第81回帝国議会　衆議院　農業団体法案外一件委員会　第8号　昭和18年2月8日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  昭和十八年二月八日（月曜日）午前十時十五分開議
  　出席委員左の如し
  　　委員長　東郷實君
  　　理事　白川久雄君　理事　恒松於莵二君
  　　理事　成島勇君　理事　西川貞一君
  　　理事　濱地文平君　理事　山田六郎君
  　　理事　吉田正君
  　　　　青山憲三君　　　赤城宗徳君
  　　　　石坂養平君　　　石坂繁君
  　　　　五十嵐吉藏君　　　大石大君
  　　　　岡田啓治郎君　　　奧久登君
  　　　　越智太兵衞君　　　加藤知正君
  　　　　北勝太郎君　　　小山邦太郎君
  　　　　小平權一君　　　鈴木重次君
  　　　　杉山元治郎君　　　高橋熊次郎君
  　　　　高田耘平君　　　土屋源市君
  　　　　中井亮作君　　　平野力三君
  　　　　松原五百藏君　　　松山常次郎君
  　　　　間宮成吉君　　　森部隆輔君
  　　　　山口左右平君　　　山口馬城次君
  　　　　吉植庄亮君
  　出席國務大臣左の如し
  　　　　　　　　　農林大臣　井野碩哉君
  　出席政府委員左の如し
  　　　　　　　　　厚生次官　武井群嗣君
  　　　　　　内務省國土局長　新居善太郎君
  　　　　　　農林省總務局長　重政誠之君
  　　　　　　農林省水産局長　寺田省一君
  　　　　　　農林省蠶絲局長　井上俊太郎君
  　　　　　　　　農林書記官　藤田巖君
  　　　　━━━━━━━━━━━━━
  本日の會議に上りたる議案左の如し
  　農業團體法案（政府提出）
  　水産業團體法案（政府提出）

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• 001・東郷實

  ○東〓委員長　會議ヲ開キマス-五十嵐
  吉藏君

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• 002・五十嵐吉藏

  ○五十嵐委員　主要食糧ノ增產ヲ中心ト致
  シマシテ、最近米麥其ノ他重要農產物ノ價
  格ノ問題ガ、非常ニ眞劍ニ論議ヲ致サレテ居
  リマスガ、屢〓ノ機會ニ於キマシテ大臣ノ御
  答辯ヲナサレテ居リマス所ノ內容ニ付キマ
  シテ、私ニドウシテモ了解ニ苦シム點ガアリ
  マスノデ、其ノ點ニ付キマシテ御尋ネヲ致
  シタイト思ヒマス、政府ノ低物價政策ノ堅
  持ト云フヤウナコトハ、是ハ無論私ニモ能
  ク分ルノデアリマスガ、私ハ問題ノ重點ハ
  現在ノ狀態ニ於テ、果シテ此ノ生產ト云フ
  モノガ維持出來、又增產ヲスルコトガ出來
  ルカドウカト云フ所ニアルト思フノデアリ
  マス、ソコデ此ノ問題ヲ決スルノニハ、何ト
  言ツテモ農村ノ實態ヲドウ見ルカト云フ見
  方ニ依ツテ決定スルモノデアル、斯ウ考ヘ
  テ居ル譯デアリマス、其ノ一ツノ例ヲ申上
  ゲテ見マスト、最近離農、離村ト云フ問
  題ガ非常ニ論議ヲサレテ居リマス、是等ノ
  問題ヲ取上ゲテ見マシテモ、支那事變ノ勃
  發ヲ致シマシタ當時カラノ傾向ト云フモノ
  ハ、大體ニ於テ農村ノ過剩勞力、或ハ二男
  三男デアルトカ、サウ云フヤウナ人達ガ農
  村ヲ離レルト云フコトガ多カツタノデアリ
  マシテ、其ノコト自體ハ決シテ惡イコトデ
  モナシ、當然重要產業ノ方ニ轉換ヲスルト
  云フコトハ、國ト致シマシテモサウ云フ行
  キ方ハ決シテ惡イトハ思ヒマセヌガ、最近
  ノ私ノ知ル範圍ニ於ケル所ノ傾向ト云フモ
  ノハ、生產ノ責任者ガボツノ〓村ヲ離レル
  ト云フ傾向ニアルコトダト思ヒマス、是ハ非
  常ニ重要ナ事柄トシテ關心ヲ持タナケレバ
  ナラヌ問題デアリマス、其ノ結果ト致シマ
  シテハ、老幼婦女子ノ勞働ガ非常ニ强化サ
  V、サウシテ其ノ結果反當收量ト云フモノ
  ガドウシテモ減退ヲ來シテ居ルコトハ、必然
  的ニサウナルノテアリマシテ、其ノ結果更
  ニ農村ノ人口ノ涸渴ノ因トナル、果シテ斯
  ウ云フヤウナ狀態デ參リマシテ、農村人口
  ヲ四割定有ヲスルト云フコトガ出來ルカドウカ
  ト云フコトニナルダラウト思フノデアリマス、然
  ラバサウ云フ風ナ狀態ニナルノハ一體何處
  ニ最モ大キナ原因ガアルカ、是ハ色々ナ方
  面カラ色々ナ原因ガアラウト思ヒマスガ、
  何ト申シマシテモ、現在ノ農業生活ト云フ
  モノガ經濟的ニ如何ニモ貧困デアルト云フ
  コトガ、最モ大キナ原因デアラウト思フノ
  デアリマス、殊ニ米麥ヲ初メト致シマシテ、
  主要〓糧ヲ作ツテ居ルヤウナ者程非常ニ生
  活ノ狀態ガ貧困デアル、斯ウ云フヤウナ結
  果ガ最モ大キイ原因デアラウト思フノデア
  リマス、然ラバ一體果シテ農村ト云フモノ
  ハ本當ニソレ程苦シイカト云フコトハ、現
  在ノ主要農產物ノ價格ト云フモノニ付キマ
  シテ、生產費ト販賣價格トヲ對照致シマス
  レバ、細カイ數字ハ申上ゲナクテモ、直グ
  ニ是ハ分ルコトデアルト思ヒマス、斯ウ云フ
  コトニナリマスカラ、結局主要食糧、米麥或
  ハ甘藷、馬鈴薯、養蠶、斯ウ云フヤウナ國家
  ノ要請スルモノヲ中心トシテ經營ヲシテ行
  ク農家ハ立行カヌ、斯ウ云フコトニナラウ
  ト思フノデアリマス、サウ云フ結果ト致シマ
  シテハ、農民トスレバ已ムヲ得ズ生活維持
  ノ對策トシテ工場其ノ他ヘ轉出ヲスル、或ハ
  轉出ノ出來ナイ者ハ不急作物デアル所ノ靑
  果物ト云フヤウナモノニ重點ヲ置イテ、辛
  ウジテ生計ヲ立ツテ行クト云フコトハ、是
  ハ非常ニ歎カハシイ現象デハアルガ、蓋シ
  已ムヲ得ナイ狀態デアラウト思ヒマス、元來
  農民ハ申シマスマデモナク、計數的觀念ニ
  ハ非常ニ薄イノデアリマシテ、隨テ生活ニ
  不安ガナケレバ簡單ニ方針ヲ變ヘルト云フ
  ヤウナコトハ、農民ニ限ツテハ極メテ少イト思
  フノデアリマス、玆ニ古來ヨリノ農民魂ガア
  リ、民族ノ源泉タルノ基地デアルト言ハレル所以
  ガアラウト思フノデアリマス、斯ウ云フ風ナ
  觀點カラ致シマシテ、當面ノ問題ト致シマ
  シテハ生產確保、或ハ生產力、農村生產物
  ノ增强、斯ウ云フ問題ヲ解決スル爲ニハ、色
  色手ハアリマセウケレドモ、當面ノ問題ト
  シテハ何ト云ツテモ、私ハ價格ノ問題ガ解
  決ヲシナイ限リニ於テハ、非常ニ困難デア
  ラウ、斯ウ考ヘテ居ルノデアリマス、此ノ點
  ニ付キマシテ屢〓御答辯ガアリマシタガ、ド
  ウモ私了解ニ苦シムノデアリマシテ、農村
  ノ實態ヲ如何ニ御覽ニナツテ居ルカト云フ
  點竝ニ主要食糧農產物ノ價格ノ問題ニ付
  キマシテ、之ヲ御修正ナサル御考ヘガアル
  カドウカト云フ點ニ付テ承リタイト思ヒマ
  ス

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• 003・井野碩哉

  ○井野國務大臣　今日主要食糧ノ生產增强
  ノ問題ガ極メテ重大デアリマシテ、其ノ重
  大デアル國家要請ニ對シマシテ、一面農民
  ニ離村ノ傾向ガアルト云フコトモ、洵ニ政
  府トシテハ考ヘナケレバナラヌ問題ダト思
  ツテ居リマス、併シ離村ノ原因ガ只今御述
  ベノヤウニ、主要〓糧ノ價格問題ニ存スル
  ヤ否ヤト云フコトニナツテ參リマスルト
  私ハ必ズシモサウ思ハナイノデアリマス、
  離村ノ原因ハ固ヨリソコニモ一半ノ理由ガ
  アルト思ヒマスケレドモ、今日離村スル所
  ノ色々ノ事情ヲ調ベテ見マスルト、附近ノ
  鑛山ナリ、工場ト云フモノノ賃金ノ關係デ
  アルトカ、或ハ兵役關係デアルトカ、色々
  ナ關係ガ離村ノ原因ヲ成シテ居ルノデアリ
  マシテ、唯米價ヲ直シタラバソレガスツカ
  リ止マルカト云フト、決シテサウハ思ハナ
  イノデアリマス、結局離村防止ト云フモノ
  ハ農民ガ土ニ愛着ヲ持チ、又土ヲ愛スル農
  民ノ傳統的ノ精神ヲ涵養スルコトガ一番必
  要デアリ、精神的ノ施設ノ上ニ於テ十分徹
  底セシメテ參リマスレバ、サウ云ツタ點ハ
  或ル程度防ゲマスガ、是亦固ヨリ精神的ノ
  施設ノミヲ以テハ全キハ得ナイノデアリマ
  シテ、結局私ハ自作農化スルコトガ一番農
  民ノ離村防止ノ根本的ノ對策デアルト考ヘ
  テ居リマス、自作農ニナレバ農民ハ必ズヤ
  其ノ土地ヲ愛シ、又從來ノ國家要請ノ主要
  作物ノ增强ニ專心致スノデアリマス、今日
  農村カラ離レマスル者ノ多クハ大體小作人
  デアリマス、自作農ト云フモノハ殆ドアリ
  マセヌ、而モ全體的ノ數カラ大觀致シマス
  ルト、今日ノ狀態ハマダ極メテ小部分デア
  リマシテ、其ノ爲ニ國家ノ主要作物ニ對ス
  ル生產增强ガ非常ナ減退ヲスルト云フ風ニ
  ハ私見テ居リマセヌ、デアリマスカラ此ノ
  際ニ於テ、出來ルダケ自作農ノ創設ヲ促進
  シテ、サウシテ農村ノ基本的ナ勞力ヲ農村ニ
  確保シ、且ツ農業經營ノ安定ヲ圖ツテ行ク
  ト云フコトガ一番根本策デアル、斯ウ考へ
  テ居リマス、併シサラバ價格ノ問題ハ放ツ
  テ置クカト云フト、是ハ私度々申上ゲテ居
  ルヤウニ、決シテ放ツテハ置カナイノデア
  リマス、唯今日之ヲ米ニ付テ考ヘテ見マス
  レイクヤハリ生產費ト云フモノガ其ノ價格
  ノ基準ニナリマスル以上、之ヲ十分ニ檢討
  致シマシテ、サウシテ實際ニ生產費ガ引合
  ハヌト云フヤウナ事態ニナリマスレバ、無
  論ソレハ考ヘナケレバナリマセヌガ、今年
  ノ作柄ヲ以テシマスレバ、大體引合ハヌト
  云フ所マデハ行ツテ居ナイト云フ見透シヲ
  持ツテ居ルモノデアリマスルカラ、此ノ際
  ハイヂラヌト云フコトヲ申上ゲテ居ルノデ
  アリマス、麥ノ價格ニ付テ先般其ノ必要性
  ヲ認メマシテ値上ヲ致シマシタノモ、斯ウ
  云ツタ點ニアリマシテ、決シテ政府トシテ
  ハ疎カニハ考ヘテ居ナイト云フ點ヲ、能ク
  御諒解願ヒタイノデアリマス

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• 004・五十嵐吉藏

  ○五十嵐委員　大體御趣旨ノ點ハ分リマシ
  タガ、次ニ段々農村カラハ勞力ガ少クナル、
  斯ウ云フ見地カラ致シマシテ、然ラバ少イ
  勞力デドウスルカト云フ點ニ付キマシテハ、
  是亦色々ナ施策ヲ政府ニ於テ御執リニナツ
  テ居ルヤウデアリマスルガ、結局日本ノ農
  業ト云フモノハ其ノ規模ニ於テ、其ノ經營
  ニ於テ、兎ニ角過小農ノ形態デアル、斯ウ
  云フヤウナ零細ナ、而モ小規模ナ農業形態
  デハ是ハドウシテモイカヌト云フノデ、當
  然ソコニ適正規模農家ノ創設ト云フ問題ガ
  起ル譯デアリマスルガ是ハソレト致シマシ
  テ當面成ベク手ツ取早ク增產ニ資シ、且
  ツ農家生活ノ安定向上ヲ期スル見地カラ致
  シマシテ、現狀ノ農業經營ヲ以テ適正規模農
  業、或ハ大規模經營ノ農業ニ少カラナイヤ
  ウナ生產性ヲ發揮セシメテ、サウシテ生產
  力ヲ擴充シ、農家經營ヲ安定スル所ノ方法
  ト致シマシテハ先ヅ耕地ノ交換分合ト云
  フモノガ今ノ狀態ニ於テハ適切デアル、斯
  ウ考ヘテ居ル譯デアリマスルガ、併シ是ハ
  農民ノ色々思想ノ上ニ於テ、或ハ舊來ノ觀
  念ノ上ニ於テ、單ナル指導デアルトカ、或
  ハ單ナル奬勵デアルトカ云フヤウナコトデ
  ハ到底所期ノ目的ヲ達スルコトハ出來ヌ
  ト思フノデアリマス、從來モ政府ニ於キマ
  シテ、耕地ノ分合ト云フヤウナモノヲ斡旋
  サレ、隨分心配サレテ居リマスガ、アア云
  フヤウナ程度デナシニ、本當ニ現在ノ農村ニ
  於テ適切ナリト云フコトニナリマシタナラ
  バ、私ハ是ハ本當ニ積極的ニ推進シテ行ク
  コトガ大キナ效果ヲ齎ラスノデハナイカ、
  斯ウ考ヘテ居ル譯デアリマスガ、ソレニ付
  キマシテ或ル程度ノ之ヲ强制實施シ得ルヤ
  ウナ制度ヲ御作リニナル御考ヘガアルカド
  ウカ、此ノ點ニ付テ御尋ネ致シマス

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• 005・井野碩哉

  ○井野國務大臣　今日農業經營ヲ合理化ナ
  ラシメ、現在ノ經營ニ於キマシテモ採算上
  有利ニシテ參ル爲ニ、耕地ノ整理分合ト云
  フ問題ガ極メテ重大デアルコトハ御述ベノ
  通リデアリマス、然ラバ之ヲ强制スルヤ否
  ヤト云フ問題デアリマスガ、今日斯ク農民
  ニ對シテ增產ヲ要請シテ居リマス時期ニ、
  非常ニ良イコトデモ、强制シテ却テ農村ノ
  秩序ヲ混亂サセル場合ガアツテハナラナイ
  ト思フノデアリマス、小作地ノ國有ノ如キ
  モ、其ノ意味ニ於テ私ハ遽カニ贊成シナイ
  ノデアリマシテ、自作農創定ト云フコトハ
  良イコトデアリマス、ソコデ成ベク早ク之
  ヲヤル爲ニハ、强制シテモヤレト云フヤウ
  ナ議論モアリマスケレドモ、農村ノ事柄ハ
  ヤハリ餘リ强制ト云フコトデナシニ、積極
  的ニ政府ガ努力ヲ致シテ、出來ルダケ良イ
  ト思フ方向ニ導イテ行クコトガ、今日ノ生
  產增强ヲ必要トスル時期ニハ最モ適切デア
  ル、ヤツテ見テドウシテモ出來ナイ時ニハ、
  ソコニ又其ノ必要性カラ一面强制ト云フコ
  トモ考慮シテ宜イノデハナイカ、マダ試ミ
  テモ居ナイ內ニ、イキナリ法制的ニ强制ヲ
  實施スルト云フコトハ、成ベク避ケテ參リ
  タイ、斯ウ私ハ考ヘテ居リマス

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• 006・五十嵐吉藏

  ○五十嵐委員　大臣ノ御考ヘノ點ハ私モ能
  ク分リマスシ、御尤モデスガ、唯耕地ニ關
  スル問題ニ關シマシテハ、申スマデモナク
  單ナル指導デアルトカ、或ハ奬勵ト云フヤ
  ウナコトデハ中々是ガ運行ハ出來ヌト思フ
  ノデアリマス、ソコデ耕地ノ交換分合ト云
  フモノガ非常ニ重要性ヲ持ツテ居ルト云フ
  コトデアリマスナラバ、私ハ恐ラク今之ヲ
  相當思ヒ切ツテ推進スルコトガ、軈テ其ノ
  曉ニ於テハ必ズヤ相當大キナ效果ヲ齎ラス
  モノト考ヘテ居ルノデアリマス、强制ト云
  フコトニナリマストドノ程度マデ强制ス
  ルカ、非常ニ難カシイ問題ニナリマスガ、
  兎ニ角普通一般ノ指導ダケデハ容易ニ是ハ
  到達スルモノデハナイト考ヘテ居リマスノ
  デ、何等カ具體的ニ積極的ニ指導サレル御
  計畫等ガオアリデアリマセウカ、ソレヲ伺
  ヒマス

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• 007・井野碩哉

  ○井野國務大臣　只今申上ゲマシタ通リ全
  面的ナ强制ハヤリタクナイ、併シ其ノ目的
  ニ向ツテハ國トシテモ出來ルダケ進メタイ
  ト思ツテ居リマスカラ、今囘政府ガ重要施
  策トシテ決定致シマシタ皇國農村確立促進
  施設ト云フモノハ、サウ云ツタ町村ヲ段々
  捉ヘテ行キマシテ、サウシテ其ノ內部ニ於
  ケル耕地ノ整理、交換、分合ヲ積極的ニ指
  導シテヤラセテ參リタイ、必要ガアリマス
  レバ、今日耕地整理組合法其ノ他ノ法律ハ
  多少强制的ナ法制ヲ整ヘテ居リマス、組合
  ヲ作ルトカ致シマスレバ、組合ニ强制加入サ
  セラレマス、入レバ必ズ整理ヲシナケレバ
  ナラヌト云フヤウナ法規モアリマス、是ハ
  今日其ノ手續ノ上ニ於テ面倒デアル、中々
  此ノ法制デハ簡單ニ行カナイ、モツト簡易
  ナ耕地分合ノ法制ガ必要ヂヤナイカト云フ
  議論モ能ク伺ツテ居リマス、デアリマスカ
  ラ皇國農村確立ノ場合ニ色々ヤツテ見マシ
  テ、サウシテ更ニ一層ノ支障ヲ感ズル場合
  ニハサウ云ツタ見地カラノ法制化ニ付テ、
  更ニ考ヘテ見タイト思ツテ居リマス

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• 008・五十嵐吉藏

  ○五十嵐委員　次ニ蠶絲關係ノ問題ニ付テ
  御尋ネヲ致シタイト思ヒマス、現在行ハレ
  テ居リマスル生絲ノ輸出竝ニ國用ノ區別デ
  ゴザイマスルガ、現行ノ蠶絲統制ト云フモ
  ノガ全面的ニ統制ニ乘出サナケレバナラナ
  クナツタ事情ハ、先般モ大臣カラ御話ガア
  リマシタ通リデアリマスルガ、現在ノ情勢
  ハアノ當時ノ事情ト大分ニ變化シテ參リマ
  シテ、モウ既ニ輸出ノ檢査ヲ受ケタ生絲デ
  モ、全部國內ニ消費サレルト云フ情勢ニナ
  リマシタ以上ハ、是ハ先般加藤委員カラモ
  御話ガアリマシタガ、生絲ノ輸出、國用ト
  云フ區別ヲ廢シマシテ、國用一本ニ行ク、
  消費方面カラ考ヘテモ何レノ方面カラ申シ
  テモ、生產、消費ヲ通ジテ極メテ圓滑ニ運
  用スルノニハ、此ノ際思ヒ切ツテ此ノ區別
  ヲ廢スベキデアル、斯ウ考ヘテ居ル譯デア
  リマスガ、併シ一面ニ於キマシテ、尙ホ相
  當ノ輸出モアリ、其ノ他軍需方面ニモ使用
  サレルト云フ譯デアリマシテ、是等ニ對シ
  マシテハ相當高級絲ヲ必要トスル、斯ウ云
  フモノニ對シテハ私ハ或ル特定工場ニ指定
  生產ヲサセレバ宜イノダト考ヘテ居ル譯デ
  アリマス、少クトモ現在ノ制度ニ於テハ色
  色ナ點ニ非常ナ摩擦ヲ生ジ、面白カラヌ現
  象ヲ生ジテ居リマスノデ、速ニ此ノ制度ヲ
  撤廢シテ貰ヒタイト考ヘテ居ル譯デアリマ
  スガ、此ノ點ニ付キマシテ御所見ヲ承リタ
  イ

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• 009・井野碩哉

  ○井野國務大臣　輸出生絲ト國用生絲ノ效
  用竝ニ價値ノ相違ト云フモノハ、「アメリカ」
  輸出當時ト今日トハ全ク違ツテ居リマスコ
  トハ御述べノ通リデアリマス、併シ今日デ
  モ尙ホ相當ニ第三國輸出ト云フモノハアル
  ノデアリマス、又南方方面ニモ輸出ヲ致ス
  餘地ガゴザイマス、又軍需ニモ相當ニ需要
  ガアリマス、隨テ技術ヲ保存セシメテ行ク
  コトガ必要デアルト云フ意味ニ於テ、ヤハ
  リ國用生絲ト違ツタ扱ヒ方ヲ致シテ參ツテ
  來テ居ルノデアリマスガ、併シ今御述べノ
  通リ其ノ用途ト云フモノモ段々ト限定セラ
  レテ來テ居リマスカラ、特殊ノ製絲工場ニ
  ノミ限ツテ之ヲ造ラセテ、其ノ價格等ノ統
  制ヲ致シテ參ルコトモ一ツノヤリ方デアリ
  マス、製絲業全體ニ付キマシテノ機構改革
  ノ問題ガ、今民間側ノ方カラモ起ツテ居ル、
  政府モ是ガ斡旋ニ努メテ居リマス、是等ノ
  機構ノ整備ト相俟チマシテ、其ノ點ハ十分
  考慮シテ參リタイト思ヒマス

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• 010・五十嵐吉藏

  ○五十嵐委員　サウ致シマスト、私ハ只今
  大臣ノ御述べニナリマシタヤウナ輸出、是
  ハ大體ニ於テ數量ガ計畫的ニ、凡ソ事前ニ
  分ルト思フノデアリマスガ、ソレ等ノモノ
  ヲ特定ノ工場ニ於テ製造サセル、少クトモ
  國內用ノモノハ全部國有ト云フコトニ一定
  ヲスル必要ガアルト云フコトヲ申述ベタ譯
  デアリマス、是ハ着々御〓究ニナルト云フ
  コトデアリマスガ、輸出用ヲ技術保存ノ爲
  ニ殘シテ置ク、是モ能ク話ガ分リマスガ、
  少クトモ國內デ使用スルモノダケハ一本ニ
  スル方ガ宜イノダ、斯ウ考ヘテ居ルノデス
  ガ、其ノ點ニ付テノ御考ヘハ如何デゴザイ
  マスカ

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• 011・井野碩哉

  ○井野國務大臣　輸出生絲トシテ技術保存
  ノ見地カラ或ル程度ノ工場ニ能力ニ持タセ
  テ行キタイ、製絲家トシテハ、出來タ物ガ
  全部輸出ニナレバ御話ノ通リ國用ハ一本ニ
  ナルト云フコトガ出來マスガ、出來タ物ヲ
  處分スルコトガ出來ナイト云フコトニナル
  ト、是ハ困リマス、ドウシテモ國用ニ出サ
  ナケレバナラナイ、サウスルト國用ト同ジ
  デアレバ、技術保存ヲスル工場ガサウ云フ
  物ヲ作ルコトヲ厭ガリマス、詰リ其ノ加減
  ヲ全體的ノ統制ガ出來タ時、十分考ヘテ參
  リタイト云フコトヲ申上ゲタノデアリマス

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• 012・五十嵐吉藏

  ○五十嵐委員　私ノ質問ハ終リマシタ

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• 013・東郷實

  ○東郷委員長　高田耘平君

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• 014・高田耘平

  ○高田委員　私ハ質問ト云ヒマスカ、御相
  談ト云ヒマスカ、希望ト云ヒマスカ、色々
  アリマスカラ、御諒承ヲ願ヒマス、先ヅ私
  ハ團體統合ニ觸レタ問題デ質問致シタイト
  思ヒマスガ、其ノ前ニ申上ゲテ置カナケレ
  バナラヌコトハ、ドウモ食糧ノ增產ト云フ
  コトヲ色々ノ方面カラヤツテハ見ルガ、中
  中逆條件ガ多クテ增產ハ至難デ、寧ロ減產
  ヲ防止スルト云フコトガ大切ナヤウニ思ツ
  テ居ルノデアリマシテ、此ノ減產防止ノコ
  トニ付テ色々苦慮致シマシタケレドモ、中
  中妙案ガナイ、ソコデ私ハ大臣ニ二ツノ問
  題ニ付テ御質問申上ゲテ見タイ、其ノ一ツ
  ハ農業團體法ニ關スル問題、其ノ一ツハ所
  謂主要農產物中ノ主ナルモノノ一ツデアル
  米ノ値段ニ付テデアリマス、私ハ此處デ大
  臣ニ之ニ付テノ御答辯ヲ願ヒタイトハ申
  シマセヌ、他ノ方面デ屢〓御答ヘニナツ
  テ居ルヤウデアリマスシ、又大臣ノ意中
  ニドウ云フ御氣持ガアツテモ、ソレヲ此ノ
  議場デ言フコトガドウ云フ影響ヲ現在ノ
  供出米ニ及ボスカト云フコトヲ考ヘマス
  ト、容易ニ御答ヘ出來ナイ事情モ了承致シ
  テ居リマスカラ、私カラハ敢テ御答ヘ願ヒ
  タイトハ申上ゲマセヌガ、唯斯ウ云フコト
  ハ御答ヘニナツテ居リマス、農產物價中、
  比較的均衡ヲ得テ居ラヌモノハ均衡ヲ得ル
  ヤウニスル、是ハ仰シヤル通リ出來ルコト
  デセウ、又ヤツテオイデニナル、ソコデ先
  ヅ米ノ値段ヲ上ゲレバドウナルカト云フ
  ト、是ハ增產ト云フヨリ寧ロ減產ト云フ意
  味ガ强クナルデアラウト思フ、ソコデ參考
  ノ爲ニ申上ゲテ置キタイ事柄ハ減產防止ハ
  ドレカラヤツタラ宜イカト云フコトニ付テ
  ハ、結局値段ヲ上ゲルト云フコトガ一ツノ
  問題デアル、ソコデ同ジ政府ノ中デ大藏省
  ノ專賣局ガ賠償スル、此ノ賠償金ニ付テ、
  ドウ云フ態度ヲ執ツタカト云ヘバ、正確ナ
  數字ハ私此處ニ材料ガアリマセヌカラ申上
  ゲマセヌガ、大體ニ於テ葉煙草ノ賠償金ト
  云フモノハ、日支事變ノ起ル前ノ三倍ニ
  反步當リノ賠償金ガ上ツテ居ルヤウニ思ヒ
  マス、但シ是ハ賠償金ノ基礎タル標本ハ改
  メナイ、唯行政上ノ鑑定ノ手心デ上ゲテ居
  ル、是ハ何ノ爲ニ上ゲルカト云ヘバ、減產防
  止ダト云フ、非常ニ勞力ガ足ラヌノデ、煙
  草ヲ耕作スル人ガ段々減ル、其ノ爲ニ生產
  品ヲ賠償スルト云フ制度デアリマスケレド
  モ、賠償以上ニナツテ居ルト私ハ思フ、作
  ラナイノダカラ已ムヲ得ナイ、要スルニ是
  ハ煙草ガ御承知ノ通リ今度値上ゲヲスレバ、
  十億圓以上ノ收入ニナル、國家ノ必要ナル
  財源デアルカラ、其ノ原料タル葉煙草ヲ耕
  作セシムル爲ニハ減產ヲ防止シナケレバナ
  ラヌ、減產ヲ防止スルニハ賠償金ヲ上ゲル
  ト云フコトカラ出タノデアラウト思ヒマ
  ス、無論御承知ノコトト思フ、斯ウ云フコ
  トヲ同ジ政府內デヤツテ居ルノデアリマス
  カラ、米ノ値段ニ付キマシテモ、消費者ニ
  對スル賣渡價格ヲ上ゲルト云フコトハ或ハ
  出來ナイカモ知レナイ、私個人トシテハ或
  ル程度上ゲテモ宜イト思フガ、輿論ハ出來
  ナイト云フコトニナツテ居リマスカラ、私
  ハ輿論ニ逆ラウコトハ致シマセヌガ、要ス
  ルニ五圓ヲ、奬勵金トシテヤル、ソレヲ或
  ハ十圓ニスルトカ、十五圓ニスルト云フコト
  ハ減產防止ノ方カラヤツテモ宜イト私ダケ
  ハ考ヘマスガ、此處デ大臣ニ彼此レノ御答
  ハ要求致シマセヌ、兎モ角モ財政ヲ掌ツテ
  居ル大藏當局自身ガ、自分ノ直接主管シテ
  居ル所ノ葉煙草ノ賠償金ヲ支拂フノニ、事
  變前ノ殆ド三倍ノ支拂ヲシテ居ル、ソレハ
  減產防止ガ必要デアルカラデアル、米ニ於
  テモ減產防止ガ必要デアルナラバ、價格ヲ
  引上ゲナイデモ生產者ニ對スル奬勵金ハ相
  當程度引上ゲルト云フコトガ、食糧確保上
  缺クベカラザルモノデアルト云フコトヲ玆
  ニ申上ゲテ置キマス、敢テ御答ヘハ要求致
  シマセヌ
  第二ハ食糧增產ニ關スル指導機關ノ徹底
  ノ問題デアリマス、日支事變以來食糧增產
  ニ關スル色々ノ法律ヤ勅令ガ出タ、然レド
  モ中々思ツタ通リノ效果ハナイ、唯アルノ
  ハ臨時農地價格統制令デ、是ガ爲ニ確ニ土
  地ノ値段ハ抑ヘテ居ル、併シソレガ爲ニ自
  作農ガ出來ルコトモ抑ヘテ居ル、善イカ惡
  イカ、ソレガ爲ニ自作農ハ出來マセヌ、故
  ニ一般的ニ自作農ヲ作ルコトヲヤラナイナ
  ラバ、臨時農地價格統制令ニ適當ノ改變ヲ
  加ヘルカ、何カノ方法ヲ以テ、私ハ自作農ノ
  奬勵ヲシナケレバナラヌト存ジマスガ、此
  ノ點ニ付テノ御答ヘモ要求致シマセヌ、小
  作統制令ガアリマスケレドモ、是ハ地主ガ開
  墾耕地改良ヲナサザルヤウニナリ、增產
  上逆效果ガアル、ソコデ又農地管理令、農
  地管理令ハ要スルニ色々ノ目標ガゴザイマ
  スガ、主タル目標ハ耕作シナイ土地ガ澤山
  出來ル、ソレヲ防止スルト云フコトガ農地
  管理令ノ第八條デアリマス、所ガ是ハドウ
  ナツテ居ルカ、此ノ間農政局長ニ調ベテ貰
  ツタ、所ガ臨時農地統制令第八條ニ依ツテ、
  詰リ第八條ガ發動シテ、之ニ依ツテ知事ガ
  命令ヲ下シタモノガ全國ヲ通ジテ今日マデ
  僅カ八件シカナイ、山口縣、千葉縣、京
  都是ダケデアリマス、驚イタモノデアリ
  マン、アレダケノ勅令ヲ作ツテ、第八條、
  第九條等ヲ發動セバ、之ニ依ツテ不耕作地
  ガ出來ナイ譯デアル、所ガ八件シカ適用サ
  レテ居ラナイ、到ル處今日ニ於テハ田畑、
  殊ニ畑地ニ於テ耕作セヌ土地ガ澤山出來テ
  來タ、其ノ反別ハ相當ノモノデアラウト私
  ハ思フ、是ハ農林省ノ統計ガナイヤウデア
  リマス、玆ニドナタカノ要求ニ依ツテ出シタ
  の)
  統計ヲ見ルト、是ハサウ云フモノハ入ツテ
  居ラナイノデ、唯公ニ全然潰地ニナツタモ
  ノハゴザイマスケレドモ、今農民ガ勞力ガ
  足ラナイデ耕作シナイヤウナ土地ガ幾ラト
  云フ調ベハナイ、是ハ相當ノモノニナツテ
  居ルト思フ、要スルニ農地價格令ノ第八條
  ニ依ツテ小作地ノ出來ナイヤウニスルト云
  フ勅令アレドモ實際ハ行ハレテ居ナイ、ソ
  レカラ又農業生產統制令ハ何ノ爲カ、是ハ
  主トシテ農業勞力ヲ確保スルト云フコトガ
  主タル目的デゴザイマセウ、所ガ是モ私ア
  ノ第八條ニ依ツテドウ云フ風ナ效果ヲ奏シ
  タカト思ツテ、是モ一寸農政局長ニ調ベテ
  貰ツタ、詰リ第八條ニ依ツテ申請シタ數ガ
  七万五千七百四十八、承認シタ數ガ七万千
  百三十三、拒否シタ數ガ四千六百十五、斯
  ウ云フ數字ガ上ツテ居リマス、是ハ內地全
  部デハゴザイマセヌデ、二十四府縣ニ付テ
  斯ウ云フ統計ガ出テ居ルノデゴザイマス、
  但シ餘リシツカリシタ數字デハナイト云フ
  コトデゴザイマスガ、兎ニモ角ニモ農業統
  制令ノ第八條ニ依ツテ農業勞力ヲ確保スル
  ト云フコトモ、是モドウモ完全ニヤルコト
  ガ出來ナイト見ルノデアリマス、然ラバ他
  ノ一面カラ見マシテ、一昨年デゴザイマシ
  タカ、三千万圓カ豫備費ヲ御出シヲ願ツテ、
  サウシテ農業ノ生產增進ニ對スル各種施設
  ヲ實行シタ、其ノ折ニ、低位耕作者ノ收穫ヲ
  引上ゲナケレバナラヌト云フコトガアツタ、
  是モ私ノ見ル所ニ依ルトドウモ思フヤウニ
  行ツテ居ナイ、故ニ豫算ヲ政府ガ出シテ見マシ
  テモ、豫算ヲ取ツテ之ヲ農會ニ配付シマシ
  テモ、或ハ又勅令等ヲ作ツテヤツテ見マシ
  テモ、豫期ノ效果ヲ擧ゲルコト頗ル難イ、
  斯ウ云フ實際デアラウト思ヒマス、然ラバ
  ドウシタラ宜イカト云フコトヲ考ヘルト、
  先ヅ以テ色々ノ考ヘモゴザイマセウガ、私
  ノ考ヘタ所デハ、直接第一線ニ立ツテ農業
  指導ノ任ニ當ル者ハドウシテモ農會ノ役員
  デナケレバナラヌ、所ガ役員ハ今ドチラカ
  ト云フト、名譽職的ノ者ガ七分モ八分モゴ
  ザイマシテ、町村農會長トシテ專門的ニ其
  ノ業務ニ携ツテ居ル者ハ極メテ少イノデア
  リマス、唯技術員及ビ書記ガ農會ノ仕事
  ヲシテ居ルノデアリマシテ、全ク心許ナイ
  狀態テアルト云ハナケレバナラヌト思ヒマ
  ス、ソコデ待遇ノ問題ニ及ブノデゴザイマス
  ガ、私ハ待遇ガ必ズシモ絕對的ノモノトハ思
  ヒマセヌ、待遇ガ極メテ菲薄デモ、本當ニ滅
  私奉公、食糧增產ニ邁進シテ居ル町村農會
  長モアルト思ヒマスカラ、待遇ガ絕對的ノ
  モノトハ申シマセヌガ、兎ニモ角ニモ相當
  ノ待遇ヲ與ヘテ、一意專心食糧增產ニ奉公
  サセルダケノ待遇ヲシナケレバ、其ノ目的
  ヲ達成スルコトハ出來ナイデアラウト思ヒ
  マス、ソコデ此ノ場合私ハ待遇問題ニ付テ、
  高田ハ比較スベカラザルモノヲ比較スルト
  仰シヤルカモ知レナイガ、一應申上ゲテ見
  タイト思ヒマス、行政部ノ方ハ兎モ角トシ
  テ民間團體ノ方カラ云フト生產奬勵團體
  ノ方ト配給團體ノ方トニ於テ非常ニ待遇ノ
  差ガアルノデアリマス、是ハ食糧ガ十分デ
  アルト云フ時代テアレバ、其ノ儘ニ捨テテ
  置イテモ宜イト思ヒマスガ、配給モ大切ダ
  ケレドモ、增產ガ何ヨリモ大切デアルト云
  フ時代ニナツタノデアリマスカラ、私ハ生
  產部門ニ對スル各種ノ團體ニ對シテモ、第
  一線ハ勿論ノコト中央團體モソレ以下團
  體モ、相當ノ待遇ヲ改善スル途ヲ講ジナケレ
  バナラヌト思ヒマス、私ハ農業團體法ガ出
  來マシテ產業組合、或ハ農會、畜產組合等
  ガ一ツニナルコトニ依ツテ相當效果ハアル
  ト思ヒマスガ、之ニ依ツテ直チニ食糧增產
  ノ成果ヲ擧ゲ得ルトハ信ジ得ラレマセヌ、
  ソコデ待遇ノ問題ヲ深ク〓究シテ見ルト、
  帝國農會長ハ副會長ノ報酬ヲ合セテ一箇年
  五千圓デアリマス、中央〓糧營〓ノ總裁ハ
  私ノ聞イタ所デハ四万圓ト承ツテ居ル、副
  會長ガ三万圓、帝國農會ノ方ノ會長、副會
  長合セテ五千圓アツテ、而モ是ハ生產團體
  ノ中心點デアル、配給ノ方ハ總裁ト副總裁
  ヲ合セテ、ハツキリシタ數字ハ分リマセヌ
  ガ何デモ六、七万圓ニナリハシナイカ、配給
  團體ノ方ハ政府ガ金ヲ出サヌデモ、支出ノ
  途ガ付クカラ斯ウ云フ待遇ニナツテ居ル、私
  ハ其ノ待遇ガ高イトカ安イトカ言ヒマセヌ、
  高クテモソレダケノ力ガアレバ宜イカモ
  知レマセヌ、ソレハ結構デス、ソレナラバ
  最モ必要ナ生產團體ノ中心點ノ待遇ガ會長、
  副會長合セテ五千圓、是デ宜イデセウカ、
  是ハ農會ハ金ガナイカラ仕方ガナイ、仕方
  ガナイト云ツテ其ノ儘デ宜イト云フコトハ
  出來マセヌ、又縣農會長ハ何モ報酬ヲ取ラナ
  ケレバ生活ニ困ルト云フ人ハ居ナイ、副會長モ
  サウ云フ人ハ居ナイガヤハリ相當ノ待遇ヲ
  シナケレバ、縣農會長ニ本當ニ食糧ガ困ル
  ト云フ此ノ際ニ一意專心農會ノ事務所ニ出
  テ、縣農會ノ事務ヲ指導シテ貰ヒタイノデス
  ガ、ヤツテ居ラヌ、ヤツテ居ラヌト云ツ
  テモ私共彼レ此レ言フ譯ニ參ラナイ、縣
  食糧營團ト縣農會長ノ報酬-是モ最近帝
  國農會ニ調ベテ戴イタノデスケレドモ、多
  少ノ誤リガナイトハ言ヒマセヌガ、大體誤リ
  ガナイト思ヒマス、道府縣農會長ノ報酬及
  ビ手當ガドウナツテ居ルカト云ヘバ北海道
  ノ四千五百圓ヲ頭トシ、第二ハ兵庫縣ノ三
  千圓、第三ハ滋賀ノ二千圓、第四ガ愛媛ノ
  千八百圓デゴザイマス、山形ノ千八百圓モ
  ゴザイマス、アトハ五百圓、六百圓、二百
  圓百五十圓ニナツテ居リマス、是ハ私ハ
  何モ報酬手當ノ多イ所ノ農會カ必ズ良イト
  ハ申シマセヌガ、大體ニ於テ北海道ノ農會長
  ノ働キ、或ハ兵庫縣、愛媛縣、滋賀縣ハマ
  ア私ノ見ル所デハ相當御働キニナツテ居ツ
  テ效果ガ現ハレテ居ルト信ジテ居ル、副會
  長ノ報酬ハ彼レ此レ申シマセヌガ、ヤハリ
  ソンナ程度デアリマシテ、五、六縣ハ相當ノ
  待遇ヲシテ居ルケレドモ、アトハ名譽職ニ
  對スル一種ノ賞與的ノモノデアリマス、是
  ヂヤ仕事ガ出來ナイノガ當リ前デアル、郡
  農會長ニ至ツテモ其ノ通リ、町村農會長ハ
  ドウカト云フト、ドウモ急ニ調ベタモノデ多
  少ノ誤リガアルカモ知レマセヌ、サウシテ
  マダ調査ノ到着シナイ所モアリマスカラ〓
  要ニ過ギマセヌガ、常勤ノ專任ノ數ガ七百
  五十四人、常勤兼任ト云フノガ二千百八十
  八人アリマス、其ノ中ノ俸給ノ最モ高イノ
  ガ九百圓以上ノモアリマスケレドモ、先
  ヅ以テ五十五圓トカ、二十五圓トカ、三十
  圓トカ云フモノガ多イ、又常勤ニアラザル
  町村農會長ガ八千人以上アリ、是ハ名譽職、
  サウシテ一箇年ニ二十圓トカ三十圓トカ、
  ホンノ形バカリ名バカリデス、斯ウ云フ狀
  態デハドウシテモ食糧增產ノ目的ヲ達スル
  コトガ出來ナイヤウニ思フノデアリマス、
  卽チ農地管理令ヲ發布シテモ實際效果ガナ
  イ、農業生產統制令ヲヤツテモ效果ガナイ、
  低位耕作者ノ引上ヲヤツテモ實際ニ效果ガ
  ナイ、斯ウ云フコトニナルト思フノデアリマ
  ス、ソコデ今度ハ農業團體ガ出來マシテ、
  經濟的ニ力ガアル產業組合、經濟的ニ極メ
  テ菲薄ナル農會ヲ一ツニスルノデアリマスカラ、
  餘力ハ出來マセウケレドモ、何トカシテ增產ノ
  指導ニ當ル中心ノ役員-帝國農會ナリ縣
  農會ナリ、主會トナルベキ郡農會、町村農會
  ナリノ役員ニ相當ノ報酬ナリ手當ナリヲ支
  拂ツテ、一意專心食糧增產ニ邁進セシムル
  ト云フコトデナケレバナラヌト思フノデゴ
  ザイマス、之ニ付テドウ云フ御所見ガゴザ
  イマスカ、私ノ意見ニハ無論御同意下サル
  トハ存ジマスガ、然ラバ其ノ金ヲ何處カラ
  出サセルカト云フコトニ付テノ私ノ決マツ
  タ意見モゴザイマセヌガ、農會法ハ廢止サ
  レルノデ、勅令ニ依ツテ農會法中ニ規定サ
  レタ經費ノ分賦ニ對スル程度バ何カモ決マ
  ルコトト思ヒマスガ、是ハ私ハ分リマセヌ
  ドウ云フ程度デアルカト云フコトハ分リマセ
  ヌガ、兎ニ角食糧增產ニ努メナケレバナラヌ
  役員ガ、今日マデノ如キ菲薄ナル待遇デ、
  名譽職デハ、到底思フヤウナ仕事ハ出來マ
  セヌカラ、一意專心食糧增產ニ邁進セシム
  ル役員ヲ作ルコトガ此ノ際急務デアルト思
  ヒマス、之ニ對シテ大臣ハ無論御同意ト思
  ヒマスガ、然ラバ其ノ金ガ、私ノ考ヘデハ
  若シ團體デ力ノナイ場合ニ於テハ政府ガ之
  ニ對シテ相當ノ金ヲ出シテ、サウシテ一意
  專心食糧增產ニ邁進セシムルコトガ必要ト
  思ヒマスガ、之ニ付テノ御意見ハ如何デゴ
  ザイマセウカ、ドウモ是モ或ハ增產方策ト
  シテ不十分カモ知レマセヌガ、色々考へテ
  見ルニ、是ヨリナイノデスカラ、ソレデコ
  ンナコトヲ考ヘタノデアリマスカラ、御所
  見ヲ伺ツテ見タイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=14

