1. 会議録本文
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000・会議録情報
會議
昭和十七年一月二十六日(月曜日)午前十時三十四分開議
出席委員左の如し
委員長 上田孝吉君
理事 小林房之助君 理事 小平重吉君
理事 中野治介君 理事 田中亮一君
釘本衞雄君 小山邦太郎君
澤田利吉君 末松偕一郎君
陣軍吉君 鶴惣市君
長谷長次君 馬場元治君
古屋慶隆君 北れい吉君
世耕弘一君 川俣清音君
渡邊泰邦君 瀧澤七郎君
出席國務大臣左の如し
商工大臣 岸信介君
出席政府委員左の如し
商工次官 椎名悦三郎君
商工省總務局長 神田暹君
商工省鑛産局長 津田廣君
商工省振興部長 豊田雅孝君
燃料局事務官 畠中大輔君
燃料局事務官 山口眞澄君
委員長の許可を得て出席したる者左の如し
燃料局事務官 山田六平君
燃料局事務官 榎本隆一郎君
本日の會議に上りたる議案左の如し
國民更生金庫法中改正法律案(政府提出)
帝國石油株式會社法中改正法律案(政府提出)
重要物資管理營團法案(政府提出)
帝國鑛業開發株式會社法中改正法律案(政府提出)
帝國燃料興業株式會社法中改正法律案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=0
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001・上田孝吉
○上田委員長 ソレデハ是ヨリ國民更生金
庫法中改正法律案外四件ノ委員會ヲ開キマ
ス、先ヅ商工大臣ノ說明ヲ求メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=1
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002・岸信介
○岸國務大臣 本委員會ニ一括付託セラレ
マシタ國民更生金庫法中改正法律案外四件
ニ付キマシテ、其ノ提案ノ理由ヲ順次御說
明申上ゲマス
先ヅ第一ニ國民更生金庫法中改正法律案
ニ付テ申上ゲマス、中小商工業ノ再編成ニ
付キマシテハ、從來ヨリ重點主義ニ依ル生
產增强、物資配給ノ圓滑適正化ヲ目途トシ、
併セテ緊要產業部門ニ於ケル勞務ノ充足ニ
資スル方針ノ下ニ、企業ノ整理統合ヲ實施
シテ參ツタノデアリマス、大東亞戰爭ノ赫
赫タル戰果ハ我ガ國產業ノ前途ニ多大ノ光
明ヲ齎シテ居リマスガ、之ニ依リ近イ將來
ニ於テ中小商工業ニ及ボス物資不足ノ影響
ガ緩和セラルルコトヲ期待スルコトハ時期
尙早デアリ、又將來諸物資ガ潤澤ニ供給セ
ラルルコトヲ考慮ニ入レマシテモ、產業再
編成ノ必要性ハ毫モ減殺セラルルコトハナ
イノデアリマシテ、必勝體制確立上、今後
益〓中小商工業ノ整理統合ヲ推進スルコトハ
刻下ノ急務ト存ズルノデアリマス、此ノ企
業ノ整理統合ニ伴ツテ生ズル轉廢業者ニ對
シマシテハ國民更生金庫ノ設置、同業者
ノ共助金ニ對スル國庫補助、其ノ他國民職
業指導所及ビ國民勤勞訓練所ノ設置等諸般
ノ施設ヲ講ジテ居ルノデアリマシテ、就中
國民更生金庫ハ政府ノ轉廢業施設中其ノ中
心トナルモノデアリマス、而シテ今後政府
ニ於テ急速ニ企業ノ整理統合ヲ實施致シマ
スル關係上、國民更生金庫ノ利用ハ急增ス
ルモノト豫想セラルルノデアリ之ニ伴フ
國民更生金庫ニ對スル資產引受、共助資金
借入等ノ申込ハ約七億三千万圓ノ多額ニ上
ル見込デアリマス、然ルニ國民更生金庫ノ
現在ノ資本金ハ二千万圓、更生債劵ノ發行
限度ハ拂込資本金ノ十倍ニ過ギナイノデア
リマシテ、到底激增スル利用者ノ需要ニ應
ズルコトハ困難デアリマス、仍テ國民更生
金庫ノ資本金ヲ三千万圓增加シ、其ノ全額
ヲ政府出資トスルト共ニ、更生債劵ノ發行
限度ヲ拂込資本金ノ十倍ヨリ十五倍ニ擴張
シ、以テ其ノ資金ノ充實ヲ圖ラントスル次
第デアリマス、尙ホ國民更生金庫ハ從來大
藏大臣ノ所管デアリマシタガ、今般商工省
ノ所管ニ移スコトニナリマシタノデ、之二
伴ヒマシテ、國民更生金庫ノ損失補償ノ基
準決定ハ大藏大臣ガ之ヲ爲スコトトナツテ
居リマシタノヲ、主務大臣ガ大藏大臣ニ協
議シテ定ムルコトニ改メントスルモノデア
リマス
次ニ帝國石油株式會社法中改正法律案ニ
付テデアリマスガ、改正ノ第一點ハ、帝國
石油株式會社ノ資金調達ノ圓滑化ヲ圖ラン
トスルモノデアリマシテ、是ガ爲ニ帝國石
油株式會社ガ政府ノ認可ヲ受ケテ增資ヲ行
ヒマス場合ニハ、政府出資ヲ現行法ノ五千
万圓ヲ超エテ出資シ得ルコトト致シマスル
ト共ニ、帝國石油債劵ノ發行限度ヲ、拂込株
金額ノ三倍ヨリ五倍ニ擴張セントスルモノ
デアリマス、現在帝國石油株式會社ノ資本
金ハ一億圓デアリマシテ、政府出資ハ其ノ
半額ニ限定セラレ、又帝國石油債劵ノ發行
限度ハ拂込株金額ノ三倍ト定メラレテ居ル
ノデアリマスガ、南方油田開發ノ重大任務
ヲ擔當スベキ同社トシテハ、現在程度ノ資
金調達デハ不十分デアリマスノデ、之ヲ增
加セントスルモノデアリマス、尙ホ南方油
田開發ニ要スル資金ノ額竝ニ其ノ時期等ハ、
現在ニ於キマシテハ未ダ決定致スコトハ不
可能デアリマスカラ、政府出資ノ限度ハ之
ヲ撤廢致シマスルト共ニ、帝國石油債劵ノ
發行限度ヲ擴張セントスルモノデアリマス、
改正ノ第二點ハ、帝國石油株式會社ノ副總
裁一人ヲ二人ニ增員セントスルモノデアリ
マスガ、是ハ今後同社ヲシテ南方ニ進出セ
シムル爲メ同社ノ機構ヲ擴充整備シ、副總
裁ノ一人ヲ二人ニ增員シ、其ノ一人ヲシテ
南方ニ常駐セシムルノ途ヲ開カントスルモ
ノデアリマス
次ニ重要物資管理營團法案ニ付テ申上ゲ
Web s今次大東亞戰爭ヲ克服シテ有終ノ成
果ヲ收メマスガ爲ニハ、今後長期ニ亙ルベ
キ大規模ナル物資消耗戰ニ對處シテ國內戰
時經濟ノ運營ニ一段ノ强化ヲ加ヘ、生產、
配給、消費各部面ニ統制ノ徹底ヲ圖リマス
ト共ニ、特ニ重要物資ノ國內在庫ノ確保及
ビ增强ト其ノ適切ナル利用ヲ講ジマスコト
ガ極メテ緊要ト認メラレルノデアリマス、
豫テヨリ政府ト致シマシテハ、物資動員計
畫ノ實施ニ關聯シテ將來ノ需要ニ備ヘ、機
會アル每ニ特別輸入乃至繰上輸入等ノ措置
ヲ講ジ、海外ヨリノ早期輸入手當ヲ致シマ
シテ、現ニ國內ニ保有セラレテ居ル戰時緊
要物資ハ相當多量ニ上ツテ居リマス、又其
ノ他一般ノ國內在庫ニ致シマシテモ、未ダ
相當大量ニ貯藏セラレテ居ルモノト考ヘラ
レル實情ニ在リマスルノデ、差當リノ問題
トシテ是等國內在庫ノ增强確保ノ方策ヲ講
ジ、事態ノ進展ニ伴ヒ、今後ニ於ケル海外
取得物資、特ニ南方ヨリ輸入スル重要物資
ノ管理及ビ其ノ有效利用ヲ圖ルコトガ急務
ト認メラレルノデアリマス、更ニ又戰時下
ニ於ケル非常不測ノ事態發生ニ備ヘテ工業
用各種原材料、生活必需日四、防空用資材等各
般ノ物資ニ亙リ、是等ヲ綜合シテ地方分散
ノ保管計畫ヲ運用致シマスコトモ緊要ナル
事業ト考ヘラレルノデアリマス、而シテ是
等ノ事業ハ何レモ既存ノ民間機關ニ之ヲ期
待スルコトハ至難ナルモノガアリマスノデ、
新タニ國家ニ代ツテ、敍上ノ使命ヲ遂行ス
ル重要物資管理營團ヲ設立シマシテ、本營
團ニ對シ特別ノ權能ト助成ヲ與ヘ、政府ノ
適切ナル指導監督ノ下ニ重要物資ノ貯藏ヲ
確保增强シ、其ノ利用ヲ有效且ツ適切ナラ
シメルコトヲ骨子トシマシテ本法案ヲ立案シ
タルモノデアリマス、本法案ノ要領ヲ申述
ベテ見マスト、第一ニ本營團ノ資本金ハ之
ヲ全額政府出資トシ、且ツ政府ハ國債ヲ以
テ出資ヲナシ得ルコトト致シテ居ルノデア
リマスガ、右ハ其ノ事業ガ高度ノ國家的性格
ヲ持ツカラデアリ、又營團ノ資本金額ヲ二千
万圓ト致シテ居リマスガ、右ハ營團ノ事業
規模ヲ考慮シ、〓ネ資本金ノ利息ヲ以テ其
ノ事務費ヲ賄ハシメル方針ノ下ニ斯樣ニ致
シタノデアリマス、尙ホ營團ノ事業資金ノ
調達ニ付キ、一般ノ營團法ニ見受ケラレマ
スルガ如キ債劵發行ニ關スル規定ヲ設ケテ
居リマセヌガ、右ハ營團ノ事業ノ性質上〓
ネ短期ノ資金ヲ要スルノデアリマシテ、必
要ナルトキハ借入金ヲ以テ賄ハシメル方針
デアルカラデアリマス、第二ニ、本營團ノ
國家代行機關タル本質竝ニ事業目的達成上
ニ於ケル必要性ニ鑑ミマシテ、一定ノ者ニ
付キ重要物資ノ保有狀況ニ關シ報〓ヲ求メ
或ハ檢査ヲナスノ權能ヲ認メ、又一定ノ者
ニ對シ重要物資ノ保管ヲ請求シ得ル權限ヲ
認ムルコトト致シテ居リマス、第三ハ、本
營團ノ事業ハ直チニ物資動員計畫ノ內容ノ
一部ト相成リマスル關係上、其ノ事業ニ關
スル基本計畫ハ政府ニ於テ之ヲ決定スルコト
トシ、營團ハ右基本計畫ニ基キ實施計畫ヲ樹
立運用スルコトト致シマシタ、其ノ他ノ點ニ付
キマシテハ略〓一般ノ營團法中ニ設ケラレテ居
リマスル如キ諸規定ヲ設ケタノデアリマス
次ニ帝國鑛業開發株式會社法中改正法律
案ノ提出理由ニ付テ申上ゲマスガ、同社ハ御案
內ノ如ク、昭和十四年八月十日銅、鉛、亞鉛、
錫「ニツケル」「クローム」「マンガン」等金屬
鑛物資源ノ開發ヲ目的ト致シマシテ、三千
万圓ノ資本金ヲ以テ設立セラレマシタ半官
半民ノ國策會社デアリマスガ、時局ノ進展ニ
伴ヒ是等金屬鑛物ノ重要性ハ一段ト增加シ
テ參リマシタノデ、當社ハ其ノ設立ノ本旨
ニ鑑ミ、或ハ自ラ鑛山ノ經營ニ當リ、或
中小鑛山ニ對スル融資乃至投資ヲ行フ等ノ
方法ニ依リ、休眠鑛區ノ開發乃至低品位鑛
ノ處理ニ萬全ノ努力ヲ拂ツテ參ツタノデア
リマス、然ルニ今般大東亞戰爭ノ勃發ヲ見、
軍需資源トシテノ非鐵金屬ノ重要性ハ更ニ
一段ト增加シタノデアリマシテ、之ニ伴ヒ
同社ノ事業モ當然擴充セザルヲ得ザルコト
トナツタノデアリマス、斯クノ如キ同社ノ
擴充ニ備フル爲ニハ、同社ノ資金ヲ潤澤ナ
ラシメ置ク必要ガアルノデアリマス、同社
ノ資金調達ノ狀況ヲ見マスルニ、公稱資本
金三千万圓、內一千二百万圓ノ拂込濟ミデ
アリマシテ、拂込額ノ五倍タル六千万圓ノ社
債發行能力ヲ有シテ居ルノデアリマスルガ、
社債ハ現ニ五千万圓マデ發行濟ミトナツテ
居リ、而モ殘額一千万圓ハ此ノ三月マデニ
發行致シマスコトト決定致シテ居リマス、此ノ
如キ事情デアリマスルノデ、同社ノ事業ヲ擴
張致シマスルニハ、資金調達ノ上ニ改正ヲ加
フルノ必要ガ起ツテ參ツタノデアリマス、卽チ
今囘ノ改正ノ第一點ハ、同社ハ帝國鑛業開
發株式會社法第三條第二項ノ規定ニ依リ、政
府ノ認可ヲ受ケ其ノ資本ヲ增加スルコトヲ
得ルコトトナツテ居リマスルガ、此ノ場合
ニ於キマシテ政府ハ現在ニ於ケル政府出
資ノ限度額タル千五百万圓ヲ超エテ出資シ
得ルコトトスル點デアリマシテ、之ニ依リ
同社ガ政府ノ認可ニ依リ增資ヲナス場合、
政府ニ於テモ其ノ增資新株ヲ引受ケ得ルコ
トトシ、同社ノ資金調達ヲ容易ナラシメン
トスル趣旨デアリマス、次ニ改正ノ第二點
ハ、現在同法第二十九條第一項ノ規定ニ依
リ四分トナツテ居リマスル同社ノ配當補給
金ノ限度ヲ年六分ニ引上ゲ、更ニ其ノ年限
ガ現在ハ設立ノ年及ビ其ノ翌年ヨリ五年間、
トナツテ居リマスノヲ、十年間、卽チ第二
十一營業年度マデ延長致サウト云フ點デア
リマシテ、同社ノ舊株ノ拂込徵收竝ニ增資
新株ノ引受ヲ容易ナラシメ、資金調達上遺
憾ナキヲ期スル趣旨ニ外ナラヌノデアリマ
ス、次ニ改正ノ第三點ハ、非訟事件手續法
改正ニ伴ヒマシテ、本法ノ規定ヲ整理セン
トスルモノデアリマス
最後ニ帝國燃料興業株式會社法中改正法
律案ニ付テ申上ゲマス、改正ノ第一點ハ、
帝國燃料興業株式會社ガ政府ノ認可ヲ受ケ
テ增資ヲ行ヒマス場合ニ、政府出資ヲ現行
法五千万圓ヲ超エテ出資シ得ルコトトセン
トスルモノデアリマス、人造石油製造事業
ハ、我ガ國石油ノ自給確保ノ爲メ今後益〓强
化振興ヲ必要トスル次第デアリマスガ、帝
國燃料興業株式會社ノ現在ノ資金計畫ハ資
本金一億圓、社債發行限度ハ拂込株金額ノ
五倍デアリマシテ、今後ノ事業ノ振興ニ對
シマシテ不十分ナル實情ニアリマスノニ鑑
ミマシテ、同社ノ資本金ヲ增加セントスル
モノデアリマス、第二點ハ、帝國燃料興業
株式會社ニ對スル配當補給金ノ限度ヲ擴張
セントスルモノデアリマシテ、現行法ニ於
キマシテハ民間株主ノ拂込株金額ニ對シ
年百分ノ六ノ割合ニ相當スル額及ビ當該營
에
業年度ニ於テ支拂ヒタル燃料興業債劵ノ利
息額ヲ超ユルコトヲ得ザルコトトナツテ居
リマスル所、現下ノ金融情勢下ニ於キマシ
テハ、社債發行ヲ致スト共ニ相當程度ノ借
入金ヲ爲スコトヲ必要トスル場合ガアリマ
スノデ、斯カル場合ニ借入金ノ利息額ヲモ
配當補給金ノ範圍ニ加ヘントスルノデアリ
マス、其ノ他二點ニ於キマシテ、商法改正
竝ニ非訟事件手續法ノ改正ニ伴フ關係條項
ノ整理ヲ行ヒタイト考へルノデアリマス
以上ガ今囘提出致シマシタ五件ノ法律案
ノ骨子デアリマス、何卒愼重御審議ノ上御
協賛アランコトヲ希望致ス次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=2
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003・上田孝吉
○上田委員長 一寸御諮リ致シマスガ、付
託サレタル五案ノ中、國策會社關係ノ法律
案デアル帝國石油、帝國鑛業、帝國燃料、
此ノ三案ヲ一括シ、重要物資管理營團竝ニ
國民更生金庫ノ案ヲ一括シテ質問ヲシテ戴
クヤウニシタラバドウデアラウカト思フノ
デアリマスガ、サウ云フヤウナ運ビニシテ
御差支アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=3
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004・上田孝吉
○上田委員長 ソレデハサウ云フヤウナ運
ビニシテ、討論採決ニ付テハ又後日御相談
致シマスガ、一應御質問トシテハサウ云フ
風ニ取計ヒマス、御質問ハ何レ國民更生、重
要物資ノ方ニ多イト思ヒマスルカラ、先ヅ
質問ノ少イト思ハレマスル國策會社三件ノ
分カラ質問ヲシテ戴クヤウニシテ行キタイ
ト思ヒマス
ソレカラ政府カラ資料ガ大分出マシタガ、
尙ホ委員諸君カラ資料ノ要求ガアリマシタ
ラバ今後モ要求サレテ差支ヘナイト思ヒマ
スガ、成ベク時期ニ遲レザルヤウニ御要求
願ヒタイ、尙ホ只今ノ程度デ御要求ノ方ガ
アレバ、質問ニ入ル前ニ資料ノ要求ヲシテ
戴キタイト思ヒマスガ、資料ノ要求ハアリ
マセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=4
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005・川俣清音
○川俣委員 資料ハ委員長ノ手許マデ書イ
テ出シマスカラ、委員長カラ政府ノ方へ要
求シテ戴キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=5
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006・上田孝吉
○上田委員長 承知シマシタ、ソレデハ委
員會デ直チニ要求シテ戴イテモ結構デスガ、
豫メ委員長ノ手許マデ資料ノ要求ノ控ヘヲ
出シテ戴キマスレバ整理スルノニモ都合
ガ好イト思ヒマスカラ、左樣御願ヒ致シマ
ス-ソレデハ國策會社三案ノ質問カラ始
メテ戴キタイト思ヒマス、小林房之助君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=6
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007・小林房之助
○小林(房)委員 南方占領地區ノ地下資源
ヲ開發シテ行カウト云フノデ、國民ノ關心
ガ其ノ方面ニ非常ニ向イテ居ルヤウデアリ
マスケレドモ、之ヲ以テ直チニ日本現在ノ
必要ニ應ズルノニハ急場ノ間ニ合ハヌノヂ
ヤナイカト思ヒマス、隨テドウシテモ現在
內地ニ於ケル地下資源ノ開發ニ全力ヲ盡ス
コトガ最モ必要ナコトデアリ、且ツ捷徑デ
アルコトハ申スマデモナイコトデアリマス、
玆ニ於テソレ等ノ資源開發ノ爲ノ重大ナル
使命ヲ持ツテ居ル國策會社、例ヘバ現在議
題ニナツテ居ル帝國鑛發會社ノ如キモノガ、
本當ニ現在ノ日本ノ地下資源開發ノ爲ニ、
生產擴充ノ爲ニ、十分ニ其ノ機能ヲ發揮
