1. 会議録本文
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000・会議録情報
會議
昭和十七年一月二十六日(月曜日)午前十時二十五分開議
出席委員左の如し
委員長 板谷順助君
理事 飯村五郎君 理事 田村秀吉君
理事 中田儀直君 理事 長井源君
理事 坂東幸太郎君 理事 龜井貫一郎君
理事 本田英作君
井阪豐光君 大口喜六君
太田理一君 菊池良一君
木暮武太夫君 鈴木英雄君
武田徳三郎君 豐田豐吉君
豐田收君 内藤正剛君
中島彌團次君 仲井間宗一君
南雲正朔君 西村金三郎君
廣川弘禪君 堀内良平君
松方幸次郎君 山本粂吉君
矢野庄太郎君 石坂豐一君
世耕弘一君 河合義一君
三輪壽壯君 粟山博君
田中耕君
一月二十六日三輪壽壯君の理事辭任に付其の補闕として龜井貫一郎君理事に當選せり
出席國務大臣左の如し
大藏大臣 賀屋興宣君
出席政府委員左の如し
大藏省銀行局長 山際正道君
大藏省爲替局長 原口武夫君
大藏省會社部長 田中豐君
大藏書記官 伊原隆君
預金部長官 相田岩夫君
本日の會議に上りたる議案左の如し
日本銀行法案(政府提出)
戰時金融金庫法案(政府提出)
臨時資金調整法中改正法律案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=0
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001・板谷順助
○板谷委員長 是ヨリ會議ヲ開キマス、此
ノ際資料ノ御要求ノ方ハ申出ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=1
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002・本田英作
○本田(英)委員 是ハ簡單ナコトデスガ、
外國爲替管理法ニ基イテ昭和十三年以降個
人若シクハ會社ノ申請ニ基イテ、大藏大臣
ガ外國ニ現金輸出ヲ許可シタモノニ付テ、
各年度別竝ニ各國各地別ニ其ノ金額ヲ一ツ
表示シテ戴キタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=2
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003・板谷順助
○板谷委員長 外ニ御要求ハアリマセヌカ、
此ノ際御諮リヲ致シマス、三輪君ハ理事ヲ
辭任サレマシタノデ、理事ノ補關選擧ヲ行
ハネバナリマセヌガ、先例ニ依リマシテ委
員長ヨリ指名スルコトニ御異議アリマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=3
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004・板谷順助
○板谷委員長 御異議ナシト認メマス、ソ
レデハ龜井貫一郞君ニ御願ヒ致シマス
是ヨリ質疑ニ入リマスガ此ノ際諸君ニ御
諒解ヲ得テ置キタイト思フノデアリマス、
御承知ノ通リ本案ニ對シテハ出來得ルダケ
審議ヲ盡シタイト云フコトハ昨日申上ゲタ
通リデアリマスガ、委員ノ數モ多イコトデ
アリマスルノデ、成ベク質問ハ簡潔明瞭ニ
重複ニ亙ラザルヤウニ、質問ナサル方ハ成ベ
ク議席ヲ保ツテ戴キタイ、之ヲ豫メ御願ヒ
申上ゲテ置キマス、是ヨリ通〓順ニ依ツテ
質問ヲ御許シ致シマス--田村秀吉君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=4
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005・田村秀吉
○田村委員 私ハ二、三日本銀行法案ト戰
時金融金庫法案ニ付テ質シタイ點ヲ有シテ
居ルノデアリマスガ、極メテ大要ニ付テ大
藏大臣ノ考ヘ方、御方針ヲ承ツテ、改正案
ガ成立スルトスレバ其ノ運用ニ付テノ方法
ヲ此ノ際言明シテ戴キタイト云フ點デアリ
マスノデ、私ノ質問ハ大臣ガ御出席ノ時ニ
致シタイト思フノデアリマス、最初ニ大臣
ガ出ラレヌデハ、コチラハ極力促進致シタイ
ト云フ考ヘデアツテモ、根本ガ正サレナケ
レバ審議ヲ進メニクイト思フノデアリマス
カラ、委員長ニ於カレテ、極力時間ノ御都合
ヲ願ツテ大臣ノ御出席ニナルヤウニ御取計
ラヒ願ヒタイ、私ハソレマデ、私ノ質問ハ
保留致シテ置キタイト思フノデアリマス、
預金部長官ハオ見エデセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=5
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006・板谷順助
○板谷委員長 マダオ見エニナリマセヌ
ガ、田村君ニ申上ゲマスガ、實ハ大臣ノ出
席ヲ要求シタノデアリマス、御說ノ如ク初
マリハ大臣ガ出テ、能ク質疑應答スルコト
ガ審議ヲ滑ラカニスル上ニ於テ適當デアル
ト考ヘタノデアリマスガ、午前中ハ豫算總
會ノ軍事豫算ノ爲ニドウシテモ出ルコトガ
出來ナイト云フコトデアリマス、恐ラクハ
午後ニハ何トカ御差繰ガ出來ルト考ヘルノ
デアリマス、左樣御承知置キヲ願ヒタイ、
只今銀行局長、會社部長ガオイデニナツテ
居リマスカラ、此ノ方ニ對スル何カ御質問
ガアツタラ御質問ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=6
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007・粟山博
○粟山委員 私ハ議事進行ニ付テ一言致シ
マス、私共實ハ多年議會ノ經驗ヲ持ツテ居
リマス、委員ガヨク大臣ニ質問ヲ要求サレ
マスガ、御尤モノコトデアル、併シ中々斯
ウ云フヤウナ非常時議會ニ當ツテハ大臣モ
御多忙デアルコト察スルニ餘リアルノデア
リマス、要スルニ委員會ガ委員會ノ權威ニ
於キマシテ政府當局ニ質問スルニ當ツテハ、
所謂政府ニ質問スルノデアリマス、御答辯
モ隨テ政府ノ權威トシテ行ハルルコトト私
ハ信ジマスカラ、ドウカ時間ヲ利用シテ、
此ノ非常時議會ニ卽應スルヤウナ眞劍ナ、時
間ヲ極度ニ利用スル審議ヲ進メラレルコト
ヲ私ハ切望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=7
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008・板谷順助
○板谷委員長 承知致シマシタ、出來ルダ
ケ御期待ニ副フヤウニ計ラヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=8
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009・田村秀吉
○田村委員 預金部長官ニ一點ダケ承ツテ
置キタイト思フノデアリマスガ、ソレハ戰
時金融金庫法案ニ依ツテ、日本協同證劵株
式會社ガ金融金庫ノ方ニ統合セラレルト云
フコトニナリマスガ、此ノ統合スルニ付テノ
協同證劵ノ善後處置ヲドウスルカト云フコ
トガ問題ダト思フノデアリマス、其ノ前提
トシテ協同證劵ノ資本金五千万圓、此ノ協
同證劵ガ有價證劵ノ市價ノ安定ノ爲ニ相當
最近活動シテ居ツタコトハ私共之ヲ認メル
ノデアリマスガ、大東亞戰爭勃發前ニ、其
ノ低落ヲ抑ヘル爲ニ預金部カラ相當金額ガ
融資セラレテ、最近ハ株價ガ上ツテ行クト
云フノデ、之ヲ賣リニ出テ、相當利益ヲ協
同證劵ガ收メテ居ルト思ヒマスガ、其ノ預
金部資金ヲドノ程度ニ協同證劵ニ融資シテ
居ラレマスカ、其ノ金額、ソレカラ最近ノ
賣リニ出タ爲ニ、協同證劵ガ得テ居リマス
利益金ノ大體ノ見込額ガ御分リデシタラ御
發表願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=9
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010・相田岩夫
○相田政府委員 日本協同證劵ノ株價維持
ノ資金ニ付キマシテハ、株金ノ拂込ミニ依
ルモノノ外ハ、總テ興銀ニ對スル融資命令
ニ依リマシテ之ヲ融通シテ居リマスノデ、
預金部カラハ同會社ニ對シマシテハ全然資
金ヲ供給致シテ居リマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=10
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011・田村秀吉
○田村委員 其ノ融資命令ニ依ツテ興銀カ
ラ融通シテ居リマス金額ハ分リマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=11
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012・相田岩夫
○相田政府委員 現在マデニ出シテ居リマ
スモノハ、三千數百万圓ニ過ギナイ狀態デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=12
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013・田村秀吉
○田村委員 最近世間ニハ、協同證劵ハ安
イ時ニ相當買ツテ、其ノ後大東亞戰爭勃發
後非常ニ賣リニ出タ、隨テ其ノ利鞘ガ相當
ニアルト云フコトガ傳ハツテ居リマス、隨
テ此ノ協同證劵ヲ戰時金融金庫ガ統合スル
場合ニ、假ニ利鞘ガ相當額アツタトスルナ
ラバ、此ノ處置ヲドウスルカト云フコトガ
世間ノ注目スル所デアルト思フノデスガ、
融資命令デ三千五百万圓融通シテ居ラレル、
其ノ後ノ市價安定ノ行動ニ依ツテドノ程度
ノ利益ヲ收メテ居ルカ、是ハ計算ダケノ問
題デハイカヌト思フノデスガ、大體ノ見込
額ガ御分リデシタラ御願ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=13
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014・田中豐
○田中政府委員 協同證劵ガ最近株價ガ上
リマシタニ付キマシテ、相當利益ヲ擧ゲテ
居ル、ドノ位利益ヲ擧ゲテ居ルカト云フ御
質問ダト承知致シマスガ、大東亞戰爭勃發
以來或ル程度ノ利益ガ擧ツテ居ルカト考ヘ
やく、併シ此ノ金額ハマダ分リマセヌシ、
或程度ノ利益ヲ擧ゲテ居ルトハ豫想サレマ
スガ、締切ヲヤツテ居リマセヌシ、又其ノ
金額ヲ正確ニ申上ゲルコトハ困難ナ事情ニ
アリマスノデ申上ゲ兼ネマス、ソレカラ相
當利益ガアツタト假定致シマシテ、戰時金
融金庫ニ統合セラルル際具ノ處置ヲドウス
ルカト云フ問題デアリマスガ、是ハ利益金
ノ中カラ株主其ノ他ニ、或ル程度ノ相當額
ノ配當ト云フ問題ハアルカト思ヒマスガ、
殘ツタ金ハ全部戰時金融金庫ニ引繼グ、斯
ウ云フ考ヘデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=14
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015・田村秀吉
○田村委員 今ノ御說明ニ依ルト、或ル程
度ハ株主ニ對シテ配當スル、其ノ程度ハ問
題デスガ、殘ツタモノハ金融金庫ニ其ノ儘
之ヲ受繼グト云フコトデスガ、私ハ金融金
庫ニ受繼グノハ宜イト思フノデス、ト云フノ
ハ是ハ資本金ガ五千万圓デアツテ、其ノ資
本金ニ依ツテ安定工作ヲ圖ツタ場合ニ、損
失ガアツタト云フ場合ニハ協同證劵株式會社
ノ損ニナツテ居ル、サウ云フ點ガアリマス
ガ、併シ融資命令ニ依ツテノ三千万圓ナ
リ、或ハ多イ場合ニハ何億ト出ルノデスガ、
其ノ補塡ハ國家ガ保證シテ居ル、ソコデ從
來ノ建前デハ國家ノ危險負擔ニ於テ有價證
劵ノ安定工作ヲ講ジテ居ル、ソレガ偶〓利益〓
ガアツタト云フ場合ニハ、是ハ、其ノ利益ノ
全部トハ行カヌデモ、大體ノ大本ハ其ノ利
益ガアツタモノハ之ヲ國家ニ納付セシムル
ト云フコトガ建前デナケレバナラヌト思フ
ノデスガ、サウ云フ意味デ金融金庫ニ引
繼ガレルノデアリマスカ、ソレカラ相當
額ノト云フノデスガ、其ノ相當額ノ基準、
株主ニ配當セラレル今ノ御言葉ノ中ニアリ
マス方針ガオアリデゴザイマシタラ御伺ヒ
シタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=15
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016・田中豐
○田中政府委員 御尤モデゴザイマシテ、
協同證劵ガ偶〓或ル程度ノ利益ヲ擧ゲタト致
シマシテモ、其ノ背景トシテ國家ガ總テヲ
「バック」致シマシテ、サウ云フ利益ヲ現在
擧ゲテ居ル譯デアリマスカラ、普通ノ商法
上カラ言ヘバ、利益ハ全部株主ニ歸屬致ス
ベキ筋ノモノデアリマスガ、サウ云ツタヤ
ウナ國家ノ政策ニ依ツテ國家ノ總テノ支援
ヲ受ケテ今日ノ狀況ニナツテ居ルモノデア
リマスカラ、大體ノ方針トシテソレヲ戰時
金融金庫ニ引繼グコトガ當然デアルト思フ
ノデアリマス、併シナガラ又一面ニ於テ株
主ハ相當ノ資本ヲ出シテ居リマス、又設立
以來一囘モ利益ノ分配ニモ預ツテ居ラナイ
ノデアリマスカラ、其ノ出資致シマシタ金
額ニ對スル利子程度ノモノヲ此ノ際配當ス
ルコトハ如何デアラウカ、斯樣ニ考ヘテ居
ルヤウナ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=16
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017・田村秀吉
○田村委員 大體了承致シマシタ、アトハ
大臣ガ御出席ノ際マデ保留致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=17
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018・板谷順助
○板谷委員長 武田德三郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=18
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019・武田徳三郎
○武田委員 質疑ニ入ルニ先ダツテ參考資
料ヲ此ノ機會ニ御願ヒシテ置キタイト思ヒ
やく、昭和十二年末カラ十六年末ニ至ル各
年末ノ保證準備ノ中、國債ヲ準備シテアル
其ノ數額ヲ承知シタイノデアリマス、其ノ
次ニハ昭和十三年ヨリ十六年ニ至ル間各年
各月ノ國庫支拂超過額トソレニ應ジタ國民
貯蓄增加額ノ比較ヲシタモノヲ一ツ御示シ
ヲ願ヒタイト思ヒマス、其ノ次ニハ最近ノ
日本銀行ノ考課狀ノ寫シ、全部ガ困難デア
リマシタラ其ノ要點ダケデ結構デアリマ
ス、ソレカラ其ノ次ニモウ一ツ御願ヒシタ
イコトハ、昭和十二年カラ十六年ニ至ルマ
デノ間ノ各年ノ產業別ノ產業資金ノ供給高
ノ調ヲ御願ヒシタイト思ヒマス、以上デア
リマス
私ノ政府ニ御伺ヒ申シタイコトハ、主ト
シテ大藏大臣ニ伺ヒタイコトガ多イノデア
リマスルケレドモ、事務的ニ亙ル問題ダケヲ
政府委員カラ伺ツテ置キタイト思ヒマス、
此ノ度ノ日本銀行法ノ制定ニ取ツテ一番重
大ナ點ハ、管理通貨制度ヲ採用セラレタル
點デアルト思ヒマス、其ノ管理通貨制度ノ
決定ニ對シテ、是ハ政策上ノ問題モアリ、
又學理上ノ問題モ伴フ問題デアリマシテ、
之ニ付テハ詳細ニ大藏大臣ノ意見ヲ伺ヒタ
イト思ツテ居ルノデアリマスガ、唯此ノ管
理通貨ノ運用ニ伴ツテ事務的ニ最モ重大ナ
ル問題ハ、其ノ通貨ノ數量ヲ如何ニシテ調
整スルカト云フ技術上ノ問題ダト思フノデ
アリマス、殊ニ戰時ノ如キ異例ノ場合ニ於
テハ、極メテ是ハ困難デナイカト思ハレル
ノデアリマス、現ニ政府ハ昨年事實上ノ通
貨管理ヲ御實行ニナツタ場合ニ、其ノ發行
額ノ數量ハ政府ガ定メルト云フコトデ、慥
カ四十八億圓ト御決定ニナツタト思フノデ
アリマス、然ルニ昨年ノ十二月ハ六十餘億
モ通貨ガ發行サレテ、ツレガ總テ限外發行
トナツテ居ル、其ノ結果其ノ限外發行ニ付
テハ政府ニ稅ヲ納メナケレバナラヌ、限外
發行ニ對シテ政府ニ稅ヲ納メルト云フコト
ハ、言葉ヲ換ヘテ申セバ、資金ノ「コスト」ガ
高クナルト云フコトデアルノデアリマス、
戰時財政トシテ最モ重要ナル點ハ、低金利デ
ナケレバナラヌ場合ニ於テ、此ノ發劵ノ作
用ニ依ツテ、詰リ大藏大臣ガ適當ト認メラレ、
タコトハ、實際カラ見レバ大藏大臣ガ四十
八億ト決定ニナツタト云フコトハ、實情ニ
卽サナカツタト云フコトヲ表明スルモノデ
アリマス、卽チ此ノ發劵業務ニ對シテノ行
政手段ノ過チト申スト語弊ガアリマスガ、
其ノヤリ方如何ニ依ツテハ低金利ト矛盾シ
タ結果ヲ生ズルト云フコトハ極メテ重大ナ
コトデアルノデアリマスガ、政府ノ今マデ
ヤラレタル所ニ依リマスルト、其ノ決定ノ
方法ハ、財政ノ模樣トカ、物價ノ事情等ニ
依ツテ是ガ決定スルノダト云フコトヲ昨年
ノ春ノ議會ニ言ハレタヤウニ思フノデアリ
マス、甚ダソレハ漢トシタコトデアツテ、
其ノ結果現ニ昨年ノ暮ミタヤウナコトガ將
來ニ於テモ往々ニシテ起ルノヂヤナイカ、
ドウ云フ工合ニソレヲ決定ナサルカト云フ
コト、ドウシタラ財界ノ實情ニ最モ適應ス
ルカト云フコトハ、極メテ是ハ困難ナ技術
ダト私ハ思フノデアリマス、元來ソレニ正
確ナ客觀的標準ガアリマスルナラバ、是ハ
洵ニ結構ダガ、唯腰ダメ的ニヤリマスルト
云フト、通貨ノ數量ヲ先ニ大藏大臣ガ定メ
ルト云フコトハ、通貨ノ供給ヲ先ニ定メテ
掛ルコトデアリマスルカラ、是ハ逆ノコト
デハナイカ、通貨ノ流通ノ方ガ先ニ定マツ
テ、ソレニ應ジテ通貨ヲ發行スルト云フノ
ガ順序デアルノニ、先ニ供給ヲ定メテ掛ル
ト云フコトハ、私ハ金融疏通ノ途ヲ逆ニ行
クコトニナリハシナイカト云フ風ニモ實ハ
考ヘラレルノデアリマス、之ニ向ツテ大藏
省デ今日マデ御取扱ヒニナツタ方法、竝ニ
將來ニ向ツテ財界ノ要求ト發劵ノ數量トヲ
適當ニ「マッチ」セシムル方法ニ付テノ御考
