1. 会議録本文
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000・会議録情報
會議
昭和十七年一月三十日(金曜日)午後一時十四分開議
出席委員左の如し
委員長 板谷順助君
理事 横川重次君 理事 田村秀吉君
理事 中田儀直君 理事 長井源君
理事 坂東幸太郎君 理事 龜井貫一郎君
理事 本田英作君
池田秀雄君 小山倉之助君
大口喜六君 太田理一君
菊池良一君 木村正義君
熊谷直太君 木暮武太夫君
西川貞一君 武田徳三郎君
豐田豐吉君 内藤正剛君
中島彌團次君 仲井間宗一君
西村金三郎君 野田俊作君
廣川弘禪君 福井甚三君
堀内良平君 松方幸次郎君
松永東君 三浦虎雄君
山本粂吉君 石坂豐一君
世耕弘一君 河合義一君
粟山博君 田中耕君
水谷長三郎君
出席政府委員左の如し
大藏次官 谷口恒二君
大藏省銀行局長 山際正道君
大藏省爲替局長 原口武夫君
大藏省會社部長 田中豐君
大藏書記官 伊原隆君
陸軍主計大佐 遠藤武勝君
本日の會議に上りたる議案左の如し
日本銀行法案(政府提出)
戰時金融金庫法案(政府提出)
臨時資金調整法中改正法律案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=0
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001・板谷順助
○板谷委員長 是ヨリ會議ヲ開キマス-
本田英作君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=1
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002・本田英作
○本田(英)委員 大キナ問題ハ既ニ質問サ
レテ濟ンデ居ルヤウデアリマスガ、私ハ業
務ノ關係ニ付キ一、二御聽キシタイト思ヒマ
ス、先ヅ日本銀行ノ業務トシテ外國通貨ヲ
賣買セラレルコトハ、別ニ玆ニ明文ハナイ
ヤウデスガ、ヤハリ御取扱ニナルノデセウ
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=2
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003・山際正道
○山際政府委員 御尋ネノ點ハ、外國通貨
ヲ地金銀ト云フコトデ扱ツタ方ガ宜シイ場
合ハ、第二十條第六號ノ地金銀ノ賣買ト云
フ方デ參ルト思ヒマス、又ソレガ爲替ト云
フ觀念デ考ヘタ方ガ宜シウゴザイマス場合
ハ第二十三條ノ外國爲替ノ賣買、此ノ規
定デ行ケルト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=3
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004・本田英作
○本田(英)委員 サウ致シマスト、外國爲替
管理法ノ第三條デ、政府ガ命令ヲ以テ日本
銀行ニ外國通貨又ハ外國爲替其ノ他ノ證劵
ナドヲ賣買セシムル場合ニハ、ヤハリ只今
仰シヤツタ條項ニ依ツテ、ソレ〓〓日本銀
行ノ業務ニ屬スルト云フコトニナルノデセ
ウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=4
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005・原口初太郎
○原口政府委員 左樣デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=5
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006・本田英作
○本田(英)委員 サウ致シマスト、私ハ金
融方面ノコトハ能ク存ジ居ラナイノデスガ、
外國爲替ト云フ中ニハ所謂自由爲替ト云フ
ヤウナ-私ノ用語ガ惡イカモ知レマセヌ
ガ、一般ニ言ハレテ居ル外國爲替、自由爲
替ト云フモノハ、之ニ含マレテ居ルノハ勿
論ノコトト思ヒマスルガ、「ドイツ」ナドデ
近頃アノ方面ノ共榮圈ト言ヒマスカ、樞軸
ノ範圍ニ於テ〓算爲替トカ何トカ人ハ言ツ
テ居ル、アア云フモノヲ此ノ外國爲替ノ中
ニハ含マレルノデアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=6
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007・原口初太郎
○原口政府委員 「ドイツ」ハ今日「ヨーロツ
パ」ニ於キマスル主トシテ戰爭地域ノ決
濟ヲ、慥カ私ノ記憶ニ依リマスト「フリーe
マルク」自由「マルク」ト云フモノデヤツテ
居ルト思ツテ居リマス、我ガ國ニ於キマシ
テモ「ドイツ」程ハ廣ク行ツテ居リマセヌ
ガ、多少コレニ類似シタ特別圓ト申シマス
カ、自由圓ト申シマスカ、サウ云フモノデ
今日主トシテ日滿支ノ間ノ爲替ヲ決濟シテ
居リマス、左樣ナモノモ仰セノ通リ此ノ中
ヘ入ツテ參リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=7
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008・本田英作
○本田(英)委員 今度ノ日本銀行法ノ第二
十四條ノ終ヒノ所ノ「資金ヲ融通シ又ハ外
國金融機關ト爲替決濟ニ關スル取引ヲ爲ス
コトヲ得」ト云フコトガアリマスガ、此ノ
「外國金融機關ト爲替決濟ニ關スル取引ヲ爲
スコトヲ得」ト云フノハ只今仰シヤツタノト
ハ又違フノデセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=8
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009・原口初太郎
○原口政府委員 只今御指摘ニナリマシタ
第二十四條ノ最後ノ「外國金融機關ト爲替
決濟ニ關スル取引ヲ爲スコトヲ得」、此ノ言
葉ハ大分廣クナツテ居リマスルガ、茲デ豫
想シテ居リマスルコトハ、先般モ慥カ銀行局
長カラ御說明申上ゲタコトト存ジマスガ、
日本銀行ガ之ニ依リマシテ一々ノ爲替取引
ノ第一線ノ仕事、卽チ窓口事務ヲ致スト云
フコトデハゴザイマセヌノデ、此ノ外國金
融機關ト申シマスノハ、主トシテ外國ノ中
央銀行、發劵銀行、斯ウ云フモノヲ豫想シ
テ居リマス、御承知ノ通リ今日ノ爲替ノ決
濟ノヤリ方ガ非常ニ以前ト違ウテ居リマシ
テ、大體ニ於キマシテ各國ソレ〓〓相手國
ト直接ニ爲替ノ決濟ヲスル、斯ウ云フコト
ニナツテ居リマス、從前ニアリマシタポ
ンド」ナリ「ドル」ナリ、何處ノ國ニモ通用ス
ル所謂國際通貨ト云フモノガ今日存在シテ
居リマセヌノデ、大體ニ於キマシテ原則ハ
相手國トノ間ニ個別ノ決濟ヲスルト云フコ
トニナリマスルト、其ノ爲替ノ尻ヲ持ツテ
來ル場所ヲ作ツテ置ク必要ガアリマス、從
來我國ニ於テハ其ノ役目ヲ過渡的ニ橫濱正
金ト云フ銀行ガ果シテ居リマシタケレドモ、
段々左樣ナ國際間ノ決濟ガ廣クナツテ參リマ
スト、時ニ依リマシテ外國ノ中央銀行ガ、
別ニ正金銀行ヲドウノ斯ウノト云フ譯デハ
ゴザイマセヌケレドモ、ヤハリ中央銀行ハ
一ツノ格ト言ヒマスカ、誇リヲ持ツテ居リ
マス、自分ノ國ハ中央銀行ヲ出スノデアル
カラ、日本モ一ツ日本銀行ニ出テ貰ヒタイ
ト云フヤウナコトヲ現ニ申シタコトモゴザ
イマス、從前ハ法規ノ關係上日本銀行ニ左
樣ナ役割ヲ果シテ貰フコトガ出來マセヌデ
シタガ、今囘ノ改正ニ依リマシテ、左樣ナ
場合ニ於キマシテハ、相手國モ中央銀行、
コチラモ中央銀行、斯ウ云フ五分々々ノ立
場ニ於テ主トシテ爲替ノ〓算取引ノ最終ノ
機關、斯ウ云フコトヲ考ヘテ居リマス、ソ
コデ御質問ノ點ニ戾リマスガ、御話ノヤウ
ニ「ドイツ」ハ自由「マーク」デ「ヨーロッパㄴ
ノ諸國ノ爲替ノ決濟ヲスルト同時ニ、「ヨー
ロッパㄴ廣域經濟圈以外ノ經濟圈、卽チ只
今ニ於キマシテハ主トシテ東洋デアリマス
ルガ、東洋ノ諸國、例ヘバ我ガ國ト「ドイ
ツ」トノ間ノ資金ノ決濟、或ハ我ガ國ト「ド
イツ」以外ノ「ヨーロッパ」ノ諸國、例ヘバ
「スェーデン」斯ウ云フモノトノ間ノ資金ノ
決濟ハ現實ニ圓ト「マルク」トノ間ニ行ハレ
テ居リマス、從來先方ハ「ライヒス·バ
ンク」デアリマシタガ、コチラハ法規上日本
銀行ガ表面ニ立ツ譯ニ參リマセヌノデ橫濱
正金銀行ガ表面ニ出テヤツテ居リマシタ
ガ、左樣ナコトハ追々此ノ法規ノ改正ニ依
リマシテ、將來ハ日本銀行ガヤルト云フコ
トニモ相成ラウカトモ存ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=9
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010・本田英作
○本田(英)委員 現在ノ世界情勢カラ致シ
マスルト今日マデ爲替ノ中心地ト目サレマ
シタ英米ト日本トハ絕交シテ居ルヤウナ狀
態デアリマスカラ、只今ニ於テハ是等ノ國
トノ爲替ノ決濟ト云フヤウナコトハ、銀行
業務トシテモ殆ドナイコトト思ヒマス、而
シテ今日ノ戰果ノ結果、東亞共榮圈ト云フ
モノガ目ノ前ニ展開シテ居ル譯デゴザイマス
ガ、此ノ東亞共榮圈ノ範圍ニ於テ輸出、輸入
ノ〓算ヲ或ハ「タイ」其ノ他、近ク或ハ「フィリッ
ピン」ナドモサウ云フコトニナルノデゴ
ザイマセウシ、ソレト類似ノ東亞共榮圈內
ノ獨立國トノ種々ノ爲替ノ決濟ト云フノハ
只今御話ノ二十四條ノ外國金融機關トノ爲
替決濟ニ關スル取引ト云フコトニナル譯デ
ゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=10
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011・原口初太郎
○原口政府委員 其ノ問題ニ付キマシテハ
大藏大臣カラモ御答辯申上ゲタト存ジマス
ルガ、大體ノ順序ハ、初メカラ申上ゲマス
ト極ク簡單ニ、此ノ條文ガドウ云フ風ニ
現實ニ動キ出シテ來ルカト云フ順序ヲ簡單
ニ申上ゲマス、先日武田サンカラノ御質問
デシタガ、日本ハ管理通貨ノ國デアル、相
手國ガヤハリ管理通貨ノ場合ニ其ノ間ノ決
濟ヲドウスルカト云フヤウナ御質問ガアツ
タノデアリマスガ、今日ハ仰セノ通リ「ポ
ンド」ト「ドル」ノ時代ハモウ過ギタノデア
リマスカラ直接決濟ヲシナケレバナラヌ、
斯ウ云フコトニナリマスルト、筋合カラ言
ヒマスルト二ツノ管理通貨ヲ持ツテ居ル國
ノ決濟ト云フモノハ、直接ソレ〓〓ノ通貨
ノ間デ行ハレルノデアリマス、卽チ兩國間
ニ於キマスル物資ノ交流ニ依リマシテ債權
債務ノ關係ガ全體トシテ相殺サレル、サ
ウシテ輸出入ノ尻ト云フモノハ、差額ト云
フモノハ-輸出入ト申上ゲマスノハ貿易
外ノ受取、是ハ輸出ノ方ヘ入レマス、又貿
易外ノ支拂ヒハ輸入ノ方ニ入レマシテ、其
差額ハドウ云フ恰好デ片付ケラレルカト云
ヒマスト、支拂ヒ超過國ニ於キマスル受取
リ超過國ノ預ケ金、或ハ受取リ超過國ニ於
キマスル支拂ヒ超過國ノ一時ノ借入金、斯
ウ云フ恰好デ一應整理サレマス、所ガソレ
ガ第二ノ段階ニ於テドウ云フ形ニ於テ處理
サレルカト申シマスト、第一段ト致シマシ
テ例ヘバ上半期ハ片方カラ片方ニ品物ガ流
V、下半期ニ於テハ逆ニ一方カラ一方ニ品
物ガ流レル、斯ウ云フ風ニ巧ク貿易ノ「バラ
ンス」ガ取レテ吳レレバ、一年間ヲ通ジテト
ントンニ決濟ガサレマスガ、事實ハ中々サ
ウハ參リマセヌカラ、只今申シマシタ一時
ノ預ケ金、斯ウ云フモノデ、例ヘテ申シマ
スト、佛領印度支那ト日本ノ間ニ於テハ
日本ガ輸入超過デ、佛印ハ日本ニ預ケ金ヲ
持ツテ居ル、ソレデ有價證劵ヲ買ヘバ一應
片ガ付ク、斯ウ云フコトニナリマス、又コ
チラガ向フニ借入金ヲ持ツテ居ルト云フ場
合ニハ、ソレヲ長期ノ「クレヂット」ニ引直
ス、斯ウ云フコトデ原則ハ片ガ付キマスガ、
尤モ補助的ノ方法トシマシテ、金ヲ其處ニ
送ルト云フ場合モゴザイマスガ、此ノ場合
ノ金ト云フモノハ慥カ是モ大臣カラ申上ゲ
タト思ヒマスガマア私共ハ輸出ノ一項目
位ニ考ヘテ居リマス、以上申上ゲマシタノ
ハ少シ理窟ニ走ツテ居リマスガ、ソレナラ
バ現實ハドウナルカト申シマスト、只今申
上ゲマシタヤウニ、二ツノ國ノ間ノ物資ノ
交流ノ「バランス」ガ取レルト云フコトハ中々
實際問題トシテアリマセヌノデ、ソコデ今
ノ原則ヲ實地ニ動カシマス場合ニ於キマシ
テハ、便不便ト云フコトモ考ヘマシテ、或
ル廣域經濟圈ノ中ニ決濟ノ中心地ヲ求メ
ル「ヨーロッパ」ニ於キマシテハ、小さく
リン」ガ其ノ働キヲシテ居リマス、同時ニ
一ツノ決濟通貨ヲ求メテ、「ヨーロッパ」ニ
於キマシテハ「マルク」ガ其ノ役ヲシテ居リマ
ス、南北「アメリカ」ニ於キマシテハ「アメ
リカ」ノ「ドル」ガ其ノ役目ヲシ、「ニューヨー
ク」ガ中心ノ決濟地ニナツテ居リマス、
東洋ノ方面ニ於キマシテハ、今日ハマダ完
成シテ居リマセヌガ、私共行ク〓〓ハヤハ
リ東京ヲ中心ニシマシテ、日本ノ圓ヲ丁度
「ヨーロッパ」ニ於ケル「フリー·マルク」、西
半球ニ於ケル「アメリカ」ノ「ドル」、斯ウ云
フ働キヲスルヤウニ持ツテ行キタイト云フ
コトヲ考ヘテ居リマス、是ハ別ニ政治的ニ
■
日本ガドウノ斯ウノト申シマスヨリモ、只
今申シマシタヤウニ、國際決濟ノ實情ノ差
異、國際經濟ノ取引ノ變化カラ見マシテ、
ソレガ一番便利ナ、實際的ナ、能率ガ上ガ
ル方法デアル、左樣ニスルコトニ依リマシ
W.