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• 015・井野碩哉

  ○井野國務大臣　高田サンノ御說何レモ私
  共尤モニ拜聽シタノデアリマス、先ヅ私ノ
  答辯ハ御要求ニナリマセヌデシタガ、初メ
  ノ問題デ一寸申上ゲテ置キタイコトハ、農
  產物ノ價格ノ問題ニ付キマシテ、政府部內
  ニ於テ大藏省ハ葉煙草等ニ付テノ賠償金ハ
  勝手ニ自分等ノ方デヤレル、農林省所管ノ
  問題ハ中々步調ヲ合セナイデ居ルノダガ、
  サウ云フ點ヲ一ツ合セタラドウカト云フ御
  話、是ハイツカモ高田サンガ此ノ委員會デ
  私ニ仰シヤツタコトガゴザイマス、ソレデ
  其ノ事ニ付キマシテハ、私モ過般二重米價
  制度ヲ採リマシタ時ニ、大藏省ニソレヲ材
  料ニ相當强ク突込ンダコトモアリマス、大
  藏省モサウ云ツタ點デ色々考ヘサセラレタ
  コトモアリマス、今後ソレ等トノ權衡ハ色
  色考ヘマシテ、私トシテモ出來ルダケノ善
  處ハシテ參リタイト思ヒマス、サウ云フ沿革
  ガゴザイマスカラ一寸申上ゲタノデアリマ
  ス
  ソレカラ色々ノ增產施設、積極的、消極
  的ノ問題ニ付テ豫算ヲ取ツタリ法令ヲ作ツ
  タリシテモ、思フヤウニ行カヌヂヤナイカ
  ト云フ御說、是モ固ヨリ斯ウ云フ時局デゴ
  ザイマスカラ、其ノ法律自體、豫算自體デ
  非常ナ大キナ效果ガ擧ルト云フ所マデハ私
  モ至ツテ居ナイト思ヒマス、併シ單ニ統計
  ニ現ハレタルコトダケデナシニ、色々ノ作用
  ノアルコトハ、私モ色々各方面カラ調査モ
  シ承知モシテ居ルノデアリマス、例ヘバ生產
  統制令ニ付キマシテモ、或ル基本農家ノ勞
  力確保ニ付テ、其ノ法令ニ依ラズシテ勞力
  ノ逃ゲル話モ聞イテ居リマスガ、併シ又一
  面ニ於テ其ノ法令ノ爲ニ相當ニ出ヨウトシ
  テ出ラレナイト云フ事例モ聞イテ居リマス
  又農地管理令等ニ付キマシテモ、所謂耕地
  ノ場合ニ於テ、其ノ法令ノ效果ハ數字的ニ
  ハ許可トカサウ云ツタモノニハ現ハレテ居
  リマセヌガ、相當實際ノ效果ヲ現ハシテ居
  ルヤウデアリマス、統計的ニ見マスト、例
  ノ潰レ地等ノ統計ハ無論ソレニハ入リマセ
  ヌガ、昨年ノ耕作面積ト云フ積極的方面ノ
  統計カラ見マスト、餘リ一昨年ニ比ベテ減
  ツテ居リマセヌ、寧ロ一昨年ハ早害ノ爲ニ
  相當ノ耕作不能ニナツタ面積等ガアリマシ
  テ、寧ロ昨年ノ方ガ增加シテ居ルヤウニ
  考ヘマス、デアリマスカラ其ノ收穫高カラ
  判斷致シマシテモ、サウ御心配ノ程ハ統計
  的ニハ減ツテ居ナイト思ヒマス、地方的分
  布的ニ見マスト、相當ノ事態ガアルト思ヒ
  マスガ、大局ノ觀察カラ見マスト、サウ悲
  觀的ニ見ナクテモ宜イノデハナイカト思ヒ
  マス、唯併シ今御說ノ如ク、凡ユル方面カ
  ラ今日ハ增產ヲ高調シテ行カナケレバナラ
  ナイノデアリマスカラ、苟クモ支障トナル
  ベキ事柄ハ出來ルダケ排除シテ行クト云フ
  コトハ當然ノ歸結デアルト考ヘマス、新
  農業團體ガ今度確立致シマスレバ、之ニ基
  イテ生產增强ノ色々ノ手段ヲ、此ノ團體ヲ
  通ジテ講ジテ參リタイトモ考ヘテ居リマス
  ノデ、是ガ會長ナリ或ハ役職員ノ待遇問題
  ト云フコトモ、相當ニ私ハ從來ト違ツタ觀
  點カラ考ヘテ行カナケレバナラヌト思ツテ居
  リマス、唯今日配給機關ニ於ケル國策會社
  乃至統制機關ノ役職員ノ俸給ガ中々問題ニ
  ナツテ居リマス、併シ是モヤハリ良イ人ヲ
  思フ存分働カセルト云フ爲ニハ、私ハ相當
  ノ報酬ヲ出サナイト、今高田サンノ御話ノ
  如ク良イ人ハ來ナイノデハナイカト云フ所
  カラ、色々ノ非難モアリマスガ、サウ無暗
  ニ之ヲ下ゲ得ナイ實情ニアルノデアリマス、
  農林關係ノ配給會社、國策會社ハ商工關係
  カラ見マスト寧ロ非常ニ低イノデアリマシ
  テ、是ハ農村ト云フモノヲ背景ニ持ツテ居
  リマス配給機關デアリマスカラ當然ダト思
  ツテ居リマス、ソレニシマシテモヤハリ配
  給機關ニ從事スル人ハ、從來ノ商業關係ノ
  方ノ人ヲ引張ツテ來ルノデアリマスカラ、
  勢ヒ從來ノ報酬ト云フモノガ基準ニナリマ
  スノデ、其ノ點ガ農業ノ生產團體ト比ベテ
  見マスト高イト云フコトハ、是ハ沿革的ニ
  ハ已ムヲ得ナイノデハナイカト思フノデア
  リマス、殊ニ食糧營團ノ人選等ニ付キマシ
  テハ、先般此ノ委員會デ高田サンカラ、其
  ノ點ニ付テ十分注意シテ貰ヒタイト云フ御
  希望モアリ、私トシテモ其ノ總裁以下ノ人
  選ニ付キマシテハ、相當愼重ニ考慮致シマ
  シテ、良イ人ヲ持ツテ來タイト考ヘテ居リ
  マス、ソレニハヤハリ或ル程度ノ報酬、從
  來取ツテ居ルモノヨリ減ラスト云フ譯ニ行
  カヌト云フコトカラ、ソレニ相當ノ報酬ヲ
  出シテ居リマスガ、是ガ偶〓農業團體ノ方ノ現
  在ノ會長、副會長ノ報酬ト比ベテ見マスト高イ
  ト云フコトハ、是ハ御說ノ通リデアリマス、
  寧ロ農業團體ノ會長ナリ副會長ノ俸給ガ安
  過ギルト云フコトハ、私自身モ感ズルノデ
  アリマス、併シ又農村方面ノ聲トシテハ
  自分等ガ働イテ出來タモノヲ扱ツテ貰フト
  カ、又生產ノ奬勵指導ヲシテ貰フ團體ノ會
  長ハ、餘リ俸給ヲ多ク出シテハイカント云
  フ論モ中々ゴザイマスノデ、寧ロ高田サン
  ノヤウナ御意見ガ農村方面ニ强ク出テ參リ
  マスレバ、相當良イ人ガナツテ參リマスシ、
  其ノ方ガ私ハ本當ニ農業團體ノ活動ニハ宜
  イト思フノデアリマスケレドモ、兎角逆ナ
  意見モ相當ニアルヤウデアリマス、併シ是
  等ノ意見モ吾々トシマシテハ色々勘案致シ
  マシテ、サウシテ今度ノ農業新團體ノ會長、
  副會長等ノ役職員ノ俸給等ヲ決メテ參リタ
  イト思ツテ居リマス、然ラバ今ヨリ假ニ優
  遇スルトシテ、財源ヲドウスルカト云フ御
  話デアリマスガ、是モ農村方面ノ方々ガ高
  田サンノヤウナ御意見デアリマスレバ、私
  ハ經費ノ分賦ノ場合ニ於キマシテモ、相當
  ノコトハ出來ルノテハナイカ、二、三人ノ
  職員ノ俸給ヲ分賦金ニシテ見マスレバ、極
  メテ僅カニナルノデアリマスカラ、サウ云フ方
  面カラモ勿論財源ハ出マスシ、又府縣以下ノ團
  體ニ於キマシテハ各種團體ガ統合サレマスカ
  ラ、其ノ經費ト云フモノハ從來ヨリ餘程
  節約サレルコトニナルト思ヒマス、殊
  人員等モ餘程陶汰サレルコトニナリマスカ
  ラ、一人ノ人ニ從來ヨリ相當ノ報酬ヲ出シ
  得ルト云フコトモ容易ニナツテ來ルノデハ
  ナイカト思ヒマス、併シ必要ガアレバ國家
  ノ助成金モサウ云ツタ點カラ又別ニ考ヘテ
  參リマスレバ、現在ノ豫算ト云フモノハ色
  色ナ形デ出テ居リマスカラ、サウ云フ點モ
  考慮ニ加ヘラレルト思フノデアリマス、兎
  ニ角結論ト致シマシテハ私ハ高田サンノ御
  意見ニ贊成デアル、サウ進ムベキガ今後ノ
  新農業團體ヲ指導シテ參ルニ適當デアルト
  考ヘマス、配給機關ノ役職員ノ俸給等トモ
  能ク勘案致シマシテ、適當ニ善處シテ參リ
  タイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=15

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• 016・高田耘平

  ○高田委員　今私ノ申スヤウナ意見ガ多ク
  ナレバ宜イダラウト云フコトデアリマスガ、
  ソレハ其ノ通リデアリマス、私ハ年々帝國
  農會ノ總會デモ言フノデスガ、帝國農會ノ
  費用ガ少クテ何モ出來ヌヂヤナイカ、單ニ
  五百万ノ農家ガ十錢ヅヅ出セバ五十万圓ニ
  ナルノデスガ、ドウモ私ハ言ハセレバ各府
  縣ノ農會長諸君方ハ弱インデスネ、ソレダ
  カラ斯ウ云フヤウナコトニナツテ居ル、如
  何ニ酒井サンガ金持デモ、副會長ガ地主サ
  ンデモ、マサカ五千圓デ年中農會デ働イテ
  居ルト云フコトハ出來マセヌカラ、デスカ
  ラ何トカシテ一万圓ナリ二万圓ナリヤラナ
  ケレバナラヌトシテモ、實際ハ中々纏マラ
  ナイ、縣ノ方モ其ノ通リ遠慮シマス、先程
  ドナタデシタカ、縣ノ食糧營團ハ五千圓以
  上ト云フヤウナ御話ガアリマシタガ、所ガ
  縣農會長ハ、サツキ言ツタ通リ、北海道ハ
  四千五百圓デ、アトハ五百圓、六百圓デア
  ル、デスカラ、五百圓六百圓ノ農會長ニ仕
  事シテ吳レト云フコトモ無理ナンデスカラ、
  結局ソチコチ兼務シテ、一週間ニ一遍モ顏ヲ
  出セバ宜イ位ニナツテ居ルヤウデス、是ヂヤ
  迚モイカヌデス、ソコデ相當ノ報酬ヤ手當
  ヲ今度出來ル團體ノ役員ニヤル、或ハ又町
  村ノ農業團體ニ一意專心食糧增產ニ邁進出
  來ルダケノコトヲシテヤル、ソコデ農民ガ
  自覺スレバ何デモナイ、但シ農會等ノ分賦
  金ヲ今後規定スル場合ニ於テ、相當緩メテ、
  是等ノ人々ノ待遇ヲ相當出來ルダケノ金額
  ヲ賦課スベキ制度ニ御作リニナレバ出來マ
  セウガ、ソレハ又負擔ガ重クナツテ來ルノ
  デハナイカ、ソコハ私ハツキリ分リマセヌ、
  ソコデ先程御話ノヤウニ、經濟團體ト指導
  團體ガ一ツニナリマスカラ、經費ノ餘剩モ
  出來マセウ、ケレドモ何レノ下部團體モ必
  ズサウナルトハ私ニハ見ラレマセヌ、貧弱
  ナル農村ニ於テハ產業組合ト農會ト合體致
  シマシタ所ガ、其ノ會長ニ對シ或ハ指導ニ
  從事スル役員ニ對シ(指導ノ爲メ專務理事ヲ置
  ク場合ニ於テ其ノ者ニ對シ)七百圓モ八百圓
  モ拂ヘルダケノ力ガアルカドウカ分リマセヌ
  ガ、兎ニモ角ニモ私ノ申上ゲタコトニ御共
  鳴下サルナラバ、今度農業團體ガ出來マシ
  テ、之ヲ統制スル場合ニ於キマシテハ、此
  ノ指導團體ニ相當ノ力ヲ付ケル爲ニ、若シ
  此ノ團體ニ金ガナケレバ、實力ガナケレバ
  ナイヤウニ、國家ノ施設、國家ノ豫算ヲ以
  テ支給スルト云フ位ノコトハ此ノ際ヤルノ
  ガ必要デハナイカト思フ、常ナラバソンナ
  コトハ出來マセヌ、併シナガラ今ハ〓糧增
  產ガ何ヨリモ必要ナル國家ノ政策デアルト
  スレバ、思ヒ切ツテ國家ガ五百万圓ヤ六百
  万圓ノ金ヲ出シテモ宜イノデハナイカト思
  フ、又一昨年豫備金ヨリ支出セシ三千万圓
  ノ中カラ共勵員ニ出シテ居ル、是ハ場所ニ
  依ツテ違フカモ知レマセヌガ、一町村ニ二
  三十人ヅツアルガ、アレハ一人ニ二十圓ヤ
  ソコラデハ餘リ效果ガナイ、中ニハ働ク者
  モアルガ、大體ニ於テ共勵員ト云フモノハ
  只二十圓ヅツ貰フヤウナ者デアリマスカラ、
  アア云フヤウナ者ハ相當整理スル必要ガア
  ラウト思フ、先ヅ以テ大體ニ於テ私ノ意見
  ニ御贊成下サツタ以上ニハ、先刻申上ゲタ
  ヤウニ各種團體ノ役員ヲ相當ノ手當ヲ以テ、
  一意專心食糧增產ニ邁進セシムルヤウナ方
  法ヲ講ゼラレタイ、斯ウ云フコトデゴザイ
  マス
  次ニ條文ノ問題デアリマスガ、是モドナ
  タカラカ質疑ガアツタト思ヒマスガ、第二
  十九條ノ「會長ハ總會ニ於テ推薦シタル者ニ
  就キ市町村農業會ニ在リテハ市町村長(町村
  長ニ準ズベキモノヲ含ム)ノ意見ヲ徵シ地方
  長官、道府縣農業會ニ在リテハ地方長官ノ
  推薦ニ依リ主務大臣之ヲ命ズ」是デアリマス、
  市町村農業會ノ會長ヲ知事ガ任命スル場合
  ニ於テ、市町村長ノ意見ヲ徵スルト云フ
  コトハドウ云フ必要カラ出タノデゴザイ
  マセウカ、是ハ餘程考ヘモノデゴザイマ
  ス、ナゼ考ヘモノデアルカト云フト、今
  度提出セラレタル改正町村制ノ第七十二條
  ノ二ニ「町村長ハ町村內ニ於ケル各種施策
  ノ綜合的運營ヲ圖ル爲必要ト認ムルトキハ
  町村內ノ團體等ニ對シ必要ナル指示ヲ爲ス
  コトヲ得」トアル、結局團體長ヲ町村長ノ監
  督下ニ置ク、斯ウ云フ思想デアルト思フ、
  ソレデ是ハ實ハ內務大臣ニ聽ク方ガ宜イカ
  知レマセヌガ、此ノ間本會議デノ農林大臣
  ノ農業團體法ニ於ケル御答辯デハ、內務大
  臣ト農業團體ノ運營ノ問題ニ付テハ總テヨ
  ク相談ガ出來テ居ルカラト云フノデ、決シ
  テ意見ノ相違スルヤウナコトハナイト云フ
  御話デアリマシタガ、町村制改正案ノ第七
  十二條ノ「必要ナル指示ヲ爲スコトヲ得」是
  ガ問題デス、一昨日デスカ森山法制局長官ガ
  行政特例ニ關スル法律案ノ委員會デ、指示
  ト云フコトハ指揮命令デアルト說明シテ居
  リマス、サウスルト町村長ガ「各種施策ノ綜
  合的運營」ト云フコトハドウ云フコトヲ言フ
  カハツキリ分リマセヌガ、兎ニ角團體長ニ
  對シテ指揮命令ガ出來ルト云フコトデス、
  同時ニ團體法ノ第二十九條ニ、農業團體長
  ヲ命ズル時ニハ市町村長ノ意見ヲ徴ス、斯
  ウ云フコトデ、全然農業團體長ト云フモノ
  ガ町村長ノ指揮命令ヲ受ケルヤウニナル、
  指揮命令ヲ受ケシムル爲ニハ町村長ノ意見
  ヲ重ンジテ任命スル、斯ウ云フノデスガ、
  是ハ餘程考ヘモノデス、何故考ヘモノデア
  ルカト云ヘバ、地方ニ依ツテ事情ハ違ヒマ
  セウガ、町村長ニナル適當ナ人ト農業團體
  長ニナル適當ナ人トハ人柄ガ違フノガ多イ、
  兼ネル場合モアリマスケレドモ、兼ネル場
  合ハ餘程其ノ村ノ有力ナ者デ、多クノ場合
  ニ於テ、町村長トハナレルガ、其ノ人ガ財
  政的其ノ他信用ナキ爲ニ農業團體長ニハナ
  リ得ナイ、農業團體長ニハ經濟上ノ信用ハ
  アルガ、行政的手腕ガナイカラ町村長ニナ
  リ得ナイト云フ人ガ相當アル、之ヲ見テ町
  村長ト云フモノハ農業團體長ノ上位-上
  位ト云フ言葉ハ當ラヌガ、法律的ニ言ヘバ
  上位デアル、サウ云フコトニナルト農業團
  體長ト云フモノガ良イ人ヲ得ルコトガ出來
  ナクナルノデハナイカト私ハ思フ、何ノ爲
  ニ町村長ノ意見ヲ聽カナケレバ知事ハ農業
  團體長ノ任命ガ出來ナイヤウナ規定ヲ作ツ
  タノデゴザイマスカ、是ハ運用ノ如何ニ依
  ツテハ非常ニ弊害ガアルト思ヒマスカラ、
  其ノ點ヲ伺ツテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=16

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• 017・井野碩哉

  ○井野國務大臣　農業團體ヲ統合致シマス
  際今日ニ於キマシテモ、市町村內ニ於ケ
  ル各種農業團體ノ運營ニ當リマシテハ、固
  ヨリ農林省ノ指導方針モ、町村ヲ中心ニシ
  テ、圓滿ニ地方自治ヲ害サナイヤウニ指導
  シテ參ツテ來テ居リマス、併シ是ガ統合致
  スコトニナリマスト、一層團體トシテノ性
  格ガハツキリシテ參リマスシ、又團體長ノ
  責任モ重クナル、又能力モ擴大サレテ來ル
  譯デアリマスカラ、是ガ地方自治ト牴觸致
  シタリ、又確執致スヤウナコトガアリマシ
  テハ、是ハモウ寧ロ地方自治ノ上ニ非常ナ
  大キナ弊害ヲ貽ス譯デアリマス、·市町村ト
  云フモノハ今日地方自治團體トシテノ最下
  部機關デアリマスシ、ヤハリ市町村ト云フ
  モノヲ中心トシテ各種ノ市町村內ノ團體ト
  云フモノハ相提携シ相助ケ合ツテ、サウシ
  テ町村ノ治績ヲ擧ゲテ行クト云フコトガ一
  番大切デアリマス、デアリマスカラ團體法
  ヲ制定致シマス時ニモ、先般衆議院ノ建議
  案ニ於キマシテモ、地方自治トノ關係ヲ十
  分ニ考慮シテ團體法ヲ作リ、サウシテ速ニ
  提出シテ貰ヒタイト云フ御希望モアツタヤ
  ウニ、此ノ問題ハ農林省ト內務省トノ關係
  ニ於キマシテ、十分ニ其ノ連繫ヲ圖ルコト
  ニ付テノ具體的ナ事項ヲ協議シ合ツタノデ
  アリマス、其ノ結果法文ノ上ニ現ハレテ參リ
  マシタノガ、今御示シノ二點デアリマス、
  一點ハ此ノ法律ノ第二十九條ニ於キマシテ、
  市町村長ノ意見ヲ徵シテ地方長官ガ任命ス
  ル、卽チ團體長ニ對シテ市町村長ト極メテ
  仲好クヤツテ行ケル人ヲ選ブコトガ一番適
  切ダ、全然市町村長ト緊密ナル關係ノ保テ
  ナイ人デハ面白クアリマセヌカラ、サウ云
  ツタヤウナ意味デ先ヅ意見ヲ聽イテ、サウ
  シテ地方長官ガ任命スル、此ノ點ニ於テ團
  體長ト市町村長トハ極メテ圓滿ニ其ノ事務
  ヲ遂行出來ルヤウニナル譯デアリマス、又
  モウ一ツハ地方制度ノ方ノ法律案ノ方ニ、
  市町村長ノ指示權ヲ認メタ、是ハ何モ農業
  團體ダケデハアリマセヌ、市町村內ニ存ス
  ル婦人會デアリマストカ、其ノ他水利組合
  デアリマストカ、凡ユル團體ニ對スル指示
  權ヲ認メタノデアリマス、是ハヤハリ地方
  自治ノ上ニ於キマシテ、市町村長ヲ其ノ市
  町村內ノ總テノ仕事ニ付テ纏メテ行ク立場
  ニ置クコトガ宜イ、何モ身分的ニ於テ上ニ
  立ツト云フ意味デハナイノデアリマス、仕
  事ノ上ニ於テ纏メテ行クノニ市町村長ヲ中
  心ニシテ行クコトガ宜シイ、サウシテソコ
  ニ何カ委員會デモ作リマシテ、各種ノ團體
  長ガ委員トナツテ、市町村長ガ其ノ委員長
  トナツテ纏メテ行クト云フコトガ、地方自
  治ノ上ニ一番圓滿ナル運行ヲ見ルモノデア
  ルト云フ見地カラ、其ノ規定ヲ入レルコトニ
  致シタノガ、是ガ農林內務ノ間ニ事務的ニ
  話ガ纏マリサウシテ法文ニサレタ問題デ
  アリマス、デアリマスカラ此ノ一一點ト云フ
  モノハ、農業團體ト地方自治機關デアル市
  町村トノ關係ヲ今申上ゲマシタヤウナ觀點
  カラ緊密化スル、サウシテ今日ノ生產力增
  强ニ一體トナツテ行クト云フ意味ニ於テノ
  規定ト御解釋ヲ願ヒタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=17

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• 018・高田耘平

  ○高田委員　私ハソレニ付テハ考へガアリ
  マスケレドモ、意見ニナリマスカラ申シマ
  セヌ、兎ニ角モ農業團體長ト云フモノハ
  寧ロ市町村長ヨリモ總テノ點ニ於テ優秀ナ
  人ガナツテ居ルコトガ多イノデアリマス、
  所ガ之ヲ町村長ニ隷屬サセルト云フヤウナ
  風ニ法律的ニスルト云フコトハ、頗ル考ヘ
  モノト思ヒマス、併シ此處デ彼此レ意見ヲ
  申上ゲマセヌ
  私ハモウ一ツ簡單ニ伺ツテ見タイコトガ
  アル、ソレハ農地管理令ノ運用ノ問題、モ
  ウ大體大臣モ御承知ト思ヒマスガ、何トカ
  農地管理令ノ運用ヲモウ少シ强クシテ、サ
  ウシテ收穫量ノ少イモノヲ收穫量ノ多イモ
  ノニ轉作セシメル方法ハ執レナイモノカ、
  例ヘバ陸稻ノヤウナモノ、是ハ畑地ノミノ
  方面ニ於テハ或ル程度仕方ガナイガ、サウ
  デナイ方面ニ於テモ相當陸稻ヲ作ツテ居ル
  ノデ、是ハ土地ノ狀況ニ依ルコトデ一般的
  ニハ申セマセヌガ、土地ニ依ツテハ陸稻ヲ
  作ルコトヲ止メサシテ、甘諸ヲ作ラセル方
  ガ、食糧農產物ノ量ニ於テ頗ル多イ、斯ウ
  云フコトハ思切ツテ轉作セシメル方ガ宜イ
  ト思フ、是ハ農地管理令ニ依ツテ適當ニ出
  來ルノデスケレドモ、是ハオヤリニナリマ
  セヌカ、是モ農政〓究會ガ〓究シタ結果デ
  アルノデアリマスカラ、之ニ付テ御意見ヲ
  伺ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=18

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• 019・井野碩哉

  ○井野國務大臣　其ノ點ハ今日ノ食糧事情
  カラ見マシテ、私モ極メテ緊切ナル處置デ
  アルト考ヘマス、唯地方的事情ニ依リマシ
  テ、陸稻ヲ止メテ藷ヲ作ラセマシテモ、輸
  送關係トカ或ハ貯藏關係カラ、收穫ガ多ク
  テモ、必ズシモ藷ノ方ガ宜イト云フコトデ
  ナイ場合モアリマス、ソレハ事情ヲ見テ能
  ク統制令ヲ發動シテ參リタイト思ツテ居リ
  マスガ、€大體ニ於テ高田サンノ御述べノヤ
  ウナ方針ヲ今囘ハ執ツテ參リタイト思ヒマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=19

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• 020・高田耘平

  ○高田委員　マダヤラナイノデスケレド
  千、少シ思ヒ切ツテヤツタナラバ宜イト思
  イマス、摩擦トカ何トカヲ惧レルノデオヤ
  リニナラヌノデセウガ、多少何カ緩和シタ
  ヤウニ伺ツテ居リマス、陸稻ト甘薯ナド
  ハ、私フ縣ナドモ陸稻ノ多イ縣デ、甘薯モ
  多少作リマスケレドモ、農民カラ言フト陸
  稻ヲ何町何反步、何村ト云フ命令ガ來ルノ
  デ、甘薯ヲ作リタクテモ仕方ナシニ陸稻ヲ
  作ルコトニナツテ居リマス、本年ヨリ或ル
  程度緩和シテ居ルヤウデスガ、サウデナク
  土地ノ狀況ニ依ツテハ、全然各府縣每ニ、
  ドノ村ハ陸稻ハ幾ラニ制限シ、ドノ村ハ甘
  薯ヲ幾ラ曾產シロト云フヤウナコトガ出來
  サウニ思ヒマスケレドモ、ドウナンデスカ

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• 021・井野碩哉

  ○井野國務大臣　今ノ御話ノヤウニサウ云
  フ方針デ指導シテ居リマス、直グ今ドノ村
  ガドウト云フコトハ、私ガ事務當局ニ命ジ
  マシテカラマダ直グニハ出來テ居リマセヌ
  ケレドモ、一應緩和サセマシテ、直グサウ
  云フ方面ニ積極的ニ乘出シテ見タイト考へ
  テ居リマス

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• 022・高田耘平

  ○高田委員　私ハ此ノ程度デ止メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=22

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• 023・東郷實

  ○東郷委員長　岡田啓治郞君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=23

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• 024・岡田啓治郎

  ○岡田(啓)委員　農業團體法ノ審議ヲ繞リ
  マシテ、食糧ノ問題、農產物價ノ問題、耕
  地ノ交換分合、耕地ノ價格、農業均衡問題、
  農民離村ノ問題、自作農創設ノ問題、凡ユ
  ル問題ガ過日來熱心ニ質疑應答サレテ居リ
  マス、殊ニ農林大臣ハ明快ニ御答辯ニナツ
  テ居リマスカラ、重複ヲ避ケマスガ、尙ホ
  割切レナイヤウニナツテ居リマスモノガ一
  ツ二ツアリマスカラ、私ハ極メテ、簡單ニ御
  尋ネ致シマス、是ハ日本ノ國ガ、民族培養基
  地ト致シマシテ、一億ノ人口ヲ將來ニ定有
  シテ、其ノ中農業人口四割確保ト云フ國策
  ニナツテ居リマス、而モ今日ノ農村ノ現狀
  ハ、要スルニ離村、離農スル者ガ多イ、更
  ニ勞力ノ問題デ不足ヲ致シテ居リマス、此
  ノ勞力問題ノ調整ニ付キマシテハ過日來伺
  ツテ居リマスト、是ハ農業ノ有畜化ニ依リ
  或ハ機械化ニ依ツテ解決スルノデアル、其
  ノ方法ニ依ツテモ解決シ得ル場面ガアルト
  思ヒマスケレドモ、サウナツテ來マスト其
  ノ問題ハ解決スルケレドモ、結局國策テア
  ル農業人口ノ保有確保ト云フ問題ハ矛盾ヲ
  來スデハナイカト考ヘラレマスノデ、之二
  對シテモウ一遍ハツキリ御伺ヒシタノデア
  リマス、固ヨリ自作農ノ創定ニ依ツテ農民
  ノ離村ヲ防止スルト仰シヤラレタト思ヒマ
  スケレドモ、一應之ヲ承リタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=24

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• 025・井野碩哉

  ○井野國務大臣　只今御意見ノ通リ農村人
  口ノ一定保有ト云フコトト、農村勞力ヲ節
  約シテ行クト申シマスカ、卽チ有畜農業ナ
  リ或ハ機械化ニ依リマシテ、勞力少クシテ
  農業經營ヲ可能ナラシムルト云フ二ツハ、
  或ル程度ニ於テ矛盾スルコトハ御話ノ通
  リデアリマス、ソコデ現在ニ於テドウ結ビ
  付ケテ解決シテ行クカト云フコトガ、一番政
  府トシテモ考ヘナケレバナラヌ點デアリ、
  ソレヲ所謂皇國農村確立施設ト云フモノニ
  於キマシテ、兩者ノ按配ヲ致シテ、人口四
  割ノ定有ヲ圖ツテ參リタイ、其ノ目標ヲ先
  日此處テ數字的ニ細カク申上ゲタノデアリ
  マス、アノ目標ニ依ツテ參リマシテ、農村
  ニ於テ今日大體、專業農家デアレバ一町八
  九反ノ耕作面積ヲ持チ、一戶當リノ人口モ
  五·七人ト云フノガ現狀デアリマスガ、之ヲ
  或ハ六人、或ハ七人ト云フヤウニ、人口增
  殖ノ見地カラ殖ヤシテ參リマスレバ、モツ
  ト耕地面積モ持チ得ルコトニナルノデアリ
  マン、サウ云ツタ方面デ、其ノ程度ノ耕地
  ヲ耕シテ行クノニドウ云フ勞力ト、ドウ云
  フ機械化ナリ或ハ有畜農業化ニ依ツテ行ク
  ガ宜イカ、卽チ例ヘバ五人ノ家族デ二町近
  クノ田畑ヲ耕シテ行クト致シマスレバ、ソ
  レダケノ勞力デ足リナイノデアリマスカラ、
  勢ヒソコニ家畜ヲ飼ハセ、サウシテ小規模
  ノ機械農具ヲ入レルコトニ依リマシテ、ソ
  レヲ解決サシテ行ク、ソレハ其ノ地方々々
  ノ色々ノ事情ニ依リ、農業ノ立地條件ナリ
  或ハ種類ナリニ依リマシテ、適切ナル企畫
  ヲ致シテ指導シテ參ル、是ガ皇國農村確立
  策ノ一ツデアルノデアリマス、ソレハ具體
  的ニ各地方々々ニ依ツテ決メテ參リタイ、
  斯ウ云フ風ニ考ヘルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=25

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• 026・岡田啓治郎

  ○岡田(啓)委員　皇國農村確立ノ構想ハ伺
  ヒマシテ分リマシタガ、併シ私ハ先日來モ出
  テ居リマスケレドモ、結局米ノ問題ニナリ
  マスト、何トシテモ一面ニ於テ價格ノ問題
  ガ採上ゲラレナケレバナラナイコトニナル
  ヂヤナイカト思ヒマス、先日來質疑應答ノ中
  ニモアリマシタガ、乾繭確保ノ目標六千三百
  万貫、而モ今日ノ蠶絲業界ノ情勢カラ申シマ
  スト、現在ノ繭ノ値段デハ之ヲ確保スルト
  云フヨリ、寧ロ減產ヲ防止スルコトガ極メ
  テ困難デアルト云フ情勢ニ置カレツツアル
  ト云フコトニ付キマシテ、加藤サンデアリ
  マシタカ御質疑ガアリマシタ、ソレニ對シ
  マスル大臣ノ御答辯ニハ、繭價ニ對シテハ
  修正ノ用意ガアルノダ、殊ニ是ハ春蠶ニ於
  テ考慮スルト云フコトヲ言明サレタト記憶
  スルノデアリマス、私ハ此ノ言明ヲ得マシ
  タコトハ、今日ノ日本ノ蠶絲業界ニ取リマ
  シテ、養蠶業界ニ取リマシテハ正ニ天來ノ
  福音ノヤウニ、恐ラクハ養蠶家ハ考ヘテ居
  ルデアラウト存ジマス、卽チ將來ニ對シマ
  シテ是ハ確ニ光明ヲ與ヘラレタルモノナリ
  ト承リマシテ、實ハ嬉シク思ツテ居ルノデ
  アリマス、然ルニ一方米價ノ問題ニ立至ツ
  テ考ヘテ見マスルト、米ハ何ト云ツテモ、
  如何ナル觀點カラ見テモ箆棒ニ安イノデア
  リマス、最モ卑近ナ例ヲ-コンナコトハ
  言ハヌデ宜シイケレドモ、申シマスナラ
  バ、兎ニ角煙草ノ朝日一個デ米ガ一升買ヘ
  ルト云ツタヤウナコトデモアリマスシ、ソ
  レカラ議院ノ食堂ニ於キマシテモ、林檎一
  ツガ二十錢モスルト云ツタヤウナ次第デア
  リマシテ、之ヲ米一升ト比べマスト米ノ
  値段ハ兎ニ角安イ、併シ政府ノ低物價政策
  ノ堅持ノ立場モアリマセウシ、其ノ他波
  及スル所ノ影響モ御考ヘニナツテ居リマ
  シテ、是マデモ協力會議ニ於キマシテモ、或ハ
  議會ニ於キマシテモ、豫算總會ニ於キマシテ
  モ、米ハ値上シナイノダト云フコトヲハツキ
  リ仰シヤツテ居ルノデアリマスガ、此ノ二重
  價格制度デ行ツテ貰ヒマスコトハ結構デア
  リマスカラ、サウナラバ米ハ値上シナイデ
  生產奬勵金ハドウスルト云フコトニ相成ル
  ノデアリマスガ、私ハ現在ノ米價デハ今モ
  申シマス通リニ、日本農業ノ特質デアル水
  田ノ耕作、卽チ米作農家ト云フモノハ現在
  減ツテ行クノデハナイカト思フ、前ニモ申
  シマシタ人口ノ定有確保ハ難シクナツテ來
  ルノデハナイカ、米作農家ヲ確保シテ行ク
  コトハ困難デハナイカト思フ、固ヨリ農民
  ハ皇國農民トシテ今日ノ時局ヲ能ク知ツテ
  居リマスルシ、知ツテ居ル以上ハ其ノ忠誠
  心ヲ一層發揮シテ、食糧增產ニ一生懸命挺
  身スルコトハ言フマデモナイノデアリマス
  ガ、此ノ團體法實施ノ此ノ際、ヤハリ事情
  ハアリマセウガ、萬難ヲ排シテ生產奬勵金
  ノ增額ヲ實行スルト云フコトヲ大臣カラ言
  明ヲ戴キマスルナラバ、私ハ確カニ全國農
  民ヲ一層感奮興起セシメル所以デアルト思
  フノデアリマスガ、之ニ對スル御所見ヲ伺
  ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=26

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• 027・井野碩哉

  ○井野國務大臣　私ハ繭ニ付キマシテモ必
  ズ値上ヲスルト云フコトヲ申シタコトハ
  ゴザイマセヌ、是ニハ絲價安定委員會ガア
  リマシテ、此ノ委員會ニ諮ツテ春繭ノ値ヲ
  決メルノデアリマスカラ、今玆デ上ゲルト
  カ上ゲナイトカ云フ言明ノ出來ル性質ノモ
  ノデハナイノデアリマス、唯今日ノ養蠶ノ
  事情ガ、生產費ヲ非常ニ割ツテ居ルヤウニ
  色々ノ觀點カラ見エルノデアリマス、隨テ
  サウ云フ點ヲ考慮ニ加ヘテ、繭價ヲ決メル時
  ニモ色々考ヘルト云フコトヲ申上ゲタノデ
  アリマス、隨テソレナラバ米價ニ付テハド
  ウカト云フト、ヤハリ生產費ヲ今日ノ米價ハ
  基準ニシテ居リマス、是ハ食糧管理法デ御
  承知ノコトト思フノデアリマス、ソコデ本年
  ノ米ニ付テ生產費ガドウナツテ居ルカト申
  シマスト、マダ調査ガ出來テ來テ居リマセ
  又、併シ昨年ノ米ニ付テハ出來テ居リマス、
  詰リ五千五百万石ノ生產ノ時ノ生產費ヲ償
  フヤウニ五十圓ニ直シタノデアリマス、隨
  テ六千七百万石ノ本年ニ於ケル生產費ハ、
  ソレヨリ石當リハ高クナルベキ筈ノモノデ
  ナイノデアリマスカラ、今常識的ニ考ヘテ
  見マシテモ、生產費問題カラ直チニ之ヲ考
  慮ハ致シ兼ネルト云フコトヲ先般來申上ゲ
  タノデアリマス、デスカラ實際ノ數字ガ出
  テ參リマシテ、ドウシテモ農業經營ノ上ニ
  於テ生產費ヲ割ルノデアルト云フコトニナ
  リマスナラバ、是ハ政府ノ奬勵金ヲ又殖ヤ
  シテ行クコトニ私トシテモ努力ヲ致シテ參
  リタイ、斯ウ考ヘテ居ルノデアリマス

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• 028・岡田啓治郎

  ○岡田(啓)委員　御話ヲ承ルト分ルノデア
  リマスガ、併シ私ハ今年六千七百万石ヲ突
  破シテ非常ナ豐作デアツタノデ、生產費ハ
  是デ償ハヌヤウニナツテ居ラヌカラ奬勵金
  ハ出サヌト說明サレル、其ノコトハ分ルノ
  デアリマスガ、豐作デアツテモ、實際農村
  ノ現狀カラ眞ニ食糧ヲ確保スルト云フ立場
  カラ考ヘマスルナラバ、ヤハリ此ノ際生產
  費ハ假ニ辛ウジテ償ヒマシテモ、生產奬勵
  金ノ增加ト云フコトニ對シテ、深甚ノ御考
  慮ヲ煩ハシタイト云フコトヲ申上ゲテ置キ
  タイノデアリマス
  次ニ御尋ネ致シタイノハ、今日農家ガ物
  資不足ノ關係カラ、空俵ノ返還ヲ非常ニ熱
  望致シテ居リマス、ソコデ私ハ玄米ノ裸買
  上ト云フコトヲ御實施ニナツタラドウカト
  考ヘルノデアリマス、ト申シマスルノハ
  今日統制下ニ於キマスル玄米ニ付キマシテ
  ハ、商品價値ハ失ハレテ居ル、生產セラレ
  ル米、小作米トシテ收納サレル米ハ、自家
  保有米ヲ除イテ全部買上ゲラレルノデアリ
  マス、サウシテ此ノ買上ゲラレタ米ハ大體
  買上地ニ之ヲ拂下ゲラレテ、其ノ地デ消費
  サレルノガ大部分ダト思ヒマス、ソレカラ
  其ノ府縣內ニ於テ消費セラレル、主要生產地
  ハ縣外ニ多數移出サレルト思ヒマスガ、サ
  ウデナイノハ大體ニ於テ其ノ土地ニ於テ、
  或ハ其ノ府縣內ニ於テ消費サレルノガ多イ
  ト云フ風ニ思フノデアリマス、然ルニ現在
  ノ買上ノ場合ニ於キマシテハ、其ノ土地ニ
  消費サレルモノモ、他ニ移出サレルモノモ、
  或ハ貯藏サレルモノモ、悉ク最モ嚴重ナル
  表裝ヲシタ上デ買上ゲラレル狀況ニチツテ
  居リマス、所ガ今申上ゲマスル通リニ、表
  裝ノ資材或ハ又表裝ニ要スル勞力、其ノ他
  色々ノコトヲ考ヘマス時ニ、徒ラニ勞力、
  資材ヲ空費シテ居ルト申シテモ宜イト思フ
  ノデアリマス、此ノ點ヲ考ヘマシテ玄米ハ
  裸デ供出シテ、之ヲ政府ガ買上ゲルト云フ
  ヤウナコトヲ實施サレル御考ヘガアルカナ
  イカ、御伺ヒ致シマス

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• 029・井野碩哉

  ○井野國務大臣　今日ノ米ノ管理ハ從來ノ
  自由取引ト違ヒマシテ、段々ト計畫性ヲ持
  ツテ參リマシタカラ、今御話ノヤウナ點モ
  或ル程度私ハ考ヘテ居リマス、併シ裸デ玄
  米ヲ買上ゲルカドウカト云フト、ソレハサ
  ウハイカナイ、寧ロ其ノ前ニモウ一ツ俵ヨ
  リ叺ニ直スト云フコトガアルノデハナイカ
  ト思ツテ、今事務當局ノ方ニ至急ニ〓究シ
  ロト申シテ居リマス

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• 030・岡田啓治郎

  ○岡田(啓)委員　私ガ斯ク申シマスノハ、
  今申シマス通リ物資ノ關係、勞力ノ關係ト、
  ソレカラ此ノ裸供出ト云フコトニ付テハ今
  御話ノヤウニ叺ノコトモアリマセウガ、直
  チニ御〓究ヲ願ツテ、效果ノアル一ツノ方
  法デナイカト信ジテ居ルカラデアリマス、
  同時ニ米ノ裸供出ヲ實施スルコトニ依ツテ
  生產農家ハ、私ハ其ノ通リニナルカドウカ
  知リマセヌガ、兎ニ角俵ノ代金、表裝料ガ
  假ニ二圓掛カルト致シマスナラバ、一石、
  付テ五圓ダケ節約ガ出來ルト云フコトニモ
  ナリマス、一面ニ於テハ是ダケ奬勵金ヲ貰
  ツタト同ジ關係ニナルト思ヒマスカラ、是
  ハ一ツ御〓究ヲ願ヒタイ、是ハ增產ニモ資
  スル所ガアルト考ヘル次第デアリマス、私
  ハ是デ終リマス

