1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十八年三月十日（水曜日）午前十時四分開議
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議事日程 第十七號
昭和十八年三月十日
午前十時開議
第一 市制中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會の續（委員長報告）
第二 町村制中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會の續（委員長報告）
第三 府縣制中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會の續（委員長報告）
第四 北海道會法中改正法律案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會の續（委員長報告）
第五 東京都制案（政府提出、衆議院送付） 第一讀會の續（委員長報告）
第六 岩手縣甲子川改修工事繼續施行の請願 會議
第七 岩手縣尾崎岬に燈臺設置の請願 會議
第八 未成線鐵道釜石線速成の請願 會議
第九 豫定線釜石、盛間鐵道速成に關する請願 會議
第十 未成線鐵道遠別、築別の兩驛間速成の請願 會議
第十一 天鹽鐵道達布、雨龍線添牛内 の兩驛間鐵道敷設の請願 會議
第十二 東北本線北福岡驛、岩手縣九戸郡久慈町間に省營自動車運輸開始の請願 會議
第十三 圖書館事業の體制確立に關する請願 會議
第十四 釜石港に防浪施設施行の請願 會議
第十五 七尾線七尾、氷見線氷見の兩驛間に鐵道敷設の請願 會議
第十六 金剛山、高野山國立公園設立の請願 會議
第十七 北海道常呂郡留邊蘂町に登記所設置の請願 會議
第十八 石川縣千路郵便局に電信電話事務開始の請願 會議
第十九 奈良縣五條町、和歌山縣新宮市間鐵道速成の請願 會議
━━━━━━━━━━━━━発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=0
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001・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 報〓ヲ致サセマ
ス
〔小野寺書記官朗讀〕
去ル二日本院ニ於テ可決シタル左ノ政府提
出案ハ卽日裁可ヲ奏請シ又可決ノ旨ヲ衆議
院ニ通知セリ
昭和十八年度歲入歳出總豫算案竝昭和十
八年度各特別會計歲入歲出豫算案
豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲ス
ヲ要スル件
昭和十七年度歲入歲出總豫算追加案(第
號
昭和十七年度各特別會計歲入歲出豫算追
加案(特第一號)
昭和十八年度歲入歲出總豫算追加案(第
(一)
昭和十八年度各特別會計歲入歲出豫算追
加案(特第一號)
豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲ス
ヲ要スル件(追第一號)
特殊財產資金豫算案
昭和十八年度歲入歲出總豫算追加案(第
二號)
昭和十八年度各特別會計歲入歲出豫算追
加案(特第二號)
樺太內地行政一元化ニ伴フ樺太廳特別會
計ト他ノ會計トノ關渉ニ關スル法律案
朝鮮事業公債法中改正法律案
朝鮮簡易生命保險及郵便年金特別會計法
案
臺灣事業公債法中改正法律案
臺灣官設鐵道用品資金會計法中改正法律
案
朝鮮郵便年金ノ事務ニ關スル郵便物ニ關
スル法律案
同日本院ニ於テ採擇スルコトヲ議決シタル
國幣小社須佐神社國費造營ノ請願外九件ノ
請願ハ各〓意見書ヲ附シ卽日之ヲ政府ニ送
付セリ
去ル三日委員長ヨリ左ノ報告書ヲ提出セリ
請願文書表(第六囘報〓)
去ル四日衆議院ヨリ本院ノ送付ニ係ル左ノ
政府提出案ハ同院ニ於テ之ヲ可決シ奏上ヤ
ル旨ノ通牒ヲ受領セリ
日滿地方稅徵收事務共助法案
明治四十年法律第二十五號廢止法律案
大正九年法律第五十三號中改正法律案
北支那開發株式會社法中改正法律案
中支那振興株式會社法中改正法律案
占領地軍政官憲ノ爲シタル行爲ノ法律上
ノ效力等ニ關スル法律案
去ル五日委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
請願委員會特別報告第四號
去ル六日委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
市制中改正法律案可決報〓書
町村制中改正法律案可決報告書
府縣制中改正法律案可決報告書
北海道會法中改正法律案可決報〓書
一昨八日委員長ヨリ左ノ報〓書ヲ提出セリ
東京都制案可決報〓書
同日衆議院ヨリ本院ノ送付ニ係ル左ノ政府
提出案ハ同院ニ於テ之ヲ可決シ奏上セル旨
ノ通牒ヲ受領セリ
戰時刑事特別法中改正法律案
在滿日本人ノ身分ニ關スル滿洲國裁判ノ
效力ニ關スル法律案
裁判所構成法中改正法律案
陪審法ノ停止ニ關スル法律案発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=1
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002・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 是ヨリ本日ノ會
議ヲ開キマス、日程第一、市制中改正法律
案、日程第二、町村制中改正法律案、日程
第三、府縣制中改正法律案、日程第四、北
海道會法中改正法律案、政府提出、衆議院
送付、第一讀會ノ續、委員長職〓、是等ノ
四案ヲ一括シテ議題ト爲ス〓御異議ハ
ゴザマイセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=2
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003・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、委員長河原田君
法人 釋出ていたの路線ストマトリート
市制中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十八年三月六日
委員長河原田稼吉
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
町村制中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十八年三月六日
委員長河原田稼吉
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
府縣制中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十八年三月六日
委員長河原田稼吉
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
北海道會法中改正法律案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十八年三月六日
委員長河原田稼吉
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔河原田稼吉君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=3
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004・河原田稼吉
○河原田稼吉君 只今議題トナリマシタ市
制中改正法律案外三件ニ關スル委員會ノ審
議ノ〓要竝ニ其ノ結果ヲ御報告申上ゲマス、
此ノ四法律案ノ中核ハ、市制及町村制ノ改
正法律案デアリマシテ、他ノ二法案ハ大體
ニ於キマシテ、此ノ改正ニ伴ヒ是ト相照應
スル程度ノモノデアリマスルカラ、主トシ
テ市制及町村制ノ改正法律案ニ付キマシテ
御報告申上ゲマス、本改正案ハ市制、町村
制ノ全部ニ亙ルモノデアリマシテ、可ナリ
長イ澤山ノ條文ニ及ブモノデアリマスガ、
主要ノ事項ハ大體次ノ五點デアリマス、第
一、市町村長ノ選任及解任ニ付キマシテ、
官廳ノ權限ヲ强化シタコトデアリマス、卽
チ市長又ハ町村長ノ選任ニ付キマシテハ、
從來ハ市會又ハ町村會ニ於キマシテ選擧ヲ
スルト云フコトニ相成ッテ居ッタノデアリマ
スルガ、本案ニ於キマシテハ、市長ニ付キ
マシテハ、市會ハ唯推薦ヲシ、其ノ選任ハ
内務大臣ガ勅裁ヲ經テ之ヲ爲スト云フコト
ニ改メラレタノデアリマス、又町村長ニ付
キマシテハ、從來ハ町村會ニ於キマス選擧
ダケデ濟ンデ居ッタノデアリマスガ、本案
ニ依リマシテ、尙此ノ上ニ府縣知事ノ認可
ヲ必要トスルコトニ改メラレタノデアリマ
ス、又市町村長ガ甚ダ不適任ナ場合ニハ
市長ニ付キマシテハ內務大臣、町村長ニ付キ
マシテハ府縣知事ガ、何時デモ之ヲ解任スル
コトガ出來ルコトニ定メラレタノデアリマ
ス、市町村長ノ選任及解任ニ付キマシテ、斯
カル規定ヲ設ケマシタ理由ト致シマシテ、政
府ノ說明サルヽ所ハ、市町村民ノ指導者デア
ル所ノ市町村長ニ眞ノ適任者ヲ得テ、仍テ戰
時下ニ於ケル市町村行政ノ强化ヲ圖リタイ
ト云フコトニアルヤウデアリマス、第二ハ、市
町村會ノ權限ヲ縮小シタコトデアリマス、卽チ
市町村長ノ選任方法ニ於キマシテ、或ハ又市
町村會ノ議決事項ヲ縮小シタト云フコトニ
於キマシテ、或ハ市會ニ會期ヲ設ケタト云フ
コト等ニ於キマシテ、其ノ事ガ現レテ居ルノ
デアリマス、第三ハ、市町村長ノ權限ヲ擴大强
化シタコトデアリマス、卽チ市町村會ノ權限ヲ
縮小スルト云フコトハ、取モ直サズ市町村長
ノ權限ヲ擴張スルコトニ相成ルノデアリマ
スガ、其ノ外新タニ加ヘラレマシタ主チル
モノノ一ツトシテ申上ゲタイコトハ、市町
村內ニ於キマスル各種團體ニ對シマシテ、
必要ナル指示ヲ爲シ得ルト云フ權能ガ與ヘ
ラレタコトデアリマス、是ハ御承知ノヤウ
ニ、農會、產業組合ヲ始メト致シマシテ、各
種各樣ノ團體ガ、現今市町村内ニ簇出ヲ致
シ、其ノ間ニ統制ノ取レナカッタト云フヤ
ウナ嫌ガアッタノデアリマスルガ、此ノ實
情ニ鑑ミマシテ、運營上ノ指導權ト云フモ
ノガ市町村長ニ與ヘラレタノデアリマス、
第四ハ、自治體ノ理事機關デアリマス所ノ
市町村長ニ、國家機關デアル性格ヲ更ニ多
ク加ヘタト云フコトデアリマス、卽チ從來
市町村長ノ扱ッテ居リマシタ所ノ、所謂市
町村ノ固有事務ノ外ニ、國家其ノ他カラ委
任セラレマス所ノ國政事務ヲ扱ッテ居ッタ
ノデアリマスガ、尙今囘ノ規定ニ依リマシ
テ官廳等ノ委任ニ依リマシテ、所謂國政事
務ヲ處理スベキ權能ト義務トガ擴大セラレ
タノデアリマス、第五八、從來法制的ノ根
據ノナカッタ所ノ、所謂町內會トカ部落會
ニ對シマシテ、始メテ法律ノ規定ヲ以テ
種ノ人格ヲ付與シ、財產權ノ主體トナルコ
トガ出來ルヤウニ致シタコトデアリマス、
又市町村長ノ命令ニ依リマシテ、町內會、
部落會ノ會長ハ市町村ノ事務ヲ援助施行シ
ナケレバナラヌト云フコトニ相成ッタノデ
アリマス、卽チ法律上ノ義務ヲ明定セラレ
タノデアリマス、政府ト致シマシテハ、町
內會、部落會ヲ、下部ノ自治的協同體ト致
シマシテ、之ヲ育成助長シタイ、斯ウ云フ
コトダサウデアリマス、其ノ他市町村會議
員ノ選擧法トカ或ハ訴願等、行政救濟ノ手
續等ニ付キマシテ、幾多ノ改正ガ加ヘラレ
タノデアリマス、以上ノヤウナ改正ヲ加へ
マシタ理由ニ付キマシテ、政府ノ說明サル
ル所ヲ綜合致シテ見マスト云フト、要スル
ニ市町村行政ヲ刷新シテ更ニ行政上ノ能率
ヲ高メ、國策ヲ滲透セシメ、國民生活ヲ確
保スルト云フコトニ付キマシテ遺憾ナキヤ
ウニシタイト云フ所ニアルヤウデアリマス、
唯此ノ地方制度改正ノ全般ヲ通ジマシテ、
他ノ觀點カラ綜合的ニ觀察ヲ致シマスト云
フト、要スルニ地方自治團體ガ從來持ッテ
居リマシタ所ノ、所謂自治權ニ對シマシテ相
當ノ制限ヲ加ヘタト云フコトハ、是ハ否ミ
得ナイ所デアリマス、卽チ市町村長ノ選任解
任方法ノ改正ニ於キマシテモ、是ハ其ノ著
シイ例デアリマスガ、其ノ他市町村會ノ權限
ノ縮小ニ關スル規定等ニ現レテ居リマスル
ヤウニ、之ヲ〓言致シマスレバ、市町村會
等自治團體ニ於ケル所ノ議事機關ノ權限ヲ
或程度縮小シテ、之ニ對シマシテ、市町村
長等理事機關ノ權限又ハ其ノ活動範圍ヲ擴
張シテ、一方是等ノ理事機關ニ對シマシテ
ハ、監督官廳ノ發言權ト申シマスカ、或
壓力ト申シマスカ、所謂官憲ノ影響力ト云
フモノヲ强化シテ居ルノデアリマス、卽チ
從來考ヘラレテ居リマシタ所ノ地方團體ノ
自治ト云フ觀念ニ對シマシテ、官治的氣分
ヲ濃化シテ居ルヤウニ見エルコトデアリマ
ス、ガ併シ之ニ對シマシテ、委員會ニ於ケル
質疑ニ付テ內務大臣ガ屢、、御述ニナリマシタ
所ヲ綜合致シマスルト云フト、此ノ事ハ全
ク時局ニ卽應シテ市町村行政ノ敏活刷新ヲ
圖ラウトスル所ノ實際上ノ必要ニ基クモノ
デアリマシテ、政府ハ決シテ自治ノ本義ニ
對シ之ヲ變改シヨウトスル意圖ニ出テ居ル
