1. 会議録本文
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000・会議録情報
會議
昭和十七年二月四日(水曜日)午前十時三十八分開議
出席委員左の如し
委員長 勝正憲君
理事 坂田道男君 理事 大石倫治君
理事 河野密君 理事 松永義雄君
青山憲三君 石坂養平君
伊藤五郎君 卯尾田毅太郎君
宇賀四郎君 小川郷太郎君
小高長三郎君 小野謙一君
岡本實太郎君 加藤知正君
金澤正雄君 豐田收君
篠原陸朗君 藤本捨助君
村上紋四郎君 森肇君
山本芳治君 青木作雄君
田川大吉郎君 百瀬渡君
加藤鯛一君
出席國務大臣左の如し
大藏大臣 賀屋興宣君
出席政府委員の如し
法制局參事官 佐藤基君
内務次官 湯澤三千男君
内務省地方局長 成田一郎君
内務書記官 小林千秋君
大藏省主税局長 松隈秀雄君
大藏書記官 池田勇人君
大藏書記官 平田敬一郎君
陸軍少將 田中隆吉君
馬政局長官 粟屋仙吉君
拓務省管理局長 中野勝次君
本日の會議に上りたる議案左の如し
所得税法中改正法律案(政府提出)
法人税法中改正法律案(政府提出)
所得税法人税内外地關渉法中改正法律案(政府提出)
相續税法中改正法律案(政府提出)
織物消費税法中改正法律案(政府提出)
物品税法中改正法律案(政府提出)
電氣瓦斯税法案(政府提出)
廣告税法案(政府提出)
馬券税法案(政府提出)
印紙税法中改正法律案(政府提出)
臨時利得税法中改正法律案(政府提出)
特別法人税法中改正法律案(政府提出)
營業税法中改正法律案(政府提出)
臨時租税措置法中改正法律案(政府提出)
國庫出納金端數計算法中改正法律案(政府提出)
戰時災害國税減免法案(政府提出)
所得税の日滿二重課税防止に關する法律案(政府提出)
地方分與税法中改正法律案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=0
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001・勝正憲
○勝委員長 ソレデハ是ヨリ開會致シマ
ス-靑木君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=1
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002・青木作雄
○靑木(作)委員 事變下地方自治體ノ擔任
シマスル國家事務ハ極メテ多端トナリマシ
テ、戰爭遂行上重要ナル役割ヲ演ジテ居リマ
スルコトハ贅言ヲ要セザル所デアリマス、
之ニ伴フ支出ノ激增ニ對シテ、現在ノ稅制
ノ下ニアツテハ彈力性ニ乏シク、四苦八苦
ノヤリ繰ヲ重ネテ居ルト云フ市町村ガ少ク
ナイコトハ、同僚議員ノ旣ニ指摘セラレテ
居ル所デアリマス、政府ハ今後常ニ此ノ點
ニ留意セラレマシテ、苟モ行詰リニ陷ラナ
イヤウニ遲滯ナク善處セラレルト共ニ、配
付稅ノ配分ニ關シマシテハ手心ニ遺憾ナキ
ヲ期セラレンコトヲ私ハ切ニ要望致シマス、
私ガ此ノ機會ニ於テ內務大臣ノ御意見ヲ伺
ヒタイト思ヒマスルノハ、自治制度ノ改革
案ヲ本會議ニナゼ提出セラレナカツタカト
云フ一點デアリマス、現在ノ自治制度ハ時
代ニ卽セザルコトハ今更呶々ヲ要シマセ
又、其ノ中急ヲ叫バレマスルモノニ大都制
案ナルモノガアリマスルガ、私ノ特ニ茲デ
申上ゲタイト思ヒマスルノハ市町村制ノ
餘リニ自由主義的デアルト云フコトデアリ
マス、市町村會議員ハ選擧デ選バレマスル
ガ、其ノ市町村會ガ選ンダ市町村長ハ直チ
ニ市町村ノ支配者トナルノデアリマス、
如何ナル制度モ悉ク我ガ皇國ノ一部ナラザ
ルモノハナイノデアリマシテ、臣民ハ
天皇中心ノ國民生活ヲ營ムノデアリマスカ
ラ、假令制度ガ恰モ獨立ノ共和國ノヤウニ自
由デアツテモ、選バレタ人ガ臣道ヲ實踐シサ
ヘスレバ何等問題ハアリマスマイ、併シ實際
ハ中々サウ參リマセス、第一市町村長ヲ選擧
スベキ市町村會議員ノ選擧ガドウデアリマス
カ、言論、文章ノ威力ト云フモノハ皆無デア
リマス、是ハ言論、文章ノ人ト云フヨリモ小
マメニ立働ク人、德望、人格、事業關係ノ情
實、サウ云フヤウナモノガ、言論、文章ヨリ以
上ニ選擇ノ標準ト見ラレルノデハアリマスル
ケレドモ、更ニソレヨリ强力ナルモノハ所謂
潛行運動ナルモノノ威力デアルコトヲ否定
スルコトハ出來マセヌ所謂金權候補ナルモ
ノハ市町村會議員選擧ニ對シテハ、殆ド例
外ナク當選シテ居リマス、此ノ傾向ハ
事變ノ深刻化ト共ニ激化致シマシタ、卽チ
警察官ノ手不足、未熟、裁判所ノ書記中、
練達ナル者ノ不足シテ來タコト、其ノ補充
難等ニ依ツテ、取締竝ニ大檢擧ノ困難ガ生
ジタノデアリマス、假ニ取締ニ缺陷ハナ
イト致シマシテモ、時局下人心ニ不安衝動
ヲ與フルト云フヤウナ大檢擧ハ努メテ避ケ
ナケレバナラナイノデアリマスカラ、此ノ
方針ノ爲ニ自治體ノ選擧ハ容易ニ舊態ヲ改
メルニ至リマセヌ、此ノ結果最モ苦々シイ
ノハ闇取引デ巨利ヲ博シタル徒輩ガ轡ヲ竝
ベテ地方自治政ニ乘出スコトデアリマス、
帝國議會デノ舊政黨的色彩ハ著シク拂拭サ
レマシタガ、今最モ濃厚ニ殘存スルモノハ、
實ニ斯カル實情ニアル地方自治體デアリマ
ス、一昨年ノ新體制運動以來、地方自治體
ニモ可ナリ當局ノ强壓政策ガ行ハレタノデ
アリマスルガ、而モ尙ホ政治的ニ最後ニ取
殘サレタル所ノ自由主義ノ牙城トナツテ居
ルノデアリマス、此ノ牙城ヲ葬ルベク執ラ
レタ窮餘ノ一策ガ、實ニ大政翼贊會ヤ選擧
肅正運動ニ依ル推薦制度ナルモノデアリマ
ス、嚴正ナルベキ選擧ヲ官自ラ强壓ヲ持チ
違法ノ方法ニ訴ヘテマデヤラナケレバナラ
ナイト云フ實情ハ、實ニ戰時下ノ政治組織
ノ中堅タル自治體ノ改善ガ忽セニ出來ヌト
云フカラデハアリマセヌカ、戰爭ノ目的ヲ
達スル爲ニハ過般ノ總理モ仰シヤツタヤウ
ニ一億一心ノ結束ヲ固メナケレバナラナ
イ、其ノ爲ニ不必要ナル摩擦ハ直接戰爭遂
行ノ爲ニハ避ケナケレバナラナイ、ソコデ
內務大臣ニ於カレマシテハ斯ノ如キ翼贊團
體ノ活動ヲ一時停止ヲ命ジ、專ラ頰被リ主
義デ來ルベキ選擧ヲ行ハレル積リデアリマ
スカ、戰爭ハ短期ニ大局ヲ制シ得ルコトガ
望マシイノデアリマス、併シ相手ハ米英、
更ニ「ソ」聯ノ動向モ油斷ヲ許シマセヌ、當
然長期ニ亙ルト云フコトモ覺悟シナケレバ
ナリマセヌ、然ラバ此ノ問題ヲ長ク其ノ儘
ニシテ置イテ宜イト御考ヘニナツテ居ルノ
デアリマスカ、選擧ヲシテシマヘバ四年間
ハ延バサレルノデアリマス、政府ハ此ノ選
擧ハシテモ、大局ノ見透シガ付イタ時ニハ、
市町村會モ同時ニ解散ヲ命ジテ、欲スルガ
如キ翼贊體制ニスルト云フ御考ヘヲ以テ此
ノ選擧ニ臨マレルト言フノデアリマスカ、
首相ハ機構改革ヨリモ寧ロ人ニアル、人事
ノ運用デヤツテ行ケルト云フ所ノ信念ヲ披
瀝セラレマシタ、洵ニ私モサウ思フノデア
リマス、併シ只今申シマシタヤウナ選擧デ
選出セラレタ市町村會議員ガ選定シタ市町
村長ハ、現行法上刑餘ノ身トナラナイ限リ
ハ、內務大臣、知事ガ、ドウモアノ男ハ此
ノ時局下ニ於テ翼贊トカ何トカ云フコトニ
關係スベキ柄ノ男デナイト御考ヘニナリマ
シテモ、變更ハ出來マセヌ、其ノ人ノ有ス
ル限リノ忠誠ニ依存シテ國政ノ末梢ヲ司ラ
シメナケレバナリマセヌ、彼等ノ中ニハ現
行法ノ與ヘタ城廓ニ傲然ト構ヘテ、更ニ現
狀維持ニ汲々トシテ居ル者ガアルノデアリ
マン、卽チ翼贊會、翼贊壯年團ノ組織ニ
當ツテ、之ヲ自己陣營ニ取入レントスル者
ガアルノデアリマス、之ニ對シテ烈々タル
所ノ翼贊精神ニ燃エル者ハ抗爭シマス、此
處ニ紛議ガ生ジ、組織困難ガ生ズルノデア
リマス、翼贊壯年團ガ到ル處ニ早ク出來ナ
ケレバナラヌニモ拘ラズ、今尙ホゴタ〓〓
シテ居ル所ガアルト云フノハ、斯ウ云フ實
情ヲ內面ニ持ツテ居ルノデアリマス、而モ
之ヲ全國的現象ナリト斷言シ得ルノデアリ
マス、此ノ原因ハ一ニ現行制度ノ自由主義
的缺陷ニアリト私ハ信ズルノデアリマス、
今此ノ委員會ニ付託セラレテ居リマス所ノ
增稅案ハ決シテ輕イモノデハアリマセヌ、
國民ハ此ノ以上ノ重稅ヲモ覺悟シテ居リマ
スガ、併シ此ノ一千二百万圓ヲ翼贊會ニ支
出セラレル政府ノ御胸中ハ、必ズヤ翼贊運
動ノ必要ヲ認ムルモノ切々タルモノアレ
バコソト信ズルノデアリマスガ、其ノ金
ハ、若シ運動ノ目的ガ達セラレルナラバ
私共決シテ惜シイトハ思ヒマセヌ、併シ若
シ其ノ翼贊團體ノ殼ノ中ニ舊體制ガ其ノ儘
ヤドカリノ如ク居坐リ込ンダノデハ、何ノ
爲ノ金デアルカ、血ノ出ルヤウナ金デアリ
マイク、甚ダ私ハ惜シイト思フ、今ヤ重要產
業ハ數十年ノ粒々辛苦ノ事業ト雖モ、國家
ノ必要トアラバ整理統合セラレ、他人ノ手
ニ委ネナケレバナリマセヌ、殆ド一切ノ機
關ノ責任者ハ、政府ハ此ノ時局下ニ不適當
ト認メル時ニ於テハ、政府ノ任免ノ外ニ立
ツコトヲ許サレナイノデアリマス、然ルニ
市町村ノミガ奇怪ニモ例外トナツテ居ルト
云フコトハドウデアリマスカ、市町村ハ内
務省ノ監督下ニアルカラ宜イヂヤナイカト
言フノデアリマスガ、ソレハ形式的ナ話、
市町村コソ翼贊ノ中核トナラナケレバナラ
又、翼贊會ノ支部ヲ設ケ、ソレガ土藏ノ外
カラ土藏ノ中ニアルモノヲ溫メルヤウナ恰
好ヲシテ、外カラ翼贊精神デ吹付ケテ行ツ
テ市町村長ヲ翼贊的ニシヨウ、市町村會議
員ヲ翼贊的ニシヨウ、斯ウ考ヘマシテモ無理
デアリマス、隔靴搔痒ノ感ナキヲ得ナイノデ
リマス、政府ハサウ云フコトデナシニ、直接
國政ノ末端ヲ扱ヒ五、六億ニ上ル多額ノ經費
ヲ使ツテ居ル自治團體其ノモノヲ何故翼
贊的ナ中核組織トセラレナイノデアル
カ、サウシテ初メテサウ云フ團體ト地方支
部トガ表裏一體トナツテ、政府自ラ音頭ヲ
取ラナクテモ立派ナ活動ヲシテ·銃後ヲ固メル
コトガ出來ルノデアラウト思フノデアリマ
ス、私ハ斯ウ申シタカラト云ツテ市町村長
ヲ官選ニセヨト云フノデハアリマセヌ、選
擧ニ依ルコトヲ基本トハ致シマスガ、其ノ
結果ニ付テハ政府ノ許可ヲ要スル制度ヲ採
リ入レラレタラドウカト思フノデアリマス、
自治體ノ改革ニ付キマシテハ色々細カイコ
トガアリマスガ、此處デ何モ彼モ曝ラケ出
シテ此ノ委員會デ論ズベキコトデモアリマ
セヌノデ、私ハ中心トナルベキ、其ノ一番
儀表トナルベキ人物ノ上ニアル、此ノ制度
ノ自由主義的缺陷ヲ述ベテ政府ニ愬ヘタイ
ト思フノデアリマス、今日位國民〓育ノ重
大ナ時ハアリマセヌ、併シナガラ先般ノ地
方稅制改正、義務〓育費國庫負擔、斯ウ云
フコトニ依リマシテ可ナリ國民〓育ニ對ス
ル市町村會議員ノ活動ノ弊ガ取除カレタヤ
ウデアリマスガ、今尙ホ彼等ノ地方〓育界
ニ食入ツテ居ル力ハ牢固トシテ拔クベカラ
ザルモノガアリ、洵ニ恐ルベキモノガアリ
マス、唯之ヲ明ラサマニシマスレバ、前
モ申シマシタヤウニ地方人心ニ非常ニ大キ
ナ結果ヲ及ボシマスカラ、唯臭イモノニ蓋
ガシテアルト云フダケデアリマス、中身ヲ
見ルト云フト洵ニ戰慄スベキモノガアルノ
デアリマス、是ハ內務次官ニ於カレマシテ
モ能ク御承知ノコトデアル、私共以上ニ御
手許ニハ色々ノ報告ガ來テ居ルト思ヒマス、
併シドウニモナラナイト云フノデハ、是デ
ハ私ハ大東亞戰爭ハ長期ニ亙ツテヤレナイ
ト思フノデアリマス、政治ハ人デアリマス、
人ヲ得ルニ困難ナル制度ハ速カニ變ヘナケ
レバナラヌ、內務當局ハ之ニ對シテドウ云
フ御決意ヲ持ツテ居ラレルカ伺ヒタイト思
マヒス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=2
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003・湯澤三千男
○湯澤政府委員 只今靑木サンカラノ御議
論ノ點ト、又結論ノ點ニ付キマシテ縷、〓拜
聽致シマシタガ、今日ノ自治體ヲドウ云フ
風ニ改善シテ行ツタラ宜カラウカ、又現在ノ
自治體ニ色々ナ弊害ノアルト云フ點ニ付テ
ハ私共洵ニ御尤モニ考ヘテ居ルノデアリ、マ
ス、而シテ自治體ノ制度ヲドウ云フ風ニスルカ
ト云フコトハ、實ハ非常ニ難カシイ問題ダ
ト私共思ツテ居ルノデアリマス、ト云フノ
ハ我ガ國ノ制度ト致シマシテ官治ノ外ニ自
治體ヲ認メテヤツテ行クシ斯ウ云フ根本
ノ趣意ハ、地方ノ人民ガソレ〓〓相協力シ
テ自發的ニ其ノ福利ヲ增進スル、斯ウ云フ
積極的ナ活動ヲ國家ノ政治ノ上ニ寄與セシ
メルト云フ所ニアルト思フノデアリマスガ、
今日マデノ經過ヲ見マスト、今マデノ法制
ハ段々此ノ權限ヲ擴張シテ參リマシテ、地方
ノ人民ノ活動ヲ成ベク廣汎ニスルト云フヤウ
ナ狀態ニナツテ來ツツアツタ譯デアリマス、
所ガ今御話ノヤウナ風ニ中々廣汎ナル權限
ヲ與ヘラレテ居ルニ拘ラズ、其ノ自治體ノ
發達ヲ圖ルト云フコトニ付テ種々ナ弊害モ
生ジテ來テ居ルト云フコトハ、是ハ洵ニ事
實ノヤウニ思フノデアリマス、斯ウ云フ點
ハ一體何處ニ存在スルカ、或ハ我ガ國民性
ノ上カラ自治的ナ活動ト云フコトハ非常ニ
難カシイ、寧ロ官治的ナ、治メラレルコト
ニ依ツテ、容易ク其ノ目的ヲ達シ得ルヤウ
ナ國民性デアルカ、或ハ極積的ニ自治ノ能
力ガナイノデアルカドウカ、斯ウ云フ國民
性ノ大キナ問題ガアルカドウカト云フコト
ハ一ツ十分ニ考ヘナケレバナラヌ問題ダト
思フノデアリマス
第二ニハ今御話ニ述ベラレマシタヤウナ
風ニ思想ノ變化ニ基イテ來テ居ル點ガアリ
ハシナイカ、一面ニ於テハ時代ガ非常ニ急
進シテ參リマシテ、國家ノ目的ニ合致セシ
メルト云フ要求ガ非常ニ大デアル、御話ノ
ヤウニ各種ノ經濟ノ統制會ナドニ付キマシ
テモ、其ノ會長ヲ選ブト云フ場合ニ國家ガ
自ラ之ヲ選ンデ居ル、國家ノ意思ヲ滲透セ
シメルト云フコトノ方ガ遙カニ必要ヲ生ジ
テ來テ居ルノデハナイカ、其ノ急速ナ國家
ノ要求ニ對シテ、地方ノ自治體ノ現在ノ組
織ガソレニ應ジ切レナイヤウナ狀態ニナツ
テ居ル、或ハ又其ノ考へ方ガ應ジ切レナイ
ヤウナ狀態ニナツテ來テ居ル、國家ノ非常
ナ飛躍ニ應ジラレナイト云フヤウナ思想上
ノ關係カラ來テ居ルカドウカト云フヤウナ
點モ考ヘナケレバナラヌカト思フノデアリ
マス、又モウ一ツニハ支那事變以來國家カ
ラ要請サレマシタ事務ガ非常ニ增加シテ參
リマシテ、之ヲ處理スルト云フコトニ付キ
マシテモ、自治體トシテハ非常ナ負擔ヲ生
ジテ來テ居ル譯デアリマスガ、之ヲ處理ス
ルト云フコトノ觀念ノ上ニ於テ、地方ノ町
村民ガ本當ニ理解ガナイ舊態依然トシテ元
ノ儘デアツテ、時代ノ要求ニ對シテ十分目
覺メテ居ラナイ、一面國家ハ町村ニ對シテ
非常ニ重大ナル事務ヲ要求シテ來テ居ル、
斯ウ云フコトノ上ニモ非常ナ間隔ガ生ジテ
來テ居ルノデハアルマイカト云ツタヤウナ
色々ノ方面カラ、今日ノ自治體ノ十分ナ强
力ヲ發揮出來ナイト云フ點ニ付テ考ヘラレ
ルノデアリマスガ、然ラバ之ヲドウ云フ風
ニヤツタラ宜カラウカ、少クトモ現狀ノ儘
デハイケナイト云フ結論ニ對シテハ、私共
全ク同感ナノデアリマス、ソコデ拔本的ナ
改革ガ直チニ所期出來ルカドウカト云フ問
題モアリマス、之ニ付テハ先程申上ゲマシ
タ國民性ノ問題ト云フコトモ考ヘナケレバ
ナリマセヌ、ソレカラ今ノ思想ノ變化ト云
フコトモ考ヘナケレバナリマセヌ、併シ何
レニシテモ當面ノ仕事ヲ十分ニ處理スルト
云フコトニ付テ町村民ノ自覺ヲモウ少シ深
メル、又國家ノ意思ヲ最下部マデ滲透セシ
メルト云フコトハ、是ハ今日ノ時局ノ上カ
ラ言ツタナラバ絕對ニ必要デアルト考ヘマ
ス、ソコデ私共ノ方ニ於キマシテモ市制及
ビ町村制ノ改正ト云フモノハ是非之ヲ斷行
致シタイ、斯ウ云フヤウナコトデ略〓或或種
ノ成案ヲ持ツテ參ツタノデアリマス、又先程
靑木サンノ御話ノヤウナ、町村長ガ唯町村
會ノ選擧ダケデ其ノ職務ニ就ケルト云フノ
デハナイ、或ル程度マデ國家ノ意思ヲ其ノ
選任ノ上ニ加ヘテ參ルト云フコトノ方ガ有
力ナル人物ヲ擧ゲ得ル實情ニナツテ居ルノ
デハアルマイカ、斯ウ云フヤウナコトヲ考
ヘマシテ、サウ云フヤウナ腹案ノ下ニ此ノ
改正案ヲ出シタイト云フヤウナ風ニ考ヘテ
居ツタノデアリマスガ、御承知ノヤウニ今
度ノ議會ハ、大東亞戰爭ニ我ガ國家ガ突
入致シマシテカラ間モナイコトデアリマ
スシ、〓戰ノ戰果ヲ十分ニ確保シテ、軈テ
來ルベキ大發展ニ備ヘナケレバイカヌ、
斯樣ナ意味デ出來ルダケ戰爭目的ニ直接關
係ノアルモノダケニ止メルト云フ風ニ制限
ヲ致シマシタノデ、私共ノ方カラ市制、町
村制ノ改正或ハ都制案ト云フヤウナモノ
ハ、此ノ際ノ議會ニハ遠慮致シマシタヤウ
ナ次第デアリマスケレドモ、是ハ來ルベキ
大發展ノ問題ヲ處理スル議會ガ恐ラクハ近
ク開カルルコトト私共ハ期待致シテ居リマ
スガ、サウ云フ機會ニハ是非トモ此ノ問題ヲ
解決スベク提案致シタイ、斯ウ云フ風ニ考
ヘテ居リマス、要スルニ結論ニ於キマシテ
ハ、靑木サンノ御見解ト全然同意見デアル
ト云フコトヲ申上ゲ得ルダラウト思ツテ居
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=3
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004・青木作雄
○靑木(作)委員 私ハ只今ノ御答辯デ滿足
致シマスガ、唯茲ニ申上ゲタイノハ、從來
選擧ヲシテシマヒマスト、ソレデ地位ヲ獲
得シタル者ハ任期滿了マデハ新シイ法律ハ
適用サレナイト云フコトガ大體慣例ノヤウ
ニナツテ居リマス、此ノ次ノ適當ナル近イ
機會ニ於テ提案シヨウト云フ御決意ノアル
コトニ付キマシテハ、私共ハ非常ニ滿足シ
テ居リマスガ、大東亞戰ニ於テ四年早ク手
ヲ着ケルカ、四年遲レルカト云フコトハ非
常ナ違ヒデアル、色々ノ摩擦ガアリマシタ
ケレドモ、日本ガ「アメリカ」ヨリモ先ニ高
度國防國家體制ニ向ツテ、此ノ不足ナル資
源ヲ以テ、摩擦ヲ克服シナガラ、國內ニ於
ケル幾多ノ紛爭ヲ克服シナガラ此處マデヤ
ツテ來タ、其ノ總力ガ現ハレテ今日ノ戰果
ム
ヲ擧ゲテ居ルノデハナイカト思フノデアリ
マス、サレバ大東亞戰ノ建設ニ付テモ地方
自治體ノ改革ニ依リマシテ、早ク地方ノ細
胞組織ヲ政府ノモノトシナケレバナラヌ、
ソレガ四年先ニナルカ四年後ニナルカト云
フコトハ大キナ違ヒデアルト申シマシタ
カラト言ウテ、私ハ只今直グ翼贊壯年團ヤ
翼賛會ガソレニ對應スルダケノ十分ナル準
備ガ出來テ居ルトハ申シマセヌ、現在ノヤ
ウナ變ナガサツナ團體ニ依ツテ直チニ之ヲ
期待スルト云フ如キハ、是ハ甚ダ亂暴ナ議論
デアリマスガ、併シ行キ方ニ於テハ私ハ此
ノ方向ヲ辿ルヨリ外ニナイト思フ、ダカラ
是ガ整備ト相俟ツテ、是ガ整備サレタ場合
二、何時デモ現行法ニ依ル市町村會ヲ解
散シテ、サウシテ提案セラレタル改正案ヲ
卽時實施ト云フコトニナリマスルヤウナ御
決意ヲ以テ臨マレナケレバ、私ハ折角ノ御
決意モ時ノ問題ニ於テ非常ニ遲レテ來ル、
市町村ニ關スル限リニ於キマシテハ、政府
ガ十年前ニ此ノ大東亞戰ノ準備ニ掛カラレ
テ居ルナラバ、市町村制ハ十五年後ニナツ
テ初メテ其ノ態樣ヲ整ヘルト云フヤウナ變
ナコトニナリ、一番遲レテ來ルノデアリマ
スルカラ、一番早ク追付カセナケレバナラ
又、斯ウ私ハ思ヒマス、此ノ以上ハ申シマ
セヌガ、其ノ點ニ付テドウ云フ御考ヘヲ以
テ居ラルルカ御尋ネ致シタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=4
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005・湯澤三千男
○湯澤政府委員 只今御話ノアリマシタヤ
ウナ時期ノ上カラ申シマシテ、法案ヲ施行
致シマスル拔本的ナ方法ト云フモノガ執レ
マスカドウカ、是ハ餘程〓究ヲ致サナケレ
バナラヌト思ヒマスガ、併シ今御述べニナ
リマシタ御鞭撻ハ十分拜承致シマシテ、此
ノ改正案ヲ提出致シ、又改正案ヲ實行致シ
マスル上ニ於キマシテハ十分ナル善處努力
ヲ致シタイト思ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=5
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006・勝正憲
○勝委員長 大石倫治君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=6
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007・大石倫治
○大石(倫)委員 内務次官ガ御急ギニナル
サウデアリマスカラ、内務次官ノ方カラ先ニ質
問シテ吳レトノ委員長ノ御注意ニ依リマシテ、
内務次官ニ先ニ御尋ネ致シタイト思ヒマス、
私ハ主トシテ今囘新タニ設ケラレマスル
新稅ノ中、馬劵稅ニ付テ御尋ネヲ致サウ
ト思フノデアリマス、內務省ノ關係ト致シ
テ御尋ネヲ致シマスル事柄ハ、競馬ニ對ス
ル內務省ノ觀念ト申シマスルカ、考ヘ方ト
申シマスルカ、甚ダ私共ノ腑ニ落チナイ點
ガアルノデアリマス、ソレ等ノ點ニ付テ御尋
ネシタイノデアリマスガ、ソレヨリモ最モ緊要
ナル直接ノ關係ハ、ノミ屋行爲ノ取締ニ關
スルコトデアリマス、此ノ度新タニ賦課セ
ラレマスル馬券稅ハ、競馬法ニ依ル競馬ニ對
スル馬劵ノ發行ニ對スル課稅、竝ニ的中拂
戾金ニ對スル課稅ノ二樣ノ課稅ヲ受ケ、又
軍馬資源保護法ニ依ツテ行ハレマスル鍛鍊
馬競走ニ對シテハ、優等馬票ノ買受ニ對ス
ル課稅、竝ニ拂戾金ニ對スル課稅ノ二重課
稅ガ起サレルコトニナツテ居ルノデアリマ
ス、競馬法ニ依ル競馬ハ旣ニ現在ニ於テハ賣
上金、所謂賣得金ノ百分ノ十八ト云フ控除
額ヲセラレテ居リマシテ、其ノ控除額ノ中
ヨリ一一·五ト云フ政府納付金ヲ致シテ居
ルノデアリマス、此ノ控除額ト云フモノハ
決シテ輕イ控除額デハゴザイマセヌ、殊
政府納付金ノ如キモ競馬法ガ制定實施セラ
レマシタ大正十二年ノ當時ニ於テハ、僅カ百
分ノ一デアツタノデアリマス、然ルニ今日
ハ一一·五デアリマシテ、殆ド十二倍トモ申
スベキ高額ニ上ツテ居リ、所謂競馬うつ
ン」ノ負擔ト云フモノハ非常ニ重クナツテ
居ルノデアリマス、隨テ拂戾金ノ金額ノ上
ニモ影響ヲ及ボシテ居ルノデアリマス、茲
ニ又更ニ馬劵ヲ買フ者ハ競馬法ニ依ルモノ
ハ百分ノ七、其ノ拂戾ニ際シマシテハ法
定金ヲ控除シタル殘リノ金額ニ對スル百分
ノ二十ト云フ負擔ヲ受ケネバナラヌ、優等馬
票ニ於キマシテハ、馬劵ノ購買ニ當ツテハ
百分ノ四、拂戾ニ當リマシテハ百分ノ十ト
云フ課稅ヲ受ケルノデアリマス、軍馬資源
保護法ニ依ル鍛鍊馬競走ニ依ル所謂競馬デ
アリマスガ、優等馬票ヲ發行シテ居ル此ノ
競走ニ於キマシテハ、各鍛鍊馬競走ヲ行フ、
主催者ニ於キマシテ大體ニ於テ百分ノ二十
五ト云フ控除額ヲ負擔シテ居リマス、デア
リマスルカラ拂戾サレマスル金額ト云フモ
ノハソレダケ少クナツテ居ル、斯ウ云フ所
へ更ニ百分ノ四デアリ、百分ノ十デアルト
云フ風ニ重課セラレルノデアリマスカラ、
當然ドウシテモ「ファン」ノ負擔ガ餘リ重過
ギル、拂戾ノ步合ガ非常ニ少クナル、殊
鍛鍊競走ニ於ケル影響ハ一層甚ダシイト思
フノデアリマス、サウナリマスルト、玆ニ
一番問題ニナリマスルノハ、ノミ屋行爲ト
云フモノガ非常ニ跋扈シテ來ル虞ヲ持ツノ
デアリマス、俗ニ今日マデ稱スル公認競馬
ニ於キマシテハ、先ノ控除額ト今囘課セラ
レル稅金トヲ加算致シテ見マスルト、大體
ニ於テ一囘百分ノ三十以上ニナルカモ知レ
マセヌ、又鍛鍊競走ノ方ニ於キマシテハ百
分ノ三十五乃至六、七ニナルノデアリマス、
是ガ所謂稅金トナリ、控除額トナツテ、重
イモノガ行ハレマスト、ノミ屋ハ之ヲ免レ
ントスル意味ニ於キマシテ法律ノ下ヲ潜ツ
テ、色々巧妙ナル手段ニ依ツテ此ノノミ屋
行爲ヲ行ツテ、競馬主催者ト同樣ノコトヲ
ナスノデアリマス、斯樣ナ者ハ今日マデデ
アリマシテモ各所ノ競馬場ヘ現ハレマシテ、
年々檢擧セラレル數ニ於キマシテモ、夥シ
イ數ニ上ツテ居ルノデハナイカト考ヘラレ
ル、又此ノノミ屋行爲ト云フモノノ檢擧ガ
非常ニ困難デアリマシテ、其ノ取締上ニ於
キマシテモ容易デナイノデアリマス、此ノノ
ミ屋行爲ガ跋扈シマスルト、當然買得スベ
キ金額ニ影響ヲ致シマシテ、其ノ影響ハ軈
テハ國庫ノ收入ヲ減少シ、又政府納付金ヲ
減少シ、又此ノ馬事施設ノ爲ニ行ヒマスル
所ノ、今日マデハ軍用保護馬中央鍛鍊會ト
云フ團體ガアリマスガ、ソレニ納メマスル
金モ減退スル、斯ウ云フ結果ヲ來スノデア
リマス、サウデアリマスルカラ、此ノノミ
屋行爲ト云フモノハ、ドウシテモ完全ナル
取締ヲナスニアラザレバ、折角玆ニ新稅ヲ
設ケラレマシテ此ノ馬劵稅ヲ賦課スルコト
ニナリマシテモ、國家ノ目的ハ達成シナイ
ト云フ結果ニ陷ルノデアリマス、其ノ點ニ
付キマシテ今日マデノ內務省ノ取締ノ現狀
ヲ見マスルト、隔靴搔痒ノ歎ガアリマシテ、
今後ニ於キマシテモ尙ホ此ノ取締上ニ吾々
ハ疑ヒヲ持ツノデアリマス、仍テ內務省ハ
是等ニ對スル取締ヲ如何ニナサル積リデア
ルカ、此ノ點ヲ伺ツテ置キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=7
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008・湯澤三千男
○湯澤政府委員 大石サンハ競馬ナリサウ
云フ馬ノ方ニ付テハ非常ナ專門家デ、私共ハ
サウ云フ方面ノ知識ヲ餘リ持ツテ居リマセ
ヌガ、恐ラクハ御答ヘヲ申上ゲルコトガ不
滿足デハナイカト考ヘルノデアリマスケレ
ドモ、此ノ馬劵稅ト云フモノヲドノ位ノ程
度ニシタラ宜カラウカ、此ノ課稅ノ仕方ニ
依ツテハ、或ハ競馬ニ關係ノアル、趣味ヲ
持ツテ居ル連中ガ裏面ノ行爲ノ方ニ走ツ
テ、ノミ屋ノ方ニ誘惑サレル場合ガ非常ニ
多クナリハシナイカ、サウスルト折角ノ課
稅ノ目的ガ達セラレナイト云フ虞ガアリハ
シナイカ、斯ウ云フ點ガ一ツアルト思フノ
デアリマスガ、ソレニ付テハ一體內務省自
體ノ取締ガ非常ニ難カシクナツテ來ル、詰
リ稅ガ上レバ上ル程ノミ屋行爲ガ多クナツ
テ來ルト云フ結果ニナツテ來テ、取締ノ厲
行ガ中々難カシイヂヤナイカ、然ラバ其ノ
取締ヲドウ云フヤウニシテ目的ヲ達成スル
カ、斯ウ云ツタ意味ノ御尋ネデハナイカト
思フノデアリマスガ、此ノ稅ノ高サヲドノ
程度ニシタナラバ課稅ノ目的モ十分ニ擧ゲ
得ラレ、而モ脫法行爲ノナイヤウニ出來ル
カト云フ分界點ガアルカモ分リマセヌガ、
是ハ非常ニ難カシイコトノ一ツデアラウカ
ト思ヒマス、唯課稅當局ノ方カラ考ヘテ、
或ル程度ノ課稅ハ此ノ際已ムヲ得ナイ、斯
ウ云フヤウナ標準ガオ立チニナルナラバ、
