1. 会議録本文
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000・会議録情報
會議
昭和十七年二月七日（土曜日）午前十時二十六分開議
出席委員左の如し
委員長 野村嘉六君
理事 原惣兵衞君 理事 松木弘君
理事 鹽川正藏君 理事 山本粂吉君
石坂繁君 高橋義次君
立川平君 長井源君
服部英明君 馬場元治君
古島義英君 松川昌藏君
一松定吉君 佐竹晴記君
北浦圭太郎君
出席國務大臣左の如し
司法大臣 岩村通世君
出席政府委員左の如し
司法次官 大森洪太君
司法省民事局長 坂野千里君
司法省刑事局長 池田克君
司法省調査部長 齋藤直一君
本日の會議に上りたる議案左の如し不動産登記法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）
戰時に於ける領事官の裁判の特例に關する法律案（政府提出、貴族院送付）
戰時民事特別法案（政府提出、貴族院送付）
戰時刑事特別法案（政府提出、貴族院送付）
裁判所構成法戰時特例案（政府提出、貴族院送付）発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=0
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001・野村嘉六
○野村委員長 是カラ開會致シマス-山
本君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=1
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002・山本粂吉
○山本(粂)委員 私ハ裁判所構成法ノ戰時
特例案、戰時刑事、戰時民事兩特別法案ノ
三案ニ付テ、同僚諸君ノ質問ガ多數アリマ
スカラ、詳細ナ點ハ他ノ委員ニ御讓リ致シ
マシテ、極メテ大綱ノ點ニ付テ御尋ネ致シ
タイト思ヒマス
第一點ハ戰時體制下デハアリマスルケレ
ドモ、日本ノ司法制度ハ其ノ立案ノ當時大
體歐米流ノ司法制度ヲ取入レタノデアリマ
シテ、隨テ歐米臭ガ多分ニ含マレテ居ルコ
トハ疑ヒガナイ、ソコデ私ノ御尋ネ致シタ
イコトハ、今日此ノ際我ガ國ノ司法制度ニ
付テ根本的ノ改革ヲスル御意思ガアルカド
ウカ、卽チ凡ユル部面ニ付テ新シイ體制ノ
確立ガ叫バレテ居ル今日デアリマスシ、又
ソレガ着々實現シテ居ル今日デアリマス、
殊ニ經濟機構ノ如キニ至ツテハ、先ヅ私共
ノ承知スル範圍ニ於テハ、契約自由ノ原則
ダトカ、或ハ自由主義經濟機構ニ基イタ個
人ノ權利義務關係ヲ基本ニシタ經濟體制ハ
是正セラレマシテ、所謂國家最高目的遂行
ニ必要ナル程度ニ總テガ統制セラレテ居ル
ロトハ、今日ノ實情デアリマス、其ノ經濟
社會ノ實情ニ卽シタ法制ノ根本的改革ノ必
要ガアルコトハ、異論ガナイト思フノデア
リマスガ、其ノ點ニ付テ我ガ國ノ司法制度
ヲ時代ニ卽シタヤウニ根本的改革ノ意思ガ
アルカドウカ、先ヅ此ノ一點ヲ御伺ヒ致シ
タイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=2
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003・大森佳一
○大森政府委員 只今ノ御質問洵ニ御尤モ
ニ存ズルノデアリマス、司法制度ニ付キマ
〃
シテモ日本的精神ニ立脚ヲシマシテ多々考
慮ヲ要スル點ガアルダラウト思フノデアリ
マシー今日御審議ヲ願ツテ居リマスル裁判
所構成法ノ戰時特例ニ付キマシテハ、昨日
モ申述ベマシタ通リ、此ノ戰時下洵ニ已ム
ヲ得ザル問題デアリマシテ
〔委員長退席、松木委員長代理着席〕
暫ク此ノ點デ御辛抱ヲ願ヒタイ、斯ウ云フ
趣旨ニ外ナラナイノデアリマス、平和克服ニナ
リマスルナラバ、又平和克復ニ至リマセヌ
デモ、是ガ建設戰ニデモ移リマスルナラバ、
吾々ソレ〓〓十分ニ考慮ヲ拂ヒマシテ、相
當雄大ナ理想ヲ立テテ、着々其ノ改正ニ調
査ヲ進メタイト存ズル次第デアリマス、尙
ホ裁判所構成法ノ問題ハ暫ク別問題ト致シ
マシテ、其ノ他ノ司法制度ニ付テ御指摘ノ
ヤウナ改善ヲシナケレバナラナイコトハ、
私共十分ニ心懸ケテ居ルノデアリマシテ、
例ヘバ調停制度ヲ近頃適正ニ利用シツツア
リマス、保護ノ制度ニ付テモ相當成績ヲ擧
ゲテ居ルヤニ存ズルノデアリマス、是等ハ
或ルモノハ旣ニ古來ヨリアツタモノモアリ、
又例ヲ西洋ニ做ツタモノモアリマスケレド
モ、其ノ精神ノ發揚ニ付テハ確カニ日本式
デアツ.テ、世界ニ誇ル實績ヲ此ノ我ガ日本
デ擧ゲ得ルモノダト存ジテ居ル次第デアリ
マス、卽チ司法制度ノ全般ニ付テ、我國古
來ノ習俗ヲ加味シテ大イニ改善ヲシナケレ
バナラナイコトハ、全ク御說ノ通リニ考ヘ
テ居ルノデアリマス、今後其ノ方面ニ十分
ノ努力ヲ捧ゲタイト」考へテ居ル次第デアリ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=3
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004・山本粂吉
○山本(粂)委員 御意思ノ程能ク了承致シ
マシタガ、司法制度ノ大革新ヲスルト云フ
御方針ノ下ニ、雄大ナル理想デ計畫ヲ進メ
タイト云フ御意向モ能ク分リマシタガ、更
ニ一步ヲ進メテ先程モ一寸觸レマシタヤウ
ニ、日本ノ私法卽チ商法、民法等ノ規定ガ、
舊來ノ個人ノ權利義務ヲ基礎ニシタ立法ノ
立テ方デアリマシテ、今日ノ經濟生活ト吻
合致シマセヌ、事每ニ停止サレテ居ル條文
ガ相當ニ多イ、他ノ法律ニ依ツテ掣肘ヲ受
ケテ、發動シ得ザル條文ガ相當ニアル、是
ガ大東亞戰爭ガ終結スレバ、直チニ自由主
義經濟機構ニ還ツテ、個人ノ權利義務ヲ基
本ニシタ舊來ノ私法デ律シ得ラレルカト云
フト、是ハ恐ラク望ミ得ナイコトデアリマ
シテ、卽チ思想的ニモ經濟機構ニ對スル考
ヘ方ガ、根本的ニ世界的ニ變ツテ來タノデ
アリマスカラ、之ニ對應スル私法ノ改革ヲ
スルコトガドウシテモ必要ダト思フノデア
リマス、實情ニ卽セザルモノヲ其ノ儘ニ放
任シテ置イタナラバ、死文ニナツテシマフ、
ソレデハ却テナキニ如カズ、ソレヨリモ今
カラ司法當局ニ於テ御計畫ニナラレテ、
大調査機關デモ御設ケニナツテ、今日ノ經
濟體制、國民經濟生活ヲ基礎ニシテ、ソレ
ニ對應シ得ルヤウニ、民法商法等ノ私法關
係ヲ改革スル御意思アリヤ否ヤヲ承リタイ
ノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=4
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005・大森佳一
○大森政府委員 御示シノ通リ現行民法及
ビ商法ノ下ニ於キマシテ、現在ノ經濟情勢
ニ卽應シナイ規定ノ相當ニアルコトハ、私
共モ考ヘテ居ルノデアリマス、只今御鞭撻
ニ相成リマシタヤウニ、司法部ノミガ時局
ニ遲レテ居ルト云フコトハ申譯ガナイコト
デアリマス、私共モ大イニ時局ニ目覺メマ
シテ、是等ノ法規ノ整備ニ當リタイト存ジ
テ居リマス、尤モソレニ付キマシテハ御指
摘ニナリマシタヤウニ、調査機關ト云フヤ
ウナモノモ必要デアリマセウ、ガ併シ、先
ヅ少クトモ吾々內部ニ於キマシテ調査ヲ始
メマシテ、然ル後ニ如何ナル調査機關ヲ必
要トスルカト云.フヤウナコトヲ檢討致シテ
行キタイト存ズルノデアリマス、隨ヒマシ
テ直チニドウ云フ調査機關ヲ設ケルカト云
フコトヲ御答ヘスル程度ニハ參ツテ居リマ
セヌケレドモ、吾々ニ左樣ナ點ニ付テ十分
〓究ヲシタイ熱意ノアル所ハ、十分ニ御諒承
ヲ願ヒタイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=5
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006・山本粂吉
○山本(粂)委員 諒承致シマシタ、更ニモ
ウ一點關聯シテ御伺ヒシタイノデアリマス
ガ、最近マデニ司法一元化ガ相當ニ强ク叫
バレテ居リマシテ、司法常局ニ於テモ之ニ
御留意ノ上、大分一元化ニ向ツテ實績ガ擧
ツテ居ルコトハ、私モ之ヲ認メテ居リマス、
併シ未ダシノ感ナキニアラズデアリマシテ、
モウ一步進メテ、今日人的資源ノ缺乏シテ
居ル折柄、他面ニ於テハ在野法曹ノ活動ス
ベキ部面ガ縮小セラレツツアルコトモ考慮
ニ入レテ見マスト、司法一元化ノ實現ラス
ルノニ、極メテ好イ機會デハナイカト考ヘ
ラレルノデアリマス、此ノ點ニ付テ、從來
ノ御方針モ一元化ニ努力サレテ居ルノデア
リマスケレドモ、更ニソレヲ擴大セラレテ、
ヨリ多ク在野法曹ヨリ判檢事ヲ登用セラレ、
サウシテ一面ニ於テハ人的要素ノ充實ヲ圖
リ、一面ニ於テハ民間有能ノ士、知識經驗
者ヲ採用シ、而シテ所謂戰時下ニ於ケル敏
速ナル裁判ヲスルニ練達堪能ノ士ノ必要ナ
ル今日デアリマスカラ、ソレ等ノ點カラ考
ヘテモ、此ノ際一ツ一段ト御考慮ヲ願ツタ
ラ如何カト思ヒマスガ、從來通リノ御腹案
デオイデニナルノカ、更ニ强化シテヨリ多
ク一元化實現ニ努力サレルト云フ御考ヘデ
アリマスカ、此ノ點ヲ御伺ヒ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=6
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007・大森佳一
○大森政府委員 法曹一元化ノ問題ニ付キ
マシテハ、法律上ノ組織ヤ制度ト致シマシ
テ、之ヲ一元化スルト云フコトハ、蓋シ根
本法制ノ變ツテ居リマスル我ガ日本ニ-
成程外國ニ於キマシテハ法曹一元化ノ國モ
アリマスケレドモ、直チニソレト基調ヲ一
ニスルト云フコトハ、是ハ不可能デアラウ
ト思ヒマス、俳シナガラ實質ニ於キマシ
テ、私共在野法曹ノ諸君ノ御支援ヲ願ヒタ
イコトニ付テハ、是ハ今日ニ於テ益〓其ノ必
要ヲ痛感シテ居ルノデアリマス、御承知ノ
ヤウニ段々ト手不足ニナツテ參リマスルカ
ラ、ドウシテモ在野法曹ノ方カラ御支援ヲ
願ハナケレバ、司法ノ運用ノ全キヲ期スル
コトガ出來ナイノデアリマス、成程御指摘
