1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十八年二月二日(火曜日)午前十時六分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=0
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001・橋本實斐
○委員長(伯爵橋本實斐君) ソレデハ國民
貯蓄組合法中改正法律案ノ委員會ヲ開催致
シマス、昨日ハ國民貯蓄ニ付キマシテノ一
般ノ質疑ガ一應出盡シタヤウデアリマスカ
ラ、引續イテ國民貯蓄組合法中改正法律案、
是ノ細カイ審議ニ入リタイト思ヒマス、質
疑ヲ何卒御續行願ヒタイト思ヒマス、ソレデ
ハ國民貯蓄組合法中改正法律案、此ノ分ハ
別ニ御質疑ハゴザイマセヌカ、ゴザイマセ
ヌヤウナラバ次ノ納稅施設法案ニ付テ御質
疑ヲ願ヒタイト存ジマス、是ハ先ヅ審議ノ
便宜ノ爲第一章ニ付キマシテ御質疑ヲ願ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=1
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002・河田烈
○河田烈君 チヨット第一章ト云フ譯デモ
ナイノデスガ、納稅施設ニ付テ一ツ伺ヒタ
イノデスガ····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=2
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003・橋本實斐
○委員長(伯爵橋本實斐君) 全般的ノ御質
疑ガゴザイマシタラドウゾ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=3
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004・河田烈
○河田烈君 全般的ト云フ程デアリマセヌ
ガ、宜シウゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=4
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005・橋本實斐
○委員長(伯爵橋本實斐君) 宜シウゴザイ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=5
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006・河田烈
○河田烈君 是ハ納稅ノ爲ニ色々便宜ヲ圖
ラレルノハ贊成デ、段々稅額ガ高クナルノ
デ、出來ルダケ便宜ヲ圖ルト云フコトニ力
ヲ用ヒラレルコトハ非常ニ雙手ヲ擧ゲテ贊
成スルノデスガ、納稅ノ方法ニ銀行小切手
ヲ利用スル方法ガモウ少シナイデセウカ、
私ハ知ラナイノカモ知レマセヌガ、此ノ頃
銀行ノ支店デ以テ納稅ヲ取扱ッテ居リマス
ガ、其ノ稅ノ種類ガ非常ニ限定サレテ居ル
ノデスガ、多分銀行デ取ッテ吳レヽバ小切手
デ行ケルト思フ、郵便局デハ昔ノ二等局以
上、大キイ郵便局デ手ノアル所デハ小切手
ヲ受取ッテ、取リニ行ッテ吳レル便宜ヲ圖ル
コトガアルガ、先ヅ普通ノ三等局デハ小切
手ハ取ッテ呉レナイ、是ハ一々銀行ニ取リニ
行クコトハ大變デスカラ取ッテ吳レナイノ
デスガ、納稅ヲ郵便局デハ振替貯金ヲ利用
シテ居ルト思ヒマスガ、振替貯金ガ交換ノ
「メムバー」、會員ニナッタラ何カ小切手デ以
テ取ッテ吳レル途ガナイデモナイノヂヤナイ
カ、サウシテ一々現金ヲ引出シテ拂ハナク
テモ濟ムノデ、サウ云フ方法ハナイカト思
フ、私モ前カラサウ云フ考ヲ持ッテ居ッタノ
デスガ、今迄遞信當局デハ好マレナイヤウ
デアリマスガ、何カサウ云フヤウナモノガ
出來ナイモノデゴザイマセウカ、ソレカラ
小切手ヲ利用スルコトニナルト······一位)
ア小切手ノ利用ハ少イノデ、小切手ノ契約
ヲシテ、一々小切手ヲ以テ支拂ヲスルト云
フ人ハ多分國民ノ中ニハ幾ラモ「パーセンテー
ジ」ハナイダラウト思ヒマス、是ハ納稅ニ
直接關係ガナイノデスガ、小切手ノ利用ヲ
十分ニスルコトニナルト、自然ト通貨ノ死
藏モ減ッテ來マスシ、ソレカラ兌換劵ノ發行
ノ高ニ影響スル、大シタコトハナイカモ知
レヌガ、多少ハ影響シテ來ルダラウト思へ
ル、納稅ハ段々稅額ガ多クナッテ來マシテ個
人ノ納メル額ガ相當高クナッテ居リマスカ
ラ、一般ノ小切手ノ利用ト云フコトハ、是
ハ稅ニ直接關係ナイノデアリマスガ、奬勵サ
ルベキモノデハナイデセウカ、納稅ノ方法
トシテ小切手ヲ利用スルコトヲ何カ工夫サ
レタナラバ、一石二鳥ト云フカ、三鳥ノ利
益ガアリハシナイカト思フノデスガ、ドン
ナ風ニナッデ居リマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=6
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007・松隈秀雄
○政府委員(松隈秀雄君) 御答ヲ申上ゲマ
ス、只今ノ御質問ハ國稅ノ納付ニ當リマ
シテ、モウ少シ小切手ヲ利用スル制度ヲ認
メルヤウニシタナラバ納稅上非常ニ便宜デ
ハナイカト云フ、斯ウ云フ御趣旨デゴザ
イマスガ、御承知ノ通リ國稅ノ納付ニ當
リマシテ小切手ヲ以テ納メ得ルコトニ現在
ナッテ居リマス、其ノ場合ニ於キマシテ支
拂保證ノアル小切手ヲ受入レルコトガ原則
トナッテ居ルノデアリマスルガ、其ノ限度
ガ從來百圓以上ハ支拂保證ガ要ルト云フ
コトデアリマシタガ、ソレデハ不便デアリ
マスルノデ、其ノ支拂保證ノ要ラナイ限度
ヲ元ノ百圓カラ一萬圓ニ迄擴張致シマシ
ク、一萬圓迄ハ支拂保證ガ無イ小切手デ
アッテモ、租稅ヲソレニ依ッテ納付シ得ル
ト云フコトニ致シマシタノデ、餘程便宜ニ
ナッタト考ヘテ居ル次第デアリマス、尙昭
和十六年八月以降大都市ノ市域ニ於キマシ
テ、日本銀行國稅代理店ト云フモノヲ設置
致シマシテ、其處ニ於キマシテ納稅額ト、
納稅者ノ國稅代理店銀行ノ預金トノ振替決
濟ガ出來ルヤウナ制度ヲ設ケマシタノデ、
ソレ等ノ大都市ニ於キマシテハ、國稅代理
店ヲ通ジマシテ預金トノ振替ノ方法ニ依ツ
テ納稅ガ出來ルコトニナリマシタノデアリ
マス、是モ大分便宜ヲ齎シタコトト思フノ
デアリマス、唯其ノ場合ニ於キマシテハ只
今モ御話ノアリマシタヤウニ、國ガ直接徵
收致シマスル國稅ノミヲ納メサセテ居リマ
シテ、市町村ヲシテ徵收セシメマスル租稅
ニハ及ンデ居ラナイノデアリマス、ソコデ
市町村ヲシテ徵收セシメマスル租稅モ尙銀
行ヲ通ジテ納メ得ルヤウニシマスル爲ニハ
市町村ト銀行ヲシテ市町村ノ公金ノ收納ヲ
取扱ハシメルト云フ契約ヲ結バセマスルト云
フト、其ノ扱ガ出來ルヤウニナリマス、是ハ
段々ニ其ノ方向ニ話ヲ進メツヽアリマシテ、
旣ニ銀行ト市トノ間ニ、市ノ公金ノ收納取扱事
務ヲ取扱フト云フ契約ノ成立ヲ見タ市モゴザ
イマス、此ノ方面ハマダ國稅代理店程普及
致シテ居リマセヌガ、漸次其ノ方向ニ進メ
テ參リタイト存ジマスルノデ、サウ致シマ
スレバ、國稅ヲ納メル上ニ付テ、銀行預金ヲ
以テ納メ得ルト云フコトニ付テノ便宜ガ大
分殖エテ參ルト存ズル次第デアリマス、更
ニ今囘提案致シテ居リマスル納稅準備預金
ヲ致シマスレバ、銀行ハ令書ヲ預ッテ、納稅者
ニ代ッテ稅ヲ納付スルト云フ事務迄取扱ッテ
呉レルコトニナッテ居リマスルノデ、此ノ納
稅準備預金ノ利用ニ依ッテ、只今御心配ノヤ
ウナ點ハ餘程便宜ヲ得ラレルヤウニ、制度
ガ擴張サレテ參ルコトト存ズル次第デアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=7
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008・河田烈
○河田烈君 郵便局ノ方ハドウデセウカ、
今現在原則トシテハ多分受取ラナイト思ヒ
マスケレドモ、何カ三等郵便局デ小切手デ
以テ受取ラレルヤウナ方法ハ餘程面倒デセ
ウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=8
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009・松隈秀雄
○政府委員(松隈秀雄君) 郵便局ニ於キマ
スル窓口事務ハ、最近非常ニ煩雜ヲ極メテ居
リマスルノデ、現在ノ狀況ヲ以テ致シマス
ト郵便局ニ新シイ事務ヲ命ジ、又ハ郵便
局ノ事務ヲ擴張スルト云フコトハナカ〓〓
困難デゴザイマスガ、御趣旨ノ點ニ付キマ
シテハ將來十分ニ〓究シテ、出來マスレバサ
ウ云フ方向ニ向フヤウニシタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=9
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010・河田烈
○河田烈君 何時モ遞信當局ハ郵便局ノ窓
口事務增加ト云フコトヲ口實ニスルノデス
ガ、唯現金ヲ受取リ、「チェック」ヲ受取ッテ、
之ヲ交換ニ廻スト云フ振替貯金ノ全體トシ
テ、其ノ區域ヲ變ヘル必要ハアルカモ知レ
ヌガ、交換ノ會員ニシテ置ケバ、窓口事務
ハソンナニ殖エルモノヂヤナカラウト思へ
ル、實際ハ分リマセヌガ、サウ云フコトヲ
御〓究願ヒタイコトヲ希望致シテ置キマス、
ソレカラチヨット此ノ法案ニ直接關係ガナ
イ所デモ宜シケレバ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=10
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011・橋本實斐
○委員長(伯爵橋本實斐君) 宜シウゴザイ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=11
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012・河田烈
○河田烈君 納稅ノ便宜ノ一ツノ方法トシ
テ、數年前相續稅ノ物的納入ノ方法ヲ認メ
ラレタノデスガ、如何デセウカ、利用ハサ
レテ居リマセウカ、餘リ利用サレテ居リマ
セヌデセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=12
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013・松隈秀雄
○政府委員(松隈秀雄君) 相續稅物納ノ制
度ハ昭和十六年ニ創設サレタノデアリマス
ガ、只今迄承知致シテ居ル所デハ、物納ノ受
入ヲ致シタコトハゴザイマセヌ、是ハ察シ
マスルニ大體最近ニ於キマスル傾向ハ、
不動產價格ガ大勢トシテ上向キノ狀況ニア
リマスルカラ、斯ウ云フ時期ニ於テハ强ヒ
テ物納ヲ申出デナイデモ、納稅上困難ヲ感
ジナイノデアラウト思ヒマスガ、萬一狀況
ガ變リマシテ、不動產價格ガ下落ノ傾向ニ
デモ出ルト云フコトニナリマスレバ、アノ
制度ヲ利用スル者モ或程度殖エテ參ルダラ
ウト思ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=13
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014・河田烈
○河田烈君 御邪魔ヲ致シマシタガ、尙第
四章ニ付テチヨット伺ッテ見タイト思ヒマス
ガ、是ハ逐條ニ入リマスカラ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=14
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015・三井清一郎
○三井〓一郞君 逐條ニ入ラナイ前ニ今河
田委員ノ質問ニ關聯シテ、相續稅ガ今日ノ
時局ニ關係シテ、例ヘバ戰死ト云フコトニ
ナレバ確カ相續稅ハ免除ニナルト思ッテ居
ル、違ッテ居ルカモ知レマセヌガ·····其ノ
他ノ戰地ニ於テ公傷病デ死ンダ者、或ハ戰
死トスルカドウカ、其處ニ若干ノ疑ヒアル
者等ハ悉ク戰死ノ名義デナケレバ免稅セナ
イト云フヤウニモ聞イテ居リマスガ、ソレ
ハ大藏省ノ其ノ解釋ヲ一ツハッキリ承リタ
イト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=15
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016・松隈秀雄
○政府委員(松隈秀雄君) 現在ノ相續稅法
ニ於キマシテハ戰死ノ場合ト、ソレカラ戰
傷若シクハ戰病ニ因リマシテ一年以內ニ死
亡シタ場合ニ限ッテ相續稅ヲ課セナイト云
フ規定ガアルノデゴザイマス、其ノ他ノ之
ニ該當シナイ場合ニ於テハ、法文上相續稅
ヲ免除······課稅シナイト云フ扱ハ出來ナイ
コトニナッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=16
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017・三井清一郎
○三井〓一郞君 ヨクハッキリシマセヌガ、
其ノ戰病死若シクハ戰地ニ於テ公務ニ服務
シテ死ンダ者ハ、矢張リ戰死ト看做シテ免
稅ヲスルト云フコトニ考ヘテ宜イノデスナ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=17
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018・松隈秀雄
○政府委員(松隈秀雄君) 戰死ノ場合ハ
ハッキリシテ居ルト思フノデアリマスルガ、
戰爭ノ爲ニ受ケタ傷痍ニ起因シタル死亡ニ
因ッテ相續ガ開始シタ場合ニ於テハ、負傷又
ハ發病後一年ヲ經過シタ場合ニハ非課稅ト
シナイ、斯ウ書イテゴザイマス、此ノ場合
ニ於テハ、問題ハ何時負傷シタカ、殊ニ病
氣等デアルト云フト發病ノ時期如何ニ依リ
マシテ、果シテ一年以內デアルカドウカト
云フコトニ付テ時々認定上ノ問題ヲ起シテ
居リマスルガ、ソレニ付キマシテハ法律制
定ノ趣旨ニ考ヘマシテ、出來ルダケ寛大ナ
扱ヲ致シテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=18
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019・三井清一郎
○三井〓一郞君 私ハ承ッタノハ、例ヘバ戰
地ニ於テ戰鬪ヲ交ヘナイ中ニ飛行機カラ落
チテ死ンダ、或ハ戰鬪後歸還ノ途中ニ於テ
飛行機ノ故障デ亡クナッタト云フ者ハ、公務
ニ起因シタ死亡、陣歿ニハナッテ居リマスル
カラ、戰死ト看做サナイト云フヤウナ爲ニ
相續稅問題ガ引ッカヽルヤウナ話ヲ聞イテ
居リマスガ、ドウモソコハ常識カラ考ヘテ、
戰地デ偵察若シクハ戰鬪シタ歸還ノ途中ニ
飛行機ノ故障デ死ンダ、ソレカラ戰地デ
病氣シテ、ソレガ戰地ニ居ッタ爲ニ其ノ病氣
ガ發シテ一年以內云々ト云フコトト比較ス
レバ、當然サウ云フ飛行機ニ依ッテ活動シタ
結果死ンダ人ハ戰死ニ近イ方ヂヤナイカト
思ハレマスガ、是ハ相續稅カラノ關係カラ
大藏省ノ御意見ヲ承リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=19
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020・松隈秀雄
○政府委員(松隈秀雄君) 戰死ノ場合ニ於
キマシテハ、現在ノ扱ハ相續稅ニ於テ戰死
ト認メマスル場合ト軍ニ於テ戰死ト認メマ
スル場合ト、國家ノ認定ガ食ヒ違フコトモ
如何カト存ジマシテ、軍ノ發表ニ依ッテ戰死ト
認メラレタ場合ニ於テ、相續稅法モ戰死ニ
該當スルモノトシテ取扱ッテ居ルノデゴザ
イマス、飛行機事故ニ因リマスル死亡ノ場
合ニ於キマシテモ、果シテソレヲ戰死ト認
ムベキデアルカ、或ハ戰死以外ノ事故ニ因
ル死亡ト認ムベキデアルカト云フコトハ、
徵稅官廳ト致シマシテハ認定ガシニクイノ
デアリマス、ソコデ已ムヲ得ズ現在ノ所デ
ハ軍ノ御取扱ガ戰死デアルカ、或ハ戰死以
外トシテ居ラレルカト云フコトニ依ッテ、稅
法ハ相續稅法ノ第七條ヲ適用シテ居ルノデ
アリマスガ、是ハドウモ現在ノ所〓稅官廳
トシテハ已ムヲ得ナイカト思フノデアリマ
ス、將來立法ト致シマシテ、戰地ニ於ケル
死亡ト云フ風ニ廣ク此ノ條文ヲ修正致シマ
スレバ、ソレハ問題ガナイノデアリマス
ガ、現在ノ所デアリマスレバ其ノ認定ハ
大體軍ト同一步調ニ出ルノガ適當デアラウ
カト、斯樣ニ存ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=20
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021・三井清一郎
○三井〓一郞君 稅ノ方デ一般的ナコトデ
スガ、私ハ滯納額調ヲ御出シヲ願ッテ、ソレ
ヲ見マスルト調定濟額ノ六分五厘、七分近
ク、滯納額ガ五億二千七百萬圓ノ滯納ガア
ルノヲ見テ驚イタノデス、御承知ノ如ク納
稅ハ國民ノ義務デアル、是ハ兵役ニ次イテ
納稅ノ義務ハ果サナケレバ國家ノ生存ニ非
常ナ影響ヲ及ス、非常ニ納稅ト云フコトニ
重キヲ置イテ居ル一人デアリマスガ、此ノ
大キナ滯納ガ出來ルト云フコトハ、稅務監
督ガドノ程度ニ行キ亙ルノデアリマスカ、
チヨット疑ヒナキヲ得ナイノデアリマスガ、
事實ヲ一ツ御話ヲ承リタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=21
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022・松隈秀雄
○政府委員(松隈秀雄君) 三井委員ノ御要
求ニ依リマシテ國稅滯納額調ト云フモノヲ
作ッテ差上ゲテアルノデアリマスガ、ソレニ
依リマスルト調定濟額ニ對シマシテ滯納稅
額ノ割合ガ、十六年度ニ於テ六分五厘、十
七年度ノ四月カラ十一月迄ニ於キマシテ同
ジク六分五厘程度出テ居リマス、之ヲ昭和
十一年度又ハ十五年度ニ較ベマスルト云フ
ト、或程度增加致シテ居ルノデゴザイマ
ス、此ノ數字ハ年度末現在ニ於キマスル其
ノ年ノ調定濟額ニ對スル滯納額ヲ御示シシ
タノデアリマシテ、其ノ後ノ滯納整理ニ依
リマシテ現狀ハ是ヨリモ減ッテ居ル譯デア
リマスルガ、兎ニ角或程度國稅ノ滯納額ガ
絕對金額ニ於テハ勿論、步合ニ於テモ殖エ
ツヽアリマスルコトハ誠ニ遺憾トスル所デア
リマスルガ、是ハ御承知ノ通リ最近數次ノ
增稅ニ依リマシテ、國民ノ負擔ガ相當過重サ
レ、又免稅點ノ引下等ニ依リマシテ新シク納
稅者ニ入ッテ參ル階層ガ出來マシタ、而シテ
是等ノ人々ハ從來租稅ニハ比較的親シミノ
薄カッタ人々デアリマシテ、今度新シク租
稅ヲ納メルヤウニナッタノデアリマスルカ
ラ、從來カラ租稅ヲ納メテ居ル人々ニ較べ
マスレバ、心構ヘヤ納稅ノ手續ニ付テモ幾
分行屆カナイ點モアッタカト思フノデアリ
マス、ソレカラ最近經濟界ノ各種ノ變動、
殊ニ統制强化ニ伴ヒマスル企業ノ合同、再
編成ト云ッタヤウナ點カラ、轉廢業者モ生ズ
ルト云ッタヤウナ實情ニゴザイマス、ソレカ
ラ一般ノ狀況ト致シマシテモ、矢張リ物資
關係ガ窮屈ニナッタリ致シマスルノデ、營
業ノ狀況ヲ見マスルト云フト前年度ヨリモ
營業ノ成績ノ良クナッテ居ルモノモゴザイ
マスケレドモ、中ニハ營業ノ狀態ガ段々惡
クナッテ來ル、斯ウ云フモノモアルノデアリ
マスガ、現在ノ稅法デハ前年ノ實績デ課稅
ヲスルト云フ建前ニナッテ居リマスノデ、
前年ノ營業ノ狀況ガ宜シクテ今年ノ狀況ガ
惡イト云フヤウナ場合ニ於キマシテハ、前
年ノ良イ實績デ今年課稅サレマスルカラ、
心懸ケガ良ク、前年ノ營業ノ狀況ノ良カッタ
時分ニ納稅ノ準備ヲ致シテ置キマスレバ、
別デアリマスルケレドモ、サウデナイト云
フト、矢張リ納稅ノ時期ニ當ッテ納メニク
イト云フヤウナ結果ヲ生ジテ參ルノデアリ
マス、其ノ外色々ノ關係モアリマシテ、最
近ニ於ケル納稅成績ハ少シク低下ノ氣味ニ
アリマスルノデ、此ノ儘放置致シマスルコ
トハ如何カト存ジマシテ、今囘納稅施設法
ヲ提案致シマシテ、國民ノ納稅義務ノ履行
ヲ容易確實ナラシメル各種ノ方策ヲ講ズル
ヤウニ致シタイト思ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=22
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023・三井清一郎
○三井〓一郞君 斯ウ云フ情勢デアツテ、
今囘納稅施設法案ヲ御出シニナッタト云フ
ノハ非常ニ結構ナコトト思フノデアリマ
ス、此ノ施設法案ニ付テハ、私ハ此ノ擧ヲ
以テ非常ニ宜イ方法ヲ御執リニナルト云フ
コトヲ考ヘル者デアリマスガ、此ノ滯納者
¥人員ガ三百二十七名デ、二億
ノ表ニ依ッテ
三千七百萬圓ノ滯納ト見マスレバ、主稅局
長ノ御說明ノ後段ノ經濟界ノ方ガ主ヂヤナ
イカ、個人デ千圓以上ト云フトマア中
位ノ所デスガ、千圓ト平均シテモ三十萬圓
位ナモノダト思ヒマスガ、若シ小サイ納稅者
デアッタナラバ、三百二十七名デコンナニ
二億三千萬圓ニモナル譯ガナイ、是ハ專ラ
私ハ財界方面ノ滯納ト思フ、是ハ一ツ經理
統制令ヲ出シ、此ノ財界ノ······軍需工業ナ
ラバ管理工場、監督工場ナラバ陸海軍ガ
監督シテ居リマセウシ、其ノ他ハ相當ノ
官廳昨日モ申シマシタ通リ、實行行政ヲ
オヤリニナッテ直接工場ヘ行ツテ御調ニ