私共ノ方ト致シマシテハ、假令ソレガノミ
屋行爲ヲ誘發スルヤウナ狀況ニナリマシテ
モ、其ノ取締ノ方ニ厲行スル外致シ方ガナ
イ、是ハ課稅當局ガ御考ヘ下サル外致シ方
ガナイノデアリマス、內務省トシテハ課税
ノ結果、ノミ屋ノ行爲ガ非常ニ殖エルト云
フコトデアレバ、何處マデモ其ノ取締ヲ厲行
致シテ、法律ニ許サレタ範圍ニ於ケル射倖
心ノ滿足ト申シマセウカ、其ノ範圍ニ於テ
ヤツテ貰ハナケレバナラヌ、斯ウ云フ風ニ
私共トシテハ考ヘル譯デアリマス、ソコデ
根本的ノ問題ガ伏在スルヤウニ思フノデア
リマスガ、一體競馬ト云フコトニ依ツテ
人間ノ持ツテ居ル根本的ナ射倖心ヲドノ程
度ニ滿足セシメタラ宜カラウカト云フコ
トデナイカト思フノデアリマス、內務當局
ノ立場カラ申シマシテ、射倖的ナ〓博トカ
富籤トカ色々アルト思ヒマスガ、サウ云フコ
トニ依ツテ風俗ヲ紊シ、或ハ家產ヲ失フト
云フヤウナコトノナイヤウニ、詰リ射倖ト云
フコトハ出來ルダケ吾々トシテハ希望シナ
イノデアリマス、併シ一面馬事思想ノ普及、
或ハ馬ノ育成發達ノ上ニ效果ヲ擧ゲルト
カ、或ハ又貯蓄ノ目的ヲ達スルトカ云ツタ
ヤウナ、色々國家ノ要請ニ應ジテ射倖心ヲ或
ル程度マデ-多少弊害ハアルカモ知レヌ
ケレドモ、防止シ得ルト認メラレル程度マデ
ノ範圍ニ於テ射倖心ヲ利用シテ國家ノ他ノ
目的ヲ達成スル、斯ウ云フコトノ爲ニ、今
ノ競馬トカ或ハ貯蓄債劵等ニ割增金等ガ付
イテ居ルト云フコトガアルト思フノデアリ
やく、私共ノ方カラ考ヘマシテモ、ノミ屋
行爲等ヲ誘發スルヤウナ場合ガ必然的ニ生
ズル、是ハ已ムヲ得ナイ、無論餘リ高大ナル
課稅ト云フコトカラ、サウ云フ必然ナ結果ガ
アルノダト云フコトニナリマスト是ハ餘
程〓究シナケレバナラヌ問題ニナルト思フ
ノデアリマスガ、私共ノ立場ト致シマシテ
ハ、課稅當局ニ於テ今日ノ時勢上此ノ程度
ノ課稅ハ國家ノ要請カラ已ムヲ得ナイ、斯
ウナツテ居リマスル結果、假ニソレガノミ
屋行爲ヲ生ズルノダト云フ結論ニナリマシ
テモソレハドウモ致シ方ガナイ、吾々ト
シテハサウ云フ法ニ許サレナイ射倖ノ目的
ヲ達スルヤウナ行爲ハ、嚴重ニ取締ツテ行
クヨリ致シ方ガナイ、斯樣ニ考ヘル次第デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=8
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009・大石倫治
○大石(倫)委員 湯澤次官ノ御說明ハ當然
ノ御答ヘダト存ジマス、併シ私ハ只今競馬
ニ對スル內務省ノ觀察ト云フカ、考ヘト云
フモノヲ伺ヒタイト言ウタノハ、只今ノ御
答辯中ニ現ハレテ居ル點デアリマス、其ノ
點ハ後カラ申シマスガ、ノミ屋ノ取締ト云
フコトハ、サウ簡單ニ法ノ許ス範圍ニ於テ
取締ルト云フダケデハ取締リ難イ隱密ナル
取引ガ行ハレテ居ル、只今次官ハ私ハ馬ニ
ハ云々ト申サレマシタガ、實ハ私ハ此ノ競馬
ニハ直接ニモ間接ニモ殆ド關係ヲ持ツテ居
リマセヌ、唯偶〓地方ノ馬ノ生產、或ハ地方
馬事團體ニ關係ヲ致シテ居リマシテ、普通
ノ人ヨリハ早ク詳細ニ知リ得ルト云フ立場
ニ居ルニ過ギナイノデアリマスガ、內務省ニ
ハ統計ガアルカナイカ分リマセヌガ、私ノ
少シ調ベマシタ所ニ依ルト、現行ノ公認競
馬、是ハ全國十一箇所デアリマスガ、其ノ
十一箇所ノ各地ニ於テ行ハレテ居リマスル
ノミ屋行爲ト云フモノハ、實ニ多數ニ上ツ
テ居リマシテ、既ニ內務省系統ノ取締ニ依
ツテ檢擧ヲセラレマシタモノハ、一昨年ノ
調ベニ依リマスルト、一千七百件アル、是
ハ競馬場內ニ於ケル檢擧件數デアリマシテ、
其ノ他ニ場外ニ於テ尙ホ此ノノミ屋行爲ガ行
ハレテ居リマシテ、ソレ等ノ檢擧件數モ或
ハ百件近イモノガアリハシナイカト思フノ
デアリマス、現行法ニ於テスラモ斯クノ如
キ多數ノノミ屋行爲ガアリマシテ、尙ホ檢
擧セラレザル、免レテ居ル者ハ殆ド其ノ數
ヲ知ラヌト云フ程デナイカト思フノデアリ
マシー、檢擧セラレマシタ者ニシテ處罰セラ
レタ者モ、或ハ六百件、或ハ一千件ト云フ
ヤウナモノデ、處罰セラレタル者、或ハ起
訴中止ニナツタモノ、色々アルヤニ聞イテ
居ルノデアリマスガ、何レニシテモ此ノノ
ミ屋行爲ト云フモノハ容易ニ發見シ難キ狀
態ニ置カレテ居ルノデアリマス、此ノノミ
屋行爲ノ跋扈ト云フモノハ競馬ノ盛衰ニ關
係ヲ持來スコトニモナリハシナイカ、斯ウ
云フ新稅ガ賦課セラレマシテ、其ノ重サガ
更ニ加ハツテ參リマスレバ、一層此ノノミ
屋行爲ヲ行フ者モ、又ソレニ應ズル者モ大
變利益ニナルノデアリマスカラ、是ハバレ
サヘシナケレバ、其ノ方デヤル方ガ非常ニ
利益デアルト云フ關係上起ツテ來ルト思ハ
レマス、サウ云フヤウナ違反ヲ致シマシタ
者ノ罰則ハ、懲役二箇年以內、五千圓以內ノ
罰金ト云フヤウナ非常ニ重イ刑デアリマス
カラ、之ヲ檢擧シ、之ヲ處罰スルト云フ際
ニ於キマシテモ、又或ハ殘酷ニ過ギルト云
フヤウナ嫌ヒナシトモシナイノデアリマス、·
此ノ重イ罰則ガアルニ拘ラズ行ハレマスル
行爲デアルダケニ、中々巧ミニ、中々現ハレ
ナイヤウニ出來テ居ル、又ソレニ引ツ掛ル
者ハ相當ノ身分ノ者、相當ノ地位ノ者ガ引ツ
掛ツテ、罰スルニ忍ビナイト云フヤウナコ
トモ出テ參ルノデアリマス、デアリマスル
カラ、是等ノ取締ニ付テハ、更ニ一段ノ御
〓究ト設備トヲ希望致スノデアリマス
尙ホ只今内務次官ハ、競馬ノ射倖心ト云
フコトヲ屢〓仰セラレマシタガ、此ノ競馬ニ
對スル一般觀念ニ於キマシテモ、又取締當
局ノ建前ニ於キマシテモ、政府關係方面ノ
建前ニ於キマシテモ、動モスルト競馬ニ對
スル觀點ニ誤リヲ生ジテ居ルト私ハ思フノ
デアリマス、競馬ハ一種ノ賭博的ノモノデ
アル、射倖心ヲ挑發スルモノデアル、唯徒
ラニ遊興スルモノデアル、斯ウ云フ考ヘノ
下ニ競馬ニ對シテ居ルノハ今日ノ社會ニ於
ケル通弊デアリ、又取締方面ニ當ル方々ノ誤
リデアルト思フノデアリマス、今日ノ競馬
ト云フモノハ左樣ナ賭博的ノモノデハナイ、
又射倖心ヲ滿足セシムルモノデモナイノデ
アリマス、是ハ大藏大臣、農林大臣ガオイ
デニナツテカラ御尋ネシヨウト思ツテ居ツ
タノデアリマスガ、內務當局ニ對シテモ申。
上ゲテ置カナケレバナラナイ、競馬法ノ第
十條ニハ「日本競馬會ハ法人トシ馬ノ改良
增殖及馬事思想ノ普及ヲ圖ルヲ以テ目的ト
ス」ト規定サレテ居ル、又昭和十四年內地
馬政計畫ガ陸軍省ノ指導ノ下ニ決定ヲセラ
レマシテ、其ノ內地馬政計畫實施要綱等
ガ發表セラレタノデアリマス、其ノ要綱ノ
中ニ、第四ノ四項ニドウ書イテアルカト申
シマスルト、競馬法ニ依ル競馬ハ馬ノ改良
ニ必要ナル種馬ノ能力ヲ檢定シ種馬ノ取得
ヲ容易ナラシムル如ク實施シ併セテ馬事思
想ノ普及ニ資ス、斯ウアリマス、更ニ內地
馬政計畫實施要綱第三ノ四ニハ、競馬法ニ
依リ競馬ニ所要ノ改善ヲ加ヘ種馬選定上其
ノ機能ヲ發揮スルニ遺憾ナカラシム、斯ウ
明記セラレテ居ルノデアリマス、又軍馬資
源保護法ノ第一條ニハ「本法ハ國防上特ニ
必要トスル馬ノ資質ノ向上ヲ圖リ軍馬資源
ノ充實ヲ期スルコトヲ目的トス」ト、其ノ目
的ガ明記セラレテ居ルノデアリマス、ケレ
ドモ鍛鍊競走ニ對シテモ公認競馬ニ對シ
テモ馬劵ガ伴ウテ居リマスルノデ、其ノ馬
劵ノ的中配當標準ハ最高馬劵ノ金額ノ十倍
ニ制限セラレテ居ルノデアリマスルケレド
モ、十倍マデノ拂戾ヲ受クルト云フ關係ガ
兎角世間ノ射倖心、或ハ賭博心ノ挑發ノ如
クニ誤解セラルルノデハナイカト思フガ、
今日競馬ト云フモノハ徒ラニ唯觀覽ヲサ
セ、遊興心ヲ滿足サセル、或ハ馬劵ヲ買ツ
テ射倖心ヲ滿足サセルト云フヤウナ建前ノ
下ニハ決シテ出來テ居ナイノデアリマス、
此ノ競馬ノ目的トスル所、鍛鍊馬競走ノ目
的トスル所ハ、此ノ法律及ビ內地馬政計畫
ノ明文ニ明記セラレテ居ルヤウナ次第デア
リマシテ、活動ヤ芝居ヤ輕業ヲ見ルヤウナ
モノトハ同一視スルコトハ出來ナイノデア
リマス、殊ニ射倖心々々々ト申シマスケレ
ドモ、今日ノ競馬ノ的中ノ如何ハ、是ハ單ナ
ル僥倖デハナイノデアリマス、僥倖デハ中々
駄目ナノデアリマス、科學的ニ〓究ヲ致シマ
シテ、アノ馬ハ何秒間ヲ以テ何「メートル」ヲ走
ル、アノ馬ノ今日ノ榮養狀態ハドウデアルカ、
今日ノ天氣ハドウデアルカ、馬場ノ工合ハドウ
デアルカト云フヤウナ、實ニ緻密ナル所ノ〓究
調査、凡ユル科學的ノ綜合的關係ニ依ツテ、
此ノ馬ガ果シテ當籤スルカ或ハ落伍スルカ
ト云フヤウナコトノ判定ヲ致シテ今日馬劵
ト云フモノヲ多ク購買セラレテ居ルノデア
リマス、ソレハ單純ナル僥倖ヲ期シテ行ツ
テ。ハ、偶〓當ルモノモアルカ知レマセヌケ
レドモ、左樣ナモノデハナイノデアリマス、
餘程馬ニ對スル所ノ〓究、馬ニ對スル所ノ
趣味、馬ニ對スル所ノ調査ト云フモノガ行
屆イテ居ラナケレバナラヌ、第一ハ系統ヲ
質シマス、父母ノ系統、更ニ祖父母ノ系統、
サウ云フ科學的調査〓究ノ結果ニ依ツテ輸
贏ヲ爭ツテ居ルト云フヤウナ實情デアリマ
ス、今日ハ政府ニ於テスラモ十圓ノ債劵ニ一
万圓ノ懸賞ヲ付ケテ居ル、斯ウ云フモノハ
如何ナル〓究ヲシマシテモドウシテ當ルカ
ト云フ〓究ハ出來マセヌ、是コソ本當ニ射
倖的、僥倖的デアル、永ク勸業銀行ニ於テ
扱ツテ居リマスル債劵ノ三千圓、五千圓ノ
當リ籖ト致シマシタ所デ、債劵ノ系統ヲ〓
究シタリ、能力ヲ〓究シタリシテヤル譯ニ
ハ參ラヌノデアリマス、是等ハ眞ノ射倖或
ハ僥倖ヲ目的トスルト申シテモ差支ナイノ
デアリマスケレドモ、競馬ニ對シテハ普通
ノ人ノ觀察シテ居ル如キ左樣ナ不眞面目ナ
モノデハナイノデアリマス、偶〓素人ガ面
白サウダカラト云フノデヤル者モソレハア
ルデアリマセウ、ケレドモ今日苟クモ競馬
ニ行ツテ、憂身ヲ窶シテヤツテ居ル者ハ實
ニ能ク〓究シテ居ル、吾々ハ寧ロソレ程ニ
〓究ヲシ苦心ヲシテ居ルノニ驚カサレルノ
デアリマス、斯ウ云フ時代ニ於キマシテ内
務當局取締ノ上ニ於キマシテモ、馬ハ單純
ナル遊興的ノモノデアル、競馬ハ單純ナル
射倖心ヲ滿足サセルモノデアルト云フ見地
ニ立ツテ取締ヲセラレマスルナラバ、今日
ノ馬ノ日本ニ於ケル使命、役割、國防上ニ於
テモ產業上ニ於テモ、運輸交通ノ上ニ於キ
マシテモ、日ニ益〓、重キヲ加ヘテ居ル時ニ
於キマシテ、洵ニ遺憾ナコトデアルト私ハ
考ヘルノデアリマス、今日馬劵稅ニ對シテ
質問ヲ致サントスルノモドウ云フ建前ニ於
テ此ノ新課稅ガ行ハルルカ、競馬ニ對スル
觀念、競馬ニ對スル觀察、ソレ等ノ點ニ吾
吾馬事ニ關係シ、日夜日本馬政ノ爲ニ苦心
ヲ致シテ居リマスル者ノ納得シ得ル點ニ到
着シテ居ルカ如何ヲ御尋ネシタイト云フ點
ニ、私ノ質問ノ重點ガアルノデアリマス、
斯樣ナ次第デアリマスカラ此ノ取締ヲスル
ニ當リマシテハ、不正行爲ヲ致ス者ノ取締
ヲナシテ戴クコトハ勿論デアリマスケレド
モ、一般取締ノ上ニ於キマシテモ、餘程此ノ
點御注意ヲ願ヒタク存ズルノデアリマス
之ニ對シマシテ一點御尋ネヲ致シタイコ
トハ、ノミ屋ノ行爲ハ只今申シマスル如キ態
度ヲ以テ御取締ヲ願フコトト致シマシテ、更
ニ一般「ファン」ノ取締ニ關スル點デアリマス、
支那事變ノ勃發前ニ於キマシテハ、左程苛
烈ナル虐待ハ行ハレテ居ナカツタノデアリ
マンク、相當遺憾ナ取締ガアツタヤウニモ見
受ケルノデアリマスガ、支那事變勃發後ニ
於ケル所ノ競馬ニ對スル取締ニハ、私ハ洵
ニ遺憾ナ點ヲ目擊見聞ヲ致シテ居ルノデア
リマス、一ツノ例ヲ申シマスト、一昨昨
年ヨリ一昨年ニ掛ケテ、福島競馬ニ於ケル
場外或ハ場內ニ於ケル「ファン」ニ對スル
警察官ノ取締ハ、洵ニ非常識極マツタモノ
デアル、人權蹂躪ニマデ立至ツテ居ルノデ
ハナカラウカト私ハ存ジタノデアリマス、
私ハ競馬場ニハ久シク立入ヲシテ居リマセ
ヌケレドモ、餘リ福島縣ニ於ケル取締ノ非
常識ナルコトヲ聞キマシテ、ドウ云フ實情
デアルカヲ取調ベル爲ニ、一昨年態々私ハ
福島マデ參ツテ、能ク調査ヲシテ檢分ヲ致
シタノデアリマス、ソレ等ニ付テ見マスル
ト實ニ驚イタ、競馬「ファン」ニ對スル警察官
ノ態度ハドウ云フ態度デアルカ、非國民扱
ヒデアル、先ヅ其ノ一端ヲ申シマスルト、
福島ノ停車場ヘ他府縣カラ競馬ニ來ル、自
動車ヲ一切用ヒテハナラヌ、乘物ヲ非常ニ
制限ヲスル、一本ノ彼處ニ不完全ナルヨタ
ヨタ電車ガアリマシテ、ソレヲ賴リニ致シ
マシテ餘程遠イ競馬場マデ往復ヲ致シテ居
ルサウ云フコトハマダシモ宜シイ、今度
ハ辨當ノ如キモ衞生、體力ニ關係ノアル供
給上ニ付キマシテモ、非常ニ嚴重ナル取締
ヲ受ケテ居ツタノデアリマス、サウ云フコ
トハマダシモ支那事變ト云フ時局ニ鑑ミ
テ已ムヲ得ザルモノト致シマシテモ、甚
ダシキハ旅館ニ於ケル取締デアリマス、是
ハ全ク人權蹂躙同樣デアツテ、現ニ馬政局
或ハ陸軍省ノ臨監ノ人デスラモ檢査ヲ受ケ
タ、時刻ハ九時、十時或ハ十一時ト云フヤウ
ナ時間ニ、飯坂溫泉ノ宿屋ニ多ク泊ツテ居リ
マスガ、其ノ宿屋へ警察官ガ出張致シマシ
テ、競馬ニ來テ居ルヤウナ者ヲ寢床カラ引
出シテ一齊ニ廊下ニ立タセ、住所姓名懷ロ
ノ蟇口ノ中ヲ全部檢査シテ、四十圓、五十圓
位シカ持ツテ居ラナイト、オ前何シニ來タ、
是位ノ金シカ持タナイデ馬劵ヲ買フトハ不
屆キダ、歸ヘレト云ツテ歸ヘシテ居ル、餘
リ多ク金ヲ持ツテ居ルト、ドウ云フ譯デコ
ンナ大金ヲ持ツテ居ル、是ハ不正ナコトヲ
ヤツタノヂヤナイカ、警察へ來イト云フヤ
ウナ始末デアリマス、ソレハ實ニ非常識デ、
是デモ日本國民トシテ扱ツテ居ルノカト云
フヤウナ節ガ數ヘ切レナイヤウニ澤山アツ
タノデアリマス、斯ウ云フ取締ハ何ノ爲
ニスルカト云フト、詰リ競馬ニ對スル觀念
ニ誤リガアル、競馬ト云フモノハ無用ノ長
物デアル、唯遊興ノ爲ニヤルモノデアル、
射倖心ヲ滿足サセル爲ニヤルモノデアル、
左樣ナモノハ盛ンニシテハ相成ラヌト云フ
ヤウナ建前カラ、斯ウ云フ取締ガ行ハレテ居
ルノデハナイカト思フノデアリマス、斯ウ云
フ點ニ付キマシテハ、獨リ福島ニ限ラズ相當東
京方面ニ於キマシテモ乘物ノ禁止デアルト
カ、或ハ〓物ノ制限デアルトカ、色々ナル取
締上ノ苛酷ナルモノガ近來行ハレテ居ルノ
デアリマシテ、國民自ラ肅正シテ行クコト
ニナリマスルナラバ喜バシイノデアリマス
ガ、官憲ノ力ヲ以テ斯樣ナモノヲ無理抑ヘ
ニ抑ヘルト云フコトハ餘リヤルベキコトデ
ハナイト思フ、縱令戰時非常時下デアリマ
シテモ、人間ニ一體何處マデモ緊張サセテ、
何處マデモ尻ヲ叩イテ働カセルバカリガ國
家ノ爲ニナルモノデハナイト思フ、寛嚴宜
シキヲ得ナケレバナラヌ、人間ト云フモノ
ハドナタデモ同樣デアリマシテ、年カラ年
中緊張シテ、年カラ年中叩カレ通シデ行ツ
テハ堪ルモノデハアリマセヌ、人間ノ精根
ニハ各々限度ガアル、時ニ緩メ、時ニ締メ
寛嚴宜シキヲ得テ初メテ人間ノ能力ト云フ
モノガ完全ニ發揮スルコトガ出來ルモノデ
アラウト思フ、然ルニ近時動モスルト徒ラ
ニ國民ヲ强ヒテ緊張サセ、サウシテ鞭撻ノ
ミシテ緩ミヲ吳レナイト云フヤウナ風ガア
ルノデアリマスガ、此ノ競馬ニ對シテモ同
樣ノ觀點ニ立ツテ居ラレルデハナイカト思
フ、競馬ハ固ヨリ樂シミデアリマス、馬劵
ヲ買ツテ當レバ愉快デアリマス、サウ云フ
ノハ一ツノ遊興ニモ樂シミニモナル、其ノ
間ニ自ラ馬事思想ノ普及、馬ニ對スル觀
念又馬事、馬政ノ指導ノ上ニ非常ニ有效
ナノデアリマス、然ルニ、ソレヲ年中貴樣遊
ビニ行クノデアル、サウ云フコトハシテハ
相成ラヌト云フヤウナ建前ノミヲ以テ取締
ラレルコトハ餘リニ親心ノナイコトデハナ
イカ、競馬ヲヤル者カラ色々話ヲ聞イテ居
リマスガ、今年ハ中山ノ競馬、今年ハ府中
ノ競馬、一遍行ツテ一ツ競馬ヲ見ヨウ、馬
劵ヲ買ツテ見ヨウト云フノデ、年中一生懸
命ニナツテ馬劵ヲ買フ爲ニ準備ヲシテ、辛
抱ヲシテ相當ノ金ヲ掛ケテ、初メカラカヲ
入レテ居ル、(「ソレガ弊害ダ」ト呼ブ者アリ)ソ
レガ弊害デナイ、一生懸命ニ働イテソレダ
ケノ餘力ヲ生ジテ行ツテ、一日ナリ二日ナ
リ樂シンデ來ル、ソコニ自ラ浩然ノ氣モ養
く らソコニ自ラ人間ノ、軈テ緊張ヲスル
所ノ、伸ビントスル所ノ準備ガ出來ルノデ
アリマス、サウ云フヤウナコトモ御考ヘ下
サイマシタナラバ、此ノ取締ニ付テ相當ノ
御手加減ガアツテ然ルベキモノデアラウト
思フノデアリマスガ、今後是等ニ對スル取
締ニ付テノ內務省ノ御意向ヲ伺ヒタイト思
フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=9
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010・湯澤三千男
○湯澤政府委員 今大石サンノ御話ノ中ニ
色々ノ御意見ガアリマシタガ、國民ニ一ツ
ノ娛樂ヲ與ヘテ、緊張ダケヂヤイケナイ、
時ニハソレヲ緩メテ更ニ大ナル緊張ヲ起サ
セル、斯ウ云フコトハ勿論非常ニ必要ナコ
トト思ツテ居リマス、此ノ間モ東條總理大
臣自身ガサウ云フヤウナコトヲ述ベラレテ
居ル位デアリマシテ、是ハ何等異議ハナイ、
唯今ノ國民ノ緊張ヲ解ク、或ル意味ニ於テ
ハ、或ル程度ノ滿足ヲ得サセルト云フヤウ
ナコトニ、競馬ガ宜イカドウカ、斯ウ云フ
コトノ問題ニナツテ來ルト思フノデアリマ
ス、ソレカラモウ一ツハ、此ノ競馬ト云フ
モノニ付テノ御見解ノ中ニ、私ハ競馬其ノ
モノノ目的ガ射倖心挑發ノ目的デアル、斯
ウ云フ風ニハ考ヘテ居ラナイ、今御述べニ
ナリマシタヤウニ馬事思想ノ普及トカ、畜
產ノ奬勵トカ云フヤウナ大キナ國家目的ヲ
達成シタイ、斯ウ云フ目的ニアルコトハ疑
ヒナイノデアリマスガ、其ノ手段ニ、射倖
心ヲ或ル程度マデ滿足サセルト云フ、其ノ
手段ヲ利用シテ居ル、斯ウ云フ風ニ申上ゲ
タノデ、勿論射倖心ヲ國家ガ滿足サセル目
的デ競馬ヲヤツテ居ルト云フヤウナコトガ
アルベキ筈ハナイト思フノデアリマス、ソ
レデ御話ノ射倖心デハナイ、是ハ純然タル
〓究、或ハ興味本位、斯ウ云フヤウナ點デ
ハナイカドウカト云フ點ガ起ツテ來ルト思
ヒマスガ、私ノ方デ調ベマシタ最近十年位
ノ狀況ヲ見マシテモ、競馬「ファン」ト申シマ
スカ、ソコニ殺到シテ參リマスル人間ノ數
ガ、段々大キクナツテ參ツテ來テ居リマス、
私ノ持ツテ居リマス統計ヲ見マスルト、昭
和七年ニハ全國ノ公認競馬ニ於ケル入場人
員ガ八十八万、ソレガ此ノ十三年、支那事
變ニ入ツテカラ後デアリマスケレドモ、一一
百二十万、金額ニ致シマスルト昭和七年ニ
ハ六千七百万圓-是ハ競馬投票劵ノ購入
金額デアリマス、ソレガ十三年ニナリマス
ルト一億六千萬圓、斯ウ云フヤウナ譯デ非
常ナ增加デアリマスガ、是ハ大石サンノ御立
場カラ言ヘバ非常ニ滿足スベキ、狀況ト云
フコトガ言ヘルカ分リマセヌガ······(笑聲)
ソコデ競馬ノ弊害デアリマスケレドモ、斯ウ
云フ風ニ入場人員ガ非常ニ增加セラレ、又
金額モ殖エテ參ルト云フヤウナコトニ伴ヒ
マシテ、大石サンノ御話ノヤウナコトニモ
關聯ガアリマスガ、犯罪ヲ犯スト云フヤウ
ナ事態ガ非常ニ起ツテ參リ、又色々風俗上
ノ弊害ヲ起シテ居ル、ソレデ此ノ十年間位
ニ競馬カラ生ジマシタ色々ナ弊害ヲ擧ゲテ
見マスルト、中々容易ナラザル弊害ガアリ
マス、家庭カラ言ヘバ倒產シタモノ八十六件、
一家離散シタルモノ五十五件、生計困難ニ陷
リ、家庭不和トナリタルモノ六十三件、自殺シ
タルモノ十四件、コンナ數ガアリマスシ、犯罪
ヲ慣行シタル件數ハ、是ハ非常ニ大キナ件
數デアリマシテ、詐欺ガ千三百件、橫領ガ五
十件、恐喝ガ三十三件、窃盜ガ三百七十五
性競馬法規則違反、競馬ニ直接關係ノア
リマス犯罪デアリマスルガ、是ガ九千件ト
云ツタヤウナ風ニ、犯罪ヲ慣行スル事件ガ
非常ニ多クナツテ來テ居ル、其ノ中ニハ競馬
「ファン」ト稱スル熱狂的ナモノガ居リマシテ、
其ノ熱狂的ナモノガ、一面ニ於テハ唯普通
ノコトダケデハ滿足シナイ、今御述ベニナ
リマシタ十倍位ノコトデハ滿足シナイデ、
更ニ競馬ノ機會ニ於テ賭博ヲスル、サウ云
ツタヤウナコトヲヤラナケレバ滿足ヲ得ラ
レナイト云フヤウナ狀態デ、是ハ競馬→ フ
ン」ニ對スル取締ト云フコトガ餘程問題デア
ル、ソレデ大體ニ於テ今御話ノヤウニ、
年間ニ二百万人以上ノ人ガ殺到スルノデア
リマスガ、此ノ二百万人ト云フ人員ノ中ニ
ハヤハリ今御話ノヤウニ非常ナ專門家ガア
ツテ、馬事思想ノ〓究カラ科學的ナ〓究心
ノ結果、是ハ必ズ勝ツノダト云フヤウナ〓
究心ノ非常ニ旺盛ナ人モアリマセウガ、併
シ大多數ハ中々サウ云フ風ニハ行ツテ居ラ
ヌヤウニ私共承知シテ居ルノデアリマス、
ソコニヤハリ一ツ當レバ非常ニ宜イト云ツ
タヤウナコトデ、或ル程度馬事思想ノ普及
ト云フコトヲ巧ミニ利用シテ射倖心ヲ滿足
サセル、サウ云ツタヤウナ見解ニ付テハ內
務省トシテハ取締ル、ソレハ或ル程度ノ射
倖心ノ滿足ト云フコトヲ利用スル方法デア
ル、目的デハナイケレドモ、手段デアル、
此ノ手段ガ尙ホ度ガ過ギルトソレハ非常ナ
弊害ヲ生ズルコトニナリマスノデ、ヤハリ
十倍位ノ所デ止メテ置イテ、サウシテ其ノ
間ニ之ヲ利用シテ成ベク弊害ノ少イ範圍デ
馬事思想ノ普及ヲ圖ル、私共トシテハ斯樣
ナ見解ヲ取ツテ居ル譯デアリマス、唯御話
ノヤウニ取締ノ上ニ非常ニ苛酷ナヤリ方ヲ
スルト云フコトハ餘程愼マナケレバナラヌ
ノデアリマスカラ、大體ニ於テ犯罪ヲ犯サ
ナイヤウニ取締ヲ勵行スルヤウニ、政府ニ
於テハ極力地方ニ對シテサウ云フ方針ヲ示
シテ居リマシテ、例ヘバ競馬場ニハ色々「ポ
スター」ナドヲ貼リマシテ犯罪ニ陷ラナイ
ヤウニ、法律ニ許サレタル範圍ニ於テ出來
ルダケ競馬ニ興味ヲ持タセル程度ニ止メテ
置ク、斯ウ云ツタヤウナコトニ出來ルダケ
努力ヲシテ居リマスガ、併シ今御話ノ中ニ
アツタ福島縣ノ話ノヤウニ、隨分行過ギタ
例モナイトハ私共保シ難イノデアリマスガ、
或ハ御話ノヤウナコトガアリマスナラバ
是ハ人權ヲ尊重スルト云フ上カラ行キマシ
テモ、十分注意シタイト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=10
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011・大石倫治
○大石(倫)委員 內務省ニ對シマシテハ、
今御尋ネシタ程度ニ止メテ置キマス、次官
ノ穩健ナル御考ヘガ一般取締ノ上ニ現ハレ、
且ツ完全ナル取締ニ依リマシテ、新課稅ノ
目的ガ達セラレルヤウニ御取計ラヒヲ願ヒ
タイト思ヒマス
次ハ農林省ニ御伺ヒ致シタイノデスガ、
農林大臣ノ御都合ニ依ツテ長官ガ代ツテ御
出席ニナリマシタカラ、御尋ネヲ致シタイ
ト思ヒマス、ソレハ陸軍ト農林、省ノ馬政局
ト兩方ニ御尋ネシタイト思ツテ居ツタノデ
アリマス、兵務局長ノ御出席ヲ願ツテ居リ
マシタガ、マダ御出席ガアリマセヌノデ、
重複スルヤウニナルカモ知レマセヌガ、先
ヅ農林省カラ御伺ヒ致シタイト思ヒマス、
此ノ度ノ新稅ヲ設ケラルルコトニ付キマシテ、
公認競馬ニ對スル收入ノ上ニ影響ヲ來スノ
デハナイカト云フ見解ヲ私ハ持ツテ居ルノ
デアリマス、先刻申述ベマシタ通リ公認競
馬ニ依ツテ年々政府ヘ納付致シテ居リマス
ル金額ハ少カラザル金額ニ上ツテ居ルノデ
アリマス、此ノ納付金ハ法律ノ上ニ其ノ四
分ノ三ヲ下ルコトヲ得ズ、四分ノ三以上ヲ
馬車ノ爲ニ使用セネバナラヌ關係ニナツテ
居ルノデアリマス、隨テ今日マデ納付セラ
レマシタル金ハ一部社會事業タル救護費ニ
振向ケラレマシテ、大部分ハ一旦政府ノ國
庫ニ入リ、更ニ馬事馬政ニ關スル費目トシ
テ政府ヨリ農林省ニ支出セラレ、ソレニ依
ツテ我ガ日本ノ馬事馬政ハ大體司ラレテ參
ツテ居ルノデアリマス、只今內務省ノ方ニ
御伺ヒシタイト思ツテ居タノデスガ、急ガ
レテ居リマシタノデ申上ゲマセマデシタガ、
大正十二年競馬法ガ制定實施セラレテ以來、
今日マデニ政府ニ納付シタル金ハ相當ノ金
額ニ上ツテ居リマスガ、支那事變勃發ノ昭
和十二年ヨリ昭和十六年ニ至ル五年間ノ政
府納金ヲ見マスト、一億六百十二万圓ニ上
ツテ居リマス、而シテ政府ガ馬ノ爲ニ出シ
テ居ル所ノ豫算ハドレダケデアルカト申ス
ト一億三千八十一万二千圓デアリマス、
サウスルト此ノ競馬納付金ト政府支出ノ總
額ト比較シテ見マスルト、過去五年間ニ於
テ政府ノ支出シテ居リマスル金ハ僅カニ二
千四百万圓ニ過ギナイ、而モ一年ノ豫算ハ
ドレ程デアルカト申セバ、昭和十二年度ニ
於キマシテハ八百八十四万七千餘圓、十三
年度ニ於キマシテハ千三十九万八千圓、十
四年度ニ於キマシテハ二千七百八十四万四
千圓、十五年度ニ於キマシテハ三千九百四
十四万六千圓、十六年度ニ於キマシテハ四
千四百二十七万九千圓ト云フ豫算ニナツテ
居ルノデアリマス、年々增額致シテ居リマ
ス、此ノ馬事、馬政ニ關スル豫算ニ伴ヒマ
シテ、競馬ノ納付金ト云フモノハ增額ヲ致
シテ居ツテ、昭和十二年ニ於キマシテハ、
政府ヘ納付致シマシタ金額ハ九百七十三万
一千餘圓、十三年ニ於キマシテハ一千二百
三十万六千餘圓、十四年ニ於キマシデハ二
千百六十万九千餘圓、十五年ニ於キマシテ
ハ二千八百六十八万四千餘圓、十六年ニ於
キマシテハ三千三百七十九万四千餘圓、斯
樣ナ增額デアリマス、先刻內務次官モ御話
ニナリマシタガ、年々殖エテ行クノダ、隨
テ此ノ入場人員ノ殖エルコトニ依ツテ賣上
金ト云フモノモ殖エ、賣上金ノ增加ニ依ツ
テ政府納付金ト云フモノガ殖エテ參ツテ居
ルノデアリマス、過去五箇年ニ於キマシテ
馬ノ豫算ハ飛躍的ニ膨脹ヲ致シテ參ツタノ
デアリマス、何故ニ斯樣ニ膨脹ヲシタカト
云ヘバ、其ノ一番ノ原因ハ馬匹生產改良ノ
上ニ支出ノ殖エマシタノハ勿論デアリマス
ケレドモ、ソレヨリモモツトハツキリト此
ノ豫算ノ非常ナ膨脹ヲ致シタノハ昭和十四
年デアリマス、卽チ軍馬資源保護法ガ制定ヲ
セラレマシテ、此ノ軍馬保護法ニ依ツテ馬
ノ普通鍛鍊、鍛鍊競技、鍛鍊競走ト云フ三
種目ノ鍛鍊方法ガ定メラレ、殊ニ普通鍛鍊
ニ依ル所ノ全國ニ於ケル馬ノ數ト云フモノ
ハハツキリト申上ゲルコトハ出來ナイノ
デアリマスケレドモ、非常ニ多數ニ上ツテ
居リマスノデ、是等ニ對スル諸經費、助成
費其ノ費目ガ政府ニ於テ計上セラルルコト
ニナリマシテ、十三年ノ一千三十九万圓ノ
豫算ガ二、七倍ノ二千七百八十四万圓ト云フ
高額ニ上ツタノデアリマス、財政上相當ニ
大藏省ハ緊縮方針ヲ採ツテ居ラレル時ニ於
キマシテ、斯樣ナ支出ハ中々容易デナイト
思ヒマスガ、是ハ競馬ノ納付金ニ依ウテ大
體支辨スルコトガ出來テ參ツタモノデアル
コトハ爭フコトノ出來ナイ事實デアルト存
ジマス、斯ウ云フ關係ヲ持ツテ居リマスル
外ニ、中央ニ於ケル馬事團體ノ馬事改良ノ
爲ニ、或ハ生產增殖ノ爲ニ使ヒマスル所ノ
費用ト云フモノモ多イノデアリマスガ、ソ
