1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十八年二月八日(月曜日)午前十時十三分開議
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議事日程 第七號
昭和十八年二月八日
午前十時開議
第一 國民貯蓄組合法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第二 納税施設法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第三 臨時資金調整法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第四 普通銀行等の貯蓄銀行業務又は信託業務の兼營等に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第五 銀行等の事務の簡素化に關する法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第六 戰爭死亡傷害保險法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第七 鹽專賣法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第八 商工經濟會法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第九 商工組合法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十 商工組合中央金庫法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十一 帝國鑛業開發株式會社法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十二 重要鑛物増産法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十三 郵便年金法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十四 航空法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十五 木船保險法案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
第十六 自動車交通事業法中改正法律案(政府提出) 第一讀會の續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=0
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001・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 報告ヲ致サセマス
〔高山書記官朗讀〕
去ル五日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提
出案ハ卽日之ヲ衆議院ニ送付セリ
恩給法中改正法律案
東北興業株式會社法中改正法律案
日滿地方稅徵收事務共助法案
明治四十年法律第二十五號廢止法律案
大正九年法律第五十三號中改正法律案
會計檢査院法中改正法律案
藥事法案
船員保險法中改正法律案
軍事扶助法中改正法律案
北支那開發株式會社法中改正法律案
中支那振興株式會社法中改正法律案
占領地軍政官憲ノ爲シタル行爲ノ法律上
ノ效力等ニ關スル法律案
同日第一部ニ於テ請願委員佐々木八十八君
ノ補關選擧ヲ行ヒシニ村上恭一君當選セリ
同日委員長ヨリ請願委員村上恭一君ヲ第一
分科擔當委員ニ選定シタル旨ノ報〓書ヲ提
出セリ
一昨六日委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
自動車交通事業法中改正法律案可決報〓
書
同日內閣總理大臣ヨリ左ノ通第八十一囘帝
國議會政府委員仰付ラレタル旨ノ通牒ヲ受
領セリ
內務省所管事務政府委員
內務書記官郡祐一君
內務事務官今井久君
海軍省所管事務政府委員
海軍少將保科善四郞君
司法省所管事務政府委員
司法省行刑局長正木亮君
司法省保護局長森山武市郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=1
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002・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽壽) 一昨六日、公爵
德川慶光君滿三十歲ニ達シタルニ依リ、貴
族院議員ニ就職セラレマシタ、仍テ其ノ部
屬ヲ第九部ニ定メマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=2
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003・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 是ヨリ本日ノ會
議ヲ開キマス、請暇ノ件ニ付御諮リヲ致シ
マス、石渡莊太郞君、公務ニ付十日間、福
永吉之助君、病氣ニ付十七日間、請暇ノ申
出ガアリマシタ、
シタ許可ヲ致シテ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=3
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004・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=4
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005・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第一、國民
貯蓄組合法中改正法律案、日程第二、納稅施
設法案、日程第三、臨時資金調整法中改正
法律案、日程第四、普通銀行等ノ貯蓄銀行
業務又ハ信託業務ノ兼營等ニ關スル法律案、
日程第五、銀行等ノ事務ノ簡素化ニ關スル
法律案、日程第六、戰爭死亡傷害保險法案、
日程第七、鹽專賣法中改正法律案、政府提
出、第一讀會ノ續、委員長報告、是等ノ七
案ヲ一括シテ議題ト爲スコトニ御異議ハゴ
ザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=5
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006・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、委員長橋本伯爵
左ノ報告ハ朗讀ヲ經サルモ參照
ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ傚フ
國民貯蓄組合法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十八年二月四日
委員長伯爵橋本實斐
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
納稅施設法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十八年二月四日
委員長伯爵橋本實斐
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
臨時資金調整法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十八年二月四日
委員長伯爵橋本實斐
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
普通銀行等ノ貯蓄銀行業務又ハ信託業
務ノ兼營等ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十八年二月四日
委員長伯爵橋本實斐
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
銀行等ノ事務ノ簡素化ニ關スル法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十八年二月四日
委員長伯爵橋本實斐
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
戰爭死亡傷害保險法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十八年二月四日
委員長伯爵橋本實斐
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
鹽專賣法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候、也
昭和十八年二月四日
委員長伯爵橋本實斐
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔伯爵橋本實斐君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=6
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007・橋本實斐
○伯爵橋本實斐君 只今上程ニナリマシタ
國民貯蓄組合法案外六件ノ、特別委員會ニ於
ケル經過竝結果ヲ御報〓申上ゲマス、特別
委員會ハ五囘ニ亙リ愼重審議ヲ重ネ、或時
ハ速記ヲ止メ、或時ハ祕密會ヲ開キ、又大
藏大臣ヨリ戰時金融ノ根本對策ヲ聽取致ス
ナド致シマシテ、去ル二月四日、是等議案
ヲ原案通リ可決スベキモノト議決致シマシ
タ、以下委員會ニ於ケル質疑應答ノ主ナル
モノヲ、各法案ニ付順次御報〓申上ゲマス、
先ヅ國民貯蓄組合法中改正法律案ヨリ申上
ゲマスルガ、本案ハ國民貯蓄組合ノ斡旋ニ
依ル貯蓄ノ增加ヲ圖リ、以テ大東亞戰下ニ
於ケル國民貯蓄ノ增强ニ資スルコトヲ以テ
改正ノ理由ト致シテ居リマス、法案ノ要旨
ヲ申上ゲマスレバ、第一、國民貯蓄組合ノ
斡旋ニ依ル貯蓄ニ關シテハ、元本七千圓ヲ
超エザル限リ、其ノ利子、利益ニ所得稅ヲ
免除シテ、課稅上ノ特典ヲ擴張致シタコト
デアリマス、第二ハ、勤メ先預金ハ原則ト
シテ國民貯蓄組合ノ幹旋ニ依リ受入ルヽコ
トニ統制致シマシテ、其ノ受入方法、資金
ノ運用等ハ別ニ指示ヲスルコトニナッテ居リ
マス、第三、組合構成員タル資格ヲ有スル者
ニ對シマシテハ、必要ニ應ジ加入命令ヲ爲
シ得ルコトト致シマシタ、第四ニハ、市町
村單位ノ地域組合ノ組織ヲ認ムルコトデア
リマス、又第五ニハ、組合貯蓄ノ範圍ヲ擴
張シテ、一定外國有價證劵ノ買入ヲ追加致
シタコト等デアリマス、本案ニ關スル質疑
ヲ綜合致シテ申上ゲマスルト、戰時下國民
貯蓄ノ增强手段ハ、飽ク迄モ國民ノ愛國心ニ
愬フルコトヲ本則トスベキデアル、政府モ
之ニ關シテハ法律上ノ强制ヲ行ハヌト屢〓聲聲
明シテ居ルガ、今囘ノ貯蓄關係法案ノ提出
ノ趣旨ハ何處ニ在ルカ、又貯蓄ノ奬勵モ部
落會、町內會、隣組ニ對スルモノノ實際ヲ
見ルト、度ノ過ギタルモノガアルヤウデア
ル、卽チ半バ强制的ノ貯蓄ガ最低生活費以
上ニ喰ヒ込ンデ困難ヲ感ジテ居ル向キモ相
當多イヤウデアル、又公債ノ購入等ノ爲ニ
已ムヲ得ズ借入金ヲ以テ之ニ充ツルト云フ
ヤウナ實情モアルヤウデアル、政府ニ對シ
テハ貯蓄奬勵ノ矢ヲ、モット增產奬勵ニ依ル
所得、其ノ他軍需產業會社等ノ社内留保金
等ニ向ケル工夫ガ一段ト要請サレルガドウ
デアルカ、之ニ對シテ政府當局ヨリ、戰時
下國民貯蓄ノ增强ニ關シテハ、飽ク迄モ國
民任意ノ貯蓄心ニ根本ノ建前ヲ置キ、法律
ニ依ル直接强制ノ如キハ今後ト雖モ之ヲ行
ハヌ考デアル、御話ノ今囘提出ノ法案ハ、個
人ノ貯蓄ニ關スル熱意ヲ刺戟發動セシムル
ト共ニ、其ノ預貯金ヲ安全ニ確保スル趣旨
ニ基クモノデアル、生產增强ニ依ル所得其
ノ他、軍需工業方面ノ所得ノ貯蓄ノ增强奬
勵ハ、從來特別ニ努力シ來ッテ居ルガ、今
後トモ一層留意スル、又公債ノ隣保消化等
三、相當ムツカシイ問題モ一部ニハ介在
スルカラ、購買力ノ浮動スルト思ハルヽ方
面ニ注意ヲ向ケ、國民全體的ニ無理、摩
擦無キヲ期シタイ、唯國民ノ最低生活費云
云ノ御話モアッタガ、是ハ地方ニ依リ、職
業ニ依リ、又家族ノ構成ニ依ッテ各〓、異ルカ
う、所得幾何以下ノモノハ貯蓄ヲ要セズト
