコトハ誠ニ感激ニ堪ヘ
ナイ所デアリマス、而シテ政府ニ於キマシ
テハ財政ノ需要竝ニ國民生活及國民經濟ニ
及ス影響等ニ付愼重考究ヲ遂ゲ、稅制ノ全
般ニ亙ル增稅計畫ヲ樹立シマシテ、曩ニ早
急實施ヲ要スルト認メラルヽ酒稅其ノ他ノ
間接稅ヲ中心トスル增稅案ノ御協賛ヲ得マ
シテ、既ニ實施致シテ居ルノデアリマスルガ、
今囘更ニ增加スル臨時軍事費ノ財源ニ充テ
マスル爲、直接稅ヲ中心トスル增稅ヲ行フ
コトト致シ、之ニ必要ナル稅法ノ改正案ヲ
今期議會ニ提出致シテ居ルノデアリマス、
本邦ノ對外貿易ニ關シマシテハ、昨年七月
ノ米英蘭諸國ノ對日資產凍結ニ次イデ、今
次大東亞戰爭ノ勃發ニ依リ米英蘭諸國トノ
經濟關係ハ完全ニ斷絕スルニ至ッタノデアリ
マスルガ、滿支方面トノ貿易ハ堅實ナル步
調ヲ示シテ居リマス、又佛印及「タイ」トノ
貿易ガ、輸出入共著シキ增加ヲ示シテ居リ
マスコトハ、大東亞共榮ノ見地カラ心强ク
感ズル次第デアリマス、斯クノ如ク我ガ對
外經濟活動ハ專ラ大東亞共榮圈ノ地域ニ集
中セラレルコトト相成リマシタノニ伴ヒ、
共榮圈內ニ於ケル物資ノ計畫的交流ヲ圖ル
コトハ刻下ノ急務ト相成ッタノデアリマシ
テ、茲ニ國際金融ノ部面ニ於テモ過去ノ政
策ニ一大轉換ヲ加ヘ、新タナル構想ノ下ニ
新事態ニ卽應スベキ政策ヲ速カニ實施スル
ノ必要ヲ見ルニ至ッタノデアリマス、卽チ第
三國トノ間ノ國際收支ノ均衡保持、及ビ米
英貨基準ノ爲替相場ノ維持安定ヲ目的トス
ル從來ノ爲替政策ハ、我ガ國ノ對外經濟ガ
米英兩國ニ依存シテ運營セラレテ居リマス
ル時代ニ於キマシテハ、重要ナル意義ヲ有
シテ居ッタノデアリマスルガ、今ヤ米英經濟
トノ關聯ヲ一擲シ、大東亞ヲ打ッテ一丸トス
ル國防經濟力ノ强化充實ヲ圖ルベキ當面ノ
急務ニ應ズル爲ニハ、共榮圈內ニ於ケル物
資ノ交流ヲ圓滑ナラシムルト共ニ、資源ノ
開發ヲ急速ニ促進セシムルニ必要ナル金融
上ノ措置ニ重點ヲ置クベキモノデアリマス、
政府ハ斯カル見地ヨリ、昨年末米英貨ニ基
準ヲ置ク從來ノ爲替相場ヲ廢止致シマシテ、
日本圓ヲ中心トスル自主的換算率ヲ公定致
シタノデアリマス、更ニ今後ニ於テハ、南
方諸地域ニ於ケル米英ノ金融勢力ヲ一掃シ、
是等ノ地域ノ通貨ハ其ノ價値基準ヲ漸次日
本圓ニ置カシムルコトトシ、各地域間ノ決
濟ハ日本圓ヲ通ジ東京ニ於テ行ハルヽ方式
ヲ馴致致シ、以テ我ガ國ヲ中心トスル大東
亞金融圈ノ設定ニ努ムル所存デアリマス、
從來我ガ國ハ、日滿華ヲ打ッテ一丸トスル
綜合的見地ニ立脚シテ生產力ノ擴充ニ努メ
テ參ッタノデアリマスルガ、更ニ進ンデ此
ノ豐富ナル南方資源ヲ、最モ速カニ最モ效
率的ニ開發取得シテ、當面ノ戰爭遂行ニ寄
與セシムルト共ニ、大東亞共榮圈內ノ自給
自足體制ヲ確立スルノ肝要ナルコトハ申ス
迄モアリマセヌ、卽チ一面敵ノ兵力ヲ擊碎
シツヽ一面資源ノ開發ヲ促進スルコトガ目
前ノ急務デアリマス、是等ノ諸點ニ鑑ミマ
シテ、政府ハ南方資源ノ開發利用ニ必要ナ
ル資金ヲ圓滑ニ供給シ、南方諸地域ノ通貨
金融政策ノ圓滑ナル運營ヲ期スルガ爲ニ、
先般御說明申シマシタ如ク新タニ南方開發
金庫ヲ設立セムト致スモノデアリマス、右
申述ベマシタル爲替換算率ノ自主的公定ト、
日本銀行ノ對外金融ヘノ進出態勢トハ、我
ガ國ヲ中心トスル大東亞共榮圈ノ金融施策
ニ付テ一步ヲ進メルモノデアリマス、而シ
テ南方諸地域ニハ、我ガ軍票ハ到ル處住民
ノ歡迎ヲ受ケ極メテ圓滑ナ流通ヲ見テ居リ
マシテ、南方開發金庫ノ設立竝ニ中央及現
地ニ於ケル各般ノ施策ト相俟ッテ南方諸地
域ニ於ケル通貨金融ニ關シ、當面ノ措置ヲ講
ジ得ル態勢ヲ整ヘムトスルモノデアリマス、
戰時下國家總力ノ發揮ニ遺憾ナカラシムル
爲ニハ、一面極力資金ノ蓄積ニ努ムルト共
ニ、其ノ蓄積セラレタル資金ノ統制的運用
ヲ行ヒ、以テ之ガ最モ效果的ナ活動ヲ爲サ
シムルコトガ緊要デアリマス、之ガ爲各種
金融機關ノ機構ノ整備ヲ必要トスルノデア
リマスルガ、此ノ際先ヅ中央發劵銀行タル
日本銀行ヲシテ、我ガ國通貨金融制度ノ中
核トシテ政府ト一體的關係ニ立チ、國策ノ
嚮フ所ニ卽シテ通貨ノ調節、金融ノ調整及
信用制度ノ保持育成ノ責ニ任ゼシメ、進ンデ
ハ大東亞共榮圈全體ノ金融ノ中心タルベキ
任務ヲ果サシムルノ體制ヲ整備致シマスルコト
ガ最モ必要デアルト存ズルノデアリマス、仍テ
政府ハ今囘日本銀行制度ノ根本的改正ヲ行
ヒ、尙時勢ノ進運ニ應ズル爲、日本銀行券ノ
兌換制度ヲ廢止シ、完全ニ金ヨリ離脫シタ
ル管理通貨制度ヲ採用スルコトヲ明カニ致
シタノデアリマス、併シナガラ此ノ改正ハ
旣成事實ヲ確認シタルモノデアリマシテ、
之ニ依リ金ノ重要性ハ失ハレルモノデハナ
イノデアリマス、又金融統制及資金活用ノ
微底ヲ期スルガ爲ニハ、進ンデ法的基礎ニ
基キ金融機關ノ團體的機構ヲ整備シ、金融
機關ヲシテ團體ノ自律力ヲ活用シテ政府
ノ金融統制ニ一段ト積極的ニ協力セシムル
コトガ適當デアルト認メラレルノデアリマ
ス、仍テ政府ハ目下國家總動員法ニ基キ金
融事業ノ統制ヲ目的トスル團體ヲ設立セシ
ムル爲、必要ナル準備ヲ進メテ居ル次第デ
アリマス、軍需產業、生產力擴充產業、其ノ
他國家緊要產業ニ對スル資金ノ圓滑ナル供
給ヲ圖ルコトハ、戰時金融ノ主眼點デアリマ
ス、從ッテ我ガ國ニ於ケル各種金融機關ハ、
擧ゲテ此ノ方面ニ努力ヲ致スベキデアリマ
シテ、從來商業金融ヲ主トシタル銀行等ノ
職能モ、戰時ノ事業金融ニ轉換シ、謂ハバ
全金融機關ガ戰時金融機關タル性質ヲ帶ビ
ツヽアルノデアリマス、併シナガラ戰時緊
要事業ノ一部ニハ、其ノ性質上、是等既存
ノ金融機關等ノ通常ノ方法ニ依ル資金ノ供
給ノミニテハ尙不十分ト認メラレマスル場
合ガ相當ニ多イノデアリマス、且此ノ種資
金ノ需要ハ將來一層增大スベキ趨勢ニアリ
マスルノデ、政府ハ此ノ目的ノ爲必要ナル
資金ニシテ他ノ金融機關等ヨリ供給ヲ受ク
ルコト困難ナルモノニ付テハ、新タニ特殊
ノ金融機關ヲ設置シ、之ヲシテ供給セシム
ルヲ戰時金融ノ整備强化上適當ト認メマシ
テ、今期議會ニ戰時金融金庫法案ヲ提出致
シタノデアリマス、而シテ以上ニ述ベマシ
タ日本銀行ノ改組、金融統制團體ノ組織及
ビ戰時金融金庫ノ設立、更ニ外ニハ南方開
發金庫ノ設立ニ依リ、從來ノ金融機關ト相
俟ッテ、玆ニ戰時金融ノ責ニ任ズベキ金融機
構ノ整備ヲ見タルモノト言ヒ得ルト存ズル
ノデアリマス、有價證劵ノ價格ノ適正安定
ヲ圖ルコトハ、生產力擴充資金其ノ他產業
資金ノ疏通ト、國民貯蓄ノ保護ノ上ヨリ見
テ頗ル緊要デアリマス、此ノ見地ニ基キ政
府ハ從來有價證劵ノ價格、特ニ株式價格ノ
安定ニ關シマシテハ各般ノ施策ヲ講ジ來タッ
タノデアリマスガ、今後トモ行過ギタル思
惑等ニ基ク過當ナル騰落ハ共ニ之ヲ抑ヘ
著シキ變動ハ出來得ル限リ之ヲ避クルヤウ
致シタイト存ズルノデアリマス、又保險會
社ニ付キマシテハ、從來ヨリ國民生活ノ維
持安定ニ資スルト共ニ必要ナル資金ノ蓄積
配分ニ寄與スル處大ナルモノガアリマスル
ノデ、政府ハ今後モ努メテ新機軸ヲ發揮セ
シムルヤウ指導致シ、其ノ機能ノ擴充ニ努
メル方針デアリマス、我ガ國ガ大東亞ノ天
地ニ大規模ナル戰爭ヲ繼續スルコト既ニ四
年有半、而モ我ガ國ノ國防經濟力ハ年ト共ニ
著シキ增强ヲ來タシテ居リ、加フルニ南方諸
地域ノ豐富ナル資源ノ開發利用ヲ完ウシ得
ルニ於テハ、我ガ經濟界ノ前途ハ眞ニ希望
ニ溢ルヽ所デアリマス、併シナガラ此ノ資
源ヲ開發シ、之ヲ基礎トシテ我ガ國防經濟
力ノ一層ノ增强ヲ圖リマスル爲ニハ、今後
莫大ナル資材、勞力、技術及輸送力ガ必要
トナルノデアリマス、是等ノ生產力擴充ニ
要スル資金ト、一面今後益,增加スル戰費ト
ハ頗ル巨額ニ達スルノデアリマス、而シテ
他面莫大ナル戰費撒布ニ依ル民間資金ヲ囘
收致シ、以テ國民經濟ノ運行ヲ確保スルコ
トガ愈〓緊要デアリマシテ、之ガ資金ノ囘收、
蓄積ニ遺憾ナカラシムル爲ニハ、其ノ大部
ヲ國民貯蓄ノ增强ニ俟ツノ外ハナイノデア
リマス、全國民ハ各其ノ分ニ應ジタル納稅
ニ依リ、國家ノ必要トスル戰費等ノ調達ニ
貢獻スルノ外、尙現在ニ幾層倍スル努力ヲ
以テ生產勤勞ニ勵ムト共ニ、消費生活ハ最
低限度ニ切詰メ、其ノ餘剩ハ擧ゲテ之ヲ貯
蓄ニ振向ケルコトガ絕對ニ必要デアリマス、
此ノ國民貯蓄ニ依ッテコソ、戰費ノ調達、生
產力擴充資金ノ供給ガ始メテ可能トナルノ
ミナラズ、同時ニ國民蓄貯ガ順調ニ增加シ
ツヽアル事實コソ、戰時財政經濟政策ノ圓
滑ナル運營ト其ノ綜合的成果トヲ反映スル
指針ニ外ナラナイト存ズルノデアリマス、
我々ハ米英兩國政府ガ、〓戰ノ打撃ニモ拘
ラズ、其ノ厖大ナル綜合國力ヲ傾注シテ、
長期ニ亙リ飽ク迄モ抗爭ヲ續ケ來タルモノ
ナルコトヲ覺悟致シテ、之ニ對シテ徹底的
ニ戰ヒ拔キ、完全ナル勝利ヲ得マシテ、以
テ大東亞共榮圈ヲ確立スル堅キ決意ノ下ニ、
綜合的ニシテ且雄大ナル構想ニ基ク各般ノ
財政經濟政策ヲ樹立致シマシテ、萬邦ニ冠
タル一億國民ノ祖國ニ對スル熱愛ヨリ發ス
ル絕大ナル努力ト無限ノ忍耐トニ依リ、之
ガ目的ノ完遂セラルヽコトヲ確信スルモノ
デアリマス、終リニ臨ミ、政府提出ノ豫算
案ニ付キマシテハ何卒速カニ御審議ノ上協
贊ヲ與ヘラレムコトヲ御願ヒ申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00819420204&spkNum=5
-
006・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第一、米穀
需給調節特別會計法中改正法律案、日程第
二、木炭需給調節特別會計据置運轉資本臨
時補足ニ關スル法律案、日程第三、食糧管
理法案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、
是等ノ三案ヲ一括シテ議題ト爲スコトニ御
異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00819420204&spkNum=6
-
007・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、賀屋大藏大臣
左ノ案ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ
タメ茲ニ載錄ス以下之ニ傚フ
米穀需給調節特別會計法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十七年二月三日
衆議院議長田子良
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
米穀需給調節特別會計法中改正法律案
米穀需給調節特別會計法中左ノ通改正ス
「米穀需給調節特別會計法」ヲ「〓糧管理
特別會計法」ニ改ム
第一條食糧管理ノ爲ニスル食糧ノ買入、
賣渡、交換、貸付、交付、加工、製造
又ハ貯藏ニ關スル一切ノ歲入歲出ハ之
ヲ一般會計ト區分シ特別會計ヲ設置ス
第三條第一項中「米穀」ヲ「食糧」ニ改ム
第四條ノ三中「八億五千萬圓」ヲ「二十一
億圓」ニ改ム
第六條本會計ニ於テハ〓糧ノ賣渡代金、
借入金及附屬雜收入ヲ以テ其ノ歲入ト
シ食糧ノ買入代金、食糧ノ買入賣渡交
換貸付交付加工製造貯藏及運搬ニ關ス
ル諸費、證劵及借入金ノ償還金及利子
其ノ他諸費ヲ以テ其ノ歲出トス
第六條ノ二中「米穀ノ數量又ハ市價ノ變
動ニ基ク」ヲ「〓糧ノ」ニ改ム
附則
本法ハ昭和十七年度ヨリ之ヲ施行ス
昭和九年法律第二十九號附則第二項ヲ削
ル
國債整理基金特別會計法第二條第四項中
「米穀證劵」ヲ「〓糧證劵」ニ改メ同法ニ左
ノ一條ヲ加フ
第十三條第二條第四項ノ規定ノ適用
ニ付テハ米穀證劵ハ之ヲ食糧證劵ト
看做ス
木炭需給調節特別會計据置運轉資本臨
時補足ニ關スル法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十七年二月三日
衆議院議長田子一民
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
木炭需給調節特別會計据置運轉資本臨
時補足ニ關スル法律案
政府ハ木炭需給調節特別會計ノ据置運轉
資本ニ不足アルトキハ九百萬圓ヲ限リ借
入金ヲ爲シ臨時之ヲ補足スルコトヲ得
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
食糧管理法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十七年二月三日
衆議院議長田子一尺.