ヘ方ヲ一ツ承リタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=19
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020・山際正道
○山際政府委員 只今御話ノアリマシタル
ガ如ク、現在ノ金融經濟情勢ノ下ニ於キマシ
テ通貨ノ調節ヲ圖ル、又最モ經濟界ニ適應
シタ通貨量ノ放出ヲ行フト云フコトハ、實
ニ現在ノ經濟問題ノ中心トナルベキ重要ナ
ル問題ト考ヘテ居リマス、昨年ノ春ノ議會
ニ於キマシテ、臨時立法ト致シマシテ、政
府ニ於キマシテハ、從來ノ金本位制度カラ
離脫致シマシテ、一種ノ所謂管理通貨制度
ヲ採用致シテ、此ノ一年間ソレニ依リマシ
テ運行致シタノデアリマス、其ノ際ニ於テ
然ラバ通貨調節ノ目安ヲ何處ニ置イタカ、
又如何ナル方法ニ依ツテ通貨ノ調節ヲ圖ツ
タカト云フ點ニ付キマシテハ、私共ノ考
ヘテ居リマスル所デハ、通貨ノ調節ト云フ
コトガ只今申上ゲマシタルガ如ク、實
ニ現在ノ金融經濟ノ中心的問題デアル
ト云フコトノ反面ト致シマシテ、中々是ハ
日本銀行ダケノ機能ニ依ツテ適當ノ調節ガ
出來ルモノトハ實ハ考へテ居ナイノデアリ
マス、申スマデモナク今日貯蓄ノ奬勵、
其ノ他、更ニ進ンデハ其ノ貯蓄ノ奬勵、資
金ノ蓄積ヲ促スガ爲ノ國民ノ生活方式ニ對
スル各種ノ問題トカ、ソレ等廣ク各般ノ問
題ガ綜合サレテ、ソレ等ノ綜合サレタ力ニ
依ルニアラズンバ、通貨ノ調節ト云フコト
ガ現實ニハ行ハレナイ情勢デアル、左樣ナ
風ニ理解シテ居ルノデゴザイマス、隨ヒマ
シテ昨年新シイ立法ニ依リマシテ、大體昭
和十六年中ノ目安ト致シマシテ、四十七億
圓ト最高限度ヲ決定致シタノデアリマスル
ガ、其ノ四十七億圓ヲ一應ノ目標ト致シマ
シテ、通貨ヲ調節スルニ當リマシテハ只
今申上ゲマシタ如ク實ニ百般ノ施策ヲ此
ノ點ニ集中致シマシテ、專ラ適當ニ通貨ヲ
供給スルコトニ努メテ參ツタノデゴザイマ
ス、御話ノ如ク昨年ノ暮ニ於キマシテハ、
六十億餘ノ兌換劵ノ發行ヲ見ルニ至ツタノ
デアリマスケレドモ、當時四十七億圓ト定
メマシタ根據ハ、實ハ大體年末ニ於キマシ
テ制限外發行ヲ見ルコトハ已ムヲ得ナイ、
年末ノ取引資金ノ需要ガ旺盛ニナル爲ノ限外
發行ハ已ムヲ得ナイトシテ、ソレマデハ大
體四十七億圓限度デ行キタイ、斯樣ナ見地
ニ於テ四十七億圓ト決定致シタノデアリ
マス、其ノ結果昨年ノ十一月末ニ於キマシ
テ多少ノ限外發行ヲ見マシタケレドモ、併
シ大體ニ於テ當初吾々ガ考ヘマシタ四十七
億圓限度ト云フモノガ維持サレテ參ツタヤ
ウニ思フノデアリマス、年末ニ於キマシテ
只今申上ゲマシタ程度ノ金額ガ增發セラレ
マシタコトハ、是ハ或ル程度ハ旣ニ豫想致
シテ居ツタ所デゴザイマシテ、其ノ結果ト
シテ四十七億圓ノ限度ハ低キニ過ギタト
カ、或ハ豫定以上ニ通貨ヲ多量ニ放出シ過
ギタトカ、斯樣ナ感想ハ實ハ未ダ持ツテ居
ナカツタノデゴザイマス、尙ホ制限外發行
ヲ年末ニ於テ多額ニ致シマシタ結果、ソレ
ガ制限外發行稅トノ關係ニ於テ、一般ノ金
融市場ノ資金「コスト」ヲ高メハシナカツタ
カト云フ御懸念デアリマス、此ノ點ニ付キマ
シテ日本銀行現在ノ運營ハ、申スマデモナク
制限外發行稅ヲ課シマシタカラト申シマシ
テ、格別貸出利率ヲ引上ゲル譯デモゴザイ
マセヌシ、實際上カラ申シマスト、制限外發
行稅ニ依ル通貨調節ノ機能ト申シマスルモ
ノハ、ソレ程銳敏ニハ動イテ居ラヌト思フ
ノデアリマス、隨ヒマシテ今囘ノ法律ニ於
キマシテハ、御覽ノ通リ制限外發行稅ト云
フ制度ヲ廢メマシタ、直接ソレガ資金「コス
ト」ノ引上ニ影響ヲ持ツトハ實際上思ヒマセ
ヌケレドモ、尙ホ制限外發行稅制度ノ起リ
マシタ所以ガ、之ニ依ツテ資金ノ放出ヲ調
節シヨウト云フ制度デゴザイマスカラ、左
樣ナ制度ハ此ノ際トシテハモウ必要ハナカ
ラウト云フコトデ、實ハ只今御審議ヲ願ツ
テ居リマスル法律案ニ於キマシテハ、制限
外發行稅ノ制度ヲ廢メタノデゴザイマス、
然ラバ今囘ノ法律ニ於キマシテモ、又先程
申上ゲマシタ昨年春御決定ヲ願ヒマシタ新
規立法ニ於キマシテモ、所要通貨ノ最高發
行高ヲ大藏大臣ガ決メルト云フノハ果シ
テ如何ナル根據ニ於テソレヲ決定スルモノ
デアラウカ、是ハ非常ニ困難ナコトデアル
ガ、場合ニ依ツテハ寧ロ他ノ要素ガ發行高
ヲ限定スルノデアツテ、兌換劵發行高トシ
テ現ハレルモノハ、寧ロ他ノ各種ノ要求ノ
結果デハナイカト云フヤウナ諸種ノ御尋ネ
ガアツタト思フノデアリマスガ、此ノ點ハ
考ヘ樣ニ依リマシテハ正ニ御話ノ通リダト
思フノデアリマス、隨ヒマシテ見樣ニ依リ
マシテハ斯樣ナ通貨制度ヲ執リマス上ニハ
法律上最高發行高ト云フモノヲ設ケル必要
ガナイト云フコトモ言ヘルト思フノデアリ
マス、併シ尙ホ現在ノ狀況カラ申シマスト、
一應目安ヲ設ケテ置クト云フコトハ、ヤハ
リ一種ノ通貨ノ安全感ニ對スル一ツノ指標
ニナラウカト考ヘルノデアリマシテ、其ノ意
味合ヒニ於キマシテ今囘ノ新法律案ニ於キ
マシテモ、ヤハリ最高發行高ハ大藏大臣ガ之
ヲ決メルト云フ制度ヲ設ケタノデアリマス、
然ラバ大藏大臣ハ如何ナル根據ニ依ツテ發
行高ヲ決メルカト申シマスルト、是ハ只今御
話ニナリマシタ如ク、極メテ困難ナ事柄デ
アリマス、或ル客觀的ノ標準ニ依リマシテ是
ガ決メ得ルモノナラバ、事柄ハ至極簡單デ
アリマスガ、併シ實際カラ申シマスルト、
只今御話ニナリマシタ如ク、各般ノ要素ヲ
考慮ノ上ニ置キマシテ、其ノ上ニ立チマス
所ノ客觀ニ依ツテ決メルヨリ外ナイト云フ
狀況ニアルノデアリマス、然ラバ如何ナル
觀點ニ依ツテソレ等ノ情勢ヲ判斷スルカト
云フコトニ付キマシテハ、申ス迄モナク大
藏大臣ガ發行高ヲ決定致シマスル際ニハ、先
ヅ通貨ノ健全性ヲ失ハナイト云フ點ガ重
要ナ點デアリマスト同時ニ經濟界ガ必要ト
スル通貨ハ圓滑ニ之ヲ供給スルト云フ點
ガ、又同時ニ考慮セラレナケレバナラヌ點
デアリマス、此ノ場合各種ノ經濟的ノ指標
或ハ生產デアルトカ、配給デアルトカ、物價
ノ關係、又國ノ財政ノ關係、其ノ他一般金
融情勢等、汎ク一般ノ經濟取引活動ノ狀況
ニ十分ノ考慮ヲ拂ヒマシテ、サウシテソレ
等ノ諸要素ヲ綜合致シマシタ上ニ於テ、客
觀ヲ加ヘネバナラヌ、斯ウ云フコトデアラ
ウト思フノデアリマス、見樣ニ依リマシテハ
所謂腰ダメ的決定トモ見得ルノデアリマス
ガ、是ハ事柄ノ性質上洵ニ已ムヲ得ナイコ
トデハナイカト考ヘテ居ル次第デアリマス、
大體從來此ノ制度ヲ運用シテ參リマシタ心
組ハ、左樣ナ趣旨ニ於テヤツテ參ツタヤウ
ナ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=20
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021・武田徳三郎
○武田委員 今承ツタ事柄ハ大體私ノ豫想
致シタ事柄デアルノデ、事務當局ト致サレ
テハ既ニ管理通貨ヲ實行スルトスレバ、今
御話ノ程度ヨリ仕方ガナイト思フノデアリ
マス、デ私ハ銀行局長ノ専門的ノ御意見ト
シテモウ一ツ關聯シテ承ツテ置キタイノデ
アリマスガ、稍〓通貨管理ノ根本論ニ亙ルヤ
ウナコトデアリマスケレドモ、元來私ガ申
上ゲルマデモナク、政府資金通貨ト云フモ
ノハ、國權ノ作用ノ最モ重大ナル問題デア
リマスカラ、一國ノ貨幣ハ元來政府ガ責任
ヲ以テ流通セシムベキモノデアルト云フコ
トハ申スマデモナイノデアリマスガ、唯此
ノ金融界ノ實情ニ應ジテ伸縮セシムルモノ
デアル、銀行劵トシテ、ソレニ經濟界ノ事
情ト相應ズルベク、何等カノモノヲ基礎トシ
テ置ク方ガ都合ガ好イ、政府ガ其ノ權力ヲ
以テ唯通貨量ヲ決メルト云フコトハ極メテ
困難デアル、經濟界ノ自動作用ヲ利用スルト
云フノガ銀行劵ヲ發行スル所謂中央發劵銀
行ヲ作ツタ趣旨デアルコトハ、私ハ御異論
ハナカラウト思フ、然ルニ今御說明ノ如ク
金融市場ノ實情ヲ考慮シ、各般ノ指標ニ依
ツテ、政府ノ意見デ決メル、又管理通貨ノ
信用ノ根本ハ、申スマデモナク政府ニ對ス
ル信用デアリマス、成程保證準備ハ國債其
ノ他有價證劵ヲ準備トシテ設ケルコトニ新
法ハナツテ居ルノデアリマスケレドモ、實
際問題トシテ見マスルト、只今私ハ參考資
料トシテ要求シタノヲマダ戴キマセヌカラ
分リマセヌガ、私ノ知ツテ居ル限リニ於テ
ハ、現在保證準備ノ大部分ハ國債デアルト
承知シテ居リマス、サウ致シマスルト今日
ノ現狀ニ見マシテモ、今日ノ銀行劵ハ殆ド
政府紙幣ト何等異ナル所ハナイヤウニ思ハ
レル、若シ同一ノモノデアツテ、ソレデ經
濟界ニ甚ダシキ支障ヲ生ジナイモノデア
リマスルナラバ、其ノ本筋ニ立還ツテ銀行
劵ト云フヤウナモノヲ銀行ニ發行セシムル
ト云フコトヨリハ、政府自ラガ政府紙幣ヲ
發行シタカラト云ツテ其ノ間ニ何等ノ差ガ
ナイノデハナイカ、斯樣ニモ實ハ考ヘラレ
ルノデアリマス、純然タル管理通貨制度ヲ
根本的ニ御斷行ニナツテ居リナガラ、依然
トシテ銀行劵ト云フ形デ通貨ヲ發行シナケ
レバナラヌト云フノハ、實際的ニソコニ何
カ相違ガアルノデアリマセウカ、サウシタ
方ガ餘程便宜ダト云フ何カ特殊ナ事情ガア
ルノデアリマセウカ、實ハ私ハ此ノ點ハ自
分デモ一寸ハツキリ分ラナイノデアリマ
スガ、其ノ點ヲ一ツ御伺ヒシタイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=21
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022・山際正道
○山際政府委員 只今ノ御尋ネニ對シマシ
テ一應事務當局ノ考ヘテ居リマスコトヲ申
上ゲマス、政府紙幣ト銀行劵トノ差異ガ何
處ニアルカ、今日ノヤウナ所謂管理通貨ニ
徹底セントスル時代ニ於テハ、寧ロ政府紙
幣ニ依ルノモ同樣デハナカラウカト云フ御
尋ネノ御趣旨ト承リマシタ、政府紙幣ト銀
行劵トノ作用ノ區別、是ハ實際上如何ニ運
用サルルカト云フ點ニ關聯致シマシテ、ソ
コニ理論的區別ヲ立テルコトハ甚ダ難カシ
イカト考ヘマスケレドモ、一應吾々ガ今囘
ノ改正案ニ於テモ尙ホ通貨トシテハ銀行券
ヲ主體ニ求メマシテ、政府紙幣ノ方法ニ依
リマセヌデシタ理由ト致シマシテハ、御尋
ネノ前段ニ於テ御話ノゴザイマシタ、國
經濟界フ必要トスル通貨ノ量ハ緊密ニ各種
ノ經濟現象ト關聯セシメネバナラヌト云フ
觀點カラ致シマシテ、其ノ意味合カラ申シ
マスルナラバ、ニヤハリ政府トハ別個ノ銀行
ニ依ル銀行劵ヲ發行セシメルコトノ方ガ、
實際上經濟界ノ眞ニ必要トスル需要供給ノ
狀況ニ合致シ得ル、斯樣ナコトヲ原則的ニ
考ヘタノデアリマス、政府紙幣ハ動モスレ
バ財政上ハ極メテ都合ノ好イ通貨制度ト見
ラレルノデアリマスルケレドモ、金融經濟ニ
重キヲ置キマシテ、ソレニ能ク適合シタ通
貨ト云フコトニナリマスルト、ヤハリ其ノ
機能ハ中央銀行ヲ設ケ、其ノ銀行ノ發行ス
ル銀行劵ニ依ツテ其ノ需要ヲ充スト云フコ
トノ方ガ實情ニ卽應シ得ルト考ヘタノデゴ
ザイマス、現在ノ我ガ國ノ情勢ニ於キマシ
テモ、ヤハリ其ノ原則ハ當然當嵌マルト
考ヘルノデアリマシテ、主トシテ金融界ノ
事情ニ卽應シタ通貨ノ伸縮ヲ圖ルト云フ建
前ガ、今囘ノ法案ニ於キマシテモ政府紙幣
ノ方法ヲ採ラズ、銀行劵ノ方法ニ依ツテ居
ル主タル原因デゴザイマス、然ラバ銀行劵發
行ノ保證準備トシテ大部分ガ國債ニナツテ
居ルト云フコトハ、ソレトドウ云フ關係ヲ持
ツデアラウカト云フ御尋ネト存ズルノデアリ
マスルガ、保證準備物ト致シマシテハ、成程
國債ガ多クノ部分ヲ占メテ居リ、其ノ意味合
ニ於キマシテ御尋ネノヤウナ論モ起リ得ルカ
ト思フノデアリマスルガ、併シソレ等ノ資金ガ
如何ナル方法ニ於テ民間ニ放出サレテ行ク
カ、其ノ方法、或ハ放出サレタ銀行劵ガ如何
ニシテ囘收サレルカト云フ其ノ徑路ノ方ガ
問題トナルベキデアラウト思フノデアリマ
シテ、準備物ガ何デアルカト云フ點ニ於キ
マシテハ、是ハ別個ノ觀點、卽チ最モ確實
ナ市場性ノ多イ物件ガ保證トナラネバナラ
ヌト考ヘルノデゴザイマス、隨ヒマシテ成
程國債ハ現在ノ準備物中甚ダ多クノ部分ヲ
占メテ居リマスルケレドモ、併シナガラ通
貨ノ放出ナリ收縮ナリ自體ハ其ノ準備物ト
ハ直接關係ナク、只管金融經濟上ノ必要ヲ
觀點ト致シマシテ行ハレテ居ル次第デアリ
マスカラ、直チニ其ノ兩者ヲ結付ケテ現在
ノ兌換劵、銀行劵ガ實體ニ於テ政府紙幣デ
アルト云フコトニハ相成ルマイト、斯樣ニ
考ヘテ居ル次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=22
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023・武田徳三郎
○武田委員 只今ノ前段ノ御說明ハ略〓私ノく
豫想シタコトデアリマス、卽チ政府紙幣ト
セズシテ、銀行劵ノ建前ヲ執ツタノハ比較
的金融界ノ實情ニ通ジマシタル中央銀行ノ
銀行劵トシテヤツタ方ガ、金融界ノ實情ニ適
應スルデアラウト云フ見地カラダト云フ御
說明デ、是ハ御尤モノコトデアリマス、然
ラバ何故ニ今御說明ニナツタ其ノ御趣旨ニ
合フヤウナ立法ヲナサラヌノデアラウカ、
一體金融界ノ實情ニ適スルト云フコトハ、
卽チ金融界ノ要求ヲ能ク知悉スルト云フコ
トデアリマセウ、然ルニ發行額ヲ大藏大臣
ガ決定シ、日本銀行總裁ガソレニ何等ノ發
言權ヲ持タヌト云フコトハ、今ノ御說明ト
御趣旨ガ相反スルコトニナリマス、若シ金
融界ノ實情ニ成ベク多ク「マッチ」セシムルヤ
ウナ方法ニ於テ發行額ヲ決スルノガ目的デ
アルト云フナラバ、其ノ發行額ヲ日本銀行
總裁ニ決定セシメテ、唯監督權上ノ作用ト
シテ政府ノ認可ヲ受ケルト云フヤウナヤリ
方デアルナラバ、只今ノ御說明ハ私ニハ首
肯出來マス、併シナガラ今日ハ總テノ金融
統制ノ權力ヲ大藏省ニ集中シヨウト云フ建
前デ、其ノ結果此ノ立法モ出來テ居ルノデ
アリマセウ、此ノ新日本銀行法ト云フモノ
ハ政府ノ金融統制ノ代行機關トデモ言フ
カ、其ノ手足ト云フ位ノ程度ニ今日ハ變ツ、
テ來テ居ルノデアリマス、是ハ今日ノ實情
カラ已ムヲ得ヌデアリマセウ、總裁其ノ他
ノ職制ノ上カラ見マシテモ、銀行員總テヲ
公務員ト認メルト云フコトカラ見マシテモ、
又株式會社ヲ廢メテ特殊法人トシテ營利性
ヲ全然此ノ日本銀行カラ取ツタト云フ點カ
ラ見マシテモ、私ハ左樣ニ考ヘ得ルノデア
リマス、ソレナラバ銀行劵ノ發行ニ依ツテ
金融界ノ實情ニ「マッチ」セシムルト云フコト
ハ何處ニ發見スルコトガ出來マセウカ、私
ハ今ノ政府委員ノ御說明ト此ノ立法ノ實際
トハ、ドウモソコデ一致シナイヤウニ思フ
ノデアリマスガ、私ノ誤解デアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=23
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024・山際正道
○山際政府委員 御承知ノ如ク現在ノ我ガ
國ノ經濟界ハ所謂統制セラレタ經濟デアリ
マシテ、此ノ政策ノ大本ハ申スマデモナク
政府ガ之ヲ決定シ、其ノ政策ニ基イテ各種
ノ經濟事象ガ運行セラレテ居ル次第デアリ
マス、發劵制度ノ建前ト致シマシテ、其ノ
發行高ガドノ程度ニ維持セラレルカト云フコ
トハ、先程モ御話ノゴザイマシタ如ク、實
ニ經濟界ノ中心的ナ現象ト相成ラウ、ト考ヘ
テ居リマス、此ノ意味ニ於キマシテ全體ヲ
通ジテ發行高ヲ幾ラニスルカト云フ大本
ハヤハリ大藏大臣ニ於テ握ツテ置キマシ
テ其ノ示サレタ大本ノ中ニ於テ日本銀行
總裁ガ最モ經濟界ノ實情ニ適應シタ通貨ノ
放出收縮ヲ圖ルト云フノガ、現在ノ場合ニ
於テ最モ望マシイ姿デハナカラウカト云フ
ヤウナ意味合カラ、本法案ヲ立案致シタノ
デゴザイマス、唯實際ノ發行高ノ決定ニ當
リマシテハ、勿論金融界ニ最モ通曉シタ日
本銀行ヲシテ十分ニ其ノ意見ヲ具申セシメ
ル是ハ內部ノ計ヒトシテ當然ヤラナケレ
バナラヌコトト考ヘテ居リマス、尙ホ又一
タビ大藏大臣ガ決定致シマシタ最高發行高
ニ付キマシテモ、經濟界ノ事情ガソレデハ
窮屈デアルト云ツタヤウナ場合ニ於キマシ
テハ、日本銀行總裁ハ其ノ申出ヲ致シマシ
テ、大藏大臣ノ認可ヲ得テ尙ホ制限外ノ發
行ヲナシ得ルト云フ途ハヤハリ殘ス必要ガ
アルト認メマシテ、本案ニ於キマシテモ其
ノ配慮ハ致シテアル次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=24
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025・武田徳三郎
○武田委員 只今ノ御說明ハ先程ノ御說明
ト較ベマシテ私ハ尙ホ議論ノ餘地ガアルカ
ト思ヒマスガ、餘リ議論ニ亙ルコトハ好マ
ナイノデアリマスカラ、先ヅ一應其ノ程度
ニ止メテ置キマス
次ニモウ一ツ伺ヒタイコトハ、今度ノ
新シイ日本銀行法ニ依リマシテ銀行劵ヲ發
行スル場合ニハ公債其ノ他ノ有價證劵ハ
勿論デアリマスガ、尙ホ金銀ヲモ其ノ準備
トスルコトヲモ認メラレテ居ルヤウデアリ
マッド、是ハ尤モノコトデアリマセウ、唯從
來二百九十「ミリグラム」ヲ一圓トスルト云
フヤウナ金準備ノ基礎ノ決マツテ居ル場合
三、金ナリ銀ナリヲドウ評價シテ其ノ準
備ニ繰入レルカト云フコトハ議論ノ餘地ハ
アリマセヌガ、今度ハサウ云フコトハナク
ナツテ、純然タル通貨管理ニナルノデアリ
マスカラ、其ノ準備ニナルベキ金銀ヲドウ
云フ工合ニ評價シテ其ノ準備ニ繰入レルノ
デアリマセウカ、時價ト云フコトニナルノ
デアリマセウカ、詰リ評價ノ方法ハドウナ
ルノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=25
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026・山際正道
○山際政府委員 金銀ヲ銀行劵發行ノ準備
ト致シマシタ場合ニ於キマシテ、其ノ價格
ヲドウ決メル積リカト云フ御尋ネデアリマ
スルガ、本法案ニ於キマシテハ、其ノ價格ハ
主務大臣ノ認可ニ依ツテ決定ヲスル、斯樣ニ
規定致シタノデアリマス、ソレハ第三十二
條ノ末項ニ其ノ趣旨ノ規定ヲ設ケタノデアリ
マス、併シ實行上ト致シマシテハ只今御話
ノ通リ二百九十「ミリグラム』一圓ト云フ割
