1. 会議録本文
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000・会議録情報
會議
昭和十七年一月二十八日(水曜日)午前十時二十三分開議
出席委員左の如し
委員長 勝正憲君
理事 川崎末五郎君 理事 河野密君
理事 松永義雄君
石坂養平君 卯尾田毅太郎君
宇賀四郎君 小川郷太郎君
小高長三郎君 小野謙一君
岡本實太郎君 金澤正雄君
小畑虎之助君 立川平君
藤本捨助君 豐田豐吉君
村上紋四郎君 森肇君
百瀬渡君 山本芳治君
佐竹晴記君 田川大吉郎君
田万清臣君 森田福市君
青木作雄君 加藤鯛一君
同月二十七日委員眞鍋儀十君辭任に付其の補闕として豐田豐吉君を議長に於て選定せり
出席政府委員左の如し
内務書記官 小林千秋君
大藏次官 谷口恒二君
大藏省主税局長 松隈秀雄君
大藏書記官 池田勇人君
大藏書記官 平田敬一郎君
物價局長官 石黒武重君
本日の會議に上りたる議案左の如し
所得税法中改正法律案(政府提出)
法人税法中改正法律案(政府提出)
所得税法人税内外地關渉法中改正法律案(政府提出)
相續税法中改正法律案(政府提出)
織物消費税法中改正法律案(政府提出)
物品税法中改正法律案(政府提出)
電氣瓦斯税法案(政府提出)
廣告税法案(政府提出)
馬券税法案(政府提出)
印紙税法中改正法律案(政府提出)
臨時利得税法中改正法律案(政府提出)
特別法人税法中改正法律案(政府提出)
營業税法中改正法律案(政府提出)
臨時租税措置法中改正法律案(政府提出)
國庫出納金端數計算法中改正法律案(政府提出)
戰時災害國税減免法案(政府提出)
所得税等の日滿二重課税防止に關する法律案(政府提出)
地方分與税法中改正法律案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=0
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001・勝正憲
○勝委員長 ソレデハ是ヨリ開會致シマス、
豫メ申上ゲテ置キマスガ、今日ハ午前中デ
此ノ委員會ハ止メマス、午後ハ委員室ノ都
合デヤレナイサウデアリマス、ソレカラ明
日ハ午前中ハ此ノ委員室ガ塞ガリマスカ
ラ、午後一時カラヤリタイト云フ豫定デア
リマス、豫メ申上ゲテ置キマス-ソレデ
ハ通〓順ニ依ツテ發言ヲ許シマス-宇賀
君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=1
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002・宇賀四郎
○宇賀委員 私昨日大藏大臣ニ質問シタ中
デ、事計數ニ關スルノデ、主稅局長カラ御
答ヘヲ求メル點ガ二ツバカリ殘ツテ居リマ
シタ、ソレヲ今日此處デ主稅局長カラ承リ
タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=2
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003・松隈秀雄
○松隈政府委員 昨日宇賀委員ノ御尋ネノ
アリマシタ點デ、調査ヲ致シマシタ結果申
上ゲルコトニ答辯ヲ保留致シマシタモノハ、
公債、社債、預金ノ利子ハ源泉選擇ヲ致シ
マシタ場合ニ百分ノ二十五ト云フ稅率ニナ
ツテ居ルノデアルガ、假ニ源泉選擇ヲ致シ
マシテ百分ノ二十五ト云フ比例稅率ニ依ツ
テ課稅スルコトヲ止メテ、株式等ノ配當ト
同樣ニ綜合累進課税率ニ改メタトシタナラ
バ稅額ニ於テドノ位ノ差ガアルカ、斯ウ
云フ御尋ネデアリマス、是ハ固ヨリ豫想ノ
數字デアリマスノデ的確ニハ申上兼ネマス
ルガ、一應推算シテ計算致シマスト現在採
用致サントシテ居リマス百分ノ二十五ト云
フ源泉選擇ノ稅率ハ所得五万圓以上ノ人ニ
アリマシテハ百分ノ二十五ヨリモ重イ稅率
ニナルノデアリマス、隨テ所得五万圓以
下ノ人デアリマスレバ、綜合課稅ヲ受ケタ
方ガ負擔ガ輕クテ濟ム、所ガ所得ガ五万圓
ヲ超エルヤウナ人ニアリマシテハ、其ノ上
ニ乘ツカリマスル公債、社債、預金ノ利子
デアリマスト、四割ヲ引イテ課稅致シマシ
テモ、其ノ稅率ハ百分ノ二十五ヲ超エマス
カラ、綜合課稅ヲ受ケルヨリモ源泉選擇ヲ
致シマシテ、百分ノ二十五デ課稅ヲ受ケル
方ガ稅引ノ手取ガ多イト云フコトニ相成ル
譯デアリマス、ソレヲ廢止シタト致シマシ
テ計算スルノデアリマスルガ、大體配當ト
同ジヤウナ分布狀況デ、公債、社債、預金
ノ利子ガ持タレテ居ル、斯ウ云フ風ニ假定
致シマシテ、平均稅率ヲ算出シテ增差額ヲ
見テミマスト、大體二千万圓位ノ增差額ガ
出ルベキデハナイカ、斯ウ云フ計算ニナル
ノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=3
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004・宇賀四郎
○宇賀委員 次ニ綜合課稅ノ現在ノ控除額
ハ現行法デハ五千圓トナツテ居リマスガ、
今度ノ改正ニ依リマスト三千圓ト云フコト
ニ切下ゲテアリマスガ、其ノ結果トシテド
ノ位ノ人員ト、ドノ位ノ金額ガ殖エルコト
ニナリマスカ、稅ヲ納メナケレバナラヌヤ
ウニナル人員ト金額ヲ御示シ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=4
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005・松隈秀雄
○松隈政府委員 綜合所得稅ニ於キマシテ
課稅最低限ヲ五千圓カラ三千圓ニ引下ゲタ
コトニ依リマス所得納稅者ノ增加人員ハ、
現在ハ家族ヲ合セテ四十一万三千人、其ノ
中家族ハ十三万五千人デアリマスガ、是ガ
改正後ニ於キマシテハ七十六万六千人、其
ノ中家族ガ二十一万六千人アリマス、隨テ
改正後ニ於ケル增加人員ハ、總數デハ三十
五万三千人、家族ノモノノ增加致シマス數
ハ、其ノ中八万一千人デアリマス、增加致シ
マス金額ハ初年度ニ於テ-初年度ト平年
度ト同額デアリマスガ、現在ノ納稅者ノ分
ヲ合セマシテ四千六百万圓程ニ相成ツテ居
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=5
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006・宇賀四郎
○宇賀委員 今日ハ主稅局長カラ數字シカ
聽カナイコトニナツテ居リマスカラ、綜合
所得稅ノ方ノコトハ是デ止メマスガ、アト
二、三新シイ稅ノコトニ付テ伺ヒマス、尙
ホ其ノ前ニ今度ノ相續稅法中改正法律案ニ
ハ「本法施行前開始シタル相續ニ關シテハ仍
從前ノ例ニ依ル」トアリマス、サウシテ「家督
相續ニ在リテハ昭和十七年一月一日以後ニ
開始シタルモノ」トアリマスガ、延長デハナ
クシテ只今死ンダ人間ガアルトシマスト、
今度ハ二十八條ノ中ノ「五年又ハ七年以內」
ト云フノヲ「七年又ハ十年以內」ニ改メテ居リ
マスガ、其ノ條文ハ適用ニナルノデアリマス
カ、是ハ適用ニナラナイノデアリマスカ、
從前ノ例ニ依ルトアリマスカラ、五年又ハ
七年デ律セラレルノデアリマスカ、其ノ點
ヲ一ツ御伺シテ置キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=6
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007・松隈秀雄
○松隈政府委員 第二十八條ノ改正規定ハ
外地デ開始シマシタ相次相續ノ免除ノ年限
ノ關係デアリマスノデ、內地ノ相續ニハ直
接關係ハナイ譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=7
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008・宇賀四郎
○宇賀委員 私少シ考へ違ヒヲシテ居リマ
シタ、此ノ前ノ相續稅ノ改正ノ時ニ三年ガ
五年ニナリ、五年ガ七年ニナリマシタ、其
ノ時ニ「本法ハ昭和十五年四月一日ヨリ之
ヲ施行ス、本法施行前開始シタル相續ニ關シ
テハ仍從前ノ例ニ依ル」ト云フ、ヤハリ、
是ト同ジヤウナ條文ガゴザイマシタガ、其
ノ時ニ十五年一月中ニ、マダ此ノ法律ガ改
正ニナラナイ前ニ開始シタ相續ニ付テハ三
年ガ五年ニナリ、五年ガ七年ニナルト云フ
ノハ、一體適用ガアルノカナイノカ其ノ點
ヲ一ツ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=8
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009・松隈秀雄
○松隈政府委員 相次相續ノ年數ヲ變ヘマ
シタノハ、法律施行ノ日以後適用ガアルノ
デアリマスカラ、法律施行直前ニ於テ開始
シマシタ分ニハ遡ツテ適用ガナイ譯デアリ
マス、今囘第二十八條ヲ改正致シマシタノ
ハ、十五年ニ內地ノ相次相續ノ年數ヲ變ヘ
マシタ時ニ、外地ノ分モ權衝ヲ取ツテ變ヘ
ルベキデアツタノデアリマスガ、其ノ點ガ
變ヘデゴザイマセスデシタカラ、今囘步
調ヲ取ルコトニ改正シタ譯デアリマス、而
モ其ノ改正ノ施行ハ、ヤハリ從來ト同ジヤウ
ナ解釋ニ依リマシテ、此ノ規定ハ本法施行
後ノ分カラ適用ガアル、隨テ施行直前ニ開
始シタモノハ尙ホ從前ノ例ニ依ツテ此ノ改
正ノ延バシタ年數ニハ依ラヌ、斯ウ云フ積
リデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=9
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010・宇賀四郎
○宇賀委員 相續稅ニ付テハソレデ止メテ
置キマス、其ノ次ニ電氣瓦斯稅ト云フ新シ
イ稅ガ出來ルコトニナリマシタガ、私ハ此
ノ稅法ヲ以テ今日ノ狀態ニ於テ是位ノ課稅
ヲスルノハ當然ダラウト思ヒマスシ、業者
ニ於テモ-業者ト云フカ寧ロ消費者ニ於
テモ、此ノ際ハ是モ甘ンジテ御受ケナケレ
バナラヌカト思ヒマスガ、唯此處ニ出マシ
夕課稅ノ標準ノコトニ付テ、第六條ニ依リ
マスト、電氣瓦斯總テ料金ノ百分ノ十ト云
