1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
會議
昭和十七年二月七日（土曜日）午前十時十九分開議
出席委員左の如し
委員長 由谷義治君
理事 小笠原八十美君 理事 駒井重次君
理事 深澤吉平君 理事 石坂豐一君
岡本實太郎君 篠原陸朗君
土田莊助君 中野治介君
藤本捨助君 松田正一君
三木武夫君 宮本雄一郎君
片山哲君 北れい吉君
川俣清音君 瀧澤七郎君
西尾末廣君
出席國務大臣左の如し
大藏大臣 賀屋興宣君
出席政府委員左の如し
大藏省主税局長 松隈秀雄君
大藏省會社部長 田中豐君
大藏書記官 中村建城君
國民貯蓄奬勵局次長 氏家武君
營繕管財局理事 梅北末初君
本日の會議に上りたる議案左の如し
日本勸業銀行法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）
農工銀行法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）
北海道拓殖銀行法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）
國民貯蓄組合法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）
税務代理士法案（政府提出、貴族院送付）
社債等登録法案（政府提出、貴族院送付）
會計法戰時特例案（政府提出、貴族院送付）発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=0
-
001・由谷義治
○由谷委員長 是ヨリ會議ヲ開キマス-
中野治介君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=1
-
002・中野治介
○中野(治)委員 私ノ御尋ネシタイ點ハ、
主トシテ事務上ニ關スル事柄デゴザイマシ
テ、五點アリマス、其ノ第一ハ、各府縣ハ
ソレ〓〓經濟ヲ異ニシテ居リマス爲ニ預金
ナリ、債劵ノ賣出額等其ノ數額ニ於テ差ノ
アルコトハ當然デアリマスガ、サウシタ預
金ナリ、債劵賣出ニ依ツテ得マス收入額ニ
比例致シマシテ、貸出ノ額ト云フモノハ割
合ヲ決メテ居ラレルト云フヤウナ實情デア
リマスカ、サウ云フコトハナクシテ、仕事
本來ノ性質ニ基イテ貸出ニナルト云フヤウ
ナ次第デアリマスカ、ト云フ點ガ第一點デ
アリマス
第二點ハ、日本勸業銀行法第十五條ニ、
貸出ヲ受クル資格者ニ付テ規定シテアリマ
ス、產業組合以下玆ニ揭ゲテアリマスモノ
ノ中デ、漁業組合ト云フコトガ規定サレテ
居ルノデアリマスガ、此ノ貸出ヲ受クル法
定團體ニ對シマシテハ、其ノ團體ノ性質ニ
依リマシテ、貸出ノ額ノ割合ト云フモノガ
銀行ニ於テ豫定サレテ居ルヤウナコトガア
ルノデアリマスカ、若シソレガアルト致シ
マスナラバ、其ノ割合ハドウ云フ風ニナツ
テ居リマスカ、御指示ガ願ヒタイノデアリ
やっく、ソレカラ漁業組合ニ貸出ヲスルコト
ニナツテ居リマスガ、此ノ漁業組合ガ昨今
總體デ幾何借リテ居リマスカ、其ノ〓數ガ
分リマスレバ御指示ガ願ヒタイノデアリマ
ス
尙ホ二點ノ中デ三十二條ノ中ニ「五人以上
ノ農業者、林業者、工業者又ハ漁業者申合
セ」云々トアリマシテ、無擔保デ以テ漁業者
モ借リ得ルコトニナツテ居ルノデアリマス
ガ、此ノ條ニ依リマシテ無擔保デ以テ漁業
者ガ借リテ居ル總額ハ現在凡ソ幾何デアリ
マスカ、〓數ヲ示シテ戴キタイノデアリマ
ス、此ノ問ヲ發スル所以ハ、漁業者ハ一般
社會ニ關心ヲ以テ迎ヘラルルコトガ他ノ業
者ニ比較致シマシテ洵ニ薄イト云フコトヲ
痛感スル次第デアリマスガ、食糧問題ノヤ
カマシクナリマシタ今日ト致シマシテハ
斯樣ニ今マデ無關心デアリマシタヤウナコ
トハ許サレヌト云フコトニナツテ居ル狀
態デアリマスカラ、努メテ漁業者ヲ助ケ、
大イニ漁業ノ實ヲ擧グルコトニ努メナケレ
バナラナイ現狀デアリマスカラ、サウ云フ
ヤウナコトヲ加味致シマシテ此ノ問ヲ發ス
ル次第デアリマス
第三點ハ、民法ニ依リマスト擔保ヲ毀滅
減少致シマシタ時ニハ、其ノ擔保ヲ毀滅減
8円
少致シマシタ爲ニ辨償ヲ受クルコトノ出來
ナイコトニ立至リマシタル場合ニハ、其ノ
辨償ヲ受クルコトノ出來ナイ範圍內ニ於テ
ハ保證人ニ對シマシテハ求償ガ出來ナイ
ト云フコトニナツテ居ルノデアリマスガ、
今日マデノ實例ニ依リマスト、勸業銀行ノ
貸出ハ、仕事ノ取扱振リト致シマシテハ、
擔保ヲ毀滅減少致シマシテモ、斯ウシタ保
證人ニ對シマシテハ免責ヲ許サナイ、サウ
シタ場合デモ保證人ハ當リ前ノ保證ノ義務
ヲ盡サナケレバナラヌト云フコトニ取扱ハ
レテ居ルノデアリマスガ、斯ウ云フコトハ
道義ノ觀念ノ上カラ申シマシテモ、貸主ハ
自己自ラガ自己ノ權益ヲ擁護シナケレバナ
ラヌ立場ニ居ルノデアリマスガ、ソレガ其
ノ過失行爲ニ依リマシテ擔保ヲ毀滅減少ヲ
致シマシテモ保證人ニ之ヲ追求シテ取リ得
ルト云フコトニ致シマスコトハ、如何ニモ
人道ノ上カラ申シマシテモ、正義ノ上カラ
申シマシテモ、許スベカラザル事柄デハア
ルマイカト思フノデアリマス、所デ實際ノ
實例ハ、堂々タル勸業銀行ノ貸出ニ於キマ
シテ、保證義務ハヤハリ斯ウ云フ場合ニ於
キマシテモ保證人ニ追求シ得ルコトニナツテ
居ルノデアリマスガ、是等ハ如何ニモ貸出ノ
指導ノ立場ニ居ル團體ト致シマシテハ餘リ
男性ラシクナイト考へルノデアリマスガ、
其ノ點ニ付キマシテ當局ノ御所見ガ伺ヒタ
イノデアリマス
第四點ハ近時資金ノ融通ト云フコトニ付
キマシテハ、飽マデ合法的ナ事柄デアリマ
スナラバ便利ヲ與ヘルト云フコトガ至當デ
アラウト思フノデアリマス、債權債務ノ肩
替リデアリマスガ、債權及ビ擔保ヲ共ニ勸
銀ガ讓受ヲ致シマシテ融通ヲスル、斯ウ云
フコトハ登錄稅ノ二重負擔ヲ免レ、其ノ他
時間ノ節約等ノ上カラ申シマシテ、餘程便益
デアルノデアリマスカラ、努メテサウ云フ
場合ニ遭遇致シマシタ時ニハ債權及ビ擔保
共ニ讓受ケテ、サウシテ融通ヲスルト云フ
コトガ洵ニ便利デアルノデアリマシテ、サ
ウ云フ事柄ハ、多少是マデノ經驗上勸業銀
行デ取扱ツテ居ラレルコトヲ實見シテ居ル
ノデアリマスガ、是ハ原則トシテ御許シニ
ナツテ居ルノデアリマスカ、例外トシテサ
ウシタ場合ニ特ニ許スト云フ次第デアリマ
スカ、其ノ點ニ付テ御所見ヲ承リタイノデ
アリマス
終リニ第五點ト致シマシテ、擔保價格デ
アリマスガ、從來ノ經濟ノ情勢ト致シマス
ナラバ漸次價格ノ騰貴ヲ見ル、斯ウ云フ次
第デアリマスカラ、長期ニ亙ル貸出ニ付キ
マシテハ其ノ將來ヲ考慮ニ入レテ價格ノ決
定ヲスルコトガ出來ルノデアリマスガ、近
來ハ各方面カラ色々ノ點ニ抑ヘラレテ居ル
ノデ、價格ノ騰貴ト云フコトハ近キ將來ニ
ハ到底望マレヌト思フノデアリマスガ、長
期ニ對シマシテハ價格決定ノ上ニ於テ將來其
ノ騰貴スルコトヲ見込ンデ居ラレマスカ、
ヤハリ現狀ニ鑑ミラレマシテ、サウ云フ價
格ノ騰貴ト云フコトヲ見込マナイデ、今日
ハ今日ノ現狀ヲ御決定ニナルト云フ御方針
デアリマスカ、其ノ點ニ付テノ御所見ヲ伺
ヒタノデアリマス、以上五點ニ付テ御伺ヒ
致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=2
-
003・櫛田光男
○櫛田政府委員 只今ノ御尋ネノ第一點
ハ、地方ニ於キマス預金トカ或ハ債劵ノ
購入ト云フヤウナ地方ニ於ケル資金ノ蓄積
ト、地方ニ於ケル貸出トガドンナ工合ニナ
ツテ居ルカト云フ御尋ネト拜承致シタノデ
アリマス、各府縣每ニ依リマシテ、自ラ其
ノ地方ニ於ケル資金ノ蓄積ニ付キマシテ
相違ガアリマスコトハ、只今仰シヤイマシタ
通リデアリマスガ、同時ニ資金ノ放出ト申
シマスカ、貸出ノ部面ニ於キマシテモ、最
近ニ於キマシテハ、殊ニ先般來大藏大臣モ
豫算委員會其ノ他デ屢〓申サレテ居リマス
通リニ、限リアル資金ヲ現在ノ時局ニ最モ
有效ニ使フト云フコトガ最大ノ眼目デアリ
マスノデ、地方的ニモ其ノ事業、其ノ他產
業ニ付テモ自ラ出來ルダケ有效ナ方向ニ重
點的ニ使ハネバナラヌト云フコトニ相成ラ
ウカト思フノデアリマス、隨テ各地方デ集
ツタ資金モ、其ノ地方ニ於テ重點的ニ使ハ
レル方面ニ放出スル以外ハ、大體是ガ中央
ニ集ツテ、大キナ計畫ノ一ツノ實行トシテ、
或ハ中央ニ集ツタ其ノ資金ヲ國債ノ消化ニ
振向ケマストカ、或ハ他ノ地方ノ重要ナ產
業ニ振向ケマストカ、サウ云ツタヤウナコ
トガ行ハレルノデアリマスガ、是ガ段々ト
最近ニ於テハ計畫的ニ、綜合的ニ行ハレテ
來ルヤウニナツテ居ル事情ニアルノデアリ
マス、隨テ先程御尋ネノ貸出ニ付テ、預金
ナリ其ノ地方ニ於ケル蓄積ノ何ㄱパーセン
ト」位ト云フヤウニ、各府縣每ニ割合ヲ決
メテヤツテ居ルカト云フコトニナルト、抽象
的ニ、一般的ニサウ云フコトハヤツテ居ラ
ナイノデアリマシテ、其ノ時々具體的ナ事
情ニ應ジテ重點的ニ資金ヲ有效ニ使フト云
フコトニ基點ヲ置イテ運用シテ居ル、斯ウ
申上ゲテ宜シイカト存ズルノデアリマス
次ハ勸業銀行法ノ第十五條ノ第三項ニ付
テデゴザイマシテ、產業組合トカ工業組合、
漁業組合等色々ノ組合ガアル譯デアリマス
ガ、其ノ組合每ニドノ位貸セルト云フ風ナ
貸出ノ豫定ノ金額ガアルデアラウカト云フ
御尋ネデゴザイマシタガ、是モ抽象的ニ大
體ドノ位貸サウト云フ風ナ限度ヲ設定シテ
居ルト云フ風ナ實情デハゴザイマセヌ、產
業組合ナリ、漁業組合ナリ、工業組合ナリ
ガ、ドレダケノ金額ヲドウ云フ方面ニドウ
云フ工合ニ使ヒタイド云フ申込ノアツタ時
ニ、其ノ色々ナ事情ヲ檢討シテ貸出ス譯デ
アリマシテ、豫メ漁業組合ナラ漁業組合ニ
對シテ此ノ程度シカ貸シテハイケナイト云
フ風ナ最高限度ヲ設ケテ居ルト云フ風ナ實
情ハゴザイマセヌ、ソレカラ漁業組合ニ對
シテドノ程度現在貸シテ居ルカト云フコト
デゴザイマスガ、昭和十六年ノ上期末ニ於
ケル漁業組合ニ對スル無抵當ノ貸付殘高ハ、
大體七百万圓餘ニナツテ居リマス、尙ホ漁
業者ニ對シテ五人以上ノ申合セ連帶責任ヲ
以テ貸付ケテ居リマス無擔保貸出ハ、幾
ラアルカト云フコトヲ併セテ御尋ネデゴザ
イマシタガ、只今其ノ細カイ數字ハ手許ニ
ゴザイマセヌノデ申上ゲラレマセヌガ、漁
業者、農業者、林業者、工業者ト、全部ヲ
合セテ五人以上ノ連帶デ貸付ケテ居リマス
殘高ハ昭和十六年ノ六月末ニ於テ二千三百
万圓餘ニ相成ツテ居リマス
ソレカラ漁業金融ニ付テ、現在ノ時局ニ
顧ミマシテ、モツト積極的ニ何カ工夫ヲ凝
ラス必要ガアルノデハナイカト云フ御意見
デゴザイマシタガ、私共最近殊ニ食糧問題
ノ點カラ申シマシテモ、國民保健ノ點カラ
申シマシテモ、漁業問題ノ重要性ニ付テハ
十分ニ考ヘテ居ルノデゴザイマス、隨ヒマ
シテ仰シヤイマス通リニ漁業金融ノ問題ニ
付テ、今後勸業銀行其ノ他一般金融機關ヲ
シテ從來ヨリ以上ニ相當積極的ニ、何等カ
ノ工夫ヲ凝ラシテヤラナケレバナラヌト云
フコトハ痛感致シテ居ル所デアリマシテ、
其ノ點ニ付テハ豫ネ〓〓色々ナ〓究ヲ凝ラ
シテ居ル所デゴザイマス
ソレカラ擔保ノ問題ニ付キマシテ、債務
者ノ過失故意等ニ依ラズシテ是ガ滅失毀傷
シタ場合ニ於ケル保證人ニ對シテ追及スル
權ガ現在キツ過ギルノデハナイカト云フ御
話デゴザイマスガ、私實情ヲ能ク存ジマセヌ
ガ、時々サウ云フ御話モ聽カナイ譯デハゴ
ザイマセヌノデ、大體銀行トシテハ實情ニ
應ジテ負擔ノ能力アル方ニハ御願スル譯デ
アリマスガ、最近ニ於キマシテモ、是ハ例
ガ一寸違フカトモ思ヒマスガ、例ヘバ應召セ
ラレタ方トカ徵用セラレタ方、サウ云フ方
ニ對シテハ、從來ノ金融業的ナ見方カラ申
スト非常ニ寛大ナト申スト語弊ガアリマス
ガ、極メテ公平ニト申シマスカ、社會正義
ト申シマスカ、緩ヤカニ御便宜ヲ計ラツテ
居ルト云フヤウナコトヲ致シテ居ル譯デア
リマシテ、段々ト銀行ノ方ノ考ヘ方モ日ニ日