合デ致シテ居リマスルガ、本法案ヲ切替ヘ
マスル場合ノ措置ト致シマシテハ二百九
十「ミリグラム」一圓ノ割合ニ於テ認可致ス
考ヘデアリマス、然ラバ其ノ後ノ價格ノ變
更ヲドウスルカト云フ問題ニ付キマシテ
ハ、是ハ其ノ時々政府ガ執ラレルノデアリ
マセウ所ノ金ニ對スル各種ノ政策ニ依リマー
シテ變更スルコトハアリ得ルカト、斯樣ニ
考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=26
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027・武田徳三郎
○武田委員 其ノ點ハ了承致シマシタ、更
ニ進ンデ伺ヒマスガ、日本銀行ガ、金融ノ
統制ノ中核的機關トシテ働キマスル場合ニ
於テハ、國家總動員法ノ發動ニ依ツテ出來
タ金融統制會ノ首腦者トシテ銀行ノ統制ハ
勿論出來マスガ、ソレト同時ニ有效ニ金融
ノ統制ヲ致シマスルノニハ、ドウシテモ日
本銀行トノ取引關係ヲ總テノ銀行ニ持タシ
メナケレバナラヌト思フノデアリマス、併
シ現在ノ實情ニ於キマシテハ、全國ノ銀行
ノ中日本銀行ト取引ヲシテ居ルモノハ極メ
テ少數ノ有力銀行ダケデアル、其ノ數ガド
レ位アルカ知リマセヌガ、此ノ取引銀行ハ
現在ノ銀行數ト比ベルト極メテ少イト思ヒ
やく、完全ニ此ノ金融統制ヲ行フニハ、ド
ウシテモ總テノ銀行ヲ日本銀行トノ取引銀
行ニスルヤウニシナケレバナラヌト云フ風
ニ私ハ考ヘマス、併シナガラ實際問題トシ
テ考ヘテ見マスルト、今日ハ政府ノ御盡力
デ大分全國ノ銀行ノ集中統合ガ行ハレマシ
タケレドモ、尙ホ全國ニ於テ二百以上ノ銀
行ガアル、其ノ中ニモ極メテ貧弱ナル銀行
ガ今尙ホ存在シテ居ルノデアリマス、是デ
ハ總テノ銀行ヲ日本銀行ト取引銀行ニセシ
ムルト云フコトノ實行上ニ於テモ困難デア
リマセウシ、サレバト云ツテ日本銀行トメ
取引銀行ニシナケレバ、此ノ金融ニ直接關
係ヲ持ツテ居ナイガ爲ニ、統制ガ力强ク行
ハレナイト云フ結果ニ陷リハシナイカト思
フノデアリマス、ソコニ於テ問題ハ、銀行
ノ集中統合ヲ更ニ力强ク、又成ベク急速ニ
行フ必要ハナイデアラウカ、之ニ向ツテ政
府ガ如何ナル方法、目途ヲ定メラレテ居ル
カ、サウシテ左樣ナ整理統合ノ出來タ場合
ニ、總テノ銀行ヲシテ日本銀行ノ取引銀行
ニセシムル御意思ガアルカドウカト云フ點
ヲ御伺ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=27
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028・山際正道
○山際政府委員 金融統制ノ完全ヲ期シマ
スルガ爲ニ、一面ニ於テ金融統制會ヲ通ズ
ル所ノ統制ヲ實施スルノミナラズ、他面日
本銀行ト各種ノ金融機關ガ總テ其ノ取引關
係ヲ通ジテ其ノ統制ヲ實施シナケレバナラ
ヌト云フ御話ハ、洵ニ御同感デアリマス、
大體當局ト致シマシテモ、左樣ナ考ヘヲ
以テ今後ノ金融統制ノ方策ヲ進メタイ考
ヘデアリマス、ソレニ付キマシテ、現在
金融機關ニシテ日本銀行ト取引關係ヲ持
ツテ居ルモノノ數ガ比較的少イデハナイ
カト云フ御尋ネデアリマス、從前御尋ネ
ノ如キ事態ハ確カニ存在致シタノデアリ
マスガ、是ハ客年末對米英戰爭勃發ト同
時ニ、政府ハ非常金融對策ヲ打樹テマシ
テ、如何ナル事態ニ於テモ金融界ニ混亂ヲ
生ゼシメナイト云フ觀點カラ、出來ルダケ
多クノ金融機關ヲシテ既ニ日本銀行ト取引
關係ヲ結バセテ居ルノデアリマス、今日ト
致シマシテハ、モウ殆ド其ノ取引關係ハ行
渡ツテ居ルカノ如ク考ヘテ居ルノデアリマ
スガ、尙ホ此ノ取引關係ヲ强化致シマシテ、
此ノ方法ニ依ル統制ヲ推進メナケレバナラ
ヌト云フコトハ御說ノ通リト考ヘテ居リマ
ス、尙ホソレニ關聯致シマシテ、地方ニ存在
スル幾多ノ小銀行ヲ今後ドウ云フ風ニ持ツ
テ行クカト云フ御尋デアリマスガ、從來是
等ノ銀行ニ付キマシテハ、集中統合ヲ圖ル
方針ヲ進メテ參ツタコトハ御承知ノ通リデ
アリマス、此ノ方針ニ付キマシテハ、尙ホ
當局ト致シマシテハ變更スル必要ヲ認メテ
居リマセヌノデ、今後モ强力ニソレヲ進行
サセタイ考ヘデアリマス、ソレニ付キマシ
テハ、過般ノ總動員審議會ニ於キマシテ金
融機關ノ整理統合ニ關スル總動員勅令ノ御
審議ヲ御願ヒ致シマシテ、是ガ爲メ所要ノ
勅令モ着々立案ヲ進メツツアルノデアリマ
ス、今後ハ必要ナル地方銀行等ノ整理統合
ハ更ニ有效ニ進マレルコトト考ヘテ居リマ
ス、サレバト申シマシテ、一〓ニ地方事情
ヲ全然無視シタ統合ヲ行フ考ヘハ勿論ゴザ
イマセヌ、其ノ邊ハ能ク地方經濟ノ事情ニ
適應シタ程度ニ於テ愼重ヲ期シツツ此ノ集
中統合ノ方策ヲ進メタイ、斯樣ニ考ヘテ居
ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=28
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029・武田徳三郎
○武田委員 次ニ御伺ヒ申シタイコトハ、
此ノ法案中ニハ明白ニサレテ居リマセヌケ
レドモ、大藏大臣ノ本案提案ノ御說明ニ依
ツテ見マシテモ、又此ノ新法案ノ基礎トナ
ツテ居リマス昨年七月政府ノ發表サレマシ
タ財政金融基本要綱ニ依ツテ見マシテモ、
中央銀行トシテノ日本銀行ハ、從來ハ其ノ
働キガ金融界ニ對シテ消極的デアツタ、自
分ノ方カラ働キ掛ケルト云フコトノ出來ナ
イヤウナ組織デアツタノヲ、ソレデハ金融
統制竝ニ今日ノヤウナ頗ル困難ナ金融情勢
ヲ圓滑ニ調整スルト云フコトハ出來ナイカ
う、日本銀行ヲシテ積極的ニ能動的ニ働キ
掛ケサセルヤウニ組織ヲ變ヘナケレバナラ
ヌト云フコトモ謳ツテアルノデアリマス、
其ノ趣旨ニ從ツテ此ノ法案ガ出來タモノト
思ヒマスガ、各條ヲザツト拜見シテ見マス
ニ、然ラバ極積的、能動的ニ金融界ニ中央銀
行ガ働キ掛ケルトハ、具體的ニ言ヘバドウ
云フコトヲシヨウト云フノカ、是ハ或ハ更
ニ施行規則カ何カニソレヲ明白ニサレルノ
カトモ思ヒマスケレドモ、ドウ云フ風ニ金
融界ニ對シ中央銀行ガ特ニ働キ掛ケルカト
云フコトヲ、具體的ニ事例的ニ主ナルモノヲ
擧ゲテ御說明ヲ願ビタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=29
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030・山際正道
○山際政府委員 財政金融基本方策ニ於テ、
日本銀行ノ機能ヲ今後ハ一層積極的、能動
的ニ發揮セシメルト云フ方針ヲ揭ゲタノデ
アリマスガ、今囘ノ立案ニ於テモ、其ノ方
針ニ依ツテソレヲ致シタノデゴザイマス、
然ラバ法條ノ如何ナル部分ニ其ノ趣旨ガ現
ハレテ居ルカト云フ御尋ネデゴザイマスル
ガ、其ノ業務ヲ積極的ニ行フカ消極的ニ行
フカハ、主トシテ運用ノ問題デアラウト思
ヒマスガ、其ノ運用ヲ一層便宜ナラシムル
爲ニ、現行法ニ比ベテ本法案ガ此ノ法條ノ
上ニ於テ考慮シマシタ點モ少クハナイノデ
ゴザイマス、例ヘバ其ノ業務ノ中ニ於テ、
商業手形、銀行引受手形、其ノ他ノ手形又
ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケタル債劵ノ賣買ヲ
行フト云フ規定ヲ第二十條第五號ニ於テ新
シク設ケテゴザイマス、此ノ規定ナドハ積
極的ニ日本銀行ガ市場ヘ出マシテ、或ハ手
形ノ買入レ賣放チ、或ハ主務大臣ノ認可ヲ
受ケマシタ債劵類ノ買入レ賣放チ、之ニ依
ツテ市場ノ資金狀態ヲ或ハ引締メ、或ハ引
緩メルト云フ操作ガ行ヒ得ルカト思フノデ
アリマス、尙ホ其ノ他一層積極的ニ其ノ機
能ヲ發揮サセル爲ニ、今囘ノ法案ノ業務ノ
部分ニ於キマシテハ、現行法ニ於テハ揭ゲ
ラレテ居リマセヌデシタ各種ノ新タナル業
務ヲ附加ヘタノデアリマス、例ヘバ二十三
條ニ於テ外國爲替ノ賣買ヲナシ得ト規定
シ、二十四條ニ於テ國際金融取引上ノ諸般
ノ權能ヲ認メ、更ニ又第二十五條ニ於テ信
用制度ノ保持育成ト云フ仕事ヲ新シク日本
銀行ニ認メタト云フヤウナ、各般ノ新タナ
ル條項ヲ設ケテ居ルノデアリマス、併シナ
ガラ何分ニモ積極的能動的ニ市場ニ出ル
ト云フ場合ハ、先程申上ゲタ手形ヲ賣買
スルトカ、債劵ヲ賣買スルト云フ點ハ比
較的容易ニ行ヒ得ルノデアリマスガ、例
バ手形ノ割引ヲ行フコトニ依ツテ市中ニ資
金ヲ放出スルトカ、場合ニ依ツテハ其ノ他
ノ形式ニ依ツテ特定ノ銀行トノ間ニ特殊ノ
資金ヲ放出スルトカ云フヤウナ、相手方ノ
協力ヲ得ルニアラザレバ、日本銀行ノ取引
ヲ通ズル金融統制モ旨ク行カナイト云フ點
ガ考ヘラレマス爲ニ、今囘ノ法案ニ於キマ
シテハソレ等ノ條項ヲ竝ベマシタ最後ニ第
二十八條トシテ「主務大臣ハ日本銀行ノ目
的達成上必要アリト認ムルトキハ銀行其ノ
他ノ金融機關ニ對シ日本銀行ノ業務ニ協力
セシムル爲必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得」
斯樣ナ特殊ノ規定ヲ設ケタノデアリマス、
卽チ此ノ規定ニ依ツテ日本銀行ガ積極的ニ
市場ニ進出スル、或ハ特定ノ金融機關ニ對
シテ積極的ニ、或ル業務ヲ行フト云フ場
合ニ、相手方金融機關ノ同意ヲ取ルコトガ
非常ニ困難デアルト云フヤウナ場合ニ於キ
マシテ、主務大臣ガ其ノ日本銀行ノ業務ヲ
達成セシメル爲ニ必要アリト認定致シマシ
タナラバ、相手方銀行ニ對シテ日本銀行ノ
仕事ニ協力セヨト云フコトヲ申付ケルコト
ガ出來ル趣旨ノ規定ヲ設ケテアルノデアリ
マス、御話ノ點ハ法文ノ上ニ表ハスコトノ
非常ニ困難ナル條項デゴザイマシテ、運用
ニ屬スル部分ガ多イノデアリマスガ、尙且
ツ只今申上ゲタヤウナ各條項ハ、是等積極
的機能ノ發揮ニ付キマシテ、日本銀行ノ仕
事ヲ非常ニ容易ナラシメル點デハナイカト
考ヘテ居ル次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=30
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031・武田徳三郎
○武田委員 了承致シマシタ、更ニ伺ヒタ
イコトハ、最近金融界ニ於テ一番迷惑ナコ
トデアリ、困難ナコトデアルト言ハレテ居
リマスノハ、日支事變以來國庫ノ放出金ガ
多クナルニ從ツテ、短期市場ハ非常ニダブ
付イテ居ルニモ拘ラズ、長期金融ハ非常ナ
逼迫ノ狀態ニナツテ居ルノデアリマス、是
ガ爲ニ工業金融ハ非常ニ困難ナ狀態ニ陷ツ
テ、政府モ此ノ緩和ニ向ツテ凡ユル苦心ヲ
サレテ居ルノデアリマセウシ、何トカ此ノ
短期資金ヲ長期資金ニセシメルヤウナコト
ニ付テ、政府ハ勿論御心配ニナツテ居ルデ
アラウト思ヒマスガ、運用ノ上ニ於テカ制
度ノ上ニ於テカ、何カ特殊ノ御考ヘガアル
ノデアリマセウカ、私ノ考ヘヲ以テスルト、
之ニハ色々ナ方法ヲ採ラナケレバナラヌト
思フノデアリマスガ、一ツノ方法トシテ考
ヘ得ルコトハ、日銀ニ對スル普通銀行ノ一
般預金ト云フモノハ今日無利子ニナツテ居
リマス、ソレハ手形交換尻ノ決濟ニ要スル
手段デアリマスカラ、是ハ當然デアリマセ
ウガ、ソレト別種ノ民間預金ニ對シテ、利
子附ノ預金制度ヲ設ケテ、短資ヲ日本銀行
ニ集中シ、日本銀行ノ信用ヲ以テ之ヲ必要
ノ部面ニ對シテ、合法的ノ長期金融ヲスル
ト云フ途ハ開ケナイコトハナイヤウニ私ハ
思フノデアリマス、一口ニ申セバ、日本銀行
ニ一種ノ「プール」ニナルヤウナ譯デアリマセ
ウ、殊ニ今日日本銀行ガ從來ノ商業金融ヲ
捨テルノデハナイケレドモ、ソレニ增シテ工
業金融ニ乘出サウト云フ際デアリマスカラ、
殊ニ「インフレーション」ヲ阻止スルト云フ
意味ニ於テモ、私ハソレハ唯一ノ途トハ申
シマセヌガ、短期資金ヲ長期資金ニ振替ヘ
ル一ツノ有力ナ方法デナイカトモ考ヘルノ
デアリマス、長期市場ガ逼迫シテ短期市場
ハ緩漫過ギルト云フ此ノ問題ニ付テハ、大
藏省當局トシテハドウシテモ何等カノ適當
ナル措置ヲ御採リニナラナケレバナラヌ筈
デアラウト思ヒマスガ、之ニ對シテ銀行局
長ノ御方針ヲ聽カシテ戴キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=31
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032・山際正道
○山際政府委員 今日ノ如キ金融情勢ノ下
ニ於キマシテ、兎角金融機關ニハ短期ノ資
金ハ集マリ勝チデアルケレドモ、長期ノ資
金ヲ吸收スルコトハ短期資金ニ於ケルガ如
ク容易デナイト云フ事象ハ、當然肯ケル所
デアリマス、隨テ一面ニ於テ非常ニ旺盛ニ
ナリツツアル事業資金ニ對スル需要ヲ、如
何ニシテ此ノ金融情勢ニ適應セシムルカト
云フ所ガ、只今御說ノ如ク現在ノ金融問題
ノ中ニ於キマシテ最モ苦心ヲ要シツツアル
點デアリマス、之ニ對スル對策ト致シマシ
テハ、旣ニ御承知ノ如ク、機會アル每ニ短
期資金ノ吸收機關ト言ハレテ居ル普通銀行
等ニ對シマシテモ、努メテ其ノ資金ヲ事業
資金トシテ放出スベキコトヲ御話致シテ居
ルノデアリマス、此ノコトハ從來ノ短期資
金ヲ集積シタルモノハ短期ニ運用スベシト
云フ金融上ノ原則カラ見マスレバ、稍〓異例
ニ亙ルコトデハアリマスケレドモ、而モ尙
ホ今日ノ經濟界ノ情勢ハソレヲ敢テスルコ
トヲ要求致シテ居ルト思フノデアリマス、然
ラバ具體的ニ如何ナル方法ニ於テ其ノコト
ヲ可能ナラシムルカト云フ點ニ付キマシテハ、
只今モ御話ノアリマシタ如ク、單純ニ此ノ
方法ダケト云フコトデ效果ヲ擧ゲルコトモ中々
難カシイノデアリマスガ、根本ハ先刻來御
話ノアリマシタ各種ノ金融機關ヲ日本銀行
ト緊密ニ連絡セシメマシテ、假令短期ノ資
金ヲ事業資金ノ方ニ廻シマシタカラト申シ
マシテモ、一タビ資金ノ必要ガ起リマシタ
場合ニハ、直チニゾレヲ日本銀行カラ其ノ
金融機關ニ供給スルコトニ依ツテ、其ノ金
融機關トシテハ何等差支ヘノナイ運營ヲ續
ケ得ルト云フ狀態ニ總テノモノヲ構成スル
コトガ根本デアラウト思フノデアリマス、
併シナガラ尙ホソレニ至リマスル過程ト致
シマシテモ、過般當局ト致シマシテハ軍需
手形等ノ制度ヲ設ケマシテ、比較的短期資
金ガ事業金融方面ニ向ヒ得ル途ヲ設ケタコ
トモアリマスシ、今後モ尙ホソレ等便宜ト
スル方法ニ付キマシテハ、漸次其ノ途ヲ殖
ヤシテ行カナケレバナラヌト考ヘテ居ル次
第デアリマス、只今御示シノアリマシタ餘
裕金ヲ日本銀行ニ集中スル爲ニ、利附預金
ノ制度ヲ設ケテハ如何カト云フ點ニ關シマ
シテハ、此ノ點モ尙ホ當局トシテ考ヘニ入
レテ居ル事柄ノ一ツデゴザイマス、唯其ノ
實行ニ付キマシテハ、御承知ノ如ク現在ノ
短期資金ノ市場ニ付キマシテハ、ソレ自體
ヤハリ一種ノ需要供給ノ調節ガ其ノ市場ニ
於テ行ハレテ居リマスル實情ニモアリマス
ルカラ、遽カニ總テノ餘裕金ヲ日本銀行ニ
集中スルコトニ依ツテ、所謂短期市場ナル
モノガ玆ニ非常ナ資金ノ枯渴ヲ來スト云フ
支障ガアリマシテモ、ソレハ經濟ノ運行上
面白クナイモノト考ヘマスノデ、今後ノ〓
究問題トシテ、當局ト致シマシテハ餘裕金
ヲ日本銀行ニ集メル、其ノ方法トシテ利附
預金ノ制度ヲ開始スルト云フヤウナ點ニ付
キマシテ、具體的方法ヲ愼重考究致シテ居
リマスル段階デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=32
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033・武田徳三郎
○武田委員 只今御質問申上ゲタ事柄ニ關
聯シテ一ツ伺ヒタイノデアリマスガ、此ノ
點ニ付テハ昨年ノ春ノ議會ニ於キマシテ、
豫算委員會デ當時ノ大藏大臣ニ私ハ質問致
シタノデアリマスケレドモ、極メテ曖昧ノ
間ニソレハ終ツタノデアリマス、今日普通
銀行ノ實際ヲ見マスルト、預金ノ增加ニ從
ツテ預金準備ノ現金手持ト云フモノハ相當
ニアルノデアリマス、此ノ預金準備ノ現金
ノ手持ヲ多ク持ツト云フコトハ、銀行トシ
テハ資金ノ「コスト」ヲ高カラシムル所以デ
アリ、通貨ノ量ノ殖エルト云フ所以デモアル
ノデアリマス、ソレデ私ハ米國ノ各州デモ
現ニ實行シテ居ルト聞イテ居リマスガ、金
融機關ノ民間預金ニ對シテ、一般的ニ政府
ガ保證スルト云フ制度ヲ執ツテハドウデア
ルカ、サウスレバ一面ニ於テ多少預金ノ利
子ヲ下ゲテモ、或ハ國民ノ貯金ノ吸收ハ樂
ニナリハシナイカ、現ニ郵便貯金ノ金利ハ
非常ニ安イニモ拘ラズ、郵便貯金ニ國民ノ
貯金ガ著シク集中シテ居ルノハ、。政府ノ絕
大ナル信用ノ賜モノデアル、ソレノミデハ
アリマセヌケレドモ、ソレガ唯一ナル支柱
デハナイカトモ考へル、サウシテ一面ニ於
テハ普通銀行ニ國民ノ貯金ヲ集中スルニ便
利ニナリ、一面ニ於テハ銀行ノ準備手許金
所有ヲ減ズルコトモ出來ルト云フ一擧兩得
ノ策デハナイカト云フ意味デ、實ハ私ハ一
兩年來其ノコトヲ考ヘ、先程申上ゲル通リ
昨年ノ秋ノ議會ニ於テ、私ハ政府ニ所見ヲ
聽イタノデアリマスケレドモ、極メテ根據
ノナイ否定的ノ答辯ニ接シタノデアリマス、
其ノ當時ハ山際サンハ銀行局ノ御當局デハ
ナカツタヤウデアリマスガ、山際サンハ其
ノ點ニ向ツテ如何ニ御考ヘニナルノデアリ
マセウカ、ソレト關聯致シマシテ、今私ガ
申上ゲタト同ジヤウナ事柄デアリマスガ、
ソレニ致シマシテモ銀行ノ預金準備トシテ
ノ手許金ト云フモノハ勿論多少要リマセウ
ガ、ソレヲ日本銀行ニ集中スルノ手段ヲ御
執リニナツテハドウデアルカ、サウ致シマ
スルト日本銀行ヘノ集中ガ增加ヲスルト共
二、通貨ノ減少ヲ來スコトニナリハシマイ
カト思ヒマスガ、其ノ兩點ニ向ツテ局長ノ
御意見ヲ伺ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=33
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034・山際正道
○山際政府委員 一般金融機關ニ對スル預
金ノ支拂ニ關シテ、政府ニ於テ其ノ支拂ヲ
保證スルコトニ致シタラドウデアラウカト
云フ御尋ネデアリマス、御承知ノ如ク昨年末
ノ非常金融對策ニ於キマシテハ、政府ハ其ノ
信用ニ掛ケテ、如何ナル金融機關ノ預金ヲ
モ必ズ拂戾ス、預金者ニ迷惑ヲ掛ケルコト
ハ絕對ニ致サヌト云フコトヲ申シタノデア