云フガ如キコトハ困難デアル、本年度
ノ二百三十億ノ貯蓄目標ハ、我々國民ニ
取ッテ必ズ爲シ遂ゲネバナラヌ義務ガアル
カラ、國民各人ハ、出來ルダケ生活費ヲ切
詰メテ貯蓄ニ振リ向クルノ心樺ガ要請セラ
レル、斯ウ云フ答辯ガゴザイマシタ、
第二ハ納稅施設法案ニ付テ御報告申上ゲ
そう、國民ノ納稅義務ノ履行ヲ容易〓實ナ
ラシメ、併セテ納稅ニ關聯シマシテ、貯蓄
ノ增嵩ヲ圖ルノ必要ガアッテ、本案ガ提出セ
ラレタモノデアリマス、法案ノ骨子ヲ申上
ゲマスト、第一ニ、納稅ニ關シ公共的事業ヲ
行フ町內會、部落會及ビ納稅組合ヲ納稅團
體トシテ法制上ノ地位ヲ與ヘタルコト、第
二ニ、法人ニ對シテ當該法人ノ納付スベキ
法人稅ノ納稅準備ノ爲、決算確定ノ際、
定割合ノ納稅積立金ヲ爲サシメ、其ノ積立金
ノ一部ハ之ヲ納稅準備預金ヲ以テ保有スル
ノ義務ヲ負ハシムルコトデアリマス、第三、
專ラ租稅公課ノ納付ニ充ツル目的ヲ持ツ納
稅準備預金ナル新種ノ預金ヲ創設シ、其ノ
利子ニ免稅ノ特典ヲ與ヘル、第四ニ、租稅
ノ納付ト國民貯蓄ノ增强トヲ關聯セシメタ
ル一ツノ新シイ施設トシテ、租稅ノ貯蓄納
付制度ヲ創設スル、卽チ所得稅、臨時利得
稅ノ納稅者ガ、其ノ稅額ノ二倍、又ハ三倍
ニ相當スル金額ノ貯蓄、卽チ戰時納稅貯蓄
ヲ爲シタル場合ニハ、當該租稅ノ納付ト同一
ノ效果ヲ生ゼシメルト云フノニアリマス、次ニ
質疑ノ主ナルモノヲ申上ゲマスルト、先ヅ
納稅ニ關スル一般的ノ質疑ト致シマシテ、
小切手ニ依ル租稅納付制度ノ件デアリマス、
卽チ納稅ノ便ヲ圖リ併セテ通貨節約ニ資ス
ル爲、小切手ヲ以テスル納稅制度ノ擴張ヲ
認メテハドウデアルカ、斯ウ云フ質問デアリ
マス、當局ハ、本件ハ旣ニ其ノ必要ヲ認メ
テ昭和十五年ヨリ之ヲ實施シテ參ッテ居ル、
尙特定郵便局ヲシテ納稅上小切手ノ受入ハ、
郵便局窓口事務ノ現狀ニ顧ミ、考慮ノ餘地
ガアルカラト云フコトノ答辯ガゴザイマシ
タ、次ハ租稅ノ滯納狀況ニ付テノ質疑デア
リマス、當局ハ、近時納稅成績ハ稍〓低下ノ
徵ヲ示シテ居ル、其ノ原因ト見ラルベキモ
ノハ、最近直接稅ニ付大幅ノ增稅ガアッ
タコト、課稅最低限ノ引下ニ依リマシテ、
納稅ニ親シミナキ新規ノ納稅者ガ現出シタ
ルコト、各種統制强化、企業整備、轉廢業
等ニ依リ、營業狀態ニ變動ヲ生ジタル處、
課稅ハ前年度ノ實績ニ依リ之ヲ爲ス爲、納
稅困難ヲ生ズル次第デアル、之ガ對策トシ
テハ、所得ニ餘裕アル時、納稅準備ノ心掛
ヲ涵養スルノ外ハナイト云フ答辯デアリマ
シタ次ニ本法案ニ關スル質疑ト致シマシ
テ、一委員ヨリ、戰時納稅貯蓄ノ中、租稅
ニ該當スル部分以外ヲ以テ次期以降ノ納稅
ニ充當シ得ルコトト致シテハドウダ、斯ウ
云フ質問デアリマシタ、之ニ對シマシテ大藏
営局ハ、戰時納稅貯蓄ノ中、租稅收入トナ
ルモノヲ除キタル部分ヲ、次期以降ノ納稅
ニ充當シ得ルコトト爲スコトハ、公債ヲ以
テ納稅ニ充ツルト同一ノ結果トナルノミナ
ラズ、租稅ノ前取ナルヤノ觀念ヲ生ゼシム
ルコトトモナルノデ適當デハナイ、斯ウ云
フ答辯デアリマス、次ニ他ノ委員ヨリ)戰
時納稅貯蓄ハ、國民中ノ如何ナル階層ヲ目標
トスルヤト云フ問デアリマス、一定以上ノ
高額所得者ハ、其ノ納付スル租稅ノ二倍或
ハ三倍ノ貯蓄ヲ、當該年度ノ所得ヨリ爲ス
コトハ出來ナイ事情ニ在ル、故ニ自然戰時
納稅貯蓄ハ、主トシテ中流階層ヲ對象トス
ルト云フヤウナ結果ニナル、斯ウ云フ答辯
デアリマス、更ニ他ノ委員ヨリ、戰時納稅貯
蓄ハ、國民貯蓄組合ノ貯蓄額中ニ算入スルカ
ドウカト云フ質問ニ對シマシテハ、御尋ノ
件ハ、只今〓究中デアル、斯ウ云フ答辯デ
アリマス、次ノ法案ニ移リマシテ、臨時資金
調整法中改正法律案ニ付テ申上ゲマス、此
ノ改正理由ハ、大東亞戰ノ進展ニ伴ヒマシ
テ、國民貯蓄ノ增强、適正簡易ナル有價證
劵賣買機構ノ確立、及ビ株式ノ市價安定ヲ圖
ルコトニ存スルノデアリマス、法案ノ骨子
ヲ申上ゲマスト、第一ニ、各種ノ新種貯蓄
ヲ取扱ハシメ、新種證劵ヲ發行シ得ルコト
ト致シ、課稅上優遇ヲ圖リ、損失補償或ハ
補助金ヲ交付スル等デアリマス、第二ニ、適
正簡易ニシテ安全ナル有價證劵ノ賣買機構
ノ整備デアリマス、第三ニ、必要ニ應ジ株
式ヲ讓渡スベキコトヲ命ジ得ル等デアリマ
スガ、本法案ニハ、多クノ委任命令ニ讓ル
規定ガゴザイマスルノデ、委員會ニ於キマ
シテハ、命令ノ內容ニ付テ詳細ナル當局ヨリ
ノ說明ヲ聽取致シマシタガ、玆ニ申上ゲルコ
トハ煩雜デアリマスカラ速記錄ニ讓リタイ
ト存ジマス、唯本案ニ付テ一委員カラ、癩
又ハ結核豫防、航空機生產又ハ造船促進等、
特殊目的ヲ限リ、資金ヲ調達シ併セテ購買
力ヲ吸收シ、更ニ元本ハ獻金スル意味ニ於
テ、富籤ヲ發行スル意思ハナイカ、斯ウ云フ
質問デアリマス、政府當局ヨリハ、御尋ノ
御心持ハ能ク御察シガ出來ル、確カニ特殊
ノ方面ノ購買力吸收ノ一策ト致シテ考慮ノ
價値ハアルケレドモ、元本ヲ失ハシムル
富籤ハ、國民貯蓄思想ニ及ス影響ヲ考ヘ
躊躇セザルヲ得ナイ、從ッテ第十條ノ五ノ改
正ニ依リ、貯蓄債劵、報國債劵以外ニ、別
ニ新種ノ高額割增金附證劵ノ發行ヲ認ムル
ト云フヤウナコトニ致シタイ、斯ウ云フ答
辯デアリマシタ、第四ニ、普通銀行等ノ貯
蓄銀行業務又ハ信託業務ノ兼營等ニ關スル
法律案ニ付テ申上ゲマス、本案ハ納稅施設
法案ト共ニ委員會ニ於テ最モ論議ノ重ネラ
レタル法案デアリマシテ、委員ノ中ニハ、
銀行、信託業等ニ多年ノ經驗ヲ御持チニ
ナッテ居ル方々モアリマスノデ、其ノ論議ハ
傾聽スベキモノガ多クゴザイマシタ、時局
ノ要請ニ顧ミマシテ、貯蓄的預金ノ吸收ノ增
强ヲ圖ル爲ニ普通銀行等ヲシテ貯蓄銀行
業務又ハ信託業務ヲ兼當セシムル必要ガア
ルト云フノガ、本法案ノ提出理由デアリマ
ス、法案ノ骨子ト致シマシテ、第一、普通
銀行ガ主務大臣ノ認可ヲ受ケ、又ハ特別銀
行ガ主務大臣ノ指定ヲ受ケ、貯蓄銀行業務
又ハ信託業務ヲ營ミ得ルコト、第二、銀行
又ハ信託會社ノ合併ニ關スル規定ガ、規定
シテゴザイマス、第三ニ、本法案ニ伴ヒテ必
要ナル他ノ法律ノ改正ヲ規定シテ居ル等デ
アリマス、質疑應答ノ內容ヲ申上ゲマスル
ト、其ノ第一ハ、普通銀行ハ健全ナル內容
ヲ維持シテ居ルカ、又本時局ガ解消後、普
通銀行資金內容ニ惡化ノ生ズル虞ハナイデ
アラウカ、斯ウ云フ質問ニ對シマシテ、普
通銀行ノ內容ハ、往時ト一變致シテ全ク改
善シテ懸念スベキモノハ一モナイ、特ニ大
東亞戰爭勃發後ハ、非常金融對策ニ依リ、
如何ナル事態ガ起ッテモ預ケタダケノ金ハ
金融機關カラ拂戾スヤウ政府ニ於テ援助ス
ル、又普通銀行ハ、國家的事業ヲ營ム會社
等ニ融資ヲシテ居ル、國家ハ是等ノ事業會
社ヲ十分保護スルカラシテ、會社事業ノ變
化ニ依ッテ銀行資產內容ノ惡化ヲ來スガ如キ
コトハ絕對ニナイ、又政府ハ銀行ニ對シテ
モ、是等ニ對シテ深キ責任ヲ感ジテ居ル次第
デアル、斯ウ云フ答辯デアリマシタ、次ニ本
法案制定ニ依リ、結局金融機關ノ分業主義
ヲ廢シ、綜合機能ヲ與ヘ、金融機關ノ一元
化ヲ圖ルニアラズヤト云フ懸念デアリマス、
之ニ對シマシテ営局ヨリ、此ノ制度ヲ設クル
ノハ、財政經濟政策上貯蓄增强、預金吸收
ヲ喫緊ノ要務トスル所ヨリ、金融界ニ於
テ人員、店舗等最モ活動力アル普通銀行ヲ
シテ總力ヲ擧ゲシメムトスルコトニ基ク、
技術上是等令融機關ヲ綜合シテ强力ナル金
融機關ヲ作ラシメムトスルガ如キ意見ニ基
イテ本法案ガ出來テ居ルノデハナイ、斯ウ
云フ答辯デアリマス、更ニ金融統制上ノ見
透シトシテ近キ將來金融機關ノ國營ヲ考フ
ルコトハナイカト云フ件デアリマス、昨年
來大銀行ノ合同ガ起ッタケレドモ、是ハ當業
者自發的ノ認識了解ニ基イテ起ッタモノデア
ル、政府ト致シテハ銀行ノ國營ヲ考ヘルヤウ
ナコトハナイ、斯ウ云フ答辯デアリマシタ、
次ニ普通銀行ニ貯蓄銀行業務ヲ兼營セシム
ル方針如何、尙此ノ場合兼營ハ當事者ノ認
識了解ヲ基礎トスベキデアルカドウカ、斯
ウ云フ質問ニ對シマシテ、本法案ノ精神ハ、
成ルベク國民經濟的ニ能率良ク貯蓄ヲ吸收
スル建前デアルカラ、大都會等ニ於テ十分
獨立シテ貯蓄業務其ノ他ガ實行シ得ル能力
ヲ備ヘ、且之ヲ他ニ合併スルヨリモ、獨立
サセル方ガ、全體的ニ能率上宜シキモノハ、
將來ト雖モ專營トシテ存續セシムル方針デ
アル、尙此ノ場合ノ兼營ニハ强制セザルコ
ト勿論デアル、斯ウ云フ答辯デアリマシタ、
他ノ質疑ハ、將來ノ貯蓄銀行新規設立ヲ認
ムルカ、斯ウ云フ問ニ對シマシテ、產業經濟
一般ガ、企業合同等ヲ行ハルヽ形勢ニ進ムカ
ラシテ、金融機關モ自然之ニ伴ヒテ其ノ數ハ
整理合同ノ餘地ハアルケレドモ、增設スル
餘地ハ乏シキ傾向ニアル、從ッテ新タナル免
許ハ致サナイ方針デアル、斯ウ云フノデア
リマス、次ニ本法施行後多年地方ニ於テ經營
シタル貯蓄銀行ノ根柢ヲ搖ガスヤウナコト
ハナイダラウカ、斯ウ云フ懸念ニ對シマシ
テ當局ハ、是ハ愼重ニ考慮シテ、兼營ノ貯
蓄銀行業務ガ專門ノ貯蓄銀行業務ヲ妨ゲザ
ルガ如キモノニ制限スルコトニ依ッテ、其ノ專
門ノ貯蓄ノ特色ヲ一層發揮セシムルヤウニ注
意スル、又本法附則ニ於テ、貯蓄銀行ノ力
ヲ增ス爲ニ、資金運用制限ヲ緩和シ、或ハ國
債保有率ヲ減少シタル等ガ是デアルト云
フ答辯デアリマシタ、次ノ問題ハ、貯蓄銀
行ノ役員ハ法律上特別ノ責任アリト考フル
ケレドモ、普通銀行ガ之ヲ合併スル場合ハ
役員ノ責任ハドウナルカ、斯ウ云フ質問ニ
對シマシテ、現行法上、貯蓄銀行ノ役員ハ
無限責任ヲ負ッテ居ル、併シ本法案ニ付テ
ハ〓究致シマシタ結果、此ノ規定ハ適用シ
ナイコトニナッテ居ル、斯ウ云フ答辯デア
リマシタ、又信託業務ヲ兼營セシムル方針
ハドウデアルカト云フ間ニ對シマシテ、
信託業務ハ、特殊性ニ富ミ資力大ニシテ業務
發達ノ熱意ヲ要スルカラシテ、此ノ資格ノ十
分備ハレル普通銀行ヲシテ兼營セシムル方
針デアル、斯ウ云フ答辯デアリマシタ、又本法
施行ノ曉ハ、信託ノ合併ヲ促進スル氣運ヲ釀
成スルノデハナイカ、斯ウ云フ質問ニ對シ
マシテ、信託ノ合併ガ、信託機能全體トシ
テ〓揚セラルヽ場合ハ、銀行合併ノ一般ノ
原則ト同樣合併ヲ認ムルヲ可トスルケレド
モ、實情ハ、信託會社ニハ大體親銀行ガアッ
テ、其ノ資本系統ノ役員ガ存在シテ居ルカ
ラシテ、親銀行ノ合併ガナイ限リ、事實上
ハ實現シナイモノト考ヘル、斯ウ云フ答辯
デアリマシタ、次ニ普通銀行ノ信託業務兼
營ハ、固有ノ信託ヲ衰微セシムル虞ハナイ
カ、斯ウ云フ質問ニ對シマシテ、本法案ノ
精神ハ、兼營ニ依ッテ貯蓄增强ヲ重要ナ理由
トスルト同時ニ、本來ノ信託ヲ活カスコト
ヲモ重視シテ居ル、近時銀行ガ漸次國民ノ
財產管理ヲ行フコトヲ要スルガ如キハ、此
ノ信託ノ方向へ伸ビテ行ク證據デアル、此
ノ意味ニ於テ銀行ノ選擇ヲ誤リサヘシナケ
しく、信託業務ガ全體トシテ發達シテ行ク
モノトナリ、尙之ニ依ッテ從來ノ大口財產管
理ガ、時局ノ要請ニ依ッテ遺家族財產ノ管理、
育英信託等大衆相手ノ機能ヲ發揮サセテ行
ク見込デアル、斯ウ云フ答辯デアリマシ
タ、次ノ法案ニ移リマシテ銀行等ノ事務ノ
簡素化ニ關スル法律案ニ付テ申上ゲマス、
本案ハ銀行其ノ他金融機關ノ事業年度ヲ政
府會計年度ト合致致サセル等ニ依リマシテ、
金融機關ノ事務簡素化ヲ圖リ、戰時下國家
財政及ビ金融ノ圓滑ナル運營ニ資スルガ爲、
銀行法等ニ改正ヲ加ヘタノガ提案ノ趣旨デ
アリマス、委員會ニ於テモ殆ド質問ガゴザ
イマヌセデゴザイマシタカラ、本件ハ此ノ
程度ニ止メタイト存ジマス、次ニ戰爭死亡
傷害保險法案ニ付テ申上ゲマス、制定ノ要
旨ヲ申上ゲマスルト、戰爭ノ進展ニ卽應
シ、戰爭ニ因ル死亡傷害ニ對シ特別ノ保險
制度ヲ設クル必要ガアル、仍テ國民ノ志氣
昂揚、後顧ノ憂ナカラシムルコトガ本法制
定ノ理由デアル、法案ノ骨子ト致シマシテ
ハ、第一、保險ハ戰爭ノ際ニ於ケル戰鬪行
爲又ハ之ニ關聯アル事件ニ因ル死亡傷害ヲ
保險事故ト致ス、第二ニ、保險者ハ政府ノ
指定スル保險會社······生命保險デアルトカ、
傷害保險、損害保險、トスルト共ニ、本保
險契約ノ手續ハ、之ヲ普通ノ場合ニ比シテ
簡易ニシ加入ニ便セムトスルノデアリマス、
第三ニ、被保險者、保險金受取人、保險金
額保險料、保險期間等ノコトハ、命令ヲ
以テ之ヲ定ム、第四ニ、純然タル公的ノ保
險デアリマスカラ、營利的ニハ行ハナイ、
從ッテ會社ガ損失ヲ蒙レバ、政府ハ之ヲ補償
シ、利益ガアッタラバ、之ヲ納付セシムルト
云フヤウナコトニナッテ居リマス、本案ニ對
シマシテハ、先ヅ保險會社指定ノ範圍ハ如
何、又第一條ノ「之ニ關聯アル事件」ノ例如何、
第三ニ、本保險ノ保險料ハ生命保險料ニ比シ
テ著シク低率デアルト思フガドウダ、四番目
ニ、保險金額ノ限度竝ニ其ノ限度ノ根據等ニ
付テノ質問ガアリマシタガ、政府當局ハ、本
保險ノ普及ヲ圖ル爲、生命保險會社ハ全部、
損害保険會社ニ付テモ、再保險又ハ汽罐保
險專門ノモノノ外ハ全部、之ヲ指定スル積リ
デアル、又御尋ノ事例トシテハ、空襲ニ伴フ
火災、消防、避難、其ノ他混亂、戰鬪ニ伴フ
軍事上ノ行動措置、又ハ行政上ノ措置等ガ
此ノ例ニナル、次ハ著シク此ノ保險料ハ低