ナッテ監督ナサレテ居ル、ソレノ納稅ヲ怠ル
ト云フコトハ、私ハ甚ダ不愉快ニ感ズル、
專ラ是ハ私ハ財界ノ滯納ガ主ナモノト考ヘ
ルガ、サウデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=23
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024・松隈秀雄
○政府委員(松隈秀雄君) 滯納者ノ中ニハ
相當多額ノ稅ヲ納メテ居ル者デ滯納ノ已ム
ナキニ至ツタ者モゴザイマスシ、又比較的
稅額ノ少イ者デ滯納ニナッテ居ル者モアリ
マシテ、必ズシモ大キナ者ノミノ滯納ト申
ス譯ニハ參ラナイヤウデゴザイマス、ソレ
カラ大キナ稅額ノ者ハ比較的資力ガアルノ
デアルカラシテ、滯納ニハナラナイト御思
ヒニナルカト思フノデアリマスガ、相當財
界ノ變動ガゴザイマシテ、殊ニ統制ノ强化
等ニ因リマシテ營業狀態ガ著シク變ッテ來
ル、斯ウ云フヤウナ場合モアリマスルノデ、
結局ハ納メラレテモ法定納期ニハ一應滯納
ニナル、斯ウ云フヤウナモノモ出テ參リマ
スルノデ、サウ云フモノ、此此處ニ滯納額ト
シテ載ッテ居ル譯デアリマス、デ、只今御示
シノ數字ハ三百七十二人トゴザイマスガ、
是ハ三十二萬七千人ト云フコトデゴザイマ
シテ、其ノ滯納額ガ二億三千七百萬圓デゴ
ザイマスカラ、一人當リ平均スレバ七百圓
程度ト云フコトニナッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=24
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025・三井清一郎
○三井〓一郞君 此ノ滯納ガ或ハ稅務監督
廳ノ算定ト納付者ノ算定トノ喰ヒ違ヒガ
アッテ、其ノ間ニ意見ノ一致シナイ點ガア
ル爲ニ滯納ニナッテ居ルモノモアラウト思
フ、サウ云フモノハドレ位ノ「パーセンテ
ージ」ニナッテ居リマスカ、今デナクテモ後
デ宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=25
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026・松隈秀雄
○政府委員(松隈秀雄君) 後程資料デ·発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=26
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027・河田烈
○河田烈君 大變御邪魔ヲシマスガ、私ハ此
ノ委員會デハ少シドウカト思ッテ、何處カ他
ノ機會ニ政府當局ニ伺ツタラ宜イカト思ッテ
居タノデアリマスガ、今三井委員カラ戰死
者ノ相續稅ニ付テ御質問ガアリマシタノデ、
ソレニ關聯ガアリマスカラチヨット伺ヒタ
イト思ヒマス、今政府委員ノ御答へ通リ、
私ノ存ジ寄リニ致シマシテモ戰死ナリ
ヤ否ヤト云フコトノ認定ハ、其ノ當局、
詰リ徵稅官廳ノ仕事デハナクシテ、政府
ニハ違ヒナイガ、又別個ノ、軍當局ノ認
定ニ依ルノガ當然ダラウ、是ハ御說明ノ
通リダト思ヒマスガ、相續稅ヲ課スルガ
爲ニ、一々戰死ナリヤ否ヤ判定スル譯ニハ
行カナイ、ソレハ正ニ其ノ通リデアルト思
ヒマス、從ヒマシテ戰死ナリヤ否ヤト云フ
原因ノ判定ト云フモノハ、軍當局ノ判定ニ
依ルト致シマシテ、是ガ相續稅法ニ關スル
限リノ解釋、何ト言ヒマセウカ、徴稅官廳
ト軍當局ノ認定ハ卽チ一致スル、是ハ結構
デアリマスガ、此ノ場合大藏當局ニ伺フノ
ハ少シ變デスガ、戰死ナリヤ否ヤト云フコ
トノ判定ニ付テハ、軍當局ニ於テ戰死ト云
フ意味ニハ種々ノ區分ガアルノデアリマセ
ウ、ソコニ私ハ一點疑ヲ持ツノデアリマス、
戰死ト判定スルカ否カニ依ッテ相續稅ヲ課
ス課サナイト云フ結果ヲ生ズルノハ、成ル
程相續稅ヲ課セラレルヤウナ資產ノ者ニ付
テハ相當ノ影響ガアラウト思ヒマスガ、是
ハ或意味カラ言ッテ物的ノ影響デアッテ、多
クノ人ハソンナニ多額ノ相續稅ヲ課セラレ
ナイ人ガ多イト思ヒマスカラ大シタ影響ハ
ナシ、又課セラレタニシテモ物的ノ影響デ
アッテ、最モ重ンズベキ所ノ國家ノ行賞、表
彰サレル所ノ名譽ノ問題トハ自ラ違フ、然
ルニ例ヘバ飛行機事故デ以テ途中デ變死ヲ
シタ場合、戰死ニナルカナラヌカト云フコ
トニ疑問ガ起ッテ來ルノト同ジク、多年ノ勞
苦ノ後ニ歸還ノ途中ニ於テ或事故ニ因ッテ
死ンダ、第一線ニ於テ鐵砲ノ彈丸デ死ンダ
ノハ明瞭ニ戰死ニナルガ、多年ノ勞苦ヲシ
タ上ニ歸還ノ途中ニ於テ墜落ヲシテ亡クナッ
タト云フコトニナル、是ガ戰死デナイト云
フコトニナルト、大變士氣ニ影響スルモノ
デアリ、豈單リ相續稅ノ問題ノミデナク、其
ノ影響非常ニ大ト思フノデアリマス、其ノ
點相續稅法ノ適用ニ於テハ戰死ト認メナ
イケレドモ、死亡ノ賜金トカ行賞トカ、具
體的ニ言ヘバ、金鵄勳章ヲ賜ルトカ、靖國神
社ニ祀ラレルトカト云フ場合ニ於テハ、是ハ
矢張リ戰死トスルカ或ハ戰死ニ準ジテ、サ
ウ云フ名譽ヲ與ヘラレルノガ······相續稅法
ノ適用ニ於テハ戰死ニ付テハ國ノ意思ハ一
致スル、二ツハナイガ、軍當局ニ於テ判定ス
ル戰死ト云フ中ニ種類ガアルノダ、斯ウナッ
テ來ルト物的ノ方ハ兎モ角士氣ニ影響スル、
是ハ大藏當局ニ伺ッテモ無理ダト思ヒマス
ガ、尙若シ御承知ニナッテ居ル點ガアルナラ
バ伺ッテ見タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=27
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028・谷口恒二
○政府委員(谷口恒二君) 河田サンノ仰セ
ノヤウニ我々トシテチヨット申上ゲ兼ネル點
モアラウト思ヒマスガ、多少存ジ寄リノ點
モゴザイマスノデ申上ゲタイト思ヒマス、
此ノ稅法關係デ今ノ御話ノ要點ハ軍ニ於テ
判斷シタ戰死ト云フモノト、稅法ニ於ケル
戰死ト云フ判斷ト違ッテモ宜イヂヤナイカ
ト云フヤウナ所デハナカッタカト思フノデ
アリマスガ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=28
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029・河田烈
○河田烈君 違ッテ宜イトハ思ハナイ、一致
スベキデ、ソレハ今主稅局長ガ御答ニナッタ
ヤウニ軍ノ判定ニ依ルト云フコトハ結構デ
アリマスケレドモ、寧ロ大藏當局トシテハ
軍ノ判定ニ種類ガアルヤウニ其ノ結果思へ
ルヤウナ氣ガスル、ソレハ一致スベキダト
思ヒマス、軍ノ方ノ判定ニ戰死、準戰死ト
云フ風ニ區分ガアルヤウナ風ナ結果ニナル
ノヂヤナイカト云フ疑ヲ持ッタノデアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=29
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030・谷口恒二
○政府委員(谷口恒二君) 聊カ聽キ誤リマ
シテ·発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=30
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031・河田烈
○河田烈君 ソレハ大藏當局ガ御存ジノナ
イコトハ失禮ナガラ御尤モデ、無理ナ質問
ト思ヒマス、ケレドモ經驗ニ依リマシテサ
ウ云フ場合ニ於テ大藏當局ハ色々御聞及ビ
其ノ他ニ依ッテ多少存ジ寄リノ所ガアレバ、
差支ガナケレバ伺ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=31
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032・橋本實斐
○委員長(伯爵橋本實斐君) 若シ御希望ナ
ラバ軍當局ヲ煩ハシテモ宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=32
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033・三井清一郎
○三井〓一郞君 是ハ此ノ稅法ノ委員會ニ
於テモ矢張リ非常ナ問題ダト思ヒマス、是
ハ賜金ニモ關係ガアリマスシ、幸不幸ガア
ル、此ノ解釋ヲ勝手ナ解釋ヲシテ行ッタナ
ラバ、非常ナ幸不幸ガ生ズル発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=33
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034・河田烈
○河田烈君 チヨット速記ヲ止メテ戴キタ
イ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=34
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035・橋本實斐
○委員長(伯爵橋本實斐君) チヨット速記
ヲ止メテ··
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=35
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036・橋本實斐
○委員長(伯爵橋本實斐君) ソレデハ速記
ヲ始メテ······他ニ御質疑ゴザイマセヌデセ
ウカ、一般的ノ···ソレデハ細カイ審議
ニ入ル筈デアリマスガ、今主稅局長ハ稅法
ノ改正委員會ニ參ラレマシタ、ケレドモヤッ
テ居ッテ戴イテモ宜シイト云フ御話デアリ
やく、ソレデハ先程ノ御話ニ依リマシテ第
一章ヲ先ヅ議題ニ供シマス、別ニ御質疑ナ
イヤウナラバ第二章、宜シウゴザイマスカ、
ソレデハ第三章発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=36
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037・澁澤金藏
○澁澤金藏君 簡單ナコトデゴザイマスガ、
第十條ニアリマスル指定金融機關ノ種類ハ
頂戴致シマシタ資料ニ依リマシテ、銀行ト
市街地信用組合ニナッテ居ルヤウデゴザイ
マスガ、是ハ無論銀行ニハ普通銀行、特殊
銀行、貯蓄銀行モ入ッテ居ルト思ヒマスガ、
支店ガアリマス所ハ當然支店ノ方デモ取扱
ハレル御趣旨デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=37
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038・戸田忠庸
○政府委員(子爵戸田忠肅君) 御答へ申上
ゲマス、命令ヲ以テ定ムル金融機關ニハ、
只今御手許ニ差上ゲテアリマス命令案要綱
ノ中ニアリマスヤウニ、銀行及市街地信用
組合ト相成ッテ居リマス、銀行ハ特殊銀行、
普通銀行、貯蓄銀行總テヲ含ンデ居ルノデ
アリマシテ、本店ノミナラズ支店、出張所
等モ豫定シテ居ル次第デゴザイマス、尙農
村方面ニ於キマシテ銀行其ノ他市街地信用
組合等ノ數ノ少イ場合ニ於キマシテハ、場
合ニ依リマシテハ農業會等ヲシテ取扱ハシ
メルコトヲモ腹案トシテ考ヘテ居ル次第デ
ゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=38
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039・澁澤金藏
○澁澤金藏君 十三條ニ納稅ノ手續ガ規定
シテアリマス、是ハ要綱ノ方ニモ書イテア
リマスガ、何レ施行令カ施行規則ニ依ッテ
詳シイコトヲ御規定ニナルノデゴザイマセ
ウガ、此ノ納稅準備預金ヲ引出シテ租稅公
課ノ納付ニ充テル譯デアリマスガ、是ハ無
論現金ヲ引出ス譯デハナクシテ、〓體ノ方
ガ纏メテ御取扱ニナルト思ヒマスガ、其ノ
後段ノ方ニ「租稅公課ノ納付ヲ委託スベシ」
ト云フ文句ガゴザイマシテ、ドウ云フ風ニ
ナルノカチョット分リ兼ネマスノデスガ、其
ノ點ヲ伺ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=39
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040・戸田忠庸
○政府委員(子爵戸田忠肅君) 十三條ニ規
定シテ居リマスコトハ、納稅準備預金ヲ以
テ租稅公課ヲ納付スル場合ニ於キマシテハ、
其ノ預金者ガ現金ヲ引出シマシテ之ヲ市町
村ヘ拂込ム手續ヲ致シマセヌデ、納付ノ手
續ヲ總テ指定金融機關ニ委託セシメルト云
フ規定デゴザイマス、從ヒマシテ納稅告知
書等ヲ持參致シマシテ銀行ノ窓口ニ參リマ
シタ預金者ニ付キマシテハ、其ノ當該預金
ヲ現金デ拂出シマセヌデ、其ノ預金口座ヨ
リ必要ナル公租公課ノ金額ヲ落シマシテ、
銀行ガ納稅者ニ代リマシテ市町村等ニ納付
ノ手續ヲ代行スルト云フ意味デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=40
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041・橋本實斐
○委員長(伯爵橋本實斐君) 他ニ御質疑ゴ
ザイマセヌカ、又オアリニナレバ後程デモ
宜シウゴザイマスカラ、第四章ニ進ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=41
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042・河田烈
○河田烈君 二十條ノ命令ガ大體分ラヌ譯
デスガ、此ノ間調査部會デ以テ氏家局長ノ
御說明ニ依ルト斯ウ云フ風ニ承ッタノデ
ス、具體的ニ申スト、金ヲ申シタ方ガ却テ
ハッキリスルト思フノデスガ、或期ニ百圓ノ
稅額ヲ納付スル時ニ、假ニ二百圓ヲ貯蓄ニシ
テ三百圓ヲ納メル、百圓ハ稅額ニナル、ア
ト二百圓ハ納稅貯蓄ニナル、其ノ二百圓
ヲ二十年以內ニ拂戾スコトニナル、ソレニ
付テハ國債ニ準ジテ三分五厘位ナ利子ヲ附
ケルコトニナッテ居ル見込ダト云フ御話ダッ
タト思フノデスガ、サウナルト百圓ノ利
子、百圓ノ稅ヲ納メル時ニ懷ニ餘裕ガアッタ
カラト云ッテ三百圓納メル、今度ハ二十年以
內ダカラ二十年カ十二年デスカニ二百圓ダ
ケハ凡ソ三分五厘ノ利子ガ附イテ拂戾サ
レルコトニナルト、三百圓ノ現金ヲ持ッテ居
ル者ハ百圓ハ納稅ニシ、二百圓ハ三分五厘
ノ國債ヲ買フト云フノト同ジ結果ニナル、
サウスルト何モ「アトラクション」ガナイ上
ニ、公債ナラバ右カラ左ニ又賣レナイコト
モナイケレドモ、ナカ〓〓サウモ賣レナイ
カモ知レナイガ、尤モ價格ノ値下リガアル
カモ知レナイガ、融通出來ナイコトモナ
イ、此ノ貯蓄ニナッテ來ルト拘束サレテ、償
還サレル迄ハ何等融通ノ途ガナイ、斯ウ云
フコトニナルト、却テ餘裕ガアルカラト
云ッテ二百圓ヲ納ムル人ハナイノヂヤナイ
カ、百圓、二百圓ト言フカラ金ハ僅カニナ
リマスケレドモ、是ガ相當ノ金額ニ上ッテ來
ルト、「アトラクション」ガ何モナイト云フ
結果ニナリハシナイカ、私ノ考デハ三百圓
ニ對シテ三分五厘ノ利子ガ付ク程度ニ二百
圓ヲ返ス、サウスルト二百圓ダケ見ルト三
分六厘ニモナリマセヌケレドモ、何カ구
トラクション」ナシニ斯ウ云フ方法ヲ採ラ
レルト云フコトガ貯蓄ノ奬勵ニナルカ、金
ガアルカラ使フトイケナイカラ納メルト云
フ位デ、「アトラクション」ガナイト云フコ
トニナッテハ餘リ效能ガナイノヂヤナイカ
ト云フ氣ガスルノデスガ、何カ外ニ誘引ス
ルナニガアルノデセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=42
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043・氏家武
○政府委員(氏家武君) 或ハ此ノ前御話申
上ゲマシタ際ニ、私十分ニ御分リニナルヤウ
ナ所迄申上ゲナカッタカトモ思ヒマス、モウ
一度申上ゲテ見マスト、此ノ戰時納稅貯蓄
ハ甲種ト乙種ニ分ケマシテ、甲種ノ方ハ納
稅額ノ二倍ノ貯蓄ヲスル、乙種ノ方ハ三倍
ノ貯蓄ヲスル、サウシテ甲種ノ場合ニ於キ
マシテハ大體二十年後ニ之ヲ其ノ儘ソック
リ返ス、乙種ノ場合ニ於キマシテハ大體十二
年後ニ其ノ儘ソックリ返ス、斯ウ云フコトニ
ナルノデアリマス、其ノ二十年後、十二年後ト
云フノハ大體ノコトヲ申上ゲテ居ルノデア
リマシテ、是ハ勿論利子ト云フ觀念ハナイノ
デアリマスルケレドモ、只今ノ割引國債ナドトノ
權衡モ考ヘマシテ、大體二十年、二十年ト
云フヤウナコトヲ申上ゲテ居ルノデアリマ
ス、多少ソレガソレヨリモ短クシタ方ガ宜
イト云フヤウナ考ヘ方モアリマスノデ、ハッ
キリ其處ハ決ッテ居リマセヌ、デサウ云フ風
ニ致シマシテ利子ガナイノデアリマスル
カラ、是ニハ所得稅ガ掛ラナイノデアリ
マス、又形式上ノ利子ハナイノデアリマス
ルケレドモ、割引國債ト同ジヤウニ、實質
的ノ利〓ト云フモノハ考ヘ得ルノデアリマ
ス、ソレノ方ハ二十年近ク、或ハ十二年近
クト云フヤウナコトニ致シマスト、三分五
厘位ノ所ニ行クノデゴザイマス、ソレニ稅
ガ附カナイト云フコトニナリマスト、實ハ
非常ニ有利ナ貯蓄ト云フコトニ相成ルノデ
アリマス、從ヒマシテ讓渡ノ禁止ト云フヤ
ウナコトモ考ヘテ居リ、二倍トカ三倍ト云
フヤウニ制限致シマシテ、之ヲ四倍ニモ五
倍ニモサセナイト云フヤウナコトニモ致シ
テアルノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=43
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044・河田烈
○河田烈君 サウスルト其ノ三分五厘ノ利
廻ニ當ルト云フノハ、矢張リ貯蓄ニ當テタ
分ニ對スル利廻デスナ、今申上ゲタヤウニ
三百圓ニ對スル利〓デナク、二百圓ニ對スル
利廻、サウ云フコトニナリマスネ、氏のハ
遍申セバ甲種、乙種ノ······複雜スルカラドッ
チデモ宜シイケレドモ、利廻ハ三分五厘程
度デアルケレドモ、之ニ所得稅等ハ掛ラナ
イカラ普通ノ貯蓄預金ノヤウニ所得稅ガ要
ラヌカラ、利廻ハ少イガ、普通ノ貯蓄預金
ヨリ利廻ガ宜イ、此ノ點簡單ニ言ヘバサウ
云フコトニナルヤウニ承ッタノデスガ、ソレ
デ宜シイノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=44
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045・氏家武
○政府委員(氏家武君) 百圓ガ稅金デアリ
マシタ際ニ、甲種ノ戰時納稅貯蓄ヲシマス
ト二百圓ノ貯蓄ヲシタコトニナリマシテ、
返ッテ來ルノハ二百圓デゴザイマス、ソレカ
ラ乙種ノ貯蓄ヲ致シマシタ場合ニ於キマシ
テハ、是ハ三百圓ノ貯蓄ヲスルノデゴザイ
マスカラ、略〓十二年後ニ返ッテ來ルノハ三
百圓ガ返ッテ來ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=45
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046・河田烈
○河田烈君 私ハサウシタラ「アトラクショ
ン」ニナルト思ッテ居ッタ、此ノ間ノ御話
ノヤウデアッタラ「アトラクション」ガナイ
ヤウニ思ヒマシタガ、ソレナラ「アトラク
ション」ガアル、私モサウヂヤナイカト思ツ
タノデスガ、ソレナラモウソレ以上伺ヒマ
セヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=46
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047・三井清一郎
○三井〓一郞君 今ノニ關聯シテ質問ヲ致
シタイノデスガ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=47
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048・橋本實斐
○委員長(伯爵橋本實斐君) 宜シウゴザイ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=48
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049・三井清一郎
○三井〓一郞君 )今ノ御話ヲ伺ヒマスト斯
ウ云フ感ジガ致シマスガ、今日食フヤ食ハ
ズデ漸ク稅ヲ納メテ居ル、納メナケレバ仕
方ガナイカラ着物ヲ質ニ入レテ稅ヲ納メテ
居ルト云フ話モアル、ソレハ納稅ノ義務ヲ
盡スニハソレ位ヤラナケレバ本當ヂヤナ
イ、斯ウ云フヤウナ裕リノアル納稅貯蓄ヲ
ヤリマスト、此ノ裕リノ利益ヲ利用スル者
ハ相當生活程度ノ高イ人デナケレバ利用出
來ナイ、一體納稅トカ、總テ國民全般ニ關
スル法令ハ、成ルベク上モ下モナイ、其ノ利
益ニ均霑セシメルト云フ根本精神カラ出發
シテ立法スベキヂヤナイカト思フ、此ノ點
ニ付テドレダケノ御著意ニナッテ居リマス
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=49
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050・氏家武
○政府委員(氏家武君) 只今御話ノヤウ
