1. 会議録本文
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000・会議録情報
會議
昭和十七年二月二日(月曜日)午後一時十八分開議
出席委員左の如し
委員長 板谷順助君
理事 横川重次君 理事 田村秀吉君
理事 中田儀直君 理事 長井源君
理事 坂東幸太郎君 理事 龜井貫一郎君
理事 本田英作君
井阪豐光君 西川貞一君
内藤正剛君 西村金三郎君
矢野庄太郎君 世耕弘一君
田中耕君 大口喜六君
菊池良一君 田村秀吉君
豐田豐吉君 中島彌團次君
石坂豐一君 三輪壽壯君
太田理一君 木村正義君
武田徳三郎君 豐田收君
南雲正朔君 廣川弘禪君
山本粂吉君 河合義一君
粟山博君 水谷長三郎君
出席國務大臣左の如し
大藏大臣 賀屋興宣君
出席政府委員左の如し
大藏省理財局長 山住克己君
大藏省銀行局長 山際正道君
大藏省爲替局長 原口武夫君
大藏省會社部長 田中豐君
本日の會議に上りたる議案左の如し
日本銀行法案(政府提出)
戰時金融金庫法案(政府提出)
臨時資金調整法中改正法律案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=0
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001・板谷順助
○板谷委員長 是ヨリ會議ヲ開キマス、此
ノ際諸君ニ御諒解ヲ得テ置キタイコトガア
リマス、今日マデ八回委員會ヲ開イタノデ
大體政府委員ニ對スル質問ハ終ツタモノト
存ジテ居ルノデアリマスガ、大臣ニ對スル
質問ガマダ多數殘ツテ居ルノデアリマス、
ソコデ先程理事會ヲ開キマシテ相談ノ結果、
出來得ルナラバ今日大臣ニ成ベク御出席ヲ
願ツテ居ツテ、出來ルダケ諸君ノ御質問ニ
答フルヤウニ御願ヒヲシテ置キタイト思フ
ノデアリマスガ、恐ラクハ本日中ニ質問終
了ハ中々困難ダト考ヘマス、ソコデ明日午
前中更ニ開キマシテ、明日ハ大體ニ於テ質
問ヲ打切リタイト考へテ居リマス、其ノ上
デ各派ノ態度ヲ御決定ヲ願ツ五日ノ本
會議ニ上程スル運ビニシタイ云フコトヲ、
先程理事會ニ於テ大體打合セヲ致シタ譯デ
アリマス、豫メ御承知置キヲ願ウテ置キマ
ス、ソレカラ大臣ニ對スル質問ノ通〓ガマ
ダ十名殘ツテ居リマスガ、出來ルダケ諸君
ニ於カレマシテモ自制ラサレマシテ、大體
ニ於テ二十分乃至三十分位ノ程度ニ於テ、質
問ノ要領ダケヲ御發言願フヤウナ運ビニシ
タイト思フノデアリマス、武田君ノ質問ハ
マダ二、三點殘ツテ居ルト云フコトデアリマ
スガ、併シ大臣モサウ始終御出席モ困難ノ
コトト考ヘマスノデ、成ベク委員諸君ノ多
數ノ方々ニ御滿足ヲ與ヘルヤウニ公平ナ取扱
ヲシタイト考ヘテ居ルノデアリマス、ソレ
デ西川貞一君ハマダ一囘モ質問ヲサレテ居
リマセヌノデ、同君ニ於カレマシテモ今私
ガ申上ゲル趣旨ニ基イテ、成ルベク三十分前
後ニ於テ質問ヲ終了スルト云フ御考ヘノ下
ニ御質問アランコトヲ希望致シマス-西
川貞一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=1
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002・西川貞一
○西川委員 私ハ先日來武田委員ニ對スル
大藏大臣ノ御答辯ト、御提出ニナリマシタ
法律案トノ間ニ、ドウモ了解ノ出來ナイ點
ガゴザイマスノデ、此ノ點ニ付テ明瞭ニ致シ
タイト思フノデアリマス、私ハ管理通貨デア
ルカラ反對トカ、ドウ云フ制度デナケレバ
贊成出來ヌトカ、自分ノサウ云フ意見ヲ前
提トシテ質問スルノデナクテ、唯物ノ本質
ヲ明カニシテ政府ノ方針ヲ明瞭ニ致シタイ
ト云フコトガ、私ノ御尋ネ致シマスル目的
デゴザイマスカラ、左樣ナ意味ニ於テ明瞭
ニシテ戴キタイ、一月二十七日ノ委員會ニ
於テ大藏大臣ハ斯ウ云フ答辯ヲサレテ居ル
ノデアリマス、武田委員ニ對シマスル答辯
ノ末尾ニ、速記錄ヲ見マスルト、「併シナガ
ラ是ガ爲ニ國內通貨ノ價値ノ基準ヲ金ニ置
カナケレバナラヌトハ考ヘテ居ナイノデア
リマシテ」トアリマスガ、通貨ノ價値ノ基準
ト云フ言葉ハ、貨幣法上用ヒラレテ居リマ
ス所ノ價格ノ單價ト云フ言葉ト同ジ意味デ
アラウト思ハレル、通貨ノ價値ノ基準、詰
リ通貨全體ニ對スル價値ノ裏付ケト云フ意
味デハナクシテ、物ノ單位ヲ現ハシタ意味
デハナイト、此ノ御答辯デハ受取レルノデア
リマス、サウデアルト致シマスナラバ、當
然貨幣法ヲ廢止サレナイト其ノ筋ガ通ラヌ
ノデハナイカ、私ガ一寸其ノ點ニ付テ指摘
致シマシタニ付キマシテハ、大臣ハ斯ウ云
フ答辯ヲサレテ居ル、「法律上ノ無制限ノ通
貨力ト致シテ居リマスカラ、事實上金本位
ヲ脫却シテ居リ、ソレデ私モ申上ゲテ居ル、
貨幣法モ追ツテハ改正ノ手續モ必要ダト思
ヒマスガ、只今修正ノ必要モゴザイマセヌ
ノデ其ノ儘ニ致シテ居リマス」斯ウ言ハレ
テ居ルノデアリマスケレドモ、物ノ方針ヲ
明カニスル爲ニハ修正ノ必要ガアルノヂヤ
ナイカ、修正ヲシテシマヘバ明瞭ナノデア
リマス、通貨ノ價値ノ基準ヲ金ニ置カナイ
デ、金カラ完全ニ離レテシマフト云フコト
ニナリマシタナラバ、貨幣法ハ當然廢止サ
レルノガ筋ガ通ルノデアリマス、大イニ必
要ガアルト思フノデアリマスガ、サウデナ
シニ、貨幣法ノ或ル條文ニ對シテハ當分ノ間
之ヲ適用シナイ、當分ノ間ト云フ意味ハ非
常ニ誤解ヲ生ムノデアリマス、當分ノ間ガ
濟ンダナラバ、ヤハリ其ノ貨幣法ノ當該條文
ガ生キテ來ルノデアルカト云フヤウナ疑念
ハ當然ソコニ起ツテ來ルノデアリマス、大
臣ノ御趣旨カラ致シマスト、貨幣法ハ廢止
サレルカ、或ハ價格ノ單位ニ關シマスル點
ハ根本的ニ修正ヲ必要トスルコトハ私ハ當
然ト思フノデアリマスガ、之ヲナゼ廢止サレ
ナイノデアルカ、ナゼ制度ノ上ニ此ノ儘ニ置イ
テオカレルカ、而モ大臣ノ說明ニ於テハ斯
ウ云フ風ナ意思ハ明カノヤウデアリマスガ、
其ノ意思ガ制度ノ上ニ徹底スルヤウニナゼ
御修正ニナラナイノデスカ、ドウ云フ譯デ
御訂正ニナラナイノデアルカ、其ノ點ヲ先
ヅ御伺ヒシテ置キタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=2
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003・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 貨幣法ヲ改正スル必要ガ
アリマスコトハ御述べノ通リデアリマス、
私モ改正シタガ宜イト思ツテ居リマス、唯
今年ハ戰爭遂行ニ必要ナル法律案ニ限ツテ
提案スルト云フ政府ノ方針デゴザイマスノ
デ、貨幣法ハ改正シナクテモ、一向差支ヘナ
イノデアリマスカラ、後〓シニシタノデア
リマス、追テ改正致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=3
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004・西川貞一
○西川委員 追テ改正サレルト云フ意圖ヲ
明カニサレタ譯デアリマスカラ、ソコデ御
尋ネシタイノデアリマスガ、貨幣法ハ追テ
改正サレル、然ラバ大體ドウ云フ風ナ取扱
ニスルカト云フ點ニ付テハ御考ヘハ決マツ
テ居ルコトデアラウト思ヒマスカラ、此ノ
際御聽キシタイノデアリマスルガ、貨幣ノ
價格ノ單位ニ付テハ、然ラバ金以外ノ何物
カノ價格ヲ以テ、通貨ノ價格ノ單位トシテ
御認メニナルノデアルカ、又價格ノ單位ハ
モウサウ云フ風ナ物的ナルモノヲ基礎トセ
ズニ、全然名目的ナモノデ宜シイ、例ヘバ價
格ノ單位ハ之ヲ圓トスルト云フダケノ表示
デ宜イ、何々ヲ以テ價格ノ單位トシテ之ヲ圓
ト稱スルト云フヤウニ、物ニ依存スル必要
ハナイト云フ御考ヘデゴザイマセウカ、此
ノ點ハ通貨政策ニ對シマスル根本的ノ點デ、
極メテ重要ナ點デアラウト思ヒマス、私
ハ是非ノ議論ヲ致サウトハ考ヘテ居リマセ
ヌ、唯政府ノ方針ガ全然物ニ依存セズシテ、
獨立シタ一ツノ名目的ナ圓ノ單位ト云フモ
ノヲ押通シテ行カレル積リデアルカ、或ハ何カ
ヤハリ物ニ準據スルコトガ必要デアルト考ヘラ
レルノデアルカ、此ノ點ヲ明カニシテ戴キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=4
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005・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 其ノ點ニ付キマシテハ、私ハ
今私見ヲ持ツテ居リマスガ、追テ貨幣法改正案
ヲ提案致シマシタ際ニ明瞭ニ申上ゲタイト
思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=5
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006・西川貞一
○西川委員 ドウモ本案ニ依リマスレバ、
貨幣法ト云フモノハ此ノ際手ヲ着ケテ居ラ
レヌケレドモ、事實上改正サレタト同ジ結
果デハナイカ、是ハハツキリト大臣モ言ハ
レマスヤウニ旗幟ハ鮮明デナクテハナラヌ
ノデアツテ、此ノ際日本ガ單ニ國內ノ經濟ノ
ミナラズ、大東亞ノ共榮圈全體ノ經濟ノ中
心トシテ、特ニ新シイ日本銀行ニ於キマシ
テハ大東亞ノ中央銀行トシテノ職能ヲ果ス
ト云フ此ノ重大場面ニ於テ、旗幟ハ鮮明デナ
クテハナラヌト云フコトヲ大臣モ言ハレテ
居ルノデアリマス、其ノ意味カラ致シマシテモ、
此ノ際此ノ重大ナル「ポイント」ニナル點デゴ
ザイマスカラ御聽キシタイト思フノデゴザイ
マスガ、御聽キ出來ヌノデゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=6
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007・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 日本銀行劵ヲ無制限ニ强
制通用ヲ認メマシテ、金兌換ノ制度ヲ廢シ
マシタ以上、私ハ世間ハ明瞭ニ考ヘテ居ル
ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=7
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008・西川貞一
○西川委員 只今閣僚ノ委員カラモ斯ウ云
フ御指摘ガアルノデアリマス、只今ノ大藏
大臣ノ答辯サレマシタコトト、政府委員ノ
答辯サレマシタコトガドウモ違フ、山際政
府委員ノ御答辯デハ、尙ホ〓究ノ必要ガア
ルカラ〓究ヲシテ居ルノダト云フ御答辯デ
アツタヤウデゴザイマシタ、併シ大臣ハ旣
ニ考ヘハ決ツテ居ルト言ハレルノデアリマ
ス、成程玆ニ御示シノ法律案ニ依ツテ大體
世間ハ納得シテ居ルト考ヘルノデゴザイマ
スガ、ドウモ私魯鈍ニシテ其ノ點ヲ、ソレ
ノミデハドウ云フ風ニ取ツタラ宜イカト云
フコトガハツキリシナイノデアリマスガ、
願クハ此ノ際世間モ既ニ納得シテ居ル所デ
アリ、大臣ノ肚モ決ツテ居ルコトデゴザイ
マスナラバハツキリシタ大臣ノ言葉ヲ以
テ此ノ際一ツ御示シヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=8
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009・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 日本銀行ニ兌換銀行劵
ノ制度ヲ廢止シテ、金兌換ヲ本質的ニ廢
メマシテ、サウシテ無制限ノ通用力ヲ認
メテ居リマスノデ、經濟上金本位ヲ完全
ニ離脫シタト云フコトハ、私ハ世間ハ
實質上承認サレテ居リ、大體經濟ノ運行其
ノ他總テ是デ支障ガナイト思フ、今モ色
色御言葉ガアリマシタノデ、私ノ今カラ申
上ゲルコトハ或ハ蛇足カモ知レマセヌガ、
一應申上ゲマスト、日本ハ金貨ノ流通セザ
ル金本位國デ元カラアツタノデス、實質ハ
金爲替本位國デアツタ、形式ハ兎ニ角實質
ハサウデアリマス、ソレガ金ノ兌換ヲ停止
ゝシマスシ、愈〓、實質ハ金爲替本位ヲモ離脫シ
マシテ、近年ハ管理通貨制度ニ入ツテ居リ
マシー、ソレヲ日本銀行法デ明確ニ致シマシ
タノデ、最早社會ノ經濟通念トシテハ何等ノ
支障ナク私ハ動クト思ツテ居リマス、金貨
デモ實際ニ流通シテ居ル國デアリマスト、貨
幣法モ何モ變ヘテ行キマセヌト普通ノ通念
ハ變リマセヌケレドモ、實際ノ日本ノ通貨
ハ日本銀行劵デ事實アルノデアリマス、ソ
レデ十分ニ行クト思ヒマス、ソレデ貨幣法
ノ改正ハ先程申上ゲマシタヤウナ理由デ、
今期議會ニハ提案致サナクテモ日本銀行法
ノ制定デ十分ニ間ニ合フ、片方ノコトハ寧
ロ制度ヲ形式的ニ整備スルニ止マルノミト
申シテモ宜イ位ナ點デアリマスカラ、追テ改
正シタイト思ツテ居リマス、又政府委員ノ
考究致シマスト云フノハ、サウ云フコトデ
ゴザイマスカラ、貨幣法ヲ改正致シマス場
合ノ文案ナドヲマダ練ツテ居ル譯デハアリ
マセヌノデ文案ナドハ完成ヲスル時ニハ相
當面倒ナ所ガアラウト思ヒマス、私ノ肚ハ
決ツテ居リマスガ、其ノ點ハ書キ方ナドノ
關係ハ殘ツテ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=9
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010・西川貞一
○西川委員 ドウモ私ノ御問ヒシテ居ルコ
トト、大臣ノ御答ヘ下サル點ガ少シ食違ツ
テ居ルト思ヒマスガ、モウ少シ明瞭ニ御答
ヘ願フ爲ニ尙ホ御聽キシタイト思ヒマス、
私ハ日本銀行劵ノ通用力、サウ云フ方面ニ
於テ支障ガアルト云フヤウナコトヲ問題ニ
致シテ居ルノデハ全然ナイノデアリマス、
併シナガラ通貨ノ根本的ナ職能トシテハ二
ツニ分ケテ考ヘナクチヤナラヌ、一ツハ一
般的ノ交換手段ナンデアル、新シイ日本銀
行劵ガ一般的交換手段トシテノ强制通用力
ヲ與ヘテ居ラレマスコトハ、此ノ法文ニ明
示サレテ居ル、併シナガラ通貨ノ他ノ基本
的ナ職能ノ一ツトシマシテハ、價格ノ計算
單位デナクチヤナラヌ、此ノ價格ノ計算單
位ト一般的交換手段トシテノ職能ト、兼ネ
備フルモノデナクテハ、是ハ通貨デハナ
イ、然ルニ日本銀行劵ハ一般的ナ交換手段
トシマシテハ此ノ御提案ニナツタ法律ニ依
ツテ其ノ能力ヲ付與サレテ居ルノデアリマ
スケレドモ、價格ノ計算單位トシテハ此ノ
法律ニ於テ基準ヲ與ヘテナイ、價格ノ計算
單位トシテハ、貨幣法ニ依ツテ初メテ價格
ノ計算單位ガ圓デアル、其ノ圓トハ何ゾヤ
ト言フナラバ、金ノ一定量ノ價格ヲ以テ圓
ト稱スルノダ、是ハ一ツノ根本的ナ建前デ
アリマス、其ノ建前ハ、法律ハ改正ヲシナ
イケレドモ、自分ノ肚デハソレハモウ改メ
タノダ、自分ノ考ヘデハソレハ改メタノダ
ト、斯ウ言ハレルノデアリマス、ソコデ價
格ノ計算單位トシテノ此ノ通貨ノ日本銀行
劵ノ職能ハ、將來ドウ持ツテ行カレルノデ
アルカ、此ノ日本銀行劵ガ通用致シマス上