テ日本ノミナラズ、支那モ、滿洲モ、南方各
地域モ非常ナ便益ヲ得ル、斯ウ云フ考ヘヲ
以チマシテ實際ニ動カシテ行ク積リデ居リ
マイクソコデ御質問ノ點ニ戾リマシテ、二
十四條ノ最後ノ點デアリマスガ、左樣ナ場
合ニ於キマシテ日本銀行ニ、東亞各地域ノ
中央銀行ニナリマスカ、爲替銀行ニナリマ
スカ、サウ云フ銀行ノ〓算勘定ヲズツト置
キマシテ、ソコノ出入リデ東亞共榮圈內ノ
物資ノ交流ハ勿論、東亞共榮圈ト他ノ廣域
經濟圈トノ間ノ資金ノ出入リヲ調節シテ參
リタイ、斯ウ云フ風ニ存ジマシテ今囘ノ改
正ヲ致シタノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=11
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012・本田英作
○本田(英)委員 大體分リマシタガ、尙ホ
一寸ソコニ駄目ヲ押シテ置キタイノデス、
御話ノ通リニ-能ク私ハ存ジマセヌガ、
「ドイツ」デハ中央〓算取引所ト云フヤウナ
モノガ出來タヤウニ聞イテ居リマス、ソコ
デ今仰シヤルヤウナ將來東亞共榮圈ノ範圍
ニ於テ東京デ圓建デ總テノ決濟ヲヤルト云
フ場合ニ、別ニサウ云フ〓算取引所トカ何
トカ云フヤウナモノハ設ケズ、當然此ノ規
定デ日本銀行ガヤレルト云フノデセウカ、
又サウ云フ曉ニハ特ニサウ云フ機關ヲ設ケ
ルト云フ御意見デセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=12
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013・原口初太郎
○原口政府委員 今囘ノ日本銀行ノ改正ノ
此ノ部分、ソレカラ南方開發金庫、ソレカ
ラ只今東洋ニアル各國ノ中央銀行、滿洲中
央銀行、或ハ蒙疆ノ銀行、北支ノ準備銀行、
或ハ南京ノ儲備銀行、佛印支銀行モゴザイ
マス、下ツテハ南ノ方ニ段々ト左樣ナ金融
機關ガ出來テ參リマスガ、サウ云フモノヲ
巧ク結ビ合ハシテ參リマスレバ、十分ニ只
今申シマシタ機能ヲ發揮スルコトガ出來ル
ト思ツテ居リマス、特別ノ〓算機關ヲ此ノ
以外ニ作ルト云フ考ヘハ持ツテ居リマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=13
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014・本田英作
○本田(英)委員 ソレカラ大分他ノ委員諸
君カラモ爲替局長ニ質問ガアツテ、或ル部分
ハ了承シテ居ルノデゴザイマスガ、結局私
ノ御問ヒシタイノハ、東亞共榮圈ト云フヤ
ウナモノガ愈〓確立シツツアルノデアリマシ
テ、從來敵性ヲ持ツテ居リマシタ上海、香
港、支那ニ於ケルサウ云フ方面ノ敵性モ除
カレテシマツタ譯デアリマス、又東洋ノ獨
立國ニ對シマシテモ管理通貨ト云フヤウナ
コトデ進ミタイト云フヤウナ曉ハ、サウ云
フ管理通貨ガ總テ共榮圈內ニ萬遍ナク行ハ
レルヤウナ曉ニナツタラ格別デゴザイマス
ガ、其ノ途上ニアル今日ニ於テ、大體日本
銀行ガ今回管理通貨ト云フヤウナコトニナ
ツテ、兌換ヲシナクテモ濟ムノデアリマス
カラ、今少シ外國爲替管理法ノ第一條ニ於
ケル取締ト云フヤウナモノヲ緩和スル必要
ガアリハシナイカ、個人トシテハソレヲシ
テ貰ヒタイト思フノデアリマスガ、大藏省
當局トシテハ、兌換ト云フヤウナ性能ヲ銀行
劵ガ持ツテ居ル場合ハ格別、管理通貨ト云
フヤウナコトニナツテ來レバ、モウ少シ外
國爲替管理法ノ第一條ニ於ケル種々ノ禁止
又ハ制限事項ト云フコトニ付テ、一般ニ緩
和シテ戴キタイト云フ希望ガアルノデス
ガ、其ノ點ニ對シテ大藏當局ハドウ云フ風
ナ御考ヘヲ持ツテ居リマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=14
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015・原口初太郎
○原口政府委員 仰セノ通リ外國爲替管理
法ノ第一條ト申シマスルカ、モウ少シ全部
大局的ニ見マシテ、外國爲替管理法ノ運用
ニ付テ新シイ情勢ニ卽シテ考ヘ直ス必要ガ
アリハシナイカ、斯ウ私共率直ニ感ジテ居
リマス、其ノ具體的ノ方法ト致シマシテ、
昨年ノ戰爭後、押詰リマシタ年末ニ、幾分
ナリトモ爲替管理法ノ適用ヲ受ケル方面ノ
能率ヲ上ゲテ、手數ヲ省クト云フ爲ニ、是
ハ我ガ國トシテハ初メテノコトデアツタノ
デアリマスガ、爲替銀行自身ニ實際上許可
ノ事務ヲ扱ハセ、モウ爲替銀行ノ窓ロダケ
デ日本銀行ニモ參リマセヌ、無論大藏省
ニモ參リマセヌ、卽決シテ處理スルト云フ
コトヲ始メマシテ、段々ト左樣ナ仕事ヲ殖
ヤシテ行キタイ、斯ウ思ツテ居リマス、ソ
レカラ只今御質問ノ點ハモウ少シ根本的
ナ問題ニ觸レテ居リマス、兌換制度トノ關
係管理通貨トノ關係ヨリモ-其ノ點モ
ゴザイマスガ、モツト大キナ問題ハ國際經
濟、「ドル」ㄱポンド」ノ時代ガ過ギテ、東亞
共榮圈內ニ於テ通貨ノコトヲ考へ、金融ノ
コトヲ考ヘルト云フ場合ニ、從來ノ外國爲
替管理ト云フモノヲ根本的ニ考ヘ直ス必要
ガアリハシナイカト私共存ジテ居リマス、
之ニ付キマシテハ一ツ成ベク早イ時期ニ〓
究致シマシテ、何等カノ結論ヲ得タイト存
ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=15
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016・板谷順助
○板谷委員長 田村君、世耕君ニ許シテア
リマス軍部ノ方ガオイデニナツタラ、ドウ
ゾ御讓リ下サイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=16
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017・田村秀吉
○田村委員 承知シマシタ、一、二政府委員
ノ御說明ヲ願ツテ明カニシテ戴キタイト思
ヒマス、最近金融統制會ガ設置セラレルコ
トニナツテ居ルノデアリマスガ、是ハ日
本銀行制度ノ改革ヤラ、或ハ戰時金融金庫
等ノ設置ヲ見透シテ、斯ウ云フモノガ出來
ルヤウニナツタト思フノデアリマス、ソコ
デ金融統制會ノ機能ニ付テ、出來ルダケ御
說明願ヒタイ、ソレカラ金融統制會ト重要
產業其ノ他ノ統制會トノ關係、金融統制會
ニハ會長ニ日本銀行總裁ガナツテ、ニアノ
資金關係ヲ此處デ統制シテ行クト云フ建前
ニナツテ居ルヤウニ思フノデアリマスガ、
サウ致シマスト、此ノ金融統制會ト他ノ產
業統制會トノ關係、隨テ其ノ關係ニ基ク政
府ノ監督關係、大藏大臣、商工大臣トノ關
係又此ノ金融統制會ト產業統制會トノ關
係ニ依リマシテハ、先般來議論ニナツテ居
ル戰時金融金庫ト產業設備營團トノ關係
等ニ及ンデ來ルノデスガ、其ノ點出來ルダ
ケ詳シク此ノ際御說明願ツテ置キタイト思
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=17
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018・山際正道
○山際政府委員 今後我ガ國ガ其ノ目的ト
スル所ニ從ヒマシテ、種々經濟政策ヲ進メ
テ參リマスル上ニ、總テノソレ等ノ經濟施策
ガ綜合的ニ計晝的ニ、愈、運行セラレネバナ
ラヌト云フコトハ申スマデモナイ所デアリ
マス隨ヒマシテ金融ノ部面ニ於キマシテモ、
金融ノ統制ハ今後愈、强化セラレ、愈〓微細ナ
ル點ニマデ行キ亙ルト云フ情勢ニアリマス
ルコトハ、是レ洵ニ免レ難イ所デアリマス、
ソレニ付キマシテ大體今後ノ金融統制ニ當
リマスル機構ト致シマシテ、當局トシテ考
ヘマシタル所ハ、只今御話ア金融統制會トソ
レカラ今囘ノ日本銀行法案ニ依ル日本銀行
ト、更ニ御指摘ノアリマシタ戰時金融金庫、此
ノ三者何レモ同ジヤウナ一ツノ考ヘ方カラ
一括シタ思想ノ下ニ立案セラレタモノデゴザ
イマス、其ノ點ニ於テ三者何レモ密接ナル連
繫ヲ有スルモノデアリマスルガ、特ニ日本銀
行ト金融統制會トノ關係ニ付キマシテハ、
大體ノ考ヘ方ト致シマシテハ、政府ガ金融
統制ヲ實施致スニ當リマシテ、日本銀行ハ
其ノ實行ニ當ル機關トシテ特ニ認メラレタ
ル發劵ノ作用ニ依リマシテ、資金ヲ放出シ、
或ハ收縮シ、所謂資金操作、金融操作ノ方
法ニ依ツテ實際ノ金融界ヲ統制シ、金融ノ
動キヲ統制スルト云フ働キヲ持ツ、他面政
府ノ更ニ一ツノ、何ト申シマスルカ、協力
團體トシテ金融統制會ガアル、統制會ハ卽
チ資金ノ操作ハ行ヒマセヌケレドモ、或ル
一定ノ行爲ヲ其ノ團體ノ自律力ヲ基礎ト致
シマシテ、或ル行爲ヲナスベシ、或ル行爲
ハナスベカラズト云ツタヤウナ方面ニ於ケ
ル統制ヲ行ツテ行ク、卽チ政府ハ眞ン中ニ
立ツテ居ツテ、片手ニ日本銀行ガアツテ、
一切ノ資金ニ依ル資金操作ヲ行フ、片一方
ニハ金融統制會ガアツテ、是ガ資金ノ操作
ハ致シマセヌガ、行爲不行爲ヲ命ズルコト
ニ依ツテ統制ヲ致シテ置ク、斯ウ云フ兩方
ノ構ヘニ依ツテ金融ノ統制ヲ行ツテ行カ
ウ、斯ウ云フ考ヘ方デアリマス隨ヒマシテ
日本銀行ト金融統制會トハ、嚴密ニ政府ノ
意思ガ間違ヒナク兩者ニ於テ運營スルヤウ
ナ組織ヲ考ヘマスルコトガ極メテ必要デア
リマスルノデ、ソコデ御指摘ノ如ク日本銀
行ノ總裁ヲ以テ全國金融統制會ノ會長ニ當
テマシテ、此ノ兩機關ハ全ク緊密ナル連絡
ノ下ニ動キ得ルヤウニ特殊ノ配慮ヲ致シタ
ヤウナ次第デゴザイマス、金融統制會ノ內
