1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十七年二月五日(木曜日)
午後一時十三分開議
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議事日程 第九號
昭和十七年二月五日
午後一時開議
第一 大東亞戰爭の呼稱を定めたるに伴ふ各法律中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二 日本銀行法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三 戰時金融金庫法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四 臨時資金調整法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=0
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001・田子一民
○議長(田子一民君) 諸般ノ報告ヲ致サセ
マス
〔書記官朗讀〕
一本日貴族院ヨリ受領シタル政府提出案左
ノ如シ
戰時ニ於ケル領事官ノ裁判ノ特例ニ關ス
ル法律案
戰時民事特別法案
戰時刑事特別法案
裁判所構成法戰時特例案
〔左ノ報〓ハ朗讀ヲ經サルモ參照ノ爲
玆ニ揭載ス〕
一議員ヨリ提出セラレタル議案左ノ如シ
横山神社昇格ニ關スル建議業
昭和十七年二月六日
衆議院議事速記錄第十號
提出者熊谷五右衞門君
戰時壯丁鍊成局設置ニ關スル建議案
提出者
藤生安太郞君石坂繁君
泉國三郞君岡田喜久治君
信太儀右衞門君末松偕一郞君
道家齊一郞君守屋榮夫君
三浦虎雄君吉植庄亮君
小池四郞君深澤豐太郞君
農業保險制度改正ニ關スル建設案
提出者
助川啓四郞君岡田喜久治君
吉植庄亮君喜多壯一郞君
西川貞一君三宅正一君
成島勇君高橋守平君
石井德久次君平野力三君
杉山元治郞君長野長廣君
行吉角治君中田儀直君
小串〓一君松浦周太郞君
森幸太郞君小山邦太郞君
高橋熊次郞君高橋圓三郞君
橫川重次君三善信房君
馬岡次郞君山田六郞君
野溝勝君多田漕長君
森田重次郞君
崇神天皇ヲ奉祀スル神宮御創建ニ關スル
建議案
提出者
田中万逸君松尾四郞君
福井甚三君
治療師法制定ニ關スル建議案
提出者
守屋榮夫君猪野毛利榮君
濱野徹太郞君坂東幸太郞君
東〓神社ヲ別格官幣社ニ昇格ニ關スル建
議案
提出者
守屋榮夫君猪野毛利榮君
助川啓四郞君羽田武嗣郞君
上田孝吉君八角三郞君
簡牛凢夫君
乃木神社ヲ別格官幣社ニ昇格ニ關スル建
議案
提出者
守屋榮夫君猪野毛利榮君
助川啓四郞君羽田武嗣郞君
上田孝吉君八角三郞君
簡牛凢夫君
渡良瀨川流域砂防工事施行ニ關スル建議
案
提出者
森下國雄君靑木精一君
佐藤洋之助君木村淺七君
宇賀四郞君山本粂吉君
小平重吉君木暮武太夫君
吉植庄亮君成島勇君
高田耘平君川崎巳之太郞君
最上政三君
水道營團設立ニ關スル建議案
提出者
小笠原三九郞君八角三郞君
佐藤洋之助君
(以上二月三日提出)
一去三日東條內閣總理大臣ヨリ左ノ通發令
アリタル旨ノ通牒ヲ受領セリ
技衛院總裁子爵井上匡四郞
技術院次長和田小六
第七十九囘帝國議會政府委員被仰付
一去三日議長ニ於テ辭任ヲ許可シタル常任
委員左ノ如シ
第四部選出請願委員木村作次郞君
一去三日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如シ
民法中改正法律案(政府提出、貴族院送
付)外一件委員
辭任川副隆君補關原夫次郞君
一昨四日常任委員補關選擧ノ結果左ノ如シ
第四部選出
請願委員山川賴三郞君(木村作次郞
君補闘)
-昨四日ニ於ケル特別委員ノ異動左ノ如シ
米穀需給調節特別會計法中改正法律案
(政府提出)委員
辭任北原阿智之助君補關長野長廣君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=1
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002・田子一民
○議長(田子一民君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス-御諮リ致シマス、請願委員長、所得
稅法中改正法律案外十七件委員長、郵便法
中改正法律案外三件委員長及ビ民法中改正
法律案外一件委員長ヨリ、ソレ〓〓本日本
會議中委員會ヲ開キタイトノ申出ガアリマ
ス、何レモ之ヲ許可スルニ御里議アリマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=2
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003・田子一民
○議長(田子一民君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ之ヲ許可致シマス-日程第一、
大東亞戰爭ノ呼稱ヲ定メタルニ伴フ各法律
中改正法律案ノ第一讀會ヲ開キマス-森
山法制局長官
第大東亞戰爭ノ呼稱ヲ定メタルニ
伴フ各法律中改正法律案(政府提出、
貴族院送付)第一讀會
大東亞戰爭ノ呼稱ヲ定メタルニ伴フ各
法律中改正法律案
勅令ヲ以テ別段ノ定ヲ爲シタル場合ヲ除
クノ外各法律中「支那事變」ヲ「大東亞戰
爭」ニ改ム
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔政府委員森山銳一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=3
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004・森山鋭一
○政府委員(森山銳一君) 只今議題トナリ
マシタ大東亞戰爭ノ呼稱ヲ定メタルニ伴フ
各法律中改正法律案ニ付キマシテ提案ノ理
由ヲ御發明申上ゲマス、支那事變ハ幾多ノ
段階ヲ經マシテ、遂ニ米英兩國ニ對スル宣
戰ノ大詔渙發トナリ、今日ノ事態ニマデ發展
シテ參リマシタ次第デアリマスガ、政府ハ
時局ガ新タナル段階ニ入リマシタノヲ機ト
シテ、今次ノ對米英戰爭ハ支那事變ヲモ含
メ大東亞戰爭ト呼稱スル旨ヲ定メ、聖戰ノ
大目的ガ大東亞新秩序ノ建設ニ在ルコトヲ
直截ニ表現スルコトト致シタノデアリマス、
支那事變勃發以來御制定ヲ仰ギマシタ法
律ノ中ニ、支那事變ナル呼稱ヲ揭ゲラレマ
シタモノガ三十有餘ニ上ツテ居ルノデアリ
マスガ、大東亞戰爭ナル呼稱ガ定マリマシ
タニ伴ヒマシテ、是等現存ノ諸法律ニ用ヒ
ラレテ居リマス「支那事變」ナル字句ヲ「大東
亞戰爭」ト改メマシテ、法文上ノ措辭ヲ名實
一致セシメ、規定ヲ明確ナラシムルヲ適當
ト考へ、本法律案ヲ提出致シタ次第デアリ
マス、何卒速カニ御審議ノ上御協賛ヲ與ヘ
ラレンコトヲ切望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=4
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005・依光好秋
○依光好秋君 本案ニ對スル質疑ハ之ヲ省
略セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=5
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006・田子一民
○議長(田子一民君) 依光君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=6
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007・田子一民
○議長(田子一民君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ、本案ノ審
査ヲ付託スベキ委員ノ選擧ニ付テ御諮リ致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=7
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008・依光好秋
○依光好秋君 本案ハ政府提出恩給法中改
正法律案ノ委員ニ併セ付託セラレンコトヲ
望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=8
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009・田子一民
○議長(田子一民君) 依光君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=9
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010・田子一民
○議長(田子一民君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ-日程第
二乃至第四ハ同一委員ニ付託シタル議案デ
アリマスカラ、一括議題トナスニ御異議ア
リマセヌカ
〔「異議ナシト」呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=10
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011・田子一民
○議長(田子一民君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程第二、日本銀行法案、日程第
三、戰時金融金庫法案、日程第四、臨時資
金調整法中改正法律案、右三案ヲ一括シテ
第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報〓ヲ
求メマス-委員長板谷順助君
第二日本銀行法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第三戰時金融金庫法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第四臨時資金調整法中改正法律案
(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一日本銀行法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十七年二月四日
委員長板谷順助
衆議院議長田子一民殿
報告書
一戰時金融金庫法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十七年二月四日
委員長板谷順助
衆議院議長田子一民殿
報〓書
一臨時資金調整法中改正法律案(政府提
〓
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十七年二月四日
委員長板谷順助
衆議院議長田子一民殿
〔板谷順助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=11
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012・板谷順助
○板谷順助君 只今議題トナリマシタル日
本銀行法案、戰時金融金庫法案、臨時資金調
整法中改正法律案ニ對スル委員會ニ於ケル
審議ノ經過竝ニ結果ヲ御報告申上ゲマス
先ヅ政府案ノ大要ニ付テ說明ヲ致シマス、
今囘改正サレントスル日本銀行法案ハ、現
在ノ日本銀行條例竝ニ兌換銀行條例ヲ廢シ
マシテ、新タニ日本銀行法ヲ設ケ、同行及
ビ發劵制度ニ大改革ヲ行ハントスルモノデ
アリマシテ、其ノ目的トスル所ハ、大東亞
共榮圈ヲ確立スルト共ニ、是ガ維持發展ヲ
期サンガ爲ニハ、先ヅ以テ中央發劵銀行タ
ル日本銀行ガ政府ト一體的關係ニ立チ、國
策ノ嚮フ所ニ卽シテ通貨ノ調節、金融ノ調
整及ビ信用制度ノ保持育成ノ責ニ任ジ、進
ンデハ大東亞共榮圈全體ノ金融ノ中心機關
タルベキ任務ヲ果シ得ルヤウ其ノ體制ヲ整
備セントスルモノデアリマス
其ノ改正ノ主ナル點ヲ申上ゲマスレバ、
第一ハ日本銀行ノ株式組織ヲ根本的ニ改メ
マシテ、之ヲ强度ノ公的性質ヲ有スル特殊
ノ法人組織トスル點デアリマス、第二ハ、
現在日本銀行ノ資本金六千万圓ノ中、拂込
資本額四千五百万圓ニ、更ニ政府ガ五千五
百万圓ヲ出資致シマシテ、資本金ヲ一億圓
トスル點デアリマス、第三ハ、日本銀行ノ
運營ハ國家目的ノ達成ヲ主眼トシテ行ハル
ベキモノデアリマスカラ、同行役員ハ總テ
政府ニ於テ任免セントスル點デアリマス、
第四ハ、現在日本銀行ハ制度上金融調整ヲ
中心トシタル建前トナツテ居ツタノデアリ
マスルガ、其ノ行フ業ヲ擴充致シマシテ、
產業金融、其ノ他我ガ國全般ノ通貨金融ノ
調節ニ當ルト共ニ、更ニ進ンデハ今後廣ク
大東亞共榮圈內ノ金融ノ中心機關タルノ職
責ヲ負ハントスル點デアリマス、第五ハ
日本銀行劵發行ニ關シ新制度ヲ採用シテ、
管理通貨制度ヲ基礎トスル恆久的ナル新發
劵制度ヲ設ケントスル點デアリマス、第六
ハ、日本銀行ハ專ラ國家目的ノ達成ヲ使命
トシテ運營セラルベキモノデアリマスルカ
ラ、同行ニハ出資者總會ヲ置カザルコトト
スルト共ニ、政府以外ノ出資者ニ對シ年四
分ノ配當ヲ保證スルコトトシ、他面剩餘金
ヨリ出資者ニ對スル年五分ヲ超エザル配當
及ビ所定ノ積立金ヲ引去リタル殘餘ハ、之
ヲ擧ゲテ國庫ニ納付セシメルコトトシタル
點デアリマス、第七ハ、日本銀行ヲ公的機
關ニ改編スルニ伴ヒマシテ、國家ト同行ト
ノ一體的關係ヲ强化シ、其ノ連繫ヲ緊密ナ
ラシメル爲ニ、同行ニ對スル政府ノ監督制
度ニ付キ所要ノ改正ヲ行ヒ、且ツ日本銀行
制度ノ內容ヲ綜合的明確ニ諸法規ノ統合整
理ヲ行フコトト致シタ點デアリマス以上ガ
改正ノ主ナル點デアリマシテ、其ノ結果今
後國家ハ日本銀行ニ對シテ無限ノ援助ヲ與
フルコトトナリ、隨テ信用ノ基礎ハ愈、一部
固トナリ、新事態ニ卽應スベキ中央發劵銀
行トナルモノト確信スルト云フコトガ、大
藏大臣ノ說明セラレタル點デアルノデアリ
マス
次ニ戰時金融金庫法案ニ付テ政府案ノ大
要ヲ說明致シマス、此ノ法案ハ戰時經濟確
立ノ爲ニ、我ガ國產業ニ要請セラレテ居リ
マスル金融ハ、一般金融機關等ノ活動竝ニ
融資命令等ノ發動ニ依リマシテ、兎モ角モ
供給セラレテ參ツタノデアリマスルガ、大
東亞戰爭ノ進展ニ伴ヒマシテ生產ノ重點的
擴充、產業再編成及ビ重要物資ノ貯藏等ヲ
遂行致シマスル爲ニハ、從來ノ金融機關ヨ
リ調達ヲ受クルコトガ困難ナルモノニ供給
ノ途ヲ開キ、併セテ有價證劵ノ市價安定ヲ
圖ルヲ目的トセントスルモノデアリマス、
而シテ本法案ノ主ナル點ヲ申上ゲマスルト、
第一、本金庫ノ資本金ハ三億圓トシ、內政
府ハ二億圓以內ニ於テ出資シ得ルコトトシ、
殘リハ民間ノ出資ニ俟テ、更ニ政府ノ認可
ヲ受ケテ增資シ得ル點デアリマス、又本金
庫ノ役員ハ總テ政府ガ之ヲ任命シ、評議員
ニハ關係官吏及ビ民間關係者ヲ之ニ任命致
シマシテ、業務ニ關スル重要ナル事項ニ付
テハ總裁ノ諮問ニ應ゼシムルコトト致シ、
運營上各方面トノ連絡ヲ十分ニ保持セシメ
タイト云フ點デアリマス、第二ハ、業務ニ
付テハ國家緊要產業ヲ含ムモノ、維持ヲ必
要トスル未動遊休設備ヲ保有スルモノ、國
家ノ必要ニ應ジテ重要物資ヲ貯藏シ、ヌハ
事業ノ整備ヲナスモノ等デゴザイマシテ
從來ノ普通ノ金融方法ヲ以テシテハ、其ノ
必要ナル資金ノ供給ヲ受クルコト困難ナル
モノニ對スル投資、又ハ融資竝ニ市價安定
ノ爲ニスル有價證劵ノ賣買保有ヲ行ハント
スル點デアリマス、第三ニ、本金庫ノ業務
ヲ遂行致シマスル爲ニハ、相當多額ノ資金
ヲ必要ト致シマスノデ、其ノ調達ハ主トシ
テ債劵ノ發行ニ依ルコトト致シマシテ、拂込
資本金額ノ十倍ヲ限リ戰時金融債劵ヲ發行
シ得ルコトトシ、又政府ハ其ノ債劵ノ元本
ノ償還及ビ利息ノ支拂ラ保證シ得ルコトト
致シマシタル點デアリマス、第四ニ、本金
庫ハ國家的必要ニ應ジテ、囘收ノ確實性必ズ
シモ明確ナラザル投資融資ヲ行フモノデア
リマスカラ、損失ガ生ジタル場合ニモ政府
ハ之ヲ補塡シテ、民間ノ出資ニ對シ年五分
ノ配當ヲナシ得ルヤウ必要ナル補給金ヲ交
付セントスル點デアリマス、第五ニ、昨年
設立セラレマシタル日本協同證劵株式會社
ノ業務ハ本金庫ニ統合致シマシテ、市價安
定ノ爲ニスル有價證劵ノ賣買保有ハ、之ヲ
戰時金融金庫ニ於テ行フコトトスル點デア
リマス
次ニ臨時資金調整法中改正法律案ニ付テ
政府案ノ大要ヲ說明致シマス、改正ノ第一
點ハ、戰時金融金庫ヲ本法第二條ノ金融機
關ノ中ニ加ヘントスル點デアリマス
第二ハ、本法ニ依ル興業債劵ノ發行限度ヲ、
二十億圓ヨリ五十億圓ニ擴張スルト共ニ、右
債券ニ對スル政府ノ元利支拂保證ノ限度ヲ
撤廢セントスル點デアリマス、第三ハ、商
工債劵ノ發行限度ヲ擴張シ、五千万圓ヲ限
リ商工組合中央金庫法第三十一條ノ制限ヲ
超エテ、之ガ發行ヲナシ得ルコトトナサン
トスル點デアリマス、第四ハ、土地其ノ他ノ
モノヲ收用セラレ又賣却シタル者等ガ、其
ノ代償トシテ受ケル金錢ノ處分ニ付テ必要
ナル命令、卽チ國債等ノ有價證劵ノ購入保有
ヲ命ジ得ルノ途ヲ開カントスル點デアリマ
ス、第五ハ、貯蓄債劵ノ發行限度ヲ十億圓
ヨリ二十億圓ニ、報國債劵ノ發行限度ヲ五
億圓ヨリ十五億圓ニ擴張スルト共ニ、貯蓄
債劵ノ劵面金額ヲ引上ゲ、報國債劵ノ割增
金ノ附與囘數ニ關スル制限ヲ撤廢セントス
ル點デアリマス
以上右三案ハ何レモ戰時金融トシテ重要
案件デゴザイマスノデ、委員會ヲ開クコト
十囘、愼重審議、質疑應答ガ行ハレタノデア
リマスガ、詳細ハ速記錄ヲ御覽ヲ願フコト
ト致シマシテ、其ノ中主ナル點ヲ御紹介致
シマス
先ヅ第一ハ今議會ニ提出セラレタル法案
ハ、總テ戰爭遂行上必要ナルモノニ限ラレ
テ居ルガ、本案ノ如キ最モ愼重ニ〓究ヲ要