ニ支障ガアルカト云フヤウナコトヲ私ハ問
題ニスルノデハアリマセヌケレドモ、貨幣
ノ根本的ノ、通貨ノ根本的職能ノ一ツデア
ル所ノ價格ノ計算ノ單位トシテ、其ノ點ハ
ドウ云フ風ニナルノデアルカ、ドウモ押問
答ノヤウデアリマスケレドモ、是ハ重大ナ
點デゴザイマスカラ、其ノ點ハ能ク私ノ申
上ゲタコトガ今マデ御分リ下サラナカツタ
ヤウデゴザイマスカラ申上ゲルノデアリマ
スガ、此ノ點ハドウデアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=10
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011・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 貨幣ガ交換媒介ニ使ハレ
テ居リマス時ニ、同時ニソレガ價値ヲ現ハ
シテ居ル、ソレハ一ツコトデゴザイマシテ、
何等價格ノ尺度ニナラヌモノデハ交換ノ媒
介ニハナリ得ナイ、現在金ト言フヨリモ
是デ以テ石炭ガ買ヘル、アレガ買ヘル、是
ガ買ヘル、是ガ社會ノ價値ノ尺度デアリマ
ス、ソレデ實際ニ通用シテ完全ニ行ツテ居
リマス、價格ノ計算ノ尺度ニナラナケレバ
媒介ニナリヤウガナイノデアリマス、ソヨ
デ私ハ金ノ價値ト云フコトハ法律ニハ書イ
テアリマスガ、金ノ價値ト云フモノハモ
ウ今マデ暫定法デドン/〓變ツテ居リマス
シ、現ニソレガ各種ノ物資勞力ト交換サレ
ル所ノ、チヤント社會的ニ經濟的ニ價値ヲ
現ハシテ居ルト思ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=11
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012・西川貞一
○西川委員 ソレデハモウ此ノ上押問答ヲ
致シマセス、ドウモ其ノ點ハ私ハマダ奧齒
ニ物ノ挾マツタヤウナ感ジガゴザイマシテ、
ドウモ明瞭ニ了解シ得ナイノデアリマスケ
レドモ、同ジ問題ヲ繰返スコトハ最早無用
ダト思ヒマスカラ、差控ヘマス、然ラバ大
體價格ノ單位トシテモ金ヲ離脫スル、サウ
シテ金ニ代ル何等カノ物ニ更ニ價格ノ單位
ヲ求メルト云フヤウナコトハシナイ、大體
圓ト云フモノハ一ツノ物價相互ノ關係デア
ル、詰リ今後ノ物ノ價格ト云フモノハ、金
ノ價格ト他ノ商品ノ價格トノ比率ヲ現ハス
モノデハナクシテ、交換サルベキ所ノ商品
ト商品トノ交換ノ比率ヲ現ハスノガ物價デ
アル、從來ハ通貨ノ價値ノ單位ヲ金ト云フ
物質ニ依存シテ居リマシタ爲ニ-事實上
ハ我ガ國ハ近來サウハナツテ居リマセヌケ
レドモ、觀念ノ上ニ於テハヤハリ金ト他ノ商
品トノ交換比率ヲ現ハスト云フコトニ、貨
幣制度ノ上ノ觀念トシテハアツタノデアリ
やっ、然ルニ今ノ大臣ノ御說明ニ依ツテ、
最早サウ云フ建前ハ執ラナイト云フコトニ
ナリマスルト、大體其ノ建前ノ下ニ於テハ、
物價ト云フモノハ商品ト商品トノ交換ノ比
率ガ價格トナツテ現ハレルノデアツテ、此
處ニ何カ價値ノ基準トナル所ノ一ツノモノ
ガアツテ、此ノ尺度ト他ノモノトノ比率ヲ現
ハスノガ價格デハナシニ、何デモ宜イ、商
品ハ何デモ宜イ、ソレ〓〓交換サルベキ所
ノ商品トノ其ノ交換ノ比率ガ價格トナツテ
現ハレルノダ、當然斯ウ云フ物價ノ建前ニ
ナツテ來ルト思フノデアリマスガ、ソレハ
如何デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=12
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013・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 詰リ各種ノ物資ノ交換ノ
相互價値ガ私ハ貨幣ノ價値ダト思ツテ居リ
マスカラ、今御述ベニナリマシタコトハ、
大體ソレデ宜シイト申上ゲテ宜イト思ツテ
居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=13
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014・西川貞一
○西川委員 ソコデ次ニ御尋ネシタイコト
ハ、私ハ實際政治ノ上ニ於キマシテ、其ノ
觀念ノ下ニ於テハ、物價政策ノ上ニ觀念的
ニハ相當ノ變化ガ來ルノデハナイカト思フ
ノデアリマス、大體現在ノ物價政策ハ、私
ハ是モ現在ノ大臣ガ近衞內閣ノ下ニ大藏大
臣ニ就任サレマシタ時ニ、日本ノ價格政策
ノ上ニ一ツノ大キナ劃期的ナ變化ガアツタ
ト思ヒマス、卽チ其ノ際ニハ大體對英一「シル
リング」一「ペンス」ナル所ノ爲替ノ水準ヲ一
ツノ基礎ト致シマシテ、其ノ對英一「シルリ
ング」二「ペンス」ノ基準ニ日本ノ通貨ノ價値
ヲ安定サセルト云フコトヲ目標ニ一ツノ政策
ヲ立テラレテ、爾來現實的ニハ物價政策ハ色
色ト紆餘曲折ヲ辿ツテ參リマシタケレドモ、其
ノ基本ニ於テハ當時ノ對英一「シルリング」二
「ペンス」ノ爲替水準ヲ維持スルト云フ考
ヘハ强ク働イテ來タト思フノデアリマス、
然ルニ大東亞戰爭勃發以來、最早對英ノ爲
替水準トカ、或ハ對米ノ爲替水準ト云フヤ
ウナコトハ全然無當味トナツタノデアリ、
爲替相場ハ帝國ノ政府ニ於テ、獨自ノ立
場ニ於テ之ヲ裁定サレルト云フ方針ニナツ
テ居リマス、更ニ貨幣ノ制度カラ申シマシ
テモ、從來ハ通貨ノ價値ノ基準ガ金ニ依存
シテ居リマシタモノガ、ソレカラ離レテ
只今申シマスヤウニ物資ノ相互ノ交換比率
ガ一ツノ價格トナツテ現ハレル、斯ウ云フ
コトニナリマスト玆ニ觀念ノ上ニ於キマ
シテハ、物價政策ノ考へ方ニ大キナ變化ヲ
當然來スト思フノデアリマス、私ハ物價ヲ
上ゲ下ゲ致シマスコトハ、是ハ容易ナラザ
ル影響ヲ各方面ニ與ヘルト思フノデゴザイ
マシテ、現實的ニ物價ノ數字ガドウ云フ風
ニ變ツテ來ナクチヤナラヌト云フコトヲ申上
ゲルノデハゴザイマセヌガ、根本ノ考ヘニ
於テハ目標ガ變ツテ來タノデハナイカ、增
稅ノ委員會デモ物價政策ニ付テノ大臣ノ御
考ヘハ述ベラレタヤウニ、新聞等デ傳ヘテ
居ルノデゴザイマスガ、私ハ此ノ法律ニ基
キマシテ、玆ニ制度ノ上ニ於キマシテ日本
ノ通貨ガ劃期的ナ大變化ヲ致シマスノニ相
卽應シテ、物價政策ト云フモノハ考ヘ方ト
シテ相當ノ變化ヲ致シテ行クト云フコトハ
當然ト考ヘマスノデ、之ニ付テノ大臣ノ御
考ヘヲ伺ツテ置キタイト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=14
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015・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 支那事變ノ始マリマス前
ニ、私ハ對英一「シル」二「ペンス」ト云フモノ
ヲ爲替相場ノ基準ニ國策的ニ決定致シマシ
タ、私ガ決定致シマシタト云フコトハ不穩
當デゴザイマスガ、事實上決定致シタ譯デ
アリマス、ソレハ物價ノ基準ト申シマスル
ヨリモ、日本ノ經濟ノ維持ト云フコトヲ主
眼ニ致シマシタ、アレヲ崩シテ行キマスル
コトハ、日本經濟ノ力ノ增强發展ドコロカ、
大混亂ヲ招イテ、其ノ結果衰退スル、アレ
ヲ維持スルノガ必要ナリト云フ觀點ヨリ致
シマシタ、寧ロ物價ハ逆ニソレカラ延イテ
決マルト云フ譯デス、ソレデ尙ホ其ノ後私
ハ民間ニ居リマシタ時ニ、物價對策委員ト
シマシテ私共デ決メマシタ、是ハ寧ロ政府
ノ委囑ニ應ジテ決メタヤウナモノデアリマ
ス、其ノ時ハ非常ニ重要性ノアル物ガ多量
ニ英米トノ取引ニ依存シテ居リマシタ、隨
テ物價水準ト云フモノハ必ズ外國トノ交換
ノ比率ヲ考ヘテ、爲替相場ヲ考ヘテ決メナ
ケレバナラヌト云フ說ヲ持ツテ居リマシタ、
當時ノ政府モソレヲ採用シテ居リマシタ、
事實上其ノ考ヘハ英米トノ經濟ガ斷絕シマ
スマデハ續イテ居ツタト思ヒマス、併シソ
レデ利害ヲ決メルト云フコトヨリモ、其ノ
關係ガ破レヌ程度ニ「アジャスト」シテ行カ
ナケレバナラヌト云フ、非常ニ「フレキシブ
ル」ナ考ヘ方デズツト政府モ居ラレタヤウデ
アリマス、私等ノ意圖モソレデアツタノデ
アリマス、ソレデ通貨ノ方ノ所謂形式的價値
ガ變ルカラト云フノデ、物價ノ方ハ餘リ動
イテ來ナイト思ヒマス、例ヘバ、私共ノ說
デハ、假ニ金本位ニシマシテ日本ノ通貨ノ
價値ヲ切下ゲテモ、事變以來採ツテ來タ經
濟方策ノ下ニ於テハ動カヌト云フ觀念ヲ持ツ
テ居リマス、其ノ事實上ノ例證ト致シマシ
テ、昭和十二年ニ金準備ノ再評價ノ法律ノ
御協賛ヲ經マシテ、アレハ一躍二倍以上ニ
シタカト思ヒマス、併シソレニ依ツテ何等
物價ハ動カヌ、又私共モ動カヌト見、結果モ
サウデアリマス、今囘ノ日本銀行法ノ改正
ニ依ツテモ、私ハ物價ハ何等影響ハナイト思
フノデアリマス、要スルニ通貨ト物資-
財貨總體ノ關係デ動イテ參リマスカラ、形
式的ノ改正ハ殆ド關係ハナイ、今囘ノ改正
モ、其ノ點ニ付キマシテハ、唯事實ヲ確認
シタニ止マルノデゴザイマスカラ、何等此
ノ點物價政策ニハ關係ハアリマセヌ、ソレ
ヨリモ英米ト事實上經濟ヲ斷交致シマシテ、
其ノ結果所謂國際的水準ト云フモノヲ、物
價ノ水準ノ上ニ大キク考ヘル必要ガナクナ
ツタノデアリマス、私ハ現狀ニ於テハ今ノ物
價水準ヲ維持スル、斯ウ云フ考ヘ方ヲ持ツ
テ居リマス、一々ノ價格ニ付キマシテハ相
當是正スルモノモアリマセウガ、此ノ水
準ハ現在ノ所維持スルガ宜シイ、)所謂物價
ハ私ノ考ヘデハ安定ガ第一デアリマシテ、
高イカ低イカト云フコトハ、他トノ影響デ
「アジャスト」ヲ要スルモノ以外ニハ安定ス
レバ宜シイト云フ私ノ考ヘデアリマス、ソ
レガ大體政府ノ考ヘデアルト申シテモ差支
ヘアリマセヌ、此ノ間モ稅制委員會デ申シ
マシタガ、大體現狀ヲ基準トシテ、安定スル
ト云フ方針ハ政府全體ノ方針デアルト申シ
テ差支ヘナイト思ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=15
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016・西川貞一
○西川委員 大體物價ニ對スル影響ノコト
ニ付テ御說明ニナツタノデアリマスガ、現
在ノ物價ト云フモノハ法律デ拘束サレテ居
ル物價デゴザイマスカラ、政府ニ於テ物價
ヲ變化セシメヨウト云フ意思ガアレバ、何
等ノ事象ガ他ニナクテモ變化出來ル、又
ドウ云フ事象ガ起リマセウトモ、政府ガ一
ツノ物價ヲ維持スルト云フ鞏固ナ意思ヲ持
ツテ居リマスル限リ、法律ニ根據ヲ持ツ所
ノ政府ノ手段ニ依ツテ決メラレテ、其ノ手
段ニ依ラザレバ動カナイ物價デアリマスカ
ラ、ソレハ影響ガナイノガ當然デアリマス、
唯從來ノ米英トノ經濟ヲ斷交致シマスル前
ニ於テハ、大體爲替相場ヲ維持スル、對英一
「シル」二「ペンス」ノ水準ヲ大體維持スルノニ
差支ノナイ程度ニ國內ノ物價水準ヲ維持シ
ナケレバナラヌト云フコトガ、非常ニ强イ政
府ノ考ヘ方デアツテ、是ガ爲ニ、生產力ノ擴
充ヲ遂行スル爲ニモツト物價ヲ裕リノアル
物價ニシタイ、斯ウ云フ風ナ要求ガアリマ
シテモ、併シ通貨ノ價値ヲ維持スルコトガ
極メテ重大デアルカラ、餘リサウ云フ考ヘ
方モ取入レルコトガ出來ナイト云フ風ニ、
可ナリ窮屈デアツタノヂヤナイカト思フノ
デアリマス、而モ今米英トノ關係ハ全然斷絕
サレマシテ、同時ニ通貨ノ根本的ナ制度其ノ
モノニ於テモ、他ノ何物カヲ標準トシテ玆ニ
物價ヲ釘付ケニシナクチヤナラヌト云フ必
要ハナクナツテ、物ノ需給關係ニ卽應シタ物
價ノ動キ、例ヘバ人間ノ健康狀態ニ依ツテ體
溫ガ或ハ上昇シ、或ハ下降スル、體溫ノ上下
其ノモノガ人間ノ健康ヲ調整致シマスルヤウ
ニ、サウ云フ意味合ニ於テ物價ハ今少シ寬
イダ氣分デ、物價自體ノ持ツ經濟界ノ調節作
用ヲ働カシテモ宜イノヂヤナイカ、考ヘ方
トシテハサウ云フ風ニ考ヘラレルノヂヤナ
イカ、大藏大臣ハ物價ハ安定ガ望マシイト
言ハレルノデアリマス、勿論是ハ一般誰デ
モ物價ガ安定スルコトハ望マシイノデアリ
マス、併シナガラ物價ヲ形成致シマスル要
素トシテハ、一面ニ於テハ財貨ノ數量ト云
フモノガ物價ヲ安定セシメマスル一ツノ要
素トシテ强ク働クト思ヒマス、他面ニハ通
貨ノ數量ト云フモノガヤハリ强ク働クト思
フノデアリマス、然ルニ現在ノ物價ヲ見マ
スルト、事變前ニ比ベマシテ通貨ガ著シク
膨脹シテ來タト云フコトハ是ハ統計ノ示
ス所デアリマシテ、疑フ餘地ハナイ、通貨
ガ膨脹致シマスルニ伴ツテ財貨ハ當然增加
シテ居リマス、財貨ノ增加ガアツタレバコ
ツ、統制サレタ物價ノ上ニ於テモ尙ホ通貨
ノ膨脹ガアリ得タノデアリマルスカラ、財
貨ハ增加シテ居ル、併シナガラソレハ財
貨全般ニ付テ見レバ增加シテ居ルノデゴザ
イマスルガ、國民ノ消費ニ充テラレマスル
所ノ財貨ハ、事變前ニ比較致シマシテ或ル物
ハ增加シテ居リマセウガ、又減少シタ物モ
ナイデハナイ、總體的ニ言ヘバサウ大シテ
增加シテ居ナイノデアリマス、ソコデ國民
ノ消費ニ充テヨウトスレバ直チニ充テラレ
マス所ノ通貨ノ數量ト、國民ノ消費ニ充テラ
レマス財貨ノ數量トノ間ニハ、可ナリ大キナ
跛行關係ガ生ジテ居ルノデハナイカ、此ノ
跛行關係ガ生ジテ居レバコソ、ソコニ所謂
浮動購買力ナルモノモ生ズルコトニナリ、
浮動購買力ナルモノノ吸收ガ極メテ重大デ
アルト云フコトニモナルノデアリマス、之ヲ
他面物價政策ノ上カラ考ヘテ見マスルト、
例ヘバ重要ナル物資ニ對シマシテハ其ノ物
ノ價格ガモウ生產費ヲ償ハナイ、之ヲ放任
シテ置イタナラバ當然生產費ヲ償ハナイカ
ラ減產ニナル虞ノアルモノニ對シテハ、政
府ガ之ニ補助金ヲ出サレ、補償金ヲ出サレ
マスル等ノ方法ニ依ツテ、尙ホ從來ノ價格
ヲ其ノ儘維持シヨウト御努力ニモナツテ居
ルノデゴザイマス、サウ云フ點ニ付テモ既ニ
根本的ニ再檢討ヲサレテ、サウシテ適正ナル
一ツノ價格ヲ決メテ行クト云フ風ニ、此ノ通貨
ノ制度ガ根本的ニ改正サレマスト同時ニ、
物價政策其ノモノニ付テモ根本的ナ檢討ヲシ
テ、サウシテ現實ノ經濟事情ニ卽應スルヤウ
ナ適正ナル價格ヲ決メテ行クト云フ風ニ、物價
政策ヲ指導シテ行ク必要ガアルノヂヤナイカ
ト考ヘノルデアリマスガ、此ノ點ニ付テノ大臣
ノ御考ヘヲ伺ツテ置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=16
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017・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 只今御述ベニナリマシタ
コトハ、少シ私共ノ考ヘト違ツテ居ルノデ
アリマス、一「シル」二「ペンス」ノ水準ヲ維
持スル爲ニ物價ヲ抑ヘタト云フコトハ餘リ
ナイノデアリマス、大體私共ノ物價政策ノ
物價ヲ上ゲルコトト生產ノ關係ハ、從來ノ
國際經濟ガ自由デアリ、國內經濟ガ自由デ
アリ、物價ヲ上ゲ價格ヲ上ゲレバ其處ニ勞
カ、資材ガ集マツテ來テ生產ガ殖エルト云
フコトガ行ハレル時代デアルト云フノガ根
本ノ考ヘ方デアツタ、石炭ガ思フヤウニナ
イ、何モ足ラヌト云フ時ニ、價格ヲ上ゲレ
バ或ルモノハ其處ニ集マツテ來マセウガ、