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
食糧管理法案
食糧管理法
第一條本法ハ國民食糧ノ確保及國民經
濟ノ安定ヲ圖ル爲食糧ヲ管理シ其ノ需
給及價格ノ調整竝ニ配給ノ統制ヲ行フ
コトヲ目的トス
第二條本法ニ於テ主要食糧トハ米穀、
大麥、稞麥、小麥其ノ他勅令ヲ以テ定
ムル食糧ヲ謂フ
第三條米穀、大麥、稞麥又ハ小麥(以
下米麥ト稱ス)ノ生產者又ハ土地ニ付
權利ヲ有シ小作料トシテ之ヲ受クル者
ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ生產シ又
ハ小作料トシテ受ケタル米麥ニシテ命
令ヲ以テ定ムルモノヲ政府ニ賣渡スベ
前項ノ場合ニ於ケル政府ノ買入ノ價格
ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ生產費及物價
其ノ他ノ經濟事情ヲ參酌シテ之ヲ定ム
第四條政府ハ其ノ買入レタル米麥ヲ食
糧營團又ハ政府ノ指定スル者ニ賣渡ス
モノトス
前項ノ場合ニ於ケル政府ノ賣渡ノ價格
ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ家計費及物價
其ノ他ノ經濟事情ヲ參酌シテ之ヲ定ム
第五條政府ハ必要アリト認ムルトキハ
米麥以外ノ主要食糧ノ買入又ハ賣渡ヲ
爲スコトヲ得
前項ノ場合ニ於ケル政府ノ買入又ハ賣
渡ノ價格ハ時價ニ準據シテ之ヲ定ム
第六條政府ハ必要アリト認ムルトキハ
主要食糧ノ輸入若ハ移入ヲ目的トスル
買入又ハ輸出若ハ移出ヲ目的トスル賣
渡ヲ爲スコトヲ得
前項ノ場合ニ於ケル政府ノ買入又ハ賣
渡ノ價格ハ政府之ヲ定ム
第七條政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ主
要食糧ノ貸付又ハ交付ヲ爲スコトヲ得
政府ハ必要アリト認ムルトキハ主要食
糧ノ貯藏、交換、加工又ハ製造ヲ爲ス
コトヲ得
第八條第三條第一項ノ者ハ同項ノ規定
ニ依リ其ノ者ガ政府ニ賣渡スベキ米麥
ニ付勅令ノ定ムル所ニ依リ檢査ヲ受ク
ベシ但シ勅令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ
限ニ在ラズ
政府ハ必要アリト認ムルトキハ前項ノ
檢査ノ外勅令ノ定ムル所ニ依リ主要食
糧ニ付檢査ヲ受クベキコトヲ命ズルコ
トヲ得
第九條政府ハ特ニ必要アリト認ムルト
キハ勅令ノ定ムル所ニ依リ主要食糧ノ
配給、加工、製造、讓渡其ノ他ノ處分、
使用、消費、保管及移動ニ關シ必要ナ
ル命令ヲ爲スコトヲ得
第十條政府ハ特ニ必要アリト認ムルト
キハ勅令ノ定ムル所ニ依リ主要〓糧ノ
價格、加工賃又ハ製造ノ料金ニ關シ必
要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第十一條米麥ノ輸出若ハ移出又ハ輸入
若ハ移入ハ勅令ニ別段ノ定アル場合ヲ
除クノ外政府ノ許可ヲ受クルニ非ザレ
バ之ヲ爲スコトヲ得ズ
前項ノ規定ニ依リ政府ノ許可ヲ受ケ米
麥ヲ輸入又ハ移入シタル者ハ命令ノ定
ムル所ニ依リ其ノ輸入又ハ移入シタル
米麥ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノヲ政
府ニ賣渡スベシ
前項ノ場合ニ於ケル政府ノ買入ノ價格
ハ政府之ヲ定ム
政府ハ特ニ必要アリト認ムルトキハ勅
令ノ定ムル所ニ依リ期間ヲ指定シ米麥
以外ノ主要食糧ノ輸出若ハ移出又ハ輸
入若ハ移入ヲ禁止又ハ制限スルコトヲ
得
第十二條政府ハ必要アリト認ムルトキ
ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ期間ヲ指定シ
主要食糧ノ輸入稅ヲ增減又ハ免除スル
コトヲ得
第十三條主要食糧ノ生產費、生產高、
現在高及移動ノ調査、家計費ノ調査其
ノ他主要食糧ノ管理ヲ行フ爲必要ナル
調査ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ
之ヲ定ム
政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ前項ノ調
査ヲ行フ爲必要ナル報告ヲ徵シ又ハ當
該官吏若ハ吏員ヲシテ必要ナル場所ニ
臨檢シ業務ノ狀況若ハ帳簿書類其ノ他
ノ物件ヲ檢査セシムルコトヲ得
第十四條食糧營團ハ法人トシ政府之ヲ
監督ス
食糧營團ハ中央〓糧營團及地方食糧營
團トス
食糧營團ニ非ザル者ハ〓糧營團又ハ之
ニ類似スル名稱ヲ用フルコトヲ得ズ
第十五條中央〓糧營〓ハ政府ノ定ムル
食糧配給計畫ニ基キ主要食糧ヲ配給ス
ルト共ニ政府ノ指定スル〓糧ヲ貯藏ス
ル爲必要ナル事業ヲ行フコトヲ目的ト
ス
中央食糧營團ハ主タル事務所ヲ東京市
=図3)
中央〓糧營〓ハ政府ノ認可ヲ受ケ必要
ノ地ニ從タル事務所ヲ設置スルコトヲ
得
第十六條中央〓糧營團ノ資本金ハ一億
圓トシ之ヲ二百萬口ニ分チ一口ノ出資
金額ヲ五十圓トス但シ資本金ハ政府ノ
認可ヲ受ケ之ヲ增加スルコトヲ得
政府ハ五千萬圓ヲ限リ中央食糧營國ニ
出資スベシ
政府ノ引受ケタル出資ノ出資金拂込ハ
其ノ他ノ出資ノ出資金拂込ト之ヲ異ニ
スルコトヲ得
第十七條中央〓糧營〓ハ定款ヲ以テ出
資者ノ資格ヲ制限スルコトヲ得
第十八條中央食糧營團ニ總裁副總裁各
八、理事五人以上、監事三人以上及
評議員、若干人ヲ置キ政府之ヲ命ズ
第十九條中央食糧營團ハ左ノ事業ヲ行
フモノトス
-主要〓糧ノ買入
二地方食糧營團又ハ政府ノ指定スル
者ニ對スル主要食糧ノ賣渡
三政府ノ指定スル食糧ノ貯藏
四政府ノ指定スル主要食糧ノ加工、
製造及保管
五前各號ノ事業ニ附帶スル事業
六前各號ノ外中央食糧營團ノ目的達
成上必要ナル事業
中央〓糧營〓前項第五號又ハ第六號ノ
事業ヲ行ハントスルトキハ政府ノ認
可ヲ受クベシ
中央食糧營團ハ政府ノ認可ヲ受クルニ
非ザレバ其ノ事業ノ全部又ハ一部ヲ廢
止シ又ハ休止スルコトヲ得ズ
第二十條政府ハ中央食糧營團ニ對シ主
要食糧ノ配給上必要ナル事業ヲ行フベ
キコトヲ命ジ其ノ他業務ニ關シ公益上
必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得
第二十一條中央食糧營團ハ政府ノ許可
ヲ受ケ其ノ寄託ヲ受ケタル物ニ付倉荷
證劵ヲ發行スルコトヲ得
商業組合法第三條ノ六第二項第三項、
第三條ノ七、第三條ノ八第一項第二項
本文及第三條ノ九ノ規定ハ前項ノ倉荷
證劵ニ付之ヲ準用ス但シ同法第三條ノ
七、第三條ノ八第一項及第三條ノ九中
商業組合倉庫證劵トアルハ〓糧營團倉
庫證劵トス
第二十二條中央〓糧營〓ハ拂込資本金
額ノ五倍ヲ限リ食糧營團債劵ヲ發行ス
ルコトヲ得
政府ハ〓糧營〓債劵ノ元利支拂ヲ保證
スルコトヲ得
第二十三條中央〓糧營團ハ販賣ノ目的
ヲ以テ買入ルル者ニ主要食糧ヲ賣渡ス
トキハ命令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ認
可ヲ受ケ其ノ主要食糧ノ販賣ニ關シ必
要ナル事項ヲ指示スルコトヲ得
政府ハ主要食糧ノ配給上特ニ必要アリ
ト認ムルトキハ前項ノ者ニ對シ同項ノ
指示ニ從フベキコトヲ命ズルコトヲ得
第二十四條中央〓糧營團ノ解散及〓算
ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十五條地方〓糧營〓ハ地方長官
(樺太廳長官ヲ含ム以下同ジ)ノ定ムル
食糧配給計畫ニ基キ地方的ニ主要食糧
ヲ配給スルト共ニ地方長官ノ指定スル
食糧ヲ貯藏スル爲必要ナル事業ヲ行フ
コトヲ目的トス
地方食糧營團ノ名稱、資本金及主タル
事務所ノ所在地ハ政府之ヲ定ム
地方食糧營〓ノ名稱ニハ其ノ主タル事
務所ノ所在スル道府縣ノ名(樺太ニ在
リテハ樺太)ヲ冠ス
政府ハ樺太ニ地方〓糧營團ヲ設立セシ
ムル場合ニ於テハ八百萬圓ヲ限リ之ニ
出資スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル出資ハ樺太廳特別會
計ノ歲出トシ之ニ因リ取得シタル出資
證劵ハ同會計ノ所屬物件トス
第十六條第三項ノ規定ハ第四項ノ規定
ニ依ル出資ノ出資金拂込ニ之ヲ準用ス
第二十六條中央〓糧營〓ハ政府ノ認可
ヲ受ケ地方食糧營團ニ出資スルコトヲ
得
第十六條第三項ノ規定ハ前項ノ規定ニ
依ル出資ノ出資金拂込ニ之ヲ準用ス
第二十七條地方食糧營團ニ理事長一人、
理事三人以上、監事二人以上及評議員
若干人ヲ置キ地方長官之ヲ命ズ
第二十八條地方〓糧營〓ハ左ノ事業ヲ
行フモノトス
一主要食糧ノ買入及賣渡
二地方長官ノ指定スル食糧ノ貯藏
三地方長官ノ指定スル主要食糧ノ加
工及製造
四前各號ノ事業ニ附帶スル事業
五前各號ノ外地方長官ノ指定スル主
要食糧ノ保管其ノ他地方食糧營團ノ
目的達成上必要ナル事業
地方食糧營團前項第四號又ハ第五號ノ
事業ヲ行ハントスルトキハ地方長官ノ
認可ヲ受クベシ
第二十九條第十五條第三項、第十七條、
第十九條第三項、第二十條、第二十一
條、第二十三條及第二十四條ノ規定ハ
地方食糧營團ニ付之ヲ準用ス
第三十條農地開發法第八條、第十條乃
至第十四條、第十七條、第十九條、第
二十條後段、第二十一條、第二十二條
第二項第三項、第二十五條乃至第二十
七條、第二十九條乃至第三十七條及第
三十九條乃至第四十一條ノ規定ハ食糧
營團ニ付之ヲ準用ス但シ同法第十二條
第一項、第十三條第二項、第二十一條、
第二十七條、第三十五條、第三十七條第
二項、第三十九條、第四十條第一項及第
四十一條中主務大臣トアルハ政府トシ同
法第十九條第二項中副理事長ハトアルハ
地方食糧營團ニ付テハ理事ハ定款ノ定ム
ル所ニ依リトシ同法第四十條中農地開發
營團監理官トアルハ食糧營團監理官トス
第三十一條第九條又ハ第十條ノ規定ニ
依ル命令ニ違反シタル者ハ十年以下ノ
徵役又ハ五萬圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十二條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ三年以下ノ懲役又ハ一萬圓以下ノ罰
金ニ處ス
一第三條第一項又ハ第十一條第二項
ノ規定ニ違反シタル者
二第十一條第一項ノ規定ニ違反シ又
ハ同條第四項ノ規定ニ依ル禁止若ハ
制限ニ違反シタル者
前項第二號ノ場合ニ於テ輸出若ハ移出
又ハ輸入若ハ移入シタル主要〓糧ニシ
テ犯人ノ所有シ又ハ所持スルモノハ之
ヲ沒收スルコトヲ得若シ其ノ全部又ハ
一部ヲ沒收スルコト能ハザルトキハ其
ノ價額ヲ追徵スルコトヲ得
第三十三條前二條ノ罪ヲ犯シタル者ニ
ハ情狀ニ因リ懲役及罰金ヲ併科スルコ
トヲ得
第三十四條第二十三條第二項(第二十
九條ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ規
定ニ依ル命令ニ違反シタル者ハ三千圓
以下ノ罰金ニ處ス
第三十五條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
-不正ノ手段ニ依リ第八條ノ規定ニ
依ル檢査ヲ受ケ又ハ受ケントシタル
者
二第八條第二項ノ規定ニ依ル檢査ヲ
受ケザル者
三第十三條第二項ノ規定ニ依ル報〓
ヲ怠リ又ハ虚僞ノ報〓ヲ爲シタル者
第三十六條第十三條第二項ノ規定ニ依
ル當該官吏又ハ吏員ノ檢査ヲ拒ミ、妨
ゲ又ハ忌避シタル者ハ五百圓以下ノ罰
金ニ處ス
第三十七條法人ノ代表者又ハ法人若ハ
人ノ代理人、使用人其ノ他ノ從業者其
ノ法人又ハ人ノ業務ニ關シ第三十一
條第三十二條、第三十四條又ハ第三
十五條ノ違反行爲ヲ爲シタルトキハ行
爲者ヲ罰スルノ外其ノ法人又ハ人ニ對
シ各本條ノ罰金刑ヲ科ス
第三十八條食糧營團ノ總裁、副總裁、
理事長、理事、監事又ハ使用人其ノ職務
ニ關シ賄賂ヲ收受シ又ハ之ヲ要求シ若
ハ約束シタルトキハ二年以下ノ懲役又
ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス因テ不正ノ
行爲ヲ爲シ又ハ相當ノ行爲ヲ爲サザル
トキハ五年以下ノ懲役又ハ五千圓以下
ノ罰金ニ處ス
前項ノ場合ニ於テ收受シタル賄賂ハ之
ヲ沒收ス若シ其ノ全部又ハ一部ヲ沒收
スルコト能ハザルトキハ其ノ價額ヲ追
徵ス
第三十九條前條第一項ニ揭グル者ニ對
シ賄賂ヲ交付シ又ハ之ヲ提供シ若ハ約
束シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ五百
圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキ
ハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除スルコトヲ得
第四十條食糧營團本法若ハ本法ニ基キ
テ發スル命令又ハ之ニ基キテ爲ス處分
ニ違反シタルトキハ總裁、理事長、總
裁ノ職務ヲ行ヒ若ハ代理スル副總裁又
ハ理事長ノ職務ヲ行ヒ若ハ代理スル理
事ヲ五千圓以下ノ過料ニ處ス副總裁又
ハ理事ノ分掌業務ニ係ルトキハ副總裁
又ハ理事ヲ過料ニ處スルコト亦同ジ
第四十一條食糧營團ノ總裁、副總裁、
理事長又ハ業務ヲ分掌スル理事第三十
條ニ於テ準用スル農地開發法第二十一
條ノ規定ニ違反シ他ノ職務ニ從事シタ
ルトキハ千圓以下ノ過料ニ處ス
第四十二條第十四條第三項ノ規定ニ違
反シ食糧營團又ハ之ニ類似スル名稱ヲ
用ヒタル者ハ千圓以下ノ過料ニ處ス
第四十三條本法ノ一部ハ勅令ノ定ムル
所ニ依リ之ヲ樺太ニ適用セザルコトヲ
得
樺太ニ於テ本法ヲ適用スルニ付必要ナ
ル事項ニ關シテハ勅令ヲ以テ特例ヲ設
クルコトヲ得
附則
第四十四條本法施行ノ期日ハ各規定ニ
付勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十五條左ニ揭グル法律ハ之ヲ廢止