スルモノガ、果シテ今議會ニ提出スル程急
速ヲ要スルモノデアルカトノ質問デアリマ
スガ、之ニ對シマシテ政府ノ答辯ハ、現在
ノ日本銀行ハ日本銀行條例、及ビ兌換銀行
劵條例ヲ基本法トシテ居リマスガ、何レモ
其ノ沿革ハ極メテ古ク、例ヘバ其ノ業務ニ
關スル制度ハ商業金融ヲ中心トスル建前ヲ
執リ、表面上產業金融ニ關與シタリ、外國
爲替ノ賣買ヲ行ツタリ、或ハ信用制度ノ保
持育成ニ乘出スコトガ出來ズ、發劵制度亦
現在デハ不合理トナツタ金本位制度ヲ建前
トシテ居リマス爲メ、全面的ニ國家的ノ
要求ニ副ハヌ點ガ多ク、殊ニ今後同行ガ
大東亞共榮圈內金融ノ中心機關トシテ他國
ヲ指導シテ行ク上ニ於テ少カラズ障碍トナ
ルノミナラズ、今後我ガ國經濟ヲ愈〓綜合的、
計畫的ニ運營致ス必要ニ迫ラレテ居リマス
今日、我ガ國通貨及ビ金融制度ノ中樞タル
日本銀行制度ノ改正ハ、正ニ緊要ノコトデ
アルト考ヘテ提出スルニ至ツタノデアルト
云フ說明ガアリマシタ
次ニ日本銀行ノ組織、業務、發劵制度ニ
分ツテ主ナル點ヲ御報〓申上ゲマス、日本
銀行ハ現在ノ組織デ別ニ行詰ツテ居ルトモ
考ヘナイガ、之ヲ公的組織トスル理由ハ何
處ニアルカ、又木案ノ如ク公的組織トスル
位ナラバ、更ニ一步ヲ進メ之ヲ國有組織ト
スレバ宜イデハナイカ、更ニ又公的組織ト
スル以上解散ハアリ得ヌ筈デアルガ、之ヲ
豫定シテ居ルカノ如キ規定ヲ設ケタコトハ
如何ナル理由ニ依ルカトノ質問ガアリマシ
タガ、之ニ對シテ政府ハ、日本銀行ハ現在
一種ノ營利法人デアル爲メ金融界全體ノ爲
ニ乘出サネバナラヌト云フ時、其ノ出足ガ
拘束サレルコトヲ免レナイ、然ルニ日本銀
行ノ使命、職能ハ今日根本的ニ一變シテ居
ルカラ、自己責任ノ原則ニ立ツ株式組織ハ
適當デハナク、損失アル場合ハ國家ガ終局
ニ於テ責任ヲ負ヒ、他面同行ノ利益ハ國家
ヨリ與ヘラレタル特權ニ基クモノガ多イカ
六、是ハ原則トシテ國家ニ歸屬セシムベキ
モノデアル等ノ理由カラ、本案ノ如キ組織
トシタノデアル、サレバト言ツテ之ヲ全ク
國有組織トスル必要ハナイノデ、今日最モ
必要ナコトハ、總テノ資本、勞力ガ國家目的
ニ副フヤウニ働クト云フコトデアルカラ、
本案ノ如キ謂ハバ中間的形態ヲ認メルコト
ハ有意義ノモノト考ヘル、又解散ニ關スル
規定ヲ置イタコトハ、同行ガ國家ヨリ獨立
シタル法人デアルカラ、一應法律上ノ體制
ヲ整ヘル爲デアルト云フ答辯デアツタノデ
アリマス
次ニ最モ重要ナル質問ハ、現在ノ日本銀
行ハ、中央銀行トシテ政府ノ財政ヨリ獨立
シタル存在デアリ、其ノ使命ハ純然タル銀
行トシテノ使命ニ留マツテ居タガ、今後日
本銀行ハ政府ト表裏一體ノ關係ニ立ツテ運
營セラレ、多分ニ政治性ガ加味セラルルコ
トニナルト、所謂惡性「インフレーション」ヲ
惹起スル虞ナキヤト云フ質問ガアリマシタ
ガ、之ニ對スル政府ノ答辯ハ、日本銀行ハ
我ガ國通貨金融制度ノ中核トシテ、政府ト
密接ナ關係ヲ保ツテ運營セラレネバナラナ
イコトハ、今後益〓必要ナコトデアツテ、日
本銀行ガ政府ト一體トナツテ、政府ノ財政
ヲ賄フコトト、惡性「インフレーション」ヲ惹
起スルカ否カト云フコトハ別問題デアル、
今日金融竝ニ經濟ハ綜合的且ツ計畫的ニ運
營セラレ、政府ノ財政モ當然此ノ綜合的ナ
計畫ノ中ニ織込ンデ決定セラルベキモノデ
アルカラ、日本銀行ガ政府ト一體トナリ運
營セラレルコトトナツテモ、決シテ其ノ爲
ニ惡性「インフレーション」ヲ惹起スル虞レ
ハナイト云フ答辯デアリマシタ、次ニ、政
府ハ過般金融統制團體ヲ設立スルコトニ決
定シタ趣キデアルガ、金融統制〓體ノ機能
ト日本銀行トノ關係、產業統制團體トノ關
係竝ニ兩者ノ監督關係等ニ付テ質疑ガ行ハ
レタノデアリマスガ、之ニ對スル政府ノ答
辯ハ、金融統制團體ハ其ノ自律力ヲ基調ト
シテ、金融事業ニ對シ一定ノ事項ノ行爲、
不行爲等ヲ指示スルコトニ依ツテ金融事業
ノ指導給制ヲ行フモノデアリ、之ニ對シテ
銀行劵發行ノ機能ヲ有スル日本銀行ハ貸
田、市場操作等ノ所謂金融操作ヲ通ジテ金
融統制ニ任ズルモノデアルカラ、兩者ハソ
レゾレ獨自ノ領域ヲ有スルモノデアルガ、
兩者相互ニ相補フコトニ依ツテ、能ク金融
綺制ノ效果ヲ擧ゲ得ルコトトナリ、更ニ金融
統制國體ノ事業ノ一トシテ、金融ト產業ト
ノ緊密化ヲ圖リ、互ヒニ其ノ連絡ヲ密ニシ、
是等ヲ監督スル官廳相互間ニ於キマシテ
モ、一層連絡協調ヲ保ツテ行ク方針デアル
ト云フコトデアリマシタ
次ニ、日本銀行ガ產業金融ニ積極的ニ關
與スルト云フガ、是ハ如何ナル趣旨デアル
カ、又其ノ場合興業銀行、其ノ他ノ銀行ト
ノ關係ハドウナルカトノ質問ガアリマシタ
ガ、之ニ對シテ政府ハ、今日如何ナル金融
機關ノ金融モ、總テ產業金融的色彩ヲ帶ビ
ネバナラヌト考ヘルガ、產業資金其ノモノ
ハ國民ニ依ツテ蓄積セラレタル資金ニ依ツ
テ賄ハルベキモノデアツテ、日本銀行ガ產
業金融ニ關與セントスル趣旨ハ、興業銀行、
其ノ他專業金融ヲ行フ普通銀行ガ、專業資
金ニ一時手詰リヲ來スヤウナ時、親銀行タ
ル立場ニ於テ之ヲ調節スル爲トカ、或ハ資
本市場ヲ緩和スル爲メ債劵ノ買入等ノ方法
ニ依ツテ、日本銀行ヨリ一時資金ヲ放出セシ
メントスルノデアツテ、同行ガ直接事業會
社ヲ相手トシテ長期固定ノ產業資金ヲ放出
スルガ如キコトハ、全然ナイト云フ答辯デア
リマシタ、次ニ、日本銀行ガ本案ニ依リ外國
爲替ノ賣買ヲ行ヒ得ルコトトナリ、更ニ進
ンデ東亞共榮圈內金融ノ中心機關トシテ
國際金融取引ニ乘出スコトトナレバ、正金
銀行等ノ業務トノ關係ハ一體ドウナルカ
トノ質問ニ對シマシテ、政府ノ答辯ハ、日
本銀行ガ外國爲替ノ賣買ヲ行ヒ得ルコトト
ナツテモ、ソレハ決濟尻ヲ日本銀行ニ集中
スルコトヲ意味スルモノデアツテ、其ノ取
引ノ相手方ハ正金銀行、臺灣銀行、其ノ他
ノ爲替銀行デアルトノコトデアリマシタ、
更ニ此ノ點ニ關聯シテ南方ノ通貨問題ニ關
シ、多數ノ委員諸君ヨリ質問ガアリマシタ
ガ速記ヲ中止シテ政府ヨリ詳細ナル所ノ
答辯ガアリマシタ
次ニ、本法案ニ依ル銀行劵發行制度ト金
トノ關係ニ付テハ、所謂管理通貨制度ト云
フコトニ關聯ヲシテ種々ナル質問ガアツタ
ノデアリマスルガ、政府ハ本法案ノ發劵制
度ヲ管理通貨制度ト言フ所以ノモノハ今
後ノ通貨ノ價値ハ決シテ金ノミニ依ツテ維
持セラルルノデハナク、ソレハ物資、勞力、
資本等ヲ含メタ國家ノ經濟總力、經濟金融
全般ニ亙ル政府ノ政策及ビ是等ニ對スル內
外ノ信用ニ依ツテ、維持セラレ安定セシメ
ラレルモノデアリ、又通貨ノ量モ金ノ裏付
ガアレバ、通貨ハドレダケ發行セラレテモ
宜イト同時ニ、金ガナケレバ如何ニ國家ノ
經濟上必要ナ通貨デモ、發行シテハナラヌ
ト云フヤウナ考ヘノ下ニ、專ラ金ノ量ニ依
リ之ヲ調節スルコトハ、今日ノ事態ノ下ニ
ハ到底許サルベキ所デハナイコトデアツテ、
通貨ノ量ハ國家ノ經濟秩序ヲ維持安定シ、
國家ノ經濟總力ノ適切ナ發揮ヲ圖ル爲メ、
必要ナ量ハ圓滑ニ供給スルト共ニ、ソレ以
上ノ通貨ノ發行ハ嚴ニ之ヲ抑制スルコトヲ
目標トシテ調節セラルベキモノデアルトノ
說明ガアツタノデアリマス、然ラバ金ハ對
外決濟上モ全ク其ノ用途ヲ失フニ至ルト考
フベキカトノ質問ガアリマシタガ、之ニ對
シテ政府ハ、今後ハ金ノミガ唯一ノ對外決
濟手段デアルトハ考へナイガ、金ハ今後ニ
於テモ必要ニ應ジ對外決濟上ノ手段タル働
キヲ果スモノト考ヘルカラ、金ハ決シテ之
ヲ輕視スベキモノデハナイト云フ說明ガア
ツタノデアリマス、次ニ銀行劵發行高ハ從
來ノ如ク金ニ依ル制限ヲ受ケズ、大藏大臣
ガ其ノ發行限度ヲ定メルコトハ、通貨ノ發
行ニ政治的色彩ヲ加ヘ、官僚統制ニ流レ易
ク、其ノ信用ヲ害スル虞ガナイカト云フコ
トヲ中心トシテ、其ノ發行限度ヲ定メル基
準、手續等ニ付テ色々質問ガアツタノデア
リマスルガ、政府ハ之ニ對シテ通貨ノ調節
ハ金融經濟ノ中心的問題デアツテ、今日
デハ此ノ機能ハ日本銀行ノミノ働キニ俟ツ
コトハ出來ナイ、通貨ノ調節モ、貯蓄ノ奬
勵國民生活ノ規正等、各般ノ經濟金融政
策ヲ綜合的ニ運營シテ初メテ行ハレルモノ
ト考ヘ、政府ハ愼重ニ是等ノ政策ヲ決定シ
テ行ク積リデアル、大藏大臣トシテ發行限
度ヲ定メルノハ、之ニ依リ一應經濟界ノ必
要トスル通貨ノ量ヲ示シ、通貨ノ安全感ニ
對スル一ツノ指標タラシメントスルノモノ
デアツテ、此ノ限度ヲ定メルニ、當ツテハ、通
貨ノ健全性ヲ保持スルト共ニ、各般ノ經濟
政策ト睨合ハセ、配給、物價、財政、般
經濟取引活動等ノ要素ヲ十分考慮ニ入レ、
又事柄ノ重要性ニ鑑ミテ日本銀行ハ勿論、
其ノ他ノ經濟界各方面ノ意見ニ徵シ、愼重
ニ之ヲ決定スル積リデアルトノ說明デアツ
タノデアリマス、其ノ他各般ニ亙リ質疑ガ
行ハレマシタガ、詳細ハ速記錄ニ依ツテ御
諒承ヲ願ヒマス
次ニ戰時金融金庫法案ニ對スル質疑應答
ノ主ナルモノヲ御紹介申上ゲマス······(「簡
單」ト呼ブ者アリ)簡單ト云フ譯ニ行キマセ
又、先ヅ第一ニ戰時金融金庫ト旣存ノ金融
機關トノ關係ノ質問デアリマスガ、之ニ對
シテ政府ハ大東亞戰爭ノ勃發ニ伴ヒ、我ガ
國產業ニ要請セラレテ居リマスル資金ハ、
從來ハ旣存ノ金融機關等ノ活動竝ニ融資命
令ノ發動ニ依ツテ供給セラレテ參ツタノデ
アリ、今後モ是等ガ一層供給ニ努力スベキ
コトハ當然デアリマスルガ、之ニ要スル資
金ノ需要ハ今後益〓增大スルモノト豫想セラ
レマスノミデナク、是等ノ資金ノ中ニハ事
業ノ收益性ノ將來ノ見透シガ困難ナル真情
ニアル等ノ爲ニ、旣存ノ金融機關トシテハ
從來ノヤリ方ヨリ、之ニ資金ヲ供給スルコ
トヲ躊躇セザルヲ得ナイモノガアリマス、
而シテ是ハ又反面カラ見レバ預金ヲ保護ス
ルト云フ見地カラ已ムヲ得ナイ所デアリ、
斯クノ如キ旣存ノ金融機關ヲシテ資金ヲ供
給セシムルコトガ無理デアツテ、而モ國家
的ニ之ニ資金ヲ供給スル必要ヲ生ズル關係
カラ、其ノ調和ノ一策トシテ融資命令ノ制
度ガアルノデアリマスルガ、此ノ制度ニ依
ツテ個々ノ貸付ニ付テ其ノ元利ヲ補償スル
コトニナリマスルト、實際問題トシテ簡單
ニ參ラナイ、ソコデ新タニ斯クノ如キ或ル
程度危險性ノアル資金ノ供給ヲ擔當セシム
ル爲ニ、國家ノ補償ヲ背景トシタ機關ヲ設
立シ、戰時下ニ於テ必要ナル資金ノ圓滑ナ
ル供給ラスルト共ニ、旣存ノ金融機關ガ餘
リニ危險ナル金融ニ乘出シ、不堅實ニナル
ノデハナイカトノ疑ヒヲ避ケテ行クコトガ
必要デアルトノ見地カラ、本金庫ヲ設ケタ
次第デアルトノ說明ガアリマシタ、尙ホ本
金庫設立後モ融資命令制度ヲ廢止スル考ヘ
ハナク、興業銀行ノ資金ノ狀況、其ノ他事
業ノ實際的事情ヲモ考慮シテ、必要ガアレ
バ發スル場合モアルト考へテ居ルト云フ說
明ガアツタノデアリマス
次ニ本金庫ノ運營ト產業政策トノ關係ノ
質問デアリマスルガ、政府ハ本金庫ノ運營
ハ國家ノ產業政策ト極メテ緊密ナル關係ガ
アリマスルノデ、產業政策ノ主管廳ノ意見
ヲ十分ニ尊重シテ參リタイ、又本金庫ヨリ
資金ヲ供給スベキ產業ノ選擇、資金ノ供給
ヲ受ケタル者ノ監督等ニ付テハ大藏、商工
兩當局間ノ連絡ヲ緊密ナラシムル爲ニ、遺
憾ナキ措置ヲ講ズル考デアルトノ答辯ガア
ツタノデアリマス、次ニ戰時金融金庫ト產
業設備營團トノ關係ノ質問デアリマスガ、
政府ハ戰時金融金庫ノ業務ト產業設備營團
ノ業務トノ關係ニ付キマシテハ、本金庫ハ
產業設備營團ノ業務ト關係ノナイ業務ヲモ
營ムノデアルガ、其ノ一例トシテ關聯アリ
ト考ヘラルル業務、卽チ國家緊要產業ヲ營
ムモノノ資金ノ供給者ニ關シテ言ヘバ、先
ヅ國家緊要產業ニ付テハ、產業設備營團ハ
國家的ニ急速建設ノ要アルモ、危險ノ度ガ
極メテ高ク、專業者ニ於テ建設スルコト著
シク困難ナル設備ヲ、所謂國有民營的措置
トシテ自ラ建設スルモノデアリ、戰時金融
金庫ハ危險ノ度ガソレ程高クナク、隨テ事
業者ガ其ノ建設ヲ行フ場合ニ必要ナル特別
ノ金融的助成ヲ與ヘルモノデアル、而シテ
兩者何レモ國家ノ決定セル產業政策ニ從ツ
テ是ガ實行ニ當ル慘關デアリマシテ、運營
上連絡ヲ俣持セシムル爲ニハ、兩者ノ役員
ノ一部ヲ兼務セシムルトカ、兩機關ノ連絡
委員會ヲ置キ、始終協議セシメルト云フヤ
ウナ措置ヲ講ズル考ヘデアルト云フ答辯ガ
アツタノデアリマス
次ニ日本協同證劵會社ノ如キ、戰時金融ノ
他ノ業務ト全然異ナルモノヲ本金庫ニ統合
スルハ如何ナル理由デアルカト云フ質問ニ
對シマシテ、政府ハ戰時ニ於テ有價證劵ノ
市價安定ヲ圖ルコトハ國家的ニ緊要ナル
コトデアリ、現在ノ日本協同證劵會社ハ謂
ハバ臨時ノ形態デアツテ、何レハ之ヲ政府
補償ヲ背景トスル公的機關ニ改メル必要ガ
アルト考ヘテ居ルノデアリマシテ、此ノ際
國家緊要產業ヲ營ム者等ニ對スル資金ヲ供
給スル機關ヲ設立致シマスル以上ハ、其ノ
業務モ互ヒニ關聯ガアルノミデナク、何レ
ノ業務モ政府ノ補償援助ヲ背景トシテ行ハ
レルモノデアルト云フ點ニ於テ共通デアリ
マスルカラ、之ニ統合スルコトヲ適當ト考
ヘタ次第デアルトノ說明ガアツタノデアリ
マス、其ノ他詳細ハ速記錄ヲ御覽ヲ願ヒマ
ス
次ニ臨時資金調整法中改正法律案ニ關シ
テ、報國債劵ノ抽籤ニ付キ、每年一囘以上
トアルノヲ削除シタル理由ハ如何トノ質問
ニ對シ、政府ハ是ハ割增金ヲ附スルコトヲ
廢止スルト云フ意味デハナク、之ニ依ツテ
將來其ノ時ノ情勢ニ應ジテ最モ大衆ニ歡迎
セラレルヤウナ條件ノ借劵ヲ發行シテ、購
買力ノ吸收ニ大イニ力ヲ盡ス方針デアルト
ノ答辯ガアツタノデアリマス
大體以上ノ如ク質疑ヲ終リマシテ、昨日
午後一時討論ニ入リマシテ、田村秀吉君、
世耕弘一君、龜井貫一郞君、本田革作君ノ諸
君ガ各〓其ノ會派ヲ代表シテ意見ヲ述ベラレ
タノデアリマス、此ノ討論ニ現ハレマシタル各
委員ノ綜合的意見竝ニ希望ヲ御參考マデニ
委員長トシテ申述ベタイト存ジマス
今ヤ我ガ國ハ大東亞戰爭下未曾有ノ國運
興隆ノ機運ニ際會シテ、大東亞共榮圈ノ確
立ニ邁進セントスルニ當ツテハ政治、經濟、
文化ノ各方面ニ亙ツテ、一大飛躍シタ積極的
構想ト畫策トヲ必要トスルコトハ勿論デア
リマス、隨テ又建設其ノ他凡ユル方面ニ多
大ノ資金ヲ要スルコトモ覺悟セネバナラヌ
ノテアリマス、恐ラクハ是等ノ見地カラ今囘
日本銀行制度ガ割期的改革ヲ企圖セラレ、
進ンデ大東西共榮圈內ノ中央發劵銀行トナ
リ、產業金融機能ヲ發揮スルコトトナツタ
ノデアリマスルガ、更ニ又一面重要產業ニ
對スル積極的意圖ヨリ、戰時金融金庫ヲ設
ケラレタモノト信ズルモノデアリマス、此
ノ意味ニ於テ洵ニ其ノ使命ノ重大ナルモノ
ガアルト言ハナケレバナラヌノデアリマス、
要スルニ問題ハ制度ト云フヨリハ、其ノ衝
ニ當ル人物ト、其ノ運用ノ如何ニアルト云
フコトハ言フマデモナイコトデアリマス
所ガ顧ミマスレバ、從來政府ガ國策遂行ノ
目的ノ爲ニ多數ノ國策會社ヲ作ラレ、或ハ
株ヲ持チ、或ハ補給金ヲ出シテ居ラレル、
現在國策會社ノ資本金ハ八十六億三千餘
万圓、債劵ノ發行高ハ四十三億九百餘万圓
ノ多額ニ達シテ居ルノデアリマスルガ、果
シテ其ノ成績ハウドナツテ居ルカ、恐ラク
諸君ハ御分リニナツテ居ルデアリマセウ、
若シ此ノ國策會社ノ中ニ成績不良ノ會社ガ
アルト致シマシタナラバ、洵ニ斯クノ如キ
國策會社ノ簇出ハ戰時下我ガ產業界ノ發展
ヲ阻碍シ、國家金融ノ根本ヲ破壞スルモノ
デアルト言ハネバナラヌノデアリマス-(拍
手)、殊ニ戰時金融金庫ノ如キ一朝運用ヲ誤
リマシタナラバ、所謂玉石混淆、國家ガ其
ノ尻拭ヒヲセネバナラヌト云フ結果ニナル
(拍手)此ノ點ニ付キマシテ、政府ハ深ク思
ヒヲ致シ、通貨價値ノ安全ヲ確保シテ、所
謂惡性「インフレ」ノ防止ニ對シテハ萬全ヲ
期セラレタイ、又生產擴充ノ上ニ苟クモ各
省間ニ摩擦競合等ノ弊ニ陷ルコトナク、相
互ノ連絡ニ留意シ、共ノ使命ヲ完ウセラレ
ンコトヲ期セラレタシト云フコトガ、委員
會ニ現ハレタ所ノ多數ノ意見デアリマス、
此ノ點ハ特ニ御報〓ヲ申上ゲマス、斯クテ
採決ノ結果、全會一致原案ヲ可決致シマシ
タ、以上御報告申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=12
-
013・田子一民
○議長(田子一民君) 三案ノ第二讀會ヲ開
クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=13
-
014・田子一民
○議長(田子一民君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ三案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=14
-
015・依光好秋
○依光好秋君 直チニ三案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報〓ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=15
-
016・田子一民
○議長(田子一民君) 依光君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=16
-
017・田子一民
○議長(田子一民君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ三案ノ第二讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
日本銀行法案第二讀會(確定議)
戰時金融金庫法案第二讀會(確定議)
臨時資金調整法中改正法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=17
-
018・田子一民
○議長(田子一民君) 別ニ御發議モアリマ
セヌ、第三讀會ヲ省略シテ、三案トモ委員
長報告通リ可決確定致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=18
-
019・依光好秋
○依光好秋君 議事口程追加ノ緊急動議ヲ
堤出致シマス、卽チ此ノ際政府提出、戰時
ニ於ケル領事官ノ裁判ノ特例ニ關スル法律
案戰時民事特別法案、戰時刑事特別法案、
及ビ裁判所構成法戰時特例案ノ四案ヲ一括
議題トナシ、其ノ審議ヲ進メラレンコトヲ
