1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十七年二月三日(火曜日)
午後一時七分開議
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議事日程 第八號
昭和十七年二月三日
午後一時開議
第一 昭和十七年度歳入歳出總豫算案竝昭和十七年度各特別會計歳入歳出豫算案
第二 豫算外國庫の負擔となるべき契約を爲すを要する件
第三 (第一號)昭和十六年度歳入歳出總豫算追加案
第四 (特第一號)昭和十六年度各特別會計歳入歳出豫算追加案
第五 (第一號)昭和十七年度歳入歳出總豫算追加案
第六 (特第一號)昭和十七年度各特別會計歳入歳出豫算追加案
第七 (追第一號)豫算外國庫の負擔となるべき契約を爲すを要する件
第八 米穀需給調節特別會計法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第九 木炭需給調節特別會計据置運轉資本臨時補足に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十 食糧管理法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十一 昭和十五年度第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第十一 昭和十五年度特別會計第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第十一 昭和十五年度特別會計豫備費支出の件(承諾を求むる件)
第十一 昭和十六年度第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第十一 昭和十六年度豫備金外豫算外支出の件(承諾を求むる件)
第十一 昭和十六年度特別會計第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)
第十一 昭和十六年度特別會計豫備金外豫算超過及豫算外支出の件(承諾を求むる件)
第十一 自昭和十六年十一月一日臨時至同年十一月五日軍事費特別會計豫備費外豫算超過支出の件(承諾を求むる件)
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〔左の報告は朗讀を經さるも參照の爲茲に掲載す〕
一政府より提出せられたる議案左の如し
昭和十五年度第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)
昭和十五年度特別會計第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)
昭和十五年度特別會計豫備費支出の件(承諾を求むる件)
昭和十六年度第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)
昭和十六年度豫備金外豫算外支出の件(承諾を求むる件)
昭和十六年度特別會計第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)
昭和十六年度特別會計豫備金外豫算超過及豫算外支出の件(承諾を求むる件)
自昭和十六年十一月一日臨時至同年十一月五日軍事費特別會計豫備費外豫算超過支出の件(承諾を求むる件)
(以上二月二日提出)
一昨二日貴族院より受領したる政府提出案左の如し
大東亞戰爭の呼稱を定めたるに伴ふ各法律中改正法律案
一議員より提出せられたる議案左の如し
神宮皇學館大學を綜合大學として擴張變更に關する建議案
提出者
濱地文平君 長井源君
片岡恒一君 馬岡次郎君
松田正一君
(以上一月三十一日提出)
種苗國策樹立に關する建議案
提出者
立川平君 宮崎一君
高橋守平君 小串清一君
(以上二月二日提出)
一去一月三十一日東條内閣總理大臣より左の通發令ありたる旨の通牒を受領せり
興亞院部長 宇佐美珍彦
第七十九囘帝國議會政府委員被仰付
一去一月三十一日議長に於て辭任を許可したる常任委員左の如し
第五部選出豫算委員 岡崎久次郎君
第九部選出豫算委員 宮脇長吉君
一去一月三十一日議長に於て選定したる委員左の如し
民法中改正法律案(政府提出、貴族院送付)外一件委員
池田七郎兵衞君 池田清秋君
石坂繁君 伊禮肇君
小山田義孝君 川副隆君
岸田正記君 木村作次郎君
鹽川正藏君 高橋義次君
立川平君 内藤正剛君
長井源君 野村嘉六君
服部英明君 原惣兵衞君
馬場元治君 古島義英君
松川昌藏君 山本粂吉君
名川侃市君 一松定吉君
松木弘君 菊地養之輔君
佐竹晴記君 北浦圭太郎君
三田村武夫君一去一月三十一日特別委員理事補闕選擧の結果左の如し
國民體力法中改正法律案(政府提出)外四件委員
理事松尾孝之君(委員星島二郎君去一月三十一日理事辭任に付其の補闕)
一去一日常任委員補闕選擧の結果左の如し
第五部選出
豫算委員 石坂豐一君(岡崎久次郎君補闕)
第九部選出
豫算委員 木檜三四郎君(宮脇長吉君補闕)
一昨二日委員長及理事互選の結果左の如し
民法中改正法律案(政府提出、貴族院送付)外一件委員
委員長 野村嘉六君
理事
原惣兵衞君 鹽川正藏君
山本粂吉君 松木弘君
一昨二日に於ける特別委員の異動左の如し
米穀需給調節特別會計法中改正法律案(政府提出)委員
辭任 村松久義君 補闕 大島寅吉君
辭任 淺沼稻次郎君 補闕 須永好君
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〔三笠宮崇仁親王殿下御臨場〕
〔總員起立敬禮〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=0
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001・田子一民
○議長(田子一民君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス、日程第一乃至第七ハ豫算案デアリマス
カラ、一括議題トナスニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=1
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002・田子一民
○議長(田子一民君) 御異議ナシト認メマ
ス、日程第一、昭和十七年度歲入歳出總豫
算案竝昭和十七年度各特別會計歲入歲出豫
算案、日程第二、豫算外國庫ノ負擔トナル
ベキ契約ヲ爲スヲ要スル件、日程第三、第
一號、昭和十六年度歲入歳出總豫算追加案、
日程第四、特第一號、昭和十六年度各特別會
計歲入歲出豫算追加案、日程第五、第一號、
昭和十七年度歲入歳出總豫算追加案、日程
第六、特第一號、昭和十七年度各特別會計
歲入歲出豫算追加案、日程第七、追第一號、
豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲スヲ
要スル件、右七案ヲ一括シテ議題ト致シマ
ス、豫算委員長ノ報告ヲ求メマス-豫算
委員長松村謙三君
第一昭和十七年度歲入歲出總豫算案
竝昭和十七年度各特別會計歲入歲出
豫算案
第二豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契
約ヲ爲スヲ要スル件
第三(第一號)昭和十六年度歲入歲出
總豫算追加案
第四(特第一號)昭和十六年度各特別
會計歲入歲出豫算追加案
第五(第一號)昭和十七年度歲入歲出
總豫算追加案
第六(特第一號)昭和十七年度各特別
會計歲入歲出豫算追加案
第七(追第一號)豫算外國庫ノ負擔ト
ナルベキ契約ヲ爲スヲ要スル件
報〓書
一昭和十七年度歲入歲出總豫算案竝昭和
十七年度各特別會計歲入歳出豫算案
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十七年二月二日
豫算委員長松村謙三
衆議院議長田子一民殿
報〓書
一豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲
スヲ要スル件
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十七年二月二日
豫算委員長松村謙三
衆議院議長田子一民殿
報告書
一(第一號)昭和十六年度歲入歲出總豫算
追加案
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十七年二月二日
豫算委員長松村謙三
衆議院議長田子一民殿
報〓書
-(特第一號)昭和十六年度冬特別會計歲
入歲出豫算追加案
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十七年二月二日
豫算委員長松村謙三
衆議院議長田子一民殿
報〓書
一(第一號)昭和十七年度歲入歳出總豫算
追加案
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十七年二月二日
豫算委員長松村謙三
衆議院議長田子一民殿
報〓書
(特第一號)昭和十七年度各特別會計歲
入歲出豫算追加案
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十七年二月二日
豫算委員長松村謙三
衆議院議長田子一民殿
報告書
(追第一號)豫算外國庫ノ負擔トナルベ
キ契約ヲ爲スヲ要スル件
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十七年二月二日
豫算委員長松村謙三
衆議院議長田子一民殿
〔松村謙三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=2
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003・松村謙三
○松村謙三君 只今議題トナリマシタ昭和
十七年度歲入歲出總豫算案竝昭和十七年度
各特別會計歲入歳出豫算案、豫算外國庫ノ
負擔トナルベキ契約ヲ爲スヲ要スル件、第
一號、昭和十六年度歲入歳出總豫算追加案、
特第一號、昭和十六年度各特別會計歲入歲
出豫算追加案、第一號、昭和十七年度歲入
歲出總豫算追加案、特第一號、昭和十七年
度各特別會計歲入歲出豫算追加案及ビ追第
一度、豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ
爲スヲ要スル件、右ノ七件ニ付キ、豫算委
員會ニ於ケル寒議ノ經過竝ニ結果ヲ御報〓
致シマス
先ヅ昭和十六年度歲入歳出總豫算追加案
ニ計上致シテ居リマスル金額ハ、歲入百三
十餘万圓、歲出一億四千二百十餘万圓デア
リマシテ、差引一億四千七十餘万圓ノ歳出
超過トナツテ居リマスガ、是ハ昭和十六年
度豫算實行上ノ歲入超過額ノ中ヨリ充當ス
ル計畫トナツテ居リマス、歲出追加額ノ主
ナル事項ヲ申上ゲマスレバ、災害土木費補
助ノ增加、鐵鋼原料ノ補償ニ要スル經費、
重要物資管理ニ要スル經費等デアリマス
次ニ昭和十七年度歲入歳出總豫算案ト、
昭和十七年度歲入歲出總豫算追加案トニ付
テ申上ゲル順序デアリマスガ、昭和十七年
度一般會計豫算ノ全貌ヲ明カニスルガ爲
ニ、過日成立致シマシタ臨時軍事費關係ノ
昭和十七年度歲入歲出總豫算追加ヲモ加ヘ
マシタモ人ニ付キ、以下其ノ大要ヲ申上グ
ルコトト致シマス、昭和十七年度一般會計
豫算額ハ、歲入歳出共各〓八十八億三千七百
餘万圓デアリマシテ、之ヲ前年度豫算額ニ
比較致シマスト、歲入ニ於テ六億二千六百
餘万圓、歲出ニ於テ一億七千九百餘万圓ノ
增加トナツテ居リマス、而シテ右ノ豫算額
ニ過日成立致シマシタ臨時軍事費豫算追加
ノ金額百八十億圓ヲ合算致シマスレバ、先
般モ申上ゲマシタ通リ、二百六十八億三千
七百餘万圓トナリ、是ヨリ一般會計及ビ臨
時軍事費特別會計間ニ於テ重複スル金額ト
ナツテ居リマス所ノ一般會計ヨリ臨時軍事
費特別會計ヘ繰入額二十五億二千五百餘万
圓ヲ控除致シマスレバ、二百四十三億千百
餘万圓ト相成ルノデゴザイマス
先ヅ歲入豫算ノ內譯ヲ申シマスト、租稅
其ノ他ノ普通歲入ガ七十二億五千七百餘万
圓、公債金ガ十五億二千六百餘万圓、借入
金ガ五千四百万圓デアリマシテ、右ノ普通
歲入ハ、之ヲ前年度豫算額ニ比較致シマス
ナラバ、二十一億三千餘万圓ノ增加デアリ
マス、是ハ主トシテ租稅收入ノ增加ニ基ク
モノデアリマシテ、就中前年度ニ實施致シ
マシタ間接稅中心ノ增稅ニ基キマスル本年
度ノ增收額ト、本議會ニ於テ審議中ノ增稅
案ニ依ル增收額トヲ合算致シマシテ、十四
億二千九百餘万圓ガ見込マレテ居ル次第デ
アリマス、又右ノ公債發行豫定額ニ各特別
會計ノ分及ビ臨時軍事費豫算追加ニ伴ヒマ
スル分ヲ加ヘマシテ、昭和十七年度ニ於ケ
ル公債發行豫定總額ヲ見マスルト、百六十
三億五千八百餘万圓ト相成ルノデゴザイマ
ス
次ニ歲出豫算額ノ前年度豫算額ニ對スル增
加ハ、只今申上ゲマシタ通リ一億七千九百
餘万圓デアリマスガ、陸海軍ノ經費ニ付キ
マシテハ、大東亞戰爭ノ動發ニ因ル兩省所
管各部ノ全面的戰時態勢化ニ伴ヒマシテ若
干ノ例外ヲ除キ、其ノ殆ド全部ヲ臨時軍事
費ニ計上致シテ居リマスノデ、兩省所管ノ
經費ハ前年度ニ比シ、三十一億七千百餘万
圓ヲ減少シテ居リマス、隨ヒマシテ他ノ各省
所管ノ經費ニ於キマシテハ、三十三億五千百
餘万圓ヲ增加シテ居ルコトニナリマス、但シ
此ノ內、臨時軍專費、特別會計ヘ繰入ノ前年
度ニ比シ增加シタル金額十六億四千百餘万
圓ハ、通拔ケ勘定デアリマスカラ之ヲ控除致
シマスレバ、差引十七億千餘万圓ノ增加ト
ナリマス、今其ノ內譯ヲ見マスレバ、國債
費ニ於テ五億五千四百餘万圓、年金及ビ恩
給ニ於テ千七百餘万圓、地方分與稅分與金
特別會計ヘノ繰入ニ於テ一億三千二百餘万
圓、國庫豫備金ニ於テ五億千万圓、其ノ他ノ
經費ニ於テ四億九千四百餘万圓トナツテ居リ
マシテ、時局ニ關スル經費ノ增加ガ其ノ主
要ナル部分ヲ占メテ居リマス、而シテ其ノ
他ノ經費ニ於ケル增加ハ、生產力擴充、低
物價維持、產業再編成、國民保健、重要物
資貯藏、軍人援護、科學技術振興、防空等
時局ニ鑑ミ緊要ナル經費ノ膨脹ヲ致シタノ
ニ因ルノデアリマス、爾餘ノ昭和十七年度
各特別會計歲入歲出豫算案外四件ニ付キマ
シテハ、其ノ說明ヲ省略致シマス