ノヤウニ、、在來モ其ノ方針デ進ンデ居リ
マシタケレドモ、在來以上ニ更ニ遙カニ御
支援ヲ願ヒタイノデアリマス、私共ノ方カ
ラ辯護士諸君ニ御願ヒヲ致シマシテ、ドウ
カコチラノ方へ來テ下サイマセヌカト御依
賴致シマシテモ、俺ハ御免ヲ蒙ルト云ツタ
ヤウナ方モ是マデハ少クナカツタノデアリ
マス、ドウカ今後ハサウ云フコトノナイヤ
ウニ、私共モ手ヲ擴ゲテ歡迎致シマスカラ、
辯護士諸君ノ方カラモ進ンデ吾々ノ方ニ御
入リ下サルヤウニ十分ノ御配慮ヲ願ヒタ
イト存ズルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=7
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008・山本粂吉
○山本(粂)委員 能ク分リマシタ、更ニ進
ンデ、皇軍ノ赫々タル武動ノ結果、南方地
域ニ於ケル我ガ國ノ占領地域ガ着々擴大セ
ラレテ居ル、之ニ對シテ軍政下ニ於テモ陸
軍、海軍共ニ相當國內ニ於ケル有能ノ士ヲ、
或ハ顧問、囑託ニ任用サレテ、是等占領地
域ノ政治ノ萬全ヲ期シテ居ラレルコトハ御
承知ノ通リデアリマス、ソコデ其ノ南方地
域ノ治安維持、秩序維持ト云フヤウナ點カ
ラ、司法官ノ進出モ亦相當必要ナリト思料
スルノデアリマスガ、此ノ點ニ付テ司法大
臣ハ何カ特段ナル御考ヘヲサレテ居リマス
カ、御所見ヲ伺ヒタイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=8
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009・岩村一木
○岩村國務大臣 只今御尋ネノ通リ、南方
占領地域等ニハ相當ニ人ヲ要スルコトニナ
ツテ居リマス、殊ニ只今ノ所ハ軍政下デア
リマスルケレドモ、旣ニ今日ニ於テモ司法
ニ關スル事務ニ堪能ナル人ヲ要スルコトガ
多々アル、數ヲハツキリ申上ゲルノハ如何
カト思ヒマスルケレドモ、相當數現ニ南方
ヘ參ツテ居リマス、南方へ參ツテ居リマス
者ノ色々調査報告、等ニ依リマシテ、更ニ如
何ナル方面ニ司法當局トシテ考ヘナケレバ
ナラヌカ云トフヤウナ問題モ分ツテ居リマ
ス、只今斯樣ナ準備ヲ致シテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=9
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010・山本粂吉
○山本(粂)委員 次ニ裁判所構成法ノ戰時
特例ニ關スル點ニ付テ一、二點御尋ネシタイ
ノデスガ、其ノ一點ハ裁判所構成法ノ戰時
特例ヲ規定セラレナケレバナラナイ理由ハ、
昨日來ノ御說明ニ依ツテ能ク諒承致シテ居
リマス、之ヲ要約致シマスト、結局人的ニ
非常ニ缺クル所ガアルト云フコトガ一ツ
ト、戰時下デアルカラ急速ニ事件ヲ處理シ
タイト云フコトガ一ツ、サウ云フ理由デ裁
判所構成法ノ戰時特例ヲ御設ケニナルト云
フノデアリマスカラ、此ノ點ハ異論ガアラ
ウ筈ハナイノデアルカラシテ、私モ根本的
考ヘ方ニ付テハ決シテ贊成スルニ吝デハナ
イ、併シナガラ此ノ戰時特例ヲ御設ケニナ
ツタ目的ト、而シテ此ノ戰時特例ノ規定ト
ヲ對照致シマスト、ドウモ是デハ政府ノ企
圖スル目的ヲ達シ得ルヤ否ヤニ付テノ疑問
ガアルノデアリマス、ソレハ先ヅ第一ニ控
訴審ヲ廢シテ直チニ上告ヲ認メル、是デ果
シテ急速ニ事件ノ解決ガ付クカドウカ、果
シテ人物經濟ニナルカドウカ、此ノ點ニ付
テ私ハ疑問ガアル、今日マデノ裁判ノ審理
ノ實情ヲ見マスト、一審ノ事件デ是ガ控訴
トナリ上告トナリ、其ノ一審ノ裁判期間
ト、控訴審ノ裁判期間ト、上告審ノ裁判期
間トヲ檢討致シマスト、控訴審ヲ除イタ
カラト云ツテ、其ノ代リ直チニ上告ヲ認メ
ルコトニナルト、控訴スベカリシ事件ハ多ク
上告ニ持ツテ行カレルコトヲ豫想シナケレ
バナラヌ、サウスルト.政府ノ企圖スルヤウ
ニ人物經濟ニナルトモ豫想出來ナイ、寧
ロ餘計ナ人ガ必要トナツテ來ルカモ知レ
ナイ、卽チ相當知識經驗ヲ有シ、之ヲ上
告審トシテ裁クニ適當ナル判事ノ必要ナ
ルコトハ多言ヲ要シナイ、サウ云フ風ニ
事件ガ多クナリ、人物ガ餘計ニ要ルト云
フコトニナルト、人物經濟ニナラナイ、
他面事件ガソコニ集結スレバ、勢ヒ審理
期間ガ延ビテ、從來上〓審ハ大體三箇月以內
デ片ガ付クノガ多イノデアリマスガ、五箇月、
六箇月ト云フノモ相當ニアル、一、二箇月
デ片付クノハ統計カラ云ツテ極メテ少イ、
ソレガ更ニ五箇月、六箇月ガ普通トナリ、
甚ダシキニナルト、一年或ハ十箇月モ要ス
ルヤウニナラナイトモ斷言出來ナイ、斯ウ
云フ見地カラ考ヘテ見ルト、私ノ狹イ經驗
カラ言フト、ドウ.モ控訴審ヲ廢シテ上告ヲ認
メルコトニ依ツテ、政府ノ企圖スルヤウナ
目的ヲ達セラルルカニ付テ疑問ガアリマス
カラ、此ノ點ニ付テ何カ政府ニハ斯ウ云フ
風ニナラウト豫想セラルルカラ斯ウ云フ人
物經濟ニモナリ、期間ノ短縮卽チ急速解決
モ出來ルノダト云フ、豫想ナリ理想ナリガ
オアリナラバ承リタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=10
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011・大森佳一
○大森政府委員 御尤モノ御質疑ト存ズル
ノデアリマス、兎ニモ角ニモ三審級制ヲ二
審級ニシタノデアリマスルカラ、人物經濟
ノ點ニ付テハ、幾ラカ效果ヲ生ズルト思ツ
テ居ルノデアリマス、勿論三審級ヲ二審級
ニシマシタ所デ、仰セノ通リニ上告ノ數ハ
確カニ殖エテ參リマセウ、又二審級ニ致シ
マシタ結果、第一審ヲ極メテ愼重ニシナケ
レバナラナイ關係モアリマスルカラ、三審
級ヲ二審級ニシタガ爲ニソレダケノ手數ガ
當然直チニ省ケルトハ存ジマセヌ、ケレド
モ兎ニ角控訴審ノ省略ト云フコトニナリマ
スレバ、相當ノ其ノ點ニ於ケル效果ハ擧ゲ
ルコトト私共ハ確信ヲ致シテ居ル次第デア
リマス、尤モ計數等ノ詳細ニ付キマシテ、
後ニ資料ヲ差上ゲマスカラ、之ニ付テ申述
ベタイト存ズルノデアリマス、只今申述べ
マシタコトヲ要約致シマスト、兎ニ角控訴
審ヲ省略シタノデアリマスルカラ、多少ノ
手ノ空クコトハ是ハ當然ダラウト思ヒマス、
併シナガラ、ソレダト言ツテ上〓ノ殖エル
コトモ考ヘナケレバナリマセヌシ、第一審
ヲ少クトモ今日ヨリハ遙カニ愼重ニシナケ
レバナラナイト云フコトハアリマスカラ、
眼ニ見エル程ノ效果ハ或ハナイカモ知レマ
セヌ、併シ控訴審省略ニ依ツテ相當ノ人員
ノ空キヲ生ズルト云フコトダケハ、私共確
信的ノ考ヘヲ持ツテ居ル次第デアリマス、
尙ホ人員ノ配置ノ點デアリマスガ、此ノ運
用ニ依リマスルト、全國ノ地方裁判所ニ於
テ多少ノ手ノ空キヲ生ズルト思ヒマス、其
ノ手ノ空キノ一部ヲ控訴院ニ上ゲマシテ、
上告審ノ增加ニ之ヲ充當致シ、又其ノ一部
ヲ區裁判所ニ移シマシテ、サウシテ區裁判
所第一審事件ノ審理ノ完璧ヲ期シタイ、斯
樣ニ思ツテ居リマス、將來ノコトデアリマ
スルカラ、極メテ茫漠タル豫想ニハ過ギマ
セヌケレドモ、私共此ノ案ニ依リマシテ、
相當ノ效果ハ擧ゲタイト意氣込ンデ居ル次
第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=11
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012・山本粂吉
○山本(粂)委員 成程相當ノ人物經濟ニモ
ナリ、審理促進ノ確信ガオアリダト仰シヤ
ラレタノデスガ、ソレハサウデアリマセウ、
兎ニ角一審拔クノデアリマスカラ、觀念的
ニハサウ云フコトガ言ヘル、又ソレガナケ
レバ本改正ノ理由ガ全然ナイノデアリマス
カラ、サウ云フ御確信ノアルコトハ諒承致
シマスガ、一體上告ヲ認メテ控訴ノ事實審
理ヲナクスルト云フコトガ、私ハ國民感情
ト司法省ノ取扱ヒトガ疎隔スルヤウナ感ジ
ガ致スノデアリマス、專門的法律家カラ言
ヘバ別トシテ、一般國民的感情カラ言フト、
上〓ヲシテ甲ノ法律デ罰セラレテモ、乙ノ
法律ヲ適用サレテモ、例ヘバ詐欺デ罰セラ
レテモ、橫領デ罰セラレテモ、或ハ竊盜デ
罰セラレテモ、サウ法律適用ガ間違ツテ居
·タカラト云ウテ、國民ノ方カラ言フト一般
的ニ大シタ問題デハナイ、懲役三箇月ハ懲
役三箇月、懲役六箇月ハ懲役六箇月デアル、
ソレヨリモ本當ノ事實ヲ把握シテ戴イテ、
其ノ事實ヲ探究シテ、其ノ事實ニ卽シタ裁判
ヲシテ貰フト云フコトガ國民ノ要望スル所
デアル、又戰時下ナルガ故ニ、法律適用トカ
解釋トカ云フコトニ付テ、或ハ一ツノ大審
院上〓裁判所ニ於テ取扱フノトハ、法ノ
解釋、適用等ニ多少食違ヒガ出來マシテモ、
卽チ從來ノ如ク大審院ガ解釋ヲ統一シテ居
ル時代ト違ツテ、大審院ノ上告ヲナクスレ
バ區々ナ解釋モ豫想セラレマスケレドモ、
ソレハ戰時下ナルガ故ニ我慢ガ出來ル、卽
チ法ノ適用ヲ斯ウスベキダトカ、法ノ解釋
ヲ斯ウスベキダト云フコトハ、大體ニ於テ
大審院ガ其ノ說明ヲ加ヘテ行キサヘスレ
バ、サウ澤山間違フモノデハナイ、又偶〓、
間違ツタ法ノ解釋ガアツタトシテモ、ソレ
ハ戰時下ナルガ故ニ、國民的感情カラ言ヘ
バ我慢ガ出來ル、ソレヨリモ我慢ガ出來ナ
イノハ、事實ニ付テ親切丁寧ニ、而シテ眞
實發見ノ眞摯ナ態度デ御取調ヲ願ツテ、事
實ニ卽シタ所謂適正妥當ノ裁判ヲシテ貰フ
ト云フコトガ、國民ノ要望スル所デアリマ
ス、サウ致シマスト政府ガ企圖スルヤウニ、
迅速急速ニ事件ヲ處理スルト云フコトト、
人物經濟ト云フ二ツノ目的ヲ達スルコトノ
爲ニ、戰時特例ヲ設ケルト云フノナラバ、
寧ロ上〓審ヲ廢シテ、事實審理ヲモウ一遍
シテヤル、ドウモ一審ダケデハ不安心ダ、
モウ一遍調ベテヤルト云フコトニシテ、控
訴院ノ事實調ヲ是認シテ、上告審ヲ廢メテ、
戰時下ダカラ法律ノ解釋、或ハ又不統一ガ
アツテモ我慢シロト云フコトノ方ガ、私ハ
戰時下ナルガ故ニ國民的感情ト一致スルト
思フノデスガ、此ノ點ニ對スル御考ヘハ如
何デスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=12