ニ變ツテ參ツテ居ル譯デアリマスガ、今後共
十分ニ氣ヲ付ケマシテ、仰シヤイマスヤウナ
點ガ、擔保追及其ノ他ニ付テ條理ヲ外レテ
强行スルト云フヤウナコトノナイヤウニ段
段ト仕向ケテ行キタイト存ジテ居リマス
ソレカラ第四點ハ、債權ノ肩替等ニ付テ
ハ擔保モ讓受ケテ併セテヤツタ方ガ宜イデ
ハナイカ、ソレガ原則ニナツテ居ルカ、例
外ニナツテ居ルカト云フ御尋ネデアツタヤ
ウニ存ジマスガ、是ハ別ニ取扱上之ヲ原則
トスルト云フヤウナコトハ致シテ居リマセ
ヌガ、不動產融資ノ場合ニ於キマシテハ
此ノ事ヲ現實ニヤツテ居ルノデアリマシテ、
他ノ場合ニ於テモ便宜上ヤツテ居ル場合ガ
アリマスガ、唯原則トシテハ居ラナイノデ
アリマシテ、別ニ例外措置ト云フノデハゴ
ザイマセヌデ、其ノ時々ノ實情ニ應ジテ適
宜取計ラツテ居ルト云フ現狀デゴザイマス
ソレカラ擔保價額ニ付テ將來ノ値上リト
云フヤウナモノヲ考慮ニ入レテ決定シテ居
ルノデアルカドウカト云フ御話デアリマス
ガ、大體擔保價額ハ簡單ニ申セバ、皆サン
能ク御承知ノコトト思ヒマスガ、現在竝ニ
將來ニ亙ツテ其ノ擔保カラ生ズル收益性ト
申シマスカ、其ノ割合トカ、或ハ之ヲ現在
處分スル時ニハドウ云フ風ナ時價ヲ持ツテ
居ルカ、サウ云ツタ時價トカ現在竝ニ將來ニ
亙ル收益トカ色々ナ點ヲ考ヘマシテ、專門
家ガ之ヲ鑑定致シテ居ル譯デゴザイマス、
隨ヒマシテ將來ノ考慮ト云フコトモ當然其
ノ一要素トシテ入ツテ居ルコトハ勿論ダト
存ジマスガ、最近ノヤウニ物價ノ統制ナリ
殊ニ又不動產ノ價格等ニ付キマシテモ、段
段ト統制サレテ參リマス時代ニ於キマシテ
ハ或ル程度將來ニ於ケル價格ノ下落ナリ
或ハ價格ノ騰貴ナリト云フモノヲ考ヘマス
ル要素ガ、段々ト少クナツテ來ルノデハナ
イカト云フコトハ自然ノ傾向トシテ考ヘラ
レル譯デアリマスガ、唯將來ノ考慮ト云フ
コトハ擔保價格ノ鑑定ニ當リマシテハ
ツノ要素トシテ加ハツテ居ルト云フコトダ
ケハ申上ゲラレルト思ヒマス、不十分デア
リマスガ、大體以上御答ヘ申上ゲマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=3
-
004・中野治介
○中野(治)委員 私ハモウ宜シウゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=4
-
005・由谷義治
○由谷委員長 ソレデハ午前中ノ會議ハ是
デ休憩致シマス、午後一時カラ再開致シマ
ス
午前十時四十一分休憩
午後一時四十五分開議発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=5
-
006・由谷義治
○由谷委員長 是ヨリ午前ニ引續イテ會議
ヲ開キマス、大藏大臣御出席ニナリマシタ
ガ、色々詰マツタ用事モアルサウデスカ
ラ、大藏大臣ニ殘シタ質問ハ出來ルダケ簡
潔ニ要領好ク御願ヒシマシテ、時間ノ整理
ヲスルヤウニ心構ヘヲ御願ヒシテ置キマ
ス-岡本實太郞君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=6
-
007・岡本實太郎
○岡本委員 折角大臣御臨席デスカラ一點
御尋ネ致シマス、稅務代理士法案ニ付テデ
アリマスルガ、此ノ法案ヲ見マスルト、辯
護士ヤ或ハ辨理士等ノ如ク登錄制度ニアラ
ズシテ、許可制度ニナツテ居ルノデアリマ
ス、而シテ其ノ許可スベキモノトシテ法案
ノ第二條ニ第一號、第二號、第三號、第四
號是ダケ列擧シテアリマス、是ハ許可ス
ベキ資格者ナノデアリマス、其ノ第一號ニ
ハ「辯護士」ト揭ゲテアリマス、一方辯護士法
ヲ見マスルト、現行ノデハ辯護士ハ一般法
律事務ヲ行フヲ以テ職務ト致シテ居リマス、
訴訟事件、非訴訟事件、或ハ官廳ノ選任ニ
依ツテ辯護モ致シマス、所謂官選辯護デア
リマス、斯ウ云フコト以外ニ一般法律事
務ヲ取扱フヲ職務トスル、斯ウアリマスカ
ラ、從來稅務ニ付テモ法律事項トシテ之ヲ
辯護士ハ取扱ツテ居ツタノデアリマス、殊
ニ辯護士ガ取扱フ時ニハ、稅法ニハ比較的
知識ガ薄イト云フ關係カ、審査請求或ハ
訴願等ヲスル時ニ於キマシテモ、多クハ
實體法ニ基イテ居ル民法トカ商法トカ乃
至ハ訴訟法トカ-訴訟法ハ實體法デハ
アリマセヌガ、-民法、商法、殊ニ會
社ニ關スルコトガ最モ複雜デ、稅法デモ
審査請求ヤ訴願等ガ多イノデアリマスい
ソレニ基イテ辯護士ハヤツテ居リマス、
是等ニ付テハ辯護士ハ必ズ專門知識ヲ持ツ
テ居ル、之ニ次ギマシテ第二號ニ「計理士」
トアリマスガ、計理士ガ扱フノハ多クハ計
算事務デアリマセウ、考課狀ノ作成、是等
ニ付テ特別ノ知識ヲ持ツテ居ルカラ資格ガ
アルノデアリマセウ、ソコデ今囘ノ法案ヲ
見マスト、許可制ニナツテ居ル、辯護士ガ
出願シタ時ニ、其ノ許否ハ大藏省ノ御自由
デアル、先日來政府委員ト質問應答ヲ重ネ
マスルト、餘リニ數ヲ多クスルト云フト
品位モ下リ、地位モ落チルカラ、其ノ數ヲ
成ベク制限スル、數ノ少イ方ガ宜シイ、斯
ウ云フ御答辯ニ承ツタノデアリマス、サウ
スルト辯護士ガ出願シタ時ニハ、從來扱ツ
テ居ツタ者ハ扱ヘマセウガ、然ラザル者デ
アレバ、實體法ニ基イテ折角ヤラウトシテ
モ、其ノ許可ガ受ケラレヌ、訴願モ出來ナ
イ審査請求モ出來ナイト云フコトニナ
ル-尤モ行政訴訟法ハ除イテアリマスカラ、
是ハ別デアリマス、自由ニ出來ル-謂ハ
バ旣得權ヲ奪ハレル、旣ニ今マデヤツテ居
ツタモノガ出來ナイト云フコトニ制限サレ
ル、斯ウ云フコトニナルノデアリマス、現
在稅務代理士ヲヤツテ居ル者ハ別ニ資
格ノ要求ハナイシ、又非辯護士ノ取締
法ニモ訴訟事件、非訟事件デナイカラ
直接入ツテ居ラヌ、斯ウ云フヤウニ扱ツ
テ居リマス、ソレデ現在扱ツテ居ル者
ハ多クハ御許シニナル、旣ニ扱ツテ居ル
者ノ業務マデ奪ツテシマツテハ殘酷デアル
カラ、所得既得權ヲ認メテ、出願スレバ多
クハ許ス方針デアル、併シ札ダケ掛ケテ事
實ヤツテ居ラヌト云フヤウナ者ハ御許シニ
ナラヌ、是ハ當然デアリマス、斯ウ云フヤ
ウニナリマスト、現在ヤツテ居ル者ハ旣得
權ヲ保護シテ殆ド許ス、辯護士ノ方ニハ成
ベク數ヲ制限スル爲ニ其ノ許可ハ甚ダ制限
サレルト云フコトニナルト、非常ニ不公平
ニナツテ、辯護士ハ既得權ヲ奪ハレル、斯
ウ云フ點カラ容易ナラヌ問題ガ起ルノデア
リマス、ソコデ大藏大臣ニ御尋ネスルノハ、
旣ニ辯護士ヲ職務トシテ行ヒ業トシテ居ル、
是ハ今マデヤツテ居ツタ者デアリマス、詰
リ斯ウ云フ者ガ出願スレバ成ベク御許シニ
ナル、絕對トハ言ヘマスマイ、多數辯護士
ノ中ニハ適任ノ者モ居リマセウシ、不適任
ノ者モ居リマセウカラ、絕對トハ言ヘマス
マイガ、成ベク御許シニナル方針デアル、
斯ウ云フコトヲ承レバソレデ又了解モ致シ
マス、併シ成ベク御許シニナルト云フ方針
ヲ御執リニナツテモ、ソンナニ澤山ハ願フ
マイト思フ、ナゼナラバ各〓其ノ管轄ガアリ
マシテ稅務代理士會ヲ作ルコトニナツテ居
ル、ソレニハ每月會費モ要リマス、相當ナ
費用モ出サナケレバナラヌ、ダガラ願フ者
ハ其ノ費用ヲ厭ハズ出サネバナラヌノデス
カラ、全ク仕事ヲシナイ者ハ願出ルヤウナ
コトハアルマイト思フ、斯ウ云フヤウナ關
係ニモアリマスカラ、出願シタ者ハ成ベク
御許シニナルヤウニシテ戴キタイト思フノ
デアリマスガ、ドウ云フ御扱ヒニナルカ、
其ノ御心組ミヲ承ハツテ置キタイト思フノ
デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=7
-
008・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 税務代理士法ニ於ケル稅
務士ノ職務ニ付キマシテハ、大體現在ニ於
テハ何人ノ特權ニモ屬シマセヌモノニ關シ
マシテ、稅務ニ關スル特定ノ手續ニ付キマ
シテ、之ヲ業トスル者ニ付キ一定ノ制限ヲ
加ヘントスルモノデアリマスカラ、法律上
ハ何人ノ特權モ害スルト云フコトハナイド
思フノデアリマス、唯實際ノ問題ト致シマ
シテ、適格者ヲ得ルト云フコトガ一ツ、ソ
レカラ又從來適格者デアツテ、且ツ從來事
實上稅務代理ノ仕事ヲシテ居ツタト云フコ
トヲ尊重シマスルコトガ一ツデアリマス、
是ハ今御述ベニナツタ中ニモ其ノ通リアル
ト思フノデアリマス、併シヤハリ是ハ段々
ニ補充ヲ要スル性質ノモノデアリ、、又段々
稅法モ煩瑣ニナリ、稅務代理士タル人ノ數
モ餘計要ルト云フコトニ漸次相成ラウト思
ヒマス、其ノ中ニ於キマシテハ成ルベク適
格者ヲ認メテ行クコトガ又必要デアルノデ
アリマス、辯護士、殊ニ民事ヲ主トシテヤラ
レマスヤウナ人ニハ適格者ハ相當多イノデ
アリマス、特ニ之ヲ制限スルコトナシニ、
成ベクナラバ出願ガアリマスレバ認メルト
云フ方針デ參リタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=8
-
009・岡本實太郎
○岡本委員 其ノ御答辯ヲ承ハリマシテ分
リマシタ、恐ラク出願スル者ハ會社ノ取締
役ノ經驗ガアルトカ、或ハ監査役ヲシテ居
ルト云フ者デアリマセウ、又實際ヲ見マシ
テモ所謂會社ノ顧問トシテ各社ノ法律事務
ノ相談ニ與ツテ居ル者ハ多クハ監査役ヲヤ
ツテ居ルヤウデアリマス、舊商法デハ人カ
ラ名前ヲ借リタ株主ニナツテ居リマス、新
商法デハ株主デナクテモ出來マスケレドモ、
顧問ト俗ニ言ウテモ實ハ監査役ヲヤツテ居
リマス、考課狀ナドモ始終見ルコトガアル
シ、斯ウ云フ經驗ハ多ク持ツテ居ル者デス
カラ大抵願フコトニナルダラウト思フ、所
謂「バランスシート」ヲ見ルダケノ知識ヲ持
ツテ居ル者ハ稅法關係デモ能ク分ル、·斯ウ
云フコトガ言ヘル、又稅法モ數年前マデハ
實ニ複雜多端デドウナツテ居ルカ分ラヌヤ
ウナ混亂シタモノデアツタガ、一昨年根木
的ノ整理ガ出來マシテ、今デハ其ノ法規ノ
複雜ナル關係ハ取レテ、辯護士ナラバ法規
ヲ見レバ一見分ルノデアリマス、ソレニ三
ツモ四ツモ重ナルト云フヤウナコトハアリ
マセヌカラ餘程解釋ノ出來ルコトカト思ヒ
マス、斯ウ云フ關係ニアリマスカラ、狙ヒ
ハ成ベク御許シニナルト云フコトヲ御願ヒ
致シマス、私ノ大臣ニ對スル質問ハソレダ
ケデアリマズ
次ニ是ハ法案其ノモノデハアリマセヌガ、
モウ一點御願ヒシタイコトガアリマス、事
務所ノ數デアリマスガ、辯護士法ニハ事務
所ハ一人一箇所トス、但シ他ノ法律事務所
デ事務ヲ扱フノハ宜シイ、斯ウ云フ規定ニ
ナツテ居リマス、之ニナリマスマデハ一一箇
所デモ三箇所デモ幾ラデモ宜シイ、サウス
ルト出張所ヲ置クヤウニナツテ先生ハ月ニ
一度カ二度位シカ行カナイデ、事務所ハ代
理ノ者ガ扱フ、詰リ俗ニ言フ潜リ、非辯護
士ニ任セテ置クト云フ弊害ガアリマス、ソ
コデ非辯護士ヲ取締ルト同時ニ事務所ハ
箇所トス、斯ウ云フ事柄ニ當時改正サレタ
ノデアリマス、又事實信用ニ依ツテ參リマ
スカラ、先生デナケレバナラヌト云フノガ
多イノデアリマス、吾々ガ丁度醫者ニカカ
ル時ニ兎ニ角院長サンニ手ヲ握ツテ貰ヒタ
イノト同ジデアリマス、所ガ事務所ヲ二ツ
モ三ツモ置クト先生ハ一箇所ニハ居ラヌデ、
替ル〓〓ニ事務所ニ行クヤウニナルノデ、
ドウシテモ非辯護士ニ代理ヲサセル、其ノ
弊害ニ堪ヘナイト云フヤウナ關係カラ稅務
代理士ニ於キマシテモ須ク斯ウ云フ方針ニ
ナサレタガ宜イト思ヒマス、此ノ案ヲ見マ
スト命令ノ定ムル所ニ依リ事務所ヲ設立ス
ベシトアリマスカラ恐ラク勅令カ省令カ
デ一箇所カ數箇所ト云フコトヲ御定メニナ
ルト思フ、其ノ命令ヲ御決定ニナル時ニハ
是ハ一箇所ト云フヤウニ數ヲ制限サレヌト
キツト將來弊害ガアリマス、勿論命令ナラ
バ其ノ時變ヘルコトモ容易デアルカモ知レ
ナイガ、此ノ稅務代理士法ガ出テ、變ナ者
ガ餘リ跋扈シナイヤウニ當初カラ御懸念下
サツテ、此ノ命令ヲ御制定アランコトヲ望
ンデ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=9