シテ居ルカドウカト云フコトニ對シテ、非
常ナ疑ヒヲ持ツテ居ルノデアリマス、ドウ
云フ譯デソレ等ノ國策會社ガ十分ニ國策會
社タルノ使命ヲ完全ニ果シ得ナイカト申シ
マスルト、帝國鑛發會社ノ如キ、會社ノ性
格ガ一面ニ於テ國策會社デアルケレドモ
一面ニ於テ營利會社デアル、營利會社デア
ル以上ハ損ヲスル譯ニハ行カナイ、會社ノ
經營ノ爲ニハ損ヲシナイヤウニヤツテ行
ク、殊ニ鑛山開發ト云フコトハ、相當思切
ツタ手段ヲ講ズルノデナケレバ開發モ增產
モ出來マセヌ、此ノ山ハ是ダケノコトヲシ
タナラバ是ダケノモノハ出來ル、併シナガ
ラ是ダケノ損ガ出ルノダ、損ハ出テモ國家
ノ要請ノ爲ニハ出サナケレバナラヌト云フ
コトノ爲ニ、國策會社ガ思ヒ切ツテ働カナ
ケレバナラヌノデアリマスルケレドモ、
面ニ於テ營利會社デアルカラ赤字ノ出ナイ
ヤウニ損ヲセナイヤウニ、石橋ヲ叩イテ渡
ル爲ニ、生產ノ增强ガ出來ナイノデハナイ
カ知ラン、斯樣ニ考ヘマス、卽チ帝國鑛發
會社ハ一面ニ於テ國策會社デアルケレド
モ、一面ニ於テ營利會社デアル、此ノ二ツ
ノ性格ヲ持ツテ居ル鵺的ノ狀態ガ、此ノ會
社ヲシテ十分ニ國策會社トシテノ地下資源
開發ノ使命ニ邁進シ得ナイ苦シイ立場ニ陷
レテ居ルノデアルト私ハ解釋致シテ居リマ
ス、隨テ帝國鑛發ニ致シマシテモ、或ハ日
本產金ニ致シマシテモ、或ハ東北振興會社
ニ致シマシテモ、斯ウ云フヤウナ鵺的性格
ヲ離脫セシメ、寧ロ是等ノモノヲ解消シ、之
ヲ打ツテ一丸トスル營團組織-營利ト云フ
コトヲ考ヘナイ、本當ニ國策ノ立場ニノミ
立ツテ地下資源ノ增產ヲシテ行クト云フ營
團組織ニシテ行クノデナケレバ、本當ニ國
策ノ使命達成ハ出來ナイ、生產力ノ擴充ハ
出來ナイ、斯樣ニ考ヘルノデアリマスガ、
政府ハ是等ヲ發展的ニ解消セシメテ、新タ
ナル營團ヲ組織スル御考ヘハアリマセヌカ、
如何デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=7
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008・岸信介
○岸國務大臣 大東亞戰爭完遂ノ爲ニ、國
內鑛物資源ノ開發ガ極メテ緊要デアル、此
ノ爲ニ其ノ中心機關ニナツテ居ル國策會社
ノ活動ノ不十分ナモノヲ十分ヤラスヤウニ
セヨト云フ御意見ニ對シマシテハ、私共全然
同感デアリマス、正ニサウ致サネバナラヌ
ト思ヒマス、今御指摘ニナリマシタ如ク、
一面南方諸地域ニ於キマシテ、各種ノ鑛物
資源ヲ確保スルコトニナリマシタケレド
モ、中々各種ノ事情ハ急速ニ之ヲ開發シ、
且ツ之ヲ國內ニ於テ利用スルト云フ譯ニモ
參リマセヌノデ、ドウシテモ國內資源ノ開
發ニ更ニ一段ノ力ヲ用ヒナケレバナラヌ、
其ノ趣旨カラ、今御審議ニナツテ居リマス
ル國策會社ノ資金ノ充實、若シクハ機構ノ
擴充等ニ付テ考慮致シタ譯デアリマス、而
シテ今御指摘ニナリマシタ是等國策會社ガ
十分ニ其ノ使命ヲ果シ得ナイ、又過去ノ實
績カラ見テ十分ノ活動ヲシテ居ラナイト云
フ點ニ關シマシテモ、私共今日マデノ是等
ノ各特殊會社ノ活動振リヲ見マスト、遺憾
ノ點ガナイ譯デハナイノデアリマス、併シ
ナガラソレニハ色々ナ事情が私ハアルト思
フノデアリマス、今御指摘ニナツタ事柄モ
一ツノ點ディルト思ヒマスガ、其ノ他色々
ナ點ガアルト思フノデアリマシテ、是等ノ
點ニ關シマシテハ從來ニ於キマシテモ是
ガ改善ニ付テ力ヲ致シテ居リマスガ、今後
ニ於キマシテモ特ニ力ヲ用ヒタイト思ヒマ
ス、唯總テノ是等ノ國策會社ヲ今直チニ發
展的解消ヲセシメテ、營團組織ニ改組シテ
行クト云フ御意見ニ付キマシテハ、私共直
チニサウスルト云フコトヲマダ申上ゲル時
期ニ達シテ居リマセヌケレドモ、十分一ツ
御趣旨ノヤウナ點ヲ〓究致シテ見タイト考
ヘマス、今日ノ所、必ズ營團ニ發展解消ス
ルト云フコトハ申上ゲ兼ネマスルケレド
モ、御意見ノ點ニ付キマシテハ十分今後〓
究シテ見タイト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=8
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009・小林房之助
○小林(房)委員 此ノ改正案ヲ見マスルト、
配當補給ガ增率サレテ居マスガ、是ハ配當
ノ補給ノコトデアリマシテ、配當ノ保證、
「ギヤランテイー」デハアリマセヌ、隨テ配
當ノ補給ヲ得ルニ付キマシテモ、其ノ金額
ノ最高限度ハ決ツテ居ルコトニ相成リマス、
隨テ會社ガ損ヲ餘計ニ出シタノデハ配當ガ
出來ナイコトニナルノデアリマスカラ、ド
ウシテモ營利會社タル性格カラ損ヲ出スコ
トヲ避ケルヤウニ努メル、隨テ消極的ノ經
營ニ堕スルコトハ已ムヲ得ナイト思フノデア,
リマスルガ、併シナガラ之ヲ救濟スル方法
トシテ、此ノ會社ノ經營ニ對シテ損失補償
ヲスルコトガ必要デアルト思フノデアリマ
ス、昨年ノ何月デシタカ、新聞デ見タノデア
リマスガ、何處カノ小サイ山-水銀デスカ
錫デスカ、サウ云フ山ノ經營ヲ政府カラ指
令シテ、ソレニ對シテ僅カ三十万カソコラ
ノ損失補償ヲスルト云フ命令ガアツタヤウ
ニ新聞デ承知シタノデアリマス、資料ニ依
ツテ見マスト帝國鑛發ハ可ナリノ山ヲ經營
シテ居リ、又委任經營ヲシテ居ル、是等ノ
山ト云フモノハ必ズシモ計算ガ立ツモノト
ハ思ハレマセヌ、生產力ノ增加、地下資源
ヲ現實ニ增產シテ行ク爲ニハ、政府ハ是等
ノ鑛山ヲ積極的ニ經營開發セシメル、ソレ
ニ依ツテ生ズル損失ハ政府ガ之ヲ補償スル
ト云フコトデナケレバナラヌト思フノデア
リマスルガ、之ニ對シテハ如何ナル御方針
デアリマスルカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=9
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010・岸信介
○岸國務大臣 御趣旨ハ全然同感デアリマ
シテ、實ハ帝國鑛業開發株式會社法第二十
四條ト云フ規定ガアリマシテ、損失補償制
度ノ規定モ設ケラレテ居ルノデアリマス、
今マデ十分ニ活用サレテ居ラナカツタヤウ
デアリマスガ、今御指摘ニナツタヤウナ場
合ニハ、同規定ノ發動ニ依ツテ或ル仕事ヲ此
ノ會社ニ命ジマシテ、是カラ起ル所ノ一切
ノ損失ヲ補償スルト云フ制度ヲ本年度カラ
十分活用シテ參リタイト思ヒマス、現ニ具
體的ニ事務的ニハ數件ノモノニ付テ考慮致
シテ居リマス、十分サウ云フ御趣旨ニ從フ
ヤウナ運用ヲシテ參リタイト考ヘテ居リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=10
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011・小林房之助
○小林(房)委員 只今ノ御答辯ノ損失補償
ハ、帝國鑛發ノ經營シテ居ル山ノ一部分ニ
對シテ御指定ニナルノデアリマスルカ、會
社全體ノ山ノ經營ニ對シテノ損失補償ヲ言
フノデアリマスルカ、其ノ間ノ融通ト言ヒ
マスカ、流用ト言ヒマスカ、彈力性ヲ御認
メニナルノデアリマスカ、如何デアリマス
カ、茲ニ其ノ金額ガ大體分ルヤウデシタラ
御答辯願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=11
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012・岸信介
○岸國務大臣 會社全體ノ經營ニ對シマシ
テハ配當補給ノ制度デ參ル積リデアリマス、
又サウ云フコトニナツテ居リマス、今申シ
マシタ損失補償制度ノ運用ハ會社ノ事業ノ
一部、卽チ或ル事柄ガ國家的ニ見テ非常ニ緊
要デアルト云フ仕事ヲ特ニ會社ニ命ジテヤ
ラセル場合ニ於キマシテ其ノ事業ノ部分ダ
ケニ付キマシテ損失ヲ補償スル考ヘデアリ
マス、此ノ金額ニ付キマシテハ、十六年度
ハ實ハ比較的少ウゴザイマシテ、四十万圓
ヲ豫備金デ支出スルコトニナツテ居リマス、
十七年度分ニ付キマシテハ、千二百万圓ノ
豫算外契約ヲ締結スルコトニナツテ居リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=12
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013・小林房之助
○小林(房)委員 十七年度一年デ一千二百
万圓ト云フコトニナリマスト可ナリノ金デ
アリマスガ、帝國鑛發ガ出來テカラマダサ
ウ大シテ年月ガ經タナイノデアリマスカラ、
今マデノ經營ニ對スル損失ノ高ハサウ大シ
テ現ハレテ來ナイカモ分ラヌト思ヒマス、
併シソレダケノ損失補償ヲヤルト云フノデ
アルナラバ、私ハヤハリ會社全體ガ現在現
實ニ經營シテ居ル事業其ノモノニ對シテ損
失ヲ補償シテヤルノデナケレバ、思ヒ切ツ
タ經營ハ出來ナイト思フ、是ダケノ部分ハ
損失補償ヲスルノデアル、他ノ部分ハ知ラナ
イト云フコトデハ、會社全體ノ運營及ビ增
產ノ上ニ於テハ十分ナ目的ヲ達スルコトガ
出來ナイト思フノデアリマス、是ハマダ方
針ガ本當ニ御決マリニナツテ居ナイナラバ、
全體ヲ見テヤルト云フコトニシナケレバナ
ラヌト思ヒマスガ、サウ云フコトニ對スル
御考ヘヲ承ツテ置キタイト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=13
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014・岸信介
○岸國務大臣 先程千二百万圓ヲ十七年度
ノ豫算外國庫負擔契約トシテ今議會ニ提案
致シテ居ルト申シマシタガ、右ハ少シ不十
分デアリマシタノデ訂正シテ置キマス、是
ハ十七年度及ビ十八年度ニ於テ生ズベキ損
失ノ補償ノ總額デアリマシテ、二箇年分ニ
ナツテ居リマス、尙ホ全體ノ點ニ付テヤハ
リ同樣ナ損失補償デ行クベキデハナイカト
ノ御意見デアリマスガ、會社經營ノ全體ニ付
キマシテハ配當補給制度デ參リマス、今後新シ
ク積極的ニ必要トスル部面ニ於テ、今御指摘
ニナツタヤウナ消極的ニ堕スルコトナク、積
極的ニ重要鑛山資源ヲ開發スルコトニウン
ト力ヲ入レシメル意味ニ於キマシテ、損失
補償制度ニ付キマシテハ、今後積極的ニ吾
吾ノ方カラヤラセルモノニ付テ之ヲ行ツテ
行ク、會社全體ノ經營ニ付キマシテハ配當
補給制度ノ運用ニ依ツテヤツテ行ク、斯ウ
云フ二本建デ參リタイト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=14
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015・小林房之助
○小林(房)委員 配當補給制度ニ依ツテ會
社經營ノ損失ヲ補塡シテヤルト云フ御趣旨
ハ能ク承知ガ出來マスケレドモ、是ハ配當
ノ補給デアツテ保證デナイ、「ギヤランテ
イー」ヲスルト云フコトデアツテコソ、初メ
テソコニ會社經營ノ安全ト云フモノガ期セ
ラレルケレドモ、「ギヤランテイー」デナイ
補給デアルナラバ、大膽ナル經營、思ヒ切ツ
タ增產計畫ヲ遂行スルコトハドウカト云フ
疑ヒヲ持ツノデアリマス
次ニ御尋ネ致シタイコトハ、只今御話ノ
損失補償ハ、帝國鑛發自體ノ經營シテ居ル
鑛山、而モ其ノ中ノ政府ガ指定サレルモノ
ニ對スル損失補償デアリマスガ、更ニ一段
進メテ帝國鑛發ガ十分ナル調査ヲシ、十分
ナル注意ヲ拂ツタ上デ、是ナラバ增產ノ見
込ガアル是ナラバ開發シテ國家ノ必要ナ
ル資源ヲ供給シ得ル見込ガアルト云フ山ニ
對シテ資金ノ融通ヲスル場合ニ於テハ、之
ニ對シテモ損失補償ヲシテヤラテケレバ本
當ノ增產ハ出來ナイト思ヒマス、國家ガ損失
ノ補償ヲスルノハ、單ニ帝國鑛發ノ經營シ
テ居ル鑛山ダケデハナク、今日國家ノ要請
ニ應ズル資源ノ開發增產ハ、日本全國ニ亙
ル中小鑛山ノ開發ニ依ラナケレバ到底必要
ナル資源ヲ賄フコトガ出來ナイト思ヒマス、
中小鑛山ヲ活カシテ行ク、働カシテ行ク、
而モ其ノ中ニハ相當見込ノアル、相當品物
ノ出ルモノガアルニ違ヒナイ、而モソレ等
ハ帝國鑛發ノ經營デハナイノデアリマスカ
ラ、廣ク是等ノ中小鑛山ニシテ十分地下資
源ヲ開發シ得ル見込ノアル山、而モソレニ
對シテハ金ガナイ、是等ノ金融ノ爲ニ帝國
鑛發ガ金ヲ出ス、而モ十分ナル調査ヲシ、
十分ナル注意ヲシテ、是ナラバ間違ヒガナ
イ、併シナガラ山ノコトデアリマスカラ、ヤ
ツテ見テドウ云フ結果ガ起ルカモ知レナイ、
サウ云フモノニ對スル融資、是ハ增產ノ爲
ニ働イテ居ルモノデアリマスカラ、國家ハ
當然之ニ對シテ損失補償ヲスル、此處マデ
來ナケレパ、地下資源ノ開發、增產ハ出來
ナイト思フノデアリマス、只今申サシマシ
タ千二百万圓ノ損失補償ハ、帝國鑛發ガ融
資ヲシテ居ルモノニ對スル損失ノ補償ニモ
之ヲ振向ケルベキモノデアルト思フノデア
リマスガ、如何デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=15
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016・岸信介
○岸國務大臣 其ノ點ハ、大體損失補償ヲ
シマス場合ニハ、帝國鑛發ヲシテ受託經營ヲ
セシメテ、此ノ場合ノ損失ヲ補償スルト云
フ形式ヲ執リタイト思ツテ居リマス、御話
ノヤウナ山ニ對シマシテ、ソレノ經營ヲ帝
國鑛發ヲシテ受託經營ヲセシメマシテ、サ
ウシテ中小鑛山中適當ナ山ノ事業ヲ積極的
ニ行ハシメル、ソレニ付テハ帝國鑛發ノ受
託經營ノ形式ヲ執リタイト思ヒマス、今
御指摘ニナリマシマヤウナ、帝國鑛發自
體ガ貸付ヲスル場合ニ於キタシテハ、今
ノ所損失補償制度ノ事柄ヲ其ノ形式デハ考
ヘテ居ラナイノデアリマス、唯ソレカラ生
ジテ參リマス損失ニ付キマシテハ、全體ノ
配當補給ノ形ニ現ハレテ來ル部分ニ付キマ
シテハ、配當補給ヲスルコトハ當然デアリ
マスケレドモ、損失補償ノ點ニ付キマシテハ
ヤハリ帝國鑛發ガ或ル程度マデ技術的ニモ
經營的ニモ責任ヲ持ツテヤル、ソレニ付テ
ノ捐失ヲ補償スル、併シ是ハ帝國鑛發ガ持
ツテ居ル自山ニ付テハ大體考ヘテ居ラナ
イノデアリマシテ、主トシテ中小鑛山ノモ
ノヲ受託經營ノ形式デヤルト云フ場合ヲ考
ヘテ居リマス、御承知ノ通リ中小鑛山ニ付
キマシテハ、特ニ技術力デアルトカ、或ハ
其ノ他ノ經營ノ上ニ於キマシテ、從來比較
的弱點ヲ持ツテ居ツタモノガ多イノデアリ
マシテ、之ニ帝國鑛發會社ノ持ツテ居リマ
ス經營力ナリ、技術力ナリヲ加ヘテサウシテ
積極的ノ開發ヲ圖ル、斯ウ云フ考ヘデ、サ
ウ云フ形式ニ依ツテ捐失補償ヲヤル、斯ウ
考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=16
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017・小林房之助
○小林(房)委員 現在經營シテ居ル中小鑛
山デ、技術力及ビ資金其ノ他ニ付テ弱イモ
ノハ受託經營ノ形式デヤツテ損失補償ヲ認
メルト云フ御趣旨ハ能ク承知ガ出來ルノデ
アリマスガ、併シ必ズシモ技術及ビ資材ニ於
テ弱クナイ、兎モ角モ小ジンマリトシテ經
營ノ出來テ居ル山モアリ得ルト思ヒマス、
斯ウ云フモノヲ無理ニ委託經營ノ下ニ入レ
テシマツテ-損失補償ハ結構デアルガ其
ノ形式デヤツテ行ツテ却テ從來ノ增產シテ
行クベキ傾向ヲ阻止シハシナイカ、ヤハリ
今マデ通リヤラシテ行ク方ガ增產ガ出來事
業ノ經營ヲ圓滑ナラシメルノデアツテ、ソ
レニ對シテ、ハ思ヒ切ツタ損失補償ヲソコニ
認メテヤルヤウニシテ行クノデナケレバナ
ラヌト思ハレルノデアリマスガ、之ニ對シ
テハ如何デセウカ、モウ少シ腑ニ落チヌ所
ガアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=17
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018・岸信介
○岸國務大臣 御話ノ如ク中小鑛山ノ實情
ハ色々デアリマシテ、今御指摘ニナリマシ
タヤウナ、獨リデ小ジンマリヤツテ居ル、
經營モ技術モ其ノ山ニ適應シタ相當ナモノ