斯クテ豫算委員會ハ、一月二十二日ヨリ
開會致シ、同三十日ニ質疑ヲ終了シ、三十一
日、二月一日ノ二日間分科會ヲ開キマシタ、
今日ノ如キ時局デゴザイマスカラ、理事會
ニ於キマシテモ種々森議ノ進行ニ苦心ヲ致
シ、軍國ノ議會タルニ鑑ミ、其ノ急務ニ應
ズル議會ノ機能ヲ十分發揮シタイト存ジマ
シテ、或ハ質疑ヲ重大ナル問題ニ集中シ、
又ハ總理大臣、陸海軍大臣ハ軍國ノ重大ナ
ル際デアリマスカラ、從來ノ通リ始終本委
員會ニ出席困難ノ場合ガアルコトヲ想定シ
テ、是等ノ大臣ニ對スル質疑ハ、其ノ出席
シ得ル日ヲ定メテ集中シテ行ヒ、一面十分
審議ヲ盡スニ遺憾ナキヲ期スルト共ニ、是
等ノ直接ノ大臣ガ緊要ナル軍務ヲ鞅掌スル
ニ支障ナキヲ期シタノデゴザイマス、幸ヒ
委員諸君ノ非常ナル精勵ニ依リマシテ、本
豫算案及ビ各種ノ追加豫算案ヲ併セ僅カニ
十日間ニシテ議事ヲ終リ、而モ此ノ重大ナル
時局ニ對處スル國政ニ關シ凡ユル審議ヲ盡
シ得タコトハ、最モ欣幸トスル所デゴザイ
マス
是ヨリ委員會審議ノ內容ニ付テ主ナ問題
ヲ取上ゲテ簡單ニ御報告申シタイト存ジマ
ス、先ヅ現政府ガ國家內外ノ現狀ニ對シテ
施政ノ根本觀念ヲ何處ニ持ツテ居ラルルカ
ニ付キマシテ一言申上ゲタイト存ジマス、
ソレハ本委員會ノ中途ニ於テ或ル委員ノ質
問ニ對シ東條總理大臣ハ極メテ率直ニ自己
ノ國政ニ對スル心境ヲ披瀝シテ居ラレマス、
其ノ一節ヲ速記カラ朗讀致シマス「十二月
八日ヲ以テ大戰ノ詔書ガ發セラレ、玆ニ眞
ノ大戰爭ニ今突入致シテ居リマス、施政ノ
第一ノ着眼ハ、此ノ戰爭ニ勝ツコトデアリ
マス(拍手)凡ユル重點ヲ之ニ集中シテ居リ
マス、施政ノ主體ヲ私ハ之ニ置イテ居リマ
ス、又第二ノ主體ハ國內ヲ纏メルコトデア
リマス、一億一心ヲ具現シテ行クコトデス、
隨ヒマシテ私ハ總理大臣トシマシテ、凡
ル國政ニ對シマシテハ、總理大臣ト云フモ
ノノ責任ニ於キマシテハ全幅ノ責任ヲ執リ
マス、併シナガラ施政ノ重點ハ今ノ二點ニ
置イテ居ルノデアリマス、八分ノ力ハソレ
ニ置イテ居リマス、隨ヒマシテ國內問題ト
云フモノニ付キマシテハ、實ハ私ハ率直ニ
申シマスト、二分ノ力シカ盡シテ居リマセ
又、是ハ皆樣方ガ十分御協力シテ戴クトシ
テ安心ヲシテ居ルノデアリマス(拍手)併シ
ナガラ國內問題モ勿論重大デアリマスノデ、
〓究ハヤラシテ居リマス、或ル一段落ガ付
キ、玆ニ大東亞ノ戰爭ハ確實ニ目途ガ付キ、
玆ニ大東亞ノ基礎ガ兎ニ角與ヘ得タト云フ
コトニナリマスレバ、其ノ際ニ振返ツテ又
國內ノ問題モ今度ハ重點ノ置キ方ガ違ツテ
來ルト思ヒマス、此ノ點モ將來ハ必ズ吾々
トシマシテハ、當然ニ近イ時期ニ於テ力ノ
持チ方ガ逐次變ツテ來ル時代ガ來ルト思ヒ
マス、併シナガラ其ノ時代ニ備ヘルダケノ
〓究ハ十分シテ居リマス」云々ト言ツテ居
リマス、又ソレニ次イデ言ツテ居リマス言
葉ハ「勿論此ノ大キナ八分ノ力ヲ投ジテ居
リマス所ノ二ツノ目的ヲ完遂スル上ニ於キ
マシテ、ドウシテモ變ヘネバナラヌト云フ
點ハ、是ハ逐次變ヘテ居リマス、唯茲ニ特
ニ懸念シテ居リマスコトハ、之ニ依ツテ國
政ガ一瞬デモ停頓シテハ困ルト云フ點ヲ他
面ニ顧慮シツツ之ニ當ツテ居ル次第デアリ
マス」此ノヤウニ申サレテ居リマス、是ハ
行政機構改革問題ニ對スル答辯ノ一節デア
リマスガ、何等飾ル所ナク總理大臣ノ施政
ノ着眼、心持ガ分ルト思ヒマス、又實際本
委員會ニ於ケル政府ノ說明ナリ、方針ナリ
ガ、此ノ趣旨ニ一貫シテ徹底致シテ居ルヤ
ウデアリマスカラ、先ヅ〓論トシテ第一ニ
御紹介申ス次第デゴザイマス(拍手)
豫算總會ヲ通ジテ寒議ノ中心トナリマシ
タモノハ、大東亞共榮圈ノ建設ニ關スル問
題デアリマス、其ノ爲ニ質疑ノ第一日ヲ全
部總理大臣ヲ中心トシテ、此ノ大問題ノ檢
討ニ費シタルノミナラズ、全期間ヲ通ジテ
凡ユル論議ガ之ヲ基礎トシテ行ハレタノデ
アリマス、其ノ結果本議會ニ於ケル政府ノ
施政方針ニ述ベラレタ大東亞建設ノ輪廓ニ
含マレル內容ヲ略〓明カニスルコトヲ得タノ
デアリマス、卽チ總理大臣、其ノ他關係大
臣ノ答辯ヲ綜合致シマスト、大東亞共榮圈
ノ想定セラレル範圍、絕對不脅威ノ範圍ハ
今後ノ進展ニ重大ナル關係ヲ有シ、殊ニ作
戰ト關係ヲ有スルガ故ニ、今ハ之ヲ言明ス
ル時機デハナイケレドモ、大東亞防衞ノ爲
ニ絕對的必要ナル地域ハ帝國之ヲ把握措置
シ、其ノ他ノ地區ニ對シテハ各民族ノ傳統
文化ニ應ジ、戰局ノ進展ニ伴ツテソレ/
適當ナル措置ヲ講ジ、差當リハ先ヅ軍政統
治ノ下、治安ノ囘復ヲ圖リ、先ヅ重要資源
ノ需要ヲ充足シ、當面ノ戰爭遂行ニ遺憾ナ
キヲ期スルト共ニ、併セテ大東亞ノ自給自
足體制ノ基礎ヲ確立スルコトヲ主眼トナ
シ、是ガ具體的方針ト致シマシテハ、第一、
資源ノ獲得、殊ニ戰爭遂行上緊要ナル資源
ヲ確保スルコト、第二、南方ノ是等ノ重要
資源ガ敵性國家ニ向ツテ流出スルコトヲ飽
クマデ阻止スルコト、第三、作戰軍ノ現地
ノ自活ヲ確保スルコト、第四、在來企業ノ
我ガ方ニ對スル協力ヲ誘導スルコトニ重點
ヲ置キ、日滿支ノ經濟建設計畫ヲ骨幹トシ
テ、之ニ新タニ我ガ勢力圏內ニ入リ來ル南
方地域ヲ併セテ一大計畫ヲ樹立シテ、實行
ニ移サントスルモノデアリマス、其ノ計畫
ニ基ク物資ハ之ヲ物動計畫ニ繰入レ、國家
ノ國防經濟力トシテ、之ヲ一元的ニ運用シ
テ行クノデアリマス、而シテ南方開發ノ擔
當者ハ、是ハ許可主義トシテ、嘗テ南方ニ
經驗ヲ有シ、此ノ大建設ニ理解アル者ヲ先
三〇、更ニ適宜必要ニ應ジ新タナル者ノ進
出ヲ許スコトニスル、斯ウ云フコトデアリ
マス、又通貨ハ現地ノ其ノ所々ノ通貨ニ
「マーク」シタ軍票ヲ以テシ、軍票ト現地ノ
通貨ハ等價ニ流通セシムル方針デアリマシ
テ、其ノ上漸次現地ニ適應シタル通貨制度
ヲ確立セントスルモノデアリマス、追々ハ
日本銀行ヲ中樞トスル大東亞金融圈ヲ作ラ
ントスル考ヘデアルトノコトデアリマス、又
共榮圈內ノ過剩物資、例ヘバ「ゴム」錫ノ如キ
ニ付テハ、出來得ル限リ我ガ方ニ於テ買取
ツテ之ヲ貯藏シ、他面生產ヲ制限スルト同
時ニ、東亞ノ諸民族ニモ此ノ大東亞ノ建設
ニ協力セシメテ、將來ノ康福ノ爲ニ一時ノ
苦痛ヲ忍バシメナクテハナラナイトノ方針
デアリマス、唯是等ノ開發ニ最モ因難ナル
問題ハ輸送、卽チ船舶ノ問題デアリマスガ、
勢ヒ現在ノ狀態ニテハ專ラ國防資源ノ運輸
ニ限定セラルルハ已ムヲ得ザル所デアリマ
シテ、其ノ他ノ物資ノ運輸ハ極メテ制約セ
ラルルノデアリマス、船舶ノ問題ハ斯クノ如
ク焦眉ノ急デアリマスガ、遞信大臣ノ說明
ニ依リマスレバ、造船計畫ノ數字ハ申サレ
マセヌガ、此ノ一、二箇年間ノ造船ノ實績
ヨリモ、遙ニ大ナルモノヲ必ズ實現出來ル
ト申シテ居リマス、尙ホ此ノ大東亞建設ニ
關シテハ種々重大ナル質疑應答ガアリマシ
タガ、是ハ略シマス、要スルニ今ハ〓戰〓
〓ノ時代デゴザイマシテ、大ナル建設的方
策ハ今後ニ殘サレテ居リマス、朝野ノ知識
經驗ヲ集メテ、千古搖ギナキ大建設ノ基礎
ヲ作ルコトハ何ヨリモ肝要デアリマス担 当
手)政府ハ之ニ應ズル中央機關ト申シマス
カ、之ニ類シタ一ツノ施策ヲ目下至急ニ考
案中デアルト申シテ居リマス
尙ホ外交ニ關シマシテハ、東郷外務大臣ヨ
リ米英ニ對シテハ、軍事ト竝行シテ外交的
ニ十分最善ノ努力ヲナス旨ヲ述ベラレ、又
日「ソ」間ニ現存スル中立條約ノコトニ付テハ、
兩國間ニ於テ之ヲ守ルコトニ何等ノ變化ハ
ナイノデアツテ、此ノ點ニ於テハ「ソヴィエ
ト」政府ニ於テ大東亞戰爭勃發後モ、之ヲ嚴
守スルモノデアルコトヲ一再ナラズ言明サ
レマシタ、又最近ニ於キマシテモ「ソ」聯ノ
大使ト此ノ點ニ付テ篤ト懇談ヲ致シタ譯デ、
此ノ邊ニ付テハ何等變化ハナイト御承知ヲ
願ヒタイトノ言明ガアリマシタ
軍事ニ關シマシテハ、豫算總會及ビ分科會ニ
於テ屢〓、秘密會ヲ開イテ說明ヲ聽キマシタガ、
此處ニ發表スル限リデハゴザイマセヌ、唯
玆ニ御報告申上ゲテ置キタイコトハ、分科
會ニ於ケル政府ノ說明ニ依リマスレバ、支那
事變發生以來陸海軍ニ對スル獻金ハ、國防
獻金ニ於テ總計二億五百六十六万圓、恤兵
金ニ於テ九千四百五十七万圓、學藝技術奬
勵金千五百十六万圓、合計三億千五百四十
万圓ニ上ツテ居リマス、殊ニ今囘ノ大戰爭
開始以來ノ獻金ハ、僅カニ一箇月有餘ノ間
ニ、陸海合セテ八千七十餘万圓ノ巨額ニ上
ツテ居リマス(拍手)以テ如何ニ國民ガ陸海
軍ノ忠戰ニ感謝シ、戰爭目的ノ完遂ニ愛國
ノ熱意ヲ發揮セルカヲ知ルベク、茲ニ特ニ
御報告申上ゲテ置ク次第デアリマス
財政ノ諸問題ニ付キマシテハ、是マデノ
ヤウニ技術的ノ質疑ハ割合ニ少クアリマシ
タガ、大東亞ヲ中心トシテ、我ガ財政ノ將來
ヲ見タル意見ガ相當ニアリマシタ、其ノ
部ハ既ニ大東亞建設ノ所ニ申述ベテ置キマ
シタガ、尙ホ質疑ニ依リテ略〓明カニナリマ
シタ所ニ依リマスト、政府ハ豫算ト物ト
ノ權衡ヲ圖ルニ付テハ、我ガ國ハ勿論、滿
洲支那及ビ南方ヲモ考慮ニ入レ、其ノ資
材ノ獲得ヲ考ヘテ今度ノ豫算ヲ編成シタ、
實行豫算ニ付テハ勿論今ハ之ヲ編成スル考
ヘハ持ツテ居ラヌト申シテ居リマス、貯蓄
奬勵、公債消化ハ戰時經濟ノ最モ重大ナル
要點デアリマシテ、明年度ノ公債發行高ハ
百六十億ニ上リ、十六年度ノ未發行公債ト
社債其ノ他必要ノ資金需要ヲ加ヘマスレ
バ、二百億ヲ遙カニ超ユルコトト存ジマ
ス、是ハ一ニ國民收入ノ貯蓄ニ俟タナクテ
ハナリマセヌ、其ノ點ニ付テ國民ノ愛國心
ニ愬へ、政府ノ執ル諸般ノ方策ニ協力ヲ得
テ、國民貯蓄ノ增加ヲ圖リ、之ニ依ツテ圓
滿ニ公債、其ノ他所要ノ資金ノ融通ニ遺憾
ナキヲ期シ、强制貯蓄等ノ政策ハ執ラナイ
トノコトデゴザイマス
臨時軍事費特別會計ノ決算及ビ經理監督
ニ付キマシテハ、御承知ノ通リ事變發生以
來、戰爭終結マデ一會計年度トナルノデゴザ
イマス、隨ヒマシテ決算ハ法律ニ定メラレ
マシタ通リ、同會計終結ノ際マデ行ハナイ
ノデアリマスガ、但シ經理ノ監督ニ付キマ
シテハ、陸海軍共適當ノ機關ニ於テ嚴重ナ
ル監査ノ方法ヲ執リ、更ニ會計檢査院ノ檢
査モ行ハレテ居ルトノコトデアリマス、尙
ホ南方開發軍事費ノ融通ヲ受クル會社ノ
經理ニ關スル監督モ軍ニ於テ實行スル用意
ヲシテ居ルトノコトデアリマス、質疑ヲナ
セル委員ニ於テモ之ニ滿足ヲ表スルト共
ニ、此ノ上トモ萬遺漏ナキヲ期セラレタイ
トノ希望ガアリマシタ
次ニ經濟關係ノ諸問題デアリマス、商工、
鑛業ノ關係ニ付キマシテ最モ多ク問題トナ
リマシタノハ、統制會ノ問題デアリマスガ、
之ニ關スル質疑ハ、殆ド全部ガ統制會ト他
ノ組織機構トノ關係ニ付テデアリマシタ、政
府ノ答辯ノ要旨ヲ申上ゲマスナラバ、國策
會社ト統制會トノ關係ニ付テハ、國策會社
ト雖モ統制會長ノ指導下ニ附カネバナラヌ
コト、勞務統制ニ關聯シテ、產業報國會ト
ノ關係ニ付キマシテハ、統制會ハ各種產業
ニ付キ縱斷的ニ統制ヲシ、產業報國會ハ產
業全體的ニ橫斷的ニ統制スルコト、商業組
合及ビ工業組合トノ關係ニ付キマシテハ、
將來是等ヲ統制會ノ下部機構タラシムルト
云フ着意ヲ以テ目下〓究中デアリマスガ、
例ヘバ中小商工業ノ整理統合ト云フヤウナ
當面ノ問題ノ處理ニ當リマシテハ、マダ統
制會ハ之ヲ擔當シ得ル所マデ發達シテ居リ
マセヌカラ、差當リ商業組合、工業組合ノ
制度ノ運用ニ俟ツコト、更ニハ大東亞全般
ニ亙ル經濟團體ヲ作ルニ當ツテハ、我ガ國
ノ統制會ヲ中核トシテ行フコト等デアリマ
ス、右ニ關聯シテ國策會社ト通稱セラレナ
ガラ、實ハ單純ナル商法上ノ會社ニ過ギナ
イ各種ノ統制會社ニ對スル監督ニ付キ、目
下總動員法ニ基ク勅令ヲ以テ、是ガ規定ヲ
整備スル手配ヲ致シテ居ル旨ノ言明ガアリ
マシタ
中小商工業者ノ轉廢業問題ニ關シテモ亦
多數ノ委員カラ樣々ノ質疑ガアリマシタガ、
政府ト致シマシテハ、單ニ中小商工業ナル
ガ故ニ、全般的ニ之ヲ再編成シナケレバナ
ラヌト云フヤウナ考ヘハ持ツテ居ナイ、必
要ナ部門ダケニ於テ必要ナ限度ニ限ルベキ
コトハ言フヲ俟タナイト云フ答辯デアリマ
ス、尙ホ轉廢業者ノ南方へノ進出ニ關シ
テハ、具體策ハ目下〓究中デアルガ、之ヲ
無秩序ニ許スコトナク、具體的ニ計畫ヲ
立テテ行ヒタイト云フコトデアリマス、
此ノ外生產力ノ擴充、重要物資ノ國家管
理石油ノ問題、取引所問題、日本銀行
改組ノ問題、戰時金融金庫ノ設立ニ伴フ
各種金融機關ノ機能ノ變化等ノ諸問題ニ付
テ質疑應答ガ行ハレマシタ
又農業上ノ諸問題ニ付テモ活潑ナル質疑
ガ行ハレマシタ、例ヘバ適正農業經營ノ問
題農業團體統合ノ問題、重要ナル肥料ノ
問題、資材配給ノ問題、農業保險制度ノ改
革、農業國策會社ノ整理等ノ諸問題ニ付テ
極メテ眞摯ナル質疑ガアリマシタ、又食糧
問題ニ付テハ、日本內外地ヲ通ジテ自給自
足ヲ圖ル根本方針ニハ變リノナイコト、又
肥料ニ付キマシテハ、昨年ニ比シ本年ハ多少
減少ハ致シマスガ、本年ノ秋、更ニ來春以
降ニハ漸次好轉スル見込デアルトノコトデ
ゴザイマス、是等ノ諸問題ハ、他ノ農業關
係ノ委員會ニ於テ更ニ詳細ニ論ゼラレテ居
ルヤウデアリマスカラ、玆ニ詳シク報〓ス
ルコトヲ止メマス、唯一ツ御注意ヲ喚起致
シテ置キタイト思ヒマスコトハ、土地問題
ニ關スル議論ガ例年ノ豫算委員會ヨリモ一
層多クナリマシテ、凡ユル角度ヨリノ發言
ガアリマシタ、是ハ注意スベキ傾向トシテ
御報告申上ゲテ置キマス
尙ホ國內問題ニ付テ種々ノ點ニ於テ論議
セラレマシタガ、之ヲ省略シ、唯一、二ノ
主要ナル問題ニ付テ御報〓致シマス、其ノ
第一ハ、行政機構改革ノ問題デアリマスガ、
之ニ對シテ政府ハ、從來ト同樣改革ノ必要
デアルコトハ認メルガ、事態ガ斯クノ如ク
大戰爭ニ突入シタ以上、戰爭ニ勝ツコトガ
主ナル目的デアツテ、國內問題ニ付キ大ナ
ル改革ヲヤツテ、一瞬ニテモ國政ガ停頓シ
テハ困ル、機構ヨリモ寧ロ人ガ仕事ヲスル
ノデアルカラ、現在ノ機構デモ十分ヤツテ
行ケルト思フ、併シ戰時必要ノ部分ハ勿論
之ニ應ジテ改メルト云フコトデアリマス
次ニ官紀振肅ノ問題デアリマスガ、是ハ
役人ノ獨善的傾向竝ニ下剋上的風潮ヲ一掃
シ、官吏ノ中ノ極メテ一部ノ少數者デアラ
ウト思フガ、種々ノ犯罪、或ハ惡思想ノ浸
潤等ノ危險ガアツテハ洵ニ國家ノ憂デアル
カラ、眞ニ國家ノ爲メ挺身奉公スルヤウニ
致シ、國民トノ間ニ毫モ間隔ヲ生ズルコト
ガアツテハナラヌト、事例ヲ擧ゲテノ質疑
ニ對シマシテ、總理大臣ハ、大部分ノ官吏
ハ洵ニ精勵デアルガ、一部ノ人ガ間違ツテ
今示サレタヤウナコトヲヤルノデ困ル、此
ノ従、陛下ニ對シ奉リ相濟マヌノデ、身ヲ
以テ下ヲ感化シ、斯クノ如ク不正ノ道ニ踏
ミ入ルコトナキヤウ防止シナクテハナラナ
イ、一面峻嚴ナル取締ヲナスト共ニ、一方
ハ溫カイ餘裕ヲ以テ、不正ナカラシムルヤ
ウ努メタイトノコトデゴザイマス(拍手)
最後ニ大政翼賛會ノ性格及ビ運營ノ問題
デアリマスガ、此ノ問題ニ付キマシテ各派