モノデハナイ、否寧ロ現在ノ如キ戰時態勢
下ニ於キマシテハ、自治ノ精神ト云フモノ
ハ之ヲ抑壓スルドコロカ、益〓之ヲ〓揚シナ
ケレバナラヌモノデアルト云フコトヲ確信
スルト云フ旨ヲ明カニセラレテ居ルノデア
リマス、以上ハ法案ノ要旨デアリマス、委
員會ニ於キマシテハ、五日間ニ亙リ熱心ナ
ル質疑應答ガ重ネラレタノデアリマス、其
ノ中ノ三四ノ事項ニ付キマシテ御參考迄ニ
其ノ大要ヲ御披露申上ゲヨウト思ヒマス、
先ヅ第一ハ、本改正案ハ政府言明ノ如ク特
ニ戰時ノ必要ニ基クモノデアッテ、自治ノ
本義ハ之ヲ堅持スルト云フ建前デアルナラ
バ、市町村制ノヤウナ自治制度ノ根幹トモ
謂フベキ法律ト云フモノハ餘リ之ニ手ヲ著
ケヌデ、別ニ地方制度ニ關スル戰時特別法
規ヲ制定スルト云フコトガ宜イノデハナイ
カト云フ質問ニ對シテ、政府ハ、本法ハ多
分ニ戰時對策タル意義ヲ持ッテ居ルモノデ
アルガ、他面市町村ノ本質ト實情トニ深キ
考慮ヲ加ヘタモノデアッテ、單ニ一時ノ立
法ト云フコトガ出來ナイモノデアリ、且各
方面カラ十分檢討ヲ加へタモノデアルト云
フ答辯デアリマシタ、第二ハ、市町村長ノ
選任及解任ニ付キマシテ實際上如何ニ之ヲ
取扱フカト云フ質疑ニ對シマシテ、政府ハ、
此ノ規定ノ實行ニ付キマシテハ極メテ愼重
ナル態度ヲ執リ、自治ノ精神ハ更ニ能ク一
般ニ普及徹底セシメ、一方官憲ニ於キマシ
テ所謂權力ヲ濫用シテ、其ノ結果市町村ノ
吏員或ハ住民ヲシテ萎縮退嬰セシメ、自治
ニ無關心トナリ、延イテ國民ニ活力ヲ失ハ
シムルコトノナイヤウニ、萬全ノ方策ヲ講
ズル旨ノ答辯ガアッタノデアリマス、第三
ハ、市町村等ノ地域團體ト農業團體トノ統
合ヲ實現スル意思ガアルカドウカ、斯ウ云
フ質疑ニ對シマシテ、政府ハ、其ノ統合一
元化ノ理想デハアルケレドモ、急速ニ實
現シヨウト致シマスト云フト、非常ナル無
理ヲ生ジ、實際ニ卽シナイ嫌ガアル、仍テ
農業團體法ノ制定ト相竝ンデ、本法ニ依リ
マシテ先ヅ市町村長ニ指示權ヲ與ヘテ、農
業團體等ヲシテ步調ヲ一ニセシメ、更ニ逐次
一元化ノ方向ニ進ミタイ積リデアルト云フ
答辯デアリマシタ、第四ハ、本法ニ依リマ
シテ、町內會、部落會ノ會長ト云フモノハ、
市町村ノ事務ノ一部ヲ援助施行スル義務ヲ
法律上定メラレタノデアルガ、是ハ往々ニ
シテ町內會、部落會ヲシテ其ノ負擔ニ苦シ
マシメルニ至ル虞ガアルガ、之ニ對シテ政
府ハ如何ナル方策ヲ講ズル積リデアルカト
云フ質疑ニ對シテ、政府ハ、其ノ運用ニ付
テハ十分注意シ、濫リニ市町村ノ事務ヲ町
內會、部落會ニ轉嫁移讓シ、其ノ負擔ヲ過
重ニスルヤウナコトノナイヤウニ十分指導
スル旨ノ答辯ガアリマシタ、又町內會、部
落會ノ區域ノ變更ニ付キマシテモ、住民ノ
意向ヲ尊重シテ、唯法規ヲ楯ニ取ッテ之ヲ
强行スルト云フヤウナコトハ、嚴ニ之ヲ戒
シムル積リデアルト云フ答辯ガアッタノデ
アリマス、其ノ他選擧制度ニ關シ、或ハ巾
央及地方ニ於キマスル政令ノ統一徹底ニ關
シ、或ハ市町村組合ノ活動助長ニ關シ、或
ハ自治體吏員ノ待遇改善ニ關シマシテ、或
ハ吏道ノ刷新振起ニ關シマシテ、本案審議
上極メテ緊切ナル質疑應答ガアッタノデア
リマスルガ、是等ノコトハ速記錄ニ讓リマ
ス、尙其ノ間ニ數囘祕密會ガ開カレタノデ
アリマスルガ、其ノ御報〓ハ差控ヘマス、。
斯クシテ質疑ヲ終リマシテ、此ノ四法案ヲ
一括シテ討論ニ入リマシタ處、或委員カラ、
本改正案ノ實施ニ當ッテハ、唯單ニ時局ノ要
請ニ應ジ行政熊樣ヲ變更スルニ急ナルノ餘
リ、自治ノ根本義ヲ沒却スルヤウナコトノ
ナイヤウニ、又施行ニ伴ヒマシテ無用ノ摩
擦ヲ生ゼシメナイヤウニ、十分ノ注意ヲ願
ヒタイ、又本法ノ施行ト共ニ、地方官公吏
ノ地位ハ愈〓重キヲ加ヘルノデアリマスルガ
故ニ、吏道ノ振肅刷新ニ付キマシテハ殊ニ
必要デアル、此ノ點ニ付キマシテ格段ノ努
力ヲ拂ハレタイ、又町內會、部落會等ノ取
扱ニ付キマシテハ、國民生活ニ密接ノ關
係ノアル問題デアルカラシテ、監督者ノ側
ニ於キマシテハ、常ニ能ク實情ヲ察知シ、
萬違算ナキ措置ヲ講ズルヤウ致サレタイ旨
ノ希望意見ヲ述ベラレマシテ、贊成ノ意ヲ
表明セラレマシタ、仍テ採決致シマシタ處、
四案全部全會一致ヲ以テ可決致シマシタ、
之ヲ以テ私ノ御報告ヲ終リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=4
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005・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 討論ノ通告ガゴ
ザイマス、子爵大河內輝耕君
〔子爵大河內輝耕君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=5
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006・大河内輝耕
○子爵大河內輝耕君 只今委員長カラ詳細
ナ御報〓ガゴザイマシタ、私ハアノ席デ時々
傍聽ヲ致サセテ戴キマシタガ、御討論ノ
樣子、御質問、御審議ノ樣子ヲ伺ッテ見ルト、
誠ニ皆樣其ノ道ノ權威者ノ方バカリデアッ
テ、我々ノ氣ノ付カナイ非常ニ適切ナ御質
問ガアリ、又御意見モアリ、モウ殆ド我々
一言モ加ヘル餘地モナイ、私ハ此ノ特別委
員各位ノ御努力ニ對シテ深甚ノ敬意ヲ表シ
マシテ、此ノ案ニ贊成致ス者デゴザイマス、唯
併シ贊成致シマスニ付キマシテハ、此ノ際御
參考ノ爲ニ政府ニ多少申上ゲテ置キタイコ
トガゴザイマスノデ、暫ク時間ヲ拜借致シタ
ウゴザイマス、特別委員會ノ委員ノ御方ノ
中デ、皆樣ソレハ練達堪能ノ御方バカリデゴ
ザイマスガ、其ノ中ノ我々ノ最モ奠信スル
御方ノ御一人カラ、斯ウ云フ御發言ガアッ
夕、此ノ制度ハ戰時ノ制度デアル、戰時ト
云フコトニナレバ、モット自治權ヲ强化シ
テモ宜イガ、自治ノ根本ハ元ノ通リ置イテ
置イタラドウカ、私ハ其ノ意味ヲ誤解シテ
居ルトイケマセヌカラ、ソレヲ御紹介スル
コトハ出來マセヌガ、私ノ解スル所デハ、自
治ノ根本ハ崩スナ、併シ時局ノ必要トアレバ
之ヲ制限スルコトハ差支ナイ、斯ウ云フ御議
論デアッタヤウニ伺ッタ、誠ニ私モ成ル程仰ッ
シヤル通リダト云フノデ、大變ソレニ感服致
シタ譯デゴザイマス、自治ノ由來ト云フモノハ
決シテ一朝一夕ノモノヂヤナイ、白治ハ憲法
政治ノ一端トシテ是ガ出來テ居ル、決シテ
之ヲ輕々ニ廢止スベキモノデナイ、只今
委員長カラモ、政府ノ意圖ハ自治ヲ益〓昂
揚スルノダト云フヤウニ、政府ガサウ
言ッタヤウニ御報告ガゴザイマシタガ、私
ハドウモ是ハ、自治ヲ制限スルヨリモモット
行キ過ギテ居ル、寧ロ自治ヲ廢メテ官治ニ
スルモノデアルト私ハ解スル、ドウモ此ノ
點ハ少シ行キ過ギテヤナシイカ、日本ノ憲法ニ
セヨ、自治制度ニセヨ、戰爭ト決シテ兩立
シナイモノヂヤナイ、斯ウ云フ風ニ官治ニ
爲サラナイデモ、マダヤレル餘地ハアリハ
シナイカト思ヒマス、日本ノ憲法ニシロ、
自治制度ニシロ、其ノ由來スル所ハ實ニ古
イ、三千年來ノモノダト私ハ思フ、何故カト
申シマスト、日本ノ歷史ト云フモノハ、專
制政治ニ苦シミニ苦シミ拔イテ來タ所ノ歷
史ナンデアル、詰リ明治維新ニ至ル間ト云
フモノハ、隨分專制政治ニ惱マサレ、サウ
シテ國體ニ惡イ影響ヲ與ヘテ來タ、其ノ度
ニ革新ガアッテハ其ノ專制政治ヲ倒シテ來
タ、是ガ日本ノ歷史デアッタヤウニ存ジマ
ス、大化ノ革新ト云ヒ、後三條天皇ノ改革ト
云ヒ、或ハ建武ノ中興ト云ヒ、又明治ノ維
新ト云ヒ、悉クソレデナケレバナラヌ、其
ノ間ニ於テ又非常ニ國體ニ惡イ影響ヲ與ヘ
タ、專制政治ノ弊ノ極マル所、或ハ「心ニモ
アラテウキ世ニナカラヘハ」ト云フヤウナ
御製ニナリ、甚ダシキニ至ッテハ新島守ノ御製ト
モナッテ、今日ニ至ル迄傳ヘラレテ居ル、ソコ
デ維新ノ當時ニ、維新ノ政治家ハドウ考ヘラ
レタカ、此ノ儘デ放ッテ置イタナラバ、又專
制ノ昔ニ還ッテ國體ニ惡イ影響ヲ與ヘルデア
ラウ、此ノ點ヲ考ヘラレテ始メラレタモノガ憲
法政治デアリ、ソレニ伴フ自治制度デアラウ
ト私ハ思フ、伊藤公ニセヨ、桂公ニセヨ
一身ノ休戚ヲ顧ミズシテ政黨ヲ組織サレ、
アレダケニ憲法政治ニ努力サレタト云フコ
トハ、此ノ點デアッタラウカト思ヒマス、
自治制ト言ウテ輕ク視ルヤウデアリマスガ、
自治制ハ憲法政治ノ一端デアル、若シ之
ヲ廢メルトカ云フコトニナレバ、國體ノ外
郭ノ一端ヲ崩シタト言ッテモ差支ナイ、此ノ
點ニ於テ、私ハ此ノ案ニ付テハ一種ノ疑惑
ヲ持タナケレバナラナイ、併シ根本論ハ姑
クソレト致シマシテ、ソレデハ官治ニスル
理由ハ何處ニ在ルカト云フコトヲ考ヘテ
見マスト、是モナカ〓〓領解ガシニクイ、
東條總理ハ甞テ、其ノ地位ニ在ル者ハ何デ
モ知ッテ居ル、或大臣デアレバ其處ノ省ノ
仕事ハ何デモ知ッテ居ルノダト云フコトヲ
言ハレタコトガアル、私ハサウハ思ハナイ、
ソレハサウ言フト大變失禮ニ當リマスケレ
ドモ、事實サウ思フノデス、今度ノ選擧干
涉ニ付キマシテ內務大臣ニ質問ヲ致シタ處
ガ、私ガ詳シイ事例ヲ擧ゲテ質問シタニ拘
ラズ、内務大臣ハ之ヲ御否認ニナッタ、段々
私ガ例ヲ擧ゲテ質問シテ行ク中ニ、御分リ
ニナッタト見エテ、終ヒニハサウ云フ例モ
アッタカモ知レナイ、アッタラバ相當ナ處置
ヲシヨウ、斯ウ言ハレタ、詰リ初メハ御承
知ハナカッタ、ダカラ其處ノ地位ニ居ルカ
ラ、總テ物ヲ知ッテ居ルト仰シヤッタッテ、
ソレハサウハ參ラヌ、併シ是ダケノコトハ
認メラレル、官吏ハ其ノ省ノ事務ニ關シテ
色々ナ材料ヲ持ッテ居ラルヽト云フコトハ、
是ハ認メテ差支ナイカト思ヒマス、併シ
政治ヲ行フ爲ノ材料ハ、決シテ其ノ省ニ關
シ、其ノ仕事ニ關シテ、總テノモノヲ持ッ
テ居ラレルトハ、私ハ認メルコトガ出來ナ
イ、併シ其ノ材料ト云フモノハ、世ノ中ニ
鬼ニハ金棒ト云フコトガアルガ、詰リ鬼ト
言ヘバ金棒デス、金棒ハ鬼ガ振廻サナケレ
バイケナイ、我々ガ金棒ヲ振廻シタラ、自
分モ怪我スルガ、誰ニ怪我サスカ分ラナイ、
ソレデハ官吏ハ鬼デアルカ鬼デナイカト
云フト、色々ナ材料ガ金棒トスレバ、官吏
ハ鬼ニナルノデ、鬼ハ金棒ヲ振リ〓セルガ、
鬼デアルカドウカト云フト、是ハドウモ
鬼ダトハ申上ゲラレナイ、何故カト云フト、
申ス迄モナク、多數ノ官吏ノ方々ガ忠實
ニ事務ニ服シ、薄給ヲ以テ甘ンジ、又其ノ
道ノ權威者デアルト云フコトハ、是ハ我々
モ認メルシ、ドナタモ御認メニナル、併シ
是ガ政治ヲシテ宜イカ惡イカト云フコトニ
ナルト、政治ニ適スルトハ到底考ヘラレナ
イ、自分デ權限ヲ持ッテ居ル、生活ハ保障サ
レテ居ル、貧弱ト云ッテハ失禮デスガ、兎ニ
角保障ヲサレテ、權限ヲ持ッテ仕事ヲシテ居
ルノダカラ、世ノ中ノ事ガ分リヤウガナイ、
世ノ中ノ事ガ分リヤウガナイカラ、到底
政治ニ介入シテ來ル資格ハ官吏ニハ無イ、
ソレデドウ云フコトガ起ルカト云フト、ド
ウシテモ茲ニ獨善ト云フ弊ヲ生ズル、私ハ
此ノ問題ニ付キマシテ官吏ノ性質ヲ見ルニ
當ッテ、獨善ノ方面ト責任ノ方面ト、二ツノ
方面カラ之ヲ見テ見タイト思ヒマス、獨善
ハ申ス迄モナク、自分ハ一番偉インダ、自
分ノ言フコトハ少シモ誤リハナインダト云
フコトナンデアル、官吏ハ自分ノ地位ガ能
ク分ッテ、自分ハ事務ヲ識ッテ居ル、事務ハ
識ッテ居ルケレドモ、政治ヲ行フ資格ハナイ
ノダト、斯ウ白覺シテ居ルト宜シイガ、兎角
其ノ自覺ガ足リナイ、此ノコトハ伺ヒ違ヒ
カモ知レマセヌガ、私ハ此ノ開會劈頭ノ伍堂
博士ノ御演說ノ其ノ中ニ一端ヲ窺フコトガ出
來タ、唯併シサウ申スト空漠ト致シマスカ
ラ、多少例ヲ擧ゲテ、二三ノ例ヲ又示スコ
トヲ御許シヲ願ヒタイ、政府ハソンナ御考
ヂヤナイト思ヒマス、政府ハソンナ御考ヂ
ヤナイト思ヒマスガ、兎角獨善ニ陷ッテ、自
分獨リデ世ノ中ノ事ヲ總テヤルト云フヤウ
ナ弊ガ此ノ頃アル、先ヅ其ノ二三ノ事ヲ申
上ゲマスレバ、例ヘバ靖國神社ノ祭典ノ如
キデス、大キナアヽ云フ祭典ニナリマスレバ、
ドウカ國民ノ周知スル方法ヲ以テ、周知セラ
レル時期ニ於テ、斯ウ云フモノハ擧行シテ
戴キタイ、又國務大臣ガ政務ヲ行フ時ニ付テ
モ、國務大臣ノオイデニナル所ガ時々分ラ
ナクナッテシマッタト云フヤウナコトデハ、國
民ニ對シテ安心ヲ與ヘル所以ヂヤナイト思
フ、斯ウ云フモノハ國民ト共ニ、又國民ノ安心
スル方法ヲ以テ、擧行サルベキモノト私ハ思
フ、「世ノタメニ身ヲハヲシマヌ心トモアラ
フル神ハテラシミルラム」、今日ノ國民ノ心
ハ、此ノ御製ヲ拜受シタ時ト同ジコトダト
思フ、政府ハ此ノ點ニ付テハ一層ノ御考慮
ヲ煩ハシタイト思ヒマス、又徵用ノ問題ニ
致シマシテモサウデス、徵用デモ、アレヲ
早ク制度ヲ決メマシテ、サウシテ訓練所ニ
入レテ、サウシテ惡イ者ハ、不合格トシテ
出シテシマフ、又良イモノハ適材適所ニ、
適材デナイ所へ持ッテ行ッテモ駄目デスカラ、
適材適所ニヤレバ相刺摩擦モナカッタラ
ウト思ヒマス、無論大シタ相剋摩擦ガアッ
タトハ申シマセヌガ、多少ノ相剋摩擦ハ聞
カナイコトモナイ、斯ウ云フヤウナ點モ早
ク議會ヘデモ御出シニナッテ、サウシテ議會
ト共ニ御審議ニナッタナラバ、相剋摩擦モナ
ク、モット宜イ方法デ濟ンダラウカト思ヒマ
ス、又私ナリ皆樣ナリカラモ聞カレタ砂防
等モサウデス、是等モ貴族院ノ希望決議ニ
反シテ、砂防ハ減サレテシマッタ、ドウシ