望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=19
-
020・田子一民
○議長(田子一民君) 依光君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=20
-
021・田子一民
○議長(田子一民君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ハ追加セラレマシタ、戰時ニ
於ケル領事官ノ裁判ノ特例ニ關スル法律案
戰時民事特別法案、戰時刑事特別法案、裁
判所構成法戰時特例案、右四案ヲ一括シテ
第一讀會ヲ開キマス-東郷外務大臣
戰時ニ於ケル領事官ノ裁判ノ特例ニ關
スル法律案(政府提出、貴族院送付)
第一讀會
戰時民事特別法案(政府提出、貴族院送
付第一讀會
戰時刑事特別法案(政府提出、貴族院送
付第一讀會
裁判所構成法戰時特例案(政府提出、貴
族院送付)第一讀會
戰時ニ於ケル領事官ノ裁判ノ特例ニ關
スル法律案
第一條戰時ニ於ケル領事官ノ裁判ニ關
スル特例ハ本法ノ定ムル所ニ依ル
第二條領事官ハ明治三十二年法律第七
十號第八條ノ規定ニ拘ラズ死刑又ハ無
期若ハ短期一年以上ノ懲役若ハ禁錮ニ
該ル罪ニ付公判ヲ爲スコトヲ得但シ豫
審ヲ經ザルモノニ限ル
第三條裁判所構成法戰時特例第五條ノ
控訴院ハ領事官ノ爲シタル判決ニ對ス
ル上〓及上〓棄却ノ決定ニ對スル抗〓
ニ付テハ之ヲ長崎控訴院トス但シ中華
民國福建省、廣東省、廣西省及雲南省ニ
駐在スル領事官ノ爲シタル判決ニ對ス
ル上〓及上〓棄却ノ決定ニ對スル抗〓
ニ付テハ之ヲ臺灣總督府高等法院覆審
部トス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法ハ本法施行前領事官ノ受理シタル訴
訟ニ付テハ之ヲ適用セズ
戰時終了ノ際ニ於テ必要ナル經這規定ハ
勅令ヲ以テ之ヲ定ム
戰時民事特別法案
戰時民事特別法
第一章通則
第一條戰時ニ於ケル民事ニ關スル特例
ハ本法ノ定ムル所ニ依ル
第二條戰爭ニ起因スル避クベカラザル
障碍ニ因リ期間ヲ遵守スルコト能ハザ
ル場合ニ於テハ其ノ期間ヲ伸長ス但シ
他ノ法令ニ定アルモノニ付テハ其ノ定
(株)フライン
前項ノ規定ニ依リテ伸長セラレタル期
間ハ障碍ノ止ミタル時ヨリ一週間ノ經
過ニ依リテ滿了ス
第三條裁判所ガ官報及新聞紙ヲ以テ爲
スベキ公〓ハ官報ノミヲ以テ之ヲ爲ス
第二章民事訴訟
第四條裁判所適當ト認ムルトキハ土地
ノ管轄ニ關スル規定ニ拘ラズ申立ニ依
リ又ハ職權ヲ以テ訴訟ノ全部若ハ一部
ヲ他ノ裁判所ニ移送シ又ハ自ラ裁判ヲ
爲スコトヲ得
前項ノ規定ハ訴ニ付專屬管轄ノ定アル
場合ニハ之ヲ適用セズ
第五條裁判所構成法戰時特例第三條第
一項ノ訴訟ノ請求ガ他ノ請求ト併セ一
ノ訴ヲ以テ提起セラレタル場合ニ於テ
ハ裁判所ハ口頭辯論ヲ分離スルコトヲ
要ス
第六條裁判所特ニ必要アリト認ムルト
キハ攻擊又ハ防禦ノ方法ヲ提出スベキ
期間ヲ定ムルコトヲ得
前項ノ期間經過後ニ於テハ攻擊又ハ防
禦ノ方法ハ裁判所ノ許可ヲ受クルニ非
ザレバ口頭辯論ニ於テ之ヲ主張スルコ
トヲ得ズ
第一審ニ於テ前項ノ規定ニ依リテ主張
スルコトヲ得ザリシ攻擊又ハ防禦ノ方
法ハ裁判所ハ許可ヲ受クルニ非ザレバ控
訴審ニ於テ之ヲ主張スルコトヲ得ズ
第七條裁判所ハ機密ノ保持其ノ他公益
上ノ理由ニ依リ訴訟記錄ノ謄寫又ハ其
ノ謄本若ハ抄本ノ交付ヲ相當ナラズト
認ムルトキバ之ヲ禁止スルコトヲ得
第八條期日ニ於ケル呼出ハ民事訴訟法
第百五十四條ニ定ムル方法以外ノ相當
ト認ムル方法ニ依リテ之ヲ爲スコトヲ
得此ノ場合ニ於テハ期日ニ出頭セザル
當事者、證人又ハ鑑定人ニ對シ法律上
ノ制裁其ノ他期日ノ懈怠ニ依ル不利益
ヲ歸スルコトヲ得ズ
第九條裁判所相當ト認ムルトキハ證人
又ハ鑑定人ノ訊問ニ代ヘ書面ノ提出ヲ
爲サシムルコトヲ得
第十條民事訴訟法第三百五十九條ノ規
定ハ裁判所構成法戰時特例第三條第一
項ノ判決ニハ之ヲ適用セズ
第十一條債務者ガ戰爭ノ影響ニ因リ債
務ヲ履行スルコト困難ナル場合ニ於テ
債務者ガ誠實ニシテ債務履行ノ意思ア
リ且債權者ノ經濟ニ甚シキ影響ヲ及ボ
サザルモノト認ムベキ顯著ナル事由ア
ルトキハ裁判所ハ債務者ノ申立ニ依リ
擔保ヲ供セシメ又ハ供セシメズシテ强
制執行ノ一時ノ停止又ハ旣ニ爲シタル
執行處分ノ取消ヲ命ズルコトヲ得
民事訴訟法第五百七十條ノ二第二項及
第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用
ス
第三章破產及和議
第十二條破產ノ原因タル事實ガ戰爭ノ
影響ニ因リテ生ジタル場合ニ於テ債務
者ガ誠實ニシテ債務履行ノ意思アリ且
債權者一般ノ利益ヲ甚シク害セズト認
ムベキ顯著ナル事由アルトキハ裁判所
ハ破產ノ宣〓前ニ限リ債務者ノ申立ニ
依リ破產手續ヲ中止スルコトヲ得
民事訴訟法第五百七十條ノ二第二項ノ
規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十三條强制和議ノ條件ガ各破產債權
者ニ付平等ナラザルトキト雖モ裁判所
ハ債權ノ額其ノ他一切ノ事情ヲ斟酌シ
債權者間ニ差等ヲ設クルモ衡平ヲ害セ
ザルモノト認ムルトキハ强制和議認可
ノ決定ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ハ和議法ニ依ル和議開始ノ
決定及和議認可ノ決定ニ之ヲ準用ス
第四章調停
第十四條民事ニ關シ紛爭ヲ生ジタルト
キハ當事者ハ相手方ノ住所、居所、火,
業所若ハ事務所ノ所在地ヲ管轄スル區
裁判所又ハ當事者ノ合意ニ依リテ定ム
ル地方裁判所若ハ區裁判所ニ調停ノ申
立ヲ爲スコトヲ得但シ他ノ法律ニ定ア
ルモノニ付テハ其ノ定ニ從フ
第十五條裁判所其ノ管轄ニ屬セザル事
件ニ付中立ヲ受ケタルトキハ決定ヲ以
テ事件ヲ管轄裁判所ニ移送スルコトヲ
要ス但シ事件ノ處理上適當ト認ムルト
キハ之ヲ他ノ地方裁判所若ハ區裁判所
ニ移送シ又ハ自ラ處理スルコトヲ妨ゲ
ズ
裁判所其ノ管轄ニ屬スル事件ニ付申立
ヲ受ケタルトキト雖モ事件ノ處理上適
當ト認ムルトキハ決定ヲ以テ之ヲ他ノ
地方裁判所又ハ區裁判所ニ移送スルコ
トヲ得
前二項ノ決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツ
ルコトヲ得ズ
第十六條受訴裁判所適當ト認ムルトキ
ハ專件ヲ調停ニ付シ自ラ調停ニ依リテ
之ヲ處理スルコトヲ得此ノ場合ニ於テ
調停主任タル判事ハ受訴裁判所之ヲ指
定ス
第十七條調停ハ特ニ必要アリト認ムル
トキハ適當ノ場所ニ於テ之ヲ爲スコト
ヲ得
第十八條借地借家調停法第二條、第四
條ノ二、第六條、第八條乃至第二十三
候、第二十六條乃至第三十一條及第三
十二條第一項、金錢債務臨時調停法第
五條乃至第十條竝ニ人事調停法第六條
及第十條ノ規定ハ第十四條ノ調停ニ之
ヲ準用ス
第十九條第十六條及第十七條ノ規定ハ
他ノ法律ニ依ル調停ニ之ヲ準用ス
金錢債務臨時調停法第七條乃至第十條
ノ規定ハ借地借家調停法及商事調停法
ニ依ル調停ニ之ヲ準用ス
人事調停法第六條及第十條ノ規定ハ借
地借家調停法、小作調停法(農地調整法
第十三條ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)、
商事調停法及金錢債務臨時調停法ニ依
ル調停ニ之ヲ準用ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五條及第十條ノ規定ハ本法施行前裁判
所ノ受理シタル訴訟ニ付テハ之ヲ適用セ
ズ
戰時終了ノ際ニ於テ必要ナル經過規定ハ
勅令ヲ以テ之ヲ定ム
戰時刑事特別法案
戰時刑事特別法
第一章罪
第一條戰時ニ際シ燈火管制中又ハ敵襲
ノ危險其ノ他人心ニ動搖ヲ生ゼシムベ
キ狀熊アル場合ニ於テ火ヲ放チテ現ニ
人ノ住居ニ使用シ又ハ人ノ現在スル建
造物、汽東、電車、自動車、艦船、航空機
若ハ鑛坑ヲ燒燬シタル者ハ死刑又ハ無
期若ハ十年以上ノ懲役ニ處ス
戰時ニ際シ燈火管制中又ハ敵襲ノ危險
其ノ他人心ニ動搖ヲ生ゼシムベキ狀態
アル場合ニ於テ火ヲ放チテ現ニ人ア住
居ニ使用セズ又ハ人ノ現在セザル建造
物、汽車、電車、自動車、艦船、航空機若
ハ鑛坑ヲ燒燬シタル者ハ無期又ハ三年
以上ノ懲役ニ處ス
前項ノ物自己ノ所有ニ係ルトキハ一年
以上ノ有期懲役ニ處ス但シ公共ノ危險
ヲ生ゼザルトキハ之ヲ罰セズ
第一項及第二項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第一項又ハ第二項ノ罪ヲ犯ス目的ヲ以
テ其ノ豫備又ハ通謀ヲ爲シタル者ハ十
年以下ノ黴役ニ處ス
第二條戰時ニ際シ燈火管制中又ハ敵襲
ノ危險其ノ他人心ニ動揺ヲ生ゼシムベ
キ狀態アル場合ニ於テ火ヲ放チテ前條
第一項及第二項ニ記載シタル以外ノ物
ヲ燒燬シ因テ公共ノ危險ヲ生ゼシメタ
ル者ハ一年以上ノ有期懲役ニ處ス
前項ノ物自己ノ所有ニ係ルトキハ十年
以下ノ懲役ニ處ス
第三條第一條第二項及前條第一項ニ記
載シタル物自己ノ所有ニ係ルトキト雖
モ差押ヲ受ケ、物權ヲ負擔シ又ハ賃貸
シ若ハ保險ニ付シタルモノヲ燒燬シタ
ルトキハ他人ノ物ヲ燒燬シタル者ノ例
ニヨン
第四條戰時ニ際シ燈火管制中又ハ敵襲
ノ危險其ノ他人心ニ動搖ヲ生ゼシムベ
キ狀態アル場合ニ於テ刑法第百七十六
條若ハ同條ノ例ニ依ル同法第百七十八
條ノ罪又ハ此等ニ關スル同法第百七十
九條ノ罪ヲ犯シタル者ハ三年以上ノ有
期徵、役ニ處シ同法第百七十七條若ハ同
條ノ例ニ依ル同法第百七十八條ノ罪又
ハ此等ニ關スル同法第百七十九條ノ罪
ヲ犯シタル者ハ無期又ハ七年以上ノ懲
役ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ傷害ニ致シタ
ル者ハ死刑又ハ無期若ハ十年以上ノ懲
役ニ處シ死ニ致シタル者ハ死刑ニ處ス
刑法第百八十條ノ規定ハ第一項ノ罪ニ
付テハ之ヲ適用セズ
第五條戰時ニ際シ燈火管制中又ハ敵襲
ノ危險其ノ他人心ニ動搖ヲ生ゼシムベ
キ狀態アル場合ニ於テ刑法第二百三十
五條、第二百三十六條、第二百三十八條
若ハ第二百三十九條ノ罪又ハ此等ニ關
スル同法第二百四十三條ノ罪ヲ犯シタ
ル者竊盜ヲ以テ論ズベキトキハ無期又
ハ三年以上ノ懲役、强盜ヲ以テ論ズベ
キトキハ死刑又ハ無期若ハ十年以上ノ
黴役ニ處ス
戰時ニ際シ燈火管制中又ハ敵襲ノ危險
其ノ他人心ニ動搖ヲ生ゼシムベキ狀態
アル場合ニ於テ刑法第二百四十條前段
若ハ第二百四十一條前段ノ罪又ハ此等
ニ關スル同法第二百四十三條ノ罪ヲ犯
シタル者ハ死刑又ハ無期懲役ニ處シ同
法第二百四十條後段若ハ第二百四十一
條後段ノ罪又ハ此等ニ關スル同法第二
百四十三條ノ罪ヲ犯シタル者ハ死刑ニ
處ス
第一項ノ强盜ヲ爲ス目的ヲ以テ其ノ豫
備又ハ通謀ヲ爲シタル者ハ一年以上十
年以下ノ黴役ニ處ス
第六條戰時ニ際シ燈火管制中又ハ敵襲
ノ危險其ノ他人心ニ動搖ヲ生ゼシムベ
キ狀態アル場合ニ於テ刑法第二百四十
九條ノ罪又ハ之ニ關スル同法第二百五
十條ノ罪ヲ犯シタル者ハ一一年以上ノ有
期懲役ニ處ス
第七條戰時ニ際シ國政ヲ變亂スルコト
ヲ目的トシテ人ヲ殺シタル者ハ死刑又
ハ無期ノ徵役若ハ禁錮ニ處ス
前項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第一項ノ罪ヲ犯ス目的ヲ以テ其ノ豫備
又ハ陰謀ヲ爲シタル者ハ一一年以上ノ有
期ノ黴役又ハ禁錮ニ處ス
第一項ノ罪ヲ犯スコトヲ〓唆シ又ハ〓
助シタル者ハ被〓唆者又ハ被幫助者其
ノ實行ヲ爲スニ至ラザルトキハ二年以
上ノ有期ノ徵役又ハ禁鋼ニ處ス
第一項ノ罪ヲ犯サシムル爲他人ヲ塲動
シタル者ノ罰亦前項ニ同ジ
第三項乃至前項ノ罪ヲ犯シタル者自首
シタルトキハ其ノ刑ヲ減輕又ハ免除ス
第八條戰時ニ際シ防空ノ實施ニ從事ス
ル公務員ノ當該職務ヲ執行スルニ當リ
之ニ對シテ暴行又ハ脅迫ヲ加ヘタル者
ハ七年以下ノ懲役ニ處ス
第九條戰時ニ際シ刑法第百六條ノ罪ヲ
犯シタル者ハ左ノ區別ニ從テ處斷ス
首魁ハ死刑又ハ無期若ハ三年以上
ノ懲役ニ處ス
二他人ヲ指揮シ又ハ他人ニ率先シテ
勢ヲ助ケタル者ハ一年以上ノ有期懲
役ニ處ス
三附和隨行シタル者ハ三年以下ノ懲
役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
戰時ニ際シ暴行又ハ脅迫ヲ爲ス爲多衆
聚合シ當該公務員ヨリ解散ノ命令ヲ受
クルモ仍解散セザルトキハ首魁ハ十年
以下ノ懲役ニ處シ其ノ他ノ者ハ三年以
下ノ懲役又ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第十條戰時ニ際シ公共ノ防空ノ爲ノ建
造物、工作物其ノ他ノ設備ヲ損壞シ又ハ
其ノ他ノ方法ヲ以テ公共ノ防空ノ妨害
ヲ生ゼシメタル者ハ死刑又ハ無期若ハ
三年以上ノ懲役ニ處ス
戰時ニ際シ氣象ノ觀測ノ爲ノ建造物、
工作物其ノ他ノ設備ヲ損壞シ又ハ其ノ
他ノ方法ヲ以テ氣象ノ觀測ノ妨害ヲ生
ゼシメタル者ハ十年以下ノ懲役ニ處ス
第十一條戰時ニ際シ郵便又ハ電氣通信
ノ用ニ供スル建造物、工作物其ノ他ノ
設備ヲ損壞シ又ハ其ノ他ノ方法ヲ以テ
公共ノ通信ノ妨害ヲ生ゼシメタル者ハ
無期又ハ一年以上ノ懲役ニ處ス
第十二條戰時ニ際シ瓦斯又ハ電氣ノ用
ニ供スル建造物、工作物其ノ他ノ設備
ヲ損壞シ又ハ其ノ他ノ方法ヲ以テ瓦斯
又ハ電氣ノ公共ノ利用ノ妨害ヲ生ゼシ
メタル者ハ無期又ハ一年以上ノ懲役ニ
處ス
第十三條戰時ニ際シ國防上重要ナル生
產事業ノ設備其ノ他當該生產ノ用ニ供
スル物ヲ損壞若ハ隱匿シ又ハ其ノ他ノ
方法ヲ以テ其ノ物ノ效用ヲ害シ當該事
業ノ遂行ノ妨害ヲ生ゼシメタル者ハ無
期又ハ一年以上ノ懲役ニ處ス
第十四條前四條ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第十五條戰時ニ際シ業務上不正ノ利益
ヲ得ル目的ヲ以テ生活必需品ノ買占又
ハ賣惜ヲ爲シタル者ハ五年以下ノ懲役
又ハ一萬圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ罪ヲ犯シタル者ニハ情狀ニ因リ
懲役及罰金ヲ併科スルコトヲ得
第十六條戰時ニ際シ刑法第百二十四條
第一項ノ罪ヲ犯シタル者ハ一年以上ノ
有期懲役ニ處ス因テ人ヲ死傷ニ致シタ
ル者ハ死刑又ハ無期若ハ三年以上ノ懲
役ニ處ス
戰時ニ際シ刑法第百二十五條ノ罪ヲ犯
シタル者ハ無期又ハ五年以上ノ懲役ニ
處ス
戰時ニ際シ刑法第百二十六條第一項又
ハ第二項ノ罪ヲ犯シタル者ハ死刑又ハ
無期若ハ七年以上ノ懲役ニ處ス因テ人
ヲ死ニ致シタル者ハ死刑ニ處ス
第二項ノ罪ヲ犯シ因テ刑法第百二十七
條ニ定ムル結果ヲ生ゼシメタル者亦前
項ノ例ニ同ジ
第一項前前、第二項及第三項前段ノ未
遂罪ハ之ヲ罰ス
第十七條戰時ニ際シ刑法第百三十條ノ
罪ヲ犯シタル者ハ五年以下ノ懲役又ハ
千圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
第十八條戰時ニ際シ刑法第百四十三條
又ハ第百四十四條ノ罪ヲ犯シタル者ハ
一年以上ノ有期懲役ニ處ス因テ人ヲ死
傷ニ致シタル者ハ死刑又ハ無期若ハ三
年以上ノ懲役ニ處ス
戰時ニ際シ刑法第百四十六條前段ノ罪
ヲ犯シタル者ハ死刑又ハ無期若ハ七年
以上ノ懲役ニ處ス因テ人ヲ死ニ致シタ
ル者ハ死刑ニ處ス
戰時ニ際シ刑法第百四十七條ノ罪ヲ犯
シタル者ハ無期又ハ三年以上ノ懲役ニ
處ス
第一項前段、第二項前段及前項ノ未遂
罪ハ之ヲ罰ス
第二項前段ノ罪ヲ犯ス目的ヲ以テ其ノ
豫備又ハ通謀ヲ爲シタル者ハ十年以下
ノ徵役ニ處ス
第二章刑事手續
第十九條戰時ニ於ケル刑事手續ニ關ス
ル特例ハ本章ノ定ムル所ニ依ル但シ第
二十條ノ規定ハ裁判所構成法戰時特例
第四條第一項ニ揭グル罪竝ニ刑法第七
十三條、第七十五條及第二編第一一章ノ
罪ニ關スル事件ニ限リ之ヲ適用ス
第二十條辯護人ノ數ハ被〓人一人ニ付
二人ヲ超ニルコトヲ得ズ
辯護人ノ選任ハ最初ニ定メタル公判期
日ニ係ル召喚狀ノ送達ヲ受ケタル日ヨ
リ十日ヲ經過シタルトキハ之ヲ爲スコ
トヲ得ズ但シ已ムコトヲ得ザル事由ア
ル場合ニ於テ裁判所ノ許可ヲ受ケタル
トキハ此ノ限ニ在ラズ
第二十一條辯護人ハ訴訟ニ關スル書類ノ
謄寫ヲ爲サントスルトキハ裁判長又ハ
豫審判事ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス
辯護人ノ訴訟ニ關スル書類ノ閱覽ハ裁
判長又ハ豫審判事ノ指定シタル場所ニ
於テ之ヲ爲スベシ
第二十二條裁判書又ハ裁判ヲ記載シタ
ル調書ノ謄本又ハ抄本ハ機密ノ保持其
ノ他公益上ノ理由ニ依リ裁判所ニ於テ
之ヲ被〓人其ノ他訴訟關係人ニ交付ス
ルコトヲ相當ナラズト認ムルトキハ之
ヲ交付セザルコトヲ得
第二十三條豫審判事ハ商工會議所其ノ
他ノ團體ニ對シ必要ナル事項ノ報〓ヲ
求ムルコトヲ得
裁判所ハ公判期日前前項ノ團體ニ對シ必
要ナル事項ノ報告ヲ求ムルコトヲ得
刑事訴訟法第三百四十二條ノ規定ハ前
項ノ規定ニ依リ集取シタルモノニ付之
ヲ準用ス
第二十四條刑事訴訟法第三百三十四條
ノ規定ハ第五條第一項竝ニ昭和五年法
律第九號第二條及第三條ノ竊盗ノ罪ニ
關スル事件ニ付テハ之ラ適用セズ
第二十五條地方裁判所ノ事件ト雖モ刑
事訴訟法第三百四十三條第一項ニ規定
スル制限ニ依ルコトヲ要セズ
第二十六條有罪ノ言渡ヲ爲スニ當リ證
據ニ依リテ罪ト爲ルベキ事實ヲ認メタ
ル理由ヲ說明シ法令ノ適用ヲ示スニハ
證據ノ標目及法令ヲ揭グルヲ以テ足ル
第二十七條國防保安法第三十四條第二
項ノ規定ニ依リ上〓裁判所原判決ヲ破
毀スル場合ニ於テ其ノ事件裁判所構成
法戰時特例第四條第一項第二號ニ揭グ
ル罪ニ關スルモノナルトキハ檢事ノ意
見ヲ聽キ決定ヲ以テ事實ノ審理ヲ爲ス
ベキ旨ヲ言渡スベシ
裁判所構成法戰時特例第四條第一項第
二號ニ揭グル罪ヲ犯シタルモノト認メ
タル第一審判決ニ對シ控訴院ニ上告ア
リタル場合ニ於テ其ノ罪ガ外國ト通謀
シ又ハ外國ニ利益ヲ與フル目的ヲ以テ
犯サレタルモノナルコトヲ疑フニ足ル
ベキ顯著ナル事由アルモノト認ムルト
キハ控訴院ハ決定ヲ以テ事件ヲ六審院
ニ移送スベシ此ノ場合ニ於テハ事件ハ