ヲ代表スル理事ノ協議ニ基キマシテ、委員
長ヨリ大綱ニ付キ總理大臣ニ質疑ヲ致シタ
ノデアリマス、此ノ質疑應答ヲ朗讀致シマ
ス、「大政翼贊會ノ性格、其ノ實際ノ運營ニ
付キマシテハ、旣ニ第七十六囘帝國議會ニ
於テ十分ニ討議セラレ、政府ハ、大政翼贊
會ハ治安警察法第三條ノ公事結社デアルコ
ト、隨テ治安警察法第一條ノ政事結社、之
ニ該當スルガ如キ政治運動ハ、大政翼贊會
ニ於テハナスベキモノニアラザルコト、斯
ノ如キ政治活動ヲナシタル場合ニハ、嚴重
ニ之ニ對シテ取締ヲナスベキコトヲ明確ニ
宣明致シテ居リマス、爾來一箇年ニナリマ
スガ、尙ホ實際上色々ノ問題ヲ生ジ、或人
憲法上ノ機關ト牴觸シ、或ハ行政上ノ領域
ト相侵スガ如キ疑ヒヲ生ズルヤウナコトガ
アリマシテハナリマセヌ、今日ノ場合更ニ
大政翼贊會ノ性格ヲ明瞭ニシ、之ヲ統制シ
テ、其ノ標榜スル方針ト、其ノ實質トヲ完
全ニ一致セシメテ、一切ノ疑惑ヲ解キ、眞
ニ其ノ職守トスル所ニ恪循シテ、今日全ク
一億一心ニナツテ居リマス國民ノ總力ヲ具
現スルコトガ、戰時ノ今日何ヨリモ必要デ
アルト考ヘマス、勿論第七十六帝國議會ニ
宣明セラレマシタ方針ハ、今日ト雖モ何等
變更セラルル所ナシト信ジマスルガ、此ノ
際內閣總理大臣ヨリ特ニ大政翼贊會ノ性格
及ビ今後ノ運營ニ付テ、明確ナル御方針ヲ
承リタイノデアリマス」
此ノ尋ネニ對シマシテ、總理大臣ノ御答ハ
「大政翼贊會ノ性格ニ付キマシテハ、只今
御話ノ如ク、第七十六帝國議會ニ於テ政府
ノ言明セル所ト今日何等異ナル所ガアリマ
セヌ、卽チ治安警察法ニ謂フ政事ニ關ス
ル結社ニ屬セヌノデアリマス、治安警察法
ノ關係ニ於キマシテハ、公事ニ關スル結社
トシテ取扱フベキモノト考ヘマス、而シテ
翼贊會ハ此ノ趣旨ニ於キマシテ、其ノ職分
ヲ守ツテ活動スルヤウ從來モ指導シテ參ツ
テ居ルノデアリマスルガ、將來モ以上ノ趣
旨ノ下ニ指導シテ參リタイト存ズルノデア
リマス」トノ答辯デゴザイマス、尙ホ此ノ
答辯ノ歸結トシテ翼贊壯年團及ビ大日本興
亞同盟ノ性格モ政事ニ關スル結社デハナク、
治安警察法ノ關係ニ於キマシテハ、公事ニ
關スル結社トシテ取扱フベキモノデアツテ、
隨テ選擧運動等ニ關係スルコトハアルベキ
モノデナイトノ答辯デゴザイマシタ、又大
政翼贊會、又ハ其ノ指導ノ下ニ啓蒙運動ヲ
超エテ候補者推擧ニ關係シタル場合ハドウ
カトノ質問ニ對シテハ、翼贊會トシテ選擧
運動ヲナスベキモノニアラズトノ答辯デゴ
ザイマス、尙ホ翼贊會關係者ノ立候補ノ問
題ニ付テハ、出來得ル〓限リ制限ヲ加ヘザル
ヲ可トスルトノ說明デアリマシタガ、·委員
ノ方ヨリ之ヲ制限スルノデハナイケレドモ、
翼贊會ノ地方支部等ニ在リテハ其ノ役員ト
ナツテ居ル人ガ、其ノ儘立候補スル時ハ、
翼贊運動ト選擧運動トノ間ニ紛清ヲ生ズル
虞アリトノ意見ニ對シ、總理大臣ハ更ニ考慮
ヲ約サレテ、昨日ノ豫算總會ニ於テ、斯ノ
如キ心配ガアルナラバ、適當ニ善處スルト
ノ答辯デアリマシタ、尙ホ其ノ他重要ナル
種々ノ問題ニ付テ質疑ガアリマシタガ、是
ハ速記錄ニ相讓リマス
昨二日再ビ豫算總會ヲ開キマシテ、各分
科主査ヨリ審査ノ結果ノ報〓ガアリマシタ
後、各案ヲ一括シテ討論ニ入リ、木原七郞
君、鈴木文治君、中村高一君及ビ水谷長三
郞君ヨリ各〓所屬會派ヲ代表シテ、原案贊成
ノ意見ヲ述ベラレ、採決ニ入リマシタ、原
案贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メタル所、起立總
員卽チ全員一致ヲ以テ可決致シマシタ
(拍手)此ノ段御報〓申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=3
-
004・田子一民
○議長(田子一民君) 是ヨリ討論ニ入リ
マス-木暮武太夫君
〔木暮武太夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=4
-
005・木暮武太夫
○木暮武太夫君 私ハ只今議題ト相成リマ
シタ豫算各案ニ對シマシテ、翼賛議員同盟
ヲ代表シテ贊成ノ意ヲ表スルモノデアリマ
ス
我ガ帝國ハ昨年十二月八日以來、玆ニ必
勝決戰ノ新シイ態勢ニ入ツタノデアリマス、
一億國民ハ宣戰ノ大詔ヲ拜シマシテ感奮興
起熱鐵一丸トナツテ總力ヲ盡シテ驕慢ナ
米英ヲ打倒シテ、其ノ世界制覇ノ野望ヲ粉
碎シナケレバ已マナイ固イ決心ニ、今日ハ
燃エテ居ルノデアリマス(拍手)而シテ我ガ
忠勇ナル皇軍ハ、廣袤實ニ幾千里、陸ニ、海
ニ、空ニ赫々タル戰果ヲ連日御擧ゲ下サイ
マシテ、全世界ヲ衝動電撼サシテ居ルノデ
アリマス、實ニ我ガ帝國ハ、今日コソ興亡
ヲ賭ケタ未曾有ノ大戰爭ノ眞只中ニアルト
云フコトヲ斷言シテ差支ヘナイノデアリマ
ス(拍手)然ラバ銃後ト第一線ノ區別ヲ許サ
ザル國家總力ヲ擧ゲテ勝拔クベキ秋デアリ
マス、隨テ只今議題トナツテ居リマスル豫
算各案モ亦、曩ニ本院ヲ滿場一致ヲ以テ通
過致シマシタル臨時軍事費ニ準ズベキモノ
デアルコトハ疑ヲ容レマセヌ、是コソ臨時
軍事費ト同樣ニ、今後我ガ國戰力增强ニ役
立タシムベキ重大ナル責任ヲ政府ニ負ハシ
ムル重大ナル軍國豫算デアルト申上ゲテ差
支ヘナイノデアリマス(拍手)戰時ノ唯一ノ
要請ハ戰力ノ增强ニ依リマシテ、必勝ヲ期
スルコトデアリマス、是ガ爲ニハ國家ハ總
テノ國力ヲ擧ゲテ、必勝目的ニ傾注スル必
要ガアルノデアリマス、卽チ產業ニ、經濟
ニ、國民生活ニ、文化ニ、一切ヲ指導シ、
統制シ、計畫スルノ力ヲ國家ガ握ラザルヲ.
得ナイノデアリマス、斯ウ云フ狀態ニナリ
マシタ以上ハ、戰時ノ國家財政ト云フモノノ
樣相ハ、平常時ノ國家財政ノ樣相トハ飛躍
的ニ全ク異ツタモノデアルト云フコトヲオ互
ヒニ考ヘナケレバナラヌノデアリマス(拍手)
平時ノ國家財政ハ、一定ノ國家需要ヲ充シテ
行ツテ、其ノ間ノ調整ヲ如何ニスベキカガ問
題トナツテ、所謂財政ノ健全性、或ハ均衡
財政ト云フヤウナコトガ目標トナルノデア
リマス、隨テ平常時ノ豫算ハ成ベク小サイ
方ガ宜シイ、大キナ數字ノ豫算ハ財界ニ
惡イ影響ヲ及ボスモノトシテ、一般ニ非難
サレテ居ルノガ平常時ノ財政論デアルト申
シテ差支ヘナイノデアリマス、ソコデ形ノ變
ツタ、平常時ト違ツタ戰時ノ財政ハ、決シテ
昔ノヤウニ國民經濟ト對立的對蹠的ナ立場
ヲ執ルモノデハアリマセヌ、戰時ノ財政問題
ハ、大キナ政治ノ問題デアリマス、國民經
濟其ノモノデアリマス、場合ニ依ツテハ國
民生活其ノモノデアルト申上ゲテモ差支ヘ
ナイノデアリマス(拍手)最早從來ノ所謂健
全財政論ヤ、或ハ又均衡財政論ト云フヤウ
ナモノノ批判カラ、遠ク離レテ超越シナケ
レバナラナイモノデアルト固ク信ズルノデ
アリマス、要スルニ戰時ニ於ケル國家財政
ハ長イ目デ見テ、國家全體ノ調整ガ旨ク行
ケルト云フ見透シガ付ケバ宜イノデアリマ
ス、短イ會計年度ダケヲ見テ歲入ノ或ル部
分ガドウシテモ稅デナケレバナラヌトカ、
或ハ公債ハ此ノ程度デナクテハナラヌト云
フヤウナ議論ヲ戰時財政ニ致スベキデハナ
イト私共ハ信ジテ居ルノデアリマス(拍手)
今ヤ我ガ帝國ハ世界第一ノ資源地域ヲ、
シツカリト其ノ管理下ニ握ラント致シテ居
ルノデアリマス、加フルニ十億ノ人的資源
ヲ其ノ傘下ニ集メント致シテ居ルノデアリ
マス、只今議題トナツテ居リマスル各案ノ豫
算ノ數字ハ、蓋シ未曾有ノ金額ナリト云フ
コトハ申シテ差支ヘナイデアリマセウガ、
只今私ガ論ジマシタ所ニ依リマスレバ、此
ノ戰爭ノ眞只中ニ於テハ、其ノ數字ガドン
ナニ大キクテモ本質的ニハ吾々ハ驚クニ足
ラナイト信ズルノデアリマス(拍手)
偖テ大東亞戰爭勃發ヲ一轉機ト致シマシ
テ、我ガ國ハ實質的ニ大東亞共榮圈建設ノ
具體的段階ニ今日ハ入ツテ來タノデアリマ
ス、過去ノ滿洲、支那ニ於ケル尊イ苦イ經
驗ヲ此ノ際活用致シマシテ、雄大ナル構想、
新シイ工夫ニ依リマシテ、豐富ナル此ノ地
方ノ資源ヲ取ツテ以テ、我ガ帝國國防國家
建設ノ大切ナル資材トシテ貢獻サセルノ必
要ガアルノデアリマス、此ノ大東亞資源地
域ノ開發經營ノ成否ト云フモノハ、全ク我
ガ日本民族將來ノ運命ヲ決定スベキモノ
デアリマス、故ニ廣ク國民ノ智能、經驗ヲ
動員、致シマシテ、過去ニアリシガ如クニ、
唯理論ニバカリ囚ハレズニ、其ノ現地ニ卽應
シタル所ノ施策ヲ行ハナケレバナリマセ
ヌ、此ノ南方資源地域開發經營ニ成功致シ
マスコソ、只今赫々タル戰果ヲ擧ゲテ居リ
マスル此ノ皇軍ノ武勳ニ報ユルノ道デアル
ト、吾々ハ信ジテ居ルノデアリマス(拍手)
此ノ際政府ハ支那事變勃發後ノ輸入物資
杜絕トカ、或ハ日滿華一體經濟ナドヲ基礎
ト致シマシテ、過去ニ於テ勘案樹立致サレ
マシタル所ノ多クノ施策ヲ再檢討シテ、其ノ
考へ方、其ノ狙ヒ所、目標ト云フモノヲ改
ムルノ時機ニ到達シタヤウニモ吾々ハ考ヘ
テ居ルノデアリマス、例ヘテ申シマスルト、
中小商工業整理統合ノ問題ハ、全ク今マデ
ハ不足シタ物ノ統制强化カラ來テ居ルノデ
アリマス、今後ハ斯ウ云フ消極的ノ考ヘデ
アツテハナラヌト思フノデアリマス、今日
戰力增强ノ爲ニ、國家ガ必要トスル產業ニ
對シテ、必要トスル所ノ勞力ヲ供給確保增
强スルト云フ見地カラノ中小商工業ノ整理
統合デナクテハナラヌト確信ヲ致スノデア
リマス、整理統合ニ依ツテ生ミ出サレマシ
タ所ノ餘剩勞力ト云フモノノ人々ハ、喜ンデ
其ノ日直チニ戰力增强ノ仕事ニ勤シンデ、
軍需生產增强ニ日本人タル生甲斐ヲ覺エサ
セルト云フコトガ、是ガ眞ノ活キタ政治デ
アルト、吾々ハ信ジテ居ルノデアリマス(拍
手)
〔發言スル者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=5
-
006・田子一民
○議長(田子一民君) 田淵君ニ注意致シマ
ス、靜肅ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=6
-
007・木暮武太夫
○木暮武太夫君(續) 豫算ハ生產力ノ反映
デアリマス、生產力ノ增强擴充ノ伴ハナイ
膨脹豫算ト云フモノハ惡イ「インフレ」ノ危
險ヲ馴致致シマスコトハ論ヲ俟チマセヌ、
幸ヒニ我ガ國ノ國防生產力ハ、事變以來其
ノ增强振リハ世界ノ驚異ノ的ニナツテ居ル
ノデアリマス、支那事變勃發以來玆ニ五年、
米英ノ希望的觀測ニ反シマシテ、我ガ國ノ
國防生產力ハ益〓偉偉ナル擴充發展ヲ見テ居
リマスルコトハ、國家ノ爲ニ御同慶ノ至リ
ニ堪ヘマセヌ、殊ニ今囘議會ニ提案セラレ
マシタ日本銀行法初メ、兵器等製造事業特
別助成法、或ハ戰時金融金庫法等色々ノ法
律ノ運用ニ依リマシテ、軍需產業、國防資源
等ノ生產增强ガ、金融ノ側カラ從來ニ增シ
テ期待サレテ居ル狀態デアルコトハ喜ビニ
堪ヘナイノデアリマス、加フルニ物ノ側カ
ラ見マスナラバ、只今委員長御說明ノ通リ、
政府ノ御答辯ニモアリマシタガ、將來ニ於ケ
ル物動計畫中ニ新シク南方資材ノ相當量ガ
加ヘラレルコトハ、何人モ豫測シ得ベキコ
トデアルノデアリマス、斯ウ云フ風ニ金融
ノ側カラモ、物ノ側カラモ、必勝ニ必要ナ
ル國防用物資ノ增强ガ、今囘ノ大キナ豫算
ノ裏付ヲ致シマスル限リニ於キマシテハ、
米英ノ希望的豫測ノ如キ惡性「インフレ」ハ
斷ジテ我ガ帝國ニハ起ラナイト、吾々ハ確
信致シテ居ルノデアリマス、簡單ニ申シマ
スルナラバ、世界第一ノ原料資源地域ヲ握
ツタ我ガ國ニ於テ、施策宜シキヲ得マシタ
ナラバ、物ノ側ヨリノ惡性「インフレ」ノ起
ルベキ道理ハ、斷ジテナイト確信ヲ致シテ居
ルノデアリマス(拍手)寧ロ問題ハ勞務ノ調
整ニアリト考ヘラレマス、去ル一月六日「ア
メリカ」ノ議會ニ送ツタ「アメリカ」大統領
ノ〓書ノ中デ、大東亞戰爭〓戰ニ於ケル大
敗北ヲ挽囘スル爲ニ、一大軍備ノ計畫ヲ示
シテ居ルノデアリマス、此ノ「アメリカ」ノ
一大軍備計畫ニ對シマシテハ、吾々ハ之ヲ
徒ラニ嘲笑シ、徒ラニ恐レルモノデハアリ
マセヌ、唯敵ノ備へ以上ノ備ヘヲ充實シナ
ケレバナラヌト云フコトヲ考ヘルダケデア
リマス、斯ウ考ヘテ參リマスルト、今後ニ
於テ軍需兵器ノ生產ヲ中心トスル國防資材
擴充ノ爲ニハ、玆ニ相當莫大ナ勞力ノ配置
サルベキコトハ、當然ト言ハザルヲ得ナイ
ノデアリマス、一面ニ於テハ〓糧ノ確保ト、
帝國ニ於ケル堅實ナル國民中堅層ノ維持增
强ノ爲ニ、或ル一定數ノ農村ノ人ロハ動カ
スト云フコトハ出來マセヌ、他面作戰ノ進
捗ト共ニ、南方諸地域ノ住民ニ對シマシテ、
衣料品、或ハ雜貨、其ノ他ノ日用生活品ヲ
供給確保シテヤルト云フコトハ、東亞共榮
圈ノ盟主トナツタ我ガ帝國ノ責任ニ於テナ
サネバナラヌコトデアリマス、斯ウ考ヘテ
參リマスルト、中々多クノ勞務ノ需要ガ、
今後ニ於テ起ルコトヲ考ヘテ見ナケレバナ
ラヌノデアリマス、是ニ於テ或ハ兵器、重
工業、化學工業ノヤウナ第一義的ナ國家ノ
國防建設ノ爲ニ重要ナル產業ニ對スル勞務
ハ國內人口ニ之ヲ一任スル、更ニ第二義的
ナ產業ニ對スル勞務ハ東亞共榮圈諸地域ノ
人口ニ任シテヤルト云フヤウナ雄大ナル計
畫ノ下ニ、新シイ勞務配置ノ計畫ト云フモ
ノガ、急速ニ出來ルコトヲ吾々ハ要望シテ
已マナイモノデアリマス(拍手)
偖テ通貨金融ノ問題ニ付テ一、二申述ベ
テ見タイト思フノデアリマス、今囘ノ日本
銀行法ニ依リマシテ、日本銀行制度ハ玆ニ
改革ヲ見タノデアリマス、產業經濟ノ血液
デアル通貨ノ本質ト云フモノハ、全ク其ノ
性質ヲ一變致シタノデアリマス、金ノ桎梏
ヲ離脫シテ、國力ヲ基礎ト致シマス所謂管
理通貨ト云フモノニ今日ハナツテ來タノデ
アリマス、私ハ洵ニ喜ブベキ英斷デアルト
信ズルモノデアリマス、從來政府ト對蹠的、
對立的ニ考ヘラレタ日本銀行ノ半獨立性ト
云フモノハ解消シテ、日本銀行ノ營利性ガ
ナクナツタノデアリマス、其ノ代リニ今マ
デ日本銀行ガ持ツテ居ツタ所ノ通貨ノ安全
性ノ大キナ役目ハ、今後大藏省ガ全面的ニ
負フニ至ツタノデアリマス、卽チ日銀ハ今
後ハ大藏省ノ或ル意味ニ於テハ一分局ト化
シテ、政府ガ決定シタ所ノ方針ニ從ツテ實
踐スル所ノ機關ト化シタト申シテモ差支ヘ
ナイノデアリマス、是ニ於キマシテ大藏大
臣ハ、通貨ノ安全確實性ト云フモノヲ擁護
スル一大責任ヲ持ツテ參ツタノデアリマス、
金準備ニ拘束制約サレナクナツタ管理通貨
ニ於キマシテモ、目ニ見エナイ所ノ經濟力、
國力ト云フモノガ、是ガ基礎ヲ成シテ居ル
コトハ斷ジテ忘レテハナラナイノデアリマ
ス、今後ニ於キマシテ圓系通貨流通區域ノ
未曾有ノ擴充ヲ見マスニ當リマシテハ、此
ノ通貨ノ安全性擁護ト云フ重大ナル立場ヲ
執ルニ至リマシタ政府ハ、宜シク通貨調整
ニ萬全ヲ盡シ、新シイ形デ國民ニ見エタ管
理通貨ノ擁護ノ大任ヲ果サレンコトヲ望ン
デ巳マナイノデアリマス