イノデアル、卽チ生命保險料ハ、金額千圓
ニ付テ三十五圓カラ四十圓見當デアルノ
ニ、本保險ハ、帝國內ハ千圓ニ付テ三圓、帝
國外ニ於テハ千圓ニ付テ十圓程度ニスル、
又保險金額ハ五千圓ヲ限度ト致ス、大體是ハ
國民生活ノ水準等ヲ考ヘテ決定シタノデア
ル、此ノ五千圓ハ他ノ制度ニ於テモ之ヲ採ツ
テ居ルヤウデアル、卽チ戰時災害保護法、
防空從事者扶助令等ニ依ル補償、軍人ノ戰
死傷ニ對スル給與等ハ、大體五千圓ヲ採ッテ
居ルト云フ答辯デアリマス、尙本保險制度
ヲ國營トスベキモノト考ヘルガドウカト云
フ質問ニ對シマジテハ、本保險制度ノ普及上ノ
便宜カラ考ヘテモ、現在相當普及セル生命保
險會社等ヲ指定スル方ガ得策デアルト考ヘル
カラ、差常リ國營ノ考ヘハナイ、斯ウ云フ答辯
デアリマス、最後ニ鹽專賣法中改正法律案ニ付
テ申上ゲマス、改正ノ理由ト致シマシテ、鹽
需給ノ安定ニ資セムガ爲デアリマス、法案
ノ骨子ト致シマシテ、鹹水用途ノ制限ヲ緩
和シ、鹽製造以外ニモ之ヲ使用セシム、次
ハ鹽又ハ鹹水製造業者ニ罹災補償制度ヲ設
ケル、鹽製造廢止ニ政府ノ許可ヲ受ケシム、
鹽製造業者等ノ共同活動ヲ促進セシメ、鹽生
產增强ヲ圖ル爲、團體機構ヲ確立スル、斯
ウ云フコトデアリマス、本案ニ關シマシテ
ハ、一委員ヨリ、今般ノ改正ニ卽應シテ、
鹽業者ニ於テモ生產ヲ確保スベキコトニ關
シ、政府ハ方途ヲ講ズベキモノト考フルガ
所見如何、鹽生產ノ激減シタルガ如キ場合
ニ於テ、鹽製造業者ニ對スル救濟策ハドウ
デアルカト云フ質問ニ對シマシテ、鹽ノ生
產確保ニ付テハ、別途國家總動員法關係ノ
勅令ニ基イテ生產命令ヲ發シ得ルコトニナ
ル、又鹽生產ノ激減シタル場合ニハ、改正
案第十七條ノ二ノ運用ニ依ッテ之ヲ救濟ス
ルコトニナッテ居ルト云フ答辯デアリマス、
尙委員會ニ於キマシテハ速記ヲ止メマシテ、
農村等ニ於ケル鹽不足ノ實情ニ關シ、委員
ト當局トノ間ニ熱心ナル問答ガ交換セラレ
マシタ、又祕密會ヲ開キマシテ、鹽需給ニ
關シ當局ノ說明ヲ聽取致シマシタコトヲ玆
ニ併セテ御報〓申上ゲマス、最後ニ一委員
ノ質問ニ對シマシテ、大藏大臣ヨリ、戰時金
融根本對策ニ付キテ御所見ヲ伺ヒマシタル
處ガゴザイマスカラ、簡單ニ之ヲ申述ベマス、
戰時金融對策ノ根本トシテハ、戰爭ヲ勝ツ爲ニ
ハ、其ノ必要ナル資金ハ必ズ之ヲ調達ス
ル、此ノ戰爭資金ノ調達方法トシテハ、經
濟秩序ノ維持ヲ第一トスルコト、又戰爭資
金ニハ自ラ其ノ限度ガアルト云フコトヲ考
ヘナケレバナラヌ、必要ナル金ヲ作ルコト
ハ、其ノ反面不必要ナル金ヲ支出シナイコ
トデアル、資金ノ限度ハ國家總生產力ヲ考
ヘナケレバイカヌ、又限度內ノ配分ヲ行フ
コトデアル、此ノ配分トハ國家ノ直接用ノ
モノ、民間ノ戰時生產力擴充資金ニ充ツル
平)、及ビ國民消費資金等ニ分ツコトガ出
來ル、國家活動資金ハ租稅及公債ニ依ル、
租稅ハ生產力ヲ破ラズ、國民生活ガ維持シ
得ル限度ニ止メタイ、租稅以外ハ國民ノ貯
蓄ニ依リ集積シタル金ヲ國家ノ生產力ノ
爲ニ必要トスルモノニ支出スル、不用資金
ハ流出セザルコトヲ專念トスル、租稅ハ國
民貯蓄ノ增强ニ俟ツ、從ッテ根本的ニハ國民
ノ自覺ニ俟ツコトガ非常ニ多イ、戰時下ニ
於テハ殊更經濟秩序ガ肝要デアル、生產力
擴充ヲ極端ニスレバ、他ニ害ヲ及スコトト
ナル、資力ノ收拾ト共ニ秩序ヲ要スルノデ
アル、是ニハ物價對策、金利對策等ニハ注
意ヲシナケレバ破綻ヲ生ズル、金利ノ方面
ハ變動サセナイ、現下ノ情勢ニ於テハ外國
ノ爲替ハ其ノ作用ヲ爲サナイ、唯心配ナノ
ハ株式市場ニアル、戰時惡性「インフレー
シヨン」ヲ戒メルコトガ第一デアル、之ガ
爲ニ日本證劵取引所法ノ制定ヲ今期議會ニ
出シタ、斯ウ云フコトデアリマス、斯クテ
質疑ヲ終リマシテ、討論ニ入リマシタル處、
一委員ヨリ、是等ハ何レモ戰時喫緊ノ法案
デアルカラ、原案ニ贊成スルトノ意見ノ開
陳ガアリ、又他ノ一委員ハ、是等各案ニ贊
成ヲ致ス者デアルケレドモ、唯、是等ノ中、
納稅施設法案ニ付キマシテ、其ノ第四章、
卽チ第十七條乃至第二十條ニ關シテハ、
ツ、國民ガ租稅ノ納付トシテ考ヘ貯蓄シタル
モノガ、後年ニナッテ公債トシテ返還セラレ
ルコトハ、國民納稅義務ノ觀念ニ混淆ヲ生
ズルモノデハナイカ、又納稅額ニ二倍シタ
ル戰時納稅貯蓄金ノ殘餘額ハ、之ヲ次期ノ納
稅ニ、或ハ更ニ次年度ノ納稅ニ充當シ、更
ニ所得稅以外ノ相續稅等ニモ振替へ得レバ、
國民ノ納稅上ノ便宜ガ大デアルトノ建設的
ナ意見ノ開陳ガゴザイマシタ、終ッテ採決ヲ
致シマシタル處、全會一致ヲ以テ是等七件
ノ法律案ハ、原案通リ可決スベキモノナリ
ト決定致シマシタ、此ノ段御報告ヲ申上ゲ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=7
-
008・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 別ニ御發言モナ
ケレバ、七案ノ採決ヲ致シマス、七案ノ第
二讀會ヲ開クコトニ御異議ハゴザイマセヌ
カ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=8
-
009・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=9
-
010・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ各案ノ第一讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=10
-
011・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=11
-
012・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=12
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013・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=13
-
014・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 七案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナケレバ、全部ヲ問
題ニ供シマス、七案全部、委員長ノ報告通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=14
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015・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=15
-
016・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ各案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=16
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017・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=17
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018・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=18
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019・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=19
-
020・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 七案ノ第三讀會
ヲ開キマス、七案全部、第二讀會ノ決議通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=20
-
021・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=21
-
022・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第八、商工
經濟會法案、日程第九、商工組合法案、日程
第十、商工組合中央金庫法中改正法律案、
政府提出、第一讀會ノ續、委員長報〓、是
等ノ三案ヲ一括シテ議題ト爲スコトニ御異
議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=22
-
023・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、委員長黑木伯爵
商工經濟會法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十八年二月四日
委員長伯爵黑木三次
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
商工組合法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報告候也
昭和十八年二月四日
委員長伯爵黑木三次
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
商工組合中央金庫法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十八年二月四日
委員長伯爵黑木三次
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔伯爵黑木三次君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=23
-
024・黒木三次
○伯爵黑木三次君 只今議題ト相成リマシ
タル商工經濟會法案外一一件ヲ付託セラレマ
シタル特別委員會ノ經過竝ニ其ノ結果ヲ御
報告申上ゲマス、特別委員會ハ去ル一月三
十日、二月一日、二日、三日、四日ト五
日間ニ亙リ愼重審議ヲ致シ、中、速記ヲ中止
シテ質疑ヲ進ムルコト一囘、政府當局ノ退
席ヲ求メマシテ懇談ヲナシ、漸ク全委員ノ
意見ノ一致ヲ見マシタノデ、去ル四日午後、
討論ニ入リ、表決ヲ致シマシタル處、以上
三法案トモ原案通リ可決スベキモノナリト
決議致シマシタ次第デアリマス、是ヨリ委
員會ノ經過狀況ニ付申上ゲマス、三法案ノ
提案理由ハ、此ノ壇上ヨリ先日岸商工大臣
ヨリ述ベラレマシタルガ故ニ、繰返シマセ
ヌガ、委員會ノ席上ニ於テ述ベラレマシタ
ル提案理由ハ、御參考ニ相成ル點少クナイ
ト信ジマスガ故ニ、玆ニ申上ゲタイト思ヒ
マス、第一ニ、商工經濟會法案ハ從來ノ商
工會議所ヲ廢止致シマシテ、新タニ商工經
濟會ヲ設ケムトスルモノデアリマス、卽チ
從來ノ商工會議所ハ、單ニ商工業ノ改善發
達ヲ圖ルコトヲ其ノ目的ト致シテ居マシタ
ガ、此ノ商工經濟會ハ、地域的綜合產業經
濟團體トシテ地方產業經濟ニ關スル行政ニ
對スル協力ヲ主眼トシタル產業行政ノ協力
機關デアリマスルガ故ニ、行政區劃ニ依リ
道府縣ヲ其ノ區域ト致シマスガ、從來ノ商
工會議所ハ市又ハ町ノ範圍ヲ區域ト致シタ
ルニ對シ、其ノ地區ハ擴大サレタノデアリ
マイ、又商工會議所ノ構成員ハ一定ノ國
稅等、一定額ヲ納ムル者ヲ其ノ議員選擧權
者トシテ、是等ノ者ノ選擧シタル議員ヲ中
心ニ車業ヲ行ッテ來タノデアリマスガ、商工
經濟會ハ、地方產業行政ニ協力セジメ、
般產業間ノ連絡ヲ圖ルヲ以テ各種產業ヲ營
ムモノノ中ヨリ其ノ構成員タル資格ヲ有ス
ル者ヲ行政官廳ニ於テ指定シ、其ノ者ハ當
然加入トシタノデアリマス、從ッテ主務大臣
ノ命令ニ依リ之ヲ全國ニ設立スルコトト致
シマシタ、此ノ點從來ノ任意設立タル商工
會議所ト大ナル逕庭ガアル次第デアリマス、
商工會議所ノ事業ハ、單ニ商工業ノ改善發
達ヲ圖ルニアリマシタルガ故ニ、其ノ役員
ノ任免ハ當事者ノ意思ニ任サレテ居タノニ
反シ、商工經濟會ノ事業ハ總テ行政官廳ト
表裏一體ノ關係ニ於テ地方產業經濟ニ關ス
ル行政ニ協力セシムルヲ主眼トスル故ニ、
其ノ公共性ハ强クナリ、事業範圍ハ擴大致
シマシタルガ故ニ、有能ノ士ヲ其ノ役員ニ
スル方途ヲ講ジマシタ、其ノ上ニ行政官廳
ノ任命又ハ承認制度ヲ採ッタノデアリマス、
又商工經濟會法案ニハ支部ヲ設クル規定
ヲ設ケマシタガ、是ハ必要ナル地ニ强力ナ
ル支部ヲ設ケ、下部組織ノ整備ヲ圖ラムト
スル趣旨デアリマス、第一一ニ、商工組合法案
ハ、商工鑛業ノ總力ヲ結集シ、其ノ能率ヲ
