1. 会議録本文
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000・会議録情報
會議
昭和十七年二月五日（木曜日）午後一時二十七分開議
出席委員左の如し
委員長 勝正憲君
理事 川崎末五郎君 理事 大石倫治君
理事 河野密君 理事 松永義雄君
青山憲三君 石坂養平君
伊藤五郎君 猪野毛利榮君
卯尾田毅太郎君 宇賀四郎君
小川郷太郎君 小高長三郎君
小野謙一君 岡本實太郎君
藤田若水君 豐田收君
篠原陸朗君 高橋熊次郎君
立川平君 藤本捨助君
青木作雄君 村上紋四郎君
森肇君 山本芳治君
百瀬渡君 加藤鯛一君
大橋清太郎君
出席國務大臣左の如し
大藏大臣 賀屋興宣君
出席政府委員左の如し
内務次官 湯澤三千男君
内務省地方局長 成田一郎君
内務書記官 小林千秋君
大藏次官 谷口恒二君
大藏省主税局長 松隈秀雄君
大藏書記官 池田勇人君
大藏書記官 平田敬一郎君
本日の會議に上りたる議案左の如し
所得税法中改正法律案（政府提出）
法人税法中改正法律案（政府提出）
所得税法人税内外地關渉法中改正法律案（政府提出）
相續税法中改正法律案（政府提出）
織物消費税法中改正法律案（政府提出）
物品税法中改正法律案（政府提出）
電氣瓦斯税法案（政府提出）
廣告税法案（政府提出）
馬券税法案（政府提出）
印紙税法中改正法律案（政府提出）
臨時利得税法中改正法律案（政府提出）
特別法人税法中改正法律案（政府提出）
營業税法中改正法律案（政府提出）
臨時租税措置法中改正法律案（政府提出）
國庫出納金端數計算法中改正法律案（政府提出）
戰時災害國税減免法案（政府提出）
所得税等の日滿二重課税防止に關する法律案（政府提出）
地方分與税法中改正法律案（政府提出）発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01219420205&spkNum=0
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001・勝正憲
○勝委員長 ソレデハ是ヨリ開會致シマス、
前會申上ゲテ置キマシタ通リ、若シ簡單ナ
ル質問ガアレバ之ヲ許スト云フコトニ御決
定ヲ願ツテ居リマスガ、小川〓太郞君竝ニ
岡本實大郞君ヨリ簡單ナ質疑ヲ致シタイト
云フ御申出ガアリマスカラ之ヲ許スコトニ
致シマス-岡本實太郞君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01219420205&spkNum=1
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002・岡本實太郎
○岡本委員 廣告稅ノ取扱方ニ付テ御伺ヒ
致シタイノデアリマス、具體的ニ申セバ、
簡單ナ例ガ想像出來マス、法案ニ依ツテチ
ラシ千個二十錢ト云フ稅ガ付イテ居ツタカ
ト思ヒマスガ、稅務署ノ所在地ヲ離レルコ
ト十里、十五里或ハ二十里ト云フヤウナ
遠方ノ山村僻地デ可ナリチラシヲ配ルコト
ガアルダラウト思ヒマス、現ニ吾々ガナス
時ニ於キマシテモ、選擧ノ時ニハ、是ハ公
ノ選擧デ要リマセヌガ、選擧以外ニ議會報
告トカ或ハ其ノ他ノ演說會ヲナス時ニ、斯
カル僻地デチラシヲ配ルノニ、ワザ〓〓人
夫ヲ傭フノモエライノデ、其ノ附近ノ子供
位ヲ使ヒマシテ配ルコトガアリマス、僅カ
二十錢ノ稅ヲ稅務署ノ所在地マデ行ツテ一
一納稅シナケレバナラヌト云フヤウナコト
ハ、殆ンド想像ガ出來ナイ、斯フ云フヤウナ
場合ニハ、ドウ云フ風ニシテ御取扱ヒニナ
ルカ、其ノ運用方法デアリマス、之ヲ承リ
タイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01219420205&spkNum=2
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003・松隈秀雄
○松隈政府委員 御答へ申上ゲマス、廣告
稅法第二條第二種第三號ノ廣告、卽チチラ
シ等デアリマスルガ、其ノ納稅義務者ハ第
五條ニ第二種第三號ノ廣告ニ對スル廣〓稅
ハ同號ニ揭グルモノヲ作製スル者ヨリ、之
ヲ徵收ス、斯ウ云フコトニ相成ツテ居リマ
ス、大體ニ於キマシテ、チラシ類ヲ作製致
シマスル者ハ印刷業者デアルト思ヒマス、
其ノ印刷業者ヲ徵收義務者ニ致スノデアリ
マス、業者ハ廣〓主カラ印刷ノ依賴ヲ受ケ
マシタ時ニ、チラシニ對シマスル稅金、卽
チ千個又ハ其ノ端數ニ付キ二十錢ヲ徵收致
シマシテ、之ヲ翌月稅務署ニ納メルノデア
リマス、隨ヒマシテ業者ハ一々デハナク、纒
メテ翌月納メマスルカラ、或ル程度稅務署
カラ距離ノアル所ニ營業致シテ居リマシテ
モ、左程ノ面倒ハナイノデハナイカト思ヒ
マス、唯個人ノ場合デアリマスルト、業者
ノヤウニ纒メテ翌月納メルト云フヤウナコ
トデアリマセヌカラ、手數ガ割合ニ億劫ダ
ト思フノデアリマス、サウ云フコトモ考ヘ
マシテ、且ツ個人ノ致シマス場合ハ、極メ
テ僅カノ枚數ヲ狹イ範圍ニ配ル程度ノモノ
デアラウトモ考ヘマシテ、文字ノ上カラ申
シマスト、個人ガ自ラチラシヲ作ツテ配ル
ト云フ場合ニ於キマシテハ、作製スルト云
フノニ入ラヌコトハナイノデアリマスケレ
ドモ、大體個人ガ自ラ手デ書イタリ、或ハ
手デ書クコトヲ略シマス爲ニ謄寫版等デ刷
ツテ廣〓ヲ致シマスト云フ場合ニ於テハ
課稅ヲ致サナイ取扱ニ致シタイト存ジテ居
リマス、尙ホ其ノ場合ニ於テモ、業者ガ自
分ノ爲ニヤル、チラシヲ印刷スルコトヲ業
トシテ居ル者ガ自分ノ爲ニ廣〓ヲシタト云
フヤウナ場合デアレバ、是ハ課稅ヲ致シタ
イト思ツテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01219420205&spkNum=3
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004・岡本實太郎
○岡本委員 私ハ是デ宜シウゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01219420205&spkNum=4