ス
一農產物檢査法
二米穀統制法
三米穀自治管理法
四米穀配給統制法
五籾共同貯藏助成法
六政府所有米穀特別處理法
七昭和九年法律第五十二號
八昭和十二年法律第九十號
前項ニ揭グル法律廢止前當該法律ノ罰
則ヲ適用スベカリシ行爲ニ付テハ仍從
前ノ例ニ依ル第一項ニ揭グル法律ノ廢
止ニ關シ必要ナル規定ハ勅令ヲ以テ之
ファミハ
第四十六條政府ハ設立委員ヲ命ジ中央
食糧營團ノ設立ニ關スル事務ヲ處理セ
シム
第四十七條設立委員ハ定款ヲ作成シ政
府ノ認可ヲ受クベシ
政府ハ前項ノ認可ヲ爲シタルトキハ第
十九條第一項ニ揭グル事業ト同種ノ事
業ヲ行フ株式會社、商業組合、商業組
合聯合會、工業組合又ハ工業組合聯合
會ニシテ勅令ヲ以テ定ムルモノニ對シ
其ノ解散ヲ命ズルコトヲ得
前項ノ命令ヲ受ケタル法人ハ中央〓糧
營團成立ノ時解散スルモノトシ其ノ權
利義務ハ中央食糧營團之ヲ承繼ス此
ノ場合ニ於テハ他ノ法令中解散及〓算
ニ關スル規定ハ之ヲ其ノ法人ニ適用セ
ズ
第四十八條前條第一項ノ認可アリタル
トキハ設立委員ハ政府ノ引受ケタル出
資及勅令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ認可
ヲ受ケ同條第二項ノ命令ニ係ル法人ノ
株式又ハ出資ニ引當テタル出資ヲ控除
シタル殘餘ノ出資ニ付キ出資者ヲ募集
スベシ
政府ハ前項ノ認可ヲ爲サントスルトキ
ハ〓糧配給事業評價委員會ノ議ヲ經ベ
シ
食糧配給事業評價委員會ニ關スル規程
ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十九條設立委員ハ出資者ノ募集ヲ
終リタルトキハ出資申込書ヲ政府ニ提
出シ其ノ檢査ヲ受クベシ
設立委員ハ前項ノ檢査ヲ受ケタル後遲
滯ナク出資第一囘ノ拂込ヲ爲サシムベ
シ
出資第一囘ノ拂込完了シタルトキハ出
資者ノ總會ヲ招集スベシ
前項ノ總會終結シタルトキハ設立委員
ハ遲滯ナク其ノ事務ヲ中央食糧營團總
裁ニ引渡スベシ
總裁前項ノ事務ノ引渡ヲ受ケタルトキ
ハ總裁、副總裁、理事及監事ノ全員ハ
主タル事務所ノ所在地ニ於テ設立ノ登
記ヲ爲スベシ
中央〓糧營團ハ設立ノ登記ヲ爲スニ因
リテ成立ス
第五十條本法ニ規定スルモノノ外中央
食糧營團ノ設立及第四十七條第二項ノ
命令ニ係ル法人ノ解散ニ關シ必要ナル
事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十一條前五條ノ規定ハ地方食糧營
團ニ付之ヲ準用ス但シ第四十七條第二
項中第十九條第一項トアルハ第二十八
條第一項トス
第五十二條第四十七條第三項ノ規定ニ
依リ解散シタル商業組合又ハ商業組合
聯合會ノ發行シタル倉荷證劵アルトキ
ハ之ヲ當該商業組合又ハ商業組合聯合
會ノ權利義務ヲ承繼シタル食糧營團ノ
發行シタル倉荷證劵ト看做ス
第五十三條登錄稅法中左ノ通改正ス
第五條ノ二中央〓糧營團力食糧營團
債劵ニ付登記ヲ受クルトキハ左ノ區
別ニ從ヒ登錄稅ヲ納ムヘシ
食糧營團債劵又ハ其ノ第二囘以
後ノ拂込
每囘拂込金額千分ノ二
二登記事項ノ變更、消滅又ハ廢止
每一件金十圓
從タル事務所ノ所在地ニ於テ前項各
號ノ登記ヲ受クルトキハ每一件金二
圓ノ登錄稅ヲ納ムヘシ
第十九條第七號中「農地開發營團、」ノ
下ニ「〓糧營團、」ヲ、「農地開發法、」ノ
下ニ「〓糧管理法、」ヲ加フ
第五十四條印紙稅法第五條中第五號ノ
二ヲ第五號ノ三、第五號ノ三ヲ第五號
ノ四トシ第五號ノ次ニ左ノ一號ヲ加フ
五ノ二食糧營團ノ發スル出資證劵及
食糧營團債劵
第五十五條產業組合中央金庫法第十五
條第一項ニ左ノ一號ヲ加フ
五食糧營團其ノ他農林水產業ニ關
スル事業ヲ營ム法人ニ對シ主務大
臣ノ認可ヲ受ケ短期貸付ヲ爲スコト
第五十六條商工組合中央金庫法第一一十
九條第一項第三號中「又ハ自動車運送
事業組合聯合會」ヲ「、自動車運送事業
組合聯合會又ハ〓糧營團」ニ改ム
第五十七條第十四條第三項ノ規定施行
ノ際現ニ〓糧營團又ハ之ニ類似スル名
稱ヲ使用スル者ハ同項ノ規定施行後六
月以內ニ其ノ名稱ヲ變更スルコトヲ要
ス
第四十二條ノ規定ハ前項ノ期間內之ヲ
同項ノ者ニ適用セズ
〔國務大臣賀屋興宣君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00819420204&spkNum=7
-
008・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) 只今議題トナリ
マシタ三案ノ中、米穀需給調節特別會計法
中改正法律案及ビ木炭需給調節特別會計据
置運轉資本臨時補足ニ關スル法律案ニ付キ
マシテ、其ノ提案ノ理由ヲ說明致シマス、
先ヅ米穀需給調節特別會計法中改正法律案
ニ付申上ゲマス、今囘米穀等ニ關スル諸法
律ヲ整備致シマシテ食糧管理法ヲ制定致シ
マスルニ伴ヒマシテ、從來ノ米穀需給調節
特別會計法ノ名稱ヲ變更致シマスル等ノ必
要ガアリマスルノト、之ニ關聯シテ國債整
理基金特別會計法中改正ヲ爲ス必要ガアリ
マスルノデ、本法律案ヲ提出致シマシタ次
第デアリマス、次ニ木炭需給調節特別會計
据置運轉資本臨時補足ニ關スル法律案ニ付
說明申上ゲマス、木炭需給調節ノ實狀ニ顧
ミマスルニ、現在ノ木炭需給調節特別會計
ノ据置運轉資本百萬圓ヲ以テ致シマシテハ、
同特別會計ノ圓滑ナル運營ヲ圖ルコト困難
トナリマシタノデ、九百萬圓ヲ限リ臨時之
ヲ補足シ、現行ノ据置運轉資本百萬圓ト合
シテ千萬圓ト爲シ、之ガ財源ハ借入金ニ依
ルコトト致シマスル爲、本法律案ヲ提出致
シマシタ次第デアリマス、以上二件ノ法律
案ニ付キマシテハ、何卒御審議ノ上速カニ
協賛ヲ與ヘラレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00819420204&spkNum=8
-
009・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 井野農林大臣
〔國務大臣井野碩哉君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00819420204&spkNum=9
-
010・井野碩哉
○國務大臣(井野碩哉君) 只今議題トナリ
マシタ三件ノ中、〓糧管理法案ニ付キマシ
テ提出ノ理由ヲ說明致シマス、本法律案提
出ノ理由ハ三ツノ點ニ歸スルノデアリマス、
其ノ第一ハ、主要食糧ノ國家管理體制ノ强
化ヲ圖ル必要ガアルコトデアリマス、現在、
政府ハ米麥ノ管理制度ヲ實施シテ居ルノデ
アリマスルガ、大東亞戰爭ノ進展ニ伴ヒマ
シテ、長期戰體制ニ卽應シ、銃後國民ノ生
活安定ノ上カラ見マシテモ、亦農山漁村ノ
健全ナル發達ノ上カラ見マシテモ、此ノ管
理制度ヲ一層强化シ、~農民ガ安ンジテ增產
ニ邁進シ得ルヤウ、生產セラレタル米麥ハ
必ズ政府ガ之ヲ買上グルト云フ熊勢ヲ明カ
ニスルコトガ緊要デアルト信ズルノデアリ
マス、第二ハ、主要食糧ノ配給機構ヲ整備
セムトスルコトデアリマス、卽チ現下ノ食
糧事情ニ鑑ミマシテ、一面ニ於テハ、從來
殆ド米ノミニ依存シタ配給ヨリ、主要食糧
ヲ打ッテ一丸トシタ綜合的配給ニ移行スル必
要ガアリマスルト共ニ、配給機構其ノモノ
モ亦之ニ卽應シタル公共的ナル機構ニ制度化
スル必要ガアルノデアリマス、之ガ爲中央及
地方ニ〓糧營團ヲ創設セシメマシテ、主要
食糧ノ綜合配給ニ關スル事業ヲ擔當セシメ
ムトスルモノデアリマス、第三ハ、非常時
用食糧ノ貯藏ノ問題デアリマス、從來、政府
ハ空襲等ノ緊急事態ニ備フル爲、非常時用
食糧ノ分散貯藏ヲ實施セシメツヽアルノデ
アリマスルガ、貯藏機關ハソレ〓〓ノ物資
每ニ區々トナッテ居リ統一ヲ缺イテ居リマ
スノデ、之ヲ只今申上ゲマシタ食糧營團ヲ
シテ實施セシメ、何時如何ナル緊急ノ場合
ニ於キマシテモ萬遺憾ナキヲ期セムトスル
モノデアリマス、其ノ他、米麥ノ管理制度
ノ强化ニ伴ヒ、其ノ檢査制度等モ、政府ノ
買上檢査ノ如キ意味ヲ多分ニ持ツヤウニナ
リマシタノデ、此ノ趣旨ニ卽應スル如キ制
度ニ改メ且其ノ豫算ノ協贊ヲモ御願致シテ
居ルノデアリマス、以上ノ理由ニ依リマシ
テ本法律案ヲ提出致シマシタ次第デゴザイ
マン、何卒御審議ノ上速カニ協賛ヲ與ヘラ
レムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00819420204&spkNum=10
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011・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今議題トナリマシタ
米穀需給調節特別會計法中改正法律案外二
件ハ、特別委員ノ數ヲ二十五名トシ其ノ委
員ノ指名ヲ議長ニ一任スルノ動議ヲ提出致
ショコ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00819420204&spkNum=11
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012・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00819420204&spkNum=12
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013・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 戶澤子爵ノ動議
ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00819420204&spkNum=13
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014・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、特別委員ノ氏名ヲ朗讀致サセマス
〔佐藤書記官朗讀〕
米穀需給調節特別會計法中改正法律案外
二件特別委員
公爵一條實孝君侯爵前田利爲君
侯爵德川賴貞君伯爵酒井忠正君
子爵富小路隆直君子爵織田信恒君
子爵安藤信昭君子爵松平康春君
子爵土岐章君宇佐美勝夫君
河井彌八君內田重成君
男爵大藏公望君橫山助成君
男爵三須精一君男爵坊城俊賢君
男爵杉溪由言君宮田光雄君
有賀光豐君千石興太郞君
山上岩二君二瓶泰次郞君
佐々木長治君佐藤助九郞君
柴田兵一郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00819420204&spkNum=14
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015・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第四、國民
體力法中改正法律案、日程第五、國民醫療
法案、日程第六、健康保險法中改正法律案、
日程第七、國民健康保險法中改正法律案、日
程第八、戰時災害保護法案、政府提出、衆
議院送付、第一讀會、是等ノ五案ヲ一括シ
テ議題ト爲スコトニ御異議ハゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00819420204&spkNum=15
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016・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、小泉厚生大臣
國民體力法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十七年二月三日
衆議院議長田子民
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
國民體力法中改正法律案
國民體力法中左ノ通改正ス
第二條中「未成年者」ヲ「年齡二十六年未
滿ノ男子及年齡二十年未滿ノ女子」ニ改
ム
第三條本法ニ於テ保護者ト稱スルハ左
ニ揭グル者ニシテ本法施行地內ニ居住
地ヲ有スルモノヲ謂フ
-未成年者タル被管理者ニ對シ親權
ヲ行フ者(親權ヲ行フ者ナキトキハ
後見人又ハ後見人ノ職務ヲ行フ者)
二禁治產者タル被管理者ノ後見人
第四條第一項中「年齡二十年ニ達セザル
モノ」ヲ「年齢二十六年ニ達セザル男子及
年齡二十年ニ達セザル女子」ニ改メ同項
ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ命令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ
在ラズ
同條第二項中「前項ノ被管理者」ヲ「前項
ノ規定ニ依リ體力檢査ヲ受クルコトヲ要
スル被管理者(以下第四條第一項ノ被管
理者ト稱ス)」ニ改ム
第五條第一項中「前條第一項ノ規定ニ依
リ體力檢査ヲ受クルコトヲ要スル」ヲ「第
四條第一項ノ」ニ、同條第二項中「被管理
者ニシテ前條第一項ノ規定ニ依リ體力檢
査ヲ受クルコトヲ要スルモノ」ヲ「第四條
第一項ノ被管理者」ニ改ム
第六條第四條第一項ノ被管理者(同條
第二項ノ規定ニ依ル義務者アル場合ハ
其ノ義務者)ハ被管理者ノ氏名、生年月
日其ノ他命令ヲ以テ定ムル事項ヲ被管
理者ノ居住地ノ市町村長ニ屆出ヅベシ
但シ命令ヲ以テ定ムル被管理者ニ關シ
テハ此ノ限ニ在ラズ
第六條ノ二地方長官ハ國民體力ノ向上
ヲ圖ル爲特ニ必要アリト認ムルトキハ
勅令ノ定ムル所ニ依リ第四條第一項ノ
被管理者ニ非ザル者ニ付テモ體力檢査