レ等ニ對スル財源トナリマスルモノハ、ヤ
ハリ此ノ日本競馬會ノ馬劵賣得金ニ依ツテ
生ジタ剩餘金ノ助成ニ俟ツモノガ多イノデ
アリマス、又獨リ中央團體ガ其ノ助成ヲ受
ケテ居ルバカリデナク、全國的ニ公認競馬
ニ依ル所ノ賣得金ノ控除額ノ剩餘ガ如何ニ
日本ノ馬事、馬政ニ寄與シテ居ルカト云フ
コトハ、私ヨリ改メテ申上ゲルマデモナク、
馬政局長官ノ能ク御承知ノコトデアルト存
ジマス、斯樣ニ致シテ參リマシテ、先刻申
シマシタ競馬ノ働キ、鍛鍊競走ノ目的ハ自
ラ明瞭デアルト同時ニ、他面ニ於キマシテ
ハ此ノ賣得控除金ガ、國家ノ馬政ノ爲ニ貢
獻ヲ致シテ居ルノデアリマスカラ、吾々ハ
此ノ競馬ト云フモノヲ保護シ、助長セシメ
テ、ヨリ我ガ馬事界ニ貢獻ヲセシメラレタ
イト念ジテ居ツタノデアリマスガ、此ノ度
大藏省ハ新稅ヲ設ケラレマシテ、之ニ馬劵
稅ヲ課セラレルト云フコトニナルノデアリ
マス、此ノ結果ハ必ラズ此ノ賣得金ニ減少
ヲ來スデナイカト云フ觀察ヲ致シテ居リマ
ス、若シ賣得金ノ減少ヲ來シマスルト、隨
テ高額ノ政府納付金ト云フモノニモ減退ヲ
來スノデアリマシテ、日本ノ馬政ノ上ニ影
響スル所ガ少カラザルモノデアルト存ズル
ノデアリマスガ故ニ、農林省トシテハ之ニ
對シテ、此ノ課稅ヲ御同意ナサル筈ガナイ
ト思ツタノデアリマスガ、時局ガ時局デア
リ、殊ニ此ノ大東亞戰爭ノ財源不足ノ場合、
萬已ムヲ得ザルモノガアツテ、之ニ同意ヲ
セラレタモノデアルト存ズルノデアリマス
ガ、此ノ影響ニ對シテハナシト御觀察ニナ
ツテ居リマスルカ、又アリトシマシテモ、
ソレ等ニ對スル適當ナル處置ヲ講ジ得ルノ
御確信ヲ持ツテ居ラレマスカ、御伺ヒシタ
イト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=11
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012・粟屋仙吉
○粟屋政府委員 只今御述ベニナリマシタ
競馬ノ馬政ニ貢獻シテ居リマスルコトニ付
キマシテハ、私共大石委員ト同ジ考ヘヲ持
ツテ居リマスガ、併シナガラ只今御述ベノ
通リ、此ノ時局ニ於キマシテ戰時財政ヲ强
化スル爲ニ又浮動購買力ノ吸收ト云ツタヤウ
ナ、サウ云フ觀點カラ競馬ニ於キマシテモ
政府ノ方針ニ協力ヲスベキモノト考ヘマシ
テ、私共ノ立場ヨリモ此ノ馬劵稅ヲ取ラレ
ルコトニハ贊意ヲ表シタ譯デアリマス、而
シテソレガ爲ニ賣得金ガ減ジハシナイカト
云フ御心配デアリマスガ、是ハ從來ノ傾向
ヲ見テ居リマスト、年々非常ナ躍進ヲ示シ
テ居ルノデアリマシテ、之ヲ以テ判斷致シ
マスナラバ、今囘稅金ヲ取ラレルコトニナ
リマシテモ、從來通リノ增收ヲ見ルコトハ
困難デアルカモ存ジマセヌガ、先ヅ現狀程
度ノ收入ハ擧ゲルコトガ出來ルト考ヘテ居
ルノデアリマス、其ノ他先程內務次官ニ御
尋ネニナリマシタノミ屋行爲等ニ付キマシ
テハ十分內務省ノ方ニ御願ヒシマシテ、取
締ヲシテ戴ク等ノ方法ヲ用ヒマスレバ大ナ
ル影響ヲ來サナイト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=12
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013・大石倫治
○大石(倫)委員 公認競馬ニ對シテハ大體
左樣ナ御觀察ハ必ズシモ無理トハ存ジマセヌ
ガ、併シ此ノ數字ニ於テ見マスレバ、年々增
加ヲ致シテ居ルノデアリマスルケレドモ、
先ヅ私ノ觀察スル所ニ依ルト、昭和十六年度
ハ我ガ國競馬界ノ飽滿時代デアルト思ヒマ
ス、決シテ是レ以上ノ伸力ハナイト考ヘテ
居ツタノデアリマス、デアリマスルカラ現
狀ノ儘デ之ヲ保護シテ行キマシテ、現狀維
持ヲシテ行クコトガ必要デアルト存ジテ居
ルノニ、更ニ此ノ新タナル課稅ヲ受ケマス
ルト云フコトニナリマスルト、其ノ課稅ハ他
ノ課稅ニ比較シマシテモ、禁止稅程ニハナラ
ヌカモ知レマセヌケレドモ、殆ド禁止稅ト
同樣ナル結果ニ陷ル虞ガアルノデアリマス、
ヤハリ相當是ガ影響スルモノト覺悟ヲセネ
バナラヌト觀察ヲ致スノデアアリマシテ、
斯樣ナ觀點カラ見マシテ、更ニ之ヲ軍馬資
源保護法ノ法律ノ建前カラ考ヘマシテ、此
ノ課稅ハ果シテ適當デアルカドウカト云フ
ヤウナ一ツノ疑ヒヲ持ツテ居ルノデアリマ
ス、軍馬資源保護法ハ只今第一條ノ目的ヲ
申シタノデアリマスガ、支那事變ガ勃發ヲ致
シ、大東亞戰爭ニ移リマシテノ實際ノ現狀
ヲ見マシテモ、馬ハ軍馬トシテ其ノ必要性
ハ益〓重要性ヲ加ヘテ參ツテ居ル、需要ハ益〓、
多クシテ、生產補給ガ之ニ伴ハナイ憂ヒガ
アルノデアリマス、私共常ニ當局ト力ヲ協
セテ我ガ國ノ馬產ノ奬勵增殖ニ微力ヲ致シ
テ居リマスルケレドモ、中々其ノ期待スル所
ニ副ハヌノハ御承知ノ通リデアリマス、ソ
レデ先刻次官ノ申スヤウナ手段トシテ、或
ハ興味ヲ助長セシメ、或ハ一種ノ射倖的ノ
ヤウナモノモ認メテ行ク處ト云フノデセ
ウ、此ノ鍛鍊ニ際シマシテハ、普通鍛鍊、
鍛鍊競技ト二ツノ競技バカリデハ尙ホ馬事
思想ノ普及ノ上ニ、或ハ馬ノ生產利用奬勵
ノ上ニ缺クル所ガアツテ、玆ニ鍛鍊競走ト
云フモノヲ認メテ居ルノデアリマシテ、要
スルニ是ハ軍馬資源トシ、軍馬トシテノ建
前カラ出來タ法律デアリ、其ノ法律ニ依ツ
テ行ハレテ居ル所ノ鍛鍊競技デアリマス、
ソレニ對シテ僅カニ百五十万圓、二百万圓
足ラズノ新稅ヲ取ランガ爲ニ賦課セラレマ
スコトハ、私ハ決シテ適當ナル賦課方法デ
ハナイト思フノデアリマシテ、之ニ對シテ
農林當局トシテハ公認競馬ハ兎モ角、此ノ
軍馬資源保護法ニ依ル鍛鍊競走ニ對スル所
ノ課稅ハ御不同意ノ筈デアルト思ウタノデ
アリマスガ、是等ニ對スル御見解ハ如何デ
アリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=13
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014・粟屋仙吉
○粟屋政府委員 鍛鍊馬競走ニ對スル課稅
ニ對シマシテハ特殊ノ意味ガアリマシテ、
軍馬ノ鍛鍊ト云フコトヲ十分ニ致シマス爲
ニ計晝セラレテ居ルモノデハアリマスガ、併
シヤハリ是ハ彼等トシテ馬票ヲ買フト云フ
餘力ノアル人ガヤハリ此ノ時局ニ當リマシ
テ政府ニ協力ヲスル、戰時財政ニ協力ヲス
ルト云フコトハ是亦公認競馬ト同樣ニ或ル
程度ナスベキデアルト考ヘタノデアリマス、
併シナガラ鍛鍊馬競走ハ其ノ創設モ新シ
ク、極メテ今日マデノ發達日尙ホ淺イモノ
デアリマスカラ、之ニ對シマシテハ課率ニ
於キマシテ、ソレ〓〓公認競馬ヨリ相當低
ク率ヲ決定シテ課稅ヲサレルコトニナツテ
居リ、課稅方法ニ付テモ十分考ヘテ居リマ
スシ、此ノ程度ノモノデアリマスルナラバ、
其ノ發達ヲ强ヒテ阻碍スルモノデハナイト
考ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=14
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015・大石倫治
○大石(倫)委員 馬政局長官ノ課稅率ノコ
トハ、私共ノ考ヘテ居ル所ト餘程違フヤウ
デアリマス、此ノ度ノ馬劵稅ノ表面ニ現ハ
レタル課稅率カラ見マスルト、競馬法ニ依
ル公認競馬ニ對スル課稅率ヨリハ低イノデ
アリマスケレドモ、實際施行シテ居リマス
ル建前カラ見マスト、却テ公認競馬ヨリモ
重クナルノデハナイカ、競馬法ニ依ル課稅
率ハ、馬劵ガ例ヘバ一枚二十圓デアリマス
レバ、二十圓ニ對シテ一圓四十錢ヲ課稅シ、
更ニ的中シタル拂戾金ニ對シテハ、或ル法
令ノ金額ヲ差引キタル殘リニ對シテ百分ノ
二十ノ課稅デアリマス、鍛鍊馬競走ノ方ニ
對シテハ、馬劵三圓ニ對シテ百分ノ四、卽
チ十二錢デアリマシテ、百分ノ七ト百分ノ
四トノ間ニ三ノ差ガアリマス、又的中拂戾
ニ對シマシテハ、一方ハ百分ノ二十デアリ、
鍛鍊馬競走ノ方ハ百分ノ十デアリマスカラ、
其ノ半分ニシカナツテ居ラヌ、仍テ課率ノ
上デハ低イト云フ御見解ガ生ズルノデアリ
マスケレドモ、競馬法ニ依ル公認競馬ノ控
除額ハ百分ノ十八デアリマス、而シテ鍛鍊
馬競走ノ方ノ控除率ハ先ヅ百分ノ二十五以
內トナツテ居リマスカラ、大體百分ノ二十
五ヲ基準トシテ控除シテ居リマス、卽チ十
八對二十五デアリマス、デアリマスカラ、
百分ノ四ト百分ノ十六ヲ鍛鍊馬競走ノ百分
ノ二十五ニ加ヘテ見、一方百分ノ十八ニ對
シテ、百分ノ七、百分ノ二十トヲ加ヘテ見
マスト、率ニ於テ却テ鍛鍊馬競走ノ方ノ負
擔額ガ多クナツテ參ルト思フノデアリマス、
斯ウ云フ關係ト、殊ニ公認競馬ハ全國十一
箇所デアリマス、鍛鍊馬競走ハ未ダ全國ニ
普及ハ致シテ居リマセヌケレドモ、旣ニ三
十幾箇所ガ開催サレテ居ル、一方ハ十一箇
所ニ於テ約二億九千三百八十餘万圓ト云フ
賣上ヲ出シテ居リマスガ、一方鍛鍊馬競走
ノ方ハ三十數箇所ノ賣上トシテ、僅カニ
千五百万圓ニ滿タナイノデアリマス、箇
所ノ賣得金ト云フモノハ極ク僅少デアリマ
シテ、而モ開催地ハ相當ノ費用ヲ要シ、其
ノ控除金ノ中カラ中央團體ニ納付金ヲ致シ
やく、更ニ又納付金ノ半額ハ所在地ニ還元
シテ居ルト云フヤウナ複雜ナコトニナツテ
居ルノデアリマスガ、此ノ鍛鍊馬競走ハ地
方競馬ヨリ鍛鍊馬競走ニ變リマシテ僅カ三
年デアリマシテ、期間モ短イノデアリマス
ガ、中々今日ノ事情ニ於キマシテハ伸ビル
力ハ見出セナイ、殊ニ戰爭ノ戰線ガ段々擴
大セラレマシテ、軍馬ノ所要數ガ增加スル
ニ伴ヒマシテ、地方ノ在馬數ガ少クナリ、
此ノ鍛鍊馬競走ニ出場スル馬ノ數ト云フモ
ノハ段々少クナリマシテ、其ノ經營ガ一層
困難ニ陷ツテ參ルノデアリマス、斯樣ナ時
ニ當ツテ假令課率ガ低シト雖モ、之ニ課稅
スルコトハ自ラ此ノ鍛鍊馬競走ヲ衰微減退
セシメルト存ズルノデアリマス、之ニ對シ
テノ課稅ハ何トカ御取止メ下サル御意向ハ
ナイデアリマセウカ、之ヲ大藏大臣ニ御尋
ネシタイガ、先ヅ馬政局當局ハ此ノ點ノ御
考ヘガアルカドウカ承ツテ置キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=15
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016・粟屋仙吉
○粟屋政府委員 先程述ベマシタヤウナ理
由デ、鍛鍊馬競走ノ方面カラモ此ノ發達ヲ阻
碍セザル範圍ニ於キマシテ、此ノ戰時財政
ニ協力シテ稅金ヲ納メルト云フコトハ此ノ
際適當ダト考ヘテ居ルノデアリマス、課率
ノ點ニ付キマシテハ御意見モアリマシタガ、
全體トシマシテハヤハリ公認競馬ト較ベマ
スレバ少イコトニナルト考ヘテ居ルノデア
リマシテ、此ノ程度ナラバ此ノ發達ニ大ナ
ル支障ハナイト考ヘテ居ルノデアリマシテ、
此ノ課稅ニ對シテ贊意ヲ表シタ次第デアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=16
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017・大石倫治
○大石(倫)委員 大體馬政局長官ニ對スル
質問ハ是デ終リタイト思ヒマスガ、唯心配
スルノハ、一方課稅ニ依ツテ國庫ノ收入ガ增
加致シマシテモ、他方ニ於テ競馬ノ〓微ヲ
致シマスコトハ、政府納付金ヲ減退スルコ
トニナリマシテ、直接馬ノ爲ニ使ハルベキ
法律上ノ費目ガ減リマスコトハ、吾々國防上、
產業上、最モ重大ナル使命ヲ持ツテ居ル所
ノ馬ノ爲ニ心配ニ堪ヘナイノデアリマス、
殊ニ先般馬政局長官ノ御苦心ノ結果成立致
シタ日本馬事會、卽チ馬事團體ヲ統合致シ
マシテ、更ニ馬ノ生產增殖ヲ圖リ、馬ノ資
質ノ向上改良ヲ圖リ、一般馬事思想ノ普及
ヲ圖ラントセラレマス所ノ此ノ日本馬事會
ノ財源ヲ、今日政府ノ補助ヲ俟タズシテ行
カウト云フ建前ニ立ツテ居ル、是ハ當然斯
ウ云フヤウナ中央團體ノ自營、露骨ニ申セ
バヤハリ是モ公認競馬ノ賣得金ノ控除、剩
餘金ニ俟ツ外ハナイト思ヒマスガ、斯ウ云
フコトニマデ影響致シマシタナラバ納付金
ハ減リマス、一方馬政局ノ豫算ハ減ラナイ、
不足ナ分ハ國庫カラ出スト云フヤウナ建前
ニナルコトガ出來マセウカ、此ノ民間ニ於
ケル所謂統制團體ノ運用ガ、是ガ爲ニ僅カ
デモ阻碍サレルヤウナコトガアリマシタナ
ラバ、日本馬政界ノ爲ニ洵ニ憂慮ニ堪ヘナ
イ點ガアルノデアリマス、是等ノ點ニ付キ
マシテモ將來大藏當局ハ此ノ新稅實行ノ成
績ニ鑑ミラレテ、適當ナル處置ヲナサレル
コトト存ジマスケレドモ、農林當局トシテ
ハ特ニ此ノ點御留意ヲ願ツテ、我ガ國馬事
界ニ聊カデモ支障ノ來サザルヤウニ御注意
ヲ御願ヒ致シタイト存ズルノデアリマス、
御尋ネシタイ點モアリマスケレドモ、都合
モアルサウデアリマスカラ、農林省ニ對ス
ル質問ハ此ノ程度ニ止メテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=17
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018・勝正憲
○勝委員長 ソレデハ今日ハ是非質問ヲ終
了致シタイト思ヒマスカラ、少シ無理デア
リマスガ、午後ハ一時ヨリ開會致シマス、
是ニテ暫ク休憩致シマス
午後零時二十分休憩
午後一時十九分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=18
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019・勝正憲
○勝委員長 是ヨリ開會致シマス-大石
君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=19
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020・大石倫治
○大石(倫)委員 此ノ度ノ馬券稅創設ニ關
シマシテ大藏省ガ御執リニナリマシタル御
見解ヲ御伺ヒシタイト思フノデアリマス、
殊ニ競馬法ニ依リマスル馬劵ニ對スル課稅
ト、軍馬資源保護法ニ依ツテ行ハレマスル
鍛鍊馬競走ノ優等馬票ニ對スル課稅トハ
自ラ異ナル點ガアルト思ヒマスガ、之ヲ創
設セラレマシタル御見解ヲ伺ヒタイト思ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=20
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021・松隈秀雄
○松隈政府委員 今囘新タニ馬券稅法ヲ設
ケマシテ、競馬法ニ依ル競馬又ハ軍馬資源
保護法ニ依リマスル鍛鍊馬競走ヲ開催スル
者ニ馬劵稅ヲ課スルコトト致シマシタ趣旨
ハ、先程農林省カラモ御述ベニナリマシタ
ヤウニ、大東亞戰爭勃發ニ依リマシテ、軍
事費ヲ初メト致シマシテ、國庫ノ歲出ガ非
常ニ增シテ參リマシタノデ、此ノ際極力國
庫收入ノ增加ヲ圖リマスル必要ガアルノデ
アリマス、他面浮動購買力ノ吸收ニモ資シ
タイ、斯ウ云フ趣旨カラ致シマシテ、競馬
若シクハ鍛鍊馬競走ニ於キマシテハ、入場
ノ際入場稅ヲ課シテ居ルノデアリマスルガ、
尙ホ入場致シマシタ上、金ヲ拂ツテ馬ノ競
走ヲ觀テ樂シム、其ノ爲ニ相當ノ金額ガ支
出サレルノデアリマス、其ノ支出金額ニ對
シマシテハ或ル程度ノ擔稅力ガ認メラレマ
スノデ、先程申上ゲマシタ國庫收入ノ增加
ヲ圖ルト云フ點、及ビ其ノ反面ニ於テ浮動
購買力ヲ吸收スル、斯ウ云フ見地カラ課稅ヲ
スルコトニ致シタノデアリマス、固ヨリ此ノ課
稅ニ依リマシテ競馬又ハ鍛鍊馬競走ガ非常
ニ萎縮シマシテ、其ノ爲ニ馬事改良施設費等
ガ減リマシテ、困難ヲ生ズルト云フコトガア
ツテハナリマセヌノデ、其ノ邊ニ付キマシ
テハ關係省デアル所ノ農林省トモ協議シテ
大體適當ト認メラレル稅率ヲ定メタヤウナ
次第デアリマス、其ノ場合ニ於キマシテ、競馬
法ニ依ル競馬ノ方ハ馬劵モ五圓以上、二十
圓ト相成ツテ居リマス、卽チ支出致シマス
ル金額モ多イノデアリマスルカラ、稅率。モ
勝馬投票劵ノ發行ニ依ツテ得マシタ金額ニ
付テハ百分ノ七トスル、ソレカラ勝馬投票
劵ノ購買者ニ拂戾スベキ金額ニ對シマシテ
ハ百分ノ二十トスルト云フ風ニ致シマシテ、
一方軍馬資源保護法ニ依ル鍛鍊馬競走ニ於
キマシテハ馬劵モ一枚三圓ト云フヤウナコ
トニナツテ居ツテ、支出金額モ少イノデア
リマス、又納付金ノ方モ競馬ノ方ハ百分ノ
十八ニナツテ居リマスガ、鍛鍊馬競走ノ方
ハ百分ノ二十五、實際トシテハ今百分ノ二
十三程度デアルト承知シテ居リマスガ、サ
ウ云フ點モ考慮ニ入レマシタ上、優等馬票
ノ發行ニ依ツテ得マシタ金額ニ付テハ百分
ノ四、優等馬票ノ購買者ニ拂戾スベキ金額
ニ付テハ百分ノ十ト云フ風ニ差等ヲ設ケタ
次第デアリマス、全體ノ競馬又ハ鍛鍊馬競
走ノ爲ニ賣上ゲマシタ金額ハ大體三億一千
餘万圓程度ニ見込マレルノデアリマスガ、
其ノ金額ニ對シマシテ、歲入ノ見積リハ約
四千万圓デアリマスルノデ、稅金ノ割合ハ一
割三分程度ニ相成ルカト思フノデアリマス、
隨ヒマシテ他ノ各種ノ娛樂的方面ニ對シマ
スル消費ト比ベマスレバ、其ノ稅率ハ著シ
ク重イトハ言ヘナイト思フノデアリマス、
是ガ新稅デナカツタナラバ、或ハ政府納付
金ト云フモノガナカツタノデアルナラバ、
賣上金額ト云フモノガ三億一千餘万圓ト申
シマシテモ、ソレハ囘轉スルト云フコトモ
考慮ニ入レナケレバナラナイノデアリマス
ルガ、サウ云フ點ヲ考慮致シマシタ結果ト
致シマシテ、稅率ハ比較的低イ所ニ決メラ
レテアルト存ズルノデアリマス、其ノ上最
近ニ於キマスル競馬又ハ鍛鍊馬競走ニ於ケ
ル入場人員ノ殖エ方、賣上金額ノ殖エ方ノ
足取ヲ見マスレバ、此ノ程度ノ課稅デ著シ
ク惡影響ガアルヤウニハ思ハナイノデアリ
そう、一方政府資金ノ撒布モ相當增シテ參
リマスノデ、此ノ種ノ課稅ニ依ツテ競馬又
ハ鍛鍊馬競走ノ經營ガ收入減ニ依ツテ非常
ニ困難ニ陷リ、其ノ結果馬事改良施設等ガ
十分ニ出來ナイト云フコトハ先ヅナカラウ
ト思ツテ居リマス、此ノ點ニ付キマシテハ
農林省トモ協議シテ居ルノデアリマス、先
程農林省ノ政府委員カラモ御答辯ノアツタ
通リデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=21
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022・大石倫治
○大石(倫)委員 其ノ趣旨ハ大體私モ了承
致シテ居リマス、長イ事變ヨリ、更ニ大規
模ノ大東亞戰爭ニ入ツタノデアリマシテ、
一般國費ハ勿論殊ニ軍事費ノ增大膨脹致シ
マスルコトハ固ヨリ當然デアリマス、又國
民モ此ノ負擔ノ爲ニ出來ルコトヲ辭スルト
云フヤウナコトハ斷ジテナイト思フノデア
リマス、大藏當局トシテハ大體ノ歲出ハ公
債ヲ以テ賄ヒマシテモ、玆ニ彈力性ヲ持タ
シメ、健全ナル財政ノ運用ヲナサル所ニ苦
心セラレテ居ルト云フコトハ、能ク私共ノ
推察ヲ致シテ居ル所デアリマス、隨テ各種
ノ間接稅ハ昨年ニ於テ增加シ、直接稅ハ今
囘ノ諸法律ノ改正等ニ依ツテ之ヲ增加シ、又
新タニ電氣瓦斯稅デアルトカ、或ハ廣〓稅
デアルト云フヤウナモノト共ニ、此ノ馬劵
稅ヲ新設セラルル御氣持モ能ク分ルノデア
リマス、併シ露骨ニ申シマスト、此ノ競馬
ニ對スル課稅ハ假令財政上ノ御都合ガアリ
マシテモ、賦課セラレナイノガ本當デアツ
タラウト思ツテ居ツタノデアリマス、最初
馬劵稅ガ出ル、競馬ニ新課稅ガ出ルト云フ
コトヲ聞キマシテ、恐ラク實現シナカラウ
ト信ジテ居ツタノデアリマス、ソレハ競馬
法ニ依ル競馬、是ハ他ノ租稅ヤ色々ナ遊興
稅デアルトカ、或ハ飮食稅デアルトカ、觀
覽稅デアルトカ云フモノニモ增シテ、ソレ
ニ先ダツテ政府ニ御奉公ヲ澤山シテ居ル、サ
ウシテ其ノ政府ニ御奉公シタル具體的ノ現
ハレハ、納付金トシテ大正十二年以來昭和十
六年ニ至ル殆ド二十箇年ノ間ニハ相當ノ金額
〓上リ、其ノ納付金ガ政府ノ負擔ヲ輕クシテ、
サウシテ日本ノ馬政ノ運營ガ行ハレテ居ツタ、
斯ウ云フ實情ニ置カレテアルノデアリマス、
又先年制定セラレマシタ軍馬資源保護法ニ
依ツテ行ハレマスル所ノ鍛鍊競走ニ對シ
テハ、一種ノ軍馬ノ豫備訓練デアリマシテ、
其ノ主催、經營ノ仕方モ競馬法ニ於ケルモ
ノトハ其ノ趣キヲ異ニ致シテ居リマシテ、
此ノ競馬ノ賣得剩餘ニ對シテハ、其ノ賣上
ノ金高ニ應ジテ、軍馬資源保護法ニ依ツテ
生レタル軍用保護馬鍛鍊中央會ニ納付金ヲ
致シテ、ソレガ全國ノ生產地方、育成地方、
利用地方ノ收支相償ハザル方面ノ助成ニ又
半分ハ還付セラレテ、他ハ此ノ鍛鍊中央會
ノ運營ノ資金トナツテ、馬事界ニ貢獻ヲ致
シテ居ル實情デゴザイマス、此ノ一例ヲ
見マシテモ更ニ二重ノ新課稅ヲナサル必要
ガナイデハナカラウカ、又アリマシテモ大
體此ノ競馬法ニ依ル競馬ノ納付金ト云フモ
ノハ、競馬法ノ明文ニ依リマシテ、其ノ納
付金ノ四分ノ三ハ馬事ノ爲ニ使ハネバナラ
ヌト云フコトモ決メラレテ居ルノデアリマ
ス、詰リ「納付金ノ額ニ相當スル金額ハ馬
ノ改良增殖及馬事思想ノ普及ノ爲必要ナル
經費竝ニ社會事業ノ爲必要ナル經費ニ充ツ
ルコトヲ要ス馬ノ改良增殖及馬事思想ノ普及
ノ爲必要ナル經費ニ充ツル金額ハ納付金ノ
額ニ相當スル金額ノ四分ノ三ヲ下ルコトヲ
得ズ」ト規定セラレテ居ルノデアリマス、
デアリマスカラ政府ヘ年々納付シテ居リマ
スル金額ハドレ程アルカト見マスルト、先
刻モ農林當局ヘ示シマシタ旣往五箇年、昭
和十二年度以降合計一億六百十二万餘圓ニ
上ツテ居リマシテ、政府ノ支出セラレマス馬
ニ關スル總豫算ハヤハリ既往昭和十二年以降
五箇年間ノ總額ガ一億三千八十一万圓ト云
フ額ニナツテ居ルノデアリマス、昭和十四
年度以降農林省ノ馬事豫算ト云フモノハ、
一躍三倍近クニ上リマシタケレドモ、ソレ
等ノ大部分ヲ支辨シテ、政府ノ負擔ガ爲ニ
頗ル輕クナツテ、五箇年間ノ政府施設ハ一
万三千圓ニ對シテ僅カニ二千四百圓ヨリ出
テ居ラヌ、斯ウ云フ風ニ働キヲナシテ居ツ
タノデアリマスルカラ、此ノ際更ニ此ノ課
稅ヲナサルト云フコトハナカラウ、斯樣ニ
考ヘテ居ツタノデアリマスガ、遂ニ是ガ實
現ヲ致シタノデアリマス、聞ク所ニ依ルト
農林省ニ於キマシテモ餘リ之ニハ贊成ヲ致
サヌノミナラズ、寧ロ反對ノ意見ヲ持ツテ
居ツタノデアルケレドモ、時局柄ノ關係ニ
應ズル爲ニ已ムヲ得ズ同意ヲ表シタト云フ
コトデアリマスガ、今主稅局長ノ述ベラレ
ル通リ、單純ナル一囘買ツタモノヲ使用ス
ルト云フヤウナ建前ノモノデアリマスルナ
ラバ、其ノ課率ニ於テハ他ノ增稅、他ノ負
擔ニ比較シテ高イトハ申シ得ナイカモ知レ
マセヌケレドモ、旣ニ政府納付金トシテハ
一割一分五厘ヲ負擔シテ居ルノデアリマス、
又競馬開催其ノ他日本ノ民問〓體助成、或
ハ政府ノ國庫支辨外ノ色々ノ馬事ノ施設、
〓究費、色々ナモノガ此ノ日本競馬會ヨリ
寄附ト云フ名前ニ依ツテ、或ハ補助ト云フ
名前ニ依ツテ支出セラレテ、日本ノ馬事界
ニ盡シテ居リマスルコトハ頗ル多イノデアリマ
シテ、他ノ幾多ノモノニ比較致シマシテモ、競
馬ニ依ツテ國家ニ盡シテ居リマシタコトハ非
常ニ多イト存ジマス、サウ云フ風ニナツテ居
ルバカリデハナイ、段々政府納付金ヲ見マ
スト、大正十二年ノ最初ニ於キマシテハ、
勿論此ノ當時ハ日本競馬法ガアリマシテ
モ、各競馬場ノ經營ハ十一箇所個々獨立デ
アリマシテ、各所屬ノ競馬倶樂部ガ經營ヲ
致シテ居ツタノデアリマスカラ-今度ハ
違ヒマスケレドモ-隨テ政府納付金ノ負
擔率モ違フノデアリマス、最初ハ僅カニ百
分ノ一デアリマス、大正十二年ニ於キマシ
テハ百分ノ一、其ノ後段々ソレガ變化ヲ致
シマシテ、或ハ百分ノ二トナリ、三トナリ
三·五トナリ、又賣得金ノ金額ニ應ジテ、最
モ多イモノハ百分ノ十一一マデ達シタコトガ
ゴザイマシタ、昭和十一年ノ終期カラ十四
年ノ三月マデソレガ續イテ參ツタノデアリマ
ス、昭和十四年三月二十八日ニ政府ノ要求
ニ依ツテ、賣得金ハ支那事變ニ貢獻スル爲
ニ、農林省ノ馬ノ豫算ガ著シク膨脹致シマ
シテ、一躍三倍近クニ上ル關係カラ、從來
ノ納付金百分ノ八ヲ百分ノ十一半ト改メラ
レマシテ、玆ニ控除金百分ノ十五ガ百分ノ
十八ニナツタノデアリマス、斯樣ニシテ支
那事變勃發後ニ於キマシテ斯ウ云フヤウナ
非常ナ高率ノ控除金ヲナサシメルコトニ至
ツタノデアリマス、競馬ノ法規ヲ御覽ナサ
ルト、法律ニハ五圓以上二十圓トアリマス
ガ、現在十一箇所ノ公認競馬場ニ於キマシ
テハ、殆ド十圓劵トカ五圓劵トカ云フモノ
ガナクナリマシテ、二十圓劵ニナツタノデア
リマスガ、假ニ百圓ノ金ヲ以テ一日ニ何囘
買ヘルカト云フト最高二十四枚買ヒマシ
テ、四百八十圓ニナル、全部ハ買ヘナイ、
假ニ平均ヲ見マスルト、何時ノ時代ニ於キ
マシテモ賣上高ト入場人員トハ稍〓≧一致シテ
居リマシテ、一人ノ一日ニ馬劵ヲ買ヒマス
金額ハ約百圓ニナル、昨年ハ入場人員ガ二
百八十万人ニ對シテ賣上ガ二億九千三百万
圓十五年ハ入場人員二百六十七万七千人
ニ對シテ賣上ガ二億四千九百四十二万圓、
十四年ハ入場人員ガ一百三十九万二千人ニ
對シテ賣上ガ一億八千九百万回デ、大體ニ
於テ百圓程度デアリマス、百圓アレバ五枚
買ヘマス、假ニ二十圓ノモノヲ五遍買フト、
モウ元金ハサツパリナクナツテシマフ、皆
控除金ニ取ラレテシマア、普通ノモノヲ買
ヘバ一度買ツテソレヲ或ル目的ニ用ヒテ居
ルノデアリマスカラ、課カル稅金ハ一遍
デアリマスケレドモ、ソレハ循環デアリマ
スカラ、一日ニ何囘ト云フ稅金ヲ購買者ガ
負擔スルト云フノデアリマシテ、其ノ率ヲ
計算シマシタラ非常ニ高イモノニナルノデ
アリマス、隨テ今度ノ新課稅デソレヲ買フ
際ニ尙ホ七分ヲ課ケラレマスト、丁度馬劵
ヲ買ツタ時二割五分減ツテシマフ、二十圓
ノ馬劵ガ十五圓ノ値打シカナクナツテ、十
五圓ガ配當サレルコトニナルノデアリマス
ガ、其ノ十五圓ノ配當ヲ更ニ又其ノ中ヨリ
購買シタ金額ヲ差引イタ殘リニ百分ノ二十
ヲ課ケラレルト云フコトニナルト、結局二
十圓ノ金ガ的中シテ拂戾ヲ受ケル時ハ十四
圓ニナルカナラヌカト云フ程度デアリマス、
先刻一割何分ト仰シヤツタケレドモ、其
ノ率ハ一囘三割課カル、三割課カリマシテ
ソレガ一日十囘ニナルト三十割、十二囘ニ
ナルト三十六割、五囘買ヒマシテモ十五割
ト云フ風ニ非常ナ高イ率ニナツテ來ルノデ
アリマス、サウ云フ高イモノニナリマシタ
ナラバ、年々ノ賣得金ハ殖エル、入場人員
ガ殖エテ居ルカラ、斯ウ云フ課稅ニ依ツテ
減ラナイト云フ御言明ハ必ズシモ、保證シ
得ナイト私ハ思フ、今日何故ニ此ノ競馬ガ