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005・勝正憲
○勝委員長 ソレデハ小川君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01219420205&spkNum=5
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006・小川郷太郎
○小川(郷)委員 此ノ增稅案ニ付キマシテ
ハ質問應答ガ交サレマシテ、モウ殆ド言
フコトハナイコトニナツテ居リマスガ、私
ハ最後ニ少シク私共ノ意見ヲ述ベテ政府ノ
之ニ對スル考ヘ方ヲ聽イテ置キタイト思フ
ノデアリマス、ト申シマスノハ、翼贊議員
同盟ハ委員會ヲ設ケマシテ、此ノ戰時ノ稅
制ハドウ云フコトデナケレバナラヌカト云フ
コトニ付テ少シ〓究ヲシテ居リマシタノデ、
其ノ考ヘ方ニ付テ主トシテ申述ベテ政府ノ
御意見ヲ承リタイノデアリマス、日本ノ稅
制ハ平時ノ稅制ト致シマシテハ、洵ニ立派
ニ出來テ居ルト思フノデアリマス、コンナ
立派ナ稅制ガアルカトモ思フ程立派ナモノ
デアルト思ヒマスガ、戰時ノ稅制トシテハ
ドウデアルカ、斯ウ云フコトニ付テ一ツ考
ヘテ見ル必要ガアルト思フノデアリマス
稅制デヨク租稅體系ト申シテ居リマスガ、
租稅體系ヲ打立テマス此ノ支柱トナルヤウ
ナ考ヘ方ヲ、租稅負擔均衡トカ、或ハ負擔
均等ト云フヤウナ文字デ言ヒ表ハシテ居リ
マスガ、兎ニ角擔稅力ニ應ジテ稅ヲ負擔ス
〓、ソレカラ金ヲ持ツテ居ル者ニウント稅
ヲ課ケル、金ノナイ者ニハ稅ヲ少クスルカ
或ハ課ケナイ、是ガ一番大キイ考ヘ方ニナ
ツテ居ルト思フノデアリマス、併シナガラ
日本國民ハ總テ納稅ノ義務ヲ負フト憲法ニ
言ツテ居ラルル通リ、各人ガソレヲ普ク負
擔スルノダト云フ此ノ理念モ、勿論平時ノ
租稅體系ノ上ニ於テハ考ヘラレヌコトモア
リマセヌガ、社會政策トカ色々ノ見地カ
ラ、各人ガ皆稅ヲ擔フト云フコトハ事實ニ於
テ非常ニ制限ヲ受ケテ居ルノデアリマス、
所ガ此ノ戰時ノ租稅體系トシテハ、勿論擔
稅力ノアル者ニ多々益〓課ケテ行カナケレバ
ナリマセヌガ、併シ各人ガ何レモ租稅ヲ負
擔スルト云フ、卽チ負擔普遍、普ク行渡ル、
斯ウ云フ考ヘ方ガ餘程現ハレテ來ナケレバ
ナラヌモノダト思フノデアリマス、現ニ第
二國民兵マデモ徵集スルト云フヤウナ
コトニナリ、勞働トシテハ各人ガ皆働カナ
ケレバナラヌト云フコトガ强調サレテ居ル
今日ニ於キマシテハ、租稅ト致シマシテモ、
各人ガ皆背負ツテ行ク、斯ウ云フ建前ガ强
調サレナケレバナラナイト思フノデアリマ
ス、各人ノ稅額ハ少クテモ、皆寄集マツテ
行ケバ非常ニ大キナ稅額ニナルノデアルカ
ラ、少クトモ斯ウ云フ風ニ稅制ヲ組立テテ
行クベキデハナイカト思フノデアリマス
是ハ直接稅ニモサウデアリマスシ、間接稅
ニ於テモサウデアルノデアリマス、今度ハ
直接稅ヲ主トシタ增稅案ガ出テ居リマス
ガ、承ル所ニ依リマスト、其ノ御改正ニ依
ツテ所得稅ナンドカノ納稅者ト云フモノハ先
ヅ七百万人位ダラウト言フノデアリマス、
內地人ガ七千万人居ルトシマスレバ、七百
万人ノ人間ガ稅ヲ背負フ、十人ニ一人ダト
思フノデアリマス、是ハ宜イト言ヘバ宜イ
ノデアリマスガ、併シナガラ各人ガ皆働ク、
第二國民兵モ出テ行クト云フ此ノ戰時下ニ
於キマシテ、是ハ尙ホ進ンデ考ヘルベキ餘
地ガアルモノデハナイカトモ思ハレルノデ
アリマス、殊ニ惡性「インフレーション」ノ
對策ト致シマシテ浮動購買力ヲ吸收スルト
云フ考ヘ方ガアル、是ハ今後ニ於テハモツ
ト私ハ强調サレナケレバナラヌト思フノデ
アリマスガ、サウ云フ風ナコトカラ言ヒマ
スト、此ノ租稅ノ上ニモ其ノ趣旨ヲ達成ス
ルヤウニ仕組ンデ行ク、斯ウ云フコトニナ
リマスレバ、戰時ノ租稅體系ト致シマシテ
ハ平時ノ租稅體系ト少シ違ツタ色彩ノア
ルヤウナモノニ組立テ直シテ行ク必要ガア
ルヤウニ思フノデアリマス、大體是ハ狙ヒ
ドコロデアリマスガ、之ニ付キマシテ大藏
大臣ノ御考へ方ヲ承ツテ置キタイト思ヒマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01219420205&spkNum=6
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007・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 戰時ニ於キマシテ必要ナ
ル、國費ヲ國民ノ負擔ニ依ツテ作ルト云フコ
トガ、稅ノ第一義デアルト云フ御說ニ拜承
致シマシタ、御尤モニ存ジマズ、國民ハ皆
兵デアル、皆稅ヲ納メル、此ノ根本ノ精神
ハ全ク御同感デアリマス、負擔ノ均衡ト云
フコトハ稅制ノ上ニ於テ極メテ重要ナコト
デハアリマス、併シナガラ戰時ニ於テハ負
擔均衡ヲ至上ノ主義トシテノミ守ツテ行ク
ト云フコトハ、强チ適切デナイト私ハ存ジ
テ居リマス、御說ニ付キマシテハ、其ノ實
行ニ付キマシテ尙ホ今後能ク〓究シテ參リ
タイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01219420205&spkNum=7
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008・小川郷太郎
○小川委員 大藏大臣ノ考ヘ方デアリマス
ト、此ノ日本ノ國稅、或ハ地方稅ヲ通ジマシ
テ戰時ノ色彩ヲ帶ビタ稅制ヲ打立テル餘地
ガ相當アルノダラウト思フ、此ノ委員會ノ
席上デモ、地方稅ヲモウ少シ伸縮スル餘地
ガアルナイト云フヤウナコトカラ、市民稅
ノ御議論モアツタヤウデアリマス、從來ノ
經緯モアリマスケレドモ、私ハ今ノヤウナ
立場カラ見マスルト更ニ檢討ノ餘地ガアル
ダラウト思フ、是ハ地方稅トシテ宜イカ、
國稅トシテ宜イカ知リマセヌガ、ま兎ニ角戰
時下ニ於テ國民ノ負擔ヲ如何ニナスベキカ
ト云フ點ニ付テ、其ノ根本ノ考へ方カラ割
出シテ、具體的ニ色々ノ考究ノ餘地ガアル
ト思フノデアリマス、段々大藏大臣ノ考ヘ
方ヲ承リマシタノデ、其ノ方針デ更ニ調査
サレンコトヲ望ミマス
尙ホモウ一ツ違ツタ角度デゴザイマス
ガ、何分大キナ戰爭デアリマスカラ、大キ