ヲ受ケシムルコトヲ得
前項ノ體力檢査ハ第五條第二項ノ學校
又ハ幼稚園ニ在學又ハ在園スル者ニ關
スル場合ヲ除クノ外地方長官之ヲ行フ
但シ事宜ニ依リ同條第一項ノ規定ニ準
ジ市町村長又ハ事業主若ハ管理人ヲシ
テ之ヲ行ハシムルコトヲ得
第四條第二項、第五條第一一項、第十條乃
至第十二條、第十三條及第十四條ノ規
定ハ第一項ノ規定ニ依リ體力檢査ヲ受
クルコトヲ要スル者ニ關シ、第八條第
二項乃至第四項ノ規定ハ第一項ノ規定
ニ依リ體力檢査ヲ受クルコトヲ要シ又
ハ要シタル者ニシテ體力手帳ノ交付ヲ
受ケタルモノニ關シ之ヲ準用ス此ノ場
合ニ於テハ第四條第二項、第八條第四
項第十一條又ハ第十二條中保護者ト
アルハ第六條ノ二第一項ノ規定ニ依リ
體力檢査ヲ受クルコトヲ要スル者ニシ
テ未成年者又ハ禁治產者タルモノニ付
親權ヲ行フ者、後見人タル者又ハ後見
人ノ職務ヲ行フ者ニシテ本法施行地内
ニ居住地ヲ有スルモノトシ第十三條第
一項中第五條第一項トアルハ第六條ノ
二第二項トシ第十三條第二項中第五條
第一項、第六條トアルハ第六條、第六
條ノ二第二項トス
第八條第一項中「被管理者」ヲ「第四條第
一項ノ被管理者」ニ、同條第三項中「前二
項」ヲ「前四項」ニ改メ同條第一項ノ次ニ
左ノ二項ヲ加フ
第四條第一項ノ被管理者ノ體力檢査ノ
結果ハ體力手帳ニ之ヲ記載スルモノト
ス第十條乃至第十二條ノ規定ニ依リ體
力向上ニ關スル指導若ハ指示ヲ爲シ又
ハ療養ニ關スル處置ヲ命ジタルトキ亦
同ジ
命令ヲ以テ定ムル體力ニ關スル檢査ヲ
行フ者體力手帳ノ交付ヲ受ケタル第四
條第一項ノ被管理者ヲ檢査シタルトキ
ハ其ノ結果ヲ體力手帳ニ記載スベシ醫
師體力手帳ノ交付ヲ受ケタル第四條第
一項ノ被管理者ニ付命令ヲ以テ定ムル疾
病ニ罹レルモノト診斷シタルトキ亦同ジ
第九條第一項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
國民體力管理醫ハ其ノ職務ノ執行ニ當
リテハ國民體力ノ向上ニ關スル國策ノ
遂行ニ努ムルヲ旨トスベシ
第十一條及第十二條第一項中「體力檢査」
ノ下ニ「、命令ヲ以テ定ムル體力ニ關スル
檢査又ハ他ノ法令ニ依ル醫師ヨリノ患者
診斷ノ屆出」ヲ加フ
第十二條ノ二主務大臣又ハ地方長官ハ
體力檢査ニ基キ國民體力ノ向上ヲ圖ル
爲特ニ必要アリト認ムルトキハ勅令ノ
定ムル所ニ依リ公共團體其ノ他ノ法人
又ハ團體ニ對シ體力向上ニ關シ處置又
ハ施設ヲ爲スコトヲ指示スルコトヲ得
第十三條第一項中「第十條乃至前條」ヲ
「第十條乃至第十二條」ニ、同條第二項中
「第八條第一項第二項及第十條乃至前條」
ヲ「第八條第一項乃至第四項及第十條乃
至第十二條」三郎人
第十四條ノ二本法又ハ本法ニ基キテ發
スル命令ニ依ル地方長官ノ職權ノ一部
ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ保健所ノ長ヲ
シテ之ヲ行ハシムルコトヲ得
第十五條第一號中「第五條第一項但書ノ
規定ニ依ル地方長官ノ命令」ヲ「第五條第
一項但書ノ規定(第六條ノ二第二項但書
ノ規定ニ依リ準ズル場合ヲ含ム)ニ此ル
命令」ニ改メ同條第二號中「被管理者、保
護者又ハ第四條第二項但書ノ規定ニ依ル
義務者」ヲ「被管理者(第六條ノ二第一項
ノ規定ニ依リ體力檢査ヲ受クルコトヲ要
スル者ヲ含ム)、保護者(第六條ノ二第一
項ノ規定ニ依リ體力檢査ヲ受クルコトヲ
要スル者ニシテ未成年者又ハ禁治產者タ
ルモノニ付親權ヲ行フ者、後見人タル者又
ハ後見人ノ職務ヲ行フ者ニシテ本法施行
地內ニ居住地ヲ有スルモノヲ含ム)又ハ
第四條第二項但書ノ規定(第六條ノ二第
三項ノ規定ニ依リ準用スル場合ヲ含ム)
ニ依ル義務者」三段八、
第十六條第一號中「第四條第二項ノ規定」
ノ下ニ「(第六條ノ二第三項ノ規定ニ依リ
準用スル場合ヲ含ム)」ヲ、「被管理者」ノ下
ニ「(第六條ノ二第一項ノ規定ニ依リ體力
檢査ヲ受クルコトヲ要スル者ヲ含ム)」ヲ
加フ
附則第二項ノ次ニ左ノ一項ヲ加フ
第八條第一項ノ規定ハ第二條ノ規定ニ
該當スル者ニシテ前項ノ規定ニ依リ被
管理者タラザルモノノ中命令ヲ以テ定
ムル者ガ體力檢査ヲ受ケタル場合ニ之
ヲ準用ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
國民醫療法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十七年二月三日
衆議院議長田子一民
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
國民醫療法案
國民醫療法
第一章總則
第一條本法ハ國民醫療ノ適正ヲ期シ國
民體力ノ向上ヲ圖ルヲ以テ目的トス
第二條本法ニ於テ醫療關係者トハ醫
師齒科醫師、保健婦、助產婦及看護
婦ヲ謂フ
第二章醫師及齒科醫師
第三條醫師及齒科醫師ハ醫療及保健指
導ヲ掌リ國民體力ノ向上ニ寄與スルヲ
以テ其ノ本分トス
第四條醫師又ハ齒科醫師タラントスル
者ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ
免許ヲ受クルコトヲ要ス
第五條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ニ對
シテハ醫師免許又ハ齒科醫師免許ヲ與
ヘズ
-六年ノ懲役又ハ禁錮以上ノ刑ニ處
セラレタル者
二未成年者、禁治產者、準禁治產者、
精神病者、聾者、啞者及盲者
第六條左ノ各號ノ一ニ該當スル者ニ對
シテハ醫師免許又ハ齒科醫師免許ヲ與
ヘザルコトアルベシ
-六年未滿ノ懲役又ハ禁鋼ニ處セラ
レタル者
二醫事ニ關シ罰金ニ處セラレタル者
三前二號ニ該當スル者ヲ除クノ外醫
事ニ關シ不正ノ行爲アリタル者
第七條厚生省ニ醫籍及齒科醫籍ヲ備ヘ
醫師免許及齒科醫師免許ニ關スル事項
ヲ登錄ス
登錄スベキ事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第八條醫師ニ非ザレバ醫業ヲ、齒科醫
師ニ非ザレバ齒科醫業ヲ爲スコトヲ得
ズ
醫師ハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣
ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ齒科專門ヲ
標榜シ又ハ齒科醫業中命令ヲ以テ定ム
ル行爲ヲ爲スコトヲ得ズ
第九條診療ニ從事スル醫師又ハ齒科醫
師ハ診察治療ノ需アル場合ニ於テ正當
ノ事由ナクシテ之ヲ拒ムコトヲ得ズ
診察又ハ檢案ヲ爲シタル醫師ハ診斷
書、檢案書又ハ死產證書ノ交付ノ需ア
ル場合ニ於テ正當ノ事由ナクシテ之ヲ
拒ムコトヲ得ズ
診察ヲ爲シタル齒科醫師ハ診斷書ノ交
付ノ需アル場合ニ於テ正當ノ事由ナク
シテ之ヲ拒ムコトヲ得ズ
第十條醫師ハ自ラ診察セズシテ治療ヲ
爲シ、診斷書若ハ處方箋ヲ交付シ又ハ
自ラ檢案セズシテ檢案書若ハ死產證書
ヲ交付スルコトヲ得ズ但シ診療中ノ患
者死亡シタル場合ニ交付スル死亡診斷
書ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
齒科醫師ハ自ラ診察セズシテ治療ヲ爲
シ又ハ診斷書若ハ處方箋ヲ交付スルコ
トヲ得ズ
第十一條醫師診療ヲ爲シタルトキハ本
人又ハ其ノ保護者ニ對シ療養ノ方法其
ノ他體力ノ向上上必要ナル事項ノ指導
ヲ爲スベシ
前項ノ規定ハ齒科醫師診療ヲ爲シタル
場合ニ之ヲ準用ス
第十二條醫師又ハ齒科醫師診療ヲ爲シ
タルトキハ遲滯ナク診療ニ關スル事項
ヲ診療錄ニ記載スベシ
前項ノ診療錄ニシテ病院又ハ診療所ニ
依リ爲シタル診療ニ關スルモノハ其ノ
病院又ハ診療所ノ管理者ニ於テ、其ノ
他ノ診療ニ關スルモノハ其ノ醫師又ハ
齒科醫師ニ於テ五年間之ヲ保存スベシ
第十三條醫師又ハ齒科醫師醫業又ハ齒
科醫業ニ關シ命令ヲ以テ定ムル科名ニ
付專門ヲ標榜セントスルトキハ勅令ノ
定ムル所ニ依リ主務大臣ノ許可ヲ受ク
ベシ
第十四條醫業又ハ齒科醫業ニ關シテハ
何人ト雖モ前條ノ規定ニ依ル專門ノ標
榜ノ外技能、治療方法、經歷又ハ學位
ニ關スル廣告ヲ爲スコトヲ得ズ但シ醫
師又ハ齒科醫師ノ稱號及命令ヲ以テ定
ムル診療科名ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
主務大臣ハ前項ニ規定スルモノノ外醫
業又ハ齒科醫業ニ關スル廣告ヲ制限ス
ル爲必要ナル命令ヲ發スルコトヲ得
第十五條醫師又ハ齒科醫師第五條各號
ノ一ニ該當スルトキハ其ノ免許ヲ取消
スベシ但シ命令ヲ以テ定ムル場合ハ此
ノ限ニ在ラズ
醫師又ハ齒科醫師第六條各號ノ一ニ該
當シ又ハ醫師若ハ齒科醫師タルノ品位
ヲ損スル行爲アリタルトキハ免許ヲ取
消シ又ハ期間ヲ定メテ醫業若ハ齒科醫
業ヲ停止スルコトアルベシ其ノ事免許
前ニ係ル場合亦同ジ
前項ノ取消處分ヲ受ケタル者ト雖モ改
悛ノ情顯著ナルトキハ再免許ヲ與フル
コトアルベシ第一項ノ取消處分ヲ受ケ
タル者ニ付第五條第二號ノ原因止ミタ
ルトキ亦同ジ
前項前段ノ規定ニ依リ再免許ヲ受ケタ
ル者主務大臣ノ定ムル期間內ニ於テ第
六條第一號又ハ第二號ニ該當スルニ至
リタルトキハ其ノ再免許ハ效力ヲ失フ
第一項乃至第三項ノ處分ハ主務大臣之
マヨン
第三章醫師會及齒科醫師會
第十六條日本醫師會、道府縣醫師會、
日本齒科醫師會及道府縣齒科醫師會ハ
醫療及保健指導ノ改良發達ヲ圖リ國民
體力ノ向上ニ關スル國策ニ協力スルヲ
以テ目的トス
日本醫師會、道府縣醫師會、日本齒科
醫師會及道府縣齒科醫師會ハ法人トス
第十七條醫師又ハ齒科醫師ハ勅令ノ定
ムル所ニ依リ道府縣醫師會又ハ道府縣
齒科醫師會ヲ設立スベシ
醫師又ハ齒科醫師ハ勅令ノ定ムル所ニ
依リ道府縣醫師會又ハ道府縣齒科醫師
會ノ會員トス
醫師又ハ齒科醫師ニ非ザルモ醫師免許
又ハ齒科醫師免許ヲ受クル資格ヲ有ス
ル者ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ道府
縣醫師會又ハ道府縣齒科醫師會ノ會員
タラシムルコトヲ得ルモノトス
第十八條道府縣醫師會又ハ道府縣齒科
醫師會ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ日本醫
師會又ハ日本齒科醫師會ヲ設立スベシ
道府縣醫師會又ハ道府縣齒科醫師會ハ
勅令ノ定ムル所ニ依リ日本醫師會又ハ
日本齒科醫師會ノ會員トス
第十九條道府縣醫師會又ハ道府縣齒科
醫師會ハ其ノ會員ヨリ徵收スベキ收入
ニ關シテハ民事訴訟ヲ提起スルコトヲ
得
第二十條前四條ニ規定スルモノノ外日
本醫師會、道府縣醫師會、日本齒科醫師
會及道府縣齒科醫師會ノ設立ノ手續、
區域、機關、經費ノ負擔及其ノ徵收、監
贅會員ノ懲戒其ノ他ニ關シ必要ナル
事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四章醫療等ノ指導及監督
第二十一條病院、診療所又ハ產院ヲ開
設セントスル者ハ命令ノ定ムル所ニ依
リ主務大臣又ハ地方長官(東京府ニ在
リテハ警視總監)ノ許可ヲ受クベシ
前項ニ規定スルモノノ外病院、診療所
及產院ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以
テ之ヲ定ム
第二十二條主務大臣國民體力ノ向上ヲ
圖ル爲必要アリト認ムルトキハ勅令ノ
定ムル所ニ依リ醫療關係者ト爲リタル
者ヲシテ二年以內主務大臣ノ指定スル
業務ニ從事スベキコトヲ命ズルコトヲ
得
前項ノ規定ニ依ル命令ハ初テ醫療關係
者ト爲リタル時ヨリ一年以內ニ之ヲ爲
スモノトス
第二十三條主務大臣國民體力ノ向上ヲ
圖ル爲必要アリト認ムルトキハ醫療關
係者ニ對シ醫療、保健指導、助產及看
護ニ關シ必要ナル指示ヲ爲スコトヲ得
第二十四條主務大臣ハ命令ノ定ムル所
ニ依リ醫療關係者ヲシテ醫療、保健指
導助產及看護ニ關シ必要ナル事項ノ
修習ヲ爲サシムルコトヲ得
第二十五條主務大臣ハ勅令ノ定ムル所
ニ依リ醫療、助產及看護ノ報酬又ハ醫
療關係者ノ受クベキ給與ニ關シ必要ナ
ル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第二十六條主務大臣又ハ地方長官(東
京府ニ在リテハ警視總監ヲ含ム)必要
アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ
依リ當該官吏ヲシテ病院、診療所及產
院ニ臨檢シ其ノ構造設備又ハ診療錄其
ノ他ノ帳簿書類ヲ檢査セシムルコトヲ
得
第二十七條本章ニ規定スルモノノ外保
健婦、助產婦及看護婦ニ關シ必要ナル
事項ハ合令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十八條本章ニ規定スル主務大臣ノ
職權ノ一部ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ地
方長官(東京府ニ在リテハ警視總監ヲ
含ム)ヲシテ之ヲ行ハシムルコトヲ得
第五章日本醫療團
第二十九條日本醫療團ハ國民體力ノ向
上ニ關スル國策ニ則應シ醫療ノ普及ヲ
圖ルヲ以テ目的トス
日本醫療團ハ法人トス
第三十條日本醫療團ハ主タル事務所ヲ
東京市ニ置ク
日本醫療團ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ必
要ノ地ニ從タル事務所ヲ設置スルコト
ヲ得
第三十一條日本醫療團ノ資本金ハ一億
圓トス但シ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ
增加スルコトヲ得
第三十二條政府ハ一億圓ヲ日本醫療團
ニ出資スベシ
前項ノ出資ハ國債證劵ヲ交付シテ之ヲ
爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ交付スル國債證劵ノ