フヤウナ標準ニナツテ居リマスガ、一體電
氣ニ致シマシテモ電氣廳ガ出來マシテ以來、
日本ノ發電ヲ統一シテ、追々日本全國ノ消
費者ノ料金ヲ均一ナラシムルコトニ今日マ
デ努力シタ形跡ハアリマスガ、今日マダ均
ニナツテ居ナイ所ガ非常ニ多ウゴザイマ
ス、殊ニ瓦斯ノ如キモノニアリマシテハ
サウ云フ電氣廳ミタイナ瓦斯廳ト云フモノ
ガナイ爲ニ、且又是ハ出來ナイ爲メデモア
リマセウガ、現ニ東京ダケヲ取ツテ見マシ
テモ、舊市內ト新市內トハ料金ガ違ツテ居
リマス、又瓦斯ノ主ナル生產費ト云フモノ
ハ石炭デアリマスカラ、石炭ノ手ニ入リ易
イ所トカ、運賃ノ安イ所ハ比較的安ク出來
マスシ、或ハ又石炭ノ手ニ入リニクイ沖繩
ト云フヤウナ所ハ非常ニ瓦斯電氣ノ如キ料
金デモ高クナツテ居リマシテ、全國的ニ見
マシテ料金ト云フモノハ餘程凸凹ニナツテ
居ルコトヲ考ヘテ見マスルト、先ヅ一番ニ
文化ニ浴シ得ラレル所ガ一番料金ガ安クナ
ツテ居ルノガ多イヤウデアリマス、ソレハ
瓦斯ト電氣ト同一ニ議論ハ出來ナイカモ知
レナイ、ソレデアルカラ私ノ希望ヲ申上ゲ
ルナラバ、ナゼ料金ヲ決メル時ニ使用量ヲ
標準ニシテ料金ヲ決メテ、瓦斯ニ付テハ何
立方、電氣ニ付テハ何「キロ·ワット」以上
ハ使ハセナイト云フヤウナコトニシテ、ソ
レ以上使ツタ者ニ付テハ單價幾ラニ付テ其
ノ料金幾ラト云フ-要スルニ「メーター」
デ出ス、電氣事業者ナリ或ハ瓦斯事業者ナ
リカラ來マシテ、私共ニ紙ヲ配ツテ行ク時
ニ、檢針ヲシタ數量ヲ書イテ行クノデアリ
マスカラ、其ノ數量ヲ見レバ料金ガ分ルノ
デアリマス、所ガ其ノ料金タルヤ今言フ通
リニ色々違ツテ居リマス、ノミナラズ玆ニ
モ其ノ七條ニ於テ「本法ニ於テ料金トハ電氣
料、瓦斯料、基本料其ノ他名義ノ何タルヲ
問ハズ電氣又ハ瓦斯ノ使用ニ付電氣事業者
又ハ瓦斯事業者ニ支拂フベキ金額ヲ謂フ」ト
云フコトニナツテ居リマスルト、同ジ三圓
ヲ支拂フ時ニ於キマシテモ、本當ハ瓦斯ヲ
倍モ使ツテモ三圓ニナラナイモノモアリ、
半分シカ使ハナクテモ三圓ニナルヤウナ不
都合ナ所モ出來テ來ルノデアリマスカラ、
サウ云フ所ハ大藏省ノ御方ハ十分御調査ナ
スツタコトトハ思ヒマスルガ、電氣ニ付テ
一體ドウナツテ居ルカ、又瓦斯ニ付テドウ
ナツテ居ルカ、六大都市ト日本デ一番瓦斯
ガ高イト認メラレル沖繩デアルトカ、北海
道デアルトカ、大キナ所一、三デ宜シウゴ
ザイマスカラ、電氣料、瓦斯料ト云フモノ
ガドンナ風ニナツテ居ルカ、此處デ別ニ差
支ヘナイ限リ一ツ御示シヲ願ヒタイト思ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=10
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011・松隈秀雄
○松隈政府委員 電氣瓦斯稅ヲ創設スルニ
當リマシテ、其ノ課稅標準ヲ從量稅、卽チ
使用致シマシタ電氣ノ量デアルトカ、或
使用致シマシタ瓦斯ノ量ニ依ルカ、或ハ從
價稅、卽チ使用ノ代價トシテ支拂フ所ノ料
金ニ依ルカト云フコトニ付テ檢討ヲ致シタ
ノデアリマスルガ、從量稅ヲ取ルニ當ツテ
一ツノ大キナ障碍ハ、電氣ノ方面ニ於キマ
シテハ相當程度定額制ノ電燈料金ヲ取ツテ
居ル所ガアルノデアリマス、是ハ定額制デ
アリマス爲ニ、何程ノ電力量ヲ消費シタカ
ト云フコトノ調査ガ困難ナノデアリマス、
又一方稅ノ建前カラ狙ヒマス所ハ結局消費
能力ト言ヒマスカ、電氣瓦斯ノ使用ニ對シ
テ支拂フ所ノ金額ニ擔稅力ヲ認メテ居リマス
ル關係上、旁〓併セマシテ從價稅、卽チ支
出金額ニ應ズル課稅ト致シタヤウナ次第デ
アリマス、此ノ場合ニ於キマシテ、只今御
話ノアリマシタヤウニ、地域ニ依リマシテ、
料金ニ或ル程度ノ差等ガアルコトハ承知致
シテ居リマスノデ、其ノ不公平ヲ出來ルダ
ケナクスコトニ付テ苦心ヲ致シタノデアリ
マス、關係廳ニ於キマシテモ出來ルダケ早
イ機會ニ料金ノ調整ヲ致シタイ、斯ウ云フ
心組デ居リマス、殊ニ電氣ノ如キモノハ配
電統合ノ進行トモ相俟ツテ、本年ノ六月頃
マデニハ料金ノ調整ハ大體出來ルヤウニ伺
ツテ居リマス、サウシマスレバ同ジヤウナ
電力料金ヲ拂ツテ使用量ニ差ノアルト云フ
期間モ比較的短イ間デハナイカト思ヒマス、
併シ其ノ間ニ於キマシテモ尙且出來ルダケ
不公平ヲ是正シヨウト思ヒマス、少クトモ
課稅最低限ニ付キマシテハ電力料金ガ高イ
爲ニ直キニ三圓ニナツテ課稅サレルト云フ
ヤウナコトヲ防グヤウニ工夫シタ譯デアリ
マス、例ヘバ電氣ニ例ヲ取ツテ見マスト、
定額制ノ所デ最モ高イヤウナ場所、北海道
東北ノ一部、或ハ沖繩等ニ於キマシテハ十
六燭光デ一圓二十五錢モ致シマス、東京デ
アルト大體五十五錢位カト思フノデアリマ
ス、サウシマスト、東京デハ五燈位點ケテ
モ課稅ニナラナイノニ、北海道、沖繩等ノ
電燈料ノ高イ所デアルト三燈位點ケテモモ
ウ課稅ニナルト、斯ウ云フコトニナリマス
ノデ、特ニ課稅最低限三圓ノ外ニ-十六
燭光デ四燈程度マデハ課稅外ニ置ク、斯ウ
云フコトニ致シマス、サウ云フ料金ノ高イ
地方ヲ見テミマスト、大體四燈以上點ケテ
居ルモノハ極メテ稀デアリマスルカラ、此
ノ免稅點ニ依ツテ極端ナ場合ハ救濟サレル、
而モ比較的近イ機會ニ關係廳間ニ於テ出來
ルダケ料金ノ公正ヲ圖ル、其ノ間、僅カノ
間完全ニ統一サレナイト致シマシテモ、例
ヘバ同ジ程度ノ量ヲ使用シタイト致シマシ
テ、三十錢、五十錢位ノ差ガアルト假定致
シマシテモ、其ノ程度ノ差デアリマスレバ、
稅額ニ直シテ見マスト、一割ノ差デスカラ、
稅ノ上デハ三錢カ五錢ノ差シカ出ナイ、斯
ウ云フヤウナコトデアレバ從量稅ヲ採用シ
ナカツタトシマシテモ、標準ガ取リ難イト
スレバ、先ヅ已ムヲ得ナイコトデハナカラ
ウカト、斯樣ニ思ツテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=11
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012・宇賀四郎
○宇賀委員 只今御示シヲ受ケマシタケレ
ドモ、私ニハ少シ首肯ノ出來ナイ點モ尙ア
ルノデスガ、何カ定額燈ハ幾ラ電氣ヲ使フ
カ分ラヌト云フヤウナコトハ、要スルニ定
額燈デアリマスルカラ節約シテモ電燈會社
ガ値ヲ引イテ吳レナイノデ、夜目ヲツブツ
テ居ナガラ電燈ヲ點ケツ放シニシテ置イテ
使フ、泥棒デモ御招キスルヤウナ狀態ニ置
イテアルヤウナモノダカラ電氣ヲ幾ラ使フ
カ分ラヌ、併シナガラ是デモヤハリアナタ
ノ方デ御出シニナツタ勅令案ノ何カノ要綱
ノ十ヲ見ルト、大體何燭光ガドノ位ノ「ワッ
ト·アワー」ノ電氣料金ト云フコトニナツ
テ居ルヤウデアリマス、併シ是ハヤハリ電
力節約ト云フ一面カラ見テモ、私ハ「メー
トル」制ニ決メタ方ガ都合ガ好イノヂヤナ
イカ、今北海道ヤ沖繩ノ方ハ四燈以上點ケ
テ居ル人ハ澤山ナイヤウニ言ハレルガ、其
ノ通リデス、農村デハ恐ロシク取ラレルカ
ラ、モツト澤山點ケタイケレドモ、餘計取
ラレテハタマラナイカラ我慢シテ居ルノデ
アツテ、其ノ我慢ヲシテ居ルノヲ見テ四燈
以上點ケテ居ル人間ハ、ソレハ非常ナ負擔
力ノアル者ダカラト云フ御批判ハ、是ハド
ウモ當ラナイノデハナイカト思ヒマス、併
シソコマデ行クト議論スルコトニナルガ、
私ノ申スノハ七條ニハ「電氣料、瓦斯料、
基本料其ノ他名義ノ何タルヲ問ハズ」云
云、斯ウ云フコトニナツテ居リマシテ、是
ハ私モ電力會社ニ居ツタコトガアリマスカ
ラ知ツテ居リマスガ、不便ノ所程電燈料金
ト云フモノハ高クナリマス、途中ニ電信柱
ヲ立テルトカ、ソレニ具ヘル所ノ器具ハ半
分ソツチデ持テト云フノデ高クナル、足人
無理ダカラ、出來レバ從量稅ニシタ方ガ宜
イノデハナイカト思ヒマス、アナタノ方モ
無論業者其ノ他ト十分打合セヲシテ之ヲ御
作リニナツタモノデアラウト思フカラ、是
以上質問ハ止メテ置キマスガ、基本料ナド
ト云フモノニナリマスト貸付器具ノ損料ト
云フヤウナモノ、瓦斯ノ方モ釜ヲ置クアレ
ヲ借リテ置ク人ト、買取ツテ自分ノモノニ
シテ使フモノト、ヤハリソコラハ餘程違フ
ノデアリマス、サウ云フコトニナルト貧乏
人程-貧乏人ト云ツテハ貧乏人ガ三圓ノ
瓦斯ヲ使フノハ贅澤ヂヤナイカト言ハレル
カ知レマセヌガ、少シ金ノアル人ノ料金ノ
方ガ少クテ濟ムヤウナ方法ガ出來テ居ルト
思フ、サウ云フ所カラ見ルト私ハドウモ感
心シナイヤウニ思ヒマスガ、近イ內ニ全國
平均サレルヤウニナルカモ知レナイト仰シ
ヤル、私ハ是ハ空賴ミダト思ツテ餘リ當ニシテ
ハ居リマセヌケレドモ、折角ココデ御作リ
ニナツタ法律デスカラ之ヲ御施行ナサルノ
モ宜シイデセウ、更ニモウ一ツ御聽キシタ
イノハ、勅令案ノ內容トシマシテ九ト云フ
所ニ法第六條第二項關係事項ト云ツタヤウ
ナモノガゴザイマスガ、是ハ「前項ノ料金
又ハ出力ノ算定ニ關シテハ命令ヲ以テ之ヲ
定ム」トアル、是デスカ、私ハ法案第六條
第二項關係事項、瓦斯ノ料金ヲ拂フベキモ
ノ課セザルモノ、課スルモノト二ツアル
ヤウナ場合ニ、之ヲ區分スルト云フヤウナ
コトハ、是ハ中々大切ナ條文ダト思ヒマス
ガ、之ヲ區分スルコトニ付テ、ドウ云フ風
ニ適當ニ區分スルカト云フコトニ付テ、業
者ト御打合セデモシテ、適當ナル方法ヲ御
講ジニナルノデセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=12
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013・松隈秀雄
○松隈政府委員 先ヅ第七條ノ關係ノ方カ
ラ御答へ申シマスガ、料金中ニハ計器ノ貸
付料、又ハ其ノ他ノ器具貸付料、是ハ瓦斯
焜爐ト云フヤウナ、假ニ會社デ貸シテ居ル
ト云フヤウナ物ガアリマスレバ、其ノ器具
장
貸付料ハ包含セシメナイ扱ヒノ積リデゴザ
イマス、ソレカラ次ニ御尋ネノアリマシタ
勅令案要綱ノ九ト致シマシテ示シテ居リマ
スル法案第六條第二項關係ト申シマスノハ、
御話ノアリマシタヤウニ「前項ノ料金又ハ
出力ノ算定ニ關シテハ命令ヲ以テ定ム」ト、
斯ウシテゴザイマスルノデ、其ノ命令案ノ
〓要ヲ御示シシタ譯デアリマス、何レ詳シ
ク命令ニハ書ク積リデアリマスルガ、電氣
瓦斯稅ハ料金ノ百分ノ十、若クハ出力數一
「キロワット」又ハ其ノ端數ニ付テ每年十
二圓ノ割合デ徵收スルノデアリマスルガ、