ナ稅ガ要ルノデアリマシテ、今日マデノ增
稅ノ案ヲ見マスルト、大體ニ於テ稅率ヲ上
ゲルトカ、多少稅種ヲ擴張シタノモアリマ
スケレドモ、今度ノ直接稅ノ增稅案ト云フ
モノハ、分類所得稅ノ稅率ヲ動カシタト
カ、或ハ其ノ他免稅點ヲ低メテ行クトカ云
フヤウナ、極メテ技術的ニ簡單ナ方法ヲ執
ツテ居ラレルヤウデアリマス、ソレカラ七
十七議會ニ出マシタ間接稅ノ增徵ニ付キマ
シテモ、多少ハ稅種ノ擴張ヲ見タ所モアリ
マスケレドモ、大體此ノ稅率ヲ動カシテヤ
ルト云フヤウナ狙ヒガ見エテ居ルノデアリ
マシテ、此ノ點ハマダ餘地ハアリマスガ、
ソレハ政府委員ノ方カラ御答ヘニナリマシ
タヤウニ、此ノ直接稅ノ方デ分類所得稅ノ
稅率ヲ高メテ增稅ヲ圖ルト云フコトハ、
實ハ何囘モヤルベキモノヲ一遍ニヤツ
タト云フヤウナ御話モアツタヤウニ承知シ
タノデアリマス、ソレデ稅率ヲ動カジテ
ドン〓〓高メマシテモ、ソレハヤハリ限度
ガアルノデアリマス、ソレデアリマスカラ
今前段ニ申上ゲマシタヤウナ趣旨ヲ貫ク上
ニ於キマシテモ、餘地ノアルモノハ益〓稅率
ヲ上ゲテヤツテモ宜シウゴザイマスケレド
モ、モツト他ノ方面ニ工面ヲスル必要ガア
ルノデハナイカト思フ、殊ニ斯ウ云フ大キ
ナ稅額ヲ生ミ出ス時分ニハ、納稅心理ト云
フヤウナモノモ能ク摑ミマシテ、知ラズ識
ラズノ間ニ國民ガ稅ヲ背負ツテ居ツテ、ソ
シテソレヲ集メテ見レバ非常ニ大キナ額ニ
ナルト云フヤウナ稅ニ狙ヒヲ付ケル必要ガ
アル、ソレハ勿論片方ニ於テ財產家階級ト
カ所得ノ多イ者ニノミト云フ意味デハアリ
マセヌ、ソレハ何處マデモヤラナケレバナ
リマセヌガ、ソレト同時ニ今ノヤウナ立場
デ行キマスト、間接稅ヲ相當ニ增徵スル、
或ハ間接稅ト云フヨリハ流通稅ト云フヤウ
ナモノヲ體系ヅケテ行クノガ宜イノデハナ
イカト思フ、今日マデノ間接稅ト云ヒマス
ト、唯嗜好品デアル酒トカ、煙草トカ、砂
糖トカ云フヤウナ、少々ノモノニ稅ヲ課ケ
ルコトニナツテ居ルノデアリマシテ、是ハ
幾ラ率ヲ上ゲマシテモ、自ラソコニ限界ガ
アルト思フノデアリマス、ドウシテモ消費
稅ト申シマスナラバ消費稅ノ品種ヲモウ少
シ擴張シテ、總テノ人ガ稅ヲ擔フ、サウシ
テ總テノ人ガ知ラズ識ラズノ間ニ稅ヲ背
負ツテ行クト云フ趣旨ヲ貫クコトガ必要ヂ
ヤナイカト考ヘルノデアリマス、ソレハ間
接稅ト云フコトデ言ヘバサウデアリマスガ、
世ニ所謂流通稅ト云フモノハ-間接稅ト
云フモノハ色々見方モアリマセウガ、此ノ
流通稅ニ付テ所有權ノ移轉トカ取引トカ云
フヤウナモノニ稅ヲ課ケルト云フコトニナ
レバ、極メテ輕微ナモノデアツテモ額ガ多
クナツテ來マシテ、戰時稅ト致シマシテハ
相當ナル效能ヲ發揮スルモノデアル、外國
ノ立法ニ於キマシテモ、サウ云フコトヲ隨
分採用シテ居ルヤウニ思フノデアリマス、
日本ノ物品稅ト云フモノハ一寸ソレニ似テ
居リマスケレドモ、元々奢侈稅ト云フ觀念
カラ出テ來タモノデアリマス、ソレヲ大分
擴張セラレタヤウデアリマシタケレドモ、昔
ノ歷史ニ囚ハレテ奢侈品デナイモノマデ稅
ヲ取ルヤウニナリマシテモ、ソコニ何カ制
約サレルヤウナモノガア·リマシテ、物品稅
ノ發達ガ十分ニ出來テ居ナイヤウニ思フノ
デアリマス、ソレデアレバイツソノコト是
ハ改組致シマシテ、外國ニモ例ノアリマス
ヤウニ賣上稅、或ハ取引稅デモ宜シウゴザ
イマスガ、普通ノ賣買移轉ノアル所ニ、物
品稅ノヤウナ大キナ稅率デナイモノヲ課ケ
テ、多クノ者カラ取ツテ稅額ヲ大キクス
ル、斯ウ云フ風ニスベキヂヤナイカ、卽チ
賣上稅ヲ中心ニシテ或ハ印紙稅トカ登錄稅
其ノ他所謂流通稅ト云フヤウナ大キナ建物
ヲ拵ヘル、或ハ間接稅ト云フコトデ、消費
者ノ苦シイヤウナコトガアツテハイカヌト
云フナラバ、其ノ流通稅ト云フ觀念デ行ケ
バ、必ズシモ品種ヲ限ツタモノデナイト考
ヘマスカラ、此ノ流通稅體系ト云フモノヲ
立派ニ確立シテ、ソレデ非常ニ大キナ稅額
ヲ生ミ出ス、サウスレバ各人ガ皆負擔スル
ト云フ趣旨ニモ適ヒ、又購買力吸收ト云フ
コトモ出來ル、斯ウ云フコトガ必要ヂヤナ
イカト思フノデアリマス、今ノ直接稅、間
接稅ト云フコトニ付テ考ヘテ見マスト、今
囘十一億五千万圓ノ直接稅ノ增徵ガアツタ
ノデアリマスカラ、七十七議會ニ六億何千
万圓ノ間接稅ノ增徵ガアリマシテモ、今日
ノ日本ノ稅制トシテハ直接稅、間接稅兩方
睨合セテ見マスト、ドウモ直接稅ノ方ニ大
分偏傾シテ居ルヤウナ憾ミガアルノデアリ
マスガ、戰時ニ於テハ私ハ間接稅ガ少クナ
クテハイカヌ、直接稅ノミニブツカラナケレ
バナラヌト云フヤウニ實ハナルノヂヤナイ
カト思ヒマス、斯ウ云フ點カラ考ヘマシテ
モ、ドウシテモ日本ノ是カラ後ニ戰時ノ要
求ニ應ジテ色々ノ經濟、財政上ノ要望ヲモ
充シテ、稅ト云フモノヲ旨クヤツテ行クト
云フコトガ必要ト思フソデアリマスガ、サ
ウ云フ風ナ考ヘ方ハドウデアリマセウカ、
是ガ私共ガ色々〓究シタ考ヘ方ナノデアリ
マス、政府ノ見ル所ヲ御聽キ申上ゲテ置キ
タイト思ヒ·マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01219420205&spkNum=8
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009・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 種々各般ニ亙リマシテ御
〓究ノ結果ノ御意見ヲ拜聽致シマシタ、尙
ホ能クソレ等ノ點ニ付キマシテハ今後十分
ニ〓究ヲシテ參リタイト存ジマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01219420205&spkNum=9
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010・小川郷太郎
○小川委員 私ハモウ是ダケニシテ置キマ
ス、國民負擔ノコトデ重大ナ事デモゴザイ
マスカラ、ドウカ能ク衆智ヲ盡シ御〓究ア
ツテ、一般國民ノ共ニ此ノ戰爭ヲヤツテ行
クト云フ氣分ニ相應ジテ、租稅フ方面モ整
ヘラレンコトヲ祈リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01219420205&spkNum=10