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• 031・東郷實

  ○東郷委員長　山口馬城次君

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• 032・山口馬城次

  ○山口　(馬)委員今日農業ニ關係シテ居リ
  マス者ノ實情ト致シマシテ、自作農ノ創設
  ノ問題ト、米價ニ關聯シテノ奬勵金ノ引上
  ゲト云フコトガ、實際ノ問題ト相成ツテ居ル
  ノデアリマス、今日マデノ質問ト御答辯ニ
  依リマシテ、當局ノ御趣旨ノアル所ハ私ハ
  大體ニ於テ分リマシタ、ソコデ自作農ニ關
  スル問題ハ私ハ御尋ネヲ致シマセヌ、奬勵
  金ノ引上ノコトニ關シテ實情ヲ御參考ニ供
  シテ、御判斷ノ資料ニ供シテ見タイノデア
  リマス、斯樣ナコトカラ質問ヲ省略致シテ
  實情ダケヲ御認識ヲ願フ、斯ウ云フ意味デ
  申上ゲタイト思ヒマス、要約シテ申シマス
  ナラバ、問題ハ實情ヲドウ認識スルカト云フ
  コトガ骨子デアル、大臣ハ御考ヘニナツテ
  居リ、色々御心配ニナツテ居ルト云フコト
  ハ能ク分ツテ居リマスガ、少ナクトモ國民
  ニ對シテ、此ノ問題ニ關スル十二分ノ關心
  ヲ持ツテ居ルト云フコトヲ、此ノ議會ヲ通
  ジテドコマデモ國民ニ徹底ヲサセルト云フ
  コトガ大切ナ問題デアル、サウ云フ觀點カ
  ラ私ハ責任ヲ痛感シマス、ソコデ諄イヤウ
  デアリマスケレドモ、實情ヲ一ツ御認識ヲ
  願フ爲ニ、是ダケハドウシテモ申上ゲテ置
  カナケレバナラヌ、斯樣ニ感ジテ居ルノデ
  アリマス、ソコデ此ノ具體的ナ問題トシマ
  シテハ、御答辯ニ依リマスト生產費ト他ノ
  物價トノ均衡、物價ノ安定ト云フヤウナコ
  トガ大體骨子トナツテ居ルヤウデアリマス
  ガ、先程ノ御答辯ニ依リマシテ、生產費ト
  物價トノ關係等ヲ考ヘテ、引合ハナイト云
  フ狀態デアレバ是ハ勿論考ヘナケレバナラ
  又、決シテ放ツテ置クト云フ意味デハナ
  イ、併シ今年ハ豐作デアツタ、ソコデ引合
  ハヌトハ思ハレヌ、斯樣ナ御趣旨ニ承ツタ
  ノデアリマスガ、今年之ヲ實行スルトカセ
  ナイトカ云フヤウナコトハ、是ハ將來ニ於
  テ御考ヘニナルコトデアツテ、之ヲ私ハ今確
  メヨウト云フコトヲ考ヘル譯デハアリマセ
  又、併シ本年豐作デアツタカラ引合ツテ居
  ル筈デアルト云フ點ニ付キマシテ、私ハモ
  ウ少シ認識ヲ深メテ戴キタイト云フコトカ
  ラ、實情ヲ申上ゲタイノデアリマスガ、米價
  ハ引合ハナイト云フコトデ地方デ色々問題
  ガ起ツテ居リマス、ソコデ私ハ私自ラノ認
  識ヲ深メル必要ガアルト思ヒマシテ、今年
  田ヲ五反バカリ自分デ作ツテ見タノデアリ
  マイ、サウシテ私ノ信賴ニナル者ニ世話ヲ
  賴ンデ詳細ニ計算ヲシテ、之ヲ今ノ價格ニ
  換算ヲシマシテ、收支ノ計算ヲヤツテ見タ
  ノデアリマス、是ハ今年デアリマス、今年
  ハ豐作デアツタノデアリマス、ソコデ其ノ
  收支ノ計算ヲ見マスト、數字ハ申上ゲマセ
  ヌガ、〓算シテ田ノ草ヲ取ル除草費ト、ソ
  レガ後俵ニ入レルマデノ費用ガ、結局ニ於
  テ足リナイト云フ結果ニ相成ツタノデアリ
  マス、是ハ私一人ノ體驗デアリマスガ、自
  分一人ダケノコトデアルカラ大局カラ見テ
  ドウデアルカト云フコトヲ大體觀察ヲシマ
  シタ、所ガ大局カラ見マシテ、ヤハリ自分
  ガ作ツタ場合ノ勞銀ヲドノ位ニ見ルカト云
  フコトニ歸着スルノデアリマス、ソコデ政
  府ノ方ノ御考ヘハ、勞銀ヲ幾ラニ御考ヘニ
  ナリマスカト云フコト-私ハソコニ相當
  ノ差ガ出テ來ルノデハナイカト思ヒマス
  ガ、併シ民間ノ實情カラ見マシテ、今日ノ
  公定ノ勞銀デ見ルト云フコトニシマスレ
  バ、是ハ非常ニ實際ノ事情ニ適シナイ、斯
  樣ニ〓括的ナ結論ト自信ヲ私ハ得テ居ルノ
  デアリマス、隨ヒマシテ本年ハ豐作デアル
  カラ引合ツテ居ル筈デアルト云フ御考ヘモ
  アリマセウケレドモ、實際ハ本年ハ豐作デ
  アリマシテモ、普通ノ賃金ノ割合等カラ見マ
  シテ、ドウシテモ引合ハナイ、斯樣ニ私
  ハ感ズルノデアリマス、尙又是ハ明年
  ノ-本年ノ植付ケニ非常ナ關係ガアルノ
  デアリマス、此ノ三月前後ヲ通ジマシテ土
  地ノ入替ガアルノデアリマスガ、本年豐作
  デアツタト云フコトハ明年ノ根付ケニハ餘
  リ關係ガナイノデアリマス、明年豐作デア
  ラウト云フコトハ誰モ豫定ガ立タナイノデ
  アリマス、又本年奬勵金ガ餘計出テ居ナイ
  ト云フコトハ、明年ノ根付ケヲスル上ニ於
  テ是ガ判斷ノ基準ニナルノデアリマス、隨
  ヒマシテ明年ノコトヲ考ヘマスト、本年豐
  作デアツタト云フコトデ此ノ儘ニシテ置ケ
  バ、明年ノ增產、明年ノ根付ケト云フコト
  ニ影響ヲシテ參ルト私ハ思フノデアリマス、是
  ダケノ實情ヲ申上ゲテ置キタイノデアリマス
  ソレカラ經營ノ合理化ニ依ツテ生產費
  ヲ引下ゲテ行クト云フコトガ、全體トシテ
  健全ナ建前デアルト云フ御趣旨ハ、私モ全
  ク大臣ト同感デアリマスガ、此ノ生產費ノ
  切下ゲヲヤツテ行クト云フ爲ニハ、經營ノ
  合理化或ハ自作農ノ創設ト云フコトガ急速
  ニ運ビマスレバ、是ハ又農民ノ力ヲ引張ツ
  テ行ク魅力ヲ持ツノデアリマスケレドモ、
  此ノ經營ノ合理化或ハ自作農ノ創設ト云フ
  コトハ、急ノ間ニハ合ハヌト私ハ思フノデ
  アリマス、其ノ間ニ農村ガ荒レル、斯樣ナ
  感ジヲ持ツテ居ルノデアリマス、ソレカラ
  自作農ノ創設ニシマシテモ、米ノ供出ニシ
  マシテモ、ヤハリ奬勵金ガモウ少シ引合フ
  ヤウニナツテ居リマスレバ、自作農ノ創設
  モ割合ニ進ムノデアリマス、今日自作農ハ
  引合ウテモ引合ハヌデモ、自分ガ持ツテ居
  ルカラ之ヲ作リマス、併シ是カラ自作農ヲ
  ヤラウト云フ人ハ、ドウシテモヤハリ算採
  ヲ考ヘルノデアリマス、隨ヒマシテ自作農ヲ
  本腰ニヤツテ行ク、本當ニ徹底シテオヤリ
  ニナルト云フ責任ト決意ヲ御持チニナツテ
  居ルトスレバ、ヤハリ外ノ色々ナ施設ヲ御
  考ヘニナルヨリモ、採算ノ合フヤウニ或ル
  程度考ヘテヤル、此ノ自作農創設フ他ノ面
  ニ金ヲ御使ヒニナルヨリモ、此ノ方面ニ御
  考ヘニナツタ方ガ、自作農創設ヲヤツテ行
  クト云フ上カラ考ヘマシテモ確カニ宜イ、
  斯樣ニ私ハ考ヘルノデアリマス、今日大體
  農民ノ輿論ト云フモノハドウ云フ風ニナツ
  テ居ルカ、奬勵金ノ增額ト云フコトニ付テ
  ノ輿論ハドウ云フ風ニ動イテ居ルカト云フ
  コトヲ見マスト、最近此ノ問題ヲ申シマス
  者ハ、ドウデモシテ農村ニ頑張ツテ之ヲ守
  ラウト云フ眞面目ナ考へヲ持ツテ居ル者ガ
  多イノデアリマス、責任ヲ感ジテ居ル者ガ
  申スノデアリマス、又眞劍ニ指導ヲシヨウ
  ト云フ者ガ申シテ居ルノデアリマス、私共
  ガ方々ヲ廻ツテ見テ、其ノ聲ハドウ云フ氣
  持デ言ツテ居ルカト云フコトヲ調ベテ見ル
  ト、皆サウ云フ氣持カラ出テ居ルノデアリ
  マイ、モウドウデモ宜イト云フヤウナ餘リ
  氣力ノナイ者ナドハ默ツテ居ルノデアリマ
  ス、私ガ方々ヲ廻ツテ見マシテ私ノ頭ニ最
  モ響イタ所ハ、精神指導ダケデハドウモ蹤
  イテ來ナイ、何カ玆ニ一ツ手ヲ打タナケレ
  バイカヌ、ソレニハドウシテモ奬勵金ノ問題
  デアル、斯樣ニ申シテ居ルノデアリマス、
  ソコデドウシテモ今日農村ヲ守リマス爲ニ
  ハ、皇國農村ノ創定、自作農ノ創定ト云フ
  コトヲ根本的ニ考ヘナケレバナリマセヌガ、
  是ハ急ノ間ニハ合ハナイノデアリマス、ソ
  コデ急速ニ行ハレテ全生產者ニ徹底スル所
  )、生產者ヲ引張ツテ行クノニ魅力ノアル
  問題ハト云フコトヲ考ヘマシテ、サウ云フ
  政治的ノ考ヘカラ行キマスト、ドウシテモ
  私ハ此ノ奬勵金ノ問題ガ一番生產者ニ魅力
  ノアル問題デアル、皆ガ感激シテ起チ上ル
  問題デアル、此ノ題目デ兎ニ角此ノ急場ヲ
  結集シテ行ク、サウシテ農民ヲ引張ツテ行
  ク、是程私ハ魅力ノアル問題ハナイト思フ、
  勿論皇國農村ノ創定、自作農ノ創定ト云フ
  コトハ確カニ私共ハ力强イ題目デアルト思
  ヒマスケレドモ、是ハドウシテモ今明年農
  民ノ精神ニ感激ヲ持タシテ起チ上ラセルト
  云フニハ間ニ合ハナイト思フ、先達テ私ハ
  縣廳ノ人ト〓リマシテ感ジタノデアリマスガ、
  色々此ノ精神指導ト云フコトヲ申シマスト、
  非常ニ眞劍ニナツテ居リマシテ、極メテ眞面
  目ナ人ガアトデ起チ上リマシテ、アナタハ
  サウ言ハレマスガ、農村ガ大切ダト云フコト
  ヲ言ハレマスガ、アナタノ孃サンヲ百姓ノ
  息子ニオ嫁ニ吳レマスカ、斯ウ申スノデア
  リマス、私ハ實ニ其ノ深刻ナ考ヘ方ニ非常
  ニ感ジタノデアリマス、今日ハ精神指導ト申
  シマシテモ、ソレガ本當ニ農民ニ血ノ繫ガ
  リノアル所ノ政策ヲ伴ハナケレバ、引張ツテ
  行ケナイ狀態ニ相成ツテ居ル、ソコデ私共
  ハ眞劍ニ農村ニ呼掛ケテ行クト云フ上ニ於
  テハ、ヤハリ皇國農民精神ニ信賴シテ、之
  ヲ搔キ立テテ行ク、草莽ノ忠誠ニ信賴シテ
  之ヲ搔キ立テテ行クト云フ所ニ、第一義的
  ノコトヲ考ヘナケレバナラヌコトハ勿論デ
  アリマスケレドモ、是ト相俟ツテ、ヤハリ
  先手ヲ打ツテ、サウ云フ輿論ノ趨勢ニアル
  所ニ先手ヲ打ツ、サウシテ感激サセテ、飛
  躍サセテ引張ツテ行クト云フコトヲ次々ニ
  考ヘナケレバイカヌト思フ、モウ奬勵金ヲ
  御出シニナツテ三年バカリニナリマセウ、
  色々國策ヲ御考ヘニナツテ居リマセウガ、
  私ハ今日ノ場合、ヤハリ此ノ問題ガ一番好
  イ問題デアル、斯樣ニ私ハ深ク信ジ、又私
  共ノ責任上、此ノ際ドウアツテモ農民ガ〓
  糧增產ニ御奉公申上ゲルト云フ機會ヲ何處
  マデモ果サセルト云フ點カラ申シマシテモ、
  先ヅ此ノ問題ヲ一ツ速カニ敢行ヲサレル、
  是ガ本當ニ責任ヲ考ヘル時ニ一番宜イ、是
  デナケレバ農村ガ守レナイ、斯樣ニ私ハ感
  ジテ居ルノデアリマス、私ハ此ノ實情ヲ申
  上ゲマシテ、サウシテ是非此ノ實情ヲ御認
  識ヲ願ツテ置キタイ、斯樣ナ氣持デ意見ヲ
  申上ゲタ次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=32

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• 033・井野碩哉

  ○井野國務大臣　農產物ノ價格ノ問題ガ農
  民ニ取ツテノ一ツノ大キナ魅力デアルト云
  フ御說デアリマスルガ、私ハ魅力デアルガ
  爲ニ、又餘程農村ノ指導ノ上ニ付テハ考ヘ
  テ參ラナケレバナラヌト思フノデアリマス、
  外ノ單ナル營利事業デアリマスレバ、無論
  價格ヲ引上ゲテ、其ノ增產ヲ圖ルト云フコ
  トモ一ツノ手デアリマスルケレドモ、今日
  農業ノ尊イ所以ノモノハ單ナル營農關係ダ
  ケデハナイノデアリマス、農村ガ極メテ堅
  實ナル發達ヲ見テ參リマシタ所以ノモノハ、
  時ニハ引合ハナクトモ土ニ親シミ、自ラノ
  農民精神ヲ鍛ヘテ、サウシテ日本ノ所謂皇
  國農村トシテ立派ニ守リ立テテ行クト云フ、
  此ノ農民ノ精神ガ今日ノ農村ヲシテ堅實性
  ヲ與ヘ、而モ大和民族トシテノ立派ナ涵養
  地ニナツテ來テ居ルト思フノデアリマス、此
  ノ狀態ヲ唯魅力カラ解決シテ行クト云フコ
  トハ、却テ私ハ農村ヲ導ク上ニ於テ危險ヲ
  感ズルノデアリマス、併シ今御話ノ通リ、
  生產ヲヤツテ引合ハナイト云フ狀態ニ何時
  マデモ置イテオイテ、サウシテ尙ホ國家ノ
  要請ヲソコニ持ツテ參ルト云フコトハ、是
  ハ爲政者トシテ考ヘナケレバナラヌ、斯ウ
  思フノデアリマス、デアリマスカラ、實際
  ニ引合ハヌ場合ニハ價格ノ是正モ今マデモ致
  シテ來テ居ルノデアリマス、今日農村ヘ行
  ツテ見マスト、米價問題ハ相當私モ耳ニ致
  シマス、併シ指導者トシテハソコハ抑ヘテ
  戴キタイ、併シ私共、政府ニ對シテノアナ
  タ方ノ御主張ハ、是ハ農村ノ色々ノ事情ヲ
  御訴ヘ戴イテ、斯ウシテ吳レト云フ御要求ハ
  御尤ダト思ヒマスガ、唯私共ニ仰シヤルコ
  トヲ以テ、ヤハリ農村ニ、ソレハ尤モダ、
  ダカラサウスルガ當然ダト云フ氣持ヲ御傳
  ヘ願ヒマスト云フト、玆ニ私ハ農村ノ指導
  上ニ於テ非常ナ誤リヲ生ジテ來ルト思フノ
  デアリマス、此ノ點ハ能ク一ツ御考ヘ願ヒ
  タイノデアリマス、而モ又今日ノ狀態ニ於
  テ、豐作ダカラ生產費ガ償フカラドウト私
  ハ言フノデハナイノデアリマス、一昨年ノ
  五千五百万石ノ時ノ生產費ヲ調ベテ見マシ
  テ、サウシテ今日ノ米價ト云フモノガ出來
  テ居ルノデアリマス、隨テ米ノ價格ト云フ
  モノハ一年ノ豐凶ニ依ツテ直チニ改廢シテ
  行クモノデハ勿論ナイノデアリマシテ、數
  年ノ米價ノ色々ノ平均ヲ取リ又而モ各地ノ
  農家ノ中庸生產者ノ生產費ヲ調ベマシテ、
  サウシテ色々ノ點カラ觀察シテ定メテ參ル
  ノデアリマスカラ、只今ノ御體驗ニ依ツテ
  ノ色々ノ生產費ト云フモノハ、是ハ私ノ直
  グニハ參考ニハ出來ナイト思フノデアリマ
  ス、ヤハリ農林省トシマシテモ愼重ニ考慮
  致シマシテ、サウ云ツタ生產費ヲ決メマシ
  テ、サウシテソレニ卽應スル改善ヲ致シテ
  參ル、斯ウ云フ譯デアリマス、デアリマス
  カラ今御述べノヤウニ、米價ノ問題ハ極
  メテ重大デアリ、又政府トシテモ色々ノ點
  カラ考ヘテ參ラナケレバナリマセヌガ、然
  ラバ今玆デ之ヲドウスルト云フコトヲハツ
  キリ言ツタ方ガ農民ノ魅力デアルカラ、大イ
  ニ增產ニ拍車ヲ掛ケルコトニナル、斯ウ仰
  シヤツテ戴キマシテモ、私ハ今申上ゲタヤウ
  ナ見地カラ、之ヲ玆ニ明言スル譯ニハ行カ
  ナイ、併シ十分ニ色々ノ點カラ考ヘテ、サ
  <
  ウシテ農村ノ爲ニハ無論增產ニ必要ナル凡
  ユル施設ヲ、單ニ米價ノミナラズ、色々ナ
  觀點カラ考ヘテ行クコトガ適切デアルト云
  フコトヲ先般來モ申上ゲテ居ル譯デアリマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=33

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• 034・山口馬城次

  ○山口(馬)委員　誤解モオアリデハナカツ
  タラウカト思ヒマスケレドモ、魅力ト云フ
  言葉ヲ功利的ニ御受取リニナツタノデハナ
  イカト云フ感ジモ聊カ致シマスガ、私ハ決
  シテ左樣ナ意味デ申シタノデハ斷ジテナイ
  ノデアリマス、何處マデモ傳統ノ皇國農民
  精神ニ信賴シテ、之ヲ搔キ立テテ行クト云
  フ所ニ指導精神ヲ置カナケレバナラヌト云
  フコトハ、私ハハツキリ認識致シテ居ルノ
  デアリマス、又地方ニ於テサウ云フコトノ
  ナイヤウニト云フ御注意モアリマシタ、私
  ハ地方ニ於キマシテハ、農村ノ村長モヤツ
  テ居リマスルシ、ソレカラ農會關係モヤツ
  テ居ルノデアリマス、隨ヒマシテ私ハ村デ
  皆ニ話ヲシマス時ニ、引合ツテモ引合ハナク
  テモ第一ニハ國家ノ主要食糧ヲ通ジテ御奉
  公申上ゲルト云フコトデヤツテ行カナケレ
  バナラヌト云フコトハ、强ク强調シテ居ル
  ノデアリマス、サウ云フ點ニ付キマシテハ
  私モ能ク注意致シテ居ルノデアリマスガ、
  私ガ玆ニ特ニ申上ゲル所以ノモノハ、左樣
  ニシテ私共トシマシテハ强ク精神指導ヲ第
  一義トシテヤツテ參ツテ居ルノデアリマス、
  隨テ私共ガドウシテモ之ヲ確保シナケレバ
  ナラヌト云フ責任上、私ハ地方ノ實情ダケ
  ヲ申上ゲテ御參考ニ供シテ置キタイ、斯ウ
  云フ趣旨ニ外ナラナイノデアリマス、其ノ
  點モ能ク御諒承ヲ願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=34

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• 035・東郷實

  ○東郷委員長　暫時休憩致シマス、午後ハ
  一時半カラ再開致シマス
  午後零時十一分休憩
  午後一時三十八分開議

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=35

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• 036・東郷實

  ○東郷委員長　休憩前ニ引續キ會議ヲ開キ
  マス-杉山元治郞君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=36

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• 037・杉山元治郎

  ○杉山委員　私ハ本法案ニ關聯致シマシテ、
  先ヅ先ニ厚生省ニ一ツ一一ツ御伺ヒシテ見タ
  イト存ジマス、其ノ第一點ハ、從來產業組
  合デ國民健康保險ノ代行ヲ致シテ居リマシ
  タガ、恐ラクソレハ今度ノ農業會デ繼承サ
  レルモノダト存ジマスガ、此ノ際ニ國民健
  康保險ヲ農業會ニ全面的ニ代行セシメテハ
  ドウカ、斯ウ云フ問題デアリマス、其ノ譯
  ハ團體統合ヲ致シマシタ精神ハ、申スマデ
  モナク各種ノ團體ノアリマスルコトハ、下
  部ニ於テ色々ト迷惑デアリ、又指導命令ガ
  多岐ニ亙ルノデ、斯樣ナコトハ戰時下好マ
  シイコトデハナイノデアリマス、斯ウ云フ
  ヤウナ意味カラモ致シマシテ、今囘ノヤウ
  ナ團體統合ト云フモノガ出來タト思フノデ
  アリマス、サウ致シマシタ團體統合ノ精神
  カラ考ヘテ見マシテモ、又別ニ國民健康保
  險組合ト云フモノヲ作ルヤウナコトガアリ
  マスト、玆ニ又團體ヲ新シク作ルト云フコト
  ニナリハシナイカト思フノデアリマス、農
  業會ノ外ニ國民健康保險組合ト云フモノヲ
  作リマスナラバ、ソレダケ多クノ會合ガ催
  サレ、而シテ時間ヲ要シ、其ノ爲メ生產ヲ
  阻碍スルト云フコトニモナラウカト存ズル
  ノデアリマス、其ノ外今度ノ團體法カラ見
  マスト、農會長ハ町村長ノ意見ヲ徵シテ、
  サウシテ知事ガ任命スルト云フコトニナツ
  テ居リマス、又團體長ガ町村ノ參與ニナリ
  得ル、サウ云フヤウニ町村ニ農業會ノ會長
  ガ關聯ヲ持ツテ居リマスト同時ニ、一面町
  村長ハ農業會ノ理事ニモナル、又町村ノ吏
  員モ理事ニナルト云フヤウナ交互關係ガゴ
  ザイマシテ、謂ハバ町村ト農業會ト云フモ
  ノトガ表裏一體ノ形ニナツテ居ル譯デアリ
  やく、斯樣ニ以前ノ產業組合ノ時代ト違ヒ
  マシテ、農業會ハ國策遂行ノ公法人的ナ性
  格ヲ持ツヤウニナツタト云フヤウナ意味カ
  ラ考ヘテ見マシテモ、此ノ際農業會ニ全面
  的ニ代行ヲ許シテハドウカ、斯ウ云フ點ガ
  先ヅ伺ヒタイ一點デアリマス、時間ノ關係
  デ續ケテ申上ゲマス
  第二ニ御尋ネ致シタイ點ハ、代行條件ヲ
  緩和シテハドウカト云フ點デアリマス、第
  五十四條ノ改正ハ、勿論無條件代行ヲ許ス
  ト云フ考ヘデハナイト存ジテ居ルノデアリ
  マスガ、前ニ申上ゲマシタヤウニ、今度ノ農
  業會ハ前ノ產業組合ト大分性格ヲ異ニシテ
  居ル點ガゴザイマスカラ、此ノ際ニ代行條件
  ヲモツト緩和シテハドウカ、從來デアリマ
  スレバ、組合員ノ八割以上加入ガ必要デア
  ル、斯ウ云フコトニナツテ居ツタノデアリ
  マスガ、併シ五割以上加入スルナラバ、知事
  ハ命令デ組合員以外ノ者ヲモ被保險者ニナ
  シ得ルト云フコトハ、從來デモアツタノデ
  アリマスカラ、此ノ際ニセメテ五割以上マ
  デモアルナラバ、代行セシメルト云フコトニ
  デモスルコトハ出來ナイカドウカ、此ノ二
  點ダケ御伺ヒ致シタイト思フ譯デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=37

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• 038・武井群嗣

  ○武井(群)政府委員　國民健康保險組合ノ
  代行ニ關シテ御尋ネガアリマシタ、仰セノ通リ、
  從來產業組合ニ對シマシテ、國民健康保險
  組合ノ仕事ヲナシ得ル條件ヲ具ヘテ居リマ
  スル組合ニ對シマシテハ、是ガ代行ヲ認メ
  テ居ツタノデアリマス、今囘農業團體ニ關
  スル法律ノ制定セラルル場合ニ於キマシテ、
  新シク出來マスル農業會ニ對シテ、國民健
  康保險ノ仕事ヲ代行セシメルコトニ付キマ
  シテハ、從來ノ產業組合ニ對スルト同樣ナ
  考ヘヲ持ツテ居ル譯デアリマス、只今此ノ
  點ニ關シテ、將來ハ全面的ニ代行セシメテ
  ハドウカト云フ第一點ノ御尋ネデアリマス
  ガ、此ノ點ニ付キマシテ、只今此ノ席上
  ニ於キマシテ、左樣ニ致シマスト云フコ
  トハ、マダ申上ゲ兼ネル實情ニアルト存ジ
  マス、申スマデモナク、國民健康保險組合
  ハ全國民ヲシテ健康ノ增進、體位ノ向上ヲ
  目指トシマシテ、政府ガ最モ力瘤ヲ入レテ
  ヤツテ居リマスル重要國策ノ一ツデアリマ
  シテ、過去數年間ニ於テ、僅カニ六百万人
  程度ノ組合員シカ出來ナカツタモノヲ、昭
  和十七年度中ニ於テ之ヲ二千万人ニ殖ヤス、
  昭和十八年度ニ於キマシテハ更ニ又其ノ
  上ニ一千六百万人程ヲ殖ヤサウ、斯樣ニ致
  シマシテ、昭和十八年度中ニ農山漁村ニ漏
  レナク國民健康保險組合ヲ作ラウト云フヤ
  ウナ譯デアリマス、更ニ引續キマシテココ
  兩三年ノ內ニ、都市ト言ハズ、農村ト言ハ
  ズ、全國民漏レナク健康保險組合ニ加入セ
  シメヨウトスル、大キナ方針ヲ以テ進ンデ
  居ル譯デアリマス、此ノ際ニ農業團體法ガ
  改正ニナリマシテ、農業會ガ國策ニ卽應ス
  ルヤウニ設置セラレル狀況ト睨合ハセマシ
  テ、此ノ國民健康保險組合ノ仕事ヲ代行シ
  得ル資格、內容等ヲ具ヘテ居リマスル組合
  ニ對シテハ、之ニ代行セシメルコトガ適當
  ナリト思ツテ居リマスルケレドモ、併シナ
  ガラ御話ニモアリマシタヤウニ、農業會ノ
  目的トスル所、其ノ施行スル仕事ト、國
  民健康保險組合ノ目指ス所、及ビ其ノ仕事
  トニハ、自ラ其ノ範圍ノ異ナル點モアリマ
  スルシ、之ヲ運用スルニ付キマシテハ、之
  ニ必要ナル人ヲ得ル點モアリマスルノデ、
  ヤハリ個々ノ農業會ソレ自身ヲ見マシテ、代
  行シ得ルニ適格ヲ持ツテ居ルモノニ付テ之ヲ
  代行セシメルト云フ方針ハ、是ヨリ後モ實施
  シテ參ラナケレバナルマイト思ツテ居リマス
  ケレドモ、御希望ノ點ハ能ク諒承致シマシタ
  是ト關聯致シマシテ第二ノ御尋ネデ
  アリマスガ、從來八割以上加入シテ居ル
  モノニ付キマシテハ、强制ノ規定等ガア
  リマシテ、其ノ規定ノ運用等ヲ致シテ居ツ
  タ譯デアリマスガ、此ノ條件ヲ緩和シテハ
  ドウカト云フ點デアリマス、此ノ點ハ第一
  ノ御答ヘト關聯スルノデアリマスガ、新シ
  ク御制定ニナリマス農業團體法ニ依ツテ
  出來マシタ農業會ガ、如何ナル活動ヲシテ
  居ラレルカ、其ノ點モ見マシテ、出來上リ
  マシタ農業會ノ其ノ實績ニ徵シテ、代行ヲ
  シテ貰フト云フコトニナルカト思ヒマス、
  自然農業會ノ實體ヲ見タ上デ、此ノ條件緩
  和ト云フ點モ十分ニ考へテ見ナケレバナル
  マイ、斯樣ニ存ジテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=38

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• 039・杉山元治郎

  ○杉山委員　大體次官ノ御答辯デ諒承致シ
  タノデアリマスガ、今日マデモ隨分町村長
  初メ村ノ人達ガ、十分諒解ヲシ希望シテ御
  願ヒシテ居ルニ拘ラズ、ドウシタコトデア
  リマスカ、少シ條件ガ足リナイト云フヤウ
  ナコトデ、認可サレテ居ラナイト云フヤウ
  ナ所ガ、數多アルヤウニ聞及ンデ居ルノデ
  アリマス、サウ云フヤウナ所ガ、今度農業
  會ニナツテ性格ガ變リ、一層强イモノニナ
  ツテ來ルノデアリマスカラ、サウ云フ希望
  ノ所ニハ、ドウカ一日モ早ク御許シヲ戴キ
  タイ、是ダケ御希望申上ゲテ、私ノ厚生省
  ニ對スル御尋ネヲ終ツテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=39

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• 040・東郷實

  ○東郷委員長　ソレデハ厚生省ニ對スル質
  問ハ終リト致シマス--杉山君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=40

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• 041・杉山元治郎

  ○杉山委員　次ニ内務省關係ニ付キマシテ
  一言御尋ネシテ置キタイト思フノデアリマ
  ス、ソレハ都市計畫ト云フモノハ恐ラク國
  土計畫ノ一部トシテ行ハレテ居ルノダト思
  ヒマス、國土計晝ニ付テハ後デ農林省ニモ
  御伺ヒ致シマスガ、國土計畫ガ今完全ニ出
  來テ居ルノカドウカト云フ問題ガ一ツデア
  リマス、サウシテ其ノ國土計畫ヲナサレル
  時ニ、關聯シマス所ノ農林省ト連繫ヲ執ツ
  テヤツテ居ルノカドウカ、內務省ハ內務省
  獨自デ、國土計畫ノ一部トシテ都市計畫ト
  云フモノヲオヤリニナルノカドウカ、ト云
  フコトガ先ヅ御伺ヒシタイ第一點ナノデア
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=41

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• 042・新居善太郎

  ○新居政府委員　只今都市計畫ハ國土計畫
  ノ一部ト思フガドウカ、ト云フ御尋ネデア
  リマスガ、吾々ト致シマシテモ、國土計畫
  ニ卽應シテ、地方計畫ナリ都市計畫ヲヤツ
  テ行カナケレバナラヌト思ツテ居リマス、
  又國土計畫ハ完成シテ居ルカドウカ、又之
  ヲ立テル上ニ於テ、內務省ハ農林省ト能ク
  連絡協調ヲ保ツテ居ルカ、ト云フ御尋ネニ
  伺ヒマシタガ、國土計畫ハ私ノ存ジテ居ル
  範圍ニ於テハ、完成ト云フ域マデニハマダ
  ナツテ居ラナイノデハナイカ、是ハ企畫院
  ガ中心ニナリマシテ國土計畫ヲ策定シ、其
  ノ策定スル上ニ於テ各省ト密接ナル連絡ヲ
  執ルト云フコトニナツテ居リマスカラ、勿
  論內務省トシテモ其ノ一環トシテ、十分之
  ニ協力シテ行ク、又從來ノ都市計畫ニ於テ
  モ、現實ノ都市計畫及ビ都市計畫事業ヲ決
  定スル場合ニ於キマシテハ、事務的ニモ農
  林省關係、其ノ他トモ密接ナ連絡ヲ執リマス
  シ、又御承知ノ通リ都市計畫委員會ノ構成
  員ト致シマシテハ、農林省系統ノ方々モ其
  ノ委員會ニ列席シテ居リマシテ、サウ云フ
  見地カラモ御檢討ヲ願ツテ居ルノデアリマ
  ス、吾々ト致シマシテハ緊密ナ連絡ヲ執ツ
  テ居ル次第デアリマス

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• 043・杉山元治郎

  ○杉山委員　都市計畫ノ爲デアリマスガ、
  區劃整理ヲ致シテ居リマス、アレハヤハリ
  內務省ノ仕事ダト存ジマスガサウデゴザイ
  スマスカ

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• 044・新居善太郎

  ○新居政府委員　都市計畫及ビ都市計畫事
  業トシテ、區劃整理ヲヤツテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=44

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• 045・杉山元治郎

  ○杉山委員　ドウモ私共都市ノ近郊ト言ヒ
  タイガ、稍〓懸離シタ所ニ、隨分區劃整理
  ヲ行ハレテ、ソレガ隨分美田ヲ壞シテ行ク、
  マダ住宅地ニナス必要ノナイ所ヲ住宅地ニ
  シテ行ク、斯ウ云フコトノ爲ニ、今日ノ食
  糧增產ニ非常ナ障碍ヲナシテ居ル事實ヲ私
  共ハ見テ居ルノデアリマス、今私ガ農林省
  ト連繫ヲ執ツタカト伺ツタ點ハ、サウ云フ
  點ナノデアリマシテ、今後サウ云フヤウナ
  場所ニ付テ十分ノ御注意ヲ願ヒタイコト
  ト寧ロ今日ノヤウニ、食糧ヲ必要トスル
  際サウ早急ニ住宅ヲ、必要トシナイヤウ
  ナ實情ノ時ニハ、之ヲ阻止シテ戴クコトノ
  方ガ適當デハナイカト考ヘテ居ルノデアリ
  マスガ、此ノ際政府ノ御意向ノアル所ヲ伺
  ツテ見タイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=45

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• 046・新居善太郎

  ○新居政府委員　都市計畫ノ見地カラ致シ
  マシテモ、交通、衞生、保安、其ノ他食糧
  一切ノ問題ヲ綜合的ニ考ヘナケレバナラヌ
  ト云フ根本ノ立場カラ出發シテ居リマスノ
  デ、成ベク土地ノ利用ニ付テ不合理ナ點ノ
  ナイヤウニ、農地トシテ利用出來、又是カ
  ラ利用シナケレバナラヌモノヲ不必要ニ廢
  メサセルト云フコトノナイヤウニ、從來モ
  努メテ居ル積リデアリマスガ、唯都市計畫
  ノ又一面ノ使命トシテ、市街地ガ出來上ツ
  テカラ、其處ニ都市構築ノ現實ノ仕事ヲシ
  始メルノデハ、徒ラニ一遍出來タ施設ヲ動
  カストカ、或ハ建築物ヲ無用ニ移轉サスト
  云フコトニナリマスノデ、現在市街地化シ
  テ居ラヌ所モ、併セテ都市計畫區域トシテ各
  種ノ制限ヲ致シマシテ、將來ノ都市構築ノ
  基準ヲソコニ示シマシテ-勿論將來ノ基
  準ヲ示スノデアリマスカラ、先程申上ゲタ
  ヤウニ、其ノ案ニ付テハ愼重ニ立案シ、且
  ツ凡ユル方面ノ權威者ノ御集リヲ戴イテ居
  リマス都市計畫委員會ノ議ヲ經テ內務大臣
  ガ決定シ、又內閣ノ認可ヲ得ルト云フヤウ
  ナ嚴重ナ手段モ講ジテ居ルノデアリマス、
  サウ云フ關係デマダ現實ニ家ハ建タヌケレ
  ドモ、都市計畫區域內ニ入ツテ居ル所ガア
  ルコトハ御承知ノ通リデアリマスガ、其ノ
  中ニ於テ街路ヲ造ルトカ、或ハ他ノ施設ヲ
  スルト云フ場合ニ、一々個人々々カラ買收
  スルト云フコトニナルト、手續ノ煩瑣モア
  リマスシ、又土地ヲ合理的ニ使フト云フ上
  カラ行ツテモ中々旨ク行カヌト云フコトモ
  アリマスシ、事ヲ早ク進メテ行クト云フ
  コトカラシテモ、用地ヲ生ミ出スト云フ
  關係カラ、區劃整理ヲスルト云フ手段ヲ
  採ル場合ガアリマス、其ノ際ニ於テモ、
  農耕地トシテ依然使ヘルモノヲ禁止スル
  ト云フヤウナコトハセズ、使ヘルモノ
  ハ使ハシテ置クト云フコトニナツテ居ル
  ノデアリマス、又此ノ事變以來、御承知ノ通
  リ臨時農地等管理令ト云フモノガ出來マシ
  テ、農耕地ノ改廢ト云フコトニ付テハ、又
  農林當局ノ方デモ嚴重ニ監視シテ居リマス
  ノデ、吾々ノ方カラ言ヒマシテモ、此ノ法
  令ニ依リ手續ヲ執ツテ居ルノデアリマシテ、
  十分連絡ヲシテ居ル積リデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=46

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• 047・杉山元治郎

  ○杉山委員　管理令ノ登令後ハ今ノ御話ノ
  通リデアリマスガ、私ノ伺フ點ハ發令以前ノ
  區劃整理ニ多クアリマシテ、今農耕地ニナリ
  得ル所ハ、尙ホ農耕地トシテ殘シテ置クト
  云フ御話デアリマスガ、事實ハモウ出來ナ
  イヤウニヤルノデアリマス、譬ヘテ申スト
  池ノアル所ヲ池ヲ潰シテシマフ、或ハ水路
  ヲ壞シテシマフト云フヤウナコトデ、宅地
  ガ目的デアルカラ出來ナイ、自然サウ云フ
  所ハ荒廢ニ歸シテシマツテ居ル、斯ウ云フ
  實情ヲ見マスガ故ニ、特ニ今日ノ如キ食糧
  ノ必要ナ際ハ、內務省ニハ十分ノ御注意ヲ
  願ヒタイト云フ意味デ此ノ質問ヲシタ譯デ
  アリマス
  第二ニ御尋ネシタイ點ハ綠地設定ノ問題
  デアリマス、是モ軍事上或ハ厚生上設置ス
  ルト云フコトデ、巳ムヲ得ナイコトデアラ
  ウト存ジマスガ、綠地ノ設定ハ相當廣範圍
  ノ面積ヲ取ル關係上、其處ニ働イテ居ツタ
  農民ガ、大部分轉業ヲ餘儀ナクサレテ居ル
  ノデアリマス、之ニ對シテ內務省ノ御執リ
  ニナツテ居ル所ノ處置ハ、僅カバカリノ離
  作料ヲ與ヘテ、ソレデ足レリトシテ居ルヤ
  ウニ見受ケテ居ルノデアリマス、一尺之二
  反道路ノ敷地ニナルト云フヤウナ場合ナラ
  バ、從來ノヤウナ離作料デモ農民ハ我慢ス
  ルト思ヒマスガ、綠地帶ノ場合ノヤウニ、全體
  ガ取ラレテシマツテ轉業シナケレバナラヌト
  云フヤウナ時ニ、從來ノヤウナ僅カナ離作料
  デハ到底將來ノ途ガ立タナイ、斯ウ云フ場合
  ニ丁度商工業者ガ轉業致シマスル場合ニ、後
  顧ノ憂ヒノナイヤウニ、色々ト保護施設ヲ
  致シテ居リマスノト對照致シマスルト、非
  常ニ差ガアルヤウニ思ハレルノデアリマス、
  唯土地ノ離作料ヲ貰ヒマシテ、納屋ガ駄目
  ニナル、農具ガ駄目ニナル、或ハ家畜モ不
  用ニナル、サウ云フヤウナモノニ對シマシ
  テ、何等ノ處置ヲ御執リニナツテ居ラヌノ
  デアリマス、サウ云フコトハ私ハ適當デナ
  イト考ヘテ居ルノデアリマスガ、內務省ハ
  唯離作料ダケヤレバ是デ足リテ居ルト御考
  ヘニナツテ居ルカドウカ、ソレカラ家屋ナ
  ドヲ他ニ移轉致シマスル場合、色々ト見積
  リヲナサルノデアリマスガ、ソレハ政府ノ
  御見積リニナツタ價格デハ今日ハドウシ
  テ見マシテモ再建ガ出來ナイ、物ガ闇デナ
  ケレバ買へナイ、斯ウ云フヤウナ時代ニ、
  移轉シナケレバナラヌト云フ人達ハ何モ要
  求セヌ、唯元通リ其ノ儘直チニ政府ノ方デ
  移シテ吳レレバ喜ンデ行ク、ケレドモ政府
  評價ノ値段デ行ケト言ハレレバ到底移ツテ
  行ケナイ、斯ウ云フコトヲ數多ク伺ツテ居
  ルノデアリマス、サウ云フ點ニ付テ一ツ政
  府ノ御意見ヲ伺ツテ見タイト思フノデアリ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=47

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• 048・新居善太郎

  ○新居政府委員　綠地ノ設置ニ付キマシテ
  モ、只今杉山委員ノ御憂慮ニナリマスヤウ
  二、吾々モ成ベク農耕地ヲ潰サヌヤウニト
  云フコトヲ心懸ケテ居リマス、又假令綠地
  ニナリマシテモ、出來ルダケ從來ノ農耕ヲ
  續ケテ行ケルヤウニト云フコトヲ考ヘマス
  ガ、又其ノ綠地ニ或ハ防空上ノ施設、或ハ
  衞生厚生上ノ施設ト云フモノヲスル爲メ、
  巳ムナク農耕地ヲ潰シテ外ノ用途ニ使フト
  云フ場合ニ、只今御話ノヤウナ農民ノ移轉
  ト云フ問題ガ起リマスノデ、サウ云フ場合
  ニ於キマス對策ト致シマシテハ、都市計畫
  事業ヲ執行シテ行キマス地方公共團體ニ於
  キマシテ、十分ニ努力ヲシテ居リマスガ、
  只今御話ノヤウニ、單ナル離作料デハ其ノ
  他ノ色々ノ點ニ於テ損害ガアルト云フ點ヲ
  御述ベニナリマシタガ、サウ云フ具體的ニ
  通常生ズベキ損害ト云フ範圍外ニ計上出來
  得ルモノハ、總テ損害ノ補償ヲスルト云フ
  方針ヲ執ツテ居ルノデアリマスガ、具體的
  ニドレガ其ノ中ニ入ルカト云フ問題ニナル
  下、個々ノ土地デナイト決定シ兼ネルト思
  ヒマス、又家屋ノ移轉ノ場合ハ、移轉スル
  ニ付テ通常要スルモノハ支拂フト云フ方針
  ニナツテ居リマス、併シ又現實ニ表向キサ
  ウ云フ風ニヤツタダケデハマダ足リナイ
  ヂヤナイカト云フ點ハ、往々ニシテアラウ
  カト思ヒマスノデ、若シ澤山ナ人ガ集團的
  ニデモ外ニ行カナケレバナラナイト云フヤ
  ウナコトニナリマスレバ、外ノ農耕ニ適當
  ナル所ヲ發見スルトカ、或ハ外ノ政策カラ
  サウ云フ土地、或ハ開發營團デ開發スルト
  云フヤウナ所トカ、或ハ干拓ヲスルト云フ
  ヤウナ所ニ幹旋スルトカ、サウ云フ行政的
  ノ手段ニ依ツテ、出來ルダケ父祖傳來ノ土
  地ヲ公共ノ爲ニ讓渡シタ人ニ對スル溫カイ
  心持デ、御世話申上ゲルト云フコトニシタ
  イト思ツテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=48

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• 049・杉山元治郎

  ○杉山委員　今御答辯ノヤウニ、色々損害
  ト認メルモノニ對シテ補償ヲシテ下サル
  斯ウ云フコトナラバ非常ニ結構デスガ、現
  在ヤツテ居リマス事實ハサウデナシニ、唯
  離作料ダケ與ヘテ、ソレデ突ツ放シテ居ル
  ト云フ狀態デアリマスノデ、特ニ私ノ大阪
  附近デハ御承知ノヤウニ、澤山マダ綠地々
  帶ガ出來ル筈ニナツテ居リマス、サウ云フ
  場合ニ、今マデノヤウナ狀態デアツテハ、
  農民ニ非常ナ不安ヲ與ヘマスト同時ニ、
  面政府ニ對シテ怨ミノヤウナ言葉ヲ述ベル
  ト云フヤウナコトハ宜クナイト存ジテ居リ
  マスノデ、サウ云フ者ニ對シテハ、十分ト
  ハ行カナクトモ、兎モ角モ餘リ不平ノナイ
  程度ニ保護シテヤツテ戴キタイ、斯ウ云フ
  コトヲ特ニ御願ヒシテ置ク次第デアリマス、
  私ノ内務省ニ對スル御尋ネハ是デ終リマ
  ス、アト大臣ガ見エマシタラ····

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=49

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• 050・東郷實

  ○東〓委員長　山口左右平君ハ、內務當局
  ニ對スル關聯質問デスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=50

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• 051・山口左右平

  ○山口(左)委員　ハイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=51

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• 052・東郷實

  ○東〓委員長　ソレデハ此ノ際簡單ニ御願
  ヒ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=52

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• 053・山口左右平

  ○山口(左)委員　今般町村制ノ改正法律案
  ニ依リマシテ、同法律案ノ第七十二條ノ二
  ニ、町村長ハ團體ニ對シテ必要ナ指示ヲナ
  スコトヲ得ルト云フ風ニ御規定ニナツテ居
  リマス、此ノ指示ノ內容ハドンナ場合ニ指
  示ヲナサル積リデアリマスカ、ソレヲ御話
  願ヘレバ結構デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=53

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• 054・新居善太郎

  ○新居政府委員　只今ノ町村制改正ノ御質
  問デアリマスガ、是ハ委員長ニ御願ヒシタ
  イト思ヒマスガ、私內務省ノ政府委員デア
  リマスガ、其ノ方ノ係ノ方カラ御答ヘシタ
  方ガ適當カト思ヒマス、別ノ機會ニ御答へ
  サシテ戴キタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=54

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• 055・東郷實

  ○東郷委員長　山口君ノ御質問ハ、今ノ杉
  山君ノ質問ニ關聯ノ內務當局ニ對スル御質
  問ダト思ツテ居リマスガ、只今政府委員カ
  ラノ御話ノ通リデスカラ、別ノ機會ニ御願
  ヒ致シマス、杉山君、大臣ガ見エマシタカ
  ラ····