ニ、此ノ制度ガ餘リ有產者、資力ノ高イ人
ノ爲ノミニ利用サレルト云フヤウナコトニ
ナリマシテハ、誠ニ遺憾デアルト云フコト
ハ御意見ノ通リデアリマス、從ヒマシテ成
ルベク之ヲ所得ノ少イ階級ノ人ニモ利用シ
テ貰フヤウニト云フコトヲ考ヘテ居ルノデ
アリマス、デ大體非常ニ大キイ所得者ハ、
其ノ所得ノ半分以上モ稅ニ納メルト云フヤ
ウナコトニナリマスノデ、二倍、三倍ト云フ
ヤウナ貯蓄ヲ、納稅ノ機會ニスルト云フコ
トハ餘程困難ダラウト思フノデアリマス、
又强ヒテ此ノ戰時納稅貯蓄ヲスルト云フコ
トニナリマスルト、サウ云フ人ハ他ノ貯蓄
ヲ拂戾シテスル、詰リ振替リガ起ル、斯ウ
云フ風ニ考ヘルノデアリマスガ、ソレデ高
額ノ所得者ニ對シマシテハ制限ヲスルト云
フヤウナコトヲ考ヘテ居ルノデアリマス、
ソレカラ低イ階級ノ人ニモ成ルベク之ヲ利
用シテ貰ヒタイト云フ考カラ、勤先デ受取
リマスル俸給、給料ト云フヤウナモノカラ、
源泉デ控除サレル甲種ノ分類所得稅ガ掛ル
ノデアリマス、斯ウ云フモノニ付キマシテ
ハ、例ヘバ每月十圓ヅツ分類所得稅ヲ納メ
テ居ルト云フ人ハ、一ツ每月二十圓ヅツ引
イテ置イテ貰ヒタイ、斯ウ云フヤウナコト
ニシマスルト、ソレガ二十年後ニ返ッテ來ル
ト云フコトニナリマスカラ、知ラズ知ラズ
ノ間ニ、稅金ヲ納メタ積リデ貯蓄モ出來テ
居ルト云フヤウナコトニナリマシテ、働
ク間ハウント働イテ金ヲ貯メル、是ガ後ニ
ナッテ戾ッテ來ルト云フノデ、一種ノ家產
ヲ造成スルト云フヤウナ働キモシ、又見
樣ニ依ッテハ年金的ノ働キヲスルト云フ
ヤウナコトニモナルト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=50
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051・三井清一郎
○三井〓一郞君 御說明ヲ承リマシテ尤モ
ニ感ジマスガ、我々一般的ニ社會ヲ見透シ
タ頭カラ考ヘマスト、漸ク生活シテ行クト
云フ程度ノ者デハ、納稅モ致サネバナラヌ、
生活ニハ追ハレテ居ル、ソレニ色々ニ國民
トシテ此ノ時局ト戰力ノ增强ノ爲ニ盡シ
タイ、ソレダカラ食フ物ヲ食ハヌデ公輝
モ買ハウ、預金モシヨウト云フ方面デハ、
ナカ〓〓此ノ戰時納稅貯蓄ノ二十條、二十
一條等ヲ利用スルト云フコトガ餘リナイヂ
ヤナイカ、餘リ利ヲ以テ納稅ヲ、國民ノ本
當ニ大切ナ義務ヲ利ヲ以テ引摺ルト云フコ
トハ、果シテ國民精神ノ〓揚ノ上ニ善イカ
惡イカ、私ハ少シ疑問トシテ居ル、ソコデ
細カイ議論ハアリマセウガ、引括メテ大體
論カラシテ、是ハドウシテモ今御話ガアッ
タ高額所得者ハ五割、六割ノ納稅ヲスルカ
ラト仰シヤルガ、ソレハ百萬圓取ル人ガ六
割六十萬圓ノ納稅ヲシテモ、マダ四十萬圓
ノ生活能力ガアルノデスカラ、ソレハ固ヨ
リ納稅ハ擔稅力カラ割出シテ御取リニナッ
テ居ルノダカラ、ソレハ至極當然ノコトデ
アル、矢張リサウ云フ裕リノアル人ガ斯ウ
云フ利益ノ方ニ、二十年間此ノ利子ニ對シ
テ無稅ノ方へ向イテ行クト云フコトハ、大
キイ金デナケレバ算盤ガ採レヌノデスカラ、
私ハ是ハモウ一步進ンデ御考ヘ下サレタイ
ト思ヒマス、併シ成案ガ出來テ、旣ニ斯ウ
出來テ居ルノダカラ決シテ反對スル譯デハ
ナイ、所感ヲ述ベタ譯デス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=51
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052・橋本實斐
○委員長(伯爵橋本實斐君) 他ニ御質疑ハ
アリマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=52
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053・一條實孝
○公爵一條實孝君 私モ十七條デチヨット
伺ヒタイノデスガ、是ハ何デスカ、無制限、
詰リドンナ高額所得者デモ別ニ制限ハナイ
譯デスネ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=53
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054・氏家武
○政府委員(氏家武君) 段々三井サンカラ
ノ御話モアリマシタヤウニ、能ク考ヘテ見
マスト云フト、實質的ノ利〓トシテハ相當
有利ナノデアリマス、但シ年限ガ十二年ト
カ二十年トカ、相當長イ間縛ラレル、サウ
シテ之ヲ讓渡スルト云フノハ、法令ニ決ッテ
居ル場合ニ日本銀行ニ對シテ讓渡スルコト
シカ認メナイト云フヤウナ、又一方ニ於テ
不利ナ點モアルノデアリマス、併シ實質的
利〓ダケヲ考ヘテ此ノ貯蓄ヲシヨト云フ人
モナイトハ限ラナイノデアリマス、從ヒマ
シテ非常ニ多額ノ納稅ヲスル人ニ對シテハ
成ル可ク制限スルト云フ考ヘ方カラ、是ハ
マダハッキリハ決ッテ居ラナイノデアリマス
ガ、一囘ノ納稅額幾ラ〓〓、或ハ一囘ノ貯
蓄額幾ラ〓〓或ハ年額デヤル方法モアル
ト思ヒマス、制限ヲシテ行キタイト云フ風
ニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=54
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055・一條實孝
○公爵一條實孝君 矢張リ制限ヲサレルノ
デスナ、サウスルト結局今政府委員ノ御答
ノアッタノヲ伺フト、狙ヒ所、小サイ納稅者
ヲ狙ッテ居ラレルノデスネ、心持ハサウナン
デスネ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=55
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056・氏家武
○政府委員(氏家武君) 成ル可クハ之ヲ、
小サイト申シマシテモ稅ハ命令デ規定ショ
ウト思フノデアリマスガ、所得稅、戰時利
得稅ト云フヤウナモノデアリマスカラ非常
ニ小サイ、謂ハバ細民階級ト云フヤウナ方
面ニハ大シテ用事ノナイコトデアルト思フ
ノデアリマス、之ヲ中流階級ト云フヤウナ
方面ニ利用シテ貰フヤウニ、考ヘテ居ル次
第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=56
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057・橋本實斐
○委員長(伯爵橋本實斐君) 他ニ御質疑ハ
ゴザイマセヌカ、私チヨット極ク細カイ事デ
アリマスガ、伺ッテ見タイト思ヒマス、從來
マア市町村等デアリマスルト、個人ノ納稅
ヲ直接町役場等ニ納メルノニ、其ノ部落、
區等ノ手ヲ經テ納メル、サウシマスト市
町村或ハ區等ガ徵稅ノ手數料ヲ貰フコトニ
ナッテ居リマシテ、ソレガ或ル小サナ行政費
ニ豫算トシテ組マレテ來テ居ルノデアリマ
スガ、此ノ制度ガ段々利用サレマスト、サ
ウ云フ中間ニ徵稅ヲシテ手數料ヲ取ッテ、豫
算ヲ組ンデ居ッタヤウナ地方自治體其ノ他
ノ收入等ノ關係ハドウ云フ風ニナルノデア
リマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=57
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058・氏家武
○政府委員(氏家武君) 此ノ制度ヲ施行致
スヤウニナリマシタ際ニ、矢張リ納稅ニ付
テ取扱ッタ者ニ交付金ヲ出スノト同ジヤウ
ニ、此ノ貯蓄ヲ扱フタ者ニ對シマシテモ矢
張リ或程度ノ交付金ヲ出ス積リデ居ルノデ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=58
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059・橋本實斐
○委員長(伯爵橋本實斐君) 其ノ點ハ分リ
マスガ、從來手數料ヲ取ッテ居ッタ者ノ收入
ガ減ル關係ニナルダラウト思ヒマスガ、市
町村等ノ役場ノ小サナ收入、個人カラ銀行
ヲ經テ直接納稅サレテシマヒマスト、ソレ
等ノ爲ニ自治體ノ極ク僅カト雖モ入ッテ居ッ
タ收入ガ無クナルノヂヤナイカト思ヒマ
スガ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=59
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060・谷口恒二
○政府委員(谷口恒二君) 今御質問ノ點ハ
租稅ノ貯蓄納付ノ方ダケノコトデハナイヤ
ウデゴザイマス、租稅ノ納稅準備預金ニ付
テモ矢張リ御尋ニナッタカト思ヒマスガ、納
稅準備預金等ニ付テ御尋ノ點ハ從來通リト
御承知願ッテ結構デアリマス、市町村ニヤリ
マスノハ從來通リ交付金ヲ出スコトニ致シ
マス、納稅準備預金ノ場合ニ於テモ納稅ヲ
世話致シマスノハ、銀行等デ世話致シマス
ケレドモ、矢張リ銀行ガ何處へ納メマスカ
ト申シマスト、矢張リ市町村ニ納メテ居ッタ
ノデアリマシテ、市町村デモ矢張リ從來通
リ徵稅ノ交付金ハ國カラ出ス、斯ウ云フ關
係ニナリマス、ソレカラ納稅貯蓄納付ノ方
モ貯蓄致シマシタ場合ニ、此ノ貯蓄ハ政府
ガ管掌スル、政府ガ扱フト云フコトニナッテ
居リマスガ、政府ガ扱フノハ結局矢張リ市
町村カ何カニ賴マウト思ッテ居リマス、其
ノ場合ニハ矢張リ手數料ト申シマスカ、若
干ノ交付金ヲ致シタイト思ヒマスカラ、此
ノ方デモ收入ハゴザイマスルシ、ソレデ納ッ
タ稅金モ矢張リ市町村ノ手ヲ經テ納ッタモ
ノデアルト云フ風ニ、萬事從前通リト云フ
コトニ考ヘマシテ、只今御質問ノ交付金關
係ハ從來通リ同ジモノガ渡ル、斯樣ニ御承
知願ッテ結構ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=60
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061・河田烈
○河田烈君 サウスルト、法ニ付テ簡單ニ
言フト二十三條デスネ、戰時納稅貯蓄ニ
關スル事務ハ市町村デアリマストカ、日本
銀行其ノ他ノ命令ヲ以テ定メル者ヲシテ扱
ハシメル、今迄市町村ガ徵收機關デアル所
ノ稅ニ付テモ日本銀行其ノ他ノ命令ヲ以テ
定ムル者ヲシテ扱ハシメルコトニ取レルコ
トハ實行出來ナイト言ヒ得ルト思ヒマス、
從ッテサウスルト、從來市町村扱ヒノ稅ニ付
テハ市町村ニ扱ハシメルコトニナルト思ヒ
マス、サウスルト今次官ノ御話ノ通リ市町
村ノ徵收手數料ハ減ラナイ、其ノ上ニ納稅
貯蓄ニ關スル分迄手數料ヲ拂フコトニナリ
マスト市町村ノ收入ハ寧ロ殖エル、斯ウ云
フ結果ニナリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=61
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062・谷口恒二
○政府委員(谷口恒二君) 左樣デゴザイマ
ス、サウ云フ風ニナリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=62
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063・氏家武
○政府委員(氏家武君) 只今ノ御尋ネノ所
デ一言附加ヘテ置キタイト思ヒマスノハ
日本銀行ガ扱ヒマス仕事ハ、此ノ貯蓄ノ貯
蓄原簿ノ備附、整理ヲヤル、或ハ貯蓄ノ拂
戾シヲヤルト云フヤウナ事務ノ方ヲ日本銀
行ニ扱ハセル積リデ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=63
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064・河田烈
○河田烈君 御質問ガナケレバモウ一ツ伺
ヒタイノデスガ、是ハ私ガ想像シテモ手數
デ、困難ダラウト思ヒマスガ、納稅貯蓄ニ
對シテハ色々ナ制限ガアッテ、是デ見ル
ト讓渡スルコトヲ認メヌ、又御說明ニ依ル
ト、納稅貯蓄ヲ次期ノ租稅ニ振替ヘルコ
トモ出來ナイダラウト思フノデス、サウ云
フ趣旨ダラウト思フノデス、之ヲ振替ヘサ
セルト云フコトニスルト手數ガ非常ニ複雜
シテ、實行スルコトモ困難カト思ヒマスケ
レドモ、サウ云フコトガ出來ルト餘程此ノ
納稅貯蓄ガ行ハレハセヌカ、次期ノ稅額ニ
振替ヘラレナイト云フコトニナリマスト、
玆ニ三千圓ナラバ三千圓ノ金ヲ甲種、乙種
ト言ヒマスカ、千圓ノ納稅ノ場合三千圓拂
込ンデ、二千圓ハ貯蓄ニシテヤル、今度其
ノ次期ニ千圓ノ納稅ガ出來ナカッタ時ハ、自
分ハ貯蓄ハ二千圓アルノダケレドモ滯納處
分ヲ受ケルト云フヤウナコトガ起リ得ルノ
デス、想像スルト見方ニ依ッテハ、ドウモ是
ハサウナルト餘程ウッカリ貯蓄モシテ居ラレ
ナイ、ソレナラバ郵便局ニ預ケテアレバ
引出シテ滯納處分ヲ受ケナイガ、納稅貯蓄
ニシタ爲ニ滯納處分ヲ受ケルト云フコトニ
ナル、二千圓貯蓄ガアルノニ滯納處分ヲ受
ケナケレバナラナイコトニナル、之ヲ次期
ノ納稅ニ當テ得ル、今ハ懷ニ餘裕ガアルガ
此ノ次ドウカナルトイケナイカラ、納稅貯
蓄デ拂込ンデ置カウト云フ意味モアルケレ
ドモ、ウッカリヤッテシマウト次ハ又滯納處
分ニナルト大變ダト云フコトニナルト、ソ
コハ餘程氣分ガ違ハナイカト思ヒマスガ、
是ハ私ハサウ中スモノノ納稅貯蓄ノ金ヲ次期
ノ稅額ニ振替ヘ得ルト云フ使用方法ヲ認メ
タラ、大變複雜シテ困難カト思ヒマスガ、
ソレハ考ヘラレマセヌデセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=64
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065・氏家武
○政府委員(氏家武君) 所謂租稅證劵ノ中
ニハサウ云フ風ナ考ヘ方ヲシテ居ルモノモ
アルト思フノデアリマス、御話ノヤウニ致
シマスト云フト、稅ヲ前取リシテ置クト云
フヤウナコトニナルダラウト思フノデアリ
マンク。デ租稅ト貯蓄ヲドウ結ビ附ケルカ、マ
ア色々ト考ヘテ見タノデアリマスルガ、是
ハ納稅ノ機會ニ貯蓄ヲサセヨウ斯ウ云フ考
ガ主ニナッテ居ルノデアリマスカラ、此ノ
制度デハ次期ノ納稅ニ充當サセルト云フ
コトハチヨット困難ダト思フノデアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=65
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066・下村宏
○下村宏君 今ノ河田君ノ御質問ニチヨツ
ト連想サレルノデアリマスガ、段々一方デ
納稅ガ多クナッテ來ル、ソレカラソコヘ近
頃貯蓄ヲスベシト云フノデ、町內會ナリ色
色ノ方面カラ······、私今隣組ノ組長ヲシテ居
ルガ、殆ド義務的ノヤウニ組合ニ入レテ居
ルノデアリマスガ、サウスルト昨今又更ニ
是ハ町內會ニ依ッテ違フノデアリマセウガ、
市民稅ノ七倍或ハ八倍ノ公債ヲ賣ヘト云フ
ノデ、私共ソレヲヤッテ居ル、打明ケタ所
ハ隣組ノ寄合ナンカノ時ニ、稅モ相當高
クナッテ居リマスガ貯蓄セイト云フ、更に
市民稅ノ七倍八倍ト云フト、事實敵ハヌ、
出來ナイト云フ聲ガ相當アル、僕ナドモ其
ノ一人ナンデスガ、市民稅ガ資力ニ比シテ
割合ニ高イト思ッテ居ルノデアリマスガ、兎
ニ角七八倍ノ公債ヲ賣ハナケレバナラヌト
云フコトニナルト、矢張リ千圓近イモノヲ
買ハナケレバナラヌコトニナル、ソレデ今
公此ノ問題ニ觸レテ伺ヒタイノハ、
是ハ一囘
限リデハナイ、所得稅ナラバ所得稅デ四
期ナラバ四期、何時デモ二倍ナリ三倍ナリ
セネバナラヌト云フコトハナイガ、サウシ
ヨウト言ッテ其ノ方ヘ向ケル、一方デ又貯蓄
ノ奬勵モ多イシ、公債モ買ッテ吳レト云フ、
其ノ方ヘモ相當ヤラナケレバナラヌト云フ
コトニナルト打明ケテ尋ネルノハ百圓
ノ稅ニ三百圓納メテアル、今度ソコデ納メ
タラ二百圓餘分ニ納メタノデアルカラ、其
ノ二百圓餘分ニ納メテアルト云フコトニ依ツ
テ他所ノ公債ニ應ズルトカ、貯蓄ニ應ズル
ノヲ相殺シ得ルモノデアルカ、ソレハソレ
デオ前勝手ニヤッテ居ルノデアルカラ、其ノ
他ニ矢張リ貯蓄ナリ公債ハ斯ウ斯ウシナケ
レバナラヌ、斯ウ云フコトニナリマスガ、
其ノ邊ノ關係ヲ伺ヒタイノデアリマス、ソ
レカラ是ハ此ノ法案ダケニ限ル譯デハナイ
ノデアリマスガ、是ハ此ノ機會ニ分リ易ク
說明願ヘルト仕合セナンデアリマスガ、今
僕ナンカ貯金ヤサウ云フノヲ實ハ五口ヤ六
口事實ハヤッテ居ル、隣組ハ隣組デ持ッテ來、
其ノ他、他ノ關係デ矢張リ多少トモ奉ジテ
居ルノデアリマスガ、實ハ今度ノ市民稅七
倍ト云フヤウナコトヲ言ハレテ大分手許ガ
苦シクナッテ來タノデ、斯ウ云フ方ヘヤッテ
アルノデアルカラト云フコトヲ言フケレド
モ、矢張リ町内會ナラバ町內會デ、自分ノ
所デ是ダケ成績ヲ擧ゲタト云フコトヲ言ヒ
タイ、或ハ其ノ場所ノ方面ノ郵便局デハ、
其ノ郵便局デ是ダケノ成績ヲ擧ゲタト云フ
コトヲ言ヒタイト云フコトニナルノデ、
我々トシテハ外ヘモ斯ウヤッテアルノデア
ルカラト云フケレドモ、矢張リソレ〓〓理
窟ガ附クラシイノデアリマス、例ヘバ私ノ
友人ナド勸業銀行ニ貯金ヲシテアル、其ノ
貯金ヲシテアル金デ報國債劵ナリ勸業債劵
ノ募集ノアル時ニ其ノ預ケテアル金デ橫移
シニ應ジテ貰ッテ、其ノ債劵ヲ保管預リニ其
ノ儘ニナッテ居ルト云フコトニシテ居ルカ
ラ、モウ今度國債ニ應ジナクテモ自分ハ斯ウ
ヤッテ居ルト云フガ、町內會ヤ何カノ方デ
ハソレデハ困ルト云ッテ、預ケタ金ヲ銀行
カラ引出シテ又自分ノ住ンデ居ル所ノ公債
ニ應ジルト云フコトハ、サウ云フ手數ヲ拔
ク爲ニ不斷カラ預金ヲシテ置イテ振替ヲヤッ
テ居ルカラ、ソレハ特別ニ又引出シテ、其
處カラ自分ノ居ル場所カラ現物デ受取ッテ
ソレヲ本預リニセンナラヌト云フヤウナ、
手數ガ逆ニナル、斯ウ云フ點デ色々ノ場合
ガアルダラウト思フノダガ、決シテ成ルベ
ク少クシテ助カラウト云フ意味デハナイケ
レドモ、何カ其ノ邊ノ所デ、斯ウ云フヤウ
ニヤッテアレバ、ソレノ分ダケハ重複ニナル
カラ認メテ宜イトカドウトカ云フヤウナ點
ヲ、是ハ法律ノ問題ヂヤナイカモ知レヌガ、
又其ノ各町內會等ニ依ッテヤリ方モ區々ニ
ナッテ居ルノヂャナイカト思フノデス、サウ
云フヤウナ點デ相當僕自身ヲ初メ大分近頃
ハ困ッテ來テ居ルノデスガ、ソレ等ニ對スル
何カ便法ト云ヒマスカ、モウ少シ簡便ニ重
複ヲ避ケルトカ、何カサウ云フ點ニ付テノ指
示ヲスル、サウ云フ取扱ヲモウ少シ劃一ニ
スル、サウ云フ點ニ付テ御話ヲ聽クコトガ
出來レバ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=66
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067・氏家武
○政府委員(氏家武君) 最初ノ戰時納稅貯
蓄ノ方デアリマスガ、是ハ申上ゲル迄モナク
決シテ强制スルモノデハナイノデアリマス、
從ヒマシテ所得稅デアリマスレバ第一
期ハ貯蓄納付ヲシタケレドモ、第二期ハ金
ノ都合ガ惡イカラ止メタト云フノデアレバ
ソレデモ宜シイノデアリマス、又第二期ハ
二倍ノ甲種ノ貯蓄納付ヲヤッタケレドモ、第
三期ハ金ノ都合ガ好イカラ、是ハ乙種ノ貯
蓄納付デ三倍デ行カウト云フナラ是モ結構
ナノデアリマス、又普通ノ所得稅ノ方ハ
貯蓄納付ヲシタケレドモ、臨時利得稅ノ
方ハ是ハ止メタト云フナラソレデモ宜
シイノデアリマス、其ノ納稅者ノ金ノ
都合ニ依ッテ、任意ニ各期各稅每ニ、又
甲種、乙種何レデモ選ンデ戴ク、斯ウ云フ
風ニ考ヘテ居ルノデアリマス、ソレデ一旦
貯蓄納付ヲシテ、ソコニ戰時納稅貯蓄ガ出
來テ居ル、何カ後デ國債ナリ債券ナリ買フ
時ニ、ソレト相殺スルヤウナ方法ハドンナ
モノカト云フヤウナ御話ニ伺ッタノデアリ
マスガ、ソレハ先程ノ次期ノ納稅ニ充當ス
ルト云フコトヲ認メナイノト同ジヤウニ、
後デヤル貯蓄ト振替ルヤウナコトハ認メナ
イト云フ考デ居ルノデアリマス、ソレハ認
メテモ貯蓄ノ增加ニハナラナイノデアリマ
シテ、又考ヘ樣ニ依リマシテハ、是ハ貯蓄
トシテハ最モ長期固定性ノアル貯蓄デアッ
テ、戰時貯蓄ト致シマシテハ是程結構ナモ
ノハナイ、是ガ他ノ貯蓄ニ變ルト云フノハ
却テ貯蓄ノ增强トハ逆ノ方向ニ進ムモノデ
アル、斯ウ云フ風ニ考ヘラレルノデアリマ
ス、第二點トシテ今日ノ貯蓄ハ、所謂多元
的ノ貯蓄方法ヲ採ッテ居ルノデアリマシテ、
丁度稅ニ付キマシテモ段々多クノ稅ヲ納メ
サセルト云フコトニナリマスト、自然種類
ヲ多クスルト云フノト稍、、趣ヲ同ジウシテ居
ルノデアリマスルガ、ドウシテモ今日ノ場
合色々ノ貯蓄ノ種類、方法ト云フモノヲ設
ケマシテ、又色々ノ方面カラ貯蓄ヲ勸奬ス
ルト云フ方法ヲ採ラナケレバ、ナカ〓〓二
百三十億ト云フヤウナ大キイ額ハ集ラナイ
ノデアリマス、其ノ爲ニ御迷惑ヲ御感ジニ
ナル方面ノ方モオ有リニナルトハ思フノデ
アリマスケレドモ、貯蓄思想ノ餘リ發達シ
ナイ方面ニ於キマシテハ矢張リ足ヲ運ビ、ウ
ルサイ程說明モスルト云フヤウナコトニ依ッ
テ相當ノ貯蓄ヲ生ミ出シテ居ルト云フノガ
實情ナノデゴザイマス、今日模範的ノ貯蓄
組合デアルトカ、或ハ模範的ナ町內會、部
落會ト云フヤウナモノニ於キマシテハ、私
共ガ想像致シテ居ル以上ニ、非常ニ多クノ
種類ノ貯蓄ノ仕方ヲ採用シテ居ルヤウデゴ
ザイマス、尙能ク預金ヲ下シテ、拂戾シヲ
シテ、國債ヤ債劵ヲ買ッテハ何ニモナラヌ
ヂヤナイカト云フヤウナコトヲ聞カサレル
ノデアリマスガ、是ハ國債ヤ債劵ノ割當ガ
アッタ其ノ時ニ拂戾シテ使へルト云フヤウ
