1. 会議録本文
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000・会議録情報
會議
昭和十七年二月四日(水曜日)午後一時三十分開議
出席委員左の如し
委員長 宮澤裕君
理事 一ノ瀬俊民君 理事 増永元也君
理事 清寛君 理事 木檜三四郎君
大野一造君 熊谷五右衞門君
曾木重貴君 高橋義次君
田中好君 堤康次郎君
山田六郎君 増永元也君
行吉角治君 若宮貞夫君
井上良次君 中野寅吉君
米窪滿亮君
出席國務大臣左の如し
遞信大臣 寺島健君
出席政府委員左の如し
遞信次官 手島榮君
電氣廳長官 藤井崇治君
海務院長官 原清君
海務院次長 安田丈助君
海務院部長 若林清作君
鐵道省監督局長 佐藤榮作君
委員長の許可を得て出席したる者左の如し
議員 江原三郎君
本日の會議に上りたる議案左の如し
小形船舶乘組員手帳法案(政府提出、貴族院送付)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=0
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001・宮澤裕
○宮澤委員長 是カラ會議ヲ開キマス、去
ル一月二十九日木委員會ニ付託サレマシタ
小形船舶乘組員手帳法案ニ付テ今日ハ審議
ヲ致シマス、先ヅ政府ノ說明ヲ承ルコトニ
致シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=1
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002・寺島健
○寺島國務大臣 本案提出ノ趣旨ニ付キマ
シテハ、木會議ニ於テ概略ノ說明ヲ申上ゲ
タノデアリマスガ、尙ホ此ノ機會ニ於キマ
シテ、少シク敷衍シテ御說明ヲ申上ゲタイ
ト存ジマス
戰時下益〓重要性ヲ加ヘツツアリマス海上
輸送ヲ確保センガ爲ニハ船腹ノ擴充ト共
ニ、人的資源タル海上勞務ノ統制ヲ强化シ、
是ガ供給ヲ確保シナケレバナラナイコト
ハ改メテ申上ゲルマデモアリマセヌ、政
府ハ此ノ點ニ留意致シマシテ、海運國家管
理ノ方針ヲ決定シ、一定範圍ノ船員ヲ徴用
スルコトト致シタノデアリマス、然ルニ船
員法ノ適用ヲ受クル船員ニ付キマシテハ、
同法ノ手帳制度其ノ他ノ規定ニ依リマシテ、
旣ニ必要ナル統制ガ行ハレテ居ルノデアリ
マスガ、小形船舶乘組員、卽チ總「トン」數
二十「トン」未滿ノ船舶等ニ付キマシテハ
船員法其ノ他ノ法令ノ適用ガナク、全ク無
統制ノ狀態ニ置カレテ居ルノデアリマシテ、
海上輸送ノ完遂ヲ期スル上ニ於キマシテ缺
クル所ガアルノデアリマス、仍テ小形船舶
乘組員ニ付キマシテモ、漁船ヲ除キ、總「ト
ン」數五「トン」以上ノ船舶乘組員ニ對シテ
ハ、新タニ手帳制度ヲ設ケ、雇傭契約ノ成立、
終了、變更等ニ付キマシテ、之ヲ管海官廳
ニ提出シテ證明ヲ受ケシムルコトト致シ、
其ノ就業狀況ヲ明カニシテ、移動ヲ規制ス
ルト共ニ、徵用船員ノ不斷ノ補充源タラシ
ムル基礎ヲ整備スルコトト致スモノデアリ
マット、尙ホ之ニ伴ヒマシテ戶籍事務ヲ管掌
スル者ニ對シ、船員又ハ船員タラントスル
者ノ身分ヲ確カムル爲ニ必要トスル證明書
ヲ、無償ニテ發行セシムルヤウ規定シタモ
ノデアリマス、是ハ既ニ大型船舶ニ關シ船
員法、ニ、又陸上勞務者ニ關シ國民勞務手帳
法ニ規定シアルノト、同一ノ趣旨ニ出ヅル
モノデアリマス
本案提出ノ趣意ハ、大體以上述ベマシタ
ル通リデアリマス、何卒御審議ノ上速カニ
御協賛アランコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=2
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003・宮澤裕
○宮澤委員長 本案ニ對シテ質疑ノ通〓モ
アリマスガ、豫テ全員カラ要求シテ居リマ
ス一般船ニ關スル諸般ノ說明ヲ、政府カラ
此ノ際續イテ致シタイト云フ希望ガゴザイ
マスノデ、此ノ說明ヲ承ルコトト致シマス
寺島遞信大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=3
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004・寺島健
○寺島國務大臣 大東亞戰爭勃發以來、御
稜威ノ下ニ皇軍ハ各所ニ赫々タル戰果ヲ擧
ゲマシテ、今ヤ太平洋ノ殆ド全水域ニ亙ツ
テ雄大ナル作戰ヲ致シテ居リマス、又南方ノ廣
汎地區ニ於キマシテ、重要ナル據點ヲ占據
シテ、重要物資ノ確保ニ付キマシテモ其ノ
見當ガ付キ、計畫ヲ進メテ行クコトニ向ヒ
ツツアルコトハ皆樣ノ御存ジノ通リデア
リマシテ、此ノ廣大ナル戰爭ノ遂行ト云フ
コト、又主トシテ南方資源ノ確保ト云フコ
トヲ考ヘマシテモ、軍事上、經濟上、最モ
重要ト考ヘルモノハ船腹デアリマス、此ノ
點ニ付キマシテハ、皆樣方カラモ御熱心ナ
ル御質問ガアリ、重大ナル關心ヲ寄セラレ
テ居リマスルコトニ付キマシテハゝ政府ト
致シマシテモ、深ク感謝スルモノデゴザイ
マス、併シナガラ此ノ船腹ノ造船ト云フコ
トニ付キマシテハ只今ノ戰時ニ於キマシ
テハ、直チニ是ガ軍ノ狀況ヲ察知スルコト
トナルノデ、此ノ點ニ付キマシテ、數字的
ニ御話スルコトガ出來ナイノハ遺憾トスル
所デアリマス、併シ政府ニ於テ執リツツア
ル諸般ノ對策ヲ、〓括的ニ一應取纏メテ申
上ゲタイト存ズルノデアリマス
日支事變ノ始マリマスル時分ニ、本邦ノ
船舶ハ千「トン」以上ノモノ約千艘、約四百
万「トン」餘デアツタコトハ、皆サン御存ジ
ノ通リデアリマス、是ガ速カナル擴充ヲ必
要トシテ、或ハ六百万「トン」或ハ八百万
「トン」ト云フヤウニ、增大シテ行カナケレ
バナラヌト云フ說ノアツタコトモ御存ジノ
通リデアリマス、當時ニ於ケル造船量ハ、
約四十万「トン」程度ガ年々新造サレテ居ル
狀況デアリマシテ、又千「トン」以下百
ㄱトン」以上ノ船ニ付キマシテハ、其ノ隻數
ハ略〓千「トン」以上ノ汽船ト同ジ位デアリ
やくっ、ケレドモ其ノ「トン」數ハ十分ノ一位
デアリマス、故ニ大體ニ於テ千「トン」以上
ノ船ト云フコトヲ考ヘマスレバ、本邦船舶
ニ付キマシテノ〓念ハ得ラレル譯デアリマ
ス、所デ皆樣ニハ或ハ釋迦ニ說法ト云フヤ
ウナ所モアルカモ知レマセヌガ、〓括的ニ
申上ゲマスレバ、船舶ハ陸上ノ構造物等ト
違ヒマシテ、天候ノ異變等ノアル海上ヲ活
躍スルモノデアリマスガ故ニ、遺憾ナガラ
年々相當量ノ破損、遭難等ガアリマス、是
ナシトシテモ、大體船ハ三十年經テバモウ
使ヘナクナルト云フノガ凡ソノ見當デアリ
マス、三十年モ經過スレバ代リノ船ヲ造ラ
ナケレバナラヌ、是等ノ遭難ト自然消耗ト
ヲ考慮シテ、假ニ二十年ノ船齡ト云フコト
ニ考ヘテ見マスト、四百万「トン」ノ船ガア
リマシタナラバ、年々二十万「トン」ト云フ
モノハ、此ノ自然消耗ヲ補ツテ行クト云フ
ダケデ建造ガ必要デアル、年々四十万ヘト
ン」ノ建造ヲスルト云フコトハ、新タニ船
腹トシテハ二十万「トン」ガ殖エルト云フ程
度ニ考ヘナケレバナラヌモノデアリマス、
是ハ皆樣方ハ御存ジデアリマスガ、世ノ中
ノ人ハ其ノ點マデ考ヘズニ、新造船ハ卽總
テ船腹ガ殖エルヤウニ思ツテ居ル方モアル
ガ故ニ、附言シテ申上ゲルノデアリマス、
然ル所日支事變ガ逐次進展ヲシテ參ルニ伴
レテ、船腹トシテハ軍用船ニドン〓〓ト徵
用セラレテ行クモノガ增加シテ參リマシタ、
一面船舶建造ノ主ナル資材デアル所ノ鐵材
モ、其ノ入手ガ遲レ勝チデアリマス、隨テ
豫定サレテ居ル造船計畫ガ、其ノ進行ヲ逐
次遲ラシテ行クノ已ムヲ得ナイ狀況モアリ
マシタノデ、政府ハ是ガ爲ニ統制シテ船腹
ノ擴充ヲ圖ツテ行カナケレバナラヌ、從來
ハ各船主ガ見込ヲ立テテ、造船所ト契約ヲ
シテ、船腹ノ擴大ヲ圖ツテ行ク、政府ハ之
ヲ監督シテ行クト云フ程度ダケデアリマシ
タノヲ、進ンデ造船事業法ヲ制定シ、船腹
ノ建造ハ皆認可制トシテ、政府ガ之ヲ計畫
造船ニ導イテ行ク手段ニ出デテ居ツタノデ
アリマス、運輸ノ方面ニ於テモ、運輸ノ統
制ノ組合ヲ作ラセ、又造船事業法ニ基イテ、
從來民間ダケノ法人デアツタ造船聯合會ヲ
此ノ事業法ニ於ケル組合ノ法人トシテ、政
府ノ統率下ニ之ヲ置イテ參ツタノデアリマ
スガ、時局ハ愈〓進展シテ今日ノ如キ戰爭ニ
備ヘナケレバナラヌコトニ相成ツタノデア
リマス、就キマシテハ軍用船ガ著シク增加
スルコトハ當然ノコトデアリマス、一面造
船所內ニ於ケル軍用艦船ノ建造ヲ急ガナケ
レバナラヌト云フコトモ、亦當然デアリマ
ス、隨テ一方ニ於テ船腹ハ減ル、又建造ノ方
ニ於テモ、資材勞力ノ關係カラ、之ヲ十分ニ
補ツテ行クト云フコトニハ、至難ナル關係
ヲ生ジテ來タノデアリマス、加フルニ今マデ
本邦ノ方ニ外國傭船ガ相當ノ輸送力ヲ助ケ
テ居ツタノデアリマスガ、是ガ漸次ナクナツ
テ參リマシタ、是ニ於テ今マデノ組合等ニ
於テ是ガ調節ヲ圖ルト云フダケデパ、到底
其ノ目的ヲ達シナイ、一元的ニ海運ヲ國家
ノ要求ニ應ジテ纒メテ行カナケレバナラヌ
ト云フコトヲ決意致シマシテ、海運ノ國家管
理ト云フコトヲ決定致シタ次第デアリマシテ、
是ハ一定船舶ヲ政府ニ於テ徴用シテ、之ヲ
政府ノ意圖スル如ク國家ノ要求ニ卽應セシ
メルヤウニ、民間ノ有識者ヲ以テ幹部トス
ル船舶ノ運營會ト云フモノニ運營セシメ
テ、多少或ハ非常ナ危險アル所デモ、其ノ運
航ヲ敏活ニシテ、能率ヲ增加シテ行キタイ、
斯ウ云フ運航上ノ點ト、造船ニ付キマシテ
ハ、今マデノ實驗ニ依ツテ計畫ハ立ツテ居
ツテモ、實際ハ其ノ通リ行キニクイ、資材
ノ點ニ於テ然リ、勞力ノ點ニ於テ又然リデ
アリマスガ、本邦造船所ノ主ナルモノハ
旣ニ海軍ノ管理工場トナツテ居リマス、又
其處ノ勞務者ハ國民徵用令ニ依ツテ徴用セ
ラレテ居ルノデアリマス、由來造船ニ從事
スル所ノ勞務者ハ、非常ナル骨折リヲ以テ、
各地方廳又厚生省ノ盡力ガアリマシテモ、
應募者ガ意ノ如ク集マラナイノデアリマス、
是ニ於テ一般國民カラモ徴用致シマシテ、
軍管理工場ニ於テ勤勞ヲ致シテ居ル今日デ
アリマス、ソコデ此ノ造船ヲ圓滑ニスルコ
ト、而モ今日ノ船腹ノ必要ト云フコトハ
軍ニ於テモ痛切ニ其ノ必要ヲ感ジテ居ル次
第デアリマスガ故ニ、工場內ニ於ケル造船
業務ノ監督或ハ資材ノ調整等ヲ、海軍ニ於
テ一元的ニ致ス手段ヲ執リ、又造船ノ統制
會ヲモ組織致シマシテ、是ガ實際上ノ運行
ニ適切ナラシメルヤウナ手段ヲ執ルコトト
致シマシテ、船員モ之ヲ徵用シテ被徵用船
舶ニ配乘ヲ命ジ、之ニ對シテ政府ハ必要ナ
ル補助等ヲ加ヘテ行クト云フ手段ヲ執ツテ
參ツタノデアリマス、尙ホ此ノ外ニ船腹ノ
擴充ニ付キマシテハ、尋常一樣ノ手段デハ
此ノ非常時ニ適合シナイノデアリマシテ、
勿論戰爭ノ進行ト共ニ得ラレル拿捕船ヲ速
カニ使用スル、或ハ敵船等ノ沈沒シテ居ル
モノデ、使ヘルモノハ早ク引揚ゲル、又サ
ウデナイモノモ「スクラップ」トシテデモ
速カニ引揚ゲル、又苟クモ利用シ得ル外國
船ガアレバ、之ヲ利用スルノ方法ヲ講ジテ
行カナケレバナラヌ、斯ウ云フ次第ヲ以チ
マシテ、全力ヲ擧ゲテ凡ユル手段ヲ講ジテ
船腹ノ擴充ヲ圖リ、擴充セラレタル船腹ハ、
軍ノ必要ナル要求ニハ全幅的ニ應ジ、其ノ
他ヲ擧ゲテ能率アル、而モ國家ノ必要ト
スル目的ノ爲ニ運航ヲ致サセタイト云フ方
針ヲ採ツテ居ルノデアリマス、以下只今申
上ゲマシタル數項ニ付キマシテ、〓略ヲ御
說明申上ゲヨウト思フノデアリマス
一番先ニ申上ゲマシタ戰時海運管理令ノ制
定デアリマス、我ガ國海運ノ戰時的機能ヲ最
高度ニ發揮セシムル爲ニ、去ル十二月十日ノ
總動員審議會ノ審議ヲ經マシテ、戰時海運管
理ニ關スル勅令要綱ガ出來マシタ、之ニ基
キマシテ目下極力法文ノ整理ヲ急イデ居ル
ノデアリマスルガ、數日內ニハ是ハ出來上
ル積リデアリマス、是ガ出來上リ次第直チ
ニ其ノ方ノ實施ニ移ツテ行キタイト存ジテ
居リマス、其ノ要旨ト致シマスル所ハ、先
程大體申上ゲマシタガ、日本船舶ノ一程度
ノモノハ原則トシテ政府ニ於テ之ヲ使用シ、
被使用船舶ノ船員ヲ國家ニ徴用シテ、被使
用船舶ノ運營、被徵用船員ノ配乘及ビ給料
手當ノ支給等ヲ行フ機關トシテ、船舶運營
會ト稱スル法人ヲ設立シマシテ、官民ノ總
力ヲ結合シテ船舶ノ最モ有效ナル一元的運
營ヲ圖ラントスルモノデアリマス、是ハ民
有官營デハナイノデアリマス、運營ハ一ニ
民間ノ知識經驗ヲ有スル人、又船舶運行ノ
實務ニ當ル人ヲ最モ能率的ニ、自ラ進ンデ此
ノ國家ノ要求ニ力ヲ合セテ行クト云フコト
ニ導キタイト云フノガ本旨デゴザイマス
次ニ海運統制令ト云フモノヲ改正致シマ
シタ、是ハ大東亞共榮圈ノ確立ニ伴ヒマシ
テ、海運ノ運營上大ナル變化ヲ招來スルコ
トハ申スマデモナイノデアリマス、卽チ船
舶ヲ劃期的ニ增强スルノミデナク、此ノ世
界ノ寶庫トモ云フベキ南方諸地域ヲ活動ノ
基地トシテ、我ガ海運ノ世界的進出ノ意圖
ヲ實現スル爲メ、海運ハ今後益〓健全ニ又益〓、
强靱ニ育成セラレネバナラナイノデアリマ
ス、是ガ爲ニ戰時海運管理令トモ對應致シ
マシテ、我ガ海運業ニ對シマシテ、合併、解
〓事業設備ノ新設、擴張、讓渡、出資等
ニ付テ、一定ノ指導方針ヲ與フル等ノ爲ニ、
海運統制令ヲ改正致シマシテ、旣ニ總動員
審議會ノ審議ヲ經タ次第デアリマス
次ニ船腹ノ擴充ニ付キマシテ先ヅ造船デ
アリマス、外國船ノ使用ガ非常ニ困難トナ
ツテシマヒマシタ今日、船腹ノ增强ハ一ニ
船舶ノ建造ト修繕ノ促進ヲ圖ルコトニ力ヲ
盡サナケレバナリマセヌ、政府ニ於キマシ
テハ、戰時下ニ於ケル海軍艦船及ビ商船ノ
造修ヲ一體トシテ計畫致シテ行カナケレバ
ナラヌト認メマシテ、海軍、遞信兩省間ニ
於キマシテ、造船ニ關スル所管事務ノ調整
ヲ行フヲ必要ト致シマシテ、先程申シマシ
タ海軍管理工場ニ於ケル造船、及ビ船舶修
繕ニ關スル監督、及ビ船舶ノ主要材ノ供給
ノ調整ノ事務ヲ、海軍大臣ノ管理ニ移スコ
トト致シマシテ、此ノ海軍大臣ノ指揮監督
ノ下ニ最大限ノ船舶建造ヲ實現セントスル
モノデアリマス、是ハ同一造船所內ニ於キ
マシテモサウデアリマスルガ、各種ノ造船
所ヲ通ジマシテ、場合ニ依リマシテハ軍ノ
準備シテ居リマスル資材ヲモ、一時融通シ
テ貰ヘルコトニナリマス
次ニ港灣、運送等ノ統制令ニ付キマシテ
申上ゲマス、船腹ノ能率的活用ニハドウ
シテモ港灣ノ荷役能力ノ增强ヲ圖ルコトガ
必要デアルコトハ申スマデモナイノデアリ
やべり、曩ニ國家總動員法審議會ノ議ヲ經マ
シテ、港灣運送業等統制令ヲ制定シマシテ、
昨年ノ九月二十日ヨリ之ヲ實施致シマシタ
ガ、東京、橫濱、名古屋、大阪、神戶、關
門及ビ若松ノ諸港ニ付キマシテハ、當該港
ノ實情ニ鑑ミマシテ、取敢ズ地區別統制團
體ヲ設立セシメタノデアリマスガ、更ニ主
要港ニ於ケル港灣運送業ノ一元的運營機構
ノ確立ニ依リマシテ、港灣作業ノ合理的又
計畫的運營ヲ圖ル爲メ、目下各主要港ニ於
キマシテ、具體的ノ實情ヲ十分考慮ノ上、
港灣作業ヲ統合スベキ準備ヲ致シテ居ル狀
況デアリマス
次ニ機帆船ノ利用デアリマス、本法ニ於
ケル機帆船ハ、其ノ數ニ於テ非常ナ大キイ
モノデアリマス、隨テ其ノ一箇年ニ於ケル
運送量ト云フモノハ、旣ニ過去ニ於キマシ
テモ、大體三千万「トン」程度ニナツテ居リマ