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011・勝正憲
○勝委員長 是ニテ質疑ハ終了致シマシタ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01219420205&spkNum=11
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012・勝正憲
○勝委員長 是ヨリ所得稅法中改正法律
案法人稅法中改正法律案、所得稅法人稅
内外地關渉法中改正法律案、相續稅法中改
正法律案、織物消費稅法中改正法律案、物
品稅法中改正法律案、電氣瓦斯稅法案、廣
告稅法案、馬劵稅法案、印紙稅法中改正法
律案、臨時利得稅法中改正法律案、特別法人
稅法中改正法律案、營業稅法中改正法律案、
臨時租稅措置法中改正法律案、國庫出納金
端數計算法中改正法律案、戰時災害國稅減
免法案、所得稅等ノ日滿二重課稅防止ニ關
スル法律案、地方分與稅法中改正法律案ヲ
一括シテ議題トシテ討論ニ入リマス、討論
ハ通告順ニ依ツテ之ヲ許シマス-川崎末
五郞君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01219420205&spkNum=12
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013・川崎末五郎
○川崎(末)委員 私ハ只今議題ト相成ツテ
居リマスル所得稅法中改正法律案外十七件
ニ付キマシテ、翼贊議員同盟ヲ代表致シマ
シテ、政府ノ原案ニ贊成ノ意ヲ表スル次第
デゴザイマス
今日御提案ニナリマシタ主トシテ直接稅
ノ增稅額ハ、平年度ニ於テ十一億五千万圓
ノ增收ヲ見込ンデ居ラレルヤウニ伺ツタノ
デアリマスガ、之ヲ昨年ノ第七十七囘帝國
議會ニ於テ協賛ヲ與ヘマシタ酒稅法其ノ他
ノ改正ニ依リマスル、主トシテ間接稅ノ增
徵六億三千餘万圓ト合セテ考ヘマスルト、
平年度ニ於テ國稅ニ於テ直接稅間接稅ヲ通
ジテ約十七億八千万圓、十八億圓位ノ增稅
ニ相成ツタヤウニ伺ツタノデアリマシテ、
此ノ增稅額ハ之ヲ增稅割合カラ申シマシテ
モ、又絕對額ト致シマシテ、昭和十七年度
ニ於テ約七十一億ノ租稅收入ヲ見込ンデ居
ラレマスニ對比致シマスレバ、決シテ是ハ
輕イ增稅トハ考ヘナイノデアリマス、隨ヒ
マシテ是ガ一般國民ノ頭ニ及ボシマスル負
擔ハサウ輕イモノデハナイト云フコトヲ私
達考ヘナクテハナラヌシ、恐ラク政府當局
ニ於テモ其ノ點ハ十分ニ御考ヘニナツテ居
ラレルコトト思フノデゴザイマス、併シナ
ガラ此ノ增稅ガ何ガ爲ニ必要デアツテ、ド
ノ方面ニ充當サルベキモノデアルカト云フ
コトヲ考ヘマスレバ、少クトモ昨年ノ十二
月八日ニ宣戰ノ大詔ガ渙發サレマシテ、吾
吾ハ英米ヲ相手ト致シマシテ、眞ニ國運ヲ
賭シテノ一大決戰ニ臨ムニ至ツタノデアリ
マシテ、ソレガ爲ニ要スル經費ト云フモ
ノハ、凡ユル工面ヲシテ吾々ガ出サナクテ
ハナラヌ、負擔ヲシナクテハナラヌ、戰爭
ニ勝ツ爲ニハ生命モ財產モ、國民ハ總テヲ
擧ゲテ御奉公シナケレバナラヌコトハ言フ
マデモナイコトデアリマシテ、國民總テ此
ノ點ヲ能ク覺悟シ自覺致シテ居ルノデアリ
やく、隨ヒマシテ今囘ノ增稅ニ當リマシテ
モ、各案ノ內容ニ付キマシテ、各稅ノ稅率
其ノ他ニ付キマシテハ、是ハ僣越デハゴザ
イマスケレドモ、政府ノ原案其ノモノガ、
納稅ヲスル側カラ言ヘバ、卽チ之ヲ負擔ス
ル國民カラ言ヘバ、完全無缺ナリトハ私ハ
能ク斷言スルコトガ出來ナイノデアリマ
ス、併シナガラ吾々ハサウ云フ區々タルコ
トヲ捨テテ、今ハ唯戰爭ニ勝ツ爲ニ政府ヲ
支持シ、此ノ聖戰ヲ完遂シテ戴キタイ爲
ニ、吾々ハ此ノ增稅案ニ對シマシテ雙手ヲ
擧ゲテ贊成ヲ致ス次第デアリマス、就キマ
シテハ、之ニ關聯シテ一、二ノ點ヲ私ハ申述
ベテ、希望ナリ或ハ政府ニ對シテ、場合ニ
依レバ御留意ヲ願ヒタイト思フコトガアル
ノデゴザイマス、只今先輩小川先生カラ戰
時ニ於ケル增稅ノコトニ付テハ、我ガ翼贊
同盟ニ於テノ大體ノ考ヘ方ヲ御開陳ナラレ
マシテ、ソレニ對スル大藏大臣ノ答辯ヲ伺
ヒマシテ、此ノ點大イニ意ヲ安ンジ、意ヲ
强ウスル點ガアルノデゴザイマス、隨ヒマ
シテ私ノヤウナ若輩ガ敢テ蛇足ヲ加ヘ、之
ヲ重複シテ申上ゲルコトハ差控ヘベキモノ
デアルト思フノデアリマスルガ、併シナガ
ラ一言ダケ私モ此ノ點ニ付キマシテ愚見ヲ
申述ベテ、重ネテ大藏大臣ノ御留意ヲ御願
ヒ致シタイト思フノデアリマス
其ノ第一點ハ、小川先生モ仰セラレタ通
リ、私達モ此ノ戰時ノ財政、殊ニ戰時ニ於
ケル租稅ノ對策ト致シマシテ、國民ハ一方
ニ於テ身ヲ犧牲ニシテ生命ヲ差上ゲ、御奉
公致シテ居ルノデアリマス、隨ヒマシテ租
稅ノ點ニ於キマシテハ、國民ハ總テ稅金ヲ
納メル、國民皆納稅スベキモノデアル、此
ノ趣旨ヲ飽クマデモ徹底シテ戴イテ、一人
トシテ租稅ヲ免レル者ガナイヤウニシタ方
ガ宜クハナイカ、之ニ依ツテ眞ニ吾々モ一
億一心、御國ノ爲ニ御奉公シテ居ル、斯ウ
云フ自覺ヲ益〓强クセシメル意味カラ申シマ
シテ、サウ云フ御方針ヲ御執リニナツタ方
ガ宜クハナイカ、是ガ第一點デアリマシテ、
此ノ意味ニ於テ吾々ハ飽クマデモ納稅者ガ
普遍化スルコトガ必要デアルト思フノデア
リマス、此ノ趣旨ハ直接稅ニ於テモ間接稅
ニ於テモ同樣デアリマスルガ、間接稅ノ如
キニ於キマシテハ、一層此ノ趣旨ニ於テ、
從來所謂間接稅ハ、兎モスレバ是ガ大衆課
稅デアルト云フコトニ於テ、社會政策上其
ノ他ノ方面カラ考ヘマシテ、政府ニ於テモ
亦吾々議會ニ於テモ、間接稅ノ增徵ハ大衆
課稅デアル、大衆ノ反感ヲ招イテハ困ル、
大衆ヲ困ラシテハ困ル、斯ウ云フ善イ意味
ニ於テモ惡イ意味ニ於テモ、動モスルト遠
慮勝チデアツタ、其ノ結果トシテ我ガ國ノ
今マデノ租稅ノ方カラ申シマスト、直接稅
ト間接稅トノ稅收ノ割合ガ、果シテ均衡ヲ
得テ居ツタカドウカト云フコトモ一ツノ問
題デアル、過去ハ問ヒマセヌガ、私ハ先程
申シタ意味ニ於テ、此ノ戰時ニ於テハ納稅
者ヲ普遍化スルト云フ意味ト、國民ガ總テ
應分ノ稅金ヲ負擔シテ、此ノ方面カラモ御