ヲ以テヤツテ居ル、唯擴張シテ行クノニ必
要ナ資金ガナイトカ、或ハ其ノ擴張ニ必要
ナ資材ガ、資金ガ手ニ入ラヌ爲ニ手ニ入ラ
ヌト云フヤウナコトカラ、積極的ニ伸ビテ
行カナイ、而モソレヲ經營シテ居ル所ノモ
ノハ、經營ニ於キマシテモ技術ニ於キマシ
テモ、小ジンマリシテ相當ノモノヲ持ツテ
居ルト云フヤウナ場合ニ於キマシテ、之ヲ
帝國鑛發デ何デモ彼デモ委託經營ノ形ニ持
ツテ行クト云フ事柄ハ、御趣旨ノ如ク其ノ
鑛山ニ携ツテ居ル人々ノ自發的ナ創意ニ依
ツテ大イニソレヲ擴張シテ行カウト云フ熱
意ヲ失ハシメルモノデアリマシテ、サウ云
フコトヲ無理ニスベキモノデナイコトハ御
意見ノ通リデアリマス、サウ云フ場合ニハ
帝國鑛發カラ金ヲ貸スト云フ形式ニナルコ
トハ當然デアリマス、其ノ場合ニ、ソレデ
ハ帝國鑛發ノ方カラ金ヲ貸スノニ付キマシ
テ、積極的ニ貸シテ吳レナイ、四ノ五ノ言ツテ
貸サナイト云フヤウナ虞レハナイカト云フ
問題デアリマスガ從來帝國鑛發ノ資金ノ投
資融資等ニ付キマシテモ色々ナ御意見モ
承ツテ居リマス、併シ鑛發ノ首腦部ト致シ
マシテハ、サウ云フ風ナ技術力、經營力-
山ガ兎ニ角中小鑛山トシテ相當ナ狀況ニア
ルト云フヤウナコトデアレバ私ハ資金ノ融
通若シクハ投資等ノ事柄ニ付キマシテハ
特ニ損失補償ノ問題ヲ取上ゲナクトモ、一
般配當補給制度ノ運用ノ程度デ、十分ニ此ノ
國策會社ノ使命トシテ金ノ貸付ハ積極的ニ
致スモノダト考ヘマスシ、又致サセルヤウ
ニ十分ナ監督ナリ指導ナリヲ致シテ行ク考
ヘデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=18
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019・小林房之助
○小林(房)委員 サウ云フ適當ナ山ニ對シ
テハ積極的ニ資金融通ヲサスモノデアリ、
又サシテ行カナケレバナラヌト云フコトハ
當然デアリマスルガ、ソレガ思ヒ切ツテ出來
ナイト云フ原因ハ、先程私ガ申シタ營利會
社デアルト云フ性格ガ禍ヒヲシテ居ルノダ
ト思フノデアリマス、ソコガ根本ノ問題デ、
營利會社ダカラ損ハ出來ナイ、而モ片方ニ
於テ國策會社ダカラ思ヒ切ツテ金ヲ出セト
言ツテモヨウ出サナイ、ソコニ鵺的性格ガ
禍ヒシテ、本當ノ國策會社トシテノ使命ガ達
成出來ナイ、原因ハ私ハソコニアルト思フ、
ソコニ一ツ「メス」ヲ入レテ改變ヲシテ行ク
ノデナケレバ、本當ノ働キハ出來ナイト思
フノデアリマス、之ニ對シテ重ネテ御意見
ヲ承リタイト思ヒマス
モウ一ツハ、今度ノ議會ニ出テ居リマスル
戰時金融金庫ト此ノ帝國鑛發會社トハドウ
云フ關係ヲ持チマスカ、言葉ヲ換ヘテ言ヘ
バ、戰時金融金庫ハ帝國鑛發會社ヲシテ其
ノ業務ノ一部ヲ取扱ハシメルト事フコトニ
デモナルノデアリマズカ、或ハ又帝國鑛發
會社ガ有望ナル、而モ國家ノ要請ニ應ジ得
ル鑛山ノ開發資金ヲ、先程言フ營利會社タ
ルノ性格ニ禍ヒサレテ思ヒ切ツテヨウ出サ
ヌト云フ場合ハ、此ノ戰時金融金庫カラ之
ヲ融資シテサウシテ必要ナル資源ノ開發ニ
從事セシメルト事フコトニデモナサレルノ
デアリマスルカ、此ノ點ハ如何デアリマス
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=19
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020・岸信介
○岸國務大臣 最初カラ一貫シテ帝國鑛發
ノ組織其ノモノノ根本カラ、國策會社トシ
テノ鑛山開發ニ付キ積極的ナ活動ニ支障ヲ
來シテ居ル點ニ付テノ御意見ニ對シマシテ
ハ、先程御答へ申シマシタ如ク私共十分一
ツ今後〓究致シテ參リタイト考ヘマスガ、併
シ一面鑛業ト云フヤウナ事業ハ、國家ノ必
要カラドン〓〓積極的ニナサシメナケレバ
ナラナイコトハ當然デアリマスガ又山自身ノ性
質カラ申シマシテ、相當此ノ方面ニ專門的ナ
知識ヲ持チ、相當ナ見識ヲ持ツテ是ガ開發
ノ仕事ヲ進メテ行ク必要モ一面ニ於テ非常
ニアルノデアリマス、是ハ一面カラ國策會
社タル是等ノ會社ガ融資投資ガ必要ナ所ニ
十分ニ行カナイト云フ非難モアリマスガ、
一面ニ於テハ少シ放漫ナ貸付モシテ居ルト
云フヤウナ非難モアルノデアリマス、是ハ
實ハ山其ノモノノ本質カラ來ルモノデアリ、
隨テ是ノ經營ニ當ルベキ人間ハ山ニ付テノ
相當ナ經驗ヲ持チ、相當ナ見識ヲ持ツテ居
ル必要ガアルト思フノデアリマス、私共此
ノ見地カラ帝國鑛發其ノ他日本產金等ノ經
營者ニ付キマシテハ、十分其ノ人選ニ付テ
サウ云フ點ニ重キヲ置イテ、而モ是ガ運用
ニ付キマシテハ今御指摘ニナリマシタヤウ
ニ、積極的ニ必要ナ部面ニ關シマシテハ必要
ナ資金ヲ十分出シテ行クト云フコトガ、是
ハ勿論國策會社ノ本來ノ使命デアリマス、
其ノ點ニ付テハ十分遺憾ノナイヤウナ監督
指導ヲナシテ參リタイ、斯ウ考ヘテ居リマ
ス
尙ホ今囘提案サレテ居リマス戰時金融金
庫ト是トノ關係デアリマスガ、大體私共鑛
業ノ問題ニ關シマシテハ、鑛山ノ關係ニ於
キマシテハ帝國鑛發、金ノ關係ニ於キマシ
テハ日本產金ト云フモノガ特別ノ使命ヲ持
ツテ、國家ノ相當ナ保護ト助成ノ下ニ是等ノ
事業ノ積極的開發ニ付テ力ヲ用ユルト云フ
制度ニナツテ居リマスノデ、出來得ル限リ
是等ノ機關ノ足ラザル所ハ是等ノ機關自身
ヲ補强シ、是ノ監督指導ヲ十分ニシテ、此
ノ方面デ其ノ目的ヲ十分ニ達スルヤウニ持
ツテ參リタイト考ヘテ居リマス、隨テ一應
戰時金融金庫ニ於キマシテハ、旣ニ斯ウ云
フ特別ノ機構ガ設ケラレテ居ル部面ニ付キ
マシテハ特ニ其ノ活動ヲ考ヘテ居ラナイノ
ガ現在ノ提案ノ趣旨ニナツテ居リマス、併
シ法律論トシテ絕對ニ出來ナイト云フ問題
デハナイト思ヒマスケレドモ、主トシテ特
殊ノ國家的機構ガ設ケラレテ居ルモノハ、
其ノモノヲ十分活用シテ行クト云フ建前ヲ
飽クマデ取ツテ參リタイ、斯ウ考ヘテ居リ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=20
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021・小林房之助
○小林(房)委員 サウスルト、戰時金融金庫
ハ大臣ノ認可ヲ得タル銀行又ハ主務大臣
ノ指定スル者ヲシテ業務ノ一部ヲ取扱ハシ
ムルコトヲ得ト云フ規定ガアリマス、戰時
ニ際シテ生產擴充ノ爲ニ必要ナル資金ニシ
テ他ノ金融機關カラ供給ヲ受クルコト困難
ナモノニ對シテハ、戰時金融金庫ヲ利用セ
シメルノデアルカラ、今言フヤウニ帝國鑛
發ガ本當ニ鑛山資源開發ノ爲ノ金融ヲ十分
ニナシ得ナイト云フコトデアレバ、當然此
ノ戰時金融金庫ガ其ノ部面ニ活用サレテ行
クダケノ彈力性ヲ持ツテ居ルノデナケレ
バ、私ハ本當ノ鑛山資源ノ開發ハ出來ナイ
ト思フノデアリマス、·ソレハモウ帝國鑛發
ガアルカラ此處ダケデヤツテ行クノダ、
切他ノ機關ハ鑛山開發ノ爲ニハ活用セシメ
ナイノダト云フヤウナ窮屈ナ考ヘデハイケ
ナイト思ノノデアリマス、是ハ必ズシモ左
樣ナ窮屈ナモノデナイト思ツテ居リマスケ
レドモ、ソコニ彈力性融通性ガオアリニナ
ルノデアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=21
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022・岸信介
○岸國務大臣 其ノ點ハ御承知ノ通リ、從
來帝國鑛發ヤ日本產金ガ出來マス前カラモ
各種ノ金融機構ハアツタ譯デアリマスケレ
ドモ、一般金融機關ノ是等中小鑛山ヘノ金
融ト云フコトハ殆ド不可能デアリマシテ、
實際上利用出來ナカツタノデアリマス、ソ
コデ斯ウ云フ特別ノ組織ヲ設ケタ譯デアリ
マシテ、鑛山ノ問題ハ先程モ申上ゲマシタ
通リ、一般ノ事業ト違ツテ中々危險性モア
リマスシ、色々ナ點ガアリマスノデ、般
金融機關トシマシテハ、從來ト雖モ此ノ方
面ニ金融ガ出來ル建前ニハナツテ居ツテ
モ、中々金融ヲシナイト云フノガ實情デア
ツタノデアリマス、ソレデ斯ウ云フ特殊ノ
國策會社ヲ設ケタ譯デアリマスガ、此ノ國
策會社ガ完全ニ其ノ使命ヲ完遂シテ居ルト
スルナラバ、今小林委員ノ御質問ニナツタ
ヤウナ他ノ機關ノ御世話ニナル必要モナク、
十分ニ出來ルト思フノデアリマス、吾々ト
シテハ第一段ニソコニ主眼ヲ置イテ、飽ク
マデ是等ノ機關ヲシテ其ノ使命ヲ果タサシ
ムルコトニ凡ユル努力ヲ傾注スベキモノデ
アルト云フコトヲ先程申上ゲタ譯デアリマ
ス唯併シ戰時金融金庫ハ、鑛山ノコトニ
ハ絕對ニ手ヲ出スコトハ相成ラヌト云フ
ヤウナ考ヘ方ヲ持ツテ居ル譯デハナイノデ
アリマシテ、鑛山ノ特殊ノ點カラ申シマシ
テ、假ニアア云フ金庫ガ出來ルト云フコト
ニ致シマシテモ、鑛山金融ト云フ特別ノ點
カラ見ルト、專門ノ者デナイト賴ミニ參リ
マシテモ十分ナ利用ガ中々難カシカラウト
思ヒマスノデ、第一段ニハ飽クマデ斯ウ云.
フ特殊ノ使命ヲ持ツタモノヲ擴充シ、之二
全力ヲ擧ゲル、併シ戰時金融金庫ガ絕對ニ
使ハレヌトカ、或ハ是ガ全然鑛山金融ノ方
ニ手ヲ出スコトハ相成ラヌト云フヤウナ制
限的ナ考ヘヲ持ツテ居ル譯デハナイノデア
リマス、其ノ點ハ誤解ノナイヤウニ御願ヒ
致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=22
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023・小林房之助
○小林(房)委員 鑛山金融ト云フモノハ特
殊ノモノデアリマシテ、昔カラ鑛山ニ金ヲ
貸シテ返ツタコトハナイト言ハレル程面倒
ナモノデアリマス、ソレダカラコソ帝國鑛
發ガ出來タノデ是ハ當然ナコトデアリマス
ガ、ソレダケ鑛山金融ト云フコトニ付テハ
出來ルダケ此ノ鑛發會社ヲシテ其ノ使命ノ
達成ニ邁進セシメ得ルヤウニ、或ハ先程ノ
損失補償ノ如キ、或ハ思ヒ切ツテ十分ニ融
資ヲシテ、鑛山ノ開發ガ出來得ルヤウニ經
營ヲ差向ケテ行クヤウニ折角監督ヲ御願ヒ
シタイト思ヒマス、私ノ質問ハ是デ終リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=23
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024・上田孝吉
○上田委員長 次ニ渡邊泰邦君、國策會社
ノ分ニ付テ御質問ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=24
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025・渡邊泰邦
○渡邊(泰)委員 私ハ燃料ノコトニ付テ一
寸御伺ヒヲ致シタイト思ヒマス、今度帝燃
ガ非常ニ政府ノ補給ヲ得マシテ、更ニ活潑
ナル活動ヲスルヤウデアリマスガ、石油ハ
南方デモ相當開發スル、然ルニ帝燃ノ資本
金ヲ更ニ增シテヤラナケレバナラヌ理由ノ
モノハ、人造石油ト云フモノガ此ノ情勢ニ
於テハドウシテモ必要ダト云フ見地カラ來
テ居ルノダト思ヒマス、ソレニ付テハ學者ノ
間ニモ色々說ガアリマシテ、例ヘバ世界ノ
石油ノ埋藏量ハ「シリア」或ハ「コーカサスㄴ
方面ハ十五年、或ハ「アメリカ」ノ石油ハモ
ウ二十年デナクナル、或ハ南方ノ石油ハ現
在ノ儘デ掘ツテ行ケバモウ二十五年デナク
ナルト云フヤウニ、年限ニ付キマシテハ種
種見方ガアリマスガ、サウ云フ學者ノ間ニ
ハ一定ノ說ガアリマシテ、ドウシテモ天然
石油ニバカリ依存スルコトハ出來ナイ、今
後ノ軍備其ノ他ノモノモドウシテモ人造石
油ニ依ラナケレバナラヌト云フ原因ヲ玆ニ
求メテ居ルダラウト思フノデアリマス、勿
論全部ノ理由デハアリマスマイガ、ソレガ
重要ナ原因ニナツテ居ルト思フノデアリマ
ス、隨テ商工省ノ燃料ヲ〓究セラレル方ニ
於キマシテハ、今世界ノ埋藏シテ居ル石油
ガ、此ノ狀態デ消費サレテ行ケバ大體ドノ
位デ盡キルト云フ風ニ考ヘテ居ラレルカ、
例ヘバ「バクー」ノ油田ハドノ位ノ命脈ガア
ル南方ノ油田ハドノ位ノ命脈ガアルト云
フ位ノ多少ノ〓究ガアルコトト思ヒマスカ
ラ、其ノ點ニ於テ言ハレ得ル範圍ニ於テ御
聽カセ願ヘレバ大變結構ダト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=25
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026・岸信介
○岸國務大臣 天然石油資源ノ將來性ト云
フコトニ付キマシテハ、今御質問ノ如ク色
色ナ意見ガ發表サレテ居リマス、併シ實ハ
是ハ學者ノ間ニ於テモ、專門家ノ間ニ於テ
モ色々御承知ノ通リ意見ノアル所デアリマ
シテ、今各地ノ油田ニ付キマシテ大體何年
位アルト云フヤウナ事柄ヲ申上ゲルコトハ
非常ニ困難ダラウト思フノデアリマス、唯
今御指摘ニナリマシタ如ク天然石油ノ資源
ガ假ニ將來非常ニ長イ期間アリト致シマシ
テモ、又短イ場合ニ於テハ尙更ノコトデア
リマスガ、長クアリト致シマシテモ、我國
ノ將來ノ國防及ビ民需ト云フモノヲ見透シテ
見マスルト、南方諸地域ニ於テ、所謂東亞
共榮圈ノ範圍內ニ於テ、天然石油ガ十分ニ
開發サレタト云フコトヲ前提ト致シマシテ
モ、相當數量ノ人造石油ヲ持ツト云フコト
ハ數量的ニモ非常ニ必要デアラウ、尙ホ御
承知ノ通リ個々ノ質ノ上カラ見マシテ、航
空機其ノ他ノ非常ナ發達ニ伴ヒマシテ、
口ニ油ト申シマスケレドモ、液體燃料ノ中
デ特殊ノ性質ヲ持ツテ居ルモノノ必要トナ
ツテ參ツテ居リマス、是等ノ質的ノ點カラ
見マシテモ相當量ノ人造石油ノ事業ヲ確立
シテ、是カラ其ノ供給ヲ得ナケレバナラヌ
ト云フ點モアルノデアリマス、又是ハ液體
燃料自體ノ見地デハアリマセヌケレドモ、
御承知ノ通リ人造石油ノ事業ト云フモノハ
非常ナ高イ、而モ複雜ナ技術ヲ必要トスル
ノデアリマシテ、斯ウ云フ事業ガ確立シテ·
居ルト云フ事柄ハ、之ニ關聯シテ其ノ國ノ
工業ノ「レベル」ヲ高度ニ維持スル上カラ申
シマシテモ、單ニ化學工業ノ部門ノミナラ
ズ、機械工業ノ部門ニ於キマシテモ、斯ウ
云フ事業ガ成立ツテ居ルカ、成立ツテ居ラ
ヌカト云フ事柄ガ、非常ニ其ノ國一國ノ工
業力ニモ關係ヲ持ツテ參ルヤウナ性質モア
ルノデアリマス、液體燃料ノ見地カラ、又
サウ云フヤウナ見地モ加味シマシテ、相當
量ノ人造石油事業ヲ確立スルト云フ事柄ハ、
此ノ際極メテ急務デアルト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=26
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027・渡邊泰邦
○渡邊(泰)委員 大體御話ハ分ルノデアリ
マスガ、今御話ノ特殊ノ人造石油ヲ造ルニ
ハ特殊ノ石炭ガ要ルノデアリマシテ、其ノ
石炭ノ分布狀態ハ御〓究ダラウト思ヒマス、
ソレヲ一々此處デ御尋ネスル譯ニモイカヌ
情勢デハアリマスルガ、大體其ノ特殊ノ人
造石油ヲ造ル特殊ノ炭、其ノ炭ノ埋藏量ト
石油ノ世界ノ埋藏量トノ比率ヲ燃料局デハ
御〓究ダラウト思フノデスガ、ソレガ此ノ
人造石油ヲ補助シタリ或ハ增資シタリスル
「バロメーター」ニナルノヂヤナイカト私ハ
考ヘテ居ルノデス、其ノ點ハ若シ御發表ガ
差支ガアリマスレバ强ヒテ御聽キスル譯ヂ
ヤアリマセヌガ、其ノ特殊ノ人造石油ニ要
スル石炭ノ埋藏量ヤ其ノ他ニ付キマシテハ
大體御心配ナイノデセウカ、其ノ量ヲ御聽
キスルノヂヤナイノデスガ····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=27
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028・岸信介
○岸國務大臣 人造石油ト一口ニ申シマス
ガ、御承知ノ通リ之ヲ造リマス方法トシテ
ハ色々ナ方法ガアルノデアリマシテ、其ノ
或ル方法ニ付キマシテハ、之ニ最モ適當シ
タ炭質ノ石炭ヲ必要トスルト云フヤウナモ
ノモアリマスガ、他ノ方法デ之ヲヤル時ニ
於キマシテハ石炭ノ炭質ニ影響サレナイト
云フヤウナ點モアリマシテ、凡ユル方法ヲ