-
010・松田正一
○松田(正)委員 此ノ問題ノ內容カラ申シ
マスト、是ハ大臣ニ御尋ネスルノガ本筋デ
ハナイカト云フノデ、特ニ大臣ノオイデヲ
願ヒマシタガ、今日ハ打合セマシタ同僚ハ
參ツテ居リマセヌノデ、私代リマシテ大臣
ニ御伺ヒヲ致シマス、金融部門ニ付テノ統
制デアリマスガ、物ニ對スル統制ハ或ル程
度マデ强化サレテ居リマスケレドモ、金融
部門ニ對スルモノハ、マダドウモ遲々トシ
テ決定致シテ居ラヌヤウデアリマス、今囘
總動員法ニ基ク二勅令案ガ出マシテ、大部
統制ヲ强化サレルヤウニナツテ參ツタノデ
アリマス所デ此ノ委員會ニ懸ツテ居リマ
ス農工銀行、勸業銀行、拓殖銀行是ハ地方
ト中央ノ別ハアリマス、勸業銀行ハ大體中
央ニアツテ、農工銀行、拓殖銀行ハ地方デ
ヤルト云フヤウナ營業ノ相違ハアルカモ知
レマセヌガ、大體一ツノモノデアル、內容
ハ別ニ變リハナイノデアリマス、ソレヲ名
前ヲ變ヘテ、法律ヲ別ニシテ、三ツ斯ウ云
フ風ニ銀行ヲ置カナケレバナラヌト云フノ
ハ、現下ノ時局ニ鑑ミマシテドウ云フ理由
ガアルノカト云フコトガ一ツデアリマス、
ソレカラ主トシテ不動產ヲ擔保ト致シテ營
業ヲ致シマスル此ノ勸業、農工、拓殖ノ各
銀行ハ長イ間色々ナ非難ガアツタノデアリ
マス、又事實大體ハ純朴ナル農民ヲ相手ニ
シテ金融ヲ致シテ居ツタ是等ノ銀行ハドウ
モ官僚式ナ取扱ヲナシテ、一タビ農民ガ其
ノ銀行ノ金ヲ借リレバ、一生銀行ノ爲ニ苦
メラレルト云フヤウナ安貝例ガ多クアツタノ
デアリマス、ソレハ是マデモ或ル機會ニ御
話シタコトモアツタト思ヒマスルガ、春繭
ヲ取ツテソレヲ賣ツテ出來タ金ハ、勸業銀
行、農工銀行ニ皆取ラレテシマフ、秋米ヲ
穫ツテ漸ク金ニスル、サウスルトソレヲ又
十二月ノ年賦金ニ勸業銀行、農工銀行、拓
殖銀行ガ持ツテ行ツテシマフ、是デドウシ
テ農民ガ食ツテ行ケマスカ、殆ド斯ウ云フ
銀行ニ金ヲ借リタラ農民ハ浮ビ上レナイ、
現ニ大正十一年デアリマスカ、勸業銀行ノ或
ル支店ノ庭先デ農民ガ首ヲ吊ツテ死ンダコ
トガアリマス、其ノ遺言ニ、勸業銀行ハ農
民ヲ苦シメルモノデアル、孫子ノ末マデ勸業
銀行カラ金ヲ借リルナト云フコトヲ書イテ
居ツタト云フ事實ガアル、併シ是ハ今日デ
ハ餘程緩和サレマシテ、農民ノ方ガ非常ニ
便利ヲ與ヘラレテ來テ、今日デハソンナ問
題ハアリマセヌガ、今アノ銀行ノヤリ方ヲ
見マシテモ、ヤハリ幾ラカ農民ニ對シテ貸
付ノ金ヲ抑ヘル度ガ過ギテ、サウシテ產業
部門ニ廻スト云フ風ナコトガアルラシイ、
一昨日カラ當委員會デソレガ問題ニナツテ
居ルノデアリマスガ、此ノ委員會ニ付託サ
レテ居リマス法案ヲ見マスルト、勸業銀行
ハ手形モ扱フコトガ出來ル、株ノ取扱モ出
來ルト云フコトニナツテ居ル、今デハ興業
銀行ト勸業銀行トノ差ハ極メテ僅カニナツ
テ來テ居ルノデスガ、其ノ上又勸業銀行ニ
斯ウ云フモノヲ許シテ行クト云フコトニナ
ルト、是ハ普通銀行トモ餘リ變ラヌコトニ
ナル、サウ致シマスト、斯ウ云フ銀行ヲ幾
ツモ置イテオク必要ハナイノヂヤナイカ、
寧ロ大合同ヲ行ツテ一ツノ銀行ニシテシマ
ツテ、今囘日本銀行ガ政府ノ銀行ノ如クナ
ツテシマツタ譯デスガ、アア云フヤウナコ
トニ是ハ出來ヌモノデアリマセウカ、ソレ
ト同時ニ普通銀行ノ合併ガソレ〓〓進ンデ
行ツテ、前ニハ色々非難ガアリ、合併サス
爲ニキツイ檢査ヲ行フテ、合併シナケレバ
檢査デイヂメルト云フコトデ威カシ廻ツテ
合併ヲ强ヒタヤウナコトモ過去ニハアツタ
ガ、今日ハ恐ラクサウ云フコトハナイ、互
ニ諒解ヲシ合ウテ合併ガ進ミ、其ノ數モ段
段普通銀行アタリモ少クナツテ居ル、元々
檢査デ威カシテ合併ヲ强ヒタヤウナ時ニハ
例ヘバ合併スルマデニ年々百万圓ノ預金ヲ
互ニ殖ヤシテ居ツタ、詰リ二ツノ銀行デ二
百万圓ノ資金ノ取扱ガ殖エテ居ツタノガ、
合併後モ二百万圓ノ預金ノ扱ヒガ殖エテ行
クカト云フト、サウハ行カヌ、別々ニヤツ
テ行ケバ二百万圓ノ預金ノ取扱ガ殖エタケ
レドモ、一緒ニナツタガ爲ニ百五十万圓位ノ
扱ヒガ殖エルダケデ、合併ノ結果却ツテ成
績ガ惡クナツタ、所ガ今日ハモウサウ云フ
コトガナク合併ハ事實上行ハレテ、業者ガ
互ニ進ンデ合併ヲシタイト云フヤウナ氣風
ニナツテ居リマス、普通銀行ノミナラズ其
ノ他ノ金融機關ト雖モ今デハ却ツテ業者ノ
方カラ合併ヲ希望致シテ居ルヤウナ譯デア
ル、斯ウ致シマスト日本銀行ヲ初メ或ハ今
ノ特殊銀行、普通銀行ト云フヤウナモノヲ
一纒メニシテ、昨日モ次官カラ御話ガアリ
マシタガ、一元化スルト云フコトヲ言ハレ
テ居リマスカラ、保險會社ナリ庶民金融ノ
機關ナリ質屋ニ至ルマデ、上ハ日本銀行ヨ
リ下ハ質屋ニ至ルマデ金融機關ト云フモノ
ヲ一元化致シテ、金融省ト云フヤウナモノデ
モ作ツテ、其ノ金融省ノ下ニ種類別ハマダア
ツテモ宜イガ、サウ云フヤウナ機構ニナサ
ツテ、此ノ戰時下ノ金融機構ヲ改メルト云
フコトニナサツテハドウデアルカ、サウス
レバ總テノ信用保證ト云フモノハ國デスル
譯ニナリマスカラ、國民モ安ンジテ取引ヲ
ナスコトガ出來ル、又遊金ガ出來マシタ場
ニ
合ニ、其ノ資金ノ運用ハ重點主義ニ行ツテ、
政府ガ之ヲ自由ニスルコトガ出來ル、斯ウ
云フコトニナリハセヌカ、ソレヲ一ツ斷行
シテハドウデアラウカ、斯ウ云フ風ニ考ヘ
ルノデアリマスガ、之ニ對スル大藏大臣ノ
御考ヘハ如何デアルカ、一省ヲ作ルト云フ
ヤウナコトデアリマスカラ、大臣ノ御意見
ヲ伺フノガ適當デハナイカト思ツテ、此ノ
委員會ニ大臣ノオイデヲ御願ヒシタ次第デ
アリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=10
-
011・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 御尋ネハ中々多岐ニ亙ツ
テ居リマス、物事ノ眞相ヲ明カニシマス上ニ、
御尋ネノ主眼デハアリマセヌガ、日本デハ
金融統制ガ遲レテ居ルト云フ聲ガアル、之
ニハ私ハ相當了解ノ屆カナイ點ガアルト思
ヒマス、日本デ一番先ニ出來マシタノハ金
融統制デアリマス、是ハ何カト申シマス
ト臨時資金調整法ト國民貯蓄金庫デアリ
マス、私ハ統制ト云フモノハ法律ニ依ル强
制ノミヲ統制ト考ヘテ居ナイノデアリマ
ス、統制ノ上乘ナルモノハ法ノ强制ニ依ラ
ザルモノガ寧ロ上乘デアル、强制ノ必要ガ
アルカラ强制ト云フ方法ヲ執ルノデアリ
マスガ、强制ニ依ラズシテ出來ルノガ最上
ノ理想デアリマス、日本ノ全資金ヲ無用ナ
方ニハ行カサナイ、要ルダケノモノハ必ズ
要ル方ニ集メテ行ク、此ノ根本方針ガ、昭
和十二年及ビ昭和十三年ノ春確立ヲ致シテ
居リマス、國家ノ以テ必要トスル事業以外
ノモノニハ投資ササヌ、此ノ基本方針ガ立チ、
大體ソレガ出來テ居リマス、又事變以來旣
ニ數百億ノ兌換劵ノ發行ガアリマスルニ拘
ラズ、之ヲ大部分吸收シテ、僅カニ事變前ニ
較ベテ膨脹シタモノ三十億程度デアリマシ
テ、卽チ大統制ガ出來テ居ル、ソレデ集マ
リマシタモノガ公債消費、時局ニ必要ナル社
債株式ノ拂込、貸出シニ向ツテ居ルノデ
アリマス、唯末梢的ナ非常ニ個人生活ニ摩
擦ヲ感ズルヤウナ統制ハ少イノデアリマシ
テ、大局統制カラ參リマシタノデアリマス、
然ル上段々ソレガ精密化スル必要モアリマ
スノデ、金融統制會モ今度作ルヤウニナリ
マシタガ、私ハ是ハ是ニ於テ初メテ金融統
制ガ出來クニアラズシテ、金融統制ノ大綱
旣ニ成ツテ、大體其ノ後ニ出來タ資金ノ配分
ヲ今マデヨリモモツト旨クヤルト云フ程度
ノモノデアルト思ツテ居ルノデアリマス
次ニ勸業銀行、農工銀行ガ非常ニ過去ニ
農民ヲ苦シメタト云フコトデアリマスルガ、
是ハ私ハ斯ウ考ヘル方ガ實際ニ當ツテ居ル
ト思ヒマス、過去ノ農村ハ、農民自體ノ生
計ノ收支ガ償ヒ難イノデアリマス、ソコデ
巨額ノ借金ヲシテ居リマスルト、假令ソレ
ガ相當緩和シタ條件デモ迚モヤリ切レナイ
ノデアリマス、唯利子ノ取立、元本ノ償還
ナドノヤリ方ガ、所謂其ノ時ノ行員ノ手心
ガ俗ニ申スエゲツナイ、緩急宜シキヲ得ナ
イ者モアツタノデアリマスガ、大體勸銀ヤ
農工銀行ノ利子ノ方ガ農村ノ所謂金貸ノ利
子ニ較ベテ非常ニ安イ、一番高イノハ個人
ノ金貸カラ借リテ居ル金デアリマス、唯個
人ノ方ハ人ニ依ツテハ、所謂因業ナ金貸デ
ナイ者ハ、銀行ハ規則ガアルガ、規則ガナ
イカラ、偶ニハ非常ナ佛ノヤウナ人モアル
ノデアリマスガ、是ハ個人金貸ガ一番農村
ヲ苦シメテ居ル、段々農村經濟ガ良クナツ
テ參リマシテ、又一般ガ低金利ニナツテ參
リマシテ、ソコハ雙方カラ步ミ寄ツテ、只
今ハ御說ノヤウナ狀態ニナツテ居リマス、
之ヲ以テ理想デアルトハ申シマセヌ、色々
改善ノ必要モアラウト思ヒマスルガ、大體
サウ云フ經過ヲ辿ツテ來タト思フノデアリ
マス
更ニ進ンデ然ラバ勸業銀行、興業銀行、
農工銀行ト云フモノガアルケレドモ、殆ド
今ハ同ジヂヤナイカト云フ御話デアリマス、
勸銀ト農銀ハ餘程使命ガ似テ居リマスガ、
興銀ト勸銀ハ非常ニ違ヒマス、現在行員デ
モ興業銀行ニハ鑛山業デアルトカ、二五分
方面ノ知識ノアル者ガ居リ、擔保ハ工場財
團等ヲ擔保ニ致シ、專ラ工業金融、鑛山金
融其ノ他ニ、知識カラ言ツテモ、經驗カラ
言ツテモ詳シイ者ガ居リマス、又所謂顧客關
係カラ申シマシテモ、サウ云フ方ト沿革的ニ
長イ結付キモアルノデアリマス、勸業銀行ノ
方ハ不動產ガ主タル擔保デアリ、農林業、
水產業ノ方ニ主トシテ金融ヲ致シテ居リマ
シテ、現在デモ金融ヲ致シテ居リマス、貸金
額モ方面モ大分違ツテ居リマス、同ジモノ
モアリマスルガ、違ツテ居リマス、サウ云
フ特色ガアルノデアリマス、隨ヒマシテヤ
ハリ是ハ別ニアツタ方ガ宜シイ、一緒ニシ
テ特色ガナクナリマスト、ドチラモ不便ヲ
感ズルト云フヤウナコトニナルノデアリマ
ス、然ラバ何故ニ今囘勸銀ニ所謂工業金融
的ナ方面ニ進出ヲ認メルカト申シマスト、
是ハ資金關係カラ申シマシテ、資金ノ蓄積ガ
御承知ノ如ク過去ノ數倍、十倍ニモ近ク一國
ノ資金ガ集積スルト云フ狀況ニアリマス、ソ
レハ然ラバ何處ヘ持ツテ行クカト云フト、
是ハ戰費ソ調達ノ國債、戰時ニ必要ナル事
業ノ資金ニ向ケル、外ヘ向ケル餘裕ハナイ、
向ケル見込モナイ、大部分ガソレニナツテ
居ル、サウ云フコトニナルト實ハ勸業銀行
方面ハ興業銀行方面ヨリモ活動量ガ-全
面的ニ金融機關ノ活動量ハ增加シテ居ル
ガ、勸業銀行ノ方ガ活動量ガ少イ、併シ資
金ハ或ハ預金ニシテモ債劵ニシテモ相當集
ツテ居リマス、ソルヲ全部不動產金融ニ向
ケル譯ニハ行カナイ、向ケル餘裕モナイ、
ソコデ資金ハ其處ニ集リマスカラ、之ヲ工
業方面ニ出サセル方ガ一國ノ資金ノ配分ト
シテ宜シイ、元ノ特色ハ持ツテ居リマスガ
サウ參ル、ソコハ普通銀行デモサウデアリ
マス、御言葉ニモアツタヤウデアリマスガ、
私ハ簡單ナ言葉デ言ヘバ「コンマーシャル·
バンク」ガ「インダストリー·バンク」ニ變ル
ノダ、元商業金融ヲ主トシテ居ツタモノガ
今ハ國民ノ蓄積ニ依リ工業、鑛山金融ニ直
接ニ乘出ス、或ハ間接ニソレ等ノ興業債劵
ヲ引受ケル、或ハ社債ヲ引受ケテ乘出スノ
デアル、斯ウ云フ時代ニナツテ居ル、然ラ
バドレモ是モサウナレバ一緒ニナルガ宜イ
デハナイカト云フト、是ハサウハ參ラナイ、
詰リ統制ト云フコトハ要スルニ國家目的ヲ
達スル場合ニ一定ノ經濟上ノ計畫ガナクテ
ハナラヌ、經濟ハ孤立デハアリマセヌ、今
デ言ヘバ戰爭目的ヲ達シ國力ヲ充實シ、戰
後ノ經營マデモ考ヘテ國家計畫、其ノ中ノ
經濟計畫、ソレヲ實現スルノガ統制デアリ
マス、何モカモ一ツニシテ「レッテル」ヲ貼
替ヘルノガ統制デハナイ、折々サウ云フコ
トヲ履違ヘテ色々摩擦ヲ起シテ居リマスガ、
分立シテ居ル方ガ妙味ノアル場合ハ分立シ
タ方ガ宜イノデアリマス、之ヲ一緒ニシマ
ストオ客ノ關係モ何モ皆違フノデアリマス、
ナント云フテモ從來其ノ人ノ資產狀態、事
業ノ狀況ヲ知ツテ居ル銀行ガ一番金ガ貸シ
易イ、サウ云フモノヲ一緒ニスルト段々特