ナ貯蓄デアリマスト云フト、大體ハ當座的
ノモノナノデアリマス、從ヒマシテサウ云フ
當座的ノモノガ國債ヤ債劵ト云フ形ノモノ
ニ變ルト云フコトデアリマスレバ、是亦一
種ノ貯蓄增强ニナルト思フノデアリマス、
又不斷貯金ナリ預金ナドシテ置キマシテ、
サウシテ割當ガアッタ場合ニソレヲ拂戾シ
テ買フト云フ、當初カラサウ云フ計畫デ預
貯金ヲシテ居ルモノモ相當アルヤウデゴザ
イマスカラ、預ケタモノヲ拂戾シテ買フノデ
ハ全然意味ガナイト云フ風ニハ申スコトガ
出來ナイト考ヘテ居ルノデアリマス、唯御
話ノヤウナ場合勸業銀行ニ預金ガシテアル、
向フノ方デ國債ヤ債券ヲ買ッテ直グ保管ヲ
委託スルト云フ方法ヲ採ッテ居ルノデアル
カラ、隣組ノ方カラノ割當ハ斷ルト云フヤ
ウナ方法ヲ認メタナラバドウカト云フ、斯
ウ云フヤウナ御話デゴザイマス、是モ非常
ニ其ノ方ダケノ御立場カラ考ヘマスト御尤
モナコトナノデアリマスケレドモ、何セヨ
色々ノ人達ガ隣組、町內會ニ居ルノデアリ
マン、從ヒマシテ隣組組織ト云フモノヲ通
ジマシテ貯蓄ノ增强ヲ圖ツテ行クト云フヤ
ウナ場合ニハ、一部分ノ人ニ多少御迷惑ニ
ナルヤウナコトガアリマシテモ、成ルベク
一ツ是ガ堪ヘ難イモノデナイ場合ニ於キマ
シテハ是非御協力ヲ願ッテ、皆デ一ツ一〓
ニヤラウト云フヤウナコトニシテ行ク必要
ガアルト思フノデアリマス、殊ニ勸業銀行
トカ、或ハ大銀行ニ預金ヤ貯金ヲ御持チニ
ナツテ居ルト云フヤウナ方々デアリマスト
云フト、是ハ大體ニ於テ隣組ノ中デモ相當
目ヲ著ケラレテ居ラレル方面ノ方ト思フノ
デアリマスカラ、隣組ノ中ノ貯蓄思想ノ餘
リ十分ニ發達シテ居ラナイ方面ノ人達、斯
ウ云フ人達ヲ引立テルト云フ意味ニ於キマ
シテ、多少ノ御手數ハアルト思フノデアリ
マスルケレドモ、成ルベク一ツ御協力ヲ御
願ヒシタイ、斯ウ云フヤウナ風ニ考ヘテ居
ル次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=67
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068・下村宏
○下村宏君 私貯蓄奬勵ノ委員ノ一人デス
カラ、丁度今政府委員ノ話サレタヤウナコ
トヲ言ウテ居ルノデスガ、併シ今地方デ奬
勵ノ演說トカ色々ナ時ノ貯蓄奬勵ハ、戰費
ヲ賄フトカ何トカ云フ直接ノ理由ノ外ニ、
サウ云フ方法デ手許ノ有金ヲ少ク、詰リ物
資ヲ買フ方ノ力ヲ控ヘルコトニ依ッテ物價
ノ騰貴ヲ防グ、又ソレハ自分ノ爲ダト云フ
コトデ、私共絕エズ講演シテ居ルノデアリ
マスガ、唯事實問題トシテ地方デ一番愬ヘ
ラレルノハ、時局デ段々勃興シテ居ル事業
カラ無名ノ士ガ出テ來タノガ相當アル、ソ
レニ反シ地方デ相當ノ古顏デ格式ダケハア
ルガ、ドウモ時代ニ置キ去ラレテ行ッタト
云フヤウナ階級モ相當アル、サウ云フ連中
ハ割當ハ相當大キク、色々ナ方面カラ餘計
集ッテ來ルノデ、一方デ預金ヲ引出シタリ、
株ヲ手放シタリ、色々ナコトヲシテ體面ヲ
保タナケレバナラヌト云フ連中モナイデハ
ナイ、色々ナ方面カラ言ハレテ出來ルダケ
ハヤッテ見ルケレドモ、餘リ押掛ケラレルノ
デ遂ニ手ヲ擧ゲルノダト云フ者ガ相當アル、
速記デモ止メルナラバ私ハ色々ノ話ヲ知ッ
テ居ルノデ、又良イ例モ澤山アルノダガ···
要スルニ今言フヤウナ社會的地位ト云フ
カ、格式ニ比較シテ力ノナイ者ト、一方デ
伸ビテ居ル連中ト二ツノ流レガアル····発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=68
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069・橋本實斐
○委員長(伯爵橋本實斐君) 下村君、速記
ヲ止メマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=69
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070・下村宏
○下村宏君 イヤ、ソレ迄シナイデモ
ソレデ段々何處デモ餘リ重複シテ煩ニ堪ヘ
ナイト云フ聲ガ起ッテ來テ居リマスカラ、此
ノ心理狀態ハ見テ行カレネバナラヌト思フ、
ソレカラ前段ノ方ハ私ノ問ヒ方ガ至ラナ
カッタノデスガ、私ノ問ウテ居ル氣持ハサ
ウデナイノデ、此ノ納稅積立ニ依ッテ百圓ノ
所ヲ今度一ツ二百圓、三百圓ニ押ヘテ見ヨ
ウトカト云フ時ニ、之ヲ納メル見積リヲ立
テル時ニ、之ニ納メテ置ケバ納稅額以外ノ
金額ガ、一方隣組ナドデ貯金ヲセネバナラ
ヌト云フノト相殺シ得ルヤ否ヤト云フコト
デス、詰リ是ハ是デスルケレドモ、矢張リ
貯金ノ方ハ貯金デセネバナラヌト云フノガ
此ノ制度デ、此ノ方ヘ納メル一種ノ据置ノ
長期ノ預金ノヤウナモノデスカラ、同ジ貯
金ダカラコチラニ斯ウシテ置イタト言ヘ
バ普通ノ月掛ナリノ貯金ハセズトモ宜イ
ト言ヘルカドウカ、言ヘルカ言ヘヌカニ依ツ
テ見積リガアルト思フノデス、若シ自分ガ
月掛ノ貯金モスル、公債ニ應ズルコトモシ
ナケレバナラヌ、併シ今度ノ制度モ面白イ
カラヤッテ見タイト云フ時ニ今度ノコチラ
ノガ、此ノ方ノ言譯ニ立ツカドウカト云フ
コトデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=70
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071・氏家武
○政府委員(氏家武君) 御話ハ戰時納稅貯
蓄ハ、所謂貯蓄組合ノ組合貯蓄ノ中ニ包含
サレルカドウカ、貯蓄組合ハ戰時納稅貯蓄
ノ幹旋ガ出來ルカドウカ、斯ウ云フコトニ
ナルダラウト思フノデアリマス、只今色々
其ノ點ハ〓究致シテ居ルノデアリマスルガ、
何ンセ稅金ト一緒ニヤル貯蓄デハアリ、又
取扱場所ナドノ關係カラ、直チニ之ヲ組合
貯蓄ニ入レルト云フコトハ、今此處デ申上
ゲルコトモ出來ナイト思ヒマスノデ、若シ入
レルト云フコトニナリ、貯蓄組合法ニ基イ
テ斡旋シ得ル貯蓄ニ指定スルト云フコトニ
ナリマスレバ、御話ノヤウニコチラニ是ダ
ケノ貯蓄ヲシテアルカラト云フコトニナル
ダラウト思ヒマス、只今ノ所マダドチラト
モ決ッテ居リマセヌ、モウ一ツ御話ノ、謂ハ
バ時局ノ爲ニ新興階級ト申シマスカ、無名
ノ富豪ト申シマスカ、サウ云フ者ガ段々現
レテ來テ居リマシテ、斯ウ云フ方面ガ貯蓄
ニ付テ非常ニ樂ヲシテ居ル、又一方非常ニ
格式ガ宜シイ爲ニ、收入ガ之ニ伴ハナイニ
拘ラズ相當ノ貯蓄ヲシナケレバナラヌヤウ
ニナッテ居ル、殊ニ市民稅ノ何倍ト云フヤウ
ナコトニナリマスト、市民稅ハ御承知ノヤ
ウニ家屋ノ賃貸價格ナンカモ其ノ要素ニ取
入レラレテ居リマスノデ、收入ガ澤山ナイ
ニシテモ、立派ナ家ニ住ンデ居ルト云フコ
トニナリマスト市民稅ガ高イ、從ッテ貯蓄額
ガ多イト云フヤウナコトニナリマシテ、具
體的ノ場合ニ貯蓄能力ニ相應シナイト云フ
ヤウナコトモ起ルト思フノデアリマス、是等
ノ點ニ付キマシテハ、十分注意スルヤウニ
指示シテ居ルノデアリマスルケレドモ、地
方ノ方ハ相當經驗モ經テ來テ居リマスル
シ又部落會ナリ隣組ナリデオ互ノ資力ナ
ンカモ割リニ能ク知リ合ッテ居ルノデ、大
シタ支障モナク行ハレテ行ッテ居リマスケレ
ドモ、東京市トカ大阪市ト云フヤウナ大都
市ニナリマスト、マダ隣保組織ガ十分ウマ
ク働イテ居ラナイ所モアルヤウデゴザイマ
ス、從ヒマシテ手ヲ拔イタ極メテ外形標準
的ナモノヲ使ッテ、貯蓄ノ割當ヲスルト云フ
ヤウナ段階ニ今日アルノデアリマス、是ガ
ヨク隣組アタリデ協議ヲシ合フ、或ハ町內
會ノ貯蓄ニ付テノ委員ガ居リマシテ、此ノ
人ガ色々ナ點ヲ考ヘテ、サウシテ杓子定規
ナヤリ方ニ適當ナ斟酌ヲ加ヘルト云フヤウ
ナコトニ段々進ンデ參リマスト、御話ノヤ
ウナ不都合ナ場合ガ少クナッテ來ルコトデ
アラウト思フノデアリマス、丁度本年度カ
ラ來年度ニ掛ケマシテ、貯蓄組合指導員ト
云フモノヲ全國ニ相當多數設置スルコトニ
致シマシテ、是等ノ人ノ活動ガ本格的ニナ
リマスレバ餘程模樣ガ變ッテ來ルヂヤナイ
カト云フ風ニ考ヘテル次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=71
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072・下村宏
○下村宏君 マダ決ッテナイサウデアリマス
ガ、今度此ノ納稅積立金ト云フ制度ヲ新タニ
作ラレルノダカラ、强制スル譯デハナイ
ガ、是ハ始メレバ相當成績ヲ擧ゲタイト思
ヒマス、所謂据置ノ長期ノ預金ニナルノダ
カラ前申シマシタヤウニ、唯ノ普通ノ貯金
ヲスルヨリ是デ預ケル方ガ政府トシテハ長
期ニ確保出來ル譯デスカラ、無論此ノ方ハ
强制出來ヌ譯デスガ、ヤッテ見テ成ル程宜イ
ト云フノデ人氣ガ出テ、是ハヤッテ見タラ
存外多クナッタト云フコトニナリタイト思
フノデアリマス、サウ云フコトニハ今私ノ
言ッタヤウナ點モ、矢張リ懷ロノ差繰リデハ
大キナ問題ニナリヤセヌカト思フ、サウ云
フ方ニ矢張リ認メ得ルト云フコトニナルト
云フコトガ、納稅積立金ガ幾分トモ成績ヲ
高メル途デヤナイカト思ヒマスカラ、サウ
云フヤウニ御考慮ヲ願フト宜イト思ハレマ
ス、後ノ方ヘ只今御話ノヤウニ政府デモ御
考慮ニナッテ居ルデセウガ、要スルニ是ハ
地方デ、殊ニ市ノ所在地デアリマスガ、市
役所ノ市民稅ノ割當方ノ問題ダラウト思ヒ
マス、卽チ市民稅ノ何倍ト云フコトデ大キ
クナル、其ノ市民稅ノ立テ方ガ困ルト云フ
所ノ聲ガ多イト云フコよヲ御參考迄ニ申上
ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=72
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073・河田烈
○河田烈君 チヨット私ハ一番初ニ二十條
ニ付テ質問ヲ致シマシテ、政府委員ノ御答
デ分ッタノデアリマス、ソレデ十七條、十八
條、十九條ニ關聯シテ見テサウデアラウト
思ッタノデアリマス、ソコデ尙愚念デスガ、
モウ一ツ念ヲ押シテ置キタイ、第十九條ノ
戰時納稅貯蓄證書、戰時納稅貯蓄證書ニハ百
分ノ三百以內ノ金額ヲ書クノデスカ、其、處
ヲ簡單ニソレダケ······モウ一遍御分リニナ
ラナイト誤解ガアルトイケナイカラ、千圓
ノ租稅ヲ納メル時ニ三千圓納稅貯蓄ヘ納メ
ル、其ノ場合ニ十九條ノ證書ニハ三千圓ト
書クノデスカ、二千圓ト書クノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=73
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074・氏家武
○政府委員(氏家武君) 甲種ノ貯蓄デアリ
マスレバ二倍ノ二千圓ト書キマス、乙種ノ
貯蓄デアリマスレバ三倍ノ三千圓ト書キマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=74
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075・河田烈
○河田烈君 要スルニ當該期ノ稅迄込メタ
總金額ヲ書クノデスカ、ドウシテモ十七
條、十八條、十九條ヲ見ルトサウナルダラ
ウト思ヒマス、從ヒマシテ二十條ニ於テ拂
戾スモノハ二千圓若シクハ三千圓拂戾スト
云フコトニナル、其ノ場合ニ於テ拂戾ノ利
廻ハ三分五厘、三分四厘デモ三分二厘デ
モ三分六厘デモ宜イガ、大體三分五厘ニ當
ルト云フノダカラ、私ノ質問モ、當初ノ質
問ハ有利ナ利廻ニナル、普通ノヨリ有利ニ
ナル、是ハ討論ノ方ニナルノデ······非常ニ
ムツカシクナルノハ百分ノ百ハ飽ク迄稅デ
ス、然ルニ十七條ニ依ッテ「租稅ノ納付アリ
タルモノトス」ト云フノハ、百分ノ百ノ「納
稅アリタルモノトス」ト言ヒナガラ、二十
條デ返スモノハ、甲種ナラバ二倍、乙種ナ
ラバ三倍返スト云フコトニナルト、十七條
ニ依ッテ納メタ稅ト云フモノハ稅ナノカ公
債ナノカ、非常ニ國民ノ義務タル所ノ租稅
ノ觀念ト、公債ト云フモノノ觀念ヲ混淆致
シハシナイカ、併シソレハ已ムヲ得ナイ、
「納付アリタリト看做ス」ト云フノデナク
「アリタルモノトス」ト喧シク定ッテ居ルノ
ナラ、當該租稅ノ二千圓若シクハ千圓ノ
「納付アリタルモノト看做ス」ト言ッテモ宜
イヂヤナイカ、サウナレバ後ノ振替ト云フ
コトモ認メテ宜イヂヤナイカ、氏家局長ガ
是ハ丁度稅ヲ先取シタモノトナル憂ガアル
ト仰シヤル、私モ正ニサウ思ヒマス、其ノ
點ハ同感ダケレドモ、ソコ迄氣ニシテ行キ
ナガラ十七條、十八條、十九條デ納メタ金
額全體ノ貯蓄證書ヲ交付スルト、斯ウスル
以上ハ後ノ百分ノ二百以內ト云フモノハ國
ガ返スベキ義務ヲ持ッテ居ル、ソレニ違ヒナ
イ、貯蓄デスカラ······、然ルニ前ノ千圓迄
込メテ、當該租稅迄込メテヤルト云フコトニ
ナルト、公債ノ觀念ト納稅ノ觀念ト混淆ヲ
來ス虞ガアリハシナイカ、是ハ質問ヨリ先
ヘ行ッテ討論デモウ少シハッキリ申上ゲタイ
ト思ヒマス、其ノ點ハ便宜ノヤウデアリナ
ガラ餘程考ヘナケレバナラヌ立法ヂヤナイ
カト云フ氣ガスルンデスガ、是ハ討論デス
ベキデスガ、念ヲ押シテ質問ヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=75
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076・氏家武
○政府委員(氏家武君) 此ノ觀念ハ第四章
ニモ租稅ノ貯蓄納付ト云フ名前ヲ附ケテ居
ルノデアリマス、貯蓄シマスモノハ戰時納
稅貯蓄、此ノ戰時納稅貯蓄ヲスルコトニ依ッ
テ納稅義務ガ履行サレタモノト見ルト、斯
ウ云フノデアリマシテ、普通デアリマスレ
バ納稅義務ハソレニ相當スル金錢ヲ提供ス
ルコトニ依ッテ履行サレマスルケレドモ、例
外的ナ場合ト致シマシテ、證劵ヲ以テ納稅
ヲ履行スル場合モアル、先程モ問題ニナリ
マシタヤウニ物ヲ提供スルト云フコトニ
依ッテ納稅義務ガ履行サレル場合モアルノ
デアリマス、ソレヲ擴張致シマシテ、此ノ
場合ニハ百圓ノ納稅ヲシナケレバナラヌ、
斯ウ云フ場合ニ百圓ノ金錢ヲ提供スル代リ
ニ二百圓或ハ三百圓ト云フ貯蓄、眞ノ貯蓄
ハ一定ノ條件ヲ備ヘタ貯蓄デアリマスガ、
サウ云フ貯蓄ヲスルト云フ行爲ガアレバソ
レデ納稅ノ方ハ納付アリタルモノトシテノ
效果ヲ發生スル、斯ウ云フ考へ方デゴザイ
マス、但シ後ノ方ノ規定ニモアリマスヤウ
ニ政府部門ノ取扱ト致シマシテハ、其ノ貯
蓄額ノ内納稅額ニ相當スル分ハ之ヲ租稅收
入トシテ處理スル、殘餘ノ分ハ公債發行ニ
依ッテ收入シタ金額ト同樣ニ之ヲ公債金收
入トシテ收入スルト、斯ウ云フヤリ方ヲ執ッ
テ居ル次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=76
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077・河田烈
○河田烈君 時間ガ經チマスケレドモチ
ヨット氣ガ附キマシタ事柄デアリマスガ、今
ノ政府委員ノ申サレタヤリ方ハ分リマシ
タ、ソレナラバ寧口單ニ是ガ丁度餘裕ガアッ
タ場合ハ、納稅以上ニ貯蓄モシテ置カウト
云フ觀念カラ見テ行クナラバ、納稅額ト貯
蓄額トハ之ヲ以テ三千圓納メテ置イテモ千
圓ハ納稅、二千圓ハ政府ノ方カラ見レバ公
債、借金ト云フ形ニ整理ヲシテ置クベキデ
ハナイカ、サウスレバ十九條ノ戰時納稅貯
蓄證劵ト云フモノハ、三千圓ヲ納メタナラ
バ二千圓ダケ交付スル、サウスレバ二十條
デ返ス時ニハ二千圓ダケシカ返サナイ、是
ハ立法ノ仕方デドウニデモ出來ルト思ヒマ
ス、而シテ二十年內デ二千圓ヲ返ス、其ノ
「アトラクション」トシテハ三千圓ノ三分五厘
ニ當ルヤウナ計算ヲシテ返シサヘスレバ、「ア
トラクション」トアル、千圓ハ飽ク迄納稅、
二千圓ハ飽ク迄貯蓄デアルト云フ建前ニ
ナッテ來ル、サウシナイデ全部ガ納稅貯蓄
ダ、貯蓄納付ダ、此ノ貯蓄ヲシタラ納付ガ
アッタトスルト云フコトハ恰モ或場合ニ於
テハ國債證劵ヲ以テシ、或場合ニ於テハ不
動產ヲ以テ納稅スル、納稅ハ原則トシテハ
金錢デアルケレドモ、例外ノ方法トシテ之
ヲ認メテ居ルノダカラシテ、現金デアルガ、
他ノモノヲ以テ納稅スル例外ノ貯蓄納付ト
云フ一ツノ形ヲ採ルノダ、此ノ形ヲ採ルト云
フコトガ納稅ノ觀念ト租稅ノ觀念トノ混淆
ヲ來シハシナイカト申上ゲタガ、多少ノ懸
念ガアリマスガ、ソレモ一ツノ行キ方ダガ、
サウナッテ來ルト政府ガ大變心配サレテ居ル
租稅ノ先取ダト云フ觀念ヲ起シハシナイカ
ト云フ心配ハ憂フル必要ガナイノデアツ
テ、貯蓄納付ト云フ一ツノ方法デ行クト云フ
ナラバ、前ノ三千圓ノ納稅ヲ後期ノモノニ
充當スルコトガ當然宜イヂヤナイカ、政府
ノ勸奬シテ居ル納稅貯蓄ニ振替ヘテ納稅ス
ルノダカラ、納稅ノ形ガ現金ニ非ズシテ貯
蓄金ヲ以テ充テルト云フコトデアレバ後
ノ分ニ充テルト云フコトニ行カナケレバ少
シ矛盾スルヤウナ氣ガスルデスガ、ドウデセ
ウ、私ハ少シ先ニ意見ガアルデスガ、ソレ
ハ長クナルカラ、其處ダケ伺ッテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=77
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078・氏家武
○政府委員(氏家武君) 斯ウ云フ風ニ考ヘ
テ居ルノデアリマス、百圓ノ納稅ヲスル人
ガ三百圓ノ金ヲ出シタ、ソレダケ貯蓄ヲシ
タ、斯ウ云フコトニナリマスト、其ノ人ト
シマシテハ三百圓ノ公債ヲ買ッタ、斯ウ云フ
ヤウナコトニナルト思フノデアリマス、從ヒ
マシテ後デ貯蓄額ヲ其ノ後ノ納稅ニ充當ス
ルト云フコトニナリマスト、公債ヲ以テ稅
ニ充當スルト云フノト似タヤウナコトニナ
リハセヌカ、斯ウ云フ風ニ思フノデアリマ
ス、從ヒマシテサウ云フ考へ方ヲ避ケタイ
ト云フコトガ一ツアルノデゴザイマス、ソ
レカラ又其ノ貯蓄ニ付キマシテ後デ次期以
後ノ納稅ニ充當スルト云フコトニナリマス
ト、何時充當サレルカ、充當スル人ガアリ、
シナイ人ガアル、其ノ爲ニ此ノ貯蓄ノ實質
的ノ利廻ナドヲ決メル上ニモ非常ニ面倒ガ
起ッテ來ルト思フノデアリマス、從ヒマシテ
一旦貯蓄ヲシマシタモノハ、是ハ何處迄モ
貯蓄トシテ扱ッテ行キマシテ、後ノ稅トノ振
替リハ認メナイ、斯ウ云フ風ナヤリ方ノ方
ガ扱ノ上デモ簡單デ明瞭デアルト云フ風ニ
考ヘタ次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=78
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079・河田烈
○河田烈君 ソレハ意見ニ亙ルカモ知レナ
イデスケレドモ、非常ニ違フト思ヒマス、今
政府ハ百圓ノ納稅ヲスル代リニ百分ノ三百
ノ公債ヲ買ッタト思ヘバ宜イト云フ御話ガ
アッタガ、ソレデハ大變ナ行キ違ヒナンデ、
サウスルト納稅ノ觀念ト公債ト云フ觀念ト
マルデ混淆シテ來ル、併シソレハサウ云フ
趣旨ヂヤナイダラウト思フガ、懸念ガアリ
マスヨ、甚ダ其ノ點ニ於テ懸念ノアル立法ダト
思ヒマス、併シ暫クサウ云フ積リデアッテ、
其ノ三分ノ一ト云フモノハ公債ヲ買ッタト
同ジデアルガ、ソレヲ以テ納稅ニ充テルト
云フコトヲ認メテ居ル以上ハ後ノ公債ト云
フカ、貯蓄トカ云フモノヲ充當スルノハ當
然ノ歸結ニナルノヂヤナイカト思ヒマスノ
是以上ハ意見ノ相違ニナリマスガ、其ノ點
ハ寧ロ矛盾シテ來ハシナイカ、寧ロ充テテ
モ今言フ通リ後ノ納稅期ニ充當シテモ、租
稅ト云フモノト公債ト云フモノトノ觀念ノ
混淆ヲ來スト云フ懸念ハアリマスガ、ツレ
ナラバ話ハ一致スル、處ガソレガ公債ノ後
ノモノニ充テルト云フコトニナルト、今度
ハ公債ヲ以テ納付スルト云フヤウナコトニ
ナツテ、ソレハ如何ト思ッテ居ルノデアル
ガ、公債ニ當ルヤウナ貯蓄ヲ以テ納付スル
ト云フコトヲ認メテ居ルノダカラ、十七條
ハサウナッテコソ論理ハ一貫スルト思ヒマ
スガ、是以上ハ······其ノ趣旨ハサウ思フカ
ラ質問シタノデスガ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=79
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080・谷口恒二
○政府委員(谷口恒二君) 簡單ニチヨット
申上ゲテ置キマスガ、御話ノ點二ツニ分ケ
テアルト思フノデスガ、租稅ノ貯蓄ニ御理
解ノ點ガ一點、斯ウ云フ制度ヲ是認シタ場
合ニ於テ、次期以下ノ租稅ノ納付ニ充當サ
レタラ宜イヂヤナイカト云フ點ト二ツニ分
ケラレルカト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=80
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081・河田烈
○河田烈君 宜イカ惡イカ、サセタラ宜イ
ヂヤナイカト云フノデナクテ、サウ云フ歸
結ニ結局ナルノヂヤナイカト云フノデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=81
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082・谷口恒二
○政府委員(谷口恒二君) 其ノ二ツノ點ニ
アルト思ヒマスガ、十分御理解ヲ得テ居ル所
ト思フノデアリマスガ、一應先程カラ國民貯
蓄局長ノ御答ヘアリマシタ所モ併セマシテ
述ベルコトヲ御許ヲ願ヒタイト思フノデア
リマス、之ヲ極ク實際的ニ申上ゲマスト云
フト、先程カラ又甲種トカ乙種トカ、御話