リマス、其ノ意味ニ於キマシテ、現在ハ非
常措置デハアリマスケレドモ、實體的關係
ニ於テハ一種政府ガ其ノ支拂ヲ保證シテ
居ルト同ジヤウナ狀態ヲ現出シテ居ルモノ
ト考ヘテ居ルノデアリマス、唯併シ法制的
ニ之ヲ政府保證ト云フコトニ致シタ方ガ宜
シウゴザイマセウカ、或ハ現在ノ程度ニ於
テ、必ズ金融機關ハ破綻セシメナイト云フ
方式ニ於テソレヲ確保致シタ方ガ宜シウゴ
ザイマセウカ、細カイ點ニ付キマシテハ、
ヤハリ一長一短、一利一害モアルコトノヤ
ウニ思ヒマスノデ、一ツノ問題ト致シマシ
テ、實ハ從來トモ〓究ヲ續ケツツアリ、今
後尙ホ一層〓究致シタイト考ヘテ居ル點デ
ゴザイマス
更ニ金融機關ノ手許現金ハ漸次增加ノ趨
勢ニアル、其ノ結果ガ延イテハ民間ニ資金
ヲ滯留サセル原因トナルノデアルカラ、ソ
レヲ日本銀行ニ集中ヲシテ、サウシテ通貨
ノ收縮ヲ圖リ、又反面ニ於テ國債消化、其
ノ他資金ノ活用ヲ圖ツテハドウカト云フ御
尋ネト伺ツタノデアリマスガ、此ノ點ハ實
ハ計數上ハ現金準備ガ相當殖エテ參ツテ居
ルノデアリマスガ、其ノ內容ヲ仔細ニ檢討
致シマスト、最近ニ於テ國債其ノ他金融機關
手持ノ有價證劵ノ類ガ非常ニ殖エテ參リマ
シタ爲ニ、期間ノ到來致シマシタ利札其ノ
他小切手ノ類ガ、現金準備トシテ計上サレ
テ居リマス爲ニ、其ノ內容ニ於テ現金其ノ
モノハ計數ノ上ニ現ハレマシタ現金準備ノ
額程多クハ相成ツテ居ラヌノデアリマス、
併シナガラ尙ホソレ等ニ付キマシテモ、只
今御話ノ集中ノ策ヲ講ズルト云ツタヤウナ
方法ハ、尙ホ其ノ必要ガナクハナイト考ヘ
マス、從來ハドチラカト申シマスト手許
ノ資金ガ餘裕ヲ生ジテ參リマスト、相成ル
ベク國債ノ買入レヲ勸奬致シマシテ、成ベ
ク國債ノ保有ニ向ケテ貰フト云フコトニ致
シテ參ツタノデアリマス、單ニソレノミナ
ラズ、今後ハソレヲ然ルベキ所へ集中致シ
マシテ、國債又ハ必要ナル事業ノ方面ヘノ
資金ノ供給ニ充テルト云ツタ方策ガ是モ考
フベキ點デアラウト考ヘテ居リマス、西二
此ノ點ハ今後ノ問題トシテ〓究ヲ續ケタイ
所存デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=34
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035・武田徳三郎
○武田委員 只今伺ヒマシタ前段ノ問題ニ
付テハ大體私ノ希望ト同一ナ御意向ノヤ
ウニ承ツテ滿足デゴザイマス、併シナガラ
昨年ノ日英米開戰ノ當時ニ大藏省ノ御聲明
ニナツタノハ、ソレハ唯臨機應變ノ處置ト
シテ、大藏省ノ御手心ノ心構ヘヲ世ノ中ニ御
示シニナツタダケデ、ソレデハ私ノ申上ゲ
ルヤウナ意味ニ於テノ預金ノ吸收ヲ增加ス
ルト云フコトニハナラヌノデハナイカ、ド
ウシテモ之ヲ法制的ニ御定メニナラナケレ
バ-其ノコト自體ガイケナイト云フナラバ
是ハ別問題デアリマスケレドモ、大體ニ於
テ事柄ソレ自體ニハ銀行局長モ私ノ意見ニ
御同意デアルヤウデアリマス、サウ致シマ
シタナラバ大藏省ノ一片ノ聲明ダケデハ
決シテ效果ハ擧ラヌモノト思ヒマスカラ、
ドウシテモ是ハ法制的ニ御定メニナラナケ
レバナラヌノデハナイカト思フノデアリマ
ス、若シ私ノ素人考ヘニ何等カソレニ伴フ
弊害ガアルト云フコトナラバ格別トシテ、
サウデナイト致シマスナラバ、其ノ方向ニ
御進ミ下サルヤウニ御願ヒシタイト思ヒマ
ス
ソレカラ次ニ御伺ヒシタイコトハ、今度
發劵銀行ガ根本的ニ改組サレマスニ付テ
ハ、朝鮮銀行モ、臺灣銀行モ、新日本銀行ニ
其ノ發劵事業ガ統合サレテ然ルベキヤウニ
私ハ考ヘルノデアリマス、最早兩三年來サ
ナキダニ朝鮮、臺灣銀行ノ發劵業務ヲ、日
本銀行ニ統一シタ方ガ宜イノデハナイカト
云フ議論モ、民間ニソロ〓〓起ツテ居ツタ
ノデアリマス、殊ニ今日ハ朝鮮、臺灣ハ、金
融的ニ內地ト一層非常ナ緊密ノ狀態ニナツ
テ居リマス、日本ノ重工業ハ大分朝鮮ニ進
出ヲ致シテ居リマス、又臺灣ニ於テモ、近
來內地ノ重工業ハ非常ニ進ンデ參ツテ居
ル、斯ウ云フ際ニ於テハ最早臺灣銀行、朝
鮮銀行ト云フモノハ、獨立ノ發劵銀行デナ
ケレバナラヌト云フ必要ハナクナツテ居ル
ト思フノデアリマス、若シ是等ガ別々ナ發
劵銀行ヲ持タナケレバナラヌト云フコトナ
ラバ、北海道ハ北海道デ特別ノ發劵銀行ガ
アツタ方ガ便宜ダト云フコトニナル、或ル
特殊ノ業務ニ對シテノ特殊金融ヲ目的トス
ル銀行デアリマスレバ、是ハ地域ハ別トシ
テ、サウ云フコトハ必要デアルカモ知レマ
セヌケレドモ、或ハ業態ハ別トシテ、特殊
ノ銀行ハ必要デアルカモ知レマセヌガ、今
日ノ如キ實情ニ於キマシテ、臺灣ト朝鮮ト
內地ト、ソレ〓〓別々ナ發劵銀行ヲ持タナ
ケレバナラヌト云フヤウナ時代ハ、既ニ過
去ツタノデハナイカト思フノデアリマス、
本法案御立案ニ當ツテハ、多分其ノ點ニ付
テモ相當御考慮ハアツタモノト考ヘマスル
ガ、ドウ云フ譯デソレヲ御斷行ニナラナカ
ツタカ、ソコニ何カ特殊ノ事情ガアルノデ
アリマセウカ、其ノ點ノ御說明ラ願ヒタイ
ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=35
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036・山際正道
○山際政府委員 今囘日本銀行關係ノ制度
ヲ全面的ニ改正致シマスニ當リマシテ、朝鮮
銀行及ビ臺灣銀行ガ持ツテ居リマス發劵
制度ヲ統合シテハドウカト云フ問題ハ、
當然ニ考慮ノ中ニ入ツテ來ル問題デアリ
マス、當局ト致シマシテモ立案ニ當リマシテ、實
ハ其ノ點ハ愼重ニ考究ヲ致シタノデゴザイマ
ス、其ノ結果トシテモ御承知ノ如ク、朝鮮銀行、
臺灣銀行ハソレ〓〓發劵銀行デハアリマスル
ガ、同時ニ朝鮮內、臺灣內ニ於テ普通銀行業
務ヲ兼營シ、其ノ普通銀行業務遂行ノ爲ニ
發劵機能ヲ持ツコトガ、朝鮮及ビ臺灣ノ經濟
狀態カラ申シテ有效デアルト云フ見地カラ、
其ノ制度ガ尙ホ今日ニ及ンデ居ルノデアリ
マス、只今御話ノ如ク臺灣ノ經濟モ、朝鮮
ノ經濟モ、漸次內地ノソレト事情ガ非常ニ
近似シテ參ツテ居リマスコトハ明カデアル
ト考ヘマス、隨テ兩銀行ノ發劵制度ガ、漸
次日本銀行ノ發劵制度ニ統一セラルル時期
ガ近付キツツアルト云フコトハ、申上ゲル
コトガ出來ルト思フノデアリマス、卽チ終
局的ノ考ヘ方ト致シマシテハ、將來內地、
朝鮮、臺灣間ノ經濟狀態ト云フモノガ、何
等ソコニ相違ヲ生ジナイ狀態ニマデ變ツテ
參リマシテ、隨テ銀行劵ト致シマシテハ
日銀劵ヲ以テ統一スルト云フコトガ最後ノ
狙ヒデアラ·ウトモ思フノデアリマス、唯其
ノ時機ガ何時デアルカ、現在旣ニ其ノ段階
ニ達シテ居ルカドウカト云フコトニ付キマ
シテハ、尙ホ當局トシマシテハ、未ダ其ノ
時機ガ來テ居ナイト云フ考ヘ方カラ、今囘
ノ改正ニ當リマシテハ自然其ノ點ハ後日ノ
問題トシテ殘シタ譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=36
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037・堀内良平
○堀內委員 武田委員ノ御承諾ヲ得マシタ
カラ、一寸關聯シテ御伺ヒシタイト思ヒマ
ス、先刻來武田委員ヨリ通貨ガ豫想外ニ膨
脹シタト云フコト、及ビ預金ノ吸收ニ致シ
マシテモ、モウ少シ決定的ニヤツタラ宜カ
ラウト云フ御質問ガアツタノデスガ、ソレ
ニ對シテ政府委員ノ御答辯ハ、通貨ハ昨年
四十七億位ノ見込デ居ツタノガ、六十二億
ニモ達シタ、所ガ預金ノ吸收ニ付テハモウ
少シ考ヘル積リダト云フ御話デアリマシタ
ガ、之ニ付テ私ガ政府委員ニ御伺シテ見タイ
コトハ、是ハ一昨年頃カラノ話デアリマス
ガ、圓札ヲ其ノ儘物品トシテ貯藏シテ居ル
者ガアル、例ヘバ信託會社ノ金庫デ、從來
ハ骨董品ナドヲ預ツテ居ツタガ、ソレガガ
ラ空ニナツテ居ツタ所ヘ、一昨年頃カラボ
ツボツ百圓紙幣ヲ束ネテ、サウシテサウ云
フ金庫ニ預ケテ居ルト云フヤウナ說ガ、段
段多ク聞エルヤウニナツテ居ルノデアリマ
こ
ス、ドウ云フ積リデ斯樣ナコトヲスルノカ
分リマセヌガ、サウ云フコトガ段々大キク
ナツテ參リマスト、通貨モ豫想外ニ殖エル
シ、又豫想外ノ發行ヲシナケレバナラナイ
ヤウニナルカモ知レマセヌ、又一方預金ノ
吸收ヲ積極的ニヤラウトシテモ、サウ云フ
コトガアルト非常ニ妨害ニナル、今年度ハ
貯金モ一層吸收ニ努メナケレバナラヌシ、
又公債ノ消化モ十分勸誘シナケレバナラナ
イ、サウ云フ際ニ通貨ヲ自分ノ物品トシテ
之ヲ死藏スルト云フコトハ、是ハ丁度色々
ナ物ノ買溜メデアルトカ、賣惜ミデアルト
カ云フコトト同ジコトデアツテ、非常ニ惡
イコトデ犯罪デアリマス、隨テ此ノ際ニ於
テハ、サウ云フ不心得者ハ嚴罰ニ處スベキ
デハナカラウカ、一面斯樣ナコトヲ緩漫ニ
シテ置イタノデハ、一方ニ貯金ノ奬勵ヲシ、
公債ノ消化ヲ勸誘シテモ、ソレガ爲ニ非常
ニ害セラレルノデハナイカ、是ハ吾々ノ耳
ニハ一昨年來カラ入ツテ居ルノデスカラ、
大藏當局ノ耳ニモ入ツテ居ナイコトハナイ
ト思ヒマス、今日斯ウ云フ信託會社ノ金庫
等ニサウ云フモノガ死藏サレテ居ルト云フ
コトヲ御調査ナスツタコトガアルノデアリ
マセウカ、若シ御調査ヲシタコトガアルト
云フナラバ、其ノ狀況ハドウデアルカ、若
シ左樣ナ不心得ノ者ガアリトスレバ、國家
非常ノ際デアルカラ司法當局トモ御打合セ
ニナツテ、嚴罰ヲ以テ御臨ミニナルベキデ
ハナイカト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=37
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038・山際正道
○山際政府委員 圓札ヲ退藏スル者ガチヨ
イチヨイアルト云フ噂、實ハ當局モ耳ニハ致
シテ居ルノデアリマス、若シソレガ眞實デ
アルト致シマスレバ、洵ニ是ハ此ノ際ノ金
融政策、通貨政策ノ上カラ申シマシテ困ツ
タ事象デアルト考へマシテ、只今御話ノア
リマシタ關係方面等ニ付キマシテ出來得ル
限リハ調査モ致シテ見タノデアリマス、何
分ニモ事ガ事デアリマシテ、實體ヲ摑ムコ
トガ非常ニムヅカシイト云フ狀態デアツタ
ノデアリマス、政府ト致シマシテハ一々是
等ノ者ノ後ヲ追掛ケマスコトモ中々容易ナ
ラザルコトデアリマスノデ、要ハ國民ノ自
覺ニ依ツテ左樣ナコトノナイヤウニ、努メ
テ機會アル每ニ其ノ趣旨ヲ宣傳シ、又ソレ
ニ協力シテ貰ツテ居ル一面ニ於キマシテ、
現實ニ、例ヘバ預金ヲ拂戾スト云フコトニ
付テ國民ニ何等ノ不安ヲモ生ゼシメナイ、
又其ノ便宜ヲ十分計ルト云フコトガ、斯カ
ル圓札ノ退藏ヲ防止スル有力ナル方法ニモ
ナラウカト考ヘマスルノデ、先程モ申上ゲマ
シタ預金拂戾シニ付テ政府ニ於テ十分ナル
措置ヲ執ル、又先般ノ非常金融對策ノ中ニ
於キマシテ、例ヘバ預金者ガ他ノ地方ニ移
動致シマシタヤウナ場合ニ於キマシテモ、
或ル一定限度內ノモノハ從來全然取引ノナ
カツタ餘所ノ銀行ヘ行ツテモ拂戾シガ出來
ルト云フヤウナ便法サヘモ講ジテ居ルノデ
アリマス、斯ウ云フ點ニ於キマシテモ出來
ルダケ左樣ナ便宜ヲ講ジテ、預金者ガ安心
シテ預金スルコトガ出來ルヤウニスルト共
ニ、又一面國民ノ自覺ヲ促シテ、左樣ナル
政府ノ政策ニ悖ルヤウナ行ヒハ止メテ貰ヒ
タイト云フコトニ極力努メタイト考ヘルノ
デアリマス、唯斯樣ナ者ニ對シマシテ刑罰
ヲ以テ臨ムト云フコトガ、果シテ能ク其ノ
效果ヲ擧ゲ得ルヤ否ヤト云フ點ニ付キマシ
テハ、ソコマデ當局ト致シマシテハ考ヘタ
コトモゴザイマセヌガ、尙ホ却ツテ逆效果
ヲ來シ、到底一々ノモノニ付テ政府ガソレ
ニ當ツテ行クト云フコトモ出來ナイ事情デ
アリマスカラ、出來レバ國民ノ自覺ト云フ
點ヲ基礎トシテ、ソレニ國民ニ對シテ各種
ノ便益ヲ提供スルト云フ點ヲ方法ト致シマ
シテ、斯樣ナ現象ガ眞實ニ存在致シマセヌ
ヤウニ今後ハ努力ヲ致シタイト考ヘテ居ル
次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=38
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039・武田徳三郎
○武田委員 日本銀行法ニ關シテモウ一ツ
ダケ事務當局ノ御說明ヲ願ヒタイト思ヒマ
ス後ハ大藏大臣ガ御出席ニナツテカラ質
問ノ機會ヲ與ヘテ戴キタイト思ヒマス、ソ
レハ昨年ノ九月大藏省ニ於カレマシテ資金
ノ計畫方針ト云フモノヲ御發表ニナツテ居
リマス、三箇條ノ方針ヲ御發表ニナツテ居
ルノデアリマス、其ノ中デ第三ニ資金需要
ノ適合ヲ圖ル爲メ調整準備資金ヲ設ケテ彈
力性ヲ保持セシムルト云フ意味ノ聲明ガア
リマス、私ハ極メテ適切ナル御考ヘダト思
フノデアリマスケレドモ、是ハ觀念的ニハ
適切ダト考ヘテ居リマスルガ、之ヲ具體的
ニハ如何ナル方法、如何ナル施設ヲオヤリ
ニナルト言フノカ、又現ニ御實行ニナツテ
居ルノカ、是ハ極メテ必要ノコトデアルガ、
唯聲明ノシ放シデハ甚ダ遺憾ダト思ヒマス
カラ、是ハ如何ナルコトヲナサントスル
ノデアルカ、又現ニナシツツアルノデアル
カヲ御說明願ヒタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=39
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040・山際正道
○山際政府委員 只今御尋ネノ點ハ、昭和
十六年度ノ資金統制計畫ニ關聯シテ政府ガ
發表致シマシタ事柄デアラウト存ジマス、
御指摘ノ調整準備金ト申シマスコトハ、全
體ノ計畫ト致シマシテハ、一應資金ノ割振
リヲ致シマシテ、ソレハ事業資金ハ幾ラ、
又財政上公債所要資金トシテ幾ラ、又事業
資金ノ中ニ於キマシテモ短期ノ資金幾ラ、
長期投資金ガ幾ラ、株式投資幾ラ、社債ハ
幾ラデアルトカ、又對滿投資ハ幾ラデアル
トカ云フヤウニ、用途別ニ資金ヲ振分ケ得
ル計畫ヲ致シタノデアリマス、其ノ際ニ於
キマシテ尙ホ將來時間的ニ餘裕ノアルコト
デアリマスカラ、情勢ノ變化ニ基キマシ
テ、例ヘバ社債ノ方ハ此ノ程度デ宜イ
ガ、株式拂込ノ方ハ今少シ增加スル必要ガ
アル、或ハ事業金融ノ方ハソレ程デモナイ
ガ、他ノ商業資金ナリ、或ハ對滿投資等ニ
於キマシテ、今少シク資金ヲ拂込ム必要ガ
アルト云フ所ニハ、將來振向ケ得ル餘地ヲ
殘シマス爲ニ、調整準備金ナル項目ニ於キ
マシテ、一定ノ金額ヲ留保シテ置イタ次第
デアリマス、實際ノ實行ニ當リマシテハ、
全體ノソレ等ノ計畫ノ進ミ工合ヲ睨ミ合セ
マシテ、只今申上ゲマシタヤウニ、例ヘバ
社債ノ方面ニ於キマシテ今少シク資金ノ需
要ニ應ズル必要ガアルト申シマスル時ハ、
其ノ調整準備金ノ限度ニ於テ社債計畫ノ方
ヲ其ノ程度增額シ得ル、四半期每ニ色々計
畫ヲ立テテヤツテ居リマス、ソレ等ノ計畫
ニ於テ適當ニソレ等ノ調整ヲ圖リ得ルト云
フ其ノ餘地ヲ殘シタノデアリマシテ、四半
期計畫等ニ於テ實行スル途上ニ於テ、ソレ
ゾレ必要ナル方面ニソレ等ノ資金ノ配分增
加ヲ致スト云フヤウナ具體的方法デ取扱ツ
テ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=40
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041・武田徳三郎
○武田委員 諒解致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=41
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042・板谷順助
○板谷委員長 是ニテ暫時休憩致シマスガ、
午後ハ豫算總會ニ於キマシテ臨時軍事費豫
算ガ上程サレマシテ祕密會デ御話ガアルサ
ウデアリマスカラ、豫算總會ノ終了後開キ
タイト思ヒマス、其ノ際ハ「ラジオ」ヲ以テ
御通知申上ゲマス
午後零時二分休憩
午後三時二十八分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=42
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043・板谷順助
○板谷委員長 午前ニ引續キ會議ヲ開キマ
ス-世耕弘一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=43
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044・世耕弘一
○世耕委員 私ハ主トシテ日本銀行ニ關ス
ル問題ニ觸レテ最初ニ御尋ネヲ致シタイト
思フノデアリマスガ、先ヅ順序ト致シマシテ、
此ノ新日本銀行ノ發行スル銀行劵ノ内容及
ビ紙幣ノ樣式-三十三條ニ出テ居リマス
ガ、此ノ點ヲ一應御說明ヲ願ヒタイト思フ
ノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=44
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045・山際正道
○山際政府委員 今囘ノ法案ノ第三十三條
ニハ「銀行劵ノ種類及樣式ハ主務大臣之ヲ定
ム」トゴザイマス、此ノ趣旨ハ、從前ノ日本
銀行ノ制度ニ於キマシテハ、銀行劵ノ種類
ハ卽チ何圓々々ト云フ金額ニ依ル種類ハ、
法律上決メテアツタノデゴザイマス、ソレ
カラ尙ホ樣式ハ、主務大臣ガ定メマシテ、
ソレヲ公〓スルト云フコトニ相成ツテ居
リマシタ、其ノ事項ヲ踏襲致シマシテ、今
度ノ法律ニ於キマシテハ種類モ樣式モ共
ニ主務大臣ガ之ヲ決メル、斯ウ云フコトニ
改メタノデゴザイマス、種類ヲ從來法律デ
揭ゲテ居リマシタノニ今囘ハ主務大臣ガ之
ヲ決メルト申シマシテ、必ズシモ其ノ種類
ヲ法律上限定致シマセヌデシタ趣旨ハ、段
段取引ノ狀況ニ應ジマシテ實際ニ適合スル
ヤウナ種類ヲ隨時主務大臣ガ定メ得ル、其
ノ方ガ經濟界ノ實情ニ適應シタ銀行劵ガ出
セル、斯樣ニ考ヘタカラデアリマス、ソレ
デ今後ニ於ケル樣式及ビ種類ヲドウスルカ
ト云フ問題デアリマスルガ、是ハ差當リハ
此ノ法案ノ附則ニモ揭ゲテアリマスルガ、
從來使ツテ居リマシタ銀行劵ヲ其ノ儘新シ
