1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十八年二月十二日(金曜日)午後一時四十分開議
出席委員左の如し
委員長 前田房之助君
理事 阿子島俊治君 理事 中助松君
理事 羽田武嗣郎君 理事 水谷長三郎君
理事 森口淳三君 理事 米田吉盛君
青木精一君 木下郁君
伊禮肇君 今成留之助君
有馬英治君 河上丈太郎君
北れい吉君 喜多壯一郎君
阪本勝君 鈴木正吾君
高木義人君 中村梅吉君
中井川浩君 中西敏憲君
中原謹司君 野口喜一君
林信雄君 濱田尚友君
一松定吉君 福家俊一君
藤本捨助君 松本忠雄君
牧野良三君 牧原源一郎君
三浦一雄君 村松久義君
眞崎勝次君 吉田賢一君
渡邊泰邦君
同日委員河上哲太君辭任に付其の補闕として白川久雄君を議長に於て選定せり
出席國務大臣左の如し
厚生大臣 小泉親彦君
出席政府委員左の如し
法制局長官 森山鋭一君
法制局參事官 入江俊郎君
厚生次官 武井群嗣君
厚生省勤勞局長 持永義夫君
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本日の會議に上りたる議案左の如し
戰時行政特例法案(政府提出)
許可認可等臨時措置法案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=0
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001・前田房之助
○前田委員長 是ヨリ會議ヲ開キマス、質
疑ニ入ルニ先ダチ、審議ノ參考ニ供スル爲
メ、政府ヨリ十六年度十七年度ノ勞務統計
ニ付テノ御說明ヲ願ヒタイト存ジマスー
持永政府委員-速記ヲ中止致シマス
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=1
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002・前田房之助
○前田委員長 ソレデハ、是ヨリ質疑ニ移
リマス-水谷長三郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=2
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003・水谷長三郎
○水谷委員 大臣ハマダ來ラレナイデセウ
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=3
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004・前田房之助
○前田委員長 厚生大臣ハ只今豫算委員會
ニ御出席ノヤウデアリマスカラ、厚生大臣
御出席マデ政府委員ニ對スル質疑ヲ行ハレ
ンコトヲ希望致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=4
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005・水谷長三郎
○水谷委員 先達テ戰時行政特例法案第一
號該當事項トシテ資料ヲ戴イタノデアリマ
スガ、ソレニ關シテ若干御質問シテ置キタイ
ト思フノデアリマス、大體工場法ト鑛業法ト
ノコトニナツテ居リマスガ、此ノ工場法ニ一、
二、三ト三ツニ分ケテアツテ、一ハ重點產
業ニ於ケル十六歲未滿ノ者及ビ女子ノ就業
時間制限、深夜業禁止、休憩時間制限ヲ緩
和ス、是ガ工場法第三條、第四條、第七條
ト云フコトニナツテ居ルノデアリマスガ、
其ノ工場法ノ第三條ニ依リマスト、「工場主
ハ十六歲未滿ノ者及女子ヲシテ一日ニ付十
一時間ヲ超エテ就業セシムルコトヲ得ス」
第二項ニ、「主務大臣ハ業務ノ種類ニ依リ本
法施行後十五年間ヲ限リ前項ノ就業時間ヲ
二時間以内延長スルコトヲ得」斯ウ云フコ
トニナツテ居ルノデアリマス、サウ致シマ
スト、現行法ニ依リマシテモ工業主ハ原則
トシテ十六歲未滿ノ者及ビ女子ハ十一時間
ヲ就業サセ、更ニ業務ノ種類ニ依ツテハ二
時間以内延長スルコトガ出來ル、合計十三
時間働カスコトガ出來ルト云フコトニナツ
テ居ルノデアリマスガ、若シ此ノ度ノ所謂
立法ニ依リマシテ結局是ノ制限ヲ緩和スル
ト云フコトニナリマストサウ云フヤウナ
十六歲未滿ノ者及ビ女子ノ就業時間制限ハ
一體ドノ所ニ目安ヲ置カレルコトニナリマ
スカ、其ノ點ヲ先ヅ御聽キシタイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=5
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006・持永義夫
○持永政府委員 只今ノ御質問デゴザイマ
スガ、工場法ノ第三條ノ禁止、制限ヲドノ
程度ニ緩和スルカト云フコトニ付キマシテ
ハ何時間ト云フコトハマダ確定致シテ居リ
マセヌ、唯大體ノ考ヘ方ト致シマシテハ、勿
論斯ウ云フヤウナ弱イ者デアリマスカラサ
ウ無制限ニ延バスト云フコトハドウカト云
フ風ニ考ヘマスノデ、是ハ各仕事ノ性質或
ハ工場事業場ノ性質等ヲ考慮シマシテソレ
ニ適應シタヤウニ緩和スルト云フコトガ大
切ダト思ヒマス、ソレガ爲ニハ或ハ地方ニ
居リマスル工場關係ノ監督官或ハ勞務官ト
云フモノヲ活用シマシテ、各事業ニ適應シ
タヤウニヤツテ行キタイト思ツテ居リマ
ス、一律ニ何時間ト云フコトニ決メマス
ト又各事業ノ仕事ニ適應シタト云フ風ニ
ヤリマスト割ニ樂ニ行クト思ツテ居リマ
ス、目下ノ所確定シタ何時間延バスト云フ
コトハ考ヘテ居リマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=6
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007・水谷長三郎
○水谷委員 厚生省ノ御考ヘト致シマスレ
バ、個々別々ニ依ツテ具體的ニ決メナクテ
ハナラヌノデアリマセウガ、最大限ハドノ
位延バス可能性ガアルカ、叉延バシテモ宜
イト云フヤウナ御考ヘヲ持ツテ居ルカ、其
ノ點ヲ聽キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=7
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008・持永義夫
○持永政府委員 ソレニ付キマシテハ、此
ノ法律案ガ通リマシテ、愈、實施スル際マデ
ニハ全般的ニドノ位マデ延バシ得ルカト云
フコトヲ大體確定シタイト思ヒマスガ、現
在ノ所デハ時間モマダドノ位延長シタラ宜
イカト云フコトハ確定致シテ居リマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=8
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009・水谷長三郎
○水谷委員 諄イヤウデスガ、其ノ十三時
間以上相當上廻ハルコトハアルデセウカ、
ドウデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=9
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010・持永義夫
○持永政府委員 場合ニ於テハアリ得ルト
思ヒマス、唯其ノ場合デモ出來ルダケ餘リ
長クシナイヤウニト云フ風ニハ考ヘテ居リ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=10
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011・河上丈太郎
○河上(丈)委員 一寸關聯シテ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=11
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012・前田房之助
○前田委員長 河上丈太郞君ニ發言ヲ許可
致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=12
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013・河上丈太郎
○河上(丈)委員 今ノ水谷君ノ質問ニ關聯
シテデスケレドモ、今度特例ガ實施サレテ緩
和サレル業界ノ方カラ、此ノ十六歲未滿又
ハ女子ノ就業時間制限ハ困ル、モツト緩和
シテ貰ヒタイト云フ風ナ要求ガ相當ニアツ
タカドウカ、又ソレナラバドノ位マデ制限
ヲ緩和シテ貰ヒタイト云フヤウナコトガ、今
日マデ厚生省ノ方ニドノ位マデト云フヤウ
ナ、ソンナ風ナ陳情ト申シマセウカ、サウ
云フ風ナコトガ現實ニドウ起ツテ居ルノカ
ト云フコトヲ一ツ御伺ヒ致シマスト、之ヲ
緩和スルコトニ依ツテ現實上ニ生產ガ增强
サレルカ、或ハ其ノ業界ニ於ケルサウ云フ
問題ガアルカドウカト云フ風ナコトヲ承レ
バ、今ノ水谷君ノ質問モ大變具體的ニ分ツ
テ來ヤセヌカト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=13
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014・持永義夫
○持永政府委員 率直ニ申上ゲマスト、私
共ノ知リ得ル範圍ニ於キマシテハ、其ノ條
文ヲ變ヘテ時間ヲ延長ジテ貰ヒタイト云フ
ヤウナ特ニ御希望ハ聽イテ居リマセヌ、唯
今般政府トサレマシテ戰時行政特例法ヲ制
定サレテ、從來各種ノ制限禁止事項ニ付テ、
問題ニナルヤウナ事項ハドウカト云フヤウ
ナ意味カラ、厚生省トシマシテ先ヅ考ヘラ
レルノハ、斯ウ云フ事項デアルト云フ風ニ
考ヘテ居ル次第デアリマシテ、一般的ニサ
ウ云フコトガアツタト云フコトハ全然ゴザ
イマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=14
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015・水谷長三郎
○水谷委員 其ノ次ノ第二ノ問題ハ、工場
法ノ第四條デゴザイマスガ、現行ノ工場法
ニ依リマスト「工業主ハ十六歲未滿ノ者及女
子ヲシテ午後十時ヨリ午前五時ニ至ル間ニ
於テ就業セシムルコトヲ得ス但シ行政官廳
ノ許可ヲ得タルトキハ午後十一時迄就業セ
シムルコトヲ得」トアリマスガ、此ノ度ノ所
謂特例ニ依リマスト結局是ガドノ程度ニ緩
和サレルカ、卽チ時間ヲ十一時マデ延バス
ト云フコトデハナシニ徹夜モサスト云フ工
合ニナルノカドウカト云フ點ヲ御說明願ヒ
タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=15
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016・持永義夫
○持永政府委員 此ノ工場法ノ第四條ノ所
謂深夜業ノ禁止事項ニ付キマシテモ、御話
ノヤウニ現在デハ但書ニ依ツテ十一時マデ
就業セシムルコトニナツテ居リマスガ、之
ヲソレデハ何時マデ深夜業トシテ認メルカ
ト云フコトニ付キマシテハ、マダ現在ノ所
デハ決ツテ居リマセヌ、先程申上ゲマシタ
第三條ト同ジヤウナ趣旨ニ於テ、サウ是ハ
延長スベキモノデナカラウ、各工場ノ實情
ニ應ジテ、生產擴充上必要ナ場合ニ於キマ
シテ認メナクテハナラヌト云フ風ニ考ヘテ
居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=16
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017・水谷長三郎
○水谷委員 サウシマスト、是ハ一々聽キ
マシテモ其ノ程度ノ御答辯シカ得ラレナイ
ト致シマスト、此ノ二ト三モ取敢ズ就業禁
止ヲ緩和スルトカ、十六歲未滿ノ者及ビ女
子ノ危險業務ノ禁止緩和ト云フコトガアル
ガ、此ノ緩和ノ程度ト云フモノハ大體今ノ
所デハ具體的ニ其ノ御說明ガ願ヘナイカド
ウカ、或ハ又第七條ノ十六歲未滿ノ者及ビ
女子ニ對スル每月少クトモ二日ノ休日ト云
フヤウナコトモ、是等ハ緩和スルト言ヘバ、
ドノ位ニ具體的ニ緩和ヲシテモ宜イノカト
云フヤウナコトヲ、モウ少シ具體的ニ伺ヒ
タイト思フノデスガ、ドウデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=17
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018・持永義夫
○持永政府委員 具體的ニ一々御說明申上
ゲルト宜イノデアリマスガ、實ハ此ノ前厚
生省デ決メマシタ生產增强勞務緊急對策、
アノ中ニ斯ウ云フ意味ノコトモ實ハ加ヘタ
イト云フ考ヘデ居ツタノデアリマスガ、併
シ出來ルダケ生產增强ニ障碍ニナルヤウナ
事項ハ、之ヲ一ツ思ヒ切ツテ緩和シヨウト
云フ考ヘデ、只今申シマシタ工場法ノ第三
條第四條ト云フ風ナ事項ニ付キマシテ
モ、只今勤勞局ノ方トシマシテ、之ヲ具體
的ニ緩和スベク〓究ヲ進メテ居ツタ次第デ
アリマス、所ガ此ノ戰時行政特例法案ガ急
ニ出マシテ、マダ〓究ノ途中ニ實ハ此ノ法
案ガ出タヤウナ次第デアリマシテ、隨テ今
日ドノ邊マデハツキリスルカト云フヤウナ
コトハ申上ゲ兼ネルヤウナ狀態デアリマス、
目下具體的ニドノ邊マデ緩和スルカト云フ
コトニ付テ、銳意〓究ヲ進メテ居リマス、
唯二、三ノ事項ニ付テ是モサウ具體的ニハ
申上ゲ兼ネマスガ、例ヘバ危險業務ノ就業
禁止ノ事項ノ中ニ現在列擧シテアリマス事
項トシテ、齒車等ニ接近シテ行ク業務ガ制
限サレテ居リマス、斯ウ云フモノニ付テ
ハ或ル程度緩和シテモ宜イヂヤナイカト云
フヤウニ考ヘテ居リマス、ソレカラ危險豫
防裝置ノナイ足場等ニ於ケル業務ニ付テモ、
之ヲ改良シテモ宜イヂヤナイカト云フ風ニ
考ヘテ居リマス、ソレカラ第三ノ危險有害
業務ノ就業禁止デアリマスガ、之ニ付キマ
シテモ、今申上ゲマシタヤウナ趣旨ニ依ツテ、
例ヘバ或ル程度現在デハ塵埃、粉末ヲ著シ
ク飛散サセル場所ニ於テハ業務ノ就業禁止
ヲシテ居リマスガ、ソレニ付テモ或ハ或ル
程度「マスク」ヲ使フトカ云フコトデ改良シテ
モ宜イヂヤナイカト云フ風ニ考ヘテ居リマ
ス、是ハ併シマダ確定ハ致シテ居リマセヌ、
事務的ニ〓究致シマシテ、斯ウ云フコトヲ
改良スルナラ改良シタイ、斯ウ云フコトヲ
考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=18
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019・水谷長三郎
○水谷委員 サウスルト第九條ハ「工場主
ハ十六歲未滿ノ者及女子ヲシテ運轉中ノ機
械若ハ動力傳導裝置ノ危險ナル部分ノ掃除、
注油、檢査若ハ修繕ヲ爲サシメ又ハ運轉
中ノ機械若ハ動力傳導裝置ニ調帶、調索ノ
取附ケ若ハ取外シヲ爲サシメ其ノ他危險ナ
ル業務ニ就カシムルコトヲ得ス」ト云フヤ
ウナコトニナツテ居リマスガ、此ノ內ドレ
ヲ緩和シテモ宜イト云フ御考ヘデスカ、此
ノ條文ニ付テ、モウ少シハツキリ言ツテ下
サイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=19
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020・持永義夫
○持永政府委員 只今申上ゲマシタヤウニ、
第九條ニ付キマシテハ齒車等ニ接近シテ行
フ業務ニ付テハ禁止シテ居リマスガ、ソレハ
緩和シテハドウカト云フ風ニ考ヘテ居リマ
ス、第九條ニ運轉中ノ機械云々トアリマス
ガ、ソレニ該當スルダラウト思ツテ居リマ
ス、ソレカラ第十條ニ付キマシテハヤハリ
條文ノ中ニアリマスヤウニ塵埃、粉末等ヲ
飛散スルヤウナ業務、其ノ他危險又ハ衞生
上有害ナル場所云々トアリマスガ、其ノ塵
埃粉末ヲ飛散スルヤウナ所デモ、或ル程度
就業シ得ルヤウシテ行カウヂヤナイカト云
フ風ニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=20
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021・水谷長三郎
○水谷委員 サウシマスト大體ドウ云フ所
ヲ狙ツテ居ラレルカト云フコトハ、非常ニボ
ヤツトデアリマスガ、或ル程度御伺ヒスル
コトガ出來タ」ノデアリマスガ、是ト關聯
致シマシテ、此ノ間ノ資料ノ中ノ重要事業
場勞務管理令關係ト云フ四ニ厚生施設、就
業狀況等ニ關スル諸報告ヲ廢スルト云フコ
トト併セ考ヘルノデゴザイマスガ、大體工
場法ト云フモノハ今日大體代表的ナ岩波ノ
六法全書デモ、是ハ產業トカ其ノ他ノ部類
ニ入レズ、厚生ト云フ部面ニ重要ナ部分ト
シテ入レテ居ルノデアリマスガ、斯ウ云フ
ヤウニシテ女或ハ十六歲未滿ノ者ニ對スル
厚生政策ガ、今度ノ生產力擴充ノ爲ニ一步退
却ト申シマスカ、好ムト好マザルニ拘ラズ
サウ云フヤウナ狀態ニナルノデアリマスガ、
之ヲバ無制限ニ許スト云フコトハ、成程目
前ノ急場ノ目的ニハ或ハ間ニ合ヒマセウケ
レドモ、人口對策ノ上カラ考ヘ、或ハモツ
ト大キナ立場カラ考ヘマシテ、此ノ十六歲
未滿ノ者及ビ女子ニ非常ナル過當ノ勞働ヲ
强制スルト云フコトノ結果ハ、將來相當警
戒シナケレバナラヌト思フノデアリマス、
然ルニ拘ラズ一方ニ於キマシテハサウ云フ
モノノ厚生施設、從業狀況等ニ關スル報告
ハ從來ト異ナツテ廢止シテ宜イト云フコト
ニナリマスト、サウ云フヤウナ今度ノ五大
重要產業ニ關スル勞働狀況ト云フヤウナモ
ノニ關シマシテハ、何ト申シマスカ、サウ
云フモノニ對スル治外法權ガ行ハレルト云
フヤウナコトニナリマスト、是ハ考ヘ方ニ
依レバ非常ニ警戒シナケレバナラヌ、之二
關シマシテ厚生省ハ一方ニ於テ斯ウ云フヤ
ウナ制限緩和ヲスルト共ニ、他方ニ於テハ
或ハ將來ノ人口對策、或ハ社會正義其ノ他
ノ立場カラ見マシテ、斯ウ云フモノニ對ス
ル對策ト云フモノハ豫メ用意ヲシテ掛ラナ
イト、是ハ將來恐ルベキ問題デアルト思フ
ノデアリマス、之ニ對スル對策ノ具體的條
件ニ對シテ何カ御考ヘガアルカドウカト云
フコトヲ御聽キシタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=21
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022・持永義夫
○持永政府委員 只今ノ御質問洵ニ御尤モ
ニ存ジマス、厚生省トシマシテハ、只今申
上ゲマシタヤウニ色々ト制限或ハ禁止事項
ニ付テ緩和スルト云フ考ヘデ、又只今御指
摘ノアリマシタヤウニ、重要事業場勞務管
理令ニ於ケル厚生施設ニ關スル報〓ヲ廢止
スルト云フヤウナコトヲ考ヘテ居ル譯デア
リマスガ、併シ是ハ決シテ從業員ニ對スル
所ノ厚生施設トカ、或ハ從業員ノ勤勞力ノ
保持增進ト云フコトヲ無視スルト云フ考ヘ
デハ全然ゴザイマセヌ、是ハ飽クマデ維持
增進シテ行クベキモノダ、唯今日ノ情勢ガ
從來ノ情勢ト大分變ツテ居ルト云フコトヲ
考ヘタコト、又モウ一ツハ今日ハ昔ト違ヒ
マシテ、事業主自身モ大分國家的ノ見地ニ
立ツテ、勤勞力ノ維持增進ト云フコトニ付
キマシテハ、昔以上ニ考ヘテ來テ居ル、ソ
コデ勿論是ハ關係官吏ノ指導ガ大事デゴザ
イマスケレドモ、事業主ノ覺醒ヲ待ツテ
進ンデ各種ノ厚生施設ヲ講ジサセテ、勤勞
力ノ維持增進ヲ圖ルヤウニシテ參ルト云フ
コトニ付キマシテハ、今後モ厚生省トシマ
シテ十分ナル力ヲ用ヒテ行キタイ、唯斯ウ
云フコトヲ制限禁止ヲ緩和スルトカ、或ハ
報〓ヲ廢スルト云フコトノ考ヘハ、必ズシ
モ勤勞力ノ維持增進ヲ無視スルノダトカ云
フヤウナ考ヘデハ全然ゴザイマセヌ、寧ロ
之ヲ今日以上ニ維持增進シデ貰ヒタイト云
フ考ヘヲ持ツテ居ル次第デアリマス
ソレカラ尙ホ重要事業場勞務管理令ニ依
リマスル厚生施設ニ於キマシテハ、大體ノ
標準ヲ作ツテ示シテゴザイマス、勿論是ハ
事業ノ性質トカ、規模ニ依ツテ區々デアリ
マスガ、大體斯ウ云フモノハ必要デアルト云
フノデ、一應ノ標準ヲ作リ、尙又現場ニ於
テ勞務官等ヲシテ、サウ云フ施設ノ設置ニ
付テ奬勵サセテ居リマスガ、唯是ノ報告ヲ
廢スルト云フコトハ、決シテ厚生施設ヲナ
クスルトカ、或ハ之ヲ減ラシテモ宜イノダ
ト云フヤウナ考ヘデハゴザイマセヌ、唯報
告シタクテモ事實現場ニ連絡官ガ居リマス
カラ、其ノ人ト連絡ヲ取ツテ、要ラヌモノ
ハサセヌト云フコトデゴザイマシテ、決シ
テ是ハ退却トカ後退ト云フノデハゴザイマ
セヌカラ、其ノ點ハ御諒承願ヒタイト思ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=22
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023・水谷長三郎
○水谷委員 私自身モ現在ノ瞬間、少クト
モ昭和十八年度ノ決戰時期ニ於キマシテ、
日本國民ガ凡ユル犠牲ヲ拂ツテ、時局ニ驀
進シナクテハナラナイト云フコトハ十分
認メナクテハナラヌノデゴザイマシテ、隨
テ斯ウ云フ戰時行政特例法案ト云フモノガ
出テ來タニハ、ソレ相當ノ理由ガアルコト
ハ十分認メナクテハナラヌト思フノデアリ
やく、併シナガラ物ニハ程度ガアリマス、
ソレデ私ハ諄イヤウデゴザイマスガ、其に一
工場法ノ三ツノ場合ニ於キマシテ制限緩和
ハドノ程度ニナサル積リデアルカ、是ハ丁
度物價政策ト同ジヤウニ、一ツノ堤防ガ崩
レタラ、場合ニ依レバ何處マデ崩レルカ分
ラヌノデアリマシテ、成程厚生當局トシテ
ハサウ云フヤウナ御考ヘヲ持ツテ居ラレマ
セヌデセウケレドモ、一遍制限緩和サレル
ト、結局石コロガ坂ヲ下ルヤウニ、目前ノ
生產增强ト云フコトニ囚ハレテ、他ノ一方
ヲ見ルコトガ出來ナイト云フヤウナコトニ
ナルノヲ惧レル、所謂五大重要事業ノ生產
增强ヲ任サレタ人ハ、何ト言ツテモ目前ノ
生產增强ニ囚ハレル、是ダケ造ツテ吳レ、
是ダケ造ラナケレバナラヌト云フ工合ニ政
府カラ言ハレタ者ハ、ドウシテモ造ラウト
言フモノデスカラ一生懸命ニソレヲ考ヘル、
隨テソレヨリ一段高イ所ノ厚生省ガ、確固
タル信念ト對策ヲ持タナケレバ、國家百年
ノ計ヲ誤ルト云フノガ、非常ニ考ヘナクチ
ヤナラヌ點デアラウト私ハ思フ、況シテ是
ハ阪本君モ豫算總會デ述ベラレタト思ヒマ
スガ、斯ウ云フ場合ニ於キマシテハ、順序
ガ違ツテ、從來ノ社會政策ニ根ヲ下ロシタ工
