1. 会議録本文
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000・会議録情報
會議
昭和十七年二月三日(火曜日)午前十時二十二分開議
出席委員左の如し
委員長 板谷順助君
理事 横川重次君 理事 田村秀吉君
理事 長井源君 理事 坂東幸太郎君
理事 本田英作君
井阪豐光君 池田秀雄君
大口喜六君 太田理一君
菊池良一君 木村正義君
木暮武太夫君 武田徳三郎君
豐田豐吉君 豐田收君
内藤正剛君 中島彌團次君
西村金三郎君 廣川弘禪君
松永東君 山本粂吉君
石坂豐一君 世耕弘一君
河合義一君 粟山博君
水谷長三郎君
出席國務大臣左の如し
大藏大臣 賀屋興宣君
出席政府委員左の如し
大藏省理財局長 山住克已君
大藏省銀行局長 山際正道君
大藏省爲替局長 原口武夫君
大藏省會社部長 田中豐君
本日の會議に上りたる議案左の如し
日本銀行法案(政府提出)
戰時金融金庫法案(政府提出)
臨時資金調整法中改正法律案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=0
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001・板谷順助
○板谷委員長 是ヨリ會議ヲ開キマスー
武田德三郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=1
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002・武田徳三郎
○武田委員 私ハ先達テ以來大藏大臣ニ質
問ヲ致シマシタガ、ソレハ主トシテ管理通
貨ヲ前提トシテ本案ヲ提案サレテ居ルノデ
アラウカト云フヤウナ意味ニ於テ質問ヲ致
シタノデアリマスガ、遂ニ結論ニ達シナイ
ヤウナ譯デアツタノデアリマス、ソレデ重
ネテ此ノ點ニ付テ大藏大臣ニ御確メヲシテ、
然ル後ニ其ノ他二、三ノ問題ヲ御尋ネ致シタ
イト云フノデ進ンデ參ツタノデアリマス、
所ガ昨日西川君ノ質問ニ對シテ、大臣ノ御
意向ハハツキリシタコトヲ覺エタノデアリ
マス、卽チ大藏大臣ハ管理通貨制度ヲ採ル
ト云フ建前デ、貨幣法ノ改正ヲ前提トシテ
此ノ案ヲ作ツタモノダト云フ意味ノ御答辯
デアツタヤウニ思フノデアリマス、唯此ノ
際貨幣法ノ改正案若シクハ廢止案ヲ提出シ
ナカツタノハ、戰時ニ必要ナ限度內ニ於テ
法案ヲ出サウト云フ申合セニ依ツテ、必ズ
シモ今日ハ貨幣法ノ改正案若シクハ廢止案
ハ出サナクテモ差支ナイト云フヤウナ見解
カラ出サレナカツタノデアツテ、遠カラズ
貨幣法ノ根本的改正案ヲ出スノダ、斯ウ云
フ御答辯デアツタノデアリマス、隨テ私モ
今日マデ質問シテ結論ヲ得ナカツタ問題ハ、
是デハツキリ致シタト思フノデアリマス、
結局スル所、此ノ貨幣制度ノ根本問題ニ付
テハ、賀屋サント私共ノ考ヘハ全然對立的ニ
アルト云フコトガ、玆ニハツキリ致シタ
ノデアリマス、是レ以上ハ質問ノ領域ヲ超
エテ討論ノ領域ニ入ルト思ヒマスカラ、私
ハ此ノ點ニ關スル質問ハ是デ止メタイト
思フノデアリマスガ、併シナガラ此ノ際私
ハ、政府ノ政策ニ出來得ルダケ協力シタイ
ト云フ心持カラ、二、三ノ注意ヲ申上ゲテ置
クノガ適當デアラウト思ヒマス、敢テ私ハ
ココデ反對論ヲ申ス譯デハナイノデアリマ
スガ、私ハ此ノ貨幣制度ヲ如何ニスルカト
云フ根本問題ハ、戰後世界的ノ大問題ニナ
ルデアラウト思フカラデアリマス、第一次
世界戰爭ノ終ツタ後ニ於テハ、此ノ貨幣ノ
問題ガ相當論議サレテ、「イギリス」ノ如キ
ハ「マクミラン」委員會ト云フ大キナ委員會
ヲ作ツテ之ヲ討議シ、國際聯盟ニ於テモ幾
ツカノ委員會ヲ作ツテ之ヲ討議ヲシテ、隨
分詳細ナ報告書モ出テ居ルコトモ御承知ノ
通リデアリマス、又我ガ國ニ於テ明治三十
年ニ金本位制ヲ採用スル時モ、是モ相當朝
野ノ權威者ヲ網羅シタ大キナ委員會ヲ作ツ
テ、約二箇年ニ亙ツテ審議ヲサレテ、厖大
ナ報〓書ガ出テ居リマス、左樣ナ譯デアリ
マスカラ、是ハサウ輕々シク斷定スベキモ
ノデハナイ、昨日ノ賀屋サンノ御聲明ハ、
善ク言ヘバ大膽ト申シマセウカ、惡ク言ヘ
バ稍、輕率ノ謗ヲ免レナイノデハナイカト云
フ風ニ私ハ考ヘマス、一體此ノ問題ヲ御決
定ニナルニ付キマシテ今申上ゲルヤウニ、
何レ其ノ內ニ貨幣法ノ改正案ヲ御出シニナ
ルト御言明ニナツテ居ルノデアリマスカラ、
ソレニ對シテハ最モ愼重ナル態度ヲ執ツテ
願ヒタイト思ヒマス、私ノ想像スル所ニ依
リマスト、賀屋サンノ昨日ノ御聲明ノ裏面
ニハ極端ナル「ブロック」經濟ヲ豫想シテ
居ラレルノデハナイカトモ私ハ考ヘマスガ
我ガ國ノ皇謨ノ實現ノ上カラ考ヘマスト、
戰後ニ於テハ如何ナル形ヲ取ルカハ豫想出
來マセヌケレドモ、私ハ或ル程度ノ世界經
濟ガ行ハレルモノト思フノデアリマス、卽
チ我ガ國ノ皇謨ト申シマスレバ、萬國ヲシ
テ各〓其ノ所ヲ得シメ、生民ヲシテ各〓其ノ堵
ニ安ンゼシムルト云フコトデアリマス、シ
テ見マスト外ノ國々ガ「ブロック」經濟ヲ主
張シタリ、英米ノ如ク國際的搾取ヲ主トシ
テ居ル國柄ノ考ヘ方トハ、我ガ國ハ違フノ
デアリマス、我ガ國ノ皇謨ヲ實現スルト云
フ場合ニハ、極端ナル「ブロック」經濟ガ行
ハレル筈ハナイ、ドウシテモ或ル程度ノ世
界經濟ガ、要素ハ違フデアリマセウガ、行
ハレルモノト見ナケレバナラヌト思フノデ
アリマス、私共皇謨ノ解釋上サウ考ヘマス、
隨テソレ等ノ點ニ付テハ深甚ナル考慮ヲ拂
ハレズシテ、此ノ管理通貨ト云フヤウナコ
トヲ安易ナ心持ヲ以テ決定ヲナサツテ下サ
ツタリ、或ハ御考ヘ下サルト云フコトハ、
相當ニ御注意ヲ拂ツテ願ヒタイト思ヒマス
先ヅ其ノ點ハ此ノ程度ニシテ置キマシテ、
次ニ本案ニ關聯シテ伺ヒタイコトハ、本案
第一條、第二條ニ於テ新日本銀行ノ性格ト
云フモノハ非常ニ公益性ヲ增スコトニナリ
マス、是ハ尤モナコトデアツテ、私ハ是ガ
本案改正ノ重點デアルト考ヘテ居リマス、
是ハ全然結構ナコトト思ヒマスガ、併シ
方ニ今日現在ノ金融機關ノ情勢ヲ見マスト、
民間ノ金融機關ハ〓ト致シマシテ、政府內
部ニ於ケル金融機關ニ於キマシテモ、例へ
バ預金部ノ如キ、殆ド此ノ本來ノ性質ト變
リマシテ、短期金融市場ニマデ手ヲ出スヤ
ウニナツテ居リマス、是ガ善イカ惡イカハ
別問題トシテ、是ハ現實ノ事實デアリマス、
卽チ一昨年ノ秋ノ如キハ一例ヲ申上ゲルナ
ラバ、金融逼迫シタ際ニ預金部ガ自ラ發
動シテ、興銀ヲ通シテ五千万圓ノ「コールㄴ
ヲ市場ニ放出シテ居ルト云フヤウナ、純然
タル短資ノ金融機關ノ働キサヘモ致シテ居
ルヤウナ狀態デアリマス、其ノ他ニ遞信省
ニ於テハ簡易保險、是モ積立金ハ非常ニ澤
山ノモノニナツテ居リマス、又各省ノ共濟
組合ト云フヤウナモノモ、近來ハ相當ナ資
金ヲ以テ、其ノ運用ヲ致シテ居リマス、是
ハ必ズシモ日本銀行總裁ヲ通ジテ、統一的
ニ有機的ナ關聯ヲ持ツテ居ルト云フ譯デモ
ナイノデアリマス、一ニ大藏大臣ノ裁量ニ
依ツテ行ハレルノデアリマスカラ、成程大
藏大臣ガ總テヲ統制シ、總テニ有機的ノ關
聯ヲ持タシメヨウト云フコトデ出來ナイ
コトモナイト云フコトモ言ヒ得ルカモ知レ
マセヌ、併シナガラ總テノコトハ大藏大臣
一人デヤラレルモノデナクシテ、大藏省内
ニモ色々ノ部局ガアリマス、昨日ノ如キハ
現ニ大藏大臣御自身モ申サレタ通リニ、卽
チ部局ハ一、二ノ部局ヲ除イテハ殆ド金
融ニ關係ノナイ部局ハナイト言ハレル位
ニ、金融ニ關係シタ部局ハ各方面ニ分レテ
居ル、ソレカラ尙ホ私ノ考ヘル所ニ依ルト、
金融ヲ適當ニ調整致シ、資金ノ配分ヲ合理
的ニ致スト云フ上ニ於テハ、ドウシテモ金
融ト生產ノ關係ヲ有機的ニ關聯セシメナ
ケレバ旨ク行カナイト思ヒマス、然ルニ生
產ノ如キハ主トシテ商工省ガ之ニ當ツテ居
ルノデアリマシテ、大藏省ハ間接ノ又間接
ト云フ關係ニ於テ、生產ノ統制ニ當ツテ居
ルダラウト思ヒマス、此ノ關聯ヲ、最モ有
機的ニ關聯スルノ方法ヲ御考ヘニナラナケ
レバ、私ハ中々旨ク行カヌノヂヤナイカト、
斯樣ニ思フノデアリマスガ、唯昨日大藏大
臣ノ御話ノ中ニモ一寸アリマシタガ、左樣
ナコトハ大藏大臣竝ニ次官ハ、各方面ノ部
局若クハサウ云フ關係ノモノヲ巧ク統制ヲ
シテ、監督ヲスレバ出來ルダラウト云フヤ
ウナ御意見デアリマシタガ、今日ハ已ムヲ
得ズシテ此ノ官制ノ上カラハサウスル外ハ
ナイノデアリマセウ、併シナガラ私ハソレ
ハ言フベクシテ行ヒ得ナイコトデ、假リニ
出來タト致シマシテモ、痒イ所ニ手ガ屆カ
ナイヤウナ不滿足ノ結果ニ陷リハシナイ
カ、今日官界ノ新體制トカ、或ハ官制ノ根
本的改正トカ言ハレルニノハ、今日ノ現狀
デハ、サウ云フコトハ旨ク有機的ニ連絡ガ
取レナイト云フ所カラ、サウ云フ議論ガ出
テ來ルノデハナイカト思ヒマス、今日金融
機關ノ中心トナルベキ中央銀行ノ改組ヲサ
レタ結果、金融ノ統制資金ノ配分ハ一ニ
政府ノ政策ニ依ツテ決メラレルコトニナツ
テ居ル以上ハ、其ノ內部ノ金融機構ニ關ス
ル統制ト云フモノハ、極メテ必要ナ狀態ニ
ナツテ來タノデアリマスカラ、此ノ點ニ於
テ何等カノ新構想ヲ加へラレルコトハ必
要ナコトデハナイカト斯樣ニモ考ヘルノデ
アリマス、其ノ點ニ向ツテ大藏大臣ノ御考
ヘヲ承リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=2
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003・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 預金部ノ資金ノ放出ノ御
話ガアリマシタガ、大藏大臣ガ單獨ニヤ
ルト云フ御話デアリマシタガ、實情ハサウ
デナイノデアリマシテ、預金部ノ資金ガ短
期市場ニ出タノハ昭和十一年暮ガ初メデア
リマシテ、當時馬場大藏大臣ノ下ニ私ガ屬
僚ト致シマシテ、私ノ發議ガ出マシタ、而モ
日本銀行ト緊密ナ連絡ヲ執リ、同ジ意見ト
ナリマシテ、サウシテ興銀ヲシテヤラセマ
シタ、無論馬場大藏大臣ガヤラレタコトデ
アリマスガ、實ハ私ガヤリマシテ、常該部
局ノ者ガチヤント其ノ考ヘデ、大臣モ聽キ
ナガラ日本銀行ト連絡ヲ執リナガラヤル、
チヤント部局ハ部局デヤルト云フコトニ出
來テ居リマシタ、產業資金ノコトデアリマ
スガ、是ハ此ノ席上デ申上ゲタノデアリマ
シテ、事變以來事變擴大ト決マリマシテ、
其ノ決マツタ晩ニ私ガ考ヘタノハ臨時資金
調整法デアリマス、是ハ何カト云フト產
業ト金融ノ合一デアリマス、戰時ノ產業ハ
唯何デモ生產力ヲ起セバ宜イト云フ單純ナ
モノデハアリマセス、殊ニ戰時ニナル前ニ
近衞內閣ガ出來マシタ時ニ、私ハ產業政策
ノ一ツトシテ產業擴充ノ具體的方策ト云
フコトヲ申シマシタ、世間デハ具體的方策
ト云フコトヲ拔カシテ居リマスガ、私ハ昭
和十一年以來世間ノ樣子ヲ見マシテ、唯產
業擴充トサウ云フモノデハアリマセヌ、產
業擴充ニ必要テ設備資材ニ限リガアル、然
ルニ生產力ヲ擴充シナケレバナラヌ、玆ニ
於テ國家ノ要請ニ最モ應ズルヤウニ、產業
計畫ヲ決メテ、ソレニ資材、資金、勞力ヲ集
中サセナケレバナラヌト云フ考ヘカラ、產
業擴充ノ具體的方策ト云フコトヲ三大經濟
政策ノ一ツノ眼目トシテ時ノ閣議ニ於テ、
決定致シマシタ、詰リソレデアリマシテ、
全金融ガ戰費ノ調達ト國家ノ要請スル生產
力擴充詰リ產業政策ニ卽應スルト云フ根本
的ノ考ヘ方ガ當時カラ一貫シテ居リマス、
ズツト今日マデ參ツテ居リマシテ、ソレ以
來二百五十億ノ產業擴充資金ヲ僅カニ四年
餘リノ間ニ投下シ得マシタノハ、サウ云フ
政策ヲ歷代政府ガ執リマシタ結果、全ク產
業ト金融ガ合一的デアルト云フ大ナル政策
ガ執ラレマシテ、結果論トシテハ實ニ今マ
デ例ヲ見ザル飛躍的ノ產業擴充ヲ致シテ居
ル、一面ニ不必要ナル方面ニハ金ヲ出サヌ、
必要ナル方面ニ重點的ニ行クト云フコトデ
アリマシタ、而モ私共ガ希望シテ居リマシ
タノハ產業計畫ノ具體策ト云フモノガ出
來ナケレバナラナイ、如何ナル種類ノ產業
ヲドノ程度ニ擴張スルカ、ドンナ好イ、必
要ナル產業デモソレヲ無制限ニヤルト云フ
譯ニ參リマセヌ、又比較的輕イト思ハレル
產業デモ或ル程度ヤラナケレバナラヌト云
フコトガアルノデアリマス、併シ吾々ノ計
