1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
會議
昭和十七年一月三十日(金曜日)午前十時二十六分開議
出席委員左の如し
委員長 紫安新九郎君
理事 中井一夫君 理事 中村梅吉君
理事 星島二郎君 理事 塚本重藏君
理事 西尾末廣君
淺井茂猪君 池田清秋君
加藤鐐五郎君 椎尾辨匡君
清水留三郎君 田中邦治君
武知勇記君 野方次郎君
福田悌夫君 藤生安太郎君
星一君 山田清君
山田順策君 渡邊健君
松尾孝之君 三宅正一君
永江一夫君 林平馬君
一月二十九日簡易生命保險法中改正法律案(政府提出、貴族院送付)の審査を本委員に付託せられたり
出席國務大臣左の如し
厚生大臣 小泉親彦君
出席政府委員左の如し
陸軍省兵務局長 田中隆吉君
厚生次官 武井群嗣君
厚生省人口局長 中村敬之進君
厚生省衞生局長 加藤於莵丸君
厚生省豫防局長 高野六郎君
厚生省生活局長 川村秀文君
厚生省勞働局長 持永義夫君
厚生省職業局長 塩原時三郎君
厚生書記官 平井章君
厚生書記官 床次徳二君
厚生書記官 吉富滋君
厚生書記官 高橋敏雄君
保險院長官 樋貝詮三君
保險院總務局長 歌田千勝君
保險院社會保險局長 木村清司君
保險院簡易保險局長 前田穰君
委員長の許可を得て出席したる者左の如し
文部書記官 石井通則君
本日の會議に上りたる議案左の如し
國民體力法中改正法律案(政府提出)
國民醫療法案(政府提出)
健康保險法中改正法律案(政府提出)
國民健康保險法中改正法律案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=0
-
001・西尾末廣
○西尾委員長代理 是ヨリ開會致シマス、
委員長所用ガアリマスノデ、私ガ代リマシ
テ委員長ヲ勤メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=1
-
002・淺井茂猪
○淺井委員 私ハ時間ヲ節約スル意味ニ於
キマシテ、質問ノ要點ヲ政府當局ニ提出致
シマスカラ、成ベク速ニ答辯書ヲ委員長ノ
御手許ニ御提出ヲ願ヒタイト思ヒマス、質
問要點竝ニ答辯書ハ之ヲ速記錄ニ揭載方ヲ
委員長ニ於テ適當ニ御取計ラヒヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=2
-
003・西尾末廣
○西尾委員長代理 承知致シマシタ、御希
望ノヤウニ致シマス-塚本重藏君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=3
-
004・塚本重藏
○塚本(重)委員 大臣ガマグ御見エニナリマ
セヌカラ、大臣ニ對シマスル質問ヲ後ヘ廻
ハシマシテ、他ノ方カラ質問ヲ致シマス
第一番ニ家族手當ノ問題ニ付テ御伺ヒ致
シマスガ、旣ニ豫算總會等ニ於キマシテモ
言明ヲ得テ居ルノデアリマスカラ、深ク問
フ必要モナイト思ヒマスルケレドモ、今ノ
時局ニ於キマシテハ、勞働者ノ活動ニ俟ツ
コトガ非常ニ多イノデアリマシテ、此ノ大
東亞戰爭ヲ勝チ拔ク爲ニ、高度國防國家ヲ
完成スル爲ニ、彌ガ上ニモ生產力ノ增强ヲ
圖ラナケレバナラヌコトハ言フマデモナイ
ノデアリマスス、而モ資源ニ非常ナ制限ヲ
受ケテ居リ、物質的ニモ、更ニ又人的資源
ノ上ニ於テモ十分デナイ今日ニ於キマシテ
ハ一層ソレヲ痛感スルノデアリマス、ソ
コデ勞働者ノ生產性ヲ高メルト云フコトニ
厚生省ハ一段ノ御努力ヲ拂ハレナケレバナ
ラヌト思フノデアリマス、家族手當ノ問題
ニ付テ考ヘテ見マスト、今度豫算ノ上ニ官吏
ノ家族手當ト云フモノガ非常ニ增額セラレ、
且ツ其ノ適用ヲ受ケマスル範圍モ非常ニ廣
クナツタヤウデアリマス、聞ク所ニ依リマ
スト、勅任待遇者ヲ除イテ四千圓マデノ俸
給ヲ取ル人ニハ漏レナク家族手當ノ支給ガ
アルト云フコトデアリマス、ソレガ爲ニ今
度ノ議會ニ於キマシテモ、臨算總額一億二
百九十一万餘圓ト云フモノガ計上セラレテ
居ルノデアリマス、所ガ斯ウ云フ官公吏ニ
對シマスル家族手當ト云フモノガ漏レナク
行ハレルコトハ洵ニ結構デアリマスガ、之
ヲ民間勞働者ニマデ及ボスト云フコトニ付
テ、政府ハドウ云フ風ニ考ヘテ居ラレルノ
デアリマセウカ、一方ニ賃金統制令ニ依ツテ
其ノ收入ニ非常ナ制約ヲ受ケテ居リマス、
勞働ノ時間ニ付テモ制限ヲ受ケテ居ルコト
デアリマスシ、勞働者ノ今日ノ所得ト云フ
モノハ一定限度ニ限ラレテ居ルノデアリマ
ス、而モ一面物價ト云フモノハ、低物價政
策デ政府ノ非常ナル努力ニモ拘ラズ、ヂリ
ヂリト物價ハ高マツテ來テ居ルノデアリマ
ス、斯樣ニ致シマシテ勞働者ノ生活ト云フ
モノハ非常ニ窮屈ニナツテ居ルト云フコト
ハ御認メ下サツテ居ルト思フノデアリマス、
勿論私ハ到ル處デ言ツテ居ルノデアリマ
スガ、戰爭時下ニ於テ低物價政策ヲ堅持シ
ナケレバナラヌコトハ、是ハ言フマデモナ
イノデアリマス、低物價政策ヲ堅持シテ行
キマス爲ニ、一番大キナ犠牲ヲ拂ハナケレ
バナラヌ者ハ農民ト勞働者ト俸給生活者デ
アル、斯ウ云フコトヲ言ツテ參リマシタ、
農民ガ一方ノ堤防トナリ、俸給生活者、勞
働者ガ一方ノ堤防トナツテ、サウシテ此ノ
低物價政策ノ流レガ崩レナイヤウニ、兩方
ノ堤防トナツテ强固ニ低物價政策ヲ維持シ
テ行カナケレバナラヌト云フコトヲ考ヘテ
居ルノデアリマス、併ジナガラ先年農民ニ
對シマシテハ米一石ニ對スル五圓ノ生產奬
勵金ト云フモノガ出サレ、今又官公吏ニ對
シマシテハ家族手當ト云フモノガ相當高額
ニ、而モ相當吾々ノ必要デナイト思ハレル
高イ俸給ヲ取ツテ居ル分野ニマデ是ガ支給
セラレルト云フコトニナツテ參ツタノデア
リマスガ、殘サレテ居ル者ハ所謂工場、鑛
山ニ働イテ居ル勞務者デアリマス、勿論政
府ニ於キマシテモサウ云フ工場、鑛山ニ於
テ家族手當ヲ支給スルコトヲ慫慂セラレテ
居ルヤウデアリマスルケレドモ、最近神奈
川縣下デ縣當局ガ調査シタモノガ發表サレ
テ居リマスガ、ソレニ依リマスト神奈川縣
下ノ工場ニ於キマシテ、極メテ少額ノ家族
手當ヲ出シテ居ル工場ヲ調ベテ見テモ、全
縣下ノ工場ノ三分ノ一ニ達シテ居ラナイト
云フコトガ、調査ノ結果トシテ報告セラレ
テ居リマス、之ヲ以テ知ルコトガ出來ルヤ
ウニ、民間會社工場ニ於キマスル家族手當
支給ノ狀況ト云フモノハ極メテ寥々タルモ
ノデアリマス、又其ノ程度ガ非常ニ低イノ
デアリマス、是デハ所謂均衡ヲ失スルコト
ニナリハシナイカト思フノデアリマス、是
等ニ付テ賃金制度ト併セテドウ云フ風ニ御
考ヘニナツテ居ルノデアリマセウカ、從來
ノ所謂通リ一遍ノ慫慂程度デ終ラレルノデ
アリマスカ、全會社工場ニ及ブヤウニ强力
ニ何等カノ施策ガ施サレルノデアルカ、出
來レバ此ノ制度ヲ全體ニ及ブヤウニシテ貰
ヒタイト考ヘルノデアリマスガ、サウ云フ
コトガ事實上出來ルデアリマセウカ、御所
見ヲ御伺ヒシタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=4
-
005・武井群嗣
○武井(群)政府委員 勞務者ノ重要性ニ付
キマシテハ御話ノ通リト存ジマス、今日ノ
事態ニ於キマシテハ旣ニ前線銃後ト云フヤ
ウナ區別ハナイノデアリマシテ、所謂銃後
ノ國民ト云フノハ、旣ニ今日ニ於キマシテ
ハ第二線ノ豫備的兵力トモ言フベキモノト
存ジマス、而シテ只今御話ノ產業ニ從事ス
ル人達ハ、其ノ第二線兵力ノ中デモ先登ニ
立ツテ働クベキ產業戰士デアル譯デアリマ
ス、隨テ從來モ官公吏ニ對スル家族手當ノ
制度ニ準ジマシテ、是等ノ人達ニモ家族手
當ヲ支給シ得ル途ヲ講ジ、通牒等ヲ發シテ
之ヲ勸メテ居ツタコトハ御承知ノ通リデア
リマスガ、今囘政府ニ於キマシテ官吏、公
吏、其ノ他官業從業員ニ對シテ、家族手當ヲ
支給スル範圍ヲ廣メルコトト相成リマスニ
付キマシテハ、是ガ決定ノ曉ニ於キマシテ
ハ同樣ニ工場、鑛山、其ノ他ニ働イテ居
ル所ノ是等貴重ナル勞務者ニ對シテモ、無
論家族手當ノ支給ニ關シテ適當ノ處置ヲ講
ズル必要ガアルト存ジテ居リマス、會社經
理統制令、賃金統制令等ノ定メモアルコト
デアリマスガ、是ガ運用ニ付キマシテハ十
分政府ノ方針ト睨ミ合セマシテ、從來トモ
スレバ今御話ノヤウニ全般ニ行渡ラナイト
云フ嫌ヒモナイ譯デハナイコトデアリマ
スノデ、能ク此ノ趣旨ノ徹底ヲスルヤウニ
致シタイト思ヒマス、唯官吏公吏ト違ヒマ
シテ、會社工場等ハソレ〓〓支給ノ方法等
ニ於テモ違フ點モアルヤウデアリマスシ、
福利施設等ニ於テモ一ナラザル點ガアリマ
スノデ、官公吏ト同ジヤウニ一律ニ之ヲ强
制スルト云フ譯ニハ參リ兼ネルト存ジマス
ケレドモ、能ク其ノ實情ニ應ジマシテ、政
府ノ方針ガ隅々マデ徹底スルヤウニ善處致
シタイト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=5
-
006・塚本重藏
○塚本(重)委員 政府トシテハ出來ルダケ
是ガ全般的ニ普及スルコトヲ御希望ニナツ
テ居ルコトハ、是ハモウ問フマデモナイコ
トデアリマスケレドモ、偖テサウハ言ヒナ
ガラ、是マデト雖モ放任セラレタ譯デハナ
〃、縣當局ヲ通ジテ色々ト慫慂ニ努メラレ
タコトヲ承知シテ居ルノデアリマス、ソレ
ニモ拘ラズ普及ノ狀況ト云フモノハ〓ネ知
ルガ如クデアリマス、此ノ上之ヲ本當ニ希
望スルガ如キ狀態ニマデ普及セシメルト云
フコトハ非常ナル努力ヲ要スルノデハナイ
カ、之ニハ何カ格別ナ處置ヲ講ゼラレル必(
要ガアリハシナイカ、從來ノ通リ一遍ノ通
牒等ニ依ル慫慂ナドデハ、迚モ是ガ普及ト
云フコトハ困難デハナカラウカ、殊ニ官公
吏ノ家族手當ノ高額ニナツテ來タノト對比
シマシテ、一層困難ナコトニナルノデハナ
イカト思フノデアリマス、ソレ等ニ付テ特
ニ斯ウ云フ方法ヲ考ヘテ居ルノダ、斯ウモス
ル考ヘデアルト云フヤウナ、ソレナラバ效
果ガ現ハレルダラウト云フヤウニ考ヘラレ
ルヤウナ、何カ具體的ナ對策ハアリマセヌ
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=6
-
007・武井群嗣
○武井(群)政府委員 御趣旨御尤モト存ジ
マスガ、政府ノ方針ガ現ハレマシタノハツ
イ最近ノコトデアリマシテ、此ノ成立ノ曉
ニ於キマシテ工場、事業場等ニ對シテ之ヲ
勸奬スルコトニ相成リマスノデ、色々ト從
來ノ實績ニ徵シマシテ、ヤリ方ニ付テノ方
法等〓究ハ致シテ居リマスガ、只今御尋ネ
ノヤウニ斯ウ云フ方法ヲ執ルト云フコトヲ
具體的ニ此ノ席上デ申上ゲルマデニハ參ツ
テ居ラヌコトヲ御諒承願ヒタイノデアリマ
ス、御趣旨ノ點ニ付キマシテハ十分ニ諒承
致シマシテ遺憾ナキヲ期シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=7
-
008・塚本重藏
○塚本(重)委員 是非之ニハ農民、官公吏
等ト睨ミ合セデ不均衡ノ狀態ガ生ジナイヤ
ウニ、一般ノ努力ヲ御願ヒシテ置ク次第デ
アリマス、サウ云フ風ニ御願ヒハシマスル
ケレドモ、私ハヤハリ中々政府ノ希望スル
ガ如ク、吾々ノ念願スルガ如ク、此ノ制度
ガ全般ニ行渡ルコトヲ期待スルコトハ出來
ナイノヂヤナイカト思ヒマス、ソコデ次ニ
考ヘラルル問題ハ、ヤハリ今ノ資金、統制令、
賃金制度ニ付テ厚生省ガ今一度檢討シ直ス
時期ニナツテ居ルノデハナイカト思フノデ
アリマス、勿論是ハ昨年ノ十月カラ所謂總
額賃金制ト云フモノニ賃金制度ヲ改メラレ
マシテ、幾ラカ緩和シテ參ツタノデアリマ
ス、併シナガラ總額賃金制ニセラレマシテ、
其ノ範圍ニ於テ事業主ニ相當ノ自由ヲ許サ
レルヤウニナリマシタケレドモ、既ニ總額
制ガ布カレル以前ニ於テ、サウ云フ制度ガ
布カレマシテモ、其ノ工場ノ事業場ノ內部
ニ於テ彼此レ差繰リヲシ合ウテ、サウシテ
賃金ノ規正ヲ圖リナガラ全體ノ賃金ヲ高メ
テ行クト云フコトハ出來ナイ狀態ニナツテ
居リマシタ、幾ラ其ノ工場內部ニ於テ差繰
合ヒヲセイト言ツテモ、一旦決メラレテ居
ル定額給ト云フモノヲ減額スルコトハ、是
ハ事實上ノ問題トシテ出來ナイコトデアリ
マス、而モ總額ノ上ニ於テハ從來ノ實績カ
ラ見テ既ニ一定ノ限度ガアル、ソコデ低イ
給料ノ人ヲ上ノ方ニ引上ゲテ行クト云フコ
トノ餘地ガ旣ニナクナツテ居ツタト思ハレ
ル、折角サウ云フ制度ガ布カレマシタケレ
ドモ、結局ソレニ依ツテハドウニモナラナ
イト云フヤウナ事態ニ立至ツテ居ルト思フ
ノデアリマス、前ニモ申シマスルヤウニ、
私ハ彌ガ上ニモ今日勞務者ノ生產性ヲ向上
セシメナケレバナラナイ時デアルト思フ、
然ルニモ拘ラズ-勿論今日ノ時局ヲ認識
シテ勞働者ハ能ク勤勉ニ働イテ居リマス、
殊ニ大東亞戰爭勃發致シマシタ後ニ於ケル
勞働者ノ氣分ハ一變シテ居ルト云フコトヲ
私ハ見テ居ルノデアリマス、非常ニ私モ喜ン
デハ居リマス、併シ此ノ感激ヲ何時マデモ
續ケサシテ行クト云フコトノ爲ニハ、ソレ
等ノ人々ノ所謂生活上ニ付テモ、何等不安ノ
ナイヤウニシテヤラナケレバナラヌ、ソコ
デ家族手當ト云フ問題モ起ツテ來ルノデア
リマスガ、ソレニ依ツテ民間會社、工場ノ
其ノ問題ヲ緩和スルコトモ中々容易デハナ
イト云フコトニナルト、玆ニモウ一度賃金
制度ト云フモノヲ私ハ考へ直ス必要ガアルノ
デハナイカ、勞働者ノ生產性ヲ高メルト云フ
コトノ爲ニハ、一部ヤハリ出來高拂ヒト申
シマスカ、或ハ奬勵金制度ト申シマスカ、
其ノ能率ヲ上ゲタ者ニハ上ゲタ能率ニ應
ジテ然ルベキ收入ガ殖エテ來ルト云フ制度
ヲ執ラレルト云フコトガ、我ガ國ノ現下ノ
情勢ニ於テ最モ必要デハナイカト思ヒマス、
勿論三十年間工場生活ヲシテ參リマシタ私
ト致シマシテハ、所謂自由主義的ナ個人ノ
競爭ニ任シテ居ル所ノ請負制度ハ弊害が多
イト思ヒマスノデ、サウ云フコトヲ希望ス
ル譯デハアリマセヌケレドモ、二十人ナリ
三十人ノ聯合制度ニ依ル請負、而モソレハ
嚴密ナル意味ノ請負デナク、奬勵ヲ加味シ
タ請負制度、サウ云フヤウナモノデ個人主
義ノ弊害ヲ除去シマシタ所ノ、全體一丸ト
ナツテ能率ノ增進ヲ圖リ得ルヤウナ新シイ
賃金制度ガ見出サレテ、ソレガ厚生省ノ賃
金委員會ニ於テ採用セラルル必要ガアルノ
デハナイカ、何カソコニ一生懸命働ケバ
働イタダケノ甲斐ハアルノダト云フ新シイ
希望ヲ持タセル、勿論大東亞戰爭ノ此ノ感
激ニ依ツテ働イテ居ルノデアリマスルガ、
ソレダケニ期待スルコトハ出來ナイ、精
神ダケニ期待スルコトハ前金デハナイト思
フノデアリマス、精神方面ニ於テ感激ヲ覺
エサセルト同時ニ、ヤハリ物質上ニ於テモ
時局ノ諸般ノ情勢ト對應シテ不安ナカラシ
ムルヤウニ政策ヲ執ツテ行カレルコトガ、
此ノ生產擴充、絕對至上命令デアル此ノ生
產增强ノ問題ニ付テ必要デハナイカ、今ノ
ヤウナ所謂移動制限令ガアリ、勞働者ハ動
クコトガ出來ナイ、デアリマスカラ勢ヒ其
處デ勞働條件ノ劣惡ト云フ言葉ハ語弊ガア
ルカモ知レマセヌケレドモ、十分デナイ色
色ナ條件ニ甘ンジテ働カナケレバナラヌト
云フ狀態ニ置カレテ居ルノデアリマス、サ
ウ云フヤウナコトモ能ク斟酌セラレテ、今
一段ト是ハ何カ新シイ工夫ヲ運ラシテ戴カ
ナケレバ、本當ニ勞働者ノ持ツテ居ル其ノ
生產性ト云フモノヲ思フ存分ニ發揮スルコ
トガ、今日ノ賃金制度デハ不可能デハナイ
カ、不可能ニアラズトシテモ非常ナ障碍ト
ナツテ居ル點ガ多イデハナイカト云フコト
ヲ痛感シテ居ルノデアリマスガ、之ニ對ス
ル御所見ヲ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=8
-
009・武井群嗣
○武井(群)政府委員 宣戰ノ大詔渙潑以
來、特ニ產業戰士ガ身ヲ挺シテ報國ノ誠ヲ
現シテ居ラレル事實ニ付キマシテハ、御話
ノ點モアリ、又私共モ直接間接ニ見聞シテ
居ル所多々アルノデアリマシテ、深ク感謝
シテ居ル次第デアリマス、仰セノ通リ斯ク
ノ如キコトハ洵ニ麗ハシイコトデアリマス
ガ、之ヲ唯其ノ儘ニシテ置イテ感激ノミニ
留メテ之ニ報ユル所ガナケレバ、必ズ此ノ感
激モ何等カハ冷エテ來ルコトモ保シ難イ點
ガアルト存ジマス、仰セノ通リ總額賃金制
ノコトハ昨年定メタコトト記憶シテ居リマ
スガ、未ダ其ノ實施ノ日數モ多ク經ツテ居
ラヌ關係上、此ノ制度ノ運用等ニ付キマシ
テモ、事業主乃至ハ勞務者等ニモ十分徹底
シテ居ラナイ憾ミガナイ譯デハナイヤウデ
アリマス、而シテ此ノ賃金制ニ付キマシテ
ハ、其ノ當時ニ於テハ大體之ヲ以テ各方面
ノ事情ヲ十分ニ考慮シタコトト考ヘテ定メ
タモノデハアリマスガ、今御話ノヤウニ此
ノ制度ノ爲ニ折角能力ヲ持チナガラ、又其
ノ能力ヲ思フ存分ニ發揮シタイト云フ熱意
モアリナガラ、之ニ報イラレル所ガナイト
云フ結果ニナリ、自然能率ヲ低下セザルヲ
得テイト云フヤウナ結果ヲ來ス虞ガアルト
致シマシタナラバ、此ノ點ニ付キマシテハ
十分考慮ヲ拂ハナケレバナラヌト存ジマス、
御指摘ニナリマシタ奬勵金制度ノ如キモノ
モ、從來ノヤウニ個人主義的ナモノデアリ
マシテハ如何カト存ジマスケレドモ、御話
ノヤウナ制度ニ思ヒヲ運ラシマスナラバ、
此ノ點ハ十分ニ考ヘナケレバナラヌコトト
思ヒマス、何分ニモ賃金制度ノ制定ハ施行
後日尙ホ淺イコトデアリマスノデ、是ガ實
施ノ結果ヲマダ十分ニ見極メナイ點ガアル
譯デアリマス、一面ニ於キマシテ今囘地方
ニ本省ノ勞務官ヲ駐在セシメマシテ地方ノ勞
務ノ實情等ヲ十分ニ指導監督スル途モ開ク
コトニ相成ツテ居リマスノデ、是等ノ制度
ノ運用ニモ依リマシテ更ニ一層實情ヲ見極
メ、賃金制度ニ於テ無理ノナイヤウニ、サ
ウシテ其ノ最低ヲ保障スルト共ニ、產業戰
士ガ進ンデ報國ノ赤誠ニ燃エテ思フ存分ニ
全能力ヲ發揮シ得ルヤウニ、一方ニ於テハ
賃金ソノ他ノ福利施設ニ於テ十分之ニ報イ
ルヤウナ方向ニ進ミタイト存ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=9
-
010・塚本重藏
○塚本(重)委員 政府ハ今月新タニ日傭勞
働者、土木、運輸農業關係ニ至リマスマデ、
勞賃ノ最低最高ノ標準ヲ決メラレタノデア
リマス、洵ニ當然ノコトト考ヘルノデアリ
マスガ、其ノ決メラレタ最高額或ハ標準額、
サウ云フモノト、從來ノ工場勞務者等ニ對
シマスル賃金ノ最低最高等ノ標準、サウ云
フモノト對照シテ見マシテモ、是ハ私ノ見
ル所デアリマスケレドモ、ヤハリ最近ニ決
メラレタモノノ方ガ幾ラカ其ノ程度ガ高イ
ヤウニ考ヘラレルノデアリマス、斯ウ云フ
意味カラデモ、古ク決メラレタ賃金制度ト
云フモノニ、モウ一度改正ヲ加ヘラレル餘
地ハナイカト考ヘテ居ルノデアリマスガ、
此ノ點ハ十分ノ調査〓究ヲ進メテ戴キタイ
ト思フノデアリマス
ソレカラモウ一ツハ、斯ウ云フ時局デア
リマスカラ、出來ルダケ人物經濟、殊ニ勞
力不足ノ時デアリマスカラ、此ノ點ニ深
イ留意ヲ勞務動員ノ上ニ於テモ拂ツテ行
カナケレバナラヌノデアリマスガ、私ノ
見テ居リマスル所ニ依リマスト、甚ダ遣
憾デアリマスルケレドモ、從業者ノ移動防
止令ガ極メテ窮屈ニナツテ居ル、是ハ勿論
事業主側ノ意向ダケデハドウニモナラナ
イ一面ニハ職業指導所長ノ意見ニ依ツテ、
雇主側ノ意見ニ拘ラズ從業員ノ移動ヲ認メ
ルト云フ制度モ布カレテ居ルノデアリマス
ケレドモ實際ニ於テサウ云フコトガ行ハレ
ルコトハナイデアリマセウ、是ハ厚生省デ
モ能ク分ツテ居ル所デアリマス、サウ云フ
處置ヲ執ラレタコトハ殆ド私ハナイト思フ、
私ガ之ヲ拵ヘル場合ニ心配シテ居リマシ
タヤウニ、ヤハリ使用者側ニ於テ非常ニ
之ヲ惡用シテ居ルト云フコトヲ言ツテモ私
ハ差支ヘナイト思フノデアリマスガ、サウ
云フ結果ニ陷ツテ居ルト思フノデアリマス、
當然是ハ移動ヲ許シテヤラナケレバナラ
又、他ノ工場ニ替ルコトヲ許シテヤラナケ
レバナラヌ狀態ニ在ルコトガ萬々分ツテ居
リナガラ、尙且ソレニ證明書ヲ書ク事業主
ガナイ、是ハ全然ナイノデハアリマセヌケ
レドモ、書カナイ事業主ガ非常ニ多イ、ソ
レヲ職業指導所長ノ權限ニ依ツテ、移動ヲ
認メルト云フヤウナ處置ガ行ハレテ居ラヌ
ノデアリマス、極端ナ例ヲ申シマスルト、
解雇ハ承認シテ居リナガラ、其ノ勞務者ニ
對シテ、他ノ工場ニ雇ハレルコトニ對スル
異議ガナイト云フ證明書ヲドウシテモ書カ
ナイ事業主ガ相當アル、其ノ事ノ爲ニアタ
ラ働ク場所ヲ見付ケ得ナイ、自分ガ欲スル
所ノ職場ヲ見付ケルコトガ出來ナイデ、持
ツテ居ル自分ノ勞働力ヲ十分ニ發揮スル機
會ヲ得ナイ所ノ勞働者ハ、夥シイ數ニ上ツ
テ居ルノデアリマス、現ニ職場ニハサウ云
フ事情デ釘付ケニセラレテ居リマスケレド
モ、サウ云フ者ノ數ガ多イト云フコトハ、
ヤハリ其ノ職場全體ノ能率ヲ下ゲル所以デ
アリマス、其ノ人自身ノ能率ガ上ラナイバ
カリデハナイ、サウ云フ人ガ居レバ居ルダ
ヶ、其ノ周圍ニ惡イ影響ヲ及ボシテ、工場
全體、職場全體ノ能率ヲ下ゲルト云フコト
モアリ得ルノデアリマス、是ハ此ノ制限令
ガ布カレテカラ後ノ勞働者ノ移動狀況ガ、恐
ラク職業指導所ノ方カラ報〓ガ來テ居ルコ
トト思ヒマスカラ、其ノ報告ニ眼ヲ通シテ
戴キマスルナラバ、-思ヒ半バニ過ギルモノ
ガアラウト思フノデアリマス、勞働者ノ氣
分ナドハ中々アナタ方ニハ御分リニナラナ
イト思ヒマスケレドモ、朝起キテ工場ニ出
テ行ク前ニ、ツイ女房ガ言ツタ言葉ガ氣ニ
入ラヌトカ云フヤウナコトデ、工場ヘ出テ
行キニクイ、途中デ何事カアツタト云フコ
トガアレバ、一日其ノ人ノ能率ガ上ツテイ
カナイト云フヤウナコトニナル、職場ニ行
ツテ一寸上役ノ人ト何デモナイ一言二言交
ヘタコトガ氣ヲ腐ラシテ能率ヲ下ゲルト云
フヤウナコトガアル、サウ云フコトカラ致
シマシテツイ其ノ職場ト云フモノガドウモ
面白クナイト云フヤウナコトニナツテ來、
ソレカラ段々溝ガ深クナツテ來タリナド致
シマシテ、ドウモ愉快ニ明朗ニ仕事ガ出來
ナイヤウニナツテ行クコトガアルノデアリ
マス、是ハ勞務管理ノ上ニ於テ大イニ心シ
ナケレバナラヌコトデアリマスガ、サウ云
フ〓妙ナ勞働者氣質ト申シマスカ、氣分ヲ
非常ニ尊重シナケレバナラヌ是等ノ人々
ヲ、徒ニ從業者移動防止令ニ依ツテ釘付ケ
ニ今日ノヤウナ狀態ニシテ置クト云フコト
ハ、國全體ト云フ上カラ見テ、人物經濟ノ
上カラ見テ非常ニ歎カハシイコトダト思フ
ノデアリマス、サウ云フ點ニ於テモ使用者
側ハ言フマデモナイコトデアリマスガ、職
業指導所ノ方ニ於テモ目ヲ開イテ貰ツテ、
サウシテ是ハ其處ニ置イテ置クヨリハ替ラ
シタ方ガ色々ノ意味カラ見テ適當ダト思ハ
レルモノガ譯山アルト思フ、サウ云フ者ハ
適材ヲ適所ニ使ウテ、思フ存分ニ其ノ能率
ヲ上ゲサセルト云フ方面ニモウ少シ活眼ヲ
開イテ運用宜シキヲ得ナケレバナラヌ、ド
ウモ今日ハ運用其ノ宜シキヲ得テ居ナイト
思ヒマスガ、此ノ點ニ付テノ御所見ハ如何
デゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=10
-
011・武井群嗣
○武井(群)政府委員 只今御述べニナリマ
シタ人物經濟、適材適所、サウシテ其ノ
能率ヲ思フ存分發揮サセルヤウニト云フ御
趣旨カラ、色々ナ事例ヲ引イテノ御所見ヲ
篤ト拜承致シタイノデアリマシテ、其ノ御
述ベニナリマシタコトニ付キマシテハ全然
同感デアリマシテ、其ノ通リト存ジマス、
御話ニモナリマシタヤウニ勞務者ニ一種ノ
勞務者氣質ガアルコトモ事實デアリマス、
同時ニ又是等ノコトヲ能ク呑込ンデ思フヤ
ウニ働クヤウニシテ貰ブ所ノ事業主、工場
長等ガナケレバナラヌ譯デアリマス、而シ
テ是ガ監督指導ニ當ル所ノ役人モ亦實情ヲ
深ク了解致シマシテ之ニ當ラナケレバナラ
ヌ譯デアリマス、謂ハバ官廳モ事業主モ勞
務者モ、皆同ジ目的ニ向ツテ心ヲ一ニシテ
協調シテ參ラナケレバ、到底此ノ重大ナ御
奉公ハ出來ナイコトト思フノデアリマスガ、
何分ニモ戰爭勃發後產業界ノ狀況ニハ急變
化ヲ來シタヤウナ關係ガアリマシテ、大多
數ノ勞務者ハ眞面目ニヤツテ居ツタコトデ
アリマセウ、又事業主ノ大多數ハ國家ノ爲
ニト云フコトヲ考ヘテ居ツタコトデハアリ
マセウケレドモ、中ニハ轉々トシテ其ノ場
所ヲ變ヘルト云フ者モナイ譯デハナク、其
ノ甚シキ狀態ニ至リマスルト、之ヲ又誘フ
者モ出テ來ルト云フヤウナ譯デアリマシテ、
自ラ此ノ弊ガ甚シクナル、斯クテハ根本ノ
產業能率ノ增進ト云フコトニモ大影響アル
コトデアリマスノデ、法ヲ以テ移動ヲ防止
スルト云フヤウナ規定モ設ケタ譯デアルト
存ジマス、凡ソ法令ヲ以テ人間ノナスコト
ヲ規定スル場合ニ於キマシテハ、兎角其ノ
極端ヲ責メルノ餘リ、時ニハ窮屈ニナリ、
又此ノ法ヲ運用スル者ニ深キ心構ヘガナイ
場合ニ於キマシテハ、思ハザル結果ヲ來ス
コトガ絕無デナイコトハ凡ユル事業ニ於テ見
ル所デアリマス、斯樣ナ狀況デアリマスルノ
デ、今日短日月ノ間ニ於キマシテ新シク置キ
マシタ制度ヲ運用セラレルニ當リマシテハ、
御指摘ノヤウナ弊害ガ絕無デナカツタコトー
ヲ私共ハ認ムル譯デアリマス、一方ニ於キマ
シテ職業指導所ノ如キモノモ極端ナ言葉ヲ
申シマスナラバ、日ニ〓〓新シイ法令ナリ
制度ガ出來テ來ル、其ノ運用ニ當リマシテ
機構ヲ改革セネバナラズ、其ノ機構ヲ充ス
所ノ人ハ從來餘リ此ノ方面ニ經驗ノナイ者
ヲモ入レナケレバナラナイ實情モアリマシ
テ、急激ナ職業指導機構ノ增加ニ伴フ能率
ノ上ニ於キマシテモ遺憾ノ點ガナイ譯デハ
アリマセヌ、不慣レナ者ガ一方ニ於キマシ
テ又此ノ混亂ノ時代ニ於テ、時々自分ノ利
己ノ爲カラ發スル色々ナ事象ニ對シテ處ス
ル場合ニ於キマシテハ、時ニ其ノ間無理ト
思ハレルコトガアリ、非常識ト考ヘラレル
處置ヲ執ツタコトモ絕無デハナイト考ヘマ
ス、併シナガラ大體ニ於テ今日マデニ各種
ノ勞務ニ關スル制度モ出揃ツタコトデアリ
やっ、是ガ運用ニ當リマスル方面ニ於キマ
シントー、職業指導者ニ付キマシテモ更ニ之
ノ再〓育ヲ施スト云フヤウナ組織モ出來タ
コトデアリマシテ、是ヨリ職業指導ノ方面
ニ向ツテバソレ等ノ人ノ〓育ヲスル、又養
成ヲ致シテ是ガ運用ニ遺憾ナキヲ期スル譯
デアリマス、一方又產業報國運動等モ段々
ト地ニ着イテ、是等工場主或ハ勞務者等ノ
間ニ立ツテ、勞資一體、產業報國ノ實ヲ擧
ゲルコトニナルコトデアリマスルシ、又政
府モソレヲ期待致シマスノデ、是ヨリ段々
ト御期待ニ副フヤウニ向クコトトハ存ジマ
スガ、從來ノ實情、私ハ今御述べニナリマ
シタコトニ付キマシテ敢テ抗辯ヲシヨウト
ハ思ヒマセヌ、今後益〓各方面遺憾ナキヤ
ウニ致シタク考ヘテ居リマス、私モ永イ間
地方ニ居ツテ色々ナコトヲ體驗致シタノデ
アリマスガ、押竝ベテ申セバ、日ニ〓〓事
業主モ此ノ重大時局ニ目覺メテ居リ、勞務
者モ本當ニ產業戰士トシテノ誠ヲ現ハスヤ
ウニ進ミツツアルコトヲ私深ク喜ンデ居ル
ノデアリマス、此ノ美ハシイ光景ヲ益〓現
實ニ現ハシ、全國何百万ノ產業人ガ同ジ方
向ニ向ツテ一體トナツテ進ムコトヲ衷心カ
ラ祈ツテ、自分ノ職司ヲ果サウト考ヘテ居
ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=11
-
012・塚本重藏
○塚本(重)委員 此ノ法令ノ出來マシタ精
神ハ能ク分リマスシ、ソレハ又絕對必要デ
アルノデアリマス、併シ其ノ運用ノ上ニ於
キマシテ面白クナイ點ガアルカラ注意シテ
行カナケレバイケナイト私申上ゲテ居ルノ
デアリマス、是マデノ取扱ヒニ於キマシテ
ハ其ノ點吳々モ遺憾「ナ點ガ多カツタノデア
リマス、今御話ノヤウニ時局認識ノ上ニ立
ツテ、事業主ノ氣分モ變レバ勞務者ノ氣分
モ變ツテ來テ居リマス、唯徒ニ賃金ノ高キ
ヲ追ウテ轉々スル、所謂昔ノ勞働者氣風ト
云フモノハ今日ハナクナツテ居ル、唯自分
ノ職域奉公ヲ思フ存分ニ成シ就ゲル爲ニ
ハ、明朗ニ働キ得ル職場ヲ得タイト思ツテ、
其ノ職場ガ見付カラナイ者ガ相當アルノデ
アリマス、殊ニ自分ノ健康上ノ問題、或
家庭ノ事情等々ニ依リマシテ、當然同ジ仕
事ヲサスニシテモ其ノ場所ヲ變ヘテヤルト
カ、或ハ職ヲ轉ジサシテヤルトカ云フコト
ノ必要デアルコトガ能ク分ル場合ガアリマ
ス、サウ云フ場合ニハ一ツ運用ノ上ニ於テ
宜シキヲ得ルヤウニヤツテ戴キタイト思フ
ノデアリマス
次ニ私ハ健康保險法ノ改正ニ關シマシテ
順次質問ヲシタイト思フノデアリマスガ、
私ハ此ノ審議ニ當リマシテ非常ニ嬉シク感
ジテ居リマス、ソレハ私ガ此ノ議院ニ籍ヲ
置クヤウニナリマシテカラ、私ノ主力ヲ社
會保險制度ノ整備擴充ニ專ラ注イデ參リマ
シタ、恐ラク每議會此ノ方面ニ關シマスル
法案審議ヲ擔當シテ參ツタコトヲ私ハ光榮
トシテ居ルノデスガ、ココ數年ノ過去ヲ囘
顧致シマシテ、私共ガ此ノ議會ニ籍ヲ有シ
マシテカラ、思ヘバ多年ノ希望デアリマシ
タ勞働者養老年金制度モ布カレルヤウニナ
リ、或ハ國民健康保險法ガ生レ、船員健康
保險法ガ生レ、職員健康保險法ガ生レテ參
リマシテ、一應玆ニ社會保險制度ノ體系ヲ
確立スルニ至ツタノデアリマス、勿論其ノ
內容ニ付テ尙ホ將來改善ヲ加ヘテ行カナケ
レバナラナイモノガ多々アルコトハ言フマ
デモナイノデアリマスケレドモ、一應兎ニ
角此ノ體系ガ整ヒマシタコトヲ見テ非常ニ
愉快ニ感ズルノデアリマス、而モ亦今議會
ニ於キマシテ職員健康保險法ト健康保險法
トヲ統合致シマシテ、更ニ其ノ內容ニ幾多
改善ヲ加ヘラレテ玆ニ改正案ノ提出ヲ見タ
ト云フコトハ、呉々モ喜ビニ堪ヘナイ所デ
アリマス、健康保險法ノ改正ニ付キマシテ
ハ、每議會ヤカマシク私ガ主張シテ居リマ
ス、其ノ適用範圍ノ擴充ト云ヒ、或ハ醫療
內容給付條件ノ改善等、其ノ私共ノ主張ノ
八九分通リマデ實現ヲ見ルニ至ツタコトヲ
非常ニ嬉シク感ジテ居ルノデアリマス、サ
ウ云フ感激ノ上ニ以下數點ノ質問ヲ續ケタ
イト思フノデアリマス
第一番ハ改正セラレマシタ案、第七十條
ノ改正ニ依リマシテ、國庫ノ負擔ト云フモ
ノガ費用ノ十分ノ一ヲ負擔スル、被保險者
一人當リニ年平均二圓ノ割合デ補助スルト
云フコトニナツテ居ツタノガ是ガ消サレテ
シマツテ、唯國庫ヨリ費用ノ一部ヲ負擔ス
ル、斯ウ云フコトニナツテ居リマス、此ノ
點ニ付キマシテハ私共ハ從來國庫ノ負擔金
ヲ出來ルダケ增額シテ、此ノ健康保險法ノ
改善ニ當ツテ貰ヒタイト云フコトヲ申上ゲ
テ來タノデアリマス、此ノ七十條ノ條文ノ
改正ニ依ツテ、國庫ノ負擔金ハ殖エルノデ
アルカ、少クナルノデアルカト云フコトヲ
御伺ヒシタイ、豫算書ヲ見マスルト、ドウ
モ其ノ點デ逆ニナツテ居ルヤウニ思フノデ
アリマス、保險ノ國庫負擔金ニ於キマシテ、
健康保險ノ特別會計ノ繰入金、職員健康保
險ヘノ繰入金、是等ノモノガ昨年ニ比ベテ
何レモ皆減額セラレテ居ルコトデアリマス、
被保險者ノ數ト云フモノハ段々殖エテ參ツ
テ居ル、保險ノ總額ト云フモノハ殖エテ行
ツテ居ルノデリマスガ、國庫ノ負擔金ト云
フモノハ昨十六年度ニ比ベテ十七年度ガ減
額セラレルト云フヤウナコトハ、ドウモ諒
解ニ苦シムノデアリマスガ、此ノ關係ハド
ウナルノデアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=12
-
013・木村清司
○木村(〓)政府委員 健康保險ト國庫負擔
金ノ關係ハ、改正後ニ於キマシテハ改正前ト
大體同ジデ行ク積リデアリマス、ト申シマ
スノハ政府管掌ノ分ハ豫算ノ定ムル所ニ依
