1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十八年二月二日（火曜日）午前十時七分開會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103459X00219430202&spkNum=0
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001・高木喜寛
○委員長(男爵高木喜寛君) 是ヨリ開會致
シマス、藥事法案カラ御願ヒ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103459X00219430202&spkNum=1
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002・灘尾弘吉
○政府委員(灘尾弘吉君) 藥事法案提出ノ
趣旨ニ付キマシテハ過日本會議及ビ本委
員會ニ於キマシテ、大臣ヨリ御說明申上ゲ
マシタ通リデゴザイマスガ、私ヨリ法案ノ
內容ニ付キマシテ、逐條的ニ〓略ノ御說明
ヲ申上ゲタイト思ヒマス、其ノ前ニ御諒承
願ッテ置キタイト思ヒマスコトハ、此ノ法律
案ハ現在藥事關係ノ制度トシテ行ハレテ居
リマスル藥劑師法、藥品營業竝ニ藥品取扱
規則及ビ賣藥法、斯樣ナ制度ヲ統合整理致
シマシテ、更ニ本案提出ノ根本趣旨ヲ貫キ
マス爲ニ必要ナル諸規定ヲ定メマシタ次第
デアリマス、尙又現在ノ制度ハ相當古イ制
度トナッテ居リマスルノデ其ノ間諸規定ノ
中ニハ今日行ハレテ居リマスル多クノ立法
令ノ體裁ト其ノ趣キヲ異ニシテ居ルモノモ
ゴザイマスノデ、ソレ等ニ付キマシテモ大
體近頃ノ立法令ニ倣ヒマシテ、規定ノ體裁
ヲ整ヘ、又現在法律中ニ規定ノアリマスル
事項ニ付キマシテモ、命令ニ讓ルヲ適當ト
認メルヤウナモノニ付キマシテハ命令ニ讓
ルヤウニ致シテ置クノデアリマス、殊ニ此
ノ法律案ト、申サバ姉妹編ト申シマスカ、
極メテ密接ヲ關聯ノアリマスル最近ノ制定
ニ係ハリマスル國民醫療法ノ規定ト大體步
調ヲ揃ヘルト云フヤウナコトモ致シタノデ
アリマス、豫メ御含ミヲ願ヒタイト思ヒマ
ス、以下條文ニ付キマシテ御說明申上ゲタ
イト思ヒマス、第一條ハ本法制定ノ目的ヲ
規定致シタモノデアリマシテ、此ノ法律ハ
國民醫療法ト密接ノ關係ニ立チ、是ト相竝
ンデ國民保健ニ關スル基礎法タルベキモノ
ト考ヘマシテ、國民醫療法ガ國民醫療ノ面
ヲ規定スルニ對シ、此ノ法律案デハ藥劑衞
生ノ部面ヲ規定致シテ居ルノデアリマスケ
レドモ等シク國民體力ノ向上ヲ圖ルト云
フコトヲ根本ノ目的トシテ居ルト云フ點ヲ
明カニ致シタノデアリマス、次ハ第二章ノ
藥劑師ニ關スル規定デアリマスルガ、第二
條ハ新タニ設ケマシタ規定デゴザイマシ
テ、藥劑師ノ本分ヲ規定致シタモノデゴ
ザイマス、現行法ノ藥劑師法第一條ニハ
「藥劑師トハ醫師、齒科醫師又ハ獸醫師ノ
處方箋ニ依リ調劑ヲ爲ス者ヲ謂フ
藥劑師ハ藥品ノ製造販賣ヲ爲スコトヲ得」
ト云フヤウナ規定ガアルノデゴザイマス、
從ヒマシテ藥劑師ノ本來ノ職分ハ專ラ調劑
ノミニ存スルカノ如キ觀念ガ世上ニ行ハレ
テ居ル嫌ナシトシナイノデアリマス、併シ
ナガラ今日藥劑師ノ職分ハ、獨リ調劑ノミ
ナラズ、廣ク醫藥品ノ供給、或ハ飮食物ノ
檢査ト云フ風ナ衞生科學ノ部面、更ニ又近
頃デハ毒瓦斯ノ試驗〓究トカ、或ハソレ等
ノ處理ト云フヤウナ部面ニ亙リマシテ、所
謂町ノ科學者トシテ國民保健ノ廣汎ナル分
野ヲ擔當スルニ至ッテ居ルノデアリマス、此
ノ實情ニ卽シマシテ玆ニ是等ノ廣イ範圍ノ
部面ヲ擔當スルモノデアルト云フコトヲ明
カニ致シタ次第デアリマス、卽チ藥劑師ハ
國民保健ノ一ツノ大キナ分野ヲ擔當致シマ
シテ、醫師、齒科醫師等ト相携ヘテ國民體
力ノ保全增强ニ寄與スルト云フ國家的ナ任
務ヲ負フモノデアルト云フコトヲ明カニ致
シマシテ、其ノ職責ノ極メテ重イト云フコ
トヲ自覺セシメ、益〓勵精其ノ職域ニ於テ奉
公セムコトヲ期待致シマシタ次第デアリマ
ス、第三條ハ藥劑師免許ヲ受ケル資格ニ關
シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ規定スルコト
ト致シタノデアリマス、此ノ勅令ニ定メマ
スル事項ハ大體現行法通リト致ス考デアリ
マスノデ、多ク御說明申上ゲル必要ハナイ
ト存ズルノデアリマス、第四條ハ藥劑師免
許ニ關シマシテ、申セバ絕對的ナル缺格條
件ヲ規定シタモノト申スコトガ出來ルト思
フノデアリマス、字句ヲ多少修正致シマシ
タ外、現行法ノ藥劑師法第三條ノ通リデア
リマスノデ、是モ說明ヲ省略致シマス、第
五條ハ藥劑師ノ謂ハバ總體的ナ缺格條件ヲ
規定シタノデゴザイマシテ、是モ字句ヲ若
干修正致シマシタ外ハ現行法通リデゴザイ
マスノデ、是モ說明ヲ省略致シマス、第六
條ハ藥劑師ノ名簿ニ付テ新タナル條項ヲ設
ケタノデアリマスガ、是ハ現在ノ法律ニ依
リマスト云フト、藥劑師ノ名簿ニ登錄スル
ト云フコトガ藥劑師ノ資格ヲ付與スル一ツ
ノ要件トナッテ居ルノデアリマスガ、事柄ノ
性質上區分シテ規定スルノガ適當ト考ヘマ
シテ、第三條ノ免許ヲ受クルコトヲ要シ、
第六條ノ登錄ニ關スル規定ヲ設ケマタシノ
デアリマス、登錄スベキ事項等ニ付キマシ
テハ現行法通リト致シタノデアリマス、第
七條ハ藥劑師ノ免許ノ取消又ハ業務ノ停止
處分ニ關スル規定デアリマシテ、大體ハ現
行法ヲ踏襲致シテ居ルノデアリマスルガ、
特ニ變ッテ居ル點ヲ申上ゲマスレバ、先ヅ
藥劑師タルノ品位ヲ損ズル行爲ヲ免許ノ取
消又ハ業務停止處分ノ事由ノ中ニ加ヘタノデ
アリマス、ソレカラ免許ノ取消又ハ業務ノ
停止處分ノ事由タル事實ガ免許ノ前ニアッ
タコトデアリマシタ場合ニ於テモ免許ノ取
消又ハ業務停止處分ヲスルコトガ出來ルト
云フ風ニ致シタノデアリマス、ソレカラ免
許取消處分ヲ受ケマシタモノガ再免許ヲ受
ケタ者デアリマシテ、再免許ヲ受ケタル者
ガ主務大臣ノ定ムル期間內ニ於テ一定ノ刑
罰ニ處セラレマシタ時ハ、其ノ再免許ハ當
然效力ヲ失フコトト致シタノデアリマス、
尙又藥劑師ニ對スル行政處分ヲ致ス場合ニ
於キマシテ、從來ハ中央衞生會ノ審議ヲ經
ルコトトナッテ居ッタノデアリマスガ、此
ノ法案ニ於キマシテハ中央衞生會ノ審議ヲ
要スルト云フコトヲ削除致シタノデアリマ
ス)國民保健ニ關スル藥劑師ノ職責ガ益、≧
重キヲ加へ、醫師、齒科醫師ト相携ヘテ挺
身其ノ職域ニ御奉公スルコトヲ期待セラレ
テ居リマスル今日、藥劑師ニ關スル道義ノ
振作〓揚ト云フコトハ夙ニ世人ノ提唱スル
所デアリマシテ、醫師、齒科醫師何レモソ
レゾレ其ノ品位ノ向上ニ努メナケレバナリ
マセスコトハ當然デアリマスルガ、藥劑師
ハ又藥劑師トシテノ品位ヲ保ッテ行カナケ
レバナラヌト思フノデアリマス、本條ニ於
キマシテハ過般制定セラレマシタ國民醫
療法ト同樣ニ藥劑師ノ品位ヲ損ズル行爲ガ
アリマシタ時ニ行政處分ヲ行ヒ得ルコトト
致シタノデアリマス、ソレカラ藥劑師ノ職
分ノ重イノニ鑑ミマシテ免許ノ取消又ハ業
務停止ノ事由タル事實ガ免許前ニアッタ場
合ニ於キマシテモ相當ノ處分ヲ爲スベキコ
トハ、其ノ事實ガ免許後ニ拘ラズ取消又ハ
停止ヲ爲スコトガ出來ル、是亦國民醫療法
ト步調ヲ合セテ居ル譯デアリマス、ソレカ
ラ犯罪又ハ不正ノ行爲ガアリマシタ爲ニ藥
劑師免許ヲ取消サレタ者デモ改悛ノ情顯著
ナル時ハ、現行法ニ於キマシテハ一律ニ再免
許ヲ與ヘルト云フコトニナッテ居リマスガ、
改悛ノ情ガ顯著デアルカドウカト云フコト
ハナカ〓〓其ノ認定ノ困難ナ場合ガ尠クナ
イノデアリマスノデ、情狀ニ依リマシテハ
一定ノ條件ヲ附ケル等、一定ノ制限ノ下ニ
再免許ヲ與ヘルコトガ却ッテ適當デハナイ
カト云フ風ニモ考ヘラレマスルノデ、本條
ニ於テハ條件附再免許ノ規定ヲ設ケマシタ
次第デアリマス、次ニ中央衞生會ノ審議ヲ
省略スルト云フ風ニ致シタノデアリマスル
ガ、藥劑師ニ對スル行政處分ヲ行ヒマスル
場合ニハ、常ニ地方長官ノ意見ノ具申ヲ求
メ、地方長官ハ又道府縣藥劑師會ノ意見ヲ
徵スル等ソレ〓〓愼重ナル手續ヲ取ッテ居
ルコトデアリマスノデ、更ニ其ノ上ニ中央
衞生會ノ諮問ヲ經ル必要ハナイコトト考ヘ
ル、若シ左樣ニ致シマスレバ却ッテ行政處
分ノ時宜ヲ失スルト云フ風ノコトモゴザイ
マスルノデ、國民醫療法ノ改正ノ趣旨ト同
樣ニ、本法案ニ於キマシテモ中央衞生會ノ
議ニ付スルコトヲ止メルコトニ致シタノデ
アリマス、ソレカラ第八條ハ、是ハ新シイ
規定デアリマスガ、藥劑師ニ對シ主務大臣
ニ於テ補習〓育ノ義務ヲ課シ得ルコトヲ規
定シタノデアリマス、ト申シマスルノハ、先
程來申シマスル如ク、藥劑師ガ國民保健上
廣範圍ニシテ且重大ナル職責ヲ荷ヒ、又ハ
其ノ職分ガ人ノ健康、生命ニ關係スルコト
ガ多イモノデアリマスルノデ、常ニ藥劑師
タルモノハ其ノ自己ノ職分ニ付テ勉强ヲ怠
ラナイヤウニシテ貰ハナケレバナラヌト思
フノデアリマス、醫藥ノコトハ日進月步デ
アリマスルノミナラズ、國防科學ニ關スル
事項ノ如キハマダ十分ニ〓究モ遂ゲラレテ
居リマセヌノデ、斯樣ナ規定ヲ設ケマシテ
藥劑師ノ職域奉公ノ一層完璧ヲ期スルヤウ