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013・大森佳一
○大森政府委員 只今ノ御議論ハ、戰時下
ニ於テ審級ヲ一ツ省略スルモ已ムヲ得ザル
モノトシテ、所謂二審級ニスルコトハ蓋シ
已ムヲ得ザルモノトシテ、上告審ヲ省略ス
ベキデアルカ、控訴審ヲ省略スベキデアル
カ、寧ロ上告審ヲ省略シタ方ガ良クハナイ
カト云フ御趣旨ニ拜聽ヲ致シタノデアリマ
ス、其ノ點ニ付キマシテハ、固ヨリ重大ナ
ル問題デアリマスルカラ、私共モ相當ニ愼
重ニ〓究モシ、調査モ致シタ積リデアリマ
ス、ソコデ上告審、控訴審ノ何レヲ省ク
カト云フ問題デアリマスガ、兎ニ角裁判デ
アリマスカラ、法律ニ主眼ヲ置クコトハ、
是ハ固ヨリ申スマデモナイコトデアリマシ
テ、法律ノ最終審タル上告審ヲ殘スト云フ
コトハ是ハ法治ノ精神ニモ適フコトデア
リマスカラ、蓋シ當然ノコトデアルトモ存
ジタ次第デアリマス、ソレカラ御承知ノヤ
ウニ我ガ國ノ刑事訴訟法デハ、幸ヒニ上〓
審ガ純粹ニ法律審ノミデハナク、多分ニ事
實審的色彩ヲ加味シテ居ル譯デアリマス、
卽チ事實ノ著シキ誤認、刑ノ甚ダシキ量定、
是ガ上告審ニ參ルコトニ相成ルコトニナツ
テ居リマス、ソレカラ又民事訴訟法ニ於キ
マシテモ是亦御熟知ノ通リ、多年ノ裁判慣
例ト致シマシテ、經驗則、實驗則ニ反シマ
スル事實ノ誤認、卽チ證據法ニ反シマスル
事實ノ誤認ニ付テ、上告審ニ於テ原判決ヲ
十分ニ破毀致シテ居リマス、正確ナル統計
ハ分リマセヌケレドモ、民事ニ於ケル上告
デ破毀セラレルモノノ恐ラク大部分ハ、單
純ナル法律問題デハナク、此ノ證據法ニ反
スル事實ノ誤認ノ點ニ存スルモノガ多イダ
ラウト思フノデアリマシテ、此ノ傾向ハ私
共實ニ結構ナモノデアルト存ジテ居ルノデ
アリマス、卽チ是等刑事訴訟法又民事訴訟
法ニ於ケル前述ノ法規ノ下ニ於ケル事實ノ
誤認ニ付テモ、上告審ガ之ニ裁判ヲ下ス、
此ノ權限ヲ包括シタ上〓審ヲ殘スコトガ當
然デモアリ、結構デモアルト存ズルノデア
リマス、尙ホ人物經濟ノ點デアリマスガ、
人物經濟ノ點ノミニ重キヲ置クコトハ出來
マセヌ、ヤハリ審級省略ト云フコトハ固ヨ
リ望マシクナイコトデアリマスルカラ、之
ニ對スル犧牲ノ程度ヲ十分ニ少クスルト云
フコトヲ考ヘナケレバナリマセヌカラ、只
今申上ゲマスル通リ人物經濟ノミニ重キヲ
置クコトハ出來マセヌケレドモ、其ノ人物
經濟ノ點ダケニ付テ考ヘマスルナラバ、是
ハドウシテモ上告審ヲ省略スルヨリ控訴審
ヲ省略シタ方ガ有效ダト云フコトハ、自ラ明
カデアラウト思フノデアリマス、要スルニ上
告審、控訴審、二者何レヲ選ブカニ付テハ非
常ナ問題デアリマスルケレドモ、私共種々
考慮ヲ致シマシテ、是ハ上告審ヲ寧ロ殘スベ
キモノデアル、斯樣ニ考ヘタ次第デゴザイ
マス、右御諒承ヲ願ヒタイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=13
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014・山本粂吉
○山本(粂)委員 其ノ觀點カラ見タ二審
制三審制、何レヲ廢スベキカト云フ點ニ
付テハ、議論ニ亙リマスカラ私ハ是レ以上
議論ヲ進メマセヌ、別ノ觀點カラ一ツ御伺
ヒシタイト思ヒマス、昨日戴キマシタ資料
ニ依ツテ見マシテモ、私共ノ所屬シテ居ル
辯護士會等ニ於テ調査シマシタ結果カラ見
マシテモ、區裁判所ノ判決、ソレガ控訴セ
ラレテ、殊ニ是ハ刑事事件ニ付テ申上ゲマ
スガ、區裁判所ノ第一審判決ガ、ソレガ控訴
セラレテ是正セラレタル數ハ殆ド半數以上
ニナツテ居リマス、而モ其ノ中ニハ有罪ガ
無罪エナツテ居ルノモ相當ニアル、體刑ガ
自由刑ニナツテ居ルノモ相當ニアル、實刑
ヲ科セラレタル者ガ執行猶豫ノ恩典ニ浴シ
タル數モ非常ニ多イ、罰金等ノ金刑ガ減額
セラレ、是正セラレタル數モ相當ニ多イ、
區裁判所ニ於テナシタル判決ニシテ、控訴
審ニ於テ刑輕キニ失スルノ故ヲ以テ是正セ
ラレタルモノハ九牛ノ一毛デアリマス、極
メテ少イノデアリマス、此ノ觀點カラ見ル
ト一體之ヲドウスルカ、司法當局ハドウ云
フヤウニ御考ヘデアリマスカ、其ノ場合ニ
第一審ノ區裁判所ノ判決ガ適正妥當ナリ
ヤ、或ハ控訴審ニ於ケル判決ガ適正妥當ナ
リヤヲ檢討シタ場合ニ、區裁判所ノ判決ガ
適正妥當デアツテ、控訴審ニ於ケル判決ガ
適正妥當デナイト云フ結論ハ出テ來ナイ、
是ハ控訴審ニ於ケル判決ガ適正妥當デアル
ト云フコトニナル、サウスルト第一審ノ判
決ガ適正妥當ナラズト云フ結論ニナル、而
モソレガ事實ノ誤認カラ來リ或ハ證據ノ點、
卽チ司法警察官ノ拵ヘ上ゲタ調書等ガ、事
實ニ卽セザルモノデアツタリスルコトガ非
常ニ多イ、ソレ等ノ原因カラ多クハ是正セ
ラレテ居ルノデアツテ、法律適用ノ解釋ヲ
誤ツタ爲ニ是正セラレタルガ如キハ極メテ
其ノ數ガ少イ、斯ウ云フコトニナルト、結
局事實ノ認定ハ事實審ニ於ケル特權デアリ
-マシテ、是ハ司法當局ニ於テモ先刻御承知
ノ通リ、大審院ヘ持ツテ行ツテモ、事實ノ
認定ハ是ハ事實審ニ於ケル特權ナンダカ
ラ、之ヲ攻擊シテモ理由ニナラズト云フコ
トデ、甚ダシク不適當ナル認定ヲシテ、或
ハソレハ百ニ一ツカ、千ニ一ツ、刑ノ量定
ガ甚ダシク不當ダト云フコトデ、大審院デ
破レタ例モ、決シテ皆無トハ申シマセヌケ
レドモ、多クハ刑ノ量定甚ダシク失當ナラ
ズトシテ上告毀却セラレタモノガ今日ノ事
實デアリマス、サウスルト第一審判決ガ半
分近クモ適正妥當デナイ判決ヲシテ居ル事
實カラ見テ、是ガ控訴審ニ行ケバ、半分內
外是正セラレル、ソレガ今度ハ大審院ニ上
告スル、大審院ニ限ラズ上告ヲスルト云フ
コトニナルト、其ノ半分前後ノ是正セラル
ベキ判決ガ是正セラレズシテ終タツトシタ
ナラバ、是ハ如何ニ戰時下ダカラ我慢ヲシ
ロト言ウテモ、司法ノ威信カラ、法律ノ威
信カラ考ヘテ、私ハ如何カト非常ニ疑念ヲ
懷イテ居ルノデアリマシテ、凡ユル方面カ
ラ色々論議セラレテ居ル點モ、多クハソコ
ニ理由ガアルノデハナイカト思フノデアリ
マス、之ニ對シテ私共ガ納得ノ行クヤウニ、ソ
レハ心配ナイノダ、第一審ノ審理ニ付テハ、
今度ノ戰時特例ニ於テハ先ヅ判事ヲ練達堪
能ノ士ヲ向ケルトカ、或ハ審理ヲ極メテ愼
重ニサセルトカ、證據調等ニ於テモ極メテ
愼重ニヤルヤウニ訓令ヲ發スルトカ云フコ
トデ、今マデノ如ク事實ノ第一一審ガアルカ
ラ、一審ハ停車場ミタイナモノダカラ通過
スレバ宜イノダ、兎ニ角手取リ早クシテ、
ドウセ控訴スルノダカラ、控訴ニ廻シテシ
マヘト云フ考ヘデ判決ハシテ居ルマイケレ
ドモ、結果カラ見ルト半數近ク、或ハ三割、四
割ノ是正セラルベキ判決ノアルノヲ見ルト、
從來ハサウ云フ感ナキニシモアラズデア
リマス、今後ハ左樣ナコトノナイヤウニ、
特段ナ司法當局ノ御考慮ガアルナラバ、ソ
レヲ承ツテ、果シテ吾々ガ納得ガ行クカド
ウカ檢討致シテ見タイト思ヒマスカラ、此
ノ點ニ對スル懇切ナル御說明ヲ願ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=14
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015・大森佳一
○大森政府委員 只今御指摘ニナリマシタ
所ニ依リマスト、從來第一審ノ判決ガ控訴
審デ相當破レテ居ル、殊ニ區裁判所ヲ第一
審トスル判決ガ、控訴審ニ於テ相當多數破
レテ居ル、斯ウ云フヤウナ御話デアリマシ
ク、其ノ計數ニ付テハ後ニ他ノ政府委員ヨ
リ詳細申述ベマセウガ、計數ハ別問題ト致
シマシテモ、在來第一審ノ判決ガ控訴審デ
破レタ事例ハ固ヨリ否定ノ出來ル筈ハナイ
ノデアリマス、唯今日此ノ案デ臨ミマスル
ナラバ、區裁判所ノ事件ガ特ニ控訴審省略
ト云フコトニ依ツテ甚ダシク國民ニ不安ヲ
來シハシナイカ、詰リ區裁判所ノ判決ガ疎
漏デアル、ソレガ控訴審ヲ經由セズシテ直
接上告ト云フコトニナルト、事實確定ニ付
テ甚ダ望マシカラザル結果ヲ來シハシナ4
カ、斯ウ云フ御懸念デアルヤウニ拜察ヲシ
タノデアリマス、私共今日區裁判所ニ於ケ
ル審理ガ、左樣ニ不都合デアルトハ思ヒマ
セヌケレドモ、併シ今日ノ結果デ私共ハ決
シテ甘ンジテ居ルモノデハアリマセヌ、何
處マデモ改善ヲシナケレバナラナイノデア
リマシテ、今日ヨリモ明日ノ成績ヲ良クス
ル、明日ヨリモ明後日ノ成績ヲ良クスルト
云フコトニハ、吾々常ニ努力ヲシナケレバ
ナラナイト存ズルノデアリマス、而モ今日
斯樣ナ案ヲ以テ審議ニ臨ミマスル以上、區
裁判所ノ判決ヲ極度ニ愼重且ツ適正ニスル
ト云フ決意ト用意トガナケレバナラナイノ
デアリマシテ、其ノ點ニ付テハ私共懸命ノ
努力ヲ以チマシテ、御期待ニ副ヒタイト存
ズルノデアリマス
ソレハ先ヅ第一ニ人員配置ノ問題デアリ
マス、區裁判所ニ練達堪能ナル判事ヲ配置
スル、是ハ蓋シ先決的ノ問題デアラウト思
フノデアリマス、御承知ノ通リニ區裁判所
ニ相當經驗者ヲ以テ配置シマスルコトハ
大正二年ノ裁判所構成法ノ大改正ノ時ニ相
當之ヲ實行致シマシタ、其ノ後大正十一年
ニ御承知ノ破產法、和議法ガ區裁判所ノ管
轄ニナ.リマシタ時ニ、是亦相當人員ノ配置
ニ付テ注意致シタノデアリマズ、何ニ致シ
マシテモ、區裁判所ハ本當ノ意味ニ於テノ
第一線デアリマスカラ、之ニ堪能ノ判事ヲ
配置スルノ必要ハ固ヨリデアリマスケレド
モ、是マデ兎角十分デナカツタ憾ミハ確カ
ニアルノデアリマシテ、.私共今日現在ノ區
裁判所ノ判事ノ配置ガ理想的デアルトハ決
シテ申上ゲナイノデアリマス、ケレドモ斯
樣ナ案ヲ以テ臨ミマスル以上、區裁判所ヲ
十分ノ經驗アル判事ヲ以テ組織スル、此ノ
用意ハ十分ニアル積リデアリマス、昨日モ
申述ベタノデアリマスガ、御承知ノヤウニ
判事ニ付キマシテハ地位ノ保障ガアリマス
カラ、其ノ轉所ニ付キマシテ是マデハ相
當ノ困難ヲ伴ツタノデアリマスケレドモ、
此ノ開戰以來、幸ヒニ吾々ノ方ノ氣組ガ正
ニ緊張シテ參リマシテ、自己一身ノ爲ニ何
處ノ區裁判ニハ行カナイト云フヤウナ判事
ハ、全クナクナツタト存ズルノデアリマシテ、
此ノ潑刺タル意氣ヲ以テ、法案ガ幸ヒニ御
協贊ヲ得ラレルナラバ、其ノ運用ニ萬全ヲ
期シタイト云フ覺悟ヲ持ツテ居ル積リデア.