リ、組合管掌ノ方ハ健保ニ於キマシテハ保
險給付十分ノ一、但シ平均ニ依ルト云フ制
限デアリマス、ソレカラ職員保健ノ方ハ被
保險者組合一人一圓ト云フコトニナツテ
居リマス、ソレデ全體カラ見マスト、政府
管掌ハ被保險者ガ非常ニ增シタニ拘ラズ、
國庫ノ補助金ハ從前通リデ殖エテ居リマセ
ヌ、ソレカラ組合管掌ノ方ハ補充費トナツ
テ居リマスカラ、組合ガ殖エルニ隨ツテ殖
エテ行クト云フコトニナツテ居リマス、ソ
レデ職員保險ノ方ノ關係ノモノハ、是ハ此
ノ法律ノ改正ニ關係ナク今年度ノ分ト明年
度ノ分トノ關係デゴザイマスガ、是ハ被保
險者一人一圓ト云フ當初ノ約束ニ基キマシ
テ、大體實績ニ近イモノヲ計上致シマシタ、
昨年ハ大分國庫ニ返還シテ居リマシタモノ
デスカラ、餘リ返還セズニ濟ムヤウニト云
フ譯デゴザイマス、明後年度カラ此ノ新法
ガ施行サレタ後ノ國庫負擔金ノ問題ニ付キ
マシテハ、尙ホ多少職員ノ關係ニ於テ大藏
省ト折衝ヲ要スベキモノガアリマスガ、大
體現狀通リト考ヘテ戴イテ宜シイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=13
-
014・塚本重藏
○塚本(重)委員 大體諒解致シマシタ、職員
健康保險ノ方ハ實施後間ガナイノデアリマ
スカラ、前年ノ實績ニ依ツテ、十六年度ノ
豫算ガ多キニ失シテ居ツタト云フコトデ減
ラサレテ居ルコトハ分リマスケレドモ、健
康保險ノ方ハ實施サレテカラ相當年數ガ經
ツテ居リマス、ソニレモ拘ラズ十七年度ノ
豫算ガ十六年度ノ豫算ヨリ減ルト云フコト
ハ支出ノ條件ニ變リガナケレバ心配ナイ
ヤウナモノノ、然ラバドウ云フ原因デ此ノ
豫算ガ減額ニナツタノカ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=14
-
015・木村清司
○木村(〓)政府委員 後程調ベマシテ申上
ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=15
-
016・塚本重藏
○塚本(重)委員 ソレデハ其ノ點ハ後ニシマ
シテ、今度ノ改正ニ依リマシテ一部患者ガ
負擔スルコトニナリマシタ、初診料十錢、
藥劑一日劑五錢、注射ノ處置ニ付テハ一圓
十錢、齒科ノ方デハ初診ガ五錢、治療一
囘五錢、充塡一囘十五錢補綴一囘五十錢、
斯ウ云フ金ヲ被保險者ガ醫者ニ掛ツタ其ノ
時ニ醵出サセルト云フコトニナツタノデア
リマスガ、之ニ依ツテ大體醵出サレル額ハ
ドレ位ニナルモノデアリマスカ、更ニソレ
ト關聯シテ、其ノ額ガ從來ノ被保險者ノ保
險料ニ比ベテ何割程度ニナリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=16
-
017・木村清司
○木村(〓)政府委員 數字ハ後デ申上ゲマ
ス、其ノ一部負擔ノ方デ、實際ノ一部負擔
ノ費用ノ外ニ受診率ノ減少ヲ見テ平均一割
五分乃至二割程度、只今申上ゲマシタ一部
負擔ノ額ハ現實ノ費用ノ外ニ、一部負擔ノ
最モエライ所ノ濫療、濫診ヲ防止スル意味
ノモノヲ含ンデ受診率ノ減少ヲモ見込ンデ
居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=17
-
018・塚本重藏
○塚本(重)委員 ソレハ能ク分ルノデアリ
マス、濫療濫診ヲ防止スルト云フコトカラ
斯ウ云フコトヲ編ミ出サレタト云フコトハ
能ク分ルノデアリマス、更ニソレト同時ニ
ヤハリ保險經濟ヲ安固ニスル、サウシテ其
ノ適用ノ範圍ヲ廣メ、給付ノ內容ヲ改善シ
テ行クト云フ上ニモ役立タセヨウト云フ二
ツヲ狙ハレテ居ルコトハ能ク分ツテ居リマ
スルガ、一體之ニ依ル金バ一箇年ドノ位ノ
總額ニナルト見テ居ラレルカ、ソレガ從來
ノ被保險者ノ掛ケマスル保險料ノ何割位マ
デニ達スルノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=18
-
019・木村清司
○木村(〓)政府委員 一部負擔ニ依ル減ヲ
被保險者一人四圓二十三錢七厘ト見テ居リ
マス、ソレデ從來ハ現行ノ保險料ハ積立金
剩餘金ヲ無論加ヘマシテ二十二圓四十錢三
厘デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=19
-
020・塚本重藏
○塚本(重)委員 大體保險料ノ割合カラ行
クト二割程度、之ニ依ツテ收入ガ殖エテ行
クコトガ能ク分リマシタ、ソレダケ被保險
者ノ負擔ガ增シテ來タコトニナリマスガ、
從來保險料ノ建前ハ事業主ト被保險者トノ
折半負擔ト云フコトガ原則ニナツテ居リマ
ス、被保健者ノ負擔スベキ保健料額ハ一日ニ
付テ標準報酬日額ノ百分ノ三ヲ超エテハナ
ラナイ、其ノ超過シタ部分ニ付テハ事業主
ガ之ヲ負擔スルト云フコトガ從來ノ保險ノ
建前デアル、所ガ斯ウ云フヤウニ被保健者
ノ患者ニ一部ヲ負擔サセルコトニ依ツテ、
此ノ原則ハ崩レテシマツタコトニナルト思
ヒマス、兎ニ角被保險者ノ方ダケガ從來ニ
比ベテ二割位ノ負擔ガ殖エタト云フコトニ
ナルノデアリマスガ、之ニ對應シマシテ事
業主ノ負擔ヲモウ少シ高メル、更ニ又國庫
ノ負擔金ヲ高メルト云フコトハ御考慮ニナ
ツテ居ラナイノデアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=20
-
021・木村清司
○木村(〓)政府委員 此ノ度ノ改正ハソレ
ニ依ツテ得タル財源ト、竝ニ保險料ヲ增スコト
ニ依リマシテ家族給付ヲヤリタイ、或ル程度徹
底シタ家族給付ヲヤリタイ、理想カラ申シマス
ト、行ク〓〓ハ療養費ニ付テ、被保險者並ト
云フ程マデハ行カナクテモ、被保險者ニ或
ル程度近イヤウナ家族給付ヲシタイト云フ
ノガ理想デアリマスガ、差向ハ相當進ンダ
家族給付ヲシタイ、ソレデ其ノ保險料ノ增
ス場合ニハ、相變ラズ從來通リ折半主義デ
行キタイ、尙ホ制限ノ超過シタ分ニ付キマ
シテハ事業主ガ負擔スルト云フコトニナツ
テ居リマシテ、マダ決定ハシテ居リマセヌ
ケレドモ、結核ノ給付ノ擴充ヲヤリタイ、
斯ウ彼此レ考ヘテ見マスト、本來事業主ノ
事業管理上ハ、直接關係ノナイコトニ對シ
テ負擔ガ殖エルト或ル程度言ヘルノデハナ
イカト思フノデアリマスカラ、私ハ此ノ一
部負擔ガ餘リ高額ニ失シテハイカヌト思
ヒマスガ、此ノ程度ノ一部負擔ニ依ル
保險料ニ依リマシテ、理論上御說ノヤウニ
事業主ト被保險者トノ折半負擔ノ原則ハ壞
レテ居リマスケレドモ、給付ノ內容ガ家族
給付ト云フ事業管理ニハ直接ノ關係ノナイ
事項ニ對シマシテ、事業主ガ殖エタ分ニ付
テハヤハリ半分負擔スルト云フコトニ依ツ
テ、私ハ勞働者全體カラ見マスト、非常ニ
有利デハナイカト思ヒマス、ソレデ結果カ
ラ申シマスト、獨身ノ勞務者ガ比較的殖エ、
家族ノ多イ、子供ノ多イ勞務者ハ利益ヲ受
ケルト云フコトニナリマス、是ハヤハリ此
ノ委員會等ニ於テ論議サレテ居リマス人口
政策、家族制度ト云フフヤウナ全般カラ見
マシテ、良イ結果ヲ齎スト云フコトニナル
ノデハナイカト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=21
-
022・塚本重藏
○塚本(重)委員 私ハ事情ハ能ク分ツテ居
リマスルシ、考ヘ方モ能ク了解致シテ居ル
ノデアリマスガ、家族給付ガ從來ノ十圓カ
ラ三圓ニマデ引下ゲラレア居リマスルシ、
隨ヒマシテ金ガ澤山要ルト云フコトモ能ク
分ルノデアリマスケレドモ、事業主ト從業
員トガ保險料ニ於テ折半シテ負擔シテ置イ
テ、更ニ被保險者ノ方デ直接醫者ニ診テ貰
ツタ場合ニ、從來ノ保險料ニ比ベテ二割程
度、或ハモツト高イモノニナルカモ知レナ
イ、此ノ二割ト云フノハ、全體ノ平均ノ二
十二圓四十錢ニ對スル四圓三十何錢デアリ
マスカラ、モツト高イモノニナルカト思ヒマ
スガ、ソレダケノ負擔ヲサセルニ付テハ、
同時ニ又事業主ノ方ノ負擔モ殖ヤシテ行ク
ノガ當然デハナカラウカ、ソレデ直接其ノ
事業ニハ携ハツテ居ラナイ家族ノ給付ヲ殖
ヤシタノデアリマスガ、是ハモノノ考ヘヤ
ウデ議論ニナリマスガ、其ノ從業員ノ家族
ノ中ニ病人ガアルト云フヤウナコトハ、延
イテヤハリ生產能率ノ上ニ重大ナル影響ヲ
齎スノデアツテ、家庭全體ガ朗ラカデナケ
レバ勞働者ノ能率ト云フモノハ高マツテ來
ナイカラ、家族ノ疾病、療養、之ヲバ事業
主ノ生產ニ關係ハナイノダト云フヤウナモ
ノノ見方ト云フモノハドウカト思フノデア
リマス、デアリマスカラヤハリ家族ノ治療
デアリマシテモ、國ナリ事業主ナリノ全體
ノ然ルベキ適當ナル負擔ニ於テヤツテ行ク
ト云フコトガ望マシイト思フノデアリマス、
今度ノ改正デ家族給付ガ十圓カラ三圓ニ引
下ゲラレタト云フコトハ、非常ニ嬉シイノ
デアリマスガ、其ノ費用ヲ被保險者ノ側ノ
一部負擔ニ依ツテ賄フト云フ建前、被保險
者側ノ一方的負擔ニ於テソレヲ穴埋、メヲシ
テ行クト云フ建前ヲ執ラレタコトハ甚ダ遺
憾デアルト思ヒマス、私共ハ從來カラ事業
主ノ負擔ヲモツト殖ヤシテ貰ヒタイト云フ
コトヲ絕エズ申シテ來テ居ルノデアリマス
ガ、此ノ健康保險法ガ出來タ時ニモ言ツテ
居ルヤウニ、此ノ保險ガ出來テ、工場法ニ
依ツテ從來ナラバ事業主ガ負擔シナケレバ
ナラナカツタ負擔ト云フモノハ相當減額サ
レテ居ルノデアリマス、業務上ノ負傷疾病
ハ健康保險法ガ出來ルマデハ、工場法ニ依
ツテ事業主ノ一方的負擔デアツタ、ソレガ
健康保險法ガ出來マシテ、從業員側トノ折
半負擔ニナツテ居ルノデアリマスカラ、ソ
レダケ事業主ハオ蔭ヲ蒙ツテ居ル譯デアリ
マス、損得ヲ何等言フ譯デハアリマセヌケ
レドモ、サウ云ヲ意味合ニ於テモ、事業主
ノ負擔ヲモツト高メテモ然ルベキダト云フ
ノガ、從來ノ私共ノ見解デアツタ、ソレガ
今度ノ改正ニ於テ御採用ニナラナカツタコ
トヲ甚ダ遺憾ニ思フノデアリマス、是ハ此
處マデナツテ來タモノデアリマスカラ、此
ノ實績ヲ見テ、一ツ改善ヲシテ行クヤウニ
今カラ御願ヒシテ置クノデアリマス、唯
ツ心配スルノハ、此ノ健康保險法ガ出來マ
シタノハ、出來ルダケ病人ヲ早目ニ醫者ニ
掛ケテ、早ク勞働力ヲ囘復スル、早期ニ治
療ヲ受ケサセテ出來ルダケ早ク囘復サセル
ト云フコトガ狙ヒ所デアツタト思フ、ソレ
ガ斯ウ云フ一部負擔ニ依ツテ障碍トナリハ
シナイカト云フコトヲ恐レルノデアリマス
ガ、其ノ點ニ付テノ御意見ヲ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=22
-
023・木村清司
○木村(〓)政府委員 一部負擔ニ依ル早期
診斷、早期治療ノ障碍ト云フ點ニ付テハ、
私共モ相當心配ト申シマスカ、考慮シテ居
リマス、御手許ニアル御話ノヤウナ一部負
擔モマダ假案デゴザイマシテ、能ク皆サン
方ノ一般ノ御意見ヲ聽ギマシタ上デ、最後
ノ案ヲ決定シタイト思ツテ居リマス、出來
ル限リサウ云フ弊害ヲ除去シツツ、一部負
擔制度ノ良イ所ヲ貫徹シタイ、斯ウ考ヘテ
居ルノデアリマス、尙ホ御意見等ニ依リマ
シテ、又實施ノ狀況等ニ依リマシテ、一部
負擔ノ制度其ノモノハ無論變更ノ意思ハ毛
頭アリマセヌケレドモ、內容ニ付テハ適當
ノ方法ヲ今現ニ考ヘテ居リマスシ、又御意
見ニ依リマシテヨリ良イ案ニ致シタイト思
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=23
-
024・塚本重藏
○塚本(重)委員 是ハ色々ト質問シテ居ル
ト時間ガ長ク掛リマスカラ、簡單ニ致シマ
スガ、勿論此ノ一部負擔ハ業務上ニ困ル負
擔疾病等ニ對シテハ取ラナイコトガ明カニ
セラレテ居リマスガ、其ノ他ニサウ云フ濫
診濫療ヲ防止スルト云フコトカラノ發意デ
アルトシマスナラバ、其ノ點ニ懸念ノナイ
ヤウニスレバ宜イ譯デアリマスカラ、被保
險者ニシテ醫者カラ休業ヲ命ゼラレテ居ル
業務上ノ負擔疾病デハアリマセヌケレドモ、
治療上醫者ガ休業ヲ命ジテ居ルト云フ程度
ノモノハドウカ、業務上デ醫者ニ掛ラナケ
レバナラヌ者ガ掛ツテ居ルト云フノハ言ハ
ズシテ無料デアリマスガ、サウ云フ者ノ一
部負擔ヲ免除スルト云フコトニ付テ御意見
ハ如何デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=24
-
025・木村清司
○木村(〓)委員 大キナ保險制度ヲ運用シ
テ居ルモノデスカラ、大キナ利益ノ爲ニ小
サイ弊害ガアルコトハ、或ル時ハ巳ムヲ得
ナイノデハナイカト思ツテ居リマス、一部
負擔ノ免除ノ問題ハ、濫診濫療ヲ防グト云
フ意味ニ於テハ場合ニ依ルト免除シテモ宜
イト云フ具體的ノ例ガアリマシテモ、全般ノ
保險醫ニ對スル關係ニ於キマシテ、其ノ場
合免除スルコトガ全體ノ醫療組織ヲ壞スト云
フ虞ノアルコトモアルノデ、其ノ點ハ大キナ
利益ノ爲ニ或ル程度ノ具體的ノ害ト云フモ
ノハ巳ムヲ得ナイモノデハナイカ、又他ノ
方法ニ依ツテ、出來得ル限リ健康診斷ノ勵
行トカ云フ方面ニ依ツテ之ヲ除去スルコト
ニ努メマシテ、保險制度ト云フ現業ヲヤ
ツテ居ル者デアリマスカラ、全般ノ大局的
ナ利益ノ爲ニ少サイ害ト申シマスカ、弊害
ト云フコトハ、是ハ成ル程度巳ムヲ得ナイ
モノデハナイカト考へテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=25
-
026・塚本重藏
○塚本(重)委員 是ハ濫診濫療ヲ防止スル
ト云フ意味カラデアレバ、モウ少シ御考ヘニ
ナル餘地ガ相當アルト思ヒマス、但シ其ノ
保險財政ノ上ニ於テ絕對必要デアルト云フ
コトデアレバ、是ハ已ムヲ得ヌノデアリマ
スガ、サウ云フ觀點カラデアレバ、先程申
シマシタヤウニ事業主ノ方ノ國庫ノ負擔ト
云フヤウナモノモ考ヘラレルノデアリマス、
デスカラ飽クマデモ是ハ所謂保險制度ヲ布
イタ時ノ保險目的ト云フモノヲ阻碍シナイ
ヤウナ風ニヤツテ貰ヒタイト思フノデアリ
マス、濫診濫療ヲ防グ爲ニハ極メテ輕微ノ何
カモツト別ナ方法ニ於テ處置ガアルノデハ
ナカラウカ、最初掛ツタ時々ニスルカ、或
ハ最初ノ三日間ニスルト云フヤウナコトモ
考ヘラレル譯デアリマスシ、相當長イ間休
業シテ醫者ニ掛ツテ居ルト云フヤウナ者カ
ラ、ヤハリ其ノ都度是ダケノ負擔ヲサセル
ト云フコトハ、私トシマシテハ考ヘ直シテ
戴キタイト思フノデアリマス、十分ニ一ツ御
考ヘヲ願ツテ戴キタイト思ヒマス、ソレカ
ラ今モ御話ニアツタノデアリマスガ、結核
ニ對スル給付ノ援助ニ付テハ、從來私共ハ
是ハ三年マデシテ貰ヒタイト云フコトヲ御
願ヒシテ來テ居ルノデアリマスガ、今度ノ
改正案ニハ此ノ期限ノ延長給付ノコトニ付
テハ、其ノ內容ハ勅令ヲ以テ定メルト云フ
フコトデ、明記シテアリマセヌガ、三年位マ
デ御延バシニナル御意向デアリマセウカ、
御伺ヒシテ置キタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=26
-
027・木村清司
○木村(〓)政府委員 私共ハ三年ニ延長シ
タイト云フ考ヘヲ當初カラ持ツテ居ルノデ
アリマスガ、未ダ政府全體トシテ三年マデ
延長スルト云フ決定マデナツテ居ラナイノ
デアリマス、其ノ點御諒承ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=27
-
028・塚本重藏
○塚本(重)委員 マダ決定ニナツテ居ラヌ
ト云フコトハ、二年ニ延バストモ何トモ決
定シテ居ラヌト云フ意味デ、是カラ考ヘル
ト云フ意味ニ解釋シテ宜シイノデアリマス
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=28
-
029・木村清司
○木村(〓)政府委員 其ノ通リデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=29
-
030・塚本重藏
○塚本(重)委員 其ノ點ガ決定シテ居ラス
ト云フコトデアレバ、尙ホ幸ヒデアリマス
カラ、是ハ是非トモ三年マデ給付ヲ延長ス
ルト云フコトハ御決定下サルヤウニ一段ノ
御配慮ヲ御願ヒシテ置キタイノデアリマス、
次ニハ分娩費ガ二十圓ガ三十圓ニ引上ゲラ
レタノハ結構デアリマスガ、古イ規定ニ依
ルト、入院ヲシテ手當ヲ支給シタ場合ニデ
モ、分娩費トシテ十圓出スト云フコトニナ
ツテ居ルガ、其ノ規定ガ削ラレテ居リマス
ガ、其ノ關係ヲ一寸御尋ネシタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=30
-
031・木村清司
○木村(〓)政府委員 モウ一度····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=31
-
032・塚本重藏
○塚本(重)委員 能ク御分リガナカツタト
思ヒマスガ、入院ヲシテ手當ヲ受ケナイ場
合ニハ分娩費トシテ二十圓貰ツテ居ツタ、
其ノ者ガ入院シ、或ハ手當ヲシテ貰ツタ場合
ニハ二十圓ハ十圓ニ引下ゲラレタト云フノ
ガ從來デアツタト思ヒマス、ソレガサウ云
フ規定ナシニ、三十圓ニ改メラレタヤウナ
風ニ改正案デ見テ居ルノデアリマスガ、サ
ウデハアリマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=32
-
033・木村清司
○木村(〓)政府委員 三十圓全額ヤルコト
ニ致シマス、助產ノ手當ハ助產ノ給付ヲシ
マセヌカラ、子供ガ出產致シマスレバ三十
圓ハ必ズヤルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=33
-
034・塚本重藏
○塚本(重)委員 入院シタ場合、手當ヲ受
ケタ場合ノ如何ニ拘ラズ、三十圓ト云フコ
トニナルノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=34
-
035・木村清司
○木村(〓)政府委員 サウデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=35
-
036・塚本重藏
○塚本(重)委員 次ハ埋葬料ノ增額ヲ私共
ハ御願ヒシテ居ツタノデアリマスガ、現行
一箇月三十日三十圓ニ滿タザルモノハ三十
圓ト云フコトニナツテ居ルノヲ、六十日六
十圓ニ滿タザルモノハ六十圓ト云フ風ニ改
正シテ貰ヒタイト云フノガ、從來ノ私共ノ
主張デアリマス、今度ノ改正案デハ此ノ點
モ決定ヲ見テ居ラナイヤウニ見ラレルノデ
スガ、ドウナツテ居リマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=36
-
037・木村清司
○木村(〓)政府委員 其ノ點ハ左樣ノ意思
ハアリマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=37
-
038・塚本重藏
○塚本(重)委員 是モ凡ソ今日埋葬料ガ三
十圓程度デハ中々行ハレナイノデアリマス
カラ、次ノ機會ニ於テデモ是非一ツ然ルベ
ク時局ニ合フヤウナ風ニ增額セラレルコト
ヲ御願ヒ致シマス、ソレカラ次ハ家族給付
デアリマスガ、是マデ十圓以上ト云フノガ
三圓以上ト云フコトニナリ、其ノ半額ヲ負
擔シテ戴ケルト云フ洵ニ有難イ改正ニナツ
タノデアリマスガ、是ハ保險組合ニ於テハ
此ノ限度ヲ決メナイト云フコトニナツテ居
リマスガ、其ノ意味ハ三圓以下デモ家族給
付シテ宜イ、或ハモウ一ツ言葉ヲ換ヘテ言
ヘバ金ガ幾ラ要ラウト、兎ニ角保險組合ノ
持ツテ居ル診療機關等ニ掛ツタ場合ニハ
文モ取ラナクテ宜イノダ、斯ウ云フ意味デ
アリマセウカ、或ハ其ノ保險經濟ノ許サレ
ナイ場合ニ於テハ三圓以上必ズシモ半額負
擔シテヤル必要ハナイ、其ノ額ヲ五圓ニ決
メテモ宜イ、或ハ七圓ニ決メテモ宜イ、或
ハ現行法通リ十圓以上ト決メテ置イテモ宜
イ、ソレハ保險經濟ノ許ス範圍ニ於テヤル
ノダト云フ意味デアリマセウカ、サウデナ
ク逆ニ假令僅カデモ、三圓デモ二圓デモ一
圓デモ、或ハ例ヘバ十錢掛ツタ場合デモ、
全部ソレハ組合ノ方デヤルト云フコトモ自
由デアル、斯ウ云フ意味デアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=38
-
039・木村清司
○木村(〓)政府委員 家族給付ニ付キマシ
テハ現行ノ十圓ヲ三圓ニ下ゲルト云フノヂ
ヤアリマセヌ、現行ノ十圓ト云フノハ入院
トカ、出產、一ツノモノニ付キマシテ十圓、
今度ハ一ツノ病氣ニ付キマシテ三圓ト云フ
コトニシタイト云フノデアリマスカラ、範
圍ハ十圓ノモノヲ三圓ニ下ゲルノトハ格段
ノ違ヒデアル、ソレカラ組合員ニ付テハ私共
ハ保險ノ手續上、殊ニ政府管掌デゴザイマス
ガ、政府管掌ノ保險手續上圓滑ニ行クナラバ、
家族給付ヲドノ病氣デモ半額ニ見テヤリタイ
ト云フ考ヘヲ持ツテ居リマスガ、唯ソレニ依
テ非常ニ事務ガ殖エルト云フコトヲ多少懸
念シテ居ルノデアリマス、其ノ事務的ナ考
へ方カラ見テ三圓ト云フ限度ヲ一應置イテ
見タ、出來レバ家族ノモノニ付キマシテハ
半額補給ト云フコトニ致スノガ理想ヂヤナ
イカト考ヘテ居リマス、其ノ點ハ尙ホ能ク
〓究シマシテ、出來得レバドノ小サイ病氣
ニ付キマシテモ、半額健康保險カラ家族給
付ヲシテヤルト云フ方法ニ致シタイト思ツ
テ居リマスガ、是ハ保險ノ實際ノ手續ヲ能
ク考ヘマシテ決定致シタイト思ヒマス、ソ
レカラ保險組合ニ付キマシテハ政府ガ行フ
程度ノモノハ最小限度ヤラセタイ、是ハ必
ズヤル、ソレデ保險組合ガ自己診療機關ヲ
有スルヤウナ場合ニ於キマシテハ家族診
療ニ付キマシテ三圓ト云フヤウナ制度ヲ置
カナイ方ガ、組合トシテヤハリ宜クハナイ
カト云フヤウナコトヲ考ヘマシテ、三圓ト
云フ限度ヲ組合ニ付キマシテハ少クトモ是
ハ自由ニスル、併シナガラヤハリ只今ノ所
デハ給付ト云フコトニ付テハ、半額ト云フ
標準ヲ大體一定シタイト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=39
-
040・塚本重藏
○塚本(重)委員 政府管掌ノ場合ハ能ク分
ツテ居リマス、組合管掌ノ場合ニ政府ノ決
メテ居ル三圓ノ限度以上ハ同ジニ實行スル
ヤウニ是非トモ御願ヒ致シタイ、ソレ以下
デモヤハリ半額給付デヤツテ差支ヘナイ、
斯ウ云フ意味ニ解釋シテ宜シウゴザイマス
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=40
-
041・木村清司
○木村(〓)政府委員 其ノ通リデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=41
-
042・西尾末廣
○西尾委員長代理 塚本君、一寸御注意シ
マスガ、一時間過ギテ居リマスガ、アナタ
ノ質問ハ重要デアリマスカラ、一ツモ殘ス
コトノナイヤウニ簡單ニ質問出來ルヤウニ
御注意ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=42
-
043・塚本重藏
○塚本(重)委員 有難ウデゴザイマス、委
員長ノ御心ヲ體シテ、以下簡單ニ致シマス
-次ハ等級デアリマスガ、標準報酬ノ等
級ト、標準報酬ノ日額デアリマス、是ガ健
康保險モ又從來ノ職員健康保險モ同樣デア
リマスガ、千二百圓マデニナツテ居ツタノ
ガ千八百圓マデニナツテ、千八百圓以上ハ
任意加入ト云フコトニ改メラレタノデアリ
マスカラ、當然標準報酬ノ等級、標準報酬
ノ日額ト云フモノモ變ツテ來ナケレバナラ
ヌト思フノデアリマスガ、成程變ヘテハア
リマスガ、之ヲ見マスト從來ノ健康保險ニ
於テハ十六級ニ分ケテアツタモノガ、級
減ラシテ十五級ニ決メラレテ居ル、サウ云
フコトニナルト標準報酬ノ日額ノ割當ト云
フモノハ非常ニ變ツテ來ルト思ヒマスガ、
此ノ內容ヲ一ツ御示シヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=43
-
044・木村清司
○木村(〓)政府委員 標準報酬ニ付キマシ
テハ現在ノ職員健康保險ト全然同ジニシタ
イト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=44
-
045・塚本重藏
○塚本(重)委員 現在ノ職員健康保險ハ十
級制度デアリマスガ、改正案ヲ見マスト十
五級ニ定メルト云フコトニナツテ居リマス
ガ、是ハ如何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=45
-
046・木村清司
○木村(〓)政府委員 現在ノ職員健康保險
ト同ジニスルト申シマシタノハ、考へ方ヲ
同ジニスルト云フ意味デアリマス、月額十圓
カラ百圓マデガ十級、ソレカラ最高百五十
圓マデ行キマスカラ十圓刻ミデ五級、食、
セテ十五級マデアルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=46
-
047・塚本重藏
○塚本(重)委員 現在ノ職員健康保險ガ十
級制度、ソレガ千二百圓カラ千八百圓ニナ
ツタカラ、是ト同ジ率デ十五級マデアルト
云フコトハ能ク分リマシタ、大體健康保險
組合法ノ改正ニ付テノ質問ハ其ノ程度デ打
切リマシテ、次ニ國民健康保險法ノ改正ニ
付テ一點ダケ御尋ネ致シマス
ソレハ御示シニナリマシタ資料ニ依リマ
シテモ、特別國民健康保險組合ガ非常ニ少
イノデアリマス、勿論是ハ農村、漁村、山
村ト云フヤウナ所ニ普及サセヨウト云フ目
的デオ作リニナツタノデアリマスケレドモ、
同時ニ又都市ニ於テモ出來ルダケ之ヲ普及
セシメル意味合ニ於テ、特別國民健康保險
組合ヲ作リ得ル餘地ヲ殘サレテ居ツタノデ
アリマス、所ガ今マデニ出來テ居リマスモ
ノハ僅カニ二十組合デ極メテ寥々タルモノ
デアリマス、卽チ神奈川縣ノ三ツ、和歌山
縣ノ二ツヲ除イテ、アトハ兵庫、群馬、奈
良、埼玉、愛知、鳥取、東京、三重、德島、
新潟、京都、高知、岐阜、大阪等各、〓一組
合ヅツシカナイ現狀デアリマシテ、甚ダ遺
憾ト思フノデアリマスガ、今度ノ改正ニ依
リマシテ今マデ六百万人程度ノ健康保險組
合加入者ヲ、一擧ニ千何百万人カヲ殖ヤサ
ウト云フ大計畫ヲ立テラレタノデアリマス
ガ、ソレト併行致シマシテ都市ニ於ケル特
別國民健康保險組合ノ成立ト云フコトノ上
ニ一段ト御努力ヲ拂ツテ戴キタイト思ヒマ
スガ、如何デゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=47
-
048・木村清司
○木村(〓)政府委員 其ノ趣旨デ從來普通
國民健康保險組合ニ强制加入ノ制度ガアツ
タノデスガ、今囘ハ特別國民健康保險組合
制度ニ付テモ强制加入ノ制度ヲ設ケマシテ、
唯運用ト致シマシテハ、今度ノ千三百七十
五万人分殖エテ居リマスル豫算ハ、大體農
村方面ニ集中スルノデアリマスガ、此ノ方
面ガ一段落付キマシタ曉ハ、將來是ト併行
致シマシテ都市ニ於ケル此ノ種ノ組合ニ付
キマシテハ、都市ニ於テモ尙ホ普通國民健
康保險組合ノ設立ヲ勸奬シ努力シテ行キタ
イト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=48
-
049・塚本重藏
○塚本(重)委員 時間ガ餘リアリマセヌカ
ラ此ノ程度ニ止メテ置キマシテ、次ニ產業
結核ノ對策ニ付テ質問シタイノデアリマス、
資料トシテ戴キマシタモノニ依ツテ見マシ
テモ、產業結核ノ方ハ非常ニ重大デアリマ
ス、職業別結核患者ノ調ニ依ツテ見マスレ
が、職業ノ中デモ工業方面ニ肺結核ガ最モ
多イ、工業方面ニ多イ結核ノ中ニ於テモ、
機械器具工場ガ最モ高率デアルト云フコト
ガ資料ニ依ツテ明カニセラレテ居リマス、
此ノ事ハ私ハ非常ニ關心ヲ持ツテ居ルノ
デアリマスガ、此ノ時局下ニ於テ重工業ノ
重要性ト云フモノハ言フマデモナイ、而モ
此ノ產業結核ガサウ云フ方面ニ於テ特ニ多
イト云フコトハ、是ハ重要視シナケレバナ
ラヌ問題ダト思フノデアリマス、事變下所
謂徵用セラレテ居ル勞働者ノ數ハ非常ニ多
イノデアリマスガ、此ノ徵用セラレタ人達
ノ中カラ病氣ヲ得テ歸〓スル者ノ數モ非常
ナ數ニ達シテ居ルコトヲ承知シテ居リマス、
其ノ非常ニ多ク歸〓致シマス者ノ中デ、其
ノ約七割ガ結核デアルト云フコトヲ聞イテ
居ルノデアリマス、是ハ非常ニ重大ナ問題
デアリマス、工場ニ勞務動員ヲ致シマス場
合ニハ、主トシテ靑少年工ヲ動員シテ居ル
ノデアリマス、動員セラレテ參リマスト今
日ノ工場設備ノ不備不完全、ソレカラ寄宿
舍或ハ下宿ノ不備不完全、或ハ緣故ヲ辿ツ
テ來マス者ニ於キマシテモ、非常ニ小サナ
部屋ノ中ニ多數ノ者ガ雜居シテ居ルト云フ
ヤウナ住居ノ不完全、ソレカラ此ノ委員會
デモ御話ノアリマシタ工場勞働者ニ對スル
給食ノ不十分、更ニ生活環境ノ變化、ソレ
カラモウ一ツ一番大キナコトハ、何ト申シマ
シテモ過勞デアリマス、サウ云フコトカラ
致シマシテ、此ノ動員セラレタ靑少年工ガ
非常ニ多ク結核ニ冒サレテ居ル、實ニ寒心
ニ堪ヘナイノデアリマス、私共ハ工場ノ中
ニ永イ間一〓ニ生活ヲシテ居ツテ、醫者デ
ナクテモ此ノ事情ガ能ク分リマス、動員セ
ラレテ來タ時ニハ林檎ノヤウナ顏色ヲシテ
居ル、ソレガ半年經タナイ中ニ顏色ガ靑ク
ナツテ來ル、ソノ中デ特ニ顏色ノ變ツテ行
ク者ヲ見テ居ルト、アノ人ハ冒サレタト云
フコトガ一目デ分ル、私共ガオ前ハ〓里へ
歸ツタラドウカ、外ニ職業ヲ變ヘタラドウ
カト注意シタコトモアリマスガ、ソレハ家
庭ノ事情、其ノ他ニ依ツテ中々サウ簡單ニ
職業ノ選擇ガ出來ナイト云フコトデ、其處
デ辛抱シテ働イテ居ル、サウスルト段々顏
色ガ惡クナツテ行キ、不健康ナ狀態ガ一層
增進行ツテ、遂ニ天命ヲ全ウスルコトガ出
來ナイデ殪レテシマフ、或ハ死ンデシマフ
ト云フヤウナ者ヲマザ〓〓ト私ハ工場ノ中
デ見テ居リマス、是ハ實ニ可哀想ナコトダ
ト思ヒマス、勞働管理ノ職ニアル者ハ能ク
分ルコトト思フガ、早目ニ轉職サセルトカ、
或ハ〓里ヘ歸ストカ或ハ早期療養ト云フヤ
ウナコトニ付テ、モツト親切ニヤツテヤル
ト云フコトガ一切行ハレテ居ラヌ、是ハ甚
ダ遺憾ナ點デアリマス、大工場ノ一部ノ所
ニ於テハサウ云フ施設ガナイノデハナイ、
ヤツテ居ルモノモアツテ、相當見ルベキ成
績ヲ擧ゲテ居ルモノモアリマスガ、大體ニ
於テサウ云フコトハ無關心ナ狀態ニアルト
言ツテ宜イト思フノデアリマス、是ハ洵ニ
遺憾ナコトデアリマス、此ノ前斯ウ云フ統
計ガ發表セラレテ居リマス、勞働科學〓究
所ノ資料調査ノ結果ニ依ルト、是ハ某重工
業ノ一ツノ工場ニ付テデアリマスガ、結核
ニ罹ツテ解職セラレテ〓里へ歸ツタ者三百
七十五名ニ付テ調査シテ見マシタ所ガ、其ノ
中二百六十六人ガ旣ニ死亡シテ居ル、而モ其
ノ死亡ノ狀況ヲ見マスト、歸〓シテ半年未
滿デ死亡シタ者ガ百三十一名、二年未滿デ
死亡シタ者ガ五十七名、三年經タズシテ死
亡シタ者ガ四十三名、斯ウ云フ風ニ一三年ノ
間ニ結核デ歸〓シタ三百七十五名ノ中ノ二
百六十六人ハ死亡シテ居ルト云フヤウナ驚
クベキ調査ノ結果ガ勞働科學〓究所カラ發
表セラレテ居ル、是ハ實ニ寒心スベキ事柄
ダト思ヒマス、私ハ斯ウ云フ點ニ於テモ最