シタガ、戰時下輸送ノ重要性ニ鑑ミテ、是
ガ重油ノ足ラナイト云フ爲ニ、活動ヲ大イ
ニ制限セラレテ居リマシタノデ、燃料ノ特
別配給ヲ行ヒマシテ、石炭輸送ノ機帆船ニ
對シマシテハ、殆ド所用量ノ全量ヲ供給ス
ルコトニ致シマシタ、其ノ他ノ重要物資輸
送ニ當ル機帆船ニ對シマシテモ、漸次此ノ
特別配給ヲ實施シテ、運行能率ノ增進ヲ圖
ツテ居ル次第デアリマス、又艦船ノ建造ニ
從事致シテ居リマスル勞務者ノ使用法ニ付
キマシテモ、是等ノ軍艦ト商船ト一樣ニ取
扱ツテ、彼此必要ノ限度、又工事ノ進捗ノ
程度ニ於テ、最モ能率宜クヤツテ行キタイ
ト云フ趣旨ニ基クモノデアリマス、又造船
能力ヲ彌ガ上ニモ高メテ行クト云フ必要ノ
アル爲ニ、之ヲ促進スル爲ニハ、何トカシ
テ今マデノ各船主ガ思ヒ〓〓ノ註文ヲシテ
居ルノデハイカヌト云フノデ、曩ニ標準型
船ト云フモノヲ貨物船ニ付キマシテ設ケタ
ノデアリマス、ソレハ六種ニ分ツテ居リ
マシタガ、サウシテ圖面等モ齊一ニシ、
又之ニ積ム補助機械モ一定ノモノトシテ、
多量生產的方法ニ依ツテ、之ヲ進メテ行ク
ト云フコトニ致シテ居リマス、所ガ今囘大
東亞共榮圈ニ於ケル重要物資ノ移動狀況等
ヲ考ヘマシテ、客船或ハ官廳用船、其ノ他ノ
特殊ノ建造ト云フモノハ、極力之ヲ壓縮致シ
マシテ、貨物船、油槽船及ビ鑛石運搬船ノ建
造ニ主眼ヲ置キマシテ、之ニ依ツテ造船
ヲ進メテ行キマスルト共ニ、其ノ使用ノ鋼
材ノ規格等ヲ統一シテ、能フ限リ海軍艦船
ノ規格ニ合一セシメマシテ、サウシテ構造
ノ簡易化、材料ノ節約ヲ圖ルト共ニ、船ニ
積ム所ノ機械ニ付キマシテモ、其ノ設計ヲ
急ガセマシテ、戰時標準型ト云フモノヲ勸
メテ行キタイト存ズルノデアリマス、目下
旣ニ建造中ノ船舶ハ、原則トシテ其ノ儘建
造ヲ繼續致シマスルガ、殘餘ノ工事ニ付キ
マシテハ、出來ルダケ之ヲ簡易化シテ、
日デモ早ク竣工致スヤウナ手段ヲ講ジテ居
リマスルト共ニ、未起工ノ船舶ニ付キマシ
テハ、工場ノ能率等ヲ考ヘマシテ成ベク同
一造船所ハ同一型ノ船舶ヲ造ラシムルヤウ
ニ振替ヲ行フ等、極メテ計畫化シテ參リタ
イト思フノデアリマス、玆ニ前ノ歐洲大戰
ニ於キマシテ、「アメリカ」ガ戰時急造船舶
トシテ、所謂「プロダクション·シップ」ト云
フヤウナモノヲ造リ、或ハ「セメント」ノ船
ヲ造ツタリ致シマシタガ、ソレ等ニハ幾多
ノ失策ヲモ明カニサレテ居リマスルノデ、
本邦ニ於キマシテハ、是カラノ戰時急造船
ハ他人ノ誤ツタ轍ヲ踏ムコトナク、我ガ國
ニ最モ適應シタルサウシテ材料ガ最モ少
ク、積荷ガ最モ多ク、サウシテ早ク出來ル
ト云フ方針ノ下ニ、其ノ建造計畫ヲ目下進
メテ居ル次第デアリマス
次ニ造船統制會ノ設立ハ、去ル一月二十
八日ニ創立總會ラ致シマシテ、卽日之ヲ認
可致シマスルト共ニ、會長以下役員ノ決定
ヲ見タ次第デアリマス、是ガ會員トシテ今
日指定致シテ居リマスルモノハ、元ノ造船
聯合會ノ會員ニ、新タニ出來マシタ名古屋
造船所等ノ外、各地方造船協議會ヲ會員ト
致シマシテ加入セシメテ居ルノデアリマス、
統制會設立ノ趣旨ニ鑑ミマシテ、機能ヲ完
全ニ發揮セシムル爲ニハ、此ノ外木造船業
者及ビ內燃機關、補機、艤裝船製造會社ヲ
モ、之ニ加フルノ考慮ヲ致シテ行カネバナ
リマセヌ、尙ホ外地ニ於ケル造船業者ヲモ
包括スルヤウニ處置セネバナラナイト存ジ
テ居リマス、船舶ノ補充ニハ鋼材船ガ一番
宜イト思ヒマスガ、沿岸輸送等ノ確保ニ木
造船ノ建造ヲ一層奬勵シテ行カナケレバナ
ラヌト思ヒマス、此ノ點ニ從來ヨリ劃期的
ナル進出ヲ致シタイト存ジテ居ルノデアリ
マス、就キマシテハ主要ナル木造船ニ付キ
マシテハ、標準船型ヲ決定スルヲ適當ト考
ヘテ居リマス、元來木造船ハ最モ統制セラ
レテ居ラナイ工業デアリマシテ、今後計畫
造船ノ遂行ヲ圖ル爲ニハ、木造船ノ資材、
勞力ヲ重點的ニ活用スルノガ必要デアリマ
シテ、企業ノ整理統合ヲ圖ルト共ニ、此ノ
統制ヲ强化シテ、造船統制會ノ一翼トシテ、
戰時下造船ノ遂行ニ綜合能力ヲ發揮セシム
ルヤウ處置致シタイト考ヘテ居リマス
次ニハ外國船ノ利用デアリマス、先程モ
申シマシタヤウニ、歐洲戰爭ガ勃發シテカ
ラハ急激ニ我ガ國ニ參ツテ居リマシタ外國
船ガ減少致シマシテ、現在ニ於キマシテハ
極メテ少數トナツテ居リマスガ、東亞ノ水
域內ニアル所ノ樞軸國船舶ニ付キマシテハ、
銳意之ヲ我ガ手ニ購入若クハ傭船スルヤウ
ニ手當中デアリマス、所ガ此ノ中ニハ油ヲ
主要燃料トスルモノガ多イノデアリマシテ、
是等ノ點ニモ一ツノ考慮ヲ拂ツテ參ラナケ
レバナラヌト思ツテ居リマス、尙又支那沿
岸及ビ南方地域ニ於テ、戎克ノ利用ニ付テ
モ考ヘテ居リマスルガ、御承知ノ如ク赤道
附近ハ無風地帶デ、戎克ノ航行ト云フコト
ガ、風ガナイ爲ニヤリニクイト云フ、點ハ又
考慮ニ入レナケレバナラヌ、此ノ使用ハ何
處ヘデモト云フ譯ニハ參ラナイ譯デアリマ
ス
次ニ拿捕船ニ付キマシテハ、是ハ出來ルダ
ケ早ク本邦一般ノ海運ニ使用スルニ、政府
トシテ處置ヲ進メテ居リマシテ、旣ニ若干
艘ハ本邦ニ到着致シテ居リマシテ、近ク運
送ヲ開始スルコトニナツテ居リマス
次ニハ沈沒船ノ引揚ゲモ十分ニ考慮シテ
參ラナケレバナリマセヌコトハ、先ニモ申
上ゲマシタガ、南方占據地域、特ニ香港、
「マニラ」等ノ主要港、又其ノ他ノ東亞ノ水
域ニ於キマシテモ、相當ノ沈沒船又破損船
ガアリマスガ、是ガ引揚ゲ其ノ他ノ處置ヲ
ナサシムル爲ニ、關係業者ヲ統制アル組織
ヲ作ラシメマシテ、政府ノ指導方針ノ下ニ
活潑ナル活動ヲナサシムルヤウニ、關係ノ
各廳ト密接ナル連絡ヲ取ツテ居リマス、占
領地域內ノ行動ハ、軍政下ニ於テ軍ノ方ニ
一切ハ其ノ點ヲ監督シテ行カレル譯デアリ
マス
次ニ船員ニ關スル方策デアリマスガ、船
員ノ自給ガ困難デアル狀況デアルコトハ事
實デアリマスガ、從來各種ノ養成機關補習
機關ヲ動員シテ、急激ナ需要ノ增加ニ對處
シテ來ツタノデアリマス、卽チ高等船員ニ
付キマシテハ、現在ノ高等商船學校二ツ
及ビ地方商船學校七ツヲ根幹ト致シマシテ
〓育シテ參ツタノデアリマス、時局ノ進展
ニ伴ヒマシテ、是ガ臨時急速ノ養成ヲ必要
トスルニ至リマシタノデ、昭和十五年度カ
ラ臨時高等海員養成所、特別海員養成所、
短期高等海員養成所ヲ設立致シマシテ、其
ノ養成ニ當ツテ居ルノデアリマス、昭和
十七年度ニ於キマシテハ、相常大量ノ養成
計畫ヲ樹立致シテ居ルノデアリマス、又普
通船員ノ養成機關ニ付キマシテハ、昭和十
四年以來官立養成所ヲ四箇所開設致シマシ
テ、普通船員ノ基幹トナルベキ者ノ養成ニ
當ツテ居リマスルガ、其ノ他海運報國團、
日本海運抜濟會ニ補助金ヲ交付致シマシテ、
約二箇月程ノ初級ノ養成〓育ヲ實施シテ、
相當ノ效果ヲ擧ゲテ居ルノデアリマス、右
ノ外民間ノ船主ニ於キマシテモ、普通船員
養成機關ニ有スルモノガアルノデアリマス、
是等モ政府指導ノ下ニ船員養成ニ當ツテ居
ルノデアリマス、尙ホ船員ノ再〓育ノ爲ニ、
前ニ申シマシタ臨時高等海員養成所及ビ特
別高等海員養成所ニ於テ〓育シ、更ニ上級
ノ免狀ラ得ルコトノ出來ルヤウニ致シテ居
リマスルガ、唯現下ノ情勢ニ於キマシテハ、
船員ノ需給ニ餘裕ガナイノデ、是等ノ被再
〓育者ニ十分ノ機會ヲ與ヘルト云フ程度ニ
ハ至ラナイノデゴザイマス、先般海務院ガ
設置セラレマスルト共ニ、商船乘組員ノ〓
育ニ關スル所管ヲ、戰時中遞信大臣ノ方ニ
移管致シマシタノデ、今般商船學校ノ入學
資格ヲ、今マデ中學卒業ト云フ程度デアリ
マシタノヲ、中學校四年修了者ト云フコト
ト致シマシテ、受驗者ノ範圍ヲ擴張スルト
共ニ、高級船員ノ志望者ヲ成ベク早ク世ニ
出サシメテ、高級船員タル者ノ修業年齡ノ
若干デモ低下ヲ圖リマシテ、勤務年限ヲ長
カラシメント致スノデアリマス、今後ニ於
キマシテ、船員ノ〓育、養成機關ノ全般ニ
亙リマシテ、更ニ檢討ヲ加ヘテ、時局ニ卽
應スル〓育ヲ行フト共ニ、前申シマシタル
造船計畫ト併セ考慮致シマシテ、大東亞共
榮圈ヲ擔當スベキ我ガ國海運ノ中樞タルベ
キ船員ヲ、多量ニ養成シテ行キタイト思フ
ノデアリマス、今日ノ我ガ國ニ於キマシテ、
船ハ幾ラ出來テモ餘ルコトハナイノデアリ
マス、只今申上ゲマシタヤウナ各種ノ手段
ヲ執ツテ、船腹ノ增强ニ努メテ居リマスル
ガ、此ノ數量ハ、最初ニ申上ゲマシタ通リ、
遺憾ナガラ今日ノ戰局ニ於キマシテ申上ゲ
ルコトハ出來ナイノデアリマス、十七年度
ニ企圖シテ居リマスル造船量ハ、十五、十
六年度ノソレ等ト比ベテ、遙カニ大キイモ
ノデアリ、又劃期的ノ增大ヲ致スト云フコ
トヲ申上ゲテ、御諒承ヲ戴キタイト思フノ
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=4
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005・宮澤裕
○宮澤委員長 是デ大體政府ノ說明ハ終了
致シマシタ、質問ヲ許スコトニ致シマスガ、
今ノ政府ノ御說明ニ對シテ、簡單ナ質疑ガ
アリマスレバ、成規ニ依ル通〓者ノ外ニ質
問ヲ許シマス-井上良次君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=5
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006・井上良次
○井上(良)委員 簡單ニ造船統制會ノコト
ニ關シテノ質問デゴザイマスガ、今大臣ノ
御話ニ依リマスルト、時局下極メテ緊要デ
アリマス所ノ造船建艦、之ヲ完成スル爲ニ、
之ニ必要ナル諸資材ヲ全力ヲ擧ゲテ計畫的
ニ集メル、更ニ其ノ艤裝品ノ製造業者ヲモ
救護スル、斯ウ云フ御說明デゴザイマシタ
ガ、其ノ艤裝品ノ製造業者ノ救護ニ關シテ
ノ問題デアリマス、御承知ノ通リ造船ニ必要
ナル技術、又愈〓ソレガ船舶トシテ運輸ニ十
分ノ使命ヲ果ス爲ニハ、色々ノ艤裝品ヲ必
要ト致シマス、是等艤裝品ノ製造業者ト云
フモノガ、從來船具商ノ手ヲ經マシテ、色
色ノ形デ造船業者ニ納入サレテ居ツタノデ
ゴザイマスガ、是ガ全部、最近聞ク所ニ依
リマスト、此ノ統制會ノ指導ノ下ニ、ソレ
ゾレノ業種別ニ再編成サレマシテ、艤裝品
一切ヲ統合スルコトニナツテ居ルサウデア
リマス、所ガ此處デ私ガ特ニ此ノ問題ニ付
テ質問ヲ致シマスノハ、最近政府ノ中小企
業ノ整理統合ノ問題デゴザイマス、此ノ中
小企業ノ整理統合ガ、今日ノ時局上國家重
要產業ノ生產能率ヲ高メル、サウシテ出來
ルダケ高能率ヘ持ツテ行ク、同時ニ時局下
必要デナイ中小工業ヲ整理致シマシテ、其
ノ餘剩勞力ヲ國家有用ナル產業ニ活用スル、
斯ウ云フヤウナ洵ニ明確ナル線ノ下ニヤツ
テ居ルノデアリマス、併シ實際行ハレマス
所ノ過程ヲ吾々ガ見テ居リマスト、得テシ
テ重點主義ト申シマスカ、大資本中心主義
ト言ヒマスカ、其ノ業界ニ幾十年ノ歷史ヲ
持チ、或ハ又其ノ爲ニ非常ナ苦心慘憺ヲ致
シテ、新シイ技術ノ〓究ト練磨ニ努力ヲシ
課
テ〓來シタ所ノ中小工業者ノ活キタル能力
ト云フモノヲ、全然沒却致シマシテ、主ト
シテ大工場、大資本、大實績ヲ中心ニ、官
廳ノ意思ヲ無視シタ如キ態度デ、ソレ等ノ
業者ガ數人集リマシテ、サウシテ中小工業
ヲ片端カラ併呑ヲスル、此ノ爲ニ不必要ノ
刺戟ヲ中小工業者ニ與ヘ、或ハ其ノ爲ニ、
長イ間自分ガ練磨シ、或ハ又磨キヲ掛ケマ
シタ所ノ技術ト云フモノハ、全然役ニ立タ
ズニ、遂ニ其ノ事業ナリ職業ナリ、店舗
ナリト云フモノヲ閉メナケレバナラヌ狀態
ニアルノデアリマス、特ニ此ノ艤裝品ノ製
造業者ニハサウ云フモノガ非常ニ多ク含
マレルト考ヘルノデアリマス、ソコデ第一
點ト致シマシテハ、艤裝品小指定サレル、
所謂政府ガ考ヘテ居リマス所ノ此ノ製造業
者ノ範圍、大體主ニドウ云フモノヲヤラウ
トスルカ、第一番ハ金物ヲ中心ニヤルカ、
或ハ木製品ヲ中心ニヤルカ、或ハ又綿類其
ノ他ノモノヲ中心ニヤラウトスレバ、ドウ
云フモノヲヤラウトスルカ、サウシテヤル
場合、組合團體ヲ作ツタ場合下請ハドウナ
ルカ、將來下請ニ對スル十分ナ途ヲ開ク積
リデアルカドウカト云フ點ヲ、此ノ際伺ツ
テ置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=6
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007・原清
○原政府委員 只今井上サンノ御質間デア
リマスガ、中小工業ノ整理統合ト云フノハ、
先程御話ノ通リニ、大體能率ノ惡イノハ資
材ヲ浪費スルノデアリマスカラ、其ノ點ハ
能率ノ惡イノハ他ノモノニ合併シテ高能率
ニスルト云フコトガ、政府ノ執ラウトスル
政策デアリマス、ソレカラ第一點ノ御質問
ノ範圍其ノ他ニ付キマシテハ、船ニ關スル
限リハ先程大臣ノ御說明ニアリマシタ通
リニ、補助機關其ノ他ノモノハ、戰時急造
艦船ニ必要ナル機械類ハ形式ヲ決メマシテ、
其ノ形式ニ依ツテ製造ヲ適當ナ製造業者ニ
命ジテ行ク、船用品ニ關シマシテハ、船用
品ノ統制會社ガ出來テ、地域的ニ今御話ノ
ヤウナ大企業者ガ之ヲ併合スルト云フヤウ
ナコトハヤツテ居ナイ筈デアリマス、ソレ
ハ遞信省ニ關スル限リニ於テハ)サウ云フ
コトハヤラセマセヌ、外ノ方ノ關係ナラバ
此處デ答辯スル限リニアラズト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=7
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008・井上良次
○井上(良)委員 モウ一點其ノコトニ關シ
テ······例へバ最近船用金物統制會社ト云ヒ
マスカ、ヽサウ云フモノガ東京、大阪ノ方ニ
出來テ居リマスガ、ソレハ全然アナタノ今
ノ答辯トハ違フノデ、ヤハリ中小商工業ノ
生キタ、サウシテ非常ニ優レタ技術ト云フ
モノヲ無視シテ、實績本位ノ、大資本本位
)、「メーカー」本位ニ統合サレテ居ルノ
デ、遞信省ニ關シテハソンナコトハナイト
仰シヤルケレドモ、事實サウ云フコトガア
リ得ルノデアリマス、若シ具體的ナ證據ト
云ヘバ、ソレハ後デ又御說明申上ゲマスガ、
其ノ點十分一ツ御監督ヲ願ヒマシテ、皆ガ
ヤハリ此ノ難局ニ立ツテ造船ノ國家的使
命ヲ達成スルヤウニ、協力スルヤウニ御指
導ヲ、此ノ際特ニ御願ヒシテ置キタイト思
ヒマス、是デ私ノ質問ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=8
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009・高橋義次
○高橋(義)委員 海運ノ增强ニ關スル詳細
ナ大臣カラノ御說明ヲ伺ツテ、私共其ノ外
貌ヲ把握スルコトガ出來タノデアリマスガ、
特ニ其ノ中ノ一點、港灣ニ關スル點ヲ伺ツ
テ置キタイノデスガ、港灣ナドト云フコト
ハ、或ハ遞信省ダケデハ責任アル御囘答ガ
願ヘルカドウカ、此ノ點ニ付テ私モ考ヘツ
ツ御尋ネヲ申上ゲルノデアリマスガ、若シ
當局ニ於テ御答ヘガ出來レバ、一寸伺ヒ致
シテ置キタイト思ヒマス、ソレハ船腹ヤ船
員等ノ增加强大ヲ圖ルト云フコトハ、勿論
必要デアルト共ニ、港灣ノ統制整備ト云フ
コトハ、最モ重點ヲ置イテ考ヘナケレバ、
海運全體ノ增强ハ期シテ待ツコトガ出來ナ