上〓ヲ爲シタル時ヨリ大審院ニ〓屬シ
タルモノト看做ス
第二十八條上〓裁判所訴訟記錄ノ送付
ヲ受ケタルトキハ速ニ其ノ旨ヲ上告申
立人及對手人ニ通知スベシ
上告申立人ハ前項ノ通知ヲ受ケタル日
ヨリ三十日以內ニ上告趣意書ヲ上〓裁
判所ニ差出スベシ
上告ノ對手人ハ第一項ノ通知ヲ受ケタ
ル日ヨリ三十日以內ニ附帶上告ヲ爲ス
コトヲ得
刑事訴訟法第四百二十二條、第四百二
十三條及第四百二十四條第一項ノ規定
ハ之ヲ適用セズ
第二十九條上〓裁判所上告趣意書其ノ
他ノ書類ニ依リ上〓ノ理由ナキコト明
白ナリト認ムルトキハ檢事ノ意見ヲ聽
キ辯論ヲ經ズシテ判決ヲ以テ上〓ヲ棄
却スルコトヲ得
第三十條裁判所構成法戰時特例第四
條第一項ニ揭グル罪ニ該ル事件(陪審
法第四條ニ規定スルモノヲ除ク)ハ之
ヲ陪審ノ評議ニ付セズ
第三十一條刑事手續ニ付テハ別段ノ規
定アル場合ヲ除クノ外一般ノ規定ノ適
用アルモノトス
第三十二條第二十一條乃至第二十四
條、第二十六條及第三十一條ノ規定ハ軍
法會議ノ刑事手續ニ付之ヲ準用ス此ノ
場合ニ於テ刑事訴訟法第三百四十二條
トアルハ陸軍軍法會議法第三百八十八
條又ハ海軍軍法會議法第三百九十條ト
シ刑事訴訟法第三百三十四條トアルハ
陸軍軍法會議法第三百六十七條又ハ海
軍軍法會議法第三百六十九條トス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
昭和十六年法律第九十八號ハ之ヲ廢止ス
第二十條及第二十四條乃至第三十條(第
二十四條及第二十六條ニ付テハ第三十二
條ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)ノ規定ハ
本法施行前公訴ヲ提起シタル事件ニ付テ
ハ之ヲ適用セズ
戰時終了ノ際ニ於テ必要ナル經過規定ハ
勅令ヲ以テ之ヲ定ム
昭和十六年法律第九十八號ニ違反シタル
者ノ處罰ニ付テハ仍舊法ニ依ル
戰時刑事特別法案中議院法第三十條ニ依
リ別紙ノ通修正ス
昭和十七年一月二十二日
內閣總理大臣兼東條英機
陸軍大臣
司法大臣岩村通世
海軍大臣嶋田繁太郞
〔別紙〕
第三十條ヲ削リ第三十一條ヲ第三十條ト
ス
第三十二條ヲ第三十一條トシ同條中「第
三十一條」ヲ「前條」ニ改ム
附則第三項中「第三十條」ヲ「第二十九條」
ニ「第三十二條」ヲ「第三十一條」ニ改ム
裁判所構成法戰時特例案
裁判所構成法戰時特例
第一條戰時ニ於ケル裁判所構成法ノ特
例ハ本法ノ定ムル所ニ依ル
第二條戰時刑事特別法第五條第一項竝
ニ昭和五年法律第九號第二條及第三條
ノ竊盗ノ罪ニ付テハ區裁判所其ノ裁判
權ヲ有ス但シ豫審ヲ經ザルモノニ限ル
第三條左ニ揭グル訴訟ノ第一審ノ判決
ニ對シテハ控訴ヲ爲スコトヲ得ズ
-裁判所構成法第十四條第二ノ訴訟
二民事訴訟法第六編ニ定ムル訴訟但
シ同法第五百九十一條第三項(第六
百二十條第一項ノ規定ニ依リ適用ス
ル場合ヲ含ム)、第六百一一十三條第一
項及第六百四十七條第三項ノ訴訟ヲ
除ク
前項ノ判決ニ對シテハ直接上告ヲ爲ス
コトヲ得
第一項ノ訴訟ノ請求ニ附帶シテ果實、損
害賠償、違約金又ハ費用ノ請求ヲ爲シ
タル場合ニ於テハ前二項ノ規定ノ適用
ニ付テハ之ヲ第一項ノ訴訟ト看做ス
第四條左ニ揭グル罪ニ付言渡シタル第
一審ノ判決ニ對シテハ控訴ヲ爲スコト
ヲル受
ー刑法第二編第七章ノ二、第三十六
章及第三十九章、昭和五年法律第九
號戰時刑事特別法第一章、陸軍刑
法第二條ニ揭グル各條(第七十九條
乃至第八十五條及第九十九條ヲ除
ク)、海軍刑法第二條ニ揭グル各條
(第七十八條乃至第八十五條及第百
條ヲ除ク)、防空法、食糧管理法竝ニ
言論、出版、集會、結社等臨時取締
法第十七條及第十八條ノ罪
二刑法第七十四條及第七十六條、國
家總動員法(第四十四條ヲ除ク)、昭
和十二年法律第九十二號、外國爲替
管理法、軍機保護法(第二條乃至第
七條及此等ニ關スル第十五條乃至第
十七條ヲ除ク)、軍用資源祕密保護法
(第十一條乃至第十五條及第十九條
ヲ除ク)、要塞地帶法、國境取締法、
陸軍輸送港域軍事取締法、軍用電氣
通信法、陸軍刑法第七十九條乃至第
八十五條及第九十九條、海軍刑法第
七十八條乃至第八十五條及第百條、
大正十五年法律第六十號竝ニ不穩文
書臨時取締法ノ罪但シ此等ノ罪ニシ
テ外國ト通謀シ又ハ外國ニ利益ヲ與
フル目的ヲ以テ犯シタルモノヲ除ク
前項ノ判決ニ對シテハ直接上告ヲ爲ス
コトヲ得
前項ノ上告ハ第二審ノ判決ニ對シ上告
ヲ爲スコトヲ得ル理由アル場合ニ於テ
之ヲ爲スコトヲ得
上〓裁判所ハ第二審ノ判決ニ對スル上
告事件ニ關スル手續ニ依リ裁判ヲ爲ス
ベシ
第五條前二條ノ第一審ノ判決ニシテ區
裁判所ノ爲シタルモノニ對スル上〓ニ
付テハ控訴院其ノ裁判權ヲ有ス
前項ノ判決ニ付區裁判所ノ爲シタル上
告棄却ノ決定ニ對スル抗告ニ付亦前項
ニ同ジ
控訴院ノ上告審トシテ爲シタル決定ニ
對シテハ抗〓ヲ爲スコトヲ得ズ
裁判所構成法第四十八條ノ規定ハ第一
項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第六條控訴院ガ上〓裁判所タル場合ニ
於テ法律ノ同一ノ點ニ付曾テ大審院又
ハ上〓裁判所タル控訴院ノ爲シタル判
決ト相反スル意見アルトキハ決定ヲ以
テ事件ヲ大審院ニ移送スルコトヲ要ス
前項ノ決定アリタルトキハ訴訟ハ上〓
ヲ爲シタル時ヨリ大審院ニ繫屬シタル
モノト看做ス
第七條民事ニ付抗〓裁判所ノ爲シタル
決定ニ對シテハ更ニ抗〓ヲ爲スコトヲ
得ズ
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法ハ本法施行前裁判所ノ受理シタル訴
訟ニ付テハ之ヲ適用セズ
第二條ノ規定ハ本法施行前犯シタル昭和
十六年法律第九十八號第二條第一項ノ竊
盜ノ罪ニ關スル事件ニシテ本法施行後公
訴ヲ提起スルモノニ付、第四條乃至第六
條ノ規定ハ本法施行前犯シタル昭和十六
年法律第九十八號ノ罪ニ關スル事件ニシ
テ本法施行後公訴ヲ提起スルモノニ付亦
之ヲ適用ス
戰時終了ノ際ニ於テ必要ナル經過規定ハ
勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣東郷茂德君登〓〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=21
-
022・東郷茂徳
○國務大臣(東郷茂德君) 只今議題ト相成
リマシタ戰時ニ於ケル領事官ノ裁判ノ特例
ニ關スル法律案提出理由ニ付キマシテ御說
明申上ゲマス、大東亞戰爭ニ際シマスル司
法上ノ特別措置ト致シマシテハ只今議會
ニ戰時民事特別法、戰時刑事特別法等ノ法
律案ガ提出セラレテ居ルノデアリマシテ、
是等ノ特例ハ領事裁判ニモ適用セラルル次
第デアリマスルガ、國內ノ裁判トハ幾分事
情ヲ異ニシテ居ル領事裁判ニ關シマシテハ
是ダケデハ不十分ナ點ガアリ、又是等特例ヲ
領事裁判ニ適用スル上ニ於テ當然設ケラレ
ナケレバナラナイ規定モアルノデアリマス、
殊ニ近時中華民國在留邦人ノ數ガ激增致シ
マスルニ伴ヒマシテ、領事官ノ裁判事務モ
急速ニ增加シツツアルノデアリマスルガ、
大東亞戰爭勃發以來日華間ノ海路連絡ハ著
シク制限セラルル懸念モナシトセザル爲
ニ、從前ノ制度デハ今次戰爭下ニ於ケル領
事裁判ノ圓滑ナル運營ハ頗ル困難トナルベ
キ情勢ニ立到ツテ參リマシタ、以上ノ如キ
點ヲ考慮致シマシテ、領事官ノ裁判ニ關シ
特例ヲ設ケンガ爲、本法案ヲ提出致シタ次
第デアリマス、何卒御審議ノ上協贊ヲ與ヘ
ラレンコトヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=22
-
023・田子一民
○議長(田子一民君) 岩村司法大臣
〔國務大臣岩村通世君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=23
-
024・岩村通世
○國務大臣(岩村通世君) 先ヅ最初ニ只今
議題ニナリマシタ戰時民真特別法案ニ付キ
マシテ、提案ノ理由ヲ御〓明申上ゲマス、
戰時ニ際シマシテハ國ヲ擧ゲテ外敵ニ當
ラナケレバナラナイコトハ申上ゲルマデモ
ナイノデゴザイマス、隨テ私權關係ニ付テ
紛爭ヲ生ジマシタ場合ハ、常ニモ增シテ敏
速且ツ妥當ニ解決ヲ致サナケレバナラナイ
ト存ジマス、其ノ見地カラ考ヘマスト、戰
時ニ於キマシテハ平時ト異ナル應急臨時ノ
特別規定ヲ設ケルコトヲ必要ト致スノデア
リマス、仍テ本法案ニ於キマシテハ戰爭
ニ起因スル障碍、其ノ他ノ影響ヲ考慮致シ
マシテ、訴訟上ノ期間等ニ相當ノ餘裕ヲ設
ケ、一定ノ條件ノ下ニ强制執行ノ一時ノ停
止、執行處分ノ取消又ハ破產ノ宣〓ノ猶豫、
和議ノ條件ノ相當ナル緩和等ヲナシ得ルモ
ノトシ、尙ホ訴訟手續ノ圓滑ナル進行ヲ圖
ル爲、管轄ノ規定ヲ緩和シ、攻擊防禦ノ方
法ヲ提出スベキ期間ヲ定メ得ルモノトシ、
證人、鑑定人ノ訊問ニ代ル書面ノ提出、簡
易ナル呼出ノ方法ヲ認メマス外ニ、調停制
度ヲ擴張シ、且ツ其ノ運用ノ適正ヲ期セン
トスルモノデゴザイマス、尙ホ之ニ加ヘマ
シテ防諜、其ノ他公益上ノ必要アル時ハ、
訴訟記錄ノ謄寫等ヲ制限シ、用紙ノ關係カ
ラ裁判所ノナスベキ公〓ハ官報ノミニ依ル
モノトシ、裁判所權成法戰時特例ノ制定ニ
伴フ手續上ノ規定ヲ設ケントスルモノデゴ
ザイマシテ、以上何レモ現時ノ體制下痛切
ノ必要ヲ感ズル事項ヲ揭ゲタモノデゴザイ
マス
次ニ戰時刑事特別法案ヲ提出スルニ至リ
マシタ理由ヲ御說明申上ゲマス、御承知ノ
通リ大東亞戰爭ハ國家總力戰デアリマス、
而シテ其ノ目的ノ完遂ヲ期シマスル爲ニ
ハ國內ノ治安ヲ確保シ、國民ヲシテ安ン
ジテ職域奉公ノ誠ヲ盡サシメマスト共ニ、
國防上有害ナル犯罪ニ付キマシテモ、是ガ
豫防及ビ鎭壓ノ爲メ、有效適切ナル方策ヲ
講ジマスコトガ、此ノ際最モ緊要ナルコト
ト存ズルノデアリマス、然ルニ現行ノ刑法
及ビ刑事訴訟法ハ、專ラ平時ニ於ケル犯罪
ト刑事手續トヲ規定致シテ居リマス關係
上戰時犯罪ノ豫防及ビ鎭壓ノ法規トシテ、
其ノ儘運用スルニ適切ナラザルモノガアル
ノデアリマシテ、戰時下特ニ公共ノ安寧等
ヲ甚ダシク阻碍スル犯罪ニ對シマシテハ、
其ノ刑罰ヲ加重整備シテ、一般豫防ノ目的
ヲ達シマスルト共ニ、刑事手續ニ付キマシ
テモ、亦戰時ニ相應シキ特例ヲ設クルノ必
要ヲ痛感致スノデアリマス、仍テ政府ニ於
キマシテハ、是ガ臨時應急ノ措置ト致シマ
シテ本法案ヲ立案致シ、先般ノ臨時議會ニ
於テ御協贊ヲ得マシタ戰時犯罪ノ外放火、
騷擾、住居侵入及ビ往來妨害等ノ犯罪ニ對
スル刑法所定ノ刑罰ヲ加重シ、且ツ新タニ
國政變亂ノ目的ヲ以テスル殺人、公共防空
及ビ公共通信ノ妨害、瓦斯電氣ノ公共利用
ノ妨害竝ニ國防上重要ナル生產事業ノ遂行
妨害等ノ犯罪ニ關スル規定ヲモ整備致シマ
シテ、治安ノ確保ニ資シマスルト共ニ、手
續規定ニ於キマシテモ證據ノ取調、判決ノ
方式及ビ上告審ノ手續等ニ關スル臨時ノ特
例ヲ設ケ、裁判所構成法戰時特例ト相俟ツ
テ、事件ノ迅速且ツ適正ナル處理ヲ圖リ、以
テ戰時下ニ於キマスル犯罪ノ豫防及ビ鎭壓
ニ、萬遺憾ナカランコトヲ期シタ次第デア
リマス
次ニ裁判所構成法戰時特例案ノ提案ノ理
由ヲ御說明申上ゲマス、今ヤ我ガ國ハ國家
ノ總力ヲ擧ゲテ大東亞戰爭ノ目的完遂ヲ期
シテ居リマス、此ノ秋ニ當リ國民權義ノ保
全ト國內治安ノ維持トヲ、其ノ職責ト致シ
マス司法ノ部門ニ於キマシテハ戰時體制
下殊ニ第一線竝ニ占領地域ニ、相當多數ノ
職員ヲ進發セシメルノ必要ヲモ考慮シ、且
ツ現在ノ情勢ニ於キマシテ、豫想スベキ交
通上ノ問題ヲモ參酌シツツ本來ノ機能ノ發
揚ヲ十分ニシテ、裁判検察ノ運行ヲ的確迅
速ニシ、以テ其ノ職司ノ遂行ヲ遺憾ナカラ
シメンコトヲ期シ、同ジク本議會ニ提案致
シマシタ戰時民事特別法案及ビ戰時刑事特
別法案ノ制定ト相俟ツテ、裁判所構成法ニ
モ、戰時下是非トモ必要ナリト思量致シマ
ス最小限度ノ特別措置ヲ講ジタク、本法案
ヲ提出致シマシタ次第デアリマス、申スマ
デモナク總テ大東亞戰爭中ニ限ツテノ特例
デゴザイマス
本法案ノ趣旨トスル所ハ大體四項目デア
リマス、第一ハ、區裁判所ニ於ケル刑事事
件ノ事物管轄ヲ、巳ムヲ得ザル限度ニ於テ
擴張セントスルモノデゴザイマス、卽チ戰
時刑車特別法案中ノ戰時非常狀態下ニ於ケ
ル竊盜罪ト、昭和五年法律第九號、盜犯等
ノ防止及處分ニ關スル法律ノ中ノ當習竊盜
罪ハ、何レモ刑ノ短期ガ〓役三年デアリマ
スガ、罪質ハ竊盜ニ外ナラナイノデアリマ
スカラ、豫審ヲ經ザルモノニ限リマシテ、
之ヲ區裁判所ノ管轄ニ屬セシメルコトニ致
シマシタ、第二ハ、民事、刑事トモ訴訟ハ
三審制ガ裁判所構成法ノ原則デアリマスガ、
或ル特殊ナル種類ノ事件ヲ限リマシテ、處
理ノ敏速ヲ圖ル爲メ、控訴審ヲ省略致シマ
シテ、二審制ニ改メントスルモノデアリマ
ス、卽チ民事ニ付テハ特ニ迅速ナル審判ヲ
要スルモノトシテ、現在デモ訴訟物ノ價額
ニ拘ラズ、之ヲ區裁判所ノ管轄ニ屬セシメ
テ居リマス裁判所構成法第十四條ノ第二ノ
訴訟及ビ民事訴訟法第六編、强制執行編ニ
規定スル所ノ、債權者ガ旣ニ强制執行ニ着
手シテ後ノ手續上ノ問題ト、假ノ權利保全
處分等ニ關スル事項ノ訴訟竝ニ刑事ニ付テ
ハ、戰時下ニ於ケル國內ノ治安ヲ維持シ、
國防經濟ノ完遂ニ資シ、併セテ防諜ノ完璧
ヲ期スル爲メ、刑法ノ安寧秩序ニ對スル罪、
一般ノ竊盜、强盗ノ罪、戰時刑事特別法案
第一章各條ニ定ムル罪ノ如キ公共ノ安寧ヲ
阻害スルコト甚ダシキモノ、國家總動員法
違反ノ罪ノ如キ經濟統制ヲ紊ルモノ、又軍
機保護法違反ノ罪ノ如キ機密ノ漏洩ヲ防止
セネバナラヌモノ等ニ關スル事件ノ第一審
判決ニ對シテハ、控訴ヲ許サズ、直接上告
ヲナシ得ルモノト致シタノデアリマス、第
三ハ、現在民事刑事ノ訴訟ノ上〓ハ、總テ
大審院ノミガ其ノ裁判權ヲ有シテ居リマス
ガ、前述ノ民事刑事ニ付キ控訴審ヲ省略ス
ルコトト致シタ事件ノ中デ、第一審ヲ區裁
判所ニ於テ審理シタモノニ付キマシテハ、其
ノ上告ヲ控訴院ニ管轄セシメントスルモノ
デアリマス、而シテ控訴院ガ上〓裁判所ト
ナル場合ニ於ケル法律解釋ノ統一ヲ圖ル爲
メ、控訴院ヨリ大審院ニ事件ヲ移送スルコ
トヲ要スル場合ヲ認メテ置イタノデアリマ
ス、第四ハ、民事ニ付キ、訴訟事件ニアラザ
ル決定事件ノミニ付キマシテ抗告裁判所ノ
致シマシタ裁判、卽チ決定ニ對シテハ更ニ
抗告ヲナシ得ザルコトト致サントスルモノ
デアリマス、何卒愼重御容議ノ上速カニ是
等三案ニ對シ、御協賛ヲ與ヘラレンコトヲ
希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=24
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025・田子一民
○議長(田子一民君) 質疑ノ通告ガアリマ
ス-森田重次郞君
〔森田重次郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=25
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026・森田重次郎
○森田重次郞君 只今上程致サレマシタ法
案ニ關聯シ、內閣總理大臣、外務、農林、
商工、司法等ノ諸大臣ニ若干ノ質疑ヲ試ミ
タイト思ヒマス
第一點ハ、大東亞共榮圈ノ建設ト司法制
度ノ問題ニ付テデアリマス、皇軍ノ赫々タ
ル戰果ニ依リ、今ヤ世界ノ歷史ニ一大變革
ガ齎ラサレマシタ、我ガ肇國理想實現ノ現
實的段階ハ、言フマデモナク大東亞共榮圈
ノ新建設ニ邁進スルコトデアリマス、戰ヒ
モ一段落トナリマスレバ、勇氣凛々タル斯
界ノ勇士ハ、建設ノ先驅者トシテ前進スル
デアラウコトハ當然デアリマス、故ニ國家
ハ之ニ對應シ、南洋方面ニ對スル司法制度
ノ確立ヲ圖リ、國民ヲシテ安ンジテ建設ニ
勵マシムルヤウ施設スベキデアリマス、
更ニ又政治的獨立ヲ認ムル是等諸地方、諸
民族、諸國家ニ對シテハ、博大ナル皇道宣
布ノ大義ニ立脚スル司法的指導ノ根本原理
ヲ確立シテ、最モ適切ナ指導ヲ加フベキハ
勿論、且ツ是ト密接不離ノ關係ニアル所謂
大東亞國際法ノ制定ヲナシ、以テ雄渾極マ
リナキ國家要請ニ應ズベキデアルト思フノ
デアリマス、更ニ南洋ヲ含ム綜合的上級裁
判フ中心ハ何處ニ置クベキデアルカ、領事
裁判ノ運用ハ如何ニアルベキカ、之ニ要ス
ル裁判官ノ養成方針ハ如何、內地法ヲ是等
外地ニ適用スベキ限度ノ問題、在野法曹ノ
活動領域竝ニ方向等ニ關スル根本方針ナ
ド、前途ニ幾多ノ大問題ガ橫タハツテ居ル
ト思フノデアリマス、是等ニ對シ外務及ビ
司法大臣ノ御所見ヲ御伺ヒ致シタイノデア
リマスルガ、尙ホ將來在朝在野法曹ノ權威者
ヲ網羅セル調査機關ヲ設ケ、之ニ關スル方
針ヲ決定スベキ意思アリヤ否ヤ、之ニ對ス
ル御所見ヲモ併セテ御伺ヒ致シタイノデア
リマス
第二點ハ、司法官竝ニ是等關係官吏養成ノ
問題ニ關シテデアリマス、言フマデモナク、
法律ハ裁判上ニ於ケル〓念的規範ヲ定メタ
マデノモノデアリマス、之ヲ運用スルノ妙
ハ全ク人ニアルト言ハナケレバナリマセヌ、
法網密ニシテ人恥ヲ忘レ、細鱗網ニ入ツテ
呑舟ノ魚ヲ逸スルガ如キコトガアツテハ
斷ジテ國家ノ負託ニ任ズルモノデアルト云
フコトハ出來ナイノデアリマス、然ルニ近
時司法官ノ志願者漸減ノ傾向ニアルノミナ
ラズ、關係司法警察吏、或ハ裁判所書記等
モ亦漸減シ、是ガ補充ニ相當ノ困難ヲ感ジ、
是ヨリ來ル事務ノ澁滯、取調ノ粗漏ナドヲ
耳ニスルコトノ屢〓デアリマスルコトハ、國
家ノ爲メ洵ニ遺憾ニ堪ヘナイモノガアリマ
ス裁判ノ信用失墜ガ如何ニ恐ルベキコト
デアルカハ、世界ノ歷史ニ徵シ洵ニ明瞭デ
アリマス、今ニシテ拔本塞源ノ途ヲ講ズル
ノデナケレバ後日ニ悔ヲ貽スノ憾ミナシト
セヌノデアリマスガ、政府ハ此ノ事象ニ鑑
ミ、此ノ缺陷ヲ補フ爲ニ果シテ如何ナル方
策ヲ講ゼントシテ居ルノデアリマスルカ、
之ニ對スル司法大臣ノ現實的ニシテ、且ツ
具體的ナル御所見ヲ御伺ヒ致シタイノデア
リマス
更ニ第三點トシテ、之ニ關聯シテ次ノ一
事ヲ明カニシテ戴キタイト思フノデアリマ
ス、司法官ノ待遇ノ菲薄デアルコトハ獨リ
今日ノ事象發生ニ依ツテ問題トナツタノデ