日本ト致シマシテハ取入レテ、是ノ工業化
ヲ圖ツテ居ル譯デアリマス、隨ヒマシテ特
ニ特別ノ性質ヲ持ツテ居ル石炭ガ特定量ナ
ケレバ、人造石油ト云フモノノ特定量ヲ確保
スルコトハ出來ナイト云フヤウナコトニハ
ナラナイヤウニ、凡ユル技術、方法ヲ取入
レテ、是ノ綜合ニ依ツテ必要ナ人造石油ヲ造
ツテ行カウト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=28
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029・渡邊泰邦
○渡邊(泰)委員 私ガ特殊ノ炭ト言ツタノ
ハ、例ヘバ燃料デ必要ナ炭ヲ意味シタノデ
アリマシテ、少シ突込ンデ御聽キシテモ宜
イノデスガ、例ヘバ「フィッシャー」法デア
ルトカ、一々名前ヲ擧ゲルノハイカヌカモ
知レマセヌガ、サウ云フ「パテント」ノ要ル
モノ、色々御〓究ニナツテ居ル筈デアリマス、
併シ何分ニモ一定シナイ仕事デアリマシテ、
相當長イ間御〓究ト技術ノ難カシイコトヲ
經テヤツテ居ル筈ダト思フノデアリマス、
是モ最近聞イタ話デスガ、滿洲デ極メテ優
秀ナ技術的ニ成功シタト云フ話ヲ聞イテ非
常ニ喜ンデ居ルノデアリマスガ、其ノ高度
ノ技術ヲ取入レテ非常ニ巧ク行ツタト云フ
ヤウナ事實ニ付テ、內容ハ御伺ヒシナクト
モ宜イノデスガ、非常ニ巧ク行ツテ居ルト
云フコトヲ一ツ御聽キシタイノデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=29
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030・岸信介
○岸國務大臣 今我ガ國デ行ツテ居リマス
ル色々ナ方法ノ中、極ク大別シテ申上ゲマ
スト合成法ニ依ルモノ、ソレカラ水添法ニ
依ルモノ、又低溫乾溜ノ方法ニ依ルモノ等
ガアルコトハ御承知ノ通リデアリマス、低溫
乾溜ニ依ルモノニ付キマシテハ、是ハ技術
的ニ問題ナイ事柄モ既ニ御承知ノ通リデア
リマス、合成法及ビ水添法ニ付キマシテハ、
中々技術ノ上ニ於キマシテモ設備ノ上ニ於
キマシテモ、相當ナ〓究ト長イ間ノ苦心ヲ
重ネテ今日ニ參ツタノデアリマスルガ、最
近ニ於キマシテハ兩方ノ方法トモ相當ナ
進步ヲ致シマシテ、私共トシテハ相當滿足
スベキ結果ヲ兩方トモ得テ居ル狀況デアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=30
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031・渡邊泰邦
○渡邊(泰)委員 燃料局ノ御方ニ一寸御願
ヒシテ置キタイノデスガ、後デ宜ウゴザイ
マスカラ、世界ノ石油ノ將來ニ對スル學者
ノ學說ハ澤山アルノデス、世界中ノ學者ノ
說ガアリマスガ、大體燃料局トシテハドウ
モサウ云フコトハ分ラヌ、唯成行デ行クノ
ダト云フコトヂヤナク、ドレガ一番妥當ダ
ト云フヤウナ考ヘ方ガアルダラウト思フノ
デス、ソレヲ一ツ發表シ得ル機會ニ聽カセ
テ戴キタイ、ソレカラ石炭ノ埋藏量ニ付テ、
是ト比率ヲ取ツテ色々ナ會社ノ方針ヲ、增資
シタリ補給シタリシテ決メルノダラウト思
ヒマス、其ノ根本原因ヲ御調ベニナツテ居
ルト存ジマスガ、發表シ得ル機會ニ一ツ御
願ヒシタイ、私ノ質問ハ是デ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=31
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032・上田孝吉
○上田委員長 川俣委員ノ質問ハ一寸長イ
サウデスカラ末松サンノ質問ハ簡單デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=32
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033・末松偕一郎
○末松委員 自分ノ質問ハソンナニ時間ハ
掛リマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=33
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034・上田孝吉
○上田委員長 掛ラナケレバ午前中ニヤツ
タラドウカト思ヒマス-末松君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=34
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035・末松偕一郎
○末松委員 只今カラ色々渡邊君カラ御話
モアツタヤウデアリマスガ、此ノ人造石油
ノ製法ニ關スル「フイッシャー」法トカ、色々
ナ「パテント」ガアリマスガ、、日本デ〓究シ
テ居ル人々ノ間デモ同ジヤウナ〓究ヲ重複
シテヤル、又或ル程度ノ〓究マデ行ク途中
デヤハリ此ノ重複ガ起ルト云フヤウナコト
1シ1
ガアルサウデ、曩ニ樺太ノ此ノ種ノ會合ノ
際ニ其ノコトヲ-是ハモウ數年前デスガ
非常ニ論ゼラレタヤウデアリマスガ、今各
會社ノ〓究方法ニ對シテハ、帝國石油デ之
ヲ纒メテ、旣ニ〓究シタ部分ニ付テハオ互
ニ協定シテ其ノ〓究ヲ利用スルト云フコト
ニナツテ居ルノデアリマセウカ、如何デア
リマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=35
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036・榎本隆一郎
○榎本說明員 今ノ〓究ニ關シマシテハ
人造石油關係ノ〓究機關ハ軍官民合セマシ
テ三十箇所アリマス、是ハ十分緊密ナル連
絡ヲ取ルヤウニ、每年一囘宛總會ヲ開イテ
各〓究ヲ忌憚ナク發表、討議ヲ致シテ居リマ
ス、尙ホ各詳細ナル技術ニ關シマシテハ分
科會ヲ開キマシテ、是亦非常ニ立入リマシ
テ詳細ナル〓究ノ討議、發表等ヲ致シテ居リ
マス、尙ホ特許製造技術デ完成サレマシタ
製造技術ハ、人造石油製造技術組合ト云フ
モノヲ結成致シマシテ、日滿ノ全人造石油
業者ガ參加ノ下ニ、他ノ如何ナル技術デモ
御互ニ利用出來ルト云フ仕組ニナツテ居リ
マス、全業者ガ協力シマシテ製造技術育成、
是ノ遺憾ナキ活用ヲ期シテ十分ノ效果ヲ擧
ゲテ居ルヤウニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=36
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037・末松偕一郎
○末松委員 以前ハサウ言ヒナガラドウモ
各會社ノ祕密ト云フヤウナ部分ヲ、兎角十
分ニ一般ニ共通的ニ利用シナカツタヤウナ
傾キガアツタヤウデアリマスガ、今全然サ
ウ云フ點ニ付テ各會社モ腹藏ナク自分ノ〓
究資料ヲ示シテ、一般的ニ利用スルコトニ
ナツテ居リマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=37
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038・榎本隆一郎
○榎本說明員 ナツテ居リマス、唯人造石
油ノ技術ハ非常ニ機密ニ亙ル部分モアリマ
スルノデ、一般ノ技術ノヤウニ簡單ニ公開
ハ致シテ居リマセヌガ、他ノ技術ヲ十分ニ
使ハウト云フ意思ガアリマシタナラバ、適
當ナル條件デ以テ之ヲ十分利用シ得ルヤウ
ニナツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=38
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039・末松偕一郎
○末松委員 「パテント」ノ關係ハドウナツ
テ居リマスカ、例ヘバ「フイッシャー」式ヲ
三井ガ買ツテ來テ之ヲ使フト云フヤウナ際
ニ、他ノ會社ガ其ノ部分マデモ相當立入ツ
テ知ルコトガ出來ルモノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=39
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040・榎本隆一郎
○榎本說明員 今ノ「フイッシャー」法ノコ
トデアリマスガ、是ハ帝國燃料デ保有致シ
テ居リマシテ、日滿ノ人造石油業者如何ナ
ル人ニデモ、同一ノ條件デ分權シ得ルヤウ
ニナツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=40
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041・末松偕一郎
○末松委員 ソレハ「パテント」ヲ買ハナク
テ宜イノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=41
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042・榎本隆一郎
○榎本說明員 サウデハアリマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=42
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043・末松偕一郎
○末松委員 ソレカラ今度ハ方向ヲ變ヘマ
シテ、此ノ人造石油ト云フモノハ、將來南
方開發ニ伴ツテ相當多量ノ石油資源ヲ得ル
ヤウニナルダラウト思ヒマスガ、マダ此ノ
人造石油資源ニ關スル政策ト云フモノハ、
當分此ノ儘ヤルト云フ御考ヘデアリマスカ、
或ハ近キ將來ニ於テ人造石油政策ノ根本ヲ
相當改メネバナラヌト云フヤウナ御考ヘガ
アルノデアリマセウカ、此ノ點ハ大臣カラ
御答ヘヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=43
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044・岸信介
○岸國務大臣 其ノ點ハ極メテ重大ナ問題
デアルト思ヒマス、私共南方諸地域ニ於キ
マシテ、相當ナ廣大ナ石油資源ガ、現在ニ
於キマシテ又將來ニ於キマシテ確保サレ、
是ガ開發サレル事柄ヲ期待致シテ居リマス、
併シナガラ是ガ開發ニハ相當ナ時日ヲ一面
ニ要スルコトハ言フヲ待タナイノデアリマ
スガ、其ノ時日ノ後ニ開發サレマシタト致
シマシテモ、其ノ時ニ於ケル我ガ國ノ國防
力及ビ我ガ國ノ生產力、其ノ他全般ヲ見透
シテ見マスルト、決シテ今日吾々ガ確保シ
將來確保スルデアラウト考ヘテ居ルモノヲ
以テシマシテモ、之ヲ以テ十分ト言フ譯ニ
ハ行カナイノデアリマス、遺憾ナガラ相當
量ノ不足ヲ來スヤウナ狀況ニアルト思ヒマ
ス、又油ノ性質カラ申シマシテモ、先程モ
申シマシタ如ク、各油田ニ依ツテ特殊ノ性
質ヲ持ツテ居リマシテ、今日ノ國防又一般
的生產擴充ノ全般ニ亙ル量的、質的ノ見地
カラ見マシテ、相當量ノ人造石油ノ事業ノ
確立ト云フコトハ絕對ニ必要デアルノデア
リマス、而シテ今日マデ數年來人造石油事
業ノ確立ノ爲ニ計畫ヲ立テテ、其ノ生產擴
充ニ付テ努力致シテ參ツテ居リマスケレド
モ、實ハ今日マデノ實績ハ色々ナ事情ニ於
キマシテ、或ハ一部遲レテ居リ、或ハ一部
豫期ノ通リノ成績ヲ收メテ居ラナイ部分等
モゴザイマスノデ、此ノ內閣成立當初ニ於
キマシテ、將來ノ人造石油事業ノ確立ノ目
標ヲ立テマシテ、之ニ對シテハ特ニ重點ヲ
置イテ、今後施行シテ參ル方針ヲ定メタノ
デアリマス、爾來大東亞戰爭ノ勃發ヲ見マ
シタケレドモ、此ノ根本方針ニ關シマシテ
ハ、私共何等ノ變更ヲ認メテ居ラナイノデ
アリマス、隨ヒマシテ今吾々ノ持ツテ居リ
マスル人造石油事業ノ確立ニ關スル具體的
方針ト云フモノハ、變更スル意思ヲ毛頭持
ツテ居ラナイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=44
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045・末松偕一郎
○末松委員 今政府ノ御調ベニナリマシタ
所ニ依レパ、近キ將來先ヅ一、二年ノ間ニ
確保スベキ石油ノ量ガドノ位ニナルカト云
フヤウナ點ガ、既ニ御分リデアリマスルカ、
又御分リニナツテ居ツテモ發表シ得ナイコ
トモアラウト思ヒマスガ、サウ云フ點ニ付
テ發表シ得ル程度ノ御答ヘヲ願ヒタイ、ソ
レト同時ニ石油採掘ニ關スル資源ナリ勞力
ナリ、其ノ他技術等ニ付テモ色々ノ難問題
ガアルダラウト思ヒマスガ、ソレ等ノコト
ニ關シテ政府トシテハドウ云フ方針デ、或
ハ人ヲ養ヒ、或ハ資材ヲ補給スルト云フヤ
ウナ一定ノ御計畫ガ既ニアルヤ否ヤ、斯ウ
云フ點モ御伺ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=45
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046・岸信介
○岸國務大臣 近キ將來ニ於キマシテ南方
諸地域ニ於テ確實ニ開發確保ノ出來ル油ノ
數量ニ付キマシテハ、今日ノ段階ニ於キマ
シテハ、之ヲ具體的ニ申述ベル時期ニマダ
到達シテ居ラヌト思ヒマス、隨ヒマシテ具
體的ニハ申上ゲ兼ネルノデアリマスガ、此
ノ開發ニ必要ナ技術、勞力、又物的資材等
ノ問題ニ關シマシテハ、實ハ今囘提案致シ
テ居リマスル帝國石油ノ機構ヲ充實致シマ
シテ、日本ニ於ケル石油工業ノ採掘事業ヲ
全部之ニ統合致シマシテ、此ノ物的、人的
ノ凡ユルモノヲ之ニ集中致ス仕組ヲ確立シ
タノデアリマス、之ニ依リマシテ從來各社
ニ於キマシテモ技術員等ノ養成ニ對シマシ
テハ、此ノ數年來補助金等ヲ交付シマシテ、
技術員ノ養成等ヲ行ハシテ參ツテ居リマス
ガ、之ヲ今後ハ帝石ニ於キマシテ、有力ニ綜
合シテ、必要ナル技術員ノ養成等ヲ行フコ
トハ勿論ノコト、從來持ツテ居リマスル日
本ノ技術力ト云フモノヲ總動員シテ、軍ト
緊密ナル連絡ノ下ニ、南方デ確保サレル油
田ヲ出來ルダケ早ク、而モ能率的ニ開發ス
ルコトニ付キマシテハ、萬遺憾ナキヲ期シ
テ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=46
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047・末松偕一郎
○末松委員 其ノ點ニ關聯シテ、私個人トシ
テ先日カラ關係シテ居ル問題ニ、關シテ政府
ノ御考ヘヲ伺ヒタイノデスガ、聞ク所ニ依
ルト石油開發ニ付テハ、重晶石ト云フモノ
ガ非常ニ必要デアルニ拘ラズ、其ノ重晶石
ハ北海道ノ產出ガ非常ニ少クナツテ困ルト
云フコトノ爲ニ、朝鮮ニ重晶石ノ鑛山ヲ持ツ
テ居ル私ノ懇意ナ人ヲ說キ、又之ヲ援助シ
テ會社ヲ起サセヨウト云フコトデ-是ハ
南方開發ニ付テ非常ニ必要ナ石油採掘上ノ
礦石ダサウデスガ、私モ全然サウ云フ點ニ
付テハ知リマセヌケレドモ、併シ是ハ國策上
其ノ種ノモノヲヤラナイトイケナイト云フ考
ヘハ、私ハソレヲ相當援助シテ會社ヲ起ス
コトニナツテ居ツタノデアリマスガ、是ハ
日本石油ノ方デヤハリ其ノ必要ヲ感ジテ、
相當株ヲ持ツテ援助シテヤルト云フコトニ
ナツテ居ツタ、所ガソレガ今度御承知ノ如
ク帝國石油ニ鑛山ノ方ハ合併サレタノデ、
帝國石油トシテハ、此ノ種ノ國策會社ガサ
ウ云フヤウナ株ヲ持ツコトガ出來ルヤ否ヤ
ト云フコトヲ政府ニ〓究シテ貰ヒタイト云
フコトヲ言ツテ居ルノデアリマス、隨テ私
ノ質問ハ、此ノ種ノ國策會社ガ國策上必要
ナル場合ニ於テハ、此ノ種ノ自己ノ必要ナ
ル鑛山其ノ他ノ機械トカ云フヤウナモノノ
株ヲ持ツテソレヲ援助スルコトガ出來ルヤ
否ヤ、卽チ國策會社ガ自己ニ必要ナル私ノ
會社ノ株ヲ持ツコトガ出來ルヤ否ヤト云フ
問題ガ一ツ、ソレカラ重晶石ト云フモノガ
非常ニ石油採掘上ニハ必要デアルト云フコ
トヲ私ハ聞イタダケデ、ソレニ幾ラカ國策
的必要ヲ感ジテ援助ヲ與ヘテ居ルノデアリ
マスケレドモ、其ノ種ノ礦石ガドノ程度ニ