最高度ニ發揮スルコトヲ目途トシ、其ノ統
制運營ヲ〓ル組織機構ヲ整備確立セムトス
ルモノデアリマス、卽チ統制組合、施設組
合ノ商工組合竝ニ商工組合中央會ヲ設立セ
ムトスルモノデアリマス、初メノ統制組合
ハ、商工鑛業部門ニ於ケル統制團體デアリ
マス、曩ニ重要產業團體令ニ基キ、重要產
業部門ニ於ケル統制團體トシテ、統制會ノ
設立二十有餘ニ上リマシテ、重要產業部門
ノ上部統制機構ハ略〓、整備致シマシタガ、
般ノ商工業部門ニ於テハ、商業組合、工業組
合、同業組合ガアリマスガ、是等ハ遠ク過
去ニ於テ創設セラレマシタ關係上、今日ノ
結制經濟下ニ於ケル統制組織トシテ幾多缺點
ガアリマス、例ヘバ總會ヲ中心トスル會議制ノ
如キ、國家意思ヲ敏速ニ且的確ニ滲透セシムル
ニ缺點ガアリマス、右諸組合ノ外、統制會ノ下
部組織トシテ重要產業團體令ニ依ル各統制組
合ガアリマスルガ、現行ノ統制組合ハ、其
ノ事業ガ狹義ノ統制專業ニ限ラルヽ結果、
一般中小企業ノ統制ニ適セザル所アル故、
統制確保上必要ナル經濟事業ヲモ併セ行フ
ヤウ强化擴充ノ必要ガアリマス、更ニ現
行ノ商業組合、工業組合ハ、商工分立ノ原
則ニ立チマスガ故ニ、兩者對立摩擦ヲ惹
起スル虞ガアルノデアリマス、カルガ故ニ、
必要ニ應ジ商工一體ノ組合ヲモ設立ノ途ヲ
開クヲ適當トシ、現行ノ統制組合、工業組
合、商業組合、同業組合ノ制度ノ長ヲ採リ
短ヲ補ッテ新統制組合制度ヲ創設セムトス
ルノデアリマス、次ノ施設組合ハ、中小
企業ノ共同經營ノ組織デアリマス、現下ノ
生產增强、配給ノ適正ノ爲、企業整理ヲ爲
シ能率增强ヲ期シツヽアルガ、一面中小企
業經營ニ伴フ利點モ之ヲ活用スル必要ガア
リマスルノデ、是等中小企業ヲ結合シ、共
同經營ヲ行ハシメ、以テ中小經營ノ長ヲ採
リ短ヲ補フ組合ノ存在モ亦必要トナリマシ
タ、卽チ本法ニ依リ任意加入性ノ純然タル
共同組合トシ、施設組合ナル制度ヲ設ケタ
ノデゴザイマス、終リノ商工組合中央會ハ、
本法ニ依ル統制組合、施設組合ノ指導連絡
ヲ圖ル中央機關デアリマシテ、其ノ事業
ハ商工組合ノ經營、實務ノ指導、其ノ他
中小企業ニ關スル調査〓究ニ限リマシテ、
統制ニハ關與シナイ建前デアリマス、又總
テ本法ニ依リ旣存組合ガ新組合ニ改組セラ
ルヽニ當リマシテハ、成ルベク簡易ナル方
法ニ依ルヤウ諸種ノ規定ヲ設クルト共ニ、
業界ニ無用ノ混亂ヲ生ゼシメナイヤウ、特
ニ留意スルトノコトデアリマシタ、扨商工
組合中央金庫法中改正法律案ハ、設立當初
ハ所屬組合ガ千六百餘デ、貸出殘高モ三百
餘萬圓デアリマシタガ、昨年末ハ組合數約
七千、貸出殘高一億圓ヲ突破ノ狀況ヲ呈シ
マシタ、又商工債劵ニ付テモ、昨年末發行
高ガ約一億一千萬圓ニ達シマシテ、約三千
萬圓ノ發行餘力ヲ殘スニ過ギナイ狀況トナ
リマシタ、又今囘本法ノ改正ニ依リ、從來
ノ組合ヲ改組設立シタル會社、其ノ他統制
ノ必要上設立シタル會社ニ對シマシテモ融
通スルコトニナリマシタノデ、資本金ヲ千
四百萬圓增加シ、政府ヨリ一千萬圓、組合
ヨリ四百萬圓ヲ出資セシメムトスル次第デ
アリマス、故ニ合計三千萬圓ノ資本ニナル
譯デアリマス、近時產業整備ノ必要上、組
合ヲ改組シ、有限會社、食糧營團等ノ別個
ノ形態ニ移行スルモノニ對シマシテモ、貸
付ノ繼續ヲ認メルト共ニ、商工組合中央金
庫ニ所屬セザル組合、又ハ聯合會ヲ改組シ
タル會社、其ノ他設立ノ趣旨、組織者等カ
ラ見テ、之ニ準ズベキ會社ニ對シテモ、餘
裕金庫運用ニ依ル短期貸付ヲ認メムトスル
モノデアリマス、是等ガ其ノ主ナ點デゴザ
イマス、扨質疑ノ焦點ハ、商工經濟會法案
ニ於キマシテ、商工經濟會ガ、統制會ノ縱斷
的ナルヲ受ケテ、横ノ連絡ノ機關トナルト云
フ點ニ對シ集中サレマシタ、又商工組合法
ニ關シテハ、旣設ノ重要產業團體令ニ依ル
各統制組合ニ關聯スルモノデアリマシタ、
又商工組合中央金庫法中改正法律案ニ對シ
マシテハ格別ニ是ト云フ質疑モゴザイマ
セヌデシタ、是等質疑中ヨリ其ノ主ナルモ
ノヲ申上ゲテ見タイト思ヒマス、卽チ委員
ヨリ、是迄ハ統制會ト云フモノガ各縦斷的
ニ出來テ居ルガ、橫ノ連絡ト云フモノニ付
未ダ至ラザル所ガアルカラシテ、此ノ商工
經濟會ト云フモノヲ其ノ橫ノ連絡機關トシ
テ、連絡ヲ圖リタイト云フ積リデアルト言
ハレルガ、理念トシテハ誠ニ結構ナ御考ト
思フ、併シ如何ナル具體的方法デ横ノ連絡
ヲ取ラルヽカ、又是等運營ヲ誤ッタナラバ、
農業水產團體ト此ノ商工經濟會トノ間ニ摩
擦ガ起ル憂ガアリハシナイカト云フコトニ
對シマシテ、商工大臣ハ、是ハ一ニ商工經
濟會ノ組織ノ問題デアラウト思フ、卽チ比
較的大キナ產業界ノ事業者ハ、單獨ニ於テ
商工經濟會ヲ組織スル、同時ニ其ノ人々ハ
縱ノ關係ニ於テ締制會ノ會員ヲシテ居ルノ
ダ、中小企業ノ連中ハ、今囘改正セラルヽ
所ノ商工組合其ノ他適當ナル團體組織ニ組
織セラレマシテ、一方縱ノ統制會ノ「メン
バー」デアルト共ニ、各地方ニ於キマシテ
ハ商工經濟會ノ會員デアルト云フコトニ
依ッテ、此ノ間ノ組織上ノ綜合連絡ト云フ
モノガ取レテ行クト思フ、又運用ノ上ニ於
テハ、地方長官ハ地方ノ綜合行政機關ナル
故ソレト表裏一體トナッテ、是ガ活動シ
運用サレテ行クト云フコトニナレバ、地方
ニ於ケル產業、經濟ガ綜合サレタ意味ニ於テ、
地方行政ト云フモノモ行ハレ、ソレニ協力
スル商工經濟會モ運營サレテ行クト云フコ
トニ依ッテ、組織及運營兩方面カラ此ノ產
業經濟ノ橫ノ綜合的ナ連絡ヲ取ッテ行ク故
ニ、眞ニ各地方ノ最モ有力ナル產業經濟界
ノ方々ガ之ニ參畫シテ戴キ、同時ニ地方ノ
實情ヲ最モ明確ニ實現シ得ルヤウナ組織構
成ヲ取ルコトニ付テ、政府トシテハ萬全ノ
方策ヲ講ジ、十分商工經濟會ノ目的達成ヲ期
スルヤウ運營シテ行ク心構ヘデアル、而シ
テ農業、水產兩團體トノ關係ニ付テハ、今
囘商工經濟會法ガ通過シ、農業團體關係ノ
法案ガ通過致シマスレバ、農業諸團體ハ
農業團體法ニ依ツテ統合セラレ、又商工
關係ノ團體ハ商工經濟會法ニ依ッテ有力
ナル一ツノ組織ヲ持ツト云フコトニ相成リ
マスレバ、是ガ地方ニ於テハ何レモ地方長
官ノ綜合行政ノ管下ニアッテ兩團體ガ運營
サレ、中央ニ於テハ、政府ヨリ、地方ト統
一シタル兩者ノ調整ニ付確乎タル方針ヲ定
メ、兩者間ニ十分ナル調整ヲ取ッテ行ケバ、
過去ニ於ケルガ如キ摩擦牴觸ト云フ苦キ經
驗ハ萬ナカラウト思フ、トノ答辯デゴザイ
マシタ、又委員ヨリ、此ノ有力ナル商工經濟
會ガ出來タナラ、現在私的團體ナルモ、代
表機關トシテ認メラレテ居ル所ノ經濟聯盟
ノ如キ團體ヲ如何ニ取扱ハルヽカ、トノ質
問ニ對シマシテ、大臣ハ、是等商工經濟會
ノ中央機關ヲ如何ニ整備スベキヤトノ問題
ニ關シテハ、商工經濟會法中ニハ取上ゲテ
居ナイノデアルガ、實際ハ全體ノ連絡機關
ガ出來ルト思フ、中央ニ於テ締制會ノ上部
ノ橫ノ連絡機關ガ出來、是等ガ健全ナル發
達ヲ遂ゲルヤウナ狀況ニ立到リマスレバ、
是等ノ問題ハ總テ一括シテ解決シ、中央ニ
有力ナル產業經濟ニ關スル團體ガ結成サレ
ムコトヲ期待シテ居ル、トノ御答辯デアリ
マシタ、又今回ノ商工經濟會ヲ結成シタル
時、命員數ガドノ位ニナルカトノコトニ關
シマシテ、大體大中小ト云フ縣ヲ拔キ出シ
テ見マスレバ、東京、大阪等ニ於テハ直接
商工經濟會ノ會員ニナル者ハ、營業稅三百
圓以上ヲ納メル者デ、以下ノ者ハ組合ヲ結
成シ、組合ヲ通ジテ會員ニナル、而シテ東
京府ニ付テ言ヘバ八千五百餘ト云フ數ガ出
ルノデアッテ、是ガ商工經濟會ノ會員ニナル
數デアリマス、勿論此ノ數ハ單獨加入、團
體加入ノ總數デゴザイマス、京都、神奈川、
愛知、兵庫、福岡等ノ直接會員トナル者ニ
付テハ、營業稅ガ百圓以上、北海道等ハ五
十圓以上トシタノデ、總代會ヲ置ク所ハ、
單獨加入、團體加入ノ數ヲ加ヘ、大體千二
三百以上ノ所ニスル心組デアルトノ表明ガ
アリマシタ、而シテ初メテノ商工經濟會ガ
出來マス時ノ定款ハ、設立委員ガ任命セラ
レ、其ノ設立委員ガ定款其ノ他ノモノヲ拵
ハイ、其ノ內容ニ付認可ヲ受ケテ成立シ、
定款モ決ルノデアッテ、是ハ施行規則ニ詳細
ヲ規定スルトノコトデアリマシタ、又支部
ノ問題ニ關シマシテハ、其ノ箇所ハ大體會
頭ニ委セル積リデアル、是ハ最モ地方ノ產
業經濟ノ實情ニ曉通シテ居ラルヽ會頭ニ、
一應ノ判斷ヲ願フ方ガ實情ニ適スルノデア
リマスマイカ、斯樣ナ御答辯デアリマシタ、
又商工經濟會法ノ實施時期ニ關シマシテハ、
大體本年ノ六月ノ初メニ施行シ、十月頃迄
ニ全部ノモノヲ終リタイト思フ、併シ商工
組合ノ方ハ非常ニ數ガ多クナリマスルガ故
ニ、十月迄ニハ困難ト思フノデアルカラ、
從ッテ過渡的ニハ、從來ノ工業組合或ハ商業
組合、同業組合ト云フモノヲ、此ノ商工經
濟會ノ會員トシテ置キ、改組ニナッタラ改メ
テ會員ノ編成替ヲヤル積リデアル、斯ウ云
フ御答辯デアリマシタ、又委員ヨリ、統制經
濟ノ圓滑ナル運營ハ、縣「ブロック」ヲ打破
スルト云フコトガ要諦デアル、商工省ナリ
農林省デ拵ヘタ統制法規ヲ運營スルモノガ、
內務省系統ノ官吏ニ依ッテ行ハルヽガ故ニ、
ソコニ圓滿性ヲ缺クハ自然ノ理デアル、故
ニ商工經濟會法案ニシテモ、商工組合法案
ニシテモ、此ノ間ノ融合調和ヲドウシテヤ
ルカ、ト云フコトニ關シマシテ、商工大
頁、內務大臣ノ言明ヲ求メラレマシタ、是
ハ後デ申上ゲマス、又之ニ關聯シマシテ、數縣
ヲ合セタル經濟「ブロック」ニシテ、商工行政ヲ
運用スルト云フコトガ、今日ノ統制經濟ノ
運用上、又國家ニ對シ協力ヲ求ムル上ヨリ
モ、都合ガ好イノデハナイカトノ質問モ起ッ
タノデゴザイマス、又同ジク委員中ヨリ、
性質ノ異ナル各種ノ組合ガ一〓ニナッテ、其
ノ中央會ガウマク運用出來ルヤ否ヤ疑ヲ存
スル、從前ノ統制組合ト今囘ノ統制組合ト
ハ、用語ハ同一ナルモ、國家意思ノ反映ス
ル程度ハ甚ダシク異ナル、寧ロ重要產業團
體令ハ現在ノ儘ニ活カシテ置キ、從ッテ重要
產業團體令ニ依ル統制組合ハ、商工組合法
案ニ依ル統制組合トハ別箇ノモノトシ、出
資團體トセザル方ガ宜クハナイカ、トノ質
問ニ對シマシテ、當局ハ、前段ノ質問ノ中
央會ハ統制ニハ關與サセナイノデアル、唯
統制ノ爲ノ實務運營等ノ指導ニ任ズルノミ
デアル、又締制會ノ下部機構ニナッテ居ル工
業組合ハ現在百六、七十アルガ、是等ハ從前
ノ體制ノ儘デハ、統制ノ目的ニ合致スル行
動ヲ十分ニ執レナイ、一元化スル必要ガア
ルノデアル、又統制會ノ下部機構タル統制
組合ニ對シテハ、其ノ理事長ヲ統制會ノ會
長ガ任命シ、而モ理事長ニハ原案執行權ヲ
サヘ認メテ居ル次第デアルカラ、現狀ト異
ナル所ハナイ、唯異ナル所ハ經濟行爲ヲ行
ヒ得ルト云フ點ノミデアル、最終日ノ午前、
委員ノ要求ニ依リマシテ內務大臣ノ出席ヲ
求メテ、統制經濟ノ圓滑ナル運營ヲ妨ゲルモ
ノハ所謂縣「ブロック」ナリ、トノ質問ニ對
シマシテ、內務大臣ヨリ、物資不圓滑ノ原
因ハ、府縣「ブロック」ノミニ依ルモノデハ
ナク、例ヘバ價格トカ、輸送トカノ關係上、
物資ノ偏在傾向ガ生マレルノデアッテ、中
央ノ統制經濟計畫ガ周密ヲ加ヘルト共ニ、
府縣「ブロック」ハ解消シツヽアリト考ヘル、
徹底的ナ「ブロック」打破ノ爲ニハ、思ヒ切ッタ
生產增强手段ヲ執ル外ハナイ、又經濟統制
ノ爲ノ部局ヲ地方廳內ニ別箇ニ獨立シテ設
ケテハ如何、トノ御質問ガアッタガ、之ニハ贊
成シ難ク、是ハ地方長官ガ綜合運營ノ任ニ
當ルコトヲ以テ適切ト考ヘル、唯目下各府
縣相似タルモノヲ集メテ、八箇ノ府縣連絡
ノ協議會ヲ設ケ、中央ノ全國的計畫ノ實現
ニ支障ナキヲ期シテ居ル、トノ御言明ガゴ
ザイマシタ、斯クテ二月四日午後ヨリ政府
當局ノ退席ヲ求メマシテ、委員間ニ於テ忌
憚ナキ意見ノ交換ヲ行ヒ、懇談ヲ交フル
コト實ニ二時間ニ及ビマシテ、漸ク結論ニ
達シ、委員會ヲ再開、質疑ヲ打切リ、討論
ニ入リマシタ、一委員ヨリ、本特別委員會
ニ付託セラレタル三法案ノ立法ノ趣旨ニ於
テハ今日ノ時世ニ於テ必要ト思考スルガ
故ニ、是等法案ノ制定ニ對シテ贊意ヲ表ス
ル、併シナガラ法文ヲ通讀シ、又委員諸氏
ト政府當局トノ質疑應答ニ依リ、法文上不
備ノ點多々アルヲ感ズルノハ遺憾デアル、
立法ノ趣旨ハ宜キモ、却テ業界ニ混雜ヲ惹
起シ、或ハ他種團體卽チ農業團體、大政翼
贊會等ト摩擦ヲ起ス虞ナキヤヲ深ク憂フル、
政府ハ宜シクソレ等ノ點ニ深甚ナル注意ヲ
拂ヒ、能ク實績ヲ擧ゲル爲施行規則ノ制定
其ノ他運用上十分ナル手段ヲ執ラレムコト
ヲ望ムト述べラレマシタ、又一委員ヨリ、
其ノ辯論中ニ於テ、商工經濟會ハ地方行政
機關ト相關聯シ、表裏一體トナツテ統制經
濟ノ運行ヲ全ウスルガ其ノ趣旨デアルコト
ヲ、法文竝ニ當局ノ說明ニ於テ了承致シマ
シタルモ、如何ニモ其ノ機構ノ構成ニ於テ、
其ノ形態ガ不安定デアル、中央ノ指令ハ各
省ヨリ別々ニ出テ、地方ニ於テ之ヲ受クル
ハ地方廳一ツデアル、故ニ頗ル安定セザル
形態デアル、末端ノ橫ノ連絡ノミデハ、統
制經濟ハ其ノ所期ノ目的ヲ達成シ得ナイ、
宜シク中央ニモ連絡ヲ執ルベキ司令部ヲ作
ル必要ガアラウ、故ニ急速ニ中央機關ヲ設
ケ、中樞機能發揮ヲ一日モ速カニセラレ、