ハナク、平素ノ輿論デアツタト言ウテモ過
言デナイモノガアルノデアリマスルガ、私
ノ特ニ不思議ニ感ジテ居リマスルコトハ、
憲法ニ依ツテ獨特ノ地位ヲ與ヘラレテ居ル
裁判官、而モ其ノ裁判官ノ最高峰ニ立ツ大
審院長ノ地位ヲ得タ人々モ、退官後樞密院
ニ奉請セラレ、或ハ貴族院議員ニ勅選セラ
レタ人ガ極メテ少イト云フ一事デアリマス、
警視總監、警保局長、法制局長官等、內閣
更迭每ニ如何ニ多クノ人々ガ勅選セラレテ
居ルカト對比シ、且ツ世界列强ノ大審院長
ニ與ヘテ居ル待遇上ノ實例ニ徵シマシテモ、
何トナク疎外セラレテ居ルニアラズヤトノ
感ヲ深クセラレルモノガアルノデアリ。マス
(拍手)是ハ決シテ獨リ一大審院長ノ問題デ
ハナク、司法官ニ對スル日本ノ社會全般ノ
風潮ヲ物語ルモノデアツテ、司法ノ權威ノ
爲ニ再省スルノ要アル問題デアルト思フノ
デアリマス(拍手)私ハ政府ハ、過去ノ理由
ノ如何ヲ問ハズ、將來斯カル地位ニ在リタ
ル人々ニ、前ニ述ベマシタヤウナ新タナル
途ヲ開クコトニ依リ、一面其ノ經驗ヲ國家
ノ爲ニ活用スルト共ニ、一道ノ光明ヲ司法界
ニ投ゼラレンコトヲ望ム者デアリマスルガ、
之ニ對スル政府ノ御所見ハ如何デアリマス
ルカ、御伺ヒ致シタイノデアリマス
第四ニ、裁判所構成法戰時特例案以下ノ
法案ニ付キ、御尋ネ致シタイノデアリマス、
裁判所構成法戰時特例案中最モ大キイ問題
ハ一定ノ犯罪ニ付テハ第一審ノ判決ニ對
シ控訴ヲナスコトヲ得ナイ旨ノ規定ヲシテ
居ル點デアリマス、尙ホ刑事手續ニ關スル
規定中ニハ、特定ノ犯罪ニ付キ辯護人ノ數
ハ被〓一人ニ付キ二人ヲ超エルコトヲ得ズ
トシ、選任ノ日時ニ付テモ制限ヲ加ヘ、其ノ
他關係書類ノ謄寫、閲覽等ニ嚴重ナル制限
ヲ付シテ居ルノデアリマス、戰時民事特例
案中ニモ、舊來ノ方法ニ對シテ相當ノ制限
ヲ付シテ居ルコトハ同樣デアリマス、法案
ヲ通覽スルニ、其ノ諸規定中時弊ニ的中シ、
戰時下ノ現狀ニ照シ首肯ニ値スルモノ少シ
トシナイノデアリマスガ、遽カニ贊意ヲ表
シ能ハザルモノモ亦多イノデアリマス、其
ノ最モ大キイモノハ、前ニ述べマシタ第一
審ノ判決ニ對シテ控訴ヲナスコトヲ得ズト
ノ規定デアリマス、今之ヲ現下日本ノ實情
ニ照シテ見マスルニ、區裁判所ノ判事必ズ
シモ練達堪能ノ者ヲ配シテ居ルト云フ譯デ
モナク、又實例ニ徵シマシテモ、統制經濟
違反ノ如キハ第一審判決ニ對シテ控訴院
ニ於テ變更セラレタルモノハ約其ノ六割ニ
及ブトノコトデアリマス、一家裁判ニ於ケ
ル事實認定ノ因難デアルコトハ之ニ依ツ
テモ明カデアルト言ハナケレバナリマセ
又、二審ノ監督的上級審ガ存シテサヘ斯ク
ノ如クデアリマス、若シ夫レ規定ノ如キ控
訴審ヲ廢シマシタナラバ、一審裁判所ニ於
ケル專實審理及ビ其ノ認定ハ輕率疎漏ノ危
險ヲ大ナラシメ、是ヨリ生ズル人心ノ不安
ハ容易ナラザルモノアリト思フノデアリマ
ス、而モ尙ホ强イテ之ヲ實施セント致シマ
スナラバ、寧ロ上〓審ヲ廢シ、事實審理ト
シテノ控訴審ハ之ヲ存置スベキデアルト思
フノデアリマスガ、當局ノ御所見果シテ如
何デアリマスカ、更ニ辯護人ノ制限ノ如キ
モ適當ナル規定デアルト言フコトガ出來ル
カドウカ、疑問ガアリマス、元來裁判事件
ハ、其ノ性質及ビ其ノ難易等ニ依ツテ五人、
六人ノ辯護人ヲ以テスルモ尙ホ困難ヲ感ズ
ルモノノ存在スルコトハ顯著ナル事實デア
リマス、故ニ若シ斯ノ如キ制限規定ヲ必要
トスルノデアリマスルナラバ、須ク許可制
ヲ採用シ、事件ノ性質ニ依ツテ裁判所ノ許
可ニ依リ數人ニ增加シ得ル如キ彈力性ヲ持
セシムベキデアルト思フノデアリマス、提
案ノ理由ヲ御伺ヒ致シマスルニ、唯只管事
件ノ迅速ナル處理ヲ期スルニアルカノヤウ
デアリマスルガ、若シ然リト致シマスナラ
バ是ハ愼重ナル熊度ヲ必要トスルト思フ
ノデアリマス、何トナレバ司法営局ハ此ノ
目的實現ニ關シ、果シテ在野法曹ノ時局認
識ヲ深ムルコトニ力ヲ致シ、且ツ之ニ協力
ヲ求メ、眞劍ニ窮通ノ途ヲ講ジタコトガア
ツタデアリマセウカ、又一面民事事件ノ減
少ニ依ル判事ノ配置替ヲ考慮シタコトガア
ルデアリマセウカ、尙ホ所謂裁判所時間ナ
ル定評ノ存スル時間ノ不定、不經濟ヲ徹底
的ニ是正スル爲メ萬全ノ策ヲ講ジタコトガ
アルデアリマセウカ、更ニ又此ノ目的實現
ニ卽應スル裁判官ノ鍊成ニ付キ十全ノ途
ヲ講ゼラレタコトガアルデアリマセウカ
擧ゲ來リ、擧ゲ去レバ必ズシモ其ノ途ナシ
トセナイノデアリマス、若シ此ノ用意ト基
礎工作ヲ施シタルコトナク、卒然トシテ時
局下ナル名目ノ下、斯カル法ノ實現ヲナサ
ント致シマスルナラバ、本案ノ如キ正ニ時
局便乘ナリトノ謗リヲ免レ得ナイデアリマ
セウ、便乘ノ謗リハ之ヲ可トスルモ、之三
依ツテテ生ヲ豫期セラルルデアラウ司法權
ノ弛緩、檢察權ノ濫用、人權蹂躙ノ頻發等
ハ、國家ノ爲メ斷ジテ許容スルコトノ出來ナ
イ所デアラウト思フノデアリマス、而モ其
ノ結果司法ノ信用失墜、人心ノ萎靡等、凡
ソ政府ノ期待ニ反スル結果ヲ招來スルモノ
デアリマシテ國家ノ爲メ洵ニ深憂ニ堪ヘ
ナイモノガアリマス、裁判ノ權威ハ迅速ノ
點ニノミ存スルモノデハナク、民ヲシテ眞
ニ悅服セシムルモノデナケレバナリマセ
ヌ一罰百戒、是コソ洵ニ望マシイ姿ダト
思ヒマス、唯數ノ多キヲ誇ルガ如キハ斷ジ
テ日本司法界ノ名譽トハ言ヒ得ナイノデア
リマス、政府ハ果シテ本法提案ニ當リマシ
テ、如上ノ諸點ニ對シ如何ナル考ヘヲ持シ、
又如何ナル用意ヲ御整へニナツテオイデニ
ナリマスルカ、其ノ〓要ヲ御發表アランコ
トヲ切望スル者デアリマス
第五ニ御伺ヒ致シタイコトハ、經濟統制
違反ニ關スル問題デアリマス、統制經濟ノ
違反、是コソ今ノ日本ニ取ツテ洵ニ悲シム
ベキ一箇ノ現象デアリマス、併シ低物價政
策ノ堅持ガ現下日本國家意思ノ至上命令デ
アル限リ、是コソハ斷乎根絕セシメナケレ
バナラナイ根本命題デアリマス、而モ是等
違反者ノ中ニハ、時代ヲ辯ヘザル惡質ノ者
ノ存在スルコトハ否定スルコトノ出來ナイ
事實デアリマスルカラ、是等ノ者ニ對シテ
ハ毅然タル熊度ヲ示シ、嚴刑以テ之ヲ處斷
シ、毫末モ假借スルコトガアツテハナリマ
セス、併シナガラ經濟統制違反ナルガ故ニ、
違反者ノ總テガ直チニ國賊デデモアルカノ
如キ先入見ヲ以テ之ニ對スルガ如キハ、法
ノ運用上嚴ニ愼ムベキ所デナケレバナリマ
セヌ(拍手)私ハ此ノ惡質ナラザル人々ノ行
爲ニ付テ、若干考察ヲ致シテ見タイト思フ
ノデアリマス
元來此ノ種違反者ノ大多數ハ、平素ノ場
合デアリマスナラバ、絕對ニ刑事被告人ト
ナルヤウナ惡質性格者デハナイノデアリマ
ス、是等ノ人々コソハ、唯未曾有ノ大戰爭
ニ對應スル國內經濟機構ノ急激ナル變革ニ
順應スルコトノ出來ナカツタ、一時的變態
的現象ノ悲劇ノ主人公デアツタト云フニ過
ギナイノデアリマス、併シナガラ此ノ順應
ノ滑カデナイト云フ點ハ、獨リ國民ノミニ
限ラレタモノデアルトハ言ヒ得マセヌ、政
府モ亦此ノ無激ナル變轉ニ對シテハ、國民
同樣迅速ナル順應ヲナシ得ナカツタ憾ミナ
シトセヌノデアリマス、車實ハ雄辯ニ之ヲ
物語ツテ居ルノデアリマス、或ル縣ニ起ツ
タコトデアリマス、或ル器具ニ對シテ公定價
格ガアリマシタ、而モ其ノ資材ノ一部ノ輸
入價格ガ高クナリマシタ爲ニ、前ノ公定價
格デハ引合ハナイコトニナツタノデアリマ
ス、已ムナク公定價格ノ訂正方ヲ願出タノ
デアリマスルガ、數箇月ヲ經過シテモ御許
シハアリマセヌ、一方警察ノ方カラハ、現
物アルニ拘ラズ是ガ賣却ヲナサヌノハ賣惜
デハナイカト責メラレマス、ソコデ巳ムコ
トナク許可トナルデアラウコトヲ豫想シテ、
願出ノ公定價格デ賣ツタノデアリマス、價
格統制令違反ニ問ハレタコト論ヲ俟チマセ
又、他ノ一例ハ、某縣ニ於テ藁ノ庭先買入
價格ガ一貫目ニ付キ七錢、需用者ヘノ賣渡
價格ハ八錢ト公定サレマシタ、其ノ差僅カ
ニ一錢デアリマス、近所ナラ兎モ角、遠隔
ナル地方カラ運ンデ參リマシタ際ノ運賃ハ
一體何處カラ出ルノデアリマセウカ、仲買
人ノ生活ノ費用ハ一體何處カラ捻出セラレ
ルノデアリマスカ、私ハ敢テ言フ、此ノ兩
者ニ共通ナル結論ハ、此ノ公定價格ノ下ニ於
テハ、違反ノ危險ヲ冐シテモ生活ノ途ヲ立
テルコトニ進ムベキカ、然ラズンバ其ノ職
業ヲ廢シテ他ニ轉ズベキカ、其ノ何レカ一
ツヲ選バナケレバナラヌ必須的最後ノ巖頭
ニ立タセラレタト云フ一事デアリマス、現
下ノ統制經濟ハ、個人生活ノ基礎ヲ確實ナ
ラシムルヤウ保障シテ居ルトハ言ヒ得マセ
又、右ノ通リデアリマスルガ故ニ、經濟統
制違反ノ起ル理由ハ、獨リ國民ニノミ存ス
ルノデハナク、政府モ亦其ノ一半ノ責任ヲ
負フベキモノデアルト言ハナケレバナリマ
セヌ(拍手)
以上ノ實例ヲ前提トシ、私ハ端的ニ之ヲ
絕滅スルノ途ヲ提示致シタイト思ヒマス、
ソレハ何デアルカト言ヒマスルト、商工農
林各省ハソレ〓〓公定價格ノ適正、運用ノ
迅速、地方實情ヘノ調和等、其ノ基調ノ確
立ヲ圖ルコトニ專念シ、司法當局ハ法ノ力
ノ局限ニ謙虛ナル自己反省ヲ加ヘ、以テ具
體妥當性ヲ有スル眞實發見ノ途ニ勵シムコ
ト、卽チ是デアリマス、デアリマスルガ故
ニ、形式的ナル基準ヲ示シ、違反金額ノ多
寡ニ依ツテ劃一的ナル判決ヲナスガ如キ獘、
及ビ事件ノ促進ヲ念トスルノ餘リ、短時間
ニ審理ノ結了スルヲ誇リトスルガ如キ裁判
ノ事務化等ハ斷ジテアツテハナラナイノデ
アリマス、況ヤ金一封ノ奬勵金ニ依ツテ檢
擧數ノ大ヲ競フノミナラズ、人權蹂躪ニ類
スル檢察權ノ濫用等ハ斷ジテ許容セラルベ
キモノデハナイト思フノデアリマス(拍手)
更ニ統制經濟違反ハ、其ノ運用方法ニ依
ツテ國民ノ大多數ニ波及スル危險ヲ孕ム特
別ノ事情ヲ含ムモノデアリマスカラ、之三
對シテハ相當ノ考慮ヲ加へ、其ノ手加減ヲ
ナスベキモノデアルト私ハ思ヒマス、若シ
之ヲ平時ノ裁判ノ如ク、罪アルヲ俟ツテ之
ヲ彈効スルガ如キ對立的方法ニ終始スルガ
如キコトガアツタナラバ、國ト民トノ間
ニ救フベカラザル澁渠ヲ作ルモノデアリ
マシテ、決戰體制下ニ於テ其ノ運用ハ格段
ノ注意ヲ必要トスルモノデアルト思フノ
デアリマス(拍手)ソレ故ニ更ニ私ハ玆
ニ積極的ナル一箇ノ提案ヲ致シマス、
ソレハ何デアルカト言ヘバ、卽チ政府ハ本
犯罪ノ特質ニ鑑ミ舊來ノ方法ヲ改メ、虛心
坦懷、司法警察官、司法官及ビ一般國民ト
ノ連繫ニ於テ統制經濟違反絕滅相談所ナル
モノヲ開設シテ、之ヲ制度化シ、官民一體
トナリ、違反事件ノ發生ヲ事前ニ防止スル
コトニ全力ヲ傾注シ、以テ新生面ヲ開クベ
キデアルト思フノデアリマス、果シテ政府
ニ之ヲ容ルルノ雅量アリヤ、觀念的啓蒙ノ
時代ハ旣ニ去リマシタ、現下ノ日本ハ現實的
ナ特別救濟法ノ出現ヲ翹望致シテ居ルノデ
アリマス、今ヤ國民ハ如何ニシテ未曾有ノ
國運進展ニ協力シ、其ノ生活ヲ意義アラシ
ムベキカニ心ノトキメキヲ感ジツツアルモ
ノノヤウデアリマス、然ルニ是等ノ人々ヲ
シテ、一時的現象デアルトハ言ヒナガラ
故〓遠キ海ノ彼方ニ奮戰シツツアル其ノ子
ノ姿ヲ悲シムベキ法廷ニ想起セシメ、歔欷
流涕セシムルガ如キ事態ヲ生ゼシムルハ、
斷ジテ八紘一宇ヲ念トスル我ガ皇道ニ副フ
所以デハアリマセヌ、ドウカ全國民ヲシテ
本當ニ歡喜ノ裡ニ協力前進セシメンコト
ヲ、私ハ政府ニ要望スルモノデアリマス、
是コソ現實日本ノ求ムル最大ノ政治デナケ
レバナリマセヌ、是レ本事犯ノ取扱方法ニ
關シ、大刷新ヲ要望スル所以ナノデアリマ
ス、切ニ政府ノ勇斷ヲ冀ウテ已ミマセヌ
以上ニ對シ關係諸大臣ノ御答辯ヲ願ハレ
マスレバ幸ヒニ存ズル次第デアリマス(拍
手)
〔國務大臣東郷茂德君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=26
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027・東郷茂徳
○國務大臣(東郷茂德君) 日本ガ有シテ居
リマス領事裁判ハ、御承知ノ通リ「タイ」國
ニ付キマシテハ先年之ヲ撤廢致シマシタ、
只今持ツテ居リマスノハ中華民國ダケデア
リマス、尙ホ中華民國ニ於キマシテモ、日
支基本條約ニ於キマシテ、日支新關係ノ發
展ニ照應シ之ヲ撤廢スルト云フコトモ約束
致シタヤウナ次第デアリマスカラ、此ノ點
ニ付テハ左樣御承知ヲ願ヒタイ譯デアリマ
スガ、南方地域ニ於キマシテハ、此ノ前一
月二十一日ニ申上ゲマシタ通リ、現在占領
致シテ居リマス地域ニ付テハ、帝國ニ於テ
東亞ノ防衞上絕對ニ必要ナル所ハ之ヲ把握
スル、其ノ他ノ地域ニ付テハ、其ノ地域ノ
傳統及ビ文化ニ應ジテ適當ニ之ヲ處理スル
ト云フコトヲ申上ゲマシタ譯デ、簡單ニ申
上ゲマスルト、或ルモノハ獨立國トナルト
云フコトニ相成リマスルガ、或ルモノハ我
ガ統治地域ニ入ルト云フコトニナル譯デア
リマス、サウ云フ狀態ニ相成リマスル譯デ
アリマスルカラ、將來ノ新事態ニ應ジマシ
テ、司法組織モ之ヲ出來ルダケ其ノ事態ニ
應ジテ善處シテ參リタイ、斯樣ニ存ジテ居
ル次第デアリマス
〔國務大臣岩村通世君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=27
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028・岩村通世
○國務大臣(岩村通世君) 森田君ノ御質問
ニ對シテ御答ヘ申上ゲマス、第一點ハ南
方ノ諸問題ニ付テ一段落シタナラバ、何カ
司法制度ニ關係致シマシテ、相當大規模ノ調
査會等ヲ作ツタラドウカト云フ御尋ネデア
ツタヤウニ了承致シマス、只今ハ御承知ノ通
リマダ戰ヒ中デアリマスカラ、是ガドウ云
フ形ニ進ンデ參リマスカ、無論將來ノコトニ
屬スルトハ思ヒマスルガ、我ガ國ノ統治下
ニアル諸制度ヲ完備シテ行クト云フコトニ
ナレバ當然司法關係ノ制度ガ其ノ中ニ織
込マレナケレバナラヌト云フコトハ申スマ
デモナイト思ヒマス、實ハ左樣ナ點モゴザ
イマスルノデ、現在南方ノ諸地域ニ司法部
ノ關係ノ者モ既ニ數名參ツテ調査ヲ致シテ
居ルヤウナ次第デアリマス、サウ云フヤウ
ナ結果ニ依リマシテ、如何ニ司法制度ヲ織込
ンデ行クカト云フコトニ付テハ、後日十分
考ヘナケレバナラヌ時期ガ來ルモノト考ヘ
テ居リマス
次ニ司法官ノ養成、待遇等ニ付テハ、ド
ウ云フ風ニ考ヘテ居ルカト云フ御尋ネデア
リマス、司法官ノ養成ニ付テハ、是ハ旣ニ
御承知ノコトト存ジマスガ、司法〓究所ト
云フ、一種ノ養成ト言ヒマスカ、訓練〓
究機關ガ出來テ居リマス、之ニハ三ツノ
部ガアリマシテ、第一部ニ於テハ司法官
試補ヲ一定ノ期間司法〓究所ニ集メマ
シテ、色々〓究ヲ致シテ居リマス、第二
部ハ數年判檢事ノ實務ニ從事シタル者、
第三部ハ相當期間ヲ經過致シタ者ノ〓究
ヲ致ス爲ニ、司法〓究所ト云フモノガ、司
法部內ニ出來テ居ル譯デアリマス、殊ニ
戰時下ニ於キマシテハ特別ノ法律關係ヲ生
ジマスルノデ、刑事民事ニ關係致シマシテ、
種々異ツタ法制ノ〓究ヲ要スルコトト思ヒ
マス、ソレガ爲ニ、支那事變發生以來モ特
ニ考ヘテ居リマシタガ、特ニ米革宣戰御布
〓後ニ於キマシテハ、戰時ニ關スル刑事民
事ニ對スル對策ト云フコトノ〓究ノ必要ヲ
感ジマシテ、特ニソレヲ題目トシテ司法〓
究所デハ〓究致サセルコトニナツテ居リマ
ス
ソレカラ尙ホ司法官試補ノ志願者ガ減ズ
ルト云フ、是ハ御說ノ通リデアリマス、入
營又ハ應召等ニ依リマシテ、相當數ノ司法
官試補ヲ得ルト云フコトガ中々困難ニナツ
テ參リマシタ、又現在判事檢事トシテ執務
ヲ致シテ居リマス者デモ、應召致シテ居ル
者ハ非常ナ多數ニ上ツテ居リマス、將來ヲ
考ヘマスル時ハ、人事ニ付テモ種々考慮ヲ
シナケレバナラヌ事柄ガ多イト思フノデア
リマス、卽チ今囘戰時ニ關スル諸立法ヲ御
審議願フノモ、サウ云フヤウナ點モ頭ニ入
レマシテ、御願ヒヲシテアル筈デアリマス、
人員等ハ減ジマスケレドモ、一人ガ二人前
モ、三人前モ働クト云フ氣〓ヲ以テ、戰時
ニハ御奉公ヲスベキモノダト一同考ヘテ、
大イニ勉强致シテ居ル次第デゴザイマス
ソレカラ大審院長等退職ノ場合ニ於ケル
優遇ノ途ニ付テハ、色々御理解アル御質問
デゴザイマシタ、是ハ十分考ヘルコトニ致
シマス、御諒承ヲ願ツテ置キマス
ソレカラ其ノ次ニハ戰時立法ト致シマ
シテ控訴審省略ノ問題デアリマス、三審
制度ハ我ガ國裁判所構成法ノ執ツテ居ル原
則デアリマシテ、此ノ原則ヲ成ルベク守ツ
テ行キタイト云フコトハ、私共念願シテ居
ル所デアリマス、併シナガラ現在ノ戰時ニ
於キマシテ、人員ノ關係等モ考慮シ、今日
ハ幸ヒニシテ戰果赫々タルモノデアリマシ
テ、飛行機ノ來襲ト云フヤウナコトハ幸ヒ
ニシテゴザイマセヌ、洵ニ御同慶ノ至リデ
アリマス、併シ何ト申シマシテモ、相手ハ
米英デアリ、是ハ長期ノ戰ヲ覺悟シナケレ
バナラヌト私共考ヘルノデアリマス、ソレ
ニ對處スルニハ、大審院デ今日ノ如ク全國
ノ上〓審ヲ裁判スルト云フヨリハ控訴院
ガ七箇所アリマスカラ、七箇所デ上〓ヲ取
扱フヤウニシタイ、斯樣ナ考ヘカラ、區裁判
所カラ始マリマシタ特殊ノ事件ニ付テハ
上告審ヲ控訴院ニシタイト云フヤウナコト
モ、實ハ戰時ノ交通機關等ヲ考ヘテシタ次
第デアリマス、又裁判ノ審級制度ニ付キマ
シテモ、出來ルダケ三審制度ハ守リタイノ
デアリマスルガ、御承知ノ通リ戒嚴令等ニ
依リマスルト、極端ナ場合ハ一審制度ニナ
ルヤウナコトモアルノデアリマス、政府ニ
於テハ生產等ノ關係モ考慮致シマシテ、戒
嚴令ノ布告ナクシテ處理セラレルヤウニ致
シタイト云フ方針デゴザイマス、左樣ナ次
第デアリマスルカラ、裁判制度モ特殊ノモ
ノニ限ツテハ、戰時中ノミ例外トシテ一一審
制度ヲ採用致シマシテ、事件ノ迅速適正ニ
處理セラレルヤウニ致シタイ、勿論御話ノ
ヤウニ、二度調ベルヨリハ三度調ベレバ、
ソコニ周到ナル注意ガ行屆クト云フコトハ
無論アラウト思ヒマスルケレドモ、特ニ戰
時下迅速ニ處理スベキモノハ、治安ノ方面
カラ見マシテモ、先程ノ人員ノ點等モ附加
ヘテ申シマシタガ、左樣ナ點カラ見マシテ
モ迅速ニ處理シナケレバナラヌ、又防諜ノ
方面カラ言ヒマシテモ、機密ヲ保持スルト
云フ上カラ、迅速ニ處理ヲシナケレバナラ
ヌト云フヤウナ特殊ノ事件ニ付テノミ、戰
時中ニ限ツテ二審制度ヲ採用致シタイ、斯
ウ云フ考ヘデアリマス、三審制度ガ二審ニ