イ、例ヘバ東京港ト横濱港、此ノ二ツニ付
テ考ヘテ見マシテモ、御承知ノ如ク只今兩
方或ル意味ニ於テ、ドウモ色々ナ點カラ爭
ヒツツアルヤウナ狀態ニ置カレテ居ルト云
フコトハ、戰時下最モ重大ナル海運增强ノ
觀點カラ見テ、非常ニ遺憾ナコトデアルト
存ジマス、斯ウ云フ點ニ對シマシテ、政府
ニ於テ何カ統合整備スルト云フコトニ付テ
ノ案ガナイモノカドウカ、一例ヲ東京、橫
濱港ニ取ツテノ當局ノ御心構ヘヲ一ツ伺ツ
テ見タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=9
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010・安田丈助
○安田政府委員 只今マデ港灣ニ於ケル各
般ノ作業ノ統一ニ依ツテ、船腹ノ能率增加
ト云フコトニ付テ、ドウ云フ方針ヲ執ツタ
カト云フコトニ付キマシテハ、御承知ノヤ
ウニ昨年ノ九月二十日以降、國家總動員法
ニ基キマスル港灣ト海運業ノ統制令ヲ實施
致シマシテ、爾來ソレニ基キマシテ諸般ノ
作業統合ニ付テ手續ヲ進メテ居ル狀況デゴ
ザイマス、大體ソレヲ申上ゲマスト、先程
大臣カラ申上ゲタ橫濱、東京ナドノ、アア云
フヤウナ主要ナ港七港ニ付キマシテハ、差
當リ地區別ノ統制〓體ト云フモノヲ作リマ
シテ、港灣ニ於ケル積卸、積上ナドノ爲ノ
諸業、陸揚業、船積業、艀業、是等ノ作業
ヲ統合シテ、以テ其ノ作業ノ不統一ヲ避ケ
ル、斯樣ナ狀態ニ進メテ居リマス、其ノ他
ノ港ニ付キマシテハ、大體今申上ゲマシタ
ヤウナ作業ニ付テノ會社ラ一ツニ取纏メマ
シテ、サウシテ作業ノ分散的ナ活動ヲ防ガ
ウ、斯樣ニ進ンデ居リマス、港灣ノ倉庫、
上屋、岸壁ナドノ施設其ノモノニ付キマシ
テハ、港灣運送業者統制令トハ別個ノ問題
ト致シマシテ、是等ハ內務省其ノ他ノ關係
省トモ相談ヲ致シマシテ出來得ル限リ、船
舶ノ側面カラ港灣ノ利用ニ工合ノ好イヤウ
ニ、今後ノ港灣修築ナドニ付テ出來ル限リ
遞信省方面ノ意向ヲ採入レルヤウニ、行政
ノ運用上協議ヲ進メテ參ツテ居ル、斯樣ナ
狀況デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=10
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011・高橋義次
○高橋(義)委員 統制令ノ御說明ヲ承ルノ
ガ目的デナカツタノデ、若シサウシタコト
ニ付テ積極的テ經綸ガ當局ニオアリナラ伺
ヒタイ、サウ云フ氣持チデ伺ツタノデス、大
體今ノ御答辯以上ノコトガ伺ヘナケレバ、
私ハ質問ヲ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=11
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012・増永元也
○增永委員 一寸關聯シテ簡單ナ質問
ヲ、······只今大臣ノ詳細ナ御說明デ、私共大
變有難ク感謝申上ゲル譯デアリマス、今木造
船ヲ澤山オ造リニナルト云フ御話デ、洵
當然ナコトデアラウト考ヘルノデスガ、是ハ
私ガマダハツキリ其ノ邊ヲ調ベマセヌカラ
御尋ネシテ置キダイト思ヒマス、木造船ニ
ハ保險ガ付カナイカラ、ドウモ木造船ニ積
ムコトヲ荷主モ好マナイ、斯ウ云フヤウナ
コトヲ私ハ承ツテ居ルノデスガ、保險ハ付
イテ居ルノカ付カナイノカ、若シ付イテ居
ナケレバ、此ノ際政府ガ是ダケ、ノ計畫ヲナ
サルナラバ再保險デモ付ケルト云フヤウ
ナ必要ガアルト思ヒマスガ、其ノ點ヲ一寸
伺ツテ置キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=12
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013・安田丈助
○安田政府委員 只今ノ御質問通リニ、木
造船ニ對スル船體保險ナドニ付キマシテハ
制度ガゴザイマセヌ、今後木造船ノ建造ニ
依ツテ船腹增加ヲ圖リマス以上、御說ノ通
リ色々考慮致サネバナラヌ、斯樣ニ考ヘテ
居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=13
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014・増永元也
○增永委員 此ノ際デスカラ大キイ鋼材其
ノ他ノ關係デ汽船ノ出來ナイノハ當然ナコ
トデアリマシテ、政府ガ木造船ヲ造ツテ此
ノ急場ノ用ニ應ズルノハ當然デアラウト思
フノデスケレドモ、今日マデ日本ノ內地、
或ハ朝鮮其ノ他ニ相當ナ木造船ガアツテモ
是ガ活用サレテ居ナイ、ソレハ全ク保險ガ
付カナイコトニ起因シテ居ルノデアリマス、
此ノ點ハ木造船ヲ造ルト云フ御考ヘニナル
ト同時ニ、是ノ保險ノ問題ヲ、一緒ニ御考ヘ
ニナラヌト、荷主ト云フモノハソレダケノ
危險ヲ負擔シナケレバナラヌカラ、木造船
ガ出來テモ役立タナイ、斯ウ云フ結果ニナ
ルト思ヒマスカラ、速カニ木造船建造ト同
時ニ、政府ニ於テハ其ノ御手配ヲシテ戴ク
コトニ、特ニ御願ヒヲシテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=14
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015・宮澤裕
○宮澤委員長 委員長カラ安田次長ニ一寸
御尋ネスルノデアリマスガ、何カ木造船ニ
モ率ハ高イガ保險ヲ付ケテ居ル例モアルヤ
ウデゴザイマスガ、サウ云フコトハゴザイ
マセヌカ、アルノデゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=15
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016・安田丈助
○安田政府委員 私ノ記憶デハゴザイマセ
ヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=16
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017・宮澤裕
○宮澤委員長 アリマセヌカ、ソレヂヤ私
ノ誤解デゴザイマセウ、ソレデハ通〓者ノ
質問ヲ許シマス-木檜三四郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=17
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018・木檜三四郎
○木檜委員 只今大臣カラ海運國家管理ノ
緊要ナルコトヲ廣汎ニ亙ツテ御說明ガアリ
マシテ、謹ンデ拜聽致シマシタ、ソレニ付
テ私共民間側カラ氣ガ付イテ居リ、伺ツテ
置キタイ點ヲ、少シク御伺ヒ致シマスガ、
實ハ大東亞共榮圈ノ確立ノ爲ニ、海運力ノ
增嵩獲得、所謂船舶ノ運營ヤ造船ニ關スル
問題ハ、是ハ民間側モ極メテ重要ニナツテ
居リマシテ、昨年ノ八月近衞内閣デ臨戰體制
確立ノ目的ヲ以テ、海運國家管理要綱ノ閣
議決定ヲ公表サレタノデスガ、其ノ時ニ船
舶船員ヲ政府之ヲ徵用運營シ、造船計畫ノ
一元的統制ヲ爲スベキ政策ヲ公表セラレ
タ、之ニ關聯致シマシテ、遞信省ハ管船局
ヲ外局ニ昇格シテ、所謂海務院ナルモノガ
出來タノデアリマスガ、只今大臣ノ御說明
ニモ私ノ伺フコトガアラレテ居ルカ存ジマ
セヌガ、其ノ海務院ガ誕生致シマシテカラ、
閣議ノ公表ニ依レバ、政府ニ於テ徵用スル
船舶ヤラ船員ノ運營ノ爲ニハ、特別法人ヲ
拵ヘテ運營ヲスルヤウナコトヲ承知シテ居
リマシタガ、只今ノ大臣ノ說明ノ中ニ是ガ
アリマシタカドウカ、若シ特別法人ヲ設定
スルコトニナツテ居ツタノガ、今進ンデ居
リマスナラバ、其ノ具體的進捗狀態ヲ伺ヒ
タイノデアリマス
尙ホ現在ニ於テハ、軍ノ作戰上船舶ハ其
ノ方面ニ主ニ使ツテ居リマセウガ、ココデ
戰爭ガ大體一定ノ段階ニ參リマスレバ、相
當ニ船ヲ民間側ニモ使ハセルコトニモナリ、
又尙ホ引續イテノ作戦ニ使フコトニモナリ
マセウガ、サウ云フ必要ナル段階ニナリマ
スレバ、政府ノ方ニ於テモ、所謂經濟建設
ト云フ方面カラ再編成ヲスルコトニナルダ
ラウト思ヒマスガ、是等ニ對シマスル御意
見ノ程モ伺ツテ置キタイト思ヒマス、所謂
見透シヲ伺ヒタイト思ヒマス
ソレカラ私共民間側デ見テ居リマシテ心
配ニ堪ヘヌノハ、只今大臣カラモ言ハレマ
シタガ、船員ノ人的資源整備確保デス、之
ヲ今少シ進メテ參リマセヌト、船ヲ拵ヘテ
モ之ニ伴フ重要ナル人的資源ガ確保出來ナ
ケレバ、運航ノ上ニ非常ナル不便ヲ來スト
思フノデアリマス、今マデハ船舶ノ方面モ
抑ヘテ居ツタ形デアリマスガ、此ノ大東亞共
榮圈確立ヲ致シマスニハ、船舶竝ニ是ガ造船ノ
方面ニ大馬力ヲ掛ケラレテ居リマスガ、人的
資源方面ニ之ヲ伴フ力ガ付イテ行カヌヂヤ
ナイカ、今後我ガ國ノ海運力ハ、數字ハ勿論
申ス譯ニハ參リマスマイガ、現在持ツテ居
ル船ノ「トン」數ヨリモ、少クトモ千五百万
ㄱトン」或ハ二千万「トン」トカ云フヤウナ、
相當ナ量ニ船舶ヲ殖ヤスコトハ當然デアリ
マセウガ、其ノ殖ヤスニ付テハ、船舶運航
ニ必要ナル人的資源ガ一番大切ニナルノデ
アリマス、此ノ人的資源ニ對シマシテハ
普通船員トシテハ從來外國人、所謂支那人
ヲ使ツテ居リマシタガ、然ルニ昭和五、六
年頃デゴザイマスガ、海運ガ不況時代ニナ
ツテカラ、之ヲ整理シテ、爾來此ノ方面ガ活
潑ニ動イテ居ラヌ、然ルニ今日東亞共榮圈
確立ノ爲メ將來世界海運界ニ伸ビントスル
ノニハ此ノ方面ヲ建直シテ行カナケレバ
ナラナイ、所謂外國人ヲ使フコトデゴザイ
マス、卽チ其ノ人的資源ノ上ニ於テ、東亞共榮
圈內ノ諸民族-支那デアルトカ、「マレーㄴ
トカ、或ハ「フィリッピン」等ノ人達ヲ、我ガ
船舶ノ普通船員トシテ養成採用致シマシテ、
其ノ要員ヲ確保スル方策モ愼重ニ考慮シナ
ケレバナルマイト私共ハ思ツテ居ルノデスガ、
本件ニ付テハ從來ノヤウニ、此ノ種ノ民族ヲ
使ヒマスノニハ、普通船員トシテ採用スレバ、
日本人ヨリモ給料ガ安イト云フヤウナ所カ
六、唯物的觀念ニ基礎ヲ置キマシテ使ツタ
ヤウニ承知シテ居リマス、サウ云フ取扱ハ
モウ是カラ止メテ、日本人船員ト同樣ニ極
メテ家族的ニ之ヲ取扱ツテ、彼等ヲシテ日
本船員ノ指導下ニ優秀ナル帝國海員トシテ
鍊成ヲサレ、所謂人格、手腕ヲ十分ニ具ヘ
ルヤウニ導イテ行クヤウニシナケレバナリ
マスマイガ、其ノ方式ニ付テ政府ニ於テモ
御決定ニナツテ居リマスカドウカ、此ノ點
ヲ一ツ伺ツテ置キタイノデアリマス
ソレカラ普通船員養成擴充ニ付キマシテ
ハ船員法ノ第四條ニ、海運ノ方ハ船員ト
シテハ十五歲未滿ノ者ハ採用シテハナラヌ、
十八歲未滿ノ者ハ石炭夫又ハ火夫トシテ之
ヲ使用スルコトヲ得ズトアル、但シ勅令ヲ
以テ定ムル場合ニハ此ノ限ニアラズ、大體
ガ法ニ依リマスレバ、十五歲未滿ノ者ハ船
員トシテ採用スル能ハズ、十八歲未滿ノ者
ハ石炭夫又ハ火夫トシテ使フコトガ出來ヌ、
斯ウ云フコトニナツテ居ルノデスガ、然ル
ニ陸上ノ工場方面ニ於キマシテハ年齡十三
歲卽チ國民學校初等科ヲ卒業スレバ、直
チニ工場勞務者トシテ就職奉公ガ出來ルノ
デアリマス、船舶乘組ノ方ハ十五歲ニ達シ
ナケレバ船員トナルコトガ出來ナイ、此ノ
關係ニ於テ國民學校卒業者ニ對スル勞務者
ノ割當ト云フモノニ於テ、陸上工場其ノ他
ノ產業ニ對スル要員ノ割當ハ、至ツテ便利
ガ宜シイノデアリマス、船員ニ關スル要員
ノ割當ハ、斯樣ナ法ノ規定ガアリマス爲ニ
不可能デアツテ、隨テ要員ノ獲得ガ出來ナ
1、斯ウ云フ狀態ニ今ハ置カレテアルヤウ
ニ存ジマス、是ハ國際勞働會議ノ決定事項
デアルカト存ジマスガ、此ノ年齡制限ノ矛
盾ヲ解決スル爲ニハ、今日ハ國際勞働會議
ナドニ束縛サレル必要ハナイト私ハ思フ、
我ガ國ハ今日ノ大東亞共榮圈確立ノ場合ニ
ハ、獨自ノ立場ニ於テ之ヲ改正スベキガ當
然ダト私ハ思フノデスガ、所謂海員獲得ノ
爲ニ、此ノ點ニ付テ政府ニ於テ御決心ハ
如何デスカ、現在ノ儘ニシテ置キマスレバ、
海運ノ方面ニハ陸上ト比ベテ船員ヲ採ルコ
トガ出來ナイ、法ノ規定ガ斯ウナツテ居リ
マスカラ、是ハ何トシテモ御改メニナルコ
トガ必要カト存ジマスガ、此ノ點ニ關スル
御所見ヲ伺ヒタイト思ヒマス
ソレカラ具體的ニハ、國民學校初等科卒業
者ヲ直チニ普通船員トシテ採用シ得ル方法
ヲ講ジテ、一方ニハ普通海員養成所ノ在學
期間ヲ六箇月トアルノヲ一箇年位ニ延長致
シマシテ、學術ト實地ヲ併行シテ〓授ヲス
ル、サウシテ船內ノ作業ニ適合スルヤウ、
其ノ養成方法ヲ改善致シマスルナラバ、海
運ニ於ケル船員ノ年齡ト云フモノハ、陸上
ノト同ジ率デ宜シクハナイカ、斯ウ存ゼラ
レルノデアリマス、此ノ點ニ對スル御考ヘ
方ヲ特ニ伺ヒタイノデス、普通船員、高級
船員、養成〓育機關整備擴充ニ關シマシテ
モ、外國人ヲ普通船員トシテ使用スル場合
ハ、今マデノ考ヘ方ヲ改メテ、總テ斯業者
ニ注意ヲ與ヘテ、日本船員ハ精神技術共ニ
優秀ナル船員デアルカラ、外國人デアラウ
ガ何デアラウガ、之ヲ指導シテ行クト云フ
ダケノ大イナル雅量ヲ持ツテ戴カナケレバ
ナラヌト思フノデス、又今後ハ海運ノ重要性
ニ鑑ミマシテ、船員ノ養成〓育ト云フモノ
モ、技術的方面ダケデナク、人格精神ノ方
面ニ於テ、所謂大東亞共榮圈ノ指導者デア
ル以上ハ、日本人的ノ思想ヲ外國人ニ吹込
ムト云フダケノ大キナ覺悟ヲ與ヘテ導カセ
テ、サウシテ船員獲得ト云フコトガ大切ヂヤ
ナイカ、斯ウ存ジテ居ルノデアリマス、サウ
シテ手腕力量ノアル者ハ普通船員デモ高
級船員ニ昇格スルコトノ出來ル途ヲ設ケル、
是ガ大切ヂヤナイカ、又海務院ノ創立ニ伴ヒ
マシテ商船學校、高等商船學校ヲ文部省ノ所
管カラ海務院所管ニ移サレタガ、其ノ〓育方
針、及ビ普通船員昇進ニ關スル方針ニ付テモ、
海上勞務者ニ將來伸ビル途ガアル-モウ
普通船員以外ニハ伸ビルコトガ出來ナイト
云フコトデハ、ヤハリ働ク人ノ氣分ガ違ヒ
マスカラ、手腕力量サヘアレバ、高級船員
ニモ伸ビテ行クコトガ出來ルト云フ、將來希
望アルヤウナ方策ノ確立ガ必要ト思フノデ
アリマス、是ハ吾々民間側ノ考ヘ方デスガ、
政府當局ノ之ニ對スル御所見ヲ伺ヒタイト
思フノデアリマス
ソレカラ船員ニ對スル取扱デアリマス、
支那事變及ビ今般ノ大東亞戰爭ニ於ケル
皇軍ノ赫々タル戰果ニ付キマシテハ、吾々實
ニ感謝感激ニ堪ヘヌノデアリマス、隨ヒマ
シテ大東亞戰爭ニ於ケル船員諸君ノ活躍ト
功績ニ對シテハ、旣ニ昨年末參謀總長竝ニ
遞信大臣ヨリ、ソレ〓〓感謝狀ヲ授與致サ
レテ、其ノ功績ヲ表彰致サレテ居ルコトハ
洵ニ結構デアル、斯カル重大ナル任務職責
ニ對シマシテ、默々トシテ一死君國ニ奉公
セラレタル船舶ノ乘組員諸君デアリマスル
カラ、其ノ人達ニ對シテハ、今マデヨリ更
ニ一層之ヲ優遇スル方法ヲ考慮スル必要ガ
アリハシナイカト思フノデス、船舶乘組員
ノ取扱保護、顯彰ニ付キマシテハ、特ニ十
分ナル方法ヲ講ズルコトガ必要デアルコト
ハ彈ノ參リマセヌ所ニ居ル者デハアリマ
スケレドモ、ヤハリ戰線ニ居ル者ト同樣ニ
考ヘテ、是ガ方法ヲ講ジナケレバナラナイ、
所謂大東亞共榮圈ノ指導者デアル日本ノ船