リマス
其ノ點先ヅ御諒承ヲ願ヒマシテ先程區裁
判所ノ判決ガ控訴審デ破レル、其ノ破レル割
合ハ主トシテ事實認定ヲ誤ツタモノデアルト、
斯ウ云フヤウナ御說明ガアツタヤウニ拜承
ヲ致シタノデアリマス、此ノ點ニ付テハ、
不幸ニシテ精細ナル統計ハアリマセヌケレ
ドモハ最近經濟事犯ニ付キマシテ調査ヲ致
シタ結果ガアルノデアリマス、ソレニ依リ
マスト區裁判所ヲ第一審トスル經濟事犯
デアリマスガ、昭和十五年ノ七月カラ昭和
十六年ソ六月ニ至ル滿一箇年間ノ調査デア
リマス、其ノ中デ控訴理由アリトシテ裁判
サレマシタ、卽チ區裁判所ヲ第一審トスル
裁判ガ破レマシタ其ノ中ニ付テ內譯ヲ取ツ
テ見マスト、事實認定ガ第一審、控訴審全
ク同樣デアツタト云フモノガ九四%デアリマ
シテ、事實認定ガ第一審ノガ間違ツテ居ツ
タト云フノガ六%デアリマス、之ヲ被〓人ノ
人員ニ付テ申シマスト、區裁判所ヲ第一審
トスル經濟事犯ニシテ、控訴審デ破レマシ
タ其ノ內譯デアリマスガ、事實認定ヲ同ジ
クスルモノガ千百三十五人デアリマシテ、
事實認定ヲ異ニシタモノガ八十一人デアリ
マス、ソレデアリマスカラ、此ノ一年間ノ
統計ガ示ス所ニ依リマスト、控訴審デ破レ
マシタノハ主ニ刑ノ量定ノ問題デアル、事
實誤認ト云フモノハ極メテ少イト、斯ウ云
フ結果ニナルノデアリマス、併シ是ハ經濟
事犯ニ付テ昭和十五年七月カラ昭和十六年
六月ニ至ル僅カニ一箇年間ノ統計デアリマ
スカラ、之ヲ以テ全部ヲ推ス考ヘハ毛頭モ
ゴザイマセヌ、又私共決シテ今日ノ實績ヲ
强辯スル積リモナイノデアリマシテ、區裁
判所ノ人員配置、卽チ其ノ結果區裁判所ノ
判決ヲ更ニ大イニ良クスルト云フコトニ付
テ、私共懸命ノ努力ヲ捧ゲタイ、其ノ決意
ノ程ヲ御諒承ヲ願ヒタイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=15
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016・山本粂吉
○山本(粂)委員 先程私ガ。事實認定ヲ異ニ
スルト言ウタノハアレハ、間違ヒデアリマシ
テ、事實ニ卽セザル刑ノ量定ヲシタト云フ
意味デアリマスカラ御諒承ヲ願ヒマス、司
法當局ガ此ノ改正ヲセラレルニ付テ、第
審ノ裁判所構成ニ付テ、相當御考慮ニナツ
タコトハ拜察出來マスガ、私ハドウモソレ
ダケデハ、此ノ控訴理由アリトシテ是正セ
ラレタ判決ノ多イ點カラ見テ、果シテ政府
*
ノ期圖スルヤウテ練達堪能ノ第一審判事ガ
得ラレルカドウカ、現在ノ司法當局ハサウ
デモアリマスマイケレドモ、從來ノ政府ノ
御答辯ヲ聽イテ居ルト、ソレハ斯ウスルト
議會デ御答辯ニナツテモ、濟ンデシマフト、
ソレガサツパリドウモ實現シナイノガ今マ
デノ實情デアリマス、此ノ度ハ國民ノ重大
ナ人權ニ關スル問題デアリマスカラ、勿論
只今御言明ノ如ク、區裁判所卽チ第一審裁
判所ニ於ケル司法官ノ配置ニ付テハ相當考
慮セラレ、而シテソレガ實現セラレルコト
ハ、私モ左樣アラネバナラヌトハ考ヘテ居
リマスガ、ソレガ政府ノ企畫スルヤウニ出
來ルカドウカ、大正二年ノ大變動ノ時ニハ
慥カ特例ヲ出シテ判檢事ノ異動ヲヤツタヤ
ウニ私ハ記憶シマスガ、此ノ度ハソレガナ
イノデアリマシテ、司法官ハ身分ノ保障ガ
アリ、而シテ區裁判所ニ轉任シテ行クコト
ガ、詰リ上級審カラ判事ガ最下級ノ裁判所
ニ轉任シテ行クコトガ、果シテ政府ノ企畫
スル如ク總テガ圓滑ニ行クカドウカト云フ
コトモ懸念セラレル、ソレヤ是ヤヲ考ヘテ
行クト、大森次官ガ企畫セラレテ居ルヤウ
ニ、御言明ナラレルヤウニ、國民ガ安心シ
テ裁判ニ服スル、一ツモ間違ヒガナイノダ、
適正妥當ナ裁判ヲ受ケラレルノダト云フ、
安心ノ行ケルヤウナ第一審ノ人的構成ガ出
來ルカドウカ、モウ少シ御說明ヲ願ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=16
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017・大森佳一
○大森政府委員· 只今モ申述ベマシタ通
リ、成程此ノ特別案ハ、裁判所ノ組織ナリ
運用ナリニ付キマシテ重大ナル變更デアリ
マス、斯樣ナ重大ナル變更ヲ以テ臨ミマス
ル以上、之ニ對スル吾々ノ覺悟ハ相當ニ付
イテ居ナケレバナラナイ筈デアリマシテ、先
程來申述ベマシタ私ノ御約束ト申シマスル
カ、言明ト申シマスルカ、是ハ決シテ通リ
一遍ノ御挨拶デハナイ積リデアリマス、卽
チ區裁判所ノ充實ニ付テ確信ナクシテ斯樣
ナ法案ヲ出セナイ筈デアリマシテ、私共ハ
其ノ點ニ付テハ及バズナガラ相當ノ確信ハ
持ツテ居ルノデアリマス、其ノ點ニ付キマ
シテ只今モ御懸念ニ相成リマシタヤウニ、
地位ノ保障ニ付テノ故障モアリマスルガ、
是モ幸ヒニ御安心ヲ願ヒタイノデアリマシ
テ、舊臘八日ノ開戰以來、流石ニ吾々一同
ノ氣組ミガ變ツテ參ツタノデアリマス、卽チ
人員配置ノ命ヲ受ケマスルヤ、滅私奉公ノ
精神ニ依リマシテ、相當堪能ナル人ヲ區裁
判所ニ派遣シ得ルト云フ見込ハ付イテ居ル
ノデアリマス、尤モ之ニ付テハ先日モ申述
ベタ所デアリマスガ、幸ヒニ御協賛ヲ經マ
シテ、是ガ法律ニ相成リマスルナラバ、其
ノ公布直後全國ノ監督官ヲ會同致シマシテ、
更ニ吾々一同ノ氣組ミヲ新タニシテ、此ノ
人員配置ノ萬全ニ付テ邁進ヲシタイト考ヘ
テ居ル次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=17
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018・山本粂吉
○山本(条)委員 モウ一點御伺ヒ致シマス
ガ、此ノ改正ノ中デ、國防保安法トカ、軍
機保護法トカ、其ノ他ノ破廉恥罪等ニ付テ
二審制度ニ改正セラレルコトハ先ヅ姑ク措
クトシテ、資料ニ依ツテ見マシテモ、先
程御示シノヤウニ、昭和十四年四月カラ
昭和十六年六月マデノ統計デアリマス
ガ、統制經濟關係ノ法令違反ヲ見ルト、
相當數第二審ニ於テ是正セラレテ居ル、
而モ我ガ國ノ統制經濟ハ極メテ顯著ナル
如ク、自由主義經濟機構ヲ急激ニ變革シ
タモノデアリマシテ、ソレガ實情ニ卽セズ、
或ハ一旦統制シタモノガ、ヤリ方ガ惡イト
云フノデ、之ヲ是正シタリ、色々テ變化ヲ
來シテ、最近漸ク統制經濟ガ板ニツイタト
言ツテモ過言デナイノデアリマス、其ノ間
ニ起ツテ來夕事案ガ、今後ニ於テ摘發セラ
レル數モ相當豫想セラレナケレバナラヌ、
而モ永年2間自由主義經濟機構ニ慣レ切ツ
タ國民ガ、成程支那事變勃發後ニ於ケル國
民的感情ト、大東亞戰爭勃發後ニ於ケル國
民的感情トハ、格段ノ差ガアルコトハ私モ
認メマス、併シ奈何セン國民ノ自己ノ生活
問題デアリマスカラ、統制經濟ノ法令違反
事件ガ相當多數ニ上ツテ居ルコトハ實ハ
遺憾ニ堪ヘナイケレドモ、又一面カラ考ヘ
レド、惡質ナモノハ別トシテ、其ノ中ニハ
相當同情スベキモノモ數多ク含マレテ居
ル、ソレアルガ故ニ第一審ノ判決ガ第二審
デ相當是正サレテ居ル、斯ウ云フ見地カラ
考ヘテ行キマスト、戰時下デアルト申シマ
シテモ、此ノ統制經濟關係法令遠反事件ダ
ケハ略式デ濟マスヤウナ事案ハ別トシテ、
少クトモ裁判所ニ起訴セラレテ、口頭辯論
ヲ經テ判決ヲ言渡ス事件ハ、之ヲドウシテ
モ三審制度ニシテ置クコトガ、司法當局ト
シテ戰時下困ルト言フナラバ、セメテ其ノ
事案ダケハ之ヲ第一審ヲ地方裁判所ニ於テ
ヤル、略式等ヲ以テヤルモノハ別トシテ、
サウデナイモノハ地方裁判所ニ於テ之ヲ審
理サセルト云フコトハ、現在ノ此ノ儘ノ法
令ニ於テナシ能フコトナリヤ否ヤヲ御伺ヒ
シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=18
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019・大森佳一
○大森政府委員 只今御指摘ニ相成リマシ
タヤウニ、經濟事犯ハ其ノ法令ノ施行當初
ニ於キマシテ、全ク我ガ國民ノ慣レテ居ナ
イ所デアリマシテ、隨テソレガ爲ニ事犯モ
非常ニ多カツタト云フコトハ、洵ニ殘念ナ
コトデハアリマスルガ、蓋シ已ムヲ得ナイ
コトデアツタノデアリマス、其ノ點ニ付テ
ノ御所見ハ全ク御同感デアリマス、又審理
ナリ檢察ナリノ方面ニ付キマシテモ、全ク
新規ノ事柄デアリマスカラ、其ノ當初ニ於
キマシテハ相當間誤ツキマシタコトモ蓋シ
事實デアリマス、併シ今日ニ相成リマシテ、
先程御述べニナリマシタヤウニ、全ク吾々
ノ方ニ於キマシテモ相當板ニツイテ參リマ
シテ、サウ周章狼狽スルヤウナ事案ハナイ
ノデアリマシテ、大抵見當ガ付イテ參ツタヤ
ウナ次第デアリマス、デアリマスカラ、之ニ
付テ控訴審ヲ省略致シマシデモ、是ガ爲ニ
甚ダシク國民ニ不安ヲ與ヘルヤウナコトハ
ナイト存ジマスルノミナラズ、此ノ種ノ事
件ハ御承知ノ通リ非常ニ多イノデアリマス、
是ハドウシテモ控訴審省略ノ中ニ入レマセ
ヌト、人員ノ配置上非常ニ手不足ヲ生ズル
ノデアリマシテ、是ハドウシテモ控訴審省
略ノ中ニ入レテ戴キタイノデアリマス
ソレカラ最後ノ御意見ノ點デアリマスル、
然ラバ之ヲ總テ地方裁判所ニ持ツテ來ルノ
ガ宜イヂヤナイカ、斯ウ云フ御說デアリマ
シタケレドモ、之ヲ總テ悉ク三人ノ判事ヲ
以テ構成スル地方裁判所デ以テ第一審ヲ
取扱ハネバナラナイト致シマスルナラバ、
今日ノ人員配置ノ現狀ニ於キマシテ、私
共ドウシテモ責任ヲ持ツコトガ出來ニク
イノデアリマス、ヤハリ或ル種ノモノハ