テ砂防工事ガ減サレタカト言ッテ伺ッテ見ル
ト、「セメント」ガ足リナイカラデアル、「セメ
ント」ガ足リナイト云フ口ノ下カラ、新シイ川
ガ附加ハッテ居ル、例ヘバ六甲トカ荒川トカ、
時局ニ關係ノアル川ノ砂防工事ハ延期サレテ
シマッテ、餘リ關係モナイト思ハレルヤウナ
酒匂川ガ入ッテ居ル、大變細カイ事ヲ申シテ
何デスガ、御分リ宜イ爲ニ例ヲ引キマスガ、
サウシテ聞イテ見ルト、「セメント」ガ足リナ
イ、ソレナラ酒匂川ヲ中止ニナッテ、六甲
フヤウナ所ヲオヤリニナッタナラバドウカ
ト聞イテ見ルト、酒匂川ヲ止メテモ六甲ハ
ヤレナイト言フノダ、誠ニ我々ニハ解シ
難イ、六甲デ御使ヒニナル「セメント」ト酒匂
川デ御使ヒニナル「セメント」トハ、違フ「セ
メント」ヲ御使ヒニナルモノト見エル、何デ
モ他人ノモノハ氣ニ入ラナイ、自分ガ新シ
イモノヲ造ラナケレバ氣ニ入ラナイト云フ、
斯ウ云フ弊風ガアル、ソコデ貴族院ノ決議
ト云フモノハマルデ無視サレテシマッテ、妙
ナ形ノモノニナッテ現レテ來タ、又〓育ナド
ヲ見マシテモサウデゴザイマス、此ノ頃鍛
鍊ト云フコトガ頻リニ行ハレテ居ル、段々
何ッテ見ルト、〓育ノ方ハ年限ガ短縮サレマ
シテ、サウシテ學科ノ時間ガ非常ニ少クナッ
ク、學科ノ時間ガ少クナル爲ニ、アトガ學
力ガ低下スルト云フコトハ、是ハ認メラレ
テ居ルハ認メラレテ居ルノニ拘ラズ、、、
云フ風ニ鍛錬々々ト言ヒ、又色々行事ヲ殖
ヤサレルノハドウ云フ譯カ、例ヘバ鍛鍊ト
云フコトハ腹ゴナシデヤルンダト云フコト
ナラバ、學童ト云フモノハ朝晩ニ通學モシ
テ居ルシ、又學校ヘ行ッテ自分ノ好ム긋
ポーツ」ヲヤレバ、腹ゴナシナラバソレデ宜
1、若シモ精神〓育ダト云フコトナラバ、
是ハ文部大臣ニ申上ゲル迄モナク、決シテ
精神〓育ハ長イ時間ヲ取ッタカラソレデ宜
イト云フコトハナイ、正法眼藏ノ提唱迄サ
レル御方ニ、ソレコソ本當ニ釋迦ニ說法デ
スガ、日面佛月面佛ト言ッテ昔カラ格言ガア
ル、長イカラソレデ宜イト云フモンデナイ、
ソレデ餘リアヽ云フコトヲ獨善ニヤラレル
結果、多數ノ病者ガ出テ來ル、小サイ子供
ガ起サナイデモ宜イ病氣ヲ起ス、私ノ尊信
スル或方ノ令孃ナドハ、此ノ爲ニ病氣ヲ起
シテ亡クナラレタ、是ハ私ハ體驗デゴザイマ
スカラ申シマスガ、私ハ其處ノ席上ヘ參ッテ
御燒香ヲサシテ戴イタ、サウシタ處ガ其ノ
御棺前ニ、同級生カラ來タ手紙ガ前ニ置イ
テアル、マルデ詰リ國民學校ノ生徒ノ字デ、
綺麗ナ四角イ字デ書イテアル、私ハソレヲ
見テ實ニ去ルニ忍ビナカッタ、ドウモ此ノ手
紙ヲ、私スラ見ルニ忍ビナイ此ノ手紙ヲ、
若シモ御兩親ガ見ラレタナラバドンナ御氣
持デアッタラウカ、實ニ察シラレタ、ソレデ
スカラ〓育當局モ、兩親ノ身ニナッテ、其ノ
家族ノ身ニナッテ、少シ考ヘテ戴キタイ、斯
ウ云フモノハ獨善〓育兒童ヲ殺スト云フモ
ンデアル、コンナ獨善ノ甚ダシイモノハ、
遂ニ此處ニ至ル、世ノ中ニ啓蒙運動トカ、
啓蒙トカ云フコトヲ頻リニ言ハレマスケレ
ドモ、蒙ト云フノハ何ダ、馬鹿ダト云フコ
トデアル、サウスルト國民ハ馬鹿デ、官吏
ハ利巧ダト云フコトニナル、私ドウモ是ハ
少シ官吏トシテ行キ過ギテ居ヤシナイカ、
心掛トシテ行キ過ギテ居ヤシナイカ、事務
デモ〓ヘテ戴クノナラバ、國民ハ蒙デアッテ
役人ハ明デアル、是ハ分ッテ居ル、併シ世ノ
中ノ事デハ、失禮ナガラ或ハ國民ノ方ガ明
デアッテ官吏ノ方ガ蒙デアルカモ知レナイ、
何レニシテモ、國民一般ヲ蒙ト見ラレルコ
トハ少シ行キ過ギテ居ルヤリ方デナイカト
思フ、斯ウ云フ實例ヲ擧ゲレバ澤山ゴザイ
マスガ、先ヅ此ノ位ニ致シテ置キマシテ、ソ
レデハ斯ウ云フ風ニシタ獨善ヲヤッテ、色々
ナ害モアルガ、今度官吏ノ責任ノ方面カ
ラ見タナラバドウカ、斯ウ云フ方カラ見テ
見タイ、此ノ議會ノ質問應答中現レマシタ
ノハ、サウシテ私ノ感ジマシタノハ、官吏
ノ責任ト云フモノガ少シモ顧ミラレナイ、
少シモト言ッテハ言葉ガ强イカモ知レマセ
ヌガ、殆ド顧ミラレナイデ、棄テテ置カレ
ルト云フコトヲ發見シタ、甚ダシキハ法律迄
モ、官吏ガヤルノト國民ガヤルノトニ依ッテ、
二三ニサレテ居ル、例ヘバ斯ウ云フ御話モ
アッタ、選擧運動ヲヤルノヲ、啓蒙運動ダト
思ッテヤレバ、ソレハ啓蒙運動ニナル
ンダ、選擧運動ヲヤル積リデナクテ、啓
蒙運動ダト云ッテヤレバ、選擧運動ヲ
ヤッテモ啓蒙運動ニナル、サウ云フ意味カ
ラ申セバ、ソレデハ啓蒙運動ヲヤッテモ選
擧運動ダト思ッテヤレバソレデ差支ナイ、立
派ニ日本精神ニ適フモノダトスレバ、赤ガ
カッタコトヲ言ッテモ赤ニナラナイデ矢張リ
日本精神ニナル、サウ云フコトニナッテ來
タラ、法律ト云フモノハ、其ノ官吏ノ考へ
次第デヤッタノハ皆正シイ事ニナッテ、一ツ
モ罰シヤウガナイ、斯ウ云フヤウナ御意見
サヘ飛ンダ位デアリマス、又是ハハッキリハ
行キマセヌガ、唯サウ云フ風ガ吹イタト云フ
ダケノ話デアリマスガ、業務行爲ハ總テ適
法ナモノト見ル、官吏ノ業務行爲トシテ爲
シタコトハ總テ適法デアル、業務行爲ダカ
ラ適法デアル、斯ウ云フコトニナリマシテ
ハドウダト云フコトデ、詰リ情報局ノ總裁
ガ假ニ赤ノ宣傳ヲシタトスレバ、業務行爲ト
シテ少シモ罰スルコトハナクナル、是ハ業
務行爲ダ、サウスルト、官吏ハ切捨御免デ
何ヲヤッテモ勝手デアル、唯是ハ斯ウ云フ風
ガ吹イタト云フダケノコトデアル、ソレカ
ラ戰爭指導ニ關係アル行爲ナドヲ、若シ
我々ガ漏ラシタトスレバ、我々ハマア翌ル
日ハ除名クラヰサレテシマフ國民ガ若シ
ソンナ事デモヤレバ何處ヘヤラレルカ分ラ
ヌ、今頃引ッ張ラレテ居ル位デセウ、實例ヲ
申上ゲレバ、斯ウ云フ事ハ出版法、新聞紙
法、治安警察法ノ所謂安寧秩序ヲ害スルモ
ノダト云フコトニナル、サウ云フコトダラウ
ト私モ考ヘル、官吏ガヤッタラドウナリマス
カ、ソレハ存ジマセヌ、斯ウ云フ風ニ法律ノ
取扱迄ガ、官吏タルヤ否ヤニ依ッテ異ルト云
フコトニナルト、非常ニ國民生活ノ上ニ危險
ナモノデアルト云フコトヲ私ハツクヅク感
ジサセラレタ、尙實例カラ申シマシテモ、官
吏ノ隨分無責任ナコトガチヨイ〓〓事例ニ
アル、無論是ハ私ハ大キナ例ヲ引キマシテ玆
ニ無用ナ波瀾ヲ招クコトハ好ミマセヌカラ、
態々小サナ例ヲ、極ク小サナ例ヲ引イテ申
シマス、併シ是ハ私ノ體驗デゴザイマス
カラ、サウ御承知ヲ願ヒタイ、札幌ノ或郵
便局デ、札幌ノ或郵便局デ郵便局長ヲ免職
シタ、マダソレダケナラ宜シウゴザイマス
ガ、ソレダケナラ宜シウゴザイマスガ、郵
便局ノコトデアリマスカラ、後任者トノ關
係ガ非常ニ面倒デアル、後任者ニ讓ラナケ
レバ······仕事ヲ後任者ニ讓ルト云フコトハ
前任者ノ一ツノ權利ミタイニナッテ居ル、ソ
レヲ全然無視シテシマッテ、サウシテ何時迄
經ッテモ辭表ヲ取上ゲナイ、辭表ヲ出セト言ッ
テ置キナガラ、何時迄經ッテモ放ッテ置イテ、
終ヒニドウシタカト云フト、此ノ辭表ヲ握ッ
テ居タ人事課係長ガ、自分デ其處へ入リ込
ンダ、自分デ人ニ辭職ヲ勸告シテ置イテ、サ
ウシテ自分ガ其處へ入リ込ンデシマッタ驚
クベキ例ガアル、是ハ態々小サイ例ヲ私ハ
拾ッタノデアリマスガ、七五三ニ於ケル關係
デチヨイ〓〓斯ウ云フ話ヲ聽カナイコトハ
ナイ、併シサウ云フコトハ一切省略シテ置
キマス、併シ此ノ話ナドダケヲ言ッテモ誠ニ
權力ノ濫用デアル、人ヲ人トモ思ハナイ、
自分ノ爲ナラ何デモスルト云フヤウナ、非
常ナ橫暴ナ行爲ダト言ッテ差支ナイト思フ、
尙今度ノ議會ニ於キマシテモ、官吏ノ瀆職
ニ付キマシテハ色々ノ話モ出マシタ、一々
此處デ申上ゲルコトモ致シマスマイ、大部
分速記ガ止ッテ居ッタト思ヒマスカラ、是ハ
致シマセヌガ、ソレ等ハ長官達ノ責任ガド
ウナッタカ、監督ノ地位ニアル長官達ノ責
任ガドウナッタカト云フコトハ、一向報〓
モサレナケレバ、分リモセズ、闇カラ闇ヘ
葬ラレタ形デアル、相當ニ善處サレヨウカ
ト思フガ、一向議會ヘノ御報告ガナイト云
フト、遽カニ之ヲ信ズルコトモ出來ナイ、
尙私ノ見テ居リマシタ所ノ、調ベマシタ所ノ
選擧干涉ニ付テモサウデゴザイマス、九州
ノ某縣ニ於ケル所ノ長官ハ、アレダケノ事
ヲヤッテ置キナガラ、アンナ干渉ヲヤッテ置
キナガラ、今、七五三ノ仲間ニ入ッテ暖衣飽
食ヲヤッテ居ル、總務部長ハ近所ノ一等縣ヘ
轉任シテシマッテ、警察部長ハ相變ラズノン
ベンダラリトヤッテ居ル、サウシテ氣ノ毒ナ
ノハ司法主任、司法主任ハ一人デ攻擊ノ矢
面ニ立ッタ爲ニ、到頭懲戒免官ニナッテシマッ
タ、懲戒免官ハ外ノ理由デナッタト云フガ、
ソレハズット前ニ起ッタ事デアル、ソレガ選
擧干涉ノ爲ニ餘リ非難ヲサレタモノダ
カラ、サウ云フ風ナ外ニ名前ヲ借ッテ懲
戒免官ニシテシマッタ、其ノ上、長官達
ハ平氣ナ顏ヲシテヤッテ居ル、北陸某縣ノ警
察部長ハ、東海道ノ或モット宜イ所ニ榮轉
シテ今デモ平氣デヤッテ居ル、サウ云フヤ
ウニ官吏ノ責任ト云フモノハ、全然ト言ッ
テモ宜イ位、問ハレナイヤウナ狀態デアリ
マス、是デハ是ダケノ大キナ權力ヲ、市會ハ
惡イ、町村會ハ惡イト言ッテ、是ダケノ大キ
ナ權力ヲ官吏ニ與ヘテ置キナガラ、果シテ
國民ガ安心シテ之ニ倚ルコトガ出來ルダラ
ウカ、是デ突ッカヒ棒デモアレバマダ宜イ、
市會ナリ町村會ナリト云フ色々突ッカヒ棒
ガアレバマダ何トカナル、世ノ中ニ協力ト
云フコトガアリマスガ、協力ト云フノハ追
隨ヂヤナイ、善イモノハ促進スルガ宜イ
シ、惡イモノハ抑制スルガ宜イシ、批判ハ
始終シテ自分ノ思フ所ヲ述ベル、之ガ協力
ト思フ、處ガ近頃ハ協力ト云フ意味ガ追隨
ト云フコトニ解サレテ居ル、先日私ハ翼贊
會ノ中央協力會ト云フモノヲ傍聽致シタ、
處ガ出テイラッシヤル方ハ皆立派ナ御方デ
アリマスケレドモ、其ノ言ハレル所ヲ聽イ
テ見ルト、告政府ニ追隨シテ居ル事バカリ
言ッテ居ラレル、サウシテ一人追隨シテ居
ナイコトヲ仰シヤッタ方ガアッタ、サウシタ
ラ、議長ガソレヲ差止メルヤウナコトヲ言ツ
タ、ソレヂヤイケマセヌカラ皆追隨ノ議論バ
カリ、斯ウ云フコトヲナサルト云フコトハ
非常ナ害ヲ與ヘルモノデアル、詰リ斯ウ云
フ風デヤレバ、官吏ト云フモノハ有頂天ニ
ナッテシマッテ、何處迄自分ノ獨善ヲ發揮ス
ルカ、一口ニ言ヘバツケ上ガッテシマフ、
能ク世ノ中ニ旦那藝ト云フモノガゴザイマ
シテ、何時迄經ッテモ上手ニナラナイ、玄
人ガ藝ヲ練習スルト隨分叩カレタリ突ツカ
レタリシマスカラ上手ニナリマスケレドモ、
旦那樣ガヤッタノヂヤ何時迄タッテモ、少シ
ヤルトソレデ御宜シウゴザンスト云フ譯デ、
何時迄經ッテモ上手ニナラナイデ、何時モ
同ジ所ヲグル〓〓廻ッテ居ル、ソレト同ジ
コトデ、ソンナ事ヲシテ居ッテ、義太夫ガ
下手ダト云フコトナラバ別ニ國家ニ害モナ
イガ、官吏ガ斯ウ云フ風ニ有頂天ニナッテシ
マッタラ實ニ危イ、斯ウ云フコトハ町村
會ヤ何カノ權限ヲモット廣クシテ、市會ノ
權限モ廣クシ、無論議會ノ開會日ハウント
長クシテ、院外モアンナ戰時特別法ト云
フヤウナモノハ好イ加減ニシテ置イテ、自由
ニ批判ヲサセル、獨立ノ地位ニ居ル者ハ
獨立ノ發言ヲスルカラ、ソレデ官吏ガ有頂
天ニナラズニ行ケル、私ハサウ云フモノト
思ヒマス、ソレデアリマスカラ、獨善モ强
クアリ、政府モ亦顧ミラレナイ、オマケニ
之ヲ、突ッカヒ棒ノ機關ヲ今度取上ゲテシ
マッテ、非常ニ國民トシテ、又國家トシテ
モ、誠ニ好マシカラザル地位ニアルト言ッ
テ差支ナイ、〓括シテ申上ゲマスレバ、官
吏ノ近頃ノ政治ニハ品位ガナイ、モウ少シ
ソレハ顧ミラレテ宜イ、官ノ民ニ對スル態
度ハ溫良恭儉讓、此ノ五字ニ盡キヨウト思
フ、今日ノ官吏ノ現狀ヲ見ルト、是ト相距
ルコト極メテ遠イ、ドウカ此ノ點ハ政府ニ
於カレテモ此ノ案ヲ施行サレルニ付テ十分
ノ御注意ヲ願ヒタイ、私ハ此ノコトヲ御參
考迄ニ政府ニ申上ゲマシテ、サウシテ此ノ
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-
007・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 他ニ御發言モナ
ケレバ、四案ノ採決ヲ致シマス、四案ノ第
二讀會ヲ開クコトニ御異議ハゴザマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=7
-
008・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=8
-
009・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ各案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=9
-
010・秋田重季
○子爵秋田重委君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=10
-
011・松平頼壽
○議長(伯爵松干賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=11
-
012・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=12
-