ガ出テ居リマスガ、話ガ細カニナリマシテ、
コンガラガルヤウナ話デアリマスガ、三倍
ノ······假ニ千圓ノ稅金ヲ納メマス場合ニ此
ノ制度ニ依リマスト、三千圓ヲ拂ヒマスト
先程御話ノヤウニ、戰時納稅貯蓄證書ヲ政
府ガ渡シマシタ時ニハ三千圓ノ額面ヲ御渡
シ致シマス、サウデアリマスカラ、千圓ノ
納稅ノ際ニ、三千圓持ッテ行ッテ貯蓄制度デ
扱ッテ吳レロ、斯ウ仰シヤレバ、扱フ方ノ側
デハ、千圓ノ租稅ノ領收證書ヲ出ス筈デアリ
マス、ソレカラ三千圓ノ戰時納稅貯蓄證書
ヲ出ス譯デアリマス、ソレヲ持ッテ行ッタ方
ハ、稅モ納ッタシ、三千圓ノ貯蓄モ出來タ
ト云フ氣持デ御歸リヲ戴クコトニナル、ソ
レデ其ノ時ニ貯蓄ヲナサッタ方ノ懷ロ勘定
ハドウ云フコトカト申シマスト、千圓ノ納
稅ヲシナケレバナラヌ、ソコデ千圓ノ稅納
ヲシテ、サウシテ三千圓ノ貯蓄證書ヲ貰ッテ
御歸リニナリマスガ、是ハ二千圓貯蓄ヲシ
テ、後ノ千圓ト云フモノハ十二年間ニ出テ
來ル所ノ割引國債ノ差減額ト申シマスカ、
ソレニ相當スル利息ヲ十二年後ニ貰フト云
フ懷ロ勘定ニナルト思ヒマス、政府トシテ
ハ其ノ三千圓ノモノヲドウ扱フカト申シマ
スト、千圓ハ租稅收入ニ入レマシテ、後ノ
二千圓ハ先ノ方ニ書イテゴザイマスガ、戰
時臨時軍事費ノ關係ノ公債、大東亞戰爭ニ
關スル臨時軍事費ニ充テタモノトシテ、公
債發行額トシテ整理シテ行ク、尙細カク申
シマスレバ、現在割引國債ヲ發行シテ居リ
マス場合、發行ノ差減額ヲ年々ノ償還年限デ
分ケタモノヲ、償還資金トシテ入レテ整理シ
テ行ク、アレト同ジヤウナヤリ方デ整理シ
テ行キマシテ、十二年後ニソレヲ、三千圓
ヲ償還スルト斯ウ云フ恰好ニナルノデアリ
マシテ、斯ウ云フ大體仕組デアリマシテ、
先程カラノ御話デアリマスガ、納稅スル方ノ
方ノ立場ニスレバ、千圓ノ稅金ハ納ルシ、同時
ニ先々デ十二年後ニハ三千圓取レルガ、其ノ
三千圓ノ內ノ千圓ト云フモノハ、二千圓ニ對
スル利息ニ相當スル部分デアル、斯ウ云フ大體
懷ロ勘定ニナルト、斯ウ云フ考へ方デアリマ
ス、サウ云フノガ實際ノ制度デアリマスガ、若
シサウ云フ制度デアルトスルナラバ、次期以
下ノ納稅ニ充當セシムルコトガ當然出テ來
ルト云フ御話デアリマシテ、是ハ私モ先程
カラ伺ッテ居リマシテ、或ハサウ云フ筋カト
モ思ヒマスガ、併シ政府ノ今考ヘテ居リマ
スコトハ、次期以下ノ納稅ニ充當サセルト
云フコトハ考ヘテ居リマセヌ、唯三倍ノ場
合ニ十二年後ニ三千圓ヲ返スト云フダケノ
コトニ致シタイト云フコトヲ只今考ヘテ居
リマス、此ノ納稅貯蓄證書ト云フモノハ、讓
渡スルコトヲ得ナイト云フコトニ致シテ居リマ
シテ、特別ノ場合ニ日本銀行デソレヲオ金ニ換
ヘルト云フコトヲ致シマスガ、只今御話ノヤ
ウニ次期以下ノ納稅ニ充當セシメルト云フコト
ハ制度トシテハ今考ヘテ居リマセヌ、併シ
是ハサウ云フ筋合デアルト云フコトヲ一ツ
ノ御議論デアルト、尤モナ御說デアルト云
フコトハ私モ考ヘルノデアリマスガ、只今
ノ所デハサウ云フ風ニ考ヘテ居リマセヌ、將
來ノ制度ノ發展トシテハ、此ノ戰時納稅貯
蓄制度ト云フモノガ發展シテ參レバ、次期
以下ノ納稅ニ充當セシメルトカ、或ハ相續
稅ノ納稅ニ充當セシメルト云フヤウナコトニ
發展シテ行グカモ知レマセヌ、一ツノ御議
論デアルト申シマスト、尙疑ヲ挾ム餘地ヲ
殘シテ居ルカノ如キ申シ方デアリマスケレ
ドモ、筋合トシテハ御尤モデアルト存ジマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=82
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083・河田烈
○河田烈君 意見ニ亙ルコトデアリマスカ
ラ申上ゲマセヌガ、立法ノ趣旨ハ一應分リ
マシタカラ質問致シマセヌガ、チヨット念
ヲ押シテ置キマスト、今次官ノ御話ニ依ル
ト十九條ノ證書ハ三千圓ノ證書ヲ渡スケレ
ドモ、二十條ニ依ッテ返ス利廻計算等ハ二十
年目、假ニ簡單ニスル爲ニ、十二年目デスカ、
十二年目ニ三千圓ノ拂戾ヲスルト、ソレハ
此ノ間カラ屢〓出テ居ル凡ソ三步五厘位ノ
利〓ニナッテ返サレルト云フノハ、十二年ト
云フコトニシマスト、一一千圓ニ對シテ······、
又元ヘ戾ッテ、三千圓ニ租稅等ヲ込メテ返サ
とー、二千圓ニ對シテ三步五厘位ニ當ル
カ、矢張リ三千圓ニ對シテ三步五厘位ニナ
ルカ、是ハ細カク計算シナケレバ分ラナイ
デセウガ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=83
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084・谷口恒二
○政府委員(谷口恒二君) ソレハ二千圓ニ
對シテデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=84
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085・河田烈
○河田烈君 三千圓ハ返スガ、割合ハ二千
圓、ソレデ凡ソ三步五厘位ニナル、ソレデ
丁度前ニ貯蓄局長ガ言ハレタ方ガ正シカッ
タ譯デ、サウスルト十七條ノ租稅ト公債
トノ觀念ノ混淆ノ點ハ心配ガナクナルト同
時ニ、又逆戾リシテ、「アトラクション」ハ少
クナル、斯ウ云フコトニナリマスネ、趣旨
ハ分リマス、所得稅ガ掛ラナイカラ利益ニ
ハナルデセウケレドモ、非常ニ割合ガ少ク
ナル、行キ方ハ分リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=85
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086・三井清一郎
○三井〓一郞君 速記ヲ止メテ御相談申シ
タイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=86
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087・橋本實斐
○委員長(伯爵橋本實斐君) 速記中止
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=87
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088・橋本實斐
○委員長(伯爵橋本實斐君) 速記ヲ始メ
テ······ソレデハ午前ハ大分御勉强ヲ願ヒ
マシタカラ此ノ程度デ·····午後ハ一時半
カラ開會致シマス
午後零時十九分休憩
午後一時三十九分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=88
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089・橋本實斐
○委員長(伯爵橋本實斐君) 只今カラ國民
貯蓄組合法中改正法律案ノ委員會ヲ續行致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=89
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090・一條實孝
○公爵一條實孝君 甚ダ私素人ノ質問ヲス
ルノデスガ、斯ウ云フ例ヲ擧ゲテ御說明ヲ
願ッテ置キタイト思ヒマス、第四章ノ戰時納
稅貯蓄ノ場合ニ、假ニ此處ニ一萬圓ナラ一
萬圓ノ納稅ヲスル人ガアルトシテ、是ガ御
趣旨ニ應ジテ三萬圓ヅツ戰時納稅貯蓄ヲス
ル、其ノ人ハ比較的順調ニソレヲヤッテ行ク
場合ニ、何シロ十二年モ先ノコトデアリマ
スカラ、死ヌ場合ガアル、死ンダ場合ニ相
續稅其ノ他ノコトガドウ云フ風ナ形ニナリ
マスカ、ソレヲ一ツ御說明ヲ願ッテ置キタ
イ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=90
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091・氏家武
○政府委員(氏家武君) 戰時納稅貯蓄ヲサ
レマシタ方ガマダ拂戾ノ期限ガ參ラナイ中
ニ、相續ガ起ッタト云フ場合ニ、其ノ戰時納
稅貯蓄ヲ相續ガ起ッタ當時ノ價格デ評價ス
ルコトニナリマス、其ノ評價方法ナドハ
定ノ表ニ作ッテ置キマシテ、簡單ニ取扱ヘル
ヤウニシタイト思ヒマス、其ノ價格デ相續
財產ノ中ニ組入レラレルコトトナルノデアリ
マス、唯其ノ場合ニ相續財產ニ組入レラレ
ク、相續稅ハ納メナケレバナラヌト云フコ
トニナリマスト、此ノ貯蓄ヲ拂戾サナケレ
バ現金ガナイト云フヤウナコトノ爲ニ、納
稅ニ差支ガ起ルト云フヤウナ場合モ考ヘ得
ルノデアリマス、從ヒマシテ二十一條ニ「戰
時納稅貯蓄ハ之ヲ讓渡スルコトヲ得ズ」ト
云フ建前ヲ取ッテ居リマスケレドモ、「但シ
命令ノ定ムル所ニ依リ日本銀行ニ讓渡スル
ハ此ノ限ニ在ラズ」ト云フコトニ致シテ居
ルノデアリマス、ソコデ相續稅納付ノ爲ニ
現金ガ欲シイアノ戰時納稅貯蓄ヲ日本銀
行ニ讓渡シタイト云フヤウナ、斯ウ云フヤ
ウナ申出デガアリマシタ際ニハ、二十一條
ノ讓渡ヲ認メル場合ノ中ニソレヲ入レマシ
テ、其ノ價格デ日本銀行ガ買上ゲテ、之ヲ
納稅資金ニ使ッテ頂ク、斯ウ云フ方法ヲ認メ
タイト思ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=91
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092・橋本實斐
○委員長(伯爵橋本實斐君) 他ニ四章ノ御
質問ゴザマセヌカ、····ゴザイマセヌナラ
バ第五章ノ雜則及附則ヲ議題ト致シマス、
宜シウゴザイマスカ······ソレデハ第五章雜
則及附則ニ付テハ別ニ御質問ガナイヤウデ
ゴザイマスカラ、納稅施設法案ノ質問ハ此
ノ程度ニ致シマシテ、次ニ臨時資金調整法
中改正法律案ヲ議題ニ致シタイト思ヒマス、
條章モ餘リ多クゴザイマセヌカラ之ヲ一括
御質疑ノ議題ト致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=92
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093・下村宏
○下村宏君 調整法ノ第十條ノ五「貯蓄債
劵及報國債劵ヲ除クノ外命令ノ定ムル所ニ
依リ」云々トアッテ、ソレカラ頂戴シタ書類
ニハ「本條ノ證劵ノ劵面金額ノ種類、賣出
方法、償還期限竝ニ償還方法、割增金ノ金
額及其ノ附與ノ方法、割增金ノ支拂方法等
ニ付規定ヲ設クルコト」トアリマスガ、此
ノ內容ニ付テ當局ノ御見込ヲ承知シタイノ
デス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=93
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094・氏家武
○政府委員(氏家武君) 只今御承知ノヤウ
ニ割增金附債劵ト致シマシテ、貯蓄債劵ト
報國債劵ヲ發行致シテ居ルノデアリマス、
此ノ外ニ郵便貯金切手ト云フモノモアリマ
スルガ、貯蓄債劵及報國債劵ニハ相當多額
ノ割增金ヲ附ケテ居ルノデアリマス、之二
付キマシテ色々世間カラ希望ガ出テ居ルノ
デアリマス、モット割增金ヲ少クシテ當選率
ヲ多クシテハドウカ、殊ニ貯蓄債劵トカ報
國債劵ト云フモノヲ、隣保消化ト云フ形デ、
國民ニ消化シテ貰ッテ居ル際デアルカラ、五
千圓ダ一萬圓ダト云フヤウナ割增金モ結構
デハアルガ、サウ云フ割增金ヲ附ケレバ自
然當選率ガ惡クナルカラ、ソレヨリモモット
低イ割增金デモ宜シイ、成ルベク澤山ノ人
ニ當ルヤウニ仕組ンデクレト云フ要求ガア
ルノデアリマス、又逆ニ今段々金ノ値打モ
昔ノヤウデナクナッテ來テ居ルカラ、一萬圓
ト云ッテモサウ大イシテ魅力ハナイ、モウ
少シ之ヲ大キナ額ニシテクレ、當ッテモ當ラ
ナクテモ兎ニ角五圓ナリ十圓ナリノ金ヲ出
シテ、何萬圓ト云フ夢ヲ見セテ貰フト云フ
コトダケデモ宜イノダ、斯ウ云フヤウナ意
見モアルノデアリマスケレドモ、現在貯蓄
債劵、報國債劵ト云フモノハ相當澤山發行
サレテ居ルノデアリマスルカラ、今急ニ此
ノ兩方ノモノニ付キマシテ、割增金ヲ現在
ヨリモ非常ニ多クスルトカ少クスルトカ云
フコトハ旣發ノ債券ノ價格維持ト云フヤ
ウナ點カラ考ヘテ、餘程愼重ナ考慮ガ要ル
ノデアリマス、從ヒマシテ先程申上ゲマシ
タヤウナ方面ノ希望モ容レル爲ニハ、現在
ノ貯蓄債劵或ハ報國債劵ト別個ノ債券ヲ出
スト云フヤウナ必要モアラウカト思フノデ
アリマス、サウ云フヤウナ場合ノ爲ニ、此
ノ條文ヲ追加致スコトニ致シタノデアリマ
スルガ、唯是ハ兎ニ角割增金ト云フモノデ
貯蓄心ヲ刺戟シテ行カウ、金利ト云フヤウ
ナモノニハ餘リ魅力ヲ持ッテ居ラナイ方面
ノ人カラ購買力ヲ吸收シヨウト云フ場合
ニ、斯ウ云フ債劵ヲ使ハウト考ヘテ居ルノ
デアリマスカラ、大體第十條ノ五ニ依ッテ發
行セシメマス所ノ債劵或ハ證劵ト云フヤウ
ナモノハ、其ノ時ノ情勢ニ依リマシテ、又
使ヒ方ニ依リマシテ、色々ト額面ニ付キマ
シテモ亦割增金ニ付キマシテモ考ヘテ行キ
タイト云フ風ニ思ッテ居ルノデアリマス、卽
チ何カノ記念日ニ限ッテ發賣スルトカ、或ハ
貯蓄强調週間中ダケ發行サセルトカ、或
工場方面ノ人ニダケ賣リ出ストカ、色々ト
考ヘヤウガアルト思フノデアリマスガ、其
ノ時々ノ事情ニ依リ、其ノ債劵ヲ賣リ出ス
方面ナドニ依リマシテ、豫メ一定シテ置カ
ズニ、色々ナモノガ發行出來ルト云フヤウ
ニシテ行キタイト考ヘテ居ル次第デアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=94
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095・下村宏
○下村宏君 御話ノ趣ハ承知シタノデスガ、
私共國民カラ所謂「ツエックロッテリー」ト
云フカ、「ヨーロッパ」デハ殆ド何處ノ國デ
モヤッテ居ルガ、癩ノ患者ニ對スル施設ト
カ、ソレカラ近頃デ言ヘバ結核ノ病床ヲセ
メテモウ二萬床位殖シタイトカ云ッテ、ソ
レモ一年別ニスレバ極メテ僅カヅツシカ出
來ヌヤウデアリマスガ、今厚生問題ガ非常
ニヤカマシイシ、殊ニ結核ナドニ付テハ病
床モナシ、斯ウ云フ時局デ一般ニ體位ノ下
ル時ニハ、ナカ〓〓長イ年度割ナドデハ待
チ切レナイ事態モ多イト思フノデ、元々誰
モ籤ガ當ラウト云フ算盤デ買フノヂヤナイ
ノデスカラ、寧ロ寄附ヲシテ吳レト云フノ
ダガ、唯ノ寄附ト云フノヂヤ魅力ハ一ツモ
ナイカラ、サウ云フ魅力ヲ附ケテ、此ノ際
諸君ハ一ツ結核患者ノ爲ニ金ヲ寄附シテ吳
レト云フ意味デ、比較的、籤ノ札數ナリ額
ハ色々ト見方ガアリマセウガ、事柄ハ何ヲ
ヤルノカト云ヘバ、之デ靑年層ナドニ非常
ニ多イ結核患者ヲ少クスルノダ、其ノ費用
ノ爲ニ君等ハ喜捨シテ吳レト云フヤウナ聲
ヲ揚ゲテ、所謂目的富籤ト云ヒマスカ、サ
ウ云フコトヲ、無論當局デハ色々御考ニナツ
テ居ルノデアリマセウガ、サウ云フ趣旨ニ
性った、又ソレニ相應シイヤウナ方法モ、之
ヲ認メレバ矢張リヤリ得ルノヂャナイカ、
ソレカラ衆議院ナリ貴族院アタリデモ能ク
問題ニ出テ居ッタノハ航空證劵、詰リソレニ
依ッテ飛行機ヲ造ル、是ハ屢〓問題ニ出テ居リ
マシタ、又或ハ近頃ニナレバ船舶ト云フモ
ノガ非常ニ要ルノデスカラ、サウ云フ船舶
トカ飛行機トカ云フモノニ喜捨スルト云フ
氣持デ、此ノ割增金制度ヲ擴充シテ行キ、
方デハ今言フ結核患者ノ施設トカ、其ノ他
社會政策ニ相應シイモノガ澤山アルカラ、
サウ云フモノヲ矢張リ特ニ條文デ謳ッテモ、
私ハ宜イト思フノデスガ、若シ此ノ第十條
ノ五ノ規定ニ依ッテ、サウ云フ點モ考慮シ
テヤルコトニナレバ、極メテ時局ニ副ッタ
ヤリ方ヂヤナイカト思ヒマス、當局デモ
富籤ト云フ問題ニ付テハ、色々ト遠慮ヲス
ルト云フカ、多少富籤ト云フ名前カラ懸念
サレテ居ル點モアルヤウデスガ、又嘗テハ
貴族院デ此ノ問題ガ······航空證劵デアッタ、
カト思ヒマスガ、豫算委員會デ出テ居リマ
シタガ、ドウモサウ云フ金ナンカ當ッテモ持
ツノハ汚ラハシイトカ、宜クナイトカ云フ
ヤウナ反對ノ聲ヲ偶〓私ハ聞イタコトガアリ
マス、併シ何モ當籤シテ當ッタカラト云ッテ、
其ノ金ヲ自分ガ皆使ハナケレバナラヌコト
ハナイノデスカラ、ソレヲ寄附シヨウトド
ウシヨウト、ドウニデモ使ヘルノデ、私ハ
此處へ色々ナ材料ヲ持ッテ來テ居リマスガ、
今迄報國債劵ナドデ當ッテ、其ノ割增金ヲド
ウ善處シテ居ルカト云フ例ハ幾ラデモアル
ノデス、是ハアナタノ方デモ隨分御調ニナッ
テ居ルト思ヒマス、今日バモウドウセ全部
白イ黑イト云フ問題ハナイノデ、ドウシタ
ナラバ氣持好ク斯ウ云フ際ニ資金ヲ吸收出
來ルカト云フコトガ問題デアッテ、又其ノ吸收
スルコトガ延イテ幾分トモ物價ノ騰貴ヲ止
メ得ルト云フ大キナ效果ガアルノデスカ
ラ、是ハ一ツ勇敢ニ思ヒ切ッテ此ノ方法ヲ
擴充シテヤッテ戴キタイト云フノガ私ノ希
望デアリマスガ、一ツ次官カラ所信ヲ承リ
タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=95
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096・谷口恒二
○政府委員(谷口恒二君) 富籤乃至割增金
ノコトニ付キマシテ、特ニ富籤ノコトニ付
キマシテハ、下村サンカラモ豫テ御意見ノ
アル所ハ承知致シテ居ルノデアリマシテ、
豫テ承ッタ所及ビ只今御話ノ點ニ付キマシ
テハ、御同感申上ゲル點ガ非常ニ多イノデ
アリマス、然ルニサウ云フ御意見ヲ承リマ
シテカラ後、既ニ二年モ三年モ經ッテ居ル
ノデアリマスルガ、未ダニソレヲ實行スル
コトニ至リマセズシテ、漸クノコト貯蓄債
劵ヤ報國債劵ヨリモモウ少シ踏ミ出シタヤ
ウナ程度ノ割增金ヲ附ケルト云フヤウナコ
トノ案ヲ具體化シヨウト云フヤウナ、只今
程度デアリマシテ、ドウシテモ元金ヲナク
サセル所ノ富籤、今度フ十條ノ五ニ提案致
シテ居リマス制度ナドト富籤トノ差異ハ
元金ヲナクスルカ、シナイカト云フ點ニ要
點ガアルノデアリマスガ、元金ヲナクスル
富籤ト云フ斯ウ云フ所マデ、マダドウシテ
モ實行的ノ案ガ決メ得ナイデ居ルノデアリ
マス、其ノ理由ト致シマシテハ、富籤ニ關
シマシテハ、矢張リ道義的ノ批判ト云フモ
ノガ相當アルト云フコトヲ感ジテ居ルノデ
アリマス、ソレ等ノ道義的ノ考ヘ方ニ付キ
マシテハ、固ヨリ之ニ承服セザルヲ得ナイ
點ガ多イノデアリマスガ、併シ斯ウ云フ時
局ノ下ニ於キマシテ、從來ノ道義觀ヲドウ
云フ風ニ思ヒ諦メテ、ソレト妥協シテ行クカ
ト云フコトニ付テハ、考ヘ方ハナイコトハ
ナイダラウト思フノデアリマスガ、何レニ
致シマシテモ、道義觀ト云フモノガマダ其
處ニアルト云フコトガ一ツ感ジラレルノデ
アリマス、ソレカラ又之ニ付キマシテハ歲
入ト云フ點カラ致シマシテ、考ヘテ見マス
ト云フト、サウ非常ニ大キナモノヲ望ムコト
ハ出來ナイ、併シ富籤ニ付キマシテハ、歲
入ノ問題ノミガ要點デハナイノデアリマシ
テ、只今下村サンノ御話ノ中ニモアリマシ
タノデアリマスガ、購買力ヲ玆ニ吸收スル、
或ハ玆ニ留置スル、少クトモ留置スルト云
フ所ニ非常ニ意味ハアルノデアリマスガ、
一ツノ方策トシテ考ヘマス場合ニ、國家ノ收
入ト云フモノガ差程上ルモノデハナイ、富
籖ノ賣上代金ノ中カラ、矢張リ還付シナケ
レバナラヌモノガ相當ノ額ニ上ボリマシ
テ、政府ノ歲入トシテ、殘ル部分ガ割合ニ
多クナイト云フ所ガ魅力ヲ少ナカラシメテ
居ル點デアルノデアリマス、若シ之ヲ實行
致スコトニ相成リマスレバ、是ハ結核デアル
トカ、或ハ癩デアルトカ、或ハ航空デアル
トカ、或ハ又船舶ト云フヤウナ如キモノハ
一ツノ方法デゴザイマセウ、サウ云フモノヲ
目的トシテ、ソレニ集中シテ、富籖、普通
ノ道義觀カラハ許サレナイヤウナ富籖ト云
フヤウナモノヲ致シマシテ、今日ノ時局ニ
合フヤウニ購買力ノ吸收ヲシ、歲入ヲ一部
分上ゲルト云フコトヲヤルニ付キマシテハ、
サウ云フ目的ヲ定メルト云フコトガ一ツノヤ
リ方デアルト思フノデアリマス、富籖ニ賣
出シマシタ時ニハサウ云フ目的ヲ定メテ
ヤルコトモ宜シカラウト思ヒマスガ、國民
貯蓄ノ一般ノ手段ト致シマシテ、割增金附
ノ證劵、元金ヲナクシナイ普通ノ制度トシ
テヤリマス場合ニ於キマシテハ、此ノ特定ノ
目的ニ使フト云フコトニ付キマシテハ尙亦
考慮ヲ要スル點ガアルノデハナイカト考ヘ
ルノデアリマス、國民貯蓄ノ方法ニ依リマ
シテ、得マシタ資金ト云フモノハ矢張リ
般ノ公債消化資金ナリ、或ハ生產擴充資金
ニ使フベキデアッテソレカラ上ゲマシタ資
金ヲ、特定ノ目的ニ使フト云フコトニ付キ
マシテハ、是ハマダ考慮スベキ、〓究スベ
キ點ガ殘ッテ居ルカノヤウニ考ヘテ居ルノ
デアリマス、併シ富籖ニ賣出シマシタ場合
三、矢張リ特定ノ目的ヲ決メマシテ、サ
ウシテ其ノ目的ノ爲ニ集中スルト云フコト
ニ依リマシテ、道義的ノ批判ト云フヤウナ
モノトノ調和ヲ圖ルト云フコトガ、極メテ
適當デハナイカト云フ風ニ考ヘテ居ルノデ
アリマス、ソレデ此ノ富籤ノ制度ニ付キマ
シテハ、外國ニアルコトモ承知致シテ居ル
ノデアリマス、近クハ又滿洲ニ於テモ、
サウ云フコトヲ實行致シテ居リマス、
ソレカラ外地ニ於テハ、富籤ト云フヤウナ
ヤリ方ガ購買力ノ吸收ニ付テ、非常ニ
實效ガアルノデハナイカト云フヤウナコト
モ考ヘテ居ルノデアリマス、差當リ將來若
シ、富籤ヲ實行スルト云フヤウナコトニ立
至リマスナラバ、試ミニ外地ニ之ヲ始メテ、
サウシテ漸次其ノ推移ヲ見ルト云フノモ一ツ
ノ方法デハナイカト云フヤウニ考ヘテ居ル
ノデアリマス、斯樣ナ次第デアリマシテ、