色ガナクナリマス、全金融ノ大キナモノヲ
一本デ振廻セルモノデハナイノデアリマス、
オ互ヒニ仕事ニハヤリ易イ程度ト云フモノ
ガアル、一ツニ纏ツタラ長鞭馬腹ニ及バズ
ト云フコトモアリマスノデ、ソレデヤハリ
普通銀行モアツタガ宜シイ、勸業銀行モア
ツタガ宜シイ、農工銀行ト勸業銀行ハ似テ
居リマスカラ、合併シテ農工銀行ガ勸業銀
行ノ支店ニナル、是モ宜シイ、併シナガラ
何デモカンデモ直グニヤツテシマヘト云フ
程ノ必要ハナイト思ヒマス、普通銀行ノ合
同デモサウデアリマス、マダ〓〓相當合同
ニ反對シテ居ルモノモアリマス、段々ニ是
ハ基礎其ノ他ノコトヲ考ヘテ合同サシタ方
ガ宜イノデアリマスガ、併シナンデモカンデ
モ直グ明日ヤレト云フヤウナ方針デハ參ラナ
イ、實際ニ弊害ナク、サウシテ其ノ間ニ分立
シテ居ル方ガ動キ易イ時ニハ其ノ方ガ宜シ
イ、是デ參リマス、無暗ニ合併スレバ機能ガ
一時止リマス、是ハ御言葉ノ中ニ段々其ノ弊
ガ少ナクナツタト云フ御話デアリマスガ、二
ツガ一ツニナツタ爲ニ元ノ一ツ半ノ働キデ
ハ困ル、斯ウ云フコトハ昔隨分アリマシタ
コトデ、只今ハ段々少クナリマシタガ、ソ
レガナイ程度ニモノヲ持ツテ行カナケレバ
ナラヌト思ツテ居ルノデアリマス、兎角計
畫統制經濟ノ非常ナル弊ハヤハリ一面自
由競爭ノ長所ガ發揮出來ナイコトガ一ツ
一方カラ言フト、幾ラ損シテモ國家ガ緊要
ノ事業デアルト云フノデ尻ヲ拭ツテ吳レル、
此ノ安心ガ能率ヲ上ゲナイノ物資ヤ勞力ヲ
粗末ニスル、詰リ效率ヲ上ゲナイト云フコ
トニナル、私ハ計畫經濟ノ前途ニ對シテ他
ニ懸念ハ持ツテ居ナイノデアリマスガ、是
ガ昂ジタラ大變ナ問題デアルト思ツテ居リ
マスノデ、此ノ分立統合ト云フコトモ色々
ナ見地カラ實際ニ效率ヲ上ゲルヤウニ致サ
ナケレバナリマセヌ、唯分立統合ノ結果所
謂一元的統制ガ紊レテハ困リマス、二元レ
云フコトハ何モ凡ユル機關ヲ一ツニスルト
云フ意味デハアリマセヌ、又凡ユル機關ガ
同ジ速度デ同ジ活動ヲスルト云フコトデモ
アリマセヌ、國家目的ヲ達スル爲ニ色々經
濟計畫ガアリ、金融計畫ガアル、其ノ計畫
ノ通リニ物事ガ調和ヲ以テ各〓ノ分ヲ以テ
動クノガ一元的統制デアルノデアリマス、
ソレヲ達シ得ナイヤウナ方向ニ行ク時ニハ
是ハドン〓〓方向ヲ換ヘナケレバナリマセ
又、所謂單一色ニスルト云フ考ヘ方ハ採ラ
ナイ積リデ居ルノデゴザイマス
最後ニ金融省ノ御話デアリマスガ、私實
ハ大藏省ハ金融省デアルト考ヘテ居リマス、
質屋マデハヤツテ居リマセヌガ、(笑聲)此ノ
間モ申シマシタガ、大藏省ニ今外局等ヲ入
レテ主計、主稅、理財、銀行、爲替、會社、
監理、ソレニ專賣、營繕、預金部、國民貯
蓄奬勵局ト十一アリマス、此ノ中デ主計、
主稅ガ豫算ヲヤリ稅ヲ取ル、營繕ハ官廳營
繕專賣ハ專賣ヲヤツテ居ル、此ノ四ツ以
外ハ全部金融デアリマス、理財、會社ト云
フノハ普通ノ國內金融デアリマス、預金部ハ御
承知ノヤウニ金ヲ集メル方ノ一ツノ部デア
リマス、國民貯蓄奬勵局ハ國家ノ全資金ヲ
集メテ來ルト云フ働キヲ致シテ居リマス、
爲替ハ外ノコトヲ致シテ居リマス、銀行ハ
銀行信託、監理局ハ保險及ビ取引所等ノコ
トヲ致シテ居リマス、大體是ガ金ノ分配ノ
方面ト集積ノ方面、ソレカラ經理ノ方面、
外ノ爲替其ノ他資金ノ方面等デアリマス、
私ハ此ノ構想ニ付キマシテハ英米其ノ他
ノ三國トノ關係ガ斷絕致シマシテ、對外ト
云ツテモ東亞共榮圈ニナツテ、滿洲、中華
民國、「タイ」、佛印及ビ南方諸國對日本、斯
ウ云フ關係ニナル、ソレ以外ノ國ニ「ドイ
ツ」ノ關係ガアル、尙ホソレ等ヲ通ジマシ
テ「スイス」トノ關係モアリマスルガ、今後
ドウスルト云フコトハ今具體的ニ御話申上
ゲルコトハ出來マセヌガ、觀念的ニハ東亞
共榮圈ノ外ノ金融ト國內金融トハ非常ニ關
聯ガアル、其ノ中資金ノ集積ノ方ト資金配
分ノ方、大體ノ觀念ハ斯ウ來テ居リマスカ
ラ私ハ大藏省ガ金融省デアル、斯ウ云フ考
ヘ方デ居リマス、特ニ今金融省ヲ設クルト
云フ考ヘ方ハ持ツテ居リマセヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=11
-
012・松田正一
○松田(正)委員 御答辯ニ依リマシテ大臣ノ
御意見ハサウデアラウト私ハ考ヘテ居ツタ
ノデアリマスガ、何レ記錄モ出來ルコトデ
アリマスカラ、其ノ記錄ヲ參酌致シマシテ、
將來合併等ニ付テノヤリ方ニハ自分モ參考
ニ致シタイト存ジマス
金融省ノ問題ハ大藏省ガ旣ニ金融省デア
ルト云フコトニナリマスレバ、別ニ金融省
ヲ設ケル必要ハナイ譯デアリマスガ、併シ
獨立ノ金融省ト云フモノガ出來タノト、今
大臣ノ言ハレル大藏省ガ金融省デアルト云
フノトハ大分相違ガアルノデアリマス、是
ハ併シ時間ガ掛ルカラ此處デ御質問ハ申上
ゲマセヌ、合併等ニ付テノ御意見ハ十分諒
解致シマシタ、唯勸業銀行ト興業銀行ト是
ハ別ニシテ置イテ宜イノダ、斯ウ申サレル
ノデスガ、ソレハ別ニシテ置イテモ宜イデ
セウ、自ラ使命ハ別ニナツテ居ルノデスカ
ラ、併シ事實ハ段々ト興業銀行ノ範圍ニ勸
業銀行ガ入ツテ來テ居ル、デアルカラ、斯
ウシテ入ツテ行クノナラバ一緒ニシタラド
ウダト云フ議論ガ起ル、是ハ當然デス、ソ
レガ爲ニ手形等ノ扱ヒヲスルコトニナツタ
ラドウデス、大臣、實際普通銀行ノ如ク晝
休ミノ間ノ如キハ電話ヲ掛ケテ手形ガナイ
カ、手形ガナイカト皆デ聞キ合ツテ居リマ
スガ、キツト此ノ勸業銀行ニ手形ヲ許シタ
ラ、手形ト云フモノハ足ガ短イ、囘轉ガ早
イ、而モ相當ノ利廻リニナリマスカラ、斯
ウ云フモノニ重キヲ置イテ、一方農民ノ方
デ實際ナクテナラナイ金ノ出シ方ガ少シ
嚴重ニナツテ來テ、不動產擔保貸ヲ輕ンジ
テ來ル惧レデアルノデハナカラウカト云フ
コトハ、是ハ國民カラ申シマスト當然ソコ
ニ考ヘガ來ルノデハナイカト思ハレル、仍
テ先程ノ質問モ致シタノデアリマスガ、今
日本銀行ハ四分ノ配當ヲ保障サレテ、五分
配當以上ノモノヲ國庫ニ納メルト云フコト
ニナツテ居リマスルガ、獨リ勸業銀行ダケ
ハ一割ノ配當ヲヤツテ、殘ツテ居ル農工銀
行等モ高率ノ配當ヲ致シテ居ル、ソレデア
ノ勸業銀行ノ建物ノ中ニ一タビ入ツテ見マ
スレバ、夏モ「マスク」ヲ掛ケナケレバナラヌ
程涼シク、冬行ケバ團扇ヲ使ハナケレバナ
ラヌ程溫カイト云フヤウナ暮シ方ヲヤツテ
居ツテ、而モ一割ノ配當ヲ致シテ居ル、ア
レハ皆農民ノ膏血ヲ搾ツタ結果ヂヤナイカ
ト、實際民間デハサウ言ウテ居リマス、其
ノ勸業銀行ガ此ノ上ニ又興業銀行ノ仕事
ヲシテ行クト云フコトニナリマスト、層
農民ノ方ニ出ス金ヲ澁ルノデハナイカ、斯
ウ誰デモ一應ハ疑フ所デアリマス、現在興
業銀行ニ參リマシテ、是ハマダ近イ話デア
リマスガ、五万圓バカリ金貸シテ貰ヒタイ
ト言ウタラ、五万ヤ六万ハ勸業銀行ヘ
行ツテ戴イタ方ガ宜シイト言ツテ居ル、
サウシマストヤハリ勸業銀行ト興業銀
行トハ表面ハ違ツテ居リマスケレドモ、
勸業銀行ハ興業銀行ノ方ニ段々入ツテ行
ツテ居ルコトハ事實デアリマス、ソレナラ
一〓ニシテモ宜イヂヤナイカ、斯ウ云フ議
論ヲ言ウタカラト云フテ事實ニ反スルコト
ハナカラウト思ハレルノデアリマスルガ、
併シ今ノソレヲ速急ニドウト云フコトハ申
シマセヌ、唯希望致ス所ハ、斯ウ云フモノ
ハ範圍ガ廣クナツテ、產業資金ノ方へ金ヲ
出スヤウニ範圍ガ廣クナリマシテモ、產業
ニ農民ガ要ル金、農民ニ流ス金ハ餘リ餘計
ニシテハイカヌト云フコトハ當然デアリマ
スガ、實際要ルベキ金ハヤハリ農民ノ方ニ
モ出シテヤルヤウニシテ、唯利益ノミヲ考
ヘテ產業ノ方ニ廻サヌヤウニ、大藏省ノ方
デ御監督ヲ願ヒタイ、他ニモ大臣ニ御質問
ノ方ガアルヤウデアリマスノデ、私ハマダ
合併ノ問題、庶民金融機關ニ對スル問題モ
アリマスケレドモ、是ハ大臣以下ニ御尋ネ
スルコトニ致シテ私ノ大臣ニ對スル質問ハ
打切リマス、唯一言ダケ申上ゲテ置キタイ
ノハ稅務官吏ニ對スル待遇デゴザイマス、
是ハ昨年モ大阪邊デ如何ハシイコトガアツ
タノデスガ、外ヘ出マシテ稅務ノ仕事ヲス
ルノニ、大分仕事ガ多イモノデスカラ自然
夜ニナル、御飯ガ出來テ居ルカラ御上リナ
サイト言ハレレバ、自然飯ヲ食フコトニナ
ル、根ガ薄給デアリマスカラサウ云フヤウ
ナ關係デツイ世ノ疑ヲ受ケルヤウナコトニ
ナツテ、如何ハシイヤウナコトモ聞クノデ
アリマスガ、サウ云フ外ヘ出ルヤウナ稅務
官吏等ニ對シテハ何カ優遇ノ方法ヲ講ジテ、
モウ少シ働キ易イヤウニシテヤラナケレバ
イカヌト思フ、一寸飯ヲ食ヒニ行クト云フ
ヤウナ費用ガナイカラ、ソコデ時期ガ來レ
バツイ飯ヲヨバレル、ソレガ元トナツテ疑
ヲ受ケルヤウナ場合ガアルノデアリマス、
斯ウ云フヤウナ稅務ノ下級官吏ニ對シテハ
優遇ノ途ヲ御考ヘニナツテ居ラヌノデセウ
カ、實際事務ヲ執ツテ居ル所ヲ見マスト洵
ニ氣ノ毒デアリマス、左樣ナコトニ付テノ
大臣ノ御意見モ此ノ際伺ツテ置キタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=12
-
013・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 勸銀、興銀ニ付テノ御意
見ハ洵ニ御尤モニ拜聽致シマシタ、資金ノ
大部分ハ寧ロ工業金融ニ向ケナケレバナラ
ヌ時期デアリマスガ、サウカト云ツテ增產
金融ヲ無視スル譯ニハイカナイ、ドウシテ
モ是ハ必要ナ限度ニ於テヤラナケレバナラ
又、勸業銀行、興業銀行ヲ合併致スコトハ
寧ロ其ノ本ヲ忘レルコトニナル、ソレハヤ
ハリ勸業銀行トシテ置イテ、今ノ資金ハ增
產金融ニ若干集マルカラ、工業金融ノ方ニ
出テモ宜シイ、併シナガラ元ノ本職ヲ忘レ
チヤナラヌト云フ此ノ注意ハ必要デアルトㅔ
思ヒマスノデ、此ノ點ハ十分ニ注意シテ參
リタイト思ヒマス、又資金ガ餘リマスレバ
短期ニ出ルコトハ認メマスガ、是ハ他ノ銀
行ト違ヒマシテ認可主義ヲ執リマシテ、本
當ニ餘裕金ノナイ限リハ短期ノモノニ本式
ニ出ルト云フコトハ致サセナイ考へ方デア
リマス
尙ホ稅務官吏ニ付キマシテハ非常ニ御同
情ノ御言葉ヲ戴キマシテ、私モ御尤モト思
ヒマス、實際今見テ居リマスト、金バカリ
デハアリマセヌ、食物ノ配給ナドモ中々皆
不自由ヲ感ズル、外デ食事ヲシテ歸リタク
ナルト云フコトモアル位デ、洵ニ御尤モト
存ジマシテ、私共トシテハ稅ニ携ツテ居リ
マス者ニハ何トカシタイト云フ氣ハ起ルノ
デアリマス、併シ政府ト致シマスト稅務官
吏ハ成程薄給デアル、併シ非常ナ金目ノモ
ノ納稅者ニ利害關係ノ多イモノヲ扱ツテ
居ル、今ハ出張ノ場合ハ多少旅費モ貰ヒマ
スガ、ツイ誘惑モ起ルヤウニナルヂヤナイ
カト云フコトデアリマスガ、是ハ尙ホ飜ツ
テ見マスト、例ヘバ商工省系統、農林省系
続地方廳ノ經濟、納稅ノ官吏ハ非常ニ事
業ノ上ニ利害關係ガアリ、大袈裟ニ申セバ
活殺與奪トモ思ヘルヤウナコトヲ其ノ權能
トシテ持ツテ居ル、是モ中々實情カラ云
フト大キナ權限デアリマス、人民ニ利害
ノ深イモノデアリマス、而モ統制法規ト云
フモノハ實ニ澤山ノ種類ノモノガ出マシテ、
眞ニ之ヲ理解シテ運用シテ行クト云フコト
モ非常ナ骨デアリマス、殊ニ警察官ナドニ
致シマシテモ、元ハ所謂窃盗トカ吾々普
通〓念ノ刑事ニ關シテノ取締ヲシテ居レバ
宜イモノガ)經濟犯ノ取締ヲシナケレバナ
ラヌ、是ハ非常ニ複雜多岐ノ法令ノ適用
デ、新タニ仕事ノ分野ガ殖エテ來タ、是ハ
非常ナ苦心ダラウト思ヒマス、其ノ他色々
各方面ヲ考ヘテ見マシテモ、私共トシテハ
小サイ人情カラ云フト、稅務官ノ優遇ダ
ケデモヤリタイノデアリマスガ、總テヲ考
ヘマスト、ドウモ一ツダケヤルト云フコト
ガ中々イカヌ、ヤハリ廣ク考ヘナケレバナ
ラヌト云フ考ヘ方ニナリマス、然ラバ一般
ニ官吏ノ增俸ヲスルカト云フト、官吏ノ生
活ト云フコトヲ總テノ狀態カラ切離シテ考
ヘレバ必要デアリマセウ一方非常ナル增
稅ヲ國民ハ忍ンデ納稅シテ貰ハナケレバナ
ラヌノデ、各種ノコトヲ苦ンデ居ル、是ガ