部ノ組織ニ付キマシテハ、大體ノコトハ過
般モ發表ヲ致シタノデアリマスルガ、極
クザツト申上ゲマスルト、全體ヲ包括スル
統制機關ト致シマシテ、全國金融統制會ガ
アリ、其ノ下ノ各種ノ金融機關每ニ業態別
ニ組織サレマシタ業態別統制會ト云フノガ
附屬スル、更ニ業態別統制會ノ中デ、例
バ信用組合ノ如キ全國的ニ非常ニ澤山數ノ
ゴザイマスルモノニ於キマシテハ、例ヘバ
一府縣ヲ單位トシテ統制組合ト云フモノヲ
組織サセテ、其ノ統制組合ガ寄ツテ業態別
統制會ヲ組織スル、斯ウ云フ三段構ヘノ仕
組ニナツテ居リマス、更ニイマ一ツ地域的
ニ種類ヲ異ニシタ金融機關ガ集マツテ、共
通問題ニ付テ統制ヲ行フ地方金融協議會ト
云フ組織ヲ設ケマシテ、之ヲヤハリ全國金
融統制會ノ統制下ニ置ク、斯樣ナ仕組ヲ以
テ此ノ金融團體ニ關スル統制ヲ致シタノデ
アリマス、ソコデ次ノ問題ハ然ラバ產業團
體統制會トノ間ニ如何ナル關係ヲ持ツカト
云フ御話デアリマス、金融統制會ニ對シマ
スル仕事ノ一ツト致シマシテ、產業團體トノ
連絡ヲ緊密ニスルト云フ仕事ガ謳ツテアル
ノデアリマス、其ノ意味ハ金融統制團體ハ
一面ニ於キマシテ、他ノ產業統制團體トノ
間ニ或ハ常時會合ヲ催ストカ、情報ノ交換
ヲシ合フトカ、要望ノ交換ヲスルトカ、場
合ニ依ツテハ役員ヲ互ニ交換スルトカ云フ
ヤウナ組織ニ依リマシテ、兩者ノ緊密ナ連
絡ヲ執ル、而シテ產業統制團體ハ其ノ下部
機構デアル各種ノ產業ニ對シテ、ソレ〓
指示ヲシ其ノ方針ニ基ク一方金融統制會ニ
於キマシテハ、下部機構デアル各種ノ金融
機關ニ對シテ同ジヤウナ指示ヲスルト云フ
仕組ニ於テ、兩者ノ緊密ナ關係ニ於テ金融
ヲ圓滑ニ運用スルヤウニト云フコトヲ考ヘ
テ居ルノデアリマス、隨ヒマシテ御話ノ如
ク今後是等ノ全體ノ機構ヲ動カシテ參リマ
スル爲ニハ、ソレ〓〓其ノ政策ノ基本ヲ押
ヘテ居リマスル各行政官廳ガ是亦緊密ナル
一體ヲナシテ運營スルニアラザレバ、其ノ
全體ガ一貫シタ政策ニ依ツテ運用セラレナ
イト云フ懸念ガアルノデアリマス、隨ヒマ
シテ今後各種ノ統制團體ガ出來テ參リマス
ルニ從ヒマシテ、愈〓、關係各省間ノ連絡ト
云フモノガ緊密ナラザルヲ得ナイノデアリ
マシテ、又現ニ益〓其ノ緊密ナル關係ヲ深
ク致シツツアルノデアリマス、或ハ事務當
局ガ相互ニ頻繁ニ會合ヲシテ打合セヲスル
トカ、各種ノ連絡ノ委員會ヲ設ケルトカ、
次官會議ヲ利用シ、更ニ進ンデハ閣議ニ於
テ統一アル政策トシテ屢〓論議サレルト云フ
ヤウニ、政府部內ノ横ノ連絡ヲ益〓緊密ニセ
ラレツツアル、今後ソレ等ノ點ハ一層留意
ヲシテ運用セラレナケレバナラナイト考ヘ
テ居ル次第デアリマス、尙ホ或ハ御答ヘ漏
レノ點ガアルカモ知レマセヌガ、御質問ニ
依リマシテ更ニ御答ヘ申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=18
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019・田村秀吉
○田村委員 私共ノ金融統制會ニ付テ頭ニ
浮ビマスコトハ、今囘日本銀行ノ制度ガ改革
セラレテ、產業金融ニ乘出ス、一方戰時金
融金庫ト云フヤウナモノガアツテ、時局下
ニ緊要ナル產業ニ對シテハ、採算、收益ト
云フヤウナコトヲ考ヘズニ資金ノ放出ヲシ
テ生產擴充ニ當ラナケレバナラナイ、一方
ニ於テハ公債ガ非常ニ增加シテ來ル、此ノ
金融ノ統制ノ上ニ民間ニアル資金ヲ吸收シ
ナケレバナラヌ、ソコデ金融統制會ト產業
統制會トノ運營ガ餘程機微ノ關係ニ立ツト
思ヒマスノデ、此ノ間矛盾撞著ノナイヤウ
ニシテ行カナケレバナラヌト考ヘルノデア
リマス、ソコデ大藏大臣竝ニ商工大臣ガ此
ノ關係ニ立ツテ、ドウ云フ風ナ監督ヲスル
カト云フ點ノ御說明ヲ伺ツテ置キタイ、序
デデアリマスガ、金融統制會ガ新設セラレ
テ、今後大東亞戰爭ノ推移ニ基イテ益〓歲出
ノ增加、公債ノ激增ガ豫想サレルノデアル
ガ、此ノ公債政策ト金融統制會トノ關係ニ
付テ何カ新タニ考慮セラレテ居ルカドウ
カ、此ノ二點ヲ御伺ヒシタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=19
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020・山際正道
○山際政府委員 第一ノ御尋ネ、卽チ今後
金融統制會ヲ指導スル大藏大臣ト、產業統
制團體ヲ指導スル主タル所管大臣デアル商
工大臣トハ、此ノ統制機構ノ運營ニ付テ如
何ナル連繫ヲ持ツカト云フ御尋ネデアツタ
ト思フノデアリマスガ、此ノ點ハ更ニ適當
ナル機會ニ於テ、大藏大臣ヨリ御答へ出來
マスヤウニ申シ傳ヘタイト思ヒマス
第一ニ、公債ガ今後益〓發行セラレテ參リ
マスニ當リマシテ、其ノ消化ニ付テ金融統
制會ガ如何ナル役割ヲスルデアラウカト云
フ御尋ネデアリマス、是ハ今後ノ金融問題
ノ中心トナルベキ一ツノ大キナ問題デアル
ト思フノデアリマス、隨ヒマシテ統制會ガ
成立致シマスレバ、恐ラクハ先ヅ第一着手
トシテ取上ゲラレル問題デハナイカト思フ
ノデアリマスガ、統制會ガ致シマス實體的
ナ仕事ハ、其ノ統制會ノ會員自體ガ制定致
シマス所ノ統制規定ニ依ツテ動クコトニ相
成ツテ居リマス、隨ヒマシテ先ヅ統制會ガ
出來マスト、其ノ會員ヲ拘束スベキ所ノ公
債消化ニ關スル統制規定ヲ制定スル段取リ
ニナルノデハナイカト思フノデアリマス、
統制會ガ出來マシテカラ、其ノ理事者ガ色
色適當ナ立案ヲサレルコトト思ヒマスケレド
モ、假ニ豫想致シマスナラバ、例ヘバ今後
ハ如何ナル種類ノ金融機關ニ付テハ、新タ
ナル增加預金ノ何割ヲ公債消化ニ振向ケル
トカ、或ハ如何ナル種類ノ金融機關ニアツ
テハ、年內ニ何十億ノ公債ヲ消化スルヤウニ
スルトカ、或ハ更ニ進ンデハ增加資金ト言
ひく、金資產ノ何割ヲ公債消化ニ向ケルト
カ、種々方法ハアラウカト思ヒマスガ、ソ
レ等ノ方法ニ從ヒマシテ恐ラクハ統制規定
ガ制定セラレ、ソレニ依ツテ各會員タル金
融機關ガ事實的ニ公債消化ニ向ツテ行ク、
斯樣ナコトニ相成ルノデハナイカト思ツテ
居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=20
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021・田村秀吉
○田村委員 只今ノ公債消化ノ關係ニ付テ
其ノ片鱗ヲ御洩ラシニナツタノデアリマス
ガ、私共モ昭和十七年度ノ公債發行高ト云
フモノハ、從來トハ違ツタ非常ナ激增ヲ旣
ニ豫想シテ居ルノデアリマスガ、之ニ對シ
テ從來ノ貯蓄奬勵ニ依ツテ國民精神ノ緊張
ヲ圖ルト云フヤウナヤリ方ダケデハ足ラヌ
ノデ、只今御話ガアリマシタ預金ノ何割ヲ
向ケルトカ、一方日本銀行ガ產業金融ト云
フコトヲ眼目ニシテ來タノデ、是ト睨合ハ
セテ各銀行ノ預金、或ハ只今御話ノ資產ノ
何割ヲ公債ニ振當テルト云フヤウナコトヲ
私共モ豫想シテ居ル、是ハ銀行間デモ多少
問題ニナツテ居ルヤウニ思フノデスガ、ソ
レ等ニ付テ此ノ際尙ホ進ンデ承リタイ、今
ノハ御豫想ノヤウナ御話デアツタノデス
ガ、新タナル公債消化方法トシテ、從來ト
違ツタ何等カノ腹案ヲ今御持チデアリマシ
タラ、此ノ際發表シテ戴キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=21
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022・山際正道
○山際政府委員 金融機關ノ擔當スベキ公
債消化ノ部面ニ付キマシテハ、只今考ヘテ
居リマス程度ニ於テ御答ヘ申上ゲタノデア
リマスガ、何ト申シマシテモ各金融機關ガ
公債ヲ消化致シマス爲ニハ、其ノ本ニナル
預金ナリ、貯金ナリ、ソレ等ノ金ガ金融機
關ニ集メラレルト云フコトガ、前提ト相成
ツテ居ルノデアリマス、此ノ故ニ於キマ
シテ金融機關ニ關スル問題ノミニ付キマシ
テモ、其ノ預金增加等ノ方法ニ付テ、種々
方策ガ今後考ヘラレナケレバナラヌト云フ
コトハアラウカト思フノデアリマス、ソレ
等ノ點ニ付キマシテハ、吾々ト致シテモ、
常時〓究ヲ續ケテ居ルヤウナ次第デアリマ
ス、尙ホ一般ノ貯蓄增加ノ方法等ニ關シテ
ハ、更ニ擔當ノ政府委員カラ御答ヘ致シマ
スヤウニ取計ラヒタイト思ヒマス、只今出
席致シテ居リマセヌカラ後刻ニ御願ヒ致シ
タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=22
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023・田村秀吉
○田村委員 次ニ、日本銀行ガ產業金融ニ
乘リ出シテ來ルト云フコトニナルノデアリ
マスガ、日本銀行ノ產業金融ト云フモノハ、
無論從來竝ニ新設ノ金融機關ヲ通ジテ間接
ニ行クモノデアツテ、直接デハナイト思フ
ノデスガ此ノ點ハ世間ニ明カニスル意味ニ
於テ、或ハ直接ノモノガ何カ考ヘラレルカ
ドウカ、ソレカラ興業銀行ニ對スル融資命
令其ノ他ノ金融機關ヲ產業金融ニ對シテ
一層活潑ニ動カサケレバナラヌノデアリマ
スガ、日銀ノ產業金融ニ對スルソレ等ノ關
係-活潑ニ動カナケレバナラヌト思フノ
デスガ、新シイ方法等ニ付テ御說明ガ願ヘ
レバ伺ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=23
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024・山際正道
○山際政府委員 日本銀行ノ今後ノ仕事ノ