國ニ御奉公ヲスル、斯ウ云フ意味ニ於テ、
私ハ躊躇スルコトナク必要ナル場合ニ於テ
ハ、間接稅ニ於テモ更ニ餘地アルモノニ對
シテハ課稅ヲ增徵スベキモノデアルト思フ、
又直接稅ニ於テモ同樣ナ意味ニ於テ、私ハ
今同ノ提案ニ於キマスル分類所得稅ノ、殊
ニ勤勞所得ニ對スル免稅點、扶養控除ノ引
下ノ如キ、或ハ不動產所得ニ對スル免稅點
ノ引下ハ、是ハ一部ニ於テハ議論ガアルカ
モ知レマセヌケレドモ、大體ニ於テ此ノ方
針ヲ是認スル者デアリマス、唯此ノ場合ニ
於テ、不動產ニ對シテハ是ハ免稅點デナイ、
免稅額デアル、片方ハ扶養控除デアル、此
ノ關係ガ實際ノ納稅者ニ於テ如何ナル差別
ガアルカト云フコトハ、稅務當局ニ於テハ
十分御承知ノ點デアリマス、果シテ其ノ點
カラ言ヘバ不動產所得ニ對スル二百五十圓
ヲ百五十圓ニスル、或ハ事業所得ノ基礎控
除ノ引下ト云フコトモ、是ガ納稅者ニドウ
響クカト云フコトハ、是等モ多少〓究ノ餘
地ガアリハシナイカト思フノデアリマス、
今囘ハ是認ハ致シマスケレドモ、又サウ云
フ意味ニ於テ不動產所得ニ對スル分類所得
稅ノ課稅ノ如キ、勤勞所得ニ對スル課稅ト
比較致シマスレバ、果シテ是ガ均衡ヲ得タ
モノデアルカト云フコトモ考ヘナケレバナ
リマセヌガ、要ハ私ハサウ云フ區々タルコ
トヨリモ租稅ヲ普遍化スル、一人デモ國民
全部ガ分ニ應ジテ稅金ヲ負擔スル、斯ウ云
フ意味ニ於テモツト普遍化スルヤウニ考ヘ
テ貰ヒタイト思フノデアリマス
尙ホ今囘ノ增稅ニ依ツテ將來ノ見透シハ
ドウカト云フコトモ御伺ヒ致シタイノデア
リマスルケレドモ、恐ラク私ハ將來此ノ增
稅ニ依ツテ、十八年度以降ニ於テ增稅ナシ
ニ戰費ヲ賄ヒ、戰時財政ノ運營ヲシテ行カ
レルカト思ヒマスレバ、恐ラクハ更ニ來
年度ニ於キマシテモ亦增稅ノ問題ガ起キス
トモ限ラナイシ、又起ルコトハ必然的デ
アルト考ヘナクテハナラヌ、斯ウ考ヘマス
ルト、此ノ稅制改革以來三、四年シカナリ
マセヌガ、現在ノ稅制ニ依ツテ唯稅率ヲ變
更スルト云フコトノミニ依ツテ、果シテ是
ガ將來巧ク運用シテ賄ヘ、而シテ增收ノ目
的ガ達シ得ルカト云フコトヲ考ヘマスルト、
場合ニ依ツテハ所謂戰時租稅對策ト致シマ
シテ、惡イトハ申シマセヌガ、現在ノ稅制
ニ戰時ト云フ意味ヲ加味シテ根本的ニ再檢
討ヲ致ス必要ガアルノデハナイカト思フノ
デアリマス、若シサウ云フ場合ニ於キマシ
テハ、今申シタ納稅者ノ普遍化、或ハ間接
稅直接稅ノ均衡ヲドウスルカト云フコト
ハ、能ク御考慮願ツテ、ソレヲ按配シテ戴
キタイト思フ、例ヘバ具體的ニ一例ヲ申上
ゲマスレバ人頭稅ノ如キモ、極ク少額ノ人
頭稅ノ如キモノモ、戰時中ニ於テハ考究スベ
キ一ツノ問題デハナイカ、財產稅ノ如キ、
或ハ流通稅ノ中デモ、一例ヲ申シマスレバ、
馬場財政以來問題ニナツタ賣上稅、物品稅
ノ何レヲ取捨スベキカト云フヤウナコトモ
私ハ御考ヘヲ願ツテ、或ル場合ニ於キマシ
テハ、私達ハアノ當時ハ財產稅ノ如キ、賣
上稅ノ如キハ、其ノ當時ノ實情カラ申シマ
スレバ如何カト考ヘ、寧ロ反對的ノ考ヘヲ
持ツタノデアリマスルケレドモ、此ノ戰時
下ニ於キマシテハ、是等モ既往ノ行掛リニ
コダハラズシテ、極ク白紙ニ立還ツテ、國家
ノ稅收ヲ上ゲル爲ニ考ヘラルベキ一ツノ問
題デハナイカト思フノデアリマスルカラ、能ク
其ノ點ヲ御考ヘ願ヒタイト思フノデアリマス
尙ホ斯ウ云ツタ意味ニ於キマシテ、稅デハ
アリマセヌケレドモ、或ハ浮動購買力ヲ
吸收スルト云フヤウナ意味カラ考ヘマシ
テモ、例ヘバ富籖ノ如キ、是ハ大藏大臣
モ曩ニ同僚議員ノ質問ニ對シテ、考慮〓究
サレツツアルト云フコトヲ伺ヒマシタガ、
是等モ私ハ十分ニ眞面目ニ實行的ニ御考ヘ
願ヒタイト思フ一ツノ事例デゴザイマス
尙ホ今囘ノ地方分與稅ノ改正案ニ付キマ
シテ、私達異存ハアリマセヌガ、地方稅關
係ニ付テ一言内務當局ナリ大藏大臣ニ希望
的ノ意見ヲ申述ベテ御留意ヲ仰イデ置キ
タイト思フノハ、質問中ニモ同僚モ私モ一
言附加シテ御尋ネ致シタ次第デアリマスル
ガ、此ノ支那事變勃發以來、殊ニ昨年ノ大
東亞ノ大戰爭ニ入ツテカラト申シマシ
テモ、現在ヲ考ヘ將來ヲ思ヒマスルト、地
方ノ財政ト云フモノハ年々月々日々ニ膨脹
ヲ致シテ居ル、殊ニ此ノ戰爭ニ關聯シテ、
ドウシテモ支出シナケレバナラヌ經費ト云フ
モノハ、相當ニ增加シテ行クコトハ是ハ疑フ
コトノ出來ナイ事實デアル、而モ其ノ財源
ハ如何ト申シマスレバ、地方ノ財源ハ國ノ
財源ト違ヒマシテ、極メテ制限サレタ範圍
內ニ於テ、極メテ制限サレタ稅源シカ持ツテ
居ナイノデアリマスカラ、此ノ極ク平常的、
經常的ナサウ云フ財源ノミニ依ツテ、斯ウ
云フヤウナ臨時ノ費用ヲ支辨サスト云フコ
トハ、ソコニドウシテモ無理ガ起ツテ來
ル、其ノ無理ガ何處デ「カバー」サレテ居ル
カト云フト、地方當局ニ於テハ能ク御承
知カモ知レマセヌケレドモ、稅以外ノ寄附
金其ノ他ノ名義ニ依ツテ、名前ハ寄附其ノ
他ノ自由意思ニ依ル出捐ノ名義デアリマス
ルガ、事實ニ於テハ、是ハ國稅ナリ地方稅
ト同ジヤウナ、殆ド强制的、割當的ニ徵收
サレテ居ル、是等ガ段々殖エテ來ル、又稅
ノ中ニ於テ制限課率ノ如キハ、當初稅制改
正ノ當時ニ豫想ダモシナカツタヤウナ大キ
イ制限外ノ率ヲ課セザルヲ得ナイヤウニナ
ツタ、是等ハ同僚ノ森君カラモ指摘サレ
タヤウデアリマシテ、私達モ大體ニ於テ
森君ノ指摘サレタ事實ニ付テハ、中
央當局ニ於テモ十分ニ御承知ヲ願ツテ
置キタイ、是等ニ付テモ私ガ國稅ニ於テ申
上ゲタト同樣ニ、地方稅ニ於キマシテモ、當
時ト事情ガ變ツテ居ル以上ハ、現在ノ事情
ニ卽シテ地方分與稅其ノ他ノ地方稅ノ稅制
ニ付テ、其ノ實情ニ卽シテ改正スベキ所ハ
躊躇セズニ、極ク虛心坦懷ニ御考ヘ願ヒタ
イト云フコトヲ申上ゲル、唯一言申上ゲタ
イノハ、ソレカト申シテ市町村民稅ノ如キ
ニ付キマシテモ、當時ハ彼ノ戶數割ノ弊害
ニ顧ミマシテ、餘程嚴重ニ制限シナケレバ
ナラヌト云フコトハ當時ノ輿論デアツタ、
併シ今ハモウ少シアレヲ緩和シテハドウカ
ト云フ意見ガ多イヤウニ思フノデス、私達
モ其ノ意見ニ付テハ敢テ反對ハ致シマセヌ
ケレドモ、緩和ノ餘リニ、昔ノ戶數割ノ如
キ弊ニ陷ラナイヤウニ御留意願ヒタイト云
フコトヲ申上ゲテ置クノデアリマス
尙ホ同時ニ國ト地方ニ於キマシテノ事務
ノ委任關係デアリマスルガ、是等ノ委任ニ