前ノ世界大戰ノ時ノ物價騰貴ノ狀況ナラ
私ハ增俸ヲシテモ宜イト思ヒマス、日本ガ
苦シマズニ富ハ增シタ、今ハ樣相ハ違ツテ、
全國民打ツテ一丸トシテ行カナケレバナラ
ヌト云フ時デアリマス、此ノ際一般ノ增俸
ト云フ理由モアルガ、全局ヲ考ヘルト忍バ
ナケレバナラヌ、併シナガラ相當苦シイ所
モアリマスノデ、今囘モ多少デハアリマス
ガ、家族手當制度ノ改正モ致シマシテ、本
當ノ一人暮シ、夫婦暮シノ樂ナ人ニハ依然
トシテ殆ド影響ハナイデセウガ、薄給デ多
人數ヲ擁シテ居ルト云フヤウナ人ニハ相當
ナ金ガ行キマスシ、又所得稅ニ於ケル控除
額モ又相當程度ニアリマス、是ハ非常ニ健
康ナ、健全ナ國民ガ必要デアルト云フコト
カラモ其ノ方ガ妥當ト認メラレマスシ、是
デ我慢シテ貰ハナケレバナラヌ、一方カラ
考ヘマスト甚ダ氣ノ毒ニ思ヒマスケレドモ、
只今トシテハドウモ著シイ税務官吏ノ優遇
案ヲ考ヘルト云フコトハ甚ダ困難ニ感ジテ
居ルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=13
-
014・由谷義治
○由谷委員長 此ノ際委員諸君ノ御諒解ヲ
得タイノデスガ、大藏大臣ハ貴族院ノ豫算
總會カラ大變ナ督促ガ來テ居リマスカラ行
ツテ貰ヒマス、其ノ代リ適當ナル時期ニ尙
ホコチラニ來テ貰フヤウ御約束ヲ御願ヒ致
シマス-駒井君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=14
-
015・駒井重次
○駒井委員 先日稅務代理士法案ニ付テ池
田政府委員ノ詳細ナル御答辯ヲ戴イタノデ
アリマスガ、主稅局長ガ見エマシタカラ、
二三ノ點ヲ補足的ニ御尋ネ致シタイト思ヒ
マス、稅務代理士法案ノ全文ヲ通讀致シテ
見マスト、稅務代理士ノ品位ノ保持或ハ素
質ノ向上ト云フコトハ、全法案ヲ通ジテ看
取セラレルノデアリマス、併シナガラ稅務
代理士ノ品位ヲ向上セシメル、或ハ素質ヲ
良化サセルト云フヤウナコトニ付キマシテ
ハ獨リ此ノ法律案ガ制定セラレマシテ、
稅務代理士ノ制度ガ確立シタカラト云フコ
トノミヲ以テシテハ之ヲ達成スルコトハ
出來ナイト思フノデアリマス、此ノ點ニ關
シマシテハ、何カ特別ニ御考ヘニナツテ居
ル點ガアリマスカ、其ノ點ヲ先ヅ御伺ヒシ
テ見タイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=15
-
016・松隈秀雄
○松隈政府委員 税務代理業ヲ營ミマスル
者ハ、國民ノ納稅義務ニ關聯シテノ職業デ
アリマスル爲ニ、從來カラモ業者ノ品位、素
質ノ向上ヲ希望シテ居ツタノデアリマス
ガ、遺憾ナガラ數多クノ稅務代理業者ノ中
ニハ納稅者ニ對シテ故ナク異議ノ申立ヲ勸
誘致シタリ、或ハ甚ダシキニ至リマシテハ
租稅ノ通脫ニ付テ指示ヲ致ス者等ガアリマ
シタコトハ、非常ニ遺憾トスル所デゴザイ
やく、ソコデ今回新タニ稅務代理士法ヲ制
定致シマシテ、從來稅務代理業ヲ營ンデ居
リマシタモノヲ許可制度ト致シマシテ、之
ニ依リマシテ適格者ヲ稅務代理士トシテ得
ルコトニ努メマスルト云フコトニ相成リマ
スレバ、自然品位、素質ノ惡イ者ハ落伍致
シテ參リマスノデ法案ノ制定ニ依リマシテ
其ノ點ハ餘程改善サレルト思フノデアリマ
ス、法案ノ有無ニ拘ラズ稅務代理業ヲ營ム
者ノ素質ノ向上ノ必要デアルコトハ勿論デ
アリマスガ、法案ノ提案ニ依リマシテ、其
ノ實施ノ曉ニ於キマシテハ、大藏大臣ニ於
テ監督權モ得ルコトニ相成リマスルノデ、
一方稅務代理士會ヲ通ジマシテ、所期ノ目
的ヲ達スル上ニ於テ相當效果ガアルコトト
存ジテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=16
-
017・駒井重次
○駒井委員 此ノ法律ノ精神ハ確カニサウ
云フ所ヲ狙ツテ居ルヤウデアリマスガ、併
シ將來良イ人ガ稅務代理士ノ許可ノ申請ヲ
致シマシテ、其ノ業務ニ携ツテ貰フコトガ
必要ダト思フノデアリマス、從來兎角稅務
代理人トカ稅務代辨人トカ申シマシテ、稅
務署へ行ツテモ餘リ尊敬モシテ吳レナイ、
何カ三百代言デモ迷ヒ込ンデ來タヤウナ取
扱ヲサレル、其ノ一面ニ於キマシテハ生活
ヲ確保スル爲ニ、色々惡イ事モスルト云フ
ヤウナコトモアリマシテ、兩々相俟ツテ稅
務代辨人ノ地位ヲ低カラシメタ、〓シ斯ウ
云フ業務ガ必要ダト云フコトハ、是ハ申ス
マデモナイコトデアリマシテ、必要ニ依ツ
テ生レタ業務デアリマスカラ、成ベク才能
ノアル、〓養ノアル人々ガ此ノ業務ニ携ハ
リ得ルヤウニ、導キ下サラナケレバナラヌ
ト思フノデアリマス、ソレニハ先ヅ第一ニ
稅務當局ニ於カレテモ、勿論此ノ法律制度
ガ出來ル譯デアリマスカラ、稅務代理士ノ
地位ニ對シテ十分之ヲ認メ、相當ノ待遇ヲ
與ヘテ下サルト思フノデアリマス、同時ニ
此ノ稅務代理士ノ報酬ノ問題ト云フコトガ、
極メテ重要ナル問題ニナルト思フノデア
リマス、先日池田政府委員ニ此ノ報酬ノ點
ヲ御尋ネ致シタイノデアリマスガ、其ノ際
ニハ成功報酬ハ認メナイ積リデアルト云フ
御答ヘガアリマシタ、ソレカラ私ハ重ネテ
異議ノ申請或ハ審査請求等ノ場合ニ於テ、
相當ノ結果ヲ得タ場合ト)何等ノ結果ヲ得
ナイ場合ト同一ノ報酬シカ取レナイト云フ
コトデハ、是ハ稅務代理士ガ一ツノ事件ヲ
扱フニ付キマシテ、十分ナル努力ヲスルト
云フコトヲシナイダラウ、ソレデハドウモ
困ルノデ、成功報酬ト云フ言葉ガ當ルカド
ウカソレハ疑問デアリマスケレドモ、兎ニ
角相當ノ結果ヲ得タ場合ニ於テハ、之ニ對
スル報酬ヲ取リ得ルト云フ途ガナケレバナ
ラナイノデハナイカト御尋ネシタノデアリ
Ⅳく、ソレニ對シテ池田政府委員カラ、其
ノ點ハ十分考ヘテサウ云フ風ニシタイト云
フ御話ガアリマシタ、併シ尙ホ今日此ノ點
ヲ、モウ少シハツキリト御說明ヲ願ツテ置
キタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=17
-
018・松隈秀雄
○松隈政府委員 稅務代理士法制定ノ曉ニ
於キマシテ、稅務代理士トシテ業務ニ携ハ
ル者ガ人格的ニ申シテモ、又手腕ノ上カラ
見マシテモ、優良ナル素質ノ者ガ之ニ從事
シテ戴クヤウナ風ニ方針ヲ執ツテ參ルベキ
デアルト云フ御意見ニ對シテハ、洵ニ同感
デゴザイマス、法律ノ資格要件ニ付テモ其
ノ趣旨デ定メテゴザイマスシ、又不適當ナ
者ハ假令一旦稅務代理士ニナリマシテモ、
許可ヲ取消ス等ノ方法モ設ケテアル次第デ
ゴザイマス、尙ホ此ノ點ト關聯致シマシテ、
相當素質ノ優良ナル者ガ從事スルニ當リマ
シテハ、報酬ノ點ニモ留意シナケレバ、結
局良イ人ハ此ノ事業ニ携ハラナクナルト云
フ點モ仰セノ通リデアルト思ヒマス、唯將
來認可スベキ報酬ニ付キマシテハ、未ダ具體
的ノ案ヲ作ルマデニ至ツテ居リマセヌカ
ラ、大體ノ考ヘ方ヲ申上ゲテ御參考ニ供シ
タイト思フノデアリマス、一口ニ報酬ト申
シマシテモ、稅務代理業ニモ色々ノ事務ガ
ゴザイマス、例ヘバ書類ノ作成、審査ノ請
求稅務相談等、各種ノモノガアリマシテ、
又同一ノ事項ニ付キマシテモ、事件ニ付テ
難易ノ差ガアリマスノデ、一律ニ之ヲ定メ
ル譯ニハ行キ兼ネルト思フノデアリマス、
現在ニ於ケル實際ノ料金ト申シマスルモノ
モ、或ル程度參考ト致シマシテ決メタイト
思フノデアリマス、其ノ大體ノ方針ト致シ
マシテハ、書類ノ作成、審査ノ請求、稅務
相談等、各稅務代理業ニ屬スル事項每ニ報
酬ヲ定メルノガ宜イカト思ツテ居リマス、
ソレカラ同一ノ事項ニ付キマシテモ、先程
モ申上ゲマシタ通リ其ノ仕事ニハ自ラ難易
ノ差ガアルノデアリマス、之ヲ全然同一ノ
報酬トスル譯ニハ參リマセヌカラ、其ノ難
易ニ依リマシテ報酬ニ差等ヲ設ケルヤウニ
致シタイト存ズルノデアリマス、ソコデ仕
事ノ難易ハ何ニ依ツテ判斷スルカト云フコ
トデアリマスガ、稅金ノ種類、課稅標準額
ノ大小等ニ依ツテ、或ル程度推定致シタイ
ト思フノデアリマス、例ヘバ個人ノ營業
稅法人稅、相續稅、個人ノ所得稅ト云
ツタヤウナ稅目ニ依リ、或ル程度難易ガ分
レテ參ツテ居ルヤウデアリマスカラ、ソレ
モ一ツノ標準デアリマス、ソレカラ大キナ
事件ト、小サイ事件ト云フコトハ、結局稅
務ニ於テハ大體、課稅標準ニ依ツテ、何段
階カニ分ケタナラバ、分ケ得ラレナイコト
ハナイデハナイカト思フノデアリマス、次
ニ問題デアリマス所ノ所謂成功謝金卽チ審
査請求等ノ場合ニ於キマシテ、減免セラレ
マシタ稅額ヲ標準トシテ、其ノ何割ト云フ
ガ如キ報酬ヲ認メルカドウカト云フ點ニ付
キマシテハ、之ヲ認メルト國民ノ納稅思想
ノ善導上如何カト思ハレル節モアルノデア
リマスガ、又是ガ脫稅等不正行爲ヲ刺戟ス
ル虞レモアルノデアリマスカラ、減免稅額
ノ何割ト云ツタヤウナ標準ノ成功謝金ハ、
將來認メタクナイト思ツテ居リマス、尤モ
事件ガ依賴者ニ有利ニ解決サレマシタ場合
ト、然ラザル場合ト全然同一ノ報酬ニ依ラ
シメルト云フコトハ、社會常識上適當デナ
イト思ヒマス、又サウ云フコトデアツテハ
稅務代理士ガ委囑者ノ爲ニ、一生懸命仕事
ヲシナイ、斯ウ云フコトニナレバ依賴者ノ
利害ヲ圖ル所以デモアリマセヌノデ、委囑
者ニ有利ニ解決サレマシタ場合ニハ、報酬
ヲ一定倍スルト云フコトニ致シマシテハ稅
務代理士ヲシテ、納稅者ノ利益ヲ擁護スル
ノ熱意ヲ持タシメタイト存ジテ居リマス、
重ネテ申シマスガ從來行ハレテ居ルヤウナ
減免稅額ノ何割ト云フガ如キ報酬ノ定メ方
デナク、委囑者ニ有利ニ解決サレマシタ場
合ニハ、手數料ヲ一定倍數更ニ取リ得ル、斯
ウ云フヤウニシタラ如何カト思ツテ居リマ
ス、尙ホ右ニ申シタヤウニ報酬ノ他ニ、旅
費宿泊料ノ如キ實費辨償ノモノハ、各、≧適
當ト思ハレル範圍ニ於テ認メテ參ルコトハ
當然ダラウト思ヒマス、以上大體ノコトヲ申
上ゲマシタガ要スルニ報酬ヲ餘リ高ク定メ
マスト納稅者ニ迷惑ヲ及ボスコトニナリ、
反對ニ餘リニ低ク抑ヘマスト稅務代理土
ノ生活ヲ脅威シ、ソレデハ素質ノ優良ナ人
ヲ迎ヘ得ル所以デアリマセヌ、素質ガ低下
シタリ、或ハ生活上脅威ガアルト云フコト
ニナルト、徒ニ事件件數ヲ漁ツテ、爲ニ不
正ヲ誘發スルト云フ虞レモアリマスノデ、
此ノ間ノ事情ヲ十分考慮致シマシテ、且ツ
現在ドノ程度ニ取ツテ居ルカト云フコトモ
參酌致シタ上適當ナ標準ヲ定メシメルヤウ
ニ、稅務代理士會ヲ指導シテ參リタイト思
ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=18
-
019・駒井重次
○駒井委員 只今ノ明確ナル御答辯デ、報
酬問題ニ付テハ、何等ノ疑義ガナイノデア
リマス、併シナガラ納稅者ノ立場カラ考ヘ
テ見マスト、稅務代理士ニ報酬ヲ拂フト云
フコトハ、主トシテ減稅ヲ受ケタ場合ニ限
ラレテ居ル、減稅ヲ受ケナイノニ報酬ヲ取
ラレルト云フコトハ納稅者トシテハ非常ナ
苦痛ヲ感ズルコトニナリハシナイカト思フ、
現在ノ稅務代理業務ノ報酬ノ狀態ヲ聽イテ
見マスト、殆ド所謂成功謝金ニ限ラレテ居ル
ヤウナ狀態デアリマス、ソレデアリマスカ
ラ納稅者ノ希望シテ居リマスル結果ヲ得タ
場合ト然ラザル場合ニ於テハ、十分ナル懸
隔ヲ付ケタ標準ヲ御決メニナルコトヲ希望
致シマス、ソレカラ先程松田委員カラ稅務
官吏ノ優遇ニ付テ御尋ネガ大藏大臣ニアリ
マシタガ、私モ同ジヤウニ稅務官吏ノ優遇
ヲ十分ニシテ戴カナケレバナラヌト思フ、
稅務官吏ノ取扱ツテ居ル仕事ト云フモノハ
中々重要ナモノデアリマシテ、而モ相當ノ
素養ト經驗トガナケレバナシ得ナイコトヲ
致シテ居ルノデアリマス、此ノ稅務官吏ノ優
遇ニ付キマシテハ、大藏大臣カラモ御答辯ガ
アリマシタガ、今後十分ニ考慮シテ戴キタ
イト思ヒマス、偶〓此ノ稅務代理士法ガ議會ニ
提案ニナリマシタノデ、稅務官吏トシテハ退
官後ノ職場ヲココニ得〃タヤウナ感ジヲ致シ
テ居ルノデアリマス併シナガラ私ハ其ノ意味
於テモ稅務代理業務ガ公認セラレテ一ツノ