員デアリマスカラ、先ヅ是等ノ優遇ニ付テ
ノ〓要ヲ申シマスルナラバ、第一ニ、船員
ニ對シテハ從來ノ船乘ト云フヤウナ名稱ヲ
總テ止メテ、皇國海員トカ又ハ帝國海員ト
カ云フヤウナ呼稱ヲ與ヘテ、先ヅ彼等自身
ヲシテ尊敬サセルヤウナ方法ヲ執ル方ガ宜
イカト思フ、二ニハ、戰傷者又ハ船員ノ給
養等ノ問題ニ付テハ、皇軍將兵ト同樣ナル
取扱ヲ致サレルヤウニナサツテハドウカ、
ソレカラ三ニハ、海軍ノ作戰上ニ於ケル戰
死者ハ、皇軍將兵戰死者ト同樣ナル取扱ヲ
シテ、出來得ルコトナラバ、是モ靖國神社
ニ御奉祀出來マスヤウニ御取計ヒガ出來レ
バ結構デアル、若シ出來ナケレバ、何等カ
ノ方法デ其ノ功績ヲ特ニ顯彰スベキ途ヲ立
テテ上ゲルト云フ風ニシテ、海員ノ志氣ヲ
昂メル方法ヲ講ズルガ宜カラウト思ヒマス、
四ニハ、功績顯著ナル者ニ對シマシテハ、
勳章ヲ授與サレルヤウニ御留意ヲ御願ヒシ
タ方ガ宜イノデハナイカ、五ニハ船內ノ
作業及ビ生活ノ特殊事情ヲ考ヘテ、食糧品
竝ニ作業服及ビ必要ナル綿製品等ニ關シテ
ハ、特別ナル配給ノ方法ヲ講ジマシテ、出
來ルコトナラバ海軍ト同樣ナル支給制度ヲ
實施スルコトガ出來ナイカ、是モ只今大臣ガ
廣イ範圍デ海運國家管理ノ緊要ナルコトヲ
御述べニナリマシタ如ク、ソレニ併セテ必
要ヂヤナイカ、斯ウ思フノデアリマス、是
ガ船員優遇ニ對スル私共ノ考ヘ方デアリマ
ス、之ニ對スル御意見ヲ伺ヒタイ、ソレカ
ラ今一ツ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=18
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019・宮澤裕
○宮澤委員長 一寸木檜君ニ御相談致シ」マ
スガ、何レモ重要ナル御質問デアリマスケ
レドモ、其ノ邊デ區切リヲ御付ケニナリマ
シテ、答辯ヲ承ハレタ方ガ宜カラウト思フ
ノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=19
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020・木檜三四郎
○木檜委員 ソレデハ是ダケニシテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=20
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021・寺島健
○寺島國務大臣 先程私ガ中述ベマシタ中
ニ、初メノ御質問ノコトハ入ツテ居ルノデ
アリマスルガ、特別法人ヲシテ國家ノ管理
スル船舶ヲ運營セシムルト云フ政府ノ閣議
決定ノ發表ガアリマシテ、其ノ特別法人ノ
名前ヲ運營會ト稱スルコトニナリマシタ爲
ニ、先程運營會ト申上ゲマシタノデアリマ
ス、アノ公表サレタ國家管理ノ中ニアル特
別法人ト、フフトナノデアリマス、サウシ
テ斯ウ云フ特別法人ヲ作ルノカ作ラナイノ
カト云フ御話デアリマスガ、是ハ海務院ガ
出來マシテモ、先程申シマシタヤウニ、官
吏ガ船舶ノ運營-商賣ヲスルト云フコト
ハシナイノデアリマシテ、別ニ此ノ運營會
ニ依ツテ運營セシムルコトニ致スノデアリ
マン、ソレカラ戰爭ガ一段落付ケバ又何ト
カ考へ直スカト云フ御話ノヤウニモ承リマ
シタガ、戰局ガ一段階付キマシテ、今日程ニ
軍用船ガ要ラナクナリマスレバ、其ノ時代
ニ於キマシテハ、漸次一般ノ方ニ返サレテ來
ル譯デアリマスカラ、之ヲ國家ガ徴用致シ
マシテ等シク運營會ノ方デ以テ廻船ヲ行ツ
テ行カレル次第デアリマス、次ニ外國船員
ヲ使ツテ、之ヲ育成指導シテ行ツタラ宜イ
ヂヤナイカト云フ御話デアリマス、御同感
デゴザイマシテ、特ニ支那方面或ハ今度ノ
占領地ノ南方方面ニ於もマシテハ、下級船員
ハ出來得ル限リ善良ナル是等共榮圈內ノ外
國人ヲ使ヒマシテ、高級船員ノ方ハ本邦人
ニ依ツテ指導監督及ビ育成ヲヤツテ行キタ
イト云フ考ヘヲ持ツテ居リマス、ソレカラ
船員ノ年齡ハ、今日ノ法規デハ十五歲、又
火夫トシテ石炭ヲ焚ク者ハ十八歲ト云フ、
最低年限ヲ附セラレテ居ルコトハ仰セノ通
リデアリマス、特別ノ場合政府ニ於テ許可
スルノハ、ソレヨリ以下ノ者ナラバ、二人ヲ
以テ一人ニ代ヘルト云フヤウナコトハアリ
マスルガ、是デハ不十分デアリマシテ、今後
國民學校ノ卒業生カラ直チニ是等ノ船員ト
シテ採ルカ、養成所ニ入レテ實際船員トシ
テ働ク者ハ何歲カラ採ルカト云フコトハ、
大體御指示ノヤウナ趣旨ニ依ツテ只今〓究
中デゴザイマス
ソレカラ普通船員ガ高級船員ニ進級シ
得ル方途ヲ擴大シタラドウカト云フ御話
デアリマスガ、現在普通船員カラ高級船員
ニ進級スル爲ニハ、船舶職員法ノ定ムル
試驗ニ合格スル方法ガアリマスルガ、實
際ハ相當ニ困難デアリマス、且ツ色々ノ
弊害モ伴フモノデアリマスノデ、海務院ニ
於テハ、高等海員養成所ヲ設置シテ、之ヲ
卒業スルコトニ依ツテ、直チニ甲種二等運
轉士免狀又ハ二等機關士免狀ナド、中級海
員免狀ヲ授與スルコトト致シテ居リマス、
更ニ特別高等海員養成所ヲ設立致シマシテ、
其ノ卒業生ニハ船長、機關長ナドノ海技免
狀ヲ授與シ、以テ實地ノ出身者ニ對スル進
級ノ途ヲ開イテアルコトハ御承知ノ通リデ
アリマス、是等ハ今後益〓擴充强化シテ、船
員ノ養成又進級ノ途ヲ綜合的ニ樹立致シタ
イト考ヘテ居リマス
ソレカラ船員ノ待遇ト云フ點デアツタト
思ヒマスガ、是等モ御趣旨ニ於テハ御同感
デアリマシテ、表彰ノコトモ、只今御述べ
ニナリマシタ參謀總長或ハ遞信大臣カラ表
彰シタト云フ以上ニ、今後一層國家トシテ
ノ表彰ヲ受ケルヤウニ致シタイト考ヘテ居
リマス、又功績顯著ナル人ニハ敍勳モ奏請
致シタイト云フ考ヘモ持ツテ居ルノデアリ
マス
最後ニ、待遇ノ一般トシテ被服、糧食等
海軍ノ兵員ト同ジヤウニナラヌカト云フ御
話デアリマシタガ、是ハ一寸難カシイカト
思ヒマス、海軍軍人ノ給與ト云フモノト船
員ノ給與トハ非常ニ違フノデアリマス、唯
糧食ニ於キマシテハ、海務院トシテ船員ノ
糧食ニ對スル特別ノ配慮ヲ拂ツテ居ル次第
デアリマス、此ノ點ハ全ク軍人ト同ジヤウ
ニト云フ點ハ行カナイカト思ヒマスルガ、
此ノ優遇等ノ方法ハ十分講ジテ行キタイト
思ヒマス、尙ホ其ノ點ニ付テハ政府委員カ
ラ御答へ致サセタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=21
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022・原清
○原政府委員 只今大臣カラ御話ニナリマ
シタガ、船用米ニ付キマシテハ、船員ニ特
別ニ配給シテ居リマス、作業友其ノ他モ商
工省カラ特別ニ配給ヲ得テ、配付ヲ現ニヤ
ツテ居リマス、船員ノ〓育、日本海員ガ東
亞海運ノ指導者トナツテ行クト云フ御趣旨
ニハ、至極御同感デアリマシテ、今度海務
院ニ於キマシテ、船員ノ紀律、訓育ト云フ
ヤウナモノヲ十分徹底シマシテ、サウシテ
御示シノヤウナ、東亞共榮圈ノ他民族ヲ、
船員トシテ優秀ナモノニ持ツテ行クト云フ
風ニ進メタイト考ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=22
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023・木檜三四郎
○木檜委員 今二ツバカリ伺ヒマスガ、御
承知ノヤウニ船舶業者ニ對スル指導統制團
體ガ先年出來タノデアリマス、是ハ陸上ニ
於テハ大日本產業報國會デゴザイマスガ、
斯ウ云フモノガ出來テ、海ノ方ニ於テハ日
本海運報國團ト云フモノガ出來テ居リマス、
一方ハ厚生大臣ガ總裁トナリ、一方ハ遞信
大臣ガ總長トナツテ居ルヤウデアリマス、
之ニ對シマシテハ、尙ホ之ヲシテ統制アル
活動ヲナサシメル爲ニ、將來法制化シテ、
モツト活潑ニ規律アル活動ノ出來マスヤウ
ニサセル御考ヘハアリマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=23
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024・寺島健
○寺島國務大臣 仰セノ通リ產業報國會、
海運報國團ト云フモノガアリマスガ、其ノ
趣意トスル所ハ、根本ニ於テハ同ジデアリマ
スルガ、海上勤務者ト云フモノノ特異性ニ基
キマシテ、海運報國團ガ出來テ居リマス、其
ノ趣意ニ基キマシテ、私ハ或ル點ニ於テハ
其ノ事業トシテハ產業報國會ヨリモ進ンデ
居ル所モアルノデハナイカ、海員ノ養成ノ
コトニモ當ツテ居リマスルシ、又今後ハ是等
ノ船員ノ福利施設ノ一部ヲモ、此ノ海運報
國團ニ於テ政府ノ指導ニ依ツテ行ツテ行カ
ウ、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居リマス、御說ノ如ク
此ノ報國團ヲ一層强化シ、一層活動スルヤウ
ニ指導シテ行キタイト存ジテ居ル次第デア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=24
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025・木檜三四郎
○木檜委員 ソレニ伴ウテ次ニ御伺ヒシタ
イノハ海運力ノ擴張整備ヲ圖ル上ニハ、
玆ニ一ツノ海運報國團ト云フモノガ出來マ
シタ以上ハ、補助費マデモ御割キニナツテ
居ルヤウナ譯デスカラ、ドウシテモ之ニ對
シテハモツト具體的ニ有效適切ナル方法ヲ
講ジテ行クコトガ必要ヂヤナイカ、例ヘバ
上海トカ香港、廣東、支那大陸沿岸ノ方ハ
申スニ及バズ、佛印、「タイ」「マレー」リィ
リッピン」等ノ主要ナ港灣都市ニ船員ニ對
スル健全ナル宿泊所、休養、或ハ娛樂機關、
或ハ醫療機關等ノ施設ニ關シテ、所謂百年
ノ大計ニ基イテ、適當ナル施設ヲ此ノ方面
ニ設ケテハドウカ、殊ニ大日本產業報國會ト
云フモノト海運報國團トハ、一種ノ車ノ
兩輪ノヤウナモノデアリマスガ、此ノ產業
報國會ト云フモノニ對シテハ百万圓ノ補助
ガアル、所ガ海運報國團ニ對シテハ年額九
万圓シカ補助ガ出來テ居ラヌ、是ハ唯員數ノ
問題トカ何トカ云フヤウナモノデハナイト
私ハ思フ、是カラ所謂太平洋方面ニ伸ビテ
働カセルノニハ、非常ナ役目ヲ持ツノデア
リマスカラ、隨テ是等ニ對スル給與、保護
ト云フヤウナ點モ、陸上ニ於ケルモノ以上
ニ大切デアルト思フノデアリマス、ソレガ
御承知ノヤウニ一方ノ陸上ノ產業團體ニハ
百万圓ヲ與ヘテ置キナガラ、海運報國團ニハ
年額僅カニ九万圓ト、普通船員養成費トシ
テ三万圓與ヘテ、合計年額十二万圓デアリ
やっ、是ハ比較スル譯デハゴザイマセヌケ
レドモ、大東亞共榮圈確立ノ爲メ大イニ日
本ガ指導者トシテ伸ビテ參リマスノニハ、特
ニ海運報國團ト云フヤウナモノノ働キニ力
ヲ添ヘナケレバナラヌ、ソレニハドンナニ
少クトモ、一方ガ百万圓デアルノニ一方ハ
九万圓ダト云フコトハ、餘リニ權衡ガ取レ
ヌ、殊ニ之ニ對シテ私共ノ疑ヒマスルノハ、
日本產業報國會ガ會員タル工場、鑛山ノ勞
働者カラ徴收スル會費ト云フモノハ、年額
五十錢程度デアル、所ガ日本海運報國團ノ
團員カラ徴收スルノハ、月給四十圓位ノ船
員カラ月額五十錢ヲ取ツテ居ル、年六圓ニ
達スル會費ヲ徵收シテ居ルノデアリマス、
斯ウ云フコトハ如何ニモ矛盾シテ居リハ
セヌカ、是カラ大イニ伸ビントスル海運界
ノ從業員ニ對シテ、陸ノ方ニアル產業報國
會ハ會員タルモノガ年額五十錢デアルノニ、
一方ハ六圓モ取ツテ居ル、斯カル國家的團
體ニ對シテハ、事業經營者ガ相當ナル費用
ヲ出スノハ結構デスケレドモ、勞務者カラ
斯ウ云フヤウナ、比較致シマスト多額ナ會
費ヲ取ルコトハ、運營上宜シクナイ、私ハ
斯ウ考ヘテ居リマス、此ノ點ニ對シマシテ
ハ政府ノ御意見ハ如何デアルカ、此ノ點ハ
特ニ御注意ヲ願ヒタイ、尙ホ產業報國
會ニ對スル政府ノ補助金ハ、加盟人員
トカ何トカ云フモノニ重キヲ置イテ居ルヤ
ウニ私共見テ居ルノデアリマス、是ハ斯
ウ云フ所ニ方針ヲ置イテ補助額ヲ決メルト
云フコトハ間違ヒヂヤナイカ、其ノ會員
ヨリハ寧ロ其ノ任務、其ノ事業ノ規模、
其ノ活動ノ範圍ト云フヤウナモノカラ見
テ、補助費ヲ計上シタ方ガ宜シクハナイカ、
斯ウ考ヘルノデアリマス、サウ致シマスル
ト、其ノ運營ノ爲ニハ事業費トシテ、ヤハ
リ海運ノ方面ニ九万圓ト云フヤウナモノヲ
改メテ百万圓ニシ、又一方船員養成所トシ
テ僅カニ三万圓ト云フヤウナコトハ今日
ノ海運界ノ情勢カラ考ヘマシテモ、政府ノ
考ヘ方ハ違ツテヤシナイカ、少クトモ是ハ
二十万圓以上位ノ補助費ヲヤツテ、普通船
員養成費ノ費用ノ足シ前ニシナケレバナル
マイカト思フ、卽チ兩團體ニ對スル政府ノ
補助ト云フモノハ、權衡上カラ見テモ穩カ
デナイト私共思フノデアルシ、今日ノ東亞
共榮圈ト云フモノノ伸ビ行ク上ニ、此ノ海
運ノ働キ手ヲ助ケテ參ルト云フ、此ノ情勢
カラ見テモ、此ノ補助費ハドウシテモ上ゲ
ナケレバナルマイト思ヒマスガ、此ノ點ニ
對シテ政府ノ御意見ニ特ニ御伺ヒシテ、出
來ルコトナラバ補助費ノ增額、卽チ海運報
國團ニ九万圓ト云フモノハ百万圓ニシ、
方ノ普通船員養成費ノ一一万圓ハ少クトモ二
十万圓以上位ニシテ、サウシテ唯會員ガ少
イカラト云フヤウナ點デ、金額ノ差別ヲ設
クルコトハ穩カデナイノデハナイカト思フ
ノデアリマス、此ノ點ニ對スル大臣ノ御意
見ヲ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=25
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026・寺島健
○寺島國務大臣 只今產業報國會ト海運報
國團ノ補助金ニ付テ御話ガアリマシタガ、
產業報國會ノ方ノ補助金ハ、會費トシテ集
メル額以上ハ政府ハ補助出來ナイ、補助ス
ベキモノハソレ以内ノモノダト云フ話ヲ前
ニ承ツテ居ツタ、會員ガ數百万人居リマス
ガ、是等ニ依ツテ會費ノ集マルモノガ約三
百万圓近クカト思ヒマス、之ニ對シテソレ
以內ノ補助ガ出來ルト云フコトヲ聞イテ居
リマス、斯ウ云フ種類ノモノハ、必ズシモ
會員ノ頭數ノミニ依ツテ補助金ヲ定メテ居
ル次第デハナイト思ヒマス、併シ今出テ居
ル產業報國會ノ方ハ、サウ云フ風ニ承ツテ
居ル譯デアリマス、其ノ後ニ生レマシタ海
員ノ方ハ、成程仰セノヤウニ、·或ハ人數ガ
產業報國會ノ方カラ較ベマシテ、モツト少
イト云フ點モ、或ハ加味セラレタカモ知レ
マセヌガ、ソレハ會員數バカリニ依ツテ補
助金ヲ決メルモノデナイト云フ御說ハ御尤
モト思ヒマス、又養成ノ方ノ補助金モ、段
段出來得ル限リ增シタイト思ツテ居リマス、
今仰セノヤウニ、直チニ百万圓出來ルカド
ウカト云フコトハ分リマセヌガ、是ハ色々
ノ福利施設モ此ノ會ノ方デヤツテ行クト云
フ風ニ指導致シタイト思フ結果、將來ニ於
キマシテハ是ガ補助ノ增額ヲ圖ツテ行カ
ナケレバナラヌト云フコトハ、政府ニ於テ
モ考ヘテ居リマス、尙ホ進ンデ南洋ノ占領
地アタリヘモ、此ノ報國國ノ進出ヲヤツタ
ラドウカ、是ハ將來左樣ニ致シタイト思ツ
テ居リマスガ、今軍政下ニ於キマシテハ、