013・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 四案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナケレバ、全部ヲ問
題ニ供シマス、四案全部、委員長ノ報告通
リデ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=13
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014・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=14
-
015・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ各案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=15
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016・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=16
-
017・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=17
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018・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=18
-
019・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 四案ノ第三讀會
ヲ開キマス、四案全部、第二讀會ノ決議通リ
デ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=19
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020・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=20
-
021・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第五、東京
都制案、政府提出、衆議院送付、第一讀會
ノ續、委員長報告、委員長八條子爵
東京都制案
右可決スヘキモノナリト議決セリ依テ及
報〓候也
昭和十八年三月八日
委員長子爵八條隆正
貴族院議長伯爵松平賴壽殿
〔子爵八條隆正君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=21
-
022・八條隆正
○子爵八條隆正君 東京都制案特別委員會
ノ審議ノ經過竝ニ結果ヲ御報告致シマス、
本委員會ハ、三月二日正副委員長ノ互選ヲ
行ヒマシテ、翌三日第二囘ノ會議ヲ開キ、
內務大臣ヨリ本案提出ノ趣旨竝ニ法案ノ要
領ニ付キマシテ說明ヲ聽取致シマシタ、其
ノ後質疑ニ入リマシテ以來、三月八日ニ至
ル迄、都合六囘ニ亙リ愼重審議ヲ致シタノ
デアリマス、其ノ間特ニ帝都ノ防空及都ノ
機構ニ關シマシテハ、祕密會ヲ開キマシテ
審議ヲ盡シタノデアリマス、而シテ八日質
疑ヲ終了致シ、直チニ討論ニ入リ、採決致
シマシタル處、全會一致ヲ以テ原案、卽チ
衆議院ノ修正送付ニ係ル案ヲ可決スベキモ
ノナリト決定致シタノデアリマス、都制制
定ノ趣旨竝ニ其ノ內容ニ付キマシテハ、過
般本會議ニ於キマシテ內務大臣ヨリ御說明
ノアッタコトデアリマスルカラ、之ヲ茲ニ
反覆致シマスコトヲ省略致シマシテ、直チ
ニ委員會ニ於ケル皆疑座答ノ主ナルモノニ
付御說明ヲ申上ゲマシテ、御宋議ノ御參考
ニ供シタイト思ヒマス、第一ニハ、都制制
定ノ理由、又ハ其ノ運營ノ方針等ニ關スル
質疑デアリマス、昨年第七十九帝國議會ノ
豫算委員會ニ於キマシテ、委員ノ質問ニ對
シ、政府ハ、戰時下ノ故ヲ以テ都制案ヲ提出
シナイト云フ答辯ヲセラレタノデアリマス
ガ、決戰下ノ今日之ヲ提出シタノハ如何ナ
ル理由デアルカトノ質問ニ對シマシテ、昨
年ハ更條內閣成立後間モナク大東亞戰爭ガ
勃發致シマシテ、其ノ前途全ク豫斷ガ出來
ナカッタノデアルガ、其ノ後ノ大戰果ニ依
リ戰爭ノ見透シモ立チ、長期戰熊勢ヲ整ヘ
ル爲、國內體制ヲ整ヘルコトガ必要トナッ
ク、ソレ故ニ昨年ハ總選擧、或ハ行政ノ簡
素化、內外地行政ノ一元化、或ハ又大東亞
省ノ創設等ヲ行ッタノデアルガ、帝都ノ行政
モ、戰局ノ進展ニ伴ヒ必要ナル體制ヲ整フ
ルノ必要ニ迫ッタノデ、今囘之ヲ提出致シタ
モノデアルト云フコトデアリマシタ、次一
東京ハ今日ニ於テハ大東亞建設ノ本據デア
ルト云フコトデアルガ、此ノ都制案提出ノ
理由ノ中ニ左樣ニ申サレテ居ル、然ラバ大
亞東建設ノ本據トシテ帝都ニ何等カノ構想
ガアルカ、卽チ興亞〓育ノ中心トシテノ〓
育設備、或ハ衞生施設、又ハ科學的施設、
其ノ他各般ノ整備等ニ關シテ帝都建設ノ理想
ニ付質問ガアリマシタ、此ノ質問ニ對シテ
ハ、從來東京ノ經營ニ付或一ツノ構想ヲ描
イテ、ソレヲ目標トシテ施設ヲ進メテ行ク
ト云フヤウナコトハ、政府ニ於テモ亦東
京市ニ於テモナカッタノデアル、併シ都制施
行ニ依リマシテ、直接ニ帝都ノ運營ニ付テ
ハ國家的性格ヲ附與スルコトトナリマスガ
故ニ、政府自ラ其ノ理想計畫ヲ立テ經營ニ
當ルベキ責任ヲ負フコトニナッタ、故ニ今後
ハ東京都ニ一任セズ、政府ハ相當ノ援助ヲ
爲シ、又ハ政府自ラ進ンデ計晝ヲ樹立スル
ノ必要ガアルト思フト云フコトデアリマシ
タ、次ニ帝都行政ノ刷新ト高度ノ能率化ヲ
以テ木案提出ノ一理由トシテ居ルガ、其ノ
具體的方策ハドウデアルカトノ質問ニ對シ
マシテ、政府ノ答辯ニ依リマスルト、是人
都制案ト官制ノ兩面ヨリ其ノ實現ヲ圖ラム
トスルモノデアリマスガ、都制案ノ面ヨリ
言ヘバ、一ツニハ府市竝存ノ二重機構構廢
シテ、一元化スルコトニ依ッテ能率ノ增進
ヲ圖リ、又都長官及幹部ヲ官吏ト致シマシ
テ、執行權ノ確立强化ヲ圖ルコト、或ハ又
都議會ノ構成ヲ改革致シ、議事ノ能率化ヲ
圖ルコト、或ハ又區役所ノ組織ヲ充實致シ
テ、第一線機關タル區役所ノ陣容ヲ整備充
實スルコト等モ、刷新ト能率化ノ爲デアル
ト云フコトデアリマシタ、次ニ帝都ノ防空
ニ關シマシテハ、都ノ範圍ニ限局シナイデ、
大震災當時ノ如ク近縣ヲ包容スル廣キ範圍
ニ於テ一元的ニ强力ナル機構ヲ確立スル
ノ必要ガアルノデハナイカ、トノ質問ニ對
シマシテ、政府ノ答辯ト致シマシテハ、防
空業務ハ行政ノ有ラユル部面ニ關係スルモ
ノデアルカラ、之ヲ總テ單一ノ機構ノ下
ニ收メルコトハ困難デアル、要ハ各關係
方面ノ緊密ナル連絡ノ下ニ防空業務ノ一元
化ヲ圖ルコトガ最モ滴當デ、現ニ之ニ努力シ
テ居ルノデアルガ尙一層注意スルトノコト
デアリマシタ、次ニ帝都ニ於ケル民防空ニ關
スル事務ハ、之ヲ都廳ニ一元化シテハドウ
デアルカト云フ質問ガアリマシタガ、之一
對シマシテハ、都制ノ實施ニ依リ防空ノ施
設、復舊、救護等、防空ニ關スル一般的
業務ハ都廳ノ所管トナルノデアルガ、防火
ニ關シテハ消防署ヲ主トシ、警察署及警
防團ノ仕事ニ屬シテ居ッテ、是等ハ敏速
且現場的實踐訓練ヲ必要トスルモノデアッ
テ、之ヲ二元的ニ指揮スルコトハ重大ナル
齟齬ヲ來ス虞ガアルガ故ニ、警視廳ノ所管
ニ存置スルコトガ必要デアル、而シテ此ノ
兩者ノ連絡ニ付キマシテハ、內務大臣ハ全
責任ヲ以テ之ニ當リ、帝都防空ノ萬全ヲ期
スルコトニ致ス考デアルト云フ答辯デアリ
マシタ、又尙帝都行政ノ一元化ヲ期スル趣
旨ヲ徹底スル上カラ致シマシテ、警視廳ノ
所管行政ハ、能フ限リ之ヲ都廳ヘ移シテハ
ドウデアルカ、トノ質問ニ對シマシテ、帝
都ノ治安ハ全國ニ關係アル重要性ニ鑑ミ、之
ニ專念スル責任ノ官廳ガ必要デアッテ、警視
廳ヲ在續セシメル必要ガアルガ、所管事務
ノ調整ニ付テハ十分考究ヲ致シ、助長行政
ニ屬スル建築、交通行政等ノ事務ニ付テハ
目下〓究中デアル、何レ官制制定ノ際ニ十
分考慮ヲ致シタイト云フコトデアリマシタ、
又帝都ノ國家的重要性ニ關スル認識ガ、政
府ノ各部內ニ於テ不十分ナルモノガアル、
將來其ノ認識ヲ政府各省ニ徹底セシメ、諸
施策ヲ之ニ卽應セシムル必要ガアルノデハ
ナイカトノ質問ニ對シマシテ、此ノ點ニ付
テハ從來トテモ生活必需物資ノ配給確保、或
ハ防空施設ノ充實等ニ付キマシテハ、各省
ガ總掛リノ姿デ何レモ努力致シテ居ル次第
デアルガ、今後一層政府部內全般ニ帝都ノ
重要性ニ付キテ認識ヲ高メルコトニ努力致
シタイト云フ答辯ガアリマシタ、第二ニハ、
都議會ニ關スル質疑デアリマス、市政ノ根
本的刷新ヲ徹底スル上ニ於テ、都議會ヲ議
決機關トセズシテ諮問機關トシテハドウデ
アルカト云フ質問ニ對シマシテ、政府ノ答
辯ハ、諮問機關トスルコトハ、都ガ自治體デ
アルコトニ鑑ミ滴當デナイ、公選主義ノ議
會ガ盛リ上ル帝都住民ノ力ヲ結集シテ、住
民ノ意嚮ヲ都ノ行政ニ反映セシムルコトガ
必要デアルト思フ、都議會モ其ノ運用ニ依
リ改善セラルヽモノト思フト云フコトデア
リマシタ、次ニ各都市ニハ各〓其ノ特殊性
ガアル、故ニ都議會ニハ帝都タルノ特殊性
ヲ發揮セシムルガ爲ニ、議員定數ノ中、其
ノ一定數ハ、選擧ニ依ラズ、帝都ノ特殊性
ヲ代表スベキ者ヲ官選トスルガ適當デハナ
イカトノ質問ガアリマシタ、之ニ對スル答
辯ハ、所謂特別議員ノ制度ハ、議員制度ノ
根本タル公選主義ニ觸ルヽ重大ナル關係ガ
アルノミナラズ、之ヲ採用シテ果シテ好キ
結果ヲ收メ得ルヤ否ヤニ付テモ十分ナル確
信ガナイノデ、之ヲ將來ノ〓究問題トシタ
次第デアルトノコトデアリマシタ、次ニ帝
都ノ國家的性格ニ卽應シ、帝都ノ建設ニハ
國家的構想ヲ要スルガ故ニ、都ト中央各省
トノ關係ヲ緊密ニシ、又他面都長官ノ地位
ノ强化ニ資スルガ爲、官制ヲ以テ帝都建設
委員會ノ如キモノヲ設置シ、之ニ各省次官
ヲ其ノ委員中ニ入ルヽガ如キ組織ヲ作ル考
ハナイカト云フ質問ニ對シマシテ、政府ハ、
今後帝都ノ建設ニハ何等カノ方法ヲ考フル
必要アリト思フ、帝都建設委員會ノ如キハ
一案ト思フ、官制制度ノ時迄ニ十分〓究シ
テ見タイトノ答辯デアリマシタ、又今秋ノ
府縣會議員選擧ニ付テハ過般東條總理大
臣ノ推薦制度ニ關スル言明ガアッタガ、都議
會議員選擧ニ付テモ同樣ノ考デアルカ聽キ
タイト云フ質問ニ對シマシテ、政府ハ、第
三者ニ依ル推薦ハ現行法ノ認ムル所デアッ
テ、適材ヲ擧ゲムガ爲推薦ノ機運ノ起ルコ
トハ期待スル所デアルガ、知事等ノ官憲ガ
中心トナッテ銓衡會ヲ作ルヤウナコトハヤラ
セヌ考デアル、又如何ナル候補者ニ對シテ
モ差別待遇ハセナイ、是ハ都議會議員ノ選
擧ニ付テモ全ク同樣ニ考ヘテ居ル次第デア
ルト云フ答辯デアリマシタ、更ニ又地方議
會議員選擧ニ、翼政會ガ直接間接ニ推薦ニ
關係スルコトハ宜クナイト思フ、又啓蒙運
動ハ選擧運動ト異ッテ居ルガ、其ノ間紙一重
デアル、翼賛會本部ニ於テハ間違ハナクト
モ、地方壯年團員ト云フヤウナ所ニナルト
區別ガ出來ヌコトガアル、啓蒙運動ガ脫線
シテ選擧運動トナッタ時ニハ、取締ルコト
ニ注意ヲセヨトノ希望ニ對シマシテ、政府
ハ地方選擧ニ翼政會ガ推薦ニ乘リ出スコ
トハ希望セザルコトデアルガ、第三者推薦ハ
法ノ認ムル所デアルカラ抑ヘルコトガ出來
ナイノデアル、併シ翼政會ハ國政ニ當ルコ
トヲ希望スルモノデアル、而シテ是ハ取締
ノ問題ヨリモ政治ノ問題デアル、又啓蒙運
動ニ付テハ、選擧運動トナラザルヤウニ注
意シ、翼贊會トテモ弊ニ陷ル時ハ知事ニ注
意ヲ致シテ、又假借スルコトナク取締ル考デ
アルトノ答辯デアリマシタ、第三ニハ、都ノ
執行機關ニ付テノ質問デアリマス、先ヅ都長
官其ノ他ノ都ノ幹部級ハ官吏トナル結果、
其ノ更迭ガ頻繁トナッテ都行政ノ成績ガ擧
ガラヌ虞ハナイカトノ趣旨ノ問辯ガアッタ
ノデアリマスルガ、之ニ對シマシテハ、都ノ官
吏ハ成ルベク長ク置ク考デアル、從來ノ例
ヲ見テモ東京市長ノ平均在職期間ハ、東京
府知事ノ平均在任期ヨリモ短イヤウナコト
デアル、適材ヲ得テ都民ノ信望アル以上、長
ク其ノ地位ニ置ク考デアル、其ノ他ノ職員
ニ關シテモ、人事ノ交流ニ付心配ノ向ガア
ルガ、出來ルダケ長ク置イテ帝都ニ馴染マ
セル考デアルト云フコトデアリマシタ、次ニ
又官吏ヲ以テ都ノ要職ヲ占ムルコトトスル
時ニハ、動モスレバ都ノ官僚化ヲ來スト共
ニ、從來ノ東京市職員中ノ練達ナル專門家
ヲ都ヨリ失フニ至ル虞ハナイカ、ト云フ質問
ニ對シマシテハ、都行政ノ所謂官僚化ノ弊ハ
極力之ヲ避クル方針デアリ、又從來ノ東京
市ノ職員ノ任用ニ付テハ、御趣旨ノアル所ヲ
十分ニ考慮シテ參ル所存デアルトノ答辯ガ
アリマシタ、又其ノ他都ノ行政機構ニ關シ
テハ、都制ニ關スル重要事項トシテ種々質
疑應答ガ行ハレ、又熱心ナル意見ノ開陳ガ
アリ、殊ニ都長官及幹部級ノ官吏ノ身分及
待遇等ニ付キマシテハ、官制ノ制定ノ際ニ
政府ニ於テ十分ナル考慮ヲ拂フベシトス
ルノガ委員多數ノ意見デアッタト存ジマス、
之ニ對シ政府ハ、之ヲ諒トシ官制制定ノ
際委員諸君ノ意ノ在ル所ハ十分考究スル考
デアルトノ答辯ガアリマシタ、第四ニハ都
ノ財政ニ關スル質問デアリマス、都ノ公共
事務中ニハ舊東京市ニ關係スル事業ガ多イ、
之ニ三多摩等ノ選出都議會議員ガ關與スル
ノハ不合理デアル、都議會ニ於テ舊東京市