ニ致シタ次第デアリマス、第三章ハ藥劑師
會ニ關スル規定デゴザイマス、藥劑師會ニ
關シマシテハ從來藥劑師會令ト云フモノガ
ゴザイマシテ、ソレ〓〓規定ヲ設ケラレテ
居ル次第デアリマス、大體ニ於テ從來ノ規
定ヲ踏襲スル考デゴザイマスルガ、第九條
ニ書イテアリマスル如ク、從來ノ藥劑師會
ノ目的ニ多少ノ修正ヲ加ヘマシテ、實體ニ
於テハ、根本精神ニ於テハ差異ハナイト考
ヘマスケレドモ、此ノ法律ニ於キマシテハ
「日本藥劑師會及道府縣藥劑師會ハ藥事衞
生ノ改良發達ヲ圖リ國民體力ノ向上ニ關スル
國策ニ協力スルヲ以テ目的トス」卽チ從來ノ
規定ニ較ベマスレバ「國民體力ノ向上ニ關ス
ル國策ニ協力スルヲ以テ目的トス」ト云フコ
トヲ新タニ附加ヘマシテ、現下ノ時局ニ於
ケル藥劑師會ノ使命ヲ明カニ致シタノデア
リマス、其ノ外ノ點ニ付キマシテハ大體現
行法通リデアリマスルガ、唯今囘ノ藥劑師
會ノ規定ニ於キマシテハ、會員ノ範圍ヲ從
來ヨリモ擴大致ス積リデ居ルノデゴザイマ
ス、卽チ從來ハ開局ノ藥劑調劑ニ從事スル
藥劑師、或ハ又藥品ノ營業ニ從事スル藥劑
師ハ、藥劑師會ノ會員トナッテ居ッタノデア
リマス、今度ノ改正ニ於キマシテハ、其ノ
範圍ヲ擴大致シマシテ、獨リ左樣ナ營業ニ
從事スル藥劑師ノミナラズ、苟クモ藥劑師
ノ資格アル者ニ付テハ之ヲ會員ト致シタイ
考ヘデアリマス、ソレカラ又現ニ藥劑師ノ
免許ヲ持ッテ居リマセヌデモ、藥劑師免許ヲ
受ケル資格ヲ有スル者ハ之ヲ道府縣藥劑師
會ノ會員タラシメルコトヲ得ルト云フ途ヲ
開キマシテ、卽チ藥劑師乃至ハ藥劑師同樣
ノ資格ヲ持ッテ居リマスル、有ラユル分野ノ
人達ガ寄ッテタカッテ、藥劑師會ヲ組織シテ
ソレ〓〓ノ職分ヲ發揮致シマシテ、公共ノ
爲ニ盡スト云フ體制ヲ取ルコトト致シタノ
デアリマス、ソレカラ從來ハ日本藥劑師會
ハ任意設立デアッタノデアリマスルガ、藥劑
師會ノ使命ノ重大性ニ鑑ミマシテ、中央ニ
强力ナル藥劑師會ヲ設立スル必要ガアルト
考ヘマシテ、第十一條ニ規定致シテアリマ
スル如ク、日本藥劑師會ノ設立ヲ强制設立
ト致シタノデアリマス、其ノ外ノ點ハ特ニ
申上ゲル必要モナイカト存ジマス、ソレカ
ラ次ハ第四章ノ藥局及調劑ニ關スル事項デ
ゴザイマス、第十四條ニ「藥局ヲ開設セント
スル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ地方長官ノ
許可ヲ受クベシ」、斯樣ニ規定ヲ致シテ居リ
マス、從來ノ規定ニ依リマスレバ藥局ノ開
設ハ地方長官ニ屆出ヲ以テ足レリト致シテ
居ッタノデアリマスルガ、此ノ法律案ニ於キ
マシテハ許可ヲ受ケルコトト致シタノデア
リマス、ノミナラズ從來ノ規定ニ依リマス
レイ、藥局ノ開設者ハ原則トシテ藥劑師ニ
限ラレテ居ッタノデアリマス、多少ノ例外ハ
ゴザイマスルガ原則トシテ藥劑師ニ限ラレ
テ居ッタノデゴザイマスルガ、此ノ法律案ニ
於キマシテハ藥劑師ニ限定シナイコトニ致
シタノデアリマス、藥局ハ藥事衞生ニ關シ
マシテ、一般民衆ノ利用ニ供セラレル重要
ナ機關デゴザイマスノデ、其ノ設備管理等
ニ付キ適正ヲ期スル必要ガアリマスルコト
ハ申ス迄モナク、又其ノ分布ノ狀況ハ從來
ドチラカト云ヘバ、都市偏在ノ傾向ガ誠ニ
著シイモノガアルノデアリマス、例ヘバ六
大都市所在附近ノ藥局數ガ、全國藥局數ノ
五十三「パーセント」ニ達シテ居ルノデアリ
マン、又東京府大阪府ノ藥局數ハ全國ノ藥
局總數ノ三十二「パーセント」ニ達スルト云
フヤウナ狀況デゴザイマス、大體ニ於テ大
都市ニ藥局ガ集中セラレテ居ルヤウナ傾向
ガアルノデゴザイマシテ、其ノ狀態ハ今後
ノ問題ト致シマシテ、國民保健上相當考ヘ
ナケレバナラヌ點デアルト考ヘマスルノデ、
是ガ是正ヲ圖ルノ方途ヲ期スルコトモ必要
デアラウト考ヘルノデアリマス、從ヒマシ
テ藥局ノ開設ニ付キマシテハ設備其ノ他ノ
點ニ付テハ固ヨリ、分布ノ狀況等ヲモ考慮
致シマシテ、許可ニ依ルコトニ致シタ次第
デアリマス、ソレカラ藥局ノ開設者ニ付キ
マシテハ先程申シマシタ如ク、原則トシテ
藥劑師ニ之ヲ限定シ、例外ト致シマシテハ
從來公共團體又ハ地方長官ニ於テ、特ニ必
要アリト認メテ許可シタ場合ニ限ルコトト
ナッテ居ルノデアリマスルガ、其ノ結果經營
ノ狀態ガ往々ニシテ實情ニ卽セズ、極メテ
不自然ナルコトヲ餘儀ナクセラレル場合ガ
アリマスルノミナラズ、右ハ藥局ノ分布ノ
適正乃至設備ノ完璧ヲ圖リマシテ、其ノ發
達ヲ圖ルニ必ズシニモ適當ナヤリ方デハナ
イト考ヘラレマス、且又其ノ管理ニ付キマ
シテ藥劑師ヲシテ行ハシメルト致シマスル
上ニ於テハ、開設者ヲ必ズシモ藥劑師ニ限
定スル保險衞生上ノ必要モナイト考ヘラレ
マスルノデ、今囘ノ改正ニ於キマシテハ開
設者ヲ藥劑師ニ限定致サナイコトニ致シタ
次第デゴザイマス、第十五條ハ現行法通リ
デゴザイマス、ソレカラ第十六條ハ大體現
行法ノ通リデアリマスルガ、之ニ但書ヲ附
ケマシテ「命令ヲ以テ別段ノ定ヲ爲シタル
場合ハ此ノ限ニ在ラズ」ト云フ規定ヲ設ケタ
ノデアリマス、此ノ趣旨ハ調劑ハ特定ノ人
ノ特定ノ疾病ニ對スル治療藥劑ヲ製造スル
者デアリマシテ、毒藥ノ如キ微量ナル過チ
ニ依リマシテ人命ヲ奪フ者モアル次第デゴ
ザイマスノデ、相當完備シタ設備ノ下ニ調
劑ヲナサナケレバナラヌト云フコトハ申ス
迄モナイコトデアリマスルカラシテ、現行法
通リ原則ト致シマシテハ、藥局ニ於テ調劑ヲ
スベキコトヲ規定致シタノデアリマスルガ、
併ナガラ藥劑師ノ調劑ヲ、藥局以外ノ場所
ニ於テナスコトヲ從來禁止致シテ居リマシタ
結果、例ヘテ申シマスルト病院、診療所等
ニ於テ調劑ニ從事スル藥劑師ガ、一體此ノ
規定ニ或ハ牴觸スルノデハナイカト云フ風
ナ疑モゴザイマシタシ、又公ケノ必要上例へ
バ巡廻診療等ト云フヤウナモノヲ、行ヒマスル
下、藥劑師ノ調劑ト云フコトガ出來ナイト
云フコトニナリマスルノデ、特定ノ場合ヲ限
リマシテハ、藥局外ニ於テ調劑ヲスルコトヲ
認メルノガ實情ニ適スルト考ヘマシテ、斯
樣ニ致シタノデゴザイマス、第十七條ハ大
體現行法ノ通リデゴザイマス、ソレカラ第
十八條モ多少ノ整理ハゴザイマスルガ、趣
旨ニ於テハ現行法ノ通リデゴザイマス、第
十九條ハ、是モ大體現行法ノ通リデアリマ
スルガ、調劑錄ノ備付ノ義務デアリマスト
カ、或ハ其ノ保存義務ニ關スルヤウナ規定
ハ是ハ命令ニ讓ルコトト致シマシタ、
ソレカラ第二十條、是ハ新シク設ケマシタ規
定デゴザイマス、調劑報酬ニ付キ主務大臣
ハ必要ナル命令ヲ發スルコトヲ得ト云フヤ
ウニ致シタノデゴザイマス、醫療費ノ適正
ヲ期シマスルコトハ、國民保健上最モ肝要
ノコトト存ズルノデアリマス、醫師ノ受ク
ベキ醫療報酬ニ付キマシテハ、曩ニ制定セ
ラレマシタ國民醫療法ニ於テ、主務大臣ガ
必要ナ措置ヲ爲シ得ル途ヲ開キ、其ノ適正
ヲ圖ルコトト致シタノデアリマス、醫療費
ノ一部タルベキ調劑報酬ニ關シマシテモ
從來區々ニ亙リ、又ハ適正ヲ缺クモノガナ
キニシモアラズト斯樣ニ考ヘラレマスルノ
デ、之ヲ適正ナラシメル爲ニ、主務大臣ニ
於テ必要ナ措置ヲ講ジ得ルコトト致シタノ
デアリマス、次ニ第二十一條デアリマス、
之ニ付キマシテハ現行法ニハ、法律ニ於テ色
色ナ規定ガアルノデゴザイマガ、大體同樣
ナ趣旨ヲ規定スル積リデハゴザイマスルガ、
事柄ガ細目ニ亙リマスルノデ、之ヲ命令ニ
讓ルコトニ致シタノデアリマス、例ヘバ藥
品ヲ省略シテハイケナイ、調劑ノ場合ニ、
醫師、齒科醫師ノ規定致シマシタ藥品ヲ省
略シテハナラナイ、或ハ又代リノ藥ヲ使ッテ
ハナラナイ、又藥劑ノ容器又ハ包紙ニ諸般
ノ事項ヲ記入シナケレバナラヌ、毒藥、劇
藥ヲ配合致シテ居リマス處方箋ノ保存義務
ト云フヤウナ色々ノ細カイ規定ガゴザイマ
スルガ、是等ハ總テ命令ニ讓ルコトト致シ
タノデゴザイマス、次ハ第五章ノ醫藥品デ
アリマス、第二十二條ハ醫藥品ノ製造ニ關
スル規定デゴザイマス、玆デ御說明ヲ申上
ゲテ置キタイト思ヒマスコト〓、現在醫藥
品ニハ藥品營業竝藥品取扱規則ノ規定ガゴ
ザイマス、又賣藥ニ付キマシテハ賣藥法ノ
規定ガアルノデアリマス、而シテ藥品ノ中、
外國藥局方收載藥品ニ付キマシテハ、藥
品營業竝藥品取扱規則ニ規定ガアルノデア
リマス、又何レノ藥局方ニモ記載セザル藥
品又ハ製劑、通常之ヲ新藥新製劑ト申シテ
居リマス、此ノ何レノ藥局方ニモ記載セザ
ル藥品又ハ製劑ニ付キマシテハ、同ジク藥
品營業竝藥品取扱規則中ニ規定ガアリマス
ルノ外、明治四十四年ノ內務省令第十八號
ノ規定ガアルノデアリマス、ソレ〓〓法規
上別個ノ取扱トナッテ居ルノデアリマス、併シ
ナガラ新藥新製劑ト賣藥トノ關係ニ付キマシ
テハ、實際問題トシテ兩者ヲ劃然ト區別ス
ルト云フコトハ、極メテ困難デアリマシテ、
殆ド同種同類ノモノガ、或ハ賣藥トナリ、
或ハ新藥新製劑トナル等、徒ラニ取扱ニ煩
瑣デゴザイマスルノミナラズ、後ニ申上ゲ
マス如ク、新藥新製劑ニ付テモ許可制ヲ採
ルコトト致シマスル以上ハ、賣藥ト新藥新
製劑トノ區別ヲ設ケルト云フコトハ事實ニ
於テハ殆ド意味ノナイコトトナルノデア
リマス、又外國藥局方ノ新藥新製劑ニ付キ
マシテモ、今後ノ事態ニ於キマシテハ、特
別ノ取扱ヲスル必要ハナイト考ヘル次第デ