直チニ報國團ガ働クト云フ程度マデハ行カ
ヌカモ知レマセヌガ、其ノ實質ハ大體軍政
下ニ於テモ行ハレテ行クノデハナイカト私
ハ思ツテ居リマス、一寸速記ヲ止メテ戴キ
タイ
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=26
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027・寺島健
○寺島國務大臣 斯樣ナ次第デアリマシテ、
御趣意ノ如ク報國團ト云フモノヲ一層活潑
ニ堅實ニ活用出來テ行クヤウニ致シタイ、
ソレガ爲ニハ補助金ノ增額モシテ行キタ
イ、斯ウ御答ヘ申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=27
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028・木檜三四郎
○木檜委員 御說明デ大體分リマシタガ、
先程言ヒマシタ會員ノ會費デゴザイマス
ガ、四十圓位ノ月給ヲ取ル人間カラ月五十
錢年六圓ノ會費ト云フ狀態ニナツテ居ル
ヤウニ承知致シテ居リマス、一方日本產業
報國會ノ方ハ年ニ五十錢シカ取ラヌ、別
比較スル譯デハアリマセヌガ、年六圓ト云
フ會費ハ負擔ガ重イヤウニ思ヒマス、今日
ノ此ノ海運界ノ大イニ伸ビナケレバナラヌ
時代ニ當ツテ、此ノ會費ダケハ御減シニナ
ルヤウニ願ツタラ宜イト思ヒマス、此ノ點
ニ對スル御所見ヲ伺ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=28
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029・安田丈助
○安田政府委員 今ノ會費ノ點デゴザイマ
スガ、產業報國會ナドト比べマスト相當高
イノデアリマス、但シ此ノ點ニ付キマシテ
ハ高級船員トノ關係モ考ヘマシテ高級
船員ハ一圓トシ、普通船員ノ方ヲ五十錢ト
致シタ關係モアリマスノデ、全體ト致シマ
スト、或ハ陸上ニ比ベマシテ極メテ高イヤ
ウニモ思ヒマスルガ、此ノ點ニ付キマシテハ
海運報國團ノ經營ナドモ考へ合セマシテ、
出來ル限リ會員ノ負擔ノ低減ヲ圖ツテ行キ
タイ、斯樣ニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=29
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030・宮澤裕
○宮澤委員長 宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=30
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031・木檜三四郎
○木檜委員 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=31
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032・宮澤裕
○宮澤委員長 ソレデハ次ニ米窪滿亮君ノ
質問ヲ許シマス-米窪君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=32
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033・米窪滿亮
○米窪委員 私ノ質問スル點ハ、大體ニ於
テ同僚ノ木檜委員ガ詳細ニ御質問濟ミデア
リマスカラ、唯私ハ其ノ足ラザル所ダケヲ
簡單ニ御質問申上ゲテ見タイト思ヒマス
東條首相ハ本會議其ノ他ノ機會ニ於テ繰
返シ繰返シ、大東亞建設ノ要素トシテハ第一
ニ人デアル、第二ニ技術デアル、第三ニ物
デアル、斯ウ言ツテ居リマスガ、最モ大切
デアル人ニ關スル法案ガ今議會ニ餘リ多ク
現ハレテ居ラナイ、此ノ點此ノ法案ガ大イ
ニ萬丈ノ氣焰ヲ吐クガ如キ感ガアルノデア
リマスルガ、船ノ必要デアル點ハ凡ユル機
會ニ各議員カラ質問ガアツタノデアリマス、
之ヲ動カス人ニ付テハ餘リ質問ガナカツタ、
幸ヒニ木檜委員ノ非常ニ各方面ニ亙ツテ
適切ナル御質問ガアツテ、洵ニ吾々トシ
テモ感謝シテ居ル次第デアリマスガ、私御
尋ネシタイ點ハ、何ト言ツテモ船員ガ不足
デアリマス、船舶ノ現在ノ保有量及ビ將來
ノ建造計畫ハ、遞信大臣ニ依ツテ只今稍〓明
確ニ示サレタノデアリマスガ、數字ガ示サ
レナイノデ吾々詳細ニ亙ツテハ分リマセヌ
ガ、相當ナ量ニ達スルモノト思フノデアリ
マス、又其ノ船舶ヲ運行スル範圍モ、東西南
北何万「キロ」ト云フ廣範圍ニナルダラウト
思ヒマスガ、之ヲ動カス船員ヲ將來養成シ
補充スルト云フコトニ付テハ何等ノ數字ノ
御示シガナイ、甚ダ憂慮ニ堪ヘナイノデアリ
マスガ、私最モ心配スル點ハ、資料トシテ
戴イタ表ノ中ニ轉職船員推定員數訓ト云
フモノガアリマス、之ニ依リマスト昭和十
四年度ニ於ケル高級船員、普通船員ノ轉職
率ガ、高級船員ニ於テ五七%、普通船員ニ
於テ六四%、是ガ昭和十五年ニナリマスト
其ノ「パーセンテージ」ガ殖エマシテ、高級
船員ニ於テ六〇%、普通船員ニ於テ六七%
ト云フヤウニナツテ居リマス、言換ヘマス
ト、高級船員ニ於テモ普通船員ニ於テモ、
大イニ志ヲ海上ニ向ケテ出テ來タ者ガ他ノ
職ヘ轉ジテシマフ、詰リ船員トシテハ餘リ
多ク殘ラナイ、殘ル率ガ段々減ツテ來ルト
云フコトハ、日本ノ海洋國策ヲ立テル上カ
ラ非常ニ重大ナ問題デアリマス、是ニ於テ
私考ヘル點ハ、ナゼソレデハ船員ニナリ手
ガ少イカ、折角ナツテモ、ナゼ他ニ行ツテ
シマフカト云フコトデアリマス、先程木檜
委員カラモ御話ガアリマシタガ、大體私ハ
三ツノ點ガ日本ノ施策トシテ缺ケテ居ルノ
デハナイカト思ヒマス、第一ハ、船員ニ對ス
ル待遇ガ惡イ、第二ニハ、船員ノ表彰ガ足
ラナイ、第三ハノ海事思想ノ普及ト云フ
モノガ徹底シテ居ラナイ、大體此ノ三ツダ
ト思ヒマスガ、以下此ノ三ツニ付テ一ツヅ
ツハ御尋ネシタイト思ヒマス
船員ノ待遇ニ付テハ、先程來木檜委員カ
ラモ御質問ガアリマシタガ、私ハ主トシテ現
實ノ問題トシテ、船員ガ船主カラ貰ツテ居ル
給料其ノ他手當ト云フコトニ付テ御尋ネシタ
イノデアリマスガ、今日本給ハ最低ガ四十
二圓カラ四十五六圓、最高ハ八十圓程度デア
リマス、之ニ各種ノ手當ガ付イテ居リマス
ガ、是ハ私ハ決シテ少イトハ申シマセヌ、
併シ手當ヲ殖シタナラバ、必ズ船員ニナル
希望者ガ殖エルト云フコトハ確實デアリマ
ス、デアリマスカラ政府ハ、船員ニ對スル
給與令其ノ他給與ニ對スル「ストップ」令ガ
アリマスガ、之ヲ急速ニ此ノ際改正サレマ
シテ、相當額ノ增額-是ハ本給デモ手當
デモ宜シイノデアリマスガ、私トシテハ、
大體現在ノ船員ノ給料ノ五割增ヲシナイト
船員ニナリ手ガ段々減ツテ來ル、船員ガ他
ニ轉職スル理由ノ一ツハソコニアルト考ヘ
マスガ、此ノ點ニ付テ遞信御當局ノ御意見
ヲ伺ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=33
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034・寺島健
○寺島國務大臣 今船員ノコトニ付テ御述
ベニナリマシタガ、船舶ハ幾ラ出來テモ、
之ヲ動カス人ガ十分デナケレバ其ノ機能ヲ
發揮シ得ナイト云フコトハ當然ノコトデア
リマス、是ハ先程モ申上ゲマシタヤウニ、
船腹ノ擴大ト見合ハセテ船員ノ補充ヲヤツ
テ行ク、而モ船ノ方ハ幾ラ長ク掛ルト云ツ
テモ、人ノ養成程ノ期間ハ掛ラナイ、隨テ
船ハ出來テモ船員ガ之ニ追付カナイト云フ
點ヲ考ヘマス時ニ、玆ニ急速養成、特別養
成ト云フコトガ必要ニナツテ參リマスノ
デ、政府モ船腹ノ增大ニ伴ヒマシテ、之二
必要ナル數ダケハ是非トモ補充シテ行キタ
イト云フ考ヘデ計畫ヲ致シテ居リマス、其
ノ中デ、先程御述べニナリマシタ轉職者ノ
コトデアリマスガ、五二%或ハ六〇%ト云
フモノガ轉職スル、斯ウ言ハレマシタガ、
是ハ辭メタ。人ダケノ率ナノデゴザイマス、
船員手帳ヲ持ツテ居ル人ノ中何十分ノ一位
ノ人ガ漸次轉職致ス、其ノ轉職スル中デ、
本當ニ辭メテシマフ人ト他ノ職業ニ轉ズル
人トノ比率ガ此處ニ書イテアルノデアリマ
ス、是ハ御承知ノ通リデアリマスガ、年ニ
五十何「パーセント」モ辭メテ行クヤウニ聞
エマシタノデ、一寸申上ゲテ置キマス、ソ
レデ船員ノ補充ノ困難ナ理由ノ一ツトシテ
ノ給與ノ點デアリマス、確カニ給與ヲ上ゲ
レバ來ルト云フコトモアリマスガ、ソレニ
ハ低物價政策ノ一般的ノコトモ考慮シナケ
レバナリマセヌ、併シ海員ハ別デアルト云
フ點ニ於キマシテ、今日ノ給與ハ各會社ニ
依ツテモ凸凹ガアリ區々デアリマスガ、十
四年度ニハ停止令ガ出テ居リマシタガ、昨
年ノ八月日本海運協會及ビ近海汽船協會ヨ
リ給與ニ關スル許可申請ガアリマシテ、大
體ノ標準ガ定マツタノデアリマスガ、各會
社ニ於テ船員ガ缺乏スルト困難スルノデ、
賞與其ノ他ノ方法デ-今ハ給與全體トシ
テノ關係デ見合ハシテ居リマスガ、今後ハ
船員モ國家徵用トナリマスレバ、此ノ點ヲ
十分ニ考ヘテ行キタイト思ヒマス、唯五割
上ゲルカドウカト云フ點ニ付キマシテハ、
低物價政策等モ考ヘマシテ、サウハ行カナ
イカト思ヒマスガ、適當ニヤツテ行キタイ、
尙ホ先程木檜サンノ御話ト關聯シテ-後
ニ御尋ネガアルカモ知レマセヌガ、ドウモ
船員ト云フ言葉ガイケナイノデハナイカト
云フ御話ガアリマシタガ、私一個ノ考ヘト
シマシテハ、ソレニ付テハ少シ意見ガ異ル
ノデアリマス、私自身モ船頭デアリ、熱
船員上リ、船頭上リト云フコトヲ恥ニ致シ
マセヌ、敵國人ノ言葉ヲ用ヒルコトハ甚ダ
不本意デアリマスガ、英國ノ前ノ前ノ皇帝
ハ、船ニ乘ツテ、「ハンドル」ヲ握ツテ、水
夫ノ着物ヲ着テ、余ハ船員ナリト云フコト
ヲ言ツテ居ツタノデアリマス、私ハ日本ニ
於テ今日マデ船員チル言葉ガ、尊敬サレタ
ル言葉デナカツタト云フコトヲ遺憾ニ思ヒ
マスルノデ、言葉ヲ變ヘナイト云フ譯デモ
何デモアリマセヌガ、私自身ト致シマシテ
ハ船員ト云フ言葉ガ國民カラ尊敬ヲ受ケ
ルヤウニ、船員自體モ向上ヲシテ行クコト
ヲ必要ト考ヘテ居リマス、一寸是ダケ附言
シテ申上ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=34
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035・米窪滿亮
○米窪委員 船員ノ年齡ノ問題デアリマス
ガ、木檜委員ノ船員ノ年齡ヲ下ゲルト云フ
コトノ御質問ニ對シテ、遞信大臣カラ御答
ヘガアリマシタガ、私ハ多少具體的ニ更ニ
御質問申上ゲタイト思ヒマス、是ハ此處ニ
御出席ノ先輩若宮委員ガ管船局長時代、私
ハ船員代表トシテ行キマシテ、私自身ガ贊
成シテ歸ツタモノデアリマス、併シ是ハ今
日ノ實情カラ見レバ、私ハ當然下ゲナケレ
バナラヌト思フ、私共ガ行ツテ判ヲ捺シテ
來タモノハ、ヤハリスツカリ變へナケレバ
ナラヌト考ヘテ居ルノデスガ、是ハ技術的
ニハ非常ニ困難デ、樞密院ニ諮詢サレテ條
約案ガ日本デ御批准ニナツテ居リマス、ソ
シテ之ニ基イテ船員法ガ制定サレ、其ノ第
四條ニ此ノコトガ規定サレテ居ルノデアリ
マス、デアリマスカラ樞密院方面ノ承諾ヲ
得ルト云フコトト、ソレカラ船員法ノ改正ト
云フコトデアリマス、所ガ此ノ議會ニサウ
云フ法律ノ改正ガ出テ來マセヌ、隨テ又是
ガ來年ニ延ビルト云フコトニナツテシマヒ
マスト、一年先ニナツテシマフノデアリマ
スガ、現實ハ之ヲ待ツテ居ル譯ニ行キマセ
又、何カソレニ代ルベキ適當ナ施策ガ用ヒ
ラレルカドウカ、御伺ヒ致シタイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=35
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036・若林賚藏
○若林政府委員 只〓ノ御質問ニ對シマシ
テハ實ハ此ノ船員法ノ勞働立法ニ基イタ
コトハ承知シテ居リマス、是ハ今御話ノ通
リ國際條約ニ基イテアア云フ風ニ相成ツテ
居リマスルノデ、只今遞信省ト外務省ト折
衝ヲ致シマシテ、此ノ條約廢棄ノ手續ヲシ
テ貰フヤウニ進行中デアリマス、其ノ上デ
只今ノヤウナ年齢低下モ併セ解決シタイ、
斯ウ云フ風ニ今進メテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=36
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037・米窪滿亮
○米窪委員 サウスルト條約廢棄ノ方ハ近
イ將來ニ行ハレルノデセウガ、之ニ基イテ
決メラレタ船員法ノ改正ハヤハリ一年先ニ
ナルト、ソレニ縛ラレテ十五歲以上及ビ十
八歲以上デナケレバイケナイト云フコトニ
ナルノデアリマスカ、或ハ一年間ダケノ暫
定的ナ過渡的ナモノガナイノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=37
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038・若林賚藏
○若林政府委員 只今ノ御質問ニ對シテハ
其ノ通リデアリマスガ、事實必要ニ應ジマ
シテ緊急勅令デモ發布シテ戴イテ、サウ云
フ風ニ處置シナケレバナラヌト云フ情勢ニ
ナツテ來ルノデハナイカト思ヒマス、其ノ
方モ併セ〓究シテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=38
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039・米窪滿亮
○米窪委員 了承致シマシタ、實ハ國民學
校ヲ卒業スル年齢ガ滿十四歲、所ガ二千「ト
ンゾ以下ノ小形船舶、沿岸航路、近海航路
ニ從事スル船員ニ於テスラ十五歲以上ニナ
ツテ居リマスケレドモ、小形船ニ乘込マセ
ルコトヲ豫想シテモソコニ一年ノ開キガア
ル、此ノ一年間遊ンデ居ル爲ニ、厚生省ハ
割當デ他ノ工場ナドニ取ラレテシマフ、ソ
コデ船員トシテ徵用スベク遞信省ガ俺ノ方
ニモ寄越セト言ツテモ、ソコニ一年ノ開キ
ガアルカラ、國民學校ニセヨ、實業學校ニ
セヨ、優秀ナ者ハ皆取ラレテシマフト云フ
關係ニアルノデアリマス、私ハ此ノ點カラ
言ヒマシテモ、出來ルナラバ今年三月ノ國
民學校卒業ノ時期カラ年齡ヲ下ゲルコトニ
シマシテ、本年度ノ國民學校卒業生ヲ相當
取レルヤウ、遞信省ト厚生省ト橫ニ御交涉
ニナツテ貰ヒタイト思ヒマスガ、其ノ御見
込ガドウダラウカ、ソレカラ横ノ厚生省ト
ノ御交涉ハ、ソコハ如才ナクオヤリニナツ
テ居ルト思ヒマスガ、其ノ經過ヲ御示シニ
ナルコトガ出來レバ伺ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=39
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040・若林賚藏
○若林政府委員 只今ノ御質問ハ、實ハ國
民學校卒業者割當配當ヲ受ケルト云フコト