一ツト致シマシテ、事業金融ノ方面ニ大イ
ニ其ノ金融ノ疏通ヲ圖ルト云フコトニ相成
ツテ居ルノデアリマスガ、併シ其ノヤリ方
ト致シマシテハ、只今御話ノ如ク日本銀行
ガ取引致シマスハ、事業資金ヲ供給致シテ
居リマス各種ノ金融機關デアリマシテ、直
接ニ日本銀行ガ各事業會社トノ間ニ、事業
資金ヲ出シマスコトハ豫想致シテ居ラヌノ
デゴザイマス、其ノ他稀ナル場合ト致シマ
シテハ、所謂證劵市場ニ於キマシテ一定ノ
債劵ノ類ヲ日本銀行ガ買取ルコトガアラウ
カトハ思ヒマスケレドモ、其ノ場合ト雖モ、
ヤハリ金融機關ナリ、或ハ證劵ヲ取扱フ機
關ナリ等ヲ相手ニスルコトニナラウト思フ
フデアリマシテ、直接ニ事業資金ノ關係ニ
於テ、產業會社ヲ取引先トスルコトハ考ヘ
テ居ラヌ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=24
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025・田村秀吉
○田村委員 法文ノ第三十一條ニ、管理通
貨制度ニナツテ、限外發行ノ規定ヲ設ケラ
レテ居リマスガ、是ハ季節的ノ發行ヲ狙ツ
テ居ルノデアラウト思ヒマス、モウ一ツハ、
管理通貨ニナルト、發行限度ト云フコトガ
通貨ノ信用ラ維持スル上ニ於テ、非常ニ重
大ナ點デアルト思フノデス、サウ云フ意味カ
ラ抑ヘテ居ルノデハナイカト思フノデス
ガ、然ラバ第三十一條ノ限外發行ト云フコ
トハ季節的ノモノデアルカ、而シテ今申上
ゲタ發行限度ノ關係ヲ狙ツテ居ルノカ、若
シ季節的ノ場合ニ限外發行シタ場合ノ發行
稅ト云フモノハ、ドウ云フ風ニ御考ヘニナ
ツテ居ルノカ、承リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=25
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026・山際正道
○山際政府委員 第三十一條ニ於キマシテ
制限外發行ノ制度ヲ設ケマシタノハ、是ハ
只今御話ノ如ク、一時ノ季節的理由等ニ依
リマシテ、臨時的ニ金融界ノ情勢ニ應ジテ、
其ノ限度ヲ超エテ發行スル途ヲ設ケテ置キ
マスコトガ、實體ニ合フモノト云フ趣旨カ
ラ此ノ規定ヲ設ケタノデアリマス、卽チ若
シ此ノ規定ヲ設ケマセヌト、臨時ノ必要ニ
於キマシテモ、其ノ都度第三十條ニ依ル發
行限度自體ヲ變ヘテ行カネバナラヌノデア
リマスガ、併シナガラ第三十條ノ發行限度
自體ハ、只今御話ノヤウニ銀行劵ノ一應ノ
目安ヲ定メマシタ規定デアリマスルカラ、
左樣ニ頻繁ニ季節的ニ變更スルコトバ豫定
シテ居リマセヌ、ソレ等ノ一時的ノ必要ハ
三十一條ニ依ツテ解決スル、斯樣ニ考ヘテ
居ルノデアリマス
次ニ今囘ノ改正ニ於キマシテ、從來設ケ
テ居リマシタ制限外發行稅ノ制度ハ、之ヲ
廢止致シタノデアリマス、之ヲ廢止致シマ
シタ理由ハ、從來發行稅制度ハ御承知ノ如ク
其ノ發行稅ノ負擔ニ依ツテ、例ヘバ金利ヲ
少シク引上ゲル、其ノ結果自然資金ノ需要
ヲ減殺シテ、仍テ金融ノ調節ヲ圖ラウト云
フ趣旨カラ、本來制限外發行稅制度ヲ設ケ
ラレテ來テ居ツタノデアリマス、併シナガ
ラ今囘ノ改正法案ニ於キマシテハ、稅負擔
ト云フ關係金利ノ增減ト云フヤウナ關係ニ
於テ、一時的ノ通貨ノ需要ヲ調節スルト云
フヤウナ狀態ハ今後豫定致シマセヌカラ、
隨テ制限外發行稅ノ必要ガナイバカリデナ
ク、日本銀行ノ今後ノ收益ト云フモノハ一
定ノ積立金ト、法律上確保セラレマシタ配當
金以外ハ、擧ゲテ之ヲ國庫ニ納付スル建前
ニナツテ居リマスルカラ、特ニ稅ト云フ課
目ニ於テ歲入ノ途ヲ設ケル必要モナイト云
フ考ヘ方カラ廢止シタ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=26
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027・田村秀吉
○田村委員 ソレカラ臨時資金調整法ノ改
正案ノ中ニ、報國債劵ノ抽籤ヲ每年一囘以
上トアルノヲ削ツテ居ルノデアリマスガ、
每年一囘以上ダカラ抽籤ヲ盛ンニヤラウト
スハバ幾ラデモヤレル、之ヲ特ニ削ツタノ
ハ、報國債劵デアルカラ抽籤ニ依ツテ割增
金ヲ付ケル、サウ云フ射倖心的ナコトヲ止
メルト云フ意味デ之ヲ削ラレタノカ、尙ホ
此ノ削ルニ至ツタニ付テハ從來ノ報國債劵
ノ抽籖ノ上ニ、何カノ理由ガアツテ茲ニ削
ルニ至リマシタノカ、其ノ間ノ經緯、目標
ヲ御說明願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=27
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028・相田岩夫
○相田政府委員 現在ノ法律ニ依リマスト、
報國債劵ハ每年一囘以上抽籤ニ依ツテト云
フコトニナツテ居リマシテ、一囘以上ハ必
ズ抽籤ヲヤラナケレバナラヌノデアリマス、
隨ヒマシテ御承知ノ特別報國債劵、所謂豆
債劵ハ償還期限ガ二年デアリマスガ、ソレ
デモヤハリ每年一囘ト云フコトデ二囘抽籤
ヲヤツテ居リマス、今囘此ノ制限ヲ撤廢シ
ヨウト云フ趣旨ハ、要スルニ割增金附與ノ
方法ニ變化ヲ與ヘル餘地ヲ多ク致シマシテ、
之ニ依ツテ其ノ時々ノ情勢ニ應ジマシテ、
購買力吸收ニ最モ適當シタ、卽チ言葉ヲ換
ヘテ申シマスレバ、其ノ時々ノ情勢ニ應ジ
テ、最モ大衆ニ歡迎サレルヤウナ條件ノ債
劵ヲ發行シヨウト云フ趣旨デゴザイマス、
每年一囘以上ト云フノヲ假ニ二年ニ一遍ト
カ三年ニ一遍トカニシマスレバ、ソレダ
ケ當籤ノ籤ヲ、卽チ當リ籖ノ數ヲ多クスル
ト云フコトモ出來マスルシ、サウ云フ方法
ニ依ツテ割增金附與ニ變化ヲ與ヘヨウト云
フ趣旨ニ外ナラヌノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=28
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029・田村秀吉
○田村委員 サウシマスト報國債劵ト云フ
國民精神的ナ意味ヲ狙ツタノデハナクシテ、
其ノ方ガ却テ購買力ノ吸收ニ便宜ダト云フ
點ニ重點ヲ置カレタノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=29
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030・相田岩夫
○相田政府委員 只今ノ御質問ノ御趣旨
ヲ、或ハ私正當ニ理解シテ居ラナイノカモ
知レマセヌガ、御質問ノ御趣旨ハ抽籤デ割
增金ヲ付ケルト云フコトヲ止メル、其ノ爲
メノ改正デハナイカト云フ御尋ネノヤウニ
伺ツタノデアリマスガ、若シサウデゴザイ
マスレバ、改正シヨウトスル趣旨ハ割增
金ヲ付ケルコトヲ止メテシマフト云フノデ
ハゴザイマセヌデ、其ノ割增金ヲ付ケル方
法ヲ更ニ工夫シヨウ、斯ウ云フ趣旨デゴザ
イマス、割增金ト云フヤウナ方法ニ依ツテ
資金ヲ吸收スルト云フコトガ、或ハ精神的
ニドウカト云フヤウナ問題モ無論昔カラア
ルコトデゴザイマスガ併シ此ノ點ニ付テ
ハ從來カラ政府モ說明致シテ居リマスル通
リ、政府資金ノ撒布ガ非常ニ大ニナリマシ
テ、國民所得ガ增加致シ、殊ニ從來貯蓄ト
云フヤウナ慣習モ極メテ少ク、單ナル金利
ニ依ツテハ吸收シニクイヤウナ方面ノ資金
ヲ吸收スルト云フ意味ニ於キマシテ、所謂
人情ノ機微ニ適シタ方法デ、サウ云フ方面
ノ資金ヲ吸收スルト云フ意味ニ於テ、割增
金ト云フ制度ハ考ヘラレテ居ルノデアリマ
シテ、此ノ每年一囘以上ト云フ制限ヲ削リ
マシタノハ、割增金ヲ止メルト云フ趣旨デ
ハ決シテゴザイマセヌノデ、唯其ノ方法ニ
變化ヲ與ヘ易クスル、斯ウ云フ意味デゴザ
イマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=30
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031・板谷順助
○板谷委員長 速記ヲ中止致シマス
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=31
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032・板谷順助
○板谷委員長 速記ヲ始メテ下サイ-長
井源君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=32
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033・長井源
○長井委員 極メテ簡單ニ二、三ノ御尋ネヲ
致シタイ、、私ハ金融トカ通貨トカ云フ問題
ハ全クノ素人デアリマスカラ啓蒙ノ意味デ
御答ヘヲ願ヒマス、日本銀行法案ヲ讀ンデ
居リマシテ疑問ニナル點ガ二、三アリマス、
第一ハ第三十條デゴザイマス、「主務大臣ハ
前條第一項フ銀行劵ノ發行限度ヲ定ムベ
シ」、斯ウアリマス
〔委員長退席、本田委員長代理着席〕
主務大臣ガ此ノ發行限度ヲ定メマス場合ニ
ハ特別ナ手續ナリ用意ナリガ此ノ法案ノ外
ニアルノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=33
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034・山際正道
○山際政府委員 第三十條ニ於テ銀行劵ノ
發行限度ヲ定メマスニ付キマシテハ、法律