富籤ノ說ニ付キマシテハ、事變開始以來、殊
ニ兩三年、各方面ニ於テモ、具體的ノ意見
トシテ、之ノ實行ヲ慫慂サレテ居リマス部
分モアルノデアリマスガ、只今申述ベマシ
タヤウナ、彼此諸點ヲ考ヘ合セマシテ、未ダ
富籤ヲ發行スル時デハナイ、其ノ時ニ至ッテ
居ナイヤウニ考ヘテ居リマシテ、今囘ハ此
ノ十條ノ五、程度ノ割增金ヲ少シ度ヲ高メ、
又其ノ發行ノ制限ヲ擴ゲマシテ、之ニ依リ
マシテ斯カル種類ノ方法ニ依ッテ購買力ノ
吸收ヲ便トスルヤウナ方面ニ對シテ、國民
貯蓄ノ增强ヲ圖ル手段ニ致シタイト思フノ
デアリマス、前々ヨリ承ッテ居リマス御意見
ニ付キマシテハ、之ヲ考究ノ材料ト致シマ
シテ、彼此考ペルコトニ努メテ居ルノデア
リマスガ、只今ノ所デハ其ノ時期ニ至ラナ
イノデアリマス、併シナガラ此ノ富籤ト云
フコトニ付キマシテハ長所モアルコトハ認
メザルヲ得ナイト思フノデアリマスカラ、
今後引續イテ考究ハ續ケタイト思フノデア
リマス、今日ノ場合ニ於キマシテハ、十條
ノ五程度ノ所ニ落付イテ居ルヤウナ次第デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=96
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097・下村宏
○下村宏君 御話ヲ諒ト致シマスガ、附加
ヘテ申シテ置キマス、學說ダカラドウデモ
宜イヤウデアリマスガ、我々學校デ學ンデ
居ッタ時分ハニ「ロッテリー」、「チンセン·ロッテ
リー」ト云フモノガ今言フ割增金ニ當ッテ居
ルノデ、富籤ト云フ名前デ出タモノニハ色々
道義的ノ問題モ强調サレルコトガアレバ、
何カ適當ナ名前ニ振替ハルコトモ考ヘラレ
ルノデスガ、御話ノヤウニ元金モ割增ニ皆
入レルノト、元金ハ保留サレテ、利子ダケ
入レル、所謂富籤ト云フモノニハ二ツノ說ガ
アルト思ヒマス、今度ハ、詰リ段々利子ヲ
少ナクシテ行ッテ、丁度「リミット」ヘ行ケバ、
元金ダケハ返スガ、モウ利子ハ一切見ナイ
ト云フヤウナコトガ今迄ノ勸銀ナドノ貯蓄
債劵ヲ初メトシテ考ヘラレルノデスガ、私
ノ今ノ目的富籤ト云フコトハ、目的ヲ謳フ
コトニ依ッテ、何モ前借ヲヤルト云フ目的
ヂヤナイ寄附シテ吳レ、喜捨シテ吳レ、ソ
レダカラ利子ハモウ附カヌゾ、元金ダケハ
返シテヤルガ、其ノ利子ニ當ル總額ヲ皆割
增ノ方ニ繰入レルノダカラト云フノガ「リミッ
ト」デ、ソレカラ段々元金ニ喰ヒ込ンデ行
ク、極ク理窟ポク言ヘバ、元金モ半分ダケ
ハ返シ、半分ダケハ利子ノ方ニ廻スト云フ
コトハマダ外ニハ例ガナイノデスガ、段階
トシテハサウフ云フコトモ理窟ノ上デ考ヘ
ラレヌコトハナイト思フ、無論滿洲デモヤッ
テ居レバ、支那デモヤッテ居ル、ソレカ
ラ最近ハ昭南島デモヤッテ居ルコトガ新聞
ニ見エテ居リマスガ、ソレカラ殊ニ近頃「ソㄴ
聯デハアヽ云フ獨「ソ」戰ニナッテ、ノ新手ノ財
源トシテ非常ニ大仕掛ノ富籤ノ制度モ持ツ
テ居ルヤウデアリマス、斯ウ云フ時局ダカ
ラ言ツテ居ルンデ、時局ガ濟ンデシマヘバ
止メレバ宜イノデ、大東亞戰ヲ完遂センナ
ラント云フ時ニ、段々是カラ先戰ガ愈〓深深
ニナリ、戰線ガ擴マッテ來レバ一層豫算モ膨
脹サレルノデアラウト思ヒマス、又日本銀
行ノ發行紙幣ニシテモ增ス一方デアラウト
思フ、サウスルト物價ハドウシテモ高クナッ
テ行カザルヲ得ナイノデスカラ、戰ガ此ノ
程度デ片付イテ行ケバ是ハ問題ナイガ、サ
ウデナイトシタナラバ、唯道義トカ、ドウト
カ云フコトヲ言ッテ居ル遑ハ私ハナイト思
ヒマス、サウ云フコトナシニ時局ガ收拾出
來レバ是程有難イコトハ私共ハナイト思フ、
ナカ〓〓此ノ大東亞戰ハサウ簡單ニハドウ
モ濟ムモノト思ハナイ、ソレラノ點ハ一ツ十
分考ヘテ戴カナケレバナラズ、ソレカラ厚
生省ノ、是ハ私共唯私ノ話デアリマスガ、今
ノ結核ノ患者ヲ無クスルト云フ問題ニ觸レ
テ、サウ云フ特殊ノ方法デ氣持良ク相當ノ
財源ヲ得ルコトガ、サナキダニ殖エテ行ク
戰時ノ豫算ノ上ニ何等カノ緩和ノ方法ニナ
リハシナイカト云フヤウナコトデ、昨年ノ
議會ナドノ時ニハ私共ノ私話デハ話ガアッタ
ノデス、全體ドウ云フコトニナッテ居ルカ知
リマセヌガ、厚生省カラハ可成リ相當ナ結核
ノ豫防又治療ニ關スル豫算ハ出テ居リマス、
ケレドモアレデ宜イカト言ヘバ無論足リナ
イノデ、ソレラノ點ニ付テモ更ニ一ツ審議
ヲ進メラレテ、何等カノ途ヲ講ジテ戴キタ
イト思ヒマス、是カラ先ハ意見ニナリマスカ
ラ、是ダケノコトヲ申添ヘテ私ノ質問ヲ終
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=97
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098・橋本實斐
○委員長(伯爵橋本實斐君) チヨット此ノ
際伺ヒマスガ、此ノ法案ヲ拜見致シマスト、殆
ンド各條ニ或ハ他ノ命令ノ定ムルモノニ對
シテトカ、命令ヲ以テ定ムルトカアルノデ
スガ、斯ウ云フコトニ付テ一々御說明モ煩
雜トハ存ジマスガ、皆サンノ御參考ニナレ
バ宜イト存ジマスガ、何カ御說明願ヘマセ
ヌデセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=98
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099・谷口恒二
○政府委員(谷口恒二君) 御尤モデゴザイ
マシテ、御手許ニ書類トシテ御廻シ致シテ
ゴザイマスガ、併シ其ノ書類ニ基キマシテ
一應說明致シマス方ガ宜シイカト思ヒマス
カラ簡單ニ御說明申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=99
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100・橋本實斐
○委員長(伯爵橋本實斐君) 煩雜デナケレ
バ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=100
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101・氏家武
○政府委員(氏家武君) 第十條ノ三デゴザ
イマスガ、是ハ新種ノ預貯金ヲ扱ハセルト
カ、或ハ貯蓄增强ノ施設ヲ命令スルト云フ
權能ヲ得ヤウト云フ規定デゴザイマス、ソ
レデ此ノ命令ヲ受クル者ハ貯蓄ヲスル國民
デハアリマセヌ、貯蓄ヲ取扱フ所ノ機關ニ
命令ヲスルト、斯ウ云フコトニナルノデゴ
ザイマス、ソコニアリマスヤウニ銀行、信
託會社、保險會社、市街地信用組合、斯ウ
云フモノノ外ニ市町村農業會デアルトカ、
或ハ無盡會社デアルトカ、又貯蓄組合法ニ
規定ノアリマシタ勤務先ノ預ヶ金ヲ扱フト
カ云フヤウナ場合ノ勤務先トカ、サウ云フ
ヤウナモノガ命令ヲ受ケルト云フコトニナ
ルノデアリマス、只今考ヘテ居リマス新種
ノ預金ト致シマシテ早急ニ實行ニ移シタイ
ト思ッテ居リマスノハ、國債貯金ト云フモ
ノデゴザイマス、是ハ今日國債ガ發行サレ
テ居リマシテ、其ノ中所謂郵便局賣出ト云
フ「マーク」ノ入ッタモノハ隨分大衆ノ間ニ行
渡ッテ居ルノデアリマス、殊ニ隣保消化ナ
ドニモ相當之ヲ使ッテ居ルノデアリマス、
所ガ是ガ金額ノ上ニ色々ノ制限モアリマス、
ソレカラ小額ノモノヲ澤山印刷シナケレバ
ナラナイ、印刷能力ノ關係モアリ、紙ノ問
題モアルノデアリマス、又之ヲ配給スル上
ニ非常ナ手數モ掛カルノデアリマス、從ヒ
マシテ國債貯金ト云フ特別ノ貯金ヲ認メマ
シテ、サウシテ國債ヲ買ハナイケレドモ、
貯金ヲシタ時カラ國債ヲ買ッタト大體同ジ
ヤウナ利息ヲ付ケテ貰フ、但シ是ノ拂戾シ
ヲ受ケル場合ニハ現金デハ拂戾シマセヌデ、
國債ヲ以テ渡ス、斯ウ云フコトニ致シタイ
ト考ヘテ居ルノデアリマス、之ニ依リマシ
テ先程申上ゲマシタヤウナ小額國債ヲ發行
スルコトニ伴フ所ノ色々ナル手數トカ、或
身
ハ印刷能力、或ハ紙ト云フヤウナモノノ節
約ニモ資スルコトガ出來ル、斯ウ云フ貯金
ヲ始メマシタ際ニ、是ノ取扱方ヲ貯蓄取扱
機關ニ對シテ命ジマシテ、サウシテ後ニ出
テ居リマスヤウナ規定ニ基キマシテ、場合
ニ依ッテハ補償金、補助金ト云フヤウナモノ
モ出シテヤル、又其ノ預貯金ニ付テノ免稅
ノ計ヒモ出來ル、斯ウ云フヤウナコトニ致
シタ次第デゴザイマス、十條ノ四ハ是ハ貯
蓄證劵ヲ發行シタイト云フ考ヘ方ナノデゴ
ザイマス、ドウ去フモノニ發行サセルカト
云フコトハマダハッキリ致シテ居ラナイノ
デアリマスルガ、斯ウ云フ證劵ノ發行ナド
ニ經驗ヲ持ッテ居リ、又色々組織モ持ッテ居
リマス日本勸業銀行ト云フヤウナモノモ適
當ナ機關ノ一ツデアルト云フ風ニ考ヘテ居
ルノデアリマス、此ノ貯蓄證劵ノ劵面金額
ハドウ云フモノニスルカト申シマスト、是
モ一圓位ノモノ、五圓位ノモノ、勿論必要
ダト思フノデアリマスガ、場合ニ依リマシ
テハ一圓ヨリモット小サイ金額ノモノモ出
シタイト云フ風ニ考ヘテ居リマス、サウシ
テ此ノ證劵ヲ以チマシテ之ヲ貯蓄ニ代ヘル
ト云フ場合ニハ、其ノ貯蓄ハ成ルベク長期
固定性ノ貯蓄ニ代ヘルト云フヤウニ致シタ
イト考ヘテ居ルノデアリマス、序デナガラ
何ノ爲ニ斯ウ云フ貯蓄證劵ト云フノガ必要
デアルカト申シマスト、現在債劵或ハ小額
國債、是ガ例ヘバ贈答用ニ使ハレルトカ、
或ハ賞品トシテ使ハレルトカ、或ハ記念日
ナドノ貯蓄トシテ使ハレルトカ、神社ニ參
拜シタ序デノ神前貯金ト云フヤウナコトニ
使ハレルトカ、色々使ハレテ居ルノデアリ
マスガ、何ト申シマシテモ賣捌キノ期間ガ
定メテアリマシテ、何時デモ何處デモ買へ
ルト云フコトニナッテ居ラナイノデアリマ
ス、又金額モ五圓トカ十圓ト云フ風ニ決ッテ
居ルノデアリマスルカラ、丁度其ノ金額
ニ合ハナイ金額デハ求メルコトガ出來ナイ
ト云フヤウナ不便モアリマスルノデ、サウ
云フ不便ヲ之ニ依ッテ除去シテ行キタイ貯
蓄シタイト思ッタ時ニ、其ノ機會ヲ逃サズ
ニ貯蓄サシテヤリタイ、サウ云フ考ヘ方ナノ
デアリマス、十條ノ五ハ先程申上ゲマシタ
ヤウニ割增金附ノ債劵證劵デゴザイマシテ、
先程御說明申上ゲマシタヤウニ、劵面金額
奧
ノ種類トカ或ハ賣出方法、償還期限、割增
金ノ金額、割增金ノ支拂方法、斯樣ナ事柄
ハ此ノ債劵ヤ證劵ヲドウ云フ方面ニ賣捌ク
カト云フコトニ依ッテ、色々ト變ヘテ行キタ
イト思ヒマスノデ、玆デ申上ゲルコトガチヨット
出來ナイノデアリマスガ、此ノ債劵ヲ
賣ラセル、發行サセルモノ、是モ誰デナケ
レバナラヌト云フ譯デハナイノデアリマス
ルガ、矢張リ斯ウ云フ事務ニ慣熟シテ居リ
マスル所ノ、日本勸業銀行ト云フヤウナ所
ガ適當デハナイカト思ッテ居ルノデアリマ
ス、尙此ノ證券ノ發行ニ依ル收入金ハ、命
令ノ定ムル所ニ依ッテ之ヲ運用スベシトア
ルノデアリマス、此ノ命令ノ內容ト致シマ
シテハ、例ヘバ國債ヲ保有サセルトカ、或
ハ大藏省預金部ニ預入サセルトカ云フヤウ
ナコトガ考ヘラレルノデアリマス、ソレカ
ラ十條ノ七デゴザイマス、是ハ增割金附ノ
預金ノ取扱ヲサセヨウ、斯ウ云フコトナノ
デゴザイマス、外ノ例ヘバ滿洲國アタリデ
モ、斯ウ云フ預金ヲヤッテ居ルヤウデアリマ
ス、ヤリ方ニハ色々ナヤリ方ガアルノデゴ
ザイマシテ」、今差當リドンナ形ノモノヲヤ
ルト云フコトニハ決メテナイノデアリマス、
是モ其ノ時ノ情勢ニ依リマシテ、色々考へ
樣ガアルヤウデゴザイマスガ、扱ハセマス
先ハ矢張リ銀行ト云フヤウナ所ヲ考ヘテ居
ルノデアリマス、十條ノ八ハ是ハ滅免稅ノ
規定デゴザイマシテソレ〓〓〓證證、預金
ニ付キマシテ、外ノモノトノ權衡ヲ考ヘマ
シテ適當ナ率ヲ定メテ行キタイ、左樣ニ考
ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=101
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102・田中豐
○政府委員(田中豐君) 十五條ノ二以下ノ
命令案ノ內容ヲ御說明申上ゲマス、十五條
ノ二ハ國民貯蓄ノ增强ニ伴ヒマシテ、
般大衆ノ小額國債デアルトカ、其ノ他貯蓄
報國債劵等ノ所有額ガ非常ニ增加致シマシ
テ、中ニハ已ムヲ得ズ換價シナケレバナラ
ナイ者モアリマシテ、サウ云フ際ニ買上機
構モ現在ハ整備サレテナイ爲、非常ニ安イ
値デ賣ラネバナラヌト云フヤウナ場合モア
ルト云フヤウナコトニ鑑ミマシテ、斯カル
大衆ガ所有致シマシタ小額國債デアルトカ、
貯蓄債劵、報國債劵等ノ簡便ナ、且確實ナ
賣買機構ヲ整備セムトスル爲ニ設ケル規定
デアリマスガ、併セテ唯單ニ買上制度ノミ
ナラズ、賣却モ致シ、或ハ賣買ノ代理、若
シクハ媒介モ致スト云フヤウナコトヲ規定
致シテ居ルノデアリマス、其ノ命令ノ內容
ト致シマシテハ、先ヅ十五條ノ二ノ初メニ
命令ノ定ムル所ニ依リ賣買ヲ命ジ又ハ代理
ヲ命ズルトアリマス、此ノ命令ノ定ムル所
ニ依リマシテハ、例ヘバ買上ヲ爲ス場合ニ
御手許ニアリマス命令案ノ內容ノ方ノ順序
デ御說明申上ゲマスト、本條文ハ命令ノ定ム
ル所ニ依リ銀行、信託會社、證劵引受業者、
其ノ他ノ者ニシテ命令ノ定ムル者ニ對シ命
ズルト云フコトニナッテ居ルノデアリマス
ガ、本法ニ依ッテ此ノ命令ヲ受ケル者ノ範
圍ハ、現在ハ差當リ銀行、信託會社等ト致
シマシテ、是等ノ本支店等ニ命令ヲ出シマシ
テ、此ノ賣買ノ取扱ヲ致サセタイト考ヘテ
居ル次第デアリマス、次ニ先程申上ゲマシ
タ命令ノ定ムル所ニ依リ賣買ヲ爲サシメル、
買上制度ノ內容ト致シマシテハ、買上ヲ致
シマスル場合ハ、例ヘバ銀行ガ澤山國債ヲ
持ッテ居ル、之ヲ買ッテ吳レト言ッタヤウナ
時ニ致スノデハアリマセヌ、先程申シタヤ
ウナ趣旨デ本制度ヲ設ケマスガ爲ニ、金融機
關等以外ノ一般大衆ガ持ッテ居ル國債、事變
債劵等ヲ買入レテ吳レト云フ申出ガアッタ
際ニ適用致シマス、或ハ又其ノ買上ヲ致ス
ベキ證劵ノ種類、國民貯蓄、卽チ國債ニ付キ
マシテハ額面千圓以下ノ國債、其ノ他債劵
ニ付キマシテハ貯蓄、報國債劵デアルト云フ
ヤウナ規定ヲ致シタイト存ズル次第デアリ
マス、此ノ第十五條ノ二ノ第二一行目ニアリ
マス「政府ノ指定スル法人ノ爲ニ有價證劵
ノ賣買ノ代理若ハ媒介ヲ爲ス」ト申シマスノ
ハ、是ハ例ヘバ國債ニ付キマシテハ、日本
銀行ノ爲ニ先程申シタ銀行信託會社ノ本支
店ガ代理トカ賣買ヲ爲スト云フヤウナコト
ニ致シ、又貯蓄債劵、報國債劵ニ付キマシテ
ハ日本勸業銀行ヲ指定シタイ、斯樣ニ考
ヘテ居ル次第デアリマス、次ニ第十五條
ノ三ハ、前條ノ賣却ヲ爲ス爲ニ必要ガアリ
マスナラバ命令ノ定ムル者ヲシテ一定ノ證
劵ナドヲ保有セシメル、斯ウ云フ規定ナノデ
アリマスガ、其ノ次ノ頁ノ初メニアリマスル「命
令ノ定ムル所ニ依リ銀行、信託會社、證劵引受
業者其ノ他ノ者ニシテ命令ノ定ムルモノ」
トアリマス、此ノ命令ヲ受ケル者ノ範
圍ハ、當分ノ內日本銀行本支店トシ、
此ノ本支店ガ保有ノ義務ヲ持ツト云フ
コトニ致シタイト思ヒマス、ソレカラ其ノ
前ノ、命令ノ定ムル所ニ依リ保有スルトア
リマス、此ノ命令ノ內容ト致シマシテハ、
保有スベキ證劵ノ種類デアルトカ數量トカ
ヲ定メタイト考ヘテ居ル次第デアリマス、
次ハ第十五條ノ四デ、只今申上ゲタヤウナ
コトヲ命令致シマシタ際ニ、賣買若ハ保有
ニ因ッテ損失ヲ生ズル、或ハ經費ガカカル
ト云ッタヤウナ場合ニ、政府カラ補助金ヲ出
シ或ハ損夫ノ補塡ヲ致スコトニナッテ居ル
ノデアリマスガ、命令ノ定ムル所ニ依リ斯
ウ云フコトヲスルト云フ、其ノ內容ト致シ
マシテハ、補助金ノ交付或ハ損失補塡ノ手
續或ハ損失ノ基準······通常生ジ得ベキ損失
ヲ補塡スルト云ッタヤウナ損失ノ基準ト云
フヤウナコトニ付テ規定ヲ設ケタイト存ジ
マス、次ニ第十五條ノ五デアリマスガ、是ハ
株式ノ市價安定ノ爲メノ規定デアリマス、
御承知ノヤウニ現在戰時金融金庫ニ於キマ
シテ、株式ノ市價安定上必要ナラバ株式ノ
賣買ガ出來ルト云フコトニナッテ居ルノデ
アリマスガ、株式ノ市價ガ下リマシタ際ニ
ハ、戰時金融金庫ガ資金ノ手當サヘアレバ
幾ラデモ買ッテ市價ヲ維持スルト云フコト
ガ可能ナノデアリマスガ、昂騰ノ際ニ於キ
マシテハ現ニ株式ヲ持ッテ居ナイト、之
ヲ賣ッテ値ヲ下ゲテ適當ナ所ニ安定セシメ
ルト云フ作用ガ十分ニ營メナイ、斯樣ナ憾
ガアルノニ鑑ミマシテ、今囘此ノ戰時金融金
庫等ノ昂騰時ニ於ケル賣買操作ヲ更ニ有效
ナラシメル爲ニ、豫メ株式ヲ充實サセテ置
カウ、斯樣ナ趣旨カラ、適當ナ必要トスル
株式ヲ多量ニ所有スル者ニ對シテ命令ヲ出
シテ、戰時金融金庫其ノ他ニ讓渡セシメヨ
ウト云フノデアリマス、本條ニ依リマシテ
命令ノ定ムル者ニ對シ讓渡命令ヲ出スノデ
アリマスガ、此ノ命令ノ定ムル者ハ、玆
アリマス金融機關等ニハ勿論出シマスシ、
其ノ他命令ノ定ムル者ト致シマシテ、一定
ノ株數ヲ限ッテ相當澤山株式ヲ所有シテ居
ル者、或ハ特ニ必要トスル株······特定ノ銘
柄ヲ相當數以上所有シテ居ル者ト云フヤウ
ナ者ニ對シテ、此ノ命令ヲ出シ得ルヤウニ
規定ヲ致シタイト存ズル次第デアリマス、
尙是ハ命令ノ定ムル所ニ依ッテ讓渡命令ヲ
出スノデアリマスガ、其ノ命令ノ內容ト致
シマシテハ、玆ニ「時價ヲ以テ讓渡スベキ
コトヲ命ズルコトヲ得」トアリマスガ、時
價ト申シマシテモ、取引所ノ相場アルモノ
モアリマスシ、サウデナイモノモアルト云ッ
タヤウナコトモアリマスノデ、取引所ノ相
場アルモノニ付テハ其ノ相場ニ依ルシ、又
相場ナキモノニ付テハ實物仲値ヲ基準トシ
テ定メルト云フヤウナコトヲ規定致シタイ
ト存ジマス、又命令ハ致シマシタガ、命令
ヲ受ケタ者ニ於テ其ノ株ハドウシテモ手離
シテハ工合ガ惡イ、例ヘバ一定ノ株數ヲ所
有スルコトニ依ッテ或ル企業體ヲ支配シテ
居ル、ソレヲ命令ヲ受ケテ讓リ渡セバ、其
ノ企業ノ支配權、經營權ト云フモノガ無クナ
ルト云フヤウナ支障ノアリマス際ニハ、此
ノ命令ハ出サナイ、命令ヲ受ケマシテモ
讓渡シナイデ宜イト云フコトニ致シタイト
存ジマシテ、サウ云フ規定ヲ命令デ規定致
シタイト存ジテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=102
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103・橋本實斐
○委員長(伯爵橋本實斐君) 只今ノ說明ニ
付テ御質疑ハゴザイマセヌカ-サウ致シ
マスト此ノ臨時資金調整法中改正法律案ニ
付キマシテハ一應御質疑ハゴザイマセヌ
カ-ソレデハ御異議ガナケレバ、其ノ次
ノ普通銀行等ノ貯蓄銀行業務又ハ信託業務
ノ兼營等ニ關スル法律案ニ移リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=103
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104・米原章三
○米原章三君 本案ニ付キマシテハ先日來
委員各位ノ質疑ト當局ノ說明デ大體諒承致
シマシタガ、私ハ今一應御尋シテ見タイト
思ヒマス、戰時ニ於ケル金融政策上ノ施設
ノ强化ヲ必要トシテ、殊ニ國民貯蓄ノ增强
ヲ確保セントスル構想カラ本法案ガ提出セ
ラレタルコトハ、先日次官ノ說明ニ依リマ
シテ承知致シマシタガ、私ハ我國ノ貯蓄銀行
ノ發達モル旣往ヲ追懷シ、長イ歷史ト其ノ
ノ傳統ヲ有シテ時局下重要ナル貯蓄報國ノ
職域ニ精進シツヽアル此ノ際、突如トシテ
今囘貯蓄銀行及ビ信託業務ノ特殊性ヲ其ノ
儘普通銀行ニ委讓セラルヽノ法案ニ接シマ
シテ、金融界ニ取リマシテハ極メテ畫期的
ノ法案ノヤウニ承知致シマス、就キマシテ
玆ニ二三ノ質疑ト希望ヲ申上ゲマシテ御意
見ヲ伺ッテ見タイト思ヒマス、第一ハ、斯カ
ル重要ナ法案ヲ提出サレルニ當リマシテハ、
政府ハ金融統制會乃至民間金融界ノソレゾ
レノ機關ニ諮問シテ其ノ意見ヲ徵セラレタ
コトガアリマスカドウカ、第二ニハ、金融
統制上ノ見透シトシテ、政府ハ近キ將來ニ
於テ金融機關ノ國營卽チ銀行國營ノ如キ御
考ヲ持ッテヰラッシヤルカドウカ、第三ハ
現存ノ貯蓄銀行當業者ハ、明治、大正、昭
和ヲ通ジテ貯蓄報國ノ信念ノ下ニ民間ノ零
細ナル貯金ヲ吸收シ、其ノ使命ヲ果シツヽ
アルデアリマス、然ルニ本法案ガ成立シテ
施行セラレマスルヤ、其ノ特殊性ヲ失ヒマ
シテ、大都市ノ貯蓄銀行以外ハ普通銀行ニ
吸收合併サレル運命ト察シマス、否、ソレ
ガ御當局ノ方針ノヤウニモ推察サレルノデ
アリマス、就キマシテ大藏省ハ、現在ノ貯
蓄銀行經營者ノ貴キ經驗ト其ノ努力乃至創
意、工夫ニ對シテ、何等カ御考ニナッテ居ル
點ガアルデセウカ、第四ニハ、全國六十有
餘行ニ過ギマセヌ貯蓄銀行ニシテ、而モ其
ノ保有スル貯蓄金額ハ七十五億圓ノ巨額ニ
達シテ居ルコトヲ承知致シマシテ、私共ハ
全國ノ貯蓄銀行業者ニ敬意ヲ表スル次第デ
アリマス、サウシテ政府當局ハ何故ニ本案
ト同時ニ、貯蓄銀行ニ普通銀行ノ業務ヲ兼
營セシムルノ法案ヲ提出セラレナイノデア
リマセウカ、卽チ貯蓄銀行ニ普通銀行ノ業
務ヲ兼營セシムルノ御意向ハアリマセヌカ
ドウカ、第五ニ、昭和二、三年頃ノ所謂銀行
界ノ恐慌時代ヲ契機ト致シマシテ、大藏省
ノ指導ト協力ノ下ニ全國大小銀行ノ合併ハ
徹底的ニ實現サレマシテ、今日ノ銀行ハ大
藏省ノ監督ト其ノ規正ノ下ニ堅實ナル經營
ヲ爲シツヽアルコトハ先日銀行局長ノ仰セ
ノ通リデアリマス、私ハ銀行ノ合併モ餘リ
ニ大藏省ノ藥ガ效キ過ギテ居ルデハアリマ
セヌカ、大都市ハ別ト致シマシテ、地方ニ
依リマシテハ一縣一行主義ノ爲ニ當事者ノ
獨善ト獨占ノ意慾ニ禍ヒセラレテ、地方ノ
產業會社、殊ニ現下ノ喫緊ナル生產增强ニ
寄與セザルノ憾ミナキヤヲ憂ヘルモノデア
リマス、勿論決戰下ノ現段階ニ於キマシテ
ハ貯蓄第一主義デアリマスルカラ、玆ニハ
餘リ多クヲ申上ゲルコトヲ差控ヘマスルガ、