場法ヲ或ル程度改革シヨウト云フ場合ニハ、
勤勞根本法ト申シマスカ、サウ云フモノガ
先ヅ出來マシテ、或ル程度ノ大綱的ノ目安ガ
アレバ、是モ私ハ心配ハ要リマセヌガ、サ
ウ云フ原則モナイ、更ニ又今盛ニ產報ナル
モノガ皇國勤勞觀ト申シマスカ、勤勞ノ方カ
ラ皇國勤勞觀ト云フコトガ可ナリ說カレテ
居リマス、ソレト「タイアップ」シナクテハナ
ラヌ所ノ皇國企業觀ト云フモノガ、皇國勤
勞觀ヨリモ幾ラカ等閑視サレテ居ルノデハ
ナイカト思フ、今持永局長ハ、現在ノ產業
資本家ニハサウ云フコトハナイヤウニ仰シ
ヤツテ居ラレマスケレドモ、成程個人トシテ
ハ立派ナ、サウ云フ御考ヘヲ持タレテモ、
現在目ノ前ノ生產增强下ニ目ヲ奪ハレル限
リニ於キマシテハ、動トモスレバサウ云フ考
ヘガ薄ラグコトハ、是ハ私ハ或ル程度認メナ
クテハナラヌト思ハレル、此ノ點厚生省ト
致シマシテハ、十分ニ一段高イ所カラ其ノ
御考ヘヲ願ヒタイト思フ、隨テ斯ウ云フ工
合ニシテ、只今ノ所デハ例ニナツテ出テ居
ルコトハ此ノ程度シカ出テ居リマセヌガ、
是ハ總理ノ指示權ニ依ツテ何處マデ擴ガル
カ分リマセヌ、而モ工場法ガ全面的ニ退却
スルコトハ必須ノ狀況デアリマス、一 H〓
早クソレニ代ル勤勞根本法ト云フモノヲ制
定シテ、大體ノ大綱的ナ目安ト云フカ、「ブ
レーキ」ト云フモノヲ玆ニ考ヘナクテハナ
ラヌト思フノデアリマス、私ハ厚生省ノ方
ニ於キマシテ、斯ウ云フヤウナ戰時行政特
例法案ノ全面的ナ進出ニ對シテ、勤勞根本
法ト申シマスカ、或ハ何カ其ノ他ノ法的ナ
基準ト云フモノヲ、工場法ニ代ツテ制定サ
レル意思ガアルカドウカ、私トシテハ一日
モ早クソレハ作ラナクテハナラヌト思フノ
デアリマスガ、大體イツ時分ニサウ云フコ
トヲ御制定ニナルカト云フ點ヲ、モウ少シ
具體的ニ御聞カセ願ヘレバ結構ダト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=23
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024・持永義夫
○持永政府委員 御承知ノヤウニ現在勤勞
ニ關シマシテハ各種ノ法令ガアリマシテ、
其ノ間統一ヲ缺イテ居ル點モナイデハゴザ
イマセヌ、ソコデ私共トシマシテハ、出來
ルダケ早ク此ノ勤勞ニ關スル根本的ナ法制
ヲ作リマシテ、ソレニ從來ノ各種ノ法令ヲ
吸收シテ、一ツノ體制的ナ勤勞法制ヲ作リ
タイト云フ考ヘデ、實ハ昨年以來ズツト〓
究ヲ進メテ居リマス、偶、今議會ニハ各種ノ
事情デ提案ガ出來ナカツタノデアリマスガ、
併シ一應〓究ノ案ハ出來テ居ル次第デアリ
マス、ソコデ今後ハ官民各方面ノ御意見ヲ
聽キマシテ、出來ルダケ立派ナ法案ヲ作リ
タイト云フ譯デ、追加豫算ニ御協賛ヲ願フ
ベク今御願ヒシテ居ル譯デアリマスガ、ソ
レガ通リマスト私共ノ考ヘトシマシテハ、
從來ノ法律モアリマスカラ、總動員法ニ依
ル勅令ヨリモ、寧ロ法律デ行ツタ方ガ宜クハ
ナイカト考ヘテ居リマス、勿論勅令ニ依ツ
テモ行キ得ルト思ヒマスガ、併シ工場法ノ
改廢ト云フコトハ必須デゴザイマスカラ、
隨テ出來レバ法律トシテ行クベキデハナイ
カト云フヤウナ考ヘヲ事務的ニ持ツテ居リ
マン·ソレカラ內容トシマシテハ水谷サン
カラ御話ガアリマシタヤウニ、マダ現在工
場法ニ規定シテアリマス各種ノ事項ガ、其
ノ重要ナル部分ヲ占ムルノデハナイカト云
フ風ニ考ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=24
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025・水谷長三郎
○水谷委員 只今ノ點デアリマスガ、事務
當局ノ御考ヘハ分ツタノデアリマスガ、前
ニ同僚阪本委員ノ質問ニ對シテ、法律デヤ
ルカ、或ハ總動員法ノ勅令デヤルカドウカ
ト云フコトハ、マダ考ヘテ居ルト云フ御答辯
ガアリマシタ、私ハ之ニ對シマシテ只今事
務當局ガ工場法ト云フモノハ大キナ相當ノ
法律デ、之ヲ改廢スルモノデアルカラ、法
律ノ形デヤツテ行キタイ、此ノ御考ヘハ私
ハ全幅的ニ贊成デアリマス、隨テ是ハ法律
ノ形デ是非勤勞根本法ト云フヤウナモノヲ
作ツテ戴キタイ、併シナガラ戰時特例ノ方
ガマダドレダケ範圍ガ擴ツテ行クカ分リマ
セヌカラ、其ノ間ノ臨時措置トシテ、萬般
ノ用意ト對策ガナケレバ私ハイカヌト思フ
ノデアリマス、卽チ勤勞根本法ト云フモノ
ガ、法律ノ形デ出ル間ノ所謂臨時措置トシ
テ、何カノ考ヘヲ持タナクテハイカヌ、ソ
レニ對シテ御答辯ヲ煩ハシタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=25
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026・持永義夫
○持永政府委員 只今ノ御質問ニ關シテデ
アリマスガ、實ハ昨年ノ二月總動員法ニ基
キマシテ重要事業場勞務管理令ト云フモ
ノガ勅令トシテ制定公布ニ相成ツテ居リマ
ス、此ノ重要事業場勞務管理令ノ制定ノ趣
旨ハ私共ノ考ヘカラ申上ゲマスト、實ハ一
種ノ勤勞根本法ノ趣旨ヲ酌ンデ居ルモノト
考ヘテ居ル次第デアリマス、ト申シマスノ
ハ少クトモ今日ノ重要事業場ニ於キマシテ
ハ其ノ企業ノ性格ハ昔ト違ツテ相當國家性
ヲ帶ビテ居ル、隨テ其處ニ從事シテ居ル從
業員モ其ノ國家性ヲ帶ビタ勤勞ト云フ觀念
ノ下ニ働クベキダト云フ考ヘカラ、各種ノ
勞働條件ニ關スル事項モ實ハ其ノ中ニ規定
シテゴザイマス、唯事業場デゴザイマスノデ
範圍ガ狹イ關係デ全般的ニハ及ンデ居ナイ
ノデゴザイマスガ、勤勞根本法ガ出來マス
マデノ所謂暫定措置トシマシテハ、其ノ重
要事業場勞務管理令ニ依ツテ勤勞精神、或
ハ勞務管理、又各種ノ條件ト云フコトニ付
キマシテ各工場ニ適應シタ施設ヲ講ジサセ
テ、一方勤勞能力ノ維持增進ヲ圖リナガラ
一方生產增强ニ資スルト云フ其ノ二方面ニ
向ツテ現在進メテ居ル次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=26
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027・阪本勝
○阪本(勝)委員 關聯質問デ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=27
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028・前田房之助
○前田委員長 阪本君ノ關聯質問ヲ許可致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=28
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029・阪本勝
○阪本(勝)委員 私豫算總會ノ席上デ勤勞
根本法ニ關シテ御尋ネシタノデアリマスガ、
其ノ時御尋ネスルコトヲ忘レマシタ點ガア
リマスノテ、只今發言サセテ戴キマス、御
承知ノ通リ徵用令ハ唯工員ヲ工場ニマデ連
レテ行クト云フ單ナル手續法ニ過ギナイノ
デアリマシテ、徵用令ニ依ツテハ勤勞ノ性
格ト云ノモノハ全然取上ゲラレテ居リマセ
ヌ、更ニ勤勞協力令ニ於キマシテハ單ナル
道義的ナル性質ヲ勤勞ニ與ヘテ居ルト云フ
以上ノモノデハナイ、隨ヒマシテ皇國勤勞
觀ト云フコトヲ政府ハ何時モ言ハレマスケ
レドモ、其ノ勤勞觀ト云フモノハ單ニ道義
的ニ定メラレテ居ル以上ノモノデハナイノ
デアリマシテ、今度ノ勤勞根本法ニ於キマ
シテハ、ソコマデ進ンデ、詰リ勤勞ノ義務
的性格ト云フモノヲ定メナケレバ勤勞根本
法ノ意味ハ全クナイト私ハ考ヘテ居リマス、
唯工場法其ノ他ノ勞務ニ關スル法規ヲ統一、
一元化スルト云フヤウナモノデナクシテ、
勤勞ノ義務的性格ヲ決定スルト云フコトガ
勤勞根本法ノ絕對要件ナリト私ハ信ジテ居
ル次第デアリマス、翼贊政治會ニ於テ作
成シツツアリマス所ノ勤勞根本法ノ原案
ノ趣旨モソコニアリマス、厚生省ニ於テ
祕密裡ニ作成シテ居ラルル勤勞根本法モ
今議會ニハ都合ニ依ツテ提出出來ナカツ
タト云フ、其ノ勤勞根本法ハ勤勞ノ義務
的性質ヲ取上ゲテ居リマスカドウカ、其
ノ點ヲハツキリト伺ヒタイ、譬ヘテ申シ
マスト、國民學校ヲ出レバ兵隊ニ行クマ
デハ工場ナラ工場ニ入ル、詰リ勤勞ニ就
クベキ義務ヲ帶ビル義務性ト云フモノガ
取上ゲラレテ居ルカドウカ、其ノ點ヲ伺ヒ
タイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=29
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030・武井群嗣
○武井(群)政府委員 只今ノ水谷委員ノ御
質問ニ對シ關聯シテ阪本委員ヨリ又御尋ネ
ガアリマシタ、水谷委員ノ御尋ネニ對シ、又
御意見ニ對シテ持永局長ヨリ一應ノ御答ヘ
ヲ致シタノデアリマスガ、大體厚生省事務
當局ノ氣持ト致シマシテハ、マダ今御尋ネ
ニナリマシタヤウナ勤勞根本法案ノ中ニ於
テ、勤勞ノ義務的ノ規定ヲ設ケテ居ルカド
ウカト云フヤウナコトニ對スル正確ナ御答
ヘヲスルダケノ域ニハ達シテ居リマセヌ、
有體ニ申シマスト勤勞根本法ノ制定ト云フ
コトハ相當以前ヨリ考ヘテ居リ、昨年ニ至
リマシテ急速度ニ〓究ヲ進メテ居ルノデア
リマスルケレドモ御承知ノ通リ昔工場法ヲ
制定スルニ當リマシテモ其ノ方面ノ意見ヲ
纒メ、又其ノ意見ニ察シテ相當ノ年月ヲ經
テ出來テ居ル譯デアリマス、斯樣ニシテ出
來マシタ工場法ガ時代ノ趨勢等ニ從ヒマシ
テ色々ト部分的ニ改正ガ行ハレ、又支那事
變以後色々ト臨時ノ措置ガ行ハレテ居ル譯
デアリマスノデ、玆ニ勤勞根本法ヲ愈〓作ル
ト云フコトニナリマスルト、先程御話ノアリ
マシタヤウニ各種ノ法令ヲ統一スルト云フ
コトモ無論必要ナコトデアリマスルガ、同時
ニ此ノ時代ニ卽應致シマシテ勤勞ノ根本觀
念ヨリ定メル必要ガアルト思ツテ居リマス、
是ハ併シ私ヨリ申スマデモナク非常ニ重大
ナ問題デアリ、中々決メ兼ネル事情ガアリ
マスノデ、御尋ネノ點ニ付キマシテハマダ
厚生省ノ案トシテアルトモナイトモ申上ゲ
ルマデニ至ツテ居ラナイノガ實情デゴザイ
マス
先般豫算總會ニ於キマシテモ色々ト御話
ガアツタノヲ承ツテ居リマシタ、厚生省ノ
ヤルコトト致シマシテ勤勞根本法ヲ先ニ制
定シテ然ル後ニ各種ノ事變卽應ノ法制等ヲ
制定スベキナリト云フ御意見ニ付キマシテ
ハ十分敬意ヲ拂ツテ傾聽致シタノデアリマ
スガ、何分ニモ支那事變此ノ方、殊ニ三國
同盟締結後ニ於キマスル產業ノ狀況及ビ之
ニ卽應スル勤勞ノ體制ト云フモノガ急速度
ニ進メテ行カナケレバナラヌ狀態ニアリマ
スノデ、其ノ場〓〓ニ應ジテ必要ナ措置ヲ
執ツテ居ツタニ過ギナイ譯デアリマス、先
程速記ヲ停止シテ徵用ノ狀況等モ御說明致
シタ譯デアリマスガ、有體ニ申シマスト此
ノ徵用ナドニ付キマシテモ其ノ日暮シデ急
ノ間ニ合ハセテ居ツタヤウナ狀況デ、勤勞
根本法ノ制定等モ遂ニ此ノ議會ニ間ニ合ハナ
カツタヤウナ次第デアリマス、先程水谷委
員カラモ勤勞根本法制定ノ措置ニ付キマシ
テ色々御注意的ノ御意見モ承ツタノデアリ
マシテ、私共ト致シマシテモ全然同感デア
リマス、勤勞根本法ノ制定ニ付キマシテ
ハ厚生省ノ案ガ出來マシタ上ニ於キマシ
テモ產業報國會等ノ御意見モアリ、今モ
御話ガアリマシタヤウニ翼贊政治會ニ於
テモ案等ヲ御持チニナツテ居ルヤウニ承ツ
テ居リマスノデ、各方面ノ御意向モ承
リ、而シテ又一面ニ於キマシテハ皇國企
業ノ體制ト云フヤウナモノニ付キマシテ
モ餘程注意スル必要ガアラウカト思ヒマ
ス、隨ヒマシテ勤勞根本法ノ制定ニ付キ
マシテハ餘程愼重ヲ要スル點モアルカ
ト思ツテ居リマス、此ノ點ヲ御諒承載クト
共ニ、ソレマデノ措置ト致シマシテハ、水
谷委員ノ御述べニナリマシタヤウニ現在ア
リマス重要事業場勞務管理令、國民徵用令
其ノ他ノ勞務調整令、或ハ勤勞報國協力令
ト云フヤウナ各種ノ國家總動員法ニ基ク勅
令ガアルコトデアリマスン是等モ旣ニ段々
御指摘ニナリマシタヤウニ現在ノ事情ニソグ
ハナイ點ガアリマスノデ、是等ヲ一面ニ於
キマシテハ改正致シマシテ急ノ間ニ合ハセ
ルコトニ致シ、是ト併行致シマシテ勤勞根
本法ノ制定ヲ急ガウ、斯樣ニ考ヘテ居ル狀
態デアリマス、此ノ點率直ニアリノ儘ノコ
トヲ申上ゲマシテ御諒承ヲ得タイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=30
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031・阪本勝
○阪本(勝)委員 去年厚生省デ御作リニナ
ツテ今期議會ニ出ス積リデアツタト云ハレ
ル原案ニハ勤勞ノ義務制ハ採用サレテ居リ
マセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=31
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032・持永義夫
○持永政府委員 阪本サンノ御意見ノ國民
全部ニ付テ一定ノ勤勞ヲ義務的ニ課スルト
云フコトマデハ考ヘテ居リマセヌガ、實ハ
極ク素案デアリマスケレドモ、其ノ中ニ考
ヘテ居リマスノハ、今日ノ企業ガ國家性ヲ
帶ビテ來タ爲ニ、ソレニ從事スル勤勞モ當
然國家性ヲ持ツテ居ルノダ、ダカラ其ノ產
業ニ從事スル者ハ國家的立場ニ於テ全能力
ヲ發揮スベキモノデアル、又ソレガ一方國
民ノ義務デアルト共ニ榮譽デアルト云フ思
想ノ領分モ入ツテ居リマス、併シ國民全部
ニ付テ一定期間必ズ勤勞ニ服セヨト云フヤ
ウナ規定ハ入ツテ居リマセヌ、併シ其ノ點
ニ付キマシテハ、只今次官カラ御話ガアリ
マシタヤウニ、今後各方面ノ意見ヲ拜承シ
マシテ根本法ガ出來ル譯デアリマスカラ、或
ハ必要ニ依ツテハサウ云フコトモ考ヘナケ
レバナラヌト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=32
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033・水谷長三郎
○水谷委員 私アトノ點ハ大臣ニ伺ヒタイ
ト思ヒマシタガ、時間モ迫ツテ居リマスカ
ラ續ケテ質問シタイト思ヒマス、先ヅ聽キ
タイノハ昭和十八年度國民動員實施計畫ノ
目標ト申シマスカ、卽チ今度ノ五大超重點
產業トノ關係ノアラマシヲ聽キタイト思フ
ノデアリマス、昭和十八年度ノ國民動員實
施計畫ハマダ物動計畫ガ出來テ居ナイ今日
ニ於テハツキリシタコトハ勿論御伺ヒスル
譯ニハイカナイノデザイマスガ、ソレ相當
ノ準備ハ內々進ンデ居ラナクテハナラナイ
筈ダラウト思フノデアリマス、政府ハ此ノ
度ノ立法ニ於キマシテ五大超重點產業ヲ選
ンデ、是ガ非デモ或ル程度生產ヲ擴充シテ
行キタイト云フコトニナツテ居ルノデゴザ
イマスガ、ソレト相關聯致シマシテ昭和十
八年度ノ國民動員實施計畫ト五大超重點產
業トノ關係ヲ先ヅ聽キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=33
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034・武井群嗣
○武井(群)政府委員 只今ノ御尋ネデアリ
マスガ、昭和十八年度ノ國民動昌實施計畫
ハ主トシテ企畫院ニ於テ此ノ案ヲ取纒メル
コトニナツテ居ル譯デアリマス、隨テ關係
各省ニ於テハ其ノ材料トナルベキ調査ヲ只
今急イデ居ル譯デアリマシテ、厚生省ト致
シマシテ今此處デ御尋ネノ昭和十八年度ノ
國民動員計畫及ビソレト五大產業トノ關聯
ニ付キマシテハ、申上ゲルマデノ材料ハ持
タズ、又其ノ任デナイカト存ジマスノデ御
諒承戴キタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=34
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035・水谷長三郎
○水谷委員 ソレデハモウ少シ問題ス、限定
致シマシテ昭和十八年度ノ國民動員實施計
畫ニ於ケル勞務ノ供給源ノコトニ關シテ御
尋ネシタイト思フノデゴザイマス、昭和十
七年度ノ國民動員實施計畫ノ勞務ノ供給源
ハ大體國民學校ノ卒業者、中小商工業者ノ
轉換活用、未婚女子ノ動員强化、半島人ノ
勞務者ト云フヤウナモノガ大體供給源トシ
テ上ツテ居リマスガ、昭和十八年度ノ場合
ニ於キマシテハ、一方ニ於テ五大產業ニ重
點ヲ置カレル關係上、他方ニ於キマシテ相
當廣範圍ノ犠牲產業ガ發生スルコトハ言フ
マデモナイト思フノデゴザイマス、隨テ昭
和十八年度ノ國民動員實施計畫ニ於ケル供
給源ノ點ニ關シマシテハ、昭和十七年度ト
非常ニ變リ方ヲ或ル程度見ナクテハナラナ
イト思フノデゴザイマスガ、厚生省ハ昭和
十八年度ノ勞務ノ供給源トシテ第一ニ何處
ヲ目標ニシ、何處ヲ狙ツテ御立テニナルカ
ト云フ點ヲ御伺ヒシタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=35
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036・武井群嗣
○武井(群)政府委員 此ノ點モ先程御答ヘ
申上ゲタコトト關聯スルコトデアリマスルノ
デ、正確ナコトハ申上ゲラレナイノデアリ
ひく、昭和十八年度ノ國民動員計畫ヲ立テ
ル場合ニ於キマシテ、勞務給源ヲ如何ニ求
メルカト云フコトニ付キマシテハ、勿論十
七年度ト同樣ニ國民學校ノ卒業生等ガ有力
ナル給源ニナルト云フコトハ想像出來ルコ
トデアリマス、而シテ又半島人ノ移入ト云
フコトモ考ヘラレマス、十七年度ト同樣ニ
中小商工業ノ再編成等ニ於ケル轉廢業ト云
フコトモ考ヘラレマス、而シテ又只今御話
ニナリマシタヤウナ五大重點產業ヲ强調ス
ル結果トシテ、他面ニ於キマシテハ相當數
ノ企業ノ再編成ニ於ケル轉廢業等ガ出ルコト
ガ豫想サレルコトモ先般厚生大臣カラ申上
ゲタ通リデアリマス、其ノ數ガドノ位ニナ
ルカト云フコトニ付キマシテハ、只今ノ所
產業主管行政當局ト打合セ中デアリマスノ
デ、幾何ニナルカト云フコトハ勿論見當ガ
付カヌノデアリマス、併シナガラソレ等ガ
十八年度ノ國民動員計畫ニ於ケル給源トシ
テ相當ノ役割ヲ演ズルデアラウト云フコト
ハ、今想像出來ルコトト思ツテ御返事出來
ルカト存ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=36
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037・水谷長三郎
○水谷委員 十七年度ノ勞務給源ノ中デ、
數字ハ此處デオ互ヒニ言フコトハ出來ナイ
デアリマセウガ、少クトモ十八年度ノ國民
動員實施計畫ニ於テハ、勞務給源ノ第一ト
シテ此ノ度ノ產業再編成ニ伴ツテ餘ツタ所
ノ勞力ヲバ第一ニ考ヘテ、立案シナケレバ
ナラナイノデハナイカト思フノデゴザイマ
スガ、此ノ點ニ關スル厚生省ノ御考ヘヲ御
伺ヒシタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=37
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038・武井群嗣
○武井(群)政府委員 御趣旨ノ點ハ拜承致
シマシタ、唯此ノ點ニ付キマシテ御述ベニナリマ
シタ第一ト云フ意味ガ如何ナルコトヲ仰セ
ニナルカ分リマセヌガ、若シモ之ヲ最大ノ
數ト見ルベキモノナリト云フ御意見デアル
ト致シマシタナラバ、先程御答ヘ致シマシ
タヤウニ、其ノ點ニ注意ヲ致シマシテ、產業
方面ノ官廳ト十分ノ打合セヲ致シ、ドノ位
出ルカト云フコトヲハツキリ致サナケレバ
ナリマセヌツデ、是ガ第一ニ算ヘ擧ゲラレ
ルコトニナルカドウカト云フコトニ付キマ
シテハ、直チニ御答ヘ致シ兼ネルノデア
リマス、併シナガラ是ガ重要ナル部面ヲ占
メ、而シテ此ノ人ニ先ヅ以テ他ノ重要ナル
部面ニ轉向シテ働イテ貰ハナケレバナラヌ
ト云フコトニ付キマシテハ、御說ノ通リト
思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=38
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039・水谷長三郎
○水谷委員 私ノ申シマシタノハ、量ノ上
カラ申シマシテモ、質ノ上カラ申シマシテ
モ第一ニ考ヘナケレバイカヌト云フコトヲ
意味シタノデアリマス、例ヘバ私ハ自分ノ
地元ノコトヲ例ニ引キマスト、非常ニ恐縮
デゴザイマスガ、實ハ昨日ノ紀元節モ一日
夜行デ歸リ、又夜行デ來タノデアリマスガ、
今京都ニ於テハ西陣ノ問題ガ非常ニ深刻ニ
ナツテ居ル、其ノ原因ハ御存ジノヤウニ、
原糸ノ割當ガ五分ノ一ニ減ツタ、隨テソレ
ニ對シテ直接間接ニ携ツテ居ツタ者、所謂
失業ト云フ言葉ハ此ノ時局柄使フノハドウ
カト思ヒマスガ、同僚阪本君ノ例ヲ引クノ
デハアリマセヌガ、豫算總會ニ於テ戰略的
不就勞者ト云フ言葉ヲ使ハレタヤウデアリ
マスガ、私ガ昨日歸リマシテ調ベルト、約
二十万ト云フ數ニナツテ居ル、京都ノ所謂
西陣地方ニ於テ直接間接ニ今度ノ所謂企業
整備ニ依ツテ原糸ノ割當數ノ減少ニ依ツテ
職ヲ離レル者ガ約二十万、此ノ人ヲ一體ド
ウスルカト云フコトニ對シテ京都府廳モ實
ハ手ヲ上ゲテ居ルヤウナ狀態デアル、ソレ
デハ之ヲ直グ五大重點產業ニ持ツテ行クカ
ト申シマスレバ、御存ジノヤウニ、アア云
フ西陣織ノ人ハ男デモアア云フ屋內ノ日蔭
デ手織ヲヤツテ居ツタト云フヤウナ關係
上サウ云フヤウナ所ヘ持ツテ行ケナイ、
而モ又ソレデハ何處へ行クノカト云フト、
忽チ生活ニ困ルト云フヤウナ狀態デ、是ハ
非常ニ深刻ナ問題デアル、是ハ單ニ西陣ヲ
例ニ擧ゲタダケデハナイ、纖維產業ニ於ケ
ル所ノサウ云フヤウナ現象ト云フモノハ各
地ニ行ハレルノヂヤナイカト思フノデゴザ
イマス、而モ纖維產業ニ從事シテ居ツタ所
ノ勞働者ノ體質其ノ他ノ關係カラ申シマシ
テ、直チニ斯ウ云フヤウナ五大產業ニ從
事スル譯ニハ行カナイノデ、或ハソレニ
對シテドウ云フ仕事ヲ與ヘナクテハナラヌ
カ或ハ又サウ云フ仕事ヲ與ヘルコトガ出來
ナカツタ場合ニ於テハ厚生省ハドウ云フ臨
時ノ措置ヲ執ラナクテハナラヌカト云フコ
トハ相當考ヘテ戴カナクテハナラナイ問題
デアラウト思フノデゴザイマス、隨テ今度
ノ所謂企業整備ニ基キマスル中ニ於キマシ
テ、數ハ分リマセヌガ、大體サウ云フ餘ツ
タ勞働力ヲ直グ超五大重要產業ニ使ヘルヤ
ウナ部分ガ一體ドノ位アルカ、更ニ又使ヘ
ナイ者ハ一體ドノヤウニシナクテハナラナ
イカト云フコトハ、モウ厚生省トシテハ相