アリマス、從ヒマシテ今囘ノ立法ニ付キマシ
テハ、是等藥品ノ法制上ノ區別ヲ撤廢致シ
マシテ、等シク之ヲ醫藥品ト致シマシテ、
醫藥品ノ中ニ、日本藥局方ニ收載セザル、
卽チ日本藥局方外ノ醫藥品ト云フヤウナ區
分ヲ設ケマシテ、賣藥トカ新藥新製劑ト云
フ區別ハ之ヲ取廢メルコトニ致シタイト考
ヘルノデアリマス、次ニ醫藥品ノ製造ニ關
シマシテハ、現在ノ藥事法令ニ於キマシテ
ハ藥品ト賣藥トニ依ッテ其ノ取扱ヲ異ニ
致シテ居リマス、又藥品ニ付テハ藥劑師ハ
許可等ノ手續ヲ要セズ、自由ニ造レルコト
ニナッテ居リマス、其ノ他ノモノハ地方廳ニ
依リ製藥者ノ免許鑑札ヲ受ケルコトニ致シ
マシタ、而シテ製藥者ノ免許鑑札ヲ受ケテ
製藥者トナリマスレバ、如何ナル藥品モ製
造スルコトヲ得ルノデアリマス、尙又麻藥
又ハ痘苗、血〓、或ハ細菌學的治療ト豫防治
療品、又ハ新藥新製劑ノ特殊ノモノニ付テハ
更ニ特別ノ許可、認可等ヲ受ケ、或ハ又屆
出ヲ要スルノデアリマス、次ニ賣藥ニ付テ
ハ賣藥法ニ依ッテ、原則トシテ藥劑師、藥劑
師ヲ使用スル者、或ハ醫師及齒科醫師ト
云フ者ニ限ッテ調劑ノ資格ガアルノデアリ
マス、ソレガ調劑セントスル品目ニ付キマシ
テ地方長官ノ免許ヲ受ケルコトヲ要スル
ノデアリマス、尙又藥事法令ニ依リマス外、
現在ハ國家總動員法ニ基ク企業許可令ニ基
キマシテ、藥品ノ製造業ハ品目每ニ厚生大
臣ノ許可ヲ要スルコトトナリ、又緊要ナル
百三十品目ノ藥品ニ付キマシテハ、醫藥品
及衞生材料生產配給統制規則ニ依リマシテ、
品目每ニ厚生大臣ノ許可ヲ受クルコトヲ要
スルト、斯樣ニ致シマシテ、醫藥品ノ製造
ニ關スル手續ハ今日極メテ錯雜複雜、誠ニ
煩瑣ニ堪ヘナイヤウナ狀況ニナッテ居ルノデ
アリマス、併シナガラ醫藥品ノ製造ニ付キ
マシテハ、現在ノ藥事制度ニ於テハ警察取
締ノ見地カラ之ヲ把握シ、或ハ人的部門ニ
ノミ主眼ヲ置キ、或ハ物自體ニノミ主眼ヲ
置キ、人的要素ト物的要素ノ有機的結合體
トシテノ事業ソレ自體、或ハ國ノ全般生產
機構等ノ關係ニ付テ綜合的ニ把握考慮スル
ニ適シテ居リマセヌノデアリマス、就中製
造ノ施設、生產品目等ニ付テ餘リ考慮シテ
居ラナイヤウナ憾ミガアリマシテ、醫藥品
ニ付キ生產性ノ〓揚ヲ圖ルト同時ニ、又計
畫的生產ノ遂行ヲ圖リ、醫藥品供給ノ適正ヲ
期スルノニハ現狀ハ誠ニ不十分デアルト申
サナケレバナラヌノデアリマス、ソコデ今
囘ハ現行法令ニ於テ各種ノ免許、許可、認
可等ノ手續ヲ、現行法令ニ於ケル各種免許、許
可、認可等ノ手續ヲ、現行法令ニ於ケル各種免
許、許可、認可等ノ手續ヲ綜合統一致シマシテ、
製造事業自體ヲ許可ニ代ラシメ、且許可ニ
當リマシテハ全體ノ生產等ノ關係、製造品
目、製造施設等ニ付テ檢討ヲ加ヘ、特ニ日
本藥局方外ノ醫藥品ニ付キマシテハ其ノ許
否ノ標準ニ付キ相當愼重ナル檢討ヲ加ヘマ
シテ、醫藥品製造事業ノ適正ナル運行ニ依
リ、其ノ供給ノ適正ヲ期スルコトニ遺憾ナキ
ヤウニ致シタイト考ヘテ居ル次第デアリマ
ス、尙又現行制度ニ於キマシテハ、免許、
許可等ノ主體ハ〓ネ地方長官デアリマスガ、
製造事業ノ許否ニ付キマシテハ全國的視野
ニ於テ統一的ニ措置スルノガ適當ト考ヘラ
レマスノデ、本法案ニ於キマシテハ製造業
ハ主務大臣ノ許可ヲ要スルコトト致シタノ
デアリマス
次ニ先程チヨット觸レタノデアリマスル
ガ、從來ト比較致シマスト、從來ハ新藥、
新製劑ハ其ノ新規發賣ニ付キマシテハ、地
方長官ニ屆出ヲスレバ宜シイト云フコトニ
ナッテ居ッタノデアリマス、ソレデ每年屆出
ニ係ハル新藥、新製劑モ極メテ多數ニ上ッテ
居リマシテ、年々約三千件ニ上ッテ居ルト
云フ、狀況デアリマス、其ノ中ニハ品質、
效能上必ズシモ適當ト認メラレナイモノモ
ゴザイマスシ、又謂ハバ不急不要品ト思ハ
レルヤウナモノモ少クナイ狀況デアリマス、
又名前ガ違ッテ居ッテモ實際ハ大差無イト云
フヤウナ藥モ相當多數ニ上ッテ居リ、徒ラニ
煩雜ヲ加ヘ、緊要醫藥品ノ確保ヲ圖リ、共
ノ供給ノ適正ヲ期スルニ當リマシテ相當ノ
支障ヲナシテ居ルノデアリマスルノデ、今
囘ハ他ノ藥品ト同樣ニ新藥、新製劑ニ付キ
マシテモ總テ之ヲ許可ヲ受ケシメルコトト
致シマシタ次第デアリマス、二十二條ノ第
一項ニ於、キマシテハ、只今申シマシタ如ク、
總テノ醫藥品ニ付キマシテ、此ノ製造業ヲ行
ハムトスル者ハ主務大臣ノ許可ヲ受クルト云
フコトニ致シタノデアリマス、「但シ命令ヲ
以テ別段ノ定ヲ爲シタル場合ハ此ノ限ニ在
ラズ」ト云フコトニ致シテアルノデアリマス、
此ノ命令デ以テ別段ノ規定ヲ爲シタ場合ハ
此ノ限リニ在ラズト書イテアルノデアリマ
スガ、只今考ヘテ居リマスルコトハ、例
バ試驗〓究中ニ屬スル醫藥品ヲ製造致シマ
スル場合デアリマストカ、或ハ又藥局開設
者ガ其ノ藥局ニ於キマシテ特定ノ醫藥品ヲ
製造スル場合ニハ許可ヲ受ケナクテモ宜シ
イト云フヤウナ規定ヲ置カウカト考ヘテ居
ル次第デアリマス、ソレカラ第二項ニハ「醫
藥品製造業者ハ醫藥品ノ性狀品質ヲ適正ナ
ラシムル爲命令ノ定ムル所ニ依リ藥劑師ヲ
置クベシ但シ命令ヲ以テ別段ノ定ヲ爲シタ
ル場合ハ此ノ限ニ在ラズ」ト云フ規定ヲ設
ケマシテ、醫藥品製造業ニ付キマシテハ
原則トシテ藥劑師ヲ使ハナケレバナラナイ
ト云フ風ニ致シマシタ、之ニ依ッテ醫藥品
ノ性狀品質ノ適正ヲ期シヨウト云フ考ヘデ
アリマス、此ノ但書ノ規定デ以テ藥劑師ヲ置
カナクテモ宜シイト云フ場合デアリマスル
ガ、是ハドウ云フ風ナ場合ヲ考ヘテ居ルカ
ト申シマスルト云フト、例ヘバ醫藥品ノ製
造業者白身ガ藥劑師デアリマス場合、或ハ又
醫藥品ノ製造ニ付キマシテ必要ナ知識技能
ヲ有スト主務大臣ガ認メテ居リマスル場合
ニ於キマシテ、ソレ等ノ者ガ自ラ製造ニ當
ルト云フヤウナ場合ニハ必ズシモ藥劑師
ヲ置ク必要ハ無イト斯樣ニ考ヘテ居リマ
ス、又鬪病血〓其ノ他細菌學的豫防治療品
ノ製造等ニ付キマシテハ、大體從來是ハ醫
師ガ其ノ事ニ當ッテ居ルノデアリマス、斯
樣ナ場合ニ於キマシテモ勿論藥劑師ヲ置ク
必要ガ無イノデゴザイマス、醫師ガ其ノ事
ニ當ツテ居レバ此ノ除外例ノ適用ガアルト
云フ風ニ考ヘテ宜シカラウト考ヘテ居ルノ
デアリマス、第三項及第四項ニ付キマシテ
ハ、特ニ申上ゲル必要モ無イカト思フノデ
アリマス、次ハ第二十三條デアリマス、第
二十三條ハ醫藥品ノ販賣業ニ關スル規定デ
ゴザイマス、醫藥品ノ販賣ニ關シマシテハ
現在ノ藥事法令ニ於キマシテハ、藥品ト賣藥
トニ依リマシテ其ノ取扱ヲ異ニ致シテ居リ
マス、又藥品ニ付キマシテハ、藥劑師ハ許
可等ノ手續ヲ要セズ、其ノ他ノモノハ地方
廳ノ藥種商ノ免許鑑札ヲ受クルコトヲ要ス
ルノデアリマス、又賣藥ノ請賣ニ付キマシ
テハ、藥劑師又ハ藥種商ハ地方長官ニ屆出
ヲ爲スヲ以テ足ル、其ノ他ノモノハ地方長
官ノ許可ヲ受クルコトヲ要スルコトト致シ
テ居リマス、尙今日ハ右ノ藥事法令ニ依リ
マスルモノノ外ニ、企業許可令ニ依ッテ醫
藥品販賣業ヲ開始セムトスルモノハ、總テ
地方長官ノ許可ヲ受クルコトトナッテ居リ
マス、斯樣ニ醫藥品ノ販賣ニ關スル手續ハ、
現在藥品ト賣藥、又藥劑師ト然ラザルモノ
トニ依リマシテ適用法令ガ異ッテ居リマシ
テ、相當煩雜ニナッテ居ル狀況デゴザイマ
ス、醫藥品ノ適正、圓滑ナル配給ヲ圖リマ
スニハ、其ノ特殊性ニ鑑ミマシテ、極メテ
緊要ナコトデアリマス、之ガ爲ニ販賣者ノ
資質ノ適否ノミナラズ、店舗ノ分布狀況等
ヲ十分考慮スル必要ガアルノデアリマスカ
ラ、藥劑師ト然ラザルモノタルトヲ問ハズ、
醫藥品販賣業ヲ行フ者ハ齊シク之ノ許可ヲ
受クルコトヲ適當ト考ヘマシテ、斯樣ナ規
定ヲ設ケタ次第デアリマス、此ノ場合ニ於
キマシテモ、二十三條第一項ニ於キマシ
テ、許可ヲ要セザル場合ノコトヲ豫想致シテ
居ルノデアリマス、是ハ例ヘバ醫藥品ノ製造
業者、輸入販賣業者又ハ移入販賣業者ガ
其ノ製造又ハ移輸入致シマシタル醫藥
品ヲ、醫藥品ノ製造業者又ハ販賣業者ニ
販賣スルト云フヤウナ場合デアリマスト
カ、或ハ又藥局ノ開設者ガ藥局ノ開設ニ際シ
マシテ、其ノ藥局ニ於キマシテ醫藥品ヲ販賣
スルト云フ許可ヲ併セテ受ケマシタヤウナ場
合トカ、斯樣ナ場合ヲ大體豫想致シテ居リ
マス次第デアリマス、ソレカラ第二項ニ於
キマシテ、「主務大臣ハ藥劑師ニ非ザル醫藥
品販賣業者ニシテ藥劑師ヲ使用セザルモノ
ノ取扱品目ノ制限ニ關シ必要ナル命令ヲ發
スルコトヲ得」、斯樣ナ規定ヲ設ケテ居ルノ
デアリマス、現在ハ藥劑師デナケレバ、原
則トシテ藥品營業者以外ノモノニ對シ、指定
藥品ノ販賣又ハ投與ヲ爲スコトガ出來ナイ
コトニナッテ居リマス、又賣藥請賣業者ハ
藥品ヲ販賣スルコトガ出來ナイモノトナッ
テ居リマス、此ノ指定藥品ト申シマスルノ
ガ、約百四十二品目及ビ指定藥品ヲ含有ス
ル製劑ニシテ毒藥又ハ劇藥等ニ屬スルモノ
ト云フ風ニナッテ居リマス、是等ノモノハ
藥劑師カ藥劑師ヲ使フモノデナケレバ販賣
ガ出來ナイト云フコトニナッテ居ルノデア
リマス、藥品ハ其ノ性質上、之ガ取扱ニ付
キマシテハ特殊ノ知識經驗ヲ必要トシ、
從ッテ廣ク醫藥品一般ノ販賣ヲ爲スニ付キマ
シテハ、藥學、藥品ニ關シ專門ノ知識ヲ有
スル藥劑師ヲシテ之ニ當ラシメルコトガ萬