他ノ必要ナ方面ニハ不足ヲ生ズル、是ハ物
資勞力ガ餘リガアツテ、外國カラ自由ニ
輸入ガ出來ル時ニハ高物價政策ト云フモノ
ガ生產ヲ增スノデアリマスガ、サウ云フ作
用モ全然止マツテ居ツテ、ヤレバ害ノアル
コトデ、段々相場ガ高クナリ、物價ガ上ツ
テ生產費ガ上ガツテ算盤ガ採レナクナツ
テハ是ハ生產サセルト云フコトハ無理デ
アリマス、其ノ點ノ「アジャストメント」ト
云フコトハ必要デアル、是ハ一貫シタ考ヘ
デアリマス、全體ノ物價ヲ上ゲマスノハ、
戰時ニハ物價ガ暴騰シ、ソレガ因トナリ果
トナツテ惡性』「インフレーション」ヲ起スト
云フ狀況ハ起リ易イノデアリマス、今デモ
安定シタヤウニ見エマスガ、私ハ其ノ危險
ト云フモノハ不斷ニ働イテ居ルト思フ、之
ヲ抑ヘルノニハ非常ニ大キナカデ物價ノ安
定方策ヲヤツテ行カナケレバナラヌ、少々
個別的ニハ無理ガアツテモ大キナ方策ヲヤ
ツテ行カナケレバナラヌ、斯ウ云フ考ヘ方
デ居リマス、歷代ノ政府モソレデアリマス、
是ハ戰時ノ惡性「インフレーション」ヲ防グ
ト云フ爲ノ一ツノ大キナ考ヘ方デアリマス、
法令デ決マルト申シマスガ、私共ハサウ思
ツテ居ナイノデアリマス、法令ト云フモノ
ハ大體行ハレ得ルヤウナ環境ヲ與ヘテ、例
外的ノモノヲ抑ヘルト云フコトガ理想デア
リマシテ、又甚ダシク例外ガ非常ニ多クナ
ルヤウデハ實際行ハレナイノデアリマス、
ソコデ貿易ノ上ニ於テモ計畫的ニ行キ、生
產及ビ消費ノ上ニ於テモ計畫的ニ行キ、人
爲的ニ委カシテ置キマストソコニ需給ノ調
節ガ出來ナイカラ、極端ニ人爲的ノ調節ヲ
行ハナケレバナラヌ、切符制度モ消費規正
モソレナノデアリマス、是等ノ方策ニ依ツ
テ人爲的ニモ需給ヲ合セテ、一方公定物價
ガ行ハレ易イヤウニスル、需給ガ非常
ナル煩雜ノ時ニ於キマシテハ價格ノ公
定ハ到底行ハレナイ、斯ウ云フ考ヘ方ヲ持
ツテ居リマスカラ、大體ハ人爲的ニ少ク
モ需給ノ上ノ實勢ヲ其處ヘ持ツテ行ク
ト云フ考ヘ方ヲ致シテ居ル譯デアリマス
ソコデ今囘日本銀行法ヲ改正シマシテモノ
是デ物價政策ニ何等變改ヲ及ボスト云
フ考ヘハ毛頭アリマセヌ、益〓從來ノ方向
ノ物價政策ト云フモノヲ强メテ行ク、價格
ヲ上ゲルコトニ依ツテ生產ニ刺戟ヲ與ヘル
ト云フ考ヘ方ハ執ラナイ、モウ自由ニ勞
力、原料等ヲ移動シ得ナイ時代デアリマス、
或ハ南方ナドニ於キマシテ、十分ニ統制的
ニ行カズ、資材モ何モ餘ツテ居ルト云フ時
二、部分的ニサウ云フコトガ或ハ適用シ
テ宜イ場合モ起ルカモ知レマセヌガ、國內
的ニハサウ云フ方策ヲ執ル考ヘハアリマセ
ヌ、ゾレカラ今申上ゲタヤウナ大キク水準
ヲ維持シタイト云フ餘リニ、重要ナ物資ニ
付キマシテハ補助金政策マデ執ツテ安定シ
テ居リマス、ソレガ動クト云フコトガ端〓
ニナツテ全體ニ非常ナ狂ヒヲ生ズル、斯ウ
云フコトニナツテハ大變ダト云フ考ヘ方ガ
今ノ補助金政策ノ主ナル理由デアリマス、
補助金政策ニモ隨分惡イ場面モアルト思ヒ
マスガ、良イ方ト惡イ方トヲ比較シテ、今
執ラザルヲ得ヌト云フコトデヤツテ居ル譯
デアリマス、)戰時ノ經濟ノ維持ト云フコト
カラ見マシテ、物價水準ト云フコトハ極メ
テ大事デアル、ドウシテモ是ハ大ナル急激
ナル變動ガナイヤウニ維持シテ參リタイ、
斯ウ考ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=17
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018・西川貞一
○西川委員 物價政策ニ付テ御意見ノ點ハ、
私共モ一ツノ意見ハ持ツテ居リマスケレド
モ、意見ニ互ルコトハ申上ゲマセヌデ、唯
當局ノ御方針ガ明カニナレバソレデ滿足致
ス次第デアリマス
次ニ御尋ネシタイコトハ、昨年ノ七月十
一日ノ閣議ニ於テ財政金融基本方策要綱ナ
ルモノヲ御決定ニナツタノデアリマス、サ
ウシテ其ノ要綱ノ眼目ハ、國家ノ資金動員
ニ對スル所ノ計畫ヲ樹立致シマシテ、此ノ
計畫ヲ中心ニ總テノ資金ノ動員ヲ考ヘテ行
カレルト云フコトガ、此ノ要綱ノ根本ニナ
ツテ居ルヤウニ思フノデアリマス、其ノ中
ニ國家資金動員計畫ハ每年度之ヲ定ム、、尙
將來數箇年度ニ亙リテモ之ヲ〓定スルモノ
トスト定メラレテ居ルノデアリマス、此ノ
要綱ニ付キマシテハ前大臣ノ時ニ決メラレ
タコトトハ存ジマスガ、賀屋大藏大臣ニ於
カレマシテモ、勿論此ノ基本方針ニ基イテ
財政ノ御運用ニナツテ居ルコトト思フノデ
アリマス、本年度ニ於キマスル所ノ國家資
金動員計畫ナルモノハ決定サレテ居ルノデ
アルカ、尙ホ將來數箇年度ニ於テノ〓定ガ
出來テ居ルノデアルカ、若シ出來ルナラバ
其ノ計畫ヲ御示シヲ願ヒタイト思フノデア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=18
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019・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 大體ハアノ方針ハ宜イト
思ヒマシテ私共モ踏襲シテ行ク積リデアリ
やべ、併シアレガ言葉通リニ、直グアア云
フモノガ私ハ卽座ニ出來ヨウトハ思ヒマセ
又、又當時ノ當局者ニ聽キマシテモ、來年
カラ直グアノ通リ實行スルノダトハ言ツテ
居リマセヌノデス、ドウシテモ大勢ハアア
云フ風ニ行キマス、又實際ソレニ大體似
タコトヲヤツテ居リマシテ、政府資金幾
ラ-是ハ租稅ト國債デアリマス、生產擴充
資金幾ラト云フモノヲ從來ノ實績カラ、其
ノ上ニ力ノ伸ビル程度ヲ-是ハ主ニ生產
力デアリマスガ、考ヘマシテ每年立テテ行
ツテ居リマス、是ハ大體昭和十三年カラヤ
ツテ居ルコトナノデアリマシテ、昨年アレ
ガ出來マシタノハ、寧ロ是モ唯言葉ヲ明カ
ニシタダケノヤウニ私ハ思ツテ居リマス、
尙ホ將來數年ニ亙ツテ居ルカト云フ仰セデ
アリマスガ、是ハ昨年ノ十二月八日カラ是
コソ大變革ヲ致シマシタ、南方ノ物資ト云
フコトハ今マデノ觀點デハ全然計畫內ニソ
レ以前ニハ入レル譯ニハ行カナカツタモノガ、
大東亞戰爭ノ勃發ニ依ツテ非常ニ變リマシ
タ、是ハ今ノ所ハソレマデ入レタモノガド
ウナリマスカト云フ計畫ハマダ立チニクイ
ノデアリマス、明年ダケノコトハ大體ハ行
キマスガ、マダ生產擴充計畫ト云フモノガハ
ツキリ決ツテ居リマセヌカラ申上ゲ兼ネマ
スガ、是ハ實ハ御答辯トシテ申上ゲルノニ
ハ不正確過ギル位デアリマスガ、他ノ機會
ニ於テモ一寸質問應答ノ關係カラ申シマシ
テ、大體私ハ來年ハ四百五十億位ノ資金ノ
中、政府資金ト生產擴充トデ三百億位ノモ
ノデアル、其ノ中政府資金ガ今決ツテ居リ
マスノガ、國債ノ百六十億ト租稅ト合セマ
シテ二百三十億位ノ見當ダラウト思ヒマス、
ソレニ生產擴充ガ幾ラニナリマスカ、六十
億ト去年通リト致シマシテモ二百九十億位、
斯ウ云フ〓略ノ見當デアラウト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=19
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020・西川貞一
○西川委員 私ハ此ノ問題ニ付テ吟味ヲ
要スルト思ヒマスコトハ、資金ノ本質ニ對
スル認識ガ若シ徹底シテ居ナカツタナラ
バ、資金計畫ナルモノハ立チヤウガナイト
同時ニ、不徹底ナ認識ノ下ニ資金計畫ヲ立
テヨウト致シマスト、國家ノ上ニ非常ナ禍
ヒヲ生ジテ來ルト思フノデアリマス、詰リ
只今モ大臣ガ仰セラレマシタヤウニ、若シ
過去ノ數字ニ依ツテ、或ハ過去ノ數字若ク
ハ其ノ數字ニ現ハレタ趨勢ニ依ツテ將來ノ
資金計畫ヲ立テヨウト云フノデアツタナラ
バ、昭和十六年度ノ基礎的ノ數字ヲ以テ十
七年度ノ資金計畫ノ立チヤウガナイ、此ノ
間非常ナ飛躍ガアルノデアリマスカラ、前
年ノ實績ヲ以テ、又前年ノ數字ニ基ク趨勢
ヲ以テ十七年度ノ資金計畫ガ立チヤウガナ
イ、同ジヤウナ間違ガ過去ニ於テモ繰返サ
レテ居ル、例ヘバ滿洲事變ノ勃發致シマシ
テヨリ今日マデ、日本ノ政治ノ摩擦ノ根本
ニハ何ガアツタカ、ツコニ財政經濟方面ニ
於テハドウ云フ摩擦ガアツタカト云フコト
ハ古クカラ大藏省ニ居ラレ、特ニ昭和十
一年)、十二年ノ頃主計局長或ハ次官トシテ
御在任ニナツテ其ノ局ニ骨田ラレマシタ大臣
ハ、痛切ニ感ゼラレテ居ルコトト思フノデ
アリマス、ソレカラ又此ノ基本方策要綱ヲ
大體御承認ニナリマス御心持ニ於テハ、資
金計畫ナルモノガ如何ニ綜合的ナ計畫經濟
ノ上ニ於テ重大ナル役目ヲ持ツテ居ルカト云
フコトモ御分リニナルト思フノデゴザイマ
ス、其ノ點ニ付テ前年ノ實績ニ依ツテ其ノ
後年ノ資金計畫ヲ立テタリ、財政計畫ヲ立
テタリ致シマスコトガ、或ル場合ニ於テハ
非常ニ危險ヲ生ズル、特ニ戰時ニ於テハサウ
云フコトハ適當デナイ、然ルニ此ノ要綱
ハ戰時諸國、策遂行ノ經濟的基礎ヲ强化確
立スルト云フコトガ前提ニアルノデゴザイ
マシテ、戰時ヲ豫想シテ居ル、是ハ戰時ニ
於ケル方策ヲ示シテ居ルノデゴザイマスガ、
此ノ場合ニ於テ一體國債ト云フモノヲ一國
資金ノ上ニ於テ、資金需要ノ因子トシテ之
ヲ見テ居ラレルノデアルカ、或ハ供給ノ因
子トシテ見テ居ラレルノデアルカ、一體資
金ハ何ニ依ツテ供給サレルモノト見テ居ラ
レルノデアルカ、特ニ國債ノ資金ノ上ニ於
ケル所ノ性質ヲ御尋ネ致シタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=20
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021・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 是ハ私議會デモ度々申上
ゲテ居ルノデアリマスガ、大體今ノ御話ノ
通リデアリマス、私自身ノコトヲ申上ゲテ
ハ恐入リマスガ、實ハ私ガ近頃ノ資金計畫一
ノ元祖ダト思ヒマス、昭和十三年ニ如何ナ
ル資金計畫ヲスルカト云フ時ニ、初メテ國
民貯蓄八十億ト云フコトヲ提唱シテ、八十
億ノ計算ハ私自身デヤツタノデアリマス
ガ、昭和十一年ニハ二十八億位シカナカツ
タ、ソレヲ一躍八十億ト云フ算盤ハ立テニ
クイノデアリマス、丁度御話ノヤウニ、
國債ハ資金ノ需要デアツテ同時ニ供給デア
ルト考ヘテ、國債ノ發行額、從來ノ資金ノ
蓄積等ヲ見テ、大體是シ位ハ行キ得ルシ、
行カナケレバ經濟ハイカヌト云フ目標ヲ立
テマシタノハ十三年ノ四月デアリマス、大
體見込通リニ參リマシテ、其ノ後歷代ノ政
府モソレニ對シテ今年ハ公債ノ發行ハド
ノ位アル、サウ云フコトカラ國民貯蓄ノ目
標ヲドノ位增シタラ宜カラウト云フノデ、
順次其ノ後ヤツテ來ラレテ大體其ノ通リ參
ツテ居リマス、御話ノ通リニ從來ノ實績モ
無論有力ナ參考ト致シマスガ、其ノ上ニ
ドウ新タニ加ヘテ行クベキモノカト云フ
コトヲ考ヘテ參ルノデアリマス、御說ノ通
リニ國債ハ資金ノ供給源泉デアリマス、供
給源泉ナルガ故ニ又之ヲ囘收致シマセヌト
先程、生產擴充物資トカ軍需物資ハ大イニ
增產サレタガ、國民消費物資ハ殖エテ居ル
モノモアルガ、減ツテ居ルモノモアル、ソ
コデ食違ヒガ起ルヂヤナイカト言ハレマシ
タガ、詰リソレナノデアリマス、國民所得
ハ非常ニ增シテ居リマスノデ、自分ノ生活
ノ爲ニ使ヒ得ルモノヲ限定致シマセヌト、
ソコニ非常ニ大キナ食違ヒガ生ジマス、ソ
コデソレヲ一面吸收ヲスルコトガ必ズ必要
デアリ、又吸收サレルコトニ依ツテ必要ナ
ル資金ノ需要ヲ滿シ得ル、デスカラ需要面
ト供給面ト兩方考ヘテ參ル、御說ノ通リニ
前カラサウ云フ考ヘ方ヲ致シテ居ル次第デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=21
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022・西川貞一
○西川委員 國債ガ資金ノ供給ノ源泉デア
ルコトハ當リ前ノコトデアルト共ニ、財政
ノ前途ニ對スル國民ノ不安ヲ一掃スル上ニ
於テハ非常ニ力說シナクテハナラヌ點ダト
思フノデアリマス、國債ハ資金供給ノ源泉
デアリマスガ故ニ、政府ガ百億ノ國債ヲ御
出シニナルナラバ、百億ノ國債ヲ消化スベ
キ所ノ消化力ヲ國債自身ガ持ツテ居ル、謂
ハバ私共ハ國債ハ今日我ガ國ニ於ケルガ如
キ通貨制度ノ下ニ於テハ自動的ノ消化力ヲ
持ツテ居ルト思フ、例ヘバ時期的、場所的
ニハ色々ノ食違ヒガアリマセウケレドモ、
結局ハ消化スベキ所ノ力ヲ內在シテ居ル、
其ノ點ハ大臣。モ左樣ニ御認識ニナツテ居ル
ヤウデゴザイマス、又ソレデアルカラコソ、
彼ノ支那事變勃發以來ノ今日ノ厖大ナル財
政ヲ何ノ苦モナク賄ツテ來タ理由ガソコニ
アルト思フ、次ニ尙ホ重要ナル點デアリマ
スガ、半面ニ於テハ國債ハ資金ノ需要デア
ル、併シ半面ニ於テ國債ガ資金ノ需要デア
ルト云フ言葉ハ、言葉ノ嚴密ナ意味ニ於テ
ハ當ラナイノデアリマス、是ハ單ニ認識
ノ問題デアルノミナラズ、ソレハ實際ノ政
策ノ上ニ大キナ影響ヲ持ツト思フノデアリ
マスガ、資金ノ需要トシテ、政府ハ單ニ社
債ナリ其ノ他ノ產業資金ノ需要ト、國債ノ
消化ニ振向ケラレル需要ハ、政策的ニハド
チラヲ優先サルベキモノト御考ヘニナリマ
スカ、他ノ產業資金ノ需要ト國債消化ノ需
要トハ、性質ガ同ジモノト御考ヘニナツテ居
ルカ、又ソコニハ質的ニ違フモノガアルト云
フコトヲ御考ヘニナツテ居リマセウカ、其ノ點
モ一ツ明カニシテ置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=22
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023・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 大キナ意味デ本質ハ同ジ
デアリマス、私ハ常ニサウ申シテ居リマス、
戰時ニ必要ナ資金ハ必ズ出來ナケレバナラ
又、ソレハ國債デアレ、社債デアレ、株式
ノ拂込デアレ、其ノ生產事業ガ國家ノ爲ニ
必要ナモノハ必ズ出來ナケレバナラヌト云
フ意味ニ於テ、ドレヲ優先スルト云フヨリ
ハ、全體ガ出來ナケレバナリマセヌ、戰費
ガ出來テモ、生產擴充ガ出來ナケレバ次ノ
力ガ弱ルノデアリマス、ソコデ常ニ同等デ
アリ、必要ナモノハ皆消化シナケレバナラ
又、所ガソレガ大事ナコトハ、國債ヲドン
ドン出シマシテ、供給源泉ニナルガ、ソレ
ガ還ツテ來ナイト、先程御話ノヤウニ、吾々
ノ日常生活消費部面へ參リマス、之ヲ行カ
ナイヤウニ一生懸命ニ囘收シタイ、國民貯
蓄奬勵運動ハ正シクソレヲ主眼點トシテヤ
ツテ居ルノデアリマス、其ノ意味ニ於テ私
ハ全ク同列ニ解シマス、ソレカラ經濟上ノ
性質カラ申シマシテモ、國債ガ資金ノ供給
源泉デアルカラト申シテ、幾ラデモ出セル
カト云フト、出セヌト思ヒマス、國債ハ戰
費ノ供給源泉デアリ、戰費ハ何ニ使フカ、
或ル物資勞力ヲ需要スル爲ニ使フノデアリ
マス、其ノ國債ヲ本ニシテ勞力物資ヲ需要
スルノデ、其ノ對象タルモノガ不足スルナ
ラバ空廻リシテ、次ニ惡性「インフレ」ニナ
リマス、ソコデ國家ノ歲出其ノ他ノ限度ハ
物資資金ノ限度デアルト考ヘテ居リマス、
貨幣價値ヲ綜合經濟力デアルト言フノモ、