電氣瓦斯稅ハ課稅ヲ致シマスモノト、課稅
外ノモノトゴザイマス、是ガ同一ノ「メー
ター」デ計ラレルト云フ、斯ウ云フ場合ガ
アリマス、其ノ時ニハ課稅外ニ相當スル分
ヲ除カナケレバナラナイノデ、其ノ除キマ
スル規定ヲ勅令ヲ以テ定メルト云フ趣旨ダ
ケ勅令案要綱トシテ揭ゲテアルノデアリマ
ス、大體ノ考ヘ方ヲ申シマスルト、同一ノ
需要場所ニ於テ使用スル電氣又ハ瓦斯ニ對
シマシテ支拂フベキ料金ガ、電氣瓦斯稅ヲ
課シマスルモノト、電氣瓦斯稅ヲ課サナイ
モノトアリマスル場合ニ於キマシテハ、電
氣瓦斯稅ヲ課スル標準ニナル所ノ其ノ料金
ト云フモノハ、納稅義務者ノ申請ニ依ツテ
電氣瓦斯稅ヲ課スルモノト課セナイモノト
ニ分ケテ、其ノ課セナイ部分ヲ料金カラ差
引クト云フコトニ致シタイノデアリマス、
ソコデドウ云フモノニハ課セル、ドウ云フ
モノニハ課カラナイト云フコトハ、法律及
ビ命令デ示サレテ居ルノデアリマス、隨ヒ
マシテ課カラナイモノヲ持ツテ居リマスル
モノハ自分ノ使用スル器具機械ノ中、此ノ
器具機械ニ依ツテ使用スルモノハ、電氣瓦
斯稅ヲ課セラレナイモノデアルト云フ屆ヲ
スル譯デアリマス、唯其ノ場合ニ於キマシ
テ、其ノ器具機械ニ依ツテ使用致シマスル
實際料金ト云フモノヲ生ミ出スコトハ非常
ニ困難デアリマスルノデ、豫メ業者トモ相
談ヲシマシテ、一定ノ標準率ヲ設ケタイト
思ツテ居リマス、其ノ標準率ニ依ツテ、此
ノ器具デアレバドノ位ノ瓦斯ノ使用量ニ當
ルト云フコトニ依ツテ控除率ヲ定メタイ、
丁度利益ノ計算ヲ致シマスル場合ニ、收支計
算ノ明カデアルモノハ、收支計算ヲシマシテ其
ノ實額ヲ捉ヘマスケレドモ、明カデナイ場
合ニ、所得標準率ト言ツテ、一定事業カラ出
テ來マス利益ヲ算定スル步合ノヤウナモノ
ヲ作リマスガ、ソレニ似タヤウナモノヲ業者
ト〓究シテ作リ、ソレニ依ツテ査定ヲシタ
イト思フノデアリマス、例ヘバ西洋洗濯屋
サンガ電氣「アイロン」ヲ使ツテ居ルトスレ
バ、其ノ電氣「アイロン」ヲ使フ電氣料ハ課
稅外ニナル譯デスガ、一ツノ電氣「アイロンㄴ
ガドレ位ノ電氣ヲ食フモノデアルカト云フ
コトハ、大體標準ニ依ツテ決メナイ、ソレ
ハ使ヒ方ニ依ツテ標準ヨリ餘計ニ出ルコト
モアリ、或ハ少ナクナルコトモアルト思ヒ
マスガ、ソレヲ每月調ベルト云フコトハ非
常ニ困難デアル、ソレカラ理髪店デ「タオ
ル」蒸器デ瓦斯ヲ使ウテオ湯ヲ沸カシ、「タ
オル」ヲ蒸シテ居ル、是ハ業務用デスカラ
課稅外デスガ、「タオル」蒸器ノ爲ニ瓦斯ヲ
幾ラ使ウタカト云フコトハ「タオル」蒸器
ヲ使ウテ居ルト云フコトヲ申告セシメマシ
テ、大體其ノ「タオル」蒸器ニ使フベキ瓦斯
使用量ト云フモノヲ豫メ一定割合ヲ決メテ
置イテ、其ノ割合デ行カウ、斯ウ云フヤウ
ナ細カイ手續ヲ規定致シタイト云フ積リデ
ゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=13
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014・宇賀四郎
○宇賀委員 ドウモ私ニハ呑込ミニクイノ
デアリマス、大藏當局ト瓦斯會社ト御話ヲ
シテ決メマシテモ、個人々々ノ中ニハ課稅
ガ餘計ダトカ少ナイトカ言ツテ來ラレルカ
モ知レナイ、其ノ時瓦斯業者ト云フモノハ
結局稅ヲ取立テル代理人見タヤウナモノデ
アリ、支拂フモノハ使用者デアリマスカラ、
使用者ハ中々サウ云フ場合ニ納得シナイダ
ラウト思フシ、且又瓦斯業者ハサウ亂暴ナ
コトモヤリニクイト云フヤウナ點モアツテ、
愈、、實際ノ業務ニ當ル時ニハ無理ノイカンヤ
ウニシナイト、吾々ノ所ヘ瓦斯何トカ協會ト
云フ所カラ言ッテ來テ居ルノヲ見テモ、自分ノ
所デハ厄介デ困ルカラ成ベクヤリタクナイ、
需要者カラ控除申請ヲシテ決メテ貰ヒタイ
ト云フヤウナコトヲ言ッテ居リマスルガ、
現在ノ需要者カラ言ハセルト云フコトニナ
ルト、恐ラク豫メソレヲ書類デモ出サセテ、
サウシテ前以テ稅務署デ控除申請ノ額ヲド
ノ程度ニ認メルカ認メナイカト云フコトヲ
御決メニナルヤウニナルノデハアリマセヌ
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=14
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015・松隈秀雄
○松隈政府委員 御話ノヤウニ需要者カラ
控除申請ヲ出サセルノデアリマス、其ノ場
合ニ於テ「タオル」蒸器ヲ使ウテ居リマスト
カ、或ハ電氣鏝ヲ使ウテ居ルト云フ申請ガ
出ルノデアリマス、其ノ場合ニ於テ其ノ「タ
オル」蒸器ノ爲ニ幾ラ位ノ瓦斯ヲ使フデア
·
ラウ、電氣鏝ノ爲ニドノ程度ノ電氣量ヲ使
用スルデアラウト云フコトハ「タオル」蒸器
ノ大キサ、電氣鏝ノ能率等カラ見マシテ、
出來ルダケ餘裕ヲ以テ認メタイト思ヒマス、
ソレカラ後ハ使用時間ノ問題ナンデアリマ、
スルガ、是ハ營業時間內ハ使用スルト云フ
風ニ致シマシテ、此ノ點想定デアリマスル
ノデ、出來ルダケ餘裕ヲ以テ無理ノ行カナ
イヤウニ致シタイト思ヒマス、サウ云フ面
倒ナコトヲシナイデ一齊ニ課稅シテシマツ
タラ、「メーター」ヲ見ルダケデ課稅手續ハ
簡單デアリマスケレドモ、又サウ云フ案ニ
致シマスト、ソレハ亂暴デハナイカト云フ
コトニナリマスノデ、ココハ或ル程度手數
モ掛ケテ課稅ノ公平モ期シ、而モ實行ニ當
ツテ一々詮索シナケレバ料金ガ決マラヌト
云フコトデモ、官民共非常ニ煩雜デアリマ
スカラ、其ノ中間ヲ選ンデ居ルヤウナ次第
デアリマシテ、實行ニ當リマシテハ御注意
ニ依リマシテ尙ホ愼重ニ且ツ無理ノナイヤ
ウニ致シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=15
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016・宇賀四郎
○宇賀委員 モウ一點伺ヒマスガ、各需要
者ガ幾ラ使ツタカ「メーター」ヲ檢針スル人
達ガ十二箇月ノ中必ズ一日ナラ一日ニ檢針
日ヲ決メテ、其ノ日ニ雨ガ降ツテモ雪ガ降
ツテモ、ドンナ故障ガアツテモ檢針スル
又何處ハ二日、何處ハ三日ト決メテ其ノ日
ニ必ズ檢針スルト云フコトハ中々困難デア
ルト思ヒマス、隨テ一箇月ノ料金幾ラト云
フコトハ大體ノコトハ出ルニシテモキツ
チリシタ料金ハ出ニクイト思ヒマスガ、ソ
レニ付テハ如何デスカ、ドウセ金ヲ取ル人
ハ電氣業者ナリ、亙斯業者デアリマセウカ
ラ、ソレ等ノ點ニ付テハ業者ト需要者トノ間
ニ色々問題ガ起リハシナイカト思ヒマスガ、
サウ云フ點ニ付テハドンナ御考ヘヲ持ツテ
居ラレマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=16
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017・松隈秀雄
○松隈政府委員 料金ガ檢針日ノ關係デ一
箇月ニ滿タナイ場合ガアツタリ、或ハ一箇
月ヲ超ユルト云フヤウナ場合ノアリマスコ
トハ御示シノ通リデアリマス、此ノ場合ニ
於テ免稅點ヨリ以上デアルコトノハツキリ
シテ居ル場合ニハ、檢針日ニ調ベタ所ニ依
リマシテ納稅サセテ置イテ大體間違ヒハナ
イ、少シノ早ク取リ過ギ或ハ遲ク取ル、斯
ウ云フコトニナルダケダト思フノデアリマ
ス、所ガ免稅點ニ掛カツタカ掛カラナイカ
ト云フコトダケハ相當嚴密ニ調ベマセヌト
云フト國民ノ權利義務ノ關係ニハツキリ影
響シテ來ル譯デアリマス、例ヘバ三十三日
目ニ行ツタラ三圓五錢ト云フ料金ガ出タト
云フ時ニ、三圓五錢ノ料金ダカラ電氣瓦斯
稅ヲ一割御拂ヒナサイト言ツタ所デ、是ハ
三十三日目ダカラ三圓五錢ニナツタノデ、
ソレガ一箇月以內デアツタラ三圓使ツテ居
ナイト云フ場合ニ於テハ、サウ云フ抗辯ガ
成立ツ譯デアリマス、反對ニ二十九日目ニ
行ツテ二圓九十八錢ト云フ料金ガ出タトシ
テモ、或ハソレガ三十日ニナレバ三圓ヲ超
エタノデハナイカト云フコトニナレバ、徵
收不足デアツタト云フヤウナ檢定ヲ受ケル
場合ガアルノデアリマス、ソコデ免稅點ノ
所ダケハ比較的嚴重ニヤリタイト思ヒマス、
併シ實際問題トシテハ檢針日ト云フモノハ
サウ澤山ハ動カナイ、大體ハ三十日ヲ中心
トシテ前後三日ナリ五日ナリノ範圍內デア
ラウト思ヒマス、ソレデアリマスカラ其ノ
前後三日ナリ五日ノ違ヒノ所ダケ換算表ヲ
持ツテ居リマシテ、之ヲ檢針ニ參リマス者
ニ渡シテ置ケバ宜イ、恐ラクサウ云フ連中
ハソンナ換算表ハ暗記シテシマウヤウナ簡
單ナモノデアラウト思ヒマス、ソレニ依ツ
テ三十三日目ニ行ツテ三圓五錢ノ場合ニハ、
ソレハ計算上三圓以下ニナリ、又二十九日
目ニ行ツテ二圓九十八錢ノ場合ニハ計算上
三圓ヲ超ユルモノデアル、サウ云フ換算表
ヲ作リタイト思ツテ居リマス、尙ホ其ノ點
ハ命令案ニ於テ其ノ旨ヲ明カニ根據ヅケテ
居ルノデアリマス、御配リシマシタ命令案
ノ十二條ニ「料金一月ニ滿タザル期間又ハ一
月ヲ超ユル期間ニ依リ支拂ハルル場合ニ於
テハ其ノ料金ヲ當該料金計算期間ノ日數ヲ
以テ除シテ得タル金額ノ三十倍」、斯ウ云フ
コトニ致シテ計算スルコトニナツテ居リマ
ス、之ヲ常ニヤルノデハナクシテ免稅點ノ
前後ダケ之ヲヤル、アトハ便宜免稅點以上
デアルナラバ、少シノ差ハ檢針シテ徵收ス
ル、其ノ料金ニ依ツテ稅ヲ徵收シテ戴ク、
是デ大體大シテ煩瑣ナ手續ナシニ實行サレ
テ行クカト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=17
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018・宇賀四郎
○宇賀委員 大體檢針スル人ノ人格其ノ他
ヲ見マシテモ、先ヅ從業員中ノ多少技術デ
モヤツテ居ツタヤウナ人ガ代ツテ之ヲヤル
ヤウニナリマシテ、今マデハ家庭ノ主婦ナ
ンカハ何ボ料金ヲ使ツタカ、ソンナニタン
ト「メーター」ガ廻ツタカト云フコトデ、後
デ聞イテ驚クヤウナコトガアツテ、私共ノ
知ツテ居ル人デモ罰金ヲ取ラレテ初メテ自
分ノ臺所ニ瓦斯ガソンナニ〓ツタカト云フノ
デ、ビツクリシテ居ルヤウナコトガアルノ
デスケレドモ、今度是デ稅金ヲ取ラレルカ
取ラレナイカト云フコトニナリマスト、相
當家庭デモ注意スルヤウニナルカラ、「メー