初申述ベタヤウニ、勞務動員ヲヤツタ場合
ニ本當ニ適材ヲ適所ニ使フト云フコトガ更
ニ必要ヂヤナイカト思ヒマス、體力管理法
モ出テ居リマシテ、體力手帳制度ガ布カレ
テ居ルノデアリマスガ、是ハ赤ン坊ノ時カ
ラズツト體力手帳ノ必要ガアル、從來ノ體
力手帳ノ成績ニ依ツテ、サウ無茶苦茶ニ、
アレハ遊ンデ居ルカラト云フコトデ動員シ
ナイヤウニ、體力ニ相應スル所ノ仕事ヲ授
ケルヤウニシテヤラナケレバナラヌ、足 八
勞務管理ノ方面デアリマスケレドモ、一旦
工場ノ中ニ動員セラレタ者デモ、工場ノ都
合ニ依ツテ其ノ體力ノ如何ニ拘ラズ、人
員配置ヲスル現狀デアリマス、私ハ出來ル
ナラサウ云フ人達ニ色々ナ職業ヲ一應ハヤ
ラセテ見ル、旋盤モ使ハセテ見レバ、「ミー
リング」モ使ハセテ見ル或ハ「ボール」盤モ
ヤラセテ見レバ仕上等色々ヤラシテ見ル、
サウ云フ風ニシテ其ノ中デ何ヲ希望スルカ
ト云フ本人ノ希望スル所ト本人ノ體力トヲ
考ヘ合ハセテ、適當ナ所デ仕事ヲサセルト
云フ親切サガアツテ宜イノヂヤナイカト思
フガ、サウ云フコトガ行ハレテ居ラヌ、唯
動員セラレテ來タ時ノ事情ニ依ツテ無茶苦
茶ニ人員ヲ配置セラレテ居ルト云フヤウナ
狀態デアツテ、甚ダ遺憾デアルト思ヒマス
ガ、斯ウ云フ產業結核ニ對シテ特別ナ何カ
ノ御考慮ガアツテ然ルベキダト思フ、幸ヒ
ニ今般醫療團ガ出來テ八万ノ結核病床ヲ五
箇年ノ間ニ作ラレルト云フコトハ洵ニ結構
デアリマスガ、此ノ中ニ產業結核對策トシ
テノ特別ノ優先的ナ病床ヲ持タセルト云フ
コトガ絕對必要デアルト思ヒマス、唯病床
ヲ此ノ中ニ考ヘテ置クダケデナシニ、全般
ニ亙ツテ此ノ點ニハ深イ留意ヲシテ戴キタ
イト思フ、是ハ住宅政策ニモ及バナケレバ
ナラヌコトデアルシ、國民榮養食ノ問題モ
アリマセウ、色々ノ問題ニ付テ考ヘナケレ
バナリマセヌガ、此ノ點ニ對シテ何等カ特
別ナ考慮ガ拂ハレテ居リマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=49
-
050・武井群嗣
○武井(群)政府委員 產業結核問題ニ付テ、
各種ノ調査報告或ハ具體的事例ラ御擧ゲニ
ナツテ熱心ニ御述ベニナリマシタ事柄ニ付
テハ、私共全然同ジ考ヘヲ持ツテ居ル譯デ
アリマシテ、折角ノ產業戰士、殊ニ將來アル
若人ガ途中ニ於テ空シク挫折スルト云フコ
トハ、御國ノ爲ニモ洵ニ歎カハシイコトデ
アリマスノデ、根本的ニ左樣ナコトノナイ
ヤウニシナケレバナラヌト云フコトニ付テ
ハ御話ノ通リデアリマス、色々ト御話ニナ
リマシタヤウニ、何分ニモ急激ニ短時日ノ
間ニ勞務動員等ヲ致シ、徵用ニ依ツテ人ヲ
集メル必要ニ迫ラレテ居ル譯デアリマスノ
デ、ソレ等ノ動員ニ付テ健康狀態ヲ精査ス
ル譯ニ參ラナイ、其ノ餘裕ノナイ場合モア
ル譯デアリマス、况ヤ其ノ體格トソレニ適
當スル職場トノ關係等ヲ、一々綿密ニ檢査
シテ參ル餘裕ノナイ場合ガ屢〓アルコトヲ
先ヅ御諒解ヲ願ヒタイノデアリマス、斯樣
ナ狀況デアリマスノデ、當然必要デアル所
ノ住宅ノ如キモノニ付テモ、思フヤウニ參
ラナイト云フ實情モアリマシテ、御話ノヤ
ウナコトモアル譯デアルト存ジマス、徵用
ニ付キマシテハ、出來得ル限リ此ノ徵用ニ
必要ナル住宅ノ設備等ヲ新設、若シクハ借
用、其ノ他ニ依ツテ設備スルヤウニ色々勸
メテ居リ、時ニハ條件ヲ附スルト云フヤウ
ナコトヲ致シテ居ル譯デアリマスガ、新設
ニ付テハ資材ノ關係等モアツテ思フヤウニ
必要ナル住宅ガ得ラレナイコトモ、是亦實
情ヲ御諒察願ヒタイ譯デアリマス、更ニ又
一度工場ニ入ツタ者ノ作業等ガ、仕事ヲ急
グト云フヤウナ關係上、今御話ノヤウナ或
ハ旋盤、或ハ「ミーリング」其ノ他ソレム
試驗ヲシテ適當ナ向ヘ〓ハスト云フヤウナ
コトモヤツテ居ラヌ譯デモナイノデアリマ
スガ、十分ニ科學的ニヤリ得ナイコトモ御
話ノ通リデアリマス、ソレガ爲ニ折角產業
戰士トシテ奉公ノ念ニ燃エテ出テ來マシタ
ケレドモ、短時日ノ間ニ病魔ニ冒サレテ歸
〓シ、アタラ靑春ヲ空シクスルト云フコト
モ相當アルノデアリマス、其ノ一面ニ於テ
ハ今日アル結核患者ヲ速カニ治療致シ本復
セシメル爲ニ、醫療團等ニ於テ病床ヲ殖ヤ
スト云フコトハ既ニ御話ノ通リデアリマス
ガ、產業ニ因ル結核ガ相當多數ヲ占メテ居
ルコトモ事實デアリマスノデ、是等ノ方面
ニ特ニ考慮ヲ拂ツテ、產業ニ因ル是等疫病
ニ對スル病床ヲ豫定スルコトモ當然ト思ツ
テ居リマス、御話ノ中ニ大工場等ニ於テハ
相當ノ設備ガアルト云フコトデアリマスガ、
其ノ通リデアリマシテ、是等ノ行屆イタ設
備ヲ有スル大工場ノ例ニ倣ヒ、中小ノ工場
ニモ出來ル限リ工場主、事業主ヲシテ左樣ナ
設備ヲナサシメルヤウニ勸メテ居リ、時ニハ
之ヲ强制スルト云フヤウナ途モ今日マデモ
ヤツテ居ルノデアリマスガ、更ニ進メテ參
リタイト思ツテ居リマス、ソレカラ又新タ
ニ工場ニ採用セラレタ者ハ其ノ當初ニ於テ
嚴重ナル體格檢査ヲ致シ、之ニ耐エ得ルト
認メル者ニアラザレバ就業セシメナイヤウ
ニスルコトモ必要デアラウト思ヒマシテ、
是等モ只今法制上ノ考慮ヲ拂ツテ居ル次第
デアリマス、尙ホ現在ノ工場法其ノ他之ニ
基ク法令等ニ於テモ、年ニ一囘乃至二囘ノ
身體檢査ヲサセルコトニナツテ居リマスシ、
又工場醫ヲ置クコトヲ命ジテ居ルノデアリ
マスガ、是等ノ工場醫ヲ置ク範圍等モ更ニ
擴メマシテ、出來ル限リ工場醫ヲ各種ノ工
場ニ置カセルヤウニ致シマシテ、其ノ工場
醫ノ職務ノ遂行ニ依リマシテ健康狀態ニ適
當スルヤウナ職場ヲ與ヘ、又休養等ヲ與ヘ
ルヤウニ之ヲ勵行スル積リデ、是等ノ法制
ノ改正等モ今進メツツアル狀況デゴザイマ
ス、休養ノ外ニ榮養ノ大切ナコトハ勿論デ
アリマス、大工場ニ於キマシテハ工場ニ於
テ共同炊事ト云フヤウナコトヲヤツテ居ル
ヤウデアリマスガ、各府縣廳ニ於キマシテ
モ此コノトニ付キマシテハ相當考慮ヲ拂ヒ
マシテ、出來得ル限リ共同炊爨ト云フヤウ
ナ方ニ進メ、殊ニソレニ付テハ地方廳ノ榮
養士ヲ派遣シテ之ニ協力ヲ與ヘ、乃至ハ設
備資材、配給等ニ付キマシテモ格別ノ考
慮ヲ拂ヒツツアル實情デアリマス、是等ハ
全國的ニ進メタイト思ツテ居リマス、斯樣
ニ色々ト考ヘテ居ル譯デアリマスガ、更に
其ノ根本トナリマスモノハ、是等ノ病氣ニ
罹リ易イ者ヲシテ罹ラナイヤウニ致シモツ
トモツト體力ノ强健ナ者ヲ作リ出スコトガ
必要デアル譯デアリマス、此ノ點ニ付キマシ
テハ國民體力法ノ改正ト相俟チマシテ、十
五歲乃至二十五歲ノ靑年達ニ對シテハ通常
每年一回、產業戰士ニ對シテハ年一一囘ノ嚴
重ナル體格檢査ヲ行フ、而モ精密ナル檢査
ヲ行ツテ、虛弱ト認ムル者ハ之ニ修鍊ノ機
會ヲ與ヘ、病弱ト認ムル者ニ對シテハ之ニ
速カナル療養ノ指導ヲ與ヘ、又家計ノ都合
上療養ヲナシ得ザル者ニ對シマシテハ、公
費ヲ以テ之ヲ補助スルト云フヤウナ途モ開
キマシテ、今後先ヅ以テ病氣ニナラナイ、
抵抗力ノ强イ靑年ヲ作リ上ゲ、ソレ等ヲ產
業場ニ送ル、送ツタ場合ニ於キマシテノ手
當ハ先程申上ゲマシタヤウナ、衣食住各方
面ニ付キマシテノ考慮ヲ拂フコトニ致シマ
シテ、今御話ノヤウナ御心配ヲ少シデモ速
カニ輕減スルヤウニ致シタク熱意ヲ持ツテ
居ル譯デアリマス、尙ホ八万床ノ病床ノ中
デドレダケヲ之ニ割愛スルカト云フ具體的
ノモノハマダ決ツテ居リマセヌケレドモ、
今日ノ實情、產業戰士ガ相當多イト云フコ
トデアリマスレバ、是等ニ付テ最モ多クヲ
與ヘナケレバナラヌコトハ當然ノコトト存
ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=50
-
051・木村清司
○木村(〓)政府委員 先程政府管掌健康保
險特別會計ノ一般會計繰入金ノ件ニ付キマ
シテ調ベマシタ所ガ、前年度政府管掌健康
保險特別會計ニ於テ結核ノ病床建設ノ爲ニ
十五万圓補助ガアリマシタ、明年度ニ付キ
マシテハ是ガ當初豫算ニ削ラレテアリマス
ルガ、追加豫算二十二万圓計上シテアリマ
ス、只今申上ゲマシタノハ詰リ一般ノ事務
費トカ給付費ト云フモノデナシニ、結核病
床ヲ健康保險特別會計デ持ツ爲ノ特別ノ補
助ニ向ケルト云フコトデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=51
-
052・塚本重藏
○塚本(重)委員 マダ澤山アルノデゴザイ
マスケレドモ、申合セノ時間ガ三四十分モ
經過シテ居リマス、丁度十二時ガ參リマシ
タカラ、他ノ質問ハ同僚ニ御願ヒスルコト
ニ致シ、大臣ニ對シマスル一、二ノ質問ヲ適
當ノ機會ニ與ヘラレンコトヲ御願ヒマシテ
私ノ質問ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=52
-
053・西尾末廣
○西尾委員長代理 ソレデハ是デ休憩致シ
やく、午後一時カラ再開致シマス
午後零時五分休憩
午後一時三十分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=53
-
054・紫安新九郎
○紫安委員長 開會致シマス-西尾君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=54
-
055・西尾末廣
○西尾委員 畏クモ御稜威ノ下、皇軍ノ赫々
タル武勳ニ依リマシテ、戰果ハ素晴シク
擧ゲラレテ居ルノデアリマシテ、我ガ國民
ノ理想ト致シテ居リマス大東亞共榮圈ノ建
設モ、昨年吾々ガ考ヘテ居ツタヨリモ割合
ニ早ク進捗スルノデハナイカト思フノデア
リマス、此ノコトハ洵ニ吾々國民ト致シマ
シテ感激ニ堪ヘナイ次第デアリマスガ、ソ
レニ付キマシテモ豫想サルル長期戰ヲ戰ヒ
拔キ、更ニ戰後ノ共榮圈ヲ建設經營シテ行
クニ於キマシテモ、人ノ問題ガ重要ニナツ
テ來ルノデアリマス、然ルニ現實ハドウカ
ト申シマスルト、農村ニ於キマシテモ都市
ニ於キマシテモ、國民ノ體位ハ損ハレツツ
アルノデアリマス、更ニ其ノ上ニ戰爭ニ依
リマシテ出生率ハ當然減少スルモノト考ヘ
ナケレバナラヌ、卽チ國ガ求メテ居ルモノ
ハ强兵健民、人口增殖デアリマスルガ、現實
ハ其ノ逆ノ傾向ヲ迪リツツアルノデアリマ
ス、此ノ傾向ヲ克服致シマシテ、大東亞
共榮圈建設ノ國家的要請ニ應ズル爲ニハ、
厚生省ノ擔任スル責任極メテ重大デアルト
言ハナケレバナラヌノデアリマス、今囘御
提案ニナリマシタ法律案ハ、總テ此ノ目的
ノ爲ニ致サレタモノデアルト存ジマスルノ
デ、私共ニ於キマシテモ、大體ニ於テ是等
ニ贊成致シタイト考ヘテ居ルノデアリマス
ガ、唯總括的ニ結論ヲ先ニ申上ゲマスナラ
バ微溫的デアリ、不十分デアルト考ヘザ
ルヲ得ナイノデアリマス、本當ニ國家的要
請ニ應ズル爲ニハ、モツト思切ツテ積極的
ニ此ノ人ノ問題ヲ解決スル爲ノ努力ヲ致サ
ネバナラヌノデハナイカト思フノデアリマ
ス、斯ウ云フ見地ニ立チマシテ、三、四ノ質問
ヲ致シテ見タイト思フノデアリマス、先ヅ
第一ニ本委員會ニ於テモ同僚諸君ニ依リマ
シテ熱心ニ質問サレ、又政府モ十分ニ御答
ヘニナツテ居ラレマシタ結核撲滅ノ問題ハ勿
論ノコトデアリマスガ、所謂强兵健民、人
口增殖等ニハ、ドウシテモ健全ナル國民生
活ヲ保障スル、詰リ健全ナル國民生活ノ上
ニノミ是等ノ大政策ガ樹立サレ、其ノ效果
ヲ期待シ得ルト思フノデアリマス、就キマ
シテハ、第二次近衞內閣ハ最低國民生活ヲ
保障スルト言ハレタノデアリマシテ、歷代
ノ內閣及ビ現內閣ニ於テモ此ノ方針ヲ踏襲
サレテ居ルト思フノデアリマス、議會ニ於
テ此ノ點ニ付キ三、四質疑應答ガ行ハレタ
コトガアツタノデアリマスケレドモ、何レ
モ抽象的デアリマシテ、一體政府ハドノ程
度ヲ以テ國民ノ最低生活ト考ヘテ居ルノ
カ、何等是ガ具體的ニ現ハサレテ居ナイノ
デアリマス、卽チ玆ニ御尋ネ致シタイノハ、
最低國民生活トハ一體具體的ニハドウ云フ
コトデアルカ、出來ルダケ是ガ理念ナリ、
若シクハ數字的ニ御示シヲ願ヒタイト思フ
ノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=55
-
056・小泉親彦
○小泉國務大臣 只今大東亞共榮圈確保ノ
爲ニ健全ナル國民生活ヲ確保スルト云フコ
トガ第一要義デアルト云フ御說、洵ニ御尤
モデアルト存ジマス、-就キマシテハ政府ニ
於テモ此ノ健全ナル國民生活ヲ確保スル、
其ノ最低ノ、卽チ最モ此ノ目的ニ合適スル
國民生活ノ標準、是ガドウ云フモノデアル
カト云フコトニ付テハ、各方面カラ懸案ヲ
檢討シテ居ル次第デアリマス、卽チ國民生
活ガ從來御指摘ノヤウニドウモ抽象的ニシ
テ實際ニソグハナイ點ガアルト云フヤウナ
コトハ、政府ニ於テモ認メテ居ル次第デア
リマス、隨ヒマシテ此ノ國民生活ト云フモ
ノヲ凡ユル方面カラ綜合的ニ之ヲ檢討シテ、
其ノ綜合的ノ國民生活ト云フモノヲ又各方
面ヨリ綜合的ニ觀察ヲシテ、サウシテ合理
的ニ之ヲ導クト云フコトヲ考ヘテ居ル次第
デアリマス、併シナガラ今日綜合的ニ各方
面カラ綜合國民生活ト云フモノヲ見出スノ
三、今マデニサウ云フ措置ガ執ラレテ居
リマセヌ、又サウ云フ態度モ十分デナカツ
タト云フ關係カラ、新タニ玆ニ斯ウ云フコ
トヲヤル爲ニ相當ノ日時、色々ナ準備等モ
必要ナコトハ致シ方ナイ次第デアリマス、
併シサウ云フ〓究、或ハ調査ガ出來上ルマ
デ其ノ儘放ツテ置クト云フコトハ、今日ノ
事態相許サレナイト云フノデ、明カニナツ
テ參リマシタモノカラ、逐次之ヲ進メテ行
ク、斯ウ云フ風ニ致シテ居ル次第デアリマ
ス、隨ヒマシテ最低限度トハ斯ウ云フモノ
ナリト數字的ニ之ヲ示スト云フコトハ
至難ノコトノヤウニ考ヘテ居ル次第デアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=56
-
057・西尾末廣
○西尾委員 數字的ニ發表ナサルコトガ困
難デアルト云フ趣旨ハ了承致シタノデアリ
マスガ、然ラバ私ノ方カラ二、三例示致シ
マシテ御尋ネ致シタイト思フノデアリマス、
先ヅ其ノ理念ノ問題ヲ明カニシテ置キタイ
ノデアリマス、此ノ事變ガ起リマシテカラ、
トモスルト斯ウ云フコトガ能ク言ハレテ居
ルノデアリマス、第一線ノ兵隊サンノコト
ヲ考ヘマスナラバ、假令三杯ノ飯ヲ二杯ニ
シテモ、三遍食フ飯ヲ二遍ニシテモ、或
梅干ト握飯トサヘアレバ宜イデハナイカ、
隨テ生活問題ヲ餘リ論ズルコトハ宜シクナ
イノデアヅテ、ソレハ時局認識ノ足ラヌモ
ノデアル、斯ウ云フヤウナ說ガ屢〓論ゼラ
レタ、今日ニ於テモ尙ホサウ云フコトガ論
ゼラレテ居ルノデアリマス、ソレカラ又甚
ダヲカシイ話デアリマスガ、或ル陸軍大臣
デ、日本ハ大和魂サヘシツカリシテ居レ
バ、竹槍サヘアレバ防備ガ出來ルノダト
云フヤウナコトヲ言ツタ陸軍大臣モアツタ
位デスカラ、民間ニ於テサウ云フ意見ノア
ルコトハ、又無理カラヌカトモ思フノデア
リマスガ、私ハ是ハ國民ノ心構ヘトシテ
ハ國家ノ爲ニハ握飯ト梅干デヤツテ行ク
ノダト國民自身ガ自發的ニサウ云フ心構ヘ
ニナルコトハ望マシイノデアリマスガ、凡ソ
政治ニ當ル者ハサウ云フ風ニ國民ニ頭カ
ラオツ被セルモノデハナイト思ヒマス、私
ノ理解スル所ニ依リマスト、今日ノ强兵健
民、ソレニ依ツテ長期戰ニ堪へ、大東亞共
榮圈ヲ確立スル爲ニハ、私ハ斯ウ云フ風ニ
最低生活ノ問題ハ定義シテ掛カラナケレバナ
ラナイノデハナイカト思フノデアリマス、
卽チ最低國民生活トハ生產者ニ取ツテハ明
日ノ勞働力ヲ再生產スル所ノ生活デアリ
國民ニ取ツテハ强兵トシテ戰鬪力ヲ養フコ
トノ出來ル最低限度ノ生活デアル、卽チ生
ギテ居リサヘスレバ宜イト云フ、動物的ナ
意味ニ於ケル最低生活デハナクシテ、今日
國ノ必要トスル國民ノ最低生活ト云フモノ
ハ以上ノヤウナモノデナケレバナラヌ、斯
樣ニ考ヘテ居ルノデアリマスルガ、如何デ
アリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=57
-
058・小泉親彦
○小泉國務大臣 御說ノ通リデゴザイマシ
テ、今日ト致シマシテハ、戰爭ニ勝ツ爲ニ
今仰セノヤウナ意味ノ生活ヲ確保スル、是
ガ最低限度デアル、斯ウ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=58
-
059・西尾末廣
○西尾委員 大體以上私ガ申シマシタヤウ
ナ定義ニ從ヒマシテ、最低生活費ヲ調査シ
ダモノガアルノデアリマス、第五囘人口間
題全國協議會ノ席上ニ於キマシテ、勞働科
學〓究所ノ安藤政吉氏ノ發表ニ依リマスル
ト、標準家庭、卽チ大體夫婦ニ子供三人ア
ルモノヲ標準家庭ト致シマシテ、月額百四
十八圓ハ要ル、斯ウ云フコトヲ發表シテ居
ルノデアリマス、大體今日ノ此ノ生活問題
ノ學究的立場カラ、或ハ社會問題ヲ解決シ
タイト云フヤウナ立場カラ〓究シテ居ル者
ノ多クノ結論ハ、〓ネ此ノ邊ニ來テ居ルヤ
ウニ私共ハ承ツテ居ルノデアリマス、而モ
此ノ勞働科學〓究所ハ單ナル民間ノ〓究所
デナクシテ、產業報國會等トモ關係ノ深イ、
謂ハバ半官半民的ノ公的ノ性質ヲ持ツテ居
ル機關デ調査シ、ソレガ公的ナ人口問題ノ
全國協議會デ發表サレタト云フコトハ、相當
重要ナ性質ヲ持ツテ居ルモノトシテ考ヘナ
ケレバナラヌト思フノデアリマスガ、之二
對シテ如何樣ニ御考ヘデアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=59
-
060・小泉親彦
○小泉國務大臣 只今御述ベニナリマシタ
點ハ有力ナル資料トシテ十分ニ參照シテ行
キタイト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=60
-
061・西尾末廣
○西尾委員 ヤハリ生活問題ニ直接ノ關係
ガアルノデアリマシテ、ソレハ勞働賃金ニ
關スルコトデアリマス、勞働者ノ生活費ノ
大都分ガ勞働賃金デ賄ハレテ居ルト云フ點
カラ考ヘテ御伺ヒ致シタイノデアリマス
ルガ、週報ノ昨年ノ六月二十五日號ニ發
表シテ居ル所ニ依リマスルト、賃金ニ關ス
ル表ガ出テ居ルノデアリマス、ソレハ男子
勞務者ノ最低賃金デ東京、大阪等ニ屬スル第
一級デハ二十歲以上二十一一歲マデガ一圓〇
五錢ニナツテ居ル、假ニ之ヲ一箇月三十日
トシマシテ、三十日ヲ掛ケマスト、三十一圓
五十錢ニナツテ居ルノデアリマス、是ハ獨
身者デアリマスカラ、大體此ノ程度ナラ、
生活出來ルノデハナイカト思フノデアリマ
スルガ、次ニ二十五歲カラ三十歲マデ、是
ハ大體子供ガ一一位位アル家庭デ、二十八、九
歲ト云フコトニナレバ、二人位子供ガアツテ
モ宜イト考ヘルノデアリマスガ、ソレノ最
高初給賃金ガ二圓十三錢ニナツテ居リマス、
之ヲ三十倍致シマスト、六十三圓九十錢ニ
ナル、勿論之ニハ色々殘業等ガアリマシテ、
實際收入ハモツト多クナツテ居ルト思フノ
デアリマスガ、又一面約一割ノモノハ健康
保險ノ掛金デアルトカ、退職手當等ニ依ツ
テ差引カレテ、實質的ニハヤハリ六十三圓九
十錢位ナモノデハナイカト思フノデアリマ
ス、是ハ政府ノ決定シタ賃金ニ於テ生活シ
テ居ルノデアリマスカラ、政府ニ於テ十分
責任ノアルモノデアルト思フノデアリマス
ガ、大體此ノ程度デヤツテ行ケルト云フ御
考ヘデアリマセウカ、之ヲ御伺ヒ致シタイ
ノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=61
-
062・持永義夫
○持永政府委員 賃金ノ統制ニ付キマシテ
ハ、御承知ノ通リニ生活費ヲ基準ニシテ計
算シタモノデハゴザイマセヌノデ、物價ノ
統制ト同ジヤウニ大體十四年ノ九月十八日
ヲ基礎ニシマシテ、ソレカラ一昨年ノ
十月ニ賃金統制令ノ改正ヲ致シマシタ
際ニハ、十四年ノ九月十八日カラ其ノ後ニ
於ケル其ノ時マデノ物價趨勢及ビ賃金ノ
趨勢カラ考ヘマシテ決定シタモノデアリ
マス、隨ヒマシテ生活費ガドレダケ要ルカ
ラドレダケニスベキカト云フヤウナ計算デ
出テハ居ラナイノデアリマシテ、實情ヲ基
礎ニシテ、ソレニ或ル程度ノ加減ヲシテ決
メタモノデアル、只今御話ノ最低賃金ニ付
キマシテモヤハリ各業種ニ亙リマシテ男女
別、年齢別ニ實地調査致シマシテ、ソレヲ基
礎ニシテ少シ技術的ノ言葉ニナリマスガ、
標準偏差法、卽チ最低ノ場合ニ於キマシテ
ハ下カラ一割五分マデハ省キマシテ、罰
六分以上ノモノヲ基礎ニシ、又上ノ方ハ一
割五分ヲ削リマシテ、一割六分以下ノモノ
デ其ノ中間ニ於テ決メタイト云フノガ實情
デアリマス、隨ヒマシテ今囘ノ生活費カラ
計算致シマスト、具體的ノ場合ニ於キマシ
テハ、或ハ是デハ生活シテ行ケヌト云フ場
合モ只今御話ノヤウニアリ得ルト云フコト
ガ豫想サレマスガ、併シ賃金支拂ノ實際ニ
於キマシテハ、此ノ公定ジマシタ際ニヤハ
リ最高及ビ標準賃金ヲ決メマシテ、出來得
ベクンバ其ノ標準賃金ニナルヤウニ實ハ指
導致シテ居リマス、隨テ最低賃金ヲ貰フト
云フ場合ハ、極ク稀有ナ場合デアリマシテ、
非常ニ勞働能率ノ惡イ人デアルトカ、或ハ
出勤率ガ非常ニ惡イト云フヤウナ、特別ナ
人ノミニ付テ起リ得ルノデアリマシテ、普
通ニ働イテ居ル人ハ、大部分ハ標準賃金ヲ
前後ニシテ支給サレルト云フコトデゴザイ
マン、デアリマスカラ、單ニ最低賃金ノ金
額ノミヲ以テ現實ノ賃金支拂ヲ考ヘルト云
フコトハ出來ナイノデアリマシテ、是ハ西
尾サンモ御存ジカト思ヒマスガ、事實ハ大
體標準賃金前後ニ於テ支拂ハレテ居ルト云
フコトガ言ヘルト思ンノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=62
-
063・西尾末廣
○西尾委員 私モ勞働局長ノ御話ノコトハ
十分存ジテ居ルノデアリマシテ、問題ハ最
低生活費ト云フコトガ單ニ動物的ノ意味ノ
モノデナイト云フ意味ニ於テ最低賃金ノ數
字ヲ引用シタノデアリマスガ、御話ノ標準
賃金ヲ以テシマシテモ、實際ニハ是ハ足ラヌ
ノデハナイカト云フ考ヘヲ持ツテ居ルノデ
アリマス、御話ノヤウナ意味デ此ノ最低賃
金ガ決マツタト云フコトハ、丁度之ヲ經濟
界ノ統制等ニ思ヒ合ハシテ見マスト、所謂
實績デ抑ヘル、過去ガ斯ウデアツタカラ實
績デ抑ヘルト云フノデアリマスガ、最早今
日實績主義ハ廢止サレマシテ、寧ロ適正ナ
現狀ニ卽シタ統制ガ行ハレネバナラヌト云
フコトガ考ヘラレテ居ルコトニ鑑ミマシテ、
更ニ此ノ最低賃金、或ハ其ノ他標準賃金ナ
リ、最高初給賃金等ガ決定サレ實施サレマ
シタノハ、昨年ノ八月一日カラデアリマス
ガ、而モ此ノ決定ニ至ツタ資料ハ一昨年、
昭和十五年ノ五月現在ノ資料デ決定サレテ
居ルノデアリマスルカラ、非常ニ物價ガ抑
ヘラレテ居ルトハ言フモノノ、御承知ノヤ
ウニ段々ト實質的ニハ上ツテ居ル今日ニ於
テ、サウシテ又一方ニハ結核病等ガ產業勞
働者ノ上ニ益〓、猛烈烈ニ蔓延シツツアルト
云フ事實等ニ鑑ミマシテ、玆ニ賃金政策ニ
付キマシテ根本的ニ實績主義ノ殼ヲ脫シタ
是デナクテハ本當ニ產業戰士ヲ養フコ
トハ出來ナイ、長キニ亙ツテ其ノ能率ヲ發
揮サスコトガ出來ナイト云フ意味ニ於テ、
賃金政策ニ付キマシテ寧ロ從來トハ根本ノ
考ヘ方ノ變ツタ、詰リ國民ノ生活ヲ如何ニ
シテ最低限度ニ保障スルカ、詰リ今日國ガ
要求シテ居リマスル生產事業ニ、今日モ働
カセ、明日モ働カセ、來年モ働カセル爲ニ
ハ、セメテハ此ノ程度ノコトヲシナケレバ
ナラヌト云フ點ニ於キマシテ、賃金政策ニ
於テ此ノ際非常ニ思切ツテ改革スルト云フ
決意ガ必要ヂヤナイカト思フノデアリマス
ガ、此ノ點ニ對スル御考ヘヲ承リタイト思
フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=63
-
064・持永義夫
○持永政府委員 賃金ノ政策ハ、物價政策
ト同ジヤウニ非常ニムヅカシイ政策デゴザ
イマス、併シ厚生省トシマシテハ常ニ物價
ノ趨向ヲ洞察致シマシテ、常ニ勞務者ニ對
スル親心ヲ以テ賃金ノ政策ヲ決メテ行キツ
ツアリマス、只今御話ノ賃金統制令ニ依ル
賃金水準ト云フモノハ、御話ノヤウニ昭和
十五年ノ五月頃ノ調査ノミナラズ、是ハ內
閣統計局ノ資料モアリマスガ、尙ホ私ノ方
デハ其ノ外ニ十六年ノ三、四月ノモノヲ勞働
局ダケデ調査致シマシテ、ソレヲ勘考シテ
十五年ノ十二月ニ賃金統制令ヲ決メタ譯デ
アリマス、隨ヒマシテ是ハ餘リ物價ト懸離
レタモノデハイケナイガ、物價ノ値上リノ
趨勢ニ應ジテ實ハ相當餘裕ヲ持ツテ居リマ
ス、モノニ依ルト一割五分トカ二割近クノ
モノガ其ノ結果上ツテ來テ居ル、デスカラ十
五年ノ五月ダケノ資料デナク、十六年ノ三、
四月ノ資料ニ基イテ、相當程度ノ考ヘヲ加
ヘテ現在ノ賃金統制ヲヤツタ譯デアリマス、
其ノ結果最近ノ賃金指數ヲ見マシテモ、實
質賃金指數ハ物價ニ合フテ居ル、物價ヲ百
ト致シマスト、賃金モヤハリ百近クニナツ
テ居ル、月ニ依ツテ九十六トカ、或ハ百
ニナリマスガ、大體物價ニ合フテ居ル、殊
ニ鑛山ニ於キマシテハ時局柄特別ノ考慮ヲ
拂ヒマシタ爲ニ、鑛山勞務者ノ賃金ハ寧ロ
物價指數以上ニ上ツテ百十幾ラト云フヤウ
ニナツテ居リマス、隨ヒマシテ全般的ニ申
シマスト厚生省トシマシテハ、物價政策ヲ
破ラヌ程度ニ於テ、親心ヲ以ツテ賃金政策
ヲ遂行シテ居ルト云フコトガ言ヘルト思ヒ
きく、唯問題ハ個々別々ノ工場鑛山ニ於キ
マシテ、或ハ低イモノガアルカモ知レマセ
又、是ハ結局其ノ事業主ノ考ヘ方、或ハ事
業ニ於ルケ受益狀況等ニ依ツテ支配サレル
コトト思ヒマスガ、現在ノ賃金統制令デハ
御承知ノヤウニ相當彈力性ガゴザイマス、
多年勤續シタ勞務者ノ多イ鑛山等ニ於キマ
シテハ、ソレヲ理由ニシマシテ或ル程度平
均時間割賃金ヲ上ゲル、又技能ノ優レタ生
產ノ良イ工場鑛山ニ於キマシテハ、ソレニ
應ジテ賃金ヲ或ル程度ノ上ゲルト云フヤウ
ニ、彈力性ノアル方法ヲ執ツテ居ル譯デア
リマス、隨ヒマシテ現在ノ所デハ今ノ賃金
政策ヲ變ヘルコトハ物價政策トノ關聯カラ
考ヘマシテモ、サウ簡單ニ變ヘラレナイ、
特別ナ支障ノナイ限リハ現在ノ方法デ行キ
タイト云フヤウナ考ヘヲ持ツテ居ル次第デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=64
-
065・西尾末廣
○西尾委員 厚生省ガ勞務者ニ對シテ親心
ヲ以テ臨ンデ居ラレ、隨テソレノ實現ニ對シ
テ御努力セラレテ居ルコトハ、私モ常カ
ラ承知シテ喜ンデ居ルノデアリマス、併シ
厚生省モ時ニハ他ノ省トノ關係等デ思フニ
任セヌコトガアリ旨ク行カヌノデハナイ
カト思ヒマスガ、厚生省トシテハ、此ノ際
特ニユトリヲ以テ人口政策ノ立場カラ、能
率增進ノ立場カラ勞働者ノ賃金ガ若シ現在
最低生活ヲ十分ニ保障シテ居ナイトスレバ、
之ヲ改メテモ宜イノデハナイカト云フ理由
ヲ發見シテ居ルノデアリマス、勞務者ノ最
低賃金、標準賃金、最高初給賃金等ヲ決メ
タ當時ニ於テハ、之ニ二ツノ「ウエイト」ガ
掛ツテ居ル、卽チ移動防止ト低物價政策ト
デアリマス、移動防止ハ其ノ後勞務調整令
ガ施行サレ、又徵用令等モ施行サレマシテ
相當强イ勞働ノ强制配置ガ行ハレテ居ルノ
デアリマスカラ、詰リ賃金政策ノ上ニ課セ
ラレテ居タ重味、移動防止ト云フ意味ノ必
要ハ稍〓緩和サレテ來タト云フコトデアリマ
ス、モウ一ツハ低物價政策デアリマスガ、
此ノ點ニ關シマシテハ、屢〓大藏大臣或ハ商
工大臣等カラモ言ハレテ居リマスヤウニ、
必ズシモ物價ノ釘付デナク、增產ヲスルニ
必要ナモノ、其ノ他特ニ必要ト考ヘルモノ
ハ段々動カシテ行クト云フ方針ヲ言明サ
V、又現ニ動カシテ居ル實情カラ考ヘテ、
勞働賃金ガ國家目的ヲ遂行スル爲ニ低キニ
過ギル事實ガアルトスレバ、是ハ必ズシモ
釘付ニシナクテモ、動カシテ宜イ譯デアリ
マス、モウ一ツハ從來勞働賃金ハ-此ノ前金
光厚相モ言ハレタガ、勞働賃金ヲ上ゲルト
生產「コスト」ガ高クナツテ行ク、「コスト」ガ
高クナルト物價ガ高クナル、物價ガ高クナル
ト又賃金ヲ上ゲナケレバナラヌト云フヤウ
ニ、所謂循環論法テ、賃金ヲ上ゲルノハ意
味ヲナサヌト言ハレマシタ、自由主義經濟
ノ下ニ於テハ一應御尤モト思ヒマスケレド
モ、今日ニ於テハ必ズシモ其ノ議論ハ其ノ
儘受取ル譯ニハ行カヌト思フノデアリマス、
ソコヲヤハリ統制政策ニ依ツテ抑ヘテ行ク
コトガ出來マスシ、現ニ今議會ノ豫算總會
ニ於キマシテモ、此ノ問題ニ關スルコトガ
論議サレテ居ルノデアリマス、卽チ小笠原
三九郞君カラ斯ウ云フ質問ガ出タノデアリ
マス「御承知ノヤウニ金ノ方ハドウカト云
フト、金ハ銀行ヘ預ケテモ年々利息ガ附イテ
殖エテ行ク、公債ヲ持ツテモ、有價證劵ヲ
引受ケテモ、年々金ノ方ハ膨ランデ行キマ
ス、五年デ倍ニナルカ、七年デ倍ニナルカ、
十年デ倍ニナルカハ姑ク別トシテ、金ノ方
ハドウセヌデモ段々殖エテ行キマス」「卽チ
金ノ方ハ一錢デモ段々ト殖エテ行ク、人間
ノ方ハ汗水ヲ流シテ働イテ居ツテモ、物ノ
生產ニ從事スル限リ何ニモ勞働力ノ價値ハ
殖エテ行カナイ、斯ウ云フコトニナルノデ
アリマス、是ハ私ハ間違ツテ居ルト思フ」ト
-
云フヤウナ意味ノ質問ニ對シマシテ、賀屋
大藏大臣ハ斯ウ云フ風ニ答ヘテ居ルノデア
リマス、是ハ拔キ讀ミシマスノデ幾分意味
ガ變ル點モアルカト思フノデアリマスガ、
「現ニ今日低物價政策ヲ維持シテ居リマス
ガ、併シ多クノ產業ハ其ノ下ニ於キマシテ
モヤハリ相當ノ利益ヲ擧ゲマシテ、積立金
モ致シ、運行ヲ致スコトガ出來テ居ルヤウ
ナ狀況アリマス」詰リ一方ニハ統制政策ハ
ヤツテモ相當儲ケテ居ルト云フコトヲ言ヒ
更ニ一方ニ於テハ其ノ賃金ノ問題ニ付キマ
シテモ物價ノ問題ニ付キマシテモ「何モ例
ノ九·一八物價ト云フモノガ金科玉條デ、所
謂一步モ之ヲ動カサヌト云フヤウナ忠實ナ
ル方針ヲ商工省モ執ツテ居ラヌノデアリマ
ス、大體ニ於テ低物價政策ヲ維持致シマシ
テ、必要ナル方面ニハ部分的ニソレ相當ノ
處置ヲ執ル、斯樣ナ考ヘ方ヲ致シテ居リマ
ス」此ノ大藏大臣ノ答辯カラ來マスルコト
ハ、大體ニ於テ低物價政策ヲ執ツテ居ルノ
デアリマスカラ、賃金ヲ動カスユトリガ出
テ來タノデハナイカ、モウ一ツハ今日ノ統制
政策デモ相當事業家ハ儲ケテ居ル、是ハ隱
レモナイ事實デアリマス、ダカラ幾分賃金
ヲ上ゲルト云フコトハ事業家ノ儲ケガ幾分
少クナルト云フ場合ガアリマシテモ、是一
理論デアツテ、實際ハサウ簡單ニ行カヌノデ
アリマセウガ、必ズシモ今ノ循環論的ニハ
行カヌノデハナイカト云フ考ヘ方ヲ持ツテ
居ルノデアリマス、私ガ斯樣申上ゲマスコ
トモ、所謂局長ノ言ハレマシタヤウナ親心
ヲ持チマシテ-努力ノ道ガ前ト違ツテ幾分
開カレテアルノデアリマスカラ、十分ニ御
努力願ヒタイト云フ意味デ申上ゲルノデア
リマス、之ニ關スル御所見ヲ承ツテ置キタ
イト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=65
-
066・持永義夫
○持永政府委員 只今西尾サンノ御話、大
體ニ於テ私モ同感デゴザイマス、決シテ賃
金ヲ一定規率ノ狀態ニ於テ釘付ケスルト云
フヤウナ考ヘハゴザイマセヌ、物價ニ於キ
マシテモサウデアリマスガ、適正ナル賃金
政策ヲ決メテ行クト云フコトハ勿論デアリ
マス、併シ只今モ朗讀サレマシタ大藏大臣
ノ御話ノヤウニ、ヤハリ低物價政策ヲ破ラ
ナイ範圍ニ於キマシテ適正ナル方策ヲ作ツ
テ行クト云フコトガ大事ダト思ヒマス、隨