ヤハリ其ノ方カラ觀念ガ出テ居ルノデアリ
マス、私ハ無制限トハ申シマセヌ、必ズ限
度ガアル、ソレハ要スルニ一國ノ利用シ得
ベキ物資勞力ガ限度ヲ成スノデアリマス、
ソレハ生產擴充デモ同ジデアリマス、生產
資材ガナケレバ用ヲナシマセヌ、軍需資材
ガナケレバ戰費ノ用ヲナシマセヌ、サウ云
フ大キナ意味ノ經濟的性質、國家ニ於ケル
重要性ト云フ意味デ同ジヤウニ考ヘテ參ツ
テ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=23
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024・西川貞一
○西川委員 國債ノ資金需要ノ方面ニ於ケ
ル性質ニ付テハ、他ノ產業資金ノ需要トハ
本質ガ違ツテ居ル、是ハ一ツノ凝結トデモ
4
言フベキ狀態デアルト思フ、殊ニ社債其ノ
他ノ產業資金ハ資金トシテ需要サレテ居リ
マシテモ、其ノ資金ハヤハリ經濟界ニ流レ
テ居ル、動イテ居ル、併シナガラ一タビ公
債ノ消化ニ需要サレマシタ時ニハ、ソレハ
凝結シテ最早動カナイ、丁度雪ガ融ケテ水
ニナツテ、其ノ水ガ氷ニナルヤウニ、國債
ノ消化ニ充テラレル時ニハ凝結スルノデア
リマス、其ノ物ノ形ヲ以テ働カナイ、他ノ
債劵ナリ產業資金ニ供給サレル場合ニハ
ヤハリ動イテ居ル、水ノ狀態デアルカラ働
イテ居リマス、其ノ意味ニ於テ本質ニ違ヒ
ガアルノデアリマス、ソコデ凝結ヲスル時
ハ凝結ノ必要ガ生ジタ時ニ當然スルノデ
アツテ、產業資金ノ必要ガアレバ、產業資
金ノ方へ優先的ニ御〓シニナツテ宜イデハ
ナイカ、產業資金ヲ優先的ニ廻サレマシテ
モ、ソレハ流レテ居ルカラ、其ノ次ノ段階
ニ於テ國債ニ凝結シテ來ルト思フノデアリ
やっり、是ハ金融政策ノ上ニ於テ重大ナ點ニ
ナツテ來ルト思フノデゴザイマスガ、其ノ
意味ニ於テ私ハ此ノ法律案ニ、日本銀行ガ自
ラ社債ノ買入ヲスル、自ラ產業資金ノ放出
ヲスルト云フコトハ、發劵銀行ノ純粹性ヲ
保チマスル上ニ於テドウカト考ヘル、サウ
スル必要ハナイノヂヤナイカ、今日ノ場合
ノヤウニ、是ハ將來ニ亙ツテモサウデゴザ
イマスルガ、國家ノ必要トスル資金ハ國債
ヲ發行サレマシテ、其ノ國債ガ資金ノ供給
源泉トシテ多量ナ資金ガ市場ニ供給ヲサレ
マスナラバ、其ノ凝結ヲ急ギサヘシナケレ
バ一國產業資金ノ供給ニ不自由ヲ感ズル
ト云フヤウナコトハアリ得ナイ、ドウシテ
モ資金ノ需要ハ國家ノ必要ガ先行シテ居ル
ノデゴザイマスカラ、國家ノ必要ヲ充足ス
ル爲ニ國債ハ發行サレテ居ル、其ノ國債ヲ
國債トシテ凝結スルコトヲ急ギサヘシナケ
レイク產業資金ノ供給ニハ事缺カヌ筈デア
ル、サウスレバ產業資金ノ供給ハ他ノ專門
的ナ金融機關ヲシテ之ヲ行ハシメテ、日本
銀行ハ發劵銀行トシテノ純粹性ヲ何處マデ
モ保持シテ行ク方ガ、一國通貨制度ノ根本
ヲ堅實ナラシメル上ニ於テ必要ヂヤナイ
カ、特ニ重大ナル點ハ我ガ國ノ憲法ハ事
苟モ財政ニ關シマスルコトニ於テ、新タニ
國民ニ負擔ヲ課スルトカ、財政ノ國民ニ對
スル影響ノ變化致シマスル方面ニ於キマシ
テハ、極メテ嚴密ニ帝國議會ノ協賛ヲ得ル
コトヲ要件トシテ居ルノデアリマス、卽チ
國債ノ發行ハ帝國議會ノ協贊ヲ要シマス、
サウシテ其ノ國債ノ發行其ノモノガ資金ヲ
作ルノデゴザイマシタナラバ、如何ニ澤山
ノ資金ヲ政府ガ創設致シマシテモ、ソレハ
帝國議會ノ協賛ヲ得タル國家ノ總意ノ下ニ
於ケル所ノ資金ノ創設トナルノデアリマス、
然ルニ日本銀行ガ自ラ債劵ヲ引受ケルコト
ガ出來ル、帝國議會ノ協贊ヲ得ザル所ノモ
ノヲ以テ資金創設ノ根元ト致シマスル時ニ
ハ嚴密ニ財政上ニ於テ帝國議會ノ協賛ヲ
要件ト致シマスル其ノ憲法ノ建前ニ對シマ
シテ、私ハ其ノ點甚ダ遺憾デアルト思フノ
デアリマス、實際問題ハ其ノ必要ハナイ、
國債ニ依ツテ資金ヲ創設シテ行ク、サウシ
テ其ノ資金ガ必要ノ間ハ產業界ヲ流レテ居
ル、產業界ノ必要ノナイ資金ハ自然ニ國債
消化ニ凝結シテ來ルノデアルカラ、其ノ自
然ノ流レヲ國策ノ方向ニ統制シテ行キマス
ルナラバ、日本銀行自體ハ債劵ヲ引受ケタ
リ買入レタリスル必要ハナイノヂヤナイカ
ト思フノデアリマスガ、此ノ點ニ付テノ大
臣ノ御所見ハ如何デゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=24
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025・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 國債ノ今ノヤウナ發行方
法ハ、高橋大藏大臣ノ時カラ變ツテヤツテ
居リマスガ、今ヤツテ居ルコトハ本當ヂヤ
ナイノデアリマス、國債ハ生產擴充資金ト
同ジニ、民間ニ資金ガ溜ツテカラ、ソレヲ
民間カラ應募スルノガ建前デアリマス、所
ガ資金ガ急ニ增加スル時ニハソレデハ圓滑
ニ行カヌカラ、當時ノ高橋藏相ハ日銀ニ引
受ケサセタ、ソレヲ今ハ便宜ダカラヤツテ
居ルノデアリマス、生產擴充資金モ、社債
モ、國債モ同ジコトデアリマス、一ツモ違
ヒハナイノデアリマス、普通ナラバ「シンヂ
ケート」團デモ拵ヘテ其處デ民間資金ヲ集メ
テ國債ヲ引受ケ、社債ヲ引受ケル、ソレガ
普通ノ行キ方デアリマス、今便宜デアルカ
ラ國債ハアア云フ方式デヤツテ居ル、ヤツ
テ居ル以上ハ早クソレガ資金ヲ吸收シナケ
レバ、一年ニ或ハ百億トカ何トカ云フ澤山
ノ資金ガ出マスト、是ハ大變ナ資金ノダブ
付キニナリマス、ソシヲ放ツテ置イタナラ
バ、產業資金ノミニ正確ニ向ケバ宜イノデゴ
ザイマスガ、皆消費ノ方ニドン〓〓行ク可能
性ガアル、ソコデ貯蓄奬勵ヲシ、或ハ直接
國債社債ニヤル、更ニソレガ預金部銀行預
金ニ集ル、集ツテ產業資金ニナル、斯ウ云
フ形態ヲ取ツテ居ルノデ、本質ニ變リハナ
イ、唯先ニ金ヲ出シテ、サウシテ後カラ集メ
テ行クト云フヤリ方ヲ今都合ニ依ツテヤツテ
居ルダケノコトデアリマス、ソレデ產業資金ヲ
日銀ガ出ス-憲法論ノ御話ハ一寸御質問
ノ趣旨ガ分リマセヌガ、今申上ゲマスヤウ
ニ、國債モ社債モ大體日本銀行ノ發行劵デ
ヤルベキ性質ノモノデナイ、必ズソレハ一
方ニ資材、物資ト云フモノノ見返リガナケ
レバ役ニ立タナイ、金ダケ出シテモソレデ
兵器彈藥ガ出來ナケレバ何ニモナラナイ)
生產擴充モ工場ガ出來ナケレバ何ニモナラ
ナイ、船ガ出來ナケレバ何ニモナラナイ、
ソレデ大體民間カラノ蓄積資金ハ一方ニ於
テ大イニ働キ、生產ヲシ、全部消費ニ充テ
ズシテ、餘剩ガ溜リマスカラ、見返リ物資
ガ經濟全體トシテアリマスカラ役ニ立ツ、
其ノ意味ニ於テハ毫モ變リハアリマセヌガ、
併シ高橋藏相ガ、國債ニ民間カラノ資金ガ
集ツテカラ募集セズ、先ヅ日本銀行ニ引受
サシテ資金ヲ出スト云フコトハ當時ノ一
般ノ金融梗塞狀態ニ於テ、之ヲ緩和スル便
法トシテ考ヘ出シタノデアリマス、所ガ今
デモサウデアリマス、軍資金ガ要ルト云フ
時ニ銀行ニ金ガ集ツテ居ラヌ時ハ國債ガ出
セヌ、サウスルト必要ナ金モ出セヌト云フ
コトハ非常ニ不便デスカラ、國民貯蓄奬勵、
生產ノ增產、消費ノ節約ニ依ツテ物資ヲ產
ミ出シナガラ、一方資金ヲ集メテ行ク、ソ
レガ當然後カラ集ツテ來ルヤウニ努力シテ
居ルノダカラ、其ノ數箇月前ナリ數十日前
ナリ金ガ要ル時ニ直グ出スト云フノデ、國
債ヲ日本銀行ニ引受サシテ居ル、同ジヤウ
ナコトガ產業資金デモゴザイマシテ「エー」
ノ會社、「ビー」ノ會社ガ社債募集ヲシナケ
レバナラヌ、銀行カラ云フトドウモソレデ
ハ多過ギルト云フ時ニ、ソレヲ一々待ツト
云フコトハ非常ニ窮屈ヲ感ジマスカラ、ソ
コデ日本銀行ニソレヲ持ツテ行ケバ金ニナ
リマスカラ、普通銀行ニハ澤山資金ガ集ツ
テ居ラヌデモ出セル、斯ウ云フ作用ヲシヨ
ウト云フノデアリマシテ、斯ウ云フ要望モ
非常ニ多イノデアリマス、ソレニ依ツテ圓
滑ニ入ツテ行ク、併シ今申シマシタヤウニ
必ズソレハ國民ノ貯蓄ノ裏付ケデヤツテ行
キタイト云フ方針ハ國債ニモ社債ニモ一貫
シテ參ツテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=25
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026・板谷順助
○板谷委員長 マダ結論ニハ行キマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=26
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027・西川貞一
○西川委員 分リマシタ、ドウモ只今ノ御
答辯ヲ伺ヒマスト、私共ノ考ヘ方ト非常ニ
違フノデアリマシテ、只今大臣ガ言ハレル
ヤウウナコトハ事實上行ハレルコトデナ
イ、昭和十二年ニ於テ發行シタ程ノ公債
ヲ、自然ニ資金ガ溜ルナント云フコトハ昭
和十二年ニ於テアリヤウガナイ、ソレハ本
質ガ違フノデアリマスケレドモ、餘リ長イ
時間ニ亙ルト云フコトハ此ノ委員會ノ審議
ニ支障ヲ生ジマスカラ是レ以上ハ此ノ際申
上ゲマセヌ、併シ他ノ機會ニ於テ十分ニ是
ハ檢討スベキ機會ガアルト思ヒマスシ、又
必ズ其ノ機會ニ於テ徹底的ニ檢討シタイト
思ヒマス、最後ニ事實ノ問題ニ付テ二點御
尋ネ致シマス、此ノ際政府ハ金利ノ問題ニ
付テ再檢討ヲサレル考ハナイカ、金利ノ點
ハ私ハ當然再檢討サルベキ時期ニナツテ來
テ居ルト思フ、說明ヲスレバ長クナリマス
カラ申シマセヌガ、唯金利ノ問題ニ付テ檢
討スル考ヘハナイカ、ソレカラ此ノ法律案
ヲ見マスルノニ、現在ノ日本銀行ノ株主ニ
對スル所ノ保護ナリ又ハ將來ノ日本銀行ニ
對スル保護ハ頗ル手厚イノデアリマス、大
體大藏省ハ大藏省直轄ノモノニ對スル所ノ
保護ニ付テハ餘程行屆イテ居ルノデゴザイ
マスガ、他ノ省ノ管轄致シテ居リマス是ト
類似ノ金庫ナリ、或ハ營團ナリ、國策會社
等ノ待遇ガ、果シテ均衡ガ維持サレテ居ル
カドウカト云フコトニ多大ノ疑問ガアル、
例ヘバ新日本銀行ニ對スル免稅ノ點デアリ
マスガ、同ジヤウニ國家目的ノ遂行ヲ擔當
致シマスル他ノ機關ニ對シテハ免稅ノナイ
モノガ多イノデアリマス、他ノ重要物資ノ
增產ニ努力致シマスルモノ、或ハ國民生活上
一日モ缺クコトノ出來ナイ食糧ノ配給ニ當
リマス機關ニ對スル所ノ免稅點ノ點、サウ云
フ點ニ不均衡ノ點ガアリハシナイカ、サウ
云フ點ハドウ云フ風ニ御考慮ニナツテ居リ
マスルカ、此ノ二點ダケ御伺ヒ致シテ私ノ
質問ハ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=27
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028・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 私ハ金利水準ヲ動カス考
ヘハ只今ノ所持ツテ居リマセヌ、部分的修
正ハアルカモ知レマセヌ、ソレカラ大藏省
所管ノ方ト他ノ方ヲ區別スルト云フ御話デ
アリマスガ、サウ云フ考ヘハ毛頭持ツテ居
リマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=28
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029・板谷順助
○板谷委員長 粟山博君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=29
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030・粟山博
○粟山委員 私ハ前囘ニモ御當局ニ質問ノ
機會ヲ與ヘラレ、又速記ヲ止メタ時ニモ質
問ヲ致シテ居リマスノデ、極メテ簡單ニ大
藏大臣ノ御出席ノ機會ニ伺ツテ置キタイト
存ジマス
〔委員長退席、田村委員長代理着席〕
先ヅ其ノ一點ハ、改正日本銀行法ノ性格ハ
何デアルカ、又公法人トシテ見ラレテ居ル
ノカ、或ハ私法人トシテ見ラレテ居ルノカ、
其ノ點ヲ一ツ伺ツテ置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=30
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031・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 私法人デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=31
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032・粟山博
○粟山委員 私法人デアルト云フコトニハ
ツキリ御答辯ニナツタコトハ、非常ニ私ノ觀
念ヲ明確ニスルノデアリマスガ、事實此ノ
改正銀行法案ノ機構、本質、運用等カラ考
ヘマスルト、度々御當局カラソレニ付テノ
御答辯ガアツタヤウニ、政府ガ全責任ニ於
テ行ハルル形ニナツテ居ル、此ノ形ヲ取ラ
レルト云フコトニ付テハ、私ハ此ノ非常時
內閣ナレバコソ、又非常時ノ前途ヲ達觀セ
ラルレバコソ、大藏大臣ガ其ノ御經驗ト卓
拔ナル抱負經綸ト、非常ナル御決心ニ依ツ
テ是ダケノコトヲサレタノダ、斯樣ニ實ハ
多大ノ信賴ヲ以テ、此ノ法ガ必ズ此ノ時局
ヲ擔當シテ行ケルダケノ素質ヲ持ツテ居ル
ノダ、名實共ニ兼ネ備ヘタモノダト云フコ
トヲ信ジマシテ御尋ネヲ致スノデアリマス
ルガ、少クトモ政府ハ全責任ヲ以テヤルト
云フ形ニ現ハレテ居リマスル以上、私ハ商
法ノ適用ニ依ル所謂私法人ノ人格ニ依リマ
スヨリモ、公法ノ人格ニハツキリト其ノ性
格ヲ法律上御決メニナツタ方ガ國ノ爲メ
ダ、此ノ大キナ通貨ヲ賄ツテ行キ、大キナ
共榮圈內ノ地域ニ亙ツテ强ク其ノ實力ヲ示
現シテ行クノダ、效果ヲ擧ゲルノダト云フ
コトカラ行キマスト實ハ私ハ公法人ニナ
サレタ方ガ宜イノデハナイカ、甚ダ此ノ方
面ニ對スル知識ハ乏シイノデアリマスガ、
斯樣ニ常識的ニ御伺ヒヲ致ス次第デアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=32
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033・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 私法人ト申上ゲマスノ
ハ、詰リ法律論カラ出タ所デアリマシテ、
心持ハ御述ベニナリマスヤウニ、全ク此ノ
法律ノ第一條ニモアリマスヤウニ、國家的
目的ガ明瞭ニナルヤウニ書イテアリ、總テ
ノ構成モサウ云フ風ナ趣旨ナノデアリマ
ス、唯是ガ法人トシテ、ソレガ公法人ナリ
ヤ、私法人ナリヤト云フ法律論ヲ致シマス
ト、是ハドチラカト云フト、私モソコハ專
門家デアリマセヌデ、私法人ニナルサウデ
ゴザイマスト申上ゲル譯デゴザイマス、心
持ハモウ御話ノ通リデアリマス、今囘ハ第
一條デ目的ヲ非常ニ明カニ致シ、總テガ第
二條以下ニ於テ此ノ氣持ガ出ルヤウニナリ
マシタガ、其ノ「テクニック」、法律ノ專門技
術カラ申シマスト、ヤハリ是ハ所謂公法人
ト云フ形式論ニ嵌マラヌデ私法人デ宜シ