區裁判所單獨判事ニ審判ヲサセルト云フ
コト、蓋シ已ムヲ得ザル狀態ナノデアリ
さく、中ニハ簡單ナモノモアリマスルシ、
又複雜ナモノモアリマス、複雜ナモノハ
出來得ル限リ豫審經由ニスルコトガ適當
デアリマセウシ、又實際ニ於テハ相當數ハ
豫審經由デ取扱ツテ居ルノデアリマス、左
樣ナ實情デアリマシテ、此ノ構成法ノ戰時
特例法案全體ガ左樣デアリマスガ、吾々決
シテ望マザル所デアリマスケレドモ、全ク
無イ袖ハ振レナイノデアリマスカラ、是ダ
ケハ我慢ヲシテ戴キタイ、是ダケデモ實ハ
私共足リナイ氣持ハ致シマスケレドモ、國
民ニ不安ヲ與ヘマスルコトハ固ヨリ申譯ノ
ナイコトデアリマスカラ、是ダケ我慢ヲシ
テ戴ケルナラバ、吾々ハドノ位ノ苦勞ヲ致
シマシテモ此ノ司法上ノ難局ヲ乘切ツテ行
カウ、斯ウ云フ念願デアリマスカラ、此ノ
點ドウカ御諒承ヲ願ヒタイノデアリマス
尙ホ經濟事犯ノ現情ノ詳細ニ付キマシテハ
他ノ政府委員カラ御說明ヲ致シタイト存ジ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=19
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020・山本粂吉
○山本(粂)委員 モウ一、二點デスカラ、ソ
レヲ濟マシテカラ、御說明願ヒタイト思ヒマ
ス、裁判所構成法ノコトニ付テハ尙ホ議論モ
アリマスガ、他ノ委員諸君ニ讓リマシテ、
私ハ戰時刑事特別法案ニ付テ一點御伺ヒシ
タイ、此ノ戰時刑事特別法案ニ依リマスト、
其ノ第十五條ニ於テ「不正ノ利益ヲ得ル目
的ヲ以テ生活必需品ノ買占又ハ賣惜ヲ爲シ
タル者ハ五年以下ノ懲役又ハ一万圓以下ノ
罰金ニ處ス」ト云フ規定ガ出來テ居ツテ、
此ノ位統制經濟ニ付テハ刑罰ヲ加重シ、國
民的感情ヲ刺戟シテ、統制事犯ノナカラン
コトヲ企圖セラレテ居ルコトハ、私ハ滿腔
ノ誠意ヲ披瀝シテ贊成スルモノデアリマス
ガ、唯殘念ナコトハ、今日統制經濟ニ關係
セラレテ居ル公務員ノ數ノ多キコトハ、司
法當局ニ於テモ御承知ノ通リデアリマス、
殊ニ最近何々營團、何々金庫ト云フヤウナ
特殊法人ガ出來テ、而シテソレ等ノ者ヲ公
務員トシテ皆之ヲ取扱ツテ居ル規定ガ特ニ
加ヘラレテ居ル、サウ云フ點カラ見テモ、
公務員ノ數ガ非常ニ多ク、而シテ其ノ公務
員ノ取扱方ニ依ツテ經濟ノ統制ガ圓滑ニ行
ツタリ行カナカツタリスルコトハ實例ノ示
ス通リデアリマス、若シ夫レ公務員ニシテ·
個人的感情ニ囚ハレタリ、或ハ物質ノ欲望
ノ滿足ヲ充足センガ爲ニ不正ナ行爲ヲスル
ガ如キコトガアリトセバ、國民ノ一人ヤ二
人ノ賣惜トカ買占トカ云フコトニ依ツテ統
制經濟ヲ紊スヨリモ、其ノ害ヤ實ニ思フベ
シデアリマス、成程瀆職罪ニ付テハ第七十
六議會ニ於テ刑罰ガ加重セラレテ居リマス
ケレドモ、アレハ斯ウ云フ大東亞戰爭ノヤ
ウナコトヲ豫想シテ加重シタモノデハナク
テ、從來餘リニ刑罰ガ輕カツタカラ加重シ
タニ過ギナイノデアリマシテ、戰時特例デ
ハナイノデアリマス、若シアレヲ戰時特例
ナリト言ヘバ、ソレハ牽强附會デ、私ハ贊
成ガ出來ナイ、何故ニ公務員ノ瀆職-殊
ニ全般的ニ私ハ申シマセヌ、公務員ノ中デ
統制經濟ニ關係アル公務員ニ對シテ特ニ罰
則ヲ設ケテ、一般經濟界ヲシテ統制經濟違
反ヲナカラシムルト同時ニ、圓滑ナル運行
ヲ期スルト云フコトヲ、司法當局トシテハ
企圖スベキデハナカツタカ、之ニ對スル法
規ヲ此ノ戰時特別法案ノ中ニ御入レニナラ
ナカツタノハ何カ理由ガアルノカ、ソレト
モ此ノ前ノ改正デ十分ダト仰セラレルノ
カ、御所見ヲ承リタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=20
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021・大森佳一
○大森政府委員 只今御指摘ノ戰時ニ際ス
ル公務員殊ニ官吏ノ瀆職ニ付テノ問題デア
リマスガ、只今モ御話ニナリマシタ通リ、
此ノ點ニ付キマシテハ第七十六議會ニ於テ
御協賛ヲ經マシテ、刑法中ノ改正法トシテ.
法律ニ相成リマシテ、是ガ昭和十六年ノ三
月カラ實施ニナツテ居ルノデアリマス、成
程此ノ改正法律ノ刑罰ト、今日御審議ヲ願
ヒマスル刑事特別法案ノ刑罰トヲ比較致シ
マスト-尤モ罪ノ種類ガ違ヒマスカラ正
確ニハ申サレマセヌケレドモ、此ノ刑法ノ
改正法律ノ方ガ稍〓輕イ感ジノスルコトハ、
私共確カニ認メテ居ルノデアリマスガ、併
シ同ジ罪ニ付キマシテ改正ヲ加ヘテ刑罰
加重致シマシテカラ、一年經ツカ經タヌ內
ニ更ニ之ヲ加重スルト云フコトハ、種々考
慮スベキ關係モアルノデアリマシテ、外國
ニ對スル影響モ如何カト云フコトモ相當懸
念ヲ致シタノデアリマス、卽チ外國ノ宣傳
ノ逆手ニ取ラレルト云フコトモ、亦考慮ニ
入レテ置イテ宜カラウカト思フノデアリマ
シテ、ソレガ第一デアリマス
第二ノ理由ト致シマシテハ、御承知ノ通
リニ戰時刑事特別法案ノ第一章デ十數種ノ
罪ヲ相當重ク致シマシタ、是ハ此ノ前ニモ
御說明ヲ致シマシタ通リ、戰時ニ於テ頻發
ヲ豫想セラルル罪、又戰時ニ於テ特ニ急速
ノ處理ヲ必要トスル罪、斯樣ナ罪ヲ集メタ
ノデアリマシテ、是等ノ見地カラ此ノ罪ニ
付テハ刑ヲ加重致シマスルト同時ニ、不
可分的ニ控訴審ヲ省略スルコトニ致シタノ
デアリマス、卽チ啻ニ加重スルニ止マラズ、
其ノ審理ヲ急速ニシナケレバナラナイ必要
ガアル、詰リ手續上、實質上兩方ノ必要ガ
アリマシテ、是ハ不可分ノモノニ致シマシ
タカラ、若シ此ノ戰時刑事特別法案ノ中ニ
戰時瀆職罪ヲ入レマスナラバ、勢ヒ控訴審
ヲ省略セザルヲ得ザル結果ニナルノデアリ
マスガ、瀆職罪ニ付テ控訴審ヲ省略スルト
云フコトハ、私共在來ノ經驗ニ徵シマシテ
モ、甚ダ不都合、不合理デアルト存ズルノ
デアリマス、御承知ノ如ク瀆職罪ニ付キマ
シテハ相當內容ノ複雜錯綜シタモノモアリ
マシテ、事實ニ付テ一審級限リト云フノデ
ハ、私ハ到底賄ヒ切レナイヤウニ存ズルノ
デアリマス、ソレカラ又瀆職デアリマスカ
ラ、收賄ノ方ガアリマスガ、贈〓ノ方ヲ其
ノ儘三審級ニシテ、收賄ノ方ダケヲ二審級
ニスルト云フコトハ、是亦申スマデモナク
取扱上極メテ不都合デアリマス、左樣ナ種
種ノ關係ヲ考慮致シマシテ、此ノ戰時刑事
特別法案ニハ入レナカツタ次第デアリマス、
併シナガラ斯樣ナ戰時下ニ於キマシテ官吏
〓職ノ事實ガアルト致シマスナラバ、ソレ
ヲ最モ遺憾トスルノハ司法部デアリマス、
ソレデアリマスカラ貴族院ニ於キマシテモ
司法大臣ヨリ其ノコトヲ申述ベタノデアリ
マシタガ、檢察當局ト致シマシテ十分ノ努
力ヲ玆ニ注ギマシテ、其ノ檢擧ニ寸毫ノ遺
漏ナキヲ期スル所存デ居リマス次第デアリ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=21
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022・山本粂吉
○山本(粂)委員 最後ニ小サナ問題デス
ガ、右特例ニ關シテ第九條ノ規定ノ御說明
ヲ願ヒタイノデアリマス、ドウモ私ニハハ
ツキリシナイノデアリマス、第九條ニハ「裁
判所相當ト認ムルトキハ證人又ハ鑑定人ノ
訊問ニ代ヘ書面ノ提出ヲ爲サシムルコトヲ
得」トアリマスガ、此ノ規定ハ勿論是ハ證言
或ハ鑑定ニ代ヘテ書面ヲ以テ提出サセ得ル
ト云フコトデアツテ、ソレハ能ク分ルノデ
アリマスガ、之ヲ裁判所ガ相當ト認メタト
云フコトデ、裁判所ノ自由心證デドン〓〓
之ヲヤルト云フコトニナルト、事實ノ發見
ニ非常ニ困難ヲ來シハシナイカ、今日デサ
ヘモ所謂口頭辯論主義ヲ採リ、直接審理ヲ
土臺トシテ居ル現在ノ民事訴訟法ニ於キマ
シテモ、隨分如何ハシイカレコレ師、事件
師ト云フ者ガ證人ニ出テ來テ、裁判所ノ心
證ヲ誤ラシムル例決シテ少クナイノデアリ
マス、ソレガ宣誓モセズニ、書面デ出セバ
宜イノダト云フコトニナツテ、ソレガ信憑
力ヲ持ツト云フコトニナツテ、證據トシテ
採用セラレテモ、裁判所構成法上違法デナ
イト云フコトニナツテ來ルト、私ハドウモ
所謂適正妥當ノ判決ヲスルニ困リハシナイ
カ、誤ツタ判決ヲスルト云フコトガ起キテ
來ハセヌカト云フコトヲ非常ニ懸念スルノ
デアリマス、ソコデ「相當ト認ムルトキハ」
ト云フノハドウ云フ場合ヲ指スノカ、何カ
原告ナリ被〓ナリカラ申請サレタ者ガ、病
氣デ出ラレヌトカ、或ハ遠隔ノ地ニ行ツテ
居ルトカ、或ハ劇務ニ携ハツテ居テドウシシ
テモ出ラレヌトカ、或ハ事件ニ全然關係ガ
ナイカラ、アレナラ書面デ大丈夫ダト云フ
ヤウナ場合等ニ、サウ云フ意味ノ制限ヲ附ケ
テ相當ト認メラレルノカ、極メテ「フリー」
ニ相當ト認メラレルノカ、其ノ點ニ對スル
御解釋ヲ願ツテ置クコトガ、今後此ノ法律
ヲ適用スル場合ニ於テ非常ニ重要ダト思ヒ
マスカラ、御言明ヲ願ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=22
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023・大森佳一
○大森政府委員 只今此ノ戰時民事特別法
案第九條ノ解釋ニ付キマシテ、私共ノ考へ
テ居リマスルコトヲ申述ベル機會ヲ御與ヘ
下サイマシタノデ、極メテ好都合ニ存ズル
ノデアリマス、此ノ第九條ノ「裁判所相當ト
認ムルトキハ」ト云フノハ、可ナリ强イ意味
ヲ玆ニ持タセタ積リデアリマス、卽チ只今
御言葉ノ中デ御引例ニナリマシタ如ク、ア
ノ證人、鑑定人ハ十分信賴スルニ足ル者デ