ター」ヲ注意スル方ハ宜イノデスガ、アナ
タノ方デ「メーター」檢針員ヲ御監督ナサル
コトニ付テモ、何カノ標準ヲ持タセルト云
フダケデナシニ、是ハヤハリアナタノ方ノ徵
稅補助者トシテ相當之ヲ注目シナケレバ、
爭ヒガ起リマス、私共瓦斯電氣ノ人ヲ使ツ
タコトガアルガ、エライ喧嘩シマシテ、ソ
ンナ奴ニハ金ハ一文モ拂ハヌ、ソンナ奴ニ
ハ俺ノ家ヲ見セナイト言ツテ、エライ騒ギ
ニナリマスカラ、ドウゾ之ヲ施行スル場合
ニハ巧ク行クヤウニヤツテ戴キタイ、唯其
ノ希望ダケ申上ゲテ置キマス
モウ一ツ、先程貸付料金ノ方ハ關係ナイ
ノダ、其ノ他何等ノ名義ヲ以テスルヲ問ハ
ナイトアリマスカラ、是ハヤハリ貸付料金
デアツテモ、電氣料金ノ一部ヂヤナイカト
思ヒマシタケレドモ、)アナタノ方デハサ
ウ云フ風ニ御取リニナラヌト云フコトデア
リマスカラ、ソレハモウ結構デアリマス、
ソレナラバ瓦斯電氣ガ制限サレタラ罰金ノ
ヤウナモノハ稅金ノ對象ニナリマスカ、ナ
ラヌノデスカ、之ヲ一ツ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=18
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019・松隈秀雄
○松隈政府委員 一定ノ消費規正ヲ致シマ
スル場合ニ於テ、消費規正ノ標準ヲ超エマ
シタ料金ニ對シテハ、割增料金トモ云フベ
キモノヲ拂フコトニナツテ居ルノデアリマ
スガ、此ノ割增料金ハヤハリ料金ト認メマ
シテ、課稅ノ對象ニ致シタイト思ツテ居リ
マス、又ソコニ一方課稅ノ方面カラ來ル消
費規正ト云ツタヤウナコトノ效果モアルカ
ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=19
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020・宇賀四郎
○宇賀委員 モウ二ツバカリ質問サセテ戴
キマス、廣告稅ニ付テ伺ヒマスガ、廣告ハ
市內其ノ他ヲ見マスト、隨分醜惡ニシテ都
市ノ美觀ヲ損スルシ、或ハ汽車旅行ヲスル
場合ニ、何ダツテコンナニ汚イモノヲソコ
ラニ立テサセテ置クノダラウカ、私有地ニ
私有財產デヤルノハマア是ハ宜イトシテ、
一昨日岡本委員カラ其ノ點ニ觸レテ質問サ
レテ了解致シタノデアリマスガ、唯自分ノ
家ノ廣〓ダト云ツテドウモ餘所カラ見テ餘
リ異樣ニ感ズルヤウナ變ナ廣〓ハ、都市ノ
美觀ノ上カラ、別ニ都市計畫法トカ何カ他
ノ方カラモ禁止出來ルカト思ヒマスケレド
モ、稅ノ方デモ、サウ云フモノハ何カ特別
ノ稅金ヲ課シテ、都市ノ美觀ヲ損スルヤウ
ナ看板ハナクナルヤウナコトニ付テ何カ御
考ヘガ出來マセヌデセウカ、之ヲ一ツ御伺
ヒシテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=20
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021・松隈秀雄
○松隈政府委員 只今御述ベニナリマシタ
廣〓ハ、主トシテ廣〓稅法ノ第一條ノ第二
種四號ノ建植看板、野立看板ニ類スルモノ
デアルト思フノデアリマスガ、是等ハ一坪
當リ年額二圓ト云フヤウナ相當ノ稅金デア
リマス、年稅デアリマスカ』ラ每年徴收サR
レルト云フコトニ依ツテ、從來ニ比シマス
レバ、相當負擔ガ課カツテ參リマスルカラ、
餘リ大キナモノヲ出スモノハ勢ヒ減ルト思
フノデアリマスルガ、唯自分ノ事務所營業所
ニ附屬致シマスルモノヲ課稅ノ對象ト致ス
ト云フコトハ、如何ニモ苛酷ノヤウニ思ハ
レマスルノデ、其ノ點課稅外ニ置イタノデ
アリマス、其ノ場合ニ於テモ面積ノ大キイ
モノハ課稅スルト致シマシテモ、出來ナイコ
トモナカツタノデアリマスルガ、ドノ程度
カラ切ルカト云フヤウナコトニ多少問題モ
アリマシタノデ、自分ノ事務所營業所ニ附
屬シテ、其ノ事務所ナリ營業所ナリデアル
コトヲ表示スルト云フコトガ主タル目的デ
アルモノニ付テハ、此ノ際强ヒテ課稅シナ
カツタ、斯ウ云フ程度デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=21
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022・宇賀四郎
○宇賀委員 最後ニモウ一ツ、新シイ法案
デスカラ競馬稅ノコトニ付テ御伺ヒシタ
イ、第二條ノ後ノ方ニ「購買者ニ拂戾スベ
キ金額ヨリ命令ヲ以テ定ムル金額ヲ」トア
リマスガ、「命令ヲ以テ定ムル金額」ト云フノ
ハ此ノ法案ハ稅ノ負擔者ト云フモノハ、
馬劵ノ購買者ニアラズシテ、日本競馬協會
トカ或ハ鍛鍊馬ヲヤル所ノ公法人、ソレガ
負擔者ダラウト思ハレマスルガ、今ノ命令
令ヲ以テ定ムル金額ヲ控除シタル金額ニ付
之ヲ課ス」ト云フノデ、百分ノ二十トカ百
分ノ十トカ課シテ居リマス、全體ノ金額ガ
平年度四千九十六万圓バカリ課シテ居リマ
スルガ、私ハ此ノ四千万圓バカリノ中ノ何
ガ百分ノ二十、百分ノ十ヲ課シタ爲ニ平年
度四千万圓ニナル、其ノ基礎ハ御分リデシ
タラ其ノ數字ヲ一寸知ラシテ戴キタイ、百
分ノ七ヲ取ル其ノ金ガ幾ラニナルカ、百分
ノ四ヲ取ル金ガ幾ラニナルカ、百分ノ二十
ハ幾ラ、百分ノ十ハ幾ラニナルカト云フコ
トデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=22
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023・松隈秀雄
○松隈政府委員 馬券稅算出ノ根據及ビ其
ノ結果ノ歲入見積額デアリマスガ、勝馬投
票劵及ビ優等馬票ノ發賣金額ニ對シマスル
分ニ付キマシテハ、昭和十六年中ノ實績カ
ラ推定シマシタ昭和十七年度ノ發賣見込額
カラ、課稅ニ依リマシテ多少消費減ト申シ
マヌカ、發賣金額ニ影響ノアル點ヲ一割五
分程度見込ンデ、ソレヲ控除シタ金額ニ依
ツタノデアリマス、其ノ結果發賣金額ハ勝
馬投票劵ノ分、卽チ是ハ中央競馬ニ當ルノデ
アリマスガヽ二億九千二百万圓、優等馬票
ノ分、是ハ俗ニ鍛鍊馬競走ト云フ方デアリ
マスガ、千九百万圓、合セテ課稅標準額ニ
ナリマシタモノハ三億一千百餘万圓デアリ
マス、勝馬投票劵ニ對スル稅率ハ百分ノ七、
優等馬票ニ對スル稅率ハ百分ノ四デアリマ
スガ、各〓其ノ金額ヲ掛ケマシタモノノ合
計、詰リ發賣金額ニ對シマス稅額ハ二千百
餘万圓ト云フコトニ相成ツテ居リマス、又
拂戾金額ニ對スル分ニ付キマシテハ、只今
申上ゲマシタ發賣金額ヲ基礎ト致シマシテ、
之ニ對シテ課稅スルノデアリマスガ、其ノ
適中率ハ、大體前三年ノ平均ニ依ツテ算出
シマシタ適中率ヲ使ヒマシテ超過拂戾金額
ヲ算出シマス、サウシマスト勝馬投票劵ノ
分ハ九千五百万圓、優等馬票ハ六百万圓程
ニナリマヌ、合ハセテ拂戾金額トシテ課稅
標準ノ對象トナルモノガ一億百餘万圓デア
リマス、之ニ對シマシテ勝馬投票劵ノ分ハ
百分ノ二十ト云フ稅率デアリマスシ、優等
馬票ノ方ハ百分ノ十ト云フ稅率でアリマス
ノデ、此ノ方ノ稅額ハ千九百餘万圓、食、
セマシテ平年度ニ於ケル稅額ハ四千万圓、
斯ウ云フコトデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=23
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024・宇賀四郎
○宇賀委員 私ノ質問ハ是デ終リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=24
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025・勝正憲
○勝委員長 小野君ヨリ宇賀君ノ質問ニ關
聯シテ質問ガアルサウデアリマスカラ之ヲ
許シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=25
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026・小野謙一
○小野(謙)委員 電氣瓦斯稅ニ關聯シテ
寸簡單ニ御伺ヒシタイト思ヒマス、電氣業者、
瓦斯業者ガ各家庭ノ使用量ニ對スル制限ヲ
致シテ居ルガ、其ノ超過シタモノニ對シテ
ハ超過料金ヲ取ルト云フコトハ何カ法規ニ根
據ヲ持ツテ居ルノデアリマセウカ、或ハ會
社ガ勝手ニ決メ得ルノデアリマセウカ、ソ
レハ何故カト言フト、從來國策ニ協力ヲシ
マシテ瓦斯、電氣ヲ非常ニ極端ニ儉約シテ
是以上ニ儉約出來ナイト云フ所モ、又可ナ。
リ放膽ニ注意セズニ澤山使ツタ所モ、律
ニ頭カラ何割ニ減ラシタト云フコトデ、需
要者ニ大變不平ガアルヤウデアリマスガ、
是ハ絕對的ノモノデアツテ、是正ノ出來ナ
イモノデアルカ、狀況ニ依ツテハ其ノ家ノ
廣サ、燈數、或ハ人數、ソレ等ノモノヲ參酌
シテ若干ノ斟酌ガ出來ルモノデアルカ、サ
ウ云フ點デ相當各家庭ノ間ニ不平ガアルヤ
ウニ伺ツテ居リマスガ、其ノ第一ノ、法規
ニ根據ヲ持ツノカ、何等法規ニ根據ナシニ
會社ガ勝手ニ作リ得ルモノカ、サウシテ
一遍決メタモノハ實際ノ狀況ニ依ツテ增減
斟酌出來ナイモノカ、是正ノ出來ナイモノ
カ、之ヲ一ツ伺ツテ置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=26
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027・松隈秀雄
○松隈政府委員 電氣、瓦斯ノコトハ所管省
ガ別ニゴザイマスカラ、詳シクハソチラカ
ラ答辯ヲシタ方ガ適當デアルカト思ヒマス
ガ、一應私ノ考ヘヲ申上ゲテ置キマス、電
氣ノ使用規正ニ付キマシテハ、國家總動員
法ニ基ク電力調整令ニ依リ定メラレタ昭和
十六年十一月一日遞信省告示第二千二百九
號デ決メテアリマス、尙ホ消費規正ノ方法
デアリマスガ、定額制ニ依ツテ電力ノ供給
ヲ受ケマス場合ニハ、總容量ノ八割ト云ツ
タヤウナ規正ニナツテ居ルヤウデアリマス、
ソレカラ從量制ニ依ル電力ノ供給ヲ受ケマ
ス場合ニ於キマシテハ、御承知ノ通リ住宅
用ト、事務所用、又ハ營業用、商店用、其
ノ他ト云ツタヤウニ分ケテ居リマスガ、一 久