上ノ手續ト致シマシテハ玆ニ書イテアリマ
ス以外ノ手續ヲ執ル考ヘハナイノデゴザイマ
ス、銀行劵ノ最高發行限度ヲ定メマス意味
ハ、政府ガ今後各般ノ經濟政策ヲ實行シテ
參リマスニ付キマシテ、或ハ生產デアルト
カ配給デアルトカ、消費、ソレカラ國ノ財
政ノ需要、一般金融情勢、其ノ他各般ノ事
項ヲ綜合致シマシテ、而シテ其ノ綜合サレ
タ一定ノ計畫ト云フカ、ソレニ合フヤウナ
通貨量ヲ大體目安トシテ揭ゲ、ソレヲ一應
ノ基準トシテ示シテ置ク、斯ウ云ツタ意味
合ヒノ規定ナノデアリマス、勿論此ノ事タ
ル非常ニ困難ナコトデハアリマスルケレドモ、
ヤハリ斯樣ナ通貨制度ヲ採ル上ニ於キマシ
テモ、一應ノ目安ハ揭ゲルノガ適當デアラ
ウト云フコトカラ、斯樣ナ定メ方ヲ致シタ
ノデアリマス、而シテ之ヲ具體的ニ取極メ
マスル場合ニ、何モ規定ハ別ニゴザイマセ
ヌケレドモ、勿論關係方面、或ハ日本銀行
其ノ他ノ民間ノ方面トモ十分意見ヲ交換致
シマシテ、各種ノ資料ニ基イテ其ノ限度ヲ
定メル、斯樣ニ考ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=34
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035・長井源
○長井委員 サウ致シマスト、何モ法案ニ
モ現ハレテ居リマセズ、制度モナイト云フ
コトニナリマスト、少シ極端ニ申シマスト、
大藏大臣ハ全ク自由裁量デ此ノ發行限度ガ
定メラレルト云フコトニナル譯デアリマス
ネ、モウ一遍其ノ點ヲ御伺ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=35
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036・山際正道
○山際政府委員 形ノ上カラ申シマスルト、
御話ノ如キ結果ニナルノデアリマス、實ハ
昨年ノ春御定メヲ願ヒマシタ發行制度ノヤ
リ方ト、此ノ點ニ關シマシテハ同ジヤウナ行
キ方ヲ致シテ居ルヤウナ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=36
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037・長井源
○長井委員 サウ致シマスト、私ハ是ハ大
變ナ問題デナイカト思フノデアリマス、從
來金本位制ヲ採ツテ居リマシタ時ハ、勿論
制限外ノ發行モ許サレテハ居リマシタケレ
ドモ、何ト云ツテモ金ト云フモノニ依ル制
限ヲ受ケテ居ツタノデアリマスカラ、假令
大藏大臣ガ此ノ發行限度ヲ決メルト致シマ
シテモ、ソレニ對スル顧慮ナシデハ決ラナ
イト云フコトニナル譯デアリマスカラ、此
ノ儘ノ規定デモ其ノ金本位ノ金ガソレヲ制
限シテ行クト云フコトニナル譯デアリマス、
所ガ今度管理通貨ニナリマスト、何等ノ制
限スベキ、或ハ評議諮問スベキ機關モナシ
ニ、大藏大臣ガ自由ニ之ヲ決定スルト云フ
コトニナリマスト、只今ノヤウナ時勢デシ
タラ、澤山ノ通貨ガ出マシテモ貯蓄トカ公
債ヲ買ハセルトカ云フコトデ囘收ノ付ク方
法モアリマスシ、或ハ又賀屋サンガ大藏大
臣ノ時代ナラバソンナ心配ハナイカモ知レ
マセヌガ、日本銀行法ガ一旦決リマシタナ
ラバ、ドウ云フ事態ニモ應ジテ行カネバナ
ラヌコトニ相成ルト思ヒマスノデ、其ノ時
ニ極メテ放漫ナ、而モ鼻ツパシノ强イ大藏
大臣ガ出テ來テ發行限度ヲ勝手ニ增加ス
ル、斯ウ云フ風ナコトニナリマスト、於
是ハ大變ナ問題デナイカト思フノデアリマ
ス、金ガアリマス時ハ非常ナ不自由モアリマ
スケレドモ-私ハ金本位制ヲドウ斯ウト
云フ問題ヲ申スノデハアリマセヌガ、ソレガ
一ツノ標準ニナツテ制限ヲ加ヘテ居リマス
ケレドモ、管理通貨ニナリマスト、全ク信
用ノミト云フコトニナリマス、サウ云フ時
ニ大藏大臣ノ全ク自由ナル裁量ニ依ツテ決
定サルルト云フコトハ、私ハ非常ナ危險ガ
アルノデナイカト此ノ條文ヲ讀ンデ居ツテ
感ズルノデアリマスガ、是ハドウデゴザイ
マセウカ
〔本田委員長代理退席、委員長着席〕
何度モ斯ウ云フ限度ヲ決メル譯ノモノデモ
アリマセヌシ、大シテ煩ハシイコトデモナ
イノデアリマスカラ、ヤハリ民間ナリ銀行ナ
リ、官界ナリノ財界ニ通ジタ人々ヲ集メタ
委員會デモ作ツテ、ソレニ對シテ諮問スル
ナリ、評議スルナリシテ決定サレマスレバ、
非常ニ安全性ヲ保チ得ルノデハナイカト思
フノデアリマス、今日出來ル立法ハ非常ニ
世間ノ狀況ニ支配サレマスカラ、ソレ等ノ
點ニ付テ特ニ考慮ヲ拂ツテ置キマセヌト、
將來平和ニデモナツタ場合ニ於テ「インフ
レ」デモ起ルヤウナコトガアツテハ私共大
變デハナイカト思ツテ御尋ネスルノデス
ガ、日本銀行劵ノ發行限度ノ審査會ト云フ
ヤウナモノヲ設ケテ、ソレニ諮問シテ御決
メニナルト云フ御考ヘハアリマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=37
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038・山際正道
○山際政府委員 此ノ三十條ノ規定ニ依ル
發行限度ノ決定ニ付キマシテ、何等カ委員
會ノ如キ制度ヲ設ケル必要ガアルカナイカ
ト云フコトハ、實ハ立案ニ當ツテモ再應考
慮ハ致シタノデアリマスガ、種々〓究致シ
マシタ結果、御承知ノ如ク今後ノ經濟政策
ガ各般ノ政策、例ヘバ物動計畫ニ致シマシ
テモ、或ハ生產力擴充計畫ニ致シマシテモ、
其ノ他資金統合計畫ニ致シマシテモ、勿論
各方面ノ知識、各方面ノ意見ヲ廣ク集メハ
致シマスケレドモ、何レモソレ等ヲ綜合致
シマシタ結果、政府ノ責任ニ於テ之ヲ決定
シテ參ルト云フ建前ヲ執ツテ居リマス、此
ノ決メ方ニ付キマシテモ、一應同ジヤウナ
行キ方デ行ツテ差支ヘナイノデハナカラウ
カ、勿論此ノ決定ニ當リマシテ、各方面ノ
意見、知識ヲ十分ニ集メルト云フコトハ
法文ニハゴザイマセヌケレドモ、當然ノ前
提ト考ヘマシテ、特ニ左樣ナ機關ヲ設ケル
マデモナイデアラウト云フコトニ致シタノ
デアリマス、是ハ發行限度ヲ決メル度數ノ
問題デアリマスガ、斯カル制度ヲ執リマシ
タ所以モ、此ノ發行限度ナルモノハ各般ノ
經濟事情ニ從ツテ相當伸縮性ヲ持タセルト
云フコトヲ考ヘタノデアリマス、或ハ法定
致シマスレバ、其ノ都度又頻繁ニ改正ヲス
ル必要モゴザイマスシ、實際ノ狀況ニ適應シ
タ伸縮ト云フコトガ保タレマイト云フ考ヘ
方カラ、ソコニ相當ノ餘裕ヲ殘スト云フヤウ
ナコトデ、此ノ規定ヲ設ケタ譯デアリマシ
テ、極ク最近ノ經濟狀態カラ申シマスレバ、
只今決メテ居リマス發行限度四十七億圓ト
云フノモ、財政需要等ヲ見比ベマシテ、大
體昭和十六年度ヲ目標ニシテ決メテ參ツタ
ノデアリマスガ、暫クノ間ハヤハリ年度ノ
計畫ト云フモノガ基準ニナツテ、大體一年
度一囘ト云フ程度ニ決メテ行カレルノデハ
ナイカト考ヘテ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=38
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039・長井源
○長井委員 私モ此ノ伸縮性ヲ考ヘラレタ
ノダト思ヒマスガ、ソレナラバ尙更審査委
員會ノヤウナモノヲ設ケラレテ、サウシテ
ドレ位增加スベキカ、或ハ限度ヲ低メルベ
キカト云フヤウナコトヲ御相談ノ上デヤラ
レルノガ安全デハナイカト思フノデアリマ
ス、是レ以上ハ意見ニ亙リマスカラ申シマ
セヌガ、私自身ハ是非サウシテ貰ハナケレ
バナラヌモノト信ジテ居リマス、ソレデ今
度ハ金本位制カラ離脫シタ形ニ於ケル管理
通貨デゴザイマスノデ、玆ニ保證ヲ保有ス
ルコトニナツテ居リマスガ、此ノ保證ノ如
キモ先程カラ御話ガアリマシタガ、商業手
形デアルトカ、或ハ二十條第二號ト申シマ
スト商品ヲ擔保トスル貸付ト云ツタヤウナ
モノ、ソレカラ二十二條ノ第一項ノ規定ト
云ヒマスト、是ハ政府ニ對スル貸付、形ハ
保證ト云フ形ニハナリハ致シマスケレドモ、
商業手形ト云フコトニナリマスト、相當危
險ヲ含ンデ居ルモノダラウト思ヒマス、其
ノ點ハ私ハ餘リ詳シク存ジマセヌケレドモ
手形ハ相當危險ヲ含ンデ居ルト承知ノ上取
ラナケレバナラヌト思ヒマス、又商品ニ對
スル貸付ヲ擔保トスルト云フコトニナリマ
スト、是ハ價格ノ關係ナリ、需給ノ關係ニ
依リマシテ、私ハ通貨ノ呼ビ聲ニ大變ナ影
響ヲスルモノデアルト思ヒマスルシ、又政
府ニ對スル貸付ヲ擔保トスルト云フコトニ
ナルト、政府ハ自分ノ方デ一億圓金ヲ貸セ
ト云ツテ、サウシテ一億圓ノ通貨ノ發行ヲ
許スト云フコトニナリマシタナラバ、マル
デ日本銀行ト政府ハ八百長ヲヤル恰好ニナ
リマス、制度ハ斯ウダ、或ハ條文ハ斯ウナ
ツテ居ルト言ハレレバ、サウデスケレドモ、
一寸見タラサウ云フ感ジヲ受ケルノデス、
ソレデスカラ、金ノヤウナモノト違ヒマシ
テ是等ノ始終動キマス擔保、或ハ今申シマ
スヤウナ多少八百長ノ出來ル擔保ニ依ル保
證ト云フモノガ、發行限度ノ保證トナツテ
居ルト云フコトニナルト、餘程危イ保證ヲ
含ムト云フコトニ解釋サレナケレバナラヌ
ト思フノデアリマス、ソレデスカラ私ガ只
今申シマスヤウナ發行限度ヲ決メマス場合、
私ハ此ノ次ノ條文ノ三十一條ノ主務大臣ノ
認可ニ付テモ-是ハ總括的ノ認可デ宜カ
ラウカト思ヒマスガ、其ノ認可ニ付テモ諮
問デモシテ置クト云フコトガ安全デナイカ、
今ノヤウナ時代ダケデナイコトヲ能ク御考
慮シテ戴イテ、此ノ邊ハ考ヘテ戴カナケレ
バナラヌノデハナイカト思フノデゴザイマ