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=55

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• 056・杉山元治郎

  ○杉山委員　私ノ質問ハ大體前川委員ノ質
  問ニ重ナリマスノデ、大體ハ了承致シタノ
  デアリマス、尙ホ殘リマシタ點デ一、二ノ
  點ソレカラ前川委員ノ所デマダモウ一ツ
  ハツキリシナカツタト思ヒマス點、極ク簡
  單ニ御尋ネ致シタイト存ジマス、ドウゾ簡
  單ニ御答辯戴ケバ結構ト存ジマス
  第一ニ御伺ヒシタイ點ハ、國土計畫ノ下
  ニ耕地保有ノ限界點ト云フモノガ、チヤン
  ト決マツテ居ルカドウカト云フ點ガ一ツノ
  御尋ネデアリマス、ソレハ閣議決定ノ農業
  人口四割保有ト云フコトガ決マリマシテ
  モ、又曩ニ大臣ノ御答辯ノヤウニ耕地ノ豐
  富ナ農村ニ對シテハ一町七、八反ヲ耕作セ
  シメル、サウシテ人口ヲ保有スルヤウニナ
  ツテ居ル、斯ウ云フ御理想デアリマシテ
  モ、御承知ノヤウニ耕地ハ段々潰滅シテ行
  ク方ガ多イ、戴イタ參考資料デハ潰廢面積
  ヨリ開田面積ノ方ガ多イヤウニハ見エテ居
  リマスケレドモ、是ハ但書ガアリマスヤ
  ウニ、少シ拔ケテ居ル點ガアリマス、實ハ
  荒地及ビ地目變換ノ面積ガ拔イテアリマ
  ス、ダカラ此ノ表デハ開田ノ方ガ多イノデ
  ゴザイマスケレドモ、農林統計デ拜見致シ
  マスルト、潰廢ノ方ガ事實ハ多クナツテ居リ
  マシテ、十二年カラ十五年マデノ潰廢面積
  ト開田、開畑面積ト差引キ致シマスルト、
  寧ロ潰廢ノ方ガ一万三千四百九町步增加シ
  テ居ルノデアリマス、斯樣ニナツテ居ルヤ
  ウニ見受タノデアリマス、斯ウ云フヤウニ
  政府デハ一生懸命ニ開墾ナリ或ハ開畑ナリ
  ニ御盡力ニナツテ居リマスケレドモ、一方デ
  無計畫ニドン〓〓ト耕地ヲ潰サレテ參リマ
  スルト、折角ノ案デアリマス所ノ一町七、八
  反ヲ分擔セシメ、サウシテ人口四割ヲ保有
  スル、斯ウ云フコトヲ申シマシテモ空念佛
  ニ終ル虞ガアルヤウナ氣ガ致シマスノデ
  アリマス、國土計畫ト云フモノガ先ヅ先ニ
  立ツテ行カナケレバナラヌ、サウシテ國土
  計畫ノ下ニ是ダケノ耕地ヲ保有スル、是以
  上ハ侵ササナイノダト云フコトニナラナケ
  レバ、折角ノ案モ成就シナイノデハナイ
  カ、斯ウ云フ心配ヲ致シテ居ルノデアリマ
  ス、ソコデ國土計畫ト云フモノガ出來テ、
  サウシテ此ノ耕地保有ノ、一定量ダケハ持
  ツノダト云フ限界點ガ定マツテ居ルカドウ
  カ、此ノ點ヲ一ツ御伺ヒシタイト思ヒマス

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• 057・井野碩哉

  ○井野國務大臣　杉山君ノ御說ノ通リ、農
  村人口ノ一定保有ヲ維持シテ行キマスニ
  ハ、國土計畫ガ大切デアリマス、但シ此ノ
  國土計畫ハ今政府デモ折角色々企畫院ヲ中
  心トシテ〓究シテ居リマスガ、マダ具體案
  ハ出來テ居リマセヌ、然ラバ其ノ具體案ガ
  決マラナイ中ニ、卽チ農民ノ耕地保有ノ限
  度ト云フモノガ決マラナイ中ニ、サウ云ツタ
  農村人口定有ノ問題ハ解決シナイヂヤナイカ
  ト云フコトハ私ハナイヂヤナイカト思ヒマス、
  今日大體昭和三十五年ノ一億人口ヲ目標ニ
  シテ、其ノ四割ヲ保有スルト云フコトカラ、
  一面又適正經營ノ限度モ考ヘテ見マスレ
  バ、現在ノ耕地ノ面積竝ニ開墾百三十万町歩
  ノ面積ヲ加ヘタモノヲ內地ノ耕地面積トシ
  テ參リマスレバ、其ノ保有ハ可能ニナルノ
  デアリマス、隨テ如何ニシテ其ノ面積ヲ維
  持スルヤト云フ問題ニ努力ヲ致シマスレ
  バ、自ラ其ノ解決ハ出來ルノデアリマス、
  其ノ內ニ又國土計畫ノ問題モ決マツテ參リ
  マシテ、兩々相俟ツテ行ケバ、茲ニキツチ
  リシタ計畫ハ出來マスケレドモ、今キツチ
  リシタ計畫ノ出來テ居ナイ點ハ、杉山君ノ
  御說ノ通リデアリマスケレドモ、大體ニ於
  テノ目標ニ向ツテ色々ナ努力ハ可能デアリ
  マスカラ、其ノ努力ニ對シテ政府ハ色々ナ
  施設ヲ、斯ウ云フ施設ヲ以テ充テテ行クト
  云フコトヲ申上ゲテ居ルノデアリマス

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• 058・杉山元治郎

  ○杉山委員　ドウカ民族ノ培養基地、或ハ
  食糧確保ノ爲ニ、何處マデモ今ノ御話ノヤ
  ウナ一定限度ノ耕地ヲ保有スル、斯ウ云フ
  確信ノ下ニ邁進セラレルヤウニ御願ヒシマ
  シテ、此ノ點ハ是デ終ツテ置キマス
  第二ニ御尋ネ致シタイ點ハ、旣ニ多クノ
  方ガ述ベテ居ラレマスカラ私ハ重複ヲ避ケ
  マスガ、生產ヲ阻碍致シマスルモノハ、天
  災ヲ除イテ大體四ツアル、ソレハ勞力ノ關
  係ト、資材ノ關係ト、價格ノ關係ト、土地
  制度ノ關係デアル、勞力ノ不足ニ對シマシ
  テハ、先般來有畜機械化ニ依ツテ勞力ノ不
  足ヲ補ツテ行ク、斯ウ云フ御話デ大體了承
  致シタ譯デアリマス、又豫算委員會等デ黑
  澤委員ノ役畜ヲモウ少シ高度ニ利用シタラ
  ドウカ、ト云フ問題ニ付テノ話ナドモ新聞
  デ拜見シマシタカラ、大體有畜機械化ニ依
  ツテ勞力不足ヲ補ツテ行ク、此ノ點ハ了承
  シタノデアリマス、ソコデ今朝モ話ガアリマ
  シタヤウニ、有畜機械化ヲヤルノニハ、ド
  ウシテモ耕地ノ面積ヲ大キクスルコトト、
  集團化シテ行カナケレバナラナイ、集團化
  ヲスル爲ニハ耕地ノ交換分合ガ必要デア
  ル、必然サウナツテ來ルノデアリマスガ、
  耕地交換分合ヲ政府ハ非常ニ奬勵ヲシ、御
  努力ニナツテ居ルニ拘ラズ、私ハ餘リ捗々
  シク行ツテ居ルヤウニ思ツテ居ラナイノデ
  アリマス、ソコデ近頃耕地交換分合ヲヤツ
  タ地方ノ成績ハ、此ノ間大臣モ御話ノ通リ
  非常ニ優秀デアリ、又非常ニ結果ガ好イト
  云フコトモ吾々諒承シテ居リマス、斯ウ云
  フ國家非常時、或ハ又〓糧增產ガ至上命令
  デアルト云フ際デアリマシテ、所有權ノ問
  題ニ觸レルノデハナイノデアリマスカラ、
  政府ハ少シク强權ヲ發動シテ耕地ノ交換分
  合ヲ行ヒ、耕地ノ集團化ヲシテ、サウシテ
  有畜機械化ガ出來ルヤウニ進メテ行ツテハ
  ドウカ、私ハ寧ロ總動員法デモ適用シテ耕
  地ノ交換分合ヲ行ツテハドウカト思ヒマス
  ガ、此ノ點ヲ一ツ伺ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=58

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• 059・井野碩哉

  ○井野國務大臣　耕地ノ交換分合ニ付キマ
  シテハ、今朝程モ御答ヘ申シマシタ通リ、
  農林省ト致シマシテモ極メテ其ノ必要ヲ認
  メ、從來ハ耕地整理法、或ハ開墾助成法等
  ニ依リマシテ、サウ云ツタ問題ノ解決ニ當
  ツテ來テ居ルノデアリマス、今日色々ノ計
  畫ヲシテ見マシテ、サウ云ツタ法規ニ基ク
  交換分合ガ中々困難デアル、手續ガ非常ニ
  面倒デアルト云フヤウナ事態ノアルコトモ
  承知シテ居リマスノデ、何カ手續上簡易化
  スル方法ハナイカ、强權ト云ツテモ全面的
  ニ大キナ力デ、欲セザルモノヲ無理ニスル
  ト云フコトハ面白クアリマセヌカラ、簡易
  ナル組合組織カ、或ハ基礎ハ何等カノ合理
  的ナ方法ニ依ツテセシメ、サウシテ其ノ實
  行ニ當ツテ、或ル程度自由意思モ認メナイ
  デ進ミ得ルヤウナ途モナイモノカト色々〓
  究ハシテ居リマス、同時ニ又、今如何ナル
  コトヲ以テ耕地ノ交換分合ヲヤラセルカト
  云フコトハ、今御答ヘ致ス時期デアリマセ
  ヌガ、サウ云ツタコトニ向ツテハ相當〓究
  ハ致シテ居リマス、成ルベクサウ云ツタ簡易
  ナ手續デ、簡單ニ耕地ノ交換分合ガ出來ル
  ヤウニシテハ參リタイト思ツテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=59

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• 060・杉山元治郎

  ○杉山委員　今ノ御答ヘノ中ニ、耕地整理
  ノ御話モ一寸出マシタカラ、ソレニ關聯シ
  テ一ツ御伺ヒ致シタイコトハ、先程內務省
  ニモ一寸伺ヒマシタガ、耕地整理ノ名目ノ
  下ニ、區劃整理ヲ行ツテ居ル所ハナイカト
  云フコトナノデアリマス、若シ耕地整理ノ
  許可ヲ受ケナガラ區劃整理ヲヤツテ居ルモ
  ノガアルナラバ、是ハ似テ非ナルモノデア
  ツテ、甚ダ宜クナイ、私ハ中ニハ耕地整理
  ノ名目デ區劃整理ヲヤツテ居ルモノガアル
  ノデハナイカト云フ疑ヒヲ持ツテ居ルノデ
  アリマス、若シサウ云フモノガアルト致シ
  マシタナラバ、農林省ハソレ等ニ對シマシ
  テ何カ特別ノ處置ヲ御執リニナルノデゴザ
  イマセウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=60

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• 061・井野碩哉

  ○井野國務大臣　現在ニ於テハ私ハナイト
  思ツテ居リマスガ、斯ウ云フ事例ハアツタ
  ヤウニ思ヒマス、初メハ無論其處ヲ耕地整
  理ヲスル積リデ組合モ作ツテヤツテ居ツタ、
  所ガ其處ガ或ハ新シイ市ニナツタリ、市街
  地ガ延長シテ來タリシタ爲ニ、整理分合ヲ
  シタ後ガ今度ハ宅地ニナツタ、ト云フ例ハ
  聞イテ居リマス、是ハ非常ニ面白クナイコ
  トト思ツテ、サウ云フ場合ニハ助成金トカ、
  サウ云フ方法ニ付テノ色々ナ變更モ命ジタ
  リ、色々ナコトヲシテ居リマス、併シサウ
  云フノハ事態ノ變遷デアリマシテ、當初カ
  ラソレヲ目的トシテ居ルコトデハナイノデ、
  今ノ御質問ノ點トハ違フト思ヒマスガ、御
  質問ノヤウニ、初メカラモウ區劃整理ヲス
  ル爲ニ耕地整理組合法ヲ適用シテヤツテ居
  ルモノハナイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=61

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• 062・杉山元治郎

  ○杉山委員　資材ノ點ニ付テモ色々御尋ネ
  シタイ點ガアツタノデアリマスガ、是ハ重
  複ヲ避ケル爲ニ省略致シマス、價格ノ問題
  デモ既ニ多數ノ委員諸君ノ御話ガゴザイマ
  シテ、大臣トシテハ今直グニ價格ヲ引上ゲ
  ルト云フヤウナコトニ付テハ言明シニクイ
  ト云フ御話モゴザイマシタ、ソコデセメテ
  ハ價格ヲ引上ゲルノデハナクテモ、生產者
  ノ手取リヲ多クスルト云フコトノ爲ニ斯樣
  ナコトガ出來ナイダラウカ、ソレハドウ云
  フコトカト申シマスト、先ヅ米ノ例ヲ取リ
  マスト、食糧營團ガ農民カラ買取リマス時
  ニ、一石デ十「キロ」モ違フ、例ヘバ百五十「キ
  ロ」デ買ツテ、賣渡ス時ニハ百四十「キロ」デ
  渡ス、ソコニ十「キロ」ノ差ガ出テ來ル、運
  輸ノ場合等ニ於キマシテ多少ノ零レトカ、
  サウ云フコトガアルカラ、多少餘計入レル
  ト云フコトモ適當カト思フノデアリマスガ、
  一石デ十「キロ」モ違フト云フコトハ、相當
  ナ違ヒニナツテ來ルト思フノデアリマシテ、
  而モ今日玄米デ買ツテ玄米デ賣ルト云フコ
  トニナリマスト、少シ儲ケ過ギルノデハナ
  イカ、セメテ其ノ違ヒヲ半分ニスルトカ、何
  カサウ云フコトノ考慮ガ出來ナイモノデア
  リマセウカ
  ソレトモウ一ツ一等、二等、三等ト云フ
  ヤウニ、檢査ヲ受ケテ等級デ買取ルガ、賣
  渡ス時ニハ殆ンド一等デ賣ル、今日此ノ等
  級ヲ撤廢スルト云フコトハ困難ナコトデア
  リマセウガ、ソレヲ縮少シテ行クコトニス
  ルト、生產者ニ多少ノ利益ヲ與ヘルコトガ
  出來ルト思フノデアリマス、セメテ價格ヲ
  引上ゲルコトガ出來ナケレバ、ソレ位ナコ
  トハ出來ナイモノカドウカ、若シ之ヲ農民
  自體ガ知ツテ來ルト先程カラ色々御話ガ
  アツタヤウニ、國策會社ガボロ儲ケヲシ過
  ギルト云フ不平ノ問題モ起ツテ、是ハ生產
  上ニモ惡影響ヲ及ボシテ來ルト存ジマス、
  是等ニ對シテ何カ適當ナ處置ガ執ラレナイ
  ダラウカ、斯ウ云フコトヲ考ヘテ居リマス、
  此ノ點ニ付テノ御考へヲ承リタイト思ヒマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=62

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• 063・井野碩哉

  ○井野國務大臣　只今杉君ガ御述ベニナ
  リマシタ食糧營團ガ農民カラ百五十「キロ」
  デ買ツテ百四十「キロ」デ賣ルト云フ御話デ
  アリマスガ、食糧營團ハ直接農民カラ米ハ
  買ツテ居リマセヌ、現在デハ總テ供出米ハ
  政府ガ買ツテ居リマス、政府ガ買ヒマシテ、
  ソレヲ食糧營團ヲ通ジテ拂下ゲマス際ニ於
  テ、食糧營團ノ色々ナ業務上ノ費用等ヲ見
  テ、餘リ多クノ利潤ヲ與ヘズシテ消費者ニ
  賣渡シテ居リマスノガ、現在ノ價格デアリ
  マス、其ノ渡シ方ニ付テハ、或ハ玄米ヲ精
  白致シマスカラ百四十「キロ」トシテ渡ス場
  合モアリマスシ、又違ツタ渡シ方モ致シテ
  居リマスガ、ソレハ別段百五十「キロ」デ買ツ
  タ同ジ値段デ百四十「キロ」デ賣ルト云フノ
  デハナク、色々政府トシテモ麥、外米等ヲ
  混ジテ、綜合配給ヲ致シテ居ル譯デアリマ
  シテ、食糧營團ハ決シテ其ノ爲ニ儲ケテ居
  ルノデハナイノデアリマス
  次ニ二等米、一等ノ區別ガ消費者ニハ
  ナイノニナゼ設ケテ置クカト申シマスト、
  ヤハリ是ハ生產者ノ立場ヲ考ヘテ行カナケ
  レバナラヌ、生產者トシテ良イ物ヲ作ツテ
  モ、惡イ物ヲ作ツテモ、同ジ値段デ買ハレ
  ルト云フノハ氣ノ毒デアリマスカラ、自ラ
  ソコニ政府ガ買入レマス場合ニ一等、二等、
  三等ノ區別ヲ付ケテ居リマスケレドモ、買
  ヒマシタモノハ政府ガ一切ノ綜合計算ニ依
  リマシテ、食糧營團ニ混合シテ配給シテ居
  リマスカラ、今日デハ殆ドサウ云フ點ユ節
  約ノ餘地ガ少イヤウニナツテ居リママ、尙
  ホ先般五十圓ト云フ二重價格ヲ執リマシタ
  際ニモ、利潤ノ節約ト云フ點ハ隨分切詰メ
  テ致シマシタカラ、モウソコニハ殆ド引上
  ゲル餘地ハナイモノト御考ヘヲ願ヒタイノ
  デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=63

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• 064・杉山元治郎

  ○杉山委員　今大臣ノ御話ノヤウニ精白ヲ
  スルト色々胡麻化スト云フト語弊ガアリ
  マスガ、其ノ間ノ操作ガ能ク分ラナカツタ
  ノデアリマス、ケレドモ先程申シマスヤウ
  二、玄米ヲ渡シテ玄米デ賣ツテ居ルト云フ
  コトニナリマスト、政府ハソコデ儲ケテ居
  ルト云フコトデナケレバ結構デアリマスガ、
  農民自體ハサウ考ヘテ居リマセヌノデ、ソ
  コニ一ツノ面白クナイ氣分ガ起ルノデハナ
  イカト云フ點ト、渡ス時ニハ一等、二等、
  三等デ渡シテ、消費者ガ一本デ買フト云フ
  コトハ不合理デアル、斯ウ云フ氣持ハアチ
  ラコチラデ起ツテ居リマス、其ノ點ヲ十分
  御考慮願ツテ、今後何カノ場合ニ御改正願
  ヘレバ大變幸ヒダト思ツテ居リマス
  最後ニ私ハモウ一點、土地制度ノ問題ニ
  付テ御伺ヒシテ置キタイト思フノデアリマ
  ス、土地放棄ノ現象ニ付キマシテハ、色々
  各委員カラモ申上ゲマシタカラ、ソレニ付
  テハ申シマセヌ、併シ其ノ土地ノ放棄ヲ致シ
  マスル者ハ、自作農デハナクシテ殆ド小作
  農デアルト云フコトハ明瞭ナ譯デアリマス、
  ナゼ小作農ガ土地ヲ放棄スルカト申シマ
  スナラバ、所謂從來ノ高率ナ小作料デ土
  地ヲ耕作シテ居リマスルヨリモ、今日ノヤ
  ウナ他ニ勞働收入ノ多イ時ハ、其ノ方ニ轉
  ズル方ガ宜イト云フコトカラシテ、自然土
  地放棄ガ生ズルコトト思フノデアリマス、
  ソコデドウシテモ土地放棄ノ現象ヲ多少デ
  モ防止シテ行クノニハ、小作料ノ適正ヲ圖
  ラナケレバナラヌ、斯ウ云フコトニ當然ナ
  ツテ來ルト思フノデアリマス、又今日マデ
  ニ於キマシテモ、耕作權ノ確立シタ地方ニ
  於キマシテハ、小作農ト雖モ相當ニ增產ヲ
  シテ居ルコトハ旣ニ御承知ノ通リデアリマ
  ス、ソコデ私ハ此ノ際ニ農地調整法ナリ、
  或ハ農地委員會ト云フモノヲモウ少シ强化
  改善シテ、モツト積極的ニ適正小作料ト云
  フモノヲ進メテ行クトコトニ付テノ御意見
  ハドウカト云フコトガ一ツデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=64

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• 065・井野碩哉

  ○井野國務大臣　小作料ヲ適正ナラシメル
  ト云フコトハ當然必要ナコトデアリマスガ、
  如何ナル手段ヲ以テスルカト云フコトニ色
  色ノ問題ガアル譯デス、是ガ又行キ過ギマス
  ト、却ツテ小作爭議ヲ誘發スル虞モアリマ
  ス、地主トノ間ニ能ク話合ヒヲ付ケテ、サ
  ウシテ適正ナル小作料ニ直シテ行クト云フ
  コトハ、至極農林省トシテモ望ンデ居ルコ
  トデアリマス、隨テ今日ハ農地委員會等ノ
  議ヲ纏メテ、其ノ適正化ヲ圖ツテ居リマス
  ガ、之ヲ强化スルトカ、又强力ヲ用ヒテ、
  餘リ欲セザルモノヲ無理ニソコヘ導イテ行
  クト云フヤウナ行キ方ヲシマスト、折角平
  和ナル狀態ニ波瀾ヲ起スコトニナルノデア
  リマスカラ、其ノ行キ方ニ付テハ餘程農林
  省トシテモ、今日戰爭中デアリマスカラ考
  慮ヲ加ヘテ居ル譯デアリマス、御氣持ノ點ニ
  付テハチツトモ私共異議ハゴザイマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=65

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• 066・杉山元治郎

  ○杉山委員　今日ノ農地委員會ニ任セテ置
  イテハ一寸適正小作料ハ難カシイ、私モ農
  地委員ノ一人デアリマスガ、行ツテ見マス
  ト九分九厘ハ地主諸君デアリマシテ、中ト
  ハ目覺メタ地主諸君モアリマスケレドモ、
  ドツチカト云フト利害關係ガ深イノデアリ
  マシテ、小作料ノ引下ゲト云フコトハ難カ
  シイ、斯ウ云フ現象ガアリマスノデ、ヤハ
  リ紛議ヲ起スト云フコトデナシニ、適正小
  作料ヲ進メルニ付テモ、モウ少シヤハリ農
  地調整法ナリ、或ハ農地委員會ノ內容ヲ改
  善シテ行カナケレバ、是ハ到底難カシイト
  思ヒマス、サウ云フ意味ニ於テ、土地放棄
  ノ現象ヲ防止スル爲ノ適正小作料ガ必要ダ
  ト云フコトニ御同意ニナリマスナラバ、是
  非此ノ點ヲモウ少シ强化シテ戴キタイ、斯
  ウ云フヤウニ考ヘルノデアリマス
  第二ニ御伺ヒシタイ點ハ、自作農ノ創設
  ノ問題デ、旣ニ明カニナツテ居リマスカラ
  私ハ多クヲ言ハナイノデアリマスガ、自作
  農創設ノ困難ナ一ツハ、先般前川君ノ話モ
  アリマシタヤウニ、土地價格ノ問題デアリ
  マス、今ノ農地價格統制令ニ依ツテ定メラ
  レタ價格デハ、地主諸君ハ到底賣ラナイ、
  アノ價格デアリマスナラバ、恐ラク今日ノ
  小作人ハ、之ヲ買ツテ自作農ニナツテモ間
  ニ合フト存ズルノデアリマス、所ガ一方ハ賣
  ラナイ、ソコデ此ノ間前川君ノ質問ニ對シ
  テ大臣ハ、土地價格ノ引上ゲヲ考慮シテ居
  ル、斯ウ云フ御話デアツタノデス、帝國農會
  アタリノ決議ニ依ツテモ、地主諸君ガ土地價
  格ノ引上ゲヲ要望シテ居ル點モ了承致シテ
  居ルノデスガ、其ノ土地價格ヲ引上ゲル場
  合ニ其ノ引上ゲタ價格デ自作農ヲ創定スル
  ト云フコトニナリマスト、自作農ニナリマス
  者ハ、從來成績ガ旨ク行カナカツタトヤハ
  リ同樣ナ轍ヲ履マナイカ、斯ウ云フ心配ヲ致
  スノデアリマス、若シ土地價格ヲ引上ゲルト
  云フコトナラバ、其ノ引上ゲル部分、卽チ
  統制令ノ價格以上ノ部分ヲ、ヤハリ政府ガ
  何カ特別ナ援助ナリ補償ヲスルカ、乃至ハ前
  川君モ一寸觸レタノデアリマスガ、其ノ引上
  ゲタ價格デ自作農ヲ創設スルト云フナラバ、償
  還年限ヲ延長シテ支拂ノ率ヲ少クシテヤル、
  斯ウ云フ二ツノ方法デナカツタナラバ、自
  作農ノ成功ハ覺束ナイノデハナイカ斯ウ
  云フ觀點ヲ私ハ持ツテ居リマスノデ、土地
  價格ヲ引上ゲルナラバ、ソレニ對シテ農民
  自身ニ負ハスノデナクシテ、政府ガ補償ス
  ルコトガ出來ルカ、或ハ出來ナイトスルナ
  ラバ、償還年限ヲ三十年トカ、三十五年ト
  カ、或ル年限延長シテ、樂ニ返還シ得ルヤウ
  ナ方法ヲ執ルヤウニ政府ノ方ニ御考ヘハナ
  イカト云フ點デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=66

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• 067・井野碩哉

  ○井野國務大臣　先般前川君ガ御質問ニナ
  リマシタ時ニ、私ハ農地價格ヲ引上ゲルト
  云フコトハ申サナイノデアリマス、新聞ニ
  唯サウ云フ風ニ出マシタカラ私モ非常ニ迷
  惑ニ存ジテ居ルノデアリマスガ、アノ時ニ
  ハ自作農創設標準價格ニ付テ考慮ヲ加ヘテ
  居ルト云フコトヲ申シタノデアリマス、ソ
  レヲ農地價格自體ト新聞記者諸君ガ間違へ
  テ書カレタノデ、是ハ非常ニ私迷惑シテ居
  リマス、併シ標準價格ニ付キマシテハ今申
  シタ通リ、今日ノ自作農規則ヲ作リマシタ
  時ハ自由經濟時代デアリマシテ、今日ハ殆
  ド米價モ動カズ、又其ノ他ノ點モ違ヒマス
  カラ、サウ云フ點ニ考慮ヲ加ヘタイト云フ
  コトヲ申シタノデアリマスカラ、此ノ際誤
  解ノナイヤウニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=67

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• 068・杉山元治郎

  ○杉山委員　ソレデ標準價格ニシマシテモ、
  引上ゲルトスレバ、今言フヤウナ結果ニナ
  ルノデハナイデセウウカ、現在ノヤウナ價
  格ナラバ、小作農ノ方モ考ヘテ見テ何トカ
  旨ク行クノデハナイカト考ヘテ居ル譯デス
  ガ、若シ是レ以上ニ高クナレバ、從來旨ク
  行カナカツタ轍ヲ履ムノデハナイカ、斯ウ
  云フ考ヘヲ持ツテ居リマス、今ノ價格ヨリ
  高クナレバ、何カ政府ノ方デソレニ對スル
  處置ガアルカ、或ハ年限ニ付テ何カ御考ヘ
  ガアルカ、之ヲ御伺ヒシタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=68

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• 069・井野碩哉

  ○井野國務大臣　現在ノ農地價格ハ、大體
  標準價格ヨリハ相當高クナツテ居リマス、
  隨テ其ノ標準價格ガ今ノヤウニ低イト、自
  作農創設資金ノ融通額ガ少イ、結局現在ノ
  公定價格ダケ一杯ニ農地資金ヲ貸スト云フ
  譯ニイカナイ、ソコニ自作農創設ノ上ニ於
  テ非常ナ支障ガアルカラ、サウ云フ點ヲ直
  シテ行カウト云フコトヲ申シタノデアリマ
  ス、然ラバ今日ノ農地價格自體デ自作農創
  設ガ困難ナリヤ否ヤト云フ問題ハ、別ニ又
  考慮致シマス、此ノ點ニ付テハ先般モ御答
  ヘ申上ゲマシタ通リ、或ハ農地ニ改良ヲ加
  ヘ、其ノ他色々ノ事情ガ加ハリマスト、地
  方長官ノ許可デ以テ現在ノ公定價格ヲ動カ
  セルヤウニナツテ居リマス、既ニ許可シタ
  例モ數百件アツタト思ヒマス、サウ云ツタ
  ヤウナ運用デ或ル程度直セマス、又地方的
  ニ現在ノ農地價格ガ不適當デアルト云フ場
  合ニハ、是ハ又主務大臣ノ許可ヲ得マスレ
  バ直セルヤウニナツテ居リマス、其ノ直
  シタ例モ三、四件ゴザイマス、サウ云ツタ
  ヤウナ譯デ、今日ノ農地價格統制令ノ運用
  デ進ミ得ルト私共ハ大體考ヘテ居リマスノ
  デ、餘リニ農地ヲ高クスルコトニ依ツテ、
  自作農ヲ創設致シマシテモ、創設者ガ今度
  ハ自作農ガ維持出來ナイ、斯ウ云フコトニ
  ナリマスカラ、其ノ邊ハ政府トシテモ十分
  考ヘテ進ンデ行カナイト過チヲ生ズル、斯
  ウ思ツテ居リマス

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• 070・杉山元治郎

  ○杉山委員　私ノ質問ハ是デ終リマス

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• 071・東郷實

  ○東郷委員長　此ノ際御諮リ致シテ置キマ
  ス、本委員會ハ委員諸君ノ非常ナ御勉强デ
  進ンデ參ツテ居リマスガ、明日ノ午後カラ
  ハ豫算ノ方ガ分科會ニ移ルラシイノデ、部
  屋ノ都合ナリ、速記等ノ關係デ、從來通リ
  或ハ連日開ケナイヤウナ事情ニナルカモ知
  レヌト思ヒマス、然ルニ農業團體法案關係
  ノ一般的御質問ガマダ十名バカリ殘ツテ居
  ルノデアリマスガ、今日ト明日ノ午前中ダ
  ケシカ會議ガ開ケナイ事情ニナツテ居リマ
  スカラ、出來ルナラバ明日ノ午前中マデニ
  此ノ問題ダケハ一應終了サセタイト思ヒマ
  スカラ、ドウカ御同意ノ上御協力願ヒタイ
  ト存ジマス、尙ホ度々申上ゲマスガ、左樣
  ナ次第デ餘程時間等モ節約シテ行カナケレ
  バナラヌノデアリマスカラ、成ベク重複シ
  ナイヤウニ、簡明率直ニ御質疑ヲ進メラレ
  ンコトヲ希望致シマスー-北勝太郞君

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• 072・北勝太郎

  ○北(勝)委員　政府ハ新農業團體ニ對シテ
  原始生產方面ダケヲ受持タセラレテ、將來依
  然トシテ其ノ範圍ヲ出デナイ所ノ指導方針
  デ行カレルノデハナカラウカ、是ハ一ツ率
  直ニ政府ノ御方針ヲ承ツテ置キタイノデア
  リマス、今日マデ農業者ノ團體、特ニ產業
  組合ガ旣ニヤツテ居リマス事業デ、誰ガ見
  テモ其ノ儘立派ニ統制ガヤツテ行ケル、統
  制ノ目的ガ達セラレルト云フニモ拘ラズ、
  從來ハ業者ニ對スル政治的顧慮カラ、加工
  其ノ他ノ利益面ノ事業ヲ特ニ切離シテ、各
  種ノ會社ヲ作ラシテ、其ノ方ニ事業ヲ移行
  サセテ來タ傾向ガアル、其ノ結果是等ノ會
  社ハ、生產者トハ直接ノ繋リヲ失ツテシマ
  ツタノデアリマシテ、ソレガ生產ノ增强ニ
  非常ナ障碍ニナツテ居ルコトヲ私共ハ認メ
  サルヲ得ナイノデアリマス、殊ニ農產物ハ國
  民生活ニ重大ナ影響ヲ持ツ食糧トカ、原
  料トカ云フヤウナモノデアル關係上、吾々
  カラ言フト、相當ニ無理ノ掛ツタト思ハレ
  ル價格ニ据置カレテ居ルノデアリマス、サ
  ウ云フ關係ニ於テ、從來生產者ニ還元サレ
  テ居タ色々ノ特典ヲ失ツタノデ、農家ハ價
  格ガ生產費ヲ償ハナイト、忽チ生產ヲ止メ
  テシマフト云フヤウニナツテ居ルノデアリ
  マス、是ガ若シ加工面カラ其ノ利益ヲ還元
  セラレルト云フコトデアレバ、當然生產ヲ
  停止スルモノガ停止セズニ濟ム、原始生產
  ガ減リマスト、丁度電動機ガ止ツタヤウナ
  モノデ、折角ノ立派ナ機構ガ出來テ居ツテ
  モ役ニ立タナイ、斯ウシタ羽目ニナラナイ
  ヤウニ、新團體ガ出來マシタナラバ、原始
  生產ダケニ其ノ事業ヲ止メルト云フヤウナ
  コトデナクテ、加工其ノ他ノ利益面、及ビ
  手數料等ノ經費以外ノ過剩分ヲ生產者ニ還
  元スルト云フヤウニ出來マスト云フト、是
  ハ生產增强上大變都合好イコトニナルノデ
  ゴザイマス、ソコデ新團體ニ是等ノモノヲ
  讓ラセル、會社其ノ他ノモノヲ整理シテ是
  等ノモノニ讓ラセル、ソレト同時ニ關係シ
  テ居ツタ業者ヲ新團體ニ吸收シテ一體化ス
  ル、斯ウ云フヤウニシマスト、生產者ノ方
  デ言ヒマスト、一體化ニ依ル所ノ生產ノ責
  任ト云フモノガ生ジテ來ルノデアリマス、
  此ノ繫ガリガ出來ルコトニ依ツテコソ、
  精神的ニモ經濟的ニモ、眞ニ增產ガシ易ク
  ナルノダト思フノデアリマス、斯ウシマス
  コトハ、現在生產增强ノ重大課題デアルト思
  フノデアリマス、單ニ新團體ニ原始生產ノ
  ミヲ受持タスト云フヤウナ傾向ヲ一擲シテ、
  各種ノ會社ヲ整理シテ此ノ新團體ニ移讓サ
  セル、而モ業者ヲモ新團體ニ吸收シテ行ク
  ト云フ指導方針ヲ執ラルル御考ヘハナイダ
  ラウカ、之ヲ一ツ承リタイノデアリマス

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• 073・井野碩哉

  ○井野國務大臣　新農業團體ニハ、單ニ原
  始產業ノ生產ナリ指導ヲ致サセルト云フ風
  ニ限定ハ致シテ居リマセヌ加工部門モ勿論
  必要ニ應ジテソレニヤラス制度ニナツテ居
  リマス、唯從來ハ商業者方面トノ摩擦相剋、
  所謂反產運動ト云フコトトノ調和ヲ考ヘツ
  ツ、其ノ事業ニモ自ラ限度ヲ決メテ參ツタ
  ノデアリマスガ、今日ハソレ等ガ或ハ國策
  會社トナリ、或ハ法令ニ執ク統制機關トシ
  テ、兩者ガ互ヒニ資本ヲ出資シ合ヒ、人モ
  互ヒニ其處ニ入リ合ツテ、其ノ仕事ヲヤツ
  テ行クヤウナ事態ニナツテ來タノガ、其ノ
  沿革デアリマス、然ラバ今度新農業團體ガ
  出來タラ、ソレ等ノ國策會社ナリ、或ハ配
  給統制機關ヲ新農業團體ニ直チニ吸收スル
  ノガ適當デアルカドウカト云フコトハ是
  ハ唯人的構成ヲ吸收スルト云フコトガ片付
  クダケテハ片付カナイ、資本關係ヲ一體ド
  ウスルカ、資本ノ吸收ト云フコトハ一體出
  來ルカドウカ、ト云フコトモ十分〓究シテ
  見ナケレバナリマセヌ、勿論ソレ等ノ點ニ
  付キマシテハ、新團體ニ出來ルダケ私モ機
  能ノ統一化ヲ圖ツテ參リタイト思ツテ居リ
  マス、折角一ツ〓究シテ見タイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=73

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• 074・北勝太郎

  ○北(勝)委員　サウ云フ場合ニ一番障碍ニナ
  ルノハ、業者側ノ古イ對立觀念ダト思フノ
  デアリマス、是ハドウシテモ拭ヒ去ツテシ
  マフ必要ガアル、サウスレバ簡單ニ出來ル
  ノデ、資本問題モサウ難シイコトハナイト
  私共ハ考ヘルノデアリマス、ドウカ一ツサ
  ウ云フ方面ヲ特ニ御〓究願ヒタイト思ヒマ
  ス
  其ノ次ニ米價問題ニ付キマシテハ、過日
  來ノ質疑應答ニ依ツテ大體大臣ノ意ノアル所
  ヲ承ツタノデアリマスカラ、重ネテ御尋ネスル
  コトハ差控ヘタイト思ヒマスガ、此ノ際特ニ
  附加ヘテ御伺ヒシタイコトハ、低位生產地帶
  ニ對シテ、如何ナル方策ヲ以テ進ンデ行カレ
  ルカト云フコトデアリマス、今低位生產地帶ト
  シテノ北海道ノ實例ヲ申シマスト、事變以來
  ト北海道デハ既ニ約十万町步ノ田畑ガ荒レテ
  居ル、其ノ內水田ノ荒レテ居ルノハ一万二千
  町步、是ハ總反別ガ非常ニ少イカラデアリマ
  スガ、兎ニ角一万二千町步ノ水田ガ荒レテ
  シマツタノデアリマス、是ハ何レモ生產力
  ノ低位ナ農家カラ段々離農シテシマツタノ
  デアリマス、最近農會ナドニ離農ヲ申出デ、
  或ハ經濟上ノ相談ヲ持掛ケテ來ル者ナドニ
  付テ、其ノ內容ヲ聽イテ見マスト、必ズシ
  モ是等ノ人達ハ時局ヲ認識シナイデ、利ヲ
  追ウテ去ラウト云フノデハナイ、全ク經濟
  的ニ根據ヲ失ツタ悲慘ナル農家ガ多イノデ
  アリマス、ソレハ生產費ガ餘リニモ償ハヌ
  ノト、ソレカラ借金ガアル、サウ云フ者ニ
  限ツテ借金ガアル、ドウシテモ我慢シ切レ
  ナクツタ所ノ、洵ニ氣ノ毒ナ農家ナノデア
  リマス、私ハ最近北海道ノ二大米作地デア
  ルト言ハレル空知、上川ノ各米作地ニ付テ
  代表的ナモノヲ調ベタ、私ハ空知地方ヲ調
  ベタノデスガ、上川地方ハ特ニ北海道農會
  デ調ベテ貰ツタ、所ガ兩方トモ不思議ニ同
  ジヤウナ數字ガ出テ來タノデアリマス、是
  ハ大變難シイ調査ヲシテ居ルノデアリマス、
  自作農上、自作農中、自作農下、小作農上
  中、下ト云フ工合ニ、各名前マデアルノデス
  ガ、農家名簿ニ從ツテ精細ニ調ベタモノデ
  ス、其ノ中特ニ一番分リ易タ、一石當リノ
  生產費ガドウナツテ居ルカト云フ調査ヲ申
  上ゲテ見マスト、自作農上ハ一石當リガ六
  十圓九十四錢、自作農中ガ七十一圓五十六
  錢自作農下ガ七十四圓五十三錢、小作農
  上ガ六十二圓九十二錢、小作農中ガ七十五
  圓八十錢、小作農下ガ八十圓六十九錢、斯
  ウ云フ數字ニナツテ現ハレテ居ルノデアリ
  マス、ソコテ低位生產農家ハ何レモ生產費
  ヲ償ハヌコト非常ニ遠イ、少々位テ我慢シ
  切レル程度ノモノデハナイノデアリマス、
  從來ノ農業ヲソレガ爲ニ繼續スルコトガ出
  來ズ、我慢シ切レヌト云フ所マデ來テシマ
  ツテ居ルノデアリマス、ソコデ先日來承ツ
  タ自作農創設、或ハ皇國農村確立等ノ農林
  省ノ根本方針ノコトハ、大體分ツテ居ルノ
  デアリマスガ、先ニ申上ゲマシタヤウナ低
  位生產農家ニ對シテ、特ニ如何ナル手ヲ差
  伸ベテ之ニ農業經營ヲ繼續サセヨウトセラ
  レルノデアルカ、是等ノ方策ヲ一ツ承ツテ
  見タイト思フノデアリマス

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• 075・井野碩哉

  ○井野國務大臣　今日ノ米ノ生產費、是ハ
  大體中庸生產費ヲ執ツテ居リマスカラ、低
  位農家カラ見レバ、其ノ生產費ガ今日ノ米
  價デ以テ償ハヌト云フ所ハアラウカト思ヒ
  マス、然ラバ此ノ低位農家ニ對シテドウ云
  フ施策ヲ講ズルカト云フコトニナリマスルト、
  是ハ價格政策デハ中々解決付カナイ、結局
  其ノ低位農家ノ農業經營ヲシテ合理化セシ
  メ、サウシテ生產費ノ低下ヲ圖ツテ行クコ
  トニ努力ヲ致サナケレバナラヌト思ツテ居
  リマス、隨テ例ヘバ水田ノ如キモノモ、其
  處デ無理ニ水田ヲサセルコトガドウシテモ
  農業經營ノ上カラ無理ダト云フ場合ニ於キ
  マシテハ、今マデハ相當水稻中心デアリマ
  シタカラ、經濟的ニ他ニ轉作スルコトモ禁
  ジテ居リマシタケレドモ、ヤハリ農業經營
  ト云フ見地カラ、サウ云フ點ハ十分考ヘ
  ナケレバナラヌト云フコトヲ思ツテ居リマ
  シテ、假ニ外ノ農作物デ、勞力モ要ラズ、
  肥料モ要ラズ、相當有利ナモノガアルト云
  フコトデアリマスレバ、サウ云フ點モ考ヘ
  是等ノ施策ト相俟ツテ、低位收穫農家ノ向
  上ヲ、北海道等ニ於テハ考ヘテ行カナケ
  レバナラヌノデハナイカト思ツテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=75

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• 076・北勝太郎

  ○北(勝)委員　其ノ場合一ツ癌ニナリマスノ
  ハ、北海道デハ例ノ土功組合、內地ノ丁度
  耕地整理組合ニ當ルモノデス、是ガ非常ニ
  癌ニナルノデアリマシテ、一反步ニ五圓六
  圓ト云フヤウナ、サウシタ費用ガ餘分ニ掛
  ツテ居ル、ソコデ困ツタ農家ヲヨリ以上ニ
  困ラスコトニナルノデアリマシテ、ヤハリ
  成ベクハ現在ノ米作狀況カラ見テ、其ノ地
  デ仕事ヲ繼續サセテ行クコトガ必要ダト思
  ハレルノデアリマス、斯ウシタ低位生產農
  家ニ對シマシテ、其ノ窮狀ヲ打開スル一ツ
  ノ方法トシテ、土地改良ヲモツト積極的ニ
  ヤラセナクテハナラナイト思フノデアリマ
  ス、卽チ自分ノ耕作地ヲ改良シナガラ、其
  ノ事業ニ依ツテ勞銀收入ガ得ラレルト云フ
  ヤウナ途ヲ開カナクチヤイケナイト思ヒマ
  ス、サウシテ其ノ土地ノ生產ヲ高メテ行
  〃、是ガ一番手ツ取リ早ク役ニ立ツ方法
  ダト思フノデアリマス、御承知ノ通リ土
  地改良ハ暗溝排水、其ノ他實ニ大キナ費
  用ガ掛リ、是等ノ弱イ農家ガ土地改良ヲ
  シテ、徐々ニ生產ノ高マツテ來ルノヲ待ツ
  テ、サウシテ自分ノ經濟ヲ好クシテ、農業
  ヲ繼續シテ行カウト云フコトハ殆ド難シイ
  コトナノデアリマス、勿論其ノ效果ハ永年
  的ニ見レバ、隨分大キイモノデアリマス、
  併シ差當リドウカト云フト、ソレハ澤山ノ費
  用ヲ掛ケタモノヲ直グ取リ戾スト云フコト
  ハ出來ナイノデアリマス、是等ノ低位生產
  農家、或ハ低位生產地帶、サウ云フ方面ニ對
  シテノ土地改良ニ對シテハ、特別ニ政府ノ補助
  率ヲ高メナケレバナラナイ、現在四割程度
  ヤラレテ居ルガ、四割程度デハ出來ナイ、
  少クトモ六割、七割、此ノ前ノ凶作ノ時ニ
  ハ七割ニヤツタコトガアルノデアリマスガ、
  隨分澤山農家ガヤツタ實例ガアリマス、斯
  ウ云フ方法ヲ是非採ツテ戴キタイモノダト
  思フノデアリマス、之ニ付テドウ云フ御
  用意ガアリマスカ、依然トシテ四割ノ範圍
  ヲ出デナイモノデアルカ、何トカ伸縮性ノ
  アル方法ガアルノデアリマスカ、ソレヲ一
  ツ伺ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=76