ナルノデアリマスカラ、第一審ニ關與スル
所ノ判事等ニハ十分配置等モ考ヘマシテ、
注意ヲ致シテ二審制度ノ裁判ニ當ルヤウニ
致シタイト云フコトヲ考ヘテ居リマス
尙ホ辯護人ノ數ヲ制限シタ點デアリマス
ガ、辯護人ノ數モ多ケレバ多イダケ、無論
注意ハ行屆クノデアリマスケレドモ、今日
マデ辯護人ノ事件ニ對スル數ヲ調ベマス
ト、大概平均ハ二人以下ノヤウデアリマス、
勿論事件ニ依リマシテハ、重大ナ事件デア
レバ、一ツノ事件ニ數十人ノ辯護人ガ使ハ
レルト云フコトモ私共知ツテ居リマスガ
今囘ノ如ク特殊ノ事件ニ付キマシテバ、國
防保安法ニモ先例ガアリマスルノデ、成べ
ク事件ヲ迅速、適正ニ處理シテ行クニハ
ヤハリ先例モアリマスルコトデアリマスカ
う二人ニ制限致シタイト云フコトデ、此
ノ案ヲ考ヘマシタ、勿論二人ノ辯護士ノ方
ガ、補助ノ辯護士ノ方ヲ得テ、色々調査セ
ラレルト云フコトハ無論アラウト思ヒマ
スガ、公判ニ立會ハレル方トシテハ、二人
ニ御願ヲシタイト云フヤウナ理由デ、立案
ヲ致シマシタ次第デゴザイマス
尙ホ最後ニ相談所ノ問題デアリマスガ、
是ハ商工省等ノ關係デ、私ノ方ノ關係デハ
ナイト思ヒマス、)併シ此ノ統制經濟事犯ト
云フモノハ、先程御話ノ通リ、我ガ國民ニ
ハ慣レテ居ラナイ新シイ取締規定デアリマ
ス、國民モ隨分迷惑ヲシタコトト私ハ思ヒ
マス、併シナガラ先程御話モアリマシタ通リ、
低物價政策ヲ執ル上ニ於テ、戰爭目的完遂
ノ爲ニ已ムヲ得ナイ一ツノ法規デアラウト
思ヒマス、ソレデアリマスカラ、此ノ統制
經濟事件ノ處理ニ付キマシテハ、先ヅ能ク
〓ヘルト云フコトガ、私ハ非常ニ大事ダラ
ウト思ヒマス、ソレカラ全ク法律ヲ知ラナ
イト云フコトモアル、左樣ナ點ハ十分斟酌
致シマシテ、輕重ヲ能ク甄別シテ、輕イ者、
知ラザル者、知ラズシテ犯シタト云フ者ニ
對シテハ、十分〓ヘル態度ヲ今日マデ執ツ
テ居リマス、併シ不幸ニシテ、二度モ三度
モ同種ノ犯罪ヲ繰返スト云フヤウナ惡質ノ
者ハ、是ハ已ムヲ得ナイト思ヒマス、サウ
云フ甄別ハ十分ニ致シマシテ處置ハ致シテ
居ル積リデアリマス、ドウカ左樣御諒承ヲ
願ヒマス(拍手)
〔國務大臣岸信介君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=28
-
029・岸信介
○國務大臣(岸信介君) 各種ノ經濟統制違
反防止ニ關シマシテ、物價ノ公定等ニ付キ、
其ノ他是等ノ締制ノ運營ニ付テ、政府トシ
テ一段ノ注意ヲ用フベキモノデアルト云フ
御意見ハ私共モ同感デアリマシテ、物價
統制違反ノ實情等ヲ見マシテモ、隨分此ノ
手續ガ簡便ニ圓滑ニ行ツテ居ナイトカ、或
ハ統制法規ガ十分ニ理解徹底ヲシテ居ラナ
イト云フヤウナ事柄カラ、統制違反ノ問題
ノ生ジテ來ル場合モ少クナイヤウニ思フノ
デアリマス、隨ヒマシテ物價問題ニ付キマ
シテハ成ベク公定セラルベキ價格ヲ適正
ナラシメ、且ツ其ノ公定ヲ速カニシ、同時
ニ是ガ十分ニ徹底理解サレルヤウナ方法ヲ
講ジツツアリマスケレドモ、一段トサウ云
フ點ニ付キマシテハ今後力ヲ用ヒテ行キタ
イト、斯ウ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=29
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030・田子一民
○議長(田子一民君) /三田村武夫君
〔三田村武夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=30
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031・三田村武夫
○三田 ホ武夫君只今議題トナリマシタ各
案中、戰時刑事特別法案、裁判所構成法戰
時特例案ニ付キマシテ二、三基本的ナ問
題ヲ御尋ネ致シタイト思ヒマス、最初ニ質
疑ノ要點ヲ申上ゲマス、第一、戰爭遂行ニ
支障ヲ來ス行爲、又ハ戰時下治安ヲ害スル
ガ如キ行爲ハ固ヨリ嚴罰ニ處セネバナラヌ
ガ、一君萬民、一億一家ノ道義國家タル日本
ニ於テハ上陛下ノ御聖德ト御仁慈ノ下、
億ノ人心ヲ把握シテ、全國民悉ク日常生活
ノ末端ニ至ルマデ戰爭目的達成ノ方向ト步
ミヲ同ジウセシメ、一人ノ不所存者ヲモナ
カラシムルコトガ、日本政治最高ノ指導理
念デナケレバナラス、此ノ積極的國民動員、
卽チ戰時下犯罪ノ積極的防止策ニ關シ、如
何ナル用意ト方策アリヤ、第二點、形式的
法治主義ハ、歐米征服國家ノ支配原則デア
ツテ、日本建國ノ大本タル君民一如ノ道義
政治ト根本ノ理念ヲ異ニスル、今ヤ日本ハ
外來的法治主義ノ弊習ヲ脫却シテ、道義的
德治政治ヲ確立スル必要アリト思フガ如何、
第三點、法律偏重ノ思想ハ國民ノ道德的良心
ヲ麻痺セシメ、法律ニ違反シナケレバノ考
一カ、今日如何ニ多クノ社會惡、道德惡ヲ
生ミツツアルカ、又國民思想ニ惡影響ヲ及
ボシツツアルカニ鑑ミ、道德律ヲ重視シ、道
德惡ニ對シテ峻嚴ナル制裁ヲ加フル要アリ
ト思フガ、政府ニ如何ナル用意アリヤ、第
四點、罪ハ上ニ重ク、賞ハ下ニ厚キヲ治政
ノ要諦トナス、所見如何、第五點、商工大
臣ハ此ノ戰時下ニ恥ヅベキ經濟違反ヲ絕無
ナラシメル良策ノ持合セハナイカ、第六
點裁判所事務ノ澁滯ハ下級職員ノ待遇低
劣ナルニ基因スル所多シ、政府ハ是等下級
職員待遇改善ノ用意アリヤ、以上デアリマ
ス、以下時間ノ關係モアリマスノデ、簡單
ニ所見ヲ申述ベマシテ、御意見ヲ伺ヒタイ
ト思ヒマス
先ヅ第一問、大東亞戰爭完遂ノ爲ニハ、
一億鐵丸トナツテ總進軍シナケレバナラヌ
コトハ言フマデモアリマセヌ、隨テ此
ノ大目的完遂ノ爲ニ、戰時下ニ好マシカ
ラザル犯罪ヲ防止シ、是等ノ行爲ヲ嚴罰ニ
處スルコト固ヨリ必要デアリマス、併シ今
日更ニ必要ナコトハ、眞ニ一億人心ヲ把握
スルコトデナクテハナラヌ、ソレハ冷イ法
律的監視眼ヲ以テ國民ヲ警戒スルコトニ依
ツテ達成スルノデハアリマセヌ、寧ロ廣ク
溫カク胸ヲ披イテ國民ノ中ニ勇敢ニ踏込ン
デ行ク、サウシテ其ノ日常生活ノ眞實ノ姿
ヲ把握スル、サウシテ全國民ヲシテ國家ノ
至上目的、大東亞戰爭完遂ノ目標ト步ミヲ
同ジウセシムルコトデナクテハナラヌ、吾
吾ハ大東亞戰爭勃發以來、陸海軍將兵ノ赫
赫タル武勳ニ感謝感激措ク能ハナイモノヲ
持ツテ居リマス、併シ其ノ壯絕無比、勇敢
ナル皇軍將兵諸君モ、銃後ノ國民モ、等シ
ク日本人デハアリマセヌカ、同ジ日本人デ
アリマス、同ジ日本人デアルナラバ一人
デモ不所存者ヲ出サナイコトニ努力シナケ
レバナラヌト思ヒマス、此ノ戰時下ニ恥ヅ
ベキ犯罪者ヲ作ルコトハ、國民トシテ恥辱
デアリ、國家ノ損失デアリマス、吾々ハ此
ノ大東亞戰爭完遂ノ爲ニ、先ヅ何ヲ政治運
營ノ最高理念トシナケレバナラヌカヲ考ヘ
ナケレバナラスト思ヒマス、私ハ之ヲ思フ
時歷代列聖ノ御聖德ト御仁慈ヲ先ヅ仰ガ
ナケレバナラヌト思フ、明治天皇ハ明治元
年三月十四日五箇條ノ御誓文ト御宸翰ヲ發
セラレマシタ、全國民業ニ已ニ胸ノ底深ク
疊ミ込ンデ居リマス、其ノ五箇條ノ御誓文ニ
ハ何ト仰セニナツテ居リマスカ、「上下心ヲ
一ニシテ盛ニ經綸ヲ行フベシ」「官武一途庶
民ニ至ル迄各其志ヲ遂ゲ人心ヲシテ倦マサ
ラシメン事ヲ要ス」更ニ御宸翰ノ中デ「今般
朝政一新ノ時ニ膺リ天下億兆一人モ其處ヲ
得サル時ハ皆朕カ罪ナレハ今日ノ事
朕自身骨ヲ勞シ心志ヲ苦メ艱難ノ先ニ立古
列祖ノ盡サセ給ヒシ蹤ヲ履ミ」ト仰セニナ
ツテ居リマス、億兆一人モ處ヲ得ザル時ハ
朕ガ罪デアル、今日ノ事朕自ラ身骨ヲ
勞シ、心志ヲ苦シメ艱難ノ先ニ立ツト仰セ
ニナツテ居リマス、又畏多クモ今上陛下
御卽位ノ御勅語ヲ拜シマスト、「皇祖皇宗國
ヲ建テ民ニ臨ムヤ國ヲ以テ家ト爲シ民ヲ視
ルコト子ノ如シ列聖相承ケテ仁恕ノ化下ニ
洽ク兆民相率ヰテ敬忠ノ俗上ニ奉シ土下感
孚シ君民體ヲ一ニス是レ我カ國體ノ精華ニ
シテ當ニ天地ト竝ヒ存スヘキ所ナリ」ト仰
セニナツテ居ル、民ニ臨ムヤ國ヲ以テ家ト
爲シ、民ヲ視ルコト子ノ如シト仰セニナツ
テ居ル、正ニ是レ畏多クモ一天萬乘大君ノ
御仁慈デアリマス、又此ノ戰時下ニ於テ、
如何ニ上御一人ガ其ノ深キ御仁慈ヲ廣ク、
溫カク及ボシ賜ハルカヲ吾々ハ拜察シナケ
レバナリマセヌ、明治天皇ノ御製ニハ
「子ラハ皆軍ノニハニイデハテテ翁ヤヒトリ
山出モルラム」斯ウ云フ御製ガアルノデア
リマス、大御心ハ戰線ニ思ヒヲ致サレ、銃
後ニ思ヒヲ致サレ、賤ガ伏屋ニ山田守ル翁
ノ上ニモ慈シミヲ垂レ給フノデアリマス
又今上陛下ニ於カセラレテモ、今次ノ大
東亞戰爭勃發以來、全國民ハ赫々タル武勳
ノ前ニ國ヲ擧ゲテ戰勝ニ醉ウテ居ル其ノ眞
最中、歡喜怒濤ノ如ク、戰勝ニ醉ウテ居ル
其ノ眞最中、十二月十五日畏クモ井野農
林大臣兼拓務大臣ヲ御召シニナリマシテ、
食糧事情ニ付キ御下問アラセラレタコト
ヲ、吾々ハ新聞デ拜承致シテ居リマス、井
野農林大臣ハ御前ヲ退下シテ、食糧事情ニ
付キ有難キ御下問ヲ拜シマシタコトハ恐懼
感激ニ堪ヘナイ次第デアリマス、斯ウ語ツ
テ居ル、諸君、皆悉ク陛下ノ赤子デアリ
マス、御國ノ爲メナラバ死ンデモ悔ヒナイ
日木國民、此ノ國民ノ眞ノ愛國心ヲ國家目
的ニ動員スルコトガ、今日施政ノ最高理念
デナケレバナラヌト思ヒマス、私ハ其ノ見
地カラ、此ノ戰時下ノ治安問題ニ關シテモ、
全國民ノ實生活ニ觸レテ、法律的冷眼ヲ以
テ臨ムバカリデナク、其ノ本當ノ姿ヲ把握シ
テ、眞ニ理解セシメルコトガ必要ダト思ヒ
マス、東條總理大臣モ屢、く.之ヲ言ツテ居ラレマ
ス、御氣持ハ能ク分リマスガ、具體的ナ施策ノ
上ニ、十分之ヲ念願トシテ戴キタイト申上ゲル
ノデアリマス
第二問、簡單ニ申上ゲマスガ、私ハ今日
日本ハ形式的法治主義ヲ改メテ、道義的政
治ヲ行ハナケレバナラヌト思フ、形式的法
治主義ハ人間ヲ機械化スル、形式化スル、
機械化サレ形式化サレタ其ノ國民ニハ能動
性ナク又躍動性ガアリマセヌ、今日程統制、
命令、規則、法律ノ多イ時代ハ未グ曾テア
リマセヌガ、ソレデモ尙ホ違反ハ出テ來ル、
吾々ガ玆ニ考ヘナケレバナラテコトハ法
律ヤ命令ダケデハ出來ナイコトガアル、何
カト言ヘバ、物ヲ使ツテハイカヌ、配ツテ
ハイカス、其ノ制限ハ出來マス、出來タ物
ノ配リ方、消費ノ方法ニ關シテハ制限ハ出
來マスガ、作ル行爲、卽チ積極的、能動的
作爲ニ關シテハ一片ノ法律命令ヲ以テ爲シ
得ルモノデハアリマセス、米ヤ、麥ヤ、馬
鈴薯ヲ作ツテ、作ツタ物ヲ配給シ、消費ス
ルコトニ關スル制限統制ハ出來マスガ、作
ルコトハドウシテ出來マス、オ百姓ガ田ヲ
耕シ、苗ヲ植ヱ、炎熱百何十度ヲ冒シテ田ノ
草ヲ取ラナケレバ米ハ出來ナイ、其ノ人ノ
自發的、能動的行爲ヲ必要ト致シマス、私
ハナゼ之ヲ申上ゲルカト言ヘバ、今日何人
モ知ルガ如ク、所謂革新官僚ニ對シテスラ
官僚獨善ノ聲ガアリマス、是ハ私ハ官僚ノ
罪デハナイト思フ、此ノ形式的法治主義ノ
時代的、制度的習弊ノ致サセル所デアルト
思フ、何デモ法律、命令、規則、形ヲ整へ
テ、ソレデ推シテ行ケバ物ハ決マルト云フ
考ヘガ間違ヒナノデアリマス、人間ノ魂ニ
愬ヘル作ツタ靑果物、靑物ヲ市場ニ持ツテ
行ツテ配給スルコトハ、決マリマスガ、靑
物ヲ作ルコトハオ百姓ノ自主的行爲、自分
デ作ル氣持ニナラナケレバ出來ヤシマセ
又、ドウシテ作ル積リニスルカ、ソレハ眞
ニ作ラナクテハナラヌト云フ氣持ヲ湧キ立
タセルコトデアリマス、是ガ政治ノ任務デ
アリマス、是ガナイ、法律命令、規則ダケ
デアル、ダカラ今日商工大臣隨分御苦心デ
アリマセウガ、中々產業經濟ノ運營ガ巧ク
行カナイデセウ、規則ヅクメ、法律ヅクメ、
形式ヅクメ、其ノ形式的法治主義ガ間違ヒ
デアル、日本ハサウ云フ國柄デハアリマセ
又、東洋政治道德ノ經典ト言ハレル論語ニ
ハ十分旣ニ御記憶ノコトト思ヒマスガ、
實ニ適切ナル言葉ガアリマス「政ヲ行フニ
德ヲ以テスレバ令セズシテ行ハレ、罰セズ
シテ禁ゼラル、政ヲ行フニ嚴法酷罰ヲ以テ
スレバ民免レテ恥ナキニ到ル」トアル、サ
ウナツタラ目的ハ達成サレマセヌ、維新ノ
先傑高山彥九郞ハ三條大橋ニヒレ伏シテ「玉
ノ御聲ノカカル嬉シサ」ト言ツテ、男子一生
ノ感激ニ咽ビ泣イタト言ヒマスガ、今上
陛下ガ農林大臣ヲ御召シニナツテ、國民ノ
臺所ニ食糧ガアルカト云フコトノ御下問ガ
アラセラレタコトヲ拜シタナラバ全國民
感激シナイ者ハアリマセヌ(「質問ヲシロ」
ト呼ブ者アリ)質問デアリマス、マダ時間
ハ十分經ツテ居リマセヌ、私ハ今日本デ氣
ノ付カナイ所、卽チ此ノ形式的法治主義
私ハ固ヨリ日本ハ法治國家デアリマスカラ、
法律ガ要ラヌト云フノデハナイ、法律トカ、
規則トカ、命令トカ、其ノ形式ダケニ囚ハ
レル考ヘハ間違ヒダト申シテ居ル、政治ノ
根本ハドウシテモソコニ思ヒヲ致サナケレ
バイカヌト申上ゲル
第三ニ、私ハモウ少シ道德秩序、道德律
ヲ尊重シナケレバナラヌ、而シテ道德惡ニ對
スル道德的制裁ヲ加ヘナケレバナラヌト思
ヒマス、本年ノ一月十九日デアリマシタ
カ、衣類點數制ノ實施ガ發表ニナリマシタ、
此ノ記事ハ一月二十五日ノ朝日新聞ノ記事
デアリマスガ、寳ニ驚クベキ事實ガ揭載サ
レテ居リマス.「呆レタ賣上、疑ハシイ一部
市民ノ時局認識」大體ノ要點ハ其ノ前日
ノ一月十八日ノコトデス、各「デパート」吳
服店等々ノ賣上ハ、平日ノ賣上ヨリモ平均
三倍カラ十倍ノ賣上デアルト云フ、何處カ
ラ洩レタカト云フ非難ガアリマス、私ハ何
處カラ洩レタカト云フヤウナ點ヲ追及スル
ノデハナイ、誰ガ買ツタカト云フ問題ナン
デアル、裏長屋ニ住ンデ居ル小市民デハア
リマセヌ、其ノ能力ノアル人、餘力ノアル
人ガ買ツタモノニ違ヒナイ、ソレハ道德
律ヲ缺如スルカラナンダ、法律ニ違反シナ
ケレバ宜シイ、實施ノ前日ナラ宜シイト云
フ考ヘガ間違ヒデハナイカ、私ハ其ノ道德
秩序ヲ尊重シナケレバナラヌト思ヒマス
而シテ斯ノ如キ非道德的行爲ニ對シテハ
相當ノ制裁ガ必要ダト思フ、內務省モ警
視廳モ、乃至ハ商工省モ、此ノモノニ付テ
ノ取扱ニ關シテハ御調査ニナツタ筈デアリ
マス、一ツドウデス、斯ウ云フモノヲ買ツ
タ連中ヲ調ベテ御發表ニナツタラ如何カト
思フ、是ハ道德律ニ對スル道德罰デアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=31
-
032・田子一民
○議長(田子一民君) 三田村君、時間ニ留
意セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=32
-
033・三田村武夫
○三田村武夫君(續) 近頃下駄屋サンハ、
オ正月ガ三遍來タト云フ、去年ノ暮カラ正
月ガ三遍來タト云フ
〔議長退席、副議長着席〕
私ハ斯ウ云フ法律ニ違反シナケレバ宜シイ
ト云フ考ヘヲ改メナケレバナラヌト思フ、
ソレデナケレバ如何ニ嚴法酷罰ヲ以テ國民
ニ臨ンデモ、此ノ戰時下ニ忌ハシイ犯罪ハ
ナクナラヌ、犯罪ヲナクスルコトガ立法ノ
目的、政治ノ要諦デハナイカ、私ハソレヲ
申上ゲテ居ル、最後ニモウ一點申上ゲテ置
キマス、只今司法大臣ノ提案理由ノ中ニ、裁
判所ノ事務ヲ簡捷ナラシムル爲ニ二審制度
ニスルト仰シヤツタ、併シ吾々ハ裁判所事
務澁滯ノ原因トシテ、下級職員ノ待遇ガ低
劣デアルコトヲ存ジテ居リマス、此ノ問題
ハ昨年通常議會ニモ問題トナリマシテ、有
志代議士ガ裁判所下級職員待遇改善ノ決議
案ヲ出サウトシタコトガアリマス、其ノ時ニ
大藏大臣ハ、當時ノ議員倶樂部ノ政務調査會
ノ會長デアツタ砂田重政氏ニ對シテ、此ノ
裁判所下級職員ノ待遇改善ニ關シテハ大藏
省モ十分考ヘテ居ル、豫算モ第二豫備金ノ
中ニ計上シテアリマスト答辯シテ居ラレマ
ス、是ハ文書ニ依ル非公式ノ回答デ、待遇
ハ小學校〓員乃至ハ農林技術員ト同等ノ待
遇ヲスルト云フ大藏大臣ノ意思表示デアリ
マシタガ、今日尙ホ其ノ實現ヲ見テ居リマ
セヌ、私ハ大藏大臣ニ向ツテ其ノ責任ノア
ル意思表示ヲ、此處デシテ戴キタイト思フ
ノデアリマスガ、御出席ガアリマセヌ、政
府同一體ノ原則ニ依ツテ、司法大臣カラ此
ノ裁判所下級職員ノ待遇改善問題、實ニ低
劣極マル此ノ待遇ヲ、如何ニシテ改善スル
カ、司法大臣ノ御用意、御氣持ヲ伺ヒタイ
ト思ヒマス
以上數點時間ノ制限デ論旨甚ダ不徹底デ
アリマシタガ、私ノ言ハントスル所ハ、問
題ハサウ輕々シイ問題デハアリマセヌ、
ツ國務大臣トシテ事務的ナ答辯ニ亙ラナイ
良心的ナ御所見ヲ伺ヒタイト思ヒマス( )
手
〔國務大臣岩村通世君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=33
-
034・岩村通世
○國務大臣(岩村通世君) 三田村君ノ御質
問ニ對シテ御答ヘヲ申上ゲマス、第一點ニ
村キマシテハ大體私モ同ジヤウナ考ヘヲ
持ツテ居リマス、今日司法部ト致シマシテ、
戰時下犯罪ノ積極的防止策ニ關シマシテハ
種々考ヘル所ガアルノデアリマス、先ヅ少
年ニ對シテハ、少年法ニ依リマシテ少年保
護車業ト云フモノガ行ハレテ居リマス、又
思想犯ニ對シマシテモ、思想犯保護觀察法
ニ依リマシテ、犯罪ノ防遏ニ劣メテ居ル譯
デアリマス、又一般ニ付キマシテハ司法
保護事業法ニ依リマシテ、犯罪ノ防遏ニ努
メテ居リマス、斯樣ナ次第デ、國家ノ制度
ト致シマシテ注意ハ致シテ居リマスルガ、何
ト申シマシテモ、犯罪ト云フモノハ、色々
ナ原因カラ生ズルモノデアリマシテ、今日
犯罪ガ相當多數我ガ國ニモ發生シテ居ルト
云フコトハ、洵ニ遺憾ニ存ジマス、此ノ犯
罪ノ絕滅ト云フコトハ、是ハ各國力ヲ盡シ
テ居リマスガ、中々理想ノ通リ參リマセヌ
コトハ、甚ダ遺憾デアリマスケレドモ、出
來ルダケサウ云フ方面ニ盡力ヲ致シマシテ、
一人デモ二人デモ少クナルヤウニ注意ヲ致
シタイト存ジマス、殊ニ戰時下ニ於テハ、
其ノ方面ニ出來ルダケ力ヲ盡シタイト考ヘ
テ居リマス、ソレカラ次ニハ形式的法治主
義ト云フコトハイケナイ、是ハ私モ御同感
デアリマス、唯形式的ト云フ言葉等ノ間題
ニナリマスト、色々解釋ガ違フカモ知レマ
セヌガ、形式ニノミ囚ハレテ法律ヲ運用シ
テ行クト云フコトハ、是ハイケナイト思ヒ
マス、其ノ點ニ於テハ御同感デアリマス、
殊ニ法律ハ其ノ底ニハ必ズ道德宗〓等ノ思
想ト云フモノガ流レテ居ルト思フ、法律ニ