當ノ腹案ガナクテハナラヌ筈ダト思フノデ
ゴザイマスガ、之ニ對シテハツキリシタ御
答辯ヲ戴ケレバ幸福ニ思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=39
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040・武井群嗣
○武井(群)政府委員 先程ノ御尋ネニ對シ
テ一應ノ御答ヘヲシタ譯デアリマスガ、重
ネテ御意見ヲ御述べニナツテ其ノ詳細ヲ盡
サレタノデゴザイマシタ、御趣旨ノ點ニ付
キマシテハ、私ノ先程御答ヘシタ趣旨ト合
致スル點ガアルト存ジマス、實ハソレヲ申
シタカツタノデアリマシテ、第一ト云フ意
味ニ付キマシテ彼レ此レ申上ゲタノハ其ノ
點デゴザイマス、世ニハトモスルト勞務ノ
給源ハ憂フルニ足ラズ、ナゼナラバ今囘ノ
超五大產業ニ依ツテ整理サレル業態ハ相當
アルガ故ニ、其ノ方面カラ相當ノ勞務者ガ
浮イテ出ル、ソレヲ廻ハシサヘスレバ勞務
ノ給源ハ何等憂フルニ足ラズト云フヤウナ
說ヲナス者ガアルノデアリマス、ソコデ私
共ハ其ノ點ニ付キマシテハ簡單ニ思フヤウ
ニ參ラヌコトデアリ、丁度今御述べニナリ
マシタ通リ、纖維產業方面カラ出マシタ者ガ
相當アリマシテモ、數ニ於テハ相當多クア
リマセウケレドモ、併シナガラ其ノ大部分
ハ女子デアラウカト思フノデアリマシテ、
此ノ女子ニ付キマシテハ〓土ニ歸ルト云フ
者モ相當多イノデアリマス、此ノ女子ヲ超
五大產業ノ方ニ向ケルト申シマシテモ、其
ノ業態ニ依リ、又工場ノ所在地等ニ付キマシ
テ、其ノ全部ヲ向ケルコトハ到底出來ナイ
デアラウト思ヒマス、是ハ女子ノ例デアリ
マスガ、男子ニ付キマシテモ其ノ他ノ鑛山
或ハ工場等ニ於キマシテ、再編成ヲ要スル
部面ガアルト思フノデアリマス、是亦家庭
ノ事情或ハ體格體質等ノ關係カラ言ヒ、又
工場ノ所在地ト家庭トノ關係等、色々ナコ
トヲ考ヘマスルト、再編成ニ依ツテ出テ來
タモノヲ全部所謂超五大產業ニ向ケルト云
フヤウナ譯ニハ參ラナイコトカト思ツテ居
ルノデゴザイマス、隨ヒマシテ先程第一ト
云フコトニ付キマシテ私ハ此ノ產業ノ企業
ノ整備ニ依ツテ生ジタル勤勞者ヲ給源トス
ル場合ニ於キマシテハ、之ヲ重要視シテ考
ヘルコトハ必要ト思ツテ居リマスルケレド
モ、其ノ全部ヲ量的ニ見テ、振向ケレバ
勞務ノ給源ニ憂ヒナシト云フヤウナコト
ニ付キマシテハ、左樣ニ簡單ニ參ラヌカ
ト思ツテ、第一ト云フコトノ言葉ヲ避ケタ
譯デアリマス、繰返シテ申スヤウデアリマ
スルガ、企業ノ再編成ニ依リマシテ生ジタ
ル人々ニ付キマシテハ、是ハ色々ナ意味ニ
於キマシテ政府トシテ十分ニ又愼重ニ而シ
テ鄭重ニ考ヘナクテハナラヌ問題ト存ジマ
ス、重要ナ產業方面ニ向ケ得ルモノニ付キ
マシテハ、申スマデモナク喜ンデ之ヲ向ケ
ナケレバナリマセズ、又出來ル限リ其ノ方
面ニ向ツテ貰ハナケレバナラヌノデアリマ
スケレドモ、如何ナル方策ヲ執リマシテモ
向ケ得ナイデ、玆ニ今御指摘ニナリマシタ
ヤウナ國家ニ御奉公シ得ナイ立場ニアル者
モアルデハナカラウカ、斯樣ナ者ニ對シマ
シテハ、勤勞ノコトヲ扱ヒ、更ニ又國民生
活ノコトニ付テ責任ヲ持ツテ居ル厚生省ト
致シマシテハ、色々ナ意味ニ於キマシテソ
レラノ人々ノ行ク道ニ付テ十分ノ注意ヲ
拂ヒ、必要ナ施設ヲ講ジナケレバナラナイ
モノ、斯樣ニ考ヘテ居ル次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=40
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041・水谷長三郎
○水谷委員 其ノ犧牲產業ノ中、吸收サレ
ナイ勞働力ヲドウスルカト云フ點ニ關シマ
シテ、モウ少シ具體的ニ御考ヘガ伺ヘナイ
カト私ハ思フ、例ヘバ女ナラ是ガ農村カ
ラ來テ居ル場合ニハ農村ヘ歸スト云フ工
合ニシテ農村勞力ヲ補給スルト云フ手モア
リマスガ、西陣ノヤウニ大部分ガ其ノ土地
ノ者デ、歸ルベキ故〓ヲ持タナイ女、サウ
云フ者ハ一體ドウスルカ、更ニ又西陣ノヤ
ウナ所ニ働イテ居ル男ハ一年三百六十五日
重點產業ニ從事スルニ惠マレナイ體質デア
ルケレドモ、勤勞報國隊トシテナラバ或ル
程度ノ御用ガ勤マルノヂヤナイカ、サウ云
フヤウナ者ハ一體ドウスルカト云フヤウナ
點ニ關シマシテ、モウ少シ具體的ナ御考へ
ガアレバ承リタイト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=41
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042・武井群嗣
○武井(群)政府委員 結論的ニ申上ゲマス
ト、先程モ御答ヘ致シマシタヤウニ、只今
ノ所ハマダ具體的ニドレハドウスルト云フ
コトニ付キマシテ此處デ御答ヘスルダケノ
材料ヲ持ツテ居ラナイノデアリマス、ト申シ
マスルノハ、ドノ程度ノ所謂犠牲勞務者ト
申シマスカ、勤勞者ト言ヒマスカ、ト云フ
者ガ出ルカト云フコトノハツキリシタ具
體的ノモノガマダ摑ミ得ナイ狀態デアリマ
シテ、現在其ノ方面ノ資料ヲ集メツツアル
狀況デアリマスガ、ソレニ卽應スルヤウニ
對策ヲ立テナケレバナラヌト思フカラデア
リマス、併シナガラ其ノヤリ方ニ付テハ、
今仰セニナリマシタヤウニ、具體的ナモノ
ト致シマシテ、其ノ要求ニ應ズルヤウニ、
又實地ニ卽シテ適切ナル施策ヲ個々別々ニ
立テルヤウニシナケレバナラヌカト思ツテ
居リマス、又御話ニナリマシタヤウニ、出
來ル限リソレ等ノ人達ガ、全生活ヲ通ジテ
他ノ職業ニ轉換シ得ナイト致シマシテモ、
御話ニナリマシタヤウニ、勤勞報國隊等ニ
喜ンデ加入シテ、其ノ一部ナリトモ勤勞報
國ノ方面ニ奉仕シテ貰フト云フヤウナコト
ハ最モ宜シイコトカト思ヒマスノデ、結論
ト致シマシテ今御話ニナリマシタヤウナコ
トハ十分ニ尊重致シマシテ、出來ル限リ速
カニ是ガ對策ヲ立テナケレバナラズ、又立
テタイト存ジテ居ル譯デアリマス、今日ノ
所ハ左樣ナ狀況デアリマスノデ、御諒承戴
キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=42
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043・水谷長三郎
○水谷委員 先ニ申シマシタヤウニ、又次
官モ申サレマシタヤウニ、今度ノ犠牲產業
ハ纖維ナドガ非常ニ重大ナ場面ニナル關係
上直接直グ五大重點產業ニ配置轉換出來
ナイコトガ多イノデアリマスカラ、其ノ餘
ツタ勞働力ハドウスルカト云フ點ハ、モウ
卽刻ノ問題デアラウト思フノデアリマス、
或ハ農村ヘ女ヲ歸シ農村ノ勞働力ヲソレニ
依ツテ補充スルコトモ出來マセウ、或ハ最
近ノ一月二十日ノ閣議ニ於ケル勤勞緊急對
策要綱ノ中ニ於テ、勤勞報國隊ノ所謂今後
ノ行キ方ナドガ或ル程度示サレテ居ツタト
思フノデアリマスガ、所謂勤勞報國隊ハ、
御存ジノヤウニ、從來ハ道義的ト申シマス
カ、精神的ノ要素ガ非常ニ多カツタノデゴ
ザイマスガ、今度ノ勤勞緊急對策要綱ニ依
リマスト、其ノ點ガ一步進ンデ、具體的ト
申シマスカ、積極的ト申シマスカ、サウ云
フ方面ニ進ンデ來ルヤウニナツテ居ラウト
思フノデアリマス、隨テ此ノ際ニサウ云フ
ヤウナ餘ツタ勞働力ヲ勤勞報國隊ヘ吸收ス
ルト云フコトガ非常ニ大キナ點デアラウト
思フノデゴザイマスガ、此ノ勤勞緊急對策
要綱ニ於ケル所ノ勤勞報國隊ノ改組ト申シ
マスカ、改革ト申シマスカ、ソレハ何處ニ
重點ヲ置キ、從來ノ勤勞報國隊ト異ナツテド
ノヤウニ之ヲ指導シテ行クカト云フコトハ、
今度ノ犧牲產業ノ餘ツタ勞働力ト關聯シテ
非常ニ大キナ問題デアラウト思ヒマスガ、
其ノ點ニ關スルハツキリシタ方針ヲ示シテ
戴キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=43
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044・武井群嗣
○武井(群)政府委員 勤勞報國隊ニ付テ
ハ、其ノ制定ハ慥カ昭和十六年十二月八日
ダツタト思ツテ居リマスガ、其ノ實施後日
ハ尙ホ淺イノデアリマスルケレドモ、今日マ
デノ實績ニ依リマスト、非常ナ成績ヲ擧ゲ
テ居ルヤウニ見テ居リマス、而シテ勞務動
員計畫ニ於キマシテモ、臨時ノ要員ノ中ニ
於キマシテハ、勤勞報國隊ノ數ヲ相當重要
視シテ居ル譯デアリマシテ、年ト共ニ其ノ
計畫ハ數ヲ增シツツアル實情デアリマス、
而シテ實施ノ成績ニ依リマスト、只今モ御
話ニナリマシタヤウニ、勤勞報國協力令ニ
付テハ、是ガ改正ヲ要望スル聲ガ相當アル
ノデアリマス、又其ノ要望ニハ聽クベキ
モノガアルト思ツテ居リマス、隨ヒマシテ
先般ノ閣議ニ於キマシテモ、勤勞報國隊ノ
改正ト云フコトヲ一項目揭ゲテ居ル譯デア
リマスガ、其ノ改正ノ項目ト致シマシテ
ハ、問題ニナツテ居リマスノガ二三アルノ
デアリマシテ、一ツハ年齡ノ範圍ヲ擴張ス
ルコトデアリマス、今日ハ女子ニ付キマシ
テハ十五歲以上二十六歲未滿、男子ニ付テハ
四十歲未滿ト云フヤウナコトニナツテ居ル
ト思ツテ居リマスガ、此ノ年齡ノ如キモノ
モ更ニ範圍ヲ擴張シテ、出來ル限リ高年齡
ノ者ト雖モ、其ノ者ニ適當スル業種ニ於テ
奉公シテ貰フヤウニ年齡ノ範圍ヲ擴張致サ
ウカト考ヘテ居リマス、ソレカラ期間ノ點
デアリマスガ、今日ハ一年ヲ通ジテ三十日
以內ト云フコトニナツテ居リマスガ、今日
マデノ實情ニ於キマシテハ、ドウモ三十日
デハ短カ過ギルト云フ聲ガアルノデアリマ
ス、炭山ナドニ入リマシタ者ナドハ、折角
其ノ業務ヲ習熟シタ時ニハ最早外ニ出ナケレ
バナラヌト云フヤウナコトヲ屢〓聞クノデア
リマス、其ノ他ノ方面ニ於キマシテモ此ノ
期間ヲ延長シテ欲シイト云フ聲ハ相當强イ
ノデアリマス、又私共モ實地ニ見マシテ尢
モナ意見ダト思ツテ居ルクデアリマス、隨
ヒマシテ、此ノ三十日ノ期間ト云フモノヲ
モウ少シ長ク致シタイト思ツテ居リマス、
併シナガラ之ニ付キマシテモ色々ト說ヲナ
ス者ガアリマシテ、或ハ半年位ニセヨト云
フヤウナコトヲ言フ者モアリマスガ、勤勞
報國隊ナルモノハ我ガ國獨得ノ制度デアリマ
シテ、國民皆働クト云フ精神ノ下ニ出テ居
ルノデアリマシテ、强制ニ依ラズ、又法律
的ノ義務ヲ伴ハナイト云フコトニナツテ居
リマス關係上、是非一日ヲ之ニ投ジナクテ
モ出來ルト云フヤウナ人ニ對シテ奉仕ヲ求
メテ居ルト云フヤウナコトモアリマスノデ、
直チニ六箇月ニスル方ガ宜イト云フコトニ
付キマシテハ贊成シ兼ルノデアリマスガ、
現在ノ三十日ト云フコトデハ短カ過ルダラ
ウ、之ヲ長クシヨウト云フヤウナコトモ考
ヘテ居ル一點デアリマス、尙ホ色々ト實施
ニ當リマシテ改正スベキ點モアラウカト思
ヒマスガ、今問題トナツテ居リマス大キナ
點ハ此ノ二ツダト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=44
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045・水谷長三郎
○水谷委員 ソレテハ此ノ度ノ五大產業重
點主義ニ依リマシテ犧牲產業ガ起ルノデス
ガ、勞務ノ配置轉換ト云フノハ何カ法的指
示デヤラレルノデスカ、或ハ國民徵用令ト
カ、サウ云フヤウナモノデヤラレルノデ
スカ、或ハサウ云フモノデナシニ他ノ手段
方法デヤラレルノデスカ、其ノ點ヲ御聽キ
シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=45
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046・持永義夫
○持永政府委員 只今ノ方法トシマシテハ
色々ナ方法ガ考ヘラレマス、是ハ大臣モ慥
カ他ノ委員會等デ御話ガアツタト思ヒマス
ガ、出來ルダケ自發的ノ意思ニ依ツテ他ノ
重要產業ニ向ケルト云フコトヲ第一段ニ致
シテ居リマス、ソレカラ第二段ニハ、徵用
令ニ依ツテ徴用シテ勞務ニ付ケルト云フコ
トモ中ニハヤラナケレバナラヌモノモアラ
ウト思ヒマス、ソレカラ、是ハ現在〓究シ
テ居リマスガ、生產增强勞務緊急對策ノ中
ニアリマスヤウニ、勞務配置ヲ調整令デ規
定スルカドウカ、目下〓究致シテ居リマス、
若シ總動員法デ、勅令デ規定シ得ルナラ
バ、調整令ヲ改正致シマシテ强制的ニ配置
轉換ヲ命ズルコトニシタラドウカ、若シソ
レガ出來マスナラバ其ノ方法ニ依ツテ行キ
タイ、若シソレガ出來ヌ場合ノ問題ト致シ
マシテハ、是ハ指導所長ニ或ル程度奬勵ヲ
サセルヤウニシテ行キタイ、强制デハアリ
マセヌガ、事實上ハ勸奬シテ重要產業ニ向
ケルヤウニ指導シテ行キタイ、サウ云フ方
法ガ考ヘラレル譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=46
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047・阪本勝
○阪本(勝)委員 關聯シテ-只今ノ局長
ノ擧ゲラレタ中デ自發性ト云フコトト職業
指導所ノ幹旋ニ依ルコト、是ハ恐ラク效果
ガナカラウト思ヒマス、ドウシテモ總動員
法ニ基ク配置轉換ニ關スル新シイ勅令ヲ制
定スル必要ガアルト私ハ思フノデスガ、大
體政府ノ御考ヘハ新シイ勅令ヲ出スト云フ
方向ニ傾イテ居ルノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=47
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048・持永義夫
○持永政府委員 其ノ點ガマダ法制局ト十
分相談ヲ致シテ居リマセヌガ、御承知ノヤ
ウニ總動員法ノ第四條ニハ徵用ノ規定ガア
リ、第六條ハ從業條件等ニ關スル規定ヲシ
テアリマスガ、第六條デ配置轉換マデ命ジ
得ルカドウカト云フ點ガ、稍〓法制上疑問ガ
ゴザイマス、ソコデ厚生省トシマシテハ、
御話ノヤウニ其所マデ行キタイト云フ希望
ハ持ツテ居リマスガ、法制上イケナイトス
レバ出來ナイ譯デアリマス、考ヘ方トシテ
ハ大體其所マデ行キタイト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=48
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049・阪本勝
○阪本(勝)委員 總動員法第四條、第六條
デ行ケルト思ヒマス、サウシマスト法律上
ノ疑義ガ假ニ解ケテ成立テバサウ云フ勅令
ヲ定ムル意思ガアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=49
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050・持永義夫
○持永政府委員 左樣デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=50
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051・阪本勝
○阪本(勝)委員 分リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=51
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052・水谷長三郎
○水谷委員 關聯質問デ非常ニ私ノ質問ヲ
明確ニシテ貰フノデ非常ニ結構デアリマス
ガ、次ニ私ノ質問ノ要點ハ、勞務ノ權限委
讓ニ伴ツテ厚生省ト統制會ト產報トノ三ツ
ノ關係、之ヲバ具體的ニ御聽キシタイト思
フノデゴザイマス、昭和十六年ノ十月ノ閣
議ノ申合セニ依リマシテモ、資金竝ニ勞務
ノ權限ハ出來ルダケ速カニ委讓スルト云フ
コトニナリマシテ旣ニモウ一年有半經ツテ
居ルノデゴザイマスガ、最近新聞デ見ル所
ニ依リマスト、此ノ勞務ノ權限委讓ヲ愈〓大
體厚生省ガオヤリニナルト云フコトヲ拜承
シタ次第デゴザイマス、勞務ノ權限ヲ委讓
スル、ドウ云フコトヲ統制會ニ委讓スルノ
カ、唯單ニ勞務權限ノ委讓ト云フコトデハ
ハツキリ分ラナイノデ、其ノ權限委讓ノ內
容ヲドウ云フモノヲ統制會ニ委讓スルカ、
之ヲバ委讓シタ場合ニ於テハ厚生省トソレ
カラ產業報國會ト統制會、此ノ三者ノ間ニ
ハドウ云フ關係ガ生ズルノカト云フコトヲ、
極メテ詳細ニ具體的ニ御說明ヲ願ヒタイト
思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=52
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053・持永義夫
○持永政府委員 統制會ニ對スル勞務ニ關
スル權限ノ委讓ノ問題デゴザイマスガ、今
具體的ニマダ此處デ申上ゲルマデニ確定致
シテ居リマセヌガ、大體ノ意向ヲ申上ゲタ
イト思マヒス、ソレハ勞務調整令ニ依リマ
シテ、每年國民學校ノ卒業生ヲ各重要產業
ニ配置致シテ居リマス、其ノ場合ニ於テ統
制會關係ノ工場ニ對スル配置ハ、關係ノ統
制會ヲシテ纒メサセル、サウシテ厚生省ト
相談スル、此ノ場合ニ於キマシテハ、勿論
關係省モ現在マデ協議ニ與ツテ居ル譯デア
リマス、サウ云フコトガ一ツ考ヘラレマス
是ハ形式上ノ權限ト申シマスカ、或ハ廣イ
意味デ權限ト言ツテモ差支ヘナイト思ヒマ
スガ、嚴格ニ言フト或ハ協力參畫ト言ツタ
方ガ適當カト思ヒマス、併シ私共ノ方デハ
廣イ意味ノ權限ノ一ツダト云フ風ニ考ヘテ
居リマス、サウ云フコトガ一ツ考ヘラレマ
ス、ソレカラモウ一ツハ學校卒業者使用
制限、是ハ御承知ノヤウニ鑛エノ技術關係
ノ卒業生デアリマス、之ニ付キマシテハ國
民學校ノ場合ト少シ趣キガ違フノデアリマ
スガ、國民學校ノ方ハ將來大事ナ勞務デア
リマスケレドモ、數モ多ウゴザイマスシ、
ソレカラ質モ大體特別ナ質ヲ持ツテ居ル譯
デハゴザイマセヌ、併シ今申シテ居リマス
ル此ノ學校卒業者使用制限ノ方ハ、特殊ノ
技能ヲ持ツタ人達ノコトデアリマスカラ、
此ノ配置ニ付テハ國民學校ノ卒業生以上ニ
相當統一性ヲ持タセルト云フ意味ニ於キマ
シテ、最後ノ權限ハ厚生省ニ持ツテ居リマ
スガ、ヤハリ統制會關係ハ統制會ノ方ノ協
力ヲ戴クト云フコトヲ考ヘテ居リマス是
ハ國民學校卒業生ノ割當ヨリモ、少シ程
度ガ輕イ意味ノ協力ト云フ風ニ考ヘテ居リ
マス、ソレカラ賃金統制令ノ問題デアリマ
スガ、此ノ賃金統制令ノ方ハ本質カラ言ヒ
マシテ、ドノ程度ニ委讓シタラ宜イカト云
フコトガ、非常ニ難カシイ問題デゴザイマ
ス、唯現在考ヘテ居リマスノハ、基本的ナ賃
金統制ハ是ハ勿論厚生省ガ持タナクテハイ
カヌ、丁度商工省ガ物價關係ヲ全然統制
會ニ委讓シテ居ナイト同ジヤウニ基本的ナ
事項ハ是ハ委讓出來ナイガ併シ例ヘバ特別
ナル能率ヲ上ゲル爲ニ手當ヲ支給スル、或ハ
加給奬勵金ヲ支給スルト云フヤウナ場合ニ
於キマシテハ之ヲ或ル稅度統制會ニ委讓
シテ行ツタラドウカト云フヤウナコトヲ考
ヘテ居ルノデゴザイマス
ソレカラモウ一ツハ技能者養成令ノ關係、
之ニ付キマシテハ數項目ゴザイマスガ、今
此處デハツキリ記憶致シテ居リマセヌガ、
例ヘバ養成ヲスル比率デ問題、現在ノ勞務
者數ニ對シテドノ位ノ比率テ養成シナケレ
バナラヌカト云フヤウナ比率ノ問題ガアリ
マス、サウ云フ問題ニ付キマシテモ、場合ニ依
ツテハ統制會ニ委讓シタラドウデアラウカ
ト云フヤウナコトヲ考へテ居リマス、又技能
者養成ニ付キマシテ、、之ニ類スルモノガ一、
二ゴザイマス
大體具體的ニ考ヘテ居ル事項ハ以上デア
リマスガ、是ハ吾々ガ今事務的ニ考ヘテ居ル
事項デアリマシテ、關係者トモ能ク連絡ヲシ
テ御贊成ヲ得タ上テ、近ク統制會ノ幹部ノ
方々ニ御話申上ゲタイト思ツテ居リマス、
勿論大綱ニ付キマシテハ大臣カラ御話ガア
リマシタ如ク、是ハ四大產業ニナツテ居リ
マシテ、飛行機ニ關シマシテ統制力ハゴザ
イマセヌガ、其ノ鐵鋼、輕金屬、ソレカラ
石炭、造船ノ四大統制會ニ付キマシテ大臣
カラ大綱ノ御話ガアリマシタガ、厚生省ト
シテハ、アト事務的ニ決メルト云フコトガ
殘ツテ居リマスガ、只今申シマシタヤウニ、
關係省ト連絡シテ意見ガ纏マリマシタラ委
讓シタイト云フ風ニ考ヘテ居リマス、ソ
レデ大體厚生省ト統制會ノ關係ハ御想
像ガ付クト思ヒマスガ、アトハ產報トノ關
係デアリマス、產報トノ關係ハ、實ハ非常
ニ是モ工作スル部面ガゴザイマス、統制會
ノ仕事トシテハ御承知ノヤウニ勅令ノ中ニ
勞務配置等ニ關スル參畫ト云フコトガアリ
マス、ソレカラ能率ノ增進トカ、技術ノ向
上ト云フヤウナコトガ、ヤハリ統制會ノ仕
事トシテ勅令ノ中ニ規定サレテ居ル、左樣
ナコトハ總テ產報ト重ナルモノデアリマス、
其ノ間ノ統制ヲドウスルカト云フコトハ非
常ニ難カシイ問題デゴザイマスガ、大體ノ
行キ方トシマシテハ、產報ハ申スマデモナ
ク、是ハ一種ノ國民運動デアリマス、而モ
全體的ナ運動デアリマスカラハソコヲ狙ツ
テ產報トシテハ運動形態トシテ全體的ノモ
ノヲ立テテ行クト云フコトデ行キタイ、統
制會ノ方ハ言フマデモナク各業種ニ依ツテ
分レテ居リマスカラ、其ノ個々業種ニ適當
ナ事項ヲ狙ツテ行ツタラドウカト云フヤウ
ナコトヲ考ヘテ統制ヲシテ行キタイ、勿論
今後問題トシマシテハ、色々競合ノ起ル問
題ガアルト思ヒマスガ、ソレニ付キマシテ
ハ、厚生省ト商工省或ハ其ノ他關係省ト連
絡ヲ執リマシテ、醜イ競爭ノナイヤウニ致
シテ行キタイト云フ風ニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=53
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054・水谷長三郎
○水谷委員 厚生省ト統制會ノ關係ハ大體
分リマシタ、更ニ產報ノ仕事モ大體分リマ
シタガ、併シ產報ガ一番力瘤ヲ入レナクテ
ハナラヌ點ハ、一體何處ニアルカ、今ノ統
制會ト技術ノ向上、色々ノ點ニ重ナル所ガ
アリマスガ、產報ソレ自體トシテ一番力瘤
ヲ入レナクチヤナラヌ眼目ハ一體何處ニア
ルカト云フ點ヲ重ネテ拜聽サセテ戴キタイ
ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=54
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055・持永義夫
○持永政府委員 產業報國運動ノ重點ハ何
處ニアルカト云フ御質問デゴザイマス、是
ハ見ル方ノ御意見ニモ依ルト思ヒマスガ、
私共ハヤハリ產報ガ出來マシタ基礎ニナツ
テ居リマスル勤勞新體制確立要綱、是ハ昭
和十五年ノ十月ニ閣議デ決定セラレタノデ