交付價格ハ時價ヲ參酌シテ大藏大臣之
ヲルチノ
第三十三條第三十一條但書ノ場合ニ於
テハ勅令ヲ以テ定ムル者ハ勅令ノ定ム
ル所ニ依リ其ノ所有スル病院、診療所
又ハ產院ノ設備及其ノ附屬設備ヲ出資
スルコトヲ得
第三十四條日本醫療團ハ出資ニ對シ勅
令ノ定ムル所ニ依リ出資證劵ヲ發行ス
第三十五條出資者ハ日本醫療團ノ承認
ヲ經ルニ非ザレバ其ノ持分ヲ讓渡スル
コトヲ得ズ
第三十六條日本醫療團ハ定款ヲ以テ左
ノ事項ヲ規定ズベシ
-目的
二名稱
三事務所ノ所在地
四資本金額、出資及資產ニ關スル事
項
五役員及會議ニ關スル事項
六業務及其ノ執行ニ關スル事項
七醫療債劵ノ發行ニ關スル事項
八會計ニ關スル事項
九公〓ノ方法
定款ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ變更
スルコトヲ得
第三十七條日本醫療團ハ勅令ノ定ムル
所ニ依リ登記ヲ爲スコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依リ登記スベキ事項ハ登
記ノ後ニ非ザレバ之ヲ以テ第三者ニ對
抗スルコトヲ得ズ
第三十八條日本醫療團ニハ所得稅、法
人稅及營業稅ヲ課セズ
北海道、府縣、市町村其ノ他之ニ準ズ
ベキモノハ日本醫療團ノ事業ニ對シテ
ハ地方稅ヲ課スルコトヲ得ズ
第三十九條日本醫療團ニ付解散ヲ必要
トスル事由發生シタル場合ニ於テ其ノ
處置ニ關シテハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定
ム
第四十條日本醫療團ニ非ザル者ハ日本
醫療團又ハ之ニ類似スル名稱ヲ用フル
コトヲ得ズ
第四十一條民法第四十四條、第五十條、
第五十四條及第五十七條竝ニ非訟事件
手續法第三十五條第一項ノ規定ハ日本
醫療團ニ之ヲ準用ス
第四十二條日本醫療團ニ總裁副總裁各
一八理事五人以上及監事二人以上ヲ
置ク
總裁ハ日本醫療團ヲ代表シ其ノ業務ヲ
總理ス
副總裁ハ定款ノ定ムル所ニ依リ日本醫
療團ヲ代表シ總裁ヲ輔佐シテ日本醫療
團ノ業務ヲ掌理ス
副總裁ハ總裁事故アルトキハ其ノ職務ヲ
代理シ總裁缺員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
理事ハ定款ノ定ムル所ニ依リ日本醫療
團ヲ代表シ總裁及副總裁ヲ輔佐シテ日
本醫療團ノ業務ヲ掌理ス
理事ハ定款ノ定ムル所ニ依リ總裁及副
總裁共ニ事故アルトキハ其ノ職務ヲ代
理シ總裁及副總裁共ニ缺員ノトキハ其
ノ職務ヲ行フ
監事ハ日本醫療團ノ業務ヲ監査ス
第四十三條總裁、副總裁、理事及監事
ハ主務大臣之ヲ命ズ
總裁、副總裁及理事ノ任期ハ三年、監
事ノ任期ハ二年トス
第四十四條總裁、副總裁及理事ハ定款
ノ定ムル所ニ依リ從タル事務所ノ業務
ニ關シ一切ノ裁判上又ハ裁判外ノ行爲
ヲ爲ス權限ヲ有スル代理人ヲ選任スル
コトヲ得
第四十五條總裁、副總裁及理事ハ他ノ
職業ニ從事スルコトヲ得ズ但シ主務大
臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在
ラズ
第四十六條日本醫療團ニ參與理事ヲ置
キ地方長官ノ職ニ在ル者ヲ以テ之ニ充
ツ
參與理事ハ日本醫療團ノ業務ニ參與ス
第四十七條日本醫療團ニ評議員若千人
ヲ置キ主務大臣之ヲ命ズ
評議員ハ業務經營ニ關スル重要ナル事
項ニ付總裁ノ諮問ニ應ジ必要アルトキ
ハ之ニ對シ意見ヲ述ブルコトヲ得
評議員ハ名譽職トシ其ノ任期ハ二年トス
第四十八條日本醫療〓ニ顧問若干人ヲ
置キ總裁ノ推薦ニ依リ主務大臣之ヲ命
ズ
顧問ハ業務ニ關スル重要ナル事項ニ參
畫セシム
顧問ハ名譽職トス
第四十九條日本醫療團ハ左ノ業務ヲ行
フ
-病院、診療所及產院ノ經營
二前號ノ病院、診療所及產院ノ醫療
關係者ノ指導及鍊成
三前各號ノ業務ニ附帶スル事業
日本醫療團ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ前
項ニ揭グル業務以外ノ業務ヲ行フコト
ヲ得
第五十條日本醫療團病院、診療所又ハ
產院ノ設備ノ讓渡又ハ貸付ニ付權原ヲ
有スル者ト協議ヲ爲スモ協議調ハザル
トキハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣
ニ其ノ讓受又ハ借受ニ付決定ヲ申請ス
ルコトヲ得
前項ノ申請アリタルトキハ主務大臣ハ當
該事項ニ付必要ナル決定ヲ爲スコトヲ
得
前項ノ決定中對價ニ付不服アル者ハ其
ノ決定ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ三十日
以内ニ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前三項ニ規定スルモノノ外決定及之ニ
依ル病院、診療所又ハ產院ノ設備ノ讓
渡又ハ貸付ニ關シ必要ナル事項ハ勅令
ヲ以テ之ヲ定ム
前四項ノ規定ハ病院、診療所又ハ產院
ノ事業ノ讓渡又ハ貸付ニ之ヲ準用ス
第五十一條日本醫療團ハ前條ノ規定ニ
依リ讓受ケタル病院、診療所又ハ產院
ノ設備又ハ事業ノ代價ニ付テハ國債證
劵ヲ以テ之ヲ交付スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ交付スル國債證劵ノ
交付價格ハ時價ヲ參酌シテ大藏大臣之
フォルチ
第五十二條日本醫療團ハ第四十九條ニ
規定スル業務ノ用ニ充ツル爲必要ナル
土地、建物其ノ他ノ工作物又ハ土地ニ
關スル所有權以外ノ權利ヲ收用又ハ使
用スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル收用又ハ使用ニ關シ
テハ土地收用法ヲ適用ス
第五十三條日本醫療團ハ政府ノ拂込ミ
タル出資金額ノ五倍ヲ限リ醫療債劵ヲ
發行スルコトヲ得
第五十四條醫療債劵ハ額面金額五十圓
以上トシ無記名利札附トス但シ應募者
又ハ所有者ノ請求ニ依リ記名ト爲スコ
トヲ得
醫療債劵ハ割引ノ方法ヲ以テ之ヲ發行
スルコトヲ得
第五十五條日本醫療團ハ醫療債劵借換
ノ爲一時第五十三條ノ制限ニ依ラズ醫
療債劵ヲ發行スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ醫療債劵ヲ發行シタ
ルトキハ發行後一月以內ニ其ノ發行額
面金額ニ相當スル舊醫療債劵ヲ償還ス
ベシ
第五十六條政府ハ醫療債劵ノ元本ノ償
還及利息ノ支拂ヲ保證スルコトヲ得
第五十七條醫療債劵ハ賣出ノ方法ヲ以
テ發行スルコトヲ得
第五十八條日本醫療團ニ於テ醫療債劵
ヲ發行セントスルトキハ主務大臣ノ認
可ヲ受クベシ
第五十九條醫療債劵ノ消滅時效ハ元本
ニ在リテハ十五年、利息ニ在リテハ五
年ヲ以テ完成ス
第六十條醫療債劵ノ所有者ハ日本醫療
團ノ財產ニ付他ノ債權者ニ先チテ自己
ノ債權ノ辨濟ヲ受クル權利ヲ有ス
前項ノ規定ハ民法上ノ一般ノ先取特權
ノ行使ヲ妨グルコトナシ
第六十一條所得稅法及有價證券移轉稅
法中國債以外ノ公債ニ關スル規定ハ醫
療債劵ニ之ヲ準用ス
第六十二條前九條ニ規定スルモノノ外
醫療債劵ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ
以テ之ヲ定ム
第六十三條日本醫療團ノ事業年度ハ每
年四月ヨリ翌年三月迄トス
第六十四條日本醫療團ハ拂込ミタル出
資金額又ハ第三十三條ノ出資ニ對シ勅
令ヲ以テ定ムル割合ヲ超エテ剩餘金ノ
配當ヲ爲スコトヲ得ズ
日本醫療團ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ政
府ノ出資ニ對シ剩餘金ノ配當ヲ減額シ
又ハ之ヲ爲サザルコトヲ得
第六十五條日本醫療團ハ左ノ方法ニ依
ルノ外業務上ノ餘裕金ヲ運用スルコト
ヲ得ズ
ー國債、地方債又ハ主務大臣ノ認可
ヲ受ケタル有價證劵ノ取得ヲ爲スコ
ト
二大藏省預金部若ハ銀行ヘノ預金又
ハ郵便貯金ト爲スコト
第六十六條日本醫療團ハ設立ノ時及每
事業年度ノ初ニ於テ財產目錄、貸借對
照表及損益計算書ヲ作成シ定款ト共ニ
之ヲ各事務所ニ備置クコトヲ要ス
債權者ハ業務時間內何時ニテモ前項ニ
揭グル書類ノ閱覽ヲ求ムルコトヲ得
第六十七條日本醫療團ハ主務大臣之ヲ
監督ス
第六十八條日本醫療團ハ主務大臣ノ認
可ヲ受クルニ非ザレバ剩餘金ヲ處分ス
ルコトヲ得ズ
第六十九條日本醫療團ハ每事業年度ノ
初ニ於テ事業計畫ヲ定メ主務大臣ノ認
可ヲ受クベシ之ヲ變更セントスルトキ
亦同ジ
第七十條主務大臣ハ日本醫療團ニ對シ
業務及財產ノ狀況ニ關シ報〓ヲ爲サシ
メ、檢査ヲ爲シ其ノ他監督上必要ナル
命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第七十一條主務大臣ハ日本醫療團ニ對
シ結核ノ療養其ノ他國民醫療ニ必要ナ
ル施設ヲ爲スコトヲ命ズルコトヲ得
第七十二條總裁、副總裁、理事又ハ監事
ガ法令、定款若ハ主務大臣ノ命令ニ違
反シ又ハ公益ヲ害スル行爲ヲ爲シタル
トキハ主務大臣ハ之ヲ解任スルコトヲ
得
第七十三條政府ハ日本醫療團ニ對シ每
年度豫算ノ範圍內ニ於テ補助金ヲ交付
スルコトヲ得
第六章罰則
第七十四條第八條第一項ノ規定ニ違反
シタル者ハ六月以下ノ懲役又ハ五百圓
以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者醫師若ハ齒科醫
師又ハ之ニ類スル名稱ヲ僭稱シタルモ
ノナルトキハ一年以下ノ懲役又ハ千圓
以下ノ罰金ニ處ス
第七十五條當該官吏又ハ其ノ職ニ在リ
タル者故ナク第二十六條ノ規定ニ依ル
診療錄ノ檢査ニ關シ知得シタル醫師若
ハ齒科醫師ノ業務上ノ祕密又ハ個人ノ
祕密ヲ漏洩シタルトキハ六月以下ノ懲
役又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
職務上前項ノ祕密ヲ知得シタル他ノ公
務員又ハ公務員タリシ者故ナク其ノ祕
密ヲ漏洩シタルトキ亦前項ニ同ジ
第七十六條左ノ各號ノ一ニ該當スル者
ハ五百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
一第八條第二項、第九條、第十條、
第十二條又ハ第十三條ノ規定ニ違反
シタル者
二第十四條第一項又ハ第二十一條第
一項ノ規定ニ違反シタル者
三第十四條第二項若ハ第二十一條第
二項ノ規定ニ基キテ發スル命令又ハ
之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シタル者
四第二十五條ノ規定ニ基キテ發スル
命令若ハ之ニ基キテ爲ス處分又ハ同
條ノ規定ニ依ル處分ニ違反シタル
者
五第二十六條ノ規定ニ依ル當該官吏
ノ檢査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル
者
六醫業停止中ノ醫師ニシテ醫業ヲ爲
シタルモノ又ハ齒科醫業停止中ノ齒
科醫師ニシテ齒科醫業ヲ爲シタルモ
ノ
第七十七條法人又ハ人ノ代理人、戶主、
家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ガ
其ノ法人又ハ人ノ業務ニ關シ前條第二
號第三號又ハ第四號ノ違反行爲ヲ爲
シタルトキハ其ノ法人又ハ人ハ自己ノ
指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ處罰ヲ
免カルルコトヲ得ズ
第七十八條第七十六條第二號乃至第四
號ノ罰則ハ其ノ者ガ法人ナルトキハ理
事、取締役其ノ他ノ法人ノ業務ヲ執行
スル役員ニ、未成年者又ハ禁治產者ナ
ルトキハ其ノ法定代理人ニ之ヲ適用ス
但シ其ノ業務ニ關シ成年者ト同一ノ能
力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ
在ラズ
第七十九條左ノ場合ニ於テハ日本醫療
團ノ總裁、副總裁、理事又ハ監事ヲ千
圓以下ノ過料ニ處ス
一第五章ノ規定ニ依リ主務大臣ノ認
可ヲ受クベキ場合ニ於テ其ノ認可ヲ
受ケザルトキ
二第五章ニ規定セザル業務ヲ營ミタ
ルトキ
三第五十三條又ハ第五十五條第二項
ノ規定ニ違反シ醫療債劵ノ發行ヲ爲
シ又ハ償還ヲ爲サザルトキ
四第六十五條ノ規定ニ違反シ業務上
ノ餘裕金ヲ運用シタルトキ
五主務大臣ノ監督上ノ命令又ハ處分
ニ違反シタルトキ
第八十條左ノ場合ニ於テハ日本醫療團
ノ總裁、副總裁、理事又ハ監事ヲ五百
圓以下ノ過料ニ處ス
一本法ニ基キテ發スル勅令ニ違反シ
登記ヲ爲スコトヲ怠リ又ハ不正ノ登
記ヲ爲シタルトキ
二第六十六條ノ規定ニ違反シ書類ヲ
備置カザルトキ、其ノ書類ニ記載ス
ベキ事項ヲ記載セズ若ハ不正ノ記載
ヲ爲シタルトキ又ハ正當ノ事由ナク
シテ其ノ閱覽ヲ拒ミタルトキ
第八十一條第四十條ノ規定ニ違反シ日
本醫療團又ハ之ニ類似スル名稱ヲ用ヒ
タル者ハ五百圓以下ノ過料ニ處ス
附則
第八十二條本法施行ノ期日ハ各規定ニ
付勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第八十三條醫師法及齒科醫師法ハ之ヲ
廢止ス但シ同法中郡市區醫師會、道府
縣醫師會及日本醫師會竝ニ郡市齒科醫
師會、道府縣齒科醫師會及日本齒科醫
師會ニ關スル規定ハ勅令ヲ以テ定ムル時
迄仍其ノ效力ヲ有ス
第八十四條醫師法又ハ齒科醫師法ニ依
リ醫師免許又ハ齒科醫師免許ヲ受ケタ
ル者ハ本法ニ依リ醫師免許又ハ齒科醫
師免許ヲ受ケタル者ト看做ス醫師法又
ハ齒科醫師法ノ施行前醫術開業免狀又
ハ齒科醫術開業免狀ヲ得タル者ニ付亦
同ジ
醫師法施行前醫術假開業免狀ヲ得タル
者ノ爲ス醫業ニ關シテハ仍從前ノ例ニ
依ル
第八十五條本法ノ適用ニ付テハ明治十
三年第三十六號布〓刑法ノ重罪ノ刑ニ
處セラレタル者ハ六年ノ懲役又ハ禁錮