ハ船員法ニ差當リ引ツ掛ツテ來タノデアリ
マス、ソレデ實ハ早ク取ツテ、養成機關ニ
入レテ、其ノ期間ダケ養成シテ後直グ使へ
ルヤウニシタラドウカト云フコトモ考ヘマ
シテ、進メテ參リマシタガ、今年度ノ割當
ニ對シテハ間ニ合ハナイコトニナリマシテ、
今年度ハ遺憾ナガラ出來ナイト云フコトニ
ナツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=40
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041・米窪滿亮
○米窪委員 此ノ點ハ重大デアリマスルカ
ラ、本年度ハ間ニ合ハナイノハ殘念デアリ
マスガ、一方ニ於テ船員法ノ勅令ニ依ル事
實上ノ改正、一方ニ於テハソレニ並行スル
ヤウニ厚生省トモ御諒解ヲ得ルト云フ點ヲ
申シテ次ノ質問ニ移リマス
次ニ先程一寸申上ゲマシタ船員ノ表彰ノ
問題デアリマスガ、之ニ付テモ木檜委員カ
ラ大略戰時狀態ニ於ケル場合ノ表彰ニ付テ
御尋ネガアツタノデスガ、私ハ平時ニ於テ
モ、國民ガ進ンデ海洋ニ乘出シテ行ツテ、海
洋國家トシテ海洋民族トシテ日本ノ建國以來
ノ使命デアル海ニ依ツテ發達スルト云フ事
實ヲ見ル爲ニハ、ドウシテモ國民ニ對シ國家
ガ大イニ奬勵シナケレバナラヌ、斯ウ云フ
コトニ付テハ既ニ私度々、船員トシテ功勞
顯著ナ者ニ對シテ動章ヲヤツタラドウカ、
之ニ對シテ一ツノ方法デスガ、遞信省ハ昨
年顯功章ト云フ規定ヲ設ケラレタ、此ノ顯
功章ト云フノハ胸ニ下ゲテ步イテモ傷痍軍
人章ノヤウニ能ク分ラヌ、會社ノ「マーク」或
ハ〓體ノ「マーク」ノヤウデ、本人ガ斯ウ云
フ有難イモノデアルト云フコトヲ說明シナ
イ限リ分ラナイ、顯功章ヲ御出シニナルノ
ハ洵ニ結構ダガ、百尺竿頭一步ヲ進メテ、
船長ナルコト何年以上トカ、或ハ人命救助
ノ爲ニ功勞ガアツタトカ、或ハ船舶運營ノ
爲ニ顯著ナル功勞ガアツタト云フヤウナ船
員ニ對シテハ勳章ヲ戴ケルヤウニ、ソレ〓〓
ノ筋ヘ遞信大臣カラ御話ガアツタラドウカ
ト思ヒマス、此ノ場合ニイツモ問題ニナル
ト仄聞シテ居ルコトハ、海上勤務者ニヤル
コトニナルト、今度鐵道ノ從業員ニヤラナ
ケレバナラヌ、電信、電話ノ從業員ニヤラ
ナケレバナラヌト云フ權衡論ガ持出サレル
ト云フコトデアリマス、併シソレハ多々益〓
辨ズルデ、オヤリニナルノハ結構デアリマ
スガ、船員ハ其ノ他ノ場合ニ於テモ、例へ
バ御用船乘組員ニナル、色々ノ點カラ考ヘ
テサウ云ツタ權衡論ニ囚ハレル必要ハナ
イ、唯ソコニ技術的ニ困難ナノハ、何カ肩
書ガ付カナケレバナラヌノデアリマスカラ、
船員ヲ公務員ト云フコトニ御認メニナル規
定ヲ設ケラレテ、高級船員ニ對シテハ旣ニ
海軍ノ豫備員ニナツテ居ル、所ガ高級船員
ノ中デモ一部、詰リ普通船員カラ上ツテ行
ツタ所ノ者ハ海軍ノ豫備員ニナツテ居リマ
セヌ、普通船員ハ全部ナツテ居リマセヌ、
此ノ點ニ對シテ高級船員ノ一部ノ者及ビ普
通船員ノ全部ノ者ヲ公務者ト云フコトニ新
タニ御改正ニナツテ、其ノ中ニ御入レニナ
レバ、今申上ゲタヤウナ表彰ノ場合ニモ直
チニ適用サレルト思ヒマスガ、サウ云ツタコ
トニ關スル考ヘハナイモノデアリマスカ、是ハ
特ニ遞信大臣ノ御答ヘヲ得タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=41
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042・寺島健
○寺島國務大臣 只今ノ船員ノ優遇ノ一ツ
トシテ、叙勳ノ恩命ニ浴スルヤウニシタラ
ドウカト云フコトデアリマスガ、木檜サン
ノ御尋ネノ時ニモ御答ヘ申シタヤウニ、特
別ノ功績ノアル者ハサウ云フ風ニ致シタイ
ト考ヘテ居ルコトヲ御答ヘ致シタ次第デア
リマス、尙ホ之ヲ陸上ノ勤務者トノ均衡問題
トカ云フヤウナ御話モ出マシタガ、別ニサ
ウ云フ均衡ト云フコトハ考ヘテ居リマセヌ
ガ、政府ニ於キマシテハ、產業ニ於テモ非
常ナル功績ヲ現ハシタ人ハソコマデモ考へ
ルト云フコトニナツテ居ルノデアリマス、
況ンヤ船員ノ功勞ノ大キイ人ニ對シテハ、
ソコニ考慮ヲ置カレルコトハ當然ト考ヘル
ノデアリマス、尙ホ「マーク」ノコトモ御尋ネ
ニナリマシタガ、是ハ海軍デモ善行章ト云フ
モノヲ持ツテ居ルノデアリマス、別ニ私ハ
ドウト考ヘテ居リマセヌ、又公務員トシテ
ハドウカト云フ御話デアリマスガ、國家ニ
徵用致シマシタ場合ニ於テハ、公務員ノ方
ニナル譯デアリマス、此ノ點ハ公務員ダカ
ラ出來ルト云フ範圍デハナイ、先程申上ゲ
マシタ通リ造船所ノ主ナル工員モ、國民徵
用令ニ依ツテ國家ニ徵用セラレ、公務員ト
シテ事業場ニ於テ働イテ居ルノデアリマス、
竝ニ公務員ニシタカラ必ズシモ一定年限ト
云フコトニハ參ラナイト思ヒマス、功績ア
ル者ニ對シテ叙勳ノ恩命マデモ得ラレルヤ
ウニ致シタイト考ヘテ居ルト云フ次第ヲ先
程御答ヘ致シタ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=42
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043・米窪滿亮
○米窪委員 普通船員ヲ高級船員ニ登用ス
ル途ニ付テ、木檜委員カラモ御質問ガアツタ
ノデアリマスガ、海軍デハ別ニ商船乘組員ニ
對スル船舶職員規定ト云フヤウナモノガナ
クシテ、下士兵カラ功勞ニ依リ或ハ年功ニ
依ツテ、ソレ〓〓相當ノ所マデ將校ニナル
其ノ途ガ開ケテ居ル、所ガ今日海軍トノ關
係極メテ密接デアツテ、造船計畫モ一元的ニ
ヤツテ居ル、ソレカラ船員ノ徴用配備上ニ於テ
モ海務院ガ出來テ、海軍ト極メテ密接ナ關
係ヲ持ツテ居ル今日、船舶職員ノ規定ダケ
ガ依然トシテ昔ノ規定ニ縛ラレテ居ル、或
ル一定ノ試驗ヲ受ケナイト免狀ヲ貰ヘナイ
ト云フ制度ハ、相當私ハ改革ノ餘地ガアル
ノデハナイカト思フ、之ニ付テハ先程遞信
御當局カラ御說明ガアツテ、學校ガ澤山出
來ル、ソレニ入ツテ短期デ修業シタ者ニ免
狀ヲヤルト云フ御意見ガアリマシタガ、私
ハ其ノ御精神ナラバ、更ニモウ一步步ヲ進
メテ、今マデノ船舶職員ニナル資格ノ考ヘ
ヲ根本的ニ御變ヘニテル御考ヘハナイカ、
一ツノ例ヲ申上ゲマスト、普通船員トシテ
海上勤務ニ三年以上ノ海上實歷ノアル者ハ、
其ノ儘直グソレニ對シテ試驗ヲ受ケサシテ、
乙種或ハ丙種ノ免狀ヲオヤリニナル御考ヘ
ハナイカ、ソレカラ三年以上ノ實歷アル者
ガ、先程大臣カラ御伺ヒシタ所ノ各種ノ養
成所ガ三ツバカリアツタヤウデアリマスガ、
是等ノ養成所或ハ唐津ダトカ宮古ダトカ兒
島ダトカ云ツタ所ニ、海務院ノ御直轄ノ普
通船員ニ對スル養成所ガアリマスルガ、此
處ニ入ツテ六箇月或ハ一箇年-六筒月デ
足ラナケレバ一箇年、其ノ修業ヲ得タ者ハ
無試驗デ以テ乙種一等免狀、或ハ乙種二等
免狀、或ハ近海一等機關士、二等機關士ト
云ツタヤウナ低級ノ免狀ヲオヤリニナル御
考ヘハナイカ、此ノ點ハ敢テ大臣ヤ長官ノ
御答辯ヲ願ハナクトモ宜シウゴザイマスガ、
遞信御當局ニ御伺ヒヲ致シテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=43
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044・原清
○原政府委員 今ノ海務員免狀ノ問題ニ付
キマシテハ、目下總テノ錯綜シテ居ルモノ
ヲ整理シマシテ、サウシテ特別ナ案ヲ作リ
タイト云フ風ニ〓究ヲ進メテ居ル狀態デア
リマス、今海上實歷ニ依ツテ直グヤルト云
フコトハ、是ハ其ノ實歷ヲ考査スル考課ヲ
誰ガ書クカト云フ問題デ、餘程愼重ニ〓究ヲ
シタ上デナケレバ一寸御答ヘ出來ナイノデ
アリマス、サウ云フ譯デ大體トシマシテハ、
免狀ヲ現在ノヤウナ試驗制度デハヤリタク
ナイト云フ考ヲ以テ〓究ヲ進メテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=44
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045・米窪滿亮
○米窪委員 多少マダ私ノ質問ガ徹底シテ
居ナイト思ヒマスカラモウ一遍繰返シマス
ト普通船員トシテ三年以上ノ海上實歷ヲ
持ツテ居ル者ニ對シテハ、試驗ヲ受ケサセテ
之ニ低級ノ免狀ヲヤル、ソレカラ同ジ三年
以上ノ實歴ヲ持ツテ居ル者ニシテ先程申上
ゲタヤウナ各種ノ養成機關ニ六箇月以上入
ツタ者ニ對シテハ無試驗デヤル、斯ウ云フ
コトデアリマス
次ニ私ノ質問ハ海事思想ノ普及デアリマ
ス、今日遞信御當局ノ法案ヲ通ジテノ御說
明、吾々同僚ノ質問モ、現實ノ問題ニ付テ
御質問申上ゲ答辯ヲ得タヤウデアリマス、
勿論是ハ必要デアリマスガ、私ハ日本ガ海
洋國家デアリ、日本人ガ海洋民族デアル
以上ハ、非常ナ雄大ナル構想ノ下ニ、此
ノ際、將來日本ガ東亞ノ大戰爭ニ打勝ツ
テ世界平和ヲ招來スル中心的國家トナツテ
行クノニハ、飽マデモ海洋ヲ背景トシテ行
カナケレバナラヌ、之ニハ海上權ノ把握ト
云フコトガ絕對ニ必要デアル、少クトモ東
亞ニ於ケル海上權ハ凡ユル海面ニ於テ、我
ガ海軍及ビ此ノ海軍ヲ兩翼カラ助ケル所ノ
商船隊ト漁船隊トノ輔佐ガアツテ初メテ海
上權ヲ把握出來ルノデアリマスガ、此ノ商船
隊ノ乘組員ニ對スル吾々ノ希望ハ、今第一
線ニ立ツテ居ル現役ノ船員デナシニ、是ノ
後續部隊ト云フモノヲドウシテモ養成シナ
ケレバナラヌ、吾々ノ相手ハ今日ハ英米デ
アリマスガ、或ハ將來ハ英米以外ノ有力ナル
國家ノ海軍及ビ海員ト競爭シナケレバナラ
ヌ時代ガ來ルト思ヒマス、其ノ方ガ少クト
モ此ノ船員ト云フモノカラ見レバ、極メテ
侮ルベカラザル强敵デアルト私ハ考ヘテ居
リマス、サウ云フコトヲ豫想スル時ニ、今
日ノ日本ノ海員ニ對スル〓育、或ハ國民ニ
對スル海事思想鼓吹ト云フモノが甚ダ私ト
シテハ不足デアルト思フノデス、現役ノ第
一線ニ立ツテ居ル商船乘組員ハ、少クトモ
今日ニ於テ相當ノ應急的ノ措置ガ講ゼラレ
テ居リマス、將來之ニ後續シテ行キ、ソレ
ヲ補充シテ行ク所ノ船員ニ對シテハ靑少年
ノ時カラ之ニ心理的ニハ所謂海洋性ヲ吹込
ム、ソレカラ知識的ノ方面カラ行クト船舶
科學ニ對スル基礎的ノ知識ヲ與ヘナケレバ
ナラヌ、是ハ極メテ重大ナコトデ、農民ニ
對シテハ第二ノ農民ヲ作ル鍊成道場ガアリ、
工場トシテノ產業ニ對シテモヤハリソレニ
相當ノ所謂國民一般ニ對スル養成機關ガア
ル以上、我ガ國ニ取ツテ最モ重大ナル海洋
民族ノ養成ノ道場タルベキ一般國民ニ對ス
ル海事思想鼓吹ノ機關ガナケレバナラヌト
私ハ考ヘテ居リマスルガ、此ノ點ハ極メテ
重大ト思ヒマス、恐ラク遞信大臣モ其ノ趣
旨ハ贊成ダト仰セラレルデセウガ、然ラバ
其ノ實現方法ハドウデアルカト云フコトヲ
御伺ヒシテ私ノ質問ヲ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=45
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046・若林賚藏
○若林政府委員 只今ノ海事思想普及其ノ
他ニ關スル御意見ハ御尤モデアリマス、實
ハ海軍省、遞信省、厚生省、文部省、斯ウ
云フ風ナ關係各省デ只今進行中デアリマス
ノハ海洋道場ノ建設、ソレカラ此ノ間文部
省ガ主催ニナリマシテ學徒海洋訓練ノ聯盟
ガ結成サレマシタ、其ノ他ソレニ關聯シタ
各種ノ團體ヲ大體統合致シマシテ、其ノ御
趣旨ニ副フヤウナ海事思想ノ普及、サウ云
フ風ナ方面ニ對シマシテ着々進行中デアリマ
ス、何レ御經驗ノアル米窪代議士アタリノ
御援助ヲ戴カナケレバナラヌ、斯ウ云フ風
ニ考ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=46
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047・木檜三四郎
○木檜委員 一言御許シヲ願ヒタイ、誤解
ガアルトイケマセヌカラ-先程米窪君ノ質
問ニ對シテ遞信大臣カラ、船員ハ侮辱ノ言
葉デハナイト云フ御答辯デアリマシタガ、
私ガ質問ヲ致シタノハ船員ト云フノデナク
シテ、旅行シテ見マスト場所ニ依ツテ船乘
リト云フヤウナ言葉ガアルカラ、ソレヲ場
所ニ依ツテハ變ヘタラドウカ、斯ウ云フ意
味デ私ハ御尋ネヲ申上ゲタノデ、私ノ國ナ
ドデハ船乘リト云フモノハ別ニ侮辱ト思ヒ
マセヌ、私共ガヨク旅行ニ出掛ケテ行キマ
スト、船乘リト云フ言葉ヲ侮辱ノ形ニ用ヒ
テ居ル所モアリマスノデ、ソレデ質問シテ
帝國船員トデモシタラドウカ、斯ウ云フコ
トヲ申上ゲタ、大臣ノ仰セラレルニハ俺ハ
船員デアルト云フ、吾々ハ船員ト云フコト
ニ付テハ決シテ侮辱ノ言葉デモ何デモナイ、
結構ナ言葉ダト存ジテ居リマス、唯私ガ心
配ヲシテ伺ヒマシタノハ、場所ニ依ツテハ
船乘リト云フ言葉ガ侮辱ノ形ヲ持ツテ居ル
カラ、之ヲ場所ニ依ツテハ帝國船員トカ、
皇國船員トカ云フコトニ改メラレタラドウ
カト云フコトヲ御聽キ中シタ譯デ、船員ト
云フコトハ侮辱ノ意味デアルト云フ形デ言
ツタノデハ毛頭ゴザイマセヌカラ、是ダケ
ハドウゾ御注意置キヲ願ヒタウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=47
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048・宮澤裕
○宮澤委員長 尙ホ若宮委員カラ質疑ノ通
告ガアリマスガ、其ノ前ニ委員外ノ江原三
郞君カラ電氣廳長官ニ對スル質問ガアリマ
スノデ、電氣廳長官ガ折角三十分バカリノ
時間ヲ割愛シテ御出席ニナツテ居リマスカ
ラ、特ニ之ヲ許シマス--江原君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=48
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049・江原三郎
○江原三郞君 私ハ日本發送電株式會社ノ
發電工事ノ進捗狀況ニ付テ、直接御監督ノ
地位ニアル電氣廳長官ニ御尋ネヲ致シタイ
ト思フ、問題ノ場所ハ鬼怒川ノ上流デ栃木
縣ノ川俣地内ニ起サレタ發電工事ノ問題デ
アリマス、是ハ現ニオヤリニナツテ居ル問
題デアツテ、計畫カラ見レバ數千万圓ノ金ヲ
投ジテ數万「キロ」ノ發電ヲスル工事デゴザ
イマシテ、關係地方ノ非常ニ翹望シテ居ツ
タ問題デアリマス、從來利根川ノ治水、又
此ノ上流ノ鬼怒川ノ治水ニ付テハ非常ニ問
題ガアリマシテ、洪水ガアル度ニ幾多ノ耕
地ガ潰レル、栃木縣ノ如キハ此ノ洪水ノ爲
ニ每年非常ナ金ヲ使ツテ居ル、ソコデ此ノ
河水ヲ調整シテ、渴水期ニハ溜メテ居ツタ
水ヲ使ヒ、洪水期ニハ其ノ水ヲ溜メル、サ
ウシテ調節ヲスルト云フコトガ從來非常ニ
問題ニナツテ居ツタノデアリマスガ、幸ヒ
ニ日本發送電株式會社ガ出來マシタ、此ノ
日本發送電株式會社ハ他ノ電氣事業會社ト
其ノ性質ヲ異ニシテ居ル、隨テ發電工事モ
スルシ、同時ニ河水ノ調整モスルノデアル
ト云フヤウナ御趣旨デ、發送電會社ガ出來
マシタ第一ノ最初ノ工事トシテ、此ノ川俣
ノ工事ヲ御取上ゲニナツテ工事ヲサレテ居