イ、斯ウ云フ意味合デアルノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=33
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034・粟山博
○粟山委員 私ハ此ノ際國民ハ勿論ノコト、
共榮圈內ノ民族ニモ强ク觀念的ニ認識ヲ强
メル爲ニ、日本銀行法ヲ大日本銀行法ト云
フ風ニ大ノ字ヲ一ツ加へラレテ明確ニサレ
タラ如何ナモノデアリマセウカ、ソレハ希
望ト致シマシテ、次ニ私ノ御伺ヒ致シタイ
ノハ)前カラ申上ゲルヤウナ考ヘ方カラ、
此ノ際大藏大臣ハ進ンデ日本銀行總裁ヲ御
兼ネニナラレタラドウカ、寧ロナラレルヤ
ウナ規定ヲ設ケテ行カレタ方ガハツキリス
ルノデハナイカ、ソレハ實ハ豫算總會ニ於キ
マシテモ承ツタヤウニ存ジマスガ、東條總
理大臣ハ陸軍大臣ヲ兼ネ內務大臣ヲ兼ネテ
居ル、蓋シ此ノ非常時デアレバコソ、曾テ
ナイ此ノ兼任ニ依ツテ其ノ責任ニ立タレテ
居ル、非常時局ノ爲ニ左樣ナ形ヲ執ラレテ
居ルト云フコトハ、東條總理大臣ガ大政變
理ノ任ニ當タラレタル其ノ任務ノ重キニ鑑
ミハ、非常ナ責任感カラ出タモノデアラウ
ト思フ、且又人間東條英機トシテノ所謂人
格ノ現レデアル、私ハ斯樣ニ敬意ヲ拂ツテ
居ルノデアル、井野農林大臣ガ拓務大臣ヲ
兼ネテ居ル、此ノ形ハ當分變ヘナイト云フ
コトヲ當局ハ申シテ居ラレル、私トシテハ
御尤モデアルト思フ、ソコデ此ノ劃期的大
改正ノ機會ニ於テ、荷フベキ日本銀行ノ職
能ト云フモノハ非常ニ重大デナケレバナラ
ヌト思フ、洵ニ大キナ責任デアルト考ヘマ
ス、此ノ際進ンデ大藏大臣ニココマデ一ツ
御精進ニナラレルヤウニ私ハ希望スルノデ
アリマスガ、御意見ヲ伺ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=34
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035・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 大藏大臣ト云フ仕事ハ隨
分忙ガシイモノデアリマシテ、昔ノ或ル人ガ
大藏大臣カラ内務大臣ニ迭ラレマシテー
內務省ト云フ所モ相當忙シイ所デアリマス
ガ、用ガ三分ノ一ニ減ツタト云フ話デアリ
マス、而モソレハ平時ノ場合デアリマシテ、
今ハトテモ忙シクナツテ居リマスガ、私共
ト致シマシテモ滿洲事變前ノ大藏省ト云フ
モノト、ソレ以來今ノ大藏省ト云フモノト
ハ、質ト量トニ於テ大變ナ違ヒデアリマス、
是ハ私ノ不敏ノセイデアリマスカ、此ノ內
閣ノ組閣以來、昨日ノ日曜マデ、出勤シナイ
日ハナイヤウナ譯デ、此ノ上日本銀行總裁
ヲ兼ネマシテモ中々用ガ多イ、ヤハリ是ハ
然ルベキ人ニヤツテ貰ヒマシテ、大局ノ指導
監督ハ大藏大臣ガ致シマスガ、皆ソレ〓
受持デヤリマシタ方ガ宜イ、斯ウ云フ風ニ
今考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=35
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036・粟山博
○粟山委員 私ハ前囘ニ御伺ヒシタコトヲ
繰返スヤウデアリマスガ、大事ナ問題デア
リマスカラ特ニ御許シヲ願ヒタイ、此ノ大
キナ戰爭目的ヲ達スル爲ニドウシテモ是ハ
日本銀行ノ性格、業務ノ內容ヲ御變ヘニナ
ツタト云フ御精神カラ、正金銀行モ合ハセ
ル、ソレカラ臺灣銀行、朝鮮銀行ナドモ合
ハセテ一ツニスル、詰リ管理ヲ大藏大臣直
屬ノ下ニ、銀行局ト爲替局ト合セタ大キナ
外局ヲ置イテ、大藏御當局ハ勿論ノコト、
陸海軍及ビ日本銀行、正金銀行、臺灣銀行、
朝鮮銀行其ノ他民間ノ有力銀行等ヨリ練達
堪能ノ經驗者ヲ包容シ、又學者モ入レテ、
一貫シタル國策、極メテ賢明ニシテ力强イ
政府ノ抱負經綸ガ共榮圈ノ隅々マデ流レテ
行ク、斯ウ云フ風ナ建前ニ一ツ飛躍ナサレ
テハ如何カト考ヘルノデアリマスガ、大藏
大臣ノ御所見ヲ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=36
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037・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 日本銀行ハ外ニ對シマシ
テモ內ニ對シマシテモ、先ヅ銀行ノ銀行ト
云フヤウナ所デアリマスカラ、外ニ對スル
爲替關係ト致シマシテハ、ヤハリ正金銀行、
臺灣銀行其ノ他ノ直接爲替ノ現業ニ當ル機
關ヲ皆設ケマシテ、簡單ニ申セバソレノ最後
ノ所ヲ日本銀行ガ握ツテ居ル、斯ウ云フ體
制デ參リタイ、極ク碎イテ申上ゲマスレバ
此處ガ本部デ、皆出先ニソレ〓〓實地ノ活
動ニ出テ居ルト云フ體制デ參ツタ方ガ適當
デハナイカト存ジテ居リマス、ソレカラ大
藏省ノ內部ニ付キマシテハ、豫算決算ノ事
務、租稅ノ事務、專賣ノ事務及ビ營繕ノ事
務ノ四ツヲ除キマスト、アトハ皆內外ノ金
融デアリマス、只今理財局、會社部、銀行
局監理局、國民貯蓄奬勵局、預金部、爲
替局、斯ウ云フ風ニアリマスガ、殆ド資金
ノ或ハ蓄積、或ハ適正ナル配分、ソレガ外
ニ向ヒ內ニ向ヒト云フ關係ニナリマス、ソ
レデ今其ノ中デ預金部ノ如キ外局ノモノモ
アリマスガ、殆ド大藏省ハ歲計、租稅、專
賣以外ハ全部金融ノ仕事デアリマス、尙ホ
多少機構ノ上ニ付テ考ヘナイコトモナイノ
デアリマスガ、殆ド大藏省ノ部局ノ三分ノ
二ハ金融部局デアリマス、之ヲ中樞企畫的
ニ大臣次官デ總ベ指揮シテ參リマシテ、ソ
レガ實地ニ働ク所ニ日本銀行アリ、更ニ其
ノ前ニ正金モアレバ臺銀モアリ、內地ニハ
各種ノ特殊銀行ガアルト云フ風ナ仕組デズ
ツト參リタイ、斯ウ思ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=37
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038・粟山博
○粟山委員 實ハ私此ノ質問ヲ申上ゲマス
コトハ、滿洲事變モ支那事變モ實ニ意外ナ
ル發展ヲ致シマシテ、其ノ結果ハ、日本帝
國ノ爲ニ洵ニ有難イ惠マレタモノトナツテ
參リマシタコトハ御同慶ニ堪ヘマセヌ、併
シ其ノ日本ノ勢力ノ及ブ地域ガ擴大スルニ
從ツテ、其ノ跡ヲ眺メマスト、通貨ノ上カ
ラ申スト非常ニ面倒ガ生ジテ居ル、其ノ面
倒ナ原因ヲ此處デハ詳シク申上ゲルコトハ
省キマスガ、通貨ガ複雜デアルト云フコト
ガ一ツデアリマス、ソレカラ外國ノ通貨及
ビ權益ガ非常ニ日本ノ通貨政策ヲ妨害シテ
居ツタコトヲ擧ゲネバナリマセヌ、所ガ今
囘大東亞戰ノ赫々タル〓戰ノ戰果ニ依リ、
支那カラ全面的ニ英米ノ勢力ヲ驅逐シ更ニ
東亞ノ廣域ヨリ彼等ノ權益ヲ一掃スル機運
ニ達シテ居ルノデアリマス、英米トハ物資
交易ノ上ヨリモ全ク絕緣シテシマツタ、サ
ウ云フ事態カラ考ヘマスト、通貨ノ面ニ於
テモ日本ハ日本ノ大局カラ見タ自主的方針
ニ依ツテ、一貫セネバナラナクナツタノデア
リマス、通貨政策ニ於テ極メテヤリ易クナ
ツタ、非常ニヤリ易クナツタ、形ノ上カラ
ヤリ易クナツタノミナラズ、精神ノ方面カ
ラ言ヒマシテモヤリ易クナツタノデアリマ
ス、非常ニ好イ機會ガ目前ニ到來シタノデア
リマス、斯ウ云フヤウナ機會ヲ捉ヘテ一貫
不動ノ方針ノ下ニ通貨ヲ單純化スル、命令
系統モ亦明確ニスルト云フヤリ方デ行カレ
タ方ガ、實際末梢尖端ニ至ルマデ全面ヲ通
ジテ圓滑ニ交流シ、廣域內ノ人々ニ非常ニ
便利デアツテ又理解シ宜クナルモノト信ジ
マス、改正法ニ依リ日本銀行ガ爲替ノ作用
ヲ行ヒ、正金銀行モ重要ナ業務トナツテ居
ル、性格ニ於テモ正金銀行ハ私法人デアツ
テ日本銀行モ亦私法人デアル、政府ノ意圖
ヲ受ケルモノガ二途ニナツテ居ルヤウナ形
ニナツテ來テ居ル、而モ實際ノ實力性能ニ
於テハ日本銀行ト正金銀行トハ問題デハナ
イ、ケレドモ運用ニ於テハ同樣ナ立場ニ立
ツテ居ル、例ヘバ昨日本會議デ私ガ伺ツテ
居リマスト、南方開發金庫法案ニ對スル委
員長ノ報〓ノ中ニ、爲替關係ニ付テハ正金
ヲシテ取扱ハセルト申シテ居リマス、ソコ
ニ一ツ「トンネル」ガ出來テ來ルノデアル、
物ト通貨トノ關係ハ非常ニ敏感ナモノデア
ルコトハ申上ゲルマデモアリマセヌガ、是
ハドウシテモ敏感デアルダケソレダケニ
第三者ニ策動ノ餘地ヲ與ヘナイヤウニ、
本ノ命令系統ニ依ツテ國家ノ意思ト云フモ
ノガ何等ノ障碍ナシニ、電光石火ニ響キ渡
ルヤウナ形ヲ執ラレルコトガ何トシテモ必
要デアル、是ハ大藏大臣ガ北支開發ノ總裁
トシテ、大分金融難ノ時ニ御苦勞ナサレテ、
大藏大臣ノ力量ニ依ツテ難局ヲ切拔ケラレ
テ、北支開發ノ礎石ヲ置カレタコトハ能ク
存ジテ居リマシテ、敬意ヲ表スルノデアリ
マスガ、併シマダ中々氣ハ許セナイ狀態ニ
アル、サウ云フコトハ何カト云フト、支那
ダケニ付テ吾々ノ活キタ體驗ヲ顧ミマス
ト、北ハ北、中支ハ中支ト、各〓一ツノ理念
ヲ持ツテ居ル、各〓ミ一ツノ方針ヲ持ツテ居ル、
國策ノ上ニ立ツタ所ノ理論ヲ持ツテ居ル、
私共ノ常識カラ考ヘテ之ヲ何トカセネバナ
ラヌカト思ヒマスケレドモ、實際ハ中々困
難ナ事情ガ橫ハツテ居ル、併シサウシテ何
時マデモ置ク譯ニ行カナイ、ドウニカシナ
ケレバイケナイト云フコトハ、實際支那ノ
困難ナ通貨ノ對策、ソレカラ經濟建設、ソ
レガ共榮圈內ニ於ケル所ノ大キナ役割ヲ持
ツト云フコトヲ考ヘル時ニ、是非トモ大藏
御當局ガ非常ニココデ御奮發ナスツテ、簡
單ニ明瞭ニ國家意思ガ傳達シ得ルヤウニナ
サラナケレバナラナイト私考ヘルノデアリ
マス、此ノ戰爭ガ實ニ重大ナ戰爭デアルト
云フコトヲ考ヘレバ考ヘル程、通貨ノ面ニ
於テ一ツ大藏大臣ニ御奮發ヲ願ヒタイト考
ヘルノデアリマス、ソレカラ先ヲ申シマス
ト又祕密會デモ要求シナケレバナラヌコト
ニナリマスカラ、此ノ程度ニ止メテ置キマ
スガ、サウ云フ考ヘ方カラ此ノ質問ヲ致シ
タ私ノ氣持ヲ諒トセラレンコトヲ御願ヒ致
シテ置キマス
〔田村委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=38
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039・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 何トシテモ英米カラ重要
ナ物資ヲ輸入スル必要ガアリマシタ時代、
而モ支那ニ於テ上海ノ租界ノ如キ經濟上非
常ニ有力ナル地域ガ特別ナ法律關係デ、汪
精衞政府ノ思フ儘ニモナラナイト云フヤウ
ナ時ニ、非常ニ通貨其ノ他ノコトデ困難ヲ
感ジマシタコトハ御話ノ通リデアリマスガ、
愈〓大東亞戰爭ガ起リマシテ、左樣ナコトガ
綺麗サツパリ洗ハレマシテ、通貨其ノ他ノ
關係デ非常ニヤリ易クナツタ、ト云フヨリハ
我ガ國ガ指導的地位ニ立ツテ參リ得ルヤウ
ニナツタコトハ、正シク御述ベニナツタ通
リデアリマス、日本ガ東亞ノ金融ノ中心ニ
ナリタイト云フコトハ何人モ思フ所デアリ
マスルガ、今マデハサウ申シマシテモ、ヤ
ハリ空論デ、皆「ポンド」ニ依ツテヤルト云
フヤウナ實情デアツタノデアリマスガ、斯
ウ云フ時期ニナリマシタカラ、政府モ東京
ヲ以テ東亞ノ金融ノ中心點ニスル、日本銀
行ヲ以テ中心トスルト云フ意思モ明白ニ申
シ得ル狀態トナリ、又ソレヲ目標トシマシ
テ努力シテ、之ヲ十分ニ達成シ得ルト思フ
ノデアリマス、ソレデ、個々ノコトハヽ例
ヘバ正金ト日銀ニ致シマシテモ、何レモ爲
替業務ヲ致シマスガ、是ハ職能ガ截然ト區
分ガアルノデアリマシテ、個々ノ商社ナリ
商人トノ爲替取引ハ正金ナリ臺銀ナリガシ
テ、其ノ爲替ノ決濟尻全體ノ勘定ト云フモ
ノハ日本銀行ガ握ルト云フ風ニ、是ハ職能
ガ違ヒマシテ、組織的ニ、寧ロ上下ト申シ
マスカ、區分シテヤルコトデアリマスルシ、
又南方ニ致シマシテモ、各占領地ガ廣汎ナ
地域ニ亙リ、又各〓海ヲ隔テテ異ルノデアリ
マスカラ、「ペソ」モ「ギルダー」モ「ダラ」モ
一遍ニ之ヲ同ジ通貨ニスルト云フコトハ是
ハ又出來マセヌ、所謂實情ニ應ジテヤルノ
デアリマスルガ、ソレ等ノ個々ノコトヲ除
ケマシテ、全體ニ通ズル今御質問ノ氣持ハ、
最後ニ御述ベニナツタ所デ私ニハ能ク分ル
ノデアリマス、支那モ獨立政府デアリマス
ルガ、日本ハ所謂兄貴分トシテ中心ニナツ
テ行クコトデモアリマスルシ、非常ニヤリ
易クナリマシタ時デモアリマスルカラ、萬
般サウ云フコトニ付キマシテ從前ヨリ非常
ニ改善ヲシテ行キタイ、而モ大東亞ノ金融
圈ト云フモノヲ確立スル意味ニ於テ系統的
ニ步ヲ進メタイ、是ハ恐ラク御考ヘト同ジ
心持デ居ルト思ヒマス
〔委員長退席、橫川委員長代理着席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=39
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040・粟山博
○粟山委員 私ハ大臣ニ對スル質問ハ此ノ
程度デ終リマシテ、政府委員ニ一寸伺ヒタ
イト思ヒマス、速記ヲ止メテ下サイ
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=40
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041・板谷順助
○板谷委員長 坂東幸太郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=41
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042・坂東幸太郎
○坂東委員 私ハヤハリ現地ノ通貨問題デ
アリマスガ、之ニ關シマシテハ事務的ノ質
問、或ハ事務的答辯ハ聽イテ居リマスガ、
玆ニ政治的ノ意味カラ大臣ノ御意見ヲ御伺
ヒシタイノデアリマス、速記ヲ止メテ下サ
イ
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=42
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043・坂東幸太郎
○坂東委員 少クトモ今カラ立テラルベキ
所ノ準備ガナケレバナラヌ、唯今ノヤウナ
儘デ放任スルコトハ適當デナイト思ヒマス
ガ、如何デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=43
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044・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 放任ハ致シマセヌ、種々
情勢ヲ注意シテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=44
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045・坂東幸太郎
○坂東委員 佛印竝ニ「タイ」、是ハ圓「ブロ
ック」ノ範圍內ニナツテ居ル譯デアリマス