アリマスガ、ソレニ依リマシテヤハリ勤勞
報國精神ノ〓揚ト云フコトガ一番大事ナ點
デハナイカト思ヒマス、ソレニ附隨スル各
種ノ施設、事業ト云フモノハ勿論考ヘナケ
レバナラヌ、隨テ或ハ現在マデヤツテ居リ
マス出勤ノ競爭トカ、或ハ技能ノ競爭トカ、
又各種ノ物資ノ配給トカ、或ハ勤勞、文化、
保健、衞生ト云フヤウナ問題ガ總テ附隨シ
テ居ルト思ヒマスガ、サウ云フ各種ノ事業
モ勿論必要デアリマスガ、ヤハリ一番眞先
ニナルモノハ此ノ勤勞新體制確立要綱ノ冒
頭ニ揭ゲテアル勤勞報國精神ノ昂揚ト云フ
コトガ一番大事デアル、勿論私ハ產報運動
ガ單ナル精神運動デナイト云フコトハ十分
ニ認メテ居リマス、單ニ精神運動ニ終ツテ
ハナラヌト云フヤウニ考ヘマスガ、狙ヒハ
ソコニアルト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=55
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056・水谷長三郎
○水谷委員 之ニ關聯シテ產報ヲ如何ニ强
化シテ行クベキカト云フ此ノ一點ダケハ、
是マデ大臣ガ外ノ場所デ論ジラレテ居リマ
シテ、ソレニ關聯シテ私モ質問ヲ進メテ行
キタイト思ヒマスノデ、產業報國會ノ强化
對策ト云フ一點ダケハ厚生大臣ニ留保致シ
マシテ、私ノ質疑ハ是デ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=56
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057・阪本勝
○阪本(勝)委員 產業報國會ガ翼贊會ノ傘
下ニ入リマシタガ、產業報國會ノ本來ノ仕
事ヲ達成セシメル上カラ見テ、大政翼贊會
ノ傘下ノ一團體デアル方ガ宜イノカ、寧ロ
翼贊會外ノ一團體デアル方ガ宜イノカ、
其ノ點ノ御考ヘヲ伺ヒタイト思ヒマス、私
ノ考ヘヲ申シマスト、產業報國會ガ大政翼
贊會ノ傘下ニ入ツタト云フコトノ爲ニ、ド
レ程「マイナス」ニナツタカ分ラナイト思ヒ
マンク、率直ナ御意見ヲ一ツ伺ヒタイト思ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=57
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058・武井群嗣
○武井(群)政府委員 只今ノ御尋ネニ對シ
マシテ率直ナ意見ト云フ御要求デアリマス
ガ、是ハ政府委員トシテハ述ベラレナイコ
トデアリマス、私共トシテハ閣議ノ決定ニ
依リマシテ大政翼贊會ノ傘下ニ入ツタコト
デアリマス、此ノ政府ノ方針ニ基イテ仕事
ヲシ、而シテ厚生省ハ之ヲ指導シテ居ル譯
デアリマスノデ、只今ノ御答ヘト致シマシ
テハ、是ノ良シ惡シト云フコトニ付キマシ
テハ、更ニ考察シテ見ル必要ガアリマセウ、
是ノ良イ惡イニ付キマシテハ、私共ト致シマ
シテハ閣議ノ決定ニ依ツテヤツテ居ル此ノ
事ヲ認メ、其ノ弊害ガアルナラバソレヲ除去
スルコトニ努メ、益〓產報ノ精神ヲ發揮サ
セルヤウニ指導スル以外ニ只今ノ所ハ御答
ヘ出來ナイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=58
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059・阪本勝
○阪本(勝)委員 ソレデハ厚生大臣ニ直接
御尋ネスルコトニ致シマヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=59
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060・三浦一雄
○三浦(一)委員 水谷委員ガ質疑シタ點ニ
極ク二三點牽聯シテ、此ノ際御聽キシテ置
ク方ガ妥當ダラウト思ヒマスノデ、御許シ
ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=60
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061・前田房之助
○前田委員長 許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=61
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062・三浦一雄
○三浦(一)委員 厚生省カラ戰時行政特例
法案ノ運用ニ付キマシテ、私ハ聊カ物足ラ
ヌ感ハ致シマスルガ、率直ニ其ノ限界ヲ材
料トシテ御提示ニナツタコトヲ私ハ非常ニ
欣快ト致シマス、今水谷君ガ御質問ニナリ
マシテ大要ハ了承致シマシタガ、此ノ運用
ニ付キマシテ、一ツハ斯ウ云フコトデアリ
マン、所謂重點產業ニ付キマシテノ運用デ
アリマスルガ、之ヲ運用スル場合ニ此ノ書
振リデ見マスト、工場鑛山等ノ具體的事情
ニ依ツテ法令ノ解除、制限等ヲヤツテ參ル、
斯ウ云フコトニ窺ハレルノデアリマス、隨ヒマ
シテ甲鑛山、乙工場ト云フモノガ法律ノ制
限禁止ノ解除ヲ致スニ適當デアリマス場合
三、ソレヲ對象ニシテヤルカドウカ、斯
ウ云フ點デアリマス、是ハ相當ニハツキリ
シタ御考ヘヲ伺ヒタイト思フノデアリマス
ガ、先ヅ其ノ點ヲ一ツ御伺ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=62
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063・武井群嗣
○武井(群)政府委員 厚生省ト致シマシテ
ハ戰時行政特例法案ノ第一項ニ該當スル事
項トシテドンナモノガアルカト云フ御尋ネ
ニ對シテ、項目ヲ差上ゲタ譯デアリマス、
而シテ是ガ如何ニ運用サレルカト云フコト
ニ付キマシテハ、率直ニ申上ゲマスト恐ラ
ク此ノ法案ガ裁可公布ニナリマシタ曉ニ於
キマシテハ、此ノ規定ノ實施ニ關シテ必要
ナル事項ハ勅令ヲ以テ定メルコトト思ツテ
居リマス、私共ハマダ其ノ勅令ノ內容等ニ
付テ能ク存ジテ居リマセヌ、其ノ勅令ノ制
定セラレタ曉ニ於キマシテ運用ガハツキリ
スルコトト思ツテ居リマスノデ、抽象的ニ
又一般普遍的ニ制限ノ緩和等ガ行ハレル場
合ガアラウカト思ヒマス、又具體的ニ甲乙
等ノ工場鑛山等ニ付テ行ハレルコトモアル
カト思ツテ居リマスケレドモ、總テガ此ノ
勅令ノ制定ヲ見タ曉ニ於キマシテハツキリ
スルコトト思ヒマス、只今此處デ如何樣ニ
モ具體的ナコトハ申上ゲラレナイ實情デア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=63
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064・三浦一雄
○三浦(一)委員 結局問題ハ其ノ說明ノ要
綱ニ係ハル譯デアリマス、先般委員長ニ此
ノ點ヲ特ニ政府部內カラ其ノ綱領ヲ御示シ
ニナルヤウニ御配慮ヲ仰イデ置イタ譯デス
ガ、其ノコトヲ御示シニナルヤウニ一ツ御
配慮ヲ仰ギタイト思ヒマス、サウデナケレ
バ結局此ノ說明案ヲ戴キマシテモ、審議ハ
十分盡セナイト考ヘルノデアリマス、其ノ
點ヲ委員長ニ希望致シマシテ私ノ關聯質問
ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=64
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065・前田房之助
○前田委員長 三浦君ノ御希望ハ目下政府
ト交涉中デアリマスカラ、左樣御諒承ヲ願
ヒマス-河上丈太郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=65
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066・河上丈太郎
○河上(丈)委員 同僚委員カラ色々勞務問
題ヲ中心ト致シマシテ、大體勞務對策ノ全
貌ガ明白ニナツタノデアリマス、當委員會
ニ於キマシテハ勞務關係ト增產ノ關係トノ
點ニ付キマシテ、特ニ議論ガ進メラレテ居
リマスルガ、同僚ノ御方々ノ中デ殘サレテ
居ル點ト、私ノ考ヘテ居ル點ニ付テ御尋ネ
ヲ致シタイノデアリマス、勞務ノ增產對策
ト致シマシテハ食ベ物ガ足ラナイ、地下足
袋ガ足ラナイ、石鹼ガ足ラナイト云フヤウ
ナ物資ノ面ノ對策モ相當アリマスルガ、是
ハ割合樂ニ出來ルト私ハ思ヒマス、ソレカ
ラ賃金ノ方ノコトモ亦政府ノ考ヘデ(3)
フレーション」トカ物價トカ云フ重要ナル國
策ノ問題ト關聯ヲ致シマシテ、深甚ナル考
慮ヲ必要ト致シマスケレドモ、ツ
是モヤラウ
ト思ヘバヤリ得ルコトデアリマス、增產對
策ノ上ニ於テ勞務ノ關係ニ於テ一番ムヅカ
シイ問題ハ何カト云フト、勞働者ノ住宅ノ
問題デナイカト思フノデアリマス、ソレデ
住宅問題ニ付テノ御御意見ヲ承リタイノデ
アリマス、私ハ日頃カラ斯ウ云フ意見ヲ持
ツテ居ルノデアリマス、日本ノ工場法ト云
フモノハ御承知ノ通リニ自由主義經濟時代
ニ於ケル工場法デアリマシテ、唯工場ト云
フモノヲ勞働者ノ生活或ハ或ル意味ニ於テ
ハ企業全體ノ組織カラモ分離シテ考ヘテ居
ツタ時代ナノデアリマス、今カラ見テ非常
ニ吾々ハ不滿ニ思フ點モアルノデアリマス、
厚生大臣モ大體サウ云フ御意見デアラウト
思ツテ居ルノデアリマスガ、工場ガ本當ニ
勞務者ノ生活ノ中心ニナル、此處デ朝カラ晩
マデ起キテ働イテ寢テ行クト云フ大キナ所
デアル、斯ウ云フコトニナツテ初メテ私ハ
本當ニ生產ガ能率化スルノダト思フ、今日
本ノ工場ト云フモノハ唯働クノミ、ソレ以
外ニ歷史的意義モ文化的意義モ何モ持ツ
テ居ナイ、唯其處へ勞務者ガ朝通ツテ晩ニ
歸ルダケデアル、本當ニ私ハ勞務者ガ工場
ヲ生活ノ單位ト考ヘルニハ工場ニモ歷史ガ
ナケレバナラヌト思フ、私ハ學生時代ニ
「ラグビー」學校物語モ讀ミマシタケレドモ、
其ノ中ニ、學生ガ〓室ニ入ルト、此處ハ總
理大臣ガ坐ツタ席ダトカ、此處ハドウ云フ
藝術家ガ坐ツタ席ダト言ツテ、サウ云フコ
トガ非常ナ勉强ノ刺戟ニナツタ、或ル總理
大臣ノ落書ガ此處ニ-アツタト云フヤウナコ
トガ所謂學業ヲ刺戟スル、勉學ヲ鼓舞スル
原動力ニナツタト云フコトデアリマスガ、
工場ニハ歷史ガナイ、私ハ工場ニ歷史ガ欲
シイ、ソコデ初メテ所謂工場全體ガ勞務者
ノ生活ノ世界デアルシ、生活ノ根據ダト云
フ風ナ體制ヲ執ツテ行キタイ、是ガ私ノ理
想トスル工場ノ體制ナノデアリマス、此處
ニモ副議長ノ寫眞ナドガ出テ居ルヤウデス
ガ、私ハ工場デ働イテ、工場ノ齒車デ死ン
ダ勞働者ノ寫眞ガ其ノ工場ノ一角ニ揭ゲラ
€92
レテ居ルト云フ風ナ工場ガ欲シイ、ソレデ
初メテ勞務者ガ齒車ト死ンデ行カウ、齒車
ト戰死シテ行カウト云フ氣持ガ起ツテ來ル
ノデハナカラウカト考ヘテ居ル、私ハ工場
ノ經營ニ付テハ此ノ前ニ總理大臣ニモ少シ
申上ゲタノデアリマスルケレドモ、第一ニ
工場ニ對スル私ノ意見ハサウ云フ風ナ工
場ガ欲シイ、歷史ガ欲シイ、ソコデ初メテ
私ハ眞ノ生產ガ增强出來ルト思フノデアリ
マスルガ、ソレト同時ニヤハリ私ハ工場ニ
家ガ欲シイ、今日殊ニ五大產業ニ生產ヲ擴
充スルト云フノデ勞務者ヲ集中スルノデア
リマスルガ、一番ニ困ルノハ住宅問題デア
リマス、今生產ヲ阻碍致シマスル原因ハ住
宅難デアリマス、殊ニ一時間モ二時間モ先
カラ自轉車ニ乘ツテ通ハナケレバナラヌ、
或ハ汽車ニ搖ラレテ通フト云フヤウナコト
デハ、ドンナニヤツテモ生產ノ增强ハ困難
デアル、將來政府ハ工場法ノ改正ノ如キヲオ
ヤリニナルノデアリマスルカラ、結局工場
ニ勞務者ノ住宅ヲ國家ノ强制力ヲ以テ造ラ
セル必要ガアルノデハナイカ、私ハ屢〓、斯ウ
云フコトヲ言フノデアリマスケレドモ、工
場ニ倉庫ノナイ工場ハナイ、是ハ材料ヲ入
レル所デアリマス、是ハ材料ノ家デアリマ
ス、所ガ人間ノ住マフ家ト云フモノハ工場
主、或ハ經營者ト云フモノハ考ヘナイ、
万人ノ職工ヲ集メルコトヲ厚生省ニ御願ヒ
ニ來ルト、厚生省ハ許サレルケレドモ、
万人入ル所ノ家ト云フモノハ誰ガ責任ヲ以
テ造ルカト云フト造ル人ガナイ、私ハ
一万人ノ職エヲ動員スル許可ヲ得ル時ニハ、
其ノ經營者ニ一万人ノ家屋ヲ造ル義務ヲ持
タセルコトガ必要ダト思フ、倉庫ノナイ工
場ハナイ、材料ヲ入レル家ガ倉庫デアル、
人間ノ住マフ倉庫ヲ先ヅ造ラナケレバナラ
ヌト思フノデアリマス、人間ノ住マブ倉庫
ハ勞務者ノ住宅デアル、最近戰爭後非常ニ
住宅難デ、方々デ本當ニ働カウト思ツテモ、
一時間モ二時間モ先カラ通ツテ居タノデハ
迚モ駄目デアル、其ノ他色々ナコトガアリ
マス、殊ニ日本ノ產業ニ於キマシテハ、御
承知ノ通リ紡績業ハ住宅問題ヲ解決シテ居
ル、未婚ノ女ヲ採ル關係上立派ナ寄宿舍ガ
出來テ稍〓住宅難ハ緩和サレテ居リマスケ
レドモ、斯ウ云フ旣婚ノ男子ノ勞務者ノ大部
分トシテ生產ニ從事セシムルヤウナ產業ニ於
キマシテハ、是ガ殆ド考ヘラレテ居ナイノ
デアリマス、私ハ本當ニ生產ヲ增强シヨウ
トスルニ付テハ工場ノ觀念ヲ一變シ、サウ
シテ茲ニ新シイ所ノ觀念-工場ニ歷史ヲ
持チ、工場ニ慰安ヲ持チ、工場ニ生活ヲ持
ツ所ノ工場形態ヲ作ラナケレバナラヌト云フ
コトヲ私ハ信念トシテ居ルノデアリマスガ、ソコ
マデ行カナクテモ、兎モ角斯ウ云フ五大產業
ノ勞務者ヲ集中シヨウトスル時ニ於キマシ
テハ、住宅對策ハドウ云フ風ニ考ヘラレテ
居ルカ是ハ私重要ナル問題デアルト思ヒマ
スガ、餘リサウ云フ議論ガ議會ノ各方面ニ
出テ居ナイヤウニ思ヒマスノデ、一ツ御意見
ヲ承リタイ、又是ハ私商工大臣ニモ御尋ネヲ
致シテ見タイノデアリマスガ、殊ニ先程水谷君
モ言ハレタヤウニ、勞務者ガ新シイ勞働觀ニ
立ツテ國家ニ御奉公ヲスルト云フ觀念デ以テ勞
務ニ勤シムト云フ觀念ハ徹底シテ居リマス
ト同時ニ、ヤハリ企業家モ新シイ企業觀念ニ
基イテ工場ノ經營ヲヤツテ行クコトニ付テ
大イニ考慮サレナケレバナラヌ、實際工場
トハ云フガ、工場ヂヤナイデス、マルデ「バ
ラック」デ雨ガ漏ツテシドイ職工達ガアスコヲ
直シテ吳レ、雨ガ降ツタリ、嵐ガアツタリスル
ト危イカラト申出ル時デーモ、恬トシテ顧ミ
ナイ、尙ホ是ハ第二ノ問題トシテ災害防止
ニ付テ御尋ネ致シマスケレドモ、先ヅ五大
產業ニ基ク生產擴充ニ付テ、新規ニ募集サ
レル勞務者ニ對スル住宅ニハドウ云フ御氣
持ヲ持ツテ居ラレルカ、ドウ云フ對策ヲ持
ツテ居ラレルカ、又政府ハソレニ對シテ何
處マデ積極的ニヤラレルノデアルカ、御示
シヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=66
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067・武井群嗣
○武井(群)政府委員 生產力增强ノ爲ニ勞
務者對策トシテナスベキコトハ多々アルガ、
就中住宅ノ大切ナコトニ付キマシテ縷〓御述
ベニナリマシタコトニ付キマシテハ、逐
傾聽致シマシタ、工場ニ歷史ノ必要ナルコ
トニ付キマシテノ仰セハ洵ニ其ノ通リデア
リマシテ、實際ノ問題トシテ、立派ナ歷史
ヲ持ツテ居ル工場ノ生產力ハ能率が良ク、
之ニ反シテ出來タバカリノ工場ニ於ケル生
產ガ思フヤウニ行カヌト云フヤウナ事例モ
多々アルコトデアリマスノデ、此ノ點ニ付
キマシテハ、全ク御同感デアリマス、而シ
テ最初御述べニナツタヤウニ、工場ヲ生活
ノ中心トシナケレバナラナイト云フコトニ
付キマシテモ、私共モ全ク左樣ニ考ヘテ居
ル所デアリマシテ、私共ハ更ニ進ンデ工場
ハ陛下ノ赤子ヲ預カツテ居ル所デアリマス
カラ、此ノ工場ハ亦〓室デナケレバナラヌ、
修練場デナケレバナラチイト云フヤウナコ
トモ、常々事業方面ノ人ニ申シテ居ルコト
デアリ、又係官ト致シマシテモサウ云フヤ
ウナ積リデ微力ヲ捧ゲテ居ル譯デアリマス、
併シナガラ實際問題トシテ、住宅ノ不足シ
テ居ルコトハ仰セノ通リデアリマシテ、昨
年ノ暮ニモ政府ハ企畫院、住宅營團等ト力
する主ナル工業都市ニ於ケルこれ
ヲ合ハセマシテ、
住宅ノ不足ノ狀況ヲ調ベテ見タノデアリマ
スガ、調ベタ結果ニ依リマスト、想像以上
ニ又甚ダシイ實情ヲ見マシテ驚イテ居ル譯
デアリマス、ソレ故ニ生產力擴充ト共ニ、
一體住宅ト云フモノハ生產設備ノ一ツデハ
ナイカト云フコトヲ常ニ申シテ居ル譯デア
リマス、色々ナ生產計畫ヲ立テル場合ニ於
キマシテハ住宅ハ之ヲ切離スコトナシニ、
生產設備ノ一ツトシテ政府ハ之ヲ物動計畫
等ニモ入レテナスベキモノナリト云フコト
ヲ厚生省ト致シマシテハ强ク主張致シマシ
テ、漸次左樣ナ風ニ參ツテ居ル實情デアリ
マスルガ、併シナガラ其ノ實績ハ先程モ申
上ゲマシタヤウニ住宅ハ極メテ拂底シ、狹
イ部屋ニ多勢ノ者ガ寢起キシテ居ルト云フ
ヤウナ實情デアリソレスラモナイ所ガア
ル譯デアリマス、昨年ノ八月九日、不良工
員ノ檢擧等ヲ致シマシタ成績ニ依リマシテ
モ、斯樣ナ不良靑少年ノ出テ居ル所ハ多ク
住宅ノナイ所、寄宿舍ノナイ所デアリマスノ
デ、是等ノ點カラ申シマシテモ、住宅ノ必
要ナコトハ工場ノ設備ト不可分ノ關係ニア
ルト考ヘテ居リマス、然ラバドウ云フコト
ヲシテ居ルカ、率直ニ申上ゲマスト、十分デ
ハゴザイマセヌ、只今マデヤツテ居リマスル
コトハ重要ナ產業方面ニ付キマシテハ、其
ノ事業會社工場等ニ對シテ住宅ニ要スル資
材ノ特別ノ配給等ヲ致シテ、其ノ事業主ヲシテ
住宅ノ建設等ニモ當ラセテ居ルノガ一ツデ
アリマス、住宅營團ガ政府ノ庇護ノ下ニ相
當ノ資金ヲ得テ必要ナル方面ニ世帶向ノ住
宅ト工員ノ寄宿舎用ノ住宅ヲ建テテ居ルコ
トモ其ノ一ツデアリマス、住宅營團等ハ此
ノ方面ニ向ツテ相當ノ奉仕ヲシナケレバナ
ラヌ譯デアリマスルガ、シン資材ノ關係等ノ實
情ヨリシテ豫定ノ域ニ參ツテ居ラナイコト
ハ甚ダ殘念デアリマスケレドモ、少イ資材
ヲ出來ル限リ此ノ重點產業方面ニ向ケル必
要ガアリマスルノデ、昨年來住宅營團ノ作
リマスル住宅ハ所謂「バラック」ニ類スルモノ
デ此ノ際我慢ヲシテ、出來ル限リ其ノ間數ヲ
殖ヤシ收容人員ヲ多クスルコトニ力ヲ注グ
ト云フ方針ニ改メマシテ、極端ナ言ヒ方デ
アリマスケレドモ、從來ノヤウナ所謂文化
住宅的ナモノハ此ノ際見合ハセテ、專ラ勞
務者ノ入ルモノヲ出來ル限リ多ク造ラセル
ト云フヤウナ方針デ昨年以來ヤツテ居ル譯
デアリマス、併シナガラ其ノ實績ハマダ擧
ツテ居ラヌコトヲ甚ダ遺憾トシテ居リマス
更ニ進ンデ新シク造ル方面ガ斯樣ナ狀況
デアリマスルノデ、現在アリマスル住宅等
ニシテ割合不要不急ノ方面ニ使ハレテ居ル
モノガアリマスルナラバ、之ヲ總動員業務
等ヲ擔當シテ居リマスル工場方面ニ充當ス
ルヤウニ致シタイト云フ考ヘヲ持チマシテ、
總動員法ニ基ク工作物ノ使用、收用ニ關ス
ル勅令ノ制定等モ相當ノ進捗ヲ見テ居ル譯
デアリマシテ、必要アル場合ニ於キマシテ
ハ、此ノ勅令ノ發動ニ依リマシテ現在アル
建物ヲ是等ノ方面ニ使用、收用等モナサウ
ト考ヘテ居ル譯デアリマス、併シナガラ斯樣
ナ勅令ヲ以テ强制的ニ致スト云フコトハ好
マシイ方法デハアリマセヌノデ、專ラ行政
官廳其ノ他ノ勸奬等ニ依リマシテ、事業主
トソレ等ノ建物ヲ持ツテ居リマスル所有者
トノ協議等ニ依リマシテ、從來アリマスル
建物ヲ出來ル限リ重要產業方面ノ勞務者ノ
住宅ニ向ケルヤウニ色々ト措置ヲ致シマシ
テ、此ノ方面ニ於キマシテモ相當ノ成績ヲ
擧ゲツツアル實情デアリマス、是等ガ主ナ
ル對策デアリマス、併シナガラ率直ニ申上
ゲマスト、是等ヲ以テ致シマシテモ十分實
情ニ卽スルダケノ施設ガ出來テ居ラナイコ
トハ私共認メテ居リ、令後一層此ノ方面ヲ
急速ニ展開シナケレバ折角狙ツテ居リマス
ル生產增强モ效果ガ萬全ヲ期シ難イコトト
思ツテ、精々此ノ方面ノ完璧ヲ期スルコト
ニ努力スル積リデ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=67
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068・河上丈太郎
○河上(丈)委員 今度ノ勅令ニ依ルト總理
大臣ノ指示權ガ非常ニ强クナル、私ハ此ノ
際總理大臣ノ指示權ヲサウ云フ方面ニ
此ノ二ツノ法律或ハ勅令ニ依ツテ出來ルカ
ドウカト云フコトニ付テハ私ハ出來ルト考
ヘテ居リマス、總理大臣ノ指示權ヲ以テ大
藏大臣ニ資金ヲ要求スル、資材ノコトハ商
工大臣ニ向ツテヤレバ宜イノデスカラ、私
ハ勞務者住宅問題ノ如キハ解決ガ不可能デ
ナイト思フ、政府ノ今オヤリニナツテ居ル
コトハ私モ能ク存ジテ居リマス、併シ兎ニ
角厚生施設ト云フ風ナモノニナルト、今マ
デノ政府ノヤリ方ト云フモノハ田舍ノ靑物
市場ミタイナモノデ、大キナ「デパート」ナ
ラ宜イケレドモ、サウデナク、此處ニ下駄
ガ一、二足アル、アツチニハ食物ガ並ンデ
居ル、コツチニハ吳服ガ並ンデ居ルト云フ
ヤウナモノデアツテ、兎ニ角住宅ノコトモ
ヤツテ居ル、何モヤツテ居ルト云フコトハ
アルケレドモ、少シモ本質ニ觸レテ居ナイ
ヤウニ私ニハ思ヘル、生產力ヲ眞ニ擴充ス
ルニハ勞務者ノ住宅問題ハ根本問題デアル、
勞務者ニ住宅ヲ與ヘルコトニ依ツテ他ノ條
件ハ我慢シテモ勞働ニ勵シムコトガ出來ル
ト私ハ固ク信ジテ居リマス、是ハ總理大臣
ニ向ツテ申上ゲルノデスガ、當局カラ此ノ
指示權ヲウント發動シテ、資金ナリ資材ナ
リヲ得テ、ドン〓〓ヤツテ戴キタイト云フ
コトヲ私ハ希望致スノデアリマス
次ニ御尋ネ致シタイコトハ今日本ノ生產
力ヲ阻碍シテ居リマスル非常ナ大キナ方面
ハ工場鑛山ニ於ケル災害ダト私ハ思ツテ居
ル、此ノ點ヲ餘リ議會デハ觸レテ居ナイヤ
ウニ思ツタノデアリマスケレドモ、是ハ非
常ニ多イト私ハ推測シテ居ル、最近ハ御承
知ノ通リ工場災害ニ關スル統計ガ殆ンド出
來テ居リマセヌカラ能ク分ラナイノデアリ
マスケレドモ、新聞記事ヲ拾ツテ見マシテ
モ或ル鑛山ニ於テ災害ガ起ツテ澤山ノ坑夫
ガ亡クナツタ、或ハ今マデノ設備ガ殆ンド
使ヘナクナツタト云フヤウナコトガ相當ア
ル、斯ウ云フモノハ生產力ノ擴充ヲヤル土
ニ於テ、忙シイノダカラ已ムヲ得ヌト云フ
ナラソレツキリデアリマスケレドモ、其ノ
惡イ結果ト云フモノハ非常ニ大キナ生產力
ヲ阻碍スル原因ニナツテ居ル、勞働者ヲ餘
計ヨコセ、資材ヲ餘計ヨコセ、金ヲ餘計ヨ
日·や、是デ生產ノ增强ヲ致シマスト言フナ
ラ誰ダツテ出來ル、素人デモ出來ル、ケレ
ドモ其ノ爲ニ工場、鑛山ニ於ケル災害ガ多
イト云フコトハ顯著ナ事實ダト私ハ推測ス
ル、是ガ私少クトモ「ネガティヴ」ノ方面ニ於
ケル生產擴充ヲ取戾ス途デアルト思フ、斯
ウ云フ點ニ付テ政府ノ方デハドウ云フ風ナ
處置ヲ執ラレテ居ルカ、相當生產力ヲ阻碍
スル原因ニナツテ居ルト思ヒマスノデ、是
等ヲ除去スル方法ニ付テ今マデドウ云フ風
ナ態度ヲ執ラレテ居ツタノカ、サウ云フ點