申上ゲルノモ細カ過ギマスカラ、住宅用
ニ付テ申上ゲマスレバ、取付燈數十燈以下
ノ場合ニハ二十五「キロワツト」時ト致シマ
シテ、十燈ヲ超エマス場合ニ於キマシテハ、
超過燈數一箇ニ付キマシテ一「キロワツトㄴ
時ヲ加ヘタモノ、斯ウ云フコトニナツテ居
リマスノデ、假ニ電燈ヲ十二燈付ケテ居ル
家デアリマスレバ、十燈マデハ二十五キ〓
ロワツト」時、アトノ超過致シマス二燈ニ
付テ一「キロワツト」時ヅツ二ツ加ハリマス
ノデ、一月二十七「キロワツト」時マデハ超
過料金ガナクテ宜イ、若シ二十七「キロワ
ツト」時ヲ超エテ使フト云フコトニナルト、
其ノ超エマシタ「キロワツト」時ニ付キマシテ
ハ、慥カ東京電燈ナラバ一「キロワツト」時
十六錢ノモノガ五十錢ニナルト云フヤウナ
計算ニナルト思ヒマス、其ノ場合ニ於キマ
シテ、住宅ノ場合ニ於キマシテ出來レバ住
ンデ居ル人數其ノ他ヲ考慮ニ入レテ制限ヲ
致スコトガヨリ完全ナモノダト思フノデア
リマスガ、大體ハ取付箇數デ行ツテ居ルヤ
ウデアリマス、取付箇數ガ多イヤウナ家ハ
大邸宅デアリ、隨テ相當ノ能力ガアル、斯
ウ云フ風ニ見テ居ルノダト思ヒマス、邸宅
ノ廣サノ外ニ、大キイ邸宅必ズシモ大勢住
ンデ居ル譯デナイカラ、住ンデ居ル人數モ
或ル程度考慮ニ入レルト云フコトハ理論
トシテハ正シイカモ知レヌト思ヒマスガ、
實際問題トシテハマダソコマデノ消費規正
ニハナツテ居ラナイヤウデス、瓦斯ノ方ニ
付テハ是程ハツキリシタ告示ノヤウナモノ
ハ出テ居ラナイカニ承知致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=27
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028・小野謙一
○小野(謙)委員 サウスルト瓦斯ノ方ハ斟
酌ガ出來ルト云フコトニナリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=28
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029・松隈秀雄
○松隈政府委員 瓦斯ノ方ハ、監督官廳デ
アリマス商工省ノ方カラ瓦斯會社ニ通牒ヲ
出シテ實行シテ居ルノデアリマシテ、此ノ消
費ノ規正方法ハ、一般的規正方法ト、家庭
瓦斯ノ規正方法ト大體二通リニ分レテ居ル
ヤウデアリマス、是モ詳シク申上ゲマスト
細カ過ギマスカラ、先ヅ東京アタリノコト
ヲ申上ゲマスト、家庭用瓦斯割當量ハ世
帶ノ人員ニ依リマシテ一世帶ノ一月ノ割當
量ト云フモノガ違ツテ居リマス、例ヘバ五
人ノ家庭デアリマスト、一世帶當リ一〇·
五熱位ト云フコトニナツテ居リマス、立方
「メートル」ニ換算致シマスト、二十五立方
「メートル」ト云フコトニナツテ居リマス、
是ガ其ノ家庭ニ於テ消費シ得ル量ノ最高限
ト云フコトニナツテ居リマス、右ノ標準ヲ
超過シテ消費致シマシタ場合ニ於テハ、
爾後瓦斯會社ニ於テ超過量ニ相當スル消費
期間供給ヲ停止スルコトヲ得ル、斯ウ云フ
ヤウナ通達ニナツテ居リマス、併シ實際ノ
運用カラ申シマスト、特ニ惡質ナルモノデ
ナイ限リ停止ハ致シテ居ラヌト云フヤウナ
實情デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=29
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030・勝正憲
○勝委員長 次ニ藤本君ノ發言ヲ許シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=30
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031・藤本捨助
○藤本委員 私ハ二、三ノ問題ニ付キマシテ
極メテ簡單ニ御尋ネ致シテ見タイト思ヒマ
ス、其ノ第一點ハ物價政策ニ「タイアップ」シ
テ增稅政策ヲ更ニヨリ多ク考ヘテ見ナイカ
ト云フ點デアリマス、申スマデモナク今囘
ノ增稅政策ノ目的ハ浮動購買力ヲ吸收致シ、
更ニ消費ヲ抑制スルト云フ點ニ重點ノ一ツ
ガアルノデアリマスガ、事變以來巨額ノ財
政運營ノ結果ト致シマシテ、國民購買力ハ
順次增大ヲ致シテ居リマス、又大消粍戰遂
行ノ當然ノ結果ト致シマシテ物資ノ供給ハ
次第ニ遞減致シテ居リマス、併シ如何ニ購
買力ガ遞增致シマシテモ、若シ消費規正ト
云フコトガ完全ニ行ハレテ居リマスナラバ
何等問題ハアリマセヌ、卽チ如何ニ購買力
ガアリマシテモ、割當テラレマシタル量以
上ニハ之ヲ發動セシムルコトハ出來ナイ、
隨テ其ノ剩餘ノ購買力ハ、好ムト好マザル
トニ拘ラズ貯蓄ニナリマシテ、間接ニ强制
貯蓄サヘモ出來ルノデアリマスガ、併シ不
幸ニシテ現在ノ消費規正ノ面ニ於キマシテ
ハ、是ガ完備致シテ居リマセヌ、又致シ得
ナイ面モアルノデアリマス、例ヘバ食料品
關係ニ於キマシテモ、或ハ衣料關係ハ姑ク
措キマシテ、住宅關係、或ハ燃料關係、或ハ
旅行トカ娛樂、或ハ遊興方面ニ於キマシテ
ハヤハリ消費規正ノ徹底ヲ缺キ、又ハ徹底
シ得ナイ事情ノモノガアルノデアリマス、
隨テ茲ニ自由購買面ト云フモノガ多分ニ殘
ツテ居リマス、故ニ遞增シツツアル過剩購
買力ハ自然ニ此ノ自由購買面ニ流レル、ノ
ミナラズ今マデノ物價政策ハ一律的ノ低物
價政策デアリマシテ、必需品デアラウガ非
必需品デアラウガ、一律的ノ低物價政策デ
アリマスカラ、是ガ此ノ自由購買面ニ流レ
ルト云フコトニ拍車ヲ掛ケテ居リマス、此
ノ結果トシテ貯蓄ノ奬勵トカ或ハ公債ノ消
化ト云フコトニ對シテモ若干ノ支障ヲ與ヘ
テ居ル嫌ヒガアルノデアリマス、故ニ斯ウ
云ツタ事態ヲ防止致サネバナリマセヌ、而
シテ是ガ爲ニハ、先ヅ其ノ一ツノ方策トシ
テ今マデノ如キ一律的ナ低物價政策ヲ止揚
致シマシテ、生活ノ必需品ハ別デアリマス
ガ、贅澤品ニ對シテハ勿論、非必需品或ハ
不急不要ノ商品トカ物資、或ハ好マシカラ
ザル消費ニ向フ物資ニ對シマシテハ高物價
政策ヲ以テ臨ムト云フコトガ必要デアリマ
ス、而シテ高物價政策ヲ以テ臨ム結果ト致
シマシテ玆ニ利潤ノ增大ヲ來シマスガ、ソ
レヲ不急不要ノ物資ヲ造ル業者又ハ其ノ關
係者ニノミ私的利潤トシテ取得セシメルノ
デナクシテ、直接、間接ニ國家ガ之ヲ取得
シ得ルヤウ、玆ニ增稅政策ヲ物價政策ニ「タ
イ·アップ」シテヤル必要ガアルト思フノデ
アリマス、此ノ點ニ付キマシテ物價局長官
ノ御意見ト大藏當局ノ御意見ヲ先ヅ承リタ
イト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=31
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032・石黒武重
○石黑政府委員 只今ノ御話ハ全ク御同感
デゴザイマシテ、低物價政策ト申シマシテ
モ、是ハ戰時經濟ノ遂行上ノ一ツノ手段デ
アリマシテ、大體ニ於テ直接狙ツテ居リマ
ス所ハ國民生活ノ安定ト、軍需ヲ中心トス
ル所ノ戰時必要資材ノ生產增强、此ノ二ツ
ノコトヲ狙ツテ低物價政策ヲヤツテ居ルノ
デアリマス、其ノ關係カラ申シマシテモ、
御說ノヤウニ不急不要ノ品物自體ニ付キマ
シテ、是非値段ガ低クナケレバナラヌト云
フコトハナイト思ヒマス、唯御話ノ通リ左
樣ナ不急不要品ニ付テノ價格統制ヲ緩メマ
スト、左樣ナ不要不急品ノ生產ニ從事スル
人ニ對スル報償或ハ資本ニ與ヘラレル利潤
ト云フヤウナモノガ、戰時ニ必要ナル物資
或ハ生活必需物資ノ生產ニ從事スル勞力ヤ
或ハソレニ用ヒラレル資本ニ對スル利潤ト
云フヤウナモノヨリモ多イコトニナリマシ
テ、是ハ又結局ニ於テ好マシカラザル結果
ニ陷ル、左樣ナ意味ニ於キマシテ、結局必
需品以外ニ不急不要ノ品物ニ付テモ、ヤハ
リ價格ニ付テ統制ヲ取ラナケレバナラヌコ
トニナツテ來ルト私ハ思フノデアリマス、
左樣ナコトデアリマスノデ、御話ノ通リ左
樣ナ不急不要品ニ付テノ價格ガ、徵稅其ノ
他ノ方法ニ依ツテ國庫ニ納メサセルヤウナ
ヤリ方デ値段ガ高クナルト云フコトハ一向
差支ヘナイ、是ガ先般來各種ノ間接稅ノ增
徵ニ付キマシテモ、大藏當局ノ各種ノ御案ニ
對シマシテモ私ノ方トシテ全幅的ノ贊意ヲ
以テ御協力ヲ致シタ事情デアリマス、其ノ
點全ク御同感ニ存ズルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=32
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033・松隈秀雄
○松隈政府委員 只今ノ御尋ネニ對シマシ
テ、稅ノ方カラ見タ見解ヲ一應御答ヘ申上
ゲテ置キタイト思ヒマス、物ニ依ツテ高物
價政策ト云フモノヲ執ルト云フコトノ適否
ニ付キマシテハ、只今物價局長官カラ御答
ヘノアリマシタ通リデアリマスガ、間接稅
ノ對象トシテ課稅ヲ致シテ居リマスルモノ
ハ、多ク消費金額ガ課稅ノ對象ニナツテ居
リマスルノデ、消費ノ好マシカラザル部面
ニ對シテハ、或ル程度價格ヲ引上ゲルト云フ
コトニナリマスレバ、隨テソレニ伴ツテ間
接稅モ增シテ參リマスルノデ、國民ノ其ノ
方面ノ消費ニ對シマシテハ、租稅デ國家ニ
貢獻スルト云フ部面モ比例的ニ增シテ參ル
譯デアリマス、尙ホ高物價ガ或ル方面ニ認
メラレマシタ結果ト致シマシテ、生產販賣
シテ居ル方面ニモ利益ガ增大シタ場合ハド
ウナルカト云フコトデアリマスルガ、此ノ
所得又ハ純益ニ對シマスル課稅ノ方面ト致
シマシテハ、大體所得ナリ純益ナリノ大キ
サニ依ツテ負擔ガ增シテ行クヤウヲ結果ニ
ナリマスルノデ、或ル意味デサウ云フコト
ノ爲ニ利益ガ增シタ場合ニハ、ヤハリ其ノ
方面ノ純益、所得ニ對スル課稅モ重クナツ
テ、ソレダケノ利得ヲ生產者ナリ販賣者ナ
リガ直チニ懷ロニ入レルコトノナイヤウニ
稅ハ出來テ居ル積リデアリマス、更ニ一層
之ヲ徹底セシメテ、國ノ物價政策ニ依ツテ
特ニ値段ヲ高メタモノデアル、其ノ差額カ
ラ來タ利益デアルカラ、之ニ對シテ別ニ
特別ノ稅ヲ課ケルト云フ所マデハ今ノ所
ナツテ居リマセヌガ、是ハ將來各種統制
經濟ノ政策ガ徹底强化サレテ、其ノ方面ノ
計算ト云フモノガ明瞭ニナツテ參ルト云フ
コトニナレバ、稅率ノ盛リ方ナンカニ付テ
ハモウ一段ト工夫サレル所ガアルカト思ヒ
マイ、今日其ノ稅金ハ利益ノ大小ニ依ツテ