從來生產配給ノ部門ニ對シマシテハ、我
ガ國經濟力發揮ノ見地カラ、高度ノ統制ヲ
加ヘラレテ、再編成ガセラレタコトハ御承
知ノ通リデアリマス、然ルニ之ニ反シテ產
業ト竝ンデ車ノ兩輪ノヤウナ形ヲ執ルベキ
金融部門ニ對シマシテハ、稍〓統制指導ノ途
ガ緩漫デアツタノデアリマス、產業ト金融
トガ共ニ同ジヤウニ均衡ヲ保ツテ統制ヲ加
ヘラレマセヌケレバ、戰時經濟ノ能率的運
營ト云フモノニ萬全ヲ期スル譯ニハ參リマ
セヌ、政府ハ此ノ場合宜シク金融部門ニ對
シマシテモ、適切妥當ナル統制指導ヲ加ヘ
ラレマシテ、是ガ運營ニ依ツテ大キナ公債
ノ消化、又莫大ニ放出サルル所ノ資金ノ吸收
ニ遺憾ナキヲ期セラレタイノデアリマス
官界新體制ニ付キマシテハ、ココ數年要
望ノ聲ノミ徒ラニ高クシテ、其ノ實之ニ伴
ハザルノ觀ガアルノデアリマス、勿論戰時
必勝ノ體制ノ下ニ於キマシテハ、理念ノ遊
戯ニ陷ル所ノ機構ノ改變ナドハ、斷ジテヤ
ルベキデナイコトハ申スマデモアリマセ
又、唯戰時中ト雖モ玆ニ戰力ノ增强ヲ妨グ
ルガ如キ非能率的ノモノアリト致シマスナ
ラバ、是コソ萬難ヲ排シテ、戰時中デアレ
バアルダケ、速カニ戰時卽應ノ新シイ機構
ニ改編スルノ勇斷ニ出デナケレバナラヌト
思フノデアリマス(拍手)例ヘバ軍需生產ニ
對スル統制指導ノ一元化ノ問題ノ如キハ、
卽チ是レデアリス、今假ニ例ヲ特殊鋼一ツ
ダケニ取ツテ見マシテモ、特殊鋼ニ對スル
民需ハ殆ドアリマセヌ、其ノ九分九厘マデ
ハ陸海軍ノ軍需デアリマス、卽チ特殊鋼ニ
對スル最大ノ發註者ハ、陸海軍デアリマス、
然ルニ特殊鋼工業ノ指導統制ハ、最大ノ需
要者デアリ、最大ノ發註者デアル陸海軍力
ラ離レマシテ、サウシテ商工省デ之ヲ行ツ
テ居ルト云フ實情デアリマス、何人ガ之ヲ
聽カレテモ極メテ不合理デアリ、不自然デ
アリ、非能率的デアルコトガ容易ニ御分リ
下サルコトト思ヒマス、戰爭ノ時ニハ斯ウ
云フモノガ調ベテ見レバ相當澤山アルノデ
ハナイカト思ヒマス、更ニ陸海軍ノ發註ノ
ミニ依ル軍需工場ニ就テ之ヲ見マスノニ、
管理、指導ハ勿論陸海軍ガオヤリニナツテ
居ル、建物ノ關係ハ内務省、商工省ノ關係
デアル、或ハ勞務關係ハ厚生省デオヤリニ
ナリ、使フ原材料ノ關係ハ商工省デアル、
斯ウ云フ複雜多岐ナル統制ト云フモノガ、
此ノ一日一刻モ速カニ戰力增强ヲシナケレ
バナラヌ此ノ非常ノ時ニ、軍需品ノ增强ニ
妨ゲナシト何人ガ之ヲ斷ズルコトガ出來マ
セウカ(拍手)第一次大戰以來、戰ノ時ニハ
軍需生產增强ノ爲ニ、一元的指導ヲ試ミナ
イ國ハ恐ラクナカツタラウト思フノデアリ
マス、役人ノ方々ガ議會デ答辯セラレル常
套語デアル關係各省ト緊密ナル連絡ヲ取リ
マシテ、萬遺憾ナキヲ期シマスルト云フコ
トダケデハ、到底解決ノ出來ナイ問題デア
ルト吾々ハ考ヘルノデアリマス、ドウゾ政
府ハ是等ノ點ニ付テハ、國家ノ爲ニ御勇斷
ヲナサレンコトヲ切望シテ已ミマセヌ(拍
手
官紀ノ振肅ハ統制經濟ノ效果ヲ擧ゲル先
決的要件デアリマス(拍手)國民ガ官ヲ信
ジ、官ノ指導ニ應ジテ、挺身シテ各自ガ全
能力ヲ發揮致シマスコトニ依ツテ、統制經
濟ノ效果ヲ擧ゲ得ルモノデアルノデアリマ
ス、官ニ信用ガアツテ初メテ官民和諧、協
力一致ノ實ガ擧ガルノデアリマス、官紀ノ
頽廢ホド此ノ大切ナル官ノ信用ヲ傷クルモ
ノハナイノデアリマス(拍手)若シ假ニ官ニ
シテ信ナクンバ、國民ハ奮起致シマセヌ、
國民ノ士氣ハ萎靡退嬰致シマス、國民ハ唯
消極的ニ官ノ命ニ已ムナク蹤イテ行クダケ
デアリマス、是デハ今日一番必要ナ國家總
力ノ發揮ハ出來ナイト私ハ信ズルノデアリ
マス(拍手)東條總理ハ豫算總會ノ御答辯ノ
中デモ率直ニ、政治ハ人デアルト言ハレテ
居ルノデアリマス、全ク私モサウ思ヒマス、
其ノ大切ナル人ニシテ信ヲ失ヒマシタナラ
バ國政ノ實ガ擧ガルト云フコトハ保證出
來ナイノデアリマス、率先垂範ノ人東條大
將ヲ首班トスル現內閣ノ下ニ於テコソ、此
ノ大切ナル官紀振肅ノ絕好ノ機會ガ到來シ
タト、國民ハ皆期待ヲ致シテ居ルコトヲ申
上ゲテ置クノデアリマス(拍手)
戰ヒニ勝ツコトハ絕對デアリマス、今日
ハ總テノモノヲ擧ゲテ、勝ツ目的ノ爲ニ奉
仕サセナケレバナリマセヌ、舊來ノ狹イ財
政ノ見地カラ、戰ヒニ勝チヲ得ル爲ノ戰力
增强ノ施策ヲ、假ニモ拘束制約スルガ如キ
コトガアリマシタナラバ、國家ノ前途ヲ誤
ル是レヨリ甚ダシキモノハナイト私ハ信ジ
テ居リマス(拍手)曾テ當時ノ大藏大臣高橋
是〓先生ハ、此ノ壇上カラ質問ニ對シテ、
財政ノ膨脹デハ決シテ國家ハ亡ビマセヌト
考ヘラレタコトハ、皆樣モ御記憶デアラウ
ト思フノデアリマス、洵ニ是ハ千古ヲ貫ク
眞理デアリマス、大東亞戰爭ハ米英ノ屈服
マデ勝チ拔クノデアリマス、我ガ皇軍ノ精
神力訓練ト云フモノハ到底敵方ノ企テ及バ
ヌモノデアルコトハ勿論デアリマス、ト同
時ニ日本ノ金ニ直シテ約二千三百餘億圓ヲ
投ジテ、一大軍備ノ充實ヲショウトシテ居
ル敵ヲ目ノ前ニ見テ、之ヲ打倒スル爲ニハ、
我ガ國民ハ將來ニ更ニ大ナル負擔ヲ覺悟致
シテ居ルノデアリマス、帝國興隆ノ道程ニ於
テハ、又日本民族發展ノ途上ニ於テハ、一億
國民ハ如何ナル犧牲ヲモ喜ンデナスモノデ
アルト云フコトヲ申上ゲテ置クノデアリマ
ス(拍手)
以上ノ意見ヲ以テ本豫算各案ニ對シマシ
テ、贊成ノ意ヲ表スルモノデアリマス拍
手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=7
-
008・田子一民
○議長(田子一民君) 安藤正純君
〔安藤正純君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=8
-
009・安藤正純
○安藤正純君 私ハ只今議題トナツテ居リ
マス昭和十七年度豫算各案ニ對シマシテ、
同交會ヲ代表シテ贊成ノ意ヲ表スルモノデ
アリマス
曩ニ本院ニ於テ協贊致シマシタ大東亞戰
完遂ヲ目的トシテ編成サレマシタ百八十億
圓ノ臨時軍事費豫算ト、只今ノ八十八億圓
ノ本豫算トハ、表裏一體ノ關係ニアリマシ
テ、共ニ必戰必勝ニ歸一スベキモノデアリ
マス、此ノ必戰必勝ノ重點主義ノ上ニ編成
サレタ本豫算ハ、其ノ質ニ於テモ、其ノ量
ニ於テモ、洵ニ空前ノ大豫算デアリマス、
而シテ此ノ豫算ノ財源ハ、國民直接ノ負擔
タル租稅其ノ他ノ收入ニ求メマシテ、其ノ
不足ヲ公債ニ俟ツト云フ方針ハ、從前ノ如
ク敢テ變リハナイノデアリマスガ、本豫算
ヲ通ジテ我ガ國民ノ彈力性アル負擔力ヲ示
シタコトハ、本豫算ノ特徵デアリマシテ、
中外ニ對シテ我ガ國民ノ擔稅能力ヲ示スモ
ノデアルト存ズル次第デゴザイマス(拍手)
卽チ本年度豫算ノ純計二百四十三億圓ニ對
シマシテ、租稅其ノ他ノ收入七十二億圓ト云
フモノハ、約三割弱ニ當ルノデアリマシテ、
實ニ此ノ尨大ナル豫算ニ對シテ、約三割ヲ
國民ノ租稅ニ依ツテ賄ヒ得ルト云フコト
ハ、如何ニ日本國民ニ偉大ナル底力ガアル
カト云フコトヲ示スモノト存ジマス(拍手)
抑〓大東亞戰ノ性格竝ニ其ノ目的ハ、東亞
ノ諸國ヲシテ米英勢力ノ橫暴不倫ナル制壓
ヨリ解放セシメ、天賦獨立ノ新天地ヲ展開
スルト共ニ、新鮮明朗ナル世界新秩序ノ建
設ヲ期スルモノデアリマスガ、又一面ニハ
遠大ナル資源獲得戰タルコトヲ閑却シテハ
ナラナイノデアリマス(拍手)卽チ石油、「ゴ
ム」、錫等ノ戰時物資ハ勿論ノコト、米穀デ
アレ、砂糖デアレ、國民ノ平和必需品的物
資ハ、總テ戰爭遂行ト共ニ、之ヲ一方ニ獲
得シナガラ、必勝ノ目的達成ニ邁進スルコ
トガ出來ルノデアリマシテ、是レ實ニ我ガ
國ノ經濟力ヲ涵養シナガラ、長期恆久ノ戰
爭ヲ容易ナラシムルモノデゴザイマス拍
手)而シテ其ノ影響ハ國民貯蓄ノ上ニ、生
產力擴充ノ上ニ、又公債消化ノ上ニ甚大ナ
ル果實トナツテ現ハレ、本豫算遂行ノ確實
性ヲ認メラルル所以ト信ジマシテ、國民ガ
齊シク翹望シ、滿腔ノ信賴ト期待トヲ懸ケ
ル所以デアリマス(拍手)隨テ政府ハ本豫算
遂行ノ上ニハ、緊張ノ精神ト愼重ノ態度ト
ヲ持シテ、國民ノ信賴ニ背カザランコトヲ
期サナケレバナラヌト存ジマス(拍手)
若シ詳カニ本豫算ノ內容ヲ檢討致シマス
した、多々言フベキモノハアルノデアリマ
スルガ、戰爭完遂目的ノ上ニ編成セラレタ
ル戰時豫算トシテ、私ハ潔ク贊成スル者デ
ゴザイマス(拍手)唯著シク不足ヲ感ズルコ
トハ本豫算ノ中ニハ生產擴充、石炭增產、米
穀生產、防空設備、銑鐵買收補償ト云フヤ
ウナ戰爭遂行ニ伴フ所ノ巨額ノ經費ガ計上
セラレテ居リマスルガ、獨リ戰爭完遂ノ爲
ニ絕對不可缺ノ重要資材タル石油對策ニ至
ツテハ、甚ダ遺憾ノ點ガアルノデゴザイマ
ス(拍手)卽チ政府ノ石油對策ハ、只管ニ南洋
占領地ニ俟タントスルノ觀ガアリマシテ、
ソレガ爲ニ却テ內地外地竝ニ滿洲等既往ノ
計畫ヲ縮小セルガ如キ傾向ガ見ユルノデア
リマス、一言ニシテ言ヘバ、石油對策ノ用
意ト計畫ハ他ノ計畫ニ比シテ著シク缺クル
所ガアルト思ヒマス、此ノ點ハ豫算委員會
ニ於テ同僚川崎君カラモ指摘セラレタ所デ
アリマス、尤モ我ガ國ニハ豐富ナル貯油ガ
アリマスガ、油ノ一滴ハ血ノ一滴ヨリモ貴
シトスルノデアル、此ノ際石油採油ノ上ニ
ハ、萬全ノ方策ヲ講ジナケレバナラヌト信
ジマス、私ハ此ノ機會ニ於テ政府ニ進言シ
タイ、卽チ政府ハ其ノ所期スル石油ノ大量
增產ヲ確保セントスルナラバ、現在ノヤウ
ナ貧弱ナル機構組織ノ下ニ於テ、之ヲ效果
的ニ遂行セントスルコトハ不可能デアリマ
ス、尤モ大藏大臣ハ石油增產ノ爲ニハ、必
要ナル經費ノ支出ハ惜マナイト云フコト
ヲ、豫算分科會デ言明サレテ居ルノデアリ
マー、果シテ然ラバ政府ハ百尺竿頭一步ヲ
進メテ燃料省ノヤウナモノヲ獨立セシメテ
內外地ヲ打ツテ一丸トシ、更ニ最近開設サ
レタ技術院ノ機能等ヲモ、ソコニ動員ヲ致
シマシテ、陸海民一致ノ步調ヲ取ツテ、數十
億ヲ惜マザル一大組織的計畫ヲ樹立シ、以
テ戰爭目的完遂ニ遺憾ナキヲ期セラレンコ
トヲ希望スルモノデゴザイマス(拍手)
次ニ船舶運輸ノ問題モ同樣デアリマス、
勿論戰爭遂行ノ上ニ於キマシテ、船舶運輸
ノ計畫ニ問〓ノアルベキ筈ハナイノデアリ
マスガ、今後戰略ニ伴フ建設期ニ入リマシ
テ、現在ノ造船程度ヲ以テシテハ、最早雄
大ナル建設計畫ニ應ズルコトハ到底不可能
デアリマス(拍手)政府ハ宜シク國家ノ總力
ヲ傾倒シテ船舶ノ建造計畫ハ勿論、之ニ伴
ツテ海員ノ養成竝ニ保護ノ上ニ、遺憾ナキ
ヲ期スルコトガ焦眉ノ急務ト信ズル次第デ
ゴザイマス(拍手)
次ニ本豫算ノ實行ニ當リマシテ政府ノ嚴
肅ナル御方針ヲ要望致シマスルコトハ、大
政翼贊會ノ熊度竝ニ其ノ經費ノ問題デゴザ
イマス、第一大政翼贊會クライ創立以來問
題ノアル團體ハアリマセヌ、問題ノ起因ハ、
翼贊會ガ何等法的ノ根據ガナクシテ、而モ
法的根據以上ノ行爲ヲナサントスル所ニア
ルノデアリマス(拍手)是ニ於テ憲法上ノ疑
義モ生ズルノデアル、昨年ノ議會ニ於キマ
シテ、此ノ問題ハ十分ニ討議セラレマシテ、
翼贊會ハ公事結社ト決定シタノデアリマス
ガ、其ノ後ニ於テモ尙且ツ往々政事結社ニ
紛ルル行動ガアルコトハ爭ヘナイ事實デア
リマシテ、(拍手)其ノ實例ハ、此ノ間豫算
委員會ニ於テ各委員カラ指摘セラレタ通リ
デアリマス、恰モ本年ノ衆議院議員總選擧、
竝ニ地方議員ノ改選ニ際シマシテ、翼贊會竝
ニ其ノ一翼タル翼贊壯年團ガ、一方的ノ態
度ニ於テ選擧ニ關與スルガ如キコトガアル
ナラバ、其ノ標榜スル一億一心ニ全然逆行
スル結果ヲ生ズルコトハ必然ト私ハ斷ジマ
ス(拍手)大東亞戰勃發以來、一億國民ハ君
國ノ爲ニ喜ビ勇ンデ生命ト財產トヲ犧牲ニ
供シ、鐵ノ如ク固ク、火ノ如ク熱ク、ヒタ
向キニ必勝ノ信念ヲ以テ一致團結シテ居ル
ノデアル(拍手)上ハ廟堂ノ大臣宰相ヨリ、下
ハ津々浦々ノ庶民ニ至ルマデ悉ク大政ニ翼
贊シテ居ルノデアリマス(拍手)私ハ此ノ日本
ノ僞ラザル其ノ儘ノ姿コソ、實ニ國體ノ精
華デアルト思ヒマス(拍手)此ノ時ニ當リマ
シテ、翼贊會ダケガ獨リ大政翼賛ノ名ヲ恣
ニスルコトハ、寧ロ僭越至極ノ沙汰ト存ジマス
(拍手)、今更言フマデモゴザイマセヌガ、
我ガ日本ガ凡ユル世界ニ持出シテ强イノハ
一如ノ精神ノ徹底シテ居ル故デアリマス(拍
手)一君萬民、君民一如、是ガ强イノダ、
一君ノ下ニハ萬民ノ物質モ、精神モ、生命
モ、名譽モ皆集マツテ歸一シテ居リマス、
歐米ノ如ク相對對立ガ原理デハナク、我ガ
日本ニ於キマシテハ絕對一如ガ指導原理デ
アリマス(拍手)隨テ天皇陛下ノ大政ニハ
一億國民悉ク一如翼贊シテ居ルノデアリマ
ス(拍手)殊更ニ異ヲ立テ、新ヲ競ヒ、國民
ヲ驅ツテ指導者原理ニ强制追隨セシムルコ
トハ、我ガ日本ノ國體及ビ國情ニ於テハ必
要ナキコトト存ズル次第デアリマシテ、此ノ
意味ニ於テ、私ハ敢テ大政翼贊會ヲ無用ノ
長物トハ申シマセヌガ、果シテ存在ノ要ガ
アルナラバ、色々ノ場合ニ於テ相剋摩擦ヤ
對立排擠ヲ起サヌヤウ、政府ニ於テ嚴肅ニ
監督指導セラルルコトガ最モ必要ト存ジマ
ス(拍手)
第二ハ、大政翼贊會ノ經費ノ問題デアリ
マス、私共同志ハ昨年ノ議會ニ於キマシテ、
翼贊會ガ公事結社デアル以上、三百万圓見
當デ足レリト主張シタノデアリマスガ、結
局政府ハサウ多クハ要ルマイ、餘剩ガアツ
タラ國庫ニ返納スルト云フ略〓諒解ノ下ニ、八
百万圓ノ豫算ガ通過シタノデアリマス、然
ルニ本年ハ更ニ四百万圓增額シテ、一千二
百万圓トナツタノデゴザイマス、總理大臣
ハ過般ノ豫算委員會ニ於キマシテ、松村豫
算委員長ノ質問ニ對シテ、增額ノ理由ニ付
テ御說明ガゴザイマシテ、一應了承シタノ
デアリマスガ、私ガ特ニ此ノ際總理大臣ノ
御留意ヲ喚起シタイコトハ、豫算委員長ガ殊
更ニ此ノコトニ付テ、各豫算委員ヲ代表シ
テ質問セナケレバナラナカツタト云フコト
デアリマス、立法府ガ特ニ此ノ愼重ノ態度
ヲ執ツタコトニ付テハ、此ノ大戰爭ノ場合、
國民ノ粒々辛苦ガ如何ナル國費ニ使ハルル
カト云フ重要ナル懸念ガ、玆ニ存在スルト
云フコトニ付テ、總理大臣初メ政府ノ深キ
御注意ヲ希望スル次第デゴザイマス(拍手)
又總理大臣ハ、豫算委員會ニ於キマシテ同
僚植原君ノ質問ニ答ヘラレマシテ、國內ノ
運營ニ於テモ重要ナル點ガアツテ大政翼贊
會ニ經費ヲ要スルノデアル、斯ク御說明ニ
ナツテ居リマス、是ハ御尤モノ御答辯ト存
ジマスガ、私ハ總理大臣ガ更ニ大所高所ニ
立ツテ、日本ノ政治ヲ率ヰル大經綸ノ御見
地カラ、御觀察アランコトヲ希望スルノデア
リマス、卽チ今日ノ重大ナル時期ニ於テ國
民ノ何人ガ國策ノ根本ニ異議ヲ唱ヘル者ガ
ゴザイマセウ、忠實ナル日本國民ハ皆政府
ニ對シテ淚グマシキ協力ヲ致シテ居ルノデ
アリマス(拍手)アナタガ御心配ナサルヤウ
ナ國內ノ運營ニ於テ決シテ心配ハナイノデ
ゴザイマス(拍手)誰ガ言ヒ聽カセナクト