全ノ策デアルト考ヘルノデアリマス、併シ
ナガラ一面ニ於キマシテ、醫藥品ノ消費者
タル國民ノ便益ト云フコトヲ考ヘテ參リマ
スレバ、其ノ販賣業者ハ廣ク適正ニ分布セ
ラレルコトガ必要デアルト云フコトモ亦申
上ゲル迄モナイコトト存ズルノデアリマ
ス、現在ノ狀況ニ於キマシテハ、總テ醫藥
品ノ販賣業者ハ藥劑師デアルカ、或ハ又藥
劑師ヲ使用スルモノニ限ルト云フコトハ
實際問題トシテ頗ル困難ト申サナケレバナ
ラナイノデアリマス、ノミナラズ醫藥品ノ種
類ニ依リマシテハ、必ズシモソレ程高度ノ專門
ノ知識ヲ必要トシナイモノガアルノデアリマ
シテ、藥劑師又ハ藥劑師ヲ使用シナイモノ
ニ對シマシテモ、取扱品目ヲ制限シテ醫藥品
ノ販賣業ヲ行フコトヲ認メルコトガ適當デア
ルト考ヘルノデアリマス、從ヒマシテ醫藥
品中ニ現在ノ指定藥品ノ如ク其ノ性質、作
用、特ニ猛毒又ハ變敗シ易イ爲ニ、其ノ取
扱ニ付キマシテ細心ノ注意ヲ要シ、特ニ藥
學及醫藥品ノ鑑別等ニ關シマシテ、專門的
知識經驗ヲ有スル者ヲシテ取扱ハシメ、其
ノ販賣、又ハ授與ノ際ニ醫藥品ノ良否ヲ確
メ、細心ノ注意ノ下ニ之ヲ交付セシメルコ
トヲ必要トスルモノニ付キマシテハ、從來
ト同樣ニ藥劑師、又ハ藥劑師ヲ使用スル販
賣業者ニ限定スルコトト致シマシテ、然ラ
ザル者ニ付キマシテハ、其ノ販賣授與ヲナ
ス者ノ程度ニ應ジマシテ、適當ニ醫藥品ノ
取扱品目ヲ制限致シマシテ、販賣ナサシメルコ
トガ適當ト考ヘルノデアリマス、大體ノ考
ヘ方ト致シマシテハ、只今申シマシタ指定
藥品ニ相常スル物以外ノ藥品ニ付キマシテ
ハ、從來ノ藥種商、之ニ相當スル程度ノ人
達ニ對シマシテハ一般ニ指定藥品以外ノ
物ハ取扱ハシテ差支ヘナイノデハナイカ
下、斯樣ニ考ヘテ居リマスシ、又從來ノ賣
藥ノ受賣業ヲヤッテ居リマスヤウナ人達ニ
對シマシテハ、矢張リ其ノ程度ノ藥ヲ取扱
ハサセルコトニシタナラバ如何デアラウカ
下、斯樣ニ考ヘテ居ル次第デアリマス、尙
醫藥品ノ販賣ニ付キマシテハ、現在ノ制度
ニ於ケル賣藥行商ニ關スル事項、毒藥、劇
藥等ノ販賣授與ノ手續等取締ノ徹底、其ノ
他配給ノ適正ヲ期スル爲ニ、細目ノ事項ヲ
規定スル必要ガアルノデアリマスガ、是等
ハ大體現行法ヲ踏襲スル考ヘデゴザイマシ
テ、何レモ命令ニ讓リタイト考ヘテ居ル次
第デアリマス、次ハ第二十四條ノ規定デア
リマス、此ノ規定ハ新タニ設ケマシタ規定
デゴザイマス、醫藥品ハ國民保健ノ上ニ極
メテ重要ナ關係ヲ持ッテ居リマスル關係上、
其ノ價格ノ點ニ付キマシテモ、常ニ是ガ適
正ヲ期セナケレバナラヌト云フコトハ申ス
迄モナイコトデアリマス、主務大臣ハ保健
衞生上特ニ必要アリト認メマス重要ナル醫
藥品ノ價格ニ付キマシテ、其ノ公正ヲ圖ル
爲ニ必要ナル命令ヲ發シ、又ハ處分ヲ爲シ
得ルコトト致シタノデアリマス、唯ココデ
御斷リ申シテ置キタイト思ヒマスコトハ、
現在醫藥品ノ價格ニ付キマシテハ、國家總
動員法ニ基ク價格等絲制令ノ適用ガアルノ
デゴザイマスガ、差當ッテノ問題ト致シマ
シテハ他ノ物價トノ關係モゴザイマスシ、
價格等統制令ノ規定ノ運用ニ依ッテヤッテ參
リタイト考ヘテ居リマスノデ、當分ノ中此
ノ二十四條ノ規定ヲ發動スルト云フ考ヘハ
致シテ居ラナイノデゴザイマス、第二十五
條ノ規定ハ特ニ申上ゲル必要モナイト存ズ
ルノデアリマシテ、御承知ノ如ク重要ナル
醫藥品ニ付キマシテハ日本藥局方ト云フ
モノガ制定サレテ居ルノデゴザイマス、是
ハ省令デゴザイマス、從來ノ法令ニ於キマ
シテハ、法律ニ其ノ根據ガナカッタノデゴザイ
マスノデ、玆ニ其ノ規定ヲ設ケマシテ、日
本藥局方ガ此ノ藥事法ニ淵源スルト云フコ
トニ致シタノデゴザイマス、ソレカラ第二
十六條ノ第一項ハ、大體從來ゴザイマス規
定ヲ踏襲致シマシテ玆ニ規定ヲ設ケマシタ
次第デアリマス、日本藥局方ニ收載セル醫
藥品ニ關スル規定、其ノ他ニ第二項ヲ設ケ
マシテ、主務大臣ハ保健衞生上特ニ必要ア
リト認メル醫藥品ニ付キマシテハ、性狀品
質ノ適正ヲ圖ル爲、必要ナル命令ヲ發スル
コトト致シタノデアリマス、此ノ主務大臣
ノ發シ得ル命令デゴザイマスガ、只今考ヘ
テ居リマスル點ハ、保健衞生上特ニ必要ガ
アルト認メマスル醫藥品ニ付キマシテ、特
定ノ機關ノ檢査ヲ受ケシメル、或ハ又一定
ノ規格ヲ設ケテ、之ニ從ハシメルト云フ
ヤウナコトヲ此ノ命令デ以テ規定シタイ
ト、斯樣ナ考ヲ致シテ居ル次第デアリマス、
此ノ第二項ハ新タニ設ケマシタ規定デゴザ
イマス、ソレカラ第二十七條デアリマスガ、
是ハ特ニ新タニ規定ヲ設ケマシタ點ノ主ナ
ル點ヲ申上ゲマスレバ、醫藥品ニ付キマシ
テ內容ノ公示ヲサセヨウト云フ考ヘデ以テ
此ノ規定ガ出來テ居ルノデゴザイマス、現在
此ノ藥品營業、竝ニ藥品取扱規則ニハ單ニ醫
藥品ノ容器、又ハ被包ニ假名、又ハ漢字ヲ
以テ其ノ藥ノ名前ヲ記スコトヲ定メテ居ル
ノデアリマス、日本藥局方ノ收載藥品ニ付
テモ其ノ規定ノ適用ガアルバカリデアリマ
スガ、日本藥局方收載藥品ニ付テハ、其ノ
實質ヲ一目瞭然タラシメ、取扱上差支ノナイ
ヤウニ致シマスト共ニ、其ノ純良ヲ保持ス
ル爲ニハ、日本藥局方ナル文字及ビ日本藥
局方名ヲ記載セシメルコトヲ必要ト認メマ
シタノデ、斯樣ニ致シタノデアリマスガ、
日本藥局方以外ノ醫藥品ニ付テハ、現在ハ
新藥、新製劑ニ付テ明治四十四年ノ內務省
令第十八號ニ依ッテ見本品ヲ添ヘ其ノ成分
及ビ分量、成分不明ナルモノハ其ノ本質及
ビ製造法ノ要旨ヲ記載セシメルコトトシ、
又賣藥ニ付テハ花柳病豫防法ニ依ッテ、花
柳病ニ關スル賣藥ニ付テ新藥、新製劑ト同
樣ノ措置ヲ講ジテ居ルノデアリマス、醫
藥品ノ成分等ヲ公示セシメルコトハ、其ノ
内容ヲ明カナラシメルト共ニ、醫藥品相互ノ
移動關係、或ハ又代用關係ト申シマスカ、
代替關係ヲ明瞭ニ致シマスシ、醫師其ノ他ノ
使用者及ビ取扱業者ヲシテ、醫藥品ノ選擇
ナリ又ハ使用ヲ適正ナラシメマスト共ニ、
配給ノ圓滑及ビ品質ノ確保ヲ期スル上ニ於
テ必要ト考ヘラレマスノデ、特別ノ場合ヲ
除キ原則トシテ內容ノ公示ヲ行ハシメルコ
トト致シタノデアリマス、此ノ原則トシテ、
內容ノ公示ヲ致シマシタ例外ト致シマシテ
ハ、命令ヲ以テ別段ノ規定ヲ爲シタル場合
ハ、此ノ限ニ在ラズト云フヤウニ致シテ居
ルノデアリマス、大體ニ於キマシテ內容ノ
公示ヲシテ貰フ積リデ居リマスケレドモ、
時ニハ內容ノ公示ヲスルコトニ依ッテ、其ノ
醫藥品ガ經驗上非常ニ優秀ナ醫藥品デアル
ニモ拘ラズ、使フ人ガ之ヲ嫌フト云フヤウ
ナ場合ガ無キニシモアラズト考ヘラレマス
ノデ、極ク特別ノ場合トシテハ內容ノ公示
ヲシナクテモ宜シイ、斯ウ云フ風ニ規定ヲ
設ケタ次第デアリマス尙從來醫藥品ノ小
分、是ハ製造致シマシタ醫藥品ヲ適當ナ容
器ニ分ケテ、販賣ニ移ス事柄デアリマス、
醫藥品ノ小分ニ付キマシテハ現在何等ノ規
定ガナイノデアリマシテ、不都合ガ少クア
リマセヌシ、又貯藏ノ方法、其ノ他取扱ニ
關シマシテハ、醫藥品ノ特殊性ニ鑑ミマシ
テ詳細ニ規定ヲスル必要ガアルノデゴザイ
ス、事柄ガ細目ニ亙リマスノデ、是等ハ命
令ニ讓ルコトニ致シタノデアリマス、次ヘ
二十八條、廣〓制限ニ關スル規定デゴザイ
やっ、現在醫藥品ノ廣〓ニ付キマシテハ、
賣藥法ニ、賣藥ノ效能ニ關シテハ免許ヲ得
タル事項ヲ說明スルノ外、之ヲ誇張シテ公
示スルコトヲ得ザルコト、竝ニ一定ノ事項
ヲ記載シテハナラナイト云フ旨ノ規定ガア
ルバカリデアリマス、併シナガラ新藥、新
製劑等ノ廣〓制限ノ必要ナルコトハ、賣藥
ト選ブ所ガナイ實情ニアルノデアリマシテ、
醫藥品全般ニ付キマシテ今囘ハ廣〓制限ノ
規定ヲ設ケマシテ、其ノ適正ヲ期スルコトト
致シタ次第デアリマス、第二十九條ニ付キ
マシテハ、格別御說明申上ゲル必要モナイ
カト存ジマス、大體現行法ヲ踏襲シテ規定
ヲ致ス積リデアリマス、ソレカラ第六章監督
ノ第三十條デアリマス、是モ新タニ設ケマ
シタ規定デゴザイマス、主務大臣又ハ地方
長官ハ保健衞生上特ニ必要アリト認メマス
時ニハ、ソレ〓〓ノ業者ニ對シマシテ、當
該業務ニ關シテ、必要ナル指示ヲ爲スコト
ヲ得ト云フ規定デゴザイマス、主務大臣或
ハ地方長官ガ監督官廳トシテ單ニ力ヲ以テ
之ニ臨ムノデナク藥ノ製造販賣、其ノ他各
般ノ事項ニ關シマシテ、其ノ適正ヲ期スル
爲ニ、指導誘抜ヲ加ヘテ、進步發達ヲ圖ッ
テ參リタイト云フ考ノ下ニ、此ノ指示ヲ爲
スト云フコトノ權限ヲ規定致シタ次第デ
ゴザイマス、主トシテ指導誘披ノ趣旨ニ出
タモノデアリマスカラ、罰則ハ伴ッテ居リマ
セヌ、罰則ノナイ規定デアリマスルガ、關
係者ノ協力ニ依ッテ、十分其ノ目的ヲ達シ得
ルモノト考ヘテ居ル次第デアリマス、第三
十一條ハ字句ヲ若干修正致シマシタ外、現
行法ノ通リデアリマス、第三十二條モ大體
現行法ニソレ〓〓規定ガアリマスガ、特
申上ゲテ置キタイト思ヒマスコトハ、藥局
開設者、醫藥製造業者、輸入販賣業者、移
入販賣業者、若シクハ販賣業者ニ付キマシ
テ、當該業務ニ必要ナル報告ヲ徵シ得ルコ
トト致シタ次第デアリマス、從來醫藥品ヲ
ドノ位持ッテ居ルカ、醫藥品ノ所要數量等
ニ付キマシテハ、試驗調劑法ニ基キ、規則
ニ依リマシテ、調劑ヲ行ヒツヽアルノデア
リマスガ、是デハ不十分デアリマスルノデ、