關係ノ事業ガ、少數ノ三多摩地方選出ノ議員
ノ態度ニ依ッテ決セラルヽコトナキニシモ
アラズ、故ニ都ノ財政ヲ、都全體ノモノト
舊東京市關係ノモノトノ二部制トスルコト
ニ付テ〓究シタコトガアルカトノ質問ガア
リマシタ、之ニ對シマシテ、經濟ヲ區別ス
ルトスレバ結局三部制經濟デアル、是ハ理
論的理出ハアルガ、事實ハ煩雜デアッテ趣
旨達成疑ハシク、各府縣ニ於テハ近頃廢止シ
タコトデアル、故ニ今囘ハ考ヘナカッタ、又
三多摩及皇嶼ヨリ選出サレル議員ノ數ガ極
メテ少數ノ見込デアルコトニ鑑ミテ、實際
上支障ヲ生ズルガ如キコトハナイトノ趣旨
ノ答辯ガアリマシタ、次ニ從來府縣ハ法律
勅令ニ依リ府縣ニ屬スル事務ヲ處理ストアッ
ク、處ガ今囘ノ都制案ニ依ルト、都ハ法令
ニ依リ都ニ屬スル事務ヲ處理スルコトトナッ
テ、從ッテ勅令ト限ラズ、各省ノ省令ニ依リ
仕事ヲ增加スルコトトナルト思ハレルガ、
財政上ノ負擔ハ如何ニスル考デアルカト云
フ質問ニ對シマシテ、各省令ニ依ッテ國家
事務ヲ地方團體ニ委任スルコトハ、國家目
的達成ノ爲ニ、時局以來其ノ必要ガ增加ス
ルコトハ已ムヲ得ナイ、又將來ニ付テ考フ
ルモ、地方團體ニ委任スベキコトガ少クナ
イ、而シテ之ガ爲ニハ財源ヲ附與スルノ必
要ガアル、故ニ將來各省ニ於テ事務ヲ委任
セムトスル時ニハ、事前ニ各省ハ內務大臣
ニ打合セ、豫メ財源ヲ定ムルコトトシ、是
ガ第百十七條ノ第三項ノ規定ヲ設ケタ理由
デアッテ、必要ナル措置ヲ講ズベキコトト
ナシタ次第デアルト云フコトデアリマス、
次ニ近時東京市其ノ他大都市ニ於テハ、新
事業ニ對シ大都市ノ經費ガ膨脹シ財源不十
分ト思フガ、分與稅ハ大都市ニ付テハ有利
デナイ故ニ、彈力性ニ富ム所得稅ノ附加稅
ノ賦課ヲ認ムル必要ハナイカトノ質問ニ
對シマシテ、本問題ニ付テハ、分與稅制度
ガ十分ナリヤ否ヤハ實情ニ付テ〓究セネバ
ナラヌ、又分與稅制度ノ根本ニ觸レル問題
デアルカラ、大都市ノ財源等ニ付テハ、十
八年度ヨリ地方財政ニ付テ調査〓究スル目
的ヲ以テ之ニ必要ナル經費ヲ計上シテ居ル
カラ、其ノ際篤ト〓究致シタイト云フコト
デアリマシタ、第五ニハ、都ノ下部組織ニ
關スル質疑デアリマス、其ノ一ハ、三多摩ノ
地域ニ何故ニ區制ヲ布カナカッタカト云フ質
問デアリマシタガ、之ニ對シマシテハ、政府
ハ是等ノ地域ハ東京市ノ區域ト甚ダシク
實情ガ相違スルノデ、今直チニ是等ノ地
域ニ區制ヲ施行スルコトハ其ノ實情ニ卽セ
ナイ、是等ノ地域ノ住民ニ深切ナル處置
デナイト考ヘテ、當分現狀通リ市町村ヲ存
續セシメルコトトシタノデアル、但シ將來
是等ノ地域ノ實體ガ發達シテ差支ナイ狀態
トナッタナラバ、區制ヲ行フコトヲ考慮ス
ベシトノ答辯デアリマシタ、又區長ニハ
地位ノ高イ官吏ヲ置イテ之ヲ優遇シ、之ガ
異動ヲ極力避ケル必要ガアルノデハナイカ
トノ質問、又區長ガ官吏トナルコトハ舊來
ノ弊ヲ矯ムルニハ宜イガ、行政ノ第一線ニ
立ツモノデアルカラ、之ガ官僚化シ、都民
トノ親シミガナクナルヤウデハ缺陷デアル、
其ノ人選ニハ注意ヲ要スベシトノ意見ガア
リマシタガ、之ニ對シテ政府ヨリハ、區長
ニハ練達堪能ノ士ヲ擧用シ、之ガ異動ハ極
力避ケ、區民トノ親密ヲ失ハザルヤウ努メ、
御趣旨ニ副フヤウ努力スルトノ答辯ガアリ
マシタ、更ニ又區會議長ハ區長ニ於テ之ヲ
兼任スルト云フ政府ノ原案ヲ、衆議院ニ於
テ區會議長ハ區會ニ於テ議員中ヨリ選擧
スルコトニ修正シタコトニ付キマシテ、此ノ
修正ハ都制制定ノ根本趣旨ニ副ハナイモノ
ト思ハレル、仍テ是ハ政府原案ニ復スルコ
トノ方ガ宜クハナイカト云フ質問ガアッタ
ノデアリマスガ、政府トシテハ、修正ノ理
由ニ全面的ニ贊成スルモノデハナイガ、
部理由アリト思ハレル點モアル、故ニ貴族
院ニ於テモ衆議院ノ修正ニ同意セラルヽナ
ラバ、政府ハ此ノ修正ニ依ッテ實施スル所
存デアッテ、兩院通過ノ場合ノ心構ヘトシ
テハ、區長ト議長ト相協力シ、修正ノ爲ニ
惡結果ヲ來スコトナキヤウ指導ズル考デ
アルト云フ答辯デアリマシタ、次ニ町內會
ニ對シテ、政府ハ此ノ都制實施ニ付テ多大
ノ期待ヲ持ッテ居ルノデアルガ、多數ノ町
內會中ニハ往々ニシテ會計ノ紊亂、或ハ
配給ノ不公平不正其ノ他ノ弊習ガアルモノ
ガアル、又是等ノ弊風トカ或ハ事務ノ繁忙
ノ爲ニ、名望家ガ町會長タルコトヲ避ケル
傾向ガアル、故ニ町內會ノ健全ナル發達ヲ
圖ル爲ニハ、會計ノ監督等ニ付刷新ヲ國ル
ト共ニ、町會長ノ選擧方法ニ付テ指導スル
ノ必要アリト思フガドウカ、トノ質問ニ對
シマシテ、政府ヨリハ、町內會ノ會計等ノ
監督ニ付キマシテハ、都制案中ニ必要ナル
規定ヲ設ケテ居リ、之ガ活用ヲ圖ルト共
ニ、又事務ノ整備ノ爲ニハ、昨年ヨリ國庫
ヨリ補助金ヲ支出シテ職員ヲ置カセルコト
ニシテ居ルガ、尙指導監督ニ意ヲ注イデ、
町內會ノ健全ナル發達ヲ圖ルコトニ萬遺漏
ナキヲ期スルコトニ致シタイト云フ答辯デ
アリマシタ、第六ニハ、都制ノ實施ニ關聯
スル質疑デアリマス、先ヅ都ノ幹部級タル
官吏ノ數ハ、昭和十八年度豫算ニ計上セラ
レタル數デアルトスレバ、現在ノ東京市ノ
局、部課ノ數ヨリ考ヘテ過少ナリト思ハ
ート、增員ノ必要ハナイカ、之ガ爲ノ經費
ノ增加ハ、地方費支辨又ハ國庫豫備金ノ支
出ノ方法モアルデアラウト云フ質問ニ對シ
マシテ、今囘豫算ニ計上セラレタル人員ヲ
以テシテ施行ニ困難ヲ生ズル場合ニハ、地
方費支辨ノ方法モアルコトデアルカラ、施
行迄ニハ十分〓究ヲ致スト云フ答辯デアリ
マシタ、次ニ施行ニ付テハ施行準備委員會
ガ設置セラレ、內務省、東京府、市ノ人ヲ
以テ委員トスルコトト思ハレルガ、其ノ委
員中ニ都ノ次長局長級トナルベキ人ヲ入レ
テ置クコトハ施行ヲ圓滑ニスルニ便デハナ
イカト云フ質問ガアリマシタ、此ノ點ニ付テ
ハ、政府ハ誠ニ御尤モト思フ、成ルベク實
施ヲ圓滑ナラシムル爲ニ〓究ヲ致サウト云フ
コトデアリマシタ、尙此ノ準備委員會ニハ、
一委員ヨリ、其ノ圓滿ナル運行ヲ期スル爲
ニハ府會、市會ノ代表者ヲモ入レテ置クコ
トガ宜カラウト云フ希望ガアリマシタ、次
ニ都制ノ施行ニ際シテ東京府及東京市ノ吏
員ニ動搖不安ヲ與ヘザルヤウセネバナラ
又、又警視廳權限ノ一部ヲ都廳ニ移管スル
コトトナレバ、其ノ過渡期ニ於テ關係警察
官ニ熱意ヲ缺ク虞ガアル、弛緩ヲ來サザル
ヤウ注意ヲセネバナラヌ、又市吏員中ノ退
職者ニ不滿ヲ與ヘザルヤウニ適當ナル考慮
ヲ拂ハネバナラヌ、或ハ又東京市吏員ノ待
遇、特ニ恩給ニ付テ旣得ノ地位ヲ尊重スル
ノ必要ガアルノデハナイカ、ト云フガ如キ
趣旨ノ質問ニ對シマシテ、政府ハ、是等ノ
點ニ付キマシテハ何レモ能フ限リ御趣旨ニ
副フヤウ努力致シタイ考デアルト云フ趣旨
ノ答辯ガアッタノデアリマス、最後ニ東京都
制實施ニ關聯致シマシテ、從來東京市ト共
ニ特別市制ヲ要望致シマシタ所ノ東京以外
ノ五大都市ニ付テモ、特別市制ヲ布ク考ガ
アルカトノ質問ニ對シマシテ、之ニ對スル
政府ノ答辯ハ特別市制ハ多年ノ要望デア
ル、政府トシテモ重要ト考へタガ未ダ成案
ヲ得ルニ至ラナイ、併シ五大都市ニ對シ今
囘ノ東京都制ノ如キ特別市制ヲ布ク考ハナ
イ、此ノ問題ハ廣地域行政區劃ノ問題、卽
チ道州制ノ問題ト關聯シテ、今後建設的ノ
意味ニテ十分ニ〓究ヲ進メタイト考ヘテ居
ル、ト云フ趣旨ノ答辯ガゴザイマシタ、以
上大體質問ヲ御紹介致シタノデアリマスガ、
質問ヲ終了シ、直チニ討論ニ入リマシタル
處三委員ヨリ原案贊成ノ意見ヲ述ベラレ
マシタ、一委員ハ、原案ニ對シ贊成ノ意ヲ
表セラルヽト共ニ、本案ノ內容、又地方制
度一般ニ付テハ尙檢討スベキコトガアル
併シナガラ今日ハ時局重大ノ秋デアルガ故
ニ、成ルベク速カニ帝都ノ機構ヲ整ヘ對處
スルノ必要ガアル、故ニ其ノ再檢討ハ他日
ニ讓ルヲ適當ト思フ、但シ委員會ニ於ケル
委員諸君ノ意見ハ誠ニ眞劍ナルモノデアル、
是ハ全ク本案ノ圓滿ナル實施ヲ望ムガ爲デ
アル、政府ニ於テモ十分委員會ニ於ケル各意
見ヲ尊重シ、官制及施行令ノ制定ハ勿論、運
用ニ當ッテモ委員ノ章見ヲ參考シ、其ノ採用セ
ラルベキモノハ採用シ、本案ノ圓滿ナル運
用ヲ希望スル者デアル、尙本案ノ通過ノ上
ハ、政府當局ニ於テ奮勵努力シテ成ルベク
速カニ施行セラレタイトノ希望ヲ述ベラレ
マシタ、又一委員ハ、自分モ本案ニ贊成ス、
本案ハ衆議院ニ於テ長時日ニ亙リ熱心ニ論
議セラレ、愼重ニ審議ヲ盡サレタルモノデ
アル、又二重行政ノ弊ヲ除クコトハ本案ニ
依リ實行セラレ、多年ノ懸案ノ解決ヲ見ル
ノデアル、尙從來東京市政ノ弊害ハ事實デ
アル、而シテ本案ノ施行ニ依ッテ是正セラル
ルノデアル、以上ハ本案ニ贊成スル所以デ
アル、併シ本案ノ內容ヲ通ジテ、必ズシモ非
常ニ良キ案トシテ贊成スル者デハナイ、本
案內容ニ付テハ更ニ檢討スベキモノアリト
思ハレル、自分ノ考究ノ必要アリト思フノ
ハ執行機關ニ於テ官治ノ色彩ガ濃厚ナル
コト、又議決機關ノ構成ノ點ニ於テ、從來
ノ市ヨリ見レバ自治ヲ取上ゲラレタルト同
ジ結果デアル、觀察ノ仕樣ニ依ッテハ、市制
百六十四條ニ依ル大々的職務管掌トモ見ラ
レルノデアル、從ッテ自分ハ、大所高所ヨリ、
市民ハ市政ノ弊習ヲ痛感シ、市政ガ立派
ニ行ハルヽヤウ反省シ努力スベキデアルト
思フ、同時ニ內務當局ニ於テモ、都制施行
ノ結果ヲ反省考究シ、缺點ガアッタナラバ
勇敢ニ訂正スベキデアル、以上ノ理由ヲ以
テ贊成スルト述べラレテ居ル、又他ノ一委
員ハ贊成ノ意見ヲ述べラレ、都制實施ノ曉
ハ帝都ノ責任ハ極メテ重大デアル、此ノ
責務ヲ盡サムガ爲ニハ、都民の負擔ヲ惜シ
マズ、大東亞建設ノ本據トシテ是迄爲スベ
クシテ爲サヾリシ事モアル、又今後急速ニ
實行スベキ事モアル、是ハ帝都ノ責任デアッ
テ、國家ノ責任デハナイ、帝都直接實行ス
ルモ可ナリ、又補助ヲ爲シテ他ニ行ハシム
ルモ可ナリ、何レニシテモ其ノ實ヲ擧グル
コトニ努力セムコトヲ希望スルト述ベラレ
マシタ、以上ヲ以テ討論ヲ終リ、採決ニ入
リマシタル虎、滿場異議ナク全會一致ヲ以
テ原案ヲ可決スベキモノト議決シタノデア
リマス、以上ヲ以テ東京都制案特別委員會
ノ御報告ヲ終リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=22
-
023・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 討論ノ通〓ガゴ
ザイマス、松井茂君
〔松井茂君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=23
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024・松井茂
○松井茂君 去ル一日ニ都制法案ノ提出ノ
際ニ、本議場ニ於キマシテ、自治行政竝ニ
警察行政ニ造詣ノ深イ所ノ水野博士ヨリ、
本案提出ノ理由ニ付キマシテ種々內務大臣
ニ御質問ガゴザイマシタ、其ノ中デ、殊
或程度ノ警察權、卽チ助長警察ノ如キモノ
ハ之ヲ都長官ノ權限ニ委シテハドウデア
ラウカト、左モナケレバ、折角都長官ヲ置。
イテモ、警察ノ權力ヲ持タネバ非常ニ薄弱
ナモノデアル、之ニ對シ內務大臣ノ御答ハ、
帝都ノ治安ノ重大性ハ、全國ノ治安問題ニ
非常ナル影響ガアルカラ、警視總監ハ別ニ
其ノ儘存置シテ置ク積リデアル、都長官ニ
對スル、助長行政ニ關スル警察權ノコトハ、
何レ官制ヲ發布スル筈ニナッテ居ルカラ、其
ノ節ニ篤ト考慮スル、斯ウ云フ御答ガアッタ
ノデアリマス、又只今都制法案ノ委員長ノ
御報告ニ依リマスルト、委員會ニ於キマシ
テモ大分之ニ付テハ御意見ノ發表モアッタ
ト承リマシタ、而シテ此ノ問題ハ广治體ニ
警察權ヲ付與スル所ノ、白治制發布以來五
十餘年來ノ初メテノ企テデアリマス、而シ
テ此ノコトハ政府ノ權限ニ屬スル官制ノ問
題デアリマスルガ、事ハ苟モ我ガ國ノ警察
權ノ消長ニ關スル所ノ重大ナル根本問題デ
アリマス、是ト同時ニ警察權ノ消長ノ如何
ハ全國民生活ニ非常ナル關係ヲ有スルモノ
デゴザイマシテ、此ノ重大ナ問題ハ斷ジテ
輕率ニ決定スベキ限リデナイト信ジマス、
實ハ私ハ、市制委員會ニ於キマシテ一應之
ニ對スル意見モ申述ベタノデアリマス、併
シナガラ事ガ苟モ本會ニ於テ論議セラレタ
以上、玆ニ一言致シマスルコトハ當然ト存
ジマシテ、敢テ勇ヲ鼓シテ此處ニ登壇ヲ致
シタ次第デアリマス、御承知ノ如クニ、我
ガ國ノ市町村制ガ初メテ制定セラレマシタ
時ニ、段々之ニ付テハ議論ガアッタノデア
リマス、殊ニ歐米ノ例ニ傚ヒマシテ、矢張
リ自治體ニ警察權ヲ與ヘタ方ガ非常ニ滴當
デアラウト云フ說モ出タノデアリマス、併
シナガラ當時ノ先輩ハ當時ノ立法者ハ、
我ガ圖情ニ鑑ミテ、自治體ニ警察權ヲ與ヘ
ルト云フ事柄ハ滴當デナイト云フ結論ニ達
シタノデアリマスル、今日迄五十年ノ星霜
ヲ經テ居リマシテ、社會ノ事情ハ非常ニ趣
ヲ異ニシ來ッテ居リマシテ、歐米各國共自
治體ニハ夙ニ警察權ヲ與ヘテ居リマス、「ド
イツ」ノヤウナ官僚國デスラモ此ノ自治體ニ
警察權ヲ與ヘタノデアリマスガ、併シ之ニハ
御承知ノ通リニ非常ニ沿革ガアル、又此ノ
自治體ニ警察權ヲ與ヘタ爲ニ非常ニ困ッタ
例ガ著々トアルノデアリマス、自治體ガ惡イ
カラト云フノヂヤアリマセヌ、ソコガ餘程
考慮シナケレバナラヌ重大問題ナンデアリ
マス、殊ニ最近ニ於キマシテ、非常ニ自治ト
云フ觀念ガ變ッテ參リマシタ、又警察ト云フ