モ、感激ト滿足トヲ以テ陛下ノ御戰ニ討
死ヲスル國民デアリマス(拍手)國民ノ心ニ
對スル工作ト運營トニハ限リガアリ、又巧
拙ガアリマス、總理大臣ガ國民ニ對シテ
素ツ裸ニナツテ赤心ヲ披瀝スル所ニ、必勝
ノ信念ハ灼鐵ノ如ク熱シ來リ、一億一心ハ
此ノ時ニ現實スルト私ハ思ヒマス、翼贊會ノ
運動ノヤウナモノハ餘程御注意ヲ御拂ヒニナラ
ナイト、形ニ於テ一億一心トナリ、精神ニ
於テ一億一心ノ畸形兒ガ生レルト云フコト
ヲ、私ハ惧レルノデゴザイマス、仍テ、翼贊
會ノ一千二百万圓ノ經費ハ、ソレガ如何ナ
ル使途ニ使ハレルカ、萬ガ一ニモ其ノ中カ
ラ總選擧ニデモ流用セラレルヤウナコトガ
アレバ、國民ノ政府ニ對スル信賴ハ一擧ニ
シテ地ニ墜チルノデアリマス(拍手)總理大
臣兼內務大臣タル東條大將ニ於カレマシテ
ハ、深キ御關心ヲ以テ監督セラレンコトヲ
豫メ警告スル次第デゴザイマス(拍手)
最後ニ一言致シタイコトハ、此ノ空前ノ
大豫算ノ實行ニ當ツテ、之ヲ行使スル官吏
ノ綱紀肅正デアリマス、經濟統制ハ最モ必
要デアルガ、之ニ當ル官公吏ハ國民ノ苦衷
ヲ酌マナケレバナリマセヌ、中小商工業者
ノ轉廢業ハ我ガ國ノ中堅階級ニ將來如何ナ
ル影響ヲ招來スルヤ、又我ガ國傳統ノ輕工
業、家庭工業ヲ沒落セシムル所ノ憂ヒハナキ
ヤ、斯クノ如キ問題ハ深大ナル問題ヲ將來
ニ貽スノデアリマスガ、ソレハ他日ノ問題
ト致シマシテ、是等ノコトニ當ル官權濫用
ノ弊害ハ、此ノ際斷然改メナケレバナリマ
セヌ(拍手)況ヤ官公吏ガ是等ノ事ヲ行フニ
當ツテ、中間ニ於テ免レテ恥ナキ陋劣ナル
所行ヲ敢テスルニ至リテハ、官紀ノ弛緩是
ヨリ甚ダシキモノハナイト存ジマス(拍手)
是レ皆官公吏ノ忠誠ノ念慮ニ缺ケタル獨善
的態度ノ致ス所デゴザイマス
大東亞戰爭ニ於キマシテ日本國民ノ構想
ガ雄大ニナツタコトハ大イニ喜ブベキコト
デアリマスガ、之ヲ裏付ケル周到ナル準備
ト、終始一貫スル堅忍持久ノ精神ヲ伴ハザ
ル場合ニ於テハ、前途思ハザル危險ニ遭遇
スルコトヲ惧レルノデアリマス、英米ガ大
東亞戰ノ〓戰ニ慘敗致シマシタノハ、日本
ノ力ノ過小評價ガ原因デアルコトニ考ヘ及
ベバ、此ノ際國民ノ間ニ一面雄渾博大ノ氣
宇ヲ涵養シ、一面謙虚內省ノ風格ヲ作ルコ
トガ切實ニ痛感セラレル次第デアリマス(拍
手)豫算ノ實行ニ當ツテ特ニ政府ニ留意ヲ
促ス次第デゴザイマス、私ハ簡單ニ是ダケ
ノコトヲ申上ゲテ、本豫算ニ贊成ノ意ヲ表
スル次第デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=9
-
010・田子一民
○議長(田子一民君) 窪井義道君
〔窪井義道君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=10
-
011・窪井義道
○窪井義道君 私ハ第一控室所屬議員ヲ代
表致シマシテ、只今議題トナツテ居リマス
ル豫算各案ニ對シ、委員長ノ報告ニ贊成ノ
意ヲ表スル者デゴザイマス
大東亞戰爭ハ、本議會劈頭ニ於テ東條總
理大臣ガ述ベラレマシタル如ク、我ガ建國
ノ崇高ナル大理想ヲ、將ニ昭和ノ此ノ御代
ニ於テ顯現セントスル尊イ御戰デゴザイマ
ス、世界ノ人類ニ皇道ヲ光被セントスル、
卽チ道義的世界ノ建設ノ戰デゴザイマス、
吾々日本國民ハ此ノ天地ノ榮ユル聖代ニ生
ヲ享ケマシテ、天業ヲ翼贊シ奉ルコトヲ光
榮ニ存ジマスルト共ニ、吾々議員ト致シマ
シテモ、此ノ聖戰ノ豫算ニ協贊出來マスル
コトヲ無上ノ光榮ト存ズル者デゴザイマス
(拍手)先般本議場デ可決致シマシタル臨時
軍事費及ビ本豫算ヲ合シマスルト、正ニ二
百數十億圓ニ上ル巨額デゴザイマスルガ、
吾々國民ハ如何ナル重キ租稅ヲ負擔スルコ
トモ、又此ノ巨額ナル公債ヲ消化致シマス
ルコトニ付キマシテモ、業ニ已ニ十分ノ覺
悟ト用意トヲ持ツテ居ルモノデアリマス、
政府ノ懷イテオイデニナリマス抱負經綸ニ
付キマシテ、本議會ヲ通ジテ國民ニ示サレ
タルコトハ吾々心强ク感ジテ居リマス、併
シナガラ此ノ大東亞ノ建設ハ、眞ニ國運ヲ
〓スル世紀ノ大業デゴザイマシテ、之ニ關
シマシテ私ハ本豫算贊成ニ當リ、極メテ簡
單ニ、大局的見地カラ四、五ノ意見ヲ述べ
マシテ、本豫算ノ施行ニ當リ、政府ノ善處
方ヲ要望致シタイト存ズルノデゴザイマス
其ノ第一點ハ、大東亞建設ニ關シ中央機
關ノ設置ノ問題デゴザイマス、戰爭ト建設ト
ガ不可分ノ問題デアルノガ、大東亞戰爭ノ
一大特質デゴザイマス、勿論現下ニ於キマシ
テハ、總理大臣ノ申サレル如クニ、一ニモ二
ニモ三ニモ戰ヒ勝ツコトニ關シマシテ、國
家總力ヲ集中スベキコトハ申スマデモアリ
マセヌ、併シナガラ戰爭ノ遂行ト共ニ、
方建設ヲ伴ヒマスル此ノ大戰ノ性質ニ鑑ミ
マス時ニ當ツテ、或ハ戰爭遂行中ニ占領地
域ノ住民ノ協力ヲ求メル場合モアリマセウ、
或ハ先程同僚議員ガ申サレタヤウニ、占領
地域ノ物資ヲ戰爭力强化ノ爲ニ使用スル場
合モアリマセウ、特ニ此ノ廣汎ナル地域、
十億ノ民族ヲ包容スル大建設ニ當リマシテ
ハ、應急的或ハ恆久的建設ニ應ズル爲ニハ、
政府ハ少クトモ强力ナル中央機關ヲ設置致
サレルコトガ極メテ緊要ナルコトト存ズル
ノデアリマス(拍手)日本ヲ中核ト致シマス
ル大東亞ノ政治、經濟、文化ノ各般ニ亙ツ
テ、之ヲ一元的ニ又有機的ニ組織シテ雄大
ナル計畫ヲ樹テルコトガ、絕對ニ必要ナル
條件デアルト思フノデアリマス、私ハ今日
各省々々ニ於テ其ノ機能ヲ發揮致シマシテ、
調査〓究或ハ企畫ナサレテ居リマスルコト
ヲ多トスルモノデゴザイマスルガ、出來得
ルナラバ、相當ノ權力ノアル、決定權ノゴザ
イマスル中央機關ヲ創設セラレタイト存ズ
ルノデアリマス、而モ此ノ中央機關ニハ附
屬機關トシテ調査機關、或ハ諮問機關、或
ハ人材養成ノ機關等ヲ設ケラレマシテ、是
等ノ政治組織ノ下ニ官民ノ叡智ヲ集メ、經
驗ヲ徵シ、以テ國民ノ總力ヲ發揚スルコト
ニ努メテ戴キタイト存ズルノデアリマス、
特ニ私ハ大東亞建設ニ當リマシテハ、
大東亞共榮圈內ノ自給自足ノ經濟建設、
或ハ生命圈ト云フモノノ體制ヲ整ヘルコ
トハ申スマデモアリマセヌ、併シナガラ
近來動モスレバ、大東亞共榮圈ノミガ持
ツテ居リマス所ノ特殊ナル物資、此ノ物資
ガ過剩スルカラト云フコトニ依ツテ、俄カ
ニ是等ノ現在ノ生產ノ變更ヲ來サントスル
如キ議論ガ見エルノデアリマス、或ハ場合
ニ依ツタラソレモ可デアリマセウ、併シナ
ガラ現在大東亞ノミガ有スル此ノ過剩物資
ニ付テ、急激ニ變化ヲ與ヘルト云フ如キコ
トデアツテ、ソレガ本當ニ正シイ見方デア
ルナラ宜シイノデアリマスガ、萬一近視眼
的ニ、一時的ナ現象ニ眩惑サレテ是等ノ對
策ヲ誤ツタナラバ、所謂悔ヲ後年ニ貽スガ
如キコトガアツテハ、此ノ赫々タル戰果ニ
對シテ申譯ナイト存ズルノデアリマス、特
ニ私ハ大東亞建設ニ當リマシテ、大東亞共
榮圈竝ニ共榮圈外ノ他ノ共榮圈、例ヘテ申
シマスレバ獨伊ノ共榮圈ト云フ如キモノト
ノ間ニ於テモ、物資ノ交流ヲ圖リ、技術ノ
交換ヲ行フヤウナ、大キナル見地ニ鑑ミテ
是等ヲ考察シテ、其ノ對策ヲ立テラレンコ
トヲ希望スル者デアリマス
第二ノ點ハ、國土計畫ト人口問題デアリ
マス、今次ノ世界戰爭ガ吾々ニ與ヘマシタ
ル貴キ〓訓ハ何デアルカ、ソレハ一定ノ國
土ニ多數ノ純血ノ民族ガ住ンデ居リマス其
ノ國ノ力ト云フモノハ、强大ナル戰爭ノ威
力ヲ發揮シテ居リマスル點デゴザイマス、
私ハ我ガ日本帝國ガ八千万、一億ノ大和民
族ヲ持チ、此ノ國土、此ノ民族ノ力ト云フ
モノガ、今日八紘一宇ヲ世界ニ顯現スル所
ノ威力ヲ示シテ居ルノダト固ク信ズル者デ
アリマス、今日此ノ國土ガ土ト血-此ノ
土ト血ノ一體化ト云フコトガ、今日ノ世界
ノ指導國トナルベキ第一要素デアリマス、
例ヘバ我ガ日本帝國ノ如キ、或ハ「ドイツ」
民族ノ如キ然リデアリマス、吾々ハ英國ノ
瓦解ハ、英國ガ其ノ本土ニ僅カ四千万ノ人
ロヲ持ツテ居リマシテ、而モ廣汎ナル領土
ガ世界ニ分散サレテ居ル所ニ原因ガ存スル
ト思フノデアリマス、又合衆國ハアノ廣大
ナル地域ニ一億數千万ノ人口ヲ持ツテ居リ
マスルガ、其ノ民族ガ多種多樣デアリ、複
合的國家ヲ組織シテ居ル所ニ、「アメリカ」
ノ大キナ弱點ガアルト存ズルノデアリマス、
故ニ政府ニ於カレマシテハ、此ノ國土ト人
口政策ト云フ點ニ付キマシテ十分ノ用意ヲ
致サレ、今日南方へ〓〓ト云フ聲ガ國民ノ
心ヲ動カシテ居リマスル、サウシテ之ヲ無
計畫ニ植民サセ、開發サセ、移民サセルト
云フコトハ、此ノ本國ノ弱體化ヲ來ス虞ガ
アリマスノデ、是等ノ點ヲ十分ニ考慮サレ
ンコトヲ希望スル者デアリマス(拍手)豫算
委員會ニ於キマシテ東條總理大臣ガ、今日
ノ戰爭ハ第一ガ人デアル、第二ガ訓練デア
ル、第三ガ物デアル、此ノ三ツノ要素ニ依
ツテ今日ノ戰爭ガ行ハレルノダト申サレタ
點ニ對シテ、吾々ハ多大ノ共鳴ヲ感ズル者
デアリマス、尙ホ企畫院總裁竝ニ井野農林
大臣ガ、日本ノ國土計畫ト〓糧政策、或ハ,
農村對策ニ付キマシテ、日本ノ人口ノ四割
ヲ日本國土ニ保有スル計畫デアルト申サレ
タ點モ、大イニ意ヲ强ウスルモノデアリマ
ス、私ハ是等ノ點ニ鑑ミラレマシテ、政府
ハ今後大東亞共榮圈建設ニ付テ、國土ト人
口ノ問題ニ對シ十分ナル注意ヲ以テ其ノ對
策ヲ講ゼラレンコトヲ望ミマス(拍手)
第三ノ點ハ、南方ト北方トノ關聯ノ問題
デゴザイマス、今次大戰以來國民ノ心ハ南
ヘ南ヘト向ツテ居リマス、私ハ是ハ自然ノ
勢ヒデゴザイマシテ、結構ナコトト存ズル
ノデアリマス、併シナガラ南ニ行ケバ寶ノ
山ガ取レルノダ、南ニ行ツテ吾々ハ一儲ケ
シヨウト云フヤウナ考ヘヲ國民ガ持ツニ至
リマスルコトハ、非常ニ危險ナ、憂フベキ現
象デアルト思フノデアリマス、大東亞建設
ハ政府ノ申サルル如ク、日滿支ヲ中核トシ
テ、此ノ中核ヲ圍ンデ共存共榮ノ實ヲ擧ゲ
ルノデアルト申サレテ居リマス、今日マデ
日本ガ執ツテ來タ國策ガ、依然トシテ日滿
支ノ一體化デアルコトガ日本ノ根本國策デ
アツタコトヲ、吾々ハ考ヘニ浮ベマス時ニ
當ツテ、ヤハリ滿洲ハ日本ノ大陸政策ノ生
命線デアル、之ヲ吾々ハ忘レテハナリマセ
又、滿洲ニ對スル凡ユル經濟的、政治的、
文化的ノ施設ニ對シテ、政府ハ大イニ力ヲ
注ガレンコトヲ希望スルノデアリマス拍
手)北方ニ住ム民族ト云フモノガ其ノ自然
ノ環境ニ惠マレズ、或ハ風雪ト鬪ヒ、或へ
生活ノ苦難ヲ忍ンデ行ク所ニ、北方民族
ノ所謂剛毅、朴訥ノ氣風ガ養ハレテ行
クノデアリマス、私ハ北方ヲ棄テタ民族ガ
常ニ滅ビテ、北方民族ノミガ南へ〓〓
ト制壓ヲ加ヘテ行ツタト云フ、此ノ世
界ノ國々ノ興廢ノ歷史ノ〓訓ヲ忘レテ
ハナラナイト信ズルノデアリマス(拍手)政
府ハ北方、南方互ヒニ睨合ハサレマシテ、
其ノ調節ヲ圖リ、以テ大東亞共榮圈ノ偉大
ナル構想ヲ樹立サレムコトヲ希望スルモノ
デアリマス(拍手)
第四ニ、大東亞建設ト〓育ノ問題デゴザ
イマス、我等國民ガ大東亞共榮圈ノ盟主デ
アリ、指導者デアル爲ニハ、優秀ノ指導者
タル責任ト資格トヲ持タネバナリマセヌ、
其ノ爲ニハ國民ヲシテ南方ヲ正シク理解セ
シメ、十分ニ南方ニ對スル知識ヲ涵養致シ
マシテ、其ノ正シキ理解ノ下ニ初メテ正シ
キ指導ガ行ハレルコトハ申スマデモナイノ
デアリマス、特ニ私ハ現在日本ニ居リマス
靑少年、是等ノ〓育及ビ將來吾々ノ志ヲ繼
イデ生レ來ル所ノ子々孫々ニ對スル〓育
ト云フコトニモ思ヒヲ致シマシテ、政府
ハ小學〓育、中學〓育ニ關シテ、是等ノ學
校ノ讀本ニモ能ク大東亞戰爭ノ意義及ビ南
方ノ知識ヲ普及セラレ、或ハ大學、專門學
校ニモ南方ノ講座ヲ設クルノミナラズ、
方ニ師範〓育ニ對シテ根本的ナ改革ヲ企テ
ラレ、所謂小國民ヲ指導スル小學校ノ先生
ノ〓育ニ對シテモ、非常ナル意ヲ用ヒラレ
ンコトヲ望ム者デアリマス、私ハ斯ウ云フ
〓育上ノ大改革ヲ政府ガ企テラレテ、所謂
思想ニ依ル、〓育ニ依ル大東亞ノ建設、大
東亞國民ノ指導ト云フコトガ、今次ノ我ガ
日本ノ國民ニ課セラレタル所謂八紘一宇ノ
大理想ヲ顯現スル根本的ナ道デアルト考ヘ
ルノデアリマス(拍手)政府ハ〓育及ビ訓
練人材ノ養成ニ努メラルベク、〓育ノ
大劃期的改革ヲセラレンコトヲ要望スル次
第デアリマス
最後ニ私ガ申上ゲタイコトハ、大東亞戰
爭ノ意義ヲ國民ニ十分ニ普及徹底セシメ
テ、長期的抗戰ニ對應スル體制ヲ執ツテ戴
キタイコトデアリマス、此ノ點ハ先程安藤
君ガ申サレタ通リ、國民ハ既ニ如何ナル艱
苦缺乏ニモ耐ヘル覺悟ハシテ居リマス、併
シナガラ此ノ長期抗戰ト申シマスルカ、長イ
戰爭ノ旅路ヲ行キマスル內ニハ、或ハ弛ム
コトモアリマセウ、私ハ是等ノ點ヲ考ヘ
ルト、政府ニ於テモ非常ナル決心ヲ以テ、
國民ノ指導及ビ指導ノ凡ユル施設ヲ致サレ
ンコトヲ希望スルモノデアリマス、今日我
ガ皇軍ハ廣袤數千平方「キロ」ニ亙ル地域ニ
於キマシテ赫々タル武勳ヲ立テラレ、「イギ
リスヲシテ、「アメリカ」ヲシテ一指モ染
ムルコトガ出來ナイ此ノ大ナル武勳ニ對シ
テハ、吾々ハ感謝感激措ク能ハザルモノガ
アルノデアリマス、併シナガラ吾々ガ考へ
ナケレバナラナイ點ハ、「アングロ·サクソ
ン」民族ト云フモノハ蛇ノヤウニ執念深イ特
性ヲ持ツテ居ル民族デゴザイマス、粘リ强
イ民族デゴザイマス、彼等ガ厖大ナル資源
ト工業力トヲ以テ、凡ユル武器ヲ製造シテ
抗戰スルコトモ想像ニ難クアリマセヌ、又
彼等一流ノ思想戰、宣傳戰、或ハ金ノ力ヲ
以テ、凡ユル惡辣ナル魔手、手段ヲ以テ世
界ノ人々ノ攪亂ニ向ツテ來ルコトモ想像ニ
難クアリマセヌ、私共ハ今日一日々々ト「グ
レート·ブリテン」ノ崩壞ヲ眼ノ前ニ見テ居
ルノデアリマスルケレドモ、併シ是等ノ點
ヲ考ヘテ、所謂百年千年ノ歷史ヲ作ル爲
ニハ吾々日本國民ハ忍苦ト戰ヒ、缺乏ニ
耐ヘルベク覺悟ハシテ居リマスルガ、政府
ニ於カレマシテモ、此ノ國民ヲ五年十年ト
何時モ變ラナイ所ノ緊張ト感激ヲ以テ導イ
テ行クコトニ對シテ、亦大イナル努力ト決
心トガナクテハナラナイト考ヘルノデアリ
マス(拍手)東條首相ノ申サルルヤウニ、今
日此ノ戰時ニ當リマシテハ、法律萬能主義
ニ堕スルコトナク、又官吏獨善ニ陷ルコト
ナク、大キナル慈愛ノ親心ヲ以テ、日本國
民ノミナラズ、此ノ東亞ノ民族ヲ率ヰテ行
カレルト言ハレタノデアリマス、私ハ此ノ
長イ戰爭ノ旅路ニ於テハ、或ハ國民ノ中ニ
咽喉ガ渴ク者ガアル場合ニ於テハ水ヲ與ヘ
テ貰ヒタイ、或ハ先日總理ガ申サレタヤウ
ニ、甘イモノヲ欲スル者ニハ砂糖ヲヤツテ貰
ヒタイ、長イ旅路ヲスル間ニハ、ヤハリ國民
ニ休息モ必要デアリマセウ、或ハ娛樂モ必要
デアリマセウ、國民自身ハ如何ナル艱苦ニモ、
如何ナル困難ニモ耐ヘ忍ビ、戰ヒ拔ク決心
ハ持ツテ居リマスルガ、政府ノ方カラ見マ
スルト、長イ戰爭ノ旅路ヲ行ク間ニハ、此ノ
溫カイ親心ヲ以テ、國民ガ何處カ疲レテハ