ヒマシテ現ニ鑛山ニ於キマシテハ、相當上
ゲタノデアリマスガ、サウ云フ風ニ低イモ
ノニ付キマシテハ之ヲ或ル程度上ゲルト云
フコトモ勿論考ヘナケレバナラヌ、又現ニ
吾々ノ方トシマシテハ、サウ云フ政策ヲ執
ツテ居ル譯デアリマス、大體ニ於キマシテ
西尾サンノ御意見ハ吾々モ同感デアリマシ
テ、今後サウ云フコトデ進ミタイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=66
-
067・西尾末廣
○西尾委員 次ニモウ一ツ是ハ勞働局長ニ
御願ヒシテ置クノデアリマスガ、所謂厚生
省ノ親心ヲ以チマシテ、總額賃金制ニ依リ
マシテ、賃金總額ヲ制限シテ居リマスケレ
ド、モ其ノ工場ノ生產能率ガ著シク向上シタ
場合、又作業能率ガ特ニ優秀ナル事業等ニ
對シテハ、ソレ〓〓或ル限定ハ置イテアリ
マスケレドモ、賃金値上ノ途ガ所謂親心ニ
依ツテ開カレテ居ルノデアリマス、併シナ
ガラ此ノ賃金總額ヲ制限シテ居リマス統制
令ハ、其ノ法文ガ甚ダ難解デアリマシテ、又
ソレニ對シテ局長カラ依命通牒等モ出シテ
居ルノデアリマスルガ、是亦實際難解ナル
文章デアリマシテ、經營者側ニ於テモ十分
ニマダ呑込ンテ居ナイ嫌ヒガアル、況シテ
ヤ一般勞務者側ノ方デハドウニモ動カスコ
トノ出來ナイモノダト云フ風ニ感ジテ居ル
ノデアリマス、私ハ生產能率ノ問題ニ付キ
マシテ-工場デ元吾々ト同僚デアツタ者
ガ、今日デハ社員ニナリ、職長ニナツテヤ
ツテ居リマスガ、何トカ能率ガ上ル途ガナ
イカト云フ話ヲシテ、其ノ人等カラ聽イテ
見ルト、サウ云フ途ノ開ケテ居ルコトヲ知
ラナイノデアリマス、是ハ折角ノ親心ガ下
ニ通ジナイコトニナツテ居ルノデアリマス
カラ、斯ウ云フコトニ付テハ更ニ一層能ク
了解出來ルヤウナ何等カノ方法ヲ御執リ願
ヒタイト云フコトヲ希望シテ置キマス
次ニハ生產能率ノ問題デアリマスガ、昨
年ノ七十六議會ニ於キマシテ、私ハ當時工
場ニ於ケル生產能率ガ六、七〇%シカ擧ツ
テ居ナイト云フ實情ヲ痛嘆致シマシテ、是
ガ對策ノ二三ヲ例示致シマシテ、當局ノ善
處ヲ要望致シテ置イタノデアリマシタガ、
其ノ中ノ私ノ要望致シマシタ一ツデアル厚
生大臣ハ勿論ノコト總理大臣初メ陸海軍
大臣モ全國ニ出掛ケテ行ツテ、直接工場勞
働者ノ戰時日本ニ於ケル重要ナル責任ヲ自
覺サセ、彼等ヲ心カラ產業戰士トシテノ誇リ
ヲ以テ生產能率ニ增進邁進セシムルヤウニナ
サツテ戴キタイト云フコトヲ希望致シテ、置
イタノデアリマスガ、幸ヒニ致シマシ其ノ後
實現致サレマシタシ、殊ニ總理大臣ノ川崎工
場ニ於ケル勞働者ニ對スル呼掛ケト云フモ
ノハ、非常ニ效果ガアヤルウニ承ツテ喜ンデ
居ルノデアリマスガ、其ノ他ノ點ニ付テハ私
ハマダドウ云フ能率增進ノ政策ガ執ラレタ
カト云フコトヲ聞イテ居ナイノデアリマス、
當局ハ其ノ後工場勞働者ノ能率ヲ百「パーセ
ント」ニ增進セシムル爲ニハ如何ナル政策ヲ
御執リニナツテ來タノデアリマスカ、此ノ
際承リタイト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=67
-
068・持永義夫
○持永政府委員 勞働生產能率ノ向上ト云
フコトハ各方面カラ見ナケレバナラヌ問題
ダト思ヒマス、或ハ保健衞生ノ問題、殊
榮養、精神作興ノ問題、又勞務者ニ對スル
福利、厚生施設ノ問題、或ハ機械資材ノ設備
ノ問題、是ハ單ニ厚生省ダケデヤリマシテ
モ中々好イ結果ノ現ハレヌ問題デアリマシ
テ、之ニハ商工省或ハ企畫院、又場合ニ依
リマシテハ陸海軍關係者各方面ノ協力ヲ得、
各方面カラ各種ノ對策ヲ立テテ行カネバナ
ラヌト考ヘラレマス、厚生省トシマシテハ
申スマデモナク精神作興ト申シマスカ、時
局ヲ認識セシメ、又ハ勤勞ノ國家性ヲ十分
ニ把握セシメマシテ、最大努力ヲ生產ニ拂
フヤウニ仕向ケル、ソレト同時ニ或ハ住宅
問題、或ハ榮養問題又ハ結核對策トカ、其
ノ他保健衞生ノ問題等各種ノ方策ヲ決メテ
行カネバナラヌト考ヘテ居ルノデアリマシ
テ、現在マデサウ云フ方面ニ力ヲ盡シテ居
ル次第デアリマス、尙又此ノ能率ノ向上ニ
付キマシテハ、單ニ役所ノ頭カラヤルノミ
デハ不十分デアリマシテ、ドウシテモ自治
的ニ勞務者ガ奮ヒ起ツテ仕事ヲスルヤウニ
仕向ケルコトガ必要デアル、ソレニハ御承
知ノ產業報國會ヲ各工場、鑛山ニ作ツテ參
リマシテ、サウシテ自治的ニ能率ノ增進ヲ
圖ツテ貰フ、又最近ハ產業報國會トシマシ
テハ或ハ皆勤運動、卽チ一箇月ノ間從來鑛
山等ニ於キマシテハ、ヒドイ所ニナリマス
ト、十七日位シカ出ナイ、ソレヲ少クトモ
二十五日位マデ上ゲヨウ、又工場ニ於キマ
シテモ二十八九日ト云フヤウナ出勤率ノ多
イ所ハ少イ、ソレヲ其ノ邊マデ上ゲヨウト
云フノデ、本年ノ一月十一日カラ皆勤運動
ヲ始メテ居リマス、サウシテ是ハ甚ダ議論
ハアルト思ヒマスガ、其ノ皆勤ノ良イ所ハ
表彰ヲスルト云フヤウナコトヲ現ニ實施シ
テ居リマス、又ソレト共ニ是モ產報トシマ
シテハヤツテ居リマスガ、機械實動率運動、
卽チ各工場ノ機械ガ「フル」ニ働イテ居ナイ、
ヒドイ所ニナルト僅カニ六〇%シカ働イテ
居ナイト云フヤウナ狀況デアリマスノデ、
ソレヲ百「。パーセント」マデ働カセル、勿論
ソレニハ資材ノ配備トカ人ノ問題ガアリマ
スガ、少クトモ出來ルダケ現在ノ機械ヲ有
効ニ働カシメルヤウニシヨウト云フノデ、
機械實動率運動ヲ現ニヤツテ居リマス、ソ
レカラ第三ニハ生產擴充運動ト申シマシテ、
是ハ主トシテ精神運動デアリマスガ、やわ
リ產報トシマシテハ此ノ運動ヲ現在展開中
デアリマス、サウ云フ風ナ方法ニ依リマシ
テ役所ノ方面、又自治的ノ產業報國會ノ方
面斯ウ云フ各方面カラ協力シマシテ、厚
生省ノ立場トシマシテハ出來ルダケ勞働能
率ノ增進ニ努メタイト云フ風ニ考ヘテ居リ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=68
-
069・西尾末廣
○西尾委員 勞働能率ヲ增進セシムル爲ニ
ハ精神作興ノ方面ト、更ニ具體的ニ賃銀制
度ノ問題或ハ待遇改善等ノ問題、所謂經濟
方面ト大別スルコトガ出來ルノデアリマス
ガ、經濟方面ノコトニ付キマシテハ塚本君
モ論及サレタノデアリマスカラ、私ハ省略
致シマスルガ、唯一ツ此ノ機會ニ特ニ大臣
ニ御願ヒ致シテ置キタイノデアリマスガ、
兎角勞働者ニ對スル所謂世間一般ノ考ヘ方
ガ改マツテ居ナイ、ソレガヤハリ勞働者ニ
響イテ、口ニ產業戰士ダ何ダト言ハレテモ
ヤハリサウカ、ト云フ自分ガ責任感ト云フ
カ、發奮スルヤウナ感ジニナリニクイノデ
ハナイカ、之ニハヤハリ政府ノ努力ニ依リ
マシテ、勞働者ニ對スル考ヘ方ヲ改メサセ
ル爲ノ色々ナ施策ガ必要デハナイカト思フ
ノデアリマス、例ヘバ或ル人ノ或ル所デ發
表シタ所ニ依リマスト、自分ノ所ノ工場ニ
見ニ行キマシタ所ガ、門衞ガ自分ヨリモ月
給ノ下ノ社員ニハ敬禮ハシテ居ルケレドモ、
自分ヨリハ遙カニ給料ハ上デアルシ年數モ
古イケレドモ、所謂普通ノ職工ト云フ者ニ
ハ敬禮ヲシテ居ナイト云フコトヲ發見シマ
シテ、是カラ改メナケレバイカヌト云フコ
トヲ考ヘ付イタト云フ話ヲ聞イテ居ルノデ
アリマスルガ、兎角從來ノ勞働者ニ對スル
考ヘハ之ヲ一口ニ申シマスルト、餘所者ト
云フ考ヘガアルノデアリマス、詰リ社員ハ
會社ノ者デアル、ダカラ之ニハ何トナク會
社ノ者ト云フ感ジデ遇スルガ、勞働者ハ何
時變ツテ行クカモ分ラヌ、サウ云フ點ハ例
ヘバ賃金ノ支拂方法ニ於テモ、社員ハ月給
デアル、勞働者ハ時間割賃金デアルト云フ
風ニ、勞働者ヲ餘所者扱ヒニシテ居ル、之
ヲ何トカヤハリ勞働者モ所謂勞資一體ト云
ヒマスカ、其ノ工場ニ於テ社員ヲ遇シタト
同ジヤウナ心構ヘデヤハリ勞働者モ待遇ス
ルコトニ改メルコトガ必要デハナイカ、モ
ウ一ツノ問題ハ是ハ能率增進ノ問題ニ付テ
申上ゲタイノデアリマスガ、例ヘバ軍人サ
ンノコトヲ考ヘテ見マスト、是ハ給料ガ何
ボダカラ働ク働カヌト云フ事デナクシテ、
是コソ本當ニ國ノ爲ニ命ヲ捧ゲテ滅私奉公
シテ居ルノデアリマスガ、其ノ軍人サンニ
モヤハリ進級制度ト云フノガアツテ、、ソ
レガ如何ニ軍人サンニ發刺タル空氣ヲ作ツ
テ居ルカト云フコトガ窺ヘルノデアリマ
ス、又官吏ニ於キマシテモ、官吏ノ短期ニ
屢〓送ルト云フコトハ常ニ非難サレテ居
ルノデアリマスケレドモ、併シ其ノ中ニ唯
一ツ善イコトハ、段々官吏ヲ迭ヘテ轉任
サセテ所謂進級サセルト云フコトガ、官界
ニ發刺タル空氣ヲ與ヘルト云フ意味ニ於テ
ハ官吏ノ頻繁ナル異動ノ中ニモ善イ點モ
アル、斯ウ言ハレテ居ルノデアリマスガ、
勞働者ニシテ五十ニナツテモ五十五ニナツ
テモ、結局ハ五十五デ停年デ罷メサセラレ
テ行ク、何時マデモ勞働者デアルト云フ考
ヘ方ヲ止メサセテ、勞働者ニモ進級ノ途ヲ
開ク必要ガアルデハナイカ、私ハ工場ニ實
際ニ勤メテ居ル私等ノ同僚ノ者カラモ、或
ハ其ノ會社ノ幹部ノ方カラモ、話ヲ聞イテ
居ルノデアリマスガ、例ヘバ立派ナ熟練勞
働者ハ單ニ技術的ニ熟練シタダケデナク、
ヤハリ熟練勞働者ニナラツテ其ノ工場ニ五
年モ六年モ居ルト云フコトニナリマスト、
相當人格的ニモ立派ニナツテ來テ居ルノデ
アリマス、假令五人デモ六人デモ人ヲ使フ
伍長ニナリ組長ニナルト云フコトニナルト、
入格的ニモ立派ニチツテ來テ居ル、是等ハ
何時マデモ伍長、組長ト云フノデナク、ヤ
ハリ社員ニ進級サセル、モツト上ノ方ニ持
ツテ來テモ、場合ニ依ツテハ之ヲ重役ニ持
ツテ來テモ相當勤マル人ガアルデハナイカ
ト思フノデアリマス、現ニ一部デハ此ノ頃人
員ガ不足シテ居ルト云フ事情モアリマシテ、
勞働者ノ中カラ社員ニ採用シテ居ルモノモ
アリマスケレドモ、兎ニ角勞働者ハ社員ト
區別シテ何時マデモ勞働者ダト云フノデナ
ク、何等カ玆ニ進級ノ途ヲ拓クト云フコト
ガ必要デハナイカ、モウ一ツハ是モ勞働者
出身ノ社員ニナツタ人カラ話ヲ聞イタノデ
アリマスガ、私ハ十年此ノ工場デ働イテ何
モカモ知ツテ居ル、隅々ノコトマデ知ツテ
居ル、然ルニ學校ヲ出テ來タ者ハ一年ハ自
分等ガ〓ヘルケレドモ、二年目カラ此ノ人
達ノ命令ヲ聽クノデナケレバ自分ガ人ヲ使
ツテ行ク譯ニ行カナイ、學校尊重、官界デ
言ヘバ法學萬能デ技術家ヲ輕視スル、サウ
云フ空氣ガ官界ニモアルト云フコトハ盛ニ
以前問題ニナツタノデアリマスガ、千五郎
於テモヤハリ學校出ヲ學校ヲ出タカラト云
フコトデ此ノ進級ヲ早クサセルト云フ點ニ
對スル今日勞働者出身ノ方ニ不滿ガアルノ
デアリマス、斯ウ云フ點ニ付キマシテモ今
後勞働者ニ進級ノ途ヲ拓キ、ソレニ依ツテ
倦マズ撓マズ何時マデモ、五十ニナツテモ
五十五ニナツテモ緊張シテ働ケルヤウニ御
配慮願ヒタイト思フノデアリマス、此ノ點
ニ付テ御意見ヲ承ツテ置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=69
-
070・持永義夫
○持永政府委員 勤勞ノ人格性ヲ尊重シテ
行ケト云フヤウナ御議論ダト思ヒマスガ、此
ノ點ニ付キマシテハ私共全ク同感デアリマ
ス、殊ニ今日ノヤウテ時局ニ於キマシテハ、
本當ニ產業戰士トシテ勞務者ガ日々苦勞シ
テ居ル、「ハワイ」ノ攻擊ニ於キマシテモ、勞務
者ノ造ツタ爆彈ナリ飛行機ナリ或ハ潜航艇ガ
ヤハリ活躍シテ居ルノダ、サウ云フコトヲ考
ヘマスト、從來ノヤウニ勞務者ナルガ故ニ
之ヲ輕ク見ルトカ云フヤウナコトハアツテ
ハナラナイト云フ風ニ私共ハ考ヘマス、同
ジ人格、同ジヤウニ考フベキデアル、唯日本
ノ從來ノ實情ハサウ云フ考ヘガマダ十分ニ
滲透シテ居ナイト云フコトハ是ハオ互ヒ
ニ遺憾トスルノデアリマス、併シ今後ニ於
キマシテハ御話ノヤウニ勞務者ノ實力ニ
依ツテ或ル程度是ガ向上シ得ルト云フ風ニ
進ムベキモノダト考ヘテ居リマス、國家ト
シマシテモ新聞デ御承知ダト思ヒマスガ、先
般勞務者ニ對スル表彰制度ヲ考ヘテ、是ハ全
ク御話ノ勞務者ノ人格ヲ尊重スル、其ノ國
家ニ對スル勤勞ヲ表彰スルト云フ意味ニ於
キマシテ考ヘラレタモノダト思ヒマス、御
話ノ點ニ付キマシテハ今後サウ云フ方向ニ
國トシテモ又社會一般トシテモ進ムベキモ
ノデアラウト云フコトニ付キマシテハ全然
同感デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=70
-
071・西尾末廣
○西尾委員 次ハ產報ノコトニ付テ一寸伺
ツテ見タイノデアリマスガ、今度新シク產業
報國會ノ理事長ニナラレマシタ小畑理事長
ガ、昨年大阪デ新聞記者ニ語ツテ居ル所ニ
依リマスト、產報運動ハ完成スレバ非常ナ
高能率ヲ發揮スルコトニナルノデアルガ、
精神ト組織ノ切替デアルカラ、過渡期ニ於
テハドウシテモ能率ガ落チルノデアル、併
シ此ノ能率ヲ落シテハイカヌト吾々一生懸
命ニヤツテ居ルノダ、斯ウ言ハレテ居ル、
詰リ產業報國會ノ運動ト云フモノハ將來ハ
ウント能率ガ上ルノデアルケレドモ、現實
ニハ過渡的デアルノダカラ能率ガ低下スル
ノハ寧ロ當リ前デアル、斯ウ云フコトヲ新
聞記者ニ語ツテ居ルノデアリマス、
又昨年十二月ニ國策〓究會ノ席上ニ於キマ
シテモ大體同樣ナコトヲ言ツテ居ルノデア
リマス、其ノ要點ヲ申シマスト、產報運動
ハ能率增進運動デハナイ、產報運動ヲ推シ進
メルト能率ハ一時落チルカモ知レナイ、
併シ戰ハ長期戰デアリ、一時ハ落チテモ
軈テハキツト宜クナル、自分ハ長期戰ヲ目
指シテ產報運動ヲヤラナケレバナラヌト信
ジテ居ル、斯ウ云フコトヲ言ツテ居ルノデ
アリマス、私ハ是ハ了解出來ナイノデアリ
マス、私ノ信ズル所ニ依リマスナラバ、產業
報國會ガ出來タ瞬間カラ產業報國會ノ精神
ヲ百「パーセント」吸收シナクテモ二、三十
ㄱパーセント」モ吸收シテヤレバ、今マデヨ
リハ幾分デモ能率ガ上ルベキ性質ノモノデ
ハナイカ、斯樣ニ私ハ考ヘテ居ルノデアリ
マス、產業報國會ガ其ノ前身デアル產業報國
聯盟カラ今日ニナリマシテモウ數年ヲ經過
シテ居リマス、而モ增產ハ國ノ要請トシテ
絕對的必要ニナツテ居ル今日ニ於テ、マダ
其ノ產報ノ理事長ガコンナコトヲ言ツテ居
ルノハ、何ダカ私共ニハ言譯ヲシテ居ルヤ
ウナ感ジガスルノデアリマス、是ハ何カ斯
ウ云フ言譯ヲシナケレバナラヌト云フコト
ハ、何ダカ產報自身ニヤハリ根本的ナ缺陷
ガアルノデハナイカ、能ク產報ニ對シテ
吾々ハ此ノ缺陷ハ斯ウ直シタラドウカト
云フ意見ヲ從來言ツテ來タノデアリマスガ、
其ノ都度イヤ產報ガ出來テカラマダ一年ニ
シカナラヌ、二年シカナラヌ、假スニ時ヲ
以テセヨ、斯ウ云フコトヲ言ハレタ、又或
ル時ハ今親父〓育ラヤツテ居ル、資本家〓育
ヲヤツテ居ルカラモウ暫ク待テト言ハレ
タ、何ダカ今度ノ新理事長ノ言ハレテ居ル、
一時能率ガ低下スルンダト云フコトト、何
カ相通ズル言譯メイタヤウナ響キガ感ジラ
レテ居ルノデアリマスガ、一體產報ト云フ
モノハ現在ニ於テモ尙ホ其ノ過渡期デアル
カラ、產報ヲ推進メルトモツト先ニ行ケバ
宜イノデアルガ、現在ニ於テハ產報ハ能率
ガ下ガルコトハ已ムヲ得ザルモノト諒解
シテ宜シウゴザイマスカ、ソレヲ伺ヒタイ
ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=71
-
072・持永義夫
○持永政府委員、 只今ノ小畑理事長ノ御意
見、ドウ云フ趣旨デサウ云フコトヲ言ハレ
マシタカ、私ニハ能ク呑込メナイノデアリ
マスガ、恐ラク斯ウ云フ意味デハナイカト
思ヒマス、產業報國會ハ其ノ精神或ハ內容
ニ於キマシテハ、是ハ今日ノ時局トシマシ
テハナクテハナラヌモノダト私ハ信ジマス
ガ、唯產業報國會ヲ作ツテ、眞ニ產業報國
會ラシイ事業活動ヲスルニハ、企業主始メ
職員、勞働者全體ガ本當ニ產業報國ノ精神
ヲ徹底ジナケレバ旨ク行カナイ、然ルニ從
來ノ實際ヲ見マスルト、或ハ縣ノ方カラ警
察官ガ來テ勸メタカラ作ルト云フヤウナ、
已ムナク作ルト云フヤウナ所ガ相當アツタ
ヤウニ思フノデアリマス、サウ云フ所ハソ
レヲ作リマシテモ單ニ形ダケ作ツタノデア
リマシテ、魂ガ入ツテ居ナイ、恐ラク此ノ
點ヲ新理事長ガ心配サレテサウ云フコトヲ
言ハレタノデハナイカト云フ風ニ考ヘマス、
卽チ苟モ產業報國會ヲ作ル以上ハ、精神モ
魂モ打込ンデ、本當ノ產業報國會ノ趣旨ニ
副フヤウナ活動ナリ、事業ナリヲスルヤウ
ニ、初メカラ仕向ケテ來ルト云フヤウナ意
味デ恐ラク言ハレタノデアラウト私ハ思フ
ノデアリマス、從來ノ形ダケ作ツテ魂ガナ
イト云フヤウナコトデハイカヌ、形モ出來、
魂モ同時ニ出來ルナラバ、初メカラ能率ガ
十分ニ發揮サレルト云フコトハ私ハ御話ノ
通リト思フノデアリマシテ、小畑サンモサ
ウ云フ考ヘハ勿論御持チニナツテ居ルト思
フノデアリマス、恐ラクサウ云フ意味デ仰
ツシヤツタコトト思ヒマスカラ、其ノ點ハ
一ツ誤解ノナイヤウニ御諒承願ヒタイト思
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=72
-
073・西尾末廣
○西尾委員 勞働局長ノ御話ノ中ニモアリ
マシタヤウニ、產業報國會ヲ組織スル上ニ
於キマシテハ、已ムヲ得ズ急ヲ要シタノデ
アリマスカラ、警察等ニ依ツテ幾分天降
リ的ニヤツタト云フ點ヲ仰セラレマシタ、
ソレハ其ノ通リデアリマス、私モソレハ能
ク知ツテ居ルノデアリマス、併シ所謂魂ヲ
入レル爲ニハソレデハイカヌ、形ヲ作ツ
テ魂ヲ入レルンダト云フノデアリマスガ、
其ノ魂ノ入レ方ニ付キマシテ、從來兎角親
父〓育ヲスルンダ、勞働者ハ少々不滿デアツ
テモ我慢ヲシテ居テ吳レ、工場主ト事業家ヲ
納得セシメナケレバ組織ハ出來ナイノデア
ルカラト云フノデ、ソレモ物ノ順序トシテ
ハ一應尤モデアツタカト思フノデアリ
マスガ、併シモウ親父〓育ハ宜イ加減ニシ
テ貰ツテ、親父〓育ヨリモ勞働者〓育ノ方
ニ重點ヲ置イテ戴ク時機デハナイカト思フ
ノデアリマス、昨年ノ八月ニ事業場產業報
國組織整備要綱ト云フモノガ發令サレタノ
デアリマスガ、是ハ實際ニハ尙ホ十分ニ徹
底シ行ハレテ居ナイモノト思フノデアリマ
スケレドモ、ソレヲ拜見致シマスルト、ド
ウモ命令系統ヲ明カニスル、詰リ指揮命令、
上意下達、サウ云フ點ニ於テハ餘程能クナ
ツタヤウニ思フノデアリマシテ、實際ノ問
題トシテ是モ非常ニ重要ナ點デアリマシテ、
私モ贊成致シテ居ルノデアリマスガ、併シ
一方指揮命令系統ガ强化サレタノニ比ベマ
シテ、所謂下意上達ノ方面ガ割合ニ改善サ
レテ居ナイノデハナイカ詰リ一々上カラ
抑ヘ付ケテ、寧ロ勞働者側ヲ抑ヘ付ケルカ
ノ如キ印象ヲ與ヘテ、產業報國會ヲ作ラレ
タ、ソレモ最初ニ於テハ已ムヲ得ナカツタ
ト私モ思フノデアリマスルガ、今後益〓下意
ヲ上達シ、勞働者ノ氣持モ採リ入レテ、ソ
コニ眞ニ勞資一體トシテノ魂ヲ打込ンデ行
クト云フコトノ痛感サレル此ノ時ニ、發令
サレタ整備要綱ガ寧ロ下意上達ト云フ點ニ
於テ、餘リ考慮ガ拂ハレテ居ナイノデハナ
イカト私ハ考ヘルノデアリマス、ソレニハ
今後工場內ニ五人組ガ出來ルノデアリマス
ガ、其ノ五人組ナリ其ノ他一工場內ニ於ケ
ル產業報國會ノ勞働側カラ出タ委員、其ノ
全部ガ一堂ニ會シテ懇談會ヲスル、此ノ懇
談會ハ最初カラヤラセテ危イ場合モ中ニハ
アリマセウカラ、放任スルノデハナク、若
シ警戒ヲ要スル點ガアリマスルナラバ、ソ
レハ事業主側ノ方カラ誰カ監督ト云フヤウ
ナ意味デ行カスノモ宜シイシ、或ハ縣ノ產
業報國會支部ノ幹部ガソコニ出テ行ツテ皆
ヲ指導スルト云フ方法モ必要デアリマセウ
ガ、其ノ何レノ方法ヲ採ルニ致シマシテモ、
勞務者側ノ產報委員ダケガ時ニ寄ツテオ互
ヒノ問題ニ付テ話合フト云フ橫ノ連絡ヲス
ルコトハ、却テ產業精神ヲ單ニ講演ヲ聽カ
ス、或ハ講習會ニヤルト云フヤウナコトデ
ナク、工場ノ實際問題ヲ扱フコトニ依ツテ
非常ニ訓練サレルノデハナイカト斯樣ニ考
ヘルノデアリマス、卽チ魂ヲ入レル爲ニハ
モツト今ニ於テ下意ヲ上達シ易イヤウニス
ル、其ノ爲ニハ幾多ノ方法ガアリマセウ
ガ、勞務者側ノ委員ダケ會合シテ懇談ヲス
ルト云フコトガ、公ニ產報ノ組織トシテ認
メラレルヤウニスルト非常ニ宜イト思フノ
デアリマスガ、之ニ對スル御考ヘヲ承リタ
イト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=73
-
074・持永義夫
○持永政府委員 只今ノ整備要綱、是ハ其
ノ起リ·マシタ元ヲ御說明申上ゲタイト思ヒ
マス、昨年ノ八月末ニ勞務緊急對策ト云フ
モノガ閣議ニ於テ決定セラレマシタ、其ノ
中ニ勞務ニ關スル色々ナコトガアルノデア
リマスガ、特ニ能率增進ヲ期スル爲ニ勤務
組織ヲ工場內ニ作ル方ガ宜カラウト云フヤ
ウナコトガ加ハツテ居リマス、產業報國會
トシマシテハソレヲ承ケマシテ、所謂組制
度ニ依ツテ工場內ニ組織ヲ作リマシテ、生
產擴充ニ邁進シヨウト云フコトニ相成ツテ
其ノ要綱ガ示サレタ譯デアリマス、併シ單
ニ是ダケ御覽ニナリマスト、御話ノヤウニ
上カラ下ニ命令スル、所謂仕事ヲヤレ〓〓
ト云フコトノミヲ命令シテ居ルヤウニ御考
ヘニナルノデアリマスガ、產業報國會トシ
マシテハ其ノ外ニ懇談會ノコトヲ別個ニ示
シマシテ、懇談會ハ數種ニ分レマシテ最下
級カラ最上級マデアリマスガ、最上級ニハ
社長トカ工場長ト云フヤウナ最高幹部ハ勿
論又下ノ方ノ勞務者モ其ノ最上級ノ懇談
會ニ加ハルト云フ組織ニシマシテ、御心配
ノ下意ヲ上達スル爲ニ特ニ懇談會ヲ作リ得
ルヤウナ方法ヲ示シテ居ル譯デアリマス、
私共聞キマシタノハ寧ロ其ノ逆ニ、最上級
ノ懇談會ニ勞務者ノ加ハルト云フコトハド
ウダラウカト云フヤウナ、一方的ノ意見ヲ
聞イテ居ル位テゴザイマス、隨ヒマシテ產
業報國會ノ仕組トシマシテハ下意ヲ上通ス
ルト云フ仕組ハアリマスガ、唯玆ニ現實ノ
問題トシテ、サウ云フ上級或ハ中級ノ懇談
會ニ勞務者ガ出テモ中々意見ガ出ナイ、其
ノ點ヲ御心配サレテ居ルノダラウト思ヒマ
ス、卽チ勞務者ダケテ懇談會ヲ作ツタラド
ウカト云フヤウナ御意見デアラウト思ヒマ
スガ、產業報國會ノ方針トシマシテハ勞
働モ資本モ經營者モ一體トナツテ、卽チ三
者一體ト云フ方針デ行ツテ居リマスシ、是
ガ所謂勤勞新體制ノ根本デゴザイマスカラ、
單ニ勞働ダケノ懇談會ヲ作ルト云フコトハ
產業報國會トシテハドウダラウカ、昔ノ形
ニ還ル虞モナイデモナイ、隨ヒマシテ現在
ノ所デハ產業報國會ハ會員全體ガ、卽チ企
業者モ事業主モ勞務者モ一體トナツテ、懇
談會ニ於テ遠慮ナク報國會ノコトヲ懇談ス
ルト云フ仕組テ行キタイト思ヒマス、唯實
情ハ、勞務者ノ方デ中々發言サレナイト云
フ缺點ハゴザイマスガ、是ハ產業報國會ノ
幹部ノ指導、又府縣ノ役員等ノ指導ニ依リ
マシテ、實際ノ下意ヲ上通スルヤウニ懇談
會ヲ指導シテ行キタイト云フ風ニ考ヘテ居
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=74
-
075・西尾末廣
○西尾委員 實ハ五人組ノ中カラモ最高ノ
懇談會ニ出ラレルヤウニナツテ居ルコトハ
私モ承知シテ居ルノデアリマス、勞働側ノ
發言ヲ十分出來ルヤウニシタイト云フノデ
アリマスガ、是ハ今始マツタコトデナク、
產報始マツテ以來サウ云フ考ヘデアツテ、
而モ今尙ホソレガ行ハレテ居ナイ、私ノ見
ル所デハ今後モ行ハレナイノデハナイカ、
ト云フノハ十二月號ノ「日本評論」ニ載ツテ
居ルノデアリマスガ、昨年神戶デ各工場ノ
職工ヲ集メマシテ懇談會ヲヤツテ居リマス、
此ノ中ニハ私ノ知ツタ者モ居リマスガ、大
體顏觸ヲ見マスト、相當人中ヘ行ツテ物ノ
言ヘル心臟ノ强イ人モ居ルノデアリマスガ、
其ノ中ノ一人ガ斯ウ云フコトヲ言ツテ居リ
マス「產業報國會ニ對シテ不滿ナリ、至ラ
ヌコトガ屢〓、アルト思ヒマス、例ヘバ大阪
デハ一ノ警察單位ニ支部ガ出來テ居リマス
ガ、支部ノ役員ハ殆ド工場長トカ社長トカ
云フ人バカリデ、實際ノ工場ニ働イテ居ル
勞働者ガ一人モ出テ居ナイ、コレハヤハリ
職場デ働イテ居ル勞働者モ其ノ委員ノ內ニ
混ヘテ意見モ聽キ、會社ノ方針モ斯ウダト
云フコトヲ聽イテ、ヤツテ行カネバナラナ
イト思ヒマス、下部組織ノ問題モ結局、精
神的問題ニ立脚シナケレバ幾ラ組織ヲ變へ
テモ何ンニモナラナイ、ソシテ其ノ職場職
場デ選バレタ人ハ俺達ハ產業人ノ代表者デ
アルト云フ觀念カラヤハリ出來ルダケ勉
强モシ、國家ニ御奉公スルト云フ氣持デヤ
ツテ行クヨリナイト思ヒマス」斯ウ云フヤ
ウナ意見モ出テ居ルノデアリマスガ、今其
ノ發言ガ中々シニクイト云フコトニ付テ斯
ウ云フコトモ言ツテ居ル「併シ委員會ニ於
テ吾々ガ長イ間ノ勞働ノ體驗ト種々ナ方面
ヨリ考ヘタ場合ニドウシタラ能率ガ上ルカ
ト云フコトニ付テハ一番先ニ待遇ノ問題ガ
論議サレ、ソシテ種々ト話スノデアリマス
ガ、待遇ノ問題ト云フノハ結局働キ良イ
工場ニスルト云フ考ヘカラ」中略「會社側
ノ指導者ガ餘リ種々ナコトヲ言フト直グ舊
思想ダト言ハレルノデス、自分ノコトヂヤ
ナシニ生產ノ上ニ立ツテ話ヲスルコトガ何
ガ惡イト云フコトヲ考ヘテ居リマスガ、併
シ色ンナコトヲ餘リ言ハサヌヤウニシテシ
マシー是ガ大キイ缺陷デアルト思ツテ居リ
マス、コツチハ言フノガ當リ前ダガ委員ハ
使ハレテ居ル關係上、餘リ言ヘヌヤウニナ
ルノデス」ヤハリ使ハレテ居ル關係上マ
アマア言ハズニ濟ムナラ言ハンデ置カウ
ト云フコトニナル、所ガ橫ノ連絡ヲ執リ
マスト、橫デ今度斯ウ云フコトヲ言ハウ
ヂヤナイカ、ソレハ言ハヌ方ガ宜カラウ
ト云フヤウナ相談ニナリマスト、今度ハ
君ガ言へ、俺ガ言フト云フコトニナル
シ、又相談ヲサセルト、言フコトガ割合
練レテ來ルヤウニナルノデハナイカト思
ヒマス、是ハ餘程工夫ヲシナケレバ當局
ノ親心ニモ拘ラズ、中々言ハナイ、憎マ
レテマデ言ハナケレバナラヌコトハナイ
ノデアルカラ、マア〓〓言ハズニ置クト
云フコトニナツテ中々改タマラナイノデハ
ナイカト思フ、モウ一ツハ產業報國會ハ勞
働者、資本家ヲ區別シナイ考ヘ方、勞資一
體ノ考ヘ方カラサウ云フコトヲシナイノダ
ト云フ、其ノ考へ方ガ幾ラカ書生論ニ囚ハ
レタ「イデオロギー」ニ囚ハレ過ギタ考ヘ方
デハナイカ、何モ彼モ勞働者資本家ト云フ
モノヲ區別シナイヤウナ現狀ニナツテ居ル
ナラバ、此ノ議論ハ正シイノデアリマスケ
レドモ、其ノ他ノ條件ニ於テハ依然トシテ
ヤハリ勞働者扱ヒヲサレテ居ルデハナイ
カ、會社ノ方デハ思付イタコトヲ直グ其ノ
場デ言フノデナクシテ、會社側ノ委員ハ斯
ム云フコトヲ言ハウ、アア云フコトヲ言ハ
ウカト相談シテ來テ居ル、會社側デハ實際
ニハ會社側ダケガ相談スル場合ガ屢〓アルノ
デアリマス、ダカラ是ハ結局御話ノヤウニ
段々〓育ヲシテ行ツテサウシナケレバナラ
ヌノデアリマスガ、其ノ過程ニ於テ何モソ
レデ勞働者側ノ委員ニ相談ヲサセルト云フ
便宜ノ手段ヲ執ツタカラト云ツテ、產業報
國會ノ大精神ガ曖昧ニナルコトデハナイト
私ハ考ヘルノデアリマスカラ、是ハ今日マデ
ハ或ハ一應モノヲハツキリスルト云フ爲ニ、サ
ウ云フコトモ必要デアツタカモ知レマセヌ
ケレドモ、今日ニ於テハモウ其ノ點ヲ固ク
固持スル必要ハ餘リナイノデハナイカト思
ヒマスカラ、是ハ篤ト一ツ御〓究ヲ願ヒタ
イト思フノデアリマス
次ニ產業報國會ノ地方支部、縣廳、府縣
等ニ事務所ヲ置キ、知事ガ支部長ニナツテ
ヤツテ居リマスル地方ノ支部ノ機關、頁ノ
地方支部ト致シマシテ警察署長ヲ中心トス
ル地區支部等ニ於キマシテモ、是ハ勞働者
側ノ意見ヲ代表スルト云フカ、其ノ邊マデ
勞働者側ノコトヲ能ク分ツテ居ル人ガ殆ド
何處モ出テ居ナイノデアリマス、是ハ先程
引例シマシタ座談會ニ於テモ其ノ點ヲ繰返
シ言ツテ居ルノデアリマスガ、是モヤハリ
今度醫療團ノ問題ヲ考へル場合ニハ、最モソ
レニ精通シタ、又信望ノアル人ヲ選ブト云
フコトガ考ヘラレマスト同樣ニ、斯ウ云フ
產報ノ組織ヲ考ヘル場合ニ於テモ、ヤハリ
勞働者側モ產報ノ重要ナ一要素デアリマス
カラ、其ノ方ニハ人ガナイト云フコトハア
リ得ナイ、私ガ見ルニハ相當立派ナ人ガ澤
山出來テ居リマス、工場ニ於ケルサウ云フ
立派ナ勞働者モ斯ウ云フ委員ニシテ行ク、
是ガ私ガ先程觸レマシタ所謂勞働者ノ工場
內ニ於ケル進級ヲ考ヘルト同時ニ、社會的
三〓、勞働者側ノ地位ガ段々向上シテ行ク
ト云フコトヲスル爲ニモ、是ハ必要デハナ
イカト思フノデアリマス、之ニ對シテハド
ウ云フ風ニ御考ヘニナツテ居リマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=75
-
076・持永義夫
○持永政府委員 只今ノ御意見全ク御同感
デアリマス、產業報國會ハ先程申シマシタ
ヤウニ、一方的ノ利益代表ノミガ入ルモノ
デハナイノデアリマシテ、全體的ニ行クベ
キモノデアルト云フノデアリマスカラ、勞
務者ノ經驗ノアル方デ、適當ナ方ガ居ラレ
マスナラバ、勿論地方ニ於テモ、又中央ニ
於キマシテモ少クトモサウ云フ方々ニ御奮
發ヲ願ヒマシテ、運營ヲ適正ニシテ行クト
云フコトガ必要ダト思ヒマス、是ハ當初カ
ラ私共ハサウ云フ考ヘヲ持ツテ居ルノデア
リマス、併シイザドノ人ヲト云フコトニナ
リマスト、中々具體的ニ困難ナ場合ガ多イ、
其ノ爲ニ或ハサウ云フ御感ジヲ抱カレルカ
ト思ヒマスガ、私共ノ氣持ハヤハリアナタ
ノ御意見ト同ジヤウニ、出來ルダケ勞務者
側ノ意見ヲ十分ニ持ツタ方ニモ來テ貰ヒタ
イト云フ氣持ハ十分ニ持ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=76
-
077・西尾末廣
○西尾委員 私ハ當局ガサウ云フ御考ヘヲ
持ツテ居ルコトハ全ク御信賴申上ゲテ居ル
ノデアリマスガ、注意シナケレバナラヌコ
トハ、斯ウ云フ仕事ヲスルノハ是ハ警察ガ
ヤルノデス、マア地方長官ガヤルノデアリ
マスガ、產業報國會ヲ作ル時分ニモ大體警
察ノ御厄介ニナツテ作ツタヤウナコトデモ
アルシ、日本ノ內務行政ト云フモノハ大體
從來警察行政、警察的政治ダト言ハレル位
ニ、警察ノ署長ガ一番尖端トナツテヤルヤ
ウナ關係ガアルノデアリマス、殊ニ勞働組
合運動ト云フモノハ過去ニ於キマシテ活潑
ナル活動ヲシタ經驗ガアル、私ハ今ハ其ノ
必要ハナイト思ヒマスガ、曾テハ其ノ必要
ガアツタ、政黨ハアレドモ特ニ勞働者ノ爲
ニ之ヲ考ヘルト云フコトナク、又政府ニ於
テモ勞働者ノ保護ノ爲ニ盡ス所少ク、而モ自
由主義ノ下ニ於テハ勞働者ハ資本家ノ搾取
ニ喘イデ、サウ云フ場合ニ自分ノ生活ヲ防
衞スルト云フ意味ニ於テサウ云フ勞働組合
ガ出來タ、事ノ善惡シハ別トシテモ、其ノ
當時ハ必然的ノモノデアツタノデアリマス
ガ、サウ云フ時ニ勞資對立抗爭ト云フヤウ
ナモノヲ取締ツテ來タト云フヤウナ警察ノ
印象等ガ手傳ヒマシテ、兎ニ角勞働者ニ對
シテハ警戒的ノ考ヘ方ヲ以ツテ、色々ノサ
ウ云フ人選等ニ於テモスルノデハナイカト
思フ、人ヲ見レバ泥棒ト思へ人ヲ見レバ疑
ツテ掛ル、警戒シテ掛ル、斯フヤウナ地方
ニ於ケル空氣ガ人選トカ、サウ云フ問題ニ
付テ自然影響シテ來ルノデハナイカト思フ
ノデアリマス、現內閣ノ首班デアラセラレル
東條總理大臣ハ、內務大臣ニナラレタ其ノ
劈頭ニ於キマシテモ、國民ヲ信賴シテ掛ル
斯ウ云フコトヲ非常ニ强調サレテ居ルノデ
アリマス、私ハ此ノ際產業報國會ニ魂ヲ入
V、生產能率ヲ增進スルト云フ爲ニハ、大
原則トシテハ先ヅ勞務者ヲ信賴シテ掛ル、