付キマシテハ、私ハ個人ト致シマシテハ
負擔區分ノ法律デモ拵ヘテ明確ニシタ方ガ
宜イト考ヘテ居ルノデアリマスルガ、主稅
局長ノ御答辯モアリマシタ、ソレ等ノ御意
見ニ付キマシテ、吾々ハ十分其ノ事情ハ諒
ト致シマスルガ、要ハ地方團體ガ國ノ事務
ヲ必要ニ應ジテヤルコトハ當然ヤラナクテ
ハナラヌノデアリマスルガ、其ノ費用ニ付
テハ地方ニ無理ノナイヤウニ、政府ニ於テ
モ御考慮ヲ願ツテ、事務ヲ委任スルト同時
ニ、其ノ財源カ然ラズンバ豫算ヲ與ヘルト
云フコトニシテ、是ガ爲ニ過當ナ、無理ナ
地方財政ノヤリ繰ヲシナケレバナラナイヤ
ウナ窮境ニ陷ラサナイヤウニ、政府ニ於テ
御留意サレンコトノ希望ヲ申述ベテ本案ニ
贊成スル次第デアリマス、重ネテ申シマス
ルガ、本員ハ政府ノ原案ニ對シテ全部先程
申シタヤウナ理由ニ於テ欣然トシテ贊成ヲ
致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01219420205&spkNum=13
-
014・勝正憲
○勝委員長 大石倫治君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01219420205&spkNum=14
-
015・大石倫治
○大石(倫)委員 私ハ同交會ヲ代表致シマ
シテ、只今議題トナツテ居リマスル所得稅
法中改正法律案外十七件ノ原案ニ贊成ノ意
ヲ表シタイト存ジマス、本委員會ニ付託セ
ラレマシタル各案ハ、增稅又ハ新稅ノ創設
竝ニ關係法令ノ調節整備ヲナシ、多少ノ減
免稅ヲ行フ劃期的ノモノデアリマス、之ヲ
具サニ檢討致シマスレバ、直チニ鵜呑トナ
シ能ハザルモノモアラウト思ハレマスガ、
戰時非常ノ場合、卽チ大東亞戰爭ニハ飽ク
マデ勝拔カネバナラヌ今日ニ於キマシテハ、
已ムヲ得ザルモノト認メ、快ク贊成ヲ致ス次
第デアリマス、仍テ政府ハ其ノ運用實施ニ
當リテ兎角陷リ易キ官權濫用ノ弊ヲ愼ミ、
無理ナ査定等ヲナシテ國民ノ忠誠心ヲ傷ツ
ケ、或ハ民力ノ涸渴ヲ招來スルガ如キコト
ナキヤウ十分ノ監督ト指導トヲ盡サレ、萬
遺憾ナキヲ期セラレンコトヲ要望シテ、大
乘的ニ原案ニ贊成ノ意ヲ表スル次第デアリ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01219420205&spkNum=15
-
016・勝正憲
○勝委員長 河野密君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01219420205&spkNum=16
-
017・河野密
○河野(密)委員 私ハ第一控室ヲ代表致シ
マシテ、只今議題トナツテ居リマスル增稅
等ニ關スル各案ニ對シテ贊成ノ意思ヲ表明
致シマス
大東亞戰爭以來、急速ニ厖大トナリマシ
タ財政需要ニ應ズル爲ニ增稅ヲセラレルト
云フコトハ極メテ妥當デアリマシテ、其ノ
意味カラ私達ハ何等ノ異議ヲ挾ム者デハゴ
ザイマセヌ、唯此ノ際大藏大臣ニ申上ゲテ
置キタイ點ガ二、三アルノデアリマス、大藏大
臣ノ本會議、豫算總會或ハ本委員會ヲ通ジ
マシテノ御意見ヲ拜聽致シマシテ、私ノ考ヘ
ル所ニ依リマスルト、租稅ニ對シマシテモ、
公債政策ニ對シマシテモ、極メテ無難ナ道
ヲ通ラウトシテ居ルヤウニ思ハレマス、又
經濟諸方策ノ改革ニ對シマシテモ、徐々ニ
順序ヲ逐ウテ進マレテ行クト云フコトヲ主
眼トセラレテ居ルヤウニ拜承致スノデア
リマス、私ハ戰時財政經濟ノ大宗ヲ握ラル
ル大藏大臣ト致シマシテ、此ノ方針ハ妥
當デアルト考ヘルノデアリマス、ケレドモ
慾ヲ申シマスルナラバ、私ハ今ノ時代ハ單
ニ順ヲ逐ウテ起リ來ル事象ヲ追掛ケテ、後
カラ財政經濟ノ政策ヲ立テルト云フコトデ
ナク、先手ヲ打ツテ財政經濟ノ根本方針ヲ
國民ノ前ニ豫メ披瀝スルコトガ必要ナル時
代デハナイカト思フノデアリマス、二百四
十數億ニ達シマスル所ノ厖大ナル豫算ヲ消
化致シテ行クニ付キマシテハ、私ハ獨リ租
稅ノ窓、公債ノ窓カラノミ之ヲ遺憾ナク實施
シ·テ行クト云フコトニハ疑問ガアルノデハ
ナイカ、サウデナクシテ今少シク新タナル構
想ヲ以テ、新シイ方策ヲ樹立スル必要ガア
ルノデハナイカト思フノデアリマス、私ハ
此ノ點ニ付キマシテハ、本委員會ニ於キマ
シテモ大藏大臣ノ御意見ヲ伺ツタノデアリ
マスルガ、例ヘテ申シマスルナラバ公企業
ヲ活用スル、臨時軍事費ノ中ニモ、南方物
資ニ對シテノ工作ニ關スルモノモ織込マレ
ニ居ルヤニ伺ヒマスガ、是モ其ノ現ハレデ
ハナイカト存ズルノデアリマスルガ、サウ
云フ點ニ付テ考ヘルト云フコトモ必要デア
ル、更ニ現在我ガ國民ガ極メテ惑ウテ居リ
マスルノハ、南方ノ資源ニ關シテ說カレル
コト洵ニ多クシテ、現實ノ我ガ國ノ實情ト
云フモノハ益〓統制ガ强化サレテ行ク、此
ノ間ニ於ケル矛盾ニ如何ニ對處スベキカト
云フコトニ國民ハ衷心カラ惑ウテ居ルト
思フノデアリマス、南方ノ資源極メテ重
大デアリマスルカラシテ餘ル物モアリマセ
ウ、足ラナイ物モアリマセウガ、政府ハ時
間ト距離トヲ計算ニ入レテ初年度ハ斯ク斯
ク、第二年度ハ斯ク〓〓、第三年度ニ於テハ
斯ク〓〓ト云フ計畫的ナル方策ヲ立テラレ
テ、之ヲ國民ノ前ニ明示サレ、本年ハ此ノ
程度デアル、來年ハ此ノ程度デアルト云フ
コトヲ示シテ、國民ニ嚮フ所ヲ〓ヘラレルコ
トガ急務デアルト存ズルノデアリマス、今
日米英ニ對シテ戰ヒヲ宣スルマデハ國策ノ
物動計畫其ノ他ハ私ハ嚴ニ祕密ニスベキモ
ノデアツタト信ジマス、ケレドモ日本ノ經
濟力ヲ疑ツテ居ツタ米英ヲ相手ニシテ戰爭
ニ入ツタ以上ハ、私ハ物動ノ·内容其ノ他ニ
付テ必ズシモ祕密ニスベキ理由ハナイト思
フ、足ラナイ物ハ足ラナイ、餘ル物ハ餘ル
ト〓堂々ト中外ニ發表シテ私ハ何等差支ヘ
ナイモノデアルト、斯樣ニ考ヘルノデアリ
マス
更ニ私達ガ大藏大臣ノ御留意ヲ願ヒタイ
ト思ヒマスルノハ、先程來稅制ノ問題ニ付
テ先輩各位カラ、色々ノ御意見ガアリマシタ
ガ、私ハ要ハ其ノ意見ヲ妥當トスルカ、妥
當トシナイカト云フコトハ、戰時ヲドウ考
ヘラレルカ、此ノ戰爭ト云フモノガドノ程
度ニ長ク續クト考ヘルカ、戰時狀態ガ短イ
カ長イカト云フコトノ問題ト、戰後ノ經營
ヲ如何ナル方針ニ依ツテヤルノデアルカ、