ニ付テ詳細ニ私ハ御話ヲ承リタイ、特ニ今
度五大產業ニ付キマシテノ勞務ノ關係ガ厚
生省カラ他ノ官廳ナリ統制會等ニ移ツテ參
リマスノデ、一層私ハ一ツノ不安ヲ感ズルノ
デアリマス、是ハ商工大臣ニモ申上ゲタイ
ト思ツテ居ルノデスガ、厚生省ハ何ト言ツ
タツテ勞務者ノ味方、ト言ツテハ語弊ガア
リマスケレドモ、非常ニ御骨折リニナツテ
居ルノデアツテ、日本ノ勞務者ハソレハ不
平モアリマセウケレドモ、兎モ角俺達ノ親
分ガアルト思フ、今度ハ親分ノ手カラ離レ
テ繼子ニ行クヤウナ感ジヲ、日本ノ勞働者
ハ持チハシナイカト云フコトヲ私ハ非常ニ心
配シテ居ル、ソレハ又忠言トシテ商工大臣
ニ自分ノ意見トシテ申上ゲタイト思ツテ居
リマスガ、兎モ角生產力ヲ阻碍致シマスル
日本經濟ニ於ケル有力ナル原因、所謂災害
ノ防止ニ付キマシテ一ツ伺ヒタイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=68
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069・持永義夫
○持永政府委員 御話ノヤウニ生產增强ト
云フ聲ガ段々高クナリマスト、其ノ反面ニ
於キマシテ、消極的ニ生產增强ノ阻碍ニナ
ツテ居ル事項ヲ忘レ勝チデアリマシテ、積
極的方面ダケ論議サレマシテ、消極的方面
ガ兎角閑却サレル傾キガアルト云フコトハ、
吾々全ク御同感デゴザイマス、例年ノ比較
統計ハ玆ニ持ツテ居リマセヌガ、御參考ニ
公傷病ニ因ル缺勤率ノ狀況ヲ簡單ニ申上ゲ
マスト、昭和十二年ヲ百ト致シマシテ、昭和
十七年ハ男子ガ二五%增、女子ハ指數ガ四百
五十九、卽チ一方ハ百二十五、一方ハ四百五
十九ト云フ風ニ、相當公傷病ニ依ル缺勤率
ガ殖エテ居リマス、是ハ勿論急激ナル產業
ノ膨脹ニ伴ヒマシテ、施設ガ不十分デアル
ト云フコトガ一ツ、ソレカラ若イ勞務者、
殊ニ徵用工ト云フヤウナ經驗ノ淺イ勞務者
ガ、一時ニ多數入ツタト云フヤウナコトガ、
恐ラク大キナ原因ヲ成シテ居ルト云フ風ニ
考ヘマス、ソコデ厚生省トシマシテハ此ノ
點ハ閑却ノ出來ナイ問題デアリマシテ、從
來カラモ此ノ方面ニ付キマシテハ、特別ナ
ル措置ヲ講ジテ居リマス、卽チ工場法ニ基
キマシテ、各工場ニ於キマシテ五十人以上
常時勞務者ヲ使ツテ居ル所ニ於キマシテハ、
安全管理者ト云フモノヲ置カシテ居リマス、
是ハ現在約八万八千人位居リマス、尙ホ
其ノ下ニ安全委員ト云フモノヲ置キマシ
テ、是ハ現在十一万七千人位居リマス、更
ニ其ノ他ニ安全委員會ト云フモノヲ設置
シテ、常ニ安全ノコトヲ〓究致シテ居ルノ
デアリマス、ソレガ約五千五百九十一一工場
ニアリマス、サウ云フ風ニ從來カラモ色々
災害防止ノ措置ト致シマシテ斯ウ云ウコ
トヲヤツテ居リ、又一方御承知ノ安全運
動-現在ハ產業報國會ニ於キマシテ實施致
シテ居リマスガ、其ノ方ニ於キマシテモ每年
一定ノ期日ヲ定メマシテ、全國的ニ安全運
動週間ヲ設ケマシテ、此ノ方面ノコトヲヤ
ツテ居ル·譯デアリマス、殊ニ昨年ハ厚生省
ト致シマシテモ、此ノ工場安全ノ對策ヲ確
立スル爲ニ官制ヲ作リマシテ、安全〓究所
ト云フモノヲ特ニ作リマシタ、ソコデ專門
的ニ各種ノ安全ニ關シテ〓究ヲシ、之ヲ各
工場、鑛山ニ指導ヲシテ行キタイト考ヘテ
居リマス、尙ホ其ノ安全〓究所ノ仕事ト致
シマシテモ、單ニ學的ノ〓究ニ止マラズ、
各工場、鑛山ニ於キマスル此ノ方ノ係員ヲ
時々集メマシテ、サウシテ專門的ニ指導的
ノ講習會ヲ實施シテ居ルト云フヤウナ狀況
デゴザイマス、併シ先程申上ゲマシタヤウ
ニ、公傷率ガ段々殖エテ居ルト云フコトニ
付キマシテハ、吾々トシテハ非常ニ遺憾ニ
存ジテ居リマス、又御意見ノ點ハ全然同感
デアリマシテ、兎モスレバ生產增强ト云フ
ヤウナ聲ニ隱レテ、斯ウ云フ大事ナコトヲ
忘レ勝チデアルト云フコトハ、吾々トシマ
シテモ非常ニ遺憾ニ存ジマスカラ、一層此
ノ事ノ爲ニハ力ヲ盡シテ行キタイト考ヘテ
居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=69
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070・河上丈太郎
○河上(丈)委員 災害ヲ防止致シマス政府
ノ色々ノ施設モ能ク存ジテ居リマスガ、災
害防止ノ一番ノ條件ト云フモノハ、鑛山及
ビ工場ノ設備其ノモノダト私ハ常ニ思ツテ
居リマス、ソレガ不安定デアリ不十分デア
リマスト、非常ニ大キナ災害ガ起ツテ來ル
ノデアリマス、之ヲ一ツ政府ノ方デエ場ヲ
設立スルトカ、鑛山ヲ經營スル場合ニ於キ
マシテハ、基本的ナ點ニ於テ厚生省ニ於テ
嚴格ニヤラレテ置ク、サウ云フコトガ立派
ニ出來テ居ルト、鑛山ノ鑛夫ナリ工場ノ職
工サン達ハ、ビクトモシナイデ緊張シテヤ
レル、所ガ今ニモ崩レサウナ家ノ中デ、或
ハ今ニモ落盤シサウナ所デヤルト、每日每
日サウ云フ不安バカリ持ツテ居ルト云フコ
トデ、本當ノ能率ハ上ラナイ、私ハ一ツサ
ウ云フ點ニ付テモ今後十分ニヤツテ戴キタ
イト御希望申上ゲテ置キマス、大體今マデ
勞務關係ニ付テハ多クノ諸君ガ御話ニナリ
マシタノデ、私ハ繰返スコトヲ避ケマシテ、
其ノ二ツノ點ニ付キマシテ當局ニ御尋ネ致
シタノデアリマス
最後ニ一ツ御出シ下サツタ資料ノ中デ鑛
業法ノ改正ニ付テデアリマスガ、七十五條
ノ改正ニ付テ備考ト致シマシテ、工場法ニ
準ジ云々ト書イテアリマスノハ、ドウ云フ
意味デゴザイマセウカ、私ノ考ヘハ御承知
ノ通リ地下勞働ト地上勞働トノ差異ヲ何處
ニ置クカト云フコトハ、是ハ勞務對策、勞
務配置ノ上ニ於テ非常ニ大キナ問題デアル
ト思ヒマス、御承知ノ通リ勞働者年金制度
ニ於キマシテモ、私達ハ委員ノ一人ト致シ
マシテ、地下勞働ニ對スル特別ノ措置ヲ執
ラナケレバナラナイト云フ主張ヲシテ、是
ガ御採用ニナツテ法律ニナツテ居リマスガ、
最近ニ於テモ地上勞働ノ方ノ賃金ガ高マレ
バ、ヤハリ地下勞働ノ方モ高メル、地下勞
働ハ何ト云ツテモ太陽ノ光ヲ見ナイ所デ働
クノデアリマスカラ、餘程優遇シナケレバ
ナラナイト私ハ思ツテ居ル、今度政府カラ
出タ鑛業法ノ改正ハ、斯ウ云フ點ニ觸レテ
居ルカドウカ、不幸ニシテ私ハ存ジマセヌ
ガ、何シロ鑛業法ハ鑛夫ト云フモノヲ、露
骨ニ言フナラバ囚人ノヤウナ考ヘデ以テ、
最初ノ法律ガ出來テ居リマスカラ、鑛業法
ノ鑛夫ニ對スル對策ト云フモノハ、餘程大
キナ對策ヲヤラチケレバナラヌ、工場法ニ
準ジテ云々ト云フコトハドウ云フ意味デア
ルノカ、石炭生產增强ニ關シマス點カラ
考ヘテ見テモ、地下勞働ト地上勞働トニ付
テ、斯ウ云フ點ニ付テ少シハツキリシテ居
ナイノデアリマスカラ、詰ラヌコトカモ知
レマセヌガ、一寸御尋ネ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=70
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071・持永義夫
○持永政府委員 此ノ點ニ付キマシテハ先
程次官カラモ、大體ノコトヲ御說明申上ゲ
タノデアリマスガ、玆ニ書イテアリマス趣
旨ハ、御承知ノヤウニ鑛業法ニ基キマス鑛
夫就勞扶助規則ト云フモノハ、工場法ニア
ルヤウナ事項ガ規定サレテ居リマス、御話
ノヤウニ工場ト鑛山ハ、餘程是ハ嚴格ニ區
別シナケレバナラヌト云フコトニ付キマシ
テハ、全然御同感デアリマス、隨テ今ノ坑
內作業ノ一般男工ニ對スル十時間ト云フ制
限或ハ保護鑛夫ニ對スル時間ノ制限及ビ
深夜業ノ制限ト云フコトニ付テハ、工場ニ
於ケルソレ等ノ制限ノ緩和以上ニ愼重ナル
態度ヲ執ツテ行カナケレバナラナイト思ヒ
マスガ、併シ場合ニ依ツテハソレ等ノ事項
ニ付テ緩和シ得ルモノハ緩和シタラドウカ
e
ト云フ意味デ、準ジテト云フ言葉ヲ使ツテ
居リマス、ソレカラ是等ノコトハ現在許可
制度ニナツテ居リマスガ、何レ規則ヲ作ツテ
之ヲ認可スル、場合ニ依ツテハ屆出制度ニ
シタラドウカト云フヤウナコトモ考ヘラレ
ル譯デアリマス、併シ是ハ屆出ニスルカシ
ナイカト云フコトハ決マツテ居リマセヌ、
先程申シマシタヤウニサウ云フ意味デ考ヘ
ラレル事項ヲココニ述ベタノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=71
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072・河上丈太郎
○河上(丈)委員 地下勞働者ニ對スル厚生
施設、或ハ時間其ノ他ニ付テハ十分考慮ジ
テ戴カナイト、殊ニ今度ハ石炭ノ增强ト云
フコトガアリマスカラ、鑛夫ニ對シテハ積
極的ニ鑛夫ノ働ク色々ナ規則制限ヲ廢止ス
ルヨリモ、寧ロ鑛夫ニ良イヤウナコトニシ
ナイト結局增產ガ出來ナイヂヤナイカ、今
マデソレガ地下勞働ニ行カナイデドン〓〓
地上勞働ニ流レテシマフ狀況デアリマスカ
ラ、色々ナ制限ヲ緩和スルニ當ツテハ、下
手ナコトヲヤツテ、緩和シタケレドモ寧ロ
地下勞働者ガ減ツテ來ルト云フヤウナ現象
ニナツテシマフコトハ、是ハ非常ニ遺憾ナ
コトデアリマスノデ、五ツノ產業ニ於ケル
地下勞働ニ關シテハ、特別ナ勞働デアリマ
スカラ、此ノ點ニ付テハ萬遺憾ナキヲ御願
ヒシテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=72
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073・前田房之助
○前田委員長 喜多壯一郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=73
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074・喜多壯一郎
○喜多委員 私ハ最初政府委員ニ御尋ネ致
シタイノデアリマスガ、政府ガ曩ニ閣議ニ
於テ發表致シマシタ勤勞緊急對策要綱ノ中
ノ第四項ノコトデアリマスガ、ソレニ「勤勞
者用物資ノ割當竝ニ配給ハ原則トシテ產業
報國會ノ組織ヲ通ズルコトトシ其ノ一元化
ヲ圖ルコト」トアリマス、ソレカラ更ニ「工
場鑛山、事業場ニ於ケル購買會ノ配給機構
上ノ地位ヲ認メ是ガ積極的活用ヲ圖ルコト」
トアリマスガ、此ノ趣旨ハ現地ニ於ケル其ノ
商業者ノ配給活動ヲ抑制シテ、實質的ニハ
其ノ購買會等ヲシテ之ニ代行セシムルガ如
クニ、此ノ要綱ノ文字カラハ解釋サレルノ
デアリマスガ、果シテ然ルヤウナ意思ヲ厚
生當局ハ御持チカドウカト云フコトト
方ニ若シサウダトスレバ、申上ゲルマデモ
ナク東條內閣ハ昨年ノ四月二十一日ノ閣議
決定事項ニ依ツテ、企業整理、特ニ小賣業
整備要綱ヲ示サレテ居ルノデアリマシテ、
小賣業者ガ整理サレルト云フコトヲヤツテ
居ルノデスガ、ソレトノ關聯ヲドウ見テ居
ラレルカト云フコト、ソレカラ現在其ノ土
地ノ商業者ノ配給機能ニ依ツテ賄ツテ行ケ
ル場合モ、購買會ラシテ或ハ產業報國會ヲ
シテナサシメルト云フ風ニ御考ヘニナツテ
居ルカドウカ、サウダトスレバ、商業者ノ
建前カラ行ケバ、配給機能ヲ十分持ツテ居
ルニモ拘ラズ、購買會ト產業報國會ヲ以テ
セシムルト云フコトガ、現ニ拔取企業ニ依
ツテ殘ツテ行クベキ商業者其ノモノヲ否定
スル態度ニナリハシナイカト云フ風ニ考ヘ
ラレルノデス、此ノ點ニ付テココデ御使ヒニ
オツテ居ル此ノ意味及ビ生活竝ニ作業用物
資配給ト斯ウ前文ノ方デ謳ツテ居リマスガ、
サウスルト生活必需品ノ全面的ニ亙ルヤウ
ニモ解釋サレル、勢ヒ非常ニ業者ニ對スル脅威
ガ其ノ土地々々ニ依ツテ加ハツテ來ルト思
フノデスガ、此ノ文字ノ解釋及ビ適用ノ範
圍及ビ厚生當局ガ之ヲ御決メニナツタ時、
或ハ此ノ點ニ付テ商工大臣ハ厚生大臣ト多
分意見ノ御交換ヲナサツタト思フノデスガ、
商業者否定デアルカ、或ハ高能率發揮ノ爲
ニ單ニ產報乃至購買會ヲ認メルノダト云フ
程度カ、其ノ點ニ付テノ御抱懷ヲ御示シ願
ヒタイ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=74
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075・小泉親彦
○小泉國務大臣 氣持ヲ私カラ一ツ御答ヘ
申上ゲマス、先般申上ゲマシタヤウニ、勞
務者ノ團體デアル產報ガ御引受スレバ、皆
ノ所ニ最モ合理的ニ物資ガ配給出來ルダラ
ウト云フコトカラ、原則トシテ產報ヲシテ
一元的ニヤラセルト云フ感ジヲ持ツテ居ル
ノデアリマスガ、ソレデハ今アル配給ト云
フモノモ非常ニ苦心ヲシテヤツト今日マデ
流レテ來タ、此ノ流レノ中ニ橫ツチヨカラ
パツト入ツテ來テ、ソコニ渦卷ヲ起シタリ、
逆櫓ヲ漕イデ見タリスレバトンデモナイコ
トニナツテシマフ、却ツテ今ヨリモ勞務者ガ
困ツテシマフノデアルカラ、產報ヲ原則ト
シテ居ルガ、ソコハ餘程考ヘナケレバナラ
ヌ、或ハ今マデノモノニ產報ノ機關ガ入ル
ノガ宜イカ、或ハサウデナクシテココハ委
託ヲスレバ宜イカ、或ハ大キイ所デハ統制
會ガ受ケテ-全部統制會員ニシテ居ル統
制會ナラバ、統制會ガ受ケテ、個々ノモノ
ハ產報ガヤレバ宜イカト云フヤウナコトデ、
實ハ私共ハ話ヲ決メマシタ、隨テ今日アリ
マスサウ云フ購買會、或ハ配給業者ト云フ
モノヲ否定シタリ、或ハソレヲドウシヨウ
ト云フ感ジハ全然持タナイノデアリマス、
今折角出來ツツアル地域的配給ヤ何カノ爲
ニ非常ニ勞務者ノ方デ困ツテ居ル、サウ云
フ所ハ職場デ何カ考ヘテ調節スル途ガナイ
カ、サウ云フモノハ勞務者側ニ立ツテ居ル
產報ニヤラシテ行クト云フ氣持デ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=75
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076・喜多壯一郎
○喜多委員 ソレナラ洵ニ結構ナノデス、
大臣モ實情ハ御承知デセウケレドモ、中々
新タニ作ツタ產報カラノ若シ一元化ダケデ
配給ナサラウト云フ御考ヘダト、大臣ノ仰
シヤツタヤウナ弊害ガ澤山起キマス、現
一旦ヤツテ見テ良クナイ點モアル、ヤラナイ
デ宜イ點モアル、大キナ港ニ行キマスト、
海運報國トカ、產報ナドガ一元的ニヤルト
云フコトノ爲ニ、業者ガ今度ハ感情問題ニ
ナツテ、配給ノコトデ運動ヲ起シテ居ルト
云フ所モアレバ、又船ガ入ツテ來タガ、公
休日デ業者カラ貰ヘナイカラト云ツテ、大
キナ五千「トン」ノ船ガ名古屋ナドデモ三日モ
泊ルト云フ弊害ガアリマス、其ノ點ハ要綱ニ
謳ハレタカラト云ツテ一〓ニ旣存ノ良イー
惡イ配給能率ヲ持ツテ居ルモノナラ改メテ
モ宜イト思ヒマスガ、現ニ父祖代々持ツテ
居ツタ良キ配給力ヲ持ツテ居ル商業者ハ、
如何ニ產報ガ可愛イ厚生省デアルト雖モ、
餘リソコニ力ヲオ入レニナルト、一體產報ガ
翼贊會ノ傘下ニ入ツテ宜イノカ惡イノカト
云フヤウナ質問ヲ厚生次官ガ〓フヤウナコト
モサウ云ツタ所ニアルノダカラ、私ハ是ハ
要綱ニアルカラ俺ノ方ノ繩張ダト言ツテ、繩
張ダノ職權ノ爭ヒヲナサルヤウナコトニナ
ルト、結局能率ハ下ルト思ヒマスカラ、其ノ
分野及ビ其ノ數量ナドニ付テモ、若シ高能率
配給機能ヲ持タナイ業者デアルナラバ、此ノ
點ト此ノ點ハヤラセ、此ノ點ト此ノ點ハ少々
配給能率ガ惡クテモ任スノダト云フヤウナコ
トヲシテ戴カナイト、ソレデナクトモ今日
ノ業者ハ一番悲慘ナ狀態ニアリマス、一方
ハ產業組合カラ大キナ力デ抑ヘラレテ居ル、
其ノ上ニ今度產報ガ出テ來テ抑ヘルト云フ
ヤウナコトニナルト、一種ノ感情問題ニマ
デ來テ居ルノガ現狀ダト思ヒマスカラ、中
中理窟ダケデハイカヌノデス、ココマデ來
ルト云フト·····ソコデ此ノ點ニ關シテ一ツ
厚生當局ノ御考ヘガアルナラバ、此ノ際ニ
公ニシテ置イテ戴クト、業者ノ方デ持ツテ
居ル不安モ一掃サレヤシナイカト思フノデ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=76
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077・持永義夫
○持永政府委員 只今大臣カラ御答ヘガア
ツタノデアリマスガ、御話ノヤウニ現在商
業者ニ依ツテ配給ヲサレテ居ツテ、特ニ不
都合ガナイト云フヤウナ所マデ新シク購買
會ヲ作ルト云フヤウナコトハ考ヘテ居リマ
セヌ、是ハ正直ニ申上ゲマスト、鑛山ニ於
ケル購買會ノ話カラ起ツタ譯デアリマス、
ト申シマスノハ、先年來各種ノ物資、殊ニ
重要物資ノ配給機構トシマシテ農林、商工
兩省ニ於カレテハ地域的ノ配給機構ヲ原則
トシテ、從來ヤツタ購買會ノヤウナモノハ
認メナイト云フヤウナ氣持ガ非常ニ强カツ
タ、サウナリマスト交通不便ナ鑛山等ニ於
キマシテハ、一般ノ商賣人ノ配給ヲ受ケル
コトニナリマシテ、中々商賣人モ來ナイ、
配給モ非常ニ不圓滑ニナル、是デハ仕事
ガ出來ナイデハナイカト云フヤウナコトカ
ラ、實ハ鑛山ニ於ケル購買會ニ付キマシテ
ハ、從來アツタモノハ認メテ吳レ、今後サ
ウ云フ特殊ナ事情ガアツテドウシテモ已ム
ヲ得ナイモノニ付テハ認メテ貰ヒタイト
云フ譯デ話ヲ進メマシテ、此ノ方ハ或ル程
度話ガ付イタノデアリマス、ソコデサウ云
フ事情ハ工場ニ付テモアリ得ルト思ヒマス、
殊ニ最近ハ地方ニ大キナ工場ガ出來マシテ、
其ノ附近ニ町ガナイ、サウ云フ場合ニハド
ウシテモ工場ニ於テ特殊ナ購買所ヲ作ツテ
ヤラナケレバ勞務者ハ困ル、サウ云フモノ
ニ付キマシテハ實ハ新設デアリマスケレ
ドモ、ヤハリ鑛山ト同ジヤウニサウ云フ特
殊ナ事情ヲ認メテ貰ツテ、サウシテ購買會
ノ活用ヲスルヤウニシテ參リタイト云フコ
トヲ考ヘテ居ル次第デアリマシテ、今マデ
不都合ナク配給ガ出來テ居ル場所ニ於テモ
新シク購買會ヲ作ツテ、サウシテ進出スル
ト云フヤウナ考ヘマデ實ハ持ツテ居ナイノ
デアリマス、ソレカラ配給サレル物資デゴ
ザイマスガ、是ハ實ハ具體的ニマダ決マツ
テ居リマセヌ、今日マデ大體產業報國會ガ
配給シテ居リマスノハ商工省ト厚生省ト
連絡ヲ執ツテ居ルノデアリマスガ、作業衣ト
カ地下足袋ト云フヤウナ極ク勞務者ニ直接
關係ノアルヤウナモノデアリマシテ、大體
數項目シカゴザイマセヌ、併シ今後其ノ點
ニ付テハ兩省ト相談ヲシテ決メテ行クト云
フコトヲ考ヘテ居ルノデアリマス、總テノ
物資ニ付テヤルト云フヤウナ考ヘハゴザイ
マセヌ、唯地方ノ產業報國會ニ於キマシテ
ハ、例ヘバ特殊ナ勞務者用ノ菓子ヲ造ツテ
送ルト云フヤウナコトモ考ヘテ居リマスガ、
中央ニ於キマシテハサウ云フコトマデ考ヘ
テ居リマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=77
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078・喜多壯一郎
○喜多委員 私ハ只今ノ御答ヘデ明瞭ニナ
ツタコトヲ喜ビマス、併シ此ノ際厚生當局
ニ一言申上ゲテ置キタイコトハ、生活必需
品ノ配給ニ關シテ、特ニ此ノ度此ノ法律ガ動
イテ來テ、大イニ生產增强ヲシナケレバナ
ラナイト云フ五大目標重點產業方面ニ於テ
ハ、厚生當局ハモツト生活必需品ニ付テ、
作業用ノ特配品ハ無論デアリマス、私ハ實
ヲ言フト、內務當局トカ商工當局トカ云フ
風ナ「ルート」デナクシテ、勞務者相手ノモノ
ハ厚生當局ガモツト本當ニ實情ヲ御覽ニナ
ツテ、配給スルコトヲ講ズル必要ガアルト
思ヒマス、ソレガ恐ラク勞務者ノ能率ヲ向
上スル上ニ於テ良イ手ダト思ヒマス、何處
ヘ行ツテモ此ノ苦情ヲ聽キマス、此ノ苦情
ニ付テハ十分御聽キダト思ヒマスガ、少シ
遠慮勝チダト思フ、酒ハ生活必需品ノ中ノ
慰メモノダカラ地方廳ニ任シテ置イテ宜イ
ト言フガ、今日酒ハ鑛山ニ行ツタラ、私ハ
先達テモ商工大臣ニ言ツタノデスガ、上リ
三合ト云ツテ、之ヲ飮マナケレバ生キ返ツ
タ氣持ガシナイト云フノデ、鶴嘴以上ニ必
要デアル、是ガ地方廳ニ行ツテ居リマスカ
ラ、特ニ此ノ點デ重點產業生產增强ニ付テ、
生活必需品ノ配給「ルート」ヲ特ニ厚生省ガ
作ラレルト同時ニ、遠慮會釋ナクソコデ能
率ヲ發揮スルヤウニスルコトガ、端的ナ生
產增强ノ一ツノ現レダト思ヒマス、此ノ頃
ノ勞務者ハ賃金增額ナドサウ望ンデ居リマ
セヌ、デスカラ荷揚ゲニシテモ、ウント掘
ルニシテモ、昨年北海道邊リヲ見ルト、配給
ノ地下足袋三十足ヲ三千人ニ分ツガ、ソレ
ハ今月一番餘計掘ツタ者ニ順次ニヤルゾト
云フ揭示ヲ見テ、掘ルノダゾト云フ氣持ニ
ナル、足袋一足デ······、ソレカラ石鹸三箇
ト云フノデスガ、此ノ點ニ付テハ私ハ時間
ガアレバモツト愚見モ申上ゲテ、大臣ノ御
意見モ伺ヒタイト思ツタノデスガ、一ツ御
考ヘ置キヲ願ヒタイト思フノデアリマス
ソレカラ先程來續イテ各委員デモ意見ガ
出テ、厚生省ノ氣持モ分リマシタガ、大體
厚生大臣ハ今日ノ賃金特ニ私ハ初給賃金ヲ
指シマスガ、今ノ初給賃金デ宜イカドウカ
ト云フコトヲ根本的ニ御考ヘニナツタカド
ウカ、特ニ五大目標生產强行ニ付テ今日ノ
賃金制度デ宜イカ、是ハ勿論片方デハ「イ
ンフレ」防止ノ爲メノ徹底的ナ低物價政策
堅持ト云フコトガアリマセウ、併シ低物價
政策ヲ堅持スルコトニ急ニシテ、若シ五大
目標ノ生產增强ノソレガ制約サレテ居ルコ
トヲ無視セラレタナラバ、是ハ政治家デハ
アリマセヌ、低物價政策ト云フコトモ必要
デアリマスガ、何ト云ツテモ五大目標ノ生
產增强ヲスルコトモ低物價堅持ト共ニ必要
ナノデアリマスガ、一體今日ノ賃金制度其
ノモノニ付テ是ナリト御考ヘニナツテ居ラノ
レマスカ、或ハ非ナリト御考ヘニナルナラ、
何等カノ對策ヲ執ラレタカ
私ハモウ一ツ申上ゲテ置キマスガ、噂デ
聞キマスト、厚生省ハ非常ニ全面的ニ賃金
制度ノ調査ヲナスツテ居ラレルト云フコト
ヲ聞イテ居ルノデスガ、ソレガ眞實ナリヤ
否ヤ、調査ナサルナラ何カ其ノ目標ヲ持ツテ
居ラレルカドウカ
ソレトモウ一ツ、中村委員ノ質問ニ對
シテ適正ナル勤勞基準量ヲ定メルノデ、
部ハ明確ニサレテ居ルガ、マダ明確ニナツ
テ居ナイ點ガアルト言ハレマシタガ、此ノ
勤勞基準量ト云フモノト今日ノ賃金ト云フ
モノトヲドウ御考ヘニナツテ、斯ウ云フ御
答辯ヲナスツタカドウカ
ソレカラモウ一ツ、是ハ厚生大臣ニ、
何モ言葉尻ヲ捕ヘテ御尋ネスルノヂヤ
アリマセヌガ、實際ノ賃金ト所謂名目賃
金ト云フモノトノ開キヲ御認メニナルカ
ドウカ、餘リ大キイ聲デ言ヒタクナイコ
トデスガ、吾々ノ生活ト云フモノハ
實ヲ言フト「ノミナル·インカム」名目收入ダケ
ヂヤ今日ハ食ツテ行ケヌ程、闇取引ガ猛烈
デアリマスカラ、勞務者ノ面ニ於テモソレ
ガ大ナルコトヲ私ハ感知シ得ルノデアリマ
ス、以上三點ニ付テ厚生大臣ノ御答辯ヲ願
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=78