斯ウ云フコトガ前提ニナツテ行キマスナラ
バ、今日色々ナ生產能率ノ低下及ビ此ノ產業
報國會ノ運營ニ於テ、色々勞務者側ガ不滿
ヲ抱イテ居ル點モ、自ラソコカラ解決スル
ノデハナイカト思ヒマス、私ハ過去ノコト
ハ申シマセヌ、過去ニ於テハ色々オヤリニ
ナツタ、政府當局ノ御執リニナツタ手段方
法モ其ノ時ニ於テハ適切デアツタカト思フ
ノデアリマスガ、今日國民ハ上下共一丸ト
ナツテ此ノ戰ヲ勝拔カウトシテ居ル今日ニ
於キマシテハ、最早過去ニ於ケルガ如キサ
ウ云フ警戒心ヲ解イテ、信ヲ相手ノ腹中ニ
置クト云フ心構ヘデ之ニ對處致シマシタナ
ラバ、意外ニ早ク、今持ツテ居ル色々ナ缺
陷ヲ除去スルコトガ出來ルノヂヤナイカト
思フ、ドウゾ總理大臣モサウ云フ御方針デ
アルヤウデアリマスマカラ、是ハ是非トモ
サウ云フ風ニヤツテ戴キタイト思フノデア
リマス
ソレカラ事業場產報組織整備要項ノ中ニ
ハ、第四條カラ待遇改善ト云フ字句ガ削ラ
レテ居ル、是ハ產業報國會ノ單位產報ニ對
スル其ノ見本ノヤウナ會則例ノヤウナモノ
ヲ最初ニ作ツタ時ニハ、待遇改善ト云フノヲ
入レルノハ宜クナイト云フノデ、事業主側
カラ反對ガアツタノデスガ、其ノ反對ヲ押
切ツテ入レタコトニ付テハ意味ガアツタト
思フノデアリマス、然ルニ之ヲ削ラレタノ
ハドウ云フ譯デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=77
-
078・持永義夫
○持永政府委員 只今ノ御話ノヤウニ懇談
ト致シマシテハ待遇ノ問題モ觸レルト云フ
コトニナツテ居リマスカラ、其ノ組織トシマ
シテハ削ラレマシタガ、懇談ト云フコトニ
於キマシテハヤリ得ルコトニナツテ居リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=78
-
079・西尾末廣
○西尾委員 ソレカラ先程塚本君ト武井次
官トノ間ノ質問應答ノ中ニ、次官ガ結局病
氣ニ罹ラナイ强イ身體ノ勞務員ヲ今後作ツ
テ行カナケレバナラヌ、斯ウ云フコトヲ言
ハレタノデアリマス、ソレハ榮養ノ問題ヤ
ラ住宅ノ問題ヤラ色々アリマスガ、併シ是
ハ勞働時間ニモ重要ナ關係ガアルノデアリ
マス、ヤハリ結核ニ罹リマスノハ疲勞シテ
居ル場合ガ一番罹リ易イ又疲勞シテ居ルト
云フコトガ、一旦感染シタ病菌ヲ益〓蔓延セ
シムル結果ニナルノデアリマス、此ノ勞働
時間ニ付キマシテモ長イ時間ヤツタカラト
テ必ズシモ能率ガ上ルトハ考ヘラレナイト
云フコトモ、凡ソ專門家ノ定論ニナツテ居
ルノデアリマス、然ルニ一昨年ニ於キマシ
テハ十一時間以上ニ勞働時間ヲ延長スルコ
トハ、普通ノ場合出來ナイヤウニナツテ居
ツタ、其ノ制限ヲモ解イタヤウニ私ハ承知
シテ居ルノデアリマスガ、是ハ寧ロ一定ノ
限度ニマデ勞働時間ヲ短縮スル、サウシテ
能率ヲ上ゲルヤウ工夫ヲ凝ラスト云フ必要
ガアルノデハナイカト考ヘテ居ツタノニ、
事實ハソレノ逆ノ結果ニナツテ了解ニ苦ン
デ居ルノデス、是ハドウ云フコトニナツテ
居ルノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=79
-
080・持永義夫
○持永政府委員 御說ノヤウニ總動員法ニ
基キマス工場事業場就業時間制限令ニ依リ
マシテ、特殊內容、卽チ金屬其ノ他軍需產業
等ニ於キマシテハ十二時間-只今十一時間
ト言ハレマシタガ十二時間以內ヲ以テ勞働
時間ト致シテ居リマス、併シ其ノ勅令ノ中
ニハ緊急已ムヲ得ザル場合ニ於キマシテハ
之ヲ或ル程度延長シ得ルト云フ但書ガゴザ
イマス、ソコデ只今ノ御話ノ問題ハ、恐ラ
ク造船業ニ於ケル就業時間制限ノ問題ト思
ヒマスガ、其ノ造船業ニ於ケル就業時間ヲ
全面的ニ十二時間ヲ徹廢シマシテ無制限ニ
シタト云フ意味デハゴザイマセヌ、是ハ昨
年丁度其ノ頃船舶ガ非常ニ不足致シマシテ、
殊ニ米ノ輸送ニ困ルト云フヤウナ狀況デア
リマシタコトガ一ツト、モウ一ツハ軍、殊
ニ海軍ノ方ノ造船ノ關係モ非常ニ逼迫シテ
居ルト云フヤウナ特ニ强イ御希望ガアリマ
シタノデ、ソコデ軍需品ノ製造ニ關係ノ深
イ造船ニ付キマシテハ十二時間ヲ一應徹廢
スル、併シソレハ關係大臣卽チ陸海軍大臣
及ビ遞信大臣ノ證明アルモノニ限ル、サウ
云フモノハ國家トシマシテ非常ニ逼迫シテ
居リマシタカラ、已ムヲ得ズ但書ニ依ツテ
延長シ得ルト云フコトニ致シタノデアリマ
ス、併シ其ノ運用ニ於キマシテハヤハリ十
分ナル監督ヲスル、例ヘバ或ル日十三時間
ナリ十四時間ヤツタ場合ニハ、翌日ニ或ル
程度ノ休憩時間ヲ設ケルトカ、或ハ月全體
トシテ休日ヲ設ケルトカ云フヤウニ一定
ノ指導方針ヲ關係府縣ニ示シマシテ、出來
得ル限リ長時間ニ依ル惡影響ノナイヤウナ
方法ヲ執ツテ貰フヤウ之ヲ示シタ譯デアリ
マス、隨ヒマシテ全般的ニ十一一時間ヲ撤廢
シタ譯デハゴザイマセヌノデ、サウ云フ緊
急已ムヲ得ザルモノニ限ツテヤツタト云フ
コトヲ御承知願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=80
-
081・西尾末廣
○西尾委員 次ハ大臣ニ答ヘテ戴イタラ宜
イノカ、局長ニ答ヘテ戴イタラ宜イノカ、
國民體力ノ增强ノ問題ニ付キマシテハ、殊
ニ塚本君モ言及サレマシタ產業結核ノ問題
ニ付キマシテハ、第一ニ體力法ニ依ツテ早
期ニ診斷シテ之ヲ發見シ、早期ニ治療シ、
更ニ重症ニナツタ者ハ今度ノ醫療法ニ依リ
マシテ之ヲ隔離治療スル、斯ウ云フ順序ニ
ナツテ居ルノデアリマスガ、ドウモ早期發
見ハ體力法或ハ結核豫防法等ニ於テ大體是
デ旨ク行クノデハナイカト思ヒマス、ソレ
カラ重症者ノ隔離治療モ今度ハ十万2)
ド」ニ於テ稍、旨ク行クノデハナイカト思ヒ
マスガ、早期治療ト云フコトガ旨ク行カナ
イノデハナイカト思ヒマス、例ヘバ早期治
療ヲスルナラバ工場ニ働イテ居ル者ヲ休マ
セルト云フコトモ實際ニ於テハ必要ニナツ
テ來ルノデハナイカト思ヒマスガ、勞働者
側カラ言ツテモ、休ンデハ飯ガ食へナイシ、
又國家トシテモ休ンダ者ニ對シテ給料ノ保
證モ出來ナイ、ソンナ關係デ早期治療ハ相
當ムヅカシイト思ヒマス、之ヲ根本的ニド
ウシタラ宜イカト云フコトハ、今日此處デ
根本的ニ決マルベキ性質ノモノデハナイト
思ヒマスガ、唯一ツ可能ナコトハ結核病ニ
關スル限リ、其ノ治療費ハ一定限度ヲ置イ
テ例ヘバ家族手當ノ場合ニ最高ヲ決メタ
ヤウナ工合ニ、一定限度ヲ置イテ、ソレ以
下ノ收入ニ依ツテ生活ヲシテ居ルモノハ全
部之ヲ無料ニスル、少クモ之ヲ半額ニスル、
サウシテ其ノ部分ハ政府ガ負擔スルト云フ
ヤウニ出來ナイモノデアリマセウカ、之ヲ
御伺ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=81
-
082・武井群嗣
○武井(群)政府委員 結核ノ療養ニ當ツテ
未前ニ之ヲ防止スルコトノ大事ナコトハ御
說ノ通リデアリ、政府モ其ノ方針ニ向ツテ
進ンデ居ルノデアリマス、同時ニ一度感染
シタ者ノ治療ニ付キマシテモ、今囘ノ法案
乃至豫算案ニ於キマシテ、相當大規模ノ計
畫ヲシタ譯デアルコトモ御話ノ通リデアリ
マス、就テハ其ノ前ニ於テ、所謂治療前ノ
保養トデモ申シマスカ、其ノ點ニ對スル施
設ヲスルコトノ大切ナルコト是亦御話ノ通
リデアリマス、此ノ點ニ付キマシテハ健康
保險等ノ制度ニ於キマシテモ此ノ點ニ關ス
ル規定モアリマスルシ、又之ニ必要ナル施
設モ段々ト設ケツツアル實情デアリマス、
又〓員ノ保養所ナドニ付キマシテモ、主ト
シテ此ノ程度ノ者ヲ入レル計畫ヲ立テテ居
ル譯デアリマス、工場ニ從事スル者ニ付キ
マシテモ左樣ナ方ニ進マナケレバナラヌト
思ツテ居リマス、而シテ結核ノ治療ニ要ス
ル費用ニ付キマシテハ、一方ニ於テハ體力
法ニ於テ徹底的ニ其ノ療養ヲセシムル場合
ニ於テ、家庭ノ事情等ニ依リマシテ資產ノ
困難ナル者ニ付テハ之ヲ補給スル途モ開カ
レテ居リ、今囘モ若干ノ豫算ヲ計上シテ居
ルノデアリマス、左樣ニ致シマシテ大體不
十分ナガラモ其ノ方面ニ向ツテ政府ハ力ヲ
注イデ居ルト云フコトガ言ヘルト思ビマス、
寧ロ此ノ際ニ更ニ進ンデ多數ノ勞務者ヲ使
用シテ居リマスル事業主、工場主等ノ方面
ニ於キマシテモ一層ノ協力ガ望マシイト思
ツテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=82
-
083・西尾末廣
○西尾委員 是ハ戴キマシタ統計ニモ現ハ
レテ居ルノデアリマスガ、殊ニ戰爭ハ結核
患者ヲ非常ニ多クシテ居ルノデアリマス、
各國人口一万ニ對スル結核死亡累年比較表
ニ於キマシテモ、此ノ前ノ歐洲戰爭ノ時分
三、戰爭ノ參加國ハ悉ク非常ナ勢ヒデ結
核死亡率ヲ增シテ居ルノデアリマス、日本
ノ結核死亡率ノ「カーブ」ヲ見マシテモ、大
體明治三十三年カラ大正七年歐洲戰爭ノ
終ツタ頃、其ノ頃ガ一番高クナツテ、ソレ
カラ段々下ツテ來テ居ツタノガ、今度此ノ
事變ニナリマシテ又非常ニ上ツテ來テ居ル
ノデアリマス、現在デハ此ノ表ニ出テ居リ
マセヌケレドモ、恐ラク十五年ヨリハ又相
當上ツテ居ルノデハナイカト豫想セラレル
ノデアリマス、斯ウ云フ猛威ヲ揮ツテ居ル
結核ヲ退治スル爲ニハ、今ノ體力法ノ程度
デハ、是ハ甚ダ言ヒ過ギカ知レマセヌガ、
是ハ申譯的ノモノデアツテ、眞ニ之ニ依ツ
テ結核ヲ防止スルト云フコトハ出來ナイノ
デハナイカ、此ノ點ニ於テモ相當思ヒ切ツ
テ-私ノ言フ無料ニスルトカ、半額ニス
ルト云フノハ相當思ヒ切ツタヤウデアリマ
スケレドモ、寧ロ此ノ思ヒ切ツタコトヲヤ
ルノデナケレバ出來ナイノデハナイカ、是
ハ十分ニ御〓究又御決意ヲ御願ヒ致シテ置
キマス
ソレカラ最後ニ一ツ人口局長ニ御尋ネ致
〃
シタイノデアリマスガ、昨年ノ一月ノ閣議
デ決定シマシタ人口政策確立要綱ハ、大體
昭和三十五年マデニ內地人口ヲ一億万人ニ
スルト云フ目標デヤツテ居ルノデアリマス
ガ、此ノ要綱ハ今日ノ大東亞戰爭ガ行ハレ
ルト云フ今日ノ事態ヲモ豫想ニ入レテノ目
標デアルカドウカ、卽チ換言致シマスナラ
バ、此ノ人口政策確立要綱ト云フモノハ
更ニ再檢討ヲシナケレバナラヌノデハナイ
カト云フ風ニ考ヘルノデアリマス、之ヲ御
伺ヒ致シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=83
-
084・中村敬之進
○中村(敬)政府委員 昨年ノ一月ニ御承知
ノ如ク人口政策確立要綱ガ閣議デ決定ニナ
リマシタコトハ、其ノ要綱ノ冐頭ニモアリマス
ル通リ、我ガ國ガ大東亞ノ共榮圈ヲ確立シ
テ、其ノ指導ノ中心トナルト云フ根本目標
ノ爲ニ、人口政策上必要ナル事項ヲ盛ツタ
モノデアリマシテ、此ノ目標自體ハ今日ニ
於キマシテモ無論飽クマデモ堅持シテ行ク
ベキモノデアリマスルカラ、人口政策確立
要綱ノ基調ニ變化ノナイコトハ無論デアリ
マス、具體的ナ色々ノ數字ヲ擧ゲテ目標ガ
示シテアリマスガ、是等ノ點ニ付キマシテハ
私共モ最近色々〓究ヲ重ネテ居ルノデアリ
マス、御承知ノ如ク昭和十二年ト十三年ノ
出生率ヲ比較シマシテモ、約二十五万ノ出
生減ガアルノデアリマスルガ、又今日斯ク
ノ如キ大戰爭ヲ遂行シテ居ル結果トシマシ
テ、ドウ云フ風ニ人口ノ面ニ其ノ影響ガ現
ハレテ來ルカト云フコトニ付キマシテハ、
色々〓究ヲ重ネテ居ルノデアリマス、歐洲
戰爭ノ後ニ於キマシテモ、戰爭ノ直後ニ於
キマシテハ極メテ短イ期間デアリマスガ出
生ガ增加シテ居リマス、併シナガラ其ノ傾
向ト云フモノハ永ク持續サレナイデ、間モ
ナク相當顯著ナル出生ノ減退ヲ見テ居ルヤ
ウナ狀況デアリマス、日本ガ近イ將來ニ於
キマシテ此ノ戰爭ノ結果ドウ云フヤウニ具
體的ノ影響ヲ人口ノ上ニ於テ受ケルカト云
フコトハ、中々豫想モ困難デアリマスガ、斯
クノ如キ外國ノ事例、或ハ十二年、十三年
ノ間ニ於ケル出生ノ減退等ノ經驗カラ考ヘ
マシテ、色々ノ〓究ヲシ、而シテ是等ノ惡イ
方ノ影響ヲ最少限度ニ〓止メテ、當初ノ人
口政策ノ目標ヲ達スル成爲ニ更ニドウ云フ
方面ニ力ヲ入レテ行クベキカト云フコトニ
付テ色々〓究シテ居ルノデアリマシテ、其
ノ根本ノ精神ハ昨年定メラレマシタ其ノ要
綱全體ノ精神ニ出來ルダケ副フ、ソレヲ變
更シナイデモヤツテ行ケルト云フヤウナ目
標デ以テ、色々〓究ヲシテ居ルヤウナ次第
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=84
-
085・西尾末廣
○西尾委員 私ノ質問ハ大體終ツタノデア
リマスガ、此ノ機會ニ大臣ニ特ニ御願ヒ致
シテ置キタイノデアリマス、最初ニ申シマ
シタヤウニ昨年ハ私ノ希望致シテ置イタ通
リ、全國ニ廻ツテ戴イテ、大變好イ結果ヲ
得テ居ルト思フノデアリマスガ、唯惜シム
ラクハ大臣級ノ人ニモ段々來テ戴イタノデ
アリマスガ、其ノ說ク所勞働者ノ生活ニ直
接觸レナイデ、高遠ナ理想ヲ說クト云フコ
トニ急ノ餘リ、所謂勞働者自身ノ生活ニ直
接觸レルコトノ少イ講演內容モ段々アツタ
ヤウデアリマシテ、此ノ點折角ノ御努力モ
半バシカ其ノ效果ヲ達シテ居ナイノデハナ
イカト思フノデアリマス、人ヲ見テ法ヲ說
ケト云フコトガアリマスカラ、ヤハリ今度
モ是非時間ヲ御作リ下サイマシテ、各大臣
トモ增產政策ノ爲ニ勞働者ノ自覺ヲ促シ、
勞働者ヲ激勵スルト云フコトニ御努力ヲ願
ヒタイト思フノデアリマスガ、其ノ機會ニ
ハヤハリ君等ニ賴ムト詰リ求メルバカリデ
ハナク、政府モコンナニマデ諸君ノ爲ニヤ
ツテ居ルンダト云フコトヲ勞働者ノ實感ニ
觸レルヤウニ、勞働者ノ實際生活ニ卽シタ
引例ヲ以テヤツテ戴キタイト思ヒマス、小泉
厚生大臣ハ極メテ通俗的ナ御演說ヲ戴キマ
シタ爲ニ、其ノ點ニ於テハ非常ニ皆ピント
胸ニ應ヘテ喜シデ居ルヤウデアリマスガ、
其ノ他ノ人ハ必ズシモサウデナカツタヤウ
ニ思フノデアリマス、詰リ求メルバカリデ
ハナイ、右ノ手デ求メレバ又左ノ手デ與ヘ
ルト云フ氣構ヘデ一ツヤツテ戴キタイト思
ヒマス
最後ニ私近來讀ミマシテ非常ニ胸ヲ打タ
レタ愉快ナ文獻ガアリマスカラ之ヲ一ツ紹
介致シマシテ、此ノ精神ヲ大イニ普及シテ
戴キタイト思ヒマス、ソレハ「パイロットㄴ
萬年筆會社ノ重役デアリマス渡邊旭氏ノ月
給制度ニ關スル意見デアリマス、其ノ中ノ
一節ノ「名譽本能ト月給制度」ト云ラ短イ文
ヲ一寸讀ンデ見マスカラ暫ク御許シヲ願ヒ
マス「最後ニ第五ノ名譽本能ニ就テ述ベマ
ス、名譽本能ヲ滿サセルノニハ表彰狀ヲ
與ヘ、金一封ヲ出スコトバカリガ能デハア
リマセヌ、ソンナコトハ寧ロ末ノコトデス、
勿論惡イコトデハナイ、結構ナコトデスカ
ラ大イニヤツテ宜シイノデスガ、根本ノ考
ヘ方ヲシツカリ摑ンデオク必要ガアリマス、
然レバ、根本ハドコニアルカトイヒマスニ、
ソレハ勤勞アツテコソ國ガ立ツノダトイフ
理念ニ徹スルコトデアリマス、ソノ理念ヲ
以テ彼等ヲ遇スルコトガ名譽本能ヲ完ウサ
セル眞ノ道デアリマス、蟲ケラ扱ヒ、所謂
職工扱ヒヲシテオイテ、イクラ褒賞狀ニ立
派ナ文句ヲ書イテモ、ソレハ駄目デス、シ
ンカラ勞働ハ尊イモノ、勞働ヲ忌避スル民
族ニ興隆ハナイ、汗コソ何物ニモ優ル國ノ
寶ダト云フ確信ニ立ツテ彼等ヲ遇スルコト
ガ根本ナノデス、所ガ實際ノ工場事業場ヲ
見ルト、其處ハ人生ノ掃溜メダト云フコト
ニナツテハ居リマセヌカ、セメテ子供ニダ
ケハ靑服ヲ着セタクナイ、職工渡世ダケハ
サセタクナイト云フ空氣ニナツテハ居マセ
ヌカ、斯カル空氣ノ儘今後五十年續ケテ御
覽ナサイ、日本ハ危イノデス、「フランス」ノ
二ノ舞ヲセヌトモ限リマセヌ、國家產業ノ
重任ニ當ツテ居ル者ヲ所謂職工扱ヒニシテ
顧ミナイト云フ考ヘ方ハ逐ニハ國家ヲ亡ボ
ス極メテ危險ナ思想ト申サネバナリマセヌ、
先程申シマシタヤウニ「ムソリーニ」ハ「イ
タリー」ノ勞働者ヲ祖國再興ノ戰士ト呼ビ
マシタ、決シテ職工扱ヒニシテ居ラヌノデ
アリマス、又「ヒトラー」ハ民族興隆ノ爲ノ
崇高ナル奉仕ト呼ビマシタ、是又決シテ職
王扱ヒヲシテ居リマセヌ、最近日本デハ漸
ク產業戰士ト呼ブヤウニナリマシタ、此ノ
三ツノ呼聲ヲ比ベテ見テ下サイ、認識ノ度
合ガヨク現ハレテ居ルノガ分リマス、產業
戰士ト云フノガ最モ低調デ前二者ニ比ベテ
物足リナイ感ガシテナリマセヌ、丁度其ノ
如ク日本ニ於テハ勞働ノ大切ナコトノ認識
ガ低調ダト言ヘルト思ヒマス、日本精神ノ
本來ハ決シテソンナモノデハアリマセヌデ」
シタ、畏多イコトデアリマスガ、上皇室ニ
於カセラレマシテハ、產業人ヲ大昔カラ大
御寶ト呼バセ給ウテ居ラレルノデアリマス、
實ニ何トモ有難イコトノ極ミデアリマシテ、
其ノ御仁愛ノ深サニハ感激ノ外ナイノデア
リマス、是ガ日本ノ本當ノ國振リナノデア
リマス、此ノ大御寶ト呼バセ給ヲ大御心ニ
至リマシテハ、モウ「ムソリーニ」ノ表現モ「ヒ
トラー」ノ思想モ到底足元ニモ及ビマセヌ、
是レ以上ノ認識ハ世界如何ナル國ニ參リマ
シテモ斷ジテアリマセヌ、此ノ大御寶ノ大
御心ヲ體シテ彼等ヲ遇シマスコトガ、匠バー
名譽本能ヲ完了サセル根本道ナノデアリマ
ス
以上デアリマス、斯ウ云フヤウニ非常ニ
私ハ此ノ精神ガ本當ニ勞働者ニ分ルバカリ
デナタ、國民全體ニ普及サレマスナラバ、
勞働者ヲシテ更ニ奮起セシムルニ非常ニ效
果アルカト思ヒマス、此ノ點ヲ最後ニ御願
ヒ致シマシテ、私ノ質問ヲ打切ルコトト致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=85
-
086・紫安新九郎
○紫安委員長 塚本君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=86
-
087・塚本重藏
○塚本(重)委員 實ハ西尾委員ガ最後ニ述
〃
ベラレマシタコトガ私ノ質問ノ冒頭ニナツ
テ來ルノデアリマシテ、之ヲ大臣ニ御伺ヒ
シヨウト思ツテ居ツタノデアリマスガ、大
臣ガ御出席ガナカツタノデ、一番後ニ〓シ
タノデアリマス、今西尾君ガ最後ニ色々申
上ゲマシタ意味合ニ於キマシテ、私ハ此ノ
際厚生省ニ於テ產業勳章ト云フモノヲ制定
シテ戴キタイト思フノデアリマス、文化方
面ニ於テハ既ニ文化動章ガアリ、船員ノ方
ニモソレニ匹敵スルヤウナモノガ出テ居ル、
昨年陸軍デハ技術有功章ト云フモノヲ作ラ
レマシタ、又厚生省ニ於キマシテハ石炭增
產ノ爲ニ厚生大臣徽章ト云フモノガ授ケラ
レマシタ、引續イテ金屬增產奬勵ノ爲ニ厚
生大臣ノ同ジク大臣徽章ト云フモノガ授ケ
ラレマシタ、洵ニ結構ナコトデアリマス、
又今西尾君ガ申シマシタヤウニ昨年ノ夏ハ
大臣初メ高橋大將等々ノ方々ガ全國ヲ遊說
ナサイマシタコトハ、產業人トシテ洵ニ感
激ノ外ハナイノデアリマス、サウ云フコト
ヲ屢〓繰返シテヤツテ戴キタイノデアリマ
スガ、此ノ際思切ツテ一ツ產業勳章ヲ制定
シテ戴キタイ、ソレハ唯單ニ增產運動ニ對
スル表彰ト云フヤウナ意味合デナク、今ノ
動一等カラ勳八等マデ旭日章、或ハ瑞寶章、
或ハ寶冠章ノアルガ如クニ、ソレ〓〓ノ段
階ヲ定メテ相當廣イ範圍ニ產業人ニ行渡ル
ヤウニ、此ノ大東亞共榮圈ト世界新秩序建
設ノ今次大東亞戰爭ニ、此ノ總力戰ニ參加
致シテ居リマスル產業人ノ方面ニ對シテモ、
其ノ功勞ニ報イル爲ニ、益〓生產能率ヲ高メ
ル爲ニ、彌ガ上ニモ國策ニ協力シテ職域奉
公ニ邁進スルコトノ爲ニモ、此ノ機會ニ於
テ產業勳章ヲ制定シテ貰フコトガ最モ時機
ニ適シタコトデハナイカト思フノデアリマ
ス、午前中非常ニ時間ヲ費シテ居リマスノ
デ是レ以上申上ゲナクテモ意味ハ能ク御分
リデアラウト思ヒマス
附加ヘテ一ツ御伺ヒシテ御考慮ヲ煩ハシ
タイノハ救護費ガ段々減額セラレテ居ルコ
トデアリマス、是ハ數年前カラ非常ニ問題
ニナツテ、其ノ內容ハ一時十四年ノ十月カ
ラ内容ヲ改善セラレタノデアリマスガ、今
年ノ提出ニナリマシタ豫算書ヲ見マスト
又昨年ヨリ救護費ガ減ツテ居ル、ソレハ要
救護者ガ非常ニ滅ツタトカ、或ハ救護ガ徹
底シタカラ費用ヲ少クシタト云フ意味デハ
決シテナイト思フ、今日全國五万ノ方面委
員ノ手ニ掛ツテ居ル要救護者ト云フモノハ
二百數十万ニ達シテ居ル、而モ救護法ニ依
ツテ、或ハ母子保護法ニ依ツテ救ハレテ居
ル者ハ其ノ中ノ約一割ニシカ達シテ居ラヌ
ノデアリマス、而モ其ノ額ト云フモノモ今
日ノ世情カラ見マシテ極メテ低額ノ救護費
シカ出シテ居ラヌノデアリマス、是ハモツ
トモツト救護スベキ人員モ殖ヤシテ行カナ
ケレバナラズ、又〓護ノ額ニ於キマシテモ增
額スベキガ至當デハナイカト思フノニ、豫
算書ノ上ニ於テ是ガ減額セラレテ居ルト云
フコトハ、甚ダ遺憾ニ堪ヘナイノデアリマ
ス、一ツ厚生大臣能ク此ノ點ハ御考慮下サ
イマシテ、將來ニ於テ救護費ハウント增額
シテ救護ノ徹底ヲ期シテ戴キタイト思ヒマ
ス、外ニマダアルノデアリマスケレドモ、
非常ニ時間ヲ費シテ居リマスカラ、此ノ二
ツヲ大臣カラ御答辯ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=87
-
088・小泉親彦
○小泉國務大臣 勞務者ノ勤勞ノ尊イコト
ハ御說ノ通リデゴザイマシテ、此ノ點ニ關
シマシテ政府ハ夙ニ色々〓究致シテ居リマ
シタガ、御承知ノ通リノ勤勞ノ新體制要綱
ヲ決定致シマシテ、之ニ從ヒマシテ國家的
恩賞ノ途ヲ立テルト云フコトノ要ヲ認メマ
シテ、先日二種ノ勤勞章ヲ制定致シマシタ
次第デアリマス、勅令ヲ以テ詳細之ヲ定メ
マシテ、其ノ第一種ノ方ハ丁度戰爭ノ金鵄
勳章ト云フヤウナ意味ニ、第二ノ乙種ノ方
ハ普通ノ勤勞勳章ト云フヤウナモノニナツ
テ居リ、先般陸軍デ出シマシタ陸軍ノ技術章
ト云フヤウナモノト同樣ナ風ニ取扱ヒタイ、
斯ウ考ヘテ居ルヤウナ次第デゴザイマス、
尙ホ御趣意ノ點ハ能ク諒承致シテ居リマシ
テ、此ノ點ニ對シマシテハ、尙ホ綜合的ニ
色々〓究スベキモノハ將來益〓考ヘテ行キ
タイ、斯ウ考ヘテ居リマス
ソレカラ救護費ノコトニ付キマシテハ御
說ノ點ハ十分考慮シテ行キタイト存ジマス、
詳細ナコトハ政府委員ヨリ御答ヘ致サセマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=88
-
089・武井群嗣
○武井(群)政府委員 救護費ノコトニ付キ
マシテ御尋ネガアリマシタノデ、數字ヲ指
摘セラレテノコトデアリマスカラ一應御答
ヘシテ置キマス、御承知ノ通リ昨年ノ十月
カラ醫療保護法ガ施行ニナリマシタノデ、
從來救護費トシテ計上シテ居リマシタ分ノ
中醫療保護法ニ當ル分ヲ別途ニ計上シタ譯
デアリマシテ、總額ニ於キマシテハ救護
ニ要スル費用ガ減ツタ譯デハアリマセヌ、
尙ホ申スマデモナク此ノ費用ハ補充費トナ
ツテ居リマスノデ必要ガ生ジタ場合ハ更ニ
補充シ得ルコトニナツテ居リマス、更ニ又
生活ノ實情ニ卽シマシテ單價等モ上ゲル計
畫ヲ進メツツアル狀況デゴザイマスノデ、
大體御趣旨ノヤウニナツテ居ルト思ヒマ
ス、此ノ點ヲ御諒承願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=89
-
090・紫安新九郎
○紫安委員長 田中邦治君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=90
-
091・田中邦治
○田中(邦)委員 此ノ際極メテ簡單ニ二、
三御聽キ申シテ置キタイト思ヒマス、第一
ニ〓員保養所ノコトデアリマスガ、此ノ〓
員保養所ハ早期ノ結核患者ヲ保養セシメル
トデモ申シマセウカ治療スルト言ヒマセウ
カ、此ノ保養所ノ使命ハ長クデ三箇月、詰
リサウ云フ早期ノ患者ヲ置クノテアルト云
フコトヲ聽イテ居リマスガ、全ク其ノ通リ
テアルカドウカ、ソレデ此ノ保養所ニ付テ
ハ大體縣營ガ多イト思ツテ居リマス、御承
知ノ通リ縣ノ經濟ハ何處モ餘裕ガナイ、此
ノ保養所モ貧弱ナモノシカ出來テ居ナイト
思ヒマス、私ハ長野縣デアリマスガ、長野
縣ハ本年四月カラ開所ヲ見ル豫定ニナツテ
居リマスガ、是モ約一万カラノ〓員ニ對シ
テ七十箇所見當ノモノガ作ラレルノデアリ
マス、ソレデ其ノ豫算ナルモノハ五年モ前
ニ縣會デ決定シタ豫算デ、僅カ十四、五万
圓ノ豫算ノ中デ是等ノ設備ヲスルノデアリ
マスカラ、大部分ハ建築費ニ掛ツテシマフ、
斯ウ云フコトニナツテ居ル關係カラ、此ノ
日本醫療團ニ依ツテ之ニ對シテ助成セラレ
テ、モウ少シ强化サレルヤウナ途ガ付クノ
デアリマスカドウカト云フコトニ付テ先ヅ
御聽キシテ置キタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=91
-
092・武井群嗣
○武井(群)政府委員 〓員保養所ハ御承知
ノ通リ文部省ノ所管ニナツテ居リマスノデ、
私ガ御答ヘスルノハ適當デナイ譯デアリマ
スガ、地方長官ヲ致シテ居リマシタ時分ノ
記憶ニ依リマスト、之ニ要スル費用ハ三分
シテ、其ノ一ハ文部省、他ノ一ハ府縣費
ヨリ、他ノ一ハ〓員自身ガ出スト云フコト
ニナツテ居ル筈デアリマス、而モ施設ガツ
イ最近ノコトデアリマシテ、昨年漸ク此ノ
保養所ニ關スル全國的ノ制度ガ出來タヤウ
ナ狀況デアリマスノデ、今各府縣ニ建テツ
ツアルト云フ狀況デアリマス、今御指摘ノ
ヤウニ未ダ其ノ成績ノ擧ラヌ點ガ多々アル
ヤウニ思ヒマスガ、旣ニ經營シテ居リマス
地方デハ相當ノ效果ヲ擧ゲテ、保養ノ成績
ハ宜イヤウニ存ジテ居リマス、併シナガラ
之ヲ以テ滿足スベキデナイコトハ仰セノ通
リデアリマスルノデ、日本醫療團ニ於テ之
ヲ經營シタラドウカト云フ御尋ネノヤウニ
拜承致シタノデアリマスガ、只今ノ豫定ト
シマシテハ、折角文部省ガ始メタバカリノ
制度デアリ、殊ニ其ノ目的ハ〓育者ノミノ
爲ノ施設デアリマスノデ、直チニ之ヲ日本
醫療團ニ統合スルト云フコトハ考ヘテ居ラ
ナイノデアリマス、併シナガラソレ〓〓差
別待遇ヲスルト云フヤウナコトハ宜シクナ
イコトデアリマスノデ、出來ル限リ此ノ方
面ニモ實際ニ於テ成績ノ擧リマスヤウニ何
カノ方法ニ依ツテ應援ヲ致シ、協力ヲスル
ト云フヤウナコトハ考ヘテ居ル譯デアリマ
シテ、斯樣ニシテ此ノ制度モ旨ク參ルヤウ
ニ致シタイ、只今ノ所斯樣ナ腹案ヲ持ツテ
居ル譯デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=92
-
093・田中邦治
○田中(邦)委員 〓員保養所ノコトニ付テ
ハ能ク分リマシタガ、次ニ無醫村ニ對スル
對策ニ付テ、具體的ニ分リ易ク御聽キシタ
イト思フノデアリマス、ソレハ大體無醫村
ノ方ガ多イ狀態デアル今日、小サナ町ヲ中
心トシテ其ノ周圍ニ又二三百戶程度ノ村落
ガアル、格別長野縣ナドニハ其ノ例ガ多イ
ノデアリマスガ、是等ノ村ハ町ニ接近シテ
居ルカラ、相當醫者ニモ惠マレテ居ルガ、
斯ウ云フ所デモヤハリ醫者ヲ置クノデアル
カドウカ、斯ウ云フコトヲ御聽キシタイ、
尙ホ遠ク離レタ交通不便ナ小サナ寒村、是
等ニハ是非醫者ガ欲シイ、サウ云フ所ニハ
ドウ云フ施設ヲサレルカト云フコトヲ御聽
キシテ置キタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=93
-
094・加藤於莵丸
○加藤政府委員 無醫村ニ診療所ヲ設置ス
ル具體的ノ方針ニ付テノ御尋ネデアリマシ
タガ、今御述べニナリマシタヤウナ、町ニ
ハ醫者ガ居ルガ、其ノ附近ニ醫者ノ居ナイ村
ガ二三アル、サシタル不便ヲ感ジナイト云
フヤウナ場合ニ其ノ村ニ診療所ヲ設ケマス
コトハ、理想カラ申シマスレバ成ベク行屆
イテ醫者ヲ置キマスコトハ肝要カト存ジマ
スケレドモ、全國的ニ緩急ノ度ヲ見計ラヒ
マシテ、サウ云フ所ニ早速建テ得ル程度ニ
行キマスカドウカ、順序等ヲ考ヘタ上デ決
定スベキ問題デハナカラウカト存ズルノデ
アリマス
〔委員長退席、星島委員長代理着席〕
ソレカラ交通不便ナ寒村等ニ付キマシテモ
診療所ヲ作ツテ、左樣ナ場所ニ醫者ヲ常置
セシメルコトガ速カニ出來ルカドウカ、全
國ヲ睨ンデ見マスト色々ナ事情モゴザイマ
スカラ玆ニハツキリ申上ゲ兼ネマスケレド
モ、左樣ナ所ニハ場合ニ依リマシテハ巡囘
的ニ出張診療所ノ如キ設備ヲ設ケマシテ、
一週間ニ一囘トカ二囘ト力云フ風ニ巡ラセ
ルヤウナ仕組モ實ハ考ヘテ居リマス、左樣
御諒承ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=94
-
095・田中邦治
○田中(邦)委員 次ニ御尋ネシタイノハ產
業戰士ノ徴用ニ關シテデス、職業指導所ニ
於テ大體扱ハレルノデアリマスガ、是ガ身
體檢査ニ付テ十分御考慮ヲ願ハヌト非常ニ
惡イ結果ヲ齎スノデアリマス、斯ウ云フ實
例ガアリマス、一旦呼吸器病ニ罹ツテ本人
ガ一年前マデ此ノ病氣デ何モシナイデ居ツ
タノニ、今度徵用令ニ掛ツテ試驗ニ出タ所
ガ〓パス」シタ、而モソレハ補充デ居ツタガ、
今度徴用ヲサレタ、所ガ僅カ三箇月位デ、
而モ行ツタ所ハ大キナ軍需工場デアツテ、朝
カラ長時間ニ亙ツテ「コンクリート」ノ床ノ
上デ働カサレタ爲ニ再發シテドウニモナラ
ヌ
〔星島委員長代理退席、中井委員長代
理着席〕
歸ツテ來タイト思フガ中々許サレナカツ
タ、漸ク診斷ノ結果一旦歸省サセタダケデ
アルガ、此ノ際是非徴用令ヲ解除シテ貰ヒ
タイ、斯ウ云フ解除ノ手續ヲスルニ付テ是
亦容易デナイ、長ケレバ六箇月、其ノ位掛
ラナケレバ解除サレルヤウナ狀態ニナラヌ
ノデアル、已ムヲ得ナイカラ一時先ヅ醫者
ノ診斷書デモ添ヘテ、缺勤屆デ其ノ儘延バ
シテ貰フヨリ仕樣ガナイノデハナイカト云
フノガ現狀デアリマス、是等ニ付テハ厚生
省トシテ何等カモウ少シク簡便ナ方法ヲ以
テ-サウ云フ見損ツタモノハ澤山アルト思
ヒマスガ、病氣ニナツテ、モウ立派ニ醫者ノ診
斷ヲ受ケテ居ルノデ、治ルト思ツタラ病院ニ
デモ入レテ、完全ニ治療シテヤラレルガ宜
シイ、サモナケレバ當然解放サルベキモノ
デハナイカ、斯ウ考ヘルノデアリマスガ、
現在ノ規定カラ行ケバサウハ行カヌヤウデ
アリマスケレドモ此ノ點ニ付テ御考ヘヲ承
ハツテ置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=95
-
096・武井群嗣
○武井(群)政府委員 御話ノヤウナ事例ハ
サウ多クアル譯デハナイト思ヒマスガ、絕無
トハ申上ゲ難イト思ヒマス、ト申シマスル
コトハ、何サマ徵用ノコトハツイ最近始メ
タノデ、而モ此處デ數ヲ申上ゲ兼ネマスケ
レドモ、相當多數ノ人員ヲ急速ニ充足スル
ト云フ必要ニ迫ラレテ居リマスシ、一方之
ニ從事スル係員等ニモ實ハ不慣レナモノモ
相當アル譯デアリマス、ソレガ爲ニ實ハ笑
話デアリマスガ、徴用令書ヲ出シテ見タ所
ガ、實ハ女ダツタ、漢字ノ名前デアツタモ
ノデスカラ、戶籍面ノ間違ヒカラ女ガ徵用
サレタ、ソコデソレガ傳ヘラレテ、愈〓、政府
ハ女子ノ徵用ヲ始メタノダナドト言ハレタ
ト云フヤウナ笑話ガ實ハアツタノデアリマ
シテ、是ハ率直ニ申上ゲマスト、實情已ム
ヲ得ナカツタモノデアリマス、併シ此ノ儘
デ宜シイト云フコトハ毛頭ナイノデアリマ
ス、如何ニ急速ニ之ヲ要求スルト致シマシ
テモ、出來得ル限リ其ノ人達ノ身體檢査等
ハ嚴重ニシナケレバナラヌコトハ申スマデ
モアリマセヌ、今日ノ實際ノヤリ方ハ、其
ノ主務大臣タル陸軍大臣又ハ海軍大臣ヨリ
厚生大臣ニ對シテ、是レ〓〓ノ徵用ニ對ス
ル要求ガ參リマス、厚生大臣ハソレヲ受取