アルケレドモ、忙ガシイカラ喚ブノハ氣ノ
毒ダ、斯ウ云ツタヤウナ場合ニ於テノミ之
ヲ利用スル積リデアリマシテ、此ノ便法ハ
容易ク之ヲ濫用スルト云フコトハ勿論避ケ
ナケレバナラナイ、又避ケル積リデ立案致
シタノデアリマス、卽チ相當身分ノアル人、
信賴スルニ足ル人デアル、然ルニ忙ガシイ
人デアルカラ、裁判所ニ出頭サセルト云フ
コトハ氣ノ毒ダ、併シ此ノ人ナラバ書面ヲ
以テ陳述ニ代ヘタ所デ一向不安ハナカラ
ウ、懸念ハナカラウ、斯ウ云ツタ見込ノ付
イタ場合ニ於テノミ此ノ規定ヲ適用スル積
リデアリマス、御承知デモアリマセウガ、
曾テ數年前ノコトデアリマスガ、全國ニ同
種ノ事件ガ多數起リマシテ、ソレガ大藏省
ノ方針ニ關シタ事件デアリマシタ、デアリ
マスルカラ其ノ事件ニ付テ殆ド悉クガ大藏
省ノ銀行局長ヲ證人トシテ喚問シタイト云
フコトガアツタノデアリマス、是ハ全國ニ
亙リマシテ、若シ其ノ喚問ニ應ジナケレバ
ナラナイト致シマスルト、銀行局長ガ十人居
ツテモ二十人居ツテモ足リナイト云フヤウ
ナコトデアリマシテ、サウ云フ時ニ斯樣ナ
便法ガアツタラバト思ツタコトガアリマシ
タガ、事例ノ當レルカ否ヤハ別問題トシテ、
此ノ第九條ハ相當强ク制限的ニ適用セラル
ベキ積リデ立案致シマシタ、決シテ容易ク
之ヲ濫用スル積リハ毛頭ナイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=23
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024・山本粂吉
○山本(粂)委員 私ノ質問ハ終リマシタ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=24
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025・立川平
○立川委員 議事進行ニ關シテ······質問ノ
順位ハ大シタコトハナイト思ヒマスガ、理
事ノ方ハ大體後ノ方ニ御遠慮願フノガ委員
會ノ慣例ナノデス、此ノ委員會ダケサウ云
フ慣例ヲ無視スル何カ特別ノ理由ガアツタ
ノデスカ、若シナケレバ、今後ハヤハリ慣
例ヲ守ツテ戴キタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=25
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026・松木弘
○松木委員長代理 別ニ慣例ヲ破リタイト
思ツテ破ツタ譯デハナイノデスガ、昨日質
問通告ノ委員ノ方ガ出テ居ラレナイノデ、、
ソレデ山本君ガ一番最初ニ出ラレタモノデ
スカラ、山本君ノ質問ヲ願フコトニシテアツ
タノデス、所ガ昨日ハ質問ガナクシテ終ツ
タモノデスカラ、ソレデ今日ハ山本君ニ質
問ヲ御許シシタノデアラウト思フノデス、
是ハ實ハ委員長ガ許サレタノデ、私ガ許シ
タノデハナカツタノデスガ、サウ私ハ想像
シテ居リマス、ドウゾ惡シカラズ御承知ヲ
願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=26
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027・古島義英
○古島委員 私ハ山本君ノ質問中、全部ヲ
地方裁判所ニシタラ宜カラウト云フコトニ
對シテ大森次官ガ御答ヘシタコトヲ、再ビ
聽イテ念ヲ押シテ置キタイノデスガ··発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=27
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028・松木弘
○松木委員長代理 簡單ナラ宜シウゴザイ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=28
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029・古島義英
○古島委員 先程山本君ガ質問致シマスル
ト全部此ノ事件ヲ地方裁判所ニスル·コト
ニ付テハ、件數モ多イシ、ソレカラ地方裁
判所ノ方ニ人ガ少イノデアルカラ、三人ノ
判事ガ之ヲ調ベルト云フコトニ付テバ責
任ヲ持ツコトガ出來ヌト云フ仰セデアリマ
ス、御尤モデアリマスガ、斯ウ云フ經濟違
反事件ガ起リマスル前ノ判事ノ數ト現在ノ
判事ノ數トデハ、ソコニ一向減リヤウガナイ
ノデアリマス、此ノ經濟問題ノ起ル前ノ判事ノ
數ヨリ今日ハ、殖、エテ居リマス、雇モ殖エテ居
リマス、所デ事件ハト申シマスルト、是ハ私ガ
申上ゲルマデモナク、參考書類ヲ頂戴致シ
タノデアリマスガ、昭和十三年ノ際ニ於テ
ハ、通常民事事件ガ一万一千餘件アリマシ
ク、十五年ニナリマスルト、是ガ六千六百
餘件ニナツテ、約半分ニ減ツテ居リマス、
ソレカラ判決ヲシタ事件カラ申シマシテモ、
十三年ハ四万二千餘件デアリマシタガ、十
五年ニナリマスト二万二千餘件ニナツテ約
半分ニ減ツテ居リマス、民事事件ハ半分ニ
減ツテ刑事事件モ十三年ニハ三万三千八百
四十一件ト計上サレテ居リ、十五年ニナリ
マスト三万三千八十五件トナツテ居ル、サ
ウシマスト刑事事件モ極メテ僅カデハアル
ガ減ツテ居ルノデアリマス、民事事件ノ減
ツタ數ハ約半分ニチツテ居ル、之ヲ刑事ト
民事ト括メテ考ヘテ見マスト、減ツタ數ガ非
常ニ多イノデアリマス、是ダケノ餘力ハ裁
判所ニアル譯デアリマスカラ、少クトモ此
ノ事件ヲ地方裁判所ニ持ツテ參ツテモ、人
ガ少クテ困ルト云フコトハ事件ノ件數カラ云
ウテ想像出來ナイト思フ、若シ之ニ付テ地
方裁判所ニ持ツテ行クコトハ困ルト云フコ
トナラ別デアリマスガ、人ガ足ラヌトカ、
經濟事犯ガ餘リ數ガ殖エタカラト云フ理由
デハ、此ノ統計ト一致シナイコトニナリマ
スガ、次官ノ御答辯ハ此ノ統計ニ基イテセ
ラレタノデアリマスカドウカ伺ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=29
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030・大森佳一
○大森政府委員 只今ノ御尋ネニ對シテ
御答ヘヲ致シマス、成程民事、刑事ノ事
件--刑事ハ經濟事犯ヲ除ク意味デアリマ
スガ、卽チ民事、刑事ノ普通事件ハ幾ラカ
減少シテ居ルコトハ御說ノ通リデアリマス、
併シ事實ヲ申シマスルト、統計上デハ出テ
來ナイコトデアリマスケレドモ、事件ハ減
リマシタガ、減ツタノハ簡單ナ事件ガ特ニ
減ツタノデアリマシテ、難解ノ事件ガ却テ
相當殖エテ居リマシテ、現在ニ於テ事件ノ
數ガ減リマシタガ爲ニ手ニ餘裕ヲ生ズルト
云フコトハ實際ニ於テナイノデアリマス、
ノミナラズ此ノ手不足ニ付キマシテハ、後
ニ速記ヲ省略シテ內情ヲ逐一申述べタイト
思ヒマスガ、兎ニ角現在ニ於テ人間ニ餘裕
ハナイ、先ヅ是ダケヲ御諒承置キヲ願ヒマ
ス、尙ホ只今ノ御質疑ハ專ラ經濟事犯ニ付
テノ問題ダト存ジマスガ、經濟事犯特有ノ
問題トシテ申シマスルト、第一ニハ今申シ
マス通リニ手ノ餘裕ガナイ爲ニ、之ヲ悉ク
三人ヲ以テ組織シナケレバナラナイ地方裁
判所ノ管轄ニスルコトハ極メテ困難、或
不可能デアルト申シテモ宜イデアリマセ
ウ、サウ云フ狀態デアルト云フコトガ一ツ、
第二ニ御承知ノ通リ經濟事犯ニ付キマシテ
ハ其ノ被〓人ハ全國ニ分布散在シテ居ル譯
デアリマスカラ、被〓人ニ取リマシテハ地
方裁判所ニ出頭スルヨリモ、手近ナ區裁判所
ニ出頭スル方ガ好都合デアルト云フコトモ
確カニアルノデアリマシテ、左樣ナ愬ヘハ
是マデ屢〓私共耳ニ致シテ居ルノデアリマス、
モウ一ツノ理由ト致シマシテハ、經濟事犯
ノ刑罰デアリマスルガ、御承知ノ通リニ大
部分罰金刑ニ當ツテ居ルノデアリマス、是
マデノ統計ヲ取リマスルト、九五%マデハ罰
金刑ニ相成ツテ居ルノデアリマス、罰金刑ノ
事件デアルカラ粗雜ニシテ宜イトハ決シテ
申シマセヌケレドモ、是等ノ點ヲ考慮致シ
マシテ、區裁判所ヲ第一審トスルト云フコ
トニ付テ左程不都合ガナイト存ズル次第デ
アリマス、尙ホソレニ牽聯シマシテ、人員
等ノ問題ハ速記省略ノ御許シヲ願ヘマスル
ナラバ、率直ニ內情ヲ申述ベタイト思フノ
デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=30
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031・古島義英
○古島委員 只今承リマシタガ、十三年度
統計カラ私ハ申シタノデアリマスガ、十三
年ハモウ旣ニ事件ガ半減シテ居ル時デアリ
マス、實際ハ十一年位デナクンバ十六年、
十七年ノ統計ト照シ合ハセテ見ル譯ニハ參
ラヌノデアリマス、若シ十一年カラ十二年
ノ上半期ノ件數カラ云ヘバ、今日ハ恐ラク
三分ノ一ニ減ツテ居リマス、二分ノ一ドコ
ロデハアリマセヌ、刑事事件モ恐ラク斯ウ
云フ風ニ何分カ殖エテ居ルコトニナツテ居
リマスガ、是ハ十三年カラ比較致シマシタ
カラ何分カ殖エテ居ルノデ、十一年若シク
ハ十二年ノ上半期カラ比ベルナラバ、是モ
減ツテ居ルノデアリマス、事件ガ減ツテ居
ル以上ハ、判事ノ御手許ノ方ハ、是ハ暇
ガ出來タト申上ゲルヨリ外ナイノデアリマ
ス、此ノ委員會ニハ實務家ガ多イノデアリ
マスカラ、私ガ申上ゲヌデモ他ノ方ハ皆分
ツテ居リマスガ、例ヘバ東京地方裁判所ノ
民事部ニ於キマシテモ、一ツノ法廷デ三十.