居ラヌカ、何處カ困ツテハ居ラヌカト云フ
點ヲ十分ニ政治ノ上ニ氣ヲ付ケラレマシテ、
而シテ一方大東亞戰爭ト云フモノハ本當ニ
英米ヲシテ城下ノ盟ヲナサシメル、「ロンド
ン」ニ於テ、「ワシントン」ニ於テ彼等ノ首
ヲ押ヘテ、ドウダト云フ所マデ戰ヒ拔ク所
ニ吾々ノ戰爭ノ目的ガアルノデアリマス(拍
手)今日〓戰以來ノ赫々タル戰果ニ鑑ミテ、
或ハ日本ハ米英ヲシテ城下ノ盟ヲサスコト
ガ不可能ダ、出來ナイノダト云フヤウナコ
トヲ考ヘル時ニ民族ノ滅亡ガアル、戰爭ハ
出來マセヌ、是等ノ點ニ付テ總理ハ常ニ戰
ヒ拔クノダト云フコトヲ申シテ居ラレマス
ガ、ドウゾ戰ヒ拔クベキ總テノ政策、總テ
ノ經綸ヲ以テ、此ノ大東亞戰爭ニ對シテ國
民ヲ指導シテ行カレンコトヲ切ニ希望致シ
マス、以上ヲ以チマシテ私ハ本案ニ贊成ヲ
致ス者デゴザイマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=11
-
012・田子一民
○議長(田子一民君) 牧野良三君
〔牧野良三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=12
-
013・牧野良三
○牧野良三君 私ハ興亞議員同盟ヲ代表シ
マシテ、玆ニ政府提出ノ豫算各案ニ對シ贊
成ノ意ヲ表明致シマス、總額二百五十億ト
云フ豫算ノ數字其ノモノガ、旣ニ國民ニ對
シマシテ時局ニ關スル雄大ナル構想ト、牢
固タル決意トヲ示スニ十分デアルト信ジマ
ス、吾々ハ此ノ豫算案ニ對シ無條件ニ協賛
ノ意ヲ明カニスルコトニ依リ、大東亞戰爭
ニ對シテ吾々ノ有スル烈々タル熱意ヲ表明
セントスルモノデアリマス(拍手)
現內閣ガ深ク國民ノ眞意ヲ解シ、遂ニ重
大ナル決意ヲナスニ至ツタ其ノ果斷ト叡智
下、而シテ其ノ氣魄トニ對シ、一億國民ガ
齊シク感歎措カザルコトハ、旣ニ凡ユル機
會ニ於テ、凡ユル方面ノ國民ヨリ讚ヘラレ
テ居リマス、斯カル偉大ナル事態ト云フモ
ノハ、四千年ノ世界史中、如何ナル民族モ
未ダ曾テ夢想ダモシ得ザリシ所デアルト信
ジマス(拍手)今ヤ現內閣ガ此ノ大ナル決意
ヲ國政ノ上ニ明カニシテ聖意ニ副ヒ奉ラ
ントスルモノガ、卽チ此ノ豫算案デアリマ
ス、今案ノ內容ヲ見マスレバ、豫算ニ盛ラ
レマシタル現內閣ノ思想ト、數字ニ計上セ
ラレマシタル現内閣ノ計畫ノ中ニハ、無論
論議ヲ免レナイ幾多ノモノノアルコトハ當
然デアリマス、併シ是等ノ諸問題ニ關シテ
ハ、政府ハ同ジク其ノ果斷ト叡智トヲ以テ
一切ノ行掛リヲ棄テ、率直ニ之ヲ處置セラ
ルベキコトヲ固ク信ジ、其ノ期待ノ下ニ之
ニハ一切言及ハ致シマセヌ
日支事變ノ勃發致シマシテヨリ既ニ五年、
此ノ間、口ニ國論ノ一致ガアツタトハ言ヘ、
心ニ民心ノ一致ガアツクカト云フ點ニ付キ
マシテ私カニ憂ヒヲ抱イタ者ハ、獨リ吾々
ノミデハナカツタト信ジマス、然ルニ大詔
一度下ルヤ擧國凛然トシテ一致シ、億兆皆
心ヲ一ニシテ、ソコニ寸毫ノ間隙モナキニ
至リマシタルコトハ、何ト云フ偉大ナル國
民性ノ發露デアリマセウ(拍手)而モ此ノ五
年ノ間ト云フモノ、陸軍ト海軍ト軍部兩當
局ガ、默々トシテ苦心ヲ積ミ、日夜苦難ノ
年
試鍊ニ堪ヘテ、今ヤ遂ニソレガ此ノ偉大ナ
ル戰果トナツタト云フコトヲ思フト、私共
ハ眞ニ頭ガ下リマス、感謝ニ堪ヘマセヌ(拍
手)顧ミマスレバ十年前ノ十二月八日ハ、
我ガ松岡全權ガ「ジュネーブ」ニアツテ國際
聯盟脫退ノ決意ヲ明カニシタ日デアリマス、
而シテ越エテ二月ノ二十日ニ之ヲ實現スル
ニ至ツテ米英ノ心膽ヲ寒カラシメタノデア
リマス、卽チ米英ニ對スル日本帝國國民ノ
宣戰ノ決意ハ、此ノ時ニ孕ンダモノデアルト
云フコトヲ知ラナケレバナラヌ、爾來十年、
之ヲ斷行シタルモノハ現內閣デアリマス、
而モ日支事變勃發以來數ヘテ五年、早ク既
ニ斷ズベクシテ斷ズルコトノ出來ナカツタ
所ニ、軍ニモ、政府ニモ、多大ノ苦心ガア
ツタ、其ノ苦心ガ遂ニ今日ノ成果トナツタ
コトヲ思ヒマス時ニ、感慨ノ頗ル無量ナル
モノガアリマス
此ノ場合現內閣ニ對シ一言致シタイコト
ハ、內閣ノ輝カシイ功績ハ一ニ赫々タル武
勳ニアリマシテ、未ダ政治ノ事實ニ存スル
モノガアリマセヌ、政治ノ苦心ハ、武勳ガ
赫々タルダケニ更ニ一層重大ナルモノアル
コトヲ推察致シマス(拍手)併シナガラ外ニ
於ケル此ノ赫々タル武勳ハ、內ニ向ツテ一
億民心ノ得難イ明朗性トナツテ居リマス
(拍手)此ノ明朗性コソハ大東亞建設ノ重大
ナル基礎的ノ力デアリマス(拍手)サレバ苟
クモ國民ノ此ノ明朗性ヲ妨ゲルガ如キモノ
ニ對シマシテハ、現內閣閣僚諸公ハ斷ジテ
之ヲ排擊スルニ躊躇セラレテハナラヌト信
ジマス(拍手)言フマデモナク戰爭ハ樂觀ヲ
シテハナリマセヌ、併シ國民ニ希望ヲ持タ
セズシテハ戰爭目的ノ完遂ト云フコトハ斷
ジテ期待スルコトガ出來マセヌ、サレバ政
府ハ此ノ豫算ノ實行ニ當リマシテモ、國民
ト國民ノ生活トニ對シ、常ニ明朗ナル希望
ヲ抱カシメルコトニ關シ、常ニ念々怠ツテ
ハナリマセヌ、吾々ハ總理大臣ノ希望ニ應
ジ、必ズ國政ニ協力スルコトヲ誓フモノデ
アル、サレバ內閣ハ希クハ全力ヲ擧ゲテ、
此ノ當面ノ大東亞戰爭ニ勝ツテ〓〓勝チ拔
クコトニ對シテ萬遺漏ナカランコトヲ期セ
ラレンコトヲ切望ニ堪ヘマセヌ(拍手)
以上豫算案ニ關シ政府ニ激勵ノ辭ヲ呈シ
マシテ、茲ニ贊成ノ意ヲ明カニスルモノデ
アリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=13
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014・田子一民
○議長(田子一民君) 是ニテ討論ハ終局致
シマシタ、是ヨリ採決ニ入リマス、但シ總
豫算案中皇室費ハ協賛ヲ要セザル費目デア
リマスカラ之ヲ除キマス、七案ヲ一括シテ
採決致シマス、委員長報告ハ何レモ可決デ
アリマス、七案ヲ委員長報告ノ通リ決スル
ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=14
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015・田子一民
○議長(田子一民君) 起立總員
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=15
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016・田子一民
○議長(田子一民君) 仍テ七案トモ委員長
報告通リ全會一致可決確定致シマシタ拍
手)是ニテ昭和十七年度總豫算案外六件ハ
議了致シマシタ-日程第八乃至第十ハ同
一委員ニ付託シタル議案デアリマスカラ、
一括議題トナスニ御里議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=16
-
017・田子一民
○議長(田子一民君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程第八、米穀需給調節特別會計
法中改正法律案、日程第九、木炭需給調節
特別會計措置運轉資本臨時補足ニ關スル法
律案、日程第十、食糧管理法案、右三案ヲ
一括シテ第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員
長ノ報告ヲ求メマス-委員長三善信房
君
第八米穀需給調節特別會計法中改正
法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
第九木炭需給調節特別會計据置運轉
資本臨時補足ニ關スル法律案(政府
提出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
第十食糧管理法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一米穀需給調節特別會計法中改正法律案
(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十七年二月二日
委員長三善信房
衆議院議長田子一民殿
報〓書
一木炭需給調節特別會計据置運轉資本臨
時補足ニ關スル法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十七年二月二日
委員長三善信房
衆議院議長田子一民殿
報〓書
一食糧管理法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十七年二月二日
委員長三善信房
衆議院議長田子一民殿
〔三善信房君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=17
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018・三善信房
○三善信房君 只今議題トナリマシタ米穀
需給調節特別會計法中改正法律案外二件ニ
付キ、委員會ニ於ケル審議ノ經過竝ニ結果
ヲ御報告申上ゲマス
委員會ハ去ル一月二十三日ヨリ開會致シ
マシテ、昨日マデ九囘、或ハ祕密會ヲ開
キ、政府ノ說明ヲ聽キ、愼重ニ審議ヲ盡シ
タノデアリマス、先ヅ法案ノ內容ニ付キマ
シテ申シマスレバ、食糧管理法案ノ要旨
ハ、第一主要食糧ノ國家管理ヲ一層强化ス
ルコトデアリマス、第二ハ主要食糧ノ配給
機構ヲ整備シ、食糧營團ヲ創設セシメマシ
テ、主要食糧ノ綜合配給ニ關スル事業ヲ擔
當セシムルコトデアリマス、第三ハ右食糧
營團ニ非常時用食糧ノ貯藏ヲ實施セシムル
コトデアリマス、以上ノ三點ガ法案ノ主ナ
ル點デアリマス、中央〓糧營團ノ資本金ハ
一億圓デアリマシテ、政府ハ五千万圓ヲ限
リ出資致シマス、而シテ拂込資本金額ノ五
倍ヲ限リ、食糧營團債劵ヲ發行シ得ルコト
ニナツテ居リマス、地方營團ハ地方ノ實情
ニ應ジマシテ資本金ガ決メラレルコトニナ
ツテ居リマス、此ノ營團ニテ取扱ヒマス主
要食糧ハ、米麥、甘藷、馬鈴薯又ハ是等ノ
加工品等デアリマス
次ニ米穀需給調節特別會計法中改正法律
案ニ付テ申上ゲマス、本案ハ米穀等ニ關ス
ル諸法律ヲ整備シ、食糧管理法ヲ制定スル
ニ伴ヒマシテ、從來ノ米穀需給調節特別會
計法ノ名稱ヲ變更スルコトガ第一點デアリ
マス、次ニハ之ニ關聯致シマシテ、國債整
理基金特別會計法中ニ改正ヲ要スル點等ガ
アルノデアリマス
次ニ木炭需給調節特別會計据置運轉資本
臨時補足ニ關スル法律案ニ付テ申上ゲマス、
本法律案ノ內容ハ、木炭需給ノ現狀ニ鑑ミ
マシテ、其ノ需給ノ圓滑ヲ期スル爲メ常時
相當多量ノ木炭ヲ貯藏致シマス關係上、本
會計ノ据置運轉資本百万圓ニ不足ヲ生ズル
場合ニ、九百万圓ヲ限リ臨時補足シ得ルコ
トトナツテ居リマス、之ニ依ツテ會計ノ圓
滑ナル運營ヲ圖ラントスルコトガ本案ノ骨
子トスル所デアリマス
右三案ニ付キマシテハ多數委員諸君ヨリ
質疑ガアリマシタ、之ニ對シマシテ政府當
局ノ答辯ガアリマシタ、詳細ニ付キマシテ
ハ速記錄ニ就キ御承知ヲ願フコトニ致シマ
シテ、質疑應答ノ主ナル點ニ付キマシテ申
上ゲテ見タイト思フノデアリマス
第一ハ、東亞共榮圈ニ於ケル食糧ノ生產
ト交流ノ問題デアリマス、大東亞戰爭ノ赫
赫タル戰果ノ擴張ニ伴ヒマシテ、豐富ナル
南方ノ〓糧〓源ガ我ガ把握下ニ入リマシタ
結果、南方諸地方ト我ガ國食糧政策トヲ如
何ニ調整スルカ、又農業政策ノ基礎、殊ニ
開拓民政策ニ何等カノ變更ヲナスノデハナ
イカト云フ點ハ、現下ノ重大問題デアリマ
スノデ、極メテ眞摯且ツ熱心ナル質疑應答
ガ交ハサレタノデアリマス、之ニ對シマシ
テ政府ノ答辯ニ依リマスレバ、日本ノ農村
ハ單ニ食糧ヲ作ルト云フコトヲ使命トスル
バカリデナク、大和民族ノ源泉タル、所謂
人的資源ノ涵養地デアリ、今日我ガ國ノ陸
海軍將兵ガ赫々タル、戰果ヲ擧ゲテ居リマ
ス、其ノ勇士ノ多クハ、農村カラ出テ居ル
人デアリマス、是等ノ事態ヲ見マシテモ、
農村ガ如何ニ高度國防國家ノ見地カラ大切
デアルカト云フコトガ明瞭デアリマス(拍
手)隨テ內地農村ニ對シマシテハ、物心兩
方面ヨリ必要ナル施策ヲ講ズルト共ニ、主
要〓糧ハ内外地ヲ通ズル日本帝國內ニ於テ
自給自足スルコトヲ基礎ト致シテ、東亞共
榮圈內ノ〓糧政策ヲ樹立セナケレバナラヌ
ト云フコトヲ言明致サレタノデアリマス、
尙ホ他ノ農作物ニ付キマシテハ、適地滴作
主義ヲ以テ進ム方針デアリ、滿洲開拓民ニ
付キマシテハ、旣定ノ國策トシテ飽クマデ
是ガ遂行ヲ期スル考ヘデアル、而シテ南方
ニ對シテハ技術知識ニ重點ヲ置キ、指導者
ヲ送ツテ指導ニ當ラシメル方針デアルトノ
コトデアリマス
第二點ハ、戰時下ニ於ケル主要食糧ノ確
保ヲ圖リマスルコトハ喫緊ノ要務デアリマ
シテ、我國人口增加ノ趨勢ト、耕地擴張可
能ノ面積等ヨリ考ヘマシテ、果シテ〓糧ノ
需給ヲ持續シ得ルヤトノ質問ニ對シマシテ、
政府ノ答辯ハ、主トシテ農地開發營團等ニ
依ツテ五十万町步ノ田畑ヲ開墾シ、其ノ他
耕地ノ改良、耕種ノ改善等ニ依ツテ米麥ノ
增產ヲナスト共ニ、甘藷、馬鈴薯等ノ增產
ニ依ツテ、人口增加ニ伴フ食糧ノ自給自足
ニ何等不安ナイコトヲ言明致サレタノデア
リマス、尙ホ主要食糧ノ內外地ニ於ケル自
給方針ニ關シマシテハ、祕密會ニ於テ東亞
共榮圈內ノ食糧事情等ト共ニ詳細ニ亙ル數
字的ナ說明ガアリマシタガ、玆ニ御報告申
上ゲルコトヲ差控ヘマスコトハ甚ダ遺憾ト
スル所デアリマス
第三點ハ肥料ニ關スルコトデアリマス、
食糧增產上、肥料、勞力、資材ハ最モ必要
トスル所デアリマスルガ、就中來年度ノ肥
料ガ如何ナル程度ニ配給サルルヤ、農村ハ
今カラ之ニ對スル所ノ心構ヘガ必要デアル
ノデ、此ノ際配給肥料ノ數量ヲ明確ニセラ
レタイ、尙ホ肥料ノ一元的配給、又ハ單肥
配給、是ハ農村ノ輿論デアル、殊ニ配給ニ
當リ從來ノヤウニ、產業組合ト商業組合ト
ガ實績爭ヒノ爲ニ、我カ五百六十万戶ノ
農家ニ不便ト苦痛ヲ與ヘルガ如キコトハ絕
對ニ避ケナケレバナラヌ、之ニ對スル政府
ノ方針ヲ承リタイトノ質疑ガアリマシタ、
之ニ對シマシテハ政府ハ、肥料配給ノ數字
ニ付テ申上ゲルコトハ差控ヘタイガ、前年
ト比較シテ硫酸「アンモニア」ハ八〇%デア
リ、過燐酸石灰ハ五〇%デアリ、加里鹽
ハ殆ド配給出來ヌ、隨テ無畜農家ノ解消、
所謂有畜農業ニ依ツテ、勞力ノ節約ト自給
肥料ノ增產ニ依リ食糧ノ確保ヲシテ貰ハナ
ケレバナラヌ、但シ將來ノ肥料計畫トシテ
ハ、今囘ノ赫々タル戰果ニ依リマシテ、南洋
方面ヨリ燐礦石ガ新タニ入リ得ル見透シモ
付イタノデ、過燐酸石灰ノ如キハ相當殖ヤ