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=45
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046・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 英米トノ斷交以後圓ブ
ック」ノ範圍ニナツテ居リマス、細カイコ
トヲ申上ゲマスト、佛印ハ多少マダ本國ト
ノ關係モアリマスカラ、圓「ブロック」ト云フ
ノハ完全ニト云フコトハ少シ言ヒ得ナイ
カト思ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=46
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047・坂東幸太郎
○坂東委員 結局南方ハ-「タイ」、佛印ハ
外國トシマシテモ、結局日本ノ勢力下ニアル
ト云フコトハ間違ヒナイノデアリマス、サウ
シマスルト、完全ナル南方ノ開發ノ盟主タル
日本ノ立場カラ致シマスルナラバ、通貨制
度ハ「タイ」、佛印其ノ他モ引括メテ日本ト同
樣ナ立場ニ置カレナケレバナラヌ、サウス
ルト日本ガ管理通貨制度ヲ採リマスル以上
ハ、ヤハリ彼等南方地方ニ於キマシテモサ
ウ云フ方針ヲ以テヤラセルヤウナ工合ニ日
本ガ仕向ケテ、サウシテ近キ將來ニ於テ完
全ナル連絡ガナケレバナラヌト思ヒマスガ、
ソレニ對シマシテノ御考ヘヲ御伺ヒ致シタ
イト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=47
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048・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 只今御述べニナリマシタ
コトハ全ク御同感デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=48
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049・坂東幸太郎
○坂東委員 ドウカ同感デアリマスルナラ
バサウ云フヤウナ御考ヘデ今カラ-十
分御〓究モシテ居ラレマセウガ、尙ホ一層
〓究ヲセラレマシテ、萬遺算ノナイヤウニ
方針ヲ確立サレンコトヲ希望致シマス
次ニ御伺ヒシマスノハ、假令日本ガ管理
通貨制度ヲ執リマシテモ、金ハ必要デアル
ト云フ建前カラ、大臣ハ產金奬勵ハ元通リ
ヤル、斯ウ云フ御話ガアツタ、所ガ其ノ金
ガ現在日本ニ於テハ、例ヘバ今日ノ「コスト」
ハ生產費ガ一匁十五圓デアルトスル、所ガ
近キ或ハ遠キ將來ニ於テ、アノ有リ餘ル「ア
メリカ」ノ金ガ其ノ半分デ買ヘル、言ヒ換
ヘマスナラバ日本ノ品物ヲ二倍以上ニ買
ツテ吳レルト云フヤウナ場合ニ於キマシテ、
日本ハ大東亞共榮圈ノ立場カラ、「アメリ
カ」方面ニ品物ヲ買ツテ、貰ツテソレデ金ヲ
入レル必要ハナイト御考ヘニナルカ、ソレ
トモ其ノ金ヲ取入レル方針デアルノデスカ、
之ヲ大臣ニ御考ヘヲ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=49
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050・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 是ハドウモ其ノ場ニナツ
テ見マセヌト吾々ニハ分リマセヌ、日本ガ
物資ヲ出シテ金ヲ取ルカ、金ヲ成ベク取ラ
ヌデ物資ヲコツチノ方ニ餘計持ツテ來ルヤ
ウニスルカ、是ハ何レ餘程先ノコトニナリ
マスシ、又其ノ場合ノ情勢ニナツテ見ナイ
ト分リマセヌ、當分ノ問ハ產金ニ付テハ大體
前ノ機會ニ他ノ御質問ニモ御答ヘ申シタノ
デスガ、餘リ產額ヲ減サナイヤウニヤツテ
參ル、ソレニハ買上値段モ下ゲル譯ニモ參
リマセヌノデ、此ノ方針ヲ續ケテ參リタイ
ト思ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=50
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051・坂東幸太郎
○坂東委員 詰リ私ノ申シマシタコトハ斯
ウ云フコトニナルノデス、將來日本ガ大東
亞共榮圈ノ「ブロック」ト米洲方面ト取引ヲ
スルカドウカト云フ問題デアリマスガ、其
ノ問題ハ相當大キイ問題ニナリマスカラ
今直グ確答ヲ承ル譯ニモ行キマセヌガ、唯
金ノ問題ニ例ヲ取ツテ大臣ノ御考ヘヲ承ツ
タニ過ギナイノデアリマス、ト同時ニ今一
ツハ大東亞共榮圈方面ノ物產、此ノ物產ニ
關シマシテ、官吏中ニハ或ハ民間デモ
今カラ既ニ統制理念ニ依ツテ「ゴム」ヲ減ラス
トカ何トカ云フヤウナ議論ガ流行シテ居リ
マスガ、ソレニ付テ私ノ意見ヲ申上ゲマス
ナラバ、ソレコソマダ早イ、原則的ニ申シ
マスナラバ、現在ノ「ゴム」ナリ或ハ砂糖ナ
リハ、其ノ生產ニ立脚シテ、サウシテ住民
ノ利益、生活ヲ考ヘテ、徐々ニ改善シテ行
ク必要ガアルト思フノデアリマス、詰リソレ
ハ將來「ドイツ」中心ノ「ヨーロッパ」ノ「ブロッ
ク」、又日本中心ノ「アジア·ブロック」、
此ノ二ツノ「ブロック」ガ米國等ノ「ブロッ
クト貿易スルカドウカト云フコトニ關係
シテ居ルノデアリマスガ、私ノ考ヘデハサ
ウ何時マデモ戰爭バカリシテ居ルモノデハ
ナイト思フ、必ズ近キ或ハ遠キ將來ニ於テ
有無相通ズル經濟上ノ原則的立場カラ、ヤ
ハリ交易ヲスルヤウナ時ガ來ルト思フノデ
アリマス、サウシマスルト、現在ノ有餘ル
物資ヲ高ク買ヘバ彼ニ賣ツテヤル、或ハ又
向フガ買ヒタイト云フヤウナ時期ガ來ナイ
トモ限ラナイ、大東亞共榮圈ノ方面ノ物資
ニ付キマシテハ愼重ナ態度ヲ以テヤラナケ
レバナラヌ、今カラ早ク何ヲドウスルト云
フヤウナ、此ノ頃流行ノ官吏ノ所謂統制癖
ト申シマスカ、サウ云フ理念カラ今カラソ
レヲ唱ヘルト云フコトハ適當デナイト思フ
ノデアリマスガ、大體大藏大臣トシテ、又
國務大臣トシテノ御考ヘノ片鱗デモ伺ハシ
テ戴キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=51
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052・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 私モ御話ノヤウニ米國モ
英國モ遂ニハ反省ヲスルト思ヒマス、反省
ヲスレバ、ヤハリ世界中仲好クシテ參ツテ、
物資モ有無相通ズルト云フコトガ必要デア
リマス、ソレガ何時ノ日ニナリマスカ、徹
底的ニ魂ヲ入替ヘルマデハ相手ニ出來ヌト
思ヒマスガ、先ニハ何レサウ云フコトニナ
ル、其ノ途中ニ於テドウ云フ風ニスルカト
云フコトハ、是ハ物資其ノモノニモ依ルト
思ヒマスシ、ソレカラ生產ヲ減ジテ置イテ
又急速ニ囘復シ得ル性質ノ生產モアリマス
ルガ、サウモ行カヌモノモ色々アリマス
カラ、今ソレヲ一々ドウ斯ウト急速ニ慌テ
テ決メルト云フコトハ非常ニ早イト思ヒマ
ス、併シ今申上ゲタヤウニ、重點ヲ何處ニ
置クカト云フコトモアリマスカラ、何モカ
モ同ジ程度ノ生產デ行クト云フコトモ考ヘ
ラレヌノデアリマス、ソレ等ノ點ニ付キマ
シテハ、愼重ニ考究シテ參リタイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=52
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053・坂東幸太郎
○坂東委員 只今大臣ノ御答辯ハ私モ贊成
デアリマス、今カラ餘リ理念騒ギヲシテ急
ニ變更スルコトハ適當デナイ、サウ云フ意
味ノ只今ノ大臣ノ御答辯ヲ承リマシテ私ハ
全ク贊成デ安心シマシタ
其ノ次ハ、是ハ關聯事項トシテハ話ガ餘
リ大キクナリマスガ、要スルニ「アジア」ノ所
謂東亞共榮圈ノ「ブロック」ト)「ヨーロツ
パ」ノ「ドイツ」ヲ中心ノ「ブロック」トノ其
ノ外輪ノ接觸點ハ結局「インド」地方ト中
央「アジア」デアルト思フ、サウシマスト若
シ是ガ接シテ居リマスルナラバ文句ハナイ
ノデアリマスガ、所ガ人口四億カラノ「イ
ンドㄴ中央「アジア」方面ヲ中ニ挾ンデ居
リマスカラ、其ノ兩「ブロック」ノ間ノ交通
ガ不便デアル、結局此ノ兩「ブロック」ハ現
在ハ軍事中心デアリマスガ、將來ハ結局經
濟「ブロック」的ニナル、卽チ此ノ兩「ブロッ
ク」ノ間ノ交通ヲ益〓良クシナケレバナラ
ヌト云フ問題ガ生ジテ來ル、所ガ現在ノ通
路ハ北ノ「シベリア」鐵道ト「インド」洋ノ二
ツシカナイ、所ガ「シベリア」鐵道ハドウナ
ルカ分ラナイ、此ノ兩「ブロック」ノ交通機
關トシテ果シテ極度ニ利用出來ルカドウカ
ト云フコトハ分ラナイ、「インド」洋ヲ通ル
ト言ヒマシテモ、アノ長イ〓〓「マレー」半
島ガアル、、「マレー」半島ニ依ツテ恐ラクハ
千五百「キロ」位遠廻リ卽チ上下三千「キロL
迂〓ノ無駄ヲシテ居ルノデス、所ガ將來日
本ノ貿易ト云フモノハ相當「インド」方面ニ
對シテ進出發展スルコトノ可能性ガアルコ
トハ申スマデモアリマセヌ、「インド」人ハ
綿布ダケデモ一人デ一一「ヤード」、恐ラクハ
十億「ヤード」ノ綿布ヲ買フ、從來日本カラ
ノ輸出ハ四億「ヤード」デアツタ、若シ十億
「ヤード」全部ノ綿布ヲ買ツテ吳レルナラバ
ソレダケデモ數億圓デアル、斯クノ如ク「イ
ンド」ト云フモノハ日本ノ大事ナ得意デア
ル、「シンガポール」ガ陷落シマスルナラ
バ、日本ノ作戰ハ「インド」洋ニ及ブ、サウ
シマスト結局「インド」ハ日本ガ取ラナクト
モ敵性ヲ排除シテ日本ノ貿易ノ最モ大事ナ
得意先ニナル、其ノ意味カラ申シマシテモ、
此ノ大東亞ノ「ブロック」ト「ヨーロッパ」ノ
「ブロック」ノ交通線ヲ短クスルト云フコト
ハ必要デアル、此ノ點カラ申シマシテ、「マ
レー」半島ノ適當ナル所ニ運河デモ築造ス
ルナラバ、上下三千「キロ」ノ距離ノ短縮、
之ニ依ツテ「インド」中央「アジア」方面ニ物
ヲ澤山安ク賣ルコトガ出來ルト云フコトモ
考ヘラレル、ソコデ一ツ大藏大臣ハサウ云
フ方面マデモ考ヘテ、此ノ「マレー」運河開
鑿營團ト云フ位ナモノヲ造ルヤウナ、話ガ
大キクナリマスガ、貿易ノ觀點カラサウ云
フコトモ考ヘラレマスルガ、ドウデス國務
大臣トシテノ何カ御意見ガゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=53
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054・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 南方方面ノ建設ニ付キマ
シテハ色々大キナ構想ヲ運ラサナケレバナ
ラヌ、今御話ノヤウナコトモ前カラ耳ニシ
タコトモアルノデアリマス、構想ノ一ツト
シテ採入レルノハ面白イト申上ゲテハ語弊
ガアルト思ヒマスガ、甚ダ面白イヤウニ考
ヘラレマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=54
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055・坂東幸太郎
○坂東委員 是ハ大キイニハ大キイノデス
ケレドモ、中央「アジア」横斷鐵道ノ問題、
是ハ既ニ問題ニナリマシテ、確カ調査會モ
出來テ居ルト思ヒマスノデ、前ノモノヨリ
ハ或ハ平凡カモ知レマセヌガ、大臣モ御知
リニナツテ居ル筈デスガ、今述ベタ連河問
題トモ關聯ガアル、ドウシテモ戰後ノ「ド
イツ」ト日本トノ關係、卽チ「ヨーロッパL
ト「アジア」ノ兩「ブロック」ノ關係ガ經濟的
ニ密接ニナル爲ニハ、交通距離ノ關係ヲ考ヘ
ナケレバナラヌ、卽チ南ニ於テハ「マレーL
運河、中央ニ於テハ中央「アジア」橫斷鐵道
ト云フモノヲ考ヘナケレバナラヌ、ソレハ御
意見ヲ御伺ヒスル程ノコトデモアリマセヌ
ケレドモ、若シ何カ御考ヘガアリマスナラ
バ、參考ニ御伺ヒシテ置キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=55
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056・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 ドウモ御參考ニナル程ノ
意見ハアリマセヌガ、航空路ト海路トソレ
カラ鐵道、ドウシテモ此ノ三本ハ私ハ握リ
タイト思ツテ居ル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=56
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057・坂東幸太郎
○坂東委員 結構デス、其ノ位ノ御考ヘガ
アツテモ然ルベキデアルト思フ、此ノ頃ハ
產業營團トカ何トカ云ツテ色々ナモノガ出
ルガ、ドウゾモウ少シ今述べタヤウナ大キ
ナモノヲ作ツテ、本當ニ戰後ニ對處セネバ
ナラヌト思ヒマス、此ノ「アジア·ブロック」
ト「ヨーロッパ·ブロック」トハ密接ナ關係
ヲ保ツテ行カナケレバナラヌノデ、ドウシ
テモ米洲二十一箇國ハ將來經濟的ニハ敵性
ヲ繼續シマセウカラ、ソレニ對抗スルニハ其
ノ位ノ大キナ御考ヘモ必要デアラウ、斯ウ考
ヘマシテ一寸話ハ大キ過ギマスガ御伺ヒシ
タ〓デス、賢明ナル大藏大臣ハ國務大臣ト
致シマシテ大體サウ云フ御氣持ガアルラ
シイノデ私モ安心致シマシタ、ドウカ十分
〓究ヲ進メラレマシテ、眞ニ大東亞共榮圈
ノ開發、維持或ハ發展ノ爲ニ特段ノ御努力
ヲ願ヒタイト思ヒマス、尙ホ又最初申シマ
シタ東亞共榮圈ノ金融制度ヲドウシテモ畫
一的確立スルヤウニ、是モ十分ニ御〓究ト
御努力アランコトヲ切望致シマシテ、私
是デ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=57
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058・板谷順助
○板谷委員長 龜井貫一郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=58
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059・亀井貫一郎
○龜井委員 大體政府委員カラ御話ヲ何ヒ
マシテ了承致シタ譯デアリマスガ、政府委
員ニ於カレマシテ大臣ノ御出席マデ御答ヘ
ヲ御遠慮ニナリマシタ四、五ノ點ニ付テ、簡
單ニ大臣ノ御答辯ヲ得タイト思フノデアリ
マス、第一點ハ、此ノ前此處デ斯ウ云フ
御話ガアツタ、大臣ハ御忙ガシイノデ速記
錄ヲ御讀ミニナラナイデセウガ、斯ウ云フ
御話ガ此處デ出テ來タノデス、詰リ、蘭印ノ
石油精製ノ技術ニシテモ、「ゴム」ノ栽培技
術ニシテモ、或ハ原料「ゴム」ノ技術ニシテモ、
相當程度高イモノデアル、ソレデ、皇軍ノ
赫々タル戰勝、武力戰ニ依ル東亞共榮圈建