斯樣ニ人ガ殖エ、金額ガ殖エテ行クカト申
シマスルト、是ハヤハリ浮動購買力ノ關係
デアリマセウ、物ヲ買ヒタイガ買フコトガ
出來ナイ、飮ミ食ヒシタイニモ十分ナル飮
ミ食ヒガ出來ナイノデ、先ヅ其ノホトボリ
ガ自然ニ競馬ノヤウナモノニ行ツテ娛樂ヲ
求メ、遊興心ヲ滿足サセル、斯ウ云フ傾向
ハ見逃スコトガ出來ナイノデアリマスケレ
ドモ、兎モ角大體ニ於テ十六年度ハ我ガ國
ノ競馬界ニ於ケル飽滿時代、頂天時代デハ
ナイカト思ツテ居リマス、其ノ頂點ト見ラ
ルベキ所へ新課稅ヲシテ配當率ハ非常ニ少
クナツタ、是ハ僅カノ課稅ノヤウデアリマ
スルケレドモ、配當ニ於キマシテ餘程違フ
ノデアリマス、サウシマスト、一日ニ五枚
買ヒマシテ、五枚ノ中ニ一遍當ルカ二遍當
ルカ三遍當ルカ分リマセヌケレドモ、本命
ト云フモノヲ買ツテ行ツテモ金ガナクナツ
テシマフ、今馬劵ハ何ヲ買フカト云フト、玄
人ハ穴ヲ狙フ、穴ト云フモノハ計算シテ行
キマスト勝味ガナイ、先程申シマシタケレ
ドモ、科學的ニ〓究シテ行クト、此ノ馬ハ
勝味ガナイケレドモ、怪我トカ何カノ狂ヒ
ヲ狙フ、サウ云フ場合ニハ一ツノ射倖心ガ
働クノデアリマス、計算ヲ致シテ此ノ馬ハ
勝テナイ、ケレドモ何カニ依ツテ此ノ馬ハ
ヒヨツトシテ勝ツカモ知レナイカラ、之ヲ
買ツテ置ケバ宜シイト云フノデ、萬ガ一ヲ
望ンデ穴ヲ狙フ、サウスルト幸ニシテ五倍
乃至十倍ノ配當ヲ受ケマス、今マデ五囘買
ツタ中デ四囘損ヲシテ、此ノ一遍ノ的中ニ
依ツテ利益ヲ得ルコトガ出來ル、本命ヲ買
ヒマスレバ-科學的ニ〓究シテ此ノ馬ハ
必ズ勝ツト云フノデ、安全ナ所ヲ買ツテ行
カウトスルト、稅金ヤ控除額ノ爲ニ元金ガ
ナクナル、朝カラ、晝カラ、夕方マデ本命
ヲ買ヒマスカラ、當ツテモ利益ハナクナル、
十二囘ノ中十囘當ツテ一一囘外レテ、ソレデ
モナクナルト云フコトガ多イノデアリマス、
斯ウ云フヤウナ實情ハ餘リ御調査ガ行屆イ
テ居ラナイノデハナイカト思フノデアリマ
ス、斯ウ云フ稅金ヲ課ケラレテモ、「ファン」
ガ尙ホ鼻ノ下ヲ長クシテ續々ト詰寄ツテ行
クト云フコトハ考ヘラレナイ、之ニ依ツテ
ドウシテモ私ハ減ルト思フノデアリマス、
ソレト同時ニ法網ヲ潜ルノミ屋行爲ト云フ
モノハ必ズ巧ミニ跳梁跋扈シテ來ル、兩々
相俟ツテ此ノ賣上金ト云フモノハ段々減ツ
テ行クデハナイカト思フ、減ツテ行キマシ
タ場合ニ於テ、國庫ノ收入ハ十六年度モ十
七年度モ十八年度モ同額ノモノガ入リマセ
ウケレドモ、之ヲ馬事界カラ見マスト非常
ナ違ヒガ生ズル、サウシテ納付金ハ法律ノ
明文ニ依ツテ四分ノ三ヲ馬事ノ爲ニ使ハナ
ケレバナラヌ、馬ノ改良增殖、馬事思想ノ
普及ノ爲ニ使フ金ハ四分ノ三ヲ下ルコトヲ
得ズト法律ニ決メテアリマスカラ、大藏省
ト雖モソレヲ分捕ル譯ニ行キマセヌ、ヤハ
リ馬事ノ豫算ニソレヲ振向ケナケレバナラ
ヌノデアリマス、一般課稅トシテ取上ゲラ
レマシタ所ノ國庫ノ收入ハ、是ハ馬事ノ爲
ニ使ハナクテ宜シイノデアリマスカラ、
馬事ノ運營ノ上ニ影響ヲ及ボストハ限ラヌト
私ハ思フノデアリマス-幸ヒ今兵務局長
ガ御見エニナリマシタカラ、兵務局長ニ御
尋ネスル事柄モ同時ニ申上ゲルヤウニ致シ
タイト存ジテ居ルノデアリマスガ、日本ノ
馬事ノ歷史ヲ繙キマスト長クナリマスガ、
明治天皇ガ日露戰爭ノ後ニ於テ畏クモ伊
藤博文公ヲ咫尺ノ間ニ御召シニナツテ、日
本ノ馬ノ改良ヲ御躬ラ命ゼラレマシタ、玆
ニ日本ノ馬產計畫ト云フモノハ出來タノデ
アリマス、所謂第一期計畫ハ三十年ヲ期間
トシテ出來マシテ、其ノ三十年ハ數年前ニ
終ツテ、第一期計畫ハ終リ、第二期計畫ガ
立チマシタル後ニ、所謂滿洲事變、引續イ
テ支那事變ト云フモノガ起リマシテ、第
次馬政計畫ニ於テ改良ヲ目的トシタ其ノ目
標ヲ、是デハイカヌト云フ關係カラ、陸軍
ノ要望ニ依ツテ第二次馬政計畫ハ一變シ
テ內地馬政計畫ト云フモノニ變ツタノデ
アリマス、日本ノ馬事ニ關シテ明治天皇
ノ如何ニ大御心ヲ賜ハリマシタカハ歷史ノ
上ニ於テ明瞭デアリ、吾々恐懼致シテ居ル次
第デアリマス、此ノ馬ガ支那事變ノ起リマ
シテ以來、軍馬トシテ國防上ノ重要性ヲ加
ヘテ來タコトハ私ガ說明スルマデモナク、
實ニ想像以上デアリマス、而シテ內地ニ於
ケル馬ノ生產ハ其ノ需要ヲ滿スコトハ出
來マセヌ、或ハ日滿支ト申シタイノデアリ
マスケレドモ、支那トシテノ馬政計畫ハ不
完全デアリマシテ、兎モ角滿洲、日本ガ相
協力シテ是等ノ不足ヲ充足シ、生產ノ增加
ヲ圖ツテ居リマスルガ、中々達シ兼ネルノ
デ、軍當局ニ於テモ非常ニ御心配ヲナサレ、
吾々民間ニアルモノトシテモ是ガ爲ニ日夜
心配ヲ致シテ居ル次第デアリマス、斯樣ナ
時ニ當ツテ此ノ費用ト云フモノハドウデア
ルカ、支那事變ノ起リマセヌ前ニ、日本ノ
財政ガ非常ニ窮迫ヲ致シマシタ時代ニ於テ
馬ナドト云フモノハ殆ド顧ミラレナカツ
ク、滿洲事變ノ終リニ於キマシテ、軍ニ於
テハ上海事變、滿洲事變等ノ實績ニ鑑ミテ
軍機ノ改良、裝備ノ改善、色々ナル所ノ軍
事施設ヲ行ハレテソレニ對スル通常豫算、
或ハ臨時軍事費ト云フモノガ膨脹ヲ致シタ
ノデアリマスルケレドモ、馬ニ對シテハ殆ド
其ノ費用ノ增額ガナイ、政府ニ幾ラ要求致
シマシテモ政府ハ馬ニ對スル豫算ハ出シテ
呉レナイ、全ク競馬ノ納付金ヲ以テノミ日
本ノ馬政ト云フモノガ運用セラレテ居ツタ
ノデアリマス、想ヒ起スト數年前、林銑十
郞大將ガ陸軍大臣ノ砌、私ハ奇問ヲ發シタ
コトガアル、ドウ云フコトヲ私ハ尋ネタカ
ト申スト、東北、北海道ノ產馬大會ヲ開イ
テ其ノ決議ノ結果、代表陳情ニ行キマシタ
私ハ大臣ニ何ヲ問ウタカ、陸軍デハ軍馬ノ
必要ガナクナツタノデアリマスカト云フ私
ハ奇問ヲ發シタ、馬ノ陳情ニ行ク代表者ガ
軍馬ノ必要ノアルカナイカヲ知ラナイデサ
ウ云フ質問ヲスル筈ハナイ、ナゼ私ハサウ
云フ質問ヲシタカ、ドウ云フ譯カト言フカ
ラ、私共ハ軍馬ヲ作ラネバナラヌ、國防上軍
馬ガ必要デアルカラ軍馬ヲ作レト云フ御指
導ノ爲ニ、經濟動物デナイ、經濟的ニハ馬
ハ實ニ不利益ナル生產事業デアリマシテ、
其ノ不利益デ間ニ合ハナイモノヲ、軍馬ヲ
作レバ尙ホ間ニ合ハナクナル、ソレヲ何故
ニ吾々ガ奬勵シテ居ルカト云フト、國家ノ
爲メ、國防ノ爲ニ必要デアルカラ、之ヲ奬
勵セネバナラヌト心得テ今日マデ孜々營々
トシテ努メテ參リマシタ、然ルニ滿洲事變、
上海事變ガ始マツテ以來、他ノ軍費ガ著シ
ク膨脹ヲシテ行キマシタガ、此ノ不況ニ陷
ツテ喘ギ〓〓シテ居ル此ノ馬ノ豫算ト云フ
モノハ少シモ殖エナイ、馬ノ購買値段ト云
フモノハ少シモ上ラナイ、サウシテ見レバ
馬ト云フモノハ軍馬トシテノ必要性ガ乏シ
クナツタノデハナイカト、私ハ疑ヒヲ起シ
タモノデスカラ此ノ御尋ネヲシタノデス、
斯ウ言ウタ所ガ林陸相ハイヤ〓〓軍馬ノ必
要ハ減退シタドコロデハナイ、大イニ軍隊
トシテハ軍馬ノ必要ヲ認メルノダ、是非一
ツヤツテ欲シイ、是ハモウ祕密トシテ置カ
ナクテモ宜シイカモ知レマセヌガ、其ノ當
時ハ祕密デアツタ、日本ノ兵備ガ各國ニ比
較シテ「レベル」ガ甚ダ低イ、ドウシテモ此
ノ「レベル」ヲ上ゲルマデハ其ノ必要ガアツ
テ豫算ヲ使ハナケレバナラヌノデアルカラ、
其ノ間我慢ヲシテ吳レト言フ、成程御尤モ
デアルガ、馬ノ生產方面ニ從事シテ居ル吾
吾カラ見レバ、ソレデハ不服デアル、軍機
ハ材料ト設備ガアレバサア必要ダト言ウテ
其ノ設備又材料ニ應ジテ卽日ニモ生產ヲス
ルコトガ出來ルガ、斯フ云フ馬ガ必要ダカラ
サウソレヲ持ツテ來イト言ハレテモ出來マ
スカ、八年掛カラナケレバ軍馬ニナラナイ、
愈〓計畫ヲ立テテ種付ヲシテ生產ヲシテ、ソレ
ヲ育テテ訓練ヲシテ軍馬ニ供與スルマデニハ
幾ラ短カクトモ六箇年、先ヅ八箇年ヲ要
スルノデアルカラ、サア今事變ガ起ツタ、
戰爭ガ起ツタ、ソレ此處ニ軍馬ヲ持ツテ來
イト言ハレテモ、八年モ掛カルモノガ間ニ
合フモノデハアリマセヌ、必要ナモノデア
レバ今ノ中カラ相當ノ保護ヲ加ヘ、サウシ
テ相當ノ豫算ヲ支出シテ、生產家ヲ保護シ
テ行クニアラザレバ、日本ノ軍馬ノ充足ト
云フモノハ出來ルモノデナイト云フコトヲ
申上ゲタコトガアルノデアリマス、斯樣ニシ
テ日本ノ馬政ノ爲ニハ如何ニ此ノ財政困難
ナル砌、非常ナ逆境ニ陷ツテ生產者ハ多年
ノ間犠牲ヲ拂ツテ居ツタモノデアリマス、其
ノ時ニ常ニ光明ヲ與ヘルモノハ此ノ競馬ノ
納付金デアリマス、其ノ納付金ガ段々增シテ
今ヤ十六年度ニ於キマシテ三千三百七十万
餘圓ト云フモノヲ政府ヘ納付シテ來マシタ、
ソレガ社會事業ニ百万圓ヲ除イタ其ノ他全
部ガ此ノ馬事豫算トシテ使ハレテ、而モ軍
馬資源保護法ニ依ル軍馬ハ豫備訓練デアル、
或ハ鍛鍊デアル、或ハ鍛鍊競技デアル、鍛
鍊競走デアル、ソレ等ノ馬ニ對スル助成、
ソレ等ノ馬ノ持主ニ對スル所ノ經費、色々
ナモノニ充當シ使ハレテ居ル場合デアリマ
シテ、例ヘバ戰時財政ノ多端ノ場合ト雖モ、
旣ニ是程盡シテ居ル競馬ニ對シテ、更ニ是
ガ衰微ヲ來スヤウナ新課稅ハナサルベキデ
ナイ、若シ此ノ新課稅ニ依ツテ政府納付金
ガ減リマシタナラバ、是ハ政府ガ負擔セラ
レルデアリマセウケレドモ、寧ロ吾々ハ法
律ニ依ツテ制定セラレタル支出ニ依ツテ、
完全ニ納付金ハ馬ニ使ハレルト云フコトヲ
確保シテ置クコトヲ希望スルノ餘リ、此ノ
言ヲ申上ゲテ置ク次第デアリマス、殊ニ鍛
鍊競走ニ對スル新課稅ハ四十箇所ニ近イ所
ニ於キマシテ、僅カニ一年間ノ賣上ゲ千五
百万圓、ソレニ所定ノ課稅ヲセラレマシテ
モ政府國庫ノ收入ハ僅カニ百五十万圓ニ過
ギナイノデアリマス、此ノ鍛鍊競走ト云フ
モノガ今日非常ニ困難シテ居ルコトハ先刻
農林當局へ私ガ申シマシタ通リ、露骨ニ申
セバ馬ノ徵發、軍馬ノ購買、或ハ春ノ競走
ニ出サウ、秋ノ競走ニ出サウト相當準備ヲ
シ訓練ヲシテ居リマシタモノヲ、徵發軍馬
購買ニ依リマシテ其ノ地方ニサウ云フ馬ガ
ナクナツテ、偶〓開催シテモ出場馬ガナクテ
開催ガ出來ナイ、無理ニ開催シマシテモ勝
敗ガ明カデアリマスカラ誰モ馬劵ノ買手ガ
ナイ、日本ニ於ケル馬ノ生產地トシテハ先
ヅ其ノ資源ヲ東北、北海道、九州ノ一部ニ
置クノ外ハナイノデアリマスガ、東北、北海
道九州ノ此ノ生產地方ニ於ケル鍛鍊競走
ナドハドウデアルカト云フト、洵ニ經營困
難ニ陷ツテ居ル、ソレデ許サレテ居ル二十
五ノ賦課モ出來ナイ、然ラバ經營ヲシテ二
十五ノ控除ヲスレバ「ファン」ノ買手ガナイ
ト云フコトデアツテ、痛シ痒シデ、中央鍛鍊
會ノ助成ニ依ツテ漸ク經營ヲ續ケテ居ル、斯
ウ云フ狀態ニナシテ居ルノデアリマシテ、斯ウ
云フモノノ政府ノ課稅ハ全ク私ハ一般ニ對ス
ル均衡ト云フ建前デ御考ヘニナツタカ知レ
マセヌガ、無理ナ課稅デアル、斯ウ考ヘルノ
デアリマス、政府ニ於テハ、殊ニ大藏省ニ於
キマシテハ、之ニ對シテノ御考ヘヲ明カニセ
ラレマシテ、斯ウ云フ際ニ無理ニ豫算ノ修正ヲ
スルトカ或ハ法律ノ修正ヲスルトカ、或ハ否
決撤囘スルト云フヤウナコトハ私共國民ト
シテ愼ミタイノデアリマスカラソコマデハ
申シマセヌケレドモ、大藏省デ此ノ事情ヲ能
ク御諒察下サレマシテ、實施後ニ於ケル成績
ニ鑑ミテ適當ナル御施設ヲ講ズル御意思ガ
アリヤ否ヤヲ伺ツテ置キタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=22
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023・松隈秀雄
○松隈政府委員 大石委員ガ馬事改良增殖
其ノ他馬事思想ノ普及ヲ圖ル爲ニ熱心ニ御
述ベニナリマシタ點ハ謹ンデ拜聽致シマシ
ク、競馬法ニ依ル競馬、又ハ軍馬資源保護
法ニ依ル鍛鍊馬競走ニ於キマシテ、政府納
付金ガアル、其ノ納付金ノ大部分ト云フモ
ノガ、馬ノ改良增殖及ビ馬事思想ノ普及等
ノ爲ニ使ハレテ居リマスコトハ御話ノ通リ
デアリマス、其ノ狀況ガドウデアルカト申
シマスト是モ御述ベニナリマシタヤウニ、
最近ニ於ケル競馬又ハ鍛鍊馬競走ノ兩者ト
モ非常ニ足取ガ調子好ク伸ビテ參ツテ居リ
マス、隨ヒマシテ政府納付金モソレニ比例
シテ年々增シテ居リマシテ、最近ニ於テハ
三千万圓ヲ超シテ居リマスルコトハ、御
示シノ通リデアリマス、隨ヒマシテ馬ノ改
良增殖等ニ使ハレマスル金モ相當ノ金額ガ
ソレニ依ツテ賄ハレテ居ル次第デアリマス、
唯此ノ狀況ヲ著シク惡化セシムルト云フコ
トニナリマスレバ、ソレハ政府全體トシテ考
ヘナケレバナラナイ點デゴザイマスルノデ
今囘馬劵稅ヲ設ケルニ営〓リマシテモ所管ノ
省ト協議致シマシテ、他ノ場合ノ娛樂的分
子ヲ含ンダモノニ課稅致シマスヨリハ、相
當低目ノ稅率ヲ以テ稅率ヲ按配スルコトニ
致シタ次第デアリマス、之ヲ單ニ稅ノミノ
立場カラ考ヘマスルナラバ、モウ少シ負擔
額ヲ增スト云フコトモ出來ナイコトハナイ
ノデアリマスケレドモ、ソレガ爲ニ賣上金
額ガ減ル、仍テ納付金ニ影響シ、馬ノ改良
增殖ニ障リガアツテハイカヌ、斯ウ云フコ
トデ其ノ邊モ考慮ニ入レテ率ヲ組ンダヤウ
ナ次第デアリマス、隨ヒマシテ今囘程度ノ
稅率デアリマスルナラバ先程モ申上ゲマシ
タヤウニ、賣上金ニ大シタ影響ハナイト思
フノデアリマス、ソレカラ只今モ御述ベニ
ナリマシタヤウニ、政府ノ撒布資金ハ殖エ
ルノデアリマスガ購買スベキ物資ガ豐富デ
ナイ、隨ヒマシテ各方面ニ相當購買力ガ溢
レルノデアリマシテ、ソレ等ノ點モ考ヘマ
スレバ競馬ニ對シテ此ノ程度ノ課稅ヲシタ
カラト云ツテ、直チニ競馬若シクハ鍛鍊馬
競走ノ賣上金ガ減ツテ行クトハ考ヘラレナ
イノデアリマス、サウ云フコトガアツテハ
政府全體トシテ困ル、又歲入官廳デアル大
藏省ト致シマシテモ、稅ヲ課ケテ見タ所デ
ドン〓〓賣上ガ減ツテ所期ノ稅收入ガ上ツ
テ來ナイト云フコトデハ無意義ナコトデア
リマスノデ、旁々或ル程度ノ影響ハアルカ
モ知レマセヌケレドモ、相當ノ收入ガ上ツ
テ來ルト云フ見込ノ所ニ狙ヒヲ付ケテ稅率
ヲ組ンデ居ルヤウナ次第デアリマス、尙ホ
併シ萬一ニモ競馬ノ賣上金額ガ激減シタ結
果納付金ガ著シク減ツテ參ツタ、仍テ必
要ナ馬ノ改良增殖等ガ出來ナイ、斯ウ云フ
ヤウナ事態デモ出來マスレバ、ソレハ歲入
豫算ノ方面ニ於テ考慮スルナリ、或ハ稅率
ノ點ニ付テ考慮スル必要ガ起ツテ參ルカト
思フノデアリマスガ、今日ノ所デハ關係當
局トモ打合セテ、大體此ノ程度デ現狀ヲ維
持出來ル、此ノ程度ノ心組ヲ以チマシテ豫算
モ見積ツテ居ルヤウナ次第デアリマスノデ、
施行ノ經過ヲ篤ト見タイト思ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=23
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024・大石倫治
○大石(倫)委員 大藏省ノ方ハ此ノ程度ニ
致シマシテ陸軍省ノ政府委員ニ伺ヒマス、
陸軍ノ政府委員ニ對シテ馬ノ講釋ハ釋迦ニ
說法ノヤウデスカラ、是ハ省クコトニ致シ
マス、併シ唯吾々民間ニ於ケル馬ニ對スル
考ヘト、軍當局トシテノ考ヘトニ幾ラカノ
違ヒガアルカモ知レナイト存ジマスガ、今日、
ノ所ハ幸ニシテ民間デ多年唱ヘテ參リマシ
タモノ、第一ハ軍馬ノ購買價格ノ問題、又
一般馬ノ値段ノ關係等デアリマシタガ、軍
ニ於テハ特ニ此ノ點ヲ諒トセラレテ、軍馬
ノ購買、徵發馬ノ報償等ソレノ〓適當ナル
御引上ヲ下サイマシタノデ、民間側トシテ
モ感謝ヲ致シテ居ル次第デアリマス、只今
農林當局、大藏當局ヘモ御尋ネヲシテ居リ
マス軍用保護馬、所謂軍馬資源保護法ニ依
ル鍛鍊競走ニ依リマシテ、鍛鍊ノ一部目的
ヲ助ケテ居ルト云フヤウナ場合デアリマス、
此ノ鍛鍊競走ハ一昨年ハ左程デモナカツタ
ヤウデアリマスガ、昨年ニナリマシテ、殊
ニ生產地方ハ出走馬ノ不足等ヨリ此ノ開催
ガ餘程因難ニナツテ參ツタノデアリマス
無理ニ開催致シマシテモ馬ノ數ガ少イ、或
ハ競走ニナラヌト云フヤウナ場合ニ當リマ
シテハ、優等馬票ト云フモノハ殆ド賣レナ
イノデアリマス、隨テ鍛鍊馬競走ノ經營モ
困難ニ陷ル、馬事思想ノ普及、馬ノ能力檢
定等ノ上ニモ效果ガ薄クナル、斯ウ云フコ
トニナルノデアリマスル、ソコヘ持ツテ
來テ今囘ノ新課稅ガ大藏當局ハ課率ヲ輕ク
シタト云フ御說明デアリマスルケレドモ、私
ハ公認競馬ヨリモ寧ロ重イ、大藏當局ノ計
算ハ鍛鍊競走ノ主催者ガ賣得金ヨリ控除致
シマス額ヲ二十三ト計算サレタカラ輕イト
仰シヤルノデアリマスケレドモ、法ニ依リ
マシテ二十五マデ取リ得ルノデアリマス、
大部分ハ二十五マデ取ツテ居リマスガ、二
十五取リマスト、馬劵ノ賣レナイ所ニ於キ
マシテハ配當率ガ非常ニ低クナリマスルカ
ラ、成ベク鍛鍊中央會ノ助成ニ仰イデ二十
以上賦課シテ居ル、斯ウ云フヤウナ場合ガア
リマシテ、平均シテ二十二一ニナル、ケレドモ是
ハ計算上カラ言ヒマスレバ當然二十五トシテ
計算スベキモノデアル、二十五トシテ計算シマ
スト一圓カラ二十五錢主催者ガ引イテ居ル、
ソコヘ今度ハ又百分ノ四ソレカラ引カレル
コトニナルト、二十九錢引カレテ七十一錢、
更ニ配営ノ際ニ百分ノ十引カレマスト又七
錢一厘引カレル、サウスルト三十六錢ニハナ
ラナイガ、三十三、四錢、詰リ三十二、三割ノ
負擔ニナル、隨テ配當率ガ少クナル、公認
競馬ハ控除率ガ十八デ、十圓ノモノガ八圓
二十錢ニナツテ居ル、ソコヘ買フ時又七分
課ケラレマスルカラ二十五ニナル、サウス
ルト十圓ノモノハ七圓五十錢ニテル、サウ
シテ配當ニ當ツテ百分ノ十ヲ稅トシテ課ケ
ラレル、斯ウナリマスト大體三十割位ニナ
ル、片方ハ三十割、片方ハニ一十二、三割、斯ウ
ナリマシタナラバ軍馬資源保護法ニ依ツテ
ヤツテ居リマスルモノニ重イ課率トナリ
一層經營ノ困難ヲ來シ、其ノ目的ヲ達成ス
ルコトガ出來ナクナルト思フノデアリマス
ガ、之ニ對シテ農林営局ハ萬已ムヲ得ズ、
時局ニ協力スル爲ニ承諾シタト申サレテ居
リマスガ、公認競馬ノ方ノ納付金ガ今申シ
マシタヤウニ減ツタリ又斯ウ云フ鍛鍊競
走ノ納付金ガ減ツタリ致シマスト、新タニ
今囘統制セラレマシタ日本馬事會ノ運營ノ
上ニモ、普通鍛鍊競技等ノ指導奬勵ノ上ニ
モ影響ヲ及ボスコトトナルノデアリマス、
斯ウ云フ點ニ付キマシテ軍トシテ、之ヲ抑
止シテ戴キタイト云フ譯デハアリマセヌ
ガ、保護シテ戴キタイト云フ民間ノ考ヘヲ
持ツテ居ルノデアリマスガ、軍ニ於カレテ
ハ如何ナル御考ヘデアルカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=24
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025・田中隆吉
○田中(隆)政府委員 只今ノ競馬ノ課稅デ
アリマスガ、是ハ私共馬ノ增產、增殖、鍛
鍊ト云フコトニ重點ヲ置イテ考ヘテ居リマ
ス、陸軍ト致シマシテハ初メ反對デアツタ
ノデアリマス、ハツキリ申シマス、所ガ實
際一番恐ロシイノハ、政府ノ撒布スル資金
ニ依リマシテ、資金ノ多イノト物資ノ不足
デ全國的ニ所謂「インフレ」ニナツテ恐ルベ
キ結果ニナル、長期戰ニ耐ヘ得ナイ結果ヲ
生ズルト云フ大藏當局ノ主張ヲ聽イテ見マ
スト尤モナノデアリマス、又戰費モ要ル、
ソコヘ持ツテ來テ浮動購買力ト云フモノヲ
吸收シナイト長期戰ガ出來ナイト云フ風ニ
言ハレマスノデ、然ラバ一部犠牲ニシテデ
モ大藏當局ノ御要求ニ應ジマセウ、但シ是
ガ爲ニ先程大藏當局ノ政府委員カラ言ハレ
マシタ馬ノ改良進歩、增產、增殖、鍛鍊、
之ニ支障ヲ及ボサヌ程度ニヤツテ呉レト云
フ譯デ、現在ノ率ガ決マツタ譯デアリマス、
鍛鍊馬ノ問題デアリマスガ、實際今日本ノ
馬ハ實ニ良クナツタノデアリマス、數ハ事
變ノ爲ニ減リマシタガ、馬其ノモノハ實ニ
立派ニナツテ居リマス、現在軍馬補充部デ
長年育成スル馬ト民間ニアツテ徵發スルモ
ノ是ハ民間ニアツテ育成シ鍛鍊シタノデ
アリマスガ、之ヲ徴發シテ見マスト、殆ド
甲乙ノ差ガナイノデアリマス、ソレ位マデ
立派ニナツテ來マシタ、昔ノヤウニ徵發シ
タ馬ノ爲ニ砲兵ヤ輜重兵ガ死ンダト云フヤ
ウナコトガ根絕サレタノデアリマス、サウ
云フヤウナ良イ狀況デアリマシテ、鍛鍊ハ益〓
ヤラナケレバナリマセヌガ、今申上ゲマシ
タ大藏當局ノ所謂「インフレ」ヲ非常ニ恐レ
マシテ、又實際恐ロシイコトデアリマスノ
デ、サウ云フ事情ニ依リマシテ陸軍當局ト
致シマシテハ承知シタノデアリマス、併シ
若シ只今ノ稅率ガ軍ノ所期スル馬ノ增殖、
增產、改良ト云フヤウナコトヤ、馬ノ鍛鍊
ニ惡影響ヲ及ボスコトニナレバ、又考ヘ直
サナケレバナラヌト考ヘテ居リマス、併シ
先程大石委員ハ去年ガ競馬ノ絕頂ダラウト
仰シヤイマシタガ、私ハ今年ハモツト殖エ
ルダラウト思ツテ居リマス、今年ハ政府ガ
撒布スル資金ト云フモノハ厖大ナモノデア
リマシテ、ヤハリ先程申シマシタ通リ、浮
動購買力ガ多イ爲ニ今年ハモツト盛ンニナ
リハシナイカト、斯ウ云フ風ニ見テ居ルノ
デアリマス、サウ云フ觀方デ實ハ澁々贊成
シタノデアリマス、決シテ現在ノ此ノ稅率
デ以テ大石氏ノ言ハレル程ノ大ナル影響ハ
アルマイト思ヒマスガ、若シアリマシタナ
ラバ、一番馬ニ關心ヲ持ツテ居リマス陸軍
ト致シマシテハ又考ヘ直スコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=25
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026・大石倫治
○大石(倫)委員 只今ノ田中政府委員ノ御
說明デ能ク陸軍ノ心持モ分リマシタ、要ス
ルニ吾々ガ此ノ質問ヲ致シ、又常ニ馬ノ問
題ニ苦心ヲ致シテ居リマスルノハ、是ハ所
謂國防ノ第一義デアリマシテ、第二ニ產
業、第三ニハ運輸交通ト云フ關係ヲ持ツテ
居ルノデアリマス、昭和十四年マデノ馬ノ
生產方針ト申シマスカ、馬政計畫ト申シマ
スモノハ、日本內地ニ或ル一定ノ頭數ヲ繫
留ヲ致シマシテ、產業ヲ第一トシテ、第二
ニ軍馬、國防ト云フ建前ヲ取ツテ參ツタノ
デアリマス、昭和十四年ニ內地馬政計畫ノ
樹立ニ當リマシテ陸軍ノ强キ要望ニ依ツテ
我ガ國ノ馬產ノ方針ハ全ク軍馬第一主義ニ
變ツタノデアリマス、隨テ從來馬ノ生產家
ハ自分ノ好キナ馬ヲ養ツテ、自分ノ好キナ
ヤウナ馬ヲ作ラウト云フコトニナツテ居リ
マシタガ、種馬統制法ト云フモノモ制定セ
ラレ、此ノ軍馬第一主義ノ關係カラ生產家
ハ此ノ方針ニ依ツテ今生產ヲ致シテ居ル、
引續キ軍馬資源保護法ガ出來マシテ、馬ノ
鍛鍊ヲセラレルヤウニナリマシタ、御話ノ
通リ支那事變ノ勃發當時徵發セラレマシタ
馬、購買セラレマシタ馬ハ直チニ戰地ニ送
リマスト、其ノ操縱、飼養等ニ幾多ノ不自
由、不便、不利益ガアリマシタ、例ヘバ或
ル兵隊ガ馬ノ貨車ニ乘セラレテ大阪ノ停車
場ニ行ツタ、モウ着イタト云ツテ安心シテ
居リマスト、馬ニ汽車カラ蹴落サレテ氣絕
シタ、サウ云フヤウニ馬ノ暴レルモノガア
ツテ、中々危險ナモノデアリマシタ、今日
ノ馬ハ代々木ノ競技會ニ於テ御覽ノ通リ、
實ニ集團性ニ富ンデ、柔順ニナリマシテ、
見違ヘルヤウナ訓練ノ效果ト云フモノヲ擧
ゲテ參ツタノデアリマス、斯ウ云フ鍛鍊ノ
效ヲ擧ゲマスノニ、今日ハ各地ニ馬事訓練
所ヲ農林省ガ作ツテ居リマス、或ハ九州ニ、
或ハ奈良縣、北海道、東北ト云フ工合ニ作
ツテ居リマス、サウ云フ訓練所ヲ作ルニモ
政府ニ金ガナイ、サウ云フヤウナ軍馬ノ訓
練ニ直接國家ノ費用ヲ以テシテ宜シイト云
フ事柄デスラモ政府財政ノ都合ニ依リマシ
テ、中々大藏省ニ要求シテモ金ガ出ナイ、
奈良ノ馬事訓練所、北海道ノ馬事訓練所、
現ニ宮城縣ノ仙臺訓練所ヲ建築致シテ居リ
マスモノデモ、競馬ノ寄附金、競馬會ノ納
付金ノ外ニ更ニ日本競馬會ガ控除シテ居ル
モノノ中カラ支出シテ居ル、栃木縣ニ於テ
ハ二百万圓モ掛カルヤウナ馬事ノ綜合〓究
所ガ建ツテ居リマスガ、サウ云フモノノ費
用モ政府ガ少シモ支出ヲセズニ、皆競馬會
ノ寄附、負擔ニ依ツテヤツテ居ル、帝國馬
事協會ノ一年ノ總經費ノ大部分モ是カラ來
テ居ルノデアリマス、今度新タニ生レマシ
夕日本馬事會ノ經費モ、恐ラク日本競馬會
ノ助成、或ハ交付金ニ俟ツ外ナイト云フ狀
態デアリマスカラ、此ノ競馬ノ賣上金ノ少
クナルコト、競馬會ノ利得ノ少クナルコト
ハ、日本馬產界ノ爲ニ非常ナル影響ヲ蒙ム
ルノデアリマス、私ハ此ノ課稅ニ依ツテ恐
レヲナシテ居リマス所ハサウ云フ點ニモア
ルノデアリマス、能ク御觀察下サイマスト、
如何ニ此ノ競馬ノ賣上金ニ依ツテ日本ノ馬
事界ガ運營サレテ居ルカヲ知ルコトガ出來
ルノデアリマス、願クバ政府當局ニ於テモ
浮動ノ購買力ヲ吸收シ、惡性「インフレ」ヲ
防止シテ行キマスコトハ洵ニ結構デアリマ
シテ、固ヨリ異論ハゴザイマセヌケレドモ、
斯ウ云フコトニ依ツテ一ツノ資源ヲ失ヒマ
スルコトハ、軈テ馬產ノ上ニ影響ヲスル
今日馬ト云フモノハ國防上ノ必要ト、產業
上ノ建前ニ於キマシテ非常ニ重要ナモノデ
アリマス、講釋ガマシイコトヲ申スヤウデ
アリマスガ、兵隊サンガ澤山召集サレテ農
村ハ人手ガ不足デアリ、ドウシテモ馬ノ力
ヲ借リナケレバナラヌ、ソレニ付テ從來稍〓
行ハレテ居リマシタ馬耕-所謂田畑ヲ犂
ヲ以テ耕シテ行クノハ稍、普及致シテ居リマ
シタガ、最近ニ於テ最モ强ク唱道致サレテ居
リマスノハ水田中耕除草、是ハ殆ド農會ア
タリデモ知ラナイノデアリマス、帝國農會
アタリデスラ、地方ノ縣農會アタリスラモ
能ク分ラナイノデアツテ、而モ此ノ帝國馬
事協會ガ主トシテ全國ニ是ノ普及ヲ絕叫シ
テ居ル、水田中耕除草、是ハドウ云フ效果
ガアルカト云フト、田ノ草ヲ馬ヲ以テ取
ル、馬ヲ以テ取リマスルト同時ニ中耕ヲ
スルノデアリマス、中耕ヲ致シマスト
稻ヲ植ヱタ根ノ一番草、二番草、三番草ト、
ガニ爪ノヤウナモノヲ以テ地上ヲ搔イテ行
ク、掘ツテ行ク、今マデノノノ取取ハ一日
一人約一田圃位ガヤツトデスケレドモ、此
ノ馬ヲ以テヤリマスト一日ニ二十人分モ三
十人分モ樂ニ取レルノデアリマス、人手ノ
不足ヲ補フコトニ於テ非常ナ效果ガアルノ
ミナラズ、中耕除草ニ依ツテ稻ノ發育ヲ助
ヶ、霜害冷害ニ耐エル力ヲ與ヘル、ソレハ
ナゼカト云フト、從來ハ田ノ草ヲ取ルノハ
人手デ取リマス、中々ハカガ行キマセヌカ
ラ雨ノ降ツタ日デモ、曇ツタ日デモ、天氣
ノ日デモ構ハズ田ノ草ヲ取ツテ居ル、是ハ勞
働トシテモ非常ニ困難ナモノデアル、所ガ
馬ヲ以テ中耕除草ヲヤルトナルト、天氣ノ
好イ日ヲ狙ツテ短時間デスツトヤレル、サ
ウシテ稻ノ根ヲ掘返ス、掘返シテ行クト
其處ニ日光ガ反射シテ、溫イ水ヲ稻ノ根ニ
ヤルコトニナツテ肥料ノ分解ヲ助ケ、稻ノ
發育ヲ助ケ、稻ヲ强健ニスル、斯ウ云フヤ
ウナ一擧兩得ノ仕事ヲヤルノモ、皆此ノ納
付金デヤツテ居ル、ソレカラ近頃ハ「ガソ