所謂縣「ブロック」ノ誹リヲ受クルコトナク、
統制經濟ノ實ヲ擧ゲラレムコトヲ希望シ、付
託三法案ニ贊成ノ意ヲ表スト述ベラレマシ
タ、斯クテ商工經濟會法案、商工組合法案、
商工組合中央金庫法中改正法律案ヲ一括表
決ニ付シマシタル處、滿場一致、三法案ハ
原案通リ可決スベキモノナリト議決致シマ
シタ、以上ヲ以テ報告ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=24
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025・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 商工經濟會法案
一付、討論ノ通告ガゴザイマス、御許ヲシ
マス、子爵大河內輝耕君
〔子爵大河內輝耕君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=25
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026・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 本案ニ付キマシテ
ハ、各權威者タル委員ノ方々カラ詳細ナ御
質問ガゴザイマシテ、悉ク其ノ要點ニ觸レ
ラレテ居ル、私共之ニ依ッテ非常ニ蒙ヲ啓ク
コトヲ得テ、無論之ニ付テ彼此申上ゲル餘
地ハ毛頭ナイ、敬意ヲ表シテ唯贊成ヲ致ス
ヨリ外ハナイ、併シ其ノ委員會ノ空氣ヲ拜
見シテ居ルト、斯ウ云フヤウナ御說モアル
ヤウニ承ッタ、此ノ商工經濟會法案ノ下ニ一
種ノ潮流ガアル、此ノ潮流ト云フモノハ、
此ノ案バカリデナク色々ナ法案ナリ豫算案
ナリ是ガ觸レテ居ル、斯ウ云フコトニ承ツ
タ、無論私ハ其ノドウ云フ遡流デアルカ、
委員會ノ方ニ承ッタ譯デモナケレバ、委員會
ノ御方ガドウ云フ風ニ御認メニナッテ仰シ
ヤッタノカ、ソレモ仰シヤッタコトハ聽キマ
セヌガ、サウ云フ風ニ我々ニ印象ヲ與ヘラレ
タノカ、ソレハ存ジマセヌ、サウ云フコト
ヲ說明スル譯デハナイ、併シ私ハ私トシテ
矢張リ同ジ感ジヲ持ツ、或委員會ノ方カラ
其ノ蒙ヲ啓カレタ、夜中カラマルデ太陽ノ
光線ニ照ラサレタヤウナ感ガ致シタ、ソレ
デ私ノ此ノ潮流ニ付キマシテノ感ジヲ述べ
テ、サウシテ此ノ法案ノ施行ニ付テ政府ノ
御參考ニ供シタイト思フ、其ノ根柢タル潮
流ト云フノハ何デアルカト云フト、私ノ觀
ル所デハ、是ハ差別ヲ無視シタ平等、詰リ
惡平等ト云フ思想ガ此ノ法案ノ根柢ニ流レ
テ居ル、勿論平等觀ト云フモノハ惡イモノ
ヂヤナイ、成敗利鈍ヲ顧ミズ單騎敵陣ニ乘
リ込ムト云フヤウナサウ云フ精神ガナケレ
バイケナイ、併シ昔カラ色卽是空ト申サレ
テ居ル通リ、差別ヲ伴ハナイ平等ト云フモ
ノハ非常ナ危險ナモノデアル、ソレデ先達
テ或席上ニ於キマシテ、或〓育ノ大家カラ
我々ガ意見ヲ伺ッタコトガアル時ニ、其ノ方
ガ言ハレルノニハ、支那ノ或大會社ニ於キ
マシテ、或重要ナ地位ニアル人ガ赴任サレ
ルト云フコトヲ聞イテ非常ニ喜ンデ居タ、
處ガ其ノ人ガ來ルト間モナク轉ジテシマッ
ク、又一人ノ重要ナ人ガ、非常ニ重要ナ地
位ヲ背負ッテ居ッテ、長ク支那ノ其ノ會社ノ
爲ニ盡サレルト思ッテ居タ處ガ、東京ニ重要
ナ地位ガ出來タラバ忽チ去ッテシマッテ、ナ
ニ東京ニ居タッテ支那ノ事ハヤレル、斯ウ云
フコトヲ言ハレタサウデス、是等ハ詰リ社
會ヲ機械ト見ルカラダ、其ノ方ガ言ハレル
ノデス、社會ヲ機械ト見ルカラダ、機械ナ
ラバ部分品ヲ取替ヘタッテチットモ差支ナイ、
併シ人間社會ハ機械デハナイ、ソコニ差別
ガアル、人間ノ間ニハ差別ガアル、支那ノ
事ニ致シマシテモ、甚ダ人ノ事ヲ引イテ惡
ウゴザイマスガ、我々ヲ始終御指導下サル
坂西閣下ノ如キ、又或ハ水野、阪谷兩子爵
ノ如キ御方ハ、一朝一タニ出來ルモノヂヤナ
イ、ソレヲデス、斯ウ云フ風ニヒヨイ〓〓
ト取替ヘテシマフト云フノハ、其ノ會社ガ取
替ヘタト云フコトハ、會社ノ批評ヲ相濟ミ
マセヌケレドモ、詰リ是ハ社會ヲ機械ト見
テ、部分品ヲ取替ヘルコトナンゾ何トモ考
ヘナイ、ドノ部分品ダッテ同ジダ、惡平等ニ
見レバ此ノ通リナンデアル、デハ此ノ商工
經濟會法案ニソレガドウ云フ風ニ働イテ來
テ居ルカ、民意ヲブチ切ッテシマッタコトナ
ンデス、盛リ上ル民意ハ此處ニ出テ居リマ
セヌ、詰リ官僚ノ御勝手次第ニドウニデモ
シナサイト、御役所ニシテシマッタ、東京ニ
於テハ澁澤子爵、關西ニ於テハ此處ニ御列
席ノ安宅君、稻畑君、中山君、是等ノ實業
家ノ權威者ニ依ッテ、此ノ商工會議所ト云フ
モノハ一種ノ氣風ヲ持ッテ居ル、何人ガ考
ヘテモ頭ノ下ルヤウナ一種ノ氣風ヲ持ッテ
厚つ、之ヲオ役所ニシテ、今ノヤウニ部分
品ニ見テシマッテ、今日居テ明日居ナイヤウ
ナモノニシテ、ドウシテ此ノ商工會議所ガ其
ノ役目ヲ盡シテ行ケルカ、私ガ此ノ法案ノ
根柢ニ流レテ居ル或思想ガアル、其ノ思想
ハ極メテ惡イ思想デアルト考ヘルノハ、此
ノ點デアリマス、少シウルサイヤウデスケレ
ドモ、說明ヲ明カニスル爲ニ少シ例ヲ擧ゲ
ルコトヲ許シテ戴キタイ、是バカリヂヤア
リマセヌデス、社會ヲ機械ト見レバ、彈壓
選擧ヲヤッテ、自分ノ好キナ人間バカリ推薦
者ニシテ置イテ、サウシテ彈壓ヲ加ヘレバ、
思ッタヤウナ議員ガ出テ來マス、機械デアレ
バコソ蒙ヲ啓クト云フ必要ガアル、國民ニ
何デ蒙ヲ啓クト云フ必要ガアル、蒙ト云フ
ノハ要スルニ何モ分ラナイ人ダト斯ウ云フ
コトニナル、推薦ハ民意ニ適スルナドト言
フケレドモ、ドウシテソンナコトガ言ヘル
カ、成ル程機械ナラバ、何カ人間ガ加へテヤ
ラナケレバ動ケナイ、併シ國民ガ、日本ノ國
民ガデス、推薦サレナケレバ選擧ガ出來ナイ
ヤウナ、ソンナ國民トハ思ハレナイ、是ハ社
會ヲ機械ト見ルカラ斯ウ云フコトニナル、都
制、府縣制ニ依ッテ自治ヲ破壞シ、戰時刑事
特別法ヲ出シテ反對論ヲ封鎖スル、是等ハ
皆サウナンデス、一ツニ塗ッテシマハウトス
ルカラ、機械ノヤウニシテシマハウトスル
カラ、斯ウ云フ事ニナッテ來ル、是ダケナラ
マダ宜ウゴザイマスガ、經濟界ニ於テモ同
ジコトナンデス、今迄別ノ立場デ働イテ居
タ銀行ヲ一〓ニシテ、ドウシテ是ガ融和シ
テヤッテ行ケルカ、容易ナ事ヂヤアリマスマ
イ、是ハ機械ナラ、何モ二ツノ機械ヲ一ツ
ニクッ付ケレバ、ソレデ動イテ行クニ決ッテ
居ル、承レバ、農村ノ土地ノ分合ヲヤルニ
付テ壯年團ヲ使フサウデス、成ル程考ヘテ見
レバ、土地ト土地ヲ一〓ニシテシマッテ行ケ
バ宜イコトナンダ、機械ナラ其ノ通リデス、
ソコヘ持ッテ行ッテ壓力ヲ加ヘレバ宜イカ
ラ、壯年團ヲ使ッタッテソレデ宜イ、併シ農
民ノ土地ニ對スル愛著心ト云フモノハ全ク
無視サレテ居ル、惡イ事ヂヤアリマセヌケ
レドモ、惡イ事ヂヤアリマセヌケレドモ、
サウ云フヤリ方ト云フコトハ宜クナイ、色
色ナ價格ノ決定ダッテサウデス、手數料ガ
アラウガ、運賃ガアラウガ、構ハズ價格ノ
決定ヲ決メルカラ、今此處デ御話ニナッタヤ
ウニ物資ガ偏在シテシマフ、總テニ通ジタ
理論デス、中小商工業ノ整理ダッテサウデ
ス、是ハドナタカ算術整理ダト仰シヤッタ
ガ、其ノ通リデス、算術ナラ其ノ通リ出テ
來マス、併シコンナ爲ニ多數ノ者ガ職業ヲ
失ッテドウシマスカ、ソレハ何トカオヤリニ
ナラウケレドモ、其ノ間ノ苦痛ト云フモノ
ハ非常ナモノデス、木ガ要ルカラ山林ヲ伐
ルノハ宜ウゴザイマス、伐ルノハ宜ウゴザ
イマスガ、ソレダケシカ考ヘナイ、機械
ナラ其處ノ部分ダケ直セバ宜インダケレ
ドモ、社會ハサウハ行キマセヌ、此ノ爲
ニ水ガ出タラドウスル、ソンナ事ハチット
モ考ヘテ居ナイ、サウ云フ風ニ物ヲ機械
的ニ扱ッテ行クト、總テコンナ事ニナッテ
來ルノデス、思想團體ニ行キマストモットヒ
ドイデス、自由主義ヤ個人主義ヤ英米思想
ハ·······米米思想デス、英米思想ハ擊滅シテ
シマヘト云フヤウナコトヲ言ハレルケレド
〓、是ハ平等觀デアル、惡平等觀デアル、
自由思想ダッテ、個人思想ダッテ、英米ノ思
想ダッテ、長所ハ採入レテ何ノ差支ガアル
カ、捕虜ハ虐待シチマヘ敵ガ虐待シテ居ル
カラ······ト云フノハ是ハ惡平等、此ノ間
陸海軍當局ノ言ハレル通リ、大國民ノ襟度
ヲ以テ之ニ接シロ、是ガ差別ヲ伴フ平等ト
私ハ考ヘル、先達テ少年團ヲ政府ヘ取上ゲ
ラレテシマッタ、是ナンゾモサウデス、ソレ
ハ成ル程機械ナラバ誰ガヤッタッテ同ジデセ
ウ、少年團ハ機械ノ寄リ集リデハナイ、二
荒伯ヤ、三島子爵ガ心血ヲ注イデ今日ニ持ッ
テ來タモノデス、之ヲ一月ヤ三月デ變ッテ行
クヤウナ役人ノ手ニ任セテ、何デソレガ出
來ルカ、機械的ノ平等觀ト云フノハ此處迄
來テ居ル、是ガ皆樣ノ、今委員會ノ方々ガ言
ハレタソレトハ、同ジヂヤアリマスマイガ、
私ガ認メテ、一ツノ一貫シタ思想カラ起ッテ
來タ一ツノ案ダト考へテ居リマス、尤モ此
ノ案ニ付キマシテハ、私ハ彼此申シマセヌ、
權威者ノ御方ガ十分ニ御〓究ニナリマシテ、
モウ要點ハ盡ス限リハ盡サレテ居リマス、
ソレデ戰時刑法ヤ都制案ヤ府縣制程ノ政治
性ヲ帶ビタ案デハゴザイマセヌカラ、必ズ
ヤ運用ハウマク行クダラウト存ジマスルカ
ラ、贊成ハ致シマスルガ、扨將來ニ付キマシ
テ一步ヲ誤レバ容易ナラザルコトニナル、
揃ヒノ浴衣デ御神輿ヲ擔イデ、何處へ行
クノダカ分ラナイ、自分ノ嫌ヒナモノハアッ
チヲ打壞シ、コッチヲ打壞シ、ト云フコトニ
ナラナイトモ限ラナイ、ナッタラ大變、斯ウ
云フコトヲチヨット御注意ヲ申シ述ベテ、此
ノ法案ニ贊成ヲ申シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=26
-
027・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 他ニ御發言モナ
ケレバ、是ヨリ採決ヲ致シマス、先ヅ商工
經濟會法案ノ採決ヲ致シマス、本案ノ第二
讀會ヲ開クコトニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=27
-
028・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=28
-
029・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ第二讀會ヲ開
カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=29
-
030・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=30
-
031・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=31
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032・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=32
-
033・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御界議ガナケレバ、全部ヲ問
題ニ供シマス、本案全部、委員長ノ報告通
リデ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=33
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034・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=34
-
035・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=35
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036・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=36
-
037・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=37
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038・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=38
-
039・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第三讀會
ヲ開キマス、本案全部、第二讀會ノ決議通
リデ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=39