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• 077・井野碩哉

  ○井野國務大臣　北海道ノ農業經營合理化
  竝ニ其ノ生產費低下ニ付キマシテ、土功組
  合ノ組合費ガ非常ナ禍ヒヲ成シテ居ルコト
  モ能ク承知シテ居リマス、隨テ今御話ノヤ
  ウニ、耕地改良ノ問題ニ相當ノ重點ヲ置イテ、
  經營ノ改善ヲ圖ツテ行クコトガ適切デアルト
  考ヘテ居リマスガ、今日補助案等ニ付キマシ
  テハ、今マデノ沿革モアリ、各府縣トノ色
  色ノ均衡モアリマスノデサウ云ツタ割合デ
  助成ヲシテ居ルコトト思ヒマス、是等ハ事
  情ヲ能ク考ヘマシテ、直セルモノガアレバ
  直シテ行キタイト思ヒマス、今ハ何モ其ノ
  手ヲ持ツテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=77

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• 078・北勝太郎

  ○北(勝)委員　其ノ次ニ私ガ伺ヒタイノハ、
  小サイ問題ノヤウデアリマスガ、米ノ檢査、
  等級竝ニ格差ノ問題デアリマス、先程申シ
  マシタヤウニ低位生產農家ハ、實ハ其ノ收
  穫スル米ハドウシテモ等級ガ惡イ、又格差
  ガ付キ過ギルト云フコトニナリ勝チデアリマ
  ス、收入ガ少イ上ニ値段ガ安イノデ、二重
  ノ苦シミヲシテ居ルノデアリマス、格差ハ
  曩ニ一圓方縮少サレタノデハアリマスガ、
  今日ハ既ニ時代ガ飛躍的ニ變ツテ來テ居ル
  ノデアリマシテ、現地デ生產シタモノハ現
  地デ成ルベク消費サセルト云フヤウナ方
  法ソレカラモウ一ツハ格差ノ一ツノ要素
  ニナツテ居リマスル米ノ質、所謂味覺、斯
  ウ云フ贅澤ヲ云フ時代デハナクナツタノデ
  アリマス、申スマデモナク戰時下ニ於テ
  ハ、質ヨリハ量ト云フコトニナツテ來テ居
  ルノデアリマシテ、此ノ量ノ時代ニ作ラレ
  タ所ノ等級ノ付ケ方、或ハ格差ノ設ケ方
  ハ、ドウ考ヘテモ時代ニ合ハナイモノデア
  ルト思ハレルノデアリマス、ソコデ重量ガ
  同ジ量デアルナラバ、「カロリー」ニハ變リ
  ナイ筈デアリマス、ソコデ質本位デ少數ノ
  味覺ノ良イモノノ品種ニ向ハセルト云フヨ
  リハ、寧ロ量本位デ生產ノ多イモノヲ、耕作
  サセルト云フ方向ニ、農家ノ耕作ヲ持ツテ
  行カナケレバナラナイ、斯ウ云フヤウナコ
  トカラ考ヘマシテモ、是ハ一ツ格差ト等級
  ト云フモノハ、ウント縮メナケレバナラヌ
  ト思フノデアリマス、米ハ今日重量制ガ各
  地デ行ハレテ居ルノデスガ、重量制以外ノ
  モノハ、ソレハ容量ノ目方ニ應ジマシテ格
  差ガ付クノハ已ムヲ得マセヌガ、重量制ノ
  モノニ付テハ格差ヲ付ケナイ、或ハ等級ニ
  付テモ極メテ狭イ範圍ノ等級、卽チ合格、
  不合格ト云フ範圍ノ等級ニ止メルト云フヤ
  ウナ方法ヲ執ルコトガ必要デアラウト思ハ
  レルノデアリマス、ソコデ要約シテ言ヒマ
  スト、格差等級ハ合格、不合格ノ二種類位
  ニ縮メル、ソレカラ重量制ノ米ハ格差ヲ設
  ケナイ、容量制ノモノニ限ツテ重量ニ應ジ
  タ程度ノ格差ヲ付ケル、斯ウ云フヤウニシ
  マスコトハ、前ニ申シマシタ低位生產農家
  ヲ此ノ際、救ヒ上ゲル有力ナ方法デアルト
  思フノデアリマスガ、之ニ對スル當局ノ御
  所見ヲ伺ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=78

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• 079・井野碩哉

  ○井野國務大臣　北海道米ノ銘柄、格差ニ
  付キマシテハ、自由經濟時代ニ東京市場ニ
  北海道米ガ參リマシテ、他縣ノ銘柄ノ米ト
  色々比ベテ見マスト、品質ガ落チ、味ガ落
  チルト云フコトカラ、自ラ自然ノ價格ガ餘
  程低位ニ決マツテ居ツタノデアリマス、其
  ノ影響ガ北海道自體ニ於キマシテモ、消費
  者ノ手ニ渡ル時ニ、其ノ價格ガ、東京マデ
  ノ運賃ハ北海道デハ要リマセヌカラ、其ノ
  價格デ以テ北海道ニ拂下ゲテ居ツタノデア
  リマシテ、消費者ニ對スル價格ハ、尙ホ一
  層安イ價格デ拂下ゲラレテ居ツタノデアリ
  W 、サウ云フ關係デ、今日ハ所謂國家管
  理ニナリマシテ、米ノ品質モ餘リ問題ニセ
  ズ、又銘柄等モサウ重キヲ置カナクナリマ
  シタノデ、先般第一段ノ改正ハ致シタノデ
  アリマス、丁度二重價格制度ヲ作リマシタ
  際ニ、北海道ダケハ他府縣ト比ベテ非常ニ
  上ゲタノデアリマス、銘柄ノ差モ縮メ、又
  格差モ今御話ノヤウニ一圓方縮メマシタ、
  サウシテ北海道ノ生產者ニ有利ナル解決ヲ
  一應シタノデスガ、其ノ爲ニ北海道ノ消費
  者ニハ、米ノ價格ガソレダケ上ルト云フ結
  果ニナルノデアリマスカラ、一時ニ直スコ
  トハ是モ低物價政策ノ上カラ申シマスト色
  色支障アリマスノデ、アノ程度ノ改正ヲ以
  テ進ンダノデアリマスガ、今後斯ウ言ツタ
  方面ニ付テハ、今言ハレタヤウナ氣持デ銘
  柄格差ニ付テハ考慮ヲ加へテ行キタイト
  思ツテ居リマス

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• 080・北勝太郎

  ○北(勝)委員　其ノ次ニハ事務的ノコトニ
  付テ重政政府委員ニ伺ヒマス、町村農業會
  ノ經費ノ決算ノ形式ハドウ云フ風ニナルカ
  ト云フコトデアリマス、例ヘバ出資部門等
  ハ是ハ特別會計デ扱ツテ行ク、斯ウ云フ工
  合ニサレルノデアリマセウカ、果シテサウ
  ダトシマスト、出資部門ト經費部門トノ間
  ニ、色々錯雜シタ分ラナイモノガ出テ來ル、
  例ヘバ人件費デ申シマシテモ兩方ノ支出ヲ
  シテ居ル、ドチラノ經費ヘ持ツテ行ツテ宜
  イカト云フヤウナ、其ノ歸屬ガ分ラナイト
  云フコトガアラウト思ヒマス、今日殊ニ吾
  吾ガ心配シテ居リマスコトハ、增產ノ爲ニ
  ハ出資部門ト雖モ算盤ヲ外シテ、農家ニ舊
  債ガアレバ、ズツト引下ゲタ低金利ノ中ノ
  低金利デ救ツテ行クヤウナ方法モ講ジナケ
  レバ、前途ノ光明ヲ失ツテ離農シテ行ク、
  ト云フヤウナ狀況ニナル場合ガアルノデア
  リマシテ、吾々ハ今產業組合ヲ經營シテ居
  リマシテモ、先ヅ增產ノ爲ニハ一ツ算盤ヲ
  外シテヤラウト云フヤウナ氣持デヤツテ居
  リマス、併シソレガ昂ジテ行キマスト、結
  局出資部內ノ經濟基礎ヲスツカリ弱メテシ
  マフコトニナル、之ヲ危クシテハ大變ナノ
  デアリマス、所ガ增產ノ國家的要請、或
  農村ニ同ジ住ム者トシテ、相互扶助的ノ精
  神カラ言ヒマスト、ドウシテモ是ハヤラナ
  ケレバナラヌ事業デアルト云フコトニナル
  ノデアリマス、斯ウシタ場合ニ、經費部門
  カラ出資部門ニ此ノ基礎ヲ危クシナイヤウ
  ナ程度ニ豫算ニ依ツテ補助ヲ出シ得ルノデ
  アルカ、是ハ特別會計ト、ソレカラ一ツノ會
  計一本デヤルノトニ依ツテ違フノデアリマ
  スガ、ソコハ一寸私ハ實際問題トシテ疑問
  ニナツテ來タノデ御〓へヲ乞ヒタイト思ヒ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=80

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• 081・重政誠之

  ○重政政府委員　大體前囘モ色々御質問ガ
  アリマシテ、御答ヘ申上ゲマシタヤウニ、
  事業部門ト、經費ノ賦課ヲ致シマス所謂指
  導部門トハ、經理區分ヲ致シタラ宜カラウ、
  斯ウ云フ考ヘヲ持ツテ居リマス、隨ヒマシ
  テ豫算モ、是ハ團體全體トシテノ豫算ト、
  ソレカラ或ハ事業部門、又ハ指導部門ダケ
  ノ會計ト云フモノガ出來ルト考ヘルノデアリ
  マス、其ノ間ニ於ケル人件費、其ノ他ノ事
  業部門ト指導部門、又ハ兩者共通ノモノト
  云フヤウナモノハ、其ノ區分ハ難カシイコ
  トデハナイト考ヘルノデアリマス、勿論是
  ハ經理上ノ問題デアリマス、隨テ決算モヤ
  ハリ全體ノ決算ト、ソレカラ特別會計的ナ
  決算ガ出來ルモノト思フノデアリマス、出
  資關係ノ、所謂事業部門ノ方カラ一般ノ方
  ニ繰入レルモノトカ、或ハ一般ノ方カラ事
  業部門ノ方ニ繰入レルモノト云フヤウナモ
  ノハ、是ハ豫算編成ノ際ニ於テ決定ヲ或ル
  程度ヤラレル、決算ニ於テハヤハリ其ノ內
  容ヲ明カニセラレルト云フコトニ依ツテ、
  是ハサシタル難カシイ問題デハナイト私達
  ハ考ヘテ居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=81

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• 082・北勝太郎

  ○北(勝)委員　モウ一ツ御伺ヒ致シタイト
  思ヒマス、十一條ノ事業ノ所デアリマスガ、
  所謂直接關係、間接關係ト言ヒマスカ、其
  ノ後段ノ方ノ第四項ニアリマス「農業ニ從
  事スル者ノ福利增進ニ關スル施設」ト云フ
  コトニ付テ、此ノ間質問ガアツタノデアリ
  やっ、石黑農林次官カラ、之ヲ會員ノ福利
  增進ノ施設トシナカツタノハ、農會カラ此
  ノ法規ヲ引繼イデ來ラレタ爲ニ、其ノ意味
  ニ於テ農會法ノ元通リノ字句ヲ使ツタノダ、
  斯ウ言ハレテ居ルノデアリマスガ、果シ
  テサウトスレバ、是ハ會員ト直シタ方ガ宜
  イト思ハレルノデアリマス、ソレハ直スコ
  トニ依ツテ何カ非常ナ御支障ガアルヤウナ
  コトデモアレバ、ソレヲ一ツ承ツテ置キタ
  イ
  ソレカラ問題ノ二十九條デアリマスガ、
  町村ノ農業團體ノ長ハ、之ヲ地方長官ガ任
  命スル、認可モ任命モ同ジコトヂヤナイカ
  ト云フノガ重政政府委員ノ御答辯デアツタ、
  結果ニ於テハ同ジダト云フコトデアツタガ、
  吾々ハサウ同ジダト輕ク解釋シナイ、マア
  ヤツテ見テト云フ御話デアリマスガ、結果
  ニ於テ同ジダトサレルナラバ、是亦認可ト
  云フコトニ改メテモ、何等政府側デ差支ヘ
  ナイモノダト思フノデアリマスガ、是ハ何
  カサウスルト困ルト云フコトガアルノデス
  カ、ソレヲ承ツテ置キタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=82

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• 083・井野碩哉

  ○井野國務大臣　私カラ申上ゲテ、尙ホ足
  リナイ所ハ重政政府委員カラ御答ヘヲ申上
  ゲマス、農業者ノ福利施設ヲ條文デ限ツタ
  ト云フコトハ、結局此ノ團體ノ中核ヲ成ス
  者ハ何ト云ツテモ農業者デアリマス、其ノ
  福利施設ヲヤルト云フコトヲハツキリ謳ツ
  テ置キマスレバ、會員ガソレヲ利用出來ル
  コトハ當然ナノデアリマス、農業者ノ利益
  ニナラナイヤウナ福利施設ハ、會ノ爲ニモ
  採ラナイノデアリマスカラ、サウ云フ點ハ
  此ノ文句デ私ハ十分足リルト思ツテ、其ノ
  儘ニシテ置イタノデアリマス、又市町村ノ
  團體ノ會長ノ府縣知事任命ノ問題ハ、相當
  ニ私トシテモ理窟ヲ考へテ此ノ手段ヲ採ツ
  タノデアリマシテ、結局今日農民ガ責任ト
  矜持トヲ以テ其ノ生產ヲ確保シテ行クト云
  フ爲ニ、新農業團體ガ農民ノ總力結集ノ一
  ツノ機關トシテ、之ヲ活用シテ行カウト云
  フニハヤハリ政府ノ一翼機關ト考ヘテ居
  リマス、翼賛機關ト考ヘテ居リマス、翼贊
  機關デアル以上ハ、今日他ノ團體デモ大體
  大臣ナリ、或ハ主務官廳ノ任命ニナツテ居
  リマス、隨テ中央機關ヲ農林大臣ガ任命シ
  テ居ルノデアリマスカラ、其ノ下級機關ヲ
  地方長官ノ任命ニスルト云フコトハ筋ダト、
  斯ウ考ヘテサウ致シタノデアリマス、結果
  ニ於テハ任命ト認可トハ違ハナイノデアリ
  マスガ、其ノ氣持デ任命ニ致シタノデアリ
  マスカラ、ソコニ大キナ違ヒノアリマスコ
  トダケハ申上ゲテ置キタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=83

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• 084・北勝太郎

  ○北(勝)委員　只今ノ農業ニ從事スル者ト限
  ラレタコトニ對シテノ大臣ノ御答辯ハ能ク
  分ツタノデアリマスガ、斯ウ云フ字句ヲ使
  ツテ居ルコトハ、任意加入ノ者ニ對シテ實
  ハ大變ナ影響ガアリ、誤解ヲ受ケル因トナ
  ル、ソコデドウモ單ニ今ノ御說明ノ通リデ
  ハ、此ノ字句ハ當嵌ラヌヤウニ思フノデア
  リマス、其ノ一點ダケヲ伺ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=84

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• 085・井野碩哉

  ○井野國務大臣　現在ヤツテ居リマスコト
  ト違ハナイコトヲ、今度ノ新農業團體ニヤ
  ラセルノデアリマスカラ、任意加入ノ者ト
  雖モ同ジデ、今日斯ウ云ツタ施設ヲ利用シ
  テ居リマスコトトチツトモ違ハナイノデア
  リマス、此ノ點ハ私ガ此ノ委員會デ法文ノ
  解釋トシテ聲明致シマスレバ、任意加入シ
  テ居ル者モ疑ヒヲ持タナイト思ヒマス、結
  局是ハ字句ノ問題ニアラズシテ、政府ノ解
  釋ノ問題、又肚ノ問題デアリマスカラ、其
  ノ點ハ私ノ言葉ヲ以テ御信用ヲ願ヒタイト
  思ヒマス

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• 086・北勝太郎

  ○北(勝)委員　之ヲ以テ終リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=86

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• 087・東郷實

  ○東郷委員長　農林大臣ハ豫算總會デ御出
  席ヲ要求サレテ居リマシテ、四十分位向フ
  ニ掛ルサウデアリマス、ソレデ大臣ガ居ラ
  レナケレバ質疑ガ繼續出來ヌトスルナラバ、
  此ノ際水產團體法案ノ說明ヲ聽クコトニシ
  タラドウカト思ヒマスガ··

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=87

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• 088・山田六郎

  ○山田(六)委員　政府委員ニ二、三御聽キ
  シタイコトガアルノデスガ·····

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• 089・東郷實

  ○東郷委員長　ソレデハ山田君

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• 090・山田六郎

  ○山田(六)委員　大體質問ガ終ツタ位ノモ
  ノデスカラ、二、三御聽キシタイコトヲ合
  併シテ御聽キ致シマスカラ、ドウゾ簡單ニ
  御答辯ヲ願ヒタイト思ヒマス、只今北サン
  カラモ御質問ニナツタノデスガ、此ノ第十
  一條ノ前段ト後段ト、一項ト二項ト分ケテ
  アリマス、此ノ分ケマシタ一項ノ方ハ、必
  行事業ト云フヤウナコトニナツテ居リマス
  ガ、二項ノ方ハヤレバヤリ得ルト云フヤウ
  ナ意味デ御分ケニナツタ、斯ウ云フ風ニ茲
  デハ見エルノデスガ、サウ云フ意味デ御分
  ケニナツタノデアルカドウカト云フコトヲ
  御聽キシタイコトガ一ツ、ソレカラ今一ツ
  ハ、經理ニ付テノ話ガ只今アツタノデアリ
  マスルガ、是ハ皆區別ヲ致シテ經理ヲ致ス
  ト云フコトデアリマス、是ハ府縣ノ農業會
  モ、町村ノ農業會モ、サウ云フヤウナコト
  ニ取扱フ、斯ウ云フコトニナリマスルカト
  云フコトガ一ツ、ソレカラ例ヘバ統合サレ
  ル所ノ團體ハ畜產組合アリ、養蠶組合アリ、
  農會アリ、產業組合アリ致シマスガ、此ノ今
  マデノ組合ハ各自獨立シテ經營ヲシテ居ル、
  豫算モ決算モ拵ヘル、斯ウ云フヤウナコト
  ニナリマスカ、サウデハナク、玆ニアル會
  費ヲ賦課スルニ付テ、十一條ノ第一項デア
  ルトカ、第二項デアルトカ、或ハ二項ノ第
  三號デアルトカ、第四號デアルトカ云フヤ
  ウナ事業ニ該當スルモノト、是マデノ產業
  組合ノヤツテ居リマシタヤウナ十一條ノ第
  三號カラ第六號ニ至ルマデ、或ハ第二項
  ノ第一號、第二號ノ問題デアルトカ云フ
  ヤウナ項目ニ當ルモノヲ以テ分類スルト云
  フコトニナリマスカ、或ハ在來ノ組合ノ種
  類ニ依ツテ分類スルト云フコトニナリマス
  カ、其ノ經理ノ方法ニ付テ今一應御聽キシ
  タイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=90

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• 091・重政誠之

  ○重政政府委員　十一條ノ必行事項ト任意
  事項ト分ケマシタノハ、モウ既ニ屢〓御質問
  ニ御答ヘヲ申上ゲマシタ通リニ、單ナル法
  制上ノ理論的問題デ分ケタノデアリマス、
  打割ツテ申シマスレバ、吾々ト致シマシテ
  ハ、當初ハ全部之ヲ必行事項ニシテハドウ
  カトサヘ考ヘタノデアマリスガ、サウ云フ
  風ニ致シマスト、却ツテ現在ノ團體ヲ統合
  致シマシテ迷惑スル部分ガ出來テ參ル、詰
  リヤツテ居ラヌモノモアツタリ、色々ナコト
  ガアルノデハナイカト云フ風ニ考ヘテ居リ
  マス、今囘ノ農業團體ノ統合案、此ノ農業
  團體法案ガ、何處マデモ戰力ノ增强ノ基本
  ヲナス所ノ農業生產ノ增强ニアルト云フ觀點
  カラ致シマシテ、其ノ農業ニ直接ノ關聯ア
  ルモノヲ之ヲ一應必行事業ト致シタノデア
  リマス、第二項ノ任意事業ト云フノハ、ヤ
  ツテモヤランデモ宜イト云フ風ナ意味ニ輕
  ク考ヘテ居ル譯デハナイノデアリマス、間接
  的ニハ此ノ第二項ノ各種ノ事業ヲ實行致シ
  マスコトガ、又生產ノ增强ニナリ、隨テ戰
  力ノ增强ニナルコトハ明カナコトデアル譯
  デアリマス、サウ云フヤウナ譯カラシマシ
  テ、是ハ法理上ノ問題カラ一項、二項ニ分
  ケタ譯デアリマシテ、實質的ニ大ナル差異
  ハナイト考ヘテ居ルノデアリマス
  ソレカラ經理ノ區分ノ問題ニ付テ、町村
  ノ農業會モサウ云フ風ニスルカト云フ御質
  問デアリマスルガ、實ハ是ハ私共ト致シマ
  シテハ、主トシテ縣ノ團體ニ付テ一應ハ考
  ヘタノデアリマスガ、町村ノ團體ニ於キマ
  シテモ、町村ニ依リマシテハ色々事業ノ分
  量其ノ他モ違ツテ居ルダラウト考ヘルノデ
  アリマシテ、此ノ經理ノ區分ヲ强制的ニ之
  ヲ指導致スト云フ考ヘハ持ツテ居リマセヌ、
  ガ唯專ラ實情ニ卽シテ區分ヲ致シダ方ガ
  宜イデハナイカト云フ風ニ考ヘテ居ル程度
  デアリマス、ソレカラ現在ノ團體ノ團體別
  ニ經理ノ區分ヲ致ス考ヘハナイカト云フ御
  質問デアリマスガ、是ハサウ云フ考ヘハ持
  ツテ居リマセヌ、之ヲ團體別ニ經理ノ區分
  ヲ一々致シマシテ、其ノ間ニ特別會計的ナ
  性質ヲ持タスト云フコトハ、ドウモ餘リ面
  白クナイコトデハナイカト云フ風ニ考ヘテ
  居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=91

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• 092・山田六郎

  ○山田(六)委員　團體デ區分スル意思ナシ、
  ソレハ御尤モノコトト思フノデアリマスガ、
  此ノ合同スル上ニ於テ、統合サレルモノハ
  權利義務ヲ悉ク繼承スルト云フ形ニナツテ
  行クト云フコトニナツテ居ルヤウデアリマ
  スガ、例ヘバ郡ノ組合ノ如キハ、組合ニ依
  リマシテハ數万圓、或ハ十數万圓ノ財產等
  ヲ持ツテ居ルモノモアルノデスガ、是等ハ
  縣ノ農業會ニ引繼ガレルコトニナルデセウ
  ガ、併シ其ノ實質ハ其ノ郡內ニ於ケル當業
  者ノ努力、或ハ犧牲ニ依ツテ出來上ツテ居
  ル權利デアリマスカラ、資產デアリマスカ
  ラ、ソレ等ハ其ノ郡內ノ町村農會ノ方ニ引
  繼グノガ當然ノヤウニモ考ヘラレルノデア
  リマスガ、ソレヲ縣ノ方ニ引繼グト云フコ
  トニナレバ、各郡トモ稍〓同一ナ資產ヲ持ツ
  テ居ルト云フヤウナ狀況ニアレバ問題ハナ
  イノデアリマスガ、或モノハ却テ反對ニ負
  債ヲ持ツテ居ル、或モノハ十數万圓ノ財產
  ヲ持ツテ居ルト云フヤウナモノヲモ、悉ク
  平等ニ縣ノ農業會ニ繼承サレルカト云フ問
  題デアリマス
  ソレカラ今一ツハ此ノ繼承サレタ際ニ、同
  ジ一ツノ府縣ノ農業會デアリマスカラ、此
  ノ農業會ニハ經理ハ別々ニ致シマシテモ、
  全部ノ權利義務ハ共通サレルデアリマセウ
  カラ、資產モ或ハ義務ニ屬スルモノガア
  ルト致シマシテモ、是ハ全府縣ノ農業會
  ニ共通サレル、農業會ガ共同ノ責任ニ依ツ
  テ是ハ繼承スルト云フコトニナルダラウト
  思フノデアリマスガ、其ノ邊アタリノ區
  分-豫算、決算ハ區分ヲシテヤルケレド
  モ、統合ノ際ニ繼承サレタ總テノ權利義務ハ
  區分ハナイ、是ハ皆縣ノ農業團體ノ權利義
  務トシテ繼承サレル、斯ウ云フコトニナリ
  マセウカ、サウ云フ風ニナリマスト、其ノ
  場合繼承サレタ權利義務ニ付テノ豫算、決
  算等ノ區分ト云フモノトノ區別ガドウ云フ
  コトニナツテ來マセウカ、其ノ點ヲ一寸伺
  ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=92

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• 093・重政誠之

  ○重政政府委員　郡團體ノ、特ニ他ノ郡ト異
  ツテ特別ナル財產ヲ持ツテ居ルト云フヤウ
  ナ場合ノ御質問デゴザイマスガ、ソレハヤ
  ハリ縣ノ團體ニ其ノ財產ヲ一應歸屬ヲ致ス
  コトニ相成ルノデアリマス、但シ御述べニ
  ナリマシタヤウナ特殊ナ事情ガアリマシテ、
  其ノ郡內ノ各町村ニ於テハ、從來其ノ財產
  ヨリ生ズル所ノ利益ヲ共有ヲ致シテ居ツタ
  ノデアリマスルカラ、ソレハ新團體ノ成立
  ニ依リマシテ、財產ガ縣ノ方へ歸屬致シマ
  シタ後ニ於キマシテモ、ヤハリ繼續ヲ致サ
  シメル方法ヲ講ジタイ、斯ウ云フ風ニ考ヘ
  テ居ルノデアリマス、卽チ財產ノ權利トシ
  テハ、法律的ニハ縣ノ團體ニ承繼致シマス
  ケレドモ、其ノ財產ノ管理及ビ利用ニ付キ
  マシテハ、當該郡ノ支部ヲシテ優先的ニ當
  ラシメル、斯ウ云フコトニ致シタイト考へ
  テ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=93

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• 094・山田六郎

  ○山田(六)委員　サウスルト斯ウ云フコトニ
  考ヘテ宜シイノデアリマスカ、ソレハ新團
  體ニ繼承スルケレドモ、新團體ハ特殊ノ資
  產或ハ財物トシテ別ノ取扱ヲシテ、ソレカラ
  生ズル利子デアルトカ、或ハ色々ナ資產ガ出
  タトシタナラバ、ソレハ其ノ郡內ノ事業ニ使
  フ爲ニ其ノ郡ニ特ニ分配スルト言ヒマスカ、
  分與スルト言ヒマスカ、サウ云フ方法ニヤツ
  テ行クノダ、斯ウ云フ風ニ考ヘテ宜イノデ
  スカ、一昨年デシタラウカ、郡トカ縣ニアル
  所ノ各種ノ團體ニ於ケル基本財產、其ノ他
  ノモノヲ、團體統合ノ爲ニ、此ノ機會ニソレ
  ヲ豫想シテ消費シテハ相成ラス、ト云フ通牒ヲ農
  林省カラ發セラレテ居ツタデアリマスガ、其ノ
  際ニ色々話ガアリマシテ、今日マデ各地ト
  モソレヲ大事ニシ、此ノ通牒ヲ遵奉シテ居
  ルヤウデアリマスガ、愈、此ノ法律ガ出タニ
  付テ、一體ドウナルダラウカト云フヤウナ
  コトヲ各地カラ頻々トシテ言ツテ來テ居ル
  ノデアリマス、其ノ中ニハ斯ウ云フ要求ガ
  アル、特ニ私共ノ方ノ郡デハ、是レ〓〓ノ
  契約ノ下ニ斯ウ云フ金ヲ積立テテアル、是
  ハ全ク郡内ノ人ガ特ニヤツタ爲ニ是ダケノ
  モノガ積立テラレタノデアルカラ、郡ニ何
  トカ保有スルコトガ出來ヌカ、或ハ郡內ノ
  關係者ニ、或ハ關係團體ニ之ヲ此ノ機會ニ
  分配ヲシタイ、斯ウ云フヤウナコトヲ言ツ
  テ參ツテ居ルノガアリマスルケレドモ、特
  ニサウ云フヤウナ事情ノ下ニ、其ノ郡ニ限
  ツテ或ル共同事業ヲヤルトカ、郡ノ事業ト
  シテ斯ウ〓〓云フ經營ヲシタト云フヤウナ
  爲ニ出來上ツタ資產ニ對シマシテハ、特一
  其ノ郡內ノ各團體ニ歸屬セシメルト云フコ
  トヲ御認メニナルコトガ出來マセヌデセウ
  カ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=94

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• 095・重政誠之

  ○重政政府委員　サウ云フヤウナ事情ニア
  リマスモノニ付キマシテハ、私ガ先程申上
  ゲマシタヤウニ、其ノ郡ノ支部ニ於テ其ノ
  資產ヲ管理致サシメテ、サウシテ其ノ郡内
  ノ町村農業會ヲシテ是ガ利用ニ優先的ニ當
  ラシメル斯ウ云フ方法ヲ講ジテ行キタイ
  ト考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=95

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• 096・山田六郎

  ○山田(六)委員　此ノ第十一條ノ問題ニ付
  テ更ニ御聽キ致シタイノデアリマスルガ、
  第一項ノ方ハ生產ニ對スル集荷デアルトカ、
  或ハ生產必需品ノ購入デアルトカ云フヤウ
  ナモノガ主タルモノノヤウデアリマス、今
  一ツハ是マデノ產業組合デ取扱ツテ來タモ
  ノ、或ハ農會其ノ他デ取扱ツテ來タモノガ
  主タルモノノヤウニナツテ居ルヤウデアリ
  マスルガ、第二項ノ方ハ生活必需品ノ購入
  デアルトカ云フヤウナモノ、或ハ利用事業
  ト云フヤウナモノデ、是マデノモノニ當篏
  メレバ當篏メラレルト云フ工合ニナツテ居
  ルノデアリマスルガ、此ノ十一條ノ上カラ
  見マスルト、生產必需品デアルトカ、或ハ
  生產品ヲ販賣スルトカ云フコトハ、必行事
  項トシテヤルベキモノデアルケレドモ、生
  活必需品ノ共同購入デアルトカ、或ハ利用
  デアルトカ云フ問題ハ、是ハヤレバヤリ得
  ルガ、農業會トシテハヤルト云フコトヲ本
  則ニシテ居ナイノダ、斯ウ云フ風ニモ見レ
  バ見エルノデスガ、サウ云フ意味ニ依ツテ
  出來上ツテ居ルノデセウカドウカト云フコ
  トガ一ツト、ソレカラモウ一ツハ此ノ福利
  增進ト云フコトハ、是マデノ團體トシテハ
  ドノ團體ニ於テモ、ソレガ團體ノ主タル目
  的ニナツテ居ツタノデアリマスガ、今度ハ
  國策ニ卽應シテ、農業ノ整備發達ヲ圖ルト
  云ツタヤウナコトニナツテ居リマスカラ、
  サウ云フ意味ニ於テ、福利增進等ニハ力ヲ
  入レテハ相成ラヌト云フ御考ヘデ、福利增
  進ヲヤル際ニハ行政官廳ノ認可ヲ受ケル、
  斯ウ云フコトニナツテ居ルヤウデアリマス
  ガ、此ノ福利增進ト云フモノハ總テ認可事
  項ニナツテ居ルト考ヘテ宜シウゴザイマス
  カ、其ノ邊ノ所ヲ一ツ御聽キシタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=96

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• 097・重政誠之

  ○重政政府委員　第十一條ノ第一項ト第二
  項トヲ分ケマシタコトニ付キマシテハ、先
  程御答辯申上ゲタ通リデアリマス、只今御
  述ベニナリマシタヤウニ、第一項ノ方ハ必
  ズヤラナケレバナラヌ、是ハ必ズヤラナケ
  レバ農業會ニナラヌト云フコトニ法理上ナ
  ル譯デアリマス、唯併シ先程モ申上ゲマシ
  タ通リニ、此ノ第一項ト第二項ヲ分ケマシ
  タノハ、專ラ法制的ナ理論カラ分ケタノデ
  アリマスルガ、斯ウ云フ風ニ必行事項ト任
  意事項トヲ分ケタコトニ依ツテ、從來私共
  ノ執ツテ參リマシタ方針ヲ二、三ニスルト
  云フヤウナ意圖ハ、全然持ツテ居ラナイノ
  デアリマス、先程モ申シマシタ通リニ、第
  二項ノヤウナ事業ヲヤリマスコトガ、同時
  ニ是ハ農業生產增强ニ資スル所ガ極メテ大
  キイノデアリマスルカラ、隨テ現在ヤツテ居
  リマスル所ノ產業組合、農會、或ハ養蠶組
  合ト云フヤウナ各種ノ團體ヲ統合致シマシ
  テ、ソレ等ノ團體ガ現在ヤツテ居リマス事
  業ハ、悉ク是ハ出來得ルコトニ致シテ居ル
  ノデアリマス
  ソレカラ福利增進ニ關スル施設ハ悉ク
  認可ヲ要スルカト云フ御質問デアリマス
  ルガ、是ハ現在ヤツテ居リマスル所ノモ
  ノハ、認可ヲ要シナイノデアリマス、新
  タニ始メル事業ニ付キマシテハ認可ヲ受ケ
  ル、斯ウ云フコトニ致シタノデアリマス、是ハ
  必ズシモ特ニ此ノ團點ニ付テ、生產的ニ考
  ヘルト云フ趣旨デモナイノデアリマスルガ、
  御承知ノヤウニ福利增進施設ニ付キマシテ
  ハ、現在ヤツテ居リマス例へバ醫療施設ノ
  如キハ、厚生當局ト吾々ノ方ト協定致シマ
  シテ、其ノ方針ニ從ツテ現在ヤツテ居ルノ
  デアリマシテ、現在ヤツテ居リマスモノニ
  ハ、是等ノ方針ハ何等變更ハ致シテ居リマ
  セヌ、唯新タニヤリマスモノニ付テハ、ヤ
  ハリ厚生當局ノ方針ガアル譯デアリマス、
  ソコデ吾々ノ方トモ十分協議ヲ遂ゲテ之ヲ
  ヤツテ行ク、斯ウ云フ意味ニ於キマシテ認
  可ヲ受ケサセル、斯ウ云フコトニ致シタ譯
  デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=97

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• 098・山田六郎

  ○山田(六)委員　サウスルト此ノ認可ヲ受
  ケルノハ新タニヤルモノニ限ルノダ、是マ
  デヤツテ居ルモノハ認可ヲ受ケル必要ガナ
  イノダ、斯ウ云フ風ニ諒解ヲ致シテ宜シイ
  ト云フコトデスガ、更ニ此ノ問題ニ付テ御
  聽キ致シタイコトハ、今日マデノ實際ノ事
  情カラ言ヒマスト、第一項ニアル所ノ農產物
  ノ集荷或ハ生產必需品ト云フヤウナモノデ
  スガ、現在此ノ農產物ニ對スル集荷ヲヤツ
  テ居ツテ得タ其ノ金ヲ、成ベク組合員ニヤ
  ラズニ、悉ク組合ニ貯金セシメルコトガ最
  モ宜イコトダト、奬勵ヲシテ參ツテ來タノ
  デアリマス、是ハ農村ノ實體カラ言ヒマス
  ト、農產物ヲ高ク賣ラウガ、安ク賣ラウガ、
  其ノ金ヲ家ヘ持ツテ行ツテ使フト云フヤ
  ウナコトヲセシメナイコトガ、農民ノ爲ニ
  最モ宜シイコトデ、是ハ農村ノ疲幣ヲ防グ
  上ニ於キマシテモ、農村自體ニ安心ヲ與ヘ
  ル上ニ於キマシテモ、極メテ良イコトデア
  ル、詰リ此ノ農業會ガ今日マデノ產業組合
  ニ代ツテ、農村ノ生活必需品等ニ付キマシ
  テ十分ノ供給ヲナシ得、又生產必需品ニ對
  シテ供給ヲナシ得ルト云フコトニナリマス
  レバ、農家ハ本當ニ安心シテ總テノ農產物
  價格等ヲ農業會ニ悉ク任シテ置クト云フコ
  トニ行キマスカラ、一面貯蓄ノ目的モ達
  シ、一面生活ノ安定ガ益〓堅クナツテ來ルト
  云フヤウナ傾向ニモナルモノデスガ、此ノ第
  一四、第二項共ニ必行事業トシテヤリ得ル
  ト云フコトニナリマスレバ、是ハ農業會ノ
  目的ヲ達成スル上ニ於テ非常ニ重要ナコト
  ダラウト思フノデアリマスルガ、最近ニ於
  ケル事實ハ色々國策會社ノ關係ヤ、其ノ他ノ
  關係ニ於テ、產業組合ヨリ生活必需品ノ配
  給ヲ漸次狹メテ來ル、漸次ヤリ得ナイ形ニ
  導イテ來ルト云フヤウナ傾向ニナツテ居ル
  ノデアリマスガ、今度ノ農業會ハソレトハ
  違ツテ、第一項、第二項共ニ今日マデヤツ
  テ來タモノハ自由ニヤリ得ルシ、生活必需
  品等ニ對シテノ配給モ、今ヨリモ更二一層
  ヤリ得ル便宜ヲ與ヘルノダ、ト云フヤウナ
  意味ヲ此ノ中ニ含ンデアルカドウカト云フ
  コトヲ御聽キ致シタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=98

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• 099・重政誠之

  ○重政政府委員　物資ノ配給ノ問題ニ付キマ
  シテハ、屢各委員カラ御質問ガアリマシ
  テ、私モ御答ヘ申上ゲマシタシ、大臣カラ
  モ色々御答辯ヲシテ居ラレルノデアリマス
  ガ、只今ノ御質問ハ、生活必需品ヲ此ノ團
  體ヲ通ジテ配給ヲスル意味デ之ヲ設ケテ居
  ルカト云フ御質問デアリマスガ、サウ云フ
  意味ハ持ツテ居リマセヌ、申上ゲルマデモ
  ナク、物資ノ配給ノ問題ハ、現實ノ問題デ
  アルノデアリマシテ、色々ノ情勢ニ應ジテ、
  色々ノ配給機關ヲ整備ヲ致シテ今日ニ至ツ
  テ居ル譯デアリマス、隨ヒマシテ唯抽象的
  ニ其ノ分野ヲ更ニ擴ゲテヤルト云フコト
  ハ、中々申難イコトト考ヘルノデアリマス、
  要スルニ具體的事情ニ依ツテ之ヲ考慮致シ
  テ行ク、ト云フコトニナルト考ヘルノデア
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=99

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• 100・山田六郎

  ○山田(六)委員　其ノ點大體分リマシタカ
  ラ、此ノ問題ハ是ダケデ省略スルコトニシ
  マセウ、ソレカラ一ツ御聽キシタイコトハ、
  第九十二條ノ意味ガ分ラナイノデアリマス
  ルガ、第九十二條ノ勅令ト云フノガナイノ
  デアリマス、ソレハドウ云フ勅令デ、ド
  ウ云フ意味ノ條項デアルカヲ一寸御聽キ致
  シタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=100

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• 101・重政誠之

  ○重政政府委員　是ハ畜產組合ノ中デ、馬
  ニ關係ヲ致シマスル部分ハ、畜產組合ガ馬
  匹組合ニナル譯デアリマス、隨テ團體統合
  ヲ致シマス際ニ、馬及ビ牛ノ事業ヲヤツテ
  居リマス畜產組合ヲ、二ツニ分割致サナケ
  レバナラナイ譯ニナリマス、ソレニ關係ヲ
  致シマシタ事項ヲ勅令ニ書ク、斯ウ云フコ
  トニ相成ル譯デアリマス

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• 102・山田六郎

  ○山田(六)委員　ソレデ大體法令ニ關スル
  コトハ分リマシタ、第九十四條ニアル一貫
  該受命法人ノ所屬シタル法人ト當該農業團
  體トノ間ノ所屬其ノ他ノ關係ニ付テハ本法
  及他ノ法令ニ拘ラズ勅令ヲ以テ別段ノ定ヲ
  爲スコトヲ得」ト云フコトニナツテ居リマ
  ス、此ノ「別段ノ定」ト云フノハ、九十四條
  ノ特令ノ中ニモ特別ノ規定ヲ設ケルコトガ
  アルヤウデアリマスガ、是ハドウ云フ特別
  ノ規定ニナツテ居リマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=102

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• 103・藤田若水

  ○藤田政府委員　是ハ前ニ總務局長カラ御
  說明ノゴザイマシタヤウニ、團體ヲ作リマ
  ス場合ニ、地方農業會ニ於キマシテ、道府
  縣農業會ガ先ニ出來マス場合モアリ、又市
  町村農業會ガ先ニ出來、マス場合モアリ、色
  々實情ニ依リマシテ、早ク準備ノ整ツタ所
  カラ出來テ來ル譯デアリマス、隨ヒマシテ
  旣ニ或ル市町村デハ市町村農業會ガ出來タ
  ガ、縣テハマダ縣農會ガアリ、縣ノ產業組
  合聯合會ガアル、斯ウ云フ風ナ場合ガ豫想
  サレルノデアリマス、サウ云フ風ナ場合ニ、
  縣農會或ハ縣ノ產業組合聯合會ニ對シテ市
  町村農業會ガ加入ヲスル、詰リ或ハ町村農
  會或ハ町村產業組合ノ資格デ加入ヲス
  ル、サウ云フ風ナ續キ工合ヲ規定致サナケ
  レバナラヌ譯デアリマスカラ、サウ云フ風
  ナ規定ヲ置キタイト云フ趣旨デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=103

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• 104・山田六郎

  ○山田(六)委員　此ノ際御意見ヲ御聽キ致
  シタイコトハ食糧問題デアリマス、食糧問
  題ニ付テハ質問ガ大分繰返サレタノデアリ
  マスガ、私共ハ斯ウ思ツテ居リマス、昭和
  十七年度ノ米穀年度ニ於ケル米ノ生產額ヲ
  六千七百三十万石ト云フ風ニ發表サレテ居
  ルヤウデアリマスガ、是ハ實際ハモツト穫
  レテ居ル、三百二十數万町步ノ土地ヲ耕作
  シテ、多少水害ガアツテモ何シテモ、昭和十
  七年ノアノ天候ニ於テ六千七百万石ナント
  云フコトハ絕對ニナイ、其ノ他ニ陸稻ニ於テ
  年々數十万石ヅツ增產シテ居ルト云フノデ
  アリマスルカラ、勿論七千万石ハ超シテ居
  ルニ相違ナイ、、斯ウ云フ風ニ信ジテ居ルノ
  デアリマス、ソレデ統計ト實際ノ數字トノ
  一致シテ居ナイコトハ、農政上ニ於テモ非常
  ニ困ツタコトデアリマスルカラ、ドウシテ
  モ是ハ一致セシメナケレバナラヌ、私ハ切
  メテ自分ノ町村內デモ、總テノ農政上ニ關
  スル一切ノ統計ヲ實際トキツチリト合ツタ
  モノヲ作リタイト云フノデ、二、三年來非
  常ニ心配ヲシテ居リマスルケレドモ、ドウ
  シテモソレガ出來ナイ、第一ニ出來ナイコ
  トハ今日ノ農村ニ於ケル農民ノ〓糧ノ消費
  數量ガ無理ダト云フコトガ、ドウシテモ是ガ出
  來ナイ一ツノ原因ニナツテ居ル、ソレデ色
  色農地關係ノ人々ニ相談致シテ見マスト、
  今日ノ如ク非常ニ手ガ足リナイ、非常ナル過
  激ナル勞働ニ服シテ居ル人ニ對シテ、一日
  四合シカ保有米ヲ持ツテハナラヌト云フコ
  トデアル、婦人ニ對シテハ三合デアル、其
  ノ他ノ者ハ二合三勺ト云フヤウナコトデア
  リマスガ、斯ウ云フヤウナ食糧ノ規正ヲ受
  ケテ、ソレデ正直ニ其ノ數ニ依ツテ米ヲ保
  有シタナラバ、働クコトガ出來ナクナツテ
  シマフ、斯ウ云フコトナノデアリマス、私
  ハソレハ尤モノコトデアラウト思ヒマスカ
  ラ、是ハ今少シ農民ニ對スル食糧ノ消費ニ
  付テノ規正ヲ修正シテ戴ケバ、本當ニハツ
  キリシタ生產量モ分リ、ハツキリシタ消費
  量モ分ツテ、其ノ他ノ米ノ全部ノ供出ヲナ
  サシムルコトガ出來ヨウ、斯ウ云フヤウニ
  私共ハ考ヘテ居ルノデアリマス、先達テ、
  保有米中ニ於ケル一割以上ノ米ヲ出スコト
  ニ付テ、各地方ノ關係ノ人々ニ集マツテ貰
  ヒマシテ、協議會ヲ開イタノデアリマスガ、
  其ノ時ノ話デハ、何レモサウ云フ話ガ多カ
  ツタノデアリマス、此ノ點ニ付テ是非、農
  家ニ全クナクテハナラヌ最小限度ト云フヤ
  ウナモノヲ標準トシタ消費量ヲ決メテ戴ケ
  バ、其ノ餘ツタ分ハ悉ク供出セシムルコト
  ガ出來ルヤウニ考ヘルノデアリマス、本年
  ノ米穀事情ガ極メテ憂慮スベキ狀態デアル
  ト云フノデ、眞劍ニ是等ノ人々ニ說イテ見
  マスト、何レモ是等ノ人々ハ異口同音ニサ
  ウ言ツテ居ルノデアリマス、是等ノ人々
  干、出來得ルダケ混食モ代用〓モ攝リマシ
  テ、米ヲ少シデモ供出シタイト云フヤウナ
  考ヘハ、皆熱心ニ言ツテ居ルノデアリマス
  ケレドモ、サウ云フ關係デ、本當ニ眞面目ナ
  報〓ヲ出スコトガ出來ナイ、計算ヲスルコ
  トガ出來ナイト云フヤウナコトニナツテ居
  リマスガ、是等ニ對シテ更ニ消費量ニ對シ
  テ、再考スル御考ヘガアリマセヌカドウカ
  ト云フコトヲ御伺ヒ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=104