リン」ガナクナツテ自動車デ運搬ガ出來ナ
イカラ、荷馬車ニ依ラナケレバナラナイ、斯
ウ云フヤウニ今日ノ日本ニ於ケル馬ノ建前
ハ非常ニ重要デアル、國民生活ニ於テモ、
國防上ニ於テモ非常ニ重要デアル又肥料
ガ非常ニ不足シテ居ルノデアリマシテ、今
マデ金肥ヲ多ク用ヒテ居ツタガ、是ハ不經
濟デアルノミナラズ、金肥ヲ多ク使フガ爲
ニ地力ヲ非常ニ瘦セサセテ居ル、地力ガ非
常ニ痩セテ居ルノハ餘リ金肥ヲ使ツタ所ガ
多イ、之ニ馬ノ厩肥ヲ用ヒテ行キマスト、
一面地力ヲ非常ニ養フ、サウシテ肥料ノ不
足ヲ補ウテ、生產擴充、食糧增產ノ上ニモ
一役ヲ買ツテ居ル、斯ウ云フヤウニ馬ガ軍
用上、產業上、或ハ運輸交通上ニ於ケル建
前ハ實ニ重大ナモノデアリマシテ、是等ニ
對スル觀念ヲ餘リニ等閑視シテ居ル國民ノ
風ガアリマス、隨テ政府自身ニモ能ク徹底
シナイノデアリマス、斯ウ云フコトヲ私共
强調致シマシテ、若シ此ノ法律ヲ實行シマ
シテ、其ノ結果幾分デモ影響ノアル場合ニ
於キマシテハ、此ノ鍛鍊競走ニ對スル課稅
ノ如キハ止メテ戴ク、或ハ此ノ競馬法ニ依
ル競馬ニ對シ緩和ノ善後處置ヲ講ジテ戴ク、
是等ノコトニ常ニ微細ナル御注意ヲ拂ツテ
戴キタイト思フノデアリマス、浮動購買力
ヲ吸收スルコトニ付キマシテ、或ハ此ノ大
增稅ニ伴フ所ノ生產擴充トドウ云フ關係ニ
ナツテ來ルカ、或ハ近來少シ行キ過ギノ感
アル統制經濟ト、此ノ國民ノ負擔總力ト云
フモノノ關係ハドウナツテ居リマスカ、私
ニハ餘リ詳細ナコトハ分ラヌノデアリマス
ケレドモ、增稅ニ依ツテ或ハ却テ低物價政
策ト〓違ヒヲ生ズルヤウナコトガナイデハ
ナカラウカト云フコトモ心配シテ居ツテ、
大藏大臣ヘ御尋ネヲシタイト思ツテ居ツタ
ノデアリマスガ、大藏大臣ノ御出席ガアリ
マセヌケレバ、私ノ質問ヲ終リタイト思フ
ノデアリマス、是等ノ點ニ付テ先程若シ影響
アレバ考慮スルト云フ御話ガアリマシタガ、
モウ一步力强キ御言明ヲ得タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=26
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027・松隈秀雄
○松隈政府委員 馬ノ改良、增殖、鍛鍊ノ
必要デアリマスコトニ對シマシテハ、全ク
同感デゴザイマス、御述ベニナツタ趣旨ハ
能ク分ルノデアリマス、今囘新稅トシテ馬
劵稅ヲ創設スルコトニナリマシタガ、ソレ
ニ依ツテ馬ノ改良、增殖、鍛鍊ノ必要ガナ
イト云フ積リデハ決シテナイノデアリマス、
私共ノ狙ヒマスル所ハ、一石二鳥ト申シマ
スカ、大體ニ於テ稅率ヲ按配シマシテ、現
在ノ程度ノ競馬若シクハ鍛鍊馬競走ノ賣上
金ガ維持サレテ行ク、サウシマスレバソレ
ニ依ツテ必要ナ所ノ政府納付金若シクハ競
馬會等ノ致シマスル寄附ニモ影響ガ及バナ
イ、一面娛樂方面ニ對シマスル支出ニ對シ
テ、或ル程度ノ課稅ヲスルコトニ依リマ
シテ、間接稅增徵ノ目的モ達セラレ、負擔力
ノ均衡モ得マスルト共ニ、浮動購買力ノ吸
收ニモ役立ツ、斯ウ云フコトデ、影響ニ關
シマスル點ニ付テハ關係當局トモ密接ナ連
絡ヲ執リマシテ立案ノ上、實行致シテ參ル積
リデアリマス、飽クマデモ狙ヒハ一石二鳥
デアツテ、決シテ一ツノ目的ヲ達スル爲ニ
他ヲ犧牲ニシテ構ハヌ、斯ウ云フヤウナ考
ヘハ持ツテ居リマセヌ、隨ヒマシテ今後藉
スニ時日ヲ以テシテ戴キマシテ、施行ノ結
果ニ付キマシテハ更ニ能ク檢討シテ見マシ
タ上、考慮致シタイト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=27
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028・大石倫治
○大石(倫)委員 今大藏大臣ガ御見エニナ
リマシタガ、大藏大臣ニハ非常ニ御多忙ナ所
ヲ特ニオイデ戴キマシテ恐縮ニ存ジマス、實
ハ大臣ニ直接御尋ネヲ致シタイト思ヒマス
點モアリマシタガ、御出席ノ關係ガドウデア
ルカト存ジマシテ、大體今政府委員ニ御尋ネ
ヲシテ終ラント致シテ居ル所デアリマス、私
ノ御尋ネ致シテ居リマスノハ、新タニ創設セ
ラレマス馬劵稅ニ付テデアリマス、段々馬
劵稅ニ付キマシテノ政府委員トシテノ御說
明モアリマシテ、大體今囘ハ已ムヲ得ザル
モノト認ムルノデアリマスガ、大藏大臣ニ
此ノ際御尋ネヲシタイノハ、或ハ他ノ委員
ガ旣ニ御尋ネ申シテ居ツタカモ知レマセヌ、
(重複ノ虞ガアルカモ知レマセヌガ、其ノ時
ハ取消スコトニ致シテモ宜シイノデアリマ
スガ、簡單デアリマスカラ御尋ネ致シマス
政府ハ長期戰ヲ豫想シ、又大東亞戰爭以
來一層軍費、國費ノ膨脹ヲ來シ、ソレニ對
應スル施策ヲ行ハネバナラナイ、又一面公
債ノ增發ニ伴フ惡性「インフレ」ノ防止ヲ目
標トシテ、二百二十億圓ノ國民貯蓄ノ奬勵
ヲヤラウ、他面財政ノ彈力性、强化ヲ圖リ、
國民ノ負擔ニ依ル所ノ軍費ノ支辨ヲシタイ
ト云フ建前カラ、玆ニ七十七議會ニ於キマ
シテハ間接稅ノ增徵、今囘ハ直接稅ノ增徵
ヲ行ハレルコトニナリマシタ、萬已ムヲ得
ザルモノトハ思フノデアリマスガ、今ハ戰
時、非常時デアリマシテ、其ノ增徵ニ對ス
ル率モ、若シ平年時デアリマスレバ、是ハ
大騷ギヲ生ズルヤウナ高率デアリマシテモ、
國民ハ負擔シ得ル限リ、敢テ之ヲ辭スルモ
ノデナイコトハ日本國民ノ特性デアリマス、
唯私ノ惧レマスルモノハ、斯樣ナ俄カノ間
接稅、直接稅、殆ド全般ニ亙ル所ノ高率ノ
增徵ニ依リマシテ、國民ノ負擔力ト申スカ、
民力ト申シタ方ガ宜シイト思フノデアリマ
スガ、民力ヲ幾分タリトモ涸渴セシメテ、
我ガ國財政ノ彈力性ヲ失フヤウナ憂ヒハナ
カラウカ、是ハ固ヨリ當局トシテハナシト
云フ御見解デアリマセウケレドモ、ソコニ
私共ハ多少ノ不安ヲ持ツノデアリマス、其
ノ點ニ付テ御伺ヒシタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=28
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029・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 御尤モナ御質問デアリマ
シテ、財政上ノ必要カラ申シマスレバ、增
稅ノ程度モマダ〓〓强ク、高ク參ラナケレ
バナラヌト云フ考ヘモ出ルノデアリマスガ、
前々カラ申上ゲマスヤウニ、今モ民力ト云
フ仰セガアリマシタガ、民力ヲ基礎トスル
我ガ國ノ全經濟力ノ增强ト云フコトガ、何
ヨリモ大切デアリマスノデ、所謂生產力擴
夷生產ノ增强ト云フコトニ大ナル障碍ヲ
及ボシマセヌヤウニ、又國民貯蓄ノ增加ノ
上ニ非常ナ障碍ノアリマセヌヤウニ、又國
民生活、詰リ前線ノ將士モ國民ノ中ヨリ出
デテ絕エズ補充增加シテ參リマスシ、生產
其ノ他ノ活動モ皆銃後國民ガ致ス所デアリ
マスカラ、此ノ銃後國民ノ健康デアツテ、
元氣ニ、而モ時局下ニ必要ト致シマス學術
技藝ノ修得ヲ期サナケレバナリマセヌ、是
等ノコトニモ著シキ障碍ガアリマセヌヤウ
ニ、國民生活ニ多大ノ脅威ヲ與ヘナイヤウ
ニト云フコトヲ重要ナル觀點ト致シマシテ、
增稅ノ程度モ考ヘ、又租稅ノ減免其ノ他稅
率ノ按配等ニ付キマシテモ、出來ルダケ意
ヲ用ヒテ參リマシタ次第デアリマシテ、是
ハ租稅ノ臨時措置法及ビ稅法案自體ニモ、
其ノ趣旨デ色々ノ點ヲ織込ンデ計畫ヲ致シ
テアリマスルヤウナ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=29
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030・大石倫治
○大石(倫)委員 大臣ノ御說明ハ洵ニ我ガ
意ヲ得タノデアリマス、此ノ增稅諸案及ビ
其ノ他ノ改正法律案等ヲ拜見致シマシテ
モ、如何ニ其ノ間ノ調節ヲ圖リ、按配ヲ考
ヘラレタカヲ認ムルコトガ出來ルノデアリ
マシテ、御話ノ如ク此ノ增稅程度ニ於テハ、
我ガ民力ニ涸渴ヲ招クヤウナコトハナカラ
ウトハ存ズルノデアリマスルケレドモ、近時
生產擴充ノ爲ニ行ハレマスル統制、統合ト
云フモノノ結果ハ、果シテ所期ノ目的ヲ現
出シテ居ルカ否カハ能ク分ラヌノデアリマ
スケレドモ、私共民間ニ居ツテ見マスルト、
自由經濟デハ固ヨリ此ノ戰時對應ハ出來ナ
イ、統制經濟ヲ以テ戰時對應ノ需給ノ調節
ヲ圖リ、各〓、其ノ所ヲ得シムルヤウニ行カネ
バナラヌノデアリマスルガ、日本ニハ統制
經濟ニ對スル經驗ト云フモノガナイ、國民
三·日·指導階級ニモ、政府方面ニモ、第一
次歐洲戰爭ノ時ニ於ケル「ドイツ」ノ如キ、
アア云フ苦杯ヲ嘗メテ、苦キ經驗ノ下ニ組
立テラレタル統制經濟ノ經驗モ持ツテ居ラ
又、又日本ノ國風及ビ政治經濟ノ狀態ガ、
斯樣ナ統制經濟ヲ行ハネバナラヌ行キ方ヲ
シテ居ラナカツタ爲ニ、其ノ點ニ對スル所
ノ〓究ト云フコト、或ハ調査ト云フコト、
ソレ等モ十分ナル行屆キヲシテ居ラナカツ
タ、又ソレニ對スル所ノ御準備ト云フヤウ
ナモノモ十分デナカツタ所ニ、統制經濟ト
云フモノガ始メラレマシテ、或ハ價格ノ公
定デアルト云フヤウナモノガ起ツタ、統制
經濟ニ伴ウテ事業ノ統合統制ト云フヤウナ
モノガドン〓〓行ハレル、是ハ米ノ如キハ
主要〓糧デ固ヨリ別デアリマスケレドモ、
例ヘバ米屋ノ關係ガ、各米商人ノ負擔シテ
居ツタ擔稅能力ハ何處ヘ移ツタカ、或ハ魚
屋ノ統制ニ依ツテ、其ノ擔稅能力ハ何處ヘ
移ツタカ、國策會社ノ設立ニ依ツテ民間ノ
事業ガ其ノ方ニ吸收セラレテ、今マデノ民
間ニ於ケル擔稅能力ト云フモノハ何處ヘ行
ツタカト云フヤウナコトハ、今日私ハ能ク
存ジナイノデアリマスケレドモ、〓觀シテ
其ノ邊カラモ此ノ國民ノ擔稅能力、或ハ民
力ノ移動ト云フモノヲ生ジツツアルノデハ
ナイカト思フノデアリマス、若シ統制等ノ
無經驗ノ爲ニ、或ハ準備不完全ノ爲ニ、
或ハ行過ギノ爲ニ思ハザル所ノ影響モ起リ
ハシナイカ、又行過ギノ爲ニ生產擴充ヲ圖
ツテ、却テ生產ガ現狀維持スラモ出來ナイ
ヤウナモノガナイデモナカラウ、斯ウ云フ
心配ヲ持ツテ居リマス、隨テ此ノ增稅ノ調
整按配其ノ宜シキヲ得テ、決シテ民力ヲ涸渴
シ、擔稅能力ノ缺乏ヲ來スヤウナコトハナ
カラウトハ存ジマスケレドモ、何トナク其
ノ間ニ多少ノ憂ヒヲ持ツモノデアリマスカ
ラ、尙ホ一層此ノ點ニ御注意ヲ願ヒタイト
思フノデアリマスガ、此ノ增稅ニ對シテ、
擔稅能力、或ハ民力ノ涸渴ナシトスレバ、
此ノ增稅ノ成績ハ長ク續イテ、長期戰ニ卽
應スルコトモ出來ルトハ存ジマスガ、其ノ
邊モヤハリ同樣ノ御考ヘデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=30
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031・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 我ガ國ニ於キマシテ計畫
經濟、統制經濟ノ運用ノ經驗ノナカツタコ
トハ御話ノ通リデアリマス、其ノ結果統制
經濟ノ實行ニ付キマシテ、相當ノ摩擦等ヲ
生ジマシタコトモ、私共モ認メルノデアリ
マス、併シナガラ大局ガ御承知ノ如ク豫算
モ本年度ハ事變前ノ十倍ニ近イヤウナ數字
ニナリ、非常ニ大キナ戰鬪行爲等ガアリマ
スルニモ拘ラズ、之ヲ今日マデ支障ナク運
用シテ參リ、生產擴充モ既往ニ於テ到底比
ヲ見ザル、又豫測シ得ナイ程度以上ニ增强
ヲシテ參リ、今日ノ戰果ヲ擧ゲテ居リマス
背後ニハ、其ノ大イナル經濟力ガ働イテ居
ル次第デアリマス、大局ノ目的ハ比較的ニ
能ク達シツツアルト思フノデアリマス、併
シ其處ニ持ツテ參リマス行キ道ノ巧劣等ニ
於キマシテハ或ハ完全巧妙ナル運用ヲ致
シマスレバ、今マデ經驗シタ苦痛ヲモツト
輕ク、或ハ或ル方面デハ無ク行キ得タカト
モ存ズルノデアリマス、是ハ官民共ニ全ク
新シイ經驗デ、或ル程度ハ已ムヲ得ナイ點
ガアルト存ズルノデアリマス、併シナガラ
ソレハ左樣ナ客觀的ノ批評デ滿足致シマセ
ヌデ、凡ユル部面ニ於テ努力シマシテ、避
ケ得ル摩擦ハ避ケテ、尙ホ一層ノ效果ヲ擧
ゲタイト存ジテ居リマス、徵稅上ニ付キマ
シテモ、御話ノ如ク經濟ガ色々ノ意味デ或
ハ徐々ニ、時ニハ急激ニ所謂再編成ヲサレ
ツツアリマシテ、擔稅力ノアリマス場所ニ
モ平時ト違ツタ異動ガ相當ニアルト思ヒマ
ス、隨ヒマシテ徵稅ノ上ニ於キマシテモ、
單純ニ各納稅者ニ對シテ前年ノ實蹟トカ何
トカニ依リマセヌデ、其ノ事情ノ變化ヲ十
分ニ調査シ、斟酌致シマシテ、ソコニ無理
ガナイヤウニ、又思ハザル脫漏ガアリマセ
ヌヤウニ十分ニ注意シテ參リタイ、斯樣ニ
存ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=31
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032・大石倫治
○大石(倫)委員 ソレデ大體分リマシタ、
願ハクバ左樣ニ效果ヲ收メラレンコトヲ切
望シテ已マヌノデアリマス、尙ホ馬劵稅ノ
問題ニ付キマシテハ、今他ノ政府委員、大
藏省ノ政府委員等ニ伺ヒマシタコトヲ繰返
スノハ、却テ時間ヲ空費スルコトニナリ恐
縮デアリマスカラ、是ハ繰返シマセヌガ、
唯大臣ニ申上ゲテ置キタイコトハ、此ノ度
新設セラレマスル馬劵稅ハ、競馬法ニ依ル
競馬ニ對シテモ、殊ニ軍馬資源保護法ニ依
ツテ行ハレマスル鍛鍊馬競走ニ對シテ穩當
デナイト思フノデアリマス、戰時非常ノ財
政下ニ於キマシテハ、一面國民ノ浮動購買
力ヲ吸收シ、又一面國庫ノ收入ヲ增加シテ
行クト云フ建前カラハ、無理ノナイコトト
ハ存ジマスルケレドモ、馬劵稅ト云フモノ
ハ鍛鍊馬ニ對シテハ寧ロ國費ヲ以テヤルベ
キモノデアリマシテ、課稅ヲシマスルコト
ハ適當デナイ、斯ウ云フコトヲ申上ゲテ置
キマス
ソレカラ競馬法ニ依ル競馬ニ對シテハ、政
府ノ課稅ニ先チマシテ、競馬法實施以來政
府納付金ト云フモノヲ致シテ居リマス、今
日ハ政府ノ命ズル所ニ依リマシテ、昭和十
四年以來、支那事變勃發後ニ於テ、從來政
府納付金八ノモノヲ十一半ニ增額致シマシ
テ、年々納付金ハ、ココ五箇年ノ平均ヲ見
マスルト一年二千万圓、一億六百十二万
圓ト云フ額ニ達シ、政府支出ノ馬ノ總豫算
一億三千八十万圓ニ比較致シマスルト、僅カ
ニ二千四百万圓ノ政府支出ニ依ツテ、昭和
十六年ニ於キマシテハ一躍約三倍ニ增加致
シマシタル此ノ馬事豫算ト云フモノヲ負擔
シテ參ツタ、其ノ他更ニ此ノ競馬納付金、
競馬ノ控除剩餘金ト云フモノガ、納付金以
外ニモ各方面ニ支出セラレマシテ、今日民
間ト官トノ間ノ此ノ馬事ノ運營振興ヲ圖リ
ツツアルノデアリマスガ、今囘ノ課稅ニ依
ツテ此ノ競馬ノ配當率ガ惡クナリ、ラッ
ン」ノ負擔ガ重課セラレテ、賣上金ガ少ク
ナリマスルト、玆ニ政府納付金モ少クナル、
國庫ノ收入ハ他ノ新稅ニ於テ滅ラヌト致シ
マシテモ、納付金ノ少クナリマスルコトハ、
確實ニ馬ノ施設ノ爲ニ使フ金ガ減ルト云フ
コトニナルノデ、今軍用トシテモ、產業生
產擴充トシテモ、運輸交通トシテモ是非必
要ナル馬ガ不足ヲシテ困ツテ居ル際ニ、サ
ウ云フ運營ガ出來ナクナルコトハ洵ニ困ル
コトデアル、ソレデ此ノ法律ヲ實施シマシ
テ、其ノ成績ガ政府ノ豫期ニ反スル場合ニ
於テハ是ノ善處方ヲ御聽キシタノデアリマ
入、主稅局長ヨリハ其ノ影響ガ絕對ニナイ
建前ヲ以テ實行スルノデアル、萬一サウ云
フ影響ガアル場合ニ於テハ善處スルト云フ
御話デアリマス、先刻內務當局ニモ聞キ漏
ラシマシテ私モ失念致シマシタガ、一ツノ
方法ガアルト考ヘテ居ツタ、昭和十六年度
ノ賣上ガ十五年度ニ比較シテ殖エ、十五年
度ハ十四年度ニ比較シテ殖エテ參リマシテ、
段々殖エテ來テハ居ルケレドモ、モウ既ニ
飽和時期デアツテ頂點デアルト私ハ考ヘテ
居ツタ時ニ、新課稅ニ依ツテ是ガ減退スル
ト困ル、減退シナカツタト云フナラバ十倍
ト云フ制限ヲ撤廢シタ方ガ宜イデハナイカ
ト考ヘテ居ルノデアリマス、配當金ハ二十
圓ニ對シテ最高二百圓ヲ以テ制限セラレテ
居ル、又鍛鍊競走ニ對シマシテハ三圓ノ十
倍三十圓ヲ以テ限度トセラレテ居ルノデア
リマスガ、之ヲモウ少シ制限ヲ擴張スルカ、
或ハ無制限ニシテモ差支ヘナイヂヤナイカ
ト考ヘテ居ルノデアリマス、是ハ射倖
心ヲ挑發スル上ニ於テ宜シクナイ、所謂賭
博射利ノ類ニ墮スルト云フヤウナヤカマシ
イ一ツノ道德論ト申シマスカ、カラサウ云
フコトニナツテ居ルノデアリマスルケレドモ、
政府ニ於テ行ハレマスル所ノ債劵十圓ニ對
シテ一万圓ト云フ千倍ノ當リ籖ヲ認メテ居
ル、アレデモ大シタ弊害ハナイ、斯ウ
云フモノニ對シテモ他ノ方面ニ於キマシテ
ハ無制限デアリマシテ、ソレガ爲ニ一層
弊害ガ著シク增長シタト云フヤウナコトモ
ナイヤウデアリマス、故ニ此ノ際ハ兎モ角
ト致シマシテ、此ノ法律實施ノ曉ニ於キ
マシテ萬一ニモ影響ガアリマシテ、馬事施
設ノ上ニ、運營ノ上ニ不利益ヲ來スコトガ
アツテハ大變デアリマスルカラ、斯ウ云フ
コトニ付キマシテモ御考ヘヲ置キヲ願ヒタ
イト思フノデアリマス、若シ此ノ際此ノ制
限ヲ擴張スル、或ハ之ヲ無制限ニシテモド
ウカト云フコトニ付キマシテノ大藏當局ノ
御說明、是ハ主稅局長カラデモ宜シウゴザイ
マスガ、一應御意見ヲ伺ヒタイ、是ハ大體ガ
內務省ノ關係デアリマスルケレドモ、大藏
省ガ同意シナケレバナラヌノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=32
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033・松隈秀雄
○松隈政府委員 御述べノ通リ競馬法ニ依
ツテ現在ハ當該競走ニ付テノ勝馬投票劵ノ
賣得金額ノ範圍內ニ於テ的中者ニ拂戾スノ
デアルケレドモ、劵面金額ノ十倍ヲ超エル
コトヲ得ナイト云フ制限ヲ置イテ居リマス、
是ハ先程內務次官ノ說明ニモゴザイマシタ
通リ、或ル程度射倖心ヲ利用シテ馬事施設
ノ改良、鍛鍊等ヲ致スノデアリマスルガ、其
ノ程度ガ餘リニ超エマスルト、手段ト目的
トヲ〓倒スル、斯ウ云フ風ナコトニナル虞
ガアルノデ、現在劵面金額ノ十倍程度ニ抑
ヘテ居ル次第デアリマス、之ヲ撤廢致シマ
シテ無制限ニスルト云フヤウナコトニナリ
マスレバ、射倖心ノ方ガ主ニナツテ馬事施
設ノ方ガ從ニナルト云フヤウナ虞モゴザイ
マスルノデ、之ヲ今直グニ變ヘルカドウカ
ト云フトハ、愼重ニ〓究シナケレバナラヌ
問題ダト思ヒマス、馬劵稅法ノ施行ニ依リ
マシテ、馬劵ノ賣上ガ減ツテ參ルト云フヤ
ウナコトハナイト思ツテ居リマスルガ、サ
ウ云フ傾向ノ現ハレマシタ際ノ救濟策トシ
テ如何ナル處置ヲ執ルカ、劵面金額ノ十倍
ヲ變更スルコトニ依ツテ賣上ヲ增ス方法ヲ
講ズルカ、或ハ競馬開催ノ場所ヲ變ヘルト
云フヤウナコトモ賣上金額ノ增ス一ツノ方
法デモアリマスルガ、ソレ等ノ方法ノ中ド
ウ云フコトヲ致スカト云フコトハ、馬劵稅
法施行ノ結果トモ睨合セタ上關係方面ト協
議シテ愼重ヲ期スベキ問題ダト思ツテ居リ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=33
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034・大石倫治
○大石(倫)委員 私ノ質問ハ是デ大體終リ
マシタ、唯願ハクハ重ネテ馬事振興上支障
ナキヤウニ御取計ラヒアランコトヲ御願ヒ
シテ、質疑ヲ終ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=34
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035・勝正憲
○勝委員長 篠原君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=35
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036・篠原陸朗
○篠原(陸)委員 酒ト煙草ノコトヲ少シ御
尋ネシタイト思ヒマス、稅率ガ決マルト物
ガ決マツテ來ルト云フヤウナ關係ガ吾々ノ
消費物ニハ相當多イノデアリマス、私ハ最
近日曜ニ運動シテ歸ツテ參リマスト、汽車、
電車ノ中デ醜態ヲ演ズル者ニ寧ロ年若イ者
ガ多イヤウニ見受ケル、老人ガ酒ニ醉ツテ
目ヲ廻ハスト云フヤウナコトハナクテ、若
イ者ガ却テ汽車、電車ノ中デ-殆ド此ノ
頃日曜シカ私ハ運動ニ出マセヌカラ、日曜
ニ運動シテ、夕食以後ニ歸リマスト、是ガ非
常ニ餘計目ニ觸レルノデアリマス、ソレデ
アリマスカラ、私ハ現在ノ日本ノ酒ト云フ
モノハ、或ハ若イ靑年諸君ニ對シテハ强過ギ
ルノデハナカラウカ、世界中私ガ旅行シテ
步イテモ、十六、七度ト云フ酒ヲ常用スル國
民ト云フモノハ甚ダ乏シイ、ソレデアリマ
カラ、寧ロ同ジ米五十万石ヲ酒ノ爲ニ吳レ
ルノナラバ、年ノ多イ諸君ガ飮ム酒ヲ造ルノ
ト、新シク酒飮ニナル諸君ニ適スルモノヲ
造ル、是ハ寧ロ厚生省ノ御關係カモ知レマセ
ヌガ、實際斯ウ云フ酒ハ幾ラト稅率ガ決マ
ツテシマヘバ、ソコニ課稅物體ガ決マル、
斯ウ云フコトニナリマスカラ、國民ノ保健
トノ關係ヲ考ヘル餘地ト云フモノガナイノ
デナカラウカ、大藏大臣モ御分リカモ知
レマセヌガ、私ノ話ヲ持出スコトハ宜クナ
イガ、此ノ間農林大臣ニ米ノコトヲ申シマ
シタガ、コクノアルノガ日本ノ酒ノ特色ダ、
之ヲ飮マナケレバト云フヤウナ、是ハ私
的間係ノ話デ、ソレヲ持出スノハ餘リ宜ク
アリマセヌガ、サウ云フコトヲ言ハレタ、モ
ウ少シ保健ヲ目的トシテ、「アルコール」量ヲ
減ズルト云フコトハ、石數ヲ餘計造リ得ルト
云フコトデアリマスカラ、假ニ二百万石ノ米ヲ
以テ三百万石ノ酒ヲ造ルカ、五百萬石ノ酒
ヲ造ルカ、一千万石ニスルカ、寧ロ當業者ニ
健康ト、榮養ト國民全體ノ將來ノ習慣ヲ作
ルコトノ餘地ヲ與フルヤウナ御考ヘヲ御持
チニナツテ戴ク譯ニハ行カヌモノデアリマ
セウカ、「ビール」ニシマシテモ、三%トカ
法律ニ「アルコール」ノ率ヲ決メテ居ル國ガ
多イ、吾々ミタイナ酒ヲ飮マヌ者ハ、少シ
ノ「ビール」ヲ飮ンデモ眞ツ赤ニナツテ、晝
間ハ出テ來ラレヌト云フヤウナコトガアリ
マスガ、豫算委員會ニ於テハ新タナ人間ニ
酒ヲ飮ム習慣ヲ與ヘナイデモ宜イヂヤナイ
カ、斯ウ云ツタ議論ガアリマシタ、サウ云
フ非常ナ節制論者ハ別デアリマスガ、サウ
デナシニ、之ヲ國民一般ニ考ヘテ見テ、酒
ト云フモノヲサウ云フ從來ノ慣習ノミニ因
ハレテ、一部ノ人ノ滿足ノ爲ニ、全體ノ人
ニ强イ酒ヲ飮マセルト云フコトデナクテモ
宜イノデハナカラウカ、課稅ノ按配上御心
配ヲ戴イタコトデアリマセウカ、或ハ技術
上日本ノ酒ヲ拵ヘル爲ニ、〓デモ米ヲ以テ作
ル、第一囘ノ掛米デ又米ヲ以テ作ル、第二
囘ノ掛米デ又米ヲ以テ作ル、斯ウ云フ風ニ
シテ非常ニ米ヲ餘計使ツテキツイ酒ヲ拵ヘ
テ居ル、サウシテ一部分ノ人ガ飮ム、是ハ
一軒ノ家デ言ヒマスナラバ、主人ダケ飮ン
デ他ノ人ハ誰モ飮マヌ、言換ヘレバ誰ニモ
飮マセナイ、サウシテ一部ノ人ガ醉拂ツテ
氣焔ヲ擧ゲル、同時ニ若イ諸君ハ之ニ依ツ
テ眼ヲ廻ハス、斯ウ云ツタ風ニ私ハ見エタ
ノデアリマスガ、强イ酒ヲ飮ム人、弱イ酒
ヲ飮ム人、ソレカラ國民全般ニハ、ドウ云
フ消費ニ導イテ行クノガ宜イカ、斯ウ云ツ
タ風ノ御心配ヲ願ヘイナモノデアリマセウ
カ、釀造ノ技術其他ニ付テ御配慮ヲ仰イデ
過般ノ臨時議會ニ於テノ稅率ト云フモノガ
決マリマシタノデアリマセウカ、或ハサウ
デナシニ、主トシテ歲入ノ點カラノミノ御
考ヘデオヤリニナツタカ、此ノ時局ニソン
ナコトヲ考ヘテ居ル暇ガナイト云フ御考ヘ
モ多少アラウカ、サウ云ツタヤウナ考ヘ方、
現在ノコトヲ善イトカ惡イトカ申スノデア
リマセヌガ、將來ハドウ云フ風ニオヤリニ
ナツテ戴クコトガ可能デアリマセウカ、又
是ハ稅率ガ決マツテシマフト、稅率ニ合フヤ
ウナモノヲ拵ヘネバナラヌト云フコトニナ
ツテ、ソコニ何ガナイノヂヤナイカ、ッ
將來ノコトヲ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=36
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037・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 近頃非常ニ醉拂ヒガ多イ
ト云フ話ハ私モ聞イテ居ルノデアリマス、
酒ノ造石高ガ段々制限ヲサレマシテ、ドウ
モヲカシク思ツテ居リマス、之ヲ或ル人ハ、
東京市內ニ於ケル現象ハ元ハ圓タクガ非常
ニ安カツタノデ、醉拂ヒハ皆圓タクニ乘ツ
テ歸ツタガ、今ハ圓タクガ殆ド利用出來ナ
イノデ電車ニ乘ツテ歸ル、電車ニ乘ツテ歸
ルノデ非常ニ人ノ目ニ着クノダタラウト云
ツテ居リマス、ドウモ其ノ實相ハ分リマセ
ヌガ、兎ニ角若イ人ガ餘計酒ヲ飮ンデ醉拂
フト云フヤウナコトガ、從前ヨリ殖エルト
云フコトガアリマスレバ、ソレハ甚ダ憂
フベキコトデアルト思フノデアリマス、今
囘ノ增稅ニ付キマシテハ、從前ノ通リノ行
キ方デ率ノ增加ヲ致シマシタノデ、只今御
述ベニナリマシタヤウナ點ハ考慮ニ入ツテ
居リマセヌ、蓋シ物ノ嗜好ヲ變ヘマスト云
フコトハ理窟以外ノコトデアリマシテ、中
中一擧ニ稅法ニ依ツテノミ之ヲヤルト云フ
コトハ、尙ホ考慮ノ餘地ガアル問題ト存ジ
やく、國民ノ保健、其ノ他各種ノコトヲ考
ヘ合セマシテ、其ノ點モ確カニ今後ノ〓究
問題デアラウト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=37
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038・篠原陸朗
○篠原(陸)委員 多分將來ハ御心配戴ケル
コトト思ヒマスガ、技術上ハドウデスカ、技
術上釀造酒ニシテ「アルコール」ノ率ガ少イ
モノデ-詰リ釀造酒デナイト榮養量ガ
ナイ、榮養量ヲ持ツテ而シテ「アルコール」
ノ度數ガ少クテ濟ムモノガ、技術上旨ク出
來ルヤウニ御〓究ニナツテ居ルノデアリマ
セウカ、御考ヘニナツテナイノデアリマセ
ウカ、或ハソレナラバ更ニ穀物ヲ餘リ使用
シナイデ-例ヘバ餘所ノ國デハ酒ヲ造ル
ノハ、葡萄其ノ他果物ヲ利用シタモノガ多
1、其ノ點ハ技術上ドウデセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=38