ノミ牴觸シナケレバ、其ノ他ノ生活法則ニ
牴觸シテモ宜シイト云フノデハナイト思
フ、願ハクバ道德律ト法律ト云フモノガ相融
和シタ所ニ、私ハ正シイ法律規則ト云フモ
ノガ生レルモノダト、斯ウ考ヘテ居リマス
ソレカラ次ニ法律偏重ノ思想デアリマス
ガ、是ハ只今御答へ申上ゲマシタ所デ、大
體御諒解願ヘルト思ヒマスガ、法律ヲノミ
偏重スルト云フコトデ、國民生活ガ完全ニ
營マレルモノデハナイト思ヒマス、道德ト
云フモノガ吾々ノ生活ノ大部分ヲ支配シテ
居ルト云フコトハ、私カラ申上ゲルマデモ
ナイト思フ、ソレデアリマスカラ、古ヨリ
刑ハ刑無キヲ期ストマデ言ハレテ居ルノデ
アリマシテ、刑罰ト云フモノハ刑スル爲ニ
國家ガ法律ヲ作ツタノデハナクテ、刑罰ヲ
作ルコトニ依ツテ、犯罪ヲ撲滅スルト云フ
コトガ目的デアリ、刑ハ其ノ用ヲナサナイ
ニ至ツテ、初メテ刑ノ效用ヲ全ウシタモノ
デアルト云フコトヲ古人ガ申シテ居リマス
ガ、左樣ナ氣持ハ三田村君モ私ト同ジダラ
ウト思ヒマス
ソレカラ最後ニ裁判所事務ノ澁滯ハ、下
級職員ノ待遇ガ宜シク、ナイカラ、ソレニ基
因シテ居ルノデハナイカト云フ、是ハ御同
情アル御質問デアリマシタ、無論裁判所ノ
下級職員ト云ハズ、今日我ガ國ノ下級職員
ハ相當困難ニ打克チツツ御奉公シテ居ル
ト思ヒマス、併シナガラ一方ニ於テハ戰地
ニ於テ身命ヲ捧ゲテ働イテ居ル者モアルノ
デアリマス、ソレデ下級職員ノ待遇ニ付キ
マシテハ、特ニ此ノ點ハ留意ヲ致サナケレ
バナラヌ問題デアルト思ヒマシテ、是ガ是
正ヲ圖ルベク機會アル每ニ努力ハ致シテ居
リマスガ、マダ十分デハゴザイマセス、將
來出來ルダケノ努力ヲ拂ヒタイト存ジマス
(拍手)
〔國務大臣岸信介君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=34
-
035・岸信介
○國務大臣(岸信介君) 戰時下ニ於テ經濟
事犯ヲ絕滅スル良策ハナキカト云フ御質問
デアリマスガ、經濟事犯ノ絕滅ヲ期シマス事
柄ハ、私共豫テヨリ色々ナ方面カラサウ云
フ忌ハシイ事實ノナイヤウニト云フコトヲ
期待致シマシテ、施。策致シテ居リマスケレ
ドモ、何分色々複雜ナ關係ガアリマシテ、
此ノ方策ヲ實施スレバ直チニ絕滅スルト云
フコトモ望マレナイノデアリマス、要ハ之ニ
關係シテ居リマス者ガ總テ道義ヲ昂揚シテ、
戰時下ニ於テ斯ノ如キ事犯ヲ犯スコトヲ恥
トシテ、サウ云フコトヲ犯サナイヤウニト
云フ道義ノ昂揚ニ、結局俟ツベキモノト思
ヒマス、尙ホ政府トシテ斯ウ云フ事犯ヲ少
カラシムル爲ニ施策スベキ事柄ニ關シマシ
テハ機構ノ點、或ハ手續ノ點、或ハ統制
法規自體ヲ適正ナラシムルト云フヤウナ事
柄ニ付テ意ヲ用ヒテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=35
-
036・内ヶ崎作三郎
○副議長(内ケ崎作三郞君) 是ニテ質疑ハ
終了致シマシタ、各案ノ審査ヲ付託スベキ
委員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=36
-
037・依光好秋
○依光好秋君 四案ヲ一括シテ政府提出、
民法中改正法律案外一件委員ニ併セ付託セ
ラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=37
-
038・内ヶ崎作三郎
○副議長(內ケ崎作三郞君) 依光君ノ動議
ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=38
-
039・内ヶ崎作三郎
○副議長(內ケ崎作三郞君) 御異議ナシト
認メマス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=39
-
040・依光好秋
○依光好秋君 議事日程追加ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此ノ際政府提出、小形
船舶乘組員ノ手帳法案ヲ議題トナシ、委員
長ノ報告ヲ求メ、其ノ審議ヲ進メラレンコ
トヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=40
-
041・内ヶ崎作三郎
○副議長(内ケ崎作三郞君) 依光君ノ動議
ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=41
-
042・内ヶ崎作三郎
○副議長(內ケ崎作三郞君) 御異議ナシト
認メマス、仍テ日程ハ追加セラレマシタ、
小形船舶乘組員手帳法案ノ第一讀會ノ續ヲ
開キマス、委員長ノ報〓ヲ求メマス-理
事增永元也君
小形船舶乘組員手帳法案(政府提出、貴
族院送付)第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
一小形船舶乘組員手帳法案(政府提出、
貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十七年二月五日
委員長宮澤裕
衆議院議長田子一民殿
〔增永元也君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=42
-
043・増永元也
○增永元也君 只今議題ニナリマシタ小形
船舶乘組員手帳法案ノ委員會ノ經過竝ニ結
果ヲ、委員長ニ代リマシテ御報〓申上ゲマス
本法案ハ御承知ノ通リニ船舶乘組員ノ確
保ヲ圖リマスル爲ニ、五「トン」以上ノ小形船
舶乘組員ニ手帳ヲ持タシメマシテ、是等海
上勞務者ニ付テ其ノ配置竝ニ其ノ就業ノ狀
況ヲ明カニ致シマシテ、以テ移動防止ニ資
セントスル趣意デアリマス、此ノ法案ニ關
シマシテハ二月四日、五日ノ兩日ニ亙リ
マシテ愼重寒議致シタノデアリマス、其ノ
劈頭ニ、遞信大臣ヨリ此ノ提案ノ理由ノ說
明ニ附加ヘラレマシテ、只今我ガ國ニ於キ
マシテ最モ國民ノ關心ラ持ツテ居ル我ガ國
ノ海運竝ニ造船ノ諸方策ニ對シマシテ、政
府ノ畫策實施セントセラレテ居リマスル間
題ヲ最モ詳細ニ報〓サレタノデアリマス
此ノ法案ニ付キマシテハ各委員カラ最
モ熱誠眞摯ナ質疑ガ開陳サレタノデアリマ
シタガ、其ノ主ナルモノヲ申上ゲマスルト、
船員ノ待遇改善、ソレカラ船員ノ社會的地
位ノ向上、船員ノ〓育、養成、船員ノ需給
竝ニ船員ノ採用年齡低下ト云フヤウナ問題
ニ對シテ、各委員ヨリ非常ナ熱誠ナル要望
ガ致サレタノデアリマス、之ニ對シマシテ
政府御當局ヨリ、是等ノ適切ナル具體的措
置ヲ立テテ、速カニ是ガ實施ヲ期スル旨ノ
御答辯ガアツタノデアリマス、詳細ハ速記
錄デ御覽ヲ願ヒタイト思ヒマス
斯ク致シマシテ討論ヲ省略シテ採決ニ入
リマシテ、全員一致之ヲ可決致シタノデア
リマス、此ノ段御報〓申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=43
-
044・内ヶ崎作三郎
○副議長(內ケ崎作三郞君) 本案ノ第二讀
會ヲ開クニ御異議アリマヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=44
-
045・内ヶ崎作三郎
○副議長(内ケ崎作三郞君) 御異議ナシト
認メマス、仍テ本案ノ第二讀會ヲ開クニ決
シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=45
-
046・依光好秋
○依光好秋君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=46
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047・内ヶ崎作三郎
○副議長(內ケ崎作三郞君) 依光君ノ動議
ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=47
-
048・内ヶ崎作三郎
○副議長(內ケ崎作三郞君) 御異議ナシト
認メマス、仍テ直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、議案全部ヲ議題ト致シマス
人うか
小形船舶乘組員手帳法案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=48
-
049・内ヶ崎作三郎
○副議長(内ケ崎作三郞君) 別ニ御發議モ
アリマセヌ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長
報〓通リ可決確定致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=49
-
050・依光好秋
○依光好秋君 議事日程追加ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此ノ際政府堤出、民法
中改正法律案ヲ議題トナシ、委員長ノ報〓
ヲ求メ、其ノ審議ヲ進メラレンコトヲ望ミ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=50
-
051・内ヶ崎作三郎
○副議長(內ケ崎作三郞君) 依光君ノ動議
ニ御里議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=51
-
052・内ヶ崎作三郎
○副議長(内ケ崎作三郞君) 御異議ナシト
認メマス、仍テ日程ハ追加セラレマシタ、民
法中改正法律案ノ第一讀會ノ續ヲ開キマス、
委員長ノ報〓ヲ求メマス-委員長野村嘉
六君
〔副議長退席、議長着席〕
民法中改正法律案(政府提出、貴族院
送付)第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一民法中改正法律案(政府提出、貴族院
送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十七年二月五日
委員長野村嘉六
衆議院議長田子一民殿
〔野村嘉六君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=52
-
053・野村嘉六
○野村嘉六君 民法中改正法律案ニ付キマ
シテ、簡單ニ委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報
告ヲ申上ゲマス
本件ノ內容ハ、民法中私生子ノ名稱ヲ廢
止スルコト之ニ牽聯スル條文ノ整理竝ニ
胎兒相續權ヲ認メ、又認知ノ訴ヘハ父又ハ
母ノ死亡ノ日ヨリ三年トスル新タナル法規
ヲ設ケタ等デアリマス、私生子ナル名稱ガ
如何ニ世間ニ對シ本人ノ肩身ヲ狹クシツツ
アルカト云フコトハ申上グルマデモアリマ
セヌ、卽チ本人ニハ何等ノ罪モナケレバ何
等ノ科モアリマセヌ、然ルニ段々成長スル
ニ從ツテ、此ノ私生子ト云フ名稱ガ獨リ本
人ノ心ヲ苦シメマスコトヲ思ヒマスト、洵ニ
同情スベキコトデアルノデアリマス、殊ニ斯
カル私生子ト云フ名稱ヲ國ノ法律ニ規定ス
ルニ至リマシテハ、德義上カラ申シマシテ
モ穩當ヲ缺クコトト思フノデアル、此ノ改
正案ハ此ノ私生子ト云フ名稱ヲ除クト云
フ案デアリマスカラ、德義上営然ナリト存
ズル次第デアル、又結婚後其ノ屆出以前ニ
召集サレ、戰死ヲ致シタル場合ノ如キ、其
ノ生レタ子供ニ對シテ適當ナ保護ヲ加ヘナ
ケレバ、戰死致シマシタ忠靈ニ對シテモ相
濟マヌ譯デアリマス、仍テ胎兒ハ既ニ生レ
タモノト看做スト云フ新タナル規定ヲ設ケ
タノデアリマス、更ニ又此ノ規定ノ結果、
認知ノ訴ヘヲ父又ハ母ノ死亡ノ日ヨリ三年
ヲ期限ト致シマシタ是亦新シイ規定ヲ設ケ
タノデアリマス、申スマデモナク、是ハ私
生子ノ保護ヲ厚クシテ、現時ニ於ケル民法
ノ缺點ヲ補ヒ、是ガ爲ニ惱ンデ居ル多數ノ
人々ヲ救フト云フ考ヘカラ起シタコトデア
ルカラ、常然ナリト信ズル次第デアリマス
斯ク致シマシテ委員會ヲ開クコト四囘、
討論ヲ略シ、採決ニ當リ委員會ハ滿場一致
原案ヲ可決致シタノデアリマス、仍テ此ノ
段御報〓ヲ致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=53
-
054・田子一民
○議長(田子一民君) 本案ノ第二讀會ヲ開
クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=54
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055・田子一民
○議長(田子一民君) 御里議ナシト認メマ
ス、仍テ本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマ
シタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=55
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056・依光好秋
○依光好秋君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=56
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057・田子一民
○議長(田子一民君) 依光君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「里議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=57
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058・田子一民
○議長(田子一民君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
民法中改正法律案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=58
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059・田子一民
○議長(田子一民君) 別ニ御發議モアリマ
セヌ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告通
リ可決確定致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=59
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060・依光好秋
○依光好秋君 議事日程追加ノ緊急耐議ヲ
提出致シマス、卽チ此ノ際政府提出所得稅
法中改正法律案、法人稅法中改正法律案、
所得稅法人稅內外地關涉法中改正法律案、
相續稅法中改正法律案、織物消費稅法中改
正法律家、物品稅法中改正法律案、電氣瓦
斯稅法案、廣告稅法案、馬劵稅法案、印紙
稅法中改正法律案、臨時利得稅法中改正法
律案、特別法人稅法中改正法律案、營業稅
法中改正法律案、臨時租稅措置法中改正法
律案、國庫出納金端數計算法中改正法律案、
戰時災害國稅減免法案、所得稅等ノ日滿二
重課稅防止ニ關スル法律案及ビ地方分與稅
法中改正法律案ノ十八案ヲ一括議題トナ
シ、委員長ノ報告ヲ求メ、其ノ審議ヲ進メ
ラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=60
-
061・田子一民
○議長(田子一民君) 依光君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=61
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062・田子一民
○議長(円子一民君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程八追加セラレマシタ所得稅
法中改正法律案、法人稅法中改正法律案、所
得稅法人稅內外地關涉法中改正法律案、相
續稅法中改正法律案、織物消費稅法中改正
法律案、物品稅法中改正法律案、電氣瓦斯
稅法案、廣〓稅法案、馬劵稅法案、印紙稅
法中改正法律案、臨時利得稅法中改正法律
案、特別法人稅法中改正法律案、營業稅法
中改正法律案、臨時租稅措置法中改正法律
案國庫出納金端數計算法中改正法律案、
戰時災害國稅減免法案、所得稅等ノ日滿二
重課稅防止ニ關スル法律案、地方分與稅法
中改正法律案、右十八案ヲ一括シテ第一讀
會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報〓ヲ求メマ
ス-委員長勝正憲君
所得稅法中改正法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
法人稅法中改正法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
所得稅法人稅內外地關涉法中改正法律
案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
相續稅法中改正法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
織物消費稅法中改正法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
物品稅法中改正法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
電氣瓦斯稅法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
廣告稅法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