課スルダケデアリマシテ、由ツテ生レテ來
タ原因マデハ探究致シテ居ラナイコトニナ
ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=33
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034・藤本捨助
○藤本委員 今物價局長官ノ御心配ニナラ
レマシタ點ハ其ノ對策トシテ大藏當局カラ
御述ベニナツタノデアリマスガ、尙ホ併シ
將來一律的ナ低物價政策ヲ止揚致シマシテ、
戰時統制經濟下ニ於キマシテ適當ナ、殊
不要不急ノ物資ニ付キマシテハ、物價政策
上再檢討ヲ致スヤ否ヤト云フコトニ付キマ
シテモウ一度御考ヘヲ伺ツテ置キタイノデ
アリマス、卽チ將來若シ御心配ノ點ガ大藏
當局ノ御善處ニ依リマシテナイヤウニトス
ルナラバ、現在ノ一律的ノ低物價政策ヲ何
トカ更ニ御檢討願ツタラドウカト云フコト
ヲ御伺ヒ致シタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=34
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035・石黒武重
○石黑政府委員 私從來ノ長イ間ノ物價政
策ノコトハ必ズシモ詳シク存ジマセヌガ、
現在ノ所、御話ノ通リ不急不要品、或ハ贅
澤品ニ對シテ低物價政策ヲ遂行シテ居ラナ
イ積リデアリマス、是ガ詰リ先般來各種ノ
物品稅ニ付テ五割ノ課稅トカ云フヤウナコ
トデ値段ヲ上ゲマシタ理由デアリマス、私
共ノ立場カラ申シマスルト、實ハ徵稅ノ技
術上ノコトサヘ完全ニ行キマスルナラバ
物ニ依リマシタラモツト稅ガ課カツテモ宜
シイト云フ位ノコトヲ實ハ內々大藏當局ト
ノ間ニモ話合ツテ居ツタヤウナ次第デアリ
マス、只今主稅局長ハ、稅ヲ課ケル方面カ
ラ見ルト統制ノ十分行渡ツタ場合ニ於テ
ハ、或ル種ノ手段ガ執レルト云フコトヲ御
話ニナリマシタガ、是レ全ク御尤モデアリ
マスガ、又同時ニ私共ノ方カラ申シマスル
ト、稅ヲ課ケマシテモ是ガ完全ニ取レルト
云フコトデアリマセヌト、制度ノ上カラハ
成程高イ價格ノ中ノ通常ノ利潤以上ノモノ
ハ、全部政府或ハ國庫へ收得スルト云フ制
度ニナツテ居リマシテモ、事實ハソレガサ
ウナラナイ、結果ニ於テハサウナツテ居ラ
ヌト云フヤウナコトニナリマスルト、先程
モ申シマシタヤウニ、又御說ノ通リ、必需
品ノ生產ナリ、或ハ之ニ關聯シタ仕事ニ從
事スルヨリモ、今日國家ノ爲ニ不急不要ナ
品物ノ生產ナリ、其ノ他ノコトニ從事スル
方ガ一層利得ガアルト云フヤウナコトニナ
リマスコトハ、現在ノ統制ノ段階ニ於キマ
シテハ成ベク之ヲ避ケナケレバ、今日所要
ノ戰時經濟ノ運行ガ全キヲ得ナイノデアリ
マス、彼此レ實際上ノ左樣ナ事情モ考ヘマ
シテ實行セザルヲ得ナイヤウニナツテ居リ
やっ、併シ考ヘト致シマシテハ、不急不要、
或ハ贅澤ナ品物ハ、物自體ノ値段トシテハ
高クテモ一向差支ヘナイト云フ考ヘヲ以テ
現ニ私共ハヤツテ居ル積リデ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=35
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036・藤本捨助
○藤本委員 物價局長官ニ對スル御尋ネハ
是デ濟ミマシタ、次ニ購買力ノ源泉ヲ押へ
ル上ニ於キマシテ、直接稅ニ增稅サレマシ
タコトハ非常ニ當ヲ得タコトデアルト思ヒ
マスガ、其ノ結果ト致シマシテ、個人、殊
ニ法人ノ關係ニ於キマシテ減配問題ガ當然
ニ起リ、隨ヒマシテ株價ノ變動ト云フコト
モ起ルノデアリマスガ、尙ホ之ニ加ヘマシ
テ、現在ニ於キマシテハ株式ノ配當所得ニ
對シテノミ綜合累進課稅ヲ執リ、他ノ公社
債或ハ預金利子ニ對シマシテハ、所謂選擇
源泉課稅ヲ致シテ居リマスガ故ニ、特ニ株
價問題ガ起ルノデハナイカト思フノデアリ
マス、從來政府ハ株價ノ問題ニ付キマシテ
ハ、非常ニ御苦心ヲナサレテ居ラレルノデ
アリマスガ、是ハ何モ證劵業者、或ハ金融
機關、或ハ株式所有者ノ利益ヲ擁護スルト
云フ意味デハナクテ、主トシテ生產力擴充
ト云フコトニアツタト思フノデアリマスガ、
左樣ナ見地カラ考ヘマスルナラバ今囘ノ
直接稅ノ增徵ハ當然ナスベキコトデアリマ
スガ、併シ其ノ結果トシテ今申シタヤウナ
問題ガ起リ、而シテソレガ生產力擴充ニモ
支障ヲ來スヤモ知レマセヌ、トスルナラバ、
當然ニ又ソレニ對スル對策モ講ズベキデア
ルト思フノデアリマス、其ノ對策ト致シマ
シテ、一般ニ金利水準ヲ低下セシメルト云
フコトガ一ツデアリ、更ニ株式配當所得ニ
對シテハ綜合累進課稅ヲヤリ、其ノ他ノ公
社債或ハ預金利子ニ付テハ源泉選擇課稅ヲ
ナスト云フガ如キ稅制上ニ於ケル不公平ナ
扱ヒヲ一掃スルト云フコトガ必要デアルト
思フノデアリマス、併シ此ノ二ツヲヤリマ
スレバ、或ハ貯蓄ノ奬勵、或ハ公債ノ消化
ニ支障ヲ來スト云フヤウナコトガアリマシ
テ出來ヌノナラバ、其ノ他ノ何カノ適當ナ
方法ヲ以テ株價ノ變動ヲ防止シ、而シテ生
產力擴充ニ資セシムルト云フコトガ必要デ
アラウカト思フノデアリマス、此ノ點ニ付
キマシテ御伺ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=36
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037・松隈秀雄
○松隈政府委員 直接稅ノ增徵ニ當リマシ
テ、實質的ニモ亦技術的ニモ一番難カシイ
問題ト申シマスルノハ、綜合所得稅ニ於キ
マシテ綜合課稅ヲ原則トシツツ例外的ニ源
泉選擇ノ課稅ヲ按配シテ參ル、斯ウ云フ問
題デアリマス、稅ノ理論カラノミ致シマス
ルナラバ、綜合所得稅ニ於キマシテハ、總
テノ所得ヲ綜合シマシテ累進稅率デ課稅ス
ルコトガ一番簡單明瞭デアツテ、負擔力ニ
モ副フ所以ナノデアリマスガ、御承知ノ如
ク、貯蓄增强ノ必要上、殊ニ預金者等ニ及
ボス心理的影響ヲ考慮致シマシテ、昭和十
五年ノ稅制ノ大改正ノ際ニ於キマシテモ、
綜合ヲ原則トシテ置キナガラ、尙ホ源泉選
擇ノ餘地ヲ認メタノデアリマス、今囘又分
類所得稅ヲ引上ゲ綜合所得稅ノ稅率ヲ引上
ゲルニ當リマシテ、直チニ此ノ問題ニブツ
カツテ參リマシタ、之ヲ如何ニ解決スルカ
ニ苦心致シタノデアリマスルガ、要スルニ
御話ノ如ク株式ハ生產力擴充ノ爲ノ自己資
本トシテ大切ナモノデアリマスルノデ、株
式ニ不當ノ壓迫ヲ加ヘルト云フコトモ時局
下避ケネバナラナイコトデアリマス、一方
必要ナル資金ノ蓄積、公債、社債ノ消化ト
云フコトモ、戰時下ニ於キマシテ非常ニ戰
時金融ノ運營上必要ナコトデアリマス、ソ
コデドウシテモ其ノ間ヲ調和的ニ縫ツテ行
クヨリ外ニ方法ガナカツタノデアリマス、
ソコデ今囘綜合所得稅ノ稅率ハ平均二割方
上ツタノデアリマスルガ、其ノ場合ニ於キ
マシテ、源泉選擇ヲ選ンダ場合ノ稅率ヲ百
分ノ十五デアルノヲ幾ラニスルカト云フコ
トガ一ツノ問題デアツタノデアリマスルガ、
之ヲ少クトモ百分ノ二十五以上ニシナイト
株式ニ對シテ不利デアル、ソレデハ株式ヲ
持ツ者ガ大所得者ニナルニ從ツテ不利ニナ
ツテ、大所得者ノ株式投資熱ト云フモノヲ
非常ニ冷却スル虞ガアル、斯ウ云フコトカ
ラ致シマシテ大體現在ニ於キマシテモ、株
式ト國債トハ所得ノドノ階層カラ逆鞘ニナ
ルカ、別ノ言葉デ申シマスルト、所得ガ段
段大キクナルニ連レテ、株式ノ方ハ源泉選
擇ヲ認メテ居リマセヌカラ、段々累進稅率
ガ高クナツテ、稅引利廻ト云フモノガ少ク
ナツテ來ル、所ガ國債ノ方ハ源泉選擇ヲ認
メテ居リマスルカラ、所得ガ大キクナルニ
從ヒマシテモ、或ル所カラ先ハ比例稅率以
上ニハ上ラナイノデアリマス、ソコデ、株
式ト國債ト云フモノハ、或ル一點ニ來マス
ルトソコデ「クロス」シマシテ、ソレカラ先
ノ大所得者ハモウ株式ヲ持ツテハ國債ヨリ
モ稅引利〓ガ下ルカラ損ダ、斯ウ云フコト
ニナル、其ノ限界點ガ現行法ノ下ニ於テ幾
ラデアルカト云フト、現行法ノ下ニ於テハ八
万圓ト云フコトニナツテ居リマス、八万圓ヲ
超ユル人ハ表面利〓五分五厘ノ株式ヲ持ツ
テモ、表面利廻三分六厘五毛ノ國債ヲ持ツヨ
リモ、綜合累進課稅ノ結果手取ガ却ツテ不利
ニナル、斯ウ云フ數字ガ出テ居リマス、其ノ
不利ニナル割合ハ二厘二毛八朱、斯ウ云フコ
トニナツテ居リマス、今囘モ大體八万圓ノ所
デ株式ヲ持ツコトガ不利ニナルト云フ其ノ
限界分點ハ維持シタイ、斯樣ニ考ヘタノデ
アリマス、ソコデ源泉選擇ノ稅率ヲ百分ノ二
十五ニ致シマスレバ、ヤハリ八万圓ノ所カ
ラ株式ヲ持ツノガ、國債ヲ持ツヨリモ稅引
利廻ニ於テ不利ニナル、隨テ特ニ是ガ爲ニ
大所得者ガ今マデヨリモヨリ一層株式ヲ持ツ
コトヲ不利ニサレタ、斯ウ云フコトハナイ
コトニ相成ツテ居リマス、尤モ其ノ百分ノ
二十五ニシタ爲ニ源泉選擇ヲシタ方ガ宜イ
カ、綜合課稅ヲ受ケタ方ガ宜イカト云フ點
ハ一段階上リマシテ、是ハ此ノ方面カラ言
フト、現在ハ三万圓ヲ超エル人ハ綜合課稅
ヲ受ケルヨリモ、源泉デ百分ノ十五ノ課稅
ヲ受ケル、卽チ源泉選擇ヲシタ方ガ有利デ
アリマス、今囘ハ百分ノ二十五ニ致シマシ
タ爲ニ、三万圓デハナクシテ、モウ一段上
ノ五万圓ヲ超エルニ至ツテ初メテ綜合課稅
ヲ選ブヨリモ源泉課稅ヲ選擇シタ方ガ宜
イ、ソコハ一段階上リマシタ、ソレダケ見
方ニ依レバ綜合課税ノ範圍ヲ擴ゲタ、詰リ
本則ノ方ガ擴ガツテ例外ノ方ガ狹マツタ、斯
ウ云フコトニナルト思ヒマス、ソコマデ致
シテ大體株式ト國債トガ逆鞘ニナル點、ソ
レカラ株式ト社債ガ逆鞘ニナル點、是ハ國
債ノ場合ト違ヒマシテ、少シ下ノ五万圓ノ
逆鞘ニナル點ガ出テ參リマス、ソレカラ株
式ト定期預金ガ逆鞘ニナル點、是ハ大體少
シ上リマシテ、十二万圓ノ所位デ出テ居リ
マスガ、ソレノ現狀ハ維持シテ居ル、斯ウ
云フコトデアリマスノデ、今囘ノ綜合所得
稅ノ引上、源泉選擇ノ稅率ノ引上ヲ通ジテ
見マスレバ、現在ヨリ以上ニ株式ニ不利ヲ
與ヘテ居ルト云フコトハ言ヘナイト思フノ
デアリマス、一方株式ノ配當ニ對スル優遇
方法トシマシテハ、別ニ提案ニナツテ居リ
マス通リ、現在ハ分類所得稅ヲ課シマス際
ニ、株式配當カラ一割控除シテ稅率ヲ適
用シテ居リマス、所ガ綜合課稅ヲスルニ當
リマシテハ其ノ分類所得稅ヲ課稅スル際