ス此ノ點ハソレダケニ致シマス、エライ
小サイコトデ濟ミマセヌガ、モウ一ツハ七
十條ニ「第六十八條第一項ノ補償金ニ付テ
ハ所得稅ヲ課セズ」トアリマスガ、是ハ銀
行局長ノ此ノ間ノ御說明ニ依ルト、古イ株
劵ト今度ノ出資トノ間ノ市價ノ差額ヲ補償
スルト云フヤウナ御話ダツタト思フノデア
リマスガ、ソレナラバ所得稅ヲ課ケナケレ
バナラヌヤウニ考ヘマスガ、其ノ點ヲ一寸
明確ニ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=39
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040・山際正道
○山際政府委員 最初御述ベノ點ハ格別御
答ヘ申上ゲルコトモ御要求デナイヤウデア
リマシタガ、一、二念ノ爲ニ御說明ヲ附加
ヘテ置キタイト存ジマス、各種ノ手形類ヲ
保證ト致シマスルコトハ、現在ノ兌換銀行
劵條例ニ於キマシテモ同樣デアリマシテ、
手形類ハ比較的資金化ガ容易デアリ、期間
ガ短イト云フヤウナ關係カラ、發行劵ノ準
備物トシテ、ハ適當デアラウト云フ意味合
デ、從來カラ實ハ設ケラレテ參ツテ居リマ
ス、唯御話ノ如ク、手形ト申シマシテモ非
常ニ不確實ナモノモアリ、商品ト申シマシ
テモドウニモ容易ニ荷捌キノ付カヌヤウナ
モノノアルコトハ申スマデモナイノデアリ
マイク、一々日本銀行ノ法律ニ付キマシテハ
諄々シク御斷リハ致シマセヌデシタガ、第
一條ノ趣旨ニモ揭ゲテ居リマス通リニ、通
貨ノ價値ヲ十分ニ維持シテ行クト云フコト
ハ、日本銀行ニ與ヘラレタ根本的ノ使命デ
アリマス、隨ヒマシテ其ノ取リマスル所ノ
手形トカ、其ノ買入レマス所ノ債劵トカ云
フヤウナモノハ、斷ルマデモナク確實ナ資
金化ノ容易ナルモノト云フコトニ考ヘテ居
ルノデアリマシテ、是ハ條文ニハゴザイマ
セヌガ、運用上ノ心構ヘトシテ從來モサウ
デゴザイマシタシ、今後モ勿論左樣ニ行ク
ベキモノト考ヘテ居ルノデアリマス、ソレ
カラ政府貸付金ノ問題、是ハ大體其ノ趣旨
ニ於キマシテハ、從來國債ヲ保證ト致シマ
シテ、銀行劵ヲ發行致シテ居リマシタノト
同ジヤウナ趣旨ニ於キマシテ認メテ居ル規
定デゴザイマス、尙ホ國債ナリ貸付金ナリ
ノ扱ヒ方ニ付キマシテハ、此ノ度ノ日本銀
行法ノ改正ノ眼目ノ一ツガ、政府ノ財政的
運用ヲ十分ニ政府ト一體トナツテ支障ナカ
ラシメルト云フ點ガ、一ツノ眼目ニ相成ツ
テ居ルノデアリマシテ、勿論放漫ナコトハ
ナスベキデハゴザイマセヌケレドモ、政府
ヘノ貸付金ナリ國債ノ發行自體ガ旣ニ國家
全體ノ資金統制計畫ノ間ニ於テ計畫化サレ
ルノデアリマスカラ、隨ヒマシテ斯樣ナ建
前ヲ執リマシテモ、現在ノ狀況ニ比ベマシ
テ更ニ一段ト危險性ガ增スト云ツタヤウナ
心配モナイノデハナイカ、左樣ニ考ヘテ居
リマス、此ノコトハ念ノ爲ニ附加ヘテ置キ
マス
ソレカラ第七十條ノ所得稅ヲ課セズト云
フコトノ意味ニ付テノ御尋ネゴザイマスガ、
其ノ對象トナリマスル第六十八條第一項ノ
補償金ト申シマスモノハ、只今御話ノアリ
マシタル如ク、今日日本銀行ノ株式ガ持ツ
テ居リマスル時價ト、ソレカラ今度其ノ株
ト振替ニ日本銀行カラ貰ヒマス出資證劵、
是ハドチラカト申シマスルト確定利附債劵
ニ近イ性質ノモノトナツテ居リマス、サウ
致シマスト申スマデモナク現在ノ株價ニ比
ベマスト、今度新シク貰ヒマス出資證劵ハ
時價ガ餘程低イト思フノデアリマス、假
ニ今株價ガ五百圓ト致シマスレバ、今度貰
フ出資證劵ハ例ヘバ二百圓ト云フ價格ニナ
ルサウ致シマスルト、財產ト致シマシテ
三百圓ノ損ガ來タ、斯ウ云フコトニナラウ
ト思フノデアリマス、併シナガラソレハ財產
ガソレダケ損害ヲ被ツタト云フ觀念ト思フ
ノデアリマシテ、所得ガ、ソレダケ出來タ
ト云フノトハ少シ意味ガ違フノデハナイ
カ、斯樣ニ考ヘマシテ、財產ノ損害ヲ補塡
スルノデアリマスカラ、所得稅ヲ課ケル對
象ニハ性質上ナラナイ、斯樣ナ考ヘ方デ特
ニ注意的ニ此ノ第七十條ノ規定ヲ設ケマシ
タ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=40
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041・長井源
○長井委員 サウシマスト、私餘リ深イコ
トハ知リマセヌガ、色々國策會社ノ統合ナ
ドヲサレテ居ル、發送電ノ如キモノモアル
ノデハナイカト思フノデアリマスガ、サウ云
フ他ノ機構ニ於テハ今ノ御趣旨ハ牴觸スル
ヤウナコトハアリマセヌカ、是ハ日本銀行
ノ株デモヤハリ財產ト言ハレレバドノ株モ
皆同ジコトダト思ヒマス、拂込額ヨリ多イ
モノハ誰ガ持ツテ居ラウト一ツノ儲ケナノ
デス、ソレヲ特ニ所得稅ヲ課シナイト云フ
コトニナルノハ、日本銀行株劵ダケヲ特例
ニスルト云フ趣旨ニ見エル、其ノ特例ガ私
ハ從來ノ株式會社日本銀行トシテハ、ドウ
モ意味ガ取リニクイト考ヘルノデアリマス
ガ、他トノ機構ノ點ヲ一遍承ツテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=41
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042・山際正道
○山際政府委員 恐ラク他ノ場合トシテ、
御想像ニナリマスル所ハ、或ル一ツノ株ガ
他ノ株ニ替ハルト云フヤウナ場合ヲ御考へ
デハナイカト思フノデアリマス、所ガ今囘
ノ場合ハ全ク從來ニ其ノ例ガゴザイマセヌ
ノデ、株式ガ全然性質ノ違フ出資ト云フ特
別ノモノニ振替ハルノデアリマス、其ノ出
資タルヤ法文ノ第十二條ノ第二項ヲ御覽戴
キマスト御分リデアリマスガ、拂込ンダ金
額シカ-將來假令日本銀行ガ萬々一何カ
ノ理由ニ依ツテ解散ト云フヤウナコトニナ
リマシテモ、其ノ限度ヲ超エテ殘餘財產ノ
分配ニ與リ得ナイノデアリマス、謂ハバ社
債ノヤウナ關係ニナリマス、隨テ株ガ株ニ
振替ハル、隨テ新シイ株ニ付テハ、尙ホ其
ノ會社ニ付テ殘餘財產全體ノ上ニ分配ヲ受
ケル權利ヲ持ツテ居ルト云フ場合トハ趣キ
ヲ異ニ致シマス、隨ヒマシテ今度此ノ法律
ニ依リマシテ振替ヘマスル所ハ、丁度日本
銀行ノ株ヲ時價デ賣リマシテ、其ノ代リニ
一種ノ社債ニ類似シタモノト國債トデ代
リ金ヲ貰ツタ、斯ウ云フ結果ニナルノデア
リマス、他ノ場合トハ餘程趣キヲ異ニスル、
恐ラクハ唯一ノ特例デハナイカト考ヘテ居
ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=42
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043・長井源
○長井委員 勿論出資金デゴザイマスカラ、
特例ト言ヘバ特例カモ存ジマセヌガ、今日
ハ株ノ値段ニ對シテモ總動員法デ制限ヲス
ルコトガ出來タリスルヤウナ時代デアリマ
スノデ、從來ノ全ク私經濟的ナ會社ノ株劵
モ、非常ナ公共的ナ意味ヲ持ツタ時代ニナ
ツテ來テ居ルノデアリマス、其ノ方カラ公
ノ方ニ近寄リマシタノト、是ハ元々公ノ性質
ヲ帶ビタ日本銀行株劵デハアリマスケレド
モ、ヤハリ株式會社ノ株劵デアリマスノデ、
日本銀行ダケガ特例ニ見ラレルヤウナ氣ガ
スルノデアリマス、特殊ノモノダト云フコ
トデアリマスレバ此ノ點ハ私ハ打切ツテ置
キマス
第三ハ「日本銀行ハ法人トス」ト云フ日本
銀行ノ法的性格デゴザイマスガ、是ハ大藏
省當局ノ方ニ御尋ネスルノハ適當デナイカ
モ存ジマセヌノデ、御答辯ハ戴カヌデモ宜
シイノデス、ドウセ特殊ノ法人ダト仰シヤ
ルニ違ヒナイノデス、特殊ノ法人ハ最近澤
山出テ參リマシタガ、先ヅ最近ノモノトシ
テハ、營團ノヤウナモノハ特殊ノ法人トシ
テ大體ノ性格ヲ今日ナシテ來テ居リマスガ、
日本銀行ノ法人ハ此ノ法文ヲ拜見シマシテ
モ全ク違ツタモノデアリマス、斯ウ云フ風
ナ違ツタモノヲ法人トシテ取扱ハレマス場
合ニ、法律ヲ解釋致シマスヤウナ時ニハ
何カ準據スル法律ノ思想ガナケレバナラヌ
譯デアリマス、ソレハ固定シタモノデハア
リマセヌケレドモ、一ツノ政府ノ機關ノヤ
ウニナツテ居ルモノハ、一ツ〓〓全ク公的
ナモノカ、或ハ私的ナモノカ、或ハ特殊ナ
モノカ、何カ法文ノ解釋ニ迷ツテ來タ場合
ニ、ソレガ準據スルモノハ今日マデノ法律
上ノモノデナケレバ困ル譯デアリマス、斯
ウ云フ時代デスカラ、變ツタ法律的ナ思想
ガ出テ來テモ宜シイノデスガ、ソレガヤタ
ラニ是モ特殊法人ダ、アレモ特殊法人ダト
云フコトニナリマスト、私ハ法律ノ普遍妥
當性ヲ害スルコトニナルト思フノデス、サ
ウシマスト法律解釋モ非常ニ困難ナコトニ
ナ、ツテ來マシテ、法律ヲ拵ヘル意味ガ非常
ニ困ツタコトニナルト思フノデスガ、是ハ
法的性格ニ付テ何カ特殊ニ御考ヘニナツテ
居ルコトガゴザイマシタナラバ伺ヒマス、
サウデナカツタナラバ是ハ御答辯ヲ戴カナ
イデモ宜シウゴザイマス、司法關係ノ所デ
伺ツテ見ヨウト思ツテ居リマス
ソレカラ戰時金融金庫法ニ付テ伺ヒマス、
第二條ニ「戰時金融金庫ハ主務大臣ノ認可ヲ
受ケ必要ノ地ニ從タル事務所ヲ設置シ又ハ
銀行其ノ他主務大臣ノ指定スル者」トアリマ
スガ、指定スル者ト云フノハドウ云フモノ
ヲ言フノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=43
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044・田中豐
○田中(豐)政府委員 銀行以外ノ金融機關
ヲ指定スル積リデ居リマスガ、當分ハ指定
スル必要ガナイデアラウト思ヒマス、必要