以上ノ刑ニ、同法ノ禁錮ニ處セラレタ
ル者ハ六年未滿ノ懲役又ハ禁錮ニ處セ
ラレタル者ト看做ス
第八十六條醫師法又ハ齒科醫師法ニ依
ル醫籍又ハ齒科醫籍ノ登錄ハ之ヲ本法
ニ依ル醫籍又ハ齒科醫籍ノ登錄ト看做
ス
第八十七條醫師法又ハ齒科醫師法ニ依
リ爲シタル醫師免許若ハ齒科醫師免許
ノ取消ノ處分又ハ醫業若ハ齒科醫業ノ
停止ノ處分ハ之ヲ本法ノ相當規定ニ依
リテ爲シタルモノト看做ス此ノ場合ニ
於テ停止ノ期間ハ仍從前ノ例ニ依ル
第八十八條醫師法又ハ齒科醫師法ノ郡
市區醫師會道府縣醫師會及日本醫師會
竝ニ郡市齒科醫師會道府縣齒科醫師會
及日本齒科醫師會ノ權利義務ニシテ第
八十三條但書ノ規定ニ依リ勅令ヲ以テ
定ムル時ニ於テ存スルモノハ勅令ノ定
ムル所ニ依リ各本法ノ道府縣醫師會及
日本醫師會竝ニ道府縣齒科醫師會及日
本齒科醫師會之ヲ承繼ス
第八十九條醫師法若ハ齒科醫師法又ハ
之ニ基キテ發スル命令ニ違反シタル者
ノ處罰ニ付テハ仍舊法ニ依ル
第九十條主務大臣ハ設立委員ヲ命ジ日
本醫療團ノ設立ニ關スル事務ヲ處理セ
シム
設立委員ハ定款ヲ作成シ主務大臣ノ認
可ヲ受クベシ
第九十一條定款ニ付主務大臣ノ認可ア
リタルトキハ設立委員ハ遲滯ナク出資
ノ第一囘ノ拂込ヲ禀請スベシ
第九十二條出資ノ第一囘ノ拂込アリタ
ルトキハ設立委員ハ遲滯ナタ其ノ事務
ヲ日本醫療團總裁ニ引繼グベシ
第九十三條日本醫療團ハ主タル事務所
ノ所在地ニ於テ設立ノ登記ヲ爲スニ因
リテ成立ス
第九十四條結核豫防法中左ノ通改正ス
第七條第一項中「前條ノ規定ニ依リ設
置スル結核療養所」ノ上ニ「日本醫療團
ノ結核療養所又ハ」ヲ加フ
第九十五條登錄稅法中左ノ通改正ス
第二條ノ二日本醫療團ガ病院、診療
所又ハ產院ノ用ニ供スル不動產ニ關
スル權利ノ取得又ハ保存ニ付登記ヲ
受クルトキハ前條ノ規定ニ拘ラズ其
ノ登錄稅ノ額ハ不動產價格ノ千分ノ
一·一八
第六條ノ二中「恩給金庫カ恩給債劵ニ
付」ヲ「恩給金庫又ハ日本醫療團カ恩給
債劵又ハ醫療債劵ニ付」ニ、「恩給債劵
又ハ其ノ」ヲ「恩給債劵若ハ醫療債劵又
ハ其ノ」ニ改ム
第十九條第七號中「住宅營團、」ノ下ニ
「日本醫療團、」ヲ「住宅營團法、」ノ下ニ
「國民醫療法、」ヲ加フ
同條第十八號中「又ハ住宅營團」ヲ「、住
宅營團又ハ日本醫療團」ニ改ム
第九十六條印紙稅法中左ノ通改正ス
第五條第六號ノ四ノ次ニ左ノ一號ヲ加
フ
六ノ四ノ二日本醫療團ノ發スル出
資證劵竝ニ國民醫療法第四十九條第
一項第一號及第二號ノ業務ニ關スル
證書帳簿
健康保險法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十七年二月三日
衆議院議長田子民
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
健康保險法中改正法律案
健康保險法中左ノ通改正ス
第一條第一項中「療養ノ給付又ハ傷病手
當金、埋葬料、分娩費若ハ出產手當金ノ
支給」ヲ「保險給付」ニ改メ同條第二項ヲ
左ノ如ク改ム
保險者ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ被保險
者ニ依リ生計ヲ維持スル者(以下被扶
養者ト稱ス)ノ疾病、負傷又ハ分娩ニ
關シ保險給付ヲ爲スモノトス
第二條第一項中「事業主ヨリ」ヲ削ル
第七條第二項中「補給金ヲ支給スル」ヲ
「保險給付ヲ爲ス」ニ、「世帶員」ヲ「被扶養
者」ニ改ム
第九條ノ二行政官廳保險給付ニ關シ必
要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所
ニ依リ當該官吏ヲシテ診療錄其ノ他ノ
帳簿書類ヲ檢査セシムルコトヲ得
第十二條中「政府」ヲ「國、北海道、府縣、
市町村其ノ他之ニ準ズベキモノ」ニ改ム
第十三條左ノ各號ノ一ニ該當スル事業
所ニ使用セラルル者ハ健康保險ノ被保
險者トス
-工場法第一條ノ規定ニ依リ同法ノ
適用ヲ受クル工場
二鑛業法ノ適用ヲ受クル事業場又ハ
工場
三法人又ハ命令ヲ以テ定ムル團體ノ
事務所ニシテ常時五人以上ノ從業員
ヲ使用スルモノ
四左ニ揭グル事業ノ事業所ニシテ常
時五人以上ノ從業員ヲ使用スルモノ
(イ)物ノ製造、加工、選別、包裝、
修理又ハ解體ノ事業
鑛物ノ採掘又ハ採取ノ事業
(ハ)(ロ)
電氣又ハ動力ノ發生、傳導又ハ
供給ノ事業
貨物又ハ旅客ノ運送ノ事業
貨物積卸ノ事業
物ノ販賣ノ事業
(リ)(チ)(ト)(ヘ)(ホ)(ニ)
金融又ハ保險ノ事業
物ノ保管又ハ賃貸ノ事業
媒介周旋ノ事業
集金、案內又ハ廣〓ノ事業
(ル)(ヌ)
其ノ他勅令ヲ以テ指定スル事業
第十三條ノ二前條ノ規定ニ拘ラズ左ノ
各號ノ一ニ該當スル者ハ健康保險ノ被
保險者トセズ
一船員保險ノ被保險者(勅令ヲ以テ
指定スル者ヲ除ク)
二一年ノ報酬ガ勅令ヲ以テ定ムル額
ヲ超ユル職員
三臨時ニ使用セラルル者ニシテ勅令
ヲ以テ指定スルモノ
四前各號ニ揭グル者ノ外勅令ヲ以テ
指定スル者
前條ノ規定ニ依リ健康保險ノ被保險者
タルベキ者ニシテ勅令ヲ以テ定ムルモ
ノ國民健康保險ノ被保險者タル期間ハ
之ヲ健康保險ノ被保險者トセズ
第十四條第十三條ニ規定スル事業所以
外ノ事業所ノ事業主ハ主務大臣ノ認可ヲ
受ケ其ノ事業所ニ使用セラルル者ヲ包括
シテ健康保險ノ被保險者ト爲スコトヲ得
前項ノ認可ヲ申請スルニハ被保險者ト
爲ルベキ者ノ二分ノ一以上ノ同意ヲ得
ルコトヲ要ス
第十五條第一項中「事業」ヲ「事業所」ニ、
同條第二項中「第十三條但書」ヲ「第十三
條ノ二」ニ改ム
第十五條ノ二健康保險ノ被保險者ヲ使
用スル事業所ノ事業主ハ主務大臣ノ認
可ヲ受ケ其ノ事業所ニ使用セラルル第
十三條ノ二第一項第二號ニ該當スル者
ヲ包括シテ健康保險ノ被保險者ト爲ス
コトヲ得
第十三條ノ二(第一項第二號ヲ除ク)、
第十四條第二項及前條第一項ノ規定ハ
前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十六條中「工場又ハ事業」ヲ「事業所」ニ
改ム
第十七條第一項中「第十三條及第十五條」
ヲ「第十三條、第十五條及第十五條ノ一一」
ニ、「第十三條但書若ハ第十五條第二項」
ヲ「第十三條ノ二、第十五條第二項若ハ第
十五條ノ二第二項」ニ改メ同條第二項ヲ
削ル
第十八條中「第十三條及第十五條」ヲ第
十三條、第十五條及第十五條ノ二」ニ、「第
十三條但書若ハ第十五條第二項」ヲ「第十
三條ノ二、第十五條第二項若ハ第十五條
ノ二第二項」ニ、「前條第一項」ヲ「前條」
三段人
第十九條第一項中「第十五條」ノ下ニ「又
ハ第十五條ノ二」ヲ加フ
第二十條第十八條ノ規定ニ依リ被保險
者ノ資格ヲ喪失シタル者ニシテ喪失ノ
日前二月以上被保險者タリシモノハ勅
令ノ定ムル所ニ依リ繼續シテ被保險者
ト爲ルコトヲ得
第二十一條前條ノ規定ニ依ル被保險者
ハ同條ノ規定ニ依リ被保險者ト爲リタ
ル日ヨリ六月ヲ經過シタルトキ其ノ他
勅令ヲ以テ定ムル事由ニ該當スルニ至
リタルトキハ其ノ資格ヲ喪失ス
第十八條ノ規定ハ前條ノ規定ニ依ル被
保險者ガ死亡シタル場合ニ之ヲ準用ス
第二十三條保險者ハ被保險者及被扶養
者ノ疾病若ハ負傷ノ療養又ハ被保險者
及被扶養者ノ健康ノ保持增進ノ爲必要
ナル施設ヲ爲シ又ハ之ニ必要ナル費用
ノ支出ヲ爲スコトヲ得
第二十三條ノ二第一項中「被保險者」ヲ
「被保險者及被扶養者」ニ、「保險者ノ施
設」ヲ「前條ノ施設」ニ改ム
第二十七條乃至第二十九條及第三十五條
中「事業」ヲ「事業所」ニ改ム
第三十條中「第十四條第一項」ノ下ニ「又
ハ第十五條ノ二第一項」ヲ加フ
第三十一條中「一事業」ヲ「一又ハ二以上
ノ事業所」三六人
第三十三條削除
第三十七條ノ二主務大臣ハ健康保險組
合ニ對シ命令ノ定ムル所ニ依リ第二十
三條ノ施設ヲ爲スコトヲ命ジ又ハ之ニ
必要ナル費用ノ支出ヲ命ズルコトヲ得
第四十二條中「業務」ヲ「事業所」ニ改ム
第四十二條ノ二健康保險組合ハ共同シ
テ其ノ目的ヲ達スル爲健康保險組合聯
合會ヲ設立スルコトヲ得
健康保險組合聯合會ハ法人トス
健康保險組合聯合會ヲ設立セントスル
トキハ規約ヲ作リ主務大臣ノ認可ヲ受
クベシ
主務大臣ハ健康保險組合ニ對シ健康保
險組合聯合會ニ加入スルコトヲ命ズル
コトヲ得
第二十三條、第二十三條ノ二、第三十
四條、第三十六條乃至第三十九條及第
四十一條ノ規定ハ健康保險組合聯合會
ニ之ヲ準用ス
第四十三條被保險者ノ疾病又ハ負傷ニ
關シテハ左ニ揭グル療養ノ給付ヲ爲ス
一診察
二藥劑又ハ治療材料ノ支給
三處置、手術其ノ他ノ治療
四病院又ハ診療所ヘノ收容
五看護
六移送
前項第四號乃至第六號ノ給付ハ保險者
ガ必要アリト認ムル場合ニ於テ爲スモ
ノニ限ル但シ命令ヲ以テ定ムル場合ハ
此ノ限ニ在ラズ
第四十三條ノ二前條第一項第一號乃至
第四號ノ給付ヲ受ケントスル者ハ命令
ノ定ムル所ニ依リ保險醫及保險藥劑師
竝ニ保險者ノ指定スル者ノ中自己ノ選定
シタル者ニ就キ之ヲ受クルモノトス此
ノ場合ニ於テハ勅令ヲ以テ定ムル場合
ヲ除クノ外主務大臣ノ定ムル所ニ依リ
一部負擔金ヲ支拂フベシ
第四十三條ノ三保險醫又ハ保險藥劑醫
師ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ醫師、齒科醫
師又ハ藥劑師ニ就キ行政官廳之ヲ指定
ス
醫師、齒科醫師又ハ藥劑師ハ正當ノ理
由ナクシテ保險醫又ハ保險藥劑師タル
コトヲ拒ムコトヲ得ズ
醫師、齒科醫師又ハ藥劑師ヲ使用スル者
ハ正當ノ理由ナクシテ其ノ醫師、齒科
醫師又ハ藥劑師ガ保險醫又ハ保險藥劑
師タルコトヲ妨グルコトヲ得ズ
第四十三條ノ四保險醫及保險藥劑師ガ
療養ノ給付ヲ擔當スルニ關シ必要ナル
事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十三條ノ五保險醫若ハ保險藥劑師
又ハ之ヲ使用スル者ガ療養ノ給付ニ關
シ保險者ニ請求スベキ費用ノ額ハ勅令
ノ定ムル所ニ依ル
第四十四條ノ二療養ノ給付ハ同一ノ疾
病又ハ負傷及之ニ因リ發シタル疾病ニ
關シ其ノ給付ヲ始メタル日ヨリ起算シ
六月ヲ經過シタルトキハ之ヲ爲サズ
主務大臣ノ指定スル疾病ニ關シテハ保險
者ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ前項ノ期間ヲ
超エ繼續シテ療養ノ給付ヲ爲スモノトス
第四十五條中「一日ニ付」ノ下ニ「職員ニ
シテ勅令ヲ以テ定ムルモノニ在リテハ報
酬日額ノ百分ノ五十ニ相當スル金額ヲ、
其ノ他ノ者ニ在リテハ」ヲ加フ
第四十六條中「病院」ヲ「病院又ハ診療所」
三段人
第四十七條第一項及第二項ヲ左ノ如ク改
ム
傷病手當金ノ支給期間ハ同一ノ疾病又
ハ負傷及之ニ因リ發シタル疾病ニ關シ
テハ療養ノ爲勞務ニ服スルコト能ハザ
ルニ至リタル日ヨリ起算シ六月ヲ以テ
限度トス
第四十四條ノ二第二項ノ規定ハ前項ノ
場合ニ之ヲ準用ス
第四十八條第一項中「前條」ヲ「第四十四
條ノ二」ニ改ム
第四十九條第一項中「報酬日額ノ三十日
分」ヲ「報酬月額」ニ改ム
第五十條中「二十圓」ヲ「勅令ヲ以テ定ム
ル額」ニ改ム
第五十一條保險者ハ被保險者ヲ產院ニ
收容スルコトヲ得
產院又ハ病院若ハ診療所ニ收容シタル
被保險者ニ對シテ支給スベキ分娩費及
出產手當金ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之
ヲ減額スルコトヲ得
第五十六條第一項中「九十日」ヲ「三月」ニ
改ム
第五十七條ノ二前三條ノ規定ニ拘ラズ
被保險者タリシ者船員保險ノ被保險者
又ハ勅令ヲ以テ定ムル者ト爲リタルト
キハ保險給付ヲ爲サズ
第五十九條ノ二第一條第二項ノ保險給
付ニ關シ其ノ種類、範圍其ノ他必要ナ
ル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第六十一條中「傷病手當金ノ全部又ハ
部ヲ支給セサル」ヲ「保險給付ノ全部又ハ
一部ヲ爲サザル」ニ改ム
第六十二條第二項中「病院、、病舍又ハ療
養所ニ收容セラレタル者ニ對シテハ」ヲ
「療養費ノ支給又ハ療養アリタルトキハ
其ノ限度ニ於テ」ニ改ム
同條第四項中「補給金ヲ支給スル」ヲ「保
險給付ヲ爲ス」ニ改ム
第六十三條中「之ニ支給スヘキ傷病手當
金ノ一部ヲ支給セサル」ヲ「之ニ爲スベキ
保險給付ノ一部ヲ爲サザル」ニ改ム
第六十九條ノ二第一項中「世帶員」ヲ「被
扶養者」ニ、同條第二項中「補給金」ヲ「保
險給付」ニ改ム
第六十九條ノ三保險者ハ勅令ノ定ムル
所ニ依リ本章ニ規定スル保險給付ニ併
セテ保險給付トシテ其ノ他ノ給付ヲ爲
スコトヲ得
第七十條國庫ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ
健康保險事業ニ要スル費用ノ一部ヲ負
擔ス
第七十二條但書中「第二十條」ノ上ニ第
十五條ノ二又ハ」ヲ加フ
第七十四條第一項中「一日ニ付報酬日額」
ヲ「一月ニ付報酬月額」ニ改メ同項但書ヲ
左ノ如ク改ム
但シ被保險者タル資格ヲ喪失シタル月
ニ於テ被保險者タル資格ヲ取得シタル
者及第十五條ノ二又ハ第二十條ノ規定
ニ依ル被保險者ニ付テハ此ノ限ニ在ラ
ズ
第七十六條中「其ノ期間」ノ上ニ「勅令ノ
定ムル所ニ依リ」ヲ加フ
第八十四條ノ二第八十一條及前條ノ規
定ニ依ル訴願又ハ行政訴訟ニ關シテハ
健康保險組合ハ之ヲ行政廳ト看做ス
第八十七條當該官吏又ハ其ノ職ニ在リ
タル者故ナク第九條ノ二ノ規定ニ依ル
診療錄ノ檢査ニ關シ知得シタル醫師若
ハ齒科醫師ノ業務上ノ祕密又ハ個人ノ
祕密ヲ漏洩シタルトキハ六月以下ノ懲
役又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
職務上前項ノ祕密ヲ知得シタル他ノ公
務員又ハ公務員タリシ者故ナク其ノ祕
密ヲ漏洩シタルトキ亦前項ニ同ジ
第九條ノ二ノ規定ニ依ル當該官吏ノ檢