於テ石油事業ト密接ナル關係ガアルカト云
フコトヲ實ハ私モ全然知ラナイノデアリマスガ、
此ノ機會ニ於テ、技術方面ノ方カドナタカカ
ラ、重晶石ト云フモノガ石油開發上必要デアル
ヤ否ヤト云フコトヲ伺ツテ見タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=47
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048・榎本隆一郎
○榎本說明員 今御話ノ重晶石ハ、是ハ水
ニ溶解致シマシテ、井戶ヲ掘ル時ニ坑井ノ
周壁ガ崩レルノヲ防グ爲ニ用ヒルモノデア
リマス、併シ是ハ普通ニハ泥水デ役ニ立ツ
テ居リマスノデ、重晶石ノ方ガ宜イ場合モ
アリマスルガ、地質ノ狀況ニ依リマシテ絕
對的ノモノトハ考ヘラレマセヌ、南方石油
ノ地質等ガマダ的確ニ分ツテ居リマセヌカ
ラ、隨テ量ハドノ位ノ程度マデ要ルカト云
フコトハ、今一寸申上ゲニクイト考ヘラレ
マス、併シ若シ是ガ要ルト云フコトニナリ
マシタナラバ、相當量ノ增產ヲ致サナケレ
バナラヌト思フノデスガ、量的ニハマダ何
トモ申上ゲラレナイト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=48
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049・末松偕一郎
○末松委員 此ノ種ノ國策會社ガ自己ノ必
要ナル資源ヲ得ル爲ニ私ノ會社ノ株ヲ持ツ
コトガ出來ルヤ否ヤト云フ點ハ相當疑問ガ
アルノデ、政府ノ意見ヲ聽イテ貰ヒタイト
云フコトヲ帝國石油ノ幹部ノ人ガ言ツテ居
ルノデスガ、其ノ點ヲ一ツ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=49
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050・岸信介
○岸國務大臣 具體的ノ問題ハ申上ゲ兼ネ
マスルケレドモ、國策會社トシテ其ノ事業
ヲ營ンデ行ク上ニ於テ必要ガアルト云フ場
合ニハ、之ニ關聯シタ事業ヲ營ミ、若シクハ
之ニ投資スルコトガ出來ル、法律論トシテ
出來ル建前ニナツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=50
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051・上田孝吉
○上田委員長 ソレデハ午前ハ是デ止メマ
シテ、一應午後一時半カラ開クコトニ致シ
マス、豫算委員會ノ方デ臨時軍事費ノ政府
ノ說明ガアルヤウデスカラ、ソレガ一時半
頃ニ該當スルヤウナラバ、一旦開キマシテ又
休ムコトニ致シマスガ、一應一時半カラ開
クコトニ致シマス、是デ休憩致シマス
午後零時五分休憩
午後一時三十九分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=51
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052・上田孝吉
○上田委員長 ソレデハ午前ニ引續キ本委
員會ヲ開キマス
一寸申上ゲマスガ、豫算委員會ニ於テ「タ
イ」ノ宣戰布〓ノ問題竝ニ臨時軍事費ニ關ス
ル問題、更ニ祕密會ノ質問應答ガアリマシテ、
委員諸君モ是非聽クベキ點ガ澤山アラウト
思ヒマスノデ御希望ニ依ツテ三時マデ休憩
スルコトニ致シマス
午後一時四十分休憩
午後三時二十五分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=52
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053・上田孝吉
○上田委員長 ソレデハ休憩前ニ引續キマ
シテ委員會ヲ開キマス-川俣君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=53
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054・川俣清音
○川俣委員 私ハ帝國鑛業開發ニ致シマシ
テモ、或ハ帝國燃料ニ致シマシテモ、先ヅ
日本ノ大キナ鑛業政策ヲ立テテ置カナケレ
バナラヌ、·之ニ協賛スルニ致シマシテモ、
其ノ根本對策ガ一番必要デアラウト考ヘマ
スノデ、先ヅ其ノ點カラ大臣ニ御尋ネ致シ
タイト思フノデアリマス、工業生產力ノ擴
充增强ノ上カラ、原料資源デアル所ノ鑛產
物ヲ確保スルコトノ必要ナルコトハ今更言
ヲ俟タナイノデアリマスガ、商工省ノ今日
持ツテ居ラレマスル鑛業政策ト云フモノ
ガ、ドウモ中途半端ナ所ニアルノデハナカ
ラウカト云フ憂ヲ常ニ抱イテ居ルノデアリ
マス、ソレハ商工省ダケノ考ヘカラ致シマ
シテ、唯鑛產物ノ增產ヲ圖ラウト云フヤウ
ナコトダケニ力ヲ入レラレマシテ、其ノ他
ノコトニ付キマシテハ農林省トカ、大藏省
トカ、或ハ厚生省ト云フコトデアリマシテ、其
ノ方トノ。連絡ト云フカ、サウ云フ方面ニ付
テノ努力ガ非常ニ足リナイノデハナカラウ
カ、斯ウ云フ大體ノ考ヘ方ヲソコニ置イテ
居ルノデアリマス、ソコデ具體的ニナルノ
デアリマスガ、第一商工省自身トシテモ、
一體十分ナル鑛業政策ヲ持ツテ居ナイノデ
ハナカラウカト云フ點カラ御尋ネ致シタイ
ノデアリマス、日本ノ鑛業法規ノ變遷ハ、
此處デハ時間ガナイカラ問題ニ致シマセ
又、鑛業法規ノ中ニ於テ、商工省ハ一體ド
レヲ中心ニ考ヘテ居ラレルノカト云フコト
ニナルノデアリマスガ、御承知ノ通リ鑛業法規
ノ中ノ一番重要ナ點ハ鑛業法ノ第四十條ノ
點デアリマス、ソレト同時ニ日本ノ鑛產物
ノ增產ヲ圖ル法規的ナ點ハ、重要鑛物增產
法ト鑛業法ノ四十條ヲ活用スルコトガ一番
大切ナノデアリマスガ、商工省デハ此ノ四十
條ヲ活用スルコトヨリモ、大藏省ノ問題ニ
ナル所ノ四十一條ノ方ニ力ガ入レテ居ルヤ
ウナ傾キガアル、ト云フノハ、鑛區稅ヲ納
メナケレバ鑛業權ヲ取消スト云フヤウナ、
所謂稅ノ方ノコトニ付テハ、鑛業權者ニ對
シテハ强硬ナ建前ヲ現實ニ取ツテ居ル、併シ
ナガラ四十條ノ所謂鑛產物ヲ掘出スト云フ
方ノ態度ニ付テハ、之ヲ非常ニ曖昧ニシテ居
ル、稅金ヲ納メナケレバ鑛業權ヲ停止スル
ケレドモ、或ハサウ鑛物ヲ掘出サナイデモ
見逃シテ置クト云フヤウナ建前デアル稅金
サヘ出スナラバ鑛物ノ方ハドウデモ宜イト
云フヤウナ結果ガ現レテ來テ居ルノデアリ
きく、サウ云フ點ニ付テ、稅金ダケ納メル
者ガ鑛產物ヲ增產スルコトニ熱心デアツテ、
其ノ他ノ者ガ不熱心デアルト云フヤウナ考
ヘヲ持ツテ居ラレルノデアルカドウカ、斯ウ
云フ點ニ付テ先ヅ第一ニ御尋ネシナケレバ
ナラヌト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=54
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055・岸信介
○岸國務大臣 御質問ノ鑛業法第四十條及
ビ第四十一條ノ關係ニ關シマシテハ、御質問
ノ御趣旨ノ如ク、鑛業法ノ一番重要ナ主眼
ハ言フマデモナク、國家ガ必要トスル所ノ
鑛業權ヲ付與スルコトニ依ツテ鑛山ヲ開發
セシメルト云フ事柄ニアル譯デアリマス、
隨ヒマシテ之ヲ開發セズ、其ノ鑛山ガ完全
ニ地下資源ノ利用ヲシテ居ラナイト云フコ
トニナリマスト、鑛業法本來ノ精神ニ悖ル
譯デアリマスカラ、之ニ對スル適當ナル監
贅又必要ガアレバ其ノ鑛業權ノ取消等ヲ
行ツテ參ルト云フ事柄ガ、四十條及ビ四十
一條ノ精神デアラウト思ヒマス、其ノ實體
ハ言フマデモナク御趣旨ノ如ク地下資源ノ
開發利用ト云フ點ニ主眼ガアリマシテ、之
ヲ怠ルト云フ所ニ是ガ及ンデ來ルノデアリ
マシテ、四十條、四十一條共ニ精神ハソコ
ニアルト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=55
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056・川俣清音
○川俣委員 當然サウ云フ建前デナケレバ
ナラナイト私共思フノデス、鑛業權者ガ正
當ナ理由ナクシテ、登錄ノ日カラ一箇年以
內ニ仕事ヲシナカツタ場合、或ハ一定ノ計
畫ニ基イテ採掘ヲナサナカツタ場合、所謂
鑛物ヲ採取シナカツタ場合ニ於テハ、之ヲ
監督シテ採掘セシメルト云フノガ本來ノ目
的デナケレバナラナイト思フ、所ガ其ノ本
來ノ方ハ餘リ問題ニシナイデ、今日行ハレ
テ居ルモノハ、四十一條ノ所謂鑛區稅ヲ納
メナイト云フコトニ依ツテ鑛業權者ニ對ス
ル懲罰ハアルケレドモ、四十條ノ規定ノ準
用ト云フモノガ比較的ナイ、一年以内ニ鑛
物ヲ採ラナカツタカラ鑛業權ヲ取消サレタ
トカ、或ハ施業案ニ依ラズシテ-忠實ニ
鑛物ヲ採取シナカツタコトニ依ツテ鑛業權
ヲ停止シタト云フ例ハ未ダ曾テナイ、唯稅
金サヘ納メテ居ルナラバ其ノ儘繼續シテ置
クト云フヤウナ建前ヲ取ツテ居ラレル、ソ
レハ一體商工省ノ建前ナノカ、大藏省ノ建
前ナノカト云フ點ヲ私ハ常ニ疑問ニ思ツテ
居ツタ、若シモ本當ニ考ヘテ居ラレルナラ
バ、鑛業法ノ精神デアル所ノ、所謂鑛業權ヲ
設定シタナラバ、ソレニ基イテ一年以内ニ着
手スル-是ハ或ハ二年以內ト云フ條項ニ
改メラレテモ構ハヌケレドモ、或ハ採掘ニ、
或ハ試掘ニ忠實ニ入ツテ行ク、或ハ採掘ノ
方法ノ計畫ヲ立テテ之ニ從事スルト云フ方
向ヲ執ラセナケレバナラナイト思フ、所ガ
現實ニ採掘ナリ、試掘ナリノ行動ヲ執レナ
イ現狀ガ玆ニアルノハ、資材及ビ勞働力ノ
不足ノ點ニアルト思フノデス、資材ノコト
ハ商工省デアリマスガ、今日ノ多クノ問題
ハ私ハ勞働力ノ點ニアルト思フ、勞働力ノ
コトニナリマスト、事厚生省ダト云フコト
ニナル、商工省ガ四十條ヲ適用致シマシテ、
ソレデハ一年以內ニナゼ着手セヌノダ、或
ハ施業案ヲ以テナゼ採掘ニ掛ラヌノダト云
ツテ嚴重ニ監督ヲサレルト勞務ノ關係ハ
ドウダト云フコトガ問題ニナル、ソコデ勞
務ノコトハ厚生省ダカラト云フコトニナツ
テ來テ、實際上ハ商工省ガ此ノ建前ヲ以テ
業者ヲ指導シナケレバナラナイノニ拘ラズ、
此ノ問題ガ起ツテ來ルト、ソレハ厚生省デ
アルトカ、ソレハ何省デアルト云フコトデ、
建前ダケハ立テルケレドモ、ソレヲ實行ニ
移スダケノ實際ノ力ヲ商工省ハ持ツテ居ナ
イ、サウ云フ所ニ此ノ四十條ガ折角ノ中心
デアルベキモノデアルニ拘ラズ、ソレガ有
效ニ働イテ居ナイト」云フ缺陷ヲ生ジテ來
ん、之ニ對シテ大臣ハ如何ニ御考ヘニナル
ノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=56
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057・岸信介
○岸國務大臣 從來鑛山ノミナラズ一般生
產力擴充ノ仕事ニ致シマシテモ、今御指摘
ニナリマシタ如ク、資材、資金、勞働力ト
云フモノガ綜合的ニ、有機的ナ關係ヲ持ツ
テ十分活動ヲ見ナカツタト云フヤウナ嫌ヒ
ハ、確カニ御指摘ノ如クアツタト思フノデ
アリマス、隨ヒマシテ此ノ三者ノ有機的ナ
活動ヲ促スコトハ、生產力擴充ノ上カラ申
シマシテ最モ緊要ナ問題デアリマス、而シ
テ御承知ノ通リ資金ハ大藏省ニ、資材ハ商
工省ニ、勞働力ハ厚生省ニト云フヤウニ所
管ガ分レテ居リマス爲ニ、此ノ三者ノ關係
ガ有機的ニ運用サレナイト云フ憾ミハ確カ
ニアツタノデアリマス、併シナガラ最近ニ
於キマシテハ企畫院ニ於キマシテ、此ノ三
者ノ關係ヲ十分綜合的、有機的ニ先ヅ計畫
ヲ樹立シ、其ノ計畫ニ基イテ實行ヲ有機的
ニ、綜合的ニ爲サシムベク關係省ノ間ニ十
分努力ハ致シテ居リマス、併シナガラ實際
ノ問題ト致シマシテ、尙ホ不十分ナ點モア
ラウカト思ヒマス、私共今日鑛山ノ資源開
發若クハ其ノ他ノ必要ナ方面ニ於ケル生產
力擴充ト云フコトニ關係シマシテ、單ニ資
材ノミナラズ、勞働力ノ方面ニ付キマシテ
モ、是ハ所管ハ厚生省デアリマスケレドモ、
實際ノ生產力擴充ノ責任ヲ持ツテ居ル商工
省ト致シマシテ、十分其ノ點ニ關シマシテハ
色々ナ方面カラ力ヲ致シテ居リマス、又今
後ニ於キマシテモ十分力ヲ致シ、サウ云フ
コトノ爲ニ生產力擴充ガ遲レルトカ、或
出來ナイトカ云フヤウナ事態ノナイヤウニ
善處致シタイ、斯ウ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=57
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058・川俣清音
○川俣委員 私ハ只今ノ大臣ノ答辯ヲ以テ
滿足シナイノデス、ソレデ具體的ニ私ハ申
上ゲタイト思フノデス、色々努力サレテ居
ルト云フコトハ聞及ンデ居リマスケレドモ、
ソレハ現實ニ行ハレテ居ラナイ、ソレハ厚
生省カラ勞務管理ヲ商工省ヘ取ツタ方ガ宜
イトカ何トカ云フコトハ第二ノ問題ト致シ
マシテ、大體厚生省ガ出來マシタ最初ニ於
ケル所ノ勞務管理ト云フモノハ、是ハ日本
ノ過去ノ歷史カラ言ヒマシテ、大臣モ御理
解ニナツテ居ルト思フノデスガ、平和時代
ニ於ケル所謂社會政策カラ此ノ勞務管理ガ
生レテ來タノデアリマス、今日ハ社會政策
トシテノ勞務管理デナクシテ、一ツノ產業
政策ノ上カラ勞務管理ガ考ヘラレナケレバ
ナラナクナツテ來タ、所ガ依然トシテヤハ
リ昔分ケタ通リ之ヲ厚生省ニ置イテ、是 、
商工省ノ仕事デハナイト云フヤウナコトデ、
唯其ノ間ニ綜合的ニ有機的ニ關係ヲ結ンデ
行クノダ、斯ウ云フコトダケデハ、十分產
業政策的ナ勞務管理ガ可能ニナルト云フコ
トハ考ヘラレナイ、サウシテ頭カラ民間ニ
色々ナ企業合同ヤ何カヲ勸メテ居リマスケ
レドモ、ヤハリ省自體トシテモ、昔ノヤウ
ニ勞務管理ガ社會政策ノ上カラ立ツタ勞務
管理ノ場合ハ厚生省ニアツテ然ルベキデア
ルト思フガ、併シナガラ今日ノヤウナ時代
ニナリマスト、產業政策ノ上カラ勞務管理
ヲシナケレバナラナイト云フ根本ヲ、モツ
ト明確ニ立テナケレバナラヌ時期ニ到達致
シタノデハナイカ、ソコニドウモ手薄デア
ルト云フコトト、商工省ガ色々ノ法案ヲ以
テ生產力擴充ヲ圖ラウトサレマシテモ、大
キナ點デ手拔カリガアルノデハナイカト思
フノデスガ、此ノ點ニ付テ御伺ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=58
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059・岸信介
○岸國務大臣 御話ノ如ク日本ノ勞務管理
ノ發達ノ沿革カラ申シマスト、今御話ニナ
ツタ通リノ沿革ヲ辿ツテ居ルモノダト思ヒ
やく、而シテ今日ニ於キマシテハ產業政策
ノ見地カラノ勞務管理ヲ强化シレケレバナ
ラヌト云フコトモ同感デアリマス、更ニ此
ノ問題ハ、今後ノ問題ト致シマシテハ產業
政策ノミナラズ、·大キナ日本ノ人口政策ノ
見地カラモ、此ノ問題ニ付テ考慮ヲ拂ハナ
ケレバナラヌト云フコトモ申スマデモナイ
コトデアラウト思ヒマス、而シテ產業政策
ノ一部面ト致シマシテノ勞務管理ト云フモ
ノヲ完全ニ行ツテ行クト云フ事柄ハ足ノ、
取リモ直サズ生產力擴充ノ實績ヲ確保スル
所以デアリマシテ、先刻來御答ヘ申上ゲテ
居ル通リ、其ノ點ニ付テノ從來ノ遺憾ナ點
ニ付キマシテハ微力ナガラ出來ルダケノ力
ヲ盡シマシテ、實效ヲ擧ゲルヤウニ努力致
シタイト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=59
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060・川俣清音
○川俣委員 次ハヤハリ勞務管理ノコトヲ
モウ少シ御尋ネ致シマスガ、私ハ勞務管理
ガ非常ニ難カシクナツテ來タト思ツテ居ル
ノデス、小サイ點カラ申上ゲルト、自分ハ
商工業者ノ企業合同ト云フコトガ勞務管理
ノ上ニ非常ニ影響シテ來ルト云フヤウナコ
トニ付テ、商工省デヤハリ一應御考ヘヲ願
ハナケレバナラヌト思ヅテ居ルノデス、ト
云フノハ、御承知デセウガ勞働者ガ工場デ
仕事ヲスル、或ハ是ハ「サラリーマン」デモ.