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079・小泉親彦
○小泉國務大臣 賃金ノ問題ニ對シテノ御
尋ネデアリマスガ、從來賃金統制令ガ總テ
低物價政策ト云フコトト相呼應シテ來タコト
ハ、今御話ノ通リナノデアリマス、然ラバ
今日低物價政策、今日ノ物價ト云フモノガ
從來執ツテ居タ儘デ宜イカ惡イカト云フコ
トハ、モウ既ニ定說ノアルコトデ、私ガ此
處デ申上ゲルマデモナイ、今囘ノ議會ニ於
キマシテモ、盛ンニ各方面カラ斯ウ云フ點
ニ對スル色々ノ御意見ヲ拜聽シテ居リマス、
要スルニ當然此ノ儘デ宜シイト云フコトデ
ハナイト云フコトニ歸結シテ居ルト私ハ拜
聽致シテ居リマシタ、而シテ然ラバ今後之
ヲドウスルカト云フコトハ、當然政府トシ
テ考ヘナケレバナラナイ問題ダト思ヒマス、
卽チ物價對策ト云フモノハ、玆ニ新タニ此
ノ時世デ殊ニ此ノ五大產業ノ生產ヲ增强ス
ル、而シテ一面ニハ國民ノ生活ヲ確保スル、
卽チ生活必需品ヲ立派ニ生產シ、而シテ今
ノ軍需第一ノ方面ノ物資ノ生產ヲ增强スル、
此ノ二ツヲ睨合ハセマシタ時ニ、當然物價
ニ對スル一ツノ對策ト云フモノガ考ヘラレ
ナケレバナラナイ段階ニ今日立至ツテ居ル、
ソレガナクシテハ要スルニ生產增强ノ上ノ
隘路ガ完全ニ開カレルモノデハナイ、斯ウ
云フコトハ皆樣ノ御意見、其ノ通リダト私
ハ存ジテ居ルノデアリマス、ソコデドウシ
テモ今後生產價格或ハ生產物價ト申シマス
カ、サウ云フモノヲ適正ニ考ヘテ行クト云
フコトト、ソレカラ厚生省ノ方面カラ見マ
スル卽チ國民ノ消費生活內容ノ爲ノ、其ノ
モノニ對スル所ノ物價ト云フモノトノ問題
ガ玆ニ起ツテ來ルト思フノデアリマス、國
家ハ責任ヲ以テ此ノ五大產業ノ重要ナル物
資ヲ生產增强シ、又生活必需品ノ生產ヲ確
保スル、此ノ責任ヲ考ヘル場合ニ於テハ、
當然ソコニ對策ガ新タニ生レテ來ル、又生
レサセナケレバナラヌト云フ風ニ今思ツテ
居リマス、ソコデ其ノ物價對策ト云フモノ
ガ定マツテ參リマスルニ連レテ、是ト同時
ニ私ハ賃金ノ問題、亦收入ノ問題ト云フモ
ノガ新タニ考ヘラレルト思フ、斯ウ云フ
考ヘデアリマス、低物價政策ト云フモノガ
從來ノ儘、若シ其ノ儘之ヲ是認シ、之ヲ尊
重致スト致シマシテモ、一方ニハ生產增强
ト云フ此ノ絕對ノ要求、國家ノ要請ナノデ
アリマスカラ、之ヲ天秤ニ掛ケテ見テ、其
ノ場合々々ニ於テ、ドツチガ重イト云フコ
トデ行カナケレバナラナカツタ、隨ヒマシ
テ過去ニ於キマシテ私ハ重要事業場ノ勞務
管理令ノ指定工場ト云フヤウナモノニ對シ
テハ、其ノ場合ヲ一々天秤デ見ナケレバナ
ラヌカラ、全然ソコデ總額制限ト云フヤウ
ナモノモ撤廢シテシマフ、サウシテ賃金規
則或ハ昇給內規ト云フヤウナモノヲ、其ノ
工場々々ノ實際ニ適スルヤウナモノヲ拵ヘ
テ置イテ、ソレニ依ツテ運用セラレテ行ク
ト云フコトデ行カウ、斯ウ云フヤウナコト
デ來タノデアリマス、又今日デハマダ此ノ
物價對策ヲハツキリ政府ガ斯ウ云フ風ノ對
策ダト云フ所ニ、今勿論〓究ハシテ居リマス
ルガ、行ツテ居リマセヌカラ、今日此處デ
申上ゲルノハ低物價政策ト云フモノガ玆ニ
アルト致シマスレバ、之ヲ五大產業ニハ今
ノヤリ方ハ當然持ツテ來ル、一般ノモノニ
對シテハ餘程考ヘテ行カナケレバナラヌケ
レドモ、五大產業ニハ當然持ツテ來ル、ソレ
ヲシモ尙ホ考ヘテ物價對策ト呼應シタ一ツ
ノ賃金ト云フモノヲ考ヘテ行カナケレバナ
ラヌト斯ウ思フノデス、ソコデ第二ノ此ノ間
オ前ハ賃金ノ問題ノ時ニ勤勞基準量ト云フ
モノヲ今調ベテ居ル、ソレノ適正基準量ト
云フモノヲヤツテ居ルト云フコト、是ガ
何處ニ關係ガアルカ、斯ウ云フ御話デ
ゴザイマスガ、是ハドウシテモ生產價格
ト云フモノヲハツキリスル、卽チ生產ノ絕
對要請デアルモノデゴザイマスカラ、今日從
來ノ如キ、採算ガ取レルトカ採レナイトカ
云ツタ考ヘデハナイノデアリマスカラ、國家
ガ責任ヲ以テ生產ヲスルノダト云フコトノ
爲ノ生產價格ト云フモノハ當然或ルモノガ
決ツテ來ルダラウ、其ノ適正ナル所ノ生產
價格ト、ソレニ對スル適正ナル利潤ト云フモ
ノヲ當然考ヘナケレバナラヌ、其ノ利準ト
二ツ加ヘタモノガ生產ノ價格デアラウ、ソコ
ヘ持ツテ來テ、物價ノ方ナリ消費スル方ナリ、
或ハ需要スル方ノ物價ハ開クカモ知レナ
イ、是ハ國家ガ責任ヲ持タネバナラヌト云
フヤウナコトヲ考ヘマシタ時ニ、ドウシテ
モ生產費ト云フモノガ從來ノヤウナ物ダケ
ノ生產費デナク、ヤハリ勤勞力ノ方ノ價値
ト云フモノガ、非常ニ强ク考ヘラレネバナ
ラヌ、先程ノ御話ノ石炭ノ方面ニ於キマシ
テハ、御承知ノ通リ賃金ト云フモノハ非常
ニ石炭「コスト」ノ大キイモノヲ持ツテ居ル、
又特殊ノ機械工業ダト賃金ト云フモノハ極
メテ僅カノ「パーセンテージ」シカ持ツテ居
ラヌ、斯ウ云フヤウニ非常ニ比重ガ違ツテ
居リマスカラ、其ノ大ナル比重ヲ持ツテ居
ルヤウナ所ニ於キマシテハ速カニ其ノ勤勞
力ト云フモノガ、「コスト」ニ働イテ行ク所
ノモノヲ見ルト、勤勞力ガ唯從來ノ此ノ儘
デ宜イカドウカ、是ハ一ツ適正ナ勤勞基準
量ヲ知ツテ置ク必要ガアルト云フノデ、段
段厚生省デ調ベテ參リマスト、例ヘバ石炭
デモ年ニ一人當リ三百單位ト云フモノヲ大
體皆擧ゲテ居ル、其ノ三百單位ガ或ル所ヘ
參リマスト百二三十單位シカ生產出來ナイ
所ガアル、其ノ百二三十ト云フ-私共ハ
ソレヲ丁トカ戊トカ云フ級ノモノニ分ケテ
居リマス、其ノ丁級ノモノガ又ソレノ一ツ
一ツノ鑛山ニ付テ見マスト、百二三十ノ單
位ト云フヤウナ生產量シカ擧ゲテナイ所
ガ、二十五トカ三十位ノ所ト、百五十位ノ
平均ニナツテ居ル、斯ノ如ク三百單位生產
スル所ト二十單位位シカ生產シナイト云フ
所デハ、ソレハ山ノ性質モアリマセウ、或
ハ又ソレノ設備ノ關係モアリマセウガ、若シ
山ノ性質ガ大體同ジデ、山ノ條件ガ大體同
ジテ、設備モ大體同ジナノガ、三百ト二十
五ナント云フ馬鹿ナ開キガアルノハドウ云
フ譯ダラウ、ソレヲ段々煎ジ詰メテ行キマ
スト其ノ中ノ勤勞力ノ配置ト、使用方法ガ
生產ヲ擧ゲルヤウニ旨ク行ツテ居ル、極ク
簡單ニ中上ゲマスト、事務員ト實際ノ採炭
夫ト、或ハ坑內夫ト坑外夫ト、其ノ中男子
ト女子ノ關係、或ハ實際ニサウ云フコトニ
經驗ノアル者トナイ者ト色々ニ分ケテ見テ
參リマスト、ソレノ配置ノ旨ク行ツテナイ
所ガ非常ニ低イト云フコトガアリマス、ソ
レヲコツチノ方ノ低能率ノモノニ高能率ノ
樣式ヲ段々移シマスト上ツテ來ル、上ツテ
來ルトソレガ全部デナクテモ低能率ノ原因
ノ大キナモノダト云フヤウナコトガ分ツテ
參リマスカラ、サウ云フコトヲ調べテ行ツ
タラ、或ル一ツノ基準量ガ出ヤシナイカ、
其ノ基準量ニ依ツテ居ル所ノ生產ノ經濟價
値判斷ヲシテ參リマスレバ、「コスト」ヲ計算
スル上ノ一ツノ資料ニナリハシナイカ、サ
ウ云フヤウナコトヲヤツテ參リマシテ初メ
テ本當ノ生產價格ト云フヤウナモノヲ考ヘ
テ見タイ、サウ云フヤウナ時ノ賃金、斯ウ
云フ意味デ關聯性ヲ持ツト云フノデ巾上ゲ
タヤウナ譯デアリマス、ソレカラ賃金ト收
入是ハ實際問題デ賃金ト收入ハ全ク別ニ
考ヘナケレバナラヌ、又今マデハ低物價デ
惡循環々々々ト云フコトヲ考ヘマシタ爲
ニ、ドウシテモ賃金ニスルコトガ許サレナ
イ場合ガアル、併シ現實ニ厚生省トスレバ
コンナ賃金デハ駄目ダ、モツト出シタイ、
併シ一方カラ低物價ト云フコトガ堅持サレ
マスレバ、惡循環ノ虞レガアルト云フ場合
ニ困リマスカラ、他ノ手段卽チ手當トカ賞
與トカ色々ナ各種類ノコトヲシテ、收入ト
賃金トハ別個建テニシタノデアリマス、ソ
コガ一方ニ於テ惡循環ト云フコトバカリデ
ナク、又一面ニ於テ日本人自身トシテ必要
ナコトデアル、而モ是カラ物資ガ缺乏シテ
參リマス時ノ生活-一體勤勞ヲ管理スル
ト云フコトハ、其ノ作業場ダケノ仕事ノ管
理デナクシテ、生活管理ニ參ラナケレバナ
ラヌト云フヤウナ感ジマデモ實ハ持ツテ居
リマス、生活賃金ト云フヤウナ意味ヲ持ツ
タモノデナケレバナラナイト考ヘテ居リマ
スノデ、ソンナ方面ニ付テ今大イニ頭ヲ惱
マシテ居リマシテ、各方面ノ卽チ業界ノ今
マデノ經驗實情ヲハツキリシマシテ、ッ
此ノ際新タナル賃金制度ガ生レテ來ナケレ
バ、生產擴充ノ本當ノ目的ヲ達成シテ行カ
レナイ、斯ウ云フ考ヘデ〓究ヲ進メテ居ル
次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=79
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080・喜多壯一郎
○喜多委員 是ハ意見ノアル所デ、モウ旣
ニ賃金ヲ上ゲレバ、增產、サウ單純ニトハ
申シマセヌガ、中ニハヤハリ「インフレ」ノ
原因ダト云フ反對論モ成立ツト思ヒマス、
併シ御決メニナラウトシテ居ルコトヲ旣ニ
發表セラレテ居ル、皇民トシテ、皇國トシ
テノ勤勞觀ト云フコトノ樹立ハ、一方デハ
無論精神的ノ大キナ要素ヲ要シマス、ケレ
ドモ、ドンナニ忠君愛國デ身ヲ犠牲ニシテ
行クト言ツテモ、今厚生大臣モ仰シヤツタ
通リ賃金ト云フモノハ一ツノ生活觀ノ中ニ
入ツテ來テ居ル大キナ力デスカラ、勤勞觀
ノ大轉換ハ言換ヘレバ何ト言ツデモ生活觀
ノ大轉換デス、又、言換ヘレバ法律法文ダケ
デ決メタカラト云ツテ、ドツコイソレガ今
マデノ資本主義ノ下デ儲ケヨウトシテ働イ
テ居ツタコトカラ、國ノ爲ニ殉ズルノダト
云フ所ニハ行キハセヌカラ、是ハ私共ハ其
ノ點デ衣食足ツテ禮節ヲ知ルト云フ言葉ト
同樣ニ、衣食ハ十分トハ言ヘマセヌガ、或
ル程度ノ所デ押ヘテ行クヤウニシテ、ヤハ
リ働イテ行ケバ國ノ爲ダト云フ風ナ所ニ持
ツテ行ク點カラ、目下調査中デアルト云フ
賃金制度ヲ大至急明カニシテ行クト云フコ
トガ必要ダト思フノデアリマス、是ハ其ノ
點ニ付テ一ツ成ベク早ク具現スルコトヲ希
望シテ私ハ此ノ點デ質疑ヲ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=80
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081・前田房之助
○前田委員長 水谷君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=81
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082・水谷長三郎
○水谷委員 大臣ガ御見エニナリマシタノ
デ、大體他ノ質問ハ次官及ビ局長カラ答辯
ヲ得タノデアリマスガ、一ツ大臣ニ御伺ヒ
シタイノハ產業報國會ヲ今後ドウシテ行ク
カト云フコトヲ能ク此ノ際〓究シテ見タイト
思フノデアリマス、私ガ產業報國會ヲワザ
ワザ大臣ヲ前ニシテ取上ゲルコトハ、今日
大キナ企業就中現在直接戰爭ニ必要ナ物ヲ
生產シテ居ル企業ニ對シマシテハ、國家資本
ガ非常ニ擴大致シマシテ、資金ト云フ點ニ
關シマシテハ、餘リ心配ハ要ラナイト云フ
狀態、結局殘サレタ問題ハ、資材ト勞力、
此ノ二ツノ問題デアラウト思フノデゴザイ
マス、而モ勞力ヲ生產增强ト結付ケル場合
ニ於テ考ヘマスルニ、或ハ賃金ヲドウセイ、
或ハ生活必需物資ヲドウセイト云フコトモ是
ハ當面ノ問題デゴザイマセウ、例ヘバ農村
ニ於キマシテオ米ヲ澤山作ル爲ニ、或ハ米
ノ値段ヲ引上ゲロ、或ハ肥料ヲドウセイト
云フコトハ、當面ノ問題デアルト同ジヤウ
ニ、又今日ノ場合ニ於テハ、土地制度ヲ或
ル程度根本的ニ解決シナケレバ增產ガ出來
ナイト同ジ理由ニ於キマシテ、私ハ今日ノ場
合ニ於キマシテハ、何ト申シマスカ企業ト
勤勞トノ關係ヲハツキリサス、言葉ヲ換ヘテ
申シマスレバ、勞働者ガ單ニ一個ノ賃金取
ト云フコトデナシニ、經營或ハ生產ト云フ
モノニ對シテノ或ル一部ノ責任ヲ負フト云
フ所マデ持ツテ行カナケレバ、本當ノ增產
ハ出來ナイノデハナイカト思フノデス、大臣
モ他ノ場合ニ於キマシテ、經營者ト勞務者
ヲ一體トスル勤勞組織ノ整備ト云フヤウナ
コトヲ、豫算總會デ西尾君デアリマスルカ、阪
本君デアリマスルカニ御答辯ヲシテ居ラレタト
思フノデゴザイマス、問題ハ此ノ企業組織ト
勤勞組織ヲドノヤウニ結付ケルカト云フ所
ニ私ハ今後ノ產報ノ活キテ行ク道ガナクテ
ハナラヌト云フノガ私ノ先ヅ結論的ナ問題デ
アリマス、現在ノアル姿ノ儘ノ產報ト云フモノガ
ドウ云フモノデアルカト云フコトハ、旣ニ豫算
總會ニ於キマシテ西尾君ガ今年ノ一月號ノ「社
會政策時報」ニ載ツテ居リマスル森戶辰男氏ノ
論文ヲ引イテ申上ゲタコトハ、大臣旣ニ御存
ジノ通リデアリマス、又私ノ手許ニアリマス三菱
經濟〓究所ノ「本邦財界情勢」ノ一月號ニモ、
斯ウ云フコトガ載ツテ居リマス、「惟フニ勞働
組合ノ廢墟ノ上ニ構築サレタ產業運動ハ一面
ニ於テ勞働組合ノ階級鬪爭的缺陷ヲ解消ス
ルニ成功シタコトハ事實デアルガ、他面ニ於
テ勞働組合ノ特異的トモ言フベキ生活ニ根差
シタ組織ト協同意識ヲバラ〓〓ニ解體シ去ツ
タ憾ミヲ免レルコトハ出來ナイ、玆ニ勞務者
ガ產報ヲシテ自發的意志ヲ抑制スル組織ト
誤識シ、又ソノ構成層ニ於テ事業主、行政官
等ガ指導的地位ニアル爲メ、トカク消極的
嫌ヒガ伴ヒ易カツタコト等ノ諸事情ガ潜在
シ、勞務者自體ヨリ盛上ル積極的態度ニ缺
クル處ガアツダ」ト云フヤウナコトヲ言ツテ
居リマス、是ハ獨リ森戶辰男氏或ハ「本邦財
界情勢」ノ記者ノ意見ダケカト思フト、サウ
デハナイノデアリマシテ、此處ニ居ラレマ
ス小泉厚生大臣モ或ル機會ニ、產報運動ノ
行キ方ガトモスレバ職場カラ遊離シ勝チノ
ヤウニ見受ケラレ、現ニ此ノ運動ノ實體ヲ
專ラ華々シイ仕事デアルカノ如ク考ヘテ居
ル向キモアルト云フヤウナコトヲ仰シヤツ
テ居ラレルノデアリマス、是ハ單ニ一部ノ
雜誌、或ハ一部ノ評論家ト云フダケデナシ
ニ、大體厚生大臣自ラモ現在アル姿ノ儘ノ
產報デハドウモナラヌト云フコトハ御考ヘ
ニナツテ居ラウト思フノデアリマス、ゾレ
デハ此ノ產報ヲドウスルカ、一部ノ論者ノ
ヤウニ私ハ產報ヲ否認シヨウトスルモノデ
ハナイ、折角六十万ナラ六十万ト云フ勞働
者ヲ或ル形ノ上デ組織シテココマデ來タ所
ノ產報、之ヲ惡イカラト云ツテ又壤シテ別
ノモノヲ作ルト云フ程今ハ悠長ナ時期デハ
ナイ、少クトモ一種ノ經營形態トシテ現在
アルモノヲ何トカシテ使ハウト云フ狀態デ
アルカラ、此ノ產報ヲ何トカシテ擔イデ、
現在ノ生產增强ニ「マッチ」サセナケレバナ
ラヌト云フ問題ヲ考ヘナケレバナラヌト思
フ、私ハ產報ノ所謂强化ノ其體策ヲ一體厚
生省トシテドノヤウニ御考ヘニナツテ居ル
カ、是マデ豫算總會ノ上ニ現ハレタ所デハ、
大體其ノ總論的ナ、抽象的ナ言葉ダケデア
リマシテ、ハツキリシタ具體策ガナイ、產
報ハ過去ニ於テハ斯ウ云フヤウナ運動ヲシ
テ居ツタガ、併シナガラ生產增强ノ必要ナ
現在ノ時期ニ於キマシテ、將來ニ於テ產報
ハドノヤウニシテ之ヲ强化サシテ行クカト
云フ具體策ガ何カ法制ノ上ニ於テ、或ハ運
用ノ上ニ於テ、厚生省トシテ御用意ガアル
カドウカト云フ點、具體的ナ問題ヲ御聽キ
シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=82
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083・小泉親彦
○小泉國務大臣 只今仰セノ通リ今日ノ企
業、殊ニ重要產業ニ於キマシテノ企業ハ、
モウ資本ノ上カラモ何カラモ、非常ナ國家
的ノ性格ヲ强ク持ツテ居リマシテ、隨ヒマ
シテ其ノ經營體ド云フモノモサウ云フ方カ
ラ見マスレバ、從來ノ經營或ハ企業トハ全
然變ツテ來テ居ルノデアリマスルガ、併シ
生產ヲスル、國家ノ絕對要請ニ對シテ必ズ
之ヲナシ上ゲルト云フ今ノ御言葉ノアリマ
シタ生產責任ト云フモノヲ玆ニハツキリス
ルコトヲシナケレバ到底幾ラ形ヲ整ヘマシ
テモ此ノ國家ノ絕對要請ヲハツキリスル上
ニ於テハ十分デナイ、此ノ點ハ全ク仰セノ
通リ私共御同感ニ存ズルノデゴザイマス、
ソコデ今日マデノ企業經營體ト云フモノニ
手ヲ着ケテ、一部分今度ノ豫算總會ナンカ
デモサウ云フヤウナ意味ノ御尋ネモアツタ
ノデアリマスルガ、ソシテ卽チ企業ノ國家
性ト云フコトヲハツキリシテシマフ、ソシ
テ其ノ中ニ勤勞モ經營モ、資材モ皆一〓ニシ
テシマツテ國家性ト云フモノヲ明確化スル、
ソレノ爲ニハ或ハ色々ノ經營ノ變革ト云フ
コトノ御考ヘモアツテドウダト云フヤウナ
御意見モ伺ツタノデアリマスルガ、是ハ政府
ト致シマシテハ今日ソンナコトヲゴタ〓〓
シテ居ル時デハナクテ、今マデ多年ノ間經
驗ヲ持チ、サウシテ工夫ヲシテ來ラレタ其ノ
方ガ玆ニ國家ノ絕對要請ト云フコトヲハツ
4
キリ認識サシテ貰ツタナラバ、ソコカラ新
タナル工夫モ生レ、新タナル創意モ生レテ
來ル、ソレヲ以テ國家ノ爲ニ働イテ戴カウ、
斯ウ云ウ風ニ行カウト考ヘテ居リマスルガ、
今日ニ於キマシテハ企業組織形態ト云フモ
ノニ對シテ現狀ノ儘デ、所謂總理ノ申シテ居
リマス全部ノ國內總力ガ盛上ツテ來タソレ
デ行カウト云フ氣持ノ爲ニ、ソコニハ手ヲ
着ケナイ、併シナガラ、生產責任ト云フコトヲ
ハツキリスルニハ、今日ハ設備モサウダ、資
材モソウダ、ケレドモ資材ダトカ、設備ダト
カ云フモノハ、急遽ニ今日ノ決戰體制ノ爲
ニ必要ナル所ノ生產增强ニ間然スル所ナク足
リルト云フノデハナクテ、ソコニ色々ナ制約
ヲ受ケル其ノ制約ヲ克服シテ、ソコニ日本人
トシテ生產ヲ增强スルト云フコトヲ現實化
スルノダト云フナラバ、ドウシテモ國民勤
勞ト云フコトガ一番大キイ問題デアル、卽
チソコニ皇國ノ勤勞觀ニ出發シタル御奉
公總テヲ犧牲ニ供シタル所ノ御奉公ト云
フヤウナ觀點ニ立ツタ所ノ勤勞ガ生レテ來ナ
ケレバナラナイ、ソレガ一ツノ勤勞組織トナ
リ、生產責任ノ組織トナツテ行クト云フヤ
ウナコトガ出來レバ宜イ、ソレニハ企業ト
云フモノト、經營ト云フモノト、ソレヲ物
デナクシテ、働キノアル、脈摶ツテ居ル所
ノ生產ト云フ面ヲ强ク持ツテ居ルモノハ、
卽チ總テノ勤勞者デアル、經營者デアル、
指導者デアルト云フコトカラ、經營ノ責任
者全部ガ此ノ企業勤勞組織、生產責任性ヲ
持ツタ所ノ、其ノ生產組織ト云フヤウナ
モノニ觀念シテ見タイ、實ハ斯ウ考ヘテ居
ルノデス、サウ云フコトノ一ツノ生產責任
ヲ確認シタ所ノ勤勞組織ト云フモノガ、茲
ニ出來タ場合ニ於テ、ソレノ第一ヲナスモ
ノハ何ダト言ヘバ、所謂仕ヘ奉ル、此ノ時局
ノ要請ニ唯身ヲ以テ御應ヘスルノダト云フ、
ソコニ皇國ノ勤勞觀ト云フモノガ實ニ上カ
ラ下マデ、又更ニ國民全部ニモスツカリ徹
底シテ來ナケレバ、是ハ唯觀念ニ終ツテシ
マフノダラウト云フ心配ガゴザイマスノデ、
此ノ皇國勤勞觀ノ徹底ト云フコトハ、何處
マデモ强ク、第一義的ニ行ツテ貰ヒタイ、
過去ニ於テ勞働組合ト云フヤウナコトカラ
段々アリマシタ所ノ、勞資ノ對立トカ、色々
ノ問題ヲ兎ニ角拂拭スルニ絕大ノ功績ヲ
擧ゲタ所ノ產業報國會ニ、此ノ際一ツノ皇
國勤勞觀ノ徹底强化ト云フコトニ〓ヒ込ン
デ貰ヒタイ、ソコガ唯職場カラ離レテシマ
ツテ、皆ヲ集メテ話ヲシタリ、唯本ヲ讀マ
セタリスルノデハナクテ、是ハ俺ノモノダ、
此ノ間モ西尾君ノ御話ニナリマシタヤウ
ニ、一ツ皇國勤勞觀念ニ徹底シテ、俺等ガ
挺身シテ行クノダ、是デ行クノダト云フコ
トコトヲ全部ガ考へマシテ、經營者、經營
責任者、ソレカラ勤勞者、總テガ一緒ニナ
ツテ、サウシテ一ツ俺ノ產報ダト云フノデ
積極的ニ勞働者ガ協力シテ來ルト云フ風ニ
產報ガ考ヘテ行クト云フコトハ、將來當然
ナサナケレバナラヌ、サウ云フ風ニスルノ
三ノ、本當ニ俺ノモノダト云フノニハ、ド
ウシテモ先程喜多君カラモ御話ガアリマシタ
ガ「衣食足ツテ禮節ヲ知ル」ト云フヤウナ所
ガ非常ニアリマスルカラ產報ノ組織ノ上ニ
於テモサウ云フコトヲ能ク考ヘテ見テ、サ
ウシテ今ノ產業報國會ガソレヲヤル、一方
ノ生產ト云フ面ノ方ハ勤勞組織體ヲ各事業
場內ニ作リ上ゲテ、是ガ全ク楯ノ表裏デア
ル、一心同體デアル、サウシテソレニ依ツ
テ生產ノ責任ヲ果シテ行クヤウニシテ行キ
タイ、斯ウ云フヤウナ考デゴザイマス、ソ
コニ考ヘテ參リマスル順序ノ中ニハ多分ニ
矛盾ガアルト云フコトヲ私自身デハツキリ
認メマス、企業ノ根本ニ觸レナイデサウ云
フコトヲ言フノハ非常ニ無理デゴザイマス
ガ、今日其ノ無理デ一ツ押シテ行クト云フ
コトガ、ゴチヤ〓〓ヲ起サナイデ、兎ニ角
今ノ姿ノ儘デ、今日カラ行クト云フコトガ
一ツノ途デハナイカ、斯ウ云フノガ狙ヒド
コロデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=83
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084・水谷長三郎
○水谷委員 大體ノ大摑ミナ御意見ハ分ツ
タノデアリマスガ、ソレデハ大臣ト致シ
マシテ、產報ガ勞働組合ノ所謂階級的鬪爭
的缺陷ヲ打破シテ、ソコニ皇國勤勞觀ヲ打
立テタ、是ハ成功ダ併シナガラ勞働組合ノ
長所デアル所ノ、生活ニ根ザシタ組織ト、
協同意識ヲバラ〓〓ニ解體シ去ツタ、此ノ
缺點モ認メヨウ、更ニ又勞働者ハ、社長サ
ンガ上ニ居ル、サウシテ行政官ガ上ニ居ル、
マルデ自分等ノ抑壓機關ノヤウニ產報ガト
モスレバナル、是モ認メヨウト云フコトニ
ナリマスト、ソレデハ斯ウ云フヤウナ、現
在現ハレタ具體的ナ缺陷ニ對シテ、一體大
臣ハドウ云フヤウナ對策ヲ御持チデアル
カ、例ヘバ地方ノ產報ヲ見テ居リマスト、
職場ノ單位產報デハ社長サン、勞務官ト云
フヤウナ者ガ上ニ立ツテ居ル、ソレデ偶サ
カ會議ニ出テ能ク發言スル勞働者ハ次カラ
役員ニシナイ、結局產報ト云フモノハ社長
ノ說〓ダケヲ聽イテ居ルト云フコトニナ
ル、サウシテ工場ヲ離レルト、京都ナラ京
都ノ例ヲ言ヘバ、產報ノ人事關係ハ皆警察
ノ手デヤツテ居ル、サウ云フ譯デ外ヘ行ケ
バ警察ニ頭ガ上ラヌ、內デハ社長サンニ頭
ガ上ラヌ、マルデ「サンドウイッチ」ミタ
イニナツテ居ルヤウナ狀態デアル、斯ウ云
フモノヲドウ云フヤウニ改革スルカ、例へ
バ產報ヲ警察ノ手カラ一先ヅ切離シテ工場
ノ中ニ持ツテ來ル、而モ工場ノ中ニ持ツテ
來タ時ノ人事關係、機構ト云フモノヲドウ
スルカ、相モ變ラズ社長ニ頭ガ上ラヌ、斯
ウ云フ工合ニスルノカ、或ハソコニ勞働者
ト所謂企業責任者ト云フ者ガ本當ニ同列
ト申シマスカ、膝突キ合ハセテヤレルヤウ
ニシナケレバ、私ハ是ハドウスル譯ニモ行
カナイノデハナイカト思フノデス、例ヘテ
申シマスレバ、企業家、企業責任者、勞働
者ガ三位一體ニナラナケレバナラヌノデ
スガ、今日企業家ト云ヘバ三井トカ、住友
トカ、三菱トカ云フコトニナツテ居ルガ、
是ハ段々三井ノ代リニ大日本帝國、住友ノ
代リニ大日本帝國ト云フヤウニ國家ガ來テ
居ル、私ハ今度新タニ出來タ所ノ超五大重
點產業ノ經營者ハ、形ハ假令住友デアラウ
ト、或ハ三菱デアラウト、是ハ國家ト見テ