制度ガ出來タコトハ結構デアリマスガ、稅
務官吏ノ退官後ノ職場トシテノミ限定スル
考ヘ方ハ排シテ貰ヒタイ、實際業務ニ携ラ
ウトシテ此ノ際〓究モシ、其ノ爲ニ勉學ヲ
シテ初メカラ此ノ途ニ入ラウト云フ相當ノ
人モアツテ然ルベキデハナイカ又單ニ稅務
官吏ト限ラズ或ハ大藏次官ヲシタ人デモ稅
務代理業務ニ携ツテ貰ハナケレバナラナ
イ、又サウ云フ人ガ入ツテ來ナケレバナラ
ナイト考ヘルノデアリマス、稅務代理士ノ
素質ノ向上品位ノ保持ト云フコトニ付テハ
尙ホ今後トモ御〓究ヲ願ヒタイト思ヒマス、
是ハ希望ヲ申上ゲテ置キマス、尙ホ先般池
田政府委員ノ御答辯ノ中ニ辯護士、計理士
ガ特殊ノ自分ニ關係ノアル事件ニ付テ偶〓稅
務ノ相談ヲ受ケルト云フヤウナ場合ニ付テ
ハ業務ト看做サナイト云フ風ニ御答ヘガア
ツタヤウニ思ヒマシタ、此ノ點ハドウカト
思ヒマスカラモウ一度御說明ヲ戴キタイ、
尙ホソレニ關聯致シマシテ業務デナイ稅務
代理行爲或ハ報酬ヲ取ラナイ稅務代理行爲
ト云フモノハ、此ノ稅務代理士法ノ拘束ヲ
受ケナイノデアリマスカ、以上御答ヘヲ願
ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=19
-
020・松隈秀雄
○松隈政府委員 報酬ノ點ニ付テ重ネテ御
話ガゴザイマシタ、從來ハ兎角所謂成功
謝金ニ重點ガ置カレタト云フコトデアリマ
スガ、サウ致シマスト先程モ申上ゲタヤ
ウニ弊害ガ動モスレバ生ズル虞ガアリマス
ノデ、今後ノ方針ト致シマシテハ稅務代
理士ヲ煩ハシテ書類ヲ作成セシメタ、或へ
稅務ノ相談ヲ致シタト云フヤウナ場合ニ於
キマシテハ、其ノ行爲自體ニ對シテ或ル程
度ノ報酬ヲ取リ得ルコトニ定メタイト思ヒ
やっ、而モ委囑シマシタ事件ガ委囑者ニ有
利ニ解決サレマシタ場合ニ於キマシテハ)
ヤハリ或ル程度ノ謝金ヲ認メルト云フコト
ガ、實際的デモアルシ、又常識的デアルト
思ヒマスノデ、サウ云フ報酬モ認メルヤウ
ニシテ參リタイ、其ノ間宜シキヲ得ルヤウ
ニ致シタイ、斯樣ニ考ヘテ居リマス
次ノ點ノ、今囘ノ稅務代理士法ノ制定ニ
依ツテ、退職稅務官吏ノ退職後ノ職場トス
ルコトノナイヤウニト云フ御注意ニ付テ
ハ謹ンデ御意見ヲ御伺ヒシマシテ、今後
ニ於テ稅務官吏ノミノ獨占的職業化スルト
云フヤウナコトノナイヤウニ、嚴重ニ取締
ツテ參リタイト存ジマス、法文ノ上デ申シ
マスト、稅務官吏ト致シマシテ判任官ノ職
ニ在ツテ三年以上國税ノ事務ニ從事シタル
者ガ一應資格ガアルコトニナツテ居リマス
ルケレドモ、尙ホ許可スルニ當リマシテハ
詮衡方針ニ於テ愼重ヲ期シタイト思ツテ居
リマス、ソレカラ「命令ヲ以テ定ムル官廳」
ト云フノニハ大藏省モ入ツテ居リマス、次
官等デ間接的デハアリマスケレドニ、國稅
ノ事務ニモ從事シタト云フ解釋ガ付キ得ル
限リ、稅務代理士タル資格ハアリ得ル譯デ
アリマスカラ、サウ云フ要職ニアラレタ方
ガ稅務代理士ノ許可ヲ受ケラレルト云フコ
ト·ハ吾々トシテモ希望シテ居ル所デアリ
マス
次ニ特殊ノ關係アル會社カラ稅務ノ相談
ヲ受ケタト云フ場合ニ、稅務代理業ニ當ル
カドウカト云フノデアリマスガ、自己ノ關
係シテ居リマスル特殊ノ會社ノ稅務ニ關シ
テ相談ヲ受ケルト云フコトハ税務代理業
ヲ營ム者ト云フ解釋ニハ入リ兼ネルト思ツ
テ居ルノデアリマス、稅務代理士法案ニア
リマスル通リ、「所得稅、法人稅、營業稅其
ノ他命令ヲ以テ定ムル租税ニ關シ他人ノ委
囑ニ依リ稅務官廳ニ提出スベキ書類ヲ作成
シ又ハ審査ノ請求、訴願ノ提起其ノ他ノ事
項ニ付代理ヲ爲シ若ハ相談ニ應ズルヲ業ト
スート書イテゴザイマスガ、此處ニ業トス
ト云フノハ、例ヘバ事務所ヲ置キマシテ、
不特定多數ノ人ノ委囑ヲ受ケ得ルヤウナ狀
態ニ於テ仕事ヲスル者、斯ウ云フ風ニ解釋
シタラ宜シイト思ツテ居リマス、又隨テ報
酬ヲ得ルト云フコトガ當然伴ツテ參ルノデ
アツテ、報酬ヲ得ナイト云フヤウナ場合ニ
於テハ、業トスルト云フ解釋ニハ入レナイ
方ガ宜シイト思ツテ居リマス、特定ノ會社
ノ顧問ト云フヤウナ地位ニアリマスル者ガ、
其ノ會社ノ稅務關係ノ相談ヲ受ケタト云フ
ノデハ、稅務代理士トシテノ仕事ヲシテ居
ルノデハナクテ、其ノ會社ノ顧問トシテノ
仕事ヲシテ居ルノデ、之ニ反シテ不特定多
數ノ者カラ、稅務ノ相談ヲ受ケルヤウナ意
味デ顧問ヲ引受ケルト云フヤウナコトヲヤ
ツテ居リマスレバ、ソレハ稅務代理士トシ
テノ許可ガ要ルト云フ解釋ニ致シタイト思
ツテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=20
-
021・駒井重次
○駒井委員 今ノ問題ハ能ク分リマシタ、
次ニ稅務代理士會ノ會則ハ大體大藏大臣ノ
指示ニ依ツテ出來ルモノト思フノデスガ、
ドウ云フ點ヲ此ノ會則ノ內容トセラレルノ
デアリマスカ、若シ大體ノ案ガオアリデシ
タラ御說明ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=21
-
022・松隈秀雄
○松隈政府委員 稅務代理士會ハ會則ヲ定
メテ主務大臣ノ認可ヲ受ケルコトニナツテ
居ルノデアリマスルガ、會則ニ定メマス事
項ハ大體次ノヤウナモノヲ豫定シテ居ル譯
デアリマス、卽チ、名稱及ビ區域、事務所
ノ所在地、役員ノ種類、數、職務權限、選任、
解任及ビ任期ニ關スル規定、總會ニ關スル
規定、稅務代理業ニ關シ會員ノ受クベキ報
酬ニ關スル規定、會費ニ關スル規定、稅務
代理士法第十四條ノ規定ニ依ル退會、庶務
及ビ會計ニ關スル規定、其ノ他必要ト認ム
ル事項、斯ウ云ツタヤウナ豫定デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=22
-
023・駒井重次
○駒井委員 私ノ質問ハ大體ソレデ盡キタ
ノデアリマスガ、先程稅務官吏ノ優遇ニ
付キマシテ、其ノ點幾ラカ誤解ガアツタヤ
ウデアリマスガ、稅務官吏ノ退官後ノ一ツ
ノ職場トシテノ役ニモ立ツデアラウト私ハ
申上ゲタ積リデアツタノデアリマス、何レ
ニ致シマシテモ、稅務官吏ノ素質ノ向上ト
云フコトハ、稅務代理士制度ガ出來マシタ
以上一層ニ必要ダト思フノデアリマス、從
來兎角稅務官吏ガ辯護士トカ計理士トカノ
介在ヲ喜ビマセヌ主ナル理由ハ、稅務ニ關
スル協議ヲ致シマシテモ、知識〓養ノ點ニ
於テ甚ダ遜色ガアルト云フ點ガ、サウ云フ
人ノ介在ヲ喜バナカツタ、デアリマスカラ
一面ニ於キマシテハ稅務官吏ノ優遇ニ、
モウ少シ力ヲ入レテ數イタラドウデアルト
思フノデアリマシテ、從來徵稅費ナルモノ
ハ間接ノ國家ノ經費デ最少額ニ止メネバナ
ラスト云フヤウナ考ヘ方ガ、財政論トシテ
常ニ考ヘラレテ居ツタノデアリマスケレド
モ、今日ノ徴稅費ト云フモノハ、必ズシモ
間接經費トノミハ考へラレナイ狀態ニナツ
テ居リマス、其ノ點ハ一ツ十分御考慮ヲ願
ヒタイト思ツテ居ルノデアリマス、私ノ質
問ハ是デ終リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=23
-
024・松隈秀雄
○松隈政府委員 稅務官吏ノ向上ニ付キマ
シテ、同情アル御言葉ヲ戴キマシタコトヲ
感謝致シテ居リマス、目下各方面ニ於キマ
シテ人材ノ乏シキヲ憂ヘテ居ルノデアリマ
スガ、稅界モ亦其ノ例ニ漏レズ、實ハ優秀
ナル稅務官吏ヲ數多ク得ルト云フコトニハ
非常ニ困難ヲ感ジテ居リマス、率直ニ中上
ゲマスレバ、素質ノ優秀トマデ行カナクテ
三、ソコマデ行カナイ程度ノ人デモ必要ダ
ケノ人ヲ集メルト云フノニ苦心ヲシテ居ル
ヤウナ狀況デアリマス、併シ稅務官吏ノ携
ハリマス仕事ガ、國民ノ權利義務ニ重大ナ
ル關係ヲ持ツテ居リマスノデ、是ガ養成ニ
ハ十分氣ヲ付ケナケレバナラナイコトデア
リマシテ)幸ヒ本年度カラ稅務誰習所ノ開
設モ認メラレテ居リマスノデ、是等ニ於キ
マシテモ優秀稅務官吏ノ養成ニ銳意力ヲ注
イデ居ルヤウナ次第デアリマス、今後トモ
御注意ノ點ニ付キマシテハ吾々十分努力シ
テ參リタイト存ジマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=24
-
025・由谷義治
○由谷委員長 石坂君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=25
-
026・石坂豐一
○石坂(豐)委員 私ハ此ノ稅務代理士法案
ニ付テ簡單ナコトヲ二ツバカリ伺ツテ置キ
タイト思ヒマス、尤モ各委員カラ御質問ガ
アリマシテ若シ重複致シテ居リマシタラ、
誰々ニ答辯シタト御答ヘ下サレバソレデ宜
シイノデアリマス、第一ハ、稅務代理士ハ
第一條ニ依リマシテ、ナスベキ行爲ガ定メ
ラレテ居ルノデアリマスガ、其ノ中デ書類
ヲ單ニ作成スルト云フコトガ、恰モ司法書
士卽チ代書人ガ書類ヲ作成スルト云フヤ
ウニ解釋スベキデアリマセウカ、實際ニ於
テハ所得稅或ハ法人稅等ノ申〓ニ付テ、ド
ウシテモ納稅者ノ會計或ハ法人ノ會計ニ立
入ツテ計算ヲシナケレバナラヌコトガアル
ノデアリマス、添付書類ニモソレヲ要求シ
テ居ル箇條ガアルノデアリマス、ソレデア
リマスカラ、若シサウ云フ計算ニ屬スルコ
トヲ致シマスレバ、勢ヒ計理士法ノ第一條
ト抵觸スルト云フコトニ相成ルノデアリマ
スガ、其ノ點ヲ本法實施ニ對スル解釋トシ
テ此ノ席上ニ於テ明確ニ致シテ置ク方ガ都
合ガ宜クハナイカト考ヘマス、其ノ點ヲ一
ツ御答辯ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=26
-
027・松隈秀雄
○松隈政府委員 稅務代理士ノ業務ト致シ
マシテハ他人ノ委囑ニ依リ稅務官廳ニ提
出スベキ書類ノ作成ト云フコトニナツテ居
リマス、此ノ提出スベキ書類トシテドウ云
フモノガ考ヘラレルカト云フノデアリマス
ガ、最モ多イ事例ハ、稅法ノ規定ニ依ル申
告書、申請書、支拂調書ノヤウナモノデア
ラウト思ヒマス、支拂調書ノヤウナモノデ
アリマスト、單純ニ何程ノ配當ヲ支拂ツタ
ト云フヤウナコトデ、餘リ計算ガ細カク
ナイ場合ガアルト思フノデアリマスガ、申
告書ノヤウナ場合ニナリマスト、其ノ添付
書類トシテ損益計算書、貸借對照表ト云フ
ヤウナモノヲ作ルコトニナツテ參リマス、ソ
コデ稅務代理士ノ制度ヲ設ケマシタコトガ
計理士ノ業務ト重複スルノデハナイカト云
フ御疑問ガ起ツテ參ルノデアラウト思フノ
デアリマスガ、稅務代理士ノ業務ハ稅務ニ
關シマス特定ノ手續ニ限定セラレテ居ルノ
デアリマス、計理士ノ業務ハ一般ニ會計ニ
關スル檢査、調査、鑑定、計算、證明、整
理又ハ立案ヲナスコトニナツテ居リマスノ
デ、一部分重複シテ居ル部分ハゴザイマス
ケレドモ、之ニ依ツテ計理士ノ業務ヲ制限
スルモノデハナイノデアリマス、唯計理士
ノ業務トシテ會計ニ關スル檢査、調査、鑑
定計算、證明、整理又ハ立案ヲナシテ居
ルダケデアレバ、ソレデ稅務代理士ノ許可
ハ要ラナイノデアリマスガ、其ノ作成致シ
マシタ書類ニ基イテ稅務ニ關スル申告書ヲ
作成スルト云フコトニナリマシタ場合ニ於
キマシテハ、稅務代理士ノ業務ヲ併セ營ム
ト云フコトニナツテ參リマスノデ、其ノ範
圍內ニ於テハ今囘ノ法律ニ依ツテ制限ヲ受
ケマスノデ、稅務代理士ノ許可ヲ得ルコト
ヲ要スル、左樣ニ相成リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=27
-
028・石坂豐一
○石坂(豐)委員 ソレデハ計理士ノ方ハ許
可ヲ受ケテ稅務代理士ノ方ヲ活カスコトガ
出來マスガ、其ノ點ハ計理士ノ方カラ眺メ
レバ稅ニ關スルコトハ差支ヘナイコトニナ
リマス、所デ稅務代理士ガ計算事務ニ從事
スルト云フコトニナレバ、計理士法ニ牴觸
スルコトニナリハシナイカ、其ノ反面ノ方
ノ說明ヲ願ヒタイモウ一ツ同時ニ、此ノ
法律ガ出來マスト計理士ガ稅務及ビ會計ニ
關シテ依賴人ヲ指導スルト云フヤウナコト