ルノデアリマス、一方同ジ鬼怒川ノ上流ニ
於テ、他ノ方面ニ内務省ニ於テヤハリ數千
万圓ノ金ヲ投ジテ、此ノ河水調整ヲ目的ト
スル「ダム」ヲ造ルコトニナリマシテ、現ニ繼
續事業トシテ豫算ガ取ラレテ居ルヤウナ狀
況デアル、ソコデ私共モ非常ニ喜ンデ居リ
マシタ所ガ、最近兎角ノ批評ガ出テ來タノ
デアリマス、ト云フノハ發送電會社デハ當
初ノ計畫ヲ實行シナイデ、何カ僅カ五千「キ
ロ」位ノ工事ニ止メテ、サウシテ止シテシ
マフノデハナイカ、話ニ聞ク所ニ依リマス
ト電氣廳ノ方カラ命令ガ出テ居ルノデアル
ガ、其ノ命令ヲ遵奉シナイトハ言ハナイガ、
唯取敢ズ五千「キロ」位ノ工事ヲヤツタダケ
デ、後ハ模樣ヲ見テ居ル、其ノ模樣ヲ見テ
居ルノモ宜イノデアルガ、資材ノ關係カラ
來タ模樣デアルカト云ヘバサウモ言ヘヌ、
最初ニ始メマシタ川俣ノ工事ニ付キマシテ
ハサウ云フ風ナ狀況デ居ルノニ、他ノ場所
ニ於テハドン〓〓進捗シテ居ルノデアルカ
ラ、資材ノ關係カラ來タ中止デハナイド
ウモ他ノ內務省ガヤツテ居ル其ノ非常ニ大
キナ「ダム」ガ出來ルト、其ノ「ダム」ノ出來
上リニ依ツテ非常ナ發電ガ出來ルノデ、ド
ウモ其ノ方ヲ期待シテ居ル、片方ハ工事費
ガ餘計掛リ、單價ガ餘計掛ルノデ、安イ單
價ノ方ヲ先ニヤツテ、サウシテ命令ニ從ハ
ナイト云フコトハシナイツデアルガ、内務省
關係デヤツテ居ル「ダム」工事ノ方ヲ利用ス
レバ費用モ掛ラヌデ濟ム、其ノ方ノ模樣ヲ
見テ居ルノダト云フ噂ヲスル者モアルノデ
アリマス、ソコデ監督官廳デアラレル電氣
廳長官トシテハ、ドウ云フ命令ヲ出サレテ
居ルノデアルカ、又其ノ工事ノ狀況ハドウ
ナツテ居ルカ、當初ノ計畫ハ實際ニ於テ變
更シテ居ハシナイカト云フコトニ付テ御尋
ネシタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=49
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050・藤井兼誼
○藤井政府委員 只今ノ御尋ネデゴザイマ
スガ、鬼怒川ノ發電地點ノ開發ニ付キマシ
テハ、御說ノ如ク獨リ電氣ト云フ立場バカ
リデナク、其ノ治水利水ニ及ボス影響等ヨ
リ考ヘマシテ計畫ヲ立テテ居ルノデゴザイ
そう、只今御尋ネニナリマシタ地點ハ、實
ハ上流ニアルノデアリマシテ、目下其ノ下
流ニアリマス栗山ト云フ地點ヲ工事中デア
ルノデアリマスガ、御承知ノ如ク資材勞力
等ガ著シク窮屈ニナツテ參ツテ居リマスル
ノデ、上流ノ地點モ下流ノ地點モ一〓ニ之
ヲ行フト云フコトハ中々困難ナノデアリマ
シテ、只今ノ所デハ下流ノ栗山地點ニ重
點ヲ置イテ居ルノデアリマス、併シナガラ
上流ノ川俣地點モ、是ハ放棄シタ譯デハナ
イノデアリマシテ、只今發送電會社ノ方デ
ハ之ヲ小サイモノニシテ、胡麻化シテ行
クト云フヤウナ御話ガアツタヤウデアリマ
スガ、是ハ單ナル噂デハナイカト思フノデ
アリマス、私共ノ方ト致シマシテハ、飽ク
マデ既定方針デ進ンデ行キタイ、斯樣ニ考
ヘテ居リマス、而シテ下流ニアリマス栗山
地點モ貯水池ヲ造リマシテ、出來ルダケ治
水ノ目的ニ相應シイヤウニ設計ガ出來テ居
ルノデアリマス、上流ノ方ノ川俣地點ハ、
資材、勞力サヘ今少シ自由ニナリマスナラバ、
直チニ是モ着手シタイト考ヘテ居ルノデア
リマス、既ニ先般電力審議會デ可決ニナリ
マシタ發送電豫定計畫、是ハ五箇年間ノ計
畫ニナツテ居リマスガ、其ノ中ニモ川俣地
點ハ開發サセルト云フ積リデ居リマシテ、ソ
レニ依リマスト、大體一万二千四百「キロ」程
度ノ設備ニシヨウ、斯樣ニ考ヘテ居リマス
又內務省ノ關係デゴザイマスガ、是ハ私
ヨリモ御尋ネノ方ノ方ガ能ク御承知デアラ
ウト思ヒマスガ、是ハ先年五十里ト云フ點
ニ內務省ガ計畫致シマシテ、地盤等ノ關係
デ是ハ止メニナツタ地點ガアルノデアリマ
ス、其ノ後再ビ內務省デ地點ヲ變ヘマシテ
調査シテ居ルト云フコトハ聞イテ居リマス
ガ、其ノ設計ノ內容等ニ付テハ、未ダ私共
ハ詳シク承知致シテ居リマセヌ、勿論內務
省デ左樣ナ計畫ヲ立テマスル場合ニハ、私
ノ方ニモ相談ガゴザイマシテ、治水、利水、
同時ニ發電ニ使フト云フ色々ノ見地カラ、
之ヲ出來ルダケ活用スルト云フコトニ致シ
テ居ルノデアリマシテ、今後御尋ネノヤウ
二、若シ內務省ニ於キマシテ左樣ナ計畫ガ
進ンデ參リマシタ時ニハ、勿論是トノ調和
ハ圖ル積リデ居リマス、只今ノ所內務省ノ
計畫ガアルカラト云フノデ、川俣地點ヲ止
メテ居ルノデハナイノデアリマシテ、川俣
地點ハ全ク資材、勞力ノ關係カラデアリマ
シテ、只今ノ所デハ栗山地點ノ方ニ全力ヲ
擧ゲテ居ル、引續イテ川俣地點ニ移ル、斯
樣ニ御諒承ヲ願ヒタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=50
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051・江原三郎
○江原三郞君 只今ノ政府ノ御答辯デ事情
ガ明瞭ニチリマシタ、私ノ質問ハ是デ終リ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=51
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052・宮澤裕
○宮澤委員長 次ノ質問者ニ質問ヲ許シマ
ス-若宮貞夫君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=52
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053・若宮貞夫
○若宮委員 一寸一、二事務的ノ御尋ネヲ
シタイノデスガ、其ノ一ツハ、小形船舶乘組
員手帳法ノ第一條第一項及ビ同條第二項ニ
揭ゲテアル命令ノ內容-內容ト言ツテモ
詳シイコトハ要リマセヌガ、ドンナコトヲ
大凡考ヘテ居ラレルカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=53
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054・安田丈助
○安田政府委員 此ノ「命令ヲ以テ定ムル船
員」ノ範圍デアラウト思フノデスガ、之ニ付
キマシテハ、此ノ法案ガ大體船員法ノ定ム
ル適用ヲ受ケル船員ト、國民勞務手帳法ノ適
用ヲ受クル船員以外ノ船員ヲ、此ノ法案デハ
適用ノ對象ト致シテ居ル次第デアリマス、隨
ヒマシテ今後命令ヲ以テ其ノ範圍內カラ、更
ニ本法案ノ適用ノ外ヘ置クベキ豫定ノモノ
ト致シマシテハ、大體年齢十四歲未滿ノ者、
是等ハ除カウト思ツテ居リマス、但シ國民
學校ノ初等科ノ〓課ヲ終了シタヤウナ者
デ、十四歲未滿ノ者ニ付キマシテハ、是ハ
近ク船員トナリ得ル狀態ニナツテ居リマス
ルノデ、十四歲未滿ノ者デモ斯樣ナ者ハ
本法ノ適用ヲ受ケルヤウニ致シタイ、斯樣
ニ考ヘテ居リマス、其ノ他船舶所有者以外
ノ者ガ使用シテ居ルヤウナ者、例ヘバ船內
ニ於キマスル船舶所有者以外ノ者ニ使用セラ
レル者ハ、船員トシテノ職務ヲ行フ者デハ
ナイト云フ見方ト致シマシテ、適用ノ外ニ
置キタイ、斯樣ニ考ヘテ居リマス、尙ホ斯
樣ナ小形ノ船舶ニハナイトハ存ジマスルガ、
何人ニモ使用セラレズシテ、小形ノ船舶内
デ業務ヲ行フ者、斯樣ナ者ヲモ除外スル考
ヘデ居リマス、其ノ他〓習船ノ如キモノガ
小形船舶ニ付テモアリト致シマスナラバ、
其ノ〓習船ニ乘組ンデ居リマス〓習ヲ受ケ
ルヤウナ者ハ、完全ナル船員トシテノ職務ヲ
行フモノデハナイト云フ考ヘヲ以チマシテ、
斯樣ナ者ハ適用ノ外ニ置キタイ、大體斯樣
ニ考ヘテ居ル次第デアリマス、尙ホ更ニ適
用ヲ除外スベキ者ニ付キマシテ、其ノ他ニ
マダアルカドウカニ付テハ、一層考究ヲ加
ヘテ行キタイ、斯樣ニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=54
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055・若宮貞夫
○若宮委員 分リマシタ、妙ナコトヲ御伺
ヒスルガ、立法例トシテハ異樣ニ感ジタノ
デス、「左ニ揭グル日本船舶ニ乘組ム命令ヲ
以テ定ムル船員」ト云フヤウナ、從來ノ立法
例ニ餘リ見ヌヤウニ思ヒマスガ、此ノ頃コ
ンナ風ニナツタノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=55
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056・安田丈助
○安田政府委員 ソレハ斯ウ云フヤウニナ
ツタト云フ譯デハゴザイマセヌ·ガ、國民勞
務手帳ノ方ニ於テモ、適用ヲ除外スル者ニ
付テ、ヤハリ同樣ナ字句ノ配置ヲ以テヤツ
テ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=56
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057・若宮貞夫
○若宮委員 ソレハソレデ形式ノコトハ分
リマシタ、ソレカラ先程大臣カラ御說明モ
アリ、米窪委員カラモ御話モアリ致シマシ
タガ、大臣ノ御說明中ニアリマシタ高等海
員ノ臨時養成機關、ソレカラ特別養成機關
ト云フ御言葉ガアツタヤウデスガ、兩方共
臨時ノモノデスカ、或ハ一方ノモノハ恒久
ノモノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=57
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058・若林賚藏
○若林政府委員 先程臨時高等海員ト大臣
カラ仰セニナリマシタガ、是ハ相當恒久性
ノアルモノデ、臨時ト云フ名前ヲ實ハ今マ
デ使ツテ居ラナイ、高等海員養成所、斯ウ
云フヤウニヤツテ居ルモノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=58
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059・若宮貞夫
○若宮委員 私モサウ思ツテ、逆ノヤウニ
考ヘテ御尋ネシタ、ソコデ御聽キシタイ要
點ハ、素人デ能ク分ラヌケレドモ、海員ノ
養成機關ガ複雜過ギハセヌカト云フヤウナ
感ジガアルノデス、高等商船學校ト云フモ
ノヲ、今度文部省カラ遞信省ニ移管シテ戴
イテ、私ハ米窪船長ノ御述懷トハ、又逆ナ
方面ニ於テ滿足ヲ感ジテ居ルノデアリマス
ガ、其ノ高等商船學校ノ二校ノ外ニ地方商
船學校ガ七校アリマス、尙ホ其ノ他ニ養成
機關ガ數種アル、斯ウ云フ風ニシテ餘リ複
雜シ過ギテ居ルカノヤウニ考ヘラレマス、
勿論當面ハ急需ニ應ズル爲ニ複雜モ厭ハ
ズ、少々ノコトハ厭ハズニオヤリ下サル必
要ガアルト思フノデスガ、併シ〓育ニ關ス
ルコトハ年限モ要スルコトデアリ、ヤハリ
早イ中ニ一ツ組織ヲ立テテヤツテ戴ク方ガ
宜イノヂヤナイカ、先程米窪委員カラノ御
意見モアリマシタガ、私モ同樣ナ考ヘヲ持
ツテ居リマシテ、其ノ邊ニ付テノ御意見ヲ
伺ヒタイ、ソレカラ併セテ、又米窪委員ヲ
屢〓引合ニ出シマシテ相濟マヌガ、米窪船長
御滿足ヲ得難イカトモ思フガ、豫ネテカラ
懸案デアリマス內燃裝置ノ帆前船ニ乘セル
訓練ト云フヤウナコトガ、今日又今後ニ引
續イテ必要ガアルノカナイノカ、必要ノ有
無ト申セバ必ラズアルト言ハレ、斯ク申ス
私モアルト信ジテ居リマスガ、今後海運ノ
大膨脹ヲ來シマス上ニ付テ、場合ニ依リマ
スト必要ノ度合如何ニ依ツテ、彼ヲ加へ之
ヲ減スト云フ手加減ガナケレバナラヌト思
ヒマスカラ、今ノ〓育機關ノ整備ニ加ヘテ、
〓育內容ノ整備ト云フコトニ付テモ、相當
御〓究ガアルノデハナイカ、此ノ際御抱負
ヲ承レレバ幸セニ存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=59
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060・若林賚藏
○若林政府委員 御說ノ通リデアリマシテ、
多數ノ學校、養成所ガ多種多樣ニナツテ居
リマスガ、實ハ目下ソレヲ如何ニ統合シ、
如何ニ整理スルカト云フ問題ニ付テ、ソレ
ハ相當恒久性ノアル將來問題トシテ今〓究
シテ居リマスガ、差當リノ問題ト致シマシ
テハ、此ノ戰時計畫ニ伴フ多數ノ造船ガア
リマスノデ、此ノ要員ノ爲ニハ、其ノ根本
的ノ對策ニ移ルト云フコトガ、現狀ニ於テ
ハ難カシイノデアリマス、今ノ多種多樣ノ
狀況デ一人デモ多ク、此ノ複雜ヲ厭ハズ要
員ヲ充實センナラヌト云フノデ、施設ノ許
ス限リ取敢ズ今此ノ養成ニ全力ヲ注グ、サ
ウシテ將來ノ對策ト云フモノハ、ソレ等カ
ラ大體支障ナク移行シ得ルヤウナ、將來對
策ト云フヤウナモノニ對シテ、着々〓究ヲ
進メテ居ル次第デアリマス、ソレハ大體成
案ガ出來次第手續ヲ經テ實行ニ移リタイ、
斯ウ云フ風ニ今考ヘテ居リマス、ソレカラ
モウ一ツ帆船〓育ガ必要ナリヤ否ヤト云フ
コトデアリマスガ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=60
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061・若宮貞夫
○若宮委員 サウデハナク帆船ハ一例ニ御
話シタノデ、〓育ノ內容ニ付テ何カ御〓究ニ
ナツテ居ルカ、斯ウ云フノデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=61
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062・若林賚藏
○若林政府委員 ソレハ〓育體系ノ問題ト
同時ニ、實ハ商船學校ノ現在ノ〓育ガ、海
軍ノ豫備員トシテノ〓育ト相當開キガアリ
マシテ、海軍ノ豫備員トシテノ〓育トシテ、
或ル程度ハ海軍ノ要望ニ副ツテ居ナイト云
フヤウナ聲モ聞イテ居リマスノデ、術科關
係ニ於キマシテハ、相當海軍兵學校又ハ海
軍機關學校ノ現行ノ宜イ所ヲ採入レテ、〓
程ノ改訂ヲヤリタイト云フノデ是モ併セテ
目下〓究シテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=62
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063・若宮貞夫
○若宮委員 甚ダ練レザル考ヘデアリマス
ガ、丁度是ガ船員ノ〓育ニ關スル法案ヲ審
議スル最モ適當ナ際デアルト思ヒマスカラ、
幾分練レザルコトヲ申上ゲテ恐縮デアリマ
スガ、私一ツ提案シテ置キタイコトガ〓育
ニ關シテアリマス、ソレハ獨リ船員ノ〓育
バカリデハナイ、國家ノ凡ユル方面ノ〓育
ニ關シテノ卑見デアリマスガ、成ベク若イ子
供ヲ摑ヘテ、成ベク短イ期間ニ基礎〓育ヲ
施シテ、サウシテ成ベク長ク社會ノ實務ニ
從事サセテ行クト云フコトガ、國家的ニ見
マシテモ、又〓育ヲ受ケル各個人カラ見テ
モ、ソレガ望マシイコトノヤウニ私ハ信ジ