馬劵稅法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
印紙稅法中改正法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
臨時利得稅法中改正法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
特別法人稅法中改正法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
營業稅法中改正法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
臨時租稅措置法中改正法律案(政府提
巴第一讀會ノ續(委員長報〓)
國庫出納金端數計算法中改正法律案
(政府提出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
戰時災害國稅減免法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委日長報〓)
所得稅等ノ日滿二重課稅防止ニ關スル
法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
地方分與稅法中改正法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一所得稅法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十七年二月五日
委員長勝正憲
衆議院議長田子一民殿
報〓書
一法人稅法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十七年二月五日
委員長勝正憲
衆議院議長田子一民殿
報告書
一所得稅法人稅內外地關涉法中改正法
律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十七年二月五日
委員長勝正憲
衆議院議長田子一民殿
報〓書
一相續稅法中改正法律案(政府提出)
右ハ、本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十七年二月五日
委員長勝正憲
衆議院議長田子一民殿
報告書
一織物消費稅法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十七年二月五日
委員長勝正憲
衆議院議長田子一民殿
報告書
一物品稅法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十七年二月五日
委員長勝正憲
衆議院議長田子一民殿
報告書
一電氣瓦斯稅法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十七年二月五日
委日長勝正憲
衆議院議長田子一民殿
報告書
一廣〓稅法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十七年二月五日
委員長勝正憲
衆議院議長田子一民殿
報〓書
一馬劵稅法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十七年二月五日
委員長勝正憲
衆議院議長田子一民殿
報〓書
一印紙稅法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十七年二月五日
委員長勝正憲
衆議院議長田子一民殿
報〓書
一臨時利得稅法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十七年二月五日
委員長勝正憲
衆議院議長田子一民殿
報〓書
一特別法人稅法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十七年二月五日
委員長勝正憲
衆議院議長田子一民殿
報〓書
一營業稅法中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十七年二月五日
委員長勝正憲
衆議院議長田子一民殿
報〓書
一臨時租稅措置法中改正法律案(政府提
出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十七年二月五日
委員長勝正憲
衆議院議長田子一民殿
報〓書
一國庫出納金端數計算法中改正法律案
(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十七年二月五日
委員長勝正憲
衆議院議長田子一民殿
報〓書
一戰時災害國稅減免法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十七年二月五日
委員長勝正憲
衆議院議長田子一民殿
報〓書
一所得稅等ノ日滿二重課稅防止ニ關スル
法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十七年二月五日
委員長勝正憲
衆議院議長田子一民殿
報告書
一地方分與稅中改正法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十七年二月五日
委員長勝正憲
衆議院議長田子一民殿
〔勝正憲君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=62
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063・勝正憲
○勝正憲君 只今議題ト相成リマシタル增
稅關係各案ノ特別委員會ニ於ケル審議ノ經
過竝ニ結果ヲ御報〓申上ゲマス
是等諸法案ノ內容ハ、旣ニ過日本議場ニ
於キマシテ大藏大臣竝ニ內務大臣ヨリ詳細
御說明ガアリマシタカラ、今更改メテ之ヲ
繰返ス必要モアリマセヌガ、其ノ骨子ト致
シマスル所ハ戰時ニ於ケル財政需要ノ增
加ニ對應シテ國庫ノ收入ノ增加ヲ圖リ、之
ニ依リマシテ戰時財政ヲ强化スルト同時ニ、
其ノ結果トシテ購買力ノ吸收及ビ消費ノ抑
制ニ資セントスルノデアリマス、昨秋第七
十七議會ニ於キマシテ成立致シマシタ所ノ
間接稅ヲ中心トスル六億三千餘万圓ノ增稅
ニ引續キマシテ、今囘ハ各種ノ直接稅ヲ中
心トスル增稅及ビ電氣瓦斯稅、廣告稅竝ニ
馬劵稅等ノ新稅ヲ創設致シマシテ、平年度
分約十一億五千餘万圓ノ增收ヲ得ントスル
案デアリマス、而シテ竝ニ注意スベキコト
ハ政府ハ是等巨額ナル租稅ノ增收ヲ圖ル
ト共ニ、他ノ一面ニ於キマシテ刻下極メテ
必要ナル貯蓄ノ增强、生產力ノ擴充、產業
再編成ノ促進及ビ人口及ビ國民保健政策ノ
圓滑ナル遂行ヲ圖ル爲ニ、稅法中幾多ノ改
正ヲ加ヘ、又臨時租稅措置法ニ大ナル修正
ヲ加ヘマシテ、其ノ爲ニ三億四千八百万圓
ニ達スル歲入ヲ犠牲ニ供シ、增稅ニ依ル苦
痛ト壓迫ヲ除キ、國民負擔ノ緩和ヲ圖ツテ
居ル、斯樣ニ大イニ苦心ノ存スルコトヲ看
取シ得ル點デアリマス
本委員會ハ一月二十二日ニ成立致シマシ
テ、案ノ內容ニ付キマシテハ政府ヨリ詳細
ナル說明ガアリマシタ、引續キ質疑ニ入ツ
テ爾來十二囘ノ委員會ヲ開催致シマシテ、
愼重審議ヲシタノデアリマス、其ノ間極メ
テ重要ナル多數ノ質疑應答ガアリマシタガ、
其ノ中、案ノ內容ニ極メテ密接ナル關係ノ
アル所ノ主ナルモノニ付キ三、四點御報告
ヲ申上ゲタイト思ヒマス
先ヅ第一ニ財政ノ根本間題ニ關スルモノ
デアリマスガ、大東亞戰爭ノ進展ニ伴ヒマシ
テ、我ガ國ノ財政ハ益〓膨脹スルコトトナ
リ、隨テ國債ノ發行モ亦增加ヲスルコトト
ナツタガ、財政ノ健全性ヲ保持スル爲ニ、
租稅ト公債トノ割合ハ如何ナル程度ニスル
コトヲ滴當ト認ムルカ、斯ウ云フ質問デア
リマシタ、之ニ對シテ政府ノ答辯スル所ハ、
公債ト租稅トガ理論上ドウ云フ割合ヲ保タ
ナケレバナラナイカト云フコトハナイノデ
アツテ、要ハ戰時ニ於ケル經濟力ノ維持發
展ヲ害セザル範圍內ニ於テ、國民ノ負擔力
ヲ考へ、出來得ルダケ租稅收入ノ增加ヲ圖
ツテ、其ノ足ラザル所ヲ公債ニ依ルベキモ
ノデアル、略テ公債ト租稅トノ割合ハ、豫
メ一定シテ斯樣々々ノ割合ニ依ルベキモノ
デアルト決メル譯ニ行カナイモノデアル、
斯樣ナ答辯デアリマス
次ニ最近數次ノ增稅ニ依リマシテ國民ノ
負擔ハ相當增加シタガ、今後尙ホ增稅ヲス
ル餘地ガアリト認メルカ、將來ノ增稅ニ付
テハ如何ナル方針デアルカ、又將來ノ財政
需要如何ニ依ツテハ相當增稅ノ必要ガアリ
ト認メラレルガ、其ノ場合ニ於テ現在ノ租
稅體系デ十分デナイ場合ガ生ズルノデハナ
イカ、政府ハ將來租稅體系ヲドウスル考ヘ
デアルカ、例ヘバ賣上稅トカ財產稅トカ云
フヤウナモノヲ創設スルト云フヤウナ考ヘ
ハナイカト云フ質問デアリマシタ、之ニ對
シテ政府ハ、今囘ノ增稅ハ第七十七議會ニ
於ケル間接稅ヲ中心トスル增稅ト關聯シタ
ルモノデアツテ、相當多額ナル增稅デハア
ルガ、之ニ依ツテ將來增稅ノ餘地ナシトハ
考ヘテ居ナイ、將來增稅ヲスルヤ否ヤ、又
如何ナル程度ノ增稅ヲ行フヤニ付テハ、其
ノ際ニ於ケル經濟狀態及ビ國民擔稅力等ニ
付テ愼重考慮ヲ要スルカラ、今具體的ニ之
ヲ述ベルコトハ出來ナイ、又將來ノ增稅ニ
關聯シテ租稅體系ヲ如何ニスルヤニ付テハ、
現在ノ稅制ヲ以テ何處マデモ行キ得ルトモ
考ヘナイケレドモ、現在ノ所、租稅體系ヲ
根本的ニ變更スル考ヘハ持ツテ居ナイ、文
賣上稅ハ非常時財源ヲ得ル爲ニハ相當注目
ニ値スル稅種デアルケレドモ、物價ニ對ス
ル影響其ノ他ノ點ニ付テ十分考究スルヲ要
スルノデ、今囘ノ增稅案ニ於テハ是ノ採用
ヲ見合ハシタノデアルガ、今後十分考究ス
ルコトニシタイ、又財產稅ニ付テハ本稅
ハ不動產重課ニ傾キ易ク、)課稅技術上ニ於
テモ相當困難ガアリト認メラルルカラ、本
稅ニ付テハ愼重考究ヲ要スル旨ノ答辯ガア
リマシタ
又其ノ次ニハ、戰時ニ於ケル租稅トシテ
ハ平時ニ於ケル租稅トハ異リマシテ、必ズ
シモ負擔ノ公平ノ見地ノミニ囚ハレルコト
ナク、少額ト雖モ國民ニ成ベク廣ク、普遍
的ニ租稅ヲ負擔セシムルヲ適當ト認ムル
ガ、之ニ對スル政府ノ所見ハドウデアルカ
ト云フ質問デアリマシタガ、之ニ對シテ政
府ヨリ、戰時ニ於テハ必要ナル費用ヲ國民
ノ負擔ニ依ツテ調達スル必要上、負擔ノ公
平ノミニ囚ハルルコトハ必ズシモ適當トハ
認メラレナイ、此ノ見解ニ付テハ全ク政府
モ同樣ナ意見ヲ有スル旨ノ答辯ガアツタノ
デアリマス
次ニ、戰時ニ於テハ租稅ニ依ツテ極メテ
多額ノ收入ヲ確保スル見地ヨリ見ル時ハ
消費稅及ビ流通稅ノ擴充ヲ圖ルノ必要ガア
リハシナイカ、是ハ納稅者ノ心理ヨリ見テ
モ適當ト認ムルガ、政府ハドウ考ヘルカト
云フ質問ニ對シマシテ、政府ヨリ、是等ノ
點ニ付テハ今後十分〓究スル旨ノ答辯ガア
リマシタ
次ニ、今囘ノ增稅ハ臨時的ノモノデアル
カ、若シ臨時的ノモノデアルトスルナラバ、
戰後輕減セラレルコトヲ期待シテ然ルベキ
モノデアルカト云フ質問ガアリマシタ、之
ニ對シテ政府ヨリ、今囘ノ大東亞戰爭ハ相
當長期ニ互ルモノト認メラレルノミナラ
ズ、大東亞ノ建設其ノ他ニ付テモ相當資金
ヲ要スル關係上、財政上ノ需要モ相當長期
ニ亙ツテ多額ヲ要スル見込デアルカラ、租
稅負擔ヲ輕減シ得ル事態ハ中々容易ニ來ナ
イモノト認メラレル旨ノ答辯ガアツタノデ
アリマス
次ニ、今次ノ增稅案ニ依レバ、株式所得ノ
負擔ハ相當ニ加重セラレルモノト認メラレ
ルガ、之ニ依ツテ生產力擴充ニ差障リヲ來
ス虞ハナイカ、又銀行預金、貯金ニ對スル
綜合所得稅ノ源泉課稅ヲ廢止スルノ考ヘハ
ナイカト云フ質問ニ對シマシテハ、政府ハ、
今回ノ增稅案ノ作成ニ當ツテ、稅率ノ按配
等ニ關シテ、生產力擴充ニ付テハ十分考慮
シテ決定シタル次第デアツテ、尙ホ配當所
得ニ付テハ綜合所得稅ヲ課スル場合ニ於
テ加算稅ヲ廢止スルコトトシ、又時局產業
會社等ノ新規拂込株式ノ配當金ニ付テハ分
類所得稅ヲ輕減スルコトトシテ居ルカラ、配
當所得ノ負擔加重ニ依ツテ直チニ生產擴充
ヲ阻碍スルモノトハ考ヘラレナイ、又銀行
ノ預金等ノ利子ニ對スル源泉課稅ノ制度ハ
旣ニ多年ニ亙ツテ行ヒ來リタル關係、モアリ、
殊ニ戰時ノ財政金融上ニ及ボス影響ニ付テ
懸念セラルルガ如キ措置ヲ執ルコトハ戒
愼ヲ要スルカラ、當分ノ內本制度ヲ存續ス
ルヲ以テ適當ト認メルト云フ意味ノ答辯ガ
アリマシタ、又今囘ノ增稅ニ依リマシテ預
金、貯金ノ減少ヲ招來スル虞ハナイカト云
フ質問ニ對シマシテ、政府カラ、今囘ノ增
稅ニ依ツテ預金利子ニ對シテ他ノ所得トノ
振合上相當負擔ハ加重トナツタケレドモ、
戰時下ノ此ノ際トシテハ洵ニ巳ムヲ得ザル
所デアルガ、一面臨時租稅措置法ニ於テ長
期預金ニ對スル課稅ヲ輕減スル等、各種ノ
措置ヲ講ジテアルカラ今囘程度ノ增稅ニ
依ヅテ貯蓄ノ減少ヲ來ス虞ハナイ旨ノ答辯
ガアリマシタ、其ノ他多數ノ有益ナル質問
應答ガアリマシタガ、是ハ速記錄ニ讓リマ
ス
唯此ノ際特ニ御報告申上ゲタイコトハ、
本委員會ニ於ケル大體ノ空氣デアリマス、
本案ハ昨年第七十七議會ニ於テ六億三千
餘万圓ノ間接稅ノ增稅ニ引續イ、今囘又重
ネテ直接稅ヲ主トスル十一億五千万圓ノ增
稅デアリ、國民ノ負擔ハ急激ニ增加ヲ來ス
ノデアリマス、今囘ノ增稅ヲ以テ國民ハ實
ニ一戶平均百二十餘圓ノ負擔ノ增加ヲ來ス
ト云フ洵ニ重大ナル增稅案デアリマス、然
ルニ拘ラズ、今日此ノ重大ナル時局ニ直面
シテ居ル銃後國民ハ、是等ノ負擔ハ喜ンデ
之ニ應ズベキモノデアルト云フ意氣ヲ示
シマシテ、增稅ニ對スル苦情ガマシキ何等
ノ質問モナク、又修正削減ヲ意味スルヤウ
ナ何等ノ質疑等モナカツタコトデアリマス
斯クテ本日討論ニ入リマシテ、翼賛議員
同盟ヲ代表シテ川崎末五郞君、同交會ヲ代
表シテ大石倫治君、第一控室ヲ代表シテ河
野密君、興亜議員同盟ヲ代表シテ松永義雄
君ヨリ、ソレ〓〓原案贊成ノ意見ノ陳述ガ
アリマシタ結果、全會一致ヲ以テ政府原案
ヲ可決スルコトニ相成リマシタ、此ノ段御
報告申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=63
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064・田子一民
○議長(田子一民君) 十八案ノ第二讀會ヲ
開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=64
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065・田子一民
○議長(田子一民君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ十八案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマ
シタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=65
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066・依光好秋
○依光好秋君 直チニ十八案ノ第二讀會ヲ
開キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ
通リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=66
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067・田子一民
○議長(田子一民君) 依光君ノ動議ニ御異
議アリマセスカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=67
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068・田子一民
○議長(田子一民君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ十八案ノ第一一讀會ヲ開キ、
議案全部ヲ議題ト致シマス
所得稅法中改正法律案
第二讀會(確定議)
法人稅法中改正法律案
第二讀會(確定議)
所得稅法人稅內外地關涉法中改正法律
案第一讀會(確定議)
相續稅法中改正法律案
第二讀會(確定議)
織物消費稅法中改正法律案
第二讀會(確定議)
物品稅法中改正法律案
第二讀會(確定議)
電氣瓦斯稅法案第二讀會(確定議)
廣〓稅法案第二讀會(確定議)
馬劵稅法案第二讀會(確定議)
印紙稅法中改正法律案
第二讀會(確定議)
臨時利得稅法中改正法律案
第二讀會(確定議)
特別法人稅法中改正法律案
第二讀會(確定議)
營業稅法中改正法律案
第二讀會(確定議)
臨時租稅措置法中改正法律案
第二讀會(確定議)
國庫出納金端數計算法中改正法律案
第二讀會(確定議)
戰時災害國稅減免法案
第二讀會(確定議)
所得稅等ノ日滿二重課稅防止ニ關スル
法律案第二讀會(確定議)
地方分與稅法中改正法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=68
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069・田子一民
○議長(田子一民君) 別ニ御發議モアリマ
セヌ、第三讀會ヲ省略シテ、十八案トモ委員
長報告通リ可決確定致シマシタ(拍手)是ニ
テ議事日程ハ議了致シマシタ、次會ノ議事
日程ハ公報ヲ以テ通知致シマス、本日ハ是
ニテ散會致シマス
午後三時五十一分散會
衆議院議事速記錄第九號中正誤
一四六頁四段四行(安藤正純君演說)「一億一心
ノ畸形兒」ハ「一億一億心ノ畸形兒」ノ誤植発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913242X01019420205&spkNum=69
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