設ノ後ノ經濟工作ニ付テ、間誤々々スルト
成果ノ幾分デモ毀損スルコトガアルト困
ル、是ハ非常ニ表現ガ難カシイノデアリマ
スルガ、特ニ獨伊ハ盟邦デゴザイマス、隨
ヒマシテ、何モ獨伊ニ對シテドウト云フ譯デ
ハナイノデアリマスルガ、例ヘバ日獨伊ノ防
共協定ノ出來タ後デモ、「インド」市場ニ於
テ人絹ニ對シテモ非常ニ日獨伊ノ競爭ガ行
ハレタ、其ノ時モ、初メ割當ヲシヨウト云
フコトデアツタノヲ、日本ノハ生產費ガ安
イカラ宜カラウト云フヤウナ結果カラ、
協定ヲシナカツタノガ思ハシクナカツタト
云フコトモアリマス、ソコデ質問ノ形式ト
致シマシテハ、大東亞共榮圈建設ニ關シテ、
何モ私ハ內容ヲ具體的ニ伺ヒタイト云フノ
デハアリマセヌケレドモ、日獨經濟協定、
其ノ他何カノ話合ヒニ於キマシテ、ハツキリ
ト「ドイツ」ノ技術及ビ資本-資本ト云フ
コトハ今日餘リ問題デハナイデセウガ、技
術ノ東亞部面ニ於ケル活動ニ付テノハツキ
リシタ御話合ヒガ出來テ居ルカドウカ、今
日ノ狀態ヲ見マスルト、支那ニ於キマシテ
モ租界囘收後ト云フモノハ、非常ニ方々ニ
德國々々ト言フモノガ出テ參ル、是ハ話ガ
付イテ居レバ結構デアリマスガ、十分付イ
テ居ルノデアルカドウカ、ソレヲ先ヅ伺ヒ
タイノデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=59
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060・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 是ハ一ツ外務當局ヨリ御
答スベキカト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=60
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061・亀井貫一郎
○龜井委員 形式ハ外務當局、外務大臣デ
ナケレバ言ヘナイデセウガ、「ウォルター
산ガ經濟人デスシ、アレト外務大臣ガ話
シテモ仕方ガナイシ、結局アナタガ外務省
ト話ヲシテ形式ガ付クノデスカラ、付イテ
居ルノカ付イテ居ナイカ、是ハ仰シヤツテ
モ宜イデハナイデセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=61
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062・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 一寸御答ヘヲ申上ゲ兼ネ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=62
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063・亀井貫一郎
○龜井委員 大體是ハ大事ナコトデアリマ
スルカラ、私ハ政府ヲ信賴致シマスガ、其
ノ點ニ關シマシテ三國樞軸ヲ何處マデモ强
化シナケレバナラヌト云フコトハ、單ナル
ㄱロマンティック」ナモノデナク、强化シナ
ケレバナラヌ、ト同時ニ、具體的ニ今カラ
ハツキリ御話合ヒガアツタ方ガ宜イト云フ
コトニ付テ、十分御高配ヲ願ヒタイト思フ
ノデアリマス、ソレト本法案ハ關係ガアル
ノデアリマスガ、大東亞戰爭ニハ斷ジテ勝
タネバナラス、大東亞共榮圈ヲ建設セネバ
ナラヌ、高度國防國家ヲ作リ、生產擴充ヲ
ヤル、ソレノ一聯ト竝行致シマシテ、玆
日本銀行法ガ出テ來ル、管理通貨ガ出來テ
來ル、戰時金融金庫ガ出來テ來ル、是ハ當
然必要ニシテ、又缺クベカラザルモノデア
ルコトハ吾々ハ十分了承スルノデアリマス、
是デ初メテ日本ノ經濟ガ生產經濟ト云フ建
前ニナルノヂヤナイカ、唯玆デ私ガ、或ハ同
僚ノ一、三ノ方ガ心配サレルノハ、斯ウ云フ
コトニナルト、詰リ大臣モ仰シヤツテ居リ
マシタ惡性「インフレ」ノ問題ナノデアリマ
ス、固ヨリ粟山君ノ言ハレタヤウニ、今
戰爭ニ勝タナケレバナラヌ最中デスカラ、
小賢シキ議論ヲ今カラアアデモナイ、斯ウ
デモナイトヤル必要ハナイノデアリマスケ
レドモ、大本ノ所ノ心構ヘハガツチリシテ
置カナケレバナラヌ、ヤハリ出來ルダケ好
イ結果ガ出ルヤウニ、詰リ惡イ結果ガ出ナ
イデ濟ムト云フ風ニ持ツテ行キタイト云フ
點カラデアリマス、サウ云フ點カラ、要スルニ
通貨ト云フモノハ物デ裏付ケテ行カナケレ
バナラヌ、物ガ澤山出來ナケレバナラナイノ
デアリマスガ、物ガ出來ルト云フコトハ、是ハ
通貨面カラ言ヘバ會社ノ收益性ノ問題ニナ
ル譯デアリマス、會社ガ、事業體ガ收益ガ上
ガラナケレバ稅モ背負へナイ、公債モ持テ
ナイ、生產擴充ノ資金ノ用意モ出來ナイ、ダ
カラ物ヲドン〓〓造ル、其ノ物ヲ造ル會社
ヲ通貨ノ面カラ見レバ會社ノ收益性ト云フ
コトニナル、收益性ト云フコトニナレバ、其
ノ物ノ量バカリヂヤナク、質ト云フ問題ニ
ナルノデアリマシテ、其ノ物ガ裏付ケラレテ
行カナケレバ非常ニ危險ダ、物ヲ造ル爲ニ
ヤツテ居ル經濟ナンデアルカラ、ソレハ申
スマデモナイコトデアリマス、ソコデ會社
ノ收益性ト申シマシテモ、自由主義ノ時代
ト今トデハ會社ノ儲ケノ意味ガ違フ、詰リ
鞘取經濟デハナクシテ、出來ルダケ能率ノ
高イ經營カラ來ル會社ノ資本ノ收益性ヲ確
保スルト云フコトニナルノデアリマス、サ
ウ云フコトニナリマスト、第一點ノ質問ヲ
簡單ニ言ヒマスト、サウ云フ風ニ此ノ金融
財政ト竝行サセテヤツテ行ク爲ニハ、大臣
御承知ノ通リデスカラ例ヲ引カナクテモ宜
イノデスガ、「ドイツ」デモ金融制度調査委
員會ガ出來タ後デ、三四年シテ會社法改正
ガ行ハレテ居ル、私ノ方ハ唯理論トシテノ
會社法改正デナクシテ、會社ノ收益ヲ上ゲ
ルト云フ趣旨ガ違ツテ來タノデアリマスカ
ラ、其ノ趣旨ニ適合スルガ如ク、會社ノ能
率ヲ上ゲ得ルヤウナ經營體ニスルガ如ク、
會社法ヲ改正シテ行カナケレバナラヌ、會
社ノ中ニ於ケル所ノ、例ヘバ常務取締役ノ
權限デアルトカ、職場ニ於ケル責任デアル
トカ、其ノ地位ノ安定デアルトカ、サウ云
フコトガ、ドウシテモ會社法改正ガハツキ
リシテ來テ、サウシテ技術的ニ、本當ニ能
率的ニ經營シテ行クモノガ收益ヲ上ゲルノ
ダト云フ建前ヲ作ラナケレバ、迚モヤツテ
行ケナイコトニナルノデアリマスガ、此ノ
點會社法改正ニ付キマシテ、政府委員ハ
貸ス方ノ者ハ斯ウ云フ風ニ性格ヲ變ヘテ來
タガ、借リル方ノ會社法改正ハ是ハ大キナ
問題ダカラ、何レ大臣カラト云フ御話デ終
ツタノデアリマス、此ノ點ニ關シマシテ國
務大臣トシテノ御所見ヲ承リタイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=63
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064・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 私ハ此ノ產業能率ヲ上ゲ
ルト云フコトガ非常ナ問題デアルト思ツテ
居リマス、ソレハ誰シモ產業能率ヲ上ゲル
ト云フコトガ重要ダト云フコトハ勿論デア
リマスガ、今ノ企業ノ經營方面カラ云ツテ、
格段ナ意味ヲ持ツノデアリマス、ト申シマ
スノハ、總テガ所謂自由企業ト云フコトガ
殆ドナクナリマシテ、個々ニハ自由ト思ツ
テ居リマシテモ、大體此ノ生產ハ此ノ程度
ニ、此ノ分量ハ認メル、ソレ以上ニハ原料、
勞力ヲ持ツテ行カナイヤウニスルト云フ全
體ノ規制ガ皆來テ居リマス、又刻下緊要產
業トナレバ、所謂「コスト」ガ高クテモ是ハヤ
ラナケレバナラス、ソコデ補助ガアリ、各
種ノ助成ガアルト云フコトニナツテ居ル、
此ノ形態ノ一方ニ於ケル弱點ト云フモノハ、
如何ニソレガ能率ガ上ラスデモ、企業的ニ
存在シ得ルト云フ所ニ私ハ一ツノ非常ナ弱
點ガアルト思フ、是ガ正確ニ能率ヲ上ゲテ
運バレルヤウニナルト云フコトガ、サウ云
フ方式ニ行キ得ルト云フコトガ、此ノ今ノ
計畫經濟、統制經濟ト云フモノガ眞ニ役ニ
立ツテ行ク上ニ於テノ缺クベカラザル要件
デアル、而モ其ノ要件タルヤ、斯ウヤレバ
出來ルト云フヤウニ簡單ニハ行カナイ、凡
ユル精神的要素、構成、組織ト云フモノガ
ナクテハナラヌ、精神的要素モ、又組織的
要素モ、技術的要素モ、是ガ旨ク調和ヲ得
テ働キマシテ出來ルコトデアラウト思ヒマ
ス、今御質問ニナリマシタ是ハ要スルニ會
社ノ實際ノ構成ト申シマスカ、人的組織其
ノ他ノ問題デアラウト思ヒマスガ、其ノ意
味ニ於テ私ハ率直ニ申シマスト、ドウモ其
ノ方ハ不得手デアリマシテ、ドウ具體的ニ
ヤルカト云フコトニ付テ成案ヲ持ツテ居リ
マセヌガ、兎ニ角此ノ計畫經濟、統制經濟
ノ將來ノ運營ニ付テハ極メテ重大ナル點デ
アルト思ツテ居リマス、其ノ點ニ付テハ十
分ニ自分モ考ヘテ行キタイ、ソレデドウモ
今政府ノ意見トシテハ中上ゲ兼ネルノデア
リマスガ、本當ノ廣イ意味デ國家目的ニ應
ズルヤウナモノガ動クト云フ觀點ト、今御
話ニナリマシタヤウナ觀點トノ兩方カラ、
色々民間ノ會社ニ對スル法的問題モ今後相
當ナ變革ヲ見ルト云フカ、發達ヲ見ルヤウ
ナ道程ニアル、斯ウ云フコトヲ非常ニ感ジ
テ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=64
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065・亀井貫一郎
○龜井委員 大臣ノ極メテ御懇切ナル御答
辯デ滿足デアリマスガ、色々酢ダノ蒟蒻ダ
ノ通貨價値ダトカ「インフレ」ダトカ、色
色議論ハ出來マセウガ、要スルニ事業體ノ
收益性ヲ高メテ、公債ト稅ト生產擴充資金
ヲ賄ツテ行ケルト云フ其ノ基本ガ立タナイ
ト、全體ガ崩壞スルモノデアリマスカラ、
此ノ點大臣ガ極メテ重大ト御認メ戴イテ
ル點ハ洵ニ心强ク感ジマスガ、今一ツ序デ
ニ大臣ニ申上ゲテ置キマスト、一部ニハ總
動員法ガアル、總動員法カラ移讓サレタ勅
令ガアル、經理統制令ガアル、勞務管理令
ガ最近出ル、ダカラ斯ウ云フ風ニ締メテ行
ケバ是デ國家目的ニ副ツテ一ツノ企業體ト
云フモノハ合セテ行ケルカラ、オ前ノ言フ
ヤウニ會社法ト云フモノヲマア直グ考ヘナ
クテモ、ユツクリ考ヘテモ宜イノデハナイカ
ト云フ議論ガアルノデスガ、大臣ノ御答辯
ヲ伺ヒマシテ、ドウゾ政府內デ一ツ早ク御
纏メ願ヒタイト云フノハ、事業體個々ヲ外
カラ縛ラレテ參リマス國家統制デハ、業態
自體ノ彈力性ガ出テ來ナイ、ダカラ只今粟
山サンノ御質問ニ對シマシテ、日本銀行ハ
私法人デアル、ソレハ其ノ通リデアリマス
ガ、私法人デアリナガラ非常ナ公益的性格
ヲ持ツ、サウ云フヤウニナツテ來ルノガ今
日ノ時世デアリマス、私ノ企業體ト云フモ
ノハ無論一ツノ企業體デアリマスガ、法的
性格ヲ持ツノデアリマス、隨テ私法人ノ性
格ヲ外カラ總動員法ダトカ、勅令ダトカデ
縛ルト云フ恰好デナクテ、ソレガ斯ウ云フ
性格デ伸ビルト云フ基本的ナ會社法ノ改正
ニ關シマシテハ、產業關係國務大臣ト致シ
マシテ、大臣ノ特別ノ御配慮、御斡旋、御
〓究ヲ願ヒタイ、斯樣ニ考ヘテ居ル次第デ
アリマス
第三點デアリマスガ、是ハ只今ノ同僚坂
東君ノ質問程大キナ問題デハアリマセヌケ
レドモ、一寸政府ニ伺フコトダケデ、國務
大臣トシテハ少シ仰シヤリニクイト云フ點
ガアルト思フノデスガ、此ノ間大臣ガ居ラ
ツシヤラナイ時ノ此ノ委員會デ、今ノ會社
ノ收益性ヲ見ナガラ、單位當リノ勞働量ニ
對スル生產高ヲ增シテ行クト云フ必要サノ
議論カラ、相當從來ノヤウナ「コンマーシ
ャル·バンク」ノヤウナ貸シ方デハイケナイ
ノダ、本當ニ工業ガ伸ビテ行クヤウナ工業
金融ニ入ラナケレバナラナイ、入ル意思ガア
ル、ドウゾサウシテ下サイト云フ議論ガ出
テ來ルト、ソコデ問題ニナツテ參リマシタ
ノガ戰時金融金庫ナリ、金融機關ガ殆ド工
業金融、產業金融ト云フコトニナリマスル
ト、其ノ監督ハ、金融サレル會社ノ監督ノ
問題ガ大藏省方面ニ於テ會社部長及ビ理財
局長デアルカ、銀行局長デアルカ、玆ニダブ
ツテ來ル譯デアリマス、其ノ點ハ更ニ本委
員會ニ於テモウ少シ他ノ面カラ更ニ御質問
モアルト思ヒマスルカラ私ハソレヲ省キマ
ス、省キマスガ、サウ云フ風ニダブツテ來
ル結果ガ、結局經濟省ダトカ何トカ云ツタ
ヤウナモノニナルダラウト思ヒマス、サウ
云フ戰爭ノ最中ニ大キナ行政機構ノ改革ト
云フモノヲ私ハ根本的ニ取上ゲル必要ハナ
イノデスガ、唯サウ云フ目安ニ持ツテ行ク
ト、商工省カラモソツチニダブツテ來ル、
大藏省カラモソツチニダブツテ來ルト云フ
コトニナル、ソコデ是ハ一ツ餘程緊密ナ御
連絡ヲ御取リ戴カナケレバナラヌト思フノ
デアリマスケレドモ、率直ニ申上ゲレバ是
ハ出來ルダケ能率的ニ動キマスル爲ニハ
大藏大臣ト商工大臣ガ共管サレルヤウナ工
業金融、例ヘバ一方ニ「ドイツ」ガヤツテ居
リマスヤウナ物價ニ對シテ物價管理局ト云
フ外局ヲ作ツテ居ル、金融ニシマシテモ地
方「ブロック」每ニ一ツ何カ外局メイタモノ
デモ、經濟省ガ出來ルマデ御置キニナルヤウ
ナ御考へ御〓究ガオアリデセウカ、其ノ
點ヲ伺ヒクイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=65
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066・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 實ハ私其ノ考ヘハアリマ
セヌ、私ハ前カラ斯ウ考へテ居リマス、大
藏省トカ商工省トカ農林省トカ言ヒマシテ
〒、是ハ一ツノ現ハレナノデス、國家ノ政
治ハ皆サウナノデアリマシテ、今技術、勞
力ヲ離レテ產業ハナイ、ソレデハ厚生省ト
云フニノハドウシテアルカ、別デアルカラ
イカヌト云フノデ、之ヲ一緒ニシテモヤハ
リ內デ別ニシナケレバナラナイ、私ニ言ハ
セレバ心掛ガ出來テ居レバ同ジヤウナモノ
デアル、唯道ガ眞直グ附イテ居ルトカ居ナ
イトカ云フヤウナ意味ニ、機構ガ障碍ガア
ルヤウニ出來テ居レバ直サナケレバナラナ
イノデスガ、結局一ツノ所ニ集メルト、其
ノ內デソレダケノモノヲ又分ケテ行カナケ
レバナラナイ、結局今ノ時代デハ互ヒニ力
ヲ協セテ行クコトガ戰時最モ必要ナ點デア
ルト思ヒマス、金融デモ國債消化ノ外ハ全
部產業金融ト申シテ宜シイ、大藏省ガ產業
ノ金融部商ヲ受持ツト云フ覺悟デ私ハ進ン
デ居リマス、臨時資金調整法ヲ事變ノ初メ
ニ作リマシタノハアレハ私ハ商工省ト相
談ヲシテ作リマシタノデスガ、是ハ皆人ハ
金融ノ汁制ダト思ツテ居リマスガ、私ハア
レハ企業ノ法制デアリ、物資ノ法制デアリ、
ソレヲ金融部面カラ行ク、斯ウ思ツテ常ニ
其ノ心持デ當時カラ居リマシタヤウナ次第
デアリマス、殊ニ割合ニ金融ノ問題ハ、今企
業デモ地域的ヨリモ全國的ニナル傾向ガ非
常ニ强イノデアリマス、只今ノ所デハヤハ
リ今ノ組織デ非常ニ緊密ニ行ク、大藏省ノ
考ヘハ斯ウダ、商工省ノ考ヘハ斯ウダト云
フノハ、孤立的ニナラヌヤウニ一ツノ政治
行政デオ互ヒニ同ジモノヲ此ノ面、此ノ面
ヲ受持ツテ居ルノダト云フヤウナ眼カラ密
接ニ考ヘテ參リタイ、斯ウ云フ考ヘ方ヲシ