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040・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=40
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041・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 次ニ商工組合法
案、商工組合中央金庫法中改正法律案ノ二
案ニ付採決ヲ致シマス、兩案ノ第二讀會ヲ
開クコトニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=41
-
042・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=42
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043・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ兩案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=43
-
044・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=44
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045・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=45
-
046・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=46
-
047・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 兩案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナケレバ、全部ヲ問
題ニ供シマス、兩案全部、委員長ノ報告通
リデ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=47
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048・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=48
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049・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ兩案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=49
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050・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=50
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051・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=51
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052・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=52
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053・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 兩案ノ第三讀會
ヲ開キマス、兩案全部、第二讀會ノ決議通リ
デ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=53
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054・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=54
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055・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第十一、帝
國鑛業開發株式會社法中改正法律案、日程
第十二、重要鑛物增產法中改正法律案、政
府提出、第一讀會ノ續、委員長報〓、是等ノ
兩案ヲ一括シテ議題ト爲スコトニ御異議ゴ
ザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=55
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056・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、委員長溝口伯爵
帝國鑛業開發株式會社法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十八年二月四日
委員長伯爵溝口直亮
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
重要鑛物增產法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十八年二月四日
委員長伯爵溝口直亮
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔伯爵溝口直亮君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=56
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057・溝口直亮
○伯爵溝口直亮君 只今議題ニナリマシタ
ル所ノ二法案ニ付、委員會ノ經過竝結果ヲ
御報告申上ゲマス、本委員會ハ前後四囘開
キマシテ、兩案共ニ政府提出原案ノ如ク可
決スベキモノト決定致シマシタ、只今ヨリ
委員會ニ於ケル法案ノ說明ノ要旨竝ニ質疑
應答ノ大要ニ付テ御報〓申上ゲマス、尙詳
細ニ付キマシテハ、速記錄ニ付テ御承知ヲ
願ヒマス、提案ニ付キマシテノ說明ハ、大
體ニ於キマシテ、本議場ニ於キマシテノ商
工大臣ノ御說明ト違ヒゴザイマセヌガ
〔副議長侯爵佐佐木行忠君議長席ニ著
ク〕
只今御了解ノ爲ニ要約致シマシテ申上ゲマ
ス、第一ノ帝國鑛業開發株式會社法中改正
法律案、是ノ改正ノ要點ハ二點デゴザイマ
ス、第一ハ、大東亞戰爭ヲ一轉機ト致シマシ
テ、金鑛業ニ整理ヲ行ヒ、其ノ整理ヲ行ッタ
ル所ノ資材勞力等ヲ、更ニ重要ナル他ノ鑛物ノ
增產ニ活用シヨウトスルコトデゴザイマス、
第二ハ、以上ノ目的ヲ達スル爲ニ、日本產
金振興株式會社ヲ帝國鑛業開發株式會社ニ
吸收合併シ、之ラシテ新タニ鑛業ノ整備ニ
關スル事業ヲ行ハシメ、尙金鑛業ノ整理竝
ニ之ニ對スル補償ノ事務ヲ掌ラシメルト云
ス、此ノ二ツガ主ナル目的ニナッテ居リマス、
ソレカラ第二ノ重要鑛物增產法中改正法律
案、是ノ改正ノ要點ハ四ツゴザイマス、第一
ハ、元來本法律案ハ臨時立法デアッテ、本年
六月ヲ以テ滿期トナルコトニナッテ居リマ
スカラシテ、之ヲ更ニ五箇年間延長シテ、
此ノ五箇年ニ於テ情勢ノ推移ヲ見テ、若シ
必要アリト認ムルトキハ、鑛業法規全體ニ
亙ッテ檢討ヲ加ヘムトスル爲ニ、五箇年延長
シヨウトスルコトデゴザイマス、第二ハ、
鑛業及砂鑛業ノ著手ニ許可制ヲ採用シタル
コト、第三ハ、政府ガ必要ニ應ジテ期間、
鑛物又ハ地域ヲ指定シテ、鑛業又ハ砂鑛業
ノ出願ヲ制限又ハ禁止シ得ルコトトシタル
コト、第四ハ、鑛業權又ハ砂鑛業權ニ對シ
テ使用權ノ設定ノ途ヲ開イタコト、此ノ四ツ
デゴザイマス、是ヨリシテ質疑應答ノ大要
ヲ申上ゲマス、第一ニ、帝國鑛業開發株式
會社法中改正法律案ニ關スル御質疑デアリ
マス、澤山ゴザイマシタガ、大體要約致シ
マスルト八點バカリゴザイマス、之ヲ逐次
申上ゲマス、第一ハ產金會社ノ整理及補償
ニ關スルコトデゴザイマス、一委員ヨ
リ、補償ノ順序ハドウ云フ風ニスルカト云
フ御質問ニ對シテ、政府デハ、大體ニ於テ
帝國鑛業開發株式會社、以下簡單ニ鑛發ト
申シマス、鑛發デ金鑛ヲ買收シテ、其ノ損失
ハ政府デ補償スルノデアル、此ノ金鑛買收ニ
關スル金額ノ決定ハ、官民ヨリ成ル所ノ委員
會ノ如キモノヲ組織シテ、之ニ付議シテ決定シ
ヨウト思フ、ソレカラ整理ヲ希望スル金山ニハ、
之ヲ申出ルヤウニ鑛山統制會ヲ通ジテ示達
スルヤウニシヨウト云フコトデアリマス、其ノ
次ニハ、斯クノ如ク金鑛ノ整理ヲ行フ場合
三、鑛發自體ノ會計ニ非常ナル重荷ヲ負
ハシテ困難ニナリハシナイカト云フ問ニ對
シテ、政府デハ、金鑛整理ニ關スル會計ハ、
鑛發ノ一般ノ會計ト別ニシテ、純然タル特
別會計トシテ整理ヲスル、其ノ損失ハ政府
デ補償スルノデアルカラシテ、決シテ鑛發
本來ノ事業ニ累ヲ及スヤウナコトハナイト
云フ御答デゴザイマス、次ニ鑛發ノ監督ニ
關シマシテ、只今ハ產金會社ハ大藏、商工
二省ノ共同監督、ソレカラ鑛發ハ商工省ノ
單獨ノ監督ニナッテ居ル、此ノ共同監督ト云
フコトハ非常ニ色々ナ事務上ノ仕事ガ面倒
デアルカラシテドウカナラナイカ、しょう
御質問ニ對シマシテ、政府ハ、今度ハ鑛發
ノ監督ハ商工省一本デヤルガ、但シ產金ノ
整理ヤナンカニ關スルコトハ、矢張リ大藏
省ノ監督官ト相談シナクチヤナラナイガ、
併シ之ニ付テハ萬遺憾ノナイヤウニ取計ラ
フト云フ御答デゴザイマス、ソレカラ次
ニ產金ノ整理ニ當リマシテ、內地ニ關スル
限リハ鑛發デ引受ケテ致シマスガ、朝鮮ニ
關スルコトハ新タニ朝鮮鑛業振興株式會社
ト云フモノヲ設ケ、是デ整理ヲスルコトニ
致シテ居ル、之ニ關シマシテ一委員ヨリ、
內地朝鮮共ニ一ツノ會社デヤッタ方ガ宜ク
ハナイカト云フ御質問ニ對シマシテ、政府ハ、
產金事業ノ整理ヲ急速ニスル爲ニハ、ドウ
モ此ノ內地ト朝鮮ヲ分ケテ整理スル必要ガ
アル、尙產金ノ事業其ノモノニ付テモ、內
地ト朝鮮トニ於テハ事情ノ違フ所ガアルカ
ラシテ、矢張リ二ツノ會社ニ於テ整理スル
必要ガアル、ト云フ御答デゴザイマス、次
ニ一委員ヨリシテ、鑛山ノ資材、勞務等ニ關
シ、只今申上ゲマシタ鑛發ト云フノハ一種
ノ國策會社デアルカラシテ、之ニ對シテ特
別ニ資材、勞力等ヲ配給トカ配分スルヤウ
ナ考ヘガアルカナイカ、ト云フ御質問ニ對
シマシテ、政府ハ、是等ニ對シテハ決シテ
例外的ニ特別ニ取扱フヤウナコトハナク、
總テ鑛山統制會ノ一元的統制ニ依ッテ仕事
ヲスル考ヘデアルト云フ御答デゴザイマス、
次ニ一委員ヨリシテ、鐵鑛石ノ增產ニ關シ
マシテ、積極的ニ鑛發ニ於テ損失ヲ構ハズ
貧鑛ニ對シマシテ開發ヲスル必要ガアルト
思フガドウデアルカ、ト云フ御質問ニ對シ
マシテ、政府委員ハ、本件ニ關シテハ未ダ
具體的ニ申上ゲルコトハ出來ナイガ、十分
〓究シヨウト云フ御答デゴザイマス、次ニ
重要鑛物ノ中デ、多クノ物ハ只今ノ鑛物ノ
原價デハ引合ハナイモノガアル、從ッテ增產
ガナカ〓〓思フヤウニ出來ナイ、ソレデア
ルカラシテ只今ノ機構ヲ十分使ヒマスレバ
原價計算ト云フコトハ略、分ル、デアルカラ
シテ原價計算ヲシテ、サウシテ損失ノ起ル
ヤウナ物ニ對シマシテハ、鑛發ニ於テ原價
計算ニ或利潤ヲ加ヘタ値段デ買取ッテ、サウ
シテ鑛發ヨリソレヲ賣ル場合ニ、必要ガア
レバ損失ヲ見テ安ク賣ル、或ハ某委員ノ實
際ノ經驗ヲ御話ニナリマシタ所ニ依リマス
下原價ハ非常ニ安イガ、原價ヲ多少上ゲ
タ所デ、製品ノ代價ニ關シテハ別ニ上ゲル
必要ノナイモノガ多々アルト云フ御話デゴ
ザイマシタ、斯クノ如クシテドウモ只今ノ
原價ノヤリ方デハ增產ガ思フヤウニ出來ナ
イカラシテ、之ニ關シテ政府ハ考慮シタラ
ドウダ、ト云フ御質問ニ對シマシテ、政府委
員ヨリ、本件ハ誠ニ御尤モト思フガ、低物價政
策ノ根本義ニモ關係スルコトデアルカラシ
テ、能ク十分ニ〓究シテ見ヨウト云フ御答デゴ
ザイマス、最後ニ朝鮮ニ於ケル金鑛整理ニ關
スルコトデ、一委員ヨリシテ、朝鮮ニ於ケ
ル產金事業ト云フモノハ非常ニ重大ナモノ
デアルカラシテ、之ガ整理ヲスルコトニナッ
タラ、其ノ影響スル所ハ財政上ニモ或ハ經
濟上ニモ、其ノ他諸般ノ點ニ於テ影響スル
所ガ實ニ大デアル、之ニ付テ政府ハ十分御
考へ願ヒタイト云フコトニ付テ御質問ガゴ
ザイマシタ、之ニ對シテ商工大臣ヨリシテ、
本件ニ關シテハ朝鮮總督府トモ十分ニ協調シ