同ジダト思ヒマスガ、一定ノ年限ヲ經テ
定ノ所謂退職手當ト云フヤウオモノヲ貰ツ
テ、其ノ以後ノ生活ハ恩給デアルトカ、所
謂退職金ヲ本ニシテ商工業ニ轉換シテ行ツ
テ餘生ヲ安樂ニスルト云フコトガ、大體日
本ノ大キナ傾向デアルト思フ、何時マデモ
所謂勞働者デアルノデハナイ、幾ラカノ年
限ヲ經テ來ルト、是ガ煙草屋デアルトカ、
或ハ小サナ工場デアルトカ、或ハ商店デア
ルトカ云フモノヲ經營スルコトニ依ツテ餘
生ヲ安樂ニスルト云フヤウナ方向ヲ大體辿
ツテ居ル、所ガ一方ニ於テ企業合同ガ行ハ
レテ、中小商工業者ガ整理サレルト云フコ
トニナルト、今度ハ前途ニ對スル行キ道ニ
付テ非常ナ不安ガアル、企業合同其ノモノ
ハ不安デハナイガ、勞働者ノ將來ニ付テノ
見透シト云フモノヲ失ツテ來ル、是ハ勞働
者ダケデハナクテ、恐ラク官廳ニ勤メテ居ラ
レル俸給生活者デモ同樣デアラウト思フ、
サウスルト將來ニ對スル希望ト云フカ、老
後ニ於ケル所ノ安定策ト云フモノヲ相當變
ヘテ持ツテ行カナケレバナラヌ、勞務管理
ニ致シマシテモ、或ハ是カラ新シク俸給生
活者ヲ入レルニ致シマシテモ、私ハサウ云
フ點ヲ全體ニ考ヘテ行カナケレバナラヌノ
ベヤナイカト思フノデアリマス、サウ云フ
コトニ付テモ餘リ考ヘ方ガ今日足リナイノ
ヂヤナイカト思ツテ居リマス、殊ニ今私共
勞働者ト接觸ガ非常ニ多クテ、其ノ成績ヲ
擧ゲテ行カウト云フ場合ニ於テ色々ナ氣持
ヲ聞イテ、如何ニスレバ生產力ヲ十分發揮
出來ルカ、勞働力ヲ發揮出來ルカト云フコ
トニ常ニ注意ヲ怠ラナイノデアリマスガ、
サウ云フ點カラ勞働者ガ將來滅私奉公產業
戰士トシテ働クノハ宜シイケレドモ、或ル程
度ノ勞働力ガ低下シテ來ルト、結局工場ヲ
辭メナケレバナラヌ、其ノ後ノ生活ヲドウ
スルカト云フヤウナコトニ付テソロ〓〓不
安ガ出テ來テ居ル、不安ト云フ言葉ガ惡ケ
レバ、安定ヲ得ラレナイ焦慮ガアル、サウ
云フコトニ付テ、是ハヤハリ年金デアルト
カ、或ハ醫療デアルトカ、サウ云フコトマ
デ是ハ考ヘテ行カナケレバナラヌト思フ、
所ガソレニナルト又厚生省ダト云フコトニ
ナル、商工省ガ何カ一ツノ案ヲ立テラレタ
ニシテモ、又年金ノコトニナルト、ソレハ
商工省デモ文句ヲ言フナトハ言ハナイデセ
ウケレドモ、餘リ相談ニ與ラヌ、ソレガド
ウ實行サレルカト云フヤウナコトニ付テハ餘
リ考ヘテ居ラレナイ、總務局長ガオイデニ
ナルカラ、總務局長が參加シテ居ラレルデ
セウケレドモ、此ノコトニ付テハ出席スル
ダケデ、餘リ發言シテ居ラレルヤウニ見受
ケ得ナイ、總テサウ云フ風ニシテ、關聯シ
テ居ルコトハ念頭ニ置カナケレバナラヌノ
ダケレドモ、其ノ點ニ付テノ御考ヘガマダ
足リナイト思フノデスガ如何デセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=60
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061・岸信介
○岸國務大臣 中小商工業ノ整理統合ノ方
針又之ニ伴ツテ各種ノ企業ノ許可制度ヲ
採用致シテ居リマスルガ、從來日本デハヨ
ク餘ツタ人口ノ捌ケ口トシテ、或ハ商業部
門、小賣商ト云フモノガ考ヘラレテ、又實
際サウ云フ風ナ實績ヲ示シテ居ツタノデア
リマス、今御指摘ニナリマス如ク、勞務者
ヤ俸給生活者等モ老後ニ於テサウ云フ部門
ニ於テ生計ヲ營ンデ行クト云フヤウナ傾キ
ガ從來相當ニアツタコトハ事實デアラウト
思ヒマス、是ガ現下ノ情勢又近キ將來ノ見
透シヲシテ見マスト、サウ云フ事柄ガ從來
ノ如ク自由ニ出來ナイノダ、隨テ之ニ對シ
テ根本的ナ方策ヲ樹立スル必要ガアルト云
フ御說ニ付キマシテハ、十分吾々モ考ヘナ
ケレバナラヌ重大ナ問題デアルト思ヒマス、
唯之ニ關聯致シマシテ勞務管理ノ問題ノ所
管、又商工省ノ發言、若シタハ是トノ關係ヲ
緊密ニスルト云フ問題ニ關シマシテハ、私
共トシテハ今マデモ努力致シテ參ツテ居ル
積リデアリマスガ、其ノ足ラザル點ニ付キ
マシテハ十分努力シテ參ル積リデアリマス、
御趣旨ノ如ク勞務管理其ノモノガ非常ナ複
雜ナ相貌ヲ持ツヤウニナツタコトニ付キマ
シテモ十分認識ヲ持ツテ居リマシテ、是ガ
對策ニ付キマシテハ關係ノ省ノ間ニ、單二
從來ノ如ク何處ノ所管ダト云イヤウナ簡單
ナ考ヘデ處理スルコトナク、十分一ツ努力
シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=61
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062・上田孝吉
○上田委員長 川俣君ニ申上ゲマスガ、勞務
管理ノ問題ノ御質問ガアリマシタガ、中小
商工業者ノ問題ノ質問ニ入ラレルヤウナラ
バ、ソレハ更生金庫、重要物資ノ時ニ御質
問ヲ願ヒタイト思ヒマスカラ、ドウカ勞務
管理ノ方トシテノ御質問ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=62
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063・川俣清音
○川俣委員 中小商業ノ問題デナクシテ、
私ガ今御尋ネシタヤウニ其ノ善シ惡シノ問
題デナク、其ノ結果カラ來ルコトニ付テ御
尋ネシテ居ルノデス、ソコデ其ノ對策トシ
テヤハリ年金デアルトカ、保險制度ト云フ
モノガ相當活用サレナケレバテラナクナツ
テ來ル、其ノ活用ニ付テモツト商工省モ御努
力願ヒタイ、併シ是ハ商工省ヲ煽テテ別ニ
厚生省カラ何カ持ツテ來イト云フ意味デハ
ナイノデアリマスカラ、其ノ點ハ誤解ノナ
イヤウニ、モツト產業省トシテノ責任ヲ持
ツテ欲シイト云フ意味ナノデアリマス、商
工省トシテ、或ハ岸サンニ御願ヒスルノデ
ハナク、日本ノ實際ノ產業省トシテノ使命
ヲ十分發揮シテ貰ハナケレバナラヌト云フ
點ニアルノデスカラ、其ノ點ハ誤解ナイヤ
ウニ願ヒタイ、厚生省ヲ潰シテ商工省ダケ
アレバ宜イト云フ意味デハナク、產業政策
ヲ十分立テナケレバナラヌ、其ノ產業政策
ノ中ニハ今ノ保險ト云フコトモ重要ニ考ヘ
ラレテ來タノデアル、サウ云フ點カラ論ジ
デ居ルノデアリマスカラ、其ノ點ハ誤解ノ
ナイヤウニシテ欲シイト思フ、例ヘバ年金ノ
點ニ付キマシテモ、今度ハ勞働者ノ年金ト
云フモノヲ大藏省ガ預金部ニ入レテ自由ニ
活用スルラシイ、前ハ厚生省デ相當ナ活用
ノ方法ヲ考ヘテ居ツタガ--是ハ大藏省ノ
人ヲ呼ンデ私ハ尋ネタイト思フケレドモ、
之ヲ預金部ニ入レテシマツテ、勝手ニ活用
スル、サウデアレバ折角勞務管理ト相關聯
シテ年金制度ガ出來テ居ルノニ、大藏省ガ
唯金ダケノ建前カラノミ年金ノ金ヲ預金部
ニ入レテシマフト云フコトニナルト、私ハ
玆ニ所謂勞務管理ト產業政策ト金融政策ト
ガ相俟タナイ結果ヲ來スデハナイカ、ドウ
モサウ云フ憂ヒヲ抱ク、デアルカラ商工省
トシテモ勞務管理ノ上カラ致シマシテ、此
ノ年金制度ニ付テハ十分ナ考慮ヲ拂ハレナ
ケレバナラヌト思ヒマス
更ニ申上ゲタイノデスガ、是ハ明日デモ實
ハ農林省ノ方ヲ呼ンデ戴イデ御話シタイト
思フノデ、其ノ際十分ニ申上ゲタイト思フ
ガ、勞務管理ノ中ニハ勞働者バカリデナク、
國民トシテノ生活上ノ食糧ガ含マレテ居ル
コトハ當然デアル、所ガ御承知ノ通リ鑛山
ト云フモノハ交通ガ非常ニ不便デアル、而
モ一箇所ノ或ル特定ナ區域ニ多數ノ人ヲ擁
シテ居ル、隨テ其ノ食糧ヲ全部鑛山ノ經營
者ガ確保シテ置カナケレバナラヌ、然ルニ
拘ラズ農林省ハ事鑛山ニ關スルト云フトド
ウモ繼兒扱ヒニスル、一般住民ト同ジヤウ
ニ、勿論切符制デアルトカサウ云フコトニ
付テ異議ハナイノデスケレドモ兎ニ角米ナ
ラ米ヲ一定數量一年ニ消費スル、其ノ消費
量ヲ多クシテ吳レト云フコトハ必ズシモ願
ハヌケレドモ、ソレダケノ食糧ヲ與ヘテ置
クナラバ、三日デアルトカ二日デアルトカ
云フヤウナ不安定ナ食糧ノミヲ配給シテ置
クト云フヤウナコトハ、鑛山ノ經營ノ上カ
ラ言ツテ非常ニ危險デハナイカ、東京ニ於
テ現ニ十二月ノ末頃、或ハ正月ノ初メニ掛
ケテ非常ニ不安ナ狀況ガアツタ、サウ云フ
コトニナツテ來ルト、是ハ一般ノ國民デア
リマスレバ一日米ガ足リナイト言ヒマシテ
モサウ不安ナコトハナイ、所ガ何千人ト使
ツテ居リマスト、其ノ家族ヲ入レルトヤハ
リ四倍乃至五倍ニナル、千人ノ從業員ガ居
ルト五千人ノ家族ニ影響シテ來ル、ゾレガ
一日カ二日分シカ米ガナイトナルト全體ニ
影響スル、都會ノ隣組デアレバ五人カ六人
デアリマスカラ、其ノ不安ノ狀態ト言ヒ
マシテモ大シタ問題デハナイ、所ガ鑛山ニ
ナルト一箇所ニ大キナ所ハ何千人ノ問題ト
云フコトニナルカラ、不安ナ狀態ガ非常ニ
助長サレル、東京全體バラ〓〓ニ千人ガ不
安デアリマシテモ大シタ問題ハナイガ一定
ノ地域ニ千人、其ノ家族ヲ入レテ五千人ノ
者ガ明日ノ米ガナイト云フヤウナコトニナ
リマスルト、是ハ產業戰士デアルト云フヤウ
ナコトヲ商工省デ如何ニ宣傳サレマシテ
モ、中々サウ云フ大キナ勞働者ノ不安ト云
フモノハ一時ニ解消出來ナイ、一方カラ言
フト、農村ノ附近デアリマスカラ、農民ハ
相當ナ食糧ヲ確保シテ居ル、一方デ產業戰
士ト云フヤウナコトデ、大イニ「ポスターL
ハ貼ツテ貰ヘルケレドモ、實際ハ〓糧ガナ
イト云フコトニナリマシテハ、名目ノ「ポス
ター」ダケノ產業戰士デアツテ、實際ノ待
遇ハ產業戰士トシテノ待遇デナイト云フコ
トヲ、勞働者デアリマスルカラ感情的ニ感
ズル、所ガソレニ對スル配給ハ相當ノ準備
ヲシテ然ルベキニ拘ラズ、サウ云フ點ニ付
テハ非常ニ遲レテ居ル、是ハ鑛山監督局ア
タリガ盛ンニ努力致シテ居ルヤウデアリマ
スルケレドモ、府縣知事ガドウモ諒解シナ
イ傾キガアル、是等ニ付テノ大臣ノ明快ナ
御答辯ヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=63
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064・岸信介
○岸國務大臣 特ニ鑛山ニ於ケル食糧問題
ノ重要性ハ御指摘ノ通リデアリマス、隨分
此ノ問題ニ關シマシテハ、或ハ或ル地方ニ
於キマシテハ食糧上ノ不安ノ問題カラ色々
好マシカラヌヤウナ事態モ起リ兼ネナイト
云フ所モアリマス、又食糧ノ量ノ問題ニ付
キマシテモ、非常ニ過激ナ肉體的勞働ヲス
ル關係上、他ノ方面ノ人々トハ特別ノ事情
ニアル點モアルノデアリマシテ、是等ノ點ニ
關シマシテ、各鑛山ニ於テ〓糧問題ノ不安ヲ
一掃シ、十分ノ活動ガ出來ルダケノ食糧ヲ
確保スルト云フコトハ、鑛山ニ於ケル增產
對策トシテ現下ノ最モ重要ナルモノノ一デ
アルト思ヒマス、過般來色々ナ鑛山ニ就テ
實際ヲ調ベテ見マシテモ、又實際之ニ働イ
テ居ル人々ノ僞ラヌ意見ヲ聽イテ見マシテ
モ、此ノ點ハ非常ニ重要ナ問題デアルト思
フノデアリマス、旣ニ農林省トノ間ニ於キ
マシテハ大臣ノ間ニ於テ或ハ事務當局ノ間
ニ於キマシテ此ノ問題ヲ採上ゲマシテ、具
體的ニ相當ナ方面ニ於キマシテハ解決ヲ見
ツツアル狀況デアリマス、唯是ハ現在ノ狀
況ガ、鑛山ダケノ立場カラ見マスルト甚ダ
遺憾ナ狀況ニナルノデアリマスルガ、併シ
是ハ鑛山ノ立場ダケデ見ル譯ニモ行カナイ
事情ガアリマシテ、ソレハ今御指摘ニナリ
マシタ如ク斯ウ云フ鑛山ニ於ケル食糧問題
ハ私共カラ申シマスルト、鑛山監督局ニ
其ノ必要量ヲ任シテ貰ツテ之ヲ必要鑛山ニ
確保シテ行クト云フ方法ヲ執ルコトガ、最
モ鑛山ニハ徹底スル方法ナノデアリマス、
サウ云フ考ヘモアリマス、併シ同時ニ地元
ノ縣ト致シマシテハ、縣內ノ凡ユル縣民ノ食
糧問題ノ不安ヲ一掃シテ食糧問題ノ確保ヲ
圖ラナケレバナラヌ、是ハ縣長官ノ當然ノ
職責デアリマシテ、其ノ見地モアルノデア
リマス、此ノ兩方ノ調和ノ點ガ現實ノ問題
トシテハ實ハ相當ムヅカシイ問題デアリマ
ス、併シ或ル地方ニ於キマシテハ、縣當局
ト監督局ノ當局ト農林商工ノ方々、各關係
者ガ十分ナ緊密ナ連絡ヲ執リマシテ、形ハ飽
クマデ縣ヲ通ジテ出テ來マスガ其ノ內容ニ
付キマシテハ鑛山監督局ノ鑛山ニ實際卽應
シタ實情ヲ採入レテ、縣ノ方ニ於テ鑛山ノ
食糧ノ不安ヲ生ゼシメナイヤウナ施策ヲ講
ジテ貰ツテ居ル所モ少クナイノデアリマス、
マダ全國ニ十分其ノ點ガ徹底シテ居リマセ
ヌガ、其ノ點ニ付テハ仰セノ如ク現下ノ實
際問題トシテ最モ重要ナ問題デアリマスカ
ラ、今後モ十分ニ注意シタイ、斯ウ考ヘテ
居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=64
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065・川俣清音
○川俣委員 此ノ點ニ付テ大臣ヨリ滿足ナ
ル答辯ヲ得マシテ諒承スルノデアリマス、
此ノ答辯ガ增產ニ付テ非常ニ影響スルト思
ヒマスノデ、其ノ答辯ヲ多ト致シマス
次ハ鑛業政策ノ上カラモウ一點御尋ネシタ
イノデアリマスガ、日滿支及ビ將來發展スルデ
アラウ所ノ大東亞共榮圈內ニ於ケル鑛業政策
ノ上カラ、試掘ト採掘ト內地ニ於テ分ケ
テ居リマスガ、日本內地ニ於ケル所ノ鑛業
政策、是ガ滿洲及ビ北支、或ハ南方マデ同
ジヤウナ方向ヲ以テ鑛業政策ヲ立テナケレ
バナラヌト思フノデアリマスガ、日本ハ日
本トシテ特別ダト云フヤウナコトニハ私ハ
相成ラヌト思フノデス、ソコデ日本ハ採掘
ト試掘ヲ分ケテ居ツテ、而モ試掘ハ四年、
採掘ハ將來性ヲ持ツテ居ルノデアリマス、
稅金ハ鑛區稅ト鑛產稅ニ分ケテ居リマスガ、
日滿支或ハ東亞共榮圈內ニ於ケル所ノ將來
ノ鑛業政策ハ、ヤハリ同樣ナ方向ヲ以テ行
カレルノデアルカ又全體ヲ睨ミ合セテ日本
内地ノ鑛業法規ヲ變ヘテ行カウトスルノデ
アルカ、其ノ點ヲ御尋ネシタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=65
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066・岸信介
○岸國務大臣 大東亞共榮圈內ニ於ケル鑛
業政策ノ問題ニ付キマシテハ、ヤハリ日本
ガ中心トナリマシテ大東亞ニ於ケル必要資源
ガ開發サレルト云フコトハ當然デアリマスガ、
唯各地方ニ於テ如何ナル法律制度ヲ採用ス
ルカト云フ問題ニ付キマシテハ、御承知ノ通
リ既ニ滿洲ニ於ケル鑛業法ノ制度ハ、日本內
地トハ全然趣キヲ異ニシテ居リマス、支那ニ
於キマシテモ亦異ツテ居ルノデアリマシテ、
南方諸地域ニ於キマシテモ、法規ノ制度、
鑛業權、採掘權、試掘權等ノ關係、或ハ其
ノ年限ト云フヤウナモノニ關シマシテハ
是ハ地域ニ依ツテ異ナル法制ガ布カレルモ
ノダト考ヘテ居リマス、必ズシモ日本ノ法
規ヲ其ノ儘南方諸地域ニ持ツテ行キマシテ、
其處ノ從來ノ慣習乃至ハ其處ノ鑛業開發上
最モ有效ナ、有利ナ、適切ナ方法デアルカ
ドウカト云フ事柄ハ、地域ニ依ツテ異ナル
モノデアリマシテ、隨テ日本ノ鑛業法ヲ其
ノ儘新シイ地方ニ施行スルト云フ考ヘハ持
ツテ居リマセヌ、又逆ニ、ソレデハ日本ノ
鑛業權ノ根本ヲ、是等ノ地域ノ色々ナ實績
カラ顧ミテ根本的ニ變へル考ヘガアルカド
ウカト云フ問題ニナリマスト、ヤハリ日本
ノ鑛業權ノ發達ニ付キマシテハ、御承知ノ
通リ相當永イ沿革ヲ持ツテ居リマシテ、是
ガ日本ノ鑛業ノ發達ニ資シテ參ツテ居リマ
スノデ、之ヲ一朝ニ變ヘルト云フヤウナ問
題モ、增產ノ上、將來ノ鑛業開發ノ上ニハ
相當ノ影響ガアル問題デアリマスカラ、勿
論時々適切ナ改正ハ行ツテ居リマスケレド