大藏省當局ニ於カセラレテハ、地方銀行ノ
使命ヲ積極的ニ〓揚セシメ、所謂戰時下生產
力增强ノ爲ニ、最善ナル對策ヲ講ゼラレム
コトヲ此ノ機會ニ特ニ希望シテ置キマス、
若シ夫レ政府ガ銀行國營ヲ企圖シテ居ナイ
トスルナラバ、地方ニ依リテハ一縣一行主
義ノ獨占形態ヨリモ、大都市ノ支店銀行ヲ
設置セシメル必要ヲ認メラレルカドウカ、
更ニ又甚ダシキハ一縣一行ノ本店銀行モナ
キ縣ガアルノデアリマス、統制經濟ハ行政
區域ヲ單位トシテ地方長官ニ强力ナル法制
上ノ指導力ヲ付與セラレテ居リマスル以上
ハ、一行政區域ニハ尠クトモ一行以上ノ本
店銀行ヲ設置セシメラレルコトガ、地方產
業ノ開發ハ固ヨリ、貯蓄吸收ノ點ヨリ見マ
シテモ、其ノ縣民ノ微妙ナル心理ヲ善用ス
ルコトニナルノデハアルマイカ、此ノ點ニ
付キマシテ御意見ヲ承リタイト思ヒマス、最後
ニ先日來銀行局長ノ御意見デハ、現在ノ貯蓄
銀行ヤ信託銀行ハ强制的ニ普通銀行ニ合併
セシムル意思ハナイガ、經營宜シク、內容充實
シテ居ルモノハ其ノ儘營業セシメテ、益〓貯貯
蓄報國ニ邁進セシムルト云フ御意見ノヤウ
ニ承リマシタガ、左樣承知シテ置ケバ宜シ
ウゴザイマスカ、且又所謂兼營銀行ト專業
貯蓄銀行トノ業務上ノ相違セル點ヲ本法案
ニ付テ指摘シテ御知セ戴イタラ幸甚ト思フ
ノデアリマス、
以上ノ諸點ニ付テ御質問申上ゲマシテ御
意見ヲ承リタイト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=104
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105・谷口恒二
○政府委員(谷口恒二君) 只今ノ御質問ニ
對シマシテ大體御答ヘ申上ゲタイト思フノ
デアリマス、今囘斯ウ云フ法制ヲ提案スル
コトニ相成ッタノデアリマスルガ、貯蓄銀行
ヲ主トシテ考ヘテ見マスルト云フト、我ガ
國銀行界ニアリマシテ、多年國民貯蓄ノ蓄
積ト云フ方面ニハ多大ノ效果ヲ擧分ラレテ
居ルノデアリマシテ、貯蓄銀行ニ關スル法
制ヲ新タニスルニ付キマシテモ、當局ト致
シマシテハ貯蓄銀行ノ從來ノ功績、其ノ國
民經濟ニ寄與サレタル所ノ業績ニ付キマシ
テハ十分敬意ヲ拂ヒマシテ、其ノ事ヲ篤ト
考ヘタ上デ斯クノ如キコトニ取リ運ンダヤ
ウナ次第デアリマス、本案ヲ提出スルニ付
キマシテハ色々考究致シマシテ愼重ヲ期シ
タノデアリマスルガ、金融統制會其ノ他ノ
機關ニ對シマシテハ、當今ニ於キマシテハ
是等ノ機關ト當局トハ日常極メテ密接ナル
關係ヲ結ンデ居リマシテ、殆ド設立ノ當初
期待サレタガ如ク、所謂表裏一體ノ如キ關
係ヲ持ッテ居リマスルノデ、特ニ形式立チマ
シテ、之ニ對シマシテ諮問ヲスルトカ、之ニ對
シテ答申ヲ求メルト云フヤウナ關係ヲ取ル
ニハ至ラナカッタノデアリマスガ、其ノ以下
ノコトモ平生カラ能ク連絡致シテ居ルノデ
アリマシテ、是等ノ當面ノ狀況等モ能ク考
ヘマシタ上今囘ノ提案ニ相成ッタヤウナ次
第デアリマス、銀行ニ關スル法制ニ付キマ
シテハ、近年議會ニ於キマシテ色々御協賛
ヲ得テ居ルノデアリマス、今囘ノ議會ニ於
キマシテモ只今議題ニナッテ居リマスル法
律案、其ノ他ノモノヲ提案致シテ居ルノデ
アリマス、又昨年末カラ大銀行ノ合同等ガ
行ハレマシテ、色々ノ話ガ世間ニ傳ハッテ
居ルカノ如クニモ察セラレルノデアリマス
ガ、此ノ金融機關ヲ色々政府ノ統制下ニ服
セシメテサウシテ其ノ統制ノ制度ヲ整備ス
ルト云フコトニ近年ズット取運ンデ參リマ
シタケレドモ、之ヲ國營ニ移スト云フ考ハ
全然ナイノデアリマス、揣摩臆測若シサウ
云フコトガ傳フルコトガアルナラバ、是尺、
單ナル揣摩臆測ニ過ギナイノデアリマシテ、
政府トシテハ、サウ云フ考ハ全然持ッテ居
ラナイト云フコトヲ申上ゲタノデアリマス、
ソレカラ尙色々御話ガアリマシタノデ後カ
ラ又銀行局長カラモ申上ゲルト思ヒマス
ガ、銀行ノ合併ノコトニ付キマシテモ御話
ガアリマシタ、此ノ問題ニ付キマシテハ
一縣一行主義ナリヤ否必ズシモソレニ一縣
一行主義ニ拘泥スルモノデハナイ、能ク地
方ノ實情ニ合致シタル態度ヲ取リタイト云
フコトヲ當局ハ答ヘテ參リマシタ、今日ニ
於テモ變リハナイノデアリマシテ、源
行ト云フコトヲ勵行致シマシテ、其處ニ無
用ナル摩擦ヲ生ゼシメ、無理ナコトヲ致シ
マシテ金融業ノ發達ヲ阻害シ國民貯蓄ニ妨
害ヲ與ヘルト云フヤウナコトハ、當局ト致
シマシテハ之ヲ致シマスル意思ハゴザイマ
セヌ、色々當該地方ノ狀況ニ應ジ、又當事
者間ニ於テ話ガ熟スルト云フコトヲ待ツノ
態度デアリマシテ、一縣一行ト云フヤウナ
杓子定規式ナ建前ノ下ニ、無理ヲ敢行スル
ガ如キ意思ハ全クナイノデアリマス、ソレ
カラ銀行ノ合併ニ付キマシテハ、貯蓄銀行
ヲ此ノ提案ニ依リマシテ普通銀行ノ方ニ合
併サセテシマハウト云フヤウナ考ハ是全ク
ナイノデアリマス、貯蓄銀行業務ヲ普通銀
行ガ兼營スルト云フニ止マルノデアリマシ
テ、從來御話ノ中ニモアリマシタガ如ク、
我ガ國金融界ニ多大ノ貢獻ヲシタル貯蓄銀
行ヲシテ全然其ノ存立ヲ失ハシメルト云フ
ヤウナ態度ニ出ルヤウナ考ヘハ毛頭ナイノ
デアリマス、貯蓄銀行中ニハ或ハ其ノ業務
ノ關係カラ、從來緊密ナル取引關係ノアリ
マシタ普通銀行ニ合併スルコトヲ便トスル
モノガ將來生ズルカモ知レマセヌガ、其ノ
場合話ガウマク運ンダ場合ニ於テハ、當局
ニ於テハソレニ贊成スルニ躊躇ハ致シマセ
ヌケレドモ、總テノ貯蓄銀行ヲ普通銀行ニ
一緒ニシテシマハウト云フヤウナコトハ全
ク致サナイ考デアリマシテ、貯蓄銀行ノ
中ニハ長キ傳統ヲ有シ、長キ經驗ヲ有シテ
居ルモノガ多々アルノデアリマス、ソレ等
ノモノハ本法案ガ假ニ實行サレタ後ニ於キ
マシテモ、矢張リ從來ト變ハラザル堅實ナ
營業ヲ營ミ、又立派ニ金融界ニ活動シテ行
クト云フコトハ、是ハ勿論デアリマシテ、
本法案ニ依リマシテ貯蓄銀行ヲナクサセル
ト云フヤウナ考ハ全クナイト云フコトヲ
明言申上ゲテ置キタイノデアリマス、尙項
目ニ分チマシテ御尋ニナリマシタ點ニ付キ
マシテハ、申シ漏ラシマシタ點ガ二、三點ア
ルカト思フノデアリマスガ、他ノ政府委員
カラ其ノコトハ御答ヘ致シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=105
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106・山際正道
○政府委員(山際正道君) 私カラ技術的ノ
問題二、三ニ付キマシテ御答へ申上ゲタイト
思ヒマス、先ヅ第一ニ、現在ノ貯蓄銀行經
營者ガ多年ニ亙ッテ積ミ重ネテ參リマシタ
經驗ト努力、又ソレカラ湧キ出ル所ノ創意
工夫ト云フモノヲ、今後假令兼營貯蓄銀行
ガ出來タニシテモ、尙ソレ等ノモノヲシテ
從前ト同樣、益〓其ノ機能ヲ發揮サセルヤウ
ニ仕向ケテ行ク用意ガアルカト云フ御尋ガ
アッタト思フノデアリマス、此ノ點ハ私共ト致
マシテモ、今囘兼營ノ法律ヲ立案致シマス
際ニ最モ考慮ヲ拂ヒマシタ點デゴザイマス、
卽チ此ノ法律ハ之ニ依リマシテ益〓此ノ貯
蓄銀行ノ機能、全金融機構ノ上ニ强力ニ
發達セシメヨウト云フノガ其ノ趣旨デゴザ
イマス、從ヒマシテ其ノ貯蓄銀行ノ業務ヲ
從來專ラヤッテオイデニナリマシテ、其ノ經
驗ト努力ノ上ニ創意工夫ヲ生ミ出シテ居ラ
レル方ノ御努力ト云フモノハ今後ニ於テモ
益〓之ヲ尊重シテ、全貯蓄銀行ノ業務ノ機能
ノ上ニ及ボシテ行キタイ、斯樣ニ考ヘルノ
デアリマス、具體的ノ方法ト致シマシテハ、
專營ノ貯蓄銀銀デ成績ノ非常ニ優秀ナル人
人ニ於キマシテハ、益〓其ノ線ニ副ッテ御活
動ガ願ヘルヤウニ、出來ルダケノ保護助長
ヲ加ヘ、例ヘバ是ハ昨日モ申シマシタガ、
今囘ノ法案ノ附則ニ於キマシテモ、貯蓄銀行
ノ力ヲ殖ヤシマスル爲ニ、資金ヲ運用致シマ
スル制限ヲ緩和致シテ居リマス、之ニ依リマ
シテモ、多少トモソレニ依ッテカガ附キマス
レバ、尙ソレ等ノ方ノ御努力ノ範圍ガ殖エ
ル譯デアリマス、又兼營ノ方面ニ於キマシ
テモ、金融統制會ノ働キ等ニ依リマシテ一
部ノ方面ニ於テ最モ有效デアルト認メラレ
ル施設ニ付キマシテハ、之ヲ移シテ、他ノ銀行
ニ於テモ其ノ線ニ副ッテ十分活動ガ出來マ
スルヤウニ、常時其ノ全體ノ機關ガ緊密ナ
ル連絡ノ下ニ能率ヲ擧ゲテ行クヤウナ指導
ヲ致シタイ考デアリマス、又全體ノ貯蓄銀
行ノ問題ト致シマシテ、是モ先般申上ゲマ
シタガ、其ノ活動力ヲ培養スル意味ニ於キ
マシテ、成ルベク收益上ノ裕リヲ付ケル必
要ガアリマスカラ、從來例ヘバ貯蓄銀行ニ
對シマシテハ、十七年度ノ資金計畫ト致シ
マシテ、增加預金ノ七十五「パーセント」ハ
國債ト云フコトニ致シテ居リマシタガ、此
ノ割合ノ如キモ、今後ハ貯蓄銀行ノ收益力
ト睨ミ合セマシテ、公社債ノ組合セノ率ナ
ドヲ加減致シマシテ、十分貯蓄銀行ガ其ノ
活動力ヲ培養ガ出來ルヤウナ方法ヲ指導致
シタイ考デアリマス、ソレカラ次ニ政府ハ
何故ニ此ノ法案ヲ作ルニ當ッテ、貯蓄銀行ヲ
シテ普通銀行ノ業務ヲ兼ネサセルコトヲ考
ヘナカッタカト云フ御尋ガアッタト存ジマ
ス、此ノ點モ立案ニ當リマシテ相當愼重考
究ヲ致シタ點デゴザイマス、普通銀行ノ特
色ハ御承知ノ如ク、其ノ主タル機能ノ點ガ
資金ノ融通、卽チ產業其ノ他ニ關シマシテ
相當ナ調査機能ヲ持チ、當時事業會社等ノ
資金ノ出入リヲ取扱フト云フ意味カラ、最
モ事業界トノ接觸ガ緊密デアリマシテ、主
トシテ資金ヲ融通シテ產業ヲ援ケルト云フ
方面ニ特色ヲ持ッテ居ル銀行デアリマス、ソ
コデ全體ノ金融機構ノ現狀ヲ考ヘテ見マス
ルト、實ハ資金放出ノ機能ノ方面ハ、相當
今日機構ガ整備致シテ居ルト思フノデゴザ
イマス、之ヲ徒ニ殖ヤシマスルコトハ、寧
ロ資金融通ニ關スル競爭ヲ惹起シテ、要ラ
ザル處ニ資金ノ廻ル虞レガアルト云フコト
サヘモ豫想サレル現狀ニアルノデアリマシ
テ、融通力ノ方面ニ關スル機能ヲ增長スル
コトハ差當リ左程必要ナコトデハナイ、寧
ロ今日ハ此ノ資金吸收部面ニ對スル機能ヲ
極力增加スルコトデナクテハナラヌ、斯樣
ナ著眼カラ致シマシテ、此ノ際、貯蓄銀行
ノ方ニ普通銀行業務ヲ兼ネサセマスルコト
ハ左樣ナ意味合ニ於キマシテ、其ノ必要
性ガ比較的乏シイト考へマシタ點ガ一ツ、
ソレカラ左樣ナ普通銀行ノ特色カラ致シマ
シテ、事業會社等ニ資金ヲ融通致シマスル
トナリマスルト、是ハ從事致シマスル人々
ノ性質、素質ノ問題、或ハ其ノ銀行ノ機構
ノ問題等カラ考ヘマシテ、容易ニソチラノ
方ニ轉換ヲスルト云フコトガ困難ナ場合ガ
少ナクナイト思フノデゴザイマス、從ヒマ
シテ貯蓄業務ヲ普通銀行ニ兼ネサセルコト
ハ容易デアルケレドモ、直チニ普通銀行ノ
ヤッテ居リマスル仕事ヲ貯蓄銀行ニ向ケル
ト云フコトハ必ズシモ實情ニ副ハナイ、斯
樣ナ理由モアルト存ズルノデアリマス、是
等ノ觀點カラ致シマシテ、本法案トハ逆ノ
コトガ、卽チ普通銀行業務ヲ貯蓄銀行ニ兼
ネサセルト云フコトハ現在ノ段階ニ於テハ
其ノ必要ガナカラウト云フ結論ニ達シタ次
第デアリマス、ソレカラ大都市ノ大銀行ノ
支店ヲ地方ニ設ケルコトガ必要デアルカド
ウカト云フ御尋ガアツタト考ヘマス、之ニ
對シマシテハ、從來ヤッテ參リマシタ方針
ハ、大銀行ハ全國ニ其ノ支店網ヲ張リマシ
テ、其ノ大企業、大事業ヲ相手トシテ資金
ノ疏通ニ任ジテ參ッテ居ルノデアリマス、漸
次地方ニモ大規模ノ產業ガ勃興スルニ連レ
マシテ、主要ナル都市ニハ大銀行ノ支店モ
必要デアラウト思フノデアリマス、從ヒマ
シテ必要ノ程度ニ依リマシテハ漸次其ノ支
店モ認メテ參ッテ居ルノデアリマス、併シナ
ガラ他面又考ヘナケレバナラヌコトハ、只
今御指摘ノ如ク地方ニハ地方銀行ガ存在致
シマスルシ、又其ノ他ノ金融機關モ地方的
ニ存在致シテ居ルノデアリマス、之ガ大銀
行ノ支店ヲ設置致シマシタ場合ニ於テ、其
ノ資金ノ吸收ノ部面、或ハ資金融通ノ部面
ニ於テ如何ナル狀態ヲ現出スルカ、徒に
競走ガ惹起シテモソレハ望マシイコトデハ
ナイ、又大銀行支店ノ故ニ地方ノ銀行等ガ
壓迫ヲ蒙ッテ十分ノ機能ノ發揮ガ出來ナイ
ト云フコトハ避クベキ事柄デアラウト思フ
ノデアリマス、此ノ意味ヲ以チマシテ、支
店ヲ地方ニ設置致サセマスル場合ニ於テハ
篤ト其ノ地ノ狀況ヲ勘案致シマシテ、サウ
矢鱈ニ大銀行ノ支店ヲ地方ニ認メルト云フ
コトモ致シテハ居ナイノデアリマス、卽チ
一面ニ於テ產業ノ規模ニ應ジ、金融ノ疏通
ニ遺憾ナキヲ期スルト同時ニ、地方ノ金融
機關ノ育成ノ見地カラ適宜支店ノ設置ヲ認
メテ居ルヤウナ實情デアリマス、ソレカラ
現在縣ニ依ッテハ本店銀行ノナイモノガア
リ是等ノ地方ニ於テ少クトモ本店銀行ヲ
置クコトガ地方經濟ノ運營上妥當デハナカ
ラウカト云フオ話ガアッタノデアリマス、極
ク稀ナ例デハゴザイマスガ、オ話ノ如キ縣
ハアルノデゴザイマス、是等ノ沿革ヲ考へ
テ見マスルト、地方ノ產業モ漸次其ノ規模
ガ擴大致サレテ參リマス又信用補强資金
吸收力ノ增大、或ハ有能ナル職員ヲ招致ス
ルト云フヤウナ觀點カラ、地方ノ銀行モ亦
時勢ノ移リ變リト共ニ漸次大規模ノモノト
ナラザルヲ得ナイ勢ヒニアリマシテ、左樣
ナ狀態ガ今日現出サレテ參ッタノデゴザイ
マシ、オ話ノ如ク今日相當ノ經濟行政ガ、
府縣ヲ單位トシテ行ハレテ居ルコトハ、其
ノ通リデアリマシテ、此ノ意味カラ申シマ
スルト、或ハ本店銀行ガナイト不便ダト云
フコトモ一應考ヘラレルコトデハアリマス
ケレドモ、一面ニ於テ、經濟行政サヘモ所
謂府縣「ブロック」ヲ打破シテ、モット大キナ
單位ニ於テ彼此融通ヲスルノデナケレバ、
今日ノ經濟ハ全體トシテナカ〓〓ウマク運
營シテ行カヌト云フ事情モアルノデゴザイ
マン、其ノ意味カラ申シマスルト、現在本
店銀行ガゴザイマセヌ縣ニ、直チニ元ヘ戾ッ
テ本店銀行ヲ設ケルノガ宜イカ惡イカト云
フコトハ、餘程是ハ考究ヲ要スル所デアラ
ウト思フノデアリマス、ソレヨリモ具體的
ニ現在左樣ナ縣ニ付キマシテハ、能ク其ノ
銀行ノヤッテ居リマスル狀況ヲ調査致シマ
シテ、果シテ此ノ本店ナキガ故ニ其ノ縣ニ
非常ナ金融上ノ不便ヲ與ヘテ居ルト云フヤ
ウナコトガアリマスルナラバ、ソレハ最モ
適當デナイコトデアリマスルカラ、直チニ
銀行ヲシテ其ノ態度ヲ改メサセ、又其ノ從
事致シテ居リマスル役員ナリ、職員ナリノ
方面ニ於テ其ノ縣ノ事情ニ精通シテ居ル者
モソレニ差加ヘ、更ニ要處々々ニハ店舗ノ
數ヲ增設スルト云ッタヤウナ實際ノ方法ニ
依ッテ解決スルノガ、寧ロ今日ノ實情ニ適
當シタ方法デハナカラウカト考ヘテ居ル次
第デゴザイマス、ソレカラ最後ニ御尋ノゴ
ザイマシタ兼營ノ貯蓄銀行ト、專業ノ貯蓄
銀行トノ間ニ業務上何カ差別ヲ設ケルカ、
設ケルトスレバドノ程度ノ差別ヲ考ヘテ居
ルカト云フ御話デゴザイマス、是ハ大都市
ト地方トニ依ッテモ自ラ程度ガ違フカト考
ヘテ居リマス、大都市ニ於キマシテハ只今
ノ所デハ、所謂定期積金ナル仕事ハ、假
大銀行ガ貯蓄銀行業務ヲ兼營致シマシタ場
合デモ、之ニハ許サナイ考デアリマス、卽
チ如何ニ普通銀行ガ貯蓄銀行業務ヲ直チニ
コナシ得ル能力ガアルト申シマシテモ、定
期積金ノ如キモノハ、是ハ專門ノ貯蓄銀行
ヲシテ扱ハシムルノガ妥當デアラウト考ヘ
マスルカラ、是ハヤラサナイ考デ居リマス、
又預入レマスル其ノ貯金ノ利子ノ率ニ付キ
マシテモ、具體的ニハマダハッキリ申上ゲ
兼ネマスルケレドモ、多少ノ差等ヲ設ケマ
シテ、兼營ノ場合ノ方ヲ幾ラカ低クスルト
云フノガ此ノ際トシテハ妥當ナ措置デハナ
カラウカ、或ハ又貯金ヲ扱ヒマスルニ付キ
マシテモ、今日專業ノ貯蓄銀行ニ於キマシ
テハ、其ノ預金者ガ法人デアルト個人デア
ルトノ別ヲ立テテ居リマセヌケレドモ、貯
蓄增强ノ趣旨カラ申シマスルナラバ、兼營業
務ヲ認メルヤウナ場合ニハ、個人ノ貯金ヲ專
ラ扱ハセルト云フノモ一ツノ方法デハナカ
ラウカト考ヘテ居リマス、其ノ他定期積金ト云
フ仕事モゴザイマスルガ、是ナドモ現在ノ
專門ノ貯蓄銀行デハ格別ヤカマシイ制限ヲ
致シテ居リマセヌガ、兼營ノ場合ニ於キマシ
テハ多少其ノ型ヲ一定致シマシテ、一種類
ニ致シマスルカ、數種類ニ致シマスルカハマ
ダ決定致シテハ居リマセヌガ、ソコニ專業
ノモノトハ稍〓趣ヲ異ニシタ範圍ニ於テ仕事
ヲサセルノガ適當デハナカラウカ、ソレハ
法律ニゴザイマス業務ノ種類及方法ヲ定メ
テ認可ヲ受ケルト云フコトニナッテ居リマ
スルノデ、其ノ種類及方法ヲ定メマスル場
合ニ於テ適當ニ按配致シタイト考ヘテ居リ
やっゝ、尙今大都會ノ問題ニ付テ申上ゲマシ
タガ、地方ノ銀行ニ付キマシテハ是ハ、大都
會ニ於ケル方トハ兩者ノ間ニ著シイ差別ヲ
設ケル必要モナイカトハ思ヒマスルガ、併
シ矢張リ實情ニ合ヒマスル程度ニ於テ兼營
ノ場合ト專營ノ場合トハ金利ノ問題、ソレ
カラ型ノ問題ナドニ於キマシテ實情ニ適シ
タ差別ヲ設ケルコトガ適當デハナカラウカ
ト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=106
-
107・米原章三
○米原章三君 次官始メ局長カラ御懇切ニ
御說明ヲ戴キマシテ、大體了承致シマシタ
ガ、私ノ考ヘ方デハ此ノ法案ガ實施セラレ
マスト、ドウモ貯蓄銀行ノ特殊性ト云フモ
ノハ全然ナクナッテ、結局地方ノ貯蓄銀行ハ
晩カレ早カレ、普通銀行ニ吸收合併サレル
運命ニアルンデハナイカ、斯ウ考ヘル、今
局長カラ御說明ニナリマシタ利子ノ點、或
ハ定期積立ト云フヤウナ點ニ多少ノ御考慮
ハアルヤウデハアリマスルガ、ドウモ結局
從來保護サレタ特殊性ガナクナル、將來ハ
ドウシテモ是ハ合併ノ運命ニアル、寧ロ當
局ハサウナサル御考デハナイカトモ思ハレ
ル此ノ點ヲ重ネテモウ一度御意見ヲ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=107
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108・谷口恒二
○政府委員(谷口恒二君) 地方ニ於ケル貯
蓄銀行ノ地位ニ付キマシテ段々御心配デア
リマスガ、從來ノ貯蓄銀行ノ今後ノ地位ニ
付キマシテハ、先程銀行局長カラ申シマ
シタヤウニ、十分出來ルダケノ配慮ヲ致シ
タイト思フノデアリマシテ、多年其處ニア
リマス所ノ貯蓄銀行ヲ、地方ノ貯蓄銀行ノ
根柢ヲ搖ブルヤウナコトヲ進ンデ致ス考ハ
毛頭ナイノデアリマス、先程モ申シマシタ
ヤウニ、色々ノ營業關係其ノ他カラ、普通
銀行ニ合併ニ相成リマスヤウナ情勢ガマア
出ルカモ知レナイブデアリマシテ、ソレハ
其ノコトガ穩カニ進ミマシタ場合ニ於キマ
シテハ、之ヲ妨ゲルコトハ致シマセヌケレ
ドモ、此ノ法案ガ實行セラレルコトニナリ
マシテモ、地方ノ貯蓄銀行ヲ普通銀行ニ合
併シナケレバナラナイヤウナ羽目ニ陷レル
ヤウナコトハ、當局トシテ之ヲ致ス考ハゴ
ザイマセヌ、出來ルダケ從來ノ營業ノ狀況
ヲ尊重致シマシテ、普通銀行トノ間ニ於キ
マシテモ、普通銀行ト別ニ特色ヲ持チ續ケ
ルコトノ出來マスルヤウニ、出來ルダケノ
配慮ヲ致サウト云フ考ヲ持ッテ居ルノデア
リマス、重ネテ此ノ法案ニ依リマシテ、地
方ノ貯蓄銀行ヲシテドウシテモ普通銀行ト
一緒ニナラナケレバナラヌヤウニ仕向ケル
ヤウナ考ハナイト云フコトヲ申上ゲテ置キ
タイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=108
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109・米原章三
○米原章三君 今一ツ御尋ネ致シマスガ、貯
蓄銀行ノ營業ノ行キ方ト致シマシテハ、從
來小切手ノ取引、爲替ノ取引等ガ全然其ノ
性質カラ許サレテ居ナイ、又或ハソレガ本
體カト私ハ考ヘテ居リマスルガ、此ノ金融
ノ閑散ニナリマスニ連レマシテ貯蓄銀行ニ
小切手制度、爲替、送金爲替ノ取組ト云フ
ヤウナコトヲ御認メニナル御意思ハアリマ
セヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=109
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110・山際正道
○政府委員(山際正道君) 先般來申上ゲマ
シタ通リ現在最モ必要ヲ感ジテ居リマスノ
ハ、資金ヲ吸收スル機構ヲ全國的ニ擴充シ
タイト云フ考ヘ方デゴザイマス、吸收サレ
マシタ資金ヲ運用シマスル方ノ機構ハ、現
在ノ事態ニ於キマシテハ、一應現狀デ備ッテ
居ルヤウニ考ヘテ居ルノデアリマス、貯蓄
銀行ヲシテ其ノ機能發揮ノ力ヲ附ケマスル
意味ニ於キマシテ、只今申上ゲマシタ附則
ニ依ル貯蓄銀行法ノ改正ノ程度ノコトハ
此ノ際必要デアラウト考ヘテ居リマスケレ
ドモ、更ニソレ以上ニ亙ッテ爲替業務ヲ扱
フ、或ハ當座取引ヲスルト云フコトハ現狀
トシテハマダソコ迄考ヘナクテ宜シイノデ
ハナイカト云フ結論ヲ得マシテ、此ノ法案
ヲ立案致シマシタ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=110
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111・明石元長
○男爵明石元長君 此ノ問題ニ付キマシテ
ハ、只今米原委員カラ御尋ガゴザイマシテ、
非常ニ重複スルヤウデハゴザイマスケレドモ、
私ハ貯蓄銀行ノコトハ能ク分リマセヌケレ
ドモ、信託業務ヲ兼營サセルト云フコトニ
付テハ隨分無理ガアルヤウニ考ヘルノデア
リマス、ソレデ色々御話ヲ伺ヒマシタケレ
ドモ、多少重複スルヤウナ關係ニアルノデ
スガ、一應伺ッテ見タイト思ヒマス、ソレデ
當局ハ信託業其ノモノヽ重要性ト云フコト
ハ十分認メテ居ラレルト云フコトハ、前カ
ラノ御言明ニ依ッテ分ルノデアリマスガ、其
ノ意味ハドウ云フコトデアルカト考ヘテ見
マスト、我ガ國ノ信託業ト云フモノハ兎角
唯長期ノ固定スル資金ヲ受ケル、言ヒ換へ