ハ、本法第一條ノ「相談ニ應ズルコト」ト牴觸
シマスカラ、計理士トシテハ出來ナイコト
ニナルト解釋シテ宜シイデセウカ、其ノ點
ヲ伺ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=28
-
029・松隈秀雄
○松隈政府委員 稅務代理士ガ計算事務ヲ
行ヒマスノハ、實際ニハ稅務ニ關スル特定
ノ手續ヲナシマス前提トシテ致ス場合ノミ
ニ限ラレテ居ルノ實情デアリマシテ、般
ニ會計ニ關スル檢査、調査、鑑定、計算、
證明、整理又ハ立案ヲナスト云フコトハ本
法ノ範圍外デアリマス、所デ計理士ニ關シ
マス特權トシテ今計理士法ニ於テ認メテ居
リマスノハ、御承知ノ通リ計理士ナル稱號
ヲ用ヒテ檢査、調査、鑑定、計算、證明、
整理ヲスルコトガ認メラレテアルノデ、計
理士テル稱號ヲ用ヒナケレバサウ云フコト
ヲシテモ違反デハナイト云フ解釋ニ相成ツ
テ居ルヤウデアリマス、故ニ今囘稅務代理
士法ニ依ツテ認メラレマス業務ノ範圍ハ、
稅務ニ關スルコトニ特定シテアリマスシ、
ソレカラ稅務代理士ガ業務ニ關聯シテ、會
計ニ關スル事務ヲ致シマシテモ、ソレハ計
理士ナル稱號ヲ用ヒテヤルト云フ意味ハ入
ツテ居リマセヌカラ、計理士法トハ牴觸致
サナイカト思ツテ居リマス、ソレカラ稅務
ニ關スル相談ト云フモノハ、考ヘ方ニ依リ
マシテハ少シク廣クナルノデアリマスガ、
大體本來ノ業務ヲ執行致スニ付テ或ル程度
ノ話シ合ガアツタト云フコトガアリマシテ
モ、ソレダケ取上ゲテ稅務ノ相談ヲシタト
云フヤウナ見方ハ致サナイ、附隨的ニ相談
ガアルト云フコトハアリ得ルコトデアリマ
スカラ、サウ云フモノヲ稅務ノ相談トシテ、
特ニ稅務代理士ノ許可ガナケレバ出來ナイ
ト云フ風ニ解釋ハ致サナイ積リデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=29
-
030・石坂豐一
○石坂(豐)委員 能ク判明致シマシタ、次
ニ先程駒井君カラ御尋ネニナツテ居リマシ
タ稅務官吏ノ優遇ノコトニ關聯致シマシテ、
色々ノ恩賞其ノ他ニ付テノコトハ御考ヘニ
ナツテ居リマセウガ、詰リ地方ニ於ケル官
廳ト本廳トノ間ニ交流人事ヲ行ツテ、優秀
ナモノヲ拔擢スル、又優秀ナ人ヲ地方ニ送
ツテ指導ノ任ニ當ラシメル、サウ云フコト
ハ從來行ハレテ居ツタヤウニ考ヘテ居リマ
スガ、此ノ頃其ノ點ニ付テ特ニ御實行ニナ
ツテ居リマスデセウカ、此ノ事ハ單ニ昇給
トカ恩賞ト云フヨリハ、寧ロサウ云フ風ニ
下級官廳ヨリ上級官廳ニ引上ゲルト云フコ
トニ依ツテ、一人ヲ賞シテ他ノモノガ奮起
シテ行クコトニ相成ルノデアリマシテ、稅
務官吏ノ素質ヲ向上セシメラレル點ニ於テ
モ餘程有益デアルト考ヘマスガ、局長ノ御
考ヘハ如何デアリマセウカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=30
-
031・松隈秀雄
○松隈政府委員 稅務ニ於キマシテ中央ト
地方ノ人事ノ交流ヲ致シマシテ、地方ニ於
ケル稅務官吏ノ素質ノ優秀ナル者ヲ中央ニ
拔擢スルコトニ依リマシテ、一方ニ於テハ
優遇ヲ圖リ、一方ニ於テハ向上心ヲ刺戟ス
ルコトノ必要デアリマスルコトハ仰セノ通
リデアリマス、從來モ實行致シテ居リマス、
從來本省ニ於テ地方ノ稅務官吏中比較的優
秀ト認メラレマスル者ヲ集メテ講習ヲ致
シ、其ノ講習成績ノ優良ナル者ハ將來ニ於
テ本省ノ官吏トシテ推薦スル、斯ウ云フコ
トニ相成ツテ居リマスルノデ、是ガ稅務官
吏ノ一ツノ登龍門ノヤウニモ相成ツテ居リ
マス、全ク仰セノ通リ中央、地方ノ交流人
事ト云フコトハ、一面カラ云ヘバ中央ノ事
情ヲ地方ニ反映シ、又地方ノ事情ヲ中央ニ
反映サセル上ニ於テモ必要ナコトデアリマ
スノデ、今後モ出來ル限リサウ云フ方針デ
臨ミタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=31
-
032・由谷義治
○由谷委員長 此ノ際昨日委員長カラ質問
シマシタ國民所得ノ內容ニ關シマシテ、氏
家國民貯蓄奬勵局次長カラ御說明ガアルサ
ウデアリマスカラ、發言ヲ許シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=32
-
033・氏家清吉
○氏家政府委員 昨日國民所得ノコトガ問
題ニナツタノデアリマスガ、其ノ際御質問
ニ應ジマシテソレ〓〓御答ヘ致シマシタノ
デ、稍〓連絡ガナイヤウナ御答ヘヲ致シマシ
タ爲ニ御分リニクイ點モオアリニナツタラ
ウト思ヒマスノデ、重複ノ嫌ヒハアリマス
ルケレドモ、玆ニ纏メテ今一應御說明申
上ゲタイト思ヒマス、先ヅ算定ノ方法デア
リマスガ、是ハ方法ハ色々アリマシテ、ド
レガ最モ適當デアルカト云フコトハ中々取
捨選擇ニ困ル難シイ問題ナノデアリマス、
況ンヤ將來ノモノニ付キマシテハ、國民經
濟ノ各般ノ條件ヲ豫測スルノ必要ガアリマ
スルノデ、色々〓究ハ致シテ居リマスケレ
ドモ、數字的ニ詳細ニ御說明申上ゲ、又是
ガ一番良イ方法ダト云フコトヲ確定的ニ申
上ゲルコトガマダ出來ナイノヲ甚ダ遺憾ト
シテ居ル次第デアリマス、從來國民所得ニ
付キマシテハ、議會ニ於テモ問題ニナツタ
コトガアルノデアリマス、併シ其ノ方法ハ
大體人的ノ計算方法ト申シマシテ、各個人
ナリ法人ナリノ所得ヲ集計致シマシテ、ソ
レカラ相互ノ重複分ヲ控除スルト云フヤウ
ナ方法ニ依ツタモノヲ發表シタ年モアルト
云フヤウナコトデアツタラウト思フノデア
リマスガ、是等ノコトハ主トシテ稅制ノ上
デ問題ニナリマシタノデ、其ノ詳細ハ主稅
局長ノ方カラ御話申上ゲル方ガ適當デアル
ト思フノデアリマス、私共最近調査シテ居
リマスルノハ、丁度昨年財政金融基本方策
要綱ガ閣議ノ決定ニナリマシテ、其ノ中デ
國家資力ト云フ問題ヲ取上ゲ、之ヲ相當重
視致シテ居リマシテ、各般ノ經濟政策、財
政金融政策立案ノ基礎トシテ、國家資力ヲ
出來ルダケ正確ニ測定スル必要ガアル、斯
ウ云フコトニ相成リマシタノデ、實ハソレ
ニ備ヘル爲ニ、昨年アタリカラ急ニ各方面
ノ學者其ノ他ノ意見ヲ徵シ、又其ノ援助モ
受ケマシテ、只今大藏省ニ於テ其ノ調査ヲ
進行致シテ居ルノデアリマス、勿論マダ其
ノ調査ガ完成致シテ居リマセヌ、今此處デ
申上ゲルノハ尙早ノ感ガアルノデアリマス
ガ、問題ニナリマシタノデ、ホンノ大體ノ所
ヲ申上ゲマス次第デアリマス、其ノ方法ハ
所謂物的計算方法ト云フモノヲ取ルコトニ
致シマシテ、當該年度ニ於キマシテ新ニ生產
サレマシタ物資ノ生產額カラ原料費デアル
トカ、光熱費デアルトカ、動力費デアルト
カ云フヤウナ必要經費ニ相當スルモノヲ控
除シマシタ額、是ガ一ツ、加工若シクハ輸
送等ニ依ツテ增加シタ物資ノ價格、是ガ又
ーリ、ソレニ對價ノ支拂ハレル勤勞ノ價
額是ガ三デ、ソレニ尙ホ對外收支ノ差額
ヲ調整シマシテ、國民所得ヲ算出シヨウ、
斯ウ云フ方法ヲ執ツテ居ルノデアリマス、
隨テ法人ノ生產シタモノ、是ハ勿論所得ノ
中ニ入ツテ參リマス、個人ノ生產シタモノ、
是モ勿論所得ニ入ツテ參リマスケレドモ、
兩者ヲ特ニ區別スルコトナク、一括シテ國
民所得中ニ算入シテ居ルヤウナ次第デアリ
マス、昭和十七年度ノ國民所得ガ四百五十
億程度デアル、斯ウ申上ゲマシタノハ極メ
テ大體ノ輪廓ヲ御示シシタニ過ギナイノデ
アリマス、尙ホ今後〓究ノ進捗スルニ從ヒ
マシテ若干修正ヲ加ヘルコトガアリ得ルト
思フノデアリマス、尙ホ四百五十億ノ所得
ノ中各業態別ノ所得、例ヘバ農業トシテ
ハドレ程デアルカ、工業トシテハドレ程デ
アルカト云フヤウナ所得ノ數額ノ內譯ハ、
色々事情ガアリマシテ、此ノ際茲デ申上ゲ
ルコトガ出來兼ネルヤウナ次第デアリマス、
其ノ四百五十億圓ノ中國民ノ消費資金、之
ヲ大體百五十億圓程度ト大藏大臣ガ申上ゲ
タヤウデアリマス、總國民所得ヲ大別シマ
スルト、之ヲ財政資金トシテ使ハレルモ
ノ產業資金トシテ使ハレルモノ、更ニ國
民消費資金トシテ使ハレルモノ、斯ウ云フ
風ニ分ケ得ルト思フノデアリマスガ、其ノ
四百五十億圓ノ中、國民消費資金トシテ使
用セラルル部分ガ百五十億圓程度、斯ウ云
フ風ニ申上ゲテアルノデゴザイマス、租稅
及ビ國民貯蓄ノ動員ニ依リマシテ、財政資
金トシテ消費シ得ル部分、是ガ大體二百四
十億圓、ソレカラ產業資金ノ方面デ生產用
ニ使用シ得ル部分、是ガ約六十億圓、其ノ二
ツヲ四百五十億圓カラ控除シタ殘額、是ガ國
民消費ニ充當シ得ルモノ、斯ウ云フコトニナ
ルノデアリマシテ、觀念上ハ其ノ國民消費
ト申シマス中ニハ、個人ガ其ノ負擔ニ於テ消
費スルモノノミナラズ、法人ガ其ノ負擔ニ
於テ消費ヲスルモノモ含ム、斯ウ云フコト
ニ相成ルノデアリマス、併シ其ノ兩者ガド
レ程ノ割合ニナツテ居ルカト云フコトハ、
今日ノ調査ノ進行ノ程度ニ於テハ、未ダ之
ヲハツキリ申上ゲルコトガ出來マセヌガ、
大體ニ於キマシテ法人ガ其ノ負擔ニ於テ消
費シ得ル部分ハ非常ニ少イ額デアラウ、斯
ウ云フコトハ想像シ得ルノデゴザイマス、
此ノ國民所得ノ問題ハ、能ク通貨ノ流通ノ
問題ト混同セラルル場合ガアルノデアリマ
スガ、是ハ私共トシテハ、關聯ハアリマス
ケレドモ、別ノ問題デアルト斯ウ云フ風ニ
考ヘテ居ル次第デアリマス、國民所得四百
五十億圓ト云ヒ、國民ノ消費百五十億圓ト
云ヒマシテモ、是ハ先程申上ゲマシタヤウ
ニ極メテ大雜把ナ數字デ、謂ハバ昭和十七
年度末前一箇年ニ國民所得ノ累計ガ幾許ニ
達スルカ、且ツ其ノ配分トシテ國民ノ消費
累計ガ幾許ニ達スルカ、斯ウ云フ靜態的ナ
豫測、斷面的ノ豫測デアリマシテ、是ト國
民經濟ニ於ケル通貨ノ動的ノ循環ハ之ヲ區
別シテ考ヘテ居ル次第デアリマス、昨日ド
ナタカノ御話ニ、百五十億圓ヲ生活ニ消費
シテモ、其ノ金ハ何處ニモ行カナイデ、又
日本銀行ニ戾ルダラウ、隨テ是ハ又貯蓄ニ
ナルダラウ、斯ウ云フ御話ガアツタノデア
リマス、成程百五十億圓ト云フ金ハ消費シ
テモ、金其ノモノハ日本ノ國カラ何處ニモ
出テ行ク譯デハアリマセヌ、併シ其ノ金ノ
消費ニ依ツテ、百五十億圓ニ相當スル所ノ
物資-ト申シマシテモ、先程來申上ゲテ
居リマス物資ト云フ言葉ノ中ニハ、所謂物
資モ、勞力モ、色々ナ「サーヴィス」五六百斤
レテ居ルノデアリマスガ、其ノ百五十億圓
ノ物資ト云フモノハ其ノ效用ヲ大體ニ於テ
失ツテシマツテ居ル、斯ウ云フ風ニ考ヘル
ノデアリマス、卽チ通貨ハ支出セラレテモ
殘ツテ居リマスケレドモ、物資ハ消費サレ
レバナクナツテシマフ、斯ウ云フ關係ニナ
ルノデアリマシテ、逆ニ例ヘバ、公債ヲ日
銀ニ引受ケサセ、日銀ガ兌換劵ヲ增發スル、
十億圓ノ兌換劵ヲ增發スルト云フコトハ
今申上ゲテ居ル所ノ物資ガ十億圓殖エルト
云フ關係デハナイ、斯ウ云フノト對應シタ
考ヘ方トナルノデアリマス、國民經濟ノ活
動ハ、貨幣經濟ノ今日必ズ通貨ノ循環ヲ伴
ヒマシテ、隨テ一定ノ所得ガ實現セラレ、
ソレガ然ルベキ態樣ニ依リマシテソレ〓〓
配分セラレル爲ニハ、必ズ之ニ相應スル通
貨ノ循環ヲ伴フ、是ハ勿論ノコトデアル、
通貨ハ其ノ性質トシマシテ或ル囘轉率ヲ以
チマシテ絕エズ囘轉シテ居ルノデアリマス、
通貨ノ數量竝ニ其ノ囘轉率ト云フノハ、靜
態的デアル所ノ國民所得ノ計數竝ニ其ノ配
分トノ間ニ、必然的ニ或ル種ノ關聯性ハア
ルト思フノデアリマス、卽チ生產量ガ增加
スル、又消費量ガ增加スルト云フ爲ニハ
ソレニ伴ツテ通貨量モ增加シナケレバナラ
又、斯ウ云フヤウナ關聯ハアルト思フノデ
アリマス、併シ此ノ兩者ハ別箇ノ觀點カラ
考察スルヲ要スルノデゴザイマス、卽チ動
態的ニ申上ゲマスルト、國民ガ一旦消費シ
タ通貨デアツテモ、是ハ又循環ノ過程ニ於
テ更ニ消費或ハ貯蓄ノ方ニ向ケラレル次第
デアリマスケレドモ、此ノ國家資金ニ關ス
ル計畫ト致シマシテハ之ヲ一箇年間ノ累
積シタ所ノ計數トシテ靜態的ニ考察スルト
云フコトガ必要ニナツテ來ルノデゴザイマ
ス、斯ウ云フ見地カラ致シマスレバ、例.