今囘斯樣ナ規定ヲ設ケ、命令ヲ以テ適當ナ
規定ヲ設ケマシテ、醫藥品ノ數量等ニ付キ
マシテモ、常ニ之ヲ明カニ致シテ置キタイ、
斯樣ニ考ヘテ居リマスル次第デアリマス、
尙又從來藥局ノ巡視ト申シマスカ、藥劑師
ヲ監視員トシテ巡視セシメルト云フ規定モ
アッタノデアリマスルガ、近頃デハ藥劑師ヲ
監視員ニ賴ンデ、藥局ヲ巡視セシメルト云
フヤウナコトハ致シテ居リマセヌ、又今後
モ其ノ必要ガナイト考ヘラレマスルノデ、
藥劑師ヲ監視員トスルト云フヤウナ規定
ハ此ノ際削除スルコトニ致シタノデアリ
マイク。第三十三條ハ業者ガ其ノ業務ニ關シ
マシテ、犯罪又ハ不正ノ行爲ガアリマシタ
場合ニ、許可ヲ取消シ、業務ヲ停止シ、又
ハ藥局開設者、醫藥品販賣業者ノ業務ニ關
シマシテ、犯罪又ハ不正ノ行爲ノアリマシ
タ時ノ許可ノ取消、業務ノ停止ト云フ規定
デアリマス、特ニ御說明申上ゲルコトモナイト思
ヒマス、ソレカラ第三十四條、是モ新タナル規
定デアリマス、醫藥品ノ製造業、輸入販賣
業移入販賣業、或ハ又藥局開設、ソレカ
ラ醫藥品販賣業ト云フヤウナモノハ、醫藥
品ノ供給ニ關シマシテハ、極メテ重要ナル
地位ニ立ツモノデアリマシテ、特ニ許可ヲ
受ケテ、ソレ〓〓ノ業務ニ從事シテ居ルモ
ノデアリマスルカラ、其ソ許可ヲ受ケマシ
タ以上ハ、ソレ〓〓其ノ職域ニ於テ働イテ
行カナケレバナラヌト考ヘル次第デアリマ
ス、ゾレガ何ト申上ゲマスカ、謂ハバ權利
ノ上ニ眠ルト申シマスカ、職責ヲ怠ルト云
フヤウナ者ガアリマシテハ、其ノ使命ニ鑑
ミマシテ、誠ニ遺憾ト存ジマスノデ、正當
ノ事由ナクシテ、其ノ業務ヲ行ハナイト云
フヤウナ場合ニ於キマシテハ、許可ノ取消
ガ出來ルト云フ規定ヲ設ケマシテ、勵精其
ノ職分ヲ全ウシテ戴キタイト期待シテ居リ
マスル次第デアリマス、ソレカラ第三十五
條ハ、地方廳ニ對スル職權委任ノ規定デア
リマス、特ニ申上ゲル必要モナイト存ジマ
ス
第三十六條ハ樺太ノ內地移管ニ伴フ關係
ニ於テ此ノ規定ヲ設ケタノデアリマス、從
來ハ樺太ハ法域ヲ異ニ致シテ居リマスルノ
デ、藥劑法ノ適用其ノ他ニ付キマシテモ、
若干差異ガアッタノデアリマスルガ、是ガ來
ル四月一日ヨリ內地ニ編入セラレ、此ノ法
律ガ樺太ニ適用セラルヽ見込ミデアリマス
ルノデ、ソコ等ノ關係ヲ如何ニ致スカ、勅
令ヲ以テ特例ヲ開キ得ルヤウニ致シテ居ル
次第デアリマシテ、是ハ大體他ノ一般ノ措
置ト脱合セマシテ適當ニ善處致シタイト考
ヘテ居ル次第デアリマス、次ニ罰則ノ規定
デゴザイマスルガ、此ノ中第三十七條、第
三十九條、第四十條、第四十一條、之ヲ一
括シテ趣旨ダケ申上ゲテ置キタイト思ヒマ
ス、第三十七條、第三十九條、第四十條、
第四十一條ニ於キマシテ、第一ニ麻藥ニ關
スル違反ノ行爲ニ付キ刑ヲ加重致シタノデ
アリマス、ソレハ今後共榮圈內ノ交通ノ頻
繁化ヲ豫想セラルヽニ當リマシテ、一層麻
藥ニ關スル取締ノ徹底ヲ期シ、民族衞生上
遺憾ナカラシムル必要モアルト考ヘマスシ、
又阿片法トノ權衡モ考慮致シタノデアリマ
ス、ソレカラ醫藥品ノ製造、輸入販賣又ハ
移入販賣ハ醫藥品供給ノ根源ヲ爲スモノデ
アリマスカラ、是ガ適正ヲ圖ルノ必要ガ特
ニ切ナルモノガアリマスノデ、之ニ關スル
コトニ付テ刑ヲ規定致シタノデアリマス、
ソレカラ罰金刑ニ付キマシテハ久シキニ亙
ル時勢ノ推移ニ伴ヒ、貨幣價値ノ變動等モ
アッテ、カナリ古イ時代ノ法律、殊ニ藥品營
業及藥品取締規則ハ議會開設前ノ法律ト云
フヤウナ狀況モアリマスノデ、其ノ刑ガ今
日ノ場合トシテ餘リニ低キニ失スルト云フ
コトモ考ヘラレマスルカラ、ソレ等ノモノ
ニ付キマシテハ他トノ權衡ヲ考慮致シマシ
テ之ヲ改正致シタノデアリマス、次ニ第三
十八條デアリマスルガ、是ハ當該官吏又ハ
其ノ職ニ在リマシタ者ノ祕密ヲ守ル義務ニ
關スル罰則デアリマシテ、從來ハ行政官廳
ノ命令ヲ受ケテ公務ヲ行フ者モ此ノ罰則ノ
適用ヲ受ケテ居ッタノデアリマスルガ、左樣
ナコトハ今後考ヘラレマセヌノデ、處罰ヲ
受クベキ事案ヲ官吏ノ「個人ノ祕密」ニ限定シ
タダケガ從來ト變ッテ居リマス、ソレカラ第
四十二條、第四十三條、第四十四條ハ大體一
般ノ例ニ從ヒマシタダケデ、特ニ御說明申
上ゲル必要モナイト存ジマス、ソレカラ第
四十五條、之ニ付テモ申上ゲル必要ハナイ
ト思ヒマス、第四十六條デアリマスガ、藥
品營業竝ニ藥品取扱規則、賣藥法、藥劑師
法ハ此ノ法律施行ト共ニ廢止セラルヽコト
ニナル譯デアリマスガ、唯藥劑師法中道府
縣藥劑師會、日本藥劑師會ニ付テ特別ノ勅
令ヲ出スコトニ致シテ居ルノデアリマス、
此ノ法律施行ト同時ニ、從來ノ道府縣藥劑
師會、日本藥劑師會ガナクナルト云フコト
ニナリマスト、色々支障ヲ生ズル場合ガ
アリマスノデ、特ニ其ノ間ノ調節ヲ圖リマ
ス爲ニ、特別ナル勅令ヲ出スコトニ致シタ
ノデアリマス、ソレカラ第四十七條、是ハ
大體從來アル規定デアリマシテ、醫師、齒
科醫師又ハ獸醫師ノ調劑ニ關スル規定デア
リマシテ、現在ニ於キマシテハ從前同樣ノ
規則ニ於テ規定ヲ致シテ居ル次第デアリマ
ス
ソレカラ第四十八條ハ前ノ現在ノ藥劑師
法ニ依ッテ藥劑師免許ヲ受ケタルモノハ、此ノ
法律ニ依ッテ藥劑師免許ヲ受ケタモノト看做
スト云フ規定デアリマス、從ッテ同前ノ規定
ト考ヘマス、第四十九條、第五十條、第五
十一條何レモ經過的規定デアリマシテ、特
ニ申上ゲル必要モナイト思ヒマス、ソレカ
ラ第五十二條ハ藥劑師法關係ノ道府縣藥劑
師會及日本藥劑師會ノ權利義務ヲ、此ノ法
律ニ依ッテ設立セラルベキ道府縣藥劑師會
及日本藥劑師會ハソレノ〓之ヲ承繼スルト
云フ規定ヲ設ケマシタノデアリマシテ、特
ニ申上ゲル必要モナイト存ジマス、第五十
三條ハ、從來ノ藥局ニ付テノ經過的規定デ
アリマス、ソレカラ第五十四條ハ、是ハ從
來ノ、例ヘバ藥種商、或ハ製藥者、或ハ賣
藥營業者乃至醫藥請賣業者ト云フヤウナ業
者ノ關係ヲ規定致シマシタノデ、其ノ規定
ニモアリマス通リニ、現ニ此ノ法律施行ノ
際ニ、製造ニ從事シ或ハ販賣ニ從事シテ居リ
マス業者ハ、其ノ仕事ニ付キマシテハ、其
ノ法律ノ施行ノ後ニ於キマシテモ、其ノ法
律ニ依ッテ製造ナリ、或ハ販賣ノ許可ヲ受ケ
タモノト看做サレテ居ルノデアリマシテ、
從來同樣此ノ仕事ラ續ケテ參ルコトガ出來
ルノデアリマス、ソレカラ第五十五條、是
モ大變細イ規定デアリマスガ、醫藥品ノ容
器又ハ被包ニ記載スベキ事項ニ付キマシテ
ハ、現ニ有スル醫藥品ニ付テ、直チニ此ノ
法律ニ依ッテ措置セシメルコトハ、實情ニモ
適シマセヌ、關係業者ニ難ヲ强イルト云フ
ヤウナ結果ニナラナイカト考ヘマスノデ、
二箇年程ノ猶豫期間ヲ置キマシテ、此ノ間
ハ此ノ法律ニ依ラナイデ宜シイト云フコト
ニナッテ居ルノデアリマス、ソレカラ第五十
六條、之ニ付キマシテモ、特ニ申上ゲル
必要ハナイト思ヒマス、舊法ニ依ッテ處罰セ
ラルベキモノハ、矢張舊法ニ依ッテ處罰セラ
V、新シイ法律デハヤラナイ、ソレカラ第
五十七條、是ハ花柳病豫防法ニ、先程チヨツ
ト申上ゲマシタガ、賣藥ノ內容公示ニ關スル
規定ガアリマシテ、今囘ハコチラノ方ニ取
入レマシタノデ削除スルコトニ致シマシ
タ、ソレカラ第五十八條ハ、阿片法中、藥
劑師藥種商ト云フヤウナ言葉ガアリマスノ
ヲ、或ハ又製藥者ト云フ言葉ガアリマスガ、
是等此ノ法律ト總テ步調ヲ合セマシテ、醫
藥品販賣業者、醫藥品製造業者ニ改メルコ
トニ致シタ次第デアリマス、ソレカラ第五
十九條ハ、昭和十五年法律第九十一一號ト申
シマスルノハ、第四條ニ於キマシテ、家畜
傳染豫防法、畜牛結核病豫防法、藥劑師法、
阿片法及藥品營業竝藥日取扱規則ノ適用ニ
付テハ獸醫手ハ之ヲ獸醫師ト見做スト云フ
規定ガアリマス、條文ノコチラガ變リマシ
タノデ、向フノ法令ノ名前ヲ變ヘマシタ次
第デアリマス、大變長イ時間御說明ヲ申上
ゲマシテ、恐縮ニ存ジマスガ、一應〓略ノ御
說明ヲ申上ゲタノデアリマス、尙御質問ガ
アリマシタラ御答ヘ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103459X00219430202&spkNum=2
-
003・高木喜寛
○委員長(男爵高木喜寛君) 藥事法案ノ條
文的ノ御說明ガアリマシタカラ、次ニ船員
保險法中改正法律案ノ條文ニ付テノ御說明
ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103459X00219430202&spkNum=3
-
004・平井章
○政府委員(平井章君) 船員保險法中改正
法律案ノ各條ニ付キマシテ、其ノ趣旨及ビ
內容ヲ御說明ヲ申上ゲタイト存ジマス、過
日ノ委員會ニ於キマシテ厚生大臣カラ船員
保險法中ノ改正法律案ハ大體四點ニ集約出
來ルト云フノデ四項目ニ分ケテ說明ガアッ
タノデアリマスカラ、其ノ四項目ニ分ケマ
シテ全條文ヲソレ〓〓四項目ニ分ケマシテ
關係スル條文ヲ拾ヒ上ゲテ御說明ヲ申上ゲ
タ方ガ分リ易イノデハナイカト思フノデア
リマス、改正ノ第一ノ點ハ船員法ニ依リマ
ス船舶所有者ノ扶助又ハ手當ノ義務ヲ廢メ
マシテ船員保險法ニ依ル保險給付ニ變ヘタ
點デアリマス、是ニ關係スル條文ト致シマ
シテハ法律第三十三條ノ削除ノ點デアリマ