大東亞ノ建設ノ方針ト云フモノヲ、ドウ云
フ根本原則デヤツテ行クカト云フコトニ懸
ツテ居ルト思フノデアリマス、私ハ政府ガ
戰爭中極メテ御多用ノ折柄デアルトハ存ジ
マスルケレドモ、此ノ戰後ニ於ケル大東亞
建設ノ方針ト云フモノヲ、ドウ云フ風ニナシ
テ行クカト云フ指導方針ヲ明確ニ御示シ
ニナルコトガ極メテ重大ナル問題デアル
ト存ズルノデアリマス、今日ノヤウナ狀態
デ進ミ、今日ノヤウナ理論デ進ンデ行クナ
ラバ、生レテ來ルモノハ何カ、私ハ決シテ
偏頗ニ申上ゲルノデハナイノデアリマスカ
ラ、誤解ヲシナイヤウニシテ戴キタイト思
フノデアリマスガ、來ルベキモノハ是ハ獨
占資本ノ强化ト云フコトガ現ハレテ來ルノ
デハナイカ、英米佛其ノ他ニ於テ見ラレル
ヤウナ二百ノ家族、百ノ家族或ハ八十ノ家
族ト云フヤウナモノガ一國經濟ノ大宗ヲ握
ツテシマフト云フヤウナ、サウ云フ事態ガ
起ルノデハナイカ、サウ云フコトニ對シテ
ハ豫メ私ハ警戒ヲ要スルノデハナイカ、更ニ
增稅ガ行ハレル度每ニ、何ト申シマシテモ、
如何ナル工作ヲ施シマシテモ、必ズ重壓ノ
掛カツテ參リマスルノハ中小企業デアリマ
ス、此ノ中小企業ノ沒落ト云フコトハ、今
日企業ノ統制其ノ他ニ於テ進ミツツアリマ
スルケレドモ、增稅ニ依ツテ拍車ヲ掛ケラ
レルト云フコトダケハ十分ニ考ヘナケレバ
ナラナイト思フノデアリマス、增稅サレル
度ニ中小企業ガ段々ニ沒落シテ行クト云フ
コトハ、是ハ免レ難イ勢ヒデアリマス、此
ノ點ニ付テハ私ハ稅制ノ問題デハ解決シ得
ナイ問題ト思ヒマスルノデ、大藏當局、殊
ニ財政經濟ノ當局ニ於キマシテ十分ナル御
留意アルベキモノト存ズルノデアリマス
最後ニ私ハ財政需要ガ極メテ厖大ニナツ
テ參リマスルノデアリマスカラシテ、吾々
ハ喜ンデ國費ノ負擔ヲ致シマス、國民ハ心
ノ底カラ稅ニ對シテ之ヲ負擔シヨウト云フ
氣持ニ燃エテ居リマス、何等之ニ對シテ異
議ヲ挾ム者ハナイ、戰爭ニ勝ツ爲ニハ喜ン
デ稅ヲ負擔致ストハ存ジマス、ケレドモ政
治ノ局ニ當ル者トシテハ國民ノ獻身的ナル
氣持、犧牲的ナル精神ノミニ依賴スルコト
ナク、政治ノ運用宜シキヲ得テ、政治ノ妙
用ヲ發揮致シマシテ、是等國民ノ期待ニ副
ビ、國民ノ嚮フ處ヲ察知シツツ手ヲ打ツテ
行カレルコトガ必要カト存ズルノデゴザイ
マス、以上極メテ僣越デアリマスルガ、未
熟ナ愚見ヲ述ベマシテ、大藏大臣ノ御留意
ヲ希ヒ、本案ニ對シテ贊成ノ意ヲ表明スル
次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01219420205&spkNum=17
-
018・勝正憲
○勝委員長 松永義雄君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01219420205&spkNum=18
-
019・松永義雄
○松永(義)委員 私ハ興亞議員同盟ヲ代表
致シマシテ、只今議題トナツテ居リマス所得稅
法中改正法律案其ノ他十七件ニ付キマシテ、
原案通リ贊成ノ意ヲ表シマス
簡單ニ希望ヲ附加ヘタイト思フノデゴザ
イマス、私ノ申上ゲルマデモナク戰時財
政ノ經費ヲ賄フ爲ニ、大體租稅及ビ公債收
入ニ依ツテ居ルト云フコトハ勿論デゴザイ
マスガ、今日吾々ガ戰時經濟ト云フノハ
物ノ經濟デアツテ、吾々日常生活カラ見マ
スレバ、最近ニ行ハレマシタ所ノ衣料ノ切
符制ニ見マス通リニ、吾々國民生活ノ切下
ニ對シテハ、現在ニ於テ之ニ耐ヘテ行カナ
ケレバナラヌノミナラズ、例ヘバ吾々ガ着
テ居リマス所ノ洋服ニ付キマシテモ、之ヲ
新タニ註文シテ作ツテ行キマス時ニ制限ヲ
受ケテ居ルバカリデナク、將來長ク吾々ノ
着テ居ル所ノ洋服ニ修復ヲ加ヘテ、サウシ
テ堅忍持久、之ニ耐ヘテ行カナケレバナラ
ヌト存ズルノデアリマス、サウシテ吾々ハ
廢品ノ囘收、其ノ他戰時經濟ニ其ノ必要ナ
ル所ノモノハ總テ國家ニ提供致シマシテ、
サウシテ最後ノ勝利ヲ得ルマテ戰ヒ拔ク所ノ
覺悟ヲ持ツテ居ルト云フコトハ言フマデモ
ナイ所ナノデアリマス、而シテ吾々ハ其ノ
殘レル所ノ金ノ大小ヲ問ハズ、之ヲ貯蓄致
シテ居リマスコトハ又說明ヲ俟タナイノデ
ゴザイマスガ、租稅ニ依ツテ吾々ハ現在ニ
於テ負擔シテ居ル、公債デアレバ其ノ負擔
ハ將來ニ押殘シテ行クモノデアル、公債ノ
收入カラ來ル將來ノ元利拂ハ、軈テハ國民
ノ負擔トナツテ將來ニ押ヤツテ行クト云フ
コトヲ、モノノ本ニハ書イテアルノデゴザ
イマスガ、併シ戰時經濟ニ於キマシテハ
吾々ハ如何ニ金ヲ假ニ殘シテ居リマシテモ、
物ノ經濟カラ申シマスト、吾々ハ只今申上
ゲタヤウニ、耐ヘ忍ンデ行カナケレバナラ
ヌ狀況ニナツテ居ルノデアリマス、而シテ
吾々ハ租稅ト云フモノガ、固ヨリ繰返シ前
ノ討論者モ言ハレマシタヤウニ、國民ノ愛
國心ノ發露デアリ、更ニ又國家ノ收入ヲ目
的トシタモノデアルト云フコトハ、是ハ論
ヲ俟タナイノデアリマスガ、今日ノ此ノ戰
時財政ノ、所謂從來使用サレテ來タ所ノ慣
用語デアル所ノ健全財政ト云フヤウナ意味
デナクシテ、財政ノ堅實ヲ圖リ、戰時財政
ノ運用ヲ圓滑ナラシムルコトニ付キマシテ、
現在吾々ガ耐ヘ忍ンデ行ク所ノ生活ノ上カ
ラ見マシテ、租稅ガ宜イカ、或ハ國債收入
ガ宜イカト云フコトニナリマスレバ、今日
吾々ハ貯蓄ト云フコトニ付キマシテ、有三
ル機會ニ於テ大藏大臣ガ言ハレテ居リマシ
タ通リニ、强制貯蓄ハ致サナイト云フコト
ハ言ハレテ居リマスケレドモ、租稅ガ寧ロ
貯蓄ヨリハ、ヨリ以上ニ購買力ノ吸收ニ力
アルト云フコトハ、是亦言フマデモナイ所
ノ事實ナノデアリマス、隨テ度々委員會ニ
於テ將來ノ租稅ノ改革ニ付テ論議セラレテ
居ルノデアリマシテ、將來ニ於ケル所ノ政
府ノ租稅ノ改革ニ對スル御方針ト致サレマ
シテ、此ノ租稅政策ヲ戰時財政ノ運用ヲ圓滑
ナラシメル爲ニ、私ハ租稅ト云フモノヲ十
分御利用ナスツテ戴キタイト云フコトヲ御
願ヒ致シタイノデゴザイマス
此處ニ現ハレテ居リマス所ノ法律案ニ付
キマシテハ色々細カイ點ニ付テハ議論モ
アラウトハ存ジマス、一方ニ增稅ヲ此ノ趣
旨カラシテ認メツツ、他方ニハ減稅ヲシテ
居ラナイデモナイノデゴザイマシテ、今日
ニ於ケル我ガ日本ノ現段階ニ於ケル財政狀
態ト云フモノガ、未ダ其ノ程度ヲ以テ出來
ルト云フコトヲ知ツテ、,私ハ非常ニ慶ビト