晝經濟ガ未發達デアリマシテ中々サウ云フ
產業計畫ガ出來ナイ、ソコデ私ハ資金調整
法ヲ作ル時ニ、私自ラ尋常一年生的ノヤリ方
ト云フコトヲ言ツテ居リマスガ、是ハドウ
云フヤリ方カト云ヘバ、產業ノ種類ヲ數種
類ニ分ケテヤツテ居ル、是ハヤル時ニハ相
談ヲ要スル、是ハヤラヌデモ宜イ、此ノ分
ケ方ガ實ニ幼稚ナノデアリマシテ、ドノ產
業デモ、此ノ種類ハ何處マデ擴ゲテモ宜イ
ト云フコトハナイ、皆國家ノ生產總力ト云
フモノノ調和ヲ保ツテ行ク上ニ考慮シナケ
レバナリマセヌ、ソコマデノ產業計畫ガ出
來マセヌカラ、已ムヲ得ズサウ云フ方法デ
ヤリマシタ、產業ノ具體的企業計畫、國家
ノ具體的政策ガ決マルノヲ待ツテ皆ソコニ
集メテ行カウト云フ所ニ非常ナ熱心ヲ以テ
今日マデ來テ居リマス、產業ト金融ガ卽應
スルコトガ卽チ政策其ノモノデアリマス、
ソレニハ金融全體ガ殆ドサウナルノデアリ
マシテ、之ヲ一部局ニ統合シタ所デ出來ル
モノデハアリマセヌ、詰リ昨日モ他ノ質問
ニ申シマシタガ、商工省ナリ、農林省ナリ或
ハ交通關係ナリ、是ハ產業計畫ト申シマシ
テモ、商工省バカリデハアリマセヌ、ソレ
ニ金融部門ガ組合ハサツテ行クコトガ必要
ナノデアリマシテ、一ツニ集メナケレバ
是ハ何ニモナリマセヌ、私ハ其ノ意味ニ於
キマシテ、產業ト金融ヲ統合スル爲ノ大キ
ナ機關ヲ拵ヘルナント云フコトハ毛頭考ヘ
テ居リマセヌ、今ノ商工省ヤ大藏省ガ農
林遞信、鐵道ト云フモノト一クサリニナ
ラナケレバイカヌ、斯ウ考ヘテ居リマス
ソレガ運轉出來ヌヤウナコトナラバ、到底
國家ノ使命ヲ達成スルコトハ出來ナイ、斯
ウ思ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=3
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004・武田徳三郎
○武田委員 賀屋サンノ御意向ハ分ツテ居
リマス、前段ノ御話ハ、私ガ引例致シタノ
ハ興業銀行ニアラズシテ、大藏省ノ預金部
ヲ引用致シタノデアリマス、興業銀行ハ大
藏省ト資金的ノ緊密ナル連絡ヲ取ツテ居ル
コトハ申上グルマデモナイ、是ハ私モ承知
シテ居リマス、私ハ獨リ預金部ヲ議論ノ對
象トシタ譯デハナイノデアリマス、一ツノ
引例デアリマスルガ、詰リ預金部ノ運用ハ
今日ノ日本銀行トハ關聯ナク出來テ居ルト
思ヒマス、其ノ他遞信省ノ簡易保險ノ運用
モ日本銀行トハ關聯ナシニ-內部的ニ如
何ナル關聯アルカハ知リマセヌケレドモ、
表面ニ現ハレタル所ニ於テハ、關聯ナシニ
行ハレテ居ルト思ヒマス、又先程申上ゲタ
通リニ、各省ノ共濟組合モ其ノ通リデアル
ト思ヒマス、今日此ノ金融ヲ統制シヨウト
云フノガ、此ノ新日本銀行法案ヲ御提出ニ
ナツタ主ナル理由ノ一ツデモアルノデアリ
マスカラ、此ノ金融ヲ統制スルニ於テハ、
左樣ニ獨立-ト申スノハ適當デナイカモ
知レマセヌガ、左樣ナ日本銀行ニ統一サレ
ナイ分立シテ居ル各種ノ金融機關ガアル
ガ、併シナガラ實際ノ要求ハ總テノ金融ヲ
一ツノ下ニ統一シテ國家目的ニ副フヤウニ
運用シナケレバナラヌト云フ意味ニ於テ
ハ此ノ儘デハ不便デハナイカ、玆ニ何等
カノ構想ヲ必要トシハスマイカ、斯ウ云フ
コトヲ御尋ネ致シタノデアリマス
ソレカラ今ノ興業資金ノコトニ付キマシ
テハ、私ハ大藏省ト商工省ヲ合併セヨト云
フ意味デ申上ゲテ居ルノデハナイノデアリ
やっく、之ニ深キ關聯アルコトハ今賀屋サン
ノ御話ニ依ツテモ分ツテ居ル、是ハ何人モ
分ツテ居ルコトデアリマス、併シナガラ產業
資金ノ融通ト生產ノ計畫トガ適當ニ合理的ニ
「マッチ」シナイガ爲ニ、現在種々ナル不便ヲ
生ジテ居ル、例ヘバ或ル事業ヲ起ス爲ニ商
工省ニ願書ヲ出ス、モノニ依ツテハ同時ニ
又大藏省ニモ出スコトニナツテ居ル、或
又商工省ダケデ出願スルコトニナツテ居ル
モノモアル、所ガ商工省ハ宜イト言ツタケ
レドモ、大藏省ニ行ツテ問ヘタ、或ハ大藏
省ノ方デハ宜イト言ハレタガ商工省ノ方デ
ハソレハイカヌト云フコトデ、其ノ許可スル
カ否カト云フ決定ガ非常ニ長イ時間掛ツテ居
ルノガ今日ノ現狀デアリマス、政府モ手古摺ツ
タト見エテ、今後ハ許可認可制ヲ一定ノ時間ニ
定メルト云フ御考ヘヲシテオイデニナルヤ
ウデアリマスガ、併シソレヲ統一シテ決メル
ト云フ何等カノ組織カ機關ガナケレバ、ド
ウシテモ手間取ルノデス、私ハサウ云フ現
實ノ事實ヲ無視シテ、大藏省ハ大藏省、商
工省ハ商工省デヤツテモ、詰リ許可スル產業
ト、許可シナイ產業ト、或ハ許可シテモ制限
スル產業トヲ先ニ決メテ置イテソレニ則ツ
テヤルノダト大藏大臣ハ言ハレルケレド
モ、ソレナラバ今マデサウ云フ不便ガ生ズ
ル筈ガナイ、現ニ最近マデ、又現在デモサ
ウダガ、實際產業ノ衝ニ當ツテ居ル者ハ非
常ニ不便ヲ感ジテ居ルノデアリマス、又政
府ノ計畫モ、愈〓、戰爭ガ斯ウ云フ重大ナ段階
ニ達スルト致シマスレバ、益〓計畫經濟的ノ
方向ニ進ムト云フコトハ已ムヲ得ナイノデ
アリマセウ、サウ致シマスルナラバ、金融
ト生產ト云フモノヲモツト有機的ニ關聯ス
ル方法ヲ更ニ工夫サルベキ必要ガアルノデ
ハアルマイカ、斯ウ云フ意味デ御尋ネシタ
ノデアリマス、其ノ點ニ付テ今一應大藏大
臣ノ御意見ヲ明確ニ承リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=4
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005・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 先程興銀ヲ通ジテト申シ
マシタノハ、御話ノアツタヤウニ、預金部
資金ヲ興銀ヲ通ジテ出シタコトハ、御指摘
ノ事實ト一致シテ居リマス、ソレカラ企業
ニ付キマシテハ、他ノ監督法令ヤ色々ナ立
場カラ、商工省ナド色々ナ關係ガアリマセ
ウガ、其ノ企業ニ資金ヲ出スヤ否ヤト云フ
コトハ臨時資金調整法デ各省集マツテ決メ
テ一本デ參ツテ居リマス、其ノ觀點デハソ
レデ濟ンデ居リマスガ、近來ハ世相ガ複雜
デアリマスカラ、他ノ色々ナ取締ノ觀點カ
ラ來ルノハ別デアリマスガ、出來ルダケ緊
密ナ連絡ハ執リタイノデアリマス、唯宜シ
イカ、宜シクナイカ、是ハ中々單純ニ行カ
ヌト思ヒマス、是ハ色々御不便ナコトガア
リマシタラ、又具體的ノ御指示ヲ戴キマス
レバ〓究シテ申上ゲマスガ、各種ノ觀點カ
ラ見ナケレバナリマセヌノデ、唯宜イカ惡
イカト云フ風ニハ行キマセヌガ、資金關
係-企業ニ資金ノ供給ヲスルヤ否ヤト云フ
コトハ、其ノ企業ガ國家的ニ必要デアル
カナイカ、又ドノ程度ニヤルカト云フコト
ハ臨時資金調整法ノ委員會デ關係省皆集マ
リマシテ、其處デ決定ヲ致シテ居リマス、
又是ハ議會ノ御審議ハ願ハナカツタノデア
リマスガ、金融統制會ヲ作ルコトニ致シテ
居リマシテ、民間金融ノ部面ハ其處デ統制
的ニ、計畫的ニ參リタイト思ツテ居リマス、
其ノ外ニ預金部資金トカ、簡易保險資金所
謂政府資金ガ存在致シマスシ、政府ノ共濟
組合資金モ亦其ノ一ツニ擧ゲテ宜イト思ヒ
マス、此ノ全體ノ統制ハ大藏省デ致シテ行
キマス、詰リ其ノ統制自體ノ衝ニ私ガ當ラ
ナケレバナラヌ譯デアリマス、政府資金ノ
主ナモノハ預金部資金、簡保資金、細カイ
モノハ政府共濟資金等デアリマスガ、民間
ハ一丸トシテ金融統制會、是ガ統制體系デ
ゴザイマシテ、此ノ統制會ハ今カラ作ルノデ
アリマス、是ガ出來タ後ニハ全體ノ統制樣
相ハソレダケ變ハルデアラウト思ヒマス
ソレカラ今ドウ云フモノヲ作ルカト云フ
御質問デアリマスガ、私ハ大筋ノコトヲ前
ニ申上ゲタノデ、成ベク國民個々ニ不便ヲ
掛ケナイヤウニ、出來ルダケ之ヲ早ク纒メ
ルト云フコトハ旣ニ考ヘテ居リマスカラ、
是ハ〓究ガ出來次第改善シテ參リタイト思
ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=5
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006・武田徳三郎
○武田委員 時間モ極メテ切迫シテ居リマ
スノデ、マダ多少不滿足ナ點モアリマスガ、
其ノ點ハ此ノ程度ニシテ次ノ質問ニ移リマ
ス、政府ハ凡ユル方法ヲ以テ產業資金ノ融
通ヲ便利ニ豐富ニスルコトニ御苦心ナサツ
テ居ルコトハ能ク分ツテ居ルノデアリマス、
本改正案ヲ御提出ニナツタコト、又戰時金
融金庫ヲ御提案ニナツタノモ皆其ノ趣意ニ
出デテ居ラレ、私モ其ノ御趣意ニハ贊成デ
アリマスガ、斯樣ニ產業資金ヲ迅速ニ豐富
ニ供給スルコトニ御苦心ニナツテ居ル結
果、ドウ云フ現象ヲ今日ノ日本經濟界ニ生
ジテ居ルカト云フト、玆ニ憂フベキ現象ガ
一ツアルト私ハ思フノデアリマス、產業資
金ガ政府ノ御努力ニ依ツテ漸次增シツツア
ルコトハ事實デアリマスガ、ソレニ伴ウテ
生產ノ增加ハ割合ヲ保ツテ居ラヌノデアリ
マス、政府ガ努力サレテ、產業資金ガ增加
スル、產業資金ノ增加ニ伴ツテ生產ガヨリ
良キ比例ヲ以テ增加シテ居ルト云フコトデ
アリマスルナラバ、是ハ實ニ萬全デアリマ
ス、少クトモ戰前ト同ジ割合ニ產業資金ト
生産ガ增加シツツアルナラバ、尙ホ恕ス
ベキデアリマス、併シ實際ノ結果ハ、產業資
金ガ政府ノ非常ナ苦心ヲ以テ供給ヲ增加サ
レテ居ルニ拘ラズ、其ノ半面ニ於テ生產ハ產
業資金ノ割合ニ比シテ減ジツツアルヤウニ
私ハ思フノデアリマス、此ノ事實ヲ明カニ
スル爲ニ、參考資料トシテ實ハ其ノ關係ヲ
御調ベ願ツテ居ルノデアリマスケレドモ、
マダ參考資料ヲ頂戴致シマセヌカラ、數
字的ニ確的ニ申上ゲルコトハ出來マセヌ
ガ、私ノ種々ナル經濟資料カラ想像スル所
ニ依リマスト、其ノ割合ハ順次低下シツツ
アルヤウニ思ハレルノデアリマス、產業資
金ノ增加ニ生產ガ伴ハヌト云フコトハ、言
葉ヲ換ヘテ言ヘバ、一商品ノ單位當リニ生
產資金ガ餘計要スルト云フコトニナルノデ
アリマス、同一ノ商品ニ生產資金ヲ多ク要
スルト云フコトハ、其ノ生產費ガ增スト云
フコトデアリマス、隨テ此ノ現象ヲ其ノ儘
ニシテ置クト云フコトハ、低物價政策トモ
矛盾スルコトニナルノミナラズ、生產ノ增
加ヲ最モ急務トスル場合ニ於テ、政府ハ生
產擴充、生產擴充ト云フコトヲ頻リニ言ハ
レテ、又何人モ之ニ全力ヲ注イデ居ルノデ
アリマスガ、併シ生產擴充ト生產ノ增加ト
ハ必ズシモ觀念ガ同ジデハアリマセヌ、生
產擴充ヲシテモ、生產ガソレニ伴ハヌト云
フコトデアレバ、是ハ經濟界ニ於ケル重大
ナル病氣ガ其處ニ現ハレテ居ルト言ハナケ
レバナラヌノデアリマスルカラ、其ノ病源
ヲ診察シテ、之ニ對應スル處方箋ヲ御作リ
ニナルト云フコトガ大藏大臣ノ責任デアル
ト思フノデアリマスガ、其ノ原因ハ如何ナ
ル點ニアルカ、又ソレニ向ツテ如何ナル對
策ヲ御持チニナルカト云フコトヲ伺ヒタイ
ト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=6
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007・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 世間ニモ生產ガ減退スル
ト云フ話ガアリマスガ、是ハ實ハ私ハ世間
デハ結論ヲ御付ケニナル材料ガナイト思ヒ
マス、ト申シマスノハ、現在ハ國防力ニ直
接ノモノハ無論、間接デモ重大ナ關係ガア
リマスモノニ付キマシテハ、是ハ日本ノ戰
鬪力ヲ現ハス其ノモノト言ツテモ宜イコト
デアリマスカラ、一切發表ヲ致シマセヌノ
デアリマス、隨テ日本ノ重要ナル生產方面
ノ生產成果ガ如何デアルカト云フコトハ
是ハ分ラナイノガ本當デアリマス、分リマ
スノハ恐ラク輕工業トカ、サウ云フ方デア
リマセウガ、是ハ戰時ニ於テ原料ノ關係、
又勞力デアルトカ資材トカ云フモノヲ國防
產業等ニ轉用致ス爲ニ、寧ロ生產制限ヲ致
シテ居ルノデアリマス、隨ヒマシテサウ云
フ生產ハ非常ニ減ジテ居リマス、サウ云フ
方ハ割合ニ世間ニ分ルノデアリマスガ、今
發表シテアリマス數字其ノ他ニ依ツテ之ヲ
推斷スルコトハ困難デアラウト思ヒマス、
私ハ必ズシモ世間ノ說ノ如ク日本ノ生產力
ハ減ジテ居ラナイト思ヒマス、若シモ是ガ
減ジテ居ルヤウデアリマシタラ、アアヤツ
テ支那事變ヲヤリ、北方ノ護リヲ安全ニシ、