テ居ルノデアリマス、話ガ大キ過ギマスガ、
帝國大學ヲ初メ凡ユル〓育機關ニ付テ、私
ハ痛切ニサウ云フコトヲ感ジテ居ルノデア
リマス、是ガ何ト言ヒマスカ、孤立ト云フ
言葉ハ使ヒタクナイノデスガ、孤立シテ居
ル場合トカ、閉鎖シテ居ル場合トカ云フコ
トヲ考慮ニ入レレバ、格別ノコトハナイカ
モ知レマセヌガ、國際的ニ競爭シツツ雄飛
シテ行クト云フ將來ノ立場ヲ考ヘテ行キマ
スルト、諸外國ノ同種類ノ人ガ養成サレテ
居ル其ノ〓育ノヤリ方、ソレニ要シテ居ル
年限、費用、斯ウ云フコトヲ比較シテ、我
ガ國ガ割合短イ期間ニ割合少イ費用、割合
ニ國家ニ迷惑ヲ掛ケズニ人間ヲ拵ヘ得タナ
ラバ、而シテ其ノ餘力ヲ以テ社會的ノ實務
ニヨリ多ク從事セシメ得タナラバ、國際競
爭ノ上ニ個人トシテモ國家トシテモ頗ル有
利ノ立場ニナルデアラウ、是ガ私ガ考ヘテ
居ル基本原理デアリマス、此ノ基本原理カ
ラ割出シテ行キマシテ、日本ノ高等船員ノ
〓育ナドガ、或ハ今日ハ直チニ外國ト比較
スベキ方便モアリマセヌガ、過去ニ於ケル
外國ノヤリ方ナドヲ比較シマスト、ドウモ
割合ニ多クノ年限ト、割合ニ多クノ費用ヲ
費シテ居ラレルノデハナカラウカ、是ハ間
違ツタラ結構デアリマスガ、私ハ左樣ニ觀
察ヲ致シテ居ル、是等ノコトモ一ツ考慮ニ
入レラレテ〓育機關ノ機構、〓育ノ內容ニ
關スル御調査ガアルサウデアリマスカラ、
一ツ〓究ヲセラレタイト云フコトヲ、甚ダ
練レヌ考ヘデアリマスガ、此ノ際敢テ提唱
致シテ置キタイ、ソレカラ委員長、私ハモ
ウ一箇條ココデ提唱シタイコトガアリマス
ガ、御許シ出來マスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=63
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064・宮澤裕
○宮澤委員長 宜シウゴザイマス、ドウゾ
御提唱願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=64
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065・若宮貞夫
○若宮委員 外ノコトデモアリマセヌガ、
國防上ノ見地カラ見テモ、國民生活ノ確保
ト云フ上カラ見テモ、國ヲ護ルト云フ稍〓消
極的ニ見テモ、又雄飛スルト云フ積極的ニ
見マシテモ、ドノ方面カラ見テモ海運機關
ガ非常ナ重要性ヲ持ツト云フコトハ、是一
私ガ申上ゲルマデモアリマセヌ、此ノ度モ
此ノ戰時狀態ニ入リマシテ、社會的ニ是ガ
痛感サレ、現ニ此ノ議會ナドニ於キマシテ
モ此ノ委員會ハ申スニ及バズ、豫算委員會
ニ於テモ或ハ南洋開發其ノ他ノ特別委
員會等、本會議ニ於テモ、委員會ニ於
テモ、海運ニ關スル問題ガ深イ關心ヲ
以テ取上ゲラレテ居ルト云フコトハ
是ハ當然ナコトト思ハナケレバナラヌ、
又私共ハ是ガ社會一般ニ痛感サレタト云フ
コトニ滿足ヲ感ジテ居ルノデアリマス、所
ガ此ノ事ニ付テハ實ハ我ガ帝國トシテ今囘
初メテ感ズルノヂヤナイト私ハ思フ、極ク
古イコトハ私共存ジマセヌガ、文獻ニ依ツ
テ存ジテ居ル所ニ依リマシテモ、日〓戰爭
ヲ經テ海運ノ必要ナコトヲ痛感ヲ致シ、日
露戰爭ヲ經テ之ヲ益〓痛感シ、曩ノ第一次
歐洲大戰ニモ非常ニ之ヲ痛感致シタ、私ハ
深ク存ジマセヌケレドモ、過去數囘日本ハ
之ヲ痛感ヲシテ來タ、サウシテ今度ハ勿論
程度ノ違ヒガアリマセウ、併シ性質上ニ於
テハ違ヒノナイ痛感ヲ屢〓重ネテ來テ、而モ
過去ハドウデアツタカ、之ヲ顧ミマスト、
動モスルト忘レラレ勝チニナル、難局ガ過
ギテ小康ヲ得ルト消極性ヲ帶ビルト云フ經
路ヲ迪ツテ來テ居ルノデアリマス、之ヲ說
明スルノニ極メテ卑近ナ而モ現實ニアツタ
例ヲ申上ゲテ見マスルト、殊ニ私ノ記憶ニ
アルノハ第一次歐洲大戰デスガ、アノ際船
腹ノ非常ナ不足ヲ感ゼラレテ社會一般カ
ラ、愬ヘラレタ、其ノ場合ニハ商業貿易ニ
從事スル方面ノ方ナンカモ、ドウシテモ我
ガ帝國ノ海運ヲ膨脹サセテ置カナケレバイ
カヌ、外國ノ船腹ニ賴ムコトハ出來ナイノ
ダ、イザトナレバ、我ガ帝國ノ船腹ニ俟ツ
ヨリ外ハナイノダカラ、其ノ準備トシテ帝
國ノ海運ノ大膨脹ヲ企圖シテ置カナケレバ
ナラヌト云フ論ニ國論ガ一致シテ居ル、所
ガ是ガ濟ンデシマツテ小康ヲ得ルトドウデ
アリマスカ、現ニ私ノ知ツテ居ル限リニ於
テモ同ジ所ヘ外國ノ船舶モ運航シテ居ル、
日本ノ船舶モ運航シテ居ル、聊カノ便宜ヲ
圖ルトカ、聊カノ運賃ノ差額ガアルト云フ
ノデ、內外ノ別ナク、貿易關係業者、商業
關係業者ハ外國船ニ荷物ヲ委託シテ居ツタ
事實ガアル、是ガ何ヨリモ如實ニ物語ツテ
居ル、俗ニ申スコトハ少シ下品デ恐縮ニ當
リマスガ、喉元過ギレバ熱サヲ忘ルルト云
フ下俗ノ諺ガアリマスガ、稍〓之ニ類似ノ嘆
カハシイ苦イ經驗ヲ數囘經テ來タモノト私
ハ觀察ヲ致シテ居リマス、當局ハ御違算ナ
イコトト思ヒマスガ、今度ハ何度目カ、三
度目ニナルカ五度目ニナルノデアリマスカ
ラ、ドウカ今ノヤウナ弛ンデシマフ、タル
ンデシマフト云フコトデナシニ、今度ハ過
去半歲ノ目前ノ急ヲ見テ、ソレニ適應シタ
ル政策ヲ執ツテ貰フコトハ勿論デアリマス
ガ、遠キ將來ヲ慮ツテ終始斷エザル積極性
ヲ帶ビテヤツテ戴キタイ、此ノ事ハ私ハ自
分ノ責任ヲ暴露スルヤウデアリマスガ、政
府ノ政策トシテモ現ニ消極性ヲ帶ビテ來タ、
擔當シテ居ル者ハ飽クマデモ積極性デ行
キ、何處マデモ助長奬勵シテ擴張サシテ行
カナケレバナラヌト思フガ、稍〓財政ノ緊縮
デアルトカ、消極方針ト云フ時ノ勢ヒト言
ヘバ已ムヲ得ナカツタノデアリマスガ、實
ニ遺憾千萬デアルノハ政府ノ政策ノ消極ニ
流レタコトデアル、是ハ現ニ私共經驗シテ
參ツテ居ル、ドウカ今後ハサウ云フコトノ
ナイヤウニ、飽クマデ積極的ニヤツテ戴キ
タイ、此ノ委員會ノ初メヨリ遞信大臣ハ
戰中ノコトデアルカラ數字ニ觸レルコトヲ
御遠慮ニ相成ツタ、私共モ諒承致シマシキ
此ノ事ハ御尋ネ致シテ居リマセヌ、ケレド
モ將來-將來ト言ツテモ極ク近イ將來ノ
我ガ帝國ノ海運ノ分量ト云フコトニ想ヒ到
リマスト、是マデ數囘時々凡ソコンナモノ
ガ目標ダナドト言ハレテ居ツタヤウナ、ア
ンナ少サナモノデハ迚モ是ハ間ニ合フモノ
デアリマセヌ、餘程雄大ナル構想ノ下ニ、-
米窪君モ觸レラレタヤウニ行ツテ戴カナケ
レバナラヌ、蓋シ政府ニ於テハ十分サウ云
フ御考ヘデアラウト思ヒマスガ、ドウカ何事
モ消極性ニ流レズ、積極性ヲ以テ終始スル
ヤウニヤツテ戴キタイ、之ヲ私ハ御願ヒシ
テ置キマス、之ニ御異存ハナイコトト信ズ
ルカラ、是レ以上長ク申上ゲル必要ハナイ、
ソコデ此ノ目的ヲ達スル爲メノ計畫ナリ統
制ナリ、或ハ又助長ト云フヤウナ諸般ノ政
策ニ付テハ、政府當局ニ於テハ斷エザル努
力ノ下ニ油斷ノナイ詳細ナル計畫ガ立ツテ
居ルコトト信ジマス、唯其ノ中ニ一ツ加ヘ
テ戴キタイコトガアリマスノデ、ソレヲ此
ノ場合ニ提唱シマスカラ聽取ツテ置イテ戴
キタイ
其ノ一部ニ付テハ既ニ木檜、米窪兩委員
カラ觸レラレマシタ船員ノ待遇ト云フコト
ガアリマシタガ、私ガ意圖致シマスノハ船
員ダケデアリマセヌ、廣ク海運ニ關係スル
者ニ對スル國家的、社會的ノ待遇ヲ十分ニ
向上サシテ戴キタイ、此ノ事柄ガ政府ノ海
運ヲ擴張セラルル助長ノ方針トヤリ方ヲ併
セテ行キマスナラバ、必ズヤ大キナ效果ノ
アルモノデアラウ、斯ウ云フ信念ヲ以テ私
ハ之ヲ提唱スルノデス、船員ニ付テ木檜、米
窪兩君カラ極メテ同情アル、又肯綮ヲ得タ
ル御提唱ガアツテ、私ハ之ヲ拜聽シテ非常
ニ滿足ヲ感ジマシタ、ドウカ願ハクバ此ノ
海運關係、モツト具體的ニ言ヘバ海運業者、
造船關係者、又海運全體ニ關係シテ努力シ
タル者ノ社會上ノ地位ヲモツト今ヨリ向上
サシテ戴キタイ、是ガナケレバ造船業、海
運業其ノ他ニ援助サレルト云フダケデハ私
ハ十分ニ行クマイト思フ、之ニ關係シ、之
ニ努力シ、之ニ功績ノアル者ノ國家的、社
會的地位ガ向上サレル、先程大變興味アル
ト申スト御無禮ニ當ルカモ知レマセヌガ、
趣味アル問答ガ木檜サント遞信大臣トノ間
ニ交換サレタガ、兩方トモ洵ニ御尤モナ御
意見ト拜聽シマシタ、私モ大臣ト同ジデ、
今敵國ノ例ヲ引キタクアリマセヌガ、過去
ニ於テ敵デナカツタ國ノ例ヲ引クコトハ差
支ナイト思ヒマス、古ク留學中歐米、殊
「イギリス」アタリニ行ツテ見ルト、大臣ノ
仰セラレタヤウニ、船頭上リト云フ言葉ハ
惡イカモ知レマセヌガ、船乘リノ經驗者、
船長、是ガ社會的ニ、或ル待遇ヲ持チ、社
會的ニ或ル尊敬ヲ確カニ持ツテ居ルト大臣
ガ言ハレテ居ル、又木檜サンモ言ハレタ通
リ、ドウモ赤褌、船頭上リト申シマスレバ、
我ガ國ニ於テハ侮蔑デハ決シテアリマセス
ガ、ソレ程ニ社會的ニ鱼敬セラレルト云フ
風ガ見エナイ、此ノ事柄ガ私ニハ氣ニ入ラ
ナイ、ヤハリ大臣ガ仰セラレタヤウニ、我
國デモ船乘上リ、船長ダト云フ一種ノ敬意
ヲ拂ハレルト云フ社會的ノ位置ヲモ向上シ
テ戴キタイ、是ハ政府ノモノナラ政府ノ方
デ待遇出來マスケレドモ、此ノ社會ノ風潮
マデ直スト云フコトヲ一遍ニ御註文申上ゲ
ルノハ無理カモ知レナイガ、政府ガ其ノ氣
デオヤリニナルナラ、社會モソレニ從ツテ
來テ大變違フト思フノデアリマス、勿論米
窪委員カラ指摘サレマシタ功績アル者、勤
續シタ者ニ對シテ國家ノ勳章ヲ與ヘルコト
ハ私ハ當然ダト思ツテ居ル、獨リ船員バ
カリデハアリマセヌ、船舶業者ニ對シテモ、
海運業者ニ對シテモ、造船業者ニ對シテモ
當然ノコトデ、旣ニ過去ニ於テモサウ云フ
コトハ極メテ局限サレタ範圍デハヤツテ居
ラレマスガ、アレヲモウ少シ擴張シテ、國
家的、社會的ニ地位ヲ進メテ置イテ戴ケバ
資本ヲ投下スル者モ喜ンデ投下スル、之三
從事スル者モ、中スマデモナク造船業ナド
ハ非常ニ右爲轉變ノ多イモノデ、是ハ遞信
大臣ニ向ツテハ先程モ言ツタガ釋迦ニ說
法以上ニナリマスカラ控ヘマスガ、此ノ造
船業ノ如キ有爲轉變ノ多イモノニ資本ヲ投
下シテ之ヲ進メテ行ク、又海運業ノヤウナ
平時ニ於テ利益ノ甚ダ少イモノニ資本ヲ投
下シテ進メテ行クト云フコトハ、是ハ餘程
刺戟ヲシテ戴カナケレバ、目的ノ通リノ、今
位ナ程度ノコトノ振興ハ行キマセウガ、吾
吾ガ意圖シ希望スルヤウナ程度ノ雄大ナル
計畫ニ副フヤウニシテ行クノニハ、餘程ノ
力ヲ入レテ戴カナケレバナラヌ、外ノコト
ハ如才ナクオヤリニナツテ居ルト信ジマス
ガ、國家的社會的待遇向上ト云フコトヲ、
海運政策ノ要目ノ中ニ御入レ下サルコトヲ
敢テ玆ニ提唱シテ、私ノ質問ダカ意見ダカ
分リマセスガ、是デ終リト致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=65
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066・寺島健
○寺島國務大臣 若宮サンノ御意見、敢テ
此ノ點、ドノ點ト要求サレタ譯デハアリマ
セヌガ、初メニ〓育ノコトノ御意見ガアリ
マシタガ、御同感ノ點ガ多イノデアリマス、
今日高等商船學校ノ入學資格ガ一般専門學
校令ニ依ツテ中學卒業以上トナツテ居ル、
海員ハ早ク出サナケレバナラヌ、卒業期ヲ早
メルト云フヤウナコトハ、應召ニ依ツテ起
キタノデアリマスガ、之ヲ遞信大臣ノ方ヘ
持ツテ來タ爲ニ、急速ニ四年制度ニ出來タ
ヤウナ次第デ、是モ御說ノヤウニ早ク出シ
タイ、一般ノ〓育ニ付キマシテモ、政府ニ於
テモ〓育ト云フコトハ能ク考ヘテ行カナケ
レバナラヌト云フコトニ話合ツテ居リマス
ガ、御說ノヤウナコトヲ私トシテモ考ヘテ
居ル點ガアルノデアリマス、此ノ〓育ノ問
題ハ私カラ政府ノ態度トシテ說明ハ申上兼
ネルノデアリマス
ソレカラ船ノ重大ナト云フコトハ、今日
本會議ヲ通ジ、或ハ各種ノ委員ヲ通ジテ、
議會デモ、世ノ中デモ言ハレルヤウニナツ
テ居ル、併シ是ハ今ニ始マツタコトデハナ
イノデアリマス、併シナガラ今日ハツレヲ
最モ痛切ニ感ジテ、自分ノ仕事ノ上マデナ
ゼ斯ウ行カヌノカ、結局穿鑿シテ見ルト船
ガ足ラヌカラダ、斯ウ云フコトニナツテ來
テ居ルノデ·アリマス、本當ニ國策トシテ船
ガ必要ダト云フコトヲ皆ガ今マデ痛感シテ
居ルカト云フコトニ付テハ、私ハ尙ホ海事
ニ當ル者トシテ一段ノ努力ヲ要スルモノ
ダト思ヒマス、ソレデ海務院ノ總務部ノ下
ニ海事ニ關スル課ヲ設ケマシテ之ニ當ル
コトニ致シタ次第デアリマス、其ノ點海事
思想ノ普及ト云フコトガ出來、軈テハ一般
國民ノ上ニモサウ云フ風ニ海事ノ必要ナル
コトガ分リ、隨テ海事ニ從事スル人ニ對スル
動章等ノ如キモノモ然ルベキモノダト云フ
輿論モ一ツ出テ來ルモノダト私ハ思ヒマス、
又仰セラレタヤウニ、海事ニ從事スル者ト
云フコトガ尊敬ヲ受ケルヤウナコトニモナ
ルト思フノデアリマス、此ノ點ニ於キマシ
テ、海事思想ノ普及ヲ國民全般ニ圖リタイ、
斯ウ思ツテ居リマス、仰セラレル通リ、日
〓戰爭、日露戰爭ヲ經テ、段々船ハ要ツテ
來マシタガ、是モ敵國ノ人間デ、マダ今日
生キテ居ル人間デアリマスガ、「ロイド·ジョー
ジガ前ノ歐洲戰爭ノ時ニ於テ、英國ノ
勝利ヲ得ルノ途ハト言ヘバ、一ニモ船、二
ニモ船、三ニモ船ト言ツタノガ私共耳ニシ
タ言葉デ初メテデアリマス、藤原銀次郞サ
ンガ初メテ言ハレタ言葉デハナイノデアリ
マス、英國ノ「ロイド·ジョージ」ガ言ツタ、
是ハ若宮サン御存ジノ通リデアリマス、斯
ウ云フ風ニ考ヘテ來テ居ツタ次第デアリマ
ス、我ガ國ニ於キマシテ仰セノ通リニ船腹
ノ必要ト云フコトヲ感ジテ居ツタノデアリ
マスガ、咽元過ギレバ熱サヲ忘レルト申シ
マスカ、斯ウ云フ風ニナラヌヤウニト云フ
コトハ、仰セノ通リト私共考ヘテ居リマス、
若シモ船主ノ方デモウ是デ大シタコトハナ
カラウト云フヤウナコトデ、遲疑逡巡スル
ヤウナ場合、其ノ他必要アリト認メマスレ
バ、將來ニ於テハ國家ガ船ヲ造ツテモヤツ
テ行キタイ、併シ國營デヤラウト云フ考ヘ
ハ今持ツテ居リマセヌ、國家ガ造ツタ船デ
モ民營ニ之ヲ委託シテ宜カラウ、斯ウ云フ
風ニ考ヘテ居ル次第デアリマス、此ノ點ダ
ケ一寸申上ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=66
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067・宮澤裕
○宮澤委員長 是ニテ通〓サレタ質問ハ大
體終了シタノデアリマスガ、尙ホ質問ノ要
求ガアルカトモ考ヘマスノデ、明日ハ午後一
時カラ此ノ第九委員室ニ於テ開會スル豫定
デアリマス、其ノ際ニ質疑ガゴザイマセヌ
ケレバ、或ハ直チニ各派ノ討論ニ入ツテ、
採決ヲスルニ至ルカモ知レマセヌカラ、各
派ノ各位ハ大體派ノ意見ヲ取纒メテ戴キマ
シテ、其ノ臨機ノ處置ニ對應出來ルヤウニ
ヤツテ戴キタイト考ヘテ居リマス、兎モ角
明日ハ午後一時カラ開會ノ豫定デゴザイマ
スガ、追テ正確ナコトハ公報ヲ以テ御通知
致シマス、本日ハ是ニテ散會致シマス
午後四時三十分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=007913535X00619420204&spkNum=67
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