スルモノデゴザイマスガ、將來ノ稅制ノ御
改革ヲ行ヒマスニ當リマシテハ、是非トモ
大藏當局ニ於カレマシテ戰時財政ノ堅實ナ
ル運用ヲ期セラレル爲ニ、租稅ト云フモノ
ヲ改善セラレマシテ、此ノ聖戰目的ヲ完遂
シ、最後ノ戰ノ勝利ヲ得ラレルヤウナ、完
全ナ稅制政策ヲ樹立セラレンコトヲ是非御
願ヒ致ス次第デゴザイマス、尙ホ地方團體
ニ付キマシテハ川崎委員カラ述ベラレタ點
ヲ援用致シテ置キマス
第三ニ吾々ト致シマシテハ將來益〓稅金ノ
多クナツテ行クコトヲ覺悟シ、又稅金ノ多
クナルヤウナ稅制ガ現ハレテ來ルト存ズル
ノデゴザイマスガ、此ノ稅金ノ取リ方ニ付
キマシテ、徵稅方法ニ付キマシテ大藏當局
ニ於テハ十分一ツ御考ヘニナツテ戴キタイ
ト存ズル次第デアリマス、市內ニ於キマシ
テハ納稅組合ヲ組織致シマシテ、每月々々
稅金ヲ集メテ納稅ノ方法ヲ取ツテ居リマス、
將來稅額ガ增加スルニ付キマシテ、中々工
場、商店ノ金融ノ運用モ困難ニナツテ來ル
ト存ズルノデゴザイマスガ、是ハ納稅期ト
云フモノハ法律デ決マツテ居ツテ、俄カ、ニ
變ヘ難イト存ズルノデゴザイマスカラ、其
ノ納稅方法ニ付テハ何等カ便宜ナ方法ヲ御
考ヘニナツテ行クコトガ結構ダト思ヒマス
尙又各會社或ハ各工場ニ於キマシテ勤勞
所得ノ源泉課稅ヲ取リマス時ニ各〓カラ稅金
ヲ取ツテ居ルト云フコトニナツテ居ルサウ
デアリマスガ、大體各會社、各工場ニ於キマ
シテハ、其ノ會社ノ社員及ビ勞働者ニ拂フ
所ノ勤勞所得、賃金ト云フモノガハツキリ
御分リニナツテ居ルコトト存ズルノデゴザ、
イマシテ、若シ斯ウ云フヤウナ稅金ヲ御取
リニナリマス所ノ方法ト致シマシテ、一括
シテ稅金ヲ御取リニナツテ戴クヤウナ方法
デモ考ヘテ戴クナラバ、非常ニ工場及ビ會
社ニ於キマシテハ人手ガ省ケルシ、又明瞭
ニ出來ルカト存ズルノデゴザイマス、將來
稅金ガ益〓殖エルニ付キマシテ、出來ルダケ
納メラレ易イヤウナ方法ニ付テ何カノ御考
ヘヲシテ戴キマシテ、徵收セラレンコトヲ
是非希望致ス次第デゴザイマス、以上希望
ヲ述ベマシテ原案ニ贊成スル者デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01219420205&spkNum=19
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020・勝正憲
○勝委員長 此ノ際大藏大臣ヨリ發言ヲ要
求ガアリマス、之ヲ許シマス-賀屋大藏
大臣発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01219420205&spkNum=20
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021・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 只今各委員ノ御討論ヲ拜
聽致シマシタガ、此ノ際大乘的見地ヨリ皆
原案ニ御贊成下サイマシテ、尙ホ其ノ上ニ
種々激勵ノ御言葉ヲ賜ハリ、又御注意ノ御
言葉ヲ賜ハリマシテ、眞ニ感謝致シマス、
唯河野委員ノ御述べニナリマシタコトニ付
キマシテ、私ノ或ハ誤解カト存ジマスガ、
物動計畫、殊ニ南方カラノ物資ニ付キマシ
テ、今後數年間ノハツキリシタ計畫ヲ立テ
ロト云フ御話デアリマス、又ソレ等ニ付テ
モ祕密ニスル必要ハナイト云フ御話デアリ
マス、是ハ私ノ解シヤウガ惡イカモ知レマ
セヌガ、私ト致シマシテ、左樣ナコトハ既
ニ南方ノ戰爭ガ終リ、時局ノ終結ヲ見タ時
ノ有樣ニ於ケルガ如キコトカト感ジタノデ
アリマス、何サマ今ハ戰爭ヲ始メマシタバ
カリデアリマス、敵ハ〓戰ニ於テ大敗ヲ喫
シマシタガ、マダ南方ニモ敵ガ居リマス、
其ノ背後ニ世界最强最富ヲ誇ル英米ノ國力
ガアリマス、私共ハ到底マダ其ノ段階ニ達
シナイト思フノデアリマス、是ハ河野委員
モ決シテ最早安全ト申シマスカ、時局ガ決
マツタヤウニ御考ヘニナツテ居ルノデハナ
イト思ヒマスガ、私共ハ實際ノ計畫ハ益〓適
切周密ニ致サナケレバナラヌ、何サマ作戰
ノ進行ニ依ツテハ來年再來年ガドウナルカ
分リマセヌノデ、物動計畫ヲ公表シマスヤ
ウナコトハ、言葉ヲ露骨ニ申上ゲサセテ戴
キマスナラバ、思ヒモ及バヌ次第ト思フノ
デアリマス、是ハ事態ノ認識ニ關スルコト
デアリマスルカラ、率直ニ一言申上ゲサセ
テ戴キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01219420205&spkNum=21
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022・勝正憲
○勝委員長 討論ハ終局致シマシタ、是ヨ
リ採決ヲ致シマス、各案共原案ニ御贊成ノ
諸君ハ起立ヲ願ヒマス
〔總員起立〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01219420205&spkNum=22
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023・勝正憲
○勝委員長 起立總員、仍テ各案ハ何レモ
原案ノ通リ可決致シマシタ.
〔拍手起ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01219420205&spkNum=23
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024・勝正憲
○勝委員長 一寸御挨拶ヲ申上ゲマス、當
委員會ハ去ル一月二十三日以來二週間、引
續キ十二囘ノ開會ヲ見タノデアリマスルガ、
連日非常ニ熱心ナル御〓究ヲ戴キマシタ、
諸君ノ御勞苦ニ對シテ深ク感謝ノ意ヲ表ス
ルト同時ニ敬意ヲ表シマス(拍手)是ニテ散
會致シマス
午後二時三十五分散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007911601X01219420205&spkNum=24
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