ツテ相當調査致シマシテ、至當ト認ムル場
合ニ於テ、更ニ内閣總理大臣ニ協議スルコ
トニナツテ居リマス、其ノ上デ府縣知事ニ
對シテ徵用ノ命令ヲ發スルト云フコトニナ
ツテ居ルノデアリマス、サウシテ府縣知事
ヨリ本人ニ對シテ何月何日マデニ出頭ヲ命ズ
ルト云フコトニナルノデアリマスガ、實ハ其ノ時日
ト云フモノガ極メテ短イノデアリマス、此ノ點
ハ詳細ニ申上ゲマセヌガ、御賢察ヲ願ヒタ
イト思ヒマス、サウシテ赤紙ニ等シイ取扱
ヒヲスル譯デアリマスノデ、斯樣ニ鄭重ナ取
扱ヲ致シテ居ル譯デアリマス、併シ其ノ後
ノ實施ノ狀況ヲ見マスト、兎モ角急イダ爲
ニ色々ト不十分ノ點モアリ、是正スベキ點モ
アル譯デアリマスノデ、只今ノ所事務ノ手
續ヲモ少シ簡略ニスル必要ガアルダラウト
云フノデ、此ノ陸軍、厚生、内閣ノ三者ノ間
ノ事務ノ打合セ等ニ付キマシテハ、相當簡
略ナ手續ヲ認メルヤウニ致シタノデアリマ
ス、ソコデ今度ハ解除ノ點デアリマスガ、
一タビ左樣ニ鄭重ニ扱ツタモノデアリマス
ノデ、之ヲ解除スル場合ニ於キマシテモ、
鄭重ニスルコトハ理ノ當然デアルト思フノ
デアリマスガ、併シナガラ事實問題トシテ
常識デ考ヘテ見テモ、巳ムヲ得ヌト云フヤ
ウナモノヲ從前ノ手續通リヤルノハ宜シクナ
イデアラウト云フコトデ、目下此ノ解除ノ事
務ノ簡捷方ニ付キマシテ〓究中デアリマシ
テ、其ノ一部ハ近ク地方長官ニモ委任スル
ト云フヤウナ考ヘデ進ンデ居リマス、併シ
マダ此ノコトハ正式ニ出ルマデニハツキリ
シタコトハ申上ゲラレマセヌケレドモ、左
樣ナ狀況デ、或ル程度ノモノハ之ヲ地方長
官ニ委任シテ實地ニ卽スルヤウニシ、國民
ヲシテ徵用ノ本義ヲ誤ラセナイヤウニ致シ
タイ、斯樣ニ考ヘテ居リマスコトヲ御諒承願
ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=96
-
097・田中邦治
○田中(邦)委員 徴用ノコトニ付テハドウ
ゾ只今ノ御意見ノヤウナコトガ促進出來ル
ヤウニ御願ヲ申ス一人デアリマス
次ニ花柳病ノコトニ付テ承ハリマス、今
日花柳病ハ一般ニハ相當減少シツツアル傾
向デアルト云フコトヲ承ハツテ居リマスル
ガ、併シ遺憾ナガラ殷賑產業方面デハ增加
ノ傾向デアルヤウニ統計ノ上ニ現ハレテ居
ルノデアリマス、私ハ其ノ外ニ大事ナル國
家ノ干城タル兵士ニ、而モ大陸ニ渡ラナイ內
ニ花柳病ニ罹ツテ入院シテ居ル者ガ相當ア
ルコトヲ、慰問等ニ於テ實地ニ見マシテ、
甚ダ寒心ニ堪ヘナイモノガアルノデアリマ
ス、是等ノ原因ハドウ云フ所ニアルノデア
リマスカ、厚生省ノ見地ヲ一ツ伺ツテ置キ
タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=97
-
098・高野六郎
○高野政府委員 壯丁ノ檢査ニ依リマス
下、花柳病ノ感染者ハサウ多クゴザイマセ
又、戰時デアリマスルガ、段々少クナル傾
向ヲ呈シテ居リマシテ、其ノ點實ハ甚ダ快
ク感ジテ居ルノデアリマス、日本ノ靑年ノ
緊張シタル態度ガ少クトモ壯丁檢査マデハ
花柳病感染ノ機會ヲ避ケテ居ルト存ジマス、
併シ股賑產業等ノ方面、又其ノ他ニ於キマ
シテ、斯ウ云フ時代デゴザイマスカラ、感
染ノ機會、詰リ感染ノ源トナル業態者ノ相
當ノ存在ガゴザイマスノデ、或ハサウ云フ
所カラ感染ガ好マシクナイ方面ニモ起ルカ
ト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=98
-
099・田中邦治
○田中(邦)委員 只今ノ御說明デハ餘リ承
服出來ナイト思ヒマスルガ、是等ノコトハ
御考ヘニナラヌモノデアリマセウカ、詰リ
賣笑婦ミタイナ者若シクハ藝妓ミタイナ
者是等ノ連中ヲ檢黴スル醫者トノ情實關
係ヨリ、本當ノ保菌者ヲバ大目ニ看過シテ
置クト云フヤウナ扱ヒ方ヲサレツツアルノ
ガ最大原因ヂヤナイカト思ハレマスガ、當
局デハサウ御考ヘニナツテ居リマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=99
-
100・高野六郎
○高野政府委員 所謂業態者ト云フモノガ
ゴザイマシテ、社會ニ花柳病毒ヲ蔓延セシ
ムル原因トナツテ居リマス、是等ニ對シマ
シテハ十分ニ診察治療ノ機會ヲ與ヘルヤウ
ニ考慮致シテ居リマス、此ノ事變ガ始マリ
マシタ當初ニ於テ花柳病豫防法ノ未施行分
モ施行スルコトニ致シマシテ、又左樣ナ業
態者ニ對スル診療施設ヲモ全國ニ相當擴充
致シマシテ、努メテ斯樣ナ者ノ健康狀態ヲ
確保スルヤウ相當努力致シテ居リマス、尤
モ數ガ多イノデゴザイマスルカラ、完全ニ
參リマセヌコトハ御承知ヲ願ヒタイト思ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=100
-
101・田中邦治
○田中(邦)委員 花柳病ハ言フマデモナク
人口ノ增殖ニハ非常ナ影響ヲ及ボスモノデ
アリマスルカラ、政府當局ニ於カレマシテ
ハ徹底的ニ御盡力アランコトヲ冀フ者デア
リマス、以上ヲ以テ私ノ質問ヲ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=101
-
102・中井一夫
○中并委員長代理 野方君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=102
-
103・野方次郎
○野方委員 同僚諸君ヨリ有益ナル御質問
ガアリマシテ、玆ニ多ク論ズル必要ハナイ
ノデアリマスルガ、結核問題ニ付テ一寸申
上ゲタイ、結核ハ不治ノ疾病ナリトシテ居
リマスルガ、將來科學的療法、免疫療法ニ
依ツテ治癒セシメルコトガ出來ルト思フ、
是ハ民間ニ於キマシテモ相當ノ〓究者ガア
リマシテ、免疫療法ノ點ニ付キマシテ少シ
ク進ンダル考ヘヲ持ツタ者モアルノデ、當
局ニ陳情シタノヲ見タコトモアリマス、是
等ハ十分再檢討スル必要ガアルト思ヒマス、
又是ガイケナケレバ政府ハ直チニ廢止ヲ命
ズル權能ガアルノデアリマシテ、恐ラクハ簡
單ナル所ニ偉大ナル發見ガアルノデ、此ノ免
疫療法ナドハ將來非常ナ效果ガアルト信ジ
テ居リマスカラ、尙ホ特ニ再檢討ヲ願ヒタ
イト思ヒマス、又此ノ結核ヲ撲滅スルニ付
キマシテハ、今日ノ方法デハ容易ニ出來ナ
イ、今度醫療團ガ出來テ、大分大規模ニナ
リマスルケレドモ、中々困難デアル、早期
診斷、早期治癒ト云フコトガ容易ニ出來得
ナイ、殊ニ今日ハ「レントゲン」ヲ以テ診斷ス
ル方法ヲ執ツテ居リマスガ、「レントゲン」
診斷ハ病勢ガ進ンダ時ニ初メテ出來ルノデ
アツテ、古來用ヒル所ノ聽診ニ依ツテ本當
ノ初期ノ診斷ガ出來ルノデアリマスカラ、
今ノヤウナ一日ニ二百人、三百人ヲ診ルト
云フ形式ヲ取ツタノデハ何ノ效果モナイ、
少クトモ五十人位ニ限定シテ、靜カナ部屋
デ十分ニ診斷セシメル方ガ宜イ、昔ハ聽診
ニ勘能ナ者ヲ以テ名醫トシテ居ツタガ、今
日ハ機械的ノ科學萬能ニナツテ、聽診、打
診等ニ付テ〓究者ガ少クナツタ、斯ウ云フ
コトガ段々醫療ノ衰退シタ原因トナツテ居
ルノデアリマスカラ、將來耳ノ肥エタ醫者
ヲ澤山採用シテ、一日ニ五十人、精々百人
ニ限定シテ、十分ナル診斷ヲサセナケレバ
早期診斷ハ困難デアリマス、又早期診斷ガ
出來マシタナラバ、次ハ治療デアリマスル
ガ、今囘ノ營團ハ結核ガ主ナルモノト考ヘ
マス、仍テ都會ノ病院等ヲ併合スルヨリハ
結核病院ヲ建テテ、結核ノ完全ナル治療ヲ
スル
〔中井委員長代理退席、塚本委員長代理
着席〕
若シ是デイカヌ場合ニ於キマシテハ、結核
保險ヲ作ル、是ハ私ノ持論デアリマスルガ、
我ガ國ニハ百五十万ノ患者ガアル、是ハ一
人千圓掛ツテモ、十五億ノ金ヲ要スルノデ
アリマスカラ、中々營團ヤ其ノ他ノ方法デ
ハ出來ヌ、仍テ結核保險ノ必要ガアルト思
フガ、政府當局ハ結核保險ヲ作ル御意思ガ
アリヤナシヤヲ御伺ヒシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=103
-
104・高野六郎
○高野政府委員 結核ノ診療法ノ〓究ニ付
キマシテハ、當局ト致シマシテモ十分注意
ヲ致シテ居リマシテ、願ハクバ日本ノ醫學
界カラ結核ノ治療豫防等ノ新〓究ノ現ハレ
ルコトヲ待望シテ居ル次第デゴザイマス、
有望ナルモノガゴザイマスレバ之ヲ何トカ
シテ助長シテ行キタイ考ヘデゴザイマス
斯樣ナ事柄ヲ政府直接ニ致シマスルコトハ
稍〓困難ガアリマスルノデ、結核豫防會ノ
〓究所ニ於キマシテ左樣ナコトヲ掌ラセヨ
ウト考ヘテ居リマシテ、今囘ノ豫算ニ於キ
マシテモ若干ノ補助費ヲ其ノ〓究ノ調査、
或ハ其ノ他ノ〓究者ノ爲ニ出シテ居ルヤウ
ナ次第デゴザイマス、若シ有效ナル又望マ
シキ〓究ガゴザイマスルナラバ、左樣ナ方
面ニ於テ調査致シマシテ、之ヲ十分國民保
健ノ上ニ活用シ得ルコトヲ期待シテ居ル次
第デゴザイマス、早期ノ診斷ニ付キマシテ、
從來ノ診斷ノ技能ニ熟達シタ者ヲ置イテ活
用スベキデアルト云フ御意見モ御尤モト存
ジマス、所謂新シキ診斷法ト之ヲ併用致シ
マシテ、誤リナキヲ期シタイト存ジマス、
今囘行ヒマスル集團檢診ノ如キ場合ニ於キ
マシテハ、其ノ診斷ニ對シテ遺漏ノナイヤ
ウニ努メタイト存ジテ居リマス
結核保險ト云フ問題ハ當局ニ於キマシテ
モ考究中デゴザイマスルガ、尙ホ是ハ未ダ
結論ニハ達シテ居ラヌ狀態デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=104
-
105・野方次郎
○野方委員 今囘ノ醫療法案ハ重大ナル案
デアリマシテ、之ニ對シマシテハ種々ノ意
見ガ交換サレテ居リマスルガ、開業醫ト醫
療團トノ將來ノ衝突ハ、是ハドウシテモ免
レ得ルコトガ出來ヌノデアリマスカラ、政
府ノ言明ガアルノデアリマスガ、私ハ此
ノ衝突ヲ惧レテ居リマスカラ、尙ホ一層御
注意ヲ願ヒタイト思フノデアリマス、今囘
ノ健康保險ノ改正ハ極メテ有意義デアリマ
シテ、滿足ノ意ヲ表シマス、唯私ハ診療契
約ニ對シテハ、今囘改組サレテ權威アル醫
師會ガ出來マスカラ、總テ此ノ醫師會ヲ通
ジテ診療契約ヲスルコトヲ御願ヒ致シマス
ガ、當局ノ御意見ヲ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=105
-
106・木村清司
○木村(〓)政府委員 今度ノ改正法施行ノ
曉ニ於キマシテハ、社會保健上最モ要望セ
ラレテ居ル所ノ保險者ト醫者ノ關係ヲ劃一
統制スルト云フ見地カラ致シマシテ、從來
ノ保險者ト醫師會トノ自由契約ニ委セラレ
マセヌ、隨テ保險者ガ異ナル每ニ其ノ契約
ノ內容ヲ異ニスルト云フ狀況ヲ一掃スル爲
ニ、保險者ト醫者トノ關係ヲ行政官廳トシ
テ主務大臣ガ之ヲ決定スルト云フ方途ニ出
テ居ルノデアリマス、併シナガラ其ノ實際
ノ實質上ノ運行ニ付キマシテハ大體從來
通リニ尙ホ改善スベキモノハ改善シマスガ、
醫界全般ノ協力ヲ俟タナケレバナラヌノデ
アリマスカラ、其ノ意味ニ於キマシテハ大
體從來ト餘リ大差ナイ方法デヤツタ方ガ宜
イノデハナイカト考へテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=106
-
107・野方次郎
○野方委員 保險醫ノ待遇問題デアリマス
ルガ、是ハ保險醫ノミナラズ科學者ニ對ス
ル希望デアリマスルガ、府縣ニ於キマシテモ、
衞生課長等ハ三等以上ノ昇給ガ出來ナイ、
少クトモ勅任官ニナレルヤウナ途ヲ開クコ
トガ望マシイ、勿論地方ノ保險醫ハ十數年
勤續シテ隨分保險ノコトニ精通シテ居ル、
殊ニ保險ノ事業ハ給付ト異ナルノデアリマ
スルガ、其ノ給付ハ醫師ガ主ニ實體ヲ摑ン
デ居ル、醫師ガ能ク修練シテ居ル、其ノ醫師
ガ一生涯技術官デ終ツテ居ルノデアリマス
ルガ、是等ハ少クトモ地方ノ保險課長トスル
必要ガアルト考ヘマスルガ、當局ハ如何ニ
御考ヘニナルカ、伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=107
-
108・木村清司
○木村(〓)政府委員 只今ノ御尋ネハ健康
保險課長ニ地方ノ保健醫カラ拔擢スル途ヲ
講ジテハドウカト云フヤウナ御趣旨ニ解シ
テ、其ノ御答ヘヲ致シマスガ、健康保險課
長ノ職務ハ大體事務的ナ仕事ガ多イノデア
リマシテ、技術者ヲ煩ハスコトハ適當デナ
イト思ツテ居リマス、待遇等ニ於キマシテ
モ、到底技術者ヲ待遇スル程度ニマデ至ツ
テ居リマセヌカラ、-唯今後社會保險ノ
進步發達ノ爲ニ、又今度ノ國民醫療法ニ書
イテアリマスヤウニ、オ醫者サンノ職責ハ
極メテ重大デアリマシテ、先般來產業戰士
ニ對スル國家ノ職務ト同ジヤウナ考ヘ方ヲ
以チマシテ、保險醫トシテ社會保險ノ發達
ニ非常ニ貢獻シテ戴ク者ニ對シマシテ、國
家トシテ其ノ勞ニ報イル途ヲ考究スル必要
ガアルノヂヤナイカト云フヤウニ考ヘテ居
リマス、併シ是ハ又國家全般的ニ綜合的ニ
物事ヲ考ヘネバナラヌノデアリマシテ、私
共ダケノ考ヘ方デハ早急ニハ解決出來ナイ
ト思ヒマスケレドモ、サウ云フコトヲ考ヘ
テ行キタイト云フ志ノアルコトダケヲ申上
ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=108
-
109・野方次郎
○野方委員 私ハ此ノ際社會保險ノ擴大强
化ヲ要求スル一人デアリマス、殊ニ健康保
險ハ今非常ニ擴大サレテ居ルガ、之ヲ尙ホ
家族ニ延長シ、其ノ者ニ保險給付ヲ與ヘナ
ケレバナラヌト存ジマス、現在中產階級タ
ル商業者ハ殆ド沒落ノ狀態ニナツテ居ル、
ドウシテモ社會保險ニ依ツテ致サナケレバ
救濟ノ餘地ガナイ、況ンヤ醫療團ガ出來マ
スレバ、開業醫ノ進ム途ガナイ、開業ヲス
ルニハ相當ノ設備ガ要ル、少クトモ三万圓
ノ金ガ要ル、其ノ金ノ捻出ガ出來ナイ、醫療
團ガ金ヲ貸スト云フコトモナイヤウデアル、
サウナルト結局醫師ノ志望者ガ減ツテ參リ
きく、隨テ醫師ガ減ル、近時非常ニ醫師ガ
少イシ、志望者モナクナツテ居ル、是ハ結
局國民ノ健康問題ニモ關係シテ來マス、政
府ハ尙ホ之ヲ家族ニマデ延長スル御考ヘガ
アルカドウカヲ御尋ネ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=109
-
110・木村清司
○木村(〓)政府委員 被保險者ノ家族ニ對
スル給付、ソレハ今度ノ健康保險法ノ改正
ノ、保險經濟上ノ實ハ大キナ眼目ニナツテ
居リマス、被保險者ノ家族ニ大體保險給付
ノ半額程度ヲ保險經濟カラ拂フ、殘リノ半
額ヲ本人ガ拂フト云フ考ヘ方デ進ンデ行キ
タイト思ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=110
-
111・野方次郎
○野方委員 私ハドウカ半額負擔デナク、
全部政府ガ出資サレンコトヲ望ミマス
尙ホ近時醫師ノ志望者ガ少クテ、醫師ヲ
雇ハントシテモ殆ドナイノデアリマス、殊ニ
大東亞共榮圈ノ確立ニ際シマシテ、少クモ一
万人ノ醫者ガ要スルノデ、斯ウ云フ醫者ガ
非常ニ少イ場合ニ於キマシテ、政府ハ之ヲ
作ル意思ガアルカドウカ一寸御伺ヒシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=111
-
112・武井群嗣
○武井(群)政府委員 是ハ文部省ノ所管ニ
ナリマスノデ、私カラ御答ヘスルコトハド
ウカト思ヒマスケレドモ、關聯ノアルコノ
デモアリ、又屢〓當席ニ於キマシテ文部省ト
專門學務局長ヨリ御答ヘシタコトデアリマ
スノデ、其ノ趣旨ヲ御取次致サウト思ヒマ
ス、國民醫療法ノ改正ニ伴ヒ、醫育ノ刷新
ト云フコトハ最モ必要ナコトデアリマスノ
デ、政府ニ於キマシテハ關係閣僚、卽チ厚生、
文部、陸軍、海軍等ノ大臣ハ特ニ此ノ問題
ニ付テ關心ヲ寄セテ、醫育ノ刷新ニ付キマ
シテ根本的ノ考究ヲ遂ゲテ居ル實情デゴザ
イマス、同時ニ又文部省ニ於キマシテハ、
醫學〓育ノ振興ニ付テノ委員會ガアリマシ
テ、此ノ會ニ於キマシテ、各般ニ亙ツテ醫
育ノ刷新ニ付テノ協議ヲ遂ゲテ居ルヤウデ
アリマス、段々ト醫師ガ不足スルノデナイカ
ト云フ御話デアリマスガ、全體カラ申セバ
サウ醫學校ニ入學スル者ガ不足シテ居ル譯
デハナイノデアリマシテ、局部的ニ單科大
學ニ入學スル者ガ少クナツテ居ルト云フヤ
ウナ狀況デアリ、却テ大學ニ附設シテアリ
マスル醫學專門部デハ、數倍乃至十數倍ノ
志望者ガアルト云フヤウナ實情デアリマス
ノデ、直チニ將來ヲ憂フベキコトハナイト存
ジテ居リマス、殊ニ數年前ヨリ復活シテ居
リマスル高等學校ノ理科ノ志望者等モ、今
年ヨリハ醫科大學ノ方ニ進ムコトニナツテ
居リマスノデ、是等ガ卒業シマシタ曉ニ於
キマシテハ、著シキ不足ハ感ジナイダラウ
ト思ヒマス、併シナガラ仰セノヤウニ大東
亞共榮圈ヲ控ヘテノコトデアリマスノデ、醫
師ノ養成機關ニ付テハ、先程申上ゲタヤウ
ニ、閣僚竝ニ文部省内ノ委員會ニ於テ、十
分之ニ對處スル案ヲ拵ヘルコトト期待シテ
居ル譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=112
-
113・野方次郎
○野方委員 私ノ質問ハ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=113
-
114・塚本重藏
○塚本委員長代理 ソレデハ暫時休憩致シ
マス
午後四時休憩
午後四時三十四分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=114
-
115・紫安新九郎
○紫安委員長 休憩前ニ引續キ開會致シマ
ス、藤生君ニ申上ゲマス、陸軍ノ政府委員
ガオイデニナツテ居リマスカラ、陸軍ニ關
スルコトカラ御質問ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=115
-
116・藤生安太郎
○藤生委員 私ハ主トシテ國民體力法竝ニ
之ニ關聯スル一般體育問題、武道問題ナド
ニ付テ極メテ〓略的デアリマスガ、文部厚
生兩當局ニ御尋ネ致シタイト思ツテ居リマ
スガ、今委員長カラ御要求モアリマシタノ
デ、陸軍ノ方ニ關係スルコトカラ御尋ネシ
テ見タイト思ヒマス、是カラ私ガ御尋ネス
ルコトハ陸軍省バカリデナク厚生省ニモ、
文部省ニモ關係ガアルノデアリマスカラ、
ソレ〓〓御答辯ヲ願ヒタイト思ヒマス
武道奬勵振興ニ付キマシテハ)第七十三
議會ニ於テ衆議院ハ院議ヲ以テ既ニ是ガ奬
勵ノコトニ付テハ決定致シテ居リマス、其
ノ具體策ニ付キマシテモ、ソレ〓〓建議提
案致シマシテ、其ノ方策ヲ進言致シテ居ル
ノデアリマス、ソレデアリマスカラ、政府
ハ衆議院ノ建議提案ニ對シマシテハ、所謂
院議尊重ノ意味ヲ以チマシテ、實行ノ御誠
意ヲ御示シニナラナケレバナラヌモノト考
ヘマス、勿論旣ニ私共ノ提案シタ建議案ノ
中ニハ實行ニ移サレテ居ルモノモアリマス
ケレドモ、國民體力ノ向上ヲ急速ニ必要ト
スル今日ノヤウナ時局ニ於キマシテハ、其
ノ積極的ノ方策トシテ最モ適當ダト思ハレ
ルモノハ相撲デアル、其ノ相撲モ在來ノヤ
ウナ相撲デハナク、武道トシテノ相撲デア
ル、斯ウ云フ風ニ私ハ堅ク信ジテ居ルノデ
アリマス、所ガ相撲ニ對シテ幾度カ建議委
員會ニ於テ政府ニ御願ヒシテ居ルノデアリ
マスケレドモ、今日ニ至ルマデ相撲ニ對ス
ル奬勵ノ方針、其ノ態度ト云フヤウナコト
ニ付テハツキリシタ態度ヲ御示シエナツテ
居ナイ、此ノ點ハ私共ノ頗ル遺憾トシテ居
ル所デアリマス、相撲ノ體育的價値ニ付テ
ハ、私ガ屢〓論ジタ所デアリマスガ、他ノ西
洋流ノ色々ノ體操ハ-西洋流バカリデナ
シニ、日本的ナ所謂建國體操トカ、各種ノ
體操ガアリマスケレドモ、斯ウ云フ體操ノ
體育的價値ト、相摸ノ體育的價値トヲ較ベ
ルト、雲泥宵壤ノ差ガアルノデアリマシテ、
例ヘバ體操ノ體育ノ方法ハ、首ノ運動トカ、
或ハ腕ノ運動トカ、或ハ腰ノ運動、足ノ運動、
段々身體ノ各部門ヲ別々ニ動カシテ其ノ效
果ヲ擧ゲルト云フヤウナヤリ方デアリマ
ス、例ヘバ一枚ノ紙ヲ柔カニスルニ、初メ
紙ヲ二ツニ折リ、四ツニ折リ、八ツニ
折、段々數ヲ多クシテ、サウシテ紙ヲ柔カ
ニシヨウト云フ方法デアリマシテ、之ニ較
ベテ相撲ハ一枚ノ紙ヲ直グクル〓〓ト丸メ
テ、サウシテ柔カニスルヤウナモノデアリ
マシテ、其ノ柔カニスル效果モ是ノ方ガ效
果的デアルノデアリマシテ、先程西尾君カ
ラモ勞働者ノ體力向上フ爲ニ色々ノ御質疑
ガアツタノデアリマスガ、斯ウ云フ勞
働者ノ體力向上ノ爲ニモ中々時間ヲ惜シム
アノ社會ニ於キマシテハ斯ウ云フ風ナ體
育方法ヲ選ブコトガ私ハ最モ適當デハナイ
カト思フノデアリマス、言フマデモナク
相撲位日本人ノ性格ニ適合シ、日本人ニ愛
好サレル所ノモノハナイノデアリマシテ、
何レ社會、上下貴賤ノ區別ナク、家庭ニ於
テ父兄達ハモウ子供ガ三ツカ四ツニナツテ
步キ出スト、坊ヤサアオ父サント相撲ヲ取ラ
ウト云ツテ、疊ノ上デ仕切ノ恰好ヤ、四股
ノ恰好ヲ〓ヘテ相撲ヲ取ツテ打興ズル、是
ハ日本デナクテハ見ラレナイ〓景デアルノ
デアリマス、ダカラ私ハ能ク言ツテ居ルノ
デアリマスガ、日本ノ男子ト云フモノハ
足許ノ危ナ氣ナ三歲ノ幼兒ノ頃カラ相撲ニ
親シンデ居ルト言ツテ宜イ位ニ相撲ト云フ
モノハ日本人ニ達シテ非常ニ普遍通ナ普及
力ヲ持ツテ居ル所ノ體育法デアリマシテ、斯
ウ云フヤウナ體育法ハ、私ハ諸外國ニハ滅多
ニ例ハナイト考ヘテ居ルノデアリマス、又
物資節約ノ今日ノ國策的見地カラ考ヘテ見
マシテモ、他ノ體育運動ガ所謂競技場ヲ造
ツテ見タリ、運動場ヲ造ツタリ、或ハ道場ヲ
造ツタリスル、其ノ設備用具等ニ要スル費
用ニ比ベテ見マスルト、相撲ト云フモノハ
唯僅カナ砂ト藁ト、褌一本アレバ事ガ濟ム
ト云フ位ニ、非常ニ經濟的デアルノデアリ
マス、併シナガラ私ハ玆ニ言フ所ノ相撲
ハ、決シテ兩國ノアノ相撲デハナイノデア
リマシテ、所謂武道トシテノ相撲ノ意味
デアリマス、私ハ多年相撲ハ武道デアル
ト云フコトヲ主張致シテ、微力ヲ盡シテ
來テ居ルノデアリマスケレドモ、何シロ今
日ノ新聞「ラジオ」ガアア云フヤウナ調子デ
宣傳ヲヤリマス爲ニ、吾々ノ努力ノ效果ガ
擧ラナクナツテ居ルト云フコトハ洵ニ遺憾
ニ考ヘテ居ルノデアリマス、所ガ此ノ正月
ノ場所ニ東條總理大臣ガ相撲見物ニオイデ
ニナツテ、其ノ時新聞記事ニ東條總理大臣
ハ、斯ウ云フヤウナ健全ナル娛樂ハ大イニ奬
勵シナケレバイカヌト云フコトヲ言ハレタ
ト云フコトガ書イテアツタヤウニ思ヒマス
ガ、私モ此ノ新聞記事ヲ見マシテ非常ニ意ヲ
强ウ致シタノデアリマス、總理大臣ガ言ハ
レルヤウニ、此ノ兩國ノ相撲ト云フモノハ
健全ナル娯樂デアル、健全ナル娯樂デアツ
テ、隨テ吾々ハ此ノ健全ナル娛樂ガ益〓愈〓健
全ニ發達スルト云フコトヲ念願スル點ニ於
テハ、決シテ人後ニ落ツルモノデハアリマ
セヌ、併シナガラアノ相撲ヲ武道ダト言フ
ヤウナコトハ斷ジテ許サレナイ、若シアノ
相撲ヲ武道ダト言フ人ガアツタナラバ、私
ハ之ニ對シテ敢然反駁ヲシナケレバナラヌ
ト云フコトハ、アア云フモノヲ武道ダト云
フコトニ依ツテ、武道ト云フモノノ尊嚴神
聖ト云フモノガ冒瀆サレルコトヲ惧レルカ
ラデアリマス、更ニ私ハ此ノ際アノ兩國ノ
相撲ノ體育的價値ニ付テ、一般ノ人達ハ大
變誤ツタ考ヘヲ持ツテ居ルノデハナイカト
思ヒマス、是ハ「ドイツ」ノ或ル體育學者デス
ガ、是ガ評シテ曰ク、日本ノ相撲ハ體重ノ
爭ヒデアル、身體ガ重イト云フコトガ、卽
チアノ相撲ノ勝利ノ絕對的ノ條件デアルト
言ツテ評シテ居リマスガ、正ニ其ノ通リデ
アル、私ハ之ヲ技術的、理論的ニ色々此處
デ詳シク說明シヨウトハ思ヒマセヌガ、ア
ノ梅ケ谷、常陸山、大錦、玉錦トカ云フヤ
ウナ歷代ノ橫綱ヲ一瞥シテ見タナラバ、直
チニ此ノ理論ハ誰ニモ了解出來ルト思フノ
デアリマス、卽チ橫綱ノ體格ハ殆ド悉ク所
謂太皷腹デ、デブ型デ、アノ社會デハ之ヲ
アンコ型ト稱シテ居リマス、サウ云フ體格
ノモノバカリデアルノデアリマス、現ニ相
撲協會ノ機關紙、相撲ト云フ雜誌ニ、力士
ハ轉業ノ利カガイ專門中ノ專門デアリ、ド
ツチカト言フト、片輪ニ等シイノデアル、
其ノ片輪ノ程度ガ益〓片輪ニナレバナル程ソ
レハ益〓名力士型ニナルノデアルト言ツテ、
所謂アンコ型ヲ推賞禮讚シテ居ル記事ヲ見
タノデアリマスガ、御承知ノヤウニ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=116
-
117・紫安新九郎
○紫安委員長 藤生サンニ御注意致シマス
ガ、御意見ノ陳述モ必要デセウガ、成ベク
早ク質問ニ入ツテ戴キタウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=117
-
118・藤生安太郎
○藤生委員 承知致シマシタ-ソレデア
ノ社會ニ於キマシテハ橫綱ト云フモノガ最
高ノ理想デアル、橫綱ノ地位ト云フモノガ
相撲ノアノ社會ニ於ケル所ノ理想的ノ地位
デアル、其ノ地位ヲ得ル爲ニハアンコ型ニ
ナラナケレバイカヌ、力士ノ精進努力ノ對
象目標ハ皆橫綱デアリマス、橫綱ニナル爲
ニハアンコ型ニナラナケレバナラヌト云フ
ヤウナ譯デアリマスカラ、飛ンダリ跳ネタ
リ、運動ヲヤツタリスルト親方ガ叱ル、又
1
彼處ニハ珍シイ戒メガアツテ、親ノ死ニ目
ニ遇ハヌデモ走ツテハナラヌ、走ルト卽チ
體力ヲ輕クスルカラデアル、斯ウ云フヤウ
ナ譯デアリマスカラ、是ニ於テ吾々ガ考ヘ
ナケレバナラヌコトハ、アノ社會、アノ相撲
ノ理想トスル所ノ體位、卽チアンコ型ト、
今日國家ガ要求シテ居ル所ノ理想的ノ體位、
卽チ體力檢定型ト言ヒマスカ、或ハ徵兵檢査
ノ甲種合格型ト言ヒマスカ、サウ云フヤウ
ナ體位ト比較シテ見タナラバ、玆ニ非常ナ違
ヒガアルト云フコトハ誰ニモ分ルノデアリ
マス、隨テ私ハサウ云フ意味カラアノ相撲
ヲ體育奬勵ノ標本デアルカノ如ク考ヘルト
云フコトハ、甚ダシキ誤リデアルト考ヘザル
ヲ得ナイノデアリマス、然ルニ一般ニ於テ
ハサウデハナイ、學校ノ先生達ハアレヲ非
常ニ立派ナ體育奬勵ノ手本デアルカノ如ク
考ヘテ、學校ノ校長先生ガ土俵ヲ造ラセテ、
其ノ土俵ノ上ニアノ連中ヲ連レテ來テ、四股
ヲ踏マシテ得々トシテ居ルト云フヤウナ狀
態デアリマス、私ハ是ハ實ニ悲シムベキ狀
態デアルト存ズルノデアリマス
ソコデ厚生省ノ方ニ御尋ネシマスガ、厚
生省ニ於テハ御承知ノヤウニ曩ニ武道振興
委員會ト云フモノガ置カレテ、武道振興方
策ニ付テ論議ヲサレタ、其ノ時ニ或ル委員
カラ私ニ對シテ、藤生君ハ武道トシテノ相
撲ノ發展ノ爲ニ非常ニ努力ヲサレテ居ル、
其ノ努力ハ多トスルガ、併シナガラ今日藝
妓連レノ旦那ガ飮食ノ間ニ享樂シテ居ル、
其ノ藝妓連レノ旦那ニ飮食ノ間ニ享樂サレ
テ得々トシテ居ル所ノ現狀ニアル今日ノ相
撲ヲ柔道ヤ劍道ト同列ニ之ヲ取上ゲテ論議
ノ對象トスル譯ニハ行カヌト云フヤウナコ
トヲ言ハレタ、之ヲ以テ考ヘテ見マシテモ
アノ相撲ト云フモノガ日本ノ相撲ノ全體デ
アルカノ如ク考ヘラレテ居ル、斯ウ云フヤ
ウナ誤レル相撲ノ爲ニ、本當ノ武道トシテ
ノ相撲ノ發展ヲ阻碍サレルト云フコトハ
洵ニ遺憾デアリマス、私ハ全國壯丁訓練武
道大會ヲ各地デズツトヤツテ來マシタガ、
其ノ時各縣廳ノ役人達ニ武道トシテノ相撲
ノ實施方ニ付テ相談ヲスル、サウスルト直
チニ之ニ對シテ非常ナル共鳴ト非常ナル贊
成ヲサレル、併シナガラ相撲ニ對スル厚
生省、文部省ノ態度ガハツキリシテ居ラナ
イ、ソコデドウシタラ宜イカト云フコトニ
對シテ色々躊躇シテ、早ク相撲ニ對スル厚
生省、文部省ノ態度ヲハツキリサセテ戴キ
タイト云フ要求ガアルノデアリマス、ソコ
デ私ハ相撲ハ斯クアルベシト云フ明確ナル
指導的規範ヲ示シテ言明スルコトハ、今日
ノ厚生省、文部省モ困難デアルト思ヒマス
カラシテ、ソレヲ要求致シマセヌガ、少ク
トモ相撲ガ娯樂デアルカ、或ハ武道デアル
カト云フコトニ付テハ、私ハ此ノ際文部省
モ、厚生省モハツキリシタ態度ヲ御執リニナ
ツテ置ク方ガ宜イノデハナイカト思フノデ
アリマス、ダカラ明確ナル指導的規範ヲ示
シテ、斯ウアルベシト云フコトハ今ノ所
マダ〓究ガ出來テ居ナイヤウデアリマスカ
ラ、ソレハ要求致シマセヌ、ケレドモ相撲
ガ娯樂デアルカ-卽チ相撲ト云フノハ、
兩國ノ相撲、アノ相撲ガ娯樂デアルカ武道
デアルカト云フコトニ付テ、厚生御當局ノ
御答辯ヲ御願ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=118
-
119・武井群嗣
○武井(群)政府委員 相撲ニ關シテ只今縷,〓
御述ベニナリマシタ其ノ御論旨ノ點ヲ深
ク拜承致シタノデアリマスガ、當局ト致シ
マシテハ、御趣旨ノ點ハ全然同感デアリマ
ス、只今相撲ト云フ言葉ヲ以テ藤生委員御
自身ノ唱道セラルル所ノモノモ、又現在興
行的ニヤツテ居ラレルモノモ引繰メテ御述
ベニナツタヤウデアリマス、併シナガラ御
話ニナリマシタ所ヲ深ク考ヘテ見マスト
寧ロアナタノ仰セニナツタ正シキ相撲ト云
フノハ、相撲ト云フ用語デハナクシテ、假
ニ私ハ之ヲ角道ト云フヤウナ名前デ呼ンデ
見タイト思ヒマス、卽チ在來世ニアリ觸レ
テ居ル相撲ト云フモノト、角道ト云フモノ
トハ違フノヂヤナイカ、卽チ角道、是ハ立
派ナ武士道デモアリ、所謂武道ノ一ツデア
リマス、今後政府ニ於キマシテハ此ノ正シ
イ意味ノ相撲、卽チ角道ト云フモノヲ武道
トシテ十分ニ維持育成シテ參リタイ、斯樣
ニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=119
-
120・藤生安太郎
○藤生委員 只今ノ相撲ト云フコトヨリモ、
角道ト言ツタ方カ正シイ相撲ニ當嵌マル言
葉ヂヤナイカト云フ風ナ御意見ニ承ツタノ
デアリマスガ、私共ハ其ノ御意見ニ對シテ
ハ多少又違ツタ考ヲ持ツテ居リマス、私ノ
〓究シタ所ニ依リマスト、角道ト書イテア
ルノハ、アレハ動物的ノ力、格鬪カラ出テ
來タ文字デアツテ、人間ノ力ヲ鬪ハセル相
撲ツト云フ所ノモノデハナイ、ソレヲ言フ
ト色々面倒ニナリマスガ、要スルニ精神的
ノモノデナイ、腕力的ノモノノ一方ニ偏シ
夕所ノ相撲ガ卽チ角道テアツテ、精神訓育
ノ伴ツタ相撲ニハアノ角道ト云フ文字ハ使
ハナイノガ妥當デハナイカ、斯樣ニ考ヘテ
居ルノデアリマス、併シサウ云フコトヲ色
色議論スルト長クナリマスカラ、其ノ程度
ニ致シテ置キマスガ、要スルニアノ兩國ノ相
撲ガ武道デナイ、或ハ娛樂ダト云フヤウナ
コトノハツキリシタ御言明ヲ今日ノ厚生當
局ニ對シテ迫ル方ガ或ハ無理カモ分リマセ
ヌ、デスカラ是以上私ハ要求致シマセヌ、
併シナガラ茲デ一ツ能ク御考ヘ置キヲ願ヒ
タイコトハ、大東亞戰爭ノ赫々タルアノ武
勳ハ、是ハ一ニ御稜威ノ然ラシムル所デア
リマジテ、隨テ吾々全國民ハ擧ツテ此ノ
天皇ノ尊嚴ト云フコトニ對シテハ、愈〓益〓之
ヲ護持發揚シナケレバナラヌト云フコトヲ
恐懼痛感致スノデアリマス、苟且ニモ聖恩
ニ狎レテ其ノ尊嚴ヲ犯シ、或ハ大義名分ヲ
紊ルガ如キコトハ、斷ジテ許スベカラザル
コトハ勿論デアリマス、此ノ意味ニ於テ私
ハ特ニ厚生當局ニ御願ヒ致シタイコトハ、御
承知ノヤウニ宮中ニ於テ天覽武道試合ガ行
ハレル、宮中ニ於テ行ハレル天覽武道試合
ノ優勝者ニ與ヘラレルモノハ大臣賞デアル