而モ南方ニアレダケノ大作戰ヲスルナドト
云フコトハ出來ヌコトデアリマシテ、私ハ
生產力ハ非常ニ增大シテ居ルト申上ゲテ宜
イト思ヒマス、唯色々ノ場合ニ御耳ニ入ル
コトガアルカト思ヒマスルガ、只今デハ御
承知ノ如ク物資ガ中々不自由デアリマスノ
此ノ不自由ハ私ハ寧ロ斯ウ解シテ居ル、物
資ガ少クナツタト云フヨリモ、物資ノ用途
ガ非常ニ殖エタ爲ニ或ル方面ノ必要ニ對シ
テハ不足勝チデアル、サウ云フ關係カラ生
產ガ思フヤウニ伸ビナイト云フ點ガヨク言
ハレルコトデアリマスガ、是ハ寧ロ金融方
面ニアラズシテ物資方面ノ問題デアルノデ
アリマス、モウ一ツ斯ウ云フ考へガ出來マ
ス、近來ハ國防工業ガ主トシテ發達スル、
是ハ多ク重工業部門デアリマス、重工業ト
輕工業ハ、其ノ生產品ノ價格ニ比シテ、固
定資本ガ非常ニ重工業ニ多ク要スルノデア
リマス、隨テ總テノ工業ヲ生產資本ト製品
トノ割合デハ論ズルコトノ出來ナイ點ガア
リマス、今ハ最モ多ク資本ノ要ルヤウナ方
向ニ性質上事業ガ向イテ居ル、デアリマス
カラ、一〓ニ生產力ガ低下スルト云フ議論
ハ私ハ餘リ贊成ヲ致シマセヌ、唯玆ニ注意
ヲスベキハ、昨日モ此ノ委員會デ申上ゲタ
カト思ヒマスガ、國家ノ必要ナ產業ナラバ
少々算盤ハドウナツテモヤラナケレバナラ
又、又其ノ通リデアルノデアリマスガ、其
ノ結果能率ヲ上ゲ、資金「コスト」ヲ下ゲテ
巧ク經營スルト云フコトガ疎カニサレルコ
トガ人情ノ上カラ起リ易イ、一番根本ノ大
切ナル點ハ私ハソレデアルト思フ、計畫統
制經濟ト云フモノニ一番是ガ恐ルベキ點デ
アリ又注意スベキ點デアルト思ツテ、此ノ
委員會デアリマシタカ私ハサウ申シタノデ
アリマス、其ノ點ヲ私モ注意致シテ居リマス、
併シ是ハ大體申シマスト、所管カラ言ヘ
バ或ハ商工大臣デアルトカ、遞信大臣デ
アルトカ、農林大臣トカ云フ方面ニ屬スル
コトデアルノデアリマス、無論私モ全體ノ
コトトシテ之ヲ疎カニ致サズ十分ニ考ヘタ
ト思ヒマス、サウ云フ考ヘ方ノ片鱗ハ戰
時金融金庫ニ於キマシテモ、彼處デ金融ヲ
致シマシタ事業ノ檢査ヲスルト云フ規定ガ
アリマスガ、是等ガ若シモ、履違ヘラレ
テ、是ハ國家ガ全力ヲ入レテ援助スルモノ
デアルカラ、彼處カラ借リタモノハ貰ツタ
ト同ジダト云フ考ヘデ、能率ヲ惡ク經營サ
レルト云フコトニナツテハ困ルト思フ、併
シナガラ一方出來ルダケ節約シテ行クト云
フコトモ大切デアリ、眞面目ナ經營ト云フ
コトモ大切デアリマスカラ、ソレ等ノ點ヲ
考慮シテ是ガ檢査ニ當ルコトニナツテ居リ
やく、又サウ云フ見地カラバカリデナク、
成ベク少イ資材ヲ以テ少イ勞力ヲ以テ大キ
ナ生產ヲ上ゲナケレバナラヌト云フノガ、
今國家ノ至上ノ要求デアルノデアリマス、
商工省其ノ他ニ於キマシテモ、其ノ意味
デ能率增進ト云フコトニ格段ノ注意ヲ拂ツ
テ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=7
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008・板谷順助
○板谷委員長 武田サン、アナタニ一ツ御
願ヒガアリマスガ、別ニ言論ヲ制限スルト
云フ意味デモアリマセヌガ、ドウカ議論ニ
亙ラヌヤウニ、成ベク質問ノ要點ダケヲ御
願ヒ致シマス、マダアトノ方モ相當控ヘテ
居リマスカラ、アナタニハ相當ノ時間ヲ許
シタ積リデアリマスカラ、ドウゾ簡單ニ御
願ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=8
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009・武田徳三郎
○武田委員 今大藏大臣ノ御話ノ如クンバ
洵ニ仕合セノコトト存ジマスガ、唯私ハ其
ノ軍需生產ノ增加シテ居ルコトハ、數字的
ニハ承知シマセヌケレドモ、、ソレハ想像
ニ難クナイト思ツテ居リマス、唯私ガ全體
カラ見テ生產資金ノ增加ニ生產ガ逆行シテ
居ルヤウナ事實ガアツテハ大變デアル、成
程大藏大臣ノ仰シヤル通リ、吾々ガソレヲ
確的ニ摑ムダケノ資料ヲ今日ハ持ツコトガ
出來ナイノデアリマスカラ、唯大藏大臣ノ
言明ニ信賴スルヨリ仕方ガアリマセヌガ、
獨リ軍需工業ト言ハズ、生產資金ノ增加ニ
伴ツテ生產モ共ニ進ミツツアル、斯樣ニ承
知シテ宜シイノデアリマセウカ、是ハ大藏大
臣ノ言明ニ信賴スルヨリ仕方ガナイノデア
リマスカラ、簡單ニ一言御答ヘヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=9
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010・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 左樣デゴザイマス、唯私
ハ各工業部門ノ一々ニ付キマシテ只今申上
ゲルコトハ出來マセヌ、國家全體トシテハ
十分ニ增シツツアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=10
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011・武田徳三郎
○武田委員 次ニモウ一ツ伺ヒタイコトガ
アルノデアリマス、本案ノ第二十八條ヲ拜
見致シマスト、其ノ「日本銀行ノ業務ニ協
力セシムル爲必要ナル命令ヲ爲スコトヲ
得ト云フ意味ノ中ニハ、必要ニ應ジテ普
通銀行ニ公債ノ消化ヲ命ズル、詰リ日本銀
行ノ引受ケタル公債ノ買入ヲ命ズルコトヲ
得ト云フヤウナ意味モ當然此ノ中ニ含マレ
テ居ルコトト思ヒマス、銀行局長ノ御說明
ノ中ニモサウ云フ意味ガ含マレテ居ルヤウ
ナ御說明ガアツタヤウニ伺ヒマス、又常識
的ノ解釋トシテモアルカト思フノデアリマ
ス、サウシマスルト、公債ノ消化ガ强制消
化ノ方面ニ一歩ヲ踏出シタト見テモ宜イヤ
ウニ思フノデアリマス、又私ハソレガ必要
デナイカト思フノデアリマス、昨日大藏大
臣ガ數字的ニ御說明ニナツタ上ニ於キマシ
テモ、昭和十七年度ノ公債消化資金トシテ
豫定サレタモノハ百六十億、ソレニ生產資
金トシテ豫定シテ居ルモノハ六十億デア
ル、公債ノ方ガ百六十億、生產資金ガ六十
億ト云フト、二百二十億カラノ資金ヲ玆ニ
蓄積シナケレバナラヌト云フコトハ明白デ
アリマス、又是モ其ノ見當ニ行クデアラウ
ト思ヒマス、サウシマスルト、今年ノ貯蓄
目的ヨリハ明年ノ貯蓄目的ハ非常ニ高イ數
字デアルコトモ是ハ免レナイノデアリマス、
サウシマスルト大藏大臣ガ機會アル每ニ力
說サレル如ク、日本ノ戰時經濟ノ運營ハ一
ニ國民ノ貯蓄ガ旨ク行クカ行カヌカニ掛ツ
テ居ルト云フコトモ、是等ノ上カラ明白デ
アリマス、他ノ機會ニ大藏大臣ハ强制貯蓄
ハ斷然ヤラヌト云フコトヲ再三繰返サレテ
居ルノデアリマスガ、其ノ點私ハモウ一度
伺ハナクテハ非常ニ心配ダト思フノデアリ
マス、旣ニ公債ノ消化モ强制消化ノ方面へ
一步ヲ踏出シタト同ジヤウナ意味合ニ於テ
貯蓄モ亦强制貯蓄ノ方面ニ一步ヲ踏出スベ
キ段階ニ今日ハ達シテ居ルノデハナイカ、
斯樣ニ私ハ考ヘルノデアリマス、勿論强制
貯蓄ト言ヒマシテモ色々ノ方法モアリ、强
弱モアリマセウガ、ドウシテモ其ノ方面ニ
向ツテ行カナケレバ今日ノ現狀デハ困難デ
ハナイカ、長イ目デ見レバ政府ノ放出資金
ガ軈テ國民ノ貯蓄トナルト云フ論理ハ、昨
日モサウ云フ意味ノ質問應答ガアリマシタ
ガ、私ハ異論ハアリマセヌ、ケレドモ時間
的ニ於テ其處ニ非常ナ相違ガ出テ來ルノデ
アリマス、時間的ニ相違ガ出ルト云フコト
ハ、其ノ資金ガ長ケレバ長イ程其ノ間ニ資
金ノ運轉囘數ガ多クナル、資金ノ運轉囘數
ガ多クナレバ浮動購買力ガ增スト云フ結果
ニナルコトハ私ガ申上ゲルマデモナク明白
ナコトデアリマスルカラ、時間的ノ相違ト
云フコトモ輕ク見ルコトハ出來ナイノデア
リマス、ソレ故ドウシテモ愈〓此ノ大東亞戰
爭ガ起キテ明年度ノ臨時費トシテ百八十億
ト云フ厖大ナ數字ヲ吾々ガ承認シナケレバ
チラヌヤウナ今日ノ事態ニ於キマシテハ
何等カ玆デ强制貯蓄ノ方面ニ少クトモ一歩
ヲ踏出スダケノ御用意ガアツテ然ルベキデ
ハナイカ、ソレデ此ノ頃我ガ國ノ國民貯蓄
ハ四百二十億乃至四百五十億ダト云フコト
ヲ大藏大臣ガ增稅委員會デスカ、豫算總會
カデ御言明ニナツタト云フコトヲ新聞デ承
知シマシタガ、大藏大臣ハ其ノ貯蓄ノ構成
ガ如何ナル割合ニ出來テ居ルト御考ヘニナ
ツテ居ルノデアリマセウカ、私ノ知ル限リ
ニ於テハ一昨年ノ「イギリス」ノ國民貯蓄ノ
構成ハ勞働賃ニ於テ四〇%、俸給ニ於テ二
十%ト云フ數字ヲ發表シテ居ルノヲ承ツテ居
ルノデアリマス、「イギリス」ト我ガ國ハ自
ラ狀況モ違ヒマスケレドモ、四百二十億乃
至四百五十億ト云フ大體ノ國民貯蓄ノ總額
デアルト言ハレルナラバ、「イギリス」通リ
ニハイカヌトシテモ、趨勢ト致シマシテハヤ
ハリ其ノ國民貯蓄ノ大イナル部分ガ賃金デ
アリ、俸給デアル、稍〓「イギリス」ノ趨勢ニ似
寄ツタ結果ヲ見テ居ルノデハナイカ、斯ウ想
像スルノデアリマス、若シ果シテサウデアリ
マスルナラバ、此ノ國民貯蓄ヲ適當ニヤラ
スト云フコトハ賃金ト俸給ニ重點ヲ置カナ
ケレバナラヌト思フノデアリマス、勿論今
日ハ各工場職場ニ於テ其ノ職工等ニ貯蓄奬
勵ノ組合ヲ作ラスヤウナコトニ御努力ニナ
ツテ居リマス、併シナガラ奬勵ト云フ程度
デハイカヌノデナイカ、此ノ國民貯蓄ノ構
成ノ大部分ヲ占メテ居ル賃銀俸給等ニ於テ
或ハ貯蓄債劵ノ何割ヲ持タスト云フヤウナ
程度マデ少クトモ進ンデ行カンデハナラヌ
ノデナイカ、斯樣ニ實ハ考ヘルノデアリマ
ス、此ノ私ノ考ヘニ對シテ大臣ハ如何ナル
御考ヘヲ持ツテ居ラレルカト云フコト、日
本ハ國民貯蓄ノ構成ガ賃銀竝ニ俸給ト云フ、
極ク大マカナコトデ宜シイガ、如何ナル
「パーセンージ」ヲ持ツテ居ルト大藏大臣ハ
御考ヘニナルカ、其ノ點承リタイト思ヒマ
ス、序ニ尙ホ大藏省ガ預金通帳記入ヲ以テ
俸給ヲ支拂フ制度ヲオヤリニナツテ居ルヤ
ウデアリマスガ、是ハ私ハ貯蓄債劵ヲ賃銀
ト同ジヤウニ支拂フヤウナ方途カラ出タモ
ノト思ヒマスガ、其ノ結果ハ如何ナル狀態
ニ今日ナツテ居リマスルカ、豫定シタヤウ
ナ好結果ヲ收メテ居リマスルカドウカ、又
將來モソレヲ御續ケニナル御見込ミデアルカ
ドウカ、更ニ是ハ大藏省以外ニモ普及セシ
ムルヤウナ御考案ヲ持ツテ居ラレルカドウ
カ、是等ノ點ニ付テ御考ヘヲ承ツテ見タイ
ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=11
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012・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 私ハ國民貯蓄ハ四百何十
億ト申シタコトハ決シテアリマセヌ、國民
貯蓄ハ昭和十七年度二百二十億必要デアラ
ウト申シテ居ルノデアリマス、强制貯蓄ノ
コトデアリマスガ、是ハ武田委員ガオイデ
ニナラヌ席デハナイカト思ヒマスガ、私ハ
度々議會デモ申シテ居ルノデアリマスガ、
只今各個人ニ對シテ幾ラ貯蓄ヲシロト法律
デ之ヲ命令スルコトヲシナイト云フコトヲ
言ツテ居ル、ソレハ幾ラ貯蓄シロト言ツテ
モ、其ノ引出ヲ全然自由ニシテ置イタノデ
ハ何モナリマセス、引出ヲ法律的ニ制限シ
ナケレバナラヌ、サウスルト絕對ニソレハ
出セヌト云フコトニナルト思ヒマス、サウ
スルトドウ云フヤウニシテ引出シタラ宜イ
カ、個人ノ自由ニシナイト、誰カガ認メテ、
今引出シテ宜イカ惡イカヲ決メナケレバナ
ラナイ、之ヲ警察署長ニヤラセルノカ、町
會長ニヤラセルノカ、私ハソンナコトヲシ
タラ各個人ノ生活内部ニ干涉スルコトニナ
ル、サウデナクテモ政府ノ要ラヌ干涉ガ多
クテ困ルト云フ時ニ、ソンナコトヲシタラ
大變ダラウト思フ、ソレハヤラヌト中上ゲ
テ居ル、ソレハヤラヌガ、昭和十三年以來
前古木曾有ノ大貯蓄ガ出來テ居ル、是ガ國
民ノ自覺デ出來テ居ル、飽クマデモ國民ノ
自律自奮ニ依ツテ出來テ居ル、工場ハ工場
デ賃銀ノ何割ヲ貯メヨ、收入ノ多イ者ハド
ウシロ、ソコマデ自律ガ出來レバ、是ハ强
制ト見レバ强制デアリマセウガ、各人ノ申