宜イ、又見ナクチヤナラヌト思フノデス、
サウスルト殘ル所ノ問題ハ、現實ノ工場ニ
於ケル經營責任者ト勞働者トガ國家意識ニ
燃エテ、ソレヲ如何ニ結付ケルカト云フ所
ヘ持ツテ行カナケレバナラヌト思フ、斯ウ
云フ點ニ關シマシテ、只今ノ大臣ノ一般論
ハ私ハ全部贊成デス、所ガ現在アリ姿ノ儘
ノ單位產報ノ斯ウ云フヤウナ缺陷-總理
大臣ガ言ハレルヤウニ、本當ニ生產力ト云
フモノハ勞働者ノ燃エ上ル力デナケレバナ
ラヌ、所ガ今產報ハ燃エ上ラス機關デハナ
シニ、マルデ「ポンプ」ノ役割ヲ果シテ居ル、
サウ云フヤウナコトデハ結局何ニモナラヌ、
ソコデ警察ノ手カラ離シテ工場ノ中ニ產報
ヲ持ツテ行ク、而モ其ノ機構ノ上ニ於テ、
人事ノ上ニ於テウント改メテ、本當ニ勤勞
組織ト企業組織トガ表裏一體トナルヤウニ
產報ヲ改組シナケレバナラヌト思フノデア
リマス、是等ノ點ニ關シ大臣ハドウ云フ御
考ヘヲ御持チデアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=84
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085・小泉親彦
○小泉國務大臣 御承知ノ通リ兎ニ角時局
ガ段々逼迫シテ參リマシテ、勞資協調ダナ
ント云フコトヲ言ツテ居ツタノデハ迚モイ
カヌカラト云フヤウナコトカラ、所謂經濟
新體制ト云フコトニ呼應致シマシテ、玆
產業報國會ト云フモノガ生レテ參リマシタ
ヤウナ次第デアリマス、勿論ソレマデニ產業
報國會ト云フモクハ事業場々々々ノ或ル所
ニハ旣ニアツタノデアリマスケレドモ、全
面的ニアツタ譯デハナイ、從來アツタ色々
ノモノモ會ノ名ハ報國會デアリマシテモ、
色々性格ガ違ツテ居ルモノガアル、ソコニ
一ツノ產報ト云フモノノ作リ上ゲルト云フ
コトニナリマシタ爲ニ、ドウシテモ日本ノ
從來ノ色々ノ關係モアリマシテ、結局警察
ト云フモノガ御世話ヲスル、斯ウ云フコト
ニナツタノハ其ノ當時已ムヲ得ナカツタラ
ウト思ヒマス、警察ガアツタラバコソ、又
ソコニ勞資協調ト云フヤウナコト、或ハ對
立ト云フヤウナ觀念ヲ持ツテ居タ者モ、兎
モ角仕方ガナイト云フノデ其ノ中ニ入ツテ
來テ、サウシテ都合ガ好クナツテ來タ、產
報ト云フモノガ段々段々運動ガ發達シテ來
タト云フコトデ、是モ已ムヲ得ナカツタト
私ハ考ヘ·マス、例ヘバ勞働爭議ナドモ急激
ニ少クナリ、又サウ云フ團體ガ全部自然ニ
解消シテ來ルト云フヤウナコトモ、ヤハリ
當時トシテハ警察ト云フモノガヤハリ物ヲ
言ツテ居タト云フコトデ、一ツノ大キナ必
要性ガアツタト私ハ思ヒマス、併シ·今日此
ノ決戰下ノ昭和十八年ニ於テ國民全部ガ國
ノ爲ニ死ンデモ戰ヒニ勝ツノダ、其ノ爲ノ
國內ノ體制ノ强化ハ生產一本ダト考ヘタ其
ノ時ニ於テ、尙ホサウ云フ手ヲ加へル必要
ハ私ハナイト考ヘル、ソコデサウ云フ考へ
カラ出發致シマスナラバ、產報ト云フモノ
ガ、先程申上ゲマシタヤウニ、私ハモウ心
カラ全部ノ動勞者ト云フモノガ、是ハ俺等
ノ一ツノアレダト云フ所ニ立返ルノニ都合
ノ好イヤウニ、人事デモ組織デモ考ヘナケレ
バナラヌ、斯ウナラナケレバナラヌ、サウ
シナケレバナラヌト思ヒマス、併シ私今各
地方々々ノ產報ニ、ドウ云フ風ニシタラ一番
宜イカト云フコトニ付テ、具體的ニ之ヲ劃
一的ニ申上ゲルト云フコトハ出來ナイ譯デ
アリマスルノデ、是ハサウ云フ趣旨ニ於テ
產報ノ當局トモ能ク懇談シテ、サウ云フ風
ニ指導シテ行キタイ、斯ウ云フ風ニ考ヘテ
居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=85
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086・水谷長三郎
○水谷委員 根本問題ト致シマシテ生產增
强ト云フモノガ、國家資本ガ擴大シタ今日
ニ於キマシテハ、只今大臣ガ申サレマシタ
ヤウニ、勤勞者ヲシテ皇國勤勞者トシテノ
矜リト自覺ヲ持タシテ、今度ノ戰爭ヲ勝拔
クノハ自分達ノ腕デ働キ出スノダ、ココガ
一番大事ナ點デアルコトハ、是ハ大臣モ私
ト同感デアラウト思ヒマス、ソコデ初メノ
時ニハ產報、ノ育チトシテ警察ノ手ヲ借リ、
色々ノコトハ必要デアツタ、是モ私ハ巳ム
ヲ得ナカツタト思ヒマス、併シ私ハ今日ニ於
テハサウヂヤナイ、サウ云フ時期デハナイ、而
モサウ云フヤウナ關係ハ此ノ產報ヲ法制化ス
レバ、大體警察ノ手カラ離レテモ、大臣ノ今ノ
御考ヘナンカ一ツノ杞憂ニ終ルノデハナイカ
ト思フノデアリマス、卽チ大臣ガ御見エニナラ
ナカツタ時ニ、勤勞根本法ト云フモノニ對シ
テ、私モ、或ハ阪本君ナンカモ牽聯質問トシ
テヤリマシタ、是ハ豫算總會等ニ於テモ現ハ
レタモノデアリマス、是ハ法律デ言ヘバ一ツノ
總論デアル、所ガ各論トシテ產報ノ法制化、
又產業報國會法ト云フヤウナモノモ、是 人
ナクチヤナラヌト思フノデアリマス、所謂
總論トシテハ勤勞根本法、是ハ所謂勤勞方
面ニ於ケル憲法ノヤウナモノト申シマセウ
カ、サウ云フヤウナモノトシテ一ツ作ラナ
ケレバナラヌ、併シナガラソレト竝ンデ產
業報國法ト云フヤウナ法律ガ出來レバ、サ
ウ云フヤウナ警察ノ手ガ離レマシテモ、私
ハ十分ニ產報ト云フモノガ育ツテ行クノヂ
ヤナイカト思フ、是ハ私ガ今此處デ產報ノ
法制化ト言フコトハ、事新シク言フノデハ
ゴザイマセヌ、是ハ產報ガ出來タ其ノ直後
カラ結局是ハ法制化シナケレバ、產報ノ權
限ト云フモノモハツキリシナイト云フコト
ヲ言ハレタノデゴザイマスガ、厚生當局ト
致シマシテハ、今度ノ所謂工場法ノ全面的
改正ヲ前提ト致シマシテ勤勞根本法ヲオ作
リニナラレル、ソレト同時ニ產報ヲ法制化
スル御意思ガナイカドウカト云フ點ヲハツ
キリシテ戴キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=86
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087・小泉親彦
○小泉國務大臣 此ノ產報ノ法制化ト云フ
コトハ、餘程前カラ色々御意見ノアルコト
ヲ私承知致シテ居リマス、今日今申上ゲマ
シタヤウヲ勤勞組織ト云フモノヲ考ヘソ
レノ表裏一體的ナ役割ヲ持タセナケレバナ
ラナイ、產業報國會ト云フモノヲドウ云フ
風ニスルカト云フコトハ、今實ハ色々考へ
テ居ルヤウナ次第デゴザイマス、先程申上
ゲマシタヤウナ、地方ノソレ〓〓ノ事情、
業態等ニ依リマシテ考へテ見ルト各論的ナ
問題ガ相當アルコトヲ承知シ、而シテ今囘
ノ此ノ工場法ト云フヤウナモノヲ改正致シ
マスノニモ、之ヲ勤勞法ト云フモノニ發展
シテ參リマスル上ニ於テノ一ツノ理由トシ
テ、ヤハリ工場法ト云フモノガ總テ劃一的
ナモノデゴザイマス、此ノ工場法ト云フノ
ガ非常ニ今日ノ時代ニソグハナイ一ツノ犬
キナ原因ニナツテ居ル、斯ウ云フ劃一的ナ
モノデナク、モツト生キタ時局ニ卽應スル
モノデ行クト云フ觀念カラ產業報國會ト云
フモノモ何カ一ツウマク考ヘ上ゲテ見タイ、
斯ウ考ヘテ居リマスノデ、是ガ今御言葉ノ
アリマシタヤウナ產業報國會ノ法制化ト云
フコトニナルカ、或ハ何カ他ノ方法ニ依ツ
テ今マデ何ダカ譯ノ分ラナイト云フヤウナ
所ヲ一ツハツキリサセルト云フヤウナコト
ガ出來ルカ、是ハ今頻リト考ヘテ居ルヤウ
ナ次第デゴザイマシテ、今私ハハツキリ斯
ウ云フ法律デ出ストカ、ドウトカ云フ所マ
デノ結論ニ達シテ居ナイノデアリマス、左
樣御諒承ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=87
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088・水谷長三郎
○水谷委員 サウスルト法制化スルカ、又
其ノ他ノ措置デ何トカ產報ヲ强化サスカ、
今考慮中ト云フコトニ拜聽シテ宜インデス
ネ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=88
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089・小泉親彦
○小泉國務大臣 サウデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=89
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090・水谷長三郎
○水谷委員 ソレデ私ハ結局生產增强ト云
フ場面カラ申シマシテ、此ノ產報ト云フモ
ノノ使命ガ今後非常ニ大キクナツテ來ルダ
ラウト思フノデゴザイマス、曩ニ私ハ勞務
ニ關スル權限移讓ニ付キマシテ、厚生省、
統制會、產報ト云フモノノ關係ヲ持永局長
カラ御聽キシタノデゴザイマスガ、結局統
制會ハ今後ハ主トシテ勞務ノ配置、而モソ
レハ業態別ノ細分的ナ配置ト云フヤウナ所
ガ重大ナ所デアラウト私ハ拜聽シマシタ、
今後ハ結局產報ノ一番大キナ問題ハ、勞務
管理ト云フ點ニ相當重點ガ置カレルヂヤナ
イカト私ハ思フノデアリマス、斯ウ云フ點
カラ申シマシテモ、所謂產報ノ法則化ト云
フモノハ非常ニ必要デアリマシテ、大臣ガ
今後ノ所謂勤勞增强力ノ一トシテ、企業組
織ト勤勞組織トヲ結付ケルト云フコトヲ先
刻非常ニ力說サレテ居リマシタガ、ソレ
デハ一體ドウシテ結付ケルカト云フコト
ニナルト、結局私ハ產報ヲ使フヨリ外ニ
途ハナイノデハナイカト思フノデゴザイマ
ス、今日ハ誰モ之ヲ持論トシテ言ツテ居
ル、私共最近經驗シタ非常ニ嫌ナコトデ
スガ、或ル工場デ餘リ勞務者ガ働カヌノ
デ何處カ歌舞伎ヲ總見サシタ、サウスルト
芝居ヲ觀タ直後ハ又働イタガ、直グ又働
カヌヤウニナツタカラ、今度ハ新國劇ヲ觀
セニ行ツタ、サウシタラ其ノ直後又働イ
タ、サウシテ今度ハ一體會社ハコンナニ俺
等ヲ優遇シテ居ツテマダ儲ケテ居ルノカト
云フヤウナ考ヘガ起ツテ來タ、ダカラ賃金
ヲドウスルトカ、或ハ必要物資ヲドウスル
トカト云フコトモ固ヨリ必要ナコトデアリ
マスガ、併シナガラ今日ノヤウニ物ヲ造ト
云フ場面ニ於テ勞務ト云フコトガ資材ト一
〓ニ大キク浮ビ上ツテ來タ時代ニ於テハ、
此ノ勤勞組織ト企業組織ト云フモノトノ
關係ヲ根本的ニ考ヘナケレバ、私ハ本當ノ
生產增强ガ出來ナイ時期ヂヤナイカト思フ
ノデアリマス、今日所謂企業家、企業ノ責
任者、勞務者ヲ三位一體トシタ我ガ國情ニ
相應シイ勞務形態ヲ作ツテ、サウシテ企業
家ト勞務者ト協議的ニ、協議經營形態ト申
シマスカ、サウ云フモノヲ以テ行カナクチ
ヤナラヌ、サウセイト云フコトハ、是ハ大
體ノ一ツノ理論ニナツテ居ルシ、又大臣ガ
先程申サレマシタヤウニ、勤勞組織ト企業
ほ組織トヲ一緒ニ結付ケヨウト云フノモソコ
ニアルト私ハ思フ、ソレデハ一體何ニ依ツ
テドウシテ結付ケルカト云フコトヲ大臣ハ
一方ニ御考ヘ願ヒタイト思フ、ソレニ產業
報國會ヲ使ヒ、產業報國會ガ第三者的ナ、
否國家的ナ立場カラ此ノ勤勞組織ト企業組
織ノ中ニ入ツテ、之ヲ結付ケルト云フ所ニ、
私ハ今後ノ產業報國會ガ生キテ行ク途ガア
ルノデハナイカト思フノデス、斯ウ云フ點
カラ申シマシテモ、產業報國會ノ法制化ト
云フコトハ、是ハモウ絕對ニ必要デアル、
若シ一方ニ於テ勤勞ノ組織ヲ作ツテ、一方
ニ於テ產業報國會-現ニ數字ハ言ヘマセ
ヌガ、曩ニ持永サンガ發表サレマシタ勞務
者ノ數字ノ半分カラズツト上ノ六百万ト云
フモノガ組織サレテ居ルコトハ事實デス、
之ヲ法制化セズニ勤勞ノ組織ダケ作ツテモ
私ハ駄目ダト思フ、ダカラ私ハ此ノ際別ニ
言質ヲ取ルノデハナイノデスガ、勤勞組織
法ヲ作ルト共ニ、產業報國會ノ法制化ト云
フモノハ是ハ是非必要デアル、ソレデナケレ
バ駄目ダ、ソレヲヤルト云フヤウナ言明ヲ、此
ノ戰力增强ニ關スル委員會デ厚生大臣ガヤ
ル勇氣ガナイヤウデハ、私ハ日本ノ勞務問
題ハ解決セヌト思ヒマス、此ノ點ニ關シマ
シテ重ネテ御所見ヲ伺ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=90
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091・小泉親彦
○小泉國務大臣 私ハ只今ノ御說ニ全ク贊
成ナノデス、產報ト云フモノヲ非常ニ强力
ニ、實體ヲ働ケルヤウナ本當ノモノニシテ、
サウシテ今私ノ觀念致シテ居リマスル勤勞
組織體ト云フモノト結付ケサセテ行ク所ノ
非常ナ强イ團體トシタイ、然ラバ之ヲ法制
化スルニハドウ云フ風ニスルカト云フコト
ニナルト、私ハ今考ヘハナイ、斯ウ申上ゲ
ルノデス、力强クハツキリシタモノニスル
ト云フコトハ自分ハ强ク考ヘテ居リマス、
又其ノ積リデ調査ヲセシメテ居ル次第デア
リマス
更ニ此ノ機會ニ一寸御言葉デゴザイマシ
タノデ私申上ゲテ置キタイト思ヒマスノハ、
途中カラ參リマシテ初メカラノ御話ヲ承ツ
テ居リマセヌノデ、或ハ間違ツテ居リマシ
タナラバ御直シヲ願ヒタイト思ヒマスガ、
河上君ノ御話ノ、勞務者ニハ色々アル、アル
ダラウガ、兎ニ角今日統制會ナリ何ナリ他
所デ勞務者ノ問題ヲ取扱フト云フ問題ニナ
ルト、厚生省カラ離レルヤウナ氣持ガアリ
ハセヌカ、又地下勞務者ガドウシテ地上勞
務者ヨリ興味ガ薄イト云フヤウナ點モ、是
ハ地下勞働者ノ厚生施設ノ十分ニナイト云
フコトガ、大變大キイ問題ニナルト申サレ
タヤウニ拜承致シタノデアリマス、私ハ之
ヲ非常ナ感激ヲ以テ拜聽致シタノデアリマ
ス、只今ノ水谷君ノ產報ノ問題ト相關聯シ
テ一〓ノ問題ノヤウニモ考ヘラレルノデア
リマス、其ノ意味ニ於キマシテ、先日モ一
寸此處デ申上ゲマシタガ、今日ノ厚生省ノ
行政事務ト云フモノハ、唯々一ニ此ノ生產
增强ノ一本ニ集中ヲサセテ居ルノデアリマス、
其ノ生產增强ニ集中スル其ノ上ニ丁度御話
ノ勞務者ノ氣持、或ハ地下勞務或ハ今ノ產
報ノ問題、或ハ勞働者全部ガ、是ハ俺ノモノ
ニシテ行クト云フヤウナコト、總テガ今日
ノ厚生省ノ機構ガ、人口ノ上カラモ、保健ノ
上カラモ、社會保險ノ上カラモ、生活ノ問
題カラモ、凡ユル問題カラ之ヲ大キク取上
ゲマシテ、サウシテ厚生省ハ此ノ勤勞者
ノ-言葉ハ惡イカモ知レマセヌガ、是ハ勤
勞者ノ本當ノ一人ノ親父ダト云フ氣持デ行
キ、之ニ依ツテ、今年ノ生產增强ヲ十分ニ完遂
シテ、大東亞戰爭ヲ勝拔ク、勝拔イタ後ニ疲レ
果タル者ガ殘ルノデナクシテ、悠久日本ノ姿
ガ國民ノ中カラ湧イテ來ルト云フ風ニ持ツ
テ行キタイト云フノガ、今私共ノ狙ヒ所デ
ゴザイマス、サウ云フ意味ニ於キマシテ、
先程ノ御言葉モ感激ヲ以テ承ツタノデマリ
マス、只今ノ產報ヲサウ云フ風ニシタイト
云フコトハ洵ニ御同感デアリマス、ドウカ
サウ云フ風ニ行カナケレバナラヌ、又サウ
スル爲ニドウスルカト云フコトヲ今一生懸
命ニ〓究シテ居ル、斯ウ云フ譯デゴザイマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=91
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092・水谷長三郎
○水谷委員 私產報ノ强化問題、具體策ニ
關シマシテ豫算總會アタリデ論議サレタノ
デ、モウ一步進ンデ具體的ニ何カ大臣カラ
御明言ガアレバト思ツテ色々質問シタノデ
アリマスガ、只今ノ所ソレ以上御明言ガゴ
ザイマセヌノデ、私ハ厚生大臣ノ誠意ニ信
賴致シマシテ、今後ノ產報ノ强化ト云フコ
トヲ一日モ早ク御考ヘヲ願ヒタイト思ヒマ
ス、マダ十分ヂヤアリマセヌガ、此ノ產報
問題ニ關シマシテハ、產報問題ノ「エキス
パート」ノ阪本君ガアトニ控ヘテ居リマスカ
ラ、私ノ足リナイ所ヲ補ツテ戴キマシテ、
私ハ是デ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=92
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093・前田房之助
○前田委員長 關聯シテ林信雄君ニ發言ヲ
許シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=93
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094・林信雄
○林(信)委員 關聯スルカドウカ分リマセ
ヌガ、私ノ御伺ヒシタイノハ住宅營團ニ關
スルコトデアリマス、總體的ノ質問ヲ申上
ゲヨウトハ思ヒマセヌガ、個々ノ一、二ニ付
テ申上ゲマス、一ツハ是ハ申スマデモナク
住宅營團設立ノ趣旨ニ副ヒ、年所ノ淺イニ
モ拘リマセズ形體ガスツカリ整ヒマシテ、地
方ニ於ケル勞務者住宅ノ建築ニ向ヒマシテ、
着々成績ヲ上ゲテ居ラレマスコトハ、地方
ノ產業人ト致シマシテ非常ニ感謝致シマス、
唯慾張リヲ言フヤウデアリマスケレドモ、
之ニ關聯シマシテ石炭業者ガヤハリ小住宅
ヲ要求スルノデアリマスガ、新礦等ヲ開發
致シマシテ、勞務者ヲ集メマスト、急速ニ
住宅ヲ要求スルノデアリマス、併シナガラ
ドウモ此ノ方面ニハ住宅營團ト致シマシテ
ハマダ手ヲ御着ケニナラナイ、其ノ事情ハ
何處カニアルノダト思ヒマスガ、忖度致シ
マストドウモ炭礦ト云フモノハ時ニパツ
ト興ルケレドモ、時ニ止マルモノデアル、
サウヂヤナイコトガ此ノ頃ノ實情ニナツテ
參リマシタガ、昔ハ隨分サウ云フ方面ガア
ツタト思ヒマス、此處ニ住宅ヲ建ツテ置イ
テモ、ソレガ十九箇年ノ間ニ拂込ムコトガ
出來ルカ、或ハ貸家ノ場合デアリマシタナ
ラバ、事業ヲ濟マスト其ノ儘空ケテシマフ
カラ其ノ住宅ハ用ヲナサナクナルト云ツタ
考へ方ガ、根幹ヲ成シテ居ルヂヤナイカト
思フノデアリマス、併シソレハ生產增强ニ
挺身致シマス炭礦側ト致シマシテ、大イニ
物足リナイノデアリマス、折角サウ云フ要
求ガアリマスナラバ、此ノ際此ノ秋ヲ目掛
ケテヤツテ貰ハナケレバナラヌノダト思フ
ノデアリマス、他ノ例ヲ採リマスナラバ、
船舶ノ關係ニ於キマシテモ、是ハ永久ノ用
ニ立テルノデハナクシテ、此ノ輸送ノ關係
ヲ充足スル爲ニ、鐵鋼船ニ於キマシテモ三
年カ五年使ヘレバ宜イノダ、此ノ際ニ使フ
爲ニヤルノダト云フアノ意氣ヲ以テ御臨ミ
下サイマスナラバ、炭礦ハ、假ニ其處デ住
宅ヲ必要トシナイト云フコトニ相成リマシ
テ、若干ノ無駄ガ出ルト云フコトニナルカ
モ知レマセヌ、全部ヂヤナイカモ知レマセヌ
ガ、假ニサウ云フコトヲ幾ラカ豫定サレルト
致シマシテモ、ソレ位ノ犠牲ハ英斷ヲ以テオ
ヤリ下サルノガ本當ヂヤナイカト思ヒマス、
ソレト例ヲ同ジクシ、尙ホモウ少シ深刻ナ氣
持ノシマスノハ、半島出身ノ勞働者ノ住宅、是
ハ特ニ豫定等ヲ致シタモノハ、ソレダケノ準
備モ致スヤウデアリマスガ、ソレ等ノ方面其ノ
他カラ流レマシテ、時ニ住居ヲ變ヘテ居リ
マスガ、是等ノモノノ住居ハ、此ノ住宅不足
ノ折柄一層不足デアリマス、街ニ生活スルト
云ヒマスガ、端ノ方ニ參リマスト、谷間ニ
「バラック」ト云フヨリハ掘立小屋デアリマ
シテ、漸ク雨露ヲ凌グト云フコトデアリマス、
是等ノモノモ今日自由勞働者ガ結成致シマ
シテ報國隊ヲ作ルト云フヤウナ秋、殊ニ言
フマデモナク、內鮮融和ト云フヤウナ見
地カラ考ヘマシタナラバ、政治ノ部面ニ於
テ、内地ニ住ンデ居ル是等ノ者ノ住宅ノ
問題ハ。十分愼重ニ考ヘテ、可ナリ行過ギ
的恩惠的ナ所マデ持ツテ行キマシテ
モ、決シテ惡イ效果ハ齎サナイト思フノデ
アリマスガ、是亦營團ノ囘收技術ト申シマ
スカ、其ノ後ノ處置問題ニ關聯致シマス
ガ、中々御喜ビニナラナイノヂヤナイカ
固ヨリ斯ウ云ツタモノヲ引受ゲマシテ、責
任ヲ以テ又貸シヲスルト云フコトニ行ケバ
又特別カモ知レマセヌガ、サウ云ツタヤウ
ナ方法デモ講ズルカ否カニアラザレバ困難
ナヤウニモ思ヒマスガ、兎ニ角斯ウ云ツタ
炭礦ノ、一口ニ言ヒマシテ納屋ト言ツテ居
リマスガ、納屋住宅及ビ半、島勞働者ノ住宅
ト云ツタ問題ハ、可ナリ犧牲ガ伴フノデ、
一私設會社ガ營利關係ヲ考ヘルヤウナ考ヘ
デナシニ、生產增强ト結ビ付ケテ、モウ少
シ徹底シタ氣持デオヤリ願ヘナイモノカ否
カ、是ハ或ハ私ノ杞憂致スヤウナコトデナ
ク、サウ云フコトハドンノ〓オヤリニナツ
テ居ルト云フコトデアリマシタナラバ、實
施ノ部面ニ於テ徹底ヲ缺イテ居ルノカモ分
リマセヌ、其ノ根本ノ御考ヘ方ト實際上ノ
御方針ニ付テ承リタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=94
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095・小泉親彦
○小泉國務大臣 勞務者ノ住宅問題ハ實ニ
仰セノ通リ深刻ナモノデゴザイマシテ、是
ガ爲ニ色々ノ生產ノ障碍ヲ來シテ居ル事例
ノアルコトモ承知シテ居リマス、從來サウ
云フコトハ資材ガナイカラト言ウテ御答ヲ
シテ居ツタノデアリマスガ、ソレハ今日ノ
場合許サレナイ、資材ガナケレバ出來ルダ
ケ其ノナイ資材ヲヤリ繰シマシテ、有效適
切ナモノニ重點的ニ配置シテ行カナケレバ
ナラヌ、抑〓住宅營團ノ出來マシタ時ノ氣持
ガ今ノヤウナノトハ違フノデアリマシテ、御
承知ノ通リ土地ノ買收デアルトカ、色々ナ
契約或ハ將來ノ採算ト云フヤウナコトデ、
ドウモ今ノヤウナ切實ナ要求ニソグハナイ
點ガゴザイマシタノデ、今後ハ住宅ノ資材
ニ對シマシテハ、一ツノ規格ヲ定メテシマ
ヒマシテ、其ノ規格ノモノダケハ物動ノ上
ニハツキリ優先的ニ摑ンデ來マシテ、重點
的ニ、卽チ今度ノ五大產業ノ中デモ、特上
何處ガ一番大事ダト云フ所ヲ見マシテ、住
宅營團自體ノ任意ナ選擇ニ任セナイデ、政
府ガ住宅建設命令ヲ住宅營團ニ與ヘテ、之
ニ依ツテヤツテ行ク、之ニ依ツテ資材ノ運
用ト適切ナル所ニ重點的ニ家ヲ建テテ行ク
ト云フコトニヤツテ行キタイト、斯ウ考へ
テ居リマス、隨ヒマシテ只今ノ石炭、鑛山
方面ノ問題、又半島人勞務者ノ問題等モ其
ノ所々ノ生產增强上ノ重要性ニ、又緩急ニ
從ヒマシテ、今申上ゲマシタヤウナ建設命
令ヲ以テ行ク、斯ウ云フ考ヘデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=95
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096・林信雄
○林(信)委員 他ノ一點デアリマスガ、住
宅營團ハ名前ノ示ス如ク住宅ノ建設ヲ致
ス、勞務者ノ小住宅ヲ作ルト云フコトデ、
規格ヲ統一ニナリマシテ、適當ナ材料ヲ御
使ヒニナリマスコトハ、結構デアリマスガ、
之ニ關聯致シマシテ、名前ニハ相應シクナ
イカモ知レマセヌガ、營團デセメテ公共團
體ノ營造物、學校其ノ他ノ建築物ヲオヤリ
願フ譯ニハ行カナイモノダラウカ、現在ノ
營團ノ狙ヒハソコニナイト思ヒマスガ、實
情ハ御存ジカト考ヘマスガ、技術者ガ非常
ニ足リナイ、營團ハ何ト云ヒマシテモ、營團