査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者ハ五
百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
正當ノ理由ナクシテ第九條ノ規定ニ依
ル當該官吏ノ質問ニ對シ答辯ヲ爲サズ
若ハ虛僞ノ答辯ヲ爲シ又ハ其ノ檢査ヲ
拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シタル者ハ三百圓
以下ノ罰金ニ處ス
第九十條第一項中「健康保險組合」ノ下ニ
「及健康保險組合聯合會」ヲ、「第三十七
條」ノ下ニ「(第四十二條ノ二第五項ノ規
定ニ依リ準用スル場合ヲ含ム)」ヲ加フ
附則
本法施行ノ期日ハ各規定ニ付勅令ヲ以テ
之ヲ定ム
職員健康保險法ハ之ヲ廢止ス
前項ノ規定施行前ノ職員健康保險ノ保險
給付及保險料其ノ他ノ徵收金ニ關シテハ
仍舊法ニ依ル
第二項ノ規定施行ノ際現ニ存スル職員健
康保險組合ハ同規定施行ノ日ヨリ健康保
險組合ト爲リ職員健康保險組合ノ權利義
務ヲ承繼スルモノトス
第二項ノ規定施行ノ際現ニ職員健康保險
ノ被保險者タル者ハ命令ノ定ムル所ニ依
リ健康保險ノ被保險者ト爲リタルモノト
ス
第二項ノ規定施行ノ際現ニ職員健康保險
ノ被保險者タリシ者ニシテ健康保險ノ被
保險者ト爲リタルモノノ受クル健康保險
ノ保險給付ニ關シテハ其ノ者ガ職員健康
保險ノ被保險者タリシ期間ハ健康保險ノ
被保險者タリシ期間ト看做シ其ノ者ガ職
員健康保險ノ被保險者トシテ保險給付ヲ
受ケタル期間ハ健康保險ノ被保險者トシ
テ之ニ相當スル保險給付ヲ受ケタル期間
ト看做ス
第二項ノ規定施行前職員健康保險ノ被保
險者ノ資格ヲ喪失シタル者ハ健康保險ノ
保險給付及徵收金ニ關シテハ健康保險ノ
被保險者タリシ者ト看做シ其ノ者ガ職員
健康保險ノ被保險者トシテ受ケタル保險
給付ハ健康保險ノ被保險者トシテ受ケタ
ル之ニ相當スル保險給付ト看做ス
第二項ノ規定施行前職員健康保險法ニ違
反シタル者ノ處罰ニ付テハ仍舊法ニ依ル
前六項ニ定ムルモノノ外第二項ノ規定施
行ノ際必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定
ム
勞働者年金保險法中左ノ通改正ス
第十六條及第十八條中「工場、事業場又
ハ事業」ヲ「事務所」ニ改ム
第十七條第一項中第二號ヲ左ノ如ク改
メ第三號及第四號ヲ削ル
二健康保險法第十三條ノ事業所以
外ノ事業所ニ使用セラルル者
第十八條中第三號ヲ左ノ如ク改ム
三前條第一項第二號ノ事業所ト爲
ルニ至リタルトキ
第二十四條第三項、第三十二條第二項
及第三十七條第二項中「工場、事業場若
ハ事業」ヲ「事業所」ニ改ム
國民健康保險法中改正法律案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十七年二月三日
衆議院議長田子民
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
國民健康保險法中改正法律案
國民健康保險法中左ノ通改正ス
第十一條第二項ヲ削ル
第十一條ノ二地方長官必要アリト認ム
ルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ普通國民
健康保險組合ノ組合員タル資格ヲ有ス
ル者ニ就キ設立委員ヲ選任シ普通國民
健康保險組合ヲ設立スベキコトヲ命ズ
ルコトヲ得
前項ノ設立委員ハ命令ノ定ムル所ニ依
リ規約ヲ作リ普通國民健康保險組合ノ
組合員タル資格ヲ有スル者ノ二分ノ一
以上ノ同意ヲ得テ其ノ設立ニ付地方長
官ノ認可ヲ受クベシ
設立委員地方長官ノ定ムル期間內ニ設
立ノ認可ヲ申請セザルトキハ地方長官
ハ規約ノ作成其ノ他設立ニ關シ必要ナ
ル處分ヲ爲スコトヲ得
第十一條ノ三組合ハ設立ノ認可ヲ受ケ
タル時又ハ前條第三項ノ規定ニ依リ規
約ノ作成アリタル時ニ成立ス
第十三條第十一條ノ規定ニ依ル組合ニ
付其ノ組合員タル資格ヲ有スル者ノ二
分ノ一以上組合員タル場合ニ於テ地方
長官必要アリト認メ其ノ組合ヲ指定シ
タルトキハ組合員タル資格ヲ有スル者
ハ總テ組合員ト爲ルモノトス
第十一條ノ二ノ規定ニ依リ普通國民健
庚保險組合ノ設立アリタルトキハ其ノ
組合員タル資格ヲ有スル者ハ總テ組合
員ト爲ルモノトス
特別ノ事由アル者ニシテ命令ヲ以テ定
ムルモノハ前二項ノ規定ニ拘ラズ組合
員ト爲ラザルモノトス
第十九條ノ二療養ノ給付ヲ受ケントス
ル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ保險醫及
保險藥劑師竝ニ組合ノ指定スル者ノ中
自己ノ選定シタル者ニ就キ診療又ハ藥
劑ノ支給ヲ受クルモノトス
第十九條ノ三保險醫又ハ保險藥劑師ハ
勅令ノ定ムル所ニ依リ醫師、齒科醫師
又ハ藥劑師ニ就キ地方長官之ヲ指定ス
醫師、齒科醫師又ハ藥劑師ハ正當ノ理由
ナクシテ保險醫又ハ保險藥劑師タルコ
トヲ拒ムコトヲ得ズ
醫師、齒科醫師又ハ藥劑師ヲ使用スル
者ハ正當ノ理由ナクシテ其ノ醫師、齒
科醫師又バ藥劑師ガ保險醫又ハ保險藥
劑師タルコトヲ妨グルコトヲ得ズ
第十九條ノ四保險醫及保險藥劑師ガ療
養ノ給付ヲ擔當スルニ關シ必要ナル事
項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十九條ノ五保險醫若ハ保險藥劑師又
ハ之ヲ使用スル者ガ療養ノ給付ニ關シ
組合又ハ組合ノ事業ヲ行フ法人ニ請求
スベ、キ費用ノ額ハ勅令ノ定ムル所ニ依
ル
第二十一條組合ハ被保險者ノ疾病若
ハ負傷ノ療養又ハ被保險者ノ健康ノ保
持增進ノ爲必要ナル施設ヲ爲シ又ハ之
ニ必要ナル費用ノ支出ヲ爲スコトヲ得
第二十八條ノ二第十一條ノ二第三項ノ
場合ニ於テハ前條第二項ノ規定ニ拘ラ
ズ地方長官ニ於テ普通國民健康保險組
合ノ理事ヲ命ズ
第四十條ノ二地方長官ハ組合又ハ組合
ノ事業ヲ行フ法人ニ對シ組合聯合會ニ
加入スベキコトヲ命ズルコトヲ得
第四十二條中「第十七條、」ノ下ニ「第二十
一條、」ヲ加へ「及第三十條乃至第三十七
條」ヲ「、第三十條乃至第三十七條及第四
十六條」ニ改ム
第四十六條主務大臣及地方長官ハ組合
又ハ組合ノ事業ヲ行フ法人ニ對シ命令
ノ定ムル所ニ依リ第二十一條ノ施設ヲ
爲スベキコトヲ命ジ又ハ之ニ必要ナル
費用ノ支出ヲ命ズルコトヲ得
第四十九條削除
第五十二條第二項ヲ左ノ如ク改ム
前項ノ規定ニ依ル訴願又ハ行政訴訟ニ
關シテハ組合ハ之ヲ行政廳ト看做ス
第五十四條中「ニシテ其ノ社員ノ爲ニ醫
療ニ關スル施設ヲ爲スモノ」ヲ削ル
第五十四條ノ二前條ノ許可ヲ受ケ普通
國民健康保險組合ノ事業ヲ行フ法人テ
付其ノ地區內ニ於テ普通國民健康保險
組合ノ組合員タル資格ヲ有スル者ノ二
分ノ一以上其ノ法人ノ社員タル場合ニ
於テ地方長官必要アリト認メ其ノ法人
ヲ指定シタルトキハ其ノ地區内ニ於テ
普通國民健康保險組合ノ組合員タル資
格ヲ有スル者及其ノ世帶ニ屬スル者ハ
總テ被保險者ト爲ルモノトス但シ命令
ヲ以テ定ムル者ハ此ノ限ニ在ラズ
第二十條、第二十二條及第二十三條ノ
規定ハ前項ノ規定ニ依ル被保險者ノ屬
スル世帶ノ世帶主ニ關シ之ヲ準用ス
第五十四條ノ三主務大臣及地方長官保
險給付ニ關シ必要アリト認ムルトキハ
命令ノ定ムル所ニ依リ當該官吏ヲシテ
診療錄其ノ他ノ帳簿書類ヲ檢査セシム
ルコトヲ得
第五十六條ノ二當該官吏又ハ其ノ職ニ
〓在リタル者故ナク第五十四條ノ三ノ規
定ニ依ル診療錄ノ檢査ニ關シ知得シタ
ル醫師若ハ齒科醫師ノ業務上ノ祕密又
ハ個人ノ祕密ヲ漏洩シタルトキハ六月
以下ノ徵役又ハ五百圓以下ノ罰金ニ處
ス
職務上前項ノ祕密ヲ知得シタル他ノ公
務員又ハ公務員タリシ者故ナク其ノ祕
密ヲ漏洩シタルトキ亦前項ニ同ジ
第五十四條ノ三ノ規定ニ依ル當該官吏
ノ檢査ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者
ハ五百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第五十七條第二項ヲ削ル
附則
本法施行ノ期日ハ各規定ニ付勅令ヲ以テ
之ヲ定ム
戰時災害保護法案
右政府提出案本院ニ於テ可決セリ因テ議
院法第五十四條ニ依リ及送付候也
昭和十七年二月三日
衆議院議長田子一尺
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
戰時災害保護法案
戰時災害保護法
第一章總則
第一條戰時災害ニ因リ危害ヲ受ケタル
者竝ニ其ノ家族及遺族ニシテ帝國臣民
タルモノハ本法ニ依リ之ヲ保護ス
第二條本法ニ於テ戰時災害ト稱スルハ
戰爭ノ際ニ於ケル戰鬪行爲ニ因ル災害
及之ニ起因シテ生ズル災害ヲ謂フ
第三條保護ハ救助、扶助及給與金ノ支
給ノ三種トス
第四條保護ハ保護ヲ受クベキ者ノ住所
地(救助ニ付テハ現在地)ヲ管轄スル地
方長官之ヲ行フ
第二章救助
第五條救助ハ戰時災害ニ罹リ現ニ應急
救助ヲ必要トスル者ニ對シ之ヲ爲ス
第六條救助ノ種類左ノ如シ
-收容施設ノ供與
二焚出其ノ他ニ依ル食品ノ給與
三被服、寢具其ノ他生活必需品ノ給
與及貸與
四醫療及助產
五學用品ノ給與
六埋葬
七前各號ニ揭グルモノノ外地方長官
ニ於テ必要ト認ムルモノ
救助ハ地方長官ニ於テ必要アリト認メ
タル場合ニ於テハ前項ノ規定ニ拘ラズ
要救助者(理葬ニ付テハ埋葬ヲ行フ者)
ニ對シ金錢ヲ給シテ之ヲ爲スコトヲ得
救助ノ程度、方法及期間ニ關シ必要ナ
ル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第七條地方長官ハ勅令ヲ以テ定ムル者
ヲシテ救助ノ實施ニ從事セシムルコト
ヲ得
第八條地方長官ハ要救助者ヲシテ救助
ノ實施ニ協力セシムルコトヲ得
第九條救助ヲ行フ爲特ニ必要アリト認
ムルトキハ地方長官ハ一時勅令ヲ以テ
定ムル施設ヲ管理シ、土地、家屋若ハ
物資ヲ使用シ、勅令ヲ以テ定ムル者ヲ
シテ物資ヲ保管セシメ又ハ物資ヲ收用
スルコトヲ得
第十條前條ノ規定ニ依リ管理、使用若
ハ收用シ又ハ保管セシムル準備ノ爲必
要アルトキハ地方長官ハ當該官吏ヲシ
テ施設、土地、家屋、物資ノ所在スル
場所又ハ物資ヲ保管セシムル場所ニ立
入リ檢査ヲ爲サシムルコトヲ得
地方長官ハ前條ノ規定ニ依リ物資ヲ保
管セシメタル者ヨリ必要ナル報告ヲ徵
シ又ハ當該官吏ヲシテ當該物資ノ所在
スル場所ニ立入リ檢査セシムルコトヲ
得
前二項ノ規定ニ依リ立入ル場合ニ於テ
ハ其ノ旨豫メ其ノ施設、土地、家屋又
ハ場所ノ管理者ニ通知スベシ
當該官吏第一項又ハ第一一項ノ規定ニ依
リ立入ル場合ハ其ノ身分ヲ示ス證票ヲ
携帶スベシ
第十四條第一項ノ規定ニ依リ市町村長
又ハ之ニ準ズルモノ第一項及第二項ニ
規定スル職權ノ委任ヲ受ケタルトキハ
第一項、第二項及前項中當該官吏トア
ルハ當該吏員トス
第十一條第七條ノ規定ニ依リ救助ノ實
施ニ從事セシムル場合ニ於テハ勅令ノ
定ムル所ニ依リ其ノ實費ヲ辨償ス
第十二條第七條又ハ第八條ノ規定ニ依
リ救助ノ實施ニ從事又ハ協力スル者之
ガ爲傷痍ヲ受ケ、疾病ニ罹リ又ハ死亡
シタル場合ニ於テハ勅令ノ定ムル所ニ
依リ扶助金ヲ給ス
第十三條第九條ノ規定ニ依リ施設ヲ管
理シ、土地、家屋若ハ物資ヲ使用シ、
物資ヲ保管セシメ又ハ物資ヲ收用スル
場合ニ於テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ其
ノ損失ヲ補償ス
前項ノ規定ニ依リ補償ヲ受クベキ者補
償ノ額ニ付不服アルトキハ其ノ金額ノ
決定ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ六月以內
ニ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第十四條地方長官ハ命令ノ定ムル所ニ
依り本法ニ定ムル救助ニ關スル職權ノ
一部ヲ市町村長又ハ之ニ準ズルモノニ
委任スルコトヲ得
行政執行法第五條及第六條ノ規定竝ニ
之ニ基キテ發スル命令ハ前項ノ規定ニ
依リ地方長官ガ市町村長又ハ之ニ準ズ
ルモノニ委任シタル第七條乃至第十條
ノ規定ニ依ル職權ニ基キテ爲ス處分ニ
依リテ負フ義務ノ履行ヲ市町村長又ハ
之ニ準ズルモノガ强制スル場合ニ之ヲ
準用ス
第十五條地方長官ハ救助ノ爲必要アリ
ト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ
道府縣、市町村又ハ之ニ準ズルモノヲ
シテ救助ニ要スル費用ヲ一時繰替支辨
セシムルコトヲ得
第三章扶助
第十六條扶助ハ左ノ各號ノ一ニ該當ス
ル者ニシテ當該ノ傷痍、疾病、身體障
害又ハ死亡ノ爲生活スルコト困難ト爲
リタルモノニ對シ之ヲ爲ス但シ傷痍、
疾病又ハ死亡ガ其ノ者又ハ扶助ヲ受ク
ベキ者ノ故意又ハ重大テル過失ニ因レ
ルモノナルトキハ扶助ヲ爲サザルコト
ヲ得
戰時災害ニ因リ傷痍ヲ受ケ又ハ疾
病ニ罹リタル者
二戰時災害ニ因ル傷痍又ハ疾病ノ治
癒シタル場合ニ於テ仍身體ニ著シキ
障害ヲ存スル者
三前二號ニ揭グル者ノ配偶者(屆出
ヲ爲サザルモ事實上婚姻ト同樣ノ關
係ニ在ル者ヲ含ム以下同ジ)若ハ直
系卑屬ニシテ前二號ニ揭グル者ト同
一ノ家若ハ世帶ニ在ルモノ又ハ前二
號ニ揭グル者ノ直系尊屬ニシテ前二
號ニ揭グル者ガ傷痍ヲ受ケ若ハ疾病
ニ罹リタル時ヨリ引續キ同一ノ家若
ハ世帶ニ在ルモノ
四戰時災害ニ因リ死亡シタル者ノ配
偶者若ハ直系卑屬ニシテ戰時災害ニ
因リ死亡シタル者ノ死亡ノ時之ト同
一ノ家若ハ世帶ニ在リ且引續キ其ノ
家若ハ世帶ニ在ルモノ又ハ戰時災害
ニ因リ死亡シタル者ノ直系尊屬ニシ
テ戰時災害ニ因リ死亡シタル者ノ戰
時災害ニ罹リタル時之ト同一ノ家若
ハ世帶ニ在リ且引續キ其ノ家若ハ世
帶ニ在ルモノ
前項ノ規定ニ依リ扶助ヲ受ケ又ハ受ク
ベキ者本法ニ依リ救助ヲ受クルトキハ
救助ヲ受クルノ間其ノ者ニ對シ扶助ヲ