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• 105・重政誠之

  ○重政政府委員　ソレハ極メテ重要ナ問題
  デアリマスノデ、農林大臣ガオ見エニナリ
  マシテカラ御質問戴イタ方ガ宜カラウト考
  ヘマスガ、恐ラクソレハ現在ノ情勢ニ於テ
  ハ中々難シイコトデアラウト私ハ思ヒマス

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• 106・山田六郎

  ○山田(六)委員　今一ツ斯ウ云フ問題ガア
  ル、是ハ全國的ダラウト思ツテ居リマス
  ガ、福島縣ハ全部デスガ、肥料ノ配給ヲ、
  昭和十八年ノ一、七月ノ肥料配給ニ對シテ、
  田ノ方ハ宜シイノデアリマスガ、畑ニ對シ
  テ、私ノ郡ハ極メテ小サナ郡デアリマスガ、
  ソレデモ四百町步アリマスカラ、福島縣全
  體デハ少クトモ七八千町步ノ畑ニ肥料ノ配
  給ガナイノデアリマス、春ノ肥料デアリマ
  スカラ、或ハ馬鈴薯ヲ作ルニモ、馬鈴薯ハ私
  共ノ方デハ彼岸ト云ヘバ全部植ヱル習慣ニ
  ナツテ居リマスガ、或ハ甘藷ヲ作ルニモ、
  ナクテハナラヌ肥料デアリマス、是ノ配給ヲ
  シナイ、ドウ云フ譯デアルカト言ヘバ、昨年
  ノ麥ノ植付ノ時分ニ、反別ヲ調査シテ、其
  ノ反別ニ依ツテ肥料ノ配給ヲシタ所ガ、其
  ノ反別ダケノモノガ植付カツテ居ラナイト
  云フノガ一ツノ理由デアリマス、ソレカラ
  昨年ノ夏ニ於ケル麥ノ供出ガ配給數量ニ足
  リナイ、餘リニ少イト云フヤウナ爲ニ、計
  算目標トシテ居ツタ反別ダケ植ヱナイカラ、
  ソレダケノ肥料ハ餘ツテ居ル筈デアル、斯
  ウ云フ見解ノ爲ニ、ソレダケノ肥料ヲ一月、
  七月ノ分カラ控除シタト云フノデアリマス、
  併シ實際ハ、到ル處デ、三反步ニ使ハウト
  思ツタ肥料ヲ二反歩ニ使ツテシマツタ、或
  ハ五反步ニ使ハウト思ツタ肥料ヲ四反步ニ
  使ツテシマツテ居リマスカラ、肥料ガ殘ツ
  テ居ル筈ハナイノデアリマス、ナイノデア
  リマスカラ、此ノ何千町歩--共共ノ方ノ
  郡ダケデモ四百町步ゴザイマスガ、是等ノ
  土地ト云フモノハ全ク肥料ノ配給ハ少シモ
  受ケズニ、而モ甘藷トカ、馬鈴薯ト云フヤ
  ウナモノハ極力作ル、其ノ他雜穀類モ作ル
  ト云フヤウナコトヲ努力シテ居ルノデアリ
  マスガ、是ハ理窟ハドウアラウトモ、兎 ロン
  角十八年度ノ春ノ肥料ヲ少シモ與ヘラレズ
  二、サウシテ生產ヲ殖ヤサウト云フ計畫ハ
  極メテ無理ナ計畫デアラウト思ヒマスガ、
  是ハ福島縣ダケノ現象デアリマスカ、日本
  全國ノ現象デアルカ分リマセヌガ、兎ニ角
  斯ウ云フヤウナ配給ヲセラレルト云フコト
  ハ生產增强ノ上ニ非常ナ惡影響ヲ及ボス
  モノト思フノデアリマスガ、之ニ對スル御
  意見ヲ御聽キ致シタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=106

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• 107・重政誠之

  ○重政政府委員　只今御質問ニナリマシタ
  ヤウナ事情ニ付テハ、十分ニ調査ヲ致シマ
  シテ、具體的ノ問題トシテ是ハ調整ヲ圖ル
  ヨリ外ハナイト思フノデアリマスガ、唯私
  是ダケノコトヲ申上ゲテ御諒承ヲ得テ置キ
  タイト思ヒマスコトハ、御承知ノヤウニ肥
  料ガ十分ニ全體トシテ配給ガ出來マセヌノ
  デ、重點配給ヲ今政府トシテハヤツテ居ル
  譯デアリマス、米麥等ニ付キマシテハ、特別
  ニ他ノ作物ニ比シテ多クヲ配給ヲ致シテ居
  リマスガ、ソレガ色々農會、產業組合等ニ
  依リマシテ、肥料ノ重點的ニ配給スルコト
  ヲ徹底ヲ致スヤウニ指導シテ居リマスガ、
  ドウモ事實ハ必ズシモサウ行ツテ居ラヌト
  云フノガ、恐ラク事實デハナカラウカト思
  フノデアリマス、只今福島縣ノ事例ニ付テ
  御話ニナリマシタヤウニ、前年ノ麥ノ作付
  ト云フモノガ計畫通リニナツテ居ラヌ、肥
  料ハ計畫反別ニ依ツテ貰ツテ居ツテ、實ハ
  作付ハ非常ニ減ツテ居ル、斯ウ云フコトデ
  アレバ、自然ソコニ、ソレハ他ノ桑ニ持ツ
  テ行ツタノデハナイカ、或ハ梨畑ニ入レタ
  ノデハナイカト云フコトヲ、恐ラク是ハ問
  題ニ致シタノデアラウト考ヘルノデアリマ
  ス、サウ云フ關係ガアリマスノデ、サラバ
  ト云ツテ之ヲ農家ニ、謂ハバ政府ノ政策ニ
  協力シナイ肥料ノ使ヒ方ヲ致ス者ニ、是ガ
  分ツテ居リナガラ默ツテ肥料ヲ縣ニ於テ配
  ツテ行クト云フコトモ如何ナモノカト云フ
  風ナ考ヘカラ、恐ラク御話ノヤウナ配給方法
  ヲ或ハ考ヘタノカトモ考ヘルノデアリマス
  ガ、ソレ等ノ點ハ十分事情ヲ調ベマシテ、
  是ハ當局ニ於テ調整ヲ致スト云フコトニ致
  スヨリ外ハナイト考ヘマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=107

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• 108・山田六郎

  ○山田(六)委員　此ノ問題ハ、肥料ヲ本當
  ニ計畫反別ダケニ使ハズニシマツタト云フ
  コトハ怪シカラヌト云フコトニナレバ、其
  ノ方ノ處分ヲスルコトハ宜シイト思フノデ
  アリマスガ、ソレガ爲ニ十八年度ニ作付ス
  ル數千町步ノ土地ニ使フダケノ肥料ヲ全然
  與ヘナイト云フヤウナコトハ、今日ノ場合
  ニハドウモ是ハドウ云フモノカト思フノデ
  アリマスガ、併シ御話ニ依ルト福島縣ダケ
  ノ問題ラシク聞エルノデアリマスカラ、尙
  ホ御調査ヲ願ツテ、然ルベク御願ヒ致シタ
  イト思ツテ居リマス、ソレカラ尙ホ〓絲ノ
  問題ト徵用ノ問題ガアルノデスガ、是モ大臣
  ニ御聽キ致シタイト思フノデアリマスガ、
  ソレハ斯ウ云フ問題デアリマス、三反歩以
  上ノ土地ヲ所有シテ居ル農家カラハ徵用ヲ
  考慮スル、斯ウ云フコトニナツテ居ツタノ
  デアリマスカラ、昨日モ其ノコトヲ農林大
  臣ガ言ハレタヤウデアリマシタガ、最近ハ
  事實ニ於テ三反步ドコロデナイ、一町步モ
  二町步モ作ツテ居ル農家カラモ、ドンドン
  徵用ヲスルト云フコトニナツタノデアリマ
  ス、ソレハ此ノ戰局ノ進ムニ從テ、色々軍
  需工場等ニモ益〓、勞働力ガ要ルノデアリマス
  カラ、已ムヲ得ナイト考ヘテ居ルノデアリ
  マスガ、所ガ其ノ徵用ヲ受ケタガ爲ニ、二
  町步、三町步ト云フヤウナ農家ガ、全ク半
  分ノ土地ノ耕作ヲ止メナケレバナラヌト云
  フヤウナ家ガ、頻々トシテ最近出來テ參ツ
  タノデアリマス、現在私ノ村ナドモ、今六、
  七戶ノ家ガ丁度サウ云フ境遇ニナツテ居リマ
  シテ、之ヲ小作ニ附シタイト思ヒマスルガ、今日
  ノ狀況デハ小作ヲ引受ケル者ガナイ、ソレデ已
  ムヲ得ナイカラ團體デ作ツテ吳レロト云フヤ
  ウナ話モアルノデアリマス、實ハ團體デ昨年モ一
  昨年モ、二箇年引續イテ產業組合ト農會ガ聯
  合致シマシテ、斯ウ云フ土地ヲ耕作シテ參リ
  マシタガ、二年ナガラ損失ヲ重ネテ、中々
  負擔モ容易デナイノデアリマス、ソレハ十
  六年ノ凶作ノ關係モアリマシタガ、悉ク勞
  賃ヲ拂ツタノデハ引合ハナイノデアリマス、
  地主ニ少シモヤラナケレバ引合フノデアリ
  マスガ、地主ニ幾ラカヤルト到底引合ハナ
  イノデアリマスカラ、今後斯ウ云フモノガ
  益〓出テ來タノデハ、團體ノ力デハドウスル
  コトモ出來ナイト云フコトニナルノデアリ
  マス、ソコデ私ハ更ニ御尋ネシタイコトハ
  是マデハ三反步以上ト云フコトデアリマシ
  タガ、三反步以上デナクトモ宜シイ、一町
  步以上デモ、一町五反步以上デモ宜シイ、
  兎ニ角徵用ノ爲ニ田ヲ耕作スルコトガ出來
  ズ、其ノ田ヲ他ニ小作ニシヨウト思ツテモ
  小作ヲ引受ケル者ガナシ、ト云フヤウナ非
  常ナ境遇ニ立ツタモノニ對シテハ徵用ヲシ
  ナイ、斯ウ云フヤウナコトヲ實際ニ行ヒ得
  ルコトニシテ戴キタイ、三反步以上ノ農家
  カラハ徵用ヲシナイト云フヤウナコトニモ
  ナツテ居ルヤウナ御話ハアリマスケレドモ、
  是デハ駄目デアリマス、實際ニ徵用シナイ
  ト云フコトニナラナケレバ駄目ダト思フノ
  デアリマスガ、近來頻々トシテ農家ノ本當
  ニ重要ナ勞働者ヲ徵用シテ持ツテ行ク、ソ
  レハアトノ家族デ耕作スルコトガ出來レバ、
  持ツテ行ツテモ宜イノデアリマス、所ガ耕
  作ガ出來ズ、更ニ小作ニシヨウトシテモ、
  小作ノ引受ケ手ガナイト云フヤウナモノニ
  對シマシテハ、是ハ是非トモ徵用ヲ見合ハ
  シテ戴キタイ、是ハ極ク上層デハサウ云フ
  コトヲサセナイト言ヒマシデモ、或ハ職業
  指導所、或ハ其ノ他ノ方面デ斯ウ云フコト
  ヲ現ニ行ツテ居ルノデアリマスカラ、極ク
  下層ノ職業方面ノ人々ガ斯ウ云フコトヲヤ
  ラヌト云フコトヲハツキリサセルコトニ御
  配慮ヲ願ヒタイト思ヒマスガ、此ノ點ニ付
  テハ御意見ハ如何デアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=108

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• 109・重政誠之

  ○重政政府委員　徵用ハ、主要ナル食糧農
  產物ヲ三反歩以上耕作シテ居ル者ニ付キマ
  シテハ、大體致サナイト云フ政府内部ノ方
  針ニナツテ居リマシテ、各地方長官ニ對シ
  テモ通達ヲ致シテアル譯デアリマス、只今
  御述べノヤウナ一町步以上モ作ツテ居ル者
  ヲ徴用致シタト云フヤウナコトハ、私最近
  ニ於キマシテ初メテ御聽キ致シタノデアリ
  マスルガ、是ハ後デ宜シウゴザイマスカラ、
  具體的ニ其ノ事例ヲ一ツ御提示ヲ願ヒタイ
  ト考ヘルノデアリマス、ソレニ依リマシテ十
  分ソレハ內容ヲ取調ベマシテ善處致シタイ
  ト考ヘマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=109

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• 110・山田六郎

  ○山田(六)委員　承知致シマシタ、ソレハ
  直チニ其ノ具體的ノモノヲ御手許ニ差上ゲ
  ルコトニ致シマス、是ハ私ハ縣ニ參リマ
  シテ、縣ノ職業課ニ對シテ、斯ウ云フヤ
  ウナ實情ニアル農家カラ徵用サレルコト
  ハ困ル、是デハ全ク百姓ガ出來ナクナルト
  話シタ所ガ、縣デハ斯ウ云フコトヲ言ツテ
  居ルノデス、縣ニ割當テラレテ來タ勞働者
  ヲ、成クベク商店デアルトカ、或ハ整理統
  合サレタ中小商工業者ト云フヤウナ方面カ
  ラ求メヨウトシテ、今日マデ努力シテ來タ
  ガ、旣ニ人ガナイ、現ニ多少アリマシテモ、
  ソレハ役ニ立タナイ、ソレダカラドウシテ
  モ農家カラ徵用スルヨリ外ニ方法ガナイノ
  ダ、ダカラソレハ諦メテ貰フ外ナイ、一 一
  徴用令ヲ出シタモノハ、假令サウ云フ事情
  ガアツテモ途中デ止スコトガ出來ナイ、ソ
  レヲ止スト外ノ者ニ惡影響ヲ與ヘルカラ、
  是ハ何デモ彼デモ止スコトハ出來ナイカラ
  已ムヲ得ナイノダ、成ベク注意ヲシヨウト
  思ツタケレドモ、是ハ今日ニナツテハ駄目
  ダ、農家以外ニ採リヤウハナシ、縣ニハ割
  當ガ來ルシ、割當テテ來タモノハ引受ケテ
  處置シナクテハナラナイカラ、已ムヲ得ナ
  イノダ、斯ウ云フ縣ノ說明デアリマスカラ、
  ソレモ御含ミ下サイマシテ、然ルベク御配
  慮願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=110

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• 111・吉植庄亮

  ○吉植委員　一寸關聯シテ······千葉縣ニモ
  山田サンノ言ハレタヤウナ、一町步、二町
  步作ツテ居ル者ガ徵用サレテ居ル例ガアリ
  マス、其ノ具體的ナコトハヤハリ後デ總務
  局長ノ御手許ニ差上ゲマスガ、私ノ方デハ
  斯ウ云フコトガアリマシタ、今囘此ノ團體
  法ソレカラ又町村制改正法ガ出ル、其ノ
  時ニ町村長ニ對シテ、餘リ芳シクナイ治績
  ニ付テ、縣ナラ縣ニ行ツテサウ云フコトヲ
  陳情シテ宜シイノカ、ソレハ勿論宜シイト
  云フヤウナ話ヲシマシタ所ガ、私ノ方デハ
  一町步、二町步作ツテ居ル者ニ徴用令ガ來
  テ、其ノ農民ガ持ツテ行カレタ、サウ云フ
  コトガアルノダカラ、村長サンノ氣持ニ反
  スルヤウナコトヲ縣アタリニ行ツテ陳情ス
  ルト、徵用ニ引掛ケラレテ私モ持ツテ行カ
  レルカモ知レナイ、サウナツタ時ニハ百姓
  ハ出來ナクナル、洵ニ困ツタモノダト云フ
  ノデ相談ニ來タ譯デアリマシテ、是ハ確カ
  ニ到ル處デ相當徵用ガアルノデゴザイマス、
  ドウカ此ノ點、吾々ノ方カラモ具體例ハ出シ
  マスガ、農林省デ一ツ能ク御調査下サイマ
  スヤウ御願ヒ致シマス

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• 112・山田六郎

  ○山田(六)委員　蠶絲問題ニ對シマシテ、是
  レ是レノコトヲ御聽キ致シタイト思フノデ
  アリマス、繭ノ値段ニ付キマシテハ、先般
  來大勢ノ人カラ質問サレマシテ、御囘答ヲ
  得テ居ルノデアリマスガ、其ノ御答辯ニ依
  ルト、兎ニ角現在生產費ヲ調査中ダカラシ
  テ、其ノ生產費ガ集マツテ來夕際ニ、現在
  ノ公定價格ヨリモ安イト云フコトニナレバ、
  此ノ公定價格ヲ生產費ニ依ツテ訂正ヲ致シ
  テ、サウシテ蠶絲委員會ニ付議シテ決定ヲ
  スル、斯ウ云フ御話ニ今マデノ御答辯ハナ
  ツテ居ルノデアリマスガ、此ノ生產費ヲ調
  査シテ參リマシタナラバ、現在ノ價格ヨリ
  モ確カニ十掛ヤ十五掛ハ高イ生產費ガ出テ
  來ルダラウ、斯ウ云フ風ニ考ヘテハ居マス
  ガ、現在ノ農林省ニ於テ御調査ニナツテ居
  ル生產費ト云フモノハ、或ル一定ノ規格ノ
  中ニ入レテ、物資ニ對シテハ公定價格以上ノ
  モノデハ相成ラヌ、人夫ニ對シテハ、是モ公
  定價格ノ範圍內デ決メナケレバナラヌ、此
  ノ仕事ハ何人デ出來ル筈デアルトカ、色々
  難カシイ規格ノ、公定價格ヲ決メル材料ノ
  雛型ヲ示シテヤラシテ置クト云フコトガ一
  ツデアリマス、今一ツハ全國內ニ於ケル所
  ノ優良養蠶家、或ハ模範農家ト云フ人ニ、
  其ノ材料ヲ提供セシメルコトガ一ツデアリ
  マスカラ、本當ノ生產費ガ出テ來ルカドウ
  カト云フコトモ非常ニ心配デアルト同時ニ、
  模範養蠶家ノ如キモノハ、必ズ或ル數量ダ
  ケノ繭ハ採ルノデアリマスガ、一般養蠶家
  ハサウ繭ハ採レナイト云フ、繭ニ對スル危
  險率ト云フヤウナモノモ、其ノ生產費ノ中
  ニハ計算ヲサレテ居ラナイト云フヤウナ譯
  デアリマスカラ、ドウ云フ生產費ガ集マツ
  テ來ルコトヤラ分リマセヌガ、ドンナ生產費
  ガ集マツテ來マシテモ、今日ノ公定價格ヨ
  リモ十掛ヤ十五掛ハ多イダラウ、斯ウ云フ
  風ニハ考ヘテ居ルノデアリマスケレドモ、
  若シ其ノ生產費ガ私共ノ思ツテ居ル程ノ生
  產額ニ達シナイトシマシテモ、經濟事情ヲ
  斟酌シテ値段ヲ決定スルト云フコトニナツ
  テ居リマスカラ、ソレ等ヲ斟酌決定ヲ致シ
  マシテ、價格ヲ或ル程度引上ゲルト云フヤ
  ウナ所ニ付テハ、無論オヤリ願ハレルモノ、
  斯ウ云フ風ニ大臣ノ答辯ノ內容ニ依ツテ想
  像ハシテ居ルノデアリマスガ、併シ何時ノ
  時期ニドウ云フ程度ノ引上ヲスルカト云フ
  コトガ、餘リニハツキリシテ居リマセヌノ
  デ、其ノ點ニ付テ一ツ御意見ヲ御伺ヒ致シ
  タイト思ヒマス

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• 113・井上俊太郎

  ○井上(俊)政府委員　生產費ハ只今御話ニ
  ナリマシタヤウニ、色々ナ枠ガアリマシテ、
  其ノ枠デ決メテ居リマスシ、又御話ノヤウ
  ニ記帳ヲ致シマスノデ、農家トシテモ相當
  良イ方面ノ農家ガ取ラレテ居ルノデハナカラ
  ウカト云フヤウニ考ヘマスガ、サウ云ツタ
  所デノ生產費ガ是ダト云フコトニナリマシ
  テ、其ノ外經濟事情、其ノ他ノ物價トノ睨合
  ハセト云ツタヤウナコトヲ參考ニシテ、蠶
  絲委員會デ以テ十分御審議ヲ願ツテ、農林
  大臣ガ決メル、斯ウ云フコトニナツテ居リ
  マスノデ、今折角昨年ノ生產費ノ報〓ヲ集
  計整理ヲ致シテ居ルヤウナ事情デゴザイマ
  シテ、何時ドノ程度上ゲルカト云フコトニ
  付キマシテハ、成ベク早ク其ノ蠶絲委員會
  ヲ開ク爲ニ、色々ナ準備ヲ今急イデ作ツテ
  居ルヤウナ事情デアリマスノデ、成ベク早
  ク蠶絲委員會ヲ開キマシテ、御決メ戴キタ
  イト考ヘテ居ルヤウナ次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=113

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• 114・山田六郎

  ○山田(六)委員　此ノ問題ニ對シテハ此ノ
  程度ニシテ置キマスガ、若シ此ノ繭ノ價格
  ノ決定ニ付テ、餘リニ僅カバカリノ引上ヲ
  シタト云フヤウナコトニナリマスレバ、遺
  憾ナガラ養蠶ト云フモノガ全然ナクナツテ
  シマフ、生產ト云フモノハ意外ニ激減スル
  ト云フ虞ガ多分ニアリマスカラ、ソレ等ヲ
  御含ミ下サツテ、然ルベク御配慮ヲ願ヒタ
  イト思フノデアリマス、大臣ノ御答ヘニ依
  しや、蠶絲委員會ニ依ツテ決定スルト云フ
  コトデアリマスガ、是ハ形式ハサウナツテ
  居リマスガ、此ノ議案ハ全部農林省ノ手ニ依
  ツテ作ラレルノデアリマスカラ、農林省ノ
  手ニ依ツテ繭ノ價格ハ決定サレルモノ、斯
  ウ云フ風ニ見ルベキダト思フノデアリマス、
  其ノ意味ニ於テ然ルベク御配慮願ヒタイト
  思ツテ居リマス
  ソレカラ國策會社ガ多ク出來テ居リ、殊
  ニ農業ニ關スル國策會社ニ對シマシテハ、
  每日各位カラ色々ナ質問ガアリマシタ、國
  策會社ノ中毒ニ罹ツテ、農產方面ニ於テハ
  困ツテ居ルト云フヤウナ議論ガ非常ニ多カ
  ツタノデアリマスガ、又最近ノ新聞デ見マ
  スルト、此ノ製絲業ガ統制サレテ一ツノ統
  制シタ製造會社ガ出來ルト云フコトニ新
  聞ニ見エテ居ルノデアリマス、是ハ現在ノ
  〓絲業狀況カラ見マスト、當然起ルベキ會
  社ダラウト考ヘテ居リマスカラ、此ノ會社
  ノ起キルコトハ當然デアルト云フ風ニ考ヘ
  テ居ルノデアリマス、併シドウ云フヤウナ
  御計畫ニ依ツテ、ドウ云フヤウナ規模ニ於
  テ此ノ會社ガ作ラレルカト云フコトニ付テ
  ノ御計畫ノ一端ヲ御聽キ致シタイト思フ
  ノデアリマス
  ソレカラ今一ツハ昨日ノ新聞デ見マス
  下、更ニ橫濱、神戶ノ問屋其ノ他ノ人々
  ガ集マリマシテ、此ノ生絲ヲ販賣スル會
  社ヲ作ルト云フコトニ決定ヲ致シタト云
  5フ意味ノコトガ新聞ニ出テ居リマスルガ、
  又此ノ會社ガ玆ニ生レルト云フコトニ相
  成ルノカドウカ、一ツノ商品ニ付テ五ツモ
  六ツモノ國策會社、若シクハ準國策會社ナ
  ルモノガ出テ來ルト云フコトガ、總テ例ニ
  ナツテ居リマスルガ、私共ガ考ヘテ見ルト、
  此ノ國策會社ト云フモノハモツト〓〓單純
  ニ一元化シタラドウカト云フヤウニ考ヘラ
  レルノデアリマス、今日本蠶絲統制會社ガ出
  來テ居リ、其ノ下ニ副蠶絲ノ會社モ出來テ
  居ル、更ニ今度ノ蠶絲製造會社ガ生レ、ソ
  レカラ又副蠶絲配給會社ト云フモノガ出來
  テ居ルト云フ話モ聞イテ居リマスガ、更ニ生
  絲ノ配給會社デアリマスカ、サウ云フモノ
  モ出來ル、其ノ他ニ蛹ト云フモノニ對スル
  會社モ出來テ居ル、更ニ一ツノ品物ニ對シ
  テ五ツモ六ツモ會社ヲ作ツテ行クト云フコ
  トハ、養蠶家ノ方カラ言フト、又犧牲ヲ拂
  ハナケレバナラヌ機關ガ一ツ殖エタト一般
  農民ガ見ル傾向モアルノデアリマスガ、是
  等二ツノ會社ニ付テノ御方針ヲ御聽キ致シ
  タイト思ヒマス

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• 115・井上俊太郎

  ○井上(俊)政府委員　生絲ノ製造會社ノコ
  トニ付キマシテハ、此ノ蠶絲ノ今ノ狀態デ
  ハ中々業者ノ方ガヤツテ行キニクイト云フ
  ヤウナ情勢ニアリマスノデ、玆ニ纏マツテ
  一ツノ製造會社ヲ立ツテ行カウト云フヤウ
  ナ趣旨デ、只今農林省ニ官民合同ノ協議會
  ヲ作リマシテ、ソコデドウ云ウ風ナ會社ヲ
  作ツテ行ケバ宜イカト云フコトニ付テ計畫
  ヲ協議シテ居ルヤウナ次第デアリマス、是
  ハ純然タル製造會社デゴザイマシテ、實際
  ニ製造ヲシテ行クト云フ意味ノ會社デゴザ
  イマス、ソレカラ問屋サンノ方デ販賣會社
  ヲ作ルカドウカト云フ御尋ネデゴザイマス
  ガ、今ノ絲ノ配給ニ付テ、ヤハリ問屋サン
  ガ現在ノ行キ方デ十分配給ノ機能ヲ達スル
  カドウカト云フコトニ付キマシテハ、絲ノ
  多イ餘ツテ居ル時代ニハ賣込ト云フ仕事モ
  相當アリマシタガ、絲ノ分量ガ減ツテ足リ
  ナイ際ニ、是ガ又色々配給ニ不都合ヲ來スト
  云ツタヤウナ事情ニモアリマスノデ、問屋
  ノ機構ノ整備ニ付キマシテモ、業者自體ニ於
  キマシテドウヤツタラ宜イカト云フコトヲ
  〓究致シテ居リマスシ、官廳ノ方面ニ於キ
  マシテモ、ドウ云フ風ニ配給ノ機構ヲヤツ
  タラ宜イカト云フコトニ付キマシテテ、十
  分〓究ヲ續ケテ居ルヤウナ次第デゴザイマ
  ス、會社ニ仕上ゲルト云ツタヤウナコトニ
  ニ付キマシテハ、其處マデ具體的ニ考ヘテ
  居ルヤウナコトハゴザイマセヌ

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• 116・山田六郎

  ○山田(六)委員　此ノ生絲ヲ統合致シテ生絲
  製造會社ヲ作リ、其ノ中ニ短纖維事業者モ
  統一シテヤツテ行クト云フコトハ今日ノ
  場合サウスル以外ニ方法ハナイノデアラウ
  ト云フ風ニ私モ考ヘテ居ツタノデアリマスガ、
  其ノ他ニ更ニ又品物ノ出來上ツタモノヲ配
  給スル會社ヲ作ルト云フヤウナコトニ至ツ
  テハ、是ハドウ云フモノデアラウカト非常
  ニ疑問ニ思ツテ居ルノデアリマス、一々統
  制事業ヲヤル爲ニ、其ノ統制ヲシタ爲ニ影
  響ヲ蒙ル人ヲ救濟スル爲ニ、會社ヲ一ツ作
  リ一ツ作リシテ行クト云フコトハ、獨リ
  蠶絲業ノミナラズ、例ヘバ農器具ノ配給ニ
  付キマシテモ、其ノ他類似シタ色々ノモノ
  ニ付キマシテモ、非常ニ餘計ナ機關ガ出來
  テ、ソレガ爲ニ農家ノ負擔ヲ曾大スルト云
  フ例ガ極メテ澤山アルノデアリマスカラ、
  本問題ニ對シマシテモ、十分一ツ其ノ點
  ヲ御考慮願ヒタイト思フノデアリマス、又此
  ノ會社ハ何レモ圓滿ニ出來上ルダラウト想像シ
  テ居リマスルガ、例ヘバ組合製絲ノ如キモ
  ノニ至リマシテモ、是ガ統制サレルト云フヤ
  ウナコトガ新聞ナドニハ出テ居リマスル
  ガ、是ハ組合製絲ノ如キモノモ强制シテ加
  入セシメルト云フコトハ出來得ナイノデア
  リマスカラ、何レモ任意參加スルト云フヤ
  ウナコトニナルノダラウト思ヒマスルガ、是ハ
  養蠶家ト非常ニ密接ナ關係ガアリマシテ、組
  合製絲ハ養蠶家ノ共同經營ニ依ツテ成立ツ
  テ居ルノデアリマスルガ、斯ウ云フ會社ガ
  出來上リマシタ際ニハ、養蠶家ガ今日繭ノ
  處理ニ付テ、製絲ヲシテ賣ツテ居ツタ特典
  ヲ失フコトニナリマスルカラ、大抵ノ養蠶
  家ハソレガ爲ニ相當不利益ヲ蒙ルヤウナ形
  ニナルノヂヤナイカト云フヤウナコトヲ心
  配サレルノデアリマスルガ、ソレ等ニ對シ
  マシテハドウ云フヤウナ御處置ヲ御執リニ
  ナリマスルカ

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• 117・井上俊太郎

  ○井上(俊)政府委員　組合製絲ヘノ參加ニ
  付キマシテハヤハリ營業製絲ト同ジヤウ
  ニ强制ヲスルト云フコトハ考ヘテ居リマセ
  ヌ、唯斯ウ云フ會社ニ入ツテ行ツタ方ガ宜
  イノダト云フ點ニ於キマシテ、御協力ヲ願
  ツテ成ベク參加ヲ願フヤウニ考ヘテ居リ
  マスガ、養蠶家ガ今マデ製絲ノ利益ヲ-
  製絲ヲシテソレダケ組合製絲ト云フ恰好ニ
  於テ利益ヲ還元サレテ居ツタト云フコトニ
  付キマシテハ、ヤハリ此ノ出來上ル製造會
  社ニ參加ヲスルト云フコトニ依ツテ、其ノ
  利益ノ還元ヲ見ルコトニナルト考ヘテ居ル
  ヤウナ次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=117

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• 118・山田六郎

  ○山田(六)委員　サウスルト斯ウ云フコト
  ニ相成リマスカナ、今度ノ會社ヲ作リマス
  ルニハ、ヤハリ現在ノ製絲家ガ悉ク出資者
  ニナリマシテ會社ヲ作ル、是マデノ蠶絲業
  ニ關スル會社ヲ作リマスルニハ、全養蠶家
  ガ其ノ出資ヲ擔當致シタノデアリマスル
  ガ、今度ノ製絲會社ニ對シマシテハ全養蠶
  家ニ出資ハ要求ヲ致サズ、現在ノ製絲家ノ
  範圍内ニ於テヤルコトニナリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=118

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• 119・井上俊太郎

  ○井上(俊)政府委員　現在ノ製絲家及ビ組
  合製絲ノ方ニ依ツテ新シイ製造會社ヲ作
  ル、斯ウ云フコトニナリマス

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• 120・山田六郎

  ○山田(六)委員　尙ホ本問題ニ付キマシテ
  ハ質問ヲ少シ保留シテ置キタイト思フノデ
  アリマス、第二ノ指導員問題、是ハ大臣ノ
  オイデニナツタ場合ニ御伺ヒ致シタイト思
  ヒマス
  ソレカラ華中蠶絲株式會社問題ニ付テ一
  寸御聽キシタイノデアリマスガ、中支ニ於
  ケル華中蠶絲式式會社ガ最モ近キ將來ニ國
  民政府ニ委讓サレル、ソシテ日本カラ行ツ
  テ居ル人々ハ引揚ゲルコトニナルサウダ
  下、極メテ最近華中蠶絲內ニ於ケル人カラ
  通信ガ參リマシタガ、サウ云フコトニナル
  カナラヌカト云フコトヲ一ツ御伺ヒ致シテ
  置キタイト思フ、ソレハ利權囘收ト云フ意
  味ニ於テ國民政府ノ手ニ移スノデアル、斯
  ウ云フヤウナコトデアリマス、今日マデ支
  那ノ蠶絲業ト日本ノ蠶絲業トノ調節ヲ圖リ、
  是ガ統制ノ任ニ當ツテ居リマシタ華中蠶絲
  ガ、全然國民政府ノ手ニ移ルト云フコトニ
  ナリマスルト、此ノ日本ノ蠶絲業ト支那ノ
  蠶絲業トノ關係ガドウ云フコトニナツテ行
  キマセウカ、今日マデ此ノ兩國ニ於ケル蠶
  絲業ハ華中蠶絲ガアリシ爲ニ調節ガウマク
  行ツテ居ツタノデアリマスルガ、ソレガ出
  來得ナイト云フヤウナコトニナリマスト、
  其ノ結果ガドウ云フコトニナリマセウカ、
  其ノ點一寸御聽キシタイト思フノデアリマ
  ス

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• 121・井上俊太郎

  ○井上(俊)政府委員　只今御質問ノ事情ハ
  能ク承知致シテ居リマセヌノデ、取調ベマ
  シテ若シ御答ヘスルヤウナ機會ガアリマシ
  タラ御答ヘ致シタイト思ヒマス

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• 122・山田六郎

  ○山田(六)委員　今大臣ガ御見エニナリマ
  シタカラ、先刻御聽キ致シタノデアリマス
  ルガ、大臣ニ御聽キ致シタ方ガ宜カラウト云
  フコトデアリマシタ食糧問題ノ統計ニ關ス
  ルコトデアリマスガ、私共ノ考ヘヲ以テス
  レバ、本年ノ氣候カラ言ツテ、本年ノ稻ノ
  出來カラ言ツテ、兎ニ角三千二百幾ラト云
  フ田地ニ植付ケテ置クノデアリマスルシ、
  其ノ外ニ百万石以上ノ陸稻ガ穫レル筈デア
  リマスルカラ、ソレ等ヲ考ヘテ見ル
  、假令一部分ニ水害等ハアツタトシマシ
  テモ、現在發表サレテ居ルヤウナ六千七百
  三十何万石トカ、ソンナ數字ヨリモツト多
  イト云フヤウニドウシテモ考ヘラレル、私
  共ノ方ノ實收カラ考ヘマシテモドウシテモ
  多クナクテハナラヌ、各地ノ米作ヲ見テモ
  多クナクチヤナラヌト思フノデアリマス
  ソレガ少イ、でドンナコトヲシテモ七
  ルガ、
  千万石ヲ突破シテ居ルモノト思フ、此ノ生
  產ノ統計ナルモノガ本當ニ確實ニ出來テ居
  ナカツタナラバ、總テノ食糧ノ計畫ト云フ
  モノガハツキリシテ來ナイト云フコトハ
  勿論ノコトデアリマス、ソレテ私ハ、自分
  ノ村ダケノモノデモ成ベク農業ニ關スル統
  計ハ正確ニシタイト云フノデ色々ト相談
  ヲシテ見タノデアリマスルガ、結局是ガ正
  確ニ出來ナイノハ、農家ノ消費スル米ノ量
  ノ制限ガ餘リニヒドイ、非常ニ勞力ガ足リ
  ナイカラ無理ナ勤勞ヲシテ働イテ居ル、
  ソレガ一日四合、婦人ニ至ツテハ三合デアル、
  其ノ他ノ人ハ二合三勺デアルト云フヤウニ
  非常ニ消費規正ガ强イノデ、實際ノ生產高ヲ
  出スコトガ出來ナイ、正直ニ出シタナラバ、
  是ハ働クコトガ出來ナクナツテシマウ、斯
  ウ云フヤウナ話ヲチョイ〓〓聞クノデアリ
  マスガ、ソレハ尤モナ說明デアリマセウ、
  ソコデ私ハ此ノ間中各地ニ農家ノ人ニ集ツ
  テ貰ヒマシテ、所謂保有米ノ中カラ一割以
  上ノ米ヲ供出シテ貯藏スルコトノ協議會ヲ
  開イテ步イタ、ソコデ能ク其ノ話ガ出ルノ
  デアリマス、本年ノ割當テタ米ト云フモノ
  ガ非常ニ多イ、是ハ私共想像シテ居ナカツ
  夕程非常ニ多イノデアリマス、私共ノ縣等
  デハ二百三十万石ノ收穫ニ對シテ、百六十
  万石モ貯藏供出サセテ居リマスルカラ、殘ル
  モノハヨク〓〓少イ、併シモツト〓〓供出
  スル餘裕ガアルノデナイカト云フヤウニ想
  像モサレル節ガアルモノデアリマスカラ、
  是非トモ供出シロト云フコトヲ頻リニ聞カ
  セマスト、出來ルダケ供出スル、アナタノ
  言フ通リ一割以上供出スルト云フコトヲ言
  ツテ居ルノデアリマス、其ノ際ニ、ドウモ
  生產統計ガ少ナイヤウデアルト云フ話ヲス
  ルト、今ノ食糧ノ規正カラ到底正直ナモノ
  ハ出セナイ、斯ウ云フコトデアリマスルガ、
  是ハ今後ノ日本ノ食糧政策ヲ樹立スル上ニ
  於テ、獨リ米ニ限ラズ、總テノモノハサウ
  云フ傾向ガ極メテアルノデアリマスルガ、
  是ハ農家ニ對スル食糧消費規正ヲ今少シ手
  加減スル、實際ニ要ルモノハ要ルトシテ計
  算シテ、成ベク實際ニ近イ統計ヲ御取リニナ
  ルコトガ、今後ノ食糧政策樹立ノ上ニ最モ
  必要デナイカト云フヤウニ考ヘラレルモノ
  デアリマスカラ、其ノ點ニ付テノ御所見ヲ
  拜聽致シタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=122

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• 123・井野碩哉

  ○井野國務大臣　農林統計、殊ニ米ノ生產
  統計ニ付キマシテハ、其ノ正確ヲ期シマス
  コトガ最モ大切デアリ、農林省トシマシテ
  モ色々規則ノ改正等モ致シ、其ノ點ニ付テ
  ハ考慮シテ參ツテ居リマス、段々ト正確性
  ヲ得テ來テ居リマシテ、此ノ統計ニ依リマ
  シテ、今日米ノ管理ナリ米ノ配給ヲ致シテ
  居リマシテ、大體一年ノ需給關係ニ於テ其
  ノ誤リナキヲ期シテ居リマスカラ、其ノ意
  味ニ於キマシテハ此ノ程度ノ統計ヲ以テ、
  滿足スルヨリ仕方ガナイト考ヘテ居リマス、
  唯今御話ノヤウニ農家ノ自家保有米ガ少イ
  カラ、統計ノ上ニ狂ヒガ來ルト云フ御話デ
  アリマスガ、第一囘收穫豫想ト第二囘收穫
  豫想ハ、是ハ農家ノ申〓ニナツテ居リマセ
  又、是ハ町村ニ於ケル統計員ガ、大體ノ其
  ノ町村竝ニ部落內ノ生產事情ヲ見マシテ
  ソレニ基イテ町村長ガ報告スルコトニナツ
  テ居リマス、隨テ或ハ各町村長或ハ統計員
  ガ、村ノ爲ニ成ベク米ヲ多ク殘シタ方ガ宜
  イト云フヤウナ氣持カラ噓僞ノ申〓ヲスレ
  バ、ソレハサウ云フコトハアリマスケレド
  モ、併シ今日デハ前年度ノ收穫トノ割合、
  色々ナ點カラ勘案サレマスカラ、サウ云ツ
  タ色々ノ細工ヲスルコトハ、餘リ出來ナイ
  ト云フ事態ニナツテ居ルノデアリマス、農
  家ノ申〓デアリマスト、是ハ今ノ御話ノ點
  モ多少アリマスガ、第一囘、第二囘ノ收穫
  豫想ハサウナツテ居リマス、唯實收ハ農家
  ノ申〓ニナツテ居リマスカラ、是ハ能ク指
  導ヲ致シマシテ、サウ云ツタ爲ニ申〓ヲ隱
  サナイヤウニ、十分ニ指導ニ依ツテ適正ヲ
  期シテ參リタイト思ツテ居リマス、現在段
  段實收ガ集マツテ來テ居リマスガ、比較的
  正確ナル數字ガ來テ居ルモノト考ヘテ居リ
  マス、然ラバ今御話ノヤウニ農家ノ自家保
  有米ヲモツト多クシテハドウカト云フ御意
  見、是ハ生產ニ從事シテ居リマス者ノ爲ヲ
  考ヘマスレバ、多イ方ガ結構カモ知レマセ
  又、併シ今日ノ國家ノ要請ト云フモノハ
  唯生產者ダケガ十分ニ食ベルト云フ譯ニハ
  行カナイノデアリマス、總テノ者ガ成ベク
  平等ナル消費ヲ致シテ行クコトガ適當デア
  リマス、今日農家ニ認メテ居リマスル自家
  保有米ト云フモノハ、サウ云フ點ヲ考慮ニ
  入レマシテ、相當ニ各方面カラ檢討ヲ加ヘ
  テ定メタ數デアリマス、先ヅアノ數ヲ以テ
  農村トシテハ滿足シテ貰ヒ、サウシテ今日
  ハ農村ハ單ナル米〓ダケデナシニ、他ノ芋
  ナリ雜穀ナリヲ混食スルコトニ依ツテ、ア
  ノ消費量モ一層節約シテ貰ヒタイト云フコ
  トヲ、國家トシテハ要請シテ居ル譯デアリ
  マス