マシテ萬遺憾ナイヤウニ取計ラフ、ト云フ御
答デゴザイマシタ、次ニ重要鑛物增產法ニ
關スル御質問デゴザイマス、之ニ關スルモノ
ハ要約スルト三件デゴザイマス、第一ハ、
重要鑛物指定ニ關スルコトデ、鑛物ノ定義
ハ鑛業法ノ第二條ニゴザイマス、更ニ本法
ノ第一條ニ、其ノ中カラシテ重要鑛物ノ
指定ガシテアリマス、處ガ段々調ベマシ
テ、調査ノ結果、今迄內地及朝鮮等ニ於
テ發見出來ナカッタ鑛物ノ發見ガアッタリ、
ソレガ又非常ニ此ノ時局ニ對シテ必要ナ
モノガ出來タリスルノデ、ドウモ之ニ
指定スル鑛物ダケデハ足リナクナッテ來タ
カラ、何トカ政府ニ於テ考へナイカト云フ
コトデ、其ノ一例トシテハ、朝鮮ニ於ケル
硼砂ノ例モ引カレマシタ、政府委員ヨリシ
テ、重要鑛物ノ指定ノ增減ト云フコトハ、
根本的ニハ鑛業法ノ第一一條ノ規定ヲ變ヘナ
クチヤナラズ、又本法律案ノ第一條ノ規定
モ弄ラナケレバナラナイノデ、今直チニド
ウスルト云フコトハ出來ナイガ、併シ斯ク
ノ如キ必要ナル鑛物デアッテ、其ノ指定ニ漏
レタモノニ對シテハ、行政的ニ出來ルダケ
差支ナイヤウニ取扱ッテ行ク積リデアルト
云フ御答デゴザイマシタ、ソレカラ次ニ鑛
業法ニ關シマシテ、鑛業法ノ制定ハ、旣
可ナリ古ク、而モ數次ノ改正ヲ經マシタガ、
尙目下能ク檢討シマスト十分デナイ所ガア
ルカラ、之ヲ改正スル意思アリヤ否ヤト云
フ御質問ガゴザイマシタ、之ニ對シマシテ
政府委員ハ、鑛業法ノ改正ハ、愼重ニ考慮ス
ベキモノデアルカラシテ、急速ニ之ヲ實現
スルコトハ困難デアル、從ッテ時局上取敢
ズ本法ヲ改正シテ、其ノ施行期間ヲ五箇年
間延長シテ、其ノ間ニ情勢ノ推移ヲ見、愼
重〓究審議シテ、鑛業法規全體ニ關シマシ
テ十分檢討シテ見タイト思フ、ト云フ御答
デゴザイマシタ、其ノ次ニハ最モ御質問ノ
多カッタ使用權ノ問題デゴザイマス、之ニ關
シマシテ、四ツバカリノ要點ガゴザイマス、
第一ハ、使用權ヲ設定スルヨリモ鑛業權ノ
强制讓渡ヲシタ方ガ宜クハナイカ、ト云フ
御質問ニ對シマシテ、政府委員ハ、鑛山ノ
賣買ト云フコト及ビ鑛業權ノ强制讓渡ト云
フコトハ、實行上色々ナル困難ヲ伴ヒ、殊
ニ價額ノ決定等ニモ暇ガ要ッテ、急速ニ之
ヲ實行スルコトハ困難デアルカラシテ、使
用權ヲ設定ルスノデアル、是ト同樣ニ、使
用權ト鑛業權ニ關スル法律關係ハ非常ニ複
雜デアッテ、一般ニ了解ガ困難デアルカラ、
寧ロ使用權ヲ設定セズシテ、鑛業權一本デ
進ンダ方ガ宜クハナイカ、ト云フ御質問ニ對
シマシテモ、政府委員ノ答辯ハ、略〓前ト同
ジヤウデ、次ニハ使用料決定ノ標準ハドウ
云フ風ニシテ決メルカ、ト云フコトニ關シ
マシテ、政府委員ヨリ、本件ニ關シマシテ
ハ、鑛山統制會ト能ク協議シテ、監督局ニ
內訓シ、又各監督局ニ於テハ、委員會ノ如
キモノヲ設ケテ之ニ諮詢シテ適正ナルモノ
ヲ決定スル考デアル、ソレカラ次ニ鑛業權
者ト使用權者トノ間ニ於ケル權利義務ニ關
スル疑義ニ付テノ御質問ガゴザイマシタ、
本改正法律案ヲ御覽ニナレバ分リマスガ、
非常ニ是ハ込ミ入ッテ面倒ナヤウデゴザイ
マス、之ニ對シマシテ、政府委員ヨリシテ、
大體只今御質問ニナッタヤウナコトハ、稀ナ
場合ガ多ク、大ナル御心配ハ要シナイ見込
ミデアルガ、若シ又必要ナ場合ニハ、第十七
條ノ二十四ニ依ッテ命令ヲ以テ規定スルコ
トガ出來ルカラシテ、ソレニ依ル積リデアル
ト云フ御答デゴザイマシタ、其ノ他使用權ノ
設定ノ爲ニ鑛發ノ仕事ガ多岐複雜ニナリハ
シナイカ、又使用權設定ノ爲ニ鑛區ガ荒ラ
サレル心配ハナイカ、ト云フヤウナ御質
問ガゴザイマシタガ、政府ニ於テハ、何
レモ之ニ對シテ御心配ハナイヤウニスル
ト云フ御答デゴザイマシタ、尙最後ニ全
般ニ關シマシテ、一委員ヨリ次ノ如キ御質
問ガゴザイマシタ、現今ニ於ケル立法ハ、餘
リニ官憲萬能ニ傾キツヽアルヤウデアルガ、
增產ノ爲ニハ、民業ヲ尊重シ之ガ活用ヲ圖
ラナケレバナラナイト思フガ、之ニ對シテ政
府ノ所見ハドウデアルカ、ト云フ御間ニ對
シマシテ、商工大臣ハ、政府ハ決シテ官憲
萬能ヲ考ヘルモノデハナイ、時局上統制ノ
必要ハ申ス迄モナイ所デアルガ、民間ノ技
能ト創意トヲ十分ニ尊重シテ、眞ニ官民一
致增產ニ邁進セムトスル熱意ガアルト云フ
コトハ十分御了承願ヒタイモノデアル、ト
云フ御答デゴザイマシタ、其ノ他種々ナル
質疑應答ガゴザイマシテ、質疑ヲ終リマシ
テ、續イテ討論ニ入リマシタ、別ニ反對ノ
御意見開陳モゴザイマセズ、次ニ採決致シ
マシタ結果、兩案共全會一致ヲ以チマシテ、
政府原案通リ可決スベキモノト決定致シマ
シタ、右御報〓申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=57
-
058・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 別ニ御發言
モナケレバ、兩案ノ採決ヲ致シマス、兩案
ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異議ゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=58
-
059・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=59
-
060・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ兩案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=60
-
061・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=61
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062・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 西大路子爵
ノ動議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=62
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063・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=63
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064・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 兩案ノ第二
讀會ヲ開キマス、御異議ガナケレバ、全部
ヲ問題ニ供シマス、兩案全部、委員長ノ報
告通リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=64
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065・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=65
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066・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ兩案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=66
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067・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=67
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068・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 西大路子爵
ノ動議ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=68
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069・佐佐木行忠
○副議長(侯爵依佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=69
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070・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 兩案ノ第三
讀會ヲ開キマス、兩案全部、第二讀會ノ決
議通リデ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=70
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071・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=71
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072・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 日程第十
三、郵便年金法中改正法律案、日程第十四、
航空法中改正法律案、日程第十五、木船保險
法案、日程第十六、自動車交通事業法中改
正法律案、政府提出、第一讀會ノ續、委員
長報告、是等ノ四案ヲ一括シテ議題ト爲ス
コトニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=72
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073・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐太行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス、委員長秋元子爵
郵便年金法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十八年二月四日
委員長子爵秋元春朝
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
航空法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十八年二月四日
委員長子爵秋元春朝
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
木船保險法案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十八年二月四日
委員長子爵秋元春朝
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
自動車交通事業法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十八年二月六日
委員長子爵秋元春朝
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔子爵秋元春朝君演壇ニ登ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=73
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074・秋元春朝
○子爵秋元春朝君 只今議題トナリマシタ
郵便年金法中改正法律案、竝ニ併託サレマシ
タル航空法中改正法律案、木船保險法案及
自動車交通事業法中改正法律案、以上四件
ニ關シマスル委員會ノ審議ノ經過及ビ結果ヲ
御報告申上ゲマス、本委員會ハ二月一日ヨ
リ五囘ニ亙リマシテ會議ヲ開キマシテ、郵
便年金法案中改正法律案他二件ニ付キマシテ
ハ遞信大臣ヨリ、又自動車交通事業法中改
正法律案ニ付キマシテハ鐵道大臣ヨリ、ソレ
ゾレ詳細ナル說明ガアリマシタ、之ニ對シ各
委員カラ質疑及ビ意見ノ開陳ガアリマシタ
ガ、以下先ヅ遞信省關係ノ三案ニ付キマシ
テ大體申上ゲルコトニ致シマス、第一ニ、郵
便年金法中改正法律案デゴザリマスガ、本
改正法律案ハ、現行ノ郵便年金ノ最高制限額
二千四百圓ヲ今囘三千六百圓ニ引上ゲマ
シテ、以テ長期貯蓄ノ增强ニ資スルト共ニ、
國民厚生施設デゴザリマスル郵便年金制度
ノ機能ヲ遺憾ナク發揮セシメムトスルモノ