イ日本銀行ノ銀行劵トシテ襲用シテ參ル積
リデアリマス、是ハ御承知ノ通リ銀行劵ハ
相當高級ナ印刷デアリマシテ、俄カニ新シ
ク種類ヲ增減スルトカ樣式ヲ改メルトカト
云フコトハ容易ナコトデハアリマセヌシ、
又今囘ノ改正ノ趣旨ガ、骨子ニ於キマシテ
ハ從來ノ日本銀行ガ其ノ儘新シイ日本銀行
ニナルト云フ考ヘ方デアリマスカラ、銀行
劵ト致シマシテモ、從來ノモノヲ差當リ其
ノ儘引繼イデ使用スルト云フ考ヘデアリマ
ス、唯今後ニ於ケル印刷ニ付キマシテハ
今囘ノ法案改正ノ結果、當然兌換銀行劵ノ
「兌換」ト云フ文字ハ削ルコトニナルト思ヒ
やく、又「金貨何圓相渡可申候」ト云フ從來
ノ劵面ニアリマスル條項ハ削除ニナルト思
ヒマスガ、其ノ二點ヲ除キマシテハ、大體
從前ノヲ引續キ使用スル考ヘデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=45
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046・世耕弘一
○世耕委員 私ノ考ヘデハ現在ノ日本銀行
ヲ現存セシメテ、寧ロ大東亞銀行ト云フヤ
ウナモノヲ創立シタ方ガ適當デナカツタ
カ、サウ云フヤウナコトガ本法立案ノ上ニ
話題ニ上ラナカツタカドウカト云フコトヲ
御尋ネシタイ、次ニ新日本銀行ト、舊日本
銀行トノ權限ノ差異デアリマス、色々此ノ
條文ノ中ニ現ハレテ居リマスガ、尙ホ念ノ
爲メ之ヲ具體的ナル例示ヲ以テ御說明ガ願
ヒタイト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=46
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047・山際正道
○山際政府委員 第一段ノ御尋ネハ本法案
ヲ立案スルニ當リマシテ、大東亞銀行ヲ建設
スルト云フコトヲ考ヘナカツタカト云フ御
尋ネデアリマス、東亞共榮圈ガ今後其ノ金
融上ノ措置ニ付テ申シマスルナラバ、日本ヲ
中心トシ、又日本銀行ヲ中樞機關トシテ運
營セラレテ行カネバナラヌト云フコトハ申
スマデモナイノデアリマス、併シナガラ今日
ノ狀態ニ於テ、直チニ大東亞銀行ナルモノ
ヲ設立致シマシテ、之ヲ以テ東亞共榮
圈內ノ各種ノ金融ニ當ラシムルト云フ組
織ガ適當デアルカドウカト云フコトニ
付キマシテハ是ハ申スマデモナク未ダ各
地域ノ事態ハソコマデ安定ヲ見テ居リマセ
又、今後事態ガ進ムニ從ヒマシテ、漸次
ソレ等ノ問題モ具體的ニ考ヘラレテ參ルコ
トダラウト思ヒマスガ、現在ノ段階ニ於テ
ハ未ダ左樣ナ具體的ナ案ヲ立案スベキ時期
ニアラズト云フ考へ方カラ致シマシテ、別
ニソレニ關スル手段ヲ設ケナカツタ次第デ
アリマス、尙ホ別途御審議ヲ願ツテ居リマ
スル南方開發金庫等ハ、自然將來ニ於キマ
シテソレ等ノ問題ヲ解決シテ參リマスル一
ツノ足掛リトハナルモノデアラウト考ヘテ
居リマス
第二ノ御尋ネハ今度ノ法案ト、從來ノ日
本銀行制度トノ間ニ日本銀行ノ權限上如何
ナル差異ガアルカト云フ御尋ネデアツタト
存ジマス、御尋ネノ趣旨ハ主トシテ日本銀
行ノ業務ニ關スル問題デハナイカト考ヘル
ノデアリマス、業務ノ點ト致シマシテハ、
大體ノ趣旨ハ從來日本銀行ガヤツテ居リマ
シタ業務ニ附加ヘマシテ、更ニ新タナル使
命ヲ此ノ銀行ニ與ヘルト云フコトデアリマ
ス、其ノ新シク附加ヘマシタ部分ハ、主ト
シテ四ツノ點ニ分レテ居リマス
第一點ハ御承知ノ通リ從來日本銀行ハ主
トシテ商業金融ニ關スル業務ヲ中心ト致シ
テ居ツタノデアリマス、其ノコトハ例ヘバ
日本銀行條例ニ於キマシテハ、直接タルト
間接タルトヲ問ハズ、日本銀行ハ工業ニ關
與シテハナラヌ、或ハ株劵ヲ擔保トシテ金
ヲ貸シテハナラヌト云ツタヤウナ規定モア
リマシテ、日本銀行ノ働ク主タル場面ハ短
期ノ商業金融ト云フコトデアツタノデアリ
マス、併シナガラ御承知ノ如ク生產力擴充
ヲ中心トスル事業金融ト云フモノガ今日當
面ノ重要ナ金融問題デアリマスルノデ、此
ノ方面ニモ尙ホ日本銀行ガ關與シ得ルト云
フ建前ヲ執リマスコトハ、今後ニ於ケル我
ガ國金融操作ノ上カラ當然ナサナケレバナ
ラヌコトト考ヘマスルノデ、是ニ於テ本法
案ニ於キマシテハ、從來ノ業務ニ加ヘテ、
尙ホ產業金融ノ方面ニ於テモ日本銀行ガ乘
出シテ行クト云フコトヲ立案ノ骨子ニ織込
ンダノデアリマス、ト申シマシテモ、何モ
直接ニ日本銀行ガ各事業會社ヲ相手ト致シ
マシテ、產業資金ヲ出スト云フ趣旨デハ勿
論ナイノデアリマス、卽チ狙ヒト致シマス
ル所ハ、產業資金ハ申スマデモナク、原則ト
シテ國民ノ貯蓄-國民ニ依ツテ蓄積セラレ
タル資金ニ依ツテ賄ハルベキデアルコトハ
言フマデモナイノデアリマスガ、唯時ニ依
リ場合ニ應ジマシテ需給ヲ調節致シマスル
必要上、日本銀行カラ一時產業資金ヲ放出
スルコトガ必要デアルト考ヘマスノデ、ソ
レガ玆ニ謂フ日本銀行ヲシテ產業金融ニ與
カラシムルト云フ趣旨ナノデアリマス、長
期固定ノ直接ノ產業資金ヲ日本銀行ヨリ放
出セシムルト云フ趣旨デハナイノデアリマ
ス
更ニ附加ヘマシタ機能ノ第二點ハ、現在ノ
日本銀行ノ仕事ハ、金融市場ニ對スル關係
ニ於キマシテモ、何レカト申シマスト、總
テ受身ニ、消極的ニ立チ働クヤウナ仕組ニ
相成ツテ居ルノデアリマス、卽チ市場ノ金
利ガ昂騰シテ金ガ入用ニナレバ市場カラ借
リテ來ル、市場ノ金利ガ緩ンデ金ガ餘レバ
日本銀行へ返シテ來ルト云フ、謂ハバ受身
ノ立場ニ在ツタノデアリマス、併シ今後ハ
金融界モ尙ホ政府ノ政策ニ依ツテ統制ヲセラ
レマシテ、金利ガ上ツタカラ借リニ來ルト
云フコトデハナク、上リサウナ場合ニハ進
ンデ金利ノ昂騰ヲ防グ爲ニ積極的ナ手ヲ打
ツ、又不必要ニ引緩ム虞ノアル場合ニ於テ
ハ、其ノ事態ノ生ジナイ前ニ、日本銀行ガ
進ンデ積極的ニ必要ナル手段ヲ講ズルト云
フ操作ガ必要デアルト考ヘマスノデ、其ノ
使命ヲ今後ノ日本銀行ニ與ヘタノデアリマ
ス、是ハ主トシテ手形、國債、一定ノ債
劵等ノ賣買ノ方法ガ中心トナツテ、ソレ等
ノ積極的ナル市場操作ガ行ハレルト思フノ
デアリマス
ソレカラ第三ニ與ヘマシタ任務ハ、國際金
融取引上必要ガアリマスル場合ニハ、積極的
ニ日本銀行ガ乘出シ得ルト云フコトヲ認メ
タ點デアリマス、現在ノ制度ニ依リマスル
ト爲替ノ賣買スラ行フコトガ出來ナイノデ
アリマスガ、今後ハ必要ガアル場合ニ於テ
ハ爲替ノ賣買ヲ行ヒ得ルノミナラズ、他ノ
外國ノ金融機關ニ對シマシテ、必要アリマ
スル場合ニ於テハ資金ノ融通デアルトカ、
出資デアルトカ、其ノ他爲替決濟ニ關スル
取引ノ協定デアルトカ、ソレ等ノ國際金融
上必要ナル取引ヲ行フコトガ出來ル、其ノ
業務ヲ第三トシテ與ヘタノデアリマス、今
後東亞共榮圈內ノ金融ノ中心機關トシテ働
イテ參リマスル爲ニハドウシテモ此ノ職
能ハ必要ナコトト思ハレマスルノデ、其ノ
點ヲ第三トシテ附ケ加へタノデアリマス
ソレカラ第四番目ニ考ヘマシタコトハ、
日本銀行ハ我ガ國ノ中央銀行トシテ我ガ國
ノ信用制度ト申シマスルカ、信用ノ秩序ヲ
保持シ、尙ホ之ヲ育成シテ行クベキ任務ガ
アルト云フコトデアリマス、是ハ一寸御分
リニクイカモ知リマセヌガ、例ヘバ玆ニ
新シイ或ル手形取引ノ制度ガ出來上ツタ、
併シナガラ其ノ手形ニ付テハマダ世間ノ信
用ガ集マツテ居ナイカラ、比較的圓滑ニ動
イテ居ナイト云フヤウナ場合ニ於テハ日本
銀行ハ、曾テ其ノ例ト致シマシテハ、「スタ
ツ手形ト云フモノヲ致シタコトガゴザ
イマスルガ、例ヘバ左樣ナ方法ニ依リマシ
テ、其ノ手形ニ信用ヲ與ヘテ、サウシテ玆
ニ新シイ信用制度、信用秩序ヲ作リ上ゲテ
行クト云フノガ、又一ツノ任務デアリマス、
或ハ又消極的ニ考ヘマスレバ、何處カ金融
機構ノ一點ニ多少弱點ヲ生ジタト云フヤウ
ナ場合ニ於キマシテハ、日本銀行ハ進ンデ
其ノ弱點ヲ補フ爲ニ相當ノ働キヲスル、其
ノ結果トシテ何等金融界ノ圓滑ナル運營ニ
支障ナク推移サセルコトガ出來マスルヤウ
ニ配慮サセルト云フノガ、當然今後ニ於テ
日本銀行ノナスベキ仕事デアルト云フ建前
カラ、此ノ點ヲ第四點トシテ加ヘタ次第デ
アリマス、其ノ他細カイ點ニ付キマシテハ
現行法ト異ナリマシテ、日本銀行ヲシテ色
色積極的ニ仕事ヲサセマス爲ノ規定ヲ設ケ
タノデアリマスガ、其ノ主ナル點ハ只今申
上ゲマシタ四ツノ點ニ分類シ得ルカト考ヘ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=47
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048・世耕弘一
○世耕委員 大體御說明ニ依ツテ外廓ハ分
リマシタガ、約メテ見マスレバ、結局新日
本銀行ガ權限ヲ擴張サレタト云フコトニハ
間違ヒナイノデアリマス、更ニ言葉ヲ換へ
テ申シマスルナレバ、一番吾々ガ重要ト考
ヘラレル金融ノ所謂非常ト處置トモ言フベ
キ權限ガ、新日本銀行ノ權限ノ中ニ强ク植
ヱ付ケラレタト云フコトガ玆ニ考ヘラレル
ノデアリマスガ、順序ト致シマシテ更ニ御
尋ネシテ置キタイノハ、從來工業竝ニ爲替方
面ニ投資取引ヲヤツテ居リマシタ稍〓類似ノ
金融關係トハドウ云フ風ナ點デ接觸點ヲ保
ツテ行クノデアルカ、此ノ調和ガヤハリ新
日本銀行ノ業務運用ノ上ニ於テ重大ナ影響
ヲ及ボスモノダラウト思フノデアリマス、
尙又之ニ依ツテ初メテ新シイ日本銀行ノ存
立ノ意義ガ明カニナルダラウト思フノデア
リマスガ、此ノ點御說明ヲ願ヒタイト思ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=48
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049・山際正道
○山際政府委員 御尋ネノ點ハ私ガ了解致
シマシタ所デハ、第一ニ工業方面ノ金融ヲ
ヤル上ニ於テ日本銀行ノ持ツ使命ト、從來
ノ工業金融機關トノ關係ハドウデアルカト
云フノガ第一點デ、次ニ外國爲替ノ關係ニ
付テ同樣ノコトハドウナツテ居ルカト云フ
御尋ネデアツタヤウニ拜聽致シタノデアリ
マン、第一點ノ工業金融ノ點ニ付キマシテ
ハ先程事業金融ノ問題ト致シマシテ、日本
銀行ノ新シイ使命ニ付テ申上ゲタノデアリ
マスルガ、日本銀行ハ個々ノ事業家ナリ個々
ノ產業ナリニ對シマシテ、直接產業資金ヲ放
出スルコトハ致サヌノデアリマス、寧ロ既設
ノ各種ノ工業金融機關ナリ事業金融機關ナ
リガ其ノ事業資金ヲ放出シ、其ノ工業資金ヲ
放出スル過程ニ於キマシテ若シ資金ニ詰ルト
カ、或ハ資本市場、例ヘバ社債ノ市場デアルト
カ、株式ノ市場デアルトカ云フ方面ニ於テ
事業金融上ノ梗塞ガ來ルト云フヤウナ場合
二、一時的ニ日本銀行ガソレヲ打開スル爲
ノ資金ヲ出ス、斯樣ナ働キヲ致スト考ヘル
ノデアリマス、卽チ其ノ意味ニ於キマシテ
各種工業關係ノ金融機關、事業金融ヲ取扱
フ機關ノ更ニ親銀行的存在ニ相成ラウト思
フノデアリマス、外國爲替ニ付キマシテモ
其ノ關係ハ同樣デゴザイマシテ、日本銀行
ガナニモ個々ノ商社ナリ一般個人ヲ相手ニ
爲替ノ賣買ヲ致ス考ハナイノデアリマス、
是モヤハリ普通ノ「ビジネス」トシテ行ハレ
マスル外國爲替ノ賣買ハ、正金銀行初メ各種
ノ爲替銀行ニ於テ今後モ從前同樣行ハルベ
キモノト考ヘテ居リマス、唯何等カノ理由
ニ因リマシテ、是等ノ外國爲替銀行ガ例へ
バ危險ヲ稱スト云ツタヤウナ關係カラ、其
ノ出合ヲ求メテ日本銀行ヘ取引ヲスルト云
フヤウナ場合ニ於キマシテハ、日本銀行ハ
其ノ賣買ニ應ジマシテ、外國爲替銀行ノ肩
ヲ輕クスルト云ツタヤウナ働キヲスルト思
フノデアリマス、卽チ是亦日本銀行ハ外國
爲替銀行ノ親銀行タル地位ニ於キマシテ、
其ノ仕事ヲシテ參ルト云フ關係ニナラウト
思フノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=49
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050・世耕弘一
○世耕委員 大體了承致シマシタガ、結局
碎イテ申シマスナラバ、保險デ言ヘバ再保
險或ハ親銀行ト子銀行、日本銀行ハ正ニ
親銀行デアルト云フヤウナ形ヲ取ルデアラ
ウト云フコトガ、只今ノ御說明デ能ク分リ
マシタデスガ、戰時金融金庫法案ノ內容ヲ
見マシテモ、恐ラク斯ウ云フヤウナ子會社
ト申シマスカ、小金融ヲ皆此ノ日本銀行ガ
脊負フノデアラウト云フ想像ガ付クノデア
リマス、突込ンデ御尋ネスルコトハ此ノ際
避ケタイト思ヒマスガ、更ニ進ンデ御尋ネ
致シタイノハ、大藏省ガ從來金融政策ヲ執
ツテ來タ其ノ態度、其ノ責任ヲ今度ノ新日本
銀行ニ全部轉嫁シタヤウナ形ガドウモ窺ハ
レルノデアリマスガ、サウ云フヤウナ點ニ
付テモウ少シハツキリシタ御說明ヲ願ヒタ
イト思フノデアリマス、尙ホ附加ヘテ日本
銀行ニ對シテ從來大藏省ガ執ツテ來タ監督
權ト、新日本銀行ニ對スル監督權トノ權限
ノ相違ニ付テ御說明ガ願ヘレバ結構ダト思
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=50
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051・山際正道
○山際政府委員 本法案ニ依リマスル日本
銀行ハ、眞ニ政府ト表裏一體ノ關係ニ立チ
マシテ、恰モ政府ガ欲スル所ノ金融操作ナリ、
金融政策ナリヲ、着實ニ其ノ儘實現シテ行
クト云フ所ニ新シキ日本銀行ノ狙ヒガアル
ノデアリマス、卽チ日本銀行ガ行ヒマスル
仕事ハ、其ノ一ツ〓〓ガ嚴密ニ國家ノ政策
ト一致シテ行ハルベキデアル、斯樣ナ考ヘ
方ニ立ツ此ノ方案デアリマス、其ノ意味ニ
於キマシテ見方ニ依リマシテハ、御話ノ
ヤウニ政府ガヤルベキ所ヲ總テ日本銀行ニ
被セテシマツタヤウナ恰好デアルト云フ見
方モ或ハ成立ツノカモ知レマセヌガ、併シ
ナガラ其ノ意味ハ政府ニ於テ其ノ責任ヲ囘
避スルガ爲ニ行フノデナイコトハ勿論デア
リマシテ、寧ロ政府ノ欲スル所ヲ如實ニ日
本銀行ニ於テ實現サレルヤウニ、其ノ意味
ニ於テ日本銀行ノ行ヒマスル仕事ヲ恰モ政
府自ラ行フガ如キ仕事ノ內容ニマデ接近
シテ居ルト云フ結果ニ相成ツテ居ルノデア
リマス、隨ヒマシテ日本銀行ニ對スル今後
ノ監督ト云フ問題ニ付キマシテハ、從來ノ
日本銀行ニ於ケルヨリモ一層徹底致シマシ
タ監督ヲ致スコトニ相成ツテ居ルノデアリ
やっく、從來ノ制度ニ依リマスルト日本銀行
條例ニ於キマシテ、政府ノ監督權ハ單ニ營
業上條例、定款ニ背戾スルカ、又ハ政府ニ
於テ不利ト認ムル事件ヲ制止スルト云フコ
トヲ以テ監督ノ骨子ト致シテ居ツタノデア
リマス、本法案ニ於キマシテハ、更ニ詳細
ナル規定ヲ設ケマシテ、例ヘバ其ノ第四十
三條ニ於キマシテ、日本銀行ノ目的達成上
特ニ必要アリト認ムルトキハ必要ナル業務
ノ施行ヲ命ジ又ハ定款ノ變更其ノ他必要ナ
ル事項ヲ命ズルコトヲ得ルト云フ規定ヲ設
ケマシテ、之ニ依リマシテ、政府ノ監督權
ヲ一層强化致シタノデアリマス、更ニ又續
イテ、四十四條ニ於キマシテハ「主務大臣ハ日
本銀行ニ對シ業務及財產ノ狀況ニ關シ報〓
ヲ爲サシメ、檢査ヲ爲シ其ノ他監督上必要
ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得」ト
云フコトヲ揭ゲマシテ、其ノ監督ノ徹底ヲ
期シタ次第デアリマス、更ニ本法案ニ於キ
マシテハ、一步ヲ進メマシテ、第四十七條
ニ於テ「日本銀行ノ役員ノ行爲ガ法令、定款
若ハ主務大臣ノ命令ニ違反シタルトキ若ハ。
公益ヲ害シタルトキ又ハ日本銀行ノ目的達
成上特ニ必要アリト認ムルトキハ總裁及副
總裁ニ付テハ政府、理事、監事及參與ニ付
テハ主務大臣之ヲ解任スルコトヲ得」ト云フ
規定ヲ設ケマシテ、非常ニ其ノ監督ノ權限
ヲ强化致シタノデアリマス、其ノ他日本銀
行監理官ヲ置イテ、常時其ノ業務ノ狀況ヲ
注視スルト云フヤウナコトハ、勿論從前通
リト相成ツテ居リマス、之ヲ要シマスルニ
日本銀行ノ今後ノ使命機能ガ非常ニ擴大サ
レテ參リマシタ關係ニ於キマシテ、政府ノ
之ニ對スル監督權モ亦非常ニ擴張サレテ參
ツタト云フコトニ相成ツテ居ルノデアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=51
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052・世耕弘一
○世耕委員 爲替局長御急ギノヤウデスカ
ラ、一寸銀行局長ノ質問ヲ留保シテ戴イテ、
爲替局長ニ關聯シテ御尋ネ致シタイト思ヒ
マン、南方諸國ニ對スル爲替基準ノ問題ガ
相當喧シク論議サレテ居ルノデアリマスル
ガ、此ノ基準ヲドウ云フヤウナ目安ニ置イ
テ今後處理ヲナサルノデアルカ、此ノ點
ガ第一、第二點ハ香港竝ニ上海等ノ敵性銀
行ノ通貨處理ニ對シテ、今後ドウ云フヤウ
ナ方針ヲ御執リニナルカ、特ニ香港、上海
方面ノ敵性銀行ノ通貨政策ニ對シテハ、蔣
政權ニ及ボス影響ガ甚大ナルコトデアリマ
スルカラ、相當考究サレテ居ラルルコトト
思ハルルノデアリマスガ、此ノ二點ヲ此ノ
際御說明ヲ得タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=52
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053・原口初太郎
○原口政府委員 南方ノ通貨ト我ガ國ノ圓
トノ關係ニ付キマシテハ只今ノ所ハ、現
地ニ於キマシテ、作戰地域ニ於キマシテハ
現地通貨表示ノ軍票ヲ使ツテ居リマシテ、
現地ノ通貨ト等價デ流通ヲサセテ居リマス、
ツレカラ作戰地デナイ地方、卽チ佛領印度
支那及ビ「タイ」、斯ウ云フ所モ、段々ト全體
ノ世界ノ爲替ノ狀況ト云フモノガ、大東亞
戰爭勃發前カラ、此ノ一、二年來非常ナ
變化ヲ起シテ來テ居リマス、殊ニ戰爭勃發
後ニ於キマシテハ、從來ノ「ポンド」或ハ「ドル」
ト云フモノノ力モ非常ニ衰ヘテ參リマシタ
シ、又我ガ國ト致シマシテハ左様ナ通貨ト
ノ連繫ハ絕ツト云フコトニ相成ツテ參リマ
シタ、又佛印或ハ「タイ」、是等モ我ガ國ニ
協力シテ參リマシテ、今後ハドウシテモ日
本ト一〓ニナツテ金融政策ヲヤツテ行カナ
ケレバナラヌ、斯ウ云フ方向ニ只今進ミツ
ツ色々ノ具體的ノ相談ヲヤツテ居リマス、