バ國民所得四百五十億圓、財政及ビ產業資
金ガ三百億圓、國民消費資金ガ百五十億圓、
斯ウ云フヤウナコトニ相成ル次第ナノデゴ
ザイマス、昨日來申上ゲタコトヲ纏メテ御
話申上ゲマスト以上ノヤウナコトニ相成ル
ノデゴザイマス、尙ホ先程申上ゲマシタヤ
ウニ、從來發表致シテ居リマシタ所ノ國民
所得ニ付キマシテハ、、主稅局長ノ方カラ申
上ゲルコトト致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=33
-
034・松隈秀雄
○松隈政府委員 近年ニ於キマシテ國民所
得ガ何程デアルカト云フコトガ問題ニナリ
マシタノハ、昭和十五年ノ稅制改正當時ニ
於テデアリマス、其ノ際政府ハ昭和十四年
ノ國民所得ヲ二百五十五億圓程ニ發表シタ
ノデゴザイマス、是ハ昭和十年ノ國民所得ノ
調査ガ內閣統計局デ出來テ居リマシタノ
デ、ソレヲ基礎トシマシテ以後ノ課稅所得
ノ增加割合ニ依ツテ推算シテ參ツタノデゴ
ザイマス、尤モ昭和十四年ノ二百五十五億
ト云フ國民所得ニ付キマシテハ、內閣統計
局ノ意見モ求メラレタノデアリマスガ、內
閣統計局ニ於テハ、少シ少ナ過ギルト云フ
感ジハスル、併シ何程デアルカト云フコト
ハハツキリ明言出來ナイ、二百五十五億ヲ
下ルヤウナコトハアルマイ、斯ウ云フコト
デアリマシタ、其ノ當時推算ノ基礎ト致シ
マシタノハ豫算デアリマシテ、實績ニ依ツ
テソレヲ訂正シテ見マスルト、實ハ昭和十
四年ノ國民所得ハ二百八十三億圓程度ト見
ルノガ宜カツタカト思フノデゴザイマス、
昭和十五年度ノ國民所得ト致シマシテハ、課
稅所得ノ增加割合ニ依ツテ十四年ノ二百八
十三億ヲ基礎トシテ計算シマスルト、三百
二十億圓程度ニ相成ルノデアリマシテ、十
四年ニ比ベテハ一割三分程度ノ增加ニ相成
ツテ居リマス、昭和十六年度ノ國民所得ノ
推算ハ、未ダ的確ナル資料ヲ得難イノデア
リマスルカラ、推算スル外ナイノデアリマ
スルガ、此ノ場合ニ於キマシテ、從來國民
所得ノ增加シマシタ割合カラ想定シマシタ
比率ヲ掛ケテ假ニ出シテ見ルコトニ致シタ
ノデアリマス、其ノ增加割合ハ、先程モ申
上ゲマシタヤウニ、昭和十五年度ハ十四年
度ニ比シテ一三%位增シテ居リマス、其ノ
モウ一ツ前ノ十四年ハ二百八十三億圓ト致
シマシテ、昭和十三年ノ二百三十二億圓ニ
比ベマスト、約二二%位增シテ居リマス、
ソコデ十六年度ノ所得ノ增加割合ニ付キマ
シテハ、政府資金ノ撒布ノ多イコト及ビ
其ノ從前ノ增加率等ヲ勘案シマシテ、餘リ
多クモ見積ラズ、又餘リ少ナ目ニモ致サナ
イト云フヤウナ所カラ、一割五分程度ト抑
ヘマシテ、十五年ノ三百二十億圓ニ對シテ
一割五分增シテ計算シマスト、昭和十六年
ハ三百六十八億圓ト相成リマス、昭和十七
年ノ見込ミニ對シテモ同ジク前年ニ比シテ
一割五分程度增スモノトシテ計算シマス
ト、四百二十四億圓トナル譯デアリマス、
併シ是ハ一種ノ見込ミデアリマスルノデ、
左樣御諒承願ヒタイノデアリマシテ、大藏
大臣モ他ノ機會ニ於キマシテ、事務當局ハ
假ニ見込ミヲ加ヘテ、四百二十億圓程度ノ
數字ヲ言ツテ居ル、自分ハ達觀モ加ヘテ四
百五十億圓程度デハナイカト思フ、斯ウ云
フ風ニ仰シヤツテ居ル次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=34
-
035・由谷義治
○由谷委員長 一寸承リマスガ、只今ノ初
メノ氏家政府委員ノ御說明ハ大變面倒ナ學
問的ナモノデアツタノデスガ、大體ハ物的
計算方法ニ依ツタト云フ風ニ承リマシタ
シ、アトノ松隈主稅局長ノ御說明ハ所謂人
的計算方法ト云ツタモノニナルト考ヘテ宜
イデセウカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=35
-
036・松隈秀雄
○松隈政府委員 左樣デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=36
-
037・由谷義治
○由谷委員長 サウシマスト、結論的ニ言
フト、人的計算方法ニ依ツテモ、物的計算
方法ニ依ツテモ、大體十七年度ノ國民所得
ハ四百二十億乃至四百五十億、稍〓似タ數字
ガ出ルモノト云フコトニナルノデスガ、サ
ウ考ヘテ宜イデセウカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=37
-
038・氏家清吉
○氏家政府委員 大體サウ云フコトニナル
ノデスガ、先程申上ゲマシタヤウニ、今後
ノ調査ノ結果、多少修正シナケレバナラヌ
ヤウナコトガアルカモ知レヌト云フコトヲ
御諒承願ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=38
-
039・由谷義治
○由谷委員長 丁度多少ノ修正ガ四百二十
億圓ト四百五十億圓トノ間ニ相當ノ開キガア
ルカラ先ヅ一致スル結果ト私ハ考ヘタイノ
デス、私ノ意見ハドウデモ宜イノデスガ、ソ
レデ今直チニ彼此レノ議論ハ差控ヘマスガ、此
ノ國民ノ立場カラ痛切ニ考ヘラレルコトハ、
極メテ大雜把ナ常識的ナ判斷ニシカ過ギマ
セヌガ、兎ニ角四百五十億圓ノ國民所得ダ、
其ノ內容ハ法人ガ幾ラ個人ガ幾ラカ分ラヌ
ガ、併シ大體生活消費ノ方面ニ於テハ、大
部分個人ニ行クモノダト云フ御說明ヲ基礎
ニシテ考ヘマスト、四百五十億圓ノ內、三
百億圓ガ國家資金ニ吸收サレル、百五十億
圓ガ生活資金ニ殘ル、昨日谷口次官ノ說明
デ此ノ國民所得ノ範圍ハハツキリシタ、詰
リ內外地ヲ通ジテノ所得ト云フコトデアリ
マシタカラ、具體的ニ言フト一億人、億
人ガ百五十億圓デ暮シテ行クト云フノデス
カラ、一年一人ノ生活費ガ平均シテ百五十
圓、サウシマスト、今日ノ物價其ノ他ノ關
係デ一人一箇年ノ生活費ガ百五十圓デヤツ
テ行ケルモノカドウカト云フ其ノ問題ガ、
何時デモ貯金運動ヲシマシテモ、色ンナ財
政論ノ話ヲシテモ、國民自體ニビント來ル
問題トシテノ焦點ニナル譯デス、是ハ良イ
モ惡イモナイイ、サウナツテシマヘバ國家
要請デアルカラ仕樣ガナイモノダガ、政府
ノ立場デ、是ハ此處デ聽クノハ隨分御無理
ト思ヒマスガ、昨日今日ノ御說明ヲ取纏メ
タ結論トシテ、結局國民個人ノ立場デ言ヘ
バ、金持モ金持タズモ、一年平均一人ガ百
五十圓ノ生活費デ何トカヤツテ行カナケ
レバナラヌモノダト云フコトニナルヤウニ
思ハレマスガ、其ノ考ヘ方ハ正シイデセウ
カ、其處ニ又相當ナ餘裕ガ別ナ方法手段デ
考ヘラレテ宜イモノデセウカ、其ノ邊ニ關
スル御意見ヲ一ツ拜聽シタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=39
-
040・氏家清吉
○氏家政府委員 總國民所得ノ內百五十億
圓ダケガ國民長期資金トナル、斯ウ云フコ
トニナリマスルガ、ソレガ大部分個人ノ消
費ニ使ハレル、斯ウ前提シマスト、御話ノ
ヤウニ內外地ヲ通ジマシタ人口一億デ割ツ
テ見マスルカラ、年額百五十圓ト云フコト
ニナルノデゴザイマス、併シナガラ、億
人ノ中ニハ年寄モゴザイマス、赤ン坊モア
リマス、ソレカラ朝鮮、臺灣等相當ノ數ニ
上ル人達デ可ナリ低イ程度ノ生活ヲシテ居
ル人モアルノデアリマス、尙ホ國民所得ト
シテハ見積ツテ居ラナイ現物ノ所得ト云フ
ヤウナモノヲ生活ノ資ニ充テテ居ル者モア
リマスシ、更ニ今日ニ於キマシテハ其ノ
年ニ新タニ生ズル所得ノ外ニ、過去ノ蓄積
ノ中カラ多少崩シテ生活ノ助ケニシテ居ル
ト云フヤウナ部面モアルダラウト思ヒマス
ルカラ、大體此ノ程度デ生活ヲヤツテ行ク
コトガ出來ルノデハナイカト思フノデゴザ
イマス、尙ホ百五十億ト申シマスト非常ニ
低イヤウデアリマスガ、私共ノ計算ハ總テ
公定價格アルモノハ公定價格ニ依ツテ計算
ヲ致シテ居ルノデアリマシテ、是ガ又闇相
場ト云フヤウナモノヲ考慮ニ入レロト云フ
コトニナリマスレバ、國民所得其ノモノノ
額モ增加致シテ參リマスシ、隨テ生活資金
モ亦增加スル、斯ウ云フヤウナ結果ニナル
ト思ヒマスカラ、大マカナ見當ト致シマシ
テハコンナコトデ宜シイノデハナイカト云
フ風ニ考ヘテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=40
-
041・由谷義治
○由谷委員長 有難ウゴザイマシタ、ドナ
タカ之ニ關聯シテ御質問ガアレバ此ノ際御
發言願ヒマス、尙ホモウ一點委員長カラ關
聯シテ質問致シマスガ、今年度ノ貯金運動
ノ目標二百二十億圓ハ大體動カヌ數字ト思
ヒマスガ、是ハ國民所得ノ計算ガ內外地ヲ
一貫シタモノデアル建前カラ云ツテ、今年
度ノ貯金運動ハ朝鮮、臺灣等ノ外地ニモ二
百二十億圓ノ何分ノ一カガ一種ノ割當ノヤ
ウナ貯金目標トシテ運動ガ始メラレルコト
ニナルノデセウカ、其ノ邊ノ御心構ヘガア
レバ伺ツテ置キタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=41
-
042・氏家清吉
○氏家政府委員 十七年度ノ貯蓄增加目標
額二百二十億圓ハ、只今委員長ノ御話ノヤ
ウニサウ確定シタモノデハナイト云フコ
トニ、大藏大臣カラモ申上ゲテアル筈デゴ
ザイマスガ、假ニ二百二十億圓ト致シマス
レバ、是ガ達成ノ爲ニハ朝鮮、臺灣等ノ外
地ノ方々ニモ勿論應分ノ御後援ヲ得ナケレ
バナラナイ譯デアリマス、割當ト申シマシ
テハ語弊ガアルカモ知レマセヌガ、サウ決
マリマシタ上ハ、大體ノ豫定ノ目標ヲ示シ
マシテ、ソレニ向ツテ奬勵運動ヲ進メテ行
クト云フ風ニヤツテ行ク積リデゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=42
-
043・松田正一
○松田(正)委員 念ノ爲ニ聽イテ置キマス
ガ、人的ト物的トノ御話、國民所得カラ言
フト此ノ國民貯蓄ト云フ部門ハ國民ノ所得
カラ是ハシナケレバナラナイモノダト思フ、サ
ウスルト百五十億ヲ消費シテシマフト云フコ
トデハ-氏家次長ハ國民貯蓄奬勵局次長
ナンダカラ、國民貯蓄ト云フコトト所得ト
ノ關係アルモノトシテ御話シタノデアリマ
スガ、二百二十億ノ貯蓄ノ金モ所得カラ來
ル、百五十億ノ消費スル金モ是ハ貯蓄ニナ
ツテ行クノデハナイカ、二百二十億ノ中ニ
此ノ物的消費ヲスル百五十億ヲ含ンデ居ル
ノカドウカ、ココノ所ガハツキリシナイヤ
ウニ思フノデスガ、之ニ對スル御意見ヲ伺
ツテ見タイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=43
-
044・氏家清吉
○氏家政府委員 申上ゲテアリマス國民所
得ト云フ意味ハ一年間ニソレダケノ利用價
値アル物資或ハ勞力、「サービス」ト云ツタヤ
ウナモノガ生產サレル、斯ウ云フ意味ノモ
ノデゴザイマス、其ノ中ノ百五十億ト云フ
ノガ國民ノ生活ノ爲ニ消費サレテシマフ、
殘リノ方ハ或ハ國家ガ財政資金トシテ使
ヒ、或ハ產業方面ニ於テ之ヲ生產資金トシ
テ使フ、斯ウ云フ風ニ申上ゲテアルノデア
リマス、ソレト昨日御話ノアリマシタ百五
十億圓ガ使ハレテモ尙ホ金ガ殘ル、ソシテ
ソレガ貯蓄ニナルノダト云フコトノ區別ヲ
先程申上ゲタヤウナ次第デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=44
-
045・松田正一
○松田(正)委員 ドウモ御答ヘガ私ニハ分
リマセン発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=45
-
046・三木武夫
○三木委員 關聯シテ一言伺ヒマスガ、今
委員長トノ質問應答ニ依ツテ大體國民ノ頭
割ニシテ見ルト、一年ノ生活費ガ百五十圓
ト云フ數字ガ出テ來タ、貯金局長ハソレハ
闇ガ入ツテ居ナイトカ、色々物質的生產デ
國民所得ノ中ニ入ツテナイモノガアルト云
フ御話デスガ、大體ニ於テ貯金局長ノ計算
ノ中ニハ、生產ガ國民所得ノ中ニ入ラナケ
レバナラヌコトニナツテ居ル、ソレカラ拔
ケテ行クモノハ割合ニ少イチノダト思フノ
デス、サウスルト非常ニ今年度ノ資金計畫ト云
フモノヲ成就スル爲ニハ、徹底的ニ國民ノ
生活程度ト云フモノヲ切下ゲナケレバ
ソレガ國民ノ消費ガ政府ノ大體ノ百五十億
ト云フ程度デ抑ヘラレナイトスルナラバ、
ソレガ公債消化ニモ直チニ影響シテ來ル、
ソレガ資金ニモ割込ンデ來テ、結局資金計
畫ト云フモノガ非常ニ豫定通リニ行カナイ
ト云フコトニナル、併シ一方生產擴充トカ、
政府ノ公債消化ノ國家的要請ト云フモノガ
絕對的ノモノデアルトスルナラバ、ドウシ
テモ國民生活費ヲ政府ノ計畫通リニ、其ノ
近イ數字ニ切下ゲル必要ガアル、然ルニ色
色ナ點ヲ考慮シテ見テモ百五十億ト云フ國
民消費資金ト云フモノハ、色々ナアナタノ
御說明ニナツタ理由モアリマセウケレドモ、
餘程徹底シタ所ノ改善ヲシナケレバ其ノ數
字通リニハ行カナイダラウト先ヅ想像ガ出
來ル、併シ一方ニ於テ國家ノ資金計畫ヲ成
就サセル爲ニハドウシテモ其ノ程度デ生活
ヲ抑ヘナケレバナラヌノダトスルナラバ、
政府ハ本年度ニ於テ國民生活ト云フモノヲ
其ノ資金計畫ニ合致サス爲ニドウ云フ風ニ
シテ指導シテ行クカ、或ハ國民ノ最低生活
ト云フモノヲドウ云フ所ニ、政府ハ戰時國
民生活ノ一ツノ規格トシテ抑ヘテ居ルノ
カ、又ソレヲ現實ニ履行サス爲ニ、ドウ云
フ方法ヲ執ツテ此ノ困難ナ資金計畫ヲ成就
サセナケレバナラヌシ、出來ルト云フ確信
ヲ持ツテ居ルカ、サウ云フコトニ付テノア
ナタノ御意見ヲ承ツテ置キタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=46
-
047・氏家清吉
○氏家政府委員 段々御話申上ゲマシタ
通リ、豫定ノ通リニ國債消化ヲシ、生產擴
充モシテ行クト云フ計算上、ドウシテモ百
五十億圓マデノ所デ國民ニ生活シテ貰ハナ
ケレバナラヌ、斯ウ云フコトニナルノデゴ
ザイマスガ、ソレハ相當低イモノノヤウニ
思ハレル、ソレガ爲ニハ餘程戰時生活ト云
フモノノ基準ヲ示シテ、サウシテ何處マデ
モ之ニ準據サセル方策ガナケレバナラヌダ
ラウ、斯ウ云フ御話デゴザイマシタ、是一
非常ニ御尤モナコトデアルト思フノデアリ
マイ、但シマダ一人當リ百五十圓ト云フ程
度、是ガ大體東京ノ者ガ平均ニナリマス爲
三、東京ノ人デアレバドノ程度ノ生活ニ
ナラナケレバナラナイカ、農村ノ人デアレ
バドノ程度ノ生活ニナラナケレバナラナイ
カ、町村ノ人デアレバドノ程度ノ生活ニナ
ラナケレバナラナイカト云フヤウナ所マデ
分ツテ居リマセヌノデ、ハツキリシタコト
ヲ申上ゲルコトガ出來ナイノデアリマスガ、
兎ニ角今マデヤツテ來タヤウナ生活ヨリハ
餘程切詰メタモノデナケレバナラナイト
云フコトハ間違ヒナイモノト思フノデアリ
マス、隨ヒマシテ現在厚生省、或ハ商工省、
或ハ大藏省其ノ他關係ノ所デソレ〓〓戰時
生活ノ基準ト云フヤウナモノヲ調査致シテ
居ルヤウデゴザイマスガ、何レ是ハ政府ト
シマシテモ纒マツタ一ツノ結論ヲ得マシテ、
之ヲ今後ノ貯蓄奬勵ノ上ニ大イニ活用シテ
行カナケレバナラヌダラウト思フノデアリ
マス、併シ實際問題ト致シマシテ或ル基準
ガ得ラレタト致シマシテ、之ヲドウ云フ風
ニ貯蓄奬勵ノ上ニ活用シテ行クカ、國民生
活指導ノ上ニ利用シテ行クカト云フコトハ
非常ニムヅカシイ問題ナノデゴザイマスケ
レドモ、ヤラナケレバナラヌト云フコトダ
ケハ、確カデゴザイマスカラ目下ソレ〓〓
ノ方面ニ於テ、調査ヲ急イデ居ルヤウナ次
第デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=47
-
048・由谷義治
○由谷委員長 ゾレデハ本日ハ此ノ程度デ
散會致シマス、次會ハ明後日午後一時カラ
開會致シマス、尙ホ明後日ハ午後一時ニ大
藏大臣ガ出席スルサウデスカラ、川俣君、
深澤君、石坂君、此ノ三君ノ大藏大臣ノ質
問ガ留保サレテ居リマスノデ、此ノ三君ハ
一ツ早々御出席ヲ願ヒマス
午後四時十分散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912838X00419420207&spkNum=48
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。