然ルニ吾々ノ考デハ娛樂デアル相撲、而モ
武道振興委員會ノ或ル委員モ言フヤウニ、
藝者連レノ旦那連中ガ飮食ノ間ニ享樂ス
ル、而モ相撲ガ濟メバ座布團ガ飛ビ、火鉢
ガ飛ビ、蜜柑ノ皮ガ飛散ル、落花狼藉タ
ルアア云フ風ナ場所ニ於テ、而モ之ヲヤツ
テ居ル者ハ力士トハ言フケレドモ、是ハ法
律的ニハ遊藝人デアル、サウ云フ者ノ勝負
ニ對シテ攝政盃ガ授與サレル、攝政盃ハ取
リモ直サズ天皇盃ト拜察シ奉ルノデアリ
マスガ、サウ云フ尊イモノガ授與サレルト云
フコトハ、是ハ私ハ天皇ノ尊嚴ト云フコ
トヲ考ヘマスル場合ニハ、是ハ非常ニ考ヘ
ナクチヤナラヌコトデハナイカト思フノデ
アリマシテ、私一個ノ見解ラ以テスレバ、
是ハ正ニ當時ノ輔弼者ノ責任デハナイカト
サヘ考ヘテ居ルノデアリマス、此ノ點ニ付
テハ私ハ敢テ厚生當局ノ御答辯ハ要求致シ
マセヌ、要求致シマセヌガ、一ツ篤ト此ノ
點ハ御考慮アツテ善處セラレンコトヲ希望
致シテ置キマス
陸軍省關係カラ御尋ネスルト云フノガ後
ニナリマシテ恐縮デゴザイマスガ、今日國
民體力ノ問題デ最モ重要ナ焦眉ノ急ヲ要ス
ル所ノ緊要問題トシテ壯丁ノ體力問題ガア
リマス、私ハ過去二十數年間〓里デ此ノ運
動ヲヤツテ來タ、最近デハ全國壯丁訓練武
道大會ノ名ニ於テ中央カラ各府縣單位ニヤ
ツテ居リマス、ソレニ付テ厚生省、内務省、
或ハ文部省カラ後援名義ヲ戴イテ、應援シ
テ戴イテ居リマスガ、此ノ機會ニ於テ感謝
致シマス、特ニ陸軍カラハ吾々ノ期待シタ
以上ノ御指導御鞭撻ヲ戴イテ居ルコトニ付
キマシテハ、私ハ此ノ機會ニ力一パイノ感
謝ノ意ヲ捧ゲル次第デアリマス、私ハ此ノ
運動ヲヤツテ來マシテ、非常ニ痛感致シテ、
前ノ臨時議會ニ同僚諸君ノ協力ヲ得マシテ、
壯丁ノ鍊成强化ニ關スル建議案ト云フモノ
ヲ提出致シマシテ、今又戰時ノ此ノ議會ニ
對シマシテモ、戰時壯丁鍊成局ト云フ建議
案ヲ提出スル用意ヲ致シテ居ルノデアリマ
ス、此ノ國防國家體制ノ卽時完成ト云フコ
トヲ緊要トスル現在ニ於キマシテ、壯丁ノ
錬成强化ヨリ緊急重大ナル問題ハナイコト
ハ先程申上ゲタ通リデアリマス、畏クモ宣戰
ノ大詔ガ渙發サレマシタ今日、吾々ハ承詔必
謹、全力ヲ擧ゲテ敵國ヲ徹底的ニ粉碎シナケ
レバナラヌ、ソレニハ兵力、戰鬪力ノ增强ト
云フコトガ極メテ必要デアルノデアリマス、
其ノ兵力ノ給源ハ何カト云フト、壯丁デア
ル、卽チ優良ナル壯丁ヲドン〓〓多量ニ送
リ出スト云フコトニアルノデアリマス、然
ルニ壯丁ノ體力狀況ハ非常ニ惡イ、ナゼ壯
丁ノ體位ガ惡イカト云フト、見方ニ依ツテ
色々原因ハ指摘サレルデアリマセウケレド
モ、私ハ其ノ壯丁ノ體位ガ惡クナル一ツノ
原因トシテ玆ニ指摘セザルヲ得ナイコト
ハ、壯丁ガ壯丁トシテノ自覺ガ足リナイ、
卽チ防人ノ歌ツタ「今日ヨリハ顧ミナクテ
大君ノ醜ノ御楯ト出デ立ツ吾ハ」-此ノ
「醜ノ御楯ト出デ立ツ吾」ト云フ自覺、是ガ
ナイトハ言ハヌガ足リナイ、卽チ陛下ノ
壯丁デアルト云フ自覺ガ足リナイコトガ大
キナ原因デハナイカト考ヘルノデアリマス、
此ノ陛下ノ壯丁デアルト云フコトノ自覺
ガアルナラバ、其ノ責任ヲ感ズルナラバ
當然日常ノ生活ニ於テ身體ノ鍊成、精神ノ
訓練ト云フヤウナコトニ對シテモ、モツト
一層ノ關心ガ拂ハレテ然ルベキモノト考ヘ
ルノデアリマス、勿論靑年學校、中等學校
ニ於テ、內容的ニハ軍事訓練ヲヤツテ居ラ
レルガ、併シ是ハ學生、生徒ト云フ觀念デ
シカナイノデアリマス、斯ウ云フ高度國防
國家ノ卽時完成ト云フヤウナコトノ必要ナ
ル現下ニ於キマシテハ、學生、生徒、或
靑少年ト云フヤウナ觀念デナシニ、モツト
國防的ノ責任感ヲ端的ニ力强ク喚起スルニ
足ルヤウナ名稱ヲ用ヒテ、卽チ壯丁ト云フ
名稱ヲ用ヒテ訓練スルコトガ極メテ必要デ
アルヤウニ思ヒマス、昔ノ武士ハ十二三歲
カラ武士トシテノ責任觀ガ非常ニ旺盛デア
ツタ、ソレト同ジヤウニ壯丁ト云フ名稱ヲ
用ヒテ、壯丁自身ニ於テハ醜ノ御楯ト出デ
立ツ吾-陛下ノ壯丁デアルト云フ責任
觀ヲ自律的ニ大イニ喚起スルト共ニ、他律
的ニ世間ノ人ガ、良イコトヲシタナラバ流
石ニ壯丁デアル、惡イコトヲシタナラバ壯丁
ノクセニ、斯ウ云フコトヲ言ツテ、自律、他
律相俟ツテ、十六歲カラ二十一歲マデノ靑
少年ヲ壯丁ト云フ名ノ下ニ訓練スル、其ノ
訓練スルニ付テハヤハリ武道ヲヤラナクテ
ハナラヌ、其ノ武道モ今マデノヤウナ非眞
劍、非實戰的ナモノデアツテハナラヌ、實戰
的ノ武道、卽チ銃劍道ヲ中心トスル所ノ武
道ニ依ツテ之ヲ訓練シテ行ク、サウシテ十
六歲カラ二十一歲未滿ノ靑少年ガ眞劍的武
道ニ依ツテ訓練サレテ、用意ガ出來テ居ル
ナラバ、必要ニ應ジテ入營年齡ヲ十六歲ニ
切下ゲル、サウスルト百万、二百万ノ軍隊
ガ直グ出來ルノデハナイカト思フ、此ノ用
意ガ出來テ、初メテ高度國防國家ト云フモ
ノハ人的關係ニ於テ完成シタモノト考ヘル
ノデアリマス、斯ウ云フ精神ヲ以テ全國壯
丁訓練武道大會ト云フモノヲ、私共ハ各府
縣別ニヤツテ來テ居ル、所ガ今日ノ時局ノ
要請カラ考ヘテ見マシテ、ドウモ吾々ダケ
ノ力デモ是ハモドカシイ、迚モ國家緊急ノ
御役ニ立ツカドウカ分ラヌト云フヤウナ不
安ヲ感ジテ來タノデアリマシテ、一日モ速
カニ斯ウ云フ風ナ運動ハ國家ガ國費ニ依ツ
テ急速ニ普及徹底シナケレバナラヌト云フ
コトヲ痛感致シマシテ、此ノ議會ニモ戰時
壯丁鍊成局ノ設置方ニ付テ建議致シテ見タ
イト考ヘテ居リマス、ソコデ壯丁ト云フト、
是ハ文部省ノ管轄デモナイ、軍人デモナイ
カラ、軍部ノ管轄デモナイヤウニ思ハレマ
ス、ソコデ此ノ內容ノ重要性カラ考ヘテ見
テ、私ハ是ハ內閣直屬ノ機關トシテ設置シ
テ戴キタイト思ヒマスガ、是等ノ點ニ付テ
厚生大臣、或ハ陸車省ノ兵務局長モ御見エ
デアリマスカラ、兵務局長カラモ何カ御感
想ヲ承ルコトガ出來レバ幸ヒト思ヒマス、
尙ホ一々坐ツタリ立ツタリシナイヤウニシ
テ、纏メテ御尋ネ致シテ置キマスガ、此ノ
吾々ノ壯丁運動、卽チ健兵運動ヲズツトヤ
ツテ來マシテ感ジマシタコトハ、東京ニ於
テ大會ヲヤツタ時ハ、陸軍戶山學校ノ〓官
方ガ來テ指導シテ下サツタ、此ノ大會ニ出
場シタ所ノ選手ハ柔道ヲヤツタ者、或ハ相
撲ヲヤツタ者、卽チ銃劍道ノアノ木銃ヲ持
ツタコトノナイ者ニモ悉ク木銃ヲ持タシテ、
銃劍道ノ基本動作カラ突擊動作マデ、約二
時間ニ亙ツテ指導訓練ヲシテ、二時間ノ訓
練デ大體ニ於テ戰地ニ連レテ行ツテモ、大
體是デ役ニ立チマスヨト〓官カラ話ヲ聽カ
シテ戴クヤウナ效果ヲ擧ゲタノデアリマス、
併シナガラ是ハ東京デヤル場合ニハ、陸軍
戶山學校ノ〓官方ノ指導御便宜ヲ與ヘラレ
マスケレドモ、地方デヤル場合ハ中々サウ
ハ行カヌ、銃劍道ノ指導者ヲ求メルノニ非
常ニ困難ヲ感ズル場合ガ多イノデアリマス、
ソコデ是ハ大阪デモサウ云フ意見ガ出タノ
デアリマスガ、陸軍戶山學校的ナモノヲ關
西方面ニモ一ツ作ツタラドウカ、サウ云フ
ヤウナコトニ付テ一ツ軍部方面トモ交渉シ
テ吳レト云フヤウナ要求モアリマシタカ
ラ、是等ノ點ニ付テ一ツ兵務局長カラ御意
見ヲ承ルコトガ出來レバ幸ヒト思ヒマス
ソレカラ其ノ銃劍道ノ指導訓練デアリマ
スカ、ヤハリ指導者ニ困ル、幸ヒ大日本銃
劍道振興會ト云フモノガ出來テ、大イニ活
躍致シテ居リマスケレドモ、マダ〓〓此ノ
活動ニ依ツテ今勃興シテ居ル此ノ銃劍道ヲ
指導スルト云フノニハ人手ガ足リナイ憾ミ
ガ多々アルノデアリマス、ソコデ私ハ陸軍
戶山學校ノ附屬機關トシテ、銃劍道指導者
ノ養成所ト云フモノヲ作ツテ戴キタイト云
フコトヲ、屢〓委員會ニ於テ御願ヒ致シタノ
デアリマスケレドモ、兵務局長モ御忙シイ
ヤウデ、未ダ御意見ヲ承ルコトガ出來ナカ
ツタノデアリマスガ、ドウカ一ツ是非サウ
云フ風ナ機關ヲ設置シテ戴キタイ、中々銃
劍道振興會モ金ガナクテ活動ニ不便ヲ感ジ
テ云ルヤウデアリマスカラ、斯ウ云フモノ
ニハドシ〓〓補助金デモヤツテ、サウシテウ
ント活動ノ出來ルヤウニシテ戴キタイト思
ヒマス、之ニ對スル御意見モ伺ツテ置キタ
イト思ヒマス、ソレ等ニ付テ一應御答辯ヲ
願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=120
-
121・小泉親彦
○小泉國務大臣 只今他ヘ行ツテ居リマシ
テ、藤生委員ノ御話ヲ中途カラ伺ツタノデ
アリマスガ、大體ニ於キマシテ靑年層ノ者
ニ對シテ壯丁運動ト云フヤウナコトヲ、殊
ニ武道ヲ中心トシテ行ツタラドウカト云
フ御意見ノヤウニ拜承シタノデアリマス、
此ノ點全然御同感デゴザイマス、私共武道
及ビ體育ノ指導上ノ方針ト致シマシテハ、今
日其ノ重點ノ第一ヲ靑年層ニ指向致シテ居
リマス、而シテ其ノ鍊成ハ何處マデモ國防
技能ヲ鍊成スルト云フヤウナ點ヲ重視シテ
指導シテ參ル、斯ウ云フ方針ヲ堅持シテ居
ルノデアリマス、而シテ今囘提出致シマシ
タ國民體力法ノ改正等モ、其ノ狙ヒ所ハ其
處ニアルノデアリマシテ、只今御指摘ニナ
リマシタヤウナ年齡層ノ者、サウ云フ靑年
ヲ國內ニ於ケル豫備兵力トシテ、人的豫備
戰力ノ擴充强化ト云フコトニ重點ヲ指向シ
テ行カウ、斯ウ云フ考ヘデ居ル次第デアリ
マス、只今御述べニナリマシタ御趣旨ニ對
シテハ、洵ニ御同感ノ意ヲ表スル次第デアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=121
-
122・田中隆吉
○田中(隆)政府委員 只今厚生大臣カラ申
サレマシタヤウニ、藤生君ノ言ハレマス壯
丁ノ鍊成ト云フコトハ、是ハ私共既ニ兵務
課長時代カラ必要ダト考ヘテ居リマシテ、
實ハ國民學校ノ義務〓育ヲ六年カラ八年ニ
シマシタノモ、一番身體ノ變化スル時期
ト申シマスト十三、十四、十五、算ヘ年
ナラバ十六マデ行クカモ知レマセヌガ、其ノ
時期ニシツカリ鍊成シヨウト云フ譯デ國民
學校ノ高等科ト申シマスモノヲ作ツタノデ
アリマス、卽チアノ年齡ノ時ニ工場ヤ商店等
ノ徒弟ニナツテ身體ヲ壞ハスヨリモ、國家
ガ義務的ニ〓育シテ身體ヲ固メサスト云フ
ノガ國民學校制度改正ノ根本デアツタノデ
アリマシテ、其ノ目標ハ一ニ健全ナル壯丁ヲ
得ルト云フコトニアツタノデアリマス、靑年
學校ヲ義務制ニシタノモサウデアリマス、
隨ヒマシテ壯丁ノ鍊成ノ必要デアルコトハ
痛感シテ居リマス、陸軍トシテハ現在是非
トモ良イ壯丁ヲ得タイト云フ譯デ、厚生省、
文部省アタリト連繫シテ、先般モ厚生省ノ
主唱ニ依リマシテ、體育團體ノ統合モ出來タ
譯デアリマス、又順調ニ參リマスレバ或ハ
近ク武道團體ノ統合モ出來ルカモ知レマセ
ス、隨ヒマシテサウ云フモノガ出來マシタナ
ラバ、私共ガ特ニ壯丁訓練ノ目的デ作リマシ
タ銃劍術振興會ト云フヤウナモノモ同團體
ノ傘下ニ入リマシテ、又若シ〓究ノ結果必
要トアレバ、武道團體ノ中ニ壯丁部門ヲ設
ケテモ差支ナイト思ツテ居リマス、是非ト
モサウ云フ精神ニ副ヒマシテ、心身共ニ健
全ナル靑年ヲ造リ上ゲルト云フコトガ必要
デアルト思ヒマス、又同時ニ厚生、文部兩
省ト協力シマシテ、熱心ニ〓究シ實行中デ
アリマス
モウ一ツ、大阪アタリニ銃劍術ノ指導機
關ヲ作ツタラドウカ、戶山學校ノ分校デモ
作ラヌカト云フ御意見デアリマスガ、實際
今戰時ノ關係デ戶山學校ハ充實シテ居リマ
とや、〓官、助〓ガ非常ニ少イノデアリマ
ス、是ガ充實シマスレバ御要求ニ應ジ得ル
ト思ヒマス、又一面武道團體デモ豫期ノ如
ク統合出來マシタナラバ、當然其ノ武道團
體ノ一部門トシテ銃劍術、射撃ノ如キ、所
謂國防武道ト云フモノガ取上ゲラレマスノ
デ、其ノ部門ニ於テ鍊成モシ、又是ガ逐次
發達シテ參リマスレバ、全國的ニ銃劍術ノ
指導者ヲ各府縣共ニ得ラレルモノト信ズル
次第デアリマス、ハツキリ申シマスガ、戶
山學校ノ分校ヲ大阪ニ設クルト云フコト
ハ、現在ノ陸軍デハ考ヘテ居リマセヌ、武
道團體ノ統合竝ニ其ノ發達ニ依リマシテ、
全國的ニ銃劍術等ノ指導者ヲ分布シ得ルモ
ノト考ヘテ、ソレニ賴ツテ居ル次第デアリ
マイク、繰返シテ申シマスガ、戶山學校ノ〓
實助〓ガ充實致シマスレバ、藤生君ノ
ヤツテ居ラレマスヤウナ全國壯丁訓練武道
大會ト云フヤウナモノニハ進ンデ御援助、
御參加申上ゲルコトガ出來ルト考ヘマス
ガ、現在ノ狀況ニ於テハ遺憾ナガラ現在
程度ノコトシカ出來ナイ、ソレハ先程中シ
マシタヤウニ、優秀者ガ殆ド第一線ニ出テ
居リマシテ、戶山學校ガ充實シテ居ラヌト
云フ所ニサウ云フ不便ガアリマス、御承知
置キヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=122
-
123・藤生安太郎
○藤生委員 壯丁運動ヲヤツテカラ痛感シ
タコトデアリマスガ、御承知ノヤウニ政黨ト
云フモノハ自由主義時代ノ產物ト云フ譯
デ、解黨解消セザルヲ得ナクナツタノデス
ケレドモ、サウシテ見ルト、靑少年團モハヤ
ハリ自由主義時代ノ產物、自由主義時代ノ
組織デアルヤウニ思フ、今度統合サレテカ
ラ段々良クナツテ來タヤウデアリマスケ
レドモ、私ガ先程壯丁運動ノ趣旨ニ付テ御
話シマシタ意味カラ考ヘテ見マスト、斯ウ
云フ高度國防國家體制ノ急速完成ヲ要スル
時局下ニ於キマシテハ、靑少年團ト云フ風
ナ名稱ノ下ニ訓練スルコトヨリモ、是ハイ
ツソノコト壯丁團ト云フ名稱ニ依ツテ之ヲ
統合シ、訓練スルコトガ非常ニ必要デハナイ
カト思ヒマス、現ニ大阪デハ各町會ノ聯合會
單位ノ壯丁鍊成會ト云フモノヲ作ツテ、段々
サウ云フ機運ガ醞釀サレツツアルノデア
リマスガ、之ニ對シテ文部省關係デアレバ其
ノ方カラ御意見ヲ伺ヒタイト思ヒマスー
ソレデハ其ノコトニ付テハ又適當ナ機會ニ
御答辯願ヒマス
只今厚生大臣カラ、目下厚生省トシテ靑
年層ニ集中シテ、而モ人的豫備戰力ヲ增强
スル意味ニ於テ國防的ノ指導ヲヤツテ居ル
ト云フ御話デゴザイマシテ、洵ニ意ヲ强ウ
スル次第デアリマスガ、ソレニ對シテドウ
モ軍人サンノ方ニ斯ウ云フ意見ヲ持ツ人ガ
非常ニ多イ、私ハ是ハ非常ニ誤ツタ考ヘデ
ハナイカト思ヒマスガ、モウ斯ウ云フ時ニ
ハ柔道トカ、相撲トカ、何モ武器ヲ持タヌ
所ノアア云フ武道ハ役ニ立タナイ、デアル
カラシテモツト實戰的ナ武道デナクチヤイカ
ヌト云ツテ、柔道或ハ武道トシテノ相撲ト云
フヤウナモノヲ動モスルト否定サレマスル
嫌ヒガアリマス、田中兵務局長ハ柔道モ劍
道モ達人デアツテ、吾々ハ其ノ點敬意ヲ表
シテ居ル譯デアリマス、實際將軍ニナツテ
カラ陸軍戶山學校ナドヘ行ツテ、每日汗ヲ
出シテヤツテ居ラレル人ハナイサウデアリ
マスガ、田中サンハ每日ヤツテ居ラレルサウ
デ、此ノ點ハ非常ニ敬意ヲ表シテ居リマス、
斯ウ云フコトハ能ク御分リノコトト思ヒマ
スガ、大體私ガ陸軍士官學校ノ〓官ヲヤツ
テ居ツタ時ニ、士官學校ノ生徒ト云フモノ
ハ動モスルト柔道ヲ劍道ヨリモ輕視スル虞
ガアル、ソコデ君達ハ成程戰場ヘ行ケバㄱピ
ストル」ヤ軍刀デ戰フ、ダカラ武器ノナイ所ノ
武道デアル柔道ハ必要デナイカノ如ク考ヘ
ルケレドモ、ソレハ非常ニ間違ツテ居ル、
若シ「ピストル」ノ彈丸ガナクナリ、刀ガ折レ
タ、サウシタラドウスルカト云フヤウナ不安
ヲ持ツテ「ピストル」ヤ軍刀ヲ使フノト、「ピ
ストル」ノ彈丸ハ盡キテモ、軍刀ハ折レテモ、
無手デ容易ニ敵ノ死命ヲ制シ得ルト云フ信
念ガアツテ、軍刀ヤ「ピストル」ヲ使フノト、ド
ツチガ威力ヲ發揮スルカ、決シテ無手ダカ
ラト云ツテ輕視シテハイカヌト云フコトヲ
言ツタコトガアルノデアリマス、所ガドウ
モ最近ノ兵隊サンノ中ニハ柔道ナドヲ輕視
サレル嫌ヒガアル、成程今日マデノ柔道、
劍道ト云フモノノヤリ方ハ非實戰的、非眞
劍的デアツタ、ダカラヨク話ガアリマスガ、
柔道ノ先生ノ家ヘ泥棒ガ入ツテ、其ノ泥棒ニ
柔道ノ先生ガ押へ付ケラレテ、ギユウ〓〓
ヤラレタ、ソコデ妻君ガ「アナタ日頃ノ柔道
ハドウシタノデスト言ツタノデ」、アアサウ
ダト云ツテ初メテ思ヒ出シテ、ソレカラ泥
棒ヲ押へ付ケタト云フヤウナ話マデアル、
劍道デモ其ノ通リデス、或ル劍士ノ家ニ刀
ヲ持ツタ泥棒ガ入ツテ來テ刀ヲ振上ゲタ、
其ノ時ニ劍士ガ「籠手」ト云ツテ斬ツタノハ宜
カツタガ、籠手ト言ツテ例ノ引上ゲ-ア
ノ興行擊劍的ナ引上ゲヲヤツタガ爲ニ、泥
棒カラ斬ラレタト云フヤウナコトガアル
サウ云フ話ガアル程ニ、柔道モ劍道モ非實
戰的、非眞劍的ナ武道デアツタノデス、此
ノ點ハ何故サウ云フ風ナ非實戰的、非眞劍
的ナ武道ニナツタカト云フト、今日ノ武道
ノ〓育ノ仕方ガ誤ツテ居ツタカラデ、今日
ノ武道ノ弊害ト云フモノハ試合第一主義ト
云フ點デアリマス、試合第一主義ガ其ノ弊害
ヲ出來シタ最大ノ原因デアツテ、此ノ點ハ
一ツ大イニ改メテ貰ハチクチヤナラヌト思ヒ
マスガ、靑年層ニ對シテ國防的ノ指導國
防ト言ヘバ是ハ眞劍的ノ武道デナケレバナ
ラヌ、其ノ眞劍的、實戰的ノ武道ト云フコ
トカラ考ヘルト、今日ノ武道ノ試合ノヤリ
方ニ對シテ大臣ハ果シテ御滿足ニナツテ居
ルダラウカ、恐ラク私ハ御滿足ニナツテ居
ラヌダラウト思フ、武德會ナドノ劍道ノ試
合ノヤリ方ニ付テハ多々遺憾ナ點ガアリマ
ス、斯ウ云フコトニ對シテハドシ〓〓之ヲ
矯正シテ行カレル御方針デアリマスカ、此
ノ點ヲ一ツ聽カシテ戴キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=123
-
124・小泉親彦
○小泉國務大臣 第一柔道トカ、或ハ只今
御言葉ガアリマセヌデシタガ、多分弓ナド
モ入ツテ居ルト存ジマスガ、斯ウ云フヤウ
ナモノハ、今日ノ實戰的ノ武道ト云フ方カ
ラ見レバドウダ、又輕視スルカト云フヤウ
ナ御尋ネデゴザイマシタガ、左樣ナコトハ
毛頭感ジテ居リマセヌ、私ト致シマシテハ
柔道、弓道悉ク是レ歸スル所一デアル、姿
ニ於テ變ツタモノト考ヘテ居リマスノデ、
先程兵務局長モ一寸申サレマシタガ、綜合團
體等ニハ之ヲ包攝シテ何處マデモ之ヲ殘シ、
又古カラ傳ハツタ所ノモノト、今日ニナツ
夕爲ニ幾分カ變ツタ所ノモノト兩方竝ベテ、
何處マデモ指導奬勵シテ行カナケレバナラ
又、斯ウ考ヘテ居リマス
第二ニ今日武道ヲヤツテ居ル姿ヲ見テ、
殊ニ試合ノ姿等カラシテアレデ宜イノカ
ト云フ御尋ネデゴザイマシタガ、私モ今日
ノ武道ノ試合ノ姿ニ對シマシテハ非常ニ遺
憾ヲ感ジテ居ルモノデゴザイマス、ドウカ
日本ノ本當ノ武道精神ヲ靑年層ニ鍊成サセ
タイ、假令兵器ヲ手ニ持タズトモ、又如何
ナル場面ニ於キマシテモ、本當ノ武道ヲ體
得シタ身體、精神ヲ鍊成サセタイ、斯ウ考
ヘテ居ルヤウナ次第デゴザイマス、少シ長
クナリマスルガ、私ノ氣持ラハツキリ申上
ゲンガ爲ニ一例ヲ擧ゲタイト存ジマス、今
般ノ戰爭ニ於キマシテ私「ソコダ武道ハ」ト
言ツタ一例ガゴザイマス、某將校ガ自分ノ
部下ヲ連レマシテ第一ノ銃線ニ起チマシタ
時ニ、其ノ中ノタツタ一人ヲ名譽射手ニ命
ジテ、他ノ者ニハ射撃ヲ禁ジテ、其ノ者ニ
彼處ヲ射テト云フコトヲ命ジタサウデアリ
マス、是ハ一人自分ノ部隊カラ選バレタ名
譽射手トシテ射撃ヲ命ゼラレタ、恰モ平時
ノ射擊ニ於ケルガ如キ沈着ト用意トヲ以テ
其ノ標的ヲ射落シタ、サウスルト指揮官ハ
次ノ射手ヲ數名呼ンデ、今度ハ彼處ト彼處
ヲ擊テト命ジマシテ、其ノ間ニ日本ノ本當
ノ武道精神ヲ全體ニ瀰漫サセテ、戰線ノ兵
ガ恰モ射的場ニ於ケルガ如キ姿ヲ以テ本當
ノ戰鬪ヲ交ヘタト云フコトヲ聞キマシタ時
ニ、私ハ「ソコダ武道ハ」ト申シタヤウナ次第
デアリマシテ、何處マデモサウ云フ氣持デ
武道ヲ進メテ行キタイ、斯ウ考ヘテ居リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=124
-
125・田中隆吉
○田中(隆)政府委員 陸軍ガ柔道トカ、弓
道トカ云フ銃劍術以外ノモノヲ輕視スルト
云フヤウニ仰シヤイマシタガ、サウ云フ暴
言ヲ吐ク者モナイデハアリマセヌケレドモ、
サウ云フコトハ吾々主務局トシテハ考ヘテ
居リマセヌ、唯最近改メマシタノハ軍刀ノ
長サヲ實戰的ニシタノデアリマス、サウシ
テ竹刀ノ長サヲ軍刀ト同ジ長サニシマシタ、
之ニ付テハ色々非難モアリマスガ、切ツタ
ノデアリマス、序ニ申ジテ置キマスガ、
體日本軍ガ强イノハ攻撃精神デアリマス、
攻擊精神ト申シマスルモノハ、吾々砲兵ノ
一例カラ申シマスルト、彈丸ガナクナツタ
ラ銃劍デ突クノデス、軍刀デ斬ルノデス、
銃劍ト軍刀ガ折レタラ組打ヲヤルノデス、
手ト足ヲ斬ラレタラ齒テ喰ヒ付クノデス、
生キテ居ル間ハ何處マデモ行クノガ攻擊精
神デアリマス、隨ヒマシテ武道トシテ凡ユ
ルモノヲ體得スルコトガ必要デアラウト思
ヒマス、其ノ意味ニ於キマシテ、藤生サン
ハ陸軍ガ銃劍術ダケニ重點ヲ置イテ居ル、
銃劍術ダケヲ武道トシテ採用シ、其ノ他ノ
モノヲ一切輕視シテ居ル、又取上ゲナイト
云フ風ニ御考ヘ下サルノハ間違ヒデアリマ
シテ、唯單ナル二年間ノ兵役ニ於キマシテ、
一切ノ武道ヲ兵ニ〓ヘルコトハ出來ナイノ
デアリマス、ソコデ銃劍術、劍道術、相撲
等ニ重點ヲ置イテ居リマスガ、併シ柔道ト
雖モ戶山學校ノ近接格闘術ノ中ニハ入ツテ
居リマス、將校ナドハ悉ク之ヲ學ブベキ義
務ガアルノデアリマス、呉々モ申シマスガ、
齒ガアル間ハ齒デ嚙付ク、命ノアル限リハ
鬪フト云フノガ攻擊精神デアリマス、斃レ
テモ巳マナイト云フ所ニ日本ノ攻擊精神ノ
特長ガアリマシテ、之ニ依ツテノミ軍ハ勝
ツノデアリマス、又是ハ何ニ依ツテ鍛鍊ガ
出來ルカト云フト、先程厚生大臣ガ申サレ
マシタ眞ノ武道精神ノ體得デアリマス、之
ニ依ツテノミ出來ルノデアリマス、御參考
マデニ申上ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=125
-
126・松尾孝之
○松尾(孝)委員 田中兵務局長ガオイデニ
ナリマシタ機會ニ、私ハ唯一點陸軍ノ御意
見ヲ承ツテ見タイノデゴザイマス、ソレハ
此ノ大東亞決戰下ニ於テ高度國防國家建設
上、建兵建民ヲヨリ多ク養成シテ第一線ノ
後續部隊トシテ、又銃後ニ於キマシテハ生
產力擴充ノ根幹トスルト云フコトガ非常ナ
大キナ問題デアリマス、同時ニソレニハ人
口ノ增加、卽チ人口政策ト云フコトガ大キ
ナ問題デアリマス、然ルニ此ノ人口ノ增加
ヲ擔任スル者ハ二十代、三十代ノ最モ血氣
盛リナ靑年層デアリマス、是等ノ靑年層ノ
多クハ軍人トシテ第一線ニ應召シテ戰ハナ
ケレバナラナイ、銃後ニ於テ生產力ノ擴充、
ソレハ物ト人フ增加デアリマス、ソコニ
ツノ惱ミト申シマスガ、符合シナイ點ガ生
ズルヤウニ感ゼラレルノデアリマス、ソコ
デ此ノ點ニ關シテ、第一線ニ勇敢ニ戰ツテ
居ル精銳ヲ、此ノ銃後ノ人ト物ノ生產增加ノ
爲ニ、或ル一定ノ期間銃後ト交代セシメテ、
此ノ方面ノ生產ヲ增强セシメルト云フコト
ニ付テ、軍トシテ特ニ御考慮ヲ拂ツテ戴イ
テ居ルカドウカ、第七十五囘カ六囘ノ帝國
議會ニ於テ、生產力擴充ニ必要ナ爲ニ、場
合ニ依ツテハ其ノ前線ノ勇士ヲ交代スルコ
トモ出來得ルカノヤウニ、陸軍大臣ガ當時
御述ベニナツタト云フコトヲ私ハ記憶シテ
居リマスガ、人口ノ增殖、此ノ問題ニ付テ
ハ軍トシテ御考ヘガアルカドウカ、仄聞ス
ル所デハ、「ドイツ」アタリデハサウ云フヤ
ウナ方法ヲ採ツテ居ルト云フコトデアリマ
スガ、此ノ點ニ付テノ軍トシテノ御考ヘヲ
此ノ機會ニ伺ヘレバ幸ヒダト存ジマス
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=126
-
127・紫安新九郎
○紫安委員長 松尾君、陸軍ニ關スル御質
問ハアリマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=127
-
128・松尾孝之
○松尾(孝)委員 アリマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=128
-
129・紫安新九郎
○紫安委員長 ソレデハ藤生君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=129
-
130・藤生安太郎
○藤生委員 武德會ノ問題ニ付テ一寸簡單
ニ御伺ヒ致シマス、御承知ノヤウニ武德會
ニハ去年薙刀問題ガ起リマシタ、今此ノ
薙刀問題ノ內容ニ付テハ申上ゲマセヌ
ガ、是ハ明カニ武德會當局ノ失態ダト信
ジテ居ルノデアリマス、隨テ吾々議員武道
聯盟ノ實行委員ハ林仙十郞會長、山本副會
長ノ所ヲ訪問シマシテ、此ノ薙刀問題ニ付
テハ明カニ是ハ武德會當局ノ失態デアル、
併シ是以上論議ハシナイ、斯ウ云フ
問題ガ起ルト云フコトハ、結局武德
會ノ內部ガ腐敗シテ居ルカラダ、此ノ
腐敗ヲ革新セヌ限リニ於テハ斯ウ云フ問
題ガ再ビ起ル、ダカラ武德會ノ改革ヲ斷行
スル意思ガアルカドウカト云フ趣旨デ會見
致シタノデアリマス、時ニ會長モ副會長モ
武德會ヲ改革スル意思ガアル、ソレニ付テ
名案ガアルナラバ案ヲ出シテ吳レト云フヤ
ウナ話ガアリマシテ、吾々ハ案ヲ出シタノデ
ス、其ノ案ノ中ニ今御尋ネセントスル一項
目ガ入ツテ居ルノデアリマシテ、吾々案ヲ
出シタニモ拘ラズ今日ニ至ルマデ何等ノ沙
汰ガナイノデアリマス、ソコデ私ハ此ノ點
ヲ監督官廳ノ厚生省ノ大臣ニ御尋ネシタイ
ト思ヒマスガ、御承知ノヤウニ京都武德會
ノ本部ノ道場竝ニ全國各地ニアル所ノ武德
會ノ道場ヲ何レモ皆武德殿ト稱シテ居ルノ
デアリマス、此ノ武德殿ト稱スルコトノ可
否ニ付テ大臣ノ御意見ヲ承リタイト思フノ
デアリマス、此ノ武德殿ノ名稱使用ノ根據
ハ桓武天皇ノ御宇、奈良ノ平城京ヨリ山
城ノ平安京へ御遷都ノ際、延曆十五年三月、
宮中ニ武德殿ヲ設ケラレ、尙武ノ思召ヲ以
テ諸國ヨリ武藝者ヲ徵セラレ、其ノ演武ヲ
天覽アラセ給ヒシコトニ對スル歷史的囘顧
ニアルト思フノデアリマス、然ルニ本來此
ノ武德殿ハ演武場ニアラズシテ、只今申シ
マシタヤウニ、平安宮室ニ於ケル一宮殿ノ
名稱デアル、卽チ大內裏諸建築ノ內、中央
ノ內裏、卽チ皇居ヲ初メトシ、八省院及ビ
豐樂院ニ亞グ宮殿ガ武德殿デアリマス、後
代武德殿ハ內裏西方ノ廣場、宴ノ松原ニ於
テ公達ノ騎射其ノ他ノ武技ヲ行フ際、天皇
親シク臨御遊バサルヽ御殿デアツテ、漫リ
ニ其ノ名稱ヲ冒スコトハ許サレザル所ト思
フノデアリマス、武德會本部演武場ヨリ十
數年前卽チ明治十六年七月明治天皇ノ聖
旨ヲ奉ジ、文武講習ノ道場トシテ建設セラ
レマシタ、宮內省ノ濟寧館デスラ武德殿ノ
名稱ヲ冠セラレテ居リマセヌ、況ヤ之ヲ民
間ニ於テ冒スヤウナコトハ洵ニ畏多イト思
フノデアリマス、之ヲ改稱セシメル必要ガ
アルト思ヒマスガ、之ニ對シテ厚生大臣ノ
御意見ヲ承リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=130
-
131・小泉親彦
○小泉國務大臣 武德殿ノ名稱ノ問題ニ關
聯シマシテノ御尋ネデデゴザイマス、御答
ヘヲ申上ゲマス、武德會其ノモノノ本部ガ
京都ニ置カレマシタ理由等ニ關シマシテモ、
今日色々〓究モサレテ居ルヤウニ承知致シ
テ居リマス、隨ヒマシテ私共ハ只今期待致
シテ居リマスル新武道團體ノ結成ノ時マデ
ニ、武德會ニ於カレマシテ此ノ本部ノ位置、
又武德會內ノ改組、或ハソレニ伴ヒマシテ
武德殿ト云フヤウナモノニ對シマスル錬武ノ
意味ト、一般ノ鍊武場トノ差異ト云フモノ
ニハツキリケジメヲ付ケラレルモノト實ハ
武德會ニ御期待申上ゲテ、寄リ〓〓御話モ
致シテ居ルヤウナ次第デデゴザイマシテ、
厚生省ト致シマシテ斯ウ云フ風ニシロト云
フ原案ヲ只今ハ示サナイデ、武德會自身ノ
改組ト共ニ、新武道團體結成ノ時マデニ是
等ガ解決スルヤウニ致シタイ、斯ウ考ヘテ
居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=131
-
132・藤生安太郎
○藤生委員 大臣ノ御心持ハ能ク分リマス
ガ、併シ其ノ新武道團體結成ノ實現ノ見透
シハ大體何時頃ニナル御積リデゴザイマ
スカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=132
-
133・小泉親彦
○小泉國務大臣 成ベク速カニ新武道團體
ノ結成ヲ見タイ、斯ウ考ヘマシテ、昨年末
ヨリ頻囘此ノ〓究調査ノ爲ニ武道關係ノ方
方ノ御集リヲ願ヒ、又特別委員モ作ツテ戴
キマシテ、武德會ノ會長初メ各武道團體ノ
首腦ノ御方ガ御集リニナツテ、只今頻リト
御〓究中ナノデアリマス、初メハ紀元節ニ
結成シタイト云フヤウナ希望デ居リマシタ
ガ、何カノ支障ヲ來シテ少シ延ビルカト思
ヒマスケレドモ、私ハ此ノ將來ハ遠キ將來
デナクテ近イモノト今期待ヲ致シテ居リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=133
-
134・藤生安太郎
○藤生委員 體力法ニ付テ一寸御伺ヒシマ
スガ、國民體力ノ向上ヲ圖ル爲ニ、本法ノ
ヤウニ專ラ醫者ト藥ニ依ツテ其ノ向上ヲ圖
ラントスルヤウナ、所謂消極的ノ方法モ是
ハ勿論必要デアリマスガ、併シソレヨリモ
寧ロ私ハ國民體力ノ向上ヲ期スル爲ニハ、大
イニ積極的ノ方策ニ期待スル方ガ效果的デ
ナイカト考ヘルノデアリマス、大東亞戰爭
ノ〓戰ニ於テ擧ゲタ輝シキ此ノ戰果、ソレ
以來敵ハ全ク周章狼狽、手モ足モ出ヌヤウ
ナ狀態ニナツテ居リマスガ、是ハ畢竟スル
ニ皇軍ノ所謂積極的ナ先ヲ行ク戰法ノ然ラ
シメタ所デアリマシテ、所謂最善ノ攻擊ハ
最善ノ防禦ナリト云フコトガアリマシテ、最
善ノ防禦ハ決シテ最善ノ攻擊トハナリ得ナ
イト云フコトヲ如實ニ示シテ居ルモノト信
ズルノデアリマス、此ノ意味ニ於キマシテ
國民ノ體力向上ヲ圖ルコトモ、私ハ積極的
ノ方策ヲ講ズルコトガ又能ク是ガ最良ノ消
極的ナ方策デモアリ得ルト考ヘルノデアリ
マス、ソレデ私ハ定メシ厚生省ニ於キマシ
テハ種々積極的ノ方策モ講ジテ居ラレルト
思ヒマスノデ、ドウ云フ風ナコトヲ國民體力
向上ノ爲ニ積極的ナ方策トシテオヤリニナ
ツテ居ラレルカ、項目ダケデモ宜シウゴザ
イマスカラ御擧ゲヲ願ヒタイ、尙ホ將來此
ノ積極的ナ方策ニ付テ、此ノ體力法ト同ジ
ヤウニ何カ立法的ナコトヲ御考ヘニナツテ
居ラレルカドウカ、此ノ點モ承ルコトガ出
來レバ光榮ト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=134
-
135・小泉親彦
○小泉國務大臣 極ク總括的ニ御答ヘヲ申
上ゲマスガ、御意見ノ通リ體力向上ノ爲ニハ
積極的方面ガ洵ニ重要ナ場面デゴザイマス、
此ノ點ニハ十分ニ力ヲ入レテ行カナケレバ
ナラナイト云フ御意見ニハ、全然御同感ノ意
ヲ表スル次第デアリマス、今囘政府ニ於キマ
シテ國民體力法ノ改正ヲ提案致シマシタガ、
之ニ依リマシテ國民ノ體力向上ニ對スル指導
ヲ强化普及シテ徹底シダイ、斯ウ考ヘテ居ル
次第デアリマシテ、指導ニ依リマシテ體力鍊
成ノ爲ノ凡ユル環境ノ改善ニ資シ、又丈夫デ
アリマスル者ハ更ニ之ヲ十分ニ第一線ノ役
ニ立ツヤウ、生產ノ上ニ於テモ、或ハ國防
ノ上ニ於キマシテモ、第一線ニ於テ十分ナ
働キヲシ得ルヤウニ之ヲ修練シ鍊成、鍛鍊
シテ行クト云フコトヲ窮極ノ目的ト致シマ
シテ、其ノ道場ト致シマシテハ體育ノ綜合
團體ヲ結成シ、武道ノ綜合團體ヲ結成シテ、
之ニ依ツテ修練シ、又心身ノ鍛鍊ヲヤツテ
貰フ、ソコマデ至ラナイ者卽チ健康ノ程度
ガソコマデ至ラヌ者ハ指導ニ依リマシテ、