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039・松隈秀雄
○松隈政府委員 釀造酒ノ代表酒ハ〓酒デ
アリマス、〓酒ノ「アルコール」度數ハセイ
ゼイ製造直後ニ於テハ十八、九度アルノデ
アリマスルガ、所謂飮ミ頃トシテハ十五、
六度ガ一番宜シイノデアリマス、ソレデハ
「アルコール」度數ガ强イカラモウ少シ薄メ
テ飮ム、斯ウ云フコトデアリマスルガ、國
民ノ嗜好ト云フモノハ遽カニ變ヘ難イノデ
アリマシテ、先年來〓酒不足ノ場合ニ、〓
酒ヲ伸バス方法トシテ水ヲ餘計割リマシタ、
所ガ水酒ノ評判ノ惡カツタコトハ御承知ノ
通リデアリマシテ、ヤハリ釀造酒ト云フモ
ノハ或ル程度ノ「エッキス」分、是ガ榮養ニナ
ル譯デアリマス、ソレカラ人ヲ醉ハセル「ア
ルコール」分、此ノ兩者ガ工合好ク絡ミ合ツ
テ居ル所ニ何トモ言ハレナイ釀造酒ノ味ガ
出テ參ルノデアリマス、之ヲ若シ人工的ニ
引下ゲヨウト致シマスルト、醱酵ヲ不完全
ナ程度デ止メルト云フヤウナコトヲ致シマ
スル爲ニ、兎角釀造ノ途中ニ於テ失敗ヲ來
ス、ヤハリ釀造ハ普通ノ順序ニ從ツテ、學
理的ニモ、實際的ニモ行ク所マデ行カセテ、
自然ニ出來上ツタモノガ丁度頃合ヒノ十
八、九度ノモノデアツテ、ソレニ一割トカ
一割五分程度ノ水ヲ割ツテ飮ムト云フノガ
一番宜シイノデアリマス、隨ヒマシテ現在
〓酒ニ對シテ國民ノ嗜好ガ集ツテ居リマス
ル際ニ、〓酒ヲ水ツポクスルト云フコトハ技
術的ニモ困難デアリマス、又サウ云フ風ニ
致シマスルト、結局國民カラ飽キラレテシ
マフト云フコトニ相成リ、且ツ餘リ水ツポ
イモノヲ拵ヘマスルト保存ガ利カナクナ
リ、腐敗シ易クナル、ソレヲ防ガウトスレ
バツイ防腐劑ノヤウナモノヲ餘計用ヒル
ト云フコトニモナリマスノデ、御考ヘハ御
尤モナ點ガアルノデゴザイマスケレドモ、
日本ノヤウニ〓酒ガ國民ノ嗜好ノ中心デア
ル飮酒傾向ニナツテ居リマスル所デハ、酒
精分ノ少イ酒ヲ造出スト云フノハ中々困
難ダト思ヒマス、ソレカラ「ビール」ノ需要
ハ年々增シテ居リマス、是モ原料ノ關係デ
抑ヘラレテ、需要ノ增スニ伴フダケノ增石
ヲ認メラレテ居リマセヌケレドモ、是モヤ
ハリ日本ノ氣候、濕度ノ關係カラ申シマス
ルト、夏ハ大體好カレマスルケレドモ、
冬ハ餘リ好カレナイ、日本ノ部屋ノヤウナ、
隙間風ノ多イ、煖房裝置ノナイヤウナ所デ
ハドウモ餘リ「ビール」ヲ飮マウト云フ氣
ガシナイ、是ハ外國ト氣候風土ガ違フ關係
ダト思ヒマス、ソレカラ果實ヲ原料トスル
酒ガ最近段々殖エテ參リツツアリマスルコ
トハ御承知ノ通リデアリマス、是ハ果物ノ
輸出ガ出來ナクナツタト云フヤウナ點、若
シクハ〓酒ガ不足シタト云フヤウナ理由カ
ラ殖エテ居ルノデアリマスルケレドモ、併
シ全體ノ酒ニ對シマスル割合ハマダ極メテ
微々タルモノデアリマス、而モ我ガ國ノ果
物ハ含糖分ガ少イ爲ニドウノモ品質ガ宜シイ
モノガ出來ナイ、斯ウ云フ狀態デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=39
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040・篠原陸朗
○篠原(陸)委員 御話ノ程度ノコトハ實ハ
私モ能ク知ツテ居ルノデスガ、今ハ新シ
イモノヲ試ミルコトヲ許サレテ居ナイ、
言換ヘレバ、酒ヲ從來ノ釀造法ニ依ツテ從
來通リニ造ルト云フ以外ニハヤツテイラ
ツシヤラナイノデハナイカト云フコトナ
ンデス、酒ガ腐ルト云フコトハ蛋白分ガ
腐ルノダカラ、米カラ蛋白分ヲ取ツテ造レ
バ腐ラナイ酒ガ必ズ出來ル、今ノ技術デハ
サウ云フコトヲ〓究シナイ、ソレダケニマ
ダ進ンデ居ナイ、デスカラ私ハサウ云フ觀
點カラ、モウ一歩進メバ、貴重ナ米ヲ三度
使ハナクテモ出來ルモノガ幾ラモアラウト
思フ、世界中步イテ見テモ、十五、六度ト
云フ酒ヲ飮ンデ居ルヤウナ宴會ハナイ、ソ
レヲ飮ンデ飮ミ足ラナイ人ハ「アルコー
ル」ノ强イノヲ飮ミマス、釀造シタ酒デナ
ク蒸溜シタ酒デ飮メルモノガ澤山アリマ
スカラ宜イノデス、ソコデ此ノ戰爭中デア
レバコソ此ノ慣習ヲ變更スルノニ一番好イ
機會デハナイカ、吾々ハ必ズシモ從來ノ
慣習ヲ其ノ儘持ツテ行クト云フコトヲ考ヘ
テハ居ナイノデス、國民ノ榮養ニ適ヒ、而
シテ健康ヲ害シナイモノナラ醉ツ拂ハナク
テモ宜イ、吾々ノ腹工合ニ好クテ、健康ニ
役立ツナラバ、オ母サンヤオ婆サンモ皆飮
ンデ宜イ譯デアル、ソレヲ唯主人バカリ
ガ酒ヲ飮ムヤウナコトニ固定シテ居ルノハ
私ハ非常ニ馬鹿ラシイコトダト思ヒマス、
ソレニハ稅率デ斯ウ云フモノハ斯ウダト縛
ツテ居ルコトガ害ヲナシテ居ナイカ、又釀
造ノ〓究ヲスル諸君ハ、サウ云フコトカラ
モウ一步踏出シテ、國民ノ保健ノ關係ト榮
養ノ關係ヲ併セテ考ヘ、サウシテ米ガ足リ
ナイナラ米ヲ使ハナクテモモツト良イモノ
ガ出來ルト云フ建前デ行ツテ居ラレルデセ
ウカト云フコトヲ私ハ心配スルノデス、私
ハ自分ガ酒ヲ飮ミマセヌノデ、酒ノコトヲ
言フノハ普段遠慮シマスケレドモ、ドウ
モ老體ダケハ舊來ノ酒ガ欲シイ、併シ新シ
ク入營シテ出征スルヤウナ者ニ元ノ酒ヲ飮
マセル必要ハナイ、同時ニ是ハサウ云フ時
世ガ來タノデハナイカ、デスカラモウ少シ
保健的ニ、ソレカラ吾々ニ榮養ヲ供給スル
意味ニ於テ-葡萄酒ナド飮ンデ見テモ恐
ラク六、七度シカナイガ、サウ云フ酒デ結
構身體ノ爲ニナル、「フランス」ノ料理ガ旨
イノハ葡萄酒デ煮ルカラデス、又「フランス」
デ砂糖ノ消費量ガ少イノハ葡萄酒デ物ヲ煮
ルカラデアリマス、ソコデ私ハ吾々ノ健康
增進ト併セテ、吾々消費者全體各階級ガ樂
シメルヤウナ御〓究ヲ願ツタラドウデアラ
ウカト思フノデアリマスガ、技術ノ方ノ諸
君ガ「アルコール」ガ少ナケレバ旨イ味ニ出
來ナイト言フノハ、私ハ過去ニコビリ付イテ
居ルヤウニ思フ、而シテ嗜好ヲ論ズル諸君
ハ自分ノ過去ノ味ヲ固執シテ居ルノデハ
ナイカト思フ、日本酒ノ特色ハ吾々モ知ツ
テ居リマスガ、モウ一步進メテ技術的ニ〓
究スレバ、モツト良イモノガ出來ハシナイ
カト思ヒマス、而モ國民全體ガ飮メルヤウ
ナモノガ出來ハシナイデアラウカ、唯一家
ノ主人ダケガ飮ンデ小言バカリ言ツテ居ル
ヤウナ慣習ハ斯ウ云フ戰爭ノ時ナラバ多
少デモ改メルコトガ出來ルノデハナイカト
思ツテ私ハ御尋ネシタノデアリマス
次ニ煙草ノコトヲ少シ御尋ネ致シマス、
新併合地帶及ビ新タニ獨立國ニナルカナラ
ヌカ知リマセヌガ、サウ云フ體制ヲ執ルヤ
ウナ地帶ハ、大體世界的ナ煙草ノ產地デア
リマス、同時ニ世界ノ消費カラ言ツタナラ、
中華民國ハ煙草ノ大ナル產地デモアリマセ
ウガ、大ナル消費地デアリマス、私ハ日本
ニ於テ煙草ヲ喫ンデ見ルト、餘リ良イ煙草
デアルトモ思ヒマセヌガ、是カラ世界ヲ相
手ニシテモ、原產地、消費地兩方持ツテ居
レバ財政的ニ將來利用ガ出來ルノデハナイ
カト思ヒマスガ、之ヲ將來ハドウ云フ風ニ
オヤリニナリマセウカ、或ハ專賣ノヤウナ
所マデ行キマセウカ、或ハサウデナク課稅
論ノヤウナモノデ行クノデセウカ、或ハ現
在ノ日本ノ煙草ニ對スル經驗其ノ他カラ言
ツテ、又國際關係カラ見テモ、相當大キナ
財源ト、而シテ仕事トシテチ相當大キナ分
量ヲ持ツテ居ルト思ヒマスガ、其ノ點ドウ
云フ工合ニオヤリニナルノデアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=40
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041・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 支那ニ於ケル煙草ト云フ
コトニハ私ハ大分以前カラ着目シテ居リマ
ス、是ハ御話ノヤウニ、非常ニ大キナ消費
市場デアルト云フコトガ第一デアリマス、
ソレニ關シマスル施策ハ中華民國政府ガナ
スベキデアリマス、併シナガラ中華民國政
府ハ我ガ國ト密接ナル關係ガアリマスノデ、
吾々モ其ノ點ラ考ヘテ行キタイ、併シ從來
支那ニ於キマシテハ、英米系ノ煙草會社ノ
勢力ガ非常ニ强イモノデアツタガ、事態モ
非常ニ變ジテ參リマシタノデ、色々吾々モ
考ヘテ居リマス、併シ今具體的ニ申上ゲル
マデノ段階ニナツテ居リマセヌガ、南方地
方ハ人口ニ於テハ支那ニハ遙カニ及ビマセ
ヌガ、併シ相當ナ人口ヲ有シテ居リマス、
殊ニ「フィリッピン」ノ如キハ非常ナ原產地
デアリマス、是ナドハ我ガ國ガ支那事變以
來國策上外葉ノ輸入ヲ止メテ居リマスカ
ラ、圈內ニ有用ナ葉煙草ノ生產ガ出來ルト
思ヒマス、是ナドハ今後供給ノ方面カラソ
レガ重要ナル因子トシテ非常ナ影響ヲ與ヘ
テ來ルト思ヒマス、又南方諸地域ノ煙草消
費カラ來ル經濟、財政ノ影響ニ付キマシテ
ハ、南方諸地域ノ統治形態ガドウナルカト
云フコトガ問題デ、主トシテ財政ニ關シマ
スル方面ハ、今ドウ斯ウト申上ゲルト云フ
段階ニ達シテ居リマセヌガ、是ハ御述ベニ
ナリマシタヤウニ、非常ニ經濟方面ニ、ソ
レカラ財政方面ニ深イ關係ヲ持ツテ居リマ
ス、我ガ國ガ指導的立場ニナリマスル關係
上是等ノ點ニ付キマシテモ我ガ領域トナ
ルモノハ勿論デアリマスガ、獨立致シマス
ヤウナモノニ付キマシテモ、善處スベキコ
トニ付テノ相當ナ援助ヲ與ヘルコトガ出來
ルダラウト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=41
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042・篠原陸朗
○篠原(陸)委員 マダ詳シク承ル時期デハ
ナカラウト思ヒマスケレドモ、租稅觀念ノ進
マナイ地方ニ於テノ財源論ミタイナモノハ、
專賣的ノ傾向ヲ持ツト云フヤウナ意味カ
ラ、專賣的ト言ヒマスカ、消費ト生產トノ
差額ヲ取ル、斯ウ云ツタヤウナ考ヘ方ガ已
ムヲ得ナイノデハナカラウカ、其ノ點カラ
言ヒマスト、一方ニ於テハ生產ヲ盛ンニス
ル、或ハ確保スル、安心ヲ與フル、斯ウ云
ツタヤウナ方面カラ、ソレニ對シテ國ノ財
政的ノ需要ヲ充タス、斯ウ云フ考ヘトノ兩
方面カラ進ミマスコトガ實際ニ合フノデハ
ナカラウカ、中華民國ヲ惡ク言フノデハアリ
マセヌガ、租稅觀念-吾々ノ謂フ直稅的ノ
租稅觀念ノ進マナイヤウナ諸國ニ於ケル財
政關係ハ、斯ウ云フコトヲ必要トスルノデハ
ナカラウカト思ヒマスカラ御尋ネシタ次第
デアリマス、大體御考ヘヲ承リマシタ
ソレカラモウ一點御尋ネシテ置キタイノ
ハ分與稅ノ將來デアリマス、分與稅ノ將來
ト云フモノハドノ程度マデ御考ヘニナツテ
イラツシヤイマセウカ、是ハ將來ノコトデア
リマスカラ餘リ深ク御尋スルコトハ如何カ
ト存ジマスガ、國ノ方カラ補給ヲシテ、ソ
レデ足リナクテ府縣ガ事項每ニ經費ヲ出シ
テ又モウ一遍分與稅ヲ貰ツテ、サウシテ府
縣デヤル、斯ウ云ツタヤウナ分與稅ノ標的
ハ府縣ト市町村ト二ツアリマセウガ、市町
村ノ方ハ一番最初ノ基礎的ノ自治體デアリ
マスカラ、完全ニ自治ヲヤツテ行ク財源ヲ
供給スルコトハ已ムヲ得ナイコトデアリ、
必然的ナコトデアリマセウガ、此ノ間豫算
委員會デモ一寸御尋ネシマシタガ、一方デ
連帶支辨金ヲ警察費デ五千万圓出ス、ソレ
デ又モウ一遍分與稅ヲ貰ツテ來ル、ソレデ警
察費ヲヤル、其ノ他ニモサウ云フ經費ガア
リマシタカラ例トシテ申上ゲマシタガ、サ
ウ云ツタヤウナコトヲヤル價値ガアルノダ
ラウカ、日本全體ノ租稅ノ入ツテ來得ル場
所ト云フモノハ東京トカ大阪トカ云フ經
濟力ノ强イ大都市デス、サウ云ツタヤウナ
所ハ滿足ナコトガヤレルガ、貧乏ナ縣デモ
同ジヤウナコトヲヤリタイ、斯ウ云ツタヤ
ウナコトガ所謂財政難ニ陷ル所以デハナカ
ラウカト思ヒマスカラ、或ル二、三ノ大キイ
ヤウナ歲出ニ對シテ國ガ國費支辨ニ移管ス
ル、斯ウヤツタラ却テ直截簡明ニ租稅政策
ダケデグツト行クノヂヤナカラウカ、ゴタ
ゴタスルダケノ實益ト云フモノハ何處ニア
ルノダラウカ、隨ヒマシテ私ハ地方自治體
ガ府縣ト市町村トデ競爭スルヤウナコト
ハ、少シ意義ヲ成サヌノデハナカラウカ、
府縣ノ方ハモウ不完全ナ自治、或ハ極ク限
局セラレタル自治ト云ツタヤウナモノニナ
ルコトハ已ムヲ得ナイノデハナイカ、此ノ
點ハ將來ノコトデアリマスガ、ドウ云フ計
畫デ御考ヘニナリマスカ、ソレダケ承ツテ
置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=42
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043・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 此ノ問題ハ地方自治體ノ
獨自ノ存在、機能發揮ト云フモノト、租稅
ガ段々單一所得稅デハアリマセヌガ、所得
ニ對シテ賦課サレルト云フ傾向ガ形ノ上ニ
於テモ鮮明ニテリマスト、補完稅ノ重要性
ガ段々薄クナツテ來ルト云フ關係、增稅力
ガ大都市ニ集マツテ來ルト云フ關係、マダ
アルカ知リマセヌガ、斯ウ云フ關係ガ錯綜
シテカラ起ル事態デアラウト思ヒマス、元
元自治體ノ觀念カラ言へバ特別ノ稅種ヲ持
ツテ行キタイ、地方自治體ノ機能、同時ニ
財源モサウ云フ風ニ行キタイト云フ要求モ
アルト思ヒマス、併シソレデハ戶數割ヲヤ
ルカ、是ハ非常ニ不完全デアル、ソレデハ
所得ニ應ジテ取ルカ、結局所得稅ノ附加
稅ノヤウニ集マツテ、段々徹底シテ分與稅
ニモナルト云フヤウナ次第デ、サウスルト
獨自ノ財源ト云フモノハナクナル、斯ウ云
フ觀點ノ調和ヲ如何ニスルカト云フ點ガ一
ツノ問題デアラウト思ヒマス、ソレカラ今
申上ゲタ負擔力ガ大都市ニ集マル、其ノ他
地方ノ事業ガ色々アリマス、是ガ純國家的
デアルカ、純地方的デアルカ、ドウモ截然
トシタモノバカリハナイノデ、色々ソコニ
中間的ノ度合、ソレガ同ジ事項デアリマシ
テモ、場所ニ依ツテ違フ、警察費連帶支辨
金國庫負擔割合モ違ツテ來ルト云フヤウナ
コトモアリマス、ソレニ國ノ委任事務、是
等ガ非常ニ複雜デアリマシテ、單ニ負擔分
任ノ關係カラノミ簡明直截ニ物ヲ扱フ譯ニ
ハ行キマセヌ、ソコニハヤハリ一方沿革ト
云フモノガアツテ、一擧ニシテ之ヲ綺麗ニ
スル譯ニハ行キマセヌ、ヤハリ以上ノヤウ
ナ觀點ガ綜合サレタ結果ノ制度ノ運用デ行
クヨリ仕樣ガナイ、ヤツテ居リマス內ニソ
レガ餘リニ偏ル、餘リニ不都合ガ生ズルト
云フ時ニハ、ソコニヤハリ相當ノ整理ガ行
ハレル、私ハ物事ハサウデアラウト思ヒマ
ス、今直グ小學校〓員ノ俸給ノ連帶支辨ヲ
廢シ、警察費連帶支辨モ廢シ、分與稅一本
デ行クト云フコトモ、一寸直グニハ行キ兼
ネルノデハナイカ、斯ウ云フ風ニ思ツテ居
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=43
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044・篠原陸朗
○篠原(陸)委員 モウ一點御尋ネ致シマス、
法人ノ國防獻金、是ハ私ハ場合ガ斯ウ云フ
戰爭ノ際デアリマシテ、獻金自體ガ戰爭ノ
緊密ナル所ニ入ルト云フコトデアリマスカ
ラ、目的トシテハ結構ナコトト思ヒマスガ、
租稅ノ體系ノ方カラ見マスト、法人ノ所得
ト云フモノハ、旣ニ租稅ノ對象ニナツテ居
ル、ソレカラ貰フ配當ト云フモノハ、個人
ノ所得ノ對象ニナツテ居ル、兩方トモ既ニ
租稅デ支配スベキ利益關係ト思フノデアリ
マス、會社ガ國防獻金ヲスルト云フコトハ、
非常ニ不定多數ノ株主カラ成ツテ居ル會社
ノ場合ニハサウエライ不合理ノコトハナイ
ト思ヒマスガ、少數ノ株主カラ成ツテ居リ
マシタ場合ニハ、個人所得稅ト法人所得稅ト
二ツヲ睨合ハセテ國防獻金ヲシテ、國防獻金
ガ損金ニナル、何カ租稅ノ取引ノヤウナ傾
向ヲ呈スルノデハナカラウカ、私ハ將來ノ
稅ノ考ヘ方ト云フモノハモウ一步進ミマシ
テ、所得デモ財產デモ兩方カラヤル、斯ウ
云フ時代ノ來ルコトヲ豫想致シマスト、法
人ガ國防獻金ヲスルト云フコトハ、言換へ
レバ個人ニ於テハ壯年ノ人ハ命ヲ出ス、ソ
レダカラ俺ハ財產ヲ出ス、所謂、「ノートオプ
ファー」ノ考ヘデ來テ居ル系統ノ考ヘ方ト
矛盾スルヤウニ思フ、臨時措置ノ規定ノ一
部ト云フモノハ遠慮シテ、實際ハ租稅體系
カラ言フト何カ逆ナヤウナ考ヘ方ガ致シマ
ス、是ハ當然現在ノ情勢モ御考ヘニナツテ
オヤリニナツタコトデアリマセウガ、ヤハ
リ條理通リ行ツタ方ガ宜イノデハナイカト
云フヤウナ氣ガ致シマスガ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=44
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045・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 考へ方ニ依レバ色々考へ
ラレルコトデアリマセウ、租稅ノ理論カラ
行ケバ、寄附ハ一切損金トシテハ認メナイ
デ、皆益金カラヤリタケレバヤル、課稅セ
テレタ利益デヤルト云フコトモ考ヘラレル、
又餘リニ寄附金ガ方々ニアリマスコトハ、
國家ノ資力ヲ適正ニ配分スル所以デハナイ、
一々ノ寄附ハ皆ソレ〓〓理由ガアルノデア
リマス、併シ一々理由ガアレバ、其ノ方ニ
何ヲヤツテモ宜イト云フコトハナイ、國家
ノ緊要ナル產業デアツテモ、種類ガ適切デ
アルカラ何處マデヤツテモ宜イト云フ譯デ
ハナク、國家ノ總資力ヲ如何ニ適切ニ配分
スルカト云フ點デアリマス、其ノ意味ニ於
テ餘リニ寄附金ニ依ツテ公共事業ガ行ハレ
ルト云フコトハ、必ズシモ適切デナイ、況
ヤ寄附金ニ依ツテ行フ事業ハ效率ガ良クナ
イモノモアルヤウデアリマス、其ノ事業ノ
本來ノ目的ニ使ハレルモノハ比較的少クシ
テ、資金ヲ集メルトカ何トカ云フ中間ニ空
費サレルモノモ少クナイ、斯ウ云フ弊害ガ
アルヤニモ思ハレルノデアリマス、單一ニ
申セバ、全部稅金ヲ取ルナラ取ルト云フ方
法デ行クノモ一ツノ行キ方デアルト思フノ
デアリマス、併シナガラ國防獻金ノ如キモ
ノハ、國民ノ愛國心ノ發露デアリマス、此
ノ愛國心ノ發露ヲ素直ニ其ノ儘認メテ行。ク
ト云フコトガ、一ツノ重大ナル政治デアル
ト私ハ思フ、其ノ意味ニ於テ國防獻金ニ付
テハ、只今提案致シテ居リマスヤウナ處置
ヲ執ルノガ適切デアルト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=45
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046・篠原陸朗
○篠原(陸)委員 私モサウ云フ氣持デオヤ
リニナツテ居ルコトダケハ分リマスガ、租
稅ノ理窟カラ考ヘテ、本當ニ國防獻金ヲス
ルト云フノハ、個人ガ身錢ヲ切ルト云フコ
トデアリマス、個人ニ於テハ一方ニハ命
ヲ捧ゲル人ガ居ルノダカラ、一方デハ財產
ヲ捧ゲル、斯ウ云フ考ヘ方ガ理論デハナカ
ラウカ、實際ハ唯國防獻金デアルガ故ニト
云フ名前ノ下ニ、租稅ノ關係カラ、益金ガ
アル場合ニハ法人デ幾ラ課カル、個人デ幾
ラ課カル、斯ウ云フ考ヘ方デスル場合モ包
含シテ居ルヤウニ思ヒマス、大臣ノ政治的
ニスルト云フコトハ能ク分ツテ居リマスガ、
サウ云フヤウナ氣持ノスル場合ガナイデハ
ナイト思ヒマス、ソレデアリマスカラ不定
多數ノ株主カラ成ツテ居ル會社ガ國防獻金
ヲシヨウ、斯ウ云フコトハ間然スル所ガナ
イ譯デアリマス、併シナガラ少數ノ株主ノ
場合ニハ逆ナ場合モアル、ソコデ其ノ間ニ
何カ區別ヲ設ケル必要ガアツタノデハナイ
カト思ヒマスガ、如何デセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=46
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047・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 結局ヤリ方ニ依リマスト、
一部ガ稅金デ國家ニ納メラレ、一部ガ國防
獻金デアルカ、全部ガ國防獻金デアルカト
云フコトニナツテ居リマス、只今ノ場合ニ
ハ全部ガ國防獻金ニナツテモ國防ニ必要ナ
戰費ニハ到底足リナイノデアリマス、政府
ガ稅金デ取ツテ、然ル後ニ是ハ戰費財源、
是ハ一般政治財源ト云フ配分ヲ要セズシテ、
國防獻金ニ眞ツ直グ行ツテ宜シイト思ツテ居
リマス、其ノヤウナコトハ別ニ區別ヲ設ケ
マセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=47
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048・篠原陸朗
○篠原(陸)委員 區別ヲシ難イ關係デアラ
ウト思ヒマスガ、將來「ノートオブファーL
ノ問題ガ起ル場合ニハ十分ナ御心配ガ願ヘ
ルカト思フノデ、私ハ餘リ申上ゲマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=48
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049・岡本實太郎
○岡本委員 先刻篠原君カラ御質問ノアツ
タ煙草ニ付テ私モ一寸御伺ヒシテ見タイト
思ヒマス、只今御答辯ノヤウニ、支那ニ付
テハ重大ナ問題ガアリマス、支那ハ大消費
地デアルト共ニ、葉煙草ノ一大生產地デア
リ、而モ從來殆ド英米ノ勢力下ニアツタガ、
漸次日本ノ勢力下ニ向ヒツツアル所デアリ
マス、事變始ツテ以來其ノ傾向ハ著シクナ
ツテ居ルト思フ、飜ツテ南方ノコトヲ考へ
テ見ルト、「インド」ヲ入レルト入レヌトデ餘
程狀態ガ違フカラ、姑ク「インド」ハ別トシ
テ、「フィリッピン」ノ「マニラ」煙草ハ世界
的ノモノデ、品質ニ於テハ世界ニ覇ヲ唱ヘ
テ居リマス、產額ハ日本ノ葉煙草ノ總產額
ヨリ稍〓少イ位カト思ヒマス、而モ今マデ出
シテ居ツタ、「アメリカ」ニ對シテハ、「フィ
リッピン」カラ輸出モ多イケレドモ、又
輸入モ多イト云フ關係ニナツテ居リマシ
テ、其ノ他ノ國ニ對シテハ輸出入ハ少イノ
デアリマス、アトハ葉煙草デ各國ニ少シバ
カリデ、而モ其ノ勢力關係ハ、永年「スペ
イン」ガ支配ヲシテ居リマシタカラ、今尙
ホ此ノ製造販賣等ニ於テハ「スペイン」系統
ガ多分ニ入ツテ居リ、之ニ英米系統、殊ニ「ア
メリカ」ノ系統ガ食込ンデ居リ、華僑ガ扱
ツテ居リマス、是ハ蘭領「インド」ニ於テモ
大事デアリマス、殊ニ「スマトラ」ノ葉煙草
ノ如キハ、世界一ノ品質デアルト思ヒマスシ、
產額モ「フィリッピン」ヨリ少シ多クテ、殆
ド日本ノ產額ニ近イモノガアリマス、佛
印「タイ」ニハ大キナ產額ハナク、佛印ハ
寧ロ「フィリッピン」其ノ他カラ供給ヲ仰イ
デ居ルヤウデアリマス、斯ウ云フ狀態ノヤ
ウデアリマスガ、蘭領「インド」ノ葉煙草ニ
付テハ、從來悉ク「オランダ」ノ方ニ行ツテ
居ツテ、「オランダ」カラ之ヲ各國ニ向ケテ
居ツタノデアリマス、隨テズツト以前カラ
ノ經歷ヲ見マシテモ、「フィリッピン」ノ葉
煙草ハ日本ニ入ツタケレドモ、蘭領チョン
ド」ノモノハ入ラナイ、皆「オランダ」ノモ
ノデアリマス、而モアチラヘ荷マデ〓ルト
云フヤウナ關係ニアツタカラ、許可モセズ、
事實來ナイ、其ノ蘭領「インド」ノ葉煙草ガ
隨分多イノデアリマス、斯ウ云フヤウニシ
テ「インド」ヲ別ニスルト、支那カラ南方ニ
掛ケテハ、葉煙草ノ原料關係ニ於テハ生產
ト消費トガ凡ソ一致スル、ソコデ「インド」
ノ關係デスガ、此ノ「インド」ハ又世界デモ
ドエライ產地デ、「アメリカ」ニ次グモノデ
アリ、而モ其ノ品質ガ割合ニ良ク、價格ガ
非常ニ安イト云フヤウナ關係デ、從來英國
關係ニ於テ專ラ世界ニ出シテ居リマシテ、
日本ニモ大分入ツテ來テ居ルト云フヤウナ
狀態ニアリマスカラ、所謂大東亞圈內ニ
「インド」ヲ組入レルト、此ノ大產地ノ葉
煙草ハ餘ツテ、其ノ過剩ヲドウシテ始末ス
ルカト云フヤウナ問題ニナツテ居ルト思ヒ
マス、南方問題ヲ論ゼラレル時ニ、「ゴムL
ノアノ澤山アル生產ヲドウ始末スルカ、或
ハ錫ヲドウスルカ、或ハ〓糧ノ米ニ付テハ
ドウスルカト云フコトガ隨分論ゼラレマス
ガ、葉煙草及ビ製造煙草ノ關係ニ付テハ、
餘リ多クノ論ヲ聞カヌト云フノハ、畢竟日
本デハ專賣局ガ扱ツテ居ツテ、專賣品ニナツ
テ居ル、斯ウ云フヤウナ頭ガアルカラ多ク
是ガ問題ニナラヌカノヤウニ存ジマス、併
シアノ支那ト云ヒ、南方諸地方ト云ヒ、煙草
ノ專賣法マデマダ行ツテ居リマセヌ、英米
ノ勢力ハ「フィリッピン」ニハ少イヤウデス
ガ、支那ノミナラズ、蘭領「インド」ノ如キ
モ十數年此ノ方製造其ノ他殆ド英米ノ勢力
デ席卷シテ居ルト云フ實情ニアル、ソコデ
御尋ネシタイノハ、斯ウ云フ實情ニアルト
シタナラバ「インド」ヲ大東亞圈內ニ組入レ
ルト葉煙草ガ大分過剩ニナル、又之ヲ縱ンバ
組入レズトモ、支那、或ハ蘭領「インド」地
方ニ於テ英米ノ製造シテ居ルノハ、悉ク
此ノ東亞圈內ノ原料デ製造シテ居リマス、
此ノ事情デアルカラ英米關係ノ煙草會社ニ
對シテハ原料ヲ供給シナイ、葉煙草ヲヤラ
ナイ、斯ウ云フコトニスレバ忽チ向フノ事
業ハ衰微シテシマフ、現在ノ設備ハドウシ
テ使ハレルカ、斯ウ云フ問題ニナル、サリ
トテ此ノ英米ノ大キナモノニ原料ヲ供給セ
ズシテ、皆製造サセナイト云フコトニナレ
バ、後ヲ悉ク日本デ引受ケルコトガ出來ル
カドウカト申セバ、日本ノ製造設備デハ容
易デハナイ、遽カニ之ヲ引受ケテ製造煙草
ヲ供給スルト云フコトハ到底至難ナコトト
思フ、支那ニ對シテハ又葉煙草ト製造煙草
ト兩方深イ關係ガアル、此ノ邊ヲドウ云フ
風ニ御扱ヒニナリ、ドウ云フ風ニ調節ナサ
ルカ、此ノ御方針、御考ヘガアリマシタラ
大體デ宜シイカラ御示シヲ御願ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=49
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050・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 今何樣作戰中デアリマシ
テ、將來世界ノ人口ノ過半ニ供給シ得ルヤ
ウナ煙草ノ資源、其ノ處置、是等ニ付テ的
確ニ申上ゲルノハマダ早イト思ヒマス、唯
先程篠原委員ノ御質問ガアリマシタ際ニ御
答へ申上ゲマシタヤウニ、非常ニ大キナモ
ノデアルト云フコトニ目ヲ着ケテ居リマス、
當分ノ中ハ作戰地帶デアリマスカラ、煙草