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• 124・山田六郎

  ○山田(六)委員　今ノ統計、第一囘、第二
  囘ハ固ヨリ豫想デアリマスカラ、其ノ申〓
  ハ豫想ニ過ギナイ、併シナガラ過去ノ歴史
  カラ言ヒマスト、第三囘ノ實收報告ト云フ
  モノト、第一、二囘ノ豫想報〓ト云フモノ
  トハ、マルデ活字デ押シタヤウニ年々決マ
  ツテ居ル、豫想報〓ト實收報告トガ大變差
  ガアツタト云フ例ハ、今日マデナイ、統計
  ダケヲ見ルト、必ズ百分ノ一位、極メテ少
  數ノ差ガ出テ居ルヤウデアリマス、斯ウ云
  フヤウナ統計表ガ出來ルト云フコト自體ガ、
  旣ニ統計ト云フモノニ對シテ色々ナ作爲ガ
  行ハレテ居ルト云フ風ニ思フノデアリマス、
  是ハ惡意デモ何デモナイト思ヒマスガ、斯
  ウ云フ習慣ニナツテ居ルノデナイカト思フ
  位統計ノ變化ガ決マツテ居ル、此ノ邊ハ
  生キタ統計ニシテ、實際ノ收穫ヲ明ラサマ
  ニ出シ、ソレニ對シテ餘リニ無理ナ規制ヲ
  シナイ、農家ニバカリ多クヲ食ベサセルコ
  トハイケナイ、是ハ御尤モデアリマス、御尤
  モデアリマスケレドモ、ソコニ餘程實際ニ近
  イ消費量ヲ決メルト云フヤウナコトガ、却
  テ農家ヲ本當ニ眞面目ニセシムルコトガ
  出來ルノデアルノデハナイカ、私共ハ農家
  ニ米ヲ多ク置クコトハ、食糧政策ノ上ニ非
  常ニ害毒ヲ流ス、斯ウ思フモノデアリマス、
  中ニハ米ヲ非常ナ闇値デ賣ルコトヲ考ヘテ
  見タリ、或ハ橫流シヲスルコトヲ考ヘテ見
  タリ、色々ナコトヲスルコトニナリマスカ
  ラ、出來夕米ノ全部ヲ、食糧米ヲ殘シタ以
  外ハモウ急イデ供出シ得ルヤウニスル、
  是ガ最モ確實ニ行クト云フ風ニ考ヘテ居ル
  ノデアリマス、其ノ意味ニ於キマシテドウ
  シテモソレニハ或ル程度餘裕ヲ付ケテ、農
  家ニ〓糧ヲ保有セシメルト云フ必要ガアル
  ノデナイカト思フノデアリマス、斯ウ云フ
  意味デ申上ゲタノデアリマス
  今一ツ御伺ヒ致シタイコトハ、蠶絲業ノ方
  面ノ指導員ノ問題デアリマスルガ、是ハ農
  業團體ガ統合サレマスト同時ニ、各種ノ團
  體ニ指導員ガアル、殊ニ一般農業ノ方ノ指導
  員ト云フモノハ最近極メテ充實シマシテ、
  又政府ニ於キマシテモ十二分ノ助成モ與ヘ
  テ居ラレマス、如何ナル町村デモ結局一一名
  以上位ノ指導員ハ、今日出來テ居ルヤウデ
  アリマス、所ガ蠶絲業ニ關スル指導員ノ問題
  デアリマスガ、先達テ一一、三ノ方カラ此ノ
  問題ニ付テ質問ガアツタノデアリマス、其
  ノ質問ノ際ニハドウモ要領ヲ得ナイト思ツ
  テ聞イテ居ツタノデアリマスガ、最近指導
  員問題ニ對シテハ、或ハ製絲家方面ニ於テ、
  或ハ統制會社方面ニ於テ、此ノ指導員ヲ何
  處ニ歸屬セシメヨウカト云フヤウナ意見ガ、
  大分アルト云フコトヲ耳ニシテ居ルンデア
  リマス、此ノ農業團體ガ統合セシメラレテ、
  他ノ團體ニ屬スル所ノ指導員ト、養蠶業ニ
  關スル所ノ指導員トハ、何レモ同ジ性質ノ
  モノデアリマスカラ、是マデ通リ、若シク
  ハ是マデ以上ニ更ニ指導ノ充實ヲ圖ル、サ
  ウシテ豫定ノ數量ヲ產出セシメルト云フ必
  要ガアルカラ、此ノ養蠶業指導員ニ對シテ
  別ナ計畫ヲ立テルト云フヤウナコトハ、全
  然ナカラウト思ヒマスガ、先達テ以來質問
  モアリマシタカラ、更ニ重ネテ御聽キ致シ
  タイノデアリマス、指導員ニ對シマシテハ
  長イ間大分論議サレタ問題デアリマス、所
  謂特約製絲、特約組合ト云フコトガ、長ク
  養蠶家ト製絲家トノ間ニ結バレテ居ルノデ
  アリマスガ、此ノ長イ間ノ特約ノ結果ハ、
  今日マデノ日本ノ蠶絲業ハ、特約製絲ノ爲
  ニ非常ナル進步ヲシタノデアリマス、是ハ
  今日マデノ飼育ノ方面ニ於キマシテモ、品
  質ノ改善ニ於キマシテモ、特約製絲ノ努力
  ト云フモノハ蠶絲業ニ對シテ非常ナル貢
  獻ガアツタモノト、斯ウ云フ風ニ私共ハ固
  ク信ジテ居リマスガ、又同時ニ弊害モ多カ
  ツタノデアリマス、弊害モ多クシテ、特約
  製絲ニ於ケル所ノ指導員ニ對スル弊害ノ如
  キモノハ、養賛家ノ利害ヲ第二次ニシテ、
  製絲家ノ利益ヲ目標トシタ指導ガ行ハレタ
  ト云フコトモ一ツデアリマス、ソレカラ甚
  ダシキニ至リマシテハ、製絲所ニ於テ指導
  員ヲ集メテ、繭ノ受渡、看貫ニ對スル講習
  會ヲ開イテ居ル、是ハ到ル所デ事實デアリ
  マス、サウシテ養蠶家カラ受取ツテ來タ繭
  ヲ製絲工場ニ渡ス際ニ、目方ノ增ス者ニ對
  シテハ年末賞與其ノ他ノ額ガ非常ニ多イノ
  デアリマスガ、若シ此ノ貫數ガ減リマス際
  三、其ノ指導員ニ對スル責任トシテ、損
  失ハ負擔シナケレバナラヌト云フヤウナコ
  トハ各大製絲家ガ今日マデ行ツテ居ツタ
  事實デアリマス、養蠶家カラ受取ツタ繭ノ
  目方ヲ殖ヤシテ、工場ニ渡サナケレバナラ
  ヌト云フコトハ、何ヲ意味スルコトデアラ
  ウカ、斯ウ云フヤウナコトマデ現在行ハレ
  テ來テ居ルト云フコトハ、弊害ノ最モ大ナ
  ルモノノ一ツデアリマスガ、色々ナ弊害ガ
  餘リニ論議サレタガ爲ニ、ドウシテモ指導
  員ノ統制ヲ圖ラナケレバナラヌト云フノデ、
  蠶絲統制法ガ出來マスト同時ニ、養蠶業系
  統組合ニ指導員ヲ全部歸屬セシメマシテ、
  僅カニ一箇年間ヤツタノデアリマス、箇
  年ヤリマシタ結果ハ、製絲家方面ノ人々ハ
  養蠶系統組合ニ指導員ヲ任シタガ爲ニ、繭
  ノ生產ガ非常ニ減少シタト云フコトヲ能ク
  說カレルノデアリマス、果シテサウデアルカ
  ドウカト云フコトハ、大ナル問題デアリマス
  ルガ、私共ハサウ云フ風ニハ考ヘテ居ナイ、
  今日ノ他ノ一般農產物ト比較シマシテ、餘リ
  ニモ養蠶業ガ引合ハヌト云フノガ最大原因
  デ、繭ノ收穫ガ減ツタト云フ風ニモ信シテ居
  ルノデアリマスガ、一部ノ人々ガサウ云フ
  コトヲ稱ヘルヤウニニナツタノデアリマス、
  私ハ指導員ヲ製絲家ノ手ニ置イテ、サウシ
  テ特約製絲ヲヤツテ居ツタ時代ト比較シマ
  シテ、養蠶系統團體ニ指導員ヲ任セルト云
  フコトハ、養蠶家ノ不利益デアルト云フコ
  トカラ斯ウ云フ問題ガ上ツテ來タノヂヤナ
  イカト云フコトニ考ヘラレルフデアリマス
  ガ、更ニ最近ニ至リマシテハ、統制會社ニ
  指導員ヲ置クコトニシタラドウカト云フヤ
  ウナ說モアルコトモ聞イテ居ルノデアリマ
  ス、私ハ此ノ問題ニ對シテハ、第一外ノ農
  業指導員トモ違ヒマシテ、殊ニ養蠶ノ指導
  員ト云フモノハ買人ノ手ニ依ツテ指導セシ
  ムベキデナイ、斯ウ云フ風ニ固ク信ジテ居
  ルノデアリマス、取別ケ蠶品種ニ對シマシ
  テ、今日原々種ハ國家ガ管理シテ居ルカラ
  同一ノ品種ガ出來ル筈デアリマスガ、原種
  ノ製造ヲ許シテ置ク爲ニ、同名異種ノ品種
  ガ非常ニ多クナツテ居ルノデアリマス、ソ
  レガ爲ニ蟲質ノ虛弱ナコトハ第二ニ置イテ、
  絲質ノ善良ナルモノト云フ工合ニナツテ來
  テ、非常ニ養蠶家ガ違蠶ニ苦ンデ居ル、殊
  ニ昨年ノ如キハ違蠶ニ苦ンダ年デアリマス
  ガ、色々ナ蠶品種ニ付キマシテモ、其ノ他
  育蠶ニ付キマシテモ、是マデノ特約組合ニ
  屬シテ居ツタヤウナコトニ行キマセヌカラ、
  此ノ指導員ヲドウシテモ何トカシタイト云
  フヤウナ計畫ノ現ハレガ、統制會社ノ方ニ
  ヤツタラドウカト云フ話ニ移ツテ來タモノ
  ダラウト思フノデアリマス、併シ原則トシ
  テ、ドウシテモ繭ヲ買フトカ、利害ノ關係
  アル方面ニ任スベキデナイト私共ハ考ヘテ
  居ルノデアリマス、幸ヒ今囘此ノ團體ノ統
  制ガ實行サレルコトニナツタカラ、此ノ統
  制ガ實行サレルコトニナレバ、各團體トノ
  摩擦モナクナリ、皆統合一致シテ全農業ノ
  爲ニ協力ヲシテ進ミ得ルコトニナリマスカ
  ラ、非常ニ結構ナコトト思フノデアリマス
  ガ、隨テ指導ノ方針モ、是マデノ農會ニ屬
  シテ居ルモノ、或ハ產業組合ニ屬シテ居ル
  モハ·或ハ畜產組合ニ屬シテ居ルモノ、或
  ハ養蠶組合ニ屬シテ居ルモノ、是等ノ全指
  導員モ互ニ融合一致シテ、サウシテ緊密ナ
  橫ノ連絡ノアル指導ヲナシ得ル、指導ノ完
  璧ヲ期スルコトガ出來ルト云フコトニ付テ、
  非常ニ私共ハ喜ンデ居ルノデアリマス、併
  シ統制會社ニ指導セシメタラドウカト云フ
  議論ノ中ニハ、統制會社ニ於テ三百數十万
  圓ノ金ヲ出シテ居ル、ドウセ是ダケノ金ヲ
  出スナラバ、一步進ンデ全部ヲ統制會社ガ
  負擔シテ統制會社ニ歸屬シテシマヘ、ト云フ
  議論モアルサウデアリマス、併シ是ハ私共ノ
  考ヘカラ申シマスルト、此ノ統制會社ガ負
  擔シテ居ル金ト云フノハ、元々養蠶家ノ犠
  牲ニ依ツテ出來上ツタ金デアル、斯ウ云フ
  風ニノミ考ヘラレル、デアルカラ現在ハ統
  制會社ノ所有トシマシテモ、之ヲ養蠶ノ改
  善ノ爲ニ統制會社ガ負擔スルコトハ、當然
  過ギル程當然デアツテ、ソレガ爲ニ此ノ指
  導ノ事業ヲ統制會社ニ歸屬セシメルト云フ
  コトハ、何トシテモ諒解シ難イト云フ風ニ
  考ヘテ居ルノデアリマス、是ニ於テ御聽キ
  致シタイコトハ、是マデノ通リニ指導員ハ、
  今度ノ農業團體ガ出來マスレバ、此ノ農業
  團體ニ置クコトヲ御認メ下サルコト又國
  ト致シマシテモ、今日マデノ通リノ助成ヲ更ニ
  一步進メテ、他ノ農業ニ從事スル所ノ一般
  指導員ト同一ノ待遇ヲ與ヘルト云フコトニ
  御願ヒ出來ナイモノカ、サウ云フコトニシ
  テ戴キタイ、ソレカラ今日マデ統制會社ニ
  ヤツテ居リマシタ補助モ、更ニ一歩進メマシ
  テ、養蠶家ニ大ナル負擔ノナイ範圍ニ於テ
  指導員ヲ置ケルコトニシテ戴キタイ、ソレ
  ハ他ノ農業ノ指導員ガ、今日マデ非常ニ樂
  ナ負擔ニ依ツテ十二分ニ指導員ヲ置イテ居
  ルノト同ジ境遇ニ、養蠶業ノ方モ立タシテ
  戴キタイ、斯ウ云フコトガ一ツデアリマス、
  現ニ斯ウ云フヤウナコトニナツテ居リマス、
  今日農會ノ負擔金ハ、約一反歩ニ付テ十錢
  内外ノ反別割ヲ受ケテ居ルト思ヒマス、養
  蠶ノ方ハドウデアルカト言ヒマスト、全國
  平均シテ一反步ノ收繭量ガ十五貫目程ニナ
  ツテ居リマスカラ、平均一貫目十五錢位ノ
  經費ヲ負擔シテ居リマスルカラ、一反步ガ
  二圓ヲ突破スルコトニナリマス、養蠶家ノ
  負擔ハ二圓ヲ突破シ、農會ノ負擔ハ十錢內
  外デアルト云フヤウナ、サウ云フ均衡ヲ得
  ナイ負擔ヲシテ居ルヤウナ現在デアリマス
  カラ、此ノ養蠶方面ニ對シテ要スル指導員ノ
  設置費用ニ對シマシテハ、特段ノ御考慮ヲ
  御願ヒヲ致サナケレバ相成ラヌ、斯ウ云フ
  風ニ私共ハ信ジテ居ルノデアリマスガ、是
  等ニ對シテノ御所見ヲ御聽キ致シタイノデ
  アリマス

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• 125・井野碩哉

  ○井野國務大臣　養蠶指導員ガ從來自由經
  濟時代ニ、或ハ製絲家ガ之ヲ使ヒ、又其ノ
  爲ニ色々ノ弊害ガアツタト云フコトモ聞イ
  テ居リマス、所謂統制經濟ニ入ツテ蠶絲統
  制會社ト云フモノガ出來マシテ、旣ニ今日ニ
  於テハ製絲家トシテハ、單ニ養蠶家カラ蠶
  絲統制會社ガ買ヒマシタ繭ヲ買受ケテ製絲
  加工ヲスルト云フニ過ギナイノデアリマス
  カラ、從前トハ餘程趣キガ違ツテ來テ居リ
  マス、隨テ養蠶指導員ヲ何處ニ置クカト云
  フコトハ、今日デハサウ大キナ問題デハナ
  イ、結局養蠶指導員トシテノ待遇モ十分ニ
  出來ルシ、其ノ數モ相當確保出來ル經費ヲ
  持チ得ルモノガ之ヲ持ツト云フコトガ、理
  論上ニ於テハ私ハ一番正シイト思フノデア
  リマス、其ノ人々ヲ養フコトモ出來ズシテ、
  唯事業ダケヤルト云フ行キ方ハ、餘リ面白
  クナイト思ツテ居リマスガ、併シ今年ノ問
  題トシテ之ヲドウスルカト云フコトニナリ
  マスレバ、色々沿革モアリ、又色々ノ事情
  モアルヤウデアリマスカラ、政府トシテモ
  十分考慮シテ適當ニ善處シテ參リタイト考
  ヘテ居リマス

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• 126・山田六郎

  ○山田(六)委員　只今ノ御話ノ中ニ、元ノ
  〓業界ト今日ノ蠶業界トハ全ク違フト云フ
  御話ガアリマシタガ、ソレハ違フニ相違ナ
  イノデアリマス、違フニ相違ナイノデアリ
  マスルケレドモ、實質ハ殆ド元ニ近イ實體
  ガ、尙ホ今日其ノ儘殘ツテ居ルノデアリマ
  ス、ソレハドウ云フ譯デアルカト言ヒマスト、
  本年カラハ地盤ヲ配當シテ製絲家ニ與ヘル、
  製絲家ハ此ノ地盤內ニ生產スル繭ヲ原料ト
  シテ、事業ヲ經營シテ行クト云フコトニナ
  ツテ居リマス、其ノ地盤內ニ於ケル繭ヲ統
  制會社ニ賣ツタ形式ニハナツテ居リマスケ
  レドモ、實質ハ養蠶家カラ製絲家ガ品物ヲ
  受渡ヲスルト云フコトニ相成ルノデアリマ
  スカラ、品物ヲ作ル上ニ於キマシテモ、受
  渡スル上ニ於キマシテモ、元ト其ノ歩ク途
  ハ殆ド變ツテ居ラナイノデアリマスカラ、
  其ノ點ハ同ジダラウト思フノデアリマス、
  指導員ノ給料ヲモ拂ヒ得ナイヤウナモノニ
  對シテハ、拂ヒ得ル方ニ歸屬セシメルコト
  モアリ得ルコトデアルト云フ御話デアリマ
  スガ、其ノ通リデアリマセウ、サウスルト
  全國ノ現在ヤツテ居ル農會ニ於ケル所ノ指
  導員ノ如キモノモ、是ハ農會員ガ指導員ノ
  俸給ヲ拂ヘナイ爲ニ國家ガ補助シテ居ルノ
  デアル、斯ウ云フ風ニ見ルベキカドウカト
  云フノデアリマス、私ハソンナ風ニハ考ヘ
  テ居ナイ、總テ農產物ガ國家ノ重要ナル產
  業トシテ、國ガソレヲ何處マデモ助成シテ
  ヤラナケレバナラヌ、所謂國政ニ卽應スル
  意味ニ於テ、全國民ヲ働カセルノデアルカ
  ラ、ソレノ指導ニ國家ガ力ヲ入レルコトハ
  當然デアルト云フ見地ノ上カラ、指導員ニ
  對スル助成等ハナスベキデハナイカト云フ
  風ニ考ヘラレルノデアリマス、併シ兎ニ角
  本年ハ是マデト同ジ行キ方ヲスルト云フコ
  トデアリマスガ、今ノ負擔ノ問題ニ付キマ
  シテモ、私共ハ非常ナ心配ヲシテ居ルノハ、
  今ノヤウナ一反步當リノ現在ノ業者ノ負擔
  シテ居ル金ト云フモノハ、養蠶ノ方ノ負擔
  金額ト、一般農業ノ負擔金額ト云フモノハ
  非常ニ違ヒマスカラ、此ノ違ツタ團體ガ統
  合サレタ際ニ、經濟上ノ色々ナ問題ガ起キ
  ルノデハナイカト云フコトモ、非常ニ心配
  シテ居ルノデアリマス、是等ハドノ程度マ
  デ共通シテヤツテ行ケルカト云フコトニ付
  テモ、ドウモ中々實行上ムヅカシイ問題ガ
  起キルノデハナイカ、斯ウ云フヤウナコト
  ヲ心配シテ居ルノデアリマス、ソレ等モ御
  配慮ノ中ニ御入レ下サマイシテ、此ノ指導
  員ノ給料等ニ付キマシテ、吾々ノ要求スル
  ヤウナ繭ノ値段ガ出來上リマスレバ、指導
  員問題モ、蠶絲問題モ殆ド解消シテシマフ、
  蠶種ノ無料配付ヲスベシト云フ議論ヲスル
  ノモ、或ハ指導員ノ全額助成ヲ仰ギタイト云
  フ議論ヲスルノモ、繭ノ値段ガ如何ニモ今
  日ノ所デハ安イ、斯ウ云フヤウナ値段デハ
  到底生產ハヤツテ行ケナイト云フヤウナ狀況
  ニナツテ居ルガ爲ニ、色々サウ云フ議論ガ出
  ルノデアリマシテ、繭ノ値段ヲ相當ニ引上ゲ
  得ルト云フコトニナリマスレバ、是等ノ點ハ
  悉ク解消シテシマフ問題ダ、斯ウ思フノデア
  リマス、先刻モ繭ノ値段ノコトニ付テ一言局
  長サンニ御尋ネ致シタノデアリマスガ、繭
  ノ値段ニ對シマシテハ、全國ノ生產費ノ調
  査ガ近キ將來ニ出來ルカラ、ソレガ出來マ
  スレバ能ク調査ヲ致シテ、蠶絲統制委員會
  ニ依ツテ決定ヲスル、其ノ際ニハ其ノ生產
  費ガ相當高イト云フコトニナツテ居レバ、
  隨テ繭ノ値段ヲ引上ゲルノダト云フヤウナ
  意味ノ御答辯ニ是マデ何度モ接シテ居ツタ
  ノデアリマスガ、此ノ問題ニ付キマシテ
  モ、今日全國カラ集マツテ來ル生產費調査
  ト云フモノハ、農林省ノ色々ノ定規ノ下ニ
  作ラレテ居ルノデアリマスカラ、實際ヨリ
  モ或ハ安ク出來テ居ルノダラウト想像サレ
  ル節モアリマスガ、如何ニ安ク出來マシテ
  モ、今日ノ公定價格ヨリハ十掛ヤ十五掛ハ
  確カニ高クナツテ居ルノダト思フノデアリ
  マイク萬々一サウ云フコトデナカツタトシ
  タナラバ、經濟界ノ狀況ヲ斟酌シテ、是等
  ハヲ加ヘテ繭ノ値段ヲ決定スルト云フコトニ
  相成ツテ居ル筈デアリマスカラ、出來得ル
  ダケ今日ノ農村ノ情勢ヲ御考慮下サイマシ
  テ、此ノ繭ノ價格ニ付テノ問題ヲ然ルベク
  御決定ヲ願フ、而シテ其ノ決定ガ高ケレバ
  高イデ、此ノ指導員問題トカ、或ハ蠶種ノ
  無料配付問題等モ一切ガ解決サレテ行ク、
  斯ウ云フ風ニ考ヘルノデアリマスガ、是ハ
  皆連繫シテ居ル問題デアリマスカラ、ソレ
  ヲ御含ミ置キヲ願ツテ、然ルベク善處シテ
  戴キタイ、斯ウ云フコトヲ申上ゲテ置キマ
  ス

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• 127・高橋熊次郎

  ○高橋(熊)委員　今ノ山田君ノ指導員ノ問
  題ニ限ツテ質問シマス、今ノ大臣ノ御答辯
  ノ中ニ、私ノ聞キ違ヒカモ知レマセヌガ、
  指導員ノ經費ヲ支出シ得ルモノガ其ノ團體
  或ハ其ノモノニ歸屬スル一ツノ方法デアル
  カラト云フヤウナ考ヘモ考へ得ラレル、ト
  云フヤウナ御話ガアツタヤウデアリマス、
  統制會社ガ三百數十万圓ノ寄附ヲ致シテ居
  ル、サウシテ系統產業ノ養蠶團體ノモノハ
  ソレダケノ支出能力ガナイ、他ノ寄附ヲ仰
  イデ援助ヲ受ケテヤツテ居ルモノデアルカ
  ラ、其ノ寄附ヲ出シテ居ル方面ニ指導員ヲ
  歸屬セシメルコトモ一ツノ方法ダラウト云
  フヤウニ取ラレルト、是ハトンデモナイ大
  間違ヒデアル、ソレハ經緯ハ御忘レニナツ
  タノカモ知レナイノデアリマスガ、是ハ全
  國養蠶業組合聯合會ノ總會ノ席上デ、養蠶
  者ガ自ラ一貫目ニ付テ十五錢、約一千五百
  万圓ノ支出ヲ致シテ、相當ニ指導員ノ優遇
  ヲ圖リ、又指導員ノ必要量ダケ設置スルト
  云フ方法ヲ立テタノデアリマス、當時其ノ
  席上ニハ蠶絲局長モ居ラレテ、大體同意サ
  レタルヤウナ御言說ガアツタノデアリマス、
  蠶絲局トシテハ之ヲ承認サレテ居ツタ、ソ
  レガ省議ニ掛ツタ時分ニハ、米作ノ方デモ
  米ノ價格ニ持ツテ行ツテ、一定ノ割合ヲ醵
  出スルヤウナ方法ヲ執ルト云フコトヲ農會
  ノ方デ提案シテ來ルト、是ハ大キナ問題ニ
  ナルト云フヤウナ橫槍ガ入ツテ、其ノコト
  ヲ決議シテモ農林省ハ許可ハ出來ナイト云
  フ工合ニ模樣ガ變ツタト私共ハ考ヘテ居
  ル、デスカラ繭ノ値段ノ中ニハ、統制會社
  ガ製絲會社ニ販賣スル手數料ガアルノデア
  リマス、私共ハ其ノ手數料ノ一部分ヲ割イ
  テ養蠶家ニ戾シテ來ル、斯ウ考ヘテ居ル、
  是ハ要スルニ養蠶家ノ負擔デヤツテ居ルト
  何等異ラナイト思フ、統制會社ガ自分デ作
  リ出シタ金デ以テ、別ノモノニ寄附シテ居
  ルノデハナイ、養蠶家ノ繭ノ代金ノ中ニ當
  然入ルベキモノデアル、ソレヲ手數料トシ
  テ製絲家ニ高ク賣ツテ居ル、ソレデスカラ
  製絲家ニソレダケ安ク渡セバ製絲家ノ利得
  ニナルシ、繭ヲソレダケ吾々ノ所へ高ク買
  ヘハ、養蠶家ノ利得ニナルベキ幾ラカノ金
  デアル、ソレデスカラ是ハ當然養蠶家ノ負
  擔デヤツテ居ルノダ、唯統制會社ノ手ヲ經
  テ戾シテ貰フダケノ話ダト私共ハ考ヘテ居
  ルノデスカラ、若シ統制會社ノ支出スル經
  費ヲ負擔シ得ル者ガ當然此ノ指導者ヲ歸屬
  セシメル權利モアルダラウ、ソレモ亦合理
  的ダラウト云フヤウナ御考ヘトスレバ、是
  ハ御訂正ヲ願ツテ置キタイト思ヒスマシ、又
  製絲家モ自分ノ利潤ノ中カラ金ヲ支拂ツテ居
  ルノデハナイノデアリマス、各方面ノ農會ニ
  二錢五厘トカ、或ハ三錢五厘トカ云フヤウ
  ナ、一貫目當リノ金ヲ系統團體ニ支出シテ
  居リマス、寄附シテ居リマス、此ノ金モ大
  多數ノ製絲家ハ繭代金ノ支拂ノ時分ニ、繭
  代金カラ一貫目幾ラト云フヤウニ差引イテ
  居リマス、是ハ全國養蠶家ノ負擔ナノデ
  ス、サウ云フヤウナコトデスカラ、之ヲ
  合理的ニ今度ノ新團體ニ於テ負擔シ得ルヤ
  ウナコトニシナケレバナラヌ、殊ニ新シク
  問題化セントスルノハ、新團體ニ於キマシ
  テ一般農事上ノ、殊ニ米作等ノ關係ノ指導員、
  技術員ト、養蠶團體ノ技術員ト、同資格ノ者
  ノ比較ヲ致シマシテモ、非常ニ優劣ガアルノ
  デアリマス、昨日モ私共ノ山形縣ノ養蠶組
  合聯合會ノ總會ヲ開イテ、其ノ席デ問題ニナ
  ツタノデスガ-是ハ山形縣ノ例デスガ、全
  國的ナ標準ニ用ヒテモ宜カラウト思フノデ
  ス、ソレハ山形縣ノ指導員ノ俸給、之ニ旅
  費ヲ加ヘ、又家族手當等モ加ヘマシテ、ソ
  レデ一年間平均一人ニ對シテ九百五十二圓
  ニナツテ居ル、月ニスルト七十二圓ニナル、俸
  給ダケデハ一箇月五十一一圓平均デアリマス、
  一年ニ致シマスト俸給ハ六百二十九圓ニシ
  カナラナイ、之ニ對シテ縣農會ガ技術員ニ
  支拂ツテ居リマス平均ハ、一千二百圓ニナ
  ツテ居ル、一方ニ農會ノ方ノ技術員ニ支拂
  ツテ居ル俸給旅費等ハ平均一人ガ千二百圓
  デアルニモ拘ラズ、片方ハ千圓ニモ達シナ
  イ九百五十二圓デアリマス、而シテ此ノ養
  蠶技術員ノ平均年齢ハ幾ラカト言ヒマスト、
  山形縣デハ四十一歲ニナツテ居ル、是ガ平
  均年齡デス、四十一歲ノ平均年齡ノ者ガ月
  俸五十二圓デス、コンナコトデ滿足ニ働ク
  コトガ出來ルト御思ヒニナリマスカ、斯ウ
  云フコトデアリマスカラ、經費ノ出口ト云
  フモノヲモツトハツキリシナケレバナラナ
  イ是ガ新團體ノ一番初メニ逢着スル問題
  デハナイカト思フ、是等ニ付テモ相當御考
  ヘ置キヲ願ヒタイト思ヒマス、別ニ此ノ場
  合御答辯ハ要リマセヌ

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• 128・加藤知正

  ○加藤(知)委員　簡單ニ御尋ネ致シマス、
  先刻山田委員ト重政總務局長トノ質問應答
  ヲ拜聽シテ居リマシタ中ニ、肥料ノ問題ガ
  アリマシテ、米麥等ニヤル肥料ガ桑或ハ果
  樹ノ方ヘ流レテ行クノガ如何ニモ不都合デ
  アルカノ如ク仰セラレタヤウニ聞エタノデ
  アリマス、農業新團體ノ生ミノ親ノ如クニ
  言ハレテ居ル重政總務局長ガ、サウ云フヤ
  ウナ御考ヘヲ持ツテオイデニナルヤウデハ、
  今度農業團體ノ中ヘ統合サレル養蠶ノ將來
  モ思ヒ遣ラレルヤウナ氣持ガ致スノデアリ
  マス、局長ノ實際ノ御心持ハドウカ知リマ
  セヌガ、左樣ニ思ハレルノデアリマスガ、
  此際農林大臣ニ對シテ特ニ御伺ヒ致シタイ
  ト思ヒマスコトハ、是マデノヤウニ米麥重點
  主義デ肥料ハ米麥十點、桑其ノ他ノ作物八
  點ト云フヤウナコトデ將來オヤリニナルト
  云フコトデアレバ如何ニ繭ノ減產防止ヲ喧
  シク仰セラレテモ、ソレハ結局出來ナイ相談
  デアルト思ヒマスカラ其ノ重點主義ヲ改メラ
  レテ米麥、桑馬鈴薯、薩摩芋ト云フヤウ
  ナ所謂重要農產物ニ對シテハ、之ヲ平等ニ
  卽チ肥料ノ配給ヲ公平ニ分配セヤウト云フ
  御考ヘガナイカト云フコトヲ此ノ際御伺ヒ
  致シタイノデアリマス、ソレカラ指導員ノ
  問題デアリマスガ、是ハ今高橋委員ガ御述
  ベニナリマシタノデモウ十分デアリマスガ、
  唯此ノ際私ハ一ツ附加へテ御意見ノアル所
  ヲ伺ツテ置キタイト思ヒマスコトハ、指導
  員ノ俸給其ノ他ノ費用ト云フモノガ、ドウ
  モ色々ナ方面カラ出テ居ルト云フ關係デア
  ル爲メカ、ソレハ能ク私ニ分リマセヌガ、
  養蠶指導員ノ多クガ市町村等ニ居リマシテモ、
  養蠶指導ノ爲ニ專心働クコトガ出來ズ、町
  村ノ普通事務ニ追ヒ廻ハサレテ居ル者ガ中
  中ニ多イノデアリマス、斯樣ナコトハ色々
  費用ノ關係カラ來テ居ルコトト思ヒマスガ、
  產繭額ノ增强ヲ圖ラナケレバナラナイ今
  日、-勿論將來モサウデナケレバナラナ
  イト思ヒマスガ、寧口是等ノ產業戰線ノ第
  一線ニ立ツテ働カレル產業戰士諸君ノ爲
  二、其ノ費用ヲ國庫若シクハ縣費ト云フコ
  トニ改メラレ特別ノ優遇法ヲ講ゼラレテ、
  本當ニアノ人達ガ其ノ繭絲ノ爲メ卽チ指導
  ノ爲ニ命懸ケデ働クヤウニシテヤラウト云
  フ御考ヘハナイカ、ココマデ政府ガ考ヘラ
  レナケレバ、本當ニ生產力ノ增强ハ難シイ
  ト思ヒマスガ、之ニ對スル御意見ヲ御伺ヒ
  致シタイト思ヒマス
  尙ホ第三ニ伺ヒタイノハ、去六日ニ全國
  ノ主ナル製絲業者又ハ其關係者ヲ大東亞會
  館へ御集メニナリマシテ統合致シタ大會社
  ヲ設立セラルルコトニシタト云フ記事ガ新
  聞紙上ニ現ハレテ居リ、又此ノ間ノ私ノ質
  問ニ對スル農相ノ御答辯中ニモアツタノデ
  アリマスガ、要スルニ是ハ工場ノ電力ヤ燃
  料等ノ關係カラ勢ヒサウ云フ所ヘ行クト云
  フコトモ無理カラザルコトト思フノデアリ
  マスガ、此ノ際私ハ左樣ナコトモ一ツノ行
  キ方デアリ方法デアルカモ知レナイト思ヒ
  マスケレドモ、併シ其ノヤリ方如何ニ依ツ
  テハ、角ヲ矯メテ牛ヲ殺スヤウナコトニナ
  ラヌトモ限ラヌト云フコトヲ深ク氣遣フノ
  デアリマス、蠶絲局長ノ話デハ、マダ具體
  的ノコトハ決マツテ居ラヌト云フコトデア
  リマスカラ、之ニ對シテ今彼此レ批評ガマ
  シイコトヲ申上ゲル時期デハナイカモ知レマ
  セヌカラ、此ノ問題ハ十分ニ御考ヘヲ願フコ
  トニシテ、只一言此ノ際御伺ヒ申シタイト思
  フコトハ、自家用座繰製絲ノコトデアリマ
  ス、卽チ機械製絲ノ發達致シマシタ其ノ以前ニ
  行ハレテ居タ、アノ自家用座繰製絲ヲ奬勵
  スル時代ガ再ビ來タノデハナイカト考ヘル
  ノデアリマス、ト云フノハ、今日ハ生絲ノ大
  部分ハ國用絲ニ變ツテ來テ、隨テ絲質ノ良
  否ト云フコトヨリモ、量ノ多少ト云フコトノ
  方ガ大切ニナツテ來タノデアリマス、殊ニ電
  力ヤ燃料、工男工女等、其ノ他色々ノ關係
  カラシテ工場ノ經營ガ頗ル困難トナリ、機械
  製絲ノ運轉ト云フコトガ、事實ニ於テ甚ダ六
  ケ敷クナツテ來テ居ルノデアリマスカラ、寧
  ロ此ノ際、自家用座繰製絲ヲ奬勵シテ大部分ノ
  製家ハ副業的ニ蠶ヲ飼ヒ繭ヲ取ツテ、ソレヲ
  直ニ絲ニ繰ツテ之ヲ賣ルト云フヤウニスル
  コトガ、纖維資源ノ關係カラ考ヘテモ、又
  昨今ノ國情カラ考ヘテモ、製絲家ノ實情カ
  ラ考ヘテモ、今日最モ適切ナヤリ方デアル
  ヤウニ考ヘマスガ、之ニ付テ農相ノ御考ヘ
  ハ如何デアリマスカ、以上ノ三點ニ付テ御
  答辯ヲ戴キタイト思ヒマス

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• 129・井野碩哉

  ○井野國務大臣　肥料ノ問題ニ付キマシテ
  ハ、今日御承知ノ通リノ事情デ、十分デナ
  イ肥料ヲ國家ノ要請シマスル農產物ニ配給
  シナケレバナラヌト云フコトニナツテ來マ
  スト、勢ヒ重點配給モ是ハ已ムヲ得ナイ、
  勿論總テノ產業ハ今日戰力增强ノ上カラ大
  切デアリマスガ、其ノ中デモ國家トシテ重
  點的ナモノヲ選ンデ、ソレ等ノ處置ヲ致シ
  テ居リマスノモ、ヤハリソレニ基イテ居ル
  ノデアリマスカラ、農林省關係ノ仕事ニ於キ
  マシテモ、大事ナモノニモ自ラ差ガアリマ
  ス、隨テ其ノ差ニ從ツテノ重點配給ヲ致シ
  テ參リマスコトハ、今後モ肥料事情ガ變リ
  マセヌ限リハ、ヤハリサウ云フ點ハ其ノ方
  針デ進ンデ行クト云フコトヲ御諒承ヲ願ハ
  ナケレバナラヌノデアリマス、隨テ一旦サ
  ウ云フ風ニ決メマシタ重點配給ヲ他ヘ流ス
  コトハ出來ナイ、如何ニ蠶絲業ガ大事ダト
  考ヘマシテモ、又ソレニ勝ル食糧ノ重要性ヲ
  考ヘル時ニ、ヤハリソコニ多少ノ差ノアリ
  マスコトハ、是ハオ互ヒニ覺悟シテ行カナ
  ケレバナラヌ、斯ウ考ヘテ居ルノデアリマ
  ス、併シ蠶絲業ガ現在重要ダト云フコトニ
  付テハ、十分他ノ方面カラ考ヘテ居リマス
  ノデ、肥料ノ問題カラノミ考ヘテ行キタク
  ナイト思ツテ居ルノデアリマス、指導員ノ
  問題ニ付キマシテハ御話ノ通リ是ハ出來
  ルダケ優遇モシ、立派ナ人ヲ置イテ指導サ
  シテ行クコトガ一番宜イト思ヒマス、今日
  食糧ニシマシテモ、繭ニシマシテモ、增產
  サセルノニハ指導員ト云フモノガ大切ダト
  云フコトハ能ク分ツテ居リマス、隨テ國
  家モサウ云フ點ニ鑑ミテ、今マデモ色々ノ
  助成ヲ致シテ參ツタノデアリマス、併シ業
  者自體ガ賄ヘルモノハ業者自體ガ之ヲ置イ
  テ行クト云フコトモ、國家財政ノ見地カラ
  見テ適當デアリマスカラ、其ノ事業々々ノ
  性質ニ應ジテ、如何ナル所カラ其ノ經費ヲ
  持チ、サウシテ優遇方法ヲ考ヘテ行クカト
  云フコトニ付テハ、是ハ具體的ナ場合ニブ
  ツカツテ、何處デドウスルカト云フコトヲ
  決メテ行クノガ一番宜イト思ツテ居リマス、
  ソコデ先程金ノ出ル所デ持ツタラドウカト
  云フコトヲ申上ゲマシタノデ高橋サンカラ
  色々沿革上ノ御話モアリ、私モ其ノ沿革ハ
  能ク知ツテ居ル、寧ロ全養聯ニ付テハ私ガ
  方針ヲ變ヘタノデアリマスカラ、私ニ責任
  問題ガアルノデアリマシテ、是等ノ點ニ付
  テハ全養聯トシテノ立場モ私ハ能ク考ヘテ
  居リマスカラ、今後新農業團體ニナリマシ
  テモ、サウ云フ問題ニ付テハ十分ニ考ヘテ
  行キタイ、斯ウ云フコトヲ申上ゲテ居ルノ
  デアリマス、是ハ筋ダケ先程申上ゲタノデ、
  其ノ通リスルト申上ゲタノデハナイノデア
  リマス
  ソレカラ第三點ノ製絲ノ合同ノ問題ハ
  是ハ今御話ノ通リ、農林省カラ積極的ニ合
  同シロト云フヤウナコトヲ勸メタ譯デモナ
  ンデモナイ、今日ノ石炭事情、電力ノ事情
  カラ見マシテ、兎モ角一一百有餘アル工場ノ
  大半、殆ドヲ整理シナケレバナラヌ事態ニ
  ナツテ參リマシタ、サウナツテ參ルト、斯
  ウ云フ際ニ一ツニナツテ行クノガ宜イヂヤ
  ナイカト云フ業者ノ氣持カラ此ノ問題ハ發
  シテ居ルノデアリマス、ソコデ座繰製絲ニ
  戾シタラドウカト云フ御意見デアリマスガ、
  今日ノ纖維ノ需要ト云フモノハ、單ニ長纖
  維ノ需要ヨリモ、寧ロ短纖維ノ需要ガ多ク
  ナツテ參ツタノデアリマス、サウシマスト
  座繰製絲ハソレニハ向カナイ、ソコニハ於テ色
  色工夫ヲ凝ラシ、機構等モ考ヘナケレバナ
  ラヌト云フ譯デアリマスカラ、座繰製絲ニ
  戾スコトガ必ズシモ此ノ問題ノ解決ニナル
  トハ考ヘテ居ラナイノデアリマス

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• 130・加藤知正

  ○加藤(知)委員　第三番目ノハ全部座繰製
  絲ニ戾セト云フ意見デハナイノデアリマス
  カラ、誤解ガアツテハイケマセヌカラ、其ノ
  コトダケ申上ゲテ置キマス

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• 131・山田六郎

  ○山田(六)委員　極ク簡單ニ一ツ申上ゲタ
  イ農產物ノ價格ノ問題、殊ニ米價ノ問題
  ニ付テハ悉クノ人ガ論議サレタノデアリマ
  スガ、是ハ尤モナコトデ、如何ニ此ノ問題
  ガ重大ニ取扱ハレテ居ルカト云フコトハ、是
  デモ想像ガ出來ルノデアリマス、私モ此ノ
  農產物ノ價格ニ付テハ、最モ急速ニ再檢討
  ヲシテ戴キタイ、斯ウト思フノデアリマス、
  此ノ價格ガ當ヲ得マセヌケレバ、生產ノ增
  强ナント云フコトハ到底出來得ナイコトダ
  ト考ヘラレマスガ、大臣ノ御答辯ノ中ニ
  ハ、今日ノ時勢ニ於テ農民ガ價格ニノミ重
  キヲ置イテ居ルト云フコトハ、實ニ怪シカ
  ラヌ行動デアルト云フヤウナコトヲ意味ス
  九、所謂皇國農民ニ似合ハシカラザル行動
  ノ如クニモ、御言葉ノ中ニ含ンデ居ルヤウ
  ニ思ツタノデアリマス、ソレハ御尤モデア
  リマスケレドモ、今日ノ農民ガマダソレマ
  デニ考ヘガ行ツテ居ラナイト云フコトハ、
  非常ニ悲シムベキコトデアリマス、併シド
  ウシテモ價格政策ト云フモノニ一般農民ハ
  誘惑サレテ、右往左往ト云フヤウニ迷ツテ
  居ルヤウナ狀態デ、實ニ一般農民ハ同情ニ
  堪ヘナイト思フノデアリマス、ソレノ證據
  二、現在栽培ヲ禁止シテ居ル所ノ果樹園ニ
  對シマシテ思ヒヲ致サレルノデアリマスガ、
  本年果樹ノ苗ガ、常ノ年ナラバ十錢ガ十五
  錢ニ賣ルベキ苗ガ、一圓ト云フ高イ値段デ
  飛ンデ賣レテ居ルノデアリマス、殆ド全國
  的ニ此ノ果樹苗ト云フモノハ賣切レニナツ
  テ、モウナカラウト思ツテ居ル、其ノモノ
  ハ今日栽培ヲ禁止シテ居ル品物デアルト云
  フコトニ思ヒ當ルト如何ニ是等ノ人々ガ
  價格ト云フモノニ誘惑サレテ右往左往、彷
  徨シテ居ルカト云フコトヲ窺フコトガ出來
  ルノデアリマスカラ、此ノ點ヲ是非考慮シ
  テ戴キタイト云フコトガ一ツト、イマ一ツ
  ハ、價格ヲ壓縮シテ戴キタイ、是ハ實ハ全
  國ノ果樹園ニ肥料ガ橫流レスル爲ニ、食糧
  品ノ生產ガ非常ニ阻碍サレテ居ルト云フコ
  トハ爭フベカラザル事實デアリマスカラ、
  果樹ニ對スル價格ヲ壓縮シテ、サウシテ思
  ヒ切ツテ引下ヲ斷行シテ戴キタイト思フノ
  デアリマス、其ノ次ニ斷行シテ戴キタイノ
  ハ煙草デス、煙草ノ價格ヲ引下ゲテ戴キタ
  イ、是ハ政府自身デ出來ルコトデアリマス
  カラ面倒ハナイ、今日ノ如キ煙草ノ價格デ
  ハ、是ハヤハリ食糧品ノ生產ガ非常ニ減ル
  ト云フ心配ガアル、ソレカラ十七年度ニ於
  ケル煙草ノ耕作面積ハ四千町步滅ラシタ、
  斯ウ云フコトヲ言ツテ居リマスケレドモ、
  事實果シテ減ツテ居ルカドウカト云フコト
  ヲ、私ハ非常ニ疑問ニ堪ヘナイ、ソレハド
  ウ云フ譯カト言フト、一反步シカ耕作スル
  權利ノナイ者ガ、知ラヌ頻シテ一反二畝植
  付ケルコトヲ默認スルト云フヤウナコト
  モ、今日行ハレルノデハナイカト云フコト
  ヲ想像サレルノデアリマス、或ハ五畝步、
  六畝步ト云フ者ガ、知ラヌ顏シテ一反步作
  ルコトヲ默認スルト云フコトモ行ハレテ居
  ルノデハナイカト云フコトモ想像スル、四
  等、五等ト云フヤウナ品位ノ煙草モ、之ヲ
  三等ト評價スルコトガ普通ノ例ニナツテ居
  ルデハナイカト云フコトヲ想像スルノデア
  リマス、サウ云フコトヲスルカラ、一以一
  對シテ三百圓、四百圓、甚ダシキニ至ツテハ
  五百圓ト云フヤウナ收穫ヲ擧ゲテ居ル、斯
  ウ云フヤウナコトハ食糧增產ノ上ニ非常ナ
  害ヲナスモノデアリマス、第一ニ果樹園、
  第二ニ煙草、此ノ二ツノ價格ノ引下ヲ此ノ
  際斷行スルヤウニ御努力ヲ御願ヒシタイト
  思ヒマス