又環境ノ改善ニ依リマシテ、十分ニ其ノ鍊
成修練ヲ受クルダケノ身體ニシテヤル、、斯
ウ云フヤウナ行キ方ニシテ居ル次第デアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=135
-
136・藤生安太郎
○藤生委員 モウ一ツ此ノ點ニ付テ御伺ヒ
シタイト思ヒマス、私ハ御覽ノ通リ身長五
尺九寸八分、二十七貫、日本人トシタラ大
型デ、何モ大型ヲ威張ル譯デハアリマセヌ
ガ、大型ナノデス、厚生大臣、次官ハ丈高カ
ラズト雖モ中々身柄ガガツチリトシテ居ラ
レテ、マア中肉中背型デセウ、オ隣リノ人口
局長ハ、是ハ甚ダ失禮ナ言ヒ方カモ知レマ
セヌガ、日本人トシテハ小型ノ部類ニ屬ス
ルノデアリマセウ、併シサウ云フヤウニ此
處デ一寸皆サン方ヲ見テモ色々型ガアルノ
デスガ、凡ソ體力ノ向上ヲ圖ルト申シマス
以上ハ、何カソコニ目標、基準ト云フモノ
ガナクテハナラヌト思ヒマス、是ハ常識的
ニハ分ツテ居リマス、併シ其ノ道ノ權威者
デアラレル大臣ガ御出席ニナツテ居ラレマ
スカラ、一ツ體力トハドウ云フモノカト云
フコトニ付テ、一應極ク簡單デ宜シウゴザ
イマスカラ、御說明ヲ御願ヒ致シテ置キマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=136
-
137・小泉親彦
○小泉國務大臣 只今ノ體力ト云フコトニ
對シマシテ政府デ考ヘテ居リマスル點ヲ御
答へ申上ゲマス、體力ハ只今御指摘ノゴザ
イマシタヤウニ、形體的ノ方面モ洵ニ重要
ナモノデゴザイマシテ、隨ヒマシテ壯丁ノ
檢査等ニ於キマシテモ一定ノ形體ノ規格ガ
定メラレテ、ソレ以上デナケレバ兵役適者
トシテ之ヲ認メナイト云フヤウナ形ニナツ
テ居リマス、同ジ形體ト申シマシテモ身體
ノ中ニ形體的ノ變化、卽チ疾病ヲ藏シテ居
ルヤウナ者ハ困リマスノデ、之ヲ形體的ノ
方面ノ能力ト致シテ居リマス、第二ノ體力
ノ要素ト致シマシテハ、働ケル機能ノ非常
ニ强イ者ガ欲シイ、身體ノ形體ハ同ジデア
ツテモ働キガ非常ニ能率的デ、サウシテ敏
活デ、其ノ企圖スル所ニ身體ガ物ヲ言ハス
コトガ出來ル、意ノ向フ所、欲スル所、ソ
レヲ身體ニ物ガ言ハセラレルト云フヤウナ
機能力ヲ持ツコトガ大變必要ダト思ヒマス
ノデ、此ノ機能的方面ヲ第二ノ要素トシテ
考ヘテ居リマス、第三ノ要素ト致シマシテ
ハ、申スマデモナク精神力、精神ノ方面ノ
能力ヲ入レテ居リマス、此ノ三ツヲ合ハセマ
シテ、其ノ綜合シタ能力ヲ體力ト考ヘテ居
ル次第デアリマス、隨ヒマシテ山淑ハ小粒
デモピリリト辛イト云フヤウナ所モアリ、
併シ形體モ一定ノモノヲ持タナケレバナラ
ナイ、機能モ持タナケレバナラナイト云フ
モノヲ綜合的ニ認メマシテ、國民ノ體力ヲ
向上シテ行ク、コンナヤウナ考ヘデゴザイ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=137
-
138・藤生安太郎
○藤生委員 全體力ニ對シテ大臣ノ御說明
ヲ承リマシタガ、形體的ノ能力ト、ソレカ
ラ働ク機能的ナ能力、精神的ナ能力、之ヲ
綜合シタ所ノ能力ガ卽チ體力ダ、斯ウ云フ風
ニ御說明ニナリマシタガ、私モ其ノ通リト
考ヘルノデアリマス、ソコデ一ツ疑問ガ起
ツテ來ルハ、此ノ國民體力法ニ於テ「管理ト
ハ國民ノ體力ヲ檢査シ其ノ向上ニ付指導其
ノ他必要ナル措置ヲ爲スヲ謂フ」トアツテ體
力ヲ管理スル爲ニ管理醫ト云フ者ガアル、
醫者ガ管理スル、サウスルト體力ノ內容ハ
今大臣カラ御說明ノアツタヤウニ、形體的
ノ能力、機能的ナ能力、精神的ナ能力、此
ノ三者ヲ綜合シタ所ノ體力ヲ檢査シ、指導
スル所ノ者ガ管理醫デアル、成程此ノ一番
ノ形體的ノ能力ノ診察トカ指導トカ云フヤ
ウナコトハ、是ハ勿論オ醫者デ出來ルコト
ト私ハ思ヒマス、併シナガラ二若シクハ三
ノ精神力ト云フヤウナコトニ付テハ、昨日
モ椎尾委員カラオ醫者ノ日本精神、國體的
觀念ニ對シテ不徹底デアルト云フコトニ對
スル警告的ノ質問ヲナサレテ居ツタガ、其
ノ醫者ガ單ニ體力衞生的ノコトバカリデナ
シニ、知識トカ精神トカ云フヤウナコトマ
デ檢査シ、指導スルト云フ能力ガ果シテア
ルモノダラウカドウダラウカト云フコトノ
疑問ヲ抱クノデアリマスガ、此ノ點精神力
等ノ指導ナリ、檢査ナリハヤハリ此ノ管理
醫ガヤルノデゴザイマスカラ、此ノ點ニ付
テ御說明ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=138
-
139・小泉親彦
○小泉國務大臣 只今御指摘ノヤウナ點ハ
吾々モ實ハ非常ニ苦心ヲ致シテ居ル點デゴザ
イマス、國家ガ體力ヲ向上致サウト云フ目
的ノ爲ト制定致シテ居リマス體力法ハ、何
處マデモ其ノ體力ト云フモノハ只今申上ゲ
マシタヤウナ三方面カラ綜合的ノモノヲ狙
ツテ居ルノデゴザイマスガ、實際問題ト致
シマシテ機能ノ良否ト云フヤウナコト、又
精神力ト云フヤウナモノヲ計リマシテ之ヲ
檢査スルコトハ、實ハ只今ノ科學ノ力デハ
洵ニ覺束ナイ、隨ヒマシテ目的ハ體力法ニ
於テ其處ニ置イテ居リマスガ、政府ト致シ
マシテハ此ノ三方面ノ檢査ガ綜合的ニ出來
ルヤウナモノガアルカナイカ、又別個ナラ
バ機能的ノ方面ハドウスルカ、精神的能力
ノ方面ハドウシタラ宜イカト云フヤウナコ
トヲ科學ノ總力ヲ動員シマシテ、色々ノ方
面ニ〓究ヲ委託ヲシテ進メテ貰ツテ居ルヤ
ウナ狀況デゴザイマス、今日ノ所ハマダ取
敢ズ第一ニ述ベマシタ形體的方面ト云フコ
トニ重點ガ置カレテ施行サレテ居ルト云フ
ヤウナ、寳ニ遺憾ナ現狀ニアリマスノデ、
是ハ卽時國內ノ科學體制ノ整フニ從ヒ、又
向上スル上ニ從ツテ完璧ヲ期シテ參リタイ
ト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=139
-
140・藤生安太郎
○藤生委員 只今形體的ノ能力等ニ付テハ
檢査スルコトモ計ルコトモ出來ルガ、精神
力ノ方面ハ計ルコトガ出來ヌ、斯ウ云フヤ
ウナ御說明デアリマシタ、成程サウダト思
ヒマスケレドモ、私ハ其ノ精神的能力ラ計
ル方法ガ一ツアルト云フコトヲ申上ゲテ見
タイト思ヒマス、是ハ立派ニ計レルノデアリマ
ス、大體斯ウ云フ風ナ管理醫ニ精神力マデ
檢査ヤ指導ヲサセルト云フ思想ノ由ツテ生
ジテ來ル根本ヲ繹ネテ見マスト、一般ノ體
育ノ問題ヲ論ズル場合、殆ド例外ナク引用
スル言葉ハ、卽チ健全ナル精神ハ健全ナル
身體ニ宿ルト云フ格言デアリマス、是ガ鎖
國封建ノ時代デ、諸外國トノ交渉ノナイ時
デアレバ其ノ儘其ノ格言ヲ吾々ハ引用シテ
差支ヘナイケレドモ、今日ノ如ク外國トノ
交涉ガ頻繁デアツテ、外國カラ外國流ノ體
育法ガドン〓〓直輸入サレテ實施サレル現
狀ニ於テ、健全ナル精神ガ健全ナル身體ニ
宿ルト云フ格言ヲ金科玉條視シテ考ヘルト
云フコトハ私ハ非常ニ危險デハナイカト思
フ、ソコデ吾々ハ其ノ人ノ持ツ所ノ精神、
其ノ人ノ抱ク思想ガ健全デアルカ、不健全
デアルカト云フコトヲ考ヘル基準ハ何カト
云フト、ソレハ卽チ合國體的デアルカ、反
國體的デアルカト云フ一點ニ歸スルコトハ
言フマデモアリマセヌ、デアリマスカラ共
產主義、民主主義、個人主義、自由主義ト
云フモノハ、我ガ日本人ニ取ツテハ是ハ決
シテ健全ナル思想デハナイ、我ガ日本人ニ
取ツテ健全ナル精神デナイ、其ノ健全ナル
精神思想デナイ所ノ外國、其ノ外國ニ發達
シタ體育思想ガドン〓〓日本ニ輸入サレテ
實施サレテ居ル、ダカラソレ等ノ體育法ニ
依ツテ鍛鍊シテ如何ニ健康體ニナツテモ、
不健全ナル身體デアルカラ之ニ健全ナル精神
ガ宿ルト云フヤウニ卽斷スルコトハ危險デ
ハナイカト思フ、斯ウ云フ意味デ私ハ日本
國民ノ體力ノ指導向上ヲ圖ルニ付テハヤ
ハリ日本民族ノ傳統的ナ歷史的長所、日
本的香リノ豐カナ、卽チ日本古來ノ武道ト
云フヤウナ體育法ヲ優先的ニ考慮實施スル
ト云フコトガ必要ダト考ヘラレルノデア
リマス、日本ニハ三千年來日本人ノ性格竝
ニ體格ニ適シタ所ノ體育法ガ澤山アル、ソ
レニモ拘ラズ外國ノ體育法ヲドン〓〓取入
レテ之ヲ實施スルト云フヤウナコトハ洵ニ
遺憾ナコトデアツテ、何カノ本ニモアリマ
シタ自家ノ無盡藏ヲ放擲シテ、鉢ヲ持シ他
家ノ門ニ立ツテ、〓ヲ乞フガ如キ貧兒ノ愚
ヲ學ンデハイケナイ、山鹿素行先生モ本朝
武ヲ以テ先トナスト言ツテ居ル、私ハ何時
カノ建議委員會デ厚生當局ニ武道奬勵ヲナ
サイ「スポーツ」ハ第二義的デハナイカト
云フ質問ヲシタ時ニ、厚生大臣ハ「スポー
ツ」ハ大イニ奬勵スルノダト云フコトヲ答
辯サレタノデアリマス、ソレハ勿論外國流
ノ體育法ヲ盛ンニスルト云フコトハ結構デ
アリマス、併シナガラモノニハ自ラ先後緩
急ガアル、ソコデ私ハ此ノ西洋流ノ體育法
ト日本體育トシテノ武道、又體育ト精神訓
育トヲ一元的ニ解決スル武道等ノ奬勵ニ關
スル先後緩急ノ度ヲ、ドウ云フヤウニ厚生
大臣ハ御考ヘニナツテ居ルノデアルカ、今
大臣ノ御答ヘデハ精神力ハ計ルコトガ出
來ナイト言ハレタノデアリマスガ、是ハ多
少我田引水カモ知レマセヌガ、外國流ノ體
育法ヲヤツテ居ル者ト、日本流ノ體育法ヲ
ヤツテ居ル者トニ依ツテ、大體其ノ人ノ精
神力ヲ計リ得ルト言ツタノハ斯ウ云フ譯デ
アリマス、ダカラ西洋流ノ體育法ト、日本
ノ體育法ノ體育ノミナラズ、精神訓育ヲモ
一元的ニ解決スル此ノ武道ト云フモノノ先
後緩急ニ對スル點ニ付テ、モウ一點御伺ヒ
シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=140
-
141・小泉親彦
○小泉國務大臣 私ノ申上ゲ方ガ足リナカ
ツタト見エマシテ誤解ヲ招イタカト考ヘテ
居リマスノデ、此ノ點モウ一度明カニシテ
置キタイト思ヒマス、健康ナ身體デアルナ
ラバ健全ナ精神ガ必ズアルトハ決シテ思ツ
テ居リマセヌ、此ノ點全然御同感デアリマ
ス、又日本精神ト云フコトハ是ハ日本人デ
アレバ悉クガ持タナケレバナラヌモノデア
ルト思ツテ居リマス、持ツテ居ル者ト固ク
信ジテ居リマス、併シ中ニハ偶〓、指指摘ニナ
リマシタヤウナ、共產主義ト云フヤウナ者
モ或ル場合ニハアツタノデアリマス、ソレ
デ精神力ハ其ノ程度デハ分リマスガ、私共
期待シテ居リマスノハ、例ヘバ只今第一線
ニ行ツテ居リマス兵、是レ悉ク軍人勅諭ヲ
奉ジマシテ、一死以テ國ニ殉ズルト云フ點
ニ於テ誰シモ甲乙ハナイノデアリマス、同
ジヤウナ精神ノ旺勢サヲ持ツテ居リマス
ガ、併シ更ニ之ヲ小分ケ致シマスト、マダ
ヤハリソコニ上下ト申シマスカ、濃淡ト申
シマスカ、ト云フモノガアルコトハ、戰場
ニ參リマシタ者ノ等シク認メル所デアリマ
ス、私共ハ體力ヲ最高ニト云フヤウナ目安
ヲ實ハ狙ツテ居ルノデアリマス、サウ云フ
意味デ精神力ト云フコトヲ申上ゲタノデア
リマスカラ、ドウゾ左樣御諒承願ヒマス、
斯ウ云フ考ヘデ居ルノデアリマスカラ、外
國流ノ「スポーツ」、或ハ一時非常ニ謳ハレ
マシタ「フェア·プレー」ナドト云フコトト、
吾々ノ試合ノ如ク、禮ニ始マリ禮ニ終ル
ト云フヤウナ日本武道トハ全ク違ツタモノ
ト考ヘテ居リマス、之ニ對スル指導ノ順序
ト云フモノハ自ラ之ニ依ツテ律セラレルト
考ヘルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=141
-
142・藤生安太郎
○藤生委員 大臣ノ御言葉ニ非常ニ感謝ノ
意ヲ表シマス、私ハ此ノ際斷ツテ置カナケ
レバナラヌコトハ私ハ決シテ「スポーツ」
ヲ無暗ニ毛嫌ヒヲシテ居ルノデハナイノデ
アリマス、私モ「スポーツ」ニ對シテハ九州
ノ「オリンピック」豫選大會ニ於テ槍投、砲
丸投ナドヲヤツテ「レコード」ヲ取リマシ
タ、實際ニモヤツテ居ルシ、理論モ相當分
ツテ居ル積リデゴザイマス、隨テ私ハ〓ハ
ズ嫌ヒノ「スポーツ」嫌ヒデハナイ譯デアリ
やく、勿論「スポーツ」ニモ採ルベキ所ガア
ル、飛ブトカ、跳ネルトカ云フコトハ、柔
道劍道ニハ非常ニ缺ケテ居ルカラ、「スポー
ツニ依ツテ之ヲ補ハナケレバナラヌ、ソ
レハ「スポーツ」トシテ補フノデナク、武道
ヲ補フ補助技ト云フヤウナ意味デ考ヘテ居
ル次第デアリマス、委員各位ニハ夜遲クマ
デ恐縮ニ存ジマスガ、モウ一寸御辛抱ヲ願
ヒマス
次ニ御尋ネ致シタイノハ文部省關係デア
リマシテ、女子ノ體育問題デアリマスガ、
吾々ハ體育問題ヲ取上ゲテ論ズル場合、其ノ
對象トナルモノハ靑少年或ハ學生生徒、壯
丁ト云フヤウナ男バカリデアリマシテ、動
モスルト女子ト云フモノヲ對象トスルコト
ヲ忘レ勝デアリマスガ、私ハ女子ノ體育向
上問題ト云フモノハ、是レ亦男子ノ體育向
上問題ニ劣ラズ、極メテ重要ナ性質ヲ持ツ
ノデアリマシテ、殊ニ國家百年ノ大計ヲ樹
立スル上ニ於キマシテ、男子ノ問題ヨリモ
一層重大性ヲ持ツノデハナイカト思フノデ
アリマス、今日國民體力法ノ制定ニ依ツテ、
男子ト同ジヤウニ女子ヲ此ノ法律ノ適用ヲ
受ケテ體力ノ向上ヲ期待シ得ラレルコトハ洵
ニ慶賀スベキコトト考ヘマス、併シナガラ
女子ノ體力向上ノ問題モ、男子ト同ジヤウ
ニ體力的ニ、衞生的ニバカリデナク、日本婦
道ノ〓揚、日本婦道ヲ一元的ニ解決スルヤ
ウナ體力向上問題ヲ考慮セラレナケレバナ
ラナイト考ヘルノデアリマス、曾テ西洋流
ノ體育ノ盛ンデアツタ頃、「オリンピック」
ニ來タ外國人ニ對シテ、日本ノ女學生ノ間
ニ貞操問題ガ起ツタ、吾々ハ今之ヲ考ヘテ
ヒ切齒痛憤ニ堪ヘナイノデアリマスガ、是
ハ明カニ其ノ當時ノ學校當局ナリ、或ハ政
府當局ナリノ、女子ニ對スル體力指導方針
ガ誤ツテ居ツタコトヲ、暴露スルニ外ナラ
ナイト考ヘルノデアリマス、御承知ノ如ク
我ガ國ハ明治ノ初年ニ徵兵令ヲ御布キニナ
ツテ、徵兵令ニ依リ國民悉クガ、階級ノ差
別ナク武士ニシテ戴イタノデアリマス、此
ノ徵兵令ノ發布ニ依ツテ、日本男子ハ悉ク
武士ニナリマシタ以上ハ、當然日本ノ女性
モ、卽チ武士ノ母デアリ、武士ノ妻デアリ、
武士ノ娘デアル所ノ責任ト自覺ガナケレバ
ナラナイノデアリマス、隨テ武士道ト云フ
コトハ、男バカリガ占有スルモノデナク、
日本婦人モ武士道ノ所有者トナラナケレバ
ナラナイ譯デアリマス、忠臣義士ノ蔭ニ潜
ム節婦烈女ノ庭訓、內助、激勵ノ功ニ俟ツ
コト甚大デアルコトハ、古今幾多ノ史實ガ
之ヲ立證シテ居リマス、楠公夫人、細川忠
興ノ夫人、幕末志士ノ母、妻、姉妹、更ニ
白虎隊ヲ出シタ會津藩ノ婦人ノ壯烈悲壯、
劍ノ短キヲ歎ズル我ガ子ニ、汝ノ劍短シト
言フノカ、サラバ一步進メト言ツテ激勵訓
戒シタル母親ノ如ク、ナヨ竹ニ勁烈ノ節ガ
アツテコソ、日本婦人ノ完美ヲ見ルコトガ
出來ルノデアリマス、眞個ノ日本男子ノ鍊
成ハ此ノ婦德ニ負フ所極メテ大デアルコト
ハ言フマデモアリマセヌ、然ルニ現代ノ女
性殊ニ銀座邊リヲブラ〓〓シテ居ルアノ
恰好ヲ見マスルト、洵ニ其ノ精神狀態ハ濟
度シ難キモノガアルヤウニ思ハレルノデア
リマス、私ハ日本女子ノ〓學ノ理想ト云フ
モノニ付テ能ク考ヘルコトデアリマスガ、ア
ノ天照大神樣ノ御姿コソ日本〓學ノ理想
ヲ御示シニ相成ツテ居ルモノト考ヘルノデ
アリマス、卽チ女性ノ御身デアリナガラ劍
ヲ佩キ、弓ヲ携へ、千箭ノ矢ヲ負ウテ凛々
シイ武裝ヲシテ居ラレル、此ノ姿コソ正ニ
日本女性ノ〓學ノ理想デナクテハナラヌト
思ヒマス、ソコデ〓育ノコトハ文部省ノ方
デアリマスガ、文部大臣八來テ居ラレマセ
又、是ハ一寸政府委員ノ方ニハ無理カモ知
レマセヌガ、適當ノ機會ニ、今此處デ御答
辯出來ナケレバ後デモ宜シユウゴザイマス
カラ、日本婦道ノ〓揚ト、日本女子ノ體力
向上ノ問題トヲ一元的ニ解決スル爲ニドウ
云フ方針ヲ持ツテ居ラレルカト云フコトヲ
文部大臣ニ御尋ネ致シタイノデアリマス、
此ノ日本婦道ノ〓揚ト日本女子體力向上ノ
問題トヲ一元的ニ解決スル方法トシテハ、
現在女學校ノ方面ニ於テ、薙刀、弓ナドガ
最モ多ク實施サレテ居ルヤウデアリマス、
是ハ最モ必要デアルト思ヒマスガ、現在學
校等デ弓ト薙刀デ、ドウ云フ風ニ普及實施
サレテ居ルカ、一先ヅ之ヲ文部省ノ政府委
員ノ方カラ御說明ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=142
-
143・紫安新九郎
○紫安委員長 文部省ノ石井訓練課長、政
府委員デハアリマセヌガ、說明員トシテ御
述ベヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=143
-
144・石井通則
○石井說明員 只今ノ御質問ニ御答辯申上
ゲマス、只今ノ女子ニ對スル心身一體ノ鍛
鍊トシテ武道ヲ實施スルト云フコトニ付キ
マシテハ、文部省ト致シマシテモ全ク同感
デゴザイマス、女子ノ體育ニ關シマシテ、
從來カラ男子ト同ジヤウニ日本精神ニ則
リ、又其ノ婦人トシテノ立派ナ身體ト精神
トヲ養フト云フコトニ付キマシテ、體育ノ
面カラ色々〓究致シテ居ツタノデゴザイマ
スガ、昭和十一年ニ、女子ノ體育ニ關シマ
シテ色々〓究ノ結果、女學校、女子ノ師範
學校ニ對シテ薙刀、弓道ヲ正科トシテ實施
シ得ルト云フコトニ致シタノデゴザイマ
ス、是ハ勿論出來マスレバ全學校ニ正科ト
シテ實施スベキコトヲ規定致シタイノデゴ
ザイマスケレドモ、或ハ指導者ノ關係、或
ハ設備等ノ關係モアリマスノデ、サウ云フ
モノガ整備致シマスレバ、正科トシテ實施
シ得ルト云フコトニ致シタノデゴザイマス、
尙ホ昨年國民學校ノ方面ニ於キマシテ
モ、高學年ノ女子ニ付キマシテハ薙刀ヲ正
科トシテ實施シ得ルト云フコトニナツタノ
デゴザイマス、從來カラ薙刀、弓道ハ女子
ノ體育トシテ實施シツツアリマシタノデゴ
ザイマスガ、正科トシテ實施スルト云フコ
トニナリマシテカラ、弓ニ付キマシテハ約三
百校位ノ學校ガ實施スルヤウニナツテ居リ
マス、又薙刀ニ付キマシテハ一一百五十校程
度ノ學校ガ實施シツツアルノデゴザイマス
ガ、是ハ勿論十二年頃ノ數字デゴザイマス、
其ノ後非常ニ早イ「テンポ」デ普及致シツツ
アリマス、最近ノ統計ニ付キマシテハ目下
調査中デゴザイマスガ、其ノ一部ノ女子師
範學校ニ關シマシテハ、弓道ヲ實施致シテ
居リマスノガ四十六校ゴザイマス、實施シ
テ居ナイモノガ三校デゴザイマス、尙ホ報
告シテ居ナイノガ四校ゴザイマスガ、薙刀
ニ關シマシテハ四十八校ガ實施致シテ居リ
マシテ、マダ實施シテ居ナイ所ガ一校アリ
そう、尙ホ報告ヲシテ居ナイノガ四校ト云
フ程度ニナツテ居リマス、尙ホ國民學校ニ
於キマシテモ非常ニ急速ニ普及發達シツツ
アルノデアリマシテ、現在相當ノ學校ニ於
テ實施サレツツアルノデアリマスガ、其ノ
數字ハ目下調査中テゴザイマシテ、今申上
ゲル段ニ至ツテ居リマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=144
-
145・藤生安太郎
○藤生委員 今ノ御話ニ依リマシテ、弓道
モ薙刀モ女學校等ニ正科トシテ實施シ得ル
見込ガ付イタト云フコトヲ承リマシタガ、
是ハモウ當然吾々モ〓究シナクテモ實施シ
得ルト考ヘテ居ツタノデアリマス、唯見込
ガ付イタダケデナシニ、斯ウ云フコトハ
ツ女子ノ體力問題解決ノ爲ニモ、日本婦道
昂揚ノ爲ニモ、成ベク早ク實施セラレンコ
トヲ要望致シテ置キマス
ソレカラ先程一寸申上ゲマシタガ、女學
校ニハドウデスカ、天照大神ノ御肖像ヲ掛
ケテアリマスカ、若シナイトスレバ、是化
私ハ日本ノ國體ノ如何ナルモノカヲ知ラシ
メル意味ニ於キマシテモ、又婦人ノ日本婦
道昂揚ノ爲ニモ極メテ良イ〓育法ニナルト
思ヒマスガ、ナケレバ是非之ヲ各學校ニハ一
ツ御備ヘシテ戴キタイト思ヒマス、是ハ御
答辯ヲ戴カナクテモ宜イノデ、サウ云フコ
トヲ希望致シテ置キマス
ソレカラモウ一點文部省ニ御伺ヒ致シマ
ス、武道振興ト云フコトヲヨク言ヒマス
ガ、此ノ武道振興ノ根本的方策如何ト云フ
ヤウナコトガ、武道振興委員會ニ於テ、文
部、厚生兩大臣ノ諮問ニ出マシテ、之ニ對シ
テ色々答申案モ出タノデアリマス、併シナガラ
私ハ之ヲ極ク端的ニ其ノ根本方策如何ト云
フコトニ對シテ答ヘルナラバ、是ハモウ結局
ハ武道〓師ノ優遇ヨリ外ニハ根本方策ハナ
イト思フノデアリマス、武道ノ〓師ノ優遇
ト云フコトガ、一番武道振興ニナルコトト
私ハ信ジテ疑ハヌノデアリマス、然ルニ學科
ノ〓師ト武道ノ〓師トノ待遇ト云フモノヲ
比ベテ見ルト、非常ニ開キガアルヤウニ考ヘ
ルノデアリマス、「文武ハ偏廢スベカラズ、
文ニ偏スレバ浮華、武ニ偏スレバ粗暴、文武
相俟ツテ道眞ニ興ル、文質彬々、然ル後君
子」ト云フコトヲ先哲ハ言ツテ居リマスガ、
日本ノ〓育ハ此ノ文質彬々タル所ニ其ノ目
的ガナクテハナラヌ譯デアリマス、學科ノ
〓師ト武道ノ〓師トノ待遇ノ其ノ差、比率
ト云フヤウナコトニ對シテ極ク簡單デ宜シ
ウゴザイマス、大雜把デモ宜シウゴザイマ
スカラ御說明ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=145
-
146・石井通則
○石井說明員 御說明申上ゲマス、只今ノ
武道振興ノ爲ニ武道指導者ノ待遇ヲ改善ス
ベキコトニ付キマシテハ、全ク御同感デゴ
ザイマス、現在學校ノ〓員ニ關シマシテ
ハ、〓員ノ資格ノ免許ガゴザイマシテ、武道
ノ〓師デゴザイマシテモ、其ノ資格ノ免許ヲ
持ツテ居リマス者ハ、全然文武差別ナク取
扱ハレテ居リマス、唯資格ノナイ武道〓師ニ
關シマシテハ、他ノ〓師ニ關シマシテモ資
格ノナイ者ガ〓ヘテ居ルコトモアリマス
ガ、サウ云フ人々ト大體大差ハナカラウカト
思ツテ居リマス、資格ノアル者ハ、實際一
般ノ學科ノ方ノ〓員ト同樣デゴザイマス
シ、資格ノナイ人ハソレニ比ブレバ低イノ
デゴザイマスケレドモ、他ノ學科ノ〓員デ
資格ノナイ者モアリマス、サウ云フ者トノ
比較ニ付キマシテハ詳シイ現在ノ調査ハマ
ダ出來テ居リマセヌガ、大體同樣デアラウ
カト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=146
-
147・藤生安太郎
○藤生委員 ドウモ只今ノ御答ヘト、私ガ
日頃調査シテ居ルコトトハ大變違ツテ居ル
ヤウニ思ヒマス、併シ是ハ何レ他ノ機會ニ
於テ御尋ネスルコトニ致シマシテ、要スル
ニ從來武道〓師ノ待遇ガ他ノ學科ノ〓師ノ
待遇ニ比ベテ非常ニ惡カツタ、其ノ爲ニ武道
ガ盛ンニナルベクシテ盛ンニナラナカツタ
ト云フヤウナコトニナツテ來タノデアリマ
スガ、此ノ武道〓師ノ待遇ガ非常ニ惡カツタ
ト云フコトハ一面ニ於テ武道〓師ノ素質
ノ惡カツタト云フ點ニモ依ルコトデアリマ
スガ、一ツニハ)是ハ今日ノ政府ノ當路ニ
アル所ノ人々、是等ノ人々ノ間ニ武道ト云
フモノガ正シク理解サレテ居ナイ、其ノ爲
ニ武道ヲ非常ニ、極端ニ言ヘバ輕蔑シテ居
ラレル、サウ云フ風ナ精神ガヤハリ武道〓
師ノ待遇上ニモ現ハレテ來タノデハナイカ
ト思ハザルヲ得ナイ、ト云フノハ武道振興
委員會ニ於キマシテモ、其ノ諮問案ニ揭ゲ
ラレタ所ノ武道ノ定義ノ如キモ、唯單ニ、
武道トハ心身鍛錬ノ道ナリ、ト云フヤウナ
コトヲ書イテアル、私ハ之ヲ指摘シテ、是
ハイカヌデハナイカ、兎ニ角ソレハ心身鍛
鍊ノ道ニハ相違ハナイ、心身鍛鍊ノ道ニハ
相違ハナイケレドモ、併シ心身鍛鍊ノ道ガ
武道ダト云フナラバ、西洋流ノ體育法デ
モ、或ハ其ノ他心身鍛鍊ニナル所ノモノハ
悉ク武道ダト言ハナクチヤナラヌ、ソコニ色
色武道ガ「スポーツ」化シタリスルヤウナコ
トニナツテ來ルカラ、サウ云フ風ナ解釋ハ
適當ナ解釋デハナイト言ツテ、私ハ其ノ時
之ヲ指摘致シタノデアリマス、然ラバ武道
ト云フモノハドウ云フモノデアルカト云フ
コトヲ言ヘバ、時間ガ又長ク掛リマスカラ
私ハ申シマセヌガ、近代的ノ學問ヲ受ケタ
所ノ政府ノオ役人サン達ハ、要スルニ武道
ト云フモノハアノ竹刀デ叩キ合ヒヲス
ル、疊ノ上デ投ゲ合ヒヲスル、アレガ武道
ノ全體ダ、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居ラレルノ
デハナイカト私ハ思フノデス、決シテ武道
ト云フモノハアノ叩キ合ヒヲスル、疊ノ上
デ投ゲ合ヒヲスル、隨テアノ道場ガ武道ノ
道場ノ全體ダ、斯ウ云フ風ニ考ヘラレルベ
キモノデハナイ、斯ウ云フヤウナ信念ヲ持
ツテ居リマス、是ハ獨リ政府ノオ役人達バ
カリデハナクノ一般世間ノ識者、指導階級
ノ人々モサウ云フ風ニ武道ト云フモノヲ考
ヘテ居ルノデハナイカト私ハ思フ、此ノ間
大政翼賛會ノ調査會ニ於キマシテモ、國民
ノ〓養訓練ヲスル、國民ヲ〓養訓練スル爲
ニハ先ヅ國體ノ本義ヲ明カニシナケレバナ
ラナイ、國體ノ本義ヲ明カニスル爲ニハ惟
神ノ大道ヲ闡明シナケレバナラナイ、サウ
シテ惟神ノ大道ヲ闡明スルニ付テ出席ノ各
委員、權威者ト言ハレル所ノ人々ガ澤山出
テ、サウシテ高邁ナル議論ヲサレテ居ツタ
ノヲ拜聽シタガ、日本ノ惟神ノ大道、日本
ノ國體ハ卽チ神ニ在ルノダ、北畠親房卿カ
神皇正統記ニ「日本ハ神國ナリ」ト言ハレテ
居ル、ソレハ神國ニ相違ナイ、ソレハ間違
ヒナイ、ケレドモ神國々々ト、惟神ノ大道
ダケ說イテ、誰一人トシテ出席者カラ武ヲ
說ク人ガナイ、是ハ非常ニ間違ツテ居ル、
神ダケデハ日本ノ國體ハ保チ得ナイ、山鹿
素行ノ中朝事實ノ武德章ニ於テハ、武德ヲ以
テ雄義ヲ現ハス云々ト云フヤウナコトヲ書
イテ居ル、又歷代ノ詔ノ中ニモ尙武、武ト
云フモノト國體ト云フモノトハ密接不可分
ナモノデアルト云フコトヲ御諭シニナツテ
居ル、此ノ神ト云フモノト武ト云フモノト
ハ切離スコトガ出來ナイ、神武ハ一體デア
ル、卽チ日本ハ神國デアルト同時ニ武國デ
アル、卽チ神武ノ國デアル、斯ウ云フヤウ
ニシテ武ト云フモノヲ考ヘルト、惟神ノ大
道ト相通ジテ、哲學的ニモ心理的ニモ深遠
ナ〓理ヲ武道ト云フモノハ持ツテ居ル、其
ノ武道ヲ唯單ニ撲リ合ヒ、投ゲ合ヒヲスル
モノガ武道デアルカノ如ク考ヘル、或ハ其
ノ道場ガ武道ノ全體ノ道場デアルカノ如ク
考ヘル人ガ多イノデス、サウ云フモノヂヤ
ナイ、私ハ眞ノ武道ノ道場ト云フモノハ、
百般ノ生活其ノモノガ眞ノ武道ノ道場デナ
クテハナラヌト思フ、今日マデノ政治ガ低
調不活潑デアツタト云フ所以ノモノハ
今日ノ政治ニ武道性ガナイカラダト言ハナ
ケレバナラヌ、又經濟生活ニ於テモ武道性
ガナイ、官僚生活ニ於テモ武道性ハ大イニ
發揚セナクテハナラナイ、然ルニ官僚生活ナ
ドニ於テモ武道性ガ發揚セラレナイト云フ所
ニ、色々統制經濟其ノ他ノコトニ依ツテ却
テ役人ニ罪人ガ出テ來ルト云フヤウナコト
ニナル、ダカラ總テノ生活、政治生活ハ勿
論ノコト、經濟生活、文化生活總テニ於テ
今日必要ナモノハ武道性ノ發揚デアルト云
フコトヲ私ハ考ヘテ居ル、ダカラ此ノ武
道武道性ト云フモノニ對シテ私ハ正シイ
認識ヲ、殊ニ其ノ方ニ關係シテ居ラレル文
部厚生ノ方々ニハ一層深メテ戴キタイト
思フ、サウ云フ意味ニ於テ、武道振興委員會
ハ出來テ居ツタ、出來テ居ツタケレドモ、
ソレハ今度體力審議會ニ發展的解消ヲシタ
トカ云ツテ、ナクナツテシマツタガ、要スル
ニ武道ヲ倫理的、哲學的ニー-唯奬勵ト云フ
ヤウナコトデハナシニモツト學問的ニ〓究
スル大キナ機關ヲ作ツタラドウカト云フコ
トヲ考ヘマスガ、厚生大臣ハ之ニ對シテ何
カ御意見ガゴザイマスレバ聽カセテ戴キタ
イト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=147
-
148・小泉親彦
○小泉國務大臣 只今武道ノ先生ハ全生活
悉ク武道ノ中ニナケレバナラヌト云フ御意
見ハ、全ク御同感デゴザイマス、隨ヒマシテ
サウ云フ意味ニ於ケル眞ノ武道ヲ盛ンナラ
シメルト云フコトノ爲ニハ只今御指摘ノ
〓究ト云フヤウナコトモゴザイマセウシ、
實踐モゴザイマセウシ、各方面ニ將來益〓
善處ヲシテ行キタイト存ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=148
-
149・紫安新九郎
○紫安委員長 是ニテ散會致シマス、明日
ハ午前十時ヨリ開會致シマス
午後六時四十分散會
〔參照〕
(淺井委員ノ質問竝ニ答辯)
問
一、國民醫療法中第十五條ニ
「醫師又ハ齒科醫師第五條各號ノ一ニ
該當スルトキハ其ノ免許ヲ取消スベシ
但シ命令ヲ以テ定ムル場合ハ此ノ限ニ
在ラズ」醫師又ハ齒科醫師第六條各號
ノ一ニ該當シ又ハ醫師若ハ齒科醫師タ
ルノ品位ヲ損スル行爲アリタルトキハ
免許ヲ取消シ又ハ期間ヲ定メテ醫業若
ハ齒科醫業ヲ停止スルコトアルベシ其
ノ事免許前ニ係ル場合亦同ジ
トアル「品位ヲ損スル行爲」トハ如何ナ
ル意味カ、品位ノ定義ヲ明確ニセラレ
ナケレバ醫師及齒科醫師ハ安心シテ業
ニ就クコトガ出來ナイ
品位ト言ヘバ道德的、良心的、人格的
ノ言葉デアツテ範圍ハ漠トシテ捕捉ガ
出來ナイ
苟モ個人ノ營業權ヲ奪フ法律デアルカ
ラ第五條及第六條ニ於ケルガ如ク明確
ニシナケレバナラナイ若シ品位ガ醫
師齒科醫師ノ絕對必要條件ナリトス
レバ第五條第六條ニ於テモ品位ノ一項
ガナクテハナラナイ
卽チ醫師、齒科醫師タラントスル者ガ
事前ニ品位ヲ損スル行爲アリタル場合
ニハ免許ヲ與ヘズト規定スベキデアル
品位ト言フノハ觀念的ノ言葉デ範圍ガ
不明デアル爲認定ニヨツテ裁量ガ自由
デアル、コレハ頗ル危險デアル中村委
員ノ質問ニ對シテ醫師會ニ諮問スルト
言フモ醫師會ガ一致シテ居ル場合ニハ
兎モ角、萬一抗爭等ノアル場合ニハ罪
惡ノ曝キ合ヒニナルデハナイカ例ヘバ
醫師、齒科醫師ノ風紀問題(看護婦ト
醜關係ヲ結ビタル場合)等ノ場合モ品
位ヲ損スル行爲ト看做スカ否ヤ明確ニ
答辯サレタシ
答
醫師及齒科醫師ハ其ノ職責及地位ノ重
要ナルニ鑑ミマシテ其ノ品位ヲ保持
スルコトハ極メテ必要ト考ヘラレマス
ノデ今囘新ニ醫師又ハ齒科醫師タルノ
品位ヲ損スル行爲アリタル者ニ對シ情
狀ニ依リテハ主務大臣ニ於テ行政處分
ヲ爲シ得ルノ途ヲ拓イタノデアリマ
ス、而シテ如何ナル場合ニ品位ヲ損ス
ル行爲アリタルヤ否ヤノ判定ハ具體的
事例ニ於テ之ヲ認定スルノ外ハナイト
考ヘラレマスガ抽象的ニ之ヲ申シマス
レバ現行法上行政處分ヲ行ヒ得ベキ條
件ニハ該當セザルモ其ノ行爲ガ著シク
社會ノ耳目ヲ衝動セシメ汎ク世ノ指彈
ヲ受クルガ如キ場合ヲ言フノデアリマ
シテ單ニ素行ノ惡イト云フガ如キ場合
ハ本條ノ品位ヲ損スルノ行爲ニ該當ス
ルトハ考ヘテオリマセン
御示シノ如キ醫師、齒科醫師ノ醜關係
ガ本條ノ品位ヲ損スル行爲アリタル者
ニ該當スルヤ否ヤハ各具體的實情ニ付
テ調査シナケレバ一〓ニ申ス譯ニハ行
キカネルト存ジマス
次ニ醫師又ハ齒科醫師ノ品位ヲ損スル
行爲ヲ主務大臣ノ行政處分ヲ爲シ得ル
事由ニ加ヘタルニ拘ラズ之ヲ免許附與
ニ關スル第五條又ハ第六條ニ加ヘザル
ハ矛盾スルニ非ザルヤトノ御尋ネデア
リマスガ醫師又ハ齒科醫師タルノ品位
ハ醫師又ハ齒科醫師トナツタ者ニ付テ
其ノ保持ヲ要請スルコトガ適當デアル
ト考ヘラレマスノデ第十五條ニノミ之
ヲ規定シタ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911039X00619420130&spkNum=149
-
本文はPDFでご覧ください。
3. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。