デゴザリマス、次ニ航空法中改正法律案デ
ゴザリマスルガ、是ハ今日ノ航空界ノ實情
ニ卽スルヤウニ現行航空法ノ規定ノ整備ヲ
圖ラムトスルコトト、新タニ航空機長及ビ
航空通信士、航空機整備士等ヲ航空職員ト
致シマス、又飛行場周圍ノ特別區域ヲ、現
在ノ千「メートル」カラ二千「メートル」迄擴
張指定シ得ルコトト致シ、又一般ニ航空機
ヲ使用シテ營ミマスル事業ヲ許可制ノ下ニ
置カムトスルモノデゴザリマス、第三ニ、
木船保險法案デゴザリマスルガ、木船建造
ノ促進竝ニ木船運輸業ノ振興ガ現下緊急ノ
要務デアリマスルニ鑑ミマシテ、木船ヲ目的
トシマスル海上保險制度ノ完璧ヲ企圖スルモ
ノデゴザリマス、本案ニ依リマス保險制度ノ
〓要ハ、第一ニ、其ノ經營狀態ヲ木船主ノ
相互保險組合ト致シマス、政府ノ强力ナル
監督ニ服セシメムトスルト共ニ、之ニ合法
的權限ヲ與ヘ、且政府ニ於テ組合ノ事務費
ノ一部ヲ補助シ、免稅ノ特典ヲモ與ヘルコト
ト致シ、又第二ニハ、保險ノ目的ヲ原則ト致シ
マシテ二十「トン」以上ノ木船トシ、差當リ七十
「トン」以上ノモノニ付テハ付保ノ强制ヲ實施セ
ムトスルモノデアル、第三ニ、付保金額ハ保
險價額ノ全部トシ、更ニ損害保險國營再保
險法ニ依ル特別會計ヲ以テ國營再保險ヲ行
ハシメムトスルモノデゴザイマス、是等三
件ニ對シマスル質疑ノ主ナルモノヲ是ヨリ
御紹介中上ゲマス、前ノ二件ハ餘リ質問モ
ゴザイマセヌノデ省略サシテ戴キマシテ、
木船保險法案ニ付テ申上ゲマス、木船保險
法案ノ中、第十五條第二項ノ勅令ノ內容ニ
付テドウ云フコトガ書イテアルカ、ト云フ
質問ガゴザイマシタガ、之ニ對シテ政府ヨ
リ、組合ノ補塡スベキ損害ノ範圍ハ全損、
救助費、分損、共同海損分擔金、衝突賠償
金ノ五ツ、又保險金額ハ、强制保險ノ場合
ニアリテハ保險金ノ全部、任意保險ノ小型
木船ノ場合ニアリマシテハ全部又ハ一部、
又保險料率ニ付キマシテハ、保險審査會ニ
諮問致シテ主務大臣ガ之ヲ〓示致シマスル
ガ、大體ハ百圓ニ付平均五圓五、六十錢ヲ豫
定シテ居リマス、積荷ノ如何ニ依ル割增金
ハ成ルベク取リタクナイ、等ノ說明ガゴザ
リマシタ、又木船ノ分損査定ハドウスルカ
トノ質問ニ對シマシテ、分損査定ハムツカ
シイカラ、或程度以下ノ小サイ損害ハ所有
者ヲシテ補塡セシムルコトニシタイ、又積
荷ハ保險目的ニナラヌヤトノ質問ニ對シマ
シテ、本法ノ保險ノ目的ハ、船體ダケデア
ル、其ノ積荷ハ從來ノ損害保險會社ヲシテ
行ハシメルコトニ致シテ居ルト云フ答辯デ
アリマス、又船齡ハ問ハナイノデアルカト
云フ質問ニ對シマシテ、船齡ニ依ッテ付保ハ
セシメナイモノナリトノコトデゴザリマシ
タ、又產業設備營團ニ依ル新造船、木造船ノ
拂下方法、拂下價格ハドウ云フ風ニナッテ居
ルカ、ト云フ問ニ對シマシテ、現存ノ業者ニ
モ讓渡ヲ致シマスルガ、運航能率ヲ擧ゲル
見地カラ大キナ專門會社ニ多量ヲ持タセタ
イ、又讓渡價格ハ別ニ定メマスルガ、建造
價格ト讓渡價格トノ間ニ差ガアル場合ニハ、
其ノ差額ハ政府ニ於テ負擔スルヤウニ致ス、
尙此ノ外ニ保險價額ハ讓渡價格デアル旨ノ
答辯ガゴザイマシタ、尙政府ハ、單ニ傭船
セラレテ居ルモノノ傭船料ニ付再檢討ヲ加
ヘ、之ガ適正化ヲ圖リツヽアルケレドモガ、
機帆船ノ傭船料ノ公定ニ付テハ目下調査中
デアル、又船員ニ對スル國家的優遇ニ付テ
ハ十分考慮シテ居ル、ト云フ答辯デアリマシ
タ、又船員優遇ニ付テノ現在ノ處置ハドウ
ナッテ居ルカト云フ質問ニ對シマシテ、日夜
ヲ分チマセヌ危險ナ任務遂行ニ努力致シテ
居リマス船員ニ對シマシテ、物質的方面ハ
勿論、又精神的ノ待遇モ與ヘル諸種ノ方策
ヲ實施シテ居リマスルガ、過日ノ閣議デ此
ノ點ヲ更ニ審議致シマシテ、五ツノ事項ヲ
決定致シマシタ、其ノ第一ハ軍屬トシテノ
身分ヲ與ヘ得ルヤウニ致ス、第二ハ論功行
賞ヲサセルヤウニスル、第三ニハ殉職者ニ
對スル公葬、第四ニハ船員竝ニ家族ニ對ス
ル援護救助ヲ、今度設ケマス船員救護會
ヲ通ジテ强化致サウトシテ居ル、第五ニハ
町內會、隣保班ヲモ通ジテ遺憾ナク處置ヲ
講ゼシメルヤウニ致ス考デアル、其ノ他ノ
方法ニ付テモ考究シテ居ルト云フ答辯デゴ
ザイマシタ、更ニ大東亞共榮圈內ノ海上保
險關係ニ付テノ質問デアリマス、是ハ我ガ
國ノ手ニ十分之ヲ消化スルコトヲ方針トシ
テ著々實施中デアル、ト云フ答辯デゴザイ
マシタ、木造船ノ建設ニ必要ナ木材ノ增產
ニ關スル當局ノ責見ハドウデアルカ、ト云
フ質問ニ對シマシテ、所要ノ木材ノ生產ト
供出トニ付キマシテハ、之ヲ地方長官ノ行
政的責任トナシ、優先的ニ確保シテ行クト
ノコトデゴザイマス、又木船建造ニ關スル
旣定方針デ滿足シテ居ルカ、トノ質問ニ對
シマシテ、立地條件ニ依リ、全國ニ少クト
モ十數箇所ノ木造船所ヲ作リマシテ、三百
ㄱトン」乃至ソレ以上ノ船ノ標準型ヲ設定致
シマシテ、重點的ニ速カニ多量ニ造ルヤウニ
銳音努力シテ居ルトノ御答辯デゴザイマシ
タ、以上ノヤウナ質疑ノアリマシタ後、先
ヅ遞信省關係ノ三案ニ付キマシテ質疑ヲ終
リ、後討論ニ入リマシテ音見ノ開陳ガアリ
マシタガ、郵便年金法中改正法律案ニ對
シマシテハ、一委員カラ、更ニ思ヒ切ッテ
其ノ最高額ヲ上ゲルベキデアルト云フ御希
望モアリ、航空法中改正法律案ニ對シマ
シテハ、一委員ヨリ、航空機職員ノ資格ヲ作
ル上ニハ、之ニ對スル制裁等ニ付テ十分考
究シ、立法ノ趣旨ニ副フヤウ努ムベキデア
ル、トノ御希望モ附加ヘラレ、討論ヲ終リ
マシテ採決ノ結果、ソレ〓〓異議ナク原案
ヲ可決致シマシタ、次ニ鐵道省關係ノ自動
車交通事業法中改正法律案ニ付テ申上ゲマ
ス、本改正法律案ハ、戰力增强ノ爲ニ特ニ
大都市中心ノ近距離輸送ノ充實ヲ目的ト
致シマシテ、貨物自動車運送事業ノ統一
的且綜合的ナル統制運營ヲ圖ラムトスルモ
ノデゴザイマス、其ノ爲ニ貨物自動車運送
事業ニ關スル權限ヲ主務大臣ニ直屬セシメ、
貨物自動車運送ノ實施命令等ヲ爲シ得ルコ
トトスルト共ニ、業務ニ對スル補助ノ範圍
ヲ擴大シ、又自動車運送事業ノ總力ヲ最モ
有效ニ發揮セシメル爲ニ、組合及ビ聯合會
ヲ改組シテ、會長及ビ理事長ノ統制權限ヲ
强化スル等ノ方法ヲ採ラムトスル改正デゴ
ザイマス、此ノ案ニ對スル各委員ノ質問ノ
主ナルモノヲ申上ゲマスト、一委員ヨリ、
先ヅ此ノ問題ハ寧ロ自動車其ノ他車輛ノ新
造ヲ促進スルコトダト思フガ、政府ノ所信
ハ如何デアルカ、新車ノ補充ハ時局下極メ
テ困難デアルガ、將來時局重要產業ノ一ツ
ニ加ヘラレルヤウ努メルト共ニ、差當リ現
有車輛ノ效率ヲ上ゲルコトニ努メタイトノ
御答デゴザイマス、又陸運ノ負擔力ハ十分現
下ノ要請ニ堪ヘ得ルカドウカ、ト云フ質問
ニ對シマシテ、事變後輸送量ガ特ニ增加シ、
今囘更ニ海運貨物ガ轉嫁シテ參ッテ、其ノ對
策ハ容易デハナイガ、極力施設ノ萬全ヲ期
シテ居ルトノ答辯デアリマシタ、其ノ他各
委員カラ、地方長官ヘノ職權委任ノ範圍、
又車輛偏在是正ノ爲ノ對策、貨物自動車實
働效率低下ノ理由、又組合改組ノ根本理由
ナドニ關シマスル質疑ガアリマシタガ、細
カクナリマスノデ速記錄ニ讓リタイト思ヒ
マス、續イテ討論ニ入リマシテ、贊成意見
ノ開陳ガゴザイマシテ、採決ノ結果、全會
一致可決致シタ次第デゴザイマス、右ヲ以
テ御報告ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=74
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075・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 別ニ御發言
モナケレバ、四案ノ採決ヲ致シマス、四案
ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異議ゴザイマセ
ヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=75
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076・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐太行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=76
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077・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ各案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=77
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078・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=78
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079・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 西大路子爵
ノ動議ニ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=79
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080・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=80
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081・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 四案ノ第二
讀會ヲ開キマス、御異議ガナケレバ、全部
ヲ問題ニ供シマス、四案全部、委員長ノ報
告通リデ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=81
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082・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=82
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083・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ各案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=83
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084・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=84
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085・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 西大路子爵
ノ動議ニ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=85
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086・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=86
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087・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 四案ノ第三
讀會ヲ開キマス、四案全部、第二讀會ノ決
議通リデ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=87
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088・佐佐木行忠
○副議長(侯爵佐佐木行忠君) 御異議ナイ
ト認メマス、次會ノ議事日程ハ、決定次第
彙報ヲ以テ御通知ニ及ビマス、本日ハ是ニ
テ散會致シマス
午後零時十七分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X00719430208&spkNum=88
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