合セハ、自律デヤツテ藪キタイ、是ガ皆ガ自
律デヤラヌカラト云ツテ、法律ノ力デ押ヘ
ルト云フコトニナレバドウナリマセウカ、
ソンナコトデトテモ年ニ二百億、三百億ノ
國民貯蓄ハ出來ナイ、法律デ押ヘヤウトス
レバ逆ニ逃ゲヤウトスル心理ガ働ク、事變
以來滿四年二百何十億ト云フ想像モ出來ナ
カツタ貯蓄ガ出來マシテ、アノ戰費モ生產
力擴充資金モ出來テ居ル、私ハ其ノ國民ノ
心意氣ヲ尊重シタイノデアリマス、私ノ氣
持カラ申シマシテ、餘リ强制デアルトカナ
イトカ云フ議論ヲシタクナイノデアリマス、
此ノ國民ノ愛國心ヲ育テテ、國家ヲ擔ツテ
行カウ、戰費ヲ拵ヘテ行カウトスル此ノ意
氣ヲオ互ヒニ燃ヤシテ行キタイト思フ、金
融機關ナドト云フモノハ相當纏マツテ居リ
マスカラ、此ノ位資金ガアレバオ前サンノ
方デ公債ヲ此ノ位持ツテモ宜イヂヤナイ
カ、金融機關ナドト云フモノニハ其ノ位ノ
コトハアリマセウガ、ソレダカラ國民ニ强
制貯蓄ヲヤルノダ、是ハ私ハドウカト思フ
ノデアリマス、私ハ飽クマデモ愛國心ニ信
賴シテ行ツテコソ、初メテソレガ出來ルシ、
ソレデ日本ガ勝拔ケルノデアル、斯ウ思フ
ノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=12
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013・板谷順助
○板谷委員長 武田君、モウアナタハ一時
間以上モ經ツテ居リマスカラ、簡單ニ御質
問ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=13
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014・武田徳三郎
○武田委員 承知シマシタ、其ノ點ハ其ノ
程度ニシテ、私ハ戰時金融金庫ニ對シテ二
ツ疑問ヲ持ツテ居ルノデアリマス、一ツハ
協同證劵ヲ之ニ合併スルト云フ問題、ッ
ハ取引所ノ投機ヲ抑制スルコト、協同證劵
ヲ戰時金融金庫ニ合同セシメテ、其ノ働キ
ニ依ツテ株價ノ安定ヲ圖ル作用ニ付テノコ
トデアリマス、ソレヲ時間ノ都合デ二ツ纏
メテ一寸伺ツテ置キタイト思ヒマス、協同
證劵會社ヲ之ニ合併ナサルノハドウ云フ構
想カラ出來テ居ルノカ、是マデノ御說明ニ
依ツテハ、ドウモ私ハハツキリシナイノデ
アリマス、從來戰時金融金庫ノ設立ノ御說
明ヲ承ツテ見ルト、興業銀行デ現在ヤツテ
居ル如ク損失補償ヲ條件トスル命令融資ノ
ヤウナ、個々ノ問題ニ付テヤルヤウナ手緩
イコトデハイカヌ、全般的ニ國家ガ損失補
償ヲスル建前ニ於テ、サウ云フ金融機關ヲ
要スルト云フ意味ニ於テ御說明ニナツテ居
ルノデアリマス、ソレハ御尤モデアラウト
思フ、所ガ一方ノ協同證劵ト云フモノハ損
失ヲ建前トシナイ、寧ロ利益ヲ、是ハ建前
デハナイケレドモ、實質的ニ於テ損ハシナ
イデ儲カルト云フ會社ノ設立デアリマス、
勿論儲カルト云フコトハ其ノ趣旨ニハナラ
ナイカ知ラヌガ、其ノ運用上ドウシテモ損
ハシナイデ、必ズ儲カルト云フ會社デアラ
ウト私ハ思フ、卽チ株ガ非常ニ下落ヲシテ、
極端ナル下落ヲスルト云フ虞ノアル時ニ初
メテ是ハ出動スルノデアリマス、サウシテ
資金ガ豐富デアリマスカラ、現物ヲ引取ツ
テ何時マデモ持ツテ居ル力ガアルノデアリ
やっ、極端ニ株價ガ底値マデ低落セントス
ル時ニ出動シテ、現金ヲ以テ現物ヲ引取ツ
テ、サウシテ濫リニ賣出スト株價ニ影響シ
マスカラ、株價ガ相當ノ高値ニナルマデ、
ソレヲ保存シテ置クト云フ性質ノ働キヲナ
ス會社デアリマスカラ、ドウシテモ是ハ損
ヲシツコハナイ、サウスルト損ヲ建前トシテ
居ル戰時金融金庫ト、得ヲ建前-ト言ツ
テハ語弊ガアリマスガ、損ヲシナイ建前ノ
協同證劵ト云フモノヲ一ツニシナケレバナ
ラヌト云フコトハ、私ハ根本觀念ニ於テ間
違ツテ居ルト思フ、又損ヲ建前トシテ居ル
危險ナル事業ニ投資スル戰時金融金庫ノ衝
ニ當ル人的構成ハ、株ニ付テ、株界ノ心理ヲ
始終見テ居ル人デナケレバ其ノ衝ニ當レナ
イ、「オペレーション」ニ當レナイ、サウ云
フ人的構成ヲ要スル所ノ協同證劵トヲ合併
スルコトニ於テハ、私ハ觀念上矛盾ガアル
ト思フ、獨リ觀念上ノ矛盾ガアルノミナラ
ズ、實際ノ運用ニ於テモ非常ナ不便ガアル、
斯樣ニ私ハ思フノデ、ソレヲ合同シナケレ
バナラズ、シタ方ガ宜イト云フ御考ヘガア
ルノハドウ云フ譯デアルカ、斯ウ云フコト
ガ一ツ、ソレカラ協同證劵ノ作用ニ依ツテ
ノミ株價ノ安定ヲ得ルト云フコトハ極メテ
困難デアル、勿論政府ニ於カレマシテハ株
式取引ノ制度ノ必要ナルコトハ、他ノ機會
ニ於テモ大藏大臣ガ言ハレテ居ル、要スル
ニ投機ニ屬スル部分ノ株式ノ取引乃至差金
賣買ヲ主トスル投機ヲ抑ヘヨウト云フ御考
ヘニ進メラレルノデアラウ、又ソレデ宜イ
デアラウ、所ガ此ノ最高最低ヲ大藏大臣ガ
御決メニナル場合ニハソレハ宜イカモ知レ
マセヌガ、私ハ最高ノ場合ヲドウシテ御決
メニナルカ、甚ダ疑ヒヲ持ツテ居ルノデア
リマス、株ノ相場ノ最高ト云フノハ、私ハ
種々ナル要素ニ依ツテ決セラレルモノト思
フノデアリマシテ、ドウモ大藏大臣ガ之ヲ
決定スルトフ云コトバ、事實上ニ於テ不可
能ノコトデハナイカ、寧ロ是ハ差金賣買ノ
ミヲ目的トスル投機ヲ抑ヘルコトヲ目的ト
スルナラバ、私ハ所謂證據金ヲウント上ゲ
サヘスレバ、左樣ナ弊害ハ全部トハ申シマ
セヌガ、大部分ソレデ抑ヘラレルモノデハ
ナイカト思フノデアリマス、隨テ株價ノ安定
ヲ唯挺子入レダケデ抑へラレルト考ヘラレ
ルノカ、又ソレダケデハイケナイカラ、最
高最低ヲ決メルト云フ御考ヘガ大藏省ニア
ルヤウデアリマスガ、其ノ最高ヲ如何ナル
方法デ御決メニナルノカ、又私ノ考ヘル如
ク、左樣ナ最高ヲ決メルコトハ事實上出來
ナイコトダ、ソレヲ適正ニ行フコトハ出來
ナイモノダト云フコトニ對シテ、大藏大臣
ハ如何ナル御考ヘヲ持ツテ居ラレルカ、私
ノ考ヘト致シマシテハ證據金ヲ其ノ實情ニ
卽シテ引上ゲサヘスレバ、稍〓其ノ目的ハ達
セラレルノデハナイカト思ヒマス、其ノ點
ニ對シテ大藏大臣ノ御意見ハ如何デアリマ
スカ、私ノ質問ハ此ノ程度ニシテ、御答辯
ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=14
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015・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 協同證劵ハ儲カル建前ト
云フ御話デアリマスガ、是ハ考ヘ方デアリ
マシテ、儲カル建前デアア云フモノガ出來
テ居ルナラバ、皆儲ケテ居リサウナモノデ
アリマス、昨年デアリマシタカ、政府ノ
慫慂デ出捐シタ人モ、何ト言ヒマスカ、公
共ノ爲ニ損ヲシテモ宜イト云フ覺悟デ出捐
シタコトト思ヒマス、結局アレガ儲カル結
果ヲ今日見テ居リマスノハ、政府ガ腰ヲ入
レテ、損ヲシテモ構ハヌカラ、幾ラデモ買
ツテ出ルト云フコトガ其ノ一ツノ因デアル、
ソコデヤハリ損失ヲ補償スルト云フ一方ノ
後楯ガナイトヤレナイノデアリマス、若シ
是ガナクシテヤレルナラ、民間デサウ云フ
モノガ幾ラデモ出來テ、巧ク行ツテ居ルダ
ラウト思フ、ソレガ出來ルノハ損ヲシテモ、
何處マデモ腰ヲ入レテ、金ヲ幾ラデモ出ス
カラト云フ「バック」ガアルカラ出來ルコト
デアルト思フ次第デアリマス、戰時金融金
庫モサウデアリマス、是ハ私ハ言葉ノ使ヒ
分ケダト思ヒマスガ、損ヲスル建前デハナ
イ、ドウセ算盤ニ合ハナイ仕事ハヤラナイ
ト云フヤウナ御話デアリマスガ、サウデハ
ナイ、算盤ニ合フカ合ハヌカ、從來ノ金融
學デハ分ラヌ仕事デアリマスカラ、皆合フ
ヤウニシテ行キタイ、案外巧ク行クカモ知
レナイ、ソコハ大變違ヒマスガ、別ニ一〓
ニシマシテモ差支アリマセヌシ、何レ金ヲ
出ス時ニハ損ヲシテモ構ハヌト云フ政府ノ
後楯ガナイト、今ノ協同證劵デヤツテ居リ
マスコトモ出來マセヌコトデアリマス、戰
時金融金庫ノ外ノ貸付モサウデアリマス、
同ジ性質ノコトガ多分ニアルノデアリマシ
テ、協同證劵ノ方ヲヤル人ハ興業金融ヲヤ
ル人トハ違フト云フ御話デアリマスガ、協
同證劵ノ仕事モ、興業金融ナドヲ考ヘズ
戰時株價ノコトバカリニ注意ヲシナケレバ
ナラヌト云フ程デナクテモ、其ノ運用ハ十
分ニ出來ルト思ヒマス、差支ヘナイト思ヒ
マス
其ノ邊ノ御答ヘハ大體其ノ程度ニ致シマ
シテ、次ニ株ノコトデアリマスガ、是ハ武
田サンモ御承知ノヤウニ經濟界ノコトハ單
純ニ行キマセヌ、一筋繩デヤレバ宜イヂヤ
ナイカト云フガ、ヤハリ色々攻道具ガ要ル
ノデアリマス、最低價格ヲ決メル力ヲ持チ、
證據金ヲ持上ゲル力モ持チ、ウント買ヒニ
向フカモ持ツ、無論御話ノヤウニ證據金ヲ
上ゲルト云フコトハ有力デアリマシテ、昨
年ノ暮アタリカラ、取引所デモヤツテ居ル
ト思ヒマス、攻道具ハ色々要ルノデアリマ
シテ、單純デナイ方ガ宜イト思ヒマス、ソ
レカラ最高價格ニ付デモ、是ハ非常ニヤカ
マシイ理論ヲ申シマシタラ決着ハ付カヌカ
モ知レマセヌ、大藏省デモ理窟ヲ言フ人バ
カリ揃ツテ居ツタラ、議論シテ涯シナイカ
モ知レマセヌ、ソレデ大體利廻カラ其ノ會
社ノ狀況カラ、或ハ周圍ノ經濟情勢カラ、
其ノ時ニ是レ以上ニ上ゲサセナイ方ガ宜イ
ト云フ睨ミハ付クモノデアルト思ツテ居リ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=15
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016・板谷順助
○板谷委員長 此ノ際田村君ノ保留質間ガ
殘ツテ居リマスノデ、之ヲ御許シ致シマ
ス-田村君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=16
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017・田村秀吉
○田村委員 實ハ此ノ間政府委員トノ質疑
應答ノ際ニ、金融統制會ト產業統制會トノ
關係ノコトニ付テ大體御說明ガアツタノデ
アリマス、其ノ際金融統制會ト產業統制會
トノ關係ニ基イテ、之ヲ巧ク運用シテ行ク
上ニ、其ノ監督關係上大藏大臣竝ニ商工大
臣ノ關係ヲドウ云フ風ニシテ行カレルカ、
其ノ點ニ付テ大臣カラ御答辯ニナルト云フ
ノデ保留ニナツテ居ルノデアリマス、是一
偶〓戰時金融金庫ト產業設備營圍トノ關係ニ
モ及ブ點デアルト思ヒマス、此ノ際大臣カ
ラ其ノ圓滿ナル運用ニ對スル意味ニ於テ、
其ノ監督關係ヲドウ云フ風ニシテ行クカト
云フコトニ付テ御說明ヲ願ヒタイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=17
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018・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 御答ヘ申上ゲマスガ、尙
ホ其ノ前ニ先刻武田サンノ御質問ニ對シテ
攻道具ト云フ言葉ヲ使ヒマシタガ、ソレハ
惡イ意味ニ於テ取引所ヲ攻メテ居ルト云フ
意味デハナク、唯其ノヤリ方ト云フ意味ニ
於テ申上ゲタノデアリマスカラ、左樣御諒
承ヲ願ヒマス
ソレカラ只今ノ田村委員ノ御質問デアリ
マスガ、產業統制會ガ資金部面、金融部面
ニ對シテドウ云フ風ニ活動スルカト云フコ
トデ、餘程此ノ問題ハ違ツテ參リマス、ソ
レハ今後ノ活動ニモ、實際ニモ俟タナケレ
バナラヌ問題デアリマスガ、其ノ統制會內
ノ各事業ノ資金部面ニ付テ相常ノ活動ガ伸
ビテ來ルヤウニナリマスト、ハ是ハ極メテ密
接ナル連絡ヲ取ツテ行カナケレバナラヌト
思ツテ居リマス、金融統制會ノ方デモ產業
ト密接ナ連絡ヲ取ルト云フコトハ一ツノ項
目ガ揭ゲラレテ居ルヤウナ場合デアリマス、
ソレハドウ云フ風ナモノデアルカ、是ハ商
工大臣トマダ話合ツテ居リマセヌガ、始終
兩方デ協議會ヲ開クトカ、兩方デ計畫ヲ通
報スルトカ、今後ノ狀況ニ應ジテ極メテ緊
密ニ連絡ヲ取ツテ參リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=18