五件若シクハ四十件ノ事件ヲ取扱ツテ居ツ
タノデアリマスガ、近來ニナリマスト土曜
日ハ大〓十件以下デアリマス、其ノ法廷ニ
現ハレル件數カラ申シマシテモ、減ツタト
云フコトハ明確ニ分ルノデアリマスシ、判
事ノ員數ガ更ニ減ツテ居ナイデ件數ガ減ツ
テ居ルト云フコトニナレバ、其ノ餘力ヲ以
テ經濟事件デモ今囘ノ此ノ法案ノ事件デモ
ヤレバ宜イノデアリマスカラ、是ダケノ理
由デ以テ手都合ガ惡イト云フコトハ、是一
ドウモ考ヘ違ヒデハアルマイカト私ハ申上
ゲルノデアリマス、尙ホ是ハ數字ノコトデ
アリマスカラ洵ニ正直ナコトダラウト思フ、
大森サンモ其ノ積リデ御答ヘヲ願ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=31
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032・大森佳一
○大森政府委員 事件ノ數ノ減ツテ居リマ
スルコトニ付テハ私共確カニソレヲ認メ
テ居ルノデアリマス、併シナガラ今日事件
ハ減リマシタケレドモ、判事ガソレダケ手
ニ餘裕ガアルカト云フト、是ハ御賢察ノ通
リニ全クナイノデアリマス、事件ガ相當難
解複雜ニナツテ參リマシタシ、ソレト既ニ
十三年以前ニ於キマシテ判事ハ非常ナ苦勞
ヲシテ居ルノデアリマス、サウシテ其ノ苦
勞ヲ苦シイナガラモ押通シテ來タノデアリ
やく、事件ガ多少減ツタカラト云ツテ、決
シテ吾々ノ方ノ手ニ餘裕ハアリマセヌ、其
ノ邊ハ十分御諒承願ヒタイノデアリマス、
尙ホ十四年度後ノ統計デアリマスルガ、正確
ナコトハヽマダ私共ノ方ニ調製ハ出來テ居
リマセヌケレドモ、民事ハヤハリ減ツテ居
リマス、併シ刑事ノ方ノ搜査事件ハ十四年
ノ後半カラ十五年ニナツテ、是ハ一般刑事
犯デアリマスルガ、寧ロ殖エテ居リマス、
併シナガラ斯樣ナコトハ大シタ違ヒハナイ
ノデアリマシテ、吾々ノ手ニ餘裕ノナイ實
情ダケハ一ツ御賢察ヲ願ヒタイト存ズルノ
デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=32
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033・松木弘
○松木委員長代理 ソレデハ先程ノ御話ヲ
速記ヲ止メテ政府當局ノ御說明ヲ承リタイ
ト思ヒマス
〔速記中止〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=33
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034・松木弘
○松木委員長代理 御諮リ致シマス、モウ
正午ニナリマシタガ、午後ノ本會議ニハ重
要ナル案ガ出ルノデ、全議員ノ出席ガ要望
サレテ居リマスカラ、此ノ際刑事局長ヨリ
經濟事犯ニ關スル御說明ヲ伺ヒマシテ後、
散會スルコトニ致シタイト思ヒマスガ、如
何デセウカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
〔松木委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=34
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035・野村嘉六
○野村委員長 ソレデハ池田政府委員発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=35
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036・池田克
○池田(克)政府委員 私ヨリ最近ニ於キマ
スル經濟犯罪ノ大體ノ〓況ニ付キマシテ御
報〓ヲ申上ゲタイト思ヒマス
御承知ノ通リ統制經濟法令ニ於キマシテ、
昨年ノ議會ニ於テ御協賛ヲ得マシテ罰則ガ
强化サレ、更ニ又取締當局ノ側ニ於キマシ
テモ、相當嚴重ナ取締ヲ致シテ居ル譯デア
リマスルガ、今日マデノ傾向ヲ見マスルノ
ニ、御手許ノ方ニ御配付申上ゲマシタ統計
資料デモ御分リノ通リニ、引續キ增加ノ傾
向ヲ辿ツテ居リマス、殊ニ最近ニ於キマシ
テハ、全國ヲ通ジマシテ、每月平均一万人
乃至一万一千人位ノ經濟違反事件ヲ檢事局
ガ受理シテ居ルト云フ風ナ狀況デアリマス、
其ノ犯罪ノ手段方法ナドモ、所謂經驗ヲ積
ムト申シマスカ、段々巧妙ニナツテ參リマ
シテ、質的ニ申シマシテモ惡質化ノ傾向ガ
認メラレマスコトハ、甚ダ遺憾ト存ズル所
デアリマス
統計ニ現ハレマシタ結果ヲ基礎ト致シマ
シテ違反ノ〓況ヲ御說明申上ゲマスルト、
全國檢事局ニ於キマシテ受理致シマシタ經
濟事件ガ、昭和十三年度ガ一万一千二百九
十二〓人、是ハ統制經濟ガ初メテ實施サレタ年
デアリマスガ、一万一千二百九十餘人、昭和
十四年度ガ二万八千六百三十七人デアリマ
シタ、昭和十五年度ニナリマスト、非常ニ飛
躍的ナ增加ヲ致シマシテ、十二万七千六百
四十人、昭和十六年度ハ一月カラ十月マデ
ノ間ニ十万六千人バカリノ事件ヲ受理シテ
居リマス、昭和十五年度ニ於キマシテ、非
常ニ急激ナ增加ヲ致シマシテ、慥カ昭和十
五年ノ十二月デアツタト思ヒマスルガ、十
二月中ニ一万五千人バカリノ事件ヲ受理致
シマシテ、是ハ一番頂點ヲ示シタ譯デアリ
マス、昭和十六年度ニ入リマシテカラハ、
其ノヤウナ急激ナ增加率ハ稍〓〓ヘタノデア
リマスルケレドモ、絕對數ニ於キマシテハ、
先程モ申シマシタ通リニ尙ホ漸增シテ居リ
マシテ、每月約一万人カラ一万一千人前後
ノ事件ヲ受理シテ居リマシテ、昭和十五年
度ト昭和十六年度ヲ比べテ見マスト、六ハ
リ全體ニ於テ一割弱ノ增加率ヲ示シテ居ル
ノデゴザイマス、此ノ受理致ジマシタ事件
ノ處理ノ問題デゴザイマスルガ、昭和十六
年ノ十月末日現在ノ累計デ、總計二十五万
六千二百八十八人デゴザイマス、此ノ中起
訴セラレマシタモノガ十万九千三百四十六
人割合デ申シマスルト四三%弱デゴザイ
マス、ソレカラ起訴猶豫其ノ他ノ不起訴處
分トナリマシタモノガ、十万六千八百八十
九人デゴザイマシテ、比率デ申シマスレバ
四二%デゴザイマス、其ノ他中止或ハ移送
シタモノガ四千五十人バカリゴザイマスガ、
比率ハ一六%弱ニナツテ居ル譯デアリマス、
此ノ起訴ノ比率デゴザイマスルガ、大體ニ
於テ今日ニ至リマスマデ大差ガナイノデ
ゴザイマス、隨ヒマシテ詰リ檢事局ガ受理
シマシタ事件ノ中デ、四二%程度ガ起訴ヲ
サレテ居ルト云フ實情デゴザイマス、サウ
シテ更ニ起訴ノ內譯ヲ見マスルト、先程モ
司法次官カラ御說明ガゴザイマシタ通リ
二、壓倒的多數ノモノガ略式命令-略式
手續デゴザイマシテ、每年約九四%程度ノ者
ガ略式命令ノ請求ヲサレテ居ル譯デアリマス、
サウシテ公判ノ請求ヲサレマスルモノガ每
年五%或ハ六%ノ程度デアリマシテ、其ノ
他ニ豫審請求ヲ致シマスル事件ガ、僅少デハ
ゴザイマスルケレドモ、マア一%カラ一%半
ノ程度ノ豫審請求デゴザイマス、之ニ對シ
マシテ第一審裁判所ニ於キマシテ言渡シマ
シタ刑ヲ見マスルト、略式命令ニ依リマス
モノハ勿論全部罰金デアリマスケレドモ、
公判請求或ハ豫審請求事件ニ付テ、體刑、
詰リ自由刑ヲ言渡シマシタモノハ、統制經
濟實施後、昭和十六年ノ十月末現在累計デ
三千七百三十八人デゴザイマス、之ヲ內譯的
ニ見マスルト、六月未滿ノ自由刑ノ言渡ヲ
受ケマシタモノガ二千七百四十一人、割合
ハ七三%、七三%程度ノモノガ六月未滿ノ自
由刑デゴザイマシテ、六月以上ノ自由刑ノ言
渡ヲ受ケマシタモノガ二七%ニナツテ居リ
マス、更ニ之ヲ內譯的ニ申シマスルト、三
年以上ノ自由刑ニ處セラレマシタモノガ五
人二年以上ノ刑ニ處セラレマシタモノガ
十六人、一年六月以上ノ刑ニ處セラレマシ
タモノガ四十五人、一年以上ノ刑ニ處セラ
レマシタモノガ百六十一一人、六月以上ノ刑
ニ處セラレマシタ者ガ七百六十九人ト云フ
コトニナツテ居リマス、之ニ對シマシテ第
一審裁判所ニ於キマシテ無罪ノ言渡ノアリ
マシタ者ガ、統制經濟濟施以來昭和十六年
ノ十月末現在マデニ於キマシテ、·約百人ニ
相成ツタカト考ベルノデアリマス
之ヲ更ニ違反ノ種類カラ見マスレバ、統
制經濟實施ノ初期ニ於キマシテハ、物資ニ
關スル統制違反ノ事件ガ殆ド大部分ヲ占メ
テ居ツタノデアリマスルケレドモ、昭和十
五年以降價格統制違反ガ非常ニ增加致シマ
シテ、今日ニ於キマシテハ全違反ノ八〇%
以上ノモノガ價格統制違反ト云フ實情デゴ
ザイマス
更ニ全國各地域ニ付キマシテ物資別ニ付
テ〓觀致シマスルト、都市、農村ヲ通
ジマシテ飮食料品、日用纖維製品等、生活
必需物品ニ違反ガ最モ多イコトト、東京
トカ、大阪トカ、名古屋、京都ト云フ風
ナ大都市ニ於キマシテハ、此ノ他ニ殆ド凡
ユル物資ニ付キマシテ違反ガ行ハレテ居リマ
スルコトト、尙ホ大都市ニ於キマシテハ相
當大キナ規模ニ於キマスル輸出納製品ノ內
地流用ノ-言葉ハ甚ダ下品デゴザイマス
ルケレドモ、闇取引ガ行ハレテ居ルコ
トト、其ノ他大都市カラ中小ノ都市ニ亙リ
マシテ、地代、家賃ノ統制令ニ違反シマス
ル者モ相當ニ見エルヤウデアリアス、農村ニ
於キマシテハ米トカ、麥トカ、大豆ナドノ
違反ノ外ニ、臨時農地價格統制令、或ハ臨
時農地管理令等ノ違反ガ現ハレ始メテ居ル
ト云フヤウナコトガ認メラレル譯デアリマ
ス
次ニ經濟犯罪ヲ質ノ上カラ見マスルト、
遺憾ナガラ發生以來常ニ惡質化ノ傾向ヲ迪
ツテ居ルヤウデゴザイマシテ、其ノ手段方
法ニ於キマシテモ、或ハ犯跡ヲ隱蔽スル方
法等ニ於キマシテモ、巧妙ナ方法ガ色々行ハ
レテ居ルヤニ見受ケラレルノデアリマス、
之ヲ地域的ニ觀察致シマスレバ、特ニ其ノ
傾向ガ相當ニ强ク認メラレマスノハ、大體
ニ於キマシテ大都會デゴザイマスルケレド
モ、此ノ他各地トモ惡質化ノ傾向ガ相當ニ
强イト云フコトガ、ドウモ否定出來ナイノ
デハナイカト觀察サレル譯デアリマス、此
ノ惡質ナル違反ノ最モ多イ物資ハ何カト申
シマスレバ、纖維、食糧品、金屬、地代、
家賃竝ニ土地建物ノ價格等デゴザイマス、
犯罪ノ手段方法トシテハ色々ノ方法ガアル
譯デゴザイマスルケレドモ、各地ノ檢事局カ
ラノ報告ニ基キマシテ、其ノ主ナモノヲ擧
ゲテ見マスルト、輸出綿製品ニ付キマシテ
ハ、所謂籍拔ト申シマスカノ方法ニ依ツテ、
各各ノ統制手續書類ヲ僞造致シマシテ、之
ヲ內地向ケニ流用シテ居ルト云フヤウナ實
例ガ、東京、橫濱、名古屋、大阪、神戶及
ビ京都カラ報〓サレテ居リマス、此ノ事件
ハソレ等ノ各地ニ亙リマスル極メテ大部分
ノ事件トナツテ居リマシテ、是等ノ纖維關
係ノ違反ヲスル者ガ全然證據トナルベキモ
ノヲ殘サヌ、或ハ燒却ヲ致シテシマツテ居
ル、更ニ或ハ街頭連絡ヲ致シマシテ「ペン·
ネーム」ヲ用ビル、或ハ隱レ家ヲ轉々スル
等丁度過去ニ於キマスル思想運動ヲ思ハ
セルヤウナモノガアル譯デゴザイマス、其
ノ他纖維關係ニ付キマシテハ、保釋中ニ更