ハ非常ニ大キナモノガアリマシテモ、煙草
ノ關係カラ言ヘバ思フヤウナ處置ガ出來ヌ
コトガ多カラウト思ヒマス、併シ根本ハ此
ノ考ヘヲ以テ善處シテ行キタイト思ヒマス、
差向キノ供給ニ付キマシテハ、ソレガ英米
系ガ拵ヘタ設備デアラウト、何デアラウト、
之ヲ利用セヌト云フコトハナイ、企業ガ誰
ニ依ツテ行ハレルカ、ドウヤルカト云フコ
トハ別問題デアリマスガ、設備ハ現地ニア
ルモノヲ皆利用シテ行キタイト思ツテ居リ
マシ、迚モ我ガ國ダケノ設備デ皆出來ルモ
ノデハアリマセヌ、偖テ企業主體ヲドウス
ルカ、是ハ一寸今申上ゲルノハ早イト思ヒ
マスルガ、原料モ設備モ現地ニアル物ハ利
用シテ行キタイ、此ノ點ハ申上ゲテ間違ヒ
ナイダラウト思ヒマス、尙ホ多クノ人ガ煙
草ヲ耕作シ、多量ノ生產ガアルコトデアリ
マスルカラ、是等ノ點ニ付キマシテモ相當
ニ注意ヲシテ參リタイ、斯樣ニ存ジテ居リ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=50
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051・勝正憲
○勝委員長 伊藤君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=51
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052・伊藤五郎
○伊藤(五)委員 私ハ大藏大臣ニ國策會社
ノ課稅問題ニ付テ簡單ニ御尋ネヲ致シタイ
ト思フノデアリマス、過去ニ於テ設立セラ
レタル國策會社、又ハ今後設立セラレル所
ノ國策會社ニ對シマシテハ、政府ハ是マデ
大體ニ於テ免稅ノ方針ヲ執ツテ居ラレマス、
是ハ洵ニ時宜ヲ得タモノト思フノデアリマ
スルガ、政府ハ國策會社ニ對シマシテハ今
後モ免稅ノ方針ヲ御執リニナル所ノ御意思
デアルカドウカ、是ガ第一點デアリマス、
第二點ハ、國策會社ノ中ニ東亞海運株式會
社トカ、或ハ東北興業株式會社ト云フヤウ
ナ會社ガ國策會社デアリナガラ免稅ノ規定
ノ適用ヲ受ケテ居ナイノデアリマス、時々
東北興業ノ如キハ政府カラ一面ニ於テ配當
金ノ補給ヲ受ケテ置キナガラ、尙ホ一面ニ
於テ稅金ヲ拂ハナケレバナラヌト云フ現狀
ニナツテ居ルノデアリマス、斯クノ如キ會
社ニ對シマシテハ、今後政府ハ他ノ國策會
社ト同ジヤウニ、ヤハリ免稅ヲ致シマシテ、
十分ニ國策會社ノ機能ヲ發揮サセルコトガ
必要デハナイカト私ハ痛感ヲスルノデアリ
マス、大藏大臣ハ是等ノ問題ニ對シマシテ
ドウ云フ御意思ヲ持ツテ居ラレルカ、御伺
ヒヲ致シタイト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=52
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053・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 國策會社ノ事業ハ多ク一
般ノ企業ニ任シテ置キマシテハ發達ガ思フヤ
ウニ行カナイモノニ付キマシテ、設立致シ
テ居リマスルカラ、其ノ育成ノ意味ヲ以テ
相當免稅ヲ致シテ居ルモノモアリマスルガ、
ソレハ一般ニ免稅スルト云フ考ヘデハアリ
マセヌ、會社每ニ其ノ事態ヲ見マシテ、免
稅スベキ稅ノ種類ヲ定メテ居リマス、又何
時マデモ免稅ト云フコトデナイ、免稅スベ
キ期間モ定メテ居リマス、個々ノ會社デ相
違ガアルノデアリマス、一方ニ助成ヲスル
カラ一方ニ必ズ免稅スルト云フ方針デアリ
マセヌ、尙ホ個々ノ會社ニ付キマシテ御尋
ネガアレバ政府委員ヨリ御答へ申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=53
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054・伊藤五郎
○伊藤(五)委員 東亞海運株式會社ト東北
興業株式會社、此ノ二會社ニ免稅ノ規定ガ
適用サレナイノハドウ云フ譯カ、ソレヲ御
尋ネ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=54
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055・松隈秀雄
○松隈政府委員 只今大臣カラ御答ヘ申上
ゲマシタヤウニ、會社ノ營ミマスル企業ノ
性質ニ依リマシテ、免稅ヲ以テ助長ヲシナ
ケレバ收益ガ償ハナイト云フ事業ニ重點ヲ
置イテ免稅シテ居ルノデアリマス、例ヘバ
或ル企業ハ日本ニ於テハマダ幼稚デアツテ、
隨テ生產費ガ高ク付イテ引合ハナイ、外國
トノ競爭ニモ堪エナイ、サウ云フヤウナモ
ノデアルトカ、或ハ多分ニ危險ノアル事業
デアツテ、當分ハ損ヲ覺悟デナケレバ出來
ナイト云フヤウナ、事業ノ性質カラ云ツテ、
當分利益ヲ得ル見込ガナイ、斯ウ云フヤウ
ナモノニ付キマシテハ、其ノ事業カラ生ズル
所得ニ對シマシテ、一定ノ年限ヲ切ツテ稅
ヲ免除シテ、助長政策ヲ執ツテ居ルノデアリ
マス、東亞海運ノ例デアリマスルト、成程東
亞海運ハ法律ニ依リマシテ國策會社ニナリ
マシタケレドモ、海運事業其ノモノハ決シ
テ成立タナイ事業トハ認メテ居ラナイ、殊
ニ最近ノ狀況デアリマスルト、相當會社ノ
收益ノ狀況ガ良カツタノデアリマス、尤モ
運賃ヲ押ヘラレマシテ、經費ノ上リマシタ
割合ニ運賃ノ引上ハ認メラレナイノデ、多
少經營ハ苦シクナツテ居リマスケレドモ、
大體收支償ヒ得ル程度ノ事業ヲヤツテ居ル
會社デアル、從來モ課稅シテ居ツタ會社デ
アルカラ、新シイ法律ニ依ツテ國策會社タ
ル體裁ヲ整ヘタト致致マシテモ、免稅スル
必要ガナカラウト、斯ウ致シタノデアリマ
ス、東北興業ニ對シマシテモ、東北興業自
體ハ東北ニ於ケル各種ノ企業ヲ營ム會社ノ
持株會社トシテ監督ヲナシ、其ノ企業ノ間
ニ統制ヲ圖ツテ參ルト云フ會社デアリマス、
其ノ會社自體ト致シマシテハ、必ズシモ損
ガ立ツ、或ハ成立タナイ事業トマデハ認メ
ラレナカツタノデ、之ニ對シテ免稅ノ特權
ヲ與ヘナカツタ譯デアリマス、併シ東北興
業ノ子會社デアリマスル事業會社デアツテ
モ、例ヘバ產金事業ヲ營ンデ居ルトカ、或
ハ特別ノ助成ヲシナケレバ成立タナイヤウ
ナ難カシイ事業ヲヤラウト云フモノデアレ
バ、是ハ事業ノ性質上免稅ヲ與ヘテ差支ナ
イ、斯ウ云フヤウナ考ヘデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=55
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056・伊藤五郎
○伊藤(五)委員 モウ一點、現在國策會社
ノ數ハドレダケアツテ、其ノ中免稅ヲ受ケ
ナイ會社ハドレダケアルカ、御分リナラバ
御示シヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=56
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057・松隈秀雄
○松隈政府委員 旣設ノモノト致シマシテ
ハ、今咄嗟デアリマスルノデ、十分擧ゲ盡
シ得ナイノデアリマスルガ、例ヘバ大日本
肥料株式會社ノヤウナモノハ國策會社ト見
得ルノデアリマスガ、之ニ對シテハ免稅ヲ
致シテ居リマセヌ、最近ニ出來マスル各種
營團、是モ見方ニ依ツテハ國策會社ト同ジ
ヤウナモノデアリマスルガ、其ノ營團ノ中
デモ課稅ヲ致シテ居ルモノモアリマス、例
ヘバ今囘提案ニナツテ居リマスル食糧營團
ノヤウナモノハ其ノ行ハントスル事業ガ國
民主要食糧品ノ配給貯藏等デアツテ、事業
ノ性質カラ言フト極メテ重要ナ性質ヲ帶ビ
テ居リマスルケレドモ、今マデ課稅ヲ受ケ
テ成立ツテ來タ事業ガ引繼ガレルノデアリ
マスカラ、新シイ營團ニナリマシテモ、强
ヒテ免稅ヲ以テ助成ヲスル程ノコトハナカ
ラウ、斯樣ニ存ジテ居リマス、其ノ外古イ
モノトシテハ日本石炭、日本蠶絲統制會社
等モ免稅シテハ居ナイヤウニ存ジテ居リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=57
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058・伊藤五郎
○伊藤(五)委員 最後ニモウ一點、東北興
業會社ノ經營ガ將來困難ニナル場合ガ私ハ
豫想サレルノデアリマス、サウ云フ場合ニ
付キマシテハ、當局ニ於テモ將來御考慮下
サルコトガ私ハ至當デアルト思フノデアリ
マスガ、之ニ對スル御意見ヲ承リタイト思
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=58
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059・松隈秀雄
○松隈政府委員 東北興業會社ハ其ノ姉妹
會社デアル所ノ東北振興電力ガ、日本發送
電株式會社ニ統合致シマシタ關係上、事業
採算ガ幾分不利ニナツタコトハ認メラレル
ヤウデアリマス、一方其ノ子會社ニ於キマ
スル各種事業モ段々ニ創設ノ時代カラ時ヲ
經マシテ、成績ガ擧ツテ參ルヤウニナリマ
シタ、隨ヒマシテ暫ク樣子ヲ見テミマスレ
バ、モウ少シノ所デ相當ノ成績ガ擧ルノデ
ハナイカト思ツテ居リマス、斯ウ云フ會社
ニ對シテ免稅ヲシタ方ガ宜イカ、或ハ配當
補給等ノ方法デ行ク方ガ宜イカト云フコト
ニ付テハ今後ノ問題トシテ〓究ヲシタイト
思ピマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=59
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060・勝正憲
○勝委員長 藤本君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=60
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061・藤本捨助
○藤本委員 大藏大臣ニ簡單ニ一ツ御尋ネ
ヲ申シマス、ソレハ稅ト公債ガ戰費ノ負擔
竝ニ戰時財政ノ收支ノ均衡ヲ確保スル重大
ナ要素デアリマスガ、戰時下不可避ニ公債
ノ累增致シテ居ル今日、政府ハ公債ノ信用
維持ニ對シテドウ云フ風ナ對策ヲ持ツテ居
ラレルカト云フコトデアリマス、昭和十七
年度ノ公債ノ發行豫定額ハ百六十三億デア
リマシテ、又事變以來大體二百六十三億程
ノ公債ヲ發行シテ居ルノデアリマスガ、此ノ
公債增發ノ傾向ハ今後モ止マヌト思ヒマス、
サウシマスト、公債ガ非常ニ累增致スノデ
アリマス、隨ヒマシテ政府トシテハ之ノ信用
ヲ保持スル爲ニ適切ナル具體策ガアルベキ
デハナイカト思ヒマス、申スマデモナク公
債ノ信用ノ維持ハ、第一ニハ國家或ハ政府ノ
信用デアリ、其ノ他國民ノ所得ノ增加ト云
フ見透シモアリ、或ハ低物價政策ヲ堅持シ
マシテ、物價騰貴ニ因ル公債ノ事實上ノ破
棄ヲ惹起シナイト云フコト、或ハ又愛國心
ヲ喚起スルコトモ其ノ方途デアリマセウ、
且又是程ノ大事業ヲ現在ノ國民ノミナラ
ズ、子孫ニモ負擔サセルト云フ行キ方モア
リマセウガ、併シ私共非常ニ心配シテ居リ
マスノハ、戰爭中ニ於ケル、殊ニ勝ツテ居
ル場合ニハ惡性「インフレ」ト云フヤウナコ
トハ統制經濟ノ進捗ト相俟チマシテ起ラヌ
ト思ヒマスガ、戰後ガ問題ダラウト思ヒマ
ス、卽チ戰後ハ非常ニ累增シタ潛在購買力ガ
浮動スルヤモ保シ難イノデアリマシテ、實
ハ是ガ問題ニナルダラウト考ヘラレルノデ
アリマス、斯ウ云フ觀點カラ考ヘマシテ、
自然的ニ今申上ゲマシタヤウナ事態ヤ方途
ニ依ツテ公債ノ信用維持ヲ期待スルコトモ結
構デアリマスケレドモ、何カ他ニ積極的ナ
信用ヲ維持スル方策ガアツテ然ルベキダト
思フノデアリマス、私見デハアリマズルガ、
其ノ方策ト致シマシテ小額ノ國債或ハ貯蓄
債債或ハ報國債劵、斯ウ云ツタモノヲ郵便年
金ノ掛金ニ充當セシメル、卽チ公債ヲ以テ掛金
ニナシ得ルト云フコトニ致シマスト、年金ヲ支
拂ヘバソレダケ公債ヲ償却致スコトニナル
ノデアリマス、更ニ私見デアリマスガ、生
命保險ヲ國營ニ致ス云々ノ論ガアリマスガ、
若シ將來左樣ニナルトシタラ其ノ掛金ニ公
債ヲ以テ充當致シ得ルト云フコトニナリマ
スルト、生命保險ノ保險金ヲ支拂フ場合ニ
ソレニ依ツテ公債ガ償却サレルト云フコト
ニナリマス、斯ウ云フコトニ付キマシテ政
府ハ何カ今後御考ヘガアルカ、其ノコトヲ
先ヅ御伺ヒ致シタイノデアリマス
ソレカラ官公吏ノ俸給或ハ「ボーナス」ナ
ドニ對シマシテ或ル程度公債ヲ以テ振替拂
ヲシテ居ラレマスコトハ結構デアリマスガ、
事實私共ノ知ル限リニ於キマシテハ、官吏
或ハ公吏ノ所得ノ如何ニモ依リマセウガ、
右ノ手デ公債ヲ買ウテ左ノ手デ惡「ブロー
カー」ト言ヒマスカ、ソンナ者ニ賣ツテ居
リマスソレガ公債ノ信用ヲ非常ニ動搖セシ
メ、又公債ノ浮動性ヲ益〓誘致スルコトニ
ナツテ居リマス、此ノ事實ヲ政府ハドンナ
ニ御覽ニナツテ居ルカ、尙且斯ウ云フ事實
ガアツテモコノ振替拂ヒヲナサルトスルナ
ラバ、家族手當モアリマスガ、百尺竿頭一
步ヲ進メテ官公吏ノ俸給ヲ減俸前ニ復ヘス
必要ガアルノデハナイカト云フコトガ考ヘ
ラレルノデアリマスガ、此ノ點ニ付キマシ
テ今後ノ御考ヘヲ承ツテ置キタイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=61
-
062・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 先ヅ方策ト致シマシテ主
ナルモノハ物價ノ安定デアリマス、トラフ
ツハ公債ノ賣却ノ自由デアリマス、此ノ二
大眼目ニ付キマシテ、ヨク公債ノ强制保有
ト云フコトガアリマスガ、强制保有ヲ致ス
ニハ賣却ノ制限ヲシナケレバマルデ方策ハ
尻拔ケデアリマス、ソレガ最モ惡イト私ハ
思ヒマス、ソレデ是ハ事變ノ前デアリマス
ガ、公債ノ郵便局賣出ヲヤリマシタ時ニ、
必ズ是ハ買上制度ト云フモノガナクテハナ
ラヌ、公債ノ價格ヲ下〓ラズシテ買上ゲル
制度、多少ノ手數料ヲ拂フ、之ヲ必ズヤラ
。ナイト公債ノ郵便局賣出、所謂民衆化ハヤ
ツテ行ケヌ、賣ル時ニハ必ズ買ツタ價格デ
賣レルト云フコトニシナケレバナラヌ、是
ガ第一デアリマス、ソレヲ往々履違へマシテ、
賣ツタ物ハ又買上ゲラレルノヂヤ何ニモナ
ラヌ、郵便局ノ窓口へ來ルト散々御說〓ヲ
スルト云フヤウナ、一ヲ知ツテ二ヲ知ラナ
イ郵便局長ナドガ居ルヤウデアリマス、嚴
ニ之ヲ戒飭スルコトニ致シテ居リマス、ソ
ンナ者ガアリマスカラ惡「ブローカー」ニ
掛ル、私ノ心配シタノハ九十八圓ノ公債ヲ
山ノ中ノ人ガ買ヒマシテ賣リニ行ク所ガナ
イ、其處へ惡イ商人ガ行ツテ八十圓トカ七
十圓ニ買ツテ行クト云フヤウナコトガ起ル
ト公債ヲ持ツコトガ厭ヤニナル、多少ノ手
數料ハ宜イガ、必ズ九十八圓ノモノハ九
十八圓ニ賣ル、之ヲ確保シテ行キタイ、ア
ノ買上ゲノ制度デス、賣ル時ニ何時デモ賣
レルモノナラバ、無用ニ賣ルモノヂヤアリ
マセヌ、賣レナイト思フカラ焦ツテ賣ル、
是ガ一番重要ナコトデアル、所謂預金ノ形
ニ於キマスル貯蓄ニ致シマシテモ、私ハ其
ノ考ヘヲ持ツテ居リマス、是ガ一番安
全ナ途デアリマス、大局ハ全體ノ經濟政
策國策デアリマス、今國家ノ爲ニ必要ナ
ル資金ハ全部作リ、必要ナラザル所ニハ一文
モ出サヌ、是ガ昭和十二年以來ノ金融政策
ノ骨子デアリマス、公債ヲ賣ツテ其ノ金ヲ
何處ヘ持ツテ行キマスカ、預金ニ致シマス
レバ、是デ銀行ガ又公債ヲ消化致シマス、
臨時資金調整法デ抑へテ居リマスカラ、ソ
レ以外ニハ持ツテ行キ場ガナイノデアリマ
ス、一方消費ノ規正モ多少漏レルモノガア
ツテモ大局ハズツトソレデ包圍シテアリマ
ス、此ノ政策ガ一番デス、一國ノ生產計畫、
消費計畫及ビ資金ノ統制計畫、是デアリマ
ス、ソレ以下ノ事トシマシテハ、今申上ゲ
マシタヤウナ賣買ノ自由、是ハ制限シテハ
却テイケナイ、甚ダ卑近ナ例ヲ申上ゲテ恐
入リマスガ、吾々ガ役人ニナリマシタ時、
洋行致スコトヲ非常ニ希望シマシタ、皆英
米ニ洋行シタガリマシタ、併シ是ハオ前向
フヘ行ツタラ一生歸ラレナイノダト云フコ
トニナツタラ皆願ヒ下ゲデス、歸ラレルカ
ラ行ク、此ノ心理ガ一番デアリマス、御述
ベニナリマシタ報國債劵等ニ依ツテ色々保
險ノ掛金ニ使ヒマスコトモ一案デアリマス
ガ、實ハ報國債劵ヲ買ツタ上ニ、保險ノ掛
金ハ又外ノ現金デ掛ケテ貰ヒタイノデス、
サウシナイト貯蓄ハ殖エマセヌ、サウ云フ
ヤウニシテ戴キタイノデス、一番ノ本ハ何
ト言ヒマシテモ、公債ニ應募シテ、今ノ大
東亞戰爭ノ戰費ヲ作ルコトデアリマス、以
下ハ速記ニ殘スコトヲ控ヘテ戴キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=62
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063・勝正憲
○勝委員長 速記ヲ止メテ··
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=63
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064・藤本捨助
○藤本委員 今詳細御答辯ヲ承リマシタ、
私ハ公債ノ消化、ソレハ曠古ノ聖戰目的ヲ
達成スルガ爲ニ最モ必要デアリマスルガ故
ニ御尋ネシタノデアリマス、御方針ヲ御示
シ戴キマシテ仕合セデアリマス、尙ホ御尋
ネ致シマシタ生命保險ヲ國營ニスルヤ、又
公債ヲ以テ其ノ掛金ヲ充當セシムルヤト云
フコト、ソレカラ官公吏ノ減俸復活ノ問題、
此ノ二ツノ點ハ如何デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=64
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065・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 生命保險ハ現在ニ於キマ
シテモ大キナ資金ノ集積機關デアリマス、
現狀ニ於テハ銀行ニ次イデ、信託以上ノ資
金ガ集マル、而モ其ノ資金ノ投資ノ方向ハ
有益ナ方ニ行キ、有益ナラザル方ニ行カヌヤ
ウニ統制ガ付イテ居リマシテ、國策的ニ用
ユル方向ハ十分ニ付イテ居リマス、是ハ國
營ニ致サヌデモ大體出來ルコトト思ヒマス
ソレカラ掛金ニ付キマシテハ今申上ゲタ
ヤウウニ成ベク貯蓄ノ意味ニ於テ、現ニ外
ノ預金ヤ債劵ノ形ニナツテ居ラヌ收入ノ中
カラ掛ケテ貰ヒタイ、國營ニ致スカ致サヌ。
カハ、尙ホ他ノ觀點カラノ〓究モ要ルト思
ヒマス、相當重大ナ問題デアリマスルカラ、
是ハ他ノ機會ニ御質問ガアリマシタ際ニモ
私ハ御說ヲ伺ツテ置クダケデ、コチラカラ
ノ意見ハ申上ゲルコトヲ此ノ場合控ヘタイ
ト思ツデ居リマス
ソレカラ官吏ノ減俸復活デアリマスガ、
是モ普通ノ考ヘナラバ復ヘシタイ、唯御承
知ノヤウニ前ノ減俸ハ比較的金額ノ少イ所
ハ減俸致シマセヌ、然ラバ上ノ方ハ樂カト
申シマスレバ左樣デアルトハ言ヘナイノデ
アリマスガ、此ノ國家ノ本當ノ非常ノ際デ
アリマスカラ、先ヅ今日デハ上ノ方ノ減俸
ヲ復ヘス時期デハナイト云フ結論ニナツタ
ノデアリマス、唯今期議會ニ提案致シマシ
タ豫算ノ家族手當ハ、多少デハアリマスガ、
大體奏任級マデ全部行渡リマス、左程ニ大
キナ金額ニハナラヌノデアリマスケレドモ、
減俸サレタ官吏ニ致シマシテモ百圓カラ二
百圓位ノ程度ノ人ニハ、是ハ又相當役立ツ
ダラウト思ヒマス、詰リ扶養スベキ家族、
子供ノ多イ方面ニ於テハ或ル程度ノ救濟ヲ
ナシ得ルモノト思ツテ居リマス
振替制度ニ付キマシテハ、此ノ振替ニ致
シマシタ金額ガ全部殘ルト云フ狀態ニハナ
ラヌノデアリマシテ、之ヲサウ擴メテ參リマ
シタ所デ······サウハ申シマシテモ現金ガ手ニ
入ルヨリハ、ヤハリ振替ニシテ置イタ方ガ、
結局トシテハ郵便局ニ殘ル金額ガ相當出ル
トハ思ヒマスガ、ソレガ果シテ何割ニナル
カト云フコトニナリマスト、マダ十分ノ見
極メガ付キマセヌ、一方之ヲ餘リ廣イ範圍
ニ擴メマスト、郵便局ノ取扱ノ手數モ大變
ナノデゴザイマス、今人的資源モ不足致シテ
居リマスノデ、之ヲ惡イ制度トハ思ヒマセ
ヌガ、急速ニ强制的ニ廣イ範圍ニ擴メルコ
トモ亦躊躇致シテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=65
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066・勝正憲
○勝委員長 村上君、地方局長ガ見エマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=66
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067・村上紋四郎
○村上(紋)委員 唯一點內務當局ニ御尋ネ
シテ見タイト思ヒマス、ソレハ外ノ問題デ
ハナイノデアリマス、御承知ノ通リ第七十
六議會ニ於キマシテ大政翼贊會ノ問題ニ付
テハ、或ハ豫算總會ニ於テ、或ハ決算委員
會ニ於テ、或ハ地方分與稅改正法律案ノ委
員會ニ於キマシテ盛ンニ論議セラレマシテ、
其ノ論議ガ殆ド最高潮ニ達シタ時デアリマ
ス、私ハ分與稅ノ委員ト致シマシテ當時ノ
留岡地方局長ニ對シテ質問ヲ試ミタノデア
リマス、其ノ要旨ハ町內會ノ如キ、部落會
ノ如キハ大政翼贊會ノ下部組織デアルカ內
務系統ノ下部組織デアルカ、其ノ當時ノ大
政翼贊會ハ、町內會ノ如キ、部落會ノ如キ
ハ大政翼贊會ノ下部組織デアルト云フヤウ
ナコトヲ盛ンニ宣傳スル、ノミナラズ情報局
カラ發行シテ居リマス週報ニハ、圖面ヲ書イ
テ系統的ニ大政翼贊會ノ下部組織デアルト
云フコトヲ明記シタノデアリマス、然ルニ
當時ノ留岡地方局長ハ町內會ノ如キ、部落
會ノ如キハ決シテ翼贊會ノ下部組織ニアラ
ズシテ、內務系統ノ下部組織デアルト云フ
コトヲ明答シタノデアリマス、其ノ後此ノ
下部組織ノ取扱ニ關シマシテハ依然トシテ
大政翼贊會ノ一部ノ如クデアリマス、私ハ
其ノ後支部長タル縣知事ニ對シマシテ此ノ
問題ヲ提ゲテ質問シタコトガアリマスガ、
其ノ當時ノ知事ハ大政翼贊會ノ下部組織デ
ナク、內務系統ノ下部組織デアルケレドモ、
町內會ノ會長ノ如キ、或ハ部落會ノ會長ノ
如キ役員ハ、大政翼贊會ノ世話人トシテ世
話スルト云フヤウナコトニナツテ居ルト聽
イタノデアリマス、私ハ此ノコトヲ聽イテ
實ニ驚イタノデアリマス、町內會ノ會長ナ
リ或ハ部落會ノ會長ガ大政翼贊會ノ世話人
トシテ世話スルト云フコトニ相成リマスレ
バ、成程大政翼賛會ノ下部組織デハナイケ
レドモ、事實ニ於テハ下部組織ト同樣ニナ
ルノミナラズ、實際ノ問題ニ觸レマシテハ
大政翼贊會ノ下部組織トナリ、地方ニ於テ
此ノ團體ヲ內務系統ノ下部組織ト認メテ居
ル者ガ殆ドナイノデアリマス、此ノ點ガ私
ハ其ノ後ドウ云フ風ニナツテ居ルカ、之ヲ
內務當局ハ明確ニ地方長官ニ示シテ果シテ
內務當局ノ言明ノ如ク實行ニナツテ居ルカ
ドウカト云フコトヲ御尋ネシタイノデアリ
やく、御承知ノ通リ大政翼贊會ニ付テハ地
方ニ於テハ大政翼贊會ノ下部組織ト云フコ
トニ付テ非常ニ迷ツテ居ルノデアリマスカ
ラ、此ノ點ニ付テハ明瞭ニシテ置クコトガ
最モ適當デアラウト思フノデアリマス、過
日來豫算委員會ニ於テ、將又分科會ニ於キ
マシテ內務當局ハ議員ノ質問ニ對シテ下部
組織ハ法制化スルノデアル、斯ウ云フコト
ヲ御答ヘニナツテ居ルト云フコトヲ新聞紙
上ヲ通ジテ知ツタノデアリマス、然ラバ下
部組織ヲ法制化スルノハ何時デアルカ、將
又地方制度ノ改正ノ時デナケレバイケナイ
ト致シマスレバ、ソレマデノ間此ノ下部組
織ヲ發揮セシムル御考へハナイカト云フコ
トヲ御尋ネシタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=67
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068・成田一郎
○成田政府委員 只今ノ御質問ニ御答ヘヲ
致シタイト存ジマスガ、町內會、部落會ノ問
題デアリマス、是ハ御承知ノヤウニ一昨年
ノ九月ニ內務省ノ訓令ヲ以チマシテ全國的
ニ町內會、部落會ノ整備ニ關スル指示ヲ致
シテ居リマス、只今御話ノヤウニ、是ハ市
町村ノ下部組織、斯ウ云フコトニ考ヘテ居
ル次第デアリマス、ソコデ次ノ問題デアリ
マスガ、大政翼贊會ガ之ヲ使ツテ居ルト云
フヤウナコトニ付テノ御尋ネデアリマス、
今御話申上ゲマシタヤウニ、町內會、部落
ハ市町村ノ下部組織デアル、隨テ大政翼
贊會其ノモノノ下部組織ト云フコトデハゴ
ザイマセヌ、是ハ去年前局長ガ御答ヘヲ致
シタ通リデアリマス、但シ大政翼贊運動ヲ
展開致シマシテ、國民ニ滲透スルト云フ意
味合ニ於キマシテハ、此ノ町內會、或ハ部
落會ト云フヤウナ組織ヲ使ヒマセヌケレバ
到底目的ヲ達成スルコトガ出來ナイモノデ
アリマスカラ、斯樣ナ意味合ニ於キマシテ
此ノ部落會、町內會ノ組織ヲサウ云フ方面
ニ活用シテ行クト云フコトハ宜シイコトト
考ヘテ居ルノデアリマス、其ノ點ハ同ジヤ
ウデアリマスルガ、ソコガハツキリ違ツテ
居ルト云フコトヲ御諒解願ヒタイト存ジマ
ス
ソレカラ町內會、部落會ノ制度化、法制
化ノコトニ付テ只今御尋ネガアツタノデア
リマス、私共ト致シマシテハ、町內會、部
落會、是等ハ市町村ノ下部組織デアリマス
ガ、現在市制或ハ町村制ノ中ニ採入レラレ
テ居リマセヌ、自然發生的ノ存在ト云フコ
トニナツテ居ルノデアリマシテ、之ニ對シ
テハ先程申上ゲマシタヤウニ、內務省ノ訓
令ヲ以チマシテ、整備ヲサセ、又ハソレノ
活動ヲ指導監督致シテ居リマスガ、ヤハリ
是ハ市町村ノ下部組織トシテ制度化スルト
云フコトガ宜シイノデハナイカト私共考ヘ
テ居リマス、隨ヒマシテ市制、町村制ノ中
ニ盛込ンデ規定ヲスル、唯法制化ニ付キマ
シテハ府縣デアリマストカ、市町村ノヤウ
ナ完全ナル自治體ト云フヤウナ形ニ致シマ
セヌデ、「ルーズ」ナ形デ一面ニ於テハ法制化
サレルケレドモ、一面ニ於テハ隣保相助ト
申シマスカ、話合デ事柄ガ進ンデ行クヤウ
ナ風ノ面モ殘シテ行キタイ、窮屈デナイ制
度ノ設ケ方ヲ致シタイ、斯ウ云フ意味合デ