ノ性格上相當ノ技術者ヲ集メテ居ル、所ガ
ココニ取ラレタ意味ヂヤアリマセヌガ、地
方ノ都市ニ於キマシテハ今マデ相當建築
方面ノ技術者ハ持ツテ居リマシタデセウ
ガ、現在デハ一人二人ト云ツタ所ハ宜イ方
デアリマシテ、絕無ノ市ガアル狀態デアリ
マス、學校建築等ヲ致ス場合ニ、殆ド無關
心ノ狀態デ請負業者ニ任シテ置カナケレバ
ナラヌト云フ實情ガアリマシテ、非常ニ不
自由シテ居リマス、又縣廳方面ニモサウ澤
山技術者モ居リマセヌノデ、出來マスコト
ナラバ、手ノ揃ツテ居ル住宅營團ニ於テ、
範圍ヲ營造物ニ限リマシテ御委囑ヲ致シマ
スナラバ引受ケテ戴ケマスカ、是ハ臨時的
ノモノデモ結構デアリマスガ、サウデナク
テ、將來其ノ程度ニ計畫シテ行ヒマスルコ
トモ固ヨリ結構デアリマス、サウ云フコト
ガ願ヘマスレバ、申上ゲルマデモナク集團
化ト云フ高能率ノ利用關係カラ行キマシ
テ、サウ云フ手ノ揃ツタ所デヤリマストホ
ンノ僅カノ手數デ相當ノ指導監督ヲ願ヘ
ル、固ヨリ斯ウシタコトハ地方ノ請負業者
ニハ無影響ナモノデアラウト思ヒマスシ、
地方公共團體ト云フモノハ惠マレル譯デア
リマス、是ハ營團ノ範圍ガ限ラレテ居リマ
スカラ、出來ナイ範圍ナラ仕樣ガナイガ、
出來ルコトナラバ此ノ方面マデ範圍ヲ御擴
ゲニナル營團ノ性格ノ變更マデ行ケバ結構
デアリマスガ、臨時的ニデモサウ云フ便宜
ヲ御依囑ニ依ツテヤツテ戴クト云フコトガ
出來マスカ否カ、サウ云フコトデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=96
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097・小泉親彦
○小泉國務大臣 只今申上ゲマシタヤウ
ニ、住宅營團ハ只今ハ實ハ重要ナ方面ニモ
手ガ及バナイヤウナ關係ガゴザイマスノデ、
今日ノ所學校建築等ニ對シテマデ、到底實
情ハ手ガ及ビマセヌ、又考ヘテ居ラナイ、併
シナガラ只今申上ゲマシタヤウニ、規格ヲ
統一致シマシテ、住宅ノ建設ト云フコトニ
今參ルヤウニナリマスカラ、公共團體ニ於テ
サウ云フ技術的ノ協力ヲ求メルト云フヤウナ
コトガアリマシタ場合ニ於テハ、若シ餘力
ガゴザイマスレバ御相談ニ應ズルコトガ出
來ルト存ジマス、只今ノ所デハソレ位シカ、
一寸工合ガ惡イ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=97
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098・前田房之助
○前田委員長 關聯シテ阿子島俊治君ニ發
言ヲ許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=98
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099・阿子島俊治
○阿子島委員 私ハ產業報國會ノコトニ付
キマシテ厚生大臣ノ明確ナル御答辯ヲ御願
ヒシタイト思フノデアリマス、ソレハ先程水
谷委員カラ產業報國會ノ法制化ト云フコト
ニ付テ御質問ガアリマシテ、厚生大臣ノ之
ニ對スル御答辯ハハツキリシタヤウデハツ
キリシナイ感ジヲ私共懷カセラレタノデア
リマス、私共ハ產業報國會ノ性格ト云フモ
ノハ、其ノ發足當時ノコトカラ考ヘテ見マ
シテ、飽クマデモ勤勞者ノ職域奉公運動體
デアルト云フヤウニ感ジテ居ルノデアリマ
ス、隨ヒマシテソレハ飽クマデモ勤勞者ガ
自主的ニ日本的勤勞精神ニ基キ、之ヲ〓揚
シテ行クト云フ所ニ產業報國會ノ使命ガア
ルト思フノデアリマス、然ルニ之ヲ法制化
スルト云フコトニナリマスト云フト、此ノ
眞ニ日本人トシテ國家ノ爲ニ御奉公シヨウ
トスル所ノ、下カラ盛リ上ル勤勞奉公觀念ト
云フモノヲ、或ハ抹殺スル虞ナシトシナイノ
デアリマス、隨ヒマシテ、勿論私共ハ產報
ノ性格ヲハツキリサセルト云フコトニ付キ
マシテハ其ノ必要ヲ認メテ居ルノデアリ
マスルガ、ソコデ日本ノ一種ノ國民運動體
ニ對スル所ノ國家ノ指導方針ト云フモノヲ
明確ニサレテ行ク場合ニ於テハ、此ノ精神
ヲ貫クコトガ出來ルト思フノデアリマシテ、
ドウゾ其ノ點ヲ御考ヘ下サイマシテ、明確
ニ產業報國會、是ハ同時ニ日本ノ國民運動體
全體ニ通ズル問題デゴザイマスカラシテ、
總理大臣ノ今日マデ本會議或ハ此ノ委員會
ニ於テ御說明下サイマシタ所ノ、アノ國民運
動或ハ日本ノ政治國內指導ナサル所ノ根本
精神ニ基イテ此ノ點ヲ明白ニシテ戴キタイ
ト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=99
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100・小泉親彦
○小泉國務大臣 先程カラ申上ゲマシタヤ
ウニ、全クノ國民精神運動體トシテ、而モ
今日ノ生產增强ノ要請ニシツクリ合フヤウ
ニ强力ナモノト致シタイ、斯ウ考ヘテ居ル
次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=100
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101・阿子島俊治
○阿子島委員 法制化ノコトハドウ考ヘマ
スカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=101
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102・小泉親彦
○小泉國務大臣 先程申上ゲマシタヤウニ
法制化スルトカシナイトカ今日私ハ申シテ
居ルノデハナイノデゴザイマシテ、法制化
シテ別ニ一ツノ產報法ト云フモノガ出來ル
ノガ宜イカ、或ハドウ云フ風ニシタラ宜イ
カト云フコトヲ今日マダ私ガ自分デ決シテ
居ラヌ、隨テ〓究ヲ致シテ居リマスカラ、
其ノ目的ニ向ツテ都合ノ好イヤウニ一ツ行
キタイ、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=102
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103・前田房之助
○前田委員長 關聯シテ阪本勝君ニ發言ヲ
許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=103
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104・阪本勝
○阪本(勝)委員 先程カラノ厚生大臣ノ御
答辯ガ非常ニ不明確デアルト云フコトガ產
報問題其ノモノノ實相ヲ語ルモノデアリマ
シテ、恐ラク今ノ產報ノ問題ニ付テ明確ナ
答辯ヲナシ得ルモノハナイト思フノデアリ
マス、非常ニ難カシイ問題ダト思ヒマス、
私ハ實ハ產報ノ問題ハ一切觸レナイデ置カ
ウトマデ考ヘテ居ツタ、詰リ投ゲテ居ツタ
ノデアリマス、併シ段々ト考ヘテ見ルト云
フト、此ノ生產增强ト云フコトガココマデ
熱烈ニ叫バレテ居ナガラ、產報ト云フモノ
ハ何トナク眞劍ニ取上ゲラレナイト云フノ
ハ不思議ナコトダ、アリ得ザルコトダト考
ヘマシタノデ關聯質問ヲ致ス譯デアリマス
私ハ先程大臣ガ仰シヤイマシタ生產責任
ヲ實行スル所ノ生產組織ト云フモノヲ作ラ
ナケレバナラヌ、其ノ生產組織ニ該當スル
モノガ將來ノ產報デナケレバナラヌト云フ
御考ヘニハ非常ニ贊成ナノデアリマス、ソ
コマデ明確ニ言ツテ戴イタコトハ非常ナ收
穫ダト思フノデゴザイマスガ、在來動モス
ルト生產組織ト云フモノガ別ニアツテ、產
報ト云フモノハ時々人ヲ呼ンデ來テ講演ヲ
シタリ、或ハ移動演劇ヲ連レテ行ツテ芝居
ヲサシタリスルモノダカラ、成ベク產報ノ
仕事ハ職場ノ閑ナ時ニ來テ吳レ、餘リ屢〓、
產報サンガ來ラレルト困ル、却テ能率ヲ阻
碍スルカラ日曜カ休日ニ來テ吳レ、斯ウ云
フ風ニ一般ニ扱ハレテ。居ツタ、然ルニ今大
臣ノ御話ニ依ルト生產責任ヲ實現シ、達成
スル所ノ生產組織、生產體其ノモノガ產報ダ
ト云フコトハ、吾々トシテハ相當嬉シイ御
斷言ダト思ヒマス、ソコデ考ヘマスノニ、
ソレナラバ產報ト云フモノガ、將來經營者
モ勤勞者ヲモ含ム所ノ職場ノ生產組織ト云
フモノニナツテ行カナケレバナラヌト云フ
コトニナリマスレバ、現在ノ產報トハ餘程
性格ノ異ツタモノニナツテ參リマス、サウ
シマスト、旣ニ勤勞觀ノ確立ト云フヤウナ
國民運動ノ限界ヲ乘越エテ、一ツノ生產ノ
現實的ナ組織トナツテ行クベキモノデアリマ
ス、サスレバ大政翼贊會ト云フモノノ傘下ニ居
ツテ精神運動ヲ建前トスル現在ノ產報ノヤ
ウナモノデハモウアリ得ナイ筈デアル、私
ハ產業報國會ガ大政翼贊會ノ傘下ニ入リマ
シタ時ニ實ハ啞然トシタノデアリマス、產報
報國會ノ關係者モ皆啞然ト致シマシタ、
體政府ノ考ヘハ何處ニアルダラウ、現在デ
サヘ產報ハ職場カラ遊離シテ、兎角職場ノ
精神運動トナラントスル時ニ、ゾレヲ大政
翼贊會ニ入レルト云フコトハ君等ノヤルコ
トハモウ精神運動ナンダ、產報ト云フモノ
ハ精神運動ヲヤツタラ宜イノダト云フコト
ヲ決定シテシマフコトニナルノデハナイ
カ、ドウ云フ所ニ政府ノ意ガアルデアラウ
カト云フコトヲ吾々了解スルニ苦シンダノ
デアリマス、併シ現在旣ニ大政翼贊會ノ傘
下ニアツテ、產報ノ人々ハ歎イテ居ル、翼
贊會ニ入ツタカラシテ、精神運動以上ノコト
ハモウ出來ナイ、何トカシテ翼贊會カラ脫
退ト云ヒマスカ、翼賛會カラ離ルル方法ハ
ナカラウカ、サウシナケレバ生產增强モ本
質的ナ仕事ハ出來ナイト云フコトガ產報關
係者一同ノ考へ方デゴザイマス、偶〓本日
大臣ノ御考ヘヲ承リマスト、生產組織其ノモ
ノガ產報デアル、精神運動デハナイ、生產
組織ト云フコトニナルト、最早翼贊會ニハ
留マルコトノ出來ナイ團體トナル筈デゴザ
イマスガ、大臣ノ御考ヘガ非常ニ正シイト
思ヒマスカラ、當然產報ト云フモノハ現下
ノ要請ニ鑑ミテ、須ラク大政翼贊會カラ離レ
テ、一本立チノ生產組織トシテ、「ドイツ」
デ言ヘバ「デル·アルバイツ·フロント」、ア
ア云フ生產ノ實體トナラナケレバナラヌト
存ジマス、此ノ點非常ニ重大ナ問題ダト存
ジマスガ、御意見ハ如何デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=104
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105・小泉親彦
○小泉國務大臣 私ノ說明ガ少シ足リナカ
ツタカモ知レマセヌガ、阪本君ノ今ノ御話
ノ通リ申上ゲタ積リハナカツタノデアリマス、
只今生產責任ヲ持ツテ、企業體モ、又勤勞者
モ皆責任ヲカツキリ遂行スルヤウニシナケレ
バナラナイ、ソコデ勤勞組織ヲ一ツ生產組織
トシテ行カナケレバナラヌ、ソレハ經營責任
者以下勤勞者一體トナツテ、ソコニ一ツノ勤
勞組織ヲ作ル、是ガ一ツノ生產責任ヲ持ツテ
居ル所ノ組織デナケレバナラナイ、而シテソ
レヲ今ヤル、其ノ生產責任ト云フモノヲ此
ノ組織ガ果シテ行クト云フ上ニ於テハ、第
一義ニナルモノガ、兎ニ角皇國勤勞觀ノ徹
底ト云フコトヲ今日ハツキリシナケレバナ
ラナイ、ソレヲハツキリサセルノニハ、
ツノ楯ノ兩面ガアツテ、片一方ハ其ノ皇國
勤勞觀第一義ノモノヲシツカリヤツテ、コ
チラニ卽チ其ノ勤勞組織體ガ居ル、斯ウ云ウ
コトデ行ク、是ハ全ク一心同體ノモノデア
ル、斯ウ云ウ風ニ私申上ゲタノデアリマス、
隨ヒマシテ產業報國會ニハ、今日何處マデ
モ强力ニ此ノ生產ヲスル所ノ勤勞ノ組織ト
云フモノガ企業體ト一〓ニナツテ行クト云
フ、ソコニ於テ此ノ產報ノ非常ニ强力ナル、
活潑ナル運動ノ出來ルヤウニ產報ヲ守立テ
タイ、斯ウ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=105
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106・阪本勝
○阪本(勝)委員 ドウモソコノ所ガハツキ
リ分ラナイノデスケレドモ、生產組織ト云フ
實體ハ別ニアツテ、產業報國會ハ其ノ實體ニ
對シテ謂ハバ勤勞觀ヲ說〓ニ行ク團體ダト
云フコトニ大臣ノ御考ヘハナルノデハゴザイマ
セヌカ、私ノ言ヒマスノハ、生產組織其ノモ
ノガ產報ノ組織デナケレバナラヌ、斯樣ニ
先程ノ言葉ヲ解シマス、今ノ御言葉デハ
生產ノ組織ト云フ實體ハ別ニアルノダ、產
報ハ勤勞觀ト云フモノヲ其ノ組織ニ對シテ
注入シ〓揚シテ行ク所ノ團體ダ、斯樣ニ仰
シヤイマスノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=106
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107・小泉親彦
○小泉國務大臣 私ノハ、同ジコトニハナ
ルカモ知レマセヌガ、此ノ產業報國會ト云
フモノガ、今日マデ來タ經過カラ、其ノ功
績ニ鑑ミマシテ、此ノ精神運動ヲシツカリ
ヤル、此ノ精神運動ガ徹底スルト、唯勞資
トカ云フヤウナコトデナク、生產ヲ擧ゲテ
行クト云フ其ノ氣持ヲ强ク持タセル、本當
ニ心カラ國ニ仕ヘルノダ、ソシテ生產スル
ノダト云フ一ツノ强力ナル推進力トナツテ、
又此ノ產報ガ何處マデモヤツテ行ク、ソコ
ニ同ジ會員デアルカモ知リマセヌガ、此ノ
生產責任者、勤勞者全部ガ一ツノ組織體、
是ガ生產ノ責任ヲ持ツテ居ル所ノ組織體、
卽チ其ノ間ニオ互ヒニ上下ノ命令系統或ハ
服從關係、或ハ仕事ノ秩序、總テノモノヲ
ソコニ確立シタ所ノ一ツノ組織體トナツテ、
其ノ組織體ガヤツテ行ク、其ノ組織體ハモ
ウヒタ向キニ、何モ構ハヌ、驀ラニ此ノ生
產ニ向ツテ行クノダト云フ所ニ一ツノ企業
體ト其ノ間ニ居ツテ、此ノ生產增强ノ第
一義デアルト思ヒマス所ノ皇國勤勞觀、卽
チ精神的要素ト云フモノヲ强ク玆ニ取上ゲ
タ一ツノ楯ノ反面トナツテ、產報ヲ何處マ
デモ强化シテ行ク、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=107
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108・阪本勝
○阪本(勝)委員 マダ分ラナイノデスガ、大
臣ノ仰シヤイマス組織體、驀ラニヤツテ行
クトアナタノ仰シヤル組織體ハ卽チ產報デ
ハナイカト云フ其ノ點デアリマス、產報ハ
別ニアルノデスカト云フコトヲ聽イテ居リ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=108
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109・小泉親彦
○小泉國務大臣 今日デハ產報シカゴザイ
マセヌガ、私ガ將來考ヘマスルノニ企業體
ノ中ニアル所ノ今ノモノガ一ツノ勤勞ノ行
キ方デゴザイマス、其ノ行キ方デ色々ノ順
序、秩序、或ハ今マデ產報ガ職場ノ秩序、
或ハ職紀ヲ嚴ニシヨウ、又オ互ニ風紀ヲ守
ツテ行カウト云フヤウナコトヲヒタ向キニ
實踐シテ行ク所ノ一ツノ組織ヲ考ヘマシテ、
サウシテソレニサウ云フヤウニヤルノダト
云フコトヲシツカリ入レテ行クノガ今日存
在シテ居ル產報デアル、之ヲ何處マデモ發
達サセテ行キタイ、斯ウ云フ風ニニ考ヘテ
居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=109
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110・阪本勝
○阪本(勝)委員 私關聯質問デスカラ餘リ
時間ヲ拜借スル譯ニ行カヌノデ、此ノ邊デ
止メマスガ、ドウモマダ分ラナイ、依然ト
シテ何處カニ喰違ヒガアルモノト思フノデ
ス、勤勞局長御答ヘ出來マセヌカ、ソコハ
非常ニ重大ナ問題デス、若シモ大臣ノ言ハ
レル生產體其ノモノガ「イクォール」產報デ
アルナラバ、是ハ大變ナコトデス、是デナ
クテハナラヌ、「ヒトラー」ガ生產增强ヲ賴ムト
云フ對象ハ「ドイツ」ノ「アルバイツ·フロン
トレ、日本ニ於テハ生產增强ヲヤツテ吳レト云
フコトハ誰モ產報ニ言ハナイ、產報ハ休ミニ
デモ來テ講演ヲシテ行ク、ソレガ現在ノ產
報デアル、ソレガ今ノヤウニ「イクォール」
產報ダト云フナラバ問題ハ解決スル、是ハ
幾ラ問答シテモ限リガナイカラ次ノ機會ニ
讓リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=110
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111・前田房之助
○前田委員長 關聯シテ河上丈太郞君ニ御
發言ヲ許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=111
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112・河上丈太郎
○河上(丈)委員 私ハ產報ノコトデハナイ
ノデスガ、厚生大臣トハ機會ガゴザイマセ
ヌノデ喜多委員ノ賃金ト物價ノ問題ニ付キ
マシテ、是ハ私ノ私見デアリマシテ答辯ヲ
求メルモノデハナイノデアリマスケレドモ、
將來ノ賃金政策ニ關シテ重要ナコトデアリ
マスカラ私ノ意見ヲ申述ベテ見タイト思ヒ
マス、實ハ私モ、戰爭始マツテ以來物價ノ
方面、賃金ノ方面ニモ關係ヲシテ來タノデ
アリマスガ、實ハ最初ハ賃金ヲ上ゲマスト
價格ガ高クナルト云フコトデ、賃金ハ當時
抑ヘラレタ、所ガ最近ハ賃金ヲ上ゲロト云
フ議論ガ產業人方面カラ出テ來タ、嘗テハ
賃金ヲ抑ヘルト云フコトニ主力ヲ注イダ、
最近ハ產業人ノ方カラ賃金ヲ上ゲロト言フ、
私ハ是ハ非常ニ曲者デアルト思フ、此ノ賃
金ヲ上ゲロト云フ要求ハ何カト云フト、次
ニハ價格ヲ上ゲロト斯ウ云フ所ニ來ル考ヘ
方デアルト思ヒマス、昔ハ賃金ヲ抑ヘロト
云フコトヲ彼等ハ言ツテ居ツタノデスガ、
其ノ邊ガ吾々ハ曲者ニ思ツテ居ル、私ノ考
ヘハ自由主義經濟ニ於テハ、賃金ノ上ガル
コトハ價格ヲ上ゲルト云フコトニナルケレ
ドモ、全體經濟デハ賃金ト價格ヲ打切ル、
ソレガ全體經濟ノ政治力ダト考ヘテ居ル、
ソレヲ賃金ヲ上ゲレバ直グ價格ガ上ガルノ
ダト云フヤウナ考ヘ方デ賃金問題ヲ取扱ハ
レルコトハ、マダ日本ノ全體經濟ノ政治力
ガ貧弱デアル、斯ウ云フ風ニ私ハ見テ居ル
ノデアリマス、「ドイツ」ノ事情ナドヲ見マ
ストヤハリ賃金ヲ上ゲテ居リマス、併シ價
格ヲ上ゲテナイ、打切ツテ居ル、所謂全體
經濟ガ日本ニ何處マデ現實ニ發達シテ行ク
カ否カト云フコトハ、賃金ト價格ト何處マ
デ切斷スルカト云フ力ニアルト考ヘテ居ル、
此ノ生產增强ニ付テハ、勞務者ノ賃金ヲ
上ゲルコトガ必要ダ、今喜多君ノ言ハレ
ル通リ、生活ノ面カラモ生產增强方面カラ
モ上ゲルコトガ必要ダ、上ゲレバ必ズ價格
ガ上ツテ來ルト云フノガ今日ノ常識的ナ考
ヘデアル、議會ニ漲ツテ居ル思想ハ大部分
サウ云フ思想ダト思ツテ居ル、サウ云フ意
味ニ於テ勞働者ノ賃金ガ變リガナイト云フ
コトハ、私ハ非常ニ殘念ダト思ツテ居ル、
此ノ點ニ付テハ商工大臣ニ此ノ委員會デ生
產增强ノ五大品目ノ價格ト勞金ノ問題ニ付
テモ私ハ意見ヲ述べタイト思ツテ居リマ
スケレドモ、其ノ筋道ハドウカト云ヘバ、
今度ノ五大產業ハ重點主義デアル、重點主
義ハ何カト云ヘバ、能率ノ高イ產業ニ集中
スル、能率ノ高イ產業ト云フモノハ、經濟
的ニ言ヘバ、生產費ヲ低下スル、生產費ガ
下ツテ來ルノデ、卽チ價格ガ同ジデ生產費
ガ下レバ利潤ガ多クナル、ダカラ此ノ五大
產業ニ資金、勞力一切ノモノヲ集中スルト
云フコトハ、價格ハ其ノ儘ニシテ置イテモ、
利潤ハ非常ニ多クナツテ來ル、ソコハ勞
働者ノ賃金ヲ上ゲテ行ケト云フノガ私ノ意
見デアル、價格ヲ動カサナクテモ賃金ヲ上
ゲ得ル餘地ガアル、ソレガ今度ノ特例ニ依
ル此ノ法律案ノ一ツノ狙ヒ所デアルト考ヘ
テ居ル、此ノ點ニ付テ商工大臣カラ明確ナ
考ヘヲ承ツテ居ナイノデアリマスケレドモ、
私ハソコガ狙ヒ所デアルト思フ、重點產業
ダカラ價格モ、上ゲロト云フコトダツタラ、
是ハ失敗ダト思フ、ナゼカト云ヘバ、此ノ政
策ハ生產費ガ下ラナイ、所謂重點產業ニ資
金勞力一切ノモノヲ集中スルト云フコト
ハ生產「コスト」ヲ下ゲル、是ハ商工大臣ニ
申上ゲタイケレドモ、今勞務者ニ對シテ色
色皇國勤勞觀ニ依ツテ働ケ〓〓、何ガナク
テモ働ケト言フ、併シ產業人ノ方ニ於テ何
ガ國家ニ御奉公カト言ヘバ、私ハソレハ「コ
スト」ヲ下ゲル、自分ノ生產ノ「コスト」ヲ出
來ルダケ下ゲルト云フコトガ、國家ニ奉公
ノ道ナリト考ヘテ居ル、ソレヲ下ゲラレナ
イ產業人ハ決シテ國家ニ奉公ヲシテ居ナイ
ノダト考ヘル、私ハ其ノ氣力、氣魄ト云フ
モノヲ日本ノ產業人ニ要求シタイ、私ハ昨
年ノ末ニ日本ノ有力ナル產業人ヲ首相官邸
ニ御招キニナリ、更ニ陛下ニ御拜謁ヲ賜
ツタト云フコトニ恐懼シテ居ル、ソレハ何
カト云ヘバ、今日ノ產業人ヲ武士ニシタノ
ダト思ツテ居ル、オ前ハ唯算盤ヲ彈クノデ
ハナイ、腰ニ刀ヲ提ゲサセルト云フ大御心
ダト考ヘテ居ル、私ハ其ノ考ヘハ何カト云
ハハ、ドウシテ國家ニ御奉公スルカ、忠義
スルカト云フナラバ、產業人ハ徹底的ニ產
業合理化ヲシテサウシテ生產費ヲ下ゲル、生
產費ヲ下ゲルコトハ勞働者ノ賃金ヲ削ルコ
トデハナイ、ソンナコトナラ誰デモ出來ル、
サウデハナイ、產業ヲ合理化スルコトニ依
ツテ生產費ヲ下ゲテ、ソコニウント利潤ヲ
得テ、其ノ利潤ハ勞銀ノ方ニ向ケテ行クト
云フコトガ、私ハ全體經濟ノヤリ方ダト考
ヘテ居ル、是ハ私ノ私見デアリマスケレド
モ、厚生省ニ於テ今後ノ賃金對策ニ付テハ
一ツ斯ウ云フ風ニ考ヘテ戴キタイト云フコ
トダケヲ大臣ノ御耳ニ入レテ置キタイト思
ヒマシテ申上ゲタ次第デアリマス、是ハ商
工大臣ニ餘計言ヒタイコトデアリマシテ、
明日私ハ商工大臣ニ言ヒタイト思ヒマスケ
レドモ、サウ云フ考ヘヲ持ツテ居ル、サウ
云フ考ヘガ議會ニ出テ居ナイノヲ私ハ殘念
ニ思ツテ居ル一人デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=112
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113・前田房之助
○前田委員長 本日ハ是ニテ散會致シマス、
明日ハ午前十時ヨリ開會致シマス
午後五時四十分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112037X00819430212&spkNum=113
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