ニ同ジヤウナ種類ノ犯罪ヲ犯スモノ、或ヘ
査定證紙ヲ不正ニ使用スルモノナドガ各地
ノ檢事局カラ報告サレテ居リマス、是等ノ
報告ヲ綜合致シマスルト、各地ニ相當ニ質
ノ惡イ面ノ仲介業者ガ存在致シマシテ、相
互ニ連絡シテ、所謂闇取引ヲ敢テシテ居ル
ト云フ風ニモ考ヘラレル譯デアリマス、又
食料品ノ關係ニ付キマシテハ、量目、品質、
等級、規格等ヲ胡麻化スモノガ相當ニ多イ
クデアリマシテ、中ニハ食用ノ鷄ノ口カラ
如露ヲ入レマシテ水トカ貝類ナドヲ注入ス
ル、或ハ魚ノ腹ノ中ニ小サナ石デアルトカ、
或ハ水ニ浸シタ藁デアルトカ、襤褸ナドヲ
詰メマシテ目方ヲ增ストカ、或ハ小麥粉ノ
中ニ三割程度ノ石ノ粉ヲ混入スルト云ツタ
ヤウナコトモ、報告ニ載ツテ居ル譯デゴザ
イマス、其ノ他從來囘收不能デアリマシタ
酒代金ヲ引受ケシメタ者、或ハ代金ノ返濟
ヲ强要シタ者、或ハ資金ヲ提供セシメタ者、
炭ニ土塊ヲ混入シテ販賣シタ者デアルト
万、或ハ違反ガ發覺シタ場合ニ豫メ刑事責
任ヲ負フベキ者ヲ定メテ置イテ違反ヲスル
トカ、或ハ二重帳簿、二重傳票ヲ作ツテ犯
罪ノ痕跡ヲ隱蔽スルトカ、更ニ軍ノ註文書
ヲ變造致シマシテ、靴ヲ多ク作ツテ之ヲ
闇取引ニスル、其ノ他輸出綿布ヲ內地向ニ
流用シタ犯罪ノ隱蔽ノ手段方法ト致シマシ
テ所轄警察署ニ綿布ノ盜難屆ヲ出シマシ
テ、其ノ受理證明書ヲ受ケテ之ヲ統制會社
ニ提出スル等、色々ナ事例ガ報告セラレテ
居リマス
最後ニ累犯ノ問題デゴザイマスルガ、經濟
事件ノ前科ガアリマスル者ガ、更ニ經濟事件
ニ依ツテ起訴セラレマシタ數ハ、統制法令
實施後昭和十四年ノ十一一月マデノ間ニ於キ
マシテハ、總計二百七十八人デゴザイマシタ
ガ、昭和十五年一月以降每月其ノ數ヲ增加
致シマシテ、昭和十五年一月ニハ十八人、五
月ニハ五十四人、八月ニハ八十二人、十二月
ニハ二百六十九人ト云フ風ニ、月ヲ逐ヒマ
シテ增加シテ來タノデアリマスルガ、昭和十
六年度ニ於キマシテハ幸ヒニ其ノ數ヲ減ジ
マシテ、昭和十六年九月ヲ見マスト、百四
十八人ニナツテ居リマス、併シナガラ前ニモ
申述ベマシタ通リニ違反人員ノ增加、犯罪
手段ノ巧妙化ト思ヒ合セマスト、經濟統制
令ノ違反事件ニ對シマスル檢察事案ト云フ
點ニ於テハ、相當ニ憂慮スベキモノガアル
ノデハナカラウカト考ヘマス、其ノ他統制
法令違反ノ犯罪ノ件ニ付キマシテモ色々ノ
點ガ考ヘラレマスケレドモ、最近ニ於ケル
經濟違反事件ノ大體ノ〓要ニ付テ御說明申
上ゲタ次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=36
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037・一松定吉
○一松委員 只今ノ刑事局長ノ御說明ハ最
モ良イ御說明ト思フ、吾々ハ本案ヲ審議致
スニハ、重要ナ參考資料ダト思フガ、何力
表ノヤウナモノガアツテ、差支ヘナケレバ
委員ニ御配付願ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=37
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038・池田克
○池田(克)政府委員 之ヲ刷リマシテカラ
御配付申上ゲマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=38
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039・服部英明
○服部(英)委員 只今ノ御說明洵ニ有難ウ
ゴザイマシタガ、「ドイツ」邊リニ於ケル同種
ノ犯罪ニ付テノ比較カ何カ御〓究シタ御調
ベガアツテ御差支ヘナケレバ御願ヒシタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=39
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040・大森佳一
○大森政府委員 只今ノ御要求デアリマス
ガ、近頃書物ハ全ク入ラナイモノデアリマ
スカラ近狀ガ能ク分リマセヌガ、歸朝シテ
參リマシタ官吏ノ話等ニ依ツテ〓要ヲ承ツ
タコトガアリマス、詳細ハ能ク分リマセ
又、其ノ點ドウモ御答ヘ致シ兼ネマスカ
ラ、惡シカラズ御諒承ヲ願ヒタイト思ヒマ
ヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=40
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041・古島義英
○古島委員 洵ニ寒心スベキコトヲ承リマ
シテ、吾々モビツクリシタノデアリマス、
段々經濟違反ガ殖エルト云フコトハ、全ク
吾々トシテ淚ノ出ルヤウナ氣持ガスルノデ
アリマス、所ガサウ云フ經濟違反ガド
ンドン殖エテ來、而モソレガ惡質化スルト
云フコトニナツテハ、全ク此ノ世ノ末デア
リマス、ソコデサウ云フコトハドウシテ殖
エルヤウニナツタノカ、ドウシテサウ云フ
惡質化スルヤウニナツタノカ、是ハ司法省
邊リガ何ヨリ關心ヲ持タナケレバナラヌコ
トデスカラ、其ノ根本ハ何處ニアルカ、私
ハ嘗テ國家總動員法ノ改正ノ時ニモ、罰金
ヲ五万圓ニシテモ駄目ダ、·兎ニ角超過金ガ
出タナラ、其ノ超過金ノ何十倍ト云フ不確
定ナ刑ニシナケレバ防ゲナイ、罰金ヲ五万
圓ニシタ所ガ十万圓儲ケレバ、結局五万圓
儲ケタコトニナル、チヤント算盤ヲ彈イテ
ヤルコトニナルカラ、如何トモ致シ方ガナ
イト云フ注意ヲシタコトガアリマス、所ガ
今日ニナツテドン〓〓殖エルト云フコトヲ
聞イテ全ク驚イタノデアリマス、其ノ原因
ハドノ邊ニアルカ、御氣付ノ點ガアツタラ
御漏シヲ願ヒタイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=41
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042・大森佳一
○大森政府委員 經濟違反ノ激增致シマス
ル原因ニ付キマシテ、私共モ明確ナコトハ
分リマセヌケレドモ、今日ノ所想像ノ程度
ニ於キマシテハ、先ヅ第一ニ犯人ガ本當ニ
國家ノ非常時局ニ目覺メテ居ナイト云フコ
トハ、閑却スベカラザル問題ダト思フノデ
アリマス、第二ニ犯人ガ少クトモ他ノ方面
ニ於テハ立派ナ人間デアリマセウ、決シテ
本來惡質ナル人間デハナイノデアリマセウ
ケレドモ、ダラシガナイ、在來ノ生活方針
カラ蟬脫シ切ツテ居ナイ、サウ云フ點ヲ擧
ゲルコトガ出來ルト思フノデアリマス、又
第三點ニ付キマシテハ配給ニ付テ多少遺憾
ナ所ガ是マデアツタヤニ伺ツテ居リマス、
サウ云フコトガアリマシタナラバ、經濟違
反發生ノ原因デハナイト致シマシテモ、經
濟事犯ヲ撲滅スルニ稍〓困難ナ事情ト思ヒマ
スカラ、是等ハ關係各官廳間ニ於テ十分連
絡協議ヲ遂ゲテ善處致スベキモノダト思ツ
テ居リマス、但シ第一、第二ノ點ハ犯人ノ
精神ノ問題デアリマスカラ、豫防的措置ト
シテ吾々遺憾ナキヲ期シタイト存ジテ居ル
次第デアリマス、御承知ノヤウニ昨年ノ十
一月一日ガ司法記念日デアリマシタ、此ノ
司法記念日ヲ第一日ト致シマシテ、爾後數
日間全國ニ亙リマシテ經濟道德ノ昂揚、率
直ニ申シマスレバ、經濟事犯豫防竝ニ撲滅
ノ爲ノ運動ヲ起シマシテ、是ハ主トシテ商
工會議所、情報局當面ノ責任者トナリマシ
テ、私共之ニ參加致シマシテ、最初ハ全國
十大都市ト思ツタノデアリマスガ、他ノ都
市モ之ニ自發的ニ參加ヲ致シマシテ、地方裁
判所、區裁判所所在地、殆ド總テニ付テ此
ノ運動ヲ起シマシタ、卽チ講演會、引續キ
座談會ヲ數日ニ亙ツテ催シマシタ、此ノ座
談會ニ付キマシテハ成績ガ極メテ良好デア
ツタヤウニ思ヒマス、私共ノ方面カラモ戰
慄スベキ事犯ノアルコトヲモ率直ニ申述べ、
サウシテ一般ノ人ノ反省ヲ願ツタ次第デア
リマス、是ハ反響ガアツタト思ヒマス、併
シソレガ爲ニ俄カニ犯罪ガ激減シタカト申
シマスト、必ズシモサウデハナイノデアリ
マシテ、此ノ運動ハ出來得ル限リ續ケタイ
ト思ツテ居リマス、今日ノ所私共ノ考ヘデ
ハ先ヅ此ノ程度ニ過ギナイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=42
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043・古島義英
○古島委員 刑事局長ノ御話ノ中ニ今ノ魚
ノ腸ニ襤褸ヲ入レル、石ヲ入レル、鷄ノ口
カラ無理ニ石ノ混ツタ餌ヲ喰ハセル、斯ウ
云フ違反ガ出テ參ルコトハ〓糧品ノ多クガ
皆目方賣リニナツテ居ル關係上、是ガ大ナ
ル原因デアルト思ヒマス、ソコデ近來ハ-
是ハ又小サイコトヲ申上ゲテ恐縮デスガ、味
噌ガ配給ニナルト、味噌ヲ其ノ儘配給セズ
ニ、之ニ水ヲ割ツテ緩クシテ目方ヲ重クシ
テヤルト云フコトサヘ起ツテ居ル、食料品
ヲ善イ惡イニ拘ラズ、何デモ彼デモ斤量賣
ニスルト云フコトガ、此ノ違反ヲ助長スル
一ツノ原因ニナルノデハアルマイカ、其ノ
點ナドハ御氣付ニナラヌデセウカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=43
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044・大森佳一
○大森政府委員 御指摘ノ點ニ付キマシテ
モ私共色々考慮ヲ實ハ致シテ居ルノデアリ
マス、併シ單純ニ司法省ダケノ問題デハナ
イノデアリマシテ、總テ關係諸官廳ト熟議
ヲ凝ラシタイト思ツテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=44
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045・一松定吉
○一松委員 一寸議事進行ニ付テー-今御
尋ネガアリマシタヤウニ、吾々ノ質問ハ司法
省ダケデハナイノデス、明後日ハ內務省、商
工省、農林省、是ダケハ是非御出席下サル
ヤウ御取計ヒヲ御願ヒ致シテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=45
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046・野村嘉六
○野村委員長 マ宜シイデス、モウ宜シウゴ
ザイマスカ-ソレデハ今日ハ是デ散會致
シマス、明後日午前十時カラ開會致シマス
午後零時三十分散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913301X00619420207&spkNum=46
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