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• 132・井野碩哉

  ○井野國務大臣　產業物ノ價格ニ付キマシ
  テ、農民ガ其ノ引上ヲ要望スルコトハ怪シ
  カラヌトハ私ハ申シマセヌ、是ハ無論農村
  自體トシテモ、サウ云フ要望ノアルコトモ
  アラウト思ヒマス、併シソレハ今日デハ行
  ヒニクヒノダト云フ事情ヲ申上ゲタノデア
  リマス、私モ實際苦シンデ昨年ノ議會デハ
  丁度米ノ二重價格制度ヲ採ツタノデアリマ
  スガ、此ノ點ニ付テハ皆サンカラモ御叱リ
  ヲ受ケナイデ、寧ロ生產ノ增强ハ農業團體
  ヲ統合シナケレバ駄目ダト云フ御叱リヲ受
  ケテ、今年ヤツト其ノ統合ヲヤツテ見ル
  ト、今度ハソンナモノヨリモ、寧ロ米ノ價
  格ダト云フコトニナルノデアリマスカラ、
  中々ヤリマス方モ骨ガ折レルノデアリマス、
  併シサウ云フ事情モ能タ伺ツテ置キマシテ、
  自分トシテハ其ノ施策ヲ誤ラナイヤウニシ
  テ行クコトガ大切ナノデアリマス、是ハ言
  ハレル方ハ何ヲ言ハレテモ、ソレハ怪シカ
  ラヌト云フヤウナ氣持ハ持ツテ居ラヌノデ
  アリマス
  ソレカラ煙草ノ問題モ是モ大藏省ト能ク
  話合ツテ居リマシテ、其ノ面積ヲ殖ヤサヌ
  ト云フ方針ハ、大藏省モ堅持シテ吳レテ居リ
  マス、偶〓地方的ニ一部サウ云ツタヤウナコ
  トモアツタカモ知レマセヌガ、全國的カラ한
  見マスルト、四千町步デアリマシタカ、確
  カニ減ラスコトニナツテ居リマシタガ、是
  ハ價格問題デドウト云フ問題デナクシテ、
  生產統制ノ見地カラ抑へテ居リマスカラ、
  其ノ爲ニ食糧增產ノ妨ゲニナルト云フコト
  ハナイト考ヘテ居リマス

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• 133・高橋熊次郎

  ○高橋(熊)委員　今ノ煙草ノ問題デ大臣ニ
  聽イテ置キタイノデスガ、煙草ノ方面ハサ
  ウ云フコトニナツテ居ルカモ知レヌガ、昨
  年ナドハ大分困ツタノデス、山形縣ノ養蠶
  地帶デ、町村長ノ目ボシイ者ヲ郡ノ煙草耕
  作組合ノ組合長ナドニ推薦致シマシタリナ
  ド致シマシテ、專賣局デ非常ニ優遇スルノ
  デス、今年ハ煙草ノ耕作者ニ鹽ヤ肥料ノ特
  配ナドヲヤツテ居リマス、斯ウ云フコトヲ
  以テ非常ニ優遇シテ居ル、先程山田君ノ言
  ツタ價格ノ實收バカリデハナイノデアリマ
  ス、斯ウ云フ誘惑ガアリマシテ、大分其ノ
  方ニ進ンデ行クヤウナ傾向ガゴザイマス、
  之ヲ一ツ御注意ヲ願ツテ置キタイノデアリ
  マス

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• 134・東郷實

  ○東郷委員長　松由君

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• 135・松山常次郎

  ○松山委員　戰時國民生活ノ確保ト云フコ
  トニ政府ガ非常ニ力ヲ入レテ居ラレルト云
  フコトハ、私モ了承ヲ致シテ居リマス、ソ
  コデ先ヅ農林大臣ニ御注意ヲ願ヒタイコト
  ハ、私ハ和歌山縣デゴザイマス、和歌山縣
  ハ平時年々約四十万石米ガ足ラヌ縣デアリ
  マス、ソレデ自然蜜柑ノ栽培トカ、或ハ棕
  梠ヲ作ツテソレデ棕梠繩ヲ作ル、又除蟲菊
  ヲ作ツテ蚊取線香ヲ拵ヘルト云フヤウナ產
  業ガ、自然ニ發達ヲ致シテ居ルノデアリマ
  ス、ソコデ今度ノ統制ガ旨ク行カヌ結果、
  直グ和歌山縣トシテ困ツタ、例ヘバ棕梠ヲ
  作ツテソレデ棕梠綱ヲ作ルト云フコトガ殆
  ド停止シタヤウニ狀態ニナツテ居ルノデア
  リマス
  〔委員長退席西川委員長代理着席〕
  除蟲菊ノ問題モ非常ニ惱ンデ居リマス、ド
  ウ云フ風ニ惱ンデ居ルカト云ヘバ、是ハ吾
  吾カラ言ヘバ、除蟲菊トカ棕梠トカ云フ小
  サイモノハ統制ヲナサラヌ方ガ宜カツタデ
  ハナイカト云フヤウナ考ヘモアリ、又ヤリ
  方ニ付テモ色々申シマスガ、併シ出來夕以
  上ハ今日戰時ト致シマシテ、政府ノ御方針
  ニ從ツテ附イテ行カナケレバナラヌ、國民
  ハ今此ノ問題ヲ彼此レ論ジヨウトハ思ツテ
  居リマセヌ、當局ニサウ云フコトヲ申シマ
  シテ、是カラ旨クヤルト言ハレテ居リマス
  カラ、相當旨クヤラレルノダラウト信ジテ
  居リマス、ケレドモ其ノ困ツタコトハ、是
  ハ大臣ニ御注意ヲ願ツテ置キタイコトデス
  ガ、例ヘバ除蟲菊ノ問題デ、和歌山縣ダケ
  デハ足リマセヌカラ、段々縣外カラ材料ヲ
  移入スル、サウシテ和歌山縣ノ人間ガ主ト
  シテ北海道ニ行ツテ除蟲菊ヲ作ル、サウシ
  テソレヲ移入シテ和歌山縣デ蚊取線香ヲ作
  ル、大阪ニモ工場ヲ和歌山縣人ガ持ツテ居
  リマス、ソレデ約八割ヲ和歌山縣人ノ手デ
  ヤツテ居ル、ソレガ統制ノ結果、北海道デ
  產業組合ニソレヲ纏メサセルモノデスカラ、
  自分ノ所デ製造シテ居ル、同ジヤウナコト
  ガ棕梠綱ニ付テモ起リツツアルノデゴザイ
  マス、是ハ和歌山縣人ト致シマシテ將來ノ
  非常ナ憂ヒダト思ヒマス、統制ナドハヤツ
  テ吳レナケレバ宜カツタノニト思ツテ居ル
  一ツデゴザイマス、是ハ一ツ御考ヘヲ願ヒ
  タイ、今山田君ガ果物ノ値段ヲ抑ヘルト言
  ツタガ、直グ困ルノハ和歌山縣ノ問題デス、
  國民生活確保ノ問題ダカラ、是ハ國策トシ
  テヤラナケレバナラヌト云フナラバ、其ノ
  結果ハドウナルカト云フコトヲ考ヘテ下サ
  ラナケレバナラヌ、和歌山縣人ハ蜜柑ヲ作
  ルノヲ廢メテ米ヲ作レト云フ譯ニ行カナイ、
  サウ云フ樣ナノデアリマス、斯ウ云フ點ニ
  於テ色々御考ヘヲ願ヒタイ點ガアルノデゴ
  ザイマス
  ソレカラドナタモ皆言ハレルコトデアリ
  マスガ、米ノ配給ノ問題、和歌山縣ハ一番
  米ノ足ラヌ縣デスガ、私ガ今マデ方々ノ縣
  ヲ見テ居リマスノニ、米ガ餘ツテ縣外ニ移出
  スル縣ハ、或ル程度マデ當然ナノデセウガ、
  裕カニ米ヲ食ツテ居リマス、例ヘバ宮城縣ノ
  如キハ二合八勺ノ配給、福島縣ハ二合七勺
  ノ配給、是ハ皆米ノ移出縣デアリマス、奈良
  縣ハ米ノ一パイ〓〓ノ縣デアリマスガ、奈良
  縣ハ二合三勺或ハ二合五勺ソレニ相當スル
  素麵ナドヲ配給致シマス、隣ノ和歌山縣ハ
  二合デアリマス、移出スル位ノ縣ハ農家ノ
  保有米モアル、實ハ保有米以上ニソンナコ
  トハナイ筈ダト云ツテモ、農家ハ米ヲ持ツ
  テ居ル、ソレガナイノデスカラ和歌山縣ハ
  一層苦シイ、此ノ意味ニ於キマシテ和歌山
  縣ニ於ケル米ノ配給ノ問題ハ深刻デアリマ
  え、近頃其ノ配給ノ方法ヲ變ヘテ、二合ト
  云フ聲ノ餘リ起ラヌヤウニシテ居リマスガ、
  米全體ニ付テハ變ラヌノデスカラ、米ニ付
  テ困ルノハ同ジデアリマス、政府トシテハ
  モツト多ク配給シテヤラウト御考ヘニナツ
  テ居ルノデスガ、併シ是モ戰時デ仕方ガナ
  イト云フノデ皆我慢シテ居ルノデアリマス、
  是ハ和歌山縣ダケデハナイ、他デモ其ノ事
  實ヲ見ルノデスガ、米ノ配給ガ少クテモ我
  慢ヲシナケレバナラヌガ、是デハ到底足リ
  ナイノダ、其ノ結果乳呑兒ヲ持ツテ居ル母
  親ノ乳ガ出ヌ、是ハドウモ辛抱ノ仕樣ガナ
  イ、非常ニ重大ナ問題ダト私ハ思フ、此ノ
  點ヲ一ツ能ク御考ヘヲ願ヒタイト思フ
  〔西川委員長代理退席、委員長着席〕
  私ノ家ノ嫁ガ子供ヲ產ミマシテ乳呑兒ガアル
  ノデスガ、鯉ヲ手ニ入レマシテ嫁ニ味噌汁ニシテ
  食ハセマスト、ズツト乳ガ出ル、農林省ハサウ云
  フコトモ注意スレバ何トカナルヂヤナイカ
  ト思ヒマス、所ガ鯉ヲ飼フニハ飼料ガナイ
  ガ、田デ鯉ヲ飼フナラバ飼料ヲヤラヌデモ
  之ヲ養フコトガ出來ル、私ハ農林省ハ細カ
  イコトニ注意ヲスレバ、國民生活ノ確保ニ
  付キマシテモ、色々サウ云フヤウナコトガ
  克服出來ルヂヤナイカト考ヘテ居リマス、
  又木材ノ增產ノ問題ガ非常ニ喧シイ、私ノ
  縣デモ非常ニ喧シイ問題デス、所ガ結局色
  色方法ヲ講ジテモ宜イカモ知レヌケレドモ、
  米ヲ配給シテ吳レナケレバ働ケヌト云フ、
  私ノ方デハ三合五勺デアリマス、山間デ働
  ク者ニ對スル配給米ガ三合五勺、是ハ六合
  ハ少クトモ要ル、木挽キハ一升飯ヲ食フ、
  山稼ギヲスル者ハ一升飯ヲ食フコトニナツ
  テ居ル、最小限六合ハ食ベル、又ソレヲ〓
  ハヌヤウナ人間ハ仕事ニハナラナイ、斯ウ
  云フノデス、是モ亦少クシヨウト思ツテ知
  事ガヤツテ居ルノヂヤナシニ、一生懸命ニ
  ヤツテ居ルノダケレドモイケナイ、御苦心
  ノ所ハ私ハ能ク了解シテ居ル、何レニ致シ
  マシテモ米ノ增產ノ問題デアル、政府ガ一
  生懸命ニヤツテ居ルコトモ是亦申スマデモ
  アリマセヌ、增產ハ誰モ皆言フコトデアリ
  マスガ、非常ナ問題デアル、何處ヘ行ツテ
  モ言フノガ米價問題デアル、政府ニハ色々
  理窟ヲ付ケテ言ハレマスガ、米價問題デア
  ル、私ノ郷里デハ斯ウ云フコトヲ百姓ガ皆
  言フノデス、何處カラ計算シタカ、誰ニ〓
  ヘテ貰ウタノカ知レマセヌガ、皆言フノデ
  ス、今日ノ世間ノ物價カラ-此ノ一點ハ
  一ツ大臣ハ能ク聽イテ置イテ戴キタイ、、農
  民ハサウ云フヤウニ認識シテ居ル、今日ノ
  世間ノ物價カラ比較シテ行ケバ、米ノ値段
  ハ一石八十圓デアルト言フ、一昨年大政翼
  贊會ガ出來タ時分ニ、地方ニ相當ノ人物
  ヲ派遣致シマシテ、民情ヲ視察セラレテ、
  其ノ報〓會ヲ私ハ聽キニ行ツタ、コトガアリ
  マス、總理大臣官舍へ行ツタ、其ノ時ニ農
  村ノ何處へ行ツテモ米價問題ガアルト云フ、
  具體的ナ問題トシテ其ノ生產費ヲ計算シテ、
  六十八圓ダト云フコトヲ言ウテ居ルト云
  フ報告ヲセラレタ人モアル、其ノ時ニ六十
  八圓ナラバ、今日ノ世間ノ物價カラ言ウテ、
  八十圓ト云フコトハ餘リ無理ナモノデハナ
  イトモ思ハレルノデアリマス、私ハソコデ
  大臣ガ生產費ヲ計算シテ見テ、ソレニ依ツ
  テ或ル場合ニ於テハ考ヘモスルト云フヤウ
  ナ意味ノ御話ガアツタヤウニ思フノデスガ、
  生產費ノ勘定ハ、中々ムヅカシイ問題デア
  ル、公定相場ガ斯ウダカラソレナラ斯ウナ
  ルベキ筈デアル、或ハ人夫賃ノ公定相場ガ
  一圓八十錢ダカラ、一圓八十錢デ計算シタ
  う、ソンナコトデハ到底行カナイ、四圓五
  圓出サナケレバ田ノ草取デモ、農繁期ノ仕
  事モ出來ナイ、公定相場ナンカ言ツテ居ツ
  タノデハ、モノニナラナイノデアリマス、闇
  相場ガイケナイト云フケレドモ、闇相場デ
  ナケレバ食へナイ、又是ハ事實行ハレテ居
  ルノデアリマス、ソコガ非常ニムヅカシイ
  問題デアリマシテ、政府トシテハ闇相場ヲ
  公然ト御認定ニナツテ、生產費ノ計算ナド
  ハ出來マスマイ、併シソレダカラト云ツテ
  公定相場カラ、此ノ生產費ハ斯ウアルベキ
  ダト云フコトデハ實際ニ合ハヌ、人民ハソ
  レデハ納得シナイ、私ガ玆デ申上ゲタイコ
  トハ、農民ハ、八十圓モスルモノダケレド
  モ、低物價政策ノ根柢ニナルノダカラ五十
  圓デ我慢シロ、斯ウ云フナラ今日我慢スル、
  今日中小商工業者ハ先祖代々ノ仕事ヲ奪ハ
  レテ、今後ドウナルカト云フヤウナコトデ迷
  ウテ居ル人モ澤山アリ、共ニ國民ハ心配シ
  テ居ル時デアリマスカラ、ソレハ我慢シロ
  ト云フナラ我慢スルノデアリマス、併シ此
  ノコトヲ能ク御認識戴キマシテ、今後米穀
  增產ノ實際ノ成績ヲ擧ゲルト云フコトヲ御
  考ヘニナリマシテ、米價問題ノ如キモ考慮
  シテ戴キタイト思フノデゴザイマス、今マ
  デ大臣ノ米價ニ對スル御意見ハ、大臣或ハ
  政府委員カラ屢〓伺ツテ居ル所デアリマシテ、
  今改メテ茲ニ御意見御考ヘヲ伺ハナクトモ
  宜シイ、此此コトニ付テノ一ツノ認識ヲ持
  ツテ戴ケレバソレデ結構デアリマス、ダラ
  ダラ話ヲシテモ仕方ガナイノデ、ココデ一
  ツ切リマシテ、大臣ノ御意見ヲ伺ヒタイト
  思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=135

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• 136・井野碩哉

  ○井野國務大臣　色々御意見ガ出マシタノ
  デ、或ハ全部御答ヘガシ得ナイカモ知レマ
  セヌガ、先ヅ第一ノ除蟲菊若シクハ棕櫚等
  ノ統制ノ問題、是ハ今日需要ノ關係カラ申
  シマシテ、ドウシテモ或ル程度統制シテ重
  點配給シテ行カナケレバナラヌト云フ所カ
  ラ起ツテ居ルノデアリマシテ、運用ノ上ニ
  於テ色々惡イ點ガアリマスレバ、是ハ直シ
  テ參リタイト思ツテ居リマスケレドモ、和
  歌山縣ノ事情ハ私能ク承知致シテ居リマセ
  ヌノデ、十分調査致シマス
  ソレカラ食糧ノ配給ニ付キマシテ各府縣デ
  餘リ不公平ノナイヤウニ、農林省ガ主ニナツ
  テ、其ノ配給量モ決メテ居リマスガ、混食其
  ノ他ノ事情カラ、必ズシモ一人當リノ消費
  量ガ全國一律デナイコトハ是ハ御說ノ通リ
  デアリマス、隨テ其ノ食糧事情デ非常ニ困ル
  所ハ、又直シテ居ルト云フ風ニ色々工夫ヲ
  致シテ居リマス、殊ニ姙產婦ニ付キマシテハ、
  政府トシマシテモ昨年ノ四月カラ特配ヲスルコ
  トニ致シマシテ、其ノ爲ノ米ノ增配モ致シテ
  居ルノデゴザイマスカラ、若シ御宅デオ困
  リノヤウデシタラ、警察ヘ能ク御相談シテ
  下サレバ增配スルコトニナツテ居リマスカ
  ラ、適當ノ數量ヲ得ラレルコトト思ヒマス、
  又鯉ヲ食ベテ御乳ガ出ルト云フコトモ能ク
  聞イテ居リマス、併シドウモ姙產婦ニ鯉ヲ
  皆增配スル譯ニモ行キマセヌ、結局ハ私共
  モ水產〓糧品ガ足リマセヌカラ、養殖デ相
  當ノ水產〓糧ヲ增サウト云フコトハ計畫シ
  テ居リマス、水田ニ鯉ヲ飼フ、所謂稻田養
  鯉是ハ前カラ農林省デモ奬勵シテヤラシ
  テ居リマスガ、今日色々ナ事情カラ中々普
  及致シマセヌガ、唯經營的ナ大キナ養鯉事
  業ハ今日相當ニ奬勵致シテ居リマス、稻田
  養鯉ノ問題モ十分考究シテ見タイト思ツテ
  居リマス、ソレカラ價格ノ問題ハ話サナク
  テモ宜イト云フ御話デアリマスカラ、又今
  マデ色々私ノ苦勞シテ居リマス所モ申上ゲ
  テ居リマスカラ、御分リ願ツタト思ヒマス、
  大體ソンナコトデアリマス

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• 137・松山常次郎

  ○松山委員　米ノ增產ノ一要素ト致シマシ
  テ、開墾事業家、土地改良事業家ト申シマ
  スカ、其ノ事ニ付キマシテ御注意ヲ喚起シ
  テ置キタイト思ヒマス、能ク米增產ノ一要
  素トシマシテ小作人ノコトガ論ゼラレ、小
  農ノコトガ論ゼラレル、是ハ洵ニ結構ナ
  コトデ其ノ通リデゴザイマス、ケレドモ今
  日マデノ米ノ增產ノ一方ヲ擔當シテ來タ者
  ハ開墾事業家デアル、近頃ハ農地營團ト云
  フモノガ出來マシテ、五十町步以上ノ大キ
  ナ開墾ガ、ココ暫クハ民間ノ者ノ手デハヤ
  レナイコトニナツテ居リマス、併シ農地營
  團ト云フモノガ果シテ長ク開墾事業ト云フ
  モノヲ擔當シテ、之ヲ獨占シテ良イ成績ヲ
  擧ゲテ行キ得ルカト云フコトニ付テハ、尙
  ホ民間デハ大キナ疑問ヲ持ツテ居ル、併シ
  政府ノヤリナサルコトデスカラ、ソレヲジ
  ツト見テ居ルノデアリマスガ、曾テ開墾助
  成法ト云フモノガ初メテ出來マシタ時分ニ
  ハ此ノ土地改良事業ヲ目的トスル會社ガ雨
  後ノ筍ノ如ク澤山出來タ、併シ皆イケナイ、
  全部失敗ニ終ツテシマツタ、結局其ノ當時
  ハヤハリ開墾事業ノヤウナモノハ、民間ノ
  本當ニソレヲ自分ノ生命トシテヤルヤウナ
  人間ニヤラセナケレバイカヌノダ、月給取
  ガ月給ダケ貰ツテ轉々移ツテ行クト云フヤ
  ウナコトヲシテ居ル者ノ手ヂヤ旨ク行カヌ
  ノダト云フコトニ國民一般ハ認識致シテ居
  ルノデアリマス、開墾事業ト云フモノハ民
  間ノ者ガヤリマシテモ大抵ハ困難ニ陷ツテ、
  通常世間デ申シテ居リマス所ハ二人、三人
  ノ手ニ渡ツテ、三人目位ノ所デ成功スル、
  開墾事業ト云フモノハサウ云フ性質ノモノ
  ダト申シテ居リマス、又モウ少シク色々ノ
  經驗家カラ言ヘバ、開墾事業ト云フノハ二
  十年我慢スルト、マアヤツテ宜カツタト云
  フ程度ニ兎ニ角事業トシテ成功スル、斯ウ
  云フ風ニ認識サレテ居ル、其ノ途中デ我慢
  シ切レナイ者ガ又二ツ三ツ人ノ手ヲ潜ツテ
  ソレカラ成功スルニ至ルモノダ、斯ウ云フ
  風ニシテ非常ニ困難ナモノトサレテ居ルノ
  デゴザイマス、此ノ間豫算委員會デ松村謙
  三君ガ、今後日本ガ東亞共榮圈內、殊ニ支
  那ノ方面ニ日本國民ガ進ンデ行クニ付テハ、
  大體ニ於テ支那人ト云フモノハ日本ノ一反
  步ニ於ケル米ノ生產量ノ半分位シカ穫ツテ
  居ラナイノダカラ、之ヲ指導シテ行ク、又
  色々開墾事業ヲヤツテ行ク、サウシテ支那
  ノ民心ヲ把握シテ行カナケレバナラヌト云
  フコトヲ言ハレ、總理大臣モ其ノコトヲ是認
  シテ居ラレマシタガ、私ハヤハリ今後ト雖モ
  農地營團ガ出來タラ開墾事業家、土地改良
  事業家ト云フヤウナモノハモウ民間デハ要ラ
  ヌノダ、斯ウ云フ風ニ行クベキモノヂヤナイ、
  今日カラ見マシテモ、本當ニ開墾事業ト云フヤ
  ウナ冒險的ナ危險ノ多イ仕事ハ、民間ノ熱
  意ノアル人間ガヤツテ行ク、ソレデ大丈夫
  ト云フ上デ農地開發營團ノヤウナモノガ進
  ンデ行ク、今後ト雖モ土地改良ト云フモ
  ノハ必要デアル、必要デアレバ其ノ者ノ事
  業ガ立チ行クヤウニ、之ヲ愛護シテ行カナ
  ケレバナラヌ、私ハ米價問題ナドヲ考慮ス
  ルニ付キマシテハ、此ノ方面ノコトモヤハ
  リ考慮ニ入レナケレバナラヌト思フノデゴ
  ザイマス、所ガ近頃世上ノ空氣ヲ見ルト、
  開發營團ガ出來タカラ、モウソンナ開墾事
  業家ナドハ要ラナイノダ、米價問題ガ考慮セ
  ラレルニ付テモ、常ニ小農、小作農方面ノ
  コトノミガ考慮セラレル、サウ云フ事業家
  ハ通常勸業銀行ナリ、或ハ民間ナリカラ金
  ヲ借リテヤルノデスガ、勸業銀行ナドデハ
  此ノ頃企業家ニ對シテハ備荒貯蓄ヲシロト
  云フコトヲ要求シマス、勿論一般國民トシ
  テ貯蓄ハ大切デアリマスガ、斯ウ云フ方面
  ニモ貯蓄ガ奬勵セラレル、公債ヲ買ヘ、寄
  附ヲシロ、色々ノ意味ニ於キマシテ中々開
  墾事業家ト云フモノハ困難デアリマス、是
  等ノ點モ總テ考ヘナケレバ-本當ニ米ノ
  增產ガ大事デアルナラバ其ノ米ノ增產ノ一
  要素トシテノ開墾事業ガ、今後ハ營團デコ
  コ暫クハヤルトシテモ、ソレデモ尙ホ五十
  町歩以下ノモノハ、ソレ等ノ手ニ依ツテヤ
  ルモノガ隨分アリマセウ、今日ニ於テ我
  國ガ是ダケノ米ノ量ヲ保持シテ居ルト云フ
  コトハ、ソレ等ノ人ノ功勞ニ負フ所ガ多イ
  ノデアルカラ、國家トシテハ相當ニ之ヲ保
  護シテ行クベキモノデアル、殊ニ又國家ノ
  將來ヲ考ヘテモ、是ハ保護シテ行クベキモ
  ノデアル、斯樣ニ私ハ考ヘテ居ルノデアリ
  マスガ、農林大臣ノ御意見ヲ伺ヒタイト思
  ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=137

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• 138・井野碩哉

  ○井野國務大臣　開墾事業ガ今後ノ食糧需
  給計畫上極メテ重要デアリマス點ハ、御意
  見ノ通リデアリマス、又是ガ實施ニ當リマ
  シテハ、農地開發營團ダケデヤラセルト云フ
  特權的ナモノハ何モナイノデアリマス、外
  ノモノモヤレルノデアリマス、唯大キナ仕
  事ハ中々個人ノ開墾デハ經費、或ハ資材、勞
  力等ノ點デ難カシイノデ、國家的機關ヲ設
  ケマシテ開墾ヲヤラセルト云フコトニ致シ
  テ居ルノデアリマスルカラ、御話ノ通リ民
  間デ大キナ開墾ヲヤリタイト云フ者ガアレ
  バ、政府トシマシテモ出來ルダケ是ハ援助
  致シタイト考ヘテ居リマス

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• 139・松山常次郎

  ○松山委員　モウ一點デアリマス、是モモ
  ウ多クヲ言フ必要ハナイノデスガ、自作農
  創定ノ問題デアリマス、私ハ自作農創定ノ
  問題ニ付キマシテハ、多年色々自分デ考案
  モシ、考ヘテ來タ者デゴザイマス、曾テ山
  本悌二郞農林大臣ノ時ニ、稍〓大キイ自作農
  創定ヲヤラウトシテ、政治的ニ色々ノ困難
  ニ遭遇シテ惱ンダコトモ知ツテ居リマス、
  故ニ今度井野農林大臣ガ御計畫ニナツタ自
  作農創定ノ大規模ナ計畫ニ付テハ、洵ニ私
  ハ感服致シテ居ル者デゴザイマス、モウ來年
  頃ニハ一年ニ三億五千万圓位使フ、或ル時ニ
  ハ三億八千万圓位金ヲ使フト云フ雄大ナル
  自作農創定ノ御計畫ヲ井野農林大臣ガ御立
  テニナツタコトニハ、私ハ敬服致シテ居ル
  者デゴザイマス、故ニ私ハ此ノ自作農創定
  案ト云フモノガ、滯リナク實現出來レバ宜
  イト云フコトヲ冀ツテ居ル者デゴザイマ
  ス、ソレニ付キマシテ、是亦私ガ初メテ申
  上ゲルコトデハアリマセヌ、多クノ同僚諸
  君ガ意見ヲ述べラレ、大臣ノ意見ヲ求メラ
  レタ所デゴザイマスルガ、價格問題ニ付
  テ、實際ニ是デ旨ク行クカト云フ大キナ疑
  ヒヲ持ツテ居ル者デゴザイマス、之ヲ旨ク
  實現シテ行ク爲ニハ、モウ少シ此ノ價格
  ヲ-田ハ四百圓、開畑二百五十圓ト云フ
  平均價格ヲモウ少シ引上ゲナケレベ、實際
  ニ於テ行ハレナイノヂヤナイカ、ソレハ場
  末ニ於テハ行ハレルカモ分ラヌダラウケレ
  ドモ、全國一般ニ是ガ行ハレルカト云フコ
  トニ付テハ、大キナ疑問ヲ持ツテ居ル、此
  ノコトハ私ガ申上ゲルマデモナク、德川時
  代ニ於キマシテ、農民ハ武士階級カラ相當
  ナ壓迫ヲ受ケテ、其ノ上百姓ヲシナイデ遊
  ンデ居レバ叱ラレタ、王政維新後ハ其ノ
  叱ル所ノ階級ガナクナツタノデアル、ソコ
  デ是等ノ農民ノ多クハ、土地ヲ小作人
  ニ渡シテシマツテ、羽織ヲ着テ政治運動ヲ
  始メタ、自由民權ノ運動ト云フモノハ是デ
  熱ヲ持ツテ來、力ヲ持ツテ來タ譯デアル、
  其ノ結果立憲政治ガ此處マデ運ンデ來タ、
  此ノ功勞ハ確カニ認メナケレバナラヌ、所ガ初
  メノ間ハ科學ノ進步ニ依ツテ農產物ノ增產
  ハスル、價格ハ經濟的ノ發達ニ依ツテ上ツ。
  テ來ル、百姓ト云フモノハ相當ニ好イモノ
  デアル、自分ガ農家デアルト云フコトヲ誇
  リトシテ、サウシテ政治運動ニ參加シテ居
  ツタ、所ガ農產物ト云フモノハサウドン
  ドン殖エテ行クモノデハナイ、是ハ寧ロ低
  下シテ行ク、原則トシテサウナツテ行ク、
  價格ノ如キモノモ非常ニ變動ハアリマスル
  ケレドモ、其ノ割合ニハ上ツテハ行カナ
  イ、一方商工業ノ方ハドンノ〓發達シテ行
  ク、斯ウ云フコトノ爲ニ、農民ノ社會的位置
  ト云フモノハ非常ニ壓迫セラレル立場ニア
  ツタ、個々ノ農民カラ言ヘバ、元ノ德川時
  代ノ百姓、明治以來ノ一ツノ政治的要素デ
  アツタ所ノ地方ノ地主ト云フモノガ非常ニ
  困難ナ位置ニナリマシテ、其ノ中ノ弱イ段
  者カラ段々農村ヲ離レテ、農村ノ土地ヲ賣
  リ-此ノ自作農創定ノ御計畫ガナクトモ事
  實ニ於テ居レナクテ、段々農村カラ離レテ
  都會ニ出テ行キ、勞働者ノ中ニハ入ツテ行
  キ得ナイデ、或ハ其ノ者ガ米屋ヲ始メルト
  カ、小サイ商賣ヲ始メルトカ、ソレガ中小
  商工業者ニナツテ、遂ニハ整理セラレルト
  云フヤウナ時代ニナツテ來テ居リ、一種ノ
  緩漫ナ社會變革ガ玆ニ行ハレテ居ル、之ヲ
  一ツ政府ノ政策トシテ、或ル軌道ニ乘セテ
  此ノ運行ヲヤツテ行カウト云フノガ自作農
  創定デアル、ダカラ地方ノ者ニ土地ヲ賣レ
  ト云フ場合ニ、オ前ノ土地ヲ半分賣レト
  カ、三分ノ一賣レト云フコトニハ行クマイ
  ト思フ、賣ルト云フ時ニハ、其ノ土地ヲ全
  部賣ツテ其ノ地ヲ離レル、或ハ他ニ好イ仕
  事ヲ見付ケルカモ知レマセヌガ、兎ニ角其ノ
  ノ時ハ其ノ土地ヲ離レテ行ク人ナノデアリ
  マス、丁度士族階級ガ祿ヲ離レ、元ノ藩侯
  ノ地ヲ離レテ社會ニ抛リ出サレタヤウニ、
  此ノ自作農創定デ、與ヘラレタル金ヲ持ツ
  テドウ云フ所ニ落付クカ、兎ニ角其ノ人ハ
  社會ノ一ツノ波ニ乘ツテ行カナケレバナラ
  ヌノデアリマスカラ、茲デ自作農創定ヲヤ
  ルニ付テ政府トシテ、此ノ自作農ガ後デ混
  亂スルヤウナコトノナイヤウニ考ヘナケレ
  バナラヌコトハ勿論ノコトデゴザイマス、
  ケレドモ其ノ土地ヲ離レテ行ク人ノ土地ノ
  値段ヲ餘リニ叩クト云フコトハ、本當ノ政
  治トシテ宜シクナイト私ハ考ヘルノデアリ
  マス、故ニ此ノ自作農創定ノ價格ト云フモ
  ノハ、事情ノ許ス限リ之ヲ高ク値積ルヤウ
  ニシテ貰ヒタイ、又大臣ニ於テモ之ヲナス
  場合ニ於テハ、ソレニ付テ考慮モスルト云
  フ御意思ノアルコトハ、能ク分ツテ居リマ
  ス、ソレデ私ハ其ノ一ツノ方面デ此處デ申
  上ゲタイコトハ、此ノ自作農創定ヲ大體計
  畫ナサル政府トシテハモウ一歩進ンデ考
  ヘナケレバナラヌコトガアル、卽チ金ヲ持
  ツテ農地ヲ離レテ行ク所ノ農民ガ、モウ自
  分ノ村デ今マデノ小作人ト同ジヤウニ一生
  懸命働クト云フコトハ出來ヌガ、幸ヒニ國
  力ノ發展ニ依ツテ滿洲ニ日本人ガ進展シテ
  行カナケレバナラヌ、或ハ南洋方面ニ向ツ
  テ發展シテ行カナケレバナラヌト云フ此ノ
  氣運ニ乘ジテ、ソレ等ノ人ガ其ノ與ヘラレタ
  ル金ヲ持ツテ自己ノ運命ヲ開拓シテ行ク、
  斯ウ云フヤウナ途ヲ開イテヤルベキデハナ
  イカ、此ノコトニ付テ一ツ御考ヘヲ願ヒタ
  イ「アメリカ」ノ「ニューイングランド」地
  方、例ヘバ「ボストン」博物館ナドヘ行キマ
  スルト、昔ノ「ニューイングランド」ニ移住
  シタ人達ノ其ノ當時ニ持ツテ居ツタ所持品
  ガ陳列セラレテ居ル、彼等ガソレ等ヲ說明
  スル結論ハ、「ニューイングランド」二於八
  人達ハ詰リ只水呑百姓ガ來タノデハナイノ
  ダ、寧ロ相當ナ高イ文化ヲ持ツタ人ガ、思
  想上、信〓ノ自由ヲ得ラレヌトカ、政治上ノ
  或ル考ヘヲ持ツテ移ツテ來タノデアル、ソ
  レダカラ「ニューイングランド」ト云フモノ
  ハ非常ニ健全ナ發達ヲシタノデアル、只ノ
  水呑百姓ガ食ヘナクテ此處ヘ移ツテ來タノ
  デハナイ、ト云フコトヲ說明致シテ居リマ
  ス、ソレデ日本人ガ滿洲ニ移住致シマシテ
  モ、或ハ南洋ニ行クニ致シマシテモ、無論
  相當ナ文化ヲ持チ、金ヲ持ツテ居ル人々ヲ
  移スト云フコトガ、日本國民ノ海外發展ノ
  爲ニ大事ナコトヂヤナイカ、此ノ頃ノヤウ
  ニ農村ヲ離レテ、少シバカリノ金ヲ持ツテ
  都會ニ行ツテサ迷フヤウナコトノナイヤウ
  ニ、之ニ相當ノ指導ヲ與ヘ、行クベキ途ヲ
  政府ガ與ヘテヤルト云フコトガ必要デア
  ル、此ノコトヲ私ハ考へルノデゴザイマス
  ソレカラ實際問題トシテ此ノ價格ノ問題、
  例ヘバ今四百圓ト云フモノニナルト、大體
  一反步ニ年々二十四圓拂フコトニナル、二
  十四圓ト申シマスレバ、大體米ノ價ハ四十
  九圓、五十圓、デスカラ、五十圓トスレバ
  四斗八升デアル、是ハ重イヨリモ輕イ方ガ
  宜イ、生活ニ困ツテ居ル人ダカラ輕クシテ
  ヤルコトハソレハ宜シイケレドモ、兎モ角
  今マデノ小作人カラ地主ニナラウト云フ一
  ツノ考ヘデ出發スル以上ハ、ソレ等ノ人モ
  奮發スベキデアルト思フ、唯生活ガ安易ニ
  ナレバ宜シイト云フ考へ方ヲサセルコトハ、
  政治トシテハ私ハ面白クナイノデハナイカト
  思フ、例ヘバ今日ノ五十圓ノ米價トスレバ
  二十四圓ハ四斗八升デアリマス、五斗位ノ
  モノヲ出セバ宜シイ、是ハ今ノ小作人ニ八
  斗乃至一石位ノモノハ一反步ニ付テ出サセ
  テ宜シイノデハナイカ、其ノ位ノモノハ出
  サセル、併シ是ハ米價ガ非常ニ下ツタ場合、
  例ヘバ米價ガ二十圓ニナレバ、二十四圓ハ
  一石二斗ニナルカラ、政府トシテハ其ノ場
  合モ考ヘナケレバナラヌト云フナラバ、農
  地金庫ノ話ガドナタカラカ出マシタガ、米
  ノ高イ時ニハ餘ル金ヲ蓄積シテ置ク、サウ
  シテ米ガ安クナレバソレデ補給シテ行ク、
  斯ウ云フヤウナコトモ考ヘマシテ、サウ云
  フ農地金庫ノヤウナモノヲ作ツテ、其處デ
  米價ノ高イ時ニハ金ヲ蓄積シテ行キ、足リナ
  イ時ニハ補給スル、斯ウ云フヤウナ制度ヲ
  ヤリマスナラバ、今日ノ社會事情カラ申シ
  マシテ、米價ガ今日五十圓-是モ近キ過
  去ニ於テ二十圓ニモ下ツタコトガアルノデ
  スカラ、或ハサウナル時ガアルカモ知レマ
  セヌガ、日本ノ發展的ナ今ノ國情ヨリ見テ、
  日本トシテ米價ガサウ下ツテ行クベキモノ
  デナイ、斯ウ云フコトヲ考ヘルト、モウ少
  シ平均ノ地價ヲ上ゲルコトガ出來ルノデハ
  ナイカ、モウ一ツ進ンデ、自作農創定案ト
  云フモノニ實現性ヲ附與スルガ爲ニハ、其
  ノ點ヲ考慮スベキデハナイカ、斯ウ云フコ
  トヲ考ヘル譯デアリマス、農林大臣ノ御意
  見ヲ伺ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112906X00819430208&spkNum=139

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• 140・井野碩哉

  ○井野國務大臣　自作農創定ノ上デ、農地
  價格ノ問題ガ重要デアリマスコトハ御說ノ
  通リデアリマス、隨テ先般來モ此ノ問題ニ
  付キマシテハ色々考へ方ヲ申上ゲテ居ルノ
  デアリマス、併シ之ヲ徒ラニ高ク致シマス
  ト、今度ハ自作農創定致シマシタ者ガ維持
  ガ困難ダト云フコトモ十分考ヘナケレバナ
  ラヌ、又米價低落ノ場合等ノ御話ガアリマ
  シタガ、今日ノ米價ハ、政府ガ國家管理ヲ
  シテ居リマスカラ、是ヨリモ下ルト云フコ
  トハ殆ドナイノデアリマス、隨テ昔ノ自由
  經濟時代ノ自作農創設トハ餘程違ツタ觀點
  カラ、今日ハ自作農創定ガ出來得ルヤウニ
  ナツテ參リマシタノデ、政府ハ今囘ノ一大
  計畫ヲ立テテ居ル譯デアリマス、是ガ實現
  二、仰セノヤウニ農林省ト致シマシテモ
  出來ルダケ色々工夫致シマシテ、サウシテ
  此ノ目的ヲ達成シタイ、斯ウ云フヤウニ考
  ヘテ居ル譯デアリマス

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• 141・松山常次郎

  ○松山委員　今大臣ノ御說明ヲ伺ヒマシテ、
  土地ノ價格ヲ引上ゲル可能性ガ非常ニ多イ
  ト云フコトニ氣付キマシタ譯デアリマス笑
  聲ソレデコソ此ノ自作農創定案ニ實現性
  ガ、少クトモ近キ將來ニ於テ出來テ來ルト
  云フコトニ非常ニ安心致シマシテ、私ノ質
  問ヲ終リマス

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• 142・井野碩哉

  ○井野國務大臣　松山君ガ御考ヘニナルコ
  トハ自由デアリマスケレドモ、私ハ價格ヲ
  上ゲルトハ申シテ居リマセヌ

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• 143・松山常次郎

  ○松山委員　能ク分リマシタ

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• 144・鈴木重次

  ○鈴木(重)委員　松山君ノ質問ニ關聯致シ
  マシテ、食糧問題ニ付テ簡單ニ一寸御尋ネ
  致シタイト思ヒマス

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• 145・東郷實

  ○東〓委員長　簡單ナラバ此ノ際御許シ致
  シマス

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• 146・鈴木重次

  ○鈴木(重)委員　一地方ノコトヲ申上ゲマ
  シテハ恐縮デアリマスガ、私長崎縣デアリ
  マス、長崎縣ノ事情ハ、旣ニ御承知ノ通リ
  ニ炭礦ガ相當多ク出來テ參リ、更ニ造船其
  ノ他ノ戰時下ノ產業ガ相當盛ンニナツテ參
  リマシテ、十數万ノ勞働者ガ入リ込ンデ參
  ツテ居リマス、ソレガ食糧ノ配給量ガ少イ
  ト云フ爲ニ、非常ニ人心ガ動搖シテ居ルヤ
  ウナ傾向ニアリマス、殊ニ半島人ヲ炭礦方
  面ニ入レマシタモノハ、凡ソ其ノ八割ハ逃
  走スル、斯ウ云フ結果デアリマス、ソコデ
  勞働手帳ナンカ持ツテ居ルカラ、左樣ナ者
  ハ何トカナリサウナモノダト云フヤウナコ
  トデ調べテ見マスト、ヤハリ今日ニ於テ
  尙ホ勞働手帳等ヲ持チ合ハサナクトモ働キ
  得ル方面ガアルト云フヤウナ事情デ、炭礦
  方面ニ於テモ此ノ爲ニ非常ナル苦慮ヲ致シ
  テ居ルヤウナ狀態デアリマス、元來長崎縣
  ノ米ノ配給ト云フノハ、最初米ノ配給ガ實
  施サレマシタ當時ニ一人當リ一合七勺デア
  リマシタ、只今ハ一合八勺、而シテ村ニ依
  リマシテハ、最初ハ五勺位カラ、現在ニ於
  キマシテモ一人當リ一合以下ヲ配給シテ居
  ル所モアリ、左樣ナコトニ依リマシテ漸ク
  調節ヲ執ツテ居ルノデアリマスガ、重勞働
  者方面ニ對スル配給ノ實績ハ、米麥合ハセ
  マシテ三合五勺、ソレガ隣接ノ佐賀、福岡
  ノ兩縣等ニ比較致シマスルト相當ノ開キガ
  アリマスノデ、玆ニ人心動搖ノ原因ガ生ズ
  ルノデアリマス、曩ニ大臣ノ御答辯ノ中ニ、
  四合ノ配給ガ今實施サレテ居ルト云フコト
  デアリマシタガ、長崎縣ノ實情ハ、十月頃
  カト思ヒマスガ、二箇月程重勞働者ニ對シ
  テ五勺ヅツノ增配ガアツタカト思ヒマス、
  ソレ以外ニハ增配ガナクシテ、從來ノ儘デ
  實際ハヤツテ居ルト云フ狀態デアリマス、
  此ノ際左樣ナコトデハ更ニ時局產業ニ對シ
  テ甚ダシキ支障ガアリマスノデ、斯樣ナ方
  面ニ對スル增配ノ御配慮ヲヤツテ戴キタイ
  ト思ヒマスガ、此ノ點ニ付テ一言御所見ヲ
  伺ヒタイノデアリマス

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• 147・井野碩哉

  ○井野國務大臣　政府ガ限定シテ居リマス
  重大產業ニ付キマシテハ、昨年ノ四月カラ、
  是ハ順次デアリマスガ、食糧ノ增配ヲスル
  コトニナツテ來テ居リマス、隨テ長崎縣ニ
  於キマシテモ、之ニ該當スル產業ニハ增配
  スルコトニナツテ居ルノデアリマス、デア
  リマスカラ能クソレハ縣ノ方ト御打合セ願
  ヒマシテ、サウナツテ居ラナケレバ直グサ
  ウスルヤウニ御取計ラヒ願ヒタイト思ヒマ
  ス、尙ホ縣ニ於テ又色々出來ナイ事情ガア
  リマスレバ、政府カラ援助スルコトニ致シ
  マス

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• 148・鈴木重次

  ○鈴木(重)委員　分リマシタ、是デ質問ヲ
  終リマス

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• 149・東郷實

  ○東郷委員長　本日ハ是ニテ散會致シマス、
  明日ハ午前十時カラ開會致シマス
  午後六時散會

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