ガアレバ將來指定スルコトニナリマスガ、
其ノ際ハヤハリ金融機關ヲ指定致シタイ
ト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=44
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045・長井源
○長井委員 次ニ臨時資金調整法ニ關聯致
シマシタ點ヲ二ツ御尋ネヲ致シテ見マス、
私モ是ハ存ジナイノデスガ、會社デ無報酬
デ勤メテ居リマス重役ガ辭メル場合ニ、ソ
レニ對シテ慰勞金ヲ出スト云フヤウナコト
ハ經理統制令デ出來ナイコトニナツテ居ル
ト云フコトデアリマスガ、ソレハドウ云フ
エ合デサウ云フコトニナツテ居リマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=45
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046・伊原隆
○伊原政府委員 會社ノ役員ノ退職金ニ付
テノ御質問デゴザイマスガ、御承知ノ通リ
役員ノ退職金ニ付キマシテハ、會社經理統
制令ガアリマシテ、之ニ依ツテ退職前一年
間ニ支給シタ役員報酬ニ其ノ在職年數ヲ掛
ケタモノノ半分ト云フモノヲ一應ノ限度ト
致シマシテ、ソレヲ超エル場合ニハ許可ガ
要ルト云フコトニ相成ツテ居リマス、隨テ
御尋ネノヤウナ場合ニハ其ノ限度ガナイ
譯デアリマスカラ、之ニ退職金ヲ支給致サ
ウト云フ場合ニハ、許可ノ申請ガ原則トシテ
要ル譯デゴザイマスケレドモ、サウ云ラ風
ナ場合ニハ、大體其ノ方ノ過去ノ閱歷トカ、
其ノ人ガ受ケテ居タトシタナラバ、ドノ位
ノ報酬ヲ受ケテ居ラレタ筈デアラウカト云
フコトモ考ヘマシテ、適當ナ金額ヲ許可ス
ルコトニ致シテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=46
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047・長井源
○長井委員 分リマシタ、モウ一ツ御尋ネ
シテ置キタイノハ、經理統制令ヲ、今後續
續ト出テ來ルデアラウト思フガ、統制會ニ
適用シテ行クヤウナ御積リハアリマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=47
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048・田中豐
○田中(豐)政府委員 只今ノ御尋ネハ、經
理統制令ヲ統制會自體ニ適用シテ行クカト
云フ御質問デアラウト思ヒマスガ、現在ノ
會社經理統制令ハ、法規上會社ニ適用スル
コトニナツテ居リマシテ、統制會ヲ初メ其
ノ他ノ會社以外ノ各種法人ニハ適用シナイ
コトニナツテ居リマス、唯全體ノ經理統制
上サウ云フ方面ニモ擴ゲタ方ガ宜イデハナ
イカト云フ考ヘ方ハ又別ニアリ得ル譯デア
リマスガ、ソレモ各方面カラ〓究ヲ要スル
コトデアリマシテ、目下ノ所ハ會社ノミニ
適用スルコトニナツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=48
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049・長井源
○長井委員 サウスルト是ハ將來考ヘテ見
ナケレバナラヌ問題ダト云フコトニハナツ
テ居ルト心得テ宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=49
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050・田中豐
○田中(豐)政府委員 統制會ノミナラズ、
各種ノ法人其ノ他ハ色々費用ヲ使ヒ、使用
人ニ對シテ給與ヲ出シテ居ル譯デアリマス
カラ、會社ヲ統制スルト同ジヤウナ考ヘ方
デ、サウ云フモノヲ統制スル見方モアル譯
デアリマス、併シナガラ又サウ云ツタ各種
ノ法人其ノ他ハ特ニ別ノ監督ヲ受ケテ居ル
關係上、會社經理統制令ノ適用ヲ及ボスノ
ガ善イカ惡イカト云フ問題ガアル譯デアリ
マシテ、其ノ善イカ惡イカノ〓究ノ餘地ガ
アルト考ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=50
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051・長井源
○長井委員 私ノ質問ハ是デ終リマシタ
ガ、過般來此處デ質疑應答ヲ伺ツテ居リマ
シテ考ヘタコトヲ御參考マデニ簡單ニ申上
ゲテ見タイト思ヒマス、ソレハ過般來武田
サント大藏大臣、政府委員トノ間ニ色々應
酬ノアツタ例ノ管理通貨、貨幣制度本位制
ノ問題デアリマスガ、アレニ對スル見解ト
シテハ、大藏省デハツキリシテ居ラナケレ
バナラヌ筋合カモ存ジマセヌガ、何シロ今
日デハ貨幣制度ニ關スル確定シタ學說或ハ
通說ノヤウナモノモ、私能ク存ジマセヌガ、
ナイヤウデアリマス、ソレデ最近政府ハ金
ノ買上ヲヤツテ居リマシタガ、是ハ五十日
バカリ前ノコトデス、或ハ又管理通貨トシ
テモ、「ルーブル」「マーク」ト云フヤウナモノ
ニ付テ近クニ色々例ガアリマシタ、ソレカ
ラ貨幣ノ世界性ノヤウナモノモ考ヘラレマ
ス、金ガ貨幣ノ本位ニナツテ來タ歷史的ノ
經過ナドモアル譯デアルガ、恐ラク金本位
制ハ復活スルモノデハナイノデハナイカト
思ハレマス、今日ソレデナイト致シマスト、
何ガ通貨價値ノ基礎ニナルノダト云フコト
ニナツテ來マシテ、過般銀行局長ノ御答辯
ガ誤リ傳ヘラレテ新聞ニ枠付キデ圓ノ價値
ハ勞働ニアリト云フヤウナコトガ書カレル
ヤウナコトニナリマシテ、大キナ誤解ヲ生
ジテ居ルト云フ實情ニアルト思フノデアリ
マス、先ヅ一番初メニ銀行局長ガ此ノ法案
ノ說明ヲサレタ時ノヤウニ、ソレ等ノ點ニ
付テハマア暫ク〓究ニ俟ツテ貰フト云フ態
度ガ私ハ望マシイ、斯ウ云フ風ニ實ハ感ジ
マシタノデ、御參考マデニ申上ゲテ置キマ
シテ、私ノ質問ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=51
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052・板谷順助
○板谷委員長 內藤正剛君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=52
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053・内藤正剛
○内藤(正)委員 先程長井君カラノ質問ガ
アリマシテ、ソレニ對スル御答辯モアツタ
ノデアリマスガ、總裁或ハ副總裁カラ制限
外發行其ノ他重要ナル事務ニ付テ相談ガア
ルベキ場合ハ、參與ガ受ケルノデハナイカ
ト私ハ思ウテ居ツタノデス、ソレデ此ノ間
カラ法文ノ十五條ヲ見テ居ツタノデスガ、
十五條ノ「參與ハ日本銀行ノ業務ニ關スル重
要事項ニ付總裁ノ諮問ニ應ジ又ハ總裁ニ對
シ意見ヲ述ブルコトヲ得」是ガ活用サレルノ
デハナイカト思ツテ居ツタノデスガ、政府
當局ノ御答辯ハ此ノ點ニハ一ツモ觸レテ居
ラヌ、ソレカラ各委員ノ御質問ニモ參與ニ
關スル問題ガアリマセヌノデ、私ハ之ヲ聽
クノデス、參與ノ職務權限如何、抽象的ニ
聽キマスカラ具體的ニ御答ヘヲ願ヒマス
ソレカラ序ニ面倒デスカラ時間ヲ節約ス
ル爲ニ伺ヒマスガ、參與ニ對スル職務權限
ヲ書イテアリマスシ、任命ノ形式モ書イテ
アリマスガ、制裁トシテハ解任ダケデアツ
テ他ニ制裁ガナイノデス、無論諮問機關デ
一線ニ立タナイカラ差支ガナイノデアル、
斯ウ云フ御答辯ガアルト私ハ想像致シマス
ガ、苟モ參與デアツテモ、間違ツタ意見ヲ
進言シ、諮問ニ間違ツテ答ヘ、ソレガ爲ニ
總裁其ノ他ノ役員ガ踊ラサレタト云フ場合
ニ於テハ、其ノ罪ハ萬死ニ値スルモノガアル
ト思フ、動モスルト人ヲ咎メルコトガ近來
急ナル傾向ガアルニ拘ラズ、斯ウ云フモノ
ニ對シテ特ニ拔カシタ意味ハ何處ニアリマ
スカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=53
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054・山際正道
○山際政府委員 第一ニ參與ノ職務權限ハ
何デアルカト云フ御尋ネデアリマスガ、之
ヲ抽象的ニ申上ゲマスト、第十五條ニアリ
マスル通リ、「參與ハ日本銀行ノ業務ニ關ス
ル重要事項ニ付總裁ノ諮問ニ應ジ、又ハ總裁
ニ對シ意見ヲ述ブルコトヲ得」トアリマシテ、抽
象的ニ申セバ日本銀行ノ重要業務ニ付キマ
シテ、或ハ諮問ヲ受ケ又ハ意見ヲ陳述スルト云
フコトニ相成ツテ居ルノデアリマス、然ラバ
日本銀行ノ重要業務トハ何デアルカト云フ
コトデアリマスガ、是ハ勿論其ノ時々ニ依リ
マシテ、種々內容モ變ツテ參リマセウシ、一
〓ニ申上ゲラレマセヌケレドモ、例ヘバ先
程モ問題ニナツテ居リマス發行限度ト云フ
ヤウナモノヲ決メマス場合ニ、大藏大臣ガ
日本銀行總裁ニ其ノ意見ヲ徵シマシタヤウ
ナ場合ニ、日本銀行總裁ハ自分ノ意見ヲ立
テルニ付キマシテ參與ノ意見ハドウデアル
カト云フコトヲ聽クコトナドハヤハリ重
要ナル業務ノ一ツトシテ當然考ヘテ居ル譯
デアリマス、其ノ他金利情勢、公定步合ノ
立テ方ガ經濟界ノ實情ニ合ツテ居ルカドウ
カ、或ハ其ノ當時ノ金融情勢ニ應ジテ日本
銀行トシテ執ルベキ措置ハ何デアルカ、金
融ヲ締メダ方ガ宜イカ、緩メタ方ガ宜イカ、