ス、從來御承知ノ通リ船員ニ對スル病氣ニ
ナリマシタ場合ノ醫療ノ給付、醫療ヲ與ヘ
タリ、休ミマシタ場合ノ手當ヲ支給スルニ
ハ、船舶所有者ニ三箇月間ハ義務ガアッタ
ノデアリマス、所ガ最近船員ノ勞務ガ過重
サレテ參リマシテ、傷病モ非常ニ多クナ
リマシタ、從ッテ船舶所有者ノ負擔モ可成リ
大キクナリマスノト、ソレニ應ジテ船員ノ
サウ云ッタ船員法上ノ保護ガ受ケラレナイ
ヤウナ實情ノ場合ガ起ルヤウナ惧レガアリ
マスノト、今一ツハ現在ノ船員保險法ハ船員
法上ノ船舶所有者ノ義務ガ終リマシタ後デ
給付ヲ爲スコトニナッテ居リマスノデ、船員
保險法上ノ給付ヲ致シマス場合ニ於キマシ
テハ船舶所有者ノ義務ガ行レタカドウカト
云フ點ヲ確メナケレバ相成リマセヌノデ、
事務ガ煩雜ニナル爲ニ迅速ニ給付ヲ致スコ
トガ出來マセヌ、左樣ナ實情ニアリマスノ
デ、從來ノ船員法ニ依ル船舶所有者ノ義務ヲ
保險ニ取入レテ、保險デ之ヲ行ッテ行クト云
フコトニ致ス爲ニ第三十三條ノ削除ト云フ
コトニ相成ルノデアリマス、次ニ關係致
シマスノハ三十二條ノ一項ノ改正デアリマ
ス、從來給付、傷病手當金ハ六箇月ト云
フコトニ相成ッテ居リマシタガ、今囘三箇
月間ノ船舶所有者ノ義務ヲ保險ニ取入レ
ラレマシタ關係上、其ノ三箇月ヲ加ヘマシ
テ九箇月間療養ノ給付、傷病手當金ヲ出
スト云フコトニ改マル譯デアリマス、從來
ハ船舶所有者ガ三箇月間ヤリマシテ、後
六箇月間船員保險デヤッテ居リマシタモ
ノヲ船舶所有者ノ義務ヲ保險ニ入レマスカ
ラ、從ッテ保險法ノ給付ガ九箇月ト云フ
コトニ相成ルノデアリマス、但シ現狀ト同
樣ニ致ス關係上療養ノ給付ニ付キマシテハ
當該疾病、又ハ負傷ガ職務ヲ行フニ因ラズ
シテ發シ、且是ニ重大ナル過失ガアル場合
三、現在ト同ジヤウニ六箇月ニシテ、又
傷病手當金ニ付キマシテハ其ノ病氣、怪我
ガ職務ヲ行フニ因ラズシテ發シタル時カ、
又ハ當該疾病、若シクハ負傷ニ付テ重大ナ
ル過失ガアル時ニハ例外的ニナル譯デアリ
マン、ソレカラ之ニ關係致シマス條文トシ
テハ三十條ノ改正デアリマス、傷病手當金
ノ支給ノ條件ヲ緩和致シマシテ、被保險者
ガ療養ノ爲ニ勞務ニ服スルコトガ出來ナイ
場合ハ、其ノ期間標準報酬ノ百分ノ六十ニ
相當スル金額ヲ支給スルト云フ點、從來ヨ
リ支給條件ガ緩和サレテ居ルノデアリマス、
此ノ點ガ變ッテ參ッテ居リマス、ソレカラ次
ニ關係ガアリマスノハ附則ノ第三項デアリ
マス、是ハ此ノ改正法ノ施行前カラ扶助又
ハ傷病手當金ヲ受取リマス者ハ從前ノ規定
ニ依ルト云フ附則ガ付イテ居リマシテ、ソ
レ等ノ條文ノ改正ガ一ノ「船員法ニ依ル船舶
所有者ノ扶助又ハ手當ヲ保險給付」トスルト
云フコトニ關聯スル條文ノ改正デアリマス、
次ノ第二點ハ「戰時危險區域ヲ航行スル船舶
(特定船舶ヲ除ク)」コトニナッテ居リマスガ、
サウ云ッタ船舶ニ乘込ム船員ノ被保險者デア
リマス、期間ニ一定ノ加算ヲ爲スト云フ點
デアリマシテ、之ニ關係致シマス條文ガ二
十二條ノ二デアリマス、戰時下ニ於ケル船
員ノ稼働狀況ノ過激ナル現狀ニ鑑ミマシテ、
其ノ身心ノ疲勞ニ伴フ稼働能率ノ減退ヲ考
慮シマシテ、危險區域ヲ航行スル船舶ニ乘
込ミマシタ期間ニ對シテ三分ノ一ノ加算ヲ
スルト云フ規定デアリマス、玆デ「勅令ヲ以
テ指定スル區域」トゴザイマスガ、是ハ現在
ノ處成ルベク廣イ範圍ヲ認メタイト考ヘテ
居リマス、例ヘバ瀨戶內海ヲ除キマス太平
洋印度洋ト云フヤウニ、廣イ範圍ヲ勅令
ヲ以テ指定致シタイト考ヘテ居リマス、此
ノ指定ノ仕方ニハ色々戰爭地帶或ハ準戰爭
地帶ト云フヤウニ、色々指定ノ仕方ハゴザ
イマセウガ、船ハ時々航行シテ居リマス關
係モアリマスノデ、事務的ニ不可能デアリ
マスカラ、左樣ナ指定ヲ致シマセンデ、成
ルベク廣イ範圍ヲ指定致シテ、其ノ間ヲ主
トシテ航行スル船舶ニハ乘船カラ下船迄ノ
期間ニ付テ三分ノ一ノ割合ノ加算ヲ致シタ
イト考ヘテ居リマス、玆ニ「(主務大臣ノ指定
スル船舶ヲ除ク)」ト斯ウ書イテアリマスノハ
此ノ勅令デ指定致シマスル危險區域ヲ航行
致シマス船舶デアリマシテモ、能ク考ヘテ
見マスト危險モ左シテ大デハナイシ、又身
心ノ疲勞トカ、或ハ稼働狀況ナドガ加重サ
レテ居ルトモ思ハレナイ船舶ガアルノデア
リマス、譬ヘテ申シマスト、日本海方面ノ
沿海區域、或ハ沿海該當區域ヲ航行致シマ
ス所ノ短距離ノ定期航路ヲ通リマス所ノ船
舶ニ乘込ム船員ハ假令勅令ヲ以テ指定致
シマス危險區域デハアリマシテモ加算ヲ認
メル必要モナイカト思ハレマスノデ、サウ
云ッタ特殊ノ船舶ニ付キマシテハ主務大臣
ガ除外スルコトニ相成ル譯デアリマス、加
算ヲ認メマス期間ハ附則第二項ニゴザイマ
スヤウニ、大東亞戰爭ノ始マリマシタ昭和
十六年十二月八日以後デアリマス、終期ニ
付キマシテハ今後ノ戰爭ノ繼續狀態ニ應ジ
マシテ決マル譯デアリマスガ、必ズシモ戰
爭ノ終了ト日ヲ一ニスルトハ考ヘラレナイ
ノデアリマシテ、危險狀態ヲ考慮シテ終期
ハ定メル積リデ居リマス、ソレカラ加算ニ
要シマス費用ハ五十八條ニ第一項ヲ加ヘテ
居リマスガ、全額國庫ノ負擔ト致シテ居リ
マス、保險料ハ徵收致シマセヌデ、此ノ加
算致シマシタモノニ依ル所ノ經費ハ全部國
ノ負擔ニ致シテ居リマス、其ノ經費ハ大凡
我々ノ計算ニ依リマスト、戰爭ガ續キマス
ノガ五年ト致シマスト約千五百萬圓、十年
續クトスレバ三千二三百萬圓モ此ノ加算ノ
爲ニ經費ガ要スルト思ハレルノデアリマス、
加算ヲ認メマス結果、保險法上ノ給付ガ早
ク貰ヘマシタリ、又十五年ニナリマスト貰
ヘルコトニナリマスカラ、自然三分ノ一ダ
ケ早ク貰ヘルコトニナリマスガ、更ニ又年
金ヲ貰ヒマスト、一年ニ付テ一定割合ノ年
金額ノ增加ガアリマスノデ、サウ云ッタ加算
ニ依ル恩典ヲ受ケマス、給付ノ種類ハ、養
老年金、癈疾年金、癈疾手當金、死亡手當
金デアリマス、所謂長期給付ノモノデアリ
マシテ、脫退手當金ダケハ除外致シテ居リ
やっく、脫退手當金ハ保險料ノ拂戾ト云フ內
容ノモノデアリマスカラ、脫退手當金ダケ
ニ付キマシテハ、三分ノ一ノ加算ハ認メテ
居リマセヌ、此ノ二十二條ノ二ト五十八條
ト、附則ノ第二項トガ改正ノ第二點デアリマ
ス、戰時危險區域ヲ航行スル船舶ニ乘込ム
被保險者ノ年金等ノ支給條件デアル被保險
者タリシ期間ニ付テ三分ノ一ヲ加算スルト
云フ點ニ關スル條文デアリマス、第三ハ結
核ニ對スル延長給付ノ支給條件ヲ緩和スル
改正ノ點デアリマスガ、之ニ關係致シ
マスノハ三十二條ノ第二項デアリマス、
從來ノ規定ニ依リマスト、被保險者ガ其ノ
結核性疾患ニ依ッテ給付ヲ受ケヨウトスル
以前ニ、一年間ニ六箇月間繼續シテ被保險
者デナケレバナラナカッタ、卽チ乘船シテ居
ナケレバナラナイ、被保險者タルノ期間ハ
乘船中ノ期間ヲ言ヒマスノデ、具體的ニ言
ヒマスレバ併ナガラ船員ガ病氣ニナ
リマス前ニ一年間ニ六箇月繼續シテ被保險
者デアルト云フヤウナコトハ比較的少イ、
左樣ナ船員ノ勞働狀況ニ相成ッテ居リマス
ノデアルシ、更ニ結核撲滅ノ資ニモ供スル
ト云フ意味合カラ、此ノ條件ヲ緩和致シマ
シテ、病氣ニナリマシタ前一箇年間ニ繼續
シナクテモ宜イカラ、三箇月間被保險者デ
アレバ、更ニ引續イテ一箇年間結核性疾患
ニ關スル醫療ヲ加ヘマシタリ、休メバ手當
金ヲ支給スルト云フヤウナ斯ウ云フヤウニ
條件ヲ著シク緩和スル改正デアリマス、ソ
レガ現行法デハ三十二條ノ第二項ニゴザイ
マス其ノ改正デアリマス、ソレカラ改正ノ
第四點ハ健康保險等ニ卽應致シマシテ、必
要ナ規定ノ整備ヲ爲シタノデアリマシテ、之
ニ關係致シマス條文ハ五十七條ノ二、卽チ福
社施設ヲ法定致シマシテ、政府ハ被保險者
或ハ被保險者デアリマシタ者、又ハ保險給付
ヲ受クル者ノ福社增進ノ爲ニ必要ナ施設ヲ
爲シ得ルコトヲ規定致シタノデアリマス、
其ノ内容ト致シマシテハ保養所或ハ健康診
斷等ノ保健施設デアリマス、或ハ老癈者ニ
對スル保護、輔導施設、職業指導ト云フヤ
ウナ事業ヲ考ヘテ居リマス、第二點ハ二十
八條ノ改正デアリマス、療養ノ給付ノ範圍
ヲ明ニシタ二十八條ノ改正デゴザイマス、
是ハ健康保險法ト同樣ニ法律ヲ以テ、療養
給付ノ內容ヲ明ニ致シ、整備致シタノデゴ
ザイマス、ソレカラ次ハ二十八條ノ三、ソ
レカラ二十八條ノ四、二十八條ノ五、二十
八條ノ六、此ノ四箇條ノ改正ハ保健醫タル
コト、卽チ船員保險ノ醫療ヲ擔當スル醫者、
保健醫タルコトノ强制、竝ニ保健醫ガ診療
ヲ爲ス場合ノ擔當事項或ハ診療ヲ爲シタ場
合ノ報酬ノ公定價ノ規定デアリマシテ、何
レモ曩ノ通常議會ノ御協贊ヲ得マシテ、旣ニ
公布ニナッテ居リマス、健康保健ト全ク同一
ノ制度デアリマシテ、醫療組織ノ整備ニ關
スル規定デゴザイマス、ソレカラ次ハ九條
ノ二ノ改正デアリマス、是ハ行政官廳ガ必
要ガアリト認ムルトキハ、被保險者ノ異動
及ビ報酬竝ニ保險給付ノ決定ニ關シマシテ、
當該官吏ヲシテ被保險者又ハ被保險者タリ
シ者ノ勤務スル場所ニ就イテ、關係者ニ對
シ質問ヲナシ、又ハ帳簿書類其ノ他ノ檢査}
ヲナサシムルコトガ出來ル規定デアリマス、
之モ健康保險法ト步調ヲ合シタ規定デアリ
マシテ、今囘新シク加ヘラレマシタノハ
從來船員保險ノ事務ハ中央デ殆ド執ッテ居