シ得ルト思フ、又硫酸「アンモニア」ノ增產
モ、燃料等ノ關係ニ於テ段々明ルクナツテ
參ツタノデ、今暫ク我慢シテ貰ヘバ、必ズ
農村ニ必要量ノ肥料ヲ供給スルコトガ出來
ルトノ最モ力强キ答辯ガアリマシタ、肥料
ノ一元的配給及ビ單肥配給ニ付キマシテハ、
成ベク實情ニ卽シ、農村ノ希望ニ副フヤウ
努メタイトノコトデアリマシタ
第四點ハ、米麥ノ政府買入又ハ賣渡價格
ノ決定方法ハ、生產者及ビ消費者双方ニ取
リマシテ重大ナル問題デアリマス、農民ハ
時局ヲ認識シ、何等ノ不平不滿モナク一生
懸命ニ增產ニ努力シテ居リマス、ソコデ農
村ノ生產スル所ノ生產物ニ對シテハ、少ク
トモ生產費ヲ低下セズ、且ツ此ノ勞ニ酬ユ
ルダケノ價格ニシテ貰ハナケレバナラヌ、
然ルニ現在ノ麥ノ價格ハ生產費以下ニナツ
テ居ルト思フガ、是等ノ價格ハ如何ニシテ
決定スルカトノ質問ガアリマシタガ、之三
對シマシテ政府ハ、米ニ付テハ從來ノ生產
費及ビ家計費ヲ調査シ、所要ノ改善ヲ加ヘ、
之ニ物價其ノ他ノ經濟事情ヲ參酌シテ決定
シ、特ニ買入價格ニ付テハ生產費ニ更ニ投
下資本ノ利子、經營上ノ利潤等ヲ加味シ、
米麥ノ生產維持ノ見地カラ適正ナル價格ヲ
決定スル考ヘデアル、但シ買入賣渡價格ニ
付キマシテ適正ノ基準方法ヲ決定シ得ルマ
デハ、差當リ從來ノ例ニ依ツテ價格ヲ決定
スル方針デアルトノコトデアリマス、尙ホ
麥類ノ價格ニ對シマシテハ、政府ハ、大麥、
稞麥ノ現在ノ價格ハ、色々ノ事情カラ考ヘ
マシテモ比較的安イデハナイカト考ヘテ居
リマス、隨テ政府ガ買入レル場合ニ於キマ
シテハ、其ノ買入ノ操作、或ハ銘柄、或ハ
格差ノ整理等ニ依ツテ、或ル程度ノ修正ヲ
速カニ致シタイ積リデアルトノコトデアリ
マス、尙ホ價格ノ決定ニ付キマシテハ、食
糧管理委員會ヲ設置シテ之ニ諮問スルトノ
說明ガアリマシタ
第五點ハ、農村多年ノ要望タル米麥等ノ
國營檢査ガ實現セラレルニ至リマシタコト
ハ、洵ニ滿足スル所デアリマスルガ、政府
買上ノ便宜上、檢査ヲ政府自ラガ施行スル
ニ當リ、檢査手數料ヲ生產者ヨリ徵收シ、
農民ノ負擔トナスコトハ寧ロ此ノ際之ヲ廢
止シテ、檢査ニ要スル費用ヲ國庫ノ負擔ト
スベキデハナイカトノ質疑ニ對シマシテハ、
政府ハ、現在檢査手數料ハ生產費中ニ含マ
レテ居ルノデ、從來ヨリ高クナラヌ限度ニ
於テ全國一律ニ手數料ノ徵收ヲナスコトト
シタノデアルガ、今後價格改定等ノ際十分
檢査料ニ對シテハ考慮スルトノコトデアリ
マス
第六點ハ、甘藷、馬鈴薯ノ價格ニ付キマ
シテ、生產者ノ販賣價格ト消費者ノ購買價
格トノ間ニ餘リニモ多クノ開キガアルコト
ヲ例示セラレマシテ、此ノ儘ニ放任スル時
ハ增產ノ目的ヲ達スルコトハ困難デアルバ
カリデナク、或ハ減產ヲスルノ虞ガアルノ
デ、公定價格ヲ改定スルカ、或ハ奬勵金ヲ
出スカ、何等カノ方法ヲ講ジナケレバナラ
ヌデハナイカトノ質疑ニ對シマシテ、政府
ハ、國家目的達成ノ爲ニハ甘藷、馬鈴薯ノ
統制ハ必要デアル、生產者ノ販賣價格ト消
費者ノ購買價格トノ間ノ開キガアルノハ、
運賃其ノ他腐敗率ヲ見込ンダ爲メデアツテ、
統制會社其ノモノノ手數料ハ決シテ高クハ
ナイ、而シテ從來生產者ガ賣ツテ居タ値段
ヨリモ安クナラヌコト、尙ホ消費者ガ從來
買ツテ居タ値段ヨリモ高クナラヌコトヲ原
則トシテ決メタノデアルガ、地方的ニハ不
合理ノ點モアルヤモ知レヌカラ、是等ノ點
ニ付テハ今後十分考究ノ上、本年秋ニ於テ
改正スベキ點ガアレバ改正スルニ吝カデナ
イトノ答辯ガアリマシタ(拍手)
第七點ハ、國民ノ食糧上米麥ニ次グ最モ
大切ト唱ヘラレテ居ル所ノ味噌、醬油ノ問
題ニマデ質問ガ及ンダノデアリマス、國民
健康ノ增進ヲ圖ルコトハ時局下最モ重大ナ
コトデアリマスガ、政府ハ最近國民大衆ノ
榮養上缺クベカラザル味噌、醬油ノ二割制
限ヲナサレマシタ、然ルニ之ニ要スル原料
大豆ハ必ズシモ多クヲ要セヌト思フ、國民
ハ如何ナル艱難辛苦デモ忍ンデ行キマス
ガ、セメテ大衆ノ食糧品デアル所ノ味噌汁
位ハ餘リ制限セヌヤウニシテハ如何(拍手)
斯ウ云フ質問ガアリマシタ、之ニ對シマシ
テ政府ハ、大豆ノ國內生產及ビ滿洲方面ヨ
リノ輸入大豆ノ狀況ヨリ、最低限度ノ味噌ヲ
國民ニ公正ニ供給スル爲メ、配給統制規則
ヲ制定シタノデアルガ、國內ノ增產又ハ輸
入ノ增加ヲ積極的ニ圖ツテ、成ベク多ク供給
スルヤウニ最善ノ努力ヲナストノコトデア
リマシタ
第八點ハ〓糧營〓ニ關シテノ質問デアリ
マス、今囘設立セントスル食糧營團ハ、營
利性ヲ脫シタル公共的配給機關デアルカラ、
從來ノ國策會社ニ見ルガ如ク、例ヘバ國策
會社ガ出來マスルト、或ハ生產者ニハ代金ノ
支拂ガ二箇月或ハ半年遲レテ交付サレル、
消費者ハ從來消費者ノ家庭マデ配給セラレ
テ居ツタノガ、ソレガ配給所ニ行ツテ行列
ヲナサナケレバ物一ツガ買ヘナイ、斯ウ云
フヤウナコトハ生產者、消費者ニ對シテ餘
リニ不利、不便苦痛ヲ與ヘルノデアルカラ、
是等ノ事ノナイヤウニシナケレバイカナイ、
ソレニハ非能率化、或ハ官僚化ヲ矯正シテ、
民意ニ副フヤウニシナケレバナラヌ、之二
對スル政府ノ所見如何トノ質問ガアリマシ
タガ、政府ハ、營團ノ官僚化ヲ避ケル爲ニ
ハ、營團ノ內部ニ指導訓練ノ施設ヲナサシ
メ、又ハ役職員ハ民間ノ經驗者ヲ加ヘ、其ノ
運營ヲ適正ナラシムルトノコトデアリマシタ
第九點ハ木炭ノ增產計畫ノコトデアリマ
ス、木炭ノ增產計畫ノ完遂ヲ期スルニハ、
生產シタル木炭ノ輸送ヲ確保セネバナラ
ヌ、然ルニ現在消費地ニハ木炭ガ動モスレ
バ不足ヲ來シテ居ルノニ、生產シタル山元
ニハ多量ノ木炭ガ滯荷シテ、生產者ハ搬出
ガ出來ズ、非常ナル迷惑ヲ生ジテ、是ガ爲
メ生產ニ大ナル支障ヲ來シテ居ルガ、政府ハ
之ニ對シテ如何ナル對策ガアルカトノ質問
ニ對シマシテ、政府ハ、木炭ノ輸送ニ關シ
テハ牛馬ノ利用、「ガソリン」ノ特別配給其
ノ他勤勞奉仕等ニ依ツテ、山元カラ驛マデ
ノ小運送ヲ確保シテ居リ、或ハ貨車、船舶
ニ依ル所ノ大運送ニ付テハ每月ノ運送計畫
ヲ立テ、遺憾ナキヲ期シテ居ルトノ答辯ガ
アリマシタ、尙ホ木炭ノ切符制度ヲ擴充實
施スル意圖ナキヤトノ質疑ニ對シマシテハ、
政府ヨリ、現在全國ニ對シテ約二千六百ノ
市町村ニ於テ、木炭ノ切符制度ヲ實施シテ
居ルガ、木炭配給ノ適正及ビ消費ノ節約ヲ
期スル爲メ、將來尙ホ是ガ擴充ヲナス積リ
デアルトノ答辯ガアリマシタ
最後ニ農業保險制度ノ改革及ビ農業團體
統合ノ問題デアリマス、此ノ二制度ハ今期
議會ニ必ズ提案セラルルモノト思ツタノニ、
是ガ提案ヲ見ナカツタノデ、頗ル熱心ニ質
疑ガ行ハレタノデアリマス、卽チ現行農業
保險制度ノ改革ハ農村ノ絕對的要望デアリ
マス、然ルニ是ガ根本的改革ニ付テハ何等
ノ手ヲ着ケナイノミナラズ、明年度ヨリ保
險料ノ相當率ノ引上ヲ實行スルコトニナツ
テ居リマス、甚ダシキニ至リマシテハ、保
險料ガ從來ヨリモ五倍、或ハ六倍ノ保險料
ノ引上トナツテ居ルノデアリマス、斯樣ニ
保險料ノ引上ノミヲナシ、保險制度ノ根本
的改革ヲナサナケレバ、折角設立サレタル
所ノ保險組合モ解散ノ已ムナキニ至ルデハ
ナイカ、斯樣ニ憂慮セラルルノデアル、政
0
府ハ保險制度ノ改革ヲ速カニナサナケレバ
ナラヌト思フ、然ラザレバ政府ノ企圖スル
所ノ增產計畫ノ目標ヲ達スルコトハ出來ヌ
デハナイカト云フ質問ガアリマシタ、之二
對シテ政府ハ、保險制度ノ擴充ノ必要性ハ
十分承知シテ居ル、隨テ冷害對策ニ付テモ
共濟制度ノ途ヲ開クベク本議會ニ提案シテ
アル次第デ、保險制度ノ根本的改革ニ付テ
ハ國庫ノ財政負擔ノ程度ト農業增產及ビ農
家經濟ノ安定等ヲ考ヘ、成案ヲ得次第速カ
ニ提案スル積リデアルトノ答辯デアリマシ
ク、團體統合ノ問題ニ付キマシテハ、統合
ノ必要アルコトハ論ヲ俟タナイ所デアリマ
スルガ、今議會ニ於ケル提出議案ハ〓戰目
的遂行ニ直接關係ノアルモノノミニ限定ス
ルコトニナリマシタ爲ニ、農業團體法案ノ
提出ハ之ヲ見合セタノデアル、團體統合ハ
出來ルダケ近キ機會ニ是ガ實現ヲ圖ル考ヘ
デアルトノ固イ御決心ノ答辯ガアリマシタ
此ノ外或ハ害獸、害鳥ノ爲メ每年農作物
ニ二億圓以上ノ被害ガアル、是ガ防除施設
ニ付キ熱心ナル質疑ガアリ、土地制度ニ關
スル問題、或ハ水產ノ統制、消費部門ノ統
制勞働力ノ確保、或ハ內外地米穀ノ一元
的管理、是等ノ問題ガアリマシテ、重要ナ
ル質疑應答ガアリマシタガ、是等ハ速記錄
ヲ御覽ヲ願フコトニ致シマシテ、委員會ハ
昨日質疑ヲ終了シ、直チニ討論ニ入リマシ
テ、翼贊議員同盟ヲ代表シテ岩瀨亮君、同
交會ヲ代表シテ森幸太郞君、第一控室ヲ代
表シテ野溝勝君、興亞議員同盟ヲ代表シテ
松本治一郞君ヨリ、ソレ〓〓原案ニ贊成ノ
旨ヲ述ベラレタノデアリマス、採決ノ結果、
全會一致ヲ以テ三案トモ原案通リ可決サレ
マシタ、右御報告申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=18
-
019・田子一民
○議長(田子一民君) 三案ノ第二讀會ヲ開
クニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=19
-
020・田子一民
○議長(田子一民君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ三案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=20
-
021・依光好秋
○依光好秋君 直チニ三案ノ第二讀會ヲ開
キ、第二讀會ヲ省略シテ、委員長ノ報告通
リ可決サレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=21
-
022・田子一民
○議長(田子一民君) 依光君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「里議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=22
-
023・田子一民
○議長(田子一民君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ三案ノ第二讀會ヲ開キ、議案全
部ヲ議題ト致シマス
米穀需給調節特別會計法中改正法律案
第二讀會(確定議)
木炭需給調節特別會計据置運轉資本臨
時補足ニ關スル法律案
第二讀會(確定議)
食糧管理法案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=23
-
024・田子一民
○議長(田子一民君) 別ニ御發議モアリマ
セヌ、第三讀會ヲ省略シテ、三案トモ委員
長報告通リ可決確定致シマシタ(拍手)日程
第十一、昭和十五年度第一豫備金支出ノ
件外七件承諾ヲ求ムル件ヲ議題ト致シマ
ス-賀屋大藏大臣
第十一
テ、
デアリマス、
昭和十五年度第一豫備
金支出ノ件
昭和十五年度特別會計
第一豫備金支出ノ件
昭和十五年度特別會計
豫備費支出ノ件
昭和十六年度第二豫備
金支出ノ件
昭和十六年度豫備金外
豫算外支出ノ件
昭和十六年度特別會計
第二豫備金支出ノ件
昭和十六年度特別會計
豫備金外豫算超過及豫
算外支出ノ件
至同全國四十六轉一月五日一月一日臨時
軍事費特別會計豫備費
外豫算超過支出ノ件
〔國務大臣賀屋興宣君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=24
-
025・賀屋興宣
○國務大臣(賀屋興宣君) ラレマシタ昭和十五年度第一豫備金支出ノ
件外事後承諾ヲ求ムル件七件ニ付キ大體ノ
說明ヲ申上ゲマス、昭和十五年度一般會計
第一豫備金ノ豫算額ハ三千万圓デアリマシ
內昭和十五年勅令第五百九十號ニ依リ
補充致シマシタ金額ハ二千九百二十餘万圓
今其ノ重要ナル事項ヲ申述べ
マスレバ、軍事扶助費、
小學校〓員俸給分擔金、
承諾
ムヲ求
ル
件
只今議題ニ供セ
警察費連帶支辨金、
製鐵業奬勵金等デ
アリマス
次ニ昭和十五年度ニ於テ第一豫備金ヨリ
豫算超過支出ヲ致シマシタ特別會計ハ、地
方分與稅分與金、專賣局、金資金、關東局、
陸軍造兵廠、米穀需給調節、森林火災保險、
家畜再保險、木炭需給調節、朝鮮總督府、
臺灣總督府、樺太廳、南洋廳、健康保險、
船員保險、勞働者災害扶助責任保險、簡易
生命保險及ビ郵便年金ノ十八特別會計デア
リ、又豫備費ヨリ豫算超過支出ヲ致シマシ
タモノハ、米穀需給調節、通信事業、帝國
鐵道及ビ豪灣米穀移出管理ノ四特別會計デ
アリマス
次ニ昭和十六年度一般會計第二豫備金ノ
豫算額ハ三億圓デアリマスガ、內昭和十六
年四月二十六日ヨリ同年十二月二十四日ニ
至ル間ニ於キマシテ、支出致シマシタ金額
ハ二億四千十餘万圓デアリマシテ、其ノ重
要ナル事項ハ、臨時軍事費特別會計ヘ繰入
補足、金屬類特別回收諸費、食糧增產應急
施設諸費、作付統制施設費、各種災害費、
市町村吏員臨時手當補助、臨時物資販賣價
格調整費補助、馬資源保持調整施設費等デ
アリマス、右ノ内臨時軍事費特別會計ヘ繰
入補足ノ金額ハ七千四百六十餘万圓デア
リマスガ、之ニ豫備金外ニ於テ國庫剩餘金
ヲ以テ豫算外支出ヲ致シマシタ金額一億千
八百八十万圓ヲ加ヘマスレバ、臨時軍事費
特別會計へ繰入補足ノ合計額ハ一億九千三
百四十餘万圓トナルノデアリマス、而シテ
臨時軍事費特別會計ニ於キマシテハ、昭和
十六年十月ヲ以テ其ノ豫備費ハ拂切トナリ
マシタル爲メ、同年十一月一日及ビ同年同
月五日ノ二囘ニ亙リ、右ノ歲入金ヲ以テ是
ト同額ノ豫算超過支出ヲ致シタノデアリマ
シテ、其ノ內譯ハ、陸軍省所管ニ於テ一億
六千四百六十餘万圓、海軍省所管ニ於テ二
千八百八十万圓ト相成ツテ居ルノデアリマ
ス
次ニ昭和十六年度ニ於テ第二豫備金ヲ以
テ豫算外支出ヲ致シマシタ特別會計ハ、關
東局、朝鮮總督府、臺灣總督府、樺太廳及
ビ南洋廳ノ五特別會計デアリマス、又豫備
金外ニ於テ其ノ歲入金又ハ國庫剩餘金ヲ以
テ豫算超過又ハ豫算外ノ支出ヲ致シマシタ
モノニハ、造幣局、關東局、朝鮮總督府、
臺灣總督府、樺太廳及ビ南洋廳ノ六特別會
計ガアルノデアリマス、何卒御審議ノ上
速カニ御承諾アランコトヲ希望致シマス
(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=25
-
026・田子一民
○議長(田子一民君) 各件ノ審査ヲ付託ス
ベキ委員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=26
-
027・依光好秋
○依光好秋君 日程第十一ハ政府提出日本
銀行法案外二件委員ニ併セ付託セラレンコ
トヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=27
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028・田子一民
○議長(田子一民君) 依光君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=28
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029・田子一民
○議長(田子一民君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=29
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030・依光好秋
○依光好秋君 議事日程追加ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此ノ際政府提出、國民
體力法中改正法律案、國民醫療法案、健康
保險法中改正法律案、國民健康保險法中改
正法律案、戰時災害保護法案及ビ簡易生命
保險法中改正法律案ノ六案ヲ一括議題トナ
シ、委員長ノ報告ヲ求メ、其ノ審議ヲ進メ
ラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=30
-
031・田子一民
○議長(田子一民君) 依光君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=31
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032・田子一民
○議長(田子一民君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ハ追加セラレマシタ、國民體
力法中改正法律案、國民醫療法案、健康保
險法中改正法律案、國民健康保險法中改正
法律案、戰時災害保護法案、簡易生命保險
法中改正法律案、右六案ヲ一括シテ第一讀
會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報〓ヲ求メマ
ス-紫安新九郞君
國民體力法中改正法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
國民醫療法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
健康保險法中改正法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
國民健康保險法中改正法律案(政府提
出第一讀會ノ續(委員長報〓)
戰時災害保護法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
簡易生命保險法中改正法律案(政府提
出、貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報〓書
一國民體力法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十七年二月三日
委員長紫安新九郞
衆議院議長田子一民殿
報告書
一國民醫療法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十七年二月三日
委員長紫安新九郞
衆議院議長田子一民殿
報告書
一健康保險法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十七年二月三日
委員長紫安新九郞
衆議院議長田子一民殿
報〓書
一國民健康保險法中改正法律案(政府提
出
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十七年二月三日
委員長紫安新九郞
衆議院議長田子一民殿
報〓書
一戰時災害保護法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十七年二月三日
委員長紫安新九郞
衆議院議長田子一民殿
報告書
一簡易生命保險法中改正法律案(政府提
田、貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十七年二月三日
委員長紫安新九郞
衆議院議長田子一民殿発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=32
-
033・田子一民
○議長(田子一民君) 只今三笠宮殿下御退
場アラセラレマス、諸君ノ御起立ヲ願ヒマ
ス
〔總員起立敬禮〕
〔三笠宮崇仁親王殿下御退場〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=33
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034・田子一民
○議長(田子一民君) 御着席ヲ願ヒマス
〔紫安新九郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=34
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035・紫安新九郎
○紫安新九郞君 只今上程セラレマシタ國
民體力法中改正法律案外五件ニ關シ、委員
會ニ於ケル審議ノ經過及ビ結果ヲ申上ゲマ
ス、右六件ニ關スル法律案ニ於テ最モ質問
ノ集中セラレマシタモノハ國民醫療法案デ
アリマス、此ノ法案中ニ於テ最モ重要ナリ
ト認ムルモノハ、日本醫療團ニ關スル點デア
リマス、此ノ日本醫療團ハ、國民體力ノ向
上ニ關スル國策ニ卽應シ、醫療ノ普及ヲ圖
ルヲ以テ目的トシタモノデ、其ノ資本金ハ
一億圓デアリ、政府モ亦一億圓ヲ日本醫療
團ニ出資スルノデアリマス、日本醫療團ハ
政府ノ拂込ミタル出資金額ノ五倍ヲ限リ、
醫療債劵ヲ發行スルコトガ出來ルノデアリ
マス、而シテ政府ハ醫療債劵ノ元本ノ償還
及ビ利息ノ支拂ヲ保證スルノデアリマス
右申上ゲマシタ日本醫療團ニ關ズル問題
ニ付キマシテハ、多數ノ委員諸君ヨリ次ノ
如キ質疑ガナサレタノデアリマス、卽チ日
本醫療團ハドウ云フ目的ヲ以テ之ヲ設立ス
ルノデアルカ、又日本醫療團ハ他ノ病院、診
療所等ヲ統合スル方針デアルト聞イテ居ル
ガ、如何ナルモノノ經營スル病院、診療所
等ヲ統合スル方針デアルカ、日本醫療團ノ
經營方針ハ收支相償フモノト考ヘテ居ル
カ、又日本醫療團ノ設立ハ開業醫ニ相當ノ
壓迫ヲ與ヘルト思フガ如何、尙ホ日本醫療
團ハ醫療ヲ官僚化スル虞ガアルト思フガ、
政府ノ之ニ對スル所見如何ト云フガ如キ、
各方面ニ亙リ、又各角度ヨリ盛ンナル質疑
及ビ論議ガ重ネラレマシテ、之ニ對シテ政
府當局ヨリソレ〓〓答辯ガアリマシタガ、
委員長ニ於キマシテハ、日本醫療團ノ全貌
ヲ明カニスル爲ニ、更ニ是等ノ質疑ヲ取纏
メマシテ、總括的ニ、第一ニ日本醫療團ノ
目的如何、第二ニ其ノ業務ハ如何、第三ニ
統合ノ方法ハ如何、第四ニ其ノ經營方針ハ
如何、第五ニ開業醫トノ關係ハ如何、第六
ニ總裁以下役員ノ選任等ニ關シ政府ノ方針
如何ヲ質シマシタ所、小泉厚生大臣ヨリ次
ノ如キ答辯ガアツタノデアリマス
卽チ日本醫療團ハ、第一ニ其ノ目的ハ結
核ノ撲滅ト、無醫地域ノ解消トヲ目標トシ、
併セテ醫療內容ノ向上ヲ圖ラントスルニア
ルト云フノデアリマス、第二ニ其ノ業務ニ
關シマシテハ、日本醫療團ハ前記ノ目的ヲ
達成スル爲ニ、先ヅ結核控養所十万床ヲ目
標トシテ、新タニ八万床ヲ全國必要ナル地
ニ急速ニ新設シテ、是ガ經營ニ當ルト共
ニ、無醫地域ニ對シテハ其ノ急速ナル解消
ヲ目指シ、必要ナル診療所及ビ地方綜合病
院ヲ新設シ、之ヲ經營スルノデアルガ、本
團ニ於テハ單ニ是等新設ノ病院、診療所ヲ
經營スルノミニ止マラズ、旣存ノ醫療機關
ヲモ或ル程度ハ本團ノ經營ニ移シ、中央地
方ヲ通ジタル最小限度ノ醫療組織體系ヲモ
整偏シテ、之ニ依ツテ醫療內容ノ向上ヲ圖
ラントスルノデアルト云フノデアリマス、
隨テ旣存ノ醫療機關ヲ給合スル場合ニハ、
豫メ其ノ範圍、種類等ヲ限定シ、之ニ該當
スルモノハ必ズ其ノ經營ヲ移管セントスル
モノデハナイ、前述ノ組織整備上必要ト認
メラレルモノノミヲ統合スル方針デアル、尙
ホ醫療ニ關スル社會事業施設ノ如キ特殊性
ヲ有スル醫療機關ハ、之ヲ本團ニ統合スル
考ヘハナイト云フノデアリマス、第三ニ統
合ノ方法トシテハ、買收、借受、現物出資
等ノ途ヲ考ヘテ居ルノデアツテ、統合ニ付
テハ何處マデモ當事者間ノ協議ニ依リ、圓
滿ニ之ヲ行ハシムル方針デアル、體系整備
ノ爲ニドウシテモ統合ノ必要ガアル場合ニ
當リ、當事者間ノ協議ノ調ハザル場合ニ於
テハ、主務大臣ハ官民合同ノ寒査機關ノ審
議ヲ經テ、其ノ決定ヲナス途ヲ開イテアル
ト云フノデアリマス、第四ニ日本醫療團ノ
經營方針ハ、一般醫療ノ部門ト、結核ノ部
門トニ分ツテ考ヘテ居ルト云フコトデアリ
マス、結核ノ部門ニ付テハ、其ノ性質カラ
考ヘテ收支相償フコトヲ期待スルコトヲ得
ナイノデ、之ニ對シテハ、政府ニ於テ每年度
必要ナル補助ヲナスコトトナツテ居ルト云
フノデアリマス、此ノ點ニ付キマシテハ、
大藏當局ヨリモ同一ノ趣旨ノ答辯ガアツタ
ノデアリマス、第五ニ日本醫療團ト開業醫
トノ關係ニ付テハ、將來醫療團ハ開業醫ニ
協力シ、其ノ發達ニ寄與セシムル方針デア
ルト云フノデアリマス、第六ニ役員ノ選任
方針ニ付テハ、醫界ノ全體ニ信望モアリ、
且ツ本團ノ事業ノ運營ノ點カラモ最モ適任
者ヲ、視野ヲ廣クシテ簡拔致シタイト考ヘ
テ居ル、本團ノ設立ガ醫療ノ官僚化ヲ招來
スルコトノナイヤウニ十分注意シテ行ク方
針デアルト云フノデアリマス
斯クシテ討論ニ入ルニ際シマシテ、委員
長ハ更ニ斯樣ナ質問ヲ致シマシタ、一、府
縣醫師會長ハ地方長官ガ之ヲ推薦シ、厚生
大臣之ヲ任命スルコト、此ノコトハ勅令制
定ノ際考慮セラレタキコト、二、醫療團ガ
地方ニ診療所ヲ設クル場合ハ、其ノ地區ニ
於ケル醫師會ト協調シ、成ベク地方ノ實情
ニ副フヤウ醫師會ノ希望ヲ容ルルコト、右
ノ質問ニ對シテ、小泉厚生大臣ヨリ斯樣ナ
答辯ガアリマシタ、一、道府縣醫師會長ノ
任命方法ニ關スル問題ニ付キマシテハ、勅
令制定ノ際篤ト考慮致シマス、二、日本醫療
團ノ地方診療所設立ノ際ニ於ケル道府縣醫
師會トノ協調ニ付テハ、御希望ノ通リ措置
セシムル考ヘデアリマスト云フノデアリマ
ス
以上日本醫療團ノ重要ナル問題ニ關シマ
シテハ、厚生大臣ヨリ明確ナル答辯ガアツ
タノデアリマス、以上ハ質疑應答ノ中ノ重
要ナル點ヲ拾ヒ上ゲテ申上ゲタノデアリマ
ス、斯ク致シマシテ、質疑ヲ終ツテ討論
ニ入リ、國民體力法中改正法律案外五件ニ
對シ、中村梅吉君ハ翼贊議員同盟ヲ、松尾
孝之君ハ同交會ヲ、永江一夫君ハ第一控室
ヲ、西尾末廣君ハ興亞議員同盟ヲ、何レモ
其ノ所屬會派ヲ代表シテ、ソレ〓〓贊成ノ
意見ガ開陳セラレマシタ、仍テ此ノ六ツノ
法律案全部ヲ一括致シマシテ採決致シマシ
タ所、全會一致原案ヲ可決致シマシタ、
右御報告申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=35
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036・田子一民
○議長(田子一民君) 六案ノ第二讀會ヲ開
クニ御異議アリマセヌカ
〔「里議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=36
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037・田子一民
○議長(田子一民君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ六案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=37
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038・依光好秋
○依光好秋君 直チニ六案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報〓ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=38
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039・田子一民
○議長(田子一民君) 依光君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=39
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040・田子一民
○議長(田子一民君) 御里議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ六案ノ第二讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
國民體力法中改正法律案
第二讀會(確定議)
國民醫療法案第二讀會(確定議)
健康保險法中改正法律案
第二讀會(確定議)
國民健康保險法中改正法律案
第二讀會(確定議)
戰時災害保護法案第二讀會(確定議)
簡易生命保險法中改正法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=40
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041・田子一民
○議長(田子一民君) 別ニ御發言モアリマ
セヌ、第三讀會ヲ省略シテ、六案トモ委員
長報告通リ可決確定致シマシタ(拍手)是ニ
テ議事日程ハ議了致シマシタ、次會ノ議事
日程ハ公報ヲ以テ通知致シマス、本日ハ是
ニテ散會致シマス
午後四時二十四分散會
衆議院議事速記錄第八號中正誤
頁段行誤正
一二二四二九三千万圓ヲ三千万圓ニ
六千万圓ニ六千万圓ヲ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X00919420203&spkNum=41
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