觀念モ餘程變ッテ參リマシタ、殊ニ國家的
精神ト云フコトガ非常ニ强調サレマシテ、
無論自治體モ國家的ニ相違アリマセヌ、唯
權力ノ分配ノ問題デアリマス、斯ク云フ時
代ニ於テ、白治體ニ國家ノ警察權ヲ委任シ
テ浦當デアルヤ否ヤト云フコトハ餘程檢討
シナケレバナリマセヌ、又警察權ト云フモ
ノガドンナモノダト云フコトガ大變變ッテ
參ッタノデアリマス、是モ餘程檢討シナケレ
バナラヌノデ、此處ニ、我ガ國從來ノ儘ニ自
治體ニ警察權ヲ與ヘナイデ、サウシテ從來
トモ警察ノ統一ガウマク行ッテ居ルノデア
リマスルカラ、此ノ儘ニ致シテ置クコトガ、
今日ノ時代トシテハ最モ滴當デハナイカト
存ズルノデアリマスゝ殊ニ此ノ決戰下ノ今
日ニ於テハ尙更ノコトデアリマス、玆ニ帝
都ニ有力ナル都長官ヲ置イテ之ニ警察權ヲ
與ヘルト云フ說ハ、國家ノ警察權ヲ自治體
ニ移讓スルヤ否ヤノ根本問題ニモ觸レルノ
デゴザイマシテ、非常ニ見方ニ依レバ重大
ナンデアリマス、私ハ此ノ問題ハ切離シテ、
速カニ都長官ニ對スル所ノ官制ヲ御發布ニ
ナラムコトヲ希望スルモノデゴザイマス、自
治體ト警察權トノ問題ノ如キハ、立法工作
トシテハ餘程考ヘナケレバナリマセヌ、成
ル程官制デ以テ之ヲ御發布ニナルト云フコ
トハ、法律上差支ナイトハ存ジマスルガ、
丁度官制ヲ御發布ニナルノデアッテモ、恰モ
戰時行政特例法案ト云フモノガ非常ニ重大
ナル案デアリマス、是ト同ジヤウニ、此ノ
都制法案ハ非常ニ重大ナル法案デアリマス、
併シ之ヲ旅行スル所ノ官制ガ又大變大事ナ
ンデアリマス、ソコデ曩ニ戰時行政特例法
案ノ場合ニハ、勅令案ヲ先ヅ以テ御決定ニ
ナッタ、今囘ハ是カラ一ツ勅令ヲ出サウト云
フ御順序ノヤウニ思ハレルノデアリマス、
職權問題ニ於テ內容ガ非常ニ關聯シテ居ル
ノデアリマス、ソコデ今大變急イデ居ル睦
デアリマシテ、一方ニハ都制案ノ實行ヲ早
ク急ガナケレバナラヌ、一方ニハ只今言フ
ヤウナ大變大キナ問題ヲ含ンデ居ル、玆ガ
非常ナルムツカシイ所ノ問題ナノデアリマ
ス、餘リ急ギ過ギマスルト非常ニ後悔セニ
ヤナラヌコトガ度々アルノデアリマス、郡
制廢止ノ問題ノ如キ、防空法ノ問題ノ如キ、
忌憚ナク言ヘバ、矢張リ〓究セズ餘リ急イ
ダノデアリマス、ソシテ悔ヲ貽スト云フコ
トハ國家ノ爲ニ實ニ遺憾千萬ニ思フノデア
リマス、ソコデ都長官ト警察トノ間ニ二元
的ノ警察權ニナリマスカラ、其ノ結果··
警視總監ヲ廢止スル是ハ一ツノ議論デアリ
マス、サウスルト兎ニ角或程度ノ警察權ヲ
都長官ニ與ヘレバ、警視總監ガ警察權ヲ持ッ
テ居リマスカラ二元的ニナリマス、ソレハ
分配ヲ宜クシタラ宜カラウト、サウ簡單ニ
參リマセヌ、實際問題トシテサウナッテ參リ
マスルト非常ニ混亂ヲ來シマス、又從來存
在シテ居ル警察官ノ心理作用ニモ影響シナ
イトハ中サレマセヌ、延イテハ國民思想ノ
上ニモ影響ヲ及スノハ言フ迄モアリマセヌ、
故ニ餘程是ハ愼重ヲ要セナケレバナラヌ間
題デアリマスル、ソコデ私ハ、此ノ帝都ノ
警察權ハ重大デアリマスルガ、又日本帝國
全體ノ警察ト云フモノモ、今餘程時代ガ變ッ
テ參リマシタカラ、中央ノ此ノ警察ノ機關
ヲ强化シナケレバナラヌト云フ時代ニ遭遇
シテ居ルノデアリマス、茲ニ又澤山色々ノ問
題ヲ含ンデ居ルノデアリマス、サウ云フモノ
ト帝都ノ警察ハ關聯スルノデアリマス、幸
ニ我ガ國ノ警察ノ組織ハ世界ニ卓越致シテ
居リマス、夙ニ世界人モ敬服致シテ居ルノ
デアリマス、今日ノ時局デモ何ノ不安心ナ
コトハナイト固ク信ジマス、併シナガラ私
ハ此ノ時節柄ニ、モット〓〓之ヲ强化シタ
イト云フ希望ヲ持ッテ居ルノデアリマス、私
ハ獨立セル治安省ナドト云フモノヲ作ルコ
トハ反對デアリマス、唯內務省ノ組織ヲモッ
トモット强化シマシテ、一層軍部ヤ司法ト關
係連絡ヲ密接ニ致シマシテ、大イニ此ノ上
ナキ效果ヲ擧ゲルコトガ必要ト存ジマス、
今囘ノ都制法案ト云フモノモ、市町村制法
案モ、何レモ此ノ發布ノ理由ハ、此ノ時局
ニ勝チ拔ク爲ニ必要ダ、是ガ當局者ノ御說
明デアリマス以上ハ、此ノ場合ニ警察ノ機
構問題ニ手ヲ觸ルヽコトガ果シテ適當デア
リマセウカト云フコトヲ憂慮スルノデアリ
マス、何時敵ノ空襲ガアルカモ測リ難イ此
ノ時、何ヲ苦シンデ此ノ際急ニ官制上都長
官ニ警察權ヲ與ヘルノ必要ガアリマセウカ、
今更申上ゲル迄モナク、今囘特ニ都長官ヲ置
カレマスル理由ハ、畢竟帝都ハ他ノ都市ト
異ルト云フカラデアリマス、其ノ理由ハ其
ノ儘、昔警視廳ヲ置キマシタ理由ガ全クソ
レナンデアリマス、此ノ點カラ申サウナラ
バ、都長官ト警視總監ト云フモノハ、權限
コソ違ヘ、一方ハ保育行政、一方ハ警察行
政兩々相俟ツモノデ、此ノ間ニ上下ハナ
イモノデアルノハ分リ切ッタコトデアル、
都長官ノ地位ヲ高メレバ、警視總監ノ地位
ヲ高メルト云フコトハ當然デアリマス、唯
私ハ論理的デ言フノヂヤアリマセヌ、サモ
ナケレバ此ノ帝都ニ兩長官ガ居ッテ、一部
ガ低イト云フコトガアッタナラバ、何ヲ以
テ統轄ガ出來マセウ、是ハ分リ切ッタ問題
デアラウト存ジマス、今試ミニ警視廳ノ創
立當時ノコトヲ考ヘテ見マスルト、兩西〓、
大久保、川路等ノ諸先輩ガ、深ク當時ノ時局
ニ鑑ミマシテ、明治七年ノ一月ニ「パリー」ノ
例ニ做ヒマシテ初メテ警視廳ヲ置クコトニ
ナッタコトハ御承知ノ通リデアリマス、今
日ノ時代ハ、只今申上ゲル通リニ我ガ國ハ
勿論、世界的ニ警察權ヲ愈、、强化セネバナラと
ヌト云フ時代ニ遭遇シテ居ルノデアリマス、
ソコデ茲ニ都廳ヘ警察權ヲ付與スルカ否カ
ノ問題ハ、獨リ將來五大都市ニ關係アルノ
ミナラズ、朝鮮、臺灣ハ勿論、將來ノ大東亞
警察ノ機構ノ問題ニ迄モ影響ヲ及スモノト、
今カラ覺悟シテ居ラナケレバナリマセヌ、
私ハ玆ニ率直ニ申上ゲマス、私モ嘗テハ或
時代、ドウモ時代ト共ニ六大都市ト云フモ
ノハ餘程模樣ガ違フカラ、或程度ノ警察權
ヲ之ニ付與スルコトハ當然デアル、斯ウ考
ヘタ者ノ一人デアリマス、併シ將來ハイザ
知ラズ、目下ニ於キマシテ、殊ニ此ノ態勢
ニ鑑ミマシテ、帝都ノ如キハ殊ニ現狀維持
ト致シテ置クコトガ最モ適當ト信ズルノデ
アリマス、要スルニ私ノ憂慮スル所ノ眼目
ハ、從來ノ我ガ國內ヲ通ジテ一貫シテ居ル
所ノ此ノ警察行政ヲ、一朝ニシテ之ヲ破ル
ト云フコトハ如何デアリマセウカ、畢竟斯
クテハ行政ノ紊亂ヲ來ス虞ガアリマス、其
ノ結果都廳ト警視廳トノ間ニ分立ノ弊害ヲ
來シ、又一般市民ニ對シテモ迷惑ヲ掛ケル
ト云フヤウナコトガアッタナラバ大變ナ騷
ギデアリマス、先年司法省ハ司法警察ニ付
テ、ドウシテモ是ハ司法省直屬ノ司法警察
官ヲ置カネバナラナイト云フノデ、勅令迄
發布サレテ將ニ實行サレムトシタノデアリ
マスガ、御當局モ一般警察トノ關係ヲ深ク
御憂慮ニナッタト見エマシテ、只今其ノ儘
ニナッテ居リマス、斯クノ如キ例ハ各國共枚
擧ニ遑ガナイノデアリマス、餘程愼重ノ態
度ヲ御執リニナラムコトヲ希望スルノデア
リマス、今日ノ時代ハ何レノ問題モ統一ト
云フコトガ必要デアルコトハ今更申上ゲル迄
モゴザイマセマヌ、故ニ各府縣ノ如クニ、
都長官ニ警察權ヲ委スト云フコトニナレバ
統一モ取レマセウ、ソレハ一ツノ議論デア
リマス、併シソレハ今日ニ於テ出來ナイ、
警視總監ヲ廢止シナイト云フコトヲ內務大臣
ハ仰シヤルノダカラ、サウナッテ來ルト一元
的デナイト云フコトニナル、只今盛ニ行政
ノ簡易化ト云フコトヲ叫バレル此ノ時代ニ
於テ、却テ混亂ヲ來シハ致シマスマイカ、
警察行政ノ複雜ヲ來シハ致シマスマイカ、
ソコデ公明ニ考ヘマシテ、此ノ警視廳ト云フ
モノヲ廢止シナケレバナラヌト云フ議論ガ是
迄度々出テ居ルノデアリマス、御承知ノ如
クニ、私ノ記憶スル限リデモ明治三十一年
ノ六月ニ大隈、板垣聯立內閣ノ成立致シマ
シタ時ニ、當時私ハ內務省ニ居リマシタガ、
能ク其ノ車情ヲ存ジ上ゲテ居リマスガ、
進步黨ノ方面カラ盛ニ警視廳廢止論ガ出マ
シテ、帝都ノ各新聞紙モ盛ニ之ニ共鳴シタ
ノデアリマス、處ガ流石ニ板垣伯ハ熱心ニ、
是ハ國家ノ爲ニソンナコトヲスベキモノデ
ナイト云フ强イ決心ヲ以テ、斷トシテ動カ
ナカッタノデアリマス、ノミナラズ板垣内務
大臣ハ、當時大阪ニモ警視廳ヲ置カナケレ
バナラナイト云フ說サヘ、自由ヲ主張スル
板垣伯ハ主張サレタノデアリマス、次ニハ
明治三十八年九月ノ有名ナル日露戰爭ノ結
果ノ日比谷ノ騷擾事件デアリマス、玆ニ於
テ警察ガ橫暴ヲシタト云フノデ、實ニ天下
騷然トナリマシテ、殊ニ帝都ニ於テハ盛ニ
警視廳廢止ノ論ガ行ハレタコトハ公知ノ事
實デアリマス、ソレカラ警視廳廢止デハゴザ
イマセヌガ、次ニ起ッタ事態ハ六大都市ニ特
別市制ヲ布イテ、府縣廳及內務省カラ受クル
所ノ二重監督ノ撤廢間題ガ盛ニ起ッタノデア
リマス、當時知專公選ノ說ナドノ起ッタノモ御
承知ノ通デアリマス、ドウシテモ是ハ或種ノ警
察權ヲ六大都市ノ市長ニ與ヘナケレバナラ
ヌト云フコトガ殆ド一種ノ輿論ニナリマシテ、
地方長官ノ中ニモ、今日稱スル所謂助長警察
ノ如キモノ、例ヘバ建築警察、衞生警察、
交通警察ト云ッタヤウナ類ヲ、或程度迄市長
ニ委任スルノガ適當デアルト云フ說ガ起ッタ
ノデアリマス、私モ其ノ時ニ稍〓共鳴者ノ一
人デ、建築警察ト衞生行政ハ與ヘテモ宜カ
ラウト、斯ウ云フ說ヲ唱ヘタ男デアリマス、
其ノ後社會ノ變遷ト、警察ノ形勢モ段々變ッ
テ來マシテ、又世界ノ態勢ニ照ラシテ見マ
シテモ、私共ノ或ハ警視廳、或ハ內務省、
或ハ地方長官ヲ致シマシタ經驗ト結ビ付ケ
テ、公平ニ將來ノ警察ハドウナルモノダラ
ウカト云フコトヲ、私ノ詰ラナイ頭デ考へ
マシタ結果ハ、ドウモ是ハ餘程考ヘナケレ
バナラヌゾト云フ結論ニ達シタノデアリマ
ス、サウシテ居ル時ニ、今囘偶時時ノ要求
ト致シマシテ、都制法案ノ發布ノ時機ニ遭
遭シタノデアリマス、玆ニ本議會ニ於ケル
水野博士ノ質問ニ對スル、內務大臣ノ御答
辯トナッタノデアリマス、ソコデ私ハ憂慮ノ
餘リニ、市制案ノ委員ノ一人ト致シマシテ、
其ノ席上デ所謂助長警察ノ內容ニ付キマシ
テ、稍〓具體的ノ質問ヲ試ミマシテ、内務大臣
ヨリ御答ヲ戴イタノデアリマス、其ノ後又
段々考ヘマシタ、斯ウ云フ時局デコンナ事
情ナンゾモ出テ、モウ宜カラウト云フ感ジ
モ一應致シテ居ッタノデアリマス、考ヘレバ
考ヘルダケ私ハ非常ニ煩悶致シマシタ、實
ハ是ハドウモ抛ッテ置イテハイカナイゾ、自
分ノ氣付イタコトヲ言ハザルハ不忠ダ、
應ノ意見ダケハ十分ニ述ベナケレバイカヌ
ゾト云フ責任觀念ニ打タレテ、御迷惑ナガ
ラ此ノ壇上ヲ汚シテ居ル次第デアリマス、
ドウシテモ此ノ問題ハ姑息デハイケマセヌ、
モット根本的ノ解決ヲ致サナケレバナリマセ
又、警視總監ノ權限ヲ、一部門デ之ヲ分與
スルト云フヤウナコトハ、餘程姑息デアッ
テ、混亂ヲ來シマスト云フ結論ニ私ハ達シ
タノデアリマス、ソレデ本議會ニハ、多
數警視總監ノ體驗者モアラセラレマスカラ
シテ、何卒國家ノ爲、此ノ上ナガラ重要ナ
ル問題ヲ仔細ニ御檢討ヲ願ヒタイト思フノ
デアリマス、我ガ國ノ今日ノ警察界ノ實情
ハ今更申上ゲル迄モゴザイマセヌ、經濟
警察等ト云フモノガ新タニ入リ込ミマスシ、
演劇、映畫等モ從來トハ機構ヲ異ニシ來リ
マシタ、殊ニ厚生省ノ系統ノ戰時ニ卽シテ
ノ種々ノ警察方面モ澤山ゴザイマスシ、非
常ニ混亂狀態デアリマス、ト云フ實情ニ居
ルノデアリマス、ソコデ此ノ間市制法案ヲ
議シマス時ニ、建築警察位ハト云フコトヲ
申上ゲマシタガ、位ハト言ッテモ前トハ頭ガ
違フノデアリマス、餘程御考慮ヲ願ヒタイ、
私モ最近ノ細カイコトハ存ジマセヌガ、防
空建築ト云フコトハ、今防空法デ大變大事
ナコトデス、デアリマスカラ建築ノ問題
デモ惜シムノデモ何デモアリマセヌ、是ハ
ドウデアラウカ、衞生ヲ此ノ間話シマシタ
ガ、是ガ宜カッタカドウカ、是モ恐ラク此
ノ事情ヲ〓究シナイデ、傳染病ハドウシテ
モ警察デヤラナケレバナラヌ、アレハド
ノ位深ク御〓究ニナッテアヽ云フコトヲ爲
サッタノカ、〓究ヲシテ、出來得ルダケノ
コトヲ、最善ノ努力ヲシテ移管サレルノハ
少シモ差支ナイ、〓究不足デアッテ妙ナコ
トヲスルトトンデモナイコトヲ起ス、ト
云フコトヲ餘程心配スルノデアリマス、
サウスルト實際問題トシテドウナルカ、假ニ
ソレヲ助長警察ト言ヘバ、自分ノコトヲ申
上ゲテ大變恐縮デスガ、昔私ハ大變長イ間
警視廳ノ保安部長ヲ致シテ居リマシタ、處
ガ其ノ保安部ノ中ニ、所謂助長警察ト云フ
ヤツハ大抵アルノデス、建築警察ノ如キ、
交通警察ノ如キ、今問題ニナッテ居ル所謂
保安部ノ方デアリマス、ソコデ斯ウ云フ細
カイ問題ニナリマスルト、一々ナカ〓〓容
易デハゴザイマセヌカラ、ソンナコトハ申
上ゲルノデハアリマセヌガ、唯一口助長警
察ト言ッテモ、分ッタヤウナ言葉デ、分ラヌ
言葉ナンデス、ソレデハ之ヲ列擧的ニハッ
キリト、官制ノ上デ書クカト云フト、存外
餘リナイノデス、今此ノ場合ニタッタ一ツ
ヤ二ツ入レルト云フコトハドウカト思フ、
サウ云フチョコ〓〓シタ事ヲスルノハ却テ
適切デナイノデハナイカト云フヤウナ考モ
致シマス、假ニ一步ヲ讓ツテ、助長警察ト
云フモノヲ都長官ニ與ヘルトシテモ、サウ
云フコトニ相成ッテ來ハスマイカ、ソコデ
此ノ際ハドウシテモ、官制ノ中ニ此ノ問題ニ
ハ御觸レニナラナイト云フコトガ得策デア
ラウト云フコトヲ、玆ニ私ハ至誠ヲ吐露シ
テ申上ゲルノデアリマス、折角平素我々ノ敬
意ヲ表シテ居リマス所ノ水野博士ガ熱心ニ