リマシテ、地方ノ事務ハ管海官廳ニ執ッテ
戴イテ居ッタノデアリマスガ、事務ノ簡素化
ノ關係上、中央デ執ッテ居リマシタ事務ヲ地
方廳ニ移管致シマシタノデ、サウナリマス
ト健康保險ト同樣ニ此ノ九條ノ二ノ規定ガ
必要ニ相成リマスノデ、今囘健康保險ト同
樣ニ其ノ規定ヲ設ケタノデアリマス、ソレ
カラ次ハ九條ノ三ト、之ニ罰則ニ關係致シ
マシテ六十八條ノ關係デゴザイマス、是ガ、
行政官廳ハ保險給付ニ關シ必要アリト認ム
ルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リマシテ當該
官吏ヲシテ診療錄其ノ他ノ帳簿書類ヲ檢査セ
シムルコトガ出來ル、之モ健康保險ト同一步
調ニ整備ヲ致シタノデアリマス、船舶所有
者ノ扶助ノ義務ヲ保險ニ入レマシタノデ、
療養ノ給付ガ可成リ廣範圍ニナッテ參ッテ、
其ノ點ニ付キマシテハ健康保險ト同樣デア
リマスノデ、健康保險ト同樣ノ規定ヲ此處
ニ設ケタノデアリマス、其ノ次ハ五十三條
第二項ノ改正デアリマス、他ノ法令ニ依リ國
又ハ公共團體ノ負擔ニ於テ療養費ノ支給又
ハ療養アリタルトキニハ其ノ限度ニ於テ療
養ヲシナイト云フ規定、之モ亦健康保險ト
同樣ニ整備シタノデアリマシテ、療養ノ範
圍ガ非常ニ擴マリマシタ關係上、健康保險
ト同樣ニ致シタノデアリマス、ソレカラ今
一ツハ五十二條ノ改正デゴザイマスガ、是
ハ被保險者又ハ被保險者タリシ者ガ鬪爭、
泥醉若ハ著シキ不行跡ニ因ッテ故意ニ傷病
ヲ發シタト云フ場合ニ於ケル制裁規定デゴ
ザイマシテ、此處ニ加ッタモノハ、療養ノ給
付ノ全部デアリマスガ、之モ健康保險法ト
同樣ニ整備シタ關係デアリマス、卽チ新ニ
船舶所有者ノ療養ノ義務ガ此方ニ入リマシ
タノデ、其ノ療養ニ關スル制裁規定ヲ此處
ニ健康保險ト同樣ニ設ケタノデゴザイマス、
以上デ大體其ノ各關係條文ヲ第四項ニ分ケ
マシテ、其ノ意味ヲ御話申上ゲタノデアリ
マスガ、尙殘リマシタ第二十八條ノ第二ノ
改正ハ、是ハ現在勅令ニアリマスモノヲ第
二十八條以下數條ノ條文ノ關係上此處へ整
備サレテ上ガッテ來タト云フニ過ギマセヌ
ノデ、內容的ニハ現在ノ勅令ト同樣デアリ
マシテ、「勅令ヲ以テ定ムル期間」十申シマス
ノハ、大體十日間ヲ定メル、是ハ現在ト同
樣ノ方針デ居リマス、ソレカラ第三十一條
中ノ改正、「診療所」ノ上ニ「病院又ハ」ヲ加ヘ
マシタノハ、他ノ法令トノ關係上字句ノ整備
ニ過ギナイノデアリマス、ソレカラ第五十
三條第三項中ノ改正、第八節ノ前ノ處ニア
リマスガ、同條第三項中「前項ニ揭グル者」
ノ下「ニシテ病院又ハ診療所ニ收容セラレタ
ルモノ」ヲ加フト書イテアリマスノハ、此ノ
改正モ矢張リ字句ノ整備ニ過ギナイノデア
リマス、ソレカラ附則ノ四項ニ第二條中「保
險給付費」ノ下ニ「福祉施設費」ヲ加フトアリマ
ス、此ノ船員保險特別會計法中ノ改正ガ此
處ニ載ッテ居リマスノハ、福社ニ關スル規
定ヲ別ニ設ケマシタ關係上、特別會計法ニ
モ福社施設費ト云フモノヲ加ヘテ整理シタ
譯デアリマス、ソレカラ最後ノ「昭和十五年
法律第十四號中左ノ通リ改正ス」トアリマス
ノハ、其ノ改正ノ內容ハ、結局第五十八條
ノ改正ニ卽應スルモノデアリマシテ第二
十二條ノ二ノ規定ニ依ル經費、卽チ危險區
域ヲ航行スル場合ニ於ケル三分ノ一ノ加算
ノ經費ハ國庫ガ負擔スルコトニナッデ居リ
マスノデ、其ノ國庫ノ負擔シタ部分ヲ除イ
テノコトニナリマスカラ、是モ其ノ關係上
當然ノ字句ノ整理デアリマス、以上ヲ以チ
マシテ各條文ノ改正ノ四點ニ分ケテ其ノ大
體ノ御說明ヲ終ッタ次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103459X00219430202&spkNum=4
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005・高木喜寛
○委員長(男爵高木喜寛君) 船員保險法中
改正法律案ノ御說明ガ終リマシタ、次ニ軍
事扶助法中改正法律案ノ御說明ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103459X00219430202&spkNum=5
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006・高辻武邦
○政府委員(高辻武邦君) 軍事扶助法中改
正法律案ノ內容ニ關シマシテ私カラ御說明
申上ゲマス、軍事扶助法ヲ改正致シタイト
思ヒマス點ハ三點ニ亙ツテ居ルノデアリマ
スガ、此ノ三點ニ關シマシテ順次御說明申
上ゲタイト思ヒマスルガ、軍事扶助法ハ、
御承知ノ通リ扶助ヲ致シマス對象ハ傷病兵、
ソレカラ其ノ傷病兵ノ家族若クハ其ノ傷病
兵ガ死歿致シマシタ際ノ遺族、是ガ軍事扶
助法ノ對象デアリマス、更ニ又傷病兵デナ
ク、現ニ服役致シテ居リマス處ノ下士官兵
ノ家族及其ノ下士官兵ガ死歿致シマシタ際
ノ遺族、是ガ軍事扶助法ニ依ッテ扶助ヲ受
ケル對象ニ相成ッテ居ルノデアリマス、ソ
レデ今申上ゲマシタ傷病兵デアリマスガ、
其ノ傷病兵ト申シマスノハ、本法ノ第二條
ニ於キマシテ傷病兵ノ範圍ヲ定メテ居ルノ
デアリマス、第二條ニハ「本法ニ於テ傷病兵
ト稱スルハ左ノ各號ノ一ニ該當スル者ヲ謂
フ」ト云フ風ニ現行法ガ規定ヲシテ居リマシ
テ、此ノ第二條ノ內容ガ第一號ト第二號ニ
分カレテ居ルノデアリマス、第一號ハ、戰
鬪若クハ公務ノ爲傷痍ヲ受ケ、若クハ疾病
ニ罹リマシテ、之ガ爲ニ一種以上ノ兵役ヲ
免ゼラレタ場合ニ之ヲ傷病兵ト致スノデア
リマス、ソレカラ次ハ第二號デアリマスガ、
此ノ第二號ニ依リマスト云フト、戰鬪若ク
ハ公務ノ爲傷痍疾病ニ罹ル場合デナクシテ、
通常ノ現役ニ服役致シテ居リマス際、若ク
ハ應召中ノ期間ニ於キマシテ、本人自身ノ
故意又ハ重大ナル過失ニ因ルコトナクシテ
傷痍ヲ受ケ若クハ疾病ニ罹リマシタ際ニ
ハ、而シテ其ノ者ガ一種以上ノ兵役ヲ免ゼ
ラレマシタ場合ニ於キマシテハ、是亦傷病
兵ト致シマシテ本法ニ依ッテ扶助ヲ受ケル
コトニナッテ居ルノデアリマス、只今申上
ゲマシタ通リ、現行法ノ第一號、第二號何
レモ一種以上ノ兵役ヲ免ゼラレルト云フ行
政上ノ處分ガ扶助ヲ受ケル資格ノ一ツノ條
件ニ相成ッテ居ル次第デアリマス、然ルニ先
般兵役法ノ施行令及身體檢査規則ガ改正
ニナリマシテ、御承知ノヤウニ兵員ノ要員
ト云フモノガ非常ニ增大致シテ參リマシタ
爲ニ、右申上ゲマシタヤウニ兵役法施行令
及身體檢査規則ガ改正ニナリマシテ、從來
ヨリモ合格者ノ範圍ガ著シク增大ヲ致シテ
居ル際デモアリマスシ、又現役ニ編入セラ
ルヽ者ノ數モ非常ニ增大致シテ參ッテ居ル
ノデアリマス、卽チ言ヒ換ヘテ申上ゲマス
ルト、些少ナ身體的ノ故障ガアリマシテモヽ
ソレハ合格者トシテ兵役ニ服セシムルト云
フコトニ相成ッテ參ッテ居ルノデアリマス、
ソコデ之ニ伴ヒマシテ必然ノ結果ト致シマ
シテ、從來戰鬪若クハ公務ニ因リ又ハ入營
中、應召中、本人ノ故意又ハ重大ナル過失
ニ因ルニ非ズシテ傷痍疾病ヲ受ケマシタ場
合ニ、其ノ傷痍疾病ガ比較的輕微ナル故障
デアリマシタル場合ニハ、從來ノ一種以上
ノ兵役免除ト云フ行政處分ニ依ラズシテ、
本人ハ從來ノ一種ノ儘デ退營ナリ若クハ召
集解除ニ相成リ、若クハ今申上ゲマシタヤ
ウニ一種以上ノ兵役免除ト云フ行政處分ニ
依ラズシテ、單ニ現役滿期ト云フコトデ退
營ニナルト云フヤウナ取扱ニナッテ參ッテ
居ルノデアリマス、ソコデ現行法ノ儘デ進
ンデ參リマスト、先程申上ゲマシタヤウニ、
一種以上ノ兵役免除ト云フコトガ傷病兵ノ
資格條件ニ相成ッテ居ルノデアリマス爲ニ、
事實上扶助ヲ受ケナケレバナラヌモノガ扶
助ノ範圍カラ漏レル關係ニ相成ッテ來テ居
ル譯デアリマス、ソコデ今囘此ノ點ヲ改正
致シマシテ、從來ノ第二條第一號、第二號
ニ更ニ附加ヘマシテ新タニ第三號ヲ設ケマ
シテ、一種以上ノ兵役ヲ免ゼラレルト云フ
ヤウナ行政上ノ處分ヲ受ケナイモクデアリ
マシテモ、矢張リ傷痍疾病ノ程度デアリマ
シテ、一定ノ身體的ニ故障ヲシテ居リマシ
タ場合ニハ之ヲ傷病兵トシテ扶助ヲシテ參
ルコトガ妥當ト考ヘラレルノデアリマス、
ソコデ第三號ニ加ヘマスル條文ハ、「前二號
ニ揭グル者ヲ除クノ外退營シ又ハ召集解除
セラレタル陸海軍下士官兵ニシテ戰鬪者ハ
公務ノ爲又ハ故意若ハ重大ナル過失ニ因ル
ニ非ズシテ現役中」、此ノ現役中ト申シマス
ト未入營期間及歸休期間ヲ除クノデゴザ
イマスガ、其ノ「現役中若ハ應召中ニ傷痍ヲ
受ケ又ハ疾病ニ罹リ恩給法第六十六條第一
項ノ規定ニ依リ勅令ヲ以テ定ムル傷病ノ程
度以上ノ貽後障碍ヲ有スルモノ」ト云フ規定
ヲ設ケマシテ、只今御說明申上ゲマシタヤ
ウナ、事實上扶助ヲ必要トスル者ヲ扶助ヲ
シテ參リタイト存ズルノデアリマス、コ、
ニ附加ヘマシタ第三號ノ條文ノ中デ、「恩給
法第六十六條第一項ノ規定ニ依リ勅令ヲ以
テ定ムル傷病ノ程度」ト申シマスト云フト
此ノ傷痍疾病ノ程度ハ現在ノ恩給法ノ規定
ニ依リマスト云フト、三階段ニ分レテ居リマ
シテ、最モ重症ノ程度ハ項症デゴザイマス、
次ハ欵症デゴザイマシテ、比較的輕易ナル
傷痍疾病ハ目症ト唱ヘテ居ルノデアリマ