ニ、控除ニ依ツテ稅率ヲ輕減シテ置キマシ
タ、其ノ稅金ト云フモノヲ加算シテ徵收ス
ルコトニナツテ居リマスガ、此ノ加算ガア
リマスコトハ株式ヲ不利ナラシメルノデ、
少クトモ其ノ加算ダケハ取ツテ計算シマセ
ヌト、先程ノ「クロス」ノ關係ニモ響イテ來
マスノデ、其ノ加算ハ廢止スルコトニ致シ
マシタ、尙ホ更ニ時局產業等デ新規ノ株式
拂込ヲ徵收スルニ當リマシテ、拂込徵收ガ
困難ト認メラレルヤウナ事情デアリマスコ
トハ相當注意シナケレバナリマセヌノデ、
從來デ申シマスト、株式配當ニ對スル分類
所得稅ニ之ヲ設ケルト云フコトハ、手續カ
ラ言フト面倒デヤリタクナイ、斯ウ云フコ
トモ言ヘルノデアリマスガ、特ニ時局產業
等デアリマシテ、配當率一定以下ノモノニ
付キマシテハ、稅法改正後ノ拂込ノ分ニ對
スル分類所得稅ハ、一般ノモノヨリモ二ダ
ケ下ゲマシテ、新規拂込ニ出來ルダケ支障
ナカラシメルヤウニ致シマシテ、其ノ方面
ニ資金ガ集マルヤウニ工夫シテ居リマス、
隨テ新規拂込ノ配當金ニ對スル課稅ノ方カ
ラ申シマスト、先程申シマシタ逆鞘ノ出ル
點、是ハ「ポイント」ハ動キマセヌケレドモ、
割合ハ現在逆鞘ニナツテ居ル、其ノ逆鞘ノ
利子ト幾ラモ違ハナイ、殆ド同ジ位ノ所マ
デハ來テ居ル、斯ウ云フ風ナ事情ニナツテ
居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=37
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038・藤本捨助
○藤本委員 財產稅ニ付キマシテハ旣ニ御
尋ネガアツタヤウデアリマスガ、財產稅モ
一ツノ考ヘデアリマスガ、私ハ財產增加稅
ニ付テ御尋ネシタイト思ヒマス、財產權ノ
移轉ガ相續稅デアル、サウスルト財產價格
ノ異動ニ對シテ、財產增價稅ト云フモノガ
アツテモ宜カラウト思フノデアリマス、殊
ニ事變下ニ於キマシテ、財產價格ガ非常ニ
增加致シマシテ、玆ニ富ノ分配ノ跛行性ニ
對シテ更ニ拍車ヲ掛ケテ居リマス、又時局
下洵ニ好マシカラザル所ノ換物運動ト云フ
モノモ盛ンニ行ハレテ居リマス、斯ウ云フ
コトヲ見マスルト、玆ニ若シ財產增價稅ト
云フモノヲ創設致シマスルナラバ、物價ノ
騰勢モ抑ヘ得ル、或ハ富ノ分配ノ跛行性ヲ
是正スル社會政策的ノ意味モ現ハレテ來ル、
或ハ又其ノ課稅物件ノ財產ヲ調査スルコト
カラシテ、統制經濟ニナケレバナラヌ所ノ
資料モ出テ來ル、或ハ換物運動モ抑ヘラレ
ルト云フヤウナ長所ガアルト思フノデアリ
マス、ソレハ課稅技術上非常ニ骨ノ折レマ
スコトハ能ク分リマスガ、併シ斯ウ云フ際
ニ財產增價稅ノ創設ト云フコトヲ御考ヘナ
サルコトガ、戰時體制下ニ於ケル一ツノ時
局的要請デハナイカト思フノデアリマス、
此ノ點ニ付テ御伺ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=38
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039・松隈秀雄
○松隈政府委員 財產ノ增價額ニ對シテ特
別ノ擔稅力ヲ認メテ課稅スベシト云フ議論
ハ、確カニ一ツノ傾聽スベキ御意見デアル
ト思フノデアリマス、從來是ガ〓究サレツ
ツ行ハレマセヌデシタ主ナル點ハ、ヤハリ
課稅技術上ニ困難ガアル、是ガ處分ヲ致サ
レマシタモノデアリマスルナラバ、ハツキ
リソコニ處分價格、卽チ換價價格ガアリマ
スケレドモ、處分ヲシナイデ持ツテ居ル間
ニ其ノ價格ヲ幾ラナリト認定スルカト云フ
コトニ付キマシテハ、相當困難ガアリマシ
テ、價格ノ認定ニ付キマシテ、官民ノ間ニ
紛議ガ絕エナイコトト相成ルト思ヒマシテ、
實行ヲ差控ヘテ居ルヤウナ次第デアリマス、
處分サヘ致シマスレバ、現ニ船舶、鑛業權
ノヤウナモノヲ移轉シマシタ場合ニ課稅シ
テ居リマスガ、今囘ハソレニ附加ヘテ、更ニ
不動產ノ賣買ヲ致シマシタ場合ニ於キマシ
テモ、結局增差額ニ當ルモノハ課稅スルト
云フヤウナ所マデ範圍ヲ擴ゲテ參リマシ
ク、尙ホ株式等ニ付キマシテハ、公定價格
ガアルモノガ相當多イノデアリマスカラ、
或ル程度財產ノ增價格ト云フモノノ判定ガ
出來ルノデアリマスガ、此ノ方面ニ於キマ
シテハ、株式ガ餘リ價格ノ昂騰若シクハ低
落致シマスルコトハ、必要ナル產業資金ノ調
達ニモ惡影響ガアリマスノデ、政府トシテ
ハ寧ロ最高最低價格ヲ抑ヘテ、或ル一定ノ
値幅ノ範圍內ニ於テ動クコトヲ望ミマシテ、
サウ云フ方向ニ動クヤウナ政策モ執リツツ
アルヤウナ次第デアリマスカラ、此ノ方面
ニ於ケル增價額ハ、大シタ期待ハ出來ナイ
ノデハナイカト思ハレルノデアリマス、殘
ル所ト致シマシテハ、書畫、骨董ト云ツタ
ヤウナモノニナツテ參ルノデアリマス、現
ニ一部ノ購買力ハ其ノ方面ニ動イテ居ルヤ
ウナコトモ伺ツテ居リマスガ、書畫、骨董ニ
付キマシテハ、先般ノ物品稅ニ於テモ、稅
率ヲ一割カラ三割マデモ上ゲタ點モアリマ
スシ、是ノ課稅ヲスルト評價ノ問題ガ非常
ニ面倒デアリマスノデ、大體現在ノ所デハ
課稅スルト云フコトハ、理論的ニハ肯定サ
レマシテモ、實行トナルトマダ容易ニ決心
ガ付カナイヤウナ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=39
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040・藤本捨助
○藤本委員 次ニ現在ノ我ガ國ノ租稅ノ
體系ハ自由經濟ノ基礎ノ上ニ立ツテ居ルノ
デアリマスガ、事變以來平時自由經濟カラ、
戰時統制經濟ニ移行致シ、其ノ結果トシテ、
例ヘバ自由經濟時代ニ於キマシテハ、課稅
標準ハ主トシテ擔稅力ノ大小ト云フコトヲ
狙ヒ、而シテ擔稅力ガ如何ナル用途ニ向フ
カト云フコトハ問題デナカツタノデアリマ
スガ、併シ統制經濟ノ今日ニ於キマシテハ、
其ノ擔稅力ガドウ云フ使途ニ向フカト云フ
コトガ重大ナ關心事ニナツタノデアリマス、
更ニ又自由經濟時代ニ於キマシテハ、例
バ大衆課稅トナリマスル消費稅、其ノ他間
接稅ハ非常ナ惡稅ト致シマシテ、成ルベク
避ケル又間接稅ガ直接稅ニ對スル一定ノ
割合ヲ超過スルナフバ、其ノ內容ノ如何ヲ
問ハズ、社會正義、或ハ社會政策上排擊サ
レタト云フ例モアルノデアリマス、併シ今
日ハサウデハナイノデアリマシテ、如何ニ
大衆課稅ニナリマシテモ敢然課稅又ハ增稅
ヲ致サネバナラヌト云フ時代ニナツテ居ル
ノデアリマス、而シテ是等ノ時局的要請ニ
對シマシテハ、御當局ノ練達堪能ナ課稅技
術上ノ方途ヲ以テシマシテモ、幾ラカ是ガ
遂行ハ出來マスケレドモ、何トシテモ自由
經濟ヲ基礎ニシタ稅制ノ體系ト云フモノヲ
ヤリ變ヘルト云フノデナケレバ、其ノ圓滑
或ハ徹底ハ期シ得ナイト思フノデアリマス、
デアリマスカラ現在非常ニ困難ハアリマ
スケレドモ、稅制ノ改革ト云フコトヲ此ノ
際高閣ニ束ネナイデ、斷乎ヤラレル必要ガ
アルト思フノデアリマス、此ノ點ヲ一ツ御
尋ネ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=40
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041・松隈秀雄
○松隈政府委員 從來ノ稅制ノ對象ト致シ
テ狙ツテ居リマスル所得、純益、利得ト云
ツタヤウナモノハ多ク自由經濟ノ下ニ生
レテ來タモノデアル、隨テサウ云フモノヲ
狙ツテノ稅制デハナイカト云フヤウナ御疑
問ハ確カニ一面営ツテ居ルヤウニ思フノデ
アリマス、自由經濟カラ、段々統制經濟ニ
移ツテ參ルトスレバ、稅制ノ上ニ於キマシ
テモソレニ對應スル所ノ措置ガ講ゼラレナ
ケレバナラヌ、隨テ其ノ見地カラ稅制改正
ヲ考慮スベキデハナイカト云フ御意見ニ對
シマシテハ全然同感デゴザイマス、最近
ニ於キマシテモ漸次其ノ傾向ハ帶ビテ來ツ
ツアルノデアリマシテ、從來ノ擔稅力ノ點
カラ見タ負擔公平論カラ言ヘバ、或ハ如何
カト思ハレマスル場合ニ於キマシテモ、統
制經濟ノ必要上、ソコニ別ノ觀點カラ稅法
ニ變更ヲ加ヘル點ハ相當取入レラレテ居ルノ
デアリマス、一例ヲ擧ゲマスルナラバ、從
來ハ資產所得ト致シマシテハ、株式配當デ
アリマセウト、或ハ公債、社債、預金ノ利
子デアリマセウト、不動產ノ所得デアリマ
セウト差別ヲ付ケズニ、同ジ稅率ヲ以テ
參ツタノデアリマス、所ガ今囘ノ分類所得
稅ノ改正稅率ヲ御覽ニナルト御分リニナリ
マスル通リ、不動產所得ニ對スル稅率ハ百
分ノ十六ニナツテ居リマス、所ガ配當利子
所得ニ對ヌル稅率ハ、公債、社債ハ別デア
リマスガ、其ノ他ノモノハ百分ノ十五ニナ
ツテ居リマス、今マデハ百分ノ十デ道連レ
ニナツテ來テ居ツタ、若シ此ノ際、不動產
ノ方ヲ百分ノ一ダケ餘計增シタト云フコト
ニ付テノ理由ヲ何處ニ求メルカト致シマス
レイク、是ハマア一般的ニ申シマシテ、此ノ
際國民ノ資金ガ向フベキ方向ヲ國トシテ考
ぐら、不動產ニ向フコトガ望マシイカ、或
ハ株式ニ向フ方ガ望マシイカト申シマスレ
バ、今日ハ株式ハ統制ヲ加へテ居リマスノ
デ、必要ナル產業ニ對スル資金デナケレバ
新株ノ拂込增資等モ認メテ居リマセヌ、デ
アリマスカラ今日新シク投資サレルノデア
ルナラバ、寧ロ株式ニ投資サレル方ガ望マ
シイト云フヤウナ意味モ幾分加ハリマシテ、
同ジ資產所得デアリナガラ、配當所得ノ方
ヲ百分ノ一下ゲテ居ルヤウナ次第デアリマ
ス、更ニ、臨時租稅措置法ニナリマスルト
云フト、此ノ點ガ一層明瞭ニ出テ參リマシ
テ、公社債、預金ノ利子等ハ、稅ノ上カラ
致シマスト云フト、資產所得中最モ當人ノ、
所得者ノ勞苦ナシニ入ツテ來ル所得デアル、
寢テ居テモ、遊ンデ居テモ入ツテ來ル所得
デアルト言フコトスラ出來ルノデアリマス
ガ、ソレデ尙且貯蓄增强ノ方針ヲ促進致シ
マスル見地カラ、一定期間据置イタ預貯金
デアルトカ、或ハ一定期間登錄シタ會社債、
或ハ郵便局ニ保管ヲ致シマシタ國債ト云フ
ヤウナモノニ付キマシテハ、擔稅力ノ面カ
ラハ相當擔稅力ガアルニ拘ラズ、特ニ年數
ニ應ジテ百分ノ一乃至百分ノ五ノ稅率ヲ輕
減スルト云フノハ、其ノ一ツノ現ハレデア
ルト申シテ宜イカト思フノデアリマス、尙
ホ將來ノ問題トシテ、色々稅制ニ於テ工夫
シナケレバナラヌト云フコトハ御說ノ通リ
デアリマスカラ、吾々モ十分〓究ヲ續ケテ
參リタイト思フフデアリマス、例ヘバ、今