モ、根本的ニハヤハリ地域ニ依ツテ其處ニ
適シタ法制ガ布カレル、斯ウ云フ風ニ御諒
解ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=66
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067・川俣清音
○川俣委員 私ハ此ノ點ニ付テハ日本ノ法
規ガ必ズシモ進步致シテ居ルトハ思ツテ居
リマセヌノデ、日本ノ法規ハ監督法規カラ產
業法規ニ移行シテ行クベキモノダト云フコ
トハ、前々議會以來商工省ヘ其ノ點ヲ申述
ベテ居ル點デアリマス、鑛物增產ノ上カラ、
ヤハリ增產ニ適當ナ法規ニ移行シテ行カナ
ケレバナラヌモノデアル、其ノ移行シツツ
アルト云フコトハ認メマスケレドモ、
リサウ云フ方向ニ基イテ行カナケレバナラ
ヌト私ハ確信致シテ居ルノデアリマスガ、
是レ以上ハ質疑致シマセヌ、唯問題ハ帝國
興發ト關係致シテ來ルノデアリマスガ、具
體的ニ鑛物ノ增產ヲ圖ル上ニ於テ、ドウ云
フ方法ヲ執ツタラ宜イカト云フコトヲ私ハ
此ノ際檢討シタイト思フ、ソレニハ所謂富
鑛、富床ノ所ニ重點ヲ置イテ、其處ニ資材勞
力ヲ全部集メテ行ツテ、サウシテ短期間ニ
於テト言ヒマスカ、速カナル施設ヲ行ツテ
增產ヲ圖ル方ガ宜シイカ、或ハ中小鑛山ニ
努力ヲ致シテ增產計畫ヲ立テルコトガ然ル
ベキカト云フコトニ付テ、種々議論ガアル
ヤウデアリマス、併シナガラ地下資源ヲ地上
ヘ採取スルニハ、私ハヤハリ所謂貧鑛デア
ラウトモ、富床ヲ採掘スルコトノ方ガ、萬
全ト言ヒマスカ、目下ノ急務ニ當嵌マル採
掘ガ可能デアルト思フ、唯其ノ場合ニ中小
鑛山ハドウスルカト云フ問題ニ付テハ、此
ノ中小鑛山ハ所謂鑛床ノ發見ニ非常ニ役立
ツノデアリマシテ、鑛物其ノモノヲ採取ス
ルコトニ付テハ增產ニハ直接大シタ影響ハ
ナイ、併シナガラ日本內地ニ於ケル鑛床ヲ
發見シテ、次ノ段階ニ至ル所ノ鑛物ノ增產ノ
上ニ影響シテ來ルノデアル、其ノ點ヲヤハ
リ明カニシテ鑛山ヲ指導スル必要ガアルト
私ハ思フ、中小鑛山ヲ營ンデ居ル人ハ、直
グ自分ノ鑛山ガ日本ノ國策ニ適ツテ居ツ
テ、增產ニナルノダト云フヤウナ考ヘ方ヲ
往々致シテ居ラレマス、又商工省ハ、小サ
ナ鑛山ガ何ボ逆立チシテモ日本ノ鑛產ノ上
ニハ大シタ利益ハナイノダト極端ニ言ハレ
ル、併シソコノ見解ハ、中小鑛山主ガ自分
ノ資產ヲ投出シ、又親戚ノ資產ヲ持寄ツテ、
或ハ工面シテ注込ンデ居ルノガ所謂鑛床ノ
發見デアル、商工省ヤ國策會社ガ調査費ヲ以
テ鑛床ヲ發見スルヨリモ、中小鑛山經營者ガ
注込ンダ調査費ハ莫大ナモノデアルト思フ、
サウ云フ點モアルカラ、今日中小鑛山ニ對
シテモヤハリ保護ハ必要デアルト思ヒマス
ガ、ソレ自體ガ必ズシモ私ハ鑛物ノ增產ノ
上ニ影響ハナイト思ツテ居ル、然ラバ是ハ
ヤハリ所謂富鑛富床ノアル所、貧鑛ニシテモ
富床ノアル所謂有望鑛山ト云フカ、大鑛山
ニ主力ヲ注ガナケレバナラヌト思フ、ソレ
デ帝國興發ニ致シマシテモ、其ノ建前ヲヤ
ハリ私ハ執ラシムベキデハナイカト思フ、
所ガドウモ帝國興發ハ別ニ致シマシテ、日
本產金會社ハ斯ウ云フ態度ヲ執ツテ居ラナ
イ、去年ノ議會デモ申上ゲマシタケレドモ、
ドツチカト云フト同ジ鑛山ノ開發ニ當ツテ
居リマス帝國興業開發ト日本產金トハ、鑛
山ノ開發ニ對シテ根本ノ違ヒガアルト私ハ
思フ、日本產金ノ社長ガ迭ハラレテ、最近
ノ意向ハ餘程違ツテハ來テ居リマシタケレ
ドモ-產金ニ對スル政策ハマダ變ツテ居
リマセヌデセウケレドモ、餘リ華々シイ成
績ヲ擧ゲテ居ラレナイ、ソレハナゼカト云
フト最初ノ出發ガ惡カツタ、ト云フノハ具
體的ニ言フト日本產金會社ノ所謂小鑛山ニ
對スル貸付ハ、是ハ私モ此ノ前ノ議會デ言
ヒマシタケレドモ、鑛山ニ對シテ調査ニ行
ツタ結果、有望デアルカラ資金ヲ貸付ケル
ト云フ態度デハナクテ、其ノ鑛山ノ所有者
ガ興信所ノ證明ニ依ツテ相當ノ資產狀態ガ
アルト云フナラ貸スト云フノデアリマス、
隨テ日本產金カラ金ヲ借リルコトニナリマ
スト先ヅ鑛山ノ調査ト云フコトハ第二デ
アツテ)興信所ニ好ク思ハレナケレバナラ
又、地方ノ人ノ如キハ興信所ニ對シテ相當
ノ金ヲ拂ツテ居ル、鑛山ノ金ヲ借リタイト
云フノニ、興信所ニ金ヲ拂ハナケレバナラ
ヌト云フヤウナ邪道ガアル、ト云フノハ產
金會社ノ重役ノ大部分ハ大藏省カラ行ツテ
居ル、大藏省カラ行ツテ居ルト、ドウシテモ
金貸的ニ考ヘテ、鑛山ヲ開發スルコトガ目
的デナイ、開發スルコトガ目的デアルナラ
バ此ノ鑛山ガ調査ノ結果有望デアル、調
査ノ結果不良デアルト云フナラ是ハ別問題
デス、優良デアルト云フナラバ、此ノ開發ノ
爲ニ資金ヲ貸スノデアルカラ開發資金ヲ出
シタラ宜イ、出シテ之ヲ開發スベキガ目的
デアル、此ノ山ヲ優良ニスルコトガ目的デ
アルノデアリマスカラ、資金ヲ投資シテ決
シテ不滿ガナイ筈デアル、若シモ金ヲ拂ヘ
ナカツタラ山ヲ取レバ宜イ、山ヲ取ツテ開
發スレバ宜イ、所ガ產金ノ貸付方ハ、山ハ有
望デアツテモ、オ前ハ貧乏人デアツテ迚モ
金ヲ貸ス資格ガナイカラ、モツト資格ノア
ル者ヲ保證人ニ立テナケレバナラヌ、サウ
云フコトニ於キマシテ銀行屋トカ其邊ノ金
貸ト同ジヤウナコトヲヤル、サウ云フ點ガ
多クアツテ、人ヲ見テ金ヲ貸シタト云フコ
トニナル、山ヲ見テ金ヲ貸シタ形トハナツ
テ居リマスガ、人ニ金ヲ貸シタ結果、資金
ガ焦付イテ運用ガ出來ナイト云フコトニナ
ル、鑛發ハソレ程デハナイケレドモ、ヤハ
リ帝國鑛發ニ於テモ金融ヲ扱ツテ居ル人
ガ、ドツチカト云フト人ニ金ヲ貸スト云フ
考ヘ方デ、オ前ノ資產狀態ハドウカ、保證
人ガアルカドウカト言フ、保證人ヲ重要視
スルナラ山ニ貸スノデハナイ、對人關係ナ
ラ保證人ガアルカドウカ、信用ガアルカド
ウカト云フコトガ重要問題デアルガ、山一
對シテ貸スノデアル、發展性ガアル、有望
ニナル可能性ガアルト云フナラバ、ソレニ
基イテ金融サレタガ宜イ、ソレハ如何ニ貧
乏人デアラウト、金持デアラウト、山自體
ノ如何ト云フコトニアルト云フ考ヘ方ヲシ
ナケレバナラヌガ、鑛發ニ於テモヤハリ保
證人ヲ云々スルト云フ傾向ガアル、保證人
ヲ云々スルダケノ餘裕ガアルナラバ、モツ
ト山ヲ調査スルガ宜イ、嚴格ナ調査ヲサセ
ルト云フコトガ本當デアルト私ハ思フ、調
査ガ粗漏デアツテ、貸方ノ書類ダケヲ嚴格
ニヤリマシテモ十分ナ結果ヲ得ラレナイト
私ハ思フノデアリマスケレドモ、之ニ對ス
ル大臣ノ御答辯ヲ得タイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=67
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068・岸信介
○岸國務大臣 御指摘ノ如ク帝國鑛發又ハ
日本產金ノ行ヒマスル投資、融資ハ、其ノ事
業ノ性質カラ見マシテ、一般金融業者ガ相手
トシテ居ラナイ方面デ、而モ產業政策上必
要ナ部面ニ對スル金融ヲ付ケル意味ニ於キ
マシテ、特ニ是等ノ會社ニ融資、投資ノ途
ガ認メテアル譯デアリマス、隨ヒマシテ其
ノ運用ニ付キマシテモ、自ラ一般金融業者
ガ取扱フヤリ方トハ異ナルベキモノデアリ
マシテ、御意見ノ通リ、山其ノモノニ重キ
ヲ置イテナサルベキ事柄ハ當然デアリマス、
唯山自身ノ調査モ勿論必要デアリマスガ、
同時ニ山ガ開發セラレマスニ付キマシテハ、
技術デアルトカ、或ハ經營能力ト云フヤウナ
點モヤハリ一ツノ金融ノ對象トシテハ調査
ヲサレナケレバナラヌ點ダト思ヒマスルケ
レドモ、他ノ金融業者ヤ銀行ガ貸スガ如
ク、山ノ貸シハ迚モ其ノ人ノ對人信用、
他ノ財產デアルトカ、或ハ保證人ニ有力
者ガアルカナイカト云フコトダケデ以テ、
ソレニ重キヲ置イテ是ガ運用サレルト云
フコトニナリマシテハ、實ハ帝國鑛發ヤ、日
本產金ヲ設ケタ特別ノ趣旨ト云フモノガ滅
却サレル譯デアリマス、今日マデノ兩者ノ實
績ガ十分ニ完全ニ其ノ目的ヲ達シテ居ルト
云フ事柄モ申上ゲ兼ネルト思ヒマスケレドモ、
併シナガラ今日マデノ實績カラ見マシテ恐
ラクハ一般金融業者ナラバ全然相手ニシナカ
ツタデアラウト思ハレル部面ニ對シテ、相
當ナ額、投資、融資ヲ見テ居リマス、サウシ
テソレノ鑛物資源ガ開發ヲ見テ居ル事柄ハ
少クトモ是等ノ國策會社ノ使命ガ其ノ點ニ
於キマシテハ達成サレテ居ル譯デアリマス、
尙ホ現實ノ問題トシテ、是等ノ會社ガ行ツ
テ居リマスル融資、投資ニ付テ、御指摘ノ
ヤウナ弊害ガアルトスルナラバ、其ノ點ハ
適當ニ監督シテ是正スベキモノダト考ヘマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=68
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069・川俣清音
○川俣委員 私本當ハ產金ノ具體的ナ例ヲ
擧ゲテ此處デ申上タイノデアリマスガ、餘
リ時間モアリマセヌカラ、具體的ノコトニ
付テ澤山申上ゲルコトヲ止メタイト思ヒマ
ス、大體鑛發ノ方ガ成績ハ良イ、產金ノ方
ガ成績ハ大體不良デアルト云フコトダケハ
此處デ申上ゲタイト思〓ヒマス
更ニ申上ゲタイト思フノデスガ、鑛發ノ
經營シテ居ル山、現在經營シテ居ル事業ガ
二十鑛山アルヤウデアリマス、此ノ中デ金ヲ
含ンデナイ鑛山ハ三ツヨリナイヤウデアリ
そう、又日本產金デ經營シテ居ル、鑛山、或
ハ投資致シマシタ鑛山ニ致シマシテモ、其
ノ八割ハ銅其ノ他ノ鑛物ヲ含ンデ居ル、サ
ウスルト區別ガ殆ド付カナイ、殆ド日本內
地ノ鑛床ノ狀態が區別ガ付カナイ狀態ニナ
ツテ居ル、區別ノ付クノハ北海道ト朝鮮ヨ
リ外ニ大體ナイト思フ、故ニドウシテモ此
ノ產金會社ト鑛發ト二ツニ分ケテ置カナケ
レバナラヌト云フ理由ハナイト私ハ思フガ、
今日デモ尙ホ分ケテ置カナケレバナラヌ理
由ガアルカドウカ、其ノ點ヲ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=69
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070・岸信介
○岸國務大臣 日本產金竝ニ帝國鑛發ガ設
立ヲ見マシタ沿革ニ付キマシテハ、川俣委員
能ク御承知デアリマスカラ茲ニ申上ゲマセ
ヌ、唯其ノ當時ノ事情カラ申シマスルト、ソ
レゾレ是ガ設ケラルベキ特別ノ必要ガアツ
テ設ケラレテ今日ニ參ツテ居ルノデアリマ
ス、今後ニ於キマシテモ兩者ノ使命ハ必ズ
シモ同一ダトハ私共考ヘテ居リマセヌ、併
シナガラ實際ノ技術ノ上カラ今御指摘ニナ
リマシタヤウニ、扱ツテ居リマスル鑛石ノ
點カラ考ヘテ見マシテモ、其ノ他色々經營
上ノ點カラ考ヘテ見マシテモ、此ノ兩社ノ
合同ト云フヤウナ問題ニ付キマシテハ、今
直チニ之ヲ行フ考ヘハ持ツテ居リマセヌケ
レドモ、將來ノ問題トシテハ十分ニ考究ス
ベキ問題デアルト考ヘテ居リマス·発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=70
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071・川俣清音
○川俣委員 私ハ理論的ナ點カラダケデナ
ク、現在ノ技術員ノ非常ニ不足ナ場合、殊
ニ南ニ對シテモ相當ナ技術員ヲ動員シテ行
カナケレバナラナイヤウナ現在ノ情勢ニ於
テ、二社、三社ト云フモノガ各〓僅カノ技術
員ヲ割據シテ持ツテ居ナケレバナラナイト
云フ時代デハナイト思フ、產金會社ガ產金
ノミデ、砂金事業デアリマスレベ別デアリ
マスケレドモ、他ノ砂金以外ノ鑛物ノコト
ニ付キマシテハ產金會社ニ產金ダケノ專
門家ガ居ル譯デモナイシ、又帝國鑛發ニ金ノ
コトハ全然理解ノナイ者ガ居ルト云フヤウ
ニ區分サレテ居ル譯デモナイノデアリマス、
日本ノ大體ノ鑛石ノ狀態ト云フモノハ、技
術員ガ大體決マツテ居ル範圍ニシカ存在シ
ナイ、其ノ僅カシカ存在シテ居ナイ技術員
ヲ動員シテ行ク上カラ、各社ニ分ケテ置イ
テ技術員ヲ奪ヒ合スルガ如キハ、目下ノ實
情カラ私ハ甚ダ遺憾デアル、ト云フ風ニ考
ヘマシテ問題ハ資金ヲドウスルトカ、會社
ヲドウスルトカ云フコトヨリモ、斯ウ云フ現
實ニ徵セナケレバナラナイ使命ヲ持ツテ居
ル兩會社ハ速カニ技術員ノ統合ガ必要デア
ル、サウ云フ點カラ私ハ强ク主張致シテ居
ルノデアリマス、是ハ餘程御考ヘ置キヲ願
ツテ置キタイト思フノデアリマス
尙ホ進ンデ申上ゲタイト思ヒマスノハ石
炭ノコトデアリマス、石炭ノコトハ直接此
ノ法案ハ關係ハナイノデアリマスケレドモ、
是ハ日本ノ鑛山ヲ經營スル上カラ致シマシ
テ、ヤハリ勞務關係ガ重大ニナツテ來ルノ
デアリマス、南洋方面ニ於ケル所ノ鑛物ノ
存在ハ大體世間デ擧ゲラレテ居ルヤウナ狀
態デアリマシテ、日本內地ニ於テハ一番多
ク存在スルノ所ノ銅ガ南洋ニ於テサウ澤山
アルトハ考ヘラレマセヌ、又石炭ノ問題ニ
ナリマスト、北支、大陸ノ方ニ相當ナモノガ
アリマシテ、內地ノ方ハ九州ナドハモウ比
較的老境ニ入ツテ居ル、唯北海道ト樺太ガマ
ダ相當ノ餘裕ヲ持ツテ居ルガ、斯ウ云フコ
トニナルト、ソコデヤハリ大キナ石炭對策
ト云フモノハ、結局ハ運輸デアリマスルケレ
ドモ、內地ノ運輸ハヤハリ勞務對策デナケレ
バナラヌト思フ、ソコデ此ノ勞務對策ノ中ニ
於キマシテモ、將來ヤハリ南ノ方ニ熟練勞
務者ヲ向ケルト致シマスレバ、此ノ中カラ
更ニ持ツテ行カナケレバナラヌ、大體石炭
ノ方ノ勞務者ト云フモノハ、サウ熟練者ト
云フモノガ本當ハ比較的居ナイ、金屬山ニ
ハ相當ノ熟練者ガ居リマシテ、御承知ノ通
リ相當ナ知識經驗ヲ持ツテ居ルノデアリマ
ス、隨テ金屬山ノ勞務關係者ヲ、或ハ石油
ノ關係者ヲ南ニ動員シナケレバナラナイト
思フノデスガ、サウ致シマスレバ石炭ノ方
ノ關係ノ勞務者ト云フモノハ益〓不足ニナツ
テ來ルト思フ、ソレデ此ノ不足ニナツタ勞
務關係者ヲ何處カラ一體持ツテ來テ、內地
ノ採炭事業ヲナスノデアルカ、或ハ內地ノ
採炭事業ニ付テハ、北海道ニ致シマシテモ
或ハ樺太ニ致シマシテモ、當分大陸ニ依存
スルト云フヤウナコトデ、餘リ注意ヲ致サ
ナイト云フ方針デアルカドウカ、此ノ點ニ
付テ大臣カラデナクテモ宜イカラ、御答辯
ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=71
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072・山口眞澄
○山口政府委員 只今ノ御質問ニ對シマシ
テハ、出來得ル限リ能率ノ增進ヲ圖ツテ行
キタイト思ヒマス、ソレハ日本ノ炭礦ノ能
率ハ、御承知ノ通リ各國ニ比ベテ非常ニマダ
惡イノデス、機械化ノ程度モ進ンデハ參リ
マシタケレドモ、資材其ノ他ノ關係デ遺憾
ナ點ガアリマス、炭坑ノ內部ノ狀況モ左程
良イ譯デハゴザイマセヌガ、機械化竝ニ又
坑夫サンノ氣持ヲ一層勵マシテヤレバ、相
當能率ノ增進ガ期待出來得ルモノト思ヒマ
ス、尙ホ將來ノ開發ニ付キマシテハ、滿洲
及ビ北支ノ石炭モ相當將來ハ考ヘナケレバ
ナリマセヌノデ、遺憾ナイヤウニ目下〓究
致シテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=72
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073・川俣清音
○川俣委員 私ハ此ノ點ヲモツト具體的ニ
御尋ネヲシタイ、一體鑛山ノ坑夫ノ補給ヲ
ドウ云フ點ニ置イテ居ルノカト云フ點デア
リマス、一寸見ルト企業合同ニ依ル轉失業
者ヲソチラニ向ケルカノ如ク見エル、ナゼ