ス、ソコデコヽニ書イテアリマス「第六十六
條第一項ノ規定ニ依リ勅令ヲ以テ定ムル傷
病ノ程度」ト申シマスノハ、只今申上ゲマシ
タ目症ノ程度ヲ指スモノデゴザイマシテ、
此ノ程度以上ノ傷病デアリマシテ、「貽後障
碍ヲ有スルモノ」、貽後障碍ト云フ言葉ハ、
御承知ノ如ク、是ハ其ノ症狀ノ狀態ガ〓ネ
固定ヲ致シテ居リマシテ、其ノ結果現ニ唯
身體的ノ故障ヲ殘シテ居リマス其ノ場合
トソレカラ現ニ症狀ガ繼續中デアリマシ
テモ、事實上現在身體的ノ故障ヲ持ッテ居リマ
ス場合ニ之ヲ貽後障碍ト云フ風ニ名付ケテ
居ルノデアリマスガ、サウ云フ身體的ナ障
碍ヲ有スル者ニ對シテ軍事扶助法ニ依ッテ
扶助ヲ致シテ參リタイ、斯樣ニ考ヘテ居ル
ノデアリマシテ、是ガ改正ノ第一點デゴザ
イマス、次ハ改正ノ第二點デゴザイマス
ルガ、第二點ハ、現行法ニ依リマスト云
フト、兵ニ付キマシテハ、其ノ兵ガ現役
中ノ者デアリマセウトモ、應召中ノ者デ
アリマセウトモ、ソレ等ノ家族ハ本法ニ
依ッテ矢張リ扶助ノ對象ニ相成ッテ居ルノデ
アリマスルガ、下士官ニ付キマシテハ、其ノ
下士官ガ應召中デアリマスル場合ニ於テノ
ミ其ノ家族ヲ本法ニ依ッテ扶助ヲ致スコ
トニ相成ッテ居ルノデアリマシテ、現役ノ
下士官ニ付キマシテハ、其ノ家族ハ本法ノ
扶助ノ範圍カラ除外ヲ致シテ居ルノデアリ
ママ、然ルニ近來ノ狀況ニ依リマスト云フ
下、下士官ノ要員ト云フモノガ非常ニ增大
ヲ致シテ參ッテ居リマスル爲ニ、現在ニ於
キマシテハ本人ノ意思ニ依ラズシテ下士官
ニ採用ニ相成ル途モ開カレテ居リマスル
シ、假令又本人ノ意思ニ依ツテ下士官ニ相
成ル場合ニ於キマシテモソレハ矢張リ兵役
義務ノ服務ノ延長ト認メナケレバナラヌト
考ヘラルヽノデアリマシテ、現行法ノ如ク、
現役ノ下士官ト應召ノ下士官ヲ區別致シマ
シテ、本人ノ自由意思ニ依ルモノトシテ現
役ノ下士官ノ家族ヲ本法ノ適用カラ除外ヲ
致シマスコトハ應召中ノ下士官ノ家族ト
ノ權衡カラ考ヘマシテ當ヲ失スルト考ヘラ
ルヽノデアリマス、ソレデアリマスカラシ
テ、今囘本法ヲ改正致シマシテ、下士官ノ
家族ニ付キマシテハ、其ノ下士官ガ現役ノ
者デアリマセウトモ、又應召中ノ者デアリ
マセウトモ、等シク其ノ家族ヲ本法ノ適用
ノ範圍ニ致シテ參リタイ、斯樣ニ考ヘタ次
第デアリマス、之ニ關シマシテ此ノ第三
條第四條、第五條、是等ノ條文ガ關係ヲ
致スノデゴザイマスルガ、改正條文ハ稍〓
複雜致シテ居リマスルケレドモ、此ノ三箇
條ノ改正點ハ、只今御說明申上ゲマシタ第
一點及第二點ニ關聯致シマシテ字句ヲ改正
致スコトノ案ニ相成ッテ居ル譯デゴザイマ
ス、第三條ノ條文ハ家族ノ範圍ヲ、規定ヲ
致シテ居ルデアリマスルガ、此ノ家族ノ範
圍ニ關スル規定ノ中デ陸海軍現役兵、應召
中ノ陸海軍下士官兵、サウ云フ者ノ配偶者
又ハ子デアリマストカ、或ハサウ云フ者ニ
依ッテ扶養ヲ受クルベキ者デゴザイマスト
カ、或ハサウ云フ者ノ同一ノ世帶、一匹シ
時期ニ於テ同一世帶ニアッテ、現ニ引續キ
其ノ世帶ニアル者ト云フヤウナモノヲ家族
ト致シテ居ルノデゴザイマスガ、此ノ家族
ノ範圍ヲ定メテ居リマス條文ニ於キマシテ、
「陸海軍現役兵、應召中ノ陸海軍下士官兵」
ト云フ字句ヲ「現役若ハ應召中ノ陸海軍下
士官兵」ト改正致シマスノガ、第一點ノ改
正ニ伴ヒマスル當然ノ結果デゴザイマス、
ソレカラ「現役兵ノ入營シタル時、下士官
兵ノ應召シタル時又ハ傷病兵ノ兵役ヲ免セ
ラレタル時」ト云フ字句ガ同條ニ於テ使ツ
テアリマスガ、之ヲ「下士官兵ノ入營」括
弧致シマシテ「在〓ノ下士官兵ニシテ現役
下士官ト爲ル場合ヲ含ム以下同ジ」括弧ヲ
閉ジマシテ、「若ハ應召シタル時又ハ傷病兵
タルニ至リタル時」斯樣ニ改正ヲ致シタイ
ト考ヘルノデアリマスガ、是ハ矢張リ先刻
說明申上ゲマシタ第一點ニ關聯致シテ居ル
ノデゴザイマシテ、斯樣ニ字句ノ修正ヲ致
ス譯デアリマス、「ソレカラ現役兵ノ入營シ
タル時、下士官兵ノ應召シタル時又ハ傷病
兵ノ兵役ヲ免ゼラレタル時」ト云フ字句ヲ
「下士官兵ノ入營若ハ應召シタル時又ハ傷
病兵ノ傷病兵タルニ至リタル時」ト斯樣ニ
改正ヲ致シタイト存ズルノデアリマスガ、
是亦先刻申上ゲマシタ第一點第二點ニ關聯
致シマシテ、字句ノ訂正ヲ致ス譯デアリマ
ス、尙第三條ノ第二項ニ於キマシテ「陸海
軍現役兵」トアリマスルモノヲ「陸海軍下
士官兵」、ソレカラ「未入營現役兵及歸休兵」
トアリマスモノヲ「未入營兵及歸休下士官
兵」ト訂正致シマスノモ、是亦第一點第二
點ノ改正ニ伴フ字句ノ修正デゴザイマスガ
但シ最後ノ所ニアリマス「歸休下士官兵」
ト云フ字句デゴザイマスガ、從來ハ「歸休
兵」ト相成ッテ居リマシタノヲ「歸休下士官
兵」ト致シマスノハ、海軍ノ制度ニ於キマ
シテ、歸休ノ下士官ガ現在ノ制度デゴザイ
マスノデ、之ヲ矢張リ字句ノ修正ノ中ニ入
レテ居ル譯デゴザイマス、ソレカラ次ハ第
四條デゴザイマスガ、第四條ニ於キマシテ
モ、「傷病兵ノ兵役ヲ免セラレタル時」ト云
フ字句ガアリマスガ、「傷病兵ノ傷病兵タル
ニ至リタル時」ト訂正致シマスノハ、第
點ノ改正ニ伴フ字句ノ修正デアリマス、第
五條ニ於キマシテ、「現役兵ノ入營、下士
官兵ノ應召」ト云フ字句ガ現行法ニ使ッテ
ゴザイマスガ、之ヲ「下士官兵ノ入營應召」
ト云フ風ニ改メマスノモ、矢張リ是ハ先刻
御說明申上ゲマシタ改正ニ伴フ字句ノ修正
デゴザイマス、以上ガ第一點及第二點ノ改
正點ト、竝ニシテ伴ヒマス條文ノ修正ノ御
說明ヲ申上ゲタ譯デアリマス、次ハ第三點
デゴザイマス、第三點ノ改正ハ、此ノ現在ノ法
律ノ第十三條ノ二ニ規定ガゴザイマスル、
十三條ノ二ノ規定ニ依リマスト、下士官兵
ガ退營若クハ召集解除ヲ致シマシテ歸ッタ
際ニ於キマシテ、若シ必要ガアリマスルナラ
バ、二十日以內ノ時期ヲ限ッテ從來通リノ扶
助ヲ繼續シテモ宜シイト云フコトニ相成ッテ
居ルノデアリマス、然ルニ最近ノ情勢ニ依リマ
スト、歸ッテ參リマシテカラ元ノ生業ニ復歸
致シマストカ、或ハ新ナル業務ヲ求メテ就
職ヲ致シマストカ、サウ云フヤウナコトニ
於キマシテモナカ〓〓一一十日以内ト云フ期
間デハ思フヤウニナラナイト云フ狀態ニ相
成ッテ居リマスシ、戰爭ノ區域ガ非常ニ擴大
致シテ居リマスル爲ニ、戰地ニ於キマシテ
色々ノ疾患ニ罹リマシテ、ソレガ治癒致シ
マシテ歸リマシテモ、ドウモ比較的短カイ
期間ニ生業ヲ得ルト云フコトハ身體ノ關
係カラ申シマシテモ無理デゴザイマスシ、
假ニ是ガ就職スルニ致シマシテモ又病氣ガ
再發スル虞ガアリマスノデ、現在ノ二十日
以內ト云フコトハ最近ノ情勢カラ見ルト適
當デハナイノデハナイカ、寧ロ是ハ三箇月
以內ト云フ風ニ改メルコトガ適當デハナイ
カト考ヘマシテ、二十日以內ノ扶助ノ繼續
期間ヲ三箇月以內ト云フコトニ延長致シタ
イト考ヘタ譯デアリマス、現在ノ第十三條
ノ二ノ中デ、「現役兵ノ退營又ハ下士官兵ノ
召集解除」ト云フ字句ヲ使ッテ居ル部分ガア
リマスガ、是ノ「下士官兵ノ退營又ハ召集
解除」ト云フ風ニ字句ノ改正ハ、先刻申上
ゲマシタ改正點ニ關聯スルモノデアリマス、
次ニ二十日以内ト云フノヲ三箇月以内ト致
シマシタノガ只今御說明申上ゲマシタ第三
點ノ改正點デゴザイマス、以上ヲ以チマシ
テ改正條文ノ說明ヲ終ッタ次第デゴザイマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103459X00219430202&spkNum=6
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007・高木喜寛
○委員長(男爵高木喜寛君) 委員ノ方々ニ
申上ゲマス、三法案ニ對スル政府ノ御說明
ハ終リマシタノデ、今日ハ此ノ程度ニ於テ
散會致シタイト思ヒマス、御異議ゴザイマ
セヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103459X00219430202&spkNum=7
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008・高木喜寛
○委員長(男爵高木喜寛君) 尙次囘ハ明日
午前十時ニ致シタイト思ヒマス、尙質疑ノ
經過ニ依リマシテハ、或ハ午後迄續行スル
カモ知レマセヌカラ、左樣御承知ヲ願ヒマ
ス、是ニテ散會致シマス
午後零時四分散會
出席者左ノ如シ
委員長男爵高木喜寛君
副委員長長世吉君
委員
公爵桂廣太郞君
侯爵東〓彪君
伯爵酒井忠正君
子爵實吉純郞君
子男入江爲常君
男爵高崎弓彥君
長谷川赳夫君
男爵加藤成之君
中川望君
堀啓次郞君
松井貞太郞君
岩田三史君
渡邉覺造君
政府委員
厚生次官武井群嗣君
厚生省衞生局長灘尾弘吉君
厚生省保險局長平井章君
軍事保護院副總裁藤井孝夫君
軍事保護院援護局長高辻武邦君
厚生書記官木村忠二郞君
同菊池武夫君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008103459X00219430202&spkNum=8
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