此ノ席上デ御批評ニナリ、又內務大臣モ懇篤
ニ之ニ御答ニナッタ、サウ云フ時ニ當ッテ、
玆ニ反對ノ一種ノ說ヲ申上ゲルノハ私トシ
テハ非常ニ心苦シイ、心苦シイケレドモガ、
ドウモ默ッテ居ル譯ニ行カナイ、ト云フ譯デ
玆ニ申上ゲル所ノ微衷ノ程ハ宜シク御諒察ヲ
願ヒタイ、之ヲ要スルニ、都長官ニ警察權ヲ付
與スル所ノ官制ノ發布ハ、此ノ際之ヲ行フコ
トヲ御見合セニナッテ、其ノ點ダケハ除外シ
テ、一日モ速カニ都制法案ノ發布ヲ希望ス
ルト同時ニ、警察權ノ問題ヲ、モット廣イ範
圍內ニ於テ中央組織ノ警察ノ强化、大東亞
ノ警察ノ將來、警察官ノ待遇、〓育等、重
要ナル所ノ問題ガ澤山ゴザイマス、豫テ有
力ナル兒玉內務大臣ノ時代ニモ、本會ニ於
テ希望ヲ申上ゲマシタガ、警察ノ調査會ヲ
御設ケニナラナケレバイカヌ、自治制ニ付
テハ調査會モアリマシタ、矢張リ警察モ過
去ニ例ノアルコトデ、民ノ聲ヲ聽イテ、サ
ウシテ一方ニ於テ餘程愼重ナ態度ヲ御執リ
ニナッテ、警察權ノ問題ハ、問題トシテ十分
ニ御〓究ニナルコトノ希望ヲ申述べマシテ、
茲ニ都制法案ノ成立ニ對シテ贊成ノ意ヲ表
スル次第デアリマス
〔水野鍊太郞君演壇ニ登ル〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=24
-
025・水野錬太郎
○水野鍊太郞君 私ハ本案ニ贊成スル者デ
アリマス、ソレニ付キマシテ、只今松井君カラ
警察ノコトニ付テ御述ニナリマシタ、松井君
ハ警察ノコトニハ非常ニ御堪能デアリ、終始
一貫シテ警察ノコトヲ〓究サレテ居ルノデ
アリマスカラ、松井君ノ意見ニ對シテハ私ハ敬
意ヲ表スルモノデアリマス、併シ松井君ハ、
或ハ誤解サレテ居ルノデハナイカト思フ節
ガアッタノデアリマス、ソレハ都制法案ニ付
キマシテ、都ト云フヤウナ自治權ニ警察權
ヲ與ヘルノデアルト云フヤウナ御考ガアッタ
ヤウデアリマス、私ハ未ダ曾テ自治體ニ警
察權ヲ與ヘヨト言ッタコトハアリマセヌ、
過日ノ此ノ席ニ於テモ、自治體ニ警察權ヲ
與ヘタガ宜イト云フコトヲ申シタノデハア
リマセヌ、警察ハ國ノ行政デアリマス、ソ
レデアリマスカラ、ソレヲ自治體ニ與ヘル
コトガ適當デアルヤ否ヤト云フコトニ付テ
ハ、私ハ適當デナイト云フ考ヲ持ッテ居ル
ノデアリマス、但シ此ノ度ハ都長官ガ官
吏トナッタ、然ラバ其ノ都長官ニハ或程度
ノ警察權ヲ與ヘルコトガ、都ノ行政ヲ執行
スル上ニ於テモ、又帝都ノ行政ノ上カラ言
ウテモソレガ適當デハナイカト云フコトヲ
質問シタノデアリマス、松井君ハ、知事モ
シテ居ッタ、警視廳ニモ居ラレタカラ能ク御
承知デアリマセウ、府縣知事ハ警察權ヲ持ッ
テ居リマス、併シ府縣ニ警察權ヲ與ヘタ
ノデハナイノデス、國ノ官吏タル府縣知事
ニ警察權ヲ與ヘタノデアリマス、ソレガ現
時ノ狀態、又府縣制發布以來サウ云フ風
ニナッテ居ルノデアリマス、ソレ故ニ府縣
制トカ都制トカ北海道會法トカ、サウ云
フモノニハ警察權ノコトハ言ウテナイノ
デス、卽チ自治體ニ警察權ヲ與ヘタコト
ハ未ダナイノデアリマス、處ガ先程自治
體ニ警察權ヲ與ヘヨト云フヤウナ私ノ說
デアルカノ如ク言ハレマシタガ、ソレハ
誤解デアリマス、今ノ府縣デ見テモ分リマ
ス、府縣知事ハ警察權ヲ持ッテ居リマス、併
シソレハ國ノ官吏トシテ警察權ヲ持ッテ居
간府縣ト云フ自治體ニ警察權ヲ與ヘテ居
ルノデハアリマセヌ、其ノ點ハ明カニ區別
セラレタラ宜カラウト思ヒマス、其ノ趣旨
ニ於テ、府縣知事、北海道長官ニモ警察權
ヲ與ヘテ居ルノデアルカラ、都長官ニモ或程
度ノ警察權ヲ與ヘルコトガ、都行政ヲ執行
スル上ニ於テモ適當デハナイカト云フコト
ニ付テ質問致シタノデアリマス、今現ニ衞
生行政ニ付テハ東京府知事ガ或程度ノ警
察權ヲ持ッテ居ルノデス、アレハ昨年デシ
タカ一昨年デシタカノ勅令ニ依ッテ、衞生
行政ニ付テハ東京府知事ハ警察署長ヲ指揮
スル權能ヲ持ッテ居ルノデアリマス、ソレ
ガ近時ノ立法ニ於テソレガサウ云フ風ニ
ナッタノデアルカラ、ソレト同ジヤウニ、或種
類ノ警察權ヲ都長官ニ與ヘタラ適當デハナ
イカト云フコトヲ質問シタノデアリマス、
ソレデ治安警察、是ハ私、警視廳ト云フ特別
ノ官衙ガアル以上、ソレハ警視廳ノ權內ニ、
警視總監ノ權內ニ置クコトガ宜イト思ッテ
居ル、サウシテ此ノ帝都ノ治安ニ對シテ
ハ警視總監ガ專念シテ其ノ方ニ當ル方ガ
宜イト云フ風ニ考ヘテ居リマス、デアリマ
スカラ、私ハ警視廳ヲ廢シテ、サウ云フヤ
ウナコトハ考ヘテ居リマセヌ、サウ云フヤ
ウナ意味デアリマスカラ、自治體ニ警察權
ヲ與ヘヨト云フヤウナコトヲ言ウタコトハ
アリマセヌカラ、或ハソレハ松井君ハ誤解
シテ居ルノヂヤナイカト思ヒマス、サウ云
フヤウナ趣旨デ質問シタノデアリマスカ
ラ······都制ニハ是ハ實ハ關係ナイノデス、
デスカラ都制案ニハ何モ其ノコトハ規定ハ
ナイノデアリマス、若シ自治體ニ警察權ヲ與
ヘルト云フナラバ、都制トカ府縣制トカ市
町村制ニ規定ガナケレバナラヌデス、ソレハ
日本ノ法制ニハアリマセヌ、唯官制デサウ
云フコトヲ決メル、卽チ都長官ト云フ國ノ
行政ヲ掌ル其ノ都長官ノ權限ヲ官制デ決メ
ルト云フコトナノデアリマス、其ノ點ニ付
テハ、今日ノ實際上ニ鑑ミテ、今度都長官
ニ立派ナ人ヲ置ク、サウ云フコトデアレバ、
都制ヲ施行スル場合ニ是ハ考ヘラレテハ如
何デアルカト云フコトヲ、內務大臣ニ質問ヲ
シタノデアリマス、內務大臣モソレハ考慮
シヨウト云フコトデアッタ、併シ是ハ官制ノ
コトデアリマスカラ、官制ハ本議場ニ於テ
論議スベキ問題デハナイノデス、ソレハ政
府ニ於テ官制ヲ制定スル際ニ參考ニハシマ
セウケレドモ、ソレヲ此處デ論議スルノデ
ハナイ、唯サウ云フヤウニシタラドウカト
云フ意見ヲ述ベテ、サウシテ內務大臣ニ質問
シタ次第デアリマス、サウ云フヤウナ譯デ
アリマスカラ、官制トハ別問題トシテ、此
ノ都制ニハ私ハ原案ノ儘贊成スル者デアリ
マス
〔松井茂君發言ノ許可ヲ求ム〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=25
-
026・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 松井君ハドウ云
ラコトデスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=26
-
027・松井茂
○松井茂君 只今水野博士カラ段々御話ヲ
承リマシテ、御趣旨ハ能ク分リマシタ、唯
私ノ申シ方ガ惡カッタト思ヒマスカラ一言
ダケ申上ゲテ置キタイト思ヒマス、私モ、官
吏トシテノ都長官ニ警察權ヲ與ヘルト云フ
コトハ能ク分ッテ居ルノデアリマス、唯東京
府知事ノ延長ガ都長官デアリマスカラ、東
京府知事ト警視總監ト兎ニ角兩立シテ置イ
テ居ル所ノ沿革ニ鑑ミテ、ソコヘ又警察權
ガ行クト大變混亂スル、矢張リソコハ官憲
デアッテモ、今ノヤウニナッテ居ラナケレバ工
合ガ惡クハナイカト云フコトヲ心配致シテ
居ルノデアリマス、ソレガ私ノ要領デアリ
マス、其ノ點ダケヲ補足致シテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=27
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028・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 只今ノ松井君ノ
ハ辯明ト、議長トシテハ伺ッテ置キマス、他
ニ御發言モナケレバ、本案ノ採決ヲ致シマ
ス、本案ノ第二讀會ヲ開クコトニ御異議ハ
ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=28
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029・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=29
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030・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第二讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=30
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031・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=31
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032・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=32
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033・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=33
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034・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第二讀會
ヲ開キマス、御異議ガナケレバ、全部ヲ問
題ニ供シマス、本案全部、委員長ノ報告通
リデ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=34
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035・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=35
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036・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直チニ本案ノ第三讀
會ヲ開カレムコトヲ希望致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=36
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037・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=37
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038・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 西大路子爵ノ動
議ニ御異議ハゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=38
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039・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=39
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040・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 本案ノ第三讀會
ヲ開キマス、本案全部、第三讀會ノ決議通
リデ御異議ゴザイマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=40
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041・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=41
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042・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 日程第六ヨリ日
程第十九迄ノ請願、會議
左ノ意見書案ハ朗讀ヲ經サルモ參
照ノタメ玆ニ載錄ス以下之ニ傚フ
意見書案
岩手縣甲子川改修工事繼續施行ノ件
岩手縣釜石市大字釜石七ノ十四商業
村松義一外三百十四名呈出
右ノ請願ハ岩手縣甲子川ノ改修工事ハ
先年來中止セラレアルモ斯クテハ出水時
ノ災禍ヲ大ナラシムルノ虞アルノミナラ
ス現下瞬時モ忽ニスル能ハサル釜石製鐵
所ノ製鐵運營上ニモ甚大ナル影響ヲ來ス
ヲ以テ同川改修工事ハ當初計畫通之ヲ施
行セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願
意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因
テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候
也
昭和十八年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣東條英機殿
意見書案
岩手縣尾崎岬ニ燈臺設置ノ件
岩手縣釜石市大字釜石第一地割五番
地漁業佐野米藏外三百九十九名呈出
右ノ請願ハ釜石港ハ製鐵所ノ所在地タル
ノミナラス漁業ノ根據地トシテ近時貨客
船竝漁船其ノ他船舶ノ出入頻繁ニシテ且沖
合通航ノ船數夥シキモノアルニ拘ラス釜
石灣口附近ハ海岸線ノ出入複雜ナルト濃
霧風雪ノ爲航行船舶ノ遭難事故屢發生ス
ルハ甚遺憾ナルニ依リ速ニ尾崎岬ニ燈臺
ヲ設置シ以テ之等危難ノ防止ニ資セラレ
タシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體
ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法
第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和十八年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣東條英機殿
意見書案
未成線鐵道釜石線速成ノ件
岩手縣釜石市大字釜石七ノ十四商業
村松義一外四百二名呈出
右ノ請願ハ釜石線鐵道ノ速成ハ釜石港ト
東北本線ヲ結フ捷徑トシテ物資ノ輸送上
緊要ナルニ拘ラス同鐵道ノ完成年度ハ再
三繰延ヘラレ遂ニ昭和二十二年度ト爲リ
タルハ甚遺憾ナルニ依リ之カ完成年度ヲ
繰上ケ速ニ開通セラレタシトノ旨趣ニシ
テ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノ
ト議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ
別册及送付候也
昭和十八年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣東條英機殿
意見書案
豫定線釜石、盛間鐵道速成ニ關スル件
岩手縣釜石市大字釜石七ノ十四商業
村松義一外四百三名呈出
右ノ請願ハ豫定線釜石、盛間鐵道ノ速成
ハ旣設山田線、大船渡線竝之ニ接續スル諸
線ト連絡シテ其ノ機能ヲ發揮セシムルモ
ノナルニ依リ速ニ同鐵道ヲ建設線ニ編入
シテ之カ工事ノ急施ヲ企圖スルト共ニ差
當リ同區間ニ省營自動車ヲ運轉シ以テ物
資ノ輸送ト地方交通ノ利便ニ資セラレタ
シトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ
採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第
六十五條ニ依リ別丹及送付候也
昭和十八年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
内閣總理大臣東條英機殿
意見書案
未成線鐵道遠別、築別ノ兩驛間速成ノ
件
北海道留萠支廳管內町村長會長岡田
佐市呈出
右ノ請願ハ未成線遠羽線鐵道ノ速成ハ天
鹽沿岸鐵道ノ完通トナリ且沿線地方ニ於
ケル豐富ナル鑛、林海產資源ノ開發竝
軍事上裨益スル所大ナルノミナラス北海
道樺太間ノ捷路トシテ樞要縱貫線ナルニ
之カ工事ハ昭和二十年度完成ノ豫定ニ繰
延ラレタルハ甚遺憾ナルニ依リ速ニ同鐵
道ヲ敷設セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族
院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決
致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別冊及
送付候也
昭和十八年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣東條英機殿
意見書案
天鹽鐵道達布、雨龍線添牛內ノ兩驛間
鐵道敷設ノ件
北海道留萠郡留萠町長岡田佐市外二
名呈出
右ノ請願ハ天鹽鐵道達布驛ヨリ雨龍線添
牛內驛ニ至ル鐵道ヲ敷設スルハ沿線地方
ニ於ケル豐富ナル鑛產、林產、農產資源
ノ開發上貢獻スル所多大ナルニ依リ速ニ
之カ實現ヲ圖ラレタシトノ旨趣ニシテ貴
族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議
決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別册
及送付候也
昭和十八年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣東條英機殿
意見書案
東北本線北福岡驛、岩手縣九戶郡久慈
町間ニ省營自動車運輸開始ノ件
岩手縣九戶郡江刺家村長小野寺耕作
外七名呈出
右ノ請願ハ岩手縣二戶郡福岡町ヨリ九戶
郡久慈町ニ至ル間ハ部落密集シ近時交通
激增セルノミナラス沿道ニハ豐富ナル農
林鑛產資源ヲ有スルニ拘ラス今猶不完
全ナル民營運輸機關アルノミニシテ地方
民ノ不利不便少カラサルニ依リ速ニ福岡
驛ヨリ九戶郡伊保內、江刺家、戶田、山
形諸村ヲ經テ久慈町ニ至ル間ニ省營自動
車運輸ヲ開始セラレタシトノ旨趣ニシテ
貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト
議決致候因テ議院法第六十五條ニ依リ別
册及送付候也
昭和十八年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
内閣總理大臣吏條英機殿
意見書案
圖書館事業ノ體制確立ニ關スル件
神奈川縣三浦郡逗子町久木二百五十
三番地官吏高柳賢三外三十九名呈出
右ノ請願ハ圖書館ハ學校ト共ニ國民ノ
〓化鍊成上必須ノ機關ニシテ之カ整備擴
充ヲ圖ルハ刻下喫緊ノ要務ナルニ拘ラス
圖書館事業ハ地方自治體乃至民間ノ任意
的施設タルニ止マリ未圖書國策ノ樹立ナ
キハ甚遺憾ナルニ依リ今囘ノ學制改革ヲ
機トシ請願書記載ノ如ク其ノ體制ヲ確立
シ以テ皇民思想ノ昂揚、國民〓養ノ向上
ニ資セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ
願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候
因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付
候也
昭和十八年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
内閣總理大臣夷條英機殿
意見書案
釜石港ニ防浪施設施行ノ件
岩手縣釜石市大字釜石第一地割五番
地漁業佐野米藏外三百九十九名呈出
右ノ請願ハ岩手縣釜石市ハ東北地方三
陸沿岸ノ中樞漁港地タルノミナラス釜石
製鐵所ノ所在地トシテ重要都市ナルカ古
來周期的ニ襲來スル津浪ノ爲其ノ被害甚
大ナルニ依リ速ニ灣側ニ防浪堤ヲ築造ス
ルト共ニ市街臨港地區ニ防浪建築ヲ施行
シ以テ津浪ノ災害ヲ防止シ國防ノ萬全ト
地方產業ノ振興ニ資セラレタシトノ旨趣
ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採擇スヘキ
モノト議決致候因テ議院法第六十五條ニ
依リ別冊及送付候也
昭和十八年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣東條英機殿
意見書案
七尾線七尾、氷見線氷見ノ兩驛間ニ鐵
道敷設ノ件
富山市長森勇外三名呈出
右ノ請願ハ七尾線七尾ヨリ氷見線氷見ニ
至ル鐵道ヲ敷設スルハ啻ニ地方產業ノ振
興文化ノ啓發ニ資スル所多大ナルノミ
ナラス日本海海運ノ發展ニ客與スル所亦
少カラサルニ依リ速ニ之カ實現ヲ圖ラレ
タシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體
ハ採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法
第六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和十八年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣東條英機殿
意見書案
金剛山、高野山國立公園設立ノ件
東京市澁谷區南平臺四十番地ノ三十
三無職野村吉三郞呈出
右ノ請願ハ近畿金剛山一帶ノ地ハ吉野朝
及大楠公ノ史蹟多ク且南方指呼ノ間ニ高
野山ノ霽刹ヲ控フルノミナラス之ヲ擁ス
ル山河亦特異ナル自然ノ景觀ヲ呈シ其ノ
環境ノ感化寔ニ大ナルモノアルニ依リ速
ニ同地帶ヲ劃シテ國立公園ヲ設定シ以テ
殉國精神ノ〓揚ト體位向上竝智德ノ修鍊
ニ資セラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ
願意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候
因テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付
候也
昭和十八年月日
青族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣東條英機殿
音見書案
北海道常呂郡留邊蘂町ニ登記所設置ノ
件
北海道常呂郡留邊蘂町長堀川重敏呈
出
右ノ請願ハ北海道常呂郡留邊蘂町及其ノ
附近ハ同郡ニ於ケル商工上ノ要衝ニシテ
從ツテ登記件數夥多ナルニ加ヘ地方稅改
正ノ結果家屋登記ノ激增ヲ見ルニ至リタ
ルニ抱ラス管轄野付牛登記所トノ距離遠
ク住民ノ不利不便少カラサルニ依リ速ニ
同町及相內、置戶兩村ノ一部ヲ管轄區域
トスル登記所ヲ留邊蘂町ニ設置セラレタ
シトノ旨趣ニシテ〓族院ハ願意ノ大體ハ
採擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第
六十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和十八年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣東條英機殿
意見書案
石川縣千路郵便局ニ電信電話事務開始
ノ件
石川縣羽咋郡越路野村字千路百二十
三番地石川縣千路郵便局長幸正周造
呈出
右ノ請願ハ石川縣羽咋郡越路野村及其ノ
附近ハ時局下各種產業竝交通ノ發展ニ伴
ヒ且邑知潟ニ於ケル漁獲物ノ縣外共同出
荷ニ關シ通信ノ敏速ヲ所望スルコト切ナ
ルニ拘ラス千路郵便局ニハ未電信、電話
事務ノ取扱ナク住民ノ不利不便少カラサ
ルニ依リ速ニ之等事務ヲ開始セラレタシ
トノ旨趣ニシテ貴族院ハ願意ノ大體ハ採
擇スヘキモノト議決致候因テ議院法第六
十五條ニ依リ別册及送付候也
昭和十八年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
内閣總理大臣東條英機殿
意見書案
奈良縣五條町、和歌山縣新宮市間鐵道
速成ノ件
奈良縣宇智郡五條町大字五條五百五
十六番地林業栗山顯次外五名呈出
右ノ請願ハ奈良縣五條町ヨリ和歌山縣新
宮市ニ至ル鐵道ヲ敷設スルハ沿線地方ニ
於ケル豐富ナル林、鑛產等ノ資源開發ニ
貢獻スル所大ナルノミナラス戰爭資材確
保上亦緊要ナルニ拘ラス之カ建設工事ハ
曩ニ中止セラレタル儘今日ニ及ビタルハ
甚遺憾ナルニ依リ速ニ同鐵道ノ著工完成
ヲ圖ラレタシトノ旨趣ニシテ貴族院ハ願
意ノ大體ハ採擇スヘキモノト議決致候因
テ議院法第六十五條ニ依リ別册及送付候
也
昭和十八年月日
貴族院議長伯爵松平賴壽
內閣總理大臣東條英機殿発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=42
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043・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 是等ノ請願ハ、
請願委員長ノ報告通リ採擇スルコトニ御異
議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=43
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044・松平頼壽
○議長(伯爵松平賴壽君) 御異議ナイト認
メマス、是ニテ本日ノ議事ハ全部終了致シ
マシタ、次會ノ議事日程ハ、彙報ヲ以テ御
通知ニ及ビマス、本日ハ是ニテ散會致シマ
ス
午後零時十一分散會
貴族院議事速記錄第十六號正誤
頁段行誤正
二八六四二シヲ重ネル暉ヲ重ネル発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103242X01719430310&spkNum=44
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