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019・田村秀吉
○田村委員 今一點公債政策ノ點デアリマ
スガ、此ノ點モ過日政府委員カラ今後公債
ノ激增ニ伴ウテ貯蓄奬勵ト云フ以外ニ、何
等カ新シイ公債消化政策ノ新構想ガ必要デ
アルト思フト云フコトニ對シテ、政府委員
ガラノ御答辯ガアツタノデアリマス、ソレ
ハ偶〓日本銀行ガ產業金融ニ乘出シタト云フ
コトト關聯シテ、銀行ノ預金高、銀行ノ資
金、資產ノ何割カヲ公債ニ振向ケルヤウニ
シタイト云フヤウナ御答辯ガアツタノデア
リマス、ソコデ私ノ聽ク所ニ依リマスト、
公債ニ新シイ政策ガナケレバナラヌト思
フ、ソレニ伴ツテ市中ノ銀行ナドノ間ニ將
來公債ガ非常ニ激增シテ來タ場合ニ或ハ公
債ノ値下リヲ生ズルノデハナイカ、其ノ値
下リガアツタ場合ノ一ツノ用意ヲシテ置カ
ナケレバナラヌト云フコトガチラホラ吾々
ノ耳ニ入ルノデアリマス、サウ云フコトニ
對スル考ヘ方ナリ、何等カノ對策ヲ御考ヘ
デアリマスナラバ、此ノ際明確ニシテ戴ク
方ガ國家ノ爲ニ良クハナイカト思フノデア
リマス
更ニ之ニ關聯シテ昨日デアリマシタカ、
本委員會ニ於テ大藏大臣カラ、公債發行額
ハ百六十億ト云フコトノ御說ガアリマシタ
ガ、是ハ軍事費公債ダケノ百六十億ノ意味
デアリマスカ、ソレトモ生產擴充資金ニ對
スル公債發行額モ入レタ百六十億デアリマ
スカ、若シ軍事費ダケデアルトスルナラバ、
其ノ他ノ生產擴充ニ對スル公債發行額ヲ加
算致シマスト、十七年度ハドノ位ノ豫定デ
アリマスカヲ序ニ御發表願ヒタイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=19
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020・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 私ハ公債消化ノ方法ハ國
民貯蓄ガ增加スル外ニハ何モナイト思ヒマ
ス、アトノ細工ハドンナコトデモ國民貯蓄
ヲ增加サス爲ノ方法デアル、國民ノ貯蓄ガ
增加シナイデ公債ガ消化スル途ハナイノデ
アリマスカラ、國民貯蓄ノ增加一點張デア
リマス、ソレヲヤルノニ少クトモ增加シ易
イヤウニ金利政策モ考ヘマスシ、或ハ投資
方面ニ付テモ債劵ニ付テ細カイコトヲ言ヘ
バ割增金附ト云フコトモ考ヘラレマスシ、
色々考ヘラレルガ、一ニ是ハ國民ノ貯蓄ヲ
增加サスコトニ歸スルノデアリマス、ソレ
以外ニハ消化ノ仕樣ガナイ、ソレ以外ニ公
債ヲ持タスニハ日本銀行ノ兌換劵ノ增發ダ
ケデアリマスガ、ドウシテモ國民貯蓄ヲ增
加シナケレバ消化ノ仕樣ガナイ、產業資金
モサウデアリマス、ソレデ私ハ內部デヨク
言ツテ居ルノデスガ、公債消化ニ專念シテ、
他ノ社債ノ應募資金ヲ皆減スヤウナコトヲ
シテ持タシテモ、是ハ一家ノ內デ自分ノ座
席ヲ廣ク取ルカ狹ク取ルカト云フヤウナモ
ノデアリマスカラ、ソレデ私ハ國民貯蓄ノ
增加一點張リデアリマス、其ノ爲ニハ出來
ルダケノ手段方法ヲ盡クシテ行ク、今期議
會ニモ餘リ目ボシイトハ申サレマセヌガ、
稅法ノ上其ノ他ニ於テモ種々ノ考慮ハ〓ラ
シテ居ル次第デアリマス
ソレカラ今年ノ公債ノ發行額デアリマス
ガ、是ハ百六十何億ト申シマスノハ軍事費
公債ノ外ニ政府ガ自ラ生產擴充ノ爲ニ投資
致シマス所謂政府ノ出資會計ノ公債發行額
ヲモ含ンデ居リマス、ソレマデ入レマシテ
百六十何億デアリマス、尤モ政府ノ資金ニ
依ラズ、株ノ拂込ヤ社債ノ形式デヤリマス
モノハ無論此ノ以外デアリマスカラ、其ノ
他ニ新規ノ興業金融的ノ貸出、新規ノ株ノ
拂込社債ト云フモノハ昨年ノ例デ行キマシ
テモ、六十億位ハアツタノデアリマス、今
年ハドウナルカ分リマセヌ、マダ本當ノ計
畫ハ立チマセヌ、ソレカラ銀行デ公債ノ値
下リナドヲ心配スルト云フコトデアリマス
ガ、是ナドハ實ニ自覺ノ至ラザル甚ダシイ
モノデアリマス、此ノ公債ノ値ガ下ツタラ
ドウスルト云フノデセウ、何處ニ逃ゲルノ
デアリマセウカ、其ノ洮ゲ場ガアリマセヌ、
臨時資金調整法デ皆統制シテ居リマスカラ、
外國ニ逃ゲヨウトシテモ逃ゲラレナイデセ
ウ、逃ゲルト云フコトヲ考ヘルノハ昔ノ自由
經濟時代ノ考ヘデアル、今日ノ公債ハ「マー
ケット」ノ一ツノ商品ノヤウニ單ニ賣リ
タイ時ニ賣ツテ、買ヒタイ時ニ買フト云フ
如キ輕イモノデハナイ、全金融機關ハ國民
ノ貯蓄ニ依ル公債消化ト產業資金調達ノ機
關ナノデアリマス、今日公債ノ値下リナド
心配スルト云フコトハ、ソレ自身ガ、日本ノ
惡性「インフレーション」ヲ防ガウトスル熱
意ガナイモノデアル、實ニ是程錯覺ノ甚ダ
シイモノハアリマセヌ、日本人ハ公債ト運
命ヲ共ニスル覺悟ガ要ル、ソレデ戰爭ニ勝
ツテ、大東亞共榮圈建設ガ出來ルノデアル、
日本人ガ榮エルノデアル、自分ダケ公債
カラ逃ゲヨウ社債カラ逃ゲヨウト云フヨ
リ寧ロソレヲ共ニ背負ツテ行ツテ、日本ヲ
築キ上ゲヨウト云フ根本ノ觀念ヲ持タナケ
レバナラナイノデアリマス、若シ公債ガ下
ルナドト云フトソレガ惡イ意味ノ金融資本
主義的觀念ダ、私ハ斯ウ思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=20
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021・板谷順助
○板谷委員長 世耕君-成ベク簡明ニ願
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=21
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022・世耕弘一
○世耕委員 簡單ニ一一、三點要點ダケ御尋
ネ致シタイト思フノデアリマス、戰時金融
ト興業銀行關係竝ニ日本銀行トノ三ツノ關
係ガドウ云フ風ニ調和サレルカト云フ問題
ヲ御尋ネ致シタイト思フノデアリマスガ、
是ハ各委員トモソレ〓〓論議サレタ後デア
リマスカラ、私ハ此ノ際御尋ネスルコトヲ
差控ヘタイト思ヒマスガ、併シナガラ、此
ノ日本銀行法ノ附則ニ依リマスルト、此ノ
法文ノ施行ハ各條項トモソレ〓〓勅令ニ依
ツテ定メルト云フ餘裕ヲ殘シテ居ル關係モ
ゴザイマスルカラ、此ノ際一點ダケ申上ゲ
テ置キタイト思フコトハ、是ハ今日ノ日本
銀行ノ法案ヲ改正シナクテモ、融資命令デ
十分行ケルト私ハ確信シテ居リマス、殊
只今ノ大臣ノ經濟界ニ對スル御所感等ヲ承
ツテ見テ、下手ナ小細工ヲシナクテモ命令
一本デ行キハセヌカ、ソレヲ色々ナ法律ヲ
拵ヘテモ同ジコトデハナイカト云フ感ヲ深
クスルノデアリマスガ、併シ是ハ議論ニナ
リマスカラ申シマセヌガ、唯サウ云フコト
ガ言ヒ得ラレルト云フコトヲ申上ゲテ置キ
マス、尙ホ大藏大臣ハ新シイ日本銀行ノ總
裁ヲ兼任スルノダ-條文ヲ見ルト兼任シ
テモ宜ササウダ、丁度大政翼贊會ノ總裁ガ
內閣總理大臣デアルガ如クニ、イツソノコ
ト之ヲ一本ニシテシマツタラ宜イデハナイ
カ、此ノ間アタリカラ、政府ノ御說明ニ依
リマスルト、政府ト一體ダト云フコトヲ說
明サレテ居ル、一體ナラ寧ロ大藏大臣ガ兼
任シタ方ガ運用ノ妙ヲ得ルノデハナイカ、
ソレナラ今マデノ條文ヲ二三點改正サヘス
レバ直グ其ノ趣旨ガ私ハ徹底スルト思フノ
デアリマスガ、是ハドナタカ委員ノ方デ御
質問ガアツタトスレバ宜シウゴザイマスル
ガ、御質問ガナケレバ、此ノ際大臣ノ所感
ヲ伺ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=22
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023・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 是ハ昨日モ御答ヘ申上ゲ
テ置イタノデアリマスルガ、物ヲ敏速ニ纒
ツテヤルト云フコトニナレバ、一人デ何モ
カモヤツテ居ル方ガ、其ノ方カラ言ヘバ都
合ガ宜イノデアリマスガ、大事ナ職務デア
リマシテ、仕事ノ分量モ多イノデアリマス
カラ、ヤハリソレニ適シタ人ヲ置キマシテ、
政府ハ政府デソレヲ監督シテ參ツタ方ガ全
體ノ構成トシテ適當デアルト私ハ思ツテ居
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=23
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024・世耕弘一
○世耕委員 ソレニ付テ何カ根本的理念ガ
アルノデゴザイマスカ、唯便宜一片、通リ一
片ノ議論カラデスガ、其ノ點ヲ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=24
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025・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 ソレハ政府ニシマシテ
毛つ金融ト產業ハ密接ダト言ヘバ、經濟大
臣一人デヤル方ガ便利カモ知レマセヌガ、
凡ソ人間ニハ仕事ノ分量モアリマス、筋道
モアリマス、大藏大臣ハ金融ノ外ニ、歲計、
豫算、租稅、專賣其ノ他ノコトモヤツテ居
ルノデス、又金融デアリマシテ、先程モ御
話ガアリマシタヤウナ、相當ニ政府資金ト云
フ大キナモノガアリマス、金融ノ大キナ總
括方面デアリマスルガ、日本銀行ダケ或
ハ金融統制會ダケデ全面デハナイノデアリ
やく、大藏大臣ハ金融及ビ財政ヲ持チマシ
テ、其ノ金融ノ中ノ相當ナ部分ヲ日本銀行
ガ擔任スル、斯ウ云フ筋合デアリマスカラ、
別デアル方ガ本當デアル、兼ネルト云フコ
トニナレバ、寧ロ其ノ方ガ一時ノ便宜論デ
アルト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=25
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026・世耕弘一
○世耕委員 一應ノ御議論ダト思ヒマス
ガ、ソレナラバ寧ロ日本銀行ト云フモノヲ
政府ト一體ト云フヤウナ形ヲ取ラナイデ、
日本銀行獨特ノ立場ニ於テ、大藏大臣ノ權
限ニ於テ運用スルト云フ方ガ宜イノデハナイ
デスカ、機關長ト運轉手ト一〓ニナレト云
フコトハ無理ダト思フ、機關ハ機關トシテ
ノ職能ヲ發揮スルヤウニ、日本銀行ハ日本
銀行トシテノ獨特ノ立場ヲ存續サセレバ宜
イノデハナイカ、斯ウ云フコトニ又議論ハ
戾ツテ來ルノデアリマスガ、是ハ議論ニナ
リマスカラ申上ゲマセヌガ、サウ云フ主張
ガ成立ツト云フコトダケヲ申上ゲテ置キマ
ス
ソレカラモウ一點疑問ノ點ヲ明カニシテ
置キタイト思フコトハ、政府委員ノ方デハ
御取消シニナツタト云フ風ニ聞イテ居ルノ
デアリマスガ、大藏大臣ハ此ノ間ノ委員ト
ノ質疑應答ノ中デ斯ウ云フコトヲ言ハレテ
居ル、「管理通貨制度ノ採用、金本位離脫ノ
點デアリマスルガ、是ハ私ハ急速ニ決定致
シタノデアリマセヌ、貨幣ノ本質理念竝ニ
社會通念、現實ニ經濟界、經濟力ニ及ボス
影響ヲ愼重ニ考ヘマシテ、決定ヲ致シマシ
タ」又「私ハ前カラ貨幣ハ金ガ裏付ケニアル
カラ値打ガアルト云フ考ヘヲ實ハ持ツテ居
ナイノデアリマス、貨幣ニ値打ガアルノハ、
ソレニ依ツテ所要ノ物資、勞力ヲ獲得出來
ルカラ値打ガアルノデアリマス」斯ウ云フ
ヤウナコトヲ言ハレテ居ルガ、今モ同樣ノ
御考ヘデオアリニナルカドウカト云フコト
ヲ一寸御伺ヒシテ置キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=26
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027・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 前段ハ御尋ネデハアリマ
セヌガ、重要ナコトデアリマスカラ一言申
上ゲテ置キマスガ、從來ハ日本銀行ト云フ
モノハ政府ノ自由ニナラヌヤウナ存在デア
ル方ガ宜シイト云フヤウナ觀念ガアツタ、