カト云フト最近出マシタ總動員法ノ勞務管
理ノ點カラ見ルト、農村ノ方ノ勞働者ノ移
動ニ付キマシテハ、府縣及ビ町村ノ農會ガ
之ニ携ツテ居ル、隨テ部分的ナ町村農會ガ
ヤハリ特定地域ノ特定農村ノ保護ニ當ラウ
ト云フノハ、是ハ私ハ自然ノ勢ヒデアルト
思フ、自分ノ村、自分ノ部落、自分ノ〓土
ノ農業生產力ヲ上ゲルト云フコトニ全力ヲ
注グト云フコトハ、是ハ私ハ氣持トジテ當
然デアルト思フ、サウ云フ所ニ勞務管理ヲ
置キマスレバ、結果ハヤハリソコニ落着イ
テ、炭坑ノ坑夫ノ補給地デアル所ノ農村カ
ラ勞働力ガ〓ラナイト致シマスレバ、私ハ
方法ガナカラウト思フ、中小商工業者ノ轉
失業者ヲ炭坑ニ持ツテ行クト云フガ如キ
ハ私ハ殆ド不可能デアルト思フ、然ラバ
ヤハリ農村ヨリ之ヲ補給スルノ外ハナイ、
其ノ農村ノ補給ノ途ヲ止メラレルヤウナ傾
向ガアルニ拘ラズ、其ノ補給ノ途ニ付テ他
ニ考ヘテ居ラレルカドウカト云フ點ナンデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=73
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074・岸信介
○岸國務大臣 將來永イ眼ヲ以テ鑛山又
ハ一般鑛業ノ勞働力ト云フモノノ補給ヲドウ
云フ風ニ考ヘルカト云フ問題ハ、日本ノ前
途カラ申シマシテ、東亞共榮圈ノ建設ノ上
カラ非常ニ大キナ問題ノ一ツデアルト思ヒ
マス、事柄ハ結局將來ノ鑛業立地ノ問題ヲ、
勞働力ノ補給ノ點ヲ重要ナ項目トシテ考慮
シテ立地ガ決メラレナケレバナルマイト思
ヒマス、何レニシマシテモ、國內ノ勞働力
ト云フモノハ今御話ノ通リ、一面農村ニ於
ケルモノニ付キマシテハ、御指摘ノヤウナ
氣持モアリマスシ、又必要ナル食糧增產ヲ
確保セネバナラヌ現實ノ必要モアリマス、
隨テ、鑛業鑛山方面ニ所要ノ非常ニ多數ノ勞
務者ヲ、農村ノ方面デ得ラレルト云フコト
モ中々難カシイト思ハレマス、又中小商工
業者ノ轉廢業スル者ヲ以テ之ニ振向ケルト
云フ事柄モ、御指摘ノ如ク中々容易ナ問題デ
ハナイト思ヒマス、併シ目前ノ事態-來
工業立地ノ問題ヲ考ヘテ色々工場ノ分布ヲ
考ヘルト云フ大キナ計畫ハ別トシテ、一兎ニ
角目前ノ問題トシテドウスルカト云フコト
ニナリマスト、結局國內カラ、殊ニ農村ノ
方カラモ、不自由デハアリマセウガ或ル程
度ノ補給ヲ受ケ、又中小商工業方面ノ轉廢
業者ノ、非常ニ多數ノ者ガコツチニ行クト云
フコトモ困難デアリマセウケレドモ、其
ノ一部ヲ斯ウ云フ方面ニ振向ケルト云フ
コトモ亦考ヘナケレバナラヌ、又相當大
キナ補給源トシテハ、半島民ヲ入レテ來ル
ト云フ事柄モ現在行ハレテ居リマスシ、將
來ニ於キマシテモヤハリ是ハ大キナ補給源
トシテ考ヘラルベキモノデアルト思ヒマ
ス、併シ是等ヲ考ヘテ見マシテモ、將來ノ
石炭增產又金屬增產ノ爲ニ必要ナ勞働力ト
云フモノガソレデ十分デアルカドウカト云
フ點ハ、中々ソレデ十分ダトモ申上ゲ兼
ネルノデアリマス、ドウシテモ內ニ於テ是
等ノ鑛山ニ於ケル能率ノ增進、隨テ鑛山ノ
機械化等ノ方策モ併セ講ジテ、山ニ於テ能
率ヲ落サズニ、而モ勞働力ヲ多量ニ要シナ
イト云フヤウナ事柄ニ付キマシテモ考慮シ
テ行カナイト中々補給ガ十分ニ行クト云
フ確乎タル目標ガ立チ得ナイ現狀ニ於キマ
シテハ、兩方ヲ併セ行フ外ニハナカラウト
思ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=74
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075・川俣清音
○川俣委員 ソレハ其ノ御答辯デ滿足ヲ致
シマス、今度ハ具體的鑛業開發ノ內容ニ亙
ツテ御尋ネ致シタイト思ヒマス、鑛發ノ使
命ハ所謂休眠鑛區ヲシテ活發ナル活動ヲセ
シメ、鑛物ノ採取ニ當ラシメタイト云フノ
デアリマスガ、帝國鑛發ガ投資シテ居リマス
四社-昭和鑛業ヲ入レテ「マンガン」ヲ拔キ
マスレバ四社アリマスガ、此ノ四社ノ鑛區ハ
相當豐富ナ鑛區ヲ設定シテ居ル筈デアリマ
ス、是等ハ餘リ活動致シテ居ラナイヤウニ
私共ハ見受ケルノデアリマス、餘リ活動シ
テ居ナイト云フヨリモ、殆ド九割以上ハ休
眠狀態デアルト思ツテ居リマス、サウシマ
スレバ休眠鑛區ノ開發ガ使命デアルニ拘ラ
ズ、持ツテ居リマス自分ノモノト、投資シ
テ居リマス會社自體ニ休眠鑛區ヲ持ツテ居
ルト云フ矛盾ガアルノヂヤナイカト思ヒマ
スガ、之ニ對シテ如何ニ御考ヘニナツテ居
リマスルカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=75
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076・津田廣
○津田政府委員 只今御話ノ帝國鑛發ガ投
資ナリ融資ヲシテ居リマスル會社ハ、御手、許ニ
差上ゲテアリマスル帝國鑛業開發株式會社ノ
現況ト云フ資料ノ中ニ、如何ナル山ヲ經營
シ、如何ナル山ニ融資シテ居ルカト云フコ
トヲ書イタモノヲ一應差上ゲテアル譯デゴ
ザイマス、其ノ投資サレテ居リマスル會社
ハ昭和鑛業外四社ニ相成ツテ居ル譯デアリ
マス、其ノ中デ昭和鑛業アタリガ休眠鑛區
ヲ持ツテ居ルヂヤナイカト云フ御尋ネダラ
ウト思ヒマス、所ガ此ノ昭和鑛業自體ニ致
シマシテモ、御承知ノヤウニ鑛發ガ此ノ經
營ニ參加致シマシテ其ノ內容ノ改善ヲ圖ル
ト云フコトニ決マリマシテカラマダ日ガ淺
イノデアリマシテ、漸次昭和鑛業會社自體
ニ付テモ事業ノ內容ガ充實致シマスルヤウ
ニ、鑛發ト致シマシテモ大イニ力ヲ盡シテ
居ル譯デゴザイマス、隨テ今申上ゲマシタ
ヤウニマダ日ガ淺イ關係デ、中ニハ休眠鑛
區ト云ツタヤウナモノガ依然トシテ殘ツテ
居ルト云フヤウナコトモアル譯デゴザイマ
スガ、今後此ノ鑛發ノ增資ト云フコトト關
聯致シマシテ、將來ハ資金ノ充實致シマス
ニ連レテ、鑛發ト致シマシテモ此ノ投資會
社ノ中ニ有望ナ鑛區デ休眠鑛區ガアルト云
フヤウナコトノナイヤウニ指導シテ行キタ
イト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=76
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077・川俣清音
○川俣委員 當然ナコトダト思フノデス、
ソレニハ昭和鑛業ト云フモノハ相當大キナ
鑛區ヲ擁シテ居ルガ、其ノ調査ト云フモノ
ガ必ズシモ十分デヤナイト私ハ思フノデ
ス、ソコデ之ニ投資シタコトガ良イカ惡イ
カト云フコトヲ此處デ議論スルノデハナク
シテ、是等ノ投資致シテ居ル所ノ昭和鑛業
ノ鑛區自體ヲ調査致スニ致シマシテモ、現
在ノヤウナ規模ニ於テハ技術員ヲ得ラレナ
イ鑛發ノ機構ヲ增大致シマシテモ技術員
ヲ十分得ラレナイデハナカラウカ、得ラレ
ナイ結果、投資致シテ居ル所ノ昭和鑛業ナ
ドニ付テモ休眠鑛區ヲ持ツテ居ルヤウナ狀
態ニナツテ居ルノダ、斯ウ思ハレル、ソレ
トモウ一ツハ今度新シイ鑛業法ニ基イテ試
掘權ガ四年デ消滅致スノデアリマスガ、四
年デ消滅スルヤウナ鑛區ヲ澤山持ツテ居ル
昭和鑛業ニ、今是ダケ多クヲ投資致シテ居ル
ノデアリマス、其ノ可否ハ別ト致シマシテ、
政府ノ監督。致シテ居ル所ノ帝國鑛發ガ、
方ニ於テ其ノ監督法規デアル所ノ鑛業法ノ
改正ノ趣旨ニ副ハナイデ、ソレヲ棄テナケ
レバナラナイト云フヤウナコトニナリマス
ルト、資產ノ上ニモ非常ナ影響ヲ來スト思フ
ノデス、其ノ影響ヲ來サナイ爲ニハ、相當
ナ技術員ヲ豐富ニ保有シナケレバナラナイ
ト云フコトニナツテ來ルガ、ソレガ中々得
難イコトモアルノヂヤナイカ、斯ウ云フ點
ニ付テハ何カ考ヘテ居リマスカドウカ、其
ノ點ヲ御尋ネ致シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=77
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078・津田廣
○津田政府委員 帝國鑛業開發會社ト致シ
マシテモ、只今御話ノヤウニ技術員ガ非常
ニ不足シテ居ルト云フコトハ確カニ其ノ通
リデゴザイマスガ、今後只今御審議願ツテ
居リマスヤウナ增資ガ出來ルコトニナリマ
スルト共ニ、各鑛山ノ中ニ於キマシテ帝國
鑛發ニ委任經營ヲシテ貰フト云フヤウナ山
ガ相當ニ出テ參ル譯デアリマス、ソレ等ノ
受託經營ヲ致スコトニナリマシタ鑛山ヲ經
營シテ居リマス會社ノ技術員ヲ、相當各鑛
山ノ間ニ融通シテ行クト云ツタヤウナコト
デ、鑛發ガ力ヲ入レテ經營シテ行カナケレ
バナラヌト云フ山ノ方ニハ相當優秀ナ技術
員モ集メ得ルノデハナイカ、斯ウ考ヘテ居
ル譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=78
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079・川俣清音
○川俣委員 此ノ鑛發ノ最初出來マシタノ
ハ、御承知ノヤウニ外國鑛石ノ輸入ガ出來
ナイノデ、犧牲的ニ國內鑛山ノ開發ニ當ル
ト云フノガ大體此ノ鑛發ノ出來マシタ所以
デアリマス、外國鑛石ガ入ラナイ結果、其
ノ損失ヲ此處デ何トカシヨウト云フコトガ
一ツノ目的デアリマスガ、今日南ノ方ノ問題
ガ開ケテ參リマスト、其ノ考ヘ方ヲ變ヘテ、
鑛發ヲ具體的ニソレニ參加セジメテ、ソチ
ラカラ上ツテ來ルモノヲ以テ內地ノ鑛業開
發ニ向ケルト云フヤウナ考ヘ方ガ出來ルノ
デハナイカト思ヒマスガ、其ノ考ヘ方ニ付
テノ御所見ヲ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=79
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080・岸信介
○岸國務大臣 南方諸地域ノ鑛業開發ノ問
題ニ關シマシテハ、先達テ豫算總會デ企畫
院總裁ヨリ政府ノ樹テテ居リマス根本ノ方
針等ニ付テ申述ベラレテ居リマスガ、現在
ノ所ニ於キマシテハ、兎ニ角一面マダ作戰
ガ行ハレテ居ル狀況デアリマシテ、總テ其
ノ作戰ニ對應シテ臨時的ナ措置ガ講ゼラレ
テ居ルニ過ギナイノデアリマス、根本的ノ
開發方針ト云フモノハ今後考ヘテ行カナケ
レバナラヌト思ハレルノデアリマス、而シ
テ御承知ノ通リ鑛山ニ付キマシテハ、鑛山
統制會ガ設立ヲ見テ居リマシテ、此ノ統制
會ノ使命ニ鑑ミマシテ、南洋方面ニ於ケル
將來ノ鑛山開發ノ根本策ニ付テ、十十分鑛山
統制會ノ意見モ聽キ、又其ノ實際ノ責任ニ
付キマシテモ、鑛山統制會ニ相當ノ責任ヲ取
ツテ貰ツテ、是ガ開發ヲ進メテ行クベキモノ
ダト考ヘマス、而シテ鑛發自體ノ國策會社
タル使命ニ鑑ミマシテ-勿論之ヲ設立致
シマシタ時ニ、又今日ニ於キマシテ南方方面ニ
進出スルト云フコトヲ其ノ目的トシテ出來
タ譯デモナケレバ、今日存在シテ居ル譯デ
モアリマセヌケレドモ、其ノ鑛發ノ國策會
社タル使命ニ鑑ミマシテ、今後南方諸地域
ノ鑛業開發ニ關聯シテ、帝國鑛發ノ活動分野ト
云フモノモ自ラ事態ニ應ジテ擴ガツテ行カナ
ケレバナラヌ問題ダト考ヘテ居リマス、ソ
レヲ如何ナル形式ニ於テ、ドウ云フ仕組デ
ヤルカト云フ問題ニ關シマシテハ、モウ少シ
各方面ノ意見モ聽キ、政府ノ確乎タル方針
ヲ決メタ上デ其ノ活動ノ方式ト云フモノヲ
決定致シテ參リタイ、斯ウ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=80
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081・川俣清音
○川俣委員 農林省關係其ノ他ヲ殘シマシ
テ、今日ノ最後ノ一點トシテ申上ゲタイト
思ヒマスガ、私ハ帝國興發ガ相當熱心ニ鑛
山ノ開發ニ當ツテ居ラレルト云フコトハ認
メルノデアリマスケレドモ、此ノ會社ノ狀
態ガ、重役ガ合議制ダト云フヤウナコトデ
ハドウモ餘リ活潑ニ會社ガ運營出來ナイ
ヤウニ見受ケラレルノデアリマス、機構ヲ
改革致シマシテ、十分政府ノ意ノアル所ヲ
實行セシメルヤウナ機構ニ變ヘテ行カナケ
レバナラヌデハナイカ、折角玆ニ新シイ
改正案ヲ出サレマシテモ、其ノ運用宜シキ
ヲ得ナケレバ所期ノ目的ガ達成サレナイト
思フノデアリマス、其ノ任ニ當ツテ居ラレ
ル人ハ相當ニ優秀ナ人モ當ツテ居ラレマス
ノデ、私ハ露骨ニ言フナラバ出來ルダケ責
任者ニハ責任ヲ持ツテ處理サセル方ガ宜シ
イト思フ、唯成立チノ上カラ、橫カラ入ツ
テ來タヤウナ形デ、其ノ重役ニ掣肘ヲ受ケ
ナケレバナラナイヤウデアリマスレバ、責
任ノ存在モ私ハ十分デナイト思フ、ヤハリ
思フ存分社長ナラ社長或ハ社長副社長ト共
同デ責任ヲ負ハセテ惡ケレバドン〓〓迭ヘ
テ行ク、色々ナ關係デ出來タ重役ニ何時モ
掣肘ヲ受ケテ居リマシテハ責任ノ存在ガナ
イ、若シモ責任ヲ負ハナイヤウナ社長デア
リマスナラバ迭ヘタ方ガ宜シイ、信任サレ
ルナラバ其ノ人ノ手腕ニ期待サレタ方ガ宜
イ、私ハ斯ウ思フノデアリマスガ、此ノ點ニ
關シマシテ御答辯ヲ願ヒマス、発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=81
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082・岸信介
○岸國務大臣 御話ノ如ク一般國策會社ノ
運用ト致シマシテ私ノ現在執ツテ居リマス
方針ハ社長其ノ他中心ニナル所ニ最モ信賴
スベキ經營能力ノシツカリシタ人ヲ据ヱ
テ、其ノ人ニ全權ヲ委シマシテ、サウシテ
思フ存分働イテ貰フト云フ事柄ガ、國策會
社ノ能力ヲ十分ニ發揮スル最モ捷經ダト考
ヘテ居リマス、隨ヒマシテ國策會社ノ首腦
部ノ人事ニ付キマシテハ、特ニ意ヲ用ヒテ
居ル譯デアリマス、今後ノ鑛發ノ運用ニ付
キマシテモ社長ヲ信賴シテ、サウシテ十分
其ノ手腕ヲ揮ヒ得ルヤウニ指導シテ、色々
ナ事柄ニ干涉スルトカ、或ハ役員ノ人事等
ニ付キマシテモ、色々ナ關係カラ、十分ニ
能力ヲ發揮シテ社長トシテ信賴シテ社務ヲ
遂行スルノニ適當デナイト云フヤウナ重役
陣ヲ、他ノ方面カラ押付ケルト云フヤウナ
事柄ニ付テハ、特ニサウ云ツタコトノナイ
ヤウニ運用シテ參リタイ、斯ウ考ヘテ居リ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=82
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083・川俣清音
○川俣委員 ソレデハ私ハ今日ハ是デ終リ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=83
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084・上田孝吉
○上田委員長 ソレデハ明日ハ引續イテ午
前中國策會社三案ノ質問ヲ續ケテ行キタイ
ト思ヒマス、ソレデ大體質問ガ盡キレバ、
明日ノ午後カラ更生金庫ト重要物資ノ案ノ
質問ニ入ルコトニシタイト思ヒマス、本日
ハ是デ散會シマシテ、明日午前十時ヨリ委
員會ヲ開キマス
午後四時四十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911037X00219420126&spkNum=84
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