テ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=66
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067・亀井貫一郎
○龜井委員 大藏大臣ノ今ノ御答辯コソ洵
ニ私ノ希望シテ居ル所デアリマシテ、サツ
キ說明ノ仕方ガ惡カツタノデスガ、個々ニ
分レテ居ルモノヲ、仕事ガ一ツダカラト言
ツテヤタラ一ツニシタ所ガ動クモノデハナ
イ、單ニ役所ヲ一ツニスルト云フコトハ寧
ロ自由主義的ナ觀念論デアルトモ言ヘバ言
ヘルノデアリマス、其ノ考ヘハ宜イノデス、
宜イデスケレドモモウ一歩進ンデ特ニ御
考慮願ヒタイ點ハ、例ヘバ個々ニ事業ヲヤ
ツテ居ル、金ヲ借リタイ、何處デ金ヲ借リ
テ宜イカ分ラナイ、ソコデマア砲彈ヲ削ル
ノナラバ大阪砲兵工廠へ行ク、ソコデ注意
ヲサレテ勸銀ナリ、興銀ナリ、野村ナリニ
行ク、行ツテ見ルト又ソレデモイケナイト
云フノデ商工省、大藏省、軍部トグル〓〓
廻ツテ步クト云フコトニナル、成程大藏大
臣ノ御心構ヘトシテハニ立派ナンデ、ソ
レデナケレバナラヌケレドモ、結局其ノ間
ニ迷ヘル者ガ中々多イ、ソコデ私ノ言葉ガ
足リマセスカラ話ノ誤解ヲ得マシタガ、
ツソレノ外局的世話業ト云フモノガ要ルノ
デハナイカ、是ハ斯ウ云フ譬ヘ話ヲシテ申
上ゲタ方ガオ分リニナルカモ知レマセヌケ
レドモ、私共翼贊會ノ一部ヲ受持チマシタ
時、翼贊會ト云フモノハ政治力トカ何トカ
云フヨリモ、斯ウ云フ問題ヲ民間カラ一ツ
聽イテ來レバ、ソレハ大藏省ト商工省ト日
銀ト警視廳ト、彼處ガ斯ウ言ツタ、是ハ斯
ウ聽イタ、斯ウナンデスカラト云フ親切ナ
道案內ヲシテ差上ゲル、良ク言ヘバ斯ウ云
フ世話業デゴザイマスネ、サウ云フコトヲ
非常ニ國民ハ要望シテ居ル、統制經濟ト云
フモノハサウ云フ甘味-甘味ト云フノハ
變デスガ、人情味ノアル世話業ト、上カラ
ノ統制權力トガ一〓ニクツ付イテ行カナケ
レバ巧ク行クモノデナイコトハ御承知ノ通
リデス、ヤタラニ仕事ガ一ツダカラ大藏
省商工省何デモ一緒ニシテシマヘト云フ
コトハ、サツキモ申上ゲタ通リ、寧ロ自由
主義的觀念論的ナ行政改革トモ言ヘル、本
ハ一ツノ根ノモノガ二ツアルノダカラ、唯
ソレヲ有機的連絡ヲ執ツテ戴ケバ宜イ、唯
役所トシテ連絡ヲ取ル前ニ、國民ニハ大藏
省的生活ト云フモノモナケレバ、商工省的
生活ト云フモノモナイ、國民ノ生活ハ一ツ
ナンデスカラ、斯ウ云フ問題ガアル時、是
ハ何處ノ金融ヘ持ツテ行ツタラ宜イト世話
ヲスル、斯ウ云フ時ニ殊ニ私ハ重大ニ思ヒ
マスノハ、大工場バカリデハゴザイマセ
ヌ、產業能率ヲ上ゲル爲ニハ富士山ノ山麓
經濟ガ大事デアル、備品工場、修繕工場ガ
大事デアル、ソコノ金融ガ相當混亂シテ居
ル、サウ云フモノヲ何處へ持ツテ行ツタラ
宜イカト云フコトノ世話ヲ燒ク外局的ナ、
世話業的ナモノガナケレバイケナイト思フ
ノデアリマス、オ分リニナラナイデゴザイ
マセウカ-例ヘバ外國ノ例ヲ引クト甚ダ
マヅイデスケレドモ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=67
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068・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 分リマシタ、兎ニ角統制
經濟ガ-戰時デアツテ平時デハナイノデ
スカラ、色々ナコトガ常識デハ行カヌノデ
アリマス、御話ノヤウニ色々ナ制度ノ運用
ト云フモノヲドウシタラ宜イカ、役人モ民
間モ端的ニ摑メナイト云フコトハ御話ノ通
リデアリマス、サウ云フ機關ガ必要デアル
ト思ヒマス、只今ノ考ヘ方ト致シマシテ
ハ產業締制會ニ於テモ段々サウ云フ金融
上ノ心配ガアルト思ヒマス、ソレカラ金融
統制會ノ根本ノ方針ヲ決定シマシテ、早イ
期間ニソレヲ作ラウト思ツテ居リマスガ、
其ノ中ニ今ノ金融相談所ト申シマスカ、サ
ウ云フ風ナ仕組ヲ致シタイト考ヘテ居リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=68
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069・亀井貫一郎
○龜井委員 ドウゾ金融相談所ナルモノ
ヲ、各方面廣ク速カナル御實施ヲ願ヒタイ
ト希望致ス次第デアリマス
最後ニ一點伺ヒタイノデアリマスガ、是
ハサツキ西川君トノ一問一答ヲ伺ヒナガ
ラ、一寸疑問ガ出テ來タモノデゴザイマス
カラ、折角此ノ點ヲ御解明願ヒタイト思フ
ノデアリマス、大藏大臣ハ場合ニ依ツテハ
將來金モ國際決濟ノ支拂ニ使フ場合ガアル
ト仰シヤツテ居ラレマス、無論其2場合ノ
金ト云フノハ金鑄貨デハゴザイマセヌデ、
全地金デ十分ナモノト思ヒマス、ソレヲ假
ニ國際支拂ニ使フ場合ガアルト云フコト
ハ吾々ハ具體的ニ考ヘレバ、日米關係ハ
マダ〓〓屈敵致シマスマデハ考ヘテナラナ
イノデアリマスカラ論外ト致シ、例ヘバ佛
印ノ如キ、或ハ「ソ」聯邦ノ如キ、所謂金地
金拂ガアリ得ル譯ナノデアリマス、此ノ金
地金拂ガアリ得タ場合ニ於テノ金ハ、固ヨ
リ管理通貨ガ出來マシタ後ニ於テハ足ノ、
金ト云フ一種ノ商品ヲ拂ツテ居ル譯ナノデ
アリマスガ、ソレニシテモ西川君ノ御質問
ニナリマシタヤウニ、其ノ金地金ト云フモ
ノハヤハリ一ツノ圓ト結付イテ、其ノ價値
基準ニ於テ支拂ハレルト云フコトニナルノ
デハナイカト思ヒマス、サウナリマスト玆
デ一ツ問題ガ-問題デハナイノデスガ、
ハツキリ出テ參リマスノハ、大臣ノ御意見
ハハツキリト日本ノ圓ノ國際通貨トシテ、
ノ價値ト、國內價値ト云フモノハバラノ
デモ宜イノカ、國內價値ノ方ハ一ツ購買力ヲ
基準ニシテ考ヘテ行ク、國際ノ方ハ從來ノ
金ト聯關シタル圓價値ヲ以テ拂ツテ行ク、
其ノ間ノ調節ヲ日銀操作デ巧クヤツテ行ク
ト云フノデアリマセウカ、ソゴハヤハリ何
カノ連絡ヲ持タセルト云フ御考ヘナノデア
リマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=69
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070・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 法制的聯關ハ持タセナイ
積リデアリマス、詰リ例ヘバ或ル物資デヤ
リ取ヲスル、ソレヲ幾ラノ價格デ決メルト
云フコトハ何處ノ談判デモ起ルト思ヒマ
ス、ソレト同ジニ見テ行キタイ、同ジニ見
テ行キタイト申シマスガ、假ニソレガ餘計
方々デ使ハレルヤウニナリマスト、ソコニ
自ラ一ツノ相場ガアリマス、實質的ニ或ル
物ノ相場ガ決マルト同ジヤウニ、日本トノ
通貨ノ關聯ハ持ツテ參リマス、實質的ノ關
係デ行キタイ、斯ウ思ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=70
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071・亀井貫一郎
○龜井委員 大體大臣ノ御考ヘモ分リマシ
タカラ、是レ以上突込ンデ言フ譯デハアリ
マセヌガ、實質的關聯ヲ持ツト云フコト
ハ-此ノ際下ラナイ通貨理論ヲ振廻シテ
伺フノヂヤアリマセヌガ、サウスルトヤハ
リ實質的關聯及ビ歷史的關聯ニ基礎ヲ置キ
ナガラ、多分ニ國策的考慮ヲ入レテ決メテ
行ク、斯ウ云フコトニナル譯デゴザイマス
是ハ妙ナ言ヒ方デスガ、。例ヘバ一例ヲ
ネ、
擧ゲレバサウ云フコトニナリマス、簡單ニ
言フト斯ウ云フコトガアル譯デス、例ヘバ
「アスキ·マルク」、「ロンドン」ニ對スル「マ
ルク」ト南米ニ對スル「マルク」ト違ヒマ
ス、是ハ經濟的ナ違ヒ方デハナクシテ、經
濟ノ實情ニ卽シタ國策的ナ決メ方デアリマ
スネ、サレバト云ヒナガラ、ソレガ全然
「ライヒス·マルク」ノ金ト離レテ居ル譯デ
モナイ、ソレハ一例デアリマスガ、サウ云
フ風ナ意味デ說明ヲシタ譯デアリマス、サ
ウスルトヤハリ事實關聯ハ持ツノデアル
カ、持タナイノデアルカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=71
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072・賀屋興宣
○賀屋國務大巨 ソレハ國際決濟ニ金ガ餘
リ使ハレナケレバ、事實關聯ト云フモノハ
非常ニ薄イモノダト思ハレマス、使ハレル
場合ガ多ケレバ割合ニ多クナツテ行ク、斯
ウ云フコトデス、ソレハ「フレキシブル」ニ
置イタ狀態ニ持ツテ行キタイト思ヒマス、
其ノ點政策的ニト云フコトニナリマスト、
詰リソコデ或ル程度ノ金ト云フモノハ國際
決濟ニ要ル、コチラデ物資ヲ支出スル以上
ニ、餘所ノ物資ヲ取ツテ來タイ、ソレガ現
實ニ行ハレル、ソレデ產金ノ增產ヲヤリ、
價格ヲ幾ラニ決メルカ、斯ウナリマスト御
話ノヤウニ傳統的、沿革的以外ニ政策トモ
結付イテ來ル、斯ウ云フ場面モアルト思ヒ.
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=72
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073・亀井貫一郎
○龜井委員 同僚ノ御質問モ澤山アリマス
カラ、私ハ大體是デ伺ヒタイコトハ濟ンダ
ノデアリマスガ、尙ホ最後ノ一點、少シ是
ハ性格トシテハ重大ナ問題デアルト思ヒマ
スカラ、或ハ大藏大臣一人トシテノ御見解
ヲ伺フノモドウカト思ヒマスガ、此ノ議會
ノ各大臣ノ御演說、質問應答等ヲズツト見
テ居リマスト、ソコニ一度ハツキリ伺ツテ
置イタ方ガ宜イヤウナコトガアル、ソレハ
ドウ云フコトデアルカト云フト、例ヘバ一
部デハ統制會中心デ行ク、產業設備營團中
心デ行クト云フコトヲ非常ニハツキリ强ク
伺フト共ニ、例ヘバ南方ニ關シマシテハ、
此ノ速記ノアル席デハ申上ゲラレマセヌケ
レドモ、具體的ニヤルコトハヤルト決メラ
レテ居ルモノハ、個々ノ企業家デゴザイマ
スネ、ソコデ問題ハ斯ウナルノデゴザイマ
ス、今ノ統制經濟ノ考ヘ方ニ付キマシテ、
物價ヲ安定シ、サウシテ「インフレ」ニナラ
ナイヤウニスルト云フ諸般ノ統制ノ必要ノ
アルコトハ、申スマデモナイコトデアリマ
ス、其ノ性格ハ殘シナガラモ、二ツノ點カ
ラ此ノ統制經濟ヲ計畫經濟ノ線ニ沿ヒナガ
ラ、モウ一步躍進セシメタラドウカト云フ
意見ガアルト思ヒマス、一ツノ意見ハ、今
マデノ日本ノ統制經濟ト云フモノハ動モス
レバ籠城經濟デアリマス、南ニ出テ行クノ
ダカラ籠城經濟ノ「イデオロギー」カラモウ
一步進ンダラ宜イデハナイカト云フ意見モ
アルノデアリマス、第二ノ點カラ言ヘバ
ドウモ統制經濟、官僚獨善ト云フカ、官僚
ガ上カラグツト被サツテ來ル統制、國家ノ
爲ニ主要點ノ統制ハ必要ダガ、產業ノ自立
的能動的意思ト云フモノヲ、モウ少シ出
サナケレバイケナイデハナイカト云フ考ヘ
方モ第二點トシテハアル譯デアリマス、ソ
コデ此ノ日本銀行法ニ關聯シテ來ルノデス
ケレドモ、南洋共榮圈ノ開發方式ト云フモ
ノハ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=73
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074・板谷順助
○板谷委員長 龜井サン、御話中デアリマ
スガ、大臣ハ四時ニドウシテモ行カナケレ
バナラヌサウデスカラ、若シ御質問ガアレ
バ明日ニデモ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=74
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075・亀井貫一郎
○龜井委員 モウ少シデス-南方共榮圈
ニ對スル方式ト云フモノガ、善イ惡イト云
フコトヲ申上ゲルノデハアリマセヌガ、今
ヤツテ居ル方式デ言フト、國內ノ經濟方式
ガ相當變ル用意ヲシナケレバナラヌト思ヒ
マス、變ルト云フノハ自由主義ニ戾ルト云
フコトデハナイ統制經濟力ヲ更ニ本格的
ノ計畫經濟ニ一步飛躍スルト云フ意味ニ於
テ、御考ヘニナラナケレバナラヌト思ヒ
マスガ、之ニ對スル大臣ノ御考ヘヲ承リタ
イ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=75
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076・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 私ハ日本ノ計畫經濟、統
制經濟ト云フモノハマダサウ進ンダモノデ
ハナイト思ヒマス、段々ニ進メテ行キタ
イ、私ハヨク言フノデスガ、汽車ヲ或ル點
デ九十度ニ線路ヲ曲ゲテ走ラセルコトハ出
來ヌ、斯樣ナコトヲヤツテハ駄デアル、或
ル「カーブ」ヲ以テ廻ハシ、或ル半徑ヲ以テ
スレバ九十度ニモ變レバ、百八十度ノ轉換
モ出來ル、併シ汽車ガ走ルノト違ツテ世ノ
中ノコトハ暫クヂツトシテ居ツテ直グ飛上
之、少シ「スロー」ニ行ツテ又飛上ルト云フ
ヤウナ色々ナ段階ガアル、ソコヲ如何ニ旨
クヤツテ行クカト云フコトガ一ツノ大キナ
政治デアルト思フノデアリマス、今ノ南方
ノヤリ方ト云フモノハ大體マダ戰爭シテ二
月モ經タヌ、今戰爭ヲシテ居ル、ソコデ今
斯ウヤラウト云フコトデ、餘リアレヲサウ
型トシテ固ク考ヘ、重ク扱ツテ戴カヌ方ガ
寧ロ宜クハナイカ、斯ウ云フ風ナコトヲ考
ヘテ居リマス、隨テ今ノ南方ノ經濟開發方式
ト內地ノ經濟方式トノ關聯ト云フコトハ、
モウ少シ理論ヨリモ所謂實際的ニ-眼ノ前
ト申シマスカ、ソレモ五日ヤ十日デハアリマ
セヌガ、考ヘテ、モウ少シ私ハ今後ノ構想ニ
俟ツ方面ガ多イダラウト感ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=76
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077・亀井貫一郎
○龜井委員 能ク了解致シマシタ、私ノ質
問ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=77
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078・板谷順助
○板谷委員長 此ノ際政府ニ要求シテ置キ
マス、大臣ニ對スル質疑ノ通告ハ武田德三
郞君、世耕弘一君、田村秀吉君、山本粂吉君
及ビ委員長ヨリマダ質問ガ殘ツテ居リマス
カラ、明日ハ午前十時ヨリ開會致シマス
ガ、大臣ニハ是非御繰合セ御出席アランコ
トヲ希望致シマス、本日ハ是ニテ散會致シ
マス
午後四時三分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00819420202&spkNum=78
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