政府ガ通貨ヲ膨脹サセヨウトスルト、日本
銀行ハ、ソレハイカヌト云フヤウナコトデ
膨脹サセヌヤウニシテ相控制スル、互ヒニ
自由ニササヌト云フヤウナ實際上ノ考ヘガ
アツタ、一體ト云フノハ、其ノ考ヘヲヤメマ
シテ、國家トシテノ一貫シタ方針デ行クト
云フノデアリマス、其ノ中ニ於テハ御話ノ
ヤウナ獨立ノ存在デアリマス、從來ハ詰リ
相控制スルト云フヤウナ理念ガ相當ニ舊經
濟思想ニアリマシテ、中央銀行ト云フモノ
ハサウ云フモノナリト云フ觀念ガ相當ニ殘
ツテ居リマシタ、ソレハ近來ハ餘程ナクナ
ツテ居リマスルガ、ソレヲ變ヘルト云フノ
デ一體ト云フコトヲ御說明申上ゲテ居ル次
第デアリマス、存在ハ獨立ノ存在デアリマ
ス、獨立デアルガ、政府ノ金融政策ニ反シ
テヤル存在デハナイノデゴザイマス、ソレ
カラ通貨ニ關シマスル理念ハ此ノ間申上ゲ
マシタ通リデ私ハ少シモ變リガアリマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=27
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028・世耕弘一
○世耕委員 此ノ點ニ付テ更ニ簡單ニ御尋
ネシテ置キタイト思フコトハ、只今ノ私ガ
讀上ゲタ大臣ノ御說明ヲ其ノ儘採ツテ以テ
說明致シマスト、ソレハ「マルクス」ノ所
謂勞働價値說カラ出發シナイト其ノ議
論ハ成立タナイノデアルガ、ソレニ基イテ
御說明ニナツテ居ルノカドウカ、是ハ
非常ニ根本的ニ重大ナ問題デアリマス、併
シサウ云フヤウナ說ハ、今日流行スルカド
ウカト云フコトハ別ト致シマシテ、極ク原
始的ナ御考ヘナノデス、全ク言フト少シ
上品ナ言葉デ言ヘバ、素朴ナ御考ヘデアル、
今日ノ貨幣ト云フモノハソンナ單純ナ發達
デハナイ、先ヅ貨幣ノ職能カラ、學者ノ意
見ノ一致シタ所ヲ見マスト、七通リ位アル、
第一ハ交易一般ノ要具タルコト、第二ハ價
値尺度デアルコト、第三ハ消費、貸借ノ目
的物デアルコト、第四ハ給與トカ納稅トカ
保險トカノ一方的給付ノ用ヲナスコト、第
五ハ財產ノ蓄藏、第六ハ他ノ貨幣ノ基礎タ
ルコト、卽チ兌換準備タルコト、第七ハ國
際的職能、私ハ此ノ點ニモウ一ツ附加ヘテ、
歷史的存在ガアル、所謂愛國的價値ト云フ
モノガ此ノ貨幣ノ中ニ現ハレテ來ナクテハ
ナラヌト思フ、唯勞働價値ニ依ツテ、物ノ
生產ノミニ依ツテ貨幣ノ價値ガ定マルト云
フヤウナ御議論ハ、甚ダ楷越ナ言葉デアリ
マスケレドモ、百年位前ノ御議論デハナ
イカ、一時「マルクス」學說ガ流行シタ時代
ノ御說トシカ實ハ受取リニクイノデア〓リマ
ス、貨幣ノ眞價ハ更ニ職能ヲ別ナ方面ニ發
達サシテ居ルト私達ハ感ジテ居ル者デアリ
マス、若シ大臣ガ何處マデモ此ノ所說ヲ枉
ゲナイデ進メラレルト云フナラバ、私ハ日
本銀行ト云フ名前ヲ變ヘルベキダト思フ、
本當ノ議論ヲ言フト、同時ニ圓ト云フ名前
モ變ヘナクテハナラヌ、是ハ私議論ヲスル
積リデハゴザイマセヌガ、近來大藏省ノ御
說明ノ中ニハ、强ヒテ政府委員トハ申シマ
セヌケレドモ、左翼掛ツタ御言葉ヲ時々聽
クノデ、耳障ノ感ガスル、例ヘバ「何々ノ
段階ニ於テ」、「把握シテ」ト云フ言葉、アレ
ハ私ガ大學ノ學生主事ヲシテ居タ時分ニ、
能ク共產主義ノ本ヲ讀ンダ書生ガ使ツタ言
葉デアル、ソレヲ今大藏省ノ方カラチヨイ
チヨイ聽クノデ、耳障リニナルコトガアル、
必ズシモ大藏大臣ハサウ云フヤウナ言葉ト
カ理念ヲ以テ此ノ貨幣論ヲ御考ヘニナツテ居
ルトハ、私過去ノ履歷ヲ十分承知シテ居リ
マスカラ考ヘナイ、ケレドモ此ノ點ハ今日
此ノ場デ解決シテ吳レトハ申シマセヌガ、
何トカ一ツ御考ヘ置キヲ願ヒタイ、是ハ重
大ナ問題デアリマス、唯斯ウ云フコトデハ
ナイカト云フコトヲ私ハ推測シマス、大藏
大臣トシテハ非常時立法デアルカラ、金貨
本位カラ離脫シタノダ、軈テ平和ノ時代ガ
來タ場合ニハ復歸スルノダ、斯ウ云フ御說
明ナラ納得ガ出來ルノデアリマス、ケレド
モ此ノ御言葉ノ中ニアルヤウナ、離脫スル
コトガ當然ナノダ、貨幣ノ本質理念、社會
通念、現實ニ經濟界ノ經濟力ニ及ボス影響
等ヲ愼重ニ考慮シテ斯ウ言フノダト云フヤ
ウナコトハ、ドウモ納得ガ行キニクイ、此
ノ點ヲ一ツ御考ヘガアレバ承ツテ置キタイ
シ、之ニ關聯シテ軈テハ兌換劵條例ノ存置
云々ノ問題ニ實ハ論及シナクテハナラナ
1、ケレドモ、恐ラク吾々ノ考ヘト同ジ
ダラウト思ヒマスコトハ、兌換劵條例ノ存
置ニ付テ、マダハツキリシタ御態度ガ決定
シテ居ナイヤウニ承知シテ居リマス、若シ
サウダトスレバ其ノ點ヲ明カニシテ戴キタ
イト云フコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=28
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029・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 私ハ勞働價値說モ何モ採
ツテ居リマセヌ、ソレカラ今貨幣ノ職能ニ
付テ御話ニナリマシタガ、一向私ノ議論ト
矛盾シテ居マセヌ、私ガ前ニ申上ゲタ通リ
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=29
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030・世耕弘一
○世耕委員 時間ガアリマセヌカラ詳シイ
說明ヲ申上ゲルコトヲバ差控ヘマスガ、唯
御說ヲ改メナイト云フノナラ御尋ネ致シマ
スガ、紙幣ノ方ガ宜イノダ、貨幣、所謂金
貨ト云フモノハ今後無用ダト云フ點ニ付
テ、先ヅソレナラ私御尋ネシマスガ、先程
申シマシタ第五點ニ付テ、財產ノ蓄藏ニ對
シテ、紙幣ヲ蓄藏スル方ガ便利カ、金貨ヲ
所藏スル方ガ便利カト云フ、效果的ナ點カ
ラ御尋ネ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=30
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031・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 私ハ今頃文明國デ紙幣ヤ
金貨ヲ蓄藏スルモノハナイト思ヒマス、皆
有價證劵デアルトカ、工業設備デアルトカ、
鑛山設備デアルトカ、サウ云フヤウナモノ
ヲ蓄積スルモノダト思ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=31
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032・世耕弘一
○世耕委員 ソレナラ御尋ネシマスガ、最
近ハ銀行ニ金ヲ預ケルコトヲバ止メテ、自
分ノ家ノ金庫ニ紙幣ヲ藏フト云フコトガ、
他ノ委員會ニ於テモ事實ヲ指摘サレタノデ
アリマス、是ハドウ云フ所カラ來タノデア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=32
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033・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 ソレハ文明的ニ進ム段階
ニ於テ、一時文明的デナイ後退的ノ現象デ
アリマス、一時的歪ミデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=33
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034・世耕弘一
○世耕委員 一時的現象ハドウ云フ所カラ
現ハレタカト云フコトヲ御承知デゴザイマ
セウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=34
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035・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 詳シクハ知リマセヌデス、
空襲ガアツタラ銀行ニ取リニ行ケナイダラ
ウトカ、割合文明的ニ進ム道程ニ於テ、感
心シナイ考ヘ方カラ出テ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=35
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036・世耕弘一
○世耕委員 感心シナイ考ヘト云フコトハ、
卽チ社會通念ノ一ツノ心理ヲ物語ルモノダ
ト云フコトヲ考ヘナクチヤナラナイ、是ハ
唯非常立法デアルガ、吾々ハ非常時對策ニ
付テ論議シテ居ルノヂヤナイ、ソレハソレ
トシテ、ソレナラソレデ宜シイノデス、ア
ナタハ此ノ貨幣理論ヲ永久ニ之ヲ眞理ナリ
ト斷定サレルカラ、自ラ細カイ所マデ論及
シテ行カナクチヤナラナイ、其ノ點ハ如何
デス、アナタハ金貨ト紙幣ガ手許ニアツタ
場合ニ、ドチラヲ取リマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=36
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037・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 今ノ考ヘヨリ少シ歪ンダ
人ガ、貨幣ヲ蓄積スルノニ便利ナヤウニ金貨
制度ヲ採ラウトハ思ヒマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=37
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038・世耕弘一
○世耕委員 是ハ非常ニ大事ナコトデ、私
ハ議論ヲ申上ゲルノデハナイ、アナタノ貨
幣理論ノ根本ニ吾々ト意見ノ一致シナイ所
ガアルカラ御尋ネシテ居ル、成ベク議論ハ
之ヲ避ケタイト思フノデアリマスガ、又言
ヒ切レナイ御立場ガアルダラウカラ、强ヒ
テ私ハ突込ンデ御尋ネシナイノダガ、斯ウ
云フ私ノヤウナ議論ヲスル者ガアルト云フ
コトダケ、記憶ニ留メテ置イテ戴キタイ、
是ハ重要ナコトト思ヒマス、私ハ時間ヲ御
與ヘ下サルナラバ、十分アナタト得心ノ行
クマデ實ハ議論ヲシタイト思ツテ、材料ヲ
持ツテ來テ居ルノデスケレドモ、如何セン
起チ上ガル時ニ委員長カラ時間ガナイカ
ラト云フ御注意ガアツタカラ、私ハソレ以上
申上ゲマセヌガ、此ノ點ハ特ニ大臣ノ周圍
ニオイデニナル政府委員諸君ニモ、特ニ御
願イシテ已マナイノデアリマス、私ハ結論
ダケ申シマスレバ、大臣ハ一方ニ偏シタ議
論ヲシテ居ラレルト云フコトヲ、ハツキリ
申上ゲテ置キマス
次ニ「インフレ」防止ノ問題デアリマスガ、
現在ノ狀況ヲ色々ノ觀點カラ眺メテ行キマ
スト、遺憾ナガラ「インフレ」ニナラザルヲ
得ナイ道筋ヲ辿リツツアル、此ノ點ヲT
ンフレ」ニナラナイヤウユ、而モヨク問題
ガ公債ニ移ルノダガ、公債ヲ消化スル方法
ヲ講ズルコトガオ互ヒノ重大ナ責任ダト私
ハ思フノデアリマスガ、此ノ點ニ付テドウ
云フ御方針ヲ持ツテ居ラレルカ、御伺ヒ致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=38
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039・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 戰時ハ「インフレ」ニナラ
ザルヲ得ヌヤウナ原因ガ非常ナル力ヲ以テ
伏在スルノデアリマス、ソレニ鬪ヒ拔クノ
ガ戰時ノ經濟ニ對スル一ツノ大キナ國民的
努力デアリマス、ソレハ前カラ申上ゲマシ
タ通リ生產ノ增加、消費ノ規正、國民貯蓄
ノ增加、之ヲ强行スル限リ鬪ヒ拔ケルト思
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=39