現ニ佛印ノ「ピヤストル」ト日本ノ圓ト云フモ
ノハ、何レモ以前ハ米「ドル」ヲ仲介トシテ決
濟ヲシテ居リマシタガ、昨今ハ直接決濟スル
コトニナツテ居リマス、「タイ」ノ「バート」モ
日本ノ圓ト直接ニ決濟ヲスル、斯ウ云フコト
ニナツテ來テ居リマス、ソコデ御尋ネノ中
ニ、今後占領地域ノ通貨問題ト云フノガ入
ツテ參リマスルガ、之ニ付キマシテハ何分ニ
モ只今作戰中デゴザイマスルシ、只今ノ所
圓トノ間ニシツカリシタ爲替相場ヲ作ルト
云フコトハ、實際ノ必要モ餘リゴザイマセ
ヌシ、又經濟的ニ申シマシテ時期ガ早過ギ
ル、斯ウ存ジテ居リマス、南方開發金庫ガ
出來マシテ後ニ於キマシテモ、差當リノ所
ハ軍票デ資金ヲ賄ヒマス、日本ノ圓トノ間
ノ關係ハ出來ルダケ起ラナイヤウニスル、
斯ウ云フ建前ニナツテ居リマス、併シナガ
ラ斯樣ナ狀態ヲ何時マデモ續ケルト云フ譯
ニハ參リマセヌ、漸次現地ノ狀態ガ落着イ
テ參リマシテ、經濟的ニ或ル程度ノ見透シ
ガ出來マシタ場合ニ於キマシテハ、日本ノ
圓トノ間ニ適當ナ相場ヲ決メタイ、其ノ場
合ニドウ云フ所ヲ狙ツテ決メルカト申シマ
スルト、從來ノヤウニ第三國ノ通貨ヲ基準ニ
シテ、卽チ以前ハ「ドル」トカ「ポンド」トカ云
フモノヲ仲介ニシマシテ相場ヲ決メテ居リ
マシタガ、左樣ナコトハ今日ハ出來マセヌ、
又ヤルベキ筋合デモゴザイマセヌ、第三國
通貨ヲ基準ニスルト云フ方法ハ採ラナイ積
リデ居リマス、然ラバ第二ノヤリ方トシテ
金ヲ基準ニシテ決メル、斯ウ云フコトガ考
ヘラレマスガ、是モ亦今日ノ經濟ノ實體カ
ラ見マシテ我ガ國ノ政策ニ卽應シナイ、斯
ウ存ジマシテ、此ノ方法モ亦只今ノ所考ヘ
テ居リマセヌ、然ラバ第三ニ殘サレタ方法
ト致シマシテハ、日本ノ圓ノ先方ノ占領地
域ノ通貨、之ヲ直接睨ミ合セマシテ其ノ換
算率ヲ決メル、斯ウ云フコトニナリマス、
其ノ場合ニヤハリ此ノ現地ノ生產力或ハ資
源ノ狀況、民度ト云フモノガ標準ニナリマ
スルガ、何ヲ申シマシテモ物價ノ狀況ト云
フモノガ大キナ要素ニ相成ルコトト存ジテ
居リマス、情勢ノ納マル所ヲ見屆ケマシテ、
左樣ナ見地カラ適當ナ換算率ヲ決メテ、サ
ウシテ物資ノ交流ヲ圓滑ニヤツテ行クヤウ
ニ仕組ンデ行キタイ、斯樣ニ存ジテ居リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=53
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054・板谷順助
○板谷委員長 世耕君ニ一寸申上ゲマス、
大臣ハ方々デ引張凧ニナツテ居ルノヲ特ニ
御出席ニナツタノデアリマシテ、五時十分
前ニドウシテモ退席セネバナラヌト云フ御
話デアリマスノデ、田村君ト武田君ノ大臣
ニ對スル質問ガ保留シテアリマスノデ、順
次片付ケテ行キタイト思ヒマスカラ、アナタ
ハドウゾ暫ク御待チ願ヒマス-田村君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=54
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055・田村秀吉
○田村委員 私ハ大藏大臣ニ日本銀行法案
ト戰時金融金庫法案ニ付テ二、三御尋ネヲ
致シテ置キタイト思フノデアリマス、ソレ
ハ殊ニ此ノ日本銀行法案ノ如キハ、時局下
當然ノ改革デアルト思フノデアリマスガ、
私ノ御尋ネ致シタイ、趣旨ハ、斯ウ云フ大
ナキ劃期的ノ改革ニ當ツテハ、世間ニ私共
ガ理解スル以外ニ或ル種ノ誤解ガアツタ
リ、或ハ又不安ヲ生ズルト云フヤウナ場合
ガアル、或ハ又世間ニソレガ運用ニ對シテ
ノ希望ヲ持ツ點モアル、斯ウ云フ點ニ對シ
テ責任アル大臣ガ世間ニ對シテサウ云フ誤
解ヲ解キ、不安ヲ解消スルト云フ意味ニ於
テ出來ルダケ明確ナル御說明ヲ願ヒタイ、
斯ウ云フ趣旨デ二、三御尋ネヲ致シタイト
思フノデアリマス
先ヅ第一ハ日本銀行法案ニ關スル點デア
リマスガ、今囘大東亞ノ中央發劵銀行トナツ
テ、通貨ハ管理制度ニ改メラレルト云フ
コトデアリマスノデ、從來ノ兌換制度ト異
ツテ、此ノ資金供給ノ上ニ從來國債ヲ擔保
トシタモノガ社債ニモ及ボス、隨テ非常ニ
寛大デ迅速ニ行ハレマスガ、一方寛大ナル
ガ故ニ出シ過ギルヤウナコトガ又ナイトハ
言ヘナイ、ソコデ大東亞共榮圈ノ產業開發
ノ爲ニ產業金融トシテノ機能ヲ十分ニ活用シ
テ貰ハナケレバナラヌ一面ニ於テ、ソレガ
或ハ社會的ニ「インフレ」ヲ釀成スルノヂヤ
ナイカト云フ點モ起ツテ來ルノデアリマス、
ソコデ所謂管理通貨制度ニナツタ日本銀行
ガ發劵ニ當ツテノ基準-現在ハ最高發行
額ハ四十七億ト抑ヘテ居ルヤウデアリマス
ガ、今後愈〓、大東亞ノ產業ガ擴充サレテ行
ツテ、此ノ四十七億圓ガ更ニ多クナツタ場
合、其ノ發行高ノ基準ヲ何處ニ抑ヘルカ、
又今後ノ方針ヲドウシテ行クカ、現在四十
七億デアルノガ、此ノ法律ガ新タニ生レタ
場合ニドノ程度ニシテ行ク御見込デアルカ
ト云フ點ヲ、此ノ際發行高ニ關スル意味カ
ラ、是ハ此ノ法ノ目的トシテ居ル所謂信用
制度ノ保持育成ト云フ點ニ重大ナル關係ガ
アリマスノデ、出來ルダケ明確ニ御說明ヲ
願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=55
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056・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 只今御述ベニナリマシタ
問題ハ極メテ重大且ツ適切ナル問題デアル
ト存ジマス、先ヅ日本銀行ハ產業金融ニ乘
出スト云フコトヲ言ハレテ居リマスルシ、
又今囘ノ改正案ノ趣旨ノ一點ガソコニモア
ル譯デアリマス、ソレニ付キマシテ一言
申上ゲテ置キタイ、私ハ國債消化資金、
產業資金ト云フモノハ國民ノ蓄積二氏八
テ出タ資金ヲ以テ賄フベキモノデアル
ト斯ウ云フ根本ノ考ヘヲ持ツテ居リマス、
隨テ日本銀行劵ノ增發ニ依リマシテ產業資
金ト云モノハ根本的ニ賄ハレ得ルモノデハ
ナイノデアリマス、唯細カク申シマスト、ソ
コニ二點考フベキ點ガアリマス、ソレハ全
體論トシテ、長イ間ノコトトシテハ國民ノ
蓄積ニ俟ツノデアリマスガ、國民ノ蓄積ノ
增加シテ參リマス時期ト、產業資本ノ要リ
マス時期ガ、或ハ數箇月トカ、若干ノ期間
出合ヒノ惡イコトガ往々アリマス、隨テ普
通銀行等ノ資金ノ蓄積ヲ俟ツテ居リマシテ
/
ハ必要ノ場合ニ應ジ難イ、斯ウ云フ場合ニ
日本銀行ガ其ノ發劵作用ニ依リマシテ資金
ヲ供給スルト云フコトハ必要ニナルノデア
リマス、今マデハソレガ十分ニ行キマセヌ
爲ニ障碍ガアルト認メラレマスノデ、今囘
其ノ邊ヲ明確ニ致シタイノデアリマス、是
ハ公債消化資金ト同樣デアリマス、只今ハ
日本銀行ヲシテ公債ヲ引受ケシメテ居リマ
スガ、是ハ必ズ民間ニ賣出シ、之ヲ消化ス
ルト云フコトヲ必要ト存ジテ居ルノデアリ
マス、要スルニ民間資金ノ蓄積ガ出來テ初
メテ公債ガ發行シ得ルト云フコトデハ、時
間的ニ非常ナ窮屈サガアリマシテ、戰時ノ需
要ニ應ジ得ナイト云フ爲ニ、今日本銀行引
受制度ヲ執ツテ居リマスガ、是ハ徒ラナ日
本銀行劵ノ膨脹ニ依ツテ公債ヲ賄フモノデ
アルト云フ考ヘノ下デハナイノデアリマス、
隨ヒマシテ日本銀行ガ公債ノ背負込ミ增加
ヲ生ジマスコトハ極メテ大事デアリマス、
是ハ產業資金ニ付テモ同樣デアリマス、唯
國家經濟總力ガ增加致シマシテ、銀行劵ノ
所要ガ增加シマシテ、或ル程度ノ膨脹ガ必
要デアルト云フ範圍內ニ於テハ許サレルコ
トデアリマスガ、是ハ民間ノ所要量ナドニ
比ベレバ極メテ少額デアリマス、原則トシ
テハ前ニ申上ゲタヤウナ次第デアリマス、日
本銀行ノ銀行劵發行高ヲドウスルカト云フ
コトデアリマスガ、是ハ之ヲ適量ニシテ行キマ
ス根本ノ方策ハ、國債或ハ產業資金等ニ依ツ
テ通貨ノ撒布ガ行ハレルノデアリマス、之ヲ
資金ノ蓄積、國民貯蓄ノ增强ニ依リマシテ囘
收ヲスル、是ガ根本デアリマス、需給ノ根本
デアリマスガ、其ノ間ニ日本銀行ノ各種ノ操
作ニ依ツテ之ヲ調節スルト云フ、是ハ全體
ガ大キナ二ツノ流レノ中間ニ操作ガ殘ル譯
デアリマス、ソレ等ノ點ヲ考ヘマスルカラ
發行限度ハ大體ニ於テ最近ノ實績ヲ勘案致
シマシテ、其ノ後ノ變化ガ如何デアツテ產
業活動ハドウ增スデアラウカ、不健全ナラ
ザル通貨ノ必要ハドウ增スデアラウカ、斯
ウ云フ點ヲ考ヘマシテ決定ヲ致シタイト思
ヒマス、尙ホ日本銀行ガ大東亞金融圈ノ中
心トナリ、此ノ機能ガ高度ニ發揮サレマス
ヤウナ場合ニハ、海外ノ中央銀行ノ準備ト
シテ日本銀行劵ガ用ヒラレル場合モ起ツテ
來ルカト存ジマスガ、斯樣ナ場合ニハ其ノ
數量モ加算ヲ致シテ考へルヤウニ相成ラウ
ト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=56
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057・田村秀吉
○田村委員 次ニ第二點デアリマスガ、大
東亞共榮圈ノ金融ノ中心機關ニナリ、中央發
劵銀行トシテノ機能ヲ完全ニ達成スル爲ニ
ハ、私ハ現在ノ朝鮮銀行ノ發劵制度、臺灣
銀行ノ發劵制度ハ日本銀行ガ之ヲ吸收スベ
キモノデアルト斯ウ思フノデアリマス、此
ノ點ハ午前ノ委員會ニ於テ政府委員カラ
モ一應ノ御說明ガアツタヤウデアリマスガ、
私ハ適當ナル機會ニ之ヲ吸收スベキモノデ
アル、吸收シナケレバナラヌト斯ウ考ヘル
ノデアリマスガ、此ノ點ニ對スル御方針ヲ
承リタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=57
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058・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 大東亞共榮圈ノ中心的銀
行ニ日本銀行ガナル場合ニ於テモ、發達過
程竝ニ大東亞金融圈內ノ全地域ノ政治形體
等ニモ依リマシテ、各地域ノ中央銀行、又
ハソレニ類似ノ作用ヲナスヤウナモノ、發
劵ヲ致シマスヤウナ銀行モ相當長イ間存在
シ、場合ニ依ツテハ永久ニモ存在スルコト
デアリマシテ、一元的ニ日本銀行劵ニ致ス
ト云フコトニハ相成ラヌト思ヒマス、併シ
ナガラ御質問ノ如ク朝鮮銀行及ビ臺灣銀行
ハ所謂外地デハアリマスルガ、日本ノ國內
ニ於テ流通ヲ致スモノデアリマス、〓鮮モ
臺灣モ我ガ國ノ統治ノ下ニナリマシテ、餘
程久シキ年數ニナリマスノデ、漸次是ハ統
一ノ機運ニ向フベキモノデアル、斯樣ニ存
ジデ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=58
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059・田村秀吉
○田村委員 次ニヤハリソレト關聯シテデ
アリマスガ、先程御話中ニモアリマシタガ、
大東亞共榮圈ノ金融機能ヲ統制シデ行クト
云フ大キナ任務ヲ日本銀行ガ持ツヽ朝鮮銀
行、臺灣銀行、是モ內地同樣デアリマスカ
ラ、今ノヤウナ希望ヲ申上ゲタノデスガ、
大東亞共榮圈內ノ、或ハ滿洲ノ中央銀行ト
カ、或ハ中國聯合準備銀行トカ、或ハ華興
商業銀行トカ、或ハ中央儲備銀行トカ、今
囘出來ル南方金庫、是ハ多少違ヒマセウガ、
ソレ等ノ銀行ノ通貨機能ニ對シテハ、日本
銀行ガ適當ニ統制シテ行クト云フコトガ、
大東亞共榮圈ノ健全ナル發達ヲ促ス上ニ於
テ必要デアルト思フノデアリマス、就キマ
シテハ是等ノ關係モ考ヘテ行カナケレバナ
ラヌト思ヒマス、先程申上ゲタ大東亞共榮
圈內ノ我ガ國ト相關聯シテ居ル各國ノ銀行
ノ通貨ノ統制ニ付テ何カ御考ヘガアリマス
カ、伺ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=59
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060・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 只今支那ニ於キマシテハ、
我ガ方ト協力致シマスル部面ニ於キマシテ
ハ北方ニ於テハ聯合準備銀行、中支ニ於
キマシテハ中央儲備銀行ガ、發劵銀行タル實
ヲ備ヘテ居ルノデアリマス、北支ノ聯合準
備銀行ノ如キハ、樣々ナ批評モアリマスガ、
私ハ所謂戰時ニ於キマシテ、而モ若干日前
二ハ天津ノ租界ノ如キ、支那政府ノ行政
權ヲ受ケマセヌ所モアル狀態デアリ、又民
度モ高度ノ統制經濟ノ運用ニハ適シマセヌ
ヤウナ狀態ニアリマシテ、而モ古イ考ヘ
方カラ申シテ、左樣ナ自由主義的經濟ノ色
ガ多分ニ存スル所ニ於テ、必要デアリマス
ル金準備ナドト云フモノヲ持チマセヌデ、
アノ程度ノ職能ヲ果シテ參リマシタコトハ、
非常ニ成功デアルト私ハ存ジテ居ルノデア
リマス、併シナガラ現狀ニ於テ滿足デアル
カト言ヘバ、是ハ自ラ別問題デアリマス、
尙ホ其ノ發劵等ニ付キマシテハ、十分ニ考
慮スル餘地ガアルト思フノデアリマス、中
央儲備銀行ニ於キマシテハ、創立尙ホ日ガ
淺イノデアリマシテ、尙更各種ノ問題ガア
リ得ル譯デゴザイマスガ、併シ只今ハ總テ
ノ經濟ガ物資方面、通貨方面ニ極メテ密接
ナル關係ヲ持ツテ居リマスルノデ、通貨
方面ノ作用ノミニ依リマシテ其ノ健全
ヲ期スルコトハ、到底困難デアリマス、發
劵銀行ダケガ通貨ヲ增發シ、或ハ收縮シテ
行ツテ、是デヤルト云フコトハ困難デアリ
マス、所謂綜合經濟政策、經濟ノ綜合現象
ノ結果ノ反映デナクテハナラヌ、他ノ經濟
施設ト密接ナル關係ヲ持ツテ參ル必要ガア
ルノデアリマス、隨ヒマシテ其ノ觀點カラ
中シマシテモ、又政權ガ別個ノモノデアリ
マス觀點カラ申シマシテモ、直接日本銀行
ガ其ノ發劵其ノ他ヲ指導致スト云フ譯ニハ
參リ兼ネルカト思ヒマス、併シナガラ日本
側ハ北支、中支、皆支那側ノ健全ナル發達
ニ協力シテ參リマシテ、現ニ日本側ノ顧問
モ入ツテ居ルコトデアリマスノデ、事實ハ
能ク協調ヲ保チマシテ、其ノ發劵ニ付テハ
適當ニ助力ヲ致シテ參ル積リデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=60
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061・田村秀吉
○田村委員 モウ一點ハ此ノ法案ノ第二十
三條、第二十四條デアリマス、日本銀行ハ
今囘外國爲替ノ業務ヲ持ツ、國際金融取引
ノ仕事ヲ始メルト云フコトニナツテ居ルノ
デアリマスガ、サウ致シマスト殊ニ此ノ大
東亞戰爭ハ長期戰ヲ何人モ覺悟シテ居ルノ
デアリマス、其ノ大東亞共榮圈內ノ外國爲
賛國際金融ト云フモノハ擧ゲテ此ノ法案
カラ見マスト日本銀行ニ移ルノデアリマス、
サウ致シマスト戰爭ガ濟ンデ大東亞共榮圈
外ノ第三國トノ取引ニナレバ別デアリマス
ガ、ソレガ起ラヌ限リハ正金銀行ノ機能ト
云フモノガ停止セラレテ、大東亞共榮圈內ノ
國際取引ハ日本銀行ニ移ル、斯ウナルヤウ
ニ思ハレルノデアリマスガ、此ノ新制度ニ
當ツテ正金銀行ノ今後、日本銀行トノ關係
ヲドウ云フ風ニセラレル御積リデアリマス
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=61
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062・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 本法案ニ於キマシテ外國
爲替ノ賣買ヲ爲スコトヲ得トナツテ居リマ
スガ、是ハ文字通リデアリマシテ、スルコ
トガ出來ルト云フノデアリマス、隨ヒマシ
テ商社等ノ外國爲替ニ付キマシテ直接ニ日
本銀行ガ其ノ賣買、所謂爲替取引銀行トシ
テ出ル意味デハアリマセヌ、此ノ場合ニ於
キマシテモヤハリ銀行ノ銀行トシマシテ、
或ハ正金銀行デアリマストカ、臺灣銀行デ
アリマストカ、左樣ナ爲替銀行ノ寧ロ親銀
行ト申シマスカ、サウ云フ決濟尻ヲ日本銀
行ニ大體集メテ行ク、斯ウ云フ考ヘデアリ
マスカラ、他ノ爲替銀行ノ業務ハ之ニ依ツ
テ所謂其ノ業務ガ狹クナル、斯ウ云フ影響
ハ受ケマセヌ、但シ正金ガ英米等ノ系統ノ
關係ノ通商ガ一切止マリマシタ影響ハ之ヲ
受ケマスルガ、是ハ本法ノ改正トハ別個ノ
問題デアルト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=62
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063・田村秀吉
○田村委員 次ニ戰時金融金庫法案ニ付テ
ニ、三御伺ヒ致シタイノデアリマス、此ノ
戰時金融金庫法案ニ付キマシテハ、日本銀
行ノ制度ガ改革ニナルノハ當然デアリ、現
在旣ニサウ云フヤウナ機能ヲ發揮シツツア
ツタモノトハ異リマシテ、戰時金融金庫ノ
制度ニ付テハ多少世間ニ疑議ガアルヤウニ
思フノデアリマス、生產擴充、產業再編成
ヲ目標トシテ自給自足經濟ノ政策ヲ十分ニ
完備シタイ、斯ウ云フ意味カラ今マデヤツ
テ居ツタ金融機關、現在ノ金融機關以外ノ
制度トシテ戰時金融金庫制度ガ生レントシ
テ居ルノデアリマスガ、私ハ此ノ際現在ノ金
融機關ヲ活用スルナリ、或ハ現在ノ金融機
關ヲ改組シテ、其ノ戰時、時局性ヲ帶ビタヤ
ウナ改組ニ依ツテ、現在ノ金融機關ハ旣ニ
色々ナ設備ガ完備シテ居ルノデ、此ノ制度ヲ
活用スルコトガ寧ロ新タニ作ルヨリハ其ノ
目的ヲ十分ニ達成シ得ルンヂヤナイカト云
フ考ヘ方ヲスル者デアリマス、最近革新論デ
色々ナ制度ヲヤル、或ハ國策會社ヲ作ル、
或ハ色々ナ組合ヲ作ル、營團ヲ作ル、觀念ト
シテハ新シイ經濟開發ニ當ツテノ仕組トシ
テハ洵ニ立派デアリマスガ、偖テ之ヲ運用セ
ントスルコトニナリマスルト、是ハ諄々シク
申上ゲナクテモ大臣能ク御承知デセウガ、
旣ニ議會ヲ通過シテ居ル所ノ色々ノ制度
デモ活用シテ居ナイ、上ノ方ノ職員ガ俸給
ダケ取ツテ、チツトモ營團ナリ國策會社ヲ
運用サレテ居ナイ、實績ヲ齎ラシテ居ナイ、
唯一部ノ職員ガ〓ツテ行クト云フコトガ間
間アルノデアリマス、ナゼサウ云フコトガ