日營業所得、卽チ事業所得ノ甲種デアリマ
スガ、此ノ課稅ヲシ、及ビ之ニ對シテ營業
稅ト云フモノヲ課ケテ居リマス、是ハ大體
ノ觀念デ言ヘバ、從來營業ト云フモノハ個
人ノ力量、手腕ニ依ツテ自由ニ儲ケルコト
ガ出來ル營業所得ハ資產ト勤勞ノ共働所
得デアルケレドモ、個人ガ自由ニ營業デ儲
ケテ相當ノ利益ヲスルト云フ所ニ特ニ擔稅
力ヲ認メテ、事業所得ト云フモノハ勤勞所
得ヨリモ高率ノ負擔ヲシテ居ル、ソレカラ
所得稅ノ外ニ營業稅モアル、斯ウ云フコト
デアリマスガ、段々營業ガ統制サレテ、利
潤ト云フモノガ少クナツテ、殆ド個人ノ自
由意思デ營業ハ出來ナイ、會社ノ勤人ト同
ジト云フヤウナ狀況ガハツキリ出テ參ルト云
フコトニナリマスレバ-今日デハマダソ
コマデ行ツテ居リマセヌ、隨テ今日直チニ甲種
ノ事業所得ノ稅率ヲ下ゲルトカ、或ハ營業
税ニ付テ變更ヲ加ヘルト云フ所マデハ行ツ
テ居リマセヌケレドモ、ヤハリ將來ノ問題
トシテハ、營業ノ統制經濟カラ來ル變更等
トモ睨ミ合ハセテ、斯ウ云フ點モ〓究シテ參
ル必要ハアルト考ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=41
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042・藤本捨助
○藤本委員 マダ御尋ネシタイ點ガアリマス
ガ、是ハ大藏大臣ニ御尋ネシタイト思ヒマ
スカラ、私ハ此ノ程度デ止メマヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=42
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043・勝正憲
○勝委員長 丁度時間ガ來マシタガ、モウ
一人ヤリマスカ、ドウシマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=43
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044・森田福市
○森田(福)委員 今ノ藤本君ノ質問ニ關聯
シテ、一寸簡單ニ聽イテ見タイコトガアル
ノデス-只今主稅局長ノ御答辯ノ中ニ、
臨時利得稅ノ中ノ鑛業權ト船舶ニ課稅シ
テ居ツタノヲ、今度ハ不動產ヲ賣ツタモノ
ヲ加ヘルト云フコトニナツテ居ルノデアリ
マス、所ガ一方ニハ、株式ノ取引所デ取引
ヲシタ〓算取引ニ依ル所得ニハ課稅ヲスル
ヤウニナツタノデアリマスガ、場外ノ取引
ノ分ニ對スル實物取引ニ依ル所得ニハ課稅
サレテ居ラヌト思ヒマス、所ガ今ノ不動產、
土地建物ノ賣買ニ對スル利得ニ課稅ヲスル
トスレバ、御承知ノ通リニ、土地建物會社
ガ今日マデ相當銷却ヲシテ居ツテ、土地建
物トシテ賣ルト〓算所得ニ稅ガ課カルカラ、
會社ヲ株式グルミ賣ツテシマフ、船舶亦然
リ、船舶デ賣買スレバ臨時利得稅ガ大變課
カルカラ、船舶デ賣買ヲ行ハズニ、會社ノ
株劵グルミ賣ツテシマウテ、五十圓ノ株ガ
百圓、二百圓、三百圓ト云フ取引ガ出來テ
居ルモノニ對シテ、何トカ處置ヲ執ラレル
デアラウト考ヘテ居ツタノデアルガ、今度
ノ改正ニ當ツテ之ニハ更ニ考慮ヲ加ヘテ居
ラレヌガ、何カ事情ガアツテ、此ノ方面ニ
考慮ヲ加ヘナカツタノデアルカト云フ當局
ノ御考ヘヲ聽イテ見タイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=44
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045・松隈秀雄
○松隈政府委員 今囘株式ノ〓算取引ニ對
シマシテハ、分類所得稅ヲ課スルコトニ致
シマシテ提案致シテ居ルノデアリマス、ソ
レト共ニ臨時利得稅法ヲ改正致シマシテ、
從來ノ船舶、鑛業權等ノ讓渡以外ニ、不動
產及ビ不動產上ノ權利ノ移轉ニ對シマスル
讓渡利得ニ對シテモ課稅スルコトニ致シタ
ノデアリマス、是等ノ改正ノ際ニ於キマシ
テ、勿論株式ニ付テハ〓算取引ニ依リマス
ル利益、或ハ實物市場、現物店ニ於ケル店
頭賣買、若シクハ個人間ノ現物賣買等、一
切ヲ引括メテ、讓渡ニ依ル利益ニ對シテ課
稅スルコトハ考慮ニ入レタノデアリマスガ、
色々技術上ノ問題モアリマシテ、提案ノ如
ク局限サレタノデアリマス、御承知ノ通リ
株式〓算市場ニ於キマスル取引デアリマス
ルナレバ、是ガ捕捉ハ極メテ容易デアリマ
ス、同時ニ實物市場ノ株式ノ實物ノ賣買
デアリマスレバ、是モ大體捕捉ガ出來ルノ
デアリマス、所ガ市場外ニ於キマスル株式
ノ賣買デアリマスト、之ヲ調査捕捉スルコ
トガ比較的困難デアリマス、其ノ結果ト致
シマシテ、株式市場デ取引ヲスレバ課稅ニ
ナリ、市場外ニ出テヤレバ捕マルカモ知レ
ヌケレドモ、見逃サレルヤウナコトガ起ル
カモ知ラヌ、斯ウ云フヤウナ感ジヲ持チマ
スト、株式市場ニ於テ取式ヲスル者ガ、其
ノ心理的影響ニ依ツテ少クナル、斯ウ云フ
コトガ心配サレマシテ、折角株式市場ヲ設
ケマシテ、一定ノ賣買數ト云フモノヲ集メ
テ、公定値段ヲ作ラウトシテ居ル方面ニ差支
ヘガアツテハドウカト云フ所カラ、稅ノ理
窟カラ言ヒマスレバ、苟クモ株式ノ移轉ニ
依リマシテ生ジタ利得デアルナラバ、課稅
スルト云フコトハ差支ヘナイト云フコトガ
言ヘルノデアリマスガ、差當リハ〓算取引
ノ所得ニ對シテノミ課稅スルコトト致シマ
シテ、暫ク實物ノ賣買ニ依ル課稅ハ見合セ
テ、狀況ヲ見ヨウ、斯ウ云フコトニナツタノ
デアリマス、絕對ニ課稅スベカラズト云フ
ノデハナクテ、課稅ハシテモ差支ヘナイノ
デアルケレドモ、兩方一度ニヤルト云フコ
トハ困難ノ事情ガアリ、急激ノ變化ヲ與ヘ
テモ困ルカラ、實物ノ方ハモウ少シ課稅方
ヲ〓究シテ見ル、考慮シテ見ル、斯ウ云フ
コトデ延バサレタト云フヤウナ形デアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=45
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046・森田福市
○森田(福)委員 考慮シテ居ル間ニ今ノ稅ハ
逃ゲテシマフ虞ガアル、ソレナラバ現在炭
礦トカ、總テ鑛業會社、ソレカラ汽船會社、
土地建物會社、是ハモウ現物デ賣買ヲヤレ
バ臨時利得稅ヲ取ラレルカラ、物ヲ賣ルト
同ジコトデ株式括メニ賣ツテシマフ、ソレ
ヲ是カラ〓究シテ行ツテ居ル間ニ-今ノ
事變ノ爲ニ上ツテ來テ居ルモノガボツ〓〓
値ガ下ツテ居ルノデアルカラ、モウ次ニハ
其ノ必要ハナイヤウニナツテ來ルカモ知レ
又、既ニ昨年ノ夏頃カラハ此ノ炭礦ノ賣
買、船舶ノ賣買-土地建物ハサウデナ
カツタソレハ是カラデアリマス、此ノ二
ツノモノニ付テハ株式括メノ賣買ノ方ガ殆
ドデアル、船舶デ賣買、鑛山デ賣買ヲヤルノハ
殆ドソレデアツテ、額面デ賣ツタ方ノ側ハ非
常ナ高率ナ利益ヲ得テ、臨時利得稅モ所得
稅モ何ニモ課カラズ、五十圓ノ株劵ガ二百
圓、三百圓、四百圓デ賣買ガ行ハレルノハ
課稅ヲスル公平ナ立場ヲ守ル上カラ言ツテ
モ、私ハ此ノ不公平ヲ是正スル必要ガアル
ト思フ、此ノ度ハソレニ對スル何カ對策ガ
出ルモノデアラウト、去年ノ關係カラ私ハ
考ヘテ居ツタノデアリマスガ、單ニ課稅ガ
面倒デアルカラト云フヤウナコトデ、大キ
ナ所得者ヲ少シノ課稅モ加ヘズニ逃ガシテ
シマフト云フコトハ宜イデセウカ、私ハ具
體的ニ知ツテ居ル、自分ノ所デ從來營業ノ
支出ノ部デ可ナリ銷却ヲシテ、行詰ツテシ
マツテ、銷却ノシヤウガナイ、銷却ノ仕方
ガナイヤウニナツテ居ルカラ、物デハ賣ラ
ズ株デ賣ツテシマフ、五十圓ノ株劵ガ三百
圓、四百圓、四百五十圓ト云フコトデ取引
サレテ、ソツクリ其ノ儘デ行ツテ居ル、ソ
レハ數十万圓、數百万圓ノ所得ヲ得テ居ルケ
レドモ、一錢一厘ノ課稅モ受ケヌ、是ハ一
方ニ船舶ト鑛山ノ臨時利得稅ヲ個人ノモノ
ダケニ決メタカラソンナコトニナツテ居
ル、小サナ課稅ヲ漁ルコトモ宜イガ、廣告
稅トカ電氣瓦斯稅ヲ漁ルト云フコトヨリ
モ、此ノ方面ノ大キナ問題ヲ徵稅ガ面倒ダ
ト云フコトデ逃ガシテハ、私ハ公平ノ見地
ニ立ツテヤル政府ノヤリ方トハ思ヘヌ、議
論ニナルカラソレ以上ハヤラヌガ、私ノ番
ニナツタ時ニ詳シク聽ク積リデアリマス、
會社部ノ方デハ分ツテ居ル、中ニハ株劵ノ
賣買ヲ許可ヲ受ケテヤツテ居ル者ガアルカ
ラ、今日ハ調ベガ簡單ニ行クカラ、ソレガ
徵稅上面倒ダト言ハズニ御〓究ヲ願ヒタイ
ト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=46
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047・松隈秀雄
○松隈政府委員 株式ノ實物ノ賣買ニ對ス
ル課稅ヲ致シマストスレバ、船舶會社ノ株、
鑛業會社ノ株ダカラ是ハ課稅スル、サウヂ
ヤナイ、重工業ノ會社、或ハ一般ノ事業會
社ノ株ハ賣ツテモ實物ノ賣買ニ對シテモ課
稅シナイ、斯ウ云フコトニスレバ又今度ハ
課稅上ノ扱ヒトシテノ不公平ガ出來マスカ
ラ、結局切ルト致シマスレバ、〓算取引所
得ニ對スル課稅ノ所デ切ルカ、或ハ〓算取
引以外ニ實物取引ニ對シテモ課稅スルトス
レバ、全部ノ株ノ實物取引ニ課稅スルト云
フ以外ニ、稅ノ上デハ切リ方ガナイト思ヒ
そう、其ノ場合ニ於テ一部ノ會社ニ、殊
船舶、鑛業權ニ付テハ御話ノヤウナ場合ガ
出ルカモ知レマセヌケレドモ、ソレハ只今
モ御話ガアリマシタヤウニ、會社經理統制
令ノ方面トモ連絡ヲ執ツテ善處スルヤウニ
致シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=47
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048・勝正憲
○勝委員長 本日ハ午後ハ委員室ノ關係上
續行ガ出來マセヌノデ此ノ程度ニ止メマス、
尙ホ明日ハ午前中ハ委員室ガ塞ガリマスノ
デ、午後一時カラ開會致シマス、本日ハ是
ニテ散會致シマス
午後零時十分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X00519420128&spkNum=48
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