或ハ國債ノ消化ニ付テ如何ナル金融界ニ對
スル手段ヲ施スベキデアルカト云フヤウ
ナ、今後第一條ニ揭ゲマシタヤウナ日本銀
行ノ各種ノ使命ヲ達成シテ行ク上ニ於ケル
重要ナル事項ニ付キマシテ、總裁ガ此ノ參
與ノ意見ヲ徵シ、又其ノ意見ヲ容レテソレ
ゾレ處置致ス、斯樣ナ場合ヲ期待致シテ居
ル次第デアリマス、隨ヒマシテ御話ノ如ク
參與ハ非常ニ鍊逹堪能ノ士デアルト同時ニ、
其ノ述ベマス意見ト云フモノニ付テハ、參
與ハ十分ナ確信ヲ持チ責任ヲ持ツガ如キ意
見デナケレバナラヌコトハ申スマデモナイ
ノデアリマス、然ラバ何故特殊制裁ノ規定
ヲ設ケナカツタカト云フ御尋ネデアリマス
ガ、此ノ點ハ特ニ制裁規定ヲ置キマセヌデ
シタコトハ、御話ノ如ク諮問機關デアルガ
故ニト云フコトデアリマス、併シナガラ此
ノ法律ニ依リマスレバ、參與ト雖モヤハリ
其ノ取扱ハ公務員ト云フコトニナツテ居リ
マス、其ノ地位ニ任ゼラレマシタ人ガ、特
ニ自己ノ利益ヲ圖ルトカ、公共ノ利益ヲ害
スルコトヲ知リナガラ自分ノ神聖ナル意見
ヲ枉ゲテ總裁ニ具申スルト云ツタヤウナコ
トハ先ヅナカラウト信ズルノデアリマス
實際上ノ監督上ノ必要カラ申シマスレバ、
特ニ玆ニ制裁規定ヲ設ケマセヌデモ、其ノ
目的ヲ達シ得ルノデハナイカ、斯樣ニ考ヘ
マシテ、特殊ノ規定ハ置カナカツタ次第デ
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055・内藤正剛
○內藤(正)委員 無論是ハ、先程ノ長井君
ノ質問ニ對スル御答ヘトシテ、特殊法人、
公益法人ト見テ居ルノデセウカラ、是ハマ
ア分ツテ居ルノデアリマセウガ、他ノ者ハ
職務權限ニ依リマシテ、其ノ者ニ重大ナル
色々ナ間違ツタコトガアツタ場合ニハ、責
任ヲ取ラズ、更ニ刑罰法令其ノ他特殊ナ罰
則ガアリマスガ、其ノ問題ヲ聽クノデハナ
イガ、此ノ罰則ノ中ニソレヲ置イタラ宜イ
デハナイカト云フコトヲ申上ゲタノデアリ
マスガ、ソレハ諮問機關ダカラト云フコト
デアリマスノデ、是デ止メテ置キマス
次ニ伺ヒマスガ、第四十七條ニ公益ヲ害
シタル時ハ解任スルト云フコトガアリマス
ガ、斯ウ云フモノニ付テ特殊制裁法規ヲ設ケ
ナクテモ宜イノデセウカ、日本銀行ハ他ノ銀
行トハ違ツテ非常ニ其ノ銀行ノ業務自體
ハ、一顰一笑ト申シマスカ、其ノ動キハ全
國的ニ、否國際的ニモ大ナル影響ガアルト
思フノデアリマスガ、是ハ詰ラヌ市井ノ徒
ノ刑罰法令ニ觸レル問題ヨリモモツト深刻
ナ大キナモノガアルト思フ、時ニ依ルト「パ
ニック」ガ來ルコトガナイトモ限リマセヌ、
私ノ知レル範圍デハ曾テハ臺灣銀行問題
デ、日本銀行ガ手ヲ切ツタ爲ニ內閣モ引繰
返ツタト云フコトモ前例トシテ出テ居リマ
ス、ソレハ過去ノコトデアリマスガ、今後
ニ於テモ日本銀行ノヤリ方如何ニ依ツテ、
其ノノ一顰一笑ハ財界ニ非常ナ波紋ヲ生ズ
ル、一波萬波ヲ生ズルト思ハレルノデアリ
マイ、餘リニ其ノ仕事ニ携ハル人ノヤリ方
ガ特殊ノ場合ハ刑法法規ヲ以テ規定サレマ
スガ、刑法法規カラ脫ケテ居ル場合ニ於テ
モ、ソレ以上ノ値打ガアル場合ガアルノニ、
總裁若シクハ副總裁ガ僅カ五百圓ノ過料ニ
ナツテ居ル、ナゼコンナ輕イモノニシタノ
カ、此ノ頃動モスレバ多クノ人ニ臨ムノニ
重イ刑ヲ以テ戒シメテ、過チノナカランコ
トヲ期シテ居ルノガ近來ノ傾向デアリマス、
日本銀行ナルガ故ニ過料ノ過ノ字デ-丁
度戶籍法違反デ屆出ガ遲レタ爲ニ、一圓或
ハ一圓五十錢ノ過料ニ處スルト同ジ過料ヲ
御使ヒニナツテ居ル、餘リニ是ハ甚ダシイ
ヤリ方デハアリマセヌカ、練達堪能ノ大藏
當局ト致シマシテナゼ斯ウ云フ風ニ御遠慮
ニ相成ツタノデアルカ、寧ロ斯ウ云フヤウ
ナ時ニ依レバ一國ノ運命ニモ關係スルヤウ
ナ、コトガ起ラヌトモ限ラヌモノニ對シテハ
モツト重イモノヲ科シテ、不斷カラ相戒シ
メテ、過チノナイコトヲ望ム爲ニハ重クシ
テ置クノガ宜イノデハナイカ、之ニ携ハル
人ガ皆財界ノエライ人ダカラト云フノデ御
遠慮ナスツタノデアラウカ、此ノ罰則ノ經
過ヲ御伺ヒシタイト思フ、若シ之ニ似タ他
ノ法人ニ關スル法規ガアリマスナラバ、其
ノ法人ヲ列擧シテ御示シヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=55
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056・山際正道
○山際政府委員 今囘ノ立案ニ當リマシテ
罰則規定ヲ如何ニ設クベキヤニ付キマシテ、
御話ノ如キ點モ當然考慮ニ入レテ考究ヲ致
シマシタ、其ノ結果吾々ガ到達致シマシタ
結論ト致シマシテハ特ニ是等役員ノ非違ニ
對シマシテ科スベキ刑罰ニ付キマシテハ、
是ハ寧ロ一般刑法ノ規定ニ委ネマシテ、特
ニ此ノ第七章罰則ノ條項ノ中ニ、其ノ刑法
ニ該當スルガ如キ規定ヲ設ケナイ方ガ、却
テ宜イノデハナイカト云フ結論ニ達シタノ
デゴザイマス、其ノ理由ハ御話ノ如ク日本
銀行ノ總裁以下ノ役員ノ責任タルヤ、極メ
テ重大ナルモノデアルコトハ疑ヒナイノデ
アリマス、假ニ間違ヒガアリマシタ場合ニ
於キマシテ重罰ヲ以テ臨ムベキコトハ、是
ハ筋カラ申シマシテ當然デアラウト思フノ
デアリマス、併シナガラ其ノ責任ノ重大デ
アリ且ツ重要ナル職務デアリマスルダケ
ニ、其ノ人ヲ得ルニ付キマシテハ十分愼重
ナル手段ガ必要ナノデアリマス、而シテ其
ノ人ヲ得ルニ當リマシテハ、非常ニ重イ罰
則アルガ故ニ、其ノ行ヒヲ愼ムデアラウト
云フヤウナ考ヘ方ニ依ツテ、其ノ人ヲ牽制
スルト云ツタヤウナコトハ、却テシナイ方
ガ立派ナ人ヲ迎ヘルニ相應シイデハナイカ
ト云フヤウナ特殊ノ配慮ヲ致シマシテ、
應ハ御話ノ點モ十分者慮致シマシタガ、
結論ト致シマシテハ、斯カル條項ヲ削除致
シタヤウナ結果ニ相成ツタノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=56
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057・内藤正剛
○內藤(正)委員 是レ以上ナンボ申上ゲテ
モ討論ニナリマスカラ申シマセヌガ、併シ
唯殘ツテ居リマスノハ此ノ問題ハソコマデ
ハ〓究シタケレドモ良イ人ガ得ラレナイカ
ラト云フコトデアリマス、若シ之ニ似タヤ
ウナモノデ日本銀行デナカツタラ、ヤハリ
制裁ハ重イノヲ以テ臨マレルノデアルカ、
ヤハリ是レ亦日本銀行ト同ジヤウニ、日本
銀行ガ斯ウダカラ是モ斯ウダト云フヤウニ
ナルノカ、將來ノ御方針ヲ承ツテ置キタイ、
私ハ斯ウ云フ見解ヲ持ツテ居ル、刑罰法規
ヲ以テ-背任横領ハ別デスガ、背任デモ
橫領以上ニヒドイノガアル、サウ云フモノ
ガ唯過料ダケデ行クト云フコトニナリマス
ト刑事政策ノ上ニ於テ富メル者若クハ
地位アル者ダケガ逃レテ、富マザル者地
位ナキ者ハ何時モ刑罰法令デヤツツケラレ
ル、斯ウ云フヤウナ現象ヲ來スコトガ日本
ノ治安ノ上ニ又思想上甚ダ面白クナイ影響
ヲ及ボスノデハナイカト考ヘマスノデ、將
來ノ御方針ヲ伺ツテ置キタイト思ヒマス、
ソレカラ說明ノ中ニナゼ過ノ字ヲ御用ヒニ
ナツタノカ、此ノ過ノ字ニ何カ根據ガアル
ノカ、學問的ニ一ツ伺ツテ置キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=57
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058・山際正道
○山際政府委員 大體各法人ノ役員ニ對シ
マスル刑罰規定ニ對シマスル制裁ノ問題
ハ、私ガ御答ヘ申上ゲルノハ不適當カト存
ズルノデアリマス、唯日本銀行ノ非常ニ特
殊ナ機關デゴザイマシテ、他ニ類例ヲ求メ
ルコトモ困難ナ事情ニアリマス、勿論他ト
ノ振合ヒハ考ヘマシタケレドモ、日本銀行
ニ付テハ只今申上ゲマスヤウナ特別ナ配慮
ヲ致シタヤウナ次第デゴザイマス、尙ホ過料
ト云フ文字ヲナゼ使ツタカト云フ御尋ネデ
アリマスガ、是ハ特ニ理由ガアル譯デモゴ
ザイマセヌ、此ノ種ノ罰則ノ適用ト致シマ
シテハ、過料ガ其ノ例デアラウト考ヘマシ
タノデ、單ニソレニ致シマシタダケノ意味
デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=58
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059・板谷順助
○板谷委員長 此ノ際諸君ノ御諒解ヲ得テ
置キタイト思ヒマスガ、大臣ニ對スル質疑
ノ通〓ハ昨日八名デシタガ、今日ハ十名ニ
ナツテ居リマス、所デ昨日大臣ノ面前デ本
日午後一時カラ開會ヲスルカラ是非出席願
ヒタイト要求シテ置イタノデスケレドモ、
豫算委員會ニ行ツテ今日ハ來ラレナイサウ
デ巳ムヲ得マセヌ、併シナガラ本委員會ニ
付託サレテ居ル法案ハ極メテ重要デアリマ
スカラ、ドウシテモ大臣ノ出席ヲ求メマシ
テ十分ノ審議ヲシタイト考ヘテ居リマス、
ソレデ明日ハ豫算分科會ガ一齊ニ開カレ部
屋ガナイ爲ニ開會ガ出來マセヌ、明後一日
ハ日曜デアリマスカラ一一日ノ午後一時カラ
開會シタイト考ヘルノデアリマス、其ノ際
ハ是非一ツ大臣ニ御出席ヲ願ツテ、又大臣
ニ對スル質疑ノ通〓者ハ席ヲ保ツテ戴イテ、
出來ルナラバ集約的ニ質疑ヲ進メタイト考
ヘテ居リマス、本日ハ是ニテ散會致シマス
午後四時散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00719420130&spkNum=59
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