〓究モシ、準備致シテ居リマスガ、未ダ此ノ
法案ガ出ルニ至リマセヌコトハ洵ニ殘念ニ
思ヒマス、是ハ市制、町村制ト云フヤウナ
法律ノ改正ノ問題トシテ解決致シタイ、斯
樣ニ存ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=68
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069・村上紋四郎
○村上(紋)委員 只今御話ノ內務省訓令ノ
コトニ付キマシテハ、第七十六議會ニ於テ留
岡前地方局長カラ度々承ツタノデアリマス、
昨年九月ニ訓令ヲ發セラレタ、其ノ後ニ於
テ尙且大政翼贊會ガ大政翼贊會ノ下部組織
トシテ宣傳ヲシテ居ル、而モ只今申述ベマ
シタヤウニ、系統圖マデ示シテ之ヲ下部組
織ノヤウニ示シテ居ルノデアリマス、ソレ
故ニ七十六議會ノ地方分與稅委員會ニ於
テ、此ノ問題ガ取上ゲラレマシテ盛ンニ論
議セラレタノデアリマス、此ノ時ニ只今申
上ゲマシタ如ク當時ノ地方局長ハハツキリ
セシメルト云フヤウナ明答ヲ與ヘタノデア
リマスケレドモ、今以テ私ニハソレガハツ
キリシテ居ナイ、御承知ノ通リ是マデ或ハ
市會議員ノ選擧、町村會議員ノ選擧ガ行ハ
レマシタガ、ヤハリ下部組織ナルモノガ選
擧ニ參加シ、推薦制ヲ設ケマシテ、而シテ
推薦制ニ依ツテ選擧ヲ行ツタ、其ノ中堅ハド
ウカト申シマスト、或ハ町村長、或ハ大政
翼贊會ノ役員、或ハ選擧肅正中央聯盟ノ役
員トカ云フヤウナモノガ一體トナツテ推薦
選擧ヲヤツテ居ル、斯ウ云フヤウナ例ガア
ルノデアリマス、御承知ノ通リ最近衆議院
議員總選擧ヲ控ヘ、將又各地ニ於テ町村會
議員、市會議員ノ選擧ヲ行フノデアリマス
ガ、是ガヤハリ瞹眛模糊ノ裡ニ行ハレルト
云フコトニナリマスルト、ソコニ非常ナ問
題ガ起リハシナイカト思フノデアリマス、
是ハドウシテモ、何等カノ方法ニ於テ內務
系統ノ下部組織デアルト云フコトヲハツキ
リ示シテ戴キタイト思フノデアリマス、此
ノ點ニ付テ何カ御腹案ヲ御持チデアリマス
カ、之ヲ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=69
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070・成田一郎
○成田政府委員 部落會、町內會ガ市町村
下部組織デアツテ、翼贊會ノ下部組織デナ
イト云フコトハ先程御答ヘヲ致シタ通リデ
アリマス、圖面ガアルトカナイトカ云フ御
話モアリマシタガ、結局大政翼贊會自體ノ
機構ト致シマシテ、市町村支部ガ一番下ニ
ナツテ居ルノデアリマス、其ノ下ニハ組織
ガナイ形ニナツテ居ルト承知ヲシテ居リマ
ス、又只今御答ヘヲ致シマシタコトハ、昨年
ノ四月デアリマシタカ、地方長官會議ガ開
カレマシタ際ニ、留岡前地方局長カラハツ
キリト其ノ點ノ話ヲサレテ居リマスノデ、
其ノ點ニ付テノ誤解ハナイト思ヒマス、是
モ先程申上ゲマシタヤウニ、ソレナラバ全
然使ハナイカト言ヒマストソレハサウデハ
ナイノデアリマシテ、町村ノ下部組織デア
リマスガ、大政翼贊運動ト云フモノノ展開
ノ爲ニ、之ヲ活用シテ行クト云フコトハ宜
シイコトト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=70
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071・村上紋四郎
○村上(紋)委員 尙ホ一點御尋ネシタイノ
デアリマスガ、此ノ町內會、部落會ニ於キ
マシテ、御承知ノ通リ常會ト云フモノ
ガゴザイマス、或ハ月ニ一囘常會ヲ開
キ、又主婦會ト云フモノガアツテ月ニ一囘
主婦會ノ常會ガアリマス、所ガ大都市ニ於
キマシテハ或ハ月ニ一囘ノ常會ノ必要ガア
ルカモ知レナイ、昔カラ向フ三軒兩隣リト
申シマシテ、兎ニ角交際ノ區域ガ狹イノデ
アリマスカラ、常ニ其ノ人ヲ知ルト云フコ
トモ難カシイト思ヒマスガ、町村或ハ部落
ニ於テハ常ニ顏ヲ合ハシテ居リマスノデ、
每月常會ヲ開ク爲ニ非常ニ迷惑ヲシテ居ル
所ガ多イノデアリマス、私ノ地方ニ於キマ
シテハ町內ニ於キマシテ不幸事ガアリマス
ト、町內ノ各戶カラ一人ヅツ集マリマシテ、
凡ユル世話ヲスル、斯ウ云フ風ニナツテ居
リマス、所謂淳風美俗ト申シマセウカ、實
ニ美ハシイコトガ各地ニアルノデアリマス、
然ルニ常會ガ出來マシテ常會ヲ每月招集
シ、每月開キマシテモ常會トシテ相談スル
材料ハナイ、材料ガナイト隨テ人ノ批評ニ
亙リ、或ハ町村役場ノアラヲ探ストカ云フ
ヤウナコトガアリマシテ、寧ロ此ノ常會ニ
依ツテ却テ感情ノ疎隔ヲ來スト云フヤウナ
コトガ多イノデアリマス、殊ニ主婦會ニ至
リマシテハ、御承知ノ通リ女ト云フモノハ
能ク喋ル、井戶端會議トカ、或ハ女ノ字ヲ
三字書イテ姦シイト云フヤウナコトデ能ク
喋ルノデアリマス、主婦會ニ於キマシテ來
テ居ラヌ人ノ批評ヲスル、ソレガ一口二口
聞エテ、詰リ近所同士ガ疎隔ヲスルト云フ
ヤウナコトニナリマシテ、私ハ町會トカ、
常會トカ、或ハ主婦會トカ、部落會トカ云
フヤウナモノニ對シテハ何カ御考ヘ直シヲ
シナケレバナラヌデアラウト思ヒマス、之
ヲ或ハ一年ニ四囘トカ、或ハ招集スル場合
ニ於テハ問題ヲ揭ゲテ、ソレ以外ニハ話ヲ
シナイト云フヤウナコトデ制限ヲスルカ何
カシナイト、却テ近所隣リガ感情ノ疎隔ヲ
來ス、一億一心ニ支障ヲ來スト云フコトガ
アリマス、之ニ對シテ何カ御考ヘハアリマ
セヌカ、此ノ點ヲ一ツ伺ツテ置キタイト思
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=71
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072・成田一郎
○成田政府委員 只今ハ町內會、部落會或
ハ隣組ニ於キマスル常會ガ、月一囘ハ多
過ギルノデハナイカト云フ御趣旨ノ御質問
ト拜承致シタノデアリマス、私共内務省ト
致シマシテハ、御話ノヤウニ常會ハ月一囘
ヤルヤウニ指導シテ居リマス、府縣或ハ
市町村ノ常會、下ツテ町內會、部落會、
隣組ノ常會ハ月一囘ヤルヤウニ指導シテ居
リマスガ、是ハ只今ノ御話ト私共ノ見テ居
ル所ハ少シ違フヤウニ存ジマス、私共トシ
マシテハ此ノ時局ニ於キマシテ、町內會、
部落會ノ活動ヲスル、又相談ヲスルヤウナ
仕事ガ非常ニ殖エテ居ルヤウニ思ツテ居リ
マス(「其ノ通リ」ト呼ブ者アリ)又サウ云
フ時局的ナ仕事ニ付キマシテハ、斯ウ云フ
町內會、部落會ノ如キ組織ガ最モ働イテ戴
キタイト思フノデアリマス、配給ノ問題デ
アリマストカ、或ハ貯蓄ノ奬勵デアリマス
トカ、或ハ金屬類ノ囘收デアリマストカ、
色々問題ガゴザイマスノデ、斯ウ云フ點ハ
町內會、部落會ト云フヤウナ隣保ノ精神デ
纏ツテ居ル所デ圓滿ニヤツテ戴キタイト考
ヘテ居リマス、寧ロ私共ト致シマシテハ町
內會、或ハ部落會、是等ノ常會ニ對シテ餘
リニ註文ガ餘計行キ過ギハシナイカト云フ
心配ヲシテ居ルノデアリマス(「其ノ通リダ」
ト呼ブ者アリ)ソコデ中央ニ於キマシテハ
情報局ガ主トナリマシテ、每月ノ常會ニ何
ヲ徹底サセルカト云フコトニ付キマシテ、
各省カラ持寄リマシテ、來月ハ斯ウ云フコ
トニ付テ一ツ常會ニ徹底シタイ、常會ノ徹
底事項ト云フモノヲ相談シテ居ルノデアリ
マス、此ノ情報局ノ連絡會議ニ各省ガソレ
ゾレノ問題ヲ持寄リマシテ、其ノ中デ最モ
大切ナモノヲ重點的ニ取上ゲマシテ、之ヲ
一ツ來月ノ常會ニハ徹底シヨウヂヤナイカ
ト云フヤウナコトデ、寧ロ整理ト云フ惡イ
ノデゴザイマスケレドモ、重點主義ニ基イ
テ常會ニ徹底スベキ事項ヲ整理シテ居ルヤ
ウナ狀態デゴザイマスノデ、月一囘位ノ常
會ハ適當デアラウト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=72
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073・勝正憲
○勝委員長 河野君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=73
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074・河野密
○河野(密)委員 是デ質問ヲ打切ツテ戴キ
タイト思ヒマスガ、質問ヲ終結致シマス前
二、增稅各案ニ關シマシテ、其ノ規定ノ
部ヲ勅令其ノ他ニ讓ツタノガアリマスガ、
其ノ內容ニ付キマシテハ政府カラ參考書ガ
提出サレテ居リマス、之ニ付テ一々御質問
申上ゲルノハ煩雜ニナリマスノデ、質問ヲ
省略致シマシテ、政府カラ御提出ニナリマ
シタ參考書ヲ其ノ儘速記錄ニ揭載スルコト
ニ致シタイト思ヒマスガ、御諮リヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=74
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075・勝正憲
○勝委員長 御諮リ致シマス、只今ノ河野
君ノ動議ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=75
-
076・勝正憲
○勝委員長 ソレデハ左樣ニ決シマス-
是デ本委員會ニ付託セラレマシタ所得稅法
中改正法律案其ノ外十七件ニ關スル質疑ハ
大體ニ於テ終了致シマシタ、ソレデ若シ必
要ナル質疑ノ簡單ナルモノガアツタ場合ニ
於テハ、一、二簡單ナモノニ限ツテ之ヲ認メ
ルト云フコトニ致シマシテ、一應質疑ハ終
了シタイト思ヒマスガ、如何デセウカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01119420204&spkNum=76
-
077・勝正憲
○勝委員長 ソレデハ左樣ニ決シマス、明
日ハ午後一時カラ採決ニ入リマスカラ、左
樣御承知ヲ願ヒマス、本日ハ是ニテ散會致
シマス
午後四時二十分散會
〔參照〕
政府ヨリ提出セル參考資料(各稅命
令案要綱)
所得稅法中改正法律案關係命
令案要綱
-法案第十二條第七項關係
(一)株式ノ〓算取引ニ付實物ノ引渡
ニ依リ決濟ヲ爲シタル場合ニ於テ賣
約定金額ガ當該株式ノ引渡ノ時ニ於
ケル價額ヨリ小ナルトキハ其ノ價額
ト賣約定金額トノ差額ハ之ヲ損失ト
シテ收入金額ヨリ差引キテ計算スル
コト
(二)株式ノ〓算取引ニ付實物ノ引受ニ
依リ決濟ヲ爲シタル場合ニ於テ賣約
定金額ガ當該株式ノ引受ノ時ニ於ケ
ル價額ヨリ大ナルトキハ賣約定金額
ト其ノ價額トノ差額ハ之ヲ損失トシ
テ收入金額ヨリ差引キテ計算スルコ
ト
二附則關係
CI第三項又ハ第四項ニ規定スル申
〓書又ハ申請書ハ施行規則第三十六
條又ハ第三十七條ニ規定スル事項ヲ
記載シ所轄稅務署ニ提出スベキコト
(二)第五項ニ規定スル申告書又ハ申
請書ハ施行規則第三十八條又ハ第三
十九條ニ規定スル事項ヲ記載シ昭和
十七年四月一日以後最初ノ給與ノ支
拂ヲ受クル日ノ前日迄ニ支拂者ヲ經
由シ所轄稅務署ニ提出スベキコト
二、臨時利得稅法中改正法律案關
係命令案要綱
-法案第十一條ノ二關係
不動產、不動產上ノ權利、船舶又ハ鑛
業若ハ砂鑛業ニ關スル權利若ハ設備ニ
シテ昭和十一年十二月三十一日後ニ於
テ取得シタルモノノ取得價額ハ建築、
製造又ハ創設ニ因リ取得シタルモノニ
付テハ其ノ建築費、製造費又ハ創設費
(鑛業又ハ砂鑛業ニ關スル權利ニ在リ
テハ探鑛ノ費用ヲ含ム)ニ依リ他人ヨ
リ讓渡ヲ受ケタルモノニ付テハ其ノ對
價(取得ニ關スル必要ノ經費ヲ含ム)ニ
依ルコト
二法案第十四條關係
現事業年度ノ拂込株式金額、出資金額、
基金又ハ醵金ニ百分ノ三十ノ割合ヲ乘
ジテ算出シタル金額ヨリ現事業年度ノ
積立金額ヲ控除シタル殘額ニ年百分ノ
十ノ割合ヲ乘ジテ算出シタル金額ノ計
算方法ヲ規定スルコト
三、臨時租稅措置法中改正法律案
關係命令案要綱
一法案第一條ノ二關係
別表ニ揭グル事業ニ付必要ナル業種ヲ
追加スルト共ニ運用シ得ル有價證劵ニ
政府保證社債劵等ヲ追加スルコト
二法案第一條ノ四關係
統制會社、共販會社ニシテ大藏大臣ノ
指定スルモノガ價格政策ノ必要上價格平
衡資金ヲ設定シ一定ノ金額ヲ當該資金
ニ繰入レタルトキハ其ノ繰入金額ハ一
定條件ノ下ニ法人稅法ニ依ル所得、營
業稅法ニ依ル純益及臨時利得稅法ニ依
ル利益ノ計算上之ヲ損金ニ算入スルコ
ト
三法案第一條ノ九關係
(一)個人ノ受クル銀行定期預金ノ利
子又ハ合同運用信託ノ利益ニ付テハ
預ケ入若ハ信託又ハ繼續ノ期間ニ應
ジ稅率ヲ左ノ如ク輕減スルコト
預ケ入又ハ信託ノ時ヨリ一年ヲ經
過シ二年ニ滿タザル間ニ於テ支拂
ヲ受クルモノ百分ノ一
同二年ヲ經過シ三年ニ滿タザル間
ニ於テ支拂ヲ受クルモノ
百分ノ二
同三年ヲ經過シ四年ニ滿タザル間
ニ於テ支拂ヲ受クルモノ
百分ノ三
同四年ヲ經過シ五年ニ滿タザル間
ニ於テ支拂ヲ受クルモノ
百分ノ四
同五年ヲ經過シタル後ニ於テ支拂
ヲ受クルモノ百分ノ五
改正法施行前ヨリ引續キ預ケ入若ハ
信託シ又ハ繼續シ居ル預金ノ利子又
ハ合同運用信託ノ利益ニ付テハ改正
法施行後最初ニ到來スル利拂期日ヨ
リ遡リ期間ヲ計算シ前項ノ規定ヲ適
用スルコト但シ一年半以上ヲ經過シ
タルモノハ其ノ期間ニ拘ラズ總テ二
年ヲ經過シタルモノト看做シテ前項
ノ規定ヲ適用スルコト
(二)個人ノ登錄シ又ハ郵便官署ニ保
管ヲ委託シタル國債ノ利子ニシテ登
錄シ又ハ郵便官署ニ保管ヲ委託シタ
ル日ヨリ起算シテ三年以上ヲ經過シ
タル後ニ生ズルモノニ付テハ稅率ヲ
百分ノ五輕減スルコト
改正法施行前ヨリ引續キ登錄シ又ハ
郵便官署ニ保管ヲ委託シ居ル國債ニ付
テハ改正法施行直前ニ到來シタル利拂
期日ヨリ起算シ三年以上ヲ經過シタ
ル後ニ生ズル利子ニ付前項ヲ適用ス
ルコト
改正法施行前ヨリ引續キ登錄シ又ハ
郵便官署ニ保管ヲ委託シ居ル國債ノ
利子ニ付テハ登錄シ又ハ郵便官署ニ
保管ヲ委託シタル日ヨリ起算シ三年
以上ヲ經過シタルトキハ前項ニ該當
スルニ至ル迄ハ百分ノ三ヲ輕減スル
ニト
(二)個人ノ登錄シタル國債以外ノ公
債及社債ノ利子ニシテ登錄シタル日
ヨリ起算シ三年以上ヲ經過シタル後
ニ生ズルモノニ付テハ稅率ヲ百分ノ
五輕減スルコト
社債等登錄法施行後六月以內ニ登錄
シタルモノニ付テハ前項ノ期間ニ滿タ
ザル場合ニ於テモ稅率ヲ百分ノ二輕
減スルコト但シ登錄シタル日ヨリ起
算シ三年未滿ノ間ニ於テ登錄ヲ廢止
シタルトキハ輕減稅額ハ之ヲ追徵ス
ルコト
四法案第一條ノ十一關係
銀行ガ政府ノ承認ヲ得テ日本興業銀行
ニ爲シタル預金ノ利子トスルコト
五法案第一條ノ十二關係
(1)貯蓄銀行ノ供託シタル公債及社
債ノ利子ニシテ其ノ供託期間內ニ生
ジタル利子額ニ付輕減スルコト
(二)貯蓄銀行ハ前項ノ公債及社債ノ
利子ノ支拂ヲ受クル際貯蓄銀行法第
九條第一項ノ規定ニ依ル供託公社債
ナル旨ヲ利子支拂ノ取扱者ニ告知ス
ベキコト
六法案第一條ノ十三關係
(一)銀行(日本銀行ヲ除ク)、生命保
險會社及無盡會社ノ登錄シタル公債
及社債ノ利子ニシテ其ノ登錄期間內
ニ生ジタル利子額ニ付輕減スルコト
(二)貯蓄銀行竝ニ定期預金ノ利率年
三分四厘以上ナル銀行ノ所有スル登
錄國債ノ利子ニ付テハ稅率ヲ百分ノ
四トスルコト
七法案第一條ノ十四關係
別表ニ揭グル事業ヲ營ム法人等ニシテ
大藏大臣ノ指定スルモノノ株式等ニシ
テ改正稅法施行後ノ拂込ニ係ルモノニ
對スル利益若ハ利息ノ配當又ハ剩餘金
ノ分配ニ付分類所得稅ノ稅率ヲ百分ノ
二輕減スルコト但シ配當率年七分以下
ナル場合ニ限ルコト
八法案第一條ノ十六關係
(一)法人ノ爲シタル寄附金(國防獻
金及恤兵金ヲ除ク)ニシテ當該事業
年度ノ所得金額ニ百分ノ二·五程度
ヲ乘ジテ算出シタル金額ト資本金額
ニ年千分ノ二乃至三程度ヲ乘ジテ算
出シタル金額トノ合計額ノ二分ノ一
ニ相當スル金額ヲ超ユルトキハ其ノ
超過額ハ法人稅法ニ依ル所得、營業
稅法ニ依ル純益及臨時利得稅法ニ依
ル利益ノ計算上之ヲ損金ニ算入セザ
ルコト
(二)前項ノ制限額ヲ超エテ寄附ヲ爲
サントスル法人ガ其ノ超過額ニ對ス
ル法人稅ノ免除ヲ受ケントスルトキ
ハ寄附前ニ於テ其ノ旨ヲ申請スベキ
コト
(三)前項ノ申請アリタル場合ニ於テ
大藏大臣之ヲ必要ト認ムルトキハ寄
附金審査委員會ノ議ヲ經テ法人稅ヲ
免除シ得ルモノトスルコト
(24)昭和十七年一月一日前ニ寄附金
ヲ支出シタル法人又ハ同日前ノ約束
ニ係ル寄附金ニシテ同日以後ニ支出
シ若ハ支出セントスル法人ヨリ免稅
ノ申請アリタルトキハ寄附金審査委
員會ノ諮問ヲ經テ其ノ全部又ハ一部
ヲ損金ニ算入スルコトヲ得ルコト
九法案第一條ノ十七關係
(三)大藏大臣ノ指定スル事業ヲ營ム
法人トスルコト
(二)〓算所得ノ申〓ト同時ニ主務官
廳ノ證明書ヲ添附シテ輕減ノ申請ヲ
爲サシムルコト
十法案第一條ノ十八關係
大藏大臣ノ指定スル事業ヲ營ム法人ガ
事業ノ統制ノ必要上設立セラルル法人
ニ對シ設備又ハ權利其ノ他ヲ出資又ハ
讓渡シタル場合ニ於テ其ノ取得シタル
有價證劵ノ價額ヲ出資又ハ讓渡直前ニ
於ケル設備等ノ記帳價額ト同額又ハ之
ヲ超エ當該有價證劵ノ交付價額未滿ノ
價額ヲ附シタルトキハ交付價額ト記帳
價額トノ差額ハ之ヲ出資又ハ讓渡シタ
ル事業年度ノ益金ニ算入セザルコト
十一法案第一條ノ十九關係
(一)大藏大臣ノ指定スル事業ヲ營ム
法人トスルコト
(二)當該法人ヨリ配當支拂前ニ主務
官廳ノ證明書ヲ所轄稅務署ニ提出シ
承認ヲ得シムルコト
十二法案第一條ノ二十關係
CI營業ノ大部分ヲ廢止シタル個人
トハ決定ニ係ル營業所得金額又ハ純
益金額ヲ基トシテ其ノ七割程度以上
ニ相當スル部分ヲ廢止シタル個人ト
スルコト
(二)所得又ハ純益ノ申〓ト同時ニ輕
減又ハ免除ノ申請ヲ爲サシムルコト
(二)輕減又ハ免除スベキ分類所得稅
額ハ所得金額ノ總額ニ對スル當該營
業ヨリ生ズル所得金額ノ割合ヲ徵收
稅額ニ乘ジテ之ヲ計算スルコト
(四)輕減又ハ免除スベキ綜合所得稅
額ハ總所得金額ニ對スル當該營業ヨ
リ生ズル所得金額ノ割合ヲ總稅額ニ
乘ジテ之ヲ計算スルコト
(五)總所得金額ハ勤勞所得ノ控除ヲ
爲シタル後ノ金額ニ依ルコト
十三法案第一條ノ二十一關係
(一)營業ノ大部分ヲ廢止シタル個人
トハ決定ニ係ル營業所得金額又ハ純
益金額ヲ基トシテ其ノ七割以上ニ相
當スル部分ヲ廢止シタル個人トスル
二·
(二)決定當時現ニ俸給、給料、賞與
及此等ノ性質ヲ有スル給與ノ支給ヲ
受クル場合ハ輕減又ハ免除ヲ爲サザ
ルコト
(1)所得ノ申告ト同時ニ申請ヲ爲サ
シムルコト
四總所得金額ハ勤勞所得ノ控除ヲ
爲シタル後ノ金額ニ依ルコト
十四法案第二十一條ノ二關係
消費稅ノ稅率ヲ其ノ價格ノ百分ノ十ト
スル織物ヲ左ノ如ク定ムルコト
(一)人造絹織物ニシテ昭和十四年九
月五日商工省告示第二一一五號ノ規格
ニ該當スル織物中人平、鹽瀨、裏地、
銘仙、上布等
(二)更生絲織物ニシテ昭和十四年九
月五日商工省告示第二一一五號ノ規格
ニ該當スル織物中ステーブルファイ
バート麻トノ混紡絲ヲ以テ組成スル
服地、サージ等
十五法案第十三條ノ二關係
所轄稅務署ノ承認ヲ受ケアルコール專
賣法第二十條第二號ノ規定ニ依リ賣渡
ヲ受ケタルアルコールヲ原料トシテ製
造シタル合成〓酒ニ付テハ酒類製造者
ノ申請ニ依リ其ノ酒類造石稅ヲ免除ス
ルコト
十六法案第二十二條ノ三關係
行政官廳ノ指導又ハ斡旋ニ依リ爲サル
ルモノニ付テハ其ノ指導又ハ斡旋ヲ爲
シタルコトニ付當該行政官廳ノ證明ア
ルモノニ限ルコトトスルコト
四、電氣瓦斯稅法案關係命令案要
綱
一法案第一條第二號關係
左ニ揭グル營業ノ用ニ使用スル電氣又
ハ瓦斯ニハ電氣瓦斯稅ヲ課スルコト
(一)飮食店業
(二)貸座敷業
(三)引手茶屋業
(四)相撲茶屋業
二法案第一條第三號關係
左ニ揭グル場所ノ用ニ使用スル電氣又
ハ瓦斯ニハ電氣瓦斯稅ヲ課スルコト
(1)競馬場
(二)博覽會場
(三)展覽會場
(四)遊園地
(五)鍛鍊馬場
三法案第一條第四號關係
左ニ揭グル遊技場ノ用ニ使用スル電氣
又ハ瓦斯ニハ電氣瓦斯稅ヲ課スルコ
ト
(一)舞踏場
(三)ゴルフ場
(二)スケート場
(四)其ノ他一定ノ設備ヲ爲シ公衆ノ
遊技ノ用ニ供スル場所
四法案第一條第五號關係
左ニ揭グル者ノ親睦ヲ圖リ又ハ其ノ慰
安若ハ娛樂ノ用ニ供スル場所(專ラ勞
務者ノ親睦ヲ圖リ又ハ其ノ慰安若ハ娛
樂ノ用ニ供スル場所ヲ除ク)ノ用ニ使
用スル電氣又ハ瓦斯ニハ電氣瓦斯稅ヲ
課スルコト
(一)組合ノ組合員
(二)會社其ノ他ノ法人ノ職員
(三)其ノ他相互ニ特殊ノ關係アル者
五法案第一條第六號關係
左ニ揭グル機械、器具又ハ裝置ノ用ニ
使用スル電氣又ハ瓦斯ニハ電氣瓦斯稅
ヲ課スルコト
(一)ストーブ、ラヂエーター、溫風
機炬燵、行火、火鉢、足溫器、布
團、扇風機及ルームクーラー
(二)パーマネントウェーヴ機、同附
屬ドライヤー及美容用鏝
(三)ラヂオ、蓄音機及時計
(四)掃除機及床磨機
(五)エレベータ及エスカレータ
(六)煖冷房裝置及換氣裝置
六法案第四條第一號關係
左ノ公共團體ヲ指定スルコト
CI府縣組合、市町村組合、町村組
合及市町村內ノ區
(二)市町村學校組合、町村學校組合
及學區
(三)水利組合、水利組合聯合及北海
道土功組合
七法案第五條第一號關係
左ニ揭グル電氣又ハ瓦斯ニハ電氣瓦斯
稅ヲ課セザルコト
(一)農業(畜產業、養蠶業及林業ヲ含
ム)、水產業又ハ鑛業(砂鑛業及土石
採取業ヲ含ム)ヲ營ム者ガ事務所及
自己ノ收穫又ハ採掘若ハ採取シタル
物ヲ販賣スル目的ヲ以テ設ケタル營
業場以外ノ場所ニ於テ其ノ業務ノ用
ニ使用スルモノ
(二)工業(土木建築業、電氣供給業、
瓦斯供給業及水道業ヲ含ム)ヲ營
ム者ガ工場又ハ作業場ニ於テ其ノ業
務ノ用ニ使用スルモノ
(三)地方鐵道業者、軌道經營者、旅
客自動車運輸事業者、貨物自動車運
送事業者、自動車道事業者、海運組合
法第一條第一號ノ海運業者及航空機
ニ依ル運送業者ガ事務所以外ノ場所
ニ於テ其ノ業務ノ用ニ使用スルモノ
(四)倉庫業者ガ倉庫ニ於テ其ノ業務
ノ用ニ使用スルモノ
八法案第五條第四號關係
左ニ揭グル電氣又ハ瓦斯ニハ電氣瓦斯
稅ヲ課セザルコト
(C)農業(畜產業、養蠶業及林業ヲ
含ム)、水產業、鑛業(砂鑛業及土石
採取業ヲ含ム)又ハ工業(土木建築
業電氣供給業、瓦斯供給業及水道
業ヲ含ム)ニ關スル試驗所又ハ〓究
所ノ用ニ使用スルモノ
(二)私立ノ圖書館ガ其ノ用ニ使用ス
ルモノ
(三)診療所又ハ齒科診療所ノ用ニ使
用スルモノ
(四)電氣事業者ニ非ザル者ガ自ラ發
電スル電氣ニシテ停電其ノ他ノ事故
アル場合ニ於テ臨時ノ用ニ使用スル
モノ
九法案第六條第二項關係
同一ノ需用場所ニ於テ使用スル電氣又
ハ瓦斯ニ對シ支拂フベキ料金ガ電氣瓦
斯稅ヲ課スルモノ及電氣瓦斯稅ヲ課セ
ザルモノヲ同一ノ計器ニ依リ計量スル
爲電氣瓦斯稅ヲ課セザルモノニ對スル
分ヲ含ムトキハ之ヲ區分計算スルコ
ト
十法案第八條第一項第二號關係
同一ノ需用場所ニ於ケル定額制ニ依ル
電燈又ハラヂオノ總燭光數又ハ總容量
ガ六十四燭光又ハ八十ワツト以下ナル
トキハ電氣瓦斯稅ヲ課セザルコト燭光
數ヲ容量ニ又ハ容量ヲ燭光數ニ換算ス
ル場合ハ一燭光ハ一·二五ワツト、
ワツトハ〇·八燭光トシテ計算スルコ
ト
十一法案第八條第一項第五號關係
瓦斯レンヂ又ハ瓦斯調理臺ニ依リ瓦斯
ヲ使用スル場合ニハ法案第八條第一項
第五號本文ノ規定ハ之ヲ適用セザルコ
ト
十二法案第八條第二項關係
料金ガ一月ニ滿タザル期間又ハ一月ヲ
超ユル期間ニ依リ支拂ハルル場合ニ於
テハ其ノ料金ヲ當該料金計算期間ノ日
數ヲ以テ除シテ得タル金額ノ三十倍ノ
金額ヲ以テ一月ノ料金トスルコト
五、廣〓稅法案關係命令案要綱
一法案第一條第一種第三號關係
第一種第三號ノ規定ニ依リ左ニ揭グル
廣〓ヲ指定スルコト
CI電柱等ニ依ルモノ
(二)電氣事業ノ設備ニ依ルモノ
(三)入場劵又ハ乘車船劵ニ類スルモ
ノニ依ルモノ
121入場劵ノ袋等ニ依ルモノ
(五)諸藝ノ番附、受取書等ニ依ルモ
ノ
(六)照明ニ依ルモノ但シ廣告ヲ爲ス
業ヲ營ム者ノ爲スモノニ限ル
二法案第一條第二種第三號關係
第二種第三號ノ規定ニ依リ左ニ揭グル
廣〓ヲ指定スルコト
(一)曆商品目錄、時間表、電話番
號記入表、案內表、繪葉書等ニ依ル
モノ
(二)燐寸ニ依ルモノ
三法案第一條第二種第四號關係
第二種第四號ノ規定ニ依リ左ニ揭グル
廣〓ヲ指定スルコト
(一)緞帳、引幕等ニ依ルモノ
(二)照明ニ依ルモノニシテ一ノ(六)
ニ該當セザルモノ
(1)廣〓塔ニ依ルモノ等
四法案第四條第一號關係
法案第四條第一號ノ規定ニ依リ左ノ公
共團體ヲ指定スルコト
CI府縣組合、市町村組合、町村組
合市町村內ノ區及町村制ヲ施行セ
ザル地ニ於ケル町村ニ準ズベキ團體
(二)市町村學校組合、町村學校組合
及學區
(1)水利組合、水利組合聯合及北海
道土功組合
五法案第四條第五號關係
法案第四條第五號ノ規定ニ依リ廣〓稅
ヲ課セザル廣〓ヲ左ノ如ク定ムルコト
CI慈善事業又ハ社會事業ニ關スル
モノ
(二)軍人ノ慰恤又ハ軍事援護ニ關ス
んとう
(11)私立ノ幼稚園、中學校、高等女
學校、實業學校、專門學校、高等學
校、大學及此等ニ準ズル私立學校竝
ニ國民學校ニ準ズル各種學校ガ廣〓
主タルモノ
121國防金品ノ獻納又ハ募集ニ關ス
ルモノ
(五)講演會又ハ演說會ニシテ入場料
二十錢以下ナルモノニ關スルモノ
(六)第二種第一號又ハ第四號ノ廣〓
ニシテ營業所又ハ事務所ニ附屬シテ
當該營業所又ハ事務所ノ爲ニ爲スモ
ノ
六法案第六條關係
法案第六條第一項乃至第三項ノ規定ニ
依ル申〓書ハ所轄稅務署ニ之ヲ提出ス
ルコト
前項ノ申告書ノ提出ナキトキ又ハ稅務
署長其ノ申〓ヲ不相當ト認メタルトキ
ハ稅務署長ハ其ノ課稅標準額ヲ決定ス
ルコト
六、馬劵稅法案關係命令案要綱
-法案第二條及第三條第二號關係
勝馬投票劵又ハ優等馬票ノ購買者ニ拂
戾スベキ金額ヨリ控除スル金額ハ勝馬
投票劵又ハ優等馬票ノ額面金額ニ勝馬
投票的中數又ハ優等馬投票的中數ヲ乘
ジテ得タル金額トスルコト
二法案第四條關係
課稅標準額ノ申〓書ハ稅率ノ區別ニ從
ヒ其ノ金額ヲ區分シテ之ニ記載シ競馬
又ハ鍛鍊馬競走開催ノ場所ノ所轄稅務
署ニ之ヲ提出スルコト
前項ノ申〓書ノ提出ナキトキ又ハ稅務
●署長其ノ申告ヲ不相當ト認メタルトキ
ハ稅務署長ハ其ノ課稅標準額ヲ決定ス
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