テ見レバ、金錢信託ノ面ガ跛行的ニ發達シ
テ來テ居ルト云フコトハ十分言ヘルト思フ
ノデアリマス、併シナガラ信託業其ノモノ
ノ本質ト致シマシテハ、斯ウ云フ金融機關
的ナ方面デナクテ、例ヘバ不動產ノ管理ト
カ、會計檢査トカ、或ハ遺言ノ執行トカ、
サウ言ッタヤウナ管理信託ト申シマスカ、廣
ク財產ノ管理機關デアルト云フ性質ノ方ガ
本來ノモノデハナイカト思フノデアリマス、
處ガ斯ウ云フ方面ハ餘リニ利益モ少イ複雜
ナ仕事デアリマスカラ、其ノ培養源トシテ
金錢信託ノ方ガ殖エテ行ッタト云フヤウナ
關係ニアルノデハナイカト思ヒマス、ソコ
デ此ノ信託事業モ本來ノ目的ト云フモノヲ
重視シテ考ヘテ見マスト、今後ノ時局ニ於
キマシテモ昨日米山委員モ言ハレマシタヤ
ウニ、或ハ敵產ノ管理デアルトカ、遺家族
ノ資金ノ信託デアルトカ、サウ云フ方面ニ
向ッテ進ムベキ途ガ多々アルト考ヘルノデ
アリマス、當局モサウ云フ意味ニ於テ信託
業ノ重要性ヲ認メラレテ居ルト考ヘルノデ
アリマス、デ斯ウシタ方面ヲ重視シテ考ヘ
テ見マスト、私ハ理論上信託業ト云フモノ
ハ濫リニ銀行業ニ兼營セシムベキデハナイ、
寧ロ專業デナケレバイケナイト云フヤウニ
考ヘルノデアリマス、是ハ信託業法ノ何條
カヲ見マシテモ明カニサウナッテ居ルノデ
アリマス、其ノ點ハ詳シク申上ゲマセヌケ
レドモ、昨日ノ當局ノ御答辯ニ依リマシテ
モ、此ノ點ハ十分御考慮ニナッテ居ラレル、
詰リ濫リニ兼營ヲ認メル譯デハナイト云フ
ヤウナ御言明ガアッタヤウニ思フノデアリ
マス、併シサウ致シマスルト、本法ニ於テ
普通銀行ニ信託業ノ兼營ヲ認メル、ソレハ
國民貯蓄ノ增强ガ目的デアル、斯ウ云フ意
味ガドウモ曖昧ニナッテ來ルノデハナイカ
ト思ハレルノデアリマス、詰リ國民貯蓄ノ
增强ト云フ觀點カラスレバ、成ルベク多ク
兼營ヲ認メサセナケレバナラヌ、併シ信託
業本來ノ性質ヲ考ヘルトサウ無闇ニ兼營
サセル譯ニハ行カナイ、斯ウ云フヤウナ矛
盾ニナッテ、詰リ此處ニ謳ッテ居ラレル國民
貯蓄ノ增强ニハ役ニハ立タナイノデハナイ
カ、サウシテ信託業本來ノ目的ガ見失ハレ
テ來ルト云フ弊害ト申シマスカ、サウ云フ
方面ガ大キイノデハナイカト考ヘラレルノ
デアリマス、デ度々御話ガゴザイマシタケ
レドモ、ドウモ私ニハサウ云フ風ニ考ヘラ
レマスノデ、モウ一度其ノ點ヲ御伺ヒ致シ
タイト思ヒマス、ソレカラ兎ニ角兼營ヲ認
メルトシマシテモ、專業ノ方モ十分ニ之ヲ
育成助長シテ行ク必要ガアルノデハナイカ
ト考ヘマス、此ノ點ハ度々矢張リ御言明ガ
アリマシテ、只今モ御話ガアリマシタガ、
之ヲ少シ具體的ニ、ドウ云フ意味デ育成助
長シテ行クノカト云フコトモ承リタイト思
フノデアリマス、本案ノ第五條ニ「普通銀行
ニ對シ當該業務ノ種類若ハ方法ヲ制限シ又
ハ其ノ變更ヲ命ズルコトヲ得」ト云フノガゴ
ザイマスガ、斯ウ云フ點ニ於テ何等カサウ
云フ點ヲ考慮シテ居ラレルノデアルカ、伺ッ
テ見タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=111
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112・山際正道
○政府委員(山際正道君) 本法案ニ於キマ
シテ、普通銀行等ヲシテ信託業務ノ取扱ヲ
認メマスル所以ノモノハ、只今御話ノ如ク
貯蓄增强ヲ重要ナル理由ト致シテ居リマス
コトハ、段々申上ゲマシタ通リデアリマス
ルガ、同時ニ併セテ本來ノ信託ヲ活カスト
云フコトモ、亦此ノ兼營ノ法律ニ於テ特ニ
重要視致シタ點ナノデゴザイマス、デ御懸念
ノ點ハ若シ普通銀行等ニ信託業務ノ兼營ヲ
認メルト、本來ノ固有ノ意味ニ於ケル信託ト
云フモノガ、伸ビルヨリモ寧ロ衰へハセヌカ
ト云フ御懸念デアラウト思フノデアリマス、
成ル程信託ノ本旨ハ、財產ノ管理ヲ致スト云
フ點ガ其ノ特色ニ相成ッテ居ルノデアリマス
ルガ、私共ノ考ト致シマシテハ、國民ノ爲
ニ金融機關ガ財產ヲ預リマシテ、能ク國家
ノ目的ニ副ヒツヽ、其ノ附託ニ任ズルト云フコ
トハ啻ニ信託會社バカリデナク、今後ハ銀行
其ノ他ノ金融機關モ益〓其ノ色彩ヲ强クセ
ネバナラヌト考ヘテ居ルノデゴザイマス、先般
來御話ノゴザイマシタ銀行ヲシテ、納稅者
ノ爲ニ稅金ヲ簡易ニ取扱ハシムルト云フヤ
ウナ施設、ソレカラ先程臨時資金調整法ノ
改正ニ於キマシテ、證劵ノ疏通、賣買ノ爲
ニ金融機關ガ相當ノ働キヲスルト云フヤウ
ナ點、是等モ總テ其ノ考ヘ方カラ致シマシ
テ、單ニ金ヲ預リ、金ヲ貸スト云フコト以
外ニ、銀行等ガ漸次國民ノ財產ヲ管理スル
ト云ッタヤウナ心構ヘヲ必要トスル方面へ
仕事ガ伸ビツヽアルコトヲ示スモノデハナ
イカト思フノデアリマス、此ノ意味ニ於キ
マシテ信託業務ヲ普通銀行等ニ兼ネサセマ
シテモ、其ノ普通銀行ノ選定ヲ誤リマセヌ
限リニ於キマシテハ、信託業務ハ全體トシ
テ益〓伸ビル結果ニナルコトヲ信ジテ居ル
ノデゴザイマス、從來ノ信託業務ハ先般モ
申上ゲマシタガ、稍〓大口ノ財產家ノ利用ニ
偏スル嫌ヒガアリマシテ、時局下要請サレ
テ居リマスル遺家族ニ關スル財產管理ノ問
題デアルトカ、其ノ他育英信託ノ問題デア
ルトカ、所謂大衆ヲ相手トスル方ノ機能モ、
今後益〓信託業務ノ上ニ要求サレテ居ル場
面デアルト思フノデアリマス、此ノ爲ニハ
信託業務ヲ取扱ヒマスル機關、取扱ヒマス
店ヲ成ルベク殖シマシテ、國民ノ左樣ナ廣
イ需要ニ應ズルヤウニ致シタイノガ私共ノ
根本ノ考デアリマス、其ノ意味ニ於キマシ
テ、此ノ法案ニ依リマシテ信託業務ヲ普通
銀行等ニ兼ネサセルコトニ致シタノデアリ
マスルガ、普通銀行等ニ於キマシテハ他ノ金
融機關ニ較ベマスルナラバ、從事員ノ能力
ノ問題、店鋪ノ配置ノ問題等カラ考ヘマシ
テ、此ノ勞務、資材關係ノ窮屈ナ時局下ニ
於キマシテモ、比較的簡單ニ所期ノ目的ガ
達成出來ルノデハナイカト考ヘテ居ルノデ
ゴザイマス、然ラバ普通銀行等ニ信託業務
ヲ認メタ場合ニ於テ、專業ノ方ガ立チ行カ
ナクナルノデハナイカト云フ御懸念ガ一部
ニアラウカト思フノデアリマスガ、是ハ今
日信託會社ノ業務自體ハ漸次發展ノ過程ヲ
辿ッテ居リマスシ、又全體ノ法案ノ趣旨ガ
信託業務自體ヲ益〓發達サセヨウト云フ態勢
ニアルノデアリマスカラシテ、此ノ兼營ヲ
認メマスガ故ニ、直チニ專業ノモノガ其ノ
影響ヲ受ケルコトハナイモノト考ヘテ居ル
ノデアリマス、卽チ新タナル信託ノ需要ガ
ナイニ拘ラズ、徒ニ門戶バカリヲ多ク致シ
マスルナラバ、是ハ御想像ノ如ク既設信託
會社ノ仕事ガ其ノ方ニ喰ハレテシマフト云
フヤウナ結果ニナリマスルケレドモ、左樣
ナ行キ方ヲ取リマセヌデ益〓增加シ、又利用
者ガ殖エルニ應ジマシテ信託業務ヲ取扱フ
コトノ範圍ヲ擴張シテ行キタイ考ヘ方デア
リマスカラ、左樣ナ趣旨ニ於テ運用致シマ
スレバ、御懸念ノ如キ事態ハ生ゼズシテ過
シ得ルノデハナイカト思フノデアリマス、
然ラバ信託業ヲ專業ト致ツテ居ルモノヲ如
何ナル方法ニ於テ今後益、助長シテ行クカ、
或ハ第五條ノ第二項デ業務ノ種類若シクハ
方法ヲ制限スル規定ノ適用トシテ、何力保
護助長ノ策ヲ講ズルカト云フ御尋デアリマ
スガ、第五條第二項ノ方ハ、左樣ナコトハ
直接此ノ法案ノ內容トハ考ヘテ居ナイノデ
アリマス、第五條ノ規定ノ方ハ、寧ロ其ノ
兼營ヲ致シマス銀行ノ能力ニ應ジマシテ
ドノ程度ノ業務範圍ヲ入レルノガ適當デア
ラウカ、其ノ考慮カラ此ノ規定ヲ設ケテ居
ルノデアリマス、然ラバ單ニ如何ナル方法
ニ於テ信託業ノ發達ヲ助長サセルカ、直接
是ハ今囘ノ立法ニ於キマシテ法文上ノ改正
ハ行ッテ居リマセヌガ、例ヘバ御承知ノ如
ク現在ノ信託會社ハ、其ノ立法ノ當初ニ於
キマシテ、銀行業務トノ競合ヲ避ケマスル
ガ爲ニ、二年以上、五百圓以上ノ纏ッタ信
託デナケレバ預ッテハナラヌト云フヤウナ
規定モアルノデアリマスカラ、此ノ制限ノ
如キモ今後ハ成ルベク大衆カラ資金ヲ吸收
シ、又大衆ノ信託ノ要求ニ應ズルト云フ建
前ニ於テ、左樣ナ制限ハ緩和スルノガ適當
デハナイカト云フノデ、實ハ考ヘテ居ルヤ
ウナ次第デゴザイマス、尙信託會社ノ取扱
ヒマス資金ノ運用方法ハ、現在信託統制會
ガ統制ヲ致シテ居リマスルガ、是モ其ノ投
資物件等ノ選擇ヲ考慮致シマシテ、成ルベ
ク信託會社ガ其ノ業務ヲ發展致シマスル力
ヲ附ケ得ルヤウナ資金運用ノ方法ヲ考慮セ
シメタイ、現在ノ處デハ其ノ程度ノコトヲ
考ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=112
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113・明石元長
○男爵明石元長君 只今御述ニナリマシタ
コトニ依ルト、決シテ信託本來ノ目的ヲ消
滅サセルヤウナ行キ方ヲスルノデハナイ、
寧ロ今後益〓發達サセルヤウナ考ヲ以テ此ノ
法案ヲ作ッタノダト云フ御話デアリマスガ、
私ノ言フ意味ハ、本來ノ性恪ト云フ方面ガ、
從來何カ非常ニ財產家ト申シマスカ、資本
家的ト云フヤウナ色彩ヲ持ッテ居ルモノノ
ヤウニ世間ニ印象サレテ居リマシタガ、ソレ
ヲ一般大衆化シテ行キタイト云フ御考ニ付
テハ全ク御同樣ニ考ヘルノデアリマス、唯
サウ云フ動キハ別ト致シマシテモ、此ノ普
通銀行ニ信託業ヲ兼營サセマス場合ニハ
其ノ信託業ノ本來ノ業務ト云フモノハ先程
申上ゲマシタヤウニ、極メテ複雜ナ、且利
益ノナイモノデアリマス、金錢信託方面ハ
或ハ力ヲ入レルカモ知レマセヌガ、事實上
營利會社トシテハ餘リ興味ノ少イ斯ウ云フ
方面ニ、普通銀行ガ力ヲ入レテ行クカドウ
カト云フコトニ付テハ私ハ多分ノ疑問ガア
ルト考ヘマス、併シ是ハ當局ニ於テハサウ
デナイト仰シヤルノデアリマスカラ、是以
上申上ゲテモ仕方ガナイト考ヘマス、次ニ
兼營ノモノハ之ヲ從來ノ儘、且今後モ益〓發
展スルヤウニ助長シテ參リタイ、斯ウ云フ
御話デアリマスガ、少シ具體的ナ問題ニナ
リマスルケレドモ、將來銀行ガ信託業ヲ兼
營シタイ、斯ウ云、フコトヲ申出テ來ルト思フ
ノデアリマス、其ノ場合ニ、其ノ銀行ト同
一資本系統ニ信託會社ガ既ニアッテ、サウシ
テ新シク信託業ノ兼營ヲ認メテ貰ヒタイ、
斯ウ云フ風ニ言ッテ來タ場合ニハ、ドウ云フ
風ニ御扱ニナルノデアリマセウカ、ト申シ
マスノハ、現在ノ信託會社ト云フモノハ、
大體ニ於テサウ云ッタ背景ヲ持ッテ居ルノデ
アリマス、デアリマスルカラ之ニ依ッテ兼
營ヲジタイト云フ場合ニハドウシテモ同
一資本系統ノ專業ノモノヲ吸收シテ行クト
云フ事實上ノ結果ニナッテ參ルノデアリマ
ス、サウスルト專業ノモノガナクナッテ、私
ガ先程カラ色々繰返シテ申シテ居リマスヤ
ウニ、一般信託業務ノ本來ノ性質ノ上ニ力
ガ入ラヌヤウニナッテ行キハセヌカ、斯ウ云
フ風ニ考ヘルノデアリマスガ、其ノ點ハド
ウ御考デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=113
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114・山際正道
○政府委員(山際正道君) 今日ノ信託會社
ガ其ノ實情ニ於キマシテ、普通銀行ト種々
ナル關係ニ於テ非常ニ密接ナ聯繫ヲ保ッテ
居ルコトハ御話ノ通リデアルト思ヒマス、
殊ニ地方ノ信託會社カ何カノ中ニ於キマシ
テハ、役員ノ系統モ資本系統モ同ジデアル
ト云フヤウナモノガ相當アリマス、又仕事
ノヤリ振リガ謂ハバ親銀行ノ兼營的機能ヲ
發揮スルヤウナモノモナイデハナイノデア
リマス、併シナガラ他面ニ於キマシテ資本
系統ガ同ジデアリマシテモ、銀行トハ相當
趣ヲ異ニシテ、獨自ノ分野ヲ開拓シテ、而モ
有力ナルモノガ相當アリマスコトハ是亦申
ス迄モナイ事實デゴザイマス、ソコデ是等
ノモノノ間ニ於キマシテ、此ノ親銀行ニ當
ルモノガ信託業務ヲ兼營シタイト云フコト
ヲ申出タ場合ノコトデアリマスガ、是ハ必
ズシモ一〓ニハ申シ得ナイト思フノデアリ
マス、卽チ只今モ申上ゲマシタ通リ、此ノ
信託會社トノ關係ガ種々ナル段階ガアリマ
シテ、其ノ段階ニ應ジ適當ナル又考ノ差ガ
此處ニアル譯デアリマス、要ハ其ノ親銀行
ガ信託業ヲヤリタイト申出テ參リマシタ時
二、資本系統ヲ同ジクシテ居ッテモ、從來
持ッテ居ル信託會社ノ營業分野ト違フ新タ
ナル分野ヲ、ソレニ依ッテ開拓スルコトガ
出來ルカドウカ、又果シテ其ノ信託業務ヲ
ヤリ得ルヤウナ人ヲ備ヘテ居ルカ、ソレニ
理解ガアル役員ガ居ルカ居ナイカ、ソレ等
ノ點ヲ仔細ニ檢討致シマセヌト、信託會社
ヲ子會社トシテ持ッテ居リマス普通銀行ノ
兼營ノ問題ハ、ナカ〓〓簡單ニハ解答ガ出
來ナイノデハナイカト思フノデアリマス、
殊ニ信託會社ト親銀行トノ關係ガ密接デア
レバアル程、如何ナル意圖ニ於テ其ノ親銀
行ガ自ラモ信託業ヲ兼營サレルカ、能ク其
ノ事情ヲ調査勘案致シマシテ、是ハ隨分誠
意アリ、又熱心ヲ持チ、信託業務ヲ扱フニ
十分ナ信用ヲ備ヘテ居ッテ、而モ從來ト違ッ
タ新タナル分野ニ相當進出スル可能性ガア
ルト認メラレマシタ場合ニハ此ノ法案ノ
趣旨ニ則リ、初メテ其ノ兼營ヲ認メテ行ク
ト云フノガ當然ノ結論ニナルノデハナイカ
ト思フノデアリマス、ソレ等ノ問題ハ要ス
ルニ具體的ノ場合ニ付キマシテ、十分考慮
スル必要ガアルノデハナイカト考ヘテ居リ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=114
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115・明石元長
○男爵明石元長君 サウ致シマスト、今ノ
ヤウナ場合ハ種々ノ事情ニ依ッテ考ヘテ行
クベキデアッテ、具體的ナ事情ヲ能ク檢討シ
ナケレバ分ラナイ、斯ウ云フヤウナ御話デ
ツ
アリマスガ、端的ニ申シマスルト、サウ云
タ場合ニ既ニ在ル所ノ信託會社ガソレ自
體專業トシテ十分ナル資格ヲ備ヘタモノデ
アルナラバ、成ルベクソレヲ御殘シニナル
方針デアリマセウカ、ソレトモ矢張リサウ
云ッタ合併ヲ認メルト云フ御趣旨デアルカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=115
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116・山際正道
○政府委員(山際正道君) 其ノ問題ハ旣ニ
金融機關ノ合併ニ關スル一般ノ原則ニ依ツ
テ解決シタイト考ヘテ居リマス、卽チ本當ニ
當事者ガ其ノ必要ヲ認メ、其ノ合併ノ結果
ハ從來ヨリモ全體トシテ機能ヲ增進スルト認
メラレル場合ニハ、私ハ其ノ合併ハ認ム
ベキデアラウト思ヒマスガ、合併ノ結果ガ
却テ其ノ本來ノ特殊性ヲ失フコトカ、却テ
業務ノ伸張ヲ期シ得ナイト云フ場合ニハ、
其ノ合併ハ認ムベキデハナカラウ、其ノヤ
ウナ心構ヘデ居ルノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=116
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117・明石元長
○男爵明石元長君 尙モウ一ツ伺ヒタイノ
デアリマスガ、此ノ法案ノ出來マシタ結果、
信託會社同士ガ合併シテ行クト云フヤウナ
氣運ガ出テ來ルノデハナイカト思フノデア
リマスガ、政府ハ之ヲ御奬メニナルト言ヒ
マスカ、御奬メニナルヤウナ意思ガ御アリ
ニナルノデアリマセウカ、私ハ寧ロ兼業ヲ
認メルヨリモ人員、資材ヲ節約スル意味ニ
於テハ此ノ合併ノ方向ニ進ミマシテ、サウ
シテ信託業ナラ信託業ト云フモノノ歷史ガ
ツ
持ツ力、何ト申シマスカ、長年ノ經驗ニ依
テ得タ信用ヲ基礎トシテ、其ノ職域ニ進ン
デ行クト云フ方ガ、實質的ニ賢明ナノデハ
ナイカト考ヘルノデアリスガ、其ノ點ハ如
何デアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=117
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118・山際正道
○政府委員(山際正道君) 其ノ問題モ矢張
リ一般ニ合併ノ場合ト同ジヤウニ、其ノ結
果信託ノ機能ガ全體トシテ〓揚サレル場合
ハ、勿論信託會社同士ノ合併モ認ムベキデ
アラウト考ヘテ居リマス、唯實情カラ申シ
マスルト段々申上ゲマスルヤウニ、今日ノ
信託會社ハ大抵ハ親銀行ヲ持チ、其ノ資
本系統其ノ役員ノ系統ヲ引イテ居リマスノ
デ、親銀行ノ合併デモゴザイマセヌ限リハ、
實際問題トシテハナカノ〓信託會社同士ノ
合併ト云フモノモシ得ナイト思ヒマスルシ、
又親ノ方ヲ其ノ儘ニシテ置イテ、左樣ナ信託
會社ノ合併ガ果シテ能ク機能ノ調整ヲ行ヒ
得ルカドウカト云フ點モ、多少懸念ガアル
ト思フノデアリマスガ、併シ要スルニソレ
ニ依ッテ、其ノ業務ノ機能ガ益〓伸張スルノデ
アリマスナラバ、勿論ソレハ認ムベキモノ
デアルト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=118
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119・橋本實斐
○委員長(伯爵橋本實斐君) 他ニ御質疑ハ
ゴザイマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=119
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120・河田烈
○河田烈君 チヨット私方面ガ違フノデア
リマスガ、是ハ私記憶ガ古クナッテ間違ッテ
居ルカ知レマセヌガ、貯蓄銀行ノ役員ハ特
別ノ責任ガアルド思フノデアリマスガ、普通
銀行ガ特殊銀行ヲ兼營スル場合ノ役員ノ責
任人的擔保ノ責任ハドウナルノデセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=120
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121・山際正道
○政府委員(山際正道君) 御話ノ如ク現在
ノ貯蓄銀行法ニ於キマシテハ、役員ハ其ノ
預ッテ居リマスル貯金ニ對シマシテ無限責
任ヲ持ッテ居リマス、其ノ故ニ現在ノ貯蓄
銀行ハ非常ナ僅カナ資本ヲ以チマシテ、非
常ニ莫大ナ貯金ヲ集メテ參ッテ居ルノデ
アリマス、中ニハ資本金ノ五百數十倍ノ貯
金ヲ集メテ居ル貯蓄銀行モアルノデゴザイ
マス、デ今囘此ノ兼營ノ法律ヲ立案スルニ
當リマシテ、其ノ責任ヲ同時ニ兼營ノ場合
ニモ適用スベキカ否カト云フ點ヲ一應愼重
考慮致シテ見タノデアリマス、其ノ結果ハ、
結果カラ申シマスルト、兼營ノ場合ニハ
其ノ規定ハ適用シナイト云フ結論ニ達シタ
次第デアリマス、其ノ理由ハ貯蓄銀行ニ於
キマシテハ只今申上ゲマシタ通リニ、無限
責任ト云フ制度デ、設立ノ當初ニ於キマシ
テハ相當ノ信用ヲ繫イデ今日ノ發達ヲ致シ
タルデハアリマスルケレドモ、今日ノ實情
カラ見マスルト、僅カ數十萬圓ノ資本デ數億
ノ貯金ヲ預ッテ居ルヤウナモノニ對シマシ
テ、萬一事ガ起リマシタ場合ハ、實ハ役員
ノ無限責任デモ到底其ノ債務ヲ履行スルト
云フ働キハナイノデアリマス、今日ノ銀行業
ノ實際カラ申上ゲマスルト、貯蓄銀行ニ於
キマシテモ、亦普通銀行ニ於キマシテモ、
最早今日デハ其ノ無限責任ノ有無ニ依ッテ、
信用ノ强弱ガ相當影響ヲ受ケルトカ、或
ソレニ依ッテ債務ノ履行ガ確保サレルトカ
云フ事態ハ、實ハ段々去ッテ居ルノデハナイ
カト思フノデアリマシテ、寧ロ今後ノ貯蓄銀行
ニ付キマシテモ、モウ現在ノ段階カラ申シマ
スルト、無限責任ヲ撤廢スル方ガ事態ニ合フノ
デハナイカトサヘ考ヘテ居ルノデゴザイマス、
唯現狀ガ無限責任ト云フモノヲ基礎ニ、兎
ニ角巨額ノ金ヲ集メテ居ル實情デアリマス
ルカラ、其ノ資本金ノ補强等ヲ致サナイ中
ニ、唯無限責任ダケヲ貯蓄銀行ニ於キマシ
テ撤廢スルノモ如何カト思ヒマスルノデ、
此ノ方ハ其ノ儘ニ致シテ居リマスルガ、之
ヲ移シテ普通銀行兼營ノ場合ニ持ッテ來ル
コトハ、今日ノ實情カラ申上ゲマシテ其ノ
必要ガナカラウト云フ結論ニ達シマシタ次
第デゴザイマス、普通銀行ニ於キマシテハ
集メマシタ貯蓄ノ額ト資本ノ釣合カラ申シ
マシテモ、貯蓄銀行程ノ狀態デモゴザイマ
セヌノデ、又一面ニ於テ先般來申上ゲテ居
リマスル通リ、其ノ內容カラ申上ゲマシテ
モ、無限責任ヲ强ヒテ必要トシナイ事態デ
モアラウト考ヘマスノデ、其ノ條文ヲ此ノ
法案ニ引用致シマスコトハ取止メマシタヤ
ウナ次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=121
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122・橋本實斐
○委員長(伯爵橋本實斐君) 他ニ御質問ハ
ゴザイマセヌカ、デハ今日ハ此ノ程度デ終
リマス、明日ハ午後一時半ニ開會致シマス
午後三時三十七分散會
出席者左ノ如シ
委員長伯爵橋本實斐君
副委員長男爵明石元長君
委員
公爵一條實孝君
侯爵淺野長武君
子爵綾小路護君
子爵上原七之助君
三井〓一郞君
男爵小畑大太郞君
下村宏君
河田烈君
富田健治君
澁澤金藏君
野村德七君
米原章三君
政府委員
大藏次官谷口恒二君
大藏省主稅局長松隈秀雄君
大藏省國民貯蓄局長氏家武君
大藏省資金局長松田令輔君
大藏省理財局長田中豐君
大藏省銀行局長山際正道君
專賣局長官木內四郞君
大藏書記官子爵戶田忠肅君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008101044X00319430202&spkNum=122
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