出來テ來ルカト申スト、私ハ手足ガナイ、
人ガナイ、頭ガ出來タガ設備ハソレニ卽應
シナイカラダト思フ、斯ウ云フコトガ現在
ノ革新觀念ノ實際運營ニ當ツテ生ズル大キ
き
ナ弊害デアルト思ヒマス、戰時金融金庫ヲ
新設スルニシテモ、此ノ點ヲ深ク考慮シナ
ケレバナラヌト思ヒマス、其ノ點カラ言ツ
テ私ハ現在ノ金融機關ヲ改組シテ、其ノ戰
時金融金庫法案ノ狙ハントスル所ヲ、十分
ニ實行シ得ルノデナカツタカト斯ウ考ヘル
ノデアリマス、ソレカラ一〓ニ伺ヒマスガ、
金融ダケデ生產ノ擴充ト云フコトガ直チニ
行ハレルモノデナイノデアリマス、殊ニ戰
時金融金庫ノ狙ヒ所ハ大體採算ノ採レナイ
モノヲ狙ツテ居ル、サウ云フコトニ對シテ
金融ヲ注グト云フヨリハ從來アツタ補助
金制度、奬勵金ト申シマスカ、戰時的ナ特
殊ノ補助金制度ト云フモノヲ活用シテ行ツ
タ方ガ寧ロ效果ヲ擧ゲ得ルノデハナカツタ
カト云フコトモ考ヘルノデアリマスガ、此
ノ點ヲ引括メテ伺ツテ置キマス、私ハ最初
ニ承リマシタ現在ノ機關以外ニ之ヲ作ル其
ノ人ガ果シテ御用意ガアルカドウカ、觀念
ハ宜イガ、制度ハ宜イガ、併シ之ヲ實際ニ
移ス場合ニ、其ノ準備ガ整ヒ得ルカドウカ、
人ガアルカドウカ、頭ダケアツテモ胴體以
下ガ之ニ伴ハナイト云フコトデハ、目的ヲ
實現スル譯ニ行カナイノデアリマス、ソレ
ニ關聯シテ此ノ戰時金融金庫ヲ準備スルノ
ニ、ドノ位期間ガ掛ツテ、何時カラ實際ノ
仕事ニ入ラレル御用意デアリマスカヲ伺ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=63
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064・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 戰時金融ト云フコトニ付
キマシテ、戰時金融ノ爲ニ戰時金融會社ヲ
作ルト云フ說ガアリマスガ、私ハ戰時下ノ
金融デ、戰時金融デナイモノハナイト云フ
コトヲ話シテ居リマス、戰時ニ特殊ノ金融
ガ必要デアルト云フ觀念カラ、戰時金融金
庫ノ設立ヲ考ヘテ居リマセヌ、戰時下ニ於
キマシテハ、總テ一國ノ政府民間ヲ問ハズ、
其ノ資金的活動ハ物資勞力ノ供給ト合フコト
ガ必要デアルノデアリマス、ソレ以上ニ資金
ヲ出シマシテモ、是ハ所謂物價騰貴ヲ起シ、
進ンデ經濟ノ秩序ヲ攪亂シマスダケデ、何
等ノ效用ガアリマセヌ、隨ヒマシテ先程モ
日本銀行ニ付テ御話ガアリマシタガ、今囘
ノヤウナ改正ヲ致シマシテ、所謂金融機關
ヲ離レテ、自由ニ金ヲ出シテ、樂ニ金ガ廻
ツテ「インフレ」ニナルノデハナイカト云フ
議論ガアリマスガ、私共ハ決シテ左樣ニハ
考ヘテ居リマセヌ、樂ニスルガ、決シテ必
要以上ニ出サヌ、此ノ點ハ十分ニ注意シテ
努力シテ參ル積リデアリマス、話ガ餘談ニナ
リマシタガ、サウ云フ物資其ノ他ノ計畫ト
關聯シマシテ、政府資金トシテ又民間資金
トシテ、必要ナ資金ハ必ズ作ル、國民貯蓄
ノ增加ニ依ツテ作ル、同時ニ不必要ナ資金
ハ一厘モ出サヌ、是ガ詰リ昭和十二年ニ支
那事變擴大ト決マリマシタ時ニ、資金調整法
ヲ提案シタ理由モ其處ニアルノデアリマス、
而モ其ノ不必要ナル必要ナル資金ハ、
國ノ國防及ビ產業ノ計畫カラ見マシテ、如
何ナル產業ヲドノ程度ニ何時起スカ、此ノ
計畫ト合フコトガ必要ナノデアリマス、ソ
レガ資金調整法ノ制定ノ眼目デアルノデア
リマス、併シナガラ所謂企業計畫、產業計
畫ヲ一國綜合的ニ起シマスコトハ中々困難
ナモノガアリマスノデ、其ノ運用ニ付キマ
シテモ相當當初ハ幼稚ナ形態デアツタノデ
ミアリマスガ、略〓初期ノ目的ヲ達シテ參ツタ
ノデアリマス、サウ云フ點カラ考ヘマシテ、
現在ハ普通銀行ノ融資モ、貯蓄銀行ノ融資
モ、所謂商業銀行ノ融資ニ付キマシテモ、
皆此ノ戰時下ニ於キマシテハ非常ニ事業金
融ノ色彩ヲ帶ビテ參ツタ時代デアリマス、
併シナガラ尙ホサウ云フ時代ニ於キマシテ
モ、之ニハ各種類各場面ガアリマスルノデ、
昭和十二年ノ事變擴大ノ後ニ於テ、戰時金
融會社的ナモノヲ作ルヤ否ヤト云フコトヲ
考慮シマシタガ、丁度只今御話ノヤウナ
新規ノ機構ト云フモノハ、其ノ所期ノ效果
ヲ發揮シ得ザル場合ガ中々多イノデアリマス
カラ、私ハ興業銀行ノ機能ノ擴大デ其ノ時
ハ行キタイト云フ考ヘデ、興業銀行ノ債劵
發行限度ヲ相當ニ擴張シテ參リマシテ、其ノ方
針ガ爾來今日マデ四年執ラレテ參ツタノデ
アリマス、併シナガラ其ノ後ノ情勢ヲ見マスル
ノニ、日本ノ國防力ノ增强發展ノ爲ニハ新
規ノ企業ノ計畫ヲ要スルモノガ相當多イノ
デアリマス、併シナガラ一方銀行ハ預金者
ノ大事ナ預金ヲ預ツテ居リマシテ、之ヲ大
切ニ保護シマスル見地カラ、將來其ノ元本
利子ノ償還性ノ不十分ナモノニ對シテ投資
スルコトハ、他ノ面カラ見テ極メテソレハ
愼ムベキコトデアリマス、併シナガラ時勢
ノ要求ハ新規ノ事業デ國家的ニハ極メテ必
要デアリマス、併シ其ノ將來ノ採算性ガ、
隨テ元本利子ノ償還性ガ確實ナリヤ否ヤト
云フコトニナリマスト、疑念ヲ挾ム餘地ノ
アルモノガ相當アリマス、疑念ヲ挾ム餘地
ノアルモノガ國家的ニ見テ其ノ事業ハ成リ
立タナケレバナラヌ、斯ウ云フ問題ニ出會
シマシタ、申上ゲルマデモナク金融機關モ
國家的ニサウ云フモノニ進ンデ融資ヲシ
口、又能ク理解スレバ其ノ將來性ノ不安ガ
ナイト云フコトヲ理解スル方面モアルノデ
アリマシテ、頭ヲ新シク變ヘルト理解セラ
レルトコロモアリ、金融界モソレニ協力シ
タノデアリマス、所ガ其ノ元本利子ノ償還
性ノ不確實ナモノ是ハ預金者ノ大切ナル
預金ヲ預ツテ居リ、而モ其ノ預金ハ私的ナ
モノデナク國債ノ消化、產業資金供給ノ爲
ニ一國ノ經濟ノ大政策トシテ貯蓄ノ奬勵ヲ
シテ居ルノデアリマシテ、其ノ預金ガ不安
ニナルト云フコトデハ、是ハ經濟政策ノ根
本ガ崩レルノデアリマス、左樣ナ不安ナ金
融ニドン〓〓乘出スト云フコトハ大變無理
ナ註文デアリマス、其ノ調和ノ一策トシテ
所謂强制融資ノ方法ガ出テ參リマシタ、所
謂命令融資ト云フコトガ行ハレ、今日ニ於
テハ興業銀行ガ擔當シテ居ルノデアリマス、
併シナガラサウナリマスト、普通ノ金融機
關ガ普通ノ立場カラ元利ノ償還確實ナリト
思フ資金ノ融通ハ、從來ノ立場カラ無論出
來ルト思ヒマス、又國家ガ命令融資ヲシマ
スヤウナ、元利ヲ確實ニ國家ガ保障スルト
云フヤウナ債務ノ所モ融資ガ出來マスガ、
併シ世ノ中ニハサウ黑カ白カハツキリシタ
モノバカリハアリマセヌ、相當國家ガ必要
ナ產業デアツテヤラナケレバナラヌ、足ノ
軍部ニ於テモ必要ヲ感ジ、產業行政機關方
面ニ於テモ必要ヲ感ジマス、併シハツキリ
國家ガ融資命令デヤルカト云フト、中々ソ
レニハ愼重ナ〓究ガ要ツテ、簡單ニ行カナ
イ、併シ普通ノ金融カラ見ルト相當危イコ
トニナル、サウ云フモノガ相當出マシテ、
所謂白ト黑トノ實際問題トシテ間ガ出來ル、
是ハ長イ時間ヲ掛ケルト白カ黑カニナツテ
モ、サウ時間掛ケタノデハ遲クナツテ、中
中金融ガ間ニ合ハヌト云フ場面ガ出テ來ル
ノデアリマス、サウ云フコトハ現在ノ金融
機構デハ出來ニクイ、併シ國家ノ爲メダカ
ラヤルト云フコトハ、國家保障ノナイモノ
ガ乗リ出スト、或ハ將來一般ノ金融機關ニ
相常不確實ナル債權ヲ殘シ、資產ノ不安ヲ
起スト云フコトガアリマセウ、是ハ私ハ宜
クナイト思フ、ソレデサウ云フ「リスク」ガ
アルモノニ乘出ス必要ガ一面ニアル、ソレ
ナラバ乘出スニ適當ナモノガドウモココデ
段々出來ナケレバナラヌト云フ情勢ニナツ
タ、愈〓支那事變モ發展ヲ致シマシテ、大東
亞戰爭トナリマシタ、大東亞ノ建設ト云フ
コトニナリマスレバ、是ハ素人トシテ考ヘマ
シテモ、世界第一流ト云フヨリモ第一等ソ
大陸軍、大海軍ヲ作ラナケレバナラヌ、ソ
レヲ築キ上ゲ、其ノ陸海軍ガ戰時ニ於テー
近代戰ハ非常ナ兵器彈藥ノ消耗戰デアリマ
スルガ、其ノ消耗ニ耐ヘテ、之ヲ補充シテ
行クト云フ爲ノ所謂生產力、運輸力ト云フ
モノガ、實ニ大規模ノモノガ出來ナケレバ
サラヌ、將來大キナ產業計畫ガ出來マスレ
バ、「スチール」ガ何千万「トン」、石炭何
億トン、船舶何千万「トン」ト云フ風ヲ雄大
ナ構想ノ下ニ、ソコニ大ナル國防經濟力
ガ出來ナケレバナラヌ時代ニナル、今
後益〓生產擴充ト云フコトハ必要デアル、其
ノ生產擴充ノ必要ナ部面ニ於キマシテハ、
斯ウ云フ事業ハドウシテモ此ノ程度ニヤラ
ナケレバナラヌ、併シソレガ果シテ將來長
ク立派ナ採算性ガアルカドウカト云フト、
其ノ中途デハ相當不安ノ多イモノガアル、
±
併シサウ云フモノヲドン〓〓起シテ行カナ
ケレバナラヌ、ソレニハ斯ウナリマスト、
ソレヲ專門ニ扱フ機關ガドウシテモ必要デ
アル、今マデノヤウニドツチ付カズニ置イ
テ、唯國家ノ爲ニ出ロ〓〓ト云フノモ、少
シ無理ガアリマス、併シサウカト云ツテ、
一々是ハ命令融資、損失補償ダト云ツテ、
其ノ事業每ニ依ツテ行クコトモ、中々骨ガ
折レルノデアリマス、ソコデ斯ウ云フ國家
全體ガ力ヲ入レテ居リマシテ、萬一損失ガ
出來テモ構ハズニ行ケルト云フ一ツノ機關
ヲ作ツテ行ク方ガ、積極的ニ其ノ必要ニ應
ズル所ノ意味ガアリマスルシ、又消極的ニ
ハ一般金融機關ガ不堅實ニナル-實ハ是
ハ不堅實ニナラヌデ多ク終ツテ居リマスガ、
ナルト云フ疑ヒヲ避ケテ行ク、是ハ大切ナ
コトデアリマス、其ノ兩面カラ最早之ヲ作
ル時期デアル、此ノ大東亞戰爭ノ擴大致シ
マシタ此ノ機會ニ於テ、此ノ機關ヲ設ケル
ベキデアルト考ヘタ次第デアリマス、御說
ノ如ク、新シイ店開キヲ致シマスト、行員
ナドモ皆他カラ集マルノデアリマシテ、ド
ウシテモ新規ノ所ニハ中々良イ人ヲ澤山集
メルコトハ困難ダト云フコトハ、今マデノ
實例ガ左樣デアリマス、又集マリマシタ人ガ
新シイ機關ノ使命ヲ自覺シテ、ソレニ合フ
ヤウニ「チーム·ワーク」ヲ以テ運行シマスマ
デニハ暇ガ掛リマス、是ハ何レノ機關ト雖
モ、相當ソレガ慣熟シタ運行致シマスマデ
ニハ暇ガ掛ルノデアリマス、今囘モ恐ラク
サウデアラウト思ヒマス、併シナガラドウセ
相當長イ將來ニ亙リマシテ必要ナ機關デア
リマスカラ、成ベク良イ人ヲ集メルヤウニ
努力ヲ致シマシテ、成ベク早ク所期ノ目的
ヲ達スルヤウニ努メテ參リタイ、斯ウ考ヘ
テ居リマス、大體成ベクナラバ四月ノ中ニ
ハ開キタイ、斯ウ云フヤウナ方向デ進ンデ
居リマス
ソレカラ尙ホ補助金政策トノ關係デアリ
マスガ是ハ今申上ゲマシタヤウナ所謂「リ
スク」ノアル金融、將來ノ償還性ガ不確實
ト申シマスカ、是ハ單ナル金融業者ノ判斷
ガサウナルト云フ意味デアリマシテ、寧ロ
事業家ノ方デハ相當自信ノアルモノガ澤山
アル、唯從來ノ事情ト違ヒマスカラ、他カ
ラ見ルト、果シテ其ノ通リ確實カドウカト
云フコトガ非常ニ不安ガアルノガ多イト云
フコト、實際ハ不確實ナ事業デナイモノガ
多々アルガ、確實ナルモノト直グ考ヘルト
云フニハ無理ガアル事業デアリマスカラ、
是ハ貸付ヲ致シマシテ、其ノ事業ガ十分ニ成
立ツテ、其ノ元利ノ償還ヲ期シテ居ルノデ
アリマス、澤山ノ中ニハ無論サウナラナイ
モノモアラウト思ヒマスガ、一應サウデア
リマスカラ、之ヲ國家ノ補助金ニ依ツテヤ
リマスコトハ極メテ不適當デアルト思フノ
デアリマス、左樣ナ意味デ補助金ニ依リマ
セヌデ、補助金ニ依リマスモノハ個々ニ又
サウ云フ必要ノアルモノハ選擇ヲ致シテ、
別途豫算等ニ於テ御協賛ヲ得ル、斯ウ云フ
考へ方ニ致シテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=64
-
065・粟山博
○粟山委員 委員長、質問ヲモウ少シ整理
シテ貰ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=65
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066・板谷順助
○板谷委員長 マダ初メデスカラモウ少シ
御辛抱願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=66
-
067・田村秀吉
○田村委員 大體分リマシタ、只今御話ノ
中ニアリマシタ興業銀行ニ對スル强制融資
ノ今マデヤツテ居リマシタ仕事ガ、大體戰
時金融金庫ニ移ルト致シマスト、興銀ノ融
資命令制度ト云フモノハ今後如何ニナサル
オ積リデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=67
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068・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 大體戰時金融金庫ニ付キ
マシテハ、個々ニ融資命令ヲ出シマス、金
融ガナイモノデ、是ガナケレバ融資命令ヲ
出サナケレバナラナカツタカト云フモノガ
大體行クコトニナリマス、然ラバ融資命令
ト云フモノハ全部ナクナルカト申シマスト、
私ハ必ズシモ左樣ニモ考ヘテ居リマセヌ、
銀行ノ職能ハ御承知ノ如ク右左ト截然ト區
別致シマセヌ、普通銀行デモ不動產融資モ
致シ、興業金融モ致ス場合ガアリマス、今
囘勸業銀行、農工銀行法等ヲ改正致シマシ
テ、是等ガ不動產金融以外ニ相當出得ルヤ
ウニ致ス考ヘデアリマスノデ、大體ノ主眼
點ヲ置キマスガ、法令上他ノモノハ絕對ニ
出來ヌ、是ハ必ズ其ノモノニ限ルノダト云
フ區別ハ致シマセヌ、資金ノ集マリマシタ
狀況ノ工合、相當ニ遊資ヲ興業銀行ガ持チ、
又從來ノ取引關係等カラ興業銀行ト事業家
ノ關聯ガアリマスルヤウナモノ、サウ云フ
ヤウナ實際ヲ考慮致シマシテ、命令融資ヲ
興業銀行ニ出ス場合モ尙ホ私ハ殘リ得ル、
斯ウ云フ風ニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=68
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069・板谷順助
○板谷委員長 田村君、成ベク簡潔ニ願ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=69
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070・田村秀吉
○田村委員 次ニ產業設備營團ト本金庫ト
ノ關係デアリマスガ、產業設備營團ハ時局
柄重要ナル產業施設ニ對シテノ貸付或ハ資
金ノ供給ト云フコトヲ任務トシテ居リ、又
未動遊休設備ニ對シマシテモ同ジヤウナ業
務ヲ持ツテ居ルト思フノデアリマス、ソコ
デ產業設備營團ガ戰時金融金庫ガ狙ツテ居
ルヤウナ業務、ヲサウ云フ機能ヲ相當持ツテ
行カネバナラヌシ、持チタイト云フ風ニ私共
承ツテ居ルノデアリマスガ、產業設備營團
ノ活動範圍、其ノ方向、竝ニ未動遊休設備
ニ對スル兩者ノ關係等ヲ此ノ際明確ニシテ
其ノ間紛淆ガナイヤウニ、世間ノ誤解ノナ
イヤウニシテ置イテ戴キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=70
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071・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 所謂產業再編成、其ノ中
ノ相當大キナ部分ヲ占メマス所ノ所謂未動
遊休設備ニ付キマシテ、事業ヲ廢止致シマ
スルモノ、又未動遊休ノ儘ニ殘シテ置キマ
ス部分、ソレガゴザイマス、又國家緊要產
業ニシテ容易ニ個人ガ企テルコトガ出來ナ
イモノニ付テ、之ヲ實行スルト云フ要求ガ
殘ツテ居リマス、斯樣ナ點ニ付キマシテハ
政府ガ、主トシテ商工省ガ當リマス譯デア
リマスガ、計畫ヲ立テマシテ、其ノ中民間
ノ人ノ到底自分デハヤレナイ其ノ設備ハ、
政府自ラシナケレバナラヌ、運營ハ民間ニ
任セマス場合ガアリマス、サウナレバ所謂
國有民營的ニ相成リマスルガ、サウ云フモノ、
或ハ何等カ政府的援助ニ依リマシテ民間
ニヤラセルモノ、斯ウ云フ風ニ分レルト思
ヒマス、政府自ラヤルモノト、民間ノ投資
融資ニ依ツテヤルモノト、ソコニ二ツ分レ
ルヤウニナリマス、前者ガ產業設備營團ノ
致ス仕事デアリマス、後者ノ金融金庫ガ之
ニ資金ヲ供給スルコトトナリマス、斯ウ云
フ二ツニ仕事ガ分レマス、又未動遊休設備
ニ致シマシテ、ソレヲ未動遊休ノ儘ニ存續
セシメルト云フモノニ付キマシテ、到底業
者自ラ之ヲ存續スルコトガ不可能デ、政府
ガ買上ゲテ保管ヲシテ行ク必要ノアルモノ
ハ考慮スル、是ハ產業設備營團ガヤルノデ
アリマス、併シソレニハ及バヌ、相當ナ條
件デ融資ガ得ラレルナラバ、未動遊休ノ儘
存續スルコトガ企業者ニ於テ出來ルト云
フ場合ニハ、此ノ戰時金融金庫ガ金ヲ貸シ
マス、ツレカラ未動遊休設備ノ儘デ置カナ
イデ、何ト云ヒマス、其ノ設備ヲ「スクラッ
プ」ニシテシマフト云フヤウナ場合ニハ產業
設備營團ガ買上ゲル、先程政府自ラト云フ
コトヲ申シマシタガ、誤リデアリマシテ、
產業設備營團ニセシムル譯デアリマス、先
ヅ政府ニ代ツテト申シマスカ、正確ナ觀念
デハアリマセヌガ、極ク俗ニ申上ゲマシテ、
政府ニ代ツテ或ハ買ヒ潰シ、設備ヲシテ行
クモノハ產業設備營團或ハ民間ノ人ニヤラ
シテ置イテ宜シイ、併シ普通デハ金ガ借リ
ラレナイガ、金ヲ貸シテヤレバヤレルト云
フモノハ此ノ金庫デヤル、斯ウ云フ政府ノ
方針ニ基キマシテ今ノヤウナ分レタ職能デ
働ク、斯ウ云フコトニナリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=71
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072・田村秀吉
○田村委員 サウ致シマスト、御說明デハ
ハツキリ致スノデアリマスガ、其ノ運營ノ
上ニハ中々紛清スル點ガアルト思フノデス、
ソコデ本金庫ト產業設備營團トノ運營ニ當
ツテ、圓滿ニ運營シテ行ク上ノ連絡ト云フ
點ニ付テ、何等カノ御用意ガアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=72