爲サズ
扶助ハ生活ニ必要ナル限度ヲ超ユルコ
トヲ得ズ
第十七條扶助ノ種類左ノ如シ
一生活扶助
二療養扶助
三出產扶助
四生業扶助
第十八條扶助ハ戰時災害ニ因リ危害ヲ
受ケタル時ヨリ勅令ヲ以テ定ムル期間
ヲ經過シタルトキハ之ヲ爲サズ
扶助ノ程度及方法ニ關シ必要ナル事項
ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十九條扶助ヲ受クル者死亡シタル場
合ニ於テハ命令ノ定ムル所ニ依リ埋葬
ヲ行ヒ又ハ埋葬ヲ行フ者ニ對シ埋葬費
ヲ給スルコトヲ得
第二十條扶助ヲ受クル者六年ノ懲役又
ハ禁錮以上ノ刑ニ處セラレタル場合ニ
於テハ其ノ者ニ對シ扶助ヲ爲サズ六年
未滿ノ懲役又ハ禁錮ニ處セラレタル場
合ニ於テハ其ノ刑ノ執行ヲ終リ又ハ執
行ヲ受クルコトナキニ至ル迄ノ間亦同
第二十一條扶助ヲ受ケ又ハ受クベキ者
左ニ揭グル事由ノ一ニ該當スルトキハ
其ノ者ニ對シ扶助ヲ爲サザルコトヲ得
一正當ノ理由ナクシテ扶助ニ關シ地
方長官ノ爲ス指示ニ從ハザルトキ
二正當ノ理由ナクシテ扶助ニ關スル
檢診又ハ調査ヲ拒ミタルトキ
三素行著シク不良ナルトキ又ハ著シ
ク怠惰ナルトキ
第四章給與金ノ支給
第二十二條戰時災害ニ因リ死亡シタル
者アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ其
ノ遺族ニ對シ給與金ヲ給ス戰時災害ニ
因リ傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リ之ガ爲
身體ニ著シキ障害ヲ存スル者アルトキ
其ノ者ニ對シ亦同ジ
第二十三條戰時災害ニ因リ住宅(水上
生活者ノ居住ノ用ニ供スル舟ヲ含ム)
又ハ家財ノ滅失又ハ毀損アリタル場合
ニ於テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ所
有者ニ對シ給與金ヲ給ス
第二十四條業務ノ性質上戰時災害ニ因
ル危害ヲ顧ミルコト能ハズシテ業務ニ
從事スルコトヲ要スル者當該業務ニ從
事中戰時災害ニ因リ傷痍ヲ受ケ若ハ疾
病ニ罹リ又ハ死亡シタル場合ニ於テハ
勅令ノ定ムル所ニ依リ本人又ハ其ノ遺
族ニ對シ給與金ヲ給ス此ノ場合ニ於テ
ハ第二十二條ノ給與金ハ之ヲ給セズ
前項ノ業務ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十五條正當ノ理由ナクシテ給與金
ノ支給ニ關スル檢診又ハ調査ヲ拒ミタ
ルトキハ其ノ者ニ對シ給與金ヲ給セザ
ルコトヲ得
第五章雜則
第二十六條本法ニ依ル保護ハ他ノ法令
ノ適用ニ付テハ貧困ノ爲ニスル公費ノ
救助又ハ扶助ニ非ザルモノトス
第二十七條本法ニ依リ給與ヲ受ケタル
金品ヲ標準トシテ租稅其ノ他ノ公課ヲ
課セズ
第二十八條本法ニ依ル給與金品ハ旣ニ
給與ヲ受ケタルト否トニ拘ラズ之ヲ差
押フルコトヲ得ズ
第二十九條本法ヲ朝鮮、臺灣又ハ樺太
ニ施行スル場合ニ於テ必要アルトキハ
勅令ヲ以テ特別ノ定ヲ爲スコトヲ得
第六章罰則
第三十條第七條ノ規定ニ依ル命令ニ從
ハザル者ハ六月以下ノ黴役又ハ五百圓
以下ノ罰金ニ處ス
第三十一條詐僞其ノ他ノ不正ノ手段ニ
依リ保護ヲ受ケ又ハ受ケシメタル者ハ
六月以下ノ懲役又ハ五百圓以下ノ罰金
三四八人
第三十二條第十條第一項若ハ第二項ノ
規定ニ依ル當該官吏若ハ當該吏員ノ立
入檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ同
條第二項ノ規定ニ依ル報告ヲ爲サズ若
ハ虚僞ノ報告ヲ爲シタル者ハ五百圓以
下ノ罰金ニ處ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣小泉親彥君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00819420204&spkNum=16
-
017・小泉親彦
○國務大臣(小泉親彥君) 只今議題トナリ
マシタ法案中、先ヅ最初ニ、國民體力法中
改正法律案竝ニ國民醫療法案ニ付テ提案ノ
理由ヲ御說明申上ゲマス、大東亞戰爭ノ目
的完遂ノ爲ニハ、心身共ニ剛健ニシテ、大
東亞共榮圈內ノ如何ナル地域ニモ雄飛シ得
ル不撓不屈ナル多數ノ國民ヲ保持スルコト
ガ、絕對ニ必要デアルト存ズルノデアリマ
ス、是ヲ以テ政府ニ於キマシテハ特ニ主眼
目ヲ、·第一ニハ靑壯年層ノ體力鍊成ト結核
豫防ニ、第二ニハ結核其ノ他ニ對スル適正
ナル醫療施設ノ普及ニ、第三ニハ我ガ民族
悠久ノ發展ノ爲缺クベカラザル乳幼兒、姙
產婦ノ保護ニ置キマシテ、國民體力ノ向上
ニ關スル綜合的方策ヲ樹立シ、之ガ實效ヲ
擧グルニ萬遺憾ナキヲ期シテ居ル次第デア
リマス、而シテ之ガ爲ニハ、國民體力向上
ノ指導體制ヲ整備確立スルコトト、醫療體
制ヲ整備充實スルコトトガ、何ヨリモ肝要
デアルト存ズルノデアリマス、國民體力ノ
向上ニ資スル根本法ト致シマシテハ、桑葚
各位ノ御協賛ヲ得テ成立致シマシタ國民體
力法ヲ既ニ實施致シテ居リマシテ、未成年
者ノ體力向上ニ努メテ參ッタノデアリマス
ルガ、今囘同法ノ內容ヲ一層整備充實スル
コトト致シタノデアリマス、卽チ一ニハ、
靑年層ノ結核豫防ノ徹底ヲ圖リマス爲、被
管理者ノ範圍ヲ擴張スルコトトシ、二ニハ、
體力檢査及其ノ結果ニ基ク指示及處置ヲ强
力ニ實施シ得ルノ途ヲ拓ク等ノ改正ヲ加ヘ
マシテ、以テ國民體力向上ヲ圖ルガ爲ノ綜
合的指導ニ付眞ニ萬遺憾ナキヲ期シタノデ
ゴザイマス、而シテ此ノ國民保健ノ指導體
制ノ確立ト相俟チマシテ、醫療體制ノ整備
確立ヲ圖ルコトモ亦保健國策遂行上必要不
可缺ノコトト存ズルノデアリマス、顧フニ
保健國策ノ遂行ニ當リマシテハ、醫師其ノ
他ノ醫療關係者ノ熱意アル協力ガアッテコ
ツ、所期ノ目的ヲ達成シ得ルモノト存ズル
ノデアリマス、然ルニ現行醫療制度ハ、其
ノ創始以來相當ノ年月ヲ經過致シマシテ、
時局ノ要請ニ卽應シ得ナイ憾ガ存スルニ
至ッテ居リマスルノデ、今囘新タニ國民醫療
法ヲ制定致シマシテ、現行醫師法及齒科醫
師法ハ之ニ統合規定致シマスルト共ニ、日
本醫療團ヲ設立致スコトト致シマシテ、
ハ以テ醫師等ヲシテ保健國策ニ一層寄與協
力セシムルノ途ヲ開キ、一ハ以テ醫療內容
ノ向上ト醫療施設ノ適正ナル普及ニ萬遺憾
ナカラシムルコトヲ期シタノデゴザイマス、
以上二法案ハ、畢竟銃後ニ於ケル豫備的兵
力及生產勞力ノ劃期的增强ト、進ンデハ將
來大東亞共榮圈ノ確保ニ必要ナル要員充足
ニ遺憾ナカラシムルコトヲ目途トスルニ外
ナラナイノデアリマシテ、又一面ニ於テハ、
之ニ依リ國民生活ノ安定ニ資スルコトモ亦
多大ナルモノガアルト信ズルノデアリマス、
次ニ健康保險法中改正法律案竝ニ國民健康
保險法中改正法律案ニ付テ提案ノ理由ヲ御
說明申上ゲマス、現在我ガ國ニ於ケル健康
保險ノ制度ト致シマシテハ、工場鑛山等ニ
使用セラレマスル勞務者其ノ他少額所得被
傭者ノ爲ニ、其ノ疾病負傷等ニ關シ療養ノ
給付又ハ傷病手當金ノ支給等ヲ致シマスル
健康保險法ト、事務所商店等ニ使用セラレ
マスル俸給生活者ノ爲ニ其ノ疾病負傷等ニ
關シ療養費又ハ傷病手當金ノ支給等ヲ致シ
マスル職員健康法ト、農山漁村ノ居住者及
都市ニ於ケル中小商工業者ノ爲ニ其ノ疾病
負傷等ニ關シ醫療ノ給付等ヲ致シマスル國
民健康保險法トガ存在スルノデゴザイマス
ルガ、是等ノ保險制度ハ何レモ、一面ニハ
醫療費負擔ノ輕減ニ依リ國民生活ノ安定ニ
資シ、他面ニハ醫療施設ノ適正ナル普及ニ
貢獻スル所極メテ大ナルモノアルニ鑑ミマ
シテ、今囘其ノ總テニ通ジマシテ被保險者
ノ範圍ヲ擴充スル等ノ方法ニ依リマシテ、
可及的ニ大部分ノ國民ヲ社會保險制度ノ
恩澤ニ均霑セシメ得ルコトト致シタノデア
リマス、先ヅ健康保險法ノ改正ノ要點ヲ申
上ゲマスト、第一ニハ、職員健康保險法ヲ
健康保險法中ニ統合規定致シマシテ事務ノ
簡捷ヲ圖ルコトトシ、第二ニハ、被保險者
ノ範圍ヲ擴張致シマシテ年收千八百圓迄ノ
職員ヲ被保險者タリ得ルコトトシ、第三ニ
ハ、家族ニ對スル保險給付、及ビ結核性疾病
ニ對スル延長給付ハ從來任意給付デアリマ
シタガ、之ヲ法定給付ト致シ、且其ノ內容
ニ付キマシテモ相當程度ノ改善ヲ加ヘルコ
トト致シマシタ、第四ニハ、保險醫ノ制
度ヲ整備シタコト等デゴザイマス、次ニ國
民健康保險法ノ改正ノ要點ヲ申上ゲマスル
ト、第一ニハ、從來普通國民健康保險組合
ノ設立ハ任意デアリマシタノヲ改メマシテ、
必要ニ應ジ强制設立ヲ命ジ得ルコトト致シ
マスルト共ニ、組合ニ對スル强制加入ノ制
度ヲ强化致シマシテ、第二ニハ、健康保險
ニ於ケルト同樣ニ、保險醫ノ制度ノ整備其
ノ他ノ若干ノ改正ヲ致シタコトデゴザイマ
ス、最後ニ戰時災害保護法案ニ付テ提案ノ
理由ヲ御說明申上ゲマス、今後戰局ノ推移
ニ伴ヒマシテ、敵國航空機ノ來襲等ノ場合、
之ニ因ッテ生ズル戰時災害ノ爲ニ危害ヲ受
ケタルモノヲ保護シ、戰時災害ニ對シ何等
ノ不安ヲモナカラシメ、戰時下ニ於ケル國
民生活ノ安固ヲ圖リマスルト共ニ、其ノ士
氣ノ〓揚及ビ民心ノ安定ヲ期スルコトハ極
メテ肝要ナリト考ヘルノデアリマス、然ル
ニ現行ノ制度ヲ以テ致シマシテハ、戰時災
害ニ對スル保護ノ完璧ヲ期スルコトハ甚ダ
困難デアリマスルノデ、玆ニ戰時災害ノ保
護ニ關スル法律ヲ制定スルコトト致シ、本
案ヲ提出スルニ至ッタ次第デアリマス、本法
案ハ、戰時災害ニ因リ危害ヲ受ケマシタ者
ヲ應急的又ハ一定ノ期間繼續的ニ保護シ、
又ハ其ノ更生ヲ便ナラシムルコトヲ目的ト
スルモノデゴザイマシテ、保護ノ內容ヲ簡
單ニ申上ゲマスレバ、第一ニハ罹災者ノ應
急救助デゴザイマス、是ハ現ニ救助ヲ必要
トスル罹災者ニ對スル炊出又ハ醫療ヲ行
ヒ、食糧、被服、寢具其ノ他ノ生活必需品
ヲ給與シ、又ハ假住宅ヲ供與スルモノデア
リマス、第二ニハ生活困難者ニ對スル扶助
デアリマス、是ハ災害ニ因リ傷痍ヲ受ケ若
シクハ疾病ニ罹リ又ハ死亡シタル場合、之
ガ爲生活困難トナリタル本人、其ノ家族又
ハ遺族ニ對シマシテ生活、療養、出產、生
業等ノ扶助ヲ爲スモノデアリマス、第三ニ
ハ災害ヲ受ケタル者ニ對スル給與金ノ支給
デアリマス、是ハ災害ニ因ル死亡者ノ遺族
又ハ不具癈疾者ニ對シマシテ、死亡給與金
又ハ障害給與金ヲ支給シ、或ハ住宅、家財
等ヲ滅失又ハ毀損セラレタル者ニ對シマシ
テ、其ノ更生ニ便ナラシムル爲若干ノ給與
金ヲ支給スルモノデアリマス、尙業務上戰
時災害ニ因ル危害ヲ願ミルコト能ハザル者
ガ、其ノ業務ニ從事中傷痍ヲ受ケ若シクハ
疾病ニ罹リ又ハ死亡シタルトキハ、一般人
ノ場合ヨリモ給與金ノ支給程度ヲ高メテ給
シタイト考ヘテ居ルノデアリマス、以上五
件ノ法律案ニ付テ御說明申上ゲタノデアリ
マスルガ、何卒御審議ノ上速カニ御協賛ア
ラムコトヲ切望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00819420204&spkNum=17
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018・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今上程セラレマシタ
國民體力法中改正法律案外四件ノ特別委員
ノ數ヲ十八名トシ、其ノ委員ノ指名ヲ議長
ニ一任スルノ動議ヲ提出致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00819420204&spkNum=18
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019・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00819420204&spkNum=19
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020・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 戶澤子爵ノ動議
ニ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00819420204&spkNum=20
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021・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、特別委員ノ氏名ヲ朗讀致サセマス
〔高山書記朗讀〕
國民體力法中改正法律案外四件特別委員
公爵島津忠承君侯爵筑波藤麿君
侯爵久我通顯君侯爵副島道正君
子爵實吉純郞君子爵京極高修君
子爵高木正得君松井茂君
河原田稼吉君安井英二君
下村宏君男爵井上〓純君
男爵高木喜寛君男爵山根健男君
中川望君小坂梅吉君
田部長右衞門君野田六左衞門君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00819420204&spkNum=21
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022・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 次會ノ議事日程
ハ、決定次第彙報ヲ以テ御通知ニ及ビマス、
本日ハ是ニテ散會致シマス
午前十一時十九分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007903242X00819420204&spkNum=22
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