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040・世耕弘一
○世耕委員 只今ノ御返答ハ一應了承致シ
マスガ、ソレハドチラカヘ精神講話ニデモ
オイデニナツタ時ニ御說明ヲ願フコトデア
ツテ、少クトモ此ノ委員會デ拜聽スルノニ
ハ、餘リニ納得シ難イ薄ツペラナ感ジガ致
スノデアリマス、少クトモ吾々ノ聽カント
スルノハ、經濟人ノ納得ノ出來ル御答辯ガ
願ヒタイノデアリマス、私一點事實ヲ擧ゲ
テ申上ゲマスガ、日本銀行ノ營業ノ擴張、
信用ノ增大擴張ハ、反面ニ於テ危險ガ伴フ
コトデアル、ソレニ付テハ少クトモ當局ト
シテハ此ノ危險性ニ對シテ安全性ヲ確保シ
テ行カナケレバナラヌ、所ガ吾々ハ他ノ委員
會ニ於テモ調査材料ニ依ツテ色々〓究シタ
ノデアリマスガ、最近ノ國策會社ト云フモ
ノヲ先ヅ覗イテ見マスルト、吾々ノ〓算ニ
依リマシテモ、拂込額ガ約八十六億、債劵
ノ發行高ガ四十三億、斯ウ云フヤウナ狀況
ニナツテ居リマス、此ノ政府指導ノ下ニヤ
ツテ居ル國策會社ガ、皆成功シテ居ルカト
云フト、遺憾ナガラ八割マデハ不成功ニ終ツ
テ居ル、而モ政府ガソレニ付テ、大キナ會
社ニ於テハ數千万圓、小サナ會社ニ於テモ
數百万圓ノ補給金ヲ給付シテ居ル、所ガ其
ノ補給金デバ今日食ツテ行ケヌト言ツテ泣
付イテ來テ居ルデハアリマセヌカ、、名前
ヲ擧ゲレバ、幾ラモアリマス、又或ル會社
ノ如キハ、資本金ガ足リナイカラ政府ニモ
ツト出シテ吳レト言ツテ泣付イテ來テ居ル、
斯ウ云フコトガ卽チ大キナ「インフレ」ノ原
因ニナル、之ニ付テ私ハ質問ヲ簡單ニスル
意味ニ於テ痛切ナル例ヲ一、二點申上ゲテ置
キマス、例ヘバ問題ニナリマシタ帝國鑛發
株式會社ノ問題ノ如キ、千五百万圓ノ政府
出資ニ依ル三千万圓ノ會社ヲ、今度ハ六
千万圓ニ增資シテ、アト三千万圓政府カ
ラ更ニ出資增加ヲ要求シテ居ルノガ、今日
法律案ニナツテ居ル、サウシテ補給金ガ四
分デハ足リナイカラ、之ヲ六分ニシテ吳レ、
ソレヲシテ吳レナカツタラ十六年度ノ下半
期ノ末ニ於テハ行詰リマスト言ツテ泣付イ
テ來テ居ル、其ノ會社ノ業績ヲ調べテ見マ
スト、六百有餘ノ鑛山ヲ買入レテ、三ツバ
カリ山ヲ開イタダケデ、アト六百バカリノ
山ヲ抱ヘテ晝寢ヲシテ居ルト云フ狀態デア
ル、而モ是ハ昭和十四年、時ノ商工大臣八
田サンガ、短期間ニ重要鑛物ノ急激ナ增產
ヲ確保スル所ノ使命ヲ帶ビタ國家的要求ニ
基ク所ノ會社デアルト云フコトヲ言明シテ、
休眠鑛山ノ開發ガ使命デアツタニモ拘ラ
ズ、一斤、二年經ツタ今日、尙ホ晝寢シテ
居ルヤウナ山ニ、更ニ三千万圓、四千万圓
ノ追錢ト補給金ヲ出サナケレバ動ケヌ、斯
ウ云フヤウナ會社ガ幾ツモ出來テ居リマス、
是ハドウシタラ宜イカ、懷ロニアルモノヲ
出スノハ結構デアル、ケレドモ政府ハ國策
會社ヲ幾ラ作ツテモ、少シモ徹底シタ監督
ヲシテ居ラヌデハナイカ、コンナ會社ハ幾
ツ出來ルカ分ラナイ、私ハ公債ノ發行ガ何
百億出テ來ルカラト言ツテ、ソンナコトハ
少シモ心配ハシナイ、國民ハ消化シマス、
ケレドモ不合理ナ矛盾シタ政策、或ハ國策
會社ガ出テ來タ場合ニハ行詰リマスヨ、吾
吾ハ矛盾シタ國策ニ反スルヤウナ會社ガ出
テ來タ場合ニ、ソレヲモ愛國的立場カラ鵜
呑ミニシナケレバナラヌト云フ義務ハ持タ
又、此ノ點ハドウデス、私ハ斯ウ云フヤウ
ナモノガ雨後ノ筍ノ如ク現ハレテ來ハセヌ
カト云フ不安ヲ持ツ、是ガ日本銀行ノ職責
ヲ更ニ擴大シ、業務ヲ擴張シ、思フ存分資
金ヲ放出スルト云フ場合ニ、日本銀行ノ本
來ノ使命ガココデ私ハ崩サレハセヌカト思
フ、此ノ危險性ガ多分ニアルノデハナイカ、
此ノ點ニ付テ大臣ノ御考ヘヲハツキリト伺
ツテ置キタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=40
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041・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 此ノ點ハ前ニモ申上ゲマ
シタガ、產業資金ト云フモノハ、私ハ日本
銀行劵ノ發行ニ依ツテ賄フベキモノデハナ
イト云フコトヲ前カラ申シテ居ルノデアリ
マン、產業設備ハ必ズソコニ工場設備、運
輸設備等、一方生產ノ結果出來マシタ資材
ガ要ルモノデアリマス、通貨ガサウ云フ生
產ヲ背景トシナイデ唯通貨ダケ出マシタ場
合ニハ購買力ヲ失ヒマシテ價値ハ下落ス
ルノデアリマス、サウ云フ方策ヲ執ラヌト
云フコトガ所謂「インフレ」防止デアリ、戰
時經濟ヲ維持スルノデアリマス、生產ノ增
加ト申上ゲルノモ、國民貯蓄ノ增加、消費
ノ節約ト申上ゲルノモ、只今モ御話ガアリ
マシタガ、私ハ事變ノ初メカラ極メテ眞面
目ニ是ハ言ツテ居ル、大本ハ此處ニアルト
思ツテ居ル、サウ云フ一方デ生產資材ヲ生
ミ出スヤウナ背景ノアル國民ノ蓄積ニ依ツ
タ資金ヲ以テ產業資金ハ賄フベキモノデア
ル、ソレヲサウ云フ風ニ合ハセマス一ツノ
方法モ事變以來執ツテ參リマシタ、是ハ日
本トシテハ開闢以來初メテノコトデアリマ
スカラ、運用ハ中々困難デアリマシタガ、
所謂物資動員計畫、ソレニ卽應シテ居ル產
業擴充計畫デアリマス、唯無暗ニ產業ヲ餘
計擴張シヨウト思ヒマシテモ、ソレニ必要
ナル擴張設備資材ガナケレバ出來ナイコト
デアルノデアリマス、一方ニ於テサウ云フ
物資動員計畫、產業擴充ノ具體的計畫ヲ、
物資ノ供給量ヲ勘案シテ作ルノデアリマス、
ソレニ應ジテ一方社債ヲ出ス、株ヲ認メル、
資金ノ調整ヲ運用シテ居リマス、是モ事變
以來完全トハ申セマセヌデ、產業再編成ノ
必要モ、ソレバカリデハアリマセヌガ、起
シテ居ルヤウナ次第デ、完全デハアリマセ
ヌガ、大體運用シテ參リマシタコトガ「イ
ンフレ」ヲ防ギ得テ、生產擴充ヲナシ得テ
居ル原因デアルノデアリマス、サウ云フ意
味デアリマスカラ、生產資金モ國債モ、其
ノ資金ハ國民ノ蓄積ニ俟ツノデアリマスガ、
時間的出合ヒト云フコトヲ考ヘマスト、何
レ後ニハ國民ノ蓄積ハ溜ツテ來ルノデアリ
マス、又ソレヲ見當ニシテ生產擴充計畫ヲ
決メルノデアリマスガ、現實ニ社債ヲ募集
シヨウト云フ時ニ、今金ガ金融機關ニ集マ
ツテ居ナイデ困ル、仕事ハ始メル必要ガア
ルサウ云フ時間的期日ニ付テ申上ゲマス
レバ、或ハ數十日トカ數箇月トカ、サウ長
イ何年目ト云フコトデハアリマセヌ、又ソ
レデハイケナイノデアリマスガ、一時ソコ
ニ通貨ヲ供給スル方法ガ今マデ不十分デア
リマシタ、ソコデ圓滑ヲ缺イテ居リマシタ
ガ故ニ、今囘ノ改正ヲシマシテ、日本銀行
カラサウ云フ通貨ヲ出サセルト云フコトヲ
考ヘテ居ルノデアリマス、ソレデ大體金ヲ
離レタナラバ通貨ガ無制限ニ出テ不安デハ
ナイカト云フ說ニ對シテハ、前ニモ申上ゲマ
シタガ、通貨ノ適量ヲ金ノ存在量ガ決メル
モノデハナイ、是ハ歷史ニ徵シテモ明カデ
アル、ソレヨリ離脫スル、サウスルト據ド
コロガナイカラ一方不安ハ起ルノデアリマ
スガ、元來據ルベカラザルモノニ據ツテ居
ル、ソレカラ離レルガ、アトハ何カト申シ
マスト今申シマシタ一方ノ動的ニ言ヒマス
ト生產擴充トカ國民消費ノ規正トカ、資金
ノ蓄積デアリマス、ソレヲ靜的ニ言ヒマス
ト物資需給計畫、今年ハドノ位物資ガ出來
ル、ドノ位生產擴充ニ充テル、ドノ位國民
消費ニ行ツテ、ドノ位軍需ニ用ヒラレル、
隨テ軍需ノ方面モ戰費ノ最大限ハドノ位、
生產擴充ハドノ位、斯ウ云フ見當カラ立テ
マス、ソレヲ軌道ヲ逸脫致シマセヌデ生產
擴充モ其ノ範圍內デヤリ得ル、ソレデドウ
シテモ軍需ニ餘計要ルト云フナラバ、其ノ
分ダケハ生產擴充ヲ控へテ軍需ニ廻ス、或
ハ國民消費ノ方ヲ節約シテ廻ス、此ノ三ツ
ノ調子ヲ取ツテ參レバ無制限ニ出ヤウハナ
イノデアリマス、常ニ國家全體ノ經濟關係
ノ計畫ガ、今申上ゲマシタヤウナ嚴格ナ計
畫ヲ以テ行ツテ、サウシテ一方申シマスト
國民所得ハ非常ニ殖エマスガ、國民ガ消費
シ得ル物資ハ限度ガアリマス、其ノ差額ヲ
租稅及ビ國民貯蓄ニ依ツテ囘收スル、ソ
レデ今後ノ管理通貨ノ適量ヲ決メル小サイ
モノガ日本銀行ノ所作デアリマス、根本ハ
今申シマシタ物資需給ニ適應シタル國家ノ
生產其ノ他經濟活動計畫、ソレト國民貯蓄
ノ增加、詰リ是ハ別ノ言葉デ言ヘバ、撒布
サレタ日本銀行劵ノ囘收デアリマス、之に
依ツテ通貨ヲ管理シ適量ヲ圖ル、小サイ所
作ハ日本銀行ニ色々書イテアリマス諸法規
デ間ニ合ハセル、根本ハ今申上ゲタ點デ參
ル、斯ウ云フ考ヘ方ヲ致シテ居ルノデアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=41
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042・世耕弘一
○世耕委員 簡單デアリマスカラ今一點ダ
ケ御尋ネ申上ゲテ置キマス、今ノ御說明ノ中
ニアリマシタノデスガ、貨幣ノ根本論ニ付
テ何カ御考ヘニナツテ居ルヤウデアリマス
ガ、實ハ大臣ガ御考ヘニナツテ居ルノハ「ア
ダム·スミス」カラ「マルクス」時代マデヲ頭
ニ置イテ、ソレカラ以後ノ御本ヲ讀ンデ居ナ
イヤウニ吾々ニハ思ハレル、ダカラサウ云
フ議論ガ出テ來ル、貨幣ノ進步ト云フコト
ヲ無視サレテ原始的ナ經濟理論ヲオヤリニ
ナツテ居ル、實ハ戰爭ト云フモノハ或ル意
味ニ於テ文化ヲ破壞シテ原始ニ還ル一面ガ
アル、ダカラ戰時事變中ト云フ觀念カラ通
貨論ヲナサルナラバ、一言モ御異議ガゴザイ
マセヌト云フコトヲ私ハ申上ゲタ、唯此ノ
貨幣理論ノ根本ノ文明的ナ貨幣ト云フモノ
ヲ論ズル上ニ於テハ、ソレハ物足リナイノ
デハナイカ、永久不變ノ理念ナリト言フカ
ラ實ハ私ガ御尋ネヲシタヤウナ譯デアリマ
ス、併シ是ハ議論ニ亙リマシテ御迷惑デア
リマスカラ、此ノ上御尋ネハ致シマセヌ、
尙ホ日本銀行ニ關スル問題デ「インフレ」防
止ヲ吾々非常ニ憂ヘル所以ハ、成程日本銀
行ハ產業其ノ他ノ金融界ニ直接ハ當ラナイ
カモ知レナイガ、要ハ親銀行デアル、頭デア
ル、手足ガ傷ンデ來レバ頭マデ痺レテ來ル、
ソレヲ憂ヘル、ダカラ此ノ際最後ニ大藏大
臣ニ希望スル點ハ、ドウゾ半身不隨ニナラ
ナイヤウニ、產業界、經濟界ヲ立派ニ指導
育成シテ戴キタイ、ソレサヘ出來レバアナ
タノ御說ノ如ク何百億日本ノ公債ガ增加シ
タカラト言ツテ、日本ノ生產力、產業勞働
力ニ依ツテ立派ニ消化スルト云フコトハ少
シモ私ハ疑ヒヲ持チマセヌ、ソレハ同感デ
アリマス、又ソレダケノ威力ヲ持ツテ居ル
コト、潜在シテ居ルコトヲ吾々ハ明カニシ
テ居ルノデアリマス、ソレヲ誤ラシテ居ル
所ノ原因ヲ此ノ際大臣トシテハ極力除去シ
テ戴キタイト云フコトヲ希望致シマス、尙
ホ是ハ石坂君カラノ御依賴デスガ、此ノ間
質問シテマダ御返答ガナイサウデアリマス、
日本銀行法ノ第十二條ノ問題ニ付テ「解散ヲ
必要トスル事由發生シタル場合ニ於テ其ノ
處置ニ關シテハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム」
ト斯ウ云フコトヲ書イテ居ルヤウデアリマ
ス、此ノ點ニ付テ石坂君カラ質問ガアツテ
返答ガナイサウデアリマスカラ、此ノ際承
レレバ結構デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=42
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043・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 ソレハ日本銀行ガ解散ス
ルト云フコトハ豫想ヲシテ居リマセヌガ、
法律ノ體系トシマシテ、其ノ資產ノ歸屬
ト云フモノヲヤハリ規定ヲシテ置カナケレ
バナラヌ、其ノ書キ方ハ斯ウ云フ書キ方ガ
妥當デアルト云フダケノ立案デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=43
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044・世耕弘一
○世耕委員 若シソンナ簡單ナ意味ナラ
バ、寧ロ是ハ第十二條ノ第一項ハ削除シテ
別ノ法文ヲ挿入シタ方ガ、立法技術ノ上カ
ラ言ツテモ明瞭ダト思ヒマス、其ノ點ハド
ウデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=44
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045・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 政府ハ是ガ一番適切ダト
思ツテ書キマシタノデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=45
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046・世耕弘一
○世耕委員 ソレカラモウ一點、附則デア
リマスガ、附則ノ第四十九條ニ「本法施行ノ
期日ハ各條ニ付勅令ヲ以テ之ヲ定ム」ト云
フコトニナツテ居リマスガ、是ハドウ云フ
譯デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=46
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047・山際正道
○山際政府委員 四十九條デ各條ニ付テ施
行期日ヲ定メルヤウニ致シマシタノハ、御
承知ノ通リ、從來ノ日本銀行ヲ新法ニ依ル
日本銀行ニ切換ヘマスル爲ニハ、改組委員
ノ任命、其ノ改組委員ニ依リ各般ノ手續等
ヲ豫メ行ハネバナラヌコトモゴザイマスル
ノデ、ソレ等條文ニ依リマシテ時期的ニ前
後ヲ圖リマシテ各條文每ニ施行ノ期日ヲ定
メタイ、斯樣ナ準備カラ斯樣ナ規定ヲ設ケ
タ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=47
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048・板谷順助
○板谷委員長 宜シウゴザイマスカ-山
本サン、アナタノ御質問ハ簡單ナラ此ノ際御
許シシマスガ、如何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=48
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049・山本粂吉
○山本(粂)委員 時間ノ都合ナラ今日デナ
クテモ宜イト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=49
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050・板谷順助
○板谷委員長 今日打切ラウト考ヘテ居リ
やく、併シ簡單ナ御質問ナラ此ノ際御許シ
シマス、又明日午後一時カラ討論ニ入リマス
ケレドモ、若シ簡單ナラ其ノ際御許シシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=50
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051・山本粂吉
○山本(粂)委員 サウ願ヒマセウ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=51
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052・板谷順助
○板谷委員長 此ノ際委員長ヨリ此ノ委員
會ニ現ハレマシタル質疑應答ノ中ニ、此ノ
際政府ノ意向ヲ確メテ置キタイ點ガ二點ア
リマス、第一ハ今囘新日本銀行ガ大東亞共
榮圈內ニ積極的ニ發展スルト云フコトハ洵
ニ宜シイコトデ、アルガ、併シ現在ハ世界ノ
大變革ノ時代デ、何時如何ナル時代ニ安定
スルカト云フコトハ、恐ラクハ何人モ見透
シガ付カヌコトト思フ、又南方ノ建設ニ對シ
マシテハ是カラ色々ノ事業ガ計畫ヲサレル
コトデアリマシテ、恐ラクハ各方面カラ註文ガ
續出ヲシテ、又意見モ區々デアツテ、收マ
リガ付カヌヤウナ虞モアルヤウニ想像サレ
ルノデアリマス、此ノ場合ニ此ノ金融ノ重
大任務ヲ持ツテ居ル中央發劵銀行ハ、公
的法人トシテ國家ト一體トナリ管理通貨
制ヲ基礎トシタル恆久的發劵制度ヲ設置サ
レルト云フコトデアル、政府卽チ大藏省ニ
於テ絕大ノ權力ヲ持ツコトトナルノデアル
ガ、ソコニ場合ニ依レバ政治的意義ガ含マ
レ、或ハ官僚主義ニモ流レ易イ危險ガ伴ハ
レルヤウニ感ジラレルノデアリマス、金
融界ノコトハ御承知ノ通リ微妙ナ作用ガ起
リ易イモノデアツテ、此ノ前途ノ運用ニ付
キマシテハ中々容易ナラヌヤウニ考ヘルノ
デアリマスルガ、大體先程大藏大臣ノ御話
ニ依レバ、日本銀行ニ任セルト云フヤウナ
コトハ古イ考ヘデアル、ソレカラ離脫シテ政
府ト一律一體トナツテ其ノ運用ヲヤラウト
云フコトデアルガ、今後ニ於キマシテ此ノ
具體的運營ハ、日銀ノ體驗、經驗アルモノ
ニ或ル程度持タセルト云フコトガ必要デハ
ナイカ、又發劵制度ノ限度ヲ決メルコト其
ノ他ニ付テモ權威アル委員會ヲ設置シテ萬
全ヲ期スルト云フヤウナ御意思ガアルカ否
カ、此ノ點ニ對スル大藏大臣ノ言明ヲ求メ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=52
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053・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 只今ノ時局ニ於キマシテ、
只今モ委員長ノ御述ベニナリマシタヤウニ、
極メテ國家ハ多事多難、多方面ノ狀況ニ直
面ラ致シテ居ルノデアリマス、隨ヒマシテ
色々ノ考へ方ガアリ、各方面色々ノ要求モ
アリマス、併シナガラ其ノ間ニ政府トシテ
此ノ國家ノ存立發展ニ全責任ヲ持ツテ參ル
ノデアリマス、然リト致シマスナラバ、國家
重要ナ機關ガ其ノ運用ヲ誤マルヤウナコト
ガアリマシテハ、國家ノ存立繁榮ニ非常ナ
障碍ガアルノデアリマス、十分ナル注意ヲ
以チマシテ、日本銀行ノ堅實ナル發展ヲ圖
ツテ行ク、是ガ政府ノ考ヘテ居ル所デアリ
マス、御懸念ノ點ハ萬ナイヤウニ處置ヲ致
シマス、政府自ラガ兌換劵ノ無意味ナル無
制限ナル膨脹ヲ極端ニ防止セント致シテ居
リマス、前々カラ申上ゲルヤウナ貯蓄增加
ノコトニ致シマシテモ、最大ノ努力ヲ拂ヒ
タイト思ツテ居ル位ノコトデアリマス、直
接兌換劵ノ增發ニナルカ收縮ニナルカト云
フコトヨリモ、其ノ根本ニ於テ左樣ナ危險
ナル增發ガ起ラヌヤウニ、經濟政策ニ對シ
テ絕大ナル努力ヲ拂フ方針デ居ルノデアリ
マス、尙ホ直接發行高等ヲ決メマスニ於キ
マシテモ特ニ委員會ヲ設ケマセヌガ、是ハ
日本銀行ノ當局者ノ意見モ十分ニ徵シマシ
テ、適切ヲ期シタイ、斯樣ニ思ツテ居リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=53
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054・板谷順助
○板谷委員長 今一點伺ツテ置キマスガ、
勿論制度ヨリハ人ニアリ、其ノ運用ニアリ
ト云フコトハ言フマデモナイコトデアリマ
ス、所デ此ノ日本銀行ノ役員ノ任期ガ、其
ノ儘從來通リ總裁、副總裁ハ五年、理事ハ
四年、監事ハ三年トナツテ居ルヤウデアリ
マスガ、是ハ餘リ長過ギルヤウニ考ヘルノ
デアリマス、所謂後進ニ途ヲ開ク、或ハ新
事態ニ卽應シタル人材ヲ拔擢スルト云フ上
カラ、此ノ任期ニ付キマシテハ、大抵外ノ
振合ハ三年位ノ程度ニナツテ居ツテ、若シ
其ノ人ガ適任デアルトスレバ、更ニ再選ス
ルト云フヤウナコトニナツテ居ルノデスガ
ソレニ對スル大藏大臣ノ御意見ヲ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=54
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055・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 日本銀行總裁ノ職務ハ極
メテ重大デアリマスノデ、是ハ單ニ新進拔
擢デアリマストカ、後進ニ途ヲ開クト云フ
コトニ主眼ヲ置キマシテモ決メラレヌ所デ
アリマス、同時ニ落著イテ銀行ノ使命ヲ考ヘ
ルト云フコトモ極メテ大切ナノデアリマス、
尙ホ他ノ會社等ニ於キマシテモ、或ハ滿鐵
トカ或ハ北支開發、其ノ他相當大キイモノ
ニ付キマシテハ五年ニナツテ居リマスシ、
又各特殊銀行モ、正金銀行以外ハ左樣デア
リマス、從來五年ニナツテ居リマシタガ、
特ニ之ヲ短縮スル必要ヲ認メマセヌノデ、
此ノ點ハ從來通リト致シテ置キマシタ次第
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=55
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056・板谷順助
○板谷委員長 尙ホ此ノ際戰時金融金庫法
案ニ對シマシテ、此ノ委員會ニ現ハレマシ
タ各委員ノ意見ヲ綜合致シマシテ、委員長
ヨリ御尋ネ致シマス、大藏大臣ハ先般本委
員會ニ於テ、本金庫運用ニ當ツテハ國家ノ
產業政策ニ基キ、商工當局ト緊密ナル連絡
ヲ執リ之ヲ行フ旨ノ根本方針ヲ明カニサレ
タノデアリマス、勿論本金庫運營ノ圓滑ヲ
期スル上ニハ當然ノコトト思フガ、之ニ對
シテ商工當局ト具體的連絡ノ案ガアリマシ
タナラバ說明ヲサレタイト存ジマス、更ニ
又大藏商工トノ連絡委員會ヲ設置スル御意
思アリヤ否ヤ、此ノ二點ニ付テ御伺ヒ致シ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=56
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057・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 是ハ前ニモ申上ゲマシ
タヤウニ、戰時ノ緊要產業、殊ニ其ノ將來
ノ收益性ノ確實ニ付キマシテ不明ナモノヲ
對象ト致スノデアリマス、國家ノ產業政策
ト極メテ緊密ナ關係ガアリマスノデ、產業
政策ノ主管廳ノ意思ヲ非常ニ尊重シテ參リ
マシテ、特ニ如何ナル產業ニ融資スルカト
云フ事業ノ選擇ナドハ、是ハモウ產業官廳、
主トシテ商工省ノ意見ニ依ルベキモノト思
ツテ居リマス、其ノ外各種ノ會社ノ融資ヲ
致シマシタ事業ノ監督デアリマストカ、又
全體ノ緊密ナル連絡ヲ保持スル爲ニ、斯ウ
云フ點ハ豫メ相談ヲシテ行カウ、斯ウ云フ
點ハ通知シ合ハウ、サウ云フコトニ付キマ
シテ事務當局デ相當話ヲシテ居リマス、尙
ホサウ云フ方ハ纏メテ行ク積リデアリマス、
尙ホ此ノ金庫ノ理事者、產業營團ノ理事者
ナドハ、場合ニ依レバ兼任ヲスル、場合ニ
依ルト云フヨリモ多分サウ云フヤウナ方針
デ行キタイト云フ積リデ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=57
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058・板谷順助
○板谷委員長 是ニテ質疑ハ終了シタト看
做シテ差支アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=58
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059・板谷順助
○板谷委員長 左樣決定致シマス、明日午
後一時カラ委員會ヲ開キマシテ討論ニ入リ
タイト考ヘテ居リマス、ドウカ各派ノ意見
ヲ纏メテ御出席アランコトヲ希望致シマス、
尙ホ簡單ナ質問デアリマスルナラバ其ノ際
御許シ致シマス
本日ハ是ニテ散會致シマス
午後零時二十分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007912855X00919420203&spkNum=59
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