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073・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 今ノヤウナ再編成ノ計畫
ハ大體商工省ガ立テマシテ、ソレニ依ツ
テヤツテ行クノデアリマスカラ、區別ガ自ラ
アリマス、併シナガラ斯ウ云フ條件デ金ガ
借リラレレバ、企業者ガ自ラ遊休設備ヲ保
有スル、併シソレガ出來ナケレバ何處カデ
買ツテ貰フ、是ハ產業設備營團ガ買フコト
ニナリマス、サウ云フ風ニ一ツノモノガド
ツチニナルカト云フコトニ付テ相當實際問
題ガアリマシテ、サウ云フ點ニ付キマシテ
ハ丁度御質問フヤウナコトガアルト存ジマ
ス、隨ヒマシテ此ノ役員ナドヲ或ル部分ハ
相互兼務ニ致サウカト云フコトモ考ヘテ居
リ、ソレカラ兩方ノ連絡委員會ト云フモノ
ヲ置キマシテ、始終協議ヲ致シタイヤウ
ナコトモ考ヘテ居リマス、元ノ計畫今申
上ゲタヤウニ大體商工省ガ產業計畫トシテ
ハ立テルコトニナツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=73
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074・田村秀吉
○田村委員 今一點最後ニ伺ヒタイノハ、
此ノ金庫ガ仕事ヲ始メマスト、直チニ日本
協同證劵株式會社ヲ統合スルコトニナツテ
居リマスノデ、其ノ方ノ仕事ハ直チニ始マ
ルト思フノデアリマス、先程午前中ノ政府
委員ノ御說明ニ依リマスト、最近協同證劵
會社ニ對シテ預金部資金ガ三千五百万圓バ
カリ供給サレテ居ル、ソレガ此ノ大東亞戰
爭ノ後ノ株式ノ値段ノ騰落ニ依リマシテ相
當利益ガ擧ツテ居ル、其ノ利益額ハ大體ニ
於テ一部ハ株主ニ配當シテ、アトハ本金庫
ニ引繼グト云フ御說明デアツタノデアリマ
スガ、其ノ利益ノ配當ハ金利程度ト云フ御
話デアリマシタガ、ドノ程度ノ金利ヲ標準
トシテ配當セラレントスル御考ヘデアル
カ、是ハ國家ノ「リスク」ニ於テ預金部資金
ヲ調整融資シテ居ツタノデアリマスカラ、
ソレガ利益ヲ收メタ場合ニハ國家ニ納付ス
ルノガ至當ダト思フ、隨テ本金庫ニ利益
ガアツタトスレバ之ヲ引繼グベキモノデア
ツテ、多クノ配當ヲスベキモノデハナイト
考ヘルノデアリマスガ、其ノ點ヲ御伺ヒシ
テ置キマス更ニ本金庫ノ職員ハ公務員ト
看做サレテ、公務員トシテノ責任ヲ負ウテ
居ルノデアリマスガ、協同證劵會社ノ所謂
有價證劵ノ賣買業務ヲ是ガ引繼ギマスト、
職員ガ自ラ株式賣買ヲスルト云フコトハ、
公務員トシテ特殊ノ規定ガナイ場合ニ於キ
マシテハ、差支ヘナイコトニナルノデアリ
マスガ、戰時金融金庫ガ出來タ場合、監理
官ヲ置イテ政府ガ監督シテ、公務員トシテ
ノ責任ヲ問フト云フコトニナツテ居リマス
ガ、此ノ職員ハ自ラ株式賣買ニ有利ナ地位
ヲ持ツノデアリマスカラ、サウ云フ風ナ考
ヘ方ノ者ハマサカ職員ニハシナイト思ヒマ
スガ、サウ云フコトガナイヤウニ監督シ得
ルカドウカ、ソレニ對スル何等カノ規定ナ
リ、方法ヲ御考ヘデアリマスカ、此ノ二點
ヲ最後ニ承リマシテ、私ノ質問ヲ終リタイ
ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=74
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075・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 前段ノ御質問デアリマス
ガ、只今協同證劵會社ニハ預金部資金ハ出
シテ居リマセヌ、併シナガラ協同證劵會社
ガ利益ヲ得マスコトハ間接ト申シマスル
カ、國家ノ大キナ力ガ背景ニナツテ居ルノ
デアリマス、普通ノ商事會社ノ擧ゲマシタ
利益トハ違ヒマス、隨ヒマシテ之ヲ本金庫
ニ融通致シマスル場合ニ於ケル協同證劵會
社ノ配當ニ付キマシテハ、普通ノ營利會社
ト同ジ立場デ見ル譯ニハ參ラヌト思ヒマス、
大部分ガ本金庫ニ引繼ガレテ行クコトト存
ジマス、隨ヒマシテ只今何分ト云フコトヲ
私ハマダ考ヘテ居リマセヌガ、左樣ナ見地
カラ、又株式會社ノ株主トシテ普通ニ期待
シ得ル配當ト云フモノモアル譯デアリマス
カラ、是等ノ點ヲ考ヘマシテ、適當ニ私共
ノ考ヘモ纒メテ參リタイト思ツテ居リマス
尙ホ本金庫ノ職員ノコトニ關シマシテデア
リマスガ、是ハ甚ダ恐縮デアリマスガ、政府
委員ヨリ答辯ヲ致サセタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=75
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076・田中豐
○田中(豐)政府委員 本金庫ノ職員ヲ公務
員トシテ居ルガ、株ノ賣買ナドヲヤル際ニ
祕密ヲ漏洩スルトカ、或ハ不正ナコトガア
ルト云フ場合ニハ、ドウ云フ取締ガアルカ
ト云フ御質問デゴザイマシタガ、公務員ト
看做シマシテモ、サウ云フ點ニ付キマシテ
ハ別段ノ取締ハ起キテ參リマセヌ、隨テ嚴
重ナル監督ヲ要スルコトハ勿論デアリマス
ガ、監督命令デ色々ノ規定ガ出來マスノデ、
大藏大臣カラ本金庫ノ運營ニ關スル色々ナ
監督命令ヲ出ス際ニ、サウ云フコトニ對ス
ル取締ノ規定ヲ置キ、サウ云フコトノナイ
ヤウニ十分監督命令ヲ出ス積リデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=76
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077・板谷順助
○板谷委員長 此ノ際諸君ノ御諒解ヲ得テ
置キマス、私ガ前ニ申上ゲマシタヤウニ、
本委員會ニ付託サレマシタル議案ハ、戰時
金融トシテ最モ重大ナ關係ガアリマスルノ
デ、出來得ルダケ愼重ニ審議ヲ致シタイノ
デアリマス、所ガ大臣其ノ他政府委員ノ御
都合ニ依ツテ、中々思フヤウニ委員會ヲ開
クコトガ出來マセヌ、現ニ明日モ午前中開
キタイト云フ考ヘデアリマスルケレドモ、
部屋ガアカナイト云フヤウナ關係ガアリマ
スルノデ、自然審議ガ長引クト云フコトハ
已ムヲ得マセヌ、又諸君ノ要求ニ依ツテ何
時デモ大臣ノ出席ヲ求メマス、デアリマス
カラ御心配ナクユツクリ御審議ヲ願ヒマス、
是ダケ申上ゲテ置キマス-世耕君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=77
-
078・世耕弘一
○世耕委員 私ハアト少シデ日本銀行ニ關
係スルコトハ終リタイト思ヒマスガ、先程
ノ質問ニ續イテ御尋ネ致シタイト思ヒマス、
從來我ガ國ノ中央銀行デアツタ日本銀行ガ、
政府側財政カラ獨立ノ存在デアツタト思フ
ノデアリマス、所ガ日本銀行ハ先程局長サ
ンガ御說明ニナリマシタヤウニ、政府ト表
裏一體デアルト云フコトヲ言ハレテ、其ノ
點日本銀行ハ新シイ使命ト特徵ヲ有スルト
云フコトハ、十分御窺ヒ出來ルノデアリマ
スガ、此ノ改正ニ依ツテ特長ト缺點ト云フ
モノガ生ジテ來ハシナイカ、其ノ點ヲドウ
云フ風ニ御考ヘニナツテ居リマスカ、此ノ
點先ヅ最初ニ御尋ネ致シタイト思フノデア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=78
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079・山際正道
○山際政府委員 御指摘ノ如ク今後ニ於ケ
ル日本銀行ハ、政府ノ財政ヲ賄ツテ參リマ
スル爲ノ最モ必要ナル機關トシテ、十分ニ
其ノ機能ノ發揮ヲ期待致シテ居ルノデアリ
マス、從來ノ日本銀行制度ニ於ケル日本銀
行ハ、是亦御話ノ如ク何ト申シマスルカ、極
ク平タイ意味ニ於テ成ベク政治カラハ遠ザカ
ル、政治ノ圈內ニ捲込マレナイト云フ建前
デアツタノデアリマス、併シナガラ御承知
ノ如ク今後ニ於ケル我ガ國ノ經濟ノ行キ方
ト云フモノハ、總テ政府ノ政策ヲ中心トシ
テ、其ノ政策ノ下ニ經濟ガ統制サレテ行ク
ノデアリマシテ、今後ノ金融ノ中心機關デア
ル所ノ日本銀行ハ、勢ヒ此ノ政府ノ政策ト
最モ緊密ナル關係ニ立タナクテハ、實際ノ
經濟ノ要求ニ應ジタ所ノ金融操作ガ行ハレ
ナイト云フ狀態ニ相成ツテ居ルノデアリマス、
隨ヒマシテ其ノ趣旨ニ於テ、本法案ハ日本
銀行ヲシテ政府ノ政策ニ緊密ニ合致シ得ル
ヤウナ仕組ヲ執ツタ次第デゴザイマス、然
ラバ政府ノ財政ヲ政府ト一體トナツテ賄ツ
テ行クト云フコトガ、何カ無制限ニ公債ヲ
發行シ、或ハ通貨ヲ增發スル結果トナツテ、
所謂惡性「インフレーション」ヲ惹起スル因ト
ナリハセンカト云フ懸念ガ起リ得ルカト思
フノデアリマス、此ノ點ニ關シマシテハ私
共考ヘテ居リマスル所ハ、今日ノ統制セラ
レタル經濟ノ持ツテ行キ方ノ中ニ於キマシテ
ハ、政府ト雖モ無制限ニ其ノ公債ヲ發行シ
〔委員長退席、長井委員長代理着席〕
若シクハ無制限ニ其ノ公債ヲ日本銀行ヲシ
テ引受ケシメルコトハ出來ナイト云フ考ヘ方
デアリマス、卽チ全體ノ金融經濟ヲ通ズル計
畫ハ、官ト云ハズ、民ト云ハズ、財政ト云ハ
ズ、產業ト云ハズ、總テ綜合的ニ包括セラ
レマシテ一定ノ綜合的計畫ガ立ツノデアリ
マス、資金ノ面ニ於キマシテモ、資金統制
計畫ニ從ヒマシテ蓄積セラレマシタ資金ヲ
ドレダケ公債ニ〓ハスカ、ドレダケヲ事業
資金ニ〓ハスカト云フコトガ計畫的ニ定マ
ルノデアリマス、隨ヒマシテ日本銀行ガ公
債ヲ引受ケルカ否カト云フコトガ、此ノ惡
性「インフレーション」云々ト云フ問題デ
ハナクシテ、其ノ計畫ガ妥當デアルカドウ
カ、計畫通リニ資金ノ蓄積ガ行ハレルカド
ウカト云フヤウナ點ニ問題ノ核心ガ移ツテ
居ルト考ヘルノデアリマス、隨ヒマシテ斯
カル制度ヲ新日本銀行ニ於テ執リマスコト
=
自體ニ付キマシテ、將來餘リニ便利ナラシ
メル結果、却ツテ貨幣價値ノ健全性ヲ害シ
ハシナイカト云ツタヤウナ懸念ハ、此ノ經
▼
濟全體ノ持ツテ行キ方ガ左樣ヲ仕組デアル
ト云フ所カラ考ヘマスレバ、先ヅ其ノ懸念
ナキモノト考ヘテ宜イノデハナイカ、斯樣
ニ了解致シテ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=79
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080・世耕弘一
○世耕委員 先程來ノ御說明ニ依ツテ日本
銀行ノ使命ノ大要ガ分ツタノデアリマスガ、
元ノ日本銀行ハ純然タル銀行ト云フ建前カ
ラ出發シテ居ツタノガ、今度ノ新日本銀行
ハ多分ニ政治性ガ加味サレテ居ルト云フコ
トハ御說明ニ依ツテモ明カニナツタト思フ
ノデアリマス、殊ニ銀行トシテノ從來ノ建
前ヲ離レテ、從來銀行取締法規其ノ他ノ關
係カラ見マシテ禁止サレテ居ツタヤウナ工
業金融、或ハ公開市場ニ進出スル、或ハ其
ノ他ノ部面ニ新シイ職域ヲ擴ゲテ行ツタト
云フ所ニ幾分危險性ガアルノデハナイカ、
斯ウ云フ風ニ考ヘラレルノデアリマス、
ソコデ先程局長サンモ御話ガアリマシタ
ガ、「インフレ」ノ問題デアリマスガ、新日
本銀行トシテ「インフレ」ノ防止ノ最後ノ堡
壘ヲ何處ニ置イテ居ルカト云フコトガ問題
ニナツテ來ルノデアリマス、凡ソ金融ノ動
キト云フモノハ生キ物ト同樣デアリマス、
色々ナ條件、場合ガ想像サレルノデアリマ
ス、サウ云フ場合ニ常ニ萬全ヲ期スルト云
フコトガ、特ニ今度ノ此ノ日本銀行ノ如キ
使命ノ極メテ甚大ナ地步ヲ占メテ居ル特殊
銀行ニ於テ考慮ヲ運ラスト云フコトガ當然
デナイカ、斯ウ考ヘルノデアリマス、世界
各國幾多ノ事例ヲ頭ノ中ニ描キツツ御尋ネ
スルノデアリマスガ、事例ハ此ノ際申上ゲ
マセヌ、サウ云フ場合ノ「インフレ」防止ノ
最後ノ堡壘ヲ何處ニ目安ヲ置イテ居ルカ、
何處ヲシテ根據ニシテ居ルカ、此ノ點ヲ伺
ヒタイト思フノデアリマス
〔長井委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=80
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081・山際正道
○山際政府委員 新日本銀行法ニ於キマシ
テ「インフレ」ヲ防止スル爲ノ如何ナル措置
ガ採用セラレテ居ルカト云フ御尋ネデアリ
マスガ、段々申上ゲマスガ如ク、今日ノ事
態ニ於キマシテ「インフレーション」ヲ防止
スルト云フコトハ、單リ日本銀行ノ機能ニ
ノミ其ノ力ヲ求メルコトハ困難デアリマシ
テ、寧ロ其ノ日本銀行ノ機能モ勿論ノコト
ナガラ、全金融界ト云ハズ、全產業界乃至
總テノ國民生活ノ上ニマデ亙リマシテ、資
金ノ蓄積ニ努力ヲスル、貯蓄ノ奬勵ニ努メ
ルト云ツタヤウナ各方面ノ經濟政策ガ綜合
セラレマシテ、玆ニ完全ナル「インフレー
ション」防止ノ態勢ガ整ツテ參ルト思フノ
デアリマス、勿論日本銀行法ノ規定自體ノ
中ニ於キマシテモ、出來ル限リノ配慮ハ日
本銀行トシテ致スベキデアリマス、日本銀
行ノ目的ヲ以テ第一條ニ、日本銀行ハ國家
ノ政策ニ卽シ通貨ノ調節ニ當ルト云フコト
ヲ揭ゲテアリマスル意味モ、適度ノ通貨量
ヲ放出スルコトニ努メマシテ、其ノ結果通
貨ノ價値、貨幣ノ價値ヲ安全ナル狀態ニ保
持スルト云フコトヲ以テ日本銀行總テノ操
作ノ中心トスルヤウニト云フコトニ於テ其
ノ目的ヲ揭ゲタ次第ナノデアリマス、併シ
ナガラ段々申上ゲマスヤウニ、是ハ單リ日
本銀行ダケノ力デハイカヌノデアリマシテ、
金融機關ノ協力ヲ求メルト云フコトモ、日
本銀行自體ノ機能ノ上カラ言ツテモ必要ナ
最少限度デアリマス、ソコデ先程申上ゲマ
シタヤウニ、日本銀行ガ其ノ目的達成上、
例ヘバ只今申上ゲマシタ通貨價値ノ健全ナ
ル保持ヲ圖ルト云フ目的ヲ達成スル上ニ必
要ガアリマス場合ニハ、其ノ取引ノ相手方
トナル銀行其ノ他ノ金融機關ニ對シテ、日
本銀行ノ業務ニ協力セヨト言フコトモ出來
ルト云フヤウナ規定ヲ設ケテ、以テ日本銀
行ノ機能ノ達成出來マスルヤウナ補助的ナ
制度ヲ設ケタノデアリマス、平タク申シマ
スレバ、例ヘバ日本銀行ガ國債ヲ賣リタ
イ、某銀行ハ國債ヲ買フダケノ資力ガアル
ト認メラレルニ拘ラズ、尙ホ相手方ノ協力
ヲ得ラレマセヌヤウナ場合ニハ、本第二十
八條ノ條項ニ依ツテ日本銀行ノ其ノ通貨量
ノ調節業務ニ協力サセルト云ツタヤウナ制
度ヲ考ヘマシタ、御尋ネノ點ハ洵ニ重要ナ
點デアリマスガ、是等色々ノ規定ヲ綜合致
シマシテ、其ノ運用ノ實際ニ於テ御話ノ如
キ弊害ノ起リマセヌヤウニ、十分氣ヲ附ケ
テヤツテ行キタイト云ツタヤウナ心構ヘデ
居ル次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=81
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082・世耕弘一
○世耕委員 簡單デゴザイマスガ、尙ホ結
論的ナ御尋ネヲ致シタイノデアリマス、只
今ノ御話大體氣持ハ了承致シマシタガ、私
ガ最初ニ御尋ネシタヤウニ、ナゼ二本建ニ
シナカツタノカ、結局現在ノ日本銀行ト云
フモノヲ生カシテ置イテ、更ニ新シキ組織
ヲ持ツベキデハナカツタカト云フコトガ、
今御話ニナツタノト稍〓結論ニ近イ問題ニ觸
レテ來ル譯デアリマスガ、是ハ議論ニナリ
マスカラ、私ハ此ノ際追究シテ御尋ネ致シ
タクナイノデアリマス、要ハ通貨ノ膨脹ハ
信用ノ膨脹ヲ來ス、〓シソレハ一般ノ民間
ニ流用サレル理論デ、通貨ノ膨脹ハ國家ノ
信用ノ膨脹ニハ直チニナラヌ場合ガアルト
思フノデアリマス、サウ云フ風ナ政府ノ信
用ハ結局國策遂行ニ關スル政綱カラ發表シ
ナケレバナラヌノデハナイカ、是ガ只今局
長サンガ御話ニナツタ點ニ觸レテ來ルノダ
ラウト思フノデアリマス、其ノ點ヲ御考ヘ
ニナツテ御答辯ニナツタノダラウト思ヒマ
スガ、此ノ點モ重ネテ御尋ネスルコトヲ避
ケテ置キマス、以上デ大體私ノ質問シタイ
點ハ終ツタノデアリマスガ、最後ニ一點、
此ノ第五條ノ日本銀行ノ資本金一億圓トシ
テ、政府出資ガ五千五百万圓ニナツテ居リ
マスガ、後ノ四千五百万圓ノ出資ト云フモ
ノハドウ云フ風ニ按配ヲセラレルノカト云
フコトヲ御尋ネシテ置キタイノト、ソレカ
ラ委員長ニ御願ヒシタイデスガ、先程爲替
局長ガ途中デ歸ラレタノデスガ、適當ナ機
會ニ發言ヲ御許シ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=82
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083・山際正道
○山際政府委員 日本銀行ノ資本金一億圓
ノ中四千五百万圓ニ相當致シマス部分ハ、
本法案ノ附則ニモ揭ゲテアリマスル通リ、
現在ノ株式拂込金額四千五百万圓ヲソツク
リ其ノ儘出資ニ振替ヘル積リデゴザイマス、
隨ヒマシテ足ラザル所ノ五千五百万圓ヲ新
シク政府ニ於テ其ノ出資ヲ引受ケル、斯樣
ナコトニ致シテゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=83
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084・板谷順助
○板谷委員長 宜シウゴザイマスカ-尙
ホ此ノ際改メテ一言申上ゲテ置キマス、先
ニ御話致シマシタ通リ、漸ク本日質問ニ入
ツタバカリデアリマスルカラ、質問者ノ時
間ハ別ニ制限ヲ致シマセヌ、唯諸君ニ御願
ヒシテ置クコトハ、成ベク質問ハ簡潔、明
瞭ニ重複ニナラザルヤウニ、質問ノ御希望
ノ方ハ議席ヲ保ツテ置イテ戴キタイ、隨テ
今後大臣ノ御要求其ノ他ニ付キマシテモ、
出來ルダケ諸君ノ御期待ニ副フヤウニ委員
長トシテハ圖リタイト考ヘテ居ル次第デア
リマス、明日午前中ニ實ハ開會シタイト云
フ考ヘデ色々交涉致シマシタケレドモ、此
ノ部屋ハ請願委員會デ使ハナケレバナラヌ
ト云フノデ、外ニ部屋ノ都合ガ出來マセヌ、
已ムヲ得ズ明日午後二時カラ第十一ノ決算
委員室デ開會スルコトニ致シマス、本日ハ
是ニテ散會致シマス
